ルーンファクトリー4×ウルトラマンタイガ ルーンの奇跡 (ヴォーテクス)
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覚醒!光の勇者

ルーンファクトリー4を遊んでいてふと思いつきました。
宜しくお願いします。


  ルーンプラーナからセルザウィードを連れ戻してから数週間が経った。レストは相変わらずセルフィアの仮の王子としてイライザという依頼箱にある依頼を解決する日々を過ごしている。

 今日の依頼はマーヤ山道で悪さをするモンスターの退治をしに来た。今回の敵はクイーンビーという大きな黄色の蜂型モンスターで馴染みの店の客に悪さをしているから退治を依頼されたのだ。

 レストは自前で作った特製の(ゲイボルグ)でクイーンビーを容易に退治、はじまりの森に送還した。この世界に住むモンスターははじまりの森からゲートを介してやって来ており武器や農具でモンスターを倒すと死ぬ事なくはじまりの森に送られる。これはタミタヤの魔法という特殊な作用が働いているからだ。

 

「これで終わりっと」

 

 彼は呟いて街に戻ろうとしたその時、空から隕石と思わしき謎の物体が飛来している事に気付いた。その物体はマーヤ山道の麓に落ちて地面を大きく揺さぶる。

 レストは物体が落ちた場所の近くに駆け付けて様子を伺う。物体は不気味な点滅をしており周囲の岩石を取り込んでいるように見える。彼はこの様子を見て不気味だと感じた。

 城に戻って報告しようと後にした時、何かの気配を察知して振り向く。岩石を取り込んでいた謎の物体は足が三本の蜘蛛のような姿に変化した。

 飛来した隕石の正体は宇宙球体スフィアで周囲の岩石と融合して蜘蛛の様な姿をした四脚のスフィア合成獣【ダランビア】になったのだ。黄色の眼光を光らせたダランビアは目に映るモンスターを岩石で構成された巨大な前足で踏み潰して蹂躙。逃げ惑うヘラクレスやクイーンビーを後ろ足で薙ぎ払い、口から稲妻状の破壊光線を放って周囲の山やモンスターを破壊して突き進む。

 それだけでなく攻撃を受けて倒されたモンスター達の死体が残されておりはじまりの森に返されていない。幾らモンスターが人間に悪さをするとしてもこの世界に生きている存在だ。外部から来た未知の存在が好き勝手にする事を見過ごせない強い正義感を持つレストは巨大なモンスターに立ち向かう。

 何よりもこのまま侵行が続けば何れセルフィアの街に到達してしまう危険がある。

 

「させない!」

 

 星降る杖を装備した彼はエネルギーを貯めて巨大生物の足に向けて星形の魔法弾を放った。しかし手応えが殆ど無いもののそれでもレストは諦めずに杖を振り続けたが無意味だった。

 

「これならどうだ……!!」

 

 彼は(ストームワンド)に持ち変えて魔力をチャージ、大きな竜巻を発生させるとそれはダランビアの足元を飲み込みその一部が僅かに欠けた。ほんの小さな欠損だったがダランビアの注意はレストに向ける事に成功する。

 

「はあっ!」

 

 レストは更に杖を振ると風の刃を発射してダランビアの足を構成する岩の一部に傷を入れた。しかし効果は殆ど無いが陽動としては充分だった。鬱陶しく思ったのかダランビアは口から破壊光線を彼に向けて放つ。

 

「うわぁぁぁっーー!?」

 

 破壊光線が地面に着弾して爆発。熱波と強烈な衝撃でレストは倒れて瀕死の重傷を負う。頭から血を流しており腕や足に岩の破片が当たった形跡がある。ダランビアは彼を踏み潰そうと一歩一歩、確実に近づいていく。

 

(もう駄目だ……)

 

 レストが諦めかけた時、空の彼方からこちらに向かって赤い光が落下。その光は彼を包み込むと同時にダランビアを吹き飛ばして岩石の身体をバラバラに粉砕した。

 

「何だこれは……」

 

 白い空間に包まれたレストは困惑する。彼はダランビアの攻撃で瀕死状態となり踏み潰されたと思っていたからだ。戸惑いを見せる彼の前に赤い光の粒子が集まると人型になりその姿がハッキリと目に入った。それは銀と赤の身体をしており青いプロテクターを纏った頭に二本の銀色に輝く角を生やしている人だった。

 

「君は一体……?」

『俺は光の勇者、ウルトラマンタイガ。お前の勇敢な行動に感銘を受けた!お前の命を救って怪獣を倒すから力を貸してくれ……!!』

「……分かった!」

 

 タイガは急いで名乗るとレストの力を貸して欲しいと頼む。それを聞いたレストは快諾する。

 

「それでどうすれば……?」

 

 彼はタイガに問い掛けるとタイガは赤い光の粒子となりレストの右手の甲に纏わり付くと黒い手甲型のアイテム【タイガスパーク】に変化。更に左腰にタイガの顔を模した銀色のキーホルダー型のアイテム【ウルトラタイガアクセサリー】とそれを引っかけるホルダーが装着された。

 

『そのレバーを引っ張るんだ!』

「こう……かな?」

《カモン!》

 

 レストはタイガスパークのレバーを引いて起動。タイガは次にレストへキーホルダーを左手に掴むように指示を出し、自分の名前を叫ぶように発した。

 

「光の勇者、タイガ!」

 

 タイガスパークを装着した右手で掴むと光のエネルギーが充填された。

 

『叫べレスト! バディー……ゴォォッーー!!』

「バディー……ゴォッーー!!」

《ウルトラマンタイガ!》

 

 レストの身体がタイガスパークの球体から放たれる赤い光に包まれるとウルトラマンタイガに変化して巨大化した。

 

『シュアッ!!』

 

 右手を上げて大きくなったウルトラマンタイガは再構成されているダランビアに手先から光弾のタイガスラッシュを発射、一撃で粉砕した。

 

「あっさり倒せたね」

『油断するなレスト。まだ終わっていないぞ!』

 

 レストは安堵するがタイガが忠告するとその予感は的中。粉砕されたダランビアの肉体が再構成されると今度は二足歩行型の怪獣【ネオダランビア】に変化した。

 

「グギャァァッーー!!」

 

 ネオダランビアは吼えてタイガを威嚇と同時に角から稲妻状の破壊光線を発射。タイガは迫る光線を大地を蹴り跳躍して回避。そこから右足にエネルギーを集中させた蹴り技のタイガキックを落下の勢いにのせて繰り出す。

 

「ガギァァッーー!?」

 

 タイガキックが頭に直撃したネオダランビアは堪らず後ろに仰け反る。タイガは追撃と言わんばかりに懐に飛び込んでタイガブローを連続で撃ち込み、タイガチョップを頭にぶつけた。

 ネオダランビアはそれに負けじと頭部に生えた角を振り回して反撃。タイガとの距離を開けると同時に右腕を触手の様に伸ばし、タイガの腹部に巻き付けて高圧電流を流し込んだ。

 

『うわぁぁぁぁっーー!?』

 

 高圧電流の痛みに苦しむタイガを見たネオダランビアはタイガを引っ張って近づけて角の頭突きを叩き込んで破壊光線を浴びせた。無論、タイガを縛ったままで未だに高圧電流を流しているから更に苦痛は増している。

 

『いつまでも調子に乗るなよ!』

 

 左手で触手を掴んで右手に光のエネルギーを形成、それを丸鋸の形にした光の鋸(タイガ光輪)で触手を切断。そこから飛び掛かって光輪をネオダランビアの腹部に押し当てて怯ませた。

 

『ハァッ!』

 

 タイガは光輪を消すとネオダランビアの頭を両手で掴んで担ぎ上げて一気に叩き落とす投げ技のタイガスウィングを喰らわせる。更にネオダランビアの後方に跳躍して尻尾を掴んで振り回して遠くまで投げ飛ばした。

 相手が態勢を立て直す前に勝負を決めようとしたタイガは右腕を天高く掲げて両手を頭上で合わせて腰にぐっと引き寄せる。すると全身に光が集まり虹色に輝く。

 

『ストリウム……ブラスタァァッーー!!』

 

 右の拳を下から左手の平に当ててT字を作ると、右腕に装着されているタイガスパークから光線(ストリウムブラスター)が発射された。光線は態勢を立て直しつつあるネオダランビアに命中するも咄嗟に展開した亜空間バリアに阻まれたがバリアを壊してある程度のダメージを与えた。

 

「防がれた!?」

 

 動揺するレストだがタイガは動揺する事なく冷静な態度でレストに指示を出す。

 

『レスト、ウルトラマンレットを使え! それを使えばあいつを倒せる!』

「分かった!」

《カモン!》

 

 レストはタイガスパークのレバーを引くと左腕から赤と銀に彩られたブレスレット【ウルトラマンレット】が出現。タイガスパークでリードする。

 

《ウルトラマンレット、コネクトオン!》

 

 初代ウルトラマンの幻影がタイガに重なりエネルギーをチャージして右腕からストリウムブラスターよりも破壊力が増した高密度の光線が放たれた。

 

『スペシウム……ブラスタァッーー!!』

 

 光線は直撃、バリアが破壊されて耐えきれなかったネオダランビアは地面に仰向けで倒れて爆散した。ネオダランビアを倒したタイガはスフィアが残っていないことを確認して空へ飛び去った。この戦いは始まりに過ぎないと彼等は思っていなかった。




次回はタイガがこの星に来た理由を語ります。


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悪魔の欠片(その1)

今回はタイガが地球に着いた理由を語ります。


  ネオダランビアを倒したレストは夕焼けに染まるセルフィアの街に帰還。依頼箱のイライザに報告して自室に戻った彼は自室のベッドに座り込んだ。それから考え事を始めようとした時、見えない誰かに声を掛けられた。

 

『どうした……何か悩みでもあるのか?』

 

「タイガがどうしてここに来たのか気になって……うわぁっ!?」

 

 レストは悩みを口にすると目の前に自分と同じ大きさのタイガが半透明の姿が現れて驚く。

 

『そう驚く事は無いさ。お前は俺で俺はお前だからな!』

「はぁ……」

 

 タイガの言葉にレストは溜め息を吐いて悩みをポツポツと語り始める。

 

「これからどうすれば良いのか……。君に命を救って貰って有り難いけどこの街に危険が及ばないか心配になってね」

『そうか……。でも大丈夫、そいつらがここに襲ってきたら俺が倒せば済む話だ。今から俺がどうしてここに来たのか説明しないとな!』

 

 タイガはそう言ってこの星に来訪した理由を説明し始めた。彼は自分とタイタス、フーマの三人で結成したチーム【トライスクワッド】で活動している。その中で悪魔の欠片(デビルスプリンター)が各地に拡散している事を知り事態の対処に当たっていた。

 そこで悪魔の欠片を悪用する宇宙人を追って激しい戦い行った末に相討ちとなり宇宙をさ迷った末にここに到着。そして瀕死のレストを見つけて一体化したという事だ。戦っていた宇宙人と相討ちになった際、彼等とはぐれてしまった。

 

「そんな……それで君の仲間達はどうなったの?」

『あいつらの行方は分からないけど生きている筈だ!ウルトラマンはそう簡単には死なないからな!』

 

 タイガはレストの心配する言葉にハッキリと宣言する。彼等は生まれた星は違っていても固くて強い絆で結ばれた仲間である。タイガはM78星雲、タイタスはU40、フーマはO-50出身と其々異なる星で生まれたウルトラマンだ。

 

「そうだと思いたいね。所で悪魔の欠片についてだけど悪用しようとしている存在は一体誰なんだろう?」

 

『そいつの正体はメフィラス星人っていう侵略宇宙人でかつて俺の父さんとメビウスが戦った事がある手強い宇宙人だ。因みにメビウスは俺の兄弟子だ!』

 

 レストの質問にタイガは答えると補足として兄弟子に当たるメビウスの事について簡単に触れた。

 

「そっか。簡単には倒せない敵みたいだね……」

 

 彼はタイガの話を聞いて拳を強く握り締めて呟く。レストもこれまでモンスターと戦ったりゼークス帝国の兵士と剣を交えてきたが未知の宇宙人では勝手が違うと肌で感じ取っていた。

 

『そう力む事は無いぜ。悩みがあったら何時でも俺に頼ってくれよ、俺はお前でお前は俺だからな!もし俺に話せないならお前の仲間達に相談するのもありだ!』

 

 タイガは未だに悩んでいるレストを見てそう告げて姿を消した。彼の言葉を聞いたレストは暫く考えた後に眠りに着く。

 そして翌朝、日課の畑仕事を終えた彼は当てもなく街をさ迷う。

 

(この街にもしも怪獣が来たら僕が戦わないと……)

 

 彼は考え事をしながら街の中を歩くと金髪のポニーテールと銀の鎧を装備した女性のフォルテに会う。

 

「レストさん、どうかされましたか?」

「フォルテさん!? おはようございます」

 

 考え事をしていたレストはフォルテの声に驚くが挨拶を交わした。

 

「おはようございます。レストさん、昨日マーヤ山道で巨大なモンスターと巨人が出たと噂が出ていますが何か心当たりがありますか?」

「えっと……実は昨日、依頼でマーヤ山道へ行った時に巨大モンスターに遭遇しました。それから後にやってきた銀色の巨人が倒した所を目撃しました」

 

 事実と虚構を混ぜて説明するレストをフォルテは若干怪しむが彼の言葉に大きな嘘は無いと考える。セルフィア城を警備している彼女は城の外へ出ることは殆ど無く、旅人の噂等の情報を元にしている。

 

「そうでしたか。それで銀色の巨人の行方は分かりますか?」

「すみません。銀色の巨人はモンスターを倒した後に飛び去ってしまったので行方は分からないです」

 

 フォルテは銀色の巨人(タイガ)の行方を問うが答えは出なかった。レストの言うことは間違っていないが実際の所、タイガはレストの命を救うために一体化している。しかし彼女はそれを知る術は無い。

 

「分かりました。レストさん、ダンジョンに行く際は巨大モンスターに気をつけて下さい」

 

 フォルテはそう言い残して街の警備を再開。レストは街の住人に挨拶を交わす過程である人物から特定の地域に生息するモンスターの討伐依頼を受ける事になった。

 その依頼主はセルフィアの真の王子であるアーサーだ。本名はアーサー=D=ロレンスでノーラッド王国第13王子だがレストに王子の権利の大部分を委任、現在は貿易商をしている。金髪とメガネを掛けており服装は王族らしい気品溢れる姿だがその風貌故か占い師に間違えられる事があるらしい。

 依頼の内容は最近、モンスターが謎の凶暴化現象が発生しており特にモフモフが顕著で取引先が多大な被害に合っている。王子の仕事としてレストはこの依頼を解決すべくセルセレッソ丘陵へ赴く。

 

『レスト、気を付けろ。悪魔の欠片の影響を受けたモンスターは何時もより強くなっている。注意してくれ!』

「分かった」

 

 タイガの忠告を受けたレストは気を引き締めてセルセレッソの花弁が舞う大地を歩くと討伐対象のモフモフを発見した。モフモフはモコモコと似た姿をしているがモフモフの方が獰猛だが様子がおかしい。彼等の目が真っ赤に染まっており紫色のオーラを放出している様に見えた。

 

「何だ……モフモフから感じるこの威圧感……」

 

 此方に気付いたモフモフはいきなりレストに飛び掛かって来た。飛び掛かり攻撃を回避したレストは装備している槍で一突きするが手応えが無い。モフモフは痛みが感じていないのか彼に頭突きを叩き込む。

 

「うわっ!?」

 

 頭突きを腹に喰らったレストは怯むが負けじと槍で薙ぎ払う必殺技(ルーンアビリティ)のストラグルリーパーで反撃。それがモフモフの側頭部に直撃、はじまりの森に送還された。本来なら最初の一撃でモフモフを倒せた筈だが何故か手応えが無く、反撃を受けた。

 それからモフモフを見つけて槍で突いて討伐していくも前述と同じような事が起き続ける。指定数に達したが明らかに何がおかしいと確信したレストはある所に向かう。

 

「ここに何かがあるかもしれない……」

 

 彼がいる所はイドラの洞窟の入口だ。嘗てこの洞窟はゼークス帝国の研究所がありプロテクローンが造られた場所なのだ。プロテクローンとは再生と大地を司る神竜、プロテグリードの模造品だ。オリジナルより劣化しているがそれでも侮れない力を秘めており彼も苦戦した強敵だ。

 イドラの研究施設は放棄されたままなので誰かが悪用していると考えたレストは洞窟の奥へ進む。その先に待つのは一体何なのか……彼はこの時、想像絶する事実を知ることになる。




次回はあの怪獣と戦います。


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悪魔の欠片(その2)

  レストがイドラの洞窟に潜入した頃、黒い身体と青い目が特徴的な【メフィラス星人 ガルド】はイドラの洞窟の最奥部にある研究施設で三つのカプセルを並べていた。一つ目は古代怪獣ゴモラの細胞が入ったカプセルで二つ目はどくろ怪獣レッドキングの細胞で満たされたカプセル。

 そして三つ目は嘗て宇宙を支配しようとした悪のウルトラ戦士、ウルトラマンベリアルの細胞の欠片である悪魔の欠片が入ったカプセルだ。

 実験動物として捕獲した悪魔の欠片に侵されたモフモフが頑強な檻に閉じ込められておりガルドはニヤニヤしながら見ていた。

 

「ふふふ……実験と行きますか」

 

 ガルドはカプセルを眺めながら笑っておりこれから壮大な計画を始めようとするが最奥部に誰かが入ってきた。

 

「そこまでだ!」

「丁度良い所に来ましたね、これからある物をお披露目する所でしたので」

 

 レストが部屋に飛び込むとそれを待っていたかの様にガルドは丁寧でありながらも不気味な声を発した。彼は三つのカプセルを右手に持った注射器を模した銃に装填、檻にいるモフモフに放った。

 何かを撃ち込まれたモフモフはもがいて苦しむが圧倒的な力に全身が侵されると共に変貌を始めた。悪魔の欠片とゴモラの細胞、レッドキングの細胞を合成、それを撃ち込んで生み出した培養合成獣スカルゴモラが天井を突き破って出現。

 その見た目は背中側はレッドキングで腹側はゴモラ、顔はレッドキング寄りのゴモラである。胸部にベリアルを模した血管の様な模様と紫色のカラータイマーがある。

 

「実験は成功、さらばだ!」

「待て!?」

 

 崩壊する洞窟からガルドは高笑いしながらテレポートで脱出。

 

『レスト、急いで脱出だ!このままじゃ巻き込まれるぞ!』

「分かった!」

 

 レストもダンジョンから脱出する魔法のエスケープを発動。落石が彼の頭上に落ちる寸前に離脱した。セルセレッソ丘陵に降り立ったスカルゴモラは片っ端から強靭で太い大きな尻尾を振り回して破壊し始める。

 

「キシャァァァァッーー!!」

 

 雄叫びを上げながら進撃、胸元の前で生成した火山弾(ショッキングヘルボール)を発射してモフモフ達を吹き飛ばす。洞窟を出てその暴挙を目の当たりにしたレストとタイガは決心する。

 

『レスト、行くぞ!』

「僕達で止める!」

 

《カモン!》

 

 レストは右腕に装着したタイガスパークを起動、タイガのキーホルダーを左手に持って叫ぶ。

 

「光の勇者、タイガ!」

 

 左手に持ったキーホルダーを右手に持ち変えて腰を捻りながら右腕を上に掲げる。

 

「バディー……ゴォッーー!!」

 

《ウルトラマンタイガ!》

 

 レストは赤い光に包まれるとタイガの身体に変化。タイガは右腕を突き出しながら飛び出す。

 

『シュアッ!』

 

 無造作に暴れるスカルゴモラは空が真紅に輝く光景を見て首を上げるとタイガが頭上から迫っている事に気づく。タイガは先制攻撃として得意技のタイガキックを繰り出すがスカルゴモラは両手でそれを軽々と受け止めた。

 

『くっ!?』

 

 足を掴まれたタイガは抵抗するも虚しく投げ飛ばされて地面に激しく叩き付けられた。スカルゴモラは現れたタイガを敵と判断、立ち上がろうとするタイガに突進を浴びせて突き飛ばす。

 

『うわぁっーー!!』

 

 タイガは吹き飛ばされて宙を舞うが咄嗟に態勢を立て直して着地する。スカルゴモラは追撃と言わんばかりに火山弾を射出してタイガの胸にぶつけた。

 

『ぐっ!?』

 

 タイガは火山弾を喰らって怯むがスカルゴモラはその隙を見逃すこと無く突撃。赤く太い角を活かした突進攻撃を容赦なくタイガの腹に叩き込む。

 

『このぉぉっーー!』

 

 角を突き立てた突進攻撃をするがタイガは角を掴んで全身に力を込めて辛うじて耐える事ができた。そこからタイガは右チョップを連続で頭に叩き込むが効果は殆ど無い。

 スカルゴモラの胸部に左膝蹴りを撃ち込んで間合いを取って右ストレートキックで追撃をした。後ろに下がったタイガは様子を伺うとスカルゴモラの口が真っ赤に光っている事に気付く。

 

「ギシャォォォーーン!!」

 

 口から燃え盛る灼熱の光線【インフェルノ・マグマ】を発射、タイガは咄嗟に光の障壁のタイガウォールを前に張って防御。そこから左腕を立てて右腕を添えて放つ光弾(スワローバレット)を発射した。光弾がスカルゴモラの腹に命中、火花が飛び散り怯んで後退する。

 

『レスト、プラズマゼロレットを使え!』

「分かった!」

《カモン!》

 

 タイガスパークのレバーを引いたレストは左腕を前に出すと大きな水色の結晶が埋め込まれた大型ブレスレット【プラズマゼロレット】が現れた。彼は後部のスイッチを押してクリスタルの部分を上、一対のブレードの様なパーツを開くと照準器のような形になった。そしてレストはタイガスパークでクリスタルパーツの裏面をリードする。

 

《プラズマゼロレット、コネクトオン!》

 

 底の部分にある赤いスイッチを長めに押すとタイガの身体が炎を纏うと同時に光のエネルギーが一気に集まっていく。そのエネルギーを解放して全身から高出力の光線を放つと同時に叫んだ。

 

『タイガダイナマイト……シュート!!』

 

 放たれた光線はよろめくスカルゴモラに直撃! その威力に耐えきれずに倒れたスカルゴモラは絶命と共に爆散、器にされていたモフモフははじまりの森に送還された。

 

『よっしゃぁっーー!!』

 

 スカルゴモラを倒したタイガはジャンプして喜ぶも謎の警告により掻き消された。その声はガルドの声に酷似しており不気味な雰囲気が感じ取れる。タイガは声の主が聞こえた方向に視線を移すとメフィラス星人の顔の立体スクリーンが現れた。

 

「この戦いはまだ始まったばかりです。油断していると足元を掬われますよ……お気を付けて」

『おい、待て!』

 

 タイガが手を伸ばすもガルドは慇懃無礼な言葉を残してスクリーンは消えた。タイガはその場から飛び去り、変身を解除してレストに戻った。

 

「はぁ~逃がしちゃった……どうしよう」

『落ち込む事は無いさ。何れ奴は現れるからその時に倒せば良いさ』

 

 ガルドを逃がして落ち込むレストにタイガが励ます。昼下がりの時間にセルフィアの街に戻った彼等はモフモフを退治した事をアーサーに報告、その報酬を受け取った。彼の事務所はポコリーヌキッチンの隣部屋で二階には彼の寝室がある。

 因みにポコリーヌという男性はふくよかな体型をしており変人だが心優しい性格で無償の愛を与えている懐がとても深い人物なのだ。彼は料理人でその手腕は確かだが摘まみ食いが酷いという悪癖があるらしい。

 

「レストくん、お疲れ様です。これで取引先との商談がスムーズに進められます。ありがとうございます」

「いえいえ、アーサーさんのお手伝いができて良かったです」

「こちらこそ、王子の代行を勤めて貰って助かっています。先日から噂になっている巨大なモンスターと銀の巨人について話しておきたい事がありますが宜しいですか?」

 

 アーサーは問いかけるとレストはそれを承諾。マーヤ山道の麓とセルセレッソ丘陵に巨大モンスターと巨人が出現した事を告げる。巨大モンスターは山道の麓と丘陵で出た存在は違っていたが巨人は同一の存在だと述べた。

 

「なるほど、どちらも巨大モンスターが出た直後に巨人が出現して倒していると……。この事態は初めてなので調査が必要ですね。取りあえず王都にこの件を報告して対策を考えます。貴方は引き続き王子の代行をお願いします」

 

 アーサーは頭を下げて立ち上がり、事務机の椅子に着き資料の作成に取りかかった。それを見たレストは彼の仕事の邪魔になる前に彼の事務室から立ち去った。




次回は幕間の話をします。


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幕間:タイガとレスト

  自室に戻ったレストはベッドに座り込んで考え事をしているとタイガに声を掛けられた。

 

『レスト、お疲れ様! 仮の王子とはいえ大変だな』

「こういう事には慣れているから大丈夫だよ。タイガも似たような事があったの?」

『そうだな、俺の父さんと祖父が光の国で有名人だからな……その息子の俺のプレッシャーが半端じゃないよ』

 

 若干不満げな口調で語るタイガにレストは疑問を抱いて更に問いかける。

 

「どうして?」

『俺の父さんは宇宙警備隊の筆頭教官で祖父が大隊長という偉大な称号があるからな。俺個人を見てくれる人が少なくて……困っていた』

 

 タイガは彼の質問に溜め息を吐きながら答えるがどこか吹っ切れたような感じに聞こえた。

 

『けど……今はタロウの息子という事に誇りを持っているぜ! 素晴らしい仲間(トライスクワッド)やヒロユキ、E.G.I.Sの皆に会えたからな!』

「タイガは沢山の仲間と出会って絆を紡いで来たんだね。実は僕……記憶喪失にあって色々あってこの街に着いたんだ。最初は右も左も全く分からない状態だったけど街の人達が僕を支えてくれたから今の僕がいるんだ」

『そうかぁ……お前も大変だったんだなぁ~。俺や父さんも一回、敵の策略に嵌まった事があったけどその時も仲間達の力で助けてもらった事を思い出すぜ!』

「僕も色々な事があったよ。祭りに参加したり、アースマイトの才能を持っていた事が分かったのは驚いたよ。それだけじゃなくて帝国軍と戦ってセルザを連れ戻したりとかなり大変だったよ。特にタイガと遭遇した時が一番驚いたけど」

 

 レストは苦笑いしながらタイガに言った。するとタイガも苦笑いしながら同調する。

 

『そうだな……。俺も色々な星に行ったけどここはかなり良い街だと思うぜ! セルフィアはいい所だ、今度は観光客として行きたい!』

「それなら大歓迎だよ!街の脅威が去ったら今度は客として来て欲しいよ!」

 

 二人は笑いながら話をした後、自室を出て広場を経由して執事室に入るとこの城で執事をしている紫髪の女性【クローリカ】がこちらに手招きをしていた。

 

「あっ、レストくん。私の部屋でお茶しませんか~?」

 

 彼女はレストにお茶をしようと誘いをかけるとレストはタイガにクローリカの事を紹介する。

 

「タイガ、彼女はクローリカだ。普段は眠そうな顔をしているけど寝ながら働ける凄い女性で料理が得意なんだ」

『へぇ……寝がら仕事かぁ~。かなり変わっているけど凄いな!』

「レストくん、どうかされましたか~?」

 

 こそこそとレストが誰かと話している様に見えたクローリカが疑問を抱いて声をかけた。

 

「いえ、何でもないです。よろこんでお茶をしましょう!」

「それじゃあこちらへどうぞ~」

 

 レストを自室へ案内したクローリカは紅茶と菓子のアップルパイを机の上に出した。

 

「今日はおいしいお茶を頂いたんです。だからレストくんにもおすそわけしたいなっ~て思ったんです」

 

 彼女はどうぞと言ってお茶とアップルパイを彼の傍に差し出す。レストはお茶と一緒にアップルパイを貰ったのかどうか聞いてみた。

 

「違いますよ~。これは私が焼いたんです」

 

 クローリカが自分でアップルパイを焼いた事に驚く彼だが彼女はその反応を見て機嫌が悪くなる。

 

「むっ、失礼な驚きです。レストくんが初めてこの街に来た時に渡したアップルパイを焼いたのは私ですよ~」

 

 レストは弁明を試みるがクローリカはその前に矢繋ぎで口を開いて語った。この街に初めて来た時に食べたアップルパイの事を彼は思い出す。

 

「覚えてますよ。とても美味しかったです! あのアップルパイはクローリカが焼いた物だったのかぁ~。クローリカはお菓子が作れるんだね」

 

「はい♪ お菓子作り、好きなんです♪ さあさあ、それじゃあ早速食べてみてください。ジマンの自信作ですからっ!」

「それじゃあ頂きます」

 

 クローリカに勧められたレストは彼女が焼いたアップルパイを一口食べて丁寧に味わうがそれをクローリカは真剣な眼差しで見つめる。かなり緊張しているようだ。

 

「これは……美味しい!!」

 

 クローリカが焼いたアップルパイはとても美味しくてレストは舌鼓を打った。その反応を見た彼女は一安心すると彼はふと思った疑問を呟く。

 

「あれ?ジマンの自信作だったんじゃ?」

「あ……コホン。き、緊張くらい、誰でもしますよ」

 

 その呟きを聞いたクローリカは誰でも緊張すると答えると彼は苦笑いした。そしてレストはおかわりを要求すると彼女はもう一つのアップルパイを彼の前に出すと直ぐに食べ始めた。

 

(レストくんってば、本当においしそうに食べてくれてる……。な、なんでしょう……この、フシギな気持ちは……)

 

 クローリカはそんな事を思いながらレストを見ていると彼が急に口を開いてこんな事を喋り始めた。

 

「将来クローリカと結婚する人は毎日おいしい料理が食べられて幸せですね」

「けっけけけ結婚!?けっけけ結婚って!!!?!」

 

 彼がそう言うとクローリカが戸惑うがその反応が良かったのか更にレストは彼女の料理を褒める。

 

「だってこんなにおいしいんですよ?未来の旦那さんが羨ましいですね」

「だんなさん……うらやま……っ……! おいしっ……えええっ!?」

 彼の褒め言葉に顔を真っ赤に染めた彼女だがここでレストはトドメをさす言葉を投げつけた。

 

「クローリカはきっといいお嫁さんになります」

「お、オヨめさン……っ!?!?! えええええええええええええ……っ!?」

 

 この言葉が決定打となったのかクローリカの顔から湯気が沸き立つように真っ赤に染まりきっていた。

 

「……クローリカ?なんだか顔が赤いですよ?」

「……な、なんだかヘンな気持ちで……。は、恥ずかしくて……。恥ずかしくて爆発しそうです~……!」

 

 レストはそう言って顔面を近づけるが彼女の顔の頬は更に熱を帯びていき、クローリカもそれを感じている。

 

「えっ!?大丈夫ですかクローリカ!?」

「あ……あうう……。 もう、まともに顔が見れません~……!! さっ、サヨウナラッ!!!」

 

 耐えきれなくなった彼女は執事室からもの凄い速さで走り去った。

 

「クローリカ、一体どうしたんだろう?」

『レスト……お前、自覚が無いんだな……。その内、刺されそうだ。あんな事、俺には恥ずかしくてとても言えねぇよ!』

 

 レストはそう呟くとタイガは呆れたような口調で溜め息を吐いた。それから彼等は紅茶を飲み干してアップルパイが載っていた皿とカップを洗って棚に戻してから自室に戻った。

 

