悪食は闊歩する。 (萩山カオル)
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インペルダウン編
悪食修道女アリシア
拙い文ではありますが、暖かい目で見守ってくださるとありがたいです。
インペルダウンの最深部、LEVEL6に彼女は居た。修道服に身を包む彼女の名は“アリシア”。終身囚である美しいシスターだ。
なぜ、シスターである彼女がこの【無限地獄】と言われるLEVEL6に収監されているのか。そこに収監されている囚人はよくわかっている。
彼女の天女のような微笑みは看守、囚人または床を這う虫にまで向けられる。そんな彼女の笑みを無限の退屈に囚われた囚人たちは今日も無言で眺めるのだ。
だが、アリシアも大罪を犯したこ囚人。修道服を着てはいるが、牢屋の奥に囚われていることに変わりはない。ただ、彼女の牢はアリシア一人しか収容されていない。女性だからか、それとも、それほどまでに危険な囚人なのか。
そんなアリシアの通り名は【悪食修道女】。
バクバクの実と言われる
親を食らった。
神に祈る信者を食らった。
略奪の限りを尽くす海賊を食らった。
助けを求める子供を食らった。
自分の国の全てを食らった。
【人喰い】【悪食】【国喰らい】
かつて呼ばれ、恐れられた彼女の名だ。
「少し…お腹が空きましたね…。」
ヨダレを口に含み、独り言のようにつぶやくアリシア。
背にかかる金の髪をなびかせて正面の牢を見る。
「クロコダイルさん?お腹空きましたよね?」
「…テメェと一緒にすんじゃねぇよ。」
Mr.0 クロコダイル。バロックワークスの社長であり、元王下七武海である彼はアリシアの微笑みに対し、眉間に皺を寄せ、不快そうに答えるだけだった。
「あらあら。そんな
「インペルダウンに収監されて幸せを語るのはテメェだけだ。」
彼女は大袈裟に両手をあげ、やれやれと言わんばかりにため息をつく。
この静かなLEVEL6において、アリシアとクロコダイルの会話は娯楽の一部でもあった。
「それよりも…面白いことが上で起きているわ。…侵入者ね。それと脱走囚が多数。」
「…またお得意の見聞色の覇気か?」
「もちろん。それ以外で分かる術があって?」
他の囚人には聞こえない外の音を鮮明に聞き取ることの出来る彼女の見聞色の覇気を使い、アリシアの耳にはすぐ近くで起きている事のようにインペルダウン内の音が聞こえてくる。
叫び声、笑い声、彼女の前にはプライバシーなどないも同じだ。
それゆえ、今この大監獄で何が起きているのか、彼女には筒抜けなのだ。
「王下七武海“ボア・ハンコック”の訪問。海賊“麦わらのルフィ”の侵入。それに“道化のバギー”と“Mr.3”が中心となり、他の囚人を逃がしているようね。さらに、その対処のためにマゼランが直々に動いているわ。」
「…アリシア。お前今…ルフィって言ったか?」
場を震わすような力のこもった声の主は四肢を鎖に繋がれたまま、アリシアに視線を向ける。
「今…ルフィって言ったよな?」
「ええ、言ったわよ。エース。」
珍しいわね、あなたが私に話しかけるなんて、とふふふと笑いながら彼女は続ける。
「今はまだ生きてる。ただ、もうじき死ぬわ。」
「…ッ!!!」
「だって当たり前でしょう?…マゼランが出るんだもの。それに彼、馬鹿みたいに戦ってばかりで逃げようともしない。…マゼランに出会ったが最期ね。」
「黙れ…!!」
アリシアの言葉に苛立ちを隠せないエース。
そんな彼を嘲笑うかのように彼女は続けた。
「私は何も間違ったことを言ってないわよ?どうやらあなたの事を救いたいようだけど、実力が足りないわ。たとえ運良くマゼランと遭遇しなくても、LEVEL5でくたばるがオチよ。」
「…その煩い口を閉じろ。アリシア…。お前程度の実力で…何がわかんだよ…!?」
声を荒らげるエースに対し、アリシアは微笑むのをやめ、酷く冷たい目で、凍えるように冷たい声で言い放つ。
「馬鹿で短気なところが義兄弟揃って似てるのかしら?少なくとも私はあなたや彼より強い。単細胞なあなた達なんかよりもずっと上手く立ち回れる。」
──現にあなた私に負けたことをお忘れ?
