艦これ世界で配信者 (井戸ノイア)
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プロローグ:配信者になるまで……っぽい!
ありふれたプロローグ


神様転生要素は……非常に薄いです。
チートとかは無いです。
特殊タグは3話から。




 転生した。

 どうして死んだのかとかは覚えていないのだが、転生したということだけは事実だ。

 薄っすらとした記憶にカミサマみたいな存在に出会ったことを覚えている。

 

 テンプレとでも言うべきか、何かしらの特典を与えるみたいな話をされた。

 向かう先の世界のことは教えて貰えなかったもので、同じ地球に生まれるのか、それとも別世界なのか、もしかしたら地球の中でも平和じゃない国に生まれるかもしれないとか考えた。

 そこで、転生先で生きるのに、少しだけ優位になる能力を所望した。

 

 その願いを持って生まれた場所は、前世と変わらない日本という国だった。

 変わったことと言えば、性別が変わってしまったことと、地頭の良さだろうか。

 どうにも平和な日本において優位になる能力とは地頭になったらしい。大抵のものは一度見れば覚えられるし、頭の回転も早かった。

 カミサマに頂いたものを地頭と言って良いのかは分からないが。

 

 そんなこんなで、生まれて約15年。

 私は晴れて花の女子高生となった。

 前世のせいで男女ともに恋愛感の無い人間になってしまったため、青春が送れるかは甚だ疑問ではあるところだが。

 どうにも中学生までは頭の良さが異質に映ったのか、友達と呼べるような存在を作ることが出来なかったのだ。

 見目の良さもあってか、何度か告白されたのだが、前世では男であった身。当然の如く断っていたら、悪評まで出回る始末。

 まあそれも、ある程度学力が似た者が集まる高校生になれば多少は落ち着くだろう。

 そのためにわざわざ地元から離れた高校へ進学したのだから。

 

 それはそうと、一年くらい前から何だか世界がおかしな事態に陥っている。

 どうにも漁獲量が激減し、さらに政府によって漁業以外の海への接触の禁止令が出されたのだ。

 しかも、それは日本だけではなく、世界中での出来事だった。

 そのため自然と食肉が中心の生活へと移って行くのだが、魚の激減というのは非常に厳しい問題だ。

 何せ、お肉を生産するには、生産量以上にコストがかかる。端的に言うのであれば牛肉1キロを生産するにはその何倍もの牧草が必要となる。

 魚と比べて、肉はコスパで見れば非常に悪いものになるのだ。

 故に起こりうるのは食糧難。現在はまだ表面化していないが、食糧自給の多くを輸入に頼る日本では今後、食糧難がどんどん進んでいくだろう。

 

 と、そんなことを考えながら入学式へ出席していると校長先生の長い話の後に、政府の人が現れた。

現れた。

 何やらアンケートと、検査をこの後に実施するため、数分間だけ時間が欲しいというものだった。

 何のことか分からなかったが、まあ簡単なテストなら協力しても良いだろうとか思っていた。

 教室にて、教師の挨拶と、簡単な自己紹介の後、アンケート用紙が配られた。

 アンケートは最近夢を見たか? というものだった。もし見ていたならばその内容を事細かに教えて欲しいとのこと。

 最近は夢を見ていないため、見ていないに〇を付けるだけですぐに終わった。

 

 そして、もう一つの調査は校門付近に張られた天幕の中に入って欲しいと言われた。

 そこを抜けたら今日は帰って良いらしい。

 外に出てみるとずらっと行列が出来ていたが、意外なほどに列はスルスルと進んでいく。歩くよりもちょっと遅いくらいのペースで進んでいた。

 天幕の少し手前まで来ると、スタッフのお姉さんに、中に入って机の上に何かが見えたら教えて欲しいと言われた。

 逆に何も見えなかったらそのままスルーして帰って問題無いとのこと。

 新しい精神検査とかだろうか。

 

 天幕の中に入ると一人の男性と、中央に丸机が置かれていた。

 その上には、何も無い……では無くデフォルメされた人間のようなナマモノが座っていた。

 そして、見ている私に向かってサムズアップしてくる。

 何か見覚えがある……

 思い出せ、思い出せ……と地頭の良くなる前、前世の記憶を掘り起こしていると動かない私を見て男性が話しかけてきた。

 

「どうやら、君はこの妖精さんが見えるようだね」

 

 渋い声に似合わない「妖精さん」という単語。

 妖精さんが懐を探り始めたかと思ったら、どこから取り出したのか同じくらいの背丈の猫の前足を掴んでぶら下げ始めた。

 その光景を見て、私はようやく思い出す。

 思い出してしまった。

 

 あっ、艦これ。

 

 そして同時にもう一つの嫌な予感まで浮かび上がってくる。

 この度、女子高生となった、前世男、今世見目麗しい女の子の私、白立(しらたち)楓夕(ふゆ)。その容姿は、言われてみればとあるキャラクターに似ていて。

 これ、ひどいフラグが立っていませんか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とまあ、そんなことがあったのも早、半年前。

 激動の半年が過ぎて、既に懐かしい出来事となっているまである。

 白立楓夕、改めまして白露型駆逐艦夕立、兼スイラン島泊地提督になりました!

 この島、無人島です。

 私一人です。

 嘘付きました、妖精さんと私しかいません!

 

 まあ色々と条件付けてこの島の配属に納得して来たんですけどね!

 さあ、どうせまだ仕事も出来ないし、動画配信するぞ!



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ありふれたプロローグ 終

次回より配信




 妖精さんが見えた私には提督適性があるみたいだ。

 それに前世で一時期プレイをしていた艦これの『夕立』というキャラの改二の姿に、私が似ていることに気が付いてしまった。

 髪や目の色は日本人らしく、黒だったから気が付かなかった。

 

 で、私はすぐにこの原因に思い当ってしまった。

 少しだけ優位になる能力。

 確かに、海上が封鎖されているような艦これの世界においては、提督や敵性存在と戦うことの出来る艦娘は、非常に優位な存在だろう。

 

 戦うことを強制されるということを除けば。

 

 細かな設定こそ明かされていないため、様々な解釈があるものの、大まかに言えば艦娘は戦時状態と似たようなものだ。

 つまり、もし予想通り、この容姿が似ているということがこれから艦娘になるということも示唆しているのだとすれば、戦力が足りているならばともかく、漁獲量の減少や、国が現状を私たち庶民に明かしていない現状を思えば、明らかに足りていない。

 

 これは徴兵される。

 

 そして、提督適性については、また案内がされるという通達を受け、帰宅。

 前世で艦これを知っていたから、なんとなく分かるが、知らない人には何が何だかさっぱりだろう。

 

 そして、そのうち艦娘としての適性も芽生えてしまうのだろうなと考えながら、布団に潜る。

 その日、私は予想通りというか、夢を見てしまった。

 戦時の艦としての記憶、そして身体を上書きされているかのような、奇妙な違和感。駆逐艦夕立と存在が混ざっていくような不思議な、けれど嫌では無い感覚だった。

 

 目が覚めると、髪色が変わっていた。

 ベージュ色の不思議な髪の毛だ。顔を洗うために洗面所に立つと、眼の色が紅色に変わっていることにも気が付いた。

 

 報告したら、海軍本部へと連れて行かれた。

 そこからはもう怒涛の展開。

 

 日本の、いや世界の現状を聞かされた。

 それは深海より現れる異形の存在により、海が奪われ始めていること。妖精という謎の存在により、魂や心霊というものの存在が明らかになったこと。

 そして、深海より現れる異形の亡霊、深海棲艦に対抗するには、同じく霊的存在である艦とリンクした人間、艦娘と、それらの力を引き出すための提督という存在が不可欠なこと。

 

 もうなんというか、一介の女子高生相手に話すことでは無いだろうと。

 ちなみに、艦娘としての適性を得てしまった娘には全員に同じ話をしているらしい。

 

 そして、日本を守るために戦えるのは艦娘だけと。

 最大限、意思は尊重するが、戦いに巻き込まれることは確定のようだ。

 

 そして、始まった艦娘としての訓練と、提督としての勉強の二重の日々。

 環境としては、悪く無いのだが、如何せん忙しい。

 周囲の艦娘は訓練後、他の娘と交流してたりしたのだが、私はその時間、提督としての勉強もしなければいけない。

 まあ、もとよりボッチだったので、大した変化では無い。

 給料も出るようなので、大きな不満も無かった。

 二重に勉強しているから、給料も二倍だった。

 

 と、そんなことをしていると、はや半年近くが過ぎた。

 近々、配属が決まるとのことで、訓練、勉強共に佳境に入っている。益々忙しい。

 

 そんな日々の中、残り一月ほどで全行程終了とのことで、それぞれの艦娘、提督に対して今後の希望調査が行われた。

 配属先の調査等では無く、人間としてやりたいことは無いか? というものだった。

 もしあれば、政府が全力でサポートをしてくれるらしい。

 例えば、ケーキ屋さんをやりたいと言えば、休日や任務の無い時間には本当にケーキ屋を行えるように店と資金を用意してくれるらしい。

 要するに、徴兵令の如く連れてきてしまったため、可能な限りの要望は応えたいという意図らしい。

 

 実のところ、艦娘として艦とリンクしてしまった影響か、戦うことに対する忌避はあまり無い。

 死にたくないという思いはあるが、それと同時に日本を守るために戦いたいという意思もあるのだ。

 だから、そこまで手厚くしなくてもと思わないでも無いが、これは艦娘にならなければ分からない感覚だ。口で説明しても上手く伝えることは出来ないだろうし、まあ貰えるものは貰っておこうの精神だ。

 私がやりたいことを本当に出来るのかは分からないが。

 

 端的に言えば、私は配信者になりたかった。

 高校生になったら、バイトして機材を買って、某有名動画サイトで顔出し配信をしようと思っていた。

 これには前世の記憶が関係している。

 前世では何をするでも無く、ただ漠然と社会の歯車になって生きていた。

 死因は分からないが、きっとひっそりと死んでいき、そして皆の記憶から消えていったのだろう。

 それを思うと、私は今世では、生きたという証を残したいと思った。

 それは何でも構わない。だから、最も手軽に始められる配信者という形で残したいと思ったのだ。

 それならば、例え有名にならなくとも、動画サイトが残っている限りは生きた証が残り続ける。

 死はいつ訪れるか分からない。それを実感してしまったからこそ、強く生きた証拠を残したいと思ってしまった。

 

 で、まあダメ元で前世云々は隠して伝えたところ、やけに軽く許可が下りた。

 しかも、やりたいこととかあまり決まっていないと伝えたところ、少し勉強が増えるけれど正式な海軍の広報担当として配信しないかと勧められた。

 どうにも、深海棲艦と艦娘、提督のことを隠し続けることが難しくなってきたそうで、そろそろ情報を出していかなければならないとのことで。

 今まで隠してきたのは、そうした霊的なことを受け入れられるか分からなかったことと、混乱を避けるためみたいだ。

 

 機密情報のことなど、追加で少しだけ勉強して。

 そもそも艦娘のことなど、分かっていないことが多いみたいなので、機密事項は意外と少ないらしい。

 

 それでもって、とある理由もあって、このスイラン島泊地へとやって来た訳だった。

 拠点も何も無いし、ネット環境もありゃしない。

 でも、提督と艦娘がいれば、あとは妖精さんが霊的なパゥワーで全て揃えてくれる。

 そうして、私の提督、艦娘、そして海軍公式配信者として、三足の草鞋の生活が始まったのだった。





スイラン島

架空の島。
どこにあるかは決まっているので後々。


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序章:初心者提督夕立の配信日和
初配信は情報過多


機密とか深く考えてはいけません





【公式】夕立の機密配信!【許可取ってるっぽい!】

 

 

わこつ

海軍公式ってま?

↑ツイッチー見たらよく分かるぞ

こんな幼い娘が公式?

 

 

 とうとう枠を取ってしまった……。

 最初は広報も含めた公式配信者だったら、色んな人に見て貰えるから良いなぁと思っていたんだ。

 で、そのまま勧められるがままに、ツイッチーにアカウントを作った。

 大本営のアカウントと相互フォローだけして、結局忙しいからと弄ることも無く、提督として赴任。

 ひとまず、深海棲艦なんかの情報をまとめて、一度配信するかと考えたところで、再度ツイッチーを開いた。

 そして、フォロワー数を見て驚愕した。その数、実に百万以上。

 動画サイトのリンクを震える手で押してみれば、そちらも同等近い数の登録者がいて。

 明らかに一度も配信なんてしたことの無い初心者に付いて良い数では無かったのだ。

 

 そのことに今更ながら、怖くなってきたが、これも一つの仕事。

 恐怖を誤魔化すように、努めて明るく枠を取り、あと1時間ほどで配信が始まってしまう。

 まあ、この人数は私を見たくて来た人では無く、今この世界で何が起こっているのか知りたくて来た人達がほとんどだ。

 今回ばかりは必要な情報を伝えるが……普段は好きに配信して良いことになっている。

 だから、今回を区切りにきっと、視聴者は減っていくだろう。

 

 そう自分を鼓舞し、自分の選んだ道なのだからと、気持ちを切り替える。

 そして、私はマイクをオンにした。

 


 

 

『こんばんわ! 私は白露型駆逐艦4番艦夕立です! 広報担当兼、提督兼、艦娘っぽい!』

 

こんー

ぽい?

可愛いけど、中学生?

駆逐艦? どういうこと?

許可取ってるっぽいって大丈夫なのかそれ

 

『許可は問題無いし、私が公認で合ってるっぽい! 今日は質問には可能な限り答えていくっぽい! ぽいって言うのは口癖みたいなものだから気にしないで欲しいっぽい! あ、私はいちおう歳的には高校生だよ!』

 

不思議ちゃん……

何でこの娘が公認なんだろうか

リアルJKprpr

海が実質閉鎖されていることとか説明してくれるのか?

↑化け物がいるからって噂が流れているが……

化け物なんている訳無いでしょ

 

『あ、ちょうど良いっぽい! その化け物のことについて説明するっぽい! 軍が名付けた正式名称は深海棲艦。簡単に言えば、水底から現れて、手当たり次第に人を攻撃する亡霊みたいなものっぽい! 今、画像出すね』

 

 と、パソコンを操作して予め用意しておいた、駆逐イ級の画像を画面に映す。画像を撮れているのは現在、イ級だけである。

 

合成写真……?

魚雷みたい

歯が気持ち悪い

これは、本物?

 

 猜疑的な意見が多い。

 これは仕方ないだろう。誰だっていきなりこんなものを見せられて、そんなものが海にいるのかなんて納得は出来ないだろう。

 

『これは駆逐イ級。画像は無いけれど、他にもロ級なんかも確認されてるっぽい。この深海棲艦が初めて確認されたのが、凡そ2年前。たまたま一隻でいたこれを護衛艦が見つけて、襲い掛かってきたのをなんとか撃退したけれど、通常兵器ではほとんど傷を付けられなかったっぽい』

 

何かSFっぽい

こんな話急にされても信じられないなぁ

↑口調移ってる

でも、実際に海は封鎖されている訳で

全国一斉調査とかいう、何を調べたいか分からない謎なこともやってたしな

 

『信じられなくても現実だからありのままに伝えるしか無いっぽい! 私の口からでは信じられないって場合は、後から海軍の偉い人と、お国の偉い人から追加で説明があると思うからそっちを聞いて欲しいっぽい! 私も誰が発表するかは分からないけどね!』

 

そこまで言われると、若干信じるしか無いような気もしてくる

後々、発表があるならこの配信は何のために?

ぽい?

おい、釣られて謎の言語を話すやつが出てきたぞ

 

『この配信はあくまで私の個人的な配信だよ! でも、それだけだと勿体ないから広報と最新情報の宣伝も兼ねてやってるっぽい! あとは、一方的な発表じゃなくて、質問とかにも答えていくのは私じゃなきゃすぐには難しいっぽい! 答えられる質問ならすぐに答えるよ!』

 

なるほど?

つまり、おっさんの発表か、美少女の発表か選べるとな?

美少女の方は質問も拾ってくれるかもしれないぞ

もし、本当なら後々信用も生まれてくるだろうしな

最初に言ってた駆逐艦ってどういうこと?

 

『駆逐艦についてはこの深海棲艦が現れてからの軌跡を説明しないと難しいっぽい! まずは、現れて一隻しか確認されなかったことから、調査が行われたっぽい! それでその調査の結果、判明したのがあの亡霊こと、深海棲艦と、人に味方してくれる妖精さんの存在っぽい』

 

世界はファンタジーだった?

妖精さん、一体どんな姿をしているんだ

 

『妖精さんは二頭身の可愛いお人形みたいな見た目っぽい! 妖精さんと話せるのが提督って存在で、妖精さんと協力して深海棲艦を打ち倒すのが、私たち艦娘っぽい! 艦娘は戦時下の艦の名を持っていて、私はその中の駆逐艦の一人っぽい!』

 

 手元にいる妖精さんを撫でながら、話す。

 妖精さんは何故かカメラに映ることが無い。提督がスケッチした姿くらいはあるものの、あまり一般人の前に姿を現すのが好きではないようなので、その絵は出さないことにした。

 提督や、艦娘になった人には、わーわーと子供のように集まってきたりする。

 可愛いけれど、本当に謎の存在だ。

 

『簡単に言えば深海棲艦は幽霊みたいなものだから、物理的な攻撃が効かないっぽい。だから、妖精さんの力を借りて戦時下の艦の記憶を持った武装、艤装を開発。艤装は適合者を見つけると勝手にリンクして、その人を半分くらい霊的存在にするっぽい! そうして生まれるのが、艦の記憶を持った人間、艦娘だよ!』

 

幽霊?

え、じゃあ夕立ちゃんは元々軍の関係者じゃない?

半分幽霊って何それ怖い

夕立ちゃんは生霊だった?

 

『幽霊じゃないっぽい! でも、軍の関係者じゃないのは正解だよ! 半年前の一斉検査の時に適性があるって集められたっぽい! 今まで機密だったけれど、集められた人達は皆元気にしてるから安心して欲しいっぽい! 家族の方も、もう話しても大丈夫だよ!』

 

 とまあ、最低限伝えなきゃいけないことは伝えて。

 お堅い感じの詳しい説明は、お偉いさんがしてくれるだろう。

 なるべく多くの質問に答えたいところだが、これだけの視聴者の数、全てに答えていたらきりがないだろう。

 そろそろ一度終わるべきか。

 

『ふう、だいぶ時間も経ったっぽい! 全部の質問に答えるのは難しいから、ツイッチーの方に質問箱を設置したっぽい! 配信外でもそっちで随時質問に答えていくからどんどん送って欲しいっぽい! 一か月も動かしてなかったけれど、ようやく時間が作れるから、これからは活用していくっぽい! それじゃあ、何回かは質問とか説明の回になるかもしれないっぽいけれど、その後は雑談しながら普通の配信も予定しているから良かったら見てね! またっぽい~』

 

ぽいー

ぽい!

またっぽい!

↑浸食されてる……

情報の嵐に時間があっという間に過ぎてしまった……

この後、追加情報も含めて会見するってニュースでやってたぞ!

普通の配信者としてもやってくって言ってたけど、凄い異質なスタートだったな……

 

 

 

 

 

 

この配信は終了しました

 




ぽい?
ぽいぽいぽいぽいぽい!
ぽいぽい!


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初心者の釣りにハプニングは付き物

バッと書き上げた





 それから何度か配信して。

 質問なんかにも答えていくうちに、気が付けば深海棲艦のことよりも、私のことに対する質問の方が増えてきていた。

 視聴者数もだいぶ落ち着いてきたことだし、そろそろ個人的な配信をしても良いだろう。

 


 

【雑談しながら】釣りをするっぽい!

 

 

『おはようっぽい! 今日は休日にしたから朝から釣り配信をするっぽい!』

 

ぽい!

ぽぽい!

ぽいぽいぽい!

すっかりこの挨拶も定着したっぽい!

あれ? もしかして今日から普通の配信?

 

『ぽい! 人も落ち着いてきたから雑談しながら釣りでもするっぽい! 実は何するか何も考えてなくって、妖精さんから竿を貰ったからやってるのは内緒っぽい……』

 

何も考えていなかったのか……妖精さんナイスゥ!

何気に休日にしたって言ってるの提督権限か?

↑ツイッチー曰く、普段は昼間は哨戒とか、書類やってるっぽいから……

海釣りの動画とか久しぶり過ぎて楽しみ

 

『晴れ渡る青い空、白い雲、そしてさざ波の音! この光景を堪能出来るのは夕立になったからだし、すっごく良かったっぽい!』

 

 艦娘も提督も足りていないこのご時世。

 徐々に人の行動出来る海域が狭まってきていることもあって、海へは近付くことも禁止されている。

 故に、艦娘や提督などという特権階級だけしか、この光景を直接目に刻むことは出来ないのだ。

 そう思うと、何でも無いような海がとても素敵なものに見えてくる。

 

 何をするか決めていなかったのは本当だけれど、釣りをしようと思ったのは妖精さんが釣り竿を持って浜へ出掛けて行ったのを見かけたからだ。

 私も、たまには羽根を伸ばすのも良いだろう。

 

『ふっふふーん♪ふっふふーん♪ きっとこの辺りの魚はスレてないから釣りやすいっぽい! 今日は大量だよ!』

 

あっ

これはフラグ

今までは説明ばかりしていたから、ここで夕立ちゃんがドジなのかが分かる……!

そもそも餌付けれるのか? 抵抗ある娘多いと思うのだが

 

『あっ、この釣り竿は餌いらないっぽい! 妖精さん印のルアーが付いてるっぽい! でもでも、もし付けるとしてもゴカイとかなら触れるっぽい!』

 

はえー、今時なのに感心

さては釣りをしたことがあるな、貴様!

概要欄に初心者ってあるのは釣りだった……?

 

『釣りじゃないっぽい! 糸を水面に垂らすのはまだこれで二回目っぽい! 一回目は何年も前だからもう覚えてないし、初心者っぽい!』

 

 実際、ゴカイくらいなら大丈夫だろうと思って話しているけれど、ちょっと不安だ……。

 前世では問題無かったけれど、そこは引き継ぎされているだろうか?

 ……深く考えるのは辞めよう。

 

『! 見て見て、引いてるっぽい! そんなに引く力は強く無いけど何だろう?』

 

 引き上げてみるとおちょぼ口の可愛い、カワハギだった。

 カメラの前に持って見せると、コメント欄も盛り上がる。

 

カワハギだ!

今では海の魚は皆高級魚……

食べたい……

カワハギは引く力意外と強いって聞くが

ヒント:艦娘の力

 

 こうして盛り上がるコメント欄を見ると、前世でゲームの中で艦娘が秋刀魚漁をしていたのも何だか分かる気がする。

 海の幸はそれだけ貴重品になってしまったのだ。

 それを年に数度くらい、祭りのように集めて放出していたら、皆幸せな気分になれるだろう。

 出来ればこのカワハギを誰かに送ってあげたい。

 でもこの無人島は、深海棲艦の勢力圏のすぐ傍に位置するいわゆる空白地帯。

 艦娘でなければ、安定してここまで来ることは難しいだろう。

 

『このカワハギは今日の夕飯にするっぽい! 最近、持ってきた保存食とか、生成した重油にも飽きてきたからちょうど良いっぽい!』

 

何だか不憫な食事情……

まあ、普通の船じゃ危険過ぎて行けない無人島らしいから……

……重油!?

重油飲むの? 船と考えたら普通かもしれないけど……

まーた新しい情報だ、これだから夕立ちゃんの配信は見ざるを得ないぜ!

 

『あれ? 言って無かったっぽい? 私たち艦娘は船と半分融合しているようなものだから、重油とかも飲めるし、身体の中で栄養とかに変換出来るっぽい? 私もその辺りの詳しいことは分かんなーい』

 

 と言いつつ、水筒を取り出して中身を手の上に出して見せる。

 どろッとした液体、重油だ。

 提督と艦娘がいる所には自然と妖精さんが、鎮守府や泊地を築き上げる。そして、霊的ぱうわーをどう変換したのか、時間経過によって少しづつ燃料/重油や鋼材なんかを溜めて行ってくれるのだ。

 これも私がここに、赴任となった理由の一つである。

 提督が来ることは難しいが、戦略上一時補給が可能であると非常に都合が良い。

 そんな時に、提督と艦娘を両立出来る私に白羽の矢が立ったのだ。

 

『わわ、また引いてるっぽい! やっぱり今日は大量っぽい!』

 

手の上に乗せた液体を舐めとる姿……これはセンシティブ!

