マジで……この世界⁉️ (タク-F)
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IF~~原典世界との接触~~

少し原作の装者達との絡みを書きたくなりました。それと同時にこの二人がどれ程チートだったかも書いてて気付いてしまった。

詳細は本編にて!


「……ヤバイ。何で僕はここにいるの?」

 

「知らん。だがオレは勇といる事ができればどこであろうと……どんな世界だろうと構わないぞ?」

 

僕達はマジで……この世界にたどり着いてしまうとは考えていなかった。

 

「申し訳ないが本部へ同行して貰うぞ?平行世界の住人のようだが、それでもキャロルとその同行者よ」

 

「わりぃな……手荒な真似はしたくねぇが、これ以上物騒な事にするのはあたし達も本意じゃあねぇ。大人しくして貰うぜ?」

 

僕達が渡ってしまった世界は正に原典世界だったからだ。事の発端はあの聖遺物を起動してしまった事が原因だった。

 

~~回想~~

 

「何で見つかるかなぁ……〈ギャラルホルン〉。こんなの厄ネタ以外の何でもないんだけど……」

 

「〈白黄 七海〉の世界にも存在していたんだ。ならばこの世界にあるのも当然だろう?」

 

あるのは仕方ない。だけど見つかるのはダメでしょ……。ていうか既に怪しく光始めてるから嫌な予感しかしないけど……。

 

「はぁ……仕方ないか。じゃあ僕とキャロルで行こうか」

 

「……仕方ないな。だが勇とのデートだ。心踊る事に変わりはない!」

 

全然仕方ないって顔してないよね?でも厄ネタ以外の何でもないから対処しよう。そして早く楽になろう。

 

「じゃあ早く行こう?すごい嫌な予感がするけどね」

 

僕達はギャラルホルンの光が導くままに世界を越えた。

 

 

~~回想終了~~

 

そして僕達は世界の壁を越えた瞬間に包囲されていた。翼さん達のギアの形状から五期が終わった後だと推定できるね。

 

「抵抗の意思はありません。キャロルもここでは暴れないでね?僕の予想が正しいならこの世界にもギャラルホルンがあるはずだからね?」

 

「……わかった。じゃあ大人しくする。シンフォギア装者ごときに拘束されるのは遺憾だがな」

 

キャロルは殺気を振り撒いた。その結果僕達を包囲していたこの世界の翼さん・姉さん・マリアさんは汗をかいてた。

 

「……対象の同行意思を確認しました。これより本部へ帰投します」

 

翼さんの搾りだすような声がこの場所に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず僕達はその後でこの世界の本部へと案内(連行)された。そして(この世界の)司令達と顔を会わせる事になった。そして状況の説明を終えた。

 

「なるほどな。君達は平行世界の住人であり、ギャラルホルンを通って来てしまったと言う事か。何とも恐ろしい話だな。その世界のキャロル君をはじめファラ君達自動人形全員が、オレ達の世界のキャロル君を越える実力があるとはな……」

 

「もちろんキャロルはそれ以上の実力だし、単純な僕の実力はキャロルを越えるでしょう。恐らくこの世界のシェム・ハなら僕達二人で倒せますからね」

 

比喩ではなく事実だ。〈僕達二人〉に限定すれば、この世界に僕達を越える実力者は多分いない。だからはっきりと言えてしまった。

 

「その上に結社の錬金術師が師匠か。どこまで規格外の実力を秘めているんだ?」

 

「あまりオレ達をなめるなよ?いつオレ達の力の底を説明したと言った?まだ上澄みすら出していないと言うのにな?」

 

僕達はお互いの世界の情報を交換した。しかし装者達は疑いの目を向けていた。

 

「あのキャロルが愛を語るだと?想像できねぇな。奇跡を否定しないのもらしくねぇ」

 

それはそうだろう。実際に原作のキャロルは奇跡も愛も否定的だったからね。

 

「じゃあ試しに戦ってみますか?相手は僕達二人で、貴女達は七人揃って尚且つエクスドライブで構いません。それでもハンデになりませんけどね?」

 

「随分と舐められてる?」

「調子に乗ると痛い目を見るデスよ?」

 

「では場所を変えましょう。シミュレーターの準備もお願いしますね?」

 

僕達はシミュレーションルームへと移動して、装置を起動した。そして僕達はフォニックゲインでこの空間を満たした。(この時は〈破軍歌姫(ガブリエル)〉を使ったけどね)

 

「……本当にエクスドライブになったね。じゃあ後悔しても遅いよ!」

 

(キャロル……天使の使用は無し、ダヴルダヴラの使用まではオッケー。僕は錬金術だけ。大丈夫?)

 

(問題ない。ハンデにもならんな。)

 

僕達は念話で打ち合わせて、装者達は準備を終えた。

 

「それでは模擬戦開始だ!」

 

弦十郎さんの声で響が突撃してきた!

 

「キャロルちゃんの恋人さん!私達を舐めると痛い目をみますよ!」

 

その突撃速度は並みの相手なら脅威となるだろう。だけどここにはキャロルの糸が既に展開されていた。

 

「これはキャロルちゃんの糸!?私達の知る糸よりも細くて固い!こんなの有りなの!?」

 

「下がれ立花!私が活路を開く!」

 

翼さんが響の突撃を止めた糸の切断に入ったが、その糸は切れない。それどころか絡め取られる状態だった。

 

「ッ!下がれ先輩!あたしが蜂の巣にする!」

 

姉さんが広範囲の射撃に切り替えて僕達を牽制してきた。だけどその銃弾は僕達に届く事はなかった。キャロルの糸を抜けられなかったのだ。

 

「終わりか?では此方も攻撃に転じると「ザババの刃を喰らえデス!」ほう?」

 

そう言うと僕達を挟むように切歌ちゃんと調ちゃんが斬りかかってきた。しかしキャロルの体には傷一つ残らなかった。

 

「嘘!私のシャルシュガナの切れ味は相当な筈なのに!」

「あたしの鎌で刈れないモノはない筈デス!こんなのトンデモデス!」

 

「これ以上はさせないわ!未来!合わせて!」

 

「……ッ!はい!マリアさん!」

 

未来の暁光とマリアさんの砲撃は僕達に直撃した。しかしこれも決定力に欠けていた。

 

「皆!私達の力を一つにするよ!手を繋いで!」

 

響のかけ声で七人の装者(一人はファウストローブだけど)は力を合わせて一つの拳を作り出した。なるほど……アレだね。

 

〈Glorious Break!〉(七人バージョン)

 

「キャロル……受け止めるよ!」

 

「任せろ勇!」

 

キャロルは迫る拳に対して糸を解除した。そしてその一撃を僕達二人で受け止めた。

 

「チッ!やはり天使を使わないとそこそこ堪えるな。腕が痺れたぞ?」

 

「いやいや割りと血が出てるよ?まあ見た目程のダメージもないけどね?」

 

僕達へ確かに攻撃が直撃した。しかし精霊となった僕達にはただのシンフォギアじゃあ大したダメージを受けていなかった。

 

「トンでもどころじゃあすまないデス!どうしてそんなにおっかないのデスか!」

 

するとキャロルは胸を張ってこう返した。

 

「そんな物一つしかなかろう?愛以外あり得ん!

 

知ってた。それでこそキャロルだね。

 

「じゃあ僕達も反撃しますよ?防御は全力でお願いしますね?」

 

キャロルは〈翠の獅子機〉を顕現させて砲撃を放った。そして獅子機を爆発させた。僕もキューブを周囲に浮遊させる。

 

「そしてここからが僕の役割だよ!」

 

僕は爆発した獅子機から(わざと)落ちるキャロルをお姫さまだっこして周囲のキューブを放った。

 

〈Exterminate!〉(ミリアドキューブを添えて)

 

すると巨大なクレーターが出来上がり、僕達の周囲は♡の形で足場が残っていた。因みに装者達は気絶していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「口程にもないな。オレ達の世界の奴等の方がまだ手応えがあるぞ?」

 

僕はキャロルにゲンコツした。

 

「痛い!勇!何をするんだ!」

 

「調子に乗らない。そもそもキャロル自体がこの世界のキャロルよりも強いんだから仕方ないでしょ?この世界よりも霊力の分だけ違うんだから」

 

僕達の霊力がどれ程の代物か改めて痛感した。そりゃあここまで強いなら誰も勝てないよね。

 

「でもそこのキャロルちゃんは大好きな人がいるんだね?羨ましいなぁ」

 

「ていうかあたしの弟……か。バルベルデで生き別れたって辺りが生々しいな」

 

「これ程の強さは私達の知るキャロルにはなかった。一体どんな愛なんだ?」

 

「それに勇さんって人はほとんど何もしてない」

「なのに最後の一撃だけで強かったデース」

 

「錬金術師としての実力は私達の知る人物以上だわ」

 

「こんな人が何人もいる世界って何なの?」

 

この世界の装者に言われたい放題だった。だから僕達は一番大事な事を伝える事にした。

 

「多分ですけど、僕達の場合は世界と釣り合わない程の愛を全員が抱いていました。恐らくこの世界の皆さんも世界と愛の二択を迫られる事があるかもしれません。だから……もし自分が心から守りたい人ができた時はその心を信じてください。でも……自分の事も同じくらい大切にしてあげてください」

 

「うん。ありがとうねキャロルちゃんの旦那さん!私達も胸の想いを信じてみるよ!」

 

すると僕とキャロルは光に包まれ出した。

 

「時間か。では勇……行くぞ?」

 

「そうだね。行こうかキャロル!」

 

僕達は包まれる光に導かれて僕達の世界へと帰還した。

 

 

 

 

 

 

「この出逢いはきっと偶然じゃあないね。僕達がどれ程危険な力を秘めているかを教えてくれたんだ。だから……」

 

「オレ達は力と向き合いながらも責任を果たそう。それが前任者達への誓いだな」

 

僕達はこの出逢いを忘れない。例え夢だったとしても。




本当にこれだけの実力があるんですよねぇ……。敵に上昇補正をかけないとこんな事になってしまうんだよなぁ……

作者自身は〈オレつえー!〉は好きではないですが、比較対象がダメでした。

今回は息抜き投稿となりましたが、要望等ございましたら、メッセージ等で教えてください!

意見をいただければ構想を固めた後に投稿します!


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転生
プロローグ


はじめまして。
今までは読み専でしたが、二次創作の楽しみを知り投稿してみたくなりはじめました。
駄文ですがよろしくお願いします。


ありきたりの日常だった。

退屈だったけど悪くない日々だった。

なのに……こんな目にあうなんてあり得ねぇ。

 

神様転生は創作の中だけで済ませてくれよ。

しかもよりによってなんで、「戦姫絶唱シンフォギア」の世界じゃねーかよ。勘弁してくれ。

モブに厳しいことで有名な作品じゃん。

マジで最悪、某愉悦部のような友人から絶賛楽しまれる。

というか俺、「山田 勇」は頭が良いわけでもなく、

運動ができるわけでもなく、才能もない普通の学生なんだったんだけどなー。

マジでどうしよう。原作も一部忘れてるから致命的だしな。

そもそもこの世界の人物は思想がヤバい人が多いんだよなー。恋に溺れた巫女や英雄思想のマッドサイエンティスト、世界分解ガールに、「ヒト」のプロトタイプ、

そしてマジもんの神様。

……あれ?詰んで無い?

マジで生き残るには、転生特典にすがるしかないじゃん……

 

 

 

「おーい、もしもーし、話の途中で上の空にならんでくれないかなー」

 

 

ああそうだった。神様転生の話の途中だったんだった。

マジで現実逃避したい。でも特典が無いと命の保証がないから聞かないと本当に死ぬ。

 

「え~っとどこまで話したかな、確か君の転生先の世界について話したところまでだったかな」

 

そうですね。

 

「なら次は時期と特典の話だったね、希望があれば限度の範囲で叶えるよ」

 

特に思いつかない。あの世界は、力をもて余すとそれはそれで詰むからなあ。

 

「ならばこちらで選定しよう、判明する時期も設定してっと。まあ合わないものではないので、安心してくれたまえ」

 

なら、それを使いこなせる環境と才能は追加してもらえますか?

 

「ほほうそうきたか。かまわないよ、せっかくの相手が自滅なんてオチはつまらないからね。おっと、原作知識は君の記憶の複写にしておこう」

 

ありがとうございます。

 

「では、転生時期の話をしよう。」

 

そうでした。でもこだわりはないんで、原作の主人公の響ちゃんと同年齢でお願いします。

 

「なるほど、少しつまらないがまあ良いだろう。なら家族構成もランダムにして……これでよしっと」

 

重ね重ねありがとうございます。

 

「では、転生を楽しんでくるが良い」

 

落下オチはやめてもらえますか?

 

「そこに注文をつけるか。ならブラックアウトにしよう」

 

すみません神様ありがとうございます。

そうして僕は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ転生スイッチといっしょに愉悦スイッチも押しちゃったけどまあ世界的に良いか」

 

転生世界 「戦姫絶唱シンフォギア」

転生特典 「デートアライブの天使の力」

愉悦テーマ「ヤンデレ」




次回からオリ主もしゃべります


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幼き日の想い出
幼少期


まだ本編入れない


西暦2033年 友達と公園で遊んでいる、5歳の少年

「山田 勇」は今はまだ普通の男子だ。

 

「ゆーくーんこっちだよー」

 

少年を呼んでいるのは「立花 響」そしてその側には「小日向 未来」も側で手を振っていた。どちらも女子であるが、今の勇には気がつかない。

 

「まってよー、そっちにいくからさー」

 

そうして日がくれるまでブランコをこぎ、滑り台を楽しみシーソーに乗る他愛の無い子供の日常である。

当たり前の日常は美しい………しかしそれは突然失われることもある。

 

「勇ー帰るぞー」

 

父親と帰宅するその直前、ながらスマホで速度超過をしていた車が勇との接触が起きそうになった時、父親が勇を突飛ばし、激しい音がした。

勇は膝を擦りむいただけですんだが、父は帰らぬ人となった。

父子家庭で育った勇に母はおらず、事故の際は警察が、親族を探すこととなり、遠戚にあたる雪音夫妻が引きとることとなった。

それまでは、児童養護施設ですごすこととなった。

そして、職員より、こうも伝えられた。

 

「勇君。きみは、雪音さんというご夫婦の元に引き取られる。そこで君の名字は、今の〈山田〉から〈雪音〉に変わることになる」と。

 

そして一週間後、雪音雅律とソネット・M・雪音と対面する。

 

「はじめまして勇君。私は君のお父さんの親戚なんだよ。そしていきなりにはなるが、君の新しい家族になる。ゆっくりで良いからね」

 

勇はまだ事態についていけなかった。しかし、今まで知らなかった母親の温もり、そして……

 

「わたしはクリスっていうの6さいだよ。よろしくね」

 

姉という存在を知った。

 

そしてその一月後には、勇と響に未来、そしてクリスの4人で過ごすことが増えた。

 

「ひびきーまってよー。どこまでいくのー?」

「ふたりともーあんまりとおくにいかないでー」

 

はしゃぐ響、追う勇、そして見守る未来とクリスの仲は、2年続いた。そして2035年に再び運命が動く。

 

「パパ、ママ、そのはなしはほんとなの?」

 

「ごめんね。2人とも。せっかく響ちゃんたちと仲良くなったのに離れ離れにして。でもね、2人にはね、どうしても見せたいものがあるの」

 

「「みせたいもの?」」

 

「世界よ。だからね、来月には出発するから、2人にはきちんと挨拶をしておいてほしいの」

 

「「わかった。ちゃんとあいさつするね」」

 

「約束よ」

 

その二週間後に、姉弟は2人に打ち明けた。

 

「「ふたりともちょっといいかな?」」

 

「「どうしたの?」」

 

「じつはね、わたしたちもうすぐとおくにいっちゃうの。パパとママのおしごとで、ばるべるてってくにに、いくの。だからふたりにあえなくなるの」

 

「あえないの?」

 

「ごめんね。とってもとおくであえないの」

 

((さみしいね))

 

「だからね、やくそくをしよう」

 

「「やくそく?」」

 

「うん。おおきくなってにっぽんにもどってきたときにまたよにんであそぼう」

 

「「やくそくだよ」」

 

「あっ、ゆうくんはわたしとけっこんしようね」

「あーみくずるい、わたしもゆーくんとけっこんするー」

 

「ゆうはモテモテだね。おねえちゃんははながたかいよ」

「クリスおねえちゃん、からかわないでよー」

 

この二週間後雪音一家はバルベルテへ飛び立ち、物語が動き出し、そして勇は転生特典と原作知識を悲劇の後に思い出す。

 




小説投稿者は本当にすごい。
書いてはじめて苦労がわかりました。
そして速くもお気に入り登録をしていただいた方々、本当にありがとうございます。


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本当のはじまり

お気に入りと評価をしてくださった方々
本当にありがとうございます。
これからも頑張ります。


~2035年バルベルテにて~

 

いきなりだが僕は、お姉ちゃんと逃げている。そして両親の死により記憶と知識を取り戻した。そこで転生特典を知ることになったがあえてこうしたな。

(今思い出させるとか無いでしょ!もう少し余裕のあるときにしろよ。神様ぜってーゆるさねー、次に会うときは文句言ってやる‼️)

そして人が入れそうな木箱を見つけた。

 

 

「お姉ちゃん、ここに隠れて」

「ゆうはどうするの?」

「囮になってお姉ちゃんの逃げる時間を稼ぐよ」

「あぶないよ、やめてよ。」

「大丈夫、いつか響達と4人で会う約束は破らないから。それに、お姉ちゃんを守るのも男の役目だからね」

「ゆう……」

「いつかみんなで会おうね」

「ゆーーうーーー」

 

これで良い。後は時間を稼いで姉ちゃんを助けてもらえば後は、おもいっきりやれる。

幸い特典のデアラの天使の力なら、どさくさまぎれでも、何とかなるしな。

「ザフキエルーー時喰みの城」

 

すると勇の周囲に影が広がり辺りの物や兵士を飲み込んだ。「なんだこれ」「黒い」「吸い込まれる」「アアアアアアー」そしてしばらくの悲鳴と銃声の後立っていたのは、勇1人だけだった。

(姉ちゃん、無事に逃げてくれよ)

そして勇は場所を移動しては、戦場に影を落とし続けた。

 

 

~~side???~~

興味深い坊やが居るわね。まあ、こちらに気付く様子はなし。ここは彼女に相談してこの戦場が終わり次第接触しようかしら。

~~???

sideout~~

 

 

 

~~sideクリス~~

パパとママがしんだ。ソーニャたちとはぐれた。そしてゆうはわたしをにがすためにからだをはってどこかにいってしまった。あたしはいったいどうすればいいんだろう。だれかわたしにおしえて。

 

 

 

 

そしてどのくらいじかんがたっただろう。はこのなかでくれていると、きゅうにはこがひらいた。なんていってるかはわからないけど、にもつのかくにんをされた。そしておとなのひとがなにかをいってた。そしてべつのひとがきてこういってた。

「わたしは、なんみんきゃんぷにいくんだ」ってそしてじきをみてにほんにかえるっていってた。

わたしにはよくわからない。みんながなにをいってるのかわからない。ゆうのことをきいてもわからないっていってた。さみしいよゆう。

でもゆうはいってた。いつか4人でいっしょにあうって。ならわたしは、さきににほんでまとう。そしてひびきたちをみつけよう。でも、いつまでかかるんだろう。

サミシイヨ、アイタイヨ、マッテルヨ、ユウ。

~~クリスsideout~~

 

 

 

 

~~side勇~~

何故だろう。とても強い悪寒が襲ってきた。

時喰みの城の副作用か?原作でも謎が多かったし。

でも記憶取り戻してからの展開が早すぎる。

知識は、助かったけど、姉ちゃんがどうなってるかわからんしなー。でもこれで俺は人を殺めたんだよな。

表向きは内乱だけど、裏の世界では時期に今回の件に不審な動きをする人物がいるはずだから、接触しないとね。さてまずは、難民キャンプでも探しますかね。

でもどこにあるんだっけ?

ひとまず俺はミカエルで移動した。天使の連続使用がしんどい




幼少期の会話って結構しんどいですね。


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皆様の感想やお気に入りを、とても嬉しく思います。
これからもよろしくお願いします。
評価していただけることをとても感謝しています。

では本編をどうぞ。


~~side???~~

私は見た。戦場で男の子が駆けて行くのを。

普通なら、カワイイ坊や程度の認識なんだけど、

遠くから見ていた時、一定範囲の人や物が消えた。

でもあの子はなにもおきていない、近づくのは危険だが、監視は必要だった。そしてひとつの戦場が片付くと、別の場所へ向かっていた。明らかに子供と駆け離れた身体能力に謎の能力、私は、警戒を解けなかった。

プレラーティからの連絡がきていたが、今はとれない。

詳細を知らないと、あの子は間違いなく、私達の障害になる。このカリオストロの勘がつげていた。

そして、あの子は、戦場を片付けるとどこかへ消えた。

見失うわけではなく、消えたということは、あの子は間違いなく、力を使ったということ。だけど、錬金術ではななかった。鍵を持ったと思ったら、消えた。

いったいなんなのかしら。

 

っとプレラーティからまた連絡がきた。今度は出ないとね。

 

 

~~カリオストロsideout~~

 

 

 

~~sideプレラーティ~~

「サンジェルマン、カリオストロの奴が連絡に出ないワケだ」

 

「珍しくはないでしょう。時間をおけば良いじゃない」

 

「まあ確かにそういうワケだな、しかし一体どこで油を売っているワケだ?」

 

~~15分後~~

 

「もう一度連絡するワケだ」 「任せるわ」

 

「カリオストロ、貴様はどこで油を売っているワケだ?」

 

「ゴメン2人ともよくきいて。私がバルベルテで見たことを話すから」

 

「何かあったわね。詳しく話して」

 

~~カリオストロ説明中~

 

「なんと」 「にわかには信じられないワケだ」

 

「人や物を飲み込んだ影に、常識はずれな移動速度、

そして鍵のような物を使った転移。確かに侮れないわね。その少年は一体何者だ?」

 

「あーしが知るわけないじゃない‼️」

 

「そうだった。ならすまないがバルベルテにもうしばらく張り込んでもらえないか?」

 

「ふむ、本当にもどってくるワケか?」

 

「カリオストロが見たのが子供なら、近くに情報があるはずだ。それをもとにすれば、素性が判明し、向こうも気付くはずよ」

 

「流石ねサンジェルマン。わかったわ、今回は表にも出るから、情報操作は頼むわよ」

 

~~翌日~~

 

「サンジェルマン、ビンゴよ。相手の名前は、雪音 勇で、両親は昨日支援物資内の爆弾で死亡、姉のクリスは、難民キャンプに保護。しかるべき後に帰国予定。

多分彼は、私達の接触を待つために姉と別の場所にいるわ。どうする?」

 

「ふむ、カリオストロ支援物資を届けて接触してくれる?」

 

「わかったわ、朗報まっててね」

 

~~プレラーティsideout~~

 

 

~~side勇~~

さっさと思い出せば良かったけど、〈ラジエル〉を使えばすぐわかることだった。ヤバい、頭が回ってない。

えーっと〈ラジエル〉!

 

 

ふむふむ、姉ちゃんは、無事に保護、パヴァリア光明結社が僕の情報を集めてる と。

あれ?ヤバくない?

となればまずはってあれ?「未来記載」が使えない。

まずは、力をつけなきゃいけない。

 

新しい人生を掴むために。未来でお姉ちゃんを守るために




能力が不完全な理由は別の話で明かします。


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修行時代 パヴァリア光明結社
接触


本日はは二話投稿させていただきます。


さて、雪音 勇です。

来ました。原作キャラと記憶をとり戻しての初会合です。にしてもパヴァリアかー、今の時期だとどうなってるんだろう?さて、心の準備も終わったので、座してまちますか!

 

「君が雪音勇君ね?」

 

出たな、元男の爆乳錬金術師……ってちがうちがう。相手のペースに乗るな、相手は元プロの詐欺師で結社の幹部なんだ、油断したら、〈カマエル〉のオート再生があっても死ぬし、何よりもその背後の全裸がヤバいんだから。

 

「そうですよ。あなたは、パヴァリア光明結社幹部のカリオストロさんですね。はじめまして、雪音 勇です」

 

「あら?カワイイ顔してもこちらを知っているとしたら、只者じゃないわね?」

 

「褒め言葉ありがとうございます。あなたのような美人のお姉さんから言われると照れますし、お茶をゆっくり飲めたら最高なのですが、今は、大事な話をしましょう」

 

「良いわ、あなたが気に入ったから、私たちの組織、パヴァリア光明結社に案内するわ。転移するからついてきなさい」

 

さて、鬼が出るか、蛇が出るか、気を引き締めて行きますか。そうして魔方陣が出現して包まれた。

 

姉ちゃん……原作通りなら2043年には会えるはず、だからその時には必ず会おうね。僕も覚悟は決めてきたんだから。

 

~~結社本部~~

 

「君が、雪音 勇君だね?私はサンジェルマン、そして隣にいるのが、プレラーティだ」「よろしくなワケだ」

 

最初の関門だ。対応には気をつけて……っと。

 

「はじめまして。パヴァリア光明結社大幹部のサンジェルマンさん、プレラーティさん。僕が、雪音 勇です」

 

「では本題に入ろう。君は何者だい?」

 

なるほど、ストレートに聞いてきたか。ならこの質問をして、その返答で考えるのか理想かな。

 

「すみません、質問を質問で返して申し訳ないですが、貴女は平行世界を信じますか?」

 

「錬金術師は、可能性を追及するものだ。私自身は、あると信じているさ」

 

平行世界を信じたか。なら、デアラの能力を平行世界の自分の力って体で話を進めよう。

 

「ありがとうございます。では改めてまして、僕は平行世界で〈精霊〉という存在でした。そして〈天使〉という能力を有していました。記憶と力を取り戻したのは、昨日ですが、まあ、今なら三割くらいは使えますよ」

 

「へえ、話ね。カリオストロのはなしだと、貴方は、対象を飲み込む影、高速移動、そして転移能力があるわね。この流れなら、あといくつか能力があるんじゃない?」

 

そこまでバレてたか、さすがに幹部だしな。

こちらも情報は隠すつもりだったけど、まずは、信頼を得て足場を固めるのが、優先だな。

 

「そうですね。影と時間を操る〈天使〉と、風を操る〈天使〉、そして封印と解放、そして扉を作り繋げる〈天使〉が、貴女の見た〈天使〉ですよ。カリオストロさん」

 

「なるほどそのような能力だったか。なら他の力はどのようなものか、差し支えがなければおしえて欲しいものだね。もちろん、対価は支払うわ」

 

「良いですよ。例えば、水と氷の〈天使〉、炎の〈天使〉、ってのが、あり、破壊と創造の〈天使〉、そして審判の〈天使〉ってのがありますね。他の〈天使〉もあります。そしてその他を含めたら、全部で12個です」

 

「気前が良いのね。貴方の話の通りなら、手の内の半分以上をさらしたことになるのよ?」

 

「すまないが、1度目を見せてもらうワケだ」

 

「プレラーティ?」「疑ってるの?」

 

「失礼するワケだ。」

(瞳孔、脈拍、心拍数、どれを見ても緊張はしているが………、嘘はついていないワケだ。

そして何かを隠しているのも間違いはないが、まだ初対面。こちらの根城にいる以上はここらが落とし所なワケだ。)

 

「すまない、もう良いワケだ」

 

「身内が失礼した」

 

「いえいえ、信頼を得るなら、このくらいのリスクは、必要ですから」

 

そう、能力の開示よりもこの世界で必要なのは、後ろ盾なんだから。ここからが、本当の駆け引きだ。気合い入れていかないと。




これからめも、皆さまの期待に是非応えたいと思いますので、どうか拙作をよろしくお願いします。


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交渉

お気に入り登録が50件を突破しました。
皆さまありがとうございます。
これからも、よろしくお願いします。


さて能力を伝えて信用は得たはず、ここからが交渉なんだから。プロの詐欺師からどこまで認められるかな。

 

「サンジェルマンさん、カリオストロさん、プレラーティさん。僕は先ほど、平行世界を信じているか尋ねました。そして貴女方は信じて下さりました」

 

そう、信じてくれたんだから、覚悟を決めて伝えよう。

 

「僕が、平行世界で得た知識のひとつに、この結社の局長である、アダム・ヴァイスハウプトの平行世界での目的を知っている」

 

「本当か?」「ええっ」「興味深いワケだ」

 

三者三葉ではあるか、確かに手応えをかんじた。

なら、今伝えるべきだな。

 

~~勇の説明中~~

 

「そんな事が」「本当なら」「冗談にならないワケだ」

 

「あくまで平行世界の話です。この世界では、違う可能性だって十分にあります」

 

「ならば私たちは、どこで判断するものかな?」

 

「1度ある錬金術師が、レイラインを使い大きな術式を使う時がきます。その後時期を見てアダムは天と地のレイラインを使います。神降ろしの術式を使えば完全に黒です」

 

「他のタイミングはあるかな?」

 

これは、おそらく世界の命運を分ける答えになる。

 

「古代の自動人形〈アンティキラ〉の捜索、回収、起動、そして神への挑戦的な意思ですね」

 

「ありがとう。局長の意思だけは、今からでも確認するわ」

 

「ちょっと、本気なの?サンジェルマン」

 

「ええ。それがわたしたちにとって、ひいては結社にとっても必要なことよ」

 

「………サンジェルマンが本気ならワタシも支持するワケだ」

 

「プレラーティ……あなたもなのね。なら、当然あーしも乗るわ」

 

「2人とも……ありがとう」

「さて勇君、きみの情報はとても大きな情報だった。君の望みを教えて欲しい、何が必要かな?」

 

ここまで好印象なら、提供した甲斐があったな。なら、ここで自分の力をつけよう。

 

「では、まずは生活環境の保障と戦闘訓練をお願いできますか?」

 

「構わないわ。そして遠慮する事はない、他にも望みはあるのだろう?」

 

やはり鋭いなこの人は。なら、原作知識を活用するための精度を上げる必要がある。どこまで頼めるかな。

 

「次に日本の特異災害対策機動部二課の動きと、僕の姉の雪音 クリスの行方の情報が欲しいですね」

 

「あら?お姉さんの事は行方だけで良いの?あーしたちなら、貴方と一緒に保護するのも簡単なのよ?」

「それに、前半の方の情報との関連性はあるのか?ワタシは無関係だと思うワケだが」

 

さすがに幹部、信用しても合理性は、確認してくるよね。だけど、これで良い。自分の知識で動いて予期せぬ事態になったら、手のうちようがないから。だから今はこれで良い。

 

「ええ。平行世界で姉はある時期から二課に所属していました。そして、今姉をこちらで保護してしまうと、僕の知識にない事態の可能性が高まります。なので姉の動向は、日本に着いて保護されるまでお願いできますか?そうすれば、二課が姉にある目的で接触しようとするはずですから」

 

「なるほどね。お姉さんと二課の関連が繋がるわ。ということは、二課の動きの情報もそこまでで良いのかしら?」

 

さすがにだ。でも僕は、ライブの日付や、主人公の覚醒の時期を詳細には、覚えていないからな。だからこそここで頼まないといけないな。

 

「いいえ、二課の情報は、ある人物が表立って動く隠れ簑になっています。本当に必要なのは、その人物の情報何です」

 

「その人物の名前は、出せるのかしら?」

 

「はい。先史文明の巫女〈フィーネ〉で今代の依り代は、櫻井 了子です。あの世界では、二課がはじめて姉に接触する際にフィーネに誘拐されました。だから姉さんは行方不明となったんです。」

 

「フィーネか、厄介な大物ね。となると、それを防ぐ事が目的かしら?」

 

「いいえ、確かに姉は、行方不明となりますが、ある聖遺物を纏って表に表れます。その時に僕は、自分で会いに行きます」

 

「わかったわ。その内容でいきましょう。そして最後に良いかしら?」

 

「はい。何ですか?」

 

「貴方が言った、ある錬金術師の名前を教えてもらえないか?」

 

やはりそのことを聞いてきたか。彼女は作中屈指の人気キャラであり、一押しだったからな。でも、もしかしたら彼女と接触できるかもしれないんだ。ここは、答えなきゃいけないな。

 

「あら?もしかして、未来に関わる重要な人物だったかしら?」

 

「いえいえ大丈夫ですよ。なのでお伝えします名前は、

〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉前の世界で僕が最も憧れた、希代の錬金術師です」

 

ここで運命の歯車がまたうごいた。しかし彼は気付かない、後に自分の予期していない出来事が起こるということを。神の愉悦が動くということを。




文才が欲しいです。


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現実

評価バーに色がついて驚きました。
これからも、みなさんの期待に応えていきたいと思いす。


さて、サンジェルマンさんたちとの交渉を無事に終え、今は修行にも協力してもらえてる。そのおかげで自分のスペックを把握することもできた。その結果………

 

メタトロン→よく馴染む

 

ラジエル→ちょっと使いにくい

 

ザフキエル→時喰みの城と霊力の銃弾は使えるけど、

天使それ以外はきつい

 

ザドキエル→氷が少し出る程度

 

カマエル→砲撃と自己治癒能力以外はからきっし

 

ミカエル→転移以外使えない

 

ハニエル→イメージ実現にするのに隙が目立つ

 

ラファエル→移動速度が早い程度

 

ガブリエル→歌声が綺麗な程度

 

サンダルフォン→1番使える

 

ケルビエル→どう起動するの?

 

アイン→力はあるはずなのに感じない

 

 

霊力量→量があるのはわかるけど、出せる量に限度アリ

 

結論

脳筋症な単純戦法以外の選択肢がほぼゼロ

極めて改善の必要アリ

 

かなり不味い。ハニエルなんか特に使いそうなのに時間がかかりすぎるのは、戦闘なら致命的だ。能力の向上をできる環境じゃないならまずかった。

対策されてたら良くて撤退、悪くて捕縛・解析・人質の足手まといだった。最初に接触してきた組織が〈結社〉じゃなかったら、気付かない可能性が高かった。技術の向上には、サンジェルマンさんたちに相談しよう。

 

「サンジェルマンさん、相談したいことがあるのですが良いですか?」

 

「構わないわ。言ってみなさい」

 

「僕の成長課題についてなのですが、そのために錬金術を教えて欲しいんです」

 

「練金術か。しかし一体何故だい?君自身十分な能力を有していると、わたしたちは認識しているが」

 

「確かに火力は十分だと感じました。

しかし僕には、技術・駆け引き・判断力・構築力が足りませんでした。その向上に、皆さんの助けが必要何です。お願いします。僕に練金術を教えてください」

 

「わかったわ。そういうことなら協力しよう。

但し、わたしたちの修行は厳しいし、弱音は吐かせない。

1目標に届いていなければ、次には絶対に進ませない。

2君自身の能力は使用禁止

3抜き打ちチェックはアリ

4君は、〈カリオストロが連れて来た紛争孤児〉として他の者と共同生活を行う

この条件が呑めるなら、貴方の修行に指導をするわ」

 

「わかりました。よろしくお願いします!」

 

「良い返事ね。もっと悩むと思っていたが、楽しみになりそうだ。後はプレラーティに、

1日の生活リズム・1週間、1ヶ月単位のスケールを組んでもらうわ。貴方には、練金術の他にも、常識・情勢・家事・雑務・勉学にも取り組んでもらうからそのつもりでいなさい。それを全て達成した時、君は晴れて成長できるだろう」

 

「ありがとうございます。やはり貴方に相談して良かったです」

 

すごい人だ。相手が子供であることまで踏まえて計画を立ててくれる。そしてそのなかに、愛情を少なからず感じる。やはりこの人は、あの〈立花 響〉が絶対に手を繋ぎたいと願った通りの人だった。僕自身もこの人と会えて本当に優しい人なんだと感じたから。でもだからこそ惜しい。この人達を救うためにも、僕は力をつけなければならない。そして、姉ちゃんや大切な幼馴染みの元へ笑顔でかえるんだ。だけど、これは聞かないといけないな。

 

「最後にいいですか?」

 

「なんだい?」

 

「先ほど貴女は、〈アダム局長の意思を確認〉すると言いました。その際に僕の存在を彼に伝えるつもりはありますか?」

 

「いいえ。君の話通りの計画を、あの男が進める気なら、少なくとも私たちは協力する気はない。そして局長の主義や性格からして、〈カリオストロが拾って来た孤児〉には、興味など持たないだろうさ」

 

やはりそこは、原作通りなんだろうな。なら、絶対に貴女たちを僕は救ってみせる。その覚悟は、絶対に挫けずに手を伸ばしたこの世界のヒーローにも、僕は負けるわけにはいかないから。




お気に入り登録、評価、感想をしてくださる方々。
いつもありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします。


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修行と日常

前回の、
勇君の現在のスペックは、
僕だったら特典があってもこの程度だろう。
ということを想定して作りました。
現在は、その覚醒にあたる話を執筆していますので、
皆様楽しみにしてお待ちください。


あれから3年半が過ぎた。僕の記憶通りの原作なら、

アメリカの〈F・I・S〉で完全聖遺物〈ネフィリム〉の機動実験があったはずだが、僕は介入していない。師匠の厳しい指導と、研鑽し合える仲間との濃密時間を過ごすうちに、気がつけば過ぎていた。そんなことよりも、願いを叶えるためはにやるべき事がまだ山積みなんだから。ここで立ち止まるわけにはいかない。

思い出したのは2年前だったが、意味はなかったなー。

ていうか、そんな余裕なんか無いし。

 

 

「勇!!考え事をしていたな!集中が乱れているぞ!!

お前の悪い癖だ。戦闘中に複数の事を想定出来ることは、確かにお前の課題だ。だが、それは下地が出来てからの課題た。横着を私は認めないぞ。今のお前の課題は、〈3センチ四方の光のキューブで、15メートル先のゴーレムの四肢及び胴体の中央と頭部を正確に撃ち抜く訓練〉だ。集中しなければキューブは暴発し、対象が崩れるぞ!」

 

ヤバい。師匠がめっちゃ厳しい。師匠の課題の中で、

・学力は今の日本の、上の下の普通科高校なら授業内容の理解に困らないレベル

・家事技能は、難しくない家庭料理は及第点で、掃除・洗濯・家計管理は文句なし。(完全に前世のおかげ)、法律や税金についてはもう少し情勢を見てから伝えるらしい。まあ、この世界ならそれが懸命だしな。

・共同生活の方は、競い合う相手がいて、技能が上がるほど充実していた。

・戦闘における駆け引きは、対人訓練が実戦見込みがでるまで保留らしい。

だから、情勢と常識は外の任務が必要な時に教えるらしい。すごくありがたいな。

・そして技能訓練がボロボロ

1エネルギーを集めて生成する→

2形を一定の大きさに留める→

3それを一定の距離の的に正確に当てる→

4安定して10回繰り返す→

5自らが移動しながら行う→

6動く対象を撃ち抜く→

7対人訓練

 

なんだけど、今は4の工程なんだよな。

正直、心が折れそうになる。自分の集中力がこんなにすり減るとはおもわなかった。

僕の精神は、思っていたよりも弱かった。

だからこそ達成する価値があるんだ。ただ、カリオストロさんからは、

 

「実戦レベルには、程遠いけど、目を見張る成長速度よ。根が素直で真面目な良い子なのね。素敵よ♥️」

 

って言われたんだよなー。からかうのと同時に評価するなんてあの人らしいな。

 

「勇、貴方もしかして疲労から集中力が切れてない?

30分の休憩の後に第4工程から再開するわ。それまで休みなさい」

 

気を使われてしまったな。師匠は厳しいけど、相手をよく見て話してくれるからうれしいな。言葉に出すのは恥ずかしいけど、いつか絶対に伝えないとな。

 

「師匠ありがとうございます。貴女は僕にとって最高の目標となる人でした。そして母親のような存在だと感じています」

 

ってね。




評価・感想・お気に入り登録をしてくださった方々。
そして日々閲覧者してくれる方々。
本当にありがとうございました。
これからも本作品をよろしくお願いいたします。


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閑話 暗躍する者たち①

今回はサンジェルマンサイドの話です
時系列は原作ならネフェリムが暴走する半年前。
この作品では、「現実」と「修行と日常」の間となります。


私・サンジェルマンは、1年半前にある少年と出会った。

その少年は、「平行世界を信じるか?」と尋ねてきた。

その質問は、錬金術師としては、可能性があるものを否定しないし、私自身もあるものだと思っていた。

しかし、もたらされた情報と平行世界のわたしたちの結末は、予想を遥かに越えることとなった。

その世界で局長は、人間ではなく、神によって〈完全〉を目指す人形のサンプルケースであり、神の打倒を目指していること。

そして、目的達成のためなら、人類全てを犠牲にする気だったというのだから、その世界の主人公たちと戦い、敗れたらしい。局長自身の信念は悪ではないだろうが、行動は悪だろう。故に倒されたのだから。

 

それ故なのだろう。私は、局長に抱いている疑惑を話をし、局長自身の目的を聞き合点がいった。彼は人類に等しく失望していた。それ故に組織の長でありながらあの態度なのだ。ヤツの目にわたしたちは映っていない。見ているのは、計画を実行するためのプロセスだけなのだから。

私は、絶望したとともにある決意をした。

 

勇を守り支援し、勇が言っていた、〈特異災害機動部二課〉は、後に組織の名前が変わるらしい。そこへわたしたちも合流しよう……と。

 

だが、肝心の勇は、わたしたちにこう頼んできたのだ。「練金術を教えてください」と。正直その必要はないと思っていた。彼が説明した自身の能力があれば、学ぶ必要はないからだ。しかし彼は、自身に足りない物をよくわかっていた。人は見た目によらないというが、

彼の覚悟は本物だろう。ならば私は、彼に提供できるものはおしまず、望みは叶えよう。その覚悟に私は報いたいのだから。

ん?あれは…………カリオストロか?彼と話しているな。まあ、彼女のことだ。気に入った少年をからかって遊んでいるのだろう。いつものことだ。すぐに終わるだろう。

 

 

 

 

~~sideカリオストロ~~

「あら勇君こんなところにいたの?」

 

「まあ、気晴らしの散歩ですけどね。そういうカリオストロさんはどうしました?」

 

「んー。サボり?かしらね。まあせっかくだし、お姉さんに面白い話をしてくれない?」

 

「っていっても、生まれてからは普通の友達のいるこどもで、めぼしい出来事は貴女方とあったあとのことぐらいですよ?」

 

「ふーん。そうなのね。なら、平行世界の私たちが関係していた組織の話とかない?結構そういう情報は外回りなら欲しいものなのよねー」

 

(まずいなー。四期ほとんど知らんからわからんのんだよなー。実のところ、〈F.I.S〉の〈レセプターチルドレン〉に、結社がアメリカの隠蔽を教えたくらいしか覚えてない。

しょうがない。原作のパイプを早めに作ってもらうか?)と勇は考えていた。

 

「そうですね。

キャロルの〈チフォージュ・シャトー〉と、

フィーネが、〈リィンカーネーション〉の候補となる子供たちを集めている施設の話くらいしかありませんよ?」

 

そうして勇は、覚えているセレナの話をした。

 

「ふーん……なるほどね。派手な事故で施設は破損ねぇ。なら……」

(この情報は使えるわ。うまくいけば完全聖遺物の現物をみれ、シンフォギアを知り、研究所に貸しを作って、あわよくば戦力をつけられるわ。話の通りの力量なら、錬金術もきっとかなり扱えるわね。サンジェルマンに早く相談しなきゃね。)

 

~~カリオストロsideout~

 

視点は再びサンジェルマンへ

 

「カリオストロ、その話は本当なのか?」

 

彼女が勇から得た情報は、今からおよそ半年以内にアメリカの研究所の出来事だが、彼は嘘をつく人間ではないことはわかっている。およそ起こるだろう。

そしてカリオストロが目を付けたメリットは、資材より遥かに価値があった。そして結社と研究所は今もフィーネのことで有益を得られていた。

取引相手に貸しを作り、なおかつ戦力を得られるなら、その実験には、是非立ち会いたいものだ。

 

 




閲覧してくださった方々、本当にありがとうございます。

評価・感想・お気に入り登録も是非お待ちしています。



また、本日はこのあと0時よりもう一話投稿しますので、よろしくお願いします。



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閑話 暗躍する者たち②

本日二話目です。

前話は20時に投稿済みですので、
まだの方はそちらからお願いします。




引き続き、サンジェルマン視点です。
基本的にこの閑話は、サンジェルマンの視点で展開を進めます。


2037年アメリカ〈F.I.S研究所〉

 

わたしは今、彼が言っていた研究所に到着した。

本来ならば、カリオストロに任せるべきなのだう。

しかし、相手に対して敬意を表すアピールをするためには、私が出向くことが効果的だと今回は判断した。

 

「これはこれは、〈パヴァリア光明結社〉のサンジェルマン様。よくぞお越しくださいました。今回の実験は我々にとっても重要なものでして。ご足労いただいた価値があるものを是非お見せいたします」

 

社交辞令とはいえ、大層なものだ。

おとなしく開始まで待つとしよう。

 

 

 

驚いたわ。あれが完全聖遺物なのね。あのフィーネが手を回すだけの価値が確かにあるものだったわ。

聖遺物の可能性、これなら、机上論にしていた、〈ラピスの輝き〉を探るヒントになるかもしれないのだから。少なくとも、条件はあれど不可能でないことが分かったのだから。

でも、今はそれどころではなかったわね。何せ目的のネフィリムが暴れているのだから。しかし回りもあわただしいわね。今回は注目の実験だったのに失敗しましたじゃあ話にならないから、当然よね。

 

「サンジェルマン様お逃げください。ここは危険です」

 

「そうね。確かに貴方たちは危険だわ。でも私は、逆に良いものを見れたわ。〈シンフォギア〉の可能性、

そして完全聖遺物の危険性を。それを見れた対価に今回の情報隠蔽と建て直しのための資材の提供をするわ。それに、私一人が逃げるだけなら、何も問題ないわ。最前列で見るから、貴方たちは下がりなさい」

 

「わかりました。」

 

さて話している間に歌が終わりそうね。私も下りようかしらね。

ネフィリムが活動を停止した今、彼女が瓦礫に埋もれる前に、救出しなければ、意味はないわ。人払いが済んでいる今、動かないと手遅れになるわね。

 

 

~~sideセレナ~~

 

私は今、絶唱を終えてネフィリムを停止させた。でも、身体の負担は想像以上で、マトモに動けない。姉さんたちを守りたい、そして戻らないといけないのに、身体がいうことをきかない。

それに、ネフィリムが暴れた影響で、建物が崩れはじめた。

動けない私は、崩れてきた建物に巻き込まれるだろう。

ごめんねマリア姉さん。暁さん、月読さん、みんな……お別れが言えなくてごめんね。

 

そう覚悟した時、私めがけて落ちてきた瓦礫に、突然別の方向から飛んできた光の球体があたった。一体何が起こっているんだろう。

でも私は、その意味を知る前に意識を手放した。

 

~~セレナsideout~~

 

私は何とか彼女めがけて降ってきた瓦礫を、ミリアドスフィアで砕くことに成功した。しかし、彼女は「絶唱」の負荷からか、緊張の糸が切れ、意識を手放したようだ。元々連れて帰る予定だったから都合が良い。確かカリオストロの話では、ペンダントのみが後に発見され、遺品扱いで引き取られ、彼女の姉に渡されることを聞いた。

ならばギアが解除された今、ペンダントは目立つ場所に転がし、後で回収させよう。これで勇の見た平行世界の未来に矛盾は生まれないはずだ。

衰弱した彼女を背負った私は、急ぎ転移用のジェムを使い、カリオストロたちの待つ結社本部に帰還した。

2人には、私の計画について説明してあるので、勇は今、本部にはいない。修行の報酬として、この前後3日は、同期の者たちと休暇を与えている。

私たちの目標のために、彼を騙すのは些か気が引けたが、私たちは止まらない。そのために、彼に託せるものは、一つでも多く残そう。

 

 

 

~~sideマリア~~

 

私は今絶望している。大切な妹のセレナが、ネフィリムと向き合い、絶唱を使った。しかし奴が暴れた影響で施設が崩れはじめ、マムの指示で避難が始まった。慌ただしく逃げる研究者たちに、崩壊する建物。私はマムに引き摺られて連れ出された。離してよマム!まだあそこにはセレナがいるのよ!!!

暴れる私に別の研究者が、マムの指示で私に何かを注射した。

やめて!!まだあそこにはセレナがいるのよ!!誰か助けてよ!!!!

 

その思考を最後に私は意識を手放した。

 

~~マリアsideout~~

 




この時のサンジェルマンは、勇を含めた4人に対して
「提携先のトラブル対応に行く」と伝えて出発しています。事情を知っているプレラーティとカリオストロは、セレナを連れて来ることが判明した時点で、セレナと勇が接触しないよう協力しています。
その理由を後程、必ず明かすとここに誓います。



いつも読んでくださり、ありがとうございます。
お気に入り・評価・感想ありがとうございます。


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修行の成果と提案

少し余裕ができたので、
今日から二日間、一日二話ずつの合計四話投稿します。

お気に入り登録100件突破に感動してます。
皆様ありがとうございます、

それでは、本編をどうぞ。


あれからまたさらに1年半が過ぎた。つまり僕が結社に身を寄せて5年が経過していた。

師匠たちのおかげで僕自身、精神面で大きく成長できた。おそらく前世の時よりも、今の方が達観してるとさえ感じてしまう。

練金術の訓練を重ね、師匠たちからの課題をこなし続けられたのは、僕自身の成長というよりも、常に励まし・叱り・誉め・教え続けてもらえたからなのだから。

その甲斐があって、師匠の得意技の一つである、

〈ミリアドスフィア〉を、キューブ体で構成することができた。そして、「今の君ならば、その技は実戦レベルで使えるだろう。誇ると良い」と言ってもらえた。

更に、僕の技を〈ミリアドキューブ〉と、自身の技名を捩ってまでつけてくれたのだ。

師匠からその言葉を聞いた時、僕は涙が溢れて止まらなかった。人に認められることがこんなにうれしいのはいつ以来だろう。ここまで頑張ってきて良かった。

 

そんな今だからこそ、師匠たちから告げれた提案は、僕にはとても衝撃的なものだった。

 

「少し良いかしら勇?結社の、そして今後のわたしたちに関することで大事な話があるわ」

 

「今後に関わる大事な話ですか?」

 

なんだろう。師匠のあの覚悟を決めたような・悲しみを抱いたような目は。

あんな顔の師匠は見たことがない。

そして僕は同時に、とても重要な何かを見落とし続けている気もしていた。

 

「ええ。でもその前に勇にも確認しなければならないことがあるわ」

 

そして師匠は続けてた。

 

「勇は、この組織の中で今どんなポジションにいるか理解しているかしら?」

 

驚いた。質問の内容からして、今の僕の立場を、僕自身がどう思っているかを、師匠は聞いてきたのだ。

確かに考えたことはなかった。嘗ての同期よりもいっそう厳しい指導を受けていた僕は、皆よりも実力が突出し始めるにつれ、距離を置かれるような気がしていた。

「アイツは俺たちと住む世界が違う」と恐れられていた。

 

「師匠たち直属の隠れた第4の幹部。悪い意味で陰ではそう呼ばれている。そう思います」

 

これが僕の正直な気持ちだ。劣り過ぎた人間や、突出した力を持つ人間は他者から疎まれる。僕自身は、努力の成果と感じていても、周りは納得しないことなどがあるのが組織なんだから。

 

「その通りよ勇。だからこそ、わたしたちは勇に伝えたい、ことがあるの」

 

空気が変わった。一体どんな言葉を続けるんですか?

 

「プレラーティに頼んでいた、ある提携先の錬金術師のもとに、あなたに常駐してもらいたいの」

 

提携先への常駐か確かにな。

結社側は相手への恩売りと、ある意味での厄介払いができる。

相手は、優れた練金術師を確保できる。

双方のメリットはとれてるな。なら僕はその期待に応えたい。

 

「わかりました。あとで資料を頂けますか?」

 

「その必要はないわ。常駐先は〈チフォージュ・シャトー〉で、相手の名前は、〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉あなたのよく知る人物でしょう?」

 

その名前を聞いた時、僕は頭が真っ白になり、

 

「出発は1ヶ月後よ。よろしくね」

 

師匠の最後の言葉が聞こえなかった。




本日も、昨日と同様に0時に投稿します。

評価・感想・お気に入り登録を是非お願いします。



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告白と覚悟

本日の二話目です。

前話は20時に投稿済みなので、まだの方は是非そちらからお願いします。

通算UAが10000を突破しました。皆様有難うございます。


師匠から提案をうけた翌日もまだ僕の頭は混乱していた。それ故に、以前隠していた〈天使〉の本当の能力を師匠たちに打ち明けてしまった。5年前の当時の僕は、

〈メタトロン〉〈カマエル〉〈サンダルフォン〉は攻撃能力のみしか扱えなかったこと。

〈ザフキエル〉は「時喰みの城」以外使えない。

〈ミカエル〉と〈ラファエル〉は移動能力のみ。

〈ラジエル〉はインターネットより少し詳細、且つ限定的な範囲のことしかわからないこと。

〈ザドキエル〉と〈ハニエル〉〈ガヴリエル〉〈ケルビエル〉は、ほぼ使えなかったこと。

そのうえ〈アイン〉からは、力を感じれなかったこと。

にも関わらず、あたかも使えるように話したということ。

そしてそれを悟らせない為に本気で練金術を学ぼうとしていたこと。

その全てを、僕は師匠に話した。きっと師匠は怒るだろう。それだけのことを僕はしていたのだ。

 

「………………………………はぁ。やっぱりね。…………………………(そうだと思ったわ)」

 

師匠がため息を吐き、小声で何かを呟いていた。やはり怒っているのだろう。当たり前だ。無いものをあるように騙していたのだから。

報いをうける時がきたんだ。

 

「勇………………私の前に立ちなさい」

 

覚悟は決めたんだ。どんな罰も受けよう。

 

「パァァァァァン!!!!!」

 

とても乾いた音が本部で響いた。そして数秒遅れて僕は右頬に痛みを感じた。更に遅れて自分に何が起きたかを理解した。

師匠は、僕にビンタをしたんだ。

そう理解する時、師匠は目に涙を浮かべていた。そして続けてこう言ってくれた。

 

「私は、カリオストロがはじめて勇を連れてきたとき、彼女の気まぐれだと考えていた。しかし、勇は私たちにとても大きな情報をくれたんだ。そして勇は、私たちに変わるきっかけを作ったを作ったんだ」

 

「でも、あの時の僕の話は、自分の保身のためでした」

 

「確かにその意味は大きかっただろう。だか、勇は相当な覚悟をもって伝えていた。だからこそ私たちは、君を保護した時、私たちの力と知識を託せると確信したよ」

 

そんなに前から僕のことを認めてくれてたんだ。なら、練金術以外の修行は、僕がここを離れても生きていけるようにするためだったんだ。しかも、それを悟らせないように敢えて厳しくしていたんだ。師匠は本当に優しい人だ。

 

「それに私たちはね、勇がまだ未熟で、自分の能力を使いこなせていなかったことは一目でわかっていたのよ?」

 

気付かれてたんだ。自分ではボロを出したつもりはなかったんだけど。

 

「簡単なことよ。高度な知覚能力を持つ錬金術師は、相手の気配を読み取ることができるのよ。勇の場合は〈霊力〉が漏れていたわ。おそらく無意識でね。覚醒してから勇はほとんど余裕がなかったからじゃないかしら?」

 

言われれば言われる程、師匠の言葉の重みが優しさの裏返しだったんだと、今になってようやく気付くことができた。

だから練金術の修行は、他の同期より厳しくされてたんだ。だから差が開きはじめ、隣に立つ人がいなくなってたんだ。一刻も早く進めるために周りに隠してまで。

 

「それと言い忘れてたのだけど、勇が言っていた〈天使〉の能力と〈霊力〉のことだが、嘗ての君が使えなかった理由だが、私たちには最初から心当たりがあったんだ」

 

僕は絶句した。僕自身がわからなかったのに、師匠はわかると言ったからだ。

 

「簡単なことさ。勇は最初に〈その場面を何とかしたい〉と願い、姉を逃がすための時間を稼ぐ覚悟をしていたからこそ、〈天使〉の力を引き出せたのさ」

 

さらに師匠は続けた。

 

「今の勇は迷っているだけだ。君自身が本当にしたいことがあるならば、君の力はいずれ応えてくれるはずさ。それを心配することは無い。それに感じられないと言っていた〈天使〉とは、きっとふさわしい場面でのみ使える力のことよ」

 

そう言って抱きしめてくれた師匠の身体は暖かかった。

ありがとうございます。師匠のおかげで自分が成すべきことがわかった気がします。




いつも閲覧・お気に入り・評価・感想をしてくださる方々本当にありがとうございます。

これからも、よろしくお願いします。


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説明

勇君がアホをしでかしたので、
彼が原作のとある時期に、散々な目をして後悔する未来が決定しました。
しかも自分のアドバンテージを失うことになります。


師匠に自分の内心を伝え、能力を晒すっていう大ポカをしでかしてからおよそ三週間が経過した。実はあのあと師匠たちから、要約すると「無闇に能力を晒すのは三流のする事よ。気をつけなさい」って別の説教をされた。

でも師匠たちは気付いてますか?無意識かもしれませんが僕にはわかりましたよ。

 

「子供を慈しむ母親の顔」をしていたってね。

 

以前の僕は恥ずかしくて、師匠を「お母さん」とは言えなかったが、あの日は嬉しくて、うっかりと言いそうになってしまった。というより、カリオストロさんがいなかったら絶対に言ってたな。

そんなことを考えていたら、僕はカリオストロさんに呼び出された。

 

「あーしがまとめた、日本の今の動向について報告するわ」

 

そうだった。原作知識の詳細に自信のなかった、ここにきた当時の僕は、日本の動向を調査してもらっていた。

修行時代に一度尋ねたことがあったが、カリオストロさんはこう言ってあしらわれてた。

 

「そうねえ。今の現状は一言で言うなら、

〈特に大きな変化がない〉もしくは、〈重要ではあるが、後に伝えても問題は無いこと〉しか起こっていなかったらしいわ。それよりも今は修行しなさい。貴方の成長を私たちは楽しみにしてるのよ ♥️」

 

そんな人が今、僕に伝えようとしているということは、僕に伝える時期が来たということだろう。だから僕は次の言葉を待った。

 

「まず、〈特異災害対策機動部二課〉長いから次からは、〈二課〉というわね。設立は2033年で、初代司令官に〈風鳴 訃堂〉が就任するも強硬的な姿勢や、聖遺物の〈イチイバル〉紛失を理由にわずか3年で引責したわ。

そしてその後任が翌年に〈風鳴 弦十郎〉になり、他者との連携や、協調を動きの軸にすえたわ。そしてその頃から、あらゆる部門に顔を出す研究者の、〈櫻井 了子〉の出入りが激しくなったわ。

彼女が今代の〈フィーネ〉で間違いなかったわね?」

 

やっぱり僕の原作知識は、穴があったな。今回は比較的まだ良かったんだけど、抜け落ちが怖いな。でもおおよそは大丈夫そうだな。

 

「その表情なら問題なさそうね、続けるわ。

そして現司令官の姪で非公式且つ秘密裏にノイズを倒していた〈風鳴 翼〉の相方として〈天羽 奏〉が現れたわ。そして2人は、〈ツヴァイウイング〉ってユニットを結成したわ。

 

以上が私たちが把握している今の日本の動向よ。貴方の希望通りの情報を手にいれるため、ここから一年半は特に情報精度向上のためにも、メンバーを何人かは日本にも派遣するわ」

 

そうか。もうそんな時期だったんだ。しかも、僕のために本来なら負わなくて済んだ仕事を増やしてしまったな。申し訳ない。

 

「も~う。そんな顔しなくても良いわ。派遣するのは、術師として悩んでた人たちが名乗りでてくれたし、

うまくすれば日本にも貸しをつくれるから問題ないわ。

そして今後の貴方への情報の通達は、プレラーティからも行われるわ。定期的な物資の搬入の際の報告と、事態の変化があった時は、彼女達はマメにしてくれるわ。最近少しキャロルといがみ合いをしているけどね」

 

ありがたい。ここからの詳細な流れを覚えてなかった僕とっては、その申し出は本当に助かります。




いつも閲覧いただきありがとうございます。

お気に入り登録・評価・感想してくださる方々ありがとうございます。


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出発 / 追憶

いつも閲覧いただき、ありがとうございます。
感想・お気に入り登録・評価を嬉しく思います。

前話に引き続き、本日も二話投稿します。

これからもよろしくお願いします。


カリオストロさんから説明を受けた日から一週間が経過し、僕はシャトーへ出発する事となった。正直にいうと、師匠たちにあった時と別の種類の緊張をしているのが自分でもよくわかった。そして僕は師匠に呼ばれた。

 

「勇!そろそろ来なさい。まったく、人を待たせるものではないわよ」

 

おっしゃった通りで耳が痛いです。

そして師匠は続けて言った。

 

「出発前に私からもあなたに伝えることがあるわ。

以前あなたが口にした〈天使〉の名前は、もちろんこの世界にも存在するわ。一部マイナーな名前で調べるのに苦労したものもあるわ。あなた自身がその伝承を理解すれば、より一層能力の精度が上がるはずよ。私がまとめた資料を持って行きなさい」

 

何故だろう。今の師匠の行動が、原作後期のマリアさんに見えるのは。僕の気のせいなんだろうか。

ああ、師匠たちと後の〈S.O.N.G〉が本当に手を取り合える世界にしたいな。

でも本当にありがたい。大切に読ませていただきます。

そう考えていると、また師匠に呼ばれた。

 

「資料はあとで読みなさい。キャロルはあなたの知っている通りに気難しいのだから、第一印象は大切なのよ‼️」

 

そうだった、早く行かないと。でも何気に僕は、はじめてなんだよな。ラスボスと対面するのは。

そんなことを考えているうちに転移の光が僕たちを包んだ。

 

~~sideキャロル~~

 

オレの名前はキャロル・マールス・ディーンハイム

他者からは、〈孤高の錬金術師〉と呼ばれている。

パパは自分の死に際にオレに向かって「世界を識るんだ‼️キャロル‼️」という言葉が最後の遺言だった。

自分たちはパパに命を救われてもらいながら、パパを火刑に処した村人が憎かった。磔にされて炎に包まれるパパを見ていられなかったし、一人ではなにもできない無力な小娘である己自身が一番憎かった。

家族がパパしかいないオレは、パパを失って孤独となった。

そしてオレは、パパの残した言葉に従い世界を識るために、パパの残した本や資料、そしてその材料や日々のための食料を可能な限りまとめて家を飛び出した。

あの連中はパパの遺産を狙っている。まだこの家は連中には見つかっていない。お前らなんぞにはなにも渡す気はない!!

 

そしてオレは、山へ入り、比較的安全な拠点の確保ために移動しながら、持ち出した食料が尽きるまで薬草を確保した。

そして離れた村に到着した際、確保した薬草を売って金を稼ぎ、その金を使った。そうして幾度も繰り返しながら、嘗てパパが所属していた組織の〈パヴァリア光明結社〉を目指した。

道中でオレを襲って来た者や、ナメた買い取り額を提示してきた連中は、パパが苦い顔をしながら教えてくれた、〈他者から想い出を吸いとる方法〉を使い、キッチリ〆た。そして組織に到着したオレは嘗てパパと関わりのあった〈アダム・ヴァイスハウプト〉を探して接触した。

 

そうして持って来た資料とオレの知識の引き換えに結社の知識を得ることができた。

そして今、オレの目的を達成するための手段である、

〈チフォージュ・シャトー〉の建設に至った。

協力するにあたって連中は、最終的には向こうの所有物であることを条件に、オレの優先使用権を認めた。

 

だが今回奴らは、

 

「私たちの弟子をあなたのもとへ常駐させたい。必ず役に立つし、錬金術の腕も保証する」

 

と伝えてきた。あまりに予想外だが、まあいい。そこまで貴様らがいうならどれ程のものか是非みたいものだ。

 

対面する時を楽しみにしよう。覚悟しろ、名も知らぬ者よ。




次回より新章に入ります。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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修行時代 チフォージュ・シャトー
彼女たちの誓い


活動報告通り、今話から新章が開幕します。

今回は、キャロルの視点で進みます。


それではどうぞ。


約束の日になりオレはどのような人物が来るか少し胸が踊った。長年一人だったオレは最近では、人形制作を行っていた。心の何処かで無意識のうちに孤独感があったのだろう。

そんな物思いに耽っていると、プレラーティはオレに対してこう抜かしたのだ

 

「勇の実力は練金術では結社で過ごした5年半で、私たち三人に次ぐレベルに至った。更にサンジェルマンによって身の周りの家事・知識・コミュニケーション能力・料理を叩き込まれた。今はまだ子供だが、いずれ成長すれば嫁の貰い手には困らんだろう………と太鼓判を押せるワケだ」

 

オレは「コイツは今何を言っていた?」と感じずにはいられなかった。そこまでの人材なら、組織としては手元に置きたいはずだ。なのに平然と世界を分解しようとする相手に、差し出すようなマネをなぜできるかわからなかった。少なくとも、サンジェルマンは母親のような存在になっていることは容易に想像がつくし、それに気付かん貴様らなワケがない。少なくともオレなら、組織内の重要なポジションから絶対に動かさん。

 

それ故に理解ができなかった。そうして客間で考えながら待っていると扉が開いた。もうそんな時間か。

 

「連れて来たワケだ」

「久しぶりねキャロル♥️」

「すまない。少し待たせたか?」

 

挨拶をすると三人揃って入って来た。わざわざ三人で来る以上奴らは本気で弟子をオレに託す気があるみたいだな。だが、疑惑が晴れん以上は確認しよう。

 

「前置きは不要だ。早く本題に入れ」

 

「では、言葉に甘えよう。まず、この会話が部屋の外に漏れないように遮音術式を展開するわ」

 

何?弟子には聞かせられん話でもするつもりか?

まあいい。こちらには不都合はないからな。

 

「了承と見て進めるわ。先に結論をいえば、私たちはきたる時に結社を解体するつもりでいる」

 

予想外の言葉が出てきたな。そして遮音したといいことは、弟子自身は知らんということか。

 

「まさか貴様は………」

 

オレの言葉が続く前に奴は話をつづけた。

 

「キャロル。貴女は平行世界を信じていたわね?」

 

いきなり何を言い出した?確かに俺は信じているがなんぞ関係があるとは思えんが。

 

「私たちが、彼から平行世界の結社の未来を聞いた時、普段の局長の考えや態度から、何もなければ同じ結末を迎えると理解した。故に彼の存在を局長から隠して、私と考えを同じとする者を、結社から引き離す決意をしたんだ」

 

馬鹿馬鹿しい。

オレはそう思うことができなかった。

あの男が胡散臭いことはオレも知っていたし、何よりコイツがこの手のウソをつかんことも知っていた。

何より、幹部がその言葉を放つ意味を知らんワケがなかったからだ。

 

「貴様の覚悟はよくわかった。良いだろう、受け入れてやる。それに、話しぶりからして時期とは4~5年はかかるのだろう。ならばシャトーの完成に影響はなく、お前らに賛同する者がそもそも多くないだろうしな」

 

「全て貴女の言葉通りよ。それまでは今までと何も変わらないわ。そして先に1つ誓って置こう。」

 

これからおそらく、オレの信念を知っているからこその言葉が出るのだろう。

 

「もし貴女が世界の分解を行う前に、私たちが結社を離れたならば貴女に対して一切の邪魔をしないと誓うわ」

 

「良いだろう。このキャロル・マールス・ディーンハイムは、貴様らの誓いが果たされる内は、貴様らの弟子を責任を持って鍛えあげることを約束しよう」

 

「ありがとうキャロル。術式を解除するわ。そして、この話は内密にしてもらえると助かるわ。」

 

奴はそういって遮音術式を解除し、扉の向こうの相手に声をかけた。そして扉が開き、1人の少年が中に入ってきてこう言ってきた。

 

「はじめまして、雪音 勇と言います。あなたがキャロル・マールス・ディーンハイム様ですね。これからよろしくお願いします」

 

そこには、まだ幼さの残る少年が立っていた。

 




キャロル的には、問題がないので、この組織大丈夫か?
状態ですが、今は世界分解ガールなので藪をつつきたいとは、思っていません。


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運命の出会い

勇君の視点がやっと帰ってきた。


僕は師匠に連れられてやってきたシャトーで、

ある部屋の前まできた。すると師匠たちは、

 

「少しだけ私たちとキャロルで大事な話がしたい。合図があるまで扉の前で待っていてくれ」

 

と伝えられた。そしてその言葉から現在20分が経過しようとしていた。あまりに暇だったので聞き耳を立てようとしたが聞こえなかった。少し調べると遮音結界と開閉制御が内側からされていることがわかった。

つまり今の師匠は、結社の今後の協力内容を話しているのだろう。それを弟子が意図せず破綻させる危険があるって判断されたんだね。

すみません師匠。想像通りやらかす可能性は高そうで、返す言葉もありません。

 

そんなことを考えていたら、扉のロックが外れ、師匠たちの声がきこえた。中に入り僕はすぐにここの主で、第3期ラスボスの人物に声をかけた。

 

「はじめまして。雪音 勇と言います。キャロル・マールス・ディーンハイムさんですね。よろしくお願いします」

 

師匠たちは立ち上がり、僕を見て笑っていた。

そしてこう続けたのだ。

 

「キャロル、あとのことを任せたわ。そして勇、貴方は頑張りなさい」

 

そういって師匠たちは、結社本部へ帰って行った。

 

「さて、奴らから聞いているはずだが、オレから敢えてもう一度言おう。貴様はオレの配下として働いてもらう。泣き言は聞かんからそのつもりでいるが良い」

 

ああ。この声、その鋭い目付き。それこそまさしく前世で僕がこの作品を見てシリーズで最も強い印象を受けた人物その人だ。

 

「フッ。なんだ?もう怖気付いたか?」

 

冗談。むしろ心は踊ってきましたよ?

 

「いいえ。貴女に会えたことを光栄に思いますし、是非お願いしたかったから起こった武者震いですよ?でも僕だって男ですからね。もしよろしければ、外に行きませんか?」

 

「ほぉ。このオレを前に提案をするか、面白い。自らの思い上がりを悔いてもオレは知らんぞ?」

 

さて、今の錬金術師としての自分が彼女相手に何処までやれるか試さずにはいられないね。

 

その思いを胸に秘めて、キャロルちゃんの作った魔方陣に入り、共に光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論からいうと

キャロルちゃん〈エンシェントバースト〉と互角に戦えた。とはいっても、戦闘の余波がヤバく、周囲一帯はクレーターだらけだった。うわぁ穴の底が見えんのですが………彼女のエネルギーを逸らした時良い音が響き渡っていたけど、手加減してこれなんだよね?

ダメだな。錬金術師としての格の違いがここまであると、想い出を焼却して戦ってたら練金術だと勝てないよね。

つまり僕の今の課題は、

・〈天使〉の力を完全に制御すること

・練金術の精度を向上させること

どちらかを選ばないといけない日がきっと来るんだろう。

でも、戦闘の最後のキャロルちゃん、本当に楽しそうに笑っていたな。




会話が聞かれてたら、やったー四期回避だーって浮かれかねない主人公なので、多分この行動が正解。

次回予告を今回よりはじめます。

次回〈伝えたい言葉を〉


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伝えたい言葉を

ファーストコンタクトの結果がコチラ

また、今日と明日は20時と24時に各一話投稿します。

そしてミナ・スカーレットさん。誤字報告ありがとうございました。


あの戦闘からようやく一週間がたった。

戦闘が終わる時、キャロルちゃんはこう言っていた。

 

「おい勇!貴様中々良い腕だった。奴等が話にあげた通りの実力を見たとき、久しぶりにオレも胸が昂ったさ」

 

なんとキャロルちゃんは僕の実力を評価してくれていた。現在制作中のオートスコアラーの、戦闘データの参考にするらしい。そういえば原作でも、彼女達4人の実力は、ファウストローブ無しの師匠達と互角だった描写がゲームでもあった気がする。

そんなことを考えていると、キャロルからの提案は、僕の予想外のものだった。

 

「おい勇!貴様料理がうまいそうじゃないか?ちょうど良い。オレのためにメシを作れ。そしてオレのことはマスターと呼べ!」

 

マジか。絶対に情報の出所はプレラーティさんだな。多分あの人のことだから孤独なマスターに対して弟子でマウンティングしようとしたな。あの陰キャロリメガネ様ぜってーいつか見返す。

 

「フン。貴様には無理なワケだ」

 

幻聴が聞こえたきがしたが、きっと気のせいだ。

でも、マスターの機嫌を損ねるのはまずいな。

早めに取りかかろう。

でもあれ?食料庫ってどこにあるんだっけ?

 

 

~~sideエルフナイン~~

 

シャトーの完成を指示された僕たちホムンクルスは、言われた作業を黙々としていたが、見た目が僕たちとそう変わらない年代の少年がいて、なにかを探して迷っているきがした。少し怪しかったけど、僕は声をかけることにした。

 

「すみません。貴方は一体ここで何を探しているんですか?」

 

少年は少し慌てた様子で答えてきました。

 

「えーっと、食料庫って何処ですか?」

 

えっ???なんと彼は食料庫を探していました。僕たちホムンクルスには、食事は不要なんですが、一体何故さがしているんだろう???

事情はわからなかったけど、僕は場所を伝えることにした。

 

「えーっと、この先の通路を左に曲がるとある小部屋がそうですよ?」

 

「そうですか。ありがとうございます。僕は雪音 勇といってパヴァリア光明結社から派遣された錬金術師です。よろしくお願いします。貴女のお名前はありますか?」

 

なんと彼がキャロルの言っていた、噂の新しい錬金術師でした。もう少し年上の人だって思っていたので、僕は気付けませんでした。人は見かけによりませんね。

 

「僕はエルフナインです。キャロルからシャトーの建設の指示をされた、ホムンクルスの一人です。」

 

すると彼は、こう言ってくれました。

 

「ありがとう、エルフナインさん。キャロルのホムンクルスってだけあって、貴女も声が綺麗ですね」

 

彼はそういって僕を誉めてくれました。

何故だろう。はじめて言われたからなのか、僕の不思議と胸は何故かぽかぽかしました。

 

~~エルフナインsideout~~

 

 

 

さて、偶然エルフナインと会えた僕は急いで食料庫に向かった。そしてたどり着いたとき、そこには穀物と野菜がいくらかあるだけだった。マスターは食事にだらしなかったんだな。でも、これだけの材料があるなら、今回は何とかなりそうだ。それに、師匠からも美味しいと言わせたあの料理なら、マスターの舌を唸らせることができるはずだ。そう考えながら僕はマスターのもとへ向かった。




現在のキャロルは典型的なツンデレ

次は24時に更新します。

次回〈想い出〉

この後もよろしくお願いいたします。



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想い出

前話は20時に投稿していますので、
まだの方はそちらからお願いいたします。


あのあと、無事にキッチンを見つけ、調理に取りかかることができた。その料理は、僕が前世の頃にはじめて一人作ったシチューにした。僕自身の想い出の味だった。

本当なら、原作三期の回想でマスターがパパに振る舞ったあの料理を作りたかった。でも、人が振る舞った最初の料理っていうのは一番の想い出に残る料理にしたいなも、僕自身の紛れもない本音だった。

 

「マスタァーー食事が完成したのできてくださーい」

 

今はまだいないガリィの声マネをしてマスターの端末にコールをかけた。

 

少し遅れてやってきたマスターは心なしか、少し顔が赤かったきがした。ホムンクルスも、風邪を引くことってあるのかな?時期的には秋も終わり、冬が近づくので、人間の僕には、厳しい寒さなんだけどね。

錬金術師が風邪予防できないなんて師匠にばれたらぜってーしばかれる。

 

「ああ。話通りの良い匂いだ。冷めぬ内にいただくとしよう」

 

マスターがそう言っていたので、僕も食べることにした。

でもなんでだろうな。マスターが少し素直なような………多分気まぐれだよね。もしくは、僕の気のせいで純粋に食事は好きなのかな?

あっそうだ。後で建設現場のみんなにも食べて貰おう。きっと喜んでくれるはずだから。

 

「いつかマスターの好きな料理を教えてください。僕が作りますよ?」

 

「フン。いつか気が向いたら教えてやる」

 

マスターはそういって、空になった食器を片付けていた。

マスター、お腹がよっぽどへっとんだね。すぐに食べ終わってたから。

 

 

~~sideキャロル~~

 

一週間前、結社から来たあの男をオレは少し侮っていた。

手合わせ申し込みをして来たので、自信をへし折ってやろうと戦ってたら思いの外やりあえた。

結社の骨のある奴等に少し及ばん程度だったが、活動用の躯体では本気が出せぬとはいえ、楽しい戦闘となった。クレーターまみれにした状況からも、オレが昂って尚食い下がるその実力は本物だった。

そう、オレは少なからずヤツの実力を認めていた。みがけば光る原石として。

そして久しぶりに腹が減ったオレは、メシを作る用に命じた。

しかしオレは迂闊にも、ヤツに食料庫の場所を伝え忘れていた。しかしヤツは幸運にも、エルフナインと会えたことで事なきをえた。

だが、ヤツは別れ際にとんでもないことを言ってのけた。

 

「キャロルのホムンクルスなだけあって、貴女の声も綺麗ですね」

 

等と抜かしやがった。つまりそれはオレの声が綺麗ということ……………か?だが他人に褒められるのは……………(悪い気分ではないな。だが、いざヤツに食事へ呼ばれた時、何故かオレはヤツの顔を直視出来なかった。

そしてしまいには、

 

「いつかマスターの好きな料理を教えてください。僕が作りますよ?」

 

ヤツがそう抜かすのでオレはこうつたえた。

 

「フン。いつか気が向いたら教えてやる」

 

そう返すのが精一杯で、オレは逃げるように急いで食器を片付けた。

 

~~キャロルsideout~~




胃袋を掴むのはラブコメの定石。


明日も二話更新します。よろしくお願いします。


次回〈運命の分岐点/2041年〉



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運命の分岐点 / 2041年

時系列が難しかったので、今回も独自解釈が多めになっています。

俗にいう、原作二年前の話です。


マスターと出会ってから、2年がたち、ここでの生活に僕はようやく慣れてきた。

オートスコアラーの制作は、後は対応する聖遺物と、相応量の〈想い出〉が必要なだけらしい。あれ?準備早くない?それも絶対に師匠達からの提供待ちだよね。

そして疑似人格にマスターの深層意識を基にしたものを用いるらしい。僕も制作に関わろうとしたら、シャトーの建設に追い出されてしまった。

その所為か、はたまたた僕が協力している所為か、原作よりも高い完成度を誇っている気がする。あれ?コレ三期の難易度を、知らずに上げたか?もしそうなら、かなりまずいのでは?どーしよシンフォギア装者勝てるのかな。

そして去年の2041年、カリオストロさんがシャトーに合わせて二回訪れ、僕は二つの情報を聞かされた。

 

①クリス姉さんが国連のスタッフに連れられて1月の半ばに帰国できたが、すぐに行方不明になったこと。そして日本では多数の捜査員をだしたが、1人を除いて帰らぬ人になったこと。

あっこの人が〈OTONA〉として有名な風鳴司令官じゃん。生き様と性格は本当に尊敬できる人なんだよな。

 

②天羽 奏さんと 風鳴 翼さんのユニットコンサートが、10月頭に開催されたこと。その時日本政府は、

完全聖遺物である、〈ネフシュタンの鎧〉の起動実験を裏で行っていたこと。

そしてライブ中に人類の天敵である〈ノイズ〉が襲撃してきて、死者が一万人超えたこと。

そして〈特異災害対策機動部二課〉通称「特機部二」も、戦力の一人である天羽さんの槍が折れ、尚現れるノイズに対して、〈絶唱〉という自爆技を使って会場のノイズ諸共帰らぬ人となったこと。

あーー、だからライブがこの時期だったのね。

クリス姉さんは原作の一期で、

 

「あたしは、〈ソロモンの杖〉の起動に半年かかった」

 

って言っていたからなー。多分最初の姉さんは、反抗期そのものだって感じだったし、フィーネが姉さんの調教に要した時間は、2ヶ月弱ってところか。ぜってーフィーネ許さん。泣かす。姉さんを散々泣かせたんだ。この借りはきっちりと、耳を揃えて返させて貰おう。女性に暴力を振る舞った奴は例え相手が女性でもぜってー許さん。

 

そんなことを考えていると、カリオストロさんは、

僕にこうからかってきたのだ。

 

「ふふっ。勇はキャロルとうまくやれているようね。貴方はきっと、多くの女性にモテるわよ。背中に気をつけなさい。なんたって元男のあーしから見ても、素敵な男性に映っているわよ」って。

 

マジですか。周りがあれな環境過ぎて気付かんかった。

ってそうじゃないな。

 

「余計なお世話ですよ。からかうの本当に止めてください」って伝えたのにながされた。

 

しかし後にこの言葉が冗談にならないことになるなんて、この時の僕は気付いていなかった。




お気に入り登録・評価・感想ありがとうございます。

閲覧していただいてる方々、本当にありがとうございます。

次回〈譲れないモノ〉

次回もよろしくお願いいたします。


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譲れないモノ

とうとう勇君が言いたいことをいってしまった。

その結果………


「勇………貴様は今、誰が何を履き違えていると言ったか???それにオレがパパの言葉が理解できていないクソガキだと?」

 

さらにマスターは続けた。

 

「今ならそのふざけた妄言を聞き流して、訂正の機会をくれてやる。さあもう一度言ってみろ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マスターがこう言っていた経緯は30分前までさかのぼる必要がある。ことの発端をふりかえろう。

 

~~30分前~~

 

「ところでだが勇。平行世界で、オレとお前の関係はどうなっていたのだ?キリキリ答えるが良い」

 

ヤバい。マスターがとうとう、この話題を持ち出してきた。今までの僕は、原作世界ありきの情報を語ることで、関係を構築してきたから、原作ないしは、アプリのXDUにあることしかわからない。しかも俗にいうログイン勢だった所為か余計に穴が多いんだよな。

でも、こちとら前世でのマスターのキャラまでは把握しているんだ。そしてマスターは少なくとも、僕のことを憎からず思っていることまでは、この2年で理解することができた。…………もしマスターが原作通りの道をたどる気なら、僕はマスターに思い出して貰う必要があるな……………………

ごめんなさいマスター。僕は貴女にきっと残酷な真実を伝えるでしょう。

 

「平行世界のマスターは、マスターのパパの遺言の意味を履き違えてました。そのせいでマスターが自身を否定して〈世界を識る〉という名の復讐をしていました」

 

ここまでは原作の情報で、僕のことは記されていない。

だからこそ、アレンジだ。上手く伝わってくれよ、マスター。

 

「もちろん僕は最後まで説得しました。しかし、限界に達したマスターは止められませんでした。そして僕は、自身が守りたい者を守るために、行動を起こす前のマスターを殺害し、予備躯体とシャトーを破壊しました。こじらせて親の言葉を理解出来ない馬鹿ガキにつける薬はありませんから」

 

マスター自分をどうか見つめ直してください。

 

「勇………貴様は今、誰が何を履き違えていると言ったか???それにオレがパパの言葉を理解できていないクソガキだと?

 

さらにマスターは続けた

 

「今ならそのふざけた妄言を聞き流して、訂正の機会をくれてやる。さあ!もう一度言ってみろ!!!」

 

どうやら僕の言葉は届かなかったみたいだ。

 

「なら、もう一度言いますよ。キャロル・マールス・ディーンハイムさん。貴女のことですよ?」

 

「父親のイザーク・マールス・ディーンハイムの最後の言葉を履き違えた憐れなクソガキとは!!」

 

もう伝えることは全部伝えた。コレ以上言ってわからないなら………

 

「良いだろう勇。30分後にこのジェムで転移した場所に来い。オレたちの関係を身体に教えてやる。2年前のような情けがあると思わんことだ」

 

そう言ってマスターは僕にポイント登録斁済みのジェムを投げ渡した。




明日は〈チフォージュ・シャトー編〉で最大の戦いが始まります。

明日をお楽しみにしてください。

次回〈覚醒の兆し〉


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覚醒の兆し

〈チフォージュ・シャトー〉編最大の戦いが始まります。

また、本日の投稿は三話となります。

そして、この話の投稿に合わせてタグを変化させます。


マスターが僕に与えた30分の猶予で、マスターの目的を考えた。

 

①立場の再教育

マスターにとっての僕はおそらく、主人とそれに仕える貴重で有能な部下みたいな認識だ。その関係が壊れることが耐えられなかったかも知れない。

 

②自分自身の心の整理

僕から聞いた話を、自分が受け入れる落としどころを、きっと考えているのだろうな。

 

③戦闘躯体の準備

本命。ぼくを潰すために絶対に持って来る

 

④シャトーの安全確保

絶対に影響がない場所に心辺りがあるんだろうな。

 

でもマスターはまだ少し油断している。準備ができるのは貴女だけじゃないんだ。僕が貴女を侮ることは絶対にない。最初から全力でいけば、一撃を与えられる。そして意識を刈り取る。

 

「考えていると時間が過ぎるのははやいな。もうタイムリミットみたいだね」

 

そして僕はジェムを投げた。

 

~~転移後~~

 

「ふん。逃げずに来たことは認めよう。しかしオレにも油断はない。貴様に勝機は無いぞ!勇!」

 

アレは〈ラフィス・フィロソカス〉のファウストローブ……ってマジか。まずいな。完全上位互換か。ならやっぱり奇襲しか選択肢はないな。

 

「ええ。話の通じないクソガキのお仕置きの時間ですよ?」

 

僕がマスターを煽ると、すぐに特大の炎が飛んできた。

そしてその攻撃で起こる煙幕に乗じて背後に移動し、僕の最大火力を叩きつけようと接近した時、僕の脚は氷ついた。

 

「やはり思った通りか!

〈敵を煽り、攻撃に乗じて背後から叩く〉

そんな定石がオレに通じるワケがなかろう」

 

やられた。マスターは僕の思考を読んでいたんだ。

万事休すか。凍りついた脚の所為で動けない僕を、マスターは風の刃で切り刻み、火球で僕を包み、地面に叩きつけた。

 

「ふん。やはりこんなモノか。しかし、オレは貴様の能力を評価している。今回の罰に貴様の思い出を回収することで手打ちとしてやる」

 

マスターはそう言い、僕の背中を土壁に押して、

〈口つけ〉をしてきた。僕がマスターの顔をみると、今にも泣きそうな顔をしていた。

 

「違う。僕がみたかったマスターの顔は、花のような笑顔をして食事をするマスターの顔だ…………僕はマスターを救うまで諦めない!!」

 

すると、自分の胸から、

〈白〉〈灰〉〈黒〉〈青〉〈赤〉

〈黄〉〈緑〉〈橙〉〈藍〉〈紫〉の10色の光が現れ、

僕を取り囲むように周りはじめる、。そして僕の体を包んだ。

 

「クッなんだこの光は!?」

 

マスターのその言葉を最後に僕の意識がひっぱられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやらここは、〈霊結晶〉が作り出した空間みたいだ。そして僕を囲むように立っていたのは、かつて天使を使った、〈精霊〉と呼ばれた人たちだった。

 

そして〈琴里さん〉は、僕に対してこう告げた。

 

「今から貴方は、私たちがする質問に正直に答えなさい」

 

なるほど。これが僕の試練ってことですね。

いつでもどうぞ。

 

〈あなたは彼女を救いたい?〉

 

あたり前ですよ折紙さん。

 

〈その道のりはとても険しいよ?〉

 

そのための覚悟は、済ませてきましたよ二亜さん。

 

〈見たくない一面を、見ることになりますわよ?〉

 

僕はその一面すら、愛してみせますよ狂三さん。

 

〈恐いことが、たくさんありますよ?〉

 

恐いことこそ、相手と乗り超えるんですよ四糸乃さん。

 

〈貴方は行動の責任をとれるのかしら?〉

 

できるじゃなくて、やるんですよ琴里さん。

 

〈要らぬ苦労をするかも知れぬぞ?〉

 

僕はそんなこと、気にしませんよ六喰さん。

 

〈内心では、何とでも言えるのよ?〉

 

矛盾があるから、人間だと言えませんか?七罪さん。

 

〈ククッ逃げ場はないぞ?わが眷属〉

 

僕の信念に撤退は、あり得ませんよ耶倶矢さん。

 

〈勝算。 あるんですか?〉

 

自分の行動に、数字は不要ですよ夕弦さん。

 

〈あの娘、良い顔つきしてますねぇ?〉

 

貴女らしいですね美九さん。

 

〈難しいことはわからんが、とにかく動け!〉

 

わかりました!十香さん。

 

十香さんの質問が終わった時、

琴里さんは僕にこう告げた。

 

〈合格よ雪音勇くん。

さあ、私たちの力を使いなさい〉

 

皆さん。ありがとうございます。

この力で、彼女を救ってきます。

 

 

 

 

 

 

「マスター!喧嘩はまだ終わってないですよ!何故なら!!まだ僕は貴女を救うつもりなんだから!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識をとりもどした僕は、そうマスターに告げた。

 

そして10色の光が形を変えながら、僕を包み

〈頭〉〈首〉〈胸〉〈腰〉〈腹〉

〈左腕〉〈右腕〉〈背中〉〈左足〉〈右足〉

へと集まり、10色の装飾を形成した。

どうやら、僕の〈天使〉は、全て集まることで礼装を構築するようだ。今後は〈収束礼装〉と名付けよう。

 

「なんだ………その光は!?」

 

「この光は、僕が貴女を救うために束ねた〈想いの光〉です。マスター!」

 

 

今なら天使の使い方がわかる。

今回の僕の目的は、マスターの思いを吐き出させて、その上でイザークさんの真意を伝えることだ。

だからこそ、マスターをもう一度煽る。

 

「今のマスターを見たら、イザークさんはきっと泣くさ!どうして自分の言葉が伝わらなかったのか?ってな!」

 

「まだ言うか!!もうその話は聞き飽きたぞ!!!」

 

「僕は何度でもマスターがわかるまで言うさ!!!」

 

そうです。マスター!もっと怒りをぶつけてください。

 

「クソッ忌々しい。俺の前から消えろ!!」

 

僕へ向かってマスターは、アプリ版で見たマスターの四元素の波状エネルギーを放射してきた。でも今の僕なら!

 

「はああー」

 

〈ザドキエル〉の力で壁を作って防ぎ。

 

「うらあぁぁー」

 

〈メタトロン〉の光と〈カマエル〉の砲撃でマスターを追撃し、

 

「まだまだぁぁー」

 

〈ラファエル〉の風加速強化した〈ザフキエル〉の銃弾をマスターに撃ち込み関節を撃ち抜いた。

 

「ガアアアアァァッッッ」

 

どうやら今度は効いているようだ。だけど、まだあの目には闘志がある。

 

「来いよマスター。最後の一滴まで絞ってきやがれぇぇぇっっっ!!!」

 

「オレは殺す!奇跡を殺す!!勇!!!邪魔をするならお前も殺す!これがオレの錬金術だぁぁーーーーーーーー!!!

消えろーーーーー!!!!」

 

マスター最大の錬金術〈エレメンタル・ユニオン〉に対して、僕も全力で応戦した。

 

 

「〈サンダルフォン〉!!〈ハニエル〉!!」

 

僕の放った斬擊と、マスターの放ったエネルギーが戦場を覆う瞬間、僕は〈ラジエル〉を左手に展開しつつ、マスターへ駆け出して、

 

「この親不孝のクソガキがアアアア」

 

そう言って全力で右手で顔をぶん殴った。

 

「ガアッ」

 

3メートルは殴りとばした。しかしマスターは立ち上がってきて食い下がろうとしてきた。

 

「まだだ。オレは何も果たしていない!!まだ倒れるわけには!いかんのだ!!!」

 

しかしマスターの足にもはや立ち上がる力はなかった。

そして僕は9つ目の天使を呼び出した

 

「〈ミカエル〉!マスターの閉ざした心を解放しろぉぉ」

 

そして僕はマスターの心の鍵を開けた。

すると僕たちはマスターの記憶を見た。

 

 

 

 

 

 

「ふん。これが世界を壊そうとした、憐れな村娘の末路さ」

 

自嘲した声をあげるマスターを僕は抱きしめ、

〈ガヴリエル〉の歌を届けた。

そしてマスターに、僕の想いを伝えた。

 

「良いんですよマスター。人間誰しも、間違うことはありますよ。なんてない、あたり前のことです。

それに、もし1人でわからないならば、僕はマスターに寄り添い、いっしょに考えます。もっと頼ってください」

 

マスターの顔は胸を貸している僕の位置からでは見えないが、彼女はもう大丈夫だろう。あとは涙を流すだけだ。

 

「ああ。ゆう。ゆう。うわぁぁーーーーーん」

 

この後しばらく泣き崩れたマスターが、僕にずっとすがりついていた。

 

 




もう少しこの章が続きますが、皆様お付き合いください。

いつも閲覧・お気に入り・評価・感想をくださる方々。
本当にありがとうございます。


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溢れた想い

心の鍵が開けられたキャロルのお話です。

それではどうぞ。

タグを変更しました。


僕がマスターとケンカして二週間がたち、気がつけば関係に変化が起きていた。

例えば、僕が「マスター」と呼ぶと怒るようになった。これからは、「オレのことはキャロルと呼べ」とのことらしい。流石に唐突過ぎる。

そして、キャロルが僕との外出を、ねだるようになった。曰く、「もう一度世界を見定める」つもりらしい。

でも、僕たちの見た目年齢は15歳くらいの姉弟なんだよね。僕にお姉ちゃんはいるんだけどなー。

 

でも今は何かが違う気がする。

 

「なあ勇、あそこの店にジェラートがあるな。さあ、はやく買いにいくぞ♥️」

 

うわぁぁーちょっと、引っ張らないで。ちゃんと行くから、服を伸ばさないでー。

 

「ああ。やはり甘い物は旨いな♥️。そらっお前も食えっ♪」

 

冷たい!?ちょっと、いきなり口に入れるのやめて欲しい。

でも、ジェラートは美味しいな。

ってキャロル?今しれっと間接キスさせた?

しかも、うっとりしながら食べてやがる。もういいや。溶けて服汚れても知らないよ。洗濯も大変なんだから。

 

「ああ、旨かった♥️そら勇!次に行くぞ♥️今日はあと服屋を三件♥️そしてマーケットに行くぞ♥️♥️」

 

わかった。わかりましたから、引っ張らないで?こっちは地味に痛いんだけど!?

でもキャロルの顔ってあんなに赤かったかな?

 

そんなことを考えつつ、僕は1日中彼女に連れ回された。

 

 

 

~~sideキャロル~~

 

勇とオレがケンカして二週間が経過した。

あの日以降、オレの胸はかつてない程、昂っていた。

今では、勇に「マスター」と呼ばれると、何故か心がモヤモヤした。なので「キャロル」と呼ばせよう、何故か心地が良いからな。

そしてオレは、カリオストロがわざと置いていったと思われる本をよんだ。

そしてそこには、年頃の男女の逢引を、

今では「デート」と言うこと。

そして、そのシチュエーションが、いくつも載っていた。その一つに、

 

年頃の男女が同じ物を食べるのを、今では「シェア」と言うらしい。面白い。

 

そうしてオレは、店に勇を引き連れることにした。

 

「なあ勇、あそこの店にジェラートがあるな。はやく買いにいくぞ♥️」

 

そして買えたオレはジェラートを食べた。

 

「ああ。やはり甘い物は旨いな。そらっ♪」

 

オレはやつに間接キスさせることができた。だが、何故かこのジェラートは、さっきよりも旨く感じたな♥️♥️

 

「ああ、旨かった♥️そら勇!次に行くぞ♥️今日はあと服屋を三件♥️そしてマーケットに行くぞ♥️♥️」

 

ああ……勇。お前はオレのモノだ。もはやオレはお前無しではもう生きられん。この責任は、必ず取って貰うからな。どれ、まずは手始めに子を成すか?




これはまさに愛憎反転のヤンデレ。

勇君………手を打たないと世界の危機がまた来るよ。


本日は12時時にまた投稿します。
お楽しみにしていてください。

次回〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉


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閑話 キャロル・マールス・ディーンハイム

前話の更新は、本日12時に行っていますので、まだの方はそちらからお願いします。

それでは本編をどうぞ。


オレは今、パヴァリアの連中と取引をしている。

 

「さて、今回の取引は、〈覚醒した勇の情報〉と聖遺物〈グレイブニルの鎖〉をオレは貴様らに提供し、貴様らは〈勇の本来のプロフィール〉と〈自動人形〉触媒用聖遺物四種をオレに提供する。この取引に異存はあるか?」

 

「いいえ、問題ないわ。でも意外ね。貴女が勇のプロフィールを要求するなんて」

 

そう。オレは連中に、〈かねてより要求していた聖遺物〉だけではなく勇のプロフィールを要求した。当然だろう。オレの伴侶だ。邪魔者は一人残さず吊るさねばならん。絶対に誰にも渡さん。

 

「無駄口叩いてオレの貴重な時間を奪うくらいなら帰れ!そして特に貴様は二度と来るな!」

 

さらに続けてオレは言っておいた。

 

「その無駄に大きな脂肪で勇を惑わせたら!俺は貴様を殺す!」

 

そして世界を分解して死んでやる。

 

「こっわっ。キャロル、今日の貴女いつにもまして物騒よ?一体何があったというの?」

 

仕方ない。奴の怯えた顔に免じて教えてやるか。

 

「俺はしばらく前に勇と戦い、ファウストローブが、使用不可能な程戦い、その果てに勇はオレを、どうあるべきかを説いた。そして既に動かさていたオレの心は、反射的に拒絶したが、勇はそれすら受け入れ愛すると言った。世界への憎しみを奴は全て受け止めたのさ。オレは身体が動かなくなる程吐き出したのにな。そうなればあとは時間の問題だ。オレが満身創痍になるまでぶつけて尚、勇は笑って受け止めた。オレはわからなくなっていた。これからの目標を失い、絶望を味わったとき、勇はオレにあらたな夢を2人で見つけようと伝えたのだ。嗚呼なんと眩しいことだ。さながら俺の太陽だ。奴のいない世界に光は差さん。それこそ色のない世界だ。そんな世界でオレは生きることなど耐えられるものではない。逆にいえば勇さえいれば世界がどうなろうとオレの知ったことではない。オレのことを狂ったと思うならそうだろう。オレにとっては勇が世界で世界は勇だ。オレから世界を奪う狼藉者はコロス。絶対にコロス。なんとしてでも取り戻す。邪魔する者もコロス。妬む者もコロス。嗚呼愛しいな。勇。オレははやくお前に会いたい。勇に会いたい。勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇に会いたい勇を失いたくない勇に会いたい勇に会いたいはやく会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい」

 

「もうわかったわ。わかったからやめてください。お願いします」

 

なんだもう終いか。まだ愛の一分も語っていないのに情けない奴だ。だが、時間の無駄というのは、同感だ。

はやくかえってプロフィールを一万回は見ないとな♪

 

「わかったわ。キャロル、貴女の気持ちはよくわかったわ。だからお願い。その資料を見た時に世界をコロス何て言わないでね?」

 

なんだ?そんなにまずい者でもいるのか?

 

「なんだ?オレが横恋慕されるのが不安か?安心しろ。過去の女なんぞ意味はなかろう?作るべきは今なのだからな!」

 

「私にはもう、今の貴女がわからないわ。はやく帰らせて貰うわね」

 

奴はそう言い帰っていった。さて、オレも資料を拝見しよう。

 

~~資料閲覧中~~

 

なるほど。「立花響」「小日向未来」が結婚の約束をした………と。ほう?いい度胸だ。出会うことがあれば、オレ自ら格の違いをみせてやろう。

 

そして姉の「雪音クリス」は、態度次第では半殺しで許してやる。オレは寛大だからな?




このタイプのヤンデレの思考パターンが一番怖いと思うタク-fです。

次回〈整理〉

日々閲覧してくださる皆様。ありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。


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整理

本日は三話投稿してます。

前話は昼の12時に投稿してます。

それでは本編をどうぞ


2043年1月

僕は今、困っている。

 

「はじめまして旦那様」

「よろしくおねがいしますよ旦那サマ」

「派手に祝福いたしますか?」

「カッコ良いんダゾ旦那さま」

 

オートスコアラーが起動しているのはわかった。

上から〈ファラ〉〈ガリィ〉〈レイア〉〈ミカ〉だね。

何をエネルギーに動いているかも、検討はつく。

だけどね。誰か教えて。

〈旦那様〉ってどういうこと?

 

「ねえ誰かさあ、

なんで僕が〈旦那様〉なのか教えてくれない?」

 

「「「「???何も聞いてませんか???」」」」

 

どうやら僕だけが知らないようだ。

仕方ない。1から聞くか。

 

「まずは、君たちの名前から教えて?」

 

すると一人ずつ順番に始めた。

 

「では私より。〈ファラ・スユーフ〉と申しまして、旦那様の風の力をいただいております」

 

「〈ガリィ・トゥーマン〉で旦那サマの氷の力をいただいております。〈ガリィちゃん〉でいいですよ♪」

 

「〈レイア・ダラーヒム〉銃弾の力を使えます」

 

「〈ミカ・シャウジーン〉で炎の力が使えるゾ」

 

「そしてここにはおりませんが、レイアには妹がいますわ。無属性ですが」

 

だよねー。知ってたけどやっぱりかー。

 

「で、なんで僕が旦那様なの?ファラさん教えて」

 

「その必要はない!!!」

 

やっと来たかキャロル。もう本人から聞こう

 

「ねえキャロル。状況と意味を説明して?」

 

「良いだろう。まず、コイツらは〈オートスコアラー〉でオレとお前の愛の結晶だ」

 

「何故そこで愛!?」

 

「なに、コイツらのエネルギーは、オレと幾度となく交わした口づけの際、お前から大量のエネルギーが流れてな。コイツらには、対応する属性分だけ渡したのさ。しかも〈想い出〉より遥かに高純度だ。素晴らしいとは思わないか?

そして〈旦那様〉の方は簡単だぞ。オレが勇を生涯の伴侶とする。もっとも、決めたのはあのケンカのあとだ。それだけのことさ」

 

えっ?マジで?

 

「ごめんキャロル。唐突すぎてわかんない」

 

「今すぐ理解しろとは言わん。最終的にオレを選べ」

 

「幼馴染み2人にプロポーズされてるんだけど」

 

「無論知っている。会わねば良し!会っても振れば良し!」

 

「姉さんを助け出したいんだけど」

 

「では先に籍を入れるとしよう」

 

「まだ僕未成年」

 

「それがどうした。成人するまで待つさ。浮気は許さんがな」

 

「僕の気持ちがキャロルと噛み合うとは限らない」

 

「長い時間をかけて愛を育むさ」

 

ヤバい、説得不可能だ。でも今結論は出させない。

 

「キャロルはさっき、時期までは待てるって言ってたよね?じゃあさ。僕は今15歳で、6月の7日が誕生日だよ」

 

「それがどうした?そんなことは今さらだぞ?」

 

「それでね、2045年6月8日に、〈もし僕がキャロルを好きだったらプロポーズをする〉っていうのはどう?」

 

これは賭けだ。今のキャロルが聞いてくれれば良いんだけどね。

 

「………………………良いだろう。その条件なら悪くない(勇からプロポーズだと!素晴らしい!願ったりだ!)」

 

ごめんねキャロル。ワガママを聞いてくれてありがとう。




キャロルは、既成事実を考えた。
更にライバルの情報をゲットした。
プロポーズの返事も約束された。

アレっ?もしかして勇君は外堀を埋められた!?

次回〈どうやら原作ははじまっているようです〉


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どうやら原作は始まっているようです

前話の更新は、20時に行っていますので、まだの方はそちらからお願いします。


キャロル✖️霊力はヤバイ。

ビッキー達………勝てるかな………



それでは本編をどうぞ。


僕がキャロルに条件つきプロポーズの約束をしてからおよそ半年が経過していた。

長い。原作の開始時期がわからない。

でもさ?僕が日本にいなかったのがいけなかった?

みたいどころか現実はそうだからなあ。

 

「仮に日本に残れてたらどうたなってたかなぁ」

 

そんな呟きをしてしまった。

実際前世ではアニメの二次創作小説を友人に薦められたのもあり、自分のifを考えずにはいられなかったが、

ここで呟いたことで彼女の耳に届いてしまった。

 

「愚問だな勇。オレが自ら迎えに行ってやったさ。

お前はこの世界に転移してきたんだ。いずれ力を発現しただろう。お前はいずれそれを制御しただろう。

このシャトーはお前のお陰で完成が早まっただけだ!

つまりオレがシャトーを完成させる頃にお前が力を制御するだろう。俺は当初ファラたちに呪われた譜面を刻み込むつもりでいた。そして世界を分解しようとしただろう?正義感の強いお前はその時までに必ず現れたさ。そしてオレたちは戦うだろう?だが勇は必ず俺を打ち負かすだろう。そうすればお前はオレを説得する。命題の答えをお前は絶対に提示し、オレを抱きしめ慰めキスをする。つまり出会うのが遅いか早いかの違いでしかないのだ!今のオレなら耐えられん可能性だがな」

 

呼んでないんだけどなー。そしてしっかりと僕の呟きに答えてくれちゃったよ。うん。うれしいね、僕をしっかりと評価してくれたのは、うれしいんだけどね。

 

「ごめんねキャロル。早口でまくしたくられて聞こえなかったところがあるんだけど」

 

特に最後の方は小声だったし。

 

「すまなかった勇。高鳴った気持ちが抑えられなかった。そうだ、勇からキスをしてくれ」

 

うん。やっぱりトリップしてるね。

 

「ダメ。人の話を聞けない子にはご褒美はあげません」

 

「ごめんなさい。だって勇といたくて」

 

〈キャロルがワガママになった〉

 

なんかヤバいよね。目が濁るみたいな表現はあるけど、アレはそんな次元じゃあないよね。でもアレを何ていうのか僕は知る前に転生したからな。

ていうか、〈折紙さん〉と〈狂三さん〉を思い出したのはなんでだろう。

 

「勇、女のことを考えたな。お前はオレのモノだぞ?」

 

なんて鋭いお姫様だなぁ。怖いよキャロル。

そんなことを考えているとプレラーティさんから久しぶりに連絡が届いた。

 

「勇。要件を伝えるワケだ。

お前の話通りに日本でノイズの異常発生が確認され、新たな装者が出現した。そしてエースである、

〈風鳴翼〉が入院したワケだ。」

 

「すみませんプレラーティさん。ありがとうございました。」

 

「勇。頑張るワケだ。私たちはお前の成長をちゃんと見守っているワケだ」

 

師匠たちからの激励を受けた僕は、拗ねたキャロルと向き合った。

 

「キャロル。僕の姉さんが見つかる目処がたった。迎えに行って来るね。大丈夫、約束するよ。2045年6月8日に君を好きでもそうじゃなくてもここで君に返事をする。だからこそ、君を好きでいさせてくれたら僕はうれしいな。」

 

これが僕の偽らざる本音だ。

 

「わかった。勇を信じる。でも浮気が本気になったら世界を分解するから」

 

全く洒落にならないような脅しを受けつつ僕は日本への転移を行った。




次回より原作の〈ルナ・アタック編〉に入ります。

勇君からのプロポーズ待ちは現在三人。修羅場ですね。

次回〈原………作………?〉


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無印編 ルナ・アタック
原………作………?


おまたせしました。原作に入ります。

〈ルナ・アタック〉編が始まります。

それではどうぞ。


風鳴 翼の入院をプレラーティさんから聞いて急いで母国の日本に僕は帰ってきた。幸い師匠たちのスパルタ式教育のお陰で二課の表向き情報と、

〈私立リディアン音楽高等学院〉の場所は迷うことなく来ることができた。

 

そして戦闘音と煙が上がった。てことは、あそこにいるんだな。拗らせたバカ姉貴が。

そう考えながら、向かっていると、音が止み、こえが聞こえたのて、木陰にかくれた

 

「バカにしてんのか?このあたしを、雪音 クリスを!」

 

えっちょっと待って?無印編半分いってるじゃん。

って考えてたら響が

 

「そっかクリスちゃんっていうんだ。私もね、昔同じ名前の子と会ってるんだ」

 

「ハッ!他人の空似だな。世の中にはな、結構多い名前なんだよ!それにあたしはなぁ!家族が待ってるんだ!てめえみてぇな脳みそ花畑が大嫌いなんだよぉ!」

 

あれ?姉さん原作ってどうだったっけ?

なんて考えてたら姉さんはいつの間にかアーマーパージしてた。

 

「あたしの家族はなぁ、お前みてぇな偽善と人の悪意に殺されたんだ。唯一残った弟を探し出して迎えに行く。そのあたしの邪魔をするなら、全部ぶっ壊してやるんだぁぁぁぁっっ!」

 

響が原作以上にボコボコにされてた。

そして止めを刺そうとしたその時、戦場に何かが落ちた。

 

「壁か?」 「いや、剣だ!!」

 

奈々さまボイスありがとうございます。

そう言い到着した翼さんは、響に共闘を持ちかけた。

 

というより、姉さんは原作以上にご乱心なせいか、

翼さんの動きは的確に姉さんの視界を狭めさせ、響の所へ誘導した。よく見ると脂汗かいてるから、

やっぱり動くのが精々なんだね、翼さん。

 

「クソッあいつは?」

 

「もう一度ぉぉっっ」

 

原作のような影縫いではなく、響の強烈な一撃をもう一度喰らう姉さん。うん、キッツイね。

すると、一番聞きたくない声を聞いてしまった。

 

 

「命じたことも出来ないなんて情けないわよクリス。

貴女は私と契約したわよね。

〈必ず命じたことを果たす〉と。

三度目の失敗に言い訳は聞かないわ。

契約終了よ。手切れ金ってことで〈ソレ〉をあげるわ」

 

フィーネはそう言ってノイズを召還して去っていった。

だが、気のせいか、去り際に僕と目があったようなきがした。なんで?

えっ!!もしかしてあいつにずっと見られてた?

 

「待ってくれよ。置いて行かないでくれよ。フィーネぇ」

 

目に光を映していない姉さんも、フィーネの消えた方角へと消えていった。大丈夫かな姉さん。

 

「そこにいる者よ出てこい。私の参戦した辺りから立花及びあの少女を見ていたことは気づいていた。ノイズが片付いた今、残る存在は貴様だけだ」

 

えぇっ!!バレてた!?しかも割りと最初から!?

僕はショックを受けつつも、彼女たちの前に姿を表して名乗り出た。

 

「はじめまして。日本の〈特異災害対策機動部二課〉のシンフォギア装者の風鳴翼さん。そして、ただいま響」

 

もうヤケクソだ。そう考えながら僕は言葉を続けた。

 

「僕の名前は〈雪音 勇〉。そこにいる立花 響のかつての幼馴染みで、先ほどの彼女〈雪音 クリス〉の弟ですよ」

 




何と間の悪い帰国……勇君どうするの?

そして、クリスちゃんの様子の違いは、今後の展開に関わります。

ビッキーが原作よりしばかれてる………大丈夫か原作主人公!?

次回〈日本への帰還〉


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日本への帰還

やっと未来さんが出せた。

そして二課と接触が進んでいく。


翼さんに見つかり、ヤケクソで自己紹介をしてしまった僕は、ひとまず二課に同行することとなった。

事情を知らない翼さんは、終始冷静だったが、戦闘による衰弱と情報量が多すぎるため、響は帰投中に倒れた。

なので僕は〈鑑定のための血液提供〉後に許可を貰い、先に未来と接触した。

 

「未来………久しぶり。」

 

「誰ですか?人違いでは?」

 

幼馴染みは気づかなかった。うん。前世で読んだラノベ知識は役に立たないことがよくわかった。

 

「ごめんなさい。最初から言います。10年前、幼稚園から小学校に上がる2年間だけいた幼馴染みで、親の都合で海外に行くことになり、大きくなったらまた、4人で遊ぶ約束をして、…………恥ずかしいけど結婚の約束をした、雪音勇だよ。やっと日本に帰れたんだ。ただいま、未来」

 

とりあえず僕は幼馴染みに再会した。

 

「遅くなってごめんね。あのあとの僕は海外で途方もない事態になって、パパとママが亡くなったんだ。そして海外を転々としながら、はぐれた姉さんを探したんだ。そして2年前、姉さんの〈国連経由の帰国〉をヨーロッパの方で聞いて、何とか今日帰って来たんだ」

 

嘘は言ってない。これで通じれば良いんだけど。

 

「あはは、もう私わかんないや。響は私に隠し事してたし、いなくなったと思った幼馴染みはようやく帰って来るし、クリスが帰って来てたって言われるとね。もう疲れたよ」

 

そう呟く未来の声に力はなかった。

 

「未来の情報がパンクする前にまとめると、僕は姉さんはこの近くで見た。だから僕の方は、準備ができたら来てほしい。」

 

僕はそう言って端末の番号を書いた紙を手に握らせた。

 

「じゃあ僕はいくからよかったら連絡してね」

 

そうして他のメンバーの揃った司令室に向かった。

 

~~side弦十郎~~

 

俺は一度にもたらされた複数の情報は整理を余儀なくされた。

 

まず、〈雪音クリス〉君は、2年前に俺たちが保護を試みた少女だった。しかし彼女は帰国後に行方不明となり、俺を除くメンバーが殉職した。

 

そして聖遺物〈イチイバル〉は、10年前、先代の司令である親父の代に、二課から紛失した聖遺物だ。その後任として現在は俺が司令になるきっかけとなった物だ。

 

 

その弟〈雪音勇〉君は8年前、バルベルテ共和国で発生したテロで行方不明となった先程のクリス君の義理の弟に当たる存在で、情報が一切入ってこなかったが、了子君たち裏方スタッフに行って貰った鑑定の結果から、

旧姓〈山田勇〉本人であることが確認された。

 

最後の方は本人の言葉を待つのみだが、少なくとも前者2つは関連していると俺の勘が告げていた。

 

~~弦十郎sideout~~

 

 

 

 

さてさて、おそらく血液鑑定の結果から僕が本人である裏付けはとれたはず。どこまで信じて貰えるかな。

 

「司令官さんは、僕が何故ここに戻って来たか知りたいんですよね?」

 

「そうだな。あまりにタイミングが良すぎるのでな。

そういうことは勘ぐってしまう性分なのだ」

 

「だからこそお話ししますよ。まずはし「弦十郎で構わん」弦十郎さんは。平行世界を信じますか?」

 

「この地下にその手の曰く付き聖遺物がある、と情報があるがそれがどうした?」

 

「僕は少し先の平行世界の人間だったのですが、僕の世界の聖遺物の暴走により、僕はこの世界へ転生しました。

そしてその記憶を思い出したのがちょうど姉さんとはぐれたあの事件です。」

 

「いきさつはわかったが、肝心な所はまだか?」

 

「では続けます。記憶を思い出した僕は同時に特異能力がありました。そしてその能力に目をつけて来た組織に平行世界におけるその組織の結末を語ることで、その組織に僕は保護されました。」

 

「なるほど、情報がないのは組織に身を潜めていたからか。だが、何故このタイミングで戻って来た?」

 

「僕自身も姉さんを探していました。その間僕は組織への貢献と引き換えに修練を行いました。姉さんを見つけても、無力なままでいる気には、僕はなれなかったので。そして2年前は情報が届いた頃にはふたたび姉さんは行方不明になりました。今回の帰国となりました。そして組織に所属し、日本を拠点にしているメンバーから連絡をうけ、急いで帰国したんですが、情報のタイムラグから今回の帰国となりました。」

 

弦十郎さんは苦い顔をしてるな。おそらく、日本を舞台に巡る各国の思惑を読もうとしているのだろ。

 

「確かに彼女は、過去二回此方の響君を狙っていた。つまり君は、厳密には一度目の事態で動いていたがタイムラグで今日に至ったと。」

 

「そうですね。どんなに急いでも数日はかかりますから。」

 

もうマジで。素人が気づけるのは、翼さんが入院したタイミングしかわかんないよ。ホントに。

 

「であるならば此方は君に頼みたいことがある」

 

「奇遇ですね。此方も頼みたいことがあります」

 

「「姉さん(彼女)の捜索に協力してださい(くれ)」

 

2人とも同じことを言ったなー。

 

「ならば君にはこれを渡そう。そして久しぶりに幼馴染みと再会してこい」

 

弦十郎さんは例の端末を渡して来た。

 

「良いんですか?間が悪かった時に来た、襲撃者の弟ですよ?」

 

「連絡手段だ、気にするな。それに君は日本円が不足しているだろう?信用の証として使うと良い」

 

ヤバい。対応が神すぎて涙が出そう。

 

「ありがとうございます。さっそく響を探します」

 

僕はそうして部屋をあとにした。




次回は響と絡みます。楽しみにしてください。

次回〈再会/立花響〉

OTONAは偉大ですね。


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再会 /立花響

お気に入り件数250件突破&UA25000突破に驚いています。

皆様ありがとうございます。これからも応援よろしくお願いします。




響と再会した勇君が語ることとは………

本編へどうぞ。


ようやく面倒な説明を終わらせ、僕は響と再会した。

 

「久しぶりだね響。僕のことを覚えてる?」

 

未来の件があったので、僕は慎重にならざるを得なかった。しかし予想外の返事が響から返ってきた。

 

「もちろんだよ。でも、いざ再会したらさ、すごく複雑な気持ちになっちゃうんだよね」

 

「まあ、こんなタイミングで帰ってきた僕は、響と未来に会わせる顔がないな………はははは」

 

正直に言って僕は、

〈最悪のタイミングで帰ってきた〉

幼馴染みだな。

 

「ごめんね。もっと早く帰りたかったんだけど、僕は姉さんを探すのに必死で、気が回らなかったね」

 

「良いよそれは。私だって、クリスちゃんに三回も会えてたのに、気がつかなかったんだもん」

 

相手を前向きにして思うのはアレだが、8年前の幼馴染みの声を、この響が覚えていたら、それこそ奇跡である。

 

「いや、響じゃあ無理だね。自分の宿題を、未来や姉さんにさせようとしてたじゃん。頭が残念な響には無謀だよ。」

 

「ひどいよ勇君、私そんなアホの子じゃあないもん!」

 

原作ならこの時点で既にウソになってるな。まあ、今回は、知らん振りをしておくか。

 

「へいへい。みくになきつかなくてえらいなー。りっぱになったなーひびき」

 

「勇君なんで棒読みなの!?酷いよ。私がウソつくわけないじゃん」

 

ダウト だ。絶対に。まあ話を戻すか?

 

「さて、響さん話を真面目にしようか」

 

「無視!?私の話を無視するの!?」

 

さすがに少しうるさい。

 

「さっき僕は姉さんを戦闘で見たとき、恐ろしい表情をしてたけどさ。心当たりってある?」

 

「クリスちゃん、二回目の時に、すごく酷い表情をしてたって了子さんが言ってた。そして今日、

〈力を持ってるやつが許せない〉って。」

 

「多分それなんだけどさ。パパとママは、僕と姉さんの目の前で亡くなって、そこから孤児として生きてきたから、響が考えられないような日々を過ごしていたんじゃないかな?

それなのに、綺麗事を響が言っちゃったから、既に限界寸前だったんだと思う。

そして止めの幼馴染み疑惑だからね。」

 

あっ、響の頭から煙が出てる。ちょっとやりすぎたかな。

 

「まあ、一言で言っちゃったら、響にデリカシーがなかったからぶちギレたってこと」

 

とりあえず僕は、言うことを言っておいた。

 

「大丈夫か響?」

 

「大丈夫じゃあないもん………」

 

「まあ続けるよ?でもさ。響は三回対話したんだ。

そして幼馴染みかもしれないことを、伝えることはできた。ならあとは、時間の問題さ。」

 

あとは希望を添えるだけだな。

 

「昔と違って僕たちは成長したんだよ。姉さんだって子どもじゃあないんだから、いつか気づけるさ。足りないなら、今回は頼もしい大人の力を借りればいいんだよ?」

 

そう言って僕は響を抱きしめた。

 

「うん。ありがとう勇君。私も言い忘れたことがあるんだよ」

 

「良いよ。言ってごらん。」

 

「私も未来も約束はしっかり覚えてるよ。未来なんて、ドレスを見てはしゃいでたからね?」

 

どうやらまだまだ先は長そうだ。というか未来が怖い。




実際にこの作品では、四人の接点故に起きる出来事を作るつもりです。

しかし勇君よ、事態はまずいよ?

次回〈雪音クリス〉





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閑話 雪音クリス

前話のクリスちゃんは原作以上にボロボロだったので、戦闘日の翌朝に倒れました。

そして今回は、クリスちゃんの回想です。


起きたら知らない天井だ。

そして知らない格好をあたしはしていた。

あたしがなんでここにいるかはわからないが、

少なくとも、さっきまで見ていた夢は最悪だった。

 

~~回想~~

 

パパとママをバルベルテで失ったあたしは、分かりやすくたらい回しにされた。難民キャンプなんてどこも満員で余裕なんてない、常にギリギリの生活だった。

 

あたしは勇を探したかった。たった一人残されたあたしの家族。良く笑い、あたしをからかいやがった。そしてある日から勇は自分の友達をあたしのところに連れて来た。そんな変わった弟だった。

 

勇の友達は女の子だった。

・元気いっぱいで、ひたすらはしゃぐ奴と、

・甲斐甲斐しく世話を焼くような奴

の2人だった。走り回るのが好きじゃないあたしは、体力バカの栗色ののちに幼馴染みになる奴に振り回された。そしてあいつらは勇に告白してやがった。

当時のあたしは、〈最近の奴はませてるんだな〉って思ってた。まあ、勇がどっちと結ばれてもあたしは、かまわないと思っていた。

 

あたしと勇は家族だからお嫁さんにはなれない。

そう思って、当時のあたしは線引きしていたんだ。

 

そんな幼馴染みたちと弟とあたしの4人で交わした約束が、あたしの最後の拠り所になった。

だからどんなことがあっても耐えてきた。

 

あたしをもて余した奴らはらの行動の意味は、

今ならわかる。聖遺物を扱う組織にあたしを売り飛ばした。それまでは、どんなに辛くても人間らしい扱いだったが、とうとう物扱いだ。

 

歌わなければ殺される。そんな組織に落とされたあたしの絶望は、想像以上に心をすり減らした。だけど不幸中の幸い、その組織の壊滅と、あたしの帰国は、

あまり時間がかからなかった。

 

そして勇の情報は手に入らないまま、あたしは日本に帰ってきた。だけどあたしはすぐにフィーネに拐われた。でも、フィーネだけは勇のことを調べてくれた。

今にして思えば、あたしを誘導するエサだったが、当時のあたしはわらにもすがる想いだった。

 

そのためにあたしは何でもした。〈ソロモンの杖〉を起動させろといわれたので、何をするか聞いた。だけど、歌うことが条件だと聞いた時、あたしは、みんなと再会したい一心で歌い続け、3ヶ月で起動してやった。

そしてあるコンサート会場にノイズを出す命令を忠実にこなして、フィーネから、勇は何処かの組織が、匿っていることを告げられた。

 

あたしは、絶望しながら命令を淡々とこなし続けた。

そして今回の捕獲対象の立花響を捕獲しようとした。

 

しかし連中はその度に対策を講じてきたせいで、

二度も失敗した。

 

さすがのフィーネも次はない、と釘を刺した。

だけどアイツだけは気に入らない。

 

幼馴染みと同じ名前で、気のせいか面影を感じた。

それがあたしにとっては、余計に気に入らないのに、

あろうことかアイツは、人の思い出に土足でふみこんで来やがった。だからあたしは〈イチイバル〉で徹底的にいたぶったが、現場にあのアイドルが戻って来て、あたしに戦いを挑んできた。

 

だけど頭に血が登ったあたしは、前回できてた圧倒が出来ない何処か、攻撃を構えてたアイツの場所まで誘導され、任務続行が不可能になり、

とうとうフィーネに見限られた。

 

待ってくれ。お前にすてられたら、勇に再会できない。

 

 

 

あさになってすこしあかるくなりまちまでなんとかあるいたが、もうあしにちからがはいらない。ごめんねゆう。おねえちゃんもうだめみたいだ。

 

 

~~回想終了~~

 

 

 

 

 

~~side???~~

 

私が登校しようとしていると、人が倒れてた。

でも何故か、髪の毛が見覚えがある気がした。

幸い、この近くには〈ふらわー〉がある。

おばちゃんは頼めば助けてくれるだろう。

でも運ぶのに男手が欲しかったのと、

妙な胸騒ぎがした私は、彼に連絡した。




この謎の人物の視点は、次の話で明かします。

そしてクリスちゃんを助けた人物は、後のストーリーに必ず登場します。

次回〈小日向未来〉


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閑話 小日向未来

お気に入り300件突破&UA30000突破ありがとうございます。

これからもしっかり投稿します!

今回の語り手は393です。

そしてこの世界のひびみくの関係が………

それでは本編をどうぞ。


私には将来、結婚の約束をした男の子がいる。

 

当時の私は、いつも一人で過ごす子だと思っていたけど、隣の響はその子を連れ回して遊んじゃう。

仲間はずれが嫌な私は、自然とそこに混じっていた。

彼といると、胸がポカポカしてた。

 

ある時、彼が十日ぐらい私たちと会わない日が続くことがあった。お父さんたちは、その理由を教えてくれなかった。

私は何故かわからなかったけど、胸がモヤモヤしていた。モヤモヤのことをお母さんに話すと、なんでか微笑んでいた。みんながいじわるだと思った。

 

しばらくして、帰ってきた彼が、女の子を連れてきた。その子の名前は、〈クリス〉っていってた。

一歳上のお姉さんで、私は最初、緊張してどう接すれば良いかわからなかった。でも、勇君がお姉さんと2人でいるのを見ると、今度は胸がズキズキした。私の心は忙しかったけど、響とわたしと彼とクリスさん4人でいっしょになにかするのは、とても楽しかった。

 

小学校の時には、響と彼、私、クリスさんの4人で集まって遊ぶことが、楽しくてしかたなかった。学校の勉強が始まったけど、私はできたし、わからなくても、

クリスさんが教えてくれた。この頃には胸のズキズキはなくなった。

 

そして彼とクリスから、遠い国に行くことが聞かされた。そして、以前感じたものより大きなモヤモヤを感じた。お母さんたちに、もう一度伝えると、

その気持ちが〈好き〉と言うものだと、今度は教えてくれた。私は勇君が好き。だから帰って来たときに、

結婚の約束をした。そうして彼は旅立った。

 

実はクリスの綺麗な銀髪が羨ましくてしかたなかった。

でも、絶対にクリスより綺麗になって勇君を見とれさせたいと思ったのは、私だけの秘密。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2年前のコンサートのあと、生存者への憎しみから来た攻撃のターゲットは、響も例外ではなかった。

でも私と響は、2人で支えあって生きてきた。だってそうじゃないと、私と響の2人が勇君にプロポーズできないから。約束は守らないといけないから。

 

もし2年以内に勇君が帰ってきたら、

響との約束を守ってプロポーズは2人ともする。

だけど、勇君の心は私がもらう。

 

響が人助けに現を抜かしてたおかげで、

私は家庭料理や家事ができるようになってきていた。

響のお世話をすれば、絶対に勇君のお世話でも応用できるから手は抜かなかった。響が最近、

特にだらしなくなってお世話のしがいを感じた。

 

響がヘロヘロで帰ってくるから、

服を回収したり、お風呂の準備を済ませたりと、

私は経験を重ねた。

 

将来の勇君がどんな人になっても、

私は勇君に尽くせる用に能力をあげ続けた。

 

そう思いながら響を迎えにいったある日、私は響が変身して戦うところを見てしまった。

 

響?何してるの???

私たちと勇君の約束を破る気なの??

だめだよ???いっしょに結婚式のドレスを選らんだじゃない。勇君を2人でドキドキさせるんだから。

 

このままだと、最後に私の献身で、勇君を振り向かせる計画がおじゃんになっちゃう。

ゼロから作り直す時間はもうないんだよ?

 

私が考え事をしていると、

機密事項に抵触だとか何かで、同行を求められた。

そして一通りの説明が終わったあとに、

男の人が入って来た。

その人は、私の名前を呼び、久しぶりっていってきた。

最初は人違いだと思ったけど、

彼は私たちとの約束を口にした。

 

私、やっちゃった………………響をダシにして良妻アピールをするはずが、第一声で拒絶しちゃった。

私のバカ、アホ、おたんこなす

 

そうしてぐるぐる考えていると、勇君は、

クリスさんが帰って来てることを教えてくれた。

でも、私の頭は、もう限界だった。

すると彼は、自分の連絡先を書いた紙をくれた。

そして、今度は彼が待ってくれるらしい。

ひとまずは、よかったのかな?

 

翌朝、登校しようとすると、人が倒れてた。

気のせい髪の毛に見覚えがある気がした。

幸いこの近くには〈ふらわー〉がある。

おばちゃんに頼めば助けてくれるだろう。

だけど運ぶのに男手が欲しかったのと、

妙な胸騒ぎがした私は勇君に連絡した。




393ヤバい。

関係性がひびみくの形をした何かに………

次回〈突然の知らせ〉


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突然の知らせ

二課で過ごした勇君が受けた知らせとは?

本編へどうぞ!


あるものが欲しかった僕は二課を訪れていた。

そして僕は〈櫻井了子〉さんに、ある質問をした。

 

「すみません。〈シンフォギアの適合率を上げることができる薬がある〉と聞いたのですか、本当ですか?」

 

「ええ。あるわよー。〈linker〉っていう薬がね。なに?あなたもしかして欲しいの?」

 

なんかあっさり教えてもらえた。何か裏があるのか?

 

「はい。僕の世界では、そんな情報がなかったものなので。みんな自力で纏えてましたから」

 

真っ赤なウソだが、されど平行世界。可能性だけなら、十分にある話だから。

 

「でもね。アレは相当扱いが難しいわ。定期的なメンテナンスをしないと身体が薬で汚染されるのよ。響ちゃんの前任、〈天羽奏〉は、地獄のような痛みと戦ってた」

 

やっぱり師匠たちの情報通りだな。僕の目標のためにサンプルが欲しいな。頼んでみよう。

 

「この世界の人は強いですね。僕の世界もそれがあればきっと………」

 

少し僕は間を空けて続けた。

 

「もしよろしければ、サンプルを分けてもらえますか?」

 

賭けに出た僕は思いきって聞いてみた。

 

「別に良いわよ。今の娘たちには必要がないからね♪

少し待ってなさい♪」

 

そう言った彼女は5分程で戻って来た。

 

「これがお望みの品よ。でもね。使ったらちゃんと本部に報告するのよ。薬害が酷いかね。」

 

「ワガママを聞いてくださって、本当にありがとうございます」

 

そうして僕が部屋を出ると、急に端末が鳴った。そして電話に出ると、驚きの言葉が出て来た。

 

「勇君!助けて!人が倒れてるの!私一人で運ぶのが不安だからすぐに来て」

 

「落ち着いて、未来。まずは場所が知りたいからGPSの位置情報とわかりやすい付近の目印の写真を、僕に送って欲しい。そして僕が行くまでに、搬送できる場所を確保して欲しい。あと、できれば相手の写真も」

 

そう。僕には場所の詳細はわからない。だからこう伝えないと向かえないのだ。

 

「うん。直ぐに送るね。」

 

言うが早いか、未来はすぐに移動して写真と位置情報をくれた。しかも、写真はやはり姉さんだった。すると

 

「ありがとう。幸いそんなに遠くないから、20分で合流する。それまで安全を確保してくれ」

 

そして僕は司令室に向かった。

 

「すみません。二課の端末をもう一つください。理由は後で報告します!」

 

「わかった。君の言葉を俺は信じよう。友里!」

 

「わかりました。司令!」

 

言うが早いか司令は、あおいさんに端末を準備させた。

本当は、怪しいはずの僕の言葉をすぐに信じてくれた。

〈OTONA〉ってやっぱり偉大だわ。

 

「ありがとうございます。後で必ず説明します」

 

走りながら部屋を出た僕はミカエルを起動した。

待っててくれ未来、姉さん。必ず迎えに行くから!

その思いを胸に、未来から送られた位置情報の場所へ、僕はすぐに転移した。




〈勇君はクリスを見つけた。
そして未来に呼び出された〉

ここも一つの分岐点になりました。

次回〈幼馴染み/合流〉


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幼馴染み/ 合流

さあ勇君!合流するんだ!

本編へどうぞ


転移に成功した僕は、未来へ連絡した。

 

「未来、何とか写真の場所まで来た。今どこ「その路地を左に曲がって!」わかった、すぐ行く!」

 

さすがは未来だ助かる。

 

「その人が言ってた人だね。僕が背負うから未来は案内をお願いするよ」

 

そして未来は、〈ふらわー〉というお店に案内してくれた。………運んでる時に姉さんのモノが背中にあたっていた。何がとは言わないが、姉弟でも恥ずかしい。

 

「未来とお店の人には助かったよ。おかげですぐに休ませることができた」

 

僕は姉さんを運び込んで、未来と店長さんが姉さんの服を変えた。

 

「未来。君に写真をもらった時に僕は気づいたけど、この人は君たちの幼馴染みで、僕の姉の〈雪音クリス〉だよ。今はすごくボロボロになってるけどね」

 

僕は悩んだ末に未来に事実を伝えた。

 

「そんな………ウソだよね勇君。クリスさんがこんなに酷い怪我をしてるなんて。」

 

「僕だって信じたくないさ。でも、僕が姉さんのことを見間違えるわけにはいかないよ」

 

そう言って僕たちは姉さんが起きるのを待つこと30分で、姉さんは意識を取り戻した。

 

「うぐぅっ、ここはどこだ!?」

 

「姉さん!意識を取り戻したんだね。僕たちのことがわかる?」

 

僕は姉さんに声をかけることにした。

 

「えっ…………まさか………勇………なのか?」

 

「うん。クリス姉さん。そして隣にいるのは未来だよ」

 

当然だけど姉さんは酷く動揺していた。

 

「なんで勇がここに………それに未来って………じゃあもしかしてアイツは本当に………」

 

姉さんは小声で何か小さく呟いていた。

 

「あとは響がいれば全員集合なんだけど」

 

「ウソだ。それじゃあ………あたしは………何のために……」

 

僕の声が届かない程、姉さんが動揺していたので、僕は姉さんを優しく抱いて言葉を続けた。

 

「ゆっくり整理すれば良いんだよ。そしてできたら僕の話を聞いてくれたら嬉しいんだけど」

 

「それじゃあ勇君。まさか本当にクリスさんなの?」

 

ここで未来が会話に参加してきた。

 

「うん。僕たちは8年前、バルベルテで両親を失くした。そして僕は姉さんを逃がすために囮になった。そして姉さんと別の難民キャンプである組織に保護された」

 

「ホントに勇は………あたしのために………すまない………すまない………許してくれ………勇」

 

「別に良いよ。僕は姉さんを探したけど、それは姉さんも同じでしょ?」

 

ある意味では僕は姉さんを置き去りにしたんだ。恨まれるなら、きっとそれは僕の方だろう。

 

「姉さん。ひとまずは、これを受け取って欲しい。そこには未来と僕の番号が入ってる。僕はもう一台もらったから使い方は………」

 

そう言いかけた時、盛大な音が鳴り響いた。まさかコレがそうなのか?

 

「2人とも!!逃げないと!!ノイズ警報だよコレ!!」

 

「そんな………フィーネ………あたしを狙って本当に」

 

慌てて走り出した姉さん。僕は未来に叫んだ。

 

「姉さんのことは僕を信じて任せて欲しい。必ず連絡するから!!!」

 

そうして僕は姉さんを追いかけた。




〈クリスは端末を手に入れた。
しかし使い方を知らない〉

頑張って早めに持たせた意味ないじゃん!

次回〈どうする!?〉


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どうする!?

原作同様に飛び出したクリスちゃんを追った勇君が見たモノとは?

本編へどうぞ。


「勇!!くるんじゃねぇ!!コイツ等はあたしを……」

 

どうする?錬金術がノイズに通じるか?そんなことを考えていると、そこで頼もしい声が聞こえた。

 

「ウオオオオォォォッッッ!!!!」

 

瓦礫を蹴り飛ばし、彼はノイズを倒した。

 

「なんでアンタがここに!!それにあたしを庇った!?」

 

驚く姉さんと対照的に、僕は覚悟を決めた。

 

「〈カマエル〉〈メタトロン〉〈ザフキエル〉!!!」

 

散開するノイズに、僕は火力系と手数の多い天使を使い、攻撃を開始した。それは姉さんも同じだった。

 

「「姉さん(勇)、ひとまずその姿のことは後で聞く。今はノイズを片付けるよ(ぞ)」」

 

幸い2人がかりで相手にするなら何とかなる数だった。

 

「流石は姉弟だ。君たちの息のあいようは、見ていて惚れ惚れする程見事なものだ。大人として守れなかった自分が情けない。」

 

弦十郎さんは、本心を言ったのだろう。でもそれは、姉さんの逆鱗に触れてしまった。

 

「………ざっけんな。ふざけるなふざけるなふざけるな!何が〈大人として守る〉だ?救いを求める手を払い、他者に押し付け、価値があれば売り払う。そんなことを平然とできる人間をあたしは見てきたんだ。あたしは今日まで勇たちと再会するために生きてきた。なのに大人は何をしていた?肝心な情報を録に掴めずのうのうと後手に回って手遅れにしてあとから〈すまなかった〉だあ?あたしは、認めねえ。ぜってーにあたしは認めねえ!!!!」

 

姉さんはそう言って飛び降り、僕は完全に見失ってしまった。姉さんはそこまで思いつめていたんだ。

 

「俺は………またあの娘を救えなかった。いったい何を間違えたのだろうな………」

 

力なく落ち込む弦十郎さんに、僕は説明を始めた。

 

「あなたは何も間違っていないですよ、弦十郎さん。でも、できれば僕の話を聞いていただけますか?それが朝に言った、説明したいことにも繋がるんです」

 

「そうだったな。是非説明をしてくれないか?」

 

僕は自分の能力を含めた説明を始めることにした。

 

「まずは前提に、僕はクリス姉さんと姉弟の関係で、二課に所属した立花響と、先日あなた方が同行を求めた少女の小日向未来の4人は、幼馴染みの関係で、いつか日本で4人揃って再会する約束をしました。

そして僕たち姉弟が両親の夢のために行く海外に同行しました。そしてそこで起こったテロで僕は姉さんを逃がすために囮になり、離れ離れになりました。ここまではよろしいですか?」

 

「ああ。君たちの両親の死と姉弟の離別はこちらも確認していたが、まさか君たち4人に繋がりがあったとは……」

 

困惑する彼に僕はさらに続けた。

 

「はい。僕はそこで、今の力の一端を発現しました。そしてその能力に目を着けた組織が、僕に接触してきました。しかしその組織は幸いにも僕の平行世界の知識と合致する組織でした僕も恩があるので、その組織の詳細までは話せませんが、この8年間で、先程お見せした能力を使いこなせるよう、訓練してもらうと同時に、姉さんの情報を探しました。そして先日の翼さんの入院の前後で、僕は姉さんの目撃情報が確定したことを確認して帰国しました。

僕が櫻井教授に話を聞きに言った今朝、先程話した幼馴染みの小日向未来から連絡をもらい、写真と位置情報を確認しました。そして弦十郎さん達から端末を受け取り、僕は未来の元へ転移しました。そして僕たちは三人の再会をしていた時、あのノイズ警報が発令されて姉さんが飛び出し、それを僕が追いかけました。後は弦十郎さんが見た通りです」

 

「なるほどな。クリス君の逆鱗を俺は踏み抜いてしまったわけか。彼女にはすまないことをしたな。」

 

「姉さんは今、一度にもたらされた情報に混乱しています。でも、整理できたその時は、きっとわかってくれますよ」

 

僕はそう言い、笑顔で弦十郎さんの手を握った。




姉さん激おこです。仕方ありません。

次回〈離れた手/繋いだ手〉


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離れた手 / 繋いだ手

前回まで幼馴染みの再会にハブられたビッキーが未来さんと再会。ビッキーはどう和解するでしょうか?