『レスト、セルザから貰った御守りを見せてくれないか?』

「良いよ!」

 

 レストはタイガにセルザの御守りを見せて欲しいと頼まれて懐から御守りを取り出して見せた。彼はこの御守りを肌身離さず持ち歩いている。今は別のアクセサリを装備しているがリュックにこれを常時携行している。タイガはその御守りから暖かい光を感じ取って呟く。

 

『これが神竜の御守りかぁ~。神秘的で良いな。そうだ、この御守りに俺の力を込めよう!』

 

 彼は右掌から淡い光を御守りに照射して自身の力の一部をセルザの御守りに与えた。その証としてセルザの御守りに飾りがほんのり赤い光を発している。

 

「タイガの光とセルザの光を感じる……。タイガ、君の力をこの御守りに与えたの?」

『そうだ。これを持っていれば光の加護がお前を守ってくれる!』

「タイガ……ありがとう!」

『良いってことよ!』

 

 タイガの光を受けたセルザの御守りをレストは懐に戻した。




ラブ・クローリカというサブイベントと幕間を組み合わせました。


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降臨!力の賢者

今回はタイタスが登場します。


  セルフィア平原に現れた銀色の身体を有する剛力怪獣シルバゴンが街に迫る。それを迎え撃つ為にレストは人目に付かない場所に移動しようとした時、上空を巨大な人影が飛ぶ光景を目にする。

 

「あれは……?」

『あのシルエットはもしかして……!?』

 

 レストとタイガはそれを追ってみると赤と黒の筋肉質な身体が特徴的な巨人がセルフィア城門の前に降り立った。この巨人の名はウルトラマンタイタスでシルバゴンと取っ組み合いを始めた。

 

『デュアァァッーー!』

 

 シルバゴンを突き飛ばしたタイタスは右拳に力を込めて賢者の拳(ワイズマンズフィスト)を腹に叩き込んだ。強烈な一撃をマトモに喰らったシルバゴンは後退、自身が開いた亜空間の穴に飛び込んであっという間に姿を消した。

 

『ぐっ、うっ……!?』

 

 シルバゴンが逃げた直後、タイタスは追いかけようとするが急に膝を着いた。それと同時に星形のカラータイマーが点滅し始める。それを見たレストとタイガは違和感を持つとタイタスの身体がいきなり消滅した。

 

「どうしたんだろう?」

『おかしいな。タイタスはさっき出てきたばかりなのにカラータイマーが点滅して消滅なんて……まさか!?』

 

 不審に思いながらもタイタスが消えた場所に行くと肩を上下に大きく動かしているフォルテが何故かそこにいた。彼女の様子を見るとかなり疲れているように見えて呼吸が荒い事をレストは察知する。

 

「フォルテさん! 大丈夫ですか!?」

「レストさん! どうしてここに!?」

 

 フォルテがレストの登場に慌てふためくも自身に憑依しているタイタスがレストに憑依している存在に気付いて声をかける。

 

『タイタスじゃねぇか! 無事で良かったぜ!』

『その声はタイガ!? 無事で何よりだ!』

 

 タイガとタイタスは再会を果たして喜びの声を上げるがレストとフォルテが話に付いていけていない。それを知った彼等は改めて二人のいる所へ振り向いた。

 

『紹介するぜレスト、こいつはウルトラマンタイタス! U40のウルトラ戦士で俺のチームの一員だ!』

『フォルテ殿、紹介しよう。彼はウルトラマンタイガ、M78星雲の光の国から来た宇宙警備隊のウルトラ戦士でトライスクワッドのメンバーだ』

 

 互いの事を紹介した二人(ウルトラマン)はレストの自室に戻って説明をすることになった。二人は彼等に改めて事の経緯を説明するとフォルテが神妙な顔付きとなる。

 

「つまり、大きな力を悪用しようする存在を止める為に追って来たという事ですね」

『理解が早くて助かる。しかし今の我々では実体化が難しく誰かの肉体を借りる必要がある。そこでフォルテ殿の肉体を借りたのだが……結果はこの通りだ』

 

 フォルテはタイタス達の説明を要約するとそれが正解だとタイタスは返事をする。タイガとタイタスは敵との戦いで大ダメージを負って単独での実体化が困難なのだ。故にタイガスパークを介して変身する必要がある。

 

『それにしてもフォルテの肉体を借りたタイタスの実体化が異常に短かったのはどういう事だ? レストの時は制限時間以外はこれといった変化はなかったけど……』

『恐らく、彼女と肉体の同調が上手くいっていない可能性がある。私が原因なのか或いは何らかの資質が関与しているのかもしれないが……』

「それは僕がアースマイトだからと思います」

 

 レストはここで自分がアースマイトだからタイガ達との同調が上手くいっている事を推測すると共にアースマイトに関する説明をした。

 アースマイトはこの世界の神に相当する存在のセルザウィード曰く、モンスターや大地と対話することが出来る人間であり農作業を介して大地を潤すことができる者との事だ。彼はそのアースマイトの血を継いでいるのだ。

 

「アースマイトは古代の魔法、エーテルリンクというルーンと人を融合させる魔法が使えるのでその影響があると思います。僕とタイガが一体化した時は何も無かったので」

『エーテルリンクか……なるほど、それはあり得る。次に怪獣が出た時は私がレストくんの体を借りて変身しよう』

 

 タイタスはレストの説明を聞いて同意するがフォルテはそれに激しく異議を唱える。

 

「レストさん、待ってください! 貴方はタイガさんに肉体を貸していると思いますが大丈夫でしょうか? 肉体的な負担を考えると私がタイタスさんに身体を貸した方が良さそうだと思いますが……。それに街を守る事は私の仕事です。私の方が適任です!」

『彼の負担を考えてくれるのはとても有り難い。しかし今の様に偶々、怪獣が私の一撃で撤退したから良かった。だが次にまた同じ様な怪獣が出てマトモに戦える保証はあるか……?』

 

 フォルテの異論に対してタイタスはそれを諭すように答えると彼女は黙ってしまった。

 

「フォルテさん、ここは僕に任せて貰えますか? フォルテさんは僕達が戦っている間に街の住人や観光客の避難誘導をしてくれた方が僕は助かります」

「ですが……」

 

 レストの提案にフォルテは迷いを見せるが突然、地面が派手に揺れて大きな雄叫びが街全体に響き渡った。レストとフォルテは何事かと外へ慌てて飛び出すと先程、街を襲ったシルバゴンと思わしき怪物が再び姿を表した。

 しかし、最初に出現した個体と違う部分があり目付きが鋭くなっており体型が大きくなり凶暴な顔付きをしている。この怪獣はシルバゴンが強化改造された個体【超剛力怪獣 キングシルバゴン】である。

 

「グギァァァッーー!!」

 

 雄叫びを上げながら侵攻するキングシルバゴンは口から青い火炎弾(デモリッション・フレイム)を吐き出して街を破壊しようとする。火炎弾は街の門前に着弾、街への直接的な被害は無かったがこのままでは危ない。

 

『行くぞ! レスト!』

「分かった!」

 

 タイガに促されたレストはタイガスパークを起動、ウルトラマンタイガに変身してキングシルバゴンに飛び蹴りを喰らわせて街から突き放す。フォルテはその光景を見て圧倒されていた。

 

『ここから先は行かせない!』

 

 タイガは勇んで宣言すると共にキングシルバゴンの下腹部に接近してタイガブローを連続で撃ち込むが効果は殆ど無い。キングシルバゴンは全く効果が無いと言いたいのか右腕でタイガの左拳を軽く払い退けて頭突きと右蹴りで反撃する。

 

『うわぁっー!?』

 

 右蹴りで押し出されたタイガは咄嗟にスワローバレットを発射するが青い火炎弾で相殺される。キングシルバゴンは地鳴りを立てながら走ってタイガとの距離を詰め、右手の鋭い爪で彼の身体を切り裂く。更にキングシルバゴンは頭に生えた鋭利な角をぶつけて追い討ちをかけた。

 

『ぐわぁっーー!?』

 

 タイガはキングシルバゴンの剛力に追い詰められている。フォルテはタイタスに変身しようとタイガスパークを起動するもタイタスはそれを止めた。

 

『フォルテ殿、待ってくれ! 今の君が私に変身してもこの状況は打開できない!』

「しっ、しかし……ただ黙って見ている訳には!?」

『ならばこうしよう。フォルテ殿、私のキーホルダーをタイガに向けて投げてくれ。そうすれば後はレスト殿と私が力を合わせて怪獣を倒す! 今はそれしか手がない!!』

「わ……分かった」

 

 タイタスの提案をフォルテは渋々と受け入れた。倒れているタイガの近くまで彼女は走ってキーホルダーを投げ渡す。

 

「レストさん! これを受け取ってください!!」

 

 フォルテの手から離れたキーホルダーはタイガのカラータイマーに入るとレストがいる超空間(インナースペース)に到達した。

 

『タイガ、待たせたな! ここからは私に任せてもらおう!私の名前はタイタス、力の賢者だ!』

『タイタス……頼む! レスト、交代だ!』

「分かった!」

《カモン!》

 

 タイガスパークのレバーを引いた彼はタイタスの顔が刻印された星型の水晶が埋め込まれているキーホルダーを左手に持ってタイタスの異名を発する。

 

「力の賢者! タイタス!!」

 

 右手に持ち変えたレストは右腕を掲げて思い切り叫ぶ。

 

「バディー……ゴォォッーー!!」

《ウルトラマンタイタス!》

 

 荘厳な音楽と共に七色の光の奔流がマーブル状に変化、その中からウルトラマンタイタスが両腕を振り上げて飛び出すと同時にキングシルバゴンを渾身の力を込めて殴り飛ばした。

 

『ふんっ!』

 

 タイタスは両腕を上に曲げ、上腕二頭筋を強調。

 

『はっ!』

 

 続いて腰元へ手を持って行き、背中を広げる。

 

『ふぅんっ!!』

 

 最後に手を組んで身体を捻りつつ、胸や腕……そして脚。全身の至る所の厚みをアピール。U40屈指の肉体を有する光の戦士、ウルトラマンタイタスがレストの肉体を借りて降臨した。 

 

「この構えは一体……?」

 

 セルフィア平原のど真ん中で突如として開始されたボディビル大会に、レストは苦笑する。これはタイタスの特技【ワイズマンズハッスル】で自分の肉体を一時的に強化できる技だ。

 

『私は筋肉を強調することで一時的に己の力を高める事ができる。行くぞ!!』

 

 タイタスは右拳にエネルギーを集中させて賢者の拳をキングシルバゴンの頭部に叩き込んで頭を激しく揺さぶった。

 

「ガギャァァァッーー!?」

 

 キングシルバゴンは頭部に強烈な衝撃を受けてよろめくが首を振って何とか態勢を整え、左手の爪を振り下ろして反撃する。しかしタイタスは片手でその攻撃を難なく受け止めた。

 

『やるな! だが……その程度では私は倒せん!』

 

 タイタスは宣言すると同時にキングシルバゴンを両手で自身の頭上に持ち上げて街から離れた平原へ投げ飛ばした。倒れるキングシルバゴンに彼は跳躍、全体重を乗せたマッスル・フライングプレスで追撃する。

 

「グォォォォッーー!?」

 

 5万トンの重さが全身にのし掛かかったキングシルバゴンは悲鳴を上げるがタイタスは立ち上がって自身の体重を乗せて右肘撃ちを鳩尾に叩き込んだ。

 キングシルバゴンは強烈な打撃を立て続けに受けた事により既に満身創痍でフラフラとしている。辛うじて青い火炎弾を発射するがタイタスの手刀により呆気なく切り払われた。そのお返しとして右掌から強烈な光波熱線(ロッキングフレア)を浴びせた。

 それを脆に浴びたキングシルバゴンは悲鳴を上げて逃げようとする。タイタスは逃がすまいと背を向けているキングシルバゴンの尻尾を掴んで激しく振り回し、ハンマー投げの要領で平原からより遠く離れた場所に投げ飛ばして地面に叩き付けた。

 

『セブンレットを、使いなさい!』

《カモン!》

 

 ポーズを取りながら彼に指示を出す。レストはタイガスパークのレバーを引いて左腕を突き出すと赤いブレスレット(セブンレット)が出現、それをタイガスパークでリードする。

 

《セブンレット、コネクトオン!》

 

 真紅の戦士【ウルトラセブン】の幻像がタイタスの全身を覆うと共にマッスルポーズを取りながら水色の光球を生成、それをウルトラセブンの武器であるアイスラッガーの形に変えて両手で挟み全力を込めて投擲すると同時に叫ぶ。

 

『ワイドスラッガァァッーー……バスタァァッーー!!』

 

 水色の光刃(ワイドスラッガーバスター)がキングシルバゴンに向かって一直線に突き進んで肉体を貫通。身体が真っ二つに切り裂かれたキングシルバゴンは倒れて爆散。怪獣を倒したタイタスはフォルテにサムズアップをして空へ飛び去った。

 

 

 

 

 

  変身を解除したレストはフォルテの近くに移動して頭を下げた。

 

「フォルテさん、タイタスと一緒に戦ってくれてありがとうございます!」

『私からもお礼を申し上げよう。ありがとう!』

「いえ……ただ私は街を守っただけなので。それにレストさんとタイタスさんが私達を守ってくれました。お礼の言うのは私の方です」

 

 フォルテもレストが街を守ってくれた事に礼を告げる。すると側にいたタイタスはある物をフォルテに授けた。それは翡翠色をしている星型のクリスタルが埋め込まれたブレスレットだ。

 

「えっと……これは?」

『それは私の力がこめられたスターブレスレットだ。これを身に付けておけば邪悪な力から君を守る事ができる御守りだ。だから肌身離さず着けて欲しい』

 

 タイタスは彼女に腕輪を効力を説明するとそれを左腕に装着した。フォルテは左腕を翳すと淡い優しい光がセルフィア平原を照らす。

 

「ありがとうございます!これを一生、大事にします!レストさん、今日はありがとうございました。これで失礼します」

 

 彼女はそう言い残して街に戻った。フォルテの後を追うようにレストも街に戻り、城の自室に入ってベッドへ潜り深い眠りに着いた。




ワイドスラッガーバスターはセブンレットを使ったオリジナルの必殺技です。
タイタスとフォルテの出会いに関しては幕間で明かします。


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迫る昆虫の大群(その1)

  西セルフィア平原に昆虫型甲殻怪獣【インセクタス】が出現。レストが西平原に単独で赴きタイガに変身して戦っており右キックをインセクタスの顔面に浴びせた。

 

『へァッ!』

 

 タイガが追撃で繰り出した左ストレートパンチが直撃、インセクタスは怯んで後退。更にスワローバレットを脚部に撃ち込んで追い討ちをかける。

 

『レスト、プラズマゼロレットで止めだ!』

「分かった!」

 

 タイガの指示に従ってレストはプラズマゼロレットを召喚して後部のスイッチを押して展開、タイガスパークを裏面に翳して赤いスイッチを一回押した。

 

《プラズマゼロレット、コネクトオン!》

『タイガエメリウム……ブラスターー!!』

 

 ウルトラマンゼロの幻像に包まれたタイガは額のビームランプから緑の稲妻を帯びた光線を照射。インセクタスの顎の部分に命中、あっさり倒れて絶命した。

 

『あいつは雌で卵を産んでいる可能性があるから念のため凍結しておくか』

『この星の生態系に大きな影響を与えるから最小限に留める必要があるな』

 

 タイガが注意深くそう呟いた。インセクタスは以前、メビウスが地球に滞在していた時期に出現した怪獣で雌の個体は卵を産卵している可能性がある。そこで彼はウルトラフリーザーで遺体や周辺を凍結させて宇宙まで死体を持ち運んだ。

 

『後は私に任せろ!』

 

 タイガはタイタスに交代して右掌から高熱を帯びた光線【ロッキングフレア】を放ってインセクタスの遺体を焼き払った。

 

『これで大丈夫だ。さぁ戻ろう!』

 

 地上に戻ったタイタスは変身を解いて街に戻った。しかし遺体を宇宙に運んでいた時、密かに幼虫が離れていた事に気付かなかった。

 街に戻ったレストは城の竜の間にいる神竜(セルザウィード)へ怪獣を倒した事を報告した。セルフィアの街の名物であるセルザは一時期、姿を消していたが色々な事情を経てここに戻ってきたのだ。

 

「ご苦労だったレストよ。いつも助かっておるぞ、この街を守ってくれているお主に感謝せんとな」

「いやぁ~……対したことはしてないよ」

『頑張ったのは俺達だけどな』

『レストの協力があってこそ、我々も戦えているからお互い様だ』

 

 セルザがレストを讃えると彼は謙遜、タイガは自分の手柄と強調するもタイタスはレストの協力があってこそとタイガを諫めた。因みにセルザはタイガとタイタスの存在に気付いていないようでレストが見えない誰かと会話しているように見えていた。

 

「レスト、何を一人で喋っておるのじゃ? 誰かそこにいるのか?」

「何でもない、只の独り言だよ。最近、何か変わった事は無いかな?」

「ここ最近、ゼークス帝国の過激派の連中がエゼルバードの研究データを盗んで失踪したという情報があったわ。アーサーを筆頭に王都からの調査隊とゼークス帝国の穏健派が合同で調査をしておるが……何やら嫌な予感がするのじゃ」

 

 ゼークス帝国のエゼルバードに忠誠を誓っていた一部の兵士達が独断で起こした行動である。しかもその連中は何者かの手引きによる物だと調査で判明しているが詳しい事は分かっていないのが現状だ。

 

「分かった。彼等の動きに気を付けるよ、それじゃあ」

 

 レストは返事をして竜の間から自室に戻る直前、畑仕事が途中だった事を思い出して城の裏庭にある畑に足を運んだ。その作業をしている途中でタイガが声をかけてきた。

 

『所でエゼルバードってのは一体どんな奴なんだ?悪い人かな?』

「あいつは大陸を支配して神になろうとした悪の皇帝。僕とセルザ、この街の人達の力を合わせて倒した奴だけど。あいつの残した傷痕は未だに……」

 

 タイガの質問に答えたレストは苦虫を噛み潰したような表情をしながら重い口を開いた。

 

『そうか、君も辛いことがあったんだな。心中を察する……』

『……』

 

 タイタスは彼の思いを汲み取って呟き、タイガは両腕を組んで見つめた。黙々とレストが畑仕事をしている光景を彼等は見ていた。

 

『畑仕事か……。桑で土を耕したり、ハンマーで石を叩いたり、枝を斧で加工したりと……中々良いトレーニングになりそうだな!』

『また始まったよ、タイタスの筋肉語り……』

 

 タイタスは彼が進めている畑仕事が自身の筋トレの参考になると呟くがそれを聞いたタイガは呆れた様に愚痴を溢した。タイタスは日頃から筋トレをしておりスクワットや腕立て伏せを欠かさずに行っている。

 

「ふぅ……今日はこんなものかな? お腹も空いた所だし夕食の料理を作るとするか」

 

 今日の畑仕事を終えたレストは夕食を摂るために裏口から自室に戻った。そこに青髪が特徴的な執事の青年であるビシュナルが慌てて彼の部屋へ駆け込んで来た。

 

「王子、大変です!ポコリーヌキッチンに来た客が暴れています。ダグくんとディラスさん、ヴォルカノンさんが今抑えていますが持ちません。手伝って下さい!」

「分かりました!直ぐに行きます!!」

 

 彼がポコリーヌキッチンで客が暴れている報告を受けたレストは急いでポコリーヌキッチンへ駆け付けた。現場に着くと暴れる男性客を取り抑えている青い長髪の青年【ディラス】が突き飛ばされて床に倒れていた。因みにこの店の歌姫であるマーガレットは裏手に避難している。

 

「ディラス、うワっ!?」

「うがぁぁぁぁっーー!!」

 

 ディラスが突き飛ばされて動揺した赤髪のドワーフの青年【ダグ】の隙を突いた男性客は彼を壁に叩き付けて気絶させた。

 

「こいつ、大人しくしろ!!」

「わあぁぁっーー!?」

 

 レストは男性の腰にしがみついて叫ぶも雄叫びを上げた客が抵抗している。このままではいつ彼が振りほどかれてもおかしくない状況だったが紺色のローブを着た青年が腕を掴んで後ろに回した。レストは何かを察知して腰にしがみついた客から離れると机に暴れていた客を叩き伏せた。

 

「うがぁぁぁぁっ……あっ……!?」

 

 暴れていた客は突然意識を失って倒れた。先程の行動が嘘の様に鎮まっており不気味さを感じたが取りあえず暴れていた客を止めた青年を他の客達は一斉に拍手する。少し遅れて事件を聞き付けたフォルテがやって来たが既に終わっていた。

 

「皆様、私の連れが大変失礼な行動をして申し訳ありません。私が彼を運びますので道を開けて頂けますか。それでは私はこれで失礼します」

 

 そう告げた彼はカウンターに代金を置いて暴れていた客を肩に担いで店を出る。一部始終を見ていた客は何事も無かったかのように食事を再開するがレストは青年の行動を見て怪しむ。

 

「この感じ……何か嫌な予感がする……」

『あぁ……何と無くだが俺もそう感じる』

『私も同感だ。あの青年はただ者ではない』

「王子、どうかされましたか?」

 

 三人は青年を警戒するがビシュナルに声を掛けられたが何でもないとレストは返事をする。それから店に来た次いでに料理を摂る事にした。

 

「レストさん、何かありましたか?」

「それが……」

 

 レストはフォルテから事件の詳細を聞かれてそれを説明すると彼女が浮かない顔付きになって呟く。

 

「怪しいですね……。レストさん、気を付けてください」

「分かりました」

 

 フォルテからの忠告を受けたレストはそれに同意。そして彼女も彼等と一緒に夕食を摂る事になった。

 

 

 

 

  その頃、店を出た青年は街の外へ出て暫く歩いて周囲を見渡して誰もいない事を確認。黒い靄に包まれると同時に異形の姿に変貌した。

 

「良いサンプルが取れましたね。これは私の実験に使えそうですな」

 

 メフィラス星人のガルドがそう呟くと左腕に着けた謎の装置を起動、テレポートで別の空間へ先程暴れていた客と共に移動した。はじまりの森と呼ばれる特殊な空間に着いた彼は担いでいた男性を乱暴に下ろした。

 

「ふふふっ……さぁ、始めましょう」

 

 彼はそう告げると左腕に着けた謎の装置を再び起動。装置が紫色の閃光が瞬き、漆黒の靄が形成されていくとそれは球体の様な形に変化する。

 

「エーテルリンク!」

 

 彼はルーンの魔力を闇に変換、男に寄生していたノープリウス状態のインセクタスの雄へ紫色の球体を注入、一気に成長を促した。エーテルリンクとはアースマイトの秘術の一つで術者とモンスターを融合させる魔法だ。

 ガルドはゼークス帝国兵士の過激派が盗んだ研究データから人間に寄生した怪獣の幼体を強引に成長させる実験を試みた。その結果、インセクタスは急成長。被験者となった男性の体を粉々に砕いて飛び出すとはじまりの森からゲートを通過。

 翌日の昼、セルセレッソ丘陵からインセクタスが侵攻を開始する。




はじまりの森に関しては怪獣墓場の様な扱いをしています。
ゲートから出る時間に関しては人間界とはじまりの森の時空が歪んでいる影響で出現する時間帯が異なる設定になっています。


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迫る昆虫の大群(その2)

今回はインセクタスの雄が出ます。


  インセクタスが出現する数時間前に遡る。レストは起きて日課である畑の手入れや作物の収穫と出荷を済ませて、飼育しているモンスター達のブラッシング作業をしていた。彼は乳牛に酷似したモンスターであるモーモーの毛を整えている。

 

「よし、良い子だ」

 

 ブラッシングされた乳牛の様なモンスターのモーモーは気持ち良さそうに鳴き声を上げた。

 

『へぇ~モンスターを飼っているんだ。俺の父さんも小さい頃にドックンと遊んだりラビドッグを飼っていたな。でもどちらかと言えばセブンはカプセル怪獣を持っているけどそんな感じかな~』

『我々が滞在していた地球に似ている部分もあるな。とても興味深いな』

 

 タイガとタイタスはモンスターを世話する彼の姿を見て呟く。彼等の星も他の生物をペットとして飼うという文化がある。しかし二人が滞在していた地球とは異なる部分が多くあるので興味を持っていた。

 

「この子たちはモンスターだけど紛れもない家族なんだ。こうして毎日、世話をしながら蓄産物を収穫して料理をしてプレゼントする事が僕の楽しみの一つだよ」

 

 レストは収穫した畜産物の収集品に分類されているモンスターから取れる素材類を出荷箱に入れ、牛乳や卵といった食品類と出荷箱に入れなかった作物を自室に持ち帰る。

 彼は拡張した自室の部屋で料理を始める。先程収穫した葡萄とオレンジと林檎、追加素材として苺をミキサーに入れてフルーツジュースを飼育しているモンスターの数だけ作った。

 

「これで完成!」

『やったな、レスト!』

『ハンドルを手動で動かしてあれだけの数を一気に作るとは……良い筋トレになりそうだ』

 

 レストは作ったフルーツジュースを持って飼育小屋に赴きモンスター達にそれを与えると彼等はとても喜んでいた。それから他の小屋のモンスター達も同様にジュースを飲ませた。エサやりが終了した時刻は昼近くになっている事に彼は気づく。

 

「もうこんな時間だ。昼飯摂ってからダンジョンに行こう」

 

 レストは小屋を出て自室に戻った時、この城で執事をしている女性【クローリカ】が急ぎ足で部屋に入ってきた。

 

「レストくん、大変です! 今すぐ展望台に来てください!!」

 

 クローリカは珍しく慌てた様子だ。彼女は普段、眠そうな表情をしておりのんびりとした印象だが今回はそんな様子は全く無い。レストは彼女の状態を見てなにかを察知して街の展望台へ駆けつけると既にフォルテとアーサー、数人の兵士達が到着していた。

 

「あれは一体……」

「まさか昨日、出てきた巨大モンスターでは!?」

 

 フォルテとアーサーは望遠鏡からインセクタスを見て圧倒されている。

 

「あれは昨日の……いや角や鋏の形が違う!」

『インセクタス、昨日倒した筈じゃ……』

『恐らく生き残りかもしれん。しかし、奴から感じる邪悪な気配……一体何なんだ?』

 

 レストとタイガ、タイタスは昨日倒したインセクタスを見て違和感に気付く。実はあの時倒した個体は雌で絶命する間際に産卵していた。雄の角と鋏は黄色で大きく太い鋭い形をしている。

 雌の遺体が持ち運ばれる前に短時間で孵化していた幼体は気配を察知されないように身を隠していた。そしてレストが街に戻った直後に偶然通りかかった旅人の男の体内に潜入していたのだ。男は寄生された影響で昨日、ポコリーヌキッチンで暴れていたに過ぎない。

 

「フォルテさんは住人の避難をお願いします。僕は奴の侵攻を食い止めます!」

「分かりました。レストさん、気をつけてください」

「レストくん、どういう事ですか!?」

 

 レストはフォルテにそう告げて展望台から降りて行った。その会話が聞こえたアーサーは慌てながら止めようとするが既にレストの姿は無かった。

 

「行くぞ、タイガ!」

『おう!』

《カモン!》

 

 レストはセルフィア平原に着いてタイガに呼び掛けるとそれにタイガが応じてタイガスパークを起動。タイガのキーホルダーを左手に持った。

 

「光の勇者、タイガ!」

 

 キーホルダーを右手に持ち変えてそのまま掲げてタイガと共にレストは叫んだ。

 

「バディー……ゴォォッッーー!!」

《ウルトラマンタイガ!》

 

 レストはタイガに変身して巨大化。街に近づくインセクタスを食い止める為にタイガは大地を疾走して跳躍、落下の勢いを利用して右飛び蹴りをインセクタスの顔面に叩き込んで着地。そこから右ストレートパンチと左チョップを打ち込んで追撃する。

 

『ここから先は絶対に行かせない!!』

 

 力強く宣言するタイガはそれを示す様にインセクタスの前に立ちはだかる。インセクタスは邪魔者を排除しようと突進を仕掛けるがそれを見越していたタイガは前方に跳躍。後ろに回り込んだタイガはインセクタスの後頭部を左足で踏みつける要領で反撃する。そこから右回し蹴りと左ストレートを撃ち込んで追撃する。

 インセクタスはこれ以上の攻撃を阻止するべく口を振動させて超音波を発生させる。すると上空から無数の昆虫と思わしき飛行物体がタイガの元に飛来してきた。

 

『うわっ!? 何だこれは……いてっ!?』 

 

 彼の全身を昆虫が覆い被さり、タイガの身体を痛め付ける。その苦痛に悶えるタイガは地面に伏してもがくが虫の大群が離れる様子は全く無い。それを良いことにインセクタスは虫の大群を操ってタイガに更なる苦痛を与えていく。駄目押しと謂わんばかりに鋏と角から電撃を照射してタイガを追い詰めた。

 

『うわぁぁぁっーーー!!』

 

 倒れていて電撃を浴びているタイガは右腕を伸ばすも虫が纏わりつく痛みと麻痺により声を出すことが困難になっている。一方、苦戦するタイガを見たマーガレットは異様な高周波が聞こえている事に気付く。

 

(もしかして……)

「メグ、ここは危険なので早く逃げてください!」

 

 その時、避難活動をしていたフォルテに避難するように声を掛けられた。

 

「フォルテ、私はウルトラマンを助けに行くよ!」

「何を言っているのですか!? とても危険です!」

「あのまま放っておいたらウルトラマンがやられるからあのモンスターの弱点を伝えに行くの!」

 

 マーガレットの強い意思を感じ取ったフォルテは自分も同伴する事を条件に避難活動をセルフィアの兵士達に任せてタイガの元に向かった。

 同時刻、纏わりつく虫の大群により苦しめられるタイガのカラータイマーが点滅して警告音を鳴らす。その時、フォルテとマーガレットが彼の元に息を切らせながら走ってやってきた。

 

「ウルトラマンさぁぁーーん! あのモンスターの顎から高周波が出ているの! そこを攻撃すれば虫の大群は止む!!」

 

 マーガレットは大声でタイガに告げるとその声に反応したインセクタスは虫の大群をマーガレットの立っている所へ一斉に向かわせる。フォルテは彼女に手出しさせないと剣を構えて前に出るが圧倒的な数に刃先が震える。

 

『まずい!』

 

 それを見たタイガは慌ててフォルテの前に滑り込んで咄嗟にタイガウォールを展開、間一髪の所で遮った。

 

『分かった!お前らは早く逃げろ!』

『レスト、話は聞いた。ここは私に任せてくれないか?』

 

 タイガは彼女達に逃げるように告げると二人は街に急いで戻っていく。それを見届けるとタイタスは自身に交代するようにタイガに促すとレストはタイガスパークのレバーを引く。

 

《カモン!》

「力の賢者! タイタス!」

 

 左手にタイタスのキーホルダーを持った彼は右手に持ち替えるとタイガスパークに付けられた球体が黄色の輝きを放った。そこから腰を低くして力を込めるとと共に右腕を天高く突き上げて叫んだ。

 

「バディーー……ゴォォッーー!!」

《ウルトラマンタイタス!》

 

 タイタスに変身すると筋肉で構成された強靭な肉体で虫の大群を跳ね返し立ち上がった。タイタスはインセクタスの顎に狙いを定めて額のアストロスポットにエネルギーを貯めていく。

 

『星の一閃、アストロ……ビィィッーム!!』

 

 黄色の星形光線を照射、インセクタスの顎に炸裂して大ダメージを与える。すると虫の大群が突然、一気に消え去った。マーガレットの予測は正解で高周波の発生源を破壊すれば虫の大群が操れなくなるのだ。