なお液体は人には劇物の模様

それにしてもよく釣れるね

謎技術の塊の妖精さんが作った釣り竿にこそ秘密が含まれていそう

こんなに食べきれる?

 

『元々、私一人よりも、たくさんの艦娘が所属することを想定して造られているから、冷蔵庫もとってもおっきいっぽい! 食べきれない分はそこに保存しておけば大丈夫っぽい!』

 

 と、そんなこんなでお昼前くらいまで、だらだらと話しながら釣りをしていたら、気が付けば持ってきたバケツが魚でいっぱいになっていた。

 保存出来るとは言え、限度もあるだろう。

 そろそろ配信も終わるかと、締めの挨拶をして立ち上がった時だった。

 

 海の中に黒い点を見つけた。

 カメラには恐らく、ドットのようにしか映っていないだろうその黒点。

 しかし、艦娘として強化された視界はその正体を克明に表していた。

 

『深海棲艦……ごめんね、終わろうと思ったけれど、ちょっと行ってこなくちゃ!』

 

深海棲艦……?

どこにも映っていないように見えるが

もしかして、あの黒い点か?

 

 艤装は外してきてしまったので、急いで戻る。

 といっても、ドックのすぐ外で釣りをしていたので、一瞬だ。

 艤装を背負って、ふと思い立って、妖精さんに声を掛けた。

 

「それくらいお安いごようです! よゆーのよっちゃんです! これを付けるだけでかんぺきです!」

 

 そうして、渡されたのは耳に付ける小型のインカム。

 しかし、マイクは非常に小さく視界を全く阻害しない。

 

あれ? 急に画面が切り替わったぞ

さっきまでの釣り竿と、カメラが見える

これは、夕立ちゃんの視界?

 

『大正解っぽい! 急遽だけれど、近海に深海棲艦が出現したから私が迎撃に当たるっぽい! せっかくだから私の視界で配信を続けるけれど、さっきまでみたいな余裕は無いから、話せなくなるのは許して欲しいっぽい!』

 

おk

おーけー

まさか、実際の戦闘を見られるとは

駆逐イ級か?

 

『見える範囲では駆逐イ級が一隻だけっぽい! 凄惨な光景が駄目な人は自主的に視聴を止めて欲しいっぽい。たぶん、問題無いけれど、どっちが勝ったところでひどいことにはなっちゃうから!』

 

 

 

『夕立、出撃するっぽい!』

 

 






ぽい!(挨拶)


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掲示板はいつも賑やか

掲示板回
特殊タグ楽しい……





1:名無しの提督 ID:FQ6oVdVOQ

ここは海軍公式配信者、夕立ちゃんについて語るスレです。

テンプレは次回より>>1にお願いします。

 

ぽい!は挨拶!

 

2:名無しの提督 ID:pp65dXF1x

立て乙。

さっきの配信は情報濃かったな

 

3:名無しの提督 ID:svsipYzld

もう海に遊びに行けないのか……

 

4:名無しの提督 ID:si8bpUNv5

あんな小さな娘が戦うとか正気か?

高校生だろう?

 

5:名無しの提督 ID:eFULjQsla

>>4さっきの大本営の会見見てなかったのか?

選ばれた艦娘以外には深海棲艦に傷一つ負わせることが出来ないんだぞ

 

6:名無しの提督 ID:FwyZF+Ian

しかし、娘が戦いに行く可能性があると考えると……

 

7:名無しの提督 ID:vDpaMPrIp

>>6娘(妄想)

 

8:名無しの提督 ID:FwyZF+Ian

>>7おいやめろ

 

9:名無しの提督 ID:wDNuHy9Gi

妄想は置いておいて、冗談抜きに結構やばい?

 

10:名無しの提督 ID:RoVhDxCiZ

>>9実質海路の閉鎖

航空機も航路によっては止められてるってことはかなり拙い

何なら今後、もっと増えていったら輸出入が完全に停止もあり得る……?

 

11:名無しの提督 ID:YTzVfGem3

何で軍はこんなに拙いことを隠していたんだ……?

 

12:名無しの提督 ID:arJXnNePr

そりゃ、こんな霊的なこと、いきなり話しても頭おかしくなったと思われるからだろ

それにしても対応遅い気はするけど

 

13:名無しの提督 ID:rGaDHbubE

スレの趣旨からどんどん脱線していって草

 

14:名無しの提督 ID:kqZBUjmnK

>>13むしろ脱線しないことがあるのか……?

 

15:名無しの提督 ID:r/LlamHS1

じゃあ、話戻して、夕立ちゃん可愛いよな

真っ赤なお目目して……中二病かな?

 

16:名無しの提督 ID:D+9eRA7Hn

髪色もすごいよな

日本人じゃないのか?

 

17:名無しの提督 ID:ebKGLU7mN

あと口癖よ、ぽいって何だよ(哲学)

スレ冒頭から浸食されてるの、練度高すぎぃ

 

18:名無しの提督 ID:cFq5e6MAd

>>17ぽい?

 

19:名無しの提督 ID:qybPjZXSp

>>17ぽいぽい!

 

20:名無しの提督 ID:yprp7/0TE

妙に癖になるよな……っぽい

 

21:名無しの提督 ID:xYiGUL5YL

>>18-20既に浸食完了してるじゃねーか!

 

 

 

以下、ぽいにスレが浸食される。

 

 

 

527:名無しの提督 ID:eWcZkMnJZ

ぽいぽい!

 

528:名無しの提督 ID:iqqSwMxGV

そろそろぽいの流れも、終わるっぽい!

 

529:名無しの提督 ID:+zjS6KYMu

>>528終わると言いながら、しれっと続けたな、貴様ぁ!

この私の慧眼が無ければ見破れなかったぞ!

 

530:名無しの提督 ID:UuuTmGyH6

慧眼(節穴)

 

531:名無しの提督 ID:CMl1fC11r

>>529誰でも見破れるんだよなぁ

 

532:名無しの提督 ID:tSIgcEoVg

おい、ツイッチーが更新されてるぞ!

 

533:名無しの提督 ID:iGjMk8eTc

>>533そんな餌に釣られくまーーーーー

 

534:名無しの提督 ID:UzXCg8ozt

一か月以上更新無くて、配信告知以外の初めての告知がこれかよ

 

535:名無しの提督 ID:b6wOAfndZ

【公式】駆逐艦夕立っぽい!

  @yuudachi_poi

 

ぽい!

 

午後22:09 2020年ζ月§日

アクティビティを表示

864いいねの数

▭    ↑↓    ♡    ↴

 

 

536:名無しの提督 ID:jQ/NZphFZ

夕立よりもぽいが本体だった?

 

537:名無しの提督 ID:NUkO5l1Dg

むしろ何がそこまで、ぽいに駆り立てるんだ……

 

538:名無しの提督 ID:/8Vthdfje

ここまでの夕立ちゃん

 

お目目が真っ赤な中二病

髪は染めてる……? 綺麗だから日本人じゃない可能性

ぽいぽいぽい

ぽい!

ぽいぽいぽいぽいぽいぽいぽい

 

539:名無しの提督 ID:RLfObhNVJ

>>538狂気的な説明なのにむしろ間違っていないから困る……

 

540:名無しの提督 ID:gl6cFD+fo

これが、ぽいぽい教の始まりだった……

 

 

以下、再びぽいに埋まり、いくつかのスレを経て数日後

 

 

 

236:名無しの提督 ID:vEKrygYdm

ようやくこのスレも落ち着いて来たな

 

237:名無しの提督 ID:rI3KLhRds

未だにぽいの持病持ちは多いけど、大体の質問に答え終わったっぽいしなぁ

あとは純粋に夕立ちゃん目当ての人が多くなるんじゃないか?

 

238:名無しの提督 ID:Ya31Sik9a

夕立ちゃんは私の娘。

誰にも渡さんぞ

 

239:名無しの提督 ID:/E6/Fg9Z5

>>238妄想娘ニキおっすおっす

 

240:名無しの提督 ID:pwVR+eqez

>>238妄想娘ニキじゃないか!

一体どうやって脱走を!

 

241:名無しの提督 ID:NDo49tyr+

>>240(無言の腹パン)

 

242:名無しの提督 ID:IICC5bwEa

ここまでテンプレ

 

243:名無しの提督 ID:MDgajZkWy

ここまで天ぷら

 

244:名無しの提督 ID:MC6l2qLRo

お魚釣り……天ぷら……美味しそう……

 

245:名無しの提督 ID:w3ycXl9a0

最近めっきり海の幸は高級品だものな……

秋刀魚とか一尾100円以下だった頃が懐かしいぜ

 

246:名無しの提督 ID:C/+Gkaf+A

そんなことを言ってる間にさっそく釣りあげてる……

 

247:名無しの提督 ID:PqmuFALfj

ほのぼのだぁ……

 

248:名無しの提督 ID:Nd710/6l0

初期ブーストは凄かったけれど、こんな放送ならどんどん人洗練されていきそう

まだ古参名乗れるぞ

 

249:名無しの提督 ID:lJyliORqM

>>248と言っても今海釣りなんて出来ないだろうし、海の映像だけでも価値ありそう

 

250:名無しの提督 ID:0UqCW1Ukf

うーん、大漁だ!

 

 

 

 

273:名無しの提督 ID:LhN6zMUgr

深海棲艦!?

 

274:名無しの提督 ID:f5aR4vvZT

黒い点にしか見えない……どんな視力してるんだ

 

275:名無しの提督 ID:3EFWYccWN

おっ、夕立ちゃん目線

妖精さん、良い仕事をおrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr

 

276:名無しの提督 ID:SEXVB6zdB

し、視界が……回る……

夕立ちゃん早すぎぃぃぃぃrrrrrr

 

277:名無しの提督 ID:kgsNIScvz

接敵して、いちおうイ級の姿見えたけど、思ってたよりでけぇ……

目算、人よりも大きいぞ……

 

278:名無しの提督 ID:x736DlIwW

そして、その人よりも大きいイ級を砲撃三発で落とす夕立ちゃん強いっぽい!

そして、その死骸はやっぱり大きいっぽい!

 

279:名無しの提督 ID:JAj/B9Ms4

本当にあっけなく終わったけど、砲弾受けて血を流すイ級やばいな

これ、本当に流して良かったのか?

 

280:名無しの提督 ID:LOCw7yVdq

>>278また、ぽいぽい教が増えおった……

 

281:名無しの提督 ID:22WRWY3a+

いやけど、これで最弱の敵なんだよな……?

戦闘シーンが早すぎてヤムチャ視点だったぞ……

イ級も撃ち返して来てたし

 

282:名無しの提督 ID:i/tjb/O4L

夕立ちゃんが居れば、今後もきっと大丈夫っぽい!

 

 

 

スレはこの後も続く……







実際にスレを覗いたことは無いので想像っぽい!

ぽいぽいぽい!(楽しい!)


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白立楓夕の日常

日常回
次回からまた配信を中心に進んでいく(はず)




 駆逐艦夕立となった、白立楓夕(しらたちふゆ)の朝は早い。

 何せ、この無人島には楓夕一人しかいないのだ。

 

 積極的な攻勢に出る必要が無いとは言え、哨戒は小まめに行わなければならない。

 気が付かない内に深海棲艦に囲まれていたなんてことになれば、生還は絶望的になってしまう。

 目覚めの一杯として、何故かりんご味のする重油を飲み干す。

 濃度によって味が変わるようだ。

 

 そして、工廠へと向かい、艤装を装着。

 周辺の海の哨戒を行う。

 凡そ2,3日に一度くらいのペースで深海棲艦は現れる。

 今まで一番多かった時でも駆逐イ級が二体ほど。

 大本営からの通達で、駆逐や軽巡級までは存在が確認されているが、それ以上は未だに未確認状態だ。

 もっとも、艦娘に関しても似たような状態であり、軍部としても今後空母や戦艦が現れることを危惧しているらしい。

 そんなことを考えながら、島の周辺の哨戒を2時間ほどで終わらせ、泊地へと帰還する。

 

 本来であれば、提督や非番の艦娘、近くにいる憲兵など、誰かしらは出迎えるようになっている。

 提督としての勉強には、多感な時期の少女たちを戦場へ送り込まなければならないため、精神的なケアの方法なんかもあった。

 そして、原則として誰かしらが迎えに行くのは必須であったのだが、ここで出迎えてくれるのは妖精さん達だけ。

 彼らは非常に気まぐれなので、港にはいたりいなかったりだ。

 今日は居るらしい。

 二頭身の人形のような存在に心が少しだけ癒される。

 

「おかえりなさいですー」

「今日もたいりょうですかな」

 

「ただいまっぽい!」

 

 釣り配信以降、何故か毎度の如く、漁に出ていると思っている妖精さんがいる。

 そんなことにもほっこりとする。

 

 そして、栄養的には重油だけでも足りているので、そのまま執務室へ。

 提督としての仕事と言っても、現在はそんなに多くはない。

 自身の哨戒と食事に使用した資源の量と、自然に溜まっていく資源の量の差し引きの帳簿を付け、哨戒の結果を大本営へと報告する。

 今日は深海棲艦の出現は無し。出現頻度にも特に変化が無いため、何の問題も無しだ。

 

 そうして、やることが終わった頃に時計を見れば、11時を回ったところ。

 自分で作る必要もあるし、早めの昼食にすることにした。

 

 前世では家事などしたことが無かったし、今世でも親の庇護下に甘えて、家事はしていなかった。

 要するに難しい料理は出来ない。

 釣った魚の内臓だけ、取り出して丸焼きだ。

 それでも、今まで妙な味に感じる重油と、たまに食べたくなる固形物として摂取していた保存食を思えば随分と豪勢に感じる。

 焼いて、塩を振るという男飯風の焼き魚をつつきながら、少し薄めの重油を飲む。これは、レモネードみたいな味。

 

 そうして、いちおうの業務が終わり、ツイッチーをつつきながら、今日はどうしようかと考える。

 そういえば、午後から自主訓練をしようとしていたことを思い出した。

 ゲリラ配信になるが、特に話すことも無く、訓練の様子でも垂れ流しておくかと考える。

 人が減ったといえど、世間は艦娘への興味が尽きない状態。

 配信には大勢の人間がやってくる。

 既に彼女の感覚は麻痺していた。

 


 

【無言】訓練の様子【定点カメラっぽい!】

 

海に浮いた的を撃つ訓練か

真剣な表情の夕立ちゃん、何だかカッコいい……

あんな遠くの的をよく撃てるなぁ

FPSの練習を思い出した

魚雷は撃たないの?

 

 時折、流れるコメントを見ながら、訓練は真剣そのもの。

 何しろこの訓練に命がかかっているかもしれないのだ。

 配信はしていても、かなり本気で行っている。

 でも、愛想も忘れない。

 

『魚雷は止まった的じゃなくて、こっちの動く的を用意して練習するっぽい! 私はいつも、先に砲撃の訓練をしてから、魚雷に移るっぽい! 魚雷は駆逐艦の最大火力かもしれないけれど、砲撃を当てれば目隠しにもなるから、こっちも重要っぽい!』

 

 この世界、ゲームの世界とは違うのだ。

 砲撃を受ければ、当然弾薬が爆発し、煙が発生する。

 その結果、敵の視線を遮ることが出来、生存率にも大きく影響してくる。

 もっとも、それはこちら側にも言えることなのだが。

 

魚雷当てるの難しそう

挟叉とかの確認も難しそう

本来、艦は大人数で動かすものだしなぁ

 

 逆に言えば、感覚さえ掴めば、自身の技量が戦闘に直に反映されるとも言える。

 自身の練度が、全体の練度へ反映されるのだ。

 だからこそ、訓練は大事。

 数時間、砲撃、魚雷、水上移動等の訓練を行い配信を終了した。

 

『それじゃあ、また夜に会おうっぽい~』

 


 

 そして、夕方。

 午後の哨戒を行い、異常無しを確認した。

 再び、執務室へと行き訓練と、哨戒の報告書を作成。

 

 食堂へ向かい、夕食にまた焼き魚を食べる。

 妖精さんの声が聞こえるとは言え、夜にだだっ広い食堂でご飯を食べていると何だか寂しくなってきた。

 前世と合わせて、良い年齢はいっているかもしれないが、無人島に一人はやっぱり寂しい。

 

 夕食をパッと食べ終え、次は配信の準備。

 最近はパソコンゲームをすることにハマり出していた。

 というのも、朝早いと言えど19時台に寝る気にもなれず、寂しいから誰かの声をと手を出したところ、何だか心が満たされたのだ。

 配信では、誰かとチームを組んで一緒になって敵を倒す。

 夕立と通話も出来るとあって、大盛況だ。

 夕立も誰かと話せて大満足。

 ウィンウィンであった。

 

 そして、21時頃。

 配信を終了し、お風呂へと向かう。

 昔は徐々に女性らしくなる自分の身体にドギマギしていた頃もあったが、それも年を重ねるにつれて無くなっていった。

 人間、慣れるものである。

 

 お風呂から上がって、寝巻に着替えた。

 そして、執務室の奥にある提督用の仮眠室へと向かう。

 艦娘用の寮も建設されているが、誰もいない寮というのは少々怖い。

 どっちで寝ても構わないので、利便性も取ってこちらで睡眠を取ることが多かった。

 

 ふと、窓の外を見れば満天の星が見える。

 無人島故の暗闇。

 綺麗だが、人の営みでこの星空が見えなくなった光景も綺麗だろうなと思った。

 非常に人に飢えている。

 

 

 そして、布団で目を閉じ、明日がやってくる。

 ここまでが彼女、白露型駆逐艦4番艦夕立となった、〇〇島泊地提督、白立楓夕の日常である。

 

 でも、その日常ももう少しで終わるはず……。

 

 十分に溜まってきた資源を思い浮かべて、彼女は新しい仲間を夢想した。

 もう少し、もう少しだけ資源が溜まれば、艤装の建造が出来る。

 建造された艤装の持ち主はよほどの理由が無ければ、建造場所の泊地、鎮守府へと着任となるはずだ。

 

 新しく来た娘とも、一緒に配信出来たらな。

 なんて、思った。

 

 




そろそろ新しい仲間も増えるっぽい!
誰が来るのかなぁ!
ぽいぽいぽい!


ぽい?(どうしたの?)


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第一章:ぽいとクマの二重奏
建造とはガチャである


新しい仲間、だーれだ(決定済)




 自分の。

 

 配信を見直すと、何だか気恥ずかしくなる。

 本来の私の性格は、前世から続く陰の者。

 端的に言えば、陰キャ寄り。

 完全にそちら側かと言えばそうでは無いが、少ない友と一人でいる時間が長い人間だった。

 

 だから。

 艦としての自分へ意識を寄せ、明るく振る舞う『夕立』の姿を見ると、何だか恥ずかしい。

 コメントでは赤眼を中二病などと称されたが、楓夕にとっては配信活動の方がよっぽど黒歴史に感じる。

 でも、少しはたくさんの人に見られるという行為に慣れてきて、素の自分も楽しんでいる部分が増えてきた。

 

 何事もまず一歩踏み出してみるものである。

 人は変われるのだ。

 

 


 

【ガチャの】新しい艦娘を【時間っぽい!】

 

『ぽい! 今日は工廠から配信っぽい! たくさん妖精さんがいるけれどカメラに映らないから、画面越しだと何だか寂しく見えるっぽい! 』

 

ぽい!

ぽいぽ~い!

はえー、工廠のはずなのに物が少ないな

確かに工具が広がってるだけのだだっ広い空間に見えて寂しい

ガチャの時間だあああああああああああああ

結構外観映ってることあるけど工廠の中は初めてだな

工廠の中って軍事機密の塊なイメージあるけど大丈夫っぽい?

 

『ガチャは良い文明! っぽい! 基本的に鎮守府や泊地って妖精さんが一週間くらいで謎の資源を使って作り上げてるから、機密とか無いっぽい! というか、むしろ教えて欲しいことの方が多いっぽい!』

 

 補足で言えば、一般人は立ち入り禁止としているが、それは鎮守府だからでは無く、国の土地であるからという理由になる。

 亡霊や、霊力みたいなファンタジーの力が確認されて、まだ二年ほど。

 法の整備は全く進んでいない。

 

 なら、今のうちにグレーゾーンだろうと一般に広めてしまえば、今後の役に立つような意見も現れるかもしれない。

 そんな考えを持った人達によって、私の配信は支えられている。

 

『ねぇ、妖精さん。資源とかってどうやって集めてるっぽい?』

 

あー妖精さんが見たいんじゃぁぁぁ

確か提督適性者ならカメラ越しでも見れるんだっけ

なんかこう、ぼやーっと見えるような

↑霊能力者か何かかな?

 

「こう、ぐわーっと集めるんです!」

「いやいや、ひょろんと集めるんです!」

「違います。するんです」

 

 こういった質問をしても妖精さんの答えは抽象的な擬音ばかりだから分からない。

 最初に妖精さんと話して、艦娘という存在までたどり着いた人物には尊敬するばかりだ。

 

『妖精さんの回答はぐわーっとか、ひょろんとか、するんらしいっぽい! なーんにも分からないっぽい!』

 

擬音しか無くて草

こぉれは、妖精語検定が必要ですねぇ

↑そもそも、声が聞けないんですが

分からないっぽいって、ちょっとだけ分かっていそう()

夕立ちゃんの回答はぽい!って集めるだね、分かるとも!

 

『実際私が飲んでる重油とかも、妖精さんがいつの間にか増やしてるっぽいから、どうなんだろうね? ある意味分かったらちょっと怖いかもしれないっぽい!』

 

貴女は真実を知ってしまいました。SAN値チェックです。

→1D20/1D100

重すぎぃ!

世の中には知らない方が良いことがたくさんある……

 

『まあ考えても分からないことは放置するっぽい! それより、新しい艤装の建造っぽい! だいぶいつの間にか増えてる資源が溜まってきたから、ようやく新しい艤装を作れるっぽい! 無人島に一人を早く脱したいっぽい!』

 

新しい艤装……また誰かが艦娘になるのか

徴兵をしているみたいで、怖いな

誰が選ばれるのか……戦場には行きたくないな……

 

『たぶん皆はそう感じると思うんだけど、艦娘になると考えが変わるっぽい! こう、なんというか艦の意識的なものが芽生えて、戦うことも怖くないし、むしろ護りたいって思うっぽい!』

 

それって洗脳じゃ……

しっ!

自我とか浸食されそう

けど、誰かがやらなきゃいけないんだよな

 

『夕立は今が楽しいから問題無いっぽい! 訓練の時は皆、同じように戦うことに忌避は無かったっぽいけど、実際に戦場に立ってどうなるかは分からないっぽい! でも、今のところそういう話も聞かないっぽい!』

 

良くも悪くも艦と意識が混ざるんだな

艦の意識って何よ

霊的に言うなら乗組員とかの集合意識みたいな?

 

『まあ、とりあえず建造を妖精さんにお願いするっぽい! 妖精さん! 資材使って良いから艤装の建造をよろしくっぽい!』

 

「! 許可がでたぞーーーしげんを使えーー」

「まわせー、出るまでまわせー」

「しんせんな建造だーー」

 

 声を掛けた途端、工廠の中が騒がしくなる。

 しかし、その様子は映像としては残らない。

 不思議な光景だ。

 何せ、画面の中では大きな机の上に自動で組みあがっていく艤装が見えるのだから。

 

「ゆーだちてーとく! 建造しゅーりょうまであと22ふんです!」

「おおー、なかなか早いですな」

「時間にまけぬよう頑張りませう!」

 

『え、建造終了まで22分っぽい? もっとかかると思ってたから配信の予定が狂っちゃったっぽい……。それくらいなら、何かしながら、出来るまで待った方が良いっぽい?』

 

 建造にかかる時間はゲーム準拠ということだろうか。

 だとしたら、22分という時間で多少は予想が付くような気もするが……

 提督としての勉強の際には、艤装一つに数日かかったって聞いたのだけれど、何か違いとかあるのだろうか。

 

そんなに早く出来るの!?

