しのぶちゃんの第二の人生 (みっきーやんかーい)
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ハンター試験
1話


『HUNTER×HUNTER』の世界に転移した胡蝶しのぶがハンターとして、第二の人生を歩むお話

ONE PIECEの『オペオペの実』だけの胡蝶しのぶの念能力として扱います。


1999年1月

 

 大きくて立派な建物……の横にある小さな定食屋。ここがハンター試験の会場につながる秘密の入り口みたいですね。『円』を下に向かって広げてみると・・・およそ500m先に広い空洞、さらに空洞内に数百人ほどの人の団体がいるようですね。その中に4人、能力者がおられますね。試験官でしょうか?

 一先ずお店で教えてもらった合言葉で会場に赴きましょう。

 

「いらっしゃい!」

 

「ステーキ定食お願いします」

 

「・・・焼き方は?」

 

「弱火でじっくりでお願います」

 

「奥の部屋はどうぞ!」

 

 

 奥の小部屋に入ると既にステーキ定食が用意されていた。女性の店員さんによるステーキはサービスらしく、美味しくいただきました。味に文句はありませんでしたが、脂っこくて胃もたれを起こしそうでした。半分も食べられず申し訳ない思いです。

 

 F100と表示され、扉が開きました。強面(笑)な人達が沢山いらしていて、とっても怖い(笑)ですね。会場を見渡し少し下方向に視線を向けると緑色の顔をした豆みたいな小柄な男から、番号が書かれた丸いプレートを受け取る。

 番号は『350』と書かれておりますね。それにしても、私より小柄な人がいるとは・・・世界は広いですね。

 

「試験官が2人、受験生が2人と言ったところでしょうか?」

 

「よぉ、新顔だね」

 

 どこか腰のおろせる場所を探していると茶髪で鼻が大きく小柄の中年男が声を掛けてきました。胡散臭いですね。

 

「俺はトンパ。よろしく」

 

「胡蝶と申します」

 

「俺、ハンター試験のベテランなんだ。よかったら、色々教えてやるよ」

 

「いえ、お構いなく」

 

「そ、そうかい? まぁ、気が向いたら聞いてくれ。これ、お近づきの印だ。飲みなよ」

 

 トンパと名乗った人が人受けがよさそうな笑みを浮かべながら缶ジュースを差し出してきましたが‥‥わずかに漂う香りからして、薬物。おそらく下剤でしょうか?

 

「どうした? 遠慮しなくていいぜ」

 

「……新人潰しと言ったところでしょうか?」

 

「!!」

 

 自身も同じ銘柄のジュースを飲んでいる。ごまかせてはいるが缶の接合部に沿って、缶を開けた痕跡が僅かながら見られますね。私の発言に彼は一瞬目を見開いて、汗を流し始めながらも笑みに変わってるのが何よりの証拠ですね。

 

「そ、そんなわけないだろ?」

 

「じゃあ、これ飲んで見てくださいませんか?」

 

「い、いや! ひ、人にあげたものに手を付けるわけにはいかないさ」

 

「まだ開封前です。」

 

「うわっ!?」

 

 徐に缶を開封し、彼の顔目掛けて中の液体をぶちまけてみました。彼は顔を拭う。特に口周りを入念に。それだけで何かが入っていたことは十分わかる。

特に興味もないので壁に張り巡らされているパイプに向かって軽く跳躍。座ると大事な姉の形見の羽織が汚れてしまうため、パイプの上でしゃがんで人間観察をすることにしましょう。 

 

 赤紫色の髪が逆立った、顔に星と滴の化粧をしている奇妙な格好の男‥能力者ですね。しかもお強い。肉体面は私以上でしょうね。速さと身体操作技術には自信が有りますが、その他の能力は遠く及びそうも有りませんね。

 

 頬がこけ、下瞼がたるんでいるような、顔中に針を幾つも差し込んでいる奇妙なお方‥針治療でしょうか? 一歩毎の足運びが他のものと比べて些か丁寧ですね。おそらく音を殺して生きてきたのでしょう。忍び‥暗殺者といったところでしょうか? 彼の身体能力も赤紫色の方と似たようなものでしょうか? 

 

 念能力者で桁外れの実力者は、2人だけ‥‥他にも『発』だけなら扱えそうな方が2人。黄色いおっきな帽子の女の子、明るい緑がかった髪が特徴的ですね。帽子の中には、蜂が沢山いますね。もう人方は、ターバンを巻いた角ばったおじさんですね。特に特徴はなし服の中に蛇を忍ばせてらっしゃる。『纒』は扱えず『発』のみ‥おそらく『操作系』ただし念と自覚してはいない様子ですね。

 

 かく言う私も能力者。この世界に迷い込んで早半年‥‥重症、身体中の骨は砕けてしまっていましたが、幸いなことに内蔵が無事であったため死ぬ心配はありませんでした。犬みたいなお化粧を施したお方でチードルさんと言う女性に助けられました。彼女は、難病ハンターとの事で医学に精通しており、私の怪我の治療も行ってくださり助かりました。私の治療の際に『精孔』と言うものが開いてしまったため『念能力』と言うものを教えていただきました。治療との並行であったため、『凝』と四大行を覚えるのに1週間もかかってしまいました。まぁ彼女曰く、早すぎるらしいのですが、私には分かりません。怪我の完治は『絶』を使っていたため、予定より早く3週間で歩けるようには回復。治療の間は、基礎の鍛錬と私の事情を話しておきました。

 

 正直、この世界が私の生きた世界と同じ場所なのか、全く別の異世界なのかすら分かりませんでした。ただ私の話を聞いた彼女の推測によると、『放出系』の能力で飛ばされたのでは?との事です。さらに「鬼」に関しても『寄生型念獣』と言う能力があるらしく、その寄生型の影響で「人」が「鬼」に変わり、異形かつ異常な戦闘能力に変化したのではとの事です。もしかしたら、私も無意識に『念』を会得していたのかもしれませんね。この毒の身体が良い例です。

 

「……くそ! また失敗かよ。今年の新人はどうなってやがんだ? まぁいいさ。試験が始まったら、嫌でも巻き込まれる瞬間が来る。覚えてや‥が‥っれ!」

 

 トンパさんは歪んだ笑みを浮かべた瞬間に何とも言えない、苦痛とは違った何かを耐えるような顔に早変わり。腹を抑え、ぎゅるぎゅると鳴り響く自身の腹。どうしたのでしょうか?(笑) まさか先程の下剤入りのジュースを飲んでしまったのでしょうか?

 

 ROOM(ルーム)※ONE PIECE

『円』‥ドーム状のサークルを発生させる。円内では、あるもの全てを切る・付ける・動かす・交換する・調べるなど、文字通り「執刀医」となることができる。また、能力者自身の力量の向上によって、サークルの範囲が拡大するようである。

 

 シャンブルズ ※ONE PIECE

『円』内部の物体を、自在に別のものと入れ替える。

自身の体を入れ替えての瞬間移動や、実体のない人格の交換も可能である。

 

 これら2つの能力を用いり2つの缶の中身を入れ替えさせてもらいました。まぁ人様に毒を飲ませようとしたのです。このぐらい覚悟の上でしょう。さて、他の方を見ていきましょう。

 

 後は‥足運びで判断するなら、銀髪の少年と、坊主頭の青年でしょうかね?

どちらも裏のお仕事を生業にしている方でしょう。これが命のやり取りでも脅威には感じませんね。

 人数が400を超えた頃、ジリリリリリリ!!目覚まし時計のような音が響き渡る。『円』で確認済みであったがエレベーターの反対側の壁が上に開き始め、壁の向こう側にスーツを着た口髭が特徴的な紳士が立っていた。

 

 

「只今をもって、受付時間を終了いたします。それではこれより、ハンター試験を始めます」

 

 妙に響き渡る紳士の声。

 試験開始の言葉に受験生のほぼ全員に緊張感が走っていますね。

 

「さて、一応確認致しますが、ハンター試験は大変厳しいものもあり、運が悪かったり、実力が乏しかったりすると怪我したり、死んだりします。さらには先ほどのように受験生同士の争いで再起不能になることも多々あります。それでも構わない……という方のみ付いてきてください」

 

 紳士は注意事項を伝え、今ならば棄権も可能なのでしょうね。

 もちろん誰も引き返す者はいませんね。先程の奇術師にやられた人以外。腕が天井に張り付いてますが‥。能力でしょうね。オーラを粘着質‥または磁力を帯びさせる能力でしょうか?

 

「承知しました。第一次試験404名、全員参加ですね。それでは参りましょう」

 

 紳士はくるりと身を翻し、手足を大きく振り上げて歩き出す。

 それに受験生達も続く。私も前の方に向かいましょう。

 

「当たり前だが誰も帰らねぇな。ちょっとだけ期待したんだけどな」

 

 前に向かおうかと考えていると、すぐそばで緊張を紛らわせるように言う男性が‥20代後半くらいの方に見られますね。

 さらに近くの黒髪ツンツンの少年、金髪の民族衣装の青年がそれぞれ肩を竦めたり、苦笑するなど様々な反応をしていらっしゃる。

 

「ん?」

 

「おかしいな」

 

「?」

 

 サングラスの方以外の3人は変化を感じ取った様子ですね。

 前の方々が駆け足で進み始めましたね。

 

「おいおい、なんだ? やけに皆急いでねぇか?」

 

「ああ、だんだん速くなっている」

 

「前の方が走り出したんだ!」

 

 完全に周囲は長距離走‥たしかランニングというのでしたかしら?

 それに対し紳士は未だにあるくように走ってますね器用ですね。

 

「‥(流石試験官に選ばれるだけのハンターですね。【纒】も綺麗です)」

 

「申し遅れました。私、一次試験担当官のサトツと申します。これより皆様を二次試験会場にご案内します」

 

「? 二次……? ってことは一次は?」

 

「もう始まっているのでございます。二次試験会場まで私に付いてくること。これが一次試験でございます」

 

「「「「!!」」」」

 

「場所や到着時間はお伝え出来ません。ただ私に付いてきていただきます」

 

 サトツの言葉に試験の意味を理解したり、首を傾げたりなど受験生の反応は様々ですね。

 

「なるほどな……」

 

「変なテストだね」

 

「さしずめ持久力試験ってことか。望むところだぜ! どこまでも付いて行ってやる!」

 

「ああ、どこまで走ればいいのか分からないのはかなりの精神的負荷となる。精神力も試されているな」

 

 金髪くんの言葉にサングラスの人が喉を鳴らしていますね。聞き耳を立てるのは、あまりよろしくありませんが‥おや?先ほどの銀髪の少年が車輪のついた板‥スケボーでしたっけ?に乗って楽してますね。羨ましいです。

 楽してる少年にサングラスの人が大声を張り上げてますね。何故でしょうか?