「そんな昔の話を持ちかけてくるなんてなァ…。アリシアも老けたもんだな。」
「あら、ケツの青いガキがなんか喚いてるわ。お守りが必要?」
睨みを聞かせるエースに微笑みを浮かべるアリシア。
それを眺め、爆笑する囚人たち。
エースにとって因縁のあるアリシアは気に食わない相手であり、倒したい相手でもある。
逆にアリシアはエースのことを特にどうとも思っていなかった。
何かと突っかかってくる鬱陶しい相手であり、もうすぐで処刑される男、という認識だろうか。
「まぁ、もう少し進展があったら伝えてあげるわ。」
そういい彼女は壁を背にして腰を下ろし、そっと目を閉じる。
そんなアリシアのひとつひとつの動作は全てが美しく、気品が感じられる。悔しながらエースもその点は感じているのだ。
“悪食修道女”アリシア
懸賞金 8億三千万ベリー
その華奢な体からは想像もつかぬ怪力で大きな片刃斧を振り回す。
殺した相手を髪まで血で染めながら貪ることから悪食という名が広まった。海賊ではないが、世界的な犯罪者としてインペルダウンに収監中。
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あら、やっと来たの?
アリシアは長い間目を閉じ、耳を傾けていた。
王下七武海“海賊女帝”ボア・ハンコックが訪れても、軽口を言い合う仲のポートガス・D・エースが連行されても。
彼女は目を閉じずっとその音を聞き続ける。
兄を助けたい一心でマゼランに挑み、散り。
友に背を向け逃げ出したことに後悔する男…オカマの泣き声を聞き。
抵抗し押さえつけられたエースの悲痛な叫び。
そして盛り上がる「ヒーハー!!!」という笑い声。
アリシアはこの場所で全てを聞いている。
マゼランにより散った彼は友に助けられ奇跡的に生還。
そして不思議な仲間たちとここへ向かってくる。
「ふふふ、面白いことが起こりそう…。」
微笑むでもなく、心底愉快そうに顔を歪める彼女を眉間に皺を寄せ睨むクロコダイル、怪訝そうな表情の海侠の“ジンベエ”。
「お前さん…何を笑っとる…? 何を企んどるんじゃ…!?」
「ジンベエさん、私は何も企んでなどいないわ。…ただ、もうすぐね…。」
──今に階段を駆け下りてくるわ…。
アリシアはゆっくりと目を開け、微笑む。
「エースさんの…
「そうね、彼の義弟よ。」
ふふふ、と彼女の笑い声が響くLEVEL6がざわめき出す。
侵入者がここまで来るのかよ!とゲハゲハと下品な笑い声が響き渡る。
それにまじりアリシアは歪んだ笑みを浮かべる。
それはもう天女のような微笑みとは程遠かった。
「エース〜!!!助けに来たぞ〜!!!」
突如として現れた麦わら帽子の男と、異様に顔のでかいオカマ、そしてオレンジと白の目立つ服装の男。
彼らを確認し、アリシアは再び口角をあげる。
「ほらね、ジンベエさん。…でも残念。間に合わなかったわ。」
「…あれが…エースさんの…!」
──残念…残念…ふふふ
麦わらのルフィ一行はエースがいた檻、今はジンベエただひとりとなった檻を見て戸惑いを隠せない。
ルフィは小さく「いねェぞ」と呟き
大きな顔のオカマイワンコフは連れてきた看守を怒鳴りつけ
オレンジと白色のコートを着た男、イナズマは「遅かったか…!」と悔しそうに。
「お前さん“麦わらのルフィ”だな!!?? すぐに後を追え! エースさんはリフトで連行された!!! まだ間に合う!! 急ぐんじゃ!!!」
大きな声で吠えるジンベエに困惑しながらも三人は走り出す。
「…残念、それも“遅いわ”…。」
彼らの行動は遅かった。間に合わなかったのだ。
リフトは切り離され、階段は塞がれる。
そして階段から降りてくる睡眠ガス。
諦めない
そんな強い意志をアリシアは彼から感じ取ったのだ。
「麦わらのルフィさん?…私を檻から出してくださいな。 後悔はさせないわよ?