 顎を破壊されて怒ったインセクタスは角から真紅の電撃を放つがタイタスは両腕を組んでそれ突き出して受け止めてそのまま歩いて接近。電撃を纏った両腕を上げて勢いよく振り下ろす。

 

『タイタス、プラネット……ハンマァーー!!』

 

 インセクタスの顔面に渾身のダブル・スレッジ・ハンマー(タイタスプラネットハンマー)を叩き込んだ。その衝撃によりインセクタスは後退して退却を試みるがタイタスは角を掴んで抑えつける。

 

『賢者の拳は全てを砕く!』

 

 彼は渾身の右ストレートパンチをインセクタスの左鋏に打ち付けてポッキリと鋏をへし折った。そこから左手で右鋏を抑えて左膝を叩き込んで残った鋏を粉砕。

 

『マッスル! マッスル! スーパーマッスル!!』

 

 タイタスは追撃としてインセクタスの角に連続で右チョップを叩き込んで角を破壊。ボロボロになったインセクタスはフラフラの状態で立っているのが精一杯だ。

 

『止めだ!』

 

 タイタスはタイガスパークから翡翠色の光球を生成、それを右拳で渾身の力を込めて殴り飛ばして叫ぶ。

 

『ブラニウム……バスタァッーー!!』

 

 超速で飛んでいく翡翠色の破壊光球(ブラニウムバスター)がインセクタスの顔面に直撃、絶命すると同時に大爆発を起こして消え去った。

 

『デュアッ!』

「ありがとうございます!ウルトラマンタイタス!」

「ありがとう!」

 

 インセクタスを倒したタイタスは空の彼方へ飛び去る。それを見たフォルテとマーガレットは大きく手を振って礼を述べた。

 しかし怪獣の襲撃がこれから更に激しくなると誰も思わなかった。




次回は幕間でタイタスとフォルテの出会いと敵勢力の動向を書きます。


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幕間:タイタスとフォルテ

  インセクタスを倒して元に戻ったレストは街の門の前に帰還するとフォルテとマーガレットが迎えに来た。

 

「レストさん、お疲れ様です」

「もぉ~心配したよ、レストくん!」

「フォルテさん、ありがとうございます。心配掛けてごめんマーガレット」

 

 二人の話を聞いたレストはお礼と心配をかけた事への謝罪を述べた。彼等は夕食をポコリーヌキッチンで摂ってから其々の自宅に帰ることにした。メロディストリートにあるマーガレットの家で別れたフォルテとレストは歩きながら話をする。

 

「レストさん、今日のモンスターは手強かったみたいですが大丈夫ですか?」

「そうですね……マーガレットがあのモンスターの弱点を教えてくれなかったらやられてたよ」

「あまり無茶はしないで下さい。レストさんを心配している人は沢山いますよ……。勿論私もその一人ですので忘れないでください」

 

 彼女はレストが命懸けで戦っている事を心配している。そんなフォルテの思考を他所にレストはタイタスとの出会いについて問い掛ける。

 

「タイタスさんとの出会いですか……。それはーー」

 

 彼女の話によるとレストが依頼の為にマーヤ山道に赴いた直後に水の遺跡に黄色の流星が落ちる光景を目撃。落下した物体を調べる為にフォルテは単独で調査に乗り出すと例の物体が落ちた所に髪は金髪で大柄かつ筋骨隆々な肉体が特徴的な青年がいた。その青年は全身が傷だらけだが息をしている。

 

『大丈夫ですか?』

 

 フォルテは傷だらけの青年に声をかけると呻き声を出して反応するが動けない。彼女は応急措置として回復魔法のキュアオールを使って傷口を塞ぎ、痛みを和らげる。その時、彼の身体が黄色の光を発すると共に小さくなっていき銀色のキーホルダーに変化した。

 

『ひっ……!?』

 

 その光景をみたフォルテは驚いて後ずさるが先程の青年の呻き声に似た声が頭に聞こえて来た。彼女は彼が幽霊だと思ったのか全身が震えている。

 

『私はウルトラマンタイタス。今は訳合って人間態の維持が困難でこの姿になっている。済まないが私を拾ってくれないか? このままだと動けない。頼む!』

 

 タイタスは自身が幽霊では無いことを説明、人間の姿を保てない状態であると伝える。それを知った彼女はそのキーホルダーを拾って城に帰った。セルザウィードに物体の報告をするがタイタスの存在は秘密にした。

 彼曰く、自身の存在が明るみになればこの星に大きな影響を与える可能性がある事とはぐれた仲間を見つける迄は黙って欲しいと言っていたそうだ。

 翌日、シルバゴンが出現した事を知ったフォルテがタイタスに変身して追い払って今に至る。

 

 

「そうだったのか……大変でしたね」

「最初は戸惑いましたが今は平気です。タイタスさんは日頃からトレーニングをされているそうなので私もタイタスさんと一緒に鍛えたいです!」

『フォルテ殿、貴女とは話が合いそうだ! レスト、君もフォルテ殿と一緒にトレーニングをしようではないか!』

 

 彼女を労るレストだがフォルテは問題無いと言い、タイタスとは気が合うと嬉しく語る。それを聞いたタイタスは彼女と一緒にトレーニングをしようとレストに提案する。

 

「考えておきます……」

『タイタスのトレーニングはキツいからよく考えた方が良いぞ』

「そうですか……。気が変わりましたら声をかけてください。それと改めて言いますが無茶な戦いはしないで下さい」

 

 偽の王子とはいえフォルテは王子を護衛する事が任務だ。しかしその王子がウルトラマンに変身して巨大なモンスターと戦っている事に不本意に思っている。それを察したのか彼女にレストは自身の覚悟を語り始める。

 

「フォルテさん、貴女がウルトラマンに変身して街を守りたい気持ちは良く分かります。でも……僕はフォルテに笑顔でいて欲しいと思っています。この街の人の笑顔や幸せを守る為に僕は戦います……。例え自分が傷ついてでも最後まで!」

「レストさん……」

 

 彼の力強い宣言に圧倒されるフォルテの頬が赤く染まっていた。それに気付いたタイタスは彼女に声を掛ける。

 

『フォルテ殿、顔が紅いが熱でもあるのか?』

「なっ……いえこれは、そのっ……」

『熱!? それは大変だ、早く家に戻って休まないと!』

 

 フォルテの顔が赤くなっている事を指摘したタイタスに動揺した。彼女の顔が益々赤くなっているとタイガは早く家に帰るようにフォルテに促した。

 

「お大事にしてください。また明日」

 

 レストは彼女を家まで送ると自身の住む城に帰還する。その帰り道でタイタスとタイガが彼に話しかけた。

 

『フォルテ殿は大丈夫だろうか?』

『まぁ、一晩休めば元気になるだろ? レスト、お前の戦いぶりやその覚悟を見ていると嘗ての相棒の事を思い出す』

「相棒……それは誰なの。もしかして僕と同じようにタイガ達と一緒に戦った仲間かな?」

 

 彼はタイガが口にした相棒という存在が誰なのか気になった。

 

『それはまた今度な……。今日は帰って休もう!』

『ゆっくり休んで明日からトレーニングを始めよう!!』

「あはは……」

 

 タイガは相棒の話は別の機会にして休もうと言った。一方、タイタスはゆっくり休んで明日からトレーニングをしようと宣言したがレストは苦笑いした。それから自室に戻った彼はベッドに潜って深い眠りに着いた。

 

 

 

 

 

  その日の夜、異空間に潜伏するガルドはゼークス帝国の過激派兵士と自身の計画に賛同した狂科学者を召集して計画を高らかに説明する。

 

「私はエゼルバードの野望を継いでこの世界……否、全宇宙を征服すること! その為に君達の力が必要だ!!」

 

 彼の宣言に賛成を表明する彼等は自身が捨て駒として利用されている事に気付いていない。ガルドは彼等が帝国から持ち出したエーテルリンクに関する研究データと自身が所有するアイテムを融合させる実験を進めている。

 

「次の実験はこれです!」

 

 彼は怪獣の力が秘められたメダル型のアイテムである怪獣クリスタルを取り出す。そのクリスタルに描かれている絵は白い鳥の姿をした怪獣で下の部分に嵐という文字がある。そしてガルドはマゼンタの色が特徴的な鳥のモンスター【ウィーグル】に目を向ける。

 ウィーグルはガルドの手により強引に捕獲されて連れてこられており鋭い目付きで彼を睨む。そんなモンスターの視線を無視したガルドは左腕に装着した機械を介して秘術(エーテルリンク)を唱えた。

 嵐と記された怪獣クリスタルがウィーグルの体内に入り込むとウィーグルに力が流れ込み悶え苦しみ抵抗するがあっいう間にその巨大さに抗えずに呑み込まれた。

 ウィーグルは巨大な白い鳥に変貌、大きな雄叫びを上げて巨大な翼を羽ばたかせる。一部始終を見たガルドは実験は成功だと喜びの声をあげる。

 

「グエバッサー! 行け、その力を示すのだ!!」

「グェーー! ブォォーー!!」

 

 グエバッサーは産声を上げて彼が作った専用のゲートを通過して人間界に飛び去った。これはガルドが産み出した怪獣専用のゲートで人間界に怪獣を送る為に作った物だ。

 嘗て、レオン・カルナクに出現した巨大なゲート(ヘブンズゲート)の研究データを応用した産物だ。彼はこの門を【怪獣ゲート】と呼んでいる。

 トライスクワッドはガルドの野望を阻止できるのか……。フーマの行方は!?




次回はフーマの登場回です。


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見参!風の覇者

今回はフーマの登場です。


  ある日の早朝、マーガレットは街中の至る所に捨てられているゴミを拾っていた。彼女は綺麗好きで小さな汚れが見過ごせないエルフの女性で音楽家でもある。そんな彼女はゴミに紛れていた銀色のキーホルダーを発見する。それはタイガやタイタスとは異なるがウルトラマンと思わしき顔が彫られたキーホルダーだった。

 

「これ……変わったキーホルダーねぇ~」

 

 マーガレットはそれを少し眺めてボッーとした後にゴミ拾いを思い出して再開、それを終えて帰宅。因みに拾ったキーホルダーは落とし主がいるかもしれないという事で持って帰ることにした。

 帰宅した彼女は音楽家の仕事として食堂で披露する新たな楽曲を作詞をするために机に向き合い書き始めるがキーホルダー越しにフーマが潜かにそれ見ている事を気付かなかった。暫くして歌詞と音楽が調和しているかどうか確かめる為に楽譜に書いた音楽を奏で始めた。

 

(音楽か……この姉ちゃんの曲は中々良いもんだな)

 

 キーホルダー越しにマーガレットの作曲作業を見ていたフーマは心の中で呟くと突然、マーガレットが此方に注目する。

 

「今、誰かに見られている気がする。まさか……幽霊じゃないよね……?」

『俺は幽霊じゃねぇっ!!』

 

 マーガレットは幽霊らしき存在に見られている事を感じて恐れるように呟くとフーマは怒鳴り声を上げてしまった。彼はとても短気な性格で挑発に弱くてすぐに怒ってしまうがそれが仇となる。エルフの聴力は人間よりも遥かに優れており人では聴けない音を聞き取る事が可能でこの声は彼女に聞こえていた。

 

「何、この声!? 何処から聞こえているの!?」

(ヤベッ……うっかり怒鳴っちまった)

 

 フーマは怒鳴ってしまった事を後悔するが手遅れでマーガレットは周囲を見渡して声の発信源と思わしきキーホルダーを手にとっていた。

 

「ここから声が聞こえた気がする……」

 

 マーガレットはキーホルダーを凝視するとフーマはその威圧に圧倒されて降参。彼女の前に半透明ながらも己の姿を見せる。それは海の様な青い肉体と忍び装束を彷彿させる装飾、鋭いトサカの形状が特徴的な青いウルトラマンだった。

 

『参ったぜ、姉ちゃんの聴力は対したもんだ……』

 

 フーマは溜め息を吐きながらマーガレットの前に出るが彼女は唖然としていた。

 

『おっと、自己紹介がまだだったな。俺は風の覇者、ウルトラマンフーマ!』

 

 彼は堂々とポーズを取って自己紹介をしたがマーガレットは未だに呆然としていたが直ぐに我を取り戻した。

 

「えっ……えぇっーー!?」

 

 彼女の悲鳴が室内に木霊するが幸い、防音対策を施していたマーガレットの家の外に聞こえる事はなかった。それからフーマとマーガレットは自己紹介を済ませた後にフーマがここへやって来た経緯を彼女に話した。無論、タイガと話す内容は同じなので省略。

 

「つまり、フーマさんは悪魔の欠片を悪用しようとする存在を仲間と一緒に戦ってはぐれたってこと……だよね?」

『そう言うことだ。俺の仲間(トライスクワッド)はタイガ、タイタスという奴等だが何処にいるのやら……。後、俺の事は呼び捨てで構わないぜ』

 

 マーガレットはフーマの経緯をまとめると彼は納得、フーマは自分の事を呼び捨てでも構わないと彼女に伝える。

 

「その仲間はもしかして前に出たあの二人の巨人さん達の事よね……?」

『おっと今からそいつらの特徴を当てるぜ。一人目は銀の角を左右に付けた鬼の様な銀色の巨人。二人目は黒と赤の身体で頭と胸に輝く星マークのあるゴリマッチョな巨人……って所だな』

 

 マーガレットが目撃した巨人の特徴をフーマは正確に当てた事に驚く。何故ならフーマは彼等と共にチームを組んで戦っているからだ。

 

『という事はあいつらはこの星に既に来ているってことか。変身している奴が誰だか知らねぇが怪獣が出たらタイガ達も出る筈だ』

「フーマさん、キーホルダーの持ち主を探す手伝いを私にさせて下さい!」

 

 彼はタイガ達が何れにしても現れると予見するもそれを聞いたマーガレットはキーホルダーの持ち主を探す事を提案した。彼女は困っている人を放っておけない性格でそれが偽善だと分かっていても行動しないと気が済まないのだ。異なる星からやって来た存在であっても例外では無いらしい。

 

『手伝ってくれるのは有り難い。けど闇雲に探しても見つかる訳じゃない。それに俺はこの星に来たばかりで情報は全く無い。少し危険だがタイガ達が出てくるのを待った方が良い』

「それなら大丈夫。私はセルフィアに暮らして長いからこの場所の事はそれなりに知っている。それに例の巨人(ウルトラマン)に変身している人が誰なのかは検討がついてるから任せて♪」

 

 フーマはこの場所の事に関して知らないと答えるがマーガレットはその心配は無いと説明する。その人物が誰なのかフーマは考えるも全く分からなかった。

 昼から演奏をする為に食堂へ赴くとカウンター席の端にレストがひっそりと座る光景が見えた。

 

(エルフの姉ちゃんが言った通りだ。あの兄ちゃんから仲間の気配を感じる。問題はどうやってこの状況を伝えるかだが……)

 

 その時、マーガレットの耳に激しく吹き荒れる風の音が聞こえた。それと同時にレストが店の外に飛び出す光景を目にすると後ろから自分の同族と思わしき小人が飛んでいた。

 

『やっぱり、あの兄ちゃんから仲間の気配を感じた。姉ちゃん、あいつの後を追うぞ!』

「分かった!」

 

 マーガレットはフーマの言葉に従ってナンパしに来た男性のヒロニーを押し退けてレストの後を追い始めた。彼女が追い付く前に街の外へ飛び出したレストはタイガスパークを構える。

 

『レスト、行くぞ!』

「分かった!」

 

 彼はタイガに変身して暴風を巻き起こす白い羽毛で覆われた猛禽怪獣グエバッサーと対峙する。タイガは先制攻撃と謂わんばかりに大地を蹴って走り右ストレートパンチを繰り出す。

 

「グェーー!!」

 

 右パンチを顔面に喰らったグエバッサーはよろめくが即座に鋭い嘴をタイガの胸部に突き立てて反撃。それを受けたタイガは痛みで怯むと自身の翼を刃の様に振り回して胴体を切り裂いた。

 

『ぐわぁっ!? このやろう!』

 

 タイガは負けじと右蹴りを叩き込もうとするがグエバッサーが自身の翼を羽ばたかせて強烈な暴風を発生させた。その暴風に動揺したタイガは咄嗟に右足を地面に下ろして踏ん張るがその力は圧倒的で立っているのが精一杯だ。

 一方、タイガとグエバッサーの戦場に駆け付けたマーガレットは暴風に巻き込まれており身体が吹き飛ばされそうになる。

 

「なにこの風! 強すぎる!!」

『グエバッサー、面倒な風を……!』

 

 タイガは誰かの声が聞こえた事に気付いて振り向くと木にしがみついている女性を見つけるがそれを見たレストは驚いて声を発した。

 

「マーガレット!? どうしてここに!」

『この気配……フーマも一緒なのか!?』

 

 互いの仲間がここにいる事に動揺する二人だがグエバッサーはその隙を見逃す事なく翼から大木を切り裂く風の刃を射出してタイガを切り裂こうとする。

 

『「マズイ!?」』

 

 風の刃が迫っている事に気付いた二人は咄嗟に背を向けてマーガレットを庇った。

 

『「ぐわぁぁぁっーー!?」』

「ウルトラマン!?」

 

 背中を真空波で斬られた激痛がタイガに強烈な痛みを与えるがそれを堪えて彼女に大声で伝える。

 

 

「マーガレット……君が持っているキーホルダーを渡してくれ!」

『お前の持っているフーマの力が必要なんだ、頼む!!』

 

 マーガレットは二人にフーマのキーホルダーを渡してくれと告げられた事に動揺するがフーマが直に彼女へ頼み込む。

 

『このままじゃ皆、お陀仏になっちまう。あの暴風に対抗できるのは俺だけだ……。頼む、あいつにキーホルダーを託してくれ!』 

「……分かった!」

 

 マーガレットが決心した瞬間、しがみついていた大木が吹き飛ばされて空中へ投げ出された。

 

「ひぇぇ~~高いぃぃーー!!」

 

 マーガレットは高所恐怖症で高い所が苦手で気を失いそうになりかける。タイガは吹き飛ぶ彼女を慌ててキャッチ、フーマのキーホルダーとマーガレットを自身の体内に取り込んだ。

 

『待たせたな、タイガ!』

「うそ、レストくんがウルトラマンだったの!?」

 

 再開を果たして喜ぶフーマに対してマーガレットはレストがタイガに変身していた事実を知って驚愕。

 

『待ちくたびれたぜ、フーマ……て何でこの子がいるんだよ?』

「マーガレットがフーマのキーホルダーを持っていたの!?」

『驚いている場合じゃ無いぜ、三人とも! 俺の事はこう呼べ……風の覇者、フーマってな!!』

《カモン!》

 

 フーマと一緒に入って来たマーガレットに疑問を抱くタイガとレストはフーマに促されてタイガスパークのレバーを引く。彼女からキーホルダーを受け取った彼は左手に持って叫ぶ。

 

「風の覇者、フーマ!」

 

 キーホルダーを右手に持ち変えるとタイガスパークの発光部と背景が青色に変化。レストは青く光るタイガスパークを掲げて叫ぶ。

 

「バディー……ゴォーー!!」

《ウルトラマンフーマ!》

 

 氷の結晶の様な光から生じる旋風の中からフーマが左手を上に伸ばして飛び出す。突如発生した強烈な閃光に怯んだグエバッサーは後退。光が収まると自身と同じ大きさとなったフーマが目の前に姿を表した。

 

『俺の名前はフーマ。銀河の風と共に参上!!』

「よし、これで戦える!」

「えっ、どういうこと!? た、高いぃ~~!!」

 

 レストはフーマに変身して気合いを入れるが姿が変わった事にマーガレットは戸惑う。彼女はウルトラマンの体内に初めて取り込まれた上に自分が高い場所にいる事に気付いて悲鳴を上げる。

 

『エルフの姉ちゃん、静かにしてな! 舌噛むぞ!』

「ごめん……」

 

 フーマがマーガレットに注意すると彼女は少ししゅんとした表情をして口を閉じた。グエバッサーはフーマに吼えて威嚇するが当人は右手を前に出して挑発する。

 

「グェェーーー!!」

 

 挑発に怒ったグエバッサーは両翼から羽を矢の様に射出して牽制するがフーマは両腕から無数の光刃で羽を相殺。更にフーマはグエバッサーの懐に間髪入れずに素早く飛び込んで右手刀による鋭い一撃を腹に撃ち込む。

 

『遅い!』

 

 そこから左肘撃ちと右回し蹴り、左蹴りと右ストレートを激流の如くグエバッサーの腹に叩き込んで追撃をする。グエバッサーはたまらず空中へ飛んで戦況を変えるべく何度も旋回を繰り返して風を巻き起こす。

 

『竜巻か……だが俺にその技は通じねぇ!』

 

 フーマは自身よりも数倍大きな竜巻を前にするが恐れることなく竜巻とは反対方向に旋回して逆回転の竜巻を生み出して相殺した。

 

『お次はこれだ!』

 

 彼はグエバッサーの周囲を飛び回りながら光波手裏剣を翼や腹を中心に連続で発射してダメージを与える。更にフーマは残像が生じる程の速さで動いて撹乱、光波手裏剣を鋭利な刃状にして投げ付けて傷をより深く刻み込んだ。

 

『レスト、エースレットを使え!』

「分かった!」

 

 レストの左腕に顕現したブレスレットは男女両性的なイメージを湛えた戦士の胸部を象ったブレスレット【エースレット】をタイガスパークでリードした。

 

《エースレット、コネクトオン!》

 

 ウルトラマンエースの幻影がフーマに重なるとタイガスパークにエネルギーを込めて解放、右手でピースマークを突き出して堂々と宣言。

 

『これはピースマークじゃねぇ! お前はあと二秒で終わりってことだ!』

 

 フーマは周囲を飛び回りながら月型の光刃を連続で発射。放たれた光刃は途中で多数の刃に分裂してグエバッサーの全身を切り裂く。無数の切り傷が刻まれたグエバッサーは満身創痍だ。

 

『月星光波手裏剣!!』

 

 タイガスパークにチャージされたエネルギーを解放。拳を作って胸の前で交差して気合を溜めて一気に腕を上下に開く。そこから半月型の大きな光刃を発射、光刃はグエバッサーを真っ二つに切り裂くとその場で倒れて爆散した。

 

『終わったぜ!』

 

 彼はグエバッサーを倒して空の彼方へ飛び去った。

 

『セイヤッチ!!』

 

 変身を解除したレストはマーガレットの側に立って頭を下げた。勿論、フーマも彼と同様に頭を下げる。

 

「フーマがお世話になりました。えっと……君を戦いに巻き込んでごめん」

『姉ちゃんのお蔭でこいつらに会えたからな。俺からもお礼するぜそれから姉ちゃんを戦いに巻き込んじまってすまねぇ!』

「良いのよ、私は気にしてないから。困った時はお互い様だからね」

 

 二人からお礼を言われて謙遜するマーガレットを見たフーマがある事を思い付いた。彼は精神を集中させて大気にある周囲のルーンを少し集めて結晶を生成。そのルーンは水色の水晶が飾られたペンダントに変えた。

 

『こいつは俺からのお礼だ。そのペンダントは俺の力がこめられている。そいつを着けていれば闇の力を遠ざけてくれる御守りだ』

「ありがとう! 大事にするね!」

 フーマは自分が作ったペンダントの説明をしてマーガレットに渡した。それからレストはマーガレットを店に送った後、自室に戻った。

 

「これで仲間が揃ったね」

『あぁっ! トライスクワッドのメンバーが揃った!』

『うむ、我々は三人で一つだからな!』

『うっしゃ! そんじゃ、あれをやりますか!』

 

 レストはトライスクワッドが全員再会を果たした事に安堵する。そして彼等はチームを結成した時の誓ったあることを始めた。

 

『生まれた星は違っていても』

『共に進む場所は一つ!』

『我らーートライスクワッド!!』

 

 三人は右拳を突き出して互いの拳に軽く当てた。するとタイガスパークが各々を象徴する色に輝く。それをレストは暖かい目で見ていた。

 トライスクワッド、ここに集結!




次回はアースマイトに恨みを持つ皇帝が出ます。


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逆襲のエゼルバード(その1)

  フーマが戦った日の夜、ガルドが潜伏する異空間である実験が行われた。

 

「さぁ、実験を始めよう」

 

 左腕に着けた機械を突き出して彼の目の前に設置されている等身大の赤い身体と金のラインが特徴のロボット【異次元超人エースキラー】に向けて古代魔法を発動。エースキラーの周囲に禍々しいオーラが漂ってそれが体内に入ると目が紫色に光った。

 

「ここは……どこだ?」

「お目覚めですかエゼルバード陛下。私はメフィラス星人のガルドと申します。ある計画の為に貴方を復活させた者です。宜しくお願い申し上げます」

 

 エースキラー?がそう問うとガルドは畏まった態度で答える。彼は自身の野望を達成させる一環としてエゼルバードの人格と魂をエースキラーの身体に定着させた。ガルドは自身を復活させた方法を説明した。

 

「そういう事か……。私の研究がここまで発展するとは、面白い物だ。それに機械人形に我の魂を定着させる力……興味深い」

「その研究を更に進めるべくエゼルバード陛下の力をお借りしたいのですが……宜しいでしょう?」

 

 ガルドは皇帝に対して丁寧な口調で答えるとエゼルバードは高らかな笑い声を上げる。

 

「良いだろう!まず材料をここに集めるのだ!」

「畏まりました」

 

 ガルドは皇帝の指示に従って実験に必要な材料の収集を開始した。指定された材料はドラゴン系のモンスターとルーンスフィアだ。モンスターはミニドラゴン、ルーンスフィアはガルドが複製した物を与える。

 

「後は……私からのサービスです。どうぞ」

「これは……。ふむ、見たところ只の人形では無さそうだな」

 

 ガルドはエゼルバードに竜の様な姿をしている人形を渡した。エゼルバードは渡された人形から秘められた力を感知する。

 

「これはスパークドールズという大きな力を持ったアイテムです。今のままでは只の人形ですが何らかの力を注ぎ込めば怪獣として実体化させる事ができます」

 

 ガルドは渡した人形に関する説明をした。スパークドールズは嘗て闇の支配者(ダークルギエル)が持つダークスパークの力によりに宇宙規模の巨大な戦争(ダークスパークウォーズ)に参加したウルトラ戦士と宇宙人、怪獣を全て人形に変えた事件である。元凶のダークルギエルは未来から降臨したウルトラ戦士により倒されたがスパークドールズは今も残っている。

 

「成程、ミニドラゴンを器としてエーテルリンクを唱えてこの人形の怪獣を召喚するという事か。それは面白い実験だ」

 

 エゼルバードはガルドの考えを察してそれにのり、ミニドラゴンを媒介にスパークドールズの怪獣を召喚する実験を始める。彼はルーンスフィアを持って秘術を唱えてスパークドールズとミニドラゴンを融合させて怪獣を召喚する。

 

「キシャァァァッーー!!」

 

 エゼルバードが呼び出した怪獣は怪獣ゲートを通って人間のいる世界に侵出した。

 

 

 

  翌朝、起床したレストは畑仕事に精を出していた。彼の王子としての仕事の一つであり作物や花を育てている。この時期はキャベツやサクラカブとオトメロン、トイハーブと青結晶等の作物と花でどれも春の季節が育成に適している。

 

「よく育っているなぁ~」

『うむ、オトメロンを運ぶ作業は良い筋トレになるな!』

 

 大きく育ったオトメロンを収穫したレストはリュックに仕舞い他の春の作物や花の収穫を進める。青結晶の収穫をして畑の仕事が終わった彼は深呼吸をして背を伸ばす。

 

「今日はこの辺にしておこう。ここの土を暫く休ませよう」

『畑を耕して作物を育てなくて良いのか?』

 

 畑を休ませると呟くレストにタイガは疑問を持って問い掛ける。彼の考えは作物をここで育て続ける方が良さそうだと思ったからだ。

 

「同じ土地で育て続けると畑が疲れるから定期的に休ませているんだ」

『成る程、同じ部位の筋肉に負荷を掛けさせ続けると却って痛めるという事と同じという事か。定期的に休ませた方が効率が良いという訳だな』

『へぇ~勉強になるなぁ~』

 

 レストがタイガに畑について軽く説明するとタイタスは自己流に解釈して納得、フーマはそれを聞いて感心する。それから飼育しているモンスターの畜産物を収集、その一部を出荷箱と自室の冷蔵庫に入れて畑仕事を終えた。

 

「今日の仕事は終わり! 昼飯食べてから筋トレも兼ねて水の遺跡を探索しよう」

『今日もトレーニングか……まぁ、程々にしとけよ。どっかの筋肉賢者みたいにストイックにならないようにな』

 

 レストは昼からの予定を立てるがフーマはトレーニングは釘を刺した。因みに今日の昼飯はサンドウィッチで追加の具材としてイチゴを挟んでいる。

 昼飯を摂り終えた彼は水の遺跡へ行く前に雑貨屋(まごころ)に立ち寄るとダグが店番をしていた。レストは店主に軽く挨拶をして買う物を手早く選んで会計の所へ運ぶ。

 

「いらっしゃい! おっレストか、何か買っていくか?」

「ダグ、こんにちは。今日は小麦粉とキャベツをそれぞれ10個買うから会計を頼むよ」

「毎度アリ! それにしても昨日は巨大なモンスターが出て大変だったナァ~。あの巨大モンスター、どうして出てくるんだろうナ?」

「どこから来ているだろうか?」

 

 ダグの雑談を聞く中で巨大モンスターが何処から出ているのか疑問を口にするとレストは首を傾げる。その時、外から爆発音が響き、悲鳴が聞こえて建物が揺れた。

 

「なっ、なんだ!?」

「この揺れ、まさか……!」

 

 突然の揺れと爆発に動揺するダグを他所にレストは支払いをして急いで雑貨屋を飛び出す。外に出ると空から大きな竜のモンスターが街を怪光線で攻撃をしていた。

 

「どうしたんだ急二……何だあの巨大モンスターハ!?」

「ダグ、ブロッサムさんを連れて早く逃げて。ここは僕がくい止めるから!」

「お……おいレスト、幾らお前でモ……」

 

 レストはダグにブロッサムと一緒に逃げる様に告げて走り去った。エゼルバードが召喚した怪獣……それは空を切り裂く怪獣という異名を持つ超古代竜メルバである。

 メルバは雄叫びを上げながらセルフィアの空を飛び回り目から怪光線を発射。逃げている人達に向かっている事にレストは気付いた。ここままでは間に合わない!

