GGO:WZ (hareth)
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降下開始

「VRMMO」というジャンルはゲーム業界に革命を起こした。「ザ・シード」の拡散によって仮想世界は爆発的な拡張を続け、様々なVRワールドを生み出し続けている。

 その新たに作り出されたVRゲームの中でもかなり黒に近いグレーなタイトルの「ガンゲイル・オンライン」、通称「GGO」に新たな風が吹き荒れていた……。

 

 

 

「んで結局どうなんだ、そのイベントは?」

「ものすごく新鮮でクソ仕様だけど楽しかったわ。まさか弾道予測線とバレットサークルが出ない(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)とはね」

「それもうGGO崩壊してね?」

 

 グロッケンの裏路地にある少し小洒落た喫茶店。その一室でシノンとハレスは談笑していた。話題は今ホットな期間限定イベント、「バトルロイヤル」についてである。ソロ、デュオ、トリオの3ルールから一つ選び、150人揃ったら航空機から戦場へ降下するという一昔前に大流行したバトルロイヤルシリーズと同じルールである。またプレイヤーが元々所持している武器は使用できず、イベントで設定されている武器のレベルを上げて使いやすくしていくというシステムも用いている。つまるところ初心者から古参プレイヤーがほぼ同じ土俵に立ってバトルすることができるとても珍しいイベントであった。

 

「やるなら気を付けた方がいいわよ。あのイベント私たちのステータスも均一になってるから」

「マジでか。GGOやないやんそれ」

「GGOとして挑んだら簡単に殺されるわ」

 

 そう。初心者と古参が同じ土俵に立てるということは育て上げたステータスも無効になるということだ。銃撃の腕と位置取り、そしてバトルロイヤルシリーズ特有の範囲円予測をも行わないと勝利することは難しい。生存戦略が必要となる。

 

「文字通り、最後まで生き残ったヤツが勝ちという訳か……シノンの戦績は?」

「元々スナイパーだから隠れるのは得意だったけどなかなか難しかったわね…一位は取れなかったわ」

「なるほど。パーティ組んだらまた変わるかな」

「おそらく。でも私はもういいかな」

 

 ヘカート無いしとか言ってくれちゃってるシノンはもうこのイベントには参加しないらしい。かといってソロでやるのも面白くない。フレンド一覧を漁っていると、光っている名前が一つ。

 

「……あの人誘ってみるか」

「…確かにこの人なら撃ち合いは結構有利かもね。あなたと同じでいろんな銃使えるし」

 

 そこには「Sparrow」という名前が表示されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 リアルで知り合っているキリト達とは違い、ゲーム内だけでの交流だったので時間を合わせることが難しかった。お互いの予定が合ったのが一週間後である8月9日。その日までにできうる限りの情報を集めるため、ログインできるときにはできる限りそのイベントに参加していた。

 その結果わかったことがいくつかある。ステータスは関係ないとは言っていたが、体型による有利不利はあるようだ。低身長のキャラならば大型のスナイパーライフルは枷になり、大柄なキャラならば盾に体を隠し辛く、ヒットボックスも大きい。所持できるアイテムは制限が有り、弾薬を一定数以上は所持できない仕様になっている。また、爆発物を装備している状態では誤爆誘爆はせず、手に持って投擲体勢を取った瞬間から当たり判定が発生する。

 

 防具が存在する。このため回復アイテムは存在せず(自己蘇生用のアイテムは存在する)体力自体はダメージを負ったあと一定時間経過で全回復する。

 

 武器自体にレア度が存在する。例えばMP7というサブマシンガンが落ちているとする。この武器のレア度によって素の状態なのかアタッチメントがついているかなどが変わる。ここが難しい。使いにくいがレア度が高い銃を拾うのか、使いやすいがレア度が低い銃を拾うかという選択を迫られるのだ。

 

 基本的なシステムはこのような感じで、ルール説明に移行する。

 バトルロイヤルということで勝利条件は最後の1チームまで生き残ること。手段は問わない。一度体力を0にされたプレイヤーは一度だけ敗者復活戦に挑むことができ、そこで勝利すればもう一度戦場へ戻ることができる。またデュオやトリオの場合、マップに落ちているお金──GGOなのでクレジット──を一定数集めると復活権を購入できる。これには制限はない。

 

 バトル開始時にはノーアタッチメントのグロック17以外の所持品は無く、前述までの通り戦場で物資を調達することになる。航空機からの降下で戦場に降り立った後、生き残るために奔走することになる。