22分後には新しい艦娘の艤装が誕生するのか……どの艦が来ることやら

夕立ちゃん驚いていたけど、本当はもっとかかるものなのか?

妖精さんのこと聞いてると、気まぐれな気もする

せっかくだから、夕立ちゃんの艤装とかじっくり見たい

 

『習った時にはもっとかかるって聞いたっぽい? でも早く出来る分には良いっぽい! あ、それで艤装ね! すぐ持って来るっぽい~』

 

工廠内で走ってはいけません!

なお危険物は無い、ただの空間のこととする

艤装の建造風景映していってくれたけど、なんだか凄いな

ポルターガイストみたいに勝手に組み合わさっていく……

なあ、やっぱりぼんやりした人型のシルエットが部品を動かしているように見えるんだが

霊能力者ニキまだいたのか

でも、こんな時代だからな……案外霊能力者にも本物はいるかもしれない

艦娘と妖精さん、深海棲艦の発表後から神社が盛況だよな

そりゃ、神様が本当にいる可能性も高まったことですしおすし

 

『お待たせっぽい! 妖精さんにメンテナンスお願いしてたからちょっと時間かかっちゃったっぽい! うーん、どう見せるのが良いと思うっぽい?』

 

何か本当に船の縮図って感じだぁ

もっと、舐めるように、、、

詳しいやつなら、艦種とか分かりそうだよな

お舟ガチ勢こわ、とずまりすとこ

 

 意外にも、艤装を詳しく見せるっていうのがコメントの反応が良い。

 そりゃ、船が好きな人からしたら、悲しい時代なのかもしれないな。

 だって、乗るどころか、見に行くことすら難しいだろうし。

 

『夕立は見てもよく分からないっぽい~。艦の意識に向ければ使い方は完璧に分かるけど、どう説明したらいいか分かんないっぽい! やっぱり艦だから、人が息をするように使えるっていうのは当たり前っぽい!』

 

艦娘七不思議

ほんと、夕立ちゃんの配信は何気ない新情報が多いなぁ

 

 と、雑談をしながら艤装を見ていると、妖精さんから歓声が上がった。

 

「じょうずにできましたー」

「てーとくさん、かんりょーです!」

 

『! 新しい艤装が出来たっぽい! 早く見よう見よう!』

 

その髪どうなってるの……

犬の耳みたいに、髪の跳ねが動いた!

……ぽいぬ

↑天才か?

可愛い!

あれ? この艤装って……

おや?

お舟ガチ勢が何かに気付いた模様

 

『ふっふーん、新しい艤装は誰の艤装か、な……? あれ、どこかで見たことあるっぽい? え? え? え?』

 

あっ(察し

俺らもなーにか見覚えがありますねぇ

そりゃさっきじっくりと見ていたばかりだものな

夕立ちゃん、いやぽいぬちゃん、現実を見るんだ

さっそくぽいぬが広まりつつある……

 

『夕立の目の錯覚じゃないっぽい……? これって、駆逐艦夕立の艤装……』

 

 

 新しい仲間は、同じ夕立なのですか?






ぽいぽい!(私も!)


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語尾が混雑する配信

新しい艦娘が着任しました!




 艤装の件について大本営へと報告をすると、まずは全国から夕立に適合した人の捜査が始まる。

 大抵は自分から申し出ることが多いのだが、情報はまだ広めたばかり。

 漏れを封じるために、全国の警察署に通達がされた。

 

 艦娘になると、その特徴を受け継いだ身体に近づく。

 正確に言えば、髪色や眼の色。

 身長なんかは据え置きなため、多少の個性は出るのだが、基本的に艦娘の特徴的な部分は艦によって統一されるらしい。

 これもデータ数が少なく、絶対とは言えないようだが。

 

 夕立の場合は髪色が特殊なため、すぐに分かるが、黒髪の艦娘だったりすると気が付かないこともあるらしい。

 今回は早期に名乗り出てくれたが、困ったのは大本営だ。

 何しろ、建造された艤装は可能な限り建造されたその場所で運用されることとなっていたうえに、現状人数が全く足りていないセイラン島泊地の建造だ。

 それが、たった一人の、私と同艦であるというのは如何なものかというものだ。

 

 人であり、兵器である以上、同じ艦が居ても問題は無いはず。

 しかし、霊的な観点から見ると、同じ力の源を持つ者がすぐ近くにいるというのは何らかの干渉が起きてしまうのではないかと危惧された。

 

 妖精さんに聞いても、曖昧な返答しか返って来ず、結局大本営が決断を下すこととなった。

 


 

【雑談配信】マシュマロを食べるっぽい!【新しい仲間っぽい!】

 

『ぽい! 今日は新しい艦娘が着任したからその紹介とマシュマロを食べるっぽい!』

 

ぽい!

二人目の夕立ちゃんかな?

見た目とか似ているの?

マシュマロ助かる

↑火で炙って食べると美味しいよね

 

『早速、紹介するっぽい! 夕立の配信も見ててくれて、ちょっと気になってたらしいからちょうど良かったっぽい!』

 

『クマ! 球磨型軽巡洋艦1番艦の球磨だクマ! 元々佐世保鎮守府に居たんだけれど、こっちに異動になったクマ! 夕立ちゃんとも話して、今後も配信にお邪魔するかもしれないクマ! よろしくクマ!』

 

語尾が……増えた……だと!?

クマ!(可愛い)

三次元なのに、アホ毛が、凄いです

↑誰も突っ込まないけれど、夕立ちゃんも耳みたいな毛があるんですが

世界はファンタジーになった。アホ毛も現実になった。

何か嫌なファンタジーだな……

 

『ちなみにもう一人の夕立ちゃんは球磨と入れ替わりで佐世保に配属になったクマ』

 

『同じところに同じ艦が二隻だけっていうのもバランスが悪すぎたっぽい! だから球磨ちゃんが来てくれて戦力も大幅アップっぽい!』

 

『任せるクマ! 軽巡洋艦の力を深海棲艦に見せつけてやるクマ!』

 

てぇてぇ

いつも夕立ちゃん寂しそうだったから、すごく嬉しい

やっぱり気の合う仲間は必要なんやなって

そういう君には居なさそう

↑なぁんでそういうこと言うのぉぉぉ

 

『正直、会話が楽しいっぽい! それに、今日はこれがあるっぽい!』

 

 そうして取り出したのは袋一杯に入ったマシュマロ。

 球磨ちゃんがこの島へ来る時にいろいろ物資を持ってきてくれたのだ!

 そのせいかもあって、私のテンションはかなり高い。

 

『配信を見ていて、お菓子とかも無いのは辛いと思ったから持ってきたクマ! フフフーン、夜だけど甘いもの食べちゃうクマ。秘密の女子会だクマ』

 

そっちのマシュマロかーい

秘密の女子会(配信中)

球磨ちゃんが、本気の視聴者でてぇてぇ

 

『そっちのマシュマロって、他にマシュマロがあるのかクマ? 夕立ちゃんは分かるクマ?』

 

『夕立も分からないっぽい? んー、でも今は早くこのマシュマロを食べたいっぽい! 良かったら後でツイッチーで教えて欲しいっぽい! 』

 

 SNSにあまり触れて来なかった二人にとっては、マシュマロと言えばこれなのであった。

 球磨の選択にも他意はなく、偶然目に入ったから購入してきただけである。

 

まあ本来のマシュマロはそれ

夕立ちゃんのツイッチー見てると今までやってなかったんだなってよく分かる

ふと見たら、配信開始の直前に『クマ』って呟いてて草

はい! 教えるので返信して欲しいです!

 

『ん? 返信したら良いっぽい? それじゃあ、参考にさせて頂いた人には返信するっぽい!』

 

『気になるから、後で球磨にも教えて欲しいクマ』

 

『分かったっぽい! それじゃあ、マシュマロ食べながら雑談していくっぽい!』

 

↑ナイスぅ

これは分かりやすい文章を考える必要があるな……

満面の笑みでマシュマロを頬張る夕立ちゃん可愛すぎか?

一緒に食べる球磨ちゃんも可愛すぎる

真っ白でどろっとしたものを口一杯に頬張る……ふむ、続けて?

ふぅ……

 

『そうそう、聞きたかったのだけれど、球磨ちゃんの居たとこはどんな感じで深海棲艦と戦っていたっぽい?』

 

『球磨のところクマ? うーん、他とあまり変わらないと思うのだけれど、多少ローテーションしながら偵察と周辺海域の資源調査、あとは哨戒を行っていたクマ』

 

『うーん、やっぱり資源調査は必要っぽい?』

 

『そうクマね。資源調査して、ある程度効率良く妖精さんに資源を集めて貰わないと、なかなか溜まらないクマ。実際に球磨の居たところは、今三回ほど建造しているけれど、ある程度遠征先が定まってから、ようやく手を出せるようになってきたクマ』

 

唐突に始まる真面目な話

これ、聞いていても良いのだろうか

これは秘密の女子会

女子会……なんですかねぇ

 

『今までは夕立だけだったから資源も溜まりやすかったっぽい……。でも今後はそういったこともしないといけないっぽい。うーん、そろそろ提督としてどう動いていくかも考えなきゃいけないっぽいいい』

 

『難しく考える必要はないクマ! やってればそのうち慣れていくクマ! 現に球磨だって、完全に球磨に慣れちゃったクマ!』

 

糖分摂取で頭が周り始めたことにより、頭を抱える事態に

というか、それは夕立ちゃんが考えなければならないことなのか?

大本営とか、実際の軍人に聞いた方が良さそう

むしろ、オーバーワークでは?

 

『それが出来たら良いんだけどっぽい。提督って概念も霊的なものだから、提督自身が作戦を立案しないと、艦娘に上手く力を渡せないっぽい。アドバイス貰うくらいは問題無いっぽいけど、線引きもどこからどこまでか判明していないから難しいっぽい』

 

そもそも提督の役割とは?

確かに、艦娘はまだしもイマイチ分からない

 

『提督がいないと艦娘は本来の力を出せないんだクマ。普段から力とかは強いけれど、艤装を持って戦うとかは提督の承認が無いと出来ないんだクマ』

 

 飲み物片手に語る球磨。

 その後ろでは夕立がこっくり、こっくりと船をこぎ出している。

 はしゃぎすぎて、疲れてしまったようだ。

 

『球磨も詳しくは無いけれど、あとは提督と艦娘がいると鎮守府を妖精さんが作ってくれるとかクマ? 提督の力は妖精さんへの指示だったり、どこかに力が集まり過ぎないように緩衝材みたいな感じがするクマ』

 

夕立ちゃん、こっくりこっくり

始めてあんな姿見た

もっと遅い時間まで配信していることもあったし、やっぱり人がいて安心したのかな

よく考えたら夕立ちゃん、まだ歳は高校生だもんな

クマちゃんの為になる話が語尾のせいで半分くらいしか入ってこない

 

『クマ!? 球磨だって好きでこんな語尾をしている訳じゃないんだクマ。艦の意識が囁くんだクマ。それに夕立ちゃんほとんど寝ちゃってるクマ……。うーん、球磨が勝手に配信を終わっちゃって問題無いクマね?』

 

むしろ寝顔配信しよう

球磨ちゃんも一緒の布団で寝て、ずっと配信しよう

切らないで

もっと寝顔を近くで

 

『むむむ、コメントを見る限り切った方が良さそうクマ! それじゃあ、球磨が切り方分かったら終わりクマ! また夕立ちゃんから誘われたら配信来たり、球磨のアカウントとか作るかもしれないからよろしくクマ! またクマ!』

 

 その五分後、配信の切り方が分からなかった球磨は視聴者に助けを求めることとなった。

 その時の半泣きの顔は後日、切り抜きされて、それを見た本人は悶絶したのだという。

 

 ちなみに、夕立はいろいろ振り切れていたため、寝顔では動揺しなかった。






たくさんのお気に入り登録ありがとうっぽい!
80万の感謝に掛けて、800をと思ったけれど通り過ぎちゃったっぽい!

たくさん、たくさん、感謝っぽい!


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近海海域攻略作戦Ⅰ

飲んでたら遅くなったっぽい!




 球磨が着任し、二人体制で回せるようになったことで、各段に楽になった。

 

 何せ、今まで朝夕と二度の哨戒を一人で行っていたのだ。

 そのせいで、遠征に行くことも難しく、資源も細々としか溜まらない。

 それを分けるだけで、資源調査を行う余裕が出てきた。

 今までは夕立しかいなかったため、泊地の防衛のためにも哨戒以上に離れる訳にはいかなかったのだ。

 

 資源調査とは所謂、ゲームで言う遠征のことである。

 妖精さんが資源に変換しやすいパワーが集まるところを探し、そこで艦娘に付いている妖精さんや艤装が力を溜め込む。

 それを鎮守府まで持ち帰ってきて、資源に変えるのだ。

 そのため当然、燃料が多いところや、鋼材が多いところなど、様々な場所がある。

 より効率の良い場所を探すことを資源調査、そして定められた効率の良い地点まで行き、資源を持ち帰ることを目的とした出撃が遠征と呼び分けられている。

 

 分けられると言っても、所詮は駆逐艦と軽巡洋艦が一隻ずつ。

 極近い海域までしか、足を延ばすことは難しいが、それでも自然回復だけよりは効率が段違いだった。

 

 そして、余裕が生まれて芽生えてきたのは娯楽への欲求。

 端的に言えば、買い物したい。

 

 何せ、ここは一番近い有人島まででも片道四時間ほどはかかってしまう孤島だ。

 電子関連は妖精さんに頼めば、資源を使用して造ってくれる。

 でも、例えばお菓子とか、肉汁溢れるステーキとか、新しく発売した漫画とか、ゲームとか、購入出来ないものが多々ある。

 ちなみに、夕立はまだ高校生だったため、クレジットカードを所持していない。ネットで買おうにも、コンビニすらないため、カードの購入も出来ない。

 詰んでいた。

 

 故に、夕立が提督として掲げた最初の目標は近海、この無人島と本土の間の海の攻略であった。

 この海域、上手く通れば艦娘ならば島まで深海棲艦に会うことなくたどり着くことも出来るのだが、一度航路を外れれば駆逐イ級に始まりロ級、軽巡ホ級までが確認されている。

 そちらの奥地にはさらに強力な深海棲艦が居ると推測がされていた。

 

 しかし、今は艦娘が足りない時期。

 ほとんどの提督は資源調査と遠征により、艦娘を増やすことを優先目標としており、海域の攻略は視野に入っていない。

 そもそも、ゲームの知識から、ボスのようなものが居て、それを倒せばある程度安全な海域に出来るのではないかという推測を立てているに過ぎないのだ。

 本当にボスが居るのか、そして倒した場合本当に敵が少なくなるのかは未知数。

 

 しかし、未知数だからこそ、この作戦には価値があると思っている。

 成功すれば、今後の動きも立てやすいのだ。

 

 問題点があるとすれば、ただ一つ。

 駆逐艦と軽巡洋艦の二隻しかいない泊地でどう戦うかということだった。

 


 

【娯楽が】海の上で調査しながら配信【足りないっぽい!】

 

『皆はどう思うっぽい?』

 

 というような経緯を、ゲーム云々は置いておいて、配信で話してみた。

 もちろん、参考程度に聞きたかっただけで鵜呑みにするつもりはない。

 ただ、同じような意見の人がいたら良いなぁ、と思った夕立は自分の考えに少しだけ自信が持てていなかった。

 

どう、と言われてもなぁ

海が綺麗ですね

確かに霊的に考えるとそこに亡霊の発生源みたいなのはありそう

例えば、沈んだ船とか……?

 

 前回、出撃しながら配信した時はあまりのスピードと画面の揺れに、吐いた気分が悪くなる人が多発したため、カメラを改良して貰っていた。

 視点が常に平行になるカメラで、原理はよく分からないが、妖精さんに感謝である。

 

『沈んだ船っぽい? 確かにそれはあるかもしれないっぽい。報告によると、深海棲艦が来る方向はある程度一定っぽい。その方向に何かがあるとは思うっぽいけど……』

 

問題は二隻しかいないこと

泊地の守りも含めたら、実質一隻

一隻で敵地へ突撃……あれ、夕立ちゃんでは?

史実の艦とは違うので、万歳突撃はNG

 

『でも、実際のところ核みたいなのがあって、そこから深海棲艦が現れているなら都合が良いっぽい。例えば、艦娘の護衛があればその海域では漁が出来るようになるかもしれないっぽいし、今後の目標も自動的に決まってくるっぽい』

 

しかし、俺らがこんな話をしていると不謹慎ながら少し楽しい

↑分かる。提督になったみたい

こんな奴らの言うこと聞いちゃダメよ

無責任だからこそ忌憚の無い意見も言えるってもんだ

その判断をJKに任せるのは如何なものか

 

『あははは、大丈夫っぽい! 夕立もあくまで参考程度に聞いてるっぽい! それにやっぱり二隻だけじゃ、戦力的にも厳しくって難しいっぽい』

 

 と、言いつつ。

 娯楽のために、頭を回転させている夕立。

 夜間なら火力も上がっていけるかもしれないなどと思い、敵も同条件だったと落ち込む。

 やはり、どうあがいても戦力が足りない。

 しかし、新しい仲間を得るためには今の資源増加具合を見るにあと数週間はかかる。

 どうしても娯楽が欲しくなってしまった夕立であった。

 

いっそ敵から向かってこれば

防衛を崩すには三倍の戦力がいるらしい

↑それは海の上でも言えることなのだろうか

 

「あ、そこ良い感じですー。もうちょっと右に舵を取ってくださいー」

 

『分かったっぽい!』

 

 配信や考え事をしつつも今の任務は資源調査。

 妖精さんに言われた位置へと移動して、しばらく止まる。

 この間に妖精さんや、背負っている艤装に謎のパワーが集まっていっているそうだ。

 

なんか地味に身体が光ってる

この光景も数度目になると慣れてくるね

今日はまだ深海棲艦にも遭遇してないし、平和だぁ

 

『うーん、確かに今日は深海棲艦をあんまり見かけないっぽい。ちょっと不気味っぽい? 最近、哨戒していても遭遇率が下がっているっぽい』

 

 哨戒と違って、ある程度島から離れる資源調査は深海棲艦と遭遇する確率が非常に高い。

 と、言っても精々が駆逐ロ級程度。

 離れすぎないために、軽巡の深海棲艦とは未だに遭遇したことが無い。

 

『んー、島の位置ってたまたまの空白地帯みたいな感じだったからちょっと怪しいっぽい。しばらくは資源調査を抑えるっぽい? 島に居たほうが良い気がするっぽい』

 

応援を要請した方が良いのでは?

もし島に攻められたら二隻じゃ厳しい気がする

というか、何を持って空白地帯なのか

前に、大体の無人島は深海棲艦が多くて近付けないって言ってなかったか?

 

『そうっぽい! 大体の無人島は周囲に深海棲艦がうろついているし、倒してもまたすぐに集まってきちゃうっぽい。応援を要請するのは襲われてればまだしも、嫌な予感っていうのじゃ難しいっぽい……。どこも艦娘が足りていないのは同じっぽい』

 

 と、話している間に資源の回収が終わったようだ。

 妖精さんに声を掛けられたため、移動を再開する。

 しかし、その行く先は未調査の海では無く、泊地の方角だ。

 

『やっぱり、気になるから今日は泊地に戻るっぽい! という訳で、資源調査の間っていう結構長い時間付き合ってくれてありがとうっぽい! 夜にはまた、球磨ちゃんと二人でゲームとかすると思うから良かったら来て欲しいっぽい! またっぽい!』

 

またっぽい!

最近、二人プレイが多くて一緒に出来ないことが多いからちょっと寂しい

でも、夕立ちゃんが楽しそうで何よりです

球磨ちゃんの泣き顔がまた見れそう

球磨ちゃん普段は頼もしい言動なのに、ゲームはポンコツだからな……

 

 泊地へ、戻ろう。

 胸のざわめきは大きくなる一方だった。

 

 その後の三日間、周辺の深海棲艦の目撃数はゼロになった。





ルーキー日間ランキング一位、大感謝っぽい!
これも読んでくれた、皆のおかげっぽい!

これからもどうぞよろしくっぽい!


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掲示板でも話題な夕立

掲示板回②
日間ランキング2位ありがとうクマ!




《夕立ちゃんの配信を見守るスレ》

 

578:名無しの提督 ID:eVKhxxmy0

まさかダブルぽいぽいにならないとは、この李白の目をもってしても……

 

579:名無しの提督 ID:9pwS8lgPF

>>578李白節穴定期

 

581:名無しの提督 ID:YTrZ7/PU9

だが、強烈な語尾属性が増えるとは思わなかったな

 

586:名無しの提督 ID:GSIBJgw2I

球磨<これは語尾ではない、艦が囁くのだ……!

 

587:名無しの提督 ID:qnbjdvBiJ

実際、夕立ちゃんは口癖みたいなものって言ってたけど、球磨ちゃんの話聞くに以前からそういう話し方では無かったみたいだよな

 

591:名無しの提督 ID:9Oz4GSgy1

艦が囁くとかちょっと憧れる

 

594:名無しの提督 ID:xuOEGNO7v

>>591憧れた結果はぽいとクマだが構わないかね?

 

598:名無しの提督 ID:sdwTiKAsJ

でも、寝ちゃったとこを見るに相当気を張ってたんだろうな

 

602:名無しの提督 ID:eeYGg+f7r

そりゃ、艦娘と提督兼任と言えど年齢的には高校生だし

 

606:名無しの提督 ID:HofWieMBw

無人島でだだっ広い建物に一人きりとか怖いよな

 

611:名無しの提督 ID:fYbVkaCXm

それはそうと、マシュマロについて上手く教えれば悪いこと出来そう

 

615:名無しの提督 ID:xxS5NCog7

白い、ねばねば、お口……ふむ、続けて

 

616:名無しの提督 ID:63oZPzXsW

>>615君コメント欄にいたでしょう

 

617:名無しの提督 ID:Foj6sONMI

なおお菓子は無くても、インターネット環境はある模様

 

621:名無しの提督 ID:8sXD9ALKf

普通に調べられて終わりそう

 

623:名無しの提督 ID:02HMsxXoB

そもそも、ツイッチーで既に正解を教えられてるで

 

627:名無しの提督 ID:ZMtL5aDWD

流石に遅かったか

 

632:名無しの提督 ID:XN0OePpb6

というか、お菓子が貴重品になるって何も娯楽が無いのと同義では?

 

637:名無しの提督 ID:OctYxnr1C

>>632おデブちゃんおっすおっす

 

639:名無しの提督 ID:XN0OePpb6

いや、単純にお菓子買えないのであれば、他の娯楽品も買えないのでは……?

 

641:名無しの提督 ID:LG568EB09

あっ

 

644:名無しの提督 ID:IgiUfrJs5

つまり、漫画もゲームも課金も出来ずに無人島で一人暮らし……?

 

646:名無しの提督 ID:qDy/ukgDb

こぉれはブラック

 

648:名無しの提督 ID:j+EQuwC1S

稼いだ給料の使い道が無い(買う場所が無い

 

651:名無しの提督 ID:OFl9oKyGB

誰か夕立ちゃんに送ってあげて!

 

656:名無しの提督 ID:jRnxQOw0t

>>651無理です

 

658:名無しの提督 ID:/g+o+MobC

配達の対象外地域なんだよなぁ

 

659:名無しの提督 ID:Dc6qVz2Ei

夕立ちゃんにゲームを買ってあげたい

 

660:名無しの提督 ID:VphJAB93l

配信して欲しいゲームを買ってあげたい

 

667:名無しの提督 ID:Km8oIjLh1

>>659,660結婚

 

668:名無しの提督 ID:FQ2SIfkSH

動機が今までの話と関係無さ過ぎて草

 

673:名無しの提督 ID:zE7hxcV39

あれ、未だに球磨ちゃん配信切れてなかったのか

 

677:名無しの提督 ID:WZHbzIX2T

視聴者に泣きついてて可愛い

 

680:名無しの提督 ID:qyqKayN1Z

>>677分かる。あの顔ぐちゃぐちゃにしたい

 

682:名無しの提督 ID:mhW9SxoJM

>>680ひえっ

 

684:名無しの提督 ID:D4huLp1s+

>>680艦娘の力を考えると、ぐちゃぐちゃにされるのは680なんだよなぁ

 

686:名無しの提督 ID:+8MKqwkaT

でも、泣きつき顔は切り抜きされるわけで

 

688:名無しの提督 ID:uEtF1pWzJ

語尾といい、キャラといい、逸材の追加だな!