「ヴァナタ…もしかして“悪食修道女”アリシア!!??」
アリシアはイワンコフの反応に「大袈裟ね。」と笑みをこぼす。
「ルフィ君! 彼女はダメだ!! いくら戦力になるとしても、コイツは危険すぎる!! “悪食修道女”の名前くらい君でも知っているだろう!!??」
「あくじ…、なんだ?」
そんなイナズマとルフィの会話をアリシアは楽しそうに眺めている。
「どうするの? 私を外に出すのか、それとも出さないのか。」
「時間が無いのでしょう?」とアリシアは笑顔で急かす。
「んー…よし! カニちゃん!コイツ出してくれ!」
イナズマからは正気か!? とイワンコフからはヴァナタ…、と若干呆れ気味の反応をされる。
それをルフィは「シシシ」と笑って流す。
「おい。俺もここから出せ。どの道このフロアから出る術はねェんだ…。 俺ならこの天井に穴をあけられる…。」
イナズマがアリシアを檻から出している時にクロコダイルとルフィが何やら話をしていた。「ここから出せ。」と「俺ならこの階層から抜け出せる術がある」と。そして──
「後生の頼みだ!!!」
とジンベエまでもが声を上げる。クロコダイルのようにお互いのメリットを引き合いに出した取引ではなく、お願い。
ジンベエのどこかにルフィは、自分と同じような目標を見つけたのだろう。先の彼とは違い、あっさりといいぞ、と言う。
ジンベエまでもが檻から出たことによりLEVEL6の囚人達が「俺も出せ」といきり立つが、イワンコフの『
』により黙らされる。
「あらあら、なんだかいつもの顔が多いわ。」
「クハハハ…。面白くなってきやがる。」
「…待っとってくれ、エースさん…オヤジさん…!!」
それぞれが別々の目標、思いを抱えながらも彼らは今ひとつのチームとなった。インペルダウンを抜け、戦争にも関与する。
天井をくり抜き、イナズマによってかけた橋を各々がかけ上る。
ひとり遅れたアリシアは
「…臭い臭いLEVEL6の囚人さん達とお別れともなると…うぅ、なんだか込み上げてくるものがあるわ…。」
「およよ」と嘘らしく、わざとらしく泣き真似をするアリシアに、LEVEL6は騒ぎ出す。
「殺してやる」だとか「覚えておけ」だの。
「…インペルダウンから出るまでは覚えておいてあげるわ…。せいぜいつまらない人生を思う存分楽しむ事ね…。」
そう言い残し、彼女は橋をかける。
この時のアリシアは笑っていなかった。
24名の皆さんお気に入り登録ありがとうございます!
7 キルさん評価ありがとうございます!
火焔猫さん感想ありがとうございます!
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仲良くしましょう?