 

「おい、ガキ! 汚ねぇぞ! そりゃ反則じゃねぇか!」

 

 サングラスの人の言葉に少年が不思議そうな顔をしてこちら首ごと振り向いてくれてますね。

 

「なんで?」

 

「なんでって、こりゃ持久力のテストなんだぞ!?」

 

「違うよ。試験官はついて来いって言っただけだもんね」

 

「ゴン!! てめぇ、どっちの味方だ!?」

 

「どなるな、体力を消耗するぞ。それにうるさい。テストは原則持ち込み自由なのだよ」

 

「もしも〜し」

 

「~~!!」

 

 おや?気がついておられないのでしょうか?貴方の味方が誰もいないと言うことをお伝えしようと思いましたのに‥

 すでに少年はサングラスの人への興味を無くし、ゴンと言う少年と何故か私の方を交互に見ている。

 

「ねぇ、君いくつ?」

 

「俺? もうすぐ12歳!」

 

「ふ~ん……。やっぱ俺も走ろ!そっちの小柄な姉ちゃんは?」

 

「私は18歳ですよ。」

 

「「マジ?!」」

 

 私の歳を聞いた少年はスケボーを蹴り上げて、ゴン君の隣で走りながら器用にサングラスの人と共に驚いていますね。女性の年齢を聞きながらその反応は失礼ですね。

 

「その反応は、流石に傷つきますよ?」

 

「あ‥わりぃ。俺、キルア」

 

「俺はゴン!お姉さんは?」

 

「私は、胡蝶しのぶと言います。しのぶが名前になります。」

 

「ゴンにしのぶさんね。おっさんは?」

 

「おっさんじゃねぇ! 俺はまだ10代だ!!」

 

「「ウソォ!?」」

 

「あらまぁ」

 

 ゴン君もキルア君も目を見開いて驚いていますね。かく言う私も驚いています。金髪くんも声を上げなかったが、目を大きく開いて驚愕の表情をしておりますね。分かります。

 

「は!? おっさん! いくつだよ!?」

 

「19だ!!」

 

「あら‥同い年なのですね」

 

「「同い年ぃ!?」」

 

 サングラスの人とキルア君のリアクションが息ぴったりで面白いですね。

 

「私、来月19になります。」

 

「確かにそりゃ‥同い年だわ」

 

「色々アンバランスすぎだろう‥」

 

「母と姉はもう少し大きかったのですがね‥」

 

 

 身長や体格は、遺伝するものなのでしょうが‥‥ここまで小柄で筋力が弱いと考えものですね。その分、速度重視の体捌きを身につけられたのは利点ですかね?頸の切れない私の腕力を補う能力にして正解でした。

 

 

「そう言えば、そちらのお二人のお名前を存じ上げませんが‥?」

 

「俺は‥‥」

 

「私は、クラピカというものだ。胡蝶さん。」

 

「こっのやろぉぉぉ‥‥可愛い子ちゃんがいるからって、しゃしゃりでらやがって!俺はレオリオだ!」

 

「心外だ!私がお前のような如何わしい動機であるものか!」

 

 クラピカくんにレオリオくんですね。走っているのに大声で元気ですね〜

 

「……走り始めて1時間くらいですかね?そろそろ前に出させてもらいますかね。」

 

「前?すし詰め状態だぜ?」

 

「どうやって前に出るの?」

 

 

 不思議そうにする2人と同じく気になっているクラピカくんとレオリオくんも気になっているのですね。まぁこの密集地帯ですからね。では、行ってきます。

 

「すげぇ!」

 

「あのねぇちゃん壁走ってやがる‥‥」

 

 

 4人とも驚いてますね。さて、あの4人は、一次試験を乗り越えられるのか楽しみですね。

 

 

 





『鬼滅の刃』は詳しくありません。キャラが可愛いから主人公として出させてもらいました(o^^o)


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2話

1話目アンケート(9月1日での結果)
ヒソカとやりあったオモカゲ、採用 16
ハンターに捕まった別キャラとして採用 12
不採用 22

採用だけで見れば 28
ですが、3つに分けてでの投稿でしたので不採用の方向で4話目を考えて行こうと思います。







一次試験開始から約6時間経過。

 

 

 他の方は、一歩ごと規則正しく踏みしめながら地下を走る中、私は30m単位でタタッン!っと、両足を着いたら前方に向かって跳躍して体力温存です。私の歩幅ですと歩数が多くなりますからね。身軽ゆえに走り幅跳びの要領で移動すれば疲れません。それにしても、妙な視線を向けられつつも試験官のサトツさんのお隣を走っています。暇なので話し相手になってもらっていますが‥この粘つくような視線はどうにかして欲しいものですね。

 

「階段ですか‥何段ほどあるのでしょうか?」

 

「詳しくは、存じませんが5万段はあるかと‥‥まぁここまで多いと数えるのも手間ですので」※実際は知りません。

 

「なぜ、このような場所にこれほどの階段を作ったのか些か気になりますが‥‥言えてますね。階段を作る能力者でもいたのでしょうか?」

 

 目の前に現れたのは先が見えない階段。かなりの勾配があり、段差も決して低くありませんね。後ろの方々が恐ろしい(笑)表情をしています。それにしても果てしない‥‥

 

「さて、ちょっとペースを上げますよ」

 

 サトツさんは歩くような感じのまま2段飛ばしで登っていく‥‥その脚の長さ羨ましいですね。かく言う私は100段飛ばしで登らせてもらいます。後の受験者の方たちが必死に食らいついて行くさまは‥‥やはり怖いですね。まさしく鬼気迫る思い‥ですかね?おや?後ろからゴン君、キルア君が並びながら登り、徐々に先頭に近づいてきましたね。

※3mで約15段くらいが平均の階段の段数です。

 

「やっと、しのぶさんに追いついた‥‥」

 

「前がトロくてなかなか進まなかったもんな‥‥」

 

「あらあら。でしたら、壁の走り方でも教えてあげましょうか?(笑)」

 

「ほんと?!」

 

「てか、あんたどんな脚力してるんだよ!」

 

 一坂100段くらいありそうな階段を隣でひとっ飛びで飛び越える私を見て眉間を釣り上げて面白い表情ですね(笑)。足にオーラを集めて普段の脚力を何倍にも上げているだけなのですがね。

 

「俺にもできるかなぁ?」

 

「練習とかだりぃだろ」

 

「練習したら出来ます。ですがやらないのであられば出来ませんね。簡単なので練習する気概のあるゴン君ならできるようになるでしょうが‥やる気のないキルア君には、出来ないでしょう。」

 

「なっ?!」 

 

「簡単ですが仕方なありません。簡単なことに取り組めるゴン君と違って、やる気のないキルア君に出来ないのは仕方ないです。簡単な事なので気になさらないでください。ゴン君にできる事ができないだけですから‥‥‥」

 

「くがぁぁぁあ!!!! やりゃぁいいんだろう!!くそがぁ!!!!」

 

 

 ちょろいですね。まぁ『念』はともかく壁を足場にする特殊な歩行術なら、この2人なら試験中にでも会得できるでしょう。まぁもうじきトンネルとも、おさらばですのでまたの機会になりますね。

 

「もうじきトンネルも終わりですし、この後の試験の合間に教えられる場面が有れば、教えてあげますよ。」

 

「ほんと?よろしく!しのぶさん!」

 

「っちぇ‥しゃぁなしだぜ?」

 

「はいはい」

 

  さてさて、ようやく明るい青空のものに出られますかね?

 その時、

 

「外だ!」

 

 ゴン君が先を指差す。

 ようやく太陽の明かりを目にして、まだ走り続けている受験生達は流石にホッとした表情ですね。

 

「ふぅ。ようやく薄暗い地下からおさらばだぜ」

 

 坊主頭の忍び君が大きめの反応をしていますが‥本当に忍びなんでしょうか?気配丸わかりですよ?

 

「お~」

 

「うわ~」

 

「湿原ですか‥‥」

 

 ゴン君もキルア君も、目の前の光景に素直に感嘆してますね。

 後に続いて出てきた者達も、その光景を見て絶句してますね。

 これからここを走るのでしょうか?跳ねた泥が羽衣に付かないように注意しなくてはいけませんね。神経を研ぎ澄まさなければ‥

 

 

「【ヌメーレ湿原】通称『詐欺師の塒』。二次試験会場はここを通って行かねばなりません」

 

「ここを走るのですね。根気の作業になりますね。」

 

 万が一‥というのも有りますからね。畳んで腕の中に仕舞い込んでしまいましょうか。

 

「この湿原にしかいない珍奇な動物達。その多くが人間をも欺いて食料にしようとする狡猾で貪欲な生き物です。十分注意して付いてきてください。騙されると死にますよ」

 

 サトツさんの言葉が言い終わると同時に、背後の出口が閉じていった。

 

「ああ……ま、待ってくれ……!」

 

 出口前で気を抜いてしまったのか、倒れていた男が手を伸ばすがもちろん誰も助けないし、シャッターも止まらない。ざんねんざんねん。

 

「それでは参ります。騙されることのないように、しっかりと付いてきてください」

 

「はん! 騙されるのが分かってて騙されるわけねぇだろ」

 

 レオリオ君、強気ですね。大丈夫でしょうか?

 

「嘘だ! そいつは嘘をついている!」

 

『!?』

 

 出口の陰から突如、ボロボロの男が何かを引きずりながらご登場‥野生の生物ですね。言葉を喋れるあたり、魔獣の類でしょうか?

 

「そいつは偽物だ!! 試験官じゃない! 俺が本物の試験官だ!」

 

 男の言葉に受験生達はサトツさんと男を交互に見て困惑の表情を浮かべてますね。騙されそうになってますよレオリオ君。

 

「偽物!? どういうことだ!?」

 

「じゃあ、こいつは一体……!?」

 

 レオリオ君と忍君は、完全に惑わされてますね。ここでお別れでしょうか?