 

691:名無しの提督 ID:cghgU8jHv

球磨ちゃんがチャンネル持ったら絶対に行くわ

 

696:名無しの提督 ID:keBHgTjpc

この調子で他の鎮守府の艦娘も配信してくれねぇかなぁ

 

 

 


 

《定点カメラ観察スレ[夕立ちゃん]》

 

122:名無しの提督 ID:EfNlQ3xQP

ツイッチーで突撃して良かったな

 

123:名無しの提督 ID:wokyOAArr

今日も……綺麗な海だ……

 

125:名無しの提督 ID:+fgV1g12B

何このスレ?

 

130:名無しの提督 ID:+M532WfzC

>>125艦娘配信者、夕立ちゃんが設置してくれた定点カメラの観察スレだ

 

132:名無しの提督 ID:M8/mfOMIy

>>125基本は泊地前の海が延々と映し出されているだけだな

 

135:名無しの提督 ID:mUmrE/T90

たまに映る夕立ちゃんと球磨ちゃんが癒し

 

138:名無しの提督 ID:i0+plxZKR

駆逐イ級って……可愛いよな。抱き枕にしたい

 

141:名無しの提督 ID:we1HXosSP

上級者過ぎて草生える

 

144:名無しの提督 ID:h9gFW/Vaj

>>138そもそも駆逐イ級って映っても豆粒みたいな大きさにしか見えねぇじゃねぇか!

 

148:名無しの提督 ID:2M333Efkp

そもそもこの定点カメラ配信始まってから一度も映ってないという

 

150:名無しの提督 ID:B8SfgjnDz

まあ、けどリアルタイムの海が見れる配信も悪くない

 

155:名無しの提督 ID:yXaMsS1H/

24時間配信助かる

 

161:名無しの提督 ID:Cd+dd4iiQ

>>155ニート乙

 

163:名無しの提督 ID:SN3YLjXUR

ツイッチーでして欲しいこと募集した時にこれ頼んだ奴はマジで有能

 

168:名無しの提督 ID:HQDWaynKK

何より、後日実装機能が楽しみ過ぎる

 

171:名無しの提督 ID:ZDwwB4dXm

後日実装予定機能

 

・コメントに合わせて反応する妖精さん特製自動釣り機の設置

・その他要望に応じて

 

175:名無しの提督 ID:UOhEeBp1s

いつでも釣りが出来る!

 

181:名無しの提督 ID:F8trv42VE

>>175絶対に足の引っ張り合いが発生するゾ

 

183:名無しの提督 ID:FyJQqBp+1

>>181それでも、海釣りが、したいんだ!

 

186:名無しの提督 ID:EN6ElTu0O

でも実際問題、そんなこと出来るのかね

 

192:名無しの提督 ID:Nj8BGF7y1

>>186妖精さんに出来ないことは無い

 

196:名無しの提督 ID:AeN69wlni

泊地を一週間足らずで作るばかりか、やけにスペックの高い夕立ちゃんのパソコンも妖精さん特製との噂が

 

199:名無しの提督 ID:u7HpJ8Yee

ゲームしてるの見るとスペックやばいよな

 

201:名無しの提督 ID:pELUXMsf6

夕立ちゃん自身は突撃癖があるせいであまり活かせてはいないのが残念

 

204:名無しの提督 ID:zZ9idSviZ

>>201何言ってんだ、そこが良いんだろう?

 

206:名無しの提督 ID:YiTU3eMLX

突撃して真っ先に死んで、視聴者に助けを求める夕立ちゃん可愛い

 

210:名無しの提督 ID:Ej2DUNwjs

落ちる時の悲鳴すら、ぽいで笑う

 

211:名無しの提督 ID:nQkG+OmK+

死ぬとき…ぽいーーーー

死にそうなとき……ぽ、ぽいぃぃ

復活したとき……ぽい!

 

215:名無しの提督 ID:0Pp2H7MjS

>>211ふむ、違いが分からない

 

219:名無しの提督 ID:lfe/+4fFB

>>215勉強して?

 

223:名無しの提督 ID:HFEmOE6Lg

そもそも教材があるのかと思ったら、既にまとめサイト出来てて草

新しい言語かな?

 

227:名無しの提督 ID:STXXEAD3m

奴らはぽいぽい教……

最近クマクマ教とぽいクマ教、そして最近出張してきたてぇてぇ勢と日々しのぎを削っているようだ

 

229:名無しの提督 ID:tAA+bh9xI

クマ語もすぐにまとめサイト立てられそう

 

233:名無しの提督 ID:redPFhbI7

>>229まだ判断材料が少なすぎて作れない

 

234:名無しの提督 ID:UFO7tU+e7

既に作る気でいることに驚愕なんだが

 

240:名無しの提督 ID:opDUvtnRO

というかここは定点カメラスレでは……?

 

241:名無しの提督 ID:AWBtUM8f4

お昼時は誰も映らないからなぁ……

 

243:名無しの提督 ID:K+UIKBF7j

早く釣りがしたいもんだぜ

 

 

 

 


 

《艦娘と提督について語るスレ》

 

 

374:名無しの提督 ID:RCocYNok3

>>364ギルティ

 

376:名無しの提督 ID:P2QgL3MHa

>>364二度と檻の中から出てくるな

 

377:名無しの提督 ID:auvhVVTPt

そういえば、佐世保に配属になった夕立ちゃんさ、本当に夕立ちゃん?

 

380:名無しの提督 ID:bgLOIXR9m

>>377どういうこと?

 

381:名無しの提督 ID:auvhVVTPt

いやさ、元々ツイッチーやってたみたいで、写真上げててバズってるんだけど、どうにも配信で見る夕立ちゃんとは見た目が違うんだよ

 

384:名無しの提督 ID:Cz+VIkWny

人なんだから見た目は千差万別では?

 

388:名無しの提督 ID:BiGTGh4zW

あー、でも確かに目の色とかも違うな。こっちは緑色だ

 

394:名無しの提督 ID:KSJdqd0et

本当だ。あとなんとなく配信者夕立ちゃんよりもおっとりしてそう?

 

395:名無しの提督 ID:nA8ib4qrC

背負ってる艤装はこの間配信で見た時と変わってないっぽい?

 

397:名無しの提督 ID:8LNMx5Cd1

艤装は同じでも結構見た目変わるんだな

 

398:名無しの提督 ID:zV/r0p6xk

>>397まあ人なんだし、皆違うよ

 

403:名無しの提督 ID:NBgpExn38

眼の色とかは基本一緒になるって言ってたんだけど、分かってないことも多いからな

 

406:名無しの提督 ID:vOwiNYjwE

夕立ちゃんのもう一つの可能性かもしれない

 

410:名無しの提督 ID:rj6z7VqLG

戦闘力は一緒なのかな。性格の違いで役割が変わってきそう

 

412:名無しの提督 ID:kbkahUjVY

しかし、だいぶ艦娘も増えてきたな

 

416:名無しの提督 ID:cx/dVq+lY

今全国で50人くらいだっけ?

 

417:名無しの提督 ID:cDxD0VCE0

そりゃ、人手が足りないよなぁ……

 

422:名無しの提督 ID:LyG2ktmZ3

海岸の外周は約19000キロ、単純計算で一人当たり3800キロ守る必要がある

 

425:名無しの提督 ID:aJwFxYokK

>>422計算ガバガバで草

どのみち物理的に不可能だが

 

426:名無しの提督 ID:WzQvlyCG7

全国で提督が艦娘増やそうとするのもよく分かる

 

432:名無しの提督 ID:OOmXf7rz3

その一方で、配信者夕立ちゃんは深海棲艦の発生元を探そうとしている模様

 

433:名無しの提督 ID:eKLdChSnv

好戦的さが駆逐艦じゃねぇ!

 

437:名無しの提督 ID:1zJR3HfsN

そういえば、提督の数も足りてないらしくて二次募集が始まったな

 

439:名無しの提督 ID:EAFf+FTz0

公式が夕立ちゃんの配信を見て判断しろって言ってるの最高に面白い

 

445:名無しの提督 ID:QUbAmL6Nr

妖精さんがいる場所にぼんやりとでも見えたら採用らしい

 

448:名無しの提督 ID:LWV2yJld4

大きな艦隊を指揮することは出来ないけれど、数人程度なら動かせるらしいな

 

450:名無しの提督 ID:4D9kigIkz

資源の自然回復が無い代わりに、数人でいくつかの拠点を守りたいようだ

 

453:名無しの提督 ID:2iy7hdFWU

つまり、艦娘のミニハーレム……?

 

455:名無しの提督 ID:jXVCAMGyl

>>453よし、すぐ応募するぞ

 

456:名無しの提督 ID:9EoonZGLc

私はむしろ艦娘になりたい

 

458:名無しの提督 ID:Aucafxuw5

>>456お? ホモか?

 

461:名無しの提督 ID:Uc2qOTLTE

>>458女性提督もいるんだぞ? 艦娘になれたら……それこそハーレムじゃねぇか

 

463:名無しの提督 ID:H6xowOT+w

艦娘って言うんだし、女性しかなれないのでは?

 

468:名無しの提督 ID:dF20/wl6Y

日本において、従来艦は女性に例えられていたなんていうしな

 

470:名無しの提督 ID:M1R5ZFIoC

つまり、艦娘になれば女の子に!?

 

474:名無しの提督 ID:Jiheq9xRn

>>470薄い本が厚くなりそう

 

477:名無しの提督 ID:WXWox8E47

でも、あんな娘達が戦ってくれているのにやれることが無いなんて歯がゆいよな……

 

 

 




ちょっと真面目なアンケート取るっぽい!
配信タイトルがどっちが良いか聞きたいっぽい!


【公式】夕立の機密配信!【許可取ってるっぽい!】


【公式】夕立の機密配信!【許可取ってるっぽい!】



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近海海域攻略作戦Ⅱ


アンケートありがとうっぽい!
②の形式でこれからは書いていくっぽい!

そして、日間ランキング一位本当にありがとうっぽい!
夢のようで、思わず頬を抓っちゃったっぽい!




 三日間、哨戒に出ても深海棲艦を見かけることが無かった。

 今までを思えば三日くらいなら誤差かもしれない。

 

 けれど、私にはこれがどうにも戦力を集結させているようにしか思えないのだ。

 球磨ちゃんとも話して、意見は一致。

 前日の球磨ちゃんが行った資源調査でも深海棲艦を見かけることが無かったらしい。

 

 私はこれを受けて、すぐさま大本営へと報告。

 そして、万が一を考えて艦娘を何人かこちらへ滞在させられないか打診をした。

 

 しかし、どこの鎮守府でも手が回っていないのが現状。

 なんとか取り付けられたのは、緊急事態が起こった場合に、近くの鎮守府から可能な限り早く艦娘の派遣をするというもの。

 何せ、どの鎮守府も多くて精々が5人程度しか艦娘がいないのだ。

 まだまだ、起こってもいない懸念事項のために派遣を行うのは難しい。

 

 他の無人島の例を見ると、ここを深海棲艦が占領しようとやって来てもおかしくはない。

 そのため、哨戒以外の時間は島の防衛設備を整える日々であった。

 

 配信も控えて、妖精さんとも相談しつつ、疲労を溜めないように過ごす。

 いつもより楽な状態にあるというのに、気は休まらず、なかなか難しい。

 

 そして、その時はやって来た。

 


 

【緊急配信】敵艦隊接近中【これは訓練ではないっぽい】

 

 予め準備していた、配信画面を呼び出した。

 この配信はあまり適切では無いかもしれない。

 けれど、私がやりたかったから配信をするのだ。

 

『時間が無いから、要点だけ伝えるっぽい。今から三分前、一〇〇七。哨戒中の球磨が深海棲艦の群れを発見。確認出来ただけで、駆逐イ級が十二隻、駆逐ロ級が四隻、そして軽巡ホ級が三隻。球磨は交戦せずにすぐに帰投。補給を行った後に、夕立と球磨の二人でこれらの迎撃に当たるっぽい』

 

おおう、いつになく真面目な夕立ちゃん

しかし本当なら配信なんてしていて良いのか?

球磨ちゃんの救援に向かうべきでは?

 

『私が、配信を始めたのは私が生きたというところを残したかったからっぽい。だから、死ぬかもしれない今この時こそ、配信をするべきっぽい! それに球磨ちゃんとは既に作戦を練ってあって、ひとまず戻ってくることが第一優先になっているっぽい! 下手に救援に向かうと二人揃ってやられる可能性もあるし、深海棲艦から逃げるだけならよっぽど大丈夫っぽい!』

 

死という文字がこんなに身近に……

しなないで

配信に命をかけるとはまさにこのことか……

今ばかりはふざけるにふざけられない

何より夕立ちゃんの声音が本当だということを語っている

 

『そんなに心配しなくても大丈夫っぽい! この日のために準備してきたんだから大船に乗ったつもりで見ていれば良いっぽい! この動画が、日本で初めての大規模戦闘の資料になるっぽい!』

 

 球磨からの連絡を待つ。

 予定通りならば、敵発見位置から考えて、もう戻ってくるはずだが。

 そして、無線が鳴る。

 

「球磨だクマ! 残り一分で作戦海域を抜けるクマ! 深海棲艦はおよそ三分後に同地点に到着予定クマ! 魚雷を適当に全弾ぶっ放してイ級2隻とロ級1隻は沈めてやったクマ! 一分後、作戦地点で交代を願うクマ!」

 

『球磨ちゃん最高っぽい! 残り敵深海棲艦は合計十六隻! 補給をすぐ済ませて二分で戻って来て欲しいっぽい!』

 

「余裕クマ!」

 

 返事を聞くや否や、海へと飛び込む。

 身体は沈むことなく、艤装の力によって水上を滑り始める。

 作戦海域は泊地を抜けてすぐ傍、約一km地点にあった。

 本当に最終防衛ラインだが、たった二人で深海棲艦に立ち向かうために考えた苦肉の策だ。

 

作戦海域?

最近、準備しているみたいなツイッチーは見かけたが

球磨ちゃん逃げながら迎撃とか強い

 

 進むとすぐに球磨の姿が見えた。

 一直線にこちらに向かってくる球磨とハイタッチをして、全く同じ航路を進む。

 球磨が引き離すことが出来た距離はおよそ三分。

 だが、全ての敵が砲を撃って足を止めていた訳では無かった。

 

 先行してくる駆逐イ級が二隻、夕立の視界に入った。

 刹那、夕立が砲撃を開始する。

 球磨を追いかけていたイ級はすぐには止まることが出来ず、夕立の砲撃へと突っ込んでしまう。

 一隻が沈んでいった。

 もう一隻も、一対一の状況下で夕立が負けるはずが無かった。

 

『イ級二隻なら無傷で勝てるっぽい! これで、目視で確認した敵数は残り十四隻。もっとバラバラに突っ込んで来てくれると嬉しいっぽいけど……』

 

流石、普段の哨戒でも二隻相手に無傷だもんな

イ級なら艦娘の方がよっぽど強い?

あっ

フラグ立ってしまったか……

 

 そんなに甘いはずも無く、イ級を相手取っている間に目視可能距離まで接近してきたのは、軽巡ホ級を含む残りの十二隻。

 戦いは数だ。

 どんなに一人の力が強くとも、それを上回る数で対処をすれば勝つことは難しい。

 そもそも軽巡ホ級に至っては、スペックとしても勝っているか怪しいところだ。

 量産型の深海棲艦は艦娘と比べて、同艦種よりも弱めになることが多いが、それでも軽巡洋艦を模した深海棲艦は脅威であった。

 

『撤退! 撤退するっぽい! 球磨ちゃん、準備は良いっぽい!?』

 

「大丈夫だクマ! 作戦通り、三秒後に夕立ちゃんに向かって魚雷を撃つから、絶対避けてクマ!」

 

『了解っぽい! 二、一、やって!』

 

「クマあああああああああああ」

 

 無線越しだった声が近くから聞こえた。

 夕立はUターンをして、深海棲艦からすぐさま距離を取る。

 行き道と同じ航路を通って球磨の元へと向かう。

 

 当然、深海棲艦は砲撃を開始するが、そこは速度に優れる駆逐艦。

 何度か掠りながらも、航路を渡り終えた(・・・・・・・・)

 

 瞬間、夕立は左に向かって全力で飛んだ。

 その真下を球磨が放った魚雷が進んでいく。

 そして、夕立を追いかけてきていた軽巡ホ級に命中する!

 

 大きな水柱が立ち、軽巡ホ級が沈んでいくのが見えた。

 

 

 

 

すげぇ

コメントが一瞬飛んだ……

すっごい綺麗にハマってる

でも、時々掠っててもう息が止まりそう

 

「まだまだぁ! クマあああああああ!!」

『夕立だって負けてられないっぽい!』

 

 そして、正面に砲撃をばら撒く。

 敵艦を沈めることは出来なかったが、砲撃を避けるように敵が二分された。

 

 右翼にイ級三隻、ロ級二隻、ホ級一隻。

 左翼にイ級五隻とホ級が一隻。

 

 それぞれがホ級を旗艦とするように、夕立と球磨の元へと距離を縮めようとする。

 このままでは包囲される。

 が、夕立と球磨にほど近い右翼側のホ級が急に爆発をする。

 それに連鎖するかのようにして爆発した衝撃に、追随していたロ級も巻き込まれ、沈む間も無く、粉微塵となった。

 

お、おお?

何が起こった?

分からん、急に深海棲艦が爆発した

もしかして、機雷?

 

『上手く掛かってくれて、助かったっぽい! 今のうちに指揮系統が無くなった右翼側のイ級を叩くっぽい!』

 

「もちろんだクマ! ここだけならこっちが有利だクマ!」

 

 夕立と球磨が同じ航路を通っていたのは、そこしか通れないからだった。

 夕立の策により、周辺の海には妖精さん印の機雷がそこらじゅうに張り巡らされている。

 その情報を知る夕立と球磨は航路を絞り、その航路を敵に使わせずに分断、機雷のある地帯へと誘導。

 十隻以上いる深海棲艦の群れに対して、局所的に有利な局面を生み出したのだ。

 

 左翼へと散ったホ級とイ級は機雷に掛かってこそ無いものの、周囲を警戒して身動きが取れなくなっている。

 

 その間に残ったイ級三隻を沈めるなど、夕立と球磨にとっては簡単なことだった。

 

 結果、最初は圧倒的な数の差があったにも関わらず、残りの敵はホ級一隻とイ級が五隻。

 もう策は残っていない。

 あとは気合で、勝ちを掴みとるしかないが、上手く分断出来たおかげか、この数ならば負ける要素は少ないように思える。

 

 夕立は掠り傷こそ付いているが、まだ戦闘に支障は無いレベル。

 球磨に至っては、一度補給をしているため、無傷に近い。

 

 

 しかし、足元を掬われる瞬間というのは、得てして勝ちを確信した時、すなわち心に余裕が出来た瞬間だろう。

 夕立は足元に迫るソレに気が付かなかった。

 

「! 夕立ちゃん、危ないクマ!」

 

 直前、球磨が気付き、声を上げるも手遅れだった。

 

 

 夕立のいた場所に、大きな水柱が立った。

 

 

耳、耳がああああああああああああ

何が起こった!?

画面が真っ白に!?

嫌あああああああああ






ぽい!
なるべく毎日更新はしたいけれど、
戦闘になると無い頭を振り絞って流れを考えているっぽい!

(明日更新出来るかは怪しいっぽい……)

が、頑張るっぽい!


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近海海域攻略作戦Ⅲ


割と間に合ったクマ!




 水しぶきが上がり、球磨は顔を青ざめさせた。

 次いで、その中から夕立の姿を見つけ少しだけホッとし、その様相を見て再び顔を青ざめさせた。

 

 背負った艤装からは嫌な煙が上がり、右足は水面に沈みそうになりながらも、なんとか浮いているという状態。右手からも血が流れ落ち、常に快活さを見せていた顔は苦痛に歪んでいた。

 夕立は意識を朦朧とさせながらも、この下手人の正体へと思考を延ばした。

 

 そして、すぐに割り出す。

 

『ッ! 潜水艦っぽい! 球磨ちゃん、攻撃の軌跡は見えたっぽい!? 見えたならそちらの方面へ魚雷を放って!』

 

「 了解だクマ!」

 

 一瞬間が空くもすぐに状況を理解し、球磨が魚雷を放つ。

 しかし、手ごたえを得ることは出来なかった。

 

夕立ちゃんの声が! 無事だったか!

声が震えているのは大丈夫なのか!?

もしかしなくても、これ夕立ちゃん自分の身体を画面に入れないようにしてるよな

というか潜水艦!?

深海棲艦ってまだ駆逐級と軽巡級しか発見されてないのでは?

 

「全弾当たってないクマ! 夕立ちゃん、そのままじゃ戦闘の続行は不可だクマ! 球磨が抑えるからすぐに撤退するクマ!」

 

 潜水艦を逃したが、すぐ前方にはまだ駆逐イ級五隻と軽巡ホ級一隻が残っている。

 そして、それは球磨一人に任せるには荷が重い数でもあった。

 

『夕立もまだ戦えるっぽい! せめて、ホ級だけでも先に落とすっぽい! 集中砲火で、今すぐに!』

 

「駄目だクマ! 潜水艦が居るなら、それをどうにかしないと今度こそ夕立ちゃんが沈められてしまうクマ!」

 

 事実、ソナーも持たない二人では潜水艦の発見は困難を極める。

 そして、戦闘している際に飛んでくる不可視の一撃を避けることは、不可能に近い。

 機雷の配置された海も、潜水艦の前では丸裸も同然だろう。

 

潜水艦が居るなら、本気でヤバイ

隠れられたら絶対に見つからん

レーダーか何か無いのか!?

 

『……工廠妖精さん! 今すぐに対潜水艦用の装備の開発を! 資源はいくら使っても良いから、最速で!』

 

 工廠と無線を繋ぎ、連絡をした。

 そして夕立は泊地へ向かって、撤退を開始する。

 機雷の間を球磨と共に通り、その道にありったけの魚雷を発射。

 敵も学習し、それに引っかかることは無かったが、その道以外を通れないのもまた変わらない。

 少しは時間が稼げるはずだ。

 

『球磨ちゃん、すぐに戻ってくるっぽい。だから、少しだけ耐えて!』

 

「任せるクマ! 意外に優秀な球磨ちゃんって呼ばせてやるクマ!」

 

『ふふふ、意外には余計っぽい! 優秀な球磨ちゃんに任せるっぽい!』

 

 ハイタッチを交わして、泊地へと急ぐ。

 今度は、最初とは逆になった。

 夕立が戻ってくるまで、球磨が支える番だ。

 

「ここは球磨が絶対通さないクマ! 掛かってくるクマああああああああ」

 


 

 背後から砲撃の音が聞こえる。

 すぐにでも戻りたい。

 けれど、この傷では足手纏いになることは分かっていた。

 それでも、艦としての意思が、球磨という友人を戦場に一人残していくことに人としての意思が、戦いたがっていた。

 身体がぐらつき、バランスを崩しそうになりながらも、工廠を目指す。

 

 幸いにも距離はあまり無い。

 そこまで深海棲艦に迫られているとも言い換えられるが、今は一分一秒が惜しい状況。

 その近さは有難かった。

 

 水面から飛び上がり、工廠の中へと転がりこんだ。

 妖精さんがバケツになみなみと入った液体を持ってくる。

 

「こーそくしゅーふくざいです。建造とおなじくらいの資材がひつようになるけれど、持ってきました!」

「もどるなら、完全かいふくしてからです!」

「これが、九三式水中聴音機と九五式爆雷になるます!」

「溶けた資材はごあいきょう!」

「使い方はそうびすれば分かるのです!」

「魚雷を置いて、そうびするのです!」

 

 そして、バケツの液体をバシャリと掛けられた。

 途端、身体の痛みが引いていく。

 血の跡は随所に残っているが、再び流れ出すことも無い。

 艤装から出ていた煙も鳴りを潜め、万全の状態にほど近いものとなる。

 

『妖精さん、ありがとうっぽい! 急ぐからもう行くっぽい! 夕立、再出撃するっぽい!』

 

 夕立はゲームであったからという理由で大して気にしていなかったが、この光景は無駄に頑丈な妖精さん印の機材によって、全国に配信されていた。

 そして、これを機に、莫大な資源を消費することで即座に艦娘を回復させる高速修復材の存在が知れ渡っていくことになる。

 

 ちなみに、夕立は溶けた資材の量を知らない。

 ついでに言えば、配信していることすら既に頭の中には無かった。

 

 


 

 

 夕立が戻った先で見たのは、沈むイ級と、頭から血を流す球磨の姿。

 その先にはまだ無傷のホ級が残っていた。

 

 すぐさま、援護に駆け付けようとした瞬間、ソナーが水面下の存在を察知する。

 それはちょうど球磨の真後ろ。

 ホ級からの攻撃を避けることに手いっぱいの球磨に気付いた素振りは無い。

 

 そして、不可視の一撃が放たれた。

 

『球磨! 後ろ!』

 

 夢中で叫んだ。

 夕立の速力では間に合わない。

 振り向いた球磨は、驚愕の表情を浮かべ、そして一瞬諦めたような表情をした。

 だから、夕立は再び叫んだ。

 

『球磨、飛んで! 避けて!』

 

 片手だけになった砲を振り向いた球磨の後方に向けて構える。

 艦娘は、艦の意思を持つだけで、ベースは人間だ。

 海の上に浮けるのだから、海を蹴って人外の膂力を持ってして大きく飛ぶことで魚雷を躱すことも出来るだろう。

 

 しかし、同時に空中では敵の攻撃を避けることが出来ない。

 当たれば、バランスは崩れ、上手く水面に着地出来ない可能性だってある。

 その隙は致命的だ。

 

 球磨が砲を構える夕立を一目見て、覚悟を決めた。

 大きく飛び、海面下を走る魚雷を避ける。

 

 と、同時にホ級の砲撃が放たれた。

 

 全神経をホ級に寄せていた。

 これまでの訓練を思い出すんだ。

 来る位置はある程度予測が出来る。

 だから、この一撃に全てを籠めて!