「後で追いつくから先に行っててくださいな。」
「ん?なんだ? ウンコか?」
LEVEL5に到達した直後に、先に行ってて、と告げるアリシアにキョトンとした顔でとんでも無いことを聞くルフィ。そんな彼に周りは絶句。周りのオカマ達なら軽口叩くだけで済むだろうが、相手はアリシア。ここに集うもの全てが警戒する人物である。
「ふふふ、女の子には色々あるのよ。だから、ルフィ君は安心して先に進みなさい。」
「ん、わかった!」
素直に頷くルフィと違い、クロコダイルは「実年齢30超えてるくせに“女の子”かよ」と唾を吐く。そんなクロコダイルの態度をアリシアが見逃すはずもなく、突如『バコンッ!』と音とともにクロコダイルが雪に埋まる。
「何しやがる!?」
「私、今回はワニを食べて見ようかしら。 でも、なんだかこのワニジャリジャリしてそうね…?」
アリシアの笑顔にルフィ以外は顔を青ざめる。
クロコダイルも例外ではない。そんな彼らを笑顔で見渡す。
「そんなに警戒しなくたっていいのに。」
「まあいいわ。」と呟き彼女は背を向け、歩き出す。極寒の銀世界を迷いもせずに突き進む。アリシアはひとりLEVEL5の森の中に消えた。
鼻歌交じりに木々を抜ける。
まるで日の照りつける野原を歩くかのように、極寒のLEVEL5を歩いていく。まるでピクニックに来たかのような足取りでどんどん進む。
軍隊ウルフに囲まれようと、彼女は笑みを崩さなかった。
「ふふふ、わんちゃん。」
飼い犬に接するかのような態度で視線を向けるが、獣の本能で悟るのか軍隊ウルフたちは近づいてくる気配すらない。
「あらあら、臆病ね。そんなに遠くから威嚇して…。」
ふふふ、とまたひと笑い。
「…いい加減出てきてはくれないかしら? 私少し急いでるのよ…。」
雪景色に混ざるかのように一頭の大きな影。
大きな足音とともに現れたのはアリシアを囲む軍隊ウルフよりも大きな体を持つ、赤い目をしたオオカミだった。
「あなたがこの子たちのボスね?」
「…グルゥ…。」
ひと鳴き、まるでそうだ、と彼女の問いに対する返事のようだ。この大きなオオカミ、他の軍隊ウルフと同じように血走った目で、ジッとアリシアを見つめると彼女の前に歩み寄り、頭を垂れる。
「あらあら、どうしたの?」
「グガゥ…。」
アリシアの問いかけに対し、鼻先が雪に着くのでは、という程に頭を下げ、何かを訴える。彼女に何かを求めるかのように、彼女に何かを望むかのように。
「…。連れて行って欲しいの?」
オオカミはスっと顔を上げ、アリシアの金の目を見つめる。その血走った目は少しもズレることなく、彼女を見つめる。
「着いて行きたいのね…。いいわ。 着いてきなさい。…ただし、私はあなたの事を完全に守り切ることは出来ないわよ? それに、今から私が向かうのは戦場、あなたの望む外の世界を見せることが出来ないかもしれない。」
──それでもいいなら着いてきなさい。
その言葉を理解したのか、オオカミは顔を上げ、大きな遠吠えをLEVEL5に響き渡らせる。自分たちのボスの門出を祝うかのように、アリシアを取り囲む軍隊ウルフも遠吠えを、何度も何度も響き渡らせた。
アリシアとオオカミ、彼女らの姿が雪に消えようとも軍隊ウルフたちは遠吠えを続ける。
オオカミはというと、アリシアを乗せ極寒の地LEVEL5を抜ける為に駆ける。大きな体を持つこのオオカミにとって、アリシアを背に乗せ走ることなど大したことじゃないのだろう。
「…あなたに名前をつけてあげなきゃね。」
「グルゥ」とひと鳴きして返事をする。
「どうせならかっこいい名前がいいでしょう?…ロウ…は単純すぎるし…シロはちょっとね…。」
「…グガゥ…。」
名前に悩むアリシアに、まるでそれでもいいとでも言うように優しく唸る。
「あなたの名前は…ハクロ。」