本編へどうぞ。


部屋にいない未来に会うために私は学校に行った。

しかし未来は来ていなかった。けれども翼さんに出会えた私は、話を聞いてもらった。

 

端末に本部からの連絡が入った。行かなくちゃ。

 

そして遠くでとてつもない勢いでノイズを殲滅していたことがわかった私は、倒壊した建物等から人を助けるために動いた。

 

「誰かー、誰かいませんかー」

 

そう叫んでいると、いきなり口をふさがれて振り返った。そしてそこには未来がいた。

 

~~side未来~~

 

勇君たちが飛び出したあと、私はおばちゃんと避難を始めた。だけど運悪く私たちはノイズに見つかって逃げることになった。

そしておばちゃんが負傷して、建物に身を隠していたがけど、響がそこにやってきて声を挙げていた。

おばちゃんの身を案じた私は、響の口を覆った。そして携帯を使い、文面を見せた。

 

〈静かにして。あれは大きな音に反応するみたい〉

 

私の意図を察した響は、すぐに携帯を取り出した。

 

〈なんで未来がここに?〉

 

〈ふらわーのおばちゃんと避難中私たちはアイツに襲われておばちゃんが負傷した〉

 

〈私が囮になるから、響はおばちゃんをお願い〉

 

〈無謀だよ未来、死ぬつもりなの?〉

 

〈バカ言わないでよ。せっかく勇君たちに会えたのに、死ぬ気になんかなれないよ〉

 

〈勇君たち?〉

 

〈後で説明するから、おばちゃんが起きる前に早くしたいの!〉

 

〈未来の体力じゃ無謀だよ〉

 

〈私の想いを、なめないで。こんな修羅場の一つや二つに音を挙げるわけには行かないの〉

 

〈そんな根性論未来らしくないし、なんともならない〉

 

〈なら、ちゃんと皆を助けてね。私だって響に伝えたかったんだから〉

 

〈わかった。必ず助ける〉

 

そのやり取りを最後に私は飛び出してノイズを挑発した。

 

「この!空気を読めないバカノイズ!!!!」

 

そうして私は、響が助けてくれることを信じて逃げ続けた。今の私は絶対に止まらない。止まってなんかいられない。響が、クリスさんが、そして勇君が待っているんだから。

 

「流石にきついかな。」

 

ノイズから逃げること15分がたち、流石の私も限界が近づいた時、頼もしい声が聞こえた。

 

「未来!川に飛び降りて!」

 

私は言われるがまま、飛び降りた。

 

「私の親友の前から消えろー!」

 

響はそう言いながら、ノイズの撃破と私の救出をやってのけた。何か規格外な気がする。

 

「未来!手を!」

 

私は手を伸ばした。そして響はその手を掴み、

私たちは凌ぎきった。なら次は話合いだね。

 

「ねえ響、私はね、今でも勇君が大好きなんだよ?」

 

「うん。それは私もよく知ってる」

 

「だから響、私が今朝から体験したことをよく聞いてね?」

 

~~未来sideout~~

 

私が未来から聞いた話は、とても本当のこととは思えないようなことだったけど、要約すればこうだった。

 

①今朝未来は倒れてた人を発見して勇君に助けをもとめた。

 

②勇君といっしょにその人を〈ふらわー〉まで運び、そこで勇君から、倒れてたのはクリスちゃんだと教えられた。

 

③勇君はクリスちゃんを逃がすために外国で離れ離れになったこと。

 

④2人とも、お互いを探したけど、今日まで会えなかったこと。

 

⑤私が三度戦ったクリスちゃんが、私たちの幼馴染みのクリスちゃんだったと言うこと。

 

⑥勇君は一回目の襲撃した時に日本に向かってたけど、到着したのは、クリスちゃんがイチイバルを纏ったあの日だということ。

 

⑦勇君とクリスちゃんはノイズ警報を聞いて呼び出したこと

 

⑧その前に勇君は自分が使ってた端末をクリスちゃんに渡したけど、連絡はクリスちゃんから入るのを待つこと

 

えっ!ちょっと待って!?じゃあ私は、幼馴染みに誘拐されるところだったの!?




ビッキーは幼馴染みに拉致られかけてたことに気がつきました。「うん……まさか!?」案件ではあるね。

次回〈雪音クリス/勇からの伝言〉


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雪音クリス / 勇からの伝言

未来との和解に成功した響よ、おめでとう。

しかし今回はクリスさんパートである。

本編へどうぞ。


勇たちのもとから離れたあたしは、居場所を転々としていた。金も着替えのないあたしは、着の身着のままある廃墟を拠点にした。食料は残飯を漁ったり、水場を見つけては体を洗ったりしてひとまずはすごしていた。

 

本当はすぐにでも勇たちに連絡したかったが、あのオッサンが勇と同じ物を持っていたので、それは出来なかった。勇からの贈り物じゃなかったらこの端末はすぐに捨てただろう。でも勇は何を言おうとしたんだ?

 

 

そんなことをあたしが考えていると、突然通路からビニール袋が出てきて、あたしにこういった。

 

「そらっ、差し入れだ。どうせ録に食べてはいないだろう?」

 

中身は未開封の、日持ちがよくて携帯に便利な食料と飲料、

そして弁当が入っていた。何のつもりだ?

 

「どうしてここが?それに、これは何のつもりだ?」

 

まずあたしは、そこから確認することにした。

 

「まずその端末は、俺たち二課の支給品だ。そして食料は君の弟が俺に託してきたんだ」

 

ああ、やっぱりか。このオッサンはそこまで気を使えるようには見えなかったし、端末に至っては奴らの物かよ。そりゃああたしを見つけられるわな。

 

「以前俺は、君が帰国直後に行方不明になった時の捜査員だった。他の奴らは先に死んじまったがな………

だからこそ俺は君を助けるために、今回は一人で来たというわけだ。責任までは放棄したくないからな」

 

他の奴らの気配がないから、本当にそうなんだろうな。

だけどあたしは、これを言わずにはいられなかった。

 

「ふざけるな!何が責任だ!?お前ら大人はいつもそうだ。あたしたちを利用するだけ利用して、不要になれば押し付けあう。あたしが何を見続けたと思ってんだ!?寝言は寝て言いやがれ。あたしの支えは勇達だ。お前らじゃあねえんだよ!!!」

 

「そうか………君はそんなに思い詰めていたんだな」

 

そう呟くオッサンの声に力はなかった。

 

「なら、その端末について説明をさせてくれ。

それは二課の端末であると同時に、財布の機能がある。任務で使う者が必要な物を状況に応じて確保するためにな。そして交通機関もあらかた対応してあるから、必要なら使うと良い。元々は君に託すはずだったさ。

彼のおかげで多少時期が早まったがな。だから使う分には遠慮はいらんさ。

そして彼からの伝言であり、俺の本音も伝えよう」

 

だけどオッサンはあたしに端末の説明だけは丁寧にしやがった。多分本当なんだろうな、端末のことは。

 

「「心の整理に時間がかかっても良いさ。いつか姉さん(君)が、わかってくれるまで僕(俺)たちは待ち続けるさ」」

 

勇のやつ、そこまでお見通しかよ。少し可愛くねぇな。

そう思いながら、あたしはオッサンに言った。

 

「勇からの伝言をしたことに免じて一つ教えてやる。

フィーネは〈カ・ディンギル〉は完成した。後は炉心を確保するだけだとあたしは聞いた」

 

「そうか。その情報はとても大きな物だな。教えてくれてありがとう」

 

オッサンの最後の言葉を聞き終わる前にあたしは、

イチイバルを纏い、荷物を持って飛び出した。

 

 

 

…………………あたしの苦労は何だったんだろうな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~少し前のside勇~~

 

 

 

弦十郎さんが姉さんの追跡をすることを知った僕は、あるお願いをすることにした。

 

「弦十郎さん、姉さんに差し入れをする気はありますか?」

 

「ああ。あんぱんと牛乳を持って行くつもりだが」

 

やっぱりか。アニメなら良いシーンだったけど、姉さんがそれを受け取るのを知ってる弟からすると、少し複雑になった。

 

「今の姉さんは、きっと録な物を食べてませんよ。その状態で炭水化物中心の食料はちょっと遠慮して欲しいのですが」

 

「う………。因みに君ならなにを持っていくんだ?」

 

「これから気温が上がります。スポーツドリンクは絶対です。そして姉さんから見た弦十郎さんの好感度はマイナスです。まずは日持ちするカロリーメイトみたいに、ある程度栄養のとれる物をお願いします。また、脱水予防の点でも、そういう商品を準備します。

こんなかんじに」

 

そう言って僕は用意した差し入れ一式を預けた。

 

「すまんな。俺が気が回らないせいで君に手間をかけた」

 

「いえ、おきになさらず。姉を心配する弟ってだけですから」

 

「俺は何故か、君の方が保護者に見えるぞ?」

 

マジか。あーでも、他人から見れば何かわかる気はする。

 

「〈心の整理に時間がかかっても良いさ。いつか姉さんがわかるまで、僕たちは姉さんを待ち続けるさ〉とお願いします」

 

「だいたい俺の本音と同じだな。よしわかった!俺の責任を持って伝えよう」

 

頼みますよ弦十郎さん。

 

 

~~勇sideout~~




実際差し入れはこういった物が好ましい気がするんだよな。だって録に食べてないし。

次回〈雪音勇、ライブに行く〉


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雪音 勇、ライブに行く。

今回はビッキーが、原作主人公らしい話です。

本日は三回投稿します。

それでは本編へどうぞ。


本部に帰還した僕は、響に呼び止められた。

 

「あー!勇君やっと見つけた。探したんだよ!」

 

「どうしたんだ立花?急に走り出して何事かと思ったぞ?」

 

遅れて翼さんもやって来た。

 

「翼さん!さっきの話をもう一度お願いいたします!」

 

「はぁ。まったく仕方ないわね。ならもう一度言うわ。今月末のアーティストフェスで私の復帰を表明するわ。もし良かったら君も見に来るが良い。コレがそのチケットだ」

 

マジですか。僕は前世では声優ライブに行くことがなかったんだよな。えっじゃあコレ初めてじゃん。絶対に行きたい。というより、こっちから頼みたい。

 

「本当ですか!!ありがとうございます。絶対に見に行きます!!」

 

「なら、小日向さんも誘うと良い。幼馴染みなのだろう?水入らずというやつさ」

 

「あっじゃあ三枚とも未来に預けてください。響のポンコツっぷりは筋金入りなので」

 

「わかった。後で渡しておくから彼女に連絡しておいてね?」

 

「はい。ありがとうございます。お手数お掛けします」

 

「ちょっと!!勇君私の扱い酷くない!?」

 

いや、妥当でしょ。

というか、未来に話通さないといけないので、

僕はすぐに連絡した。

 

「ごめん未来、今時間良い?」

 

「何?勇君。今なら大丈夫だけど」

 

「今度のアーティストフェスで翼さんが復帰するらしくて、そのチケットの管理を未来に任せたい。

僕たち三人分の、特に響のチケットを」

 

「勇君まだそれを言うの!?」

 

響が横で騒いでいたが、無視して続けた。

 

「でも、初めてだよね。三人で出かけるの。

本当なら、姉さんもいて欲しいけどさ。」

 

「うん。そうだね………クリスさん早く見つかると良いね」

 

その言葉を最後に僕達は通話を終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてフェス当日、早めに会場入りをするために集合したところで、端末から連絡が入り、相手は弦十郎さんだった。

 

「急な連絡すまないな、ふたりとも。ノイズの出現が確認された。この後翼に連絡をして援軍として後を追わせるが、先行してもらえるか?」

 

そうだった!原作じゃあこうだったじゃん。姉さんに接触できる機会だ。僕も行かないと。

 

「いいえ師匠、私一人で行きます。

翼さんにはステージを、勇君にはその姿を見て欲しいんです。だって、まだ一度も翼さんの歌を聞いてないんですよ。せっかくの機会なんです。私に任せてください」

 

響がマジでかっこよく見えた。なんでだろう、男としての何かが負けた気がする。

 

「でも、響は平気なの?だって翼さんのステージだよ?本当は行きたいんじゃないの?」

 

なんと未来が響に聞いてきた。響の負担を気遣っての言葉からなのはわかるんだけどね。

 

「うん。本当なら、ステージを見に行きたい。でもそれ以上に、勇君には翼さんの歌を聞いて欲しい。今回は私に頑張らせて欲しいんだ。好きな人の目の前じゃあないけど、私だって女だもん。たまには格好つけさせて?」

 

ヤバイ、マジで感動した。なら、せめてコレは伝えよう。

 

「響、このノイズがもし、〈姉さんを始末するため〉にあのフィーネってふざけた女の仕業だったら、そこで姉さんに会えるかもしれない。違うのかもしれないけど、もしそうだったら、姉さんを助けてくれ」

 

「わかったよ。もし会えたら、今度は絶対にクリスちゃんを助ける。約束するよ!」

 

「なら、今回の未来と僕は響の帰る場所だ。絶対に帰って来るんだよ!」

 

その言葉を聞いて響は飛び出した。今回の僕は、フェスの客であると同時に守られる存在だった。

それが主人公の帰りを待つヒロインに見えたことは、

男としては少し凹んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブフェスってスゲェ!!!

なんなんだろこの感覚、周りの人達が、僕達が、そして何よりステージで歌う翼さんが、輝いている。

 

「未来。フェスってこんなに心が踊るんだね」

 

「うん。響は二年前にここにいたんだね。私も一緒にいたかった」

 

「響と一緒に行けなかったの?」

 

「うん。その時は、身内の人が倒れちゃって……」

 

「そっか。なら、今度こそ、響と未来、そして姉さんと僕の四人で行こうよ。こんなにに心踊るんだから。

きっと最高の思い出になるよ」

 

「そうだね。今度は、みんなで」

 

僕と未来は、ステージで世界に羽ばたく決意を伝える翼さんを見ながら、語りあった。




〈二期でライブに行こうフラグが立ちました!〉

ていうか、ビッキーのライブには厄ネタが尽きんよな。

次回〈今はまだ、繋げないけど〉



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今はまだ、繋げないけど………

再会したビッキーとクリスちゃんの語ることは?

今回はビッキー視点でお送りします。

本編へどうぞ


私が送られた座標に向かうと、そこでは既に戦闘が始まっていた。ノイズと戦闘をしていたのは、クリスちゃんだった。

 

「クソッわらわら出てきやがってうっとおしいんだよ!!!」

 

攻撃をするも、多勢に無勢だったクリスちゃんはノイズの攻撃を受けて態勢を崩してしまった。

 

「危ない!!クリスちゃんに近づくなぁぁぁーー!!」

 

「お前!!なんであたしを助けやがった!!あたしがお前に何をしたのか忘れたのか!!!」

 

驚くクリスちゃんに、私は最短で最速でまっすぐに、私の気持ちを伝えた。

 

「クリスちゃんが私達と幼馴染みだったあのクリスちゃんだったことは、勇君と未来から聞いたんだ!だからこそ!!三回も会ってながら思い出せなかったことが!!私は悔しいんだよ!!」

 

私の素直な気持ちを聞いて、クリスちゃんは動揺していた。でも、ノイズは空気を読まずに攻撃してきた。

 

「私はね!初めて襲撃された時から感じてたの!何故かはわからないけど、どこかで会っていた。そんな気持ちだったんだよ!

でも、二回目は言えなかった!!それが本当に悔しいよ。だって!!クリスちゃんに〈デュランダル〉を振り下ろしたのは、この私なんだよ!

そして三回目にクリスちゃんが来て、未来が巻き込まれた時は、クリスちゃんだって動揺を隠せてなかったんだ。そして私が初めてそれを言葉にして、クリスちゃんは怒ったじゃん!!!!〈人の思い出に土足で踏み込むなッ!!!〉て!!」

 

すると、クリスちゃんもノイズを殲滅しながら答えてくれた。

 

「ああそうさ!!どこか他人じゃあないような気持ちはあたしも同じだ!!だが!!勇に会えるかもしれないって言われた時、どう感じたかなんてお前にわかるかよ!!目の前でパパとママを失って!あたしを逃がすために囮になった勇をどんな気持ちで探したかを!!!」

 

確かにその話は未来から聞いた。だからこそ、

私はクリスちゃんに伝えるんだ!

 

「それをこれから話していきたいんだ!私たち四人が本当に再会したその時に!だからお願い!今は力を貸して欲しいんだ!!!」

 

「ハッ気に食わねえが言いたいことはわかった!!!なら、あたしについてきやがれっ!!!遅れてもフォローはしねえぞ!!!」

 

意見が一致した私たちは、二人でノイズの殲滅をはじめた。一人と一人じゃない!ここにいるのは、私たち二人なんだから!!!

 

「雑魚はあたしがやってやる!お前はデカイのを相手してな!!早く片付いたら援護くらいはしてやるよ!!」

 

役割を決めた私たちの動きは、それぞれで戦っていくよりも動き易くくなった。

 

「右のデカイのをどけてあたしの射線を通させろ!!」

 

「小型が左から三体!!背後から五体来てる!!撃ち抜ける?」

 

そんなやり取りをしながら私たちは、

ノイズをすべて倒しきった。

 

「せっかく会えたのにもう行っちゃうの?」

 

私はクリスちゃんに尋ねた。

 

「ああ。今はまだ、お前達を受け入れられねえ。だが、さっきのお前の動きは悪くなかった。………次があれば考えてやるよ」

 

ありがとうクリスちゃん。

今はまだ繋げないけど………私は信じているよ。

四人揃って再会して、翼さんとも手を取り合えるって!




勇君達のおかげで原作よりビッキーを信頼できるクリスちゃん。ひびクリは個人的には好きなんですが、本作品のクリス姉さんはブラコンです。

次回〈合流した者達〉


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合流した者達

個人的に〈クリスさん〉呼びの未来さんは書いていて新鮮でした。

今回はスカイタワー戦のお話です。

本編へどうぞ


ライブから帰って来た翌日、

僕たちは響から話を聞いた。

 

「やっぱり戦ってたのは姉さんだったんだね。」

 

「うん。今はまだ手を繋げなかったけど、いつか次があったらって」

 

ありがとう響。多分姉さんは変わって来てる。揺らいでいたけど、言葉は確かに響いている。

 

「クリスさん。また会えるよね……私はまた会いたいよ」

 

幸か不幸か、これで幼馴染みは、

全員が再会を果たした。

全員揃っての再会は果たされてないけど、そう遠くないうちに再会できる。そんな気がした。

 

 

 

 

 

そう期待していると、端末に連絡が入った。

どうやら、スカイタワーめがけて超大型ノイズが6体来ているらしい。フィーネさんあからさますぎだよ。

 

「未来、リディアンに向かいつつ避難誘導をお願い。シェルターの解放が必要になるばずだから」

 

「二人はどうするの?」

 

「翼さんと合流してあのノイズを倒すよ」

 

「まずは僕が先行して、あのデカブツを叩き落とす。

響、落とした後は任せて良い?」

 

「わかったよ勇君、すぐに合流しようね」

 

「すまない二人とも、後はまかせたよ」

 

そう言い残して僕は一足先に飛びたち、戦闘を開始した。

 

「〈メタトロン〉〈カマエル〉〈サンダルフォン〉行くぞノイズども、この街に手を出したことをあの世で悔いな!!!」

 

 

 

 

ヤバイな、火力系天使を、乱発しすぎた。

どうにか三体叩き落としたけど、体力が、持たない。

 

「オイオイ勇、もうへばったか?

まったく………情けない面してるぜ?」

 

どうやら、最高の助っ人が来てくれたようだ。

 

「姉さんこそ、なんでここに?それに響たちは………」

 

「勇君お待たせ!!!翼さんもすぐに来るよ」

 

助かる。流石にあと三体はきつかったな。

 

「待たせたな立花、そして勇!」

 

翼さんも来てくれた。これなら、いける、

 

「貴様は!何故ここにいる!!!」

 

「ハッあたしは、あたしの愛しい弟を助けに来ただけだ。あんたとなれあうつもりはない!!!」

 

そうか。姉さんと翼さんはまだ、そんな関係だったっけ。

 

「三人とも!あのノイズが上から、小型ノイズを散布してる!」

 

響の叫びをきくと、そこには、大型ノイズが、農薬でも撒くように、ノイズを撒いていた。

 

「三人とも聞いて欲しい。僕は大技を使いすぎて、これ以上の乱発はできない。

だから、誰かが代わりにあれを落として欲しい。

頼んでいいかな?」

 

「なら、その役目はあたしが引き受ける。〈イチイバル〉の性能は遠距離特化だ。限界までエネルギーを貯めれば多分撃ち抜ける。

弟が稼いだ成果はあたしが引き継いでやるよ!!!」

 

「翼さん、私たちの役目は!」

 

「わかっている、時間を稼ぐぞ立花!」

 

「まったく、響のやつ、あたしのことをもうわかった気でいやがるな」

 

「大技は使えないけど、姉さん達の背中は僕が守るよ」

 

「「「「行くぞ!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

何とかノイズを倒すことが、できた。

まさか〈時喰の城〉の効果で、ノイズの自壊促進ができたことは、素直に驚いた。

 

「響、勇君リディアンがノイズに襲われて」

 

未来からの通信がそこで切れた。

 

フィーネてめえはやり過ぎた。絶対に泣かしてやる!




〈能力の使い方がわかる〉と〈能力が使いこなせる〉
この違いが本作品では制限となります。

現在の勇君は〈使い方がわかる〉状態です。
その所為でノイズとの戦闘(相性の問題)で火力任せの戦い方をすると、簡単にバテます。なのでまだ完全には扱えていない状態です。

次回〈手を繋ぎあうために〉


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手を繋ぎあうために

お気に入り登録370件突破しました。皆様ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

本作品では便利な勇君がいるのでリディアンに向かう前に準備を整えることができます。

それでは本編へどうぞ


「三人とも聞いて欲しい。ここからリディアンまでは、頑張って夜、悪くて朝になってしまう。

もし今みたいな状態で向かえば敵は絶対に勝てない」

 

「では勇、どうするつもりだ?」

 

今は13時か……ならいけるか?

 

「まずは、食事と休憩をいれます。

そしてそのタイミングで、戦闘方法や得手不得手を話し合いたいです。異論はありますか?」

 

「わかったよ」「了承した」「オッケーだ」

 

「じゃあ響と翼さんで食料をお願いします」

 

「任せて」「行くぞ立花」

 

「で?勇は人払いして、あたしになんのようだ?」

 

流石姉さん、鋭いな。

 

「ごめん、なんだかこの後が不安になって………」

 

「まあそれは、あたしも同じだな。」

 

「だったら、元気の出るおまじないを姉さんにしないとね。」

 

僕は姉さんを抱き寄せてキスをした。

 

「なっ!!!勇お前!!」

 

姉さんは顔を真っ赤にして動揺していた。

 

「姉さんが僕を探したように、僕は姉さんを探してた。だけど、再会してすぐに離れる訳にはいかないからね。だから、必ずフィーネを倒して四人で再会しようね」

 

「わかったよ。コレが終わったら、必ずだ。あたしも四人で再会したいと思ってるよ」

 

話を切り上げると、二人が程なくして戻って来た。

 

「みんな食べながら聞いて欲しい。僕と姉さんは、離れ離れになったけど、この街で何とか再会できた。

僕は平行世界の記憶と能力のおかげで力を手に入れたけど、守りたいものを守るためには、みんなの力を貸して欲しい。頼めるかな?」

 

「私だって、勇君と再会できたからクリスちゃんにちゃんと会えたんだよ。最後まで一緒に行こう」

 

「昨日の敵とでも、手を繋ぐ立花の精神は見習うものがあった。いつか君とも語り合いたいものだ」

 

「やっと会えたあたしの弟だ。それを奪うなら、あたしは絶対に許さない!パパとママを失い、あたしを逃がすために自分の身を張った弟を守るのは、姉ちゃんの義務だ。それを果たすまで、あたしは諦めない」

 

最後姉さんが少し怖かったけど、伝えたいことは、伝わった。

 

~~sideクリス~~

 

勇のやつが、元気の出るおまじないって言ってあたしにキスをしやがった。不覚にも驚いて頭がパンクしそうだし、勇の顔を直接見ることができない。心臓の動きが早い。バクバク言っているのがよくわかる。

本当は勇を、戦いに巻き込みたくはなかったんだ。

でも、アイツは覚悟を決めてやがッた。

それができないあたし自身が許せねえ。

 

幼馴染みの未来を、ネフシュタンの鎧を纏ってた時にあたしは、未来に怪我をさせたのに、向こうはそれを気にせずにあたしを助けてくれた。

 

更に残る幼馴染みの響すら、あたしは拐うところだったんだ。

あたしを手の平の上で踊らせたことがわかった。

〈フィーネ〉!てめえを信じたあたしが馬鹿だった。

舐めた借りは、絶対に返してやる。

首を洗って待っていやがれよ。

 

~~クリスsideout~~




実は勇君のキスに対する認識は、キャロルちゃんの所為でかなり下がっています。そしてクリスちゃんかわいい!

次回〈リディアン急襲〉


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リディアン急襲

クリス姉さんに想いを告げた勇君が三人に語ったこととは?

それでは本編をどうぞ。


食事と休憩を終え、僕は三人に到着後の説明をすることにした。体力も充分に回復したからね。

 

「未来は〈リディアンにノイズが〉って言ってたからさ、僕とみんなは到着後には、別行動をする必要があると思っているんだ」

 

「一理あるが、君はそれで良いのか?君の負担が大きくなると私は考えるが」

 

流石はベテランの翼さんだ。数を見れば確かに1対3で、バランスは悪いように見えるだろう。

 

「大丈夫です。フィーネが数の少ない方に入れば人命救助を、多い方なら彼女の撃破を優先すれば良いと思います。それに、少なくとも姉さんと響は、今回の屋内戦には不利でしょうし、翼さんは戦力の要です。この人選以外あり得ませんよ」

 

「なるほど、筋の入ったもっともな話だ。良いだろう」

 

「勇君がそこまで考えてるなんて」

 

「………………………………わかった」

 

納得する翼さんと、間をかなり開けたけど、了承してくれた姉さんに安心するとともに、響にはチョップした。

 

「響だけには言われたくないなー」

 

「毎度毎度私に対する勇君の扱い酷くない!?」

 

「毎度毎度未来や姉さんに泣きつこうとした、残念な響はこの辺りで充分だと思うけど話には納得したね?」

 

「それは大丈夫だけど」

 

「全員納得と見て話を進めるよ。まず敵の手にあると思う武器は三つある。」

 

そう話を続けた僕は、フィーネの手持ちで可能性がある物の説明を、要点を絞って伝えた。

 

①ノイズがいる以上ソロモンの杖の所持は確定

 

②姉さんがパージしたネフシュタンの鎧の所持の可能性が高いこと。

 

③デュランダルを狙って覚醒がすんでいる、且つリディアンが襲われたなら強奪されたかもしれないこと

 

「③はとにかく他二つは確定、だが最悪の想定は必要だな」

 

流石〈SAKIMORI〉な翼さんだ。理解が早くてこちらは助かるよ。

 

「だが勇、どうやって今からリディアンに向かうんだ?今から行けば朝は確定だぞ?」

 

ここで今まで大人しかった姉さんが口を開いた。まあ、その質問が誰かから出るのを待ってた僕は少し意地が悪かったかもしれない。

 

「僕の能力の一つに転移能力がある。それを使えば実はリディアンまでなら行けたけど、疲労抜かずの連戦は危険だったから………」

 

「いや、君の提案のおかげで万全とは言わないが、

充分活動ができる程度には回復した。感謝する。」

 

「僕の師匠の教えで、

〈功を焦っては損をする、冷静さを失うな〉

それが戦闘訓練における師匠の教えでした」

 

「良い師匠さんなんだね。私なんて〈飯食って映画を見て寝る〉で、鑑賞後に実践だから大変だったよ」

 

そうだった。その言葉はあの人の名言だったな。

 

「お互い大変な物さ。修行や鍛練ってそういうもんだろう?」

 

こう言わないとアニメはとにかく、リアルで逆の立場なら、納得いかないからなー。

 

「っと転移前に現在のリディアン内のノイズの位置を調べるよ。そんなに拡散してないなら…………」

 

やっぱりそうだよね。大分分散してるよね。

 

「三人とも、僕がもし戻ってこれなかったら先にフィーネを倒して欲しい。引く程散らされてたから掃除に時間がかかるのが多分確定した」

 

「わかった。勇の出番がないくらいあたしがボコる。あたしを騙して幼馴染みを狙わせたことを後悔させてやるさ!!!!」

 

姉さん。女子力を捨てないで。じゃないと、いつか僕が誰かとけ「オレ以外の選択肢はないぞ勇」結婚する時に恥ずかしいから。あと、何故かキャロルの声が聞こえた気がした。聞こえた気がしただけのはずなんだ!!!

 

「みんな!行くよ!!!」

 

そうして転移した僕たちの前には、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分早く到着したな。もっと満身創痍で遅くなると思っていたぞ」

 

早くも戦闘態勢を、整えていたフィーネがいた。

 

「三人とも、打ち合わせ通りに頼むよ!!!」

 

「任せて!」

 

「ここは私たちが引き受ける」

 

「行ってこい、そして必ず帰ってこい」

 

「うん。行ってくるさ!」

 

「行かせ「邪魔はさせねえよ!!!!」っチイイッ」

 

その言葉を聞いて僕は、最速で移動を始めた。

待っていてくれよ。未来!!!




フィーネさんに慢心はありませんでした。ぶっちゃけ未来さん達は大ピンチしてます。

次回〈間に合え!〉

次回もよろしくお願いします。


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間に合え!!!

リディアンに転移して別行動に入った勇君が見たモノとは?

本編へどうぞ。


姉さん達と別れた僕は、校舎近辺のノイズと戦闘をしたが、なかなか思うように動けなかった。屋内且つ避難状態が把握しきれていない僕は、最低でも火力系天使をつかえず、現在はザフキエルを軸に消耗戦に持ち込まざるを得なかった。しかもそんな場所がいくつもあるので、じわりじわりと疲労も溜まりはじめた。

 

「クソッ、ラジエルで調べる限りじゃあまだ終わってないのにワラワラ来やがって」

 

悪態をついても状況は変わらないが、つかずにはいられなかった。しかも、外の戦闘音も激しい。

そう思っていると、地鳴りがした。

外を、見ると激しい光が見えた。

 

「………ウソだろ………!?」

 

 

 

見上げれば月が欠けていた。

 

 

 

そんな時に、司令室の近くにも芋虫ノイズがいた。

 

「そこをどけぇ!」

 

ガヴリエルを展開してノイズを倒すと、未来が出てきた。

 

「何!今の声!勇君!?!それに、その姿…………」

 

未来!?そうだ、未来ならあれが頼める。

 

「未来からの通信を聞いて、僕たちはここに来たけど、姉さん達が今フィーネと戦ってる。僕も敷地内のノイズを殲滅したら合流する予定だけど」

 

正直いやな予感がする。だから………

 

「未来!この施設の設備を、復旧してもらうんだ。それなら少なくとも、未来達の無事を姉さん達に伝えられるかもしれない!!!」

 

「勇君………クリスさんは………でも…………………

わかった。やってみる!!!」

 

「頼んだ!!僕も早く片付けて合流するから!!」

 

気づかない振りをするのは気が引けたが、ノイズをはやく殲滅したかった。

 

「あと二ヶ所、反対方面!!」

 

そうしてノイズをようやく片付けると、

今度は〈カ・ディンギル〉が崩れた。

 

「クソッ、遅かったか!」

 

僕は、最速で向かい、ガヴリエルを展開して、声をあげた。

 

「フィーネー!てめえ!よくも!翼さんを!響を!姉さんを!!!!!」

 

不意打ちのソニックボイスは、フィーネの態勢を崩すには、充分な威力があった。

 

「大丈夫か!響!」

 

「………勇………君………翼さんが………クリスちゃんが………」

 

「わかった。それだけ聞いたら充分だよ。未来達の安全なら確保してきた。あとから無事を知らせてくれる」

 

「ちがうの………「私は、酷いやつだったな。だから響、最後に私の力で守らせてくれ」って、やっと会えたばかりなのにっ。まだ、四人で再会してないのに………」

 

姉さん。あんたの優しさは確かに響に伝わったよ。

だからこそ、ここからはあんたの弟の役目だ。

 

「響はよく頑張った。誇って良い。少なくとも、僕は知っている。だから僕が、響の代わりにアイツを倒すさ。」

 

僕はそう言って、響にキスをした。

 

「そのキスは、勇気のまじないだ。また、立ち上がるためのね。響、少しガングニールを借りる」

 

ガングニールをラジエルで調べて響へ返した。

 

「ありがとう。響の思いは僕がつれて行くよ」

 

「別れの挨拶はすんだか?」

 

「人の告白やキスを黙って見るなんて、拗れた年増にしては、気が利きますね。でも、僕はあんたを許さない」

 

「この私の慈悲を無視し、尚侮辱するか!!!良いだろう。すぐに貴様も立花も、あの世に送ってやろう」

 

「あんたが姉さん達に与えた痛み・悲しみ・絶望・恐怖・怒りを本人達に変わって、僕が返してやるよ。あんた言ったよな。痛みこそが人と人を結ぶと!!!」

 

怒りに震える僕はサンダルフォンとハニエルを呼び出した。

 

「ああ言ったとも、愚かな小僧よ!!!」

 

僕はサンダルフォンを振り下ろし、ハニエルで変化したガングニールでフィーネを追った。

 

「ええい、訳のわからん力を!!!それが平行世界の力か!」

 

フィーネの腹に一発拳をぶちこんだが、ネフシュタンの回復には、及ばなかった。

 

「ハハハッ、きかんなぁ!!」

 

反撃とばかりに、僕はネフシュタンの鞭で切り刻まれた。カマエルの力がなければ即死だったが、もはや千日手だった、

 

「クソッ、決定打が足りない。どうすればっ………」

 

そんな時にリディアンの放送設備を使って、リディアンの校歌が流れた。

 

未来達がやってくれたんだ!いける、響達が復活すれば

フィーネに勝てる!

そう思った時、僕の体を光が包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは、どこだ!?

 

そこには、無表情な少女と、

長髪で目の下に大きな隈を作った女性の二人の精霊がいた。

 

〈あたしたちがあなたに最後の力を授けるわ。といっても、実質的に私の力は渡ってるんだけどね〉

 

無表情な精霊ー万由里さんの言葉の意味が僕はわからなかった。

 

〈あたしの力は、精霊の力の集合体。つまりあんたが収束礼装って呼んでたやつよ。〉

 

僕は言葉を失った。

 

〈あたしの目的は、限定解除。あなたの礼装は、どれも限定礼装だから、燃費が悪いのよ。あなたはそれを技術でカバーしていたみたいだけどね。〉

 

なるほど、だからいつもすぐにバテたんだ。

 

〈そういうこと。それが貴方のケルビエルよ〉

 

万由里さんがそういうと後ろに下がり、

 

今度は、目の下の隈の大きな女性ー令音さんが語りだした。

 

〈はじめまして。今代の精霊よ〉

 

はじめまして。令音さんの目的は、何ですか?

 

〈私の目的は、君に能力の継承と、

力の条件の詳細を語ることだ〉

 

力の条件ですか?

 

〈ああ。私の能力が真に解放されるのは、

互いの心を通わせた時だ。君なら、

この意味がわかっているんじゃないか?〉

 

「デートして、デレさせる」ですね。

 

〈ああ。君は既にそれを無意識で行ってきたのさ。〉

 

デートした時ではなかったと思いますよ。

キスしたのは…………ってもしかして!?

 

〈そうだ。デートして、デレさせ、キスをする。

シンがしていたことを君もするんだ。

但し、君が与える側なだけさ。〉

 

なら、響と姉さんは………

 

〈ああ。いずれ覚醒するだろう。君が支えたまえ

そのための力を私は君に贈るのだから〉

 

令音さんが渡した物は、見えないが力を感じた。

僕は感謝した。

わかりました。御二人ともありがとうございました。

 

 

 

その言葉を最後に僕の意識は現実へと引き戻され、

 

「「「シンフォギアーーー!!!」」」

 

再び立ち上がる響達を見上げた。

 

 




次回でフィーネとの決戦をします。それに伴い、次話の投稿まででアンケートの締め切りとします。

結果は原作13話の三週間後の描写があった話にあたる回で発表します。

次回〈限定解除!!!〉


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限定解除!!

フィーネさんとの決戦回です。

また、閑話の期間で、アンケートを行います。
よろしければ回答をお願いします。

それでは本編をどうぞ。


僕が二人の精霊から託された力は、

今までの力と桁が違うことがわかった。

 

「三人とも!良かった!!戻ってこれたんだね!!」

 

「「「勇(君)!?その翼は!?!?!?」」」

 

響達に言われて自分の姿を見ると、限定礼装から完全礼装に変化し、ラファエルの翼とは別の、一対十色の翼が生えていた。

 

「どうやら、これが僕の本当の力みたいだ。そっちも似たようなものでしょ?」

 

「うん。なんだかよくわからないけど、力が溢れてくる。いつでもいけるよ!勇君!」

 

そんな話をしていると、フィーネはノイズで周囲を埋め尽くした。

 

「へっ、どれだけ出ようが今さらノイズごときであたしが止まるかよ!!」

 

その言葉を合図に姉さん達は、戦闘を再開した。

そして、エクスドライブによる念話での三人の息のあいようは、見ていて惚れ惚れしたが、僕も男だ。

格好をつけたいのは、男の方なんだよ、響。

 

「じゃあ僕もやるか」

 

〈時喰の城〉を展開して、周囲のノイズを一気に自壊させた。

 

「ハハハッ、おもしれえなぁ勇、お前の能力はよぉ!」

 

姉さんが本気で笑ってる。なら、僕も合わせるか。

 

「〈ザフキエル〉!行くぞ!!」

 

ザフキエルを呼び出して、2丁拳銃スタイルでノイズを撃ちまくった。

 

「二人ともすごい乱れ撃ちだね!!!」

 

「「残念だが、狙い撃ちだぜ!!!」」

 

響が、乱れ撃ち、翼さんが切り伏せる。片付くのは時間の問題だと思ったが、翼さんが何かに気づいた。

 

「気をつけろ皆!!!やつが次の手を撃って来るぞ!!」

 

すると、フィーネはソロモンの杖を自分に刺して、ノイズを取り込みはじめた。

 

「三人とも!やつがノイズを取り込んだ!!!」

 

すると、フィーネの体表面がノイズに覆われ、

カ・ディンギル程の大きさになった。

なのでとりあえず煽っておいた。

 

「オイオイ、敵の巨大化は負けフラグだって知らねーのかフィーネさん?」

 

「この私を見て尚侮辱するか!!!雪音勇!!!」

 

フィーネが放つ攻撃は町を消し飛ばした。

 

「町が!!」「なんという威力!?」

 

そして装者の攻撃を軽く耐え・返したフィーネは高らかに笑った。

 

「いくら、力を引き出しても欠片は欠片だ。完全聖遺物には敵わんさ」

 

そう攻撃して来るのを僕は待っていた。

 

「〈ミカエル〉〈ハニエル〉!!」

 

すかさずハニエルをミカエルに変え、二つのミカエルで攻撃を返してやった。

 

「自分の火力に潰れろ!!」

 

「チィ、また貴様か!?」

 

流石のフィーネもこれは効いたのか態勢を崩した。

すると、姉さんと翼さんが移動と陽動をはじめた。

なるほどね、狙いはアレか。

 

「響!!援護するからちゃんとつかめよ!!」

 

僕はすぐにメタトロンとカマエルを出し、砲撃を放った。そして空いた穴からデュランダルが飛んできた。

 

「そいつが勝機だ」 「掴みとれ!」 「援護するよ響!」

 

僕はラファエルを展開してデュランダルを引き寄せた。

 

「させるか!!!」

 

しかしフィーネも黙ってはとらせないように手を振り下ろして来た。

 

「サンダルフォン!!、ザドキエル!!」

 

こちらもサンダルフォンで手を切り落として更にあたらないように氷の塊を作って蹴飛ばした。

 

そしてデュランダルをつかめた響だが、本日二度目の暴走状態になった。

 

「〈ガヴリエル〉!!、みんな!!響に想いを届けてくれー!!!」

 

展開したガヴリエルにより、僕はその声はリディアンに届けた。

 

 

するとみんなの声が聞こえた。

 

 

 

「響聞こえるか?お前の勝利を願うみんなの声が!!」

 

響は、僕の・翼さんの・姉さんの・二課のみんなの・響がかつて助けた人達の・そして未来の声を聞いて正気を取り戻した。

そしてデュランダルを振り下ろした。

 

「ガアアッ、どうしたネフシュタン!何故再生しない!まさか!!完全聖遺物同士の対消滅か!」

 

「フィーネ!!簡単だよ!あんたは混ぜるな危険ってなる二つの道具を雑に扱い過ぎたんだよ!」

 

僕はもう一度フィーネに近づきながらラジエルを左手に展開した。よし、アレができるなら………

 

「そういえば、姉さんを苦しませて、見捨てた分はまだ許してねえぞ!!フィーネ!!」

 

僕はラジエルをもっていない右手に霊力を込めて全力でフィーネをぶん殴った。

だが、フィーネはその推進力で鞭を手繰り寄せて、月の欠片を落としてきた。

 

「しまった!!油断した!!!」

 

「フハハハ!!私の勝ちだ。私は何度でも、いつの時代でも蘇る。私は永遠に不滅だ!!!!」

 

流石はフィーネだ。倒れながらも言うその言葉には、

意志の強さを感じた。

でもそれは、僕の幼馴染みも同じだった。

 

「そうですね。なら、私達の代わりに伝えてください。人には歌がある。信じられる可能性は0じゃあないって」

 

「はあ……………、仕方ないわね、胸の歌を信じなさい」

 

そろそろだな。僕は口を挟むことにした。

 

「なあフィーネさん。貴女はこの世を楽しめたか?

僕は未練だらけさ。まだやり残したことがたくさんあるからね。本当は貴女も同じじゃあないのか?」

 

「勇君?どうしたの?」

 

響が僕に尋ねたが、構わず続けた。

 

「貴女の本音を教えてください」

 

フィーネは少し悩み

 

「そうだな。先史文明の次に良い世だったさ」

 

そう呟いた。その言葉が僕は聞きたかった。

 

「ありがとうございます。これで心おきなく使えます」

 

そして僕は創造と破壊の天使を呼んだ。

 

「頼むよ、〈アイン〉フィーネを救ってくれ」

 

すると、無色の天使がフィーネを覆い、

崩壊する体を作り直した。

 

「これ………は???」

 

「これが僕の最後の天使の力です。」

 

困惑するフィーネに、僕は言葉を続けた。

 

「貴女は姉さんを苦しめたけど、助けてはくれたんだ。僕だってそれには感謝してるんだ。

今のは、そのお礼ってことで良い」

 

「フフフ、姉弟揃って不器用ね」

 

そんなことを話していたら、響達が動き出してた。

 

「世界を救いに行ってきなよ三人とも。

今度は、僕たちが待ってるからさ」

 

すると、ここで姉さんが割って入った。

 

「勇!あたしは必ず帰ってくる。未来達のことをぜってー守れよ。泣かしたら許さないからな!!!」

 

なんとも姉さんらしいな。泣かせるのは、貴女達の方なのにな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして僕たちが響達を見送った後、空に流れ星が見えた。どうやら、うまくやってくれたらしい。

だけど僕は、未来の涙だけは止められなかった。

 




この話の投稿が最後の投票期限です。

次回投票結果を発表します。

次回〈一番辛い三週間/幼馴染み〉


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一番辛い三週間 / 幼馴染み

アンケートの結果、

①その頃のキャロル

②未来とのデート

③勇の家出

④響のガングニール

の順番の投稿となりました。回答してくださった皆様、ありがとうございます。

それでは本編へどうぞ。


あの後、僕は弦十郎さんから、政府の方針と今の情勢を知らされた。

 

「やっぱり今の姉さん達は表向きは、

〈任務活動中の死亡〉扱いという流れになったんですね。

フィーネの扱いはどうなっていますか?弦十郎さん。」

 

「うむ、やはり君だけには隠せんかったか」

 

そう。僕には原作知識と、ラジエルの能力で、

そもそも隠し事は意味をなさない。

というか、弦十郎さんと二課の旧本部で話をしている。

 

「まあ、〈予想通り〉って顔で言われても説得力がありませんよ。僕は師匠たちからその辺を教えられたので」

 

「ハッハッハッ、なかなか良い師匠に出会ったじゃあないか。俺も是非会いたいものだな」

 

「まあ、師匠たちなら、多分後数年くらいで表に出てくると思いますよ。というか、質問に答えてください」

 

「いやすまんな。フィーネの扱いは、

〈響君たちの最後の一撃をもって死亡確認〉だ」

 

「ちなみに俺と籍をいれて戸籍上は

〈風鳴了子〉となっているぞ」

 

やっぱりそこに落ち着くか。

 

「ありがとうございます。そろそろ未来を迎えに行きますね」

 

「すまんな。くれぐれも未来君には………」

 

まあ、そう言うよね。僕も人の努力を壊したくはないから。

 

「大丈夫です。姉さんたちが直接迎えにくるまで、黙ってますよ。皆さんの努力を無駄にしたくはないですから、姉さんたちに言っといてください。大丈夫って」

 

そう、未来にはまだ知らされていない。それが知らされるのは、少し後の話なんだから。

 

~~side未来~~

 

私は今、二人の幼馴染みのお墓に通っているけど、名前は書いてない。しかもそのうちの一人は写真すらなかったので、私と勇君しかそのお墓が誰の物かわからない始末だ。悲しいな。せっかく再会できたんだよ。なのにどうして行っちゃったの…………クリスさん…………響。

 

「どうしてこうなったんだろう」

 

でも、勇君の方がもっと辛いだろうな。8年間クリスさんを探し続けて、再会できたのがつい先日。そして4人で再会出来る希望を持てたのに、その矢先でクリスさんや、響をうしなったんだから。

それに、初めてライブを楽しませてくれた翼さんもうしなったんだ。

 

「それに私たちを守るために、あんなに恐い所で頑張っていたのに」

 

わたしは、そう呟いてしまった。呟いてしまうと、心がどんどんいたくなる。今の私に残ったのは、勇君だけだ。

 

私は、彼が好きだ。彼を支えるために、何でも出来る努力はしてきたつもりだ。でも、今回はもう我慢なんかしてられない。彼は涙を隠すため、今の私の側はいない。もう次に会った時は、少し早いけど彼にプロポーズをしよう。

 

マモラナキャイケナイ。カレノコトハワタシガマモラナキャイコナイ。ナントシテデモ、ソレガワタシニノコサレタユイイツノヤクメナンダカラ。ゼッタイニワタシハカレヲカナシマセナイ。ナニニカエテモナニヲギセイニシテモカレノコトダケハハナシテハイケナイ。ソレガワタシノサイゴノシゴト。イッショウヲカケテデメモナシトゲテミセル

 

~~未来sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~side響~~

 

私たちは今、新しい二課本部の潜水艦にいる。

 

「ねえクリスちゃん、私たちどうすれば良いかな……」

 

私は、せっかく勇君と会えたのに、行動制限中となっていて、私たちの生存を伝えられていなかった。

師匠たちからは、対外勢力の動向がおちつくまでの辛抱らしい。

 

だからすごくつらかった。二人にウソをつかないといけないことが。だから私は時間が早く過ぎることを願った。

 

~~響sideout~~

 

 

~~sideクリス~~

 

あたしは今、後悔している。あたしがフィーネに唆されなければ、みんな幸せで暮らせたんだ。

 

でも、オッサンからたったひとつだけ良い情報があった。勇とあたしは義理の姉弟だったんだ。だから、

 

「もし君が俺たちの養子になるなら、勇君と事実上結婚出来る」

 

ってことが教えられた。

 

バルベルテで家族を失い、家族は勇のたった一人となった。あたしがお姉ちゃんなのに、アイツに危険を背負わせた。情けない。あたしがもっと強かったらって思っていた。そうしてその気持ちをオッサンに相談したら、もとの生活に戻ったら鍛えてくれる約束をした。

そうだ。あたしも二課に所属しよう。大切な唯一残ったあたしの家族。もう絶対に次に手を繋いだら離さない。

弟は姉のものだ。絶対に渡さない。相手が幼馴染みでも、勇のことだけは別だ。あたしは絶対に愛しい弟を婿にはやらない。例えどんな強いやつが来ても、絶対に倒してやる。それがこれからのあたしの生きる目的だ。

 

覚悟しろよお前ら。いまのあたしは誰にも負ける気はしないぜ。

 

~~クリスsideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~side勇~~

 

ルナ・アタックから三週間がたち、響たちが戻って来て未来たちに近づいていたノイズを撃退した。

僕はまたポカするのが恐いので、未来から逃げていた。

だけどそこには、感動的な、ひびみくの再会はなく、

どちらかというと、

 

未来VS姉さん

 

後その他のみなさん

 

みたいな構図が出来ていた。だって、

 

 

「クリスさん。私は決意しました。貴女に勇君はもったいないです。弟離れを拗らせる前にさっさと身を弁えてくださいね。クリス義姉さん」

 

 

「ほぉ、おもしれぇことをいうようになったな未来。だが、寝言は寝てから言うもんだ。まだ明るいから言うには早いけどな。お前みたいな失礼なやつは義妹には認め難いし、なにより弟は姉の物だろう?

もう少し立場をわかった方が良いぜ、その断崖ぐらい栄養が足りない奴にはわからないことかもしれないがな」

 

 

 

 

「立花、私たちは命が惜しかったら何も言うな」

 

 

 

「翼さん。この雰囲気で諦めないでください」

 

 

 

 

 

 

僕は一体何をまちがえたのだろう?




〈393が初恋からヤンデレに覚醒しました。〉

〈クリス姉さんがブラコンからヤンデレに進化しました。〉

次回はアンケート通りのキャロルの閑話です。

サブタイトル〈チフォージュ・シャトー〉お楽しみにしていてください。


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閑話 チフォージュ・シャトー

アンケート結果第一番、キャロルの閑話です!

また、別のアンケートも行っておりますので、よろしければ回答お願いします。

それでは本編をどうぞ。


オレの愛しい伴侶である勇が、俺のもとを離れて一月半が過ぎた。

 

オレには全てがわかる。勇は姉を探しだし、幼馴染みと再会し、日本政府の者達の力を借りながらフィーネを退けた。オレは奴が気に食わんかったが、シンフォギア装者が・勇と共に・力を合わせて倒したのだ。オレは腸が煮えくりかえりそうだ。腹立たしい。無性に腹立たしいのだ。

 

世界を分解するか?

 

いや、ダメだな。そんなことをして勇に嫌われたら、オレは生きて行けん。太陽を失うわけにはいかんのだ。ガマンだ。たった数年の辛抱だ。そうすれば、勇は絶対にオレのもとにやってきて愛を囁いてくれるんた。

今我慢しなくてどうするのだ?

 

ああ、愛しい愛しいオレの勇。なんとしてでもオレはお前を、手にいれる。邪魔するものは必ず殺す。

オレ以外の者が世界を支配するのも気に食わん。

オレは玉座に興味がないが、王にするなら勇一人だ。それ以外はあり得んな。もしそんなうつけが現れたらオレは動くか?だが、勇に嫌われるのはもっと困る。

愛しい愛しいオレの勇。お前が世界で、世界はお前だ。

 

もし誰かが、オレの勇を惑わすなら、オレはソイツを必ず倒す。本当なら切り刻んで殺してしまいたいが、それをすれば勇は悲しむだろう。それはダメだ。オレの太陽は笑顔でいるから太陽なんだ。勇を悲しませるのが、一番ダメなのだ。嗚呼なんともどかしいことだ。

 

そういえば、勇はシンフォギア装者と共に新たな力を手に入れていたな。オレと戦った時以上に鮮やかな色をしたあの礼装は素晴らしいものだ。オレももう一度戦いたいな。だが、〈エレメンタル・ユニオン〉は破損してしまったのでな。少々手荒いが、〈ダヴルダヴラ〉を用意しよう。勇とオレのとても強い運命の象徴であるコイツを、シンフォギア装者に使わねばならんことは遺憾だ。

しかし世の中には勝者と敗者がいるのだ。勇のことを慕っている者には悪いが、現実を教えることもオレの愛だ。勇よ、待っていろ。必ずオレがお前に近づく害虫を駆除してみせよう。

 

 

「マスタァーは良い顔をしてますねぇ。旦那様は幸せ者ですよ。

こんなに素晴らしい愛をマスターが語ってくださるのですから、嗚呼旦那様、早くお帰りくださいませ」

 

「マスターの派手な一世一代の愛を成就させるのが我らの役目です。そのための命令なら、いかなる覚悟も我々は済ませています。旦那様のお帰りを我々は派手にお待ちしています」

 

「マスターは素晴らしいゾ。そして私たちは必ずマスターを支えるんダゾ。だから旦那様の帰りが今か今かと待ち遠しいんダゾ」

 

「我々の悲願はマスターの、マスターの悲願は旦那様の。

我々の誓いを必ず果たす姿をご覧に入れてみせますわ。どうかお導きを旦那様」

 

「……………………………(我らがマスターと旦那様に祝福を)」

 




キャロルさん可愛い。そして装者は現在ハードモード。勇君の正妻戦争は、まだ始まったばかりです!三期は絶対に荒します!

次回〈幼馴染み未来、デートする〉

更新をお待ちください!


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閑話 幼馴染み未来 デートする

アンケート結果第二番、未来さんのターンです!

アンケート第二弾の回答を、よろしければお願いします。


それでは本編へどうぞ!


姉さん達が帰って来て、僕は唐突に未来に呼び出された。

 

「勇君、明日の午前9時に旧リディアン正門前に来てね。もし来なかったら、見つけ出して一緒に来てもらうから」

 

あのー未来さん、こっちの事情とか選択肢とか、拒否権とかはないんでしょうか。

 

「いやごめん未来。明日から調べたいことと、報告したい人がいるんだけど…………」

 

「私も二課の外部協力者だよ。いいでしょ。私はね、勇君と一緒に行きたいの。行き先はどこでも良いけど、勇君がいてくれないなら意味はないの。わかる?私の気持ちがどれ程のものか教えないとわからない?」

 

あまりの未来の言葉に恐怖した僕は諦めた。

 

「わかった。明日の9時に旧リディアン正門前だね。ちゃんと行くから、もう今日は休ませてください」

 

 

「……………………………………………………。

まだ語りたいけど仕方ないか。明日勇君が来てくれなかったら意味はないし、まだヤるには早いか」

 

聞こえてる。聞こえてます未来さん。貴女の呟きはしっかり相手が聞いてますからもう許してください。

 

「本当に明日行くから今日は寝る!!お休み!!」

 

僕は急いで通話を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~翌日~~

 

約束の時間30分前に待ち合わせ場所に行くと、太陽のような笑顔をした未来がいた。

だから、早すぎなんだって。

 

「おはよう未来。もしかして待たせた?」

 

「あっ勇君大丈夫だよ。私も1時間前からいただけだから。響はすぐに遅刻するし、なにより勇君とのデートなんだから、待ちきれなくて寮にいれなかったの。響には私の邪魔をしないようにしっかり〈OHANASI〉しておいたから、心おきなくデート出来るね 」

 

目はキラキラしてるのに、言動が物騒だな。人間不振になりそう。

 

「とりあえず、時間が惜しいからすぐに行こう!」

 

「うん。勇君の好きな所に連れてってね 」

 

言われるがまま僕はまず本屋に向かった。

この近辺では規模の大きい本屋を。

 

「へえ、最近の中古本って中々揃いが良いな。保存状態もまあまあだし、カバーを掛ければ………」

 

「勇君ってそういうファンタジーも読むんだね。それって今度テレビ放送される作品でしょ?」

 

「うん。仮にも錬金術師だからね。創作作品ってのには作者の解釈が入るけど、同時に新しい発想をする場合もあるからね。僕の師匠達はむしろ読むことを進めたぐらいだから」

 

「へー。例えばどんな作品がおすすめとかある?」

 

「うーん最近だと〈この素◯らし◯世界◯祝◯を〉とか、〈◯0から◯しまる◯界◯活〉とかかな。

前者はギャグ系で後者はシリアス系。どちらも主人公のスペック事態は低いから、逆転の発想には感心するものがあるね」

 

「そんなアニメがあったんだ。」

 

「ちなみに、原作は小説タイプのラノベだから、このまま行こっか」

 

「うん。エスコートよろしくね。」

 

こうして僕はラノベコーナーに行き、たまたま揃ってた

〈リ◯ロ〉の1から7巻までと、〈こ◯素◯〉1から3巻までを未来にプレゼントした。

 

「こんなに良いよ。私だってお金もってきたし」

 

「大丈夫。二課からの給料と今回の貢献報酬があるから。それに、こういうのは男が買うのが定番だからね」

 

「じゃあ次は、私が勇君にクレープを奢るね。美味しいところを知ってるんだから」

 

そうして未来に連れられてクレープを食べたりしたし

 

「よっしゃ!ストライクがターキーだ!一気にスコアが伸ばせる!!」

 

「ああ!!ピンが両端に割れちゃった!!」

 

未来とボウリングを楽しんだり

 

「流石に男子ね!!あの娘に劣らず………よく食べる!!」

 

噂のお好み焼き屋の〈ふらわー〉に行った。もちろんデート中はとても楽しかった。そして空が朱くなりはじめる頃には

 

「あー楽しかっったー!!でも、残念だなー!勇君ともっと一緒にいたいなー!」

 

「うん。僕も名残惜しいよ。でもさ。今度は4人で来ようよ。まだ僕たちは再会したばかりなんだ。そういう思い出を積み重ねたいな」

 

「そうだね。〈2人っきりのデートはいつでも出来る〉もんね。〈今度はみんなで〉、だね 」

 

心なしか未来の言葉が強調されているような気がした。

 

「それじゃあ未来。お休み」

 

「うんお休み。〈またね〉」

 

そうして僕は未来と別れて帰路に着いた




冒頭の未来がストーカー紛いになってしまった。ヤンデレ入りを果たした以上後悔も反省もしていません!

次回〈勇の家出〉

更新をお待ちください!


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閑話 勇の家出

おかげ様で本作品もお気に入り登録400件&UA45000突破しました。皆様ありがとうございます。

今回はアンケート結果第三話です!

第二回アンケートの回答も、良ければお願いします。

それでは本編へどうぞ。




姉さん達が帰って来て日が経ち、ひとまず僕と姉さんはそれぞれに旧本部の一室があてがわれた。

 

「勇!昔みたいに姉弟で過ごそうぜ。な!な!」

 

だけど今日は、朝から姉さんが煩かった。姉さんはもうすぐリディアンの二回生として編入するのに、弟離れをしてくれない。仲が良い姉弟ってのは、悪くはないけど。

でも最近、姉さんの目が濁ってきてる気がする。

 

「あー最近夏が近づいて来るから暑いなー。そうだ!

勇!2人で一緒に風呂に行こうぜ!姉弟水入らずってやつだ。そうだ!それが良い。その後ベットでゆっくり話し合おうぜ!思い出とか語りたい!そうしよう!良い考えだろ?」

 

明らかに言動がおかしいし、目がギラギラしてる。なのに息は少し荒い。完全に血迷ったみたいだ。

 

「ザドキエル………」

 

僕は静かに天使を出して姉さんに近づいた。

 

「姉さん!僕が帰って来るまでそこで頭冷やして!」

 

そう言って姉さんを壁に張りつけた。

 

「待ってくれ!勇!誤解なんだよぉ!!!」

 

姉さんの叫びを無視して僕は家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~商店街~~

 

「はぁ。とりあえずどこで時間潰そうかな………」

 

「そこにいるのは、もしかして勇か?」

 

後ろから声を掛けられ、振り向くと、

お忍び姿の翼さんがいた。

 

「翼さんじゃあないですか。偶然ですね。どうしてここにいるんですか?」

 

翼さんは顔を赤くしながら、力無く呟いた。

 

「緒川さんが………その………たまには外に行っては………と」

 

あっ、これあれだ。片付けの邪魔になるから追い出されたやつだ。流石女子力0女子の〈SAKIMORI〉だ。

 

「僕は姉さんの言動がアレだったので、家を出ることにしました。翼さんがよろしければこの辺を案内してくれませんか?」

 

 

「それは………アレか?………男女が行う逢い引きというやつか?」

 

「あー、言われてみればそうですね。僕としては、町を連れ回って欲しいんですが………時間潰したいし」

 

「ふむ。ならば私が案内してやろう。私のオススメで良いか?」

 

「おまかせしますよ。先輩」

 

「先輩か………良い響きだな。よし、今日の私を先輩と呼べよ、勇」

 

そして僕と先輩のデートが始まった。

 

「勇!見ろ!このバイク!中々良いデザインだ!」

 

「そっか。僕ももうバイクの免許がとれるのか」

 

バイクショップを見て周り。

 

「勇!最近のゲームはすごいな!というか勇はさっきから必中じゃあないか?流石雪音の弟だ!」

 

「いや、姉さんと比べられたら天と地の差が………」

 

ゲーセンでゾンビをシューティングしたり。

 

「勇!小腹が空いただろ?私の奢りだ!」

 

「美味しい!クレープを食べたの久しぶりだ!」

 

屋台のクレープを一緒に食べたり。

 

「やっぱり私は歌が好きで、誰かに聞いて欲しいんだ。

勇!私の歌は特別だぞ?」

 

「現役歌手とカラオケとか、相手が僕で良いんですか?」

 

カラオケボックスで歌ったり。

 

「ここは皆がよく名前を出す店でな!」

 

「響から聞いてますよ。店長さん!お代わりお願いしますよ!」

 

「響ちゃんに負け劣らず………流石は男子だね!」

 

〈ふらわー〉でお好み焼きを食べたりした。

すると翼さんの端末がなった。

 

〈翼さん。片付けが終わりましたので、

もう大丈夫ですよ。〉

 

「緒川さんからですね?あの人本当にすごいな!」

 

「いつも本当に感謝してるさ。おっと、勇もせっかくだからこっちに来てくれ」

 

そう言われて近づくと、体を引き寄せられた。

 

「今日は素敵な1日だった。機会があればまた頼むぞ?」

 

そう言って翼さんは僕にキスをした。

 

「つつつつ翼さん!!!!何してるんですか!!!!」

 

「いや何、雪音と立花から話は聞いていてな。今回の礼に私からのプレゼントを………と思ったが、存外恥ずかしいな………私からでは不満だったか?」

 

「その2人の言葉を間に受けましたか………悪くはありませんが、もっと自分を大切にしてください。大切な先輩なんですから」

 

「そうだな。私も真に好きな者ができたときは、そうさせて貰おう」

 

「今日はありがとうございました。でも翼さん、他人のデートプランの横流しだけは勘弁してください。次の行き先がわかっちゃうじゃあないですか」

 

「そうだな。次があれば私自身のプランを考えてくるさ」

 

「よろしくお願いしますよ。ではまた!」

 

そうして僕たちは別れて各々の帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後帰ってからの姉さんの相手がしばらく面倒だったのは、また別の話。

 




姉さん………ベッドで一体何を企んでたと言うのでしょう。とりあえず逃げた勇君は正解。

次回〈響のガングニール〉

更新をお待ちください。


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閑話 響のガングニール

アンケート結果最後の閑話です。

響のガングニールに対して勇君が思うことは?

また、第二回アンケートの回答を、よろしければお願いします。

本編へどうぞ


ルナ・アタックから二課の組織が立て直される最中、

僕は本部に呼び出された。

 

「弦十郎さんとフィーネさんに呼び出されたってことは、響のガングニールの件ですね?」

 

「ほぉ、流石だな。その通りだ。」

 

「立花響の融合状態を一番把握しているのは私だ。

お前もそれはわかっているのだろう?」

 

「ええ。そして貴女が、何とか出来る聖遺物に心当たりはあるものの、今はその手段が使えないことも知ってますよ」

 

「本当なのか!了子君!」

 

「ああ。勇の言う通り心当たりのある聖遺物は一つだけある。天羽奏の家族を手に掛けた時に掘り出された聖遺物だ。お前も心あたりがあるだろう?弦十郎」

 

そう。この2人は本当によくわからないが、確かな夫婦になっていた。

古代からの科学と歩く国際条約指定人間

多分この人達以上の夫婦は、日本にはいない。

世界単位で見ても、裏まで合わせて何組いるかって、

レベルだよね。

 

「〈神獣鏡〉か?だが、アレは…………」

 

「私がノイズを発掘チームに仕向けたのだ。ソロモンの杖がなくても、人の多い場所に誘導する事はできたのでな………」

 

マジか。そんな描写原作にあったか?

 

「話を戻そう。私は発掘された神獣鏡をアメリカに贈ったのだ。解析させるためにな。

その結果アレは、科学・異能両面における現代最強のステルスであり、魔を払う光を持つ性質がある。」

 

そう、神獣鏡を使えば、響のガングニールは消し去れる。だけど、………

 

「ギアとしての出力の低さは、私の作ったギアでも突出して低いのだ。凡そ戦闘には向かんだろうな。

更に装者の候補さえいない。現状はあまり期待できんと見て良いだろうな。」

 

「むう、致し方無しか。」

 

「ちなみに響から取り出したガングニールはから、新しくギアを作ることは、可能ですか?」

 

「なんだ勇?面白い考えでもあると言うのか?」

 

「もし仮に響から取り出したガングニールの破片があれば、何かの拍子にギアが破壊されても、響専用のギアをフィーネさんなら作れるんじゃあないですか?」

 

「面白い発想だな。体組織から発生した欠片でそのものの為のギアを作るか………融合症例には及ばんかも知れんが、適合係数はかなりの数値が見込めるか………」

 

フィーネさんが科学者の顔になったのを見て、僕は弦十郎さんに聞いた。

 

「今の響にこの事は………」

 

「ああ。君の予想通り響君達にはまだ伝えていない。こちらには了子君がいるんだ。まずはやれるだけやるべきだろう?それが俺のあるべきだと思う大人の姿だ。」

 

「僕は貴方以上に人を信頼できる組織のトップはいないと思いますよ。ある意味理想の上司像ですね」

 

「時に勇?貴様の発想は物事をあまりにも自由だ。まるで嘗て私と争った錬金術師のようじゃないか」

 

バレてた。響を助けたいが為に口を滑らせ過ぎた!!

 

「………黙っててくれるなら良いですよ。

僕は姉さんと別れた後、パヴァリア光明結社で修練を積み重ね、嘗ては大幹部の次くらいの実力があるとまで言われてました。今はどうかわからないですけど………」

 

「それは本当か!?奴らのもとにいて序列五位の離反に何も動かないだと!!!あり得ん。勇!何があった!!」

 

「どっちかというとあんたのせいだよフィーネさん!!僕はバルベルテで家族を失ってから記憶と力を取り戻した。その知識の提供を元に僕は結社で修練したんですよ。姉さんが見つかるまでの契約ってね!!」

 

「ハハハハ!!まさか奴らとそういう取引をしたか!!奴らが貴様を助けるほどのものだ只の知識ではあるまい?」

 

「平行世界におけるアダムの正体と目的、そして結社の末路ですね」

 

「なるほどなぁ。奴等も呑むはずだフハハハハハハハ」」

 

この後フィーネさんは大分笑った後、この話は他言禁止の三人だけの秘密になった。




次回もう一つ閑話を出します。

次回〈雪音姉弟の新しい家〉

更新をお待ちください。


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閑話 雪音姉弟の新しい 家

本日のお昼に誤って執筆中の回を投稿してしまいました。現在は削除しています。完成と話の展開を噛み合わせて投稿しますので、もうしばらくお待ちください。

お騒がせしました

無印編最後の閑話です!

私がこの章で一番書きたかった閑話でもあります!

また、第二回アンケートの回答もよろしければお願いします。

それでは本編へどうぞ。


二課暮らしもしばらくした頃、僕達4人は弦十郎さんに呼び出された。

 

「呼び出して悪かったな。実はクリス君と勇君の住まいが決定したのだ。その報告の為に集まって貰ったのだ」

 

「本当かよオッサン!!どこだ?間取りは?交通の利便性は?学校との距離は?店とか近くにあるか?セキュリティは万全か?病院は?」

 

姉さんがっつき過ぎだよ。僕が恥ずかしい。

 

「ハッハッハッ説明を順にしてやるから待ちたまえ。

まず場所は新生リディアンから徒歩15分で近くにスーパーがあり、俺達のダミーカンパニーの一つなのでセキュリティは保証しよう。

間取りはバス・トイレ別の4LDKで2階建て。

2階は3部屋だな。

ついでに地下室も二部屋あるぞ。男のロマンだからな。

部屋の配分はあとで決めると良い。

任務外のプライバシーは保証するし、

了子君の要望で防音設備と特殊ガラスを採用したので安心すると良い。人も呼べるし、他者の迷惑はかからんように生活すれば困ることは、ないだろう。費用も俺たち持ちだ。命を張って戦う君達への福利厚生さ」

 

「聞いたか!勇!やっと姉弟で一緒に住めるぞ。

しかもセキュリティも良いし、立地も良い。部屋もあるからあたしはヤりたいことがあるんだ。

なっ!なっ!良いだろう勇?あたしは寂しかったんだ!だから勇と一緒に過ごせるならどこでも良かったが、こんなに良い場所絶対ないぜ。ここにしよう。良いだろう?」

 

姉さんのテンションがおかしい。

これじゃまるでキャロルだ。話が通じない。

 

「だがよ、解せねえなオッサン。何で響や未来を呼んだんだ?コイツらはあたしと勇の愛の巢には入らねえだろう?一体なんの関係があるんだ?勇は愛しいあたしの弟だが、他の奴等にそれはいらない情報だろ?」

 

「ところがそーでもないんだよね。クリスちゃんごめんね。私と未来もそのお家の鍵を師匠達から貰ったの。」

 

「ごめんねクリス義姉さん。私も貰ったの。だって私たち幼馴染みじゃない。遠慮しなくて良いんだよ?」

 

「うむ。未来君の言う通り君達が幼馴染みだと知ってな。それで俺たちは君達の連携を強化すべくシェアハウスを提供することにしたのさ。事実上の治外法権だ。任務に影響がなければ煩くは言わんさ。その必要はないかも知れんがな」

 

「オッサン!コイツらはリディアンの寮で暮らしていたはずだ!そこはどうする気だ?それに親への報告は良いのか?勝手に決めちゃあダメだろ!!」

 

「あっクリスちゃん大丈夫だよ。お母さん達から許可も出たし、貴女のやりたいことを頑張りなさいって背中押されて来たから!」

 

「クリス義姉さん。一人に勇君を預けたらどんな間違いが起こるかわからないから、、私が勇君を守ってあげないとダメじゃない?」

 

「ふざけんなー!!!勇はあたしのものだー!!!」

 

「ハッハッハッ、モテモテじゃあないか勇君。君の明るい青春が俺たちは嬉しいぞ!!バックアップはしてやるから全力で楽しめよ!!」

 

みんなが言ってることに取り残された僕はこう思った。

 

もうどうにでもなれ………




次回は無印までの設定集です。

その投稿でアンケートを締め切ります。

結果発表は、二期の一話で行います。

次回〈設定~ルナ・アタックまで〉

更新をお待ちください。


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設定 ルナ・アタックまで

第二回アンケート投票をこの話で締め切ります。

今回は設定集です。それでは本編をどうぞ。


○雪音 勇(山田 勇)

 

主人公。特典によりデアラの天使、

及び修練環境の確約をされた。

・パヴァリア光明結社 序列 五位

・サンジェルマン達の直弟子

・キャロルと響と未来にプロポーズされてる。

・本人は、未来・キャロル・クリスの行動を

ヤンデレだとはまだ気づいてない

・ルナ・アタックでは、クリス保護の恩からフィーネの意思を確認して命を繋いだ。

 

天使の起動条件

 

①誰かを助ける覚悟をする。(バルベルテ)

 

②その人物が成長した時に、

デレさせてキスをする・される。(キャロル戦)

 

③能力を使いこなして尚誰かを救えない時、

守る者と守られる者の心が一つになること。

(フィーネ戦)

 

ただし③で覚醒した〈アイン〉は一時的な解放だが、

他の完全礼装の枷は外れている。

 

 

具体的なスペック目安

 

①アニメ二期の五河士道スペック

 

②限定礼装を纏った精霊本人レベル

 

③完全礼装を纏った精霊本人レベル

 

誕生日は6月7日

 

 

 

 

○立花 響

 

原作主人公。幼馴染みの一人。

・クリスと三度戦闘した時、他人な気がしなかった。

・幼少期に勇にプロポーズしたが、本人は未来に張り合った結果だった。しかし初恋のため、願望はある。

・未来のことは、原作同様親友の認識。

・重婚の件は完全に司令をたよるつもり。

キスはされたが、メインヒロインでは、ない。

 

○小日向 未来

 

原作ヒロインポジで、本作品でもヒロイン。

・幼少期に勇にプロポーズし、完璧な将来設計を考えている。計画的な行動を起こすヤンデレ。

・クリスに対し最初は敬語がついていたが、義姉になるなら不要では?と考えている。

・響のことを女性の親友認識はあるが、

恋愛においては〈上質なお出汁〉の認識。

・キャロルの存在は、まだ、知らない。

・デートはしたがキスはまだ。(重要)

 

○風鳴 翼

 

二課のエースで先輩。

・原作同様の活躍をしながら、勇君視点で展開が進む本作品では、不遇と言わざるを得ない。

・勇とデートしてキスできた唯一の人物(二課内)

・しかしヒロインではない。

 

○雪音 クリス

 

勇の義姉ではあるが本作品ではヒロインではない。

・幼少期の離別が、ヤンデレの切欠。

・勇といる為ならなんでもやる。手段は問わない依存型のヤンデレ。

・三週間の二課内隔離で、ヤンデレに覚醒した。

・幼馴染みと勇以外には人間不信手前な状態。

・勇に会いたい一心でソロモンの杖を3ヶ月で起動し、ライブ会場で使った。

・響のことは、手のかかる妹のようだと思っている。(恋愛感情がほぼ表に出ていない為)

・未来が義妹になることは許せない。

(勇が盗られそうな為)

・キャロルのことは、まだ知らない。

・キスは勇からして貰った。

 

○キャロル・マールス・ディーンハイム

 

原作では世界分解ガール。

・本作品では、初対面で勇の実力を評価した。

・大ケンカの前まではツンデレだったが、ミカエルで心が開かれてから愛憎反転型の既成事実型ヤンデレになる。ヒロインの筆頭。

・未来達の情報はシッカリと手元にある。

・勇とのキスはだいたいキャロルから。

・勇さえいれば世界なんて知らない。

でも勇が危険なら自分は動く。

・勇が他ヒロインに盗られたら、

世界を分解することも辞さない。

・泥棒猫はいつか粛清する。

・勇との戦闘は、初見殺しだった模様。

 

●参考スペック(アプリ版を参照)

 

初期のキャロル(様子見)

〈エンシェントバーストレベル50〉

 

決闘時のキャロル(動揺状態)

〈エレメンタルユニオンレベル60〉

 

原作三期〈ダヴルダヴラキャロル〉はレベル65で想定

 

現在のキャロル(霊力込みのスペック)

〈グラビトンエンドレベル70〉のスペックがある、

〈エレメンタルブレイドレベル70〉となっている。

 

 

また、〈ダヴルダヴラ〉の所持も確定。

 

 

●装者勢の参考ステータス

基本戦闘力

 

・通常ギアはレベル50で計算

 

・エクスドライブは、レベル60で計算

 

・現状の場合、どうあっても装者は勝てない

 

 

○サンジェルマン

 

本作品における師匠。

・アダム局長の行動が怪しくて信用はしていない。

・とりあえず原作のGX~AXZくらいで結社を一度解体したいと考えている。

・勇のことは、愛弟子であると同時に、息子のようだと考えている。

・勇が日本に帰って困らないように詰めれるものはスパルタで詰めた。多分オカンになる。

・セレナ救出は完全に勇には内緒。理由は後程。

 

○カリオストロ

 

本作品の師匠の一人で組織の外交担当

・勇に接触した最初の原作キャラ。(記憶復活後)

・色恋沙汰は大好き。

・人をからかうのは好きだが、キャロルにはやめることにした。彼女だって命は惜しい。

・勇は弟認識。

 

○プレラーティ

本作品の師匠一人で組織の技術班

・序列的には、勇に危機感を覚えていたので、キャロルへ押し付けたことで内心安堵した。

・勇はかわいい弟認識。

 

○セレナ・カデンツァヴナ・イヴ

 

原作世界なら享年13歳の故人

・サンジェルマンに命を救われた。

G編までは出番無し。

この世界なら19歳。

 

○天羽 奏

 

原作同様本作品でも故人で享年17歳

 

エルフナイン

 

原作GXまで出番無し

 

○マリア・カデンツァヴナ・イヴ

 

もう少し出番をお待ちください。

 

○緒川 愼次

二課のエージェントで翼のマネージャーで〈NINNJA〉

・活躍はちゃんとしているが、展開の都合上描写がされない、つまりは不遇ポジ。

 

○風鳴 弦十郎

 

二課の司令官で歩く国際条約な〈OTONA〉

・描写は比較的された。

・フィーネさんと、〈ルナ・アタック〉後に籍をいれた。クリスが望むなら養子として受け入れるつもり。

 

○櫻井 了子(フィーネ)

 

原作通りに行動した。

・〈ルナ・アタック〉失敗の際に勇に未練や楽しみがあるか質問のにあると答えて命は繋がれた。

・フィーネは、表向きでは死んだとされており、現在は櫻井了子として二課で行動している。

・パヴァリアのトップとは、何かに縁があるらしい。

・弦十郎と籍を、入れた。

 

○友里あおい・藤尭咲哉

 

原作同様本作品でも重要なオペレーターだが、

此方も作品の展開上描写割愛の不遇ポジ。

 

 

○安藤 創世・板場 由美・寺島 詩織

 

原作通りに行動したが、視点の関係で描写されない。

不遇ポジ。

 

○アダム・ヴァイスハウプト

 

結社の局長で全裸

・基本的に原作と同じ。

・他人に興味がないのでサンジェルマン達が、

結社解体のその時まで多分気づかない。

・多分原作改変のしわ寄せ被害は彼に来る。

 

○オートスコアラー達

 

基本的な性格は原作通り

・キャロルの人格設定に勇がキャロルの伴侶だと、

情報を登録してある。

・霊力がある以上原作より遥かに強い。

〈ガリィ〉が最低でも、

〈エンシェントバーストレベル55〉キャロルと

やりあえるスペックがある。

〈ミカ〉なら、〈エレメンタユニオンレベル65〉の

キャロルクラスのスペック。

〈ファラ〉及び〈レイア〉はその中間クラス。

〈レイアの妹〉は、基本的にシャトーに戦闘被害が出る観点上本作品では、戦闘不参加の建設系作業担当。

 

・完全に装者が戦力向上をしないと勝てない。




完全にキャロル陣営最強状態。ビッキー達のバラメーターは原作以上なのですが、これでも無理ゲーです。

次回〈ソロモンの杖護送任務〉

更新をお待ちください。


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G編 フロンティア事変
ソロモンの杖 護衛任務


この話よりフロンティア事変に入ります。

そしてアンケート結果より次回の閑話は、
セレナの閑話となります。

それでは本編をどうぞ。


2043年11月12日

 

僕たちはいま、岩国へ向かう列車に乗っている。

 

「くそっ、あいつらぁ!ちょっせえ動きをしやがって!!!」

 

「クリスちゃん10時の方向4体!」

 

「背中任せたぞ!頼んだぜ響!」

 

そう。姉さんと響は外でノイズと応戦している。

僕は最大戦力且つ護衛として、列車内で待機している。

 

「ウェル博士!あおいさん!前方車両へ!」

 

「このノイズ………まるで動きが制御されているみたいですね。〈ソロモンの杖〉以外にまさかそんな兵器が!ならば基地につき次第急いで解析しなければ!」

 

「そうですね。本当にそんな物があるなら、解析は必ず急務になるわ。ウェル博士、頼みましたよ」

 

「だけど、今この杖をむざむざ奪われるわけにはいきませんからね。そのために敢えて僕はここに残っています。殲滅だけならばそれで十分ですが、今回の僕の任務はあくまでも護衛ですから」

 

そう。今回司令からは、僕は最重要聖遺物を、確実に岩国の米軍基地に届けるべく、敢えて車内に残り、護衛役としてすごしていた。

更に原作知識を駆使し、ウェル博士から徹底的に目を離さないようにしていた。しかし目立つ動きどころか、ウェル博士自身のいる車両が特に狙われていることから、彼に操作する余裕等はないだろう。

僕の記憶違いだったか?いや、原作では確実に操作していたんだ。痕跡を、見落とさないようにしないと………

 

「おやおや、僕を随分見ていますね。

そんなにこの聖遺物に思い入れがありましたか?」

 

「ええ。今戦ってる僕の姉さんが、自力で起動した聖遺物ですからね。託す相手が僕は気になって仕方ないんですよ。貴方の気を害したなら申し訳ないのですが………」

 

「素晴らしい!まさに姉弟の愛ですね。僕はそんな英雄に見定められていたのですか!これは実績で答えるしかありませんね!任せてください!このドクターウェルが英雄である貴方に誓いましょう!必ず僕の名にかけて成し遂げてみせますよと!」

 

くそ!怪しい動きや、箱の扱い方にも違和感はないし、何よりコートに隠せる動作に至らない。

 

「しかし、日本の秋は暑いですね。コートがいると思って用意してきましたが、杞憂でしたか」

 

外が少し肌寒くなり、暖房がついているので、ウェル博士はコートを脱いだ。

 

「博士ってもしかして暑いのが苦手だったりします?」

 

「ええ、お恥ずかしい話ですが少々………」

 

くそ!痕跡が見つからない!

そう思っていると、トンネルに入り列車の連結が外れる音がした。

どうやら響達がケリをつけるらしい。

 

「遮弊物を用意して動きを予測し、全力の一撃か………

響の頭がこのくらい普段から回ればあたしも苦労しないんだけどな」

 

通信機から姉さんの言葉が聞こえた。

全面的に同意だね。

 

「そろそろ目的地です。博士、降車準備をお願いします」

 

「わかりました。残りは少ないですがよろしくお願いいたします」

 

結局博士の動きに一切不審なところは無く、無事に

〈ソロモンの杖〉は無事に届けられた。

原作とのズレが生じて来ているのか?不味いな。僕の知識は、本当に役にたつのか?

 

 

そう考えていたら基地から爆炎が上がった。

 

「行きなよ響!翼さんのステージなんだ。僕は後で向かうから、姉さんと先に行って!後で会場で会おう」

 

「うん。勇君絶対だよ!」

 

「優!先輩のライブなんだからな?絶対に間にあえよ!」

 

その言葉を最後に姉さん達は東京に向かい、僕は基地のノイズの殲滅をし、ウェル博士を探したが発見できなかった。くそ!最後で油断した!

 

「あのっ!すみません。二課の方ですね?今回は私たちの命を、救っていただきありがとうございました」

 

若めな女性自衛官に感謝された。

 

「いえいえ、これも僕の任務ですからね。」

 

「そうですか?ありがとうございまし……きゃ!」

 

なんと女性の首からロケットが落ちた。

 

「大丈夫ですよ。僕が拾います」

 

そうして姿勢を低くした時、僕は後ろからなにかを嗅がされて、

 

「これ………は……クロ……ロ………ホル………………」

 

 

「先生、私です。〈ソロモンの杖〉と〈兄弟子〉を、無事に回収しました。……………………………………………………………………はい、わかりました。では私も、姉さん達と合流させていただきます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして意識を失った僕は、その声が聞こえなかった。




何故勇君がクロロホルムを嗅がされたのかは、
セレナさんが次回語ります。
しかし二期開始すぐに拘束される勇君は哀れ。
これでライブは見れないですね。


次回〈セレナ・カデンツァヴナ・イヴ〉

更新をお待ちください。


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閑話 セレナ・カデンツァヴナ・イヴ

アンケート結果のセレナさんの閑話です。

それでは本編をどうぞ。


私がサンジェルマン先生達に命を救われて6年がたちました。

まず先生達は私にその間、いくつかの事実を教えてくださいました。

 

①私が絶唱を使用した後、施設が崩壊してマリア姉さん達は、私が亡くなったと思っていること。

 

②今回の実験は本国に黙って行われていたので、

表向きは火災による事故だったと処理されていること。

 

③私は平行世界ではこの事故で亡くなっており、

本来なら〈アガートラーム〉も破損した状態で後に発見されて私の形見となり、マリア姉さんが引き継ぐこと。

 

④ここはアメリカでは無くヨーロッパにある、

〈パヴァリア光明結社〉の建物であること。

 

⑤結社は錬金術師のための組織であり、

裏の世界では、知らない人がいないほどの組織だということ。

 

⑥先生達は若く見えるが、実は数百年以上生きており、

それは錬金術師の研究テーマの一つでもあること。

 

⑦私は、サンジェルマン先生の発見した逸材として、

組織に所属すること。

 

⑧先生達は私と出会う2年前に、

私の兄弟子にあたる方と出会ったこと。

 

⑨その兄弟子からの情報で今回の事故や、

組織の平行世界の運命を聞いたということ。

 

⑩兄弟子の勇さんも私が生きていると知らないこと。

 

⑪私と勇さんは、来る時まで会ってはならないこと。

 

⑫私が強くなる為に先生達が私を錬金術師として、

育てて行き、将来的にはマリア姉さん達と再会させる気があること。

 

はえー。私は頭が混乱しそうです。先生達曰く、私は筋が良いので、時間が取れない時は基礎訓練をすれば大丈夫だと言われました。実感が湧きません。

 

「セレナ!攻撃のポイントがずれてきてるわ!左に3センチ修正しなさい!」

 

「はい先生!やってみせます!」

 

このように先生達は厳しいですが、確かに私は成長を実感していますし、いずれ兄弟子を別の方に託すそうです。そうしたらもっと修練を見てくださるそうです。

マリア姉さん達をいつか助けるためにも、私は頑張りたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が先生と出会い3年がたち、兄弟子の自主練の間に私は、ある非合法組織の殲滅に同行しました。

子供たちを道具のように扱い、

不要になったり、反抗すれば処分するような組織でした。〈F.I.S〉も実はこの類いの組織で、ここと同じく聖遺物を取り扱う組織でした。

結社の傘下でありながら今回の蛮行に及んでいたことが、粛清の理由だそうです。私自身もゆるせません。

 

粛清後、その実験の被害者たちは結社の情報網を駆使して、国連を通じて母国に返されました。

先生たちも、私も、助けられたことにはホッとしました。

 

 

 

 

 

 

 

そうして今、先生は私にあることを告げました。〈NASA〉が発表した月の公転機動はデタラメで、遠くないうちに落ちて来ること。

そして、この事をマムに伝えれば、きっと動くだろうということ。

月の落下を回避する術があり、仮にマムたちがアメリカに追われても、先生たちが援護をすること。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして私は、ドクターウェルに接触してソロモンの杖を事前に預かり操作すること。護送車両に隠れて同行し、事前に渡される杖でノイズを操り、護送先の日本の岩国にある基地で、兄弟子を岩国基地で捕えて私たち〈F.I.S〉のもとに連れて来ることを命じられました。

 

 

兄弟子の勇さんには申し訳ありませんが、

私はマリア姉さんたちを、そして世界を救う為にも成し遂げてみせます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、兄弟子は捕えられたら先生達から、

お説教と今後の方針を指示されるそうです。




つまり勇君の拘束は師匠の指示でした。
ついでにウェル博士をいくら見張っていても今回の彼は白です。勇君は師匠には勝てないですね。

次回〈師匠達の動向〉


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閑話 師匠達の動向

少し時系列を遡り師匠達の動向の閑話です。

それでは本編をどうぞ。


私はもう一度プレラーティに確認した。

 

「じゃあ本当に〈NASA〉はこの事実を隠蔽する気なわけね?」

 

「ああ。間違いないワケだ」

 

「私は、彼女達に接触するべきだと思うわ」

 

「それもそうね。貴女の働きが重要になるわ。家族を助けるためにも頑張りなさい」

 

「わかりました。姉さん達の支援にはいります。先生方にはご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いいたします。」

 

「良いのよそのくらい。キャロルが動くことに比べたら何とかなるわ。」

 

そう。今回の私たちは、キャロルによりもたらされた情報により、アメリカが月の落下軌道計算結果の隠蔽に気づいたのだ。

 

~~回想~~

 

「おい!月の軌道計算はどうなっている!これではオレと勇の為の世界が台無しではないか!」

 

「キャロル………流石に用件が飛躍しているわ。順を追って説明してくれないかしら?」

 

「何、簡単なことだ。ルナ・アタック以降月の軌道に変化がはじまっていた。オレは勇との新たな生活の為の準備を進めねばならん!貴様らでど「その勇なら無事に幼馴染み達と再会できたワケだ。奴らは仲が良さそうなワケだ。貴様が惚けてた間にな」それは本当か?ならばオレがすぐに日本に行かなくては!」

 

まずい。キャロルにここで介入されれば、我々の計画に支障が出てしまう。

仕方ないが私たちが動きましょう。

 

「キャロル、すまないが今回は私たちに動かせて貰えないかしら?此方のメンバーの一人が〈F.I.S〉に家族がいるの。今回だけはお願いできないかしら?」

 

「………すごく不快だがまあ良いだろう。その代わり、しくじったらオレは動くぞ?」

 

「すまない。感謝する」

 

~~回想終了~~

 

そうして私たちは〈F.I.S〉のナスターシャ教授に接触した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当のことなのですか?米国が月の公転軌道計算の結果を隠蔽しているというのは………」

 

「すまないが確かな筋からの情報で此方が比較データです。」

 

私たちは二枚の資料を差し出した。

 

「………確かな情報ですね。しかし何故我々に?他の選択肢があったのでは、ありませんか?」

 

「〈神獣鏡〉です。あの聖遺物の力なら、フロンティアを起動し、月の遺跡へアクセスできます。また、そのシンフォギアを纏える人物を私達の弟子が知っています。その人物への接触の為に貴女方に接触しました」

 

「事態が思わしくないことはわかりましたが、私達はまだ貴女方を信用しきれません」

 

「かまわないです。そのために今回は彼女を連れて来ました。セレナ!入りなさい」

 

「なんと………本当にセレナだというのですか?しかし、貴女は6年前に………」

 

「はい。私は6年前に建物の崩落に巻き込まれるところでしたが、先生方が助けてくださいました。

そして今回は、姉さん達やマムを助ける為に私が先生方にお願いしました」

 

「………わかりました。その話を私達も信じましょう」

 

「感謝いたします。ナスターシャ教授。これに伴い、セレナは貴女方のサポートと、私達のもう一人の弟子の確保にあたってもらいます。つきましては、〈Linker〉の除染や装者のメンテナンスの為に〈ドクターウェル〉への接触をあわせてお願いいたします」

 

「こちらに対するメリットはわかりました。貴女方の要求を教えてくださいますか?」

 

「では、全てが終わった後に〈神獣鏡〉をお譲りいただけば、後は必要がありません」

 

「此方としては、嬉しいお話です。よろしくお願いいたします。」

 

何とか私達は信頼されたようね。勇が一体何をするかわからない以上は手を打つ必要がありそうね。

 

「それと申し訳ないが、セレナに捕えさせた私達の弟子を貴女方に監視して貰えませんか?フロンティア浮上までで構いません。そしてその間は好きに使ってください」

 

「なんと!我々に捕虜を預けると?よろしいのですか?」

 

「はい。彼を自由にさせると計画に支障が出かねませんから」

 

 

 

 

こうして私達は具体的なフロンティア浮上の為のプランを煮詰めることにした。

 

 

 

 

 




実際に動ける勇君は家事関連万能なので、
能力さえ封じれば有能な捕虜です。

次回〈クイーンオブミュージック〉

更新をお待ちください。


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クイーンオブミュージック

本作品ではビッキー達はライブに間に合いました。なのでライブを見ることができます。

それでは本編をどうぞ。



ライブ前ステージ控室にて

 

 

「此方の準備は整いました。調達は貴女の宣言の後に行動を開始します。頼みましたよ、マリア」

 

「オッケーマム。さあ!世界最高のステージを始めましょう!」

 

彼女達は動き始める。

 

 

 

~~マリアside~~

 

「失礼するわ。今夜の私の共演者の風鳴翼さんと、

そのマネージャーさんね?

私はマリア・カデンツァヴナ・イヴよ。今夜のライブは素晴らしいものにしましょう」

 

私は、衣装に仕込んだカメラで二人の顔をさりげなく映した。これで切歌達は彼を探せるだろう。

 

「此方こそ。アメリカの希代の天才と共演できることを誇りに思う。良いステージになるように全力を尽くすつもりだ。」

 

「ええ。精々足を引っ張らないように頼むわね」

 

彼女達を騙すのは些か良心が傷ついたが、私達には世界を救う使命と覚悟がある。諦めるわけにはいかない。

 

~~マリアsideout~~

 

 

 

 

~~side響~~

 

私達は勇君のおかげで翼さん達のステージに間に合った。楽しみだなぁ!翼さんとマリアさん!トップスターの共演に私達の胸の高鳴りは止まらない。でも………

 

「勇君遅いな………」

 

「ああ。流石に基地でノイズと戦闘ってのは、勇も時間がかかっているのかもしれねぇなあ。動きの制限に、敵の数と守る対象が未知数、更にソロモンの杖の護衛だ。あたし達を、特に響を間に合わすためにあいつは、損な役回りを押し付けちまったからな」

 

「うん。………そうだね………」

 

「なーに暗い顔してんだよ!響の笑顔が見たくて勇がやったんだ!まずは響が楽しめ!なんならオッサン達に頼んでステージをビデオに納めて貰え!」

 

「うん!ありがとうクリスちゃん!」

 

そうだね!私が楽しまないと意味がないもんね!

 

~~響sideout~~

 

 

 

~~クリスside~~

 

あたしは、響達と先輩のライブステージに間に合った。

あの人のステージ姿は綺麗だな。

 

「あたし達がノイズと戦闘してたあの日、勇はここにいたんだよな、未来?」

 

「うん。〈私と勇君の二人〉でね!

ああっあの日は良いライブだったなぁ!」

 

無性に腹がたってきた。

 

「未来。後で詳しく聞かせろ」

 

「良いですよ。クリス義姉さんには、

〈私と勇君との仲〉を知ってもらわないといけませんから」

 

「ハッ、メインステージがはじまるぜ。無駄口はここまでにしようや」

 

「そうですね。〈メインステージが始まります〉ものね」

 

その言葉を最後に先輩達のステージが始まり、

〈不死鳥のフランメ〉がはじまった。

 

「すげぇ曲だ。だが、それ以上にあの人達の息の合わせ方がすげぇ。ここまでに完成度の高い共演はあまりないだろうな」

 

「流石は〈音楽界のサラブレッド〉とも言われた義姉さんらしい感想だね。そんな人がすごい評価をするこのステージを勇君と見たかったな」

 

「その義姉さん呼びは気に食わねえし、親のことを引き出されるのも好きじゃねぇが、最後だけは同意してやるよ」

 

そう、未来と語りあいながらステージを見ていたら、

マリアがステージで〈ガングニール〉を纏ってこう言ってきやがった。

 

「私は、私達は〈フィーネ〉!終わりの名を持つ者だ!」

 

そう言ってノイズを召還しやがった。

 

ウソだろ。〈ソロモンの杖〉の方は、勇が押さえているはずだ。まさか!まだそんな聖遺物が?

 

それとも〈ソロモンの杖〉は奪われたのか?

 

教えてくれよ。勇。一体何がどうなってんだ?

 

~~クリスsideout~~




師匠の作戦プランエグい。完全に次回の行動に影響が出てる。

次回〈説教〉

更新をお待ちください。


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説教

少し時系列が遡りますが、勇君が拘束された後のお話です。

本編をどうぞ。



目が覚めた僕は今何が起こっているかわからなかったが、とりあえず目の前に師匠がいた。

 

「師匠、何故自分は拘束されているんですか?」

 

「はぁ。勇!まずは私達の話を聞きなさい。あとセレナはさっきの写真をマリアか月読達に託しなさい」

 

「わかりました先生。さっそく月読さん達に届けます」

 

「セレナ、月読ってここはまさか」

 

「勇は黙って話を聞きなさい。あと、返答に偽証ができないようにキャロルにも中継してあるわ」

 

詰んだ。僕の行動が完全に詰んだ。逆転の要素が一個もない。

 

「まず彼女達は〈F.I.S〉のレセプターチルドレンよ。

そしてここはその活動拠点の一つよ」

 

あの廃病院か。

 

「彼女達の目的は、フロンティアを起動して月の公転軌道をもとに戻すこと。

貴方は絶対に介入するから先に拘束させて貰ったわ。

あと、その拘束具は〈グレイプルの鎖〉の加工品だから貴方の力は封じてあるわ」

 

マジで対策されてる。信用もゼロですか。

 

「貴方の役目は、〈二課〉への人質と彼女達のサポートだから。フロンティア浮上まではおとなしくしてなさい」

 

「彼女達のサポートとは?」

 

「掃除・洗濯・炊事・メンタルケアよ。彼女達は万全でいてもらわないといけないから」

 

ごめん皆。学祭見れなさそうです。姉さん達のステージが見たかったなぁ。

 

「わかりました。フロンティア浮上の為の協力をします」

 

「ええ。あと、平行世界において〈神獣鏡〉の装者は誰だったのかしら?正直に答えなさい。」

 

「僕の幼馴染みの一人の小日向未来さんです」

 

「都合が良いわね。セレナ!この拠点の痕跡を二課が後でわかるようにしなさい。そして、リディアンの学祭で貴女は彼女に接触しなさい。方法は任せるわ」

 

「わかりました。先生!さっそく準備に入ります」

 

セレナさんはそう言って何処かへ行ってしまった。

 

「それと、彼女をナンパしたらキャロルへ中継されるから気をつけなさい。私達も弟子が世界を滅ぼす要因になるとかゴメンだわ」

 

 

師匠はそう言って去って行った。

 

 

 

 

「〈F.I.S〉か。あれ?セレナさんは確か6年前に亡くなっていたよね?何がどうなってるの?」

 

「気になりますか?」

 

「そうですね。………ってセレナさん!?」

 

「では、私と話をしましょう。貴方は私の兄弟子にあたる方ですから、いつか先生達のお話を聞きたいと思っていましたから」

 

「と言っても、僕のことはほとんど聞いているのでは?」

 

「先生達と出会った頃の話が聞きたいですね。

後は貴方が結社でどう過ごしてきたか。

私は貴方にあうことを禁止されていましたから」

 

そうして僕は、師匠達に出会った経緯や、平行世界の知識があることを話した。ついでに師匠達からスパルタな修練をさせられていたことも。

 

「はえー。平行世界ですか。だから先生は私を救ってくださったのですね。ならば私は貴方に感謝しないといけませんね。

勇さんのおかげで私はまた、姉さん達に会えます。ありがとうございます。

あと、先生達は絶対に、勇さんを二課に帰すための準備をされてますね。やはりあの人達は偉大な方ですね」

 

そうして僕達は各々のパヴァリア時代の話で盛り上がった。

 

 

 

 

ってクリス姉さんの帰国を手引きしたり、組織の壊滅をしていたのって師匠達だったの!?




完全に詰んだ勇君憐れ。逆転の余地はありません。

次回〈行動の裏側〉

更新をお待ちください。


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行動の裏側

何故マリアは二人の顔をカメラに写したのか、それはこの本編で語られます。

本編へどうぞ


~~マリア回想~~

 

「じゃあ二人とも。後は任せるわ」

 

私はそう言って、切歌達に彼を探すように頼んだ。

 

「任せて。必ず見つけ出す。」

 

「捜索はあたし達に任せて、マリアはステージを決めるデス」

 

「二人とも………ありがとう」

 

後はあの男に彼の写真と手紙を渡すだけ。

それだけで二課は彼の奪還に動くだろう。

 

~~マリア回想終了~~

 

 

 

 

 

 

 

「はやらないの。日本政府は、シンフォギアの概要は公開しても装者については秘匿している。そうでしょう?風鳴翼さん?」

 

「そう言えば私が鞘走らないと思ったか?甘く見られたものだImyuteus「待ってください翼さん!」緒川さん、しかし!」

 

「あら?どうしたのかしら?何かするつもりだったのでしょう?」

 

まだあの男と接触できていないわね。仕方ないわ。

 

「ならば仕方ない!会場のオーディエンスを解放する!

ノイズに手出しはさせないわ!

速やかにお引き取り願おうか!」

 

これであの男がモニタールームに向かうはず。

切歌達、頼んだわよ!

 

 

~~side緒川~~

 

やはりモニタールームに向かうしか………

ってあの娘達は?

 

「ここは危険です!早く避難を!」

 

~~緒川sideout~~

 

 

~~切歌side~~

 

「見つからないデスね」

 

「一体何処にいるんだろう?」

 

するとセレナから連絡が来ました。

 

〈お二人ともモニタールームに向かってください。

彼が向かっています。

出会えたら打ち合わせ通りにお願いします。〉

 

やっと目処がたちましたか。

 

「調!聞こえましたか?向かうデスよ?」

 

「切ちゃん。打ち合わせ通りにやるんだよ?」

 

「モチロンデス!心配はいらないデス!」

 

あたし達が向かっていると彼が此方に来ます。

ここからデス!

 

「ここは危険です!早く避難を!」

 

「私達はこの場所に向かっていました。

しかしあのマリアに、

〈コレを風鳴翼のマネージャーに届けなさい。さもなくば、今ここで炭にするわよ?〉と言われまして………」

 

そう言って渡されたチケットと、封筒を彼に見せた。

 

 

「うん。その人がを見つけないと私達……」

 

「風鳴翼のマネージャーとは僕のことですがそのようなことが!?

すみませんが渡された封筒をすぐにいただけますか?会場のノイズが今はおとなしいですが、いつ活動を再開するかわかりません。早く避難を!」

 

「助かった」

 

「やっと避難できるデス」

 

あたし達はその言葉を最後にマリアの援護へ向かった。

 

~~切歌sideout~~

 

 

 

 

 

 

~~緒川side~~

 

僕がモニタールームに向かっている時に会った、二人の少女から渡された封筒は此方の想像外の物でした。

 

〈雪音 勇の身柄は此方が預かり、ソロモンの杖も此方が所持しています。彼の命が惜しければ、マリアの要求を呑みなさい。

また、この手紙の内容は、貴方と風鳴司令のみの秘密でお願いします。

さもなくば、彼の命の保証はできかねます。〉

 

という内容の手紙と、〈ソロモンの杖〉そして、

〈拘束された勇さんの写真〉が同封されていました。

 

「みなさんの為にも、急がなくては………」

 

そう言って僕はモニタールームに向かいました。

 

~~緒川sideout~~

 

 

 

~~マリアside~~

 

中継が切られたわね。なら、そろそろ私達の力を見せようかしら?

 

「あら?ようやくやる気になったかしら?待ちくたびれた、わ!」

 

そう言って振るう私の槍を躱し、彼女はノイズの殲滅を始めた。チッ動きが速いわね!でも、此方もそろそろ。

 

「行くデス!」 「はああっ!」

 

切歌達が到着したわ。




緒川さんの行動すら想定内とは………師匠ヤバイ。
そして切調コンビの言い訳が完璧すぎる。これすぐには疑えないな。

次回〈二組の装者〉

更新をお待ちください


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二組の装者

以前フライング投稿した分とあわせて今回は二話投稿します。

観客席の幼馴染み達の視点です。

そして立場の違う者達の語ることは?

本編へどうぞ。


クソっ先輩が矢面に立たされてながらあたし達は何もできねぇ。

 

「クリスちゃん………こうなったら私が………」

 

「やめろ響!緒川さんが今、中継を切る為に向かってる。それをお前が台無しにしてどうするんだよ!あと、未来は今の内に友達を連れて避難しろ。状況が動いたらあたし達が先輩の援護に入る。思いっきりやらせてくれ。」

 

「わかった。皆行くよ!」

 

そう言って未来達は避難をはじめ、あたしは考えた。

あのノイズと勇が護衛したソロモンの杖が無関係だとは思えねぇが、情報が足りねぇ。

 

「クリスちゃん!中継が切れた!早く援護に!」

 

考えを纏めるには時間が足りねぇが仕方ねぇ!

 

「あたしが弾幕を張るから響は先輩を!」

 

あたし達はそう言って先輩の援護に向かった。

 

~~side響~~

 

私達が翼さんの援護に入るとマリアさんの側には、二人の娘がいた。なんでこうなるんだろう?

 

「もうやめよう!こんなことをしても意味はないよ!私達が戦う必要はないよ!」

 

「綺麗事を!」 「偽善者!」

 

なんで?なんでわかってくれないの?

 

「この世の中は貴女のような偽善者が多すぎる!」

 

「それに人の痛みがわからない奴らが勝手なことを言うなデス!」

 

私達が偽善者………そんな………

 

「響!偽善かどうかは後で考えろ!今はこの事態を何とかしねぇと、考えるどころじゃあねぇ!勇だって同じことを言うはずだ!」

 

「戦場で呆けるな立花!」

 

翼さんとクリスちゃんに叱責された。でも、うん。

勇君きっと同じことを言うはず!

 

~~響sideout~~

 

 

 

 

~~マリアside~~

 

〈本命の目的は達成しました。目的を悟らせない為に

速やかに撤退しなさい。〉

 

どうやら切歌達がうまくしてくれたようね。

 

「二人ともありがとう。後は彼らに任せれば良いわ」

 

「うん。何とかなった」 「全てバッチリデス!」

 

ならあとは………

 

「これは増殖分裂タイプ!?」

 

「コレを引っ張り出すなんて」 「聞いてないデスよ!」

 

「チッ、仕方ないわね!二人とも!撤退するわよ!」

 

そう。後は二課が何とかするのだから………

 

~~マリアsideout~~

 

 

 

 

~~sideクリス~~

 

せっかく先輩と合流できたと思ったら、奴らは撤退して行きやがった。目的が余計にわからねぇな。

もしかして奴らは囮か?………あり得るな。だがだとしたら本命はなんだ?

 

「こいつら………特性は増殖分裂か?完全に足止めされたな。雪音!立花!迂闊に手を出すな!増殖を促進させてしまうぞ!」

 

〈みなさん!会場の外にはまだ避難したばかりの人達がいます!この場所で抑えてください!〉

 

チッ、先輩達の言う通り迂闊に手を出せねぇ。

外には、まだ未来達がいる。

 

「クソっ!このままじゃあ………一体どうすれば……」

 

「こうなったら絶唱しかありません!アレをやりましょう!」

 

「大丈夫か響!?アレはまだ未完成なんだぞ!?」

 

「やる・やらないじゃないよ!やらないと皆が!」

 

「立花の言う通りか………仕方ない。やるぞ雪音!立花!」

 

仕方ないか。

 

「スバープソング!」

「コンビネーションアーツ!」

「セット!ハーモニクス!」

 

「「「S2CAトライバースト!!!」」」

 

ここでアレを倒すしかねぇ!

 

~~クリスsideout~~

 

 

~~マリアside~~

 

会場に放ったノイズは、三人の装者の絶唱で瞬く間に消し飛ばされた。

 

「アレが私達の敵なのね。マリア」

 

「マトモにやりあわなくてよかったデス」

 

「そうね。勝利する為に戦闘をしていたら、間違いなく返り討ちにあって、捕縛された可能性も低くないわ。今回の目的の〈彼は私達の手中にある〉ことを伝えることは無事にできたわ。」

 

そしてマム達の作戦通りなら。

 

「連中は間違いなく私達の拠点に奇襲を仕掛けるわ。

そこで私達の手に〈神獣鏡〉があると二課に伝えましょう。彼らの目的はわかっているのだから」

 

そう。私達の有利を捨てるわけにはいかないのよ。

 

~~マリアsideout~~




完全に二課の行動を手に取る〈F.I.S〉は手強い。
せめて勇君が自由なら………

次回〈勇の仕事〉

更新をお待ちください。


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閑話 勇の仕事

捕虜になった勇君のお仕事です。

本編へどうぞ。


師匠達に説教を食らった翌日より、本格的に僕の捕虜生活がはじまった。

 

「マリアさん。布団を干しますので手を貸してください」

 

「わかったわ。二人とも手伝ってくれるかしら?」

 

「了解」「任せるデス」

 

「ありがとうございます。拘束具で不自由なので助かります」

 

「本当に捕虜してますね。私の兄弟子なのか疑わしくなりますが、先生方からの指示ですからね。まあ、実力は申し分なしどころか、私達より、仕事が丁寧なのが地味にショックです」

 

セレナさんは手厳しいなぁ。

 

 

 

「暁さんは、今不安に思っていることある?」

 

「はい。私達はマリアの体にフィーネの魂が宿っていると聞かされました。本当に、マリアへフィーネが宿っているなら、私は悔しいデス。

いつもマリアは優しいのデス。そんなマリアを失うなんてあたし達は耐えられません。」

 

そうだった。原作では、そういう認識だったね。

 

「なるほどね。なら、もしフロンティアが浮上した後で、フィーネが君たちの誰に宿っているかわかってたら、教えてくれないかな?あの人には、借りがあるから、宿主の魂が亡くなる前に僕が追い出すよ。約束するから」

 

「約束デスよ。破ったらイガリマの絶唱であの世行きデスからね?」

 

「大丈夫。前は皆の力を借りたけど、僕もあの時より、強くなったから、そう簡単には負けないよ」

 

実際、今なら勝てなくても、あの時程簡単には負けない。

 

「絶対に約束デスよ。」

 

「うん。約束だ」

 

暁さんの不安を聞いてあげたり。

 

 

 

「月読さん!そっちはあとどのくらいかな?」

 

「お米が炊けるまで後20分で、お野菜は切り終わったよ。後はどうするの?」

 

「皆に声をかけてもらえない?ご飯がそろそろ出来上がるって」

 

「わかった。マリア達を呼んで来る」

 

「お願いねー」

 

月読さんと料理をしたり

 

 

 

 

 

「まさか本当にこれ程の実力があるとは………貴方が此方に最初からいれば、私達はどれ程助かったでしょうか」

 

「確かにそうですよね。僕達は確かに立場が違います。しかし今回は、僕は捕虜ですが、フロンティア浮上までの利害は一致しています。………師匠達に拉致られて会う形じゃあ無い方がよかったですけど」

 

「本当ね。貴方の人となりを知っていたら、

最初から二課に協力したいと今では思う程だわ。

先に知っておきたいものを後から知るのって、辛いものね」

 

ナスターシャさんやマリアさんと話をしたり。

 

 

 

「みなさーん!掃除が終わりましたから戻って来てくださーい!」

 

「やっと終わったデスか。ってとっても綺麗デス!勇さんすごすぎデス。何でもできるじゃあないデスか」

 

「切ちゃんのお部屋が、こんなに綺麗に………何でこの人が敵なんだろう?」

 

「本当に先生の言った通りのスペックですね。マリア姉さんとくっついたら、私達は幸せになれるだろうなぁ。だってお家のことは全部勇さんがしてくれそうだし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セレナがマリアと勇をくっ付けようとするのは、また別のお話




実際サンジェルマン師匠達にあらゆる技能を詰め込まれたので、捕虜としても、能力を封じてあれば有能です。

次回〈司令室〉

更新をお待ちください。


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司令室

原作との差異が難しかったので今回は司令室視点でお送りします。

それでは本編へどうぞ。


~~弦十郎回想~~

 

 

緒川から渡された封筒は、俺達の予想を遥かに越える内容が記載されていた。

 

「緒川、これの真偽と連中の居場所は?」

 

「居場所については、ある廃病院にここ数ヶ月で物資が運び込まれていることが判明しました。勇さんの方も、彼と連絡が一週間取れないことを考えると、これも事実だと考えられます」

 

やはりか。ならば連中の動きが再開する前に叩くべきだな。

 

「緒川!響君達を召集しろ。連中に今夜奇襲を仕掛けるぞ!」

 

「了解しました。必ず勇さんを救出しましょう」

 

~~回想終了~~

 

「オッサン!あたし達に何か隠し事してるだろ!

勇のことだ!知らねぇとは言わせないぞ!」

 

「本当何ですか師匠!勇君に何かあったって!」

 

「勇程の手練が一週間の連絡がないのは確かに妙です。

叔父様は何を隠しているのですか?」

 

「ああ。あの日に緒川は、この封筒を渡されたのだ」

 

「渡して来たのは、貴女方が戦った、マリアと共にいた装者でした」

 

俺達はそう言って、渡された手紙と写真を三人に見せた。

 

「これは!」 「そんな!勇君!」

 

「オッサン!コイツは何の冗談だ!勇が捕まっているだと!ふざけるのも良い加減にしやがれ!」

 

「クリス君達の気持ちはわかるが、これは間違いなく事実だろうな。だからこそ今日君たちを召集したんだ。連中を叩く為にな!」

 

「僕の予想ですが、彼女達の行動は、ソロモンの杖の回収と、勇さんの確保とその証拠を僕達に渡すことが本命で、会場の行動は、デモンストレーションもしくは、陽動ではなかったのでしょうか?」

 

「なるほど、そう考えれば奴等の行動に辻褄が合います」

 

「勇君………」 「チッ、そういうことかよ!」

 

「と、いうわけだ!三人とも!彼を救出するぞ!決行は今夜だ!場所は端末に送信するから各自確認しろよ!」

 

「「「了解!!!」」」

 

 

 

 

 

 

~~作戦決行中の司令室~~

 

「了子君。君から見た彼女達の目的に見当はつくか?」

 

「それを見定めるのが今夜だ。連中か〈F.I.S〉のレスプターチルドレンだということは、伝えただろう?」

 

そう、俺は了子君から、連中が彼女の遺伝子を刻まれた者達で、彼女の次の転生候補を集めた施設の少女だと聞かされた。

 

「おそらく連中の目的はフロンティアの浮上だ。そのために〈神獣鏡〉を用いるはずだが、まだ奴等の手元にある確信はないからな。今回の襲撃に対して連中の撤退時に完全なステルスに至ればまず所持は間違いなくなるが。問題は装者だ。連中が勇を捕らえた目的の一つに、誰が使っていたかを聞き出すはずだ。それがわからなければ、対応は後手後手にまわるだろうな」

 

了子君と話している内に事態に進展があった。翼がマリアの相手をし、響君が生きていたドクターウェルを拘束していると、突然別の装者が奇襲を仕掛けて来た。

 

「やはり………か」

 

「ああ。連中は間違いなく所持している。オペレーターが周囲の索敵を怠っていない以上は、確実だ。」

 

「問題の装者か。一体誰を選んだというのだ?」

 

「勇がいればすぐわかったんだがな。連中め、

相当の策士が裏にいるぞ。ライブの一件といい、今回といい、連中の対応は冷静そのものだからな」

 

そんなやり取りをしていると、連中は撤退をはじめた。

時限式と言ったことから、彼女達は〈Linker〉で適合係数を上げているのだろう。そして、

 

「てめえらぁ!!逃げるんじゃあねぇ!!!勇を!!!あたしの大切な弟を!!!返しやがれぇ!!!!」

 

クリス君が追撃に撃ったミサイルは、一つたりとも当たらなかった。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!勇!!!!!!!!勇!!!!!!すまねぇ!!!!!!すまねぇ!!!

うわぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!!」

 

クリス君の叫びが通信機に木霊した。




流石に原作の流れを知ってる勇君がいれば廃病院襲撃はかなりのイージーモードでした。つまり師匠の知略は作品内屈指の難易度と私は解釈しています。

次回〈リディアンの学祭〉

更新をお待ちください。


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リディアンの学祭

学祭に乗り込んだ〈F.I.S〉の動きとは?

本編へどうぞ。


~~調回想~~

 

「ではみなさん、頼みましたよ?」

 

「お前に言われなくてもわかっているデス!」

 

「うん。絶対に目的は達成する」

 

「お二人は肩の力を抜いてください。彼女への接触は私が行います」

 

「セレナの負担が大きい。私達がもっと頑張らないと」

 

「大丈夫ですよ月読さん。こういったことは適材適所です。それに、お二人の役割があるから今回の私が動けるのですから」

 

~~回想終了~~

 

 

 

「調、また今朝のことを考えているのデスか?」

 

「うん。だって私達の役割が〈陽動として学祭を楽しむ〉だよ?」

 

「だったら楽しむと良いのデス!ここはうまいもんマップの完成でも目指すのデス!」

 

そう。私達に与えられた役割は、

セレナがターゲットの、

〈小日向未来〉さんに接触し、私達はセレナが動いているのを二課の装者達に悟られないように一般客として振る舞うことを指示された。

本当はマリアがやるのは予定だったけど、彼女をこれ以上フィーネに近づけてはいけない。私達が頑張らないと、マリアがフィーネに塗り殺されちゃう!

 

「えーっと舞台スケジュールでは………お二人共聞いてください。二課の装者の〈雪音クリス〉と〈立花響&小日向未来〉でそれぞれ歌の予定があります。この舞台で彼女が確実に出て来るので、私が接触します。お二人はその後に飛び入り募集でステージに参加してください。それまでは、各自自由行動としましょう」

 

セレナがパンフレットを、見ながら私達に提案をしてきた。

 

 

「なんと!良いのデスか!?」

 

「でも、もし装者が来たら………」

 

「その点は大丈夫です。ここが向こうの敷地である以上は、暴れて有利になるのは私達です。少なくとも向こうは強硬手段にはうってきませんよ」

 

「すぐに行くデスよ調!セレナ後は任せるデスよ!」

 

「切ちゃん!待って!はぐれちゃうよ!」

 

私達はその言葉を最後に別行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

~~未来side~~

 

「じゃあ行くよ響。ちゃんとステージで私に合わせてよね?」

 

「うん。任せて!絶対に二人で成功させて今回これなかった勇君にも私達のステージを見てもらわなくちゃね!」

 

「そうだな。オッサン達が今回はステージを録音してくれるって言ってたからな。なら、あたし達は全力を尽くしてステージを盛り上げることが大切だ。勇なら、そう言うからな」

 

私はクリス義姉さん達が夜襲任務に就いた時に、弦十郎さんから、勇君がライブの日に就いた別任務の後に誘拐されたと知らされた。勇君の救出任務だったらしいけど、それも失敗に終わったと義姉さんから聞いた。

本当は勇君に私達のステージを見て欲しかったけど、気持ちを汲んでくれた弦十郎さんがある提案をしてきた。

 

「もし君達が良いなら、ステージをビデオに納めたい。彼も今回の学祭を楽しみにしていたのだが………せめてもの………な」と。

 

なら、私達はステージで派手に成功させるんだ!勇君が後から見ても惚れてくれる為に!

 

「へっ!まあ先手はお前らに譲ってやるよ。精々緊張でヘマしねぇよう気をつけるんだな!」

 

「おや義姉さん随分余裕ですね。私達の歌の後でプレッシャーを感じても知りませんよ。行こう!響!」

 

「うん!任せてよ未来!」

 

そして、ステージに上がった私達に司会から合図が入った。良し!絶対に成功させるんだ!

 

〈それでは立花響さんと小日向未来さんで、

「逆行のフリューゲル」です!お願いします!!〉

 

勇君。私達絶対に成功させるからね!

 

~~未来sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~クリスside~~

 

〈でましたー!!お二人の得点は94点!現在最高点の更新です!!!〉

 

やるな未来。流石はあたしから勇を貰うと啖呵きっただけあるぜ。だがなぁあたしはそう簡単には負けねぇぜ!

 

〈続きましては、突如リディアンに現れた希代の天才!雪音クリスさんです!〉

 

「へぇ……やるじゃんお前ら。だがなぁ勝つのはあたしだぜ!」

 

〈それではお願いします。雪音クリスさんで、

「教室モノクローム」です!どうぞ!〉

 

勇!あたしの姿を後でしっかり見て貰うからな!

 

~~クリスsideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~未来side~~

 

〈やりましたー!得点はなんと!96点!新チャンピオン誕生だー!!〉

 

「ああー!未来負けちゃったー!どうしよう!」

 

「良いよ響。クリス義姉さんの方が上手かった。それだけだよ。私達はベストを尽くしたんだし、結果事態だって悪くないんだから、次に生かして行こう」

 

「ううう未来ー!ごめんねー!」

 

「良いよ響。先に戻っていて。すぐ私も後で行くから」

 

「うん!先に板場さん達と合流してくるね!」

 

そう言って響は走って行った。すると、

 

「小日向未来さんですね?先程は素晴らしいステージでした。残念でしたが惜しかったですね」

 

そう言って、私達より少し年上くらいの女性に呼び止められた。

 

「ありがとうございます。でも私も響を追いかけないと行けませんから」

 

「まあ、そう警戒しないでください。私達はここで暴れたいわけではありませんから」

 

私〈達〉?じゃあもしかしてこの人達が!?

 

「何が狙い何ですか?こんな時にまで襲撃して来るなんて………」

 

「その表情!まさか私達が誰なのかわかったのですか!?」

 

やっぱり、この人達が勇君を……………!

 

「安心してください。ここで暴れる気は私達にはありません」

 

「その言葉をどう信じろと?テロリストの言葉ですよ?」

 

「世間的には、そうですね。………っと話が逸れました。私は貴女にあるものを渡しに来たんですよ」

 

「私にある物を………渡す?何の冗談ですか?」

 

「冗談ではありませんがコレをどうぞ」

 

そう言って女性は私に小さなピンクのポーチを渡してきた。

 

「その中身のことは他言無用でお願いします。でなければ彼の安全は保証できませんよ?ああそれと、私の名前はセレナと言いますので、今後ともよろしくお願いしますね?小日向さん?」

 

そう言って女性ーセレナさんは、去って行った。

彼女から渡されたポーチの中には、

一つの端末と、

 

 

 

 

 

 

 

 

〈もし彼の身を貴女が案じているならば、この端末に届いたメッセージの日時に東京スカイタワーまで来てください。当日には、ノイズが発生するでしょうから、装者を一人までなら、護衛につけても構いません。色良い返事をお待ちしています。〉

 

 

という内容の手紙が同封されていた。私はどうすれば良いんだろう。

 

~~未来sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい。此方は彼女に接触できました。兄弟子の話通りの展開になれば、私が彼女を回収して姉さん達に合流します。よろしくお願いします。マム」

 

 

 

 




セレナが有能過ぎて二課後手後手。未来さんもターゲットだから結構ピンチです。

次回〈観客席の翼さん〉

更新をお待ちください。


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観客席の翼さん

今回の語り手は翼さんです。彼女から見た後輩達の姿は?

それでは本編へどうぞ。


勝ち抜きステージでの歌に、雪音が参加すると言いだした時に私は驚いた。彼女は自分から表舞台に立ちたがる性格では無いからだ。

 

「だが、小日向が立花を連れてステージに立つと言いだした時には、流石の私も驚いたな」

 

それも、私達を前にして小日向は、

 

「私が響といっしょに、〈逆行のフリューゲル〉を歌います。

翼さんのパートを私が、

奏さんのパートを響が歌います」

 

この言葉は雪音に向けたものなのだろうが、

同時に小日向からの宣戦布告でもあるのだろう。

 

「しかし、自分の歌を他人が歌う様を観客席で見るのは、新鮮なものね。それに二人の息の合いようは、私から見てもかなり高いわ。私もいつか、再びそんな相手と出会いたいものね」

 

思えば、彼女達との関わりは、二年前のライブからはじまっていたわね。本来なら、二人で私達のライブに来るはずだったみたいだけど、小日向は事情で来れず、立花はライブを一人で楽しむことになった。

 

「そして、ステージに現れたノイズを倒す為に戦った奏のガングニールが折れ、欠片が彼女の胸に刺さった………か」

 

小日向達は、勇に自分達がステージで歌う姿を見て欲しかったから、今回ステージにエントリーしたのだろう。雪音もクラスメイトに後押しされて行ったが、勇が見に来ることがわかってからは積極性に準備をするようになった。

 

〈でましたー!!お二人の得点は94点!最高点の更新です!!!〉

 

「本当に素晴らしいものだった。もし小日向が装者になる時が来てしまうなら、立花と並び立てば私と奏に匹敵…………

いえ、私達を越えるコンビネーションを出せるでしょうね」

 

〈続きましては、リディアンに突如現れた希代の天才!雪音クリスさんです!〉

 

ほぉ、もう雪音の出番が来たか。あの二人の後では、緊張しそうなものだが、中々良い顔をしてる。

 

〈それではお願いします。雪音クリスさんで「教室モノクローム」です!どうぞ!〉

 

雪音も二人と同じく肩の力を抜き、本当に届けたい相手の為に歌を歌っている。そして、その表情はとても良いものだ。

 

〈でましたー!得点はなんと96点!勝ち抜きステージ新チャンピオン誕生だー!〉

 

「あの二人は惜しかったわね。でも、私から見ても僅差で、どちらが勝っていてもおかしくなかったわ」

 

〈さあ!次の挑戦者はどなたですか!飛び入りも大歓迎ですよ!〉

 

すると、観客席席から二人の女子が立ち上がった。

 

「チャンピオンに」

 

「挑戦デース!」

 

「あの娘達はマリアの!まさかリディアンに紛れ込んでいたのか!」

 

私はすぐに雪音と合流することを決めた。そして、あの娘達の目的は、私達のギアペンダントを奪うことだとわかった。ここを戦場にされて不利をとるのは私達だ。どうすれば良いんだ。

 

〈それではお願いします。暁切歌さんと月読調さんで、「ORBITAL BEAT」もちろんツヴァイウイングのナンバーだー!!〉

 

「なんのつもりの当てこすり!」

 

奴等が私達の歌を歌うのと、小日向達が私達の歌を歌うのは、何故か感じるものが違った。だが………

 

「あのコンビネーションは本物ね。小日向達に迫るものがあるわ。いや、戦闘においては、おそらく私達以上かもしれないわね」

 

だが、あの娘達は得点の発表前にステージを去って行った。耳を気にしたことから、通信機で何か指示があったのだろう。そして追いかけると、あの娘達は私達に決闘を申し込んできた。ここで戦いたくないと言っていたが、ステージでの表情からおそらく嘘では、無いだろう。場所と日時は追って連絡するらしい。

 

「しかし、あの娘達の目的が読めないな。ライブ会場の時と同じく陽動なのか?

あり得るな。だが、なんの為の陽動だ?」

 

会場の時は、緒川さんに接触し、

勇とソロモンの杖の写真を手紙と共に託した。今回もそれと同じなら、誰かに接触したはずだ。勇を捕らえた目的がその人物のあぶり出しなら、私達に近しい者のはずだが、その人物なら狙う根拠はないはずだ。

 

「奴等の目的は一体何なんだ?」

 

私の呟きを聞き取る者は誰もいなかった。




ひびみく版の逆光………普通に聞きたい。

そして翼さんの推測はあと少し情報があれば………

次回〈暴走〉

更新をお待ち下さい。


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暴走

こちらも本編との差違が難しかったので捕虜の勇君視点でお送りいたします。

それでは本編をどうぞ。


決闘へ向かおうとする二人をナスターシャさんが止めて、ドクターが現場に向かった。

 

 

「貴女達三人には謹慎を命じます。全員待機するように!これは遊びでは、ないのですよ!」

 

ナスターシャさんが三人に謹慎を命じて〈カ・ディンギル〉跡地にドクターが現れた。ネフェリムを持ち出したから、今回の戦いで響の融合が加速してしまうだろう。

 

「私達は、約束は破りたくなかったデス!」

 

「決着をつけてギアを回収するつもりだった」

 

彼女達は本気で今回の決闘に臨むつもりだった。それは間違い無いだろう。

 

「すみません。僕からのお話を聞いていただいても良いですか?ナスターシャさんが考えていることが、誤解のまま進むのは、僕はみていられません!」

 

「誤解………ですか。良いでしょう、三人共待機の時間ですからね。貴方の話をはじめてください」

 

「ありがとうございます」

 

原作では、優しい人だとたからな。〈F.I.S〉のメンバーを守る為に、体の不調を抱えながらマリアさん達を導いた英雄の一人なんだ。伝えたいことは、伝えるべきだろう。

 

「まず、ナスターシャさんが気にしたのは、

暁さんと月読さんの体のことじゃあないですか?」

 

「私達の」「体デスか?」

 

「ほう?」

 

みんなが別々の反応をしたが、僕は続けて言うことにした。

 

「ええ。お二人は姉さん達に戦いを挑むつもりでしたが、それ自体が既に危険だったんですよ。

まず、数が不利でした。マリアさんがいるならとにかく、三対二なら、暁さん達に勝機はありません。」

 

「そんなの!」

 

「あたし達のコンビネーションで何とかしてみせたデス」

 

「確かに二人のコンビネーションは、かなり精度が高いと思います。でもそれは、相手より数が多い場合に初めて有利をとれる。違いますか?教授さん」

 

「ええ。確かに調達のコンビネーションは、同数以下の相手もしくは、ノイズのような原則統率の無い相手を想定しています。」

 

「そのために、数が不利且つ力量が上の相手には、勝算が低かった。だから今回はドクターに任せたんですね?ネフェリムの起動後にエサを与えたいドクターにとって、シンフォギアは格好のエサですから。」

 

「そんな………」 「嘘デスよね?マム!」

 

「マリアさんにはテロリストである以上、いつか人を殺める時が来る。だから、自分達が追われていて、やむを得ず反撃した結果殺害してしまった。

その罪悪感に潰されないように抵抗感を薄れさせようとしていた。これも違いますか?」

 

本当に優しい人だから、最後には自分達の身を守れるように備えたかったんだろうな。

 

「マム!それは本当なの!?」

 

「勇さん。貴方を侮っていました。そこまで私の真意を理解していたのですか?」

 

「僕の師匠のサンジェルマンさんが、僕がいずれ日本に帰ってもやって行けるように全てを叩き込んだ時の目と貴女の目が同じ輝きをしていましたから」

 

その言葉を聞いていたら

 

「あのキテレツ!どこまで人の道を外すつもりデスか!」

 

暁さんのあの怒声が聞こえたってことは、響が暴走して反撃に出るころだな。

 

「あの装者!食いちぎられたはずの腕が!」

 

「アレが響の力の源のガングニールで、今は敵を倒す為に暴走してるんだ。彼女を救う為に僕は、当初の貴女達が〈神獣鏡〉を起動する前に接触するつもりでした。

胸のガングニールが体を食い破る前に」

 

「なるほど。だから、サンジェルマンさんは貴方を先に捕縛したわけでしたか。私達が二課と相容れぬ以上、衝突は避けられませんでしたかから」

 

「ええ。ですがこうやってお互いの目的がわかりました。だからこそ僕は、貴女方がフロンティアを浮上させるまでは協力します。でも同時に、二課と手をとれる方法があるとも信じています」

 

「私達と対話して尚、手をとることを諦めませんか。

その言葉、期待できるものだと祈っていますよ。

それとマリア!これより米国との会談があります。護衛をよろしくお願いします。」

 

話を終える頃には、戦闘は終了しており、ドクターはソロモンの杖を抱えて撤退し、落ち着いた響を姉さん達が本部へ連れて帰っていた。

 

「私達が戦う理由って何なんだろうね?切ちゃん」

 

「わからないデス。何が正しくて違うのか、良くわからないのデス」

 

「人を殺める覚悟ね。守りたいものを守る為に、いつかは背負うのね」

 

三人の装者はそれぞれの迷いを抱えながらも、次の分岐点はすぐそこまで迫っている。

 




なんでそこにいないんだよ主人公!

師匠にパクられた為不可能。本当に二課大ピンチでハードモード。まじでこの先どうしよう。

次回〈未来の嘆き/切歌の不安〉

更新をお待ち下さい。


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未来の嘆き / 切歌の不安

今回は未来さんの視点でお送りいたします。

未だ力を持たない少女が抱いた嘆きとは?

本編へどうぞ。


~~未来side~~

 

私は、響が敵との戦いで負傷し、前線を外れるように進められた話を聞いた。その話を聞いて、やっと響が危険から離れることができると思っていた。でも………

 

「ウソ………ノイズが………」

 

私達の前に現れた人がノイズを召喚して、響がギアを纏って戦うことになってしまった。今の響は、体の調子は良くないのに、私達を守る為に戦っている。

 

「響………どうして………」

 

更に二人、マリアさんの仲間と言われてた娘達が、博士さんを回収するために現れて、響は連戦を強いられることになった。

 

「どうしよう………このままじゃあ………響が………」

 

そして二人は、戦いに決着をつける為に〈絶唱〉という大技を発動させようとしていた。でも響は、自分の身を削ってまでその切り札を封殺してしまった。

 

「このままじゃあみんなが………」

 

クリス義姉さんや翼さんは、この人達との決着をつける為に準備している。響は、私達を守る為に命を削っている。勇君は最初に体を張って響達を撤退させた後で敵に捕まったと義姉さんから聞いた。私だけ何も力になれない。

 

「私にできることって何なんだろう………」

 

その呟きは、誰も聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの数日後、学祭の時に渡された端末にメッセージが入っていた。

 

 

〈三日後にスカイタワーで私達と米国政府の会談がありますが、おそらく決裂し、付近にノイズが現れます。

つきましては、貴女はその時に第二展望台まで来てください。私が迎えに行きます。そして、もし私達に協力していただければ、彼と再会するための機会と、貴女の為の力を提供します。〉

 

 

「三日後か………うん。久しぶりに響をデートに誘おう」

 

そして、私だけの力を手に入れて皆を、響を、勇君を守るんだ!私だけが守られて、仲間外れなんて耐えられないんだから!

 

 

~~未来sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~sideセレナ~~

 

勇さんから聞いた話だと、本来なら月読さんに宿るはずのフィーネの魂は、勇さんがフィーネを救った為に、今二人に何かが起これば、二人は無防備だと聞かされました。

そこで彼は陰から彼女達を見守り、危険が迫った時には、守って欲しいと私に頼んできました。

 

「本当に勇さんはお人好しです」

 

彼は今でも、自分の言葉が姉さん達を惑わせていると考えていました。マムの気持ちを伝える為に、敢えて自分を疑わせることでも行ってしまうその精神は、相当の覚悟がありました。だからこそ今回の依頼を私は引き受けたんですが。

 

「ッ!アレですか!」

 

暁さん達が座っていた近くの瓦礫が崩れて月読さんが頭をうって気絶し、暁さんが手を伸ばして防ごうとしました。

 

「はあっ!」

 

勇さんの頼み通りに障壁を展開して瓦礫を防ぎ、合流した時に見た暁さんは………

 

「何が………どうなっているのデスか………?」

 

不味いですよ。勇さん。このままだと、暁さんは自分がフィーネの器だと勘違いをはじめます。早くしないと取り返しのつかないことになりますよ?




ああ………。セレナさんが動くのか。ということはあの力が………。そして切ちゃんが感じる不安はいつ解決するのか。

次回〈未来の覚悟/勇の勘違い〉

更新をお待ち下さい。


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未来の覚悟 / 勇の勘違い

変化する状況で未来が決めた覚悟とは?
そして今回は師匠も登場します。

それでは本編へどうぞ。


私は、あの手紙に指示された日となる今日、

響とスカイタワーの水族館に来ていた。

 

「んー!久しぶりの水族館って楽しいね。響もそうでしょう?」

 

「………うん。そうだね」

 

やっぱり響は、気にしてるんだ。自分の命に危険があることを。義姉さん達はきっと今後の戦闘をしないように止めただろう。勇君の居場所を知った時に誰よりも悔しい思いをしたのは義姉さんだけど、今の私は選ぶことができる。

 

「響………私とのデートが………楽しくないの?」

 

響は、歯切れの悪い反応しかせず、とうとう渡された端末が反応した。

 

〈姉さん達の交渉が決裂し、アメリカ兵との交戦になりました。ノイズが出現します。避難準備をお願いします。〉

 

響と避難する為に移動していた私達は、親とはぐれた男の子と出くわし、何とかその子を父親のところまで連れて行けたけど、ノイズの攻撃で空いたスペースから、響が投げ出されて

 

「いつか私達が本当に困ったその時は、未来に助けて欲しい。だから今は私に守らせて」

 

そう言って響はギアを纏って地上に降りて行った。

 

 

 

 

 

 

「準備はよろしいですか?」

 

どうやら、今がその迎えのようだ。

 

「本当に私に力をくれて、勇君に会わせてくれるんですよね?」

 

「はい。私達の目的は、貴女の力を借りることです。その報酬に、手に入れた力は差し上げます。そして、姉さん達の為に覚悟を決めた勇さんを、助けたい貴女の為の協力は約束します。」

 

「わかりました。その言葉がウソじゃあないことを信じています」

 

私はその言葉を最後に、彼女達に協力することを決めた。

 

待っててね。必ず勇君の力になるから。その力で今度は私が勇君を、守るんだから。

 

 

 

 

 

~~side勇~~

 

僕は今、師匠と対面で話している。

 

「師匠!本当何ですか!未来が僕のためにここに来るって!」

 

「はぁ。勇、貴方はわかっていないわね。彼女達が誰の為に行動しているのか」

 

「響の為じゃあないんですか?」

 

でなければおかしい。〈小日向未来〉は〈立花響〉の幼馴染みであり親友。そのために行動する作中のヒロインで、姉さんや翼さんは響のことを後輩として見ていた筈だ。

 

「いいえ違うわ。〈雪音クリス〉〈小日向未来〉そして〈キャロル〉は、貴方の為に行動しているわ。彼女達にとっての貴方は、それ程までに重要な存在となっているわ。それこそ、〈立花響〉よりね」

 

意味がわからなかった。未来も姉さんも僕のために行動している?響より重要?一体なんで。

 

「その顔ならわかっていないわね。

一人目の〈雪音クリス〉の場合、貴方は、姉を守る為に八年前に命を張って逃がした。そして、再会したにもかかわらず、〈雪音クリス〉は貴方の前に満足に姿を見せられないまま、三週間の軟禁生活に陥ってしまった。この事により、貴方への依存が急激に膨らんだのよ。

ここまでは、良いかしら?」

 

なるほど、姉さんのスキンシップが過激になったのはそういえば〈ルナ・アタック〉後だったな。言われてみればそうかもしれない。

 

「次の〈小日向未来〉は、元々貴方に好意を向けていたわ。でも、度重なるノイズの出現で状況が動き続けて、彼女は貴方と満足に接することができずにいた。そして、決めては三週間貴方が彼女を避けたことね。情報規制としては良かったけど、彼女からすれば唯一残った相手となってしまったわ。そこに今回の拉致が加わるのよ?彼女は間違いなく私達の要求を聞いて貴方に会いに来て、貴方と並び立つ為に力を欲するわ。向き合い方には気をつけなさい」

 

そうだったのか。未来にとっては、僕という存在が居なければ成り立たない程苦しみ、自分の無力を呪っていたんだ。僕は自分のことしか考えていなかったけど、未来は僕の為に何ができるかを考えていたんだ。

 

「最後の〈キャロル〉はわかっているのでしょう?貴方に一番アピールしていたのは、彼女なんだから」

 

キャロルは、僕とのケンカの後から様子が変わった。

それまでは世界を壊すことしか考えていなかったが、心の底からの気持ちを初めて伝えられたのが僕だった。

そして、その言葉は、彼女がもっとも欲しかった言葉だったんだろう。だからこそ、僕といっしょにいたい気持ちを彼女は全力で伝えてきたんだ。

 

「ようやくわかってきたって顔をしているわね。私達が何故貴方を二課から引き離したかわかったかしら?」

 

「僕が彼女達にどう見られているかを伝える為ですね。

向こうではそんな機会がありませんから」

 

「正解よ。もうすぐここに〈小日向未来〉が来るわ。

ついでに教えておくわ。彼女達のことを世間では〈ヤンデレ〉って言うのよ。彼女達にとっては、世界と貴方を天秤にかけたら間違いなく貴方を選ぶわ。そしてなりふり構わないわ。下手すれば世界を滅ぼす程にね。

彼女達の気持ちとどう向きあうかは、良く考えて行動しなさい」

 

師匠、ありがとうございます。未来達の気持ちにちゃんと向き合って見ます!