 

「危ない!」

『俺に変身しろ、レスト!』

《カモン!》

 

 咄嗟に建物の陰に身を潜めたレストはタイガスパークを起動して超空間を展開、フーマに変身する。怪光線が避難している観光客に着弾する瞬間、光の手裏剣が壁となって防いだ。手裏剣は光線が途絶えたタイミングで三つに別れて空にいたメルバに向かって飛んでいくも急上昇してかわされた。

 

『セイヤッチ!』

《ウルトラマンフーマ!》

 

 青い光が飛行船の前に現れると同時に青い巨人、ウルトラマンフーマが姿を表した。

 

『ふん、俺が相手だ。このスピードについて来れるかよ!』

 

 フーマはメルバに挑発を掛けると同時に飛行場から離れた方向に飛んでいく。その挑発に乗ったメルバはフーマを追いかける。後ろからの追跡を確認したフーマは街からある程度離れた場所で着地した。

 

『ここなら大丈夫だな』

「キシャァァァッ!!」

 

 後ろから着いてきたメルバは目から怪光線を再び発射するがフーマはそれを軽々と跳躍して回避、右手から光波手裏剣を出して反撃。迫る光波手裏剣をメルバは怪光線で相殺、小さな爆発が起きた。

 爆煙が消えた瞬間フーマが目にも止まらぬ速さで接近、超スピードのストレートキック【烈火蹴撃】を腹に撃ち込む。そこから高速で回転キックを繰り出す蹴り技【疾風蹴撃】で怯ませてメルバの頭上へ飛ぶ。

 

『シュアッ!』

 

 フーマはメルバの脳天に強烈な踵落とし【迅雷蹴撃】を決めて空にいたメルバを地面に撃ち落とす。落下するメルバに上空から急降下して叩き込む頭突き【垂直落下式弾丸拳】で追い討ちをかけた。頭突きは腹に直撃、そのまま地面に落下して強烈な衝撃を起こして地上に叩き付ける。頭突きを決めたフーマは地上に戻って直ぐにロンダートで距離をとった。 

 

『こいつはおまけだ! 極星光波手裏剣!!』

 

 彼は右手に生成した大きな光の十字型手裏剣をメルバに打つと腹に深く突き刺さって悲鳴を上げる。

 

「キシャァァァッーー!?」

『これで…… なっ!?』

 

 フーマはもう一度極星光手裏剣を打って決めようとした瞬間、空が漆黒の雲に覆われると同時に紫の稲妻がメルバに降り注ぐ。肉体の色が赤黒を帯びた色に変化、目の色が黄色から真紅に染まって甲高い雄叫びを上げた。

 

「キシャァァァッーー!!」

『まだまだ終わりじゃないってことか……』

 

 フーマは額に冷や汗を流した。メルバに起きた異変とは一体何なのか……。



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逆襲のエゼルバード(その2)

  メルバに謎の稲妻が降り注がれる数分前、フーマとメルバが戦う光景を遠くからエゼルバードが観察していた。フーマの連続攻撃によりメルバが一方的に押されている。どうやら戦況は芳しく無いようだ。

 

「ふぅん、スパークドールズの怪獣はこの程度か。だが……この力を試すには丁度良さそうだな」

 

 エゼルバードは右手に持つ禍々しい闇の力を秘めた拳サイズの球体に魔力を注いで天に翳した。すると魔力を帯びた球体からエネルギーが放たれ、メルバの頭上に暗黒の雲が発生。雲から発生した紫の稲妻がメルバに直撃すると肉体に大きな変化が生じた。

 身体の色が黒く染まって各部が膨張、目の色が禍々しい赤に変化して両腕の爪の形状が鋭利な鎌になっていた。これはベリアル因子を球体に変化させた物でベリアルスフィアというエゼルバードが独自で生み出したアイテムだ。ベリアルスフィアの力を受けた怪獣は強化されるだけでなく凶暴化させる作用がある。これによりメルバは凶暴化したのだ。

 

「ギャォォォーーン!!」

 

 メルバは全身から闇の力で形成された幾多の針をフーマに向けて射出するが辛うじて左へ転がって回避する。そこから立ち上がって手裏剣を打つべく構えたが突如飛来した闇の斬撃波を喰らって怯んだ。

 この斬撃波はメルバが爪を振り下ろして放たれた衝撃波はウルトラ戦士の皮膚に深い傷が付く程の威力だ。更に力を増したメルバは上に飛ぶとそれに応じてフーマも飛んで追いかける。

 

『待ちやがれ!』

「ギャォォォーー!!」

 

 彼は光波手裏剣を連続で放つがメルバが後ろに目が付いているかのように最小限の動きで軽く回避。メルバは嘲笑うかの様にフーマよりも速く飛んで反転、すれ違い様にメルバは強化された翼でフーマの身体を深く切り裂いた。

 

『うわぁぁぁっー!!』

 

 大きなダメージを受けたフーマは態勢を崩して地面に落下。メルバは急降下しつつ目から紫色の怪光線を発射、追い討ちを掛けるが咄嗟にフーマは幻煙の術で回避、そのまま地上に降りた。しかしメルバの追撃は止まらず全身から闇の針弾を雨の様に降り注がせて傷付いたフーマに容赦なく浴びせる。針攻撃を全身に受けた彼のカラータイマーが赤く点滅して警告音が大地に響く。

 

「くっ……こんな時に……。私に戦う力があれば」

「不味いですね……。最初は青い巨人が優勢でしたが何かの力の影響で強化された巨大モンスターに押されています。それにしてもあの稲妻は一体……?」

(レストくん……)

 

 その様子を展望台から戦いを見ていたフォルテとアーサー、マーガレットは焦った。フォルテは歯軋りするかの様に呟き、アーサーは先程メルバに降り注いだ稲妻の正体が何なのか考えている。そしてマーガレットは劣勢状態となったレストの無事を祈るしか無かった。

 

『うっ……こいつ!?』

 

 追撃を受けて倒れたフーマはヨロヨロと立つもメルバが空から急接近、両目から高出力の破壊光線を発射した。フーマは避けようとするが先程のダメージで動くのは困難だ。

 

『うわぁぁぁっーー!!』

 

 フーマは破壊光線をマトモに喰らい、背後から怪光線の追撃を受けて倒れた。何とか彼は片膝をつきながらも立って後ろに振り向く。

 

『ぐっ……』

「キシャァァァッーー!!」

 

 フーマは正面から猛スピードで飛来するメルバを避ける力が無い。このままフーマが倒されると思った時、メルバの身体に急激な異変が生じる。

 

「キャオォォーー……!?」

 

 何とメルバの翼が突然、崩壊すると同時に全身から真紅の稲妻が迸る。それにより軌道が逸れてフーマの横を通り過ぎ、地面に墜落した。肉体は急激な強化を代償に限界を超える急激なエネルギーの膨張に耐えきれずに崩壊を始めた。

 メルバは肉体の崩壊に悲鳴を上げながら何とか立ち上がるも大きな隙を晒す事になる。

 

『セイヤァーー!!』

 

 その様子を見た好機と捉え、フーマはタイガスパークから生成した手裏剣を蛇腹の如く連結させて光の剣を生成、振り下ろしメルバを真っ二つに切り裂く。

 

「ガギャァァァーー!!」

 

 メルバは光波剣・大蛇(スラッシュ・ソード)で切断されて倒れ、爆散。怪獣を倒したフーマは空の彼方へ飛び去った。それを密かにみていたエゼルバードは小声で呟く。

 

「ふぅん、あの程度の力に耐えられんとは……使えんな。もっと強い器が必要だな」

 

 彼はそう言い残してその場から立ち去る。何とかメルバを倒したフーマは空へ飛び去った。変身を解除したレストは先程の稲妻と強化された怪獣について考える。

 

「うぅっ、何とか倒せたけどあれは一体……?」

『分からん。しかし……あの力、とても禍々しい物だった』

『あの稲妻から微かだけどベリアルと似た力を感じたけど……』

 

 疑問を呟くレストにタイタスは不明と話し、タイガはベリアルに似た力を感じたと其々の見解を述べる。

 

「取り敢えず一旦、街へ帰ろう」

 

 レストは痛む身体を抑えてエスケープを発動して城の門前に移動した。

 

 

 

  メルバが倒されて街の住人や観光客は落ち着きを取り戻すが不安が消えていない。これ以上、観光客に負担を掛ける訳にはいかないので取り敢えず他の街に移す事になった。無論、遠方から来た観光客は翌日の朝に送るそうだ。

 人が閑散とした夜の城前にある広場にレストが帰還するとアーサー達が出迎えて心配していた事を告げる。それに対してレストは大丈夫、平気ですと笑顔で言ってサムズアップをして自室へ戻った。彼曰く、巨大モンスターの引き付けようしたら青い巨人が現れたので戦いの場に赴いたそうだ。

 

「いや~あんな巨大なモンスターがいたとは驚いたゼ! にしてもあの巨人は一体何だったんだ? 悪い奴じゃなさそうだけド……」

「レストさん……ご無事で何よりです」

「レストくん大丈夫でしたか。私や観光客への被害は無かったです。とは言えこのままにする訳にはいかなそうですね。此方でも巨大モンスターの対策を打たないと……。巨人達が街を守ってくれているとはいえ安心できないので」

 

 ダグとフォルテは自室に向かって歩く彼の姿を見て呟き、アーサーはモンスター対策を本格的にする様に国王に相談する算段を考案しながら其々の家に帰宅する。マーガレットは無言でレストを見つめた後に家に走って戻った。

 

「ぐっ……背中の傷が……」

 

 部屋に戻ったレストはベッドに倒れると同時に背中に付いた深い切り傷痕から襲う激痛に苦しむ。彼はあの戦いで負った痛みを笑顔で必死に隠していたがこれは街の人達に不安を感じさせない演技に過ぎなかった。

 レストはウルトラマンと一体化しており一定の傷なら短時間で治癒可能だ。しかし今回は闇の力を纏った攻撃を短時間に連続かつ高威力の攻撃ばかりだったので治癒速度が遅い。

 

『すまない、レスト。俺がしっかりしていればこんな事には』

「大丈夫だよフーマ。君のせいじゃない。闇の力が原因だから……」

 

 謝罪するフーマをレストは闇の力が要因であると諭すが痛みは止まない。その時、玄関の扉が開いて誰かが部屋に入って来た。

 

「レストくん、心配して来たけど。大丈夫じゃないみたいだね……」

「マーガレット!?」

 

 部屋にマーガレットがやって来て驚くレストだがそれに構わず彼女は彼のベッドの近くに進む。そして彼の元に近付いたマーガレットは背中を見せる様に指示する。最初は平気だと渋るレストだったが彼女が放つ無言の圧力により已む無く身体を横にして背中を見せた。マーガレットはレストの背中を覆う服を捲し上げると彼の背中に刻まれたX字の傷跡を見て呟く。

 

「レストくん……やっぱり我慢してたんだね。強がりも程々にしないと駄目だよ」

 

 彼女はレストに忠告しつつも手荷物から傷薬と包帯を取り出して応急措置を施し、癒しの魔法で痛みを軽減する。一連の作業を済ませたマーガレットは彼に耳元で囁く。

 

「レストくん、フーマさん。街を守ってくれてありがとう。無茶はしないでね」

「マーガレット……」

『すまねぇな、姉ちゃん。世話を掛けちまって……』

「私にできる事はこれぐらいだから気にしないで。レストくん、明日は病院に必ず行ってね」

「家まで送っていく……ぐっ!?」

 

 マーガレットはレストの部屋から出ようとするとレストはベッドから立ち上がって彼女の家まで送ろうとしたが背中の痛みに顔を歪めた。

 

「送ってくれるのは嬉しいけど怪我人は大人しくすること。またね!」

 

 マーガレットはそう言い残して彼の部屋を出た。彼女が居なくなった部屋でタイガとタイタスはふと呟く。

 

『お前を見ていると相棒の事を思い出すな。そいつは誰かを守る為に動く奴で熱血バカと言われていたけど……掛け代えの無い相棒だったな』

『うむ、君の戦う姿勢や熱い思いを見ると彼を思い出す』

 

 その呟きを聞いたレストは彼等の相棒について尋ねようとしたが強烈な疲れと眠気がやって来たので深い眠りに着いた。 




ベリアルスフィアはこの小説の独自設定です。
次回は幕間を執筆します。


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幕間:フーマとマーガレット

ルーンファクトリー5の発売日が確定。
発売したら遊ぶぜ!!


  翌朝、目が覚めたレストは何時もの畑仕事をする為に裏庭に足を運んで水を汲んだジョウロで作物に水を与えた。そこから収穫できる作物を収集、出荷箱に入れてモンスター小屋に入って畜産物を集める。収集物の一部をまた出荷箱に放り込んで畜産物と収穫した作物で料理を始めた。

 今日の朝食はサラダとゆで卵と苺牛乳でレストはあっという間に完食、テーブルにある皿を台所に持ち込んで洗う。それを終えた彼はセルフィアにある唯一の病院【小さな包帯】に向かった。

 

「ジョーンズさん、ナンシーさんおはようございます。今日は健康診断に来ました」

「おはようございますレストくん。健康診断ですね、分かりました。準備しますので少々、お待ちください」

「レストくん、おはよう。自分から健康診断を受けるのは珍しいわね」

「そうですね。たまには自分の身体を検査した方が良いかなと思ったので」

 

 9時頃に病院へ着いたレストは二人に挨拶した後に健康診断を受けた。ジョーンズは眼鏡を掛けた医者でその技量は優秀だがトマトジュースや悪魔の血等の赤い液体を見ると人格が豹変する。女性の看護師であるナンシーはジョーンズの妻で腕は確かだが彼に惚れすぎて目眩を起こすらしい。

 健康診断の結果、レストの肉体は健康そのもので背中や腹の傷が綺麗に治っていた。これはウルトラマンと一体化事によって常人を越える治癒能力を獲得している事を示している。それから他の検診をして異常が特に見当たらない事が分かった。

 

「お疲れ様でした。レストくんの身体に異常は無いです」

「ジョーンズさん、ありがとうございます」

「もし何かあったら私達に言ってね。レストくんは無茶をよくするから……ね」

 

 健康診断を終えたジョーンズに礼を述べたレストだがナンシーから無茶をしないように釘を刺す。その後、レストは病院を出てポコリーヌキッチンへ足を運んだ。

 その道中ですれ違う観光客やバドさんに挨拶をしながら進んで行って食堂に到着、店内に入った。レストを出迎えてくれたのはマーガレットのハープが奏でる音楽だ。

 彼女の演奏に聞き入ったレストは壁に寄り掛かって演奏を聴く。その音楽は気持ちが安らぎ、充実した気持ちになる。

 演奏が終わって客から拍手を貰うマーガレットは彼の存在に気付くと頃合いと判断したレストは声を掛ける。

 

「こんにちは、マーガレット。病院に行って検査したけど異常は無かったよ」

「レストくんの傷が治って良かった~。あの傷は数ヶ月は掛かるんじゃないかって心配したよ」

『迷惑かけちまって済まねぇな姉ちゃん。レストの傷は俺の力で治したから安心しな』

 

 彼の診断結果を聞いたマーガレットは安堵するとフーマがテレパシーを介して彼女の脳内に伝える。そして彼女はレストの注文を受けて料理を運ぶ。彼の左に空いた席にマーガレットは休憩も兼ねて着席した。

 

『それにしても姉ちゃんの音楽は聴いていて心が安らぐな。俺達の宇宙じゃ事件は日常茶飯事だからこうして落ち着ける一時があるのは良いものだ。惚れ惚れするぜ!』

「嬉しい!フーマさんの旅の話、聞きたいな。宇宙を又に駆ける覇者の冒険談」

 

 彼女は自分の演奏が褒められて嬉しくなりフーマの冒険談に興味が出た。

 

『へへっ、そうおだられると話さずにはいらねぇなぁ~。けど、俺の冒険談は長くなるから別の機会に改めるぜ』

「そっか~。宇宙を又に駆けるから話が長くなるからねぇ~。それよりもフーマさんは私の耳を見てどう思う。怖い……かな?」

『姉ちゃんの耳は個性的で良いと思うぜ。俺は色々な星を冒険したけど耳が尖った種族自体はそんなに珍しくないからな。強いて言うなら俺が怖いと思う奴は圧倒的な力を持って傍若無人に暴れる敵といった所だ』

 

 フーマはマーガレットの耳を見て率直に感想を呟く。彼女は自分の耳に対してコンプレックスを抱くが彼は様々な宇宙を冒険した経験により気にならず其よりも恐ろしい力を持った敵と戦う事が怖いと軽く返す。

 

「そっか~。ウルトラマンという種族はみんなこんな感じかな? 姿とか性格なんかも……」

『そうだな……。俺は他のウルトラマンに会ったことあるけど個性的な見た目だったぜ!俺に力を分け与えたウルトラ戦士や仲間、俺の故郷で生まれたウルトラマンも近い姿だ。タイガの故郷(M78星雲)に入ってもブルー族と見られるぐらいかもな』

 

 フーマは軽口を叩きながら語るがマーガレットの顔付きは沈んだままだった。その表情を見た彼は彼女に問いかける。

 

『その、何を悩んでいるか分からねぇが困った時はお前の近くにいる仲間達に相談したらいいかもな。勿論、俺でも良ければ力になるからよ!』

「フーマさん、話してくれてありがとう! レストくんも今日は来てくれてありがとう。ゆっくりしていってね」

 

 彼の言葉を聞いた彼女は元気な顔になると来てくれたレストにお礼を行って席を立ち、ピアノに向かって演奏を始めた。

 

「マーガレットの曲……うっとりするね」

『あぁっ、こうしてゆっくり聴くと癒されるな!』

 

 こうして王子と風の覇者はエルフが奏でる美しい演奏を終わるまでゆったりと味わった。



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勇者と暴君の激闘(その1)

  ある日、レストは鍛治台で槍と拳、片手剣を作成していた。その作業は数時間に及んだ末に三つの武器は完成する。

 

「できた!」

 

 彼は完成した武器を見て歓声を上げるとトライスクワッドの三人も喜びの声を出して祝福する。この武器はレストが自主的に製作した武器で彼等の戦いの手助け兼、御守りとして持って欲しいという思いから作った物だ。

 

『やったな、レスト!』

『レスト殿、お疲れ様です!』

『中々やるじゃねぇか、兄ちゃん!』

「槍はタイガ、拳はタイタス、そして片手剣はフーマ用に作った武器だよ。もしもの時はこれを使ってね」

 

 レストはそう言うと共に三つの武器をタイガスパークに納めて事前に調理したクッキーを取り出して口にする。クッキーから広がる甘味は身体の疲れを取って生命力が戻っていく。

 

「よし、作った武器を試したいから今日はダンジョンに行こう!」

 

 クッキーを食べ終えた彼は外に出てヨクミール森に赴く。近頃、この森に住むモンスター達が謎の凶暴化現象で人に危害を加える事が多くなっている。故にそのモンスター達の討伐を兼ねてここに行く事にした。因みに依頼主はエルフの自称名探偵のエルミナータである。彼女曰く、森で特に奇妙な現象が起きているそうだ。

 森に着いたレストは赤い鋭い目付きをしたオークを発見。同時に彼の存在に気付いたオークは彼に強烈な殺気を放ちながら飛びかかって来た。レストはタイガスパークに収納した勇者の槍を取り出してオークの腹に突き刺す。

 

「はあっ!」

 

 彼は槍を連続で突き続けて反撃される前にオークをはじまりの森に送った。そこから森の奥に進む途中で弓を持った赤目のオークアーチャーが矢を不意打ちで放つがレストは咄嗟にその場で屈んで回避。その態勢から槍を拳に持ち変え、火炎弾(ビッグファイア)を二つ放ってアーチャーを返り討ちにする。

 

「ふぅ~……危なかった」

『レスト、油断は禁物だ。どんな敵が襲いかかるか警戒は怠るな』

 

 タイタスから忠告を受けた彼は軽く返事をして引き続き森の中に進んでいく。道中に赤い蟻のモンスターのアントやオーク達が襲いかかるも賢者の拳で蹴散らす。更に森の奥に進むと青い甲虫型のモンスターであるビートルが出現した。

 赤目で狂暴な目付きをしたビートルは突進するがレストは華麗に回避。風の力を宿した片手剣【疾風ノ小太刀】を取り出してビートルに猛スピードで突撃。すれ違う瞬間に一閃を刻むと同時にビートルは倒れてはじまりの森に還された。

 

「奥まで来たな……。ヨクミール森は何度か来てるけどこんなに嫌な気配がするなんて」

 

 彼は不穏な空気を感じ取りつつも森の奥に足を運んだ。その先に強大な敵が待っている事を知るとは思わず……。

 

 

 

  同時刻、セルフィアの街の花屋【カーネーション】、ここは花や肥料を取り扱っている店で店員はエルミナータとコハクが勤めている。今日の店番は緑色のショートヘアーと可愛らしい姿が特徴的な少女のコハクだ。

 

「いらっしゃいませ~」

「こんにちは」

「こんにちはですわ」

 

 ドルチェとピコが来店、売られている花をじっくりと眺める。彼女等は病院に飾る花を新しくする為に店にやって来たのだ。どの花にしようか悩んでいるドルチェにコハクが声を掛ける。

 

「ドルチェちゃん、どうしたの?」

「コハク、病院に飾っている花を取り替えたいけどどれがオススメか迷って……」

「あぁっ悩むルーちゃんは素敵、後ろから襲いイタタタタ!」

「うっさい……」

 

 ドルチェの悩む姿を見て背後から忍び寄った幽霊少女【ピコ】の顔面を鷲掴みにする。彼女は悩んだ末に桜色の花弁が綺麗な花のサクラ草を選んで会計を済ませる。

 ドルチェは花を買って店を出ようとした瞬間、地面が大きく揺れた。その揺れは建物内に伝わり柱が激しく揺さぶれて店に飾っていた花瓶が倒れ、幾か割れてしまった。

 

「コハク!」

 

 彼女はコハクの所に急いで駆け付けて机の下に彼女と共に隠れた。漸くすると揺れが収まると同時に建物越しから大きな咆哮が聞こえた。

 

「何なの一体……!?」

「外に出るの!」

 

 コハクは直ぐに飛び出すとドルチェも慌てて彼女を追って外へ出ると衝撃的な光景を目撃する。なんとヨクミールの森一面が灼熱の炎の海に包まれておりその奥に巨大なモンスターが佇んでいた。

 

「なに……これ……?」

「森さんが……」

 

 唖然とするドルチェとショックを受けるコハク。巨大なモンスターはあらゆる怪獣の部位を合体させた怪獣【暴君怪獣タイラント】が森を蹂躙していた。頭の角はシーゴラス、大きな耳はイカルス星人、両腕の鎌と鉄球はバラバと腹部はベムスター、背中の棘はハンザギランと尻尾はキングクラブ、そして足はレッドキングで構成された怪獣だ。

 タイラントは嘗てウルトラ5兄弟を下した事もある強敵でセルフィアの街に襲いかかろう物なら確実に壊滅する。タイラントの足元にモンスター達は逃げ惑うがそれに構わず足でモコモコやアントを踏み潰し、口から火炎放射を放ってオーク達を容赦なく焼き付くす。

 

「ギャォォォォッーーーン!!」

 

 タイラントは雄叫びを上げながらヨクミールの森を洞窟ごと壊滅させて次の狙いをセルフィアの街に定める。タイラントの出現に気付いた住人達は飛行場へ逃げ始めた。

 

「助けてくれぇぇぇっ!!」

「キャァァァッーー!!」

 

 逃げ惑う住人達にタイラントが迫るも後ろから誰かが尻尾を掴んで侵攻を止める。

 

『これ以上、先には進ませねぇ!!』

 

 タイラントの侵攻を止める戦士、ウルトラマンタイガはそう叫びながら尻尾を引っ張って街から遠ざけようとする。しかしタイラントは邪魔だと謂わんばかりに軽く尻尾を振ってタイガを吹き飛ばす。

 

「ぐわぁっ!?」

 

 タイガは地面に叩き付けられるが直ぐに立ち上がって背中に組み付き、街から必死に遠ざけて右蹴りでタイラントを押し出した。タイラントはそれに負けじと右腕の鎌を振り下ろしてタイガの胸を切り裂く。

 

「キィィィィッーー!!」

『くそっ……!』

 

 タイラントは更に左腕の鉄球でタイガの腹を殴りつけて耳から無数の針状光線【アロー光線】を上半身に浴びせて追い討ちをかける。

 

『うわぁぁぁぁーー!!』

「グォォォーー!!」

 

 片膝を付いてよろけるタイガにタイラントは右足で蹴り上げて腹から冷凍ガスを放出。タイガを冷凍地獄に浴びせて苦しめる。

 

『くそっ……このままじゃ……』

 

 タイラントの猛攻に苦戦するタイガの運命は如何に!?




次回はタイラントと戦う経緯と結末を書きます。


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勇者と暴君の激闘(その2)

  タイラントが出現する数分前、レストは森の最奥部に到着。目の前に蝶と人が融合したモンスター【アンブロシア】がエゼルバードにより捕らえられていた。

 

「エゼルバード!!」

 

 エゼルバードは声が聞こえた方向に振り向いて吐き捨てる。

 

「来たな、アースマイト。余は新たなる実験をする所だ、邪魔をするでない! これから余が見せる新たなる世界の扉を開く為の実験の成果をとくと見るが良い!」

 

 宣言した彼はアンブロシアに殺し屋超獣バラバのスパークドールズをエーテルリンクで融合させた。アンブロシアの肉体が変貌、バラバになり巨大化する。

 

「グギァァァァッーー!!」

「行け、バラバよ! アースマイトを根絶やしにせよ!」

 

 バラバはエゼルバードの命令に応える様に咆哮、足元にいるレストに狙いを定める。自分が狙われている事に気付いたレストはタイガスパークを起動、タイガのキーホルダーを握った。

 

「バディー……ゴォーー!!」

《ウルトラマンタイガ!》

 

 赤い光に包まれた彼はウルトラマンタイガに変身して巨大化、バラバの顔面に右拳を叩き付ける。タイガの攻撃に怒ったバラバは頭部に付いた刃を射出、咄嗟に身体を反らして避けた。頭部の剣は光の鎖で繋がれており直ぐ元の場所に収めて雄叫びを上げた。

 

「グォォォーー!!」

 

 バラバはタイガとの距離を巨体には合わぬ速さで疾走して左腕の鎌を振り下ろし、タイガの肉体に深い傷を負わせる。そこから右腕の鉄球を肩に叩き付けて大ダメージを与えた。

 

『「うわぁぁぁぁーー!!」』

 

 強烈な攻撃を受けたタイガとレストは大きく仰け反るがバラバの追撃は止まらない。鼻から火炎放射を放って彼の身体を焼き、頭部の剣から発射する青い電撃(ショック光線)を立て続けに繰り出す。

 タイガは側転してショック光線を回避してスワローバレットをバラバの腹に撃って怯ませた。彼は一瞬の隙を付き走って接近、スワローバレットを当てた部分に猛烈な連続パンチを撃ち込んで締めの右蹴りで押し出す。

 

『シュアッ!!』

 

 そこから畳み掛け、間髪入れずバラバの首を両手で掴み左膝蹴りを顎に打ち付けて後頭部に右チョップを浴びせた。タイガの猛攻を受けてよろめくバラバを見たエゼルバードはある事を思い付いた。

 

「中々やるな……。では、これならどうだ!!」

 

 彼は懐からレッドキングとベムスターのカード、シーゴラスとハンザギランとキングクラブの怪獣カプセル、イカルス星人の怪獣クリスタルをエーテルリンクによりバラバに無理矢理融合させた。

 

「ーーー!!」

 

 バラバは足掻く間もなくその姿が暴君怪獣タイラントに変貌する。それを見たエゼルバードは高らかな笑い声を上げた。

 

「素晴らしい!! 余の研究成果がここまで発展するとは……。この世界はおろか、宇宙を支配するのも夢では無い!」

「キィィッーー」

 

 タイラントは大きな雄叫びを上げ、左腕の鉄球先端に付いているアンカーを飛ばしてタイガの右腕に巻き付ける。

 

『なっ!?』

「キィィッーーー!!」

 

 タイラントはタイガをアンカーで引き寄せて右腕の鎌を振り下ろす。鋭い鎌がタイガの身体に傷を入れ、その痛みに悲鳴を上げようとする間もなく口から高熱の火炎放射が放たれた。

 

『うわぁぁぁぁーー!!』

「キィィィィーー!!」

 

 火炎放射を顔面に喰らったタイガは襲い来る灼熱地獄に悶絶。タイラントはその光景を楽しむように咆哮を上げながらタイガに向けて大きな耳から針状の光線『アロー光線』を上半身に浴びせる。

 

『うわぁぁぁぁーー!!』

「グォォォーー!!」

 

 片膝を付いたタイガにタイラントは右足で勢いをつけて蹴り上げ、ベムスターの腹から極寒の冷凍ガスを放出。タイガを冷凍地獄に浴びせて苦しめるとガスで動きを鈍らせたタイラントはヨクミール森とそこ住むモンスターとタイガを口からの火炎放射で焼き払い、街に侵攻を始めた。

 セルフィアの街に迫るタイラントを前に住人達は一斉に避難する。しかしタイラントは住人達を踏み潰そうと地面を大きく揺らして近づくがタイガが尻尾を掴んで引っ張る。

 

『「ここから先は行かせねぇ!!」』

 

 タイラントを街から遠ざけようと躍起になるタイガだが邪魔だと謂わんばかりに軽く尻尾を振って吹き飛ばした。

 

『「ぐわぁっ!?」』

 

 タイガは地面に叩き付けられるが直ぐに立ち上がって背中に組み付き、街から必死に遠ざけて右蹴りでタイラントを押し出した。タイラントはそれに負けじと右腕の鎌を振り下ろしてタイガの胸を深く切り裂く。

 

「キィィィィッッーーー!!」

『くそっ……!』

 

 タイラントは更に左腕の鉄球でタイガの腹を殴りつけて耳からアロー光線を上半身にもう一度、浴びせて追い討ちをかける。

 

『うわぁぁぁぁーー!!』

「グォォォーー!!」

 

 片膝を付いてよろけるタイガにタイラントは左足で蹴り上げて腹から冷凍ガスを放出。猛烈な苦痛を与えて追い詰める。

 

『くそっ……このままじゃ……!』

 

 窮地に追い込まれるタイガを見たコハクは突拍子もなく彼の元に駆け寄る。それを見たドルチェは慌ててコハクを追いかける。

 

「行かなくちゃいけないの!」

「ちょっと待ちなさい!」

 

 タイラントは二人が近づく事に気付いて口から火炎放射で焼き払おうとする。それに気づいたタイガは咄嗟に彼女達の前に出て炎を身体で受け止めた。

 

『危ない!』

「コハク!?」

 

 コハク達を庇ったタイガのカラータイマーは激しく点滅する。その時、コハクは大きく息を吸って腹の底から大きな声を出すとそれに続いてドルチェも同様に大きな声を出した。

 

「巨人さん、負けないでなの!!」

「負けたら承知しないんだから……」

『「……!!」』

 

 二人の声援に反応したセルザの御守りを通じてレストが所持している御守りに二人のルーンが流れ込む。その力を受け取った二人は気合いで立ち上がり、炎の中を突っ走る。

 

『調子に乗るなよ……!』

「うぉぉぉぉっー!!」

 

 彼等は渾身の雄叫びを上げて全力疾走、渾身の力を込めた右アッパーをタイラントの顎に叩き込んで打ち上げる。このアッパーは拳のルーンアビリティ【アッパーカット】の力が籠められており通常のアッパーよりも威力が増している。

 強烈なアッパーを受けて吹き飛んだタイラントを見たタイガはある事を思い付いてレストに話し掛ける。

 

『レスト、お前と俺の力を合わせればこいつを倒せる!!』

「分かった……。よし、行くぞ!!」

 

《BGM:超勇者BUDDY GO!》

 

 深呼吸した彼はタイガと息を合わせて地を蹴って走った。態勢を立て直したタイラントは迫るタイガを迎え撃つべつ構える。しかしタイラントの前から突然、タイガは姿を消した。彼の姿を見失ったタイラントは首を振って慌てふためく。

 

「ギャァァーー!?」

 

 次の瞬間、タイラントの腹部に強烈な痛みが走る。レストが放った拳のルーンアビリティ【縮地法】で相手との距離を一瞬で詰めて鋭い一撃を叩き込む技だ。

 

『「くらえ!!」』

 