 

 斯くして、夕立の放った弾は吸い込まれるように、ホ級の弾へと向かっていった。

 空中で大きな爆発が起こる。

 

 風圧で球磨が少しだけ体勢を崩したようだが、無事に着地した姿を見た。

 ソナーに、周辺で反応は無い。

 

『球磨ちゃん、あと一息っぽい! 行くっぽい!』

 

「もう駄目かと思ったクマ! これはそのお返しだクマ!」

 

 二人でホ級に向かい集中砲火を行う。

 その砲火に耐えることが出来ず、ホ級は海へと沈んでいった。

 

 もう一度ソナーを起動するが、反応は無い。

 油断は出来ないが、潜水艦の深海棲艦はどこかへ逃げていったようだ。

 

『潜水艦は近くにいない……夕立達の勝利っぽい!』

 

「クマあぁぁぁ、怖かったクマ……。腰が抜けたクマ……」

 

『お疲れ様っぽい。さ、帰投っぽい!』

 

 ふらつく球磨の肩に手を回し、支えながら泊地へと戻る。

 ソナーは起動させたまま、警戒だけは怠らずに。

 しかし、それも杞憂に終わり、泊地へと無事に戻ってくることが出来た。

 

 頭から血を流しているものの、球磨の傷自体はそこまで大きなものでは無かった。

 建設されていた資材風呂につかることで、数時間もすれば回復するだろうとは、妖精さんの談。

 

 

 

 

 

 

 そして、球磨の傷が癒えたころ、泊地へと近づく影があった。

 

「ぷっぷくぷぅ~! ここが夕立ちゃんの泊地かぴょん!」






配信成分が……足りないっぽい……




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近海海域攻略作戦Ⅳ

お待たせしたっぽい



「睦月型駆逐艦四番艦の卯月だぴょん! 宿毛湾(すくもわん)泊地からの救援で駆け付けたぴょん! と言っても、もう必要無いかもしれないけれど。とりあえず、夕立ちゃんは早く配信を終了すると良いと思うぴょん!」

 

 やって来た三人の艦娘。

 その代表として卯月が放った言葉は夕立に衝撃を与えた。

 戦闘終了から数時間、球磨の入渠も手伝ったうえに、装備の整備もしていた。

 幸いだったのは自身が高速修復材のおかげで、入渠が要らなかったこと。

 そして、装備や修復材について妖精さんに尋ねていたために、書類仕事にはまだ手を付けていなかったことだろうか。

 

『も、もしかしてずっと配信されていたっぽい……?』

 

はい、それはもうバッチリと

球磨ちゃんがセンシティブだった……

●REC

消されてないのが奇跡なくらいギリギリだった……

対潜装備とか修復材のことも妖精さんの声聞こえないのに完璧ですわ

 

「く、くまああああああああ」

 

 すっかり傷も治った球磨であったが、新しい傷が出来てしまったようだった。

 顔を真っ赤にして、夕立から、正確に言えば夕立の耳に付いている小型カメラから姿を隠す。

 もう手遅れだが。

 

『あ、あーとりあえず今日は配信終了するっぽい! またっぽい!』

 

「配信者がすっかり板に付いてるぴょんね」

 

チラッと聞こえた声は艦娘?

あー気になる

今更だし、配信続けようぜ!

 

 

この配信は終了しました

 

 


 

「ふぅ、これで良いっぽい」

 

 改めて、救援に駆け付けてくれた三人に目を向けた。

 

「もう一度自己紹介しておくぴょん! 卯月だぴょん! いちおう夕立ちゃんの同期になるぴょん!」

 

 卯月は夕立と同時期に徴兵された艦娘だ。

 よく訓練を共にしたり、忙しい夕立を案じてお菓子の差し入れなんかを貰ったこともある。

 

「私は暁型駆逐艦の(いなずま)なのです」

「川内型軽巡洋艦の那珂ちゃんだよ! よっろしくぅ!」

 

 そして、残りの二人とは初対面だった。

 

「スイラン島泊地提督、兼白露型駆逐艦の夕立っぽい! 救援感謝するっぽい!」

「球磨型軽巡洋艦の球磨だクマ! よろしくクマ!」

 

「まあ、今回は間に合わなかったからあんまり意味は無かったかもしれないぴょん。でも、司令官から三日ほどはこちらに駐留するように任務が言い渡されているぴょん!」

「第二波への警戒は電達に任せて欲しいのです」

「那珂ちゃん達に任せて、少しの間だけどゆっくり休んでね!」

 

 夕立と球磨にとっては非常に有難い申し出だった。

 何せ一度襲撃されているのだから、二度目がある可能性は十分にある。

 そのために神経を擦り減らす日々を再開するのはなかなかに心労がかかる。

 

 しかし、夕立には一つの考えがあった。

 

「うーん、すごく有難い申し出なんだけれど、ちょっと聞いて欲しいことがあるっぽい。とりあえず、食堂にでも移動して、そちらの提督とも話しながら意見を聞きたいっぽい」

「ぴょん!? さっきまで死線を彷徨っていたのに、仕事熱心ぴょんね! 前から全然変わってないぴょん!」

「そっか、卯月は夕立ちゃんの訓練時代を知っているクマね。また後でそのころの話を聞かせて欲しいクマ!」

「あ、それならそれなら、那珂ちゃんも卯月さんのこと聞きたいな!」

「電も興味あるのです」

「あんまり、エピソードは多くないっぽい。まあ、それでも良いなら後でいくらでも話すっぽい!」

「うーちゃんも問題無いぴょん!」

 

 食堂へ向かう道すがら話も弾む。

 話題はもっぱら、初期艦とも呼ばれる最初の十人の内の二人、夕立と卯月のことだった。

 初期艦には半年の訓練というアドバンテージがある。

 それ以降に建造された艤装に適合した艦娘は彼女らから基本を学び、実践と共に成長していく。

 もっとも、軍の計らいか基本を学び終えていた球磨が二人目としてやって来たために、夕立は未だに教えたことは無いのだが。

 

「あ、球磨ちゃん球磨ちゃん。たぶん勘違いしていると思うっぽいけど、卯月ちゃんは成人してるっぽい。子供扱いをむしろして欲しいって言ってるくらいだから、問題無いと思うけど、いちおう伝えておくっぽい」

「クマ!?」

 

 道中、夕立の囁きに驚き、思わず声を上げたりしながら、食堂に着いた。

 もてなせるようなものも無いので、特製のコップに注いだ重油を皆に配って、持ってきたパソコンを起動した。

 

「あーあー、うん。突然の連絡すみません、スイラン島泊地提督の夕立です。通話、聞こえますでしょうか?」

「宿毛湾泊地提督の卯ノ木(うのき)(よう)だ。俺は軍人じゃないし、そんなにかしこまらなくても大丈夫だって前から言ってるだろ?」

「い、いちおう年上ではありますし……」

「配信だって見てるから普段を知っているし、だいぶ無理して話しているだろう? 卯月だって、かなり気合入れないと普通の話し方が出来ないって言ってたぞ」

「うぅ……ぽい……」

 

 宿毛湾泊地提督、卯ノ木陽。

 彼は卯月の実の兄であった。

 国内唯一の、兄妹で提督と艦娘になるという珍しい事例だ。

 ついでに言えば、夕立と共に提督としての勉強をしていた同輩でもある。

 提督適正者のほとんどが男性だったせいで、たまの休みにはもう一人の女性提督に連れられての艦娘との交流が多かったため、あまり接点自体は多くは無かったが。

 

「で、何かしら連絡は来ると思っていたんだが、突然どうした? 俺も配信は見ていたから、事のあらまし自体は把握しているが」

「クマぁぁぁぁ、配信は忘れて欲しいクマ……」

 

 チラッと見えたコメントを読んでしまったクマは羞恥に小さくなる。

 怖くて、自分がどんな姿を晒してしまったのか見れそうにない。

 

「まずは救援感謝するっぽい。普通なら二度目の襲撃を警戒すると思うのだけれど、夕立はここがチャンスなんだと思うっぽい」

 

 夕立も始めは二度目のより戦力を集結させた襲撃を警戒していた。

 しかし、球磨の修理にかけた数時間によって、考えは変わり始めていた。

 

「配信を見ていてくれたなら、詳細は省くけれど、潜水艦の深海棲艦は逃げて行ったっぽい。つまり、敵には私たちのことが既に漏れているっぽい。そのうえで襲撃が無いのなら、考えられるのは三つっぽい。一つ、機雷による防衛を脅威と見なし襲撃を諦めた。二つ、潜水艦による襲撃を計画し、気が付かないだけで既に囲まれている。三つ、敵戦力が削れていて増援を諦めた。だと思うっぽい」

「それで?」

「一つ目と三つ目に関してはあるかもしれないっぽい。でも、二つ目に関しては、さっきまでソナーや爆雷投射機の性能を確かめるために試運転をしていたから無いと言えるっぽい。つまり、これだけの時間襲撃が無いということは、次の襲撃の可能性は薄いっぽい。そして、ここからが本題、二分の一の確率で戦力が減っている敵深海棲艦の中枢を攻撃すれば、ここにいる戦力だけでも撃破出来る可能性があると思う……っぽい」

 

 夕立は今まで調べてきた深海棲艦の動向についても説明する。

 凡その深海棲艦がやって来る方向、そして接敵後に撒いて逃した敵が戻って行く方向。

 それらを分析すると、ほとんどがこの島と本土の中間より少し東方面。

 そちらからやって来ていた。

 

 二隻では敵の大勢相手に数の暴力で負けてしまうだろう。

 襲撃の危険性があるのでは、防衛戦力が必要になるだろう。

 だが、もし数の優位を得ることが出来て、一時的には防衛の心配をしないでも良いのであれば……?

 

「ここに何があるかは分からないっぽい。もしかしたら深海棲艦の巣みたいなものがあって、圧倒的な戦力が待ち構えているかもしれないっぽい。でも、もしここに何かがあって、それを撃破することが出来たら、日本に希望の光が見えるっぽい?」





四話掛けてようやく
タイトルが仕事を始めたっぽい

もう一話くらい配信が息しないかもしれないっぽい



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近海海域攻略作戦Ⅴ


久しぶりに艦これアーケードをやって来たっぽい。
すっごく楽しかったっぽい!
そして、駆逐艦と軽巡洋艦だけでの重巡洋艦や軽空母への無力さも知ったっぽい……




「なるほど……な」

 

 画面の向こうの卯ノ木提督は顎に手をやり、少しだけ考えるような仕草をした。

 こちらの艦娘の反応は様々。

 元よりそういった話をしていた球磨はやる気に満ちているようで、切り替えが早いというかなんというか。

 卯月は特に反応が無く、画面をじっと見つめている。

 電と那珂は突然の話に驚きながらも、ひそひそと二人で話し始めた。

 

「確かに、そこに何かがある。それだけでも見つけられれば十分な進歩だ。それに俺個人の意見としてもこの海には何かがあるとは思っている。が、それは本当に今必要なことなのか? 夕立君が、球磨君が死にかけたように今はどの泊地、鎮守府でも戦力が足りているとは言い難い状態だ。戦力が整ってからでも、遅くは無いのではないか?」

 

 意見としては真っ当だ。

 ここには五人の艦娘がいるといえど、駆逐艦が三人と軽巡洋艦が二人。

 決して戦力として多いとは言えない。

 

「それは少し考えたっぽい。今がチャンスっていうのも、夕立達の島と本土の行き来を楽にしたいっていう(よこしま)な思考も入っているっぽい。でも、『今』を先延ばしにして戦況が変わると思うっぽい? 今でさえ徴兵や、海に出られないこと、輸入が出来ずに資源が減る一方なことへの批判だってあるのに、ずっと我慢出来ると思うっぽい? 夕立は敵は深海棲艦だけじゃないと思うっぽい」

 

 夕立は無視をするため気にしていないが、配信やツイッチーでも批判、アンチなどはたくさん存在する。

 ちなみに球磨はたまに憤慨している。

 それでも配信を続けるのは、それによって艦娘への理解を深めて欲しいこと。

 そして、艦娘となるということを不幸と思わせないため。

 

 という思いも少しばかりある。

 大半は、何か残したいという意思であるが、既に達成してしまったがために、より良い方向で残したくなっていた。

 なにせ夕立は今、歴史の転換点に立っている。

 ならば、より頑張れば教科書レベルで残せる可能性もあるとか思ってしまっている。

 

「だから、仕掛けるなら今だと思うっぽい。もし失敗しても後には何かを残せるっぽい。背水の陣になる前に行動を起こせるとすれば今だけなんじゃないかな」

「ふむ、相分かった。確かに言う通りだし、戦う本人がやる気とあれば止めることも難しい。宿毛湾泊地提督として、その意見には賛同しよう。ただし、こちらの艦隊が本当に行くかは卯月達の意思で決めて欲しい。チャンスといえど、五分五分の賭けだ。死地かもしれない場所へ行けなどという命令は間違っても俺には下せない」

「大丈夫っぽい。いざとなれば球磨ちゃんと二人だけでも行ってくるっぽい! その時に泊地の防衛だけでもしてくれていたら後顧の憂いも無いっぽい!」

「はっ、全く羨ましいもんだ。提督なのに、艦娘と共に戦いに行けるだなんて。それじゃ、また何かあったら連絡してくれ。指揮系統はそちらに委任する。じゃあ、またな」

 

 通話が切れた。

 場に小さな静寂が訪れる。

 卯ノ木提督は軽い口調で話していたが、自分の判断で死地へ送り出すなど元一般人たる彼には酷なことだろう。

 その点、夕立は恵まれていた。

 提督としての判断と同時に、艦娘としての、艦としての護国の気持ちを理解出来るのだから。

 

「球磨はやってやるクマよ! 夕立ちゃんの考えも前から聞いているし覚悟もバッチリクマ!」

 

 球磨が先陣を切って話し始める。

 場の空気が戻って行く。

 

「夕立も、まだまだやれるっぽい! 無理強いはしない。けれど、もし協力してくれるなら来て欲しいっぽい!」

「うーちゃんも行くかなー。何だか夕立ちゃんと球磨ちゃんだけじゃ、突撃しちゃいそうだぴょん。ペースメーカーが必要だと思うぴょん!」

 

 夕立はもちろん、卯月も行くことを表明した。

 それが分かっていたからこそ、卯ノ木提督は早々に通話を切ったのかもしれない。

 

「その、那珂ちゃん達も……行きたい、と思うかなぁ」

「電も何だか怖いという気持ちと、戦いたいという気持ちが混ざっていて不思議な気分なのです」

 

 艦としての意思が護国を訴える。人としての意思が死地へ向かうことを拒否する。

 艦娘の胸中では常に二つの意思が渦巻いている。

 それらは時として判断を鈍らせる。

 

「曖昧な気持ちならここで待っていた方が良いと思うっぽい。いざという時に、動けなくなってしまうかもしれないっぽい」

 

 意思がちぐはぐということは、何かの切っ掛けで、どちらかに傾いてしまう可能性も孕んでいる。

 死が迫った時、人としての意思が『怖い』と強く思ってしまえば、身体が震えて動けなくなるかもしれない。

 戦場でそうなった場合、待ち受けるのは避けようの無い死だ。

 

「うーちゃんもそう思うぴょん。だからこそ、司令官は私たちの意思に任せるって言っていたぴょん」

 

 二人は押し黙ってしまう。

 自分の意思を確かめようと深く考えているのだろう。

 夕立は提督としてやることがあると席を立った。

 

 作戦開始時刻は約一時間後。

 一五三〇だ。

 


 

 

 夕立がいなくなった後の食堂はまた静かになっていた。

 那珂と電が考え込んでしまっているため、球磨と卯月も下手に声をかけない方が良いと重油を飲みながら考え事をしていた。

 

 少しだけ沈黙の時間が流れ、那珂が声を出した。

 

「その、色々と考えたんだけれど分からなくなっちゃって……。球磨ちゃんと卯月ちゃんは何で戦おうって思えるの?」

 

 その質問に興味があると言わんばかりに、電も顔を上げた。

 戦いたい、けれど自分を納得させるだけの理由が分からずにいたのは電も同じだった。

 

「うーちゃんは単純だぴょん。兄貴の負担を少しでも減らすためぴょん! いつも胃を擦り減らして予定だったり、なるべく安全なルートを考えているような兄貴だぴょん。うーちゃんが、勝って勝って勝ち続ければ兄貴の心労も少しは減らせると思うぴょん。だから、こんな日々を少しでも早く終わらせるために、うーちゃんは頑張っちゃうんだぴょん!」

「え、卯月ちゃんのお兄さんって提督か何かクマ?」

「球磨さん、さっきの卯ノ木提督なのです」

「えっ、それって余計心労を掛けるだけなんじゃクマ……?」

「球磨ちゃん! しーっ!」

 

 那珂の必至の遮りで卯月には聞こえなかったようだ。

 卯月は兄の一番の心労が、積極的に戦闘をする自身のことであることには気づいていなかった。

 兄を心配し、深海棲艦を一日でも早く殲滅しようとする卯月は、あまり考えることは得意では無かった。

 

「そ、それじゃあ球磨ちゃんは?」

 

 那珂が慌てて方向転換した。

 

「んー球磨は……何でクマね? 強いて言うなら夕立ちゃんを置いていきたくないからクマ? 何て言うか、一人で突っ走っていっちゃいそうな感じがするクマ。友達だけれど、目の離せない妹みたいな感じもして、うーん、とにかく付いて行かないとって思うんだクマ!」

「さっきも沈みかけていたのに、戦闘に残ろうとしていたのです。そういうところなのです?」

「そうそう! 危なっかしくて、球磨がちゃんと見ていなきゃって思うんだクマ!」

 

 球磨に、戦闘を行う大それた理由は無い。

 ただ、友達が危険な目に遭うのなら、それを助けたいと思う。

 そんな友人思いな人間だった。

 

「わっすれものーわっすれものー♪」

 

 と話していると夕立が戻って来る。

 テーブルの上にはノートパソコンが置かれたままになっており、取りに戻ってきたようだ。

 

「あ、ちょうど良いクマ! 夕立ちゃんの戦う理由って何クマ? 那珂ちゃんと電ちゃんの参考になればと話していたんだクマ!」

「え、夕立の戦う目的っぽい? うーん、そこに敵がいるからっぽい? 無理をするつもりは無いっぽいけど、勝算があるなら戦うっぽい」

「それは、先ほど沈みかけていたのに、なのです?」

 

「夕立はやらなくて後悔だけはしたくないっぽい。ここで逃げたから、ここで戦わなかったから、って後悔するのは嫌だから『今』行動を起こすっぽい!」

 

 それじゃあ、もうちょっとやることあるっぽい!

 と言って夕立は食堂を再び去っていった。

 






感想返しが遅れてて申し訳無いっぽい。
ちゃんと全ての感想に返信はするから、もうちょっと待って欲しいっぽい!


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近海海域攻略作戦Ⅵ


短いっぽい……
やっぱりこういう戦闘を書くのは苦手っぽい……




 作戦開始時刻、数分前。

 海の前へと来た夕立は他の四人の姿を見つけた。

 

 球磨、卯月、那珂、電。

 皆が装備を身に着け、準備を完了させている。

 

「あれ? 那珂ちゃんと電ちゃんはもう大丈夫っぽい?」

「はい、大丈夫なのです!」

「那珂ちゃんも完璧バッチし!」

 

 あれから、那珂と電は吹っ切れた。

 何も大それた理由が必要な訳では無いと分かったのだ。

 少しだけ、譲れない何かがあれば、それは戦う理由になる。

 

「電は皆と一緒に戦いたいのです。電だけがここに残って、その間に戦っているなんて耐えられないのです。夕立ちゃんの受け売りになっちゃうけれど、そんな後悔はしたくないのです!」

「那珂ちゃんはアイドルになりたいんだ! でも、まだレッスン漬けの日々。なら、ここで大戦果を挙げれば訓練生時代から一躍有名になっちゃう! そのためにも深海棲艦をやっつけなくっちゃね!」

 

 死に恐怖しない必要は無い。

 それを忘れてしまえば、生き物として大切なものが欠けてしまう。

 

 死地へ行くには死に立ち向かうための勇気さえあれば良い。

 揃った五人の艦娘にはそれぞれの想いの力による勇気が備わっていた。

 

「うーちゃんも二人ならもう大丈夫だと思うぴょん!」

「球磨もそう思うクマ! これだけの人数が揃えば怖いもの無しだクマ!」

「皆、ありがとうっぽい! それじゃあ、改めて作戦を確認するっぽい! 敵の予想位置はこの島から北北東方面に凡そ100キロメートル地点。太平洋に面した四国近畿地方の深海棲艦出現報告はほぼこの方面から来ているっぽい。故に、ここに何かが存在すると仮定し、出撃するっぽい。先ほどまで報告をまとめていたのだけれど、昨日今日とこの周辺での深海棲艦の目撃例は無いことから、敵は戦力が低下している可能性は高いっぽい! 取り逃した潜水艦も存在するはずのため、対潜装備は夕立が装備。旗艦を球磨として出撃するっぽい!」

 

「クマ!」「ぴょん!」「なのです!」「え、え、え? な、那珂ちゃんだよー!」

 

 クスクスと笑いが零れる。

 これくらいリラックスしている方がちょうど良い。

 球磨を先頭に、夕立が殿で海へと出ていった。

 


 

 約二時間弱かかる道中。

 敵への警戒は必要だが、ずっと張りつめているのでは疲れてしまう。

 それ故に、軽く会話をして緊張の糸を軽くほどきながら、進む。

 

 今のところ、敵は周囲に見当たらず、平和な青が広がっている。

 

「そういえば、夕立ちゃんは今回は配信しないぴょん?」

「へ? 球磨ちゃんは許可貰っていたけど、皆にはそういう話していないからもし撮られるの嫌な人がいたらと思って撮ってないっぽい。いちおう動画は撮っておいて、編集で見られたくない人は消そうかと思ってるっぽい」

 

 何せ、そこに何かがあればそれを全世界へ伝えることが重要だ。

 本当なら確実に、残せるように配信しながらの方が良いかもしれないが、無理に撮影するのは肖像権を害するし、単純に嫌な気分になるだろうからしたくない。

 それに撮影しているということで気が散ってしまうこともあるだろうと、撮影のことも最後まで言わないつもりだった。

 

「うーちゃんは全然気にしないぴょん。それに配信されていた方が兄貴も安心すると思うぴょん!」

 

 状況が分からないのも問題だが、分かるは分かるで胃が擦り減らされるだろう。

 卯ノ木提督に今度胃薬を差し入れしようと思った夕立だった。

 胃痛の一端を担っていることには目を瞑る。

 

「電も特には気にしないのです」

「那珂ちゃんもアイドル目指してるんだから! むしろ撮って欲しいくらいだよ!」

 

 球磨は言わずもがな。

 ここに顔出しを忌避する人はいなかった。

 

「そうっぽい? それじゃあ、今のうちに配信開始するっぽい」

 

 そして、海上で増えたメンバーと共に敵本拠地と思しき場所へ向かう道中、唐突に配信は始まった。

 


 

【記録用】最終決戦っぽい?【敵本拠地へ】

 

あれ? さっき戦ってたのに、また?