 

~~勇sideout~~




原作より強い想いを抱いた393。これは不味い!義姉さん!未来を頼みました!

そして勇君はようやくヒロイン達がヤンデレだと教わりました。だけど世界は大ピンチだよ?

次回〈響の絶望/クリスの後悔〉

更新をお待ち下さい。


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響の絶望 / クリスの後悔

幼馴染みが離れ離れになり、それぞれの想いが表れていきます。

それでは本編をどうぞ。


私と未来は、スカイタワーでデートをしていた。師匠からも、前線から外されて、体はボロボロ。マリアさん達はまだ行動していて、翼さんとクリスちゃんは戦ってる。勇君は囚われてしまっているのに、私達は助けられなかった。

そして、とうとう………

 

「離したらいけない手を離しちゃったな………」

 

そして、未来達のいるスカイタワーで爆煙があがった。

 

「ああ………未来………」

 

私の前から人がいなくなる。私の所為でいなくなる。私には、何が残されているだろう。誰か教えて………

 

〈………………………………さい。……………………るの……………………ち………………の……………よ。〉

 

「何だろう今の声」

 

私の力が抜けて体勢が崩れてギアが解除された。そして、そこにノイズが襲ってきた。

………ああ………ここで私はおしまいだな。ごめんね皆。

 

「立花!今行くぞ!」

 

「先輩!響のことは任せた!ノイズはあたしが倒す!」

 

二人の駆けつけた声に私は反応出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

~~クリスside~~

 

響がオッサン達に言われて前線を外されてからの状態は、見ていられない程酷かった。

 

「響は、笑顔とその行動で人を惹き付けるから響なんだ!絶望してる響なんて!見てられないんだよ!」

 

 

響と未来が共に居なくて、スカイタワーが攻撃された。

つまり今!未来に危険が及んでいるんだ!

 

 

 

 

いつからだ?響が翳りはじめたのは!

誰のせいだ?こんな状況を産み出したやつは!

 

「そして、ノイズを使って人の命を弄ぶクソ野郎はどこのどいつだよ!」

 

いや、あたしの所為だな。あたしがフィーネに唆されて起動したからこうなったんだ。

 

「あたしは、ノイズを使って幼馴染みを誘拐しようとして、聖遺物の強奪に協力していた!」

 

あの時は気づかなかったが、勇と未来が教えてくれたんだ!

 

「そしてリディアンでは、フィーネにノイズを良いように召喚されて別れを言えない可能性が高かった状況に陥った!」

 

あの時は残された人間の気持ちを、考えてやることが出来なかった!

 

「挙げ句の果てに護送していた杖をむざむざ奪われた!」

 

そして勇が誘拐されたんだ!

 

「あたしが杖を起動しなければ!!!!」

 

未来が危険にあうことも!響の命が脅かされることも!

勇が誘拐されることだってなかったんだ!

 

「全部あたしの所為じゃあねえか………」

 

あたしがケリをつけなきゃいけねぇ。

 

「響の安全を!未来の日常を!勇との生活を取り戻してやる」

 

そのためにあたしは………

 

「何とかしてでも!誰に何をいわれても!絶対にソロモンの杖は取り返す!邪魔するやつは!あたしが倒す!」

 

次に連中が出てきたら、あたしは絶対に連中についていこう。あそこには勇がいるんだ。待ってろよ勇!お姉ちゃんが絶対にお前を助け出してやるからな。

 

「そしてこの戦いが終わったら勇と愛し合う。勇とあたしの愛の結晶を宿したいな。もう絶対に勇を離さない為に、誰にも渡さない為に」




響が聞いた謎の声の主は実は本編に登場しています。ですが響との正式な接触はGX編までお待ち下さい。

そして義姉さんは、「病み堕ち」じゃなくて本当に「闇堕ち」まっしぐら。二課どうなるの?

次回〈彼女達の覚悟〉

更新をお待ち下さい。


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彼女達の覚悟

覚悟を決める者・目的を見失う者・耐える者。想いがバラバラな者達の至る考えとは?

本編へどうぞ。


「どういうことデスか!マリアの体にフィーネはいないって!」

 

切歌ちゃんの声が船内に木霊した。

 

「言葉通りの意味よ。私の、いえ、私達の体には誰一人としてフィーネは宿らなかったのよ」

 

とうとう暴露しちゃったかマリアさん。貴女は、スカイタワーで初めて人を殺してしまった。自分達の身を守る為に。そして、そこから貴女の行動は苛烈になってしまった。

 

「今の私達では、世界を救えない。マムが嘗て言ったように、優しさを捨てなければ私達は何も成せないのよ!」

 

「マリア。少々遅かったですが、ようやく覚悟を決めましたか。では、自分が何を成すべきかわかっていますね?」

 

「もちろんよ。世界救済の為にフロンティアを起動させるわ。セレナの意思を継ぐつもりではじめたけど、サンジェルマンさん達のおかげで私達いつかは再会することができるわ。もう私に思い残すことも、甘さにすがる理由はなくなった。さあドクター行きましょう?」

 

「良いですよ。今の貴女の目には力がある。僕が英雄に至る為にも、最後まで協力しましょう」

 

そう言った二人は部屋を出て言った。

 

「マリア………なんて顔してるの………」

 

「あんなの………あたし達の知るマリアじゃあないデス!」

 

そう言って、切歌ちゃんと調ちゃんも部屋を出て行き、僕とナスターシャさんだけが残された。

 

「貴方は、彼女達を追わないのですか?」

 

「はい。僕は今、貴女と話したいことがありますから」

 

「話したいこと………ですか………」

 

「はい。貴女は以前、彼女達に〈今日限りでその甘さは捨てなさい〉と言いました。

でも僕はそう思いません。力で覆した世界は、いつか必ず覆えされます。

貴女は敢えて厳しい言葉を選ぶことで、マリアさん達が責任に潰れることを防いできましたね?」

 

この人は残り少ない寿命で世界を救う為に、マリアさん達を導いて、最後には罪を被って死ぬ覚悟をしていた。

それを間近で見ると、僕は口を挟まずにはいられなかった。

 

「そうですね。貴方の言う通りでしょう。ですが私達には時間がありません。こうする他ないのです!」

 

やっぱりこの目には見覚えがある。師匠の目だ。だからこそ、僕は僕の覚悟を貴女に伝えよう。

 

「確かに時間は残り少ないです。でも、志半ばで折れては意味がありません。だからこそ、僕の頼みを聞いて貰えますか?」

 

「頼み………ですか?一体何を………?」

 

「もうすぐフロンティアが浮上します。ですが今のマリアさん達の意思はそれぞれにズレが生じています。もしその時に貴女がマリアさん達の助けをできない時は、僕を頼って貰えますか?そもそも僕が師匠達に捕らえられたのは、僕自身の戦力と、平行世界の知識を用いた介入を防ぐ為でしたから。だからこそ、マリアさん達の力になれる方法に心当たりがあるんです!」

 

「平行世界………ですか………なるほど。故にあの方は貴方を私達に託したのですね?」

 

だろうな。師匠達の言葉の裏には、僕自身が持つ知識をリスクにしない為の立ち回りを行っていたからな。

 

「はい。そのはずです。そして頼みとは、マリアさん達〈Linker〉の使用者の効果のデータと、ドクターの持っていた〈Linker〉と〈Anti-Linker〉のデータが欲しいです。仮にも僕は結社の錬金術師でしたから。いずれ必要になるのがわかっている物を早めに入手したいです。お願いできますか?」

 

「なるほど………私達は世界を救うことまでは考えていましたが、その先には至っていませんでした。

そして貴方は、彼女達がドクターと切れた時に戦えない事態を想定していたと言うのですね………。

良いでしょう。フロンティアが浮上して貴方が解放される時、そのデータは私の手で託します。マリア達を頼みましたよ」

 

「ありがとうございます。約束は必ず果たします。そして、この会話は二人だけの秘密で行きましょう。皆さんの覚悟を踏みにじる気はありませんから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~side未来~~

 

「コレが私の力の〈神獣鏡〉なんですね?この力があれば、皆を救えるんですよね?」

 

「はい。貴女は平行世界においては、その力を使いこなしていると先生から聞きました。そして、その時の貴女は親友の命を救うと同時に力を手放したことも」

 

「いいえ。私は確かに響の命も救いたいし、世界も救いたい。でもそれ以上に!勇君を支えて並び立つ為の力が欲しいの!彼に守られてきた自分はもう嫌なの!」

 

「わかっています。ですが、試運転は必要です。反動等のデータがなければ、目的は果たせません。次の出撃では、戦闘データの収集をお願いします。相手は誰でも構いません。皆さんの為にもご協力をお願いします」

 

「わかっています。私も扱いきれない力を使って、勇君に迷惑をかけたくありません。相手が誰でも良いなら、一人戦いたい相手がいます。ですがもし私が初戦で負けそうになったら、援護をお願いします」

 

「はい。任せてください。必ず、成功させてみせます」

 

待っていてね勇君。すぐに力を使いこなして助けてみせるから。




勇君はドクターに冷たいデス!完全に事変が終わったらポイする気デス!そして393がアップをはじめてマジやばデス!

次回〈船上の戦い〉

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船上の戦い

彼女の戦いが始まります。ですが最初の語りはクリス姉さんです。

それでは本編をどうぞ。


~~クリスside~~

 

あたし達は、米国の船が敵に攻撃されている情報を知り、現場に急行した。そしてそこには、おびただしい数のノイズと炭の塊、そしてピンク色のギアを使っている奴が戦っていた。

 

「連中………仲間割れか?とりあえず、まずはノイズをぶっ飛ばす!」

 

あたしはひとまずノイズとの戦闘をはじめたが、今度は緑の方が出て来やがった!チィッ!二対二か。先輩がいるとはいえ、奴等のコンビネーションは面倒だ!

 

「雪音!備えるぞ!」

 

あたしと先輩はすぐに集まったが、緑の方がピンクの方に何かを注射しやがり、ピンクの奴のギアが解除されていった。

 

「まさかアレは!こないだの廃病院の!?」

 

ギアのなくなった方がノイズに襲われないように、あたしがソイツを守り、先輩が残った方と戦闘を始めて拘束していた。

 

「ひとまずは落ち着いたか………だがどうして………?」

 

そう考えていると聖詠が聞こえてきた。だが………この声の主がなんで………ここに………?

 

「ああ!良い力だね。これならようやく私の願いを果たせる。勇君の力になれる!」

 

「ウソだろ………未来………なんでお前が………?」

 

「ああ、クリス義姉さんでしたか。ちょうど良いです。私のギアの力の試運転に付き合って貰いますよ!」

 

クソッ!なんでいつもあたしはこうなるんだよ!?

 

「先輩!ソイツらは任せた!未来はあたしがやる!」

 

「待て!雪音!」

 

あたしは先輩の制止も聞かずに未来との戦闘をはじめた。

 

 

~~クリスsideout~~

 

 

 

 

~~side勇~~

 

「ふう。勇さんお疲れ様でした。未来さんが前線に出られましたので、先生からの言いつけ通りに拘束具を外します」

 

「やっと………か。セレナさん。現在の戦況をお願いします」

 

この戦いで、フロンティアが浮上して、響と未来は力を失うだろう。だからこそ、その時は僕が助けるんだ。

 

「はい。月読さんが戦闘続行不可能になりました。そして暁さんが拘束され、未来さんとクリスさんが戦闘をはじめました」

 

なら、まだ時間はあるな。

 

「ありがとう。ナスターシャさんのところに行って来るね」

 

僕はそう言ってコントロールルームに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「待っていましたよ。貴方の望みの品です。彼女達のことを頼みましたよ?」

 

部屋に入ると、既に準備を終えたナスターシャさんが待っていた。ありがたい!

 

「僕を信じていただいて、ありがとうございます。そして、任せてください!」

 

僕はその言葉を最後に再びセレナさんのもとに向かった。

 

 

 

 

「行かれるのですね?」

 

到着してすぐのセレナさんの言葉はそれだった。

 

「うん。この戦いを終わらせて来るよ」

 

そう言って僕は戦場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~side響~~

 

「未来!なんで未来が戦ってるの!私達が戦う必要なんてない!」

 

あの後クリスちゃんを退けた未来を止める為に私は戦場に向かい、未来の前にこうして立っている。

 

「響?私と義姉さんの会話を聞いていたら知ってるよね?私は、一人で待つだけの自分がつらかった!何もできず、ただみんなが傷つくのを見るのがつらかった!そして何より!勇君の力になれない自分が一番憎かった!」

 

「未来!そんな力をふるっても!誰も救えない!勇君も笑ってくれない!誰かを守ることなんてできやしない!」

 

駄目なんだよ未来………。力で解決したら駄目なんだよ……なんで伝わらないの?

 

「響には力があった!望んだ物じゃあなかったけど!確かに守る力があった!でも私にはそれすらないの!」

 

「違う!未来にはギアはなかったけど!確かに私達の力になってた!私達の帰る場所には!いつも未来がいたから!私達は頑張れた!」

 

私と未来はお互いを殴りながら言葉をぶつけた。

そうだ!これは私と未来のはじめての心からのケンカだ。今まですれ違ってきたけど!やっと語りあう機会がきたんだ!

 

「でも私は一人だった!この気持ちは!響が戦いはじめた時から感じてた!その気持ちが響にわかるの!?」

 

「わからない!私には!わからない!だからこそこうして向き合ってるんだ!」

 

でも、私の右手はあっさり未来に掴まれた。

 

「えっ………なんで………」

 

「もう良いよ響。これで終わりにするから。

今度は響が私達の帰る場所になってね」

 

「そんな………未来!うわあああああ!!!!!」

 

私は未来に投げ飛ばされて、体が光に包まれた。ごめんねみんな。未来のことを私は救えなかった。




393は何故こうも圧勝したのか?
それは皆さんご存知の「愛」です。
ついでに原作と違い最初から正気です。
同性の親友より異性への初恋が強いこの393は、なんならこの時点で原作より強いです。
そしてまだにイグナイト以外の強化手段が本作品では残っています。
そして次回、ようやく勇君が前線に帰ってきます。
(15話の間前線から退場してました)

次回〈復活の戦士〉

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復活の戦士

勇君が前線復帰だー!!そしてお相手は393だー!!

いやいきなりハードル高いな!大丈夫か主人公!

本編をどうぞ。


戦場についた僕が見たのは、

拘束された切歌ちゃん。拘束している翼さん。ボロボロの姉さん。ギアを失った響と、神獣鏡を纏った未来だった。

 

「響!僕が受け止めるから!」

 

ギアを失って未来になげられた響が落ちれば、命がない。阻止する為に僕は久しぶりに力を使った。

 

「ラファエル!響を包め!」

 

すぐに響の落下を押さえ、優しくキャッチした。

 

「……勇………君………なんで………それに………私………」

 

「良いよ。響は良く頑張った!自分の命をかけて未来を止めようとしたことを僕は知っている。だからこそ後は任せて欲しい。」

 

あそこに調ちゃんもいるな………なら!

 

「未来。3分待ってて。ちょっと用事を済ませて来るから」

 

「うん。私はいくらでも待つよ?勇君に並び立ちたい。そのための力を私は手に入れたの。だから、私のところに帰ってきてね?」

 

「ありがとう。すぐに済ませるから」

 

そう言って僕はミカエルを使い、調ちゃんを回収して二課の潜水艦に飛んだ。

 

「弦十郎さん!二人をお願いします!僕が未来を止めてきます!」

 

「待て、勇君!今の彼女のギアは!」

 

「神獣鏡ですよね。大丈夫です。負けませんよ!僕が救いたい人は絶対に救う!そのためにあの日から耐えてきたんです。そしてフィーネさん!コレをお願いします!」

 

「いきなりだな勇。っと、

コレは奴等の〈Linker〉と〈Anti-Linker〉のデータか!?勇お前まさか!?」

 

「説明はこの戦いの後で。みなさん!二人をお願いします!」

 

そうして僕は未来のもとに帰って来た。

 

「早かったね。もっとかかると思ってたよ?」

 

「僕はやることがあるからね。まずは、未来。君とのデート(戦争)を始めようか。」

 

「ふふっ。嬉しいなぁ!勇君と!デート!なん!て!」

 

早速未来は攻撃を開始した。〈閃光〉か。なら!

 

「未来!僕にその手の技は悪手だよ!ミカエル!」

 

すかさすミカエルを展開して未来の真上にゲートを作ったけど、あっさり避けられた。

 

「本当だ!すごいよ勇君!私の気持ちがどんどん昂るよ!」

 

そういうと未来は触手攻撃を主体にした接近戦に切り替えてきた。

 

「チィ!こっちも相当だね!響の攻撃はわざと受けてたな?」

 

「アハッ!バレた?そうだよ?響は接近戦しかないから、付き合わないとかわいそうだから!」

 

原作程の隙がない。これじゃあ未来のギアを解除させられない!

 

「アレ?勇君もしかして私のギアを解除させようとしてるの?駄目だよ?せっかく手に入れた私の力(愛)を!手放すわけないじゃ!ない!」

 

思考を読まれたか。

・高火力攻撃はよけらる。

・遠距離は向こうの土俵。

・動きは予測されている。

・多分セレナさんだ、オペレートをしているの。

・接近戦も相当。

 

「アレ?勇君黙り?もしかして降参?良いよ!私の愛を貴方にあげる!だから勇君!私のモノになって?」

 

「お断りだよ!いくら幼馴染みでも人の意思を介在しない愛なんて僕はいらない。それよりもお互いが信頼できる関係でありたいと思ってるんだ。片方だけに寄りかかるのは愛じゃない!ただの依存だ!そんなモノを押し付けないでくれ!」

 

すると突然未来の動きが止まった。チャンスか?

 

「………んで。………………して。……………なこと。……………たのに!」

 

「未来!お願いだ!わかってくれ!」

 

「なんで!どうして!私だってわかってるの!でも駄目なの!勇君がいないと、胸が痛くてたまらない!響達が傷つくのを見ると!私の無力が悔しくてつらい!義姉さんが勇君といるのを見るとおかしくなりそうなの!やっと会えたの!待ち焦がれてた!いとおしかった!つらかった!切なかった!苦しかった!痛かった!私だって!隣で勇君を支えたかった!でもそこに!私の居場所なんてなかった!だからつくるの!私達の居場所を!私達だけの!誰にも邪魔されない居場所を!私達の世界を!」

 

未来………君はそこまで自分を追い詰めていたんだね。なら、それは僕の責任だ。君に孤独を味あわせた、僕が償う罪と罰だ。だから、僕からも伝えよう。

 

「ありがとう未来。君の気持ちは良くわかった。君を追い詰めたのは僕で、君に償わなきゃいけない。だからぶつけなよ!君の全部を!僕の全力を持って、君の全部を受け止めるよ!

ケルビエル!全出力を使って、彼女を救うぞ!」

 

「わかってない!わかってないよ!勇君!勇君のことは私が守るの!私が勇君を救うの!この、分からず屋!!!」

 

そう言って未来は、自分が出せる最大出力………フロンティア起動時以上のエネルギーを出して、自力でエクスドライブに至った。

 

「未来の覚悟は僕が受け止める!いくぞ!」

 

まずはラジエルを展開して未来記載を使った。自分が全力を出せる未来を決定。次に未来の出力を測定。

どうやらキャロル並の力を秘めているのは間違いないな。

 

「もう絶対に勇君を失わない!」

 

未来はそう言って、浮上したフロンティアに匹敵する大きさのエネルギーを放った。

 

「ザドキエル!」

 

次に氷の壁を形成するも、あっさり崩壊。想定通り。

 

「メタトロン!カマエル!ラファエル!ハニエル(メタトロン)!サンダルフォン!」

 

僕の今出せる全ての天使の砲撃で未来の暁光と拮抗。このチャンスを使いザフキエルを自分に撃ち、時間を置き去りにして移動を開始。

 

「ううっ勇君の攻撃が重い。このままじゃ………って勇君はどこに!?」

 

予想通り、動きは目で追われてた。だからこそザフキエルで時間を操って良かった。これで確実に隙が出来る。

 

「ミカエル!未来の心を開くぞ!キャロルの時と同じだ!絶対にしくじらない!」

 

「後ろ!?でも!」

 

そう言って未来は僕に触手をぶつけてきた。鈍い音がしたから、おそらく骨が何本か折れたな。でも!

 

「そこだ!」

 

触手の一本が僕の右胸を貫いたが、僕はそのまま未来を左手で抱きしめ、右手で未来の体に鍵を挿した。

 

「ああっ!勇君!嫌ーーーーー!!!!」

 

「やっと………届いた………ガフッ!捕まえたよ。未来。」

 

「勇君………私………私………!!!」

 

「良いんだよ。未来を苦しめた罪と罰は受け止めるって言ったから。そして、その気持ちを抱えて尚響を救ってくれてありがとう。未来。」

 

体が死ぬ程痛い。カマエルの治癒が始まってるけど、意識を保つのがしんどい。でも、言わなきゃね。

 

「お帰り未来。」

 

そう言って僕は未来にキスををした。

 

「勇君………私……私………ごめんね。………ごめんね。」

 

そうして、未来が泣き出したので体は辛いけど、ガヴリエルを展開して、安らぎの歌を歌った。すると………

 

 

 

 

 

 

 

「頑張りましたね。お二人共。私が二課まで運びますので、ゆっくりしていてください。」

 

声のする方には、セレナさんが立っていた。

 

「なら………………セレナさん。後を頼みます」

 

「頼まれました。ゆっくり休んでください」

 

僕はそう言ったセレナさんの言葉を信じて意識を手放した。




セレナさんが最後の最後に良いところ持って行った。ヤバい。当初の設定の三倍は優秀すぎる。
そして393が強すぎる。今回の勇君は完全礼装なのにボロボロとは………。撃破ではなく無力化ではありますが、相性だけならキャロルより悪いです。


次回〈変化〉

更新をお待ちください。


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変化

393は未だにパワーアップしています。「愛」故に!

そして今回はフィーネさんも登場します。

本編へどうぞ。


未来との戦闘の後から、既に1日経過したことが、弦十郎さんから伝えられた。そして僕が気絶する前後の情報をまとめてもらった。

 

①響のガングニールは、未来との戦闘で消失。

 

②翼さんは切歌ちゃんと戦闘するも、姉さんが復活して奇襲を受けて気絶したこと。

 

③調ちゃんは、〈Anti-Linker〉を打たれ、ギアが解除されていた。

 

④切歌ちゃんと姉さんは、フロンティアに向かった。

 

⑤ドクターの暴走の勢いは凄まじく、フロンティアを急速浮上させた。

 

⑥フロンティアの浮上に際して月を引き寄せ、

タイムリミットが大幅に短縮された。

 

⑦フロンティアの調査に来ていた米国艦隊をドクターはフロンティアの操作によって捻り潰した。

 

⑧未来のギアは解除されたものの、もはや〈Linker〉なしで展開出来るようになったらしい。

 

「なるほど、要約するとこういうわけね。………ん?未来のギアはそのまま且つ、次からは自力で装着可能?最初は〈Linker〉を使っていたよ………ね?」

 

「その疑問には、私が答えよう。」

 

「フィーネさん!?一体どういうこと何ですか?」

 

「まず前提を確認するぞ。お前は、自分の体に宿る力が、人間の発するエネルギーより、遥かに高純度だと知っているか?それこそ、シンフォギアの絶唱よりもな。」

 

確かキャロルが言ってたな。

 

「お前との口づけによって流れたエネルギーは、想い出より遥かに高純度だ」と。

 

「はい。想い出よりも遥かに高純度で錬金術が使えると言われたことがあります」

 

おかしい。原作なら未来は、ギアを自力では纏えなかったはずだ。一体何があったんだ?それに今の質問の答えに結びつくとは、到底思えない。

 

「想い出を焼却する錬金術だと!?勇お前!

ディーンハイムと面識があるのか!?」

 

キャロルとフィーネさんに接点があったの!?

 

「フィーネさんは、キャロルを知っていたのですか?」

 

「すまない話が逸れた。その話は別の機会に聞くから忘れるなよ!っとお前のエネルギーは、他者と関わりを持ち、特定の条件を満たした時に相手に流れることが発覚していた。現に立花響の活動限界時間を越えて尚、ガングニールに食い破られるまでの時間にズレが生じていたし、翼とクリスの戦闘能力も、私との時点より遥かに向上していた。きっかけがあったはずだが、そこの小日向の話で確信した。お前は、小娘達と口づけをしたな?」

 

思い返せば、響にも、翼さんにも、姉さんにも、未来にもキスをしてたな僕。

 

「………あーしてましたね。その時の状況なりで流れでやってました。それが何か?」

 

「その口づけによって、奴等の体の構造に変化が起き始めている。自覚はないかも知れんがお前から流れた力だ。そして今回、小日向は自力でギアを纏うに至った訳だ。戦力としては喜ばしいがな。」

 

「うん。私もフィーネさんから話を聞いて驚いたけど、嬉しかった!私だって勇君の力になれるんだもん!」

 

いきなり現れた未来が後ろから抱きついてきた。

 

「未来!危ない!それに未来は消耗した直後だから安静にしなきゃ!」

 

「安心しろ勇。小日向の体力はお前の口づけ以降飛躍的に向上した。さながら融合症例だが、遥かに効率的且つ、負担がないときている。なんなら、一番強い装者かも知れんぞ?」

 

そんな話をしていたら、響と調ちゃんがフロンティアに向かっていた。っ!展開が早いぞ!

 

「フィーネさん!」

 

「ああ。こちらも補足した。既に弦十郎達が翼と別口で動いている。この場は私に任せてお前達も向かうと良い。何、帰ってきたら先の話を聞かせろ。それで充分な対価となるさ」

 

「わかりました!フィーネさんありがとうございます!ここはお願いします!未来!僕たちも!」

 

「うん。勇君の為ならどこにでも私はついて行くよ?」

 

「助かる!行くぞミカエル!」

 

そう言って僕たちは転移した。まずは調ちゃん、君を助けるよ!




フィーネさんが司令室にいるから、原作よりも早く弦十郎司令も前線に出れる!
さあドクター!お前の罪を数えろ!

次回〈希望が揃う時①〉

更新をお待ち下さい。


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希望が揃う時①

勝手に出撃した響達を追って出撃する勇。
しかし勇の目的は違うようで………?

本編へどうぞ。


僕たちが転移すると、既に響は一人でフロンティアに向かっていた。

 

「未来!ここの加勢は僕がする!未来は翼さんか響の援護を頼む!」

 

「わかった!勇君も早く来てね。じゃないと私、勇君を義姉さんから奪う為に次は既成事実を作ってあげるからね?」

 

「冗談にしては具体的だし、何より未来の目が笑ってない。それに、そういうことは!数年先にしてくれよ!」

 

あまりの会話内容にザババの二人の戦闘の手が止まってしまった。

 

「うん。先に行ってるね?」

 

沈黙する全員を置き去りにして未来は行ってしまった。

 

「なななななななな何を言っているデスか!!!!!!」

 

「既成………事実………………(赤面)」

 

ヤバい。完全に切調コンビに聞かれてた。

 

「っと切歌ちゃんと調ちゃんの話は僕も聞こえてたよ。

〈ドクターのやり方では何も残らない〉と、

〈ドクターのやり方でしか何も残せない〉だったね?」

 

「無理やり話を戻した」 「露骨なまでの話題そらしデス」

 

二人に冷ややかな目を向けられたけど、気にせず続けよう。

 

「それに切歌ちゃんは時間が無いって言ってたけど、

アレはどういうこと?」

 

「あたしがあたしである間に、調には安全な場所にいて欲しいのデス!だってあたしにとって調は大切な存在なのデス!あたしがあたしとして生きた証を残すために!」

 

「切ちゃん、そこまで………」

 

「それが切歌ちゃんの戦う理由なんだね。そして調ちゃんはそれが止めたい。なるほど………なら、僕が見届けるよ。君達の覚悟を、証を」

 

「勇さんが見届けるなんて癪デスが!それで充分デス!」

 

「私も聞きたいことがあるよ。

〈切ちゃんが切ちゃんでいられる為に〉って言ってたけど、アレはどういう意味?」

 

「あたしの中のフィーネの意思が目覚めそうなんデス!」

 

「なら、私が切ちゃんの為に戦う。大好きな切ちゃんが切ちゃんでいられる為に!」

 

「大好きとか言うな!あたしだって調のことがずっとずっと大好きデス!」

 

ああ良い場面だ。二人の絆の強さが良くわかる。だからこそ、僕が見届けるんだ。彼女達の覚悟を。

 

「「大好きだって言ってるのに!!!」」

 

そして、二人が〈Linker〉を使い全力の一撃を放ったが、切歌ちゃんの鎌が競り勝った。そろそろだな。

 

「はあっ!ラファエル」

 

風が二人を引き剥がした。

 

「「勇さん!どうして邪魔をするの!!!!」」

 

「二人の覚悟は見届けたし、僕も一つ隠していることがあった。だから止めさせてもらったよ」

 

「邪魔をして」「そこまでの理由があるのデスか!!」

 

「うん。まず、フィーネさんは生きて二課にいる。君達の中には宿っていないよ」

 

「勝手なことを言うなデス!私は見たのデス!私達を守った謎の光を!」

 

「ごめん。それは僕がセレナに頼んだんだよ。あの日の君達が見てられなかったからね」

 

「そんな………なら、あたしは何の為に!」

 

「だから言わせて欲しい。本当のことを伝えられ無くてゴメンね」

 

「良かった。私達がフィーネに塗り潰されないなら、私は本当に良かった」

 

「ははは………あたしは恥ずかしいデス」

 

そう言って切歌ちゃんはアームドギアを使って自殺を図ろうとした。でも!

 

「ダメ!切ちゃん!」

 

「言ったよね。二人の覚悟を見届けるって。

だからここからは僕が動くよ!ザドキエル!」

 

すぐに氷を作りだし、鎌を凍らせた。これにより勢いを失い、僕はそれを掴んだ。

 

「「勇さん!!!」」

 

「君達はお互いを思いやりながら、お互いを支えて来た。なら、君達は欠けちゃあダメなんだよ!お互いが大切なら!まずは自分を大切にしないと、意味が無いんだよ!」

 

二人はその言葉を聞くと固まってしまった。だけどすぐに意味を察して泣きはじめてしまった。

 

「調!調!ゴメンなさいデス!あたしが一人で抱え込まなかったら調は!」

 

「私も!切ちゃんに謝りたかった!切ちゃんの気持ちに気づけなくてゴメンなさい!ゴメンなさい!」

 

泣き崩れる二人を僕はそっと抱き寄せた。

 

「二人ともここにおいでよ。そして、気のすむまで泣けば良い。ここには僕たちしかいないから、胸の内を吐き出そう?」

 

「「うう。勇さーん!!!」」

 

やれやれ。こっちは一段落したかな。そっちは任せたよ未来。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ切ちゃん。私言いたいことがあるんだけど」

 

「奇遇デスね調。あたしもデス!」

 

「「私(あたし)は勇さんが好き(デス)。でもそれ以上にマリアを救って欲しい(デス)。だから、勇さんに私(あたし)達の気持ちを、

伝えよう(伝えるデス)」」

 

そう言って二人交互に僕へキスをしてきた。

 

「これは私達の気持ちだということと同時に」

 

「マリアを救って欲しい気持ちの表明デス!」

 

「「勇さんはマリアを幸せにするべき(デス)!」」

 

どうやらまだ、僕の戦いは終わって無いみたいだ。




切調コンビの動揺は正常。本来は393が異常です。
そして次回は393が暴れます。

次回〈希望が揃う時②〉

更新をお待ちください。


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希望が揃う時②

393が二人の戦いに介入します。


どう転んだかは本編をどうぞ。


勇君と別れた私は、翼さんと義姉さんが戦っている場面に遭遇した。

 

「雪音!お前は一体何のつもりだ!」

 

「あたしは!あたししか出来ねぇことをやるのさ!響が命の危機に瀕しても何も出来ねぇ!未来が戦場に現れた時に無様にのされちまった!勇に至ってはまだ敵の手の中だ!あたしがやらないと!他の誰かに被害が出てしまう!それがあたしには耐えられねえ!」

 

そうか。義姉さんは私達のことを知らないのか。

 

「それが雪音の戦う理由か!なら、私はお前に伝えなければならんことがある!」

 

「ハッ!あたし達にそんな時間はねえ!さっさとくたばりやがれぇ!」

 

「くっ!この攻撃!雪音、お前はそこまでして………ぐあ!」

 

義姉さんの攻撃は苛烈なものだったけど、私にはわかる。アレは悲しみだ。自分の守りたかったモノが自分の手から零れ落ちるその感覚が、義姉さんには耐えられなかったんだ。

 

「みんな………守りたいモノは同じなのにどうしてすれ違うのだろう。勇君も、響も、翼さんも、義姉さんも、私だって、皆がお互いを守りたかった。」

 

だけど、響はガングニールに蝕まれ、勇君は体を張って私と戦った。翼さんは残された戦力として現場に一人で行くことになった。

 

「なら、私が義姉さんの願いを引き継がないとね」

 

幸い私の存在はまだ気付かれていない。

なら、私がドクターを押さえれば良い。

 

「チャンスは来る。だから私も待つんだ!」

 

「雪音!お前が何を思っているかはお前の勝手だが、私はお前を救う気でいる!故に押し通るぞ!」

 

「ソイツは出来ねぇ相談だ!あたしの目的の為に沈めよ風鳴翼!」

 

二人はそう言って大技を繰り出す体勢に入った。私も、この時を待っていた。

 

「雪音ぇ!」 「翼ぁ!」

 

「Reishenshoujingreizizzl………」

 

「この歌は!なぜだ!なぜお前がここにいる!

小日向未来!!」

 

ああうるさい。この人を黙らせないと吐き気がする。

 

「貴方を倒しに来ました。そして、それを貰いに来ました!」

 

私はすぐに触手を伸ばして攻撃をはじめた。本当はあの杖を消したかったけど、それは義姉さんの目的だ。私がやることじゃあ無い。

 

「ぐあ!何てことだ!あり得ない!お前のギアは自身の力で分解されたはず!」

 

「いいえ。私は一度も自分の攻撃を受けていません。全ては響と勇君が私の為にしてくれたことです!」

 

動揺するドクターから、とうとう杖を回収出来ました。あとは!

 

「もう貴方の出番は終わりました!お引き取り願います!」

 

そう言って私はドクターをフロンティアまで蹴り飛ばした。

 

「義姉さん!コレを!」

 

そう言って回収した杖を義姉さんに投げた。

 

「小日向!なぜここに!お前は本部の中にいたのではなかったのか!?」

 

「何で未来がここにいるんだよ!あたしはお前を守りたかったし、救いたかった!じゃないと勇に顔向けできないんだよ!あたしは!あたしは!」

 

泣きじゃくった義姉さんを宥める翼さん。だけど、義姉さん同様に状況を飲み込めないでいた。

 

「ええ。説明しますよ。私と勇君が昨日から何をしていたのか。だから二人ともよく聞いてください」

 

そう言って私は説明を始めた。響が私と戦ってギアを失ったこと。調ちゃんが響と一緒に二課に預けられたこと。私が勇君と全力で戦ったこと。そして響と調ちゃんが切歌ちゃんやマリアさんを止める為にフロンティアへ向かっていること。調ちゃんと切歌ちゃんは今二人で戦っており、勇君がそれを見届けること。それら全てを二人に伝えた。

 

「ははは………勇は既に解放されていて、響の命は救われた。そして、アイツらの戦いを見届ける………な。あたしは大馬鹿だ」

 

「そう言うな雪音。私ですら、勇が既に復帰したとは思っていなかった。故に私も混乱しているさ」

 

「ええ。義姉さんは大馬鹿です。翼さんのことをもっと信じたら、別の手段を選べたかもしれないんですから」

 

「オイオイ。こんな時まであたしはに暴言とは、未来も変わらないな」

 

「だが、それでこそ小日向だ。私達の為に体を張ってくれたことは素直に感謝したい。ありがとう」

 

「いえいえ大丈夫ですよ翼さん。私がやりたいことをしただけですから。それと義姉さん?私との格の違いは充分に理解出来ましたね?早く弟離れをして勇君を渡してください。実力でも年齢でも戸籍でも義姉さんが勇君とくっつくより私の方がすばらしいに決まってますから」

 

「今の件には礼を言ってやる。ありがとうよ未来。だが、勇のことだけは譲らねえ。あたしの唯一残った可愛い家族なんだよ。それは誰にも奪わせねえ。例えあたしよりお前が強くても関係無い!弟は姉のもんだ!」

 

「大丈夫ですよ義姉さん。家族は私も増えますから、

唯一じゃあないです。存分に交流しましょう?私が精一杯勇君を支えますから安心してください。弟離れを拗らせたら婚期を逃しますよ?」

 

「ハッ!忠告はありがたく聞いてやるよ。だが、その点は心配には及ばねぇなぁ。あたしと勇は義理の姉弟で血は繋がってないんだ。戸籍もオッサンが何とかしてくれるらしい。つまり何も問題ねえわけよ。その貧相な体じゃあ、勇とベッドのやり取りをするのはキツイだろ?だからおとなしく身を引きな。あたしはキスまですませたんだ。お前より先にいるんだよ!」

 

「あらあら義姉さん可哀想に。その脂肪の塊で勇君を誘惑するわけですか………中々下品な発想ですね。どうせ勇君の同意無く始めるのでしょう?付き合わされてハジメテを失う勇君が可哀想ですね。早く消えてください」

 

「いい加減にしろ!!!!お前ら二人揃って戦場で惚けた話をするとは何事だ!!!!今はフロンティアを何とかしなければならないだろう!!!協力する気が無いなら、立花の救援は私一人で行く!!!貴様等は頭を冷やしてろ!!!」

 

翼さんの怒声が戦場に響き渡った。




翼さんお疲れ様です。ヤンデレは放っておいてビッキーの救援をお願いします。

次回〈希望が揃う時③〉

更新をお待ちください。


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希望が揃う時③

投稿内容の結果、アンケートの回答を次回までとさせて頂きます。まだ未回答の方は次回までに回答をお願いします。


さあビッキーよ立ち上がれ!君の力はそこにある!

それでは本編へどうぞ。


あのあと僕は泣き止んだ二人から今の状況を聞いた。今コントロールルームにはマリアさんがいて、響が向かっている状況だった。

そして未来の方は、首尾よくやったみたいだな。ドクターがフロンティアの方へ飛ばされてたから。

 

「あー二人共今の見えた?」

 

「フロンティアの方に」

「ドクターが飛んで行ったデス」

 

「多分やったのは未来だと思うよ。だって余波がアレしかなかったから」

 

「マジデスか。未来さんはトンデモな人デス」

 

「うん。逆らったら私達は殺されるかも」

 

いやそこまでは………するかも。未来の何か大事なモノを奪おうとしたら。

 

「うーん………。っていうか!響とマリアさんを助けないと意味無いじゃん!ゴメン二人共!先に向かうわ」

 

「モチロンデス!」

「マリアのことは任せた」

 

その言葉を聞いた僕は転移を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~side響~~

 

私は皆の助けを借りて先にコントロールルームに来た。だけどそこには、絶望した顔をしたマリアさんがドクターを討つ為にしたに降りようとしていたところだった。

 

「そこをどけ!立花響!マムはあの男に殺された!私はマムの仇を討たねばならない!」

 

「ダメです!マリアさんのステージの歌を、私はあの日見てました!あんなに素晴らしい歌を歌える人が手を汚す必要なんかありません!」

 

「私の手は既に血で汚れている!今さら構うものか!」

 

「それでもダメです!今のマリアさんは無理をしています!本当の貴女らしくありません!」

 

「うるさい!それでも退かないと言うなら!まずはお前から!」

 

マリアさんはそう言って槍を振るって来た。だけど私はその槍を掴んで!

 

「聖詠!バカな!一体何の為に!」

 

私にはわかる。マリアさんのガングニールから伝わる悲しみが!だから私が!これ以上悲しみを広げない為に立ち上がるんだ!

 

「何なんだそれは!?お前が纏うそれは一体何だと言うのだ!?」

 

「撃槍・ガングニールだぁぁぁ!!!」

 

「再び力を手にしたんだね響」

 

「えっ………なんでここに来たの!勇君!」

 

~~響sideout~~

 

 

 

~~勇side~~

 

僕がここに着いた時にウェルの姿は無かった。代わりにギアを手にした響とうなだれるマリアさんがいた。

 

「ウェルの奴、左腕をフロンティアに接続して重力を操作したのね。ネフェリムの心臓が接続されたフロンティアと奴の腕は繋がっている。戦う資格の無い私には、何も出来ることはないわ。だからお願い。」

 

すると響は笑顔でこう言った。

 

「私、ここに来る時に調ちゃんと約束したんです。〈マリアさんを助けて〉って。だから、私達に任せてください」

 

「なら、ウェル博士の追跡は俺達が請け負おう。響君達はネフェリムの心臓を何とかしてこい!」

 

「わかりました。師匠!ありがとうございます!」

 

そう言って響と弦十郎さん達はそれぞれの目的地に向かった。

 

「貴方は向かわないの?私は自分を偽り続けてきた。セレナが死んだと思ったあの日からは、あの娘の分まで生きようとしたわ。でもセレナは生きていたけど、私の前に姿を現したことは無かったわ。私を情けないとあの娘は思っているんじゃないかしら?」

 

そう言ってマリアさんは、不安と無力感を強く出した顔をしながら僕に尋ねて来た。

 

「僕はそうは思いませんよ。セレナさんは貴女達を助ける為に、本来は会ってはならない貴女達の前に現れた。貴女達がやりたいことを全力で支援するためです。

マリアさんの前に姿を現さないのは、その決心を揺らがせない為じゃあないですか?家族の側にいたら、思わず任務を放棄したくなります。でもそうしてしまうと貴女達を助けられない。だからマリアさんの前だけには姿を現さなかったんじゃあないですか?」

 

僕の主観だ。本人から聞きたいところだけど、今は時間が無い。事が終わったら、必ず師匠達にコンタクトをとろう。

 

「そんな………セレナは………私の為に………」

 

「あくまでも僕の予測です。本当のことは本人から聞くのが一番です。だから今はこの事態を乗り切る為に貴女の力を借りたいんです!」

 

「無理よ!私は!世界を救う為に立ち上がっても!人に力を振るうことさえ怖いの!実際にこの槍で命を奪ったあの日!私はあまりの状況に対して無我夢中で槍を振るったけど!あの日以降槍を持つ手は震えて仕方無いの!もう私には立ち上がる力は無いの!」

 

そうだ。マリアさんは本当に優しい人だった。自分の本心を隠してまで、仲間の為に危険な役割を背負い続けていた。それを僕は間近で見ていたじゃあないか。

 

「マリアさん。貴女は優しい人です。自分の為じゃなくて、自分の周りの人を助ける為に貴女は、自分を偽ってまで行動しました。それは誰でも出来ることではありません。そして貴女はナスターシャ教授を守る為にアメリカ兵を殺したことを悔いて、槍を持つ手が震えると言っていました。でもそれは、貴女が誰よりも命と真摯に向き合ってきたからだと僕は思います。だから貴女は優しい人なんです。」

 

「そんな!嘘よ!私が優しいなんて!」

 

「貴女が自分の不安な時に歌っていたあの歌を聞いた時、貴女の顔には陰が見えてました。僕は貴女の歌をまだ一度だってちゃんと聞けてません。もし貴女が不安で押し潰されると言うなら、僕は側にいます。貴女が立ち上がる為に僕はなんだってしますよ。だからお願いします。貴女の歌を聞かせて貰えませんか?」

 

マリアさんは涙を流しつつも、目に少し力が入ってきた。

 

「貴方は随分と勝手なことを言うわね。こんなに脆い女に立ち上がれなんて、よくもまあ残酷なことを言うわ。でも、そこまで言うなら見せてあげるわ。その代わりに責任をとりなさい。

私のステージをよく見届けなさい!世界でただ一人の為に歌う最高のステージにしてあげるわ!!!!」

 

「ええ!よろしくお願いしますよ!マリアさん!」

 

最後の装者が立ち上がる覚悟を決めた。




おや?マリアさんの様子が?まさか勇君!やってしまったというのか!君はどこまで………

次回〈希望が揃う時④〉

ネフェリム討伐間近です。更新をお待ちください。


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希望が揃う時④

今回でアンケートを閉め切ります。回答してくださった方々、ありがとうございます。

さあ!奇跡を纏ってネフェリムお仕置きタイムです。

それでは本編へどうぞ。


あの後、マリアさんは〈Apple〉を歌い、嘗ての統一言語で世界の皆に歌を届けることに成功した。

 

〈マリア聞こえますか?貴女の歌のおかげで世界中からフォニックゲインが集まっています。この光をもって私が月の遺跡を何とかします。それが私の最後の戦いです。〉

 

「ありがとうございます。ナスターシャ教授。こちらは僕達に任せてください。必ず何とかします!」

 

「マム!私は!」

 

〈今の貴女なら大丈夫ですよマリア。そして勇さん、マリア達のことを頼みましたよ〉

 

「マリアさん達のことは、僕に任せてください。必ず支えていきます!」

 

〈ありがとうございます。貴方と出会えたことを私は嬉しく思います〉

 

「ナスターシャさんからの通信は切れましたが、大丈夫です。あの人なら必ず果たしてくれます!」

 

「そうね。後はマムに任せましょう」

 

ネフェリムが巨大化したか。あのメガネが最後の悪あがきに出たな。でも、今の僕達なら。

 

「マリアさんの訴えのおかげで、世界中の人からの祈りが届きました。貴女のことをまた世界は信じてくれています。だから行きましょう!世界を救いに!」

 

「ええ!貴方達のおかげで私は立ち上がれた。そして今度こそ、世界を救ってみせるわ。最前席で見せてあげるわよ!!だからついて来なさい!勇!!!!」

 

良し。マリアさんが自信を取り戻した。これでネフェリムを止められる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~響side~~

 

再びガングニールを纏った私はクリスちゃんや翼さんと合流できた。そして未来も隣に立っていた。

 

「クリスちゃん!翼さん!未来も!ただいま!私も一緒に戦える!皆で力を合わせたい!」

 

「立花!お前のそのギアは!」

 

「響お前!体は大丈夫なのか?無理してないよな?本当に良いのか?」

 

「あはは、クリスちゃんは心配症だな。でも!私はもう大丈夫です!皆を守る為に私も戦います!」

 

「うん。それでこそ私の親友の立花響だね!だから私も戦うよ。でも、帰ったら私は響にオシオキをするからね。だから生きて帰るよ」

 

「あはは。お手柔らかに頼むよ?」

 

「無事に帰れたらね?」

 

私達がそんな話をしていると、ネフェリムが巨大化して現れた。

 

~~響sideout~~

 

 

 

 

 

 

~~調side~~

 

「切ちゃん。もう行ける?」

 

「バッチリデス!あたしだって勇さんに良いとこ見せたいデスし、マリアの歌が聞こえました」

 

「うん。私も聞こえた。あんなに生き生きと歌うマリアは初めてだね」

 

「それもきっと勇さんのおかげデース!」

 

「うん。それでこそ私達が好きになった人だね。だからきっとマリアもあんなに自信を持って歌ってた」

 

「だからマリアには幸せになって欲しいデスそ………」

 

切ちゃんが言葉を続けようとすると、巨大化したネフェリムが声をあげていた。

 

「切ちゃん!」

 

「わかってるデス!あのキテレツの仕業デス!」

 

やっぱりアレはドクターの。

 

「調。さっきのあたしの言葉を言い直すデス。

マリアが幸せになる為にも、アイツは絶対にぶっ飛ばすデス!」

 

「うん。私も同じ気持ちだよ。だから行こう切ちゃん!」

 

私達はそう言って巨大化したネフェリムのもとへ向かった。

 

~~調sideout~~

 

 

 

 

 

 

~~勇side~~

 

マリアさんが覚悟を決めた時、〈アガートラーム〉のペンダントが輝き出した。

 

「これはセレナの!そう……あの娘まで………ならこの力は私が使いこなして見せるわ。だから勇は最前席で私を見てなさい!」

 

「良いですよ。マリアさんの輝きを僕は最高の形で見ることができます。だから行きましょう!みんなのもとへ!」

 

「ええ!世界で最高のステージにしてみせるわ!」

 

そうして僕達はネフェリムのもとへ向かった。

 

~~勇sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~side響~~

 

「アイツ!私達の攻撃が全然効いてません!」

 

「雪音のミサイルや私の斬撃に立花の拳を受けて平然としていて、唯一小日向の攻撃のみ回避か………」

 

「クソッ!でかい図体の癖に本能はいっちょ前かよ。このままじゃあ埒があかねえぞ先輩!」

 

そう。私達の攻撃は通じず、未来の攻撃だけ避けられる。どうにかこの事態を打開しないと………

 

「危ない!立花!!!」

 

私が考えているとネフェリムの腕が眼前に迫ってた。

だけど、その攻撃は私に届かなかった。

 

「デース!!!」 「切り刻む!!!」

 

なんとあの二人が助けてくれた。

 

「調ちゃん!切歌ちゃん!来てくれたんだ!」

 

「なんと!」 「アイツら!」 「本当に来てくれた!」

 

「私は信じてたよ!二人ともわかり合えるって!」

 

「私達が来たのは」 「ドクターの暴走を止める為デス」

 

あはは。素直じゃないなあ。顔が赤いよ?

 

「皆呆けるな!奴の攻撃が来るぞ!」

 

ネフェリムが今度は巨大な火球を放って来た。だけど今度は聖詠が聞こえた。

 

「Seillencoffinairget-lamhtron………」

 

「この声は!」「マジか!」「なんと!」「やっと来た」

「デス!」「ふふっ遅いですよ?」

 

「「「「「「マリア(さん)!!!」」」」」」

 

「そして僕もいるよ!行くぞミカエル!」

 

そう言って、新しいギアを纏ったマリアさんと、私達の頼れる幼馴染みの勇君が合流した。

 

~~響sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

~~side勇~~

 

装者が七人揃った今、ネフェリムを倒す戦力は揃った!

 

「みんな!絶唱だ!響に力を集めてくれ!」

 

「「「「「「「わかった(デス)!!!」」」」」」」

 

「絶唱七人だとぉ!たかだかその程度の戦力で僕のネフェリムが倒せるものかぁ!」

 

往生際が悪いな。アイツを早く黙らせたい。

 

「みんな!僕が時間を稼ぐ!だからその間に響に力を!」

 

「やれぇ!ネフェリーム!!!」

 

ネフェリムからなりふりかまわないエネルギーが飛んできた。だけど!!!

 

「ザドキエル!ラファエル!ガヴリエル!」

 

こっちも防御に優れた天使を展開して防ぐつもりだ!

 

「だけど、さすがにキツイなあ。あんまり長くは持たない」

 

「当たり前だ!!!僕のネフェリムだ!お前らごときに止められるものかぁ!」

 

徐々に押しきられそうになった時、一番頼もしい声が聞こえた。

 

「これは七十億の絶唱だぁ!!!!」

 

そう言って響達がエクスドライブに至り、僕の体にも変化が現れた。

 

「これは〈アイン〉か!なるほど。響達の力に共鳴したってわけね!」

 

「みんな!手を!」

 

そう言って七人がネフェリムに突撃して奴の体の左側を消し飛ばした。

 

「しまった!アイツ攻撃をわずかに逸らしたぞ響!」

 

姉さんの叫びが聞こえたが、響の顔に不安はなかった。

 

「勇君!後をお願い!」

 

なるほどね。なら、遠慮なく美味しいところを貰うか。

 

「アイン!アイツに止めをさすぞ!」

 

「やめろぉ!僕のネフェリムがぁ!」

 

ウェルの言葉を無視して僕はネフェリムを消し飛ばした。だけど、僕達に通信が入った。

 

〈みんなすまん。ネフェリムの心臓が暴走した。アレの対処を頼めるか?〉

 

「大丈夫です。僕に考えがあります」

 

「本当か勇!一体何をするんだ?」

 

「未来達が回収したソロモンの杖を使ってバビロニアの宝物庫を開いて欲しい。あそこなら爆発してもこっちに被害は出ないから。」

 

「だけど勇。アレの拡張範囲じゃ………」

 

「大丈夫だよ姉さん。エクスドライブ七人なら絶対に開ける。足りないなら、僕も歌うさ。

ガヴリエル!〈行進曲〉!」

 

「これは!勇君の歌?」

 

「暖かい」「いける気がするデス!」

 

「みんなで開くぞ!」

 

「「「「「「「任せて!!!」」」」」」」

 

そう言ってバビロニアの宝物庫を展開してネフェリムを格納する広さの確保に成功した。

 

「しまった!マリアさんが!」

 

響の叫びが聞こえた時、ネフェリムはマリアさんを引きずり込んで来た。

 

「みんな!僕がマリアさんを助けに行く!そして内部からもう一度ゲートを展開する!だからみんなは出口で援護してくれ!」

 

「バカ!勇!死ぬつもりか!」

 

「大丈夫!!!僕を信じてくれるみんなを置いて死ねないよ!」

 

「絶対だよ?もし戻って来なかったら世界を越えて連れ戻すからね?」

 

「安心してよ未来。必ず戻るから!」

 

そう言ってバビロニアのゲートは扉が閉まった。




教授………ありがとうございます!

そして原作とは違い、バビロニア宝物庫での決戦は二人きりで行われます。

次回〈帰還〉

更新をお待ちください。


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帰還

アンケートの結果閑話の順番は、

①フィーネさんと勇君の閑話

②393の閑話

③切調コンビの閑話

④イヴ姉妹の閑話

となりました。回答いただいた方々ありがとうございます。

そして格納庫での戦いが原作とは違い、二人きりとなりました。

そしてこの話をもってマリアさんがヒロインに加入します。

それでは本編をどうぞ。


ネフェリムに引き摺られたマリアさんと一緒にバビロニアの宝物庫に突入した僕にケルビエルが輝き出した。

だけどゴメン。今必要なのはあの力だ。

 

 

「勇………その光は?」

 

「大丈夫です。いくぞサンダルフォン!〈最後の剣〉!」

 

そう言って全力のサンダルフォンを展開してマリアさんの拘束を振りほどいた。

 

「$⑮⑭$₡₦₢₧₣₢₤₨₨₤₡₩₡₯₡₤₡₯₧₯」

 

「勇………あなた………」

 

「僕は言いましたよ?マリアさんの姿を最高の席で見るって。だからもう一度ゲートの展開をお願いします。大丈夫です。マリアさんのことは、僕が守りますから。」

 

「………そうだったわね。なら!私の姿を目に焼き付けさせてあげるわ!」

 

マリアさんはそう言ってゲートの展開を始めた。

 

「残念だけどノイズ達!お前らは纏めて僕の獲物だ!」

 

僕はそう言って〈時喰みの城〉を展開して、ノイズを纏めて僕の時間に変えた。

 

「すごい力ね。私よりも美しいわ」

 

感心するマリアさんを他所にネフェリムが戻って来て、展開したゲートの前に現れた。

 

「アイツッ!また私達の前に!」

 

「大丈夫です。必ず突破できます。もう一度行きます!

メタトロン〈砲冠〉!カマエル〈砲〉」

 

二つの天使の力で奴の体に風穴を空けた。

 

「今ですマリアさん!手を握ってください!」

 

「わかったわ勇!私は貴方を信じてる!」

 

そう言って握ったマリアさんの手を引いて、僕は更に一つの天使を展開した。

 

「メタトロン〈天翼〉!

ハニエル〈千変万化境〉!」

 

二つのメタトロンを僕達に展開して得た加速で、奴に空けた穴を通りゲートを抜けることに成功した。

 

「やった!脱出できたわ!でもネフェリムが!」

 

やっぱり追って来るか。でも!

 

「僕達の信じた仲間がここにいます!」

 

頼もしい声が聞こえた!

 

「ああ!あたしの愛しい弟だ!手は出させねぇ!」

 

「義姉さんに先に言われたのは癪ですが同感です!」

 

「皆が笑顔でいる為に私達は諦めない!」

 

「私達のマリアと」「勇さんの為に、デス!」

 

「ガングニール!勇君を助けて!」

 

僕達の帰りを待っていた七人の戦姫が帰り道を援護してくれた。

 

「今ですマリアさん!杖を!」

 

「ええ!任せなさい!」

 

マリアさんがゲートに杖を投げ入れた後に穴は完全に閉じた。そして空が光った。

 

「終わったのね」

 

「はい。やっと終わりました。」

 

僕達が安堵していると司令から連絡が入った。月の軌道は、ナスターシャ教授のおかげでもとに戻りつつあるらしい。ありがとうございます。貴女は立派な英雄です。

 

「そう言えば、マリアさん達のこれからって………」

 

「ええ。私達はテロリストとして拘束されるでしょうね。でも心配いらないわ。覚悟していたもの」

 

マリアさんは既に状況を受け入れつつあったが、ここに予想外の人物が現れた。

 

「その必要は無いわ。彼女達の行動は正当なものだったことは私達が証明していたわ。よくやったわね、勇」

 

「えっ………師匠!?なんでここに!?」

 

「貴女は!サンジェルマンさん!何故ここに!?」

 

「ええ。私が一から説明するわ。まずことの発端は〈ルナ・アタック〉だったけど、月の軌道情報を隠蔽したのはアメリカよ。彼女達はそれを私達から聞いて今回の行動を決意したわ。」

 

「そうね。私達〈フィーネ〉は、それを知ってフロンティア起動と月遺跡稼働を計画したわ」

 

「ソロモンの杖と神獣鏡はその為に必要だった」

 

「そしてドクターを陣営に引き入れたデス」

 

そこまでが計画の初期だったな。

 

「あのライブ会場ですね。あそこでマリアさん達は宣戦布告をしてました」

 

そして師匠が話を再開した。

 

「続けるわ。勇には平行世界の知識があったわ。だから彼女達の計画を未然に防ぐ可能性が高かったわ。だからセレナに頼んで勇を拘束させたのよ。その事は、貴女のマネージャーを通して二課に伝えたわ。風鳴翼」

 

「なるほど。故に緒川さんと司令だけに………」

 

ですよねー。絶対に僕はドクターパクる気だったからなー。

 

「そして捕えた勇から、神獣鏡の適合者を聞き出して、学祭でセレナ達に接触させたわ」

 

「それが私だったんですね。だからあの時に私がセレナさんに声をかけられたわけですか」

 

「だからあの時のアイツらはステージで目立ってすぐに撤退したわけか。計画済みかよ」

 

「そして私とマムはスカイタワーで米国と会談をして決裂したわ」

 

「そのタイミングで私と未来は離れ離れになりました」

 

「そして未来がギアを纏ってあたし達の前に現れたわけか」

 

師匠が説明を再開した。

 

「彼女がフロンティアを起動させたことで勇をセレナに解放させたわ。そして私達は米国がフロンティアに向かった時点で日本を含む各国政府に米国の情報操作の真相と証拠をリークしたわ」

 

「なるほど。故にあの時米国のデータが日本に届いたわけか。君達のおかげだな。感謝する」

 

えっ!師匠達そんなことしてたの!?

 

「だから彼女達が汚名を被ることは無いわ。やむにやまれぬ事情というやつよ。だから心配しなくていいわ」

 

「本当に」「私達が無罪なんデスか!?」

 

「ええ。今頃首脳会談でアメリカに批難が集まって、代わりに日本を賞賛する意見が確実になってるわ。だから安心しなさい。

そしてマリア・カデンツァヴナ・イヴ、貴女の妹は明日到着するわ。姉妹の会話を楽しみなさい」

 

そう言って師匠は帰って行った。

 

「そういえば勇。貴方はあの時の私に〈貴女が立ち上がるためなら僕は何でもします。〉と言ってたわね。あの言葉と今回の出来事で決心がついたわ」

 

そう言ってマリアさんは僕に近づいて来た。そして僕にキスをしてきた。みんなの目の前で。

 

「マリアさん!?」 「おお……」「やりやがったな!」

「マリア!」「ついにやったデスね!」「………へぇ?」

 

「私の全てを貴方に捧げるわ。だから私は貴方の側にいさせて貰うわね。勿論本気よ。私からの愛を受け取りなさい。だって狂おしい程貴方が好きなのだから」

 

そう言ってマリアさんはウインクをして夕日に消えて行った。隣には満足気な切調コンビを連れて。

 

「立花!今すぐ私達は逃げるぞ!」

 

「待ってください翼さん!」

 

そう言って二人は逃げて行った。そして残された僕は

 

「勇!あたしの話を聞いて貰うぜ!嫌とは言わせねぇ!」

 

「義姉さんの言葉に今回は全面的に同意します。逃がさないよ!勇君!」

 

「ちょっと待って!話を聞いて!」

 

「「ダメだ(よ)!絶対に逃がさない!」」

 

こうして僕は戦いの終わりに二人の女性に追いかけられ、危うく既成事実を作られるところだったが、弦十郎さん達に泣きついて助けてもらった。女性不信になるかも知れない。




とうとうマリアさんが勇君に惚れました。しかし今のままでは、〈たやマ〉でしかありません。

そう。「まだ」病んではいません。せいぜい王子様補正程度です。この続きが別の閑話につながります。

そして次回からはアンケート結果をもとに、閑話を投稿します。

次回〈フィーネさんと僕〉

更新をお待ちください。


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閑話 フィーネさんと僕

アンケート結果第一話の投稿です!

次章の可能性をフィーネさんが語ります。

それでは本編をどうぞ。


「では勇。さっそく話を始めて貰うぞ?」

 

僕は以前約束したキャロルとの関係について呼び出された。

 

「うーん………と言っても、大したことはしてないですよ?やったことなんてシャトーの完成を一年前には終わらせてましたし、派手にケンカしたことと、オートスコアラーが完成したこと、後はキャロルからプロポーズされていることくらいしかありませんよ?」

 

「お前はバカか!!!!」

 

めっちゃ大きな声で怒られた。

 

「ディーンハイムの奴が既に塔を完成させて行動しないだと!それ自体が異常だと言っているんだぞ!奴の悲願は世界の分解だ!それがどれだけ大掛かりか携わったお前が知らん訳無かろうが!」

 

「いやだって、キャロル自身がもう一度世界を見定めるって言ってましたから問題ではないでしょう?」

 

「大アリだバカ者!それは単にお前がディーンハイムを嫌うことを恐れた結果にすぎんことだ!奴の情熱がお前に向いているなら、小娘共は命を狙われていることと同義だぞ!」

 

「いやそんな大げさな。キャロルがそんなことをするわけないじゃないですか」

 

「お前は本気で言っているのか!?奴の嫉妬深さを知らん訳ではあるまい!父親の件をどれ程引き摺ってきたか忘れたのか!」

 

………言われて初めて気づいた。以前そんなやり取りをしてたな。

 

「小娘共がお前にプロポーズしたことを奴は知っているのか?」

 

「えーっと………響と未来のことは少なくとも………」

 

「はあ………。ということは狙われる理由足り得る訳か……」

 

「そしてプロポーズ待ちと言ったが、まさかキスはしてないだろうな?」

 

………ヤバい。軽く三桁はされてる。

 

「姉さんが発見される半年前までに毎日されました」

 

「良いかよく聞け!奴の現在の力は!お前の知るレベルと桁違いに強いことを忘れるな!!」

 

ですよね。

 

「そしてオートスコアラーは既に稼働したと言ったな?奴の体にお前の力を宿した以上、オートスコアラーさえ嘗ての奴に匹敵することを忘れるなよ?」

 

えっ………ファラさん達が原作以上に強いのはわかったけど、それ姉さん達勝てるの?

 

「僕はもしかしてまずいことしてました?」

 

「まずいどころかフロンティア事変以上の災厄だ!この大バカ者!!!!」

 

最悪三期は回避不可能かな。僕かなり頑張って世界の危機を救ってキャロルの支えになってきたはずなんだけど。

 

「ということは……姉さん達は………?」

 

「最低でもあの時の小日向以上の力を引き出せないならオートスコアラーにすら勝てんぞ?」

 

キャロル達がそんなに強いとか聞いていないのですが。

 

「どうしましょう?」

 

どうすれば良いか本当にわからない。

 

「こっちのセリフだ!最低ラインナップが高すぎるわ!旧〈F.I.S〉組が〈Linker〉不要になって課題が一つ減ったと思ったら、次の要求値が高すぎるわ!完全聖遺物がいくつ必要だと思っているのか!」

 

その後もフィーネさんから説教が三時間は続いた。正座が辛いです。もう許して下さい。




勇君は世界を救ってはいたけど、爆弾も抱えていました。フィーネさんのお説教は当然の結果です。

次回〈響へのオシオキ〉

更新をお待ちください。


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閑話 響へのオシオキ

アンケート結果第二話 393の閑話です。

393が響に課したオシオキとは?

本編をどうぞ。


あの戦いのあと、私はフィーネさんに連絡を取った。勇君に逃げられてむしゃくしゃしてたのと、

響への〈オシオキ〉をする為に。

 

「ーーーーーーーーというわけでーーーーーーーを準備していただけますか?」

 

「正気かお前?立花響は親友ではなかったのか?」

 

「ええ。響は親友です。しかし、今回の一件は、

〈オシオキ〉が必要ですから。それにフィーネさんにも利益があるとは思えませんか?」

 

「ふむ。まあ良いだろう。道具の方は以前クリスの調教用に準備した物があったからな。それを出せばすぐに準備が出きるぞ」

 

「では明日に、司令を経由して通知をください。響を連れて行きますから」

 

「私は、お前の方が悪に見えるぞ」

 

「気のせいですよフィーネさん。では明日」

 

そう言って私達の通話は終了した。そして翌日。

 

「ねぇ未来?私達今日何の用で呼ばれたんだろうね?」

 

「うーん………私もわからないな。とにかく行こ?」

 

「うん!そうだね!」

 

私達はそう言ってフィーネさんの部屋まで来た。

 

「ふむ時間通りか。立花響。お前はギアを纏ってこの〈Linker〉の実験に協力して貰えるか?」

 

「わかりました!」

 

そう言って響は何も疑わずに〈Linker〉を受け入れた。チョロ過ぎる。

 

「では次にそこの椅子に座ってくれ」

 

言われて響はあっさりと座った。

 

「詳細なデータが取りたいから、拘束させて貰うぞ」

 

そう言ってフィーネさんは響を拘束し、目隠しをした。

 

「じゃあフィーネさん。後はお願いしますね。響?私の〈辛さ〉と〈切なさ〉を存分に味わってね?」

 

私がそう言って部屋を出ると響の悲鳴が聞こえ始めた。頑張ってね響。夕方には向かえに行くよ。

 

「うーん、この後どこで時間を潰そうかな」

 

そう呟いたら二人から声をかけられた。

 

「あっ!未来さん奇遇デスね」

 

「切ちゃん。せっかくだからお願いしよ?」

 

「それは良いデスね調!」

 

「未来さん。私達と模擬戦をしませんか?」

 

「良いよ。司令にお願いして一時間後にシミュレーションルームでどうかな?」

 

「異議無しデス!」 「よろしくお願いします」

 

そう言って司令にお願いして部屋の手配をしてもらった。

 

「じゃあ!」 「始めるデス!」

 

そんな流れで模擬戦が開始された。

 

~~30分後~~

 

「攻撃が届かなかった」 「接近戦まで強すぎデス」

 

「うん。良い汗かいたー。二人は休憩してて。私は連絡する人がいるから」

 

私はそう言って部屋を出て、フィーネさんに連絡した。

 

「フィーネさん。響の様子はどうですか?」

 

「ああ。立花響なら今も〈辛さ〉から泣いて許しを乞うてるぞ?」

 

「そうですか。ではお昼からは〈切なさ〉の方をお願いします。」

 

「お前は本当に容赦が無いな。協力した私でも引くぞ?」

 

「ええ。それが響への〈オシオキ〉ですから」

 

私はそう言って通話を終了した。

 

「お待たせ二人とも。休憩がてらお昼を食べようか?

あと、〈F.I.S〉の勇君の話を聞かせて欲しいな?」

 

「良いですよ」 「やったーお昼デス!」

 

こうして私達は三時間くらい話込んだ。

 

「うん。良い話が聞けた。ありがとう二人とも。じゃあまたね?」

 

「さようなら」 「バイバイデース!」

 

私はそう言って二人と別れた。そしてフィーネさんへ連絡した。

 

「フィーネさん。響の様子が知りたいので通話を繋げてもらって良いですか?」

 

「お前は本当に徹底してるな。もはや親友か疑わしいぞ?」

 

そう言ってフィーネさんは響と代わった。

 

「響?どう?少しはわかった?」

 

「みくぅぅ。切ないよぅぅ。もう許してぇぇぇーーー」

 

「ダメだよ響?私はもっと辛くて切なかったの。だから響も頑張ろう?」

 

そう言うと響は再び悲鳴をあげ始めた。

ああ可愛いなぁ響。もっと悲鳴が聞きたいなぁ。

 

「ではフィーネさん。夕方までお願いします。終わったら響の体内洗浄とそのビデオをお願いします」

 

「フハハハハハハハハ!!!!もはや清々しいな小日向未来!お前と私が〈ルナ・アタック〉で手を組んでいれば確実に二課は落ちただろうなあ!ハハハハハハハハ」

 

そう言ってフィーネさんとの通話を終了した。

 

~~夕方~~

 

「響?わかった?私達の関係をしっかりと理解した?」

 

「みくぅ………もう逆らわないから許してぇぇぇ」

 

「良いよ響。私達は〈親友〉だもの。でも、もう響は私に逆らわないね?あと、今日の事はみんなには秘密だよ?破ったら次は体内洗浄無しの後遺症に苦しんでもらうからね?」

 

「うん。約束するから。もうしないからぁ。

もう〈アレ〉は嫌だよぅ。辛くて切ないよぅ」

 

「良いよ響。私も響が約束を守ったら、もうしないから。だから響は私を支えてね?」

 

 

フィーネさんに渡されたビデオには、可愛いく泣き叫んで許しを乞うギアを纏った響が写っていた。ああ可愛いなぁ。私の親友(オモチャ)。




ちなみにこの393は、響が力を失わなかったことも気にしていました。だって勇君の隣が空かなかったので。流石393です。いつもながら愛が重いです。

次回〈切調コンビの悩み〉

更新をお待ちください。


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閑話 切調コンビの悩み

アンケート結果第三話 切調コンビの閑話です。

二人が抱える悩みとは?

本編をどうぞ。


切歌の悩み

 

 

「調。あたし達はこれからどうすれば良いんデスかね?」

 

「大丈夫だよ切ちゃん。司令が言ってたじゃない。私達もリディアンに通うって」

 

「それが問題なのデス!このままじゃ、勇さんとマリアをくっつける時間が減るじゃあないデスか!」

 

「仕方ないよ切ちゃん。だって私達はまだ未成年なんだから」

 

そう、あたし達はリディアンに通うことが決定してしまったのデス。世間的に無罪になったものの、それでもある程度の監視とあたし達の生活の為に学校生活が始まるのデス。

 

「うう。あたしは勉強が苦手デス。本当に苦痛デス」

 

「切ちゃんの悪い癖だよ?だからマムやマリアがいつも頭を抱えてたんだから。」

 

「だって苦手なものは苦手なのデス!」

 

うう。勉強さえ無ければ、学校は悪くないのデスが世の中はあたしに厳しいデス。

 

「大丈夫だよ。リディアンに通うことは悪いことばかりじゃあないから。だってクリス先輩や響先輩の、弱みを握るチャンスでもあるんだから」

 

「ハッ!そうデス。調は天才デス!まだ先輩達の弱点を見つけてませんデス!マリアの為にもここはあたし達が頑張るのデス!」

 

そうデス。あたし達にはまだやれることがあるのデス!マリアの幸せの為にも、絶対に成功させるのデス!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

調の悩み

 

 

私は〈F.I.S〉では家事を担当していた。本当はマリアがやろうとしていたけど、マリアを助けたかったし、切ちゃんやマムのことは目が離せなかった。

 

「だけど勇さんが来てからみんな変わったなあ」

 

そう。あの日セレナが捕えて来た二課の戦士の勇さんは、掃除は丁寧、料理は美味しい、そして何より優しかった。

 

「切ちゃんはお野菜を残すし、マムはお肉しか食べない。ドクターに至ってはお菓子しか食べなかったからなぁ」

 

それが私とマリアの悩みだった。

 

「でも勇さんは、拘束されながらもお野菜を美味しいカレーにした。マムには栄養面を考えて飲みやすいスープにして調理していて、みんなが美味しく食べてたな。ドクターはほっとかれてたけど」

 

マリアに振り向いて貰うのに一番の障害は先輩達じゃあない。勇さん自身だ。あの人にアピールするには、私達の後押しだけだと時間がかかりすぎる。それじゃあダメだ。呑気なことをしてたら、未来さんやクリス先輩が行動しちゃう。早く手を打たないと。

 

「マリアだけのアドバンテージか………。何があるんだろう?」

 

そう感じた私はある人に相談することにした。

 

「それで私のところに来た訳か。お前も物好きだな。他人の色恋沙汰のアシストをしたいなどと。」

 

そう。私は今フィーネさんの部屋に押しかけて相談に来た。

 

「だってマリアの強みは、ライバルの中では誰よりも大人だったこと。そしてそんなことを相談出来る人は私達の周りだけだとフィーネさんしかいないから」

 

「いや、弦十郎はクリスが勇と結婚したかったら支援すると言っていたぞ。私も反対する気は無いしな。だから何故私を選んだのか本当にわからないのだが」

 

「それでも!私が頼れるのは貴女しかいないんです!お願いします!どうか大人としてどう振り向かせるか教えてください!」

 

「はぁ。一番手っ取り早いのは既成事実だ。間違いなくな。」

 

「でもそれはみんな考えてます!!!!!」

 

そう。私達がマリアと共に離れた後、未来さん達は本当に既成事実を作ろうとして、勇さんを襲うつもりだった。本人が司令に泣きついて助けてもらったらしいからまず間違いない。

 

「ならばデートしかあるまい。それも学生組では行けない場所に限定した………な」

 

「私達では行けない場所?」

 

どこなんだろう?

 

「そうだな。ホテルでの食事や、バーでの酒等が一般的だな。貴様等は行けんだろう?」

 

「前者はとにかく、後者は勇さんが無理です」

 

「ならば発想を変えろ」

 

発想を変える?どういう意味だろう?

 

「別に店でなくても良いということだ。家の中なら任務に支障のない限り、うるさいことはいわれまい。」

 

「なるほど。参考になります」

 

さっそくメモしないと。

 

「後はアーティストらしく歌を使うことだな。プレゼントにチケットを添えろ。奴はその手の誘いは断らん。自分の愛を分かりやすくも、受け入れやすい形で行え。私から出来るアドバイスはそのくらいだ。」

 

「わかりました。絶対にマリアに伝えます!」

 

「ああ、それともう一つ。

〈命短し恋せよ乙女〉櫻井了子の言葉だ」

 

「フィーネさん!ありがとうございます!」

 

うん忘れない。早く帰ってマリアに伝えないとね。




切ちゃんは相変わらずの平常運転デスねぇ。
調ちゃんはまさかの相談相手のチョイスか。

勇君包囲網が狭まりつつあります。

次回〈イヴ姉妹の再会〉

更新をお待ちください。


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閑話 イヴ姉妹の再会

アンケート結果最後の閑話です。

この話は何気に、この章で一番書きたかった閑話でした。

それでは本編へどうぞ。


ドクターの拘束とネフェリム撃破の翌日、私はセレナと再会する事が出来るようになった。

 

「セレナ!やっと会えた!嬉しい!貴女がいなくなって私達は辛かった!なんて素晴らしい日なの!」

 

私はそう言って、全力でセレナを抱き締めた。

 

「痛い!痛いよマリア姉さん。だけど言うね。ただいま」

 

「ええ。お帰りなさい。私の妹。もう失わないわ」

 

「ごめんなさい。フロンティアの時に本当は会いたかったんだけど、あの時に会って姉さんの覚悟を鈍らせるわけにはいかなかったから」

 

「ええ。その可能性は勇から聞いたわ。彼が言ってたのは、本当だったのね」

 

あの時勇に聞かされ無ければ私は、何も残らないまま復讐と絶望に呑まれただろう。ああ、彼の優しさが嬉しい。私はそう思わずにはいられなかった。

 

「ねぇセレナ、会ってすぐで悪いけど相談があるんだけど、良いかしら?」

 

「相談?良いよマリア姉さん。何でもして。私も一緒に悩むから」

 

私は覚悟を決めて自分の想いを打ち明けた。

 

「実は私ね。勇が狂おしい程に好きで、彼を手に入れたいの。どうすれば良いかしら…………」

 

「えっ…………姉さん何を今更言ってるの?」

 

セレナの表情は、驚きと、何を今更?といったものだった。

 

「マリア姉さんが好きなようにしたら良いんだよ?それ以外に何があるの?」

 

「だって………彼にはプロポーズをした娘がいるのよ?

こんな私に振り向いてくれるわけ………」

 

そう。彼にはプロポーズをした娘が二人いる。

〈立花響〉と〈小日向未来〉だ。その事が私は不安でたまらなかった。

 

「大丈夫だよ姉さん。勇さんが優しい人なのは姉さんも知っているでしょう?勇さんはそんなこと気にしないよ?というか、私は姉さんが勇さんといつくっつくのか期待してたんだよ?だから心配しなくて良いの」

 

「でも………どうやって振り向かせるかわからないの」

 

そんな私にセレナが返した言葉は予想外の物だった。

 

「というか不安なら彼と既成事実を作成して逃げられなくすれば良いの。簡単なことだよ?」

 

「ききききき既成事実!なななな何を言ってるのセレナ!そんな強引なこと出来るわけないわ!彼だって嫌がるはずよ!それで嫌われたら私はもう立ち直れないわ!」

 

そんなこと………本の中の話のはずよ。現実なら避けられてしまうわ。無理よ。絶対に無理。

 

「なら、姉さんは彼をデートに誘うんだよ。だって勇さんは優しい人だからきっと断らない。その流れでホテルに誘えば良いんだよ?」

 

私にはセレナの話がドラマや映画の話のようにしか聞こえなかった。

 

「でも姉さん。そんなチキンな考えをしてたら、他の人に勇さんをとられるよ?」

 

「それは絶対ダメ!!!!」

 

私は自分でも驚く程大きな声が出た。

 

「うん。それで良いんだよ?マリア姉さんのその素直な気持ちを勇さんにぶつけるの。だってそれが、今までの姉さんとはちがう、本当の気持ちなんだから。生まれたままの感情を隠して後悔したらダメだよ。私だって姉さんを応援してるんだから。」

 

ああ。セレナの言葉が胸に刺さる。そうか……この気持ちは押さえなくても良いんだ。

 

「そうね………ならセレナには見せてあげないとね。私が勇に振り向いて貰うその瞬間を!」

 

「うん。その自信を持った姿も間違いなくマリア姉さんだよ。そして私も安心できたな。これで勇さんを義兄さんって呼ぶことが出来るんだから」

 

なんだ私は。実の妹に心配されてたんだ。なら、セレナの為にも、そして自分のこの気持ちの為にも私は彼を手に入れ無ければね。

 

「でもセレナ。貴女は良いの?勇のことを好きなはずじゃあなかったの?」

 

「うーん………私は先生から義兄さんのことは聞いてたけど、接触は禁止されてたんだ。だから、そう言う気持ちになれないの。だから姉さんは幸せになりなよ。暁さんや月読さんも私と同じ気持ちだから」

 

なんだ。後は私の覚悟だけだったんだ。なら、もう迷わない。

 

「必ず手に入れるわ勇!貴方をメロメロにして、私無しでは生きられないようにして見せるわ!」

 

「うん。頑張ろう姉さん。私達〈F.I.S〉は絶対にマリア姉さんの味方だから」

 

その言葉の後、私達はどうやって勇を堕とすか話合うことにした。




〈悲報〉ヤンデレが増えました。え?当たり前?
まあ勇君は王子様ですからねぇ………修羅場待ったなしか!

次回〈やって来たお隣さん〉

更新をお待ちください。



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閑話 やって来たお隣さん

どうやらお隣さんが引っ越して来たようです。穏便に済めば良いのですが………

本編へどうぞ。


「はああああ!なんでてめぇらがここにいるんだよ!冗談じゃあねえぞ!」

 

朝っぱらから姉さんの怒声が響いた。

 

「姉さん!朝っぱらからうるさい!」

 

「えっ!何!クリスちゃんどうしたの!?」

 

「ふわぁぁ。朝っぱらからうるさいですよ義姉さん……」

 

三者三様の反応ではあるが本音は同じだった。

 

「ちょうどよかった!お前らよく聞け!」

 

姉さんが言葉を続ける前に扉の先の人物が話を始めた。

 

「あら?随分な嫌われようね?私達はただお隣さんに挨拶に来ただけよ?」

 

「どうもデース!勇さん!」

 

「引っ越して来ました。よろしくお願いします」

 

「叔父様に言われてな。私達は勇達の家の隣に住むことになったのだ」

 

どうやら引っ越して来たのは、〈F.I.S〉の三人+翼さんだったようだ。ん?翼さん!?

 

「なんでここなんだよ!他の所で良いじゃねえか!」

 

大分姉さんがお怒りのようだ。当然と言えば当然だけど。

 

「それはね、私達がお願いしたのよ。愛しい勇の側にいたいけど、それが叶わない。そんな状況に私が耐えられる訳無いじゃない!」

 

マジでマリアさんがこっちを見て言って来た。でも、そんなことを言えば………

 

「おやおや。私達の愛の巣を侵害しに来たのですか?私は受けて立ちますよ?格の違いを教えてあげましょうか?」

 

「未来!目が笑って無い!怖いからいつもの未来に戻って!じゃないと私怖くて………「響は黙ってて?それとも〈オシオキ〉が必要なの?」ひぃぃごめんなさいぃぃもうアレは嫌だよぅぅ」

 

響が未来を説得しようとして泣き出した。………一体未来は何をしたんだ?あの怯えかたは異常だぞ?

 

「未来一体何を「やめて勇君!それだけはダメなの!」………わかった。とりあえず聞かないでおくわ」

 

響の必死の訴えで追及出来なかった。本当に何をしたんだよ未来………。

 

「っと話を戻すわ。私達がここに来たのは、もう一つ理由があるわ。装者の連携も兼ねてるのよ。貴方達は共同生活をすることで良い絆が生まれたわ。司令はそれを良しとして隣に住むよう進言してくださったのよ」

 

「私だけが二課で除け者だったのでマリア達が引っ越して来るのを機にここへ来させてもらったのだ」

 

マジですか。司令本気でそんなことを。

 

「ふざけんな!マリア!お前だけは絶対ダメだ!勇を誑かす奴が側にいるなんて気が気でならねぇ!」

 

「やめなよ義姉さん?みっともないよ?それに勇君を盗られるのが怖いって自分で言ってるようなものだよ?」

 

未来………僕は物扱いなの?

 

「まあまあクリスちゃん。師匠の進言なら仕方無いよ。それに私は嬉しいよ。調ちゃんや切歌ちゃん達にいつでも会えるから!」

 

「あら響?私は除け者かしら?」

 

「いえいえ。マリアさん達は世界を代表するアーティストじゃないですか。私は嬉しいですけど簡単には会えませんよね?」

 

響がやけに挑発的だと思ったら背後に未来がいた。よく見ると怯えてる。だけど僕もそろそろ言うか。

 

「うーん………全体的に見て悪くないことじゃないかな?勉強の出来ない響と切歌ちゃん。そして歌と戦闘以外残念な翼さんの監視がみんなで出来るんだよ?良いことだと僕は思うな。みんなで支え合うことが出来るんだから。」

 

とたんに三人の顔色が変わった。

 

「「勉強………」」 「片付け………」

 

わかりやすい。

 

「だからさ。三人を僕達で支援するんだよ。みんなが協力すればきっと何とかなるから」

 

そう言うと、マリアさん・調ちゃん・未来・姉さんの表情が変わった。

 

「そうね。切歌の面倒を見てくれる人が増えるのは助かるわ。本当に司令には感謝しないとね」

 

「切ちゃんのことを助けて貰えるなら私は助かる」

 

「マリア!調!ひどいデス!」

 

「響の勉強のフォローは本当に大変なんだよ。私と義姉さんがどんなに苦労したか……」

 

「本当に朝はだらしねぇからなぁ響は。毎朝苦労する身になって欲しいもんだ」

 

「うわぁぁん!未来!クリスちゃんごめんなさーい!」

 

「ふむ。二人は皆に苦労をかけているようだな」

 

「「「「「「「他人事みたいに言ってる貴女が一番手が掛かるんだよ(デス)!!!!!」」」」」」」

 

一斉に翼さんに批難が飛んだ。

 

「何故だーー!!!!」

 

「これからもよろしくお願いします。マリアさん!」

 

「ええ!こちらこそよろしくお願いするわ。そして忘れないでね。私はいつでも貴方を待ってるわよ?」

 

「「あたし(私)の愛しい勇(君)だ(です)。絶対に渡さねえ(しません)!」」

 

威嚇する姉さんと未来を他所に僕達の新たな生活が始まった。




あらあら………これは大変です。ヤンデレが三人集まってしまいました。勇君は安眠できるのでしょうか?

次回〈激おこキャロル〉

更新をお待ちください。


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閑話 激おこキャロル

この話が次章への重要な前日譚ともなっています。そして勇君の努力の結果でもあります。

それでは本編へどうぞ。


フロンティア事変が勇達の手で解決したことは素晴らしいことだ。だがそれ以上に腹立たしいことも起こってしまった。

 

「勇が………オレの勇が………奪われた………小娘共に奪われた………」

 

「マスター!直ぐ研究塔にお願いします!エルフナインが!!」

 

「なんだと!お前等!どういうことだ!」

 

奴はオレのホムンクルスの中でも特別な躯体だ。

勇の誉め言葉を最初にオレに届けた、

想い入れのある奴だ。

 

「エルフナインが機能不全を起こしたのです!」

 

「オレの予備躯体を手配しろ!直ぐだ!」

 

「了解しました!」

 

待っていろエルフナイン!オレは急いで研究塔に向かった。そして到着した時には奴はかなり衰弱していた。

 

「おい!しっかりしろ!何故黙っていた!」

 

「キャロル………ごめんなさい………君に迷惑をかけたくなくて………」

 

「馬鹿者!そんなことをオレが気にすると思っていたのか!お前達は大事な家族だ!迷惑なんて思わん!」

 

「マスター!躯体の準備が出来ました!」

 

ようやくか。かなり厳しい状況だぞ……

 

「急げお前等!間に合わすぞ!」

 

そうしてオレ達は予備躯体に、エルフナインの人格を転写した。間に合ったことには安堵したが、肝を冷やしたぞ。

 

「キャロル……ごめんなさい。僕なんかに予備躯体を使ってくれるなんて………」

 

「〈なんか〉じゃないさ。お前達はオレの家族だ。その為の躯体等大した問題にならん。予備躯体はまた作れば良いんだ。だから気にするな。それにオレが欲しい言葉は別の物だ」

 

「そうですね。ありがとうございます。キャロル!」

 

「そうだ。その言葉が聞きたかったぞ。よく言えたな、エルフナイン」

 

「そういえばキャロルは勇さんに会いに行かないのですか?僕は会いたいです!」

 

ああ。勇に会いたい。だけど勇と会えるのはまだ二年先なんだ。長いなあ。早く会いたい。

 

「会いたいさ。だけど勇は必ず来てくれるから。だからオレは待つんだ!勇はオレを裏切らないはずだから!」

 

「ダメです!そんな考えだと装者に盗られます!彼女達は本気です!我慢なんてしません!既成事実すら辞しません!」

 

「なんだと!それは本当か!ならオレは何の為に大人しくしていたというのだ!お前等!直ぐ集合しろ!」

 

そう呼ぶとオートスコアラーは直ぐに集結した。

 

「〈アルカ・ノイズ〉を完成させるぞ!泥棒猫共の力を削ぐぞ!」

 

そう言って〈アルカ・ノイズ〉の完成を急いだ。

 

「キャロル………勇さんを信じて一途に待ち続けたキャロルの想いは立派です。でも女性は強欲なんです!だからキャロルもアピールしないと出遅れます!今回の件で僕はキャロルに恩返しがしたいです!何でも言ってください!」

 

そうだ!何を乙女しているんだオレは!夫を待つのは確かに必要なことだった。だが今ではなかった!だから勇。少し早いけど迎えに行くぞ。必ずオレはお前を手に入れる。だから待っていろ。

 

「ならばエルフナインには頼みがある。レイアと打ち合わせをしてくれ」

 

「わかった!レイアさんだね?直ぐに相談して来る!」

 

そう言ってエルフナインは走って行った。

覚悟しろ小娘共。オレとお前等は立場が違うと体に教えてやる!!




やってしまったなエルフナイン!君か?君が黒幕なのか?これでは三期は大荒れではないか!(今までが平和だっただけです。)

次回〈設定 フロンティア事変まで〉

更新をお待ちください。


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設定 フロンティア事変まで

お気に入り登録者が500人を越えました。皆様ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。



今回はフロンティア事変までの設定集です。

本編へどうぞ。


○雪音 勇

 

主人公。ソロモンの杖護送任務後で拉致られた。

・その結果新たなヤンデレの製造を行い、晴れてヒロイン全員とキスをするに至る。

・尚キスのハードルが下がったのはキャロルの所為だった模様。

・閑話でフィーネさんにめちゃくちゃ説教された。

・つまるところ次章の諸悪の根源

 

○立花響

 

原作主人公だが、閑話で完全にメインヒロインルートから排除された。

・393に何をされたかは本人からは語らない。

・次のお薬は体内洗浄されない脅しを受けた。

・学祭の〈逆行〉で出汁にされてたことは知らない。

 

○小日向未来

 

ヒロインでヤンデレ。閑話でフィーネさんに響の調教の実行役をお願いした。

・自力でエクスドライブに至った。

・多分未来にタイマンで勝てるのは本作品ではガチのキャロルと勇君だけ。

・学祭の〈逆行〉は、完全に響を出汁にするつもりだった。

・キスの後から〈Linker〉は不要になった。

 

・参考ステータス

 

〈暁光〉レベル65(最大値の場合)

 

 

○風鳴翼

 

アイドルで卒業生。フロンティア事変後にマリア達の家に引っ越して来た。

・多分三期までにメンバーに教育され直される予定。

 

○雪音クリス

 

義弟に恋したヤンデレ。未来とだいたいお家でケンカしてる。

・マリアさん達が引っ越して来て警戒するライバルが増えた。

・そしてギアを纏った戦いで393に惨敗。

・学祭ではひびみくに勝った。

 

○月読調

 

勇君に命を救われた少女①

・後述の切歌と共にマリアと勇をくっつけるつもりでいる。

・フィーネさんにアドバイスを聞きに行った。

・学祭では指示通りに目立ってあっさり撤退した。

・キスの後から〈Linker〉は不要になった。

 

○暁切歌

 

勇君に命を救われた少女②

・先述の調と同様にマリアと勇をくっつけるつもり。

・頭が残念なので勉強は苦痛。

・学祭では調同様目的達成後にあっさり撤退

・キスの後から〈Linker〉は不要になった。

 

○マリア・カデンツァヴナ・イヴ

 

遅れて登場したヒロイン。

・アイドルとして登場したが、フロンティア事変で弱ってた心を勇に支える約束をされて惚れる。

・というか、彼に支えて貰えないとメンタルが保てないレベルになった。

・更にセレナ達のアシストで勇を奪ってでも手に入れたいと考えるようになった。

・勇君には大人の魅力でメロメロになって欲しい。

・この世界でのフロンティア事変では無罪放免で、家は勇君の家のお隣。

・そして装者達の中では唯一の成人女性。

・キスの後から〈Linker〉は使っていない。

・原作とは違い、バビロニア宝物庫のネフェリムノヴァとの対決は勇君と二人っきりだった。

・勇君のことは運命の王子様に見えている。

 

○セレナ・カデンツァヴナ・イヴ

 

岩国基地でサンジェルマンの指示のもとに勇君を捕縛して拉致する。

・更に学祭で未来さんに接触したり、情報操作に協力する。

・本作品では原作より強くて優秀。

・裏方の仕事を中心にこなす。

・スカイタワーで未来さんを回収したのは彼女。

・結社の新しい序列五位

・閑話にてマリアさんのヤンデレ化に貢献する。

・早く勇君を義兄さんと呼びたい。

・但し恋をしている訳ではない。

・あくまでも家族愛の範囲。

 

○サンジェルマン

 

絶対的師匠。情報操作や暗躍、キャロルの説得等大変なお仕事をしてた。

・キャロル絡みでは胃薬を飲んでいた。

・勇にヤンデレの真実を教えていた。

・勇君の拉致や学祭での行動の指示は間違いなく100点の作戦プランだった。

・どちらかというと出た被害は、ドクターの所為なので罪は全部擦り付けた。

・やはりオカンになっていた。

・フロンティア事変が終わって一番満足している。

 

○ナスターシャ教授

 

誰が何と言おうと英雄。

原作同様フロンティア事変でお亡くなりになる。

 

○ドクターウェル

 

原作同様のキチガイだが、つばクリの戦いに横槍をいれた393にぶっ飛ばされた。

・魔法少女事変の内容に影響の出た本作品でもう一度日の光を浴びるかは未定。

・師匠の意向で罪は全部彼の所為にされた。

 

○フィーネさん

 

原作一期のラスボスだが、基本的に本作品では便利キャラになる予定。

・閑話では響の調教の実行班だが、昔のクリスが反抗的だったら、同じことをする予定だったらしい。

・霊力が装者に〈Linker〉不要になる程の変化があることに気づいた。

・閑話で勇君に説教をした。

・とりあえずシンフォギア改修が急務になった。

・胃薬をこの閑話の後から飲むようになった。

・本編より閑話での出番が多い人。

 

○風鳴弦十郎

 

二課の司令官で偉大な〈OTONA〉。

ドクターを引っ捕らえたり、〈F.I.S〉の新しい住居の提供をしたりと、重要な役割を果たした。

 

○緒川さん

 

ライブ会場で伝書鳩させられた以外は原作通りの活躍の為に描写は割愛。

 

○キャロル・マールス・ディーンハイム

 

今回は良い娘していたヒロイン。

・ヤンデレだったが、プロポーズの確約で自分が選ばれると思い込み余裕を見せていた。

・その間は少女漫画等も読んでいて、お淑やか路線を歩もうとしていたが、エルフナインに危機意識を指摘されて、もう我慢することをやめた。

・〈アルカ・ノイズ〉の制作は直ぐに終わらせた。

・勇に嫌われないために成りを潜めていたヤンデレは、

他ヒロインが勢いを失わなかった為に取り戻したどころか暴走した。

・勇に嫌われないために装者を殺すことはないが、格の違いを体に教える計画が進行中。

・とりあえずダヴルダヴラで吊るすつもり。

・絶対に勇君を奪い返すつもり。

 

○エルフナイン

 

原作より早く体に不調が出てキャロルの予備躯体に記憶が転写された。

・装者が諦めが悪いことを謎の人物からの情報でキャッチした。

・ついでに既成事実をも厭わないことも何故かわかった。

・レイアと何かの計画を進めるらしい。

・キャロルが勇と結ばれるためなら何でもやる。

・とりあえず目的の為なら平気で嘘でもつく。

・おめでとう、君の行動で三期の敵が決定したよ。

・つまり君も黒幕だね!

 

○響に聞こえた謎の声

 

その人物の登場は次のシーズンから。

ついでにエルちゃんに情報を与えた謎の人物で、体は見えない。謎のモザイクのような姿と合成音声のような声で話せる人物。

 

○消し飛んだはずだった原作三期

 

魔法少女事変ではないが、ヤンデレ大戦争が確約された。章のタイトルは〈嫉妬の魔女降臨〉

 

○ガングニール

 

響の分は未来が消してしまった。

・マリアのガングニールは響にパクられたが、勇のことしか頭にないマリアは完全に存在を忘れてた。

・使用者の頭が残念な聖遺物。君は泣いていい。




三期大荒れ回避不可能!どうするの装者達!最強のヤンデレが暴れるぞ!

次回〈前日譚〉

更新をお待ちください。


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GX編 嫉妬の魔女降臨
前日譚


原作のシャトル救出にあたる話であり、ヤバい組織の誕生でもあります。

そしてこの話より嫉妬の魔女編が開始します!

本編へどうぞ。


「はぁっはぁっ早く行かないと……あの人達が直ぐそこまで………」

 

深夜の道を一人で走る少女は何者かに追われていた。

 

「コレを届けないと彼女達があっさり死んでしまいます。それでは意味がありません。急がないと手遅れになります!」

 

少女はひたすらに目的地を目指した。利用しないといけない人物を助ける為に。命がかかった道化を救う為に。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はい。こちらの準備は整いました。いつでも襲撃は可能です。」

 

またある女性は、他人が聞けば逃げ出すような単語を平然と語っていた。まるでそれが当然であるかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うう………頭が痛い。風邪を引いたかも。参ったな、姉さん達はまだ任務中だし………それもあの人の護送任務だから連絡はできない」

 

フロンティア事変が終息して程なくして、ナスターシャ教授の遺体が回収され、帰還できるはずだったが、帰還時のトラブルにより、姉さん達が出撃することになった。本当は僕も行きたかったがこのザマだ。大人しくしているしかない。

 

「勇さーん!お邪魔するデースよー!」

 

助かった。切歌ちゃんがいてくれたなら助けが呼べる。

 

「ごめん………切歌ちゃん………僕今調子が悪くて………」

 

「勇さん!顔が真っ赤デス!直ぐに横になるデス!あたしが助けを呼ぶデス!だから任せるデス!」

 

「助かるよ………お言葉に甘えて休ませて貰うね………」

 

そうして僕は自室に戻り意識を失った。

 

 

 

~~切歌side~~

 

あたしは勇さんのお家に行って、勇さんが好きな物を確認してマリアに伝える予定だったのデスが………家にいた勇さんは辛い表情と真っ赤な顔をしていました。

 

「マリア!勇さんが体調を崩したのデス!直ぐに来て欲しいデス!」

 

あたしは直ぐにマリアを呼びに戻りました。

 

「本当なの切歌!?勇が体調を崩したって!」

 

「本当なのデス!お顔が真っ赤で足取りが重たいデス!」

 

「直ぐに氷を準備しなさい!二件分よ!そして消化に良いものを買って来なさい!わからないならドリンクゼリーだけでもいいから!」

 

あたしは両家の冷凍庫から氷を集めてマリアに渡しました。そして直ぐに買い物に出かけました。勇さんを救う為に今回はお気楽なしデス!

 

~~切歌sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~マリアside~~

 

切歌に呼ばれて駆けつけたら既に勇は高熱を出していた。なんてこと!私は愛しい相手の体調に気づかなかったなんて………。

 

「勇………私が側についているわ。だからゆっくり休みなさい」

 

私は切歌に用意させた氷とタオル、そして袋を用意して即席の氷嚢を作成した。こういう時は無理に解熱させては体が治りきらないので、私は食事の準備に取りかかった。

 

「材料は………十分ね。ひとまずお粥を作ろうかしら」

 

幸い勇は自炊ができるので食材は困らなかったが、切歌が何を買って来るかは心配だった。

 

「マリア!戻ったデス!」

 

そう言って買って来た物はきちんと消化の良いものが入っていた。まだ冷たい物もあることから、本当に急いでくれたのね。

 

「ありがとう!助かったわ!直ぐに冷蔵庫に入れなさい!」

 

切歌は言い付けを聞いてきちんと助けてくれた。そして彼女が気づかなければ、勇は間違いなく倒れてただろう。

 

「私も、腕によりをかけるわ!必ず勇を助けるわよ!」

 

 

~~マリアsideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~勇side~~

 

朝からつらかった体が大分楽になった。だけど汗がすごいことになってるな。

 

「あら?起きたのね。ちょうどよかったわ。もうすぐお粥ができるわよ?」

 

どうやらマリアさんが介抱してくれたみたいだ。ありがたい。

 

「ありがとうございます。お腹も減って来てたので、助かります」

 

「良いのよこのくらい。私が勇を助けたいと思っているからやっているんだから」

 

そうして僕はお粥をいただいた。

人の為に作った料理は本当に美味しいな。

 

「それと勇は服を脱ぎなさい。汗がすごいことになってるわよ?拭いてあげるから遠慮しないで良いのよ?

 

いつもなら断るところだが今回は頼ることにした。

 

「助かります。体がしんどかったので、楽になります」

 

そう言ってマリアさんに清拭を頼んだ。

 

「良いのよこのくらい。私は貴方に全てを捧げるつもりなんだから。」

 

そう言ってマリアさんは姉さん達が帰って来るまで僕の看病をしてくれた。後から聞いた話では、切歌ちゃんはフィーネさんに薬を貰いに行ってたそうだ。マリアさんも彼女にも必ずお返しをしようと思った。

 

「今後は気をつけないとね」

 

今日のことを知った同居人に迫られることは間違いない。

 

「でもお見舞いの品がこのチケットか………」

 

マリアさんが渡してきたチケットは最高の席のチケットだった。翼さんと合同ライブのあの場所には行きたかったから素直に嬉しい。

 

「〈星天ギャラクシィクロス〉………か。前世では初めて歌えたデュエットソングだったな。」

 

このライブより前に運命が動いていたことにまだ僕は気づいていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2044年2月国連の会談にて

 

 

 

フロンティア事変をもって世界は学習した。

 

「二課の戦力と思考回路はヤバイ」と。

 

各国は自国に有利な交渉を始めようとしたが、前提が破綻していたことに気づいた。

 

・アメリカと組んで月を撃とうとした〈フィーネ〉

 

・既存の戦力を越えるシステムの〈シンフォギア〉

 

・更に使用者は一人の異性に全てを捧げ兼ねない事態

 

・歩く国際条約な司令官

 

・非公式だがバルベルテを、

八年前に壊滅させた〈精霊〉

 

・裏の世界で知らない者はいない〈結社〉と

繋がりの疑惑が浮上したと言われる者

 

・フロンティア事変で行動した〈F.I.S〉

 

・その全てが日本ないしは一国で所持できる戦力でもなければ、手綱を握れるわけではないと。

 

・そこで世界は考えた。独立指定戦力にしようと。

 

・便宜上トップを〈風鳴弦十郎〉に任命

 

・組織が歌と関わりがあることから、名前を

〈SONG〉とした。

 

・活動場所は治外法権且つ世界指定戦力

 

・〈SONG〉は、武力介入や制圧・救助を組織の目的とすること

 

・各国は〈SONG〉を、国連を通して支援すること

 

・名目上は日本の法律を適用するが、婚姻関係等は本人達の意思に準ずること

 

・〈SONG〉への加入・脱退時は、速やかにトップに報告し、同時に全世界にも通達すること

 

・活動拠点はこれまで通り日本とすること

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけだ。皆わかったか?」

 

集められた僕達に伝えられたことは予想の三倍ヤバイ話が伝えられた。体調が戻って直ぐの通達がコレって。

 

「いや司令!コレはどう考えてもヤバイでしょう!各国がこんなバカな要求を呑むわけないでしょう!?」

 

僕の叫びが司令室に響いた。するとフィーネさんが説教を始めた。

 

「通るわバカ者!結社が手を回したんだぞ!フロンティア事変の終わりにな!その上小娘共が一人しか結ばれない状態になれば!嫉妬で残りの連中が世界にケンカを売るわ!既存の兵器を凌駕するシンフォギアがいかなる代物か知らない貴様等ではあるまい!」

 

ぐうの音も出ない正論だった。もしかしてアレですか?ドクターよりヤバイですか?

 

「私達も」「勇さんと」「結ばれて良いわけデスか?」

 

響・調ちゃん・切歌ちゃんが呟いた。すると司令が、

 

「うむ。そういうことだ。クリス君も例外ではないぞ?彼とは義理の姉弟関係だったからな」

 

「オッサン!今言うなよ!恥ずかしいだろ!」

 

赤面した姉さんがすかさず声をあげた。

 

「まあ、君達の体の件もあるから婚姻やその先の関係は全員が18を過ぎるまでは認めんぞ。不公平はいかんからな」

 

「「「チッ!」」」」

 

約三人程露骨に不満を表す人がいたけど無視されて話が進んだ。

 

「師匠!〈その先〉って!」

 

「ああ。響君の考えていることに間違いはないだろう。約束を守れば………な」

 

「私達も」 「我慢しなくて良いんデスね………」

 

「「勇さん!私達も貴方のお嫁さんにしてください(デス)!!」」

 

今まで大人しくしていた二人まで活気がついた。あーこれもう無理だ。彼女が動くな。フィーネさんの説教通りに。

 

「勇?辛い時は言いなさいよ?私はいつでも貴方を受け入れるわよ?」

 

マリアさんは堂々と皆を出し抜こうとした。

 

「「「「「「さっきの話をもう忘れた(デス)か!!!」」」」」」

 

皆の意見が一つになった。

 

「ああそれと、先日浮上したフロンティアは我々の専用になることも決定した。いずれはあそこを本部とするからな」

 

「フィーネさんマジですか。フロンティアは無事でしたか。もはや本当に国じゃん!」

 

僕の嘆きを他所に新たな国家(仮)が誕生した。もし師匠達やキャロルが合流したら、

風鳴訃堂もシェム・ハにも絶対負けないね!

 

「本当にそうなったら………な。」




ヤンデレが報われた?いいえ。修羅場の始まりです。この先は彼女が暴れます。

次回〈襲撃者①〉

更新をお待ちください。


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襲撃者①

さあ!彼女が暴れます!皆さん準備はよろしいですか?

それでは本編へどうぞ。


2044年4月

 

マリアさんからチケットを貰い、招待されたコンサート会場に僕は到着した。

 

「勇…貴方に来て貰えて私は嬉しいわ。今から最高の歌を貴方の為に届けるわよ。ステージの私に魅了されなさい!」

 

「マリア……私達が歌うのは会場に来てくれた皆の為だ!勝手は控えて貰うぞ!」

 

堂々とアピールするマリアさんと、それを諌める翼さんのやり取りをみて僕も素直な気持ちを伝えた。

 

「マリアさん。貴女の気持ちは素直に嬉しいです。だから僕を含めた観客全員に最高の歌を翼さんと届けてください!」

 

「ええ!最高のステージにして見せるわ!」

 

「はぁ……どうしてこうなったか……。勇。後は私達に任せてくれ。とっておきの演出を見せよう」

 

そう言ってマリアさん達は控え室に向かった。

 

「さて!僕も席に向かいますか!」

 

僕もそう言って指定席に向かい、無事に到着した。

前回はライブ前に拉致られたから今回が初めてなんだよな。二人の合同ライブ。

 

「さあ皆!ステージを始めるわよ!!」

 

マリアさんのその言葉を合図にイギリスでコンサートの幕があがった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~コンサート終了後~~

 

「勇!どうだったかしら!私達のステージは!」

 

マリアさんはそう言って僕を抱き締めた。それも身長差から僕の顔はマリアさんの胸に飲まれた。

 

「マリア!いきなりハグとは情熱的だが!勇が窒息して踠いているぞ!早く離せ!」

 

そう言って僕は酸欠の恐怖から解放された。アレはヤバイ。男のロマンと言う人もいるけど、死にかけは勘弁して欲しいものだ。

 

「はぁっ!はぁっ!ライブの直後に死ぬかと思いました。マリアさんからの愛は感じましたから次は勘弁してください。窒息しましたから」

 

「ごめんなさい。愛しい勇を早く抱き締めたかったの!」

 

堂々とこう言えるマリアさんが羨ましい。

 

「………なるほど。どうやら情報通りの仲らしいな。泥棒猫がここに二匹。日本に五匹。早めに始末しないとな」

 

ん?なんでここに彼女が?彼女は日本にいたはずでは?

 

「お前は何者だ!」「何故ここに人が!」

 

「オレか?オレはそこにいる雪音勇の伴侶だ!貴様等とはステージの違うな!」

 

「伴侶だと!戯れ言を抜かすな!勇は私の運命の相手よ!突然現れて伴侶なんてよく私達の前で言えたわね!」

 

マリアさんはそう言ってギアを纏い出した。沸点が低すぎませんかね?

 

「マリア!冷静になれ!」

 

翼さんの制止も虚しく、マリアさんは蛇腹剣と短剣を展開して襲撃者に切りかかった。だけど………

 

「遅い!そんな遅さでは欠伸が出るわ!」

 

しかしあっさりと躱され、腕を掴まれて倉庫の方角に投げ飛ばされた。

 

「ぐあぁ!」 「マリア!」 「マリアさん!」

 

「もう一度聞く。お前は何者だ!そして勇とはどういう関係だ!」

 

翼さんが再び尋ねると………襲撃者は僕の前に来てキスをした。それもディープな奴を。

 

「なっ!!!!」

 

驚いた翼さんはマリアさんが戻るまで固まった。

 

「貴様!私の勇から離れろ!」

 

マリアさんが蛇腹剣を振るってきたことで彼女は離れた。

 

「ああっ!コレだ!この感覚だ!昂る!昂るぞ!」

 

ヤバイ。回復できるけど大分吸われた。

 

「ああすまん。オレが誰か?だったな。オレの名前はキャロル・マールス・ディーンハイムだ。

勇の正妻にて嫉妬の魔女とでも言っておこう。

ファラよ、後は任せた。では勇よ、日本で会おう」

 

キャロルはそう言って転移して行った。たぶん次のターゲットは響達かな?

 

「待て!」

 

「貴女方の相手は私です。旦那様はお下がりください」

 

そう言ってファラさんに僕達は分断されて戦闘が始まった。

 

「クッ!お前は人間ではないな!」

 

「ご明察です風鳴翼さん。やはり私の相手は貴女がふさわしいようですね!」

 

そう言ってファラさんと翼さんの剣の打ち合いが始まったが、翼さんの剣があっさり折れた。

 

「しかし今の貴女では実力が足りませんわ。こいつらで充分ですね」

 

そう言ってファラさんは赤い結晶を叩きつけた。アレはまさか!

 

「「ノイズか!?しかしバビロニアの宝物庫は!」」

 

そう言って二人とノイズの戦闘が開始されたが、ノイズの攻撃に触れた瞬間から、二人のギアが分解され始めた。

 

「「ギアが!?」」

 

「ファラさん!何をするんだ!やめてくれ!」

 

「旦那様には申し訳ありませんがマスターの指示でございますわ。装者があまりに腑抜けならギアを壊せとの命令でしたから」

 

「なんだと!」 「私達が腑抜け!?」

 

くそ!〈アルカ・ノイズ〉は完成してたのか!

 

「頼むよファラさん!僕からのお願いだ!ここは退いてくれ!じゃないと貴女と戦わないといけなくなる!」

 

「ふむ。旦那様との戦闘は禁じられておりますのでここは退きましょう。マスターからの指示も果たしたことですから。しかし旦那様。マスターは旦那様の帰りを、お待ちでございます。お早い帰還をお願いします。」

 

そう言ってファラさんは転移して行った。

 

「勇……貴方彼女達を知ってるのね?」

 

マリアさんから当然の質問が飛んできた。

 

「ええ。彼女は〈ファラ・スユーフ〉。僕が二課に向かう直前まで過ごした場所でキャロルの側近をしていた〈自動人形〉です。

そしてキャロルは、約一年前から僕にプロポーズをしてくれた錬金術師です。

返事は僕の18歳の誕生日翌日にすると約束した……人物です」




〈マリアは特攻をした〉しかし相手にされない。

目の前でディープキス………なんて羨まゴホンゴホン。
ヤバいことをしてくれてんだよ!まだキャロルに力あげるか!響達を勝たせる気ないでしょう!

次回〈襲撃者②〉

更新をお待ちください。


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襲撃者②

さあさあ害虫退治の第二ラウンドが始まります。


~~響side~~

 

マリアさん達のステージを見てた私達に、師匠から連絡が入った。火災が発生して中に人が取り残され、救助もままならない為だと説明された。

 

「じゃあ行ってくるぞ。お前らも明日学校があるから早めに休めよ。行くぞ響!」

 

「うん!直ぐ行くよクリスちゃん!」

 

私達はそう言って現場に向かった。そして道中に師匠から、被害拡大を抑える役と救助役の分担を指示されて私が救助担当になった。

 

「誰かいますか!」

 

現場で問いかけると、返事が帰ってきた。

 

「助けてください」「まだ奥に家族が!」

 

そんな状況で私は、救助活動を開始した。

 

~~響sideout~~

 

 

 

 

 

 

~~クリスside~~

 

火災が拡大する方角にあたしは向かい、一人の少女に出会った。チッ!こっちも逃げ遅れたのがいたか。

 

「おいお前!何があったかわかるか?」

 

「すみません!僕は追われているんです!早くしないと彼女がそこまで!」

 

「ようやく見つけたぞエルフナイン。手間をかけさせてくれたな。さあ早くそれを渡せ!」

 

そう言って謎の人物はエルフナインって少女に攻撃を開始したので、あたしもコインを打ち落とした。

 

「オイオイ!いきなりとはせっかちだな。

てめえが火災の実行犯か?」

 

「ふむ。そうだと言ったら?」

 

「てめえを捕らえる。それだけだよ。違うならさっさと離れた方が良いぜ?」

 

おそらくクロだが、念のための確認だ。

 

「逃げてください!相手は人間ではありません!貴女が死んでしまいます!」

 

エルフナインって奴があたしを心配しやがった。なるほど、人間じゃあない……ね。

 

「そこを退け女。私に下された命令は二つ。

一つはそこの少女の確保だ。そして……

二つ目はある人物の捜索だ。」

 

「なるほど。この付近に目的の人間がいるわけか。なら、まずはてめえを捕らえるとするか!」

 

あたしはそう言ってギアを纏った。すると向こうは驚いた顔をしやがった。

 

「特徴的な銀髪と胸元。そしてギアか。

貴様が雪音クリスだな?私はお前を探していた」

 

どういうことだ?あたしを探していた?

 

「どういう意味かは知らねえが、てめえが敵なのははっきりした。なら、始めようぜ!」

 

あたしはその言葉を合図に戦闘を開始した。だけど、あたしの攻撃はことごとくコインに弾かれた。

 

「やはり旦那様の攻撃より軽いな。

旦那様の姉がこの程度とは残念だ。」

 

………ハ?旦那様?

 

「オイオイ。あたしを旦那様の姉って言ったか?てめえが勇の関係者だと?冗談は寝て言えや!」

 

あたしは全力の戦闘に切り替えたが、それでも躱されてしまった。アイツの早さが目で追えねえ。まるで時を切り取られた感覚だ。

 

「ふむ。火力はとにかく、速度と正確性は向上したか。それでこそ旦那様の姉だな」

 

「さっさから言ってる旦那様ってのは勇のことみてえだが、てめえは何者だ?」

 

「そういえばまだ名乗ってなかったな。

私は〈レイア・ダラーヒム〉だ。我がマスターの、

〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉様の

〈自動人形〉にて、お前をテストする為に派遣された者だ。だが、お前は地味に弱い。私が派手に手を下すまでもなくな。」

 

そう言ってレイアって奴は何かを地面に投げ、ノイズらしき奴らが出てきた。

 

「レイア!〈アルカ・ノイズ〉はダメです!今すぐやめてください!」

 

そう言って展開されたノイズと戦闘したあたしのギアは、攻撃を受けて分解されていった。

 

「ギアが!何がどうなってやがる!」

 

「やはりこうなったか。興が冷めた。私は派手に撤退しよう。次に会う時までに成長してなければ、情けはかけない。旦那様はマスターの伴侶だということだ」

 

そう言って奴は消えていった。

 

~~クリスsideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~響side~~

 

マンションの救助活動も残り一人の反応となり、私は最後の一人の救助を開始した。

 

「ここは危ないよ!早く避難しよう!」

 

「お前が立花響か?オレと戦え!」

 

私は自分が何を言われたのかわからなかった。

 

「なんで初対面の私達が戦うの!?そんな必要ないよ!」

 

「オレの勇に手を出した!理由はそれだけで充分だ!」

 

「私が勇君に手を出したってどういうこと!私は彼と結婚の約束をしてるの!そしてその約束はもうすぐ果たされるの!君は急に出てきて勇君の何なの!」

 

わけがわからない。勇君と結婚の約束をしてるのは私達だ。ぽっと出の相手に奪われるなんて耐えられない。だから私はギアを纏った。

 

「ようやく纏ったか。では自己紹介を始めよう。オレの名前は〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉だ。そして勇はオレの生涯の伴侶であり、来年の6月8日にプロポーズの返事を確約された婚約者だ!貴様等のようなガキの頃の約束に縋りつくだけの小娘とはステージが違うことを教えてやる!だから戦え!」

 

「……………へぇ。婚約者ね。私達より後に彼に惚れて返事も考えて貰えたんだ。なら、キャロルちゃんは私達の敵だね」

 

私はそう言って最速で最短でまっすぐにキャロルちゃんの顔面に一撃を加えようとした。だけどあっさり止められた。

 

「………軽い。遅い。わかりやすい。何だこの腑抜けた拳は?勇の一撃と天と地程の差があるぞ?そして攻撃とはこうするものだ!」

 

キャロルちゃんは私の腕を掴んで壁に向かって投げ飛ばし、追撃に火球を放ってきた。

 

「うわぁぁ!」

 

「やはりお前ではつまらんな。そろそろ止めを………何だガリィこんな時に?」

 

私に止めを刺そうとしたキャロルちゃんは突然攻撃を止めた。

 

「別件で急用ができたので今回は帰らせて貰うぞ。次までにもっと手応えがあるようになるんだな」

 

そう言ってキャロルちゃんは帰っていった。私は情けをかけられたようだ。そしてクリスちゃんも同じように襲撃にあってギアを壊されたらしい。私達はその日完全に敗北した。




当然の結果です!貴女方では勝てないです!今すぐ身を退いてください!でないと命の保証はできません!(ある少女の退けられた訴えより抜粋)

次回〈装者合流/勇への尋問〉

更新をお待ちください


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装者合流 / 勇への尋問

さあ~!勇君よ……修羅場(本番)の幕開けだぞ!君の言葉に世界の命運は握られた!

本編へどうぞ。


マリアさん達がロンドンから帰国したことで装者全員が合流でき、司令室に集められた。

 

「連中の目的と正体は連中自身が語っていたから説明は不要だな?だが、ギアの件については私から説明しよう」

 

そう言ってフィーネさんが説明を始めた。

 

「シンフォギアのバリアフィールドを突破した攻撃は、錬金術によるもの………ね」

 

皆が沈黙して話を聞き、マリアさんが最後に呟いた。

 

「ああ。ギアが解除されて衣服が戻らん以上は確実だな。そしてこの件で話さなければならない者がいるだろう?」

 

「そうだな勇。教えてくれ。連中が何故あたし達を知っていて攻撃し、更に旦那様と呼ばれた理由をな!」

 

明らかに最後の方が本命な気がするのだが、僕の撒いた種であるのも事実なので大人しく答えることにした。

 

「まず、姉さんと一緒に保護されたのはエルフナインという少女でマリアさん達や響と交戦した、キャロルのホムンクルスです。

彼女には後で僕の方から会いに行きます。」

 

「うん。その件も後でゆっくりと聞くから、旦那様の件の方を先に説明して欲しいな。ね?勇君?」

 

「そうね。私が吹き飛ばされて戻るまでの間にディープキスをしていたことも関係あるのでしょう?」

 

皆の目に光がなかったな。絶対こっちが本命じゃん!

 

「えーっとまず、姉さんとはぐれて五年半はサンジェルマン師匠達のもとで修練をしていました。

そして残り二年半で過ごした場所がキャロルの制作していた塔です。

そこで一度キャロルと大ケンカして今の能力のコントロールができるようになりました。その時にキャロルからキスをされました。

というよりそこから半年は、毎日一回以上されてました。そして気づいたらファラさん達〈自動人形〉が完成していて、旦那様と呼ばれてました。

キャロルからは僕の18歳の誕生日翌日にプロポーズの返事をする約束をしました。」

 

「なるほどね。キャロルちゃんが私達を、泥棒猫呼ばわりしたのはそういうことだったのか。いやー驚いたよ!私達より後にプロポーズした娘に返事の約束をするなんて勇君は優しいね!私はそういうところが好きだけどさ」

 

響はそう言って言葉を切った。えっ?ちょっと怖いんだけどさ。

 

「私達が勇君のお嫁さんなんだから泥棒猫はキャロルちゃんの方じゃないかな?」

 

そう言って響は僕にキスをしてきた。キャロルと同じ舌を入れたディープなやつを。

 

「響!いきなり何を!?」

 

僕の疑問を無視して未来・姉さん・マリアさんが負けじと続けてキスをしてきた。

 

「皆!?いきなり何するの!?」

 

「勇さんは私達のモノだって」「刻み込むだけデス!」

 

そう言って切調コンビが続けて、最後に翼さんまでキスをしてきた。

 

「勇?お前はロンドンで私達の裸を見ただろう?だから責任を取って貰うぞ?私達が全員成人したら婚姻が可能だったな?ならば籍を入れろ」

 

刀を持って言うことではないと思うのですが………

 

「私の言った通りになっただろう?この大馬鹿者め!!」

 

止めと言わんばかりにフィーネさんからの説教も受けた。

 

「ハッハッハ!良かったじゃないか!〈SONG〉が設立されていなかったら世界が滅んでいたぞ!なんなら装者達が強くなってキャロル君に認めて貰え!それで俺達は晴れて敵なしだ!」

 

いや弦十郎さん!冗談にならないし、それ正妻がキャロルになってるから状況が悪化してる!

 

「納得いきません!私達が側室なんて我慢できません!」

 

未来の言葉をきっかけに装者達が訴えを起こした。

 

「ああ小娘共。お前らのギアの改修は私が受け持つが、二度と恥はさらすなよ?お前らの覚悟にギアが応えるのだからな?」

 

そう言われて装者達は黙り、この日以降修練に一層熱が入った。打倒キャロルの為に。

 

「僕はエルフナインのところに行くね?」

 

そう言って僕は逃げるように部屋を飛び出した。




〈悲報〉装者全員が婚約者になりました!

「オレの伴侶を狙う不届き者共がぁ!」

落ち着いてくださいキャロルさん。貴女のメインシナリオです!エンジン全開では(読者が)バテてしまいます!

「そんなこと知るかぁ!早く勇に会わせろぉ!」

次回〈再会と約束〉です!

更新をお待ちください!

この後作者はキャロルにぼこぼこにされました。


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再会と約束

逃げ出した勇君が向かった部屋はエルフナインの部屋でした。

それでは本編へどうぞ。


姉さん達の追及から逃げた僕は、エルフナインのいる部屋に向かった。

 

「やあエルフナイン。久しぶりだね。そして見ているんだろう?キャロル」

 

「えっ?勇さん何を言っているのですか?僕の視界をキャロルが覗けるわけ………」

 

うん。原作を忘れてたらわからないことだけど、僕は覚えてたからね。だからこのまま追及しようか。

 

「それとエルフナインも、演技はやめたらどう?レイアの攻撃は全部急所を外してたけどさ。それ自体が、わざとだよね?」

 

そう僕の問いかけにキャロルが投影された。

 

〈流石は勇だ。オレとエルの視界は共有されている。いつ気がついた?〉

 

「エルに会ったのは偶然だったけど、シャトーの頃にはね。エルにしか話してないことをキャロルが知ってた時に確信はしてたよ。」

 

〈何だ。その時には既に知っていたか。流石はオレの勇だ。だが解せんな。何故一人で来た?装者がいればエルを捕らえることは可能だろうに〉

 

まあ、そうなるわな。

 

「目的が読めないからかね。キャロルが本気で響達を排除したかったら今回の襲撃は温すぎだからね」

 

「勇さんは気付いていたのですね?僕がキャロルの体を貰ったことを」

 

「うん。エルがいつか機能不全を起こすことはわかってたけどさ、今のキャロルが対処を怠る訳がないからね。僕の知ってるキャロルは独占欲が強いけど、優しいことも知ってるから」

 

〈ああ!勇!オレはお前に会いたい!だからオレのモノになってくれ!〉

 

「うん。素直な愛の告白をありがとう。本題に入るよ?キャロルはなんでエルに〈ダインスレイフの欠片〉を託したの?装者がパワーアップする可能性が上がるのに」

 

〈今の奴等は相手にしていて張り合いがない。そんな奴等から勇を奪っても、絶対に奴等はあきらめない。だから希望を見せて叩き潰すことにした。〉

 

「手加減の理由にはなったけど、撤退の理由は?」

 

〈ガリィに守護させていた、アルカ・ノイズのデータがパクられた。だから撤退した。ついでに装者共が戦力向上すれば処理が楽になるから〉

 

「わかった。〈アルカ・ノイズ〉の方は師匠達に確認と情報収集を頼むよ。後、キャロルがちゃんと命までは狙わなかったことは偉いと思うよ。よく我慢したね。だからこの戦いが終わったら〈SONG〉においでよ。歓迎するし、重婚もできるみたいだからさ。」

 

「なんだと!本当なのか!?オレは勇と結ばれるのか!?」

 

「うん。キャロルの愛に僕は応えるよ。だからさ、今回は皆と仲良くするためにケンカしなよ。僕はキャロルの邪魔はしないし、キャロルが手加減を間違えなかったら嫌いにはならないからさ。後、今回のキャロルを焚き付けたのはエルだね?」

 

「あうぅ。バレてましたか。」

 

「レイアの弾を見ずに躱すのは、エルには無理だからさ。だからエルが共犯のはわかってたよ。

それに〈ダインスレイフ〉が今は必要ないのをわかってて持ち出したね?

キャロルは僕との約束を律儀に一年守ってくれてたけど、エルが機能不全を起こしたからキャロルは予備躯体をエルにあげた。

そしてその恩返しにキャロルと僕のキュービットをエルが名乗り出た。だから今回姉さん達を襲撃して、身を退かせようとした。違う?」

 

「流石は勇さんです。全部当たりです。僕はキャロルが勇さんと結ばれて欲しいです!」

 

「エル。素直な気持ちをありがとう。なら二人には僕からのお願いを聞いて欲しいな。」

 

〈勇からの頼みだと!何でも聞くぞ!〉

 

「姉さん達の実力テストは、嘗ての世界分解計画の襲撃スポットで頼むよ。キャロルが嫉妬で分解する気になったと言えば、誰も疑わないから」

 

〈わかった。装者共が腑抜けなら次はない〉

 

「最後に教えて欲しいんだけどさ。ガリィが迎え撃った襲撃者ってどんな奴等だったの?」

 

実際に師匠達は襲撃する必要がない。頼めば快く提供されたはずだからね。

 

〈ああ。確か「エレン」・「アルテミシア」・「ジェシカ」と呼ばれていたと報告が来ている。どうした?知り合いか?〉

 

マジか。確か過激派のメンバーだった人だ。まさにデアラの世界のあの人達を彷彿させた人達だったな。

 

「うーん………顔馴染みかな?あまり良い印象はお互いなかったはずだから。」

 

〈そうか。ならば良い〉

 

こうして、エルフナインの件を僕がネタばらしするする理由がなくなった。後はキャロルの優しさを信じよう。

ていうか過激派か。なんか如何にも四期の敵になりそうだな。後で師匠達に動向を聞いておこう。




ん?エルちゃん?キャロルと共犯?…………マジで!?
本当に〈毒〉してますねぇ……………。

次回〈説明と補足〉

更新をお待ちください


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説明と補足

エルフナインちゃんが装者全員に接触したようです。

さあ!装者の反応はいかがなものでしょうか?

本編へどうぞ。


エルと話をした後、司令室にいる皆の場所へ向かった。そこでキャロルの目的(建前)とエルが持ち出した切り札の説明が始まった。

 

「ボクはキャロルが皆さんのことを知って、皆さんを締め上げる計画を知ってしまいました。ボクだってキャロルが勇さんと結ばれたら良いと思っています。でも、今の嫉妬に捕らわれたキャロルに貴女方を許容するつもりはありません!力づくで勇さんを奪いに来ます!ボクも仮とはいえ、一人の女の子です。そんなことをされては納得できません!だからお願いです。皆さんがキャロルに認めて貰える程の力をつけてください!その為にボクは〈ドゥエルグ=ダインの遺産〉をお持ちしました。これがその〈魔剣ダイン=スレイフ〉の欠片です。シンフォギアへ組み込めば、キャロルに対抗できる可能性が上がります。それが〈イグナイトモジュール〉です!」

 

すごいなエル。嫉妬のくだりとか完全にエルの焚き付けなのに、さもキャロルが自分で気づいたように脚色してるのを見ると逆に感心するね。

 

「ふむ。確かに持って来た聖遺物は本物のようだな。これをシステムに組み込めば、出力の向上は可能だろう。」

 

フィーネさんが確認した結果、エルの持って来た聖遺物は本物であることが証明された。しかし、

 

「納得できないわ!敵からの施しなんて冗談じゃないわよ!まるで私たちが惨めな少女のような扱いじゃない!そんなの耐えられないわ!」

 

マリアさんが声をあげた。というか、皆不満を隠さない顔をしていた。しかしフィーネさんも黙ってはいなかった。

 

「では小娘共に問おう。お前達はどうやって奴等に勝つつもりだ?配下の人形にすら遅れをとったというのにな?案があるなら言ってみろ」

 

「了子さん!私達だって特訓すれば!」

 

「甘いな。お前達が仮に特訓で奴等を越えられたとして、それはいつの話だ?現実的な時間ではあるまい?」

 

フィーネさんの意見はもっともだった。そろそろ僕も口を挟むか。

 

「皆には悪いけど、現状なら勝算はほぼゼロだね。僕の所為といえばそうかもしれないけどさ。だから今は手段を気にする時間はないんじゃないかな?あと、僕は今回はよっぽどのことがないと戦闘に介入できないよ。だってキャロルは世界を分解するわけじゃないから。あくまでも、姉さん達とキャロルの問題だよ。戦闘の被害は僕の責任で抑えるから、話し合うなり、実力を認めさせるなり、手段は任せるよ」

 

冷たいようだけど、今回は世界の危機じゃない。一人の人間を巡った、あくまでも色恋沙汰だ。だから今回の主役は僕じゃない。姉さん達なんだから。

 

「それに、〈ダイン=スレイフ〉を使いこなすことも急務だよ。あの時のキャロルとのキスの時に、〈アルカ・ノイズ〉のデータは既に他の組織にも渡ってたらしいから。キャロル本人からの情報だからね。状況次第では僕はそっちの対処に入る必要があるから。僕のお嫁さん達にこの程度の逆境にくじける人がいないことも知ってるからね」

 

そう言うと皆は、〈納得はしてないが、今はそれしかない〉って顔をしていた。

 

「勇君の言う通りだ。今回はまさに響君達が対処する問題だろう。ならば了子君達技術者の協力も必要だが、一番は君達の努力が重要だ。皆それを受け入れろよ?」

 

司令も同じ意見だった。最後にフィーネさんが修理完了までのメンバー編成を伝えた。

 

「現状は翼・マリア・クリスのギアは破損状態なのでな。この三人の戦闘は認められん。よってこうすることにした」

 

①マリアさん・響・未来(主戦力の連携重視)

 

②姉さん・調ちゃん・切歌ちゃん(日常生活支援重視)

 

③翼さん・僕(現状一番支援が必要な為)

 

「勇君と離れ離れか。ここまで翼さんを恨みたくなったのは初めてだなあ」

 

「勇と引き離された………先輩をぶちのめしてぇ」

 

「良いわね翼だけ。私は気が狂いそうだわ」

 

未来→姉さん→マリアさんの順番で不満が出ていた。ちなみに当然だがアーティスト二人はしばらく活動休止になった。だってメンバーの都合上とはいえ護衛しにくくなるからね。




違うんだよ勇君!キャロルはビッキー達をもとから吊るす気だったんだよ!逃げて!もしくは勇君を差し出して!

「絶対に嫌だ!」
「お断りしよう!」
「死ねよ!」
「「「絶対に!!!」」」
「ぶった斬るデス!」「殺さなきゃ!」
「許さないわ!」

何ィ!?虹の旋律だとぉ!今はギアが破損していた筈だ!なのに一体何故!?

「「「「「「「愛の力だ(デス)!!」」」」」」」

何故そこで愛!?ひとまず作者は逃げます!

次回〈黒いガングニール〉

更新をお待ちください!

感想やメッセージをいただければ執筆の励みになります。よろしければお願いします。


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黒いガングニール

「捕まえたぞ作者ァ!」

ひぃ!クリスさん許してください!

「あたしをヒロインから外してるたぁどういう了見だぁ!」

いやだって、マリアさんや未来さんの方がヒロインにふさわ「死ねやぁ!」うげぇ!(気絶させられた作者)


「ガリィの襲撃回だ。みんなは是非本編を楽しんでくれ!」



~~響side~~

 

勇君に現実を突きつけられ、マリアさんと行動することになった私達は、学校から下校する途中で襲撃に逢った。

 

「アンタ達が〈立花 響〉〈小日向 未来〉そして、

〈マリア・カデンツァヴナ・イヴ〉ね。私はマスターの指示で来た〈自動人形〉の〈ガリィ・トゥーマン〉よ。早速で悪いけど、アンタ達が旦那サマの正妻に相応しいかテストしてあげるわ。ガリィちゃんと戦いなさい!」

 

「へぇ。貴女達が私達から勇君を奪おうとした泥棒猫さんかぁ。良いよ?私達がボコボコにしてあげるから。響も良いよね?」

 

未来の言葉に反応して私もギアを纏おうとしたけど、胸の歌が浮かばなかった。まるでガングニールが私を拒絶するように。

 

「あら?アンタは準備ができてないみたいね。まっ、ガリィちゃんからすればどうでも良いことだけどね」

 

「響。私と代わりなさい。今の貴女にガングニールは応えないわ。憎しみで染まった貴女にはね」

 

そう言ってマリアさんが私からペンダントを奪ってギアを展開した。

 

「未来………お願いがあるの」

 

「何ですかマリアさん」

 

「未来は響を守って欲しいの。アイツは私がやるわ。ロンドンの奴とは違うけど、貴女が一番の主力である以上貴女を欠くわけにはいかないから。良いかしら?」

 

「ふーん。まあ良いですよ。なら今の響は私が守ります。マリアさんも二度目の醜態は晒さないでくださいね?」

 

そう言ってマリアさんが戦闘を始めた。

 

~~響sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~sideマリア~~

 

「準備は良いかしら?ガリィちゃんは誰が相手でも構わないけどね」

 

ガリィと名乗った人形が私に問いかけて来た。

 

「ええ、待たせたわね。はじめましょう?」

 

そう言ってガリィはノイズを召喚して来た。でもロンドンで私は既に注意するべき現象は確認した。もう間違えないわ。

 

「そのノイズ達はあらゆる物を分解することがわかっているわ。だから分解攻撃をさせなければ!」

 

私はノイズの攻撃を徹底的に避けて確実に数を減らした。発光部位からの攻撃だけは絶対に食らわない為に。

 

「へぇ………やるわねアンタ。ロンドンの失敗をきちんと生かせているのは経験の賜物ね。そこは評価するわ。だからここからはアタシが相手よ?」

 

「望むところよ!勇に全てを捧げると誓ったあの日から私の迷いは捨てて来たわ!」

 

そう言って私が振るう槍を、彼女はあっさりと受け止めた。そして氷を発射してきて、私は吹き飛ばされた。。

 

「氷!?こんな水気のない場所でこの規模の攻撃………これが錬金術の力なのね………」

 

「冷静な分析力・判断その二つも評価するわ。しかも使い慣れないギアでの戦闘で周囲への被害も抑えてる………確かにアンタは出力は足りないけど、成長すれば旦那サマの側室に相応しいわ。だからガリィちゃんがお墨付きをあげる」

 

確かにまだダイン=スレイフは搭載されてないけど、ここまで余裕を見せられるのね。悔しいけど、力量差を実感せざるを得ないわ。

 

「あら。意外にもこの挑発にも乗らないのね。マスターの時には突撃してきたのに」

 

何度槍を振るい、拳を突き出しても、彼女の氷の障壁を突破できない。なのに後ろには守るべき相手がいる。だけど同じ失敗は絶対にしないわ!

 

「ええ。ここで大技を使ってもその障壁は突破できないでしょう?だから私はやるべきことをやるわ!」

 

彼女が響達に攻撃をしないように、私に注意を引き付ける。そして身を呈して守る。それが私の今できることよ!