長い時間をかけ考えた名前は結局、白狼だからハクロと単純なものになっていた。
「ごめんなさいね…。誰かの名付けなんてしたことないのよ。」
少しだけ、申し訳なさそうに目を伏せるアリシアに、ハクロは「バウ!!」と礼を告げるかのようにひと鳴き。グングンと彼は加速した。
喜んでいるのか、テンションが上がったのか、ハクロはあっという間にLEVEL5終わりの階段まで来たのだ。
「ここから先はあなたにとって、とても辛いエリアよ。 雪国育ちのハクロには地獄かもしれないけど耐えなさい。」
「グルゥ!」
階段を駆け登り、LEVEL4【焦熱地獄】へと向かう。先に向かったルフィたちは既に戦闘中のようで上からは耐えやまぬ轟音が聞こえてくる。
おそらく、インペルダウンの全兵力との激闘…いや、ルフィを含め、七武海二人にイワンコフ。マゼランが出向かない限りは止まることは無いだろう。
「…(私の獲物…まだ残ってるかしら?)」
壊れた扉を確認し、ハクロは飛び上がる。残りの階段を一飛びで越える。そして、焦熱地獄LEVEL4へと足を踏み入れた。
「あらあら、殆ど倒しちゃってるじゃない。指揮官クラスが残ってたりするといいのだけれど…ささ、行くわよハクロ。」
「グガゥ!」
踏み入れたLEVEL4は囚人、看守と敗れ倒れた者たちが転がり、殆ど戦闘が終わったあとの様だった。すぐ下にある大釜は煮え滾り、汗が滲む。少しばかりかハクロのペースも落ち込んでいる。
「…見えてきたわね…!」
アリシアが見た光景。
「出さんと言ったら一歩も出さん!!!」
血まみれになりながら、傷付きながらも敵を見据え、挑み続ける副所長の姿だった。
「…なるほどね。副所長にもなれる訳だわ…。さてハクロ。もうすぐこのフロアは抜けられる。ただし、ここほどでは無いにしろまだまだ暑いわよ?」
「バルゥ!」
「いい子」とハクロの頭を撫でイワンコフの横に並ぶ。女の姿をしているイワンコフは「あら…遅かったじゃない。」と笑いかけてくる。
対するアリシアは「この子とお話してたのよ。」とハクロを紹介する。
「イワンコフさん?」
「なによ?」
「つまらない黒ブタが来るわ。」
「は?」とイワンコフは何言ってんだ、と言わんばかりに口を開ける。
「無駄に体力を使うことは無い。おそらく戦闘にもならないわ。…だけど、ルフィくんがどうなるかは分からない。」
「麦わらボーイが…?」
アリシア達がこう話してる最中にもルフィとハンニャバルの戦いは続いていた。顔面にパンチが炸裂し、壁に激突し、皮は裂け、骨は折れる。
それでもなお立ち向かう副所長にアリシアは素直に感心していた。
それだからこそ、この後起きるヤツの登場が少々気に食わない。
「ゼハハハ…!!!」
突如として響いた大きな笑い声。それを聞きあからさまに顔をしかめるアリシアをイワンコフは見逃さなかった。笑い声が聞こえた瞬間、ハンニャバルは顔を踏みつけられ、遂に気絶する。「ゼハハハ」と笑い声が特徴的な彼こそ、現七武海、マーシャル・D・ティーチ。“黒ひげ”だ。
「私“アレ”のこと生理的に受け付けないのよね…。」
でっぷりとした黒ひげを見るアリシアの目は酷く冷たいものだった。
お気に入り登録136件ありがとうございます!
感想ありがとうございます!
☆9 piyu さん
☆8 なーお さん、ニャンちゅうワールド さん
☆7 竜凛胆堂 さん
☆5 蓮兎 さん
評価ありがとうございます!
次回、次次回からアリシアちゃん戦闘の予定
モチベーション次第で今回のように不定期に投稿する予定です
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邪魔しないで
急にお気に入り数や評価が増えていてとても驚いてしまいました!