 武器自体にも当たり外れがあるので開幕即死というものも経験できたし、いろいろな場所へ降下したため激戦区や過疎地域、使いやすい武器や開幕拾えると嬉しい武器の把握できたのでおーけーだろう。

 

 これであらかたの情報はまとまった。まだちゃんと把握していないものもあるが立ち回るという点では問題ないだろう。スパローさん(以後敬称略)に伝えるまでもう少しまとめておくことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 そして、1週間後。

 

「じゃ、さっそく行こうかニキ」

「ニキやめれ姉御」

「なんで私巻き込まれてるの……?」

 

 とある3人が航空機内で降下準備をしていた。

 ニキ呼ばわりされているのが俺ことハレス。姉御呼びしているのがスパロー。

 そして1人俯いているのがピンクの悪魔ことレンである。前回のスクワットジャムで俺とキリトを蜂の巣にしやがった悪魔である(キリトはナイフで股を斬られていた)。

 

「ねぇなんで私なの?」

「P90出るから」

「待っててねピーちゃん…!」

 

 ちょろい。

 実際のところロリ金髪グレネーダーに「レンが退屈そうだから暇じゃなくなりそうなやつ連れて行ってくれや」って言われたから引っ張ってきたのだが、それは内緒にしておこう。

 

「んでお前ら高いところ大丈夫か?」

「「……ゑ?」」

「……幸運を祈る」

 

 どうやら俺はトンだ欠陥パーティを引っ張らなければならないらしい。それはまぁ、うん。甘んじて受け入れましょうかね。

 

〔降下開始!〕

「さて時間だ。覚悟決めとけよ」

「高さどれくらいなの…?」

「ALOで飛ぶ高さと大体同じくらいじゃねぇか?」

「ALOやったことないからわかんないよっ!」

「問題ない問題なーい、よし空港に降りるぞ~!」

「話を聞けぇぇぇぇっっ!!!」

 

 聞きません聞こえません。さぁ降下だっ!

 

 

 

 

 さて、俺たちが降り立った「空港」はマップ上では西北西に位置する。流石空港というだけあって縦にも横にも広い。物資も潤沢なので激戦区である(とはいっても名前のついている場所は激戦区と判断した方がいいのだが)。

 その空港の地下通路に俺たちは降り立った。周囲に足音は聞こえず、地下通路内には俺たち以外いないことがわかる。しかし空港のターミナルビル屋上には数パーティー、滑走路にある格納庫に2パーティーとkなりの人数が下りていたので安心できない。装備を整え迎撃の準備をしなくては…。

 

「ひとまず運がよかったな。円の位置は……若干外れてる程度だからそんなに問題ないだろ」

「じゃ、武器アーマークレジット集めってことで。ここで銃撃ったことのないお前らは絶対に撃ち合うなよ」

「わかった。合流はどうする?」

「円の収縮までおよそ10分だから5分後にストレージタウン…倉庫群だな、そこで合流にしよう」

 

 ここで別行動を始める。固まって動いていても武器は見つからないからだ。

 既に銃声が上の方で聞こえ始めている。俺は目の前に落ちているノーカスタムのTAR-21を拾い、銃声の鳴る方へ駆け出した。

 

 

 

「バトルロイヤルなんて初めてだから何すればいいかわかんないよ……ピーちゃん無いし……」

「一つの銃に固執してたらやられるぞ?ロードアウトドロップ購入まで我慢しようや」

 

 レンは小脇にMP7を抱え、スパローはFALとサイトの無いKarを携えて周囲を警戒している。現在地は空港の立体駐車場の一階だ。足音は無くこのままならすぐにでもストレージタウンに抜けられるというところではあるが、クレジットが2人のものを足しても4000クレジットしかなく合流前にもうすこし集めておきたいところだ。

 

「…そのMP7サプレッサーついてるよな?」

「あるよ?どうするの?」

「ちょっと撃ってみろよ。あの壁あたりに」

 

 レンは少し離れた壁を狙って銃を構える。そしてすぐに顔を上げた。

 

「バレットサークル本当に出ないんだ…」

「やっぱり出ないのか…マジでGGOじゃないなこれ」

 

 敵にバレるかもしれないので銃を撃ちはしなかったものの、戦い辛さを予感する2人。そんな2人に通信が入った。

 