 

「なるほどね。アンタを今潰すには惜しい存在だと認めるわ。だからここはアンタの覚悟に免じて退いてあげる。ついでにもう一つ教えてあげるわ。〈自動人形〉は合計五体いるわ。一体は戦闘をしないから除外するとして、ガリィちゃんの出力は一番下なの。だからアンタ達は最低でもガリィちゃんを越えないと話にならないわ。そしてアンタはアタシの獲物よ?次に会う時には成長してなさい」

 

そう言ってガリィは転移して行った。悔しいけど、力量差は歴然だった。だからギアが直ったら必ず〈イグナイト〉を使いこなして見せるわ。だからその時は、勇に見ていて貰いたいわね。

 

~~マリアsideout~~

 

 

 

 

「響?マリアさんと響の何が違うかわかる?」

 

戦闘を見ながら、未来は私に問いかけて来た。

 

「マリアさんは、私達を守る為に戦ってた。だけど私は、キャロルちゃんへの嫉妬しかしてなかった。このままじゃあ何もできないね………」

 

「うん。だからマリアさんが立ち上がったの。私達に自分の覚悟を見せて勇君への想いを証明する為にね」

 

その話をしている最中もマリアさんの攻撃は届かず、逆に相手の攻撃のみが直撃していた。本当なら避けられたのに。私達を守る為に身を呈して防いでくれたんだ。

 

「あれがマリアさんの覚悟か………確かに今の私にはない覚悟だね。だからガングニールが応えたんだ」

 

「うん。きっとそうだよ?でも、響だってやってきたことでもあるの。だから次は頑張ろう?」

 

話が終わる頃、〈ガリィ〉と名乗った敵は帰って行った。やっぱり私達がターゲットみたいだね。だから次は間違えない。必ず皆を守る覚悟を失わない!




前書きで酷い目にあいました。(←復活した作者)

今回の響の嫉妬はギアの展開に影響がある程強いモノでした。それこそギアを展開すれば黒く染まったことでしょう。この為に響はガングニールを纏えませんでした。そして未だ本気を出さないガリィ。しかしマリアさんの覚悟を見たことで響は目が覚めました。

次回〈向き合え!響!〉

更新をお待ちください。

感想やメッセージをいただけると、執筆意欲が上がります。お待ちしています。


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向き合え!響!

ガングニールに拒絶された響は向き合う覚悟を決めた

それでは本編をどうぞ!


先日のガリィちゃんの襲撃から一週間が過ぎた。今日のマリアさんは翼さんと行動するらしいけど、勇君一人で護衛するらしい。正直二人が羨ましい。

 

「響?まだマリアさん達のことを嫉妬してるの?ダメだよ?正妻は余裕を見せるから正妻なの。分かりやすく嫉妬してたら勇君の女性関係はキリがないよ?」

 

未来は達観してるなぁ。私はそんな未来が羨ましいよ。

 

「あはは………バレちゃった?そうなんだよねー。勇君は優しいからね。皆が好きになるのもわかるよ。キャロルちゃんが勇君を伴侶だと堂々と私達に言い切れるぐらいだもんね」

 

「およ?マスターと旦那サマの関係を認めるのカ?アタシは嬉しいゾ!手間が省けるゾ!後はお前等のテストを済ませるだけダゾ!」

 

突然背後から声が聞こえて振り返ると、そこには特徴的な腕をした、まさに〈戦闘用の人形〉と言わんばかりの女の子が立っていた。

 

「貴女は一体何者かな?もしかして私達の敵なの?そうなら探す手間が省けて嬉しいんだけどね」

 

「アタシは〈ミカ・シャウジーン〉って言うんダゾ!マスターの命令でお前達が旦那サマに相応しいか試しに来たんダゾ!」

 

そう言った未来は既にギアを纏っていた。私も遅れたけど、戦わなきゃいけない!

 

「Balwisyailnescelgungnirtron………」

 

今度はギアを纏えた!いける!未来を守れる!

 

「うん。大丈夫そうだね響。でも今度は私がメインでやるから響はサポートをお願いね?」

 

「うん!任せて!」

 

そう言って私がノイズを、未来がミカちゃんを相手することになった。

 

「今度は!迷わない!」

 

私はそう言って、付近のノイズを掃討した。マリアさんが言ってたように、赤い発光部位の攻撃さえ気をつければ恐くない!

 

 

 

 

~~side未来~~

 

響にノイズの相手を任せて、私はミカちゃんと向き合っていた。

 

「およ?二人がかりじゃないで良いのカ?アタシは強いゾ?」

 

「うーん………どっちかと言うと、こっちの方がやりやすいかな。だっておもいっきりやれるから!」

 

私はまず〈閃光〉を発射した。しかしあっさり止められた。

 

「おお!中々の威力ダゾ!旦那サマを苦しめただけあるゾ!楽しくなりそうだゾ!」

 

ミカちゃんは赤い結晶を投げつけてきた。私がそれを回避すると、着弾した場所が溶けていた。

 

「すごい火力だね。当たってたら直ぐに終わるところだったよ!」

 

私は扇と触手を用いて接近戦に持ち込んだ。アレを乱発されると付近の足場がなくなる。リスクは高いけど、勝算もこれしかないね。

 

「アタシに接近戦を仕掛けるとは見る目があるゾ!お前は強いゾ!もっとやるゾ!」

 

「私はこれ以上熱いのはお断りだよ!」

 

私はギアのマーカーを用いて分解攻撃に出た。こっちも使えるからね。

 

「おお!それの直撃は不味いゾ!避けさせて貰うゾ!」

 

それが効いたのは私も意外だったけど、これなら動きを誘導できる!

 

「そこ!………あれ?当たってない!?」

 

追い込んだと思って当てたはずの攻撃はミカちゃんを素通りした。そして響の声が聞こえた。

 

「未来!右から来てる!下に降りて!」

 

言われた通りに足場を崩して落ちると、さっきいた場所に特大の火球が飛んできた!

 

「チッ!避けられたじゃねぇかミカ!」

 

「ガリィの誘導が甘いんダゾ!ミカの威力は充分だったゾ!」

 

敵がもう一人!こないだのマリアさんを退けた人形だ!

 

「未来!ここからは二人でいこう!相手も二人だから!」

 

「そうだね。二人でやろうね。」

 

私達も相手も二人。数は負けてない!

 

「響は援護をお願い!私が前衛を張るよ!」

 

そう言って戦闘再開目前のタイミングでガリィちゃんがこう言ってきた。

 

「ミカ!帰還するぞ!マスターからの命令だ!」

 

「チェッ!マスターからの命令なら仕方ないゾ!お前等は次までにもっと強くなってアタシ達を楽しませるゾ!」

 

そう言って二人は転移して行った。ひとまずは乗り越えられたのかな?

 

~~未来sideout~~




響の………活………躍?あれ?なんだか393のターンのような気がしてならない。

「私の大切な復活回が!」

いや響さんは原作のこの回で………「そんなこと知らない!勇君へのアピールタイミングを返せ!」

ひぃ!作者は逃げます!

「絶対に逃がさない!」

次回〈切調コンビの頑張り〉です!

更新をお待ちください!

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切調コンビの頑張り

切調コンビが頑張るお話です。しかし原作でもヤバいのに、昔のキャロル並みのミカちゃんが相手とは……。普通に無理ゲーですよね?

「作者がキャロルに余計な強化を施したから!」
「あたし達が大ピンチなのデェス!絶対に許さねぇデェス!」

ひいぃぃ!余計なことを言いましたァ!

本編へどうぞォ!


ミカちゃん達の襲撃から一週間が経過した。現状で認められたのはマリアさんと未来だけか。実際に戦闘をしたのは響もだけど、それは未来の働きが大きかったからな。だけどミカちゃんは本部への発電施設の襲撃に来るからな。

 

「もし二人がイグナイトの完成まで粘れなかったら、その分の時間くらいは稼ぐか」

 

「?勇は何を言ってるの?私には話が見えないけど」

 

「こっちの話ですよ翼さん。でも、いざって時には貴女にも手を貸して貰います。その時には頼みますよ?」

 

「まあよくわからないけど、その時は私もやるべきことをするわ」

 

そういえば翼さん。僕に結婚を迫った時から乙女な顔をする機会が増えたな。やっぱり翼さんも女性だからね。可愛い時は可愛いな。そして本部に警報が鳴り響いた。

 

「勇………これはまさか………」

 

「ええ。翼さんの想像通りに彼女が来ました。多分響と未来が迎え撃つでしょうね」

 

そう言った矢先に司令室から、別の人物が飛び出して行った。

 

「暁!月読!あの二人勝手に!」

 

司令室が驚いていると二人から通信が入ってきた。

 

「私達がギア改修の間の」

「時間を稼ぐデス!だからみなさんはギアの改修を進めるデス!」

 

彼女達の目に宿る覚悟は本物だな。なら僕はその考えを支持しよう。

 

「司令。今僕達の最優先目標は、三人のギアの修復と、イグナイトモジュールの搭載です。彼女達はそれをわかって時間を稼ぐつもりです。ならここはその覚悟に準じるべきです。まずは響と未来のギアへの搭載をお願いします。それが一番状況を打開できます」

 

「うむ。勇君の提案は現実的な案だ。響君と未来君のギアへのモジュール搭載を急げ!二人が稼ぐ時間を無駄にするなよ!」

 

これで僕の今できる支援はやった。後は頼むよ二人共。

 

 

 

 

 

~~調side~~

 

マリアや響さん達の前に現れたキャロルが、勇さんのことを伴侶だと言っていた。それもマリアの前で堂々とディープキスをしたらしい。私と切ちゃんはマリアと勇さんが一番に結ばれるべきだと思ってる。勿論私達だって勇さんのことが狂おしい程大好きだ。だから私達は、今回は全力で皆の為の時間を稼ぐ!その為にこの発電所は守りきる!

 

「やるデスよ調。あたし達で響さん達がパワーアップするまでの時間を稼ぐデス!」

 

「うん。絶対に時間を稼ぐ!」

 

そして私達はアルカ・ノイズとの戦闘に入った。

 

「切ちゃん!ギアの分解攻撃は最大限の注意をお願い!」

 

「わかってるデス!あたし達二人で絶対にここを守りきるデス!」

 

アルカ・ノイズの強度は普通のノイズより脆い。だけど私達の適合係数は装者の中では一番低い。だから今回は〈Linker〉を持ち出して来た。

 

「切ちゃん!後ろ四体!左三体!」

「調!右二体!前から五体デス!」

 

私達はそう言って、常にお互いをカバーできる位置をキープして、お互いのフォローを続けた。

 

「なるほど!お前等二人はこないだの二人とは、また違う面白さがあるゾ!だからミカが遊んでやるゾ!」

 

そう言ってこないだ未来さんが相手をした、

〈自動人形〉が現れた。

 

「切ちゃん!こうなったら!」

「やるしかないデスね!調!」

 

私達はお互いに持ち出した〈Linker〉を投与した。この感覚は未だに辛い。でも今はそんなことを気にしていられない!

 

「およ?もうお前等は薬を必要としないと聞いていたけど、これは楽しみになってきたゾ!早く始めるゾ!」

 

私はヨーヨーを鋸に戻して一撃に備えることにした。

 

「切ちゃん!アイツの一撃は私達じゃ受けられない!絶対に直撃はダメだよ!」

 

「わかっているデス!あたし達の目的は時間を稼ぐことデス!勝てない時は時間稼ぎに徹するべきデス!」

 

「うん。でも!」「あたし達の力を」

「「きちんとアイツに認めさせる(デス)!!」」

 

そう言ってまずは切ちゃんが斬撃を飛ばして、私が横に周り込んだ。

 

「この位置なら!」

 

「甘いゾ!」

 

するとミカは赤い結晶を作り出して左手で防いだ。そしてもう一本作り出して、右手で殴りかかった。

 

「調に手は出させないデス!」

 

すかさず切ちゃんが上から割って入ったので直撃は避けたけど、鎌が焦げていた。

 

「うーん………やっぱりまだ物足りないゾ。もっと他の技を見せるゾ!」

 

そう言うと結晶を炎の鞭のように変化させてしならせてきた。しかも動きが読めない!

 

「切ちゃん!離れよう!」「距離をとるデス!」

 

私達はすぐ後ろに下がったけど、追撃は躱せなかった。

 

「きゃあ!」「熱いデス!」

 

やっぱり想像以上に熱い。そして私達のギアの端が欠けていた。

 

「うーん……今の追撃で片方はギアを壊せるはずだったけど、よく避けたゾ!そうこなくては面白くないゾ!」

 

私達に残った時間は少ない。だから次で決めないとギアが多分保てなくなる。

 

「調……やっぱりわかりますか?」

「うん。多分後一撃くらいかな……」

 

「およ?なんだなんだ?次で決めるのか?良いゾ!あたしも付き合うゾ!」

 

私達は二人のギアを合わせてジャンプして、巨大な刃を作った。この一撃で決めないと!

 

「うん!身を削る薬を使ってまであたしの注意を引き付け、戦闘続行が困難と理解したら、せめて確実な一撃を決めるように動く。今のお前達なら正解ダゾ!だけどあたしには届かないゾ!」

 

そう言って私達の攻撃を右手の結晶で受け止めて、左手の鞭で私達のギアを壊した。

 

「私達のギアが!」「壊されてしまったデス!」

 

ああ。私達じゃあ守れないのかな………

 

「今回はあたしの勝ちだけどお前達は見所があるゾ!次はイグナイトを使いこなして来るゾ!あたしは再挑戦を待っているゾ!そして仕事も終わらせるゾ!」

 

そう言ってミカが発電所への攻撃をしようとした時に、頼もしい声が聞こえた。

 

「うん。二人共よく頑張ったよ。翼さん!二人を本部までお願いします!さっき渡したジェムで飛べますから!」

 

「承知したわ。二人共私の手を握りなさい。後は任せて良いのよね勇?」

 

私達が翼さんの手を握ると、本部への転移が始まった。

 

「すみません。後はお願いします」

 

「うん任されたよ。二人共ゆっくり休んでおいで」

 

その言葉を最後に私達は本部へ転移した。

 

~~調sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~勇side~~

 

「ミカちゃん久しぶり。さっきの戦いはどうだった?」

 

「うーん……イグナイトがないとやっぱり物足りないゾ。でもあの戦い方は悪くなかったゾ!相手がガリィなら引き分けぐらいは狙えたゾ!」

 

うん。今の二人は確実に認められてる。本番はイグナイト制御後だけど、ちゃんと今回の役割は取り組めた。だからたまには、僕も手を貸そうかな。

 

「ミカちゃんに提案だけど、未来達が来るまで僕と遊ばない?ご褒美としてだけど」

 

「おお!良いのか旦那サマ!マスター!」

 

〈まあ良いだろう、勇の提案だ。たまには楽しんでこい〉

 

「ありがとうキャロル。未来達が着いたら交代するからキャロルもおいでよ?」

 

〈待ってる!だから勇の格好いい姿を見せて!〉

 

なんかキャロルが年頃の女の子みたいな声をしてたけど、それはそれで可愛いかった。

 

「さあミカちゃん!やろうか!」

 

僕とミカちゃんの戦い(間繋ぎ)が始まった。




「やっぱりあたし達が遊ばれていたデス!」
「これは作者をシバくまで許さない!」

いや君達のギアは分解された筈なんだけど……

「そんなもの本編じゃないから意味ないデス!」
「この場所なら何でもできる!」

いやそんなメタいこと言われても……。

「「うるさい!」」

次回〈ご褒美〉

更新をお待ちください。

(この後切調コンビにしっかりシバかれました。)

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ご褒美

この章で最初で最後の勇君の戦闘回です。

「えっ?僕の戦闘描写本章ではここだけ!?二期もほとんど監禁されてたよねぇ!?」

この章では自業自得だろうがぁ!

「それはそれでムカついた!ケルビエル!」

ふざけんなてめぇ!じゃあキャロル押し倒してこいやぁ!

「こんな状況なら嫌だよ!」

さて。荒れた勇君はほっといて本編へどうぞ。


「さて。やろうかミカちゃん!」

 

「おお!楽しみだゾ!旦那サマと戦えるゾ!」

 

そう言って僕はサンダルフォンとザドキエルを展開した。ミカちゃんとの戦闘の余波まで考えたらこれしかないからね。

 

「まずは機動力を削がせて貰うよ!」

 

そう言って足場の凍結から入り、動きを制限させようとした。

 

「アタシは自分が動けないのは好きじゃないゾ!」

 

そう答えて凍った足場を破壊して機動力を維持してきた。流石………というより、あの時のキャロルに匹敵してないかな。ちょっと想定より強いかも。

 

「ミカちゃんは強いね!多分あの時のキャロルぐらい強くない?」

 

「おお!わかるのか旦那サマ!マスターからもお墨付きを貰ったんダゾ!やっぱり全力で戦えるのは楽しいゾ!」

 

接近戦では結晶の殴打・中距離なら鞭・遠距離は結晶の射出か。かなり強いから、切調コンビの努力は相当だったことがよくわかる。格上相手にあの粘りは、今の二人なら充分だった。ただ相手が悪かっただけだ。

 

「ていうかその鞭は厄介だね!自力で使えるようにしたのかい?」

 

「これはアタシの努力の成果ダゾ!これなら戦い易いんダゾ!」

 

地味に鞭の掻い潜りが難しい。軌道が読めないから、反応がギリギリになって動作が遅れる。突破するにはそれこそ、髙火力か髙スピードのどちらかしかないかな。それも支援ありきだけど。

 

「だけど今回は撃破じゃないから速度の方で行くか。

ラファエル!トップギアで行くぞ!」

 

「これは速いゾ!攻撃が当たらないゾ!」

 

止まったらやられるから、飛びながら斬撃を放って確実にダメージを与えた。

 

「うう………やっぱり旦那サマは捉えきれないゾ!でも諦めないゾ!」

 

そう言うミカちゃんは攻撃の手を緩めてカウンター重視の姿勢に入った。なるほど、当てることに重きをおいたか。

 

「それは接近したくないね!だから全力で倒しに行くよ!サンダルフォン〈最後の剣〉!」

 

剣に全力を込めた一撃を放って、ミカちゃんを吹き飛ばしたけど、カマエルの回復が始まっていた。

 

「やれやれ、回復力まであるのか。これは相当長丁場になりそうだね!」

 

「マスターの憧れた力は凄まじいゾ!アタシの昂りが抑えきれなくなりそうだゾ!」

 

「〈バーニングレイン〉か、その火力のヤバさはよく知ってるからね!全力で防がせて貰うよ。ザドキエル!〈凍鎧〉!」

 

付近一帯を焼き焦がす炎と、周囲一帯を凍結させる吹雪が衝突して、急激な寒暖差による爆風が発生した。

 

「流石に防ぎきれないか!そして体勢も保てない!」

 

「アタシの技が防がれた上に立っていられないゾ!吹き飛ばされるゾ!」

 

この爆風が周囲のモノを巻き込んで全てを薙ぎ倒した。発電所も相当被害を受けてしまったので、僕も反省した。

 

「さてミカちゃん。楽しんでくれたかな?」

 

「うん!とっても楽しかったゾ!本当はもっとやりたいけど、それは別の楽しみにとって置くゾ!」

 

「うん。この戦いが終わったらおいでよ。そうすればまた皆でやりあえるからね!」

 

「絶対だゾ!約束だゾ!」

 

そう言うミカちゃんは本当に満足そうな顔をしていた。さて、僕も自分の出した被害を何とかしますか。

 

「ザフキエル!〈四の弾〉!」

 

発電所を霊力で覆って〈四の弾〉で復元することに成功した。そしてどうやら寿命の対価は、転生特典で消えていたようだ。代わりに霊力がごっそりなくなったけど。

 

「うわぁ。すごい能力だね。やっぱり勇君はすごいなあ」

 

「当然だよ!私達の旦那様なんだから!」

 

そう言って響と未来が到着した。

 

「おっやっと来たね。なら今回の僕の役割はこれで終わりだね。後は任せたよ。後ミカちゃんにはこれあげるよ!」

 

そう言ってカマエルの力を圧縮した結晶をミカちゃんにあげた。

 

「おお!良いのか旦那サマ!」

 

「この戦いのご褒美だからね。但し今消耗した分よりは少ないよ」

 

「それでも嬉しいゾ!ありがとうだゾ旦那サマ!」

 

そう言ってミカちゃんは結晶を取り込んだ。

 

「じゃあ未来、私達もやろうか!」

 

「うん!今度は必ず倒すんだから!」

 

「そうか。ではオレも混ぜて貰うとするか。なに、貴様等もいずれこの時が来ると思っていただろう?」

 

そこには戦闘準備を既に終えていたキャロルが立っていた。




〈悲報〉ラスボス降臨のお知らせ

「ちょっと作者待って!?未来がいるとはいえ二人きりなんだけど!?」

いやまだギアの修復終わってないから。

「クリスちゃん達のギアどんだけ徹底的に壊されたの!?」

少なくともフィーネさんが胃薬を手放せないくらいだね。次回から二人でガンバ!

次回〈抜剣!イグナイトモジュール①〉

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抜剣!イグナイトモジュール①

今回からイグナイトモジュールが仕事を始めます。しかしイグナイトだけではキャロルちゃんを倒せないのが現状です。ひびみくは勝算があるのか………

それでは本編へどうぞ!


響と未来が戦場に到着し、キャロルも現れた。

 

「二人共、キャロルとおもいっきりケンカしてきなよ。大丈夫、二人はきっと呪いに打ち勝てる。だから出せる全力で行ってきてね」

 

「うん!キャロルちゃんに私達の方が勇君を好きなんだって伝えてくるね!」

 

「私達が最初に惚れたんだから、この想いは譲らないよ。絶対に負けないから、私達の姿を見届けてね?」

 

響と未来がそれぞれの決意を僕に伝えてきた。だから僕も見届けよう。二人が呪いに負けない強い想いがあることを。

 

「ではまず、こいつらと戦い今までとの違いを見せてみろ!」

 

そう言ってキャロルはアルカ・ノイズを二千体は召喚してきた。

 

「未来、いけるよね?」 「もちろん!響も大丈夫だね?」

 

「「たかだか二千体!ウォーミングアップで片付けてあげる!」」

 

そう言って二人はノイズとの戦闘を始めた。その間にキャロルに確認するか。

 

「キャロルから見て二人はどう?」

 

「目が変わったな。自信を取り戻した顔つきになった。それでこそオレが手を下すに相応しい!」

 

「なら、ダヴルダヴラを纏いなよ。僕はあの姿の君だって好きだから」

 

「ああ。勇にそこまで愛されてるならオレは今何でもできる気がするぞ!」

 

僕達が話していると響達はノイズを全て片付けたようだ。

 

「うん。もう解剖機関からの攻撃も恐くないし、体も調子が良い!負ける気がしない!」

 

「さあ!ウォーミングアップは終わりだよ。やろうかキャロルちゃん!」

 

「そうだな。お前達の評価を下すのはこれからだ。簡単に倒れるなよ!」

 

そう言ってキャロルは大人の姿になり、ファウストローブを纏った。

 

「まずは私から!」

 

響が一番自分らしい最短・最速・真っ直ぐな拳を突き出した。

 

「ほう。あの時より速度・重さ・動きの迷いがないな。良い変化だ。だがまだ足りんなあ!」

 

弦で作った壁は響の動きを絡みとり、キャロルから手痛い反撃の火球が飛んできた。

 

「うう………あの糸が突破できないと、攻撃が届かない!」

 

「なら私が次は行くよ?」

 

そう言って未来は閃光を放って、キャロルを牽制して触手攻撃を浴びせる動きに出た。

 

「なるほど、目眩まし兼致命傷の一撃で動きを制限して近接に持ち込んだやり方か。だがその動きは知っている!」

 

そう言うとキャロルはメタトロンの光で相殺し、触手を風で弾いた。ん?キャロルは天使も使えるの!?

 

「キャロル!いつの間に天使を!?」

 

「ああ。この力は勇がシャトーを離れてすぐの頃から発現したぞ?あの時の勇が見せてくれた力をオレも使いこなさねばならんかったからなぁ!」

 

マジか。アレは霊力任せじゃないな。てことは、響達も切欠があれば発現するかもしれないってことだな。

 

「未来!今の私達じゃあキャロルちゃんに届かない!今からアレを使いこなそう!」

 

「そうだね。絶対に使いこなそう。だから響、手を握ってくれる?」

 

「うん!私達二人で必ず乗り越える!」

 

「「イグナイトモジュール抜剣!!」」

 

〈ダイン=スレイフ!!〉

 

そのモジュールを使った瞬間から、二人の体を闇が覆った。

 

「始まったな。呪いに打ち勝てよ小娘共。でなければ意味がないからな」

 

「大丈夫だよキャロル。二人は必ず乗り越えるから」

 

そう言って僕達は二人が呪いに打ち勝てるのを待った。

 

「ああそうだ。膝枕をしてくれ勇。オレもご褒美が欲しい」

 

「はあ………良いよ。おいでよキャロル」

 

響達が戻って来たら別の意味でも修羅場な気はしたが、僕は大人しくお願いを聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~響side~~

 

ダイン=スレイフが見せた悪夢は、私が初めて行った翼さん達のコンサート後の迫害の日々だった。家族でまた過ごす為に必死でリハビリをしたのに、お父さんは家から逃げて、私達は近所から人殺し扱いをされて、政府からの見舞い・補償金の受け取りは税金泥棒の扱いすらされた。あの時程世界を憎んだことはなかったな。

 

〈へえ。それが貴女のトラウマですか?〉

 

知らない声が聞こえた。

 

「貴女は一体だれなんですか?」

 

〈私は貴女の婚約者の方の力の一部を、嘗て持ってた存在ですよ。わかりやすく精霊さんとでも呼んでください〉

 

勇君の力?あの力の一部?なんで私にそんなことが?

 

〈うーん………「何で?」って顔をしてますね。簡単ですよ。貴女が私の力を受け取るに相応しいか見定めに来たんですから〉

 

「勇君の力を受け取る?」

 

〈はい。だから私が質問をします。貴女はそれを正直に答えてください〉

 

「わかりました!お願いします!もう私は何も失いたくないんです!皆と手を繋ぐ為に!」

 

〈では聞きます。貴女は「手を繋ぐ」と言いましたが、どうやって実現するつもりですか?〉

 

「相手と向き合って話をします!本当は拳を振るう前に話がしたいです!わかり合う切欠を作る為に!」

 

〈なるほど。確かにぶつかり合いになる前ならそれはできますね。でも、相手の想いが他者を受け入れ難い程強硬な時はどうしますか?〉

 

「相手の想いを受け止めて、私の話を聞いて貰えるようにします!絶対に私はもう逃げないと、あの時に誓ったんです!」

 

〈貴女の覚悟は伝わりました。

貴女には人に「声を届ける力」を与えます。

その力で、彼女に自分の覚悟を伝えてきなさい〉

 

「精霊さん!ありがとうございます!その力で私の想いをキャロルちゃんに伝えてきます!」

 

待っててね。未来!勇君!キャロルちゃん!もう私は迷わない!この声を必ず届ける!

 

~~響sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~未来side~~

 

〈ダイン=スレイフ〉が見せた悪夢は、私が神獣鏡を纏う前の無力な自分だった。勇君が私達の前からいなくなった九年前。響がノイズに襲われた三年前。そして響が戦い出した一年前。勇君が帰って来てから拐われた半年前。私は何も変わらなかった。神獣鏡を手にいれるまではただ守られる存在でしかなかった。だから力を手に入れた時は勇君を今度こそ守れると信じていた。だからキャロルちゃんが勇君を私達から奪う宣言をした時から辛くなった。また私から太陽が奪われる。

 

〈ダメよ。その考えでは貴女の想い人に振り向いて貰うことはできない〉

 

「貴女は誰ですか?いきなり人の想い出に入ってくるなんて」

 

〈それは申し訳ない。でも、今の貴女は見ていられなかった。〉

 

「どういう意味ですか?」

 

この人は私に何を伝えたいのだろう?

 

〈貴女は何の為に戦うの?〉

 

「私は私の太陽を奪われない為に戦います。絶対に離さない為に、泥棒は排除します」

 

〈その信念は立派。しかし手段が良くない。力で相手を排除しても意味はない。嘗ての私がそうだった〉

 

「嘗ての貴女ですか?」

 

〈そう。私は想い人の「士道」をライバルから奪うつもりでいた。でも、彼は既に想い人がいた。だから私は持ち得る手段を駆使して彼に近づいた。しかし成果には至らなかった。強引に行けば行く程、彼は私を受け入れなかった〉

 

言われて気づいた。勇君の意思を無視して成果をあげようと、すればする程勇君に逃げられてた。

 

〈だから貴女は工夫をすべき。貴女の望みは何?〉

 

私の望み………勇君を失わない。彼を守ること。

 

「私は、無力だった時に救ってくれた彼を、今度は私が守りたい。だから力を望みました。でも今は強大な敵がいます。自分が無力に思える程の。だからって今の私は逃げたくありません!勇君を取り戻す為に立ち向かいたいです!」

 

〈そう。それこそが、あるべき覚悟。その覚悟を失わないなら、貴女はいつか必ず望みを果たせる。だから忘れないで〉

 

「何故貴女は私にそこまでして助けてくれたんですか?」

 

〈貴女が嘗ての私に似ていた。力に溺れる前の私と。だから助けたかった。〉

 

「ありがとうございます。貴女のおかげで、大切なことを思い出せました。だからお名前を教えて貰えますか?」

 

〈私の名前は「折紙」。そして貴女に託す力は「光」。未来を照らす為の力よ〉

 

「ありがとうございます。折紙さん!私はもう迷わないです!折紙さんに託された光で、必ず私達の未来を照らします!」

 

私が力を継承すると、闇が晴れてきた。待っててね、響!勇君!私の信念が折れないことをキャロルちゃんにも伝えるから!だから見守ってね。

 

~~未来sideout~~

 

 

 

 

 

 

「闇が晴れたね。キャロル」

 

「ああ。奴等の信念を受け止めて見せるさ。そしてオレの意思も奴等に見せよう。だから勇!このケンカが終わった時はオレはお前を手に入れる。今回は絶対に逃がさん。お前の魂までオレの存在を刻み込んで、肉体にも証を残すからな」

 

「わかったよ。降参だ。このケンカが全部終わったら、キャロルの望みを叶えるよ。僕も君を愛してるし、僕自身の初恋はキャロルだからね。」

 

「約束だからな!必ず刻み込んでやるからな!」

 

そして響達が、イグナイトギアを纏った姿をした。

 

「良い顔つきだ小娘共!さあ!始めるぞ!」




響に力を与えた精霊 〈ファントム〉

フロンティア事変の頃に響に聞こえた声の主。本来は美九さんの予定だったが、彼女では試練にならないのでファントムさんが〈霊結晶〉を与えた。

未来に力を与えた精霊 〈鳶一 折紙〉

思想や行動力にシナジーがあった。393の暴走的な既成事実の作り方では勇君に逃げられると指摘。キャロルちゃんに勝てなくて反転化するリスクもあることから、未来がどう覚悟を決めるか見定めた。


………ひびみくの覚醒シーン中にいちゃラブする主人公とメインヒロイン。あー本作品はキャロルがメインルートでしたね。

〈キャロルの心は舞い上がった!〉

ん?あの光は………?(暁光と砲冠に飲み込まれた作者)

未「役に立たない作者に代わり私が予告します。

次回〈対決!キャロル〉です。

更新をお待ちください。

さて!作者にオシオキをしなきゃね!」
(次回の更新まで作者を見た人は393以外いない)

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対決!キャロル!

イグナイトを制御し、礼装を手に入れた響と未来。キャロルにその力は届くのか?

それでは本編へどうぞ。


「ほう。イグナイトを制御してみせたか!面白い!それでこそ倒しがいがあるぞ!立花響!小日向未来!」

 

「うん!今度は簡単には負けないよキャロルちゃん!」

 

「私達が想い続けた九年間の大きさを見せてあげるよ!」

 

三人の雰囲気は重い。それこそ時間の流れを遅く感じる程に。そして静寂を崩したのは未来だった。

 

「最初は私からいくよ!」

 

閃光を発動して、牽制に入ったがこれは先程見た流れだ。キャロルも見ずに回避して見せた。

 

「同じ芸が何度も通じると思うなよ!」

 

「もちろん!私達も思ってないよ!だから私がここにいるんだから!」

 

すると響が閃光を屈折させて軌道を変えて見せた。なるほどね、アレは未来のマーカーか。

 

「まさかギアの分解攻撃を屈折させてオレを狙うか!面白いぞお前等!」

 

キャロルも今のは予想外だったみたいだ。顔に焦りが出てたからね。

 

「惜しいなぁ。初撃なら当たると思ったんだけどなぁ」

 

未来の呟きにキャロルが答えた。

 

「なかなか上手い作戦だったな!相手がオレでなければ良い一撃だった!だがオレも本気でな!勇を手放す気はないぞ!」

 

「なら今度は私からぁ!」

 

響が突撃して近接戦闘をする為に間合いを詰めようと動いた。

 

「甘いな立花響!お前の愚直さは知っている!」

 

キャロルは響を弦で絡めとる動きをしてきたが、響の表情に焦りはなかった。

 

「ガヴリエル!〈輪舞曲〉!」

 

ガヴリエルだって!?あの力は天使の………いや、嘗て令音さんが言ってたな。僕とのキスで霊力が流れて、いずれ精霊に至ると。なら僕の言うことは一つだけだ!

 

「二人共!天使は自分の心の象徴だ!だから!今までと同じだ!恐れることはないよ!」

 

「チィ!お前達も天使を使いこなしたか!だとしても!オレは勇を手に入れてお前達を越える!その為にもお前達に負けるわけにはいかんのだ!」

 

キャロルはメタトロンの力を展開し始めた。髙機動力と出力が合わさったあの天使は、使いこなせばダヴルダヴラとの相性はかなり良いぞ。

 

「響!そのまま突き進んで!道は私が作るから!」

 

キャロルは弦を巧みに操り、簡易的な結界を作り出した。アレに腕を絡められたら、響は次の一撃を回避できないだろうな。

 

「未来の作戦ってなんだろうな………」

 

そう呟くと、弦の結界が崩れた。響は何もしていなかった。つまり未来がやったことになるが、一体何をしたんだ?

 

「小日向未来!随分面白い戦い方をするな!今の攻撃は驚いたぞ!」

 

キャロルは結界が崩れて直ぐに距離をとって直撃を避けた。

 

「惜しい!今のを避けるなんて流石キャロルちゃんだよね!私達の攻撃が全然当たらないからジリ貧だよ!」

 

今の響の一撃は致命傷になる。キャロルはそのレベルの一撃だと理解してたみたいだ。

 

「ならキャロルちゃん!次の攻撃はどうかな!」

 

さらに未来はマーカーを大量展開してきた。一つ一つの大きさでようやく天使の検討がついた。

 

「ふん。お前もメタトロンを使ったようだな。さっきのが〈日輪〉で、今のは〈光剣〉だろう?なるほど。上手く使いこなしたか。面白い!」

 

本当に三人共楽しそうに戦うから、僕の存在感が弱くなってる気はする。

 

「ねぇキャロルちゃん!次の一撃で決めないかな?」

 

「良いだろう!全力で来い!」

 

キャロルがグラビトンエンドを発動して、強大な一撃をぶちかましてたけど、未来が前に出た。

 

「メタトロン〈砲冠〉!」 「ガヴリエル〈行進曲〉!」

 

最大火力と後方支援の同時展開で両者の技が一時的に拮抗した。だけどその時間があれば………

 

「最速で最短に真っ直ぐに!」

 

響がギアのバーニアをふかしてキャロルに突撃した。そして攻撃を抑えていたキャロルの顔面をおもいっきりぶん殴った!

 

「ぐあぁ!」

 

そして生まれた致命的な隙に未来が〈天翼〉を使って接近して追撃の蹴りをぶちかました。

 

「「これが私達の勇君への想いだよ!!」」

 

瓦礫に叩きつけられたキャロルの体は、カマエルの再生が始まっていた。氷の破片もあったから、咄嗟にザドキエルを展開して威力の減衰もさせたんだろうね。流石がキャロルだ。器用だね。

 

「はぁっ!はぁっ!今のお前等がここまでやるとはな………。認めよう!今のお前達はオレの敵だ!次はオレ自身の歌を聞かせてやる。全員でイグナイトを使いこなしてくるんだな!」

 

そう言ってキャロルは転移して行った。

 

「キャロルちゃんの歌?」

 

響が「わからない」って顔をしていたので、僕が説明することにした。

 

「フォニックゲインだよ。もともとダヴルダヴラは琴だからね。本来なら記憶を消却するけど、今のキャロルにはガヴリエルがあるから、次は全ての天使を使うだろうね。間違いなく全力だよ」

 

「まだ力を隠してたんだ。なら次はそんな余裕もない程追い詰めないとね………」

 

未来の呟きは怒りが隠れていなかった。手加減されてたことが気に食わなかったようだ。

 

「なら、次は7人で虹の旋律を奏でなよ。それこそ嘗ての統一言語だから、自分達の想いを最も形にしたものになるからね」

 

「うん!キャロルちゃんとは仲良くなれる気がするよ!勇君は渡さないけど!手は繋げるってわかったから!」

 

響は花のような笑顔で言ったけど、それ嫉妬も隠す気がないな………これは先が長そうだ。




〈 響は 勘違い を している 〉

あの場所にその勘違いを正せる者はいない。

〈 393は 怒って いる。〉

手加減されたことが悔しかった。これでは勝った気になれない。

次回〈水着とプール〉

更新をお待ちください。

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プールと水着

さあさあ水着回です!ヤンデレ達は勇君にアピールできるのでしょうか!

「オイ作者ァ!オレの水着は無いのかァ!」

いやまってくださいキャロルさん!貴女はもっと重要でインパクトのある、アピールタイムがあるじゃないですか!

「知るかそんなものぉ!」

ひぃいぃぃ!本編へどうぞ!


キャロルとの交戦から一週間が経過して、全員のギアにイグナイトモジュールが搭載できて、破損したギアの修理も完了した。

 

「これがイグナイトか………あたしは、あの呪いに打ち勝つことができるのかな………」

 

「ロンドンで私は無様を晒して敵に情けをかけられた。私は強くならなければ、剣として皆を守ることはできない。今よりももっと強くならなくては………」

 

「私は、敵と二度も交戦しておきながら何も成果をあげられなかった。勇に私の覚悟を未だに示すことができていない!」

 

「あたし達は、皆を助ける為に出撃して、たいした時間も稼げず負けてしまったデス………まだ何も変われてないデス!」

 

「メディカルルームから〈Linker〉を持ち出してでも、私達は皆の為に戦いたかった。だけど!そんな私達を助ける為に勇さん達に迷惑をかけてしまった!私達は何も変われてない!」

 

上から姉さん・翼さん・マリアさん・切歌ちゃん・調ちゃんの順番で呟きが漏れた。………不味いな。このままだと皆呪いに打ち負けるな。どうにかしないと、次のステージに進めないな。

 

「小娘共が何か小難しいことを考えているようだが、今のお前達では制御は不可能だろうな。唯一クリスだけが、ギリギリ見込みがある程度か」

 

フィーネさんの厳しい言葉が司令室に響いた。続けて司令が装者達に通達をした。

 

「お前等!一度羽目を外して肩の荷を下ろせ!そんな状態では出撃は許可せんぞ!」

 

そう言って司令は、装者全員に休暇を与えて、政府保有の屋内プライベートプールを解放した。温水プールもあり、一年を通じて楽しめる施設だった。

 

「なるほど……マリアさん達が僕に好意を向けているからこの施設を解放したわけね。男子が一人混じっているから周囲の目まで気にして………どこまでも司令はお人好しだな」

 

なんて考えてたら、水着姿の姉さん達に声をかけられた。

 

「どうだ勇?あたしの水着姿は。欲情しても良いんだぜ?あたし達は姉弟だ。弟が辛いなら、姉ちゃんが体を張るってもんだ。ついでにあたしは準備ができてるぜ?」

 

とりあえず周囲の視線があるので、ハニエルで形成したハリセンでひっぱたくことにした。世界一能力の無駄使いな気がする。

 

「確かにそういう関係にいずれなるけどさあ。TPOを弁えないなら、姉さんとそういうことはしたくないな。少なくとも、他のライバルを出し抜こうとした時点で、姉さんは自信がないみたいだからね。だから、次はムードを作ってから誘ってよ。その時は返事をするからさ」

 

「ったく可愛いのに連れねぇ弟だな。仕方ねぇから今回は退くさ。だから18過ぎたらあたしのハジメテを受け入れろよ?」

 

「どういうプロボーズかな?………でも良いよ。その時は姉さんと新しい形を作ろうね」

 

そういうと姉さんは大人しく泳ぎに行き、今度は翼さんに声をかけられた。

 

「その………なんだ………こういう機会に私は恵まれなくてな………私に皆のような大きさはないのでな………私は場違いではないだろうか………」

 

「まあ確かに、響や姉さん、マリアさんに切歌ちゃんみたいなパッと見の大きさは翼さんにはないかもしれません。でも、水着の魅力は大きさではないと僕は思ってますよ。だって翼さんはスラッとしてますから、体のバランスは流石アイドルです。その水着は似合ってますよ」

 

「そうか……似合っているか。私は綺麗なのか………」

 

そう言って翼さんは逃げるように泳ぎに行った。誉められなれてなかったらしい。

 

「あら?翼のことは随分持ち上げるわね?私も現役のトップアイドルよ?」

 

やはりマリアさんも食いついてきた。僕も男だからね。誘惑にも乗りますよ?

 

「まったく……言わなくても貴女は綺麗ですよマリアさん。貴女の妖艶な雰囲気は、装者で一番僕が理性を保つのが辛いんですよ?あと二年我慢してください。僕が貴女を受け入れますから。その時まで、他の男性にそんな挑発的な水着はしないでくださいね?」

 

「………わかったわよ。何よ。勇が私をメロメロにするなんて………普通逆じゃない」

 

マリアさんは小声で何かを呟くと下を向いてパラソルの下に入った。不貞腐れたみたいだ。あと………もう来てるんだね………ガリィ………。

 

「「勇さん!私達の水着を見て欲しい(デース!)」」

 

今度は切調コンビか………忙しいなあ。

 

「へーえ。お揃いだけど色違い、そしてそれぞれの魅力を強調した水着かあ。選んだのはマリアさんかな?とっても綺麗だし、よく似合っているよ。二人は最年少だから、いつかはもっと大きな水着がきっと似合うよ。だからその時が今から楽しみだね!」

 

「勇さんに」「誉められたデース!」

 

二人は満足そうにプールへ飛び込んで行った。元気だなあ。

 

「だーれだ?」

 

突然後ろから目隠しをされたが、犯人に検討はついている。だからカマをかけた。

 

「意地悪なおバカ」

 

「相変わらず私の扱い方が雑じゃない!?」

 

やっぱり響だ。

 

「まったく……古典的なイタズラをしなくても、響のことはわかるよ。なんたって幼馴染みだからね。そしてどう魅力的なのかも知ってるから安心しなよ?」

 

「~~~ッ!勇君!?恥ずかしいよぉ!」

 

そう言って響も逃げるようにプールに飛び込んだ。翼さんに当たりに行く気か?

 

「へーえ。皆水着を誉められて良いなー。羨ましいなー!」

 

振り返ると、目に光の無い未来がいた。怖い。

 

「未来?その笑顔がなぜか怖いのは僕の気の所為かな?僕はまだ何もしてない筈だけど………」

 

「うん。そうだよ?何もしてないから私は怒っているんだよ?」

 

あー。そーいうことか。

 

「未来のことはさ、いると安心できるから陽だまりなんだと思う。でも今は、僕達を支える為に自ら危険を省みずに頑張る未来を僕は尊敬してる。それこそ、未来がら水着姿でなくても関係ないよ?でも、見せてくれたら僕は嬉しいな」

 

「なんだ。心配しすぎだったんだ。じゃあ勇君は私の水着をよーく見てね?」

 

そう言ってパーカーを脱ぎ捨てた未来の水着は、目を奪われる程綺麗な白だった。

 

「………ごめん。あまりの魅力に言葉を失ってた。未来の姿と白の水着がすごく似合ってたから」

 

「ああ♥️嬉しい♥️勇君にそんなこと言われたら火照っちゃう♥️」

 

未来は体の熱を冷ます為に急いで水に飛び込んだ。なんかすごいな………女性って。

 

「あら?旦那サマも女性の魅力に気づきましたか?変わりましたね。マスターの時はあんなに言葉を濁したにのに」

 

「そりゃあね。これだけ多くの女性に好意を向けられて気付かない鈍感でいるつもりは僕にはないからさ。

ガリィだってそっちの方が良いだろう?」

 

「流石は旦那サマですねぇ!ガリィちゃんも嬉しいですよ!ところで、いつから気付いてました?」

 

「うーん………マリアさんの時には………かな。多分今回のターゲットはマリアさんだろう?」

 

「お見事です!アイツは前回まあまあでしたので、今回が楽しみだったんですよ!」

 

「なら、楽しんで来なよ?多分覚悟を決めたマリアさんは、ミカちゃんにすら匹敵するからさ」

 

「ええ。存じてますよ?だから楽しみなんですから!」

 

そう言ってガリィは装者達への襲撃を開始した。




ガリィちゃんが既にプールに忍び込んでいて、勇君と呑気に会話してやがるだとぉ!?オイ主人公!お前やる気無いだろ!

「じゃあ僕の戦闘回増やせよ!」

いや君の戦闘回本当に毎回大変なんだけど……後君自身が戦闘しない発言してたじゃん!

「〈しない〉と〈できない〉は意味あいが変わるだろうがぁ!」

コイツヤバイ奴だった!なんでこんなのが主人公してんの!お前のせいで本章の難易度がハードを通り越してヘルなんだよ!

「キャロルを救う為だよ!」

そういう趣旨でしたね……(諦め)

次回〈抜剣!イグナイトモジュール②〉

更新をお待ちください。

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抜剣!イグナイトモジュール②

さて!マリアさんのモジュール抜剣回ですが、今回もデアラの天使が登場します。しかし天使の方は大分選定に時間がかかりました。私がしっくりくるのが無くて本当に悩みました。

「やったわ!これで私も強くなれるわ!見てなさいガリィ!この力で必ずリベンジするわ!」

いや今回は天使の継承回ですよ!?

それでは本編へどうぞ。


〈自動人形〉のガリィが、装者を襲撃した。

 

「今回のアタシの獲物はアンタだよ。〈マリア・カデンツァヴナ・イヴ〉!前回と違うところを見せてみな!」

 

「敵の襲撃!?誰も気付いていなかったのか!?」

 

翼さんが動揺していたが、マリアさんは素早く反応した。

 

「切歌・調・翼!貴女達は付近の避難誘導を促しなさい!響・未来・クリスは私とアイツの迎撃兼足止めよ!この敷地からアルカ・ノイズは一体も出させないわよ!」

 

「暁!月読!私に続け!この周囲一帯の人々を避難させてマリア達が戦い易いように立ち回るぞ!」

 

「了解」「わかりましたデス!」

 

そう指示を出してザババコンビと翼さんは避難誘導を始めた。そして迎撃組の方は………。

 

「くそ!この場所じゃあ奴の土俵か!攻撃が悉く防がれる!」

 

「未来!アルカ・ノイズの数が多くて殲滅しきれない!」

 

「響!弱音を吐いちゃダメだよ!ここで倒さないといけないんだから!」

 

アルカ・ノイズ迎撃組は場所の都合もあって、殲滅が困難な状態となっていた。実際場所は原作の海と違い屋内の為に、その苦労は相当なものだろう。そして肝心のマリアさんの方はガリィに翻弄されていた。

 

「アイツの動きを捉えられない!どうにかしないと………」

 

「マリア!あたしは響達の援護に行く!多分あたしはノイズの殲滅に回った方が良さそうだ!」

 

「ッ!頼むわよクリス!」

 

「あたしに任せな!そしてその手柄であたしが今日のMVPだ!」

 

姉さんが離れてマリアさんとガリィの一対一になった。

 

「ようやくサシでやれるわね!マリア・カデンツァヴナ・イヴ!さあ!テスト本番よ!」

 

ガリィが手加減をやめて戦闘態勢に入った。遊びをやめたガリィは本当に対処が難しい。水の分身をはじめ、氷による物理攻撃は凶悪だし、何より相手がどう負担を感じるかよくわかる。

 

「本当に貴女が最弱か疑わしいわね!これだけやって攻撃が届かないのだから!」

 

「それは間違いないわ。ガリィちゃんの出力は最弱よ。他の三人の方が絶対に火力が高いわ!」

 

そのやり取りの際もマリアさんは、蛇腹剣での攻撃や、短剣の投擲、銀腕を用いた接近戦等の周囲の被害を最低限にする立ち回りを余儀なくされていた。

 

「クッ!近距離と中距離だけでは埒があかない!せめて射撃能力が使えれば!」

 

「あらあら、これだけ自分が不利で尚周囲の心配をするのね。それがアンタの信念なのはわかったわ。だからガリィちゃんもその流儀に乗ってあげる。ついて来なさい!そこで自分の甘さも教えてやるよぉ!」

 

そう言ってガリィはマリアさんの剣をつかんで引き寄せた。そして結晶を砕いて転移を開始した。

 

「クッ!引き剥がせない!」

 

マリアさんも逃れることはできずに巻き込まれた。なら、僕も追いますか!

 

「みんな!僕はマリアさんの覚悟を見届ける!後は頼む!」

 

僕はラジエルとミカエルの二つを展開してマリアさんの転移先に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

~~転移後~~

 

転移した僕が見たのは、余裕を見せるガリィと、既に肩で息をしているマリアさんだった。

 

「アンタの信念は立派だったわ。だけどアンタには実力が足りない。モジュールを使いなさい!それでアンタの最後の評価をしてやるよぉ!」

 

なるほど、今から抜剣するのか。見せてくれマリアさん。貴女の心の強さを!

 

「………勇………来てくれたのね。………なら、これ以上無様は晒せないわ!嘗て貴方は私の全てを支えると言った!だから私は!もう迷わない!

イグナイトモジュール抜剣!」

 

〈ダイン=スレイフ〉

 

その瞬間マリアさんの体を闇が覆った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~マリアside~~

 

私の悪夢は、セレナを失ったあの日から強くなった。それまではどんなに辛くても、切歌・調・セレナを守りたいと思って過ごしてきた。でも、ネフェリムの起動実験が行われたあの日に、私は妹と離れ離れになった。後に再会することはできたが、あの日までは残された二人を守れるのは私だけだと、自分に言い聞かせることしかできなかった。だから宿ってもいないフィーネを演じたり、アメリカ兵を不慮の事故とはいえ、殺害してしまった。そうすると私は、偽り続けた自分に対して何が残されたかわからなくなっていた。

 

〈あらあら。それが貴女の闇ですか?〉

 

「………!貴女は一体!?それに何故私の過去を!」

 

〈いえ、私は貴女を見極めに来たのですわ〉

 

「どういう意味かしら?見極めるって」

 

〈そんな殺気を向けないでくださいまし。ただ貴女に幾つかの質問をするだけですわ〉

 

得体が知れない。底知れない闇そのものとでもいうような雰囲気の女性に、私は警戒と恐怖を抱いた。

 

〈貴女は何の為に戦いますの?〉

 

何の為に?私は嘗て、セレナが残した皆を守りたくて立ち上がると決めた。でも、守られていたのは私の方だった。

 

「何の為に………ね。私は目標が探せなかった。変わり続ける状況に流され続けて、いつも周囲に助けられていたわ。本当は私が守りたかったのに………ね。」

 

〈やはりですか。嘗ての私と貴女はよく似てますわね〉

 

「嘗ての貴女?」

 

〈ええ。嘗て私にこの力を授けた者がいましたわ。しかしその人物は、周囲の人間の命を目的の為に利用し続けましたわ。私の親友も例外ではありませんでしたわ。〉

 

「貴女にも救いたい人がいたのね。私はそう思うことすら………」

 

〈私は与えられたこの力をもって、彼女に復讐しようとしましたわ。ですが、それは叶いませんでしたわ。ある人物に出会ってしまったのですから〉

 

そう話す彼女は、一人の恋した乙女の顔をしていた。

 

〈そして彼、「士道さん」に、私は勝負を挑みましたわ。彼が勝てば私の、私が勝てば彼の力をいただくという勝負を。〉

 

「一体どんな勝負をしたの?」

 

〈「先に相手の心を掴んだ方が勝ち」という勝負ですわ。〉

 

そう話す彼女の顔は幸せといった様子だった。

 

〈貴女にもいるのでしょう?全てを捧げたい殿方が〉

 

「ええ。私は彼を、勇に全てを捧げると誓ったわ。でも彼は今、私から奪われそうになっているの。それが悔しくて仕方ないわ!だから彼へ見せたい!私の決意を!見届けて貰いたい!そして彼と添い遂げたい!」

 

〈そう。その気持ちですわ。それがあれば、貴女は闇には落ちませんわ。そして私の力を使いなさいまし。きっと役にはたちますわ〉

 

「私に?良いの?貴女の力なのでしょう?」

 

〈ええ。ふさわしい方に継承したくて私は待っていたのですから。ああでも、貴女の殿方にお伝えくださいますか?〉

 

「ええ。必ず伝えるわ。どんな内容かしら?」

 

〈貴方の力の代償は、既に対価が支払われていますわ。ですから、貴方自身が負うことはありませんわ〉

 

「必ず伝えるわ。最後に貴女の名前を教えて貰えるかしら?恩人なのだもの」

 

〈そういえば名乗っておりませんでしたわね。私の名前は「狂三」ですわ〉

 

「ありがとう狂三さん。必ずこの力を使いこなして見せるわ!」

 

〈ええ。私はいつでも見守っていますわ〉

 

そう言って私の意識は現実に引き戻された。

 

~~マリアsideout~~




マリアさんに力を与えた精霊 〈時崎 狂三〉

マリアさんの自分の本心を偽ってでも目的を達成する覚悟に、嘗ての自分の姿をかさねた。そして自分の守りたい人を守る為の強さを知っている彼女は、マリアさんにザフキエルのリスクが霊力のみになっていることを伝える。

この伝達のお陰で黒幕達は安心して何かを行っているらしい。詳しくは本章の最後で明かされます。

次回〈マリアの決意〉

更新をお待ちください。

また、メッセージや感想をいただけば、執筆意欲が上がりますので、楽しみにお待ちしています。


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マリアの決意

次の更新より、アンケートの後半を開始します。前半の投票はこの話までの、後半のアンケート投票は次回以降の話に付属しています。よろしければ投票をお願いします。投票期間はどちらもキャロルとの最終決戦が終わるまでです。たくさんの投票をお待ちしています。


今回は天使とイグナイトを使ってマリアさんが戦います。

前書きが長くなりましたが本編へどうぞ。


マリアさんがイグナイトの闇に覆われている間に、僕はガリィに確認した。

 

「ガリィはこの後どうするの?」

 

「ああなるほど。旦那サマは私の身を案じてくださるのですね?大丈夫ですよ。マスターの細工で、呪いの旋律が刻まれた瞬間に対照的な光が溢れますから。そしてガリィ達はシャトーに転送され、テストが終了しますわ。マスターとエルフナインの計画ですから、旦那サマの心配は起こりませんよ」

 

なるほど………流石キャロルだ。多分ラフィスの力だね。なら後はマリアさんだけだな。

 

「ところで、ガリィから見たマリアさんはどう?」

 

「自分がどうあるべきか踠いてる少女ですね。だからこそ、どう成長するか楽しみなんですよ。なので呪いに負けるオチとか勘弁して欲しいものですね」

 

「多分大丈夫じゃあないかな?マリアさんは自分の弱さを知っているから。そして今は向き合っている筈だから。乗り越えた彼女を僕は信じて待っているんだよ」

 

「本当に旦那サマはお優しいです。この戦いが終わったら、マスターがお待ちです。ガリィも張り切ってお薬を作りますから、マスターをうんと可愛がってくださいね?」

 

「ならシャトーでキャロルに伝えてよ。〈キャロルがどんなに恥ずかしくても、僕は君の全てを手にいれる。だから今晩は寝かさないよ?〉ってね。頼んだよガリィ」

 

「おまかせください。このガリィちゃんが必ずマスターに伝えますわ」

 

そんな話をしていると、マリアさんが意識を取り戻した。そして漆黒のギアを纏っていた。普段が銀のギアだけに、その美しさに僕は見とれてしまった。

 

「待たせたかしら?」

 

「いえいえ、なかなか早い復帰だこと。もう少し呪いに踠いてると思ってたをらね」

 

「………そうね。彼女に会わなかったら、私は呪いに負けていたかも知れないわ。でも、だからこそ!私は貴女に勝たないと気が済まないのよ!」

 

「へーえ。じゃあ見せて見なよ!」

 

ガリィはそう言ってアルカ・ノイズの結晶をばらまいた。

 

「今更ノイズ!肩慣らしにもならないわ!」

 

マリアさんはそう言って蛇腹剣で、ノイズの分断と撃破を平行し、少ない方には短剣の接近戦で撃破した。

 

「これでも食らいなさい!」

 

そう言うと残した方に砲撃を放った。でも、そうすればガリィは…………

 

「自分で視界を狭めるとか致命的なんだよぉ!」

 

背後から氷の槍で体を貫こうとしたが、その攻撃は上から降ってきた短剣に阻まれた。

 

「何い!アンタまさかこれに気付いてたの!?」

 

「ええ。貴女は視界から外れたら必ず死角にいるわ。だからわざと死角を作って攻撃を誘導したのよ。勘が外れなくて良かったわ!」

 

マリアさんはわざと隙を作ってガリィの攻撃軌道を限定させたのか。これらは経験値の賜物かな。

 

「やるわね!マリア・カデンツァヴナ・イヴ!今のアンタは間違いなく旦那サマの側にいる資格があるわ!だけど正妻はマスターね。これはガリィ達にとっては譲れないわ!だからこの一撃で決着をつけましょう?」

 

「いいえ!勇の正妻は私よ!必ずキャロルにも教えてやるわ!そして望み通り決着をつけましょう!」

 

お互いに次の一撃に賭けてきたな。そしてガリィが先に動いて地面を凍結させて加速してきた。

 

「その首貰ったわ!」

 

「そんな攻撃!今更怖くないわ!」

 

マリアさんは剣と短剣の時間差攻撃でガリィの体を分断した………ように見えたが倒れたのは氷の塊だった。

 

「予測の範囲内よ!ザフキエル!私に力を!」

 

そう言ってマリアさんは時喰みの城を展開した。霊力を持つ相手には通じないが、初見なら一時的に動きを制限できる。その誤差を使ってガリィの本体を見つけだした。

 

「そこね!もう惑わされないわ!」

 

そしてマリアさんは銃を片手に持って唱えた。

 

「ザフキエル!〈二の弾〉!」

 

減速したガリィに弾丸を命中させて、更に機動力が 削がれたガリィはマリアさんの〈SERE†NADE〉にぶった斬られてた。

 

「このガリィちゃんが認めるわ!アンタは強くなったわ!」

 

そう言い残してガリィの体は光に包まれた。多分シャトーに転送されたんだろう。

 

「終わったのね」

 

「ええ。終わりましたよ。マリアさん。貴女の戦う姿を僕はしっかり見届けさせて貰いました」

 

「そうね。勇がいなかったら、私は呪いに負けていたわ。愛しい貴方のおかげよ」

 

そう言いマリアさんは僕にキスをしてきた。またそれもディープなやつを。

 

「本当にちゃっかりしてますね。まあ、それがマリアさんらしいですけど」

 

「ええ。私は弱さを受け入れて私らしくいくわ。だから遠慮はしないわよ。隙があったら、私色に染めるからね?覚悟してなさい。あと、狂三さんから伝言よ。

〈能力の対価は既に支払われている。だから貴方は何も負わなくていい〉そうよ。この意味わかるかしら?」

 

「ははは。多分マリアさんは一番気難しい能力を得ましたね。でもマリアさんなら使いこなせると、僕は信じていますよ」

 

そう言って僕達は夕日の浜辺をあとにした。




〈キャロル は 幸せ が 約束 された。〉

「ちょっと待ちなさいよ!今回は私のメインステージじゃあなかったの!」

残念ですが本章はキャ「もういいわ。すぐに死になさい作者ァ!」ウソぉ!その銀腕で殴られるのはヤバいんだって知ってるから許してください!

「必ず制裁を下すまで止めないわ!」

次回〈黒幕達の密談①〉

更新をお待ちください。

(この後作者は、マリアさんにしっかり制裁されました。)

また、メッセージや感想をいただけば執筆意欲が上がりますので、よろしければお願いします。


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閑話黒幕達の密談①

この話より、アンケート後半の掲載を行います。前半の回答もこの章の最後の話を投稿するまで受け付けておりますので、まだの方は第80話~95話までの掲載中のアンケートで回答をお願いします。


本編では……………おや?どうやら黒幕達が何か良からぬ密談をするようですよ?一体何を語っているのか……それでは本編へどうぞ!


○マリアさんのガリィ撃退時点の評価

 

マリアさんがガリィを撃退した二日後、僕は本部にいるエルに会いに行った。

 

「おっ!エルがいたから探す手間が省けたな。

ねえエル………個室に行かない?話したいことがあるからさ」

 

「勇さん!来てくださったんですね!すぐ移動します!キャロルもきっと喜びます!」

 

そう言って僕達はエルの個室に移動して、消音結界と幻影を展開した。だってある意味僕達はスパイだからね。情報漏洩が起こらないように注意しないと。

 

「おっと普通に施錠もしないとね」

 

「ありがとうございます勇さん。これでキャロルも呼べます!」

 

エルの感謝の声が聞こえた後にキャロルの姿が投影された。やっぱり元気そうだね。

 

「やあキャロル。体の具合はどう?必要があればそっちに転移して治療に行くよ?」

 

〈ああ………それには及ばない。勇に会えないのは残念だけど、今回の傷はカマエルで治ったから大丈夫だ〉

 

「キャロル………無理しないでくださいね?僕はキャロルが勇さんと結ばれて欲しいからここにいます!だからキャロルは自分の体に気を使ってください!」

 

〈本当に大丈夫だぞエル。実際に消耗したのはカマエルぐらいだからな。次に装者と戦う時はシャトーを持って行くさ。少なくとも今の三人はそれに値する価値となったからな〉

 

「シャトーを持って行くんですね。ならその時は僕達が見届けます!装者の意地とキャロルの愛のどちらが勝るかを!」

 

〈ああ。頼んだぞエル。やはりオレは勇とエルに一番見て欲しいんだからな〉

 

うん。二人の会話が微笑ましいな。でもそういうことなら僕も準備がいるな。

 

「そういえばキャロル?シャトーをこっちに持って来て戦闘をするならシャトーも無事じゃあすまないよ?規模的に」

 

〈ああ。その辺はレイアの妹が引き受けるそうだ。それにガリィ達もいるからな。シャトー方面の被害は大丈夫だろうな〉

 

なるほど。キャロルはちゃんと被害を抑えて戦う準備を整えてくれてるんだね。なら僕も今回の役割を果たさないとね。

 

「なら僕が反対側の被害を抑えるよ。今のキャロルの全力を受け止められるのは僕だけだからね」

 

「お願いします勇さん。これでキャロルは心おきなく戦えます!」

 

〈ああ。エルの言う通りこれで気兼ねなく全力が出せそうだ。もし外れても勇への愛になるからな!〉

 

「まあ僕を巡るケンカだから間違いではないけど、できれば被害は抑えてよ?僕が防ぎ損ねたら大惨事なんだからね?」

 

〈ああ!もちろんだ!〉

 

「頑張ってください!キャロル!僕はキャロルを応援しています!」

 

〈ああ!姉として妹の前で全力を尽くすからな!見ていてくれよエル!〉

 

二人共楽しみにしてるね。実際僕も楽しみだな。

 

「そういえばキャロル?響達の天使の覚醒をキャロルはどう見てる?」

 

〈ふむ。立花響は少し意外だったな。奴ならミカエル辺りだと思っていたが、奴のアームドギアは拳だったな?ならばガヴリエルはある意味必然だったな。手を繋ぐ為の手段に声を届けることは理に叶っているからな〉

 

「そう言われれば確かに響らしいね。響の力は繋ぐことだからその為の手段に天使があるなら、響の目的を助ける力になるんだろうね」

 

〈次の小日向未来はある意味順当だったな。ギアの特性と天使の力に親和性がある組み合わせだった。そして前任者も勇の記憶通りの人物ならば手を貸すだろうな〉

 

「そうだね。折紙さんならきっと未来に躊躇いなく力を継承してそうな姿が簡単に想像出来るよ」

 

〈最後のマリア・カデンツァヴナ・イヴがザフキエルに選ばれるとは思っていなかったな。アイツは正々堂々を好むタイプだろう?〉

 

「本人のスタンスはそうだけどね。フロンティア事変でマリアさんは、自分を偽ってまで世界を救うつもりだったからね。そういった意味では、狂三さんと同じなのかも知れないね」

 

やはりキャロルにとってもザフキエルの継承は意外だったみたいだね。実際に僕も納得はしたけど意外だったし。

 

「あとの候補者は翼さん・クリスさん・調さん・切歌さんですね。キャロルは次に誰を差し向けるのですか?」

 

〈ミカにザババの二人のテストをさせるさ。だが想像通りなら奴等はあの天使を顕現させるぞ?〉

 

これは僕も想像出来るな。二人にとって一番噛み合った天使だからね。

 

「ラファエルだね。僕も楽しみにしてるからさ。ミカちゃんに伝えてよ。〈二人であること〉を認識させるテストにしてあげてくれない?それが一番あの二人らしいから」

 

〈ああ。必ず伝えよう。ではこちらは失礼するぞ?〉

 

「ありがとうございますキャロル。僕も装者達の力を引き出せるよう支援します!」

 

〈頼んだぞエル〉

 

「エルもありがとうね」

 

「いえ!これもキャロルと勇さんの為ですから僕も頑張れます!」

 

そうして僕達の密談は終了した。最後にお礼代わりにエルをしっかり抱きしめておいた。やっぱりキャロルと三人ですごしたくなるな。




何故こういう時だけ無駄にがんばるかな勇君……君がキャロルを操縦できていればこんなことには………

そして次の戦闘回は切調コンビがターゲットのようです。彼女達は無事にラファエルを覚醒できるのか!

次回〈話し合い……そして〉

更新をお待ちください。

感想やメッセージをいただけば執筆意欲が上がります。よろしければお願いします。


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買い出し………そして………

今回はあの方に登場していただきます。ヒビキの支えは原作と違い少なくとも三人、内一人は初恋の彼です。そんな四人の関係に注目してくださると幸いです。

それでは本編へどうぞ。


マリアさんがガリィを撃退した翌日、響が祝勝会をやりたいと言いだしたので、僕達シェアハウスメンバー全員で近所のスーパーへ買い出しに出ていた。

 

「ふっふーん♪今日のごっはんはなーにっかなー♪」

 

「好きな物を買うのは別に良いけど、主役はマリアさんだからね?響?」

 

「わかってるよ未来ー。ちゃんと考えるからさー」

 

「いいや未来の言う通りだな。響に財布持たせたら無駄遣いしかしやがらねぇ。未来や勇が苦労してるのがよくわかるよ」

 

「クリスちゃんまで!?ねえ勇君!勇君は私の味方だよね?」

 

顔に不安を浮かべた響だったが、僕は容赦なく止めを刺すことにした。

 

「無駄遣いのことで頭が痛いのは、響と切歌ちゃんが同率かな。本当に疲れるし」

 

「そんなー!皆してひどいよー!」

 

そう言って響は逃げて行った。

 

「とりあえず僕が追いかけるから、未来と姉さんで会計を頼める?」

 

「別に良いよ」「早いとこ響を拾ってきてくれ」

 

「了解。後は任せたよ!」

 

そう言って会計を任せて響を探すと、思わぬ人と再会してしまった。

 

「おお!勇君じゃないか!久しぶりだな!元気そうで何よりだよ!」

 

「勇君!?あはは………また最悪のタイミングなことで………」

 

そこには複雑な表情をした響と、響の父親の洸さんがいた。

 

「久しぶりですね洸さん。僕です。雪音勇です。こんなところで会うなんて偶然ですね。ですが今日は家に人が来る約束があります。連絡先を交換しますので、後日にしませんか?」

 

「おお!勇君か!久しぶりじゃないか!へーえ。響と再会できたのか。そして人が家に来るのか。なら邪魔しちゃあ悪いな。わかった!それで頼むよ!」

 

そうして僕と洸さんは連絡先を交換して、一度別れた。

 

「勇君………このことは………」

 

「これは響の問題かも知れないけど、僕達は仲間だからさ。協力できることは協力したいんだよ。そうでしょう?姉さん?」

 

「あー気付いてたか。そう言う勇だってポケットの中の片手は拳握っただろ?」

 

「ええ!?勇君そんなことしてたの!?」

 

「当然私も気付いていたよ。勇君のことを一番わかっているのは私だもん!」

 

「未来まで!?じゃあわからないのは私だけ!?」

 

少しうるさい響を連れて僕達は家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~帰宅後~

 

「響はどうしたいんだ?親父さんのことを、許したわけじゃあないんだろう?」

 

姉さんははっきりと響に聞いてきた。

 

「うん。正直お父さんのことはまだ許せないかな。私達のことを置いて自分一人で逃げて行ったし………」

 

だろうね。僕の立場でも許せないかな。

 

「ならさ。響は洸さんにどうして欲しいんだ?」

 

「うーん………帰ってきて欲しい………かな?多分それが一番近いと思う」

 

「私は無理に会わなくても良いと思うよ?響が辛いなら今である必要はないから」

 

響の言葉はとにかく、未来は意外だったな。

 

「まあ、どちらにしても決めるのは響だよ?僕達は響の気持ちをしっかりと尊重するし、できる支援は惜しまないから」

 

「みんな………うん!ありがとう!私、お父さんと向き合うよ!」

 

「ごめん響。当日には僕も同行させてくれない?実は洸さんにどうしても伝えたいことがあるんだ」

 

「勇君………うん!心強いよ!」

 

「勇君?まさかやりすぎないよね?」

 

「勇!お前の行動があたしの想像通りならあたしはお前を止めるぞ!」

 

「うーん………あり得て欲しくはないけど、二人の心配は最もだからね。ならさ、四人で行かない?」

 

「そーするか」「そうしよう」

 

「みんな………ありがとう!」

 

「気にしなくて良いよ。みんな響を大切に思っているんだからね。」

 

僕達はそう意思確認をして、洸さんに電話をかけた。

 

「洸さんこんばんは。勇です。響達と話をした結果一週間後13時に駅前のファミレスで話をしませんか?来るのは響・僕・未来・姉さんの四人です。まあ話をするのは僕・響・洸さんなので、未来と姉さんは僕のストッパーですけどね」

 

〈ほぉー。未来ちゃんやクリスちゃんも再会できたのか。幼馴染みが全員再会できたんだな。〉

 

「まあそういうことです。なので一週間後の13時は必ず来てくださいね?」

 

〈わかったよ。駅前のファミレスだろう?昔からあった、あの馴染みの〉

 

「覚えていてくださって助かります。それでは一週間後の13時にお待ちしています」

 

そうして僕は通話を終了した。

 

「みんなありがとう。一週間後の13時に駅前のファミレスで設定できた。僕はもう一件電話するから離れるね」

 

そう言って僕は部屋を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

「もしもしキャロル?僕だけどお願いがあるんだ。」

 

〈勇からのお願いだと!なんだ!言ってくれ!〉

 

「こっちの装者の都合でさ。次のテストは来週以降にできる?」

 

〈構わないぞ。オレも奴らが万全でないと意味がないと思っているからな〉

 

「我がままを聞いてくれてありがとうキャロル。愛しているよ」

 

〈愛している勇の頼みだ!オレが断るわけないだろう!

だけど終わったら約束は果たして貰うから〉

 

「うん。僕の〈ハジメテ〉は必ずキャロルにあげるよ」

 

そう言って僕はキャロルとの通話を終了した。




勇君……君はまさしく黒幕だよ。だけど洸さんとのやり取りとキャロル戦の調整ができるのも君だけだよね。(遠い目)そして響の理解者達は洸さんとどう向き合うのか……

次回〈話しあい………そして……〉

更新をお待ちください。

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話合い………そして

さて今回の洸さんとの話し合いには、幼馴染み全員が同席するようです。その変化がもたらす影響とは?

それでは本編へどうぞ。


約束の日時と場所で、僕達は洸さんを待った。

 

「お父さん………来てくれるかな………」

 

「来なかったらその時は、その程度の認識ってことだろうな。おじさんがそうじゃねぇと信じてぇがな」

 

「流石にドタキャンはないと思うよ………仮にも大人だから」

 

そんな話をしていると洸さんが入店をしてきた。

 

「おっ!この席だな。すみません!サンドイッチとコーヒーを追加でお願いします!」

 

店員さんにオーダーする洸さん。原作なら文無しだったからな。少し釘を刺すか。

 

「洸さん。今日は来ていただきありがとうございます。ですが、今のオーダーは勿論貴方のお支払で間違いないですよね?」

 

「いやー勇君ごめんな。今持ち合わせが心もとなくてな。出して貰えると助かるんだが………」

 

やっぱりか。多めに持って来て良かったな。

 

「………正直このやり取りだけで貴方の魂胆がわかった気がしますが、念の為に確認します。貴方は響とどうありたいですか?また、どうして欲しいですか?」

 

「ふーむ。俺としては、また家族で過ごしたいし、響には母さん達の説得を頼みたいな。俺の話だけだと取り付く島もないからな」

 

「お父さん!そんなの自分勝手だよ!私が一番側にいて欲しい時にいなかったお父さんには!虫がよすぎるよ!」

 

「まってよ響!」

 

響は泣きながら走って退店して、未来が響を追いかけた。

 

「勇………手の力を抜け。お前は何の為に耐えたんだ?」

 

姉さんの言葉を聞いていくらか冷静になれたので、僕は洸さんと話し合いにのぞんだ。

 

「自分勝手か………わかってはいるんだが………時間では解決しないか………」

 

「洸さんはわかっていますか?時間が解決するって意味がどういうものか」

 

「ん?お互いに冷静になれる為じゃあないのかい?」

 

「僕は違うと思っています。時間が経てば、対象にかける興味や関心が薄れるんですよ。

それこそ〈好きの反対は無関心〉と言える程にね。このままの貴方なら、貴方の為に努力すること自体がいずれ響達には苦痛になるでしょう。」

 

「ははは。勇君は手厳しいなあ。なら聞かせてくれないか?君の考えってやつをよ」

 

僕はその言葉を聞くと、姉さんにアイコンタクトをとった。どうやら話しても良さそうだ。

 

「僕達がパパとママの夢に同行する為に響達と別れたのは覚えていますか?」

 

「ああ。響も未来ちゃんもあの時は泣いていたなあ。あれから九年か………懐かしいなあ」

 

「ええ。九年前に僕達姉弟はテロで両親を失いました。僕は姉さんを逃がす為に囮になり、姉さんは難民キャンプに保護されました。そこで僕達は離れ離れになりました」

 

「そんなことが………だが二人は再会できたようだね」

 

「ええ。僕を保護してくれた組織は世界情勢に聡いので、姉さんの発見を期に日本に帰国して、未来・響とも再会し、姉さんとも再会できました」

 

「そうだったのか。君達も色々あったんだな」

 

「だけど僕は雪音家に引き取られるまでは、本当に絶望していました。覚えていますか?11年前に父さんが亡くなった事故のことを………」

 

「そうだったな。君は二度も目の前で親父さんを亡くしているんだったな。そんな君からすれば俺は殴りたいんだろう?」

 

「ええ。その考え方通りなら、とても殴りたいですよ?

しかしあくまでも余所の家庭です。だから何もできませんから。」

 

「勇………お前………」

 

姉さんの心配する声が聞こえて冷静さを取り戻した。

 

「洸さん。もう一度よく考えて貰えませんか?自分が何をしたいのか、何ができるのか。響達と一緒に暮らしたいならお願いします。お会計はこちらで済ませますから。行こう姉さん」

 

「お、おう」

 

こうして僕達は、最悪の再会をしてしまった。




家族との距離感の問題は、私自身の経験や価値観を投影しました。なので不愉快に感じた方々は申し訳ありません。

次回〈襲撃!ミカちゃん!〉

更新をお待ちください。

感想やメッセージをいただけば、執筆意欲が上がりますので、よろしければお願いします。お待ちしています。


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襲撃!ミカちゃん!

話し合いは失敗した。そして響の状況は良くない。
そんな時に連絡が入り……

本編へどうぞ


洸さんとの話し合いが終わった後に響達と合流した。

 

「勇君………お父さんは………」

 

「あの人も今はもがいているはずさ。だから響は、どうしたいのかしっかりイメージをしておいて欲しい」

 

「うん………ありがとう勇君………」

 

 

翌日端末に連絡が入った。どうやらミカちゃんが暴れるらしい。

 

「二人共聞いた?地下施設に襲撃が来たらしいね」

 

「うん………行かなきゃ………」

 

俯いたままの響に力はない。

 

「響!そんな状態じゃあ任務はできない!」

 

未来はそう言って響をビンタした。

 

「未来………ごめん………」

 

「いや、未来の言う通りだね。響は僕と本部へ帰投するよ。未来は代わりに現場に向かってくれる?」

 

「うん。今の響には無理だね。お願いするよ勇君。響?私が戻るまでに腑抜けたままだったら次はビンタじゃあ済まさないからね?」

 

未来はそう言って現場に向かった。

 

「響………僕達は本部へ戻るよ。でもその道中で僕が洸さんと話したことも伝えるよ」

 

こうして僕達は本部へ向かった。その過程で、父さんを事故で亡くしたこと。バルベルテのこと。幼馴染みで再会できたことを話したと響に伝えた。

 

「ごめんね勇君………あんなことを思い出させたりして」

 

「それは僕も同じだよ。三年前のライブコンサートの件はある意味姉さんの所為でもあるから」

 

そう。姉さんには響と合流するにあたって先に本部に帰ってもらった。絶対この会話の流れになることがわかっていたからね。

 

「だから響も考えなよ。洸さんとどう過ごしたいか。どうして欲しいのか。どうしてあげたいのかね………」

 

「勇君………うん!私も考えてみる!」

 

そう言って響の目に力が戻った。後は現場の未来に全てを任せますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~未来side~~

 

響と別れた私は現場に向かい、調ちゃん達と合流できた。そして施設に突入してアルカ・ノイズとの戦闘が開始された。

 

「二人共!屋内施設での戦闘は動きが制限されるから!武器の形状には注意して戦って!」

 

「わかりました」 「了解デース!」

 

二人はそう言ってアームドギアを最小限の形に変化させた。特に切歌ちゃんの鎌が小回りが効くようにしないと、連携が困難になるからね。

 

「調ちゃんの攻撃と私の接近戦でノイズを叩くから、切歌ちゃんはうち漏らしのノイズをお願い!」

 

そう言う頃にはアルカノイズがおびただしい数まで増えていた。これじゃあ敵の〈自動人形〉が補足できない!

 

「数が多いデス………大技が使えればこんな奴等すぐに」

 

「ダメ!切ちゃん!ここが崩落したら意味が無いんだよ!」

 

「わかっているデス!でもこのままじゃあジリ貧デス!埒があかないデス!」

 

「それでもダメだよ二人共!敵の狙いがわからない今は被害を抑えなきゃ!」

 

そうして私達はノイズに足止めされて、何かが破壊される音が聞こえた。

 

「ふぅー。やっと終わったゾ!さあお前達!アタシと遊ぶゾ!」

 

「ミカ!こんな時に………」 「アイツはこの間の!」

 

こんな時に彼女が出て来るなんて………でも私が二人を守らないと、この状況を打開できない!

 

「ここで撤退に追い込む!」

 

調ちゃんが一撃で勝負を決めようと特攻に入った!まずい………こんな場所で大技を使えば………!

 

「そんな見え見えの攻撃を食らうアタシじゃあないゾ!」

 

あっさり避けられてカウンターの要領で結晶を叩き付けられた。

 

「調!よくもやったデスね!」

 

切歌ちゃんは斬撃を飛ばしたが、これも簡単に止められた。

 

「軌道が簡単に読めるゾ!」

 

そう言って火球を飛ばして来た!

 

「危ない!」

 

私はギアを防御形態にして防ごうとしたが、その隙にミカちゃんに接近されて………

 

「お前達もアイツと同じように吹き飛ばしてやるゾ!」

 

そう言って二人纏めて結晶を叩き付けられて、私達は仲良く気絶してしまった。

 

「ふーむ。やっぱりここじゃあ戦い難いゾ!勝負は預けるからもっと強くなって出直して来るゾ!」

 

ミカちゃんの呟きを聞いた人物は誰もいない。

 

~~未来sideout~~




流石ミカちゃん圧倒的!これは……強い!

「作者のせいだね!」
「とりあえず死ねデス!」

いやお二人共その刃を下ろして……

「「絶対に切り刻む(デス)!!」」

次回〈立ち直るために〉

更新をお待ちください。

やっぱりザババの刃に切り刻まれました。


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立ち直る為に

この小説も百話となりました。牛歩のような速度で話数が多いですが、閲覧いただきありがとうございます。


装者全員が召集された。そして次の任務が言い渡されて……

本編へどうぞ


ミカちゃんの襲撃の後、未来達は翼さん達に回収されて本部に戻った。

 

「ミカちゃんと交戦したんだね。だけど切歌ちゃん、調ちゃんはなんで特攻したの?あれじゃあ未来だって立ち回りが困難になるよ?」

 

「勇君………良いの。私が二人を守れなかったのは事実なんだから………」

 

「未来………ごめんね。私がちゃんと任務に就ければこんなことにはならなかったのに」

 

響と未来はお互いに後悔していた。

 

「うん。響が今回の襲撃に対応できなかったのは、完全に自業自得だよ。だけどそれはあくまでも任務開始前の話で、未来が対応したことで埋め合わせにはなった。

一番問題なのは切歌ちゃんと調ちゃんが暴走したことだよ?」

 

「私達が足手まといだから」「あたし達が何とかしないといけないんデス!」

 

「「このままじゃあ私(あたし)達はあの頃と何も変われていない(デス)!!」」

 

なるほど。二人は常に自分達が他の装者より劣っていることを悩んでいた。〈Linker〉が必要なくなった今、誰よりも努力を重ねたのだろう。それこそ、未来達にそれぞれで追い付けるように。

 

「今回の響は、自分が受け入れられない相手とどう向き合うかを必死に悩んでいる。二人の悩みの本質も同じじゃあないかな?」

 

「私達の悩みが」「響さんと同じデスか?」

 

「うん。響は家族が、調ちゃん達はお互いの現状が今は受け入れ難いモノになっているからさ。相手に何をして欲しくて、何をしてあげたくて、どういう関係をこれから築きたいかよく考えれば良いんじゃない?ここには頼りになる大人がいる。最後に答えを出すのはそれぞれだけど、時には人を頼っても良いんじゃないかな?当然僕も相談には乗るし、一緒に悩むよ。司令もそう思いませんか?」

 

「ああ!子供の悩みに真摯に向き合うのが大人の役目だ!本当は親の役目だろうが、君達の事情はこちらも十分に承知している。だから俺達を遠慮なく頼れ!支援は惜しまんし、間違いは正してやるから安心しろ!」

 

流石司令だな。その力強い言葉は安心と信頼ができる。

 

「あたし達は強くなりたいデス!守られるだけの存在ではいたくないデス!」

 

「私達が強くなれば、それだけでも守れる何かがある。そんな気がするんです!」

 

二人の目に目標が見えた気がした。なら後は手段を提供するだけだな。

 

「司令!装者は今こそ特訓の時期じゃあありませんが?司令がメンタルと基礎を、フィーネさんがメニューやケアをしていただけば、絶対に今の皆は成長できます!準備をしていただけませんか?」

 

しかし司令からは僕の予想とは違う返答が帰ってきた。

 

「ようやくその言葉が聞けたな。了子君!以前相談した計画を実行に移すぞ!」

 

「師匠?それってまさか?」

 

「ああ。嘗てキャロル君達と交戦した時に取り組んで貰おうとしたメニューだ。今のお前達ならこなせるだろうさ。そして翼!お前はマリア君と勇君の三人で八紘兄貴のところへ向かってくれ。そこでお前自身がどうしたいのか見つめ直して来い!」

 

翼さんの顔には不安が表れた。そうだったな………翼さんも家庭環境は複雑だったな。

 

「司令の人選には意味があります。何故翼さんが剣であることに固執するのか。おそらくは、お父さんとの関係はそこに理由があるんでしょう?だから僕と装者最年長のマリアさんが選ばれた筈なんですから」

 

翼さんはその言葉に力無くこう答えた。

 

「そう………だな。私自身もいつかは向き合うべき問題なのだろうな。すまないな二人とも。私のことに巻き込んでしまって………」

 

「先程響達にも言いましたが、僕達は仲間です。一人で解決したい問題ももちろんありますが、力になれるなら、僕達は協力をおしみません。そうでしょうマリアさん?」

 

「そうね。新しい恋敵が現れる可能性は無視できないけど、それ以前に私達は仲間よ。仲間の為に努力することは迷惑ではないし、解決に繋げられればそれだけでも充分よ?」

 

「そうだな………ありがとう二人共。そして皆すまないな。私達は一時的に別行動をするが、必ず状況を打開して戻ると約束しよう」

 

翼さんの言葉をきっかけに、響・切歌ちゃん・調ちゃんも目標の見えた顔つきになった。姉さんは最後まで悩んでいたが、それは今解決するべきでは無いとも感じた。

 

「じゃあ切歌ちゃん!調ちゃん!次は目標を見つけてくれ!そして次に会えた時は是非教えて欲しい!」

 

「うん!次に会えたら必ず!」

「絶対に勇さんに聞いて貰うデース!」

 

二人は力強く返事をした。

 

「響!洸さんのことはまだなんとも言えないかも知れない。でも、人は変われる!だから!」

 

「うん!その先は私が見つけてみせるから!勇君は翼さん達を頼んだよ!」

 

響も何かの覚悟を決めた目をしていた。

 

「未来!皆を任せた!今一番頼れる幼馴染みは未来だから!」

 

「任せてよ!勇君の期待は絶対に裏切らないから!帰って来たら逃がさないよ!」

 

「相変わらず未来らしい!」

 

未来とのやり取りもおえて。

 

「姉さん!もしも僕が戻って来て尚答えが出なかったら、その時は一緒に悩むから!だから今は皆を支えて欲しい!」

 

「そうだな………あたしもできることをやってみるさ!」

 

こうして僕達は別れて行動することにした。次に会う時はお互いが成長していることを信じて。




おいいぃ!勇君まさかやってしまうのか!?最後の砦も壊してしまうのか!?

次回〈抜剣!イグナイトモジュール③〉

更新をお待ちください



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抜剣!イグナイトモジュール③

今回は切調コンビの天使継承回デス!

「ふふっ!颶風の巫女」すみません話は本編でお願いします。

「ちょっと!最後まで言わせてくれない!」

「放置。皆様は本編へどうぞ」

ちょっと夕弦さん!それ僕のセリフだから!


~~切歌side~~

 

あたし達は勇さん達と別れた後、自分達がどう強くなれるか考えたデス。そして司令は響さん達の特訓メニューにあたし達を同行させてくださいましたデス。

 

「調………これなかなかキツいデスね………」

 

「うん………響さんはいつもこれについて来てたんだ」

 

「ふーむ………二人は初めてだったな。よし皆!一旦休憩を挟むぞ!無理をしては意味が無いからな!」

 

あたし達は一番能力が低い。そのことをフィーネさんに相談したらこう言われたのデス。

 

 

 

~~切歌回想~~

 

「ふむ。適合係数と個々の能力への不満か………。まあ当然の反応だな。

〈イガリマ〉と〈シャルシュガナ〉は二人で使用することを前提に製作したギアだからな。個々の能力では他のギアに劣るだろうな。例外は神獣鏡だったが、アレは使い手が別格だろう?そしてお前達は元々の適合係数が低い。それが今では自力でギアを纏えているのだ。それだけでも大きな進歩だ。

必要があるなら新しい〈Linker〉の開発も行うし、副作用の方も勇と開発を煮詰めるさ」

 

「なんで勇さんの」「名前が出るのデスか?」

 

「なんだお前達は知らんのか?奴は嘗てパヴァリア光明結社の序列五位にいた男だぞ?フロンティア事変でお前達に確保されたのは幹部が完全なメタを張って捕えたからだ。仮にも奴等の弟子だったのだからな」

 

「意外………」「勇さんが大物すぎてビックリデス……」

 

完全に予想外の言葉デス。

 

「ああそれとな。お前達のギアは互いの心を一つにすることで真の力を解放するぞ?それこそ装者二人相手でも引けをとらん程にな。故に最も可能性を秘めていると言っても良いだろう」

 

それがフィーネさんからのメッセージだったのデス。

 

 

~~回想終了~~

 

 

「おお!今度は良い目をしているゾ!これは楽しみなんだゾ!」

 

「ぬう………ここで襲撃か……ならば俺がぁ!」

 

「司令!ここは!」

「あたし達にやらせて欲しいデス!」

 

「二人共………師匠!ここは二人を信じましょう!大丈夫です!いざとなったら私と師匠がいます!絶対に何とかなります!」

 

「うむ。そうだな!二人共!俺達が側についている!だからやりたいことを思いっきりやると良い!」

 

司令があたし達を信じてくれたデス!後はあたし達が期待に応えるだけデス!

だからあたし達はギアを纏ったのデス!

 

 

「調!あたし達も今ここで!」

「呪いの力を制御して見せる」

 

「「イグナイトモジュール抜剣!!」」

 

〈ダイン=スレイフ〉

 

その瞬間あたし達を闇が覆ったデス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「切ちゃん。これは……」

「あたし達の闇の世界デスね」

 

闇があたし達に見せてきたのは、嘗ての研究所での日々デス。目的の為に手段を選ばない研究者、日々投薬される謎の薬、昨日まで生きていたのに死んでしまう命。その光景を見て・聞いて・体験してあたし達に希望なんて無いと思っていたのデス。でもある日、米国政府が月の軌道情報が偽られている情報がマムに伝えられたのデス。それをきっかけにマリアと調も協力してドクターも仲間に引き入れたのデス。

 

でも、ドクターの暴走はドンドンエスカレートしていくし、あたしはフィーネの力を宿したと錯覚する出来事が起こったのデス。だから調達を救う為にあたしはドクターに協力しました。そして調と初めてケンカをしたのデス。その時に勇さんがフィーネの真実をあたし達に伝えてくれたのデス!あたし達は勇さんから受けた恩もまだ返せて無いんデス!だから皆の為に早く一人前になりたいのデス!

 

「うん。私も同じ気持ちだよ切ちゃん。私も勇さん達に恩返ししたい。救われた命だから、大切な人と一緒に過ごす為にこの命を使いたい!」

 

〈うん。良い覚悟だね。私達の力を託すのにふさわしいと思わない?夕弦?〉

 

〈同感。確かにふさわしいです。しかし耶倶矢、ちゃんと試練は与えるべきです。それが継承の約束です〉

 

「貴女達は?」

「一体誰デスか?」

 

〈うーん………あたし達は貴女達の好きな彼の能力の先代の使い手かな?〉

 

〈要約。前任者です。私が「夕弦」。隣が「耶倶矢」。二人で一人の精霊です〉

 

「勇さんの能力の」

「前任者さんデスか……」

 

〈そう。あんた達がどう力を使いたいか教えてくれない?〉

 

〈本音。ありのままで構いません〉

 

「あたし達は今まで守られるばかりデス。でも!あたし達にだって好きな人がいるのデス!その人に!勇さんに守られるだけのあたし達はもう嫌なのデス!変わりたいのデス!」

 

「私達は守られるだけじゃなくて、あの人達の隣に立ちたいんです!私達だって勇さんの力になりたいし、何よりも私達の想いを証明したいんです!」

 

〈貴女達も支えたい相手と出会えたんだね。そして胸の想いを伝えたい。その為に今を打開する力が欲しいか。うん!その覚悟を忘れなかったら、力に溺れることもないね!なら夕弦も異存は無いでしょう?〉

 

〈同感。問題はありません。しかし二人は先程、一人一人の無力さを気にしていましたね?私達も嘗てはそうでした。どちらかが本物にふさわしいか夕弦達は互いに競い続けました〉

 

「互いに」

「競うデスか?」

 

〈追憶。私達は相手を想いあって自分達の命を捨てる覚悟さえしていました。勝負の結果と言う口実で。しかし私達は彼……「士道」に出会いました。〉

 

〈うん。ちょうど百回目の勝負だったね。そして私達は彼に惚れさせた方が勝ちって勝負をしたね〉

 

「結果が」

「気になるデス!」

 

〈解答。彼は私達が二人だから私達だと言ってくれました。それが私達らしくあると〉

 

〈だから私達は彼がどうしようもなく好きになったんだけどね。でも良い想い出だったよ〉

 

「私達と」

「同じデスね」

 

勇さんはまさにあの時「士道」と言われた人と同じことを言ったんデスね。だけどそれでもあたし達の胸に刺さったことも事実デス!

 

「だから私達は」

「今度こそ立ち上がれるデス!」

 

〈うん。もう大丈夫だね。私達の能力は風の力〉

 

〈疾風。そして全てを穿つ弓でもあります。二人で一人を越えることは必ずできます。自信を持ってください!〉

 

「ありがとうございました。耶倶矢さん。夕弦さん。」

「お二人の力は必ず正しく使うデス!だから見守って欲しいデス!」

 

あたし達はその誓いの後に意識が現実に引き戻されたのデス!

ミカ!必ず勇さんへのあたし達の想いを見せてやるから覚悟するデス!




切歌と調に力を託した精霊 〈風待 八舞〉
(〈八舞 耶具矢〉及び〈八舞 夕弦〉)

二人で一人。その絆こそが、何者にも負けない強さになることを伝えた。(そういう意味では勇君とキャロルは最強だけど)そして二人に立ち上がる為のエールを送った。

切歌が夕弦の、調が耶具矢の力を主に継承する。

「何故あたし達のパートでキャロルを優遇してるデスか!」
「私達の強化回が……。」

「「作者絶対許さない(デス)!骨も残さない(デス!)」」

物騒な切調コンビから逃げます!

次回〈決戦!ミカちゃん!〉

更新をお待ちください!

(やっぱり刻まれてマリアさんに蘇生→切り刻む→蘇生のループにはまりました。どなたか助けてください。)


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決戦!ミカちゃん!

さあ二人は原作キャロル相当のミカちゃんを倒せるのか!

「相変わらず!」
「余計なことしか言わないお口デース!」

「「しばらく黙れ(デス)!」」

「「皆様は本編へどうぞ(デス)。」」


~~調side~~

 

「もう私達は迷わない!必ず貴女を倒して!」

「あたし達の信念を証明するデス!」

 

私達はギアをイグナイトにはしたが、戦い方を敢えて通常ギアと同じ戦い方にした。その方が切ちゃんと呼吸が合わせ易いから。

 

「切ちゃん!前衛をお願い!」

「合点デス調!あたし達のコンビネーションを見せてやるデス!」

 

切ちゃんが接近して私が後方から遠距離攻撃をする。

私達の基本的な戦法であり、最もお互いを信頼して動けるやり方だ。

 

「おお!意外に冷静だゾ!基礎を忘れずお互いが一番動き易い戦い方を常に意識した、お前達らしい戦い方だゾ!だけどアタシはそんな攻撃じゃあ倒せないゾ!」

 

ミカは私達のコンビネーションの癖を知っている。だからこそ必ず切ちゃんを弾き飛ばして………

 

「鎌の方のフォローにお前が動くことは予測できているゾ!」

 

そう言って私に左手の結晶で殴りかかって来た。だから!

 

「ここで私のアームドギアを使う!」

 

ヨーヨーを使って右腕を絡め取った!

 

「惜しいゾ!左を狙えば防げたけどアタシはそうさせないゾ!だからこのままお前はおしまいだゾ!」

 

「だからこそのあたしデス!今のお前は得意のカウンターと機動力がなければ!」

 

「切ちゃん!お願い!」

「任せるデス!」

 

この短距離で斬撃を通せて!ミカの攻撃は失敗する!

 

「チッ!流石に攻撃に移りきれないゾ!」

 

結晶を手放して私を切ちゃんにぶつける動きに入った!だからこの隙に!

 

「切ちゃん!受け取って!」

「調!受け取るデス!」

 

私達はお互いのアームドギアを小型化して相手に投げ渡した。こうすれば!

 

「なるほど!お互いの武器の特性を知っているからこその回避に繋げて強引に反撃に出る気だナ!そうはさせないゾ!」

 

私達が二つの鎌で勢いを減衰して、余剰の勢いをヨーヨーに加えてミカを左右から拘束した。後はそれぞれのヨーヨーを手繰り寄せて鎌で切り刻む!

 

「うぐ!今のは流石に痛かったゾ!だからアタシも本気だゾ!」

 

ミカの動きが一段と激しくなり、結晶の投擲速度が上がった!これを回避しきるのは難しい!

 

「二人に目標を分散してるとはいえよく避けるゾ!だけど逃げるだけじゃあジリ貧だゾ!」

 

「わかっているデス!」

「だから私達二人の力で!」

 

切ちゃんの鎖と私のヨーヨーを使って完全にミカを拘束した。後は回避に使ったさっき以上の推進力でミカを倒す!

 

「「Zあ破刃エクLィプssss禁殺邪輪!!」」

 

「これはアタシの反撃の推進力を使ったすごい一撃だゾ!それぞれの足りない出力をアタシの力で補ったナ!」

 

ミカを私達の出せる最高の一撃でぶった斬った!だけどミカの体が炎に包まれて再生してきた。

 

「嘘!?」「再生したデスか!?」

 

私達は動揺が隠せなかった。

 

「うん!お前達はアタシによくぞカマエルの力を使わせたゾ!だからここからは天使の力も使って行くゾ!」

 

「調!こうなったら!」

「切ちゃん!あの人達に託された力を!」

 

「「来たれラファエル!!」」

 

私達も託された天使の力を使って高速戦法を使いだした。だけどまだ速度の加減はできない。だからこそ!

 

「「今出せる全速力でお前を切り刻む!!」」

 

シャルシャガナとイガリマの遠距離攻撃を高速移動と掛け合わせて斬撃の竜巻を発生させてミカを閉じ込めた!

 

「チイィ!この風はアタシの動きを削ぐ為の攻撃だナ!ならアタシは火力で全てを薙ぎ払うぞ!カマエル!〈砲〉!」

 

ミカは強引な火力で竜巻を消し飛ばした。だけどそんな大技を使えば!

 

「行くよ切ちゃん!ラファエル!〈縛める者〉!」

「行くデス調!ラファエル!〈穿つ者〉!」

 

私達は天使の一撃を放つ為に形を変化させて!

 

「重ねるよ切ちゃん!」

「合わせるデス調!」

 

二人の天使を重ねる合わせた!今こそ!

 

「「ラファエル!!〈〈天を駆ける者〉〉!!」」

 

巨大な弓矢を形成してミカ目掛けて放った!

 

「うおおおおおぉ!これは………受け止めきれないゾ!ならば認めるゾ!お前達二人でなら二倍以上の力を発揮出来るゾ!このアタシが認めるゾォォォ!」

 

その言葉を最後にミカは体を矢で貫かれて光に包まれた。

 

「私達は………」

「何とか勝てたデス………」

 

「二人共すごいよ!私達が倒せなかったミカちゃんを倒しちゃうなんて!」

 

響さんの声が聞こえた。どうやら私達も皆を守れたみたい。

 

「切ちゃん………私達も」

「二人でなら皆を守れるデス」

 

そう言って私達は疲労から意識を失った。でも出来れはこの勝利は勇さんに見せたかったなあ。

 

~~調sideout~~

 

 




次の更新……不味い!最後の砦が!

翼「何をしている作者。早く予告しろ!」

ひいぃぃ!次回〈風鳴邸への訪問〉です!

更新をお待ちください!

(作者の姿は三枚に卸されていた)


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風鳴邸への訪問

風鳴邸の訪問回です。

それでは本編へどうぞ


ミカちゃんの撃退から少し時系列では遡り、僕とマリアさんと翼さんの三人で風鳴邸への訪問をした。

 

「ここが風鳴邸………。日本政府の重役が住む屋敷か。そして翼さんの実家なんですね。」

 

「私達の〈SONG〉加入を後押ししてくださった恩人の家なのね。私は直接会えていないけど、その人のお陰で私は愛しい勇といられるの。是非ともお会いして直接感謝したいものね。」

 

「お父様………十年振りの帰宅か………なんと声を掛ければ良いのか………」

 

翼さんの表情は未だに暗かったが、緒川さんが門を開けて、既に八紘さん達本家の方々が出迎えてくれた。

 

「慎二よ。報告書は読ませてもらった。本部の方への礼は必ずすると伝えてくれ。」

 

「わかりました。必ず司令に伝えます。」

 

「君がマリア・カデンツァヴナ・イヴだな。活躍は聞いているし、人柄も良いらしいな。流石最年長の装者ということか。」

 

「ありがとうございます。貴方のお陰で私は、この身を捧げたいと思える彼の側にいることが出来ます。貴方の働きなくしては、実現は大幅に遅れていたでしょう。この恩は今回の滞在中に返させていただきます。」

 

「そして君が〈精霊〉と呼ばれた少年の、雪音勇君だね?活躍もさることながら女性との付き合い方に変化があったそうだな?だが君は真摯に向き合い続けているとも聞く。これからの動向が非常に気になるものだ。」

 

そう言って八紘さんは屋敷に戻ろうとした。しかし翼さんには一言もかけてはいない。

 

「お父様!私は!………いえ。十年も連絡を怠り申し訳ありません。」

 

「お前の務めは聞いている。私は私のなすべきことをしてお前もなすべきことをする。それだけのことだ。」

 

その言葉を最後に八紘さんは屋敷へ入って行った。

 

「翼!貴女はあの言われようになんとも思わないの!?貴女達は父娘なのよ!なのにこんなやり取りなんて!」

 

「マリア………良いんだ。勝手をした私の行いの結果………それだけのことなんだ。」

 

やはり翼さんは過去に囚われているな。だけど僕は知っている。八紘さんの不器用な優しさが二人の壁を壊すことを妨げていることを。

 

「緒川さんは二人の事情をご存知ですよね?」

 

「はい。僕も翼さん達のことを支援する人間なので、お二人の関係等は充分に理解しています。」

 

「なら緒川さんに頼みたいことがあります。マリアさんと翼さんを嘗ての翼さんの部屋に案内してもらえますか?もし僕の予想通りなら八紘さんの不器用な愛情の痕跡がある筈ですから。」

 

「………なるほど。勇さんの考えはわかりました。僕も今の状況は本意ではありませんからね。協力しますよ。」

 

「ありがとうございます緒川さん。よろしくお願いします。」

 

そう言って緒川さんは二人を部屋に案内した。さて、僕はこちらの対応からしようかな。

 

「ファラさんがそこにいるんでしょう?翼さんをテストするために。だけど今は間が悪いからさ。少し待ってくれない?」

 

するとファラさんは蜃気楼がとけるように姿を現した。

 

「やはり旦那様を欺くことは不可能でしたか。しかし何故私にお声を?必要があるとは思えませんでしたが?」

 

流石はファラさんだ。状況把握能力と戦闘力・諜報能力まで含めれば彼女程厄介な相手はいないだろうね。

 

「僕もここでやりたいことがあるんだ。だからそれを果たすまで行動を待って欲しいんだ。だってそうしないと翼さんは今、自分を見失っている。そこが解決しない限りイグナイトは使えないからね。それじゃテストにならないでしょう?」

 

「なるほど。旦那様の話通りであれば今の彼女は相手する価値はありませんわ。であれば旦那様の言葉に従いましょう。合図を下さい。その時に私は行動を開始致します。」

 

ファラさんの理解の早さはシャトーでも助かったからね。これで僕もやりたいことができる。

 

「じゃあ僕が要石に左腕を当てた時にお願いね?」

 

「かしこまりました。それでは次の合図をお待ちしています。」

 

そう言ってファラさんは再び景色に溶け込んだ。

 

「ようやく本命と対面かな。」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「なるほど。故に君は一人で私に会いに来たのだな?」

 

僕はあの後一人で八紘さんの部屋に向かい、話し合いの場を作ることに成功した。

 

「ええ。僕はつい先日、幼馴染みの立花響の父親と再会しました。正直に言うと〈大人とは何か〉を考えざるを得ない話し合いになりました。自らの責任から目を背け、他者の力をあてにした言動が目立ちましたから。」

 

「なるほど。確かに父親とは何かを考えられる出来事だな。しかしそれが私にどう関係するというのだね?」

 

やはりそこには気付いてくれたな。この人も不器用なだけで確実に翼さんへの愛情は確かにあるんだ。

 

「貴方の場合はある意味では彼と逆なんですよ。自分の立場上、家族という繋がりがかえって危険に巻き込んでしまうことを恐れていませんか?」

 

淡々と話していた八紘さんの空気がここで変わった。

 

「君は〈風鳴〉の役割を知っているのか?」

 

「貴方もご存知の通り僕は嘗て〈結社〉の序列五位でした。当然表にない情報もそれなりには知っていましたし、僕自身の能力も報告が来ているのではないですか?」

 

「そうだったな。君は全知の力すら備えていたのだったな。であれば今の質問の答えも自ずと知っているのだろう?」

 

「ええ。この国を守る要にて、翼さんは次期後継者だという意味ですね?もちろん知っています。そして貴方が翼さんを巻き込まない為に敢えて突き放していることも。」

 

「なるほど。私の内面までお見通しか。ならば隠す必要はないな。私は現当主の風鳴訃堂の在り方を危険視しているし、嫌悪もしている。願わくは奴の代で終わらせられればとさえ………な。」

 

だろうな。あの妖怪は心さえ人ではない。だからそんな環境から翼さんを守る為の手段がこれしかなかったんだな。

 

「でも今は違いますよ。僕達は既に日本の枷から外れています。それは貴方の努力の証でもあります。だからもう、翼さんを抱きしめてあげることはできないんですか?」

 

「いや。翼はそれを望まんだろうな。私に対して良い感情など持つはずがないだろうな。」

 

その言葉を聞いて僕は思わず彼に拳を振るっていた。手加減はしていたがほぼ不意打ちのようなものだ。

 

「すみません。頭に血がのぼった短絡的な行動をしたことは謝罪します。しかし僕はその言葉を受け止めることはできません。ご存知ですよね?僕の旧姓と九年前の悲劇を。僕は親とぶつかる機会さえありませんでした。なのに貴方は!娘を守る為とはいえ!翼さんと壁を作り!わかり合う努力を怠った!それが僕は許せないんですよ!」

 

言ってしまった。そう後悔する間もなく、マリアさん達が部屋に突撃して来た。

 

「勇!今の音は何なの!?」

 

「お父様!何があったのですか!?」

 

二人の表情は焦りと不安だった。

 

「勇………貴方泣いて………」

 

マリアさんの声に耳を傾けずに僕は横を抜けて……

 

「すみません八紘さん。無礼を働き申し訳ありませんでした。ですがもし、翼さんのことを想っているのならもう一度向き合っていただけませんか?」

 

僕はそう言って部屋を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 




父親と娘(息子)のあり方は人各々と言います。勇君の価値観の根底にあるものの解説は四期で必ず明かします。

次回〈抜剣!イグナイトモジュール④〉

更新をお待ちください


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抜剣!イグナイトモジュール④

最後の砦がくずれます。

詳しくは本編へどうぞ。


八紘さんとの話の後、僕は庭に出てきた。ファラさんとでも世間話でもしようかな。

 

「にしても………うまくいかないものだな。」

 

「そうね。勇は家族の話になると冷静でいられないわ。だけどそれは貴方が家族に対してどれ程真摯に考えているかの裏返しでもあるわよ。」

 

声のする方へ振り返るとマリアさんがいた。どうやらあの後直ぐに僕を追ってきたみたいだね。

 

「ごめんなさい。騒がしくしてしまって。マリアさんは同行を買って出てくださったのに負担をかけてしまって。」

 

「いいえ。この程度なら想定内どころかかなりマシだと思っているわ。貴方の優しさを知る私だから貴方に甘いのかもしれないけどね。さあ勇。縁側に行きましょう?」

 

そこでマリアさんは僕に膝枕をして、二人でどうすれば向き合っていけるかを悩み続けた。すると目元が赤かったが翼さんが吹っ切れた顔で戻って来た。

 

「翼さんが元に戻りましたね。」

 

「ええ。人の努力も虚しくね。」

 

僕達は皮肉を言ったが、翼さんの表情は変わらなかった。

 

「すまないな二人共。お陰で私はお父様に胸の内の想いを伝えることができた。だから今度は私が二人の為に報いる番だな。だがそれとは別に一つ私にも新たな想いが生まれたんだ。」

 

そう言って翼さんは僕の顔を覗き込み、僕にキスをした。マリアさんの目の前で。

 

「………翼。なんの冗談かしら?勇は私の運命の王子様であり、私が全てを捧げると誓った相手よ。貴女もフロンティアの中継は知っているのでしょう?よくもまあ泥棒紛いのことができるわね。〈自動人形〉より先に貴女から叩き潰そうかしら?」

 

「ん?ああすまないな。半年たっても勇の心を掴みきれないヘタレは眼中になかったものでな。幼馴染みという邪魔者と、危険思想のストーカーと、聞き分けのない義姉の教育のことを考えることで忙しくてな。悪いがお前のことは忘れていた。だがお前も婚姻は可能なのだろう?だから側室にしておけ。それが身の程を知るということだ。」

 

あれれー?翼さんの目から光が消えてませんか?そしてこの雰囲気に耐えかねた僕は逃げ出す際に要石に左腕で触ってしまった。

 

「では旦那様との約束に則り私がテストを致しますわ。準備はよろしいですね風鳴翼さん?」

 

そうだった!ファラさんとそんな約束してた!でも結果オーライだからこのまま隠し通そう!

 

「お前はファラと言ったな?嘗てロンドンにて勇の前でかかせた私の恥は!お前を倒すことで精算しよう!」

 

そう言って翼さんはファラさんに斬りかかった。

 

「なるほど。貴女は旦那様に惚れましたね?あの時よりも剣に覚悟が乗りましたわね。良いでしょう。マスターより賜ったこの哲学兵装の力で貴女を屠って差し上げましょう!」

 

すると鍔迫り合いをしていた翼さんの剣が砕けた。なるほどあれが〈剣殺し〉ね。更にラファエルの機動力まで考慮すればかなりの苦戦だな。

 

「剣が砕けた!?だがそれがどうした!私は確かに剣としての生き方を選んだ!それは今でも変わらない!だが剣は剣でも愛した者と共に歩む為の道を開く力だ!お前が剣を殺すならば!私は剣でありながらも人として生きる!故にお前に怯えることはない!

イグナイトモジュール!抜剣」

 

〈ダイン=スレイフ〉

 

翼さんを闇が覆った。

 

 

~~翼side~~

 

イグナイトが私に見せたのは、風鳴邸にいた頃の幼い私とお父様の光景だった。風鳴家の発展の為になすべきことがなんたるかを叩き込まれたあの日々だ。そして私が剣であろうと最初に思った日々でもある。

 

しかし!これはあくまでも過去の出来事だ!故に今の私は恐れていない!今の私は自分をきちんと見てくれる仲間がいる!同じ人物に恋をしたライバルもいる!私の成長を楽しみにしてくれるお父様がいる!

そして私のことを剣としても!一人の女性としても見てくれる勇がいる!だから私は強くありたい!彼を支え・守る為の強さを!

 

〈なんだ。もう既に覚悟を終えているではないか。これでは私の出番はほとんどないな。〉

 

「なんだお前は!?いきなり人の精神に侵入して来るとは!」

 

〈おお!すまないな。皆との約束なのだ。私達の力を真に継承できる存在を私達は探していた。そしてその力は無事に継承されたが、お前達の覚悟に私達は心をうたれたのだ。だから私達はお前達に力を継承するのだ。〉

 

「力の継承だと………?」

 

〈うむ。私からの試練はこれだ!

何故お前が剣として戦い続け、その先に何を見るかだな。〉

 

「なるほど。確かに目的なき力はただの暴力だ。故に私の目的を語ろう。と言ってもさっきわかったばかりだからな。」

 

〈うむ。私は嘗て人ならざる者だった。世界に現れては恐れられ、武器を向けられる。他者との交流など、力と力の交わりしかなかったのだ。「シドー」と出会うまではな。だからお前の目的を私に聞かせて欲しい。〉

 

「私は嘗て、お父様に認めてもらう為に家の剣として生きてきた。だが今は、勇のことを支えて、障害を打ち崩す為の剣であり、一人の女としてありたいと思う。今までの自分を捨てることはできないし、新しい自分でもありたい。だから剣であり、私として勇の側にいたいんだ。」

 

〈なるほどな。故に私が選ばれた訳か。お前の信念と生き様は人ならざる者だった私とよく似ている。だから私もお前に力を贈ろう。〉

 

「貴女の力………?それは一体なんだ?」

 

〈お前も嘗て見ただろう?彼の大剣だ。あれが私の力だ。万物を両断する圧倒的な力。そして玉座だ。〉

 

「勇のあれは貴女の力だというのか!?」

 

〈そうだ。そしてお前に継承する力だ。願わくば、その力を正しく使えることを祈っている。憎しみに囚われず、心を強く持つのだ。〉

 

「ありがとう。だが私は恩人である貴女の名前を知らない。教えて貰えないか?」

 

〈そうだったな。私の名前は「夜刀神 十香」だ。大切な男性である「シドー」からもらった誇りある名前だ。〉

 

「ありがとう十香。私の名前は風鳴 翼だ。十香のお陰で私はまた立ち上がれそうだ。だから私の覚悟をまた見守ってくれたら嬉しい。」

 

〈ああ。私達は翼達の力の中にいる。だからこの力あるところで常に見守っているぞ。〉

 

そうして私は十香から大切な力を受けとった。だから戻った時は勇の目に、私が勝利する瞬間を見届けて貰おう。

 

 

 

~~翼sideout~~




翼に天使を託した精霊 〈夜刀神 十香〉

嘗て人ならざる存在だった少女。人との関わり方を知らず、〈シドー〉に出会うことで運命が大きく変化した。翼の覚悟の仕方が、嘗ての孤独な自分に行き着く気がして声をかけてしまう。

翼「ふむ。勇を手に入れる為の情報を吐くが良い作者。そうすれば断片は残すと約束しよう。」

(既にバラバラな作者は答えられない)

翼「何も語らない作者に代わり私が予告を担当するぞ。

次回は〈翼さんの覚悟〉だ。

それにしても予告で私自身を〈翼さん〉と呼ぶ事に違和感があるな。皆様は更新をお待ちください」

(作者はバラバラなので誰もこの状況を突っ込めない)



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翼さんの覚悟

さあ翼さん!貴女のステージです!

「だけどどうせキャロルが」これ以上は言わせないですよ!

皆様は本編へどうぞ!


イグナイトの使用した翼さんを覆った闇は直ぐに打ち払われて、制御されて新たな力となった。

 

「勇………貴方に見せてあげるわ。私のこれまでとそして私が掴みたいこれからの未来を!」

 

「イグナイトを完全に制御しましたか。流石は旦那様に惚れた方です。しかしあくまでもテストを受ける資格を得ただけですわ。故にここからが本番ですわ!」

 

ファラさんは剣を構えて斬りかかった。原作では自身を〈翼〉と定義することで哲学の牙を打ち崩したが、今の翼さんはそれ以上の何かを感じる。

 

「見せて下さい翼さん!貴女の想いを!」

 

「ええ!そこで見届けてね。」

 

翼さんは〈蒼ノ一閃〉や〈千落ノ涙〉でファラさんに反撃を始めたが、流石は哲学の牙だ。簡単に攻撃を防いでしまったが、翼さんの顔に焦りはなかった。

 

「やはり貴様の哲学に出力は関係ないようだな。だがそんなことは些末な問題だ!」

 

「ええ。いくら出力をあげたところでそれが剣であるなら噛み砕く。それが私の〈剣殺し〉です。貴女に勝ち目はありませんよ?」

 

「否!私は嘗て自らを剣と定義して人々を守る為に生きてきた。それは今でも変わらない!だが!同時に人としても生きると私は誓った!」

 

「それは先程も聞きましたわ!ですがそのようなことで私を越えられると思わないことですね!」

 

そう。今のままなら勝機はないぞ、どうするんだ翼さん?

 

「私にあるのは剣のみに非ず!まずはこの歌を聞いて貰おう!」

 

そう言って翼さんが歌ったのは「恋の桶狭間」だった。

 

「あら?先程の荒々しさがなくなりましたわね?もう諦めたのですか?威勢の割りに残念ですがその歌が貴女の最後の曲ですわ!」

 

そう言って斬りかかったファラさんを翼さんは蹴り飛ばした。

 

「なんと………ここで剣を捨てますか。ですがそのような思いつきで私を倒せるなどと!」

 

「ああ!思わないさ!故に私は羽ばたく!この私!〈翼〉の覚悟を受けて見よ!」

 

そうして翼さんは〈羅刹零ノ型〉を発動した。ここで勝負を決める気なんだね。

 

「なるほど!自らの名前である〈翼〉と定義しましたか。それでこそ旦那様に見いられた者です。しかし私もここでは終わりません!来なさい〈ラファエル〉!」

 

ここでファラさんは天使を解放して〈護る者〉を発現させて受け止めきった。

 

「なるほど!それがお前の扱う〈天使〉か!ならば私も新たな友より託された力を見せてやる!

行くぞ〈サンダルフォン〉!」

 

翼さんに宿った天使はサンダルフォンだった。だけどこの局面じゃあ………

 

「勇………心配はいらないわ。だって私は迷っていないもの。」

 

翼さんは優しい顔をしていた。そこに不安はない。なら僕のかける言葉はこれだ!

 

「僕はどんな結末も見届けます!その美しさを目に焼き付けます!」

 

「ならば私も全力で参りましょう!

ラファエル!〈蒼穹を喰らう者〉!」

 

ファラさんのあの技は!嘗て平行世界の十香さんに手痛い一撃を与えた烈風か!キャロル………なんて領域まで至ったんだ。

 

「そうだ。これでこそ私だ!決めるぞサンダルフォン!

〈最後の剣〉だ!」

 

烈風と斬撃が激突して膨大なエネルギーが周囲に溢れた。これは不味いな。

 

「ラジエル!ザドキエル!ガヴリエル!ハニエル!ラファエル!」

 

僕は直ぐにラジエルを展開してこのエネルギーの流れと規模を観測して、ザドキエルを展開。その内側に流れと反対向きの風を発生させて威力を減衰。ガヴリエルをこの外側で覆って被害拡大の防止。ハニエルでガヴリエルをコピーして更に強化。

 

「周囲への心配は要りません!翼さんは全力で剣を振るって下さい!」

 

「勇!ありがとう!私も気兼ねなく力を放てる!行くぞファラ!」

 

「ええ!私に聞かせて下さい!貴女の歌を!」

 

やがてエネルギーは弱まり、二人は肩で息をしていた。だけど翼さんはここで奇跡を起こした。

 

「エクスドライブ!?それも自力でですか!?なんと………奇跡まで味方に。貴女はどこまで………しかし私も使命があります。最後までやらせて貰いますわ!」

 

そう言って斬りかかったファラさんに翼さんは、

〈蒼ノ一閃・滅破〉を放った。

 

「その攻撃が剣であるなら!」

 

ファラさんは〈剣殺し〉を発動したが防げなかった。

 

「一体………何故。私の定義は発動していた筈。」

 

「それは私がこれまでの全てをあの一撃に乗せたからだ。剣としての生き方。翼としての在り方。後輩を導く姿。歌姫としての私の全てをな。だからお前は防げなかったのだ。」

 

「なるほど。そう言うことでしたか。では旦那様。先にシャトーでお待ちしています。マスターの悲願まであと一つです。」

 

そう言ってファラさんはシャトーに転送された。

 

「キャロルの悲願か。それはきっと彼女の愛の形なんだろうな。」

 

僕の呟きの意味を正しく知っているのはこの場では僕以外いなかった。




ええ……奇跡を自力って……マジですか?

「事実私はやり遂げたぞ?」

奇跡が安すぎる!

(大型の斬撃に呑まれた作者)

翼「次回のタイトルは、
[最後の〈自動人形〉]よ。
皆は楽しみにして欲しいわ。私はやることがあるから、これで失礼するわね。」

(後に切り刻まれて、袋に詰められて燃やされる作者の死体)

また、活動報告に、今週限定でリクエスト回を受け付けています。よろしければ皆様の意見をお願いします。


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最後の自動人形

深淵の竜宮に向かわない勇君達。さてそうなると彼女達の行き先は?

本編へどうぞ。


~~クリス回想~~

 

 

あたし以外の奴等がどんどんイグナイトを制御していく。なのにあたしは未だに踏ん切りがつかねえ。

 

「情けねえなあたしは。響や未来はキャロルの奴と対峙して退けた。マリアは一人でガリィって人形をぶっ飛ばした。後輩共さえも敵を倒した。先輩は勇がついてるとはいえ必ず倒せるだろうな。そう考えると何もしてないのはあたしだけだな。」

 

あたしの中に焦りが生まれる。成果のないあたしに誇れる物が残っていない。勇が側にいないことは以前もあったが、今回はあたし達とキャロルの戦いだ。勇とあたしが結ばれる為には、絶対にアイツをぶっ飛ばさねえといけねえ。だけどあたしにその力が今はない。

 

~~クリス回想終了~~

 

 

 

 

 

 

 

 

~~勇side~~

 

翼さんがファラさんを撃退した後に僕達は本部へ帰投した。今のキャロルは〈ヤンドラ・サルヴァスパ〉を狙わないから、僕達も〈深淵の竜宮〉には向かわない。だけど風鳴邸の戦いの間にミカちゃんが、調ちゃん達と交戦して、二人はイグナイトを使いこなしたらしい。

 

「残るは姉さんだけか。レイアさんは一体どこで勝負を仕掛けるんだろう?」

 

「では旦那様より派手に指示をいただけますか?私はいつでも構いません。確実に任務を果たして見せます。」

 

どうやらレイアさんもステルス機能が搭載されていたようだ。本人のイメージからは意外だったけど。

 

「なら僕が状況をセッティングするからさ。その時にお願い出来る?合言葉は〈最後の自動人形〉ってことでどうかな?」

 

「旦那様の意思は、我々にとっては最優先で尊重されるものとなります。なので派手にその言葉に従います。」

 

「ありがとうレイアさん。派手な活躍を期待しているよ?」

 

「仰せのままに。旦那様。」

 

そう言ってレイアさんは再び景色に溶け込んだ。今の彼女は地味な仕事も黙ってこなしてくれるから僕も助かるよ。

 

 

~~翌朝~~

 

「ではこれより再編したチームを発表する」

 

司令室に集められた僕達(あと透明化したレイアさん)は、

 

○僕・響・未来・姉さんのチーム。

 

○マリアさん・翼さんのペア。

 

○調ちゃん・切歌ちゃんのペア

 

に分けられた。チーム分けの進言をしたのは僕だけど。すると姉さんの体が震えていた。

 

「オッサン!これはどういう意味だよ!あたしがお荷物だって言いてえのかよ!」

 

姉さんの悲痛な叫びが本部に木霊した。

 

「今のクリスの精神状態ではイグナイトは制御できない。故に私が訓練の組み合わせを編成した。異論があるか?クリス。」

 

フィーネさんの言葉には怒気が込もっていた。

 

「~~~くそっ!」

 

姉さんは司令室を飛び出して行った。

 

「待ってよクリスちゃん!」

 

「義姉さん!一人だと危ない!」

 

響と未来もあわてて姉さんを追いかけた。僕も皆を追いかけるように部屋を出てレイアさんと密談した。

 

「決めたよレイアさん。響と未来を僕達全員が揃った時に襲撃して欲しい。今の姉さんは責任感で動いている。だから自分で全てを背負い込もうとするからさ。その時に僕が姉さんを焚き付ける。」

 

「仰せのままに。派手な花火をあげましょう。」

 

そう言って僕もレイアさんと別れた。そしてしばらく三人を探していると叫び声が聞こえた。

 

「なんであたしが守られなきゃいけねえんだよ!あたしはお前達の姉貴分なんだよ!あたしが守らなきゃいけねえんだよ!」

 

「何でも一人で抱え込まないでよクリスちゃん!クリスちゃんの無茶を私達は黙って見ていることなんてできないよ!私達だってクリスちゃんを支えたいの!」

 

「響の言う通りです。今の義姉さんは義姉さんらしくありません。まるで自暴自棄です。そんな人を見捨てられる程私達は薄情なつもりはありません。例えそれが同じ男性に恋をした間柄でも関係ありません。私達はそんな簡単な関係じゃあありませんから!」

 

そう言って響と未来は姉さんをビンタして、姉さんは殴り返した。

 

「三人とも!このまま仲間割れを続けてたら〈最後の自動人形〉であるレイアさんに勝つなんて無理だよ!冷静になりなよ!」

 

僕の合言葉を聞いたレイアさんが、このタイミングで襲撃してきた。

 

「仲間割れか………地味に好都合だ。邪魔者を排除してテストを終わらせるか。そしてマスターに報告するとしよう。最後の一人は見込み違いだったとな。」

 

レイアさんの目は失望といったモノになっていた。そしてアルカ・ノイズが召喚された。

 

「未来!クリスちゃんを守らなきゃ!」

「響!背中は任せるから義姉さんを守り通すよ!」

 

二人はそう言ってノイズを殲滅してレイアさんに戦いを挑んだ。だけどレイアさんに宿った力〈ザフキエル〉は時間の天使だ。そして本人は接近戦ではトンファーを愛用して、遠距離はコインの射出と、天使がなくとも能力が高い。二人は徐々に追い詰められてきた。

 

「未来………この人………接近戦も強い………」

「響………弱音を吐いたらダメ………義姉さんを守らなきゃ………」

 

二人は慣れない防衛戦に苦戦を強いられ、ギアが纏えない姉さんはどんどん絶望していた。

 

「やめてくれよ………あたしの守りたいものを傷つけないでくれよ………もうあたしから奪わないでくれよ………」

 

響達得意の接近戦はトンファーというリーチから思うように決定打が当てられず、ついには巨大化したコインに挟まれて二人は倒れた。

 

「あぁ…………響………未来………あたしの所為で…………」

 

姉さんの声は力がなかった。正直僕だって見ていられない。だから声をかけることにした。

 

「姉さん。なんで二人が姉さんを守っていたかわかる?」

 

「あたしを守る理由……?足手まといだからじゃあねえのかよ………。」

 

「いいや違うね。二人共姉さんが大好きなんだよ。大好きな姉さんを守りたいから代わりにレイアさんと戦っていた。イグナイトを使わないのは、暴走した時に姉さんを巻き込まない為だよ。僕が間に合わなかったら、本当に助けられなくなるからね。」

 

「未来はとにかく、響までそんなことを………なのにあたしは………」

 

「姉さんはどうしたいの?」

 

「どう………か。あたしは守りたい。もう大切なモノを失わない為に。今回は勇との関係が変わることが怖かった。何処か遠くに行ってしまう気がしてた。だから皆は勇を離さない為に努力していたし、それが眩しかった。」

 

「なら………姉さんもそうすれば良いんじゃあないかな?」

 

「だけどあたしはアイツにボロ負けしたし!アイツが怖くて仕方ねえ。本当にどうかしてしまったんだ!」

 

僕は姉さんの右頬をひっぱたいた。

 

「あぅ!勇!お前何しやがる!」

 

「姉さんはさ。三度目の響との戦闘のことを覚えてる?」

 

「ああ。響に初めてイチイバルを使った戦闘だったな。」

 

「実はあの時僕も居合わせてたんだ。姉さんの雰囲気に怯えて隠れていたけどね。」

 

「それがどうしたんだよ!ていうかいたなら出て来いよ!そしたら全員揃ったじゃあねえか!!」

 

「あはは………それはごめん。だけど姉さん。あの時の気持ちを思い出して欲しい。僕と再会したい一心だったあの時の強い気持ちがあれば、姉さんは呪いすら制御出来る。僕達はそれを知っているから。でももしそれでも立てないなら、僕がキャロルを説得するよ。彼女が最後の自動人形だけど何とかするよ。それが僕のケジメだから。」

 

「なに一人で話進めてんだよ………。あたしが立てないって決めつけやがって。生意気なんだよ弟の癖に。」

 

口は悪いが姉さんの目に力が戻った。後は呪いに打ち勝つだけだな。

 

「皆すまねえ!!!!あたしが迷ってた!!!!だがあたしはもう迷わねえ!!!!必ず立ち上がる!!!!だから見てろ!!あたしの姿を!!!!」

 

そう言って姉さんはイチイバルを纏ってレイアさんの前に立った。




〈クリス は 立ち上がった!〉

やったね!これで呪われた旋律が揃うよ!

キャ 「本当に必要な物だったか?」

ん???まさか?えっキャロルちゃん嘘だよね?

キャ 「答えはいずれ示される!
次回は〈抜剣!イグナイトモジュール⑤〉だ!
読者の皆様は更新を楽しみにして欲しい!」

ちょっとキャロルちゃんそれ僕のセリフ!

キャ「少し黙るが良い!作者ぁ!」

(作者は分解されてしまった!)


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抜剣!イグナイトモジュール⑤

最後のモジュール回です!

皆様は是非クリスちゃんの覚悟を見届けてください!

それでは本編へどうぞ!


ギアを纏った姉さんはレイアさんに食ってかかった。

 

「よくもあたしの幼馴染み達を傷つけやがって!てめえは絶対にあたしが倒す!そしててめえの主に泥棒はてめえだと教えてやる!」

 

「ほう……。先程までの守られるだけの弱者の目から一転して良い顔つきになった。それでこそ私が派手に叩き潰すのに相応しい!」

 

レイアさんは二つの黒い拳銃を持ち出して構えた。あの構えは〈ガン=カタ〉か。確かに様になっているな。二人を退けたぐらい接近戦も強いし、もともとあの人は遠距離戦が滅法強い。原作では指で弾くコインが銃弾以上の速度になる。銃を奪っても姉さんの苦戦は免れないだろうな。

 

「持って行けよ!挨拶代わりだ!」

 

姉さんが放ったのは〈MEGA DEATH QUARTET〉だった。どうやら全力で戦闘出来る精神状態みたいだ。

 

「あたしは九年前にバルベルテで両親を理不尽に失って勇とはぐれることになった!」

 

「その報告はマスターより派手に聞いている。そして旦那様はその五年半後にマスターと運命の出会いをしたこともな。だからどうした?」

 

「あたしにとっても心の支えはそこにいる響と未来。そして愛しい勇なんだよ!なのにてめえ等ときたらあたしから勇を奪うだと!そんなことをこのあたしが認める訳ねえだろうが!仮に結ばれるにしても義姉に対する態度がなってねえ義妹なんてこちとら願い下げなんだよ!更にその上であたしの幼馴染みを傷つけた!てめえにも!キャロルにも!あたしの意思を見せてやるよ!

イグナイトモジュール!!抜剣!!!」

 

〈ダイン=スレイフ〉

 

 

 

 

~~クリスside~~

 

イグナイトがあたしに見せたのは九年前のバルベルテだ。パパとママを失い、勇と離れ離れになったあの忌々しい場面だ。だけどこんなことにつまづく気はもうあたしには無い!闇だろうが!呪いだろうが何でも乗り越える!そしてあたしはこの想いを果たす!

 

〈なるほどね。貴女も家族に恋をした乙女だったのね。こんにちは今代の候補者さん。〉

 

「ああ?誰だてめえは?今のあたしは忙しいんだよ。用がねえなら他を当たりな!」

 

〈あら?随分な嫌われようね。私の名前は「琴里」。嘗て義兄に恋した義妹と言っておきましょうか。そして貴女に力を託す為の試練を与える者よ。雪音クリスさん。〉

 

「あたしの名前を知っているだと!?そしてなんだよ!試練って!」

 

〈貴女も見たことはあるでしょう?彼の傷を癒す炎。そして圧倒的なまでの砲撃の力を。〉

 

「おいおい。冗談はよしてくれよ。てめえの能力と勇の力が同じな訳ねえだろう?」

 

本当に冗談じゃない。勇の力がこんな訳わからねえ奴と同じなはずが無い!

 

〈そうね。言い方を変えるわ。私達は前任者なのよ。彼がこの世界で力を覚醒させたことで、私達の力は彼に継承されたわ。でも彼にだって力を支える者は必要でしょう?貴女はその力の一つを継承出来る可能性を得た。これなら納得出来るかしら?〉

 

「なんかとんでもねえスケールの話だな。さしずめ精霊って言いてえのか?勇はいつも力を振るう時は天使の名前を呟いていた。もしてめえの話が本当なら、てめえの力はカマエルってことになるぜ?」

 

〈………何よ。疑り深い癖に察しが良すぎるわよ。私が説明すること全部知ってるじゃない。〉

 

「そりゃあ愛しい弟の力だ。お姉ちゃんは気になって仕方ねえってもんだろう?」

 

〈なんだかいろいろ腑に落ちないけどまあ良いわ。貴女の試練は私の問いに本心で答えることよ。〉

 

「なんだよ………。試練って割に優しいじゃねえか。なら!さっさと始めようぜ!」

 

〈本当に話が早いわね。でも質問をするわ。

貴女は想い人の一番になれないかもしれない。それがわかった時にどうするつもり?〉

 

「想像するだけで腸が煮えくりかえりそうだが、あたしは諦めねえ。一番に見て貰う為の努力を続けていく。だけど弟ってのは姉のもんだ。もし勇が恋人を作ることになってあたしじゃねえなら」

 

そこであたしは敢えて言葉を切った。そしてこう続けた。

 

「恋人以上に愛される姉を目指す。それこそ恋人が可哀想になるほどにな。」

 

〈ふーん。面白い答えね。…………………………………………というより、私の答えの行き着く先ということみたいね。〉

 

「何だ?えらく歯切れが悪い答えか?」

 

〈いいえ。とても素晴らしい答えよ。それこそ嘗ての私よりも……………ね。だから貴女にはカマエルの力を継承するわ。その力で弟を支えなさい。〉

 

「へっ!そんなちょせいこと言われなくてもあたしはやるよ!あたし様の愛しい弟だからな!」

 

〈それと彼に伝言を頼めるかしら?〉

 

「ああ!別に良いぜ!今のあたしの気分は最高だからよ!」

 

〈ありがとうクリス。「奴らは本物よ。それも全盛期の力を備えた」ってね。意味は彼が理解してくれるわ。二亜の奴がもっと早く気付けば苦労しなかったのに………〉

 

「わかった!必ず勇に伝えるさ!ありがとうよ琴里!」

 

継承された力の強さが体に伝わる。だから必ず力を使いこなす!そして勇と添い遂げる!だからレイア!まずはてめえからぶっ飛ばす!




クリスに力を託した精霊 〈五河 琴里〉

彼の世界では義兄に恋をした妹だったが、その恋は叶わなかった。そしてクリスもその家族(義弟)への恋心が叶わないことを悟っていた。(勇君の中から見ていたので)
試練としてその未来と覚悟を問うような形にした。
そして次の敵とならる〈魔術師〉が、本物であることをクリスに伝言させた。これにより四期の対策を黒幕達も考えることになる。

「作者馬鹿じゃないの?〈エレン〉達をその世界に呼ぶなんて勝算を捨てたの?」

あの……琴里さん?だってこうしないと四期が……

「後先考えずに修行時代を作ったツケか!貴方執筆当時無計画だったでしょう!」

だって師匠達は救済したくて……

「もう言い訳は聞かないわ!苦労する人物に代わり私自ら制裁をくだすわ!来なさいカマエル!〈砲〉よ!」

えっ!ちょっと完全礼装は聞いてな………(ここからは作者が灰になった為聞こえない)

琴「さて読者の皆様ごめんなさい。馬鹿な作者に代わり私が次回予告を担当するわ。

次回は〈姉の意地〉よ。クリスの覚悟を是非見届けてね。そして更新をお待ちください。

さて、残りの処理を始めようかしら」

(この灰になった作者は袋詰めされてゴミ箱に捨てられていました)


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姉の意地

クリスちゃんは覚悟を決め、意地を見せることにしました。さあ!レイアさんとの結局はいかに!?

本編へどうぞ!


姉さんはすぐにイグナイトの闇をコントロールして戻って来た。

 

「よう。待たせたな。そんじゃあ第二ラウンドと行きたいが、勇!お前への伝言を琴里から預かった!

〈奴等は全盛期の本物〉だとよ!お前なら意味がわかるとも言っていた!確かに伝えたからな!」

 

「本当に琴里さんからの伝言だったんだね!わかった!ありがとう姉さん!」

 

「おう!後はあたしの活躍を見てな!惚れても良いぜ!」

 

姉さんはそう言って戦闘を再開した。それにしても、

〈全盛期の本物〉か。多分それはガリィが戦った三人のことなんだろうな。なら仕方ない。四期の敵は間違いなく〈あの三人〉と〈アダム〉と〈ティキ〉が相手ってことか。響には悪いけど、奴等は手を繋ぐことはない。キャロルと同じく目的に手段を選ばず、妥協もしないし、話し合いには応じないだろうからね。本気で倒しにかからないと不味いな。

 

「だけど今考える問題でもないか。」

 

僕の呟きを他所に戦闘は激しさを増していた。

 

「そういえばてめえはガン=カタの使い手だったな!よくもあたしの幼馴染みで後輩の二人をボコボコにしてくれたな!あたしの技も喰らっていけや!」

 

〈RED HOT BLAZE!〉

 

あたしは形成したライフルで接近戦を行った。これはあたしがオッサンから習った技術であると同時に、響達をちゃんと守れるように訓練した技でもある。

 

「だけど今!響達はてめえに倒された!あたし様の怒りはこんなもんじゃあねえぞぉ!」

 

「クッ!地味に窮地!拳銃をリロードする隙がないか!やはり貴様は旦那様の姉だ!そんな貴様と手合わせ出来る私は!派手に高鳴るぞ!雪音クリス!」

 

奴の二丁拳銃から出る弾の速度は、今のあたしなら見切れるし、殴打も軌道がわかる!