今週まだ予定がそこまで詰まってないので今夜も更新
「ゼハハハ。麦わらが居ることはわかってたが、まさか悪食野郎まで出てきてたとはなぁ!?」
「あら…。女性に対して“野郎”って少し失礼ではなくて?」
下品にゼハハハと笑う大男にいつもの微笑みとは違い、凍りつくような笑顔を向けるアリシア。まるでゴミを見るかのような視線をしていた。
普段のアリシアはというと、意味ありげな笑み、唐突な真顔など、コロコロと表情の変わる女性なのだが、黒ひげ“マーシャル・D・ティーチ”と相対してからというもの表情に変化が見られないのだ。
「つれねェ女だぜ…!! まあいい、ちょうどお前にも用があった所だ。」
「ふふふ、黒ブタと海賊ごっこなんてしたくないわ。わかったかしら? 理解出来たのならさっさと養豚場に帰ることね。」
下卑た笑みを崩さない黒ひげに冷めた笑みを浮かべるアリシアは告げる。「まだ言ってないぜ?」と黒ひげの言葉をも無視して歩き出す。
「じゃあね、黒ブタさん。…あ、いいこと思いついたわ。ちょうど真下に大釜があるのだけれど…。」
「…入らねェぞ?」
アリシアは「あら残念」と無表情で告げ、再び背を向け黒ひげとすれ違う。そんな時雄叫びと共に走り出す男がいた。
「JETピストル!!!」
『ズガンッ!!』という音とともに黒ひげは吹き飛び、アリシアを追い抜かし壁へと激突した。痛みに悶絶する黒ひげに対して怒鳴りつける男は“麦わらのルフィ”だった。
「ジンベエに聞いた!! お前が“黒ひげ”だな!!??」
「あぁ…!!! だったらどうしたァ!!??」
「ぶっ飛ばす!!!」
すぐ真横で繰り広げられる戦闘に目もくれずアリシアは軍隊ウルフの“ハクロ”から何かを受け取っていた。
「ありがとうね。やっとこれで本調子が出るわ。」
ハクロが咥えていたものは大きな片刃斧。収監前のアリシアに愛用武器である片刃斧【ケツァル】は蛇を模した柄に翼の模様を持つ刃が特徴の大斧だ。アリシアはハクロから斧を受け取ると、軽々しく片手で持ち上げ、肩に担ぐ。
彼女が笑顔で愛武器を愛でている時、遂にルフィが黒ひげの“
「黒ブタさん?…首を落とされたくはないでしょう?…早く手を離せ。」
「オーガー!!!」
オーガーは既に三発の銃弾をアリシアに向け放っていた。眉間、首、胸を狙う、ほぼ同時に放たれ弾は真っ直ぐ目標へと向かい、彼女の息の根を止める。
「…残念でした。」
彼女は放たれた銃弾を全て受けたのだ。もちろん、無傷。金属に当たったかのような音を出し、銃弾は彼女の肌で跳ねたのだ。
状況を呑み込めないルフィ、Mr.2、その他囚人たちは有り得ないものでも見るかのようにアリシアを見ていた。だがそんな彼女は彼らの視線など気にもとめず、【ケツァル】を振りかぶる。
「待て! 待て待て待て!!! 離す! 離すからよせ!!」
「あらあら、そんなに慌ててどうしたの? まるで今にも殺されるかのような表情して。あら?…でも元気ね…。どうせなら元気なうちに精肉工場まで送ってあげましょうか?」
さらに顔を青く染める黒ひげに対して恍惚とした表情を浮かべるアリシア。そんな表情を前に黒ひげはルフィを投げ飛ばす。
「ふふふ、ちゃんとできるじゃない。」
と言った直後に、アリシアは黒ひげの襟首を掴みオーガーに向かって投げ飛ばす。まるで大砲かと思われる程の威力でオーガーと黒ひげはもみくちゃになる。焦る黒ひげ海賊団を無視し、自由の身になったルフィを助け起こす。この一連の動作を間近で見ていた彼は理解が追いついていないのか、少し首を傾げていた。
「さぁ、先へ急ぐわよ。すぐにマゼランが駆けつけてくるわ。」
──あなたはまだ止まるべきでは無い
笑みを浮かべルフィの背中を押す。
「さぁ」と彼を走らせた後、他の者にも声をかけた。
皆がアリシアを抜き去り、階段へと駆けた後、ゆっくり振り向き、黒ひげを見据える。