 レストは一回転して強烈な回し蹴りを繰り出す拳のルーンアビリティ【ダブルキック】をタイラントの左足にめり込ませる。タイラントはこれ以上の攻撃を許さぬ為に尻尾を振り回すがタイガは後方に跳躍して回避した。

 

『レスト、お前が作った槍を使わせて貰うぜ!』

「分かった」

 

 タイガはそう言ってレストがタイガの為に作った勇者の槍(ブレイブスピアー)をタイガスパークから取り出し、槍のルーンアビリティ【アクセルディザスター】で突撃する。この技は螺旋回転しながら相手に向かって突進する攻撃だ。

 螺旋回転で迫るタイガに動揺するタイラントは回避する間もなく命中。咄嗟に身体を反らし辛うじて直撃は免れるも大ダメージを受けた。そこから彼は槍のチャージ攻撃による刺突の連続攻撃を繰り出し、奥義で槍をその場で回転させてからタイラントの脳天に叩き付ける。

 

『「そこだ!」』

 

 タイガは神速の突きは衝撃波をまとい、複数回ダメージを与える槍のルーンアビリティ【ミリオンストライク】で追い討ちを掛ける。

 ルーンアビリティの連続攻撃でタイラントは既に満身創痍となった。タイガは止めを刺すべく槍に自身の全力を込めながらタイラントに接近、槍を腹に突き刺して残った全ての力を解き放つ。

 

『「タイガ……ダイナマイトスラスト!!」』

「ギャァァァッッーー!?」

 

 タイガとレストが力を合わせて放った渾身の必殺技を叩き込む。膨大なエネルギーを腹から全身に注がれたタイラントは耐えきれずに悲鳴を上げる同時に身体が大爆発した。

 

「ふんっ……」

 

 タイラントが倒されたエゼルバードは舌打ちをして撤退。タイガは膝から崩れ落ちると同時に変身が解けてレストの姿に戻って平原で仰向けに倒れていた。

 

「うっ……。ルーンアビリティの乱発は流石に負担が大きい……」

『必殺技は無闇に使うもんじゃ無いよな……』

 

 今回の戦いの反省点を上げる二人の元にコハクとドルチェが駆け付けた。

 

「レストくん、大丈夫なの?」

「コハク!? 大丈夫だよ……!」

 

 コハクの問いにそう答えたレストだがドルチェはある疑問を口にする。

 

「ねぇ……さっきレストが話してた人はあいつと戦っていた巨人なの?」

「えっ……何のことかな……?」

『レストさんは嘘が下手ですわ。誰だって見れば分かりますわよ。それに私もあの巨人は貴方の近くにいる事は知ってますの』

 

 何とか誤魔化そうとするレストだが余りにも挙動不審でピコにあっさりバレてしまった。彼の額に冷や汗が伝うがタイガは誤魔化しきれないと判断してレストに告げる。

 

『仕方ない……俺達の事を話そう』

「そうだね……。僕はさっきまであのモンスターと戦っていた。あの巨人、ウルトラマンタイガに変身してね。取り敢えず場所を変えて話すよ」

 

 レスト達は平穏を取り戻したセルフィア城の自室に移動してタイガと出会った経緯を一通り話す。この時、タイタスとフーマに関する情報はあえて伏せた。

 

「そうだったの~」

「信じられないけど……。あれを見たら流石に否定は無理ね」

 

 コハクはあっさり納得するがドルチェは戸惑うも直ぐに事実だと受け止めた。

 

『そういう事だ。けど、街にあいつらが攻めても俺が倒すから安心しな!』

「そうね……。危うく負けそうになったけど」

『ぐっ……。それはさっき俺が怪獣はかなり強かったからであってーー』

 

 タイガは威勢よく宣言するがドルチェは彼が敗北しかけた事を指摘する。ドルチェの指摘にタイガは言い訳を述べるがあっさり無視された。

 

「レストくん、ありがとうなの」

 

 コハクは頭を下げてタイガとレストにお礼を言うとタイガは照れる。

 

『まっまぁ……ウルトラマンとして当然の事をしたまでだ。礼を言われる程でも無いぜ』

「どういたしまして」

 

 レストは返事をするとコハクの顔が笑顔になった。彼は彼女の頭を撫でているとドルチェも小声で彼等にお礼の言葉を言う。

 

「レスト……ありがとう」

「どういたしまして、ドルチェ」

『いや~……それほどでも~』

「あんたには言っていてないから」

 

 レストは笑顔で返事をしてタイガは謙遜するも彼女はタイガに言っていてないとキッパリ否定した。

 

「それじゃあね。私達にできることがあったら何でも言ってね」

『一人で抱え込んでは困りますの』

「レストくんは一人じゃないの」

 

 ドルチェとピコ、コハクはそう言い残して其々の家に帰る。彼も城の自室に戻って眠りに着いた。 




オリジナル技

・タイガダイナマイトスラスト
 ウルトラマンオーブ ハリケーンスラッシュの必殺技ビッグバンスラストを元に生み出した技。相手の体に槍を突き刺し、高エネルギーを送りこんで内側から爆破する。


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賢者と闘士の決闘(その1)

「フフフ……このルーンの結晶が集まる一帯から産み出した怪獣よ、セルフィアの街を破壊せよ!」

 

 午前8時、エゼルバードはルーンクリスタルが大量に生えている所でゲートリジェクトで召喚したピンクドラゴンをベースに無数のルーンクリスタルを秘術で融合。全身が水色の結晶に覆われた怪獣ギラルスを召喚。

 ギラルスは紅葉古道に生えているルーンクリスタルを薙ぎ倒しながら平原を我が物顔で闊歩する。その時、上空から黒い剣の様な四つの柱がプロレスのリング状に配置されてギラルスの周囲を囲む。

 

「ギャオオーー!!」

 

 ギラルスは構わず進もうとするが高出力の電流に阻まれて先に進めない。それに戸惑うギラルスは爪や尻尾で破壊を試みるも無意味だった。遠目から見たレストは戸惑いを見せる。

 

『何だか分からないが……行くぞ、レスト!』

「分かった!」

 

 タイガの呼び掛けに応じた彼はギラルスの近くに接近、タイガスパークを起動しようとする。しかしレストの前に黒衣の男が現れて此方を見る。その男は口の口角を上げて右手を空に掲げ、光に包まれると右手の甲にタイガスパークを装着していないウルトラマンタイガに変身。

 目の前にいるギラルスと対峙した。それと同時にセルフィアの街の上空に謎の黒い円盤が三つ現れてタイガとギラルスの中継スクリーンが映った。

 

「なん……だと……!?」

『一体どういう事だ?』

 

 突如レストの前に現れた目付きが鋭く足の爪先が反ったタイガ?(以後、ニセタイガ)はギラルスに挑発する仕草を見せる。それに反応したギラルスは爪で切り裂こうとするがニセタイガは軽く身体を反らして避け、腹に強烈な右回し蹴りを打ち込む。

 

『シェァッ!!』

「グォォォーー!?」

 

 ニセタイガは余裕のある仕草を見せつけてギラルスを再び挑発する。それに反応したギラルスは突進するも身体を横にずらして回避と同時に後頭部に左チョップを入れた。

 

『ヌゥン!』

「ガォォォーーー!?」

 

 そこからニセタイガはギラルスの背中に右ヤクザキックと左蹴りを連続で叩き込み、右手から紫色の光弾【ダークスラッシュ】を結晶に覆われていない尻尾に当てた。

 連続攻撃を受けて怒ったギラルスは口から浴びた存在を結晶化させるガスを吐き出す。その攻撃に対してニセタイガは光の障壁【ダークバリア】を張って防御。自身に向かって吐かれたガスを押し返してガスを撒いたギラルスに浴びせた。

 

「グッ……ガァッ!?」

 

 ガスを返されたギラルスはなす術もなく結晶化して身動きが取れない。ニセタイガは固まったギラルスに渾身の右ストレートパンチを叩き込んで粉砕、怪獣をあっという間に倒した。

 

「巨大モンスターを倒した……」

「ありがとう、ウルトラマン!」

 

 ニセタイガは自身の勝利を自慢げにアピールした後、黒い円盤と共に空へ飛び去った。その場で呆然とするレストの前にニセタイガに変身した黒衣の男が姿を見せると飛び蹴りを繰り出す。

 

「くっ!?」

 

 咄嗟に身体を屈めて避けるも今度は拳で殴り掛かってきた。レストは迫る拳を体術でいなしつつ距離を取る。黒衣の男は彼に飛び掛かろうとした時、目の前に迫る何かを感じて咄嗟に後方へ跳躍した。

 

「レストさん、大丈夫ですか?」

「フォルテさん!? 僕は大丈夫です」

「貴様、一体何者だ!?」

 

 助太刀に来たフォルテがレストの前に立って問い掛ける。それを見た黒衣の男は口を開く。

 

「私はヘラクレス座M-16惑星グレゴール星から来た格闘家、グレゴール人だ。私の目的はただ一つ、ウルトラマンを倒して強くなる事だ!」

『何だと!? だったら何故俺の姿を使った。お前があの怪獣を呼び出したのか!?』

「いいや、あの怪獣が私が呼び出した訳では無い。お前の姿を借りた理由は私が侵略者であるとこの星の人々に誤解されないようにしただけで他意は無い」

「ではあの四つの柱は……まさか!?」

 

 黒衣の男【グレゴール人】は自身がウルトラマンと決闘に来た事と侵略目的では無いと語った。フォルテは四つの柱が突き刺さった真意に気付いて呟く。

 

「そうだ。あのリングで私とお前、どちらが本当の強者であるか証明する場所として選んだ。お前は三人のウルトラマンを宿している様だが……私が戦うウルトラマンはタイタス、君を指名する!」

『私との決闘を望むか。良いだろうその挑戦、受けて立とう!』

 

 グレゴール人は決闘相手にタイタスを指名する。その挑戦を受けたタイタスは承諾した。

 

「太陽があの柱の頂点に立った時が決闘開始の合図だ! 待っているぞ」

 

 グレゴール人はそう言い残して姿を消した。彼等の一部始終を見ていたフォルテはレストに呼び掛ける。

 

「レストさん……その、大丈夫でしょうか? あの人は相当な手練れと感じました。先程見せた余裕のある戦いをするあたりかなりの実力者だと伺えますが……」

「決闘を受ける事は正直、不安です。でもこれは僕がやるべき事です! 必ずこの街に戻りますので安心して下さい」

『フォルテ殿、ご安心下さい。私とレストの力を合わせれば勝機はあります』

 

 フォルテの分析に対して不安を吐き出すレストだが自身の使命を思い出して気持ちを奮い立たせる。タイタスはそれに加える様に勝つ可能性があると説明した。

 

「そうですね……。取り敢えず、時間まで私と軽くトレーニングをしませんか?」

『準備運動か……丁度良いな。レスト、フォルテ殿と一緒にやるぞ!』

「今から!? ……分かった。本当に軽くだからね」

 

 フォルテは決闘開始の時刻まで一緒にトレーニングをしようと提案する。タイタスが反応して承諾すると、レストは二人のトレーニングに渋々付き合う事にした。軽いランニングを始めた二人にダグが声をかけた。

 

「あの巨人、かなり強かったな! あの強者の余裕ぶり、流石だナ!」

「……」

 

 ダグはニセタイガの戦いぶりを称賛するがフォルテはそれを黙って聞く。グレゴール人の実力は本物だが何処か自身の強さをアピールしている感じにフォルテは違和感を覚えているからだ。

 走っている途中で旅館前で宣伝する灰色髪の女性【シャオパイ】に遭遇して呼び止められた。

 

「こんにちは! レストくん、フォルテとトレーニングしているか?」

「はい、軽く走っているところです」

「そうか。先程、平原に出た巨大モンスターを銀の角が生えた巨人がみたいだが……。あの戦い、最初に見た時と戦い方がかなり違うように見えたが気のせいか? 上手く表現できないが」

「普段の彼とは違う戦い方でしたね……」

「あの戦い方は誰かに自身の強さを見せつける様な感じだが、何時もの彼なら一生懸命戦っているが」

 

 彼女がニセタイガの戦い方が普段のタイガとは異なるという指摘を本物のタイガは無言で頷く。その後、シャオパイとの雑談を終えた二人はトレーニングを再開すると鍛治屋の前に人だかりができていた。

 

「グレゴール人とタイタス。どちらが勝つか……予想しよウ!」

「俺はグレゴール人に賭ける!」

「私はタイタス!」

 

 鍛治屋を営むドワーフの男性【バド】がグレゴール人とタイタスの勝敗を予想する賭けをしていた。彼は武器や農具を作っているが楽して金を稼ぐ事を目的に商売をしている。どうやらグレゴール人とタイタスの決闘の勝敗の予想で一儲けする事を企てているみたいだ。

 

「コラッ!何をしているのですか!? 戦いを見せ物にして一儲けしようなんて!!」

 

 それを目撃したフォルテはバドに怒鳴った。グレゴール人とタイタスの決闘は己の名誉と誇り、強さの証明をする為でその事情を知るフォルテが怒るのも無理はない。

 

「おっと、賭けは中止。店じまいダ!」

 

 フォルテの怒鳴り声を聞いたバドはそそくさと退散、フォルテは逃げるバドの後を追った。

 

「あははは……」

『うぅむ……我々の決闘をギャンブルの題材にするのは感心できん』

『全くだ。俺達の戦いは命懸けだ』

『そいつは同感だな』

 

 その光景を見たレストは苦笑い、タイタス達は苦言を呈した。 

 

 

 

 

 

 

「誰だ……?」

 

 レスト達がトレーニングに励んでいる頃、背後からの魔法攻撃による不意討ちを弾いたグレゴール人は低い声で問いかける。すると彼の前にエゼルバードが姿を見せた。エゼルバードはグレゴール人によってギラルスが倒された事に怒りを露にする。

 

「貴様、私が呼び出したギラルスを倒すとは……どういうつもりだ?」

「お前があの怪獣を呼び出したのか。悪いが俺のパフォーマンスとして利用させて貰った。安心しろ、ウルトラマンは俺が倒す。言っておくが私はお前がやる事に興味は無い。あくまでも己を強くする事が目的……それだけだ」

 

 エゼルバードの質疑にグレゴール人は吐き捨てる様に返答して姿を消した。平原に取り残されたエゼルバードは苦虫を噛み潰したような表情をして呟く。

 

「おのれぇ……。アースマイトだけでなく余の産み出した怪獣すらもコケにする愚か者とは……この屈辱、どうしてくれよう」




プチ解説

  結晶怪獣ギラルス
 ピンクドラゴンをベースに大量のルーンクリスタルを融合して産み出した怪獣。全身に生えているクリスタルは光線を跳ね返す能力があるが尻尾にクリスタルは無い。
 口から吐くガスは浴びせた物を結晶化させる効果がある。しかし自身もガスを浴びると結晶化してしまう。


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賢者と闘士の決闘(その2)

今回はオリジナルウルトラタイガアクセサリーが出ます。


  決闘を申し込まれたレストは太陽に柱が重なる時を待っている。メロディストリートにある崖のベンチに座って考え事をしていた。

 

(柱の周囲に観光客や人が近付かないようにフォルテさんやアーサーさんから勧告があるから大丈夫だけど僕はあいつに勝てるのだろうか……)

「レストくん、どうしたの?」

 

 悩んでいる彼の元にマーガレットが声を掛けて近くにやって来た。彼女は偶然にも仕事の休憩がてらにメロディストリートを散歩していてベンチに座るレストを見つけたのだ。

 

「マーガレット……。いや、これは僕の問題だから」

「レストくん」

 

 レストは彼女に決闘を申し込まれた件について話そうとしたが自分の問題であると思って口を閉じる。しかしそれをよしとしなかったマーガレットは強い口調で彼の名を呼ぶ。

 

「悩み事があるなら相談して欲しい。隠し事をされるのはあんまり良い気がしないからさ。どうしても言いたく無いならそれで良いけど……」

「マーガレット……。実はーー」

 

 彼女はレストに悩みがあるなら自分に話して欲しいと訴えると彼はやむなく決闘を受けた件について話す事にした。レストが話す内容を真剣に聞いた彼女は暫し考える。

 

「そうなんだ……。私にできる事は殆ど無いと思うけど、君は何のためにこの街を守ってきたのか……。セルザウィードさんや住人達の事を想ってみたら負けないと思う。……レストくん、私は君を信じているから」

「マーガレット、ありがとう。君の言葉で何か見えた気がするよ!」

 

 彼女がそう言うとレストは立ち上がって堂々と答え、決闘の場所へ赴いた。

 

(レストくん、立ち直って良かった)

 

 彼の背中を見つめるマーガレットの顔に微笑みが浮かべる。レストは彼女の激励により覚悟を決めたのだ。

 

 

 

 

 

  太陽が柱の真上に登った時間、オレンジに染まる空を照らす夕日が二人の戦士が前に立つ。これから二人による死闘が始まる。

 

「さぁ、互いの名誉と誇りをかけた決闘……始めよう!」

「お前の挑戦……受けて立つ!」

《カモン!》

 

 グレゴール人は右手を上げると共に怪しい光に包まれる。レストはタイガスパークを起動してタイタスのキーホルダーを左手に持って掲げた。

 

「力の賢者、タイタス!」

 

 キーホルダーを右手に持ち変えて腰を落として右腕を空に突き出すと同時に叫ぶ。

 

「バディィ……ゴォォーー!!」

《ウルトラマンタイタス!》

 

 マーブル状の光からタイタスが飛び出して地面に降り立った。タイタスの正面にグレゴール人が嘗て地球で戦った戦士、ウルトラマンダイナを模したニセウルトラマンダイナの姿で待機している。

 その色は赤と黒が特徴のタイタスとは異なる。青と銀に彩られており目の下に隈と身体に金のラインが入っていた。二人の巨人が現れると同時にセルフィアの上空に黒い円盤が飛来して空中にスクリーンを投影。そこに映る映像をセルフィアの住人達は興味深々に眺めている。

 

(レストくん……)

(レストさん……ご武運を祈ります)

 

 マーガレットとフォルテはタイタスを見ながら心の中で祈りを捧げる。二人はリング内で構えて動きを伺っているとニセダイナが先制、素早く右手から黒い楔型の光弾【ダークスラッシュ】を放った。

 

『アストロビィィーーム!』

 

 タイタスは額から星型の光線を発射して光弾を相殺。ニセダイナは次に腕を十字に組んで放つ光線【ダークソルジェント光線】を即座に繰り出す。

 

『ロッキングフレア!!』

 

 タイタスは負けじと左掌から強烈な光波熱線を放出、ダークソルジェント光線に衝突して拮抗した後に爆発。互いに繰り出した光線は消え去った。

 

『光線対決は互角という事か……。ならば、これならどうだ!』

 

 光線対決が引き分けとなったタイタスは格闘戦を仕掛けるべく大地を蹴って走り、ニセダイナに接近してショルダータックルを繰り出す。

 

「フンッ!」

 

 ニセダイナはタックルを身体を軽く横に反って回避、すれ違う瞬間に左手刀をタイタスの首の後部に叩き込む。手刀を喰らったタイタスはよろけるが直ぐに右腕を振って反撃、ニセダイナは両腕でそれを受け止めた。

 

『ぐっ……。こいつ、かなりの手練れだ!』

「シュアァァッ!!」

 

 タイタスの腹に右回し蹴りを撃ち込んで怯ませて胸に左拳を叩き込み、右ヤクザキックでその巨体を蹴り飛ばす。連続攻撃に圧倒されそうになるタイタスだが両手で地面を思い切り叩き、反動を利用して起き上がって叫ぶ。

 

『賢者の拳を受けてみろ!』

 

 右拳に力を込めたタイタスは賢者の拳(ワイズマンズフィスト)を繰り出すとニセダイナの腹に直撃する。強烈な攻撃を喰らって怯む仕草を見せるもニセダイナは直ぐに態勢を立て直し、右フックで反撃した。

 

『なんの!』

「ハァッ!!」

 

 タイタスはこの攻撃を左腕を前に出して防ぐも左回し蹴りを脇腹に喰らってしまった。強固な肉体を有する彼だがニセダイナは急所に攻撃を的確に当てており確実にダメージを喰らわせている。

 

「テァッ!」

『ぐぉっ!?』

 

 ニセダイナはタイタスの鳩尾に鋭い右貫手を差し込んで痛撃を与えて動きを止め、頭に左ストレートを叩き込む。顔面に拳を受けたタイタスは大きく後退、痛みに悶絶するがニセダイナの猛攻は留まる所を知らない。

 

「エァッ!」

『ぐぅっ!?』

 

 空に跳躍したニセダイナはタイタスの両肩を連続で踏みつけ、ダメージを与えて最後の一撃で顎を思い切り蹴り上げる。

タイタスの身体が宙に浮くと同時にニセダイナはドロップキックで巨体をリングの外側に押し出した。

 

『がはぁっ……。これは強烈な電流か!?』

 

 彼の背中に強烈な電流が迸ると共に地面に倒れて呟いた。ニセダイナは倒れるタイタスに挑発する仕草を見せて冷静さを失わせようとする。

 

『私に挑発とは……舐められものだな』

 

 タイタスは安い挑発を一蹴するがニセダイナの狙いは彼を挑発にのせる事ではない。一瞬の隙を付いてタイタスに接近して鳩尾に強烈な右フックを叩き込む事が目的だった。

 

『くっ……。敵ながら見事だ』

「タイタス、お前は強いがこんな物では無い筈だ。お前の本当の力……見せてみろ!」

 

 タイタスはグレゴール人の戦闘能力を称賛する。しかしグレゴール人はタイタスの潜在能力がある事を指摘して距離を取った。

 

「タイタスさん、頑張って!」

「皆さん、聞いて下さい。この街に襲う脅威を救った彼……タイタスに今こそ声援と勝利の声を届けましょう!!」

 

 マーガレットが彼に声援を送るとフォルテは住人達に声援を発するように告げる。しかし住人達は困惑するがその間にもタイタスは防戦一方になる。ニセダイナの攻撃を喰らっても彼は何度も立ち上がり続けた。

 タイタスのカラータイマーが点滅して膝を付く。彼の限界が迫るも闘志は消えない。それを見たニセダイナは自分がこれを求めていたと歓喜の声を発した。

 

「そうだ……それで良い。お前の本当の力を引き出して見せろ!!」

『そうだ……。我々には守るべき物がある……。ここで立ち止まる訳にはいかん!!』

『「そうだ……。ここで倒れてなんかいられない……!」』

「タイタス!タイタス!タイタス!タイタス!」

「タイタス!タイタス!タイタス!タイタス!」

 

 住人達がタイタスを必死に応援する声が届いた二人は再び立ち上がった。

 

『レスト、私と君の力を合わせて戦おう!』

「分かった! 行こう!」

《BGM:WISE MAN’S PUNCH》

 

 タイタスはレストと共に戦う決意を固めて両拳にレストが作った武器である賢者の拳を装備してニセダイナに反撃を開始。一瞬で間合いを詰めて鋭い一撃の縮地法がニセダイナの腹に直撃、その守りを貫通してダメージを与える。

 

「グハッ……!?」

『まだだ!』

 

 怯むニセダイナにタイタスは片腕で彼の肉体を上に持ち上げて地面に思い切り叩きつける。そこからニセダイナを両手で掴んで立ち上がらせ、強烈な左膝蹴りを腹に入れた。

 

『鍛え上げられた肉体の力を受けてみろ!』

「グゥッ!?」

 

 攻防が逆転したタイタスは両腕を胸の前で交差させてクロスチョップをニセダイナの胸に撃ち込み、右肩で体当たりを繰り出して地面に打ち倒す。

 

『私達のウルトラマッスルの全力……見るが良い!!』

 

 地面に倒れたニセダイナを両腕で持ち上げて背部に自身と共に叩き付ける投げ技【マッスル・スープレックス】を喰らわせた。ニセダイナが立ち上がると同時にタイタスは腹に左反転蹴りを撃ち込む。彼はさらに拳のルーンアビリティ【ダブルキック】をニセダイナの脇腹に連続で叩き込んで追撃する。

 連続攻撃に圧倒された隙を突き、タイタスは片腕で持ち上げてニセダイナをリフトアップで地面に投げ飛ばした。満身創痍になった彼は立ち上がり、決着を付けるべく互いに走り出す。これが最後の激突となる。

 

「シュアッ!」

『ヌゥン!!』

 

 ニセダイナとタイタスが其々繰り出した右フックと左フックが互いの頬を掠めて相殺。そこからニセダイナは左ストレート、タイタスは渾身の右ストレートを全力で放った。

 一瞬の静寂が決闘場を支配して観客達は息を飲んで見守る。タイタスの右ストレートがニセダイナの頬に直撃、ニセダイナの拳は紙一重でタイタスの頬の前で止まっていた。

 

「やったーー!!」

「お見事ですぞぉぉ!!」

「やったゼ!」

 

 住人達の歓声が響くと共にニセダイナのマスクに亀裂が入る。それと同時に変装が崩れてグレゴール人は本来の姿をさらけ出す。自身の姿が露になった彼は降参してタイタスに告げる。

 

 

「見事だ……ウルトラマンタイタス、私の敗けだ。この先の戦いは過酷になるやもしれんが君達なら越えられるだろう。これを持っていくが良い」

 

 グレゴール人はそう言うとタイタスに自身の力を宿した指輪(ウルトラタイガアクセサリー)【グレゴールリング】を授ける。彼は指輪を渡して上空に発生させたワームホールに黒い円盤を率いて飛び去った。

 

『グレゴール人……彼は誇り高き武人だった。また手合わせしたいものだ』

「そうだね……」

 

 タイタスはグレゴール人とまた手合わせする事を誓った後に夕焼けが照らす空の彼方へ飛び去る。

 変身を解除したレストは街の展望台から沈む夕日を見送りながら呟く。

 

「今日はありがとう。タイタスのお陰で勝てたよ」

『礼を言うなら私の方だ。君と仲間達の応援があったから勝てた。応援する意志は我々に限界を超えた力を引き出してくれる』

 

 レストの御礼にタイタスはそう返す。そこにマーガレットとフォルテがやって来て声を掛ける。

 

「レストくん、大丈夫だった?」

「レストさんご無事でなによりです。怪我はありませんか?」

「僕は大丈夫だよ。心配してくれてありがとう、二人とも。これからポコリーヌキッチンへ食事に行くけどどうかな?」

 

 彼は夕飯を摂る為にポコリーヌキッチンへ行くことを提案すると賛成した彼女達はレストの後を追った。彼等の戦いはまだまだ続く。




  オリジナルウルトラタイガアクセサリー解説

・グレゴールリング
 グレゴール人の顔が彫られた指輪。使用すると格闘能力が一時的に上昇する。トレギアは関与していないので闇の力やリングに依存する作用は無い。


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忍者と覇者の死闘(その1)

  グレゴール人が宇宙に去ってから数日後、畑仕事を終えたレストは久しぶりに旅館の風呂に浸かっていた。ここ最近は休憩する間もなく戦い続けており彼の肉体と精神に疲労が蓄積していたのだ。

 

「ふぅ~……久しぶりに風呂に入ると癒されるなぁ~」

『この旅館の風呂は気持ちいいな!』

 

 レストが呟くとその隣にフーマの幻影が出現して風呂に入って入り心地の良さを讃える。

 

「それにしても連続で怪獣や宇宙人の襲来が続いているから休まらないよ」

『同感だ。だが風呂に入るとそれを忘れられそうだ。俺の先輩ウルトラマンのオーブさんにもここの風呂は心地好いと伝えよう。あの人は風呂に入るのが好きだからな』

 

 

「なるほど、ウルトラマンという種族は基本的に風呂には入らないっと。個人の資質によるといった所か。因みにフーマはこの旅館の温泉は気に入ったか?」

『そうだな……俺はこの旅館の銭湯は気に入ったぜ。また入りたいな。たま~にここへふらっと訪れて入りたいぜ。その時はお前と一緒にな!』

 

 フーマは堂々とレストに宣言するも当人は首を傾げる。

 

「フーマ、僕は何も言ってないけど……?」

「あれっ? お前がてっきり質問しているかと思ったけど」

 

 彼等は何処からか聞こえた声に立ち上がって警戒すると後ろから声が響く。

 

「それは何よりだ。ここ最近のアンタはかなり無茶をしていたからな……」

 

 レストは後ろから声が聞こえて振り向くと水色の長髪と狐耳、尻に狐の尻尾が生えた竜の神官を勤めていた青年【レオン】が既に風呂に入ってきた。

 

「レ、レオンさん!? いつの間に……?」

「ついさっきな。アンタが誰かと会話をしている声が聞こえてな。その話相手は最近、噂になっているあの巨人の一人か? なぁに、誤魔化す事は無い。これでも俺は口は固いからな。安心しろ」

「安心しろって……。フーマ、レオンさんにこの事を大丈夫かな?」

『あの手合いに誤魔化しは通用するとは思えねぇが……。くそっ、俺のミスだ。俺達の会話が盗み聞きされていた以上、隠すのはほぼ無理だ。しかもこっちの会話が丸聞こえかつ俺の存在を認識できる奴が他にもいるとは……。こうなれば俺達の事を話すしかなさそうだな』

 

 観念したフーマとレストはタイガとタイタス、フーマと知り合った経緯とセルフィアで起きている異変に関して一通り説明をした。

 

「なるほど、この街に迫る未曾有の危機をアンタ達が対処しているということか。それでその事はアーサーに話したのか?」

「アーサーさんにもこの件は既に話しています。僕がウルトラマンに変身できる事は隠しています。しかしフォルテさんとマーガレット、ドルチェとコハクに知られましたが」

 

 セルフィアの真の王子であるアーサーに話しているかと質問したレオンにレストはそう答えた。ウルトラマンの正体は安易に明かして良いものではない。下手に知られると怖がれるだけでなくこの街を危険に晒す可能性があるからだ。

 

「そうか、俺にできる事は多くないということか……。だが街の近くに怪獣が出た時は住人や観光客の避難誘導をしてアンタ達の戦いに巻き込まれないようにすることならできそうだ」

「それだけでも充分です。ありがとうございます」

『俺にとっても助かるぜ。ここ最近は街の近くで怪獣が出る頻度が多くなっているからな。この街にいつ直接的な被害が出るか分からないからな!』

「なぁ~に、俺はアンタ達の邪魔にならないようにしているだけだからな。礼を言うのはこっちの方だ。くれぐれも無理はしないようにな……」

 

 レオンは彼等が戦う理由を知って自身にできる事は殆ど無いことを愚痴る。しかしそれがレスト達にとって助かっている事を知った彼は無茶はしないように忠告した後に風呂から出た。

 

「ふぅ~冷や冷やした。僕がウルトラマンになっている事を内緒にしてくれて良かった~」

『俺も一時はどうなるかと思ったぜ。これからは無闇に話をしないよう、肝に命じよう』

 

 二人は今後のやり取りに注意を払うと戒めて風呂から出て脱衣場で着替えて旅館のロビーに続く階段を下る。その途中でこでほんわかでおっとりした親しみのある雰囲気を醸した女性の【リンファ】に話し掛けられた。

 

「お客様がドロだらけになって帰っていらしたんです。紅葉古道でパァムキャットの群れに追いかけられたって……。そのおかげで、家のお風呂は大繁盛だったんですけど、やっぱり心配ですね~。どなたか、八匹ほどでいいのでこらしめてきてくれないでしょうか~」

 

 ふんわりした口調で彼女はレストにモンスター退治の依頼をすると彼はすぐに引き受けた。早速、レストはパァムキャットがいる所へ向かおうとした時、リンファに呼び止められた。

 