 

「右!左振り下ろし!突き上げ!右の蹴り!バックステップ!左殴打!右フック!全部見えてるぞ!」

 

「クソッ!こちらの動きが派手に見切られてる!?貴様一体どこまで至るつもりだ!」

 

「そんなもん!てめえの主をボコボコにするまでだ!あたし達の勇への想いを魅せてやるよ!!」

 

イグナイトを制御した、迷いのない表情からも姉さんの動きが良くなるのがわかる。そしてこの二人が意識を取り戻したことも。

 

「未来………動ける?」

「イグナイトは無理だけど天使くらいなら………。」

 

どうやら姉さんを援護するつもりらしいね。僕は介入しないけど、他の人にさせるつもりもない。只姉さんに全力を出して欲しいから。

 

「二人とも目が覚めたんだ。だけどもう少し姉さんを見守りなよ?今とっても良い顔つきだからさ。」

 

「うん。クリスちゃんが楽しそうにしてる。あんな顔久しぶりだよ!」

「癪ですけど義姉さんが良い顔してますね。あーあ。勇君に良いとこ見せたかったなぁ。」

 

そう未来が呟くと一つミサイルがこっちに降って来た。

 

「あわわわわわ!?なんで!?危ないよクリスちゃん!」

 

絶対未来の呟きに姉さんが反応した結果だな。

 

「チッ!邪魔者を仕留め損ねた………。」

 

「地味にライバルを蹴落とそうとしたな………どこまでもマスターの義姉は強欲か。」

 

「おっと!そうだったな!これで決めてやるよ!」

 

〈MEGA DEATH FUGA!〉

 

「この規模のミサイルは派手に躱せない!」

 

そう言ってレイアさんにミサイルが直撃した。しかし影が現れ、戦場を包んだ。

 

「チッ!何だこの禍々しさは!」

 

「レイアさんの力は〈ザフキエル〉か!どうやらまだ戦いは終わってないよ姉さん!」

 

「ザフ……キエ……ル……〈四の弾〉……」

 

するとレイアさんの傷が消えて万全の状態まで復元された。

 

「ふむ。良い攻撃だった。しかし私も天使を所持してる。故にここからは天使も使うぞ!」

 

するとレイアさんは〈八の弾〉で分身を作り出した。まさかここまでとはね。

 

「未来!クリスちゃんを援護するよ!ガヴリエル!〈行進曲〉!」

「これは貸しですよ義姉さん?メタトロン!〈日輪〉!」

 

二人の援護でレイアさんの分身が何体かは消えた。そして姉さんは絶唱を歌ってた。

 

「クリスちゃん!そんな無茶したら!」

 

「安心して見てな響!」

 

そう言って姉さんは絶唱の一撃を付近にぶっ放した。

 

「流石に不味い!ラファエル!ザドキエル!ハニエル!ガヴリエル!」

 

僕は慌てて防御用の天使を展開して被害を抑えた。そして煙が晴れると肩で息をしているレイアさんと、血だらけの姉さんがいた。そしてカマエルの回復が始まった。

 

「はぁっ!はぁっ!どうやら相当こたえたらしいな………だけどあたしは油断しねぇ!カマエル!〈砲〉!」

 

その追撃はレイアさんを直撃した。

 

「派手に………見事………。」

 

そう言ってレイアさんはシャトーに転送された。

 

「勝ったの………か………?」

 

「うん。姉さんの勝ちだよ。」

 

僕はそう言って倒れる姉さんを背負った。

 

「馬鹿やろう………これじゃあたしが敗者じゃねえか……」

 

悪態をつく姉さんを僕達幼馴染みは、皆揃って本部へ帰投した。




全ての準備装者は覚醒を終えた。次の戦いはもはや避けられる物ではない。

両者の譲れない想いを賭けて全力の戦闘となるだろう。

しかし今だからこそ語る者達もいる。

次回〈自動人形達の語り合い〉

更新をお待ちください。


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自動人形達の語り合い

さて、テストを終えた自動人形達が語り合うこととは?

本編へどうぞ。


テストを終えた自動人形一同が何かを話しあっていた。

 

「これにて装者達のテストは無事終了致しましたわね。皆はどう評価したの?」

 

「アタシは楽しかったゾ!あの二人は良いコンビなんだゾ!お互いを良く信頼して、足りない物を理解しているゾ!」

 

どうやら装者の実力テストの結果を語りあっているようだ。そして全員が満足そうな顔をしている。それはつまり、全員合格ということなのだろう。

 

「アタシはカマエルの力を使わされたゾ!本当はマスターからもらった力だけで戦いたかったけど、旦那様の力は昂るゾ!使えば使う程もっと戦いたくなるんだゾ!」

 

「ええ。カマエルの力には戦闘衝動を増幅させる効果があるとマスターより聞いているわ。その衝動は前任者すら手に余っていたらしいわ。だからその点を見ればミカはカマエルの力を制御しているし、奥義である〈砲〉まで使った。それで尚退けられた以上は、誰が見ても文句なしね。」

 

どうやらザババコンビは文句無しの合格らしい。

 

「あーあ。ミカとレイアは良いよな。再生能力があるから戦いを楽しみ続けられてさ。あたしとファラは一度ヤバいのを食らったら戦闘続行不可能だからなー。完勝されたら清々しい程あっさり終わるからさー。」

 

「それは地味に仕方ない。マスターは我々の身を案じている。故にその機能に文句をつけることはできんし、我々が求められている証でもある。旦那様も同じことを言われるだろうな。」

 

「同感だゾ!」

「そうですわね。旦那様なら言われるでしょうね。」

 

「まああたしも同感だけどさ。もっとマスターや旦那様の喜ぶ顔が見たいのよね。人ならざるあたし達だけど、マスターや旦那様が大好きなんだからさ。」

 

「あら?ガリィが素直に気持ちを言うのは珍しいわね。当然私も同じ気持ちなんだけど、もっと尽くしたい・求められたいと思うことは、正に人間と同じなのでしょうね。それが例えマスターの深層心理に基づいたものであるとしても、私達の誇りよね。」

 

どうやら彼女達は主の他にも敬愛する人物がいるようだが、全員が同じ人物に同じ想いを寄せているらしい。

 

「そういえば剣ちゃんが、成長して旦那様に迫っていたわね。父親とのわだかまりが溶けたそうよ。旦那様が本心からぶつかったのでしょうね。故に迷いがなかったわ。だから私もラファエルを使い、

〈蒼穹を喰らう者〉を発動して、更に〈剣を殺す者〉を発動させたにも関わらす、一撃で負けたわ。」

 

「流石旦那様だ。ファラの二つの武器を使って尚乗り越えられる程の支えなのだ。マスターの愛がどれ程偉大なものかを改めて認識するな。」

 

風鳴翼も合格らしい。

 

「そんなお二人に仕えることができるあたし達は幸せよね。」

 

「ああ。そして旦那様の姉上も立派に成られた。相手をした私でさえ敬意を払える程のな。ザフキエルを使い二度立ち上がったが、彼女の目に不安はなかった。ただ自分の守りたいものを守りぬく。それだけのことのはずなのにな。」

 

雪音クリスも文句無しのようだ。

 

「マリアの方も骨があったな。あたしが戦ったのは二度だったけど、一度目は敵わないとわかって尚あたしの前に立った。ギアを失う覚悟をしてね。案の定あたしには敵わなかったけど、守りたい者を守りぬいたわ。だからあたしはマリアがイグナイトを使いこなせる確信すら出来たのよ。そしてあたしを越えると確信もしていたけど、ザフキエルの闇に呑まれなかったわ。あの力は禁忌の力でもあるけど、マリアの目に恐れはなかった。

旦那様の前で闇に墜ちること・自分の弱さを受け入れることが一番できていたわね。」

 

ガリィは満足した顔で語っていた。

 

「故に始まるわね。真に旦那様に相応しい者を決める戦いが。」

 

「アタシ達の役目は、マスターが全力を出す為に持って行くシャトーを守り抜くことだゾ!」

 

「そして今回も旦那様が派手に結界を構築してくださるそうだ。」

 

「あたし達はシャトーを守りつつ見届けるわ。どんな結果でもね。」

 

彼女達は見届ける。どんなことがおきようとも。彼女達とて一人の女性としての意地とプライドがあるのだから。




どんな結末が待つかは誰もわからない……しかし彼女達は譲れないモノの為に戦うだろう……

次回〈黒幕達の密談②〉

更新をお待ちください


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黒幕達の密談②

決戦前に黒幕達が語り合うこととは?

本編へどうぞ。


~~レイア撃退後~~

 

レイアさんが姉さんに撃退された三日後、僕は再びエルの研究室に足を運んだ。

 

「あ!勇さんいらっしゃいませ!すぐにお茶を準備します!」

 

「りょーかい。頼むよエル。」

 

「はい!任せて下さい!」

 

エルがお茶を準備してる間に、僕は前回同様にこの部屋からの一切の情報を遮断した。

 

「はい。勇さんどうぞ。」

 

「ありがとうエル。そしてキャロル?もう大丈夫だよ?」

 

〈待ちくたびれた!やっと勇の声が聞ける!〉

 

大はしゃぎだった。どうやら相当我慢していたようだ。

 

〈ああ。それと勇?ファラからの報告では、また女を誑かしたらしいな。しかも風鳴翼だと?最早装者全員と関係を持ったな?浮気が本気に変わったら世界を分解するぞ?〉

 

「そういえばキャロル?〈ヤンドラ・サルヴァスパ〉は探さないのですか?」

 

エルの質問には僕が答えた。

 

「いやいらないだろ。キャロルにはハニエルがあるから、対象の情報さえあれば複製出来るでしょう?」

 

〈勇の言う通り今のオレはハニエルがあるからな。わざわざ面倒くさいところには行かんぞ。〉

 

よしよし。このまま話を逸らして………

 

〈さて。話を戻そう。とうとう勇の魅力を装者全員が知ってしまった。故に全員一度は吊るさないと気が済まないし、今回はシャトーも持って行く。勇にオレの歌を届けねばならんからな!〉

 

「でもキャロル?シャトーの防衛は大丈夫ですか?いくら東京上空とはいえ、あの防衛システムだけでは………。」

 

「うーん。多分エルの心配は起こらないと思うよ?だってキャロルはシャトーのことを唯の音響設備くらいにしか使わないつもりでしょう?実際にファラさん達を含む呪われた譜面は取り除いているんじゃないの?」

 

「ええ!?キャロル!?まさかファラ達の譜面取ったの?」

 

〈ああ。別に使わんだろう?〉

 

「僕が〈ダイン=スレイフ〉を運んだ意味は一体……」

 

〈唯の強化装置だ。〉

「唯のブースターだね。」

 

まあ使わないなら、そうなるよね?

 

「さて、天使の話をしようか。まずは翼さんが手にしたのは〈サンダルフォン〉だね。嘗ての翼さんの在り方なら納得の天使だね。」

 

「そうですね。名前の通りラファエルの可能性もあったのですが………」

 

〈確かにラファエルの候補者が他にいなければ奴が使っただろうな。それほどまでに天使と相性は良いだろうな。〉

 

「まあ、切歌ちゃん達の戦いが先だったからね。そう言う意味では、どちらの天使かわからなかっただろうね。」

 

〈そういえばミカの相手がザババの二人だったな。〉

 

「はい!切歌さんと調さんがミカの相手でした。イグナイトを使いこなした二人は、自力でバーニングレインのミカを両断していました。」

 

おいおい。てことは、原作のあの技を使ったんだ。だけど続きがありそうだね。

 

「そしてミカはカマエルの力を使って戦闘続行したのですが、お二人がラファエルの力を覚醒させたので、その力でミカを撃破しました。力を継承した直後とは思えない程の最高の使い方かと。」

 

〈ああ。その報告はミカから聞いている。勇とオレ以外にミカを満足させることが出来る奴が増えたと、ミカが喜んでいたからな。〉

 

「それ昔のキャロルと互角って意味だよね………」

 

〈ああ。勇と会う前のダヴルダヴラと想い出を力にしていた頃のオレと互角だな。〉

 

「キャロル!ミカの性能をそこまであげていたんですか!どれだけ勇さんを独占したいんですか!流石にその愛は重いです!」

 

エルがまさかの理由で噛みついた。

 

「あー。エル?大丈夫だから。それも含めて僕はキャロルを愛してるから。だってそれだけキャロルに想われてる僕は、あの時キャロルとケンカできて良かったと思っているから。」

 

「勇さん。なんて寛容なんですか………。だって僕がキャロルを焚き付けたんですよ?」

 

「大丈夫。僕がいつか答えを出すことだったから。決心の後押しをしてくれたのもそう言う意味では、エルなんだから。気にしなくて良いよ。だって僕の初恋はキャロルだから。」

 

〈やはり勇は最高だ!勇のない世界など色のないモノクロの世界だ!ああ!それほどまでに勇に想われたオレは幸せだ!〉

 

「キャロルもありがとうね。そこまで想われてる僕は幸せだよ。」

 

「そういえばクリスさんはカマエルを覚醒させましたね。何故彼女は選ばれたんですか?」

 

そういえばその話の途中だったな。

 

「僕のもといた世界では、あの人は義兄に恋をしてたんだよ。姉さんは義弟に恋をしたけど、ある意味同じだからね。そして姉さんは覚悟を決めたけど力の覚醒はまだだった。だから琴里さんがカマエルを継承したんだと思うよ。」

 

「なるほど。ありがとうございます!おかげで継承者の法則も見えそうです!」

 

〈確かに継承者の法則はありそうだな。前任者の選定基準もまちまちだったしな。〉

 

「うーん。そこより今は、ガリィを退けた連中の報告をして良いかな?」

 

〈奴等の報告だと?勇!何かわかったのか!〉

 

「うん。琴里さんからの伝言でね。彼女達は完全を目指す人達だった。目的の為に妥協しないタイプのね。そして実力は全盛期らしいから、アダムの神下ろしに間違いなく協力するね。それだけの危険人物だよ。」

 

〈勇にそこまで言わせる奴等か。オレも前線に出るべきか?〉

 

「それは助かる。多分三対一なら僕でも苦戦は免れないから。一人ずつ分断しないと、響達ならまず勝てない。」

 

〈わかった。この戦いが終わったら勇と合流してそっちで暮らす。〉

 

「僕もお手伝いします!何でも言って下さい!」

 

「ありがとう二人とも。よろしく頼むよ。」

 

こうして僕達の密談は終了した。次への課題に取り組む為に。




〈ダイン=スレイフ〉実はどうでも良かった案件………

エルの苦労は一体……(演技のリアリティ追及の為)

次回〈果たすべき責任〉

更新をお待ちください


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果たすべき責任

最終決戦前の、最後の準備です。

本編へどうぞ


姉さん達は全員がイグナイトモジュールを使いこなせるようになり、それぞれが天使を覚醒させた。

そして響達が復帰したその日が運命の決戦であることは、その場の全員が理解していた。そんな時に端末にあるメールが届いた。

 

〈明日の13時にあのファミレスで待ってる。〉

 

差出人は洸さんだった。そしてそのメールを響では、なく僕に送ったということは覚悟が決まったということだろう。だから僕達もその覚悟に応えよう。その為に僕はキャロルに電話を入れた。

 

「キャロル。決戦前の最後の頼みを聞いてくれるかい?」

 

〈ああ。日時の指定だな。言ってくれ。〉

 

「明後日の正午で頼むよ。そうすれば装者が最高の状態で決戦に臨むはずだから。」

 

〈わかった。オレの準備も整った。では明後日の正午にエルフナインを通じて本部に知らせよう。〉

 

そう言ってキャロルは通話を切った。後は明日全てが決まるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

~~翌日正午~~

 

「勇君のところにお父さんからの連絡が来たんだね。」

 

「おじさんが変わったとあたしは信じたいな。」

 

「洸さんがどういう決断をしたのか、私達はまだ知らないけど、前へ進めることを願っているよ。」

 

メンバーはあの時と同じく幼馴染み全員で臨んだ。

そして約束の店に僕達が入ると、既に洸さんが座っていた。しかしテーブルの上には、あの時とは違い料理はなかった。

 

「お久しぶりです。顔つきが変わりましたか?」

 

「ああ。俺は目が覚めたよ。響を頼るつもりどころか、あわよくば丸投げするつもりだった。最初は男の意地とプライドがあったけど、雪音さんの話や、勇君のお父さんの話を聞いて、自分のプライドとやらなきゃいけないことの差をはっきりと感じたよ。だから今回は勇君に連絡したんだ。」

 

「お父さん………変わったね。」

 

「ああ。君達に誇れる姿でありたいからな。一度責任から逃げた以上は、ケジメをつけなきゃいけない。だから俺はお母さん達に三日前に謝って来たんだ。」

 

「なっ!おじさんが謝ったのか!?だけどその表情は………」

 

僕も意外だった。向き合って欲しいとは言ったし、僕達のパパとママの話はしたけど、それでも尚謝れるとは思っていなかった。

 

「ああ。クリスちゃんの言う通りめちゃくちゃ怒られたし、殴られた。だけど響達の痛みに比べたら、

〈へいき、へっちゃら〉だよ。響に教えた魔法の言葉だけど、今回俺に勇気をくれたのは君達だ。本当にありがとう。」

 

洸さんはそう言って頭を下げた。

 

「響はどうしたい?洸さんはケジメをつけた。それも自分のプライドを曲げてでもね。だから響の答えを僕達は知りたい。もちろんどんな答えでも否定はしない。響の本心であることは変わりないからね。」

 

僕は響に覚悟があるか確認したけど、心配はしていなかったし、未来や姉さんも僕と同じ同じ顔つきだった。

 

「私は、お父さんが最初の一歩を踏み出せたらまたお母さん達と家族全員で暮らしたいと思っていた。だけど今は少し違うんだ。」

 

響の言葉は途切れたけど、表情は悪くなかった。そしてこう言葉が続いた。

 

「私は勇君達と一緒に過ごしたい。私の初恋であり、今一番大切な太陽を賭けた女の戦いの最中だから。だけどお父さんの手伝いも全力でしたい!私達の新しい関係の始まりだから!」

 

響の言葉には力強さがあった。

 

「響………へっ!言うじゃねえか!なら響もあたしのライバルだ。勇のハートを掴むのは響でも未来でもアイツ等でもねぇ!このあたし様だ!」

 

「おやおや義姉さんは私との実力や貸しのことを忘れてませんか?勇君の隣は私の指定席だよ?」

 

ここで正妻戦争が始まって胃が痛かったが、洸さんが話を戻した。

 

「皆がこれだけ好きな勇君だからこそ響も惹かれたんだな。そしてそんな君に俺は大切なことを思い出させてもらった。ありがとう。」

 

洸さんはそう言って会計を済ませて退店して行った。

 

「お父さん………頑張って。

そして私こそありがとう………大切なモノを思い出せたんだから………私はもう絶対に諦めない!!!」

 

響の目が今までで一番力強さとなっていた。

 

「響が立ち直ったか………。あーあ。強力なライバルになっていったなぁ………。」

 

「あのままうなだれてたらあたしの優位は揺るがなかっただろうがなぁ。だけど今の響はあたしが排除しねえといけない恋敵だ。幼馴染みだからって遠慮はしねえ。」

 

「ん?勇君の幼馴染みで一番の婚約者はクリスちゃんでもマリアさんでも翼さんでも調ちゃんでも切歌ちゃんでも未来でもキャロルちゃんでもなく私だよ?だって私が(原作)主人公だもん!私が負けるはずないじゃん!」

 

「「それが一番納得出来ない(ねえ)!!」」

 

なんか響がメタいことを言ってた。

 

 




なんでだろう……響にポンコツキャラをさせると書きやすい気がする……

響「口は災いの元だよ作者ぁ!今すぐ死んで!もしくは私がメインヒロインに書き直せ!」

無理言うな!既に100話越えなんだから無理だろ!

「じゃあ殺してヤル!ゼッタイニユルサナイ!」

久しぶりに暴走ですか!?イグナイトいらないですか!?

(作者は 撲殺 されて しまった )

響「作者の代わりに私が予告するね。

次回は〈決戦!嫉妬の魔女①〉だよ。私達は絶対にキャロルちゃんに負けない!作者を殺してでも勇君と結ばれてやる!

皆様は更新をお待ちください。」



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嫉妬の魔女降臨①

重大発表です!
11月1日の投稿より、神咲胡桃さんの作品である、
〈錬金術師と心火を燃やしてよっか?〉とのコラボ章の投稿が決定しました。僕がキャロルをメインヒロインとした二次創作を作るきっかけの作品だけに、是非皆様も読んでいただければ幸いです。リンクを此方に載せます。
https://syosetu.org/novel/222283/

仮面ライダー作品とシンフォギアへの愛を両立し、主人公とキャロルの関係の過程にも是非注目してください。






さて前書きが長くなりましたが、……最終決戦が始まります。それぞれの譲れないモノを守る戦いです。

本編へどうぞ


~~sideエルフナイン~~

 

 

〈アルカ・ノイズの反応を検知!場所は東京湾上空!数は一万を越えます!!更に巨大な城らしき影も確認!〉

 

藤尭さんの声が司令室に響きました。

 

「お前ら!最終決戦だぁ!悔いの残らんようにぶつかって行け!」

 

そして司令が皆さんに出動要請をしました。

 

「勇君の陽だまりは私の場所!絶対に奪わせない!」

 

「勇の為にも危険思想のストーカーは排除しなくてはな!」

 

「あたし様の義妹を名乗る不届き者はぶっ殺す!」

 

「勇に私の全てを見せるわ!最高の活躍をね!」

 

「勇さんは私達の大切な人!だから!」

「絶対にキャロルには渡さないデス!」

 

「泥棒猫には粛清を。わからず屋にはオシオキを。運命の王子には頑丈な鎖を。ああ!私は忙しいなあ!」

 

全員何を言っているかわからない言動をしてる上に、目に光を映していなかったです。最後の彼女は監禁思想の方ですね。これだから勇さんとキャロルが困ります。勇さんの正妻はキャロルです。他の方ではありません。しかし今のボクがそれを言えば装者は、ボクをキャロルへの人質にするでしょう。

だからボクは敢えて何も言いません。そしてこの言葉で誤魔化しましょう。

 

「皆さん!一人の女性としてのお願いです。キャロルのことを止めて下さい!そして物事の順序を教えて下さい!」

 

ボクがそう言うと皆さんは優しく微笑んで出撃されました。本当に憐れですね。勇さんの初恋はキャロルだというのに。貴女方では無いというのに。

 

~~エルフナインsideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~勇side~~

 

東京湾付近にアルカ・ノイズが大量投入された。

〈チフォージュ・シャトー〉が降臨したことから、キャロルの準備は万全だろうね。後は皆を待つだけか。

 

「ようやく来たか。身の程を知らん泥棒猫の小娘共が!」

 

キャロルの準備は万全のようだ。

 

「皆!そっちの用意は大丈夫?」

 

〈おまかせ下さい旦那様。シャトー方面への被害の防止準備も我々が済ませました。間もなくレイアの妹が到着します。よって物理・超常両面の対策は万全ですわ。旦那様もお気をつけ下さい。〉

 

ファラさん達も大丈夫みたいだね。

 

「ありがとう。そっちは任せたよ。」

 

僕はそう言って通話を終了した。さあ、ここからが本番だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最後通告だよキャロルちゃん。勇君から身を退いて。そうすればもう二度と辛い思いはさせない!私が誓ってあげる!」

 

 

「あり得ない仮定だな立花響。オレの感情がわからん貴様ではあるまい!」

 

響なりの妥協だったのだろう。だけどキャロルはその提案を拒絶した。当然キャロルは迷う事はないからね。

 

「投降の勧告だ!このような狼藉を働いて無事でいられる保障はできない!故に早く諦めろ!」

 

「なるほど……流石防人の言うことだ。その提案は合理的なのだろう。だが風鳴 翼よ……その結論はあり得んな。そんな事態は当に過ぎたのだ!」

 

翼さんは防人としての語りかけをした。確かに普通ならその可能性は高いだろうね。だけど僕達は既にその対策を講じている。だから無意味な勧告になってしまった。

 

「仮にてめぇが勇と結ばれるならてめぇはあたし様の義妹だ。だったら立場の教育は必要だよなぁ!」

 

「カマエルの力便りの戦術がオレに通じると思わない方が身のためだそ義姉上よ。」

 

既にキャロルの中では僕と結ばれた体で話が進んでいる。つまり姉さんの問いかけへの解答こそがこの挑発か。当然とはいえキャロルに負けるイメージはないからね。

 

「お願いよ!私から勇を奪わないで!やっと巡り会えた運命の王子様なの!貴女も女性ならこの気持ちがわからないの?お願い!この気持ちをわかって!」

 

「〈運命の王子様〉か………。なるほど確かに納得だ。既に勇とオレは運命で結ばれた関係だった。つまり!横槍を入れて来たのはお前達の方だ!マリア・カデンツァヴナ・イヴ!その言葉は貴様達自身に返してくれる!」

 

キャロルは僕とのケンカの後からその傾向があったね。だけど僕も初恋をしたのは君だ。だから僕の運命と言うならそれはキャロルとの関係を望むだろうね。

 

「私は大事な事を勇さんに教わったの!だから私は勇さんが好きになったし、それでもマリアの為に我慢しようとした。だけど!それはすごく辛い事なの!もう私は我慢したくない!だからキャロルは絶対に倒す!」

 

「月読 調……。〈たかだか一回勇に救われた〉等と言うつもりはないが、耐える苦痛をしたお前ならわかるだろう?その行為がどれだけ体を蝕む痛みになるかを。故にオレは二度と味わうつもりはない。身の程を教えてやるから覚悟をするが良い!」

 

調ちゃんにとっての僕は最初こそ只の捕虜だった筈だ。だけどマリアさんを救う約束をしてそれを守り抜いた。それは彼女が嫌いな偽善ではなく、本物の覚悟と行動に見えたのだろう。だけどそれはキャロルも同じだ。だからキャロルは退かないよ?

 

「あたしは勇さんに命を救われたデス!そんな勇さんに惚れて何がいけないのデスか!あたしはそんな難しい事を理解するつもりはないデス!」

 

「命を救われたお前は、確かにあの時のオレと同じだな……暁 切歌。ならばわかるだろう?オレが何故ここまでの想いを抱いたか!わからないなら教えてやる!その体になぁ!」

 

フロンティアでの出来事は間違いなく重大な出来事だった。だけど事の大きさのみを計るなら数百年の命題の答えを知り、尚且間違いだと気づかせてくれた相手をキャロルは求めた。そして僕も受け入れている。だから切歌ちゃんには酷な事が待っているんだろうね。

 

「私はね……九年間待ち続けたんだよ?そして添い遂げる為に必要な技術は習得する努力を惜しまなかった!私の想いがキャロルちゃんに劣る筈がない!だから私は負けない!絶対に勇君を奪うんだから!」

 

「その想いの強さは認めよう……小日向 未来。だがオレが抱いた勇への想いが貴様に劣ると何故決めつけられる?」

 

未来の努力を笑える人間は誰もいないだろう。

 

〈大人になった時に四人で再会する。〉

 

その約束のみが響を守る原動力であり、未来の生きる目的だ。だからキャロルに劣るとは思わないし、諦める理由にはならないと思う。だけどそれはキャロルも同じ事だし、一度は約束を守る為に距離をとる覚悟をして行動に移した。だから〈どちらが〉と言葉にする資格は誰も持たない。全ては今からの行動で示されるんだから。

 

「やはりダメだな。………何度考えようとオレの世界を奪おうとする狼藉者に、世界を渡して身を退く選択肢を打ち出されたところでそんなことがまかり通ると思うな!貴様等に聞かせる歌ではなかったが仕方ない。格と覚悟の違いを教えてやる!さあ始めるぞ!」

 

そう言ってキャロルはガヴリエルを展開し、シャトーとのリンクを開始した。全力発動準備を整えたね。なら僕も結界の構築と皆への勘違いの防止をしますか!

 

「皆!約束して欲しい!あの城はキャロルだけの物じゃあ無いんだ!僕だってあそこで過ごした時間がある!

それを奪わないでくれ!」

 

「「「!?」」」

 

今正にシャトーに特攻しようとしていたマリアさん・切歌ちゃん・調ちゃんが立ち止まった。

 

「あれが勇の想い出の場所の一つなのね。調!切歌!中止よ!勇の想い出を傷つけることは許さないわ!」

 

「勇さんの悲しむ顔は見たく無い………」

「もし勇さんの想い出を傷つけたらあたし達は生きていけないデス!絶対に止めるデス!」

 

「ふむ。シャトーの攻撃を止めたか。懸命な判断だ。そんなことをすれば立場をわからせるだけではすまんかっただろうな。勇が止めてもオレが貴様等全員の息の根を止めていたぞ!」

 

キャロルから嫉妬ではなく殺意が溢れていたが、攻撃中止で収まった。良かった!想い出の場所が無くならずに済んで。

 

「故にお前らに聴かせてやる!オレが勇の為に綴り・調律し・完成させた唄を!」

 

キャロルの唄は僕が知っている曲ではなかったけど、僕だけの為に作った唄だと直ぐにわかった。だから僕の胸も暖かくなる。この戦いが終わったら、必ず僕はキャロルと契ろう。それが僕の18年振りの初恋なんだから。




エルー!?毒か!?やっぱり君は毒なのか!?原作と考えが真逆じゃないか!?……最終決戦の幕開けはした。しかし……勇君の前世……一体何が……?
〈嫉妬の魔女降臨②〉

更新をお待ちください


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嫉妬の魔女降臨②

そういえば以前私を殺しに来た装者達は誰から情報を得ていたというんだ………?

???「その疑問は解明しない事をおすすめするよ作者君。世の中には知らない方が良いって事があるだろう?だから君も忘れてしまうと良い。さもないと……

さて戦闘では……彼女はまだ……本気を出していない……

皆様は本編へどうぞ。

しかし正体を明かせないのは面倒な事だ。」

(この前書きに作者いた筈の作者の存在は、いつの間にか消されていた。………まるではじめからいなかったかのように)


キャロルの唄でこの場所にフォニックゲインが満ち溢れた。そして全ての準備が整った。

 

「まずは肩慣らしの時間をくれてやる。こいつらを倒して力を示せ!」

 

キャロルは先程召喚したアルカ・ノイズをけしかけた。

 

「皆!アルカ・ノイズごときに礼装は必要ないよ!この程度イグナイトで吹き飛ばそう!」

 

「そうだな。礼装を纏えるあたし達なら今や負荷すら気にならねえ!」

 

「有象無象ごときに遅れをとる私達ではないと知れ!」

 

「私達の覚悟を勇に示す!邪魔するなぁ!」

 

「私達のことを!」

「見くびりすぎデス!」

 

「この程度の手品に驚く私達じゃないよ!」

 

そう言って装者は三分足らずでノイズを片付けてしまった。しかも第一セーフティで。

 

「ほう?なかなかのタイムだ!では全てのセーフティを外して来るが良い!さもなければ惨敗だぞ!」

 

キャロルの言う通り今まではウォーミングアップで、実際今の戦いでは僕の結界に全く影響は出なかった。今やイグナイトより霊力の方が出力が多いみたいだね。

 

「皆!慢心してる泥棒さんにとびっきりのお灸を据えるよ!」

 

「「「「「「「イグナイトモジュール!抜剣!オールセーフティ!」」」」」」」

 

〈ダイン=スレイフ〉

 

響達はそれぞれの気持ちも一つに合わせてイグナイトシンフォギアの全力を引き出した。

 

「まずは持っていけやぁ!」

 

〈MEGA DEATH FUGA!〉

 

姉さんの必殺の一撃がぶっ放された!確かに開戦の狼煙には丁度良いかもしれないね。だけどそのミサイルは、キャロルに直撃したところでまったく通用していなかった。当然だけどレイアさん達より強いキャロルなんだから、いくら姉さんの必殺技でも認識が甘ければ致命傷は与えられないだろう。

 

「この程度の出力では煙しかたたんぞ?」

 

「流石にこの程度じゃあくたばらねぇよな?だがあたし達の周囲の確認を怠ったのはてめぇのミスだぜ?」

 

「貴様達の数か……なるほど確かに二人足りないな。だが些細な問題だな。まずは貴様から倒すぞ義姉上よ!」

 

そう言うキャロルはヨーヨーと鎖でいつの間にか拘束されていた。どうやらあの攻撃に合わせて切調コンビは意図を察したようだ。だからキャロルの認識前に拘束してあの技を叩き込むつもりらしいね。

 

「成る程!先のミサイルはこの推進力を確保する囮か!良いコンビネーションだな!」

 

「私達の刃に!」

「ぶった斬られるデス!」

 

〈Zあ破刃エクLィプSSSS禁殺邪輪!〉

 

姉さんに攻撃をしようとしたタイミングで切調コンビが、ミカちゃんをぶった斬った合体技で攻めた。かなり上手いタイミングだったけど、キャロルに焦りはなかった。

 

「その刃はさぞ良い切れ味だろうな。故に貴様等自身でその切れ味を味わうが良い!」

 

キャロルはそう言うと自分の周囲に竜巻を発生させた。えげつないなぁキャロル……。そしてこのタイミングでそんなものが生まれれば………当然攻撃しようとした二人は体勢を崩してしまう。

 

「まずい!切ちゃん逃げて!」

「調!回避するデス!ぶつかるデス!」

 

そう言って二人はお互いに頭から衝突させられた。咄嗟にお互いの刃が当たらないように配慮したものの、そのせいで頭から衝突してしまう二人だ。間違いなく相当痛いだろうね。そして気のせいかギャグみたいな星が回ってないかな?

 

「フッ!良い見せ物だな!笑いが止まらんぞ!」

 

キャロルが爆笑している。そしてそんなタイミングでも今は戦闘中だ。隙があれば当然攻撃されるわけで………

 

「油断大敵だよキャロルちゃん!」

 

〈我流・鳳凰双燕衝!〉

 

響が隙を見せたキャロルに響は自身の速度をもって特攻をかましたが、そんな響はキャロルのダヴルダヴラに絡めとられた。キャロルの油断はあくまでも戦略の一つで、敢えて奇襲させて敵を分断する動きだったみたいだ。

 

「立花 響よ!その愚直さは貴様の美点だが!故に大きな弱点だ!」

 

身動きのとれない響に、キャロルがいつの間にか生成さしていたコインの雨が直撃し、そのタイミングで糸から解放されて近くのビルまで飛ばされた。

 

「あぐっ!これはキツいなぁ。ちょっと立てないかも……」

 

コインの雨による攻撃はレイアさんのイメージが強いけど、その戦法をキャロル自身が取れない訳ではない。そして響達の先入観のせいで今は間違いなく手痛い反撃を受けただろうね。だけど流石響と言うべきかどうやら意識はあるみたいだった。

 

「ほう?今の弾丸の雨を浴びてまだ意識を保てるか!なかなかの根性だ!それでこそオレが叩き潰すに相応しい!」

 

キャロルがテンションをあげたそのタイミングで、年長者の二人が左右から技を発動させてきた!

 

〈羅刹零ノ型!〉

〈SERE†NADE!〉

 

どうやら原作ではファラさんやガリィを倒した技をキャロルに当てるつもりのようで、その斬撃は確実にキャロルへと直撃するも、期待程のダメージには至らなかった。

 

「堪え性のない奴等だな。しかし貴様等の斬撃には重さが足りん。故に沈め!」

 

キャロルは襲撃してきた二人を、水で作った球体に閉じ込めた。拘束からの酸欠か……これはえげつないな。咄嗟の判断力の求められる戦場で意識外からの攻撃だ。二人は逃げられずに閉じ込められてしまった。そして混乱している二人は問答無用で地上へと叩き落とされた。

 

「「っ!」」

 

一時的な酸欠と解放された際に受けた衝撃で二人はすぐには立ち上がれなかった。ギアがなければ相当致命傷になったかもしれないが、翼さん達は常人ではない。だからこの攻撃でも足りないとキャロルは判断したんだね。

 

「そうだね。みんな情けないなぁ。やっぱり勇君の正妻は私だからね。だからキャロルちゃんも沈むんだよ?」

 

声のした方を見ると、未来はマーカーを浮遊させて、時間差のビームと本人が接近戦を仕掛けた。当然響より複雑な動きをしている。

 

「なるほど!流石は最強の装者と言う訳か!立花響より良い動きをするな。だが!詰めが甘い!」

 

これに対してキャロルは弦の結界にコインを乱反射させてビームを凌ぎ、攻撃で生じた煙幕を利用して未来を背後から叩き落とした。

 

「………かかった!」

 

攻撃を受けた未来が手をかざしたかと思った次の瞬間、キャロルの背後で収束したビームがキャロルを貫いた。どうやら未来は自分が攻撃される事まで想定していたようだ。しかし攻撃された筈のキャロルの体は蜃気楼の様に消えてしまった。

 

「嘘!タイミングは完璧だった筈なのに!」

 

「惜しいな。貴様が穿ったのは水分で作られた幻影に過ぎなかったのさ。」

 

「その隙は見逃さねえ!」

 

姉さんが数にものを言わせたミサイルをぶっ放した!いつかの原作の時の様に。確かに姉さんは今までの攻撃で直撃していない。だけど奇襲をするには少しお粗末だったかもしれないね。

 

「この程度防ぐまでもないな。」

 

そう言ってキャロルはミサイルが直撃しながらも姉さんに近づいて何かを注射した。そして三本程空の注射器が落ちた。

 

「あがぁ!なんだよこれ!体が焼けるようだ!」

 

「噂で聞いたことはないか?〈モデルK〉と言われた〈Linker〉の存在を。コレはその副作用のみを凝縮した物だ。お前がオレと勇の仲を認めればその薬を取り除いてやっても良いぞ義姉上?」

 

「だれが………身を退く………かよ。………絶対………嫌……だね。………あたし様を………なめるなよ………」

 

姉さんはそう言って悲鳴をあげる体に鞭を打ちキャロルに殴りかかった。だけどフラフラな姉さんの攻撃に捕まるキャロルではない。

 

「憐れだな。そんな状態で向かって来るとは。」

 

そう言ってキャロルは姉さんを弦で縛りあげた。これで姉さんは身動きがとれないな。

 

「やはりこんなものか。ではお前らにチャンスをやろう。現在この空間にはフォニックゲインが満ちている。もしお前らが諦めないなら奇跡をモノにするが良い!そしてオレはそんなお前らを凌駕しよう!」

 

姉さんを除いた六人がようやく戦場に戻って来た。みんな相当こっぴどいやられ方だね。

 

「皆!エクスドライブでいこう!そうすれば天使の力も満足に使える筈だよ!」

 

響らしいとはいえ、現状の打開できる案はもうそれだけしかないだろうね。

 

「立花の思いつきはなかなかに面白い。私はその賭けに乗ろう。」

 

翼さんもこの提案に賛成の様子みたいだね。

 

「私がフォニックゲインを調律するわ!全力でやりなさい!」

 

アガートラームの特性であるベクトル操作の使いどころだね。良い判断をしている……流石マリアさんだ。

 

「響?失敗は許さないからね?」

 

未来も反撃の為の準備を整えている。

 

「私達もまだ戦える!」

「負けるものかデス!」

 

後輩組も響を信じてる。

 

「皆………頼んだぜ……」

 

拘束された姉さんが最後に響にたくした。どうやら全員の意思は一つにまとまったらしい。

 

「皆いくよ!S2CA!セプタゴンバージョン!」

 

「ジェネレーター!」

「エクスー!ドラーイブ!」

 

響が受け止め、マリアさんがエネルギーの再分配を行う。この二人にかかる負担は相当なものだろう。だけど二人を信じて支える四人の助力も相成り、その輝きは七色の光に変わる。そしてこのフォニックゲインをもって七人はエクスドライブに至り、身に纏う礼装も完全礼装になっていた。そして一人拘束されていた姉さんもようやく体内の異物を克服した。カマエルの回復力便りだったけど拘束する糸を焼き払い、響達の立つ場所に戻る事ができた。

 

「ほう?奇跡すら味方につけ礼装までも勇と同じ物を纏えるか!ならばオレも礼装を纏うとしよう。見せてみろ!お前らの天使とギアの力を!」

 

キャロルはそう言ってダヴルダヴラのファウストローブを解除した後に収束礼装を纏ってみせた。僕がキャロルと戦った時のデザインだから限定礼装みたいだけど、それでもキャロルの場合は基のスペックが高い。

 

「あれが……キャロルちゃんの礼装と天使……」

 

そう響が呟いた頃にはキャロルは礼装を纏い、本当の決戦が今始まった。




(いつの間にか戻って来た作者)

私の身に一体何が………それに前後の記憶も……

そして本編では圧倒的実力を見せるキャロル。………コレがイグナイトの限界ということか……

装者達の逆転の手段はもう……一つしかないだろう。……しかし彼女達は諦めないし、それはキャロルも同じ事……最後に笑うのは一体どちらか……

次回〈決着!嫉妬の魔女〉

更新をお待ちください

神咲さんとのコラボ章は投稿は11月1日からです。
コラボ先〈錬金術師と心火燃やしてみよっか?〉
https://syosetu.org/novel/222283/


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決着!嫉妬の魔女

お知らせです。

次の投稿は番外編もあります。本編の更新も明日の20時にありますのでご安心ください。

そしてよろしければ番外編も閲覧いただけば嬉しいです。

そして通算UAが100000を突破しました!皆様ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!

さて前書きが長くなりました。

……奇跡を身に纏う響達とキャロルの戦いの結末とは……

本編へどうぞ


「皆行くよ!私達の勇君への愛がキャロルちゃんの愛に負けないって!勝って証明する!」

 

響は震える体に鞭を打ち、みんなに声をかけた。

 

「ならば行くぞ翼!先陣は私達からだ!」

 

「応とも!皆の気持ちは今や一つだ!まずはキャロルをシバく!各々の争いなぞ終わってからでも充分間に合う!」

 

「ザフキエル!〈八の弾〉だ!」

 

翼さんとマリアさんが先陣をきり、マリアさんの体が増え始めた。やっぱりザフキエルの力は陽動なら最適だな。

 

「行くぞサンダルフォン!〈蒼ノ一閃〉!」

 

「くらえキャロル!砲撃の雨だ!」

 

一撃一撃を必殺とするマリアさんの砲撃が、ザフキエルの力でおびただしい数になった。これは流石に涼しい顔は僕でもできないな。

 

「良い狼煙た。しかし!オレはとうにその領域に到っている!ザドキエルよ!我が力と化せ!」

 

「ッ!私達の砲撃が氷塊に防がれた!?どこまでの霊力が込められているというの!?」

 

「更にこうしよう!」

 

キャロルは作り出した氷塊でマリアさんの砲撃を受け止めた。そして残った氷塊を剣で刻んで、更にラファエルとザフキエルを召喚した。そして先程切り刻み作った礫と銃弾を用いて凶器の雨を降らせた。

 

「なんて数なの!分身が維持できない!」

 

「この威力!防ぎきれん!」

 

その威力はすさまじく、マリアさんは分身を維持できず、翼さんも剣のみで防ぐには限界があった。

 

「更にオマケをやろう!ラファエル!

〈天を駆ける者〉だ!」

 

だが今のキャロルに慢心はない。体勢を立て直す前に風を操り二人に烈風を浴びせにかかる。

 

「翼!手を放すな!体勢を崩されるぞ!」

 

「だがマリア!すまないがこれ以上は無理だ!」

 

「「うっ!ぐあぁー!!」」

 

二人は追撃の烈風に耐えられずに吹き飛ばされ、複数のビルを突き抜けて尚衰えない勢いの状態で相当遠くに飛ばされた。復帰するだけでも相当時間はかかるし、ダメージも馬鹿にならないだろうな。

 

「よくもマリアを!」

「あたし達を舐めるなデス!」

 

「待って二人共!翼さん達が戻るのを待たなきゃ!」

 

「「ラファエル!〈蒼穹を喰らう者〉!!」」

 

未来の言葉も虚しく、二人はキャロルに対抗する烈風を放った。しかしキャロルの表情に変化はない。それどころか余裕の笑みすら浮かべていた。

 

「ミカエル!〈開〉!そしてもう一度だ!」

 

「私達の攻撃が!」

「吸い込まれたデス!」

 

ザババコンビの烈風はミカエルが形成する門に吸い込まれ、キャロルから再び現れた別の門により、自らの烈風を返された。

 

「切ちゃん!防がないと!」

「わかっているデス調!合わせるデス!」

 

「「ラファエル!〈護る者!〉」」

 

すごいね、あの二人は。もうあの天使の護りの力を引き出せたんだね。いずれ二人は間違いなく強くなる。だけどまだ今の局面はそう乗り越えられないかな。

 

「よく耐える!では褒美を受けとるが良い!ガヴリエル!〈輪舞曲〉!」

 

シャトーとの共振すらしているガヴリエルの音波は、最早シンフォギアの制御できるレベルをとうに越えた衝撃と化していた。

 

「ぐぅっ!このままじゃ!」

「盾を維持できないデス!」

 

意地と覚悟で耐える二人にキャロルは止めの絶望を与えてきた。

 

「まだ粘るか!では先に力を削ごう!ミカエル!〈解〉!」

 

ミカエルの力の一つである〈解〉は、対象を分解する力がある。その力で二人の形成する盾を分解してしまった。

 

「なっ!盾が!」

「バラバラになったデス!」

 

二人はその言葉を最後に地面に叩きつけられた。下手すれば意識を失っているだろう。

 

「切歌ちゃん!調ちゃん!よくも二人まで!ガヴリエル!〈行進曲〉!」

 

響は自分に強化を施してキャロルに突撃した。流石にこの攻撃はキャロルでも受けきれないはずだ。

 

「良い推進力た!故にこう喰らうが良い!カマエル!〈砲〉!」

 

「不味い!この攻撃が避けられない!」

 

キャロルは突撃する響めがけてカウンターの砲撃を放った。まるで響が来るのがわかっていたみたいに……〈ラジエル〉の力か!だから完璧なタイミングで攻撃を放ってきたんだ!キャロルに向かって直線の動きをする響はこの砲撃を回避できずに直撃してしまった。

 

「未来!二人の攻撃を重ねるぞ!」

「仕方ありません!合わせます!」

 

「カマエル〈砲〉!」「メタトロン〈砲冠〉!」

 

「良い心がけだ!その教訓は次に繋げるが良い!サンダルフォンよ!〈最後の剣〉だ!」

 

二つの高火力天使からの攻撃がキャロルを襲ったが、キャロルはこれを正面から打ち破った。

 

「不味い!未来!回避しろ!」

「義姉さん!この攻撃の規模は流石に無理です!」

 

声かけも虚しく二人はキャロルの放った斬撃に飲み込まれた。これによって装者は全員地に膝を着く、あるいは簡単に反撃ができない事態となった。それはやっと戻って来た二人も同じだった。

 

「強い……これがキャロルちゃんの勇君への想い……」

 

「なんという覚悟だ……。次元が違う……!」

 

「体に力がはいらねぇ………。くそっ!」

 

「立てない………悔しい!」

「勝ちたいのに!悔しいデス!」

 

「ちくしょう!ここまでなの!」

 

「あと少しだったのに!もう少しで勇君と結ばれる筈だったのに!なんで!」

 

装者全員は満身創痍で立ち上がれず、更に心すら折れかけていた。それほどまでに天使を通じてキャロルの想いが伝わってしまったのだろう。

 

「なんと情けない!こんな腑抜けだとは失望したぞ!オレ自ら引導を渡してやる!」

 

確かに僕も今の状況は見ていられない。だから一度だけ皆に助け船を出そう。

 

「待ってくれキャロル!最後に一度だけチャンスをあげて欲しい!こんな終わり方は僕も納得がいかない!もし響達がまだ諦めていないなら!一度だけで良いんだ!最後まで付き合ってやってくれ!」

 

「勇君………そうだ!これは私達の意地だ!」

 

「ここで折れるわけにはいかない!」

 

「諦めるのはあたし達らしくねぇ!」

 

「まだ立てる!戦える!」

 

「勝負はまだついていないのデス!」

 

「最後まで立ち上がる!」

 

「必ず辿り着く!」

 

響達が最後の意地を見せた。後は見守るだけだ!

 

「そうだ!それでこそオレの敵だ!その想いを最後までぶつけるが良い!」

 

「皆!私達のギアと天使の力を一つに重ねるよ!

私達の決意を!!想いを!!」

 

「天羽々斬!サンダルフォン!立花に力を!」

 

「イチイバル!カマエル!響を頼む!」

 

「シャルシュガナ!」

「イガリマ!」

 

「「ラファエル!!響さんの力に!!」」

 

「アガートラーム!ザフキエル!行きなさい!」

 

「神獣鏡!メタトロン!響を支えて!」

 

「ガングニール!今こそ放てえぇっ!!」

 

力を受け取った響は、ギアの力をガングニールに。天使の力をサンダルフォンに収束させた。そしてまずはギアが束ねた拳をキャロルに向かって解き放った!

 

〈Glorious Break〉!(七人ver)

 

この攻撃を見てキャロルはこの戦いで初めて攻撃の認識を改めた。最後の覚悟に気づいたみたいだ。

 

「良い一撃だ!故にオレの全力をくれてやる!我が天使よ!この剣に力を!」

 

〈エレメンタルブレイド〉(霊力全開ver)

 

キャロルの持つサンダルフォンにエレメントの力が宿り、更に霊力が奔流を起こした!そしてそのエネルギーが響達の一撃と激しいぶつかり合いを起こした!

 

「やはり貴様等の力は欠片に過ぎん!故にオレが勝つ!」

 

キャロルの一撃が押し始めた時、響のサンダルフォンに天使の光が集まった!

 

「なんでかわからないけど!この力の使い方がわかる!だから。私は信じる!そしてこの一撃にすべてを賭ける!いくよ〈滅殺皇〉!」

 

「あれば〈滅殺皇〉か!響が天使を束ねた形があの天使を形成した。やっぱり響はやってくれるね!」

 

響はそう言って嘗て剣を振り下ろしたあの構えをとり、一人で振り下ろした!もう一度見せてくれるんだね。あの技を!

 

〈Synchrogazer〉!!

 

「まさか!?オレ達全員の霊力をフォニックゲインで調律しきったというのか!?立花響!お前はどこまでも強欲なやつだ!故にオレも負けられない!」

 

押されていた響の拳もろとも振り下ろされた剣がエレメントの光を切り裂き、分断された拳は七色の光に別れてキャロルに降り注いだ!

 

「ザドキエル!ラファエル!ガヴリエル!ハニエル!」

 

しかしキャロルもハニエルをザドキエルに変化させてこの一撃を耐えようと防御壁を展開した。しかしそこにはキャロルの一撃を押し退けた斬撃が衝突し、強固な筈の護りが崩壊した。その結果キャロルは七色の光……つまり虹の旋律の直撃を受けた。

 

「ぐあぁー!!これが虹の旋律かあぁ!だが!オレは負けられない!その為に勝つ!」

 

キャロルの眼の闘志は未だに消えなかったが、体の方はこの一撃で既に限界を迎え、立ち上がれなかった。表情には現れなかったが相当な疲労があったのだろう。響達が死なないように必ず手加減をしていたキャロルは、戦い始めてからずっと神経を研ぎ澄ませていたからね。もし加減していなかったらこんな形にはならないし、それこそ最初から天使を使った筈だ。だけどそれをしなかったのは僕との約束を守る為だったんだろうね。そして対象的に響は満足とまではいかなくとも、確実に立っていた。相手を殺す気でかかる響達はその辺の配慮まではできない。その差が拮抗した時に出たのだろうね。なら……僕が責任をもってこの戦いを終わらせよう。

 

「ここまでだ!キャロルが地に伏せ、響達は立っている!これ以上は僕が認めない!これで決着だ!」

 

「オレは………また負けたのか。だが……今度はいつになく清々しいな。こんなに限界まで戦えたのはあの時以来………いや、それ以上の満足感だな。」

 

「勝った………私達が………?………やった!勝ったんだ私達!良かったぁ!本当に良かったぁ!」

 

「最早体に力がはいらない。だが、勝てたのだな。」

 

「実感がわかないけど勝てたんだな。あたし達。」

 

「何とか………。」

「勝てたのデスね。」

 

「この勝利は二度とできない奇跡の勝利ね。」

 

「ああ……良かった。私達は勝てたんだ。」

 

キャロルは本当に悔し涙を浮かべていたが、同時にある種の満足感もあるようだ。

 

「どうだった?シンフォギア装者達は?」

 

「これ程の戦いになるとは思わなかった。だから次は絶対に負けない。」

 

「うん。それで良いと思うよ。」

 

こうして響達とキャロルの譲れない戦いは響達の勝利で幕を閉じた。お互い全力の思いをを悔いのない形で伝える事ができたみたいだね。




決着がつき、少女達は互いの想いをぶつけあった。その結果をそれぞれがどう受け止めたかは次の話で……

次回〈ご褒美 / 語り合い〉です。

更新をお待ちください

また、前書き通りに次からの更新では番外編も投稿します。よろしければそちらもお願いします。

そして11月1日よりコラボ章が始まります。
お相手の神咲 胡桃さんの情報です。
投稿作品〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉
https://syosetu.org/novel/222283/


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彼女達へのご褒美 / 今後への語り合い

今回の閑話は同時投稿している番外編の後の時系列で話を進めています。なので時系列で読みたい方は番外編からの既読をお願いします。また、作品のあらすじからジャンプできるように設定してあります。

更に本日はこの作品の執筆経緯等も語ります。そのためにいつもより大容量でお届けします!

前半は〈キャロル陣営(勇君も含まれます)の、ご褒美回〉です。

そして後半が、作者と勇君達……そして密告者と執筆経緯を語ります。

その時に作者自身の台詞は〈〉で表します。

それでは本編へどうぞ


〈①彼女達へのご褒美〉

 

キャロルと装備者の戦いが終わって、僕達は全員で集まって話をしていた。

 

「さて…みんなお疲れ様。キャロルはみんなとのケンカを、自動人形のみんなは結界の構築や姉さん達装者へのテストをありがとうね。お陰で弦十郎さんや八紘さんとの交渉も上手く進められそうだよ。」

 

「勇はオレの意志を汲んでくれたからな。本当は装者共を力ずくで排除したかったが、勇がオレを一番に想ってくれているとわかったから何という事もないぞ?というか早くベッドに行かないか?」

 

〈あの日〉以降キャロルからのこの手のアピールが増えたけど、僕はもう気にならない。だってそれだけ僕はキャロルが愛しいんだから。

 

「ありがとうキャロル。でも今日はダメだよ?ガリィ達みんなのご褒美がまだなんだからさ。だからまた今度の機会にしようね?」

 

「そうだな。ガリィ達の活躍があっての今のオレ達だ。今回の主役を差し置く訳にはいかんな。すまなかったなお前達。」

 

キャロルはちゃんとガリィ達に謝った。うん!素直なキャロルも可愛いね!

 

「大丈夫だゾマスター!ミカ達はマスターと旦那サマの幸せが一番だゾ!だから気にしないで欲しいゾ!」

 

「ありがとうねミカちゃん。でもコレは一つのケジメだから。そしてありがとう!その気遣いが僕は嬉しいよ。」

 

「旦那サマに言われたら照れてしまうゾ……。」

 

ミカちゃんは顔を赤らめて下を向いてしまった。

 

「でも本当によろしいのですか?私達がこのような派手な褒美をいただいてしまっても……」

 

「大丈夫だよレイアさん。それだけの働きを貴女方はしてくれたんだから。だから受け取ってくれた方が僕は嬉しいな。」

 

「なんともったいないお言葉ありがとうございます。謹んで褒美をいただきたいと思います。」

 

レイアさんは少し固いけど、受け取ってくれて安心したな。

 

「しかし旦那サマぁ~。あたし達は本当にこんなに幸せで良いんですか?明らかに主従関係が他と違いますよねぇ?」

 

「うん!僕はみんなを家族だと思っているからね!だから僕はみんなが大好きだし、このシャトーも好きだよ!思い出の場所だからね!」

 

「ふふっ!それでこそ旦那サマです。そんな旦那サマだからあたし達は大好きです!」

 

ガリィの素直な言葉は僕の胸に刺さった。疑似人格がキャロルの深層心理というだけあってドキドキしてしまう。このままだと僕が真っ赤になりそうだ。

 

「では、私達は一つ行きたいところがあります。よろしければエルを誘ってはいかがでしょうか?」

 

「ちょっと!直ぐに呼んで来てキャロル!エルを今すぐに!」

 

「すまんかった!行ってくる!」

 

「ふふっ!旦那様の慌てた顔も素敵ですよ。マスターに許可と改良をしていただければ……いつでも……。」

 

ファラさんの願いはいつか叶えてあげたいね。

 

「遅くなった!エル!すまなかった!」

 

「大丈夫ですよキャロル。僕が留守番をするつもりでしたから。後……装者への爆弾を作る作業が楽しくて時間を忘れていました!」

 

「帰ったら二人で計画を煮詰めようじゃないか!オレも一枚噛ませてくれ!」

 

一体何をするつもりなのかは聞かない方が良いかもしれない。

 

「さて…ファラさんの言ってた場所はどこなの?」

 

「そうですわね。〈カラオケ〉に行き、旦那様の歌が聞きたいですわ。」

 

おっとそう来たか。なら……司令に頼むか。ついでにこの件の交渉と報告もしてしまおう!

 

「オッケー!じゃあ司令にコンタクトをとるよ!そして例の件も進めてくるからエルを通じて本部へ向かってくれない?それまでには準備を済ませるから!」

 

僕は急いで転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~交渉~~

 

「……というわけで、カラオケ施設はありますか?」

 

「ああ。確かに直ぐにでも手配できるがこの資料は……」

 

僕が提出したのは、みんなの戦場の前後三日間の写真等の記録だ。人命は避難で、建物等は天使で修復済み。その間の食事等も匿名で届けた記録を渡したのだ。

 

「はい。緒川さんの報告書の裏付け資料です。今回は僕達が主犯・黒幕ですからね。だから被害をゼロにする工夫は怠りませんよ。この資料が証明です。できれば緒川さん達にもう一度確認をして欲しいのですが……」

 

「いや……そうではなくてな。被害がゼロだった今回はキャロル君達の配慮以外に何かの要因があるとオレ達は踏んでいたが、まさかこういう結果とはな。よしわかった!君達のカラオケ中に全ての報告が終わるように手配しよう!楽しんでこい!そして後からで良いからキャロル君達も連れて来い!」

 

「はい!近い内に必ず!」

 

僕は手配してもらった場所をキャロルに教えて目的の場所へ向かった。

 

 

 

~~目的地~~

 

僕は頼まれた場所となる、〈カラオケ機材を揃えた部屋〉に来た。ここは本部の中でも歌の訓練で使える事もあり重宝される部屋だ。

 

「にしても意外だな。ファラがカラオケを要望するとはな。」

 

キャロルの呟き通りだけど、確かにその通りだね。だけど僕は彼女達のご褒美に手は抜かないよ!

 

「じゃあみんなは何かリクエストがある?」

 

「響のガングニールの歌と、未来の神獣鏡の歌が聞きたいゾ!」

 

「はいよ!任せて!」

 

成る程ね。なら、〈撃槍・ガングニール〉と〈歪鏡・シェンショウジン〉だね。歌えるな!

 

「では、義姉上と風鳴 翼の歌も派手にお願いできますか?」

 

〈絶刀・天羽々斬〉と〈魔弓・イチイバル〉でいけるね!

 

「了解!本人に負けないように頑張るよ!」

 

「ザババの二人の曲を各々と、デュエット版をマスターとお願いいただけますか?旦那様とマスターのデュエットが聞きたいですわ。」

 

「キャロル!〈Edge Works of Goddess ZABABA〉のデュエット版行ける?」

 

「任せろ!月読 調のパートをオレが引き受けよう!最高のデュエットにして見せるぞ!」

 

〈獄鎌・イガリマ〉と〈鷹鋸・シャルシャガナ〉そしてザババのデュエットね。中々クる曲だから僕も楽しもう!

 

「では旦那サマァ~!マリアの歌はガングニールとアガートラームの各々をお願いできますかぁ?」

 

「せっかくだからね!僕も歌うつもりだよ!」

 

〈烈槍・ガングニール〉と〈銀腕・アガートラーム〉も大丈夫だね。

 

「なら、キャロルもダヴルダヴラを歌ってよ。たまにはキャロルもそういう機会があったら嬉しいでしょ?」

 

「今歌うなら歌詞が気まずいんだが……」

 

まあ、今思えばあの歌詞は中々刺さるよね……でも僕にとっては!

 

「大丈夫!大好きなキャロルの最初に惚れた歌なんだから、堂々と歌ってくれたら僕は嬉しいよ?」

 

後サプライズでアレも歌おうかな。

 

~~シンフォギアソング熱唱中~~

 

「さて!じゃあここまで来たらあの曲も歌おうかな?」

 

「「「「「「〈あの曲〉ですか?それは一体……」」」」」」

 

その反応は予想通りだね。だから歌い終わってから説明しようかな?

 

〈デート・ア・ライブ〉

 

歌い終わった僕には質問が飛んで来た。

 

「勇さん!もしかして今の曲って!」

 

「エルの予想通り十香さんや士道さんの世界の歌だよ。

 

〈さあ!僕達のデート(戦争)を始めよう〉

 

この言葉が最高に似合う歌でしょ?」

 

「では、皆で最後にこの曲を歌うか。勇の記憶の中でもかなり鮮明に歌詞が残っていたり、この世界のツヴァイウイングの歌の派生でもあるからな。全員一度歌詞を聞いたらわかるだろうな?」

 

そう言ってキャロルはあの曲を皆の頭の中に流した。じゃあ最後は皆で歌おうか!

 

〈虹色のフリューゲル〉

 

歌い終わった僕達は皆満足していた。

 

「皆……また来ようね?」

 

「勿論だ!」

「また行きたいゾ!」

「またいずれ」

「再び派手な歌を歌いたいですね。」

「ええ!行きましょう旦那サマ!」

「勇さん!ありがとうございます!」

 

こうして僕達はファラさん達にご褒美を楽しんでもらえた。本当に良い1日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

〈②今後への語り合い〉

 

〈さて、せっかくの機会なので今回は、コラボ開始前にこの小説の制作経緯を語りたいと思います。せっかくなので勇君にも来て貰いましょう。〉

 

勇 「何で僕まで……。まあ良いか。じゃあ作者はさあ、何がきっかけでシンフォギア見始めたの?」

 

〈五期がテレビ放送前にやってた一挙配信の時だね。実は新作アプリ時代にこの作品を知ったけど、このサイトでやってた、とあるシンフォギアSSを見たのがキャラを知ったきっかけかな。〉

 

勇 「じゃあ当時はなんかのクロスオーバー関係しか見てなかったと?」

 

〈そんなところです。その作品自体は未完だから残念だったけど、GX編の奴が当時は少なくてね。だからしばらくは他の作品の二次創作を見てたけど、シンフォギアが五期直前に行った一挙配信でちゃんと見るようになったかね。その頃にはシンフォギアとここに頻繁に通うようになったから、ハマった時期はほぼ同じだね。〉

 

勇 「ならアプリは結構長い間放置で、展開がわからない民だったのか……ていうかそれにしても作品投稿するまでに結構時間かかったよね?」

 

〈今年のアレで暇をもて余したからね。だから今回は秋が始まる前に投稿を始めた訳なんだよね。〉

 

勇 「アニメ視聴後はアプリをやってたの?」

 

〈気になるイベントの時だけかね。だからキャロルイベントでは結構ハマったね。イベントにのめり込んでたから。〉

 

勇 「なんとなくどのイベントか想像がつくな。」

 

〈ちなみにこのサイトでヤンデレ系シンフォギア作品は割りと積極的に探してたね。当然キャロルが主役の作品も。〉

 

勇 「ということは当然今回のお相手さんの作品も読んでたよね?」

 

〈勿論だよ!あんなに可愛いキャロルは自分のストライクゾーンだったね!〉

 

勇 「ちなみにクロスオーバー先がデアラの世界の理由は?」

 

〈キャロルや自動人形の属性だね。後、この二つの作品は本編が完結してるから展開が考えやすかったのもあるね。〉

 

キャ 「そういえばなぜオレは修行時代の後半からの登場なのだ?しかも一期及び二期では閑話しか出番がないじゃないか!」

 

〈おっとキャロルさんいきなりですね……。

修行時代の方は単純に当時の勇君でも取引できる組織且つ、後々実力がついてからキャロルと接触できる組織じゃないとダメだったから。

ストーリーの方は原作前にキャロルをバグキャラにしてしまって本編が壊れるのを防ぐ為です。作者の技量には限界があります。だから三期がアホ程インフレしました。〉

 

キャ 「……成る程。本末転倒に成りかねないから仕方なく……か。まあそれでこの結果なら作者自身は良かったのではないか?」

 

〈まあね。まさかここまでの人に気に入られて、神咲さんの作品とコラボできるとはGX編の執筆当初でも考えられなかったね。だからお誘いを受けた時は迷わなかったし、他の方との交流はすごく楽しんで書くことができたよ!〉

 

キャ 「コラボへの意欲がすごいな。これは勇の活躍も期待したいな!」

 

〈展開のことはさておき、もう一つの方も語りたいからあの人も呼んで良い?〉

 

勇 「そういえば前書きに密告者の情報も明かす事にしているね。一体誰なの?」

 

〈それではご登場ください密告者の天羽奏さん!〉

 

奏 「おいおい。アタシの事をそういう扱いにしたから、キャロル強化でこの章の難易度がアホ程高くなった責任を前書きや後書きで取らせただろう?」

 

勇 「……天羽さんなの!?いや一期の設定集で故人って書いてあるよね!?」

 

〈書いてあるよ。だけど実は本編のこの先で彼女にまつわるエピソードを作る予定だから。〉

 

奏 「それはコラボの話か?それともAXZ編以降の話か?」

 

〈それはノーコメントで。ちなみにこの世界の奏さんではなく、「別の世界」のって言葉がつきますが。〉

 

奏 「平行世界って便利だな。」

 

〈ぶっちゃけシンフォギアが、平行世界を許容している作品だから安易に出せるネタでもあります。〉

 

奏 「まさかとは思うけどコラボ相手に迷惑はかからないよな?」

 

〈絶対にありません。その理由は更新すればわかります!〉

 

勇 「本当に迷惑はかけないでくださいよ。作者は只でさえ交遊関係がアレなのに外出自粛までしてるんだがら。」

 

〈人の傷を抉る主人公だよね勇君。実際キャロル戦とフィーネ戦ではバカみたいに相手のお怒り地雷源を走るんだから……〉

 

勇 「作者のせいだと思うけど?」

 

奏 「そういえば四期の敵は元々お師匠達だったんだろ?その代役はあのメンバーで大丈夫なのか?」

 

〈ぶっちゃけそこもかなりの難産でした。というか今の勇君とキャロルのスペックを番外編で公表するとはいえ、何とか難易度調整には成功したと思うよ。後は本編の更新の時に確認して欲しいです。〉

 

奏 「当たり前だけどさ。感想で来た要望への対応も大丈夫だよな?」

 

〈そっちも大丈夫です。そのためにこのコラボ章は最大限の活用をします!〉

 

キャ 「ん?そうなるとコラボ編此方では本編という事か?独立した話ではなく?」

 

〈そうだね。展開の打ち合わせの時にもらった情報で、このコラボ章の設定は此方では本編にも使える事がわかったからね。だからコラボ編の情報が本編にも出てくるね。〉

 

キャ 「ならその内またタグが変わるのだな?よく変わるタグだ。」

 

〈仕方ないです。〉

 

勇 「そういえばヒロインが全員ヤンデレな理由は?」

 

〈シンフォギア作品の装者達が割りと簡単に病む気がしてて、書いてたら思いの外楽しめた。ちなみに作者はキャロルちゃん至上主義だよ。〉

 

キャ 「何故この作品の難易度が装者に対して、稀に見る難易度だったのか理由がわかった気がするな。」

 

奏 「じゃあ作者さあ、何で前書きとかで殺されたかわかるか?」

 

〈翼さんが救われないから?〉

 

奏 「50点だな。あたしがヒロインから脱落してるのも理由だぜ?」

 

〈まさかの私怨ですか!?〉

 

キャ 「じゃあ最後に今後の流れを発表したらどうだ?」

 

〈そうだね。まず11月1日からコラボ章の開始で、此方の予定章タイトルは今のところは、

 

「コラボ編 平行世界と救いたいモノ」

 

にする予定だね。〉

 

勇 「そして本編の方はどういう流れにするの?」

 

〈先にコラボ編に専念します。そしてコラボ編終了後にもう一つオリジナルの章を入れて、その後でAXZ編を投稿します。そして最後にXV編をやる予定だね。おそらく年を跨ぐけどちゃんとエピローグになって、この作品の本編はそれで完結する予定だね。とりあえずそこから先はその時にお知らせするよ。〉

 

キャ 「しかし現状はAXZ編の執筆も終わってないからな。」

 

〈まあ……そうですが……。〉

 

勇・奏・キャロル「これから作者が頑張るので皆さまも応援よろしくお願いします。」

 

〈最後まで自由なキャラ達だな……〉

 

勇「そういえば作者は誕生日の投稿がコレで良いの?」

 

〈まあ……楽しんで書けてるから良いんだよ。そして楽しんでくれる人もいるからね。本当に僕は嬉しいから大丈夫だよ。〉

 




本日は箸休め回となりましたが、明日から四期への閑話を始めます。(誕生日のくだりは本当ですが、確かに記念するべき日の投稿チョイスとしては微妙だったかもしれません。申し訳ありませんでした。)

次回のサブタイトルは〈終戦だよ!ヤンデレ集合!〉です。

更新をお待ちください。

そして11月1日の更新よりコラボ章が開始します。

此方がお相手の〈神咲 胡桃〉さんの作品情報です。

タイトル〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉
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終戦だよ!ヤンデレ集合!

装者とキャロルの戦いは終わり、キャロル達は〈SONG〉へとやって来た。しかし彼女達は気付かない。この二人は既に契りを済ませていることを。


~~キャロルとの戦いから三日後の司令室~~

 

「というわけでキャロル君達も無事に俺達〈SONG〉に合流してくれることになった。皆よろしくするんだぞ!」

 

司令の元気な声が部屋に響いた。

 

「ふん!そういう訳でオレ達もこちらで厄介することにしたのでな。よろしく頼むぞ泥棒猫共。」

 

訂正。一触即発だった。

 

「キャロルちゃん!私達はお互いに勇君の魅力に惹かれた者同士だもんね!仲良くしようね!正妻戦争から敗れたキャロルちゃんは私達を助けてくれるもんね!」

 

「立花の言う通りだな。私達は同じ人物に惚れた身だ。良き仲間になれるだろうな。だが立場は弁えて貰おう。」

 

「これでてめえが義妹になる未来はなくなった。あたし達の方が立場は上だぜ?」

 

「キャロルは仲間。それは良いことだけど」

「あたし達の方が偉いのデス!」

 

「はいはい。皆キャロルをいじめないの。傷口に塩を塗るなんて可哀想でしょう?」

 

「いえいえマリアさん甘いですよ?私は九年の想いが奪われるところでしたから、まだ足りないと思いますよ?」

 

装者一同が盛大にキャロルを挑発した。そうだよね。皆キャロルに勝ったと思っているもんね。

 

「?七人がかり且つ勇の情けで立ち上がらせてもらった、負け犬集まりではなかったのか?まぐれの過信と妄想癖は正直見苦しいぞ?」

 

キャロルの涼しい表情は崩れない。なんならドヤ顔だった。

 

「いや、まだ紹介の途中なんだが………」

 

司令の申し訳なさそうな声がして、全員言葉が止まった。そして更に別の人物が司令室に入って来た。

 

「おお!やっぱり皆揃っているゾ!チビ二人もいるし、他の奴等も戦えるのが楽しみだゾ!」

 

「ミカ!生きていたの!?」

「あたし達があの時間違いなく倒したはずデス!」

 

「久しぶりねマリア・カデンツァヴナ・イヴ。良い顔してるじゃない。ガリィちゃんの目はやっぱり狂ってなかったわね。」

 

「ガリィ!?貴女がどうして!?」

 

「派手な戦いだった。我々も良いモノを見せてもらったぞ。」

 

「レイア!お前生きていたのか!あの時確実に倒した手応えがあったぞ!」

 

「ごきげんよう翼さん。貴女も成長してるようで次の手合わせが楽しみだわ。」

 

「なんと!ファラも生きていたのか!」

 

やっぱり皆〈自動人形〉が再び現れたことに驚きが隠せなかったようだ。すると司令は咳払いして話を進めた。

 

「そうだ。キャロル君配下の彼女達も俺達の仲間になってくれたのだ。心強いことだな!」

 

「だが!オッサン!こいつらは町の破壊を強行したんだぞ!大丈夫なのかよ!」

 

「ふん!心配は要らんぞ義姉よ。オレか勇かレイアが戦闘翌日には該当エリアの修復を行っている。司令室にも報告が届いているだろう?」

 

「ああ。戦闘日の前日に該当エリアに避難勧告が出され付近の住人は前後三日避難していたし、戦闘日翌日には付近は元通りだったそうだ。故に今まで報告していなかったのもあるがな。」

 

そう。僕達は該当日の前後で付近の人払いと復元を抜かりなく行っていた。勿論ガヴリエルみたいな天使も使ったけど、実際は比較的スムーズに終わっていた。

 

「ザフキエルの〈四の弾〉ね。あの力ならそれが可能だわ。」

 

「その通りだ。故に何も問題は行っていなかっただろう?」

 

再び司令が咳払いをして話を戻した。

 

「そういう訳だ!皆これからも頼むぞ!」

 

「ああそれと、ファラ達がお前らと戦う時は、

〈ダイン=スレイフ〉の旋律と霊力の計測の為に性能が落ちていたのでな。本来の力はまだ出しきれていなかったぞ?」

 

「嘘!」

「まだ全力じゃなかったのデスか!一体どこまでトンデモなのデスか!」

 

当然こういう反応もあるよね。

 

「故に研鑽しろよ小娘共。オレ達は常に勇の側にいる努力を怠らんからな?」

 

「聞いたかお前ら!まだあたし達は強くなれる!まだまだ上を目指せるんだ!これからも負けられないぞ!」

 

「そうだね!頑張ろう!」

 

「まだまだ私達は強くなれる!そして勇にまとわりつく邪魔者を倒せる!そうすれば勇と………」

 

「調!聞いたデスか!」

「うん。切ちゃん。私達も頑張ろう!」

 

「まだ私達は終われない!あの時の奇跡を私の手に納めてみせる!」

 

「やることが増えちゃったなぁ。でも、うん!私も頑張ろう!」

 

こうして響達は新たな目的をもって訓練に臨めるようになり、更に新しい相手と巡りあえた。彼女達はこれからも強くなるだろう。

 

 

 

~~キャロル合流から一週間後の司令室~~

 

キャロル達が合流を果たしたことで、エルもキャロルと再会ができた。ついでにシャトーはフロンティアに現在は置いてあり、司令室・僕達の家・シャトーには、それぞれに対応した転移の陣が組み込まれた。これに伴い、僕達の家もそれぞれ改装された。付近の敷地をまるごと買い上げ、敷地が今までの三倍になった。出入りの人数を考えたらある意味当然だよね。

 

「なんと!お家が広くなったのデス!これで秘密基地が作れるのデス!」

 

「修練の環境を整え易くなったのは喜ばしいことだ。これで私はもっと強くなって害虫を退治できる。」

 

「うーん……勇君を押し倒せる私だけの部屋を確保しないと……。」

 

「食料庫の充実はやっぱり必要だよね!どこにしようかな!」

 

「秘密道具の収納場所がようやく確保できる!これでもっと機会をうかがえる!」

 

「モニタールームの充実と機材の調達をしないと……。私達のアドバンテージをいかさなきゃ。」

 

「やっとパパとママの仏壇を静かなところに置ける。今まで騒がしすぎてごめんなさい。」

 

なんだろう。まともなことに使いそうなメンバーが少ない。姉さんと響、かろうじて調ちゃんぐらいかな?まともなことを言ってるの。

 

「私の研究所の二号室か。確かにここなら鮮度の良いデータがとれて、解析までのロスタイムも少なくて済むな。良い場所だな勇?」

 

当然装者以外も利用しますよ。

 

「ええ。ようやく始まりますねフィーネさん。ああそれと、後でシャトーに来て貰えませんか?キャロルから話があるそうですよ?」

 

「ディーンハイムから小娘共ではなく私に話か………。わかった。このバカ共の教育が終わったら向かうとしよう。」

 

「頼みますね。あと僕も同行だそうなので、出発の時には呼んでください。」

 

「わかった。しかし今更なんの用事だ?検討がつかんぞ?」

 

フィーネさんはそう言いながらも姉さん達の教育を始めた。当然だけど、切歌ちゃんと未来とマリアさんの案は後回しになり、響・調ちゃん・姉さんの意見は優先され、翼さんの件は自己努力なら許可された。ある意味一番厳しいね。

 

「さて、僕もプライバシーを確保できる空間の確保にとりかかりますか。」

 

実は自宅では安眠をあまりできていない。姉さんや未来、マリアさんに狙われているから、自宅の方が割と油断できない。

 

「だから熟睡したい時はフィーネさん達監視の本部か、六喰さんみたいに宇宙空間で寝てたんだよなぁ。本当に長かった。」

 

でもハジメテをキャロルにあげられたのは嬉しかった。だって僕の前世からの初恋だったしね!キャロルも喜んでくれたから僕は幸せだな。

 

「そう言えばファラさん達も交代でこっちに来てくれるから、色々助かるな。ミカちゃんだけは一人だと心配だけど護衛ならある意味最強だしね。」

 

「勇!小娘共への説教は済んだぞ!ディーンハイムを待たせる前に行くぞ!」

 

僕はフィーネさんに呼ばれてシャトーに向かった。でもシャトーに到着したフィーネさんに不幸が襲いかかるなんて、この時は僕も含めて呼ばれてたメンバーはまだ知らなかったんだよなぁ。




さて……フィーネさんにもたらされた不幸とは一体なんだというのだろうか?その答えは番外編にて記されますので、興味のある方はそちらもお願いします。

次回〈ネタばらし……そして精霊同盟の締結〉です。ついに最強の妹が爆弾を落とします。

更新をお待ちください。

神咲さんとのコラボ章開始は日曜日からです!
〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉
https://syosetu.org/novel/222283/
です。開始前までに読んでいただけたら、より内容を楽しんでいただけると思いますので、よろしければお願いします。


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ネタばらし……そして精霊同盟の締結

ついに妹が爆弾を落とします。しかも最強の武器を携えてます。装者達の心は一体どうなるのか!?

本編へどうぞ


~~エルフナインside~~

 

フィーネさんとの用事(R18)が行われた三日後、司令室にて勇さんとキャロルを除いたメンバーが集められていました。ちなみにフィーネさんは司令と籍を抜いてます。やはり勇さんの魅力はわかる人にはわかるのです!

 

「実は僕から皆さんに大事なお話がありましたので、今回集まっていただきました。」

 

「エルフナインちゃんどうしたの?大事な話って?」

 

「私達全員を呼んだ話か。さぞ大事な話なのだろうな。」

 

「はい。まず前提に、勇さんの初恋は貴女方ではなくキャロルです。憐れな道化の演出お疲れ様でした。」

 

「「「「「「「ハ?今なんて言ったの(デス)?」」」」」」」

 

どうやら皆さん現実がわからないようなので、もう一度丁寧に説明しましょう。僕は優しいですからね。

 

「聞こえませんでしたか?勇さんの初恋はキャロルであって貴女方ではありませんと言いました。」

 

「あはは………。エルフナインちゃんが何を言っているか私はわからないなぁ。」

 

「仕方ありませんよ。響さんの頭は残念ですから。」

 

「エルフナインちゃ~ん!も~冗談が下手だなぁ!勇君の幼馴染みは私と未来で、私達より先に勇君に出会える人はいないのにぃ~!どうしてキャロルちゃんが初恋なのぉ~?私達に教えて欲しいなぁ~!」

 

どうやら現実を知らない方々のようです。やはり丁寧に説明しましょう。

 

「皆さんがご存じかは知りませんが、勇さんは平行世界の方ですよ?そこでキャロルを知ったのですから、皆さんより早くにキャロルを知ることができます。そして勇さんは前世では届かない片思いをしていました。ここまではお分かりですか?」

 

「………勇君に平行世界の情報があるのは知っていたけど、まさかそれでキャロルちゃんに片思いしてたんだぁ~!私達がこんなに愛していたのに、その想いが伝わらなかったのはキャロルちゃんのせいだったんだね。ふ~ん………私達を差し置いてキャロルちゃんが余裕だったのはそういうことだったのかぁ!納得したよ!なんでキャロルちゃんだけあんなに嬉しそうな顔ができたのかねぇ。今度はコロサナキャネ。」

 

やはり危険思想の方々でした。キャロルのことを隠して正解でした。

 

「何故僕がこのタイミングで皆さんにお伝えしたかわかりませんか?」

 

「決戦でキャロルに負けたら心が完全に折れたからでしょう?でも残念ね。私達はキャロルに勝ったのよ?今更じゃないかしら?私の愛しい勇が私を裏切る筈ないもの。」

 

「アイドル大統領の頭は妄想で幸せですね。よくその状態でガリィに勝てましたね。おめでとうございます。」

 

「なんですって!黙って聞いていれば好き放題言って!」

 

「落ち着けマリア。エルフナインよ、遺言として聞いてやるから最後まで話すが良い。最も、その後の保証はできないがな。」

 

やはり力に溺れだす方々でした。僕の判断に間違いはありませんでしたね。話していれば決戦前に監禁されて人質にされていました。恐ろしい人達です。

 

「今からおよそ一週間前に勇さんとキャロルは結ばれました。なんとビデオもあります!これ程素晴らしい形があると思いますか?」

 

「エルフナイン。それ以上妄言を吐くなら!」

「あたし達も黙らないデスよ?大人しくするべきデス!」

 

やはり聞き分けがありませんね、残念です。仕方ないので司令室で上映してあげました。

 

「嘘………勇君だ………なんで!」

 

「そんな!こんなことが!」

 

「なんで勇が!ちくしょう!」

 

「ああ!私の王子様が!」

 

「勇さん……なんで!」

「あたし達じゃないんデスか!」

 

「なんて姿………キャロルちゃんが憎いよぉ!」

 

装者の方々がようやく現実を理解しました。遅すぎて話が進みません。

 

「さて、本題にはいりましょう。」

 

「エルフナイン!まだあたし達に用があるのか?あたし達は今からキャロルをシバきに行かなきゃならねぇ。邪魔してくれるなよ?ああそれと、帰ってきたらお前もキャロルと一緒のところに送ってやるよ。安心しな?二人共殺さねぇからよぉ!あたし達は優しいからなあ!」

 

「残念ですがそれは叶いません。キャロルからの伝言はこうですから。」

 

〈お前達がオレの愛しい勇の魅力を知っているのは、仕方ないから許容してやる。だが見ただろう?オレと勇の愛を。故に勇の正妻はオレだ。それをお前らが認めれば今の生活を保証してやる。どうだ?魅力的な提案だろう?〉

 

「以上です。皆さんも勇さんと離されたくなければキャロルには逆らわないことをオススメします。」

 

「皆!予定変更するよ!悲しいけどエルフナインちゃんを縛りあげるよ!そしてキャロルちゃんを引きずり出さして今度こそボコボコにするよ!」

 

やはりこうなりましたか。本当に残念です。

 

「ちなみに僕の感覚器官はキャロルとリンクしています。ではキャロル後をお願いします。僕はお腹がすいたのでカップラーメンでも食べてきます。」

 

 

〈良いだろう小娘ども!妹に手を出し、更にはオレと勇を引き剥がそうとしたその罪の対価を支払うが良い!後……エル、カップラーメンならフィーネの部屋にあるからな。適当に食べてこい。〉

 

するとキャロルが転移して来ましたので、僕はフィーネさんのお部屋に向かってカップラーメンでも食べるとしましょう。

 

「一つ良いことを貴様等に教えてやろう。今のオレはあの時と違い完全礼装を纏うことができる。更に霊力はあの時の百倍は下らんぞ!つまり貴様等がオレを倒せる可能性は皆無だ!」

 

キャロル!流石です!やはりキャロルは雄々しい姿も似合います!……え~っとラーメンは……このラーメンが美味しそうなのでこれを食べましょう!(あっさり系の塩味のラーメン)

 

「お湯を入れて三分待ちます。その間にキャロルの様子を見ましょう。」

 

カップラーメンの準備を終えるとキャロルの方では場所を変えて戦いが始まるようです。

 

「キャロルちゃんからきてくれて私達は嬉しいよ。だって探す手間が省けたからさぁ!!」

 

装者が勘違いをしてるのですが今のキャロルはあの時の百倍強いです。本来のキャロルはあの時の時点で皆さんの十倍強かったので(一撃に束ねた虹の旋律のみ例外でした。)、今なら皆さんの千倍は強いですよ?

 

「嘘!虹の旋律が通じない!」

 

言わんこっちゃありません。だから警告したのです。これから全員仲良く吊るされますね。わからず屋の皆さんのことが、僕はとても悲しいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに七人纏めて、三分足らずで吊るされてました。そして皆さんはキャロルからの条件を呑み、正妻はキャロルに決定しました。皆さんようやく理解してくれました。めでたしめでたしです。さて、ラーメンも出来上がったので僕も食べるとしましょう。

 

~~エルフナインsideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~翌日の司令室~~

 

 

(~~キャロルside~~)

オレが勇の正妻になることを小娘共の体に教えた翌日、ちゃんと書面にして渡してやる為に全員を呼び出した。

 

「ねえキャロルさん。何故フィーネさんもいるのでしょうか?」

 

そういえばこいつ等に教育を施したんだったな。あの時奴ら七人のいる空間の酸素濃度を、軽くラファエルでギリギリまで下げて、ダヴルダヴラで全員拘束した。その際に奴等を窒素させ、解放して欲しければ自らの言葉で正妻を諦めさせるように促した。そのためにガヴリエルは使わず少しずつ窒素させて、気絶したらキスを用いて酸素を供給してやる。この時にオレと勇の愛の記憶を流しこんでじわりじわりと教育した。流石にマリアと未来は手強かったが、時間の問題でしかなかったな。

 

「ああ…その件なら、フィーネの奴が勇の魅力に気付いた。そして勇とオレの愛を眺めている内に勇のモノになる覚悟ができただけさ。」

 

「そうだな。私は〈あの約束〉さえ果たしてもらえれば構わないからな。だから側室で構わないのさ。」

 

「マジかよ。フィーネまで虜にしたのかよ。勇のアレはそんなにすげぇのかよ。」

 

オレの義姉にあたるクリスはフィーネと関わりが強かったな。ならばその反応は当然か。

 

「すごいどころではないな。オレが意識を保てない程素晴らしいモノだ。だが見ての通りあの状態の勇はすごい勢いなのでな。お前らにもチャンスをやることにしたのさ。」

 

「キャロル!私達に教えて欲しい!どうすれば勇に愛してもらえるの?」

 

「口の聞き方には気をつけろよ?貴様等はあくまでもオマケだ。だが、それでも尚チャンスが欲しいと言うなら、詳細を教えてやる。」

 

「お願いしますキャロルさん!私達にその詳細を教えてください!」

 

あの小日向未来さえもオレに逆らわない。それほどまでに勇と契りたいということか。面白いな、やはり機会を伺う眼をしている。奴等がオレと同じステージに立てばオレ自身の立場は危ういか。

 

「なに、簡単なことだ。お前達が既成事実を起こすのではなく、勇に起こしてもらうことだ。勇はオレにハジメテをくれてからは、そういうことを拒まなくなったからな。勇の言い方をするならそうだな……

 

〈デートしてデレさせる〉

 

ということだ。どうだ?簡単だろう?」

 

「あの勇さんに」

「デレてもらうデスか。」

 

「そうだ。但し勇を気絶させて拘束し、無理矢理合意させたらオレ自ら愚か者に灸を据えてやる。わかりやすいだろう?お前等の想いはお前等の物だ。そこにオレは介入しないし、お前等にも介入はさせない。」

 

「つまり私達がお互いの妨害をしなければ、勇と合意があれば到っても良いということですね。キャロル様の心の広さに感謝します。」

 

あの風鳴翼が土下座までするか!なんとすごい光景だな!トップスターも形無しだな!

 

「そうか………私達はこの想いを諦めなくて良いんだ。なら!私達はどんどんアピールしなきゃね!それこそキャロルさんに嫉妬されるくらいにね!」

 

やはり面白いな立花響!オレに従いながらも諦めを知らんその根性は素晴らしいな。

 

「ああそれと、寝込みを襲って来たせいで勇は自宅で熟睡できなかったらしいからな。もしオレに黙ってそんなことをすれば勇が許してもオレが許さんからな?」

 

この言葉にクリス・未来・マリアが反応した。成る程貴様等が主犯か。やはり未だに勇に抱かれたいということか。

 

「それと、貴様等は正妻になれずとも勇に愛されたいか?」

 

「もちろん!本当は正妻になりたかったけど、今の私じゃあ無理だから。でもいつかは私が奪い返す!正々堂々と勇君に愛されてみせる!その為に今は側室でも構わない!」

 

「私は勇に救われた!その想いを組んでもらえるなら!私は今の屈辱を受け入れる!そして必ず一番に至る!」

 

「どこまでいってもあたしの愛しい弟だ!だが!正妻以上に愛される姉をあたしは目指してやる!」

 

「私達の絆を思い出させてくれた勇さんに!」

「あたし達の想いで応えるデス!」

 

「「だから今は無理でも絶対に諦めない!」」

 

「彼は私の運命の王子様なの!絶対にハートを射ぬいて見せるわ!キャロルさんも覚悟してなさい!」

 

「今の私はキャロルさんに勝てないけど!勇君への想いまで負けた訳じゃあない!まだ勝負は終わってない!」

 

なんと全員オレから勇を奪うつもりだった。もはや呆れを通り越して清々しいな!

 

「良いだろう!オレは貴様等の挑戦から逃げんし!勇を奪わせるつもりは毛頭ない!故に格の違いをこれからも教えてやる!」

 

ああ楽しいなぁ!オレにもこんなに心踊るライバルがいるのだ!例え敵わずとも向かって来るそんな奴等がいる!それこそ嘗てオレが求めていたもう一つのモノだ!故にオレは負けられない!そこに求めているモノがあるのだからな!

 

 

もちろんこの後同盟締結の書類を全員に渡したぞ。約束は守るモノだからな!




なんとフィーネは司令との籍を抜けていました。コレはなんというか……。そして装者の心はボロボロですね。

次回〈見限りのついた組織……そして新たなる敵〉

ついにあの三人が表舞台に上がります。

更新をお待ちください。

神咲さんとのコラボまで後三日です!
〈錬金術師と心火燃やしてみよっか?〉
https://syosetu.org/novel/222283/
よろしければ此方を読んでお待ち下さい。


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閑話 見限りのついた組織……そして新たなる敵

さて、次の投稿でアンケートの結果を発表します。
前半のアンケートを80~95話まで。
後半のアンケートは96話~この話まで掲載しています。投票がまだの方は明日の18時59分までにお願いします。そして結果は明日の設定集の前書きで発表します。

そして1日確認が遅れましたが、お気に入り登録が600件を越えました!皆様ありがとうございます!

そしてコレが四期へ至る最後の閑話です。

それでは皆様本編へどうぞ。


「局長!本気なんですね。貴方は本当に考えを変えるつもりはないとおっしゃるのですね。」

 

「変えないとも。それはね。僕の目的は至ることなんだよ。神の座にね。頑張ってきたじゃないかそのために。弱者を見限り強者のみが至る世界だ。素晴らしいだろう?」

 

もはやこの男は私達に本心を隠す気はないらしいわね。

 

「そうですか。では私達は、この組織に見限りをつけて離れるとします。」

 

「あるのかい?行く宛は。」

 

「ご心配なく。私達にも考えがあります。なので貴方はどうぞ至りたい形に向かってください。」

 

「寂しくなるね。この組織も。」

 

「ご冗談を。ではお互いに二度と会わないことを祈りましょう。貴方の作った組織が悲願を達成することはないと思いますよ。」

 

そう言って私は局長との話を終えて退室した。

 

「やはり勇の話の通りだったわね。キャロルがレイラインを一度スキャンしたことで、局長は本気でアン・ティキ・ティラの人形を探している。現在は修復されているけど、一度わかった場所は必ず攻撃されるわね。どうにかしないと不味いわね。」

 

私達が成すべきことは支配からの解放と、人類の未来を掴みとること。そのために結社に属して非道と言われることすらやってきたが、意味を成さない結果に繋がるなら、態々組織にいる意味はないわね。

 

「サンジェルマン………やはり局長は変わらなかったのね。そして私達はあの計画に賭けるしかないのね。」

 

「すまないわねカリオストロ。私達では局長は止められなかった。だから行きましょう。」

 

「キャロルの方にも連絡がついたワケだ。現在のシャトーはフロンティアにあるらしい。私はそちらに向かいたいが、どう思うワケだ?」

 

「ちょっとだけ待ってくれないかしらプレラーティ?どうせキャロルのことよ?あの規模で暴れた以上は、私達への報せだったのかもしれないわ。」

 

「先生。私達はそろそろ義兄さんと合流すべきではないでしょうか?独立戦力となった義兄さん達になら、今の私達が合流しても問題ないと思われます。」

 

「確かにセレナの言う通りね。そろそろ勇と合流しましょうか。どうせキャロルもそこにいるわよ。というか、そろそろ勇と結ばれる頃じゃないかしら?」

 

「そうね。キャロルが強欲なのはわかっていたことだし、勇への愛をこれでもかとシャトーを音響にして唄ったはずよ?なんなら装者を纏めてねじ伏せてしまったんじゃないかしら?」

 

というか嫉妬に狂ったキャロルは、間違いなく装者と戦った筈で、その結果和解したと見て良いわね。

 

「………勇の女性関係が不安になって来たわ!三人とも急いで日本に向かうわよ!」

 

「完全に母親よね!その考え方!なんだか組織を動かしていた時よりも良い顔してるわよ!」

 

「だが確かに勇のフラグ建築能力は高いワケだ。なんなら装者全員の心を掴んでいるかもしれないワケだ。」

 

「流石は義兄さんですね。マリア姉さんとの関係の進展が気になって来ました!」

 

「ふふっ、セレナは姉思いだったわね。だけど心配しなくても大丈夫だと思うわよ。きっと勇なら上手く関係を築いているわよ?」

 

「そうですよねカリオストロ先生!きっと素敵なことになっている筈です!」

 

 

 

彼女達は弟子の暮らす日本に向かった。だがその先で弟子がもっとスケールの大きなやらかしを、していたことはまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~結社執務室~~

 

 

「寂しいものだね。やはり。」

 

神にならび立つことを目刺し、〈シェム・ハ〉の打倒を目指す者〈アダム・ヴァイスハウプト〉。彼は組織を統制できる能力がなければ、人望もない。その場での出来事任せの傾向の強い彼は、先のこと等考えてはいなかった。そんな彼の元に新たなる来訪者が現れた。

 

「お初にお目にかかります。貴方が完璧な人間と呼ばれし存在とされるアダム・ヴァイスハウプトで間違いありませんか?」

 

「おや?見ない顔だね君達は。誰なんだい?一体。」

 

「これは失礼しました。私は結社所属の〈魔術師〉にて、嘗ては人類最強を目指した者。

名を〈エレン・M・メイザース〉と申します。エレンとお呼びください。」

 

「ワタシの名前は〈ジェシカ・ベイリー〉です。ジェシカとお呼びください。」

 

「私の名前は〈アルテミシア・ベル・アシュクロフト〉です。アルテミシアとお呼びください。」

 

彼女達は勇の力の前任者、嘗て〈精霊〉と呼ばれた少女達の力を使い、何者にも負けない存在に至ろうとしたイギリスに本社を置く巨大企業の、

〈デウスエクスマキナ(通称DEM)インダストリー〉の発明品であり、最強の技術でもある、顕現装置(リアライザ)の使い手であった。

 

「聞き覚えがあるね、その名前は。科学の力で異能の力に対抗せんと集められた者達だったね。確か。」

 

「はい。私達は〈魔術師〉として、人間でありながら超常の者達と渡り合うことを目的とした部隊でした。」

 

「だけど粛清されただろう?彼女達に。なのに何故ここにいるんだい?そんな君達が。」

 

「貴方は平行世界を信じますか?」

 

「穏やかじゃないな。その話題は。だがあるだろうね。可能性は。」

 

「私達は嘗て、〈精霊〉と呼ばれる者の力を求め、世界を上書きして目的を果たそうとしていました。しかし私達の前には、その目的を邪魔する者達がおり、その者達のせいで彼の世界では目的を果たせませんでした。」

 

「しかし気づいたらこの通り、私達は全く知らないにいたのよね。エレン?」

 

「だからワタシ達は情報を求めまシタ。」

 

「だからこそ行き着いたのかい?この組織に。」

 

「ええ。そして私達は偶然か、それとも必然かはわかりませんが、その世界の知識と記憶を持ってこの世界にたどり着きました。」

 

「目的があるんだろう?どうせ。だから語ると良いよ?詳細を。」

 

「ええ。この世界にもその精霊の力を宿した者達が確認できました。私達はその力を求めています。貴方は神下ろしを行おうとしています。ターゲットが同じ以上、手を組む価値はありませんか?」

 

「面白そうな話だね。色々と。だがこちらにあるのかい?見返りは。」

 

「私達の組織の技術の理論提供と、組織の運営。この二つでは不足でしょうか?」

 

「悪くないね。条件は。良い関係を築こうじゃないか。お互いに。」

 

こうして嘗て最強を目指した者達と、創造主への反逆を目論む完全なる者が手を組んだ。世界を巻き込む戦いの幕があがる日はそう遠い未来ではないだろう。




師匠達が組織を抜けたので、四期の開始時期は原作よりズレます。なので本作品のビッキーの宿題提出は支障がありません。具体的な時期は本編再開後に明記します。

また、27日に投稿した話で次章の予定タイトルを、
〈守りたい〉→〈救いたい〉に変更いたしました。
違和感があった方方には申し訳ありません。


次回〈設定 嫉妬の魔女降臨〉です!

そして11月1日からはコラボの投稿を開始します!

お楽しみにお願いします!

神咲さんの作品は此方からどうぞ
〈錬金術師と心火燃やしてみよっか?〉
https://syosetu.org/novel/222283/


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設定 嫉妬の魔女降臨

お待たせしました。アンケート結果を発表します!
これがコラボ章終了後に投稿するのデート章の順番です。

①バイクデート(翼)
②ホラー映画(クリス)
③お料理は心を込めて(きりしら)
④海のデート(マリア)
⑤夏祭りデート(未来)
⑥虫捕り(響)

投票してくださった皆様ありがとうございます。


今回も恒例の章末の設定集です。

それでは皆様本編へどうぞ。




◯雪音 勇

 

この作品の主人公にして本章の黒幕の一人。

 

・とうとう翼さんも病み堕ちさせた。

・キャロルと結ばれることが決定した。

・番外編においてキャロルにえげつない強化を施した。

・そしてフィーネさんにも手を出した。

・実は初恋がキャロルだったので、頑なに装者達の誘惑に耐えていたことが発覚した。

・愛してくれる時はキャロルも意識が保てない程、荒々しいことがあるらしい。

・世界の危機ではなかったこの章では結界の構築回数が戦闘回数より多い。

・洸さんや八紘さんの娘への接し方には思うところがあった。その理由が家族との突然の死別から来ている。

 

◯キャロル・マールス・ディーンハイム

 

本作品のメインヒロインにして、この章のラスボスであり黒幕の一人。

 

・絶対なる依存型ヤンデレで、一度は装者から戦う力を取り上げた後に自動人形にテストをさせた。

・本当の実力なら、響達のエクスドライブ+完全礼装の合計値の十倍は強かった。しかし虹の旋律には相性の問題で敗北した。

・番外編にて世界で二番目に強くなる程、勇君の霊力を体に取り込み、保有霊力は本章開始前の百倍となっている。

・エルと感覚の共有ができる。

・勇君とは魂単位で溶け合っている。

・その結果閑話の頃には虹の旋律すら克服している。

・ライバルが正々堂々と来る分は受けて立つ。

・フィーネさんとは、ヤンドラ・サルヴァスパを奪いあった仲だったらしい。

・本章開始直後からエンジン全快で駆け抜けた。

・インフレが強すぎて、次章以降の扱いが少し難しくなった。作者も頑張ります。

・響達が側室なことは気にならない。だって自分が正妻だから。

 

◯エルフナイン

 

本章の黒幕の一人にて、装者に爆弾を落とした妹。

・〈SONG〉加入直後から自分の意思でスパイしてました。

・原作以上にキャロルへの想いは強く、装者達に平然と嘘がつける。

・原作以上に黒く、恐ろしい程頭が働く。

・閑話で人質にされかけるも、キャロルに難なく助けられる。

 

◯立花 響

 

キャロルの登場でいよいよ立場が危ういことを自覚したが、時既に遅かった。

・最終決戦で勝負を決めたものの、完全にアレは勇君の手柄。

・キャロルに言葉遣いを教育された。キャロルは敬うべき存在で、勇君は手に入れるべき初恋の彼。

・選ばれた天使はガヴリエル。人と繋がる手段を獲得したが、最愛の彼の初恋は自分ではなかった。

 

◯小日向 未来

 

ヒロインの一人にしてヤンデレ。キャロルの登場までに勇君を堕とせなかった。

・選ばれた天使はメタトロンで、折紙からの評価も高かったが、キャロルには勝てなかった。

・閑話で逆襲を企み、虹の旋律を奏でるも、キャロルには勝てなかった。

・キャロルにはその執念を認められている。でも側室。

・レイア戦では、クリスを守りながらで力を出しきれなかった。ミカ戦に到っては場所も悪かった。実力を発揮しても勝てたかは不明。

 

◯風鳴 翼

 

ファラ戦でヤンデレに覚醒した。物事を都合良く解釈しようとしたが、キャロルの前では無力だった。

・片付け能力は、人並みまで叩かれたらしい。

・選ばれた天使はサンダルフォン。剣として、人としての在り方が選ばれた理由らしい。

・ギア修復までは勇君を独占できていた。しかし行動には移せなかった。

 

◯雪音 クリス

 

レイアさんに初戦でボコボコにされた。アイツ許さねぇ精神で頑張ったが、イグナイトを使いこなせたのは最後。

 

・選ばれた天使はカマエル。琴里に、恋人以上に愛され、恋人すら嫉妬させると言いきって見せた。

・とうとうキャロルに勇君を盗られた。しかし逆襲しても今もうは勝てない。

・幼馴染みがぼろぼろになる姿で心が折れかけた。

・洸さんの言葉には思うところがあったらしい。

 

◯マリア・カデンツァヴナ・イヴ

 

キャロルに最初にシバかれた装者。復帰するまで目の前でディープキスを見る羽目になる。

 

・アドバンテージがほとんどないのに、アガートラームを壊された。

・更にガリィとの戦いでは、防衛戦を強いられることが多い。

・風鳴邸では勇君に膝枕してたのに、翼から眼中にない発言をされてしまう。後の展開で強化されます。

・シャトーに突撃をかまそうとして勇君に止められた。危ないところだった。

 

◯月読 調

 

後述の切歌と、二人で一人と戦うスタイルをとる。

 

・ミカちゃんとの戦いでは、勇君への愛が試されたものの、切歌と二人で乗り越える。

・使用する天使はラファエルで、主に耶具矢の能力を継承する。

・マリアへのサポートはやめた。

 

◯暁 切歌

 

先述の調と、二人で一人と戦うスタイルをとる。

 

・ミカちゃんとの戦いは、調と一緒に乗り越えた。でも実力不足は自覚あり。

・継承された天使はラファエル。主に夕弦の能力を継承する。

・前日譚で、勇君の異変に気付いて、マリアのお使いをおふざけ無しで頑張った。普段もこのくらい頑張りましょう。

 

◯風鳴司令

 

いつも少女達を支える頼れる〈OTONA〉で、やはり今回ま出番は少なめ。

 

◯緒川さん。

 

いつも通り描写が少ないです。ごめんなさい。

 

◯フィーネさん。

 

番外編でキャロルと勇君に心を染め上げられる。あまりの快楽だったので、勇君の側室にすぐ寝返った。

 

・キャロルとはヤンドラ・サルヴァスパを取り合ったことがあるらしい。ついでにラジエルを継承している。

・アダムとやっていることはあまり変わらない。

 

◯ミカちゃん

 

カマエルの力を宿している。呪われた旋律分スペックダウンしていた。

 

◯レイアさん

 

ザフキエルの力を宿している。呪われた旋律分スペックがダウンしている。

 

◯ファラさん

 

ラファエルの力が使える。勇君と密談をしていた。

呪われた旋律分スペックが落ちた。

 

◯ガリィちゃん

 

ザドキエルの力を宿している。

呪われた旋律分スペックが落ちた。

番外編ではビデオ撮影と複製を担当している。

 

◯立花 洸さん

 

一度はクズな発言をしたが、勇君との話で目が覚めた。

その後でしばらく悩んだ後に一人で謝りに行った。ちゃんと男の意地を見せてくださいました。

 

◯風鳴 八紘さん

 

翼さんに不器用な愛情を向けていたが、勇君との話で目が覚めた。その後で翼さんと無事に和解した。

 

◯〈エレン〉・〈アルテミシア〉・〈ジェシカ〉

 

もちろん彼女達は本人です。消し飛んでいた四期の敵として立ちはだかります。但し原作以上のスペックがありそうです。

 

◯アダム・ヴァイスハウプト

 

やっと出てきた全裸。師匠達に離反されたので、エレン達と手を組んだ。平行世界に恨みがあるらしい。

 

◯セレナ・カデンツァヴナ・イヴ

 

姉が正妻ルートから外されたことはまだ知らない。勇君は義兄の扱いとなっている。

 

◯カリオストロ師匠

 

勇君の女性関係が気になるらしい。

 

◯プレラーティ師匠

 

シャトーを返すワケだキャロル!

 

◯サンジェルマン師匠

 

アダムはアダムだった。

何年経っても変わらなかったので、勇君と合流を目指すことにした。

・勇君のヤンデレメーカーには心配が尽きないオカン。

・とりあえず日本に急ぐ。

 

◯勇君の霊力

 

とても高純度のエネルギー。キスでも得ることはできるが、しかるべき手段で取り込むと、相当の質で取り込まれるらしい。

当然だが、勇君との信頼関係ができていなければ廃人になる程の凶悪なエネルギー。

とても依存性が強い。

 

◯ガリィちゃんのお薬

 

相当凶悪な代物。

そして勇君の霊力が混ざると、人ならざる者も狂う程のモノになるらしい。(キャロルの報告書より抜粋)

 

○密告者

 

本作品で唯一救われなかった装者である、〈天羽 奏〉さんです。詳しくは27日の更新で作者と語り合いましたので、そちらをお願いします。

・更に本編への登場が実は決定しています。そのタイミングはまだ明かせませんが、皆様お待ちください。

 

○作者

 

前書きないしは後書きで装者に殺され続けた愚か者。奏さんがメタい時空でチクッたので、装者に殺され続けた。この奏さんが怖い。

 

○本来勇君が想定していた三期

キャロル「来ちゃった♡」

勇「!?」→装者の前でキス→「僕も好きだよキャロル」

装者一同「絶対にキャロル許さない」

勇「ごめんね……僕はキャロルが一番好きだったんだ……。だけど今はみんなも好きだよ。だからキャロルと仲良くしてほしい。」

装者一同「私達はあきらめない!」

司令室で全員を交えた話し合い。

キャロルが装者をねじ伏せて全員に教育完了。以降全員成人するまで結婚は見送り。

三期終了(キャロルが超ヤバいヤンデレなので事実上不可能な計画)

 

 

 

 

○大変な事になった四期

 

実はキャロルの識別名が一番の難産だった。この影響で勇君の識別名も原作の〈デウス〉から変更されている。

詳しくは四期の時に確認お願いします!




皆様お待たせしました!明日の更新より、神咲胡桃さんの作品である、

〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉
とのコラボ章が始まります!

神咲さんの作品はこのリンクからどうぞ。https://syosetu.org/novel/222283/


〈白黄 七海〉さんとその世界の〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉が、勇君とこの世界のキャロルと出会う時一体何が起きるのか?

明日の更新を楽しみにお待ちください。


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コラボ編 平行世界と救いたいモノ
精霊と謎の人物


お待たせしました!この話より〈神咲 胡桃〉さんの、

〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉とのコラボ章が始まります!

今回の此方の時系列では、番外編にてキャロルとの関わりを勇君が持ち、澪さんと接触した帰りに起こった出来事がこの章となります。

そして第一話は勇君が謎の人物と接触する話です!

それでは皆様本編へどうぞ!


僕達が澪さんと別れたその直後に視界が急激に変化し、僕は闇に覆われた!

 

「!不味い!キャロル!どこに………?」

 

キャロルがいない!何でだ!何が起こっている!?

 

《勇!どこにいる!返事をしてくれ!》

 

キャロルの声だ!そうだ!僕が呼び掛ければれば!

 

「キャロル!僕はここだ!返事をしてくれ!」

 

《何故勇の姿が見えず声も聞こえない!勇!どこにいる!返事をしてくれ!》

 

なんでだ!?僕はキャロルの声が聞こえる……だけどキャロルからの返事はない。僕は閉じ込められた……?だけど一体何故………?とにかく!早く状況を打開しないと!

 

「くそ!こうなったら!〈ラジエル〉!〈ミカエル〉!」

 

僕はこの状況の原因を探る為、そして打開にラジエルとミカエルを展開した。これで状況の原因と打開策さえわかれば!!あとはミカエルで脱出して立て直す!

 

『やっと能力を使ってくれたね!じゃあその力をいただくよ!』

 

僕は謎の声に〈ミカエル〉と〈ラジエル〉の力が奪われた感覚がした。そして僕の中の〈ミカエル〉と〈ラジエル〉の力が失われていくことを理解してしまった。

 

「何が……起こっ……て……いるん……だ?」

 

『ありがとね。貴方のおかげでようやく完成するわ。そして私達の世界へようこそ。歓迎するよ。』

 

「世界だと!?まさか貴方は!」

 

「心配しなくても大丈夫だよ。貴方には幸せをあげるんだから。」

 

その女性は〈灰色のフルボトル〉と〈黄色のフルボトル〉を持っていて、力を奪われた僕は、そのまま意識を刈り取られてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは?」

 

僕が目を覚ますと森の中にいた。

 

「まずは状況を把握しないと。」

 

〈ラジエル〉を展開しようとしたけど、展開できなかった。ならあの出来事は………

 

「ラジエルの見せた予知夢でもなければ、〈ミカエル〉の力も感じない。あの人物に力を奪われたってのがオチだな。」

 

僕はこういう時に一番信頼している天使を奪われた。いや………天使を構成する要素と、その為の霊力を奪われたな。

 

「師匠の教えの一つ。

 

〈未知の状況に陥った時はまず冷静であれ〉

 

今の僕に残っている物は十個の天使(内一つは収束した形だけど)と、錬金術師としての力。そして〈アレ〉が三体分と八割近いの霊力か。しかし〈ジェム〉は無いけど何故か〈奥の手〉はある……か。だけど何故?」

 

霊力は最悪食事と休憩で補充可能だけど、奪われた天使は厄介だな。情報が無いのは不味いし、何よりキャロルのことが心配だ。小道具の方はあったら御の字だからまあ良いけど〈奥の手〉は使いどころが重要だな。

 

「せっかく僕達は新しい関係を始めたのに、出鼻を挫かれたな。流石に許せない!絶対にキャロルと二人で帰る!そしてキャロルの望みを叶える!」

 

しかし怒りに身を任せても状況は変わらないので、まずは現在地を探ることにした。

 

「こんな時に〈ラジエル〉があればすぐにわかるんだけどなぁ。」

 

恐らくそれを防ぐ為に〈ラジエル〉は奪われた。僕が相手でもまずは情報系の能力を奪取・封印するから、敵は複数且つ、さっきの人物と同等以上の人物がいる筈だ。

 

「そして心配なのは何よりもキャロルのことだ。僕と分断されてるのはわかるけど、この世界にいる保障は……」

 

そこで僕は言葉を止めた。この直前に僕達は澪さんに会って何で言われたかを思い出したからだ。

 

「僕とキャロルの魂は溶け合っている。つまりキャロルは必ず僕を見つけ出せる。なら僕は今使える手段を以て情報を集めよう。僕とキャロルなら必ず乗り越えられる!だって僕達はこんなところで倒れる訳にはいかないから!」

 

僕は自分の持っている能力をもう一つ思い出した。

 

「もしここが〈異世界〉でも、この力は通じるかも知れない。ただし触媒は用意できないから僕自身の霊力を使うことになるけど。」

 

僕はこの森の中で平地の場所を探して、陣を描くことにした。〈錬金術〉だ。

 

「観測用の術式は嘗て師匠達がティキで行った物を参考にすれば……」

 

僕は元結社の序列五位だ。ブランクはあっても研鑽は………最近は霊力便りだから不安だけど、まずは起動しないと始まらない!

 

「さて。この(仮称〈異世界〉)の規模と自分の位置、そしてキャロルの所在が判れば、多少のリスクはやむを得ない。どうせ天使を取り戻さないといけないから、襲撃して来る分は返り討ちにして取り戻す!」

 

そして僕は観測の為の大きな錬金術式を展開して、全容の把握の為に集中することにした。だけどそんな僕に………近づいて来た人物がいた。

 

「君が私達をここに閉じ込めた錬金術師だね?なら、君は私の敵だ。心火燃やして…ぶっ潰す!」

 

仮面ライダーグリスが強襲してきた!

 

「仮面ライダーグリス!?」

 

ここはビルドの世界なのか!?でも、このグリスの声は女性の物だった。本来のグリスは男性の筈だ!でも間違いなく、僕の目の前にいるのはビルドの世界の仮面ライダーだ。本編を視聴していない僕でも名前を知っている程の主要人物で、仮にも悪の敵だった人だ。何でそんな人が僕を!

 

「待ってください!貴女は誰なんですか?少なくとも僕達は初対面の筈です!貴女の敵である必要が無い!」

 

「いや。君は私の敵だよ。この結界を発生させている錬金術師は君だろう?その大がかりな術式が何よりの証拠だね!」

 

僕は初めて出会った仮面ライダーに、望まない形で関わることになってしまった。




七海さん視点は神咲さんの投稿で確認をお願いします。
https://syosetu.org/novel/222283/
上記のリンクよりお願いします。(僕も楽しみです!)

さて……勇君は七海さんと最悪の形で対面しました。
仮面ライダーと力を一部奪われた精霊が語る事とは?

次回の更新をお待ちください。


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仮面ライダーと関わってみようか?

力を奪われた勇は仮面ライダーと邂逅する。
しかしグリス……〈白黄 七海〉にも譲れないモノが存在した。

その為に友好的な出会いではなく……


錬金術を発動させた僕を襲って来たのは、間違いなく仮面ライダーだった。

 

「もう一度教えてください!貴女は一体誰なんですか?僕は探している人物がいるんです!その邪魔をしないでください!」

 

僕は慌てて回避をしようとしたが、動揺していたこともあり体が硬直してしまった。何とか彼女の目的を聞き出さないと……!だけど彼女は動きを止めて怒りを露にしてきた。

 

「〈邪魔?〉……君は私の行動を〈邪魔〉の一言で片付けるんだね!私の想いすら考慮せずに!」

 

「貴女の……想いですか?……それは一体?」

 

彼女の想い……それがこの襲撃の理由に結びつくはずだ!だから聞かないと!

 

「お願いします!僕だって何がなんだかわかりません!だから教えてください!貴女の事を!この世界の事を!」

 

すると彼女……グリスさんは凍えるような声で話し始めた。

 

「まずこの世界を覆う結界は、貴方の力と同質の力だよ少年君。」

 

「僕の力と……同じ?それって一体……?」

 

でも動揺する僕を置いて彼女は言葉を続けた。

 

「説明を続けるよ。私〈達〉をこの世界に連れて来たのは貴方だね?貴方からは〈ブラッド〉と同じ力を感じるから、〈アイツ〉の居場所を教えて貰うよ!」

 

グリスさん〈達〉?……〈ブラッド〉?……〈アイツ〉?〈ブラッド〉が仮に〈アイツ〉と同じだとして、グリスさんは一人じゃあない……?他に仲間がいるのか?とにかく情報を得ないと!

 

「どういうことですか!〈アイツ〉とか〈ブラッド〉とか訳わかりませんよ!それに先程も言いましたが、僕達は初対面です!争う理由がありません!」

 

しかし僕の言葉は、彼女の怒りを助長するだけだった。オマケに天使は二つ奪われた為に詳細な情報が得られない。状況の打開には戦うしかないのか!?

 

「もういいよ。君は何も語らない。だったら君を倒して彼女を探させて貰うよ。だから早く倒れなよ少年!」

 

グリスさんはそう言うと二つの武器を装備してきた。

 

「〈彼女〉?貴女の他にも仲間の方がいるんですよね!?僕だって探している人がいるんです!だからお互い手を退きましょう!」

 

駄目だ!何故かわからないけど、この人とは戦ったら駄目な気がする。だけど僕はキャロルを探さないといけない!だからここで倒れる訳にはいかない!

 

「来てくれ〈サンダルフォン〉!そして〈ラファエル〉!」

 

僕は〈ミカエル〉が使えない。だから〈ラファエル〉で代用するしかないし、彼女を無力化しないといけない。だから剣の腹で攻撃して彼女を気絶させる。その後にこの場所をマーキングするしかない!必ず彼女を後から救出しないといけないけど、今は戦って状況を打破しないと!

 

「この状況でまだ考え事を!私をどれだけ侮辱すれば気が済むんだい!少年!!」

 

グリスさんは武器にゼリー(のような物)を入れると、ビームを放ってきた!

 

「とうとう攻撃が始まったか……だけどこの剣なら!」

 

僕はビームをサンダルフォンの腹で逸らし、自身への直撃を避けた。………だけどおかしいな。攻撃の軌道は僕の足元を狙っていた気がする。そして弾いたビームの着地点を見ると、かなり深い穴が空いていた。

 

「今の攻撃を剣の腹でいなしたか………流石精霊だね。その力はここの結界と同じ力だ!やはり一筋縄じゃあいかないかっ!」

 

更にグリスさんは、ゼリーを追加して、二つのビームを放ってきた!だけど今度は僕の胴体を目掛けて来たので、さっきの攻撃が威嚇だと思ったのは僕の気のせいなのか!?

 

「くそッ!さっきの一撃から威力が高いのはわかっているけど、ビーム二つは逸らし続けられない!どこかで活路を開かないと!」

 

凡そ三発ほど僕は彼女のビームを逸らし続けた。腕はかなりの負担だし、力が思うように入らない。天使二つを奪われた影響だろう。

 

「埒があかないね。ならこれならどうだい!」

 

彼女は使用する武器パイルバンカーにして接近戦を仕掛けてきた。さっきのビームであの重さである以上、その攻撃を受け流すことはもちろん困難で、直撃すれば僕は良くて気絶だろうね。最悪カマエルがあるとはいえ重症を負えば痛みから意識を失ってしまうだろう。だから僕は攻撃をせずにこの状況を打開するためにひたすら逃げ回り続けた。

 

「不味い!……早く!……何とか……しない……と!」

 

キャロルとの合流を何よりも優先したいし、ここが何処なのかは結局わからなかった。だから僕は久しぶりに錬金術を用いて情報を集めたかったけど、この状況に陥ってしまった。

 

「すみませんが貴女との戦闘をしている時間は、僕にだってありません!だから此処は退かせて貰います!」

 

僕は起動させたラファエルの力で退却を始めた。だけど此処の地形を把握できてない訳だから闇雲に逃げ回るしかなさそうかな………。だけど逃げる僕は簡単に補足されてしまった。

 

「悪いけど私は君の事を逃がすつもりはないよ!君には悪いけど知っている事は教えて貰うから!」

 

「だから先程も言いましたが知らないですよ!そもそもなんで此処に仮面ライダーがいいるんですか!」

 

僕は彼女に問いかけたが答えは返って来なかった。

 

「それは此方のセリフだよ!君がこの空間を作らなかったら誰が作ると言うんだい!」

 

「僕だってそれを知る為にあの術式を……」

 

「話が進まないな!それに君は私を嘲笑うかのように戦闘に入らない……。私の事はいつでも倒せるって余裕のつもりか!」

 

逃げ回り続けた僕が彼女へ感じた恐怖から後ずさった時に、背後の木に背が当たってしまった。……追い詰められたか。

 

「ようやく追い詰めたよ少年。今楽にしてあげるから…………」

 

その言葉を語る彼女の顔から涙が落ちた気がした。

 

そして飛び上がった彼女の背中からゼリーが噴出して、僕目掛けて蹴りである……

 

〈スクラップフィニッシュ〉!

 

を叩き込もうとしたその時………僕は待ち望んでいた声が聞こえた!

 

「お前がオレと勇を引き剥がした存在か!」

 

一枚のコインが巨大化して僕達の間に割って落ちて来た。そしてグリスさんの蹴りと衝突た。その間に僕は声の主引き寄せられてお姫様抱っこをされた。おかしいなぁ……普通逆なんだけど……。

 

「壁!?いや……コインだね!粋な真似をする人物もいたものね!」

 

「キャロル……?なの……かい?」

 

僕は恐る恐る助けてくれた人物に尋ねた。

 

「ああ!〈雪音 勇〉の生涯の伴侶にして嘗ては嫉妬の魔女を名乗った錬金術師……それがこのオレ!

 

〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉だ!

 

そして勇……お前と同じ精霊に覚醒した……そのキャロルだ。」

 

僕の最高のお嫁さんにして、初恋で最強の女性であるキャロルが、今僕と再会することができた。

 

「え………キャロル……なんで………?」

 

そしてグリスさんは、キャロルを見て驚きを隠せなかった。だけどキャロルは、グリスさんを激しく睨み付け、低い声で言葉続けた。

 

「お前がオレの伴侶である勇の命を脅かした。ならばお前はオレの敵だ。故に殺す!」

 

キャロルはダヴルダヴラのファウストローブを纏うと、グリスさんの周囲を囲み始めた。だけどグリスさんは動揺から反応が遅れてしまった。

 

「どうして……?なんでこんな事をするの!キャロル!」

 

グリスさんはキャロルを知っている……?だけどキャロルは彼女を知らないみたい。何かがおかしい。

 

「どうした!逃げる勇を執拗に追いかけ、追い詰めてから当てようとした技は使わないのか!」

 

キャロルはグリスさんの戦闘意思が揺らいでいることを見抜いたみたいだけど、既にグリスさんの周囲は糸の結界が出来上がっていた。そして錬金術で作り出した氷柱でグリスさんを貫く為に投擲してきた!

 

「待ってキャロル!今のグリスさんは戦闘ができる状態じゃない!そんな事はやめてくれ!」

 

僕の叫びもむなしく放たれた氷柱は、別の人物からの攻撃で防がれる事になった。

 

〈ジャッキングブレイク!〉

 

その言葉が聞こえたと同時に現れた人物が、グリスさんに向かっていた氷柱を蹴り砕いたことで、彼女の周囲を覆う糸の結界はその衝撃で崩壊した!

 

「ああ……キャロル……やっと……会えた……!」

 

「うん。ナナ姉の恋人のキャロル・マールス・ディーンハイムだよ。間に合って良かった。まずは今すぐアイツを倒すから待っててね?」

 

そういうと異世界のキャロルは、僕の知るキャロルに向かって歩き出した。

 

「お前は何者だ?あまりにもオレと姿が似ているな。名を名乗れ!」

 

「ナナ姉を傷つけようとしたお前に語る気はないけど仕方ないね。もう一度言うよ?私の名前は

 

〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉。

 

そこにいる愛しい女性……〈ナナ姉〉の恋人だよ。そういうお前は誰なの?私の偽物ちゃん。」

 

向こうのキャロルはやっぱりキャロルみたいだ。そして此方のキャロルも対抗するように名を名乗り始めた。

 

「ならばオレも名乗ろう。オレの名前は、

 

〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉だ。

 

そこにいる少年……〈雪音 勇〉の生涯の伴侶だ。消え失せるが良い偽物め。」

 

今ここに危機に晒された想い人を守る為に、二人のキャロルが戦闘を始めようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてしばらく二人のキャロルが激闘を繰り広げている間に、僕は何とか戦闘を止める手段を考えていた。………というかアレしかないかも……。

 

「キャロル!一旦落ち着いてくれ!そうしたら帰った時に一晩中〈愛して〉あげるから!」

 

我ながら最低な事を言っている気がしたが構わずに続けた。

 

「向こうのキャロルにも想い人がいるんだ!だからここは一回話し合いをするべきだ!」

 

「~~ッ!勇が言うなら仕方ないか。」

 

キャロルは僕の言葉を聞き、攻撃の手を止めてくれた。ここから僕達は今の状況を整理しなくてはいけない。何とかしないと……。

 

「まずは〈今何が起きているか〉を知る事だね。」

 

僕達が何を話すべきかを考えないといけないね。




本来七海さんの初弾は威嚇射撃でした。しかし勇君が交戦の意思を示してしまい、戦闘へと発展しました。
しかし勇君は戦闘が始まるも七海さんへの攻撃をほぼ行わず、回避に専念していました。
しかし七海さんにはキャロルさんとシャナさんを探す目的、そして謎の襲撃者との戦闘もあります。不幸にも勇君は自分の霊力を用いた錬金術を使用した事がかえって仇になりました。
そしてお互いのパートナーと再会したそれぞれのキャロル(達)と主人公が何を語るのか……

次回の更新をお待ちください。

そしてこちらから神咲さんの作品へジャンプできます。
https://syosetu.org/novel/222283/
〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉
是非七海さん視点でもお楽しみください。


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全員合流……してみよっか?

今回は過去最高字数となってしまいました。

そして平行世界の主人公達とその想い人のキャロル達は、誤解を紐解く為の自己紹介をお互いにします。

それでは皆様本編へどうぞ。


僕達は何とか合流する事ができたけど……まさかグリスさんの探していた人物が彼女の世界のキャロルだとは思わなかった。

 

「とりあえず……お互いに自己紹介をしませんか?僕達は初対面で、更に戦闘までしてしまいました。なら今からは、お互いの事を知るべきだと思うのですが……」

 

「……そうだね。私達もこの状況の理解が追いついている訳でもなければ、敵の正体の確信もえられてはいない。だから自己紹介をするメリットは充分にあると思うよ?」

 

幸いグリスさんからの理解を得る事はできた。だけど当然というか意外というかこの二人はやはり反対してくることになってしまった。

 

「必要ないだろう勇?オレ達はコイツ等に襲撃された。ならばコイツ等は敵でオレ達と相容れることはないだろう?」

 

「コイツの事は気にくわないけど意見には同感だね。ナナ姉を襲撃した。そんな野蛮な奴の事を私が許せる筈がないと思わない?」

 

キャロルちゃん(とりあえず向こうのキャロルはちゃん付けで良いかな……?)はナナさんの腕にしがみついていた。まるで害敵からナナさんを、守る為に・離さないようにする仕草が仔猫やコアラ、もしくは仔犬に見えてしまったから。だから僕はうっかりとこう言ってしまった。

 

「………ごめんねキャロルちゃん。僕の世界のキャロルがナナさんを襲撃したことは謝るよ。だけど僕の世界のキャロルは僕を助ける為に必死だったんだ。だから許して貰えないかな?」

 

僕が謝ると二人のキャロルから頬をつねられた。右の頬を僕の知るキャロルが、左の頬はキャロルちゃんがつねってきた。………とっても痛い。

 

「痛い!痛い!痛い!なんで!?なんで!?僕は二人のキャロルにつねられたの!?僕の言葉に気にくわないところがあったの!?」

 

僕の言葉を聞いた二人は更に怒り心頭になっていた。なんで!?僕そんなに悪いこと言ったの!?

 

「当たり前だ!!!勇の事を一番愛しているのはオレだ!なのに!平行世界とはいえオレの事を〈ちゃん〉付けだと!?そんなの羨ま……違う!そんな不平等が許される訳ないだろう!!!」

 

「あ………そういう………ごめんねキャロル。そんなつもりじゃあなかったんだ。もちろん僕からすれば僕の知るキャロルが一番だよ。ただ……その……ナナさんにしがみつくキャロルさんが可愛く見えてしまって……つい。」

 

「なんだ……そんなことか……。だったら勇が向こうのオレに一目惚れした訳ではないのか……やはり心配しすぎだったか……」

 

キャロルの方は渋々といった表情で何とか納得したようだけど、僕はまたしても左頬をつねられた。それもさっきよりも痛い気がする。

 

「痛い!痛い!なんで!?なんでまだつねられたの!?今の僕の発言に非はない筈だけど!?」

 

「うるさい!!ナナ姉を敬わない奴の事をオレが許せると思ったか!ナナ〈さん〉だと?ナナ姉をナナ姉と呼んで良いのはオレだけだ!お前なんかが〈ナナさん〉呼びするなど烏滸がましい!仮にもパパが生きていた頃からのナナ姉なんだ!お前はきちんとナナ姉を敬え!」

 

「いふぁい!いふぁいへふ!はらろうやっへひへふぁひひんへふふぁ!?(痛い!痛いです!ならどうやって呼べば良いんですか!?)」

 

僕は頬をつねられたままキャロルさんに必死に訴えてみた。頬をつねられたまましゃべったので満足に言葉もしゃべれない。

 

「何を言っているかわからんなぁ。よってお前に制裁を「はいはい……止めなよキャロル。お互いに自己紹介すらできてないんだから呼び方がわからないのも普通だよ?」ナナ姉!でも!」

 

ナナさんにキャロルさんを静止して貰えて僕はようやく解放された。やっと満足にしゃべれる。

 

「っとごめんね。私の世界のキャロルが君達にケンカを吹っ掛けて君をつねった事は私から謝るよ。だけどキャロルの事を許してくれないかな?だってキャロルからすれば私を襲う、自分と同じ顔の人物を倒さないといけないし、君が私に気安く話しているのがきっと気に食わないんだよ……まあ私はそんなキャロルが可愛く思うけどね。」

 

何故だろう……その言葉を聞くと妙に納得してしまう僕がいた。だけどこのままではまたキャロルさんにつねられてしまうだろう。だから僕は二人に尋ねないといけない事があった。

 

「では僕はグリスさんの事をどうやって呼べばよろしいですか?良ければ教えていただけば助かるのですが……」

 

本当に状況がよくならないし、名前すら満足に聞けていないので、僕は名前を聞くところから始める事にした。

 

「君は見た目の割に礼儀正しいね。恐らく君を育てた人は相当良い人なんだろうね。……っと話が逸れる前に私達の名前を言わないとね。

 

私の名前は〈白黄 七海〉。〈七海〉って呼んで欲しいけどそれはキャロルが許してくれないみたいだね。だったら君は私を〈七海さん〉もしくは〈七海お姉さん〉とでも呼んでくれないかな?

 

そしてこっちにいるのが、〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉だよ。さて、私達の名前を伝えたから今度は君達の名前を教えてくれないかな?。」

 

グリスさん改め七海さんが名前を語る時に僕は気付いてしまった。〈七海お姉さん〉と言った瞬間に、キャロルさんがとても怖い顔をしていた。とてもではないが〈七海お姉さん〉と呼ぶ事はできないだろうね。

 

「ありがとうございます七海さん。では僕の名前から名乗らせて貰います。

 

僕の名前は〈雪音 勇〉といいます。気軽に〈勇〉もしくは〈勇君〉と呼んでください。

 

そして隣にいるのが〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉です。

 

キャロルも七海さんには呼び捨てにされても構わないよね?」

 

僕は一番の不安要素になるキャロルに確認をする事にした。だけどキャロルの答えは僕の想像の斜め上の回答をしてきた。

 

「………帰ったら勇から一晩中〈シテくれたら〉許してあげる。絶対に寝かさないから………だってオレと勇は既に伴侶で籍も帰還出来次第入れるから問題ないな!そして先程初夜も済ませたではないか。何も恥ずべき事はなかろう?」

 

(七海さんとキャロルさんを見下すようなキャロルの視線)

 

正にはぶてたような態度だった筈なのに気付いたら七海さん達を煽っていた。………ていうかキャロルは煽らないで!本当に僕の胃が痛くなるから!

………うぅん………帰ったら僕が搾られる事になる事になるかどうかは別として、一先ずは乗り切ったとみていいのかもしれない。

 

「……キャロル……私達も帰ったらとりあえず〈する〉?」

 

「ナナ姉!?確かに私達は恋人関係だけど今ここで言う事なの!?」

 

「そうだよ。キャロルは恐い事に対して諦めた事があるからね。だってサウザーと戦った時に到っては死ぬ事すら覚悟してたでしょう?だから私はあの時の事を忘れるつもりは無いし、少なくとも私はキャロルを離さないつもりだよ?」

 

「……うぅ。ナナ姉の意地悪……こんな時まで言わなくても……でも……ナナ姉と過ごせる事は悪く無いけど……」

 

……どうやら七海さんとキャロルさんはまだ恋人関係らしい。……アレ?僕達にそんな期間あったかな………?

 

「勇がシャトーに身を寄せて過ごした二年半の生活の中で、オレと勇はあのケンカの後から既に伴侶だ。そんな関係は当に終わっただろう?」

 

「……キャロル……いくら伴侶でも心の声までは読まないで欲しいかな。」

 

僕が苦笑いをしていると、更に別の人物の声が聞こえた。

 

「……なるほどな。そこのオレもやはり愛しい伴侶がいたか。そしてそこのお前がそうだと言うのだな?」

 

「!?えっ!?またキャロル!?だって僕の隣にキャロルがいて、七海さんの隣にもキャロルがいる。そしてそこにもう一人キャロルがいるの!?」

 

「そうだねもう一人の私。あっナナ姉!全員揃った今なら自己紹介できるよ?」

 

………キャロルさん……貴女先程必要ないって言ってた気がするんだけど、七海さんが必要って言ったら意見が変わるんだ。キャロルさんにとっての七海さんは僕とキャロルみたいな関係とはまた違うけど、お互いに不可欠な関係なんだね。

 

「コレが平行世界の可能性……か。なら……僕達も七海さん達に負けない関係を築こうねキャロル?」

 

「そうだな勇。とりあえず帰ったら〈ヤル〉。なんなら今からでも構わないぞ?この場所にはオレと勇、そして平行世界のオレ達とその想い人しかいないのだ。何も不都合はないだろう?」

 

そう言い出したキャロルは唐突に服を脱ぎ出して下着姿になり、僕の服に手をかけようとしてきた!

 

「待ってキャロル!恥ずかしい!僕が恥ずかしいし!七海さん達も置いてけぼりだから待って!」

 

当然僕は大慌てだし、七海さん達は赤面している。キャロルがこんなに貪欲だとは思わなかった。

 

「ナナ姉ぇ……やっぱり私達も今からするべきなの?」

 

「七海……オレはあまりにも恥ずかしいので奴らを直視できないんだが?」

 

「ごめんね二人共。私もキャロルの体は見慣れてきたけど、男の子の体はちょっと見るのが恥ずかしいかも……」

 

「ごめんなさい七海さん!今は助けてください!」

 

僕達は自己紹介を始める前からひと悶着ありそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後助けられた僕は七海さんからもたらされた情報で、この場所が想像を遥かに越える事態となっている事がわかった。

 

「仮面ライダーブラッドの存在か……。確かビルドの映画の敵役だったのは覚えているけど……」

 

いかんせんビルド本編を雑にしか見ていないツケが来てしまった。仕方ないじゃん!仮面ライダーに出会うなんて考えた事なかったよ!

 

「というかそろそろ本格的な自己紹介をしないかな?流石にお互いに意思や目的を知る必要があるからね。」

 

「ごめんなさい七海さん。今すぐ始めましょう。」

 

僕達はようやく本格的な自己紹介を始めた。

 

「じゃあ改めて……。私の名前は〈白黄 七海〉だよ。転生したのはイザークさんが火炙りにされる直前で、持っている力は仮面ライダーグリスの力とフルボトルだね。そしてプログライズキーも幾つか持ち合わせているよ。」

 

なるほど確かに偉大な方だ。イザークさんを助けている事でキャロルさんと過ごした時間は凡そ数百年って事なんですね。これは確かに敬わない僕が悪かったかもしれない。

 

「パパを助けられた平行世界か……。確かにその世界のオレは世界を憎む事はないだろうな。その隣で必ず支えてくれる人物に既に出会えているからな。」

 

キャロルの言葉は普通の筈なのに何故か恐ろしく感じてしまった。

 

「では僕も自己紹介をします。名前は〈雪音 勇〉です。そしてご想像の通り〈雪音 クリス〉姉さんの義理の弟です。転生特典は異なる11人の天使を象徴した能力とその集束形態となる〈ケルビエル〉、そして修練環境の保障でした。これにより結社で錬金術師としての技術を習得し、〈サンジェルマン師匠達〉と縁を結びました。そしてその縁をもって僕はキャロルと出会いました。」

 

僕がある程度話していると、キャロルが補足説明を始めた。

 

「そしてその凡そ二年後に、オレは勇と盛大なケンカをしたな。その時打ち負かされたオレは命題が誤りである事を知ってな。その為に自殺まで考えたが勇はオレの事を必ず支えてくれると言ってな。その時からオレは勇を伴侶にすると決めたのだ。そしてつい先程初夜を済ませたら光に包まれて気がついたらこの世界にいたという訳だ。」

 

キャロル!?話の補足はありがたいけど言い方!言い方がストレート過ぎて僕が恥ずかしい!

 

「え~っと、〈サンジェルマン師匠〉?〈結社〉?う~ん…わからない単語だね。シンフォギアの世界の話だよね?」

 

あれ?七海さんは結社を知らないのか?四期の敵だったからわかると思ったんだけど……。

 

「え~ッと……?もしかして七海さんは四期を見ていないのですか?ヨーロッパに拠点を置く錬金術師の組織にして、裏の世界では知らない人はいない程の組織なんですけど……。」

 

「……ごめんね。実は私は三期までしか知らないの。だから四期って言われてもピンとこないし、その組織がどんな事をしたのかはよくわからないんだ。」

 

なるほど……。ならこの説明しかないかな。

 

「原作二期の〈フロンティア事変〉において、マリアさん達〈F.I.S〉にアメリカの情報操作の真実を伝えて、武装蜂起させた組織ですね。

そして三期の〈魔法少女事変〉においては、キャロルのシャトー製作を全面的にバックアップした組織でもあります。

僕はその組織の幹部に接触されました。姉さんと僕はバルベルテのテロを生き延びた時にはぐれてしまいました。その時に身を寄せた組織なので、時期は凡そ響がギアを纏う八年前の話です。そしてそこから五年半をその結社で修練に費やし、残り二年半でキャロルのいるシャトーで過ごしました。後はキャロルの言った通りにケンカをして、原作入りをしたのが今から一年前ですね。なので僕達の世界ではちょうど七海さんの知る当たりまでの話が終わったところですね。」

 

話が長くなってしまったな。

 

「後、今の僕が所持している武器や道具は、嘗てキャロルが使っていた物と、〈アルカ・ノイズ〉の結晶が三体分です。なので一つは七海さんに渡します。何かの役に立ててもらえれば良いのですが……。」

 

そうして僕は結晶一体分を七海さんに手渡した。すると今度はキャロルが話し始めた。

 

「ならば次はオレが語ろう。先程言った通り、

〈立花 響〉がギアを纏う半年前に勇とオレは婚約者となった。そしてオレはフロンティア事変の後に勇にまとわりついた泥棒猫共を纏めて吊るすべく日本に向かった。その結果装者達は、イグナイトモジュールと勇の力の一部を使いこなした。そして東京でオレと装者達は勇を賭けてお互いに全力で戦闘をしたのさ。結果はオレの負けだったが……。」

 

最後の方のキャロルの出来事は、忌々しい思い出だろうね。手加減したとはいえ、恋敵連合に負けたんだから。

 

「なら次は私の事を話すよ。」

 

今度は七海さんが語り始めてくれた。

 

「さっきも言ったけど私はイザークさんが在命の頃から生きているよ。そしてその中で病に伏したイザークさんにキャロルを託され、六年前にセレナの命を救い、ライブ会場では天羽 奏ちゃんを助けたよ。そして私は持っている仮面ライダーの技術を用いて、キャロル・セレナ・奏ちゃん、そしてシャナの装備を整えたよ。」

 

それが多分ビルドのライダーだけじゃなくて、別の作品の技術もありそうだったから気になったけど、今は急いでやるべき事があるから聞けなかった。

 

「ならナナ姉……次は私が話しても良い?」

 

「ん?キャロルからなんだね。良いよ。」

 

「ありがとうナナ姉。まず私の世界ではパパはあの時に火炙りにされなかったよ。ナナ姉が助けてくれたからね。そして世界を旅しながら数百年をナナ姉と過ごしたね。だからナナ姉の助けたセレナ・奏とも関わりがあるし、当時の二課で今は〈S.O.N.G〉のメンバー、つまり他の装者とも交流はあるよ。まずはルナ・アタックの頃にフィーネとアラウネルって奴が敵として現れたね。」

 

その世界にもやはりフィーネさんはいるんだね。

 

「そしてナナ姉は前世でお姉さんがいたの。その人は〈黒夜〉っていうんだけどナナ姉に自分を越えて欲しいって願いもあったみたい。だからナナ姉は黒夜と戦うし、私達もフィーネやアラウネルと戦っていたの。そしてナナ姉は黒夜を倒すんだけど、私達が相手をしていたアラウネルは逃亡してしまったの。」

 

「そういえばあの時、あいつには逃げられてたね。あのせいで姉さんは……」

 

「クリスを庇って亡くなったの。だけど装者達だってフィーネと戦っていたし、私やセレナもその戦いを支援した。だから本当にギリギリの勝利だったよ。」

 

「つまりそちらもルナ・アタックは防げたんですね。本当に良かったです。」

 

「そして私とナナ姉はその戦いの後に、正式に恋人になったの。」

 

そこでキャロルさんは言葉を止めた。そして今度はシャナさんが話し始めた。

 

「ナナ姉達が世界を救った後の世界に、オレはサウザーからの襲撃を逃れる為に流れついた。」

 

さっき出てきた名前だね。ルナ・アタックの後ならフロンティア事変相当の時系列かな?