「あんまり調子に乗らない事ね。確かにあなたには力がある。それに運もあなたに向いているのかもしれない。 その悪魔の実の能力を深く理解していることは評価するわ。」
再び斧を肩に担ぎ続ける。
「私はあなたのような人を多く見てきた。 そしてその多くを屠ってきた。 だけれども、私があなた達を今ここで邪魔する理由なんてどこにもないわ。 する必要が無いもの。 あなた達を食い殺すなんていつでもできる。手間なんてかからない。」
ウィンプルにより影に隠れた彼女の両目は金色に怪しく煌めいている。
「ゼハハハ…。大きく出たな。」
壁に寄りかかる黒ひげがそう発した瞬間、そのすぐ横の壁が一つの大きな斬撃により砕け散る。
「今私が話してるのよ。時間が惜しいのに無駄な事させないで。」
修道服に隠れた彼女の体が少し膨らみ、背丈が一回りほど大きくなる。
鼻先も伸び、まるで獣のような目で黒ひげを睨んでいた。
「…はぁ、何話そうと思ってたか忘れちゃったじゃない。」
──じゃあね、もう行くわ
「せいぜいマゼランに殺されないようにね…。」
話終え、背を向けるアリシアにオーガーが銃口を向ける。バージェスも戦闘態勢に入っているが、黒ひげが制する。
まだ勝てない。
悔しそうな目で、穴が開きそうなくらい彼女の背中を睨む。
黒ひげの目に映る彼女の背は先程よりも小さくなっていた。
「いくぞ。」
立ち上がり、アリシアに背を向け、歩き出す。
血まみれで、息を切らしながらLEVEL6へと彼らは向かったのだ。
アレ、黒ひげ弱くねって思って方居るかと思いますが、そこら辺は大目に見てやってください。
頂上戦争では彼女の戦闘をメインとして書き上げたいと思っております。
評価、お気に入り追えなくなってきました…。
新たに評価、お気に入り登録してくれた方ありがとうございます!
稚拙な文章に目を通して頂き、ありがたいです
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毒はちょっと食べたくないわ
夕方に確認したらお気に入り登録数がグッて伸びててびっくりしました!ありがとうございます!
アリシアの言葉通り、この
そして今、遂にLEVEL1。脱獄も目前という所で彼は追いついてしまった。
「“
額から血を流すマゼランによる毒攻撃。当たれば即リタイヤ、真っ直ぐとマゼランの“毒竜”は囚人たちへと向かっていき─
「“キャンドル
Mr.3の蠟により受け止められた。彼の蠟は鉄の高度を誇り、毒液など通さない。 今ここで彼以上の防御を誇るものはいなかった。
「全員早く先へ急げ!! 私も早く逃げたいんだガネ!!」
「へぇ、蠟ってすごいのね。やるじゃない。私が攻撃を任されてあげるわ、防御よろしくね。」
「聞いてたのか!? 私は逃げたいんだガネ!!??」
ハクロを先へ進ませ、アリシアはケツァルを担ぎMr.3の横へと並ぶ。
笑顔で圧を飛ばす彼女は斧を構え、ゆっくりとマゼランを見据える。
「さぁ、行くわよ。」
蠟の壁の前へ飛び出し、マゼランに向かってケツァルを縦に振り下ろした。空を切った筈のケツァルからは青白い斬撃が通路を分断するかのように突き進む。
「“
技名を呟くように言い放つ。彼女が片手で振り下ろしただけで、そこらの男どもが放つ技よりも強大な威力を誇る一撃となる。マゼランは毒竜を向かわせ、相殺にかかるが所詮は毒液、毒竜は切り裂かれ、そのまま目標へと斬撃は突き進む。
「! クッ…!!! “
「あら、避けられたわ…。」
アリシアが放った斬撃を毒竜の中を突き進み避ける。そのままマゼランは彼女へと近づき、腕に着けた角で貫きにかかる。
それをアリシアは笑みを浮かべながらケツァルで防ぎそのまま技を繰り出す。
「“
彼の右腕を斧で抑えた状態からの蹴り。ルフィ達がまだ知らぬ覇気を纏った一撃だ。まともにマゼランの体に触れたのに毒に苦しむ姿を見せないことに周りの囚人たちはどよめき立つ。