 クラピカ君は冷静に真偽を見極めようとしていますね。関心、関心。

 

「これを見ろ!」

 

 男が引きずって‥あらあらそっくりなお顔な事で(笑) 猿の顔を見た受験者達は衝撃を受けて、サトツさんと見比べてますね。擬態の一種でしょうか? お上手ですね。

 

「こいつはヌメーレ湿原にいる人面猿! こいつは新鮮な人肉を好む。しかし、手足が細く非常に力が弱い。そこで自ら人に扮し、言葉巧みに人間を湿原に連れ込み、他の生き物と連携して獲物を生け捕りにするんだ!」

 

 非力なら10時間以上も走られないでしょうに‥間違う要素が見当たりませんね。

 

「小休止の中の茶番と思えば、なかなかの見せ物ですね(笑)」

 

「しのぶさんはどっちが本物か分かったの?」

 

 クラピカ君とレオリオ君もこちらに気がついて寄ってきてますね。私は集合地点か何かですか? 背が低いから目立ちにくいと思いますが‥まぁいいでしょう。

 ゴン君に至っては、野生の勘で気がつきそうなものですが‥‥

 

「獣臭の有無もありますが、何より実力がかけ離れていますからね。‥‥‥堪え性のない奇術師ですね。戦闘狂でしょうか?」

 

 走っている時から妙な殺気と視線が有りましたが、茶番をきっかけにトランプが空を切り、男の顔にサクっと‥‥『周』の威力と持続時間から『強化系』か『変化系』でしょうか? 取り外し可能なオーラを繰り出していたことから、おそらく後者ですね。

 

『!!』

 

 サトツさんは、『凝』で受け止めていますね。全体45・指先55くらいでしょうか? 『流』の速度と精度もなかなか‥‥両手指でトランプを受け止めたのですね。

 

「くっく♦ なるほどなるほど♣‥‥(僕の殺気に意を紛れ込ませて、気付くのが遅れちゃった♣︎ おそらく腰に下げている刀で猿の額に一突き‥‥猿と彼女の距離は目測で10m。より早く‥速く正確な突き♥) 」

 

 奇術師さんはトランプを弄りながら、楽しそうですね。こちらとサトツさんを交互に視線を送ってきてますね。変態ですね。

 

「……化けたお猿さんは、気の毒ですね」

 

 どうやらお三方には、バレているようですね。手段までは察していないでしょうが、私が人面猿さんに一撃入れた事はバレバレのようで、上手く殺気を消したつもりでしたが、まだまだ未熟ですね。

 

「‥(野生の獣が相手でしたから遠慮なく試運転を試みたものの‥まだまだ本調子とは言えませんね。)ざんねんざんねん。」

 

 死んだ男の傍で死んだふりをしていた人面猿の額から血栓が噴き出す。気がついていない者たちは、奇術師の仕業だと思うでしょうね。計画的、責任転嫁です。

 

「君いいねぇ♠ 今度、食事でもどうだい♥」

 

「あらあら 奇術師さんからのナンパと言うやつでしょうか?」

 

「君の可憐な腰付きと足捌きに見惚れちゃってね♦︎ 」

 

「お褒めのお言葉とお断りのお言葉を奇術師さんに送りますね。」

 

「僕の名前はヒソカ♠︎ 君のこと褒めてるんだよ♥ ‥‥残念♣ けど、これで決定♦ そっちが本物だね♠」

 

「その通りです。これから通る場所には更に巧妙な罠を仕掛ける動物もいます。故に私から離れてしまうと、彼等の餌食になってしまいますよ?‥‥(44番がトランプを投げる瞬間!350番、彼女の影が一瞬ブレ気を取られてしまい危うくトランプを掴み損ねるところでした。あの速度、『念』を纏っていたら視認する事すら難しいでしょうね)」

 

「……なるほど……」

 

 さてさて、妙な人に目をつけられてしまいましたね。

 

「そして、もう1つ。次からはいかなる理由でも私への攻撃は試験官への反逆とみなし、即失格とします。よろしいですね?」

 

「はいはい♦」

 

 ヒソカさんは、反省していないのでしょうね。私も警戒を強めておきましょう。サトツさんのオーラも警戒を強めているようですね。

 

「それでは参りましょうか。二次試験会場へ」

 

 休憩もお終い。その言葉で受験生達の顔が再び引き締ま立てるようですね。

 なるべく泥の跳ねにくい足場を確保しなくては‥‥ハンター試験、難関ですね(笑)

 

「ちっ! またマラソンの始まりかよ!」

 

「くっ! 下がかなりぬかるんでやがる!」

 

 湿原とあって、地面はかなりぬかるんでいますね。木の根や幹、石ころを足場にしていますが、トンネルの時と違って、霧も濃いですしルートが読み取れませんね。こまめに跳躍するしかありませんかね。

 ヒソカさんの殺気がどんどん大きくなってますね。戦いたい衝動を受験生で晴らすつもりですかね?

 

「離れておきましょうか‥」 

 

 

 おそらく霧に乗じて試験官ごっこでもするのでしょうね。

 

「レオリオー! クラピカー! キルアが前に来た方がいいってさー!!」

 

「ドアホー! 行けるならとっくに行っとるわい!!」

 

「そこをなんとかー!!」

 

「ムリだっちゅうのー!!」

 

 おそらくキルア君の助言をゴン君が後方にいるクラピカ君とレオリオ君に呼びかけているのでしょうね。 ですが、こればかりは本人たちの努力次第ですね。

 

『ぎゃあああ!!』

 

 始まりましたか‥身を守るためならともかく戦いの何が楽しいのでしょうか?

 

「なんで、あんなところから悲鳴が!?」

 

「騙されたんだろ」

 

「おい、いつのまにか俺達の後ろにいた連中が消えたぜ」

 

「マジか。確か100人はいたはずだぜ」

 

 ゴン君、キルア君はいますが、クラピカ君、レオリオ君が見当たりませんね。『円』で確認した限り釣られてしまったのでしょう。

 

 

「んん〜・・・(後、何キロで目的地に着くのか分からないので2人を援護するのにもリスクが有りますね。数言ですが話した仲です。助ける義理も有りませんが、後味も悪そうですね。)

 

『ってぇーーー!!』

 

 レオリオ君の声ですね。ヒソカのトランプに当たってしまったようですね。

 

「ゴン!!」

 

 キルア君が呼び止めますが、ゴン君は止まることなく霧の中に姿を消してしまいましたね。致し方ありません。カナヲの時とは状況も違いますが、見捨てられるような薄情な性格でもありません。それに‥姉さんでも同じようにしたことでしょう。

 

「やれやれ‥‥手のかかる人達なことで…」

 

 『円』を1方向に「楕円」のように伸ばせば2kmは行けるはず‥時間との勝負ですね。

 

「私が最速で連れ戻してきますので、キルア君は二次試験会場を目指してください。」

 

 キルア君の声がしますが、振り返る時間がもったいないですね。急ぎましょう。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 時はちょっと戻る。

 

 レオリオとクラピカは濃い霧の中を走っていたが、突如周囲から悲鳴がひっきりなしに上がり始めていた。

 

「ちぃ! 知らないうちにパニックに巻き込まれちまったぜ……!」

 

「どうやら後方集団が途中から別の方向に誘導されてしまったようだな」

 

 レオリオとクラピカは動くに動けない状況だった。

 もはや先頭集団がどの方向にいるのかも分からず、動こうにもあっちこっちから悲鳴や人間のものではない声が響き渡っている。

 下手に動けば、その中の仲間入りになってしまうだろうことは容易に想像できる。

 

 更にレオリオは武器をゴンが担いでいるトランクの中に入れたままだった。

 今のレオリオには自衛手段がないに等しい状況だった。

 

 その時、霧の中から何かが飛んで来た。

 

「ぎゃあ!?」

 

「がっ!」

 

「ぐっ!」

 

 2人の近くにいた受験者達から悲鳴が上がり、血が噴き出す。

 クラピカはギリギリで気づいて、木刀を抜いて叩き落とす。しかし、レオリオは避けることも防ぐことも出来ず、左腕に鋭い痛みが走る。

 

「ってぇーーー!!」

 

 叫びながら目を向けると、刺さっていたのはなんとトランプだった。

 レオリオはそのような攻撃手段を取る者は1人しか思い浮かばなかった。

 

 トランプが飛んで来た方向に目を向けると、霧の中に人影が浮かび上がる。

 それは2人の想像通り、トランプを弄りながら不気味に笑っているヒソカだった。

 

「てめぇ……なにしやがる!!」

 

「くくく♥ 試験官ごっこ♠」

 

「なんだと……」

 

「二次試験くらいまでは大人しくしておこうかと思ってたけど、一次試験があまりにも退屈でさぁ♦ 選考作業を手伝おうかと思ってね♣ 僕が君達を判定してあげるよ♠」

 

 ヒソカは周囲にいる受験者達を見渡しながら宣う。

 

「判定ぇ? はっ。馬鹿め! この霧だぜ? 一度試験官からはぐれたら最後、どこに向かったか分からない本隊を見つけ出すなんて不可能だぜ!」

 

 受験者の1人がやけになったのか、ヒソカを小馬鹿にしたように笑って嘲る。

 

「つまりお前も取り残された不合格者なんだ―きょ!?」

 

 小馬鹿にした男は額にトランプが突き刺さって言い切る前に息絶える。

 

「失礼だなぁ♠ 君と一緒にするなよ♦ 奇術師に不可能はないのさ♥」

 

 ヒソカは余裕を保ったまま自信たっぷりに言う。

 すると、受験者達は武器を構えてヒソカを囲む。

 

「殺人狂め! 貴様などハンターになる資格はねーぜ!」

 

「二度と試験を受けれないようにしてやる……!」

 

 20人近くに囲まれたヒソカだが、表情は全く変わらない。

 それどころか、

 

「そうだなぁ~……君達相手なら、この1枚で十分かな♣」

 

 と、1枚のトランプを出して自信たっぷりに言い切った。

 

「ほざけぇ!!」

 

 それを挑発と受け取った受験者達は一斉に攻撃を仕掛ける。

 しかし、ヒソカは涼しい顔で躱し、さらに本当にトランプ1枚で急所を斬り裂いて殺していく。恐ろしいのが、ヒソカは全て喉か顔への一撃で受験者達を殺していくことだった。

 

「くっくっく……あっはっはっはぁーー♥!!」

 

 高らかに笑いながら、また命を奪う。

 ようやく現実を理解した受験者達は逃げ出そうとするが誰一人逃げきれず、10分と経たずにクラピカ、レオリオ、角刈り頭の男の3人を残して全滅した。

 

「君達全員不合格だね♠」

 

 トランプに付いた血を振り払って、クラピカ達に向く。

 

「残りは君達3人だけ♦」

 

「お取り込み中失礼します。」

 

「「「!!」」」

 

 ヒソカの背後に人影が現れて、ヒソカの手に持っていたトランプをヒソカに気付かれることなく、3人の元に歩み寄る背中に『滅』の字と蝶の髪飾りが特徴的な小柄な女性。

 彼女の接近に気づかなかったばかりか、彼女の早技を視認できなかったことに薄く笑みを浮かべるヒソカ。

 何食わぬ顔でヒソカの隙を突いた彼女に追撃するそぶりもなく、クラピカ達の前に移動する。

 

「貴女は!」

 

「こんにちわ。ここは空気そのものは、綺麗ですね。」

 