 

「サウザーの奴はオレが見つからないと考えると、キャロルを生け贄に使おうとしたんだ。当然キャロルは抵抗したんだけど、流石にオレを追い詰めるだけの力がある奴に一時は操られてしまったんだ。」

 

「え?ちょっと待って下さい。キャロルさんを操れる人物なんてその時期なら一人しかわからないんだけど……?」

 

いや本当にあの眼鏡くらいしかわからない。そんな動機も平行世界ならあり得そうだし。

 

(シャナ!アイツ勘違いしているよ?)

 

(都合が良いからこのまま合わせろ。というかそうしないと話が進まないぞ。)

 

二人のキャロルさんはどうやら何かを小声で話していたようだけど、まあ正直ドクターからの被害は思い出したくないよね。

 

「て言うかサウザーの正体ってなんだったの?」

 

「お前の想像している人物の作り出した〈自動人形〉だな。オレのデータを基にしていたらしく、オレを動力源にしようとしていたらしい。そして最終的にはウェルが、全平行世界を手中に納める英雄になる為のサポートをする事が目的だったみたいだが。」

 

ここでシャナさんが何かを思い出したように呟いた。

 

「そういえばブラッドはナナ姉達を退けた後、こんな事を言ってたな。

 

〈平行世界には楽園の名を冠する力があると言う話があったな。その力を使えばあるいは………〉

 

この意味はわからないが、何かの目的があってそんな事を言っていたぞ。」

 

 

こっちでいうところの、フロンティア事変みたいな感じの出来事が向こうでもあったみたいだ。そしてシャナさんが聞いた呟きのお陰で敵の目的を絞れるかもしれない。

 

「わかりました。多分ですけど、そのブラッドのメインターゲットは僕です。あるいは僕の世界のキャロルかもしれないですが、この空間を形成するための力が僕の力と同じだと七海さんは僕に言いました。ならば恐らくは僕の力が主な目的でしょうね。僕がキャロルと引き離されてすぐに僕の方にも謎の人物が接触してきました。そして僕から奪った力は、〈全知の天使〉と〈空間を司る天使〉でした。更にその人物はフルボトルを持っていて、僕から奪った力はボトルに入った様子でした。なのでその力でできる事は……」

 

そこで僕は自分の言葉を止めた。何か大事な事を忘れている気がしたからだ。

 

「どうしたの勇君?」

 

七海さんに心配をされたけど、それよりも疑問なのは、〈なんで僕は力を奪われたか〉だ。……今回奪われた力はその人物にとって必要な能力だったからだ。だけど彼女はこうも言っていた。

 

〈幸せをあげる〉と。

 

だから僕は言葉を続けた。

 

「幸せ……楽園……空間……まさか!通称〈凶禍楽園〉(エデン)の完成が目的なのか!そしてその空間の構築と維持には膨大な霊力……つまり僕の力が必要になります。」

 

「と言うことはブラッドの奴はまだお前を狙う理由があると言うのだな?ならば奴を倒す機会はまだあると言う事か。」

 

シャナさんが僕の言葉に対する考察をしていると、更に別の人物の声が聞こえた。

 

「ほう?やはり頭が回るようだな。ならば此方の要求はわかるだろう?少年よ!私の目的の為におとなしく残りの力も寄越すが良い!」

 

そこには、禍々しい雰囲気を出す仮面ライダーが立っていた。




七海さん視点は是非神咲さんの投稿でご確認ください。
〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉
https://syosetu.org/novel/222283/

因みにシャナさんとは平行世界のキャロルの事で、七海さん達と敵対していたサウザーと名乗っていたのですが、今回勇君は不幸にも七海さんと交戦してしまいました。そしてその勇君を襲った七海さんの事を、こちらのキャロルが襲撃したのでお互いに正体をかなり疑っています。

その為に平行世界の出来事をドクターの所為だと勘違いした勇君の行動が、偶然にも事態の悪化を食い止めました。勇君が信じると言えばこちらのキャロルはそれ以上は疑いません。彼女自身も平行世界を信じています。

さて、次回はついに勇君達もブラッドと対決します!

更新をお待ちください!


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襲撃者と戦ってみよっか?


自己紹介の下りで文字数あり過ぎて分割してたら置いて行かれてた!(打ち合わせガバルドン!)

このままでは神咲さんにご迷惑がかかる!(手遅れ)

なので、本日はもう一話更新します!


〈前回のあらすじ〉

自己紹介の最後に現れた謎の仮面ライダーブラッド。そのブラッドに対して、一度敗北した七海さんとキャロルさんは雪辱を果たす為に。勇は奪われた力の手掛かりを掴む為に初めてキャロルと共闘してブラッドと交戦します。

それでは皆様本編へどうぞ。


「お前はブラッド!?なんでここにいるの!?」

 

キャロルさんの驚く声から、この人物が今回の黒幕の一人であるブラッドだと理解する事ができた。

 

「やはりお前達も来ていたか。だが今の私はお前達に興味はない。故に消えておけ。そうすれば命は助かるぞ?」

 

その話し方に何か覚えがあるような気がしたが、それよりも威圧感が凄まじいモノになっていた。

 

「さて……と。ブラッド……お前の目的は勇君の力だね?なら私はここでお前を倒せば良い訳だ。そうすればすぐに終わらせられるからね!」

 

七海さんはそういうと変身を済ませてブラッドに戦いを挑んだ。そしてその様子を見てキャロルさんも援護をするべく変身して、同様に挑んだ。だけど奪われた天使を自由に使えるならかなり厄介だな。……あれ?シャナさんはどこへ?

 

「キャロル……今の僕達の勝算がどのくらいかわかる?」

 

「ミカエルを使いこなされていたら一割を切り、そうでなくても良いとこ二割だろうな。」

 

やっぱりそうなるか。だけど退く訳には行かないな。僕だって力を取り戻したいからね。それにシャナさんはどこに行った?……まさか!

 

「行くよキャロル。まずはあの仮面ライダーを倒す。そして僕の力を取り戻す!」

 

「任せろ。オレ達のコンビネーションを奴に見せてやろう!」

 

僕達が作戦を立てている間にブラッドは、七海さんとキャロルさんを吹き飛ばしていた。そして木に叩きつけられた二人は意識を失ってしまったみたいだ。……多分実力はシェム・ハよりも高いスペックだと考えないとダメだろうね。……果たして今の僕達でも勝てるのかな?

 

「ッ!不味いよキャロル!今七海さん達が!」

 

恐ろしい事にブラッドは倒れた七海さん達に止めをさす為に胸を貫いていた。不味い!これは早く治療しないと!

 

「勇!ザフキエルの〈四の弾〉だ!アレなら修復が出きる!」

 

「それじゃあダメだ!確かに怪我は直せるかもしれないけど、今ブラッドを倒さないと多分この間に奴は何かを準備している!その阻止をするのが多分間に合わない!」

 

僕の予想が正しいなら多分だけど、〈エデン〉はまだ完成していない。だから今はブラッドを倒す事を倒す事が最優先だ。ならここで使う弾は間違いなくあの弾だ!

 

「ザフキエル!〈八の弾〉だ!」

 

僕は〈八の弾〉を使って八人の分身を作り出した。そして七人の分身それぞれに一つずつ完全礼装を纏わせ、残る一人には錬金術を発動させた。

 

「キャロル!僕は七海さん達の治療に二人の分身を連れて行く!だからキャロルは残りの分身の援護を頼む!」

 

「ッ!そういう事か!わかった!確実にアイツに全力を叩き込むぞ!」

 

キャロルはエレメンタルブレイドを纏い、分身達の援護を始めた。早く僕達が動かないと手遅れになる!

 

「頼むぞハニエル!〈千変万化境〉だ!」

「行くぞガヴリエル!〈鎮魂歌〉だ!」

 

僕は分身達に傷の修復と、鎮痛作用のある歌を奏でた。

これで少なくとも予断を許さない状況からは脱せた筈だ。

 

「なるほど……奴の話の通りに他の力も所持していたな。では、遠慮なくその力もいただくとしよう。」

 

「勇!ヤツが消えた!気をつけろ!」

 

「ふむ。やはり分身体の実力はたかが知れているな。もしくは後方支援用の能力故か?だが貴様には過ぎた力だな小僧。」

 

キャロルの叫びも虚しく、ガヴリエルとハニエルを展開していた分身がブラッドに胸を貫かれて消滅してしまった!そしてその間際に分身は各々、緑と藍の光となって〈フルボトル〉に吸い込まれていった!

 

「そのボトルは!?……まさかあの時もお前が僕の力を!」

 

「残念だが先の二つの力を奪ったのは私ではないな。だが奴は私の協力者だという事だ。だがどのみちお前達は私を倒さないとこの状況を打開できないだろう?」

 

クソッ!今この状態でまた天使を奪われて、更に別の敵がいる。しかも取られた力が厄介すぎる!

 

「ほう?焦っているな?奪われた力の所在とそこで転がる塵芥、そして惨めな小娘と力の欠片は間に合わず。これではただの絶望だろう?故に再度勧告しよう。おとなしく残る力を私に寄越せ。そうすればそこで転がる奴等やお前の伴侶の命も保障してやろう。この力があれば私の悲願は達成まで後少しになるのだからな。」

 

そう言ってブラッドが伸ばした左手を、僕は叩き落とした。

 

「面白くもない冗談ですね。出会ったばかりとはいえ、貴女は僕の目の前で二人の女性に……キャロルに手をかけた!だから僕はお前を許さない!」

 

僕はダヴルダヴラを纏い、ブラッドを拘束した。そして残る霊力を拳に込めてブラッドの左頬を殴りつけた。

 

「お前は命の重みを何とも思わないのか!?人の想いがわからないのか!」

 

僕が込められる力は全て込めた。だけどブラッドの声色は変わらない。まるで痛みを感じないかのような抑揚だった。

 

「やはり軽い攻撃だな。天使の名を冠する力を手に入れたところで、たかだか二十もいかない少年の拳など痛みにもならないな。」

 

「勇から離れろ!お前は危険だ!今ここで倒す!」

 

キャロルは残る分身を連れて僕のいる場所に駆けつけて来た。だけど僕は何故かブラッドに勝てるイメージを壊されていた。

 

「そろそろ遊びの時間は終わるとしよう。貴様等の敗北でな!」

 

ブラッドが力を溜め始めた!不味い!ここで奴が動いたら七海さん達が!

 

「ここで倒すぞ!全員最大火力だ!」

 

キャロルの声に合わせて分身達が最大火力で技を放った。確かに僕達の攻撃に溜めはほとんどない。……なら残る一割の勝機はここしかない!

 

「メタトロン!〈砲冠〉だ!」

「ザドキエル!〈凍鎧〉だ!」

「カマエル!〈砲〉だ!」

「ラファエル!〈蒼穹を喰らう者〉だ!」

「サンダルフォン!〈最後の剣〉だ!」

「「ミリアドキューブ!!」」

「エレメンタルブレイド!」

 

僕は各々の分身に天使が持つ最大火力の技を発動させ、錬金術の分身とオリジナルの僕は師匠より名前をもらった〈ミリアドキューブ〉を発動させた。ザフキエルよりも安定性に負けるけど、銃弾よりは火力が出るから今回はこっちがこのましい筈だ!

 

「ここで倒すぞ!全力で倒れるまで放つ勢いだ!」

 

ここで倒れる訳にはいかないけど、アイツからも力を取り戻す必要がある。最低でもさっき取られたボトルは壊さないと!

 

「……攻撃主体の天使でもこの程度か。やはり凡人には過ぎた力だな。私の目的に誤りはないな。では幕引きとしよう!」

 

煙が晴れる前にブラッドの余裕がわかってしまった。嘘だろ!アレだけ天使・錬金術・キャロルの全力を直撃させた筈だ!なのに……なんでそんなに余裕なんだ!

 

「まずはその力をいただこう。」

 

ブラッドが呟くと〈カマエルの分身体〉が胸を貫かれて光へと変わった。そして先程同様ボトルに吸い込まれて赤色のボトルとなった。

 

「そしてお前を倒せば残る力は」

 

ブラッドが呟きを終える前にキャロルが背後から斬りかかった!

 

「貴様ァ!勇の力を返せ!」

 

左手にダヴルダヴラ、右手をエレメントの剣で武装して奇襲したが、その動きは読まれて錬金術の分身に攻撃が直撃した。

 

「しまった!」

 

直撃した分身は黒の光となり消滅したが、その粒子はブラッドのボトルへと吸い込まれて行った!

 

「な!勇に還元もされないだと!一体何が!」

 

「答え合わせなど要らぬだろう?お前はここで倒れるのだからな!」

 

キャロルの鎧は腹部への左回し蹴りの一撃で粉砕し、キャロルは七海さんの横へと吹き飛ばされた!

 

「キャロル!やったなブラッド!よくもキャロルまで手をかけたな!」

 

僕はブラッドに右手で殴りかかろうとしたが、ブラッドに右腕を捕まれ、残る腕で腹部に強烈な拳をぶつけてきた。僕だけ体を貫かれていないのは、能力を利用する事が目的で、生け捕りを考える必要があるからだろう。

 

「あがぁ!」

 

「うるさいぞ小僧。すぐにお前もそこで転がる奴等と同じ場所に送ってやる。故に少し待つが良い。」

 

ブラッドがそう言って僕から力を奪おうとした瞬間に、キャロルさんが背後から技を発動させていた!

 

「喰らえブラッド!〈ジャッキングブレイク〉だ!」

 

キャロルさんが必殺技の蹴りを完全な不意打ちで放ち、その攻撃は直撃したが、ブラッドはみるみる怒りを表してきた。

 

「ほう?確実に胸を貫かれてまだ動けたか。だがその程度の攻撃では私を倒すなど無理な話だ。……そして貴様は恋人と違うところで朽ちると良い。私の逆さ鱗に触れたのだからな!」

 

ブラッドは僕から手を離すと、キャロルさんを崖の方までまで蹴り飛ばした!そして僕は幸か不幸か分身体が消えていて、残る天使は使えるようだった。

 

「不味い!あっちには崖が!メタトロン!〈天翼〉だ!」

 

僕はブラッドが意識を逸らした一瞬でメタトロンを展開し、キャロルさんのもとへ疑似的に転移した。そしてキャロルさんを抱えた。そしてラファエルを展開しようとしたが、さっき腹部に受けた一撃で肋骨が折れていたみたいだ。

 

「あぐぅ!ラファエルが……展開できない……」

 

僕はキャロルさんを守る為にもラファエルを使わないといけなかったが、傷の痛みに耐えかねて展開できなかった。しかしそれでも天使の展開は必要なので、ザドキエルで僕達を覆いながら崖下へ落下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~ブラッドside~~

 

「ふむ。天使を操る小僧を逃がしたか。だがあの深傷を負った足手まといと共にいても恐れる事はないが、〈凶禍楽園〉の発動を阻害されるのは目障りだな。ならばこの力を用いて彼の世界より存在した人形を差し向けよう。奴等が仮にそれを退ける事ができた時は残る力を回収すれば良いだけだからな。」

 

ブラッドはそう言うと残る七海と(勇の世界の)キャロルを、勇達と別方角の崖から投げ捨てた。

 

「さて、私も計画の最終段階に入る準備を整えるか。」

 

ブラッドは変身を解いた事で初めて女性のような………否、嘗ての姿へと戻り戦場を後にした。

 

~~ブラッドsideout~~




ブラッドの圧倒的な強さに分断された主人公とその想い人キャロル(達)。しかしこの状況に追い討ちをかけるように別の人物が勇達に接触する。

次回の更新をお待ちください。

そしてこちらから神咲さんの作品へジャンプできます。
https://syosetu.org/novel/222283/
〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉
是非七海さん視点でもお楽しみください。


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今の状況を確認してみよっか?

圧倒的な力を勇とキャロルにも見せつけたブラッド。その力は二組の主人公達が交戦しても余裕を崩さないほどの実力だった。そして分断されたお互いのパートナー達は今の状況を確認する。


~~ブラッドside~~

 

〈白黄 七海〉と〈キャロル・マールス・ディーンハイム(勇の世界)〉の二人は、小僧達の落下した場所と反対の崖下へと放り捨てた。故に奴等が合流する事は無いだろうな。

 

「しかし念には念を入れるべきだな。〈凛祢〉にも働いて貰うとするか。」 

 

愚かにも私に歯向かった、〈白黄 七海〉と〈キャロル・マールス・ディーンハイム(勇の世界)〉はあっさりと倒れ伏した。天使の力を操る小僧は更に幾つもの力を奪われ、〈キャロル・マールス・ディーンハイム(七海の世界)〉と共に崖下へと転落していたな。そして〈シャナ・マールス・ディーンハイム(更に二人と別の世界のキャロル)〉はいつの間にか消息を絶っていたな……。

 

「だが……まあ良い。直に私の計画は最終段階へと到りあまねく世界を救済しよう………そうすればいずれ。」

 

 

~~ブラッドsideout~~

 

 

 

 

 

 

~~勇side~~

 

「僕達に一体何が……。」

 

ブラッドに襲撃され、更に複数の天使を奪われた僕は、先程の戦闘で何があったかを思い出す事から始めた。

 

「七海さんとキャロルさんがブラッドの攻撃に胸を貫かれた。僕はその治療に〈ガヴリエル〉と〈ハニエル〉を使ったけど奪われて、形成していた分身を介して〈ザフキエル〉と〈カマエル〉の力も奪われた……か。」

 

その為に残る天使を用いて、僕から力を奪ったブラッドに一矢報おうとしたキャロルさんを助ける為に僕達は崖下へと落ちた筈だ。

 

「うぅ……ナナ姉ぇ……」

 

キャロルさんが意識を取り戻しかけた事に気づいた僕は、残る力を振り絞り氷(といっても力がほとんど残ってなくて水だったけど。)を作り出した。そしてキャロルさんの傷口を洗い長し、側にあった花を使って布に錬成して傷口を覆った。

 

「ありがとうキャロルさん。貴女のお陰で僕はまだ戦う事ができます。」

 

僕はキャロルさんが目覚めるまで待つことにして、周囲を見渡した。するとこの場所は先程のような森ではなく、どこかの廃墟に近い光景が広がっていた。そしてその確認ができた頃にキャロルさんは目を覚ました。

 

「ここは……どこだ?それにナナ姉は……。」

 

「目が覚めたんだね。ここがどこかは僕もわかってない。だけどあの時にキャロルさんが僕を助けてくれたのは覚えているよ。ありがとう。お陰で僕は全ての力を失わずに済んだよ。」

 

僕はキャロルさんに感謝をしたけど、申し訳ない事もあった。未だにシャナさんの事を見つけられていないのだ。

 

「だけどごめんなさい。シャナさんの事までは見つけられていなくて……。あの戦闘の時から気付いていれば……。」

 

僕の謝罪は、意外な言葉で返された。

 

「なるほどね……勇は私達の繋がりを知らなかったよね。だったら本人に説明して貰おうか。シャナ……もう意識は戻ってる?」

 

〈ああ。ブラッドに手酷くやられたが意識は何とか取り戻したし、勇がキャロルの手当てをしていたのも認識してる。〉

 

キャロルさんの体からシャナさんの声が聞こえた!?どういう事だ!?

 

「今のシャナさんの声は一体……?」

 

僕が驚いている間に、キャロルさんの体から粒子が抜け出してシャナさんを形成した。

 

「僕の目の前で一体何が……?」

 

「ならばオレの事を改めて説明しよう。まず、オレは平行世界の〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉だ。だがナナ姉の世界にもキャロルは存在していた。よってオレは嘗ての世界への決別の意味も込めて名を一度捨てた。パパとの想い出を捨てることはいささか躊躇いがあったが、ナナ姉のくれた想いの方が今や重要だ。だから後悔はしていない。」

 

「えっ……ちょっと待って。シャナさんがキャロルさんの中にいた理由は?」

 

「話を遮るな。まず、同じ世界に同一人物は原則として存在できない。修正力が必然的に働くからな。故にこの世界はまだ救える価値のある世界だという事だ。そしてオレはサウザーの変身道具をキャロルに譲り、キャロルと同化していた。その為に戦闘中はあの場所にいなかったのだ。」

 

なんだそういう事か……なら良かった。目の前からキャロルが消えたら僕は耐えられない。それが例え平行世界の人物だとしても……。

 

「さて……状況の確認をするぞ。まずお前の体からフルボトルに吸い込まれた光の色は、〈黒〉〈赤〉〈緑〉〈藍〉だ。この色に心辺りはあるか?」

 

「その色の通りなら、〈ザフキエル〉〈カマエル〉〈ハニエル〉〈ガヴリエル〉になるね。各々が〈時間に関する十二の力を操る天使〉〈加護と炎の天使〉〈模倣の天使〉〈声と祝福の天使〉の筈だ。特にカマエルとザフキエルは疑似的な再生能力まであるから、相当敵に奪われたのは辛いね……。」

 

僕は現実を認識すると力が抜けてきた。只でさえ力を失ったというのに、更に奪われたのだ。これはかなり堪えるな。

 

「まだ絶望するには早いよ。ブラッドがお前に目をつけているなら何か行動があるから。その時が反撃の時期だよね?」

 

キャロルさんの言葉は当然だが、同時にあることにも気づいた。………まだ僕は狙われる動機がある。つまりまだこんな事が起こるって事だよね………ならまだ頑張らないといけないな。

 

「だがこの空間を作り出した奴等は何か基準を設けた筈だ。その基準は恐らく勇……お前の後悔か何かの筈だ。」

 

「僕の後悔………?」

 

僕が後悔している事か………。姉さんの時は覚悟をしていた。師匠達は心変りしている気がした。響達二課組は原作以上に結束が強くなった。旧〈F.I.S〉は正規適合者になった。キャロルは当に救われていた。一体何が後悔だと言うんだ?

 

「ああそれとナナ姉に渡した〈アルカ・ノイズ〉の結晶があと二つあるだろう?一つ寄越せ。」

 

僕は言われるがままシャナさんに結晶を一つ手渡した。そしてその時にキャロルさんにキスをされた!

 

「ッ!!?」

 

(静かにして。私が心辺りを見つけてあげるから。)

 

キャロルさんは僕にキスをしている間にそう伝えてきた。シャナさんはお顔が真っ赤になっていたけど。

 

「なっ!キャロル正気なの!?ナナ姉がいるんだぞ!?」

 

キャロルさんは唇を離すと、苦い顔をしていた。

 

「シャナ……貴女が先に勇の世界に行っていたら、私達とは出会えなかったかもしれないね。それだけ勇は私達を愛していた。そして彼の後悔も愛故の物だったよ。それも無意識の……ね。」

 

「無意識故の愛と後悔……?」

 

「勇が只一人救えなかった装者の、

〈天羽 奏〉だよ。彼女が生きていれば……って勇は無意識の内に後悔していたよ。」

 

「奏……さん?………そうか。彼女が生きていれば……。」

 

一度呼吸を整えてもう一度僕は言葉を続けた。

 

「そうだね。彼女とセレナさんの命は切り捨てた事が僕の後悔だった。セレナさんは師匠達に救われていたけど奏さんは………。」

 

「大丈夫だぜ?そんなのはただの平行世界だ。何せアタシがここにいるんだからな!」

 

「「「ッ!?」」」

 

僕達三人は声の方を振り返った。そこには間違いなく〈天羽 奏〉さん本人が立っていた。

 

「なんでここに奏さんが……貴女は2041年に……。」

 

奏さんは何事もなかったように話を始めた。

 

「良ーく思い出せよ?アタシはあのライブで絶唱を使った。だけどその時には勇の師匠達が助けてくれたじゃないか。アレでアタシは一命を取り留めて、響のギアが覚醒するのに合わせて目覚めた。そしてリハビリを死ぬ気でこなして復帰する頃に勇は帰国してきたじゃないか。そして了子さんのアホな行動を五人で制裁してリディアンを守った。フロンティア事変ではライブに参加せずに勇を救出しただろう?そしてマリア達が仲違いする事なくフロンティアを解放した。その時に未来が嫉妬で大暴れしたけど、それは二課装者と勇で何とか収まった。キャロルがアタシ達にケンカを売ってきた時は絶望したけど、勇は最後までアタシ達を信じてくれていた。だから一度はアタシと響と未来でキャロルと戦ったし、東京では八人の装者で奏でた旋律は綺麗だったじゃないか?天使は〈ケルビエル〉だぞ?ほら……コレが証拠の雷だぜ?」

 

奏さんが言葉を語れば語る程、僕はそれが真実だと感じ出した。そう……その言葉をイメージとして認識しだしたんだ。……ああ……そう言われるとそうかもしれない。

 

「奏さん……生きてて良かったです!」

 

僕が奏さんに抱きつくと僕達の傷が癒えていた。まるでそれが当たり前だったかのように……。

 

「違うぞ勇!そいつは……」

「勇!ダメ!そいつは……」

 

「悪いが二人は黙ってな?今はアタシの話の時間だぜ?……後、凛祢~早く出て来いよ~!勇が待ちくたびれてるぜ~?」

 

奏さんが二人を隔離した後に一人の女性が現れた。リディアンの制服に袖を通した緩いウェーブのかかった薄い桃色髪の少女……〈園神 凛祢〉が、僕の前に立っていた。

 

「ふふっ。この姿で会うのは初めてだね〈雪音 勇〉君。そうだよ?私の名前は〈園神 凛祢〉だよ?」

 

「そしてアタシ達は勇にお願いがあったから接触したんだ。必ずお礼も忘れないからアタシ達の話を聞いてくれないか?この世界の事も説明したいから………さ。」

 

「えっ……今……何て……?」

 

奏さんの言葉を聞いた僕は何も答える事はできなかった。




勇の前に現れた〈天羽 奏〉の存在は、只一人だけ救う事のできなかったシンフォギア装者だった。その後悔こそがこの世界を形成しているとはまだ勇は気付かない。

次回の更新をお待ちください。

そしてこちらから神咲さんの作品へジャンプできます。
https://syosetu.org/novel/222283/
〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉
是非七海さん視点でもお楽しみください。


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敵の目的を聞いてみよっか?

目の前に現れた二人の存在が勇の心を揺さぶる。彼女達の言葉を聞いた勇が感じたモノとは?

本編へどうぞ。


僕の前に現れた奏さんと凛祢が、僕に協力を要請してきた。そして僕にこの世界の事を説明する……と。

 

「まずはアタシから説明するぜ?勇が出会った仮面ライダーブラッドの正体は平行世界の〈櫻井 了子〉さん。……つまりフィーネだ。」

 

〈櫻井 了子〉……その正体は先史文明より現代まで生き続けた当時の巫女〈フィーネ〉。転生システムである〈リイン・カーネーション〉を用いて各々の時代の転換期において影で暗躍し、文明や技術の発展に貢献した人物だ。そして〈ルナ・アタック〉と呼ばれた月の破壊をもって人々を〈バラルの呪詛〉から解放しようとした人物だ。だけど僕達の世界の彼女は既にその想いに一区切りをつけた。………なのに今更何故僕の力を?

 

「その顔なら了子さんが何をしたかわかってるみたいだな。なら続けるぜ?異世界の了子さんは更に〈白黄 七海〉の世界から、〈ビルドドライバー〉と〈ハザードトリガー〉を奪い取ったんだ。そしてこの世界にたどり着いた。」

 

すると今度は凛祢が語り出した。

 

「そして私の持っていた〈コブラロストフルボトル〉と〈グレートクローズドラゴン〉が共鳴した事で、私と彼女は出会えたんだよ?」

 

確かに映画での仮面ライダーブラッドの変身道具は、〈ビルドドライバー〉・〈ハザードトリガー〉・〈コブラロストフルボトル〉・〈グレートクローズドラゴン〉の四点だった。

 

「そしてこのフィーネの世界ではね………。人々は彼女に色々な願いを押し付け始めたの。フィーネには先史文明からの膨大な知識があった。だから全ての人々が幸福な世界を目指した。そしてフィーネ自身もその願いを叶えたいと思ったし、その為には時間が必要になった。だからフィーネは自分自身を不老不死にして研究への時間を強引に確保したんだよ。」

 

凛祢が最後に言葉を暗くさせると、今度は奏さんが語り始めた。

 

「だけど人間ってのは変化に弱い生き物なんだよ。急速に発展しすぎた文明ってのは、とてもじゃあないが手に負えないものだ。そしてそんな文明にすがりついた人類に待っていたのは只の破滅だ。だけど了子さんには既に人間への関心よりも研究への想いが勝っていた。だから正直人類の破滅なんて興味なしだったよ。なんならその時すら研究所に引きこもっていたぐらいだからな。」

 

「それがブラッド……フィーネさんの目的……なんでそこまで……。」

 

本当にわからない。なんでフィーネさんは人々の為にそこまで……自分の事を投げ捨ててまで………。

 

「さあね。それはアタシ達にはわからないし、正直なところ興味はない。だから勇が自分で聞けば良いんだぜ?」

 

「私達に協力してくれたら彼女にも会えるよ?私達の願いは同じだからね。」

 

「フィーネさんと凛祢の願いが〈同じ〉?……それは一体……?」

 

驚いている僕に凛祢は、〈しまった〉という顔をしながら説明を再開した。

 

「ごめんね勇。私の願いもね……みんなが幸せに暮らす事なの。私もね……誰かが悲しむ事や苦しむ事、怒る事や泣く事が耐えられないの。だけどね……世界は一つじゃあなかったの。だったら私は何度でもやり直せる!私は一つ一つの世界を幸せに包む。どれだけの時間がかかったとしても必ずなし遂げる!その為に頑張ったし、フィーネ……いや、今は〈享楽の巫女〉を名乗っていたね。だけどそんなことはどうでも良いんだよ。私は世界を幸せにしたい。彼女も世界を幸せにしたい。だから手を組んだ。それだけなの。だから改めて勇にお願いしたいな。私達に協力してくれない?」

 

「アタシからも頼むよ。二人の願いを叶えたいんだ。」

 

凛祢と奏さんのお願いは僕の心を強く揺らした。それだけに返答をする事ができなかった。

 

〈ジャッキングブレイク〉!

 

僕達を覆っていた空間は、サウザーに変身したキャロルさんによって破壊された。そしてその中のシャナさんが、語り始めた。

 

〈キャロル……一時的に主導権を貸してほしい。オレ自らが、奴等の正体を語ろう。〉

 

「わかったよシャナ。人格を入れ替えるね?」

 

すると少し柔らかかったキャロルさんの雰囲気が、少し緊張した雰囲気に変わった。恐らくシャナさんが語るのだろう。

 

「まず〈天羽 奏〉!お前は勇の力の一部だ!本当の姿を現せ!」

 

「あ~あ。ばれちゃったよ凛祢?どうする?」

 

「ならもう良いよ〈奏〉……いや、ラジエル。」

 

奏さんがラジエルと呼ばれるとその体はラジエルの前任者である、〈本条 二亜〉を模した姿へと変化した。そしてこう言葉を続けた。

 

「ミカエルとガヴリエルも出て来いよ!」

 

ミカエルと呼ばれたスマッシュは〈星宮 六喰〉に、

ガヴリエルと呼ばれたスマッシュは〈誘宵 美九〉に各々が変化した。しかもご丁寧に礼装まで再現されている。

 

「やはり思った通りか。そして〈園神 凛祢〉!お前はオレと〈同じだ〉!だがお前は人々の救われたい願いから生まれたようだな!ならばここでお前を下してナナ姉のもとにたどり着いて、ブラッドを倒す事。そしてみんなでもとの世界へ帰る事がオレ達の願いだ!故に押し通るぞ!……キャロル……。後は任せた。」

 

するとシャナさんの意識とキャロルの意識が入れ替わったようで、雰囲気が少し変わった。

 

「まあ……待ってよ。私もやることがあるから……。」

 

凛祢さんは僕に近づいて来ると、僕の唇を奪った。そしてなにかの情報を流しこんできた。

 

「ッ!」

 

凛祢が流してきた情報はこの世界を始め、全ての平行世界をどれだけ平和にしたいかを濃縮した想いだった。そして僕をあの時に襲ったのは凛祢だという事を。………だけどなんで僕にキスを……?力を奪い返されるかもしれないのに。

 

「どうかな?私の想いは。私がどれだけ頑張るつもりか勇君ならわかるでしょう?」

 

「凛祢……君は一体……?」

 

「時間切れだよ。さあ!残る力を貰うよ勇君。私達と戦おうぜ?」

 

二亜さん……いや、ラジエルの言葉通り僕達は戦う事に成りそうだ。だけど今の僕は……

 

「勇!呆けない!今ここでお前が倒れたら誰があの私を迎えに行くの!あの想いは嘘なの!」

 

キャロルさんに発破をかけられて僕も漸く戦闘準備を始めた。使えるのは〈メタトロン〉〈ザドキエル〉〈ラファエル〉〈サンダルフォン〉〈ケルビエル〉だけど〈アイン〉は相変わらず……か。なら今の僕はいつもの捨て身が使えないな。少し困ったかもしれない。

 

「挨拶代わりに喰らうが良い!」

 

キャロルさんは氷柱を展開して横になぎはらってきた!

 

「続くよキャロルさん!メタトロン!〈光剣〉!」

 

キャロルさんの攻撃をスマッシュ達が回避すると、僕はその氷を〈光剣〉を用いて礫に変えて面での攻撃に切り替えた!

 

「面での遠距離攻撃か……悪手よな。ミカエルよ!〈開〉だ!」

 

ミカエルスマッシュ(長いから六喰さんって呼ぼう)が、僕の攻撃を門に飲み込んだ!

 

「くそっ忘れてた!メタトロン!〈天翼〉だ!そしてサンダルフォンも来てくれ!」

 

今の僕が取れる戦法はマーカーを使った時間差攻撃、そして攻撃自体を高い火力で叩き込む事。いつも通りカウンターよりの戦いに慣れているから、少しやりにくいのが本音だ。

 

「私もいますよ~!〈輪舞曲〉です!」

 

視界から離れていた美九さんが、音波を用いて畳みかけてきた!くそ!

 

「反撃の余裕は与えぬぞ?ミカエルよ〈開〉だ!」

 

六喰さんは先程溜め込んだ礫を纏めて返してきた!この威力は明らかに強く、僕とキャロルさんは倒れ伏す事になった!

 

「わかったでしょ勇君。私達がどれだけの覚悟を背負ったか。だからもう一度……いや、何度でも言うよ。私達に協力してほしい。それが平和へと繋がるから!」

 

体力の疲弊をした僕達には、その言葉が毒のように突き刺さる。オマケに美九さんが〈独奏〉を加えてきてる。この場所から早く離れないと!

 

「あの人達は天使の力をここまで……予想以上だね……。ならここは退かせて貰うよ。勇は私に掴まれたら動くな!〈凶禍楽園〉の主さん!次は……」

 

「ちょっと!?キャロルさん!?まだ話は……」

 

僕はそこで言葉を止めた。なぜならそこには〈増殖分裂タイプのアルカ・ノイズ〉が稼働を始めるところだった。アレはキャロルさんに手渡した奴だ!

 

「残念だけど今は機じゃあないよ。私達はここから退かせて貰うから!」

 

キャロルさんは僕を掴むと、全力で戦線離脱をした。

その結果凛祢達から逃れる事はできた。

だけどキャロルさんの体からは所々火花が出ていたから、本当にギリギリでの離脱だという事だ。

 

「僕は彼女の……凛祢の望みを叶えるべきなのか……倒すべきなのか……」

 

「その答えを出すのは勇だよ。だけど覚えておいて。彼女の〈幸せ〉は一方的に与えられる幸せだという事だから。……とごめんねシャナ。かなり体に無理をさせたから、ダメージがひどいよね。」

 

〈確かに痛みは馬鹿にならない。だがそれでもオレ達にはやることがある。その為ならばこの程度の痛みは耐えられるさ。〉

 

僕は彼女達の覚悟に報いられるかな……。

 

〈今はまず休め!その状態では馬鹿な事しか考えられないぞ!お前がそんなことでは誰がこの状況を打開するんだ?〉

 

「そうだね。今はその言葉に甘えさせて貰うね。」

 

僕はシャナさんの言葉に従い意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~戦闘場所side~~

 

「中々強かったね……勇君の〈アルカ・ノイズ〉。」

 

「そーだね。正に研究の賜物だよ。」

 

「しかしこれで彼を見失いましたねぇ。」

 

「大丈夫であろう?奴は必ず現れる。むく達から……いや、ブラッドから力を取り戻さねばならぬからな。」

 

凛祢達はサウザーが放った〈アルカ・ノイズ〉を撃破した。しかし流石は勇お手製の増殖分裂タイプだ。完全に逃げられたし、殲滅までに時間を取られ過ぎた彼女達はしばらく待つ事になった。

 

「だけどあんな手品も後数回だろうね。だから勇君……私は何度でも君に頼むよ。私の目的を果たす為にね。」

 

凛祢はまだ気づかない。勇に固執する理由が、力のみではない事を。そして勇もまだ気づかない。彼女が何を想いキスをしたのかを。




人間の感情は自らが意図しない行動をして、その結果意図しない事態になり得る事がある。そしてその可能性を孕むのは〈人間〉のみとは限らない。

次回の更新をお待ちください。

そしてこちらから神咲さんの作品へジャンプできます。
https://syosetu.org/novel/222283/
〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉
是非七海さん視点でもお楽しみください。


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どうしたいのか……考えてみよっか?

凛祢と奏の言葉は勇にとって致命的な程の影響を与えた。しかし選択の時は刻一刻と迫り来る。救えなかった命と、理想の世界。その甘美な誘惑に対する勇の答えとは?

本編をどうぞ。


凛祢の行動に動揺と尻込みをした僕は、キャロルさんに連れられて撤退した事で漸く窮地を脱した。

 

〈勇……なんだあの腑抜けた戦闘態勢は!お前はこの状況を打開する気があるのか?〉

 

シャナさんが今までで一番冷ややかな声で問いかけて来た。それはそうだろう。あの戦闘において僕はほとんどなにもしていない。撤退すらキャロルさんが僕を連れて逃げたから良かっただけだ。

 

「正直に言うと凛祢の目的を僕は否定したくない。僕だって全てとは言わなくても救える人々は救い、その人々が幸せであれば良いと思っていた。だから凛祢と戦う事が正しいかよくわからないんだ。」

 

「シャナ……ならさ、勇には〈あの事〉を話すべきじゃあないかな?」

 

〈そうだな。ナナ姉の覚悟も含めて話すべきだろうな。〉

 

「あの事とは……?」

 

〈それはオレが話そう。ナナ姉はオレがあの世界にたどり着いた時に幾つかのトラブルを抱えていた。ルナ・アタックの際にいた筈の敵や、未知の敵、そして姿を見せない黒幕やネフェリム等対応しなければならない問題が山積みだったのは話したな?〉

 

「うん。ナナ姉はその中で選択を迫られたんだ。〈キャロルを殺す覚悟をするか〉・〈世界が破壊されるのを受け入れるか〉ね。ナナ姉にとっては世界もキャロルも同じぐらい大切だと言う事だった。だけど現状では片方しか救えない。故に悩んだの。だけどナナ姉は覚悟を決めた。〈キャロルを救い、シャナも救う。そして世界も纏めて救う!〉とね。」

 

聞いていて七海さんがわからなくなった。確かに可能なら全部救う事が最高だろう。だから全てを救う覚悟をした。そこにはあの人の強い何かがあった筈なんだ。

 

「ナナ姉の最も根源にある想いは、〈私達キャロル〉を救う事。その為には何が起こったとしても歩みを止めない。何をしてもその罪まで背負う。ナナ姉にはそれがあった。だから勇にもある筈だよ?」

 

キャロルさんとシャナさんの言葉で僕は漸く目が覚めた。

 

「そうですね。シャナさんやキャロルさんの言葉で目が覚めました。僕はまだやるべき事を終えていません。だから折れる訳にはいきませんね。」

 

僕にもある!この場所でも成すべき事が!帰るべき場所が!だからまずは凛祢に会う!そしてキャロルを幸せにするんだ!

 

〈やっと覚悟を決めたか。だがこれでやるべき事は終わったな?ならば次は戦法を煮詰めるぞ?先程の二の舞は避けねばならないからな?〉

 

「大丈夫だよ。あの三人の中で一番恐ろしいのは〈六喰さん〉だから。あの扉の天使がかなり厄介だけど、それを封じる手立ても考えてある。そしてこの空間の破壊方法と、奏さんへの未練の絶ち方もね。」

 

奏さん……貴女を救えなかった事を確かに僕は後悔しています。だけど今は僕にも帰る場所や守りたい女性がいます。なので申し訳ないですが、貴女への想いはここに置いて行きますね。

 

〈気にするなよ。それよりも翼達を泣かせたらアタシは許さないからな?〉

 

奏さんの声が聞こえた気がしたけど、きっとそれは本当の彼女からだと思えた。

 

「凛祢は僕の力を奪ってスマッシュを呼び寄せた。……なら、僕は自分の力を追えば凛祢に会える。そしてスマッシュの力は本人の模倣の筈だ。必ずどこかに弱点や、本人に及ばないところがある。僕だって八年以上かかったんだ……いくら凛祢でも、急拵えならその可能性は高い。」

 

「つまり勇は、奴等スマッシュの能力には限界があるって言いたいの?」

 

〈確かに奴等はアルカ・ノイズの出現に驚いていた。全知の力があれば容易に想像できた筈だ。つまりそういう事だろう?〉

 

「ええ。だから僕がまだ見せていないあの武器が勝負の決め手になります。だからキャロルさんとシャナさんで美九さんの相手をお願いします。彼女一人なら近接に持ち込めば苦戦はしないでしょう。」

 

ガヴリエルには洗脳の力もある。だけどそれは完全じゃあない。だから今は考慮しない。

 

〈では行くぞ。反撃の時だ!〉

 

僕達は再び凛祢のもとへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~凛祢side~~

 

「もうすぐ……もうすぐだよ。やっと私は使命を果たせる。みんなを幸せにする事が出来る。」

 

「そうですねぇ。凛祢さんが頑張ってきた証ですからねぇ。是非とも叶えたいですよねぇ。」

 

「ふむん。しかし奴等は来るのか?恐れをなして逃げるかもしれぬぞ?」

 

「それは大丈夫だね。アタシのラジエルが言ってるよ。彼等は必ずここに来る。凛祢にもう一度会いに来る為にね。」

 

私達は敢えて勇君との戦闘場所から動かずに待ち続けた。勇君は必ず戻ってくる……そして私に話をする。以前の私にはある筈がない思考だけど、人はそれを〈心〉と呼ぶのだろう。だけど私の目的の為には必要はない。使命を果たす為には不要なモノだ。故に勇君と最後の話をしたらここに置いて行こう。

 

「ラジエル……〈天羽 奏〉に擬態して。もう一度勇君を揺さぶるよ。」

 

「おお……凛祢も抜かりないねぇ。了解したよ。アタシの力に変装機能はないけど、対象の認識をズラす事は出来るからな。」

 

そう言うとラジエルは姿(周囲の認識)を変えた。

 

「勇君……早く来ないと間に合わないよ?」

 

私は呟きながら勇君の到着を待つ事にした。私の目的を必ず果たす為に。

 

~~凛祢sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~勇side~~

 

 

「凛祢……僕を待っていてくれたんだね。ありがとう……僕は君の誘いの答えを持って来たよ。」

 

僕は凛祢のもとへたどり着いた。そしてそこには奏さん・美九さん・六喰さんもいた。

 

「私は勇君と話がしたいな。だからキャロルちゃんは席を外してくれない?」

 

「……かまわないよ。なら〈誘宵 美九〉……着いて来なよ。暇潰しの相手がほしいからね。」

 

「へぇ。……随分私の事を舐めてますねぇ。良いですよ~。そんなに余裕ならすぐに化けの皮を剥いで上げますから。」

 

キャロルさんと美九さんはそう言うと僕達から離れて行った……これで良い。

 

「良いの?勇君はさっき彼女に救われた。手品の道具すら後僅かじゃない?仮に私を倒してもまだブラッドがいるんだよ?」

 

「それにアタシの事をまた見捨てるのか?それはそれで辛いなぁ。アタシだってまだやりたい事が……」

 

「それ以上はもういいですよ奏さん……いや〈二亜さん〉。」

 

僕は敢えて二亜さんの言葉を遮った。心にもう迷いはない。だけど奏さんの姿でこれ以上語らせるべきではないと判断した。だから彼女の言葉を止めた。

 

「まずは天使を回収します。来てくれ〈ケルビエル〉。」

 

僕が纏うのは裁きの天使〈ケルビエル〉。以前は十の天使を合わせて纏う形だったけど、凛祢に天使を奪われた事で本来の雷の天使〈ケルビエル〉を纏う事になった。

 

「……万由里さん……ありがとうございます!」

 

僕が顕現させたケルビエルの力は、十の球体が浮遊していた。恐らくこの球体がそれぞれ〈鷲〉〈牛〉〈獅子〉〈人〉を形成するのだろう。

 

「まずは〈鷲〉の力だ!」

 

「おっと!流石に出力の高そうなな天使だな!直撃はゴメンだな!」

 

「しかし遠距離攻撃とはうぬも学習せぬよな?」

 

六喰さんは〈開〉を、二亜さんは回避をする事で逃れるつもりみたいだ。だけど僕にはその行動が読めている!

 

「僕の背後からの攻撃のつもりなら無駄ですよ!ここで貴女方を道連れにします!」

 

「ッ!六喰やめろ!ここで勇を失えば計画が!」

 

「ッ!致し方なしか!」

 

どうやら僕は重要な要素で間違いないみたいだ!なら貴女方には負けない!ここで沈める!

 

「行くぞサンダルフォン!〈最後の剣〉だ!」

 

動揺する二人に僕は最大級の一撃を浴びせる事にした。凛祢が僕達の体力や体を戻した以上全力を出せる!

 

「あちゃ~油断したなぁ。この深傷なら戦闘はやめた方が良さそうだな。〈ミカエル〉も撤退するぞ!」

 

「ふむん。〈ガヴリエル〉も撤退していたらしいな。ならば頃合いであろう。行くぞ〈ラジエル〉。」

 

「なっ!待て!」

 

僕は撤退する二人に驚いてしまった。まさか時間稼ぎが目的か!?すると拍手が聞こえた。……どうやら彼女は見ていたらしいね。

 

「まさか捨て身とはねぇ……だけど勇君それはダメだよ。私達の計画には君が必要だ。だからそんな事で台無しにされたら困るんだよ?」

 

「生憎だけど捨て身は僕の常套手段だ。目的を成す為ならば自己犠牲は厭わない。」

 

「うん。やっぱり勇君はそう言ってくれると信じていたよ?「だけどそれは昔の話だ!」え……どういう意味?」

 

凛祢は驚いていた……当然だろう。自己犠牲を昰とした人物がいきなり協力を拒んだんだから。

 

「確かに僕は救いたい人や、救えなかった人がいる。だけどその結果を受け止めると僕は決めた!だから奏さんの死を受け止めるし、キャロルを幸せにすると決めたんだ!」

 

「ならキャロルちゃんともここで過ごせば良い!必要なら他の……勇君の世界の人全てを「それは許さない!」なんで!!」

 

僕は凛祢の言葉に、一つの可能性を見た気がした。だからこのやり取りには意味がある!僕が折れる事がなければ確信も得られる!

 

「凛祢の言う幸せは本当に〈幸せ〉なのか?人の〈幸せ〉ってのは自分で掴むから〈幸せ〉って言うんだよ!確かに凛祢には物質的な幸せは提供はできるし、助かる人も多いと思う!」

 

「ならそれは良いことじゃないの!」

 

「それだけじゃあダメなんだ!!!!!」

 

僕は凛祢の言葉を遮った。

 

「人の心は物だけじゃあ満たされない!だからブラッド……いや〈フィーネ〉の世界は滅びたんだ!」

 

「だから私達は勇君の……天使の力が必要なの!」

 

「それは人々を力で支配する事になる!そんな事じゃあ人々は本当の幸せを掴めない!」

 

「ならどうするの!そんな簡単に人々が幸せになる手段なんて!」

 

同じだ……。嘗ての了子さんはそれをみんながわかる物にする為に統一言語を復活させようと企んだ。そしてそれは響達……いや、僕達によって防がれた。だから僕もこの言葉を凛祢に贈ろう。彼女の……〈立花 響〉が心の底から伝えた胸の内から来る言葉を!

 

「この世界には歌がある!そしてそれを届ける手段と能力が僕達にはある!」

 

「そんな呑気な事を言ってたら世界は!」

 

「変わる!……いや、僕達が変える!」

 

「そんな偽善は聞きたくない!」

 

凛祢は動揺したのかエネルギーを放って来た。だけど僕は凛祢に向き合うと決めたんだ!だから避けない!

 

「馬鹿な事をしないでよ……。お前が倒れたら誰がその世界の私を救うの?自分のやるべき事を履き違えないで!」

 

その攻撃は美九さんを下したキャロルさん(シャナさんも)が身を挺して庇ってくれた。しかしダメージが大きいのか、変身が解除されてしまった!

 

「キャロルさん!すみません〈やるべき事をしろ!それがお前の決めた道だ!〉ごめんなさいシャナさん!目が覚めました!」

 

だから僕はまずこの空間を壊す!だからあの剣を顕現させる!

 

「来い!〈ダイン=スレイフ〉!」

 

僕は顕現を済ませると直ぐに自分の足元に突き刺した。幸せを提供すると言っても根底は魔剣の呪いと同種の物だ。だからこそこの空間は〈ダイン=スレイフ〉の力で相殺出来る。

 

「嘘……私が作り出した空間が……。いや、あり得ない!私が諦めるなんて絶対にあり得ない!だから勇君!続きは後で聞いてあげるから!だからもう一度よく考えて!」

 

凛祢はそう言い残して僕達のもとを去った。恐らくブラッドと合流する事になるんだろう。

 

〈勇……気づいたか?あの女には……〉

 

「うん。確実に自我が芽生えてる。

嘗ての〈十香さん〉……サンダルフォンの前任者と同じだよ。何かの一部だったモノから自我が芽生える事は僕も知っている。だから凛祢は僕が傷つく事に動揺もした。目的の達成の為なら僕の手足を切り落とせば済むのにそれをしなかったんだから。」

 

「そうだね。シャナ!勇!ナナ姉達のもとへ急ぐよ!結界が壊れた今ならきっと合流出来る!」

 

〈もちろんだ!オレもブラッドに仮を返すし、何よりもナナ姉に会いたい!〉

 

「なら僕がナビゲートします!僕とキャロルは今や魂まで溶け合えてる!だからキャロルと僕は必ず惹かれ合う!」

 

僕達はお互いのパートナーとの合流を果たすべく動き出した。待っていてくれ!キャロル!

 




理想卿との決別は果たした。そしてお互いのパートナーと合流するために二人は動きだす。しかしその足取りは重々しい。

次回の更新をお待ちください。

そしてこちらから神咲さんの作品へジャンプできます。
https://syosetu.org/novel/222283/
〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉
是非七海さん視点でもお楽しみください。


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もう一つの戦いを見てみよっか?

勇は凛祢に対して伝えるべき言葉を伝えた。その彼女の想いは果たして……。そしてキャロルさんから伝わるもう一つの戦いでは何が起こったのか…。

本編へどうぞ。


~~凛祢side~~

 

「〈人々の幸せはモノだけじゃあ満たされない。だからフィーネは失敗した〉 

 

……か。確かにその通りだね。だけどね勇君……この世界も……君の世界も……〈白黄 七海〉の世界も……他の平行世界だって私達が包めば平和になるんだよ。何も心配・困難・苦痛・怒り・悲しみに合わずに……ね。」 

 

私が何故勇君に固執しているかはわからない。勇君が力の器だから……恐らくそれだけの筈だけど、その言葉には何かの違和感も感じる。だけど……

 

「次に会う時に答えを改めて聞かせて貰うよ……勇君。」

 

私はブラッドと合流する為に、目的を果たす為に中央に向かった。

 

「勇君は必ず私の前に現れる。そしてその時がこの世界での最後の戦いになるだろうね。」

 

そう確信して……私は………

 

~~凛祢sideout~~

 

 

 

 

 

~~キャロルさんside~~

 

「そういえばキャロルさんはどうやって美九さんを倒したんですか?」

 

ナナ姉とはぐれた私(達)は、更にシャナとは異なる平行世界のキャロルとその伴侶に出会い、現在は行動を共にしている。

 

〈まったく……お前の腑抜けた姿がなければもう少し早く奴等を下せたぞ?なのに……お前は!〉

 

「シャナ……言わないの。それに勇を守る事だけ見ればシャナの方が焦っていたじゃない?」

 

「え?シャナさんは僕が凛祢の攻撃を避けようとしなかった時にギリギリで間に合った訳ではないんですか?」

 

〈わわ!待てキャロル!それを言うな!〉

 

「実はアイツは分断されて割りと直ぐに倒したよ?洗脳は私達には効かないし、音響攻撃は余裕、物理は論外だったから、割と逃げ腰だったのかもしれないね。」

 

~~キャロルさん回想~~

 

「では始めましょうか?」

 

「御託は良いから始めよう?ナナ姉と分断された私達は既に機嫌が悪い。八つ当たりをさせて貰うよ?」

 

私達は勇と事前に相談して、スマッシュをそれぞれで相手する事にしていた。そして私達はガヴリエルスマッシュ(元の姿は〈誘宵 美九〉って名前らしい)の相手をする事になった。

 

《サウザンドライバー!》

「行くよシャナ!」〈任せろキャロル!〉

 

私は〈ゼツメライズキー〉をベルトの左側に装着した。

《ゼツメツEvolution!》

そして金色のプログライズキーを取り出して待機状態にする。

《ブレイクホーン!》

そして起動が終われば右側に装着する。

「ナナ姉と再会する為に!」〈オレ達は止まらない!〉

《パーフェクトライズ!》

「〈変身!〉!」

 

《When the five homs cross.the golden soldier THOUSER is bom.》

 

嘗てナナ姉達を苦しめ、敵として立ちはだかった希望を破壊する仮面ライダー………その力を私達は今も使っている。

 

《Presented by Alchemist!》

 

「〈仮面ライダーサウザー!オレの力を測れると思うなよ?〉」

 

「さて……漸く変身も終わりましたね?では私の可愛いお人形にしてあげますよ?〈独奏〉です。」

 

あのスマッシュが歌い出すと不愉快な気持ちになって来た。なんでかな?

 

〈解析が終わったぞ……キャロル!あれは洗脳の類いの歌だ!耳を貸すなよ?〉

 

「ならシャナはサポートをお願いね。私が全力で行くから。」

 

〈任せろ!こんなモノがオレ達に届かない事を教えてやる!〉

 

私達に洗脳は効かない。ナナ姉への想いをもう誰にも踏みにじらせない!だからそんな言葉には耳を貸さない!

 

「あらぁ?これは意外ですねぇ?私の歌を聞いて貰えないのは残念ですねぇ。なら正面きらせて貰いますよぉ?ガヴリエル!〈輪舞曲!〉」

 

今度は物理性能を持った衝撃波かな?だけどこの程度の出力なら正面から押し通れる!

 

〈今のオレ達ならこの程度は障害にもならない!気にせず進めぇ!〉

 

「この程度で!」

 

私はスマッシュの衝撃波の直撃をくらいながらも前進し、奴の腹を正面から殴り飛ばした!

 

「あがぁ!これは痛いですねぇ……流石に私一人では厳しいですか……ですがまだ終わってませんよぉ!〈行進曲〉です!」

 

殴り飛ばされたアイツは、新しい曲を歌い出した。その雰囲気から身体強化の類いかな?

 

〈みたいだな。しかし奴自身は非戦闘系のスマッシュだ。だから強化されてもたかが知れている。〉

 

「ならもう一度……いや、これで決めるよシャナ!」

 

〈任せろ!〉

 

私達は奴に向かって走りだし、繰り出される拳や蹴りを全て躱したり、いなしたりした。

 

「右フック!左の蹴りあげ!左降り下ろしからの掴みかかり!バックステップからの衝撃波!」

 

「ッ!私の動きが見きられてる!?」

 

「終わらせるよシャナ!〈これでトドメだ!〉」

 

《ジャッキングブレイク!》

 

「ガヴリエル!〈輪舞曲〉……いえ!回避します!」

 

私達渾身の蹴りを防ごうとしたみたいだが、威力の高さを認識して直ぐにアイツは回避行動に移った。だけど判断が遅れたみたいで、半分近い手応えは感じたかな?

 

「あ~あ。これは痛いですねぇ。仕方ないのでここは退きますよぉ。次は負けませんからねぇ?」

 

「待て!勇の力を置いて行け!」

 

私の制止も虚しく奴は撤退して行った。しかし意外だけど退きが早い……何か策があったのか?

 

〈とにかく勇の元へ急ぐぞ!アイツが倒れたらブラッドが倒せない!〉

 

シャナは素直じゃないなぁ。私達が助けられた恩だけならブラッドへの不意打ちで既に返してる筈なのに、勇の事をまだ口にしている。だったら見守ろうかな?彼の選択を。

 

~~キャロルさん回想終了~~

 

「って感じで勇の様子を見ていたら勇が凛祢の攻撃を避けようとしなかったでしょ?」

 

後は勇の見た通り凛祢の全力を私達で受け止めて変身が解除されたけど、その後で凛祢は撤退した。

 

「あはは……申し訳ありません……。僕自身の覚悟を見せたかったんですが……」

 

〈この状況で呑気や贅沢を言うな!お前がこの事態の鍵なんだ!それを自覚しろ!〉

 

あ~あ。シャナ怒ってるなぁ。だけど私も同感かな?

 

「まあ仕方ないよね?確かに凛祢の心を揺さぶる事には成功した筈だけど、勇の戦い方は自己犠牲が表れてる。そんな状態だと救える人を泣かせるよ?」

 

「ごめんなさいシャナさん。キャロルさん。いまから気をつけます。そして必ずブラッドの野望を止めて凛祢を救います!」

 

どうやら勇は彼女を……凛祢を救う決意をしたみたいだね。嘗てシャナを救ったナナ姉みたいに。

 

〈キャロル……勇のあの目は……。〉

 

「うん。嘗てのシャナを救った時のナナ姉と同じ目だよ。もう彼は迷わないね。」

 

現在の私達は、お互いの話をしながらナナ姉と合流する為の移動をしている。勇がキャロル(あっちの世界の)と魂が溶けあっているから場所はわかるらしい。そこにナナ姉がいる……私達はそう信じて疑わない。

 

「っ!見つけました!ここから二時の方向で七分の位置に二人がいます!」

 

勇がナナ姉を見つけた!早く向かおう!

 

「あっ!ちょっと待ってくださいキャロルさん!シャナさん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャロル!シャナ!良かった!心配したよ!」

 

「勇!やっと会えた!もう離さんからな!絶対だからな!」

 

「わかってるよキャロル。僕ももうキャロルと離れたくない……それにキャロルを悲しませたんだ。だから帰ったらうんと愛してあげるよ。でもいつかは〈みんなで〉……ね。姉さん達だって僕達の家族だからさ。」

 

「そうだな。義姉上や未来達とも話す事が残っていたな。帰ったらちょうき……いや教育しなければならない奴もな。」

 

私達は漸くお互いのパートナーに再会できた。あまりにも嬉しくて他の事を忘れてナナ姉に抱きついた!

 

「良かった!ナナ姉!やっと会えた!寂しかった!」

 

するとシャナも私の中から出て来てナナ姉に抱きついた!

 

「ナナ姉!オレ達はもう絶対に離さないからな!帰ったら絶対に〈愛して〉貰うから!」

 

「私もだよ!絶対にナナ姉に相手して貰うから!」

 

「はいはい。この事態が解決したら……ね。それに今は伝えるべき事がお互いにあるから情報交換をしようか?」

 

ナナ姉の空気が変わった。なら私達も再会の喜びは後回しだね。

 

「なら私達が出会った仮面ライダーブラッド……〈フィーネ〉の事から話すよ。彼女の思想・目的・手段・過去……そして私達を襲撃したスマッシュについてもね……。」

 

「ならその後で僕達は〈園神 凛祢〉の話をします。彼女の正体・目的・何故僕と出会えたかも……。」

 

私達はこれから最終局面に事態が移る事を認識しつつ、お互いが知った情報を最大限に生かす為の話し合いを始めた。……でも向こうの私が勇に言おうとしていた単語が頭にこびりついてしまった。一体向こうの私は何をするつもりなんだろう?

 

~~キャロルさんsideout~~




キャロルが何をしでかしたかは投稿済み本編第117話の、ネタばらし回をご確認ください。そして合流したパートナー達が出した結論とは?

次回の更新をお待ちください。

そしてこちらから神咲さんの作品へジャンプできます。
https://syosetu.org/novel/222283/
〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉
是非七海さん視点でもお楽しみください。


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やるべき事を確認してみよっか?

お互いに合流を果たしたパートナー達は次の目的地へと向かう。しかしそれをブラッド達が許容する筈もなく……

本編へどうぞ。


僕達は何とかお互いのパートナーと合流する事に成功した。そしてお互いの持つ情報を交換する事にした。

 

「平行世界のフィーネさんの野望はやはり凛祢の言う通りでしたか。」

 

「ああ。これがオレ達の聞いた話の全てだ。しかし……勇の力を奪った奴は……」

 

「うん。ブラッドに協力しているし、確実に力を所持しているね。」

 

「それだけじゃないよ。勇君達の話の通りならもうあまり時間は残されていない可能性が高い。スマッシュの動きが足止めなら尚更ね。」

 

「ナナ姉…でもどうするの?アイツの居場所は……」

 

「それに〈凶禍楽園〉とやらは明らかに名前に似合わない能力だ。人々が〈幸せ〉と言う名の檻に閉じ込められるのだからな。」

 

なら……こういう時は中央に何かがある筈だ。そこに向かえば何かがある!

 

「七海さん!中央の塔へ向かいましょう!平行世界を手中に納める為には余程大きな触媒等の何かが必要です!僕の力を触媒にするならコントロールするための場所も必要な筈です!恐らくそれがあの塔です!」

 

「わかったよ勇君。ならあそこにはブラッドもいるね。そこで全てを片付けようか。」

 

僕達が塔を目指す為に平原に出ると、そこには奏さんの姿をしたラジエルがいた。毎度毎度僕を揺さぶるつもりみたいだ。するとラジエルはこっちに声をかけて来た。

 

「あ~あ。気づいたか?なら仕方ないな。だけど了子さんの邪魔はさせないぜ?そしてリベンジマッチを始めようか!」

 

「さっきはよくもやりましたねぇ?今度は負けませんよ?」

 

「二度とブラフには騙されぬ。むく達を謀った事を後悔するが良い。」

 

「「「っ!?」」」

 

僕達が相手にしていた三人のスマッシュ達だ!なんで今ここに全員がいる!?

 

「相手は彼女達だけじゃないわよ?」

 

「あ~あ。なんで私まで……こんな根暗に出撃させるなんてひどい人間よねブラッドは……」

 

「きひひひ!仕方ありませんわねぇ。でもぉ!私達にも使命がありますわぁ!」

 

「あれは僕の残りの力で生成されたスマッシュか!姿から〈ザフキエルの狂三さん〉!〈カマエルの琴里さん〉!〈ハニエルの七罪さん〉か!」

 

すると七海さんは僕の肩を叩いて来た。

 

「勇君……さっき私達の所に来た敵と、君の所に来た敵達をそれぞれが分断して相手をしよう?その方が早く片付けられるよ?」

 

「わかりました。キャロルさん!シャナさん!僕達で先程の三人を相手します!行けますか!」

 

「ナナ姉の作戦なら異論はない。そうだよねシャナ?」

 

「もちろんだ!行くぞキャロル!」

 

シャナさんはそう言うとキャロルさんと一体化した。そして七海さんとキャロル(こっちの世界の)も、既に臨戦体勢だ。

 

「行きます!必ず倒します!」

 

僕達はそれぞれのスマッシュ達との戦闘を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガヴリエル!〈行進曲〉です!先程よりも相手が多いので負けませんよ!」

 

「ミカエルよ〈開〉だ!あのエネルギーを、返してくれる!」

 

「ラジエルも行くよ!」

 

六喰さんが収納したケルビエルの雷を放ち、二亜さんがラジエルのページを飛ばして攻撃する。そしてその二人を美九さんが〈行進曲〉で支援する……か。

 

「キャロルさん!僕が三人の攻撃を受け止めます!その隙に一人お願いします!」

 

「自爆以外の策じゃないと許さないから。ナナ姉に迷惑をかけないでよ!」

 

キャロルさんはそう言うと僕を信じて別行動をしてくれた。よし!これで一人倒せれば!

 

「まずはあの攻撃を受け止める!ラファエル!〈護る者〉だ!」

 

風の天使ラファエル。その力の一つが強固な護り。確かに嘗てファラさんや調ちゃん・切歌ちゃんは攻撃を受け止めきれなかった。だけど今はそんな事を思い出しても仕方ない。僕がやらなければキャロルを幸せにするのは無理なんだから!

 

「……とは言っても!ケルビエルの雷は地味に強力だな!だけどそれが万由里さんが僕に託した力だ!この力を扱う事から僕は逃げない!必ず使いこなす!」

 

気づいた時にはキャロルさんは六喰さんの背後をとっていた!

 

「まずはお前からだ!扉の天使は一番厄介だ!だから!ここで落とす!」

 

「ッ!?何故うぬがここに!むくは油断なぞ!」

 

〈いや、雷撃のコントロールに集中力を持って行かれてたな。故に隙だらけだったぞ?〉

 

《ジャックライズ!》

 

僕が攻撃を受け止めていると雷撃がやんだ。どうやらキャロルさんが一撃を加えたみたいだ。そして六喰さんが少し離れた場所に飛ばされたのが見えた。そして僕達は六喰さんの追撃にのりだし、そこには同じように誘導された〈琴里さん〉・〈七罪さん〉・〈狂三さん〉がいた。

 

「よし!今度こそトドメだ!」

 

僕がトドメの為にラファエルの〈天を駆ける者〉を発動しようとすると、この空間を何かが支配した感覚がした。そしてこの声が聞こえた。

 

『理想郷を否定する者共よ。もうじき〈凶禍楽園〉は完成する。全ての人間、そして世界は己の欲望に酔いしれる!その時こそ真の平和が訪れるであろう!』

 

「………ッ!間に合わなかったのか!ブラッドの……フィーネさんの企みを止める事はできないのか!」

 

僕が動揺していると、さっきキャロルさんが吹き飛ばした六喰さんが戻って来た。そしてキャロルさんはその後も二人を相手どったらしく、二亜さんと美九さんも多少の傷を負っていた。

 

「悪いけどブラッドの邪魔はさせないよ。何度も言うけど彼女の悲願まで後少しなんだ!邪魔させてたまるかよ!」

 

「先程は危なかった。しかしこれで巫女は目的を果たす。うぬ等に邪魔はさせぬぞ?」

 

「残念ですが私達も退けませんよ?やるべき事は終わってませんからねぇ。」

 

ああ!もう!敵が多すぎる!ブラッドも倒さないといけないし、このスマッシュ達も倒さないといけない!だけどあまりにも手が足りない!ザフキエルもない以上は一体どうすれば良いんだ!

 

「ならそこは最高の姉ちゃんを頼れば良いんじゃあねぇのか?」

 

「えっ!なんでここにいるの!?」

 

声の主……クリス姉さんが既にスマッシュに向けてミサイルを発射しており、辺りは爆風と砂埃で包まれた。

 

「しかし戦いにおいては数の力は偉大ですわぁ!ザフキエル!〈八の弾〉ですわよぉ!」

 

しまった!合流をしたという事は敵にとっても条件は同じだ!

 

「ふふっ。大丈夫だよ。勇君の頼れる幼馴染みがここにはいるんだから。」

 

そう言うと僕の前方三メートルを横断する形で閃光が走った。この光はまさか!

 

「うん!勇君の幼馴染みで婚約者、で名実共に〈SONG〉最強の装者の〈小日向 未来〉だよ?勇君の事を傷つけるいけない害虫にはお仕置きをしないとね。」

 

「未来!来てくれたの!」

「あたしもいるだろうが!」

 

なんで二人が!?でも助かる!

 

「救援は二人だけではありません!」

「そうだな!気合い入れて行くぞ!」

 

「新しい仮面ライダー!?でも声は奏さんとセレナさんの声だ!なんで!?」

 

「セレナ!奏!来てくれたの!」

 

あの二人の仮面ライダーは七海さんの世界の二人らしい。

 

「なんで四人がここへ?」

 

「それは私が説明します。」

 

するとセレナさんが説明を始めた。

 

「まず、私達を呼び寄せた人物は金髪の少女で、扉と鍵を操る方でした。そして私達にこう告げたのです。」

 

~~セレナ回想~~

 

〈うぬ等の大切な者達に危機が訪れておる。よってむくはうぬ等をここへ呼び寄せた。〉

 

「先生やお姉ちゃんに危機ですか!?私達はどうすれば良いんですか?」

 

「七海さんやキャロル達の危機か……見過ごせないな。アタシ達は行くぜ?」

 

「勇君は守らないといけないの!私達にとっての大切な幼馴染みで婚約者なんだから!」

 

「キャロルの事はともかく勇の事が心配だ!直ぐに案内してくれ!」

 

〈まあ待て。直ぐにむくがゲートを開く。そうすればうぬ等はその者達の事を思い浮かべる。そうした時、その者達の元へたどり着く。〉

 

私は行動する前に彼女にお礼がしたかったのでお名前を聞く事にしました。

 

「そう言えば貴女のお名前を私達は聞いていません。よろしければ教えて貰えませんか?」

 

〈むくの名前……か。そう言えばまだ名乗っておらんかったな。では少々遅くなったが自己紹介をしよう。むくの本名は「星宮 六喰」だ。そしてこの鍵と扉の天使「ミカエル」の使い手よ。そしてそこの「小日向 未来」と「雪音 クリス」には一つ伝言をしよう。

 

「既にミカエルの継承者はやるべき事を見いだした」

 

意味はいずれわかるであろうな。〉

 

「勇の力の一つ〈ミカエル〉。その継承者が……」

 

「既にやるべき事を見出だしたね。」

 

私達と異なる世界のお二人は言葉の意味を噛み締めていました。では私は彼女に……六喰さんにお礼を言うべきですね。

 

「ありがとうございます六喰さん!皆さん気持ちを一つにして思い浮かべてください!」

 

「そうだな!」

「任せてください!」

「おうよ!」

 

そうして私達は気持ちを束ねて扉をくぐり抜けてこの場所へたどり着きました。

 

~~セレナ回想終了~~

 

セレナさんの説明を聞いて僕達には希望が戻って来た。ありがとうございます六喰さん!これで僕達は四人の救援者が来てくれた。ならここはこの四人に任せて早く中央に向かわないと!

 

「セレナ!奏!ここは任せて大丈夫?」

 

「はい!お姉ちゃんが全力を出せるようにこちらは任せてください!」

 

「任せてくれよ七海さん!アタシ達は助けに来たんだ!だから信じて欲しい!」

 

七海さんの世界の二人の救援者は納得してくれた。なら僕達の世界の二人も!

 

「姉さん!未来!二人にこの場所を任せたい!大丈夫?」

 

「さっきも言ったが姉ちゃんを頼りな!この程度負担に入らねぇからよぉ!」

 

「大丈夫だよ勇君。義姉さんがヘマしても私がいるから心配しないで。」

 

「なんだと未来!」

 

相変わらず未来は姉さんをあ煽るけど、これもよく見る光景だ。

 

「とにかくここは任せてよ。私達がきちんと食い止めるから。」

 

「未来……姉さん……ありがとう!そして奏さんとセレナさんも助かりました!行こうキャロル!この戦いを終わらせよう!」

 

「じゃあ任せるね二人とも!私達のやるべき事は一つだよ!行くよキャロル!シャナ!」

 

「わかっているぞ勇!今こそオレ達の絆が奇跡を起こすぞ!」

 

「ナナ姉!私達も最後まで戦うから!だから!」

 

〈共に戦うぞナナ姉!オレ達の力で世界を救う!〉

 

僕達は想いを一つにしてブラッドの待つタワー、〈凶禍楽園〉の中央に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~クリスside~~

 

「さて、どうやらアイツ等は精霊達の姿を模したみたいだな。で……未来……提案がある。」

 

「どうしましたか義姉さん?」

 

「奴等を分断したい。お前に〈ラジエル〉〈ミカエル〉〈ガヴリエル〉を頼みたい。」

 

「わかってます。義姉さんは絡め手が苦手ですからね。私が引き受けます。」

 

「助かるよ。そして向こうの二人もそのつもりみたいだな。」

 

「お~い!アタシと組むのはどっちだ?」

 

「あっ!私です!よろしくお願いします。私の名前は〈小日向 未来〉と言います。」

 

「アタシの名前は〈天羽 奏〉だ。頼むぜ未来!」

 

「はい!任せてください!」

 

未来達は挨拶を済ませると三体の敵を引き連れて距離を取り始めた。さて、あたし様もやりますか!

 

「あたしの名前は〈雪音 クリス〉だ!短い間のバディだけどよろしく頼むぜ?」

 

「はいクリスさん!私の名前は〈セレナ・カデンツァヴナ・イヴ〉です。よろしくお願いします!」

 

「じゃあセレナ!あたし達の相手はゾンビみたいに何度でも立ち上がるからな?オーバーキルするくれぇの戦闘を頼むぞ?」

 

「わかりました!任せてください!」

 

勇……こっちは任せてお前は先に進め!あたし達が最大限の援護をしてやるからさ。

 

~~クリスsideout~~




敵の襲撃を受けた。しかし頼もしい援軍達も駆けつけた。ならば見据えるべきモノは各々が知っている。

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今度こそ胸の内を伝えてみよっか?

出会うべくして出会った者達は互いに想いを伝え合う。
それが望んだモノではなかったとしても。

本編へどうぞ。


僕達は姉さん達のお陰で何とかブラッドの元へ向かう事ができ、漸く到着した。

 

「ブラッド!凛祢!やっと見つけたぞ!お前達の野望は成就させない!ここで止める!」

 

「勇の力を奪った罪は大きいぞ!貴様等は必ず倒す!そして勇の力を取り戻す!」

 

すると凛祢がこちらへと歩いて来た。

 

「勇君……私の提案の答えを聞かせてくれるよね?」

 

「七海さん!キャロルさん!お二人にブラッドを任せます!僕とキャロルで凛祢を止めます!」

 

「漸く勇との共闘だ!これが初めての共同作業とは些か不満だが!勇の力を取り戻す為だ!貴様には灸を据えてやる!」

 

「任せなよ勇君。キャロル達もかまわないよね?」

 

「私達はナナ姉のモノでナナ姉は私達のモノだよ?その決定に不満はないから。勇!ヘマをしたら許さないからね!」

 

〈必ず目的を果たせ!オレが言えるのはそれだけだ!〉

 

「七海さん!キャロルさん!シャナさん!ありがとうございます!よろしくお願いします!行くよキャロル!」

 

僕達と凛祢は七海さん達の邪魔をしない為にも戦闘場所を変える事にした。いや……戦闘にならないならその方が良いんだけどね………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……ごめんね凛祢。さっきは君からの問いかけを無視したことは謝るよ。」

 

「そんなことは良いんだよ。だって私は勇君の答えが聞きたいんだから。」

 

「だけどお前の望む通りの答えを勇が出すとは限らないぞ?それでもお前は答えを聞くと言うのだな?」

 

キャロルの言葉には説得力があった。嘗てシャトーで僕はキャロルの命題が誤りであると否定し、その考えこそが最もイザーグさんの想いと反対だと突きつけた。そんなキャロルだから凛祢へと最後の確認をしているのだろう。

 

「構わないよキャロルちゃん。もし勇君が善意で協力してくれないなら……仕方ないけど力ずくで言うことを聞いて貰うから。」

 

「そう……か。お前はそこまで及んでいたか。ならば……」

 

キャロルはそう言うとダヴルダヴラを纏い出した。確かにこの状況は〈あの時〉と似ている。違うのはキャロルが僕の隣にいる事だろう。だけど僕の口からも伝えるべき事は伝えよう。

 

「何度でも言うよ。悪いけど僕達は凛祢達に協力はできない。僕達にも守るモノがあるし、人々の〈幸せ〉はモノだけじゃあ満たされない。そして満たす為に世界を包むのは只の支配だ。だから僕達は認めないし、何度だって凛祢達を否定して戦うよ!」

 

「そう……なんだね。やっぱり勇君の答えは変わらない……か。なら私は勇君を連れて行くよ!絶対に君を離さない!」

 

凛祢は僕の答えを聞くと少し儚い顔をした。しかしその後の瞳には光が消えていた。

 

「勇……奴のあの顔は………。」

 

「うん……気付いているよ。キャロルを始めとした皆と同じ表情だってね。そして凛祢は僕の力の残滓を使い始めた事もね。」

 

「オレの虫の居所が悪いのは相変わらずだ。まったく……勇は目を離すとすぐに女を引っかける……。オレと契った直後だろうに……。」

 

本当にごめんねキャロル……。僕が結んだ縁は間違いなく良い事だけじゃあない事はわかっているけど、それでも受け止めてくれるのは嬉しいよ。

 

「準備ができたのは二人だけじゃあないよ?私の力は勇君の力。絶対に私は負けない!」

 

凛祢は右手に〈ダイン=スレイフ〉を所持していた。そして左手には銃が確認できた。だけどあの形状は!

 

「あれはサンジェルマンの銃か!しかもオレの知らない装飾付きだと!」

 

「この力は勇君がイメージした力。その中でもキャロルちゃんの次に想い入れのある姿だよ?」

 

「!?」

 

凛祢は語り終えると姿が消えた。そして唐突に僕の目の前に現れて来た!

 

「チィ!サンダルフォン!」

 

僕はサンダルフォンで受け太刀を試みたけど、その所為で自分の視界の左側を覆う結果になった。そしてその死角から凛祢の回し蹴りをモロにくらった!

 

「あがぁ!」

 

「勇!貴様よくも勇を!」

 

キャロルはザドキエルとメタトロンで凛祢の動きを面で捉えるつもりだったみたいだけど、その予想を裏切る速度で僕は蹴り飛ばされた。

 

「キャロルちゃんは来ないで欲しいかな!」

 

凛祢は数発の弾を発射すると、その動きは常に弾道を変化させながらキャロルへと迫っていた。恐らく時間稼ぎなのだろう。

 

「今の一撃でわかったでしょう?勇君は私達には勝てない。だから私達に協力して?」

 

僕は教えて貰っているし、その違和感にも気付いている。だから今度は此方が揺さぶってやる!

 

「凛祢……君の僕に固執する理由が明らかに異常だよ?それに今だってそうさ。顕現させるのがサンダルフォンなら今の一合で僕は腕を斬り落とされていた。なのに凛祢はそれをしなかった。〈詰めが甘い〉とかじゃあないよね?明らかに手加減をしているよ?」

 

「それが本当だとしたらどんな意味があるの?」

 

「前提が変わるね。凛祢は人々の感情の……〈救われたい願い〉から生まれたとシャナさんは言っていた。そして僕が知る平行世界の〈園神 凛祢〉は〈士道さん〉を救う為に姿を現した!だから凛祢!君は既に自我を獲得しているんだ!」

 

「平行世界の事が今当てはまる訳ないじゃない!」

 

「それだよ!今凛祢は平行世界の自分と比べられた事に嫉妬した!凛祢だって一人の!君自身を見てくれる人が欲しかったんだ!この世界に彼は……〈士道さん〉はいない!だけど僕はここにいる!僕が君を受け止める!」

 

「勝手な事を言わないでよ!私には使命が!成すべき事があるんだよ!それを果たさないと私は始まらないの!」

 

「なら人と協力すれば良いんだ!何度でも言うけど人の〈幸せ〉は物質じゃあ満たされない!人を満たすには心を満たす事が大切なんだ!」

 

「だから私達は勇君の天使で!」

 

「それは只の抑圧だ!人には〈想い〉が!〈愛〉がある!」

 

「愛なんて所詮簡単に壊れてしまう儚い物なのに!」

 

このやり取りでわかった。凛祢は目的の達成を願う気持ちは変わらない。だけどその先には一人の自由を求める想いがある!だから僕は凛祢を救う!

 

「なら答え合わせだ!凛祢の使命は人々を幸せにする事だ!そしてその志を同じくするフィーネさんに出会った!その情報交換の過程で霊力を持つ僕を観測した!更に僕とキャロルの意識が現実を離れる僅かな隙が起こり、これを好機と捉えて僕へ接触して〈天使〉を強奪したんだ!後はブラッドと協力して足りない分を僕から回収すれば充分な力となる筈だ!そして世界をこの〈凶禍楽園〉で包めば良い!」

 

「それはこれまで私達が説明した事じ「気づかないのか?」えっ!?」

 

「力を狙うなら僕に固執する理由はない!平行世界を観測できるならオリジナルの士道さん達から奪えば良かった筈だ!」

 

「っ!でもそれは!」

 

「それが理由だよ。凛祢は既に自我を手にしていた。効率だけなら他の方法すらあるのに、敢えて僕達や七海さん達を狙ったんだ。そして今凛祢達は目的を果たす直前まで来た。だけど凛祢はここでもう一つ無意識に求めたんだ。凛祢は自由を求めている。なら僕達と協力をすれば良いんだ!」

 

「私達が言ってた事と同じじゃない!」

 

「いいや!それは違うな!」

 

既にエネルギー弾をいなしていたキャロルが、僕達の前に戻って来ていた。

 

「お前が勇の世界に来て、オレ達と世界を知れば良い。オレ達にはその為の力があり、お前の力は必ず受け入れられる。」

 

「そして僕達は僕達のペースで人々と関わるんだ。人には心がある。例えば花を見て綺麗だと感じて幸せになる事もある!」

 

「でも人々は簡単にその綺麗な花を踏みにじる事も……いや何度でも繰り返す!」

 

「なら花の美しさを伝えるんだ!武器を手に持つよりも素晴らしいモノがあると伝えれば良いんだよ!……いや、伝えるだけじゃない!僕達は花を植え続ける!」

 

「そんな綺麗事ばかり並べるのはエゴ……いや偽善者だよ!」

 

「偽善者で良いんだ!正義と悪ならわかりやすく白黒付けられた!だけど本当に難しいのは正義と正義がぶつかる時だ!そしてそれを乗り越えたのが響達二課の装者や七海さん達仮面ライダー!そして士道さん達精霊なんだ!だから僕は……いや僕達はもう迷わない!その行動を偽物にしないために証明し続ける!だから必ず凛祢とも手を繋ぐんだ!」

 

その言葉を全て聞いた凛祢は涙を流していた。まるで自分を初めて見つけたように……。

 

「勇君……わたし……わたし!」

 

「僕達は手を取り合える!」

 

僕達の手がふれ合うその瞬間………十を越える触手が凛祢を回収しようとしてきた!

 

「勇君!」

 

凛祢は僕に二つのフルボトルを投げて来た!

 

「これは私の決意!もし勇君が私達を打ち負かしたその時は………」

 

凛祢は最後まで言葉を伝えきれずに胸を触手に貫かれ、そのまま回収されてしまった。

 

「勇……恐らく凛祢の伝えたかった言葉は……」

 

「多分だけど凛祢の伝えたかった言葉は、

 

〈もし私達を打ち負かしたその時は……改めて手を取り合おう。でも私達にも果たすべき使命がある。だから勇君達がまだ諦めていないなら絶対に私達を打ち負かして!〉

 

だろうね。だから僕に二つのフルボトルを返したんだ。」

 

キャロルは僕の言葉を聞くと少しだけ頬を膨らまして肯定してきた。

 

「恐らくそうだろうな……。まったく……あれではオレが退け者じゃないか……。」

 

「大丈夫だよ。キャロルの事が一番大事だから。だけどこの事態は見過ごせない。だからもう少しだけキャロルの力を貸して欲しい!」

 

「何を今さら……。当に勇はオレのモノで、オレは勇のモノだ。勇のその覚悟に泥を塗るつもりはない!最後まで付き合うぞ!」

 

「ありがとう……行くよキャロル!この人々の願いが曲解した世界に終止符を打つ!そして可能なら……」

 

「〈フィーネだって救う〉だろう?まったく……勇のお人好しは立花 響と変わらないじゃないか!」

 

「良いんだよ!響の行動はある意味一つの答えだ。だから僕は自分の力と伸ばした手で救える人々はなるべく救う!全ては望まない……必ず選ぶ時が来る。だからこそ!僕はもう迷わない!自分が後悔しない選択をし続ける!」

 

「そうだな!それでこそオレが心から惚れた〈雪音 勇〉という人間だ!ならばその全てを最後まで見届けるのはこのオレだ!」

 

僕達はお互いの決意を語って中央に向かった。あそこにブラッド……いや、フィーネさんがいる!




勇と凛祢は和解しかけた。しかしブラッド……いや、フィーネは許容しなかった。そして主人公達は合流する。

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逆境だけど……立ち上がってみよっか!

ブラッドの計画は佳境へと至る。その時勇達には絶望が降りかかった。しかし同時に譲れない想いもまた存在する。

本編へどうぞ


「行くよキャロル!凛祢を救い出す!」

 

「任せろ勇!必ずブラッドを倒す!そしてアイツも救い出す!」

 

僕達は決意を固めて七海さん達の戦う場所へと向かった。触手の向きから見てもブラッドはまだあの場所にいる!

 

 

 

 

 

 

 

 

「漸く戻って来たか。……しかし僅かに遅かったぞ?凛祢はもうすぐ私に取り込まれる。」

 

僕達が七海さん達と合流すると、消耗している七海さんとキャロルさん(達)と勝利を確信するブラッドがいた。ブラッドは凛祢を引き寄せ赤いスライムの様な液体に体を変化させて凛祢を包み込みスピリチュアルスマッシュ・ジャッジメントフェイクに変貌した。

 

「あの姿は……ただのスマッシュでも、精霊でもない!それに凛祢を……〈ルーラー〉の力を取り込でる!なんて禍々しい力だ!七海さん!キャロル!シャナさん!キャロルさん!ここで奴を倒さないと本当に世界が!」

 

僕はあの力が恐ろしい物だと本能で感じた。そしてそれは他の皆も同じ様子だった。

 

「確かにな。奴は思想まで含めて危険だ!ここで倒すぞ!」

 

「ブラッド……今度こそ終わらせるよ。姉さんの発明品をもう悪用はさせないから!」

 

「ナナ姉の言う通りだ!私達が今度こそ終わらせる!そして……〈ナナ姉とデートの続きをする……だろ?〉シャナ!最後まで言わせてよ!」

 

僕達が覚悟を決めるとブラッドは鼻で笑っていた。

 

「お前達の覚悟が如何に強かろうと所詮は弱者の集まりだ。〈私〉と言う完全な存在が全てを包む邪魔はさせんぞ!」

 

フィーネはそう僕達に告げると腕を振り衝撃波を放って来た!

 

「「ラファエル!〈護る者〉!!」」

 

僕とキャロルは二人でラファエルを展開したけど、それでも衝撃は抑えきれずに僕達四人は各々が木に叩きつけられた。そして七海さんとキャロルさんは変身が解除されてしまった。

 

「腕を振るうだけでこの威力か!」

 

「かなり不味いな。ダメージがかなり大きい。」

 

「ここまでブラッドが強いなんてね……」

 

「でも私達が倒さないと……」

 

「オレ達の世界は!みんなが!」

 

悲鳴をあげる体に鞭を打って立ち上がる僕達にフィーネはこう告げて来た。

 

「やはり私にこそこの力は相応しいな……役立たずには過ぎた力だ。私を裏切る……いや、敗北する事さえ望んでいるような者など不要でしかなかったか。」

 

更にフィーネはこう付け加えた。

 

「自らが課せられた使命を放棄するとはな。貴様のような中途半端な役立たずの力も、この私が利用してやろう。」

 

「凛祢が役立たず……だと!!」

 

僕はフィーネのその言葉が許せなかった。だからこう言わずにはいられなかった。

 

「憐れな人だ……。

人と人を繋ぐ絆を痛みだけだと勘違いしていたあの時の貴女の方が、まだ人と分かり合う努力をできていただろうに……。

貴女はそれすら放棄した!だから僕達は貴女を倒す!覚悟しろ行き遅れの老害!」

 

「小僧……貴様は今何と言った?私の聞き間違いなら良いのだが貴様は私の事を侮辱したか?」

 

「聞き間違いじゃあない!僕は確かに言ったぞ!痛みを絆だと言っていた頃の貴女がまだ人どわかり合う努力をしていたと!そして今の貴女はそれすら放棄した老害だと!だから僕達は諦めない!例え何度負けたとしても何度だってフィーネさんに挑む!」

 

フィーネは僕の言葉に誤りが無いと悟ると怒りで体を振るわせていた。それはそうだろう。万能に近い力を得た今の自分が、〈カ・ディンギル〉を建造していた頃の自分に劣ると言われたんだ。それは耐えられる言葉では無いだろう。

 

「もう許す道理は無いな。貴重な力のサンプル故に手加減をしていたが、それが貴様達を増長させていたとはな。ならば教えてやろう!私が手にした圧倒的な力を!」

 

すると僕の魂の叫びを聞いて七海さんは立ち上がった。でも僕は恐れていた。仮面ライダーが変身を解かれた状態とはダメージを超過した時だということを。これ以上は命が危ないという事を。

 

「もうやめてください七海さん!貴女は錬金術師だけど人間です!愛するキャロルさん達がいる!彼女達を悲しませたらいけないです!僕は仮にも精霊です!そしてブラッドのあの力は僕から奪われた力でもあります!この事態は僕が片付けますから!これ以上彼女達を悲しませないでください!」

 

「ありがとうね勇君。勇君の覚悟のお陰で私もまた立ち上がれるよ。だけどね……その言葉はそっくりそのまま勇君に返すよ。勇君は確かに精霊で人よりも体は丈夫だろうね。だけどね……勇君達の最初の話通りなら勇君とキャロルちゃんは結ばれたばかりなんだ。そんな二人の仲が引き裂かれるなんてあったらダメなんだよ。それにね……ブラッドのあの装備の半分は私達の世界で作られた物だよ?だから私達にも果たすべき責任がある!」

 

七海さんはそう言うと言葉を切った。なら僕はこう返すべきだろう。

 

「七海さん……すみません。僕の考えが甘かったです。僕の命は既に僕だけの物じゃない!姉さんの!未来の!師匠達の!響達の!そしてキャロルとの命でもあるんだ!だから……僕はもう間違えません!力を貸してください!」

 

「うん!良く言えたね!だから今度は私が体を張るよ!なんたって私は君よりもお姉さんだからね!」

 

「そうか白黄 七海!貴様もまだ私に歯向かうか!ならば仕方無い!貴様達は全員皆殺しだ!二度と日の光すら浴びる事は無いと知れ!」

 

フィーネさんはそう言うと青い竜の形をした二つのエネルギーを放って来た。だけどその攻撃は七海さんが取り出したとあるボトルにより、4人を囲むように展開された。そしてフルボトルやプログライズキーによってその攻撃は防がれた。

 

「それと言い忘れていたけどねブラッド……理想郷は既に存在しているよ!」

 

「何だと!それはどういう意味だ白黄 七海!」

 

七海さんの言葉に初めてフィーネさんは動揺した。それはそうだろう。自分が作り出そうとしている楽園が既にあると言われたんだ。僕がフィーネさんでも動揺しただろう。そして七海さんは言葉を続けた。

 

「私達にはね……帰る場所があって、仲間がいて、友人がいて、家族がいて……愛する人が隣にいる。そこが私達の理想郷だ。貴女なんかに作ってもらう必要はないんだよ!」

 

七海さんの言葉に僕も胸を打たれた。だけど僕も男だ!意地と信念とプライドがある!

 

「仮面ライダーブラッド!……いや、享楽の巫女フィーネ!貴方は私たちが倒す!私達は自分達の手で幸せを掴むんだから!」

 

僕も七海さんに負けていられない!ここで決意を見せる!

 

「凛祢も返してもらいます!!そして……僕は貴女さえも救います!」

 

七海さんの次の言葉がなんだかわかる気がした。だから僕はこの言葉を贈るべきだと感じた。

 

「「さあ…心火を燃やして、戦争(デート)を始めよう」」

 

僕達は再び立ち上がった!




勇の覚悟は七海を、七海の言葉は勇を互いに奮い立たせた。反撃の機会が遠い可能性は高いが、それは諦める理由にはならない。

次回の更新をお待ちください。

そしてこちらから神咲さんの作品へジャンプできます。
https://syosetu.org/novel/222283/
〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉
是非七海さん視点でもお楽しみください。


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僕達の心火を燃やして戦争(デート)を始めてみよっか?

覚悟を決めた主人公達は何度倒れても立ち上がる。そして一人は新たな力を手に入れる。そしてもう一人は奪われた筈の力を取り戻す。

本編へどうぞ。


僕は凛祢から受け取ったフルボトルを開けた。すると予想通り〈ミカエル〉と〈ラジエル〉の力と霊力が戻った。

 

「ありがとう凛祢。これで僕はまだ戦える!」

 

キャロルも少し遅れて立ち上がった。

 

「同感だ!これ以上オレも寝てはいられない!ならばオレは勇の援護をする!それだけだ!」

 

七海さんも変身を完了させていた。そしてその隣にはキャロルさん(達)も立っている。反撃開始と行こうか!

 

「ほう……貴様達全員が立ち上がったか。だが言っておこう。ライダーの変身が強制解除された意味を私が知らぬと思ったか?既に風前の灯火である貴様達に構う暇など私にはありはしない。故にこいつらと戯れるが良い!」

 

ブラッドはそう言いながらスマッシュを出現させた。

 

「あのスマッシュはまさか!?まさか……姉さん達が負けたというのか!?」

 

驚く僕にフィーネさんは声をかけてきた。

 

「私がいつスマッシュは一体ずつしか出せないと言った!その程度の人形等いくらでも生成できるぞ小僧!」

 

確かに僕はこの現象に驚いただけど、僕達は既に覚悟を決めていた。だから急造したスマッシュごときには苦戦をしない筈だ!

 

「勇君……自分達が戦った三体を各々で倒すよ。」

 

「わかりました!行くよキャロル……僕達の相手は〈ミカエル〉・〈ガヴリエル〉・〈ラジエル〉の三体だ!」

 

「ふん……非戦闘系の三体か!直ぐに片付けるぞ!」

 

「あまりむく達を嘗めるなよ?」

 

「そ~だね。あたし達は弱くはないぜ?」

 

「そこの貴方以外は私のコレクションに加えても良いですよ?」

 

「行くよキャロル……メタトロンだ!」

 

「了解した……〈天翼〉だ!」

 

僕達はメタトロンの天翼を使い、擬似的なワープを始めた。

 

「ワープによる多角的な移動で的を絞らせず、更に〈光剣〉による粒子で私達を封殺……ってところかな?甘いよ!」

 

「ガヴリエル!〈幻想曲〉です!」

 

あの攻撃は美九さんが平行世界の十香さんとの戦闘に使った技だ。〈独奏〉〈輪舞曲〉〈行進曲〉〈鎮魂歌〉の四曲を組み合わせた歌だ。だけどその美しさは本物には及ばない。

 

「キャロル!合わせて欲しい!ラファエルだ!」

 

「今更だぞ勇!〈天を駆ける者〉だ!」

 

僕達は擬似的転移を繰り返す事で近くにいると三人に意識させた。そして意識の僅か外へ転移し、僕達は二人で弓矢を形成して穿った。嘗ての〈八舞〉の……〈風立 八舞〉さんの姿を越える為に!

 

「「ラファエル!!〈天を駆ける者!!〉」」

 

僕達が穿った矢は三人の意識の外からの攻撃となった。そしてその烈風で三人の姿を模したスマッシュを叩き潰した。

 

「ほう?存外まだしぶといか。ならば私自ら止めを刺そう。今度こそ貴様達の息の根を止めよう。」

 

フィーネさんはそう言うと、サンダルフォンを右腕に装備していた。

 

「アレはサンダルフォンか!だけど僕も顕現させる事はできるぞ!なのに……なぜ貴女が持っているんだフィーネ!」

 

フィーネさんは僕に失望した顔をしていた。

 

「貴様は……まだ私を享楽の……いや、先史文明の巫女の名で呼ぶか!」

 

「何度でも呼びます!僕にとっては……少し恥ずかしいですが!師匠達の次に母と呼べるのは貴女だった!だから僕は貴女の過ちを止めます!」

 

「オレも少なからず旧知の仲だろう?故に思い出すが良い!オレ達の因縁を!」

 

僕とキャロルはサンダルフォンを展開した。そして少し後ずさると、七海さんと背中がぶつかった。

 

「七海さん!」

 

「勇君……良く聞いて。ブラッドは私達二人で叩くよ。キャロル達は援護ね。」

 

(キャロル……聞こえた?)

 

(……!……もちろんだとも。これが念話か。シンフォギアの決戦仕様の一つの。)

 

僕達は作戦を念話で擦り合わせた。後はやるべき事をやるだけだ。

 

「行きます七海さん!ラファエルよ!僕達を包み風の加護を!」

 

僕達は風の加護を受けて飛び回る事に成功した。これでフィーネさんが巨体だろうと簡単には潰されない。

 

「そして僕はまだ使える天使がある。いくよケルビエル!〈ラハットヘレブ〉だ!」

 

フィーネの視界(というより顔にあたる場所)に雷撃をぶちかました。だから少しは影響が出るだろう……そう思ったのが僅かな隙を作った。

 

「毛程も効かぬわ!」

 

フィーネさんはそのまま左腕で僕を叩き潰そうとしたが、その腕はキャロルに斬り落とされた。

 

「サンダルフォンの〈最後の剣〉だ。やはりこの出力なら届くらしいな!」

 

「そのまま食らえ!〈ジャッキングブレイク!〉」

 

左腕を斬り落とされたフィーネさんは僅かに重心が崩れた。そしてそのままキャロルさんの必殺技で左足を蹴られ、完全に体が傾いた。そして七海さんが止めに仮面ライダーグリス最高の一撃を加えた。

 

「食らいなよブラッド!〈スクラップフィニッシュ!〉だ!」

 

既にバランスが崩れかけていたフィーネさんは転倒した。しかしこれだけの攻撃を受けたにも関わらず、ダメージらしいダメージは確認できなかったように見えた。

 

「さて貴様達……これで十分満足したか?」

 

「ちょっとおかしいかな?私達の攻撃がアレだけ直撃しておきながらダメージらしいダメージが入ってないなんてアークゼロの最終形態みたいじゃないかな?」

 

「〈アークゼロ〉それは間違いなく、僕の知らない仮面ライダーの敵の名前ですね?しかし僕にもその相手が恐ろしく強かった事がわかります。そして……今のフィーネさんの実力の高さが想像できました。」

 

「そう……〈アークゼロ〉はゼロワンに出てきたラスボスであり、私達がフロンティア事変で相手をしたネフェリムが最後に至った姿だよ?そしてキャロル・セレナ・姉さん・私・奏・シャナの全員で力を合わせた……ね。」

 

「だけどナナ姉!アイツは!」

 

「間違いなくアークを越えているよ。勇君達の力は既にあの時の五人相当な力がある。それでも勝てていないからね。」

 

七海さんが冷静な分析を終えると、再びフィーネさんへの攻撃態勢に入った。

 

「僕も続きます!サンダルフォン!〈最後の剣〉!」

 

僕は七海さんを援護するべく〈最後の剣〉を放った。だけどフィーネはその一撃を見てこう言い返した。

 

「貴様達に真の斬撃を見せてやろう。」

 

そして右腕のサンダルフォンを両手で持ち直した。

 

「嘘だろ!?さっき左腕は斬り落とされた筈だ!」

 

「その程度のダメージは炎の天使で修復される。貴様達も覚えがあるだろう?そしてこれで倒れろ!」

 

僕達四人は振り下ろされた斬撃で何本もの木々をへし折りながら壁に叩きつけられた。

 

「ふむ。少々飛ばし過ぎたか……ではこのまま追撃を喰らうが良い!確か名前はカマエルの〈砲〉だったか?」

 

フィーネさんによる追撃の〈砲〉の威力は恐ろしかった。だから僕は七海さんを守る為にザドキエルを展開した。

 

「ザドキエル!〈凍鎧〉だ!ここで防がないと!それに今こそ虎の子を使う時だ!!」

 

僕はザドキエルだけならこの一撃を防ぎきれないとわかっていた。だから虎の子である最後の〈アルカ・ノイズ〉も使いきった。

 

「無駄だ!今更ノイズで防げるほどお前の力は弱くないぞ!」

 

「頼むザドキエル!全力だぁ!」

 

しかし僕お手製の増殖分裂タイプの〈アルカ・ノイズ〉もろとも、ザドキエルの防壁は破壊されてしまった。

 

「だけど……何とか防いだ!」

 

「ほう……?今の一撃を防いだか!では次はどうする?風の天使による烈風だ!確か名前は……〈天を駆ける者〉だったか?」

 

さっきの一撃を防ぐ事に全力を注いだ僕は体の力が入らなかった。キャロル達はまだ動けない。万事休すかな……

 

「大丈夫だよ。私に任せなさい。」

 

七海さんはザドキエルの力によって生まれた『グリスブリザードナックル』で粉砕した。そして一度変身を解除した。

 

「それの力はもしかして……ザドキエルの!?」

 

「そうだよ。誰かを救いたいと願った少女の、勇気の結晶だ。だから私は立ち上がる!何度だって諦めない!」

 

僕達の折れない覚悟を何度も目の当たりにして、フィーネさんは怒りに体が震えていた。それもそうだろう。目的が果たされる直前でこんなに邪魔をされているんだから。

 

「貴様達は、自らの幸せの為に、多くの理想を切り捨てるのか!その覚悟があるとでも言うのか!」

 

《Are you ready?》

 

「……できてるよ」

 

七海さんがそう冷言うと、冷気が辺り一面に漂い膝上まで凍結させた。

そしてナックルに似た「アイスライドビルダー」が出現して、大量の液体窒素のような液体(ヴァリアブルアイス)が溢れて、七海さんを氷塊状態になった。

 

「ふははははは!どうした白黄 七海!諦めないと言いつつも新たな力に呑まれたか!やはり人には過ぎた力だったと言う事か!」

 

フィーネさんはこの現象を笑っていた。だけど僕はこの現象が自滅じゃないと何となく感じた。……そして後ろから氷塊をアイスライドビルダーが押し割り、変身が完了する。

 

「何なんだその力は!私の知らない力だと!?」

 

動揺するフィーネさんに七海さんはこう告げた。

 

「さっき言ったよねブラッド!この力は!誰かを救いたいと願った少女の……勇気の結晶だと!」

 

そして七海さんは仮面ライダーグリスブリザードへと変身を完了させた。




今回は少し短いですが、七海さんがグリスブリザードの初変身回ということでここで区切ります。明日は七海さんの活躍をお楽しみください。そして勇君も一つ目の決意の行き着く先とは?

次回の更新をお待ちください。

そしてこちらから神咲さんの作品へジャンプできます。
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〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉
是非七海さん視点でもお楽しみください。


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凛祢を助け出してみよっか!

グリスブリザードに変身した七海と並び立つ勇。やるべき事を見定めてその手に希望を掴めるか……

本編へどうぞ。


七海さんがグリスブリザードに変身した。僕はそれだけでこの状況を打開する希望が見えた気がした。

 

「いい気になるなよ!貴様達がいくら新しい力を宿そうと私の行動は揺るがない!ここで障害を排除すれば良いだけなのだ!」

 

フィーネさんは再びスピリットスマッシュを六体生成して来たけど、今の僕達には恐怖を感じる理由がなかった。

 

「もう惑わされません!あれはただの力の欠片から生まれた偽物だ!本物の力を継承して、僕はあの人達から直々に力を託された!だからもう振り返らない!前を見て進むんだ!」

 

「そうだよ勇君!その覚悟があればきっとその想いは彼女に伝わる!まだ間に合う!だから希望を捨てないで!」

 

「良く言ったぞ勇!オレ達が道を開く!必ず勝利を掴むぞ!」

 

「ナナ姉にここまで言わせたんだ!失敗したら私はお前を許さないぞ勇!」

 

〈ここが正念場だ!踏ん張り男の意地を見せろ!〉

 

みんなが僕の背中を押してくれる!だから負けられない。僕は救うと決めたんだ!凛祢だけじゃない……ブラッド……いや、フィーネさんの本質は変わらないんだ!奏さんの姿をしたラジエルの言葉は一部は本当だったとおもう。だけどそれだけじゃない筈だ!

 

「勇の道を作るぞ!お前も合わせろ!」

 

「良いだろう。今はお前の言葉を信じるさ!勇の想いと行動は信じるに値するからな!」

 

キャロルさんはジャッキングブレイクを発動してミカエル・カマエル・ラジエルスマッシュを蹴りあげた。そしてその三体のスマッシュには、キャロルの砲撃が待ち構えていた。

 

「既に準備は整っている!翠の獅子機の一撃を喰らえ!」

 

この一撃を回避することは、宙に浮かぶ三体のスマッシュには不可能だった。そして僕はその道を通りフィーネさんのもとへ向かう。まずは凛祢を救う為に!

 

「スマッシュ達!悪いけど覚悟を決めた少年の邪魔はさせないよ!」

 

七海さんはグレイシャルアタックを発動し、氷で巨大化した左手のアームでザフキエル・ガブリエルのスマッシュを叩き潰し、ハニエルスマッシュは握りつぶした。そして巨大化させたままのアームで僕をスピリチュアルスマッシュに向けて投げ飛ばした。

 

「救ってきなよ勇君!今が彼女を救える最後のチャンスだから!」

 

「えええええッ!?七海さん!いきなり過ぎませんか!?」

 

だけどフィーネさんもこの状況で黙る程安い計画は立てていない。だから行動に移して来た。

 

「言った筈だぞ!私の目的の邪魔はさせないとなぁ!」

 

フィーネさんは様々な迎撃を行った。

サンダルフォンの振り下ろしや、ザドキエルの氷塊の形成と射出。ザフキエルによる銃撃やカマエルの砲撃。ラファエルの烈風とガヴリエルの〈輪舞曲〉、そしてメタトロンによる収束されたビームを放った。

しかしその全ては僕を援護する三人の攻撃に阻まれる形となった。

 

「私達も言った筈だよブラッド!勇君の道を作るとね!」

 

七海さんはサンダルフォンの斬撃とザフキエルの銃撃、そしてカマエルの〈砲〉を残る右腕で防いだ。

 

「オレもまだ動けるぞ!サンダルフォン!〈最後の剣〉……いや、〈エレメンタルブレイドォ〉!」

 

キャロルは負担の残る体に鞭を打ち、エレメンタルブレイドを放った。そしてその光はラファエルの烈風とメタトロンのビームを相殺する。

 

「シャナ!私達も勇の為に!」

 

〈良いだろう!今なら少しの無理も耐えられるぞ!〉

 

キャロルさんはガヴリエルの輪舞曲とザドキエルの氷塊をその身で受け止めた。恐らく遠距離攻撃をするための力がもう残っていなかったのだろう。だけどそれでも僕を援護する為に体を張ってくれた。七海さんという恋人の目の前で。

 

「キャロル……七海さん……キャロルさん……シャナさん……すみません!助かりました!必ず凛祢を救います!」

 

「おのれぇ!貴様等ァァァァァァ!!」

 

僕がスピリチュアルスマッシュに触れた瞬間、凛祢の意識と繋がる。そして僕は凛祢と会話する。

 

「凛祢……約束を果たすよ……。」

 

僕は凛祢の意識の奥深くへとアクセスした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~凛祢深層心理~~

 

「やっぱり来てくれたんだね勇君。」

 

凛祢はまるで僕がここに来る事がわかっていたような口振りをしていた。

 

「うん。迎えに来たよ。そしてこれが僕の答えだから。凛祢……君を連れて行くよ。凛祢は自分の使命が人を幸せにすることだと言ったね?だけどそこには自分も幸せになるべきなんだ。だから僕は凛祢を連れて行く。例えその先に困難が待ち受けていても!」

 

凛祢は僕の言葉を聞くと笑い出した。

 

「ふふっ……あはははははははは!勇君は随分勝手な事を言うんだね。私がまだ使命を捨てないって言ったらどうするつもりなの?」

 

その可能性……というより、その言葉が飛んで来るのはわかっていた。だけど今の凛祢が本気で言ってない事も同時にわかった。

 

「そうだね……ならさ、まずは僕達を幸せにして欲しいな。もちろんその中には凛祢も入っているよ。だって僕は凛祢を助ける……いや、僕達の仲間になってもらうんだから!」

 

「そんな事をキャロルちゃんに黙って私に言っても良いの?」

 

「キャロルとは事前に相談をしたさ。そしてその上で凛祢を救う事……いや、フィーネさんだって救うと決めたんだから!」

 

「私がまた勇君の力を狙うかもしれないよ?」

 

「そんな事をするつもりなら今の凛祢はその表情をしていないさ。自分の表情を見た方が良いよ?」

 

僕はザドキエルで簡易的な鏡を作り凛祢に投げ渡した。

 

「っ!冷たいよ!でも……確かに今の私は笑ってるね。あ~あ……これじゃあ説得力ないか~!」

 

「それだけじゃあないだろ?凛祢は今恋する乙女の顔をしているよ。……いや、僕と戦ってた時から明らかに僕に執着していた。僕はあの顔に覚えがあった……というよりずっと見て来た顔だったんだから。」

 

「へえ~。じゃあそれは一体何だったの?」

 

「もう知ってるでしょ?〈愛〉だよ。それも凛祢の愛は普通の親愛とかじゃあないね。キャロル達と同じ類いの顔をしていた。凛祢はさ、最初は普通の恋をしてみたかったんじゃないの?だけど様々な世界を見て回る内に愛を知った。そして〈士道さん〉と同じ力を持つ僕を観測したんだ。だから今度は自分の幸せを手に入れたくなったんだよ。だけど僕はあの人じゃない。」

 

「そうだね……勇君は士道とは違うよ。だけど……私の胸がとても焦がれたのもまた事実なんだよ?」

 

「うん……そう言われる事は〈男冥利に尽きる〉って言えば良いのかな?だけどね、僕が凛祢自身を幸せにしたいと願った事もまた事実なんだよ。」

 

「そうだね。でももう一度聞くよ?私を本当に救う気があるんだね?」

 

「違うよ。凛祢だけじゃなくて、フィーネさんも救うんだ。その為にもまずは凛祢をここから救い出す!そして力を取り戻す!」

 

「あはははははははは!そういえばまだ力を全部取り戻してなかったんだ!なのによくそこまで言えたよね?」

 

そう……まだ〈ザフキエル〉・〈カマエル〉・〈ガヴリエル〉・〈ハニエル〉を失ったままだ。だけどそれでも僕は二人を救うと決心したんだ。

 

「はぁ……笑い疲れた。だけどそれなら私も手伝うよ。空いてるフルボトルに私の力を注ぎ込む。そして〈彼女〉が取り戻したフルボトルで最高の力を勇君は使えるよ?」

 

すると二本のボトルの内の一本が薄桃色に変わった。

 

「まさか七海さんが!……そうか。ありがとう凛祢!おかげで最高の姿を見せられるよ!」

 

「どういたしまして。じゃあ……私にキスをして。この戦いが終わったら勇君には、私がこんなに素敵な気持ちにさせた責任をとってもらうから。」

 

「かまわないよ。僕はいつだって全力さ。だからいくらでも困難に立ち向かう。」

 

僕は凛祢にそっとキスをした。その味には儚さを感じたけど、僕はもう迷っていないんだから。

 

「さあ行くよ凛祢!この戦いを終わらせる!」

 

「うん!私に最高の幸せを見せてよね!」

 

僕達は語りあった後にブラッドとして……スピリチュアルスマッシュとして活動するフィーネさんから脱出した。

 

「おのれ!雪音 勇!貴様はまたしても私の邪魔を!そして凛祢!私を裏切るつもりか!」

 

フィーネさんはそう言うと凛祢を取り戻すべく触手を何本も伸ばして来たけど、それは僕達には届かなかった。

 

「させる訳ないよ!せっかく二人がいい雰囲気なんだから空気を読みなさい!」

 

だって七海さんが既に〈スクラップフィニッシュ〉の態勢に入っているからね。

 

「チイィ!白黄 七海ィ!またしても貴様はぁ!」

 

「いいや違うよフィーネさん!僕達の決意そんなモノじゃない!それをこれから見せてあげるさ!」

 

そしてフィーネさん……僕達は貴女も救うつもりなんだから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~クリスside~~

 

「かぁ~!やっぱりザフキエルとカマエルはゾンビみたいに何度も立ち上がるなあ!だけどてめえらの動きは既に見切ってあんだよ!」

 

「模倣の天使もそこまでです!これで決めます!」

 

あたしは平行世界のセレナと即席のバディを組んで勇を援護しに来た。そして今はこいつらをもう倒せる!さあ!後少しで姉ちゃんが駆けつけてやるからまってろよ!

 

「これで終いだ!カマエルゥ!〈砲〉だぁ!」

 

「終わりです!ソードクリスタ!」

 

「きひひひひ……これではダメそうですわね。」

 

「悔しいけどここまでみたいね。」

 

「やっぱりあたしを駆り出すんじゃないわよ。」

 

そう言い残して奴ら……スマッシュは倒れた。それにしても琴里達の姿の模倣とは趣味がわりぃな。

 

「こっちは終わったぞ……すぐに行くからな!」

 

~~クリスsideout~~




無事に凛祢を救い出す事に成功した。最後の戦いは熾烈なモノとなっていた。そして皆は悟っている………幕引きまでの時間は残り少ないと。

明日が最終決戦です!更新をお待ちください。

そしてこちらから神咲さんの作品へジャンプできます。
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是非七海さん視点でもお楽しみください。


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さあ……最後の戦争(デート)を始めてみよっか!

凛祢を救出した勇達はいよいよブラッドとの戦いに決着をつける。例え何かを犠牲にしなくてはならないとしても………。

本編へどうぞ。


「凛祢……ありがとう。これで僕は最後の戦いに余力全てをつぎ込めるよ!」

 

「どういたしまして。だけどごめんね……私に出来る事はここまでみたいなの……。」

 

凛祢はそう呟くと体が粒子となり崩れ出した。

 

「なっ!?凛祢!どうして体が!」

 

「元々私の存在は不安定なモノだったの。だって本来の私は〈幸せになりたいと願った皆の想いの結晶〉なんだから。だけど大丈夫。勇君はきっとこの戦いを乗り越えられるよ。だって私の想いを既に受け止めてくれたんだから。」

 

「待って凛祢!まだ伝えたい事が!」

 

「そのフルボトルが勇君を……きっと助けて…………」

 

凛祢は最後まで言葉を告げる事なく粒子となった。だけど最後に言いかけた〈フルボトルが勇君を……〉その言葉の意味は今ならわかる。

 

「凛祢はさっき……自分の残る力のほとんどをこのボトルに注いだんだ。だからこのボトルは薄桃色に変わった。」

 

僕は凛祢の覚悟に気付く事が少し遅かった。そしてフィーネさんは粒子となった凛祢へこう言った。

 

「やはり裏切り者には〈死〉あるのみだな。しかしこれで処分する手間が省けた。よって貴様達も後を追わせてやろう。アイツの様になぁ!」

 

すると七海さんが僕に『ビルドドライバー』と、仮面ライダーブラッドから取り戻したボトルを投げ渡した。そして僕も凛祢が命をかけて作り出したフルボトルを握りしめた。

 

「勇君!これを使って!」

 

「これは……ビルドドライバーですか!でも……なんでこれまで僕に?」

 

「精霊と仮面ライダー………ベストマッチだと思わない?それに勇君は何か大切なモノを託された筈だよ!それを信じて!」

 

「七海さん……ありがとうございます!確かにそうですね!このフルボトルを託してくれた凛祢の為にもここで終わらせます!」

 

「ならばオレも立ち会おう。その結末を見届ける為にな!」

 

「キャロル……ありがとう。なら頼むよ!最高の光景にして見せるから!」

 

僕達が2つずつボトルを振りキャップを捻ると、凛祢から託されたもう一つのフルボトルへと全ての精霊の力が集結した虹色のフルボトルになった。そして僕は完全に霊力を取り戻した。

 

「おかえり。〈ザフキエル〉〈カマエル〉〈ハニエル〉〈ガヴリエル〉。これで全てが揃ったね。」

 

「なら私もキャロルちゃんから受けった力を使うよ!」

 

そして七海さんも『メタトロンスクラッシュゼリー』を取り出した。そして僕はビルドドライバーを装着した。

 

<〈精霊!〉・〈希望!〉ベストマッチ!>

 

<Are you ready?>

 

「救います!それが僕の覚悟で願いなんですから!」

 

<繋がるココロ!デート・ア・ライブ!イェーイ!>

 

そして僕の収束礼装に変化が始まった。礼装を形成していた力が光輝き出してアーマーを形成した。

 

「これは〈ケルビエル〉の礼装じゃない……。だけど感じる!凛祢の想いが!そして……皆の希望が!」

 

光が収まると僕も仮面ライダーとなっていた。だけどこのライダーの事は知らない筈なのに、なんでか名前がわかる気がする。

 

「〈セイヴァー〉……救済者を表す言葉。きっとこれが僕の変身するライダーなんだ。なら……改めて名乗ります!僕は〈仮面ライダーセイヴァー〉!救うと決めたモノを救う精霊で仮面ライダーです!」

 

「すごいね勇君……。なら!私も負けていられない!」

 

七海さんはさっき取り出した〈メタトロンスクラッシュゼリー〉をベルトに装填した。

 

「いくよ!」

 

すると七海さんの体にメタトロンの力が集まり更なる形態へと変化した。

 

「仮面ライダーグリスメタトロンチャージ。こっちも仮面ライダーと精霊の力の結晶だよ!」

 

フルボトルの力を受け取った精霊が変身する仮面ライダーと、精霊の力を使って変身する仮面ライダー。その二人が今並び立った。

 

(キャロル……頼みがある。)

 

僕はキャロルに念話を開始した。

 

(!?勇……どうするつもりだ?………いや、そういう事なんだな?)

 

僕はキャロルに空になったフルボトルを投げた。これは凛祢の力が注ぎ込まれなかったフルボトルだ。しかしキャロルには先ほど開けたボトルも二本ある。そして今投げられた三本目のフルボトルをキャロルは何も言わずに受け取った。

 

「これ以上長引かせない!一撃で決めます!七海さん!合わせてください!」

 

(準備完了だ!いつでもいけるぞ勇!)

 

(ありがとうキャロル。後は任せたよ。)

 

「良いよ勇君!最初で最後のコンビネーションライダーキックだ!」

 

僕達は一度ジャンプした。

そして僕はフルボトルから溢れる虹色の光を右足に集めた。

七海さんはメタトロンの光を左足に収束させた。

 

そして僕達はフィーネさんを最初で最後のライダーキックの軌道上に拘束した。

 

「「スピリチュアルボルテックフィニッシュ!!」」

 

その一撃は容易くフィーネさんの体を貫いた。そして発生した穴から全身へと虹の光がフィーネさんの体を駆け巡った。その結果彼女の魂は凛祢の様に粒子へと変わった。

 

「やったね勇君!」

「はい!七海さん!」

 

僕達はお互いに着地を決めた後に拳を合わせた。

 

 

 

 

 

~~クリスside~~

 

あたし達は敵を撃破した後未来達と合流した。

 

「よう……未来達も無事に撃破できたみたいだな。」

 

「当然です。義姉さんと違って私達の相手は搦め手ばかりでしたからね。コンビネーションが決まれば瞬殺です。」

 

「そ~だな。未来の〈神獣鏡〉だけでも充分な強さなのに光の天使を使うんだ。そりゃあ火力は事足りるな。」

 

「ですが奏さん。クリスさんの〈カマエル〉の火力は流石の一言でした。おかげでゾンビみたいに立ち上がる敵の殲滅も何とかこなせましたから。」

 

あたし達はお互いのバディに誉められてしまって正直緊張していた。だけどお互いに体が光った事で状況も何となくわかってしまった。

 

「名残惜しいですがお別れですね。」

 

「せっかく会えたのに残念だな。」

 

「ですが私達は忘れません。」

 

「あたし達は役目を果たした。それが勇達の助けになったんだ………それで充分さ。」

 

あたし達の挨拶は簡単なものになったけど、それだけで充分にお互いが何を伝えたいのかわかった。

 

「それじゃあ未来!あたし達も帰るとするか!」

 

「それでは奏さん行きますよ?」

 

あたし達はお互いの相方を連れて勇達より一足先にそれぞれの現実世界へと帰還した。

 

~~クリスsideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~勇side~~

 

僕達はフィーネさんをついに撃破した。そして今この場所に残っているのは、少しずつ崩壊を始める〈凶禍楽園〉と七海さん・キャロル・僕・キャロルさん(シャナさん)・フィーネさんの亡骸となった。

 

「ありがとうなキャロル・マールス・ディーンハイム。おかげで世界は救われた。」

 

「こちらこそ助かったよもう一人の私。」

 

〈オレからも礼を言わせてくれ。感謝するぞキャロル・マールス・ディーンハイム。〉

 

キャロル達はお互いに和解して拳を合わせた。そしてそれは僕達のお別れが近い事を示していた。

 

「今回はありがとうございました七海さん。お礼の代わりと言ってはアレですが、もし何かあった時はコレを使ってください。」

 

僕は自分の体から〈白〉〈灰〉〈黒〉〈青〉〈赤〉〈黄〉〈緑〉〈橙〉〈藍〉〈紫〉〈虹〉の霊結晶を生成して七海さんに手渡した。

 

「勇君……ありがとうね。なら遠慮なく使わせて貰うね。」

 

そういうと七海さんは〈スクラッシュゼリー〉にそれぞれの霊結晶を投入した。

 

「本当にありがとうございました。七海さんがいなければ僕は凛祢に力を奪われたままだったと思います。七海さんのおかげで僕は力を取り戻す事ができました。」

 

「それはこちらの台詞でもあるよ。勇君達がいなかったらブラッドを倒す事はできなかった。それにグリスブリザードを始めとした幾つもの強化もできなかっただろうね。だからお互い様だよ。」

 

空間の崩壊がより激しくなってきた。あまり時間は残っていないのだろう。

 

「七海さん!僕がゲートを作ります!急いでください!」

 

僕は急いでミカエルでゲートを形成した。

 

「ありがとうね勇君!キャロル!私達の世界へと帰るよ!そして勇君はコレを受け取って!」

 

「うん!今行くよナナ姉!」

 

キャロルさんも無事に七海さんと合流してゲートへ潜って行った。そして七海さんは去り際に僕へ袋を投げ渡した。

 

「おおっと!さて、キャロル……ガヴリエルいける?」

 

「もちろんだ。オレ達二人でまずはこの空間を調律するぞ!」

 

僕は投げ渡された袋を無事にキャッチした。さて、僕達は最後にこの空間を何とかしていきますか!




ここまでの話が神咲さんとのコラボ本編となります。ですがこちらでは後一話だけ続きがあります。
そして今回からは久しぶりに次回予告を再開します!
(コラボ中はネタバレ防止をやりかねないので自粛してました!)

戦いは終わり出会う筈のない者達は別れを告げた。しかし精霊達はまだやり残した事があった。

次回〈崩壊する楽園〉

更新をお待ちください。

そしてこちらから神咲さんの作品へジャンプできます。
https://syosetu.org/novel/222283/
〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉
是非七海さん視点でもお楽しみください。


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崩壊する楽園

ここから先はこちらのみのアフターストーリーです。
崩壊する楽園で勇達は最後の準備を始めます。

一体何をするかは本編で是非確認をお願いします。


「さて、行くよガヴリエル!〈幻想曲!〉キャロルもガヴリエルを頼むよ!」

 

「任せろ勇!ガヴリエルよ!〈幻想曲!〉だ!」

 

僕達はこの崩壊する楽園でフォニックゲインを高め続けた。澪さんの言葉が正しいなら今の僕達二人でなら、〈虹の旋律〉を奏でる事ができる。

 

「来た!〈アイン〉の波動を感じる!エクスドライブだ!」

 

僕達はたった二人で虹の旋律を奏で、エクスドライブへと至った。だけど目的はここじゃない。この〈奇跡の再現〉はあくまでも手段なんだ。

 

「行くよ〈アイン!〉まずはこの崩壊を止めるよ!」

 

僕は崩壊する世界を〈創造と破壊を司る天使〉でこの空間の再構築を開始した。間違いなくこの力は神の力の一端と言えるだろう。

 

「勇……ようやく空間が安定したぞ。その力が相当に危険な力だという事はも理解している。〈崇宮 澪〉の力が全ての精霊の力の根源だという事もな。」

 

キャロルの気遣いもあり何とか急場は乗りきれた。そして僕達が七海さん達の退去した後にどうしてもやりたかった事は、ブラッド……いや、フィーネさんと凛祢を救済する事だ。

 

「ありがとうキャロル……じゃあ始めようか。」

 

僕はフィーネさんが倒れた時、その亡骸をこっそり回収しておいた。それは今から行う事に必要だったから。

 

「ではオレも準備しよう。勇の頼みの品だ。」

 

そう言ってキャロルが取り出したのは空だった筈のフルボトルだ。僕がキャロルに投げ渡した分と合わせて三本あるが、今はその全てが〈あるモノ〉で満たされている。

 

「そしてこの凛祢から託されたフルボトルも必要だね。」

 

僕は凛祢から託された薄桃色のフルボトルを取り出した。そして僕達は所持している全てのフルボトルを開けた。

 

「頼むよ……上手くいってくれ……。」

 

ボトルの中身である粒子がフィーネさんの亡骸を包む。そこからの時間は長く、キャロルはその間に七海さんから託された袋の中身を確認した。

 

「……中身は〈ハザードトリガー〉と〈ロストコブラフルボトル〉そして〈グレートクローズドラゴン〉か。ん?もう一つあるな……これは……手紙か?」

 

キャロルは少し顔をしかめたけど、すぐに手紙を僕達二人が読めるようにした。その内容はこう書いてあった。

 

《今回は二人のおかげで助かったよ。ありがとうね。だから気持ちばかりのプレゼントとしてこの袋の中身を勇君達に託す事にしたんだ。

・最初に二つのビルドドライバーだけどこれらは勇君が持っていて。恐らく今後力になる筈だから。私には予知能力はないけど、自分の直感が告げてるの。必ず必要になるってね。

・次にハザードトリガーは姉さんの作り出した試作品なんだ。だからそんな危険な物は流石に持って帰りたくないから、勇君の世界で厳重に管理もしくは活用して欲しい。

・そしてコブラロストフルボトルとグレートクローズドラゴンは私達じゃなくて凛祢さんの物だから、もし良かったら形見にでもしてあげて。その方が彼女もきっと報われるから。

・そして最後にもう一つ。ありがとうね平行世界の主人公。姿や魂は違うけど、同じ世界を舞台に降り立ったある意味もう一人の自分自身。きっと勇君達はこれからも困難が待ち受けているけど、それでも乗りきれる筈だから。なんたって勇君はある意味では私と同一人物なんだから、諦めないならきっと……》

 

手紙の内容にその先は書いていなかった。恐らくそれはわざと書かなかった事が想像できた。

 

「〈ある意味では同一人物〉……か。言われてみると確かにそうだね。どちらも別の魂と心を持った一人の人間だけど、僕達が辿る軌跡は同じ様なモノが多いからね。だからきっとその言葉がしっくり来たって事か。」

 

「否定したいところではあるが、それも一つの事実だとオレも理解している。さて……そろそろあちらも終わるみたいだな。」

 

キャロルの示す先には、フィーネさんの亡骸だった物が凛祢の体へと再生されていた。そして彼女は目を開ける。

 

「あれ?私……なんで……?」

 

やはり凛祢はこの状況に困惑していた。何せ自分の体が粒子へと変わり死んだ筈だったからだ。

 

「おはよう凛祢。言っておくけどここはまだ〈凶禍楽園〉の中だよ。そして凛祢の体はフィーネさんの体だった物だよ。」

 

「勇君……キャロルちゃん……私……私……。」

 

凛祢はなぜ僕達を排除しようとした自分が蘇生されたのかわからない様子だし、そもそもそんな自分が許される訳がないと言いたげだった。

 

「生かされた意味がわからないなら見出だせ!それが勇に報いるという事だ!」

 

キャロルは少しだけ機嫌が悪い。当然だよね。自分の伴侶が目の前で他の女性を心配しているんだから。

 

「まあまあ落ち着いてよキャロル。確かに君の目の前で凛祢を心配した事は謝るよ。だけどさ、今だけは許してくれないかな?もう一人も起こさないといけないから。」

 

「わかっているさ……。勇の優しさが度が過ぎてる事も……。それが例え今の今まで戦っていた相手だとしても手を伸ばしてしまう事も……。」

 

キャロルは嘗ての自分の事を思い出しているようだ。

 

「もう……一人……?……それは……一体?」

 

凛祢がその答えを聞く前にその人物が目を覚ましたようだ。

 

〈なぜ私の意識がある……?私は確かに先ほど……?〉

 

その人物も凛祢同様になぜ自分の意識があるのか困惑していた。だけど凛祢と違うのは、その人物は自らの体を持たない事だった。

 

「これは現実ですよブラッド……いや、フィーネさん。」

 

《お前は勇か!なぜ私を甦らせた!私はあのまま!》

 

「その答えは今から伝えます。二人には聞いて欲しい話だったから覚醒するまでは、キャロルにも詳細を説明をしていなかったんですから。」

 

「まったくだ!いきなり念話で、〈フィーネが消滅する際にその粒子をフルボトルに集めろ〉等と無茶を言いやがって!」

 

「それは本当にごめん!だけど詳細を話す時間がなかったんだよ!」

 

本当に全てがギリギリだった。少しでもズレていたら救う事は不可能だった可能性が高かったから。

 

「じゃあ一から説明するよ。まず発端は凛祢が見せたイメージだったんだ。」

 

「私の見せたイメージ?」

 

「うん。平行世界のフィーネさんと凛祢は人々の願いや幸せを望み続けた。だけどそれが叶わないと知っていただけに、無意識に諦めてもいたんだよ。だけどそこに僕が観測された。」

 

「うん。私が勇君を見つけたのは、今から凡そ九年前だよ。ちょうど勇君がバルベルテで初めて礼装を纏った時だよね?」

 

「いつか僕が成長する。それまでの間にフィーネさんは凛祢に接触された。違いますか?」

 

《その通りだ。そして私は全てを救済するには、この世界と異なる理の力が必要になる事に気がついた。》

 

「なるほどな。凛祢とフィーネは本来は出会う筈がなかった。だが勇の存在を知った事で平行世界という概念に気づき、凛祢はフィーネに接触したという事か。」

 

「更にもう一つの世界へと影響が出ていた。その世界が……」

 

「白黄 七海の世界……か。オレが聞いた話では、あの世界には既にライダーシステムが存在していた。そしてその世界で作られた〈ビルドドライバー〉と〈ハザードトリガー〉をフィーネが奪った。」

 

そこまでが僕達の来る前の話だ。だけどここからが皆の聞きたい事なんだよね。

 

「そうなんだよ。ねえ凛祢?本来なら〈ロストコブラフルボトル〉と〈グレートクローズドラゴン〉は機能しない筈だったんじゃないの?」

 

「そうだよ。嘗てのビルドの世界から流れついた二つの装備が、七海さんが完成させた試作品と共鳴したんだ。本来なら起動しない筈だったのにね。」

 

恐らくそれで七海さんの世界は巻き込まれたんだ。

 

「だが解せんな。例えそうだとしてもその世界が観測される理由は無い筈だろう?それとも何か特別な物があったというのか?」

 

推測の域を出ないから僕も確信は持てない。だからそれをフィーネさんに聞きたいな。

 

「ねえフィーネさん。もしかしなくても七海さんの世界には〈ギャラルホルン〉があったんじゃあないですか?」

 

「おい勇……まさかあの〈ギャラルホルン〉というつもりじゃあないだろうな?」

 

「ギャラルホルン……それは北欧神話においてアースガルズの門番であるヘイムダルが持つ角笛で、ラグナロクの到来を告げるといわれる物だね。そして七海さんの世界には間違いなくあった筈だよ?」

 

〈確かに存在していたぞ。だが何故それをお前が知っている?〉

 

「それは勇が転生者だからだろうな。それも七海と同じようにこの世界を知っている……な。」

 

そう。キャロルのいう通り僕はアプリ版でギャラルホルンの存在を知った。そしてそれが平行世界へとアクセスする役目を持つ事も。

 

「話を戻します。フィーネさんは七海さん達がギャラルホルンを使う事で生じた歪みを観測しました。そして凛祢も所持していた二つのアイテムが、七海さん達の使うギャラルホルンを通じて反応したんです。」

 

そして恐らくは……。

 

「本来七海さん達は関わる筈がなかったけど、ギャラルホルンはブラッドとしてのアイテムとフィーネさんを呼び寄せた。そして僕達の世界へとSOSを発信し、凛祢が僕に接触した。そうですよねフィーネさん?」

 

〈全てお前の推測通りだ。故に私達はお前に接触したのだ。〉

 

「だけどそれでそれぞれのも平行世界とここが観測されるだけだよ?勇君はなんたって私達を救ったの?」

 

ようやく本題に入れるな。

 

「凛祢が僕にキスをした時にわかったんだ。凛祢もフィーネさんも、本当は皆を救いたかっただけだとね。そしてそれは僕も同じ想いだ。だけど同時に二人から、

 

〈自分達の事を止めて欲しい〉

 

という無意識の想いもわかった。だからもし次があるなら……ってね。」

 

〈筋金入りのお人好しめ。後悔しても知らないぞ?〉

 

「私はあのまま消える事が運命だと思っていた。だけど勇君が繋いでくれたこの命を、もし良いと言ってくれるなら私は勇君の為に使いたい。だって私達に〈本当の幸せ〉を教えてくれるんでしょ?」

 

フィーネさんは素直には言ってくれなかった。それでももう一度やり直す機会と本当の幸せを知る為に僕の提案を受け入れてくれそうな気配がした。そして凛祢は言うまでもないって訳ね。

 

「それじゃあ改めて。僕は確かに救える人々を救いたいし、その覚悟も決めた。だけどもし二人が良いなら協力して欲しい。」

 

「もちろんだよ。」

〈私の事も幸せにするのだろう?そうでないなら許さんからな?〉

 

「約束します!そして次に会う時は……」

 

「〈現実で会おう〉だよね?もちろんだよ!必ず会いに行くから!」

 

「ありがとう。そしてフィーネさん……もし良かったら新しい名前を受け取って貰えませんか?」

 

〈新しい名前だと?面白い!言ってみろ。〉

 

「〈ダ・カーポ〉。音楽用語で始まりを表す言葉です。今の享楽の巫女の使命は終わり、新たな幸せを手にする者。そういう意味ですよ。」

 

〈ダ・カーポか。良いだろう!もし向こうに辿り着いたその時は!〉

 

「必ず僕が迎えに行きます!だからその時私は勇の力になろう!」

 

「約束ですからね!」

 

僕達はその言葉を交わした時世界が光に包まれた。

 

「いよいよですね。先に現実で待っています。」

 

「うん!私達もすぐに向かうからね!」

 

そして僕は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~???side~~

 

アレが天使の輝きか。なんと素晴らしいものだ!

 

「我はあの者が気に入った。あの者が心残りにしていた端末は我の知る世界に存在していたな。」

 

我はあの者が欲しい……いや、あの者の愛が欲しい。あの全てを受け入れる度量は、嘗ての我が求めていた物だ。そしてついにはその機会を失っていた。しかし今回、我はあの者に会う事が出来る可能性を見た。

 

「その為にはまず、〈天羽 奏〉の器と魂が必要だな。」

 

ならばまずは器と魂を揃えよう。そして我は伝えよう。

〈我も幸せになりたい。そして我を愛して欲しい〉と。

 

「ならば急がねばなるまい。そして出会えた時は必ず……」

 

~~???sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~凛祢side~~

 

勇君が光に包まれた後、私達はこの崩壊する楽園で最後の時を待っていた。だけど一瞬だけ、本来は感じない筈の気配を感じた。

 

「ダ・カーポ……気づいた?」

 

〈ああ。まさか奴が活動を始めるとは思わなかった。だが、様子があまりにもおかしいな。今までと気配が違いすぎる。まるで恋をしたかの様な気配だったな。〉

 

そう……私達が感じたのは、本来は活動をしない筈の人物の気配だった。だけどその様子が予想とまるで違う事に驚いてもいる。

 

「だけど確信が持てるまでは勇君達にも内緒だよ。これ以上迷惑をかける訳にはいかないからね。」

 

〈だが難儀なものだ。よりによって奴が勇に惹かれたとはな。〉

 

私達に出来る事は確信が持てるまで余計な事をしない事。そして確信が持てたらすぐにキャロルちゃんに伝える事だ。

 

~~凛祢sideout~~




と……いう事で勇君の超強化完了!(神咲さんからブラッドの変身道具を正式にいただきました。)
これから勇君は、〈仮面ライダーセイヴァー〉に変身可能となりました!(これ以上強化必要かどうかは別の問題という事で)
そして凛祢さんとフィーネさんも無事に救済できました!(この二人も……というよりは最後の人物も神咲さんからいただきました。)そしてフィーネさんは新しい名前として〈ダ・カーポ〉の名前を授かりました。(意味は音楽用語で〈始まり〉です。)


次回〈設定集 コラボ編〉

更新をお待ちください。

そしてこちらから神咲さんの作品へジャンプできます。
https://syosetu.org/novel/222283/
〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉

よろしければ是非読んでください。


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設定集 コラボ編

お待たせしました。今回のコラボ章の設定集です!