「レストくん、気をつけて下さい。お客様の話しによりますとそのパァムキャット達は目が赤くて凶暴化しているとのことです」

「分かりました。ありがとうございます!」

 

 彼女はパァムキャットが凶暴化している事を告げると彼はお礼を言って旅館から飛び出した。レストは旅館の近くにある飛行船へ向かおうとした時、ディラスに釣りをしないかと誘われた。

 

「よっ、レスト。これから俺と一緒に釣りをしないか?」

「ディラス。誘ってくれて嬉しいけど僕はこれから紅葉古道に行ってパァムキャットを退治しに行くんだ。また今度、誘ってね」

「そっか……忙しい時に声を掛けて悪かったな。紅葉古道か……最近、あそこにいるモンスター達が凶暴化しているから気をつけろよ」

「分かった。じゃあまたね!」

 

 ディラスはレストが走り去る背中を見て不吉な予感を一瞬、感じるも気のせいだと思って釣り場の竜の泉に足を運んだ。

 ディラスの心配を他所に紅葉古道へ着いたレストはパァムキャットを探すべく進んで行くと黄緑色のキノコ型モンスターのトリッキーマッシュに遭遇した。このモンスターは毒粉等を撒き散らす厄介な奴だが彼の敵ではない。

 

「そこだ!」

 

 レストは右掌から風の刃を放つ魔法【ソニックウィンド】でトリッシュをあっさり撃退して先に進む。彼の道中に襲うモンスターはトリッシュやミーノ、フワリ等で彼は疾風ノ小太刀で素早く片付けるが件のパァムキャットは見当たらない。

 

「そろそろ見つかるとは思うけど……」

『この感じ……レスト、気をつけろ。奴らが来る……!』

 

 フーマが警告した瞬間、依頼を受けた八匹のパァムキャットに遭遇。その目が禍々しく赤い目をしていてこちらに強烈な殺気を放っている。リンファの言った通りでレストに容赦なく襲い掛かった。

 

「行くぞ!!」

 

 疾風ノ小太刀を構えた彼は片手剣のルーンアビリティ【パワーウェーブ】で目の前に立ちふさがるパァムキャットを一掃した。この技は剣先に気合を溜め、波動を放出する剣技で牽制として使っている。

 数匹のパァムキャットはこの一撃ではじまりの森に送還されたが残ったパァムキャットが疾走してレストに迫る。更に背後へ回り込むように数匹のパァムキャットは枝分かれしており彼の逃げ道は塞がれた。

 

「そこだ!」

 

 レストは回転しながら踏み込み、斬りつける片手剣のルーンアビリティ【ラウンドブレイク】で周囲のパァムキャットに反撃して背後から襲った連中を送還した。前方から襲った連中は吹き飛ばされるもまだ数匹残っており尚も彼に攻撃を仕掛けようと構える。

 

「これで終わりだ!」

 

 レストは攻撃される前に一瞬で間合いを詰め、一閃する剣技【ダッシュスラッシュ】で残ったパァムキャットをはじまりの森に送還。これでリンファから受けた依頼を達成して帰還しようとした瞬間、背後から殺気を感じとる。

 

『レスト、危ない!!』

「なっ!?」

 

 フーマの呼び掛けに反応したレストはその場で走って跳躍すると彼が立っていた場所に大きな爆発が生じる。すると爆煙からエゼルバードが突然、姿を見せた。

 

「今の攻撃を避けるとは、流石はアースマイト……。否、ウルトラマンの力を宿す者よ」

『レスト!』

「分かってる! エゼルバード、今度は一体何をするつもりだ!?」

「知れたことを……。汝をここで消す、それだけだ!」

 

 エゼルバードは目的を端的に告げると共にゲートリジェクトで灰色の布を被り、鎌を持った不気味なモンスター【ゴースト】を召喚。

 彼は右手に持った干からびた象の様な絵が描かれた怪獣のカプセルを起動してエーテルリンクを唱える。するとゴーストとカプセルが融合して巨大化、【忍者怪獣サータン】が出現した。

 

「行け、サータンよ。忌まわしきアースマイトを抹殺せよ!」

「ギャォォォッーー!!」

 

 サータンは大きな雄叫びを上げて近くにいるレストを踏み潰そうと歩き始めた。レストはサータンから逃げるように転がって回避、タイガスパークを起動する。

 

 

《カモン!》

「風の覇者、フーマ!」

 

 転がりながら左手に持ったキーホルダーを右手に持ち変えてフーマに変身して風を起こしながら巨大化した。

 

『さぁ、ここからは俺の出番だぜ!』

「行こう!」

 

 フーマに変身したレストは互いの息を合わせてサータンに挑む。ここに忍者と覇者の死闘の幕が上がった。




次回はフーマとサータンの本格的な戦いを書きます。


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忍者と覇者の死闘(その2)

  紅葉古道に舞う紅葉に一陣の風が吹く。その風は赤く染まる大地では極めて目立つ青い光を纏った巨人……ウルトラマンフーマが降り立った。青い光が消えるとその姿があらわとなりこの地とそこに住むモンスター達を荒そうとする忍者怪獣に視線を向けた。

 

『俺の名はフーマ……。銀河の風と共に参上!』

「グォォォッ……!」

 

 サータンはフーマの出現に動揺する事なく雄叫びを上げて威嚇するも無意味だ。銀河の風と共に戦い続けた彼にとっては負け犬の遠吠えに等しい。

 フーマは風と共に大地を蹴って疾走、サータンに素早く接近してコマの様に回転しながら連続回し蹴り(疾風蹴撃)を繰り出して怯ませる。そこから右足にエネルギーを込めてキックと同時にエネルギー弾を叩き込む蹴り技【烈蹴撃(ストライクスマッシュ)】で追撃をかけた。

 

『まだまだ!』

 

 彼は相手に攻撃の隙を与えない様に烈火蹴撃で畳み掛け、回し蹴りと同時にエネルギー弾を放つ技【疾風光波脚】を繰り出した。サータンはこれ以上の攻撃をさせまいとその場で透明になり姿を眩ませた。

 なんとこの怪獣はゴーストの能力を獲得している。その能力とはこの場から姿を完全に消してかつこちらの攻撃が命中しないという厄介なものだった。

 

『ちっ、あいつ……隠れやがった。だが俺から逃げられると思うなよ!』

 

 フーマが威勢よく叫んだ次の瞬間、サータンは彼の死角に現れて長い鼻を伸ばして彼の身体に巻き付ける。フーマは巻き付いた鼻を振りほどこうとするが締め付ける力は強く、びくともしない。

 

『なっ、こいつ!?』

「ギャォォォォーーン!!」

 

 サータンは両手から闇の力が込められた魔法【ダークボール】をフーマの腹に撃ち込んで怯ませた。更に追撃といわんばかりに自分の元に引き寄せてフーマを思い切り突き飛ばす。

 

『ぐわっ!?』

「グギァァァッーー!!」

 

 サータンは身体を透過させてその場から姿を消してフーマを撹乱、左横に姿を見せると左手からウォーターレーザーを発射した。フーマの左脇腹にレーザーが直撃、地面に倒れるがサータンは追撃といわんばかりにダークボールを投擲する。

 

『そうはいくか!』

 

 フーマは顔の前で手で印を作ると同時にサータンの前で煙幕を起こして姿を消すとダークボールは地面に着弾した。彼はサータンの右横に移り、針状の光波手裏剣を三発打って背後へ素早く動く。

 

「ギャォォォッーー!!」

 

 サータンは右に振り向くがフーマの姿が見えずに混乱しているがその隙を見逃さずに三日月型の光波手裏剣を更に打ち込んで背中に傷をつけた。

 背中の痛みを感じ取ったサータンは後ろを見るがフーマは神速残像により死角へ移動しており姿を捉えるのは困難だ。彼は苦無型の光波手裏剣を二発打ってサータンを怯ませた。

 フーマはサータンに追撃を喰らわせようと神速残像で懐に一瞬で接近する。しかしサータンは目から激しい閃光を放って近づいたフーマの目を眩ませた。

 

『しまった!?』

「グギァァァァーー!!」

 

 一瞬の隙を見せたフーマはサータンに今までの仕返しと謂わんばかりに右手で突き飛ばしてダークボールを投げ付ける。そこへ全身に生えているやすりのような強度を誇る体毛(アイアンヘアー)で彼に体当たりをして追い討ちをかけた。

 

「ギャァォォォッーー!!」

『ぐわぁぁっーー!!』

 

 サータンは強烈な痛みで苦しむフーマに容赦なく長い鼻を伸ばして胴体を締め付けて拘束。両手からダークボール、口からウォーターレーザーを発射して大ダメージを喰らわせた。

 サータンの連続攻撃をもろに受けたフーマのカラータイマーは赤く光って点滅している。

 窮地に追い詰められたフーマは残された気力を振り絞ると両腕から強烈な波動【轟波動】をサータンに向けて放つ。轟波動を顔面に喰らったサータンは怯んだ拍子に鼻の締め付けを緩めた。その隙を付いたフーマは幻煙の術でその場から姿を消した。

 

『ここからは俺達の反撃だ! レスト、お前が作った武器……ここで使わせて貰うぜ。覚悟しやがれ忍者野郎!!』

「分かった!」

《BGM:覇王を往く風の如し》

 

 背後に姿を見せたフーマはレストにそう告げると同時に左手に疾風ノ小太刀を逆持ち、右手に苦無型の光波手裏剣を順手で装備してサータンへ斬りかかる。この時、全神経を集中させて攻撃速度を速める双剣のルーンアビリティ【瞬迅】を使った。この技の効果は行動速度を上げて手数を底上げする事ができるがルーンの消費が激しいという欠点がある。 

 彼は自慢のスピードと瞬迅の効果を活かしてすれ違う瞬間に小太刀で左脇腹、右手に持った苦無を用いてサータンの全身に切り傷を入れていく。途中で右手の苦無を背中に突き刺して怯ませて隙を生み出して攻め立てる。

 

『テェィヤッーー!!』

 

 フーマはサータンの周囲を縦横無尽に飛び回りながら光波手裏剣を打ち、小太刀であらゆる所を切り裂く。サータンは必死に彼を捕らえようとするが疾風の如く移動しており目で追いかけるのが精一杯だった。フーマは光波手裏剣を打ちながら接近して小太刀で切りつけて確実にダメージを与えて怪獣を弱らせていく。

 連続攻撃を終えた彼はタイガスパークにエネルギーを集約、極星光波手裏剣をサータンの鼻に狙いを定めて打つ。極星光波手裏剣は鼻に直撃、そのまま長い鼻を切断するとサータンは大きな悲鳴を上げて激痛に苦しむ。

 

「ギャォォッーー!?」

 

 苦痛の叫びを上げる忍者怪獣の隙を付いたフーマはある物を使えと促した。

 

『レスト、ジャックレットを使え!』

「分かった」

《カモン!》

 

 レストはその指示に応じてタイガスパークをレバーを引いて左腕を前に突き出すと左手首に銀と赤い二重線が特徴的なブレスレット【ジャックレット】が顕現。タイガスパークでジャックレットをリードすると音声と共に球体部の色が黄緑色に輝く。

 

《ジャックレット、コネクトオン!》

 

 黄緑色のオーラを纏ったウルトラマンジャックの幻影が出現。それが消失すると同時にフーマは跳躍、矢尻型の光刃をシャワーの様に降らせ、小太刀をサータンの腹の影に突き刺して動きを封じる。

 

『これで終わりだ!……竜星光波手裏剣!』

 

 鋭利な先端の槍を模した光刃をタイガスパークから生成。それを右足に纏って急降下して飛び蹴りを繰り出した。更に彼は普通に落下するだけで無く自分の身体を竜巻の様に回転させて貫通力を高めたきりもみキックにして威力を底上げする。

 サータンは逃げようと試みるが身動きが取れずに戸惑う。フーマは疾風ノ小太刀を投げた際、密かに仕込んだ影縫いの術でサータンの動きを封じていたのだ。

 逃げる術を失ったサータンの胴体に渾身の竜星光波手裏剣が直撃! 巨大な槍型の光刃を足に纏ったフーマがサータンを貫くと同時に後ろへ着地。その瞬間、サータンが倒れて爆散。忍者怪獣を撃破したフーマは地平線の彼方へ疾風の如く飛び去った。

 

『シュアッチ!』

 

 

 

 

「ふぅ……。今日の戦いは大変だったなぁ~」

『レスト、お疲れさん。お前と俺の力を合わせればここまで強くなるとは……。お前には底知れねぇ力が秘められているかもしれねぇな!』

「そんな事ないよ。ただ僕はこの場所を守る為に必死になっただけだよ」

 

 二人は依頼を終えて街に戻る途中、背後から黒い球体がレストの背中に直撃。その衝撃で倒れた拍子にグレゴールリングを地面に落としてしまった。

 

「何だ……一体……!?」

 

 レストは顔を上げて状況を確認すると目の前にリングを発見して回収を試みるもエゼルバードがそれを拾い上げた。

 

「このリングは貰うぞ、セルフィアのアースマイトよ。これは汝にとっては過ぎたる力だからな」

「ま……て……」

 

 彼は手を伸ばすもエゼルバードは空間を裂け目に潜って姿を消す。レストは薄れる意識と視界に抗うも虚しく気を失ってしまった。

 

『しっかりしろ、レスト!』

『レスト殿、目を覚ませ!』

『おいレスト! ここでくばるんじゃねぇ!』

 

 三人は必死に大声で呼び掛けるが反応は無い。気絶した彼はどうなる!?




次回はタイガの強化形態が出ます。


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黄金の輝き!大地天空の勇者(その1)

  グレゴールリングを強奪したゼークス帝国の元皇帝のエゼルバードは異空間に帰還。そこに彼の主であるガルドが話かける。

 

「エゼルバードよ……研究は順調か?」

「無論だ。後は余の身体に適合する怪獣とベリアル因子を融合すれば私を倒したセルフィアのアースマイトが住む城と街、そしてお前の敵であるウルトラマンとやらを倒せる。それとお主から預かったスパークドールズを使えば磐石だ。抜かりは無い」

「おぉ~それは嬉しい事です。期待していますよ」

 

 彼はガルドに研究成果を報告、ウルトラマンとアースマイトの打倒を宣言してその場を去った。異空間から灼熱の溶岩地帯で煮えたぎる洞窟【デリリウム溶岩窟】の最奥部にワープしたエゼルバードは配下の魔術師と対面する。

 

「エゼルバード様、お待ちしていました。作戦の準備はできています」

「そうか。データ収集は先程、終えた。アースマイトよ、ここから余が本当の地獄を見せるぞ……。ハハハッーー!!」

 

 魔術師は準備が整っていると報告すると彼は高笑い上げてアースマイトへの復讐を改めて誓う。エゼルバードはレストから奪った怪獣リングをお抱えの魔術師に与える。

 そして彼は白い怪獣の絵が描かれた怪獣と禍々しい皇帝を思わせる黒い巨人が描かれた二つの黒いカプセルを取り出して起動させた。

 

「この力を持ってセルフィアのアースマイトと街を滅ぼす。エーテルリンク……!!」

 

 エゼルバードは秘術を唱えるとエレキングとカイザーベリアルの怪獣カプセルを融合。三つの螺旋の光となった彼の肉体が変化してエレキングの頭にエースキラーを彷彿させる金の甲冑、左手の鋭い爪と肩の鎧を装着したベリアル融合獣【サンダーキラー】が生まれた。

 

「おぉっ、これぞ皇帝に相応しい姿。では私も……エーテルリンク!」

 

 魔術師もエゼルバードに続いて植物と機械が混ざりあった怪獣の人形(スパークドールズ)とデリリウム溶岩窟の最奥部で咲いている大きな花のモンスター【ラフレシア】を秘術で合体。

 魔術師とグレゴールリングを媒介として生み出された合成怪獣【バイオス】が現れた。デリリウム溶岩窟に現れた二大怪獣はセルフィアに向けて進撃を開始する。

 

 

 

 

  エゼルバードが計画を開始する少し前、気絶したレストは目を覚ますと病院のベッドで寝ている事に気づく。彼は痛む身体を起こしてベッドから立つと近くにいたこの病院で看護師をしている金髪の女性【ナンシー】に声を掛けられた。

 

「レストくん、気が付いて良かった~。まったく……無理しすぎよ? お金はいいから、次は気を付けてね。

 それと……貴方をここまで運んで来てくれたディラスくん達にお礼を言うのを忘れないでね」

 

 ナンシーは起き上がったレストにそう告げて去った。その後、ディラスとフォルテとマーガレットが御見舞いにやって来た。

 

「気が付いたか」

「レストさん、大丈夫ですか?」

「ディラス、フォルテさん。それにマーガレット、心配かけてすみません……。僕を病院に運んでくれてありがとう」

「レストくん……良かったぁ~。もぅ~~心配したよ」

 

 ディラスがぶっきらぼうに尋ね、フォルテは大丈夫かと確認すると問題無いと彼は答える。レストが病院に運んでくれた事に礼を述べるとマーガレットがとても心配していた事を述べた。

 

「大変だ! 展望台に直ぐに行くようだが!」

 

 そこに銀の短髪と腰に尻尾が特徴的な少女【シャオパイ】が病院に慌ててやってきた。それを聞いたレストは怪我を押してベッドから飛び出して展望台へ向かう。

 

「無茶するな!」

「動くのは危険です!」

「レストくん!?」

 

 見舞いに来ていた三人は彼の後を追う。展望台に到着したレストは望遠鏡に目を通す。紅葉古道の方角から合成怪獣サンダーキラーとバイオスがセルフィアに向かって侵攻している光景を目にした。こちらに迫る二体の怪獣は足元にいるモンスター達を平然と踏み潰して侵攻している。

 

「失せろぉぉっーー!」

「邪魔だぁぁっーー」

 

 サンダーキラーは口から強烈な電撃、バイオスは胸部の穴から猛毒のガスを噴出して周囲のモンスターを一掃する。彼等の蹂躙を前になす術も無く逃げ惑うモンスター達だったがそれを見たエゼルバードは嘲笑うかの様に見下す。

 

「この力……素晴らしい。ネイティブドラゴンとは比較にならない巨大な力……この世界を統べるに相応しい!」

 

 圧倒的な力を振るう彼は次々とモンスター達を蹴散らしながら木々を薙ぎ倒してセルフィアに向けて進撃を続ける。

 

『この感覚……レスト、気を付けろ。今回の怪獣は手強いけど大丈夫なのか?』

「傷が治った訳じゃ無いけど僕は行く。この街を守るために……!」

 

 心配するタイガに対してレストは戦う決意を固めて展望台から降りようとした時、城の吹き抜けの天井からセルザウィードが飛翔した。

 

「セルザ!?」

『いかん、幾らこの世界を支える神竜であってもあの怪獣達はこの世界の理の外から来た存在。このままではセルザウィード殿が倒されてしまう!!』

 

 レストはタイタスの警告を受けて尚更走って向かおうとするもマーガレットとディラスがそれを止める。

 

「レストくん、無茶はしちゃダメ。これ以上レストくんが戦ったらもたないよ!」

「レスト……お前、まさか……!?」

「二人とも、ごめん。それでも僕は行くよ……!」

 

 二人の静止を振り切った彼は展望台を降りて街の外へ向かって疾走、逃げ惑う人混みを掻き分けて城門を通過した。

 

『レスト、俺に変身しろ!俺のスピードなら間に合う!』

「分かった!」

 

 レストは走りながらタイガスパークを起動、フーマのキーホルダーを握って変身。疾風と共に水色の光に包まれたフーマはセルザウィードに向かって飛んでいった。

 

 

 

「この地を荒らす不届き者達よ聞け! 妾、風幻竜セルザウィード。この世界の理を逸脱した力を傍若無人に振るう貴様らの横暴は許さん! 妾の力を持って止める。覚悟せい!」

 

 セルザウィード実力行使として全身にルーンを集中させて怪獣と同等の大きさを竜巻を発生させて二大怪獣にぶつける。エゼルバード達は巨大な竜巻が迫るも涼しい顔をしながらそれを正面から受け止めて吸収する。

 

「なっ、妾の力が通用しないじゃと……!?」

「ふぅん。貴様に様は無い、消えろ!」

 

 サンダーキラーは胸に竜巻のエネルギーを集約、高出力の破壊光線に変換してセルザに向けて発射する。

 

「なっ……!?」

 

 セルザは思わず目を閉じて痛みに備えるが何時まで経っても痛みが感じない。その事に違和感を覚えて目を開けると彼女が見た光景は自身よりも大きな竜巻で破壊光線を遮る姿だった。

 

「うぉぉぉっ……!」

『セルザウィードに手出しはさせねぇ……!!』

 

 竜巻で光線を打ち消した青い光の巨人(ウルトラマンフーマ)は構えて後ろにいるセルザに告げる。

 

『セルザウィード、ここは俺に任せてお前は街に戻れ!今のお前じゃあいつらには勝てない。街の人達を守ってくれ……頼む!』

「……分かった。この場はお主らに任せる……頼むぞ!」

 

 セルザウィードはフーマに役割を託すと街に向けて飛び去っていく。自身の力ではエゼルバードに通用しない事を知ったからだ。サンダーキラーは飛行するセルザに向けて光弾を放つがフーマの光波手裏剣により相殺された。

 

『お前らの相手は俺達だ。この先に行きたきゃ俺達を倒してからにしな!』

 

 フーマは勇ましく宣言するとサンダーキラーに接近して右ストレートを撃ち込み、左回し蹴りで追撃を入れる。サンダーキラーは後退しながらも左手の爪を振り下ろし、フーマの胴体を切り裂いた。

 

『「うわぁっっ!」』

「ギャャァァッーーー!!」

 

 フーマは切り裂かれた痛みに悲鳴を上げるがエゼルバードは容赦なく光弾を連射する。迫る光弾を前にするフーマは光波手裏剣を発射された光弾と同じ数を打って相殺した。

 

「やるな……セルフィアのアースマイト。そして光の巨人よ」

「陛下、こいつの相手は私に任せて下さい!」

 

 魔術師が変身したバイオスは頭から光線をフーマの背中に当てて怯ませ、右腕に生えた触手を伸ばして胴体に絡ませた。フーマの動きを封じて引き綴り寄せ、胸部のダクトから毒ガスを噴出して苦しめる。

 

「くくっ、セルフィアのアースマイトとセルザウィードよ。汝の暮らす街をここで破壊してやろう……光栄に思うが良い!」

 

 セルフィアの街に迫るサンダーキラーは口にエネルギーを充填して光弾を放とうと構える。セルザウィードは住人達を守る為に立ち塞がろとする。しかし威力が高すぎて防ぎきれる見込みは無い。

 

「やめろぉぉーー!!」

『「くっ、邪魔をするな!」』

 

 セルザとフーマはサンダーキラーを止めようとするが間に合わない。エゼルバードによって街が壊されようとした時、フーマの身体から黄色の光が飛び出した。

 

『ヌゥン!』

 

 黄色の光を纏った巨人がサンダーキラーにアッパーを叩き込んで光弾を強引に外させた。巨人が纏った光が消えるとウルトラマンタイタスが姿を現した。

 

『ルーンの加護のお陰で私は実体を取り戻す事ができた。セルザウィード殿、ここは私達が引き受ける!』

「すまぬ。ここは任せるぞ」

 

 タイタスは実体化できるようになったのでサンダーキラーの侵攻を阻止すべく立ち塞がる。

 

「ウルトラマンよ……我の邪魔をするな!」

 

 エゼルバードは彼の妨害に憤り、左手の爪に電撃を纏わせて切り裂こうとするがタイタスはそれを右手で掴んだ。

 

『鍛え方がなっていない。賢者の力、とくと見るがいい!』

 

 彼は左手の拳にエネルギーを集約させて賢者の拳(ワイズマンズフィスト)を叩き込んでバイオスの方に吹き飛ばした。フーマは飛来する物体を感知して跳躍、吹き飛んだサンダーキラーとバイオスが衝突して地面に倒れた。

 

『フーマ、私も一緒に戦うぞ!』

『レスト、悪いが俺は限界だ。タイガに変わってくれ』

「分かった」

『任せろ!』

 

 フーマはレストに限界である事を告げてタイガにバトンタッチして構える。態勢を立て直したサンダーキラーとバイオスが臨戦状態に入った。

 

『レスト、俺達はサンダーキラーを倒すぞ』

「エゼルバード……ここでお前を倒す!」

『なら私はバイオスと戦おう』

 

 タイガとレストはエゼルバードが変身したサンダーキラー、タイタスは魔術師が変身したバイオスに対峙する。二大戦士と二大怪獣の激闘の幕が上がる。




次回はタイガの強化形態が登場します。
因みに今回、登場した魔術師はSPの新婚モードに出てくる人物を使用しています。


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黄金の輝き!大地天空の勇者(その2)

『「行くぜ!」』

『たとえ天が許しても、私のウルトラマッスルが許さんぞ!』

「ギャォォォッーーー!!」

「陛下の野望を阻む者は誰であろうとこの私が倒す!」

 

 タイガは勇ましく、タイタスは自身の筋肉を強調しながら堂々と宣言して各々の前にいる怪獣に攻撃を仕掛ける。サンダーキラーはタイガを迎撃すべく左手の爪に電撃を纏わせて切り裂き、バイオスはタイタスを牽制する為に頭部から白色熱線を発射した。

 

『「はぁっ!」』

『アストロビィーームッ!』

 

 タイガはサンダーキラーの爪を跳躍で回避、頭部を右足で踏みつけて背後へ着地。タイタスはアストロビームで熱線を打ち消してそのままバイオスに命中してよろけさせた。

 

「これでも喰らえっーー!」

 

 バイオスは胸部の排気口から毒ガスをタイタスに向けて放出するがタイタスは右掌からロッキングフレアを放って毒ガスを掻き消した。

 

「なにっ!?」

『この私に小細工は通用せん。賢者の拳は全てを打ち砕く!』

 

 タイタスは動揺するバイオスに歩いて近づき正拳突きを胸部のダクトに叩き込み一撃で粉砕、胸部がへこみ電子機器から火花が生じる。これによりバイオスは自慢の武器である毒ガスを放出できなくなった。

 

「こんちくしょぉっーー!!」

 

 自棄になった魔術師は近接戦闘に持ち込み、機械で強化された左手からパンチを繰り出すも鍛え上げられたタイタスの肉体にダメージを与えられなかった。タイタスはお返しに右チョップを頭部に連続で撃ちながら叫んだ。

 

『マッスル!マッスル!スゥーパァー……マッスル!!』

 

 彼はよろけたバイオスに自身の体を弾丸に見立てて、敵に突進して強烈な体当たり(タイタスボンバー)を決めて吹っ飛ばした。

 

『「うわぁぁっーー!?」』

「フハハハッーー、汝の力はこの程度か」

 

 タイタスとバイオスが戦っている頃、タイガはサンダーキラーの尻尾に巻き付けられて電撃を浴びせられていた。強烈な激痛にタイガとレストは悲鳴、エゼルバードは優越感を込めた笑い声を上げていた。

 

『「こんなもん……!」』

 

 タイガはタイガスパークから勇者の槍を取り出して力を振り絞り、それをサンダーキラーの尻尾に突き刺す。尻尾に槍が突き刺った痛みに襲われたエゼルバードは思わずタイガの拘束を解いてしまった。

 エゼルバードは後退するが間の悪い事にタイタスボンバーで吹き飛ばされたバイオスに激突、両者は派手に地面へ倒れた。

 

「ぬぅぉっ!?」

「ぐはぁっ!?」

 

 バイオスを追跡したタイタスはタイガと合流、彼の無事を確かめて問題無いと問いかける。

 

『タイガ、大丈夫か?』

『助かったぜ、タイタス』

「ちょっと危なかったよ。助けてくれてありがとう」

 

 タイタスの機転で難を逃れたタイガは礼を述べた。倒れているサンダーキラーとバイオスに向けて二人はスワローバレットとアストロビームを放って牽制する。しかしタイガとタイタスのカラータイマーが赤く点滅、活動の限界時間を告げた。

 

『レスト、ここからは俺達の反撃だ。パワーアップするぞ!タイガスパークのレバーを引いてくれ』

「えっ……どういうこと?」

 

 タイガの言葉に疑問を抱くレストは首を傾げながら槍を横に突き立て、彼の言われるままにタイガスパークのレバーを引いた。

 

《カモン!》

 

 タイガのキーホルダーが黄金の光に包まれるとそれが大きくなり右上部に青い球体、左上部に黄色の球体が付いたフォトンアースキーホルダーに変化した。レストはタイガスパークで青い球体、黄色の球体をリードする。

 

《アース》

《シャイン》

「輝きの力を手に!」

 

 彼はキーホルダーの下部を右手で握って腰を捻り、右腕を突き上げて叫んだ。

 

「バディィッーー……ゴォッーー!!」

 

 タイガの身体へ脚から金を基調とした鎧が装着されていく。そこから腕や胸に鎧が付いてウルトラホーンが大きくなり金色に染め上がった。

 

《ウルトラマンタイガフォトンアース!》

『シュワッ!』

 

 黄金の光から右腕を突き出して姿を現したウルトラマンタイガは地球の力を宿した黄金の鎧を纏っている。大地天空の勇者という二つの名を持った新たな形態、フォトンアースだ。

 赤と銀に彩られた肉体は金と銀、黒に変わっており大きな金色のウルトラホーンが目を引いており荘厳な雰囲気を醸し出している。

 

「これが……タイガのパワーアップした姿なのか?」

『そうだ、俺が地球という星でこの力を授かった。レスト、行くぜ!』

「分かった!」

 

 

 フォトンアースにパワーアップしたタイガはサンダーキラーに接近して連続パンチ(フォトンアースブロー)を腹に撃ち込んで怯ませてから右回し蹴りを左脇腹へ叩き込む。

 一方、タイタスはバイオスの胴体に目にも止まらぬ速さで繰り出される連続パンチを撃ち込み肉弾戦で圧倒。更に駄目押しと謂わんばかりに彼は渾身の力を込めた右正拳中段突きで大ダメージを与えた。

 

「くっ……このワシが……」

「バッ、バカな……スパークドールズと怪獣リングで魔力は強化された筈なのに!?」

『「止めだ!!」』

『これで決める!!』

 

 タイガは大気中の(ルーン)エネルギーを体内に吸収。腕をT字型に組んで気に発射する光線技【オーラムストリウム】を発射する。

 タイタスはタイガスパークから黄緑色の光球を形成、右拳を思い切り殴り込んでブラニウムバスターを叩き付けた。

 

『オーラム……ストリウム!!』

『ブラニウムゥゥ……バスタァァッーー!!』

 

 剣状になった黄金に煌めく奔流と破壊光球が邪悪な力を秘めたサンダーキラーと配下の魔術師が変身しているバイオスに直撃!