 どうにも気の抜ける空気を塗り替えるような雰囲気の彼女の登場にクラピカ、レオリオは毒気を抜かれ、もう1人の受験者はこの場を立ち去っていた。

 ヒソカは、彼女の登場により登るような高鳴りに身を焦がしていた。

 

「これはこれは♣ もしかして、君が相手をしてくれるのかい?」

 

「……連れ戻しに、ですかね?」

 

「おやおや♠︎ それはどういう意味だい♦︎」

 

「ほんの少し、関わっただけではありますが‥見捨てるには私の良心に差し支えあります。故の助太刀です。

 

「それは嬉しいねぇ♥」

 

「言っておきますが、私の『日輪刀』には『毒』が仕込まれていますので……」

  

「それは怖いね♠」

 

 ヒソカは半身を除けそらせ、彼女の突きを躱す。躱した体勢のまま、トランプを取り出し、彼女に斬り付け用と右手を振る。 しかし、振るった時にはトランプが刀に弾かれ未遂に終わる。

 

「‥(目にも留まらぬ突きの速さも素晴らしい♣︎ 更に突きからの切り返しの繋ぎも無いに等しく、僕の腕を振る速度より遥かに速い速攻‥いいねぇ♥︎)」

 

「もしも〜し」

 

 振り抜いた腕の力をそのままに、足を振り上げる。手応えもなく、空を切ったと思いきや、空高高く上げた足の上にて、突きの構えをとる彼女。胸辺りの衣服を横に一文字切られるも、後ろの岩に付けたバンジーガムによる回避が間に合い無傷。意識を彼女に戻すと、俄然に刀の切っ先‥後3cmの所で刀の下に潜り込むかようにバンジーガムを縮め緊急回避。避けた刀の突きは、2mほどの岩を軽々と突き抜け風穴を開けることにより、彼女の突きの威力を肌まで実感し興奮を高める。

 

「‥‥(岩を突き破る破壊力、念は使えるだろうが‥そぶりも無い。興奮してイっちゃいそうだよ♥︎)」

 

「もしも〜し」

 

 ヒソカの下腹部は見るに耐えない変貌を遂げている。彼女が医学に精通していなければ、叫び声の1つでもしていたであろう。それでも彼女には、理解し難い現象で有る。 そう言った行為の際になら、まだ理解も出来たであろうが、戦闘中にも関わらず‥‥要するに童磨の時と同じく『とっととくたばれ糞野郎』の気分で有る。

 

「……やっぱ我慢出来ねぇ」

 

「レオリオ!」

 

 レオリオはクラピカの声を無視をして、近くに転がっていた武器を手にしめ、戦っているヒソカに向けて、武器を構えて一気に迫る。

 

「うおりゃあああ!!」

 

「おや?」

 

「あらあら?」

 

「こちとらやられっぱなしで、だまって見てるほど気ぃ長くねぇんだよーー!!」

 

 レオリオは叫びながら武器を構えて、ヒソカに攻めかかる。

 

「ん~、いい顔だ♦」

 

「蟲の呼吸・蜂牙の舞 真靡き(ほうがのまい まなびき)・無刀」

 

「ぐべぇ!」

 

 無謀にも単身でヒソカに突撃してきたレオリオの頬目掛けて、彼女の前方に飛ぶ突き技。刀で付いていたのだあれば、先ほどのように岩をも貫く一撃。それを拳ではなてばどうなるか‥レオリオを追って走って来たクラピカの元にエスケイプの如く飛んで行ったレオリオであった。

 

 

「何も考えず彼に挑むのは、自殺と大差有りませんよ。」

 

 彼女に殴り飛ばされたレオリオは、クラピカの足元にゴロゴロと豪快に転げ回りピクピクと痙攣しつつも動きが無い。

 

 

「ああ失礼しました。気絶しているから聞こえませんね。うっかりです」

 

 『ってへ』の効果音でも付くかような、しでかした雰囲気の笑みを浮かべる彼女。

 その時、霧の中から黒い玉が飛んできて、ヒソカの額に直撃する。

 

「「!!?」」

 

 クラピカは目を見開いて、玉が飛んで来た方向に目を向ける。

 そこには釣竿を振り被ったゴンの姿があった。

 

「ゴン!?」

 

 ゴンは当たると思っていなかったのか、呆然と固まっている。

 ヒソカは平然とゴンに顔を向ける。

 

「やるね、ボウヤ♣」

 

 ゴンはビクッとして後退る。

 本能的にヒソカの危険さを感じ取ったようだ。

 

「釣り竿? 面白い武器だね♥ ちょっと見せてよ♣」

 

「その辺にしておきませんか? それにゴン君は美味しい所を掻っ攫いちゃいましたね。残念 残念」

 

「くく♦ そうだね♣ 君の気の抜けたセリフにも毒気抜けちゃったし♠︎ それに君達は合格だよ♥」

 

 ヒソカは満足げに笑みを浮かべて頷く。

 そして、すぐ近くにいたゴンに目を向けて、屈んで顔を近づける。

 

「ん~~……君も面白そうな子だ♠ いいハンターになりなよ♥」

 

 ヒソカは立ち上りレオリオを担いで歩き出す。

 

 「じゃあ、二次試験会場で♣」

 

 ヒソカが消えていくのを見届けて、ゴンの元に歩み寄る。

 クラピカも駆け寄ってきて、ゴンに声を掛ける。

 

「ゴン! 無事か!?」

 

「……うん。何もされてないよ。レオリオは?」

 

「無謀なことをされそうでしたので気絶させました。」

 

「そ、そう、なんだ……」

 

「まぁ‥自業自得だな」

 

「では二次試験会場に向かいますよ。」

 

「うん!」

 

「道は分かるのか?」

 

「付いて来てください」

 

 

 ゴン達も後に続き、2人は全速力で彼女に付いて行き二次試験会場を目指すのだった。

 

 

 



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3話


少し、修正させてもらいました

9月6日の段階でアンケート結果

『今後の方針で、しのぶちゃんvs幻影旅団を書こうと考えます。 原作では、蜘の鬼の人とやり合ってましたので、誰とやり合わせるかをアンケート取らせてもらいます。」
ヒソカ 5
マチ 14
ノブナガ44

なので、ノブナガの方針で行かせてもらいます。



 

 

二次試験会場は、あの場からおよそ5kmの所であった。しのぶの『円』を持ってしても届かない距離‥それでも彼女は迷わず二次試験会場へと向かったいた。彼女の『円』は、他の受験者の足跡を捉え、最短距離で木の枝を飛び乗り森林をかけて行った。

 目印ではないが、いく先々でヒソカに返り打ちにあった獣たちが道標となっていた。

 

「本当にこっちで合っているのか?」

 

「こちらにヒソカさんも含めてですが、人が通り過ぎた痕跡が見られます。‥(索敵範囲、『円』の言葉言わない方が良いのでしょうね)」

 

 下からのクラピカの質問に、周囲を指差しながら痕跡の有無を指し示す。

 周囲には一撃で斬り殺されている動物の死体が点々と残されていた。

 

「しのぶさんの言う通りだよ。それにレオリオが付けてる香水もこの方角から直って来てるしね!」

 

「‥(どんな嗅覚だ!)」

 

「ゴン君は、鼻が良いのですね」

 

 ゴンの人ならざる嗅覚に驚きの表情を浮かべるクラピカ。しのぶは、鼻の角ある男の子を思い出しながら思わず口角を上げてしまう。

 そしてゴンに目を向けると、ずっと何かを考えている様子で俯いている。

 

「大丈夫か? ゴン」

 

「うん……。ねぇ、ヒソカが言ってた合格ってどういう意味だと思う?」

 

 ゴンはヒソカに言われた合格という言葉がずっと引っかかっていた。

 

「奴は試験官ごっこと言っていた。つまりヒソカは我々を審査していたのさ」

 

「どうやって? だって俺はただ顔を見られただけだよ?」

 

「ゴン君は、その前に一撃入れているでしょ? レオリオくんは己のプライドをかけてヒソカに挑みました。まぁ‥流石に無謀過ぎましたので力尽くで止めさせてもらいましたが。 ゴン君はわざわざ戻ってきて、しかも見事な一撃を入れてましたからね。」

 

 

 しばらく走っていると大きな建物のある場所についた。他の受験生たちもいる。間に合ったようだ。

 

「良かった。間に合ったみたいだね」

 

「どうやらそのようだな」

 

「170人ほどまで減りましたね。‥(サトツさんは木の上、ヒソカさんは‥針人間のお隣ですかね? レオリオ君は何処に‥?)」

 

「う、ぐ、いてて、あれ? 俺はなんでこんな……?」

 

「目を覚ましましたねレオリオ君。何があったのか貴方でも覚えてありますか?」

 

 

 さりげなく酷いこと言う、しのぶだが気がつかないレオリオ。

 

「湿原に入った所までなら覚えているんだがなぁ‥てか‥ここ、どこだ? 俺の顔はどうなってたんだ?」

 

「‥‥問題ない!いつもどうりだ!」

 

 

 レオリオの顔を見て、疑問なく言い切るクラピカ

 

「おい!よく見ろ!」

 

「見惚れはしませんが、厳ついお顔で良いとカッコいいと思いますよ!マニアックな女子に好まれる事、必見です!」

 

 声を張り、右頬を指差すレオリオの手を両手で包むように浮き足立つような言葉を軽やかに並べる和やかなしのぶ。レオリオも『お、おう‥そんなにか?」あと、満更でもない笑みを浮かべ騙される。一歩下がって、控えていたクラピカとゴンは‥

 

「言わない方がいいな」

 

「うん」

 

 2つの意味で思いだすまで言わないことにした2人であった。

 

 

 ヌメーレ湿原を抜けた所にある『ビスカ森林公園』。

 ここが二次試験会場である。

 

 サトツの後をしっかりと付いてきていた受験者達は、公園内にある倉庫のような建物の前で集まっていた。

 一次試験を終えたサトツは、二次試験の様子が気になったので高い木の上に上って様子を見ることにしていた。

 

「‥(今年の受験生は豊作ですなぁ。特に毛先が紫色の彼女は、『円』の広さが桁外れでした。1方向にのみ伸ばせば"3㎞"には達するほどの広さ。そして『纒』『練』『流』と強さと精度。おそらく『放出系』の能力でないと、ここまでの広さは作らないでしょう。いや、『放出系』でいたとしても、何らかの制約を持ちいらなければ‥)」

 

 純粋にしのぶの技量に舌を巻くサトツ。彼女の『円』は、どこまでも透き通るようなインディゴ色のオーラ。色素は薄く見えるが、そのオーラの密度‥純度は、サトツが知る限りではトップクラス。薄く広げられた『円』のオーラは『凝』を用いても、熟練のハンターでなければ見抜けないレベルの『隠』も施されている。サトツは、試験官があの癖のある彼女でなければ確実にハンターになっていただろうと確信している。