「アリちゃん!そいつの体に触ったら…!!」
既にマゼランにより、生死の境を彷徨ったルフィが焦って心配するも、アリシアは笑顔でマゼランを吹き飛ばした足を彼に見せる。
「どうってことないわ。これくらい直ぐにルフィくんも出来るようになるもの…。ああ、言い忘れてたけど、あなたは戦ってはダメよ?」
「イヤだ! 俺も…」
ルフィの言葉をアリシアはマゼランの攻撃を防御しながら返す。
「ダメよ。許可できない。あなたの兄、エースを救うためにどれだけ多くの仲間が散っていったか、よく考えて。…あなたは次の戦場で充分暴れればいいわ。」
そう言うとアリシアは再びマゼランに斧による薙ぎを行う。それを避けたマゼランは彼女から少しばかり距離をとる。
「クッ…“禁じ手”を使わざるを得ないか…!!!」
突如としてマゼランを中心に赤黒い毒が溢れ出す。シュウシュウと音を立てながらその毒は彼を覆い尽くし天井程の高さにまで唐突する。
「“
彼を中心として出来上がったモノは毒によるとても大きな“悪魔”。赤黒い毒が羽と角を持ったドクロを形成したのだ。形成された毒から出てきてすぐ彼は右手を振り下ろす。当然、それと連動したかのように後ろの“悪魔”も腕を振り下ろしてくる。
「まずいわね…!! ルフィくん!! Mr.3!! 私が時間を稼ぐ!! 長くは持たないから急げ!」
笑みを浮かべずに真剣な表情。初めて見る彼女の真面目な顔にルフィですら従ってしまう。
「時間稼ぎだと…? 麦わらのルフィにそこまで賭ける貴様らの思考など理解に苦しむな。…俺が居る限り、貴様も!! 囚人たちは逃がしはせん!!!」
再び振りかぶるマゼランに再びケツァルを構えるアリシア。深く腰を落とし、左脇近くまで振りかぶる。
「…吹き飛びなさい…!!“
切りつけるよりも叩きつけるかのような一撃に大きく仰け反る毒の“悪魔”。「ぬぅ…!!!」と衝撃に苦しむマゼランにアリシアは言い放つ。
「時間稼ぎ? 賭け? 何を言ってるか分からないわね。私が逃がすと言ったら彼らは逃げれるのよ…! 願望でも、目標でもないわ…これは決定事項なんだから…。」
冷たく微笑み言い放つ。突如として彼女の顔は黒い体毛に覆われ、口は伸び、爪は鋭さを増す。
「貴様…やはり能力を隠していたな…!!」
「見せるほどの相手とは思わなかっただけよ。…さて…」
──耐えれるものなら耐えてみなさい。
斧を両手で構え、飛び上がる。
「“
黒く燃える斬撃が真っ直ぐとマゼランへと向かう。当然彼も何もせず食らうつもりはない。“地獄の審判”により防御を行うが、斬撃は“悪魔”の腕を切り裂き突き進む。
そしてマゼランへと到達した。
切り口から黒炎が立ち上り、マゼランを焼きつくそうとする。必死に消火を試みるが、一向に消えない。そしてついに事切れたかのように倒れ伏す。
「安心しなさい…。その炎は命までは奪えない。…ただ少しだけ、そこでじっとしていなさいな。」
気絶したマゼランに投げかけるが当然返事はない。
能力を解除し、ホコリを払う。そしていつもの笑みを浮かべ彼に背を向け歩き出す。
──あなたが起きた頃には全て終わっているわ…。
首だけマゼランに向け、邪悪な笑みを浮かべるのだった。
〜新技解説〜
断・壱奉(タチ・イッポウ)
ただ片手での振り下ろし。ぶっとい斬撃が直線上に切り裂いていく技。
弐法蹴(ジッポウゲ)
武装色の覇気を帯びた蹴り。間合いをとるのに多様
冥闇捌火(メイアンハッカ)
黒い炎と共に斬撃を飛ばす技。切り口から燃えます。
能力はまた今度。
新たに評価、お気に入り登録してくれた方ありがとうございます!
結局、初めしか能力を使わない3兄さん
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