 

「ぬぉぉぉぉっーー!!」

「うわぁぁぁっーー!!」

 

 二体の怪獣は膨大な光の奔流に呑まれて断末魔を上げながら跡形も無く消滅。戦いを終えたタイガとタイタスは夕日に照らされておりクロスタッチで其々の健闘を称える。その後、二人は地平線の彼方へ飛び去った。

 

 

「エゼルバード……やはり使い物になりませんでしたか……。しかし、彼の研究成果は役に立ちそうですね」

 

 エゼルバードが倒される光景を異空間から見ていたガルドは吐き捨てるが彼の研究成果に対して一定の評価は認めた。次の計画に移るガルドの目が紫色に妖しく発光、ここからタイガ達の戦いは苛烈になる。

 

 

「いててっ……。今回は危なかったよ……」

 

 変身を解いたレストは右足を引き摺りながらセルフィア城の門前に歩いていた。彼の肉体は変身を解いた負荷がかかっており全身の筋肉が傷んでいるのだ。

 

「あっ……」

 

 レストはふとした拍子に躓いて転び掛けるが誰かが彼の身体を支えてくれた。ふと顔を見上げると尖った耳が特徴で美しい金髪を靡かせているマーガレットが彼の身体を受け止めてくれたのだ。

 

「レストくん……ありがとう。でも無茶は良くないからセルザウィードさんとお説教だね」

「マーガレット……。ははっ、お手柔らかに」

 

 マーガレットはそう言うとレストの肩を持って支えながらセルザウィードがいる場所へ向かった。城の竜の間に着くとセルザウィードが待っていた。

 彼女以外に本当の王子のアーサーとセルフィア城に仕える執事のヴォルカノンとビシュナル、クローリカとそこにいた。

 

「レストよ……よくぞ街を守ってくれた。と言いたいがこれはどういう事だ……説明してもらうぞ」

「レスト殿、心配しましたぞ」

 

 セルザとヴォルカノンに詰め寄られたレストは意を決して口を開き一連の出来事を説明した。トライスクワッドとの出会いと怪獣、復活したエゼルバードと魔術師の襲撃に関する内容だった。

 

「薄々は思っていたがまさかエゼルバードがそんな奴らと手を組んでいたとは……」

「まさか……こんな深刻な事態になっていたとは」

「レストくんがウルトラマンだったなんて……」

 

 セルザとヴォルカノンは事態を重く認識、アーサーはレストがウルトラマンに変身していた事を知って驚く。ビシュナルとクローリカは膨大な情報に処理が追い付かずに呆然としていた。

 

「そんな出来事があったのなら妾に報告すべきじゃ。そなたは何故妾に伝えなかったのじゃ!?」

「それは……僕がウルトラマンに変身していた事を知ったら皆が僕を嫌うと思っていたから黙っていたんだ。ごめん」

 

 セルザはレストが隠し事をした理由を問い詰めると彼は正体を明かしたら怖がれる可能性があることを明かす。ウルトラマンという大きな力を扱う事に大きな責任を感じたが故に無理も無い。

 

『私からも謝罪させていただく。彼を危険な戦いに巻き込んでしまって申し訳ない』

 

 レストの右隣に現れたタイタスは頭を下げて謝罪した。彼もレストを不本意な戦いに巻き込んだ事に罪悪感を持っていたのだ。

 

「そうか……。妾の力が及ばずお主達に頼る事しかできないのがとても歯痒い……」

『この星に厄介事を持ち込んだのは私達の責任だ。君達が気に病む必要はない』

 

 セルザは自身の無力感を嘆くがタイタスは責任を感じる事は無いと諭して宥める。

 

「セルザ……僕はこの街を守る為に戦うよ。この力は誰かを守る為にある力だから!」

『あぁっ、俺達の力は誰かを助けるためにある物だからな!』

『俺達三人の力を合わせれば敵は無いって事だ!』

 

 レストは戦う決意を宣言するとタイガとフーマは彼に応じて発破をかけた。

 

「レスト……改めて言うぞ。この街を頼んだぞ」

「任せてよ!」

「レスト殿……我輩は感動しておりますぞ。ウォォォォッーー!!」

「王子がこの街の為に頑張っているなら僕もできることをやります。何でも言ってください!」

「私もできることがあるなら相談してくださ~い」

 

 セルザが改めてこの街の事を頼むとレストは堂々と宣言、それを聞いたヴォルカノンは感動で涙を流していた。情報を整理し終えたビシュナルとクローリカは自分達にできることがあれば協力させて欲しいと言う。

 

「レストくんが戦っているのなら私達もできることをします。引き続き王都から情報を集めますので失礼します」

 

 アーサーは情報を集める為に一足先に城から出るとヴォルカノン達も竜の間から出る。レストは過酷な戦いで疲れていたので自室に戻って寝る事にした。

 レストの回りに仲間がいる事に気付き、彼は一人じゃないと実感した。




次回からはガルドの策略が始まります。


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幕間:乙女達のパジャマパーティー

今回はパジャマパーティーですぞ(女)のサブイベントをベースにしたオリジナル幕間です。


  レストが早めの眠りに着いた頃マーガレットの家にシャオパイとドルチェ、フォルテとコハクとクローリカが来ていた。所謂夜の女子会という物で彼女達は度々、夜に集まっており他愛もない会話をしている。今夜はどんな話が聞けるのだろうか……。

 

「それにしてもレストくんがウルトラマンに変身していたとは……知らなかったが」

「私もあそこで初めて知りました~。驚きですね~。皆は何時から知っていたんですか?」

 

 シャオパイとクローリカはレストがウルトラマンに変身していた事に驚く。二人は彼がウルトラマンとして戦っている事を知らなかったので無理はない。

 

「私はフーマのキーホルダーを拾ったから知ったよ」

「私はタイタスさんに一度変身した事があるので知っていました」

「わたしはタイガの変身を解いたレストくんを目撃したから知ったの」

「アタシもコハクと同じよ。まさかタイタスやフーマに変身していた事は知らなかったけど」

 

 四人はウルトラマン達との出会いを簡潔に語ると二人は何処か仲間外れになった感じになる。気まずい雰囲気になるもマーガレットは気を取り直して話を続けた。

 

「ねぇねぇ、皆はどのウルトラマンが好みかな?」

 

 彼女はこれまでに出てきたウルトラマンの中から誰が好みかを問いかける。その質問にいち早く答えたのは意外にもフォルテだった。

 

「私はタイタスさんが好みです。彼は日頃から筋トレや鍛練をしているので互いに切磋琢磨できる良い関係を築けそうだからです」

「あはは……フォルテらしい」

 

 フォルテはタイタスと気が合う事を話すとマーガレット達は苦笑いする。因みに当人は恋の色沙汰に関しては極めて疎くとある惑星の王女から恋愛感情を持たれているが気付かない。

 

「私はタイガなの。一生懸命戦っている姿がとてもカッコ良かったの!」

「そうだね、タイガさんは必死だったもんね!」

 

 コハクはタイガが守る為に必死で戦っている姿を見て応援しようという気持ちになった。マーガレットも彼の戦う姿を見たから彼女と同じように感じた。

 

「そうね……アタシは三人の中でフーマが気になるわ。セルザを守ってくれたから感謝しているから」

「そうですわね。私達の友人を守ってくれた人ですもの」

 

 ドルチェはフーマが気になっている事を話すとピコは彼がエゼルバードの攻撃からセルザを助けてくれた事を語った。もし速さに秀でたフーマに変身していなければセルザを助ける事が出来なかった可能性があったからだ。

 

「私が気になった事だがどうしてレストくんは自分がウルトラマンになって戦っている事を隠していたのが気になるが?」

 

 シャオパイはふと抱いた疑問を口にすると皆は黙りこんで考え始める。それを見た彼女は何か不味い事を聞いたと思って慌てて訂正しようとする。

 

「い、いや……その今のは聞かなかった事にしてほしいのだが」

「う~ん、私の考えだげと……レストくんはきっと皆に知られるのが怖かったと思うんだ。前にレストくんが戦って帰った時に笑顔で大丈夫と言ってたけど実は陰で耐えていた。

 私がそれが嘘だと気付いて救急箱を持って来たら案の定、レストくんは傷の痛みに苦しんでいたから治療した。

 も~、無茶をして心配する身にもなって欲しいよ!」

 

 マーガレットは以前、メルバとフーマの戦いを後にレストが痛みに苦しんでいるにも関わらず笑顔という仮面で無理矢理誤魔化していた事を話した。その話を聞いた彼女達は考えた後にドルチェが口を開く。

 

「レストの無茶は今に始まった事じゃ無いけど流石に今回は看過できない。けど……相手はセルザの力を遥かに上回っているんじゃ彼等に頼るしかないわね。

 セルザにも話さなかった事を考えるとよっぽど自分が大きな力を持っていた事に苦悩していたと思うわ。レストは一人で何でも抱え込む頑固な性格だから」

「悔しいですけど私がタイタスさんと一緒に戦えればレストさんの負担が減らせるのに……。無力な自分が歯痒いです」

 

 ドルチェとフォルテはどこか悔しそうな口調で言うと皆は沈黙に包まれた。レストは一人で何でも抱え込む性格なのは知っている。しかし皆に黙ってここ迄、大きな事態が起きていた件を一部の人だけにしか知らせていなかった事にある種の呆れを感じていたのだ。

 

「そういえばウルトラマンは何処から来たのか気になりますね~」

 

 重い雰囲気の静寂を打ち砕いたのはクローリカでウルトラマン達が何処から来たのか疑問を発した。その疑問を耳にした彼女達は各々の推測を立てて述べるが具体的な答えは出てこない。

 

「う~ん……やっぱりここは当人に聴いてみるのが一番だと思うよ。今度、レストくんに尋ねてみよう」

「私もタイタスさんが何処から来たのか知りたいと思っていました」

「そうだね。レストくんに聴いてみればいいの!」

 

 この話の結論は当人に聞くことになった。それから雑談を数時間した後に眠りに着く。彼女達のパジャマパーティーはこうして幕を閉じた。

 翌朝、マーガレットの家に集まっていた彼女達は其々の家に帰宅した。



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幕間:ガルドの陰謀と束の間の休息

ウルトラギャラクシーファイト大いなる陰謀を観ました。
タルタロスの勝利とは予想外でしたが続編の情報が入って来たので楽しみです。
ウルトラギャラクシーファイト大いなる陰謀を踏まえてこの小説の時系列を大いなる陰謀の後に変更しました。


  乙女のパジャマパーティーを満喫している頃、ガルドは次なる計画を企ており妖しく目を光らせる。

 

「フフフッ……明日でこの街は地獄に変わる光景が目に浮かびます。セルフィアが壊滅した暁には私がこの世界を支配する時が来ると思うと……。笑いが止まりませんね……フハハハッ!」

 

 彼は異空間越しに静寂の夜の闇に包まれたセルフィアの街を観ながら呟く。これからガルドの侵攻が始まる合図となる……。そんな彼を背後から開いた黄金のゲートから無言で見つめる金色の鎧を纏った巨人が佇んでいた。

 

 

 

  パジャマパーティーが終わった朝、レストはいつも通りに起床して日課である畑仕事をしていた。

 

『レスト、身体は大丈夫なのか?』

「大丈夫だよ。1日寝たら治るから心配しないで」

 

 タイガは彼を心配するが当人は問題ないと言ってそのまま作業を続行。するとレストは身体がふらついて倒れかけるが実体化した人間態のタイタスが受け止めて事なきを得た。

 

「レスト、君の身体は大きなダメージを受けている。無理は身体に毒だ。ここは君が飼育しているモンスター達に任せるのはどうだろうか?」

「そうだね……。僕が飼っているモンスター達に畑仕事を頼むよ」

 

 タイタスの提案を受け入れたレストは飼育しているモンスター達に仕事として水やりを依頼、彼の付き添いで自室に戻る。部屋に戻ったレストとタイタスはセルザに呼ばれて竜の間に招かれる。

 

「おはよう、レストよ。身体は大丈夫か?」

「身体は少し傷むけど歩くぶんには問題ないよ」

「しかし畑仕事をするには負担が大きいから控えた方が良いと思う」

 

 セルザの問い掛けにレストは歩くには問題ないと答えるもタイタスは畑仕事は難しいと補足した。レストの調子を把握したセルザはタイタスに視線を移して質問する。

 

「そうか……そなたへ率直に問う。ウルトラマンタイタス、お主達は何処から来たのか答えて貰えんか?」

「ふむぅ……」

 

 タイタスは彼女の質問に少し思案しているとヴォルカノンが慌ててセルザの部屋にやって来た。

 

「セルザウィード様!!」

「ぬぅっ!?」

 

 ヴォルカノンは勢い余ってレストに体当たりしかけるもタイタスが受け止めてくれたお陰で事なきを得た。彼の頑強な肉体はタイタスにも勝るとも劣らない程である。

 

「ヴォルカノン殿、中々良い筋肉だ……。今度、一緒に筋トレをしてみたいものだ!」

「タイタス殿の筋肉も鍛えられていますな……!」

 

 二人は互いの筋肉を褒め称えるがセルザはコホンと咳払いをして話を中断させて用件を問う。

 

「それでヴォルカノンよ。何ようがあってここに来た?」

「おっほん、これは失礼しました。城の正面門に設置されていた箱にこんな物が入っておりました」

 

 彼は懐からメモ用紙を取り出して読み上げる。用紙の内容によると近い内に大量のモンスターや傭兵宇宙人を率いてセルフィアに総攻撃を仕掛けると宣戦布告をしたのだ。

 

「ふむぅ……。これは妾達への宣戦布告ということか」

「これは……戦の準備が必要ですな」

 

 セルザとヴォルカノンは手紙を見て戦う準備が必要だと痛感、大きな戦乱の予兆を感じ取ったトライスクワッドとレストは身構える。

 

「来るべき戦いか……。大きな争いとなるだろう」

「そうみたいだね。……僕は戦うよ」

『俺達も一緒に戦う!』

『おうよ!俺達の力を合わせればどうって事は無いぜ!』

 

 タイタスとレストは戦いに身を投じる事を決意するとタイガとフーマはそれに応える様に覚悟を示した。

 

「となると住人達にこの事を伝えねばならぬな。ヴォルカノンよこの事を皆に伝えよ」

「畏まりました」

 

 セルザは執事のヴォルカノンに命令すると彼は急いで街の住人達に知らせに足を運ぶ。レストも彼の後を追い掛けようとするがよろめいて躓きかけるがタイタスが受け止めた。

 

「レスト、君は無茶をすべきではない。ここは私が引き受ける。君は部屋で休んでくれ」

『そういうことだ。ここはタイタスに頼もう』

『済まねぇな旦那』

 

 タイタスはレストにそう告げて自室に戻してから外へ出た。やることが無くなった彼は部屋に設置された椅子に座って考え込む。

 レストは自分がやるべき事なのにこうして部屋で休んでいる事に自責の念を抱くが部屋のドアを誰かがノックした。彼はタイタスだと思って立ち上がり、扉を開けるとマーガレットがいた。

 

「レストくん、大丈夫!? タイタスさんから怪我をしているって聞いたけど本当なの!?」

「マーガレット!? 僕は大丈夫だけど……どうしたの急に?」

「心配になったから来ちゃったの……駄目だったかな」

「そっか……心配かけてごめんね。仕事前に少し休んだらどうかな?」

 

 息を切らせながら問いかける彼女へレストは問題ないと答えるとホッと胸を撫で下ろした。安心したマーガレットはそのまま彼の部屋に入って近くの椅子に腰を下ろす。

 

「リラックスティーを淹れてくるから待っててね」

 

 レストはリラックスティーを淹れる為に調理台へ足を運ぶ。マーガレットはその光景を不安そうに見つめていると隣にタイガの幻影が現れて話しかけられた。

 

『レストは無茶をするから大変だよな。気持ちは何となく分かるけどな』

「そうなのよね。レストくんは自分よりも誰かの為に動く人だから危なっかしいから心配になるけど……そこが彼の良いところでもあるんだ」

『そっか~……。やっぱり、レストはヒロユキに似ているな』

 

 彼とマーガレットが雑談をしているとお盆にリラックスティーを二つ載せたレストがやって来て配膳をして席に着いた。彼女は彼が淹れたリラックスティーを飲むと暖かい湯が喉を通り抜ける感覚と共に心地よさを覚えた。

 

「レストくんが淹れたリラックスティーはとっても美味しい!」

「ありがとう。御代わりもあるからゆっくりしていいよ」

 

 レストはそう言うとリラックスティーを飲んで一息着く。束の間の休息を楽しむ二人の時間が緩やかに流れるとマーガレットがふと呟く。

 

「ふと気になったけどヒロユキさんってタイガさんの知り合いかな?」

「僕も気になっていたけどヒロユキって人の事を教えて欲しいんだけど良いかな」

『そう言えばまだレスト達に話してなかったな。俺がヒロユキと地球で初めて会った時はーー』

 

 彼女とレストの疑問を切っ掛けにタイガは地球で一体化して共に戦い抜いた勇敢な青年(工藤ヒロユキ)について出会った経緯を話し始めた。

 幼いヒロユキが友達を宇宙人に誘拐されるも危険を省みずに取り戻そうとした勇気に感銘を受けた。彼は高所から落下するヒロユキの命を救うために一体化して力を取り戻すまで深い眠りに着いたそうだ。

 

『それから目覚めた俺はヘルベロスを倒すためにヒロユキに声を掛けて変身、ヘルベロスを倒すことができた。まぁ、そこからはタイタスとフーマに会ってトライスクワッドが揃ったって事だ』

「へぇ~タイガさん、ヒロユキくんの命を救ったんだね。ヒロユキくんも高い所が怖かったのかな? 私がヒロユキくんと同じ状況で下を見たら手放しちゃうかも」

 

 マーガレットはタイガとヒロユキの出会いを聞いて高所から落下していた彼が怖かった可能性がある事を指摘する。タイガはマーガレットの感じた事に共感しながらも次の様に語った。

 

『マーガレットは高い所が怖いのか。ヒロユキはもしかしたら高い所……否、自分が見知らぬ場所へ連れ去られる危険があったと思うが友達を助ける為に勇気を振り絞ったかもしれないな。だからこそ俺は助けたんだ』

「そうだったんだ。それでトライスクワッドが集結してからの戦いを聞かせて」

 

 レストが話の続きを聞きたいとせがまれたタイガはその先の話をする。

 自身が戦う最中にトレギアの罠に嵌まって三人と敵対した末に本当の仲間を知って新たな姿を得た。そして先輩ウルトラマン達と共にグリムドという敵と戦った末に勝利を納めてヒロユキと別れた事、修行の道中に究極生命体の陰謀を阻止すべく奔走している現状を伝えた。

 

『とまぁ~こんな感じだ。どうだったかな?』

 

 話を終えたタイガは二人の沈黙に戸惑うがフーマが彼の左隣に現れてフォローを入れる。

 

『まぁ……無理もないさ。こんな壮大なスケールを話したら呆然とするのは』

「いや~タイガとタイタス、フーマが宇宙という広大な場所を冒険している事が想像できなくて……」

「私も……レストくんと同じで想像がつかないよ」

 

 レストとマーガレットは余りにも規模が大きな話について行けなかったが少なくとも彼等が宇宙の平和の為に日々戦っている事は分かった。

 

「あっ、もうこんな時間!? ポコさんの所に行かなくちゃ! レストくんまたね!」

 

 昼時になったと気づいたマーガレットは慌ててそう言ってレストの部屋から飛び出して行った。そんな彼女を三人は見送るとレストはタイガとフーマに話しかけた。

 

「タイガ、フーマ……この街を守る為に力を貸してほしい」

『もちろん!』

『おうよ! 悪党達にこの街を荒らさせやしねぇぜ!!』

 

 マーガレットとの話を通じてレスト達は改めてセルフィアを守り抜く事を誓った。  



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侵撃のガルド

  数日後の朝、傷が完全に癒えたレストはセルザウィードに呼ばれて竜の間に来て話をしていた。そこにヴォルカノンやアーサー達も同席している。

 

「大平風土記か……。妾も存在は耳にした事があるが実在していたとは」

「そうですね。しかし、かなり古い文献ゆえに解読に時間を要しています。レオンさんを中心に進めていますが……」

「う~む。何れにせよいつ敵が侵攻してくるか分からない状況なので直ぐに攻めて来てもいいように備えないといけませんな」

 

 彼等の進捗状況を聞いたセルザは大平風土記が実在していた事に驚き、アーサーは解読に時間が必要である事を伝える。それらを聞いたヴォルカノンは敵の襲撃に警戒するように呼び掛けた。

 

『ガルドが攻めて来ようとも俺達が倒すから安心しな!』

『あぁっ。この街は俺達、トライスクワッドが守ってみせるぜ!』

『我々も協力は惜しまない』

 

 フーマとタイガ、タイタスは自分達も戦う事を宣言する。そこにセルザが話を進行を再開した。

 

「これで情報は以上か。ならば各自、己のやることを引き続きしていくよう頼むぞ」

 

 セルザは会議をそう言って締め括った。会議を終えたレストは雑貨屋に赴き、必要な品を買い揃えている途中にダグが声を掛ける。

 

「物騒な事になったもんだナ。ゼークス帝国を凌駕する敵が攻めてくるとハ……。帝国の残党ならまだしも残党がとんでもない戦力を持つ奴と手を組むとは予想外だったナ。俺がばあさんを守らねえト」

「そうだね。今度の敵の戦力は未知数だからどうなるか……」

「そう言えば最近、この街に来たタイタスっていう奴だが人当たりが良くて丁寧でとても良い奴だナ。タイタスは少し前に雑貨屋の手伝いをしてくれたから助かっているゼ」

 

 彼は敵の襲撃を不安に感じておりレストもそれに同意した。そしてダグはこの街で住人達の手伝いをしているタイタスについて語り始めた。

 彼が実体を取り戻して以降、街の手伝いをするようになり雑貨屋の荷物運びや食堂のウェイター、旅館の皿運び等の雑務を日々やっており評判も良好だ。因みにタイタスがウルトラマンである事を知る人は極めて少ない。

 

「これで買うものは揃ったよ。ありがとう」

「また来いよ!」

 

 レストはダグに礼を言って店を出て、城の自室に戻り購入した物を収納箱に入れた。次に彼は裏口から出て畑に赴き作物や花の収穫、飼育しているモンスターのブラシ掛けをする。

 

「これで良し。そろそろ昼になるから食事を……」

 

 仕事を終えたレストは昼飯を摂ろうとした瞬間、耳を貫く程の大きな爆発音が街全体に響いた。彼は敵が襲撃に来た事に気付いて広間に急いで向かう。

 

「遂に攻めてきた……!」

『敵さんのお出迎えって所だな』

『行くぜ!』

 

 三人が城外の広場に到着するとタイタスが超人態に変身して迫り来る宇宙人達をフォルテ率いる城の兵士達と共に迎撃を始めていた。

 

「フォルテさん、危ない!」

 

 フォルテの背後から烏人間の姿をした宇宙人【レイビーク星人】が飛び掛かった瞬間、レストは疾風ノ小太刀でレイビーク星人の背中を一刀両断。真っ二つになったレイビーク星人は爆散した。

 

「レストさん。すみません、助けられました」

「無事で何よりです。一緒に戦いましょう!」

 

 フォルテは彼にお礼を述べると背中を合わせて広場で暴れる兵士とモンスター、宇宙人達を次々と薙ぎ倒していく。

 レストは片手剣を槍に持ち変え、広範囲に及ぶ大きななぎ払いをする槍のルーンアビリティ【ストラグルリーパー】でモンスターを撃退。フォルテは自慢の両手剣を振るい兵士達を倒していく。そしてタイタスは迫り来る多数の宇宙人に対して身体をすさまじい速度で回転させて近づくモノを吹き飛ばす拳のルーンアビリティ【サイクロン】で返り討ちにした。

 

「鍛え方がなっていない! 日々の鍛練が足りんぞ。次だ!」

 

 敵に叱責を飛ばすと同時に鍛え上げた肉体から百烈拳を繰り出して残っていたマグマ星人やナックル星人といった戦いに優れた宇宙人達を撃破する。

 

「お前ら、逃げている奴等を捕まえて人質にしろ!そうすればこいつらを黙らせられるぞ!」

 

 ガルドが従えていた元ゼークス兵士の一人が発すると他の兵士とレイビーク星人が観光客や住人達を捕まえようと走り出す。それを聞いたレスト達は阻止しようと奮戦するも敵の数に阻まれて思うように動けない。

 

「くっ、そこをどけ!」

「卑劣な……!?」

『弱者を狙うとは卑怯な!』

 

 三人は敵が卑劣な手段を用いる事に憤怒するがそれに構うこと無く彼等は戦う力を持たない人達を捕らえようと広場から離れる。しかし次の瞬間、兵士達は広場に吹き飛ばされ、気絶していた。

 

「レスト、助けに来た」

「観光客や住人達の避難は終わったゼ!」

「ディラス、ダグ!」

 

 敵の数に苦戦しているフォルテの前方から闇の魔法が炸裂、彼女の前にいた敵達は一掃された。フォルテは闇の魔法が放たれた方向を見るとドルチェが姿を見せる。

 

「ドルチェさん。ありがとうございます!」

「こっちも負傷者の手当てが終わったから手伝いに来たわ」

『私達も戦いますの!』

 

 彼女と幽霊のピコが参戦、形勢は徐々にレスト達の方に傾いていた。戦況が思わしくない兵士長はガルドに次の一手を打つべきかどうかと尋ねる。

 

「この状況は想定内です。ご安心を……間もなくあれが来ます」

 

 ガルドが兵士長に告げた瞬間、上空に黒いワームホールが出現。そこから頭部の角がV字で赤いバイザーの目と黒鉄のボディ、両腕に青いガンポッドが装着された二機のロボット【帝国機兵レギオノイド】がセルフィア平原に降り立った。

 

「レギオノイドよ。この周辺を焼け野原にしてしまえ!」

 

 ガルドの指示を受けた二機のレギオノイドは両腕のガンポッドから高出力のビームを平原に撃って周囲を無差別に破壊。草原や周辺にあった木を燃やし、バイザーから真紅のレーザー【レギオビーム】を発射して平原を彷徨くモンスター達を容赦なく殺害した。

 

『巨大戦力を投入してきたか……レスト殿、私はあのロボットを倒しにいく』

「分かった。こっちは任せて!」

『こっちの敵を片付け次第、俺達も援護に向かう』

『そっちは頼んだぜ、旦那!』

 

 タイタスはレストにレギオノイドの対処をすると告げて広場から飛び出して巨大化。レスト達はゼークス兵や宇宙人軍団と戦いを再開、迫り来る敵達を迎え撃っていった。

 

『賢者の拳は全てを砕く!』

 

 タイタスは周囲の地形を無造作に破壊するレギオノイドへ背後から右拳を振り下ろす。後頭部に強烈な一撃を貰ったレギオノイドの首が吹き飛び、地面に倒れた。しかしそれに気付いたもう一機のレギオノイドが右腕のビームガンを撃った。

 

『なんのっ!』

 

 正面からのビームを筋肉バリアで弾き、アストロビームで反撃してレギオノイドを怯ませる。更に頭部を失ったレギオノイドを持ち上げ、先ほどビームを浴びせたレギオノイドに狙いを定めたタイタスは力を込めて投げ付けた。

 

「「ーーー!?」」

 

 頭部を失ったレギオノイドの下敷きになったレギオノイドは立ち上がろうとする。頭を失ったレギオノイドのセンサー部は頭に集中していたが故に平行感覚が喪失、思うように動けず足をジタバタと動かしていた。

 

『ブラニウム……バスタァァッーーー!!』

 

 タイタスはその隙を見逃すことなく必殺技(ブラニウムバスター)を放った。身動きが取れないレギオノイドに破壊光球が直撃、二機は爆散した。

 

「ふむ……タイタスさん、中々やりますね。今のはほんの小手調べ……では次はこれです!」

 

 二機のレギオノイドが倒されたガルドは動揺する子となく次の一手と謂わんばかりに自身の頭上にワームホールを出現させた。

 

『これは……!?』

「なんだ!?」

 

 ワームホールから膨大なエネルギーが彼の肉体に降り注ぐと巨大化、そこからガルドは禍々しい黒い鎧を纏い右手に闇のオーラが出ている直剣を装備した彼の戦闘形態【アーマードメフィラス】に変貌した。

 

「この力……最高だ! 早速あそこにいる巨人で切れ味を確かめよう!」

 

 ガルドは歓喜の声を上げながら剣を振り回してタイタスに斬りかかる。タイタスは鍛え上げた自慢の肉体で防ごうとしたが闇の力を纏った剣で身体に深い切り傷が入った。

 

『ぬっ……!? この力は不味い!』

 

 剣に宿る危険な力を察知した彼は回避を試みるが動きが遅いタイタスにとっては極めて相性が悪い。彼は紙一重で躱し続けるがいつ攻撃が当たってもおかしくない状況に追い込まれていく。

 

「くっ……援護に行きたいけどこのままじゃ」

 

 レストはタイタスの救援に行きたい所だが目の前に宇宙人やゼークス兵が妨害している。その時、一陣の風が吹き荒れると宇宙人やゼークス兵達が足を止めて上を見始めた。彼も顔を上に向けるとこのセルザウィードが空から舞い降りてレストに告げた。

 

「レストよ、この場は妾が引き受ける。窮地に陥った仲間……タイタスを助けるのじゃ!」

「セルザ……ありがとう!」

 

 彼は敵達をセルザに任せてタイタスの元に駆け付けた。ゼークス兵達はレストを追い掛けようとするもセルザが風の刃を発射して妨害する。

 

「レストの邪魔はさせんぞ……!」

 

 

 

 

『行くぞ、レスト!』

「おう!」

 

 セルフィア平原を駆けるレストはタイガスパークを起動、タイガに変身してタイタスのもとへ全速力で急行した。

 

『ぐっ、ううっ……』

「どうやらここまでのようですね……さらば!」

 

 タイタスの身体に沢山の切り傷が刻まれてカラータイマーが赤く点滅している。ガルドに止めを刺されようとした時、タイガの槍がガルドの剣を受け止めた。

 

『タイガ……!』

『待たせたな、タイタス。後は俺達に任せろ!』

 

 タイガがそう告げるとタイタスは肉体をキーホルダーに変わり、タイガホルダーに装着された。

 

「来ましたか……タイガ。ここで貴様を倒してこの世界を掌握する!」

『お前の野望はここで終わらせる!』

「僕達の世界を好きにはさせない……!!」

 

 ガルドはタイガを倒して世界征服を宣言するがタイガとレストはそうはさせまいと毅然と反論、両者の本格的な戦いが幕を開けた。 



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暗黒の巨神、降臨

久しぶりに投稿します。
太平風土記に関する幕間は諸事情で削除しました。


 ガルドは再び剣を構えてタイガに斬りかかる。タイガはそれに対して動じる事なく槍で受け流し、右キックで間合いを取りつつミリオンストライクで追撃をした。

 

「くっ、調子にのるな!」

 

 ガルドは怒声を上げながら闇の力を込めて剣を振り斬撃波を繰り出した。

 

「おりゃっ!!」

『おっとぉっ!』

 

 タイガは斬撃波を後ろに跳躍して躱すと同時に腕を合わせてハンドビームで反撃するが暗黒剣で切り払われる。

 

「ダークスパイク!」

 

 ガルドは剣を地面に突き刺すと同時に叫んで闇のエネルギーを地中に送り込んでタイガの足元から闇の力で構成された鋭利な柱が地面から勢いよく飛び出した。

 

『うぉわぁっ!?』

 

 足元からの攻撃に対応できずにダメージを受けてタイガは怯むがガルドはそこへ闇のレーザーを照射して追撃、爆発が起きて黒煙が彼の身体を包み込んだ。

 

『せやぁっ!』

 

 黒煙から青い光が灯った瞬間、ガルドの正面からフーマが疾風の速さで接近して腹部に強烈な蹴りを喰らわせた。更に右脇腹へ左回し蹴りを繰り出し、フーマは後退しながら光波手裏剣を打ち込んだ。

 

【ジャックレット、コネクトオン!】

『流星光波手裏剣!!』

 

 レストはジャックレットをリードして黄緑色に輝く光の槍(流星光波手裏剣)を槍投げの要領で射出、疾風を纏い螺旋回転する槍がガルドの左腕を貫いた。

 

「うわぁぁぁっーー!? 私の腕がぁぁぁっーー!!」

『勝負あったな!』

 