 

 

「‥(さて、あの者達がメンチとブハラの試験にどう立ち向かうのか。楽しみですな)」

 

 サトツは内心ワクワクしながら、気配を消して忍び続ける。

 無事に会場に着いたしのぶたちは建物の前に留まっている受験者達に首を傾げる。

 

「なんで皆入らないの?」

 

「12時からなんだと。なんか中から唸り声がするけど……まぁ、待つしかないんだろうな」

 

「‥時間はまもなく12時、建物内からは、『グルグル』とお腹のなる音もしますね。‥‥(『円』で見たところ、お腹を鳴らしているのは巨漢の男。女性の方は特に何もですね。もしかしたら今回の課題は‥)」

 

 『円』の範囲を更に広げるしのぶ。周囲の森にも多くの動物、カエル、ワニ、猪、鳥など、とてもではないが把握しきれない。巨漢の男は、特に何もないが、女性の腰には、いくつかの刃物、おそらく包丁‥そして、建物の中には調理器具の数々。

 

 

「‥(この湿原で狩をする事になりそうですね。地形と食べられる動植物を予め洗い出しておきましょう。水辺もありますので、魚も課題に入るかも)」

 

 そして、時計が12時を示す。

 

 それと同時に扉が開き、受験者達が身構える。

 扉が完全に開き中にいたのは……足を組んでソファに座る勝気そうな女性と、その後ろで床に座っている3m近くの巨漢。

 唸り声の正体は巨漢の腹から鳴り響く音だった。

 

 その事実に受験生達は呆気に取られ、リアクションに困る。

 そんな受験生の様子を無視して、試験官と思われる男女は話し始める。

 

「どお? お腹は大分空いてきた?」

 

「聞いての通り、もーペコペコだよ」

 

「そんなわけで二次試験は『料理』よ!! 美食ハンターのあたし達2人を満足させる食事を用意して頂戴!」

 

 料理と言う言葉に受験者達は更なる戸惑いを浮かべる。

 まさかハンター試験で料理を作らされるとは思ってもいなかったのだ。

 

「‥(美食ハンターとは? まぁ要するに食通という事でしょうね。柱になってからは、台所に立つ事は減りましたが‥私は次女でしたからね。跡取りでなく、嫁ぐ側でしたから、料理には自信があります。これは好奇では?)」

 

「まずは俺、ブハラの指定する料理を作ってもらい――」

 

「そこで合格した者だけがあたし、私!メンチの指定する料理を作れるってわけよ。つまり、あたし達2人が美味しいと言えば晴れて二次試験合格! 試験はあたし達が満腹になった時点で終了よ」

 

 メンチの説明に全員が険しい顔をする。

 ブハラはともかく、メンチは人並みにしか食べられそうにない。メニューによっては10人以下にまで減る可能性がある。

 その事実に受験生達の緊張感は嫌でも高まっていく。

 

「俺が指名するメニューは……『豚の丸焼き』!! 俺の大好物!!」

 

 告げられた料理名にどよめく受験者達。

 しのぶは、透かさず『円』の中にいる猪を捕捉。

 

「森林公園に生息する豚なら、種類は自由だよ」

 

「‥(猪かと思っていましたが、豚さんでしたから。では今のうちに‥ 執刀医(ROOM(ルーム)))」

 

 しのぶは、『円』を自身の能力領域にするために手術室を展開。

 

「それじゃあ、二次試験スタート!!」

 

 

 開始と同時にしのぶ以外は、一斉に森に向かって走り出す。

 

 

「‥(交換(シャンブルズ)放電(カウンターショック)‥ メス‥交換(シャンブルズ))」

 

執刀医(ROOM(ルーム))※ONE PIECE

ドーム状のサークルを発生させる。『円』内では、あるもの全てを切る・付ける・動かす・交換する・調べるなど、文字通り「執刀医」となることができる。また、能力者自身の力量の向上によって、サークルの範囲が拡大するようである。

切断(アンピュテート) ※ONE PIECE

刀が届いてなくとも、サークル内の太刀筋に入ったものを全て斬る。

切断面はどこにでも接合し、元に戻ることも可能。生物を斬った場合、物理的には両断されるが、出血も痛みも無く、切断された部位の感覚にも影響はない。そして、動くことも可能。

 

交換(シャンブルズ) ※ONE PIECE

『円』内部の物体を、自在に別のものと入れ替える。

自身の体を入れ替えての瞬間移動や、実体のない人格の交換も可能である。

 

放出(カウンターショック) ※ONE PIECE

相手の体に触れ、電気ショックを与える。

しのぶちゃんのは、キルアの『電掌(イズツシ)』の約5倍の電圧

 

メス ※ONE PIECE

内臓を生きたまま、抜き取る。抜き取られた内臓は立方体状のROOMに閉じ込められる。

抜き取られた後も内臓としての機能は死なず、抜かれた本体も活動自体に支障は来さない。

しかし外的刺激はダイレクトに受けてしまい、内臓が傷付けられれば本体も相応のダメージを受ける。

 

助手(タクト) ※ONE PIECE

『円』内部の物体を浮き上がらせて、操る。

この技自体に直接的な攻撃力は無いが、『アンピュテート』で切り分けた物体を飛ばす、地下から岩を隆起させて相手を突き上げる、飛び道具の軌道を変更して相手側に送り返すなど、攻守のどちらにおいてもいくらでも応用が利く。

 

 

 しのぶは、ROOM内の『豚』とヒソカから掠めた『トランプ』の位置をシャンブルズで入れ替え、目の前に『豚』を誘き寄せる。 引き寄せられた『豚』は、何が起こったのか分からず忙しなく当たりを見渡す。 空きだらけの『豚』に優しく触れ、カウンターショック‥電撃を浴びせ絶命。 メスで『豚』を切り開かずに内臓などを抜き取り、抜き取った内臓とその辺の太い木の枝を入れ替え、串刺し。

 

 

「さて、"切断"して、火を起こして焼いてしまいましょう。‥(助手(タクト)放出(カウンターショック))」

 

 

 タクトで『円』内部にある薪になりそうな木の枝で櫓を組み、豚を焼く準備を済ませる。 一緒に集めた落ち葉に電撃を浴びせ火を起こし、豚を焼いていく。この時、アンピュテートで既に皮と肉、更に豚を等間隔で切り分ける事によりムラなく、スムーズに焼くことができたのである。 結果、しのぶは、他の者たちが帰ってきた頃には合格して木の上でサトツと雑談していた所を何人かの受験生に見られたのは言うまでもないことである。

 

 

◇◇◇

 

その頃、ゴン、キルア、クラピカ、レオリオはと言うと‥‥

 

「しかし、簡単な料理で安心したぜ!」

 

「豚捕まえて焼くだけだもんね」

 

「しかし、早く捕まえねば。あの体格とはいえ食べる量には限界があるはずだ」

 

「豚だぜ? とっとと捕まえて合格しちまおうぜ!」

 

「そう言えば、しのぶさんは?」

 

「「「……」」」

 

 ゴンに言われ、辺りを見渡すと、しのぶではなく‥豚のような顔の異臭を放つ人(トンパ)を見かけるのみ ※1話目を読んだ方は、分かると思います。

 

「彼女なら大事ないだろう」

 

「どうして?」

 

「なんで?」

 

 

 クラピカの確信した物言いに首を傾げるゴンとキルア。

 

「一次試験であのヒソカに気づかれる事なく背後を取り、奴の獲物(トランプ)を奪い取るほどの実力だぞ?」

 

「「マジかよ……」」

 

「そんな彼女が豚なんかに遅れを取るとは思えない。むしろ既に調理をし始めていることすら考えられる。」※この時、既に焼き終わっています。

 

 

 妙にキルアとレオリオの反応が一致してしまうも、特に言い争うことも無かった。

 

「とりあえず豚を見つけないと! 話はそれからだよ!」

 

「そ、そうだな!」

 

 ゴンの言葉に復活したレオリオ達は豚を探す。

 

 

「あ」

 

「豚だ!!!」

 

 ゴンが小さく声を上げて、レオリオは顔を引きつかせる。

 

 坂を滑り降りたところに豚の群れはいた。

 体長3mほどの巨大な豚。鼻は大きく、先が角のように飛び出ている。口元には牙が見えており、獰猛さが窺える。

 グレイトスタンプ。世界一凶暴な豚と言われ、巨大な鼻で獲物を圧し潰して食らうビスカ森林公園唯一の豚である。

 

 レオリオの声で、グレイトスタンプ達がギラン!と睨みつけてきた。

 

「大声を出すな馬鹿者!」

 

「う、うるせぇ!!」

 

『ブオオオオオオオ!!!』

 

「うおおお!?」

 

 大声を出したレオリオにクラピカも大声で突っ込む。息ぴったりな2人にグレイトスタンプ達が一斉に叫んで猛烈な勢いで突進を仕掛けてきた。 ゴンは、高く跳躍し釣り竿をグレイトスタンプの額に叩き込む。 グレイトスタンプは倒れて動きを止める。 その様子を見たクラピカとレオリオもグレイトスタンプの倒し方を把握する。

 

「こいつら、頭部が弱点か!」

 

「巨大で硬い鼻は脆い額をガードするための進化というわけだ」

  

 

 クラピカやレオリオも見事にグレイトスタンプを倒すと、鳴き声や音にひかれてキルアや忍など他の受験者も現れた。

 

「お~、でっけー豚」

 

「こいつなら試験官も満足できそうだな!」

 

「キルア! 額が弱点だよ!」

 

「サンキュー」

 

 ゴンがキルアに向かって弱点を伝えるが、もちろん他の受験者にもバッチリ届く。

 ゴン達は、グレイトスタンプを担ぎ会場の手頃な広い所で調理を始める。

 と言っても、丸焼きなのでほとんど手間はかからない。

 

 なので、数十分後には、ブハラの前に大量の豚の丸焼きが積み重ねられるのであった。

 

「うひゃ~!」

 

「あらま、あの子が早すぎただけなのね。大漁だこと。ちょっと舐めてたわ」

 

 メンチは目を開いて、積み重ねられた豚の丸焼きを見上げる。

 ブハラはもう我慢出来ないとばかりに早速2頭目に齧り付き、あっという間に骨だけになる。

 

ガツガツ。

 

「うん、美味い美味い」

 

ムシャムシャ。

 

「お。これも美味い」

 

ボリボリ。

 

「これも美味」

 

 と、全く勢い劣ることなく食べ続け、なんと用意された豚の丸焼き70頭全て食べ切った。

 最後の1頭が骨に変わり、ブハラが遠慮なくゲップをして満足そうに服がはだけるほど膨れ上がった腹を撫でる。

 