最終決戦ってどういうこと?

艦娘がたくさんいる……

もしかしてまた泊地を襲われてる?

 

 告知も無しに始めたばかりだというのに、次々にコメントが現れる。

 コメントへの疑問に答えるように、夕立はここまでの経緯をかいつまんで説明した。

 

『それと、今回はコメントを読んでいる暇は無いし、あくまで記録用っぽい。上手く行けば、深海棲艦への有効打をこの配信で示せるかもしれないっぽい』

 

ちょっと寂しいけど、妥当

むしろ配信せずに戦いに集中して

深海棲艦の発生源……か……

この娘たち、覚悟決まり過ぎでは?

↑艦娘になると、国を守りたいっていう艦の意思が芽生えるらしい

洗脳かよ、こわ

 

 まあ好き勝手言い合っているんだろうなと思いながらも、周囲を警戒して進む。

 不思議なほどに静かで、敵の影は見当たらなかった。

 

全く敵がいないな

それだけ戦力が集中しているのか、枯渇しているのか

もしかしたら、ここが歴史の転換点なのかもしれない

俺たちのコメントが歴史の教科書に載るのかアツイな

今のうちに有識者っぽいコメントしておこう

 

 チラリとコメントを見たら変な方向へと進んでいた。

 恐らくウィキから持ってきた知識を貼り付けている人もいる。

 

 そしてさらに進むこと少しの間。

 

 それは唐突に姿を現した。

 

 巨大なグローブを纏ったかのような手。

 頭部はイ級の被り物のようなものをしているが、全体的なシルエットとしては人間に程近い。

 グローブの上部には4つもの巨大な砲塔を持つその姿は、これまで相手にしてきたイ級やホ級とは異質な姿に映った。

 何より、赤黒いオーラを身に纏ったそれから発せられる圧は他の深海棲艦の比では無かった。

 

「総員、戦闘態勢だクマ!」

 

 周囲に他の敵艦はいない。

 しかし、それを落とすことが出来る姿が全く思い浮かばない。

 長い、戦いが始まった。







そろそろ頭空っぽな配信回を書きたくなってきたっぽい
今度から、続きものする時は書ききってから投稿したくなってきたっぽい
でも、たぶん見切り発車で投稿をまた繰り返す気がするっぽい



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近海海域攻略作戦Ⅶ


vsツ級っぽい!




 戦いが始まりはや一時間。

 陽が沈み始める時間帯となっても、夕立達はその化け物に、軽巡ツ級に致命打を与えることが出来ずにいた。

 全くの無傷では無い。

 しかし、その固い装甲は駆逐艦の火力では微かなダメージを与えることしか敵わず、球磨と那珂の火力でも大きなダメージを与えるには至っていない。

 皆、疲労が嵩み、こちらも致命傷を受けてはいないものの、戦闘の始まりよりも砲撃が掠る回数は着実に増えていた。

 そのうえ、これだ。

 

『ッ! ソナーに感あり! 潜水艦がまた来たっぽい! すぐにやるから警戒を!』

 

 定期的に襲い来る潜水艦。

 これで三隻目だろうか。

 対潜装備のおかげで、迫って来る潜水艦を発見し、打ち倒すこと自体は出来ている。

 しかし、いつ来るか分からない潜水艦の存在は確実に五人の精神を擦り減らしていた。

 

おいおいおい、これ本当に倒せるのかよ

というか、赤黒いオーラが怖すぎる

潜水艦がやば過ぎる。発見出来ても撃破まで時間かかるし、疲労がやばい

急がないと夜が来ちまうぞ

同士討ちがやばい

 

 既に陽は傾き、夕日が海をオレンジ色に染めている。

 即席の艦隊で夜戦を行うということは、同士討ちの危険性が非常に高い。

 何せ、単純に見えないのだ。

 さらに、潜水艦は発見がより困難になる。

 状況は均衡しているかのように見えて、艦娘側は少しづつ追い詰められていた。

 

『夕立ちゃん、どうするクマ! このままじゃ、ジリ貧だクマ! 球磨は一旦退くことを進言するクマ! もう十分と言って良いほど情報は得られたクマ!』

 

『ぴょん!? これはチャンスぴょん! 今でさえギリギリなのに、敵戦力がこれ以上増えたら攻略出来なくなるぴょん! 夜に視界が悪くなるのは向こうも同じ、それにあのオーラがあるなら暗闇でも多少は見えるはずぴょん! 夜戦で何とか倒すべきぴょん!』

 

『情けない話だけど、那珂ちゃんはちょっと限界が近いかなー! 球磨ちゃんと同じく撤退を進言するよ!』

 

『電はまだ戦えるのです! 何人か撤退してでも、夜戦に縺れ込ませるべきだと思うのです!』

 

 各々が意見を夕立に伝える。

 ツ級の砲撃を避け、潜水艦の位置を必死に割り出しながらも考える。

 夕立は艦娘でありながら、提督でもある。

 意見が対立した以上、この場の決定は夕立に託された。

 

てったーい!

逃げても誰も文句言わねぇよ

というかそもそもこれ、撤退出来るのか?

あああああ、命が掛かっていると思うと見ているだけで、心臓がやばい

 

 夕立は考える。

 今の状況だけを見れば撤退するのが正解だろう。

 だが、本当に安全に撤退出来るのだろうか。

 撤退とはすなわち、敵に背中を見せる必要がある。

 今の疲労状態ではその隙に、誰かが避け損なう可能性が高いのではないか。

 

 先を見据えて、今戦うとしよう。

 確かに、これに加えて大量の取り巻きが居た場合、誰かの犠牲無くして倒すことは難しいものになるだろう。

 今は五人でようやく、ツ級一体を抑えられている状態だ。

 だが、もう夜が来る。

 纏った赤黒いオーラは、他よりも目立つだろう。

 それを標的にし、陣形を固めれば同士討ちは起きないかもしれない。

 

 しかし、夜になった瞬間に敵潜水艦の残りの勢力が現れたら。

 三隻までは確認した。

 撃破も出来ている。

 だが、残りがどれだけいるのか、何を考えて逐次投入をしているのかが分からない。

 もしかしたら、夜になるのを待っていて、逃がさないために敢えて少しづつ投入しているのかもしれない。

 

 撤退か、夜戦か。

 どちらを取っても、ハイリスク。

 そして、撤退はローリターン、夜戦ならワンチャン、ハイリターン。

 

 腹が決まった。

 夕立は声を張り上げた。

 

『我々はこのまま夜戦に突入するっぽい! 陣形を決して崩さず、今、ここで、敵を撃滅するっぽい! 那珂ちゃんは、ごめんだけどもう少しだけ頑張って欲しいっぽい! どうしても無理なら、誰かを付けて撤退させるから進言を!』

 

『那珂ちゃんはまだ、やっぱり大丈夫だよ! アイドルは弱音なんて吐かないんだから!』

 

『よく言ったクマ! 長くは持たないことを考慮して、短期決戦で行くクマ! 単縦陣を組むクマ!』

 

 旗艦は球磨。

 陣形、そして現場指揮は球磨の仕事だ。

 夕立は提督として、大局を考える。

 

『! そこっぽい!』

 

 そして、ソナーの反応に気が付いた夕立が爆雷を投射する。

 大きく水柱が立ち、深海棲艦の残骸が浮かび、そして沈んでいく。

 三隻目の潜水艦を撃破した。

 

おお、三隻目!

夜戦の時間だあああああああああああ

暗闇での戦闘、やばいって、何で撤退しないの

↑撤退出来るかも怪しいと判断したんだろう。周囲に潜水艦が潜んでいればどうせ夜戦でも撤退でもやばいことになる。なら、いないことに賭けて、ワンチャン撃破だろ

 

 潜水艦が倒されたことに動揺したのか、ツ級の砲撃に一瞬間が出来る。

 瞬間、球磨は叫んだ。

 

『全艦、砲撃クマああああああああああ』

 

 合図に合わせて、五人の砲撃音が鳴る。

 それらはツ級に寸分違わず命中した。

 煙が晴れたそこには、右手のグローブがボロボロになったツ級がいた。

 

『や、やったのです!』

 

 始めて与えられた傷らしい傷。

 しかし、その気の緩みが悲劇を生む。

 思わずと言った形で喜びの声を上げた電に向かってツ級の砲が向けられていた。

 

 そして、轟音。

 お返しと言わんばかりに、ツ級の砲撃は電へと直撃。

 電は悲鳴を上げることすら出来ず、飛ばされていく。

 

『拙いっぽい! 那珂ちゃん、すぐに電ちゃんの救出を! 卯月ちゃんは二人の護衛を!』

 

 一番近くにいた那珂へと電の救出を指示し、対潜装備で火力の劣る自身よりもと卯月を護衛に付ける。

 ツ級の攻撃からは、二人で逸らさなければならない。

 意図を察した球磨はすぐに加速。

 電達と対角線になるように、真逆の方向へと円を描くように進行した。

 砲撃を交え、ツ級の注意をなんとか引けている。

 

 夕立の元へ無線通信が入った。

 

『電ちゃんを救出したぴょん! 意識も無くて、航行も不可能だけれど、生きているぴょん! 夕立ちゃん、さっきはああ言ったけれど、戦闘はもう無理ぴょん! すぐに撤退するぴょん!』

『了解したっぽい! 卯月ちゃんはそのまま、那珂ちゃんと撤退して欲しいっぽい!』

 

 それだけ伝えて、無線を切った。

 遠目に卯月達が撤退していくのが、見える。

 夕立と球磨も撤退するべきだ。

 

 ツ級が逃がしてくれるならば。

 

 卯月達から少しでも離すことを意識して動いた結果、陸はツ級の後ろ。

 手負いとは言え軽傷のツ級と、ダメージさえ無いものの疲労が蓄積した二人。

 逃げられるはずが無かった。

 きっと卯月はそれを分かっていたはずだ。

 しかし、自分たちが残ったところでやれることは無いと撤退を選択したのだろう。

 電を背負った那珂一人だけ撤退させては、途中で襲われれば沈む他無い。

 

 そして、陽が落ちた。

 赤黒いオーラを纏ったツ級の輪郭が闇の中に浮かび上がる。

 

『二人きりになったっぽい』

『そうクマね』

 

『『でも』』

 

『夕立ちゃんなら球磨の砲撃を避けれるクマ?』

『球磨ちゃんなら夕立の砲撃も避けれるっぽい?』

 

 二人が過ごしてきた時間は、期間として見ればそう長くは無い。

 しかし、無人島でたった二人だけだったのだ。

 その間の時間はより濃密なものとなり、いつしか友達、親友と思うようになっていた。

 だから、夕立は、球磨は、暗闇の中であっても、相棒が自分の砲撃の方角が分かると確信していた。

 親友のことはよく分かっている。

 互いに、思い思いに撃ったところで、相棒に当たるはずが無い。

 

『『さあ、ステキなパーティーをしましょ(するクマ)!』』

 

 

 

 

 ツ級は元より、五隻相手に夜戦を挑まれれば勝てるとは思っていなかった。

 三隻しかいない潜水艦を逐次投入したのも、まだ続くと思わせ、夜戦を躊躇わせるためだった。

 陽のある内に、予想外にも粘ってきた艦娘達を一隻も落とせなければ、夜戦では勝ち目が無い。

 何人かを道づれにすることは出来ても、最後には自身が沈む未来が見えてしまった。

 だから、己に傷を付け、油断しているところで一隻落とすことが出来たのは幸運だった。

 

 そこから、三隻が撤退し、それを見逃したのは偏に四隻に仇討と言わんばかりに襲われれば沈む可能性があったから。

 三隻は見逃して良い。

 残り二隻ならば、こちらが負ける道理は無い。

 ……そのはずだった。

 

 暗闇から砲撃の音が響く。

 瞬間、左側面から衝撃。

 ダメージになる程のものでは無かったが、体勢が崩れた。

 そこに、襲い来る再びの砲撃音。

 今度は頭に命中。流石にダメージが大きい。

 

 おかしい。

 暗闇では同士討ちを恐れて、一か所に固まるはずだ。

 何故、全く別の方向から合図も無しに撃ち合って、互いに被弾しない。

 何故、己の身体ばかりに傷が増えていく。

 艦として、あり得ない動きをする二隻に戸惑い、砲撃があった方向へ砲を向けてもそこにはもう誰もいない。

 それどころか、予想だにしていない方向から再び砲撃を食らう。

 イライラする。

 四方八方へと数撃てば当たると言わんばかりの行動をしようとした瞬間、己の失敗を悟った。

 迫りくる、魚雷の軌跡。

 同時に撃つために、海上へ砲を固定した今、それを避けることは敵わない。

 

 そして、巨大な水柱が立った。

 薄れゆく意識の中でツ級は……

 

 






次で長かった近海海域攻略作戦も終わりっぽい!
そしたら、また日常の配信に戻っていくっぽい!


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近海海域攻略作戦 終

あまり章まとめとかしたこと無かったから難産だったっぽい……




 実のところを言えば、夕立と球磨に余裕は全くもって無かった。

 敵に潜水艦が残っていれば、二人では対処しきれない。

 二人分かれて砲撃を行うということは、咄嗟の時にフォローすることが出来ないとも言える。

 

 故に、短期決戦。

 相手に何かをさせる前に撃ち倒す。

 潜水艦が居るならば、それらに有利を取られる前に旗艦たるツ級だけでも落とす。

 その考えの元、連撃を行った。

 

 嫌な予感に従い、魚雷を投擲。

 ツ級はヒトガタだ。

 海面に接している面積は足のみと非常に小さく、魚雷を当てるのは至難の業だ。

 しかし、ツ級は捉えきれない夕立達に痺れを切らしたのか、巨大な腕を海面に下ろし砲を全方位へ向けて放とうとした。

 結果、海面への接地面積が増大し、殆どの魚雷が命中。

 ツ級への大打撃となったのである。

 

 

 煙が晴れた先には未だ赤黒いオーラを纏ったツ級が沈みかけていた。

 

『終わった……っぽい?』

 

 呟いた。

 まだ敵艦が居るかもしれないと警戒は解かない。

 

『やったクマ!?』

 

 やがてツ級は海の中へと沈んでいき、辺りに静寂が戻る。

 ソナーに反応は未だ無い。

 ここで油断してはいけないと、まずは泊地への帰路に付こうと話した。

 

 その際に、配信も終了しておいた。

 暗闇には対応していないのだ。

 途中からはよく分からないことになっていただろう。

 

 そして、ツ級の沈んでいった傍まで近づき完全な撃破を確認。

 帰ろうとした時だった。

 夕立の艤装の中から妖精さんが出てきた。

 

「ゆーだちてーとくは、もっとあれの居たところに近づくのです」

「資源のきらめきを感じるのだー」

 

 突如現れた妖精さんにグイグイと引っ張られ、といっても夕立の肩の上で引っ張るので、力は掛かっていないが、ツ級の沈んで行った位置の真上に立たされた。

 二人の妖精さんは云々唸ったかと思うと、ピカリとその全身を一瞬光らせ、またすぐに戻る。

 資源回収の時と同じような光り方だった。

 

「? 何があったっぽい?」

 

「こ、これは、艦の設計図なのです」

「とくていの艦確定のちけっとなのだ!」

「資源消費せずに、あたらしい艦娘をむかえられるのです!」

「のだ!」

 

「それはすごいっぽい。でも、なるべく早く安全な場所に移動したいっぽいけど、もう大丈夫っぽい?」

 

「大丈夫のだ!」

「です!」

 

 とのことで、夕立と球磨は〇〇島泊地へと帰投した。

 道中で深海棲艦は現れなかった。

 

 


 

 

 さて、それからの顛末になる。

 

 卯月達は卯ノ木提督の元へと帰投していた。

 多少距離は伸びるが、到着までに用意されていた高速修復材のおかげで電は無事に回復したらしい。

 トラウマなどが危惧され、カウンセリングを受けたがそれも問題無し。

 むしろ、油断によって撤退をしてしまったことを悔いているらしく、以前よりも積極的に出撃するようになった。

 今度は最後まで一緒に戦いたいのです。 と電より連絡が入っていた。

 

 例の深海棲艦は大本営より正式に軽巡ツ級と名付けられ、さらに赤黒いオーラは上位個体または、ボス個体になるのではないかと予想がされており、エリート個体と暫定された。

 ツ級から回収した設計図は、現在妖精さんにより艤装に仕立て上げられているが、資源を使わない代わりに少々時間がかかるらしい。

 艦種だけは、重巡洋艦と確定している。

 

 日本初の重巡洋艦の艦娘が現れるとあって、軍は賑わっている。

 

 また、今回の撃破を受けてツ級の居た周辺海域の調査が行われた。

 結果は、深海棲艦の数は僅かに減少しているように見えた。

 深海棲艦のやって来る方角も様々になっており、恐らく別の場所から深海棲艦がやって来るようになったのではないかという推論がされている。

 他にもスイラン島へ向かう道中には艦娘でないと通れないが、深海棲艦の出現が非常に少ないルートが存在したが、そのルートにおいて一種の空白地帯のように一週間ほど出現数がゼロとなっている。

 もうしばらく調査の上、問題が無ければ一般の船も艦娘の護衛の元、スイラン島へと行き来することが出来るようになるだろう。

 

 

 そして、今作戦の功労者たる夕立は、未だに書類の山に埋もれていた。

 

「うぅ、頭痛いっぽい……」

 

 あまりの新情報の多さに、報告書が大量に。

 そして、艦娘であることから、今回の敵の詳細や対潜装備についてもレポートを纏める必要があり、そもそも書類仕事なんてしたことが無いうえに、堅苦しい文章も多く難航していた。

 

 同泊地所属の球磨に手伝って貰おうにも、〇〇島泊地では既に通常運用に戻っており、二隻しかいないこの島で夕立が書類仕事に追われているということは、必然的に球磨は出撃に追われていることになる。

 何より、今回の作戦で大量の資材を消費してしまっていたため、一週間前は火の車であった。

 球磨の頑張りにより、なんとかなる程度には戻ってきているくらいには忙しい。

 

 そんなこんなで慌ただしい日々を送っている二人。

 しかし、二人にとっても朗報はいくつかある。

 第一に、日本初の重巡洋艦がスイラン島泊地所属となること。

 第二に、今作戦の成果と、戦える艦が二人しかいないという現状を顧みて、駆逐艦を一隻スイラン島泊地へ異動させてくれることになったこと。

 第三に、防衛の都合上共にというのは難しかったが、宿毛湾泊地、スイラン島泊地の両提督、艦娘全員に慰安旅行が進呈されることとなった。

 

 日程はズラしてその間の最低限の防衛は両泊地で交代で行う予定となっている。

 そして、宿毛湾泊地は昨日から二泊三日の温泉旅行へ。

 結果、夕立と球磨の忙しさはさらに倍プッシュとなった。

 おかしい。今作戦の褒賞としての慰安旅行のはずなのに、その代償と言わんばかりに仕事が増えている。

 

 

 まあだが、球磨と二人きりの旅行というのは、ちょっとした楽しみだ。

 行き場所は四国内なら、自由に決めて良いそうなので、球磨と話し合ってワイワイしていた。

 仕事が忙しすぎて、それくらいしか出来なかったとも言う。

 ちなみにツイッチーの更新も滞り、一日一回の『ぽい』のみしか稼働していない。

 

 

 この作戦によって深海棲艦が減ったのは事実だ。

 まだ、どの鎮守府、泊地も攻略に乗り出せるような状態では無いが、一つの目標が定まったとも言えるだろう。

 

 人類と深海棲艦の戦いはまだ、始まったばかりだった。




第一章、終了っぽい!

活動報告にて島の名前の募集と
簡易なあとがきを書いたっぽい!

あとがきはどうでも良いけど、島の名前については
良ければ意見を聞かせて欲しいっぽい!


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間章:ぽいクマの慰安旅行
ツ級決戦アーカイブ感想スレ


新章
の前に間章



<高知沖合決戦感想スレ>

 

1:名無しの提督

このスレは有名配信者『夕立』ちゃんの投稿した生配信

通称『高知沖合決戦』のアーカイブ感想スレです。

 

→夕立ちゃんのスレはこちら

→球磨ちゃんのスレはこちら

→深海棲艦考察スレはこちら

 

次スレは>>980お願いします。

 

 

5:名無しの提督

スレ立て乙

 

6:名無しの提督

あれはやばかった

あの数時間での情報量半端ない

 

10:名無しの提督

情報量もさることながら、戦闘が手に汗握りすぎて

何で当たらないのか分からない

 

11:名無しの提督

>>10 割と当たってはいるぞ

直撃してないだけで

 

15:名無しの提督

というか、あれに立ち向かっていくのって本当に胆力やばいわ

 

18:名無しの提督

見た目からしてやばい

動画越しなのに威圧感が伝わってくる

 

20:名無しの提督

しかも最近あれが二体いるとこも発見されただろ?

 

24:名無しの提督

>>20 どっちも赤くは無いけどな

そして、考察スレへ行け

 

25:名無しの提督

感想……艦娘の皆が可愛いです

 

27:名無しの提督

>>25 もっとなんかあるだろぉおう

あ、卯月ちゃんをください

 

31:名無しの提督

実際偏差値やばいのでは?

 

33:名無しの提督

といってもまだ判明している娘って少ないからなぁ

 

37:名無しの提督

とりあえず戦いはどうよ

潜水艦処理し続けた夕立ちゃんの集中力凄くない?

 

41:名無しの提督

>>37 それを言うなら球磨ちゃんだって

 

44:名無しの提督

ツ級の攻撃を掻い潜りながら、なるべく安全に囲める立ち位置を取る

これはぐう有能

 

46:名無しの提督

電ちゃんと卯月ちゃんも魚雷で牽制していたぞ

ツ級が大分動きづらそうだった

 

48:名無しの提督

あれ、誰か忘れているような()

 

52:名無しの提督

>>48 那珂チャンダヨー

 

55:名無しの提督

>>52 那珂ちゃん……誰?

 

58:名無しの提督

おまえら、那珂ちゃんが何をしたって言うんだよ!

 

61:名無しの提督

>>58 なんかこういじめたくなる

 

63:名無しの提督

ちなみに、▽×事務所で本当にアイドルの卵として活動中

HPでチラッと見れるぞ!

 

65:名無しの提督

艦娘でアイドルとか、アイドル以外のテレビに引っ張りだこになりそう

 

66:名無しの提督

そもそも、夕立ちゃんも那珂ちゃんも自由過ぎでは?

 

68:名無しの提督

>>66 軍の方針らしい

一般人の徴兵になってしまうため、本人の希望を可能な限り応えております。

ってある。

 

72:名無しの提督

ゆ、夕立ちゃんも機密関連の勉強はしたって言ってたし……

 

76:名無しの提督

勉強はした(守るとは言っていない)

 

77:名無しの提督

いいぞ、もっとやれ

情報がたくさんで潤う

 

80:名無しの提督

話脱線しまくりでわろた

考察板の連中まで湧き始めたぞ

 

82:名無しの提督

実際、あれは考察のし甲斐もあるからね

仕方ないね

 

84:名無しの提督

ツ級ってかなり人に近い形してるよな

 

85:名無しの提督

>>85 亡霊だしヒトガタでもおかしくない

でも、そう考えるとあいつらって戦争で……

 

86:名無しの提督

>>85 それ以上はいけない

 

89:名無しの提督

>>85 無限湧きだし違うと思われ

 

90:名無しの提督

今って駆逐艦と軽巡洋艦の深海棲艦しか確認されてないだろ?