『そんなんで音を上げるなよ?実際に銃撃つとわかるけど弾ほとんどあたんないからな?』

「オイオイ、それゲームとして成り立つのかよ…」

「ピトさんが言ってることって本当なんだねこれ…」

 

 そのとき心拍センサーを覗いていたスパローが目の色を変えた。付近50m以内に敵が来たようだ。

 

「交戦する」

『了解、無理はするなよ』

 

 実際に銃を撃つ機会が来たことを喜ぶことにしたスパロー。レンも真剣な表情をし、周囲の音を拾い集める。

 

「多分上層階、数3。私たちから見て右に動いてる。あっちの階段で待ち伏せする?」

「それがいいな。レンはセンサーマインを設置してから手前の廃車裏で待機。俺は逆側で待機するよ」

「わかった」

 

 階段を下りてすぐ横のスペースにセンサーマインを設置し、廃車裏で伏せるレン。スパローは持っていたKarを一先ず落ちていたレミントンM870と交換しFALを土嚢に固定させる。武器を窓枠などに固定させると射撃時の反動を抑えることができるので、待ちの戦術を取る際には効果的だ。

 

『距離20m正面。もうすぐだ』

『足音聞こえてる。作動したら撃つよ』

『OK』

 

 階段を下りる音が聞こえ、正面の廃車に身を隠すレンは敵の姿をはっきりと視認した。センサーマインは1つ。これ一個で敵を倒せる訳ではないのでしっかりと弾丸を当てなければならない。

 階段を警戒しながら下ってくる敵プレイヤー。戦闘のプレイヤーがセンサーマインを横切った瞬間―――

 

「食らえ」

 

 ―――2人目(・・・)の頭部にFALの弾丸が突き刺さった。そしてセンサーマイン発動し、爆発が前に出ていた2人を飲み込んだ。

 その瞬間レンは飛び出しMP7を乱射する。その弾丸は横にブレながらも腹から頭にかけて命中し先頭の敵をダウンさせることができた。

 

「あと一人だ!」

「ダメっ上に逃げた!」

『問題ないぜ』

 

 その通信と共に一発の重い銃声が響き渡る。するとダウンしていた敵が光の破片となって飛散し、所持していたであろう武器弾薬を落とした。

 

「死んだらこんな感じになるのね」

「心臓バックバクだよもぉ…」

『まぁ初戦は制したな。銃を撃った感想は?』

 

 合流地点に急ぎながら率直な感想をレンが言う。

 

「反動が大きめ。狙ったところに当たらない」

『反動が大きく感じたのは体格とMP7だからだろうな。それストックついてないだろ』

「よくわかったね。これのせいなのかぁ…」

 

 ちなみにスパローはFALの反動にはそこまで驚いていなかった。元々反動が大きめだからであろう。今後オープンスペースでの戦闘の際にどこまで制御できるかが悩みの種ではあるが。

 

 

 

「よし合流できたな」

「あぁ。クレジットは一応ハレスに預ける」

「なら早速ロードアウトドロップ買うか。一緒にUAVも買うから周辺警戒よろしく」

 

 そう言って集まったクレジットは15000クレジット。普段GGO内での15000クレジットというのは少ない額なのだが、ここではかなりの大金になる。

 まず4000クレジットでUAVを使用。これで視界に表示されているミニマップ内に赤点で敵が表される。そしてロードアウトドロップ。ケアパッケージと同じ要領で物資を要請する。落ちてきた立方体にアクセスし、予め作っておいたいくつかの装備セットの中から中近距離対応の装備を選択する。武器はSIG552の遠距離カスタムとAUGのSMGカスタム。レンはP90の中近距離カスタムとデザートイーグルの連射カスタム。スパローはTAC-50というスナイパーライフルにベレッタM92の二丁拳銃。全ての武器にサプレッサーがついており、位置バレの可能性がが極めて少ないカスタムとなっている。

 

「さてそれじゃあ、円の範囲内に行こうか」

「そうだな、戦闘のお陰で時間取ったから急がないとな」

「でも距離あるから走ってたら追いつかれちゃうよ?どうするの?」

「そりゃあ……車乗るっしょ」

 

 そう言った俺の目の前には、防御力が低そうなすっけすけのバギーがあった。




銃撃戦やりたくなかったけどバトロワを書きたくなったのでやっちまったゼ☆

遭遇戦や奇襲多めの話が続きそうですがアドバイスがあったらよろしくお願いします。

感想、評価お待ちしています。



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