「あ~、食った食った。もうお腹いっぱい」

 

 メンチがいつの間にか横に置いていた銅鑼をおもいっきり叩く。

 

「しゅ~りょ~!」

 

 受験者達は本当に70頭全て食べ切ったブハラの胃袋に慄くか、呆れるしか出来なかった。

 クラピカは明らかに食べた体積の方が多いことに真剣に悩んでいた。

 それはメンチも同様だったようで、呆れたようにブハラを見上げる。

 

「あんたねー、結局食べた豚全部美味しかったって言うの? 審査になんないじゃないのよ」

 

「まー、最初に持ってきた彼女は、別格だったけど、いいじゃん。それなりに人数は絞れたし。細かい味を審査する試験じゃないしさー」

 

「確かにあの子の焼き加減は絶妙だったけど‥甘いわねー、あんた。美食ハンターたる者、自分の味覚には正直に生きなきゃだめよ。まぁ、仕方ないわね」

 

 メンチは再び銅鑼を鳴らす。

 

「豚の丸焼き料理審査! 70名が通過!! で、次はあたしの試験よ!」

 

 どんな料理名を告げられるのかと受験生達はゴクリと唾をのむ。

 今回はブハラと違って、作った料理全て食べられるとは思えない。つまり、早い者勝ちになる可能性が高い。

 

「‥(彼女の審査は、厳しそうですね。私の知っている料理である事を祈るしかありませんね)それでは、次の試験ですので‥サトツさん。お話に付き合っていただきありがとうございました。」

 

 

 手を振るサトツに軽く会釈し、ゴン達の元へと降り立つしのぶ。

 

 

「あたしはブハラと違って辛党よ! 審査も厳しくいくわよー。じゃあ、二次試験後半、あたしのメニューは……『スシ』よ!!」

 

 告げられた料理名に受験者達は本日何度目かの困惑を露わにする。

 困惑する理由の多くは、初めて聞く料理名に想像が出来ないからだ。

 想像出来ない料理を作るのは難しいなんてレベルではない。

 

「ふふん♪ 大分困ってるわね。ま、知らないのも無理ないわ。小さな島国の民族料理だからね」

 

 

 しのぶの生きた世界では、寿司が料理と認知された時代が『江戸時代』 彼女の生きた時代が『大正』であるため、彼女も作らなくはない。ただプロの寿司職人と比べるとどうしても、一歩も二歩も遅れてしまうのが寿司の世界。

※間違ってたらすみません。

 

「ヒントは建物の中の調理場よ! 最低限必要な道具と材料は揃えてあるし、スシに必要なゴハンはこちらで用意してあげたわ」

 

 メンチは説明を続きながら、建物の中に入る。

 

「そして、最大のヒント!! スシはスシでも、ニギリズシしか認めないわよ!! あたしがお腹いっぱいになるまでなら、何個作って来てもいいわよ!」

 

「‥(ニギリですか‥ならアレをネタにしてみましょう。)」

 

 ニギリズシという名前を聞いた瞬間、周りを無視して、しのぶは周りにバレないように森の中へと身を潜めた。

 

 

「‥‥この解毒草と‥‥毒ヘビ、それと椿の種子を寿司ネタにしてみましょう♫」

 

 

 創作寿司のネタを集めた、しのぶが調理手順を考えている時‥

 

「魚ぁ!? お前、ここは森の中だぜ!?」

 

「声がデカい!!」

 

 レオリオとクラピカの声が響き渡った。

 その瞬間、受験生達が外に走り出していく。

 

「あらあら」

 

 

 場にそぐわない雰囲気で他の受験生を見送るしのぶ。その表情は、笑顔で今現在が試験でなければ多くの男どもが足を止めたであろう。

 

 

「まずは、解毒草に電撃を流して水だけを電気分解。 乾燥した解毒草を細かく微塵切りにして、使う分だけの酢飯に混ぜる。 次にヘビですが、まず頭を切り落とし、切り落とした所から皮と内臓を剥ぎ取る。流水で血と膜を洗い流します。ハモを開く要領で開いておっきな骨を取り除きます。寿司ネタサイズにぶつ切りにして、下処理完了ですね。 椿の種を電気分解、油を抽出し、ぶつ切りにしたヘビを高温で一気に揚げる。」

 

 他の受験生が出て行ってから10分ほど経過、『ジュワァァァア』と、高温で揚げられる良い音がメンチとブハラの食欲を刺激する。

 

 

「寿司に揚げ物は無かったと思うんだけど‥‥」

 

 ブハラはメンチのウキウキした様子を見て不安を覚え始めていた。ヘビの素揚げ、油から上がったヘビの肉は、見るからにカリッと香ばしく上がっており、それだけでも食欲をそそる。それをしっかりと油を切ったのちに、しのぶ特製の解毒草の酢飯を使い、『毒ヘビの握り寿司』を速やかに仕上げていく。

 30分ほどすると徐々に受験者達が戻り始め、調理を始める。

 と言っても、ニギリズシの形が分からないので、どう捌いていいか分からずに魚を睨みつけることしか出来ないなか‥‥

 

「悩んでるわね~」

 

「そりゃそうだと思うよ?」

 

「ヒントは十分出してるじゃない」

 

「まぁ、そうだけどさ」

 

 メンチの言うヒントとは自分の目の前に置かれているテーブルである。

 テーブルの上には茶色の液体が入った小皿と箸が置かれている。

 これらと『ニギリズシ』、『個』という言い方、そして用意された調味料や調理器具を合わせれば、何となくの形は見えてくるはずだとメンチは思っていた。

 

 

「お待たせしました」

 

「待ってたわぁ!」

 

 

 見た目は、『握り寿司』しかし、そのネタは『ヘビ』。メンチも分かっているうえで、その『創作寿司』を箸にとり一口。

 

 

「‥」

 

「‥‥」

 

 

 沈黙を襲う2人の間‥すると後ろから

 

「出来たぜ! 俺が完成第一号だ!」

 

 と、意気揚々と持ってきたレオリオが持ってきたのは、生きた魚をそのまま酢飯で固めただけのものだった。

 

 

「残念ながら、私が第一号ですよ?レオリオさん。‥‥(面白い百面相ですね。将来は芸者さんですかね(笑)?)」

 

「な!なにぃぃぃ?!?!」

 

 

  どう見ても、しのぶの方が先に審査を受けているのに何をどう見たら自分が1番だと名乗れるのか不思議に思うレオリオと面識のある者達。しのぶは、レオリオに『善逸』と似たような一面を見た気がした。あくまでも気がしただけである。

 

 

「‥(これは、毒ヘビ? 毒が口の中を刺激して、ブランデーのような喉を焼くような熱を感じるわね。 その熱を酢飯に混ぜた乾燥した草‥藤の花? これも毒じゃない! でも、2つの毒が毒としての殺傷力を互いを打ち消し合っている? 更に2つの個性的な刺激物を椿油と酢飯でまとめ上げている。 面白い組み合わせね。 寿司を握る技術は無いものの、毒に精通していないと出来ない調理法で帳消しにした)350番‥合格!」※当然、作者は『毒』について知りません。

 

「ありがとうございます」

 

 レオリオの目の前で合格を言い渡されたしのぶ。彼女も淡白に応えて、次のレオリオに場を譲るべく脇へと逸れる。

 

 

「マジか!ねぇちゃん!これは、俺も負けてらんねぇな!これがレオリオスペシャルだ!!!」

 

 

 しのぶの合格を目の前で見せられたレオリオの鼻息も荒く、声高々に料理をメンチの前にお披露目する。

 

 

 

しかし

 

 

「こんなもん食えるか!!」

 

 もちろんメンチは放り投げて、レオリオを追い返す。

 その後も数人、似たような料理が続いた。

 

「も~……まだ350番のしか食べれてないわよ! あたしを餓死させる気!? 色々ヒントあげてるのに」

 

 地団駄を踏むメンチを無視して、ゴンは目を瞑っている彼女の元へと歩み寄り顔を覗かせる。

 

「ねぇ、しのぶさん。」

 

「どうかしましたか?ゴン君?」

 

「しのぶさんが合格した『ニギリズシ』について。教えて欲しくて‥教えてもらえないかなぁ?」

 

「流石に教えるのは、試験的に問題が有ると思いますのでヒントではダメですか?‥(試験官の視線が怖い(笑)ですね。言いませんよ(笑))」

 

「ほんと?!」

 

 ッパァーっと、ゴンの、眩しい笑顔に惑わされることなく、話が聞こえたのか、こちらに睨みを効かせてくるメンチ。しのぶ本人も全部を言うつもりもなく、行き詰まってる彼に助言で止めるつもりで有る。

 

「私が作ったのは、『ヘビのニギリズシ』と言う"一口サイズ"の『ニギリズシ』ですよ」

 

「え?ヘビ?」

 

「一般的に知られている"魚の鱗と骨、内臓を取り除いた"物とは、異なる『創作寿司』と、言われる物です。」

 

「『創作寿司』?」

 

「はい。私は、原型となる"魚の切り身を酢飯に乗せた"『ニギリズシ』を知っていたため作ることが出来た、他の人とは異なる『ニギリズシ』です。」

 

「そっかぁ……」

 

 

 説明の端々にジェスチャーを交え、ゴンにヒントを与える彼女。ゴンも彼女のヒントに気が付き一先ず記憶していく。記憶さえしてしまえば、クラピカやキルアなら気がつくと信じているためで有る。すると‥

 

「スシってのはメシを一口大の長方形に握って、その上にワサビと魚の切り身を乗せるだけのお手軽料理だろーが!! こんなもん誰が作ったって大差ねーべ!?」

 

 忍が思いっきり調理方法を叫びながらバラし、更には審査基準に思いっきりケチをつける。 その瞬間、メンチの目つきが恐ろしく鋭くなり、雰囲気も変わる。 そして、忍の胸倉を掴み、

 

「ざけんな、テメー!! 鮨をまともに握れるようになるまでは10年の修行はかかるって言われてんだ!! 貴様ら素人がいくら形だけマネたって天と地ほどの差があるんだよ、ボケェ!!」

 

「な……だ、だったら、んなもん試験科目にすんなよ」

 

「っせーよ、ハゲ! 殺すぞ!! お!? あ!? 言ってんだろーが、美味しいって言わせろってな!! つまり知ってようが、その努力が見られなかったら美味しいわけねーだろ!! 料理舐めんなよ、テメー!!」

 

 メンチの勢いに忍は完全に呑まれて黙り込み、他の受験者は聞こえた調理法を実践するのに集中していた。

 

 

「‥あらあら(これでは、ゴン君に与えた助言が意味をなしませんね。……仕方ありません) ゴン君」

 

 