そして、今回重巡洋艦が来るらしいじゃん

これは余裕では?

 

93:名無しの提督

ツ級エリートの能力は重巡洋艦並って考察板で言われてたぞ

 

97:名無しの提督

>>93 つまり、最強の駆逐艦が現れる可能性も

 

98:名無しの提督

駆逐艦(戦艦並の火力耐久力と駆逐艦の速さ)

 

102:名無しの提督

>>98 ぼくのかんがえたさいきょうのくちくかん

 

106:名無しの提督

そういえば、電ちゃんは大丈夫だったのか?

 

108:名無しの提督

>>106 夕立ちゃんが翌日に元気に深海棲艦倒してるって言ってたぞ

 

111:名無しの提督

電ちゃん元気過ぎぃ

トラウマになってもおかしくないのでは?

 

113:名無しの提督

艦娘皆覚悟ガンギマリ過ぎてこわい

 

114:名無しの提督

なんか艦娘になると国を護りたくなるらしい

じゃなきゃ、あんな戦闘出来ねぇ

 

116:名無しの提督

守護らねば……

 

117:名無しの提督

守護らねば……

 

118:名無しの提督

>>116,117 ケコーン

 

122:名無しの提督

何にせよ電ちゃんが無事で良かった

 

123:名無しの提督

あの画面越しでも威圧感やばい奴に死者ゼロは大戦果じゃん

 

126:名無しの提督

>>123 艦娘で死者って出てるの?

 

130:名無しの提督

>>126 まだ

でも、死亡する可能性はあるってのは明言されてる

 

132:名無しの提督

ただでさえ、抗議団体が既に出来てるからな

この戦いで死者ゼロは大きい

 

134:名無しの提督

まあ実際、年端もいかない少女たちを戦場に行かせることに抵抗あるのは分かる

 

136:名無しの提督

なお、抗議しているのはその子たちに何ら関係無い模様

 

139:名無しの提督

いちおう両親は許可出してるんだっけ

 

142:名無しの提督

そりゃ戦える人は艦娘しかいないしな

現代兵器が何も効かないんじゃどうしようもねぇ

 

145:名無しの提督

反対してるっていうのは聞かないよな

夕立ちゃんもすんなり出してくれたみたいだし

 

148:名無しの提督

>>145 あれ、そんなこと言ってたっけ

 

152:名無しの提督

>>148 ツイッチーで言ってたぞ

 

153:名無しの提督

【公式】駆逐艦夕立っぽい!

  @yuudachi_poi

 

よく心配されるので、言うっぽい。

親から理解は得ているし、強制に近いとは言えど、私も納得してここにいるっぽい!

私も納得してここにいるっぽい!

だから、心配するようなことは特に無いっぽい!

 

午後22:09 2020年ζ月§日

アクティビティを表示

2741いいねの数

▭    ↑↓    ♡    ↴

 

これな

 

157:名無しの提督

送り出す親はどんな気持ちで送り出しているんだろうか

 

158:名無しの提督

信じて送り出した娘が世界中で有名に……

 

160:名無しの提督

>>158 悪く無い

 

164:名無しの提督

まあ、娘が納得して行きたいって言ってるなら

気持ちは何であれ応援するのが親

例え危険でも誰でも出来ることでは無いのだから

 

166:名無しの提督

>>164 貴方はこんなところに居て良い人ではない……

地上にお帰り……

 

167:名無しの提督

こんなところ(スレ)

 

171:名無しの提督

感想って、何だっけな

 

175:名無しの提督

>>171 これが日常

 

176:名無しの提督

最後、暗闇で何も見えなかったけど口上が最高だった

 

178:名無しの提督

百合の波動を感じた……

 

179:名無しの提督

あれはてぇてぇが止まらない

 

181:名無しの提督

実際にあんな台詞言ってみたい

 

184:名無しの提督

しかし、実際あんなに真っ暗闇で連携取れるもんなのか?

 

185:名無しの提督

音量上げると、小さく無線で通話してるの聞こえるよ

 

187:名無しの提督

>>185 ま?

 

188:名無しの提督

ツ級は意思がありそうだったからか、かなり小声だけども

海上は遮蔽物が無いから、よく音が響きそう

 

191:名無しの提督

それでも、連携するのは難しそうだけどな

目印がツ級しか無いうえに、位置を示せるようなもの無いんだもの

 

194:名無しの提督

大まかな位置だけ伝えて、あとは味方を信じて

不謹慎だけど、映画とか見てる気分になる

 

196:名無しの提督

>>194 映画、分かりみが深い

 

199:名無しの提督

一種のエンターテイメントばりの動画だった……

 

201:名無しの提督

これが次世代のエンタメですか

 

205:名無しの提督

>>201 お楽しみはこれからだ!

 

209:名無しの提督

>>205 やめろ!

 

210:名無しの提督

どうせ皆笑顔になる

 

214:名無しの提督

>>210 あれ、これなら良いのでは?

 

215:名無しの提督

おい、スレチだが朗報だぞ!

夕立ちゃんの島に人員送れるようになったから募集するらしい!

URL:http://kajdkfaljweklfjgaogjn.ejawoif?/32131

 

218:名無しの提督

>>215 スレチだがでかしたぞ!

って、募集条件厳しすぎぃ!

 

222:名無しの提督

俺らに料理経験を求めるか

 

225:名無しの提督

はいはい、解散解散

このスレに料理出来るやつなんているはずが無い

 

229:名無しの提督

しかも危険が伴う可能性があります、か

 

231:名無しの提督

実際前線基地なうえに、より沖合に出る時の補給地として

運用する予定らしい

 

233:名無しの提督

>>231 夕立ちゃん情報お漏らし多くね?

もはや隠す気あるのか疑うレベル

 

237:名無しの提督

艦娘関連は機密事項が決まっていないせいでお漏らしし放題とか

提督すらも一般人から登用多いし、取り締まるくらいなら

ばら撒いた方が良いって感じなのかね

 

241:名無しの提督

>>233 ごくごく

 

245:名無しの提督

>>241 すごく、きもちわるいです

 

247:名無しの提督

何にせよ、この募集があったってことは夕立ちゃん達の食生活が改善されるんやなって……

重油と保存食くらいしか配信中の食風景に映りこまないんだもの

 

251:名無しの提督

前は魚焼いてたりしてたけど、最近しなくなったよな

 

252:名無しの提督

掃除とか、全部自分たちでしているっぽかったしな

戦ってくれてるんだから、せめて他の部分は楽して欲しい

 

254:名無しの提督

またマシュマロ(実物)を食べる姿が見られるようになるんやなって

 

255:名無しの提督

そういえば、結局マシュマロやってないな

 

257:名無しの提督

設置はされたけど、回収を全くしていない模様

 

259:名無しの提督

夕立ちゃんも球磨ちゃんも、SNS弱いから仕方ない……

 

260:名無しの提督

これは新しい艦娘にはSNS慣れも期待ですね

 

262:名無しの提督

というか、他の艦娘達にも配信をして欲しい

 

264:名無しの提督

>>262 分かるけど、普通は顔出しは嫌がる気がする

 

268:名無しの提督

卯月ちゃんも電ちゃんももう配信では見れないのかなぁ

 

269:名無しの提督

何れテレビに出る中ちゃんは俺たちの希望だった……?

 

272:名無しの提督

>>269 那珂ちゃんなんだよなぁ

すっごい中央にいそう

 

275:名無しの提督

歌って踊れる艦隊のアイドル! 那珂チャンダヨー

 

279:名無しの提督

>>275 なんか色々混ざってて草

 

280:名無しの提督

あ、でも補給地点として運用されるようになったら

固定カメラに映るのでは……?

 

284:名無しの提督

そういえば、そんなのもあったな

あれ今どうなってるんだ?

 

285:名無しの提督

あの配信は釣り人によって支配されたよ

釣り竿も徐々に増えて、何故か交代制になってる

 

287:名無しの提督

自動で針を外して、バケツに入れてくれる妖精さん印の釣り竿高性能過ぎる

 

290:名無しの提督

島との海路が開けたということは、その魚が俺たちの元へ来る可能性が微レ存

 

293:名無しの提督

失って気付く、魚の尊さ

というかお肉食べたい

 

294:名無しの提督

空路が駄目になって、お肉も超高級品になったからなぁ

肉……魚……食べてぇなぁ

 

298:名無しの提督

>>294 もう少しの辛抱だ

艦娘が増えれば、近海なら漁船を防衛して、魚の生産量を増やす試みがあるそうだ

 

302:名無しの提督

ここ半年で一気に質素になったもんな

 

304:名無しの提督

輸入が出来ないから経済も冷え切ってる

 

305:名無しの提督

諸外国も似たような状況らしいしなぁ

 

306:名無しの提督

せめてアジアとの空路さえ開ければ……

 

310:名無しの提督

艦娘、がんばえー

 

312:名無しの提督

>>310 応援だけに留まらず軍に志願すると良い

 

313:名無しの提督

倒産企業増えて、軍が雇うようになってきたもんな

 

314:名無しの提督

政策としては成功しているから

 

316:名無しの提督

なお仕事は艦娘のサポートで軍っぽいことは特に無い模様

 

318:名無しの提督

あれから一週間も経つと、流石に勢い落ちてきたな

というか、誰も感想の話していない件

 

320:名無しの提督

最初の勢いはやばかったけど、日常に戻ってきたとも言う

 

324:名無しの提督

ふぅ、このスレももう終わりが近いか……

 

326:名無しの提督

早く次の配信してくれねぇかなぁ

 

330:名無しの提督

ツイッチーの更新も謎の言語しか無いし、忙しいんだろ

 

334:名無しの提督

>>330 ぽいは一言に万物が宿っているのだ……

 

338:名無しの提督

うわ、信者が出たぞー

逃げろー

 

342:名無しの提督

おん?

今見たらツイッチーが更新されてる

 

346:名無しの提督

【公式】駆逐艦夕立っぽい!

  @yuudachi_poi

 

明日から球磨ちゃんと旅行っぽい!

二泊三日っぽい!

どこかで配信もする予定っぽい!

楽しみっぽい!!

 

午後22:09 2020年ζ月§日

アクティビティを表示

9741いいねの数

▭    ↑↓    ♡    ↴

 

349:名無しの提督

ほう

 

→夕立ちゃんの旅行を見守るスレ

 

353:名無しの提督

>>349 有能

 

355:名無しの提督

>>349 有能過ぎる

乗りこめーーー

 

359:名無しの提督

おおおお、乗りこめー!

 

360:名無しの提督

新鮮な配信だぁ! ヒャッハー!

 

364:名無しの提督

さて、移動するか

 

 

 

 しばらくは書き込みがあったものの、失った勢いは戻らない。

 決戦から一週間も経てば、人の興味はどこかへ移っていく。

 また、新しい日常が始まるのであった。

 




島の名前について、たくさんのコメントありがとうっぽい!
ちょっとまだ考え中だけど、考え終わったら変えさせてもらうっぽい!
ご協力、ありがとうございましぽい!

ちなみに作者はプリズマ☆イリヤ読み出したら投稿遅れたって言ってたっぽい……


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ぽいとクマの旅行Ⅰ

難産でした。
全然納得出来なくて進まない。
とりあえずギリギリ納得出来たので投稿。
また、変えるかもしれない。




 軽巡ツ級との戦いを終えてから二週間が過ぎた。

 初めは資材不足に悩まされ、報告書の山に悩まされ、忙殺されていたスイラン島泊地も、今や通常業務へ戻ろうとしていた。

 

「それじゃあ、楽しんでくると良いぴょん!」

「お土産は日持ちするものを選んだのです。帰ってきたら食べて欲しいのです」

 

 が、戻る前に一イベント。

 明日から二泊三日の慰安旅行である。

 そして、先に旅行に行ってきた宿毛湾泊地の面々からお土産と、スイラン島泊地周辺の哨戒任務の引継ぎをして、これから旅立ちとなる。

 今は昼過ぎの時間帯。

 宿毛湾泊地へたどり着く頃には夕方となり、そこで一晩過ごし、翌日より二泊三日の旅路となっている。

 

 最初は四国なら道後温泉かと思った2人だったが、有名どころよりも静かなところでゆっくりしたいと意見が一致した。

 言ってしまえば、顔出し配信をしてしまっているため、人が多いところでは落ち着けないと考えたのだ。

 ついでに、せっかくだから配信をしたいのだが、道後温泉も含め有名どころでは難しいというのもあった。

 今回の宿では事前に撮影の許可済みであった。

 

 

 そんなこんなでやって来たのはとある山の麓のホテルであった。

 少しでも長く遊ぼうと、夜のうちに宿毛湾泊地を出発したため、早朝に着いた。

 

 今回の旅路では、軍からドライバーが派遣されていた。

 夕立達に限らず、卯月達も動画に出てしまっており一躍有名人。

 余計な混乱を招かないためにも移動は車で行うのだった。

 移動制限も無くなるため、特に文句も無い。

 

 宿に荷物だけ置かせて貰って、散策へと出掛ける。

 とりあえず朝ごはんを食べようと、モーニングをやっていそうな珈琲屋へと入った。

 店内に漂うコーヒー独特の匂いは、なんだか香ばしくて好きだと夕立は思った。

 ドライバーは車の中で寝ている。眠そうだったし、置いてきた。

 付いて行きたいと言われても困るし、それは向こうも分かっていたのだろう。

 

 熱々の珈琲と、トーストとゆで卵。

 何ら変哲の無いモーニングセットであるが、食を楽しむ余裕の無かったスイラン泊地にいた夕立と球磨は久しぶりの普通の食事に感動した。

 

「ん~、やっぱり朝食はこんなのが良いっぽい!」

「焼き魚と重油と保存食しか無い生活には飽き飽きクマ!」

 

 実のところ、調味料はあったので焼き魚以外も作れるには作れる。

 しかし、二人の料理スキルの前では、あっても無くても大して変わらない。

 焼き魚の味付けが変わる程度だった。

 

「でも、安全に行き来可能なルートが確定出来たし、帰る頃には人が増えているっぽい? ギリギリ間に合うか、間に合わないかくらいっぽい」

「どのみち、これで全部二人でやらなきゃいけない生活からおさらばクマ! 球磨としては、哨戒任務が少なくなるのが嬉しいクマ!」

 

 通常、泊地のすぐ前方ならば哨戒しなくとも、見張りの人員が立てれれば問題が無かった。

 事実、宿毛湾泊地で哨戒任務と言えば、泊地、鎮守府間の海の哨戒により、人々を護るという意味が大きい。

 二人しかいないために、敵襲の警戒を常にする必要があった。

 流石に負担が大きすぎて、固定カメラを配信することによって、哨戒代わりに使用したりもしていたが。

 信憑性は段違いなので、出来れば専門に任せたい。

 さらに言えば、敵影を発見出来たとしても即座に知らせるという意味では全く使えなかった。

 

「そういえば、派遣される駆逐艦って決まったクマ? どこの鎮守府も余裕はそんなに無いと思うけれど、大丈夫クマ?」

「あーっと、んー、もう決まると思うっぽい。こっちもたぶん帰る頃には? 重巡洋艦の方ももう見つかっているっぽいけど、うちに来る前に性能とかいろいろ検査してるっぽい」

「もう見つかってたクマ? ちなみに誰だったクマ?」

「内緒っぽい! 来てからのお楽しみっぽい!」

 

 当然ながら、提督という立場も持つ夕立と、球磨の知っている情報は違う。

 泊地の運営も行うために、第一に夕立に事の経緯が伝わり、そこから艦娘へと伝達されていくのだ。

 といっても、その艦娘も現在は球磨一人だけ。

 夕立の悪戯の範疇で内緒にしておくには何の問題も無い。

 

「えぇ、気になるクマ~」

 

 と言いつつもそこまで気にしてない顔でコーヒーに口を付ける球磨。

 少しだけ飲んで、顔を顰めてカップを皿の上に戻した。

 クマなのに猫舌とはこれ如何に。

 

 

 ご機嫌な朝食も終わり、二人は予定していた山へとやって来た。

 大した山という訳でも無いが、ロープウェイで山頂まで行くことが出来て、それなりに景色も良いらしい。

 頂上には小さなお社と休憩所もあるらしく、観光がてらそこまで登って、景色を見ながらお昼ご飯を食べようという運びになっていた。

 

 コンビニでサンドイッチと飲み物、それと漫画で読んでやってみたかったことがあったので、冷凍の肉まんを購入して持って登る。

 

 

 艦娘は海の上を何時間も移動し戦闘をこなすことから分かるように、非常にタフだ。

 その力は艤装を装備していなくとも、それなりに発揮されている。

 本来は上級者コースに分類されるような山道を、景色や自然を楽しみながらゆっくり登ったとはいえ、山頂までたどり着いても大した疲労は無かった。

 途中、霧が出て来た時には一瞬焦ったもののすぐに晴れたため、それ以外にはトラブルらしきもののも無く、お昼前には着いてしまった。

 

「おぉ、思ってたよりも立派なお社っぽい!」

「しかも綺麗クマ!」

 

 山頂に着いた二人の目の前に現れたのは大きな鳥居と、その向こうには落ち葉も無く整備が行き届いた石畳が続いている。

 巨大なしめ縄の付いた社はどこか神々しさも感じた。

 

 とりあえずと、携帯で二人揃って写真を撮る。

 そのままSNSにアップしようとしたのだが、どうやら電波が届いていないようだった。

 まあいいか、と賽銭箱の前に立ち、ご縁を投げ入れた。

 

 夕立は、これからも誰も失うことなく、戦い勝てるようにと。

 球磨は、より良い出会いと、まだ見ぬ新たな仲間達の無事を願う。

 

 と、コツと足音がした。

 見ると、社の奥から誰かやって来たようだ。

 真っ赤な衣服を身に纏った女性は、その出で立ちや、紫色という不思議な髪色から艦娘のようなただの人では無いという印象を受ける。

 あるいは、社という俗世から離れた場所にいるからだろうか。

 

 

「おや、ここに人が来るとは珍しい。それに、キチンと信仰を持って願いを籠めるとは感心だね」

「あはは、どんな神様が祀られているかは知らないっぽいですけど……。こんなご時世だから神様も本当にいるかもしれないなって思うっぽい……です」

「ふむ、別に自然体で構わないよ」

 

 突然話しかけられたが、どうにも艦に引っ張られて語尾が付いてくる。

 敬語を咄嗟に使えないのは不便だ。

 

 女性は、八坂神奈子と名乗った。

 この神社に住んでいるらしい。

 

「ここに住んでるクマ?」

「そうだね、本来は他にも同居人がいるのだけれど、今は買い出しに出掛けているのさ。良かったらお茶でもしていくかい? 久しぶりの客人だから色々話を聞きたいな」

「んーどうするクマ?」

「じゃあ、休憩も兼ねてお邪魔させて貰うっぽい?」

 

 特にキッチリと予定を立てている訳でも無い二人。

 こういったことも旅行の醍醐味かもしれないと、了承した。

 相手が女性だったことと、自分たちにある程度力があることを自覚しているが故の大胆さである。

 

 昔懐かしといった様相の縁側から中に入り、お茶を受け取る。

 それからは、様々なことを話した。

 

 別に自分たちが艦娘であることを隠す必要は無いのだ。

 そもそもの話、露出が多すぎて外に出れば、すぐにバレるようなことになっている。

 そのため、動画のことから、忙しすぎる愚痴から様々なことを話してしまった。

 女性が聞き上手だったこともある。

 初対面とは思えないほどに話し込んでしまい、ついついお昼ご飯までご馳走になってしまった。

 

「お昼までご馳走になっちゃって、ありがとうっぽい! そういえば、聞くのが随分と後になっちゃったのだけど、ここってどんな神様を祀っているっぽい?」

「軍神と祟り神だね。ま、色々あって二人の神様を祀っているのさ」

「なるほど、それは球磨達にピッタリなところだったクマ」

「もう一回くらい祈っておくっぽい? 勝利と亡霊からの守護をお願いして」

「知らなかったとしても信じる心を持って祈っていれば、一度で通じるものさ。それに社というのは人に対して、祈る相手が分かりやすくするように作られているのさ。どこで祈っていたって、神様を思っていれば効果は同じさ」

 

 八坂神奈子の言葉には妙に説得力があった。

 それこそ、神様を見てきたかのような。

 

「それじゃあ、そろそろ行くっぽい! また何かあったら来るっぽい!」

「またクマ!」

「ああ、また機会があったら会おう」

 

 思ったよりも疲れなかったため、再び山道を降りる。

 綺麗な景色も見れたし、不思議な出会いもあった。

 なんとなくで来ただけであったが、きっと思い出に残るものになるだろう。

 

「あっ! コンビニで買った袋置いて来ちゃったっぽい!」

「クマ!? すぐ近くだし取りに戻るクマ!」

 

 しかし、再び戻った二人の前には先ほどまで居た立派な社では無く、小さな祠と呼んだ方が良いような壊れかけた社があるだけだった。

 先ほどまでの場所は何だったのか。

 不思議とは思うが、そこに恐怖は無かった。

 何せ、亡霊が現れ、それらに対抗するために自分たちも同様の力を借り受けて戦っているのだ。

 

 世界は知らなかっただけで、ファンタジーに溢れている。

 下山しながら話したのは、先ほどの八坂神奈子という女性のことと、あったら良いなと思えることについてだった。

 きっとそれらの内のいくつかは、遠くない内に解明されると思うと何だか魅力的だった。





コンビニ食は美味しく頂かれました。





後書き

たぶん、5,6回書き直した
これを入れるかも数日悩んだ
けど、書きたいものを優先しました
このクロスオーバーは触れる程度で多勢には影響しないと思います
でも、私の中の世界観としては入れたかったのです


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ぽいとクマの旅行Ⅱ

お待たせしたっぽい……



【温泉来たんだし】球磨ちゃんと卓球勝負!【定番どころをやるっぽい!】

 

 

わこつ

新鮮な配信だー!

浴衣姿prpr

 

 荷物を置いて温泉へ直行し、軽く汗を流して浴衣に着替えた。

 よく旅館とかホテルに置いてあるスタンダードなタイプの赤色の浴衣だ。

 そして、まだ早い時間ということもあって、遊戯室が貸し切り状態だったので、ラケットとピンポン球を借りてきて勝負と相成った。

 

『ふふふ、温泉入ってこういうことするって何だか久しぶりみたいでテンション上がるっぽい!』

 

『負けないクマ!』

 

あれ? 温泉の配信は?

温泉入るとこから配信して

前回の作戦見てると、平和で安心するなぁ

 

『温泉なんて配信する訳が無いっぽい。そもそも貸し切りでも何でも無いから他のお客さんもいるっぽい?』

 

いなかったらやってくれるんですか?

泊地戻ってからやろう

もう一度球磨ちゃんの入浴シーンを!

 

『あ、あれは忘れるクマ!』

 

 ふと、夕立は思い浮かんでしまった。

 悪い顔をして、球磨を揶揄うようにその提案をする。

 

『それじゃあ、せっかく勝負なんだし負けた方が入渠配信するっぽい?』

 

『く、くまあああああああ!? ぜ、絶対に負けられない戦いになってしまったクマ……』

 

『あ、あれ本気っぽい? 冗談のつもりだったのに本気でやらなきゃいけないっぽい!?』

 

Exactly

当然だよなぁ

ほら、視聴者の期待には応えないと

これは紛うことなき神回

 

『か、簡単クマ! 要するに卓球で勝てば良いんだクマ。勝てば、あの恥ずかしさを夕立ちゃんにも体験して貰えるクマ……』

 

 一度経験していることならば、恥ずかしさも半減。

 と、球磨は自分を誤魔化しているが顔は真っ赤であり、これから運動をというのにその額には既に汗が浮かんでいた。

 一方、特殊な生い立ちを持って生まれた夕立は、前世の経験から直接で無ければ見られてもそこまで反応を顕にする訳でも無く、まあ別になどと考えている。

 恥ずかしさで言えば、球磨と共に温泉に入る方がよっぽど恥ずかしい。まあ、それもほとんど慣れてしまっているが。

 

 結果として、早とちりで球磨が肯定してしまったことを皮切りに、本気でするつもりは無かった罰ゲームを背負うこととなってしまった。

 夕立はまあいいかと軽く考え、球磨には特大のダメージ。

 視聴者は何もせずとも、タイが釣れてホクホクという具合だった。

 

『大丈夫、負けなければ良いだけクマ……くま……』

 

お目目ぐるぐる球磨ちゃん

やる前から動揺で前見えてなさそう()

ほら、夕立ちゃんの柔肌のために頑張るんだよ!