 左腕を負傷して激昂。フーマが止めを刺そうと必殺技の極星手裏剣を打つ態勢に入った時、ガルドはセルフィアから撤退する部下を目にした。

 

「こうなったら……はっ!」

 

 彼は剣先から禍々しい気を纏った光線を照射、敗走する部下や兵士達の生体エネルギーを強引に吸収して左腕の傷を完治、周辺に漂っているルーンを闇の力に変換して肉体を強制的に強化させた。

 

「使えない部下達やルーンは私の糧にするのが一番ですね……。それと貴方達の仲間のルーンも取り込んで差し上げましょう」

 

 彼は剣先をセルフィアに向けて照射するもフーマが極星光波手裏剣を打って相殺した。

 

『てんめぇっ……お前の仲間だろ! 使えないからって合意も無しにあいつらの命を奪うのか!? それとセルフィアの仲間に手出しはさせねぇよ!』

「それがどうした言うのですか? 所詮……他の宇宙人やこの星の兵士達、モンスターすらも私の前では下等生物同然です。寧ろ私の糧の一部になったのですから光栄だと思いませんか?」

 

 命を軽視する彼の言葉に憤りを覚えたフーマは後先考えずに突撃するも暗黒剣の前に呆気なく切り伏せられた。

 

『くっ、強ぇぞこいつ……。タイガ、済まないが交代してくれ』

『分かった。レスト、フォトンアースの力で行くぞ!』

「あぁっ!」

 

 フーマはタイガ(フォトンアース)に交代。起き上がると同時に槍で薙ぎ払うもガルドは軽く身体を反らして回避、剣を振り上げて反撃した。

 

『ぐっ……まだだ!』

 

 タイガは斬撃を喰らいながらも怯まずに疾走、その勢いを利用して突きを繰り出すもガルドの剣で防がれてしまう。

 

『なにっ……!?』

「ふんっ!!」

 

 ガルドはタイガの槍の口金を闇の力を纏った左手で掴むと同時に解放、それを根本から折って地面に投げ棄てた。槍が破壊された事に動揺する二人に彼は暗黒剣の一閃を刻んで致命傷に等しい痛撃を与える。

 

『「ぐわぁぁぁぁぁっっーー!!」』

 

 大きなダメージを負ったタイガのフォトンアースの鎧が強制解除されて元の姿に戻り仰向けに倒れ、カラータイマーが赤く点滅し空に警告音が木霊する。

 

「どうやら此処までのようですね。折角ですから貴方の仲間が目の前で消える所を見せてあげましょう……」

『「やっ……辞めろぉぉっーー!!」』

 

 ガルドは右手に持った剣を振り上げ、セルフィアに切っ先を向けて闇の稲妻を発射した。

 

「いかんっ!」

 

 それに気付いたセルザは咄嗟に風幻竜の力を行使、風のバリアを街の囲うように展開して間一髪の所で防ぐ。しかしその力はとても強烈で先程の一撃により風幻竜の力は僅かしか残らなかった。

 

「くっ、今ので力を殆ど使ってしもうた……。これ以上は防げん」

「セルザ、大丈夫か!?」

 

 セルザは大きな力を行使した事で地面に倒れると側にセルザの親友等が駆け寄る。

 

「ふふふっ……どうやらここまでみたいですね。では、街を消し飛ばして差し上げましょう」

『「やらせはしなっ……!?」』

 

 疲弊するセルザを守ろうとタイガは立ち上がるもダメージが大きすぎて片膝を付いて倒れ、ガルドは嘲笑うかのように剣先を街に再び向けた。

 

「安心してください。直ぐに街の人々の所へ案内して上げますから」

『ぐっ……身体が動かん!?』

『ちっくしょぉ……!』

 

 彼は倒れているタイガを放置して剣から稲妻を今度こそ発しようとした瞬間、何処からともなく二つ刃が飛来してガルドが持つ剣を弾いた。

 

「この攻撃……誰だ!?」

 

 ガルドは周囲を警戒しながら怒号を発すると上空から異次元の穴が開き、そこから翼を模した銀色の鎧(ウルティメイトイージス)を纏った巨人が飛来してきた。

 

「メフィラス星人ガルド!お前の企みはここまでだ!」

「新たなウルトラマンが来た!?」

 

 頭に二つのスラッガーが付いており鋭い目付き、青と赤と銀のボディの中央に燦然と輝くカラータイマーが特徴的な光の巨人【ウルトラマンゼロ】がセルフィアに降臨、鎧を解除したゼロは戦闘態勢に入る。

 その光景を見た街の人々から歓喜の声が聞こえてきた。

 

「ウルトラマンゼロ……ここまで追い付いて来たのは褒めて差し上げましょう。しかし、貴様の相手は私ではございません」

 

 ガルドは自信満々にそう語ると左手にベリアルスフィアを取り出して空に掲げた。すると上空に禍々しい暗黒の雲が発生、そこから紫電の雷が降り注ぎ彼の手を離れて宙を漂う。

 

「古より封印されし世界を滅ぼす巨人よ。この地に蘇り世界を再び破滅をもたらせ……いでよ、暗黒の巨人(ネイティブジャイアント)!」

 

 ガルドは呪文と思わしき何かを呟くとベリアルスフィアから激しい閃光が迸り禍々しい暗黒の巨人に姿を変貌、その姿は嘗て宇宙を崩壊させようとした悪のウルトラマン【ウルトラマンベリアル】と酷似している。禍々しいゴーレムとベリアルが融合とした姿、その名は【ベリアルゴーレム】だ。

 

「その姿は……ベリアル!?」

『ベリアルの気配は感じるが少し違うようだが……途轍もない闇の力があの巨神から発せられている』

 

 ゼロはベリアルに酷似した巨神に驚き、タイタスはベリアルとは異なる気配が混じっていると冷静に述べた。

 

「ネイティブジャイアンじゃと!?」

「こいつは……ヤバすぎる……!!」

 

 セルザはネイティブジャイアンの復活に動揺、守り人は圧倒的な力に全身が震えておりセルフィアの人々もネイティブジャイアンの復活に信じられないと謂わんばかりにざわめく。

 

「ベリアルを復活させて何をするつもりだ!?」

「これぞ私の切り札! さぁ……どうしま!?」

『フゥン……!』

 

 驚くゼロに対して不敵な笑みを浮かべるガルドが何かを話そうとした瞬間、暗黒の巨神(ベリアルゴーレム)は彼の顔面を右貫手で刺し貫いた。

 

「馬鹿な……何故……?」

『お前の野望につき合うつもりはない。とっとと失せろ……!』

 

 ネイティブジャイアントの意志が内包されていた暗黒の巨神はガルドの思惑を無視、冷酷な言葉を発して排除した。致命傷を負ったガルドはその場で倒れると同時に肉体が粒子となって消滅した。

 

『こいつの駒になる気はない。我の目的はこの世界を破壊して我が再び神として君臨する。肩慣らしとして先ずは邪魔をする貴様らを葬ってやろう!』

「上等じゃねぇか……行くぞ!」

『「この世界を好きにはさせない!!」』

 

 暗黒の巨神はゼロとタイガに狙いを定めて攻撃を開始、二人の命運はいかに……。




オーシャンズのプレイ動画を観て急遽、ネイティブジャイアントを登場させました。


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巨神の暴虐と舞い降りる光

ゼロの時系列はウルクロZでゼットと再会して旅立った後です。


「ネイティブジャイアン……嘗て創世記に四幻竜と死闘を繰り広げた末に封印された伝説の巨人。過去に一度は復活したがアースマイトとフィーニス島の人々の祈りによって倒された。しかし……現代でネイティブジャイアンが蘇るのはあり得ん!」

 

 セルザはネイティブジャイアンに関する情報を述べた。創世記に争った存在がこの場にいる事に大きな違和感があったからだ。その発言に同意するかのようにネイティブジャイアントはその理由を淡々と述べる。

 

「確かに……私は復活して倒された。だが、あの御方の助けにより生かされてここにいる。私の悲願を達成するために忌々しき光の巨人よ……ここから失せろ!」

 

 暗黒の巨神は説明を終えると同時に右掌から強烈な無数の雷をゼロとタイガに向けて放出、二人は咄嗟に光の壁を張って防いだ。

 

「そう言われて易々と消える俺たちじゃねぇ! エメリウムスラッシュ!」

『タイガ……エメリウムブラスタァァッーーー!!』

『「お前の好きにはさせない!」』

 

 ゼロとタイガ、レストはそれに反論すると同時に額に輝く黄緑色のビームランプから光線を発射したが暗黒の巨神は右腕を軽く振ってあしらった。

 

「愚かな、この程度の力で逆らうとは……身の程を知れ!」

 

 巨神は呟くと同時に左掌から闇の力を込めた衝撃波で二人を吹き飛ばそうとするがゼロとタイガは跳躍して回避、反撃として右腕を立てて肘に左手の甲を付けてL字を組んだ。

 

「ワイドゼロショット!!」

『ワイドタイガショット!!』

『「喰らえぇっ!」』

 

 二人が照射した高出力の破壊光線が一つに重なった瞬間、螺旋を描きながら巨神に向かって進んでいく。

 

「ふんっ!」

 

 巨神は二人の光線を闇の波動でいとも容易く相殺させた。

 

「なんだと!?」

『俺達の光線が簡単に防がれた!?』

『「そんな……合体光線が効かないなんて!?」』

 

 この合体光線を受ければ殆どの怪獣や宇宙人は倒せるが相手が悪かったと言わざるを得ない状況を目の当たりにする。更に悪い事にタイガのカラータイマーの点滅がますます激しくなっていき活動限界時間が間近に迫っていた。

 

『くっ、これ以上は限界だ……』

『「タイガ、僕は最後まで戦う……!?」』

「無様な姿は見飽きた……さっさと失せろ!!」

 

 よろめくタイガを見て悪態を吐いた巨神は彼を自身の右掌に引き寄せ、彼の胴体を掴んだ。タイガは胴体を強烈な力が流れ込む激痛に悲鳴を上げて踠くが無意味だった。

 

「タイガ!?」

「邪魔をするな……!」

 

 ゼロはタイガを助けようと近づくが巨神は左掌から電撃を放って妨害した。彼は何とか近づいて助けだそうとするが巨神が放つ衝撃波で弾き飛ばされてしまい隙がない。

 

『このままじゃ、レストの身体がもたない……!』

『流石に彼を巻き込むことはできん!』

『くっ、しゃあねぇ……!』

 

 三人は最期の力を振り絞ってレストと分離、致命的な損傷を免れるもタイガの肉体が砕け散った。ゼロはタイガから分離したレストを回収、セルフィア城前の広場にいるセルザ達の所に置いて巨神と対峙する。

 

「彼を頼む。ここは俺に任せろ……!!」

「ウルトラマンゼロ……こいつと戦っているとベリアルの力が疼き力が漲る。こいつとの因縁があるというならこの場で果たしてくれる!」

 

 巨神はベリアルの力がゼロと反応している事に気付き、それに同調して己の糧に変え戦闘態勢を整える。ゼロは周囲への被害を配慮してウルティメイトイージスを発動、街をイージスから発する光の障壁で囲った。

 これにより彼は一時的にタイプチェンジやシャイニングの力が使えなくなったが使えなくても別形態が残っているので問題は無い。

 

「さぁ、行くぜ!」

「ウルティメイトイージスの力をちっぽけな街を守るために使ったか……。その選択を悔やむが良い!」

「紛い物のベリアルの力を得たお前にイージスの力を使う必要は無い事を教えてやるぜぇぇっーーー!!」

 

 ゼロと巨神が軽いやり取りを終えた瞬間、二人は大地を蹴って踏み出してぶつかりど派手な轟音が空に響く。

 

「レスト、目を覚ますのじゃ!!」

「うっ……」

 

 セルザの声に反応して目を覚ましたレストは右手の甲に装着されていたタイガスパークと腰にあったタイガ達のキーホルダーが失くなっている事に気付いた。

 

「タイガ、タイタス、フーマ! 何処に行ったんだ!?」

 

 彼は三人の名前を必死に叫ぶが反応が無く立ち上がろうとしたが身体に強烈な激痛が生じて膝をついた。それを見たセルザとドルチェが諌めて口を開く。

 

「レスト、無茶をするな!」

「セルザの言う通りよ。レスト、今すぐ病院に運ぶわ。ネイティブジャイアントはあの巨人……ゼロと戦っているからあんたは回復に専念なさい」

「王子は僕が運びます!」

「俺も手伝うゼ!」

 

 取り乱していたレストは二人の叱責により落ち着きを取り戻してドルチェの応急処置を受けた後、ビシュナルとダグの二人に担がれて病院に運び込まれた。

 同j時刻、ゼロと暗黒の巨神が一進一退の激しい攻防を繰り広げておりその衝撃がイージス越しでも伝わってくる程の激しいものだった。

 

「そこだ……!」

「うぉわっ!?」

 

 巨神から放たれた光線がゼロの胴体に着弾、怯んだゼロの隙を狙い追撃の光弾が迫る。咄嗟に首を反らして回避したゼロはエメリウムスラッシュで反撃するも巨神は軽く腕を振って弾いた。

 

「こいつ……神を名乗るだけの事はあるみてぇだな!」

「ふふふっ……はぁっ!」

 

 彼が悪態を吐くと同時に巨神の左掌から錐揉み回転する衝撃波が放たれる。闇の衝撃波は大地を抉るように突き進みながら迫るもゼロは避けること無くそれを受け止めた。

 

「くっ……!?」

「そうか……お前がその攻撃を避けるとお前が守ろうとしている奴等が傷つくという事か。人間という下らない連中を守るなんて……愚かな選択をした事を悔やむがいい」

 

 巨神はゼロの対応を悪癖と切り捨て、自身が放っている衝撃波の威力を上げてゼロを上空に吹き飛ばした。そこから間髪いれずに真上に闇のエネルギーで固めた光球でゼロを地面に叩きつけて彼の肉体に大きなダメージを与えた。

 駄目押しと謂わんばかりに右掌から魔法陣を形成、そこから闇の力を纏った無数の針状になった光弾を彼の全身に突き刺す。

 

「ぐ……まだだっ!」

 

 ゼロは痛みを堪えながらセルフィアを守ろうと立ち上がって巨神に攻撃をしようとする。巨神は決して退かない彼の姿を見て動揺、その理由を問いかける。

 

「バカな……お前の身体はボロボロ、勝ち目は無い筈だ。何故、こうも私に歯向かおうとする!?」

「俺は……俺達は守るべき者の為に最後まで戦う光の戦士、ウルトラマン。お前の様な悪に屈しない者達の為に戦う光の使者だ!!」

 

 ゼロは巨神に力強く宣言するとその言葉に憤慨、その衝動に任せて所構わずに破壊光弾を乱射し始める。

 

「うぉぉぉっーー!! どいつもこいつも邪魔しやがって!! 全てを根絶やしにしないとこの怒りが収まらんぞ!!」

「させるかっ!」

 

 乱射される光弾を嵐にゼロはバリアを展開して周囲の被害を抑えようとしたがその直前に光弾を喰らって倒れた。立ち上がろうするが激しい攻撃によって手も足も出ない状況に追い込まれておりカラータイマーの警告音が鳴り始める。

 

「くっ……このままじゃ拉致があかな、うぉわぁっ!?」

 

 耐えきれなくなったゼロが倒れ、光弾がセルフィアを覆うバリアに直撃して裂け目が入った。それを見た巨神は目を赤く光らせて右掌に闇の力を集中し始める。

 

「ゼロよ……貴様と一緒にお前が守ろうとしている街ごと消滅させてやるぞ!」

「やめろぉぉぉっーー!!」

 

 街を消し去ろうとする巨神を止めようと痛む身体に鞭を打ってゼロは立ち上がろうとするが身動きがとれない。焦る彼を嘲笑うかの如くチャージを終えた巨神が両腕を十字状に組んで右手の掌から放たれる暗黒必殺光線(デスシウムバースト)を放った。

 

「さらばだ、ウルトラマンゼロ……!!」

「うっ……」

 

 ゼロは我が身を盾にして巨神の暗黒光線を受け止めようとした。その時、セルフィアから神秘的な光の柱が立つと共に彼の前に水色の光を纏った巨人が現れてそれを遮る。

 

「何だと!?」

「この光は一体……!?」

 

 二人の前に現れた光の正体は何なのか……。




次回はタイガの最強形態が出ます。


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セルフィアの守人、絆の勇者達

今回で巨神との戦いに決着が付きます。


  ゼロと巨神が激しく戦っている頃、一通りの応急措置を済ませたレストはセルフィア城前の広場に行くとセルザを含めた街の住人達が集まっていた。その光景に戸惑いを隠せない彼に構わずセルザは口を開き広場に集まった理由を語り始めた。

 

「来たかレストよ。お主とフォルテ、マーガレットが持っているウルトラマンの力が秘められたアクセサリーに妾達の全員のルーンを注ぎ込んで三人のウルトラマンを復活させるぞ」

「……分かった。フォルテさんはタイタスから貰ったブレスレット、マーガレットはフーマから受け取ったペンダントを僕に預けて貰えますか?」

 

 セルザにそう言われた二人はレストにタイタスとフーマから貰ったアクセサリーを返却、タイガの光が込められたセルザの御守りに近付けると強い輝きを放出する。

 

「これは……!」

 

 三つのアクセサリーから赤と黄色と青の光球が飛び出し、それが一つに交わると三人のカラータイマーの意匠が施されている銀色とオレンジに彩られたブレスレット【トライスクワッドレット】に変化して左腕に装着された。

 

「次は妾達が持つルーンを全て送り、タイガ達を復活させる。皆の衆……準備は良いか?」

「何時でもいけるぜ!」

「当然だ……!」

 

 セルザの問いかけにディラスとレオンは勇んで返事をするとコハクとドルチェ、ピコがそれに続く。

 

「準備オーケーなの!」

「これであの時の借りが返せるって訳ね……!」

「タイガさん! 今から叩き起こしに行きますわ!!」

 

 中央の広場に集まった住人達はセルザとレストを輪で囲うように位置に付いて手を繋いで祈りを捧げると彼等の身体が水色に輝くルーンの光が沸き上がった。

 

「レストくん、この世界を救って!」

「レストさん……私達の想いを託します!」

「頼みますぞ、レスト殿!」

 

 マーガレットとフォルテが彼に激励の言葉を送るとそれに続けて住人達が其々の想いを込めた声援を発してルーンを届ける。ルーンの光に満ちたレストの右手の甲に消えた筈のタイガスパークが顕現した。

 

「みんな……ありがとう!」

 

 レストはタイガスパークのレバーを引いて起動すると共に左腕にあるブレスレットをリードした。

 

【トライスクワッドレット、コネクトオン!トライスクワッドミラクル!】

 

 なんとブレスレットが真紅の炎を象った剣【タイガトライブレード】になった。

 

『待ってたぜ、レスト!』

『我々はこの時を待っていたぞ』

『俺たちの真の力、今こそあいつに見せてやろうぜ!』

「みんな……これが最後の戦いだ、行くぞ!」

 

 剣から三人の声が聞こえ、激励を受けたレストはトライブレードを握り柄の部分を回転させると同時に叫ぶ。

 

「燃え上がれ、仲間と共に!!」

『『『「バディッッーー……ゴォォッーー!!」』』』

 

 タイガとタイタス、フーマの三人の幻影がレストに重なると同時に右手に持った炎の意匠が特徴的な赤い剣を天に掲げて彼等は叫んだ。

 一陣の風と共に左腕を天高く突き出し、虹色のマーブル状の閃光を発しながら両腕で力こぶを作って赤い光から右手を開いて飛び出した!

 

『シェァッ!』

『フンッ!』

『トゥワァッーー!』

《ウルトラマンタイガトライストリウム》

 

 炎を纏った真紅の巨人が降臨。頭に生えた角が燃える様な赤い角に変化しており銀と水色のプロテクターに豪華な装飾が施されている。

 ルーンの光を全身に纏ったタイガはゼロの前に降り立ち暗黒光線をその身で受け止めて防ぐがその身体に傷は全く無い。

 

『俺達はウルトラマンタイガ……トライストリウム!!』

「皆の想いと共にお前を倒す!」

 

 タイガは巨神の闇を恐れることなく堂々と宣言してゼロの前に立ち塞がる。

 

『ゼロ、俺達がこの街の人々から貰った光だ。受け取れ!』

「おうよ!」

 

 彼はセルフィアに住む人々の光の一部をゼロに譲渡、それはゼロのプロテクターに吸収された事で赤く点滅していたカラータイマーが青い輝きを取り戻した。

 

《BGM:Ultra Spiral》

 

「さぁ……反撃開始だ!」

『行くぞ!』

 

ゼロの号令に応じたタイガは巨神に向かって疾走し始めた。

 

「姿が変わった程度で私に勝てると思うなーーー!!」

 

 暗黒の巨神は虚勢を吐いて両腕を突き出して漆黒の稲妻を放つがトライブレードの横一閃で敢えなく掻き消された。フーマの力を発揮したタイガは青いオーラを纏うと同時に巨神の懐に接近、真紅の炎を纏ったトライブレードを逆手に持ち横一閃に振ると身体に深い傷が刻まれた。

 

「させるか、エメリウムスラッシュ!」

 

 ゼロは間髪入れずに巨神の左肩に黄緑の光線を撃ち込んで怯ませ、隙を作り出す。

 

『おのれ……!?』

 

 岩石の肉体と肩に傷を付けられた巨神は怒りを露にするがタイガとレストはそれに構うこと無くトライブレードの底部にあるスイッチを三回押してトリガーを引いた。

 

『「風真……烈火斬!!」』

「うぉぉぉぉっーー!!」

 

 フーマの幻影が背後に現れると同時に赤から青に変化した炎を纏った刀身で十字斬りを叩き込んで岩石の身体により深く刻み追撃。暗黒の巨神はこれ以上の攻撃はさせまいと右腕にエネルギーを集中させてタイガに振り下ろそうとした。

 

「ハァッ!」

 

 ゼロはその前に頭部にある二本の刃【ゼロスラッガー】を巨神の右肩に投げ付けて注意を反らし、タイガはトライブレードの剣身でいなした。そしてレストは底部のボタンを二回押し、トリガーを引いて必殺技を叫ぶ。

 

「この私が押されているだとぉぉっーー!?」

『「タイタス、バーニング……ハンマァァッーーー!!」』

 

 暗黒の巨神を押し出した二人はトライブレードの先端から黄色に燃える火球を渾身の力を込めて叩き付ける。その攻撃を喰らい岩石で構成された巨神の身体の各所にひび割れが生じた。

 

「そんな……私は認めん!?」

『「これで……終わりだ!!」』

 

 四人人は底部のボタンを四回押してホイールを回転させてトリガーを引いた。

 

「トライスクワッド!!」

 

 タイガは剣を三回振ってエネルギーを充填、赤と黄色と青の軌跡が刀身に集約、渾身の力を込めて剣を突き出す。

 

『『『「トライストリウム……バーストォォッーー!!」』』』

 

 四人が必殺技を叫ぶと同時に剣先から膨大なエネルギーに満ちた虹色の光線【トライストリウムバースト】が放たれた。光線の直撃を喰らった巨神は大ダメージを受けても尚、立っており黒いオーラを身体から滲み出しながら怨念を口にする。

 

「まだだ……。この世界を闇の力で消滅させるまで私は滅びるなどと……!」

『レスト、俺達とお前を力を一つにしてあいつにトドメを刺すぞ!』

『「分かった!」』

 

 レストはタイガの声に応じて空へ飛翔。太陽を背にした彼は底部のボタンを普段より長く押してホイールを回転させ、トリガーを引く。

 

「セルフィアの思いを力に……!」

『「ルーントライストリウム……ブラスタァァッッーーー!!」』

 

 ルーンの力が宿った虹色に輝く光の奔流が剣先から放たれ、巨神に命中するが腕を交差させて辛うじて直撃を防いでいた。

 

「タイガ、俺も加わるぜ!」

 

 ゼロは自身の頭部にあるゼロスラッガーを自身のカラータイマーに装着、そこに光のエネルギーを充填して繰り出すゼロが使う最強の光線技(ゼロツインシュート)を発射。

 巨神はゼロツインシュートが加わった事でその勢いに耐えきれず両腕が砕けると同時に膨大な光の奔流を浴びた。

 

『「「これが人間とウルトラマンの力だ……!!」」』

 

「バ……バカな……。神であるこの私がちっぽけな存在に倒されるとは……ぐぉぉぉぉっっーーー!?」

 

 断末魔を上げた巨神は地面に倒れると同時に爆散、その光景を見たタイガとゼロはクロスタッチを交わして勝利を讃える。

 

『「タイガ、タイタス、フーマ。そしてゼロ、セルフィアのみんなを助けてくれて……ありがとう!」』

 

 タイガと一体化していたレストはトライスクワッドとゼロにお礼の言葉を伝えると沈む夕焼けが二人を照らすのだった。 




次で最終回です。


※形態解説

 ウルトラマンタイガトライストリウムルーン
セルザウィードとセルフィアの住人達がトライスクワッドレットを通じて送り込んだルーンとアースマイトであるレストのルーンにより誕生した新たな形態。見た目はトライストリウムと変わらないが全身にルーンの光を纏っている。


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レストの旅立ち

最終回です


  戦いに終止符を打ったタイガは合体状態を解除、タイタスとフーマが並び立ちレストが分離した。そうして彼は街に帰還、セルフィアの広場に集まっていた住人達が彼とウルトラマン達の勝利で賑わっている。

 レストが街に入る直前にゼロは展開していたウルティメイトイージスのバリアを解除。自身の左腕にブレスレットに変形させてレストを街の中に入れるようにしていた。

 

「レスト、よくやった。タイガ達と共にこの世界を救ってくれた事を感謝するぞ」

「レストさん……本当にありがとうございます」

「レストくん、お疲れ様。 とってもカッコ良かったよ!」

 

 セルザウィードとフォルテ、マーガレットはレストに感謝の言葉を与える。それに続いて他の住人達も併せて彼にお礼の言葉を送った。

 

「そのお礼はトライスクワッドとゼロさんに言った方がいいよ。彼等とみんなが居なかったら勝てなかったからね」

『そんな事はないぜ。お前が最後まで諦めず、不可能を可能にしようとする意志があったからこの戦いに勝利できた』

 

 レストは自分だけでなくウルトラマン達の協力があったからと謙遜するとタイガが一歩前に出てそれだけでは無いと語った。

 

『あぁ。我々だけの力では勝てなかった。ゼロとこの街にいる人々の思いがあったからこそ勝つことができた。ありがとう!』

『そうだぜ、旦那の言う通りだ。俺達が勝ったのはお前らが闇に屈すること失く戦おうとしていたから手を貸した。それだけだ』

 

 タイタスとフーマもタイガの意見に同調するかのように述べた。トライスクワッドの後ろで佇んでいたゼロはウルティメイトイージスを纏い、トライスクワッドとセルフィアの住人達に別れを告げる。

 

「お前達の想い、俺にも伝わった……ありがとな。俺達はこれから宇宙の秩序を乱そうとする悪と戦うためにこの世界を去る。俺は一足先に宇宙(そら)へ行く!」

 

 ゼロはそう言って遥か彼方の宇宙へ飛び去った。

 

『レスト、お前とはここでお別れだ。今まで本当に世話になった……ありがとな!』

「タイガ……君にはたくさん助けてもらった。ありがとう、相棒!」

 

 お互いに礼を述べたレストとタイガは笑みを浮かべているが何処か寂しそうな雰囲気を醸し出していた。その瞬間、レストの右手の甲に付けられていたタイガスパークが消える。

 

『レスト、君には本当に世話になった。そしてフォルテ殿、また会える時が来たら手合せをお願いしたい』

「タイタスさん……その時は宜しくお願いします。街を守って頂いたこと……改めて御礼を申し上げます」

 

 タイガと同様に二人はお礼を伝えると同時に頭を下げ、次に会った時に訓練をする事を誓った。

 

『レスト、マーガレット……あんたらには世話になったな。姉ちゃん、ここにまた来た時にはあんたの演奏を聴かせてくれよな!』

「フーマ……ありがとう。もちろん、約束だよ!」

 

 フーマが二人にぶっきらぼうながらお礼を告げるとマーガレットはそれに笑顔で快諾。互いに小指を差し出し、指切りで約束を交わした。

 

「トライスクワッドの諸君、妾からも改めて礼を申す……ありがとう。そなたらの旅路に風幻竜の祝福があらん事を!」

『セルザウィード殿……お気遣い、感謝します』

 

 セルザウィードはトライスクワッドに感謝の言葉と共に全身を光らせた。

 

『じゃあな、レスト!』

『じゃあ、またな!』

『ありがとう、みんな』

『じゃあなぁ……相棒(レスト)!』

「さよなら……タイガ!」

 

 フーマは軽い口調でタイタスは全員にお礼を伝え、タイガはレストを相棒と呼び、ゼロが待つ宇宙へ飛び去る。その光景を見ていた街の住人達は大きく手を振って見送った。

 翌日、住人達は街を復興する作業に取りかかった。幸いにもゼロがセルフィアに強靭なバリアを展開したお陰で被害は殆ど出ておらず数日で街は元の姿を取り戻し、観光客も戻って来た。

 街の復興が進む最中、レストはレオン・カルナクの下にあるはじまりの森に繋がるルーンプラーナの入り口を閉ざした。その理由はルーンプラーナに行く目的が消えただけでなく第三者からの悪用を防ぐためである。

 ルーンプラーナの門の封印を終えて数ヶ月後、レストは普段着ではなく薄い青を基調としたジャケットを着ておりセルフィア城の竜の間でセルザとアーサーに宣言する。

 

「これから僕はこの世界の事を沢山知るために旅立ちます。アーサーさんにセルフィアの王子の権限を返還します。後の事はお願いします。セルザ、街のみんな……本当にありがとうございました!」

 

 彼はトライスクワッドとの出会いを通じてもっと広い世界を知って自分の出来ることを見つけようと思っていた。街が復興し観光客が戻って来るまで秘密にしていたのだ。

 

「レストくん……分かりました。貴方がそう決めたのなら止めはしないです。貴方の旅路に幸あらんことを私は祈っています」

「レスト……お主には本当に世話になったぞ。どんなに時が経ち、離れていようとも妾はレストの親友であった事を誇りに思っているぞ」

 

 アーサーとセルザは彼の強い意志を汲み取り激励を送った。レストは二人の言葉を受け取り、城の外へ出ると街の住人達が目の前にいたのだ。

 

「レスト殿がここを去ると聞いて皆で見送りに来ましたぞ!」

「レストさん、お気をつけて」

「レストくん……きみの帰りをいつまでも待っているからね~!」

 

 皆が旅立つ彼に激励を送るとレストは住人達の言葉を背に街の門から足を踏み出し、セルフィアを後にした。それからセルフィアに光の巨人伝説が伝わったらしいがそれはまた別の話である。

 

 

 

  レストがセルフィアを出てから数十年後……彼は見知らぬ山脈の麓に訪れ、空を見上げてふと呟く。

 

「タイガ……元気にしているかな。今もこの空の何処かで戦っているのかもしれないけど僕は色々な所を見て回っている。いつか君達に会うために……!」

 

 レストはその決意を胸に刻み旅を続ける道中にてピンク茶色を基調としたミニスカートを着た金髪の少女とすれ違い、少女とレストは同時に頭を下げて無言の挨拶を交わした。

 

(がんばれよ、後輩!)

 

 彼は心の中でそう呟いて旅を続けた。

 

《BGM:ドラマティック》

 

  ー完ー




これでルーンファクトリー4×ウルトラマンタイガは終わりです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。


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