 明確な形を聞かされたゴンが急いで調理場に向かおうとするのを声で呼び止めるしのぶ。 ゴンも彼女の声が聞こえたのか、振り返る。こちらを呼び寄せるように手招きする彼女になんの疑いもなく歩み寄る。

 

 

「ネタバレしちゃいましたからね。私からのコソコソ大ヒントです」

 

 

 ゴンの耳元に囁きかけるように声をかける彼女に少しドキッとしてしますゴン。

 

 

「‥長方形に切り分けた魚に浅く切り込みを何箇所か入れてみてください。もしかすると、それで合格できるかもしれません。まずは、自分で試してみて、合格出来たら、クラピカ君たちにも教えてあげてください。」

 

「うん! ありがとう!しのぶさん!」

 

 

 ゴンにヒソヒソとコツを教えている最中もメンチと忍の喧嘩は続いていた。

 ブハラも止める気配はない。

 忍への説教が終わると、怒涛のように受験者達が料理をメンチの元に持って行く。

 しかし、メンチはそれらを『握りが強すぎる』『切り方が悪い』『シャリの形がおかしい』『ゆっくり握り過ぎ』と流石に厳し過ぎる評価を続け、受験者達を追い返す。

 ブハラも流石に厳しすぎると注意したが、メンチは聞く耳を持つことはなかった。

 

 その結果‥

 

「まぁ‥甘いところばかりだけど、350番に教わったのかしら?隠し包丁を使ったことは及第点ね。お腹もいっぱいだし、あの子に免じて405番、おまけで合格。!」

 

 と、言い放ったのである。

 受験者達は唖然と固まっている。

 

 

 

「ということで、二次試験後半の合格者は2名のみ!!」

 

 メンチの声が響き渡った会場は異様な空気に包まれる。

 

 




胡蝶しのぶ
念能力『オペオペの実』
現在、出している能力のみ

放出系‥ROOM(ルーム)※ONE PIECE
ドーム状のサークルを発生させる。『円』内では、あるもの全てを切る・付ける・動かす・交換する・調べるなど、文字通り「執刀医」となることができる。また、能力者自身の力量の向上によって、サークルの範囲が拡大するようである。
制約‥正円の『円』を展開している時のみ「円』の中でのみ使用可能。

放出・操作系‥切断(アンピュテート) ※ONE PIECE
刀が届いてなくとも、サークル内の太刀筋に入ったものを全て斬る。
切断面はどこにでも接合し、元に戻ることも可能。生物を斬った場合、物理的には両断されるが、出血も痛みも無く、切断された部位の感覚にも影響はない。そして、動くことも可能。
制約‥『ROOM』を発動中に使用可能。殺傷能力ゼロ。

放出・操作・具現化系‥シャンブルズ ※ONE PIECE
『円』内部の物体を、自在に別のものと入れ替える。
自身の体を入れ替えての瞬間移動や、実体のない人格の交換も可能である。
制約‥ 『ROOM』を発動中に使用可能。殺傷能力ゼロ。人格の交換は、己以外の生物が2体以上いなければ使用不可。

強化・変化系‥カウンターショック ※ONE PIECE
相手の体に触れ、電気ショックを与える。
しのぶちゃんのは、キルアの『電掌(イズツシ)』の約5倍の電圧
制約‥金属伝いでも、必ず触れなければならない。

放出・操作系‥メス ※ONE PIECE
内臓を生きたまま、抜き取る。抜き取られた内臓は立方体状のROOMに閉じ込められる。
抜き取られた後も内臓としての機能は死なず、抜かれた本体も活動自体に支障は来さない。
しかし外的刺激はダイレクトに受けてしまい、内臓が傷付けられれば本体も相応のダメージを受ける。
制約‥ 『ROOM』を発動中に使用可能。殺傷能力ゼロ。刃物もしくは、手刀で対象に触れなければならない。

操作系‥タクト ※ONE PIECE
『円』内部の物体を浮き上がらせて、操る。
この技自体に直接的な攻撃力は無いが、『アンピュテート』で切り分けた物体を飛ばす、地下から岩を隆起させて相手を突き上げる、飛び道具の軌道を変更して相手側に送り返すなど、攻守のどちらにおいてもいくらでも応用が利く。

制約‥ 『ROOM』を発動中に使用可能。殺傷能力ゼロ。



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4話


お待たせしました〜

気が向いたら手を加えてたのですが‥思ったより暇がありませんでした(ーー;)


 

 二次試験合格者となった'しのぶ'は、争っている者たちを無視して近場の薬草などを採取し始める。同じく合格者のゴンはと言うと、キルア・クラピカ・レオリオに何故か謝り倒している所である。

 

「この柔らかい綺麗な青が特徴なお花は、胃薬に‥こちらの桃色は、蜜が美味しいおやつがわり‥この木から垂れ下がった無数の藤色の花は、私の商売道具ですね‥‥」

 

「だからぁしょうがないじゃん! しのぶさんに合格してから教えてあげるように言われたんだから!」

 

 どうやら彼女がゴンに口止めしたアドバイスを『何故?教えてくれなかったのか?』と、問いただしているようだ。粗方、薬草・毒草を収集し終えた彼女がゴンの手助けをする事にした。

 

「情報の漏れを防ぐためですよ」

 

「情報の漏れだぁ?んな事言いふらす奴がこの中にいんのかよ!」

 

「そうだぜ!ねぇちゃん!」

 

「‥」

 

「‥‥いるな」

 

「えぇ。『寿司』が魚料理だと漏洩した人が1人‥」

 

 

 ゴンの沈黙の視線。クラピカの諦めまじりの視線。彼女の確信した視線。

文句を言うキルアはまだしも、情報漏洩をした張本人のレオリオは、バツの悪そうに視線をそらす。

 

「まぁ寿司は、基本的に『魚料理』ですが、代わり種のネタを用いることも有りますからね。私は、蛇と薬草(藤の花)を使いました。それにゴン君に教えた隠し包丁も切り目が深くても浅くても魚の油とお醤油のバランスが崩れ味を損なってしまうので難しいのですよ?」

 

 彼女は簡単に説明しながら、自身が作った『毒ヘビと藤の花の寿司』と『普通の握り寿司』を4人が食べられるように握る。蛇寿司はともかく、魚の握り寿司は、見た目が他のものが作ったのと一目見て別物と認識できるレベルであった。4人が実食している間に試験の雲行きを考察する彼女。

 

 

「‥(さて、試験官である彼女‥メンチさんはどのような判断を下すのでしょうか? この駄々っ子な性格は‥‥誰にも似ていませんね。ヒソカさんと針人間さんが殺気だっていますが、あの達人2人を相手にメンチさんに勝ち目はあるのでしょうか?)」

 

 しのぶは実力者2人の殺気だった気配に眉を顰める。針人間はともかく、ヒソカの方は、何かの拍子に行動を起こすであろう戦闘教の気配に心のしか疲れを覚えていた。

 

「報告してた審査規定と違うって? なんで!? 始めから私が美味しいって言ったら合格にするって話になってたでしょ?」

 

「メンチ。それは建前で、審査はあくまでヒントを逃さない注意力と――」

 

「あんたは黙ってな!!」

 

 おっきな人が注意を促すも、聞く耳を持たないご様子ですね‥伊之助くんみたい(笑)ですね

 

「こっちにも事情があんのよ! 受験生の中にたまたま料理法知ってる奴がいてさ~! そのバカハゲが他の連中に作り方バラしちゃったのよ!」

 

「ぐ……」

 

「とにかく、あたしの結論は変わらないわ! ちゃんと合格者も出てる以上、この二次試験は合格者は2人よ!!」

 

 メンチさんはまくし立てるように言い切ると、通話を切って電源も切ってしまいましたね(笑)

 携帯を投げ捨てて、足を組んで両手をソファの後ろに回して「ふん!」と‥とても不機嫌そうですね。感情が抑えられないのは未熟者の証ですね。

 ブハラさんはため息を吐き、私も『やれやれ』と言った表情に自ずとなってしまいます。

 レオリオくんたち不合格者とされた者達は徐々にざわめきが大きくなり、殺気立ち始めましたね(笑)こわいこわい

 

「マジかよ……」

 

「まさかこれで本当に試験終了かよ?」

 

「冗談じゃねぇぞ……!」

 

 彼女も料理を知っている人がいる可能性をしていなかったのか、していて放置したのが問題ですね。まぁ事の成り行きを見守りましょう。 

 私としては自分が合格したため、この騒動には関わらず知らぬ顔を決め込むつもりです。命に関わる事でも無し。更に競争率の高い試験ならば、好敵手が少ないに越した事が無いとすら思えます。戦略的待機です(笑)

 

ドオオォン!!

 

 あらあら(笑)誰かが何かが砕く音が響き渡りましたね?あちらでしょうか?

 なんということでしょう!あの不死川さんが恰幅の良い小太りの男になっているではありませんか(笑)

 あの苛立ち具合といい露わにして拳を握り締めている姿といい‥その目の前には大きくひしゃげた流し場が見受けられますね。先ほどの音は小太りな不死川さんが拳を叩きつけた音なのでしょう。

 

「納得いかねぇな。とても『はい、そうですか』と帰る気にはなれねぇな」

 

 男は青筋を浮かべてメンチさんを睨みつけてますね。

 

「俺が目指しているのはコックでもグルメでもねぇ! ハンターだ! しかも賞金首ハンター志望だぜ! 美食ハンター如きに合否を決められたくねぇな!!」

 

「それは残念だったわね」

 

「……何ぃ!?」

 

「今年は試験官運がなかっただけよ。また来年頑張れば~?」

 

 メンチさん煽ってますね

 それに男は我慢の限界できずに拳を更に握り締めて殴りかかろうとするでわありませんか‥まさしく不死川さん!あ!でも‥不死川さんは、太ってないから言動だけですね。似ているのは(笑)

 

「ふざけんじゃ――!!」 

 

ブゥオォン!!!

ドゴォォオン!!

 

 男が巨大な手によって猛烈な勢いで吹き飛び壁を突き破る。巻き起こされた突風で近くにいた受験生達も風に煽られて耐える。

 

「っ!?!?」

 

「ブハラ邪魔しないでよ」

 

「だって、メンチ‥殺すつもりだったろ?」

 

 メンチはソファから立ち上がる。その両手には四振りの包丁が握られていた。

 

「賞金首ハンター? 笑わせるわ! ブハラの張り手も見切れず、あたしの殺気にも気づかないくせに。どのハンター目指すなんて関係ないのよ。ハンターたる者、誰だって武術の心得があって当然!!