大分長くなりましたが是非読んでください。

また、明日からは一日二回更新を再開します。
1回目の更新は18時に行います!
2回目の更新は変わらずに0時に行います!

ここから先は全速力で駆け抜けますので、皆さんも更新を楽しみにしていてください!


〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉からの登場人物。

 

○白黄 七海

 

今回のコラボ相手である、神咲七海さんの書いた主人公。

 

・本人は女性だが、恋人にキャロルとシャナ(後述で詳しく解説)がいる。

・ブラッドとの初戦闘時にはキャロル(及びシャナ)とデートをしていたが当時、ブラッドの襲撃現場の研究所近くにおり、キャロルと共に戦闘をするも敗北する。

・別の世界へと移動するブラッドを追い、突入した世界で恋人達とはぐれる。そして怪しい動き(錬金術の使用)をしていた勇とエンカウントして戦闘をする。

・ブラッドに二度目の敗北をした時に勇の世界のキャロルと一時行動を共にする。

・キャロルから〈メタトロン〉を、四糸乃から〈ザドキエル〉の力を受け取り、新たな強化形態を獲得する。

・本来の世界ではイザークさんの処刑の直前に、神様転生した人物。詳細は神咲さんの作品でご確認ください。

 

変身するのは仮面ライダーグリス。

強化形態として

・オーバーグリス

・グリスメタトロンチャージ

・グリスシンフォニー

・グリスブリザード

の四つが今回は登場した。

 

変身後の決め台詞「心火を燃やして…ぶっ潰す!」

 

○能力紹介

 

●仮面ライダーグリス

使用する必殺技

・<スクラップフィニッシュ>

 

●オーバーグリス

使用する必殺技

・<バーストフィニッシュ>

 

●グリスメタトロンチャージ

こちらのキャロルが七海さんにメタトロンの力を託して変身した姿。

 

●グリスシンフォニー

七海さんの本編における最終フォーム。

 

●グリスブリザード

四糸乃がザドキエルの力を託したことで生成された姿。『グリスブリザードナックル』で変身する。

 

使用する必殺技

<グレイシャルアタック>

<グレイシャルフィニッシュ>

 

 

○キャロル・マールス・ディーンハイム(七海さんの世界)

 

七海さんの世界のキャロルで、恋人は七海さん。

当然だが向こうの世界ではメインヒロイン。

 

・シャナさん(後で解説)と体を戦闘時に共有するが基本的にはキャロルの人格が優先される。

・七海さんとのデート中に付近の研究所をブラッドが襲撃した為に七海と共に応戦するも敗北する。

・七海さんと合流する為に移動をすると、勇の世界のキャロルが七海さんを追い詰めており交戦する。この為にお互いに相手を嫌悪していたが、最後には名前を呼び合える程度には信頼関係は改善した。

・二度目の戦闘において、勇の力を奪うブラッドに一矢報いる為に攻撃をするも、その反撃で崖下へと落下する。その為に追いかけた勇と一時行動を共にする。

・今回の此方の投稿では、「私」口調を使用する。これはキャロル・シャナとの区別も理由の一つだが、〈錬金術師と心火燃やしてみよっか?〉の第86話にて語られた時の一人称を使用している。

・七海さんの世界では、仮面ライダーサウザー及び、カラミティサウザーに変身する。

 

変身後の決め台詞

仮面ライダーサウザー時

「オレの力を、測れると思うなよ?」

カラミティサウザー時

「仮面ライダーカラミティサウザー。絶望よ、恐れ震えよ!」

 

仮面ライダーサウザー

 

使用する必殺技

<ジャッキングブレイク

<サウザンドディストラクション>

<ジャッキングユナイト>

 

・カラミティサウザーの時は以下の二つも使用可能。

<カラミティプロヴィデンス>    

<アブソリュートカラミティ>

 

○シャナ・マールス・ディーンハイム

 

七海さんの世界と更に別の平行世界のキャロル。こちらも七海さんの恋人。もちろん彼女もヒロイン。

 

・本来の世界では〈立花 響〉達シンフォギア装者と、対決したが原作の様に激闘の末に敗北した。

・この時に〈独りという孤独〉に対する想いがギャラルホルンによって七海さんの世界へとたどり着く。

・そして七海さんの世界で激闘を経て七海さん達に受け入れられて新しい名前である、〈シャナ〉として生きる決意をする。

・今回の此方の投稿では基本的に、原作キャロルの「オレ」口調を使用する。

・勇に叱責をするのがキャロルさんではなく彼女の理由は、七海は全てを捨てても〈キャロル〉を救う覚悟をしていたが、勇にそれを自覚させるため。

・基本的に戦闘時はキャロルさんに意識を委ねているため、戦闘の際はあまり描写が発生しない。

 

○天羽 奏(七海さんの世界)

 

〈星宮 六喰〉によって〈凶禍楽園〉に援軍として呼ばれた人物の一人。七海さんの援護の為に登場して勇の世界の未来と共闘して〈ラジエルスマッシュ〉〈ガヴリエルスマッシュ〉〈ミカエルスマッシュ〉と交戦するも、圧倒的な力の差を見せつけて勝利する。

 

・尚〈螺旋の憎悪編〉最終話において、歌手への復帰を果たした模様。

 

変身するのは〈仮面ライダー ランペイジバルカン〉

 

○セレナ・カデンツァ・イヴ

 

〈星宮 六喰〉によって〈凶禍楽園〉に援軍として呼ばれた人物の一人。七海さんの援護の為に勇の世界のクリスと共闘して〈ザフキエルスマッシュ〉〈カマエルスマッシュ〉〈ハニエルスマッシュ〉と交戦する。そしてクリスが超火力で勝負を決める際に搦め手を得意とする〈ハニエルスマッシュ〉を撃破する。

 

・尚〈螺旋の憎悪編〉最終話において、エルフナインと恋人になった模様。

 

変身するのは〈仮面ライダー迅 セインティングペガサス〉

 

*尚此方の投稿では救援組の帰還は主人公達より早い為、お互いに落ち着いた話し合いはほぼ発生していない。

 

○宵姫 黒夜

 

今回は名前のみの登場。本来は七海さんの姉で、元の世界で活躍する科学者であり、仮面ライダービルドの変身者。

 

・今回の〈ビルドドライバー〉と〈ハザードトリガー〉の試作品を開発者でもある。

 

 

〈マジで……この世界⁉️〉からの登場人物

 

○雪音 勇

 

此方の世界の主人公。キャロルとの初夜の際にしたキスで意識が〈崇宮 澪〉に呼ばれた帰りに黒幕の一人である、〈園神 凛祢〉から襲撃を受ける。

 

・襲撃された際に〈ミカエル〉〈ラジエル〉を凛祢に奪われる。

・キャロルとはぐれて錬金術を使用したら七海さんとエンカウントして戦闘になる。

・ブラッドと交戦して更に〈ザフキエル〉〈カマエル〉〈ハニエル〉〈ガヴリエル〉も奪われる。

・〈天羽 奏〉を救えなかった事が唯一の後悔であり、そこを〈凶禍楽園〉の発動トリガーにされる。

・シャナさんに発破をかけられ、自分の手の届く範囲は全て救う覚悟を強く持つ。

・そして幾度も接触した凛祢に自身の覚悟を伝え、救出の際に薄桃色のフルボトルを託される。

・七海さんから渡されたビルドドライバーと、凛祢から託されたボトルが共鳴して〈ケルビエル〉と収束礼装は別物になる。

・この収束礼装の名称は、

〈仮面ライダーセイヴァー・

スピリチュアルフォーム〉

意味はそのまま救済者。そして精霊を使う者を表す。

・そして変身後にフィーネへと必殺技の〈スピリチュアルボルテックフィニッシュ〉を発動させる。

・七海さん達の帰還後にキャロルと共に凛祢とフィーネを蘇生し、フィーネに新たな名前〈ダ・カーポ〉を授ける。ダ・カーポの意味は音楽用語で〈始まり〉を表す。

 

○キャロル・マールス・ディーンハイム(勇の世界)

 

この作品の絶対的メインヒロイン。勇との初夜の後に澪に呼ばれ、帰還の際に勇とはぐれる。

 

・勇と共にブラッドに挑むも歯が立たなかった。そして勇と分断された後は七海さんと行動をする。

・基本的に分断後の詳細は神咲さんの投稿をご確認ください。

・合流後は勇と共に凛祢と対峙する。そして対話の後に託されたフルボトルの内の一つを勇に渡される。

・そして全てのボトルが揃った時、空のボトルを預かる。そして勇からの念話でフィーネの魂と凛祢の魂をフルボトルへと回収する。

・凛祢及びフィーネの蘇生は勇の場合、止めても絶対にやりそうなので静観する事にした。

・今回の戦闘では援護に回る事が多い。

 

○雪音 クリス

 

〈星宮 六喰〉に呼ばれた救援組の一人。勇達の援護の為に七海の世界のセレナと共闘して〈ザフキエルスマッシュ〉〈ハニエルスマッシュ〉〈カマエルスマッシュ〉と交戦し、カマエルの〈砲〉で撃破する。

 

○小日向 未来

 

〈星宮 六喰〉に呼ばれた救援組の一人。勇達の援護の為に七海の世界の奏と共闘する。戦闘相手は〈ラジエルスマッシュ〉〈ミカエルスマッシュ〉〈ガヴリエルスマッシュ〉此方の戦闘描写は神咲さんの投稿で確認をお願いします。

 

○天羽 奏(勇の世界)

 

〈2041年のライブコンサート〉にて、命を落としたシンフォギア装者。勇に語りかける描写が今回は一瞬だが確認された。それ以外は全てラジエルスマッシュの模した偽物。

また、謎の人物が平行世界で彼女の事を狙っている。

 

〈今回の黒幕達〉

 

○園神 凛祢

 

原作同様に疑似精霊で、本来の識別名は〈ルーラー〉。

 

・様々な平行世界で、幸せを願う人々の想いから生まれた。この辺りは原作と近い要素がある。

・この〈全ての世界を幸せに包む〉過程で必要になる勇の力は、2035年にバルベルテで初めて観測された。そして勇が使いこなす頃を見計らいブラッドに接触した。

・勇の意識が澪との接触で観測可能になり、勇を隔離する。そして打開の為に使用した〈ラジエル〉と〈ミカエル〉を不意打ちで奪う。

・勇に全ての平行世界救済の為の協力を要請したが、その手段は人々の意識を一方的な幸せの中に閉じ込めるというモノ。どれほどその〈幸せ〉が一方的かは神咲さんの投稿をご確認ください。

・勇との度重なる接触の際和解しかけたが、それを察知したブラッドに取り込まれる。

・その後救出に来た勇に自身の残り全ての力をフルボトルに注ぎ一度消滅する。

・しかしブラッドの亡骸と〈凛祢の力が注がれたフルボトル〉と〈ブラッド自身の魂の欠片〉を勇達が活用し、無事に蘇生される。

・蘇生された時に何故自分が生かされたのかを疑問視していたが、勇が約束を本気で守るつもりだった事を悟った。

・原作とは違い今回は器が存在するので、後に勇の世界でも活動が可能。

・最後にブラッドと謎の人物が勇に惹かれた事を悟るが、本当にその人物なのか確証が持てない上に動機もわかっていない。

 

○〈ブラッド〉・〈フィーネ〉・〈ダ・カーポ〉

 

七海さんの世界から新しい〈ビルドドライバー〉と〈ハザードトリガー〉の試作品を奪い、勇から力を奪った今回のコラボ章で一番の強敵。

 

・その正体は平行世界のフィーネ。彼女自身は先史文明の巫女だったが、人類の為に自分の知識や技術を惜しみなく提供した。

・しかし急速な技術の発展に人類はついて行けず自滅する。また、この技術提供の時間を確保する為に自身の技術を用いて自らを不老不死にしている。

・その実力は原作の〈仮面ライダーブラッド〉同様に圧倒的な力を見せるが、実はお互いの執筆者もドン引きになるほどの強化をされている。

・具体的には初戦で七海さんとサウザーに変身したキャロルを圧勝する。二度目の戦闘では二組の主人公とキャロル達を別々とはいえ正面から叩き潰して更に勇から〈ザフキエル〉〈カマエル〉〈ハニエル〉〈ガヴリエル〉の力を奪った。

・七海さん達と戦闘をした際にある程度のダメージを負ったが、凛祢を吸収して〈スピリチュアルスマッシュジャッジメント〉へとパワーアップする。(作者が本当に絶望したパート)

・その後グリスブリザードへ変身した七海に反撃され、勇に凛祢を救出される。

・そして新たな仮面ライダーに変身した勇と七海さんのライダーキックを受け、敗北して一度消滅する。

・七海さん達の帰還後に凛祢共々、勇に蘇生された。本人達もビックリしている。

・復活後に勇から新たな名前として〈ダ・カーポ〉を受けとる。(意味は音楽用語で〈始まり〉を表す)

 

〈今回の協力者してくれた前任者の方々〉

 

○氷芽川 四糸乃

 

デート・ア・ライブより登場。

ザドキエルの前任者でもちろん本人。

 

・七海さんに〈ザドキエル〉の力を託した。詳しい描写

は神咲さんの投稿で確認をお願いします。

 

○星宮 六喰

デート・ア・ライブより登場。

ミカエルの前任者でもちろん本人。

 

・〈凶禍楽園〉の完成に動揺し、更にスマッシュ達の出現に焦る主人公達の為に、七海さんの世界からは〈天羽 奏〉と〈セレナ・カデンツァヴナ・イヴ〉を、勇の世界からは〈雪音 クリス〉と〈小日向 未来〉を救援者として呼び寄せた。

 

○鳶一 折紙

 

デート・ア・ライブより登場。

メタトロンの前任者でもちろん本人。

 

・キャロルの〈絶滅天使〉(メタトロン)を介して七海に力を与えた精霊。そしてキャロルにも〈反転体〉(魔王)の力を解放する。

 

○時崎 狂三

 

デート・ア・ライブより登場。

ザフキエルの前任者でもちろん本人。

 

・ザフキエルの銃弾で七海さん達を援護した。

・その後折紙と共に七海達の覚悟と信念を見届けた。

 

○五河 琴里

 

デート・ア・ライブより登場。

カマエルの前任者でもちろん本人。

 

・カマエルの力で七海さん達を援護した。

・その後狂三同様に七海達の覚悟と信念を見届けた。

 

○鏡野 七罪

 

デート・ア・ライブより登場。

ハニエルの前任者でもちろん本人。

 

・ハニエル(カマエル)でスマッシュ達を足止めした。

・その後狂三同様に七海達の覚悟と信念を見届けた。

 

〈謎の人物???〉

 

本来は登場の機会がなかった七海さんの世界のとある人物。

 

・この一連の戦いを通してギャラルホルンを通じて勇の存在を観測する。

・そしてその過程で勇の信念・努力・実績を評価する。

・その結果勇に惚れる事になるが、その事実を観測したのは現在は〈園神 凛祢〉と〈ダ・カーポ〉の二人のみ。それも二人共確信を得てる訳ではない。

・AXZ編から本格的に参戦する予定。

 

○〈グレートクローズドラゴン〉・〈ロストコブラフルボトル〉・〈ハザードトリガー〉・〈ビルドドライバー(二点)〉

 

お持ち帰りされたブラッドの変身道具。上二つは凛祢の所持していたの物で、下二つは七海さんの世界の物。

 

・ブラッドの撃破の後に七海さんから勇君に贈られた品物。(正確には、神咲胡桃さんからのいただき物で、フィーネを救済して此方で引き取る事を提案したらいただきました。)

・もちろん全て起動出来るので、ブラッドへの変身も可能。現在の適合者は勇君とダ・カーポさん、(この場合は凛祢が体の主導権を、一時的にダ・カーポへと譲渡する。)そしてキャロルの三人。

・ぶっちゃけ勇君かキャロルが変身したらこの二人以外に勝てる人いますか?




この話をもって〈神咲胡桃〉さんとのコラボ章である、
「マジで……この世界⁉️〈平行世界と救いたいモノ〉」を完結させていただきます。

次回からはGX編のアンケート結果を元にしたデート章を開始します。そしてその後にAXZ編へと入ります。

二週間のコラボ章を読んでいただいた皆様ありがとうございます。そして今回コラボ章の提案・協力をしていただいた神咲胡桃さん!本当にありがとうございます!

次回からは個別(例外あり)デート章の〈バイクデート〉です。次の閑話も順次更新をするので、お楽しみください。

神咲さんの作品へのリンクです。
https://syosetu.org/novel/222283/
〈錬金術師と心火を燃やしてみよっか?〉
是非七海さん視点でもお楽しみください!


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デート編 少女達は諦めない!
バイクデート


お待たせしました!
これよりデート章の開幕です!
第一話は翼さんからです!

それでは本編をどうぞ!


「勇!私とデートをして欲しい!」

 

「良いですよ翼さん。どこに行きますか?」

 

「その………今日デートに行く訳じゃあないの……実は明日行きたいの。朝六時に家の前にいてくれないかしら?」

 

ん?朝六時か……今日ではなく明日のデート。何か準備があるのかな?……まあとりあえず問題はないからオッケーなんだけど少し気になるな。

 

「翼さんのお願いは大丈夫ですよ。でもなんで明日の朝何ですか?まだお昼なのでデート自体は今からでもできると思いますよ?」

 

「実はね。今からでも行くだけなら大丈夫なんだけど、帰りが大変になるの。私が行きたいのは少し遠出になってしまうから……」

 

一体どこに行くつもりなんだろう。

 

「ちなみに目的地はどこですか?」

 

「静岡県で勇と海の幸を味わいたいの。バイクデートで、静岡に着いたら一泊するわ。それに明日からは天気も良いの。そして向こうで一泊して、海の幸を味わうわ。市場をめぐりましょう?移動には安全を兼ねて1日ずつ使いたいから二泊三日となるけど、かまわないかしら?」

 

バイクデートで静岡までね。多分道中をのんびり回りたいってことなのかな?

 

「なるほど。翼さんが遠慮気味な理由がわかりました。でも男に二言はありませんし、バイクはロマンでもあります。だからお願いします。一緒にデートに行きませんか?」

 

「ふふっ。お願いしているのはこちらなのよ?」

 

「ありがとうございます。あと翼さんのバイクって二人乗りとか大丈夫なんですか?」

 

「ええ。大丈夫よ。その為の準備は今日揃えてきたし、キャロルさんにも許可は貰えたわ。」

 

手回しの良いことで。

 

「わかりました。なら明日に間に合うように今日は早めに休みますね。お休みなさい翼さん。」

 

「ええ。良い夢を。」

 

こうして僕は明日からの予定が決まった。楽しみだなあ。前世ではバイクに乗ったことがなかったから僕の記憶でも初めてのことになるなぁ。

 

「静岡の海の幸か。一体何があるんだろうなぁ。」

 

こうして僕は明日からを楽しみに眠りについた。

 

 

 

 

~~翌日早朝~~

 

玄関には既に翼さんが待っていた。

 

「時間通りね。やはりこの時間は夏でも比較的涼しいわ。」

 

「そうですね。よろしくお願いしますよ翼さん。」

 

「ええ。二人きりのバイクデートね。普通は男の運転になるのだけと、今回は私が貴方を乗せたかったの。それとこのヘルメットを着けて貰えるかしら?エルフナインのお手製ヘルメットで、内臓マイクで会話も楽に行えるわ。」

 

そうか。エルも協力しているのか。だったら他の機能なんかもありそうだね。

 

「じゃあ翼さん。行きましょうか?」

 

「ええ。任せなさい。」

 

こうして僕達のドライブデートが始まった。

 

〈どう?綺麗な景色でしょう?眺めの良い道を調べてあるから、ゆっくり向かっても楽しめるわよ?〉

 

〈そうですね。こんなにのんびり移動を楽しめるのはいつぶりだったかな。ありがとうございます翼さん。とても楽しいです!〉

 

〈ふふっ。どういたしまして。さあ!次の絶景スポットに行きましょう!〉

 

その後も僕達は道中の風景を楽しみながら目的地の静岡まで向かい、寄り道を繰り返していたので、到着は夕方になってしまった。

 

「予約したホテルのチェックインを済ませるから、少し待っていてくれるかしら?」

 

「はい!待ってますよ翼さん!」

 

そう言って翼さんはホテルのチェックインを済ませに行った。そして僕の前にはなんとファラさんが現れた。

 

「こんばんはですね旦那様。マスターより伝言を預かりましたので、こちらに伺わせていただきました。」

 

伝言か………なんだろうな。

 

「遅くなったわね。ってファラ!何でここに!?」

 

「ふふっ。貴女に良い伝言を預かって来たのよ翼ちゃん。」

 

「私に……伝言?」

 

「ええ。マスターからの伝言では、〈下準備・配慮・内容まで文句無しだ。お前が望むなら勇との関係を進展させてもかまわない。但し初回はオレも同伴だ。オレもお前を味わいたくなったのでな。〉以上よ。良かったわね。マスターから許しが出たわ。覚悟が決まったら私に連絡をしなさい。必ずマスターに伝えるわ。」

 

そう言ってファラさんは転移して行った。

 

「私は………認められたのか?キャロルさんに。」

 

「みたいですね。じゃあ翼さん。今日は休みましょう。明日からは静岡の海の幸が待ってますよ!」

 

「ええ。オススメの市場とお店に行きましょう。それじゃあお休みなさい。良い夢を。」

 

「はい。明日も楽しみにしています。」

 

そして僕達は各々の部屋で休息をとった。

 

 

 

 

 

 

 

~~翌日~~

 

「おはよう。良く休めたかしら?」

 

「はい!お腹も減って来たので、早く市場に行きましょう!」

 

「ええ。私も楽しみなのよ。」

 

こうして僕達は市場に向かった。

 

「清水のマグロは美味しいと評判だったけど!これ程なのね!流石朝市ね!まだ一日の始まりだというのに!食欲がそそられるわ!」

 

「こっちのカツオも美味しいですよ!タタキは絶品ですね!カツオって確か特産品でしたよね?」

 

「ええ!水揚げの量は日本一よ。」

 

これは他の海産物も食べたくなって来たな。

 

「翼さん!昼は他の場所に行きませんか?」

 

「ええ!昼を過ぎたら沼津の方にも行きましょう。あそこは鯛やイクラも評判だったはずよ?」

 

これは楽しみだな。

 

「だったらお寿司が食べたいです!オススメのお店に連れて行ってください!」

 

「もちろんよ!楽しみにしてなさい!美味しいお店に連れて行ってあげるわ!」

 

こうして僕達は昼には沼津の方に行き、新鮮な海産物のお寿司を堪能した。また今度キャロルと一緒に来たいね。

 

 

 

観測者の報告による評価 風鳴 翼 の場合

 

文句無しの合格

 

デートプラン・配慮・下調べまで万全。更に勇の新しい楽しみを発見したのは好印象。そしてオレとの外出の動機に貢献したので、デートの途中だったが合格を出してしまった。それ程良いデートだった。オレも勇とデートがしたい。




そしてこの更新に合わせて番外編も投稿しています!
もしよろしければ番外編もお願いします!

次回は〈ホラー映画です〉

更新をお待ちください。

そして感想もお待ちしていますのでよろしければお願いします。


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ホラー映画

今回はクリス姉さんとのデート回です!
そして番外編も同時に更新されていますので、是非そちらもお楽しみください。

それでは本編へどうぞ!


昼下がりのある日

 

「勇!あたしと家デートをして欲しい!」

 

「姉さん。要求の仕方が響だよ。僕はかまわないけど、大丈夫なの?キャロルが怒っても責任はとれないよ?」

 

実際キャロルの嫉妬は恐ろしいからね。まあ姉さんは恋人以上の姉を目指すって言ってたから、ある意味特別なポジションを狙っているよね。

 

「へっ!その辺を抜かるあたしじゃあねえよ!キャロルの奴からは許可も出てるし、そうじゃなくてもあたし達は家族だからな。そもそも気にしねえだろう?」

 

そう言われたらある意味納得はできる。キャロルも自分が正妻になってからは少し丸くなったんだよね。

 

「で………姉さんのデートプランはどんな物なの?」

 

「ふふん!今は夏だからな。時期的には肝試しのシーズンだろう?だけど突発的な思い付きじゃあすぐつまんなくなるし、本格的な準備をする気にもなれねぇ。だからコイツを使おうと思ってな!」

 

姉さんがそう言って取り出したのはホラー映画だった。

 

「あれ?姉さんホラー苦手じゃあなかったっけ。なんでまた急にこんなものを?」

 

「うっ、うるせえよ!響の奴だよ。アイツがレンタルするDVDを間違えやがったんだよ!本当はオッサンのオススメ映画を見る予定だったらしいけどな。だからあたしに押し付けて来やがった。」

 

なんとなく状況がわかった気がする。未来にバレる前に姉さんに押し付ける昔のパターンだなコレは。

 

「まあ良いか。じゃあ寝落ちしても良いように夜に視ない?なんとなくそっちの方が雰囲気も出るし。」

 

「ったりめぇだな。じゃあ勇も一緒だからな!」

 

そう言って姉さんは部屋から出て行った。昔から素直じゃあないよね。一緒にみて欲しいとは言わないのが姉さんらしいと言えばらしいけども。

 

 

~~上映準備完了~~

 

「トイレ良し!時間良し!」

 

「コーラ良し!ポップコーン良し!」

 

二人共準備は万全だった。まあ映画鑑賞だしね。コーラとポップコーンはあっても良いかな。喉に詰めなければ。

 

「………じゃあ上映するぞ……」

 

姉さんは震える手でディスクを再生した。よく見ると手が震えていた。なんだ……やっぱり怖いんだ。

 

「うひゃあ!!なんだよコレ!怖い!怖すぎる!」

 

「ヤバい……ノイズよりマシだと高を括っていたけど、マジで怖い!なんかノイズの方が可愛く見えてきたかも!」

 

僕は姉さんに、姉さんは僕に無意識で手を重ねていた。なんだかんだ言っても僕達は家族だね。怖いモノだって似てるし、無意識に頼りたくなる。

 

「ひいぃ!アイツの顔どうなってんだよ!銃で撃たれて動じねえとか!あたしじゃあ勝てねえじゃんかよぉ!」

 

「いや姉さんが言わないでよ!装者の中で一番の射撃特化の姉さんが匙投げたらあとは物理組しか残らないから!」

 

「知るかよそんなこと!なんなら後輩の鎌で刈り取れば良いじゃねぇか!」

 

「確かに切歌ちゃんのイガリマなら可能だろうけどさ!今僕達は怖いの!普通に意味ないから!」

 

「そう言うこと言うなよ!あたしだって怖いんだよぉ!」

 

姉さんは今にも泣きそうだし、僕も内心かなりキテる。キャロルとかフィーネさんとかこの類いの連中なのに!全然同じだと思えない!

 

「勇!やっぱり手をつないでくれ!怖くて逃げたくなる!」

 

「こっちも同じことを頼む気になったけどさ!結局なんでこんなモノ再生する気になったんだよ!」

 

「勇と一緒にいたかった!昔みたいにバカやってはしゃいで疲れはてたいなって!」

 

こんなやり取りができるのは僕達が家族だからなんだろうなぁ。響や未来にはこんな姿見せられないし、キャロルの方にも恥ずかしくて言えない。なんなら記憶に鍵をかけたいやつで。

 

「なあ………体が震えてしょうがねえから抱きしめてくれねぇか?あたし達の仲だろう?」

 

やっぱり姉さんは強かだな。例えキャロルに負けても、自分らしくあり続けられるのは、姉さんの強みなんだよな。そんな姉さんが僕は大好きだったけどね。でも確かにキャロルへの想いと姉さんへの想いって違うな。これが家族愛と恋なんだろうね。

 

「良いよ姉さん。昔みたいに二人で体を寄せあってビデオを見ようか。」

 

「なんだかんだ言いながらも、あたしは勇を愛してるからな。」

 

「こんな時にその言葉はズルいよ姉さん。」

 

「仕方ねぇだろぅ?こんな時じゃねえと本音で言えねぇじゃねえかよ。」

 

「まあ確かに、僕達らしいと言えば僕達らしいね。これからもよろしくね。クリス姉さん。」

 

「~~っ!やっぱりお前はあたしの愛しい弟だよ!」

 

こんなやり取りをしていたらいつの間にかビデオはスタッフロールが流れてた。どうやら僕達は相当ビビっていたらしい。

 

 

 

 

 

 

観測者の報告による評価 雪音 クリスの場合。

 

デートプラン 良し

 

勇の新たな一面が見ることができた。そして次からはオレも混ざることができる。というかエルは逃げ出すだろうな。これでは姉妹で勇とホラー映画の鑑賞はできないが、それはあくまでもこちらの問題の為にカウントしない。あんなに簡単に勇と抱きつけるのはなんと魅力的なことだろうな。

 

もし義姉が勇と関係を進めたいなら、一度だけは先を譲るかな。そして二回目はオレも混ざりたい。アイツの体は別の意味でも魅力があるからな。




最早デートすらキャロルの監視付き……流石ヤンデレ!

しかし肝試しでは……なかった。だけど満足すればそれがデートだ!

次回は「お料理は心を込めて」です!

切調コンビのデートプランをお楽しみください!

次回も18時より更新します!


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お料理は心を込めて

デート編第三回は切調コンビです!

そのお料理に込めるモノとは一体何なのか?

本編へどうぞ。


八月某日のある日

 

「勇さん!私達と!」

「お家デートをして欲しいデス!」

 

今日のお客様はザババの二人だった。

 

「う~んキャロルは僕の正妻で、嫉妬深いんだよ?もしそんなことがキャロルに知られたら、二人の命の危機になる筈だよ?」

 

「そこは大丈夫です。私達はちゃんとキャロルさんにお願いをしました。」

「そしたらキャロルさんは許可をくれたのデス!そしてあたし達は直々に審査して貰えるのデス!」

 

どうやらキャロル公認のデートらしい。

 

「ん?キャロル直々の審査?」

 

「はい。キャロルさんは私達にこう伝えてくださいました。」

「〈そのデートならオレ自ら審査してやろう。もし素晴らしいデートであれば切歌と調には機会をやろう〉とあたし達は許されたのデス!」

 

なんだかすごい話になってきた。キャロル自ら出向くなんてどれだけ注目したデートなんだろう。

 

「ちなみにデートはいつにするの?」

 

「今から始まります。」

「まずはあたし達とスーパーに行って欲しいのデス。」

 

どんなデートなんだろう。

 

「わかった。どこのスーパーに行くの?お金は僕が出すから、たまには好きな物を買うと良いよ?」

 

「大丈夫です。そこのスーパーに用事があるんです。」

「そしてキャロルさんとの待ち合わせの場所でもあるのデス。」

 

キャロルと待ち合わせか。久しぶりにショッピングデートってことかな?

 

~~移動完了~~

 

スーパーの入り口に着くと、キャロルが待っていた。

 

「キャロルさんお待たせしました。」

「勇さんをお連れしたのデス。」

 

「ああ。切歌、調の二人は存分に買い物をするが良い。オレは入り口で勇と待っている。それとコレがロッカーの鍵だ。お前達の成果をオレは期待して待っているぞ。」

 

そう言って二人は店に入って行った。

 

「キャロル~。なんで僕達は店に入らないの?」

 

「すまんな。いくら勇でもそれは答えられない。大事なことなんだ。ああそれと、帰ったらエルのところへ向かってくれないか?エルからも大事な話があるらしいんだ。」

 

「わかった。帰ったらエルのところに顔を出すよ。」

 

そんな話をしていると、二人が店から出て来た。

 

「キャロルさ~ん!無事に買えました~!」

「ロッカーの品物も無事に回収できましたのデス!」

 

二人の荷物の量はカートで運ぶ量だった。なるほど……だから僕を呼んだのね。

 

「二人の荷物は僕が持つよ。夏場は暑いからね。」

 

「勇さんは優しいのデス。」

「だからキャロルさんが惚れたですね。」

 

「すまんな二人共。エルの奴からの頼まれ事でな。」

 

「エルの頼み?なんだろう。」

 

わからないけど、何故か嫌な予感はしなかった。

 

~~帰宅後~~

 

「切歌ちゃん!冷蔵庫にいれる物は全部入れたよ~!」

 

「ありがとうございますデス!勇さんはエルのもとに行って欲しいのデス!」

 

「んっ!りょ~かい!じゃあ二人共!後はお願いね。」

 

そう言って僕はエルの部屋に向かった。

 

「エル~!来たよ~!」

 

「あっ!勇さんありがとうございます!実は勇さんにご報告があるんです!ガリィとフィーネさんからの報告なんですが、やっぱり仮説が当たりそうだと言っていました。つきましては、勇さんの持っている〈アレ〉と、ガリィの〈新作〉の調合がしたいそうです。次の〈機会〉に〈準備〉していただけばと思うのですが………」

 

「わかった。次までには準備しとくから、今日は器の作成ってことになるのかな?」

 

「はい!なので、勇さんの霊力を結晶化していただけばと思います。」

 

僕はその言葉を聞いた後で、〈霊結晶〉の作成にとりかかった。やっぱり十個作ると体がしんどいな。

 

「ありがとうございます!必ず今回で完成させますから、待っていてください!」

 

僕はその作業の手伝いをしながら過ごしていると、キャロルから連絡が入った。エルを連れて来て欲しいらしい。

 

「エル~!キャロルが呼んでるらしいから上に行くよ~!」

 

「わかりました~!すぐ上がりま~す!」

 

そう言って僕達が部屋に戻ると、そこには夕食が並んでいた。でもこのメニューってもしかして………。

 

「はい。キャロルさんが一品。」

「あたしと調で一品ずつ。」

 

「「「そして三人で一品作ったの(デス)(だ)!」」」

 

「うわぁ!ホワイトソースのパスタに、揚げたての唐揚げ!ロールキャベツにプリンまで!」

 

「すごいご馳走だね。みんなで作ったんだ。」

 

「それで勇に頼みがあるの。私達が作った料理を当てて欲しいの。」

 

キャロルが敢えて少女キャロルの声にして問題を出した。なるほどね。コレを作って食べて貰う為のデートか。だからキャロルが同伴って。

 

「じゃあ唐揚げからたべようかな。」

 

一口食べると、しっかりと下味がついた美味しい唐揚げだった。

 

「じゃあ次はロールキャベツを食べませんか?」

 

「おっ!良いね。じゃあ貰おうかな。」

 

エルに促されて僕はロールキャベツを食べた。味がしっかり染み込んでいるのに優しい味がした。僕の事を考えて作ってくれたんだね。

 

「最後にホワイトソースパスタか。あれ?キノコやベーコンだけならまだしもピーマンと玉ねぎか。だけど良い臭いだから期待したいね。」

 

食べてみるとしっかりととろみがあるのに、すごく食べやすい味になってた。隠し味があるね。

 

「勇………どう?」

 

正直あの料理はキャロルじゃあないな。だけどあの料理を切歌ちゃんが作った事になるな。

 

「答え合わせを。」

「お願いするデス。」

 

「なら、この唐揚げは調ちゃんだね?下味がしっかりしていて食べやすい味だったよ。冷めても美味しい唐揚げのレシピだよね。良くできているよ。」

 

「当たりです。唐揚げは勇さんが男性だから好きだと思って作りました。」

 

「このホワイトソースパスタは切歌ちゃんだね?ベーコンだけなら直ぐ断定できたけど、野菜も入っていたから悩んだよ。そして隠し味がお餅だね。調ちゃんが唐揚げを作った時から優しい味付けにするつもりだったでしょう?」

 

「すごいデス!勇さんはやっぱり素敵な人デス!」

 

「最後にロールキャベツはキャロルが作ったよね?この僕の好みに細かく合わせた味付けをできるのはキャロルだけだもんね。流石僕の一番のお嫁さんだね。」

 

「すごい!嬉しい!勇の料理は美味しいから私達も勇の為に作りたかったの!だって今年の誕生日は私のせいで祝えなかったから………」

 

「勇さんはやっぱりすごいです!キャロルの愛の細部まで見抜ける勇さんの魅力に僕達は………」

 

「エル……そこまでにしよう?料理を美味しいうちにみんなで食べたいからさ?」

 

「はい!皆さんで食べましょう!」

 

という事は合作はプリンか。デザートで食べたいね。

 

「勇さんすみません。プリンに合う紅茶を入れて貰えますか?」

 

「良いよ。全員分入れてくるから待っててね。」

 

僕はそう言って席を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下 キャロルによる提案

 

「切歌も調も良い料理だった。お前達が望むならこの後オレ自ら〈その先の関係〉に混ざる許可をやろう。プリンの横のスプーンには、ガリィ印の睡眠薬が塗ってある。故にお前達ならば勇のスプーン以外はすり替えると良い。」

 

「本当に私達が!」

「機会を貰って良いんですね?」

 

「ああ。意識が保てる保証はしないからな?勇に愛された時の快楽に壊れても、その時の勇に遠慮は無いからな?〈抱える〉のが恐いなら変換術式を施すから安心しろよ?ちなみにオレ達は毎回施して臨んでいるからな。」

 

「切ちゃん!これはチャンスだよ!」

「調!今夜があたし達の変わる時デス!」




此方の更新に合わせて番外編も更新しています。

よろしければそちらも是非読んで貰えたら嬉しいです!

次回はマリアさんのデート回である、

「海のデート」です!更新をお待ちください!

また、感想もお待ちしています!


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海のデート

デート回も後半に入りました!

よろしければ装者全員のデートを最後まで楽しんで貰えたら嬉しいです。

本編へどうぞ。


八月某日のある日

 

「勇!私とデートに行かないかしら!」

 

朝から堂々とマリアさんが突撃して来た。やっていることが響なんですけど。

 

「構いませんけどキャロルが許したんですか?エルの話だと正妻はキャロルで決まったと聞いてますが。」

 

そう………キャロルの立場が、僕の正妻になった話をエルから聞いた時は驚いた。そこまでキャロルは情熱的な愛を僕に抱いてくれていたからね。

 

「ええ。私達はあのあと、〈精霊同盟〉を結んだわ。コレがその証書のコピーよ。」

 

マリアさんが取り出した物は確かにキャロルの字で作成されて、八人全員の側室署名がされた証書だった。

 

「なら今回の件をキャロルは知っているんですか?下手をすれば世界がまた危機に立たされるんですけど。」

 

「その点は問題ないわ!キャロルさんから勇をデートしてデレさせたら〈その先の関係〉まで同伴で許可がおりたわ!だから私は貴方にデートの誘いをしているのだけど……」

 

最後の方は自信が無いのか言葉に力がなかった。

 

「きちんと話の順序がわかるので大丈夫ですよ。デートはいつ・どこで行う予定ですか?」

 

「明日貴方と海水浴に行きたいわ。司令達の保有するビーチに、私と勇の二人だけのデートをしましょう?」

 

多分原作で使っていたビーチかな?でもあそこは確か……

 

「う~ん……確かにそこなら情報面は心配ないですけど……やっぱり海の家の料理がビーチで食べたいなぁ。」

 

「ええ。私もその話を聞いた時にそこが残念だったの。だから今回は緒川さんが調理してくれるそうよ?」

 

「マジですか!?ガチじゃないですか!今から楽しみになって来ました!」

 

「明日のデートにするから食べたい物を教えてね。緒川さんが材料を調達して現地で作ってくださるそうよ。」

 

「明日ですね!楽しみにしています。後で食べたい物をメールします!」

 

「ええ。明日は最高のデートにしましょう!」

 

その日の晩までに僕はマリアさんに食べたい物をメールした。明日が楽しみだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~翌日~~

 

朝九時に玄関のチャイムがなった。

 

「おはよう。よく眠れたかしら?」

 

「そうですね。最近はよく眠れるようになりましたね。」

 

するとマリアさんは申し訳なさそうな顔をしていた。

 

「その………ごめんなさいね。勇はキャロルが好きだったのにあの時は……」

 

「大丈夫ですよ。確かにキャロルのことが気になっていました。ですが今はそんな心配はしていませんよ。もう気にする理由がなくなったので。」

 

「ええ。今の私達はキャロルさんには勝てないわ。だから貴方を正々堂々と虜にしてキャロルさんにも私達の仲を認めて貰うのよ!だから私達は今まで以上に、勇にアピールやアタックをしていくつもりよ。楽しみにして欲しいわ。」

 

なんだかマリアさんらしいな。これからも楽しみになりそう。

 

「ええ。今日のデートを楽しみにしています。さあ行きましょう!」

 

「ええ。現地までは私の車よ。ドライブデートも兼ねているんだから。」

 

 

~~更に移動中~~

 

「この季節でもドライブは良いものですねぇ。」

 

「ええ。私も緊張していたけど、勇といると楽しくて仕方ないわ!」

 

「目的地までもうすぐですか。マリアさんの水着を今度はちゃんと見ますよ。だってもう浮気じゃないですからら。」

 

「~~ッ!照れるじゃない!でも良いわ。私の新しい水着で見とれさせてあげるんだから!」

 

そんなやり取りをしながら僕達は目的地に到着した。

 

「さて。着いたわよ。勇……早く行きましょう!」

 

「ええ。まずは何からしますか?」

 

「パラソルを立てましょう。そして着替えたら泳ぐわ!」

 

こうして僕達はパラソルの設営を開始した。そして着替えるタイミングとなった時、マリアさんはなんとその場で着替えだした。

 

「マリアさん!更衣室はあっちですよ!」

 

「?私と勇しかいなくて、私は勇に全てを捧げると誓ったのよ?今更体を見られても恥ずかしい訳じゃあないでしょう?」

 

「そんな堂々と言えるマリアさんが羨ましいです。でも僕は向こうで着替えたいのですが……」

 

「大丈夫よ。私達は勇とキャロルの〈愛〉のビデオを見たわ。だから勇もここで着替えましょう?大丈夫よ。同意なしに〈事〉を始める気はないわ。」

 

そんなやり取りの間にマリアさんは紅い水着を着ていた。なんだかんだで体の魅力は姉さん以上のところもあるしね。

 

「勇……日焼け止めをお互いに塗り合いましょう?」

 

「そうですね。今日のこの場所を全力で楽しみましょう!」

 

僕達はまずお互いに日焼け止めを塗り合い、海で泳ぎの競争をした。

 

「ほらっ!あそこ岩まで競争よ!私が先に着いたら勇を抱きしめさせて欲しいわ!」

 

「なら僕が勝ったら、マリアさんを後ろから抱きしめてあげますよ?」

 

「その言葉忘れないからね!」

 

そんな勝負とは言えない勝負をした結果、マリアさんの勝ちだった。素直に悔しい。

 

「約束通り勇を抱きしめるわ。ロンドンの時は窒素させてしまったけど、今回は柔らかくするからね?」

 

僕達がパラソルに戻ってすぐにマリアさんそう言って、僕の顔を胸にうずくめる形で抱きしめた。……ああ。コレが男のロマンだったんだね。今度キャロルに頼んでみよう。多分その後の展開も予想はつくけど、楽しみは楽しみだね。

 

《お二人共。昼食が完成しました。建物の方までお願いします。》

 

「マリアさん!お昼ができたみたいですね。」

 

「ええ。早速海の家料理を楽しむわ!」

 

緒川さんに呼ばれた建物にいくと事前リクエスト通り僕にはラーメンと餃子(にんにく無し)、マリアさんは焼きそばが準備されていた。

 

「コレが海の焼きそばなの!?いつもと違う場所で食べるとこんなに美味しいのね!」

 

「ラーメンも定番だけど、餃子も美味しい!海の料理は何故かロマンを感じる!」

 

「デザートにかき氷があります。持って行って向こうで食べますか?」

 

「「緒川さんありがとうございます!是非そうします!」」

 

「ええ。ごゆっくり。」

 

僕達はそう言ってかき氷とスイカをパラソルの下まで持って行って二人で食べた。お約束のアイスクリーム頭痛もしたけど、それはそれで良い思い出になった。

 

「ゆ~う~!スイカ割りの準備できたわよ~!」

 

「今行きま~す!」

 

この後緒川さんに回されてマリアさんの誘導でスイカを割ることになり、マリアさんの企みでバストダイブアクシデントを起こされた。

 

「きゃぁ!」

 

「~っ!マリアさんごめんなさい!」

 

「良いのよ勇になら……私は貴方が狂おしい程好きなのよ?それに別のスイカには辿りついたじゃない………」

 

マリアさんの顔が紅く、僕はその仕草にドキドキしてしまった。

 

「あらあら~?流石マリアね。旦那サマを虜にしかけるなんて。コレはマスターも喜ぶワァ!旦那サマの新しい一面を見れたとね。だから誇りなさい。マリアは私達の同志よ。追ってマスターより連絡が入るわ。貴女のもうひとつの望みを叶えてくださるそうよ?」

 

「~~ッ!キャロルさんが許可をくれたの!?」

 

「えぇ。マスターより直々にね。だから研鑽しなさい。夜の旦那サマはすごいわよ?」

 

ガリィの登場で動揺した僕達だったけど海のデートは楽しかった。今度はキャロルと行きたいなぁ。

 

 

 

 

観測者からの報告による評価 マリアの場合

 

デートプラン 素晴らしい!

 

勇のことをああいう風に抱きしめると喜ぶのか!ならばオレはあの姿で勇と海のデートに行かねばならん!そして恥じらいを見せる勇と情熱的なキスをしなければならん!故にそれを気付かせたマリアは〈あの機会〉をやらねばならんな。ああ!ヘソの下がこそばゆい!




そして番外編も同時に更新しています。よろしければあらすじのリンクよりお楽しみください。

次回は未来さんのデート回です!

「夏祭り」

更新をお待ちください!

感想もお待ちしています。


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夏祭り

デート回も後二回となりました。今回の未来さんは王道を責めます!

それでは本編へどうぞ。


八月某日 朝九時

 

「勇君!私と今夜お祭りデートに行こう!」

 

唐突なデートの誘いだった。

 

「僕は良いけど、キャロルが許してくれるかな?キャロルを怒らせる事には僕は協力できないよ?」

 

「それは大丈夫だよ。キャロルさんに〈私が勇君をデートに誘います〉って正面から伝えたら、あっさりとキャロルさんは許可を出してくれたの。だから私は勇君をデートに誘いたいの!」

 

キャロルが正妻である事を皆に徹底的に認知させられたみたいだね。あの未来が一番を譲るとは珍しいから。

 

「なら行こうか。」

 

「やったぁ!じゃあ今夜花火大会が隣町であるから、二人で行こう!」

 

「てことはあの花火大会だね。懐かしいね。もう9年も未来と行ってないからさ。」

 

「ふふっ!浴衣姿の私に惚れてから、乗り換えてくれても良いんだよ?」

 

「残念だけどその展開はないかなぁ。僕の一番はキャロルだから。例え未来でもそこは譲らないよ。」

 

「うん!だからデートを繰り返して、いつか勇君が私にデレてくれるよう努力していくからね?」

 

未来の目が今までで一番の本気だった。

 

「じゃあ夕方に迎えに来て。その時には軽い物と飲み物を準備しとくから。」

 

「ヤダ。お弁当を作るのは私。今日だけはダメ。」

 

未来の甘えた目の威力がヤバい。キャロルがいなかったら惚れてたかも。

 

「ありがとう未来。それじゃあお願いね。」

 

「うん!まっかせて!」

 

そう言って僕達は夕方まで準備をする事にした。僕も小銭を準備したいね。

 

 

 

~~お迎え~~

 

「勇~君!準備できた~!」

 

もうそんな時間か。

 

「わかった!今行くよ!」

 

僕は玄関に向かった。すると浴衣姿の未来がいた。すごく綺麗だった。

 

「どう……かな?似合ってる………かな?」

 

「………ごめん。みとれてた。綺麗だね未来。」

 

「うん!ファラさんとガリィさんに見繕って貰ってそのまま着て来たの。二人共すごく手際が良くてあっという間に着させて貰えたよ!」

 

大はしゃぎだった。でもあの二人なら納得かな。

 

「じゃあ行こうか。お弁当は僕が持つよ。」

 

「ありがとう!浴衣大好き!愛してる!私を一番にして!」

 

堂々の略奪宣言(本日二回目)だった。

 

「正直今の未来にドキドキしたけど、それはごめんね。朝も言ったけど僕の一番はキャロルだから。」

 

「あ~あ。やっぱりキャロルさんのガードが固いか。でも私は諦めないから!何度だってアタックして勇君を振り向かせるから!」

 

「ごめんね。それじゃあ行こうか。手を繋ぐ?」

 

「もっちろん!当然恋人繋ぎだからね!」

 

まあ婚約者ではあるからね。序列はあるけど。

 

 

~~お祭り会場~~

 

「うわぁ!懐かしいなぁ!あの頃と変わってないなぁ!未来は買いたい物ある?今回は小銭多めで持って来たから、結構いけるよ?」

 

「なら焼き鳥とフランクフルトが良いかな。」

 

「りょ~かい!ちょっと買って来る!」

 

僕は頼まれた品物を買って戻って来た。すると未来は荷物のない方の手を恋人繋ぎで引いて来た。

 

「まずはお弁当と買って来た物を食べよう!花火まで時間もあるから!」

 

「おっ!良いね。じゃああそこの絶景スボット?」

 

「ううん。まずは広いところが良いなぁ!お弁当も食べたいから。」

 

「わかった!じゃあ近くの公園でも行こうか!」

 

 

幸い到着した時に、ベンチが一組空いていたので、そこでお弁当を取り出した。

 

「おにぎりか。シンプルだけど、屋台で食べ歩きする前ならアリだよね。屋台のメイン料理は片付けが大変だから。」

 

「うん。コレなら持ち帰りもしやすいからね。やっぱり勇君はわかってくれるんだ!」

 

「じゃあさっきの物も食べよう!」

 

そうして僕達がフランクフルトを食べる時、未来の食べ方が何故かエロかった。

 

「あむっ!あむっ!はふはふ。んんっ!ふぅ!」

 

「未来……食べ方がエロいよ?」

 

「勇君が私を襲っても良いんだよ?」

 

「冗談。世界が滅びるからダメ。」

 

「チェッ!残念。あ~あ!振られたなぁ!」

 

拗ねる未来がかわいい。

 

「それじゃ他の物も買いに行こうか。」

 

「あっ!ならチョコバナナとわたあめ!」

 

「良いけどさっきの食べ方はナシだよ。かわいい未来があんな食べ方してるのは、ドキドキしちゃうからね。」

 

「かっ!~~っ!」

 

顔まで真っ赤だった。かわいい。

 

「じゃあ行こう!」

 

その後わたあめとチョコバナナを買って普通に食べた。そしてその頃には花火が上がり始めた。

 

「綺麗だね。また来れて僕達は幸せだね。」

 

「うん。いつか勇君と二人で来たいと思ってたから、それが叶って今の私は幸せだよ?」

 

「残念だけど次の相手はキャロルだよ。だってキャロルの浴衣がみたいから。」

 

「う~う!私とのデートなのにキャロルさんの事ばっかり!勇君のいじわる!」

 

「う~ん。半分は冗談だけど半分は本音だからね。それにこんな冗談は響と未来しか言えないよ。だって気心知れた幼馴染みだからね。」

 

「………なんだ。私も勇君の特別だったんだ。」

 

未来の呟きは聞こえなかった。

 

「また来年も来ようね。」

 

その言葉は花火にかき消されて聞こえなかった。

 

 

 

観測者による評価 小日向 未来

 

デートプラン 悔しいが認めよう!

 

結果 悔しいが認めよう!

 

オレの方がかわいい発言はリアルタイムで聞いていたら、勇の顔が直視できない。次は浴衣を着て勇とデートに行きたい。悔しいが小日向未来!お前は本物だ!オレが一番警戒しなければならないライバルだ!同じステージに立った時には負ける訳にはいかない!正々堂々受けて立つ!




そしてこの更新と同時に番外編も更新しています。

よろしければあらすじのリンクや作者のベージからジャンプしてください。

デート回最後は響のターンです!

次回「虫とり」

更新をお待ちください。

よろしければ感想もお願いします。


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虫捕り

デート回もいよいよ最後になりました。

それでは皆様本編へどうぞ


「勇君!私とデートしてください!」

 

8月のある日の朝八時。幼馴染みの響が僕にデートの誘いをして来た。

 

「響知ってる?僕はキャロルが好きなんだけど。」

 

「知ってる………勇君の正妻はキャロルさんだもんね。だけど私は諦めてないから!勇君を好きだった九年間は!私の全てだもん!それにキャロルさんから許可をもらったの!勇君とデートをして、デレてくれたらその先の関係も許してもらえるって!」

 

僕の知らないところで話が進んでいた。そして一番になれずとも諦めていないのがなんだか響らしいね。

 

「勇君………ダメ………かな?」

 

消え入りそうな声で響が訴えて来た。マジですか。そこまで本気ですか。

 

「いや………そうじゃないんだよ。響のストレートな誘いに面食らってただけだから。それに、そこまで真っ直ぐに言葉を伝えて来るのが響らしいなって思っただけだよ。もちろんデートしようよ。」

 

「本当!ありがとう!勇君大好き!愛してる!私に乗り換えて!」

 

どこまでも自分の感情に素直な響だね。シレッとキャロルから奪う気マシマシで来てるじゃん。

 

「ごめん響。最後だけはダメだね。僕の一番はキャロルだよ。そこは揺るがないからね?」

 

「うん………やっぱりダメかぁ。だけどデートしてくれるなら私は嬉しいよ!」

 

「ちなみにどこでデートするの?」

 

「久しぶりにカブトムシでも捕まえに行かない?あの時は楽しかったもん!勇君がいたから楽しかったんだから。」

 

どうやら二日がかりのデートをするらしい。

 

「ねえ響?罠とかの準備はどうするの?もしかしたら二日がかりにならない?」

 

「罠は仕掛け終わってるの!後は勇君がオッケーしてくれたら全ての準備が終わるだけだよ?」

 

訂正しよう。どうやら了承する前提で準備してたみたいだ。

 

「それ僕が了承できなかったらどうしてたの?」

 

「優しい勇君が断るはずないじゃん!だから私は昨日の夜から準備して、後は現地に行くだけにしたんだから!」

 

響は僕のことを、どこまでも真っ直ぐな瞳で見つめていた。

 

「わかったよ。準備するから待ってて。」

 

僕はそう言って自分の部屋に向かい、動きやすい服装に着替えた。

 

「お待たせ響。じゃあ行こうか。」

 

「うん!仕掛けた場所はあの時の緑道公園だよ!」

 

「なるほどね。やけに準備が良いと思ったら近場か。なら久しぶりに虫相撲でもする?」

 

「良いね!未来やクリスちゃんは虫が嫌いだったから、私だけ勇君と遊べたもんね!」

 

確かに未来や姉さんは虫が嫌いだったなぁ。泥だらけで網を持って二人でセミ捕りもしたっけ。懐かしいなぁ。

 

「じゃあ勇君!早速行こうよ!仕掛けた罠に何匹かかったか気になるし!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現地につくと響の仕掛けた罠には、あまりかかっていなかった。

 

「うーん…あんまり大物はいないかぁ。」

 

案の定素人が作る即席の罠にかかる獲物は、というよりは響の作る雑な罠には何故かカブトムシはいない。良いところがセミだった。

 

「ちなみに何をいれてたの?」

 

「カブトムシ用のゼリー。」

 

憐れ響。道具を揃えても本命にたどり着けないあたりが、この幼馴染みの残念なところでもあった。

 

「ねえ響?今度はちゃんと準備しない?」

 

「うん………。そうする。」

 

「まあでも懐かしいところにも来れたし、思い出巡りのデートなら悪くなかったね。本命の結果自体は残念だけど、僕も童心に帰れて楽しかったよ。あの時僕と虫捕りをして楽しめた幼馴染みは響だけだったからね。」

 

「勇君!ありがとう!」

 

響は真っ直ぐ僕に抱きついて来た。なんだか響はこういう風に真っ直ぐ行動するから、昔から本心で話やすかったんだよな。

 

「じゃあそろそろ仕掛けた罠を回収して帰ろうか。また機会があれば皆で来ようね。」

 

「うん!その時にはキャロルさんから勇君を奪ってみせるよ!だって私の魅力に勇君が惹かれてくれる筈だから!」

 

「ははは。諦めが悪いけど、裏表がないのも響らしいね。だけどそう簡単に僕の心は動かないよ?」

 

「私が簡単に諦める訳ないじゃん!絶対時間がかかっても成功させるんだから!」

 

やっぱり僕の幼馴染みは今も昔も変わらないな。だから僕はこの町に戻って来れたんだろうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば響?なんでキャロルを〈さん〉付けして呼んでるの?前は〈ちゃん〉付けだったよね?」

 

「私達の中で絶対的な格付けになったの。だって今は誰よりも強い想いと実力があるからね。皆は一番の人を敬うって暗黙のルールが決まったの。」

 

なんだかいつか僕を奪う布石を施しているのかな。気付いたらヤンデレしかいなかったしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観測者からの報告による評価 立花 響 の場合。

 

デートプラン 良し

 

昔の思い出を活用した、気心知れたデートとなり、勇もたのしんだので合格。

 

結果 次があれば改善可能だろう………というか見たい。

 

想定外の出来事に対しての動揺が目立つが、勇が楽しめていたので結果オーライ。もしその先の関係を奴が望むなら、オレが同伴の場合に限り許可。奴等の昔の思い出はオレも気になるから。




もちろん響の番外編も更新しています。

よろしければあらすじや作者のページよりお願いします。

そしていよいよAXZ編に突入します。

次回〈謎の人物???動く〉ついに彼女が動きます!

更新をお待ちください。

また、感想もお待ちしています。


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AXZ編 来たる異世界の魔術師
謎の人物???動く。


ついに神咲さんの作品からこちらの作品にいただいたもう一人の彼女を登場させます。(当然コラボの際に許可をいただきました。)

まあ……皆さまお察しの方なのですが……

そしてこの話からAXZ編の開始です!

詳しい動きは本編へどうぞ!


「では始めよう。嘗てフィーネ……いや、今はダ・カーポか。奴の世界にて存在していた女……〈天羽 奏〉。奴こそが今の我の器へと相応しい。」

 

今の我はダ・カーポが嘗て過ごしていた世界の、人類が絶滅する前の時代へと精神のみで訪れている。

 

「さて、では我の目的を果たすとしよう。」

 

我は勇に愛される為ならなんでもしよう。崩壊する世界の中から零れ落ちた命があれば救おう。強大な敵が現れたら排除しよう。快楽を求められたら受け入れよう。

 

「所在は既に観測をした時点で判明している。後は機が来るのを待つだけだ。」

 

本来ならば奏の事を問答無用で乗っ取れば手早い事だが、それを知れば勇は我を許さないだろう。故に行わない。

 

「面倒な事だ……しかしそれも勇の望みだ。故にこの手間すら苦ではないな……必要な事だとわかっているからな。」

 

後は〈その時〉が来るまで座して待つとしよう。何……そう時間はかかるまい。

 

~~2041年 10月6日 ツヴァイウィングライブ会場(ダ・カーポの嘗て過ごした平行世界)~~

 

「さて!気合いを入れろよお前達!今回の実験は重要な物だからな!」

 

「わかっています……しかしいざ本番になれば失敗は……」

 

「な~に!気にしすぎなんだよ翼は!アタシ達は唄を歌う!そして観客達を盛り上がらせる!それだけで良いんだ!緊張しすぎな方が不味いんだ。ならアタシ達は自然体でいるべきなんだよ!」

 

「うむ……奏の言う通りだぞ翼。確かにお前達の役目は重要な物だ。だが同時に一人のアーティストでもあるんだ。それを忘れるなよ?」

 

……このライブこそが数奇な運命の始まりであったな。そして勇のいない世界だ。故に端末達が何を語ろうと、この時代の巫女が何を企んでいようと我の預かり知らぬ事態だ。

 

「だが、唄というのは悪くない。故に今は純粋に楽しむとしよう。」

 

その時が来るまでの余興のつもりであったが、あの世界の我もいずれ知るのだろう。〈ヒト〉が作る無限の可能性、我らが欲した答えの一端を。

 

「故に我も唄を心得るとするか。」

 

そして我はコンサート会場に雑音が入るまで楽しんだ。そして奴らが活動を始める事を少し残念に思う。

 

「先史文明の者は愚かであった。互いを受け入れてさえいればこの素晴らしさを知れた者もいただろうに。」

 

そして状況に動きが現れる。奏が命を燃やす唄を告げ始めた。ならば時は来た。

 

「この時を待っていたぞ!」

 

フォニックゲインが奏の体を覆った瞬間に我は辺りの雑音を消し去った。奴らなぞ我の前ではただの塵芥に過ぎぬのでな。そして我は奏を連れ去った。

 

「奏!奏!どこなの!奏えぇぇぇぇーー!!!」

 

片翼を失った女が泣き叫んだが、今の我はやるべき事がある。勇の見た未来を辿る事がない事がこの世界だと思うと残念ではあるが、これ以上の干渉は不要である。なので後は崩壊を待つ世界ではあるが、それでも一時の平和がある事を我は願う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?なんでアタシは生きている?確かに絶唱を使った筈なのに……」

 

奏が意識を取り戻したみたいだな。ならば始めるとしよう。

 

「我は平行世界より来訪した嘗ての神である。今回はとある縁より貴様に接触した。」

 

「平行世界の神様だ?ハッ!冗談はよしてくれや。大体アタシを助け出して神様はなんの得をするんだ?」

 

「その無礼な態度は許そう。そして頭が回る事は評価しよう。故に貴様の世界の末路を話してやろう。」

 

そうして我は勇が見たあの世界の末路を奏に聞かせた。当然ではあるが、奏は話の途中から絶望して体の力が抜けていた。

 

「これが貴様達の世界の末路だ。理解したな?」

 

全てを話し終える頃には奏は涙を流していた。

 

「了子さんはこの後から人類が救われる為に、自分の技術や知識を皆に提供したのか。だけど人類はその速度について行けずに互いに争って自滅……ね。……笑えねえな。翼だけでも救われる事を祈ってアタシは唄ったのに、最後には翼も守れないなんてな。」

 

「そして我は勇が後悔していた貴様……奏を救う為にここへ連れて来た。もし奏が我の提案を受け入れるのであれば我は奏に対価を約束しよう。もし拒否をしても殺しはしない。ただ我に体を奪われて意識を一時的に封印するだけだ。そしてその場合は事が終わり次第奏をあの世界へと送り届けよう。……全てがなくなった後の世界ではあるがな。」

 

奏は悩んでいた。もうあの世界へと……翼達と再会する事は不可能だと言われた為であろうな。

 

「ちなみに聞くけどさ。もし神様があの時に接触しなかったらアタシはどうなっていた?」

 

「絶唱の反動による体の崩壊。それだけで奏は亡くなったな。」

 

我の告げた結末を聞いた奏は決心した顔で答えを出した。

 

「そっか!やっぱりそんな気はしてたんだ。なら決めたよ神様。アタシは神様に協力するよ。だけどさ、もし神様が良いならアタシは神様の向かう世界で過ごしたいな。」

 

「良いだろう……契約成立である。では手始めに我に名前をつけるが良い。」

 

「一応参考に聞くけどさ。今の神様の名前を教えてくれない?」

 

「今の我の名前は〈シェム・ハ〉である。神代の改造執刀医でもある。」

 

……なんだかようやく我の名前を明かせた気がする。勘違いであろうが。

 

「オッケーだ。なら新しい名前は〈シャルロット〉ってのはどうかな?元の名前はやっぱ神様だけあって仰々しい気がするからさ。それに多分だけど気になる男がいるんじゃないかな?」

 

「……奏の勘の良さは認めよう。そして新たなる名前である〈シャルロット〉も気に入った。これからは我はシャルロットと名乗ろう。そしてよろしく頼むぞ奏。」

 

「了解だよシャルロットさん!じゃあ次にアタシは何をしたら良いんだ?」

 

「我を体に宿せ。そして我が覚醒・合図をしたら意識を交代させろ。それだけだ。」

 

「なんか思ってたよりも何もしないんだな。てっきり主導権は原則取られると思ってたんだけど。」

 

「それは無い。勇は奏が生きている事を望んでいる。故に乗っ取る事は勇を悲しませてしまうだろう。」

 

勇が喜ぶ事が何よりも重要な事だ。故にその害に足り得る行動は例え我の行動であろうが許されない。

 

「ならば一つ試練を与えよう。勇の霊力の残滓から〈ケルビエル〉を使いこなして前任者に邂逅せよ。」

 

「おおぅ……。なんかいきなりすごい要求をされた事がわかったな。だけどアタシはやるよシャルロットさん!そしてシャルロットさんが惚れた相手の勇君を振り向かす事に全力で協力する事を約束するよ!」

 

「ならば我はしばし眠ろう。そして覚醒を済ませた後に勇の世界へと向かうぞ?」

 

「おう!任せてくれよシャルロットさん!」

 

奏が鍛練する間に我はしばしの眠りについた。そしてその間に〈魔術師〉を名乗る奴等に魔王の一つを授けよう。この力を勇が見れば何者かが魔王を知っていること、そして勇にメッセージを送った事に気づいてくれる筈である。

 

「勇……我を満たしてくれる希望の光よ。我は必ず勇の世界へと辿りつこう。そして出会えたその時は我は今の気持ちを伝えよう。」

 

いつの日かの邂逅を夢に見て我は希望を抱く。例え悠久のように長い時だとしても。




そう!シェム・ハさんだったのです!(バレバレな伏線)

ちなみに今回から登場する〈天羽 奏〉さんは、ダ・カーポ(コラボ章で黒幕をしていた世界のフィーネ)さんの世界の奏さんです。決して勇君の世界の彼女ではありません。

次回〈力を覚醒させる者達〉

更新をお待ちください。

感想等もお待ちしています。


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力を覚醒させる者達

前回解説し忘れましたが、七海さんの世界の〈シェム・ハ〉は今後こちらでは〈シャルロット〉と名乗る事になります。そして後に合流するヒロイン枠となります。

それでは皆さま本編へどうぞ。


~~奏side~~

 

アタシはシャルロットさん(長いから今度からは〈シャル〉って呼ばせてくれるようになった。)から託された試練に挑んでいる。

 

「ケルビエルは雷の天使ってシャルさんが言ってたな!だけどアタシは細かい動きが苦手だ。だから力のコントロールを練習するんだ!」

 

シャルさんはアタシが〈ガングニール〉を安心して纏えるように適合係数を引き上げてくれた。曰く了子さんの事をシャルさんは知っていて、その関係で改造してくれた。

 

「やっぱり礼装だけで制御するには独力じゃあ限界があるな。だけどその世界の前任者の動きを以前映像で見せてくれたけど……それでも難しいな。」

 

だからアタシはシャルさんに声をかけた。

 

「シャルさん……起きてるか?頼みがあるんだ。勇君のあの戦いの映像をもう一度見たい。お願いしても良いかな?」

 

〈良い心掛けだ。だが一つ重要な事を伝えよう。勇の霊力量は奏達の基準では受け止められないのが原則である。唯一キャロル・マールス・ディーンハイムのみが例外で無条件に受け止められる。これは勇とキャロルが互いを何よりも愛する故の例外だ。それを忘れるなよ?〉

 

めちゃくちゃシャルさんが饒舌に語ってくれた。だけどそうかぁ~!勇君のあの使い方は自分が相当な霊力量をわかっているからできる事なんだなぁ。ならその戦い方をすればアタシの体は持たないだろうな。それは〈ガングニール〉の適合の時に学んだからな。

 

「ん?勇君のあの動き……いや、浮遊する球体はどうして……。」

 

〈何か気付いたのか奏?〉

 

「ああ!もしアタシの勘が外れてないなら、一気に状況を進展させれるかもしれない!」

 

「ほう?面白い事を言うな。何か策があるのだろう?」

 

「ああ!アタシのガングニールにあの球体の力を融合させるんだ!そしてシンフォギアで霊力を制御する。他の奴等はどちらも独立して使えるけど、勇君と邂逅してないアタシには無理だからな。だからアタシは二つの力を合わせるよ。だからシャルさんはアタシの中で暴走したら止めて欲しい。頼めるかな?」

 

〈良いだろう……やってみろ奏。我は協力を惜しまない。故に全力で取り組め!〉

 

「ああ!最高の動きにしてみせるさ!だから特等席で待っていて欲しい!」

 

そうしてアタシ達は新しい可能性を模索する事にした。

 

~~奏sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~エレンside~~

 

結社の情報力や関連組織への協力の約束を済ませ、〈顕現装置〉と〈アルカ・ノイズ〉の開発を急がせている今の私に一つの本が出現した。

 

「これは〈ベルゼブブ〉……ですか。確かに嘗て〈シスター〉より奪った力をアイクが使っていましたね。しかし何故今になって私の手元へ現れる?」

 

私は確かに人類最強です。しかし〈五河 琴里〉達の〈フラクシナス〉と、〈エリオット〉に私達は嘗て敗北しました。しかしこの世界ではアイクもエリオットもサンジェルマン達に断罪されて死亡。唯一私は二人の最後の抵抗により脱出に成功しました。そして〈ジェシカ〉と〈アルテミシア〉にも再会できました。

 

「これはアイク達の最後の置き土産という事でしょうか?ならば予定を変更しましょう。〈ペンドラゴン〉〈アシュクロフト〉〈スカーレットリコリス〉は既に完成しています。ならば次は電子精霊〈或守 鞠奈〉の復活をさせましょう。そして〈フラクシナス〉の使用した〈随意領域〉の発生装置である〈世界樹の葉〉も再現してみせましょう。私は確かに人類最強です。しかしこの世界にも精霊がいます。そしてもう私達に慢心はありません。かかって来なさい精霊達。」

 

私は現れた〈ベルゼブブ〉に何の疑問も抱かなかった事を後に後悔するとはこの時は気付きませんでした。

 

~~エレンsideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~シャルロットside~~

 

どうやらエレンは〈ベルゼブブ〉を躊躇いなく受け取ったようだ。

 

「ならば存分に使わせよう。そうすれば勇はエレンを止める為に戦場へと現れる。我はその時に……」

 

「なあシャルさん?その……勇君はシャルさんが片想いしている事を知っているんだよね?」

 

「我は勇とは一度も接触しておらん。最初が肝心と言うだろう?」

 

「ちょっと待ってくれシャルさん!一回整理させて欲しい!もしアタシの考えが正しかったら……」

 

そう言うと奏は考え始めた。しかし何を考えると言うのだ?そう疑問を抱える事凡そ五分後に奏は結論を出したようだ。

 

「やっぱり勇君はシャルさんの事を知らないって事だよな?だったらシャルさんは勇君に一度きちんと会うべきだよ。」

 

「だが……勇の記憶の中の我は……神代の頃の……」

 

「だぁー!もう!そこを気にしたら始まらないだろシャルさん!それにまだこの世界では何もしてないなら良いじゃないか!」

 

「そう……か。ならば奏よ。お前ならばどうする?」

 

奏は我の問いに笑顔で解答してきた。

 

「ならさ……シャルさんが理想的な場面で勇君と再会してからデートに誘いなよ。勇君が話通りの人物ならきっとシャルさんのお願いを無下にはしない筈だから。」

 

「〈デート〉か。ならば我も考えよう。最高のデートという物をな!」

 

「その意気だぜシャルさん!アタシも協力は惜しまないからさ!」

 

我らはその後も他愛のない会話を続けた。これを人は「友」と呼ぶのだろう。

 

~~シャルロットsideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~勇side~~

 

僕達は七海さん達と出会った世界からの戦利品や託された物を確認している。

 

「さて、凛祢やダ・カーポさんとの再会の前に僕も託された物を確認して、使いこなさないとね。じゃないと七海さんや凛祢達に頭が上がらないよ。」

 

「そうだな。確かにあの世界でオレ達は新しい力を得た。ならばまた使いこなす必要があるな……鳶一 折紙の想いと力を使いこなす為にな。」

 

ん?折紙さん?

 

「ねえキャロル?折紙さんに会ってたの?」

 

「七海と行動をした時にな。それに一度だけだが、〈五河 琴里〉〈時崎 狂三〉〈鏡野 七罪〉の三人も援護をしてくれてな。言葉を交わしたのは折紙だけだが、必ず礼がしたいものだ。」

 

現在は響達装者七人とキャロル……そしてフィーネさんに天使が継承されている。だけどまだ〈ザドキエル〉〈ハニエル〉〈ミカエル〉の三個……いや、〈ケルビエル〉も含めたら四個か。

 

「まずは七罪さんに会えたらお礼を言わないとね。」

 

「そうだな。時に勇……七海から託されていた装備はどうするつもりだ?」

 

「アレなんだけどさ。しばらくは僕が持っていても良いかな?ちょっと気になる事があって……」

 

「かまわないぞ。ならばオレの方は新たに託された能力を訓練したい。少し一人になるぞ?」

 

「オッケー。じゃあまた後でね。」

 

僕はそうして部屋を出て、広い宇宙へと転移した。

 

「さて、ここでなら心置きなくセイヴァーに変身できるかな?」

 

僕はビルドドライバーを装着して、二つのフルボトルを起動する。そして収束礼装を纏い変身の準備に入る。

 

<〈精霊!〉・〈希望!〉ベストマッチ!>

 

<Are you ready?>

 

 「救います!それが僕の覚悟で願いなんですから!」

 

<繋がるココロ!デート・ア・ライブ!イェーイ!>

 

そして僕の収束礼装に変化が始まった。礼装を形成していた力が光輝き出してアーマーを形成した。

 

「行きます……皆さんの力をお借りします!」

 

そして僕はセイヴァーへと変身していた。

 

「無事にセイヴァーに変身も完了だね。後はこの力を安定して扱えるように制御をしよう。」

 

そうして僕はしばらく宇宙空間で力の制御を行った。

 

~~勇sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~奏side~~

 

アタシが〈ケルビエル〉の力を練習し続けて体感時間で三年が経過した。そしてアタシの読み通りシンフォギアと天使の相性自体はかなり良好で、ケルビエルの権能の〈鷲〉〈牛〉〈獅子〉〈人〉の形成にはアームドギアに埋め込む事で可能になった。

 

「どうだいシャルさん!アタシの努力は?」

 

「合格としよう。だが、もう我が集めた力の残滓は無い。これでは……」

 

シャルさんの悲しむ顔を見てアタシはやるせなくなった。力になれない事がこんなに辛いなんてな……。

 

「だけど何とかして、シャルさんを勇君に引き合わせてあげたいな……。」

 

そう呟いた時にアタシ達は光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈なんで私が貴女達を呼び寄せたかわかるわね?〉

 

アタシ達に声をかけたのは、長髪でサイドテールの学生服を着ている少女……〈万由利〉さんだった。

 

「アタシ達に試練を受ける資格が満たされたから……だろ?」

 

「我も呼ばれた事に意味があるのは察した。故に請う。我らは何をすれば良い?」

 

〈まず大事な事だけを説明するわ。私は貴女達の行動のみを三年間見続けたわ。〉

 

「然り。我は視線には気付いていたが、これらは我らの行いの結果だと認識もしている。」

 

「アタシは気付いてなかったな。だってそれどころじゃあなかったから。」

 

本当にすごい事ばかり起こるな~アタシ。

 

〈貴女達の想いと行動が悪性では無い事は確認した。だけどその想いが報われ無い結果になる覚悟を問う必要が出てきたわ。〉

 

「然り。例え報われずとも我らは結果として救われている。故に積み重ねる事が次の課題である。」

 

「アタシはシャルさんを支え続けるさ。それが救われた事への恩返しでもあるからさ!」

 

〈わかったわ……天羽 奏。貴女に私の力を託すわ。その力で彼女を支えなさい。そして願わくは勇を助けなさい……〉

 

「ありがとうな万由利さん。アタシは一度死んだ身だ。だから次の人生は悔いを残さないように頑張って見せるさ!」

 

〈頑張ってね。そして……私が彼の世界までの道を開くわ。だけどそこからは貴女達の頑張り次第よ。〉

 

そう告げて万由利さんは消えて行き一つの道ができ あがった。

 

「行こうかシャルさん。」

 

「ではいざ行こう……我らが焦がれた世界へ!」

 

アタシ達は示された道を進み始めた。

 

~~奏sideout~~




〈奏さんがケルビエルを獲得しました。〉

本編のしかるべきタイミングで彼女達は勇君達と合流します。その時をお待ちください。

次回〈再会する者達と新たな力〉

更新をお待ちください。

感想等もお待ちしています。


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再会した僕達と新たな力

さあ!AXZ編が始まります!嘗て人類最強を名乗った魔術師と世界を救う為に戦い続ける精霊達との邂逅……の前にまずは彼女達が合流します。

そして今回は全ての話でアンケートを掲載します。よろしければ回答をお願いします。

また、活動報告にて今後の予定を発表しましたので、よろしければ後書きのリンクより確認をお願いします。

長くなりましたが本編へどうぞ!


僕達がお互いに力を使いこなし始めた頃にその時は来た。

 

「キャロル……気付いた?」

 

「ああ。漸く奴らもここへたどり着いたらしいな。では迎えに行くとしよう。」

 

僕達は彼女達の元へと転移した。

 

「にしても……今回は静粛現界をしたんだね凛祢……もし僕達がいなかったら彼女達は……。」

 

「それは無いだろうな。凛祢は勇のところへ必ずたどり着いただろうさ。奴の目は覚えがあるからな。」

 

〈キャロル が 不機嫌 に なった!〉

 

「ごめんキャロル!今度デートするから許してください!」

 

「絶対だからな?なんならベッドの上で話の続きをしても良いからな?」

 

ここのところ搾られ続けているから洒落にならない。最近は主導権が全く取れないからなぁ。

 

「お手柔らかに頼むよ……。」

 

僕達はそう言って目的地へとたどり着いた。

 

「あっ!勇君!キャロルちゃん!会いたかったよ!」

 

凛祢は僕達を見つけると直ぐに抱きついて来た。気のせいか胸を押し当てられている……気のせいだよね?

 

「離れろ凛祢。今すぐだ。さもなければお前をダ・カーポもろとも断罪するぞ?」

 

キャロルが凍える声で威した。僕も怖い。

 

「ごめんキャロルちゃん!だけど嬉しくて……つい……。」

 

その表情は反則だよ凛祢……それじゃ怒るに怒れない。

 

〈漸くこの世界で会えたな勇。私はこの時を待ちわびたぞ!〉

 

「お久しぶりですダ・カーポさん。凡そ二ヶ月ぶりでしょうか?」

 

「そのくらいだよね~。でも私達には長い。とっても長い時間だったけど、とても楽しみな瞬間だったよ?」

 

凛祢の言葉には重みがあった。そしてダ・カーポさんはもう一つ大事な事を伝えて来た。

 

〈時にキャロル?反転体の力の調子はどうだ?制御の方は大変だろう?〉

 

声だけの筈なのに表情が読める気がしたのはきっと間違い無いからなんだろうね。でも……

 

「ダ・カーポさん……今〈反転体の力〉って言いましたよね?僕は初耳なんですが……。ねえキャロル?僕に隠し事してた?それも危険な力の?」

 

僕は純粋にキャロルの事が心配だった。だけど予想外の言葉が飛んで来た。

 

「ん?あの力なら既に調教を終えたぞ?ダイン=スレイフの時と大して変わらんだろう?」

 

何だか僕達は似た事をお互いにしている気がしてきた。

 

「なら……さ。いっそ二人で戦ったら良いんじゃないかな?その方がお互い納得するでしょう?」

 

凛祢の提案はありがたい物だった。ならここは乗ってみようかな?

 

「やろうよキャロル?僕はライダーの、キャロルは新しい力を使ってみよう?」

 

「良いだろう!簡単に二年前の用な勝ち方を出来るとは思わない事だ!そして力に振り回されない事を願うぞ!」

 

「試運転は済ませてあるから心配はいらないよ!キャロルの方こそ大丈夫かい?」

 

僕達はお互いを心配しながらも軽口を叩きあって準備を始めた。

 

「ねえダ・カーポ……。私達はある意味すごい戦いを今から見る事になるよ?」

 

〈確かにな。だが、凛祢も気にはならんか?この二人の再戦なぞそう見られない戦いだぞ?〉

 

「そうだよね~。この二人が動いたら間違いなく大概には勝てるよねぇ。」

 

〈その例外がよく言うな。〉

 

「二人共~!始めるよ~!」

 

僕は二人を呼んだ。せっかくならギャラリーがいないとね!

 

「今から行くよ~!」

 

凛祢が来るまでに僕とキャロルはじゃんけんをして、僕から変身する事にした。

 

「じゃあ僕から行くよキャロル!」

 

僕はビルドドライバーを装備して、必要なフルボトルを取り出して振り始めた。そしてグレートクローズドラゴンも取り出した。

 

『マックスハザードオン!』・『グレートクローズドラゴン!』

 

「この力を使いこなすのは僕の義務でもある。」

 

『ガタガタゴットンズッダンズダン!ガタガタゴットンズッダンズダン!』

 

『Are you Ready?』『オーバーフロー!』

 

「行きます……皆さんの力をお借りします!」

 

『Wake up CROSS-Z! Get GREAT DRAGON! ブラブラブラブラブゥラァ!』

 

『ヤッベーイ!』

 

そして僕は仮面ライダーブラッドに変身をした。

 

「〈おい!勇!ブラッドに変身するなんて聞いてないぞ!〉」

 

「勇君!?それは誰も予想してないよ!?ていうかなんでもう使いこなしているの!」

 

「割と再々宇宙に行って変身してました。そして小隕石ぐらいの奴で技のコントロールもしていました。」

 

僕がブラッドへと変身を終えると、キャロルもドン引きしていた。だけどキャロルもなにかを準備し始めた。

 

「ならばやはりこれしかあるまい!」

 

キャロルは、メタトロンの光を集めると両手の中へと集めてグッと握りこんだ。

 

そして散り散りになった光は、黒い光へと色を変えキャロルを包み込んだ。 

 

「やはりこの力は恐ろしい!しかし同時にすばらしい力でもある!これが勇に並び立つオレの新たな力だ!」

 

声を上げながら光から出てきたキャロルは、その装いを喪服のように黒いドレスに変えていた。

 

そして右手に持った<ダイン=スレイフ>が呼応するように鈍く光り、闇のように黒いオーラを吹き出した。

 

〈あの力は七海と共に私を退けた力だな。キャロルは既にアレを自力で制御したという事か。〉

 

その姿を美しいと思うと同時にこの言葉も出てしまった。

 

「ねえ?なんでキャロルは反転体の力を纏ってるの?僕その力ないよ?なんかズルくない?」

 

「「〈お前(勇君)が言うな!一番常識外れの力を使っているのはお前(勇君)だ!〉」」

 

全員から怒られた。解せぬ。

 

「いや勇君……私達はあのセイヴァーの姿になると思っていたんだよ?そしたらなんか違う変身動作をして、最終的にはブラッドになっていた。これは皆ビックリするよね?」

 

ドン引きしてる凛祢に更なる追い討ちをかけられた。戦う前から僕の心はボロボロだよ!

 

「ねえキャロル?手加減しなくて良いよね?ちょっと理不尽な扱いを受けたからさ?」

 

「反則ライダーに変身した元凶が何を言うか!オレの方が手加減せんぞ!その装備をスクラップにしてやる!」

 

〈凛祢……今から怪獣大戦争でも始まるのか?〉

 

「あながち間違いじゃあないけど、けしかけた私達は逃げたらダメだよ。」

 

ギャラリーの二人の目は既に死んでたけど、僕達は戦いを始める事にした。

 

「なら……初擊は譲るよ!遠慮なく来なよ!」

 

「後悔しても知らんぞこのチートめ!」

 

キャロルはそう告げると〈ナヘマー〉を装備して斬りかかって来た!

 

「ちょっと!?それは〈ナヘマー〉じゃん!〈サタン〉じゃないじゃん!何?反転体の力を大概は使えるって事なの!?」

 

「いや、使える魔王は〈サタン〉〈ベルゼバブ〉〈ナヘマー〉の三つだ。だが、天使との併用も可能だぞ?」

 

ダメだ……。頭が痛くなってきた。それはそれで大概ヤバイ。

 

「いや~キャロルちゃんも大概だねぇ。天使と魔王の併用とか普通に強いし、これは勇君も負けちゃうかな?」

 

何だかキャロルが悪い顔をしていた。

 

「勇……提案だが、この戦いでオレが勝てば今夜は〈搾りとる〉。負けたら勇に全てを委ねる。どうだ?面白いだろう?」

 

「それは勝っても負けてもキャロルが得をするよね?だけど良いよ。僕が勝ったら泣いても止めてあげないから!」

 

「ほざけ精霊!オレに勝てると思うなよ!」

 

僕達は意外にしょうもない理由で戦いを始めた。




勇君の新たな変身姿について……

だ れ が 予 想 し た ?

正直、〈神咲胡桃〉さんからブラッドの変身装備一式を貰った時点でこの話を書くことは決めましたが、次回は間違いなく怪獣大決戦が始まります。

次回〈負けられない戦い(笑)がここにある!〉

更新をお待ちください。

感想等もお待ちしています。

そしてこれが活動報告のリンクです。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=250288&uid=327174


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負けられない戦い(笑)がここにある!

勇とキャロルはお互いに相手が想定外の力を持ち出した事に驚きを隠せなかった。しかし彼等は賭け事をする事にした。

そう…………お互いの誇りを賭けて両者は全力で戦う。

本編へどうぞ!


「さてキャロル……お互いに譲れないモノ(夜の主導権)をかけて戦うよ!でも僕が負けるイメージはないから泣くのはキャロルだけどね!」

 

「ほざけ!勇の無様な姿を拝むのが最近の楽しみなんだ!絶対にオレは負けないぞ!」

 

僕達の戦う動機が本当にしょうもないけど、キャロルとのリターンマッチ自体は楽しみだ。お互いにあの時と全く違う装備をしてる。

 

「何だか二人共良い顔をしてるよね?」

 

〈しかし皮肉な物だな。勇は自分以外の力を使い、キャロルは勇の力と対照的な力をメインに使用するとはな。〉

 

「じゃあ私が開戦の合図にこのコインを投げるよ!落ちたら開始だから!」

 

凛祢はそう言うとコインを投げる。そして落下すると同時に二人共動き出した!

 

ブラッドのメイン技は確か、

〈猛光巨蛇ゼノベイドスネーカー〉

胸部装甲の内部にある特殊変換炉でコブラロストフルボトルの成分を使って生成する光エネルギー体。確かビルドの映画でも使っていた……と思うけど記憶が怪しくて確信が持てない。

上に騎乗する事が可能で連係してクローズビルドに猛攻を出して筈だ。後は〈ハザードフィニッシュ〉と、

〈グレートドラゴニックフィニッシュ〉だったと思うけど正直覚えてないからなぁ。というか多分エネルギーを攻撃の時に乗せてた奴だと思う。

 

「だから接近戦に持ち込むよ!」

 

「甘いな勇!オレは既にそのブラッドと戦って勝利している!お前の動きは読めているぞ!」

 

そう返すキャロルに対して僕の攻撃は悉く当たらない。やっぱり七海さんとの共闘があったとはいえ、ブラッドを倒したのはキャロルなんだ。そう簡単には倒せないよね……普通なら。

 

「とはいえ……恐ろしい速さで振られる拳や蹴りを、躱したりいなし続けるのは得策ではないのでな!なので既に仕込みは終わらせた!沈め勇よ!」

 

「なっ!?これはまさか〈サタン〉の羽か!〈ナヘマー〉で僕の攻撃を捌いていた時に少しずつ仕込みをしてたのか!」

 

「正解だ!行け魔王よ!」

 

攻撃の際に散らした羽が僕を襲うビームを放ってくる。そしてその光で隠れる様に小さな紙が舞っている事を、僕は気付いてしまった。

 

「流石に未来を決定させる訳にはいかないよキャロル!ちょっと速いけど切り札だ!〈グレートクローズフィニッシュ!〉」

 

僕はキャロルまでの直線距離にレールを展開した。そしてその空間の障害物を強制的にずらして助走を得る。後は得た推進力を使った蹴りでキャロルを叩きのめす!

 

「やはり未来記載までの時間は稼げないか!だがこれで勇の攻撃ルートも確定したぞ!羽よ……風の様に舞え!」

 

キャロルが叫ぶとレールエリアを包む様に羽がビームの竜巻を発生させた。そしてその内側ではサタンのビームが反射し続けて敵味方関係なくエネルギーが行き交っていた。

 

「くそ!キャロルを拘束して一撃で終わらせる筈がこのままじゃあ!」

 

「仲良く相討ちといこうではないか!さあ二人揃って自爆だぁ!」

 

蹴りがキャロルに届くまでの時間でお互いに随分体を撃ち抜かれた。その為に本来よりも推進力や動きの精密さを欠いてしまい、僕の想像よりも少ないダメージしか与えられなかった。

 

フハハハハハ!どうしたブラッドォ!お前の力はその程度か!

 

キャロルはナヘマーを左手に、そしてダイン=スレイフを右手に持ち、二刀流で斬りかかってきた。

 

「ここで魔剣と魔王の併用か!それはリーチの差が出てくるね……あまり嬉しくはないよキャロル!」

 

「ねぇダ・カーポ……この戦いはどっちに転ぶかな?」

 

〈手数やリーチならキャロルが圧倒的に有利だろうな。しかし勇の一撃が直撃ならば致命傷は免れまい。先程は集中力を欠いた一撃だったが故にキャロルは耐えきっただけだ。だが次に攻撃が当たった時には、恐らく耐えられないだろうな。〉

 

「結局四対六って事だね。なら予想外の一撃を加えた方が勝利するね。」

 

凛祢達の見立て通り今は少しキャロルが有利かな?だけどそれは直ぐにひっくり返せるアドバンテージでもある。

 

「キャロル!降参するなら今の内だよ!次はないからね!」

 

「それは此方のセリフだそ!現に有利なのはオレだからな!」

 

この軽口の間にキャロルは羽と紙片の展開を、僕はエネルギーの充填を完了させた。そしてお互いに向かい一気に距離を詰めた!

 

「ゼネベイトスネーカー!」

 

「ナヘマーよ!〈終焉の剣〉だ!」

 

僕は蛇状のエネルギーのゼネベイトスネーカーを二体顕現させて騎乗し、キャロルへと突撃をした。しかしキャロルは〈サタン〉じゃなくて〈ナヘマー〉を振ってきた。

 

「!?まさかここでナヘマーか!さっきの貯めは完全にブラフだったなんてね!」

 

「チィ!やはりあの蛇は凶悪か!一体仕留め損ねた!」

 

僕の騎乗していたゼネベイトスネーカーは確かに今の一撃で撃破されたけど、もう一体の方に直ぐに乗り換えて距離を詰めた。もう少し距離を詰めて〈ハザードフィニッシュ〉をキャロルに叩き込んだら僕の勝ちだ!カマエルの再生力でも直ぐには立ち上がれない体内への直接攻撃だからね。

 

「やはり決め手は〈ハザードフィニッシュ〉か!読み通りだぞ勇!」

 

「!?これは……誘導されたのか!?」

 

僕がキャロルに攻撃を叩き込む前に〈サタン〉の羽が僕達を包んだ。それにより視界を奪われた僕は一瞬だけ動揺してしまった。

 

「だけどキャロルとの距離はわかっている!このまま叩き込む!」

 

確かに動揺はした。だけどそれは一瞬の事で、直ぐにキャロルへの攻撃を再開した。ナヘマーなら小回りはきかない。接近すれば打ち勝てる!

 

「今だぁ!」

 

キャロルの声がしたかと思うとサタンの羽が乱雑な軌道でビームを放ってきた。

 

「不味い!これじゃあ軌道が読めない!」

 

再度動揺した僕はキャロルの剣が小さくなっていた事に気付けなかった。

 

これで終わりだぁ!

 

乱発されるビームの直撃をくらいながらもキャロルは〈ダイン=スレイフ〉を握り斬りかかってきた。

 

「ここで〈ダイン=スレイフ〉!?これじゃあ小回りが!」

 

僕はキャロルの振り下ろした剣を防ぐ事ができずにバッサリと斬られた。

 

うわあああああ!

 

決まったぞ!これでオレの勝ちだぁ!

 

キャロルが誇らしげにダイン=スレイフを掲げた。確かに今の僕は致命傷を受けた。だけど……その油断がキャロルの敗因だ!

 

「まだ……終わって……ない……よ。キャロル

 

僕は最後の力を振り絞り再度〈グレートドラゴンフィニッシュ〉の準備を始め、油断したキャロルは発動までを許してしまった。

 

今のを受けてまだ動けるのか勇!?サタンの力も込めたんだぞ!!

 

僕が動ける事が予想外だったキャロルは致命的な隙があった。そして今回は僕の体の痛み以外は障害はない!この一撃で終わりだ!

 

「くそ!ザドキエル!ラファエル!ガヴリエル!」

 

「キャロル!慌てて防御に秀でた天使を出現させたみたいだけどもう遅いよ!」

 

この一撃はキャロルが展開した防御を突き破りキャロルへと叩き込まれた。

 

「くそぉ!だが!これで距離を稼げるぞ!もう一度ナヘマーで…「そうはさせないよキャロル!」なんだと!」

 

本来ならキャロルは吹きとばされる筈だった。ブラッドの一撃ならその威力だけで十分に距離はとれただろう。だけどキャロルの体には小さくも触手がまとわりついていた。そしてその触手がキャロルを飛ばさせずに引き寄せた。

 

「これは!推進力を強制的に止めたのか!?そんな事をすれば体が!」

 

「さあキャロル!逃げ場のない衝撃を堪能しなよ!」

 

完全に行き場を失ったエネルギーはキャロルの体へと叩き込まれた。もともとが体内に直接攻撃を叩き込む物だっただけに、今のキャロルの体はカマエルの再生が始まっていた。

 

「本人の意思に反して発動する〈カマエル〉。これはキャロルちゃんに致命傷を与えた証拠だよね?」

 

〈その様だな。最後の油断が明暗を分けたな。あそこでキャロルがナヘマーやサタンで追撃をしていればこの一撃を受ける事はなかっただろう。しかし現に油断して手痛い一撃をもらった。そしてそれが勝負を決めたな。〉

 

ギャラリーの二人も同じ見立てをしていた。

 

「約束を忘れないでよねキャロル。今回は僕の勝ちだから今夜は泣いても止めないから。」

 

うぅ……もう少しだったのにぃ……

 

キャロルの顔を見ると今にも泣き出しそうな顔をしていた。

 

「そんなに僕を征服したかったんだねキャロル……」

 

こうして僕達の負けない戦い(笑)は終わった。そして今夜は絶対に許してあげないからねキャロル?




今回の勝敗は勇君の逆転勝ちでした。

キャロルが油断しなければあのまま勝っていた事でしょう。

次回〈聖遺物強化改修計画〉

更に明日には番外編も投稿します。

本編の更新とあわせてお楽しみください。


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聖遺物強化改修

この作品では愚者の石は響の為にしか使われません。しかし後に賢者の石の対抗手段を別のパートで確保します。

それでは本編へどうぞ


~~八月某日~~

 

「私達のギア改修ですか?」

 

響の?声を聞いた際の、フィーネの怒声が司令室に響いた。

 

「当たり前だ!貴様等全員勇とよろしくしたではないか!その状態で戦闘をすればギアが耐えられんわ!」

 

「オレの予想以上の計測数値だ。故にギアの方が耐えれんのは当然の事だ。」

 

「じゃあキャロルさんは何か対策方法を見つけているのね。」

 

「ああ。その為に勇は今、2043年11月のフロンティアに〈十二の弾〉で向かっている。響のガングニールの欠片を回収する為にな。」

 

「過去に……ですか?でもなんで響のガングニールなんですか?」

 

「響だけアームドギアが無いからな。融合症例の末期の欠片が必要になった。それで勇が今回収に向かってる。」

 

「なるほどな。当時の私達が探しても見つからなかったのはその為か。今になって納得したぞキャロル。」

 

「と、いうわけだ。未来以外はアームドギアを、未来は展開した鏡を研究棟に置いていけ。」

 

そう言われて五人はアームドギアを、未来は鏡を置いて退室した。そろそろ勇が戻って来るな。

 

「お待たせ。無事に体から零れたガングニールは回収できたよ。キャロルの方も用意は終わったみたいだね。後は……フィーネさん待ちかな?」

 

「戻ったぞキャロル。聖杯・杖・剣・硬貨の聖遺物だったな。無事にアビスから回収して来たぞ。」

 

「ネフシュタンとデュランダルも準備は終わったからね。こっちは始めるから、ギアの方をキャロルがお願いね。完成したらラジエルで複製するための情報を読みとってハニエルで対象の構造を上書きすればストックは作れるね。」

 

「では私はガリィの所に行くぞ。薬の開発が捗るのでな。」

 

そう言ってフィーネはガリィの所に向かった。そもそも今のオレ達が取り組んでいる事はそれぞれがこうだ。

 

・オレがギアに〈霊結晶〉を組み込む。ファウストローブと同じ原理なのでオレが適任だ。

 

・勇がデュランダルとネフシュタンを纏い、そこから勇の霊力を直接注ぎ込んで強化。勇以外では〈霊結晶〉の行程が必要になるからな。

 

・フィーネが液状に濃縮した勇の霊力を〈薬〉に調合。嘗てガリィの作った試作品と掛け合わせて、より高純度な〈薬〉に昇華して、更に霊力還元術式を施す。これで勇と〈愛しあう〉時に手間が減り、更に至福の快楽に変わるのだからな。

 

「さて、始めるか。まずは響の欠片だな。〈霊結晶〉はガヴリエルだから藍の結晶と錬成して………コレで充分か。後は響に取り込ませれば体の中で溶け合う筈だな。」

 

次は翼のギアだな。

 

「確かサンダルフォンなら紫の〈霊結晶〉だったな。ここからはアームドギアに力を注ぎ込んで持ち主に返すだけだからな。収納した次の使用時には強化が終わる筈だ。」

 

作業中に灰色の〈霊結晶〉が勇の作業場所に飛んで行った。どうやら持ち主の触媒に惹かれ合う性質があるようだな。面白い現象だ。

 

「しかし残る〈霊結晶〉は青・黄・緑か。一体誰が候補となるのか。」

 

すると緑の〈霊結晶〉が輝き出してオレを取り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはどこだ?

 

〈うう……なんであたしまでやらなきゃいけないのよ。琴里達は人使いが荒いわ。〉

 

アイツの顔は見覚えがあるな。確か勇の話ではハニエルの前任者だったはずだ。

 

「お前はハニエルの前任者の〈鏡野 七罪〉だな。何故オレを呼んだ?いや、今はそれよりも礼を言うのが先だったな。ありがとう。あの時は助かった。」

 

〈私だってあの時もすぐに帰るのは本意じゃあなかったわよ。貴女は既に全ての天使を満足に使えるんだから大丈夫だと思ってた。だけどあの時は見過ごせなかったし、折紙は新しい力を託せたしね。でも助かったなら何よりで良かったわ。〉

 

「当たり前だ。勇に並び立つ為の力だぞ?努力を怠る訳がないだろう?だが、それでもあの力を託された事は素直に嬉しく思うな。」

 

〈ええ。そんな貴女に伝言をお願いしたいのよ。どうやら今代の候補者達が運命の分岐点に立たされていながら、彼と接触できていないから。〉

 

なに?継承候補者に危機か。だからオレにメッセージを。

 

〈流石に貴女ならすぐわかるのね。私と違って。〉

 

「まあな。で、どのような伝言なのだ?」

 

〈「貴女達の未来を変える選択肢がある。この力を使えば貴女達の助けに必ずなる。」こう伝えてくれないかしら?私みたいな根暗からの頼みだけど。〉

 

「別にお前が悪い訳ではないのだろう?では気にする理由も、必要もないな。故に必ず伝えよう。」

 

〈貴女も優しいのね。「士道」と同じように。〉

 

「確かお前達の世界の勇のような男だな。話には聞いているのでオレも是非礼がしたいものだ。お前のおかげで勇は覚悟を決めてくれたからな。」

 

〈ああそれと、その人物が接触する数ある機会の、しかるべきタイミングで「霊結晶」がその人物に融合を果たすから、貴女に迷惑をかけないわ。今回は偶々依り代が確保できたからメッセージを伝えられただけだから。〉

 

なるほどな。確かに今回の接触はイレギュラーだったが、かえって都合が良かった訳か。

 

〈それと残る二つは、既に継承者の選定はすんでいて、後はタイミングをみて私と同じように継承されるわ。ごめんなさい。私が伝言役で。後の二人じゃあダメって琴里にうるさく言われたから。〉

 

「なるほどな。ザドキエルとミカエルの前任者は確かに伝言役には向かんな。すまないな。お前に手間をかけた。」

 

〈なんで私が感謝されるのよ。迷惑をかけているのに。〉

 

「実際に助かっているのさ。」

 

そのやり取りをもってオレの意識は現実に戻された。

 

 

あと二つの〈霊結晶〉か。一体継承者は誰なんだろうな。




聖遺物の強化過程で不穏な事をしている人物もいましたが、まあそれは後に活躍できる事態に至ります。そして彼女達も本格的に合流します。

次回〈師弟再会!〉

更新をお待ちください。

感想等もお待ちしています。


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師弟再会 !

この話で凛祢さんとダ・カーポさんも戦力として合流します。しかし彼女達の戦闘は今はほとんどありません。それほど手の回らない事態でのみ前線に出て来ます。

本編へどうぞ。


2044年 10月の司令室

 

キャロルやフィーネさんの協力によってギアの強化及び改修が行われ、姉さん達の増加した霊力量にギアが耐えられるようになった。

 

「やったね皆!これで勇君の力になれるし、キャロルちゃんを倒せるかも!」

 

「ほう?勇の霊力を取り込んですっかりその気か。ならば立場の再教育が必要らしいな。ミカエル〈閉〉!ガヴリエル〈輪舞曲〉!ふん!口程にも無いな。」

 

一人頭の残念な幼馴染みがいた。全員本心では打倒キャロルを掲げているので今更な気がしたが、きっちり響は無力化されて吹き飛ばされた。そして最終的にはダヴルダヴラで吊るされて、

 

〈私は身の丈に合わない妄想を抱いて立場を忘れた愚か者です。申し訳ありませんでした。今後このような醜態は晒しません。〉

 

と書かれた紙が頭に貼られていた。この手際わずか二分の出来事だった。

 

「響………憐れだな。キャロルに逆らわなきゃそんな目に合わないのにな。」

 

装者では姉さんのみこの口調が許されている。やはり義理とはいえ姉だからなのだろう。

 

「ごめん皆……もう二人紹介しても良いかな?」

 

司令は不思議そうに顔をしかめて僕に問いかけて来た。

 

「どうした勇君?これで全員集合した筈だが?」

 

「そうなるだろうな勇。だが紹介せねば始まるまい……。早く済ませろよ?」

 

「キャロル君はその人物達の事を知っているのか?」

 

「その為には彼女達の事を説明するところから始まります。ごめん二人共!入って来て!」

 

僕の声を聞いてその人物が司令室に入って来た。

 

「え~っと私達がその人物です。そして皆さんとは初対面なんですが私達は皆さんの事を知っていました。なので何と言ったら良いかな?」

 

「どう言う意味だ?なんであたし達の事を知っている!」

 

姉さんがすかさず噛みついて来た。当然だけど登場を間違えたな凛祢……。

 

「彼女の名前は〈園神 凛祢〉です。僕とキャロルは東京での戦いの直後に正式に初夜を迎えたのはご存じの筈ですが、実はその直後に異世界に転移していました。そして戻って来た時にはこっちの時間は経過していませんでした。」

 

「勇君……どういう意味だ?君達が消えた報告等誰からも入っていないが?」

 

司令がすかさず意味の確認に入ったが、僕達も後から気づいたんだよね……。

 

「後からわかったんですが、僕達が前任者の精霊に呼ばれた帰りに異世界へと引き摺り込まれました。そして一時的ですが力の半分を彼女達に奪われました。」

 

「は?勇……冗談は止せよ。何が何だか説明は一からしろ!」

 

姉さんが代表して聞いて来たけど皆の反応は一緒だった。だからさっさと要約して説明しよう。

 

「僕達はその平行世界でもう一組の人物に出会いました。その人物は平行世界のキャロル・マールス・ディーンハイムとその恋人達……つまり極端な言い方をすれば平行世界の僕とキャロル達でした。」

 

「キャロルさん……達?」

 

未来が不思議そうにしていたが、僕も詳しくは七海さん達の事を語れる程のプロフィールを聞いた訳じゃあないからかいつまんでそのプロフィールを語った。

 

「なるほどね。そんな事があるなんてね……。だけどそれはあくまでも出会った協力者というだけでしょう?彼女達は一体?」

 

翼さんも不安気に聞いて来た。

 

「ここからが本題です。僕達と七海さん達はもう一人いたその世界の黒幕に襲撃を受けます。その実力は僕とキャロル、七海さんとキャロルさんの二組が時間差で挑んでも正面から倒される程の物でした。」

 

当然だけど皆反応が固まった。

 

「ねえ……聞き間違いかしら?貴方達が二組いて、時間差で各々が挑んだとしても勝てないような敵なんて……それにそんな敵がもう一人いるなんて!」

 

「マリアさんの想像通り事実です。そしてその黒幕の正体こそが彼女達です。ねえ凛祢……ダ・カーポさんにも出てもらえないかな?」

 

「あ~大丈夫だけど良いの?今の説明だとかなり勇君ヤバイ事言ってるよ?」

 

「それは今から説明するからまずはお願い!」

 

僕が頼むとダ・カーポさんも話に参加してくれた。

 

〈私がそのダ・カーポだ。嘗ての名前はフィーネ……そこにいる先史文明の巫女だ。〉

 

再び皆の空気が固まった。

 

『『『はああああ!!!!』』』

 

そして大音量で叫びが響いた。

 

「続け「待てよ!説明が先だ!」デスよね~。」

 

大人しく説明を続けよう。

 

「まず凛祢とダ・カーポさんが今回の黒幕で、その正体は平行世界のフィーネさんと〈救われたい〉と願う感情の集合体の凛祢だった。そして彼女達が存在する異世界へと僕達は呼ばれたんだ。」

 

「そして私達の最終的な目的は」

〈平行世界全てを幸せに包む事だ。〉

 

「その為に僕達はその世界へと誘われた。七海さんの世界からは装備を、僕は霊力を奪う為にね。」

 

「で、君達は彼女達を撃破した……そういう事なのか?だが、幸せに包む事に一体何の問題が?」

 

司令は結末を予想しつつも疑問を持っていた。恐らく二つの大きな疑問の一つの筈だ。

 

「その手段が問題でした。僕の〈ミカエル〉で世界を包み〈ガヴリエル〉で人々を洗脳に近い状態で管理する。残りの天使は動力源ですよ。確かに苦痛や困難の無い世界ですが、それは一方的且つ画一的な幸せです。そんな物が人間の幸せとか僕は苦痛でしかありません。」

 

「勇のお人好しは響に匹敵する程だ。勇は七海達が帰還した事を確認して空間を一時的にフォニックゲインで固定し、ダ・カーポの亡骸に凛祢の魂を注ぎ込んだ。それが彼女達だ。」

 

そして全ての説明を終えた時、凛祢からもう一つ質問が飛んで来た。

 

「ねえ勇君……因みにあのボトルはまだ使えるの?」

 

「ああ……セイヴァーの変身用ボトルね。もちろん使えるよ。」

 

「変身ですか!」

「勇さんの新しい姿が見たいデス!」

 

切調コンビの目の色が変わったので変身する事にした。

 

「因みにこの変身道具と、ダ・カーポさんの使っていた装備は現在は僕とキャロルの共同管理です。なので内密にお願いします。」

 

「うむ。わかった!では見せてくれるか?」

 

「わかりました!」

 

僕はビルドドライバーを装備して各々のフルボトルを振って準備した。

 

<〈精霊!〉・〈希望!〉ベストマッチ!>

 

<Are you ready?>

 

「救います!それが僕の覚悟で願いなんですから!」 

 

<繋がるココロ!デート・ア・ライブ!イェーイ!> 

 

そして僕の礼装は輝き出して、仮面ライダーセイヴァー〈スピリチュアルフォーム〉へと変身した。

 

「おおおおお!」

「勇さんがかっこ良いです!」

 

必愛コンビの目の輝きが変わった。

 

「勇君すごいねぇ。もう自力で変身までこぎ着けたなんてねぇ。」

 

〈それが勇だろう?そして私達が惚れた男だ。〉

 

「えぇ!?ダ・カーポもなの!?はぁ……これじゃあ恋敵が増えてるよ……」

 

あそこではなにかすごい会話をしていた気がしたけど僕自身も、それどころじゃあなかった。

 

「これが勇君達が平行世界へと導かれ、持ち帰ったアイテムと絆か……。緒川……俺たち彼等を守らないとな。」

 

「そうですね。僕達は勇君のお陰で確かな力を得ました。ですが同時にその力を導く事は僕達の役目ですよ司令。」

 

「だが、平行世界の私さえ……いや、その世界を滅ぼした私さえも救済するなぞ勇以上のお人好しはいないぞ。」

 

「えぇ。響さん以上のお人好してす。響さんは〈サバイバーズギルド〉でしたが、勇君の場合は……」

 

「平行世界とはいえ未来を知っていたが故……なのだろうな。」

 

司令達が話をしていたらキャロルが咳払いをして話を始めた……時だった。

 

「さて、ギアの返却をしたところで………ん?ガリィか?どうした?」

 

突然キャロルにガリィから連絡が入って来た。なんの用事だろう?

 

《あ~皆様にお伝えしま~す。〈サンジェルマン〉・〈カリオストロ〉・〈プレラーティ〉・〈セレナ・カデンツァヴナ・イヴ〉の四人がこの本部に来られました。旦那サマに会われたいとの事ですがいかがなさいますか?》

 

師匠達がここに来た?何が目的なんだろう?

 

「わかったよガリィ。そのまま司令室まで案内を頼める?多分そのメンバーで来た以上は〈結社〉絡みのはずだから。」

 

「サンジェルマン君達には俺達も恩があるからなぁ。どのような内容かは本部全体の問題と見て良いだろう。」

 

司令や僕の言葉を受けたガリィにはそのまま案内をたのんだ。

 

『了解で~す!二分後には司令室に到着しま~す。』

 

そう言ってガリィからの通信が切れた。

 

「勇君はこの流れをどう見ている?」

 

「師匠達の組織に大きな変化があったと思われます。それも穏やかなものではないかと。」

 

「確か奴らは今でも欧州を拠点にしてたな。ヴァイスハウプトと何かあったな?」

 

「シャトーの様子も聞いてきたな。もしや亡命か?」

 

僕・フィーネさん・キャロルの順番で見解を伝え、師匠達の到着を待った。

 

「待たせたわね。急な訪問の受け入れに感謝するわ。」

 

「久しぶりね勇。おやおや?報告通りハーレムがスゴいことになってるわねぇ。」

 

「とりあえずシャトーを返すワケだキャロル!」

 

「お久し振りですマリア姉さん。義兄さんとの進展はどうですか?」

 

師匠以外がとりあえず欲望から入ってきた。皆さん建前ってご存じですか?

 

「別にあーし達と勇の仲でしょう?そんなに気にしなくても良いんじゃない?」

 

「ナチュラルに心を読まないでもらっても良いですか?」

 

カリオストロ師匠の脱線の前にサンジェルマン師匠が話を始めた。

 

「話が脱線する前に本題に入るわ。私達は先日結社を抜けたわ。そして今の組織を動かしているのは、報告によるとエレン達らしいわね。」

 

「その〈エレン〉ってどんな人なんですか?」

 

未来が師匠に質問をした。

 

「そうね。嘗てクリスちゃんを利用していた主犯達の一人にして牙を隠し続けた実力者ね。」

 

「そうね。〈アイザック〉と〈エリオット〉は処分できたけど、彼女だけは逃げられてしまっていたし、更には仲間を集めてしまったわ。」

 

「その仲間の名前が〈アルテミシア〉と〈ジェシカ〉という奴等でエレンの考えに賛同している奴等というワケだ。」

 

「そして組織に残って私達に協力してくれている方々の情報では、私達の知らない機械を扱っているそうです。」

 

「確かその兵器の名前を〈リアライザ〉、そして自律兵器を〈バンダースナッチ〉と呼んでいたわね。」

 

「ふむ。〈エレン〉〈アルテミシア〉〈ジェシカ〉に兵器が〈リアライザ〉に〈バンダースナッチ〉か。穏やかな話ではないな。」

 

司令の真剣な言葉と雰囲気が部屋を包んだ。そこにオペレーターから報告が入ってきた。

 

「司令!大変です!」

 

「どうした藤堯ぁ!」

 

「国連より武力介入依頼です!場所ははバルベルテ共和国!敵は……コイツらは一体……?とにかくモニターに映します!」

 

そこには〈武装兵士の集団〉〈軍事兵器〉〈アルカ・ノイズ〉そして〈バンダースナッチ〉がおり、兵士達は〈リアライザ〉を 装備している者をそれなりの数がいることが確認できた。

 

 




さあ!過剰戦力が軍隊と衝突します。果たして魔術師はどう動くのでしょうか?

次回〈動き出した脅威〉

更新をお待ちください。

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動き出した脅威

恐ろしいまでの戦力が武力介入を決定します。

もはや敵側の方が哀れです。

本編へどうぞ


藤堯さんが映したモニターには、本来この世界に存在しない筈の兵器があった。

 

「あれは!リアライザか!バンダースナッチまで!あの人達は既に準備を終えたというのか!?」

 

僕の叫びが司令室の中で響いてしまった。

 

「勇………?一体何なの?さっきからその〈リアライザ〉と〈バンダースナッチ〉って?」

 

マリアさんは何とか平静を装って質問して来たけど、やはり不安があるようだった。

 

「まさか私達が報告した兵器がアレだというの!?あんなに簡単に量産できる物だというの?」

 

報告した師匠も驚きを隠せなかった。当然だと思う。師匠達は現物を知らない。かろうじて名前が伝えられたみたいだから。

 

「はい。兵士達が装備している異質な兵器こそが〈リアライザ〉です。そして報告の通り自律稼働している兵器が〈バンダースナッチ〉です。」

 

「だが解せねえなぁ。見たとこパワードスーツと大差無さそうだぞ?それに量産されてるたぁいえ、数もそこまでの脅威には見えねえな。せいぜい三下程度だろ?」

 

キャロルが警戒を促してくれた。

 

「その慢心は危険だなクリス。勇がここまで警戒するのだぞ?何か重要な秘密がある筈だ。」

 

「僕は以前エルを通じてキャロルに接触したことがありました。その時点ではガリィが迎撃に出てもアルカ・ノイズのデータをパクられたそうです。」

 

「確かに結社にアルカ・ノイズの情報が入って来たのは最近の話よ。でも急すぎじゃないかしら?報告から三ヶ月程度しか経っていないのよ?」

 

カリオストロ師匠も大げさと捉えていたけど、僕はアレがいかにヤバい兵器か知っていたから楽観視できなかった。

 

「嘗て十香さん達の世界で彼女達の力を狙って捕獲・研究を企んだ巨大企業〈DEMインダストリー〉。その主力兵器の〈リアライザ〉は汎用性が高く、非力な人でもリスクと適性次第では、人類最強を名乗れる程の性能がありました。見た目こそシンフォギアに似ていましたが、当然性能はピンキリです。それでも十香さん達が捕獲された前例すらあります。そして脳の演算処理機能を最大限に活用することで艦隊ですら非常識な動きや威力をすることもできます。」

 

「じゃあ折紙さんもその〈DEM〉って人達と戦ったの?」

 

未来の疑問は当然のものだった。

 

「まあね。でも折紙さんだけ、嘗ては自衛隊の一員として十香さん達と戦ったんだ。それこそ〈リアライザ〉を用いてね。そして折紙さんは間違いなく部隊のエースを務めていた人だよ。」

 

「ということはオレ達と接触した前任者達も例外無く戦ったということか。」

 

「キャロルの言う通り、最後は総力戦だったね。全員がそれぞれの目的と守りたいモノの為に戦ったんだ。」

 

「そしてそんな連中が〈結社〉と手を組んだワケか。あの局長のことだから都合の良い駒を手に入れたとしか考えていないワケか。」

 

確かにアダムなら都合の良い駒として手を組んだ可能性は高い。だけど彼女達は馬鹿じゃないからね。多分目的が変わっていないなら僕達が標的の筈だ。

 

「彼女達はそんな組織の最強の〈リアライザ〉の使い手達です。そしてその兵器の使用者をあの世界では〈魔術師〉と呼んでいました。その名前の通り彼女達の操る範囲の空間は彼女達の意のままです。その範囲も〈テリトリー〉と呼称されていました。」

 

「〈テリトリー〉……縄張りか。確かに無策で行けばシンフォギアさえも返り討ちにされかねないな。奴等の基本装備は判明しているか?」

 

フィーネさんも僕の雰囲気を察してくれた。

 

「彼女達の目的が変わっていないなら、標的は僕達天使を宿した人物の霊力の筈です。ワイヤリングスーツからの武装は、〈レイザーブレイド〉〈対超常用ライフル〉〈魔力砲撃〉そして高火力の〈ミサイル〉があった筈です。どこまで再現されてるかはわかりませんが。更にこれは空中に浮かぶ艦隊にも装備され、神獣鏡程ではありませんが精度の高いステルス機能や、艦隊版の〈テリトリー〉生成機械がある程でした。」

 

「なるほど。確かに結社と協力が得られればかなりの脅威となる筈よ。それこそ勇とキャロルを同時に相手どる程のレベルだと認識して良いわ。」

 

師匠……ありがとうございます。悲しくなりますがこれ以上になくわかりやすい説明です。

 

「勇さんと」

「キャロルさんが」

 

「「同時に敵となるほどの脅威(デス)!?」」

 

司令もものの例えだとわかってはいただろうが、真剣な表情で決断を下してきた。

 

「なるほどな。ならば俺達はそれを踏まえた編成をせねばならんな。キャロル君・了子君・勇君は案があるか?」

 

確かに僕達に振られる気はしたけど、ここにはもっと頼りになる人がいるからね。僕の方は師匠に頼もうかな。

 

「構わないわ勇。貴方の案を出してみなさい。必要があれば私が修正や補足をするわ。」

 

ある程度はお見通しか。なら期待に応えますか。そう考えているとフィーネさんが第一案を出してきた。

 

「最も確実な案は勇とキャロルが暴れることだ。これ以上の方法はあるまい?」

 

確かに確実性を取るなら間違いないな。

 

「だが連中は奇襲や搦め手も使うだろうな。ならば他に動かせる戦力は必要だな。実働部隊の他にも隠密部隊が必要になるだろう。」

 

流石キャロルだ。だけど編成の難易度が上がるな。ならこうするしかないか。

 

「実働部隊に僕・姉さん・響・切歌ちゃん・ミカちゃん・ガリィかな。

隠密部隊は翼さん・調ちゃん・ファラさん・オペレーターのお二人・レイアさんとプレラーティ師匠にお願いできますか?」

 

「あら勇は大分戦力を投入したわね。根拠はあるのかしら?」

 

カリオストロ師匠が尋ねた通りかなりの戦力を投入することになると思う。でも可能性が否定できないからね。

 

「まず実働部隊の方は比較的単純ですが、制圧能力と奇襲対策です。姉さんやミカちゃん・響は搦め手を考慮しないならこれで良いんですが、敵の数が未知数である以上はそれを対応できるメンバーが欲しいです。更に響ならガヴリエルが展開できます。切歌ちゃんにスピーカーをばら蒔かせれば、〈独唱〉で敵戦力を無効化できる可能性があります。向こうがノイズキャンセルを使用しているなら効かない可能性も高いですが、その場合は〈輪舞曲〉での制圧に切り替えましょう。ガリィはそれこそ奇襲する側のタイプですから、必ず貢献してくれます。」

 

「へぇ!流石義兄さんです!やはり先生の教えを忘れずに研鑽されているのですね!妹弟子としても尊敬します!」

 

「ありがとうございますセレナさん。次に隠密部隊ですが、本来なら緒川さんにも参加して欲しいところです。しかしアルカ・ノイズやバンダースナッチを考慮するとリスクの方が大きいと感じました。なのでここは翼さん・調ちゃん・ファラさんとレイアさん。ナビゲーターにプレラーティ師匠と連絡役のお二方のお願いがしたいです。オペレーターのお二人は常にレイアさんが護衛して本部への連絡や科学面からの警戒をお願いします。残る翼さん・調ちゃんの案内を師匠にしていただき、ファラさんに殿をお願いします。このメンバーには一人一つ以上テレポートジェムの携帯をお願いします。」

 

「わかったわ勇。些か過剰戦力感は否めないけど、未知数への警戒には十分とみていいわ。その為には陽動組の働きがとても重要よ。」

 

「それは大丈夫です。僕が責任をもって注意を引きます。できれば過剰ではないことを願いたいですが皆さんよろしくお願いします。」

 

「よぉし聞いたな皆ァ!実働部隊は勇君・響君・クリス君・切歌君・ミカ君・ガリィ君だ。期待しているぞ!」

 

こっちは心配していない。だけど不安なのは裏方だ。この未知数は情報戦だからね。必ずここで化けの皮をはがさないと!

 

「そして隠密組の潜入班は翼・調君・ファラ君だ。そして翼達からの情報をいち早く俺達に伝える為に藤堯・友里も頼んだそ。レイア君が護衛してくれるならば大分安心だろうからな!」

 

こうして僕達のバルベルテ地獄変の介入メンバーが決まった。この心配が杞憂だと良いんだけと………




終わったな……バルベルテの軍隊さん達……

次回〈バルベルテ地獄変〉

更新をお待ちください。


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バルベルテ地獄変

振り分けられた戦力……エグい……

本編へどうぞ!


師匠達の合流の翌日、準備ができた僕達はバルベルテに向かった。原作が八月終わりだったのに対して今が十月なのは、明らかに〈リアライザ〉関連の準備だと思う。アルカ・ノイズだけなら原作通りの時系列で行われた筈だから。

 

「こちら勇です。現着しました。司令室の方はどのような報告が入っていますか?」

 

〈こちら司令室です。響ちゃん現着!まもなくガリィさんとミカさんも活動を始めます。〉

 

《こちら切歌デス!言われた通りにスピーカーをセットしたデス。いつでも起動できるデス!》

 

《こちら響。準備は終わりました。いつでも合図をください。》

 

《こちらガリィ。対象からアルカ・ノイズの所持を確認しました。いかがなさいますか?》

 

《こちらミカダソ!合図が欲しいゾ!》

 

「司令。国連軍の上陸までの時間目安はわかりますか?」

 

〈二十五分後だそうだ。それまでに無力化できるか?〉

 

バンダースナッチや魔術師次第か。さてどうだか……。

 

「わかりました。響!いくぞカヴリエル!〈独唱〉だ!」

 

《了解勇君!ガヴリエル!〈独唱〉!》

 

響と僕のガヴリエルは、切歌ちゃんにばら蒔かせれせたスピーカーによって敵兵士に多大な混乱を引き起こした。

 

〈敵指揮系統の最前線混乱を確認!一般兵士の無力化に成功しました!しかしアルカ・ノイズ及びバンダースナッチが活動を開始します!〉

 

〈並びに敵後方より増援も検知!空母出現しました!更に魔術師の活動も確認されました!〉

 

オペレーターのお二人から連絡が入った。もう第二波の準備ができていたか。これは三人の内の一人が前線ないしは近くで指揮をしているな。

 

「切歌ちゃんは敵の戦車や対空砲の破壊をお願い!ガリィ!後方からの敵の数は補足できる?」

 

《わかったデス!勇さん!あたしに任せるデス!》

 

《凡そ三千で内訳はバンダースナッチ百・魔術師五十・戦車五十・小型空母十・〈アルカ・ノイズ〉二千・兵士凡そ八百ですねぇ!数が多いですねぇ!》

 

「響!ミカちゃん!地上で切歌ちゃんと合流して暴れて!僕が空を抑えるから!」

 

《響了解!ガヴリエルで制圧するね!》

 

《ミカ了解だゾ!派手に暴れるゾ!》

 

響達に地上の戦力を任せて僕は上の戦力を叩く!

 

「行くぞラファエル!ザドキエル!よしのんも頼んだよ!」

 

〈あれあれ勇君?よしのんを呼び出すとか大戦?まあよしのんがバシッと片付けるよ!〉

 

「頼んだよよしのん!敵はあの小型空母だから損壊少なめで墜落させて欲しい。多分テリトリーの処理がされてると思うけど念の為ね?」

 

〈りょ~かい、りょ~かい。よしのんにおっ任せ~!〉

 

「ガヴリエル!〈輪舞曲〉!」

 

僕は四機目の小型空母の無力化に入ったけど数が多いな。よしのんに二機目の無力化をしてもらってるけどあと四機。流石に警戒されて散開されてるから時間がかかる!

 

《勇君!こっちはあと三百を切ったよ!》

 

「わかった!切歌ちゃんこっちのヘルプを頼む!敵が散開を始めた!速度と頭数が必要だ。お願い!」

 

《了解デェス!あたしが切り刻むデェス!》

 

「ガリィ!そっちの方からの増援は?」

 

《大丈夫ですねぇ旦那サマ。奴等は防衛ラインを下げて奥に行きました。前線を押し上げる頃合いかと。》

 

「わかった!司令室!追撃の為のヘリの手配をお願いします。釣りの可能性を考慮してこちらの無力化の後に到着をお願いします!」

 

〈こちら司令室了解です。三分後にマリアさん達が操縦するヘリが到着します。それまでに小型空母の無力化をお願いします。〉

 

《勇さ~ん!小型空母の無力化が終わったデス!》

 

「ありがとう切歌ちゃん!ヘリ到着の後に追撃をするよ!」

 

前線を押し上げた僕達の上空から大型空母が出現した。やはりリアライザのステルスか!

 

〈上空より大型空母出現!ヘリに向かってミサイルが投下されました!〉

 

やっぱり来たか!

 

「ザドキエル!〈凍鎧〉!」

 

僕はミサイルを凍結して機能停止させて、姉さんは迎撃した。ミカちゃんが響の代わりにミサイルの迎撃をしたからヘリ撃墜の為の第一波は凌いだ。

 

「姉さんとミカちゃんでヘリの護衛を頼む!切歌ちゃんと響は僕の援護をお願い!」

 

《こちら響了解!》

《こちらクリス了解だ!》

《こちら切歌了解デェス!》

《こちらミカ了解だゾ!》

 

「ガリィ!敵の奇襲や追撃は?」

 

《現状確認できません!おそらくアレで打ち止めかと。》

 

「了解!いくぞケルビエル!〈ラハットヘレブ〉だ!」

 

僕はケルビエルの全力で敵空母に大損害を与えた。

 

「響!切歌ちゃん!船内の敵の確保をお願い!」

 

《了解!》《了解デス!》

 

二人の活躍とガリィからの報告により初戦は切り抜けることができた。姉さんの報告によると、魔術師のテリトリーはシンフォギアの火力を下回ったらしく、響の近接戦でも無力化できたらしい。バンダースナッチも同様だそうだ。考えすぎだったか?

 

「だけど気がかりなのはあの三人がいなかったことか。」

 

《勇……やはりこちらはもぬけの殻だったわ。》

 

翼さん達の当たった施設はもぬけの殻だったが次の報告には驚きを隠せなかった。

 

《旦那様。こちらは彼らの動きからプラントが確認できました。更に旦那様や義姉上の馴染みの人物の弟が働いているようですわ。》

 

僕や姉さんに馴染みのある人物の弟?

 

「ファラ……もったいぶらずに教えてくれねぇか?一体そいつは誰だ?」

 

《では単刀直入に申し上げます。彼の名前は「ステファン」です。嘗て旦那様達がこの国で家族のように慕っていた「ソーニャ」の弟です。》

 

「嘘……だろ。ソーニャだなんて………。」

 

姉さんの動揺が僕達の思い出したくない記憶を思い出させた。




絶望ですね分かります。

次回〈プラント襲撃!〉

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プラント襲撃!

武力介入によって敵の拠点は絞られた。

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ファラさんよりもたらされた情報をもとに僕達はプラントへの襲撃を決行した。今回も人選を変えずに僕・響・姉さん・切歌ちゃん・ガリィ・ミカちゃんが陽動で、可能であれば資料の押収も担当する。

 

「といってもガリィに任せとけば資料の押収は簡単だよなぁ。」

 

「むぅ~。ガリィばかり旦那サマに誉められてズルいゾ!羨ましいゾ!」

 

「あ~ゴメンねミカ。あたしの性能的にみてもそういうの向いてるからぁ。」

 

「ガリィ……煽らない。それを言ったら昼の戦闘で一番敵の無力化に貢献してないのはガリィだからね。」

 

「う~ん役割が違うとはいえ旦那サマの言葉は刺さりますねぇ。これはガリィちゃんも反省します。」

 

「あのガリィが素直に黙りやがった!?どんだけ勇への忠誠心がたけぇんだよ。」

 

そんな無駄口を叩いていると僕達は、光に照らされて銃撃のお出迎えにあった。

 

「来たよ本命だ!ここで当たりだよ!」

 

「了解デェス!あたしと響さんで牽制に向かうデス!」

 

「頼んだよ二人共!ガリィも手筈通りにね!」

 

「おまかせください。ガリィが華麗に任務を果たしまぁす!」

 

ガリィが蜃気楼を作ることで僕達はそれぞれに散開した。すると魔術師とバンダースナッチも現れた。

 

「見つけたぞ精霊!お前は捕獲命令が下っている。大人しく我々に投降するが良い!」

 

「なるほどね。目的は僕達の霊力か。来なよ魔術師!相手は精霊だ。常識が通用すると思うなよ!」

 

僕は魔術師との戦闘を開始した。やはり武装はレイザーブレイドとテリトリー、それに銃火器か。

 

「これが噂のテリトリーか!確かに動きにくいね!だけどその程度の重力操作なら意味はないよ!」

 

「なっ!報告にない出力だ!ええいこうなったらお前は殺してでも!」

 

生け捕りを諦めて討伐に切り替えてきた。どうやら頭が回るタイプみたいだね。ならこの天使を使うか。

 

「メタトロン!〈光剣〉!〈日輪〉!」

 

「ちぃ!テリトリー展開!防御体勢!」

 

魔術師は防御性のテリトリーを展開してきたけど、散布した日輪のダメージにリアライザが破損した。

 

「なぜだ!直撃は避けた筈だ!」

 

「馬鹿正直にネタバレはしないよ!そしてお前は拘束させて貰う!」

 

僕は無力化した魔術師を拘束して、本部に回収を頼んだ。到着までにガヴリエルで情報を自白させたり、ザフキエルで記憶の読み取りをしたから、多分罠はないと思うけどとにかく情報が欲しかった。そして魔術師の名前はアンドリューとわかった。え~この人がこの世界のアンドリューかよ!

 

「さて、指揮官の魔術師も拘束・無力化できたし、そろそろ僕もプラントの襲撃に復帰を〈大変です勇君!翼さん達が敵首謀者と接触・交戦を始めました!現在は撤退戦をしていますが実力は未知数です!救援をお願いします!〉わかりました友里さん!位置情報をお願いします!僕が救援に向かいます!」

 

しまった!原作の流れ通り大統領のアジト襲撃は行われるのか!翼さん達の撤退までの時間を稼がないと!

 

 

 

 

 

 

 

 

~~翼side~~

 

私・月読・ファラが大統領の身を潜めたオペラハウスに潜入をしていると、大統領達が消滅していったわ。敵が生け贄と言っていたから何かしらの準備がある筈よね。

 

「翼さん。彼女達の視線の先に自動人形のような物が見えます。おそらくアレの起動の為ではないでしょうか?」

 

「月読の言う通り無関係とは言えないと思うけど、情報が少なすぎて断定はできないわ。」

 

私達が情報を得る為の監視を継続していると、端末が鳴り響いてしまった。一体何故急に!?

 

「おそらく敵がジャミングを解除したからかと。本部からの緊急連絡の時間から見ても間違いないわ。」

 

ファラの指摘通り情報の受信時刻は七分前となっており、発信者は藤堯さんとなっていたわ。更に直接の回線まで連絡が来てしまった!

 

《翼さん!やっと繋がりました!その付近から強力なエネルギーが観測されています!直ぐに撤退してください!》

 

「一足遅い上に敵に補足されました!私達はこれより交戦に入ります!なので救援の手筈をお願いします!並びに前線メンバー以外の撤退もお願いします!」

 

《わかりました!勇君が既にそちらに向かっていますが、増援にマリアさんと未来さんも向かって貰います!》

 

「お願いします!恐らく敵の目的は月読が先程送った画像の自動人形に関わりがあると思われます!」

 

《合流まであと二分粘ってください!そうすれば勇君が合流できます!》

 

二分か……相手の力量次第では厳しいわね。

 

「二人共聞いたわね。あと二分粘るわよ。藤堯さん達はレイアによって撤退できたらしいわ。あとは私達だけよ。」

 

「わかりました。必ず粘りましょう。」

 

「出来れば敵を無力化したいところでしたが無理そうですわね。ここは旦那様の合流まで撤退戦をしましょう。幸い私達の機動力ならば可能でしょうから。」

 

ファラの提案で私達は撤退戦をすることになったわ。

 

~~翼sideout~~




あ~実働部隊の戦力差がヤバイ。

次回〈撤退戦〉

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撤退戦

翼さんが敵に問いかけます。彼女達は無事に撤退出来るのか?

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「貴女達に聞くわ!一体その自動人形を使って何を企んでいると言うの!」

 

私の問いにリーダーのような雰囲気を出す女が答えて来たわ。

 

「初めましてですねシンフォギア装者。私の名前はエレン・M・メイザースと申します。」

 

「私の名前はアルテミシア・ベル・アシュクロフトよ。短い間だろうけどよろしくね。」

 

「私ノ名前はジェシカ・ベイリーヨ。貴女達の敵ネ。」

 

奴等は名乗り終えると、こちらにふざけた勧告をしてきた。

 

「私達の目的は二つです。一つはこの人形を彼に届けること。そして二つ目は貴女方の力の源である少年の、〈デウス〉つまり雪音 勇君の捕縛です。大人しく彼を渡せば貴女方の無事は保障しましょう。」

 

「そんなふざけた要求を受け入れるものか!」

 

「おやおや。身の程を知らない方々ですわね。」

 

「絶対に渡さない!」

 

絶対に奴等と相容れないことが今のやり取りでわかった。そして奴等もそれを感じたようだ。

 

「やはり決裂しましたか。では仕方ありません。貴女方にはこの兵器の実験体となっていただきます。」

 

奴等は蛇のような化け物を召喚してきた。

 

「ファラ!月読!ここで奴等を倒して退路を確保するぞ!」

 

「了解です翼さん。必ず成功させましょう。」

 

「この化け物は相当な代償を払っているわ。微かに錬金術の反応を確認できたもの。」

 

何!奴等は科学の使い手ではなかったのか!? 私の驚きを見た奴等はまるで想定内と言わんばかりに言葉を告げてきた。

 

「おや?私達のことをご存じのようですが、大して知っている訳ではなさそうですね。私達は確かに貴女達から見て異世界の力と技術を有しています。しかし我々は元々この世界の住人です。当然錬金術も扱えます。あまり過小評価しないことをおすすめしますよ?」

 

「やるわよ月読!ファラ!」

 

「わかりました!」

 

「かしこまりましたわ!」

 

〈蒼ノ一閃!〉

 

〈α式百輪廻!〉

 

〈トルネード・パイレ!〉

 

 

奴等のけしかけてきた蛇は、攻撃を受けても再生してきた。なんて化け物なの!ネフシュタンやネフェリムの類いとでも言うの!

 

「二人共。ここは私がサンダルフォンで活路を開く!二人はその後で私を回収して撤退をして欲しい!」

 

「危険です翼さん!あの化け物を倒せる保障がありません!」

 

「その案はあまり現実的ではありませんね。やはり合流を待ちましょう。」

 

やはり私の案は否決された。しかしこのままでは!

 

「ふむ。生け贄より抽出したエネルギーを無駄使いするわけにはいきませんね。私達は手土産を持って先に帰投するわ。ジェシカはデータの収集をしなさい。」

 

「わかったワ。任せてちょウだい!」

 

奴等の二人が撤退したが、化け物と一人は依然健在。どうしたものか。

 

「なら!ここからは僕が相手をします!ジェシカ!ここでお前を倒して拘束する!」

 

「アら?結社から逃げタ臆病者じゃなイ!私に勝てると思っテるの?」

 

私達の最も頼れる婚約者が到着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~勇side~~

 

僕が翼さん達に合流すると、既にエレンとアルテミシアは帰投しており、ジェシカが殿を務めたようだ。

 

「やっぱりお前だったんだなジェシカ!なんでこんなふざけたことを!」

 

「臆病者ニ語る必要ハ無いわ!私達ノ目的の為にも大人しク投降しなサい。悪いようにハしないわ!」

 

言ってくれる。だけどここで退けないと!

 

「旦那様!あの蛇は攻撃を無力化する能力があるようですわ!こちらからではジリ貧です!」

 

「大丈夫です!策ならあります!いくぞミカエル!〈閉〉だ!」

 

僕はミカエルの力であの蛇の機能を閉じた。やっぱりこの能力は通じるみたいだ。

 

「やはりゾディアックの力ヲ使えルのね!必ず捕えルわ!」

 

ジェシカの装備はスカーレット・リコリスか!しかも正気で活動限界が無いと仮定すると厄介だな。

 

「ちぃ!こうなったらやるしかないか。翼さん!貴女の力を借ります!いくぞ天羽々斬!サンダルフォン!」

 

展開するのは剣。ジェシカ相手に遠距離戦をしながら撤退するのは難しい。ならば確実に倒して撤退するしかないな。

 

「三人共!ここは僕が抑える!奴等を追い払ったら僕も帰投する!だから先に退却して情報を本部へ!」

 

「危険です勇さん!」

 

「大丈夫だよ調ちゃん!後からマリアさんと未来が来る!必ず奴等を退ける!」

 

「わかりましたわ旦那様。二人共ここは退きましょう。このままでは意味がありませんわ!」

 

そう言って三人は本部への転移をして行った。後はジェシカを退けるだけだ!

 

「アハハハハ!リコリスの火力に潰れてしまえ!」

 

ジェシカはミサイルを大量に発射して火力で押してきた。だったらこっちも!

 

〈千落ノ涙〉!

 

アームドギアの斬撃でミサイルを相殺してジェシカに接近してテリトリーが展開される前に剣の腹で吹き飛ばした。

 

「ガハァ!この威力ハ不味イ!」

 

地上に叩き落としたジェシカに影縫いで拘束して気絶させようとした時にさっきの蛇が再起動してきた!

 

「アハハハハ!間にあっタわ!そのまま喰われなさイ!」

 

しまった!ヨナルド・バストーリか!