私は球磨ちゃんもう一回でも一向に構わん! むしろそうして!

 

 視聴者も盛り上がり、一度見せているからか球磨を応援する声の方がやや優勢か。

 そして、球磨が第一投をコツンと打った。

 卓球をまともにしたことが無い二人。

 初心者らしくぽんぽんと放物線を描いて、ボールが夕立のコートへと移る。

 

 それを夕立もまた、ラケットを上向きにして球磨へと返す。

 コン。

 コン。

 コン。

 お互いミスをしないラリーが続く。

 

勝負なのにくっそ和やかで草

ミスしないのは凄いけど、終わらねぇ

ほら、スマッシュするんだよ!

海の上ではカッコいいのに、卓球はすっごい緩やか

 

『そ、そう言われても素人だから難しいクマ! 勝つなら、これが一番だクマ!』

 

 と、夕立の放ったボールが卓球台の角に当たる。

 そのまま勢いを増して地面へと急加速したボールは、球磨のラケットによって大きな放物線を描いて、夕立のフィールドへ。

 

『いやいや、さっきのはフリっぽい!? こんなの打つしかないっぽい!』

 

 ぽい! と力んで打ち付けたボールは見事に夕立のコートで跳ねてから明後日の方角へと飛んでいく。

 球磨のポイントが一点加算された。

 

おおお、球磨ちゃんの動きはっや

これは良いスマッシュ()

よくやるやつ

こーれは、素人ですね

 

『今の球磨達は艤装背負ってなくても多少身体能力が上がっちゃっているから、これはミスした方が負けクマ!』

 

『せっかく角に当たっても見てから動けちゃうっぽい? これはスマッシュが入ったとしても簡単に返されるっぽい……』

 

『つまり、この一点は大きいクマ! 夕立ちゃんの入渠で決定クマ!』

 

見てから打ち返すの余裕でした

これはそもそも勝負……付くのか?

勝負が付かなかったらどうなる?

↑そりゃ視聴者の入浴シーンでしょ

↑男の入浴シーンとか誰得……

何でや! 女の子が見てるかもしれんだろ! あ、私は男です

 

『ふふふ、それはフラグってやつっぽい!』

 

『球磨には尊厳がかかっているから、夕立ちゃんみたいな無謀なことはしないクマ! 画面映えを意識してスマッシュを打っちゃう夕立ちゃんには負けないクマ!』

 

 コン。

 コン。

 コン。

 

 たまにミラクルショットで角に当たるものの、それも取られてしまう。

 動体視力も優れているため、変な位置にボールが来ようと、打つ頃にはある程度打ちやすいように動けてしまう。

 勝負は千日手の様相となってしまった。

 

『うーん、終わらないっぽい……。そろそろラケットとか返さなきゃいけない時間になっちゃうっぽい……』

 

『その時は点数の多い方が勝ちクマ!』

 

 あれから、夕立が一度ミスをして球磨が二点。

 夕立のミスに有頂天になった球磨が力んでしまったせいでホームランを打って、夕立に一点。

 このまま終われば球磨の勝利だ。

 

 

いいぞ、球磨ちゃん!

そのままミスしないで繋ぐんだ!

お互い点数取ってないのに意外と良い勝負だ

声だけはアツイのに、終始和やかな音が響く……

 

『勝負を確実なものにするクマ! さあ、夕立ちゃん、打ってくると良いクマ!』

 

 球磨がわざと大きく放物線を描くように球を打った。

 絶好のスマッシュチャンス。

 しかし、打ってもほぼ確実に返される、リスクしか無い球。

 

『でも、このままじゃどうせ負けるっぽい! なら最後くらい決めてみせるっぽい!』

 

『夕立ちゃんならそう来ると思ってたクマ!』

 

『ぽい!』

 

 気合の入った掛け声と共にカッ! と子気味の良い音を立てボールが飛ぶ。

 それは球磨のフィールドへと吸い込まれるように叩きこまれ、球磨によって打ち返された。

 

『なんて、それを待っていたっぽい!』

 

『クマ!?』

 

 初心者がスマッシュを鋭い球で返せるはずが無い。

 再び放物線を描いたボールは、ネットを飛び越える瞬間、予測してコートの側面にまで移動し飛び上がった夕立の目の前にあった。

 

『全力で、行くっぽい!』

 

『ちょ、ちょっとそれは拙いクマ!?』

 

 かくして。

 素人がジャンプスマッシュなんてものを上手く決められるという奇跡は起こったが。

 艤装をしていないがために弱化しているとはいえ、艦娘の膂力にボールが耐えきれるはずも無く。

 球磨のフィールドに叩きつけられたボールはそのまま破裂。

 審議の結果、夕立の負けが決定した。

 

艦娘の力やべぇ

卓球でしてはいけない音が聞こえた……

破裂したのに、何故点になると思ったのか、これが分からない

そもそもルールが違う……

 

『で、でもちゃんとコートには入ったっぽい?』

 

『夕立ちゃん、諦めるクマ』

 

 良い顔をしてサムズアップする球磨。

 勝負に負けたことには悔しかったが、その笑顔を見てまあいいかと思えた。

 

『それじゃあ、泊地に戻ったらそのうち入渠しながらの配信するっぽい! まあいつやるかは言わないから、間違って配信中に誰かが入ってきちゃっても仕方がないっぽい?』

 

『ちょ、夕立ちゃんそれはズルいクマ! 絶対球磨が入った瞬間に配信開始するつもりクマ!』

 

『それはどうなるかお楽しみっぽい! それじゃあ、また明日も配信予定だから今日はこれくらいで終わるっぽい!』

 

負けてもタダでは終わらない夕立ちゃん

いつでも待ってる

球磨ちゃん以外も巻き込んでええんやで?

ああ、もう終わりか……

いかないで

 

『それじゃ、バイバイっぽい!』

『勝手に締めずにちゃんと時間を決めるくまああああああああああ』

 

 

 

 

 

 

 

この配信は終了しました。

 






他の小説書いたり、ゲームやったりでなかなか進まなかったっぽい……
まだまだ書く気はあるから、続けていくっぽい


島の名前はいろいろとありがとうっぽい!
独断と偏見で、『翠巒島』を採用させて頂くっぽい!
順次直していくけれど、このままだと読みにくいから、表記は『スイラン島』にさせて貰うっぽい!
改めて、アンケートに回答して頂いて本当にありがとうっぽい!


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ぽいとクマの旅行 終

読み返したら続きが読みたくなったので、投稿っぽい
久しぶりで書き方変わってるかもしれないっぽい……


 卓球終了後、部屋にて。

 

「そ、そのさっきの対決の罰ゲームだけど、夕立ちゃんが本気で嫌だったらやらなくても良い……と思うクマ。もし、頑張るなら、球磨も映っても良いから……頑張ろうクマ?」

 

「? 夕立は別に気にしてないっぽい? あ、心配してくれたっぽい? ぽいぽい?」

 

「ッッッガああああああ! 心配して損したクマ! もう知らないクマ!」

 

 ニヤニヤと笑う夕立と、勝負に勝ったのに顔を真っ赤にして拗ねる球磨が居たとかなんとか。

 

 

 

 

 

 部屋で深海棲艦を警戒することも無く、ぐっすりと眠った二人。

 二日目に目を覚ましたのは、朝の5時前。

 どうやら、環境が変わっても習慣は抜けないらしい。

 

 宿らしいちょっと豪華な朝食を食べて、移動して。

 球磨の行きたかったところ、夕立の行きたかったところを順に周り、明日には帰還ということも考えて、お土産もチョイス。

 楽しい時間はすぐに過ぎ去っていく。

 

 気が付けば日は傾き、予約していた民宿へと訪れる。

 山の幸をふんだんに使った、どこか懐かしい食事に舌鼓を打ち、近くにカラオケがあると聞いて、急遽歌配信をしたりした。

 

 

 

 

【カラオケより】二人で歌配信【歌は期待しないで……】

 

 

 

お歌期待

期待しないでって言うのは、どっちのことなのか……

旅行が楽しそうで何よりです

 

 音痴では無いけれど、上手いという訳でも無い、なんとも普通な歌が響く。

 

 球磨は苦手では無いけれど、得意という訳でも無く。

 夕立は普通の曲なら歌えるのに、高音域が出せることにハマってしまって、電波な曲を多めに入れては舌が回らなかったり、高すぎて歌えなかったりで撃沈している。

 

「あ、どうも。これサービスなんで良かったらどうぞ」

 

 と、偶然カラオケ店でアルバイトをしていた店員が視聴者で、ちょっとした飲み物を貰ったりもした。

 

視聴者店員君、羨ましすぎて草

サービス(店員君の自腹)

アルバイトみたいだから、仕方ないね

これがリアルスパチャ

 

 ちなみに店員君はお礼にと、配信後に二人と一緒に写真を一枚撮影した。

 この一枚は、店員君の宝物になると同時に、拗らせの原因になったらしい。

 

 

 

 

 さて、遊び倒した旅行も終わりを迎え、基地へと帰ることとなった。

 帰り道、宿毛湾泊地へと寄港する。

 

「卯ノ木提督、通話では既にお伝えしたっぽいけれど、今回の作戦の協力本当に感謝するっぽい! 一度面と向かって伝えたかったっぽい!」

 

 始め、旅行に行く前に伝えようとしたものの、卯ノ木提督は旅行から帰ってきて溜まっていた仕事をこなしている最中だった。

 故に邪魔しては悪いと、帰りに会うこととなった。

 数日の時間を置いたことで、少しは落ち着いたようだ。

 

「いちおう感謝は受け取っておくよ。まあ、ほとんど何も出来なかったけれど。今回の功績は夕立君の勇気が踏み出した一歩で得たものだ。礼を言うなら戦いに出てくれた卯月達に伝えてくれ」

「そっちももうたっくさん伝えたっぽい! 皆には逆に戦いに送り出してくれた卯ノ木提督にお礼をって言われたっぽい。だから、お礼じゃないけれど、お土産を渡しておくっぽい! あ、卯ノ木提督用に胃薬も入ってるっぽい

「ははは、もうすぐ切れそうだったから助かる……助かるよ。まあ、この心労も今後、多少は改善されそうだけどな」

「うーん、むしろ増える一方な気もするけれど、まあ触れないでおくっぽい」

「そうしてくれ。あまり考えないようにしたいんだ」

 

 それじゃあ、また何かあったらと、持ちつ持たれつの約束をして卯ノ木提督と別れた。

 球磨ちゃんは前回会えなかった宿毛湾泊地の残りの二人の艦娘に挨拶をしてくると言っていた。

 確か工廠の方にいると言っていたが。

 

 そちらへ向かって歩いて行けば、特徴的なあのクマ! という語尾が聞こえてきた。

 間違いは無いらしい。

 

「……で、夕立ちゃんはこう言ったんだクマ!」

「誰が何を言ったっぽい?」

「ひゃわ、夕立ちゃん!? 卯ノ木提督とはもう良いんだクマ?」

「恙無く終わったっぽい! そちらのお二人は?」

「紹介するクマ! 朝潮型の霞ちゃんと陽炎型の陽炎ちゃんだクマ!」

 

 言われてみれば、前世で見た姿を思い出すような?

 何十年も前のことのうえ、ゲーム上と現実では差異が大きくて、すぐには合致しなかった。

 まあ、ここは現実。そんなことはどうでも良い。

 

「私はスイラン島泊地の提督兼、艦娘の夕立っぽい! よろしくっぽい!」

「ふーん、実際に見るとあんなことをした人とは思えないわね。私は霞、よろしく」

「ちょっと霞! 初対面で失礼でしょ! あ、陽炎型駆逐艦の一番艦、陽炎よ! よろしくね」

「あんなこと? ぽい?」

「そりゃ、世界中で有名なうえに今回の功績でさらに注目されてるでしょう? 私にはそんなこと出来ないって思っただけよ。あの時も、私はただ無事に戻ってくるのを祈って待つことしか出来なかった……」

「それは違うクマ」

 

 霞の言葉を球磨が途中で遮った。

 でも、私も同じ気持ちだ。

 

「私たちの泊地と違って、宿毛湾泊地ではあの時、たくさんの人が働いていっぽい。だから、戦える人が残る必要があったっぽい」

「そんなに自分を卑下しないで大丈夫クマ! 球磨達のスイラン島泊地が誰もいなくておかしかっただけクマ!」

「ぽいぽい。卯ノ木提督も霞と陽炎がいたからこそ、3人も増援として送ってくれたっぽい。それは、2人になら泊地の防衛を任せられると思ったからだと思うっぽい! 少なくとも私ならそうでなきゃ、送れないっぽい!」

 

 あれだけ派手な戦いをしてしまったから、霞には共に戦うことが出来なかった後悔があるのかもしれない。

 でも、卯月達が泊地を気にせずに戦えたのは2人のおかげだろう。

 決して卑下するようなことでは無いはずだ。

 

「ほら霞、私の言った通りじゃない。私たちには私たちにしか出来ないことがあるって。泊地の防衛も立派な任務よ!」

「ふふっ、球磨と夕立ならまだしも、貴女が言ったら台無しじゃない。でもまあ、皆にそう言って貰えるなら気が楽だわ」

 

 霞は挑戦的な笑みを浮かべてそう言った。

 余計なお世話だったのかもしれない。

 後悔はしつつも、既に前に向かって走り出していたようだ。

 もし次があれば、彼女は確実に同じ舞台に立つことになるだろう。そう予期させる良い笑顔だった。

 

「大丈夫そうで、安心したクマ! それしても、2人とも羨ましいクマー」

「ああ、そう言えばちょっとだけ羨ましいっぽい」

 

「? 何のことよ」

 

 首を傾げる陽炎に私たちは口を揃えてこう言った。

 

「変な語尾が無いことっぽい(クマ)!」

「今でこそ慣れてしまったけれど、クマって何クマ! 球磨だからって安直過ぎる語尾が最初は気になって仕方がなかったんだクマ!」

「球磨ちゃんはまだ由来が分かるからマシっぽい! ぽいって何っぽい!? 意味分からないっぽい!」

「あ、それちょっと分かるわ。霞になってからというものの、語尾は無くても口調がちょっとキツいものになったのよね。別に怒ってる訳でも無いのに、勘違いされたり」

 

 女三人寄れば姦しいと言うように。

 唐突に始まった愚痴は、留まるところを知らなかった。

 

「あれ? もしかして、特に何も変わっていないのは私だけ?」

 

 若干の疎外感を感じる陽炎を他所に、会話は盛り上がっていった。

 そうしている内に日は傾き始め、夕立達はスイラン島へと帰る時間となっていた。

 

 数日しか離れていないはずなのに、あの人のいない島が何だか懐かしい。

 戻った時には人も増え始めて、少しは賑やかになっているのだろうか。

 艤装を装備し、ついでにと物資を載せた船の護衛をしながら島へ航行を始めた。

 

 ふと、後ろを振り向くと陽炎と霞、そして卯ノ木提督が見送りに出てきてくれていた。

 手を振り返して島へと帰る。

 今までは二人しかいない、見送りも出迎えもあまり出来なかった寂しい島だった。

 けれど、これからは人が増える。

 この光景を何度も見ることが、作り出すことが出来るだろう。

 今後への期待に胸を膨らませ、残り僅かとなった島への道を進むのだった。

 




次回から第二章っぽい!


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第二章:記者の意地と朧な満月
新たな仲間たち



<(_ _)>




 ほぼ安全が確約されたルートを通り島へと戻る。

 護衛してきた船には食料品などの他に、申請しておいた嗜好品なんかも積まれていた。

 続きが気になっていた漫画だったり、お菓子だったり、皆で遊べるゲーム機だったり。

 

 数時間の道のりを駆け、島が見えてくると堤防に人影があることに気が付いた。

 

「おーい、こっちだぴょん!」

 

 ぴょんぴょんと飛び跳ね、手を大きく振る卯月と、その近くに立つ那珂ちゃんと電。

 宿毛湾泊地の面々だった。

 私たちの旅行中は前回、救援に駆け付けてくれた三人が、スイラン島を護ってくれていたのだ。

 手を振り返しながら、近寄ると那珂ちゃんと電も話しかけてきた。

 

「この三日間、島は特に問題無かったのです」

「深海棲艦もここを泊地として警戒してるのかなぁ。近海ではほとんど見かけなかったよ」

「まあ、うーちゃん達で守ってたんだからこれくらいは朝飯前だぴょん!」

 

 今まではほど近い場所でもそれなりの頻度で深海棲艦を見かけていたのだが、それも少なくなったらしい。

 確かに卯月達が旅行に出掛けている間にもすぐ近くでの深海棲艦の目撃は減少の一途を辿っていた。

 元々イ級やロ級のはぐれなんかが迷い混んできているみたいなものが多かったため、那珂ちゃんの言う通り、ここらが泊地として深海棲艦に知れ渡ったのかもしれない。

 

「私たちの代わりに警護してくれてありがとうっぽい!」

「戦いは少なくて困ることは無いクマ」

 

 私たちが居なかった三日間のことや、旅行のことなんかを話しながら執務室へと向かって歩く。

 数日前まではシーンとしていたこの泊地にも、今は人が忙しなく動いており、何だかイキイキとしている。

 タイミングとしては卯月達がこの島に代わりに防衛として来る時に募集していた人員が島に来ていた。

 料理人や、掃除係、整備士や憲兵などで計10人ほどこの島にやって来ている。

 私たちと一緒に食材や機材が運ばれてきたため、その荷下ろしなどで一時的に忙しくなっているようだ。

 ついでに言えば新しく配属となる重巡洋艦の艦娘ももう着いているはずだが、荷下ろしに駆り出されているのだろうか。

 堤防にはいないようだった。

 

 その辺りの搬入が終わればそれらの最終チェックもしなければならないのだが、とりあえずは良いか。

 そう思い、話しながら執務室の方へと移動する。

 聞いてみれば、正式な着任がまだのため、重巡洋艦の艦娘は執務室の前でひとまず待機しているらしい。

 そうこうしているうちに執務室までやって来ると、そこには一人の艦娘がいた。

 

「あれ、もしかして新しい重巡洋艦の艦娘クマ?」

「ああ、そうっぽい。私たちが来るのを待っていてくれたっぽい? 廊下というのも何だし、中で紹介するっぽい!」

「いえいえ、全然待ってませんから! 是非よろしくお願いしますね」

 

 薄い紫色に染まった髪を後頭部でバンドで纏めてポニーテールにした女性。

 未だに写真でしか見たことが無かったが、彼女こそが日本初の重巡洋艦の艦娘であった。

 

「本日一八○○、夕立提督の帰港を持ちまして、スイラン島泊地に着任致します、重巡洋艦の青葉です! 以前は記者をやってまして、こちらでも色々と記事を発行させて頂けたらと思います! 何しろ、ここならネタには事欠かなさそうですからねぇ。あ、卯月ちゃん達には先にご挨拶をしておりますが、改めてよろしくお願い致します!」

「よろしくっぽい! 記事のことは聞いてるっぽいけど、嫌がる娘には辞めて欲しいっぽい。まあ、夕立は問題無いし、皆も配信に忌避感が無かったから今のところは問題無いと思うっぽい」

「ええ、ええ。そこはキチンと弁えますとも! 青葉の青葉だけの記事を全世界に公表……腕が鳴ります!」

 

 とまあ、結構なテンションの彼女。

 ここにいる面々は元よりテンション高めな艦娘が多い故にすぐに打ち解けていく。

 

「青葉さんは、やりたいことで記事を書きたいクマ?」

「青葉でいいですよ。そうですねぇ、誰にも邪魔されず私だけの記事を作りたいと相談したら、ネットにページを創ってくださいまして、そちらに様々な出来事や情報を更新していくつもりです!」

 

 と、手にしたスマホからページを見せてくれた。

 無骨なページには今は記事が一つも無く、題名に『青葉通信』とだけ書かれていた。

 説明文だけが記載されており、スイラン島泊地の様子や、艦娘、深海棲艦への知見を記事にしていく予定とある。

 

「もう公式ツイッチーも用意して頂いておりまして、まあまだ活動を開始していないんですけれど。栄えある第一の記事として皆さんのことを書きたくってですね、後で是非取材をさせてください!」

「球磨は構わないクマー」

「ぴょん、楽しそうぴょん!」

「そうだねー。那珂ちゃんと電ちゃんは明日には宿毛湾泊地に戻っちゃうけれど、それまでは存分に那珂ちゃんの魅力を感じてね!」

「あれ、卯月ちゃんはどうするクマ?」

「はわわ、夕立さん、言って無いのですか?」

「あーもうちょっと引っ張ろうと思ったけどバレちゃったっぽい? せっかくだから、自己紹介改めてよろしくっぽい!」

 

 サプライズも兼ねて球磨ちゃんには内緒にしていたこと。

 もう少し先でバラそうかと思っていたけれど、まあちょうど良いかもしれない。

 ちなみに、ここにいる面子で知らないのは球磨ちゃんだけ。

 

「それじゃあ改めて、睦月型駆逐艦の卯月だぴょん! 本日より宿毛湾泊地からスイラン島泊地へと異動になったぴょん! これからよろしくぴょん!」

「クマ!? でもお兄さんと同じ泊地じゃなくて良いクマ?」

「兄貴から頼まれちゃったんだぴょん! 夕立ちゃん達だけだと心配だから行って欲しいって。そんなに離れてないから、どうしてもって時は会える距離だから来ちゃったぴょん!」

「本当は自分が指揮をするとどうしようもなく心臓に悪いことが分かったから、預かって欲しいって頼まれたっぽい」

 

 こそりと球磨ちゃんに告げたら、神妙に頷かれてしまった。

 どうやら、ひどく納得がいったらしい。

 

「という訳で、明日からスイラン島泊地は夕立、球磨、青葉、卯月の4人体制になるっぽい! もう一人くらいは増やしたいと思うけれど、今までよりはかなり楽になるはずっぽい!」

「電と那珂ちゃんは、明日で宿毛湾泊地に戻ってしまうのですが、前回のように規模の大きな作戦の時は協力に駆けつけるのです」

「その時は持ちつ持たれつでよろしくっぽい! と、いう訳で青葉さんと卯月ちゃんの歓迎会と、電ちゃんと那珂ちゃんのお別れ会を兼ねてパーティーをするっぽい!」

「パーティークマ!? 最後に特大のイベントがやってきたクマ!」

 

 この島に新しく来た人達とも交友を深めるべく、事前に料理人と打ち合わせをしていたのだが、これも球磨ちゃんには内緒にしていた。

 驚く顔を二度も見れたので、大満足だ。

 

 そうして食堂へ出向けば、ズラリと料理が並び始めていた。

 先ほどやって来た船に積み込まれていた物資で豪華なパーティーが開かれる。

 いちおう夕立は提督としてこの泊地で一番偉い立場にいる。

 けれど、歳だけで見れば最年少に近いというのもまた事実だった。

 

 故に、皆を纏める立場というのに少しだけ不安も感じていたが、パーティーを通じて彼彼女らの人となりを知って、なんとかなりそうだと感じた。

 彼らも夕立や他の艦娘の人となりを知り、明日からも頑張ろうと決意をする。

 互いに距離を縮めることの出来た一日となった。

 

 

 

【公式】駆逐艦夕立っぽい!

  @yuudachi_poi

 

皆でパーティーしたっぽい!

新しい仲間と皆で写真も撮ったっぽい!

 

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午後23:37 2020年Б月ξ日

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今話、最後結構投げっぱなし……
第二章は構想は終わってるのに、書けてないっぽい……
理想は書き溜めて、一気に放出したいっぽい……


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