 

 メンチさんはお手玉のようにナイフを回してますね。芸達者な人ですね。

 

「あたしらも食材探して猛獣の巣の中に入るのだって珍しくはないし、密猟者を見つければもちろん戦って捕らえるわ。その中には賞金首の奴だっている!! 武芸なんてハンターやってたら嫌でも身につくのよ! あたしが知りたいのは、未知のモノに挑戦する気概なのよ!!」

 

 メンチさんの気迫に瓦礫から這い出てきた男は肩を震わせて‥‥不死川さんに似ても似つかないですね。不死川さんすみません。

 

 

 

『それにしても合格者2人と言うのは、ちとキビシすぎやせんか?』

 

 

 突如、外から‥正確には上空からですね。

 その声に、皆さんが駆け足で外出なされましたね。かくいう私も‥上空には飛行船が停まっていた。最初、この世界に来た時は驚きましたが‥あんな大きいものが浮かぶとは、技術の進歩は凄まじいものですね。苦手です(泣)

※携帯の通話機能が20回に1回、使えるようになった機械音痴です。

 飛行船の側部にはハンター協会のロゴが描かれていますね。チードルさんに教わりました。

 

「審査委員会か!?」

 

 おや?飛行船から何かが飛び出して来ましたね。影が徐々に大きくなっていくにつれて人であると理解できました。ドォーン!と音を響かせて地面に着地‥足‥大丈夫ですか?(汗)

 

 飛び降りてきたのは白髭を蓄えた和装に高下駄を履いた御老人‥ほんとに老人でしょうか?数十メートル上から飛び降りてきたのにケロリとしており、負傷した様子もない。この人?人ですか?鬼では?いや‥鬼でも無傷ではないはず‥(汗)

 

 

「な、何者だ? このジイさん……」

 

「審査委員会のネテロ会長。ハンター試験の最高責任者よ」

 

 受験者の呟きにメンチさんが答えてくれました。先程までの強気な態度が微塵もありませんね。

 まぁ突然の最高責任者の登場に受験者は期待に満ちた表情‥メンチさん達、試験官は緊張の面持ちですね。

 

「ま、責任者と言っても所詮裏方。こんな時のトラブル処理係みたいなもんじゃ。さて、メンチくん」

 

「は、はい!」

 

 ネテロさんに声を掛けられて、メンチさんはピシィ!と背筋を伸ばし気を付けをして返事をする。流石にメンチさんもネテロさんに対してまで強気に出れないみたいですね。あ‥あのじじい‥チラ見しましたね。見逃しませんよ助平じじい‥

 

「未知のものに挑戦する気概を彼らに問うた結果、2人を除いてその態度に問題ありと、つまり不合格と思ったわけかの?」

 

「……いえ。受験生に料理を軽んじる発言をされてついカッとなり、更にはその際に料理方法が受験生達に知られてしまうトラブルが重なりまして……。頭に血が昇っているうちに腹が一杯にですね……」

 

「フムフム。つまり自分でも審査不十分だと分かっとるわけじゃな?」

 

「……はい。スイマセン。料理のことになると我を忘れるんです。審査員失格ですね。私は審査員を降ります。試験の無効かどうかに関してはお任せします。ただ……合格にした受験生に関しては認めて頂きたいと思います」

 

「ちなみに何故その2人だけ合格にしたのかの?」

 

「はい。それは――」

 

 メンチさん‥カチカチのまま説明を続けますね(汗)

 

「フム……。なるほどのぅ。坊主の方は微妙なとこじゃが、彼女に関しては合格は問題なさそうじゃな。よかろう」

 

「ありがとうございます」

 

「しかし、選んだメニューの難度が評価するにはお互いに少々高かったようじゃの。よし! こうしよう。審査員は続行してもらう。ただし、新しいテストにも審査員である君にも実演と言う形で参加してもらう、というのでいかがかな?」

 

『!!』

 

 助平じじいの提案にメンチさんや受験生達は僅かに表情が変わりましたね。

 

「その方が受験生達も合否に納得しやすいじゃろ」

 

「……そうですね。では……『ゆで卵』で」

 

 メンチさんの新しいメニューを告げ、遠くに見える岩山を指差す。

 

「会長、あたし達をあの山まで連れて行ってくれませんか?」

 

「なるほど。もちろん、いいとも」

 

 ネテロさんは意味を理解したのか笑みを浮かべて快諾してますね。さて、ついて行くのは構いませんが‥やり直し試験に関しての私の合否は如何様に?

 

「さぁ、ここよ」

 

 メンチさんの指差すとこに崖が、みなさん下を覗き込んで足がすくんでる人がちらほら‥崖の底は見えませんね。落ちたらそう簡単には助かりそうにありませんね。私は問題ありませんが‥

 

「下は……どうなってんだ?」

 

 先ほどメンチさんに殴りかかろうとした肥満男は青褪めながら下を見る。

 メンチさん『ぶうつ(ブーツ)』を脱ぎ始め‥

 

「安心なさい。下は深ーい河よ。流れが速いから落ちたら数十km先の海までノンストップだけど」

 

 そう言いながらメンチさん‥飛び降りるんでしょうね。

 

「それじゃ、お先に」

 

 行ってしまいました。南無阿弥陀仏(笑)

 

『はぁ!? なああああ!?』

 

 皆さん面白い百面相ですね(笑)100人もいませんが‥驚く中、メンチさんは崖下へと落ちて行く間に助平じじいが口を開き始めましたね。

 

「マフタツ山に生息するクモワシ。その卵を採りに行ったんじゃよ。クモワシは陸の獣から卵を守るために崖の間に丈夫な糸を張り、卵を吊るしておる。そして、今回の試験はその糸に上手く掴まり、1つだけ卵を採って岩壁をよじ登って戻ってくることじゃ」

 

 説明し終えた頃合いにメンチさんが戻ってきて、茶色の殻の卵を受験生達に見せる。どこから取り出しているのですか‥(怒)

 

「よっと、この卵でゆで卵を作るのよ」

 

 簡単に言うメンチさんに肥満男を始めとする一部の受験者は青褪めて足踏みを‥先程までの威勢は何処えやら?(笑)

 

「あー、よかった」

 

「こういうの待ってたんだよね!」

 

「走るのやら民族料理よりよっぽど分かりやすくていいぜ」

 

 あらあら?キルアくん、ゴンくん、レオリオくんは一切戸惑うことなく崖へと飛ぶ。

 クラピカくんや他の受験者達も続き、どんどんと飛び降りて行く。

 私も気になりますし行ってみましょうか!

 

「あら、あなたはいいのよ?」

 

「卵がどのような味か気になりますので」

 

「そう‥好きにしなさい」

 

「それでは‥」

 

 さてさて‥飛び降りた先に糸のような蔦のような物に吊るされた卵たち。

糸を片手で捕まえて、卵も袖の中にヒョヒョイっと‥糸を軸に体をクルクル回転させてからの崖上に一っ飛び

 

「「「「……!!!」」」」

 

 おや?まだ皆さん帰ってきていませんね?どういうことでしょうか?(笑)

 

「あら!もう戻ってきたのね。お帰り!」

 

 待つのも面倒なので一足先に卵を用意してくれたお湯に入れて茹でることにしましょう♪

 

 クモワシのゆで卵はとても濃厚で味付けもしていないのに、それだけで立派な料理として成立するほどの美味さですね。姉さんやカナヲたちにも食べさしてあげたいですね‥

 

「それじゃ!! 二次試験合格者は42名!!」

 

 ようやく後腐れなく合格が言い渡されましたね。安心♬安心♬

 

 

 

 

 合格した42名は再び飛行船に乗って移動する。

 その頃には夜になっていた。

 

 

 

「次の目的地は明日の朝8時に到着予定です。こちらから連絡するまでは各自自由に時間をお使いください」

 

 番号プレートを配っていた小柄の男の人の言葉に、受験生達は解散し飛行船内をちらほらと徘徊しておりますね。

 レオリオくんとクラピカくんは漸くの休息時間に一気に疲れが襲ってきたようですね。

 

「俺はとにかくぐっすり寝てぇぜ……」

 

「私もだ。恐ろしく長い1日だった……」

 

「ゴン!飛行船の中、探検しようぜ!!」

 

「うん!しのぶさんも行こう!」

 

「私は、ご遠慮しておきますね」

 

「え?しのぶさん探検しないの?じゃぁ‥キルア行こっか!」

 

 キルアくんとゴンくんは元気いっぱいに走り出し、その後ろ姿があっという間に見えなくなりましたね‥さて、私は水浴びでもしてきますかね!

 

 

「私は、水浴び‥シャワー室が有ると聞いてますのでそちらに」

 

「あ~……俺はなんか腹に詰めとくか」

 

「そうだな。朝に食べられるか分からない」

 

 レオリオくんとクラピカくんも食堂に移動しちゃいましたね。

 後で私も行ってみましょう。和食があると良いのですが‥

 

 この世界‥又は、この土地と言うべきでしょう。鬼殺隊で柱をしていた頃でも体験したことのない日常‥平和とは言えないまでも理不尽に抗える力が存在して、それを扱い伝える者たちがいる。あの日あの時にこの力のことを知り身につけていたら‥失わずに済んだのかも。たらればを言っては意味をなさないのを理解しつつも考えずにはいられない。たしかに私は死んだはず。アイツに食べられて‥だからこそ縋らずにはいられない。私がこの世界で生きているのなら、姉さんだって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・逢いたいよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、試験官達も食事をしながら盛り上がっていた。

 

「ねぇ、今年は何人くらい残ると思う?」

 

「合格者ってこと?」

 

「そ。中々の粒ぞろいだとは思うのよね。料理はセンスがない連中ばっかだったけど」

 

「でも、それはこれからの試験内容次第じゃない?」

 

「そりゃまぁ、そうだけど~。それでも結構いいオーラ出してた奴いたじゃない? 念って意味じゃなくてさ。サトツさんはどぉ?」

 

「ふむ。そうですな……。ルーキーがいいですね、今年は」

 

「あ、やっぱりー!?」

 

 メンチは我が意を得たりとばかりにテンションを上げる。

 

「私は、しのぶちゃんと294番がいいと思うのよね~。片方ハゲだけど」

 

(スシを知ってたからね。てか、いつの間に350番の名前お?)

 

「私は断然99番ですな」

 

「えー!? あいつ、きっとわがままでナマイキよ! 絶対B型! 一緒に住めないわ!」

 

(似てるもんね)

 

 ブハラは料理を食べながら内心で呆れる。

 

「私も350番は注目してます。しかし、彼女はすでに念を使えるようですから、ルーキーと呼ぶには少し特殊と思いますね」

 

「まぁ私としては、彼女が美食ハンターになってくれることを願わずにわいられないわね!」

 

(既に合格する前提なんだね。否定はしないけどぉ)

 

2人の会話は、黙って目の前の食事を腹に詰め込むブハラであった。

  

 

 

 

 

 



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