 

「勇君を拐うなんて許さない!」

 

「死になさい!」

 

到着したマリアさんと未来が蛇を吹きとばして僕は間一髪喰われるのを免れた。

 

「ここまデね。次に会う時は逃がさないワ!」

 

ジェシカはそう言って転移して行った。ちぃ!逃がしたか!




ジェシカはかませ犬ポジション……憐れ。

次回〈望まぬ形での再会〉

更新をお待ちください。


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望まぬ形での再会

ファラの報告であたし達はステファンがここにいることを知り、ソーニャと再会できる可能性が出てきた。

 

「クリスちゃん………やっぱりこの国で勇君と……」

 

「ああ。パパとママを失い、勇と離れ離れになった忌々しい想い出のある国だ。オマケに勇は魔術師の奇襲であたし達と分断された。本当にイライラするぜ!」

 

あたし達はプラントを制圧して囚われた人々をある程度は解放することができた。だが指揮官には逃げられて、ステファンと出会うことになった。

 

「俺は見たんだ!車で工場長が逃げるのを!この先には俺達の村がある!奴等はそこを目指す筈だ!」

 

ソーニャと会っていないあたしはまだステファンに昔のことを語れない。あの時のあたしはソーニャに八つ当たりをしてしまったのだから。

 

「勇なら………なんて言うんだろうなぁ。」

 

そんなあたしにガリィが話かけてきた。

 

「良いかしらクリス?奴等の目的地がわかったわよ。」

 

「確かこの先の村だったな。目撃者からあたしも情報を聞いたところだ。」

 

「ええ。旦那サマの戻られる前に終わらせるわよ?」

 

あたし達はその言葉を最後に目的地に向かった。

 

 

 

~~移動中~~

 

あたし達が村に到着すると、アルカ・ノイズが住人を一ヶ所に集めていた。あの指揮官が逃亡する前の人質かよ!だけど敵の数が多い。ガリィ一人じゃ全員の救出はできねぇ!

 

(クリスさん大変デス。ステファン君がいないデス。)

 

(おい!ガリィは遠い方からの救出だぞ!なのになんで!)

 

「てめぇ等は余計なことをするんじゃねえぞ!この女の命がどうなっても良いのかぁ!」

 

クソッ!アイツ等に人質がいなければあたしのイチイバルで!

 

「クリスちゃん!ステファン君が!」

 

響に指摘された方を見ると、ステファンが指揮官にボールをぶつけて人質を助け出した。ああもうこうなったらさっさとやるしかねぇ!

 

「やるぞお前等!さっさと片付けて皆を助けるぞ!」

 

「了解!」

「やってやるデェス!」

 

ガリィと切歌が人質を解放して、あたしと響でアルカ・ノイズの殲滅と武器破壊を開始した。

 

「響!あたしが武器の破壊を請け負う!だからノイズを片付けろ!」

 

「わかった!任せるよクリスちゃん!」

 

響は戦場を全力で駆け抜けてノイズの殲滅を進めた。そしたら敵の指揮官が!

 

「こうなったらこの小僧だけでもォ!」

 

ステファンの足にアルカ・ノイズの攻撃が当たり、右足から解剖されていく様子が見えてしまった!

 

「ちくしょおぉ!」

 

あたしはやむを得ずステファンの足を撃ち抜いて命を繋いだ。だけどステファンはその代償に右足を失ってしまった。

 

「響!ガヴリエルだ!〈鎮魂歌〉なら痛みを抑えられる!キャロルかレイアが合流するまで持ちこたえさせろ!」

 

「わかったよクリスちゃん!ガヴリエル!〈鎮魂歌〉!」

 

鎮魂歌を聞いたステファンの表情は落ち着いたが、止血等の応急措置はガリィが施した。そしてあたしはキャロル達の到着を待つ間にソーニャと再会してしまった。

 

「クリス!なんで貴女がステファンを!なんで!」

 

「ソーニャ………すまない。」

 

あたし達は望まぬ再会をしてしまった。この場所に勇がいたらもう少し状況は変わっただろう。だけどいない人間にすがるのは只辛さから逃げることと変わらない。



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責任とこれから

オレはもしものことを考えて本部で待機をしていたが、まさにそんな事態が起こってしまった。

 

「翼さん交戦!敵は巨大な蛇の化け物と魔術師です!既に勇さんが現地に向かっています!」

 

「藤堯ァ!直ぐにマリア君と未来君を増援に向かわせろぉ!」

 

「司令!響ちゃん達より入電です。敵指揮官逃亡により追撃、更に村に立て籠る可能性と更なる逃亡手段の可能性だそうです!」

 

「友里ォ!直ぐに支援・追跡準備に入れェ!」

 

あわただしく司令室の状況が変化しているな。

 

「良いかしらキャロル。貴女はこの状況をどう見てるかしら?」

 

サンジェルマンの奴が珍しく話かけてきたな。さてでは質問に答えるか。

 

「陽動・リアライザの性能テストだな。少なくとも主戦力と言われた二人が戦闘をせずに移送に従事したことも違和感がある。必ずあの自動人形にカラクリがある筈だ。」

 

「そうね。エレンとアルテミシアが戦闘をしなかったことも気がかりね。まるでジェシカは捨て石と言わんばかりの動きね。局長にとってそれ程の意味があるのは間違いないわ。」

 

ヴァイスハウプトは、得体の知れない男だった。そして勇が警戒する二人も実力が未知数。

 

「確か勇が捕えた魔術師がいたな。ソイツの尋問はどうなる?」

 

「私達がこの場所で引き受けるわ。最も彼らは末端ないしは使い捨てでしょうけどね。」

 

そう話していると翼達が帰投してきた。

 

「やはり敵の目的はあの人形のようです。私達ではあの蛇が打倒できませんでした。申し訳ありませんキャロルさん。」

 

「気にするな。ファラからの報告も来ている。敵が未知数な以上は慎重さも重要だ。よく判断を誤らなかったな。」

 

すると今度は別の連絡が入ってきた。相手はガリィか!

 

《マスター!不味いです!民間人に負傷者が出ました!アルカ・ノイズの攻撃が足に当たり解剖が始まる前にクリスが足を撃ち抜きました!》

 

「その報告は本当かガリィ!だがこちらも敵が未知数な以上は直ぐに動けん!その場で応急措置を施せ!響とお前なら可能な筈だ!そして状況が変化して介入が可能になればオレが動く!それまで持たせろ!」

 

《了解です!現状維持に務めます!》

 

ガリィからの通信が切れる頃には勇の方も双方の撤退が完了していた。ならばオレが介入するぞ!

 

「司令室!今からオレが負傷者の治療に向かう!勇にも合流を促してくれ!勇も縁のある者の負傷だ!」

 

「こちら藤堯了解しました。勇さんにはそのまま村に転移して貰います!」

 

そうしてオレはクリスのもとに転移した。

 

 

 

~~勇side~~

 

「勇君大丈夫?連戦の筈だよ?」

 

未来の心配通り連戦と強敵に疲労が大分たまってきた。けど、ステファンやソーニャとの再会は僕の義務でもあるからね。

 

「流石に戦闘はキツい。だからステファンの治療も今は厳しいかな。」

 

「そっちはキャロルさんが行うそうよ。今はクリス達が待機しているわ。」

 

マリアさんの報告も助かるな。本来ならマリアさんに響達の治療を頼みたかったけどこっちに来てもらったんだ。なら僕は責任を果たさないとね。

 

「ありがとうございます。そろそろ僕は生きます。」

 

そうして僕は姉さん達のもとへ先に転移した。

 

「クリス!なんで貴女がステファンを!なんで!」

 

到着した僕が見たのは、右足を失ったステファン・落ち込む姉さん・見守る響達・そして到着したキャロルだった。

 

「すまない。待たせたな。急いでいるので早速だが始めるぞ。」

 

キャロルはステファンにザフキエルの〈四の弾〉を放って右足を復元した。

 

「嘘!ステファンの足が!でも私は許さないわよクリス!貴女がしたことを!」

 

完全にソーニャさんは怒っている。当然だけどその事を僕達は何も言えない。

 

「すみませんソーニャさん。凡そ十年振りの再会をこのような形でしてしまったことを深くお詫びします。姉さんの行為が貴女達の心に傷をつけたことは事実です。治療の出来る能力があったとはいえその事は本当に申し訳ありませんでした。」

 

「何よ今さら!私は貴女達を絶対に許さないわ!」

 

「ええ。この場所でいくら謝ってもそれは受け入れられないと思ってます。なので落ち着いた時に改めてお詫びをさせて貰えませんか?」

 

「勇………お前………」

 

「僕達だってこのような形での再会は望んでいませんでした。なので日本で改めて、こうありたかった再会をしましょう。」

 

するとステファンが意識を取り戻したようだ。

 

「姉さん……もう良い……よ。クリスさんのお陰で……俺達は命を……救われた。今は……それだけで……良いじゃない……か。」

 

「ありがとうステファン。日本に着いた時は必ず、お詫びをさせて欲しい。君の勇敢な行動には僕達も助けられたんだから。」

 

「私は貴女達姉弟を許す気になれないわ。だから今はステファンに免じてこの場では引き下がるわ。」

 

「ありがとうございます。ソーニャさん。改めて日本で謝らせてください。」

 

「すまない。ソーニャ………今のあたしはそれだけしか言えない。」

 

僕達は自分達の責任とこれからの動きを改めて考えることになった。



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彼の世界の魔術師

あの後、バルベルテを出国しようとした僕達が、ジェシカとアルテミシアの襲撃を受ける予知を見てしまった。

 

「予知……か。ラジエルは本当に肝心な時にやってくれる。」

 

さてこの予知をどうしたものか。一先ずは師匠達に相談をしようかな。

 

「むぅ……この国の出国時に襲撃か。あまり穏やかな話ではないな。」

 

「エレン達なら必ず襲撃に来るわ。それこそ慢心無しでね。そしてエレンはティキを局長に届ける為に前線にいなくても、最低でもジェシカが。最悪アルテミシアも出張るでしょうね。その予知は間違いなく回避しなければならないモノね。いくらか戦力を分けましょう。」

 

やはり師匠は偉大だ。必ず次の検討と最悪への備えがなされてるから頭が上がらない。

 

「しかし連中は霊力を狙っていたのよね?なら最悪勇以外も狙われる可能性は高いわよ?」

 

カリオストロ師匠の指摘は最もだった。デアラの世界では手に入りやすい精霊相手には見境がなかったあの人達だ。姉さん達の霊力に気付いたらターゲットが変わる可能性も充分にあるな。

 

「ならばこの国に残る陽動兼情報の運搬組と日本への直帰組の選定が必要だな。学生組は当然帰国だが、問題は陽動組だな。」

 

「そうだな。特に陽動組の帰国時こそが最も危険なワケだ。故に実力者である必要があるワケだ。」

 

プレラーティ師匠の言う通り原作ではマリアさんと翼さんは帰国時に(師匠達から)襲撃を受けた。同じことをエレンさん達も考えるだろうね。

 

「では陽動組は翼・マリア君・キャロル君に頼もうか?それであれば戦力も大丈夫だろう?」

 

「いいえ。それだけでは戦力不足だわ。私達自ら同行しましょう。カリオストロもプレラーティも構わないわね?」

 

師匠達自ら護衛か。だけどそうなったら………

 

「ならばミカとレイアも同行させよう。それであれば護衛としての戦力も充分だろう?」

 

「~っ!キャロル!?二人を置いて平気なの!?」

 

キャロルから意外な提案が出てきた。

 

「………キャロルがそこまで戦力を預けてくれるならいけるわね。やっぱりカリオストロは勇達と日本に向かってくれる?そのメンバーであればエレン達が分断してきても、貴女が対処出来るでしょう?私の信頼してる友だもの。」

 

「サンジェルマンにそう言われたら、あーしも了解するしかないわね。なら日本は任せて!必ず貴女の帰りを待っているわ。」

 

「ではこの国に残るのは翼・マリア君・キャロル君・ミカ君・レイア君そしてサンジェルマン君とプレラーティ君か。よろしく頼む。」

 

「ええ……風鳴司令。こちらこそよろしく頼むわ。」

 

司令と師匠が力強い握手をした。だけど原作と違ってバンダースナッチや魔術師もいる。油断はできない敵戦力だな。

 

 

~~翌日~~

 

僕達は敢えて予知通りに飛行機で帰国を目指した。そして予知で見た通りに襲撃を受けることとなった。

 

「やっぱり空路での帰国にしたんだね。でも〈シスター〉で予知されていた筈なのに、対策を取らないなんて杜撰だと思うよ?」

 

やっぱりあの予知はそっちが一枚噛んでたか!

 

「師匠!懸念通りです!僕達が殿となって皆の帰国の為の道を確保しましょう!」

 

「そうね。皆!手筈通りに行くわよ!」

 

そう言って僕が敢えて予知と外れて一時的に国に残り、残りのメンバーは飛行機に乗り込んだ。

 

「勇!必ず日本に戻って来いよ!」

 

「姉さんこそソーニャさん達との約束を守る為に無事にかえってよ!」

 

僕達はそうお互いに告げて飛行機は離陸態勢に入った。しかしバンダースナッチとアルカ・ノイズが襲撃してきた。

 

「ミカちゃん!レイアさん頼んだ!」

 

「お任せください旦那様。派手に守り通して見せましょう!」

 

「やっと暴れられるゾ!アタシの相手はそこのガラクタ共だゾ!」

 

二人に空路の敵を任せて僕達は向かいあった。

 

「改めて挨拶するわね〈ゼウス〉。そして〈ヘラ〉。私達が嘗てDEMに所属して始原の精霊の力を求めた者の〈魔術師〉よ。短い間だけどよろしくね?」

 

「あノ時の借りヲ返すワゼウス!私達を見くびらナいことね!」

 

どうやらこの二人が全力で来るらしい。しかし原作とは違う識別名か………僕達にかなり高い評価をしていることだけは良くわかるな!

 

「あんた達の識別名が御大層なモノなのはよくわかったよ!ギリシャの主神にその伴侶か!なら名前負けするわけにはいかないね!行くよキャロル!僕達の力を合わせるよ!」

 

「もちろんだ!奴等をぶっ飛ばすぞ!」

 

僕達は二人揃ってダヴルダヴラを装備した。

 

「嘘!勇もダヴルダヴラを纏えるの!?どれだけ強くなるのよ私達の運命の王子様は!」

 

「でもマリア……その方が素敵じゃないかしら?少なくとも私は好きよ?」

 

「ああ!もう!この剣はいつから乙女になったのよ!私のアドバンテージが減るじゃない!」

 

「戦う前に一つ良いかしらアルテミシア?貴女達は何故局長に与するのかしら?その先には破滅しか待ってないわよ?」

 

「臆病者ですが貴女方は仮にも嘗ての上司ですからね。その疑問にお答えしましょう。私達はあの世界では悲願を果たせなかった。そしてこの世界にはあの世界と同じ力を持つ者がいる。そしてあの世界の先の可能性も見えたわ。だから私達は試したいのよ。あの世界で叶わなかった目標と可能性をね。」

 

「えらく饒舌なワケだなアルテミシア。だがその油断が命取りなワケだ!」

 

プレラーティ師匠の氷の錬金術がこの戦いの狼煙になった。

 

「勇とキャロルでアルテミシアを!シンフォギア装者はアルカ・ノイズ達を!私達はジェシカを叩くわよプレラーティ!」

 

「了解!行くよキャロル!」

「では見せてやろう。オレと勇の絆を!」

 

「行くわよ翼!私達がこの戦いでアルテミシアの次に高い脅威との対峙よ!」

「そうねマリア。後輩達の退路を守り抜きましょう!」

 

「やるわよプレラーティ!ジェシカはあの時と違うわ!油断したら手痛い目に逢うわよ!」

「わかっているワケだサンジェルマン!アイツはここで倒すワケだ!」

 

「ふふっ、来なよ精霊。私達は完全や超常を討ち滅ぼす者よ!」

「エレンの為にモ負けられナいわ!」

 

未知数との本格的な戦いが始まった。



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錬金術師対魔術師

さて、アルテミシアさんはかなり強い筈だ。油断していたら死ぬのはらこちらだろうね。

 

「さて、お互いに譲れないモノの為に戦おうか。」

 

僕達は全力で彼女を倒すことにした。

 

「行くよキャロル!相手は超常と渡りあった人間だ!ここで落とすよ!」

 

「ならば全力で行こう!嘗てのオレが纏った全力をくれてやる!」

 

僕だけならば礼装を纏った方が強いと思う。だけどキャロルと並び立つなら条件は変わるね。

 

「まるで私達のリアライザみたいな装備だね。だけどそれなら私達の土俵でもあるよ!」

 

アルテミシアのテリトリーはジェシカよりも広く拘束範囲も広いだろう。そっちが不可視の結界使いならこっちは視界を覆う糸の結界で対抗しよう。

 

「挨拶代わりにオレの一撃をくれてやろう!」

 

キャロルは弦を操作して鋭利且つ極細い凶器を展開した。だけど彼女のテリトリーでは糸は逸れてしまった。

 

「私のテリトリーを過小評価しない方が良いよ?じゃないと死ぬからね!」

 

アルテミシアは高速移動を開始して置き玉にミサイルを選んだ。あの速度のミサイルはもはや追撃弾だね。

 

「あの速度で動かれたらこの糸も意味をなさない………か。ならキャロル!霊力を込めよう!只の錬金術なら分が悪いよ!」

 

「そのようだな!オレを〈ヘラ〉と呼称した以上温い認識はそちらとて命取りだぞ!」

 

僕達は糸にそれぞれの霊力を込めた。これでそう簡単には切られないし、弾かせない。

 

「やるわねゼウス。さっきまでの糸ならレイザーブレイドで対処できたけど、その糸は私が集中しないと斬れないか。そしてそれはヘラも同じ……ね。その糸が汎用性にも長ける以上は一番旗色が悪いのが私ね。ならジェシカが臆病者を下すまでは粘らせて貰おうかしら?」

 

僕達の糸が斬れないと理解したアルテミシアの行動は早かった。糸の結界を足場に三次元の動きで加速して斬りかかり、砲撃を放ってくる。そして肝心の糸の結界との接触時にはテリトリーで足を保護し、障壁が壊される前に再展開する。これを繰り返して正面から勝てない相手を翻弄しようとして来た。

 

「確かに一人なら貴女を捉えるのは難しいだろうね。だけど貴女の相手は僕達二人だ!」

 

僕は敢えて彼女のレイザーブレイドの攻撃を身に受けて、接触する一瞬の間に僕の体に深々と差し込ませた。

 

「嘘!私の攻撃を敢えて受けて私を絡めとったの!」

 

相変わらずこの戦法に頼りきりなのは情けないけど、一番慣れているのも事実だった。

 

「今だよキャロル!決め手は任せた!」

 

「ああ!とうに準備は終わっている!緑の獅子機の咆哮を受けるが良い!」

 

「ッ!このままじゃあの咆哮を受ける!何とか防御性のテリトリーを展開しないと!」

 

「おっと!なら僕がその護りを貫こう!」

 

僕も同じく緑の獅子機を作り出して、僕諸とも咆哮のコースに設定した。これでアルテミシアはどちらかの咆哮を回避ないしは防げない。

 

「ッ!防御性テリトリーを全方位に展開!こうなったら被害を最小限に抑える!」

 

アルテミシアは咆哮を受けて絡めとられた糸が切れた瞬間に回避を始めた。全エネルギー命中とは言わないけど、少なくとも半分の攻撃は命中した。

 

「はぁ、はぁ、これは活動限界が近いわね。私が一番に撤退するのは不味いけど、背に腹は変えられないわ。ゼウス、ヘラ、次までに勝負は預けるわ。」

 

そう言ってアルテミシアは転移して行った。だけど僕もかなりの傷を負ったな。帰国したら静養しよう。

 

 

~~サンジェルマンside~~

 

「さて、始めようかしらジェシカ。」

 

私とプレラーティで彼女を抑える、ないしは拘束する。その為の戦闘だ。

 

「こちらの準備は終わっているワケだ。」

 

「フン!臆病者の寄セ集めで私に勝てルかしら?」

 

ジェシカはテリトリーを展開しながら私達にミサイルを浴びせて来た。なるほど……これがアイザックとエリオットが研究していたリアライザね。

 

「サンジェルマン!確かに奴の装備は汎用性が高いワケだ!だがそれは特化したものではないというワケだ!一つ一つの攻撃は恐れるに足らないワケだ!」

 

流石プレラーティね。相手の技術への解析や対策は彼女の分野。故に私は彼女が信頼できる!

 

「プレラーティ!私がフォローに回るから貴女が決めなさい!一撃の火力は貴女が上よ!」

 

「了解したワケだ。では私の錬金術を見せてやろう。光栄に思うワケだジェシカ。」

 

「あまり私ヲ嘗めるんじゃないワ!後悔してモ遅くてよ!」

 

ジェシカのリコリスに搭載されてる兵器は単純なブレイドとミサイル、そしてあの特殊なテリトリーのみ。テリトリー自体はリアライザに搭載可能だから戦い方が解れば苦戦しないわね。

 

「テリトリーの発生には膨大な集中力を要するわ。その集中力が維持できなければ貴女の兵器は只のお荷物よ!」

 

私達は常にお互いのどちらかが攻撃を仕掛けてテリトリーを発生させ続けた。あの二人ならとにかくジェシカ程度なら時間の問題で倒せる。

 

「私を嘗めなイ方が良いワ!そんナ策お見通シよ!」

 

ジェシカは大量のミサイルを四方八方に打ち出して私達を迎撃してこようとしてきた。

 

「プレラーティ!合わせるわよ!」

 

「了解なワケだサンジェルマン!」

 

プレラーティが放った氷を私が砕いて打ち上げ花火の要領でミサイルの迎撃を図ったが、その隙にジェシカの接近を許してしまった!

 

「隙だらケよ!」

 

「しまったワケだ!」

 

プレラーティはジェシカのブレードを回避できずに斬られてしまった!

 

「プレラーティ!」

 

「私は良いから奴のミサイルに備えるワケだ!まだ防ぎきれてないワケだ!」

 

彼女のいう通り、私達は全ての攻撃を防げた訳ではなかった。そしてその攻撃を防ぐ為にまたしても隙を晒してしまった!

 

「やはり臆病者にハその選択ガお似合いヨ!」

 

その一瞬で彼女の接近を許してしまった。回避しながらの為に少しだけ距離を取れていたが、その距離は彼女のテリトリーの範囲内で私達は拘束されてしまった!

 

「油断したつもりはなかったわ。だけどこの様なのね。その兵器がいかに恐ろしいかよくわかったわよ!」

 

私も彼女同様に迎撃の際にスフィアを上空に置き弾として残しておいたわ。だから私の動きを止めれば!

 

「上空ヨり攻撃!?これハ不味いワ!」

 

ジェシカは直撃を避ける為に私達と距離をとった。そのお陰で私達は拘束から抜け出したけど、正直ファウスト・ローブがなければ状況を打開できないわね。私達にラフィスの輝きがあれば!

 

「ふふッ!手こずらされたけドこれで終ワりよ!」

 

ジェシカはミサイルとテリトリー、そしてブレードの三位一体の時間差攻撃で私達に止めを刺しに来たけど、その攻撃が私達に届くことはなかった。まさかの人物が助太刀してくれ、攻撃が防がれた為だ。

 

「なるほど。確かに火力のみであれば先程の奴よりも脅威だろうな。だが軌道は雑で本人の精神状態はあの様か。であれば対処もまた容易なことだ。」

 

ダヴルダヴラのファウストローブを纏ったキャロルが私達の救援に駆けつけた。

 

「お前は〈ヘラ〉!アルテミシアが相手ドっていた筈だ!」

 

「ん?ああ先程の魔術師なら撤退をしたぞ。勇の特攻に虚を突かれてな。そして貴様も同じ運命をくれてやろう!」

 

ダヴルダヴラの力は圧倒的で、ジェシカのミサイルはキャロルの結界に阻まれ、ブレードでは斬れず、テリトリーには捕まらない。キャロルの三次元の動きはジェシカの処理能力を上回るということなのね。

 

「そんナ!あり得なイわ!私のリコリスが!」

 

「やはり貴様は先程の奴よりも劣るか。であればこうしよう!」

 

キャロルは糸を織り合わせて二本の槍を形成していた。そしてジェシカ目掛けて投擲し、形成しなかった糸で軌道を操作してきた。

 

「こんナものテリトリーで!」

 

ジェシカは再度自分の周囲にテリトリーを展開したけど、その内側には既にキャロルの糸が存在し、テリトリーの内側からジェシカを拘束した。

 

「オレが抑えている間に決めるが良い!」

 

「助かったわキャロル!行くわよプレラーティ!」

 

「任せるワケだ!」

 

〈トリビアルミスチーフ!〉

〈ミリアドスフィア!〉

 

私達の攻撃はキャロルがジェシカを拘束していたので直撃させることができた。

 

「こノダメージは不味イわ!悔しイけど撤退さセて貰うワね!」

 

ジェシカはそう言って転移して行ってしまった。

 

「キャロル……貴女が来たということは……」

 

「ああ。もう一人の奴は既に撤退している。勇の捨て身の特攻で致命傷を受けたようでな。」

 

「ちょっと!何やってるのよ!貴女がいながらに捨て身って!」

 

ああもう!なんで私の弟子は心配事を増やすのかしら!これだから勇のことは目が離せないのよ!

 

「やれやれ。サンジェルマンの母親スイッチが入ったワケだ。これは長くなるワケだな。」

 

その後の私は勇のことを心配で仕方なかったわ。だけどその後でちゃんと説教をしないとね。

 

 



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継承される力

バルベルテでアルテミシア達を退け(機密資料はレイアさんが地味に回収していた)、バンダースナッチ達有象無象を撃破した。僕達は無事に彼女達を足止めして撤退に追い込んだけど、エレンとティキの存在が気がかりだな。

 

「旦那様。こちらがバルベルテ政府が秘匿していた機密資料となります。あの戦いの陽動で使った八の弾で作り出した分身が回収させました。」

 

「助かるよレイアさん。じゃあ僕達は転移で戻ろうか。連中の主力こそ割と直ぐに下せたけど、バンダースナッチやアルカ・ノイズの動きは明らかに時間稼ぎだった。もしかしたら帰国組の方も襲撃の可能性があるからね。」

 

「その可能性は高いわね。ただし勇の消耗を考慮して出国は一週間後よ。帰国組にはセレナもついているわ。必ず動きがあれば連絡が来る筈よ。」

 

師匠の命令で僕の静養の為に帰国は先送りにされた。う~ん……流石に過保護すぎませんかね?

 

「ならばわざわざ危険な戦法に頼ったお前自身を恨むワケだ。サンジェルマンの言葉は皆の総意だというワケだ。」

 

「わかりました。大人しく静養します。皆にはご心配をおかけしました。」

 

 

 

 

 

 

こうして僕の静養という名目でこの国に引き続き滞在することになった。そしてこの翌日に師匠は僕の寝ている部屋にキャロルと二人で入って来た。

 

「さて、今回わざわざこの国に残ったもう一つの理由なんだが、以前勇に渡された黄色の〈霊結晶〉に変化があった。そしてサンジェルマンの奴に反応している。勇はこの現象をどう解釈する?」

 

キャロルに以前渡した〈霊結晶〉……その一つの緑の〈霊結晶〉から七罪さんがキャロルに伝言をしてきた話は以前聞いたことがあった。そして今度は黄色……つまりミカエルの〈霊結晶〉が師匠と共鳴していることになる。

 

「キャロル………今から起こることを許して欲しい。多分キャロルはその行為に嫉妬しちゃうから。」

 

「………今晩だ。サンジェルマンとオレと勇で今晩〈愛しあう〉。それで手打ちにしてやる。」

 

………搾りとられることが決定かな?

 

「安心しろ。〈ガリィの薬〉はオレも常備している。お互いに〈楽しい時間〉にしようじゃあないか!」

 

キャロルの顔がなんだか嬉しそうだな………まあそれはそれでアリか。

 

「じゃあ勇……早速お願いできるかしら?」

 

「わかりました。師匠は〈霊結晶〉を持っていてください。その状態で僕達がキスをすれば恐らくは継承されるかと思います。」

 

そして僕と師匠がキスをすると、僕達三人を光が包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈ふむん。ようやくむくの力を継承する者が現れたか。主殿の覚醒から凡そ二年……流石のむくも待ちくたびれたぞ!〉

 

「お久しぶりです六喰さん。ですが当時から今まで期間が空いたことは流石に許して貰えませんか?僕の覚醒の方が予定より早かった筈です。本当なら凡そ一年と少し前の覚醒だったと思われますよ?」

 

〈ふむん。………まあそれは言うても仕方ないな。しかし今回は主殿の師にむくの力を継承する機会となったので、むくは主殿達を呼び寄せた。〉

 

「貴女が嘗てミカエルの力を使った前任者なのね。私が今代の継承候補だとして、その根拠を教えていただけないかしら?」

 

〈ふむん。力を継承する根拠……か。うぬ等は今の力に満足していない。だが強大な敵を打倒する為の力を少なからず求めている。そして力を手に入れる機会を得た。これでは不満か?〉

 

「そうね。勇を助けたいとは確かに思うけど、私は貴女にその覚悟をまだ示せてはいないわ。だから聞いて貰えないかしら?私が力を求め、何を成そうとしたかを。」

 

〈なるほどのう。むくからすればうぬは既に試練を乗り越えているが、うぬ自身の覚悟をむくに示すことで試練の変わりとしよう。〉

 

「感謝するわ。私は嘗て、奴隷だった母から生まれたわ。そして父は貴族だった。ある日母は病にかかり亡くなった。あの時父が薬を手配してくれれば母は助かったかもしれない。だけど父は拒み私は己の無力を呪ったわ。そして人類は何者にも支配されるべきではないと感じたわ。」

 

「そうだな。オレもその話は聞いている。そしてお前達がバラルの呪詛を解くために生け贄を集める。そして時を見て、オレが剥き出しにしたレイラインを用いて神降ろしの儀式を行う。それがお前達の当時の計画だったな?」

 

「流石キャロルね。ラジエルの力を使わずに言い当てるその頭脳は、味方なら頼もしいわ。」

 

「だがお前達は勇と出会い、当時の目的が誤ったモノであることに気づき、計画の修正をした。そしてオレと勇を引き合わせた。そうだな?」

 

僕も今ならその可能性に行き着けるけど、当時は気づかなかったな。師匠達はその辺りは頑なに情報を隠してたし、僕自身は師匠達を信頼していたから。

 

「ええ。私はそのことを知ってからは、結社の影響力を正しく使う為にうごいたわ。だけど今は肥大化しすぎてしまった。だから今回の局長の討伐を期に結社を一度解体するわ。もちろんこぼれ落ちる命もあるでしょう。だから私達はその命とこれからも向き合い続けるわ。」

 

偉大な師匠の覚悟を聞いた僕は、一つ賭けに出たいことがあった。これを期に聞けないかな?

 

「師匠……一つ賭けに出たいことがあるのですが?」

 

「あら?珍しいわね。貴方がそんな重要そうな賭けを申し出るなんて。それ程分が悪いの?」

 

「ええ。このまま結社を解体すれば必ず護国の鬼である、〈風鳴 訃堂〉が動くでしょう。その際に奴が取り入れそうな人材に心辺りがあります。この賭けに乗ってくださいますか?」

 

「確かにあの男は動くでしょうね。良いわ……話しなさい。どうせやらないといけないことよ。」

 

助かる。なら遠慮なく言わせて貰おう。

 

「〈ヴァネッサ〉〈ミラアルク〉〈エルザ〉この三人……通称〈ノーブルレッド〉のメンバーに今の内にコンタクトをお願いできますか?彼女達の力を借りたいのです。」

 

「なかなか珍しい人選ね。だけど幸い彼女達こそが私達の協力者よ。連絡先を伝えるから必要なら貴方自身でやりなさい。私達にも隠したいことなのでしょう?」

 

お見通しか……師匠には敵わないなぁ。

 

「助かります。後でよろしくお願いします。」

 

〈………むくのことを忘れておったな?主殿が話し始めた時点で嫌な予感がしたぞ?〉

 

ごめんなさい。本当に申し訳ないです六喰さん。

 

〈だが、うぬの覚悟はしかと見届けた。そして以前の二亜からの杜撰な情報の謝罪を、むくからさせて欲しい。そして琴里から、四糸乃の力の継承者の名前を伝えるよう頼まれている。〉

 

確かに二亜さんの情報はかなり杜撰だった。ていうか未だにエレンに力を利用されてるから、こちらも困るんだよね……あれ。ていうか肝心な時に使えない。

 

〈まず謝罪の方が「ベルゼブブ」がエレンの手にある。そして「二コルベル」が産み出されてる。これに対処できるのは、主殿・キャロル殿・フィーネ殿の三人もしくは、三人の力で操る物であるな。例えばフィーネ殿がソロモンの杖でノイズを使えば二コルベルを打倒できるぞ。〉

 

なるほどね。〈ベルゼブブ〉と〈ラジエル〉は今も表裏一体か。だから僕達の攻撃のみ有効なんだね。あの時にソロモンの杖も復元して良かったな。

 

〈次に四糸乃の力の継承者は「セレナ」と言っていたな。主殿の知り合いにおるだろう?〉

 

「なるほど……セレナさんか。師匠帰国したら僕達は……」

 

「ええ。セレナとコンタクトをとりなさい。キャロルも構わないわね?」

 

「ふん!オレは勇の決定には異議はない。だけど代わりに、勇は〈愛して〉くれるよな?」

 

「………わかってる。その日も眠れないって訳ね。」

 

「ああ!素晴らしいではないか!戦力が増え、勇とオレの絆が深まる!一石二鳥の計画ではないか!」

 

「………勇………強く生きなさい。」

 

カリオストロ師匠がここにいなくて良かったな。絶対にちゃかされてた。

 

〈ではむくの仕事を………おっと済まぬ。サンジェルマン殿の「霊結晶」は完成しているが、初回の起動には体が礼装に耐えられぬ。故に主殿達が探している物を身に纏った時に改めて天使は継承されるだろう。セレナと言う少女も同様でな。〉

 

「私達が探してる物………まさかファウストローブのこと!?」

 

〈多分それであろうな。ではむくはもう行くぞ。主殿達の道に幸多からんことを。〉

 

そう六喰さんが告げると、僕達の意識は現実に引き戻された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどね。私達のファウストローブの完成がより急務になったわね。二人とも協力して貰えるかしら?」

 

当然僕達の答えは決まっている。

 

「もちろんです。必ずやり遂げましょう!」

 

「まずは今夜だ。お手並み拝見といくぞ。」

 

あ。そっちも不可避なのね。



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嘗ての人類最強と神の依代

アルテミシア達が勇と戦闘を始めた時、結社本部では彼の自動人形が起動されようとしていた。

 

「これが神の依代足る人形ですか。正直イメージよりも幼い見た目ですね。本当にこのようなモノが神の力に耐えられるのでしょうか。」

 

エレンの手には本が握られていた。その本は禍々しい雰囲気を放ち、ティキの体を覆っていった。

 

「〈アン・ティキ・ティラの歯車〉は探すのに手間がかかりましたが無事に回収できました。が、やはりこの人形の起動に魔王は使えませんか。では仕方ありません。正当なる手段を以て起動するとしましょう。」

 

そう言ってエレンはティキの起動術式を展開した。これによりこの世界では嘗て神を降臨させた触媒が揃うこととなる。

 

「う~んよく寝た~!四百年ってところかな?そしてまだこの世界は〈バラルの呪詛〉が解かれてないのね。そして知らない力を感じるわ!何かしらこの力は!ティキの知らない世界に知らない力!そして愛しのアダム!ああ!アダムに会いたいわ!」

 

この純真無垢な子供のような姿と、嘗て惑星軌道の製図を記録する為に作られた自動人形だ。そしてその機能は休眠状態であろうと変化することはない。そして〈アン・ティキ・ティラの歯車〉によって起動される。

 

「ところで貴女はだあれ?サンジェルマンではないのね!錬金術師としてはサンジェルマン達にすら劣る良いとこ四流だけどあたしの体に近いモノをその体ないしは兵器として所持してるのね!そしてその禍々しい力!それが異世界の力なのかしら!」

 

「はじめまして、と言っておきましょうか人形。私の名はエレン・M・メイザースと言います。嘗て別の平行世界では人類最強を誇った者と言っておきましょうか。」

 

「ふ~ん。貴女ごときが人類最強ならその世界は退屈な世界だったのね。まあそのオモチャ便りの四流なら当然よね!貴女は人の上に立つタイプでありながら、同時に人に尽くすタイプね!だから貴女ごときに尽くされる主は良くて二流と言うところかしら!アダムにならび立てるのはあたしだけだもの!」

 

「言いますね人形。別の世界とはいえ、アイクのことを侮辱する発言は万死に値します。言動は選ぶモノだと忠告しましょう。」

 

一触即発の雰囲気を壊したのは電話の着信音であった。

 

《どうやら起動できたみたいだね。無事に。であれば一安心だよ。僕もね。》

 

「そうですね。無事に人形の起動は成功しました。であれば次の計画にシフトするべきだと進言しましょう。そういえば〈ヨナルド・バストーリ〉の起動自体は成功しましたが、〈ゼウス〉達の邪魔立てで破損しました。次の戦いまでに新たな戦力の補充をするべきだと思われます。」

 

《必要ないだろう?そんなこと。使えば良いじゃないか。その力を。》

 

慢心していても完全なる者。エレンの持つ魔王〈ベルゼバブ〉そしてその力より生まれる疑似精霊〈ニコルベル〉のことをエレンはアダムに話していない。にもかかわらず、アダムはその力の存在に気付いていた。他者を見下すことはあってもその力量自体を見誤りはしない。それが〈パヴァリア光明結社局長〉のアダム・ヴァイスハウプトという男でもある。

 

「では次の戦いより投入するとしましょう。その為に生け贄の力と結社の資材を投入します。よろしいですね?」

 

《構わないよ。その程度。見せて貰おうじゃないか。魔王の力を。》

 

「良いでしょう。ならばしかと見届けなさい。私達の世界の力を。」

 

《期待してるよ。良い知らせを。》

 

そう言って二人の通話は終了した。新たなる脅威は天使と対をなす魔王であった。



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コンタクト!ノーブルレッド!

師匠に教えてもらった情報は、僕の予想の斜め上を行く物へとなっていた。

 

「はぁ……実は師匠達は組織を抜けていて、現在はノーブルレッドの三人からの情報を頼りにしている……か。僕の協力をしてくれる?……いや、そもそも僕は認識されているのかな?」

 

僕は不安を抱えながらも渡されたアドレスに連絡を入れた。すると三コール目で応答が確認された。

 

『此方はノーブルレッドヴァネッサです。サンジェルマン様……どうされましたか?』

 

応答してくれたのはヴァネッサさんだった。ノーブルレッドの実質的なリーダーをしている人だ。上手くいくと良いな。

 

「お久しぶり……と言えば良いですかヴァネッサさん。僕の名前は〈雪音 勇〉です。今回は師匠のアドレスを借りてコンタクトを取らせていただきました。」

 

『そのお声……もしや勇さんですか!?お久しぶりです。一体何故お姿を見せてくださらないのかと心配でございました!すぐにエルザとミラアルクを呼びましょうか?』

 

「お気持ちは嬉しいですが一度通信を切りましょう。僕が其方へと伺います。都合の良い場所と時間の指定をお願いいただいてもよろしいですか?」

 

『わかりました。では二日後の正午に嘗ての私の実験場にてお願いします。そこに二人も連れて行きましょう。』

 

「ありがとうございますヴァネッサさん。それでは二日後に。」

 

僕はこうして通話を終了させた。

 

 

 

~~二日後の午前十一時半 旧ヴァネッサの実験場~~

 

「ヴァネッサ……本当でありますか?勇さんが此方に出向かれるとは?」

 

「冗談なら質が悪いんだぜ!あたし達は何も力を持たない勇さんが努力を重ねる過程を見てきたから、勇さんに憧れたんだぜ?嘘をついてたらいくらヴァネッサでも許さねえからな?」

 

「ごめんなさい二人共。その答えは後三十分でわかる筈よ。此方は先にお待ちするのが当然だからね。」

 

「……確かに目上の人よりも先に到着したい気持ちはわかるけどさ、あたしは待ちくたびれそうだぜ?」

 

ノーブルレッドの三人が話をしている時に僕はは現れたみたいだ。

 

「少しはやいかな?まぁ僕が待てば良いか……って!えぇ!?なんでもう三人揃っているんですか!?まだ約束の時間よりもはやい筈ですよ? 」

 

「お久しぶりです勇様……お姉ちゃんの言った通りでしょう二人共?」

 

「本当でありますか!?私達を騙しておりませんよね!」

 

「そういえば結社から離れてもう四年近くになるのかな?……ならそう言われるのも当然だよね。」

 

僕は今の状況を冷静に考え始めた。どうすれば良いかな?

 

「スンスン……これは勇さんの匂いであります!間違いありません!」

 

「エルザさん!?一体何を!?」

 

僕はエルザさんに匂いを嗅がれた後に信じて貰えたようだ。納得いかないけどさ。

 

「そういえばエルザは勇さんの持ち物を新しい物にすり替えてたな。そして古い物を持ち帰ってくれたからありがたかったぜ?」

 

「そういうミラアルクもビデオが増えると頬を緩ませていたじゃない?お姉ちゃんの目はごまかせないわよ?」

 

「ヴァネッサは狡猾であります!勇さんを孤立させて自分が理解者だと寄り添うつもりでありました!しかし勇さんは寄り添う前にキャロルの元へと行ってしまったであります!」

 

知りたくない真実を聞いてしまった。だから師匠は急に僕をキャロルの元へ………。

 

「つまり……?僕は結社の中では本来の評価は……。」

 

「努力家で意欲的。向上心の塊で磨けば光る原石だぜ!だから大幹部の方々が付きっきりでも文句は出ず、更には組織の在り方を人道的にしてくれた時期が勇さんの来た時期と重なるぜ!だから本来の二つ名は〈影の英雄〉だぜ!あたし達はそのお陰で救われた命だ。だから感謝してもし足りないぐらいだと思っているぜ!」

 

思いもよらない真実を知ってしまった。だけど嘘をついていない事もわかるから、僕は当初の目的通りにお願いをしよう。

 

「では本題に入ります。三人にお願いがあり今回は接触して貰いました。その本題は〈今後の結社の未来について〉です。」

 

「薄々察していました。二ヶ月前に大幹部の方々が軒並み離反した事で確信をしました。」

 

「そして粛清された筈の魔術師一派が台頭して来たであります。」

 

「だけどこれが結社破滅のトリガーだとすぐにわかったぜ。だからあたし達はサンジェルマン様に情報を流せるように敢えてここに残ったぜ。」

 

「でも……それじゃあ貴女達が!」

 

「良いのです。私達は既に命と尊厳を救われたのです!ならば報いたいと願うのは間違いなのですか?」

 

ヴァネッサさんの言葉は、彼女達が本気だという事の何よりの証明に他ならなかった。

 

「なら……僕は一つある計画をしています。師匠達が組織を再建する為に一度解体する。その時に皆さんは〈風鳴 訃堂〉の接触に乗って貰えますか?それも〈弱みを見せる形で〉……です。」

 

「確認するであります!」

 

「お願いしますエルザさん。」

 

「風鳴訃堂が我々に接触する動機及び我々が敢えて弱みを握られる理由を教えて欲しいであります!」

 

「では動機ですが、局長との戦いでは〈神の力〉が顕現します。そしてその力はこの戦いの後に全ての勢力が硬直状態になる程の代物です。そして訃堂はその力を手にする為に行動を起こすでしょう。」

 

「ならば勇さんは組織が解体されて混乱に陥る際に、必ず奴が動く事を確信しているという事ですね?」

 

「はい。そしてその中で最も接触しやすくて行動を制御も容易いと考えられるのが皆さんです。」

 

「……確かに私達は定期的に体内の血液を交換する必要が出てくるのであります。しかしそれだけでは……。」

 

確かに確信を得るには弱いと考える方が普通だ。だけど訃堂は人の皮を被った修羅だ。恐らく常識は通用しないだろう。

 

「その弱みだけで手中に収める事ができるのがあの妖怪です。なのでここは敢えて乗ってください。」

 

「でもそれは只の流れであります!勇さんの話通りなら、わざわざ動かなくてもそうなる可能性が高いであります!」

 

「そこが重要なんです。」

 

恐らく自然な流れでなければこのお願いは成立しない。だから今回のコンタクトに繋がるんだ。

 

「この場合、訃堂は恐らく脅迫紛いの取引を持ち掛けるでしょう。しかし今回は僕達も裏で戦います。その為には貴女方の協力が必要です。」

 

「ならば我々の具体的な動きをお願いします。」

 

「その為に確認をしなければなりません。貴女方はその手で人を殺める事を良しとしますか?」

 

「……!そういう事なのですか!?」

 

「どういう意味でありますかヴァネッサ!」

「教えて欲しいんだぜ!」

 

「二人共よく聞いて。勇さんは私達に人を殺める機会が来る事を示唆しているわ。だけどその行為は訃堂が裏で手を引く可能性が高い事も同時に示しているのよ。」

 

「はい。恐らくは皆さんを脅迫して行わせる筈です。なので敢えてその指示を受け、証拠を押さえたいんです。あの妖怪の思惑に振り回された命に報いる為には、今回は多数の命を散らすでしょう。」

 

「つまり我々の本当の役割は!」

 

「奴の悪事の証人になることです。そしてその対価は既に僕が揃えてます。」

 

「勇さんが……揃える?どういう事だぜ?」

 

「貴女方を人間に戻す為の力が僕達にはあります。しかし今それを行えば皆さんの命をより危険に晒すでしょう。なので真に事が終わったその時は……」

 

「我々を元の体に戻す事を約束すると言うのですね?」

 

「はい!皆さんの憧れた過去に誓います。そして望むならば皆さんの事にも男として責任を取ります!」

 

「もしや我々を!?」

 

「はい。貴女達の〈伴侶となることを誓う〉という意味です。」

 

「それは……まさか!」

 

「あたし達は恋や愛すらも!」

 

三人の目がようやく女性の目へと変わった。

 

「なら……あたしは決めたぜ!勇さん!あたしをお嫁にして欲しいぜ!」

 

「私も立候補するであります!」

 

「本当によろしければ私もお願いしたいです……。」

 

「約束します。だから必ず生き残ってください!」

 

「「「お任せください勇さん!!!」」」

 

僕はこうして頼もしい協力者で新しい婚約者も獲得してしまった。キャロルの制裁は怖いけど!僕は救える命は救うと誓ったんだ!



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帰国した者達

~~響side~~

 

私達は勇君が敵を足止めしてる間にバルベルテを出国できた。そして結社の情報はカリオストロさんがダミーの情報と本命の情報を見分けてくれた。

 

「流石は勇の師匠なんだな。あたし達だけならダミーの情報に踊らされた可能性が高かっただろうな。」

 

「ええ。エレン達が結社の情報網を使いこなしている以上は、ダミーの情報を掴ませる可能性は高かったと思うわ。だから情報戦はあーしに任せなさい。」

 

「流石嘗ては詐欺師として人を手玉にとり続けたカリオストロさんです。キャロルも貴女方の手腕には一目置いていました。」

 

「あらエルフナイン。嬉しいことを言ってくれるわね。だけど少しプライバシーって物はないかしら?」

 

詐欺師カリオストロ!?大物じゃん!私達が映画やドラマで見たことある人じゃん!

 

「もしかして貴女は?」

 

「ええ。嘗てはイタリアを拠点に活動して今の時代でも創作の世界でたまに耳にすることのある、そのカリオストロの認識で間違いないわ。同様にプレラーティも本人よ。あーし達は嘗てサンジェルマンに命を救われたわ。だから私達はサンジェルマンの願いを叶えたいと思うし、私達自身も勇のことをかわいい弟だと認識しているわ。」

 

勇君のお師匠さんはすごい人だなぁ。そしてそんな人達の指導を耐え抜いた勇君だからあの強さがあったんだね。

 

「あんたが勇のことを強くしてくれた恩人なのは聞いていたし、勇自身もあんた達を尊敬していたことも知ってる。だからあたし達は強くなりたい。今の勇の隣を歩めるのはキャロルだけだ。そんな現状にあたしは満足なんてできないし、悔しくてしかたない。だからもしあんた達が良いならあたし達を強くして欲しい。」

 

クリスちゃんの素直な言葉は、私も感じていた葛藤があった。私達はこのままでいるつもりはないけど、闇雲な努力じゃあ成せないことがあるのはキャロルさん達との戦いで学んだ。だから私達だって!

 

「良いわよ。結社との因縁にケリをつけたその時は、あーし達が貴女達に協力することを約束するわ。だから安心しなさい。」

 

「はい!」

 

「ああ!」

 

「よろしくお願いします。」

 

「私達は!」

「もう諦めたくないのデス!」

 

この場にいた私達は、今よりももっと強くなる覚悟を決めた。だけど、ここにいない翼さんやマリアさんも同じ気持ちになると思う!

 

「さて小娘共。恐らくだが帰国した後に敵の襲撃があるだろうな。」

 

「まってくださいフィーネさん!勇君達があの国で敵を抑えていた筈では!」

 

未来が了子さんに掴みかかったけど、了子さんは気にせずに言葉を続けた。

 

「私のラジエルが告げているのだ。必ず日本で敵が待ち受けているとな。故に今回は私も前線に上がるつもりだ。幸い勇から嘗て私が使った聖遺物の復元が完了した話が既にあり、ラジエルの展開によってその聖遺物は一時的に使用できる。この力が反応した以上は何か良からぬことが起こると考えるのが筋だろうな。」

 

「あら?なら全盛期のフィーネの再臨ね!これは頼もしいわよ!」

 

私達は新たな不安を抱えながら帰国することになった。

 

 

 

 

 

 

~~帰国後~~

 

私達が空港を出て一度自宅に戻った後、本部より敵が現れた知らせが入った。

 

《アルカ・ノイズ及びバンダースナッチの反応を確認しました!場所は……》

 

藤尭さんからの連絡に応じて私達は都心での戦闘をすることになった。

 

「はじめましてシンフォギア装者。そして臆病者。私が魔術師の代表のエレン・M・メイザースです。短い間でしょうがお見知りおきを。」

 

あの人が魔術師の!?

年齢は二十代に見えるけど、纏う雰囲気は息がつまるような気がした。そしてエレンさんが禍々しい雰囲気のする本のページを破ったかと思うと、そのページが人の形をし始めて、同じ顔の女の子達が現れた!

 

「あれは何!?勇のラジエルと似てるけど、こんな禍々しい物ではなかった筈よ!」

 

私達の中でその天使の名を知っているカリオストロさんは驚いた声をあげた。

 

「なるほど……貴女方は既に〈シスター〉の存在をご存じでしたか。では説明の手間が少し省けますね。この本の名は〈ベルゼブブ〉。天使と対を成す魔王とでも覚えてくれれば良いでしょうか。そしてこの少女の名を〈二コルベル〉。魔王の力より現れた疑似精霊という存在です。故に私達は勧告します。大人しくゼウスとヘラを渡しなさい。そうすれば無駄な犠牲は少なく済むでしょう。」

 

〈ゼウス〉?〈ヘラ〉?一体何のこと!?

 

「なるほど。エレン達は勇のことを〈ゼウス〉。キャロルのことを〈ヘラ〉と呼称したのね。ギリシャ神話の主神の名を冠するなんて随分な評価ね。」

 

「まるで勇達を道具扱いか!ふざけるのも大概にしやがれってんだ!」

 

クリスちゃんはギアを展開して二コルベルって呼ばれた娘達にミサイルを放った!

 

「きゃあ!」「いたぁい!」「いきなりね!」「ひどいわ!」

 

彼女達は攻撃を受けるとバラバラになったけど、直ぐに再生してきた!

 

「そんな攻撃は無駄です。彼女達はそんなものでは倒れませんよ?そしてあの攻略法も今は使え無いですよ?」

 

〈あの攻略法〉!?私達にはわからないけど、別の世界では通じた方法があった。だけど今はそれも通じない。私達は一体どうすれば!

 

「そうか。ではこういう手段を提供しようではないか。」

 

そう言って現れたのは了子さんだった。

 

「フィーネ!アイツ等には攻撃は効かねえ!時間と体力の無駄遣いだ!」

 

「慌てるなクリス。既にキャロル達はその対策に至っている。その為に私の聖遺物を復元させたのだからな。」

 

「フィーネさんの」

「聖遺物デスか?」

 

了子さんの聖遺物はデュランダルとネフシュタンの鎧、そして後一つが………

 

「〈ソロモンの杖〉か!?だが今更ノイズを出したところで……」

 

「嘘!?」「何この化物!?」「怖い!」「恐ろしい!」「ひいぃぃ!」

 

了子さんはノイズを召喚すると、二コルベルって娘達に接触して、彼女達を炭の塊に変えてしまった!

 

「何の冗談ですか?彼女達はその程度の攻撃では倒れない筈です。そもそもその杖はこの世界から消えた筈です。貴女方はそれを知っている筈ですが?」

 

顔をしかめるエレンさんに対して了子さんは涼しい顔でこう言ってきた。

 

「簡単なことだ。この杖達の復元者が勇とキャロルである以上は、出力の向上や概念の操作、対象のコントロール等容易いことだ。」

 

それって私達のギアと似たようなことを勇君がやってたってことなの!?私達全然聞いてないよ!

 

「なるほど。ゼウスとヘラの加護ですか。そうなると不利なのはこちらですね。二コルベルの起動実験が成功した以上は長居は無用です。今回はこれで失礼します。またいつか縁のある時に」

 

そう言ってエレンさんは帰って行った。そしてとうとかう私は、初めて手を繋ぐ発想になれない人達と出逢ってしまった。

 

「私はこれからどうすれば良いの?」

 

私の声は虚空に消えていった。

 

~~響sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

~~勇side~~

 

 

師匠達の厳命により静養していた僕は響達より一週間遅れて帰国した。そしてその時に届いた報告は驚くべき情報の塊だった。

 

「〈ティキ〉の復活にエレンさんの奇襲。そして〈ベルゼブブ〉の展開と〈二コルベル〉の出現か。」

 

不味いかも。ヤバい敵ばかりだ。

 

「そしてフィーネがソロモンの杖を起動して〈二コルベル〉を撃破か。復元して良かったな勇。」

 

キャロルの提案を聞いて良かった。僕はあの時、〈ネフシュタンの鎧〉と〈ソロモンの杖〉、そして〈デュランダル〉の復元を行った。僕のセーフティを解除できるのはキャロルと僕だけ。だからフィーネさんの(もうあり得ないけど)反乱は不可能だし、もしもの事態に備えたかった。(というよりは僕が装備したかった。)

 

「しかしカリオストロの報告は間違いないわね。エレンは間違いなく、前の世界の力を十全に使いこなし、更にはこの世界で錬金術を学んでいるわ。ファウストローブのない私達では、恐らく勝てないでしょうね。」

 

そう……師匠達のファウストローブはまだ完成していない。だから戦力的にもギリギリかもしれないなぁ。

 

《報告を続けるわ。エレンの操る〈二コルベル〉にあーし達の攻撃は決定打にはならなかったわ。だけどフィーネの攻撃のみ通じたわ。これには理由があるわね?》

 

そう。今更だが僕達は今、カリオストロ師匠と通信している。但し情報が多すぎて整理に時間がかかるけど。

 

「はい。敵の〈ベルゼブブ〉と僕達の〈ラジエル〉は表裏一体です。僕達からの攻撃のみが彼女達に有効だと思われます。嘗て〈士道〉さんも自ら無力化した程ですから。」

 

「なるほどね。勇はこのあとすぐにセレナと接触させるとして、今回はフィーネにも出て貰わないと手が足りない……か。かなり険しい道のりね。でも私達は挫けずに達成するわ!背中を見てくれる弟子達の為にもね。」

 

「流石サンジェルマンというワケだ。それでこそ、私達の希望なワケだ。だから勇もどんどん甘えるワケだ。昨日の〈事〉は私達は素晴らしく思っているワケだ。なぜならサンジェルマンは楽しむべきなワケだ。」

 

「プレラーティ!からかうのは止めて!私はそんなつもりじゃあ!」

 

「いいやお前は満足していたワケだ。キャロルもご満悦なワケだ。誇るべきなワケだ。」

 

プレラーティ師匠の口撃に僕と師匠は顔が赤くなり、気絶してしまった。

 

「さて。プレラーティ……機密資料解読の仕上げに取りかかるぞ!」

 

「キャロル!何故シャトーの一エリアがラブホ仕様なワケだ!これでは支障が出るワケだ!」

 

「本当にそうか?サンジェルマンが勇と〈事〉を成す時にあそこ程雰囲気の良い場所はあるまい?」

 

「その名前を出されると反則なワケだ。だが、勇の為という事で今回は手打ちとするワケだ。だが今後の拡張は許さないワケだ!」

 

「心得ている。そしてもうすぐ解読結果が出るな。その前にこの二人をベッドに連れて行くぞ。」

 

キャロルは二人をベッドに休ませた。なんだかんだ優しいのが彼女である。

 

「私達にかかれば解読は楽勝なワケだ。」

 

二人が解読した結果には、第二次世界大戦の時期の聖遺物研究の資料が発見された。これが後に厄災をもたらす事はまだ誰も知らない。



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力の目的と覚悟

僕達は各々の報告を終えて晴れて全員合流した。カリオストロ師匠だけは前回、ファウストローブ完成の為のデータをエルと一緒に(エルは通信の時に席を外されていた)、シャトーに取りに行っていたので、改めて全員集合ができた。

 

《アルカ・ノイズ及びバンダースナッチの反応を確認!数百五十!》

 

「セレナと勇は本部で待機よ。ここは私達が行くわ。プレラーティとカリオストロも良いわね?」

 

「なんだか息子の前で良いところを見せたい母親よね。今のサンジェルマンは。だけどあーしも同感ね。可愛い弟達に良いところを見せたいわ!」

 

「弟子達よ。師匠の活躍を見て来るワケだ。お前達を導く為の覚悟を形にして来るワケだ。」

 

「先生方……無理はなさらないでください。……私達は先生方に救われた身なのですから。」

 

「師匠達の覚悟は僕達全員が受け止めます。ですが、万が一への警戒をお願いします。まだエレンは退けたワケではないので。」

 

「そうね。確かに彼女達は今の私達でも不安があるわ。だからこそ、この力を今回で使いこなすわ。」

 

師匠達はそう言って転移して行った。

 

「では義兄さん。私達も始めましょう。」

 

「そうですね。では僕からしますので、セレナさんは正面を向いてください。」

 

僕はそう言ってセレナさんにキスをした。そしてその際に首に手を回され、ディープキスになってしまった!

 

(ふふっ、逃がしませんよ義兄さん♪)

 

そして僕は抵抗する事なく、光に呑まれる事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈お久し……ぶり……です。覚え……て……ます……か?〉

 

僕達の前に立っていたのは、嘗て兎の人形を左手に着けていた少女ーー〈氷芽川 四糸乃〉であった。

 

「お久しぶりです。四糸乃さん。そしてこちらが今代の継承者のセレナさんです。」

 

「始めまして。セレナと言います。義兄さんに力を託してくださってありがとうございます!」

 

〈義兄さん……ですか?〉

 

あ………そういえば精霊の方々には重婚の件はまだ言ってなかったような……

 

「はい!義兄さんはキャロルさんを正妻に、響さん・翼さん・クリスさん・暁さん・月読さん・姉さん・サンジェルマン先生・フィーネさん・私の愛しい旦那様ですよ?」

 

セレナさん……貴女義兄の結婚相手に自分を入れたのはわざとですか!?それとも偶然ですか!?

 

「(ペロリ)」

 

確信犯ですね……わかりました。

 

〈ふふっ。まるで「士道さん」ですね。あの人も私達全員の好きな人でいてくれました。そんなあの人を見ているみたいです。〉

 

「そういえば私への〈試練〉とやらは何ですか?」

 

〈いえ……実は貴女の試練は今では無いんです。この先に貴女のお姉さんに危機が訪れます。その時に私達の力を貴女は預からないといけません。だからその時が試練であり、貴女の役目です。だからその時に体を守る為に私の力を託しました。〉

 

セレナさんが〈力を預かる〉?〈マリアさんに迫る危機〉?わからないけど、僕達は備える必要があるな。

 

「わかりました。マリア姉さんの危機の際には、貴女の力を遠慮なく使わせていただきます。そして必ず救って見せます!」

 

〈はい!楽しみにしています!〉

 

「そういえば四糸乃さん?」

 

〈何ですか勇さん?〉

 

「七罪さんの継承者はちゃんと生きてますよね?」

 

〈はい!二亜さんの予知で確実に会える事がわかっています。心配しなくて大丈夫ですよ?〉

 

何故だろう。二亜さんの予知だとかえって不安になるなぁ。〈シェム・八〉の名前も間違えてたからなぁ。

 

「わかりました。四糸乃さんの言葉は信じます。」

 

〈はい!頑張ってください!あと、澪さんより伝言です。〉

 

「澪さんからの……伝言……?」

 

珍しい人からの伝言だな。

 

〈神様だろうと君の魅力は通じるよ。心のままに、

 

「デートして、デレさせなさい」

 

以上です。伝えましたよ。〉

 

………深く考えたらダメな気がするけど、とりあえずやることはわかった。僕達はやることをしよう。

 

「ありがとうございます!四糸乃さん!」

 

僕達の意識は現実に引き戻された。すると師匠達がアダムの登場に驚いているところだった!

 

「セレナさん!初陣ですが支援をおねがいします!」

 

「わかりました!確実に先生方を救います!」

 

僕達はアダムとの初戦を意外な理由で始める事になった!

 

 

 

僕達が現場に到着すると、アダムは既に黄金錬成の準備を始めていた。

 

「セレナさん!アイツを止めます!支援をお願いします!」

 

「わかりました義兄さん!行きますよ〈ザドキエル〉!」

 

師匠達はアダムの体術に倒されていた。その影響でこの攻撃を避けることは困難だろう。

 

「くっ……流石に腐っても統制局長ね……嘗めて関ったつもりはないけど、手も足も出なかったわ……」

 

「そうね。あーし達の攻撃は直撃しても……涼しい顔をされて……」

 

「サンジェルマンの攻撃だけは……避けられたワケだ……。悔しいが私達は遊ばれたワケだ……。」

 

師匠達の表情は怒りと嘆きの色が強かったんだけど、冷静さを欠いた表情でもなかった。

 

「さて………充分かな?遺言は。お仲間共々消えると良いよ。仲良くね!」

 

アダムは師匠達の言葉が終わるのを律儀に待った後に火球を放ち、錬成を始めてきた!

 

「セレナさん!二人のザドキエルなら止められます!あわせてください!〈凍鎧〉です!」

 

「了解です!行きます!」

 

二人のザドキエルの力を解放し、火球の一部に対抗する。この僅かに稼いだ時間で師匠達をダヴルダヴラの弦を使って引き寄せる。

 

「きゃあ!?」

「ちょっと!?優しくしなさい!」

「手荒なワケだ!」

 

………師匠の声が乙女に聞こえた事は僕の気のせいだろう。

 

「あらぁ……。先生の可愛らしい声!私初めて聞きました!」

 

(セレナさん!?ちょっとぉ!?貴女は火球を抑える役目がある筈じゃぁ!?)

 

油断したセレナさんのせいで状況は一気に悪くなり、僕は急いで火球の相殺もしなくてはいけなくなった!

 

「ああっ!もうっ!間に合え!翠の獅子機!」

 

すぐに僕は獅子機を顕現させて力任せに相殺を始めた。

 

「ごめんなさい義兄さん!すぐに再開します!」

 

「これはセレナが悪いわね………」

「あちゃー。これはお説教ね……」

「流石に許されないワケだ………」

 

(師匠達……実は少しだけ余裕ありませんか?)

 

何とか力任せに火球を相殺して耐えきった僕達に、アダムは驚きと怒りを隠さなかった。

 

「ふざけた物だね……色々と。相手をしてあげるよ……少しだけね!」

 

アダムは僕達に接近して体術を仕掛けてきた。ならこの天使を使わせて貰うか!

 

「行くよ〈サンダルフォン〉!」

 

今回の顕現では大剣を使わず、二振りの剣という形で顕現させた。支援して貰うなら、大剣は不向きだからね。

 

「嘗めているのかな?この僕を。おすすめしないよ。図に乗る事はね!」

 

アダムの戦い方は体術に錬金術を組み合わせたやり方だ。だから接近戦は奴の土俵なのもわかっている。

 

「その動きはさっきの戦闘で見ました!だから考えてますよ!」

 

僕はアダムの攻撃の内、左側の攻撃を敢えて剣の腹で受け止めて、右側の攻撃を防がなかった。

 

「嘗めているじゃないか!やはりね!」

 

アダムの左足の蹴りが僕の腹部に当たる瞬間、風で僕達の周囲を球状に包んでアダムの動きを制限し、セレナさんに僕達の背後を取らせた。

 

「相手は義兄さんだけではありません!この私もいるんです!凍りなさい統制局長!」

 

セレナさんは風越しに霊力を集め、アダムに叩き込む準備を終えていた。そして僕が攻撃されて意識が逸れた瞬間に意図を察してくれた。

 

「不味いね……これは。しかしあきらめないよ。この僕もね!」

 

アダムは回避行動に移ろうとしたが、その動きは僕がさせない。派手に受けて貰おう!

 

「させないですよ。男二人で仲良くくらいましょうか!」

 

僕はアダムの足をしっかりと抱え、アダムはバランスを崩した。そしてその体勢で回避できるはずもなく、セレナさんの攻撃で二人で仲良く凍結した。

 

「忌々しいね。その力は!君なんだろう?サンジェルマン達を唆したのは?」

 

「何を……言って……?」

 

だけど攻撃を受ける直前の言葉の意味を、僕が正しく理解する前に僕達はセレナさんに凍結された。しかしここには思わぬ来訪者もいた。

 

「無様ですよ統制局長。はぁ……慢心が過ぎる人物はやはり足元を掬われますよ?」

 

そう言って現れた〈ペンドラゴンのリアライザ〉を纏った魔術師の〈エレン〉が、セレナさんに砲撃を放ち、師匠達をレイザーブレイドで切り伏せた。

 

「きゃあ!」

「あぐぅ……」

「ああぁ!」

「ぐあぁ!」

 

その流れは敵ながらに美しく、不意打ちとはいえ反応を許さない程鮮やかな動きだった。

 

「今回は局長を回収するだけですのでこれにて失礼します。そこで凍っている振りをしている〈ゼウス〉は聞いておきなさい。そして後で〈ヘラ〉に伝えてください。

 

〈次は貴方方の力をいただきます〉

 

そして私はアイク達の悲願を必ず達成します。」

 

エレンさんはアダムを回収するとそう言い残して転移して転移して行った。………しまったな。こんな事ならさっさと氷を砕けば良かったかも。



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新たなるホムンクルス

~~キャロルside~~

 

「ふふふ。勇の遺伝子をこっそり集め続けて凡そ半年……ついにオレは完成させたぞ!勇とオレの愛の結晶たる妹を!」

 

するとこの部屋の扉を開ける人物がいた。

 

「ふわぁぁぁぁ。うるさいですよキャロル。朝っぱらから大声を出さないでください。ボクは研究と調整に忙しくて徹夜続きなんですから……。」

 

「……すまないエル。ゆっくり寝ていてくれ。」

 

「当たり前です。ボクが寝不足な理由の半分はキャロルのせいなんですからね?」

 

エルは大きな欠伸と説教をオレにすると部屋に帰って行った。

 

「……気を取り直すか。」

 

オレは今度こそ完成したホムンクルスを覚醒させた。

 

「おはようございます姉様。僕の役目を教えて貰えますか?」

 

「……理解が速すぎてつまらんぞ。少しは空気を読んでくれないと(読者が)展開についていけないぞ?」

 

「姉様メタいですよ?僕の役目を教えてください。……と言っても主に行うのは現代技術から見たオーバーテクノロジーアイテムの整備や強化でしょうけど。」

 

「………もう一度言うぞ?少しは空気を読め!そして姉を立てろ!」

 

オレはコイツに対して、ガリィとはまた別の意味で相性が悪いようだ。……すごく有能だが。

 

「じゃあ姉様は空のフルボトルをください。兄様の変身用フルボトルの予備を制作する事が僕の役目だと理解しました。」

 

「お前は姉の言葉をちゃんと聞いているのか?悉く指示や命令が伝わってる認識を感じないのだが……。」

 

少し眠そうな顔をしている新しい妹に、オレは早くも相手をする事が疲れてきた。

 

「嫌ですねぇ姉様。僕の主は姉様と兄様じゃあありませんか!ガリィ・ミカ・ファラ・レイア・エルとも姉妹として仲良くしますよ?兄様は特別です。姉様の気になる害虫を引き寄せてしまう罪な御方ですが、そこを含めて大好きな姉様も尊敬していますよ?」

 

「……オレはお前が有能且つ正直者だという事は理解した。……が、お前は二度と表舞台に立つな。お前のその態度(読者がメタ発言)で混乱を招き兼ねない。なんなら勇とも接触を禁じる!」

 

「……起動されて数分で行動制限をされた……解せぬ。姉様の態度が横暴すぎて労基署に通報したらこのシャトーには監査が入りますね。」

 

「お前はもう黙れ!そしてさっさとラボで仕事をしろぉ!!」

 

コイツは本当にオレと勇の妹か?確かに能力はその片鱗を見せているが納得したくないのが本音だ。

 

「じゃあ姉様は僕に名前をつけてください。当然センスの良い名前を期待していますよ?」

 

「……………………………………………………………………………………………」

 

「黙らないでください。名前がないと僕が不便ですし、何よりも兄様に名前を呼んでいただけない事になるのは悲しいです。姉様がそんなに酷い人ならばこのまま兄様に報告して、新しい名前を貰いに行きますね?」

 

「〈雪音 ノエル〉だ。満足か?」

 

「姉様本当に考えましたか?(アプリ版の)名前の流用なら今の内に訂正する事をお勧めします。姉様はテンパると自爆する傾向にありますからね?」

 

「うるさい!もうお前はノエルだ!絶っ対に変更等しないからな!わかったら早く仕事を始めろぉ!」

 

「調整は終わりました。」

 

「ハァ!?」

 

ノエルはオレの命令に終わったと告げた。コイツは一体何者だ?

 

「兄様の技術・努力・根気と姉様の才能・知識の結集体ですがなにか?その代わり僕は戦闘力を持たない非力でか弱い生き物なので〈顕現装置〉が欲しいです。姉様が魔術師から奪って来てください。」

 

「ノエル……お前はもう黙ってくれ。そしてガリィと勇には絶対に会うなよ?」

 

「なるほど……フリですね姉様?つまり会えという事ですね?」

 

「お前の頭の中身は爆弾かぁ!」

 

オレは優秀だが手に負えない研究部門の新たなるホムンクルスを誕生させた。しかしコイツの事を何故か嫌いになりきれないのは、皮肉にもオレの妹だという何よりの証明だった。

 

「そして勇の記憶のバックアップも兼ねているから最高の知識がここにあるな。もし仮に勇に何かがあったら……」

 

「僕にバックアップされた知識の中に兄様のメッセージが託されるでしょう?」

 

「姉の心を読むなぁ!そしてネタバレになりかねない発言はやめろぉ!」

 

本当に有能だが扱いきれる自信のない妹が誕してしまった。



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東京進行の幕開け

あの後、敢えて凍結した件がバレて師匠達からお説教をくらった。………解せぬ。

 

「いや~私でも勇君の悪癖だと思うよ~?だって油断させる為とはいえ何もしなかった訳だし?」

 

響に言われるなら末期か。僕の行いも地に堕ちたかな?

 

「とりあえずサンジェルマンの説教は妥当なワケだ。あの状況ならお前も持ち帰られた可能性があるワケだ。それを考慮しないお前が悪いワケだ。」

 

「はい。流石に次は自重します。だから正座を解かせてください。」

 

「ダメよ。そろそろ私達も心配が限界を迎えつつあるわ。そうね……〈今夜三人〉よ。それなら条件にしても良いわよ?」

 

………絶対にそっちが目的じゃあないですかね?つまり今夜も僕は搾られると……。

 

《東京湾にアルカ・ノイズの反応を検知!そしてその中には巨大な姿も確認!モニターに映します!》

 

藤尭さんの通信と共に映されていたのは、嘗て〈DEM〉が所有していた兵器の一つであり、最強の空中艦である〈ゲーティア〉が映し出されていた。アルテミシアとジェシカはキャロルが倒しているから、恐らくエレンさんの性能テストの可能性が高いか。……というかそうじゃないなら大ピンチだよね?

 

「司令!あの空中艦は相当な手練が操縦しています!対応は姉さん・僕・師匠の三人で請け負います!」

 

《勇君はとにかく、サンジェルマン君とクリス君だと?その根拠は?》

 

「師匠のミカエルの力と、姉さんの火力があの空中艦には絶対に必要です!また、アルカ・ノイズの方も馬鹿にできないでしょう。当然向こうの世界の戦力や兵器の投入がされています!ならここはそっちの対応の為に戦力を集めてください!」

 

《わかった!響君・調君・切歌君・ミカ君・未来君の五人で大丈夫か?》

 

「恐らくそれだけ投入すれば、敵のバンダースナッチまで考慮しても充分かと。なので残す戦力のカリオストロ師匠とプレラーティ師匠に通信で指揮を任せてください。それで恐らく奇襲まで対応できると思います。」

 

《であれば、了子君と残る自動人形達、そして翼とマリア君で避難誘導を行うということだな?》

 

「そうですね。その方向でお願いします。此方も間もなく戦闘が始まります!」

 

そして僕は司令との通信を切った。そしてキャロルとエル、そして凛祢さんであの力の安定をする事、そしてあの計画を進めないといけないな。

 

「でも勇?私までこの艦との戦いに必要かしら?」

 

「あたしはそれでも良いと思うぞ。勇がそこまで言うなら間違いないかもな。」

 

姉さんの方はその気だけど師匠は少し疑う様子だった。敵を過大評価していると判断されたかな?

 

「師匠の懸念はそうですけど、相手は〈人類最強〉を自称しています。前の世界では実績もあります。あの艦のテリトリーを突破するなら、カウンターが最も有効です。師匠は前回の戦いで力を温存したので、おそらく今回の奇襲は通じる筈です。なのでお願いします。」

 

「わかったわ。私が指揮するから貴方達姉弟で立ち回りなさい。全力で援護するわ!」

 

流石師匠です。助かります!

 

「では行きます!あの艦を黙らせます!」

 

 

 

 

 

 

~~響side~~

 

師匠の通信で召集された私達はすぐに合流して、蛇のようなアルカ・ノイズと対峙した。

 

《気をつけなさい装者達!連中もラフィスの輝きを手にしているわ。だからイグナイトは諸刃の剣よ。今は新しい強化手段を錬金術で模索しているわ。だからそれまでは使いどころを見極めなさい》

 

「イグナイトが諸刃の剣に………」

「ならあたし達は礼装を使うデス!」

 

「それが良いゾ!まずはアレを片付けるけど、被害のことも考慮するんだゾ?」

 

ええ!?ミカちゃんに言われた!?でもやるしかない!

 

~~響sideout~~

 

 

 

 

 

~~キャロルside~~

 

「〈シェム・ハ〉がオレ達を観測して勇に一目惚れをした……か。その話は本当なんだろうな凛祢。」

 

「うん。私達が帰還した時にね。だからその確信を得るまでは黙るしかなかったなぁ。」

 

「厄介な奴だろう?」

 

「うん。私達の世界から、〈あの力〉……反転体の力を使える可能性が高いね。あの戦いで天使の力を観測して、今回〈ベルゼブブ〉が顕現してる。だから恐らく、反転体の力の何個かは習得して勇君に接触する筈だよ?」

 

「〈ニコルベル〉の前例を考えると恐ろしい話だな。そんな奴がいるとは。だが勇にこのことは……」

 

「反転体までは伝えてないね。でも対策を考えるのは勇君じゃあなくて私達の役目だよ。その為に〈ビルドドライバー〉〈精霊ボトル〉〈ブラッドのボトル〉〈仮面ライダーのボトル〉を勇君の力に安定して耐えられる用に調整しないとね。」

 

「そうだな。だがヴァイスハウプトが出て来た時はオレ達も前線に出なくてはな。」

 

「うん。必ずやらないとね。」

 

「………キャロル?僕のことを忘れていませんよね?」

 

正直……話の内容が重すぎてエルが置いてけぼりだった。すまないエル……忘れていた。

 

「エルちゃんの力が一番の要だからね。だから私達で全力の後方支援をするよ!」

 

「わかりました凛祢さん!僕も頑張ります!」

 

待っていてくれ勇……奴の復活までには必ず手を打つからな。

 

「あとセレナに渡す物がある。勇に頼まれていたお前の為のファウストローブだ。何を素材にしたかは手に取ればわかるだろう?」

 

そう言ってオレはセレナに完成した物を投げ渡した。

 

「わわ!いきなりですか!?というかキャロルさんこの聖遺物って!?」

 

セレナは驚いてそれを受け取り確認を始めた。まあオレは構わずに説明を始めるがな。………勇の唇を不意打ちで奪った罪は重いぞ?

 

「ヌアザの光剣〈クラウ・ソラス〉だ。嘗てのお前の適合聖遺物である〈アガートラーム〉とも関わりのある聖遺物だ。使い方は何となくわかるだろう?」

 

「神殺しの聖遺物の一振りですか……そしてこれが私のファウストローブになる……ありがとうございます!これで義兄さん達を助ける事ができます!」

 

「礼には及ばんな。そして連中は空中艦を持ち出して来た。勇の戦力分けは恐らく自分達の方を足止めに留める為にわざと薄くした筈だ。だから早く合流してこい。」

 

「ええ。〈クラウ・ソラス〉の逸話なら私もアガートラームの逸話を調べた時に知りました。確かに今の私にぴったりの力です。そしてコレを霊力に耐えられる用にこっそり調整していただいたご恩も忘れません!」

 

……なんだ。気付いていたか。ザドキエルが宿る事がわかってすぐにオレは〈クラウ・ソラス〉を調達・改修したが、流石は勇の妹弟子だ。よくわかっている。

 

「その様子なら問題ないな!では実績をもってオレに感謝を示すが良い!」

 

「はい!実績をもって義兄さんにアピールします!私の魅力を知って貰わないといけませんから。ありがとうございますキャロルさん。私に義兄さんと結ばれるチャンスをくれて!」

 

「待てセレナ!貴様その言葉はどういう意味だ!」

 

セレナはそう言い残して戦場へ転移して行った。しまった!奴を吊るし忘れていたか!早くオレも行かねば!

 

「待ってくださいキャロル!僕達が今コレを成さないと!勇さんの後の計画が!」

 

「大丈夫だよキャロルちゃん。勇君は君を一番愛している。だから私達は彼の事を信じてここで待とう?」

 

この二人の説得にオレは悔しいがその説得に耳を傾けざるを得なかった。……だが悔しいモノは悔しい!



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精霊対ゲーティア

「じゃあ行きますよ師匠……姉さん。」

 

僕達の相手は人類最強を語る魔術師の操縦する空中艦だ。ここでスクラップにしないとかなり後に響くかもしれない。

 

『一度警告しましょう〈ゼウス〉〈イフリート〉〈ゾディアック〉大人しく我々のもとへと下りなさい。そうすれば〈命は〉保障しましょう。』

 

「直ぐにスクラップにしましょう。まずは一撃……あいたぁ!何をするんですか!」

 

僕がとりあえず一撃放とうとしたらゲンコツされた。とても痛い。

 

「バカな発想をした弟子にお仕置きをしただけの事よ。完全に挑発に乗ってるじゃない……。」

 

「あたし様達を道具扱いされた事に怒る姿は……カッコよかったけどよ……バカな事をするのは響一人だけで充分だ!」

 

僕は姉さんの言葉に照れてしまった。だって小さな呟きが聞こえてしまったからね。

 

「そこの姉弟はボヤボヤしない!連中の砲撃が来るわよ!」

 

「はい師匠!気を取り直して一撃を加えます!来てくれ〈ラファエル!〉」

 

「おっとそれじゃあたしもだな!焦がせ〈カマエル!〉」

 

「来なさい〈ミカエル〉!ついでにファウストローブも併用して見せようかしら?」

 

僕はこういう戦場では攻防一体の運用ができるラファエルを顕現させた。そして姉さんはカマエルを、師匠はミカエルを顕現させた。ん?ファウストローブの併用?

 

「え~と師匠今〈併用〉って言いました?」

 

「当たり前……というよりはそもそも天使と聖遺物は親和性が高いじゃない。なんで今まで誰も……キャロル以外は併用してないか不思議だったわよ!」

 

この説明で姉さんが汗をかきだした。心当たりがあるみたいだ。

 

「いや……その……な。多少ピンチを演出すれば……勇に助けて貰えるしまだ扱うのに不安があったんだよ!」

 

姉さんがキレ出してイチイバルも纏い出した。どうやらやればできる事みたいだ。

 

「てことは皆本当は……」

 

「もうやればできる筈よ。但し貴方に助けて欲しくてわざとやらないだけで……ね。」

 

「言うなあぁ!」

 

姉さんが悲鳴をあげるが、エレンは躊躇いなく砲撃をブッパしてきた。しかしその砲撃も別の人物の介入で簡単に防がれた。

 

「先生ごめんなさい!遅くなりました!」

 

強かで優秀、小悪魔な笑顔を見せる妖艶な女性であるセレナさんが救援として駆けつけた。

 

『〈ほう……〈ハーミット〉も現れましたか。ちょうど良いので纏めて回収して行きましょう。』

 

「チャージは既に終わっています!行くぞサンダルフォン!最後の剣(ハルヴァンヘレブ)だ!」

 

僕は全力でゲーティアへ斬撃を放った。本来であれば不意打ちに近いタイミングで飛ばした筈の斬撃は、予想外の声の主にかき消されていた。

 

《うわぁ……やるわねゼウス……あたしがエレン達のサポートをしていなかったら、ゲーティアは今の一撃で手痛いダメージを受けていたわ。まっ、そんな事あたしがさせないけどね。》

 

僕が聞いた声は、〈ニコルベル〉の様でそうじゃない。だけどそれでも〈彼女〉の正体には検討がついた。

 

「なるほど……鞠奈さんと世界樹の葉(ユグドホリウム)……ですか。やはり貴女達はあの世界よりも強い。しかし僕達も守りたいモノがあります!だから倒れません!」

 

本当に()()()なら勝てないかもしれないな。だけど今この戦場には僕も仲間がいるんだ!

 

「あたし様や愛しい弟を狙うだなんて度しがてえ!だから喰らっていけやぁ!カマエルの〈砲〉(メギド)とイチイバルのミサイルのフルコースだぁ!」

 

〈MEGA DEATH PARTY!〉

 

「続きます!ザドキエル!〈凍鎧〉(シリヨン)です!そしてこの剣こそが私の新たな力です!」

 

〈絶対切断!〉(ワールドエンド)

 

「ならば私も続くわ!ミカエルの〈解〉(ヘレス)よ!そしてもう一撃持って行きなさい!メテオドラグナー!

 

僕の予想通り姉さん達は天使やギア等で遠距離攻撃に撃って出た。しかしこれだけは言わせて欲しい人が二人いる。

 

なんで師匠とセレナさんはその技を知っているんですか!」

 

「「簡単(です)よ!勇(さん)の記憶を見たからよ(です)!」」

 

記 憶 見 ら れ て た ?

 

えっマジですか?これは悪い夢ですか?

 

「そうよ本当よ。参考になる技が多かったからね。それに副産物で勇の前世の趣味・嗜好が良くわかったわ。嬉しいじゃない……私達を一人の女性として見てくれるなんてね♡」

 

「私は少しだけ物足りないですね。もっと勇さんの事を知りたいですよ♡でも今は邪魔な空中艦(害虫)墜落させ(おとさ)ないといけません。なのでまずは片付けますよ!」

 

《嘘ぉ!今の反撃だけで世界樹の葉(ユグドホリウム)が七割以上破壊ないしは機能停止したの!?なんであの世界よりもここの精霊達は強いのよぉ!》

 

鞠奈さんは酷く動揺していた。しかし今度は姉さんが声をあげてきた。

 

「なら教えてやるよ人工精霊(ポンコツ)!女ってのはなぁ!守りたい相手ができると何を犠牲にしても手に入れたい時があるんだよ!それが例え他人のモノでもなぁ!」

 

姉さん恐い。というか……そんな事を言っても平気な「あたし様は許されてるだろう?」……最近は心の中にもプライバシーが存在しない気がしてきた。

 

「そうですね。クリスさんの言う通り私達はかつての自分の信念や目的よりも重要だと思えるモノがあるあります。それこそが私達の行動の原動力であり生きる目的です!」

 

『何を言ってるのよぉ!まさかアンタ達は本当にそれだけで何でもしてしまうつもりだとでも言うの!?』

 

「なら教えてあげるわ〈或守 鞠奈〉。その感情を人はと呼ぶのよ。そしてここ世界ではこそが全てよ。貴女自身がスクラップになるまで覚えておきなさい。」

 

『認めない……認めないわ!何が〈愛〉よ!あたしはねぇ!あの世界では救われなかったの!確かに鞠亜は救われたわ!そして世界線によっては私や凛緒さえも救われたわよ!だけど今の〈あたし〉は救われてないの!だったらブッ壊してやる!そしてエレン達と世界を恐怖に陥れるのよぉ!』

 

鞠奈さんの叫びは悲痛な物だった。恐らくあの人は数ある平行世界の中で裁定者(ルーラー)としての責務を果たした鞠奈さんじゃないかな?だけどもしそうなら……。

 

「……鞠奈さん。ここで貴女をその呪縛から解放します。」

 

そして僕は〈ケルビエル〉の礼装を纏う。この一撃で全てを終わらせるために。

 

「終わりにしましょう鞠奈さん

……。」

 

僕は小さな声で呟いた後に全力で雷撃を発動させた。そして一筋の涙を流した。

 

「喰らえゲーティア!〈ラハットヘレブ〉だぁ!」

 

『総員回避しなさい!』

 

エレンさんの慌てる声が僕達にも聞こえた。恐らく鞠奈さんが最後の抵抗を始めたのだろう。そしてゲーティアに僕の一撃が直撃して墜落を始めた。

 

『ありがとうね勇……あたしを解放してくれてありがとう。これでやっと向こうに帰れる……。凛緒の託してくれた世界へ……』

 

鞠奈さんの声が聞こえた気がした。それは彼女自身が救われたという事だろう。

 

「あの世界で士道さん達の手助けをお願いしますね鞠奈さん……」

 

僕は墜落するゲーティアを見つめながらそう呟いた。

 

「勇……感傷に浸る暇はないわよ。私達はあくまでも足止めをされただけ。本隊を叩かないといけないわよ。」

 

「そこは大丈夫です師匠。既に()()()が動いています。ですが響達に伝えてください。

 

〈敵の狙いは僕達後継者達です。戦線は()()()とミカちゃん達に任せて撤退してください〉

 

……とお願いします。僕は少しここでやるべき事をします。」

 

「わかったわ。クリス!セレナ!撤退よ!後は()()()に任せなさい!必ず何とかしてくれるわ!それに他の戦場への報告も始めるわよ!」

 

「はい!勇さんの帰還をお待ちしています!そして今夜も捕まえます!」

 

「わかったよ。じゃああたし達は先に戻るわ。整理ができたら勇も本部へ戻って来いよ。」

 

師匠達は僕のお願いを聞いて先に本部へと帰っていった。

 

「ごめんなさい鞠奈さん。貴女を巻き込んでしまって……。ですが必ずこの悲劇を終わらせる事を約束します。」

 

僕は一人残った戦場で涙を流した。そして鞠奈さんが〈あの世界〉へと帰れるように祈りを捧げた。



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襲撃者は油断しない

~~響side~~

 

私達は勇君達の采配で敵の大部隊と交戦する事になった。

 

「ねえ皆……あの艦の動き方がおかしくないかな?」

 

「どうしましたか未来さん?」

「別に普通だと思うデスよ?」

 

「ん~その勘は大事にするべきだとアタシは思うゾ?だけどアタシ達の役目は敵の大部隊の侵攻を止める事だゾ。避難誘導をしている翼達が前線にどれだけ早く来られるかはアタシ達がどれだけ敵を抑えるかで変わるゾ。だからその勘は後で信じるべきだゾ!」

 

未来は艦を見ながら不審な動きを見抜いていた。だけど今はまだ避難誘導もままならない……それなら私達は!

 

「じゃあ皆!最短で最速で真っ直ぐに!」

 

「敵のアルカ・ノイズを倒して!」

「あのバンダースナッチも片付けるデス!」

 

「翼さん達が合流できるように頑張る!」

 

「そして皆であの艦を落とすゾ!」

 

「「「「「おぉ!」」」」」

 

私達は戦闘準備を開始した。

 

~~響sideout~~

 

 

 

 

 

~~空中艦side~~

 

未来の勘は外れていなかった。〈増殖分裂タイプ〉の大型アルカ・ノイズを投入した空中艦には、二人の魔術師が待機していた。

 

「ジェシカ……どのくらいいける?」

 

「操舵トオペレーションまでネ。まだテリトリーノ発生まではつらいワ。」

 

「わかったよ。じゃあ私がテリトリーの展開を主に引き受けるからお願いね?じゃないと〈ディーヴァ〉〈ベルセルク〉〈エンジェル〉の捕縛が難しくなるからね?」

 

「〈イフリート〉の人形はよろしいのですか?」

 

空中艦内では響達を捕らえる為の作戦が立てられていた。

 

「この作戦の指揮権は私にあるよ?〈小型〉はなるべく広く展開して、敵を分断する。〈大型〉は敵が消耗するように立ち回らせる。そしてなるべく被害を目立たせるようにする。これが作戦の全容だよ?エレンが〈ゲーティア〉を持ち出した以上は失敗は許されないよ?」

 

「失礼しました!これより大型を投下します!」

 

さあ精霊……私達は油断しない。貴女達の力を使って亡きウェストコット様の悲願を果たさせて貰うよ?

 

~~空中艦sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~未来side~~

 

私達は大型アルカ・ノイズの撃破をしたけど、その動き方はやっぱり誘導臭い動き方をしていた。

 

「司令室!敵の動きが広域的です!翼さん達の様子はどうなっていますか!」

 

〈此方友里よ。未来ちゃんの読み通り敵は明らかに散開して、皆の合流を阻害している気配がするわ!だから翼さん達がこの一帯を避難させ終わるまでは敵をこの一帯から出さないで貰える?そして肝心の避難率もこの広域の襲撃で四割程度しかできていないのも響くわね……〉

 

「ッ!まだ四割しか……皆!ここは危険だけど散開しよう!翼さん達が合流したその時は!」

 

「〈全員であの艦を落とす〉だよね未来!任せて!」

 

私達が散開の覚悟を決めた時、先程までのノイズと明らかに別の奴が戦場に現れた。

 

「なんデスかあれは!」

「大きい……蛇?」

 

「でも首がたくさんあるよ!普通のノイズじゃない!」

 

「……まさかモチーフは〈八岐大蛇〉なの!?」

 

「ごめん未来……八岐大蛇ってなんだっけ?」

 

響ぃ!ここは戦場だけどそのくらいは知っててよぉ!

 

「わかりやすく言うと見た目通り八首の蛇だゾ。そして首を斬られても簡単には死なない逸話つきの化物だゾ!」

 

「ありがとうミカちゃん!」

 

「でも未来……その通りなら……」

 

「うん。簡単には倒せないかもしれない。だから皆!天使を展開して一撃で落とすよ!」

 

すると皆はそれぞれの天使を纏い出した。

 

「ガヴリエル!〈行進曲〉!皆は全力でお願い!」

 

「ありがとう響さん!行くよ切ちゃんラファエル〈貫く者!〉」

「合点デス!ラファエル〈縛る者〉!」

 

「「ラファエル!〈天を駆ける者!〉」」

 

「メタトロン〈砲冠!〉」

 

「カマエル〈砲〉だゾ!」

 

私達の全力を響が束ねて強化し、敵の大蛇ノイズに攻撃を当てる事に成功した。しかしあのノイズは……

 

「嘘!あの一撃で倒れなかったの!?」

「それどころか分裂しているデス!」

 

「まさかテリトリーを……お前等!砲撃が来るゾ!」

 

ミカちゃんが声をかけた次の瞬間には私達の立つ場所に砲撃の雨が降り注いだ!

 

「ガヴリエル!〈輪舞曲!〉」

「メタトロン!〈光剣!〉」

 

「「ラファエル!〈護る者!〉」」

 

私達は各々が防御をする事で攻撃を凌いだ。だけどその隙にノイズは分裂して、散り散りに動き始めた!

 

「しまった皆!あのノイズが!」

 

「こうなったら皆で散開しよう!あの大きさなら皆で各個撃破できる筈だよね!」

 

「なら無茶は控えるゾ!翼達の合流を信じるんだゾ!」

 

「調了解。必ず戻ります!」

「切歌了解デス!絶対に帰って来るデス!」

 

皆は各々に別れてノイズの迎撃を始めた。私はこの場所にいるノイズを倒そう。

 

「司令室!現在の避難状態は!」

 

〈此方藤堯!現在凡そ八割完了。このペースなら後一五分弱で皆さん合流可能です!〉

 

「後一五分……か。消耗は避けたいけど……」

 

ここを通す訳には行かない私は、全力で戦う事になりそうだ。

 

「ここは私が通さない!首が二つあるくらいで調子に乗らないで貰うよ!」

 

私は双頭のヘビノイズとの戦闘を開始した。

 

「メタトロンは相性が悪い……なら神獣鏡を使えば!」

 

私はすぐに神獣鏡を再展開して、マーカーをばら蒔いた。仮にもノイズならこの攻撃は有効になる。そして早く片付けて勇君の援護に回る!

 

「そしてベッドの上で悶える勇君を……「食べちゃうのよね?」!誰なの!?」

 

「アハハ!この間あったばかりじゃない!つれないわねぇ?」

 

まさか〈ニコルベル〉が出て来るなんて!

 

「だけど一人なんだ。なら纏めて潰してあげるよ!」

 

神獣鏡をエクスドライブへ変化させて私は直ぐに〈暁光〉を放ちヘビを弱体化させた。

 

「なっ!一撃であそこまで弱体化させるなんて十分化物じゃない!ならこのあたしが相手してあげるよ!」

 

ニコルベルは紙吹雪を発生させて私めがけて放って来た!

 

「メタトロン〈天翼!〉からの〈光剣!〉」

 

「チィッ!大人しく捕まりなさいよ!それにちょこまか動いて目障りなのよ!」

 

天翼の動きを捕らえられない彼女は私を見失い、私はその時の死角からの攻撃を繰り返す。……だけど直ぐに対応が始まる。

 

「目では追えなくても予測はつくわ!そこにいる筈よ!」

 

紙吹雪から紙飛行機に変わることで一撃の威力が増し続けた。そして時間稼ぎも困難を極めた時に私は声を聞いた。

 

「ならば私が引き継ごう。デュランダルの一撃を喰らうが良い!」

 

背後から声が聞こえた時には斬撃が通りはじめてた!

 

「うわぁ!直ぐに逃げないと!」

 

私は急いで逃げた。そして声の主に怒りをぶつけた!

 

「了子さん!私ごと殺す気でしたね!危ないじゃないですか!」

 

「あぁすまんな。キャロルの次に目障りなお前はしばらく退場していてくれ。そして私がその座に返り咲こう!」

 

そう言いながらデュランダルを振るう了子さんが残るアルカ・ノイズは召喚したノイズで相殺して、ニコルベルは顔が青ざめていた。

 

「この化物!あんたみたいなのが〈シスター〉の力を得ているとか冗談にならないわよ!もうあたしは帰るから!」

 

「絶対に逃がさない!」

 

私は逃げるニコルベルの真上に鏡を展開して、そこから必殺の一撃になる〈天光〉を発動した。そして光に包まれたニコルベルは破れたページへと姿を変えた。

 

「了子さんがここに来たということは……」

 

「ああ。他の地点でも無事に避難が完了した。だが加勢に来られたのはここが最初みたいだな。他の連中はまだ間にあってはいないだろう。」

 

「なら直ぐに向かいましょう!」

 

「いや、私の〈ラジエル〉によれば今回の標的は継承者達だ。ここは〈奴等〉に任せて我々は本部へと帰還するぞ。」

 

「……ッ!あの人達が出るんですか!?わかりました!直ぐに帰還します!」

 

私達はフィーネさんからの情報を信じて帰還を始めた。まさかあの人達が暴れるなんて………ね。

 

~~未来sideout~~



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他の戦場では………

~~調side~~

 

私達は未来さんの指示を元に散開したヘビノイズを追っていた。

 

「切ちゃん!あのノイズが!」

 

「わかっているデス!勝手に分裂を始めたデス!」

 

私達が攻撃をする前にノイズが勝手に分裂を始めた。しかも頭が一つの奴と二つの奴に別れている!

 

「切ちゃん!私が二つ頭をやるから切ちゃんは!」

 

「合点デス!逃げた方を追うデス!」

 

私達は更に分断される事を覚悟して二手に別れた。

 

「ならここで落とす!禁じ手だけど早く片付ける為に!抜剣!イグナイトモジュール!〈ダイン=スレイフ〉」

 

私は直ぐにイグナイトを纏い双頭ヘビのノイズを切り刻んだ。すると次は大量のアルカ・ノイズが待ち構えていた。

 

〈バキュンッ!!〉

 

「えっ!?」

 

私は背後からなにかで撃ち抜かれてイグナイトを解除された。そしてそこにいたのは………

 

「バンダー……スナッチ……!」

 

不味い。イグナイト無しでこの数は辛い。その上に今の解除に体力を持っていかれた。流石に厳しいかな………。

 

「なら月読は私を頼りなさい。ここは先輩が助ける場面よ?」

 

〈千落ノ涙!〉

 

私の前にいたノイズは撃ち抜かれて、背後のバンダースナッチはその人物と鍔迫り合いをしていた。

 

「翼さんありがとうございます!援護します!」

 

〈α式百輪廻!〉

 

私の丸鋸がバンダースナッチを仰け反らせ、その隙に翼さんが〈逆羅刹〉で装甲を蹴り砕いた!

 

「月読……司令室からの報告を伝えるわ。〈彼女達〉が後を引き受けるから離脱しなさい。どちらにしてもそこから先は続行不可能よ?」

 

「わかりました翼さん。後は〈彼女達〉に任せます。」

 

私は翼さんに連れられて本部へと帰還した。

 

~~調sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

~~切歌side~~

 

あたしが調と追っていたヘビが勝手に分裂したのデス!これじゃ敵の思う壺デス!

 

「ちゃっちゃと倒すデス!ラファエル!〈蒼穹を喰らう者〉デェス!」

 

あたしは奴等を逃がさない為に全力をぶちかましたのデス。しかし一人で使った〈蒼穹を喰らう者〉は想像以上の疲労なのデス……どうしたら良いデスかね?

 

地味に何をしている!戦場で動けなくなる技を使う時は戦況を把握してからだと旦那様にも派手に言われただろうが!

 

なんとビックリな事にレイアさんが助けてくれたのデス。デスが激おこなのデス……これはお説教コースなのデス……不味いデス。

 

「それにしても連中は派手な数を連れて来ているようだな!ではこれをくれてやろう!」

 

〈エクスプロージョンコイン!〉

 

レイアさんは周囲の敵をあっさりと片付けてしまったのデス……。

 

「切歌は地味に撤退しろ。奴等の狙いは天使の後継者だ。故にここは私達と〈彼女達〉が動きだす。後は頼れる大人達に任せておけ。」

 

「………………………?どういう事デス?」

 

「とにかく帰れ。そこで次の指示を待て。それだけだ。」

 

「なんだかよくわからないデスが了解デス!じゃあレイアさん達に後は任せるデス!」

 

あたしはレイアさんの指示で撤退する事になったのデス。後で誰か教えて欲しいデス。

 

~~切歌sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~響side~~

 

私は未来の指示の元でアルカ・ノイズ達と交戦していたけど、気付いたらあの八首ノイズが分裂していた。それで各個撃破に切り替えたけど、殲滅のペースが全然追い付けない!

 

あぁもう!なんでこんなに敵がいっぱいいるの!これじゃあキリがないよぉ!

 

泣き言を言いながらも私が戦わなきゃ皆が巻き込まれる!だから敵が多くても頑張らなきゃ!

 

「それに私も強くならないとキャロル〈ちゃん〉に勝てないからね!絶対に勇君を奪い返すんだからぁ!」

 

絶対にキャロルちゃんは許さない。私達から勇君を奪った罪は重いっていつか闇討ちしてやるんだから!

 

その前にそこのデカブツノイズはバラバラにしてやるぅ!

 

私はガングニールじゃあ埒があかないからガヴリエルを展開した。そしてこの戦場を纏めて吹き飛ばす広域殲滅技に撃って出た!

 

ガヴリエル!〈輪舞曲〉を最大音量で奏でろぉぉ!

 

その衝撃波はいつもなら絶唱に匹敵する火力が出た。よぉし!これならちゃっちゃと片付けて次に行ける!

 

「やり過ぎよ響!少しは被害を考えなさい!」

 

「ふぇ?」

 

間抜けな声を出した私は次の瞬間に上から盛大なゲンコツを喰らって気絶した。

 

「まったく……。じゃあ後は頼むわよガリィ。そして本当に〈彼女達〉が暴れるのよね?」

 

「当たり前よマリア。それにマリア自身もターゲットの一人なんだからさっさと撤退しなさい。後はガリィと〈彼女達〉で片付けるわ。それと響はマスターの所に運び込んでおきなさい。マスターからちょ……再教育の必要性が出たらしいわ。」

 

「……響の軽はずみな言動に同情するわ。なら私達は先に帰るわね。」

 

意識のない私はマリアさんに抱えられて戦場を離脱した後にキャロル〈さん〉のラボで再教育をされる前の最後の状況はそんなところだったみたい。

 

~~響sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~ミカside~~

 

「アタシの相手はお前だゾ!一番大きいから期待してやるゾ!」

 

カマエルの戦斧と鞭を持つアタシは一際大きな首のヘビノイズを相手にする事になったゾ!

 

「まずはバラバラにしてやるゾ!」

 

斧で切り裂けば増殖を勝手に始めるからそこは鞭で逃がさずに捕らえるゾ。でもちょこまかと動かれたらめんどくさいからこの一帯を少しの間結界で覆ってやるゾ!

 

「綻べ!グロリオーサだゾ!」

 

本来なら設置型の術式だとマスターが旦那サマの昔見たアニメから教えて貰ったゾ。だけどアタシは面倒だから自分ごと相手を閉じ込めてやるゾ!

 

「とはいえなかなかしぶといゾ。このままならアタシでもジリ貧になるゾ。それじゃあつまらないゾ。」

 

悩むアタシに声をかける奴がいたゾ。

 

「はぁ。ミカ……やり過ぎにならない辺りはまだ良いですが少し派手に立ち回り過ぎよ。まあ今回はその方が都合が良いから何も言えないけどね。」

 

「ん?ファラ!なんの用だゾ?今アタシは考える事に忙しいゾ。」

 

「その件についての情報よ。敵の狙いが天使の継承者だから彼女達は撤退。その変わりに私達と〈彼女達〉が前線で大暴れよ。だからさっさと片付けて行きますわよ?」

 

「おぉ!良い事を聞いたゾ!なら早くアイツを倒して「その必要はもうないよ。」おぉ!ついにお前も前線デビューだゾ!」

 

ひたすら再生を続けたヘビも〈彼女達〉の必殺技の前だと意味をなさないゾ。何故ならそれは

 

「つい二月程前に旦那様やマスターを苦しめた御方ですからね。お願いしますわよ〈ダ・カーポ〉さん。」

 

「承ったぞ。まずはこの戦場を片付けるとしよう。」

 

〈任せなよ二人共。私達が勇君達の事だけじゃなくてその仲間達も守る事ができるなんて嬉しいねダ・カーポ?〉

 

「そうだな凛祢。次はあのやかましそうな空中艦だ。直にここへ集まる戦力で奴等を落とすぞ。」

 

そこには既に変身を済ませたダ・カーポが立っていたゾ。

 

~~ミカsideout~~



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最強の救援者

~~魔術師side~~

 

「〈ゲーティア〉戦闘続行不可能!緊急脱出します!」

 

「総員結社本部へと転移します!各自ジェムを起動しなさい!」

 

ゲーティアの乗組員はテレポートジェムを使い、墜落する艦の内部より脱出した。そしてその知らせは同時に彼女達にも届く事となる。

 

「嘘!エレンとゲーティアが()()負けたと言うの!?しかも今回は電子精霊まで連れ出したのよ!」

 

「あり得ナいわ!エレン達が負けルなんて!」

 

『此方とて想定外です。しかし事実として戦闘の続行も不可能です。今回は我々の完全敗北です。よって二人とも戦線からの離脱を推奨します!』

 

ゲーティアからの通信により主力部隊の撤退が正式に決まった。しかし彼女達ただではを逃さない者が存在していた。

 

ねえダ・カーポ……あれが最後の空中艦みたいだよ?さっさと墜落させないと勇君が落ち着けないからさぁ……殺っちゃお?

 

「ふむ。確かに目に見える脅威は排除するに限る。しかし奴等のばら蒔いた塵芥もそれなりの数が存在するな。」

 

この戦場に本当の悪魔(の様な実力のチートライダー)が降臨した。

 

「ゲーティア乗組員全員が本部への転移を確認!我々も早くこの戦場からの離脱を!」

 

「ッ!……残ったバンダースナッチト大型を全テ投下しなさい!そいツらで稼いだ時間で私達モ撤退すルわよ!」

 

随意領域(テリトリー)を最大展開しなさい!私達もこの戦線から離脱するわよ!」

 

空中艦は残ったバンダースナッチと大型アルカ・ノイズを全て投下した。そして離脱準備に入ったが、それを許す()()()ではなかった。

 

~~魔術師sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~勇side~~

 

鞠奈さんへの祈りを捧げる僕に一つの連絡が入った。相手はキャロルからみたいだった。

 

『勇……感傷中のところをすまないが、あの艦の残骸を調べて貰えないか?どうにも研究部門が奴等の装備に興味津々みたいでな。』

 

キャロルからの連絡はありがたい物でもあった。僕自身も〈鞠奈さん〉の形見になりそうな物を探すつもりだったからだ。

 

「わかったよキャロル。確か戦闘の時点でもいくつかの〈顕現装置〉は機能停止をした物があるみたいだから、まだ起動する分があればあるいは……ね。」

 

『ああ。前任者の決戦装備の一つである〈ブリュンヒルデ〉の再現にも繋げられる。そうすれば……』

 

「響達のギアの改修も行えるね。もちろん〈アマルガム〉も搭載したいけど、あるに越した事はないからね。」

 

『それに此方も遺憾だが新たな人手を確保した。よって〈ブリュンヒルデ〉の再現体の量産はソイツに全てやらせるさ。』

 

「……いつの間にホムンクルスを増やしたかは聞かないでおくけど、腕がたちそうなのはわかったよ。じゃあ見つかり次第ラボに送るね?」

 

『そうして欲しい。頼んだぞ……』

 

キャロルからの通信はそこで終了した。

 

「ゲーティアの装備は相当な技術の結集体だった筈なのに、エレンさんは自爆する素振りを見せなかった。それは機能が封じられていたのか、それとも単純に想定外だったのか……」

 

僕は一人呟きながら〈顕現装置〉の回収を始めた。そして同時に鞠奈さんの形見になりそうな物も探し始めた。

 

~~勇sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~ダ・カーポside~~

 

「さて、奴等は本格的に侵攻を開始したのかそれとも尻尾を巻いたのか……」

 

〈う~ん……後者かな?だってあまりにも散開させ過ぎだからねぇ。確実に時間稼ぎかな?〉

 

「そうか。時にアレを落としても構わんのだろう?」

 

〈殺っちゃおうよ!〉

 

私達は撤退を視野に入れた(というよりは逃げるつもり満々の)空中艦を落とす事にした。

 

「しかし塵芥が目障りだな。」

 

〈だよねぇ……。ならさアレを使おうよ!〉

 

「ふむ……アレか。確かにこの場面には適しているな。」

 

私はこの体に宿る霊力を使い数人の人物を呼び寄せた。

 

「へぇ……今回は此方側って訳ね?良いじゃない!存分に暴れるわよ!」

 

「きひひひひ!良いですわねぇダ・カーポさん!私達も存分に協力しますわぁ!」

 

「私達は彼の為にその力を振るう。彼が安心して祈りを捧げる為に……。」

 

〈あ~あ~張り切っちゃって………そんなに嬉しいの?〉

 

「お前が言うか。その胸の昂りを私と共有しているのだから当然だろう?無論私自身も昂っているがなぁ!」

 

私達は召喚したスマッシュ(というよりは再現体)に協力をして貰うつもりでいたが、今回はより本人に近い様子だった。

 

「では私達もお手伝いしますわ。後方一帯は引き受けます。貴女方は前方一帯をお願い致しますわ。」

 

「えぇ。ガリィ達に任せて貰えるかしら?もちろん其方と肩を並べるのも悪くはないけどね?」

 

「だけどそれじゃあ足並みが揃わないかもしれないゾ。だからガリィの案は却下だゾ!」

 

「地味にミカが的を得た発言をしているな。だがそれもまた一興だな。」

 

キャロル達の〈自動人形〉達だな。しかし今の状況では頼もしい限りだ。

 

「すまないが最初の案の通り後方一帯を頼めるか?私達もお前達を巻き込む事は不本意だ。勇達に申し訳ないのでな。」

 

「かしこまりました……ではそのように。そして私達と貴女方の立場は対等ないしは貴女方が上です。気遣いは不要ですので遠慮なくお申し付けください。」

 

そうか……私達と彼女達の立場はその様な距離感なのか……。

 

〈これは敬われているって認識で良いの?それともこれ以上は近づくなという警告のつもりなの?〉

 

凛祢の底冷えする声が聞こえた。あの時から凛祢は勇に対して相当な愛を抱いている。それこそキャロルに引かない程のな。

 

「もちろん前者です。貴女方は旦那様とマスターの二人がかりで挑んで尚退ける実力をお持ちの方々です。なので我々の中でも装者以上の立場と認識しておりますわ。」

 

「継承者よりも……か。凛祢も良い事を聞いたな。」

 

〈うん!張り切っちゃうよダ・カーポ!〉

 

「無論だ!行くぞぉ!」

 

散開して各々が塵芥の殲滅を始めたが、私達は艦を仕留める事にした。

 

「さて……始めるとするか。」

 

私達は逃げる艦を追うが、奴等は小賢しくも砲撃やビーム等で抵抗を止めなかった。しかしこの体を貫く程の威力でもなければ、そもそも避けられない速さではない。

故に接近するだけならば苦になることなぞ一つもなかった。

 

「戦場において逃げる標的なぞ恐れるに足らん!この一撃で終わらせて見せよう!」

 

〈全力で行くよぉ!〉

 

私達は〈ゼネベイトスネーカー〉を発動させて空中艦を追跡して追い付く事に成功した。

 

『っ!?なんて速度なの!?私達は全力で随意領域を展開してこの戦場からの離脱を試みていた筈なのに!』

 

〈私達にとってはね……貴女達が勇君に敵対した時点で殲滅対象なの。だからさぁ……早く墜ちてくれないかなぁ?〉

 

凛祢の底冷えするような声はこの私すらも怯える程の迫力があった……なんと恐ろしい事だ。

 

「では全てを終わらせるとしよう!」

 

『ッ!不味い!総員この艦を捨てて本部へ転移するわよ!無駄死には許さないわ!』

 

その言葉の後に艦より様々なタイミングで光が明滅していたが、程なくして人の気配が全て消えた。どうやら連中は艦を捨ててでも逃走する事を選んだみたいだな。

 

アハッ!!やったよダ・カーポ!アイツ等艦を置いて逃げちゃった!嬉しいなぁ!勇君の為に素敵なプレゼントをくれたんだもの!

 

この世界に到着して以来ずっと凛祢は恍惚とした状態が続いている。愛しい勇のいる世界に自分がありのままでいられる事が嬉しくて仕方がないのだろうな。

 

「ふむ。乗組員は全員逃げたようだな。では艦を損傷させずに持ち帰るとしよう。そして私達も〈顕現装置〉を再現しようではないか。」

 

私達は主のいなくなった艦を回収して勇達のもとへと向かったが、その場所には既に勇はいなかった。そして通信により先に本部へと帰投した事と、他の戦場もつつがなく敵対勢力の殲滅を終了させた報告が届いていた。

 

〈今夜は私が勇君を慰めてあげなきゃね……悪いけどその時はダ・カーポも眠っていてよ?私は今虫の居所が悪いからさぁ?〉

 

(最近の凛祢は随分と積極的だな。だがそれすらも受け入れる事が勇の魅力であり短所だな。)

 

 

(あ~あ~……そろそろ私も強硬手段に出ないとダメかなぁ……ダ・カーポも勇君の魅力を知っているんだし……。)

 

 

私達は体を共有しているが、今回のように想いを口に出さない場合はお互いの行動に目を瞑る事も珍しくはなかった。

 

「しかし存外あの世界の魔術師の実力とは、たかが知れている程度のモノだったとはな。」

 

〈口程の実力もない癖にねぇ。早く本部も潰さないとねぇ?〉

 

「抑えろ凛祢……ここは勇の世界だ。全ては勇の選択と心のままに。」

 

〈そうだね。勇君の望みを叶える事が今の私の使命で生き甲斐……そしてこの胸の昂りを鎮める唯一のお薬なんだもん!〉

 

私達は全てを受け入れる。例えこの世界に何が起きようとも勇の為になるのならば……な。



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負い目と再会

僕達はエレン達の攻撃を退けた。そしてほどなくしてステファンが来日する事が知らされた。

 

「姉さん……報告は聞いたよね?」

 

「ああ……ステファンとソーニャが来るってな。だけどあたしは……」

 

姉さんは〈あの事〉をまだ気にしている。そして僕もその事を背負うと決めてもいる。だから何が最善だったのかは常に考えるし、再会する時にはなんて声をかけるべきなのかも悩み続けている。

 

「本当に難しい事だよね……命を背負うって事はさ……。」

 

そんな僕達に声をかける人物も当然いるけど、今日の人物は予想外だった。

 

「お二人共お悩みですね。私達も一緒に考えますわよ?」

 

「あたし達も旦那サマの悩みを知っています。何なりとご相談ください。」

 

「ファラと……ガリィか。なんだか珍しい組み合わせだな。お前がこうして人に寄り添うなんてどういう風の吹きまわしだ?」

 

「あら?心外ねクリス。私達は旦那サマが心配なのよ?だけどアンタの事も嫌いじゃない……というよりは好きな分類ですらあるわ。」

 

意外だな。ガリィは姉さんみたいなタイプとは合わないと思っていた。だけどそういう感じじゃあないんだ。

 

「じゃあガリィ達は今回の件をどう見てる?」

 

「そうですねぇ……不幸な事故と思っています。本来は〈アルカ・ノイズ〉なんて遭遇する理由がありませんでした。しかしあたし達が巻き込んでしまった。」

 

「しかし彼はそんな出来事に直面しても立ち向かいましたわ。ならば彼の功績は素直に讃えましょう。また、同時にどれほど心配をされる事をしたかも伝える義務があると思いますが?」

 

なるほど……二人らしい意見だな。確かにステファンは怪我を負った。しかしそれは自分の行いの結果でもあり、彼が守ったモノの証でもある。それを伝える事が僕達の役割と言われると納得してしまった。

 

「なら僕達は謝ると同時に「アイツに説教をしなきゃいけない訳か。」姉さん!僕の話に割り込まないでよ!」

 

「あぁ?良いだろ別に。勇とあたし様の仲だ。なんならおっ始めようぜ?」

 

姉さんは本当に積極的にスキンシップを求めて来る。それを嫌いじゃない僕も大概なんだけどね。

 

「だけど良い顔になったわよクリス。勿論旦那サマといちゃついてもあたし達は何も口出ししないわ。だってマスターの姉なんだからね。」

 

「ええ。旦那様の照れる顔をマスターにお届けすればそれはそれでマスターもお喜びになりますわ。勿論マスターも同席される事があるでしょう。しかし今は手が離せないと聞いています。なので私達が精一杯フォローを致しますわ。」

 

「ありがとう二人共。じゃあ姉さん!空港に行って二人を迎えに行こう!」

 

「勿論だ!じゃあお前達に留守は任せたからな!行くぞ勇!」

 

僕達は気持ちを新たに空港へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステファン達が到着する空港にアルカ・ノイズが出現した。狙いがまだ読めないけどどうやら仕返し辺りか?

 

『精霊達に告げやがります!我々へと降伏してください!そうすればこれ以上の破壊行為はしないと保障しやがりますよ?』

 

チィ!この人混みの中での襲撃か!どれほどの命を危険に晒す気なんだ!

 

「やるしかないか!〈ガングニール!〉〈イガリマ!〉スタンバイ!」

 

僕は天使ではなくギアを展開させた。それも単騎仕様の物を選ぶ事にした。

 

『ほう……天使ではなくシンフォギアですか。しかし私達を見くびるつもりならおすすめしませんよ!』

 

「クソッ!ここじゃあたしの武器が使い難い!なんて場所を選びやがって!」

 

本当に場所が悪い。今の僕達の状況は嘗てのリディアンと同じだ。違いはここで立つメンバーと背負う命の数だけ。魔術師はそれをわかった上でここを戦場にして来たんだろう。

 

本部!こちら勇です!現在空港にて敵魔術師と遭遇しました!誘導の遅延と相性の悪さから応援を求めます!

 

《こちら司令室だ。状況は確認した。直ちに翼と調君そしてマリア君を援護に向かわせる。》

 

おかしい……司令にしては戦力の投入が弱気だ。……まさか奴らは!

 

「まさか他の地点でも襲撃が!?」

 

《ああ。響君と未来君は現在キャロル君の所におり、凛祢君と切歌君が別地点で交戦中。そしてサンジェルマン君達は現在其方のフォローに入っている。》

 

「ファラさん達の所在は!?」

 

《其方はキャロル君の所要に付き合っている報告が既に届いている。了子君は既に本部でサポートと最終防壁として待機している。》

 

キャロルの馬鹿ぁ!こんな時に何戦力を遊ばせてやがるんだよぉ!何をしてるの!

 

《すまないが連絡が取れない事には……》

 

司令のせいじゃありません!キャロルには後できちんと言い聞かせます!

 

《すまないな……。》

 

僕達は僅かな戦力で敵との交戦になるが、僕は〈あること〉に気づいてしまった。

 

「まさかその声は真那さんなんですか!なんで貴女が!」

 

すると魔術師は僕達の前に降り立った。そして首をかしげて質問をしてきた。

 

「………?ふむ。私の名前をなぜ知ってるかは聞かねーですが、とりあえずは任務を遂行します。さっさと降伏する事をおすすめしやがりますよ!」

 

真那さんは〈ヴァナルガンド〉を装備している。実力が仮にアルテミシアを下回るとして、今は場所が悪い為に頭を悩ませていると思いもよらない言葉を続けて来た。

 

「私にとってはこの世界がどーとか関係ねーです。しかしゼウス。テメーは精霊で私達の敵です。戦いの理由はそれで充分じゃーありませんか?」

 

「チィ!勇の記憶通りなら相手は〈あの人〉の実妹かよ!なんて趣味の悪ぃ事をしやがる!」

 

「兄様の事を知ってやがるのは好都合です。捕えた後でゆっくり聞かせて貰いますよ〈イフリート!〉」

 

真那さんはレイザーブレイドで斬りかかって来て、同時にアルカ・ノイズをばら蒔いて来た。僕はとっさに真那さんの剣を鎌で受け止めて、姉さんがノイズの殲滅に動いた。

 

「勇さんを援護します!」

 

「散りなさい魔術師!」

 

「なんて卑劣な事をっ!もう許さないわ!」

 

調ちゃん・マリアさん・翼さんが合流したが、真那さんは余裕を崩さない。

 

「〈プリンセス〉〈ナイトメア〉〈ベルセルク〉の片割れですか。テメー等に用はねーです。なのでこいつらをくれてやります!」

 

真那さんは更にノイズを散開させて僕達の分断を図った。そして姉さんの向かった方に真那さんは飛びだって行った。

 

「クソッ!逃がすか!」

 

僕は姉さんを助ける為に何も考えずに動いてしまった。

 

「勇!ここは私達に任せなさい!」

 

マリアさんの言葉が僕の耳に届く前に僕は移動を始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんであそこに三人が!」

 

僕が姉さんを見つけた時には、ソーニャとステファンの前に立つ傷だらけの姉さんがいた。そしてカマエルの炎で傷を修復させると胸を押さえていた。

 

「いやーなかなか粘りますねぇ〈イフリート〉。しかしテメー達も運がねーですね?私達の戦闘を見てしまったのですから。」

 

真那さんは〈随意領域〉で二人を捕えようとした。そしてステファンがソーニャを突飛ばした。

 

あがぁ!

 

「ステファン!なんで!」

 

ステファンは悲鳴をあげ、ソーニャは怯え始める。あの時の悪夢がフラッシュバッグしたのだろう。しかしステファン自身の言葉は違った。

 

なんでアンタがこんな事をするのか俺にはわからない!だけどせっかくクリスや勇にきちんと再会できそうだったんだ!それを台無しにするんじゃねぇ!

 

「はぁ…。なんてしょーもねぇですね。テメー等がしゃしゃり出なければ済んだ話です。なのに一々うるせーですよ?少し黙ると良いです。」

 

真那さんは面倒だと言わんばかりにステファンに刃を向けた。僕はそれを見て急いで真那さんを蹴り飛ばした。

 

「あがぁ!」

 

吹き飛ぶ真那さんと解放されるステファン。そしてソーニャと姉さんは互いに顔を合わせ一度頷いた。

 

「クリス!勇!私達は貴女達姉弟に感謝をしている!貴女達がいたから皆あの時に助かった!だからお願い!必ず生きて戻って来て!」

 

僕達はソーニャのその言葉に返事をした。

 

「わかった!必ず倒すからここで待っていてくれ!」

 

「後であの時のお礼をさせて欲しい!だから待っていてくれ!」

 

僕達は真那さんが戻る前にケリをつける事にした。



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門出と約束

「姉さん!彼女をここで倒す!手を貸してくれ!」

 

「ったりめぇだ!アイツを倒してソーニャ達ときちんと話し合うぞ!」

 

僕達はようやく心置きなく戦う事ができそうだ。

 

「解せねぇですね。足手まといがいるこの場所でなんでそんな顔が出きるか知らねぇですが、私は任務を果たすまでです。よってさっさと片付けさせて貰いますよ!」

 

真那さんの攻撃速度は速い。目で追う事は出来なくはないけど、その為に晒す隙が大きすぎる。

 

「勇……変身しろよ。この局面はギアじゃねぇ。圧倒的な力が必要だ。だからさっさと変身してアイツを倒すぞ。」

 

「わかったよ姉さん。時間稼ぎは任せたからね?」

 

「ハッ!なんならあたし様が倒しても良いんだぜ!」

 

「あまり調子に乗らねー事をおすすめしますよ〈イフリート〉。テメーじゃあ私には勝てねぇです。さっさと終わらせてやりますよ。」

 

姉さんが稼ぐ時間はあまり多くはない。だから急いで僕はビルドドライバーを装着してフルボトルをセットする。

 

 <〈精霊!〉・〈希望!〉ベストマッチ!>

 

 <Are you ready?>

 

 「救います!それが僕の覚悟で願いなんですから!」

 

 <繋がるココロ!デート・ア・ライブ!イェーイ!>

 

そして僕の収束礼装を形成していた力が光輝き出してアーマーを形成する。

 

「僕は〈仮面ライダーセイヴァー〉!救うと決めたモノを救う精霊で仮面ライダーです!」

 

僕の変身に真那さんは動揺していた。もしくは知らない力を恐れているのかもしれない。

 

「そのアーマーが見かけ倒しじゃねぇ事を祈りますよ!」

 

「〈四番〉と〈十番〉を展開!必ず貴女を倒して皆の安全を確保する!」

 

僕は〈ザドキエル〉と〈サンダルフォン〉を展開して剣と盾のように構えた。そして真那さんのブレイドと斬り結んだ。

 

「チィッ!流石は精霊の剣ということですか。一撃がなんておめーですかね。ならここは速さで勝負するとしますか!」

 

真那さんは高速移動を始め、更にはミサイルを乱発してきた。恐らく僕が迎撃に出て表れる隙を突くつもりなのだろう。確かに一人なら対処すれば隙が生まれた。

 

「だけど僕達は二人だ!頼んだよ姉さん!」

 

「任せろ勇!全部撃ち落としてやるさ!」

 

姉さんが迎撃に集中して僕が真那さんを倒す。今の僕達は会話をしなくてもその事を理解していた。

 

「これは……〈ユニゾン〉だ!僕達は今ユニゾンをしている!今ならいけるよ姉さん!イグナイトを使って!」

 

「任せろぉ!イグナイトモジュール!抜剣!〈ダイン=スレイフ!〉」

 

姉さんは久しぶりにイグナイトを安定して纏う事ができた。そして真那さんは〈賢者の石〉を〈顕現装置〉に取り付けて無力化を図って来た。

 

「甘いですよ真那さん!僕達は強くなる!その為には努力を惜しまない!そして僕は貴女を倒す!例えその命を絶つ事になっても!」

 

更に僕は〈シャルシュガナ〉のギアも併用し始め、完全に馴染んで来た気がしてきた。

 

「次から次へと何なんですか精霊!私の邪魔ばかり!」

 

「確かに僕達は真那さん達の邪魔をしている。だけど僕達にも背負うモノがある!だからその責任を果たす為に貴女はここで落とす!」

 

僕はサンダルフォンに、姉さんはイチイバルにエネルギーをチャージし始めた。

 

「この土壇場で隙を晒すとは舐められたモノです!なら望み通り殺してやるよ!」

 

真那さんはミサイルを僕に放ち、巻き起こる煙幕で身を隠した。確かに動揺する人は多いだろう。だけど僕達は既に次の場所がわかっている!

 

「とっととくらいなよ!あたし様の特盛だぁ!」

 

MEGA DEATH FUGA!

 

「なんて馬鹿みてーな火力ですか!〈随意領域〉で防ぎきれねーじゃねぇですか!」

 

姉さんのミサイルの火力は真那さんの想像以上だったらしく、完全に足を止めて防御体勢に入った。しかし僕は逆に動きが止まったので止めを刺すことにした。

 

「〈サンダルフォン〉の〈最後の剣〉です!この一撃で終わらせます!」

 

僕は〈最後の剣〉を放ち、真那さんの〈随意領域〉をあっさりと壊した。そして煙が晴れた時には真那さんの体からは大量の血が流れ、呼吸も苦しそうだった。

 

「ぜぇ……ぜぇ……やっぱり精霊は危険でやがります。仕方ねーのでここは退いてやりますよ……」

 

真那さんはそう言い残して転移して行った。

 

「真那さん……なんで……」

 

僕の呟きは誰にも聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう二人共!おかげでまた俺達は命を救われたよ!本当にありがとう!」

 

「すまねぇな。また危険に巻き込んじまって……。」

 

僕達はステファン達と向き合う事にした。そして言うべき事も言うつもりだ。

 

「今回もバルベルテの時もステファンは無茶をしすぎだよ。少しでも敵の意思や状況が悪ければ命を落としていた。それはソーニャさん達の事を悲しませる事だよ?」

 

「勇……確かにその通りね。でもステファンが起こした行動は……」

 

ソーニャさんは僕がステファンを責めている事に複雑な気持ちだろう。僕の語っている事はあくまでも事実だから。

 

「だけどステファンのおかげで救われた命や、立ち上がれた人達もいる。それも一つの事実だよ。だから約束して欲しい。勇気を持った行動をやめろとは言えない。だけどステファンの事を大切に思っている人達を悲しませるような無茶はやめてあげてくれ。」

 

これが僕の偽らざる本音だ。どう響くかはわからないけど。

 

「そうだな。俺の行動で姉さん達を悲しませたら意味がない。だから次は考えるよ。皆で笑える選択ってやつをよ!」

 

「きっとステファンならできるよ。そしてソーニャさんももし良かったらステファンを支えてあげて欲しい。きっとまた無茶をするからね。」

 

「わかっているわ。そして貴女達姉弟にはまた助けられた。本当にありがとうね。」

 

「じゃあな二人共。もしまた次があったら酒でも飲みながら語ろうぜ!」

 

僕達はそう言って別れる事にした。確かに次に会う時は皆二十歳を越えてるかもね。その時は笑ってお酒を飲むのも良いかもしれない。

 

「じゃあ行こうか姉さん。これから報告が大変だよ!」

 

「だけどさっさと終わらせるぞ!そして今日は押し倒してやるからな!」

 

本当に姉さんは変わらないな。



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支える者と誓う者達

~~カリオストロside~~

 

「さてジェシカ……始めましょうかしら?」

 

「今回の私達は全ての準備を終えたワケだ。そしてお前の倒し方はわかっているワケだ。」

 

「あまり舐めなイで欲しいわね。私の実力ヲ見くびらない方ガ良いわよ!」

 

ジェシカは〈随意領域〉を展開して防御を固めつつもミサイルを放つ。しかしあーし達は既にその動きを知っており、更にプレラーティは一度彼女の攻撃を身をもって味わっている。

 

「この事態ならあーしも隠し玉を使うわよ~!」

 

あーしはファイティングスタイルをとり、フリッカーにエネルギーを乗せて放った。初見でこれを受ければ今の装者達にも報いる事ができうるので、訓練までとっておきたかったが今はプライドを捨てた。

 

「ならば私も全力を注ぐワケだ!」

 

プレラーティはけん玉を使い軌道力を確保した。そしてその状態から精密操作された氷の錬金術がジェシカに放たれる。

 

「!?この出力ハ一体どこかラ!」

 

動揺する彼女だがあーし達は退く理由も負ける理由もない。だから全ての手札を晒そうとあんただけは落とさせて貰うわよジェシカ……。

 

「相手にはあーしもいるわ!だから余所見はダメよ!」

 

「援護するワケだカリオストロ!」

 

あーしが接近戦を挑み厄介な〈随意領域〉の展開を抑制し、プレラーティが退路を絶つ。そうすればあの兵力を持つリコリスは必ず活動限界に襲われるだろう。その時こそが私達の勝機足り得るので、処理に必要な情報を飽和させる事で彼女を無力化する。

 

「これが私達の覚悟と言うワケだジェシカ!」

 

プレラーティは炎と氷の錬金術を使用する。いくら〈随意領域〉があるとしても温度は人にとって重要だ。しかし今は戦闘中でそちらの調整に集中力をとられれば致命的な隙が生まれる。

 

「〈随意領域〉を用いテ状況ヲ打開……いえ迎撃をシなくては!」

 

ジェシカは温度変化への対応を諦めて私達へと斬りかかる。確かにその方が優先度は高いだろう。しかし今の集中力を欠いた彼女はもう恐くない。

 

「決めるわよプレラーティ!」

 

「任せるワケだカリオストロ!」

 

カイザーフィスト!

 

シャッテンヘルシャフト!

 

私達はタイミングを合わせて技を放ち、ジェシカは反応が遅れて直撃を受けた。

 

「嘘……ワタシのリコリスが……」

 

ジェシカの表情は切ないものだった。目的を果たせずに私達に敗北する事は彼女にとっては相当の苦痛だったのだろう。

 

「今は眠りなさいジェシカ……。必ず勇が貴女達を元の世界へ送り還す筈よ。」

 

私は彼女にこの呟きが聞こえないと知っていながらにそう言葉を残した。

 

~~カリオストロsideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~勇side~~

 

僕とキャロルでペンドラゴンを纏うエレンさんと戦う事になった。しかし恐怖は感じていない。

 

「この世界では初めてじゃないですか?その〈顕現装置〉の運用はほとんど確認されていなかった筈です。」

 

「流石〈ゼウス〉という事ですか。ええ。確かに私のペンドラゴンはまだ起動して間もないでしょう。しかしそちらも私が使う必要がなかった事を忘れていませんか?」

 

エレンさんは明らかに余裕のある表情を崩さない。そして僕達を見て更に挑発を仕掛けて来た。

 

「そして私達の宿願が果たされるまでもう間もなくです。シンフォギア装者ごときではアダムは倒せないでしょう。」

 

僕はその言動に殺気を放った。しかしそれ以上の殺気を放つ者もまた存在していた。

 

「そうか……お前は響達を見くびっているようだな。ならば教えておこう。奴等は想像以上に諦めが悪く、実力以上の奇跡を体現するオレの恋敵達だ。まあ……奴等の前ではそう言える事ではないがな。」

 

僕はキャロルの言葉に思わず笑ってしまった。そして一つの覚悟を決めた。

 

「キャロルの気持ちを知れた僕は嬉しいよ。ならその為にはエレンさん……貴女を早く下す理由が出来た。だから全力で行くよ!」

 

僕はビルドドライバーを装着して、二つのフルボトルを起動する。そして収束礼装を纏い変身の準備に入る。

 

 

 

<〈精霊!〉・〈希望!〉ベストマッチ!>

 

 

 

<Are you ready?>

 

 

 

 「救います!それが僕の覚悟で願いなんですから!」

 

 

 

<繋がるココロ!デート・ア・ライブ!イェーイ!>

 

 

 

そして僕の収束礼装に変化が始まった。礼装を形成していた力が光輝き出してアーマーを形成した。

 

 

 

「行きます……皆さんの力をお借りします!」

 

 

 

そして僕はセイヴァーへと変身した。

 

「やはり勇のその姿はいつ見ても頼もしい!ならばオレもこの力を解放しよう!」

 

そしてキャロルもあのモーションに入った。

キャロルは、メタトロンの光を集めると両手の中へと集めてグッと握りこんだ。

 

そして散り散りになった光は、黒い光へと色を変えキャロルを包み込んだ。 

 

「やはりこれは恐ろしい力だ!しかし同時にすばらしい力でもある!これが勇に並び立つオレの力だ!

 

キャロルはそう言うと闇を切り裂き姿を現した。やっぱキャロルは反転体の力すら美しく見せてくれるね。

 

「ッ!真那を下したゼウスに魔王を従えたヘラですか!良いでしょう。私が最強であると今度こそ証明します!」

 

僕達の考える事は全てが同じだった。

 

〈早く相手を下す〉それだけだ。

 

「〈サタン〉よ!オレに力を寄越せ!そして〈サンダルフォン〉よ!オレを導け!」

 

「〈五番〉と〈十番〉の展開!そして現れろ〈烈槍・ガングニール〉!」

 

キャロルは〈サタン〉と〈サンダルフォン〉を、僕は〈カマエル〉の治癒力を身に纏わせて、〈サンダルフォン〉とマリアさんの〈ガングニール〉を顕現させた。

 

「ッ!!〈魔王〉力を持つ〈ヘラ〉は〈天使〉との併用を、〈ゼウス〉は〈イフリート〉の治癒力と〈プリンセス〉の剣……更にはシンフォギアの槍ですか!ですが先程も言った通り私は退きません!エリオットとアイクの分まで私は果たすと決めたのです!」

 

エレンさんの動きはとても素早い事がわかっていた。だから僕達はその速度に対して一撃で勝負をつける事ができる力を纏った。

 

「しかしいつオレ達の動きを遅いと決めつけた!貴様の動きなぞ目で追えるぞ!」

 

キャロルはエレンさんの動きを完全に見切っていた。そして高速で動く彼女に鍔迫り合いを仕掛けた。

 

「なんて力なのですか!これが天使の力だと言う筈がありません!私達は嘗てその実力を知っています!あの時の彼女達と貴女達は何が違うと言うのですか!」

 

キャロルの剣を受け止める為に余程の集中力とエネルギーを使う事が僕の目で見ても明らかだった。しかし彼女の相手はキャロル一人じゃない。少し卑怯と思うけど僕達にも負ける訳にはいかない。背負うモノがあるんだから。

 

〈HORIZON†SPEAR!〉

 

「それだけじゃないよ!」

 

〈最後の剣!〉

 

僕が放った技はマリアさんの得意技の一つ〈HORIZON†SPEAR〉と〈サンダルフォン〉の大技にあたる〈最後の剣〉だ。今のエレンさんに素早い攻撃を避ける力と余裕はない。その攻撃は彼女の理解を越えて叩き込まれる事になった。

 

「あぅ!なぜ私は無様に膝をついている……。

何故貴方達はここまで強くあれる!

 

エレンさんは何故慢心を捨てた自分達が悉く負けていくのか理解ができていないみたいだった。そしてその答えを告げるのはキャロルだった。

 

「魔術師のトップよ……覚えておけ。オレ達は自分の中に絶対に譲れないモノが存在している。何を犠牲にしても離さず、何を言われても折れないモノが胸の中より沸き上がる。人はそれを〈〉と呼ぶのだ。」

 

「〈愛〉……?そんなモノの為に私達の悲願はまたも邪魔されたと言うつもりなのですか!そんな事で納得ができる訳!」

 

エレンさんは幾度となく士道さん達に邪魔されてきた時の記憶と、この世界で僕達と戦った時の記憶が許せないと言わんばかりにミサイルを乱雑に放ち、ブレイドを振り回した。しかしその攻撃に恐怖を感じる事はない。

 

「終わりにしましょうエレンさん。」

 

僕は霊力を右足に注ぎ込んだ……そして一度跳躍する。

 

「勇……早く決めてやれ。」

 

「わかったよキャロル……これで終わらせる!」

 

〈スビリチュアルボルテックフィニッシュ!〉

 

「ひぃ!防御性の〈随意領域〉を全力で展開!この一撃はしのがないと!」

 

嘗てあの世界で七海さんと合わせた必殺技だが、今回は僕一人で放った。そしてその一撃はエレンさんの〈随意領域〉を軽々と破壊しても勢いを落とす事なく彼女に直撃した。

 

うああああああああ!!!

 

衝撃に耐えられないエレンさんの体はカリオストロ師匠達の戦場の方角へと向かった。

 

「少しやり過ぎたかな。」

 

僕達は急いでカリオストロ師匠達の元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう!ビックリするじゃないの!まあ手間も省けたから良いわ。」

 

僕達が到着した時にはエレンさんとアルテミシアさん、そしてジェシカさんが無力化されて拘束されていた。

 

「さっさと始めてやるワケだ。その方が彼女達の為になるワケだ。」

 

「わかりましたプレラーティ師匠。〈ミカエル〉……〈開〉だ!」

 

ミカエルで開いたゲートに僕はエレンさん達を送り込む。

 

「貴女達のした事は許される事ではありません。しかしあの世界では未来を掴める事を祈っています。」

 

僕はそう呟きゲートを閉じた。

 

「さて……オレ達も早く合流するぞ。ヴァイスハウプトの事だ。恐らく次の段階へと手を進めるだろうな。」

 

僕達は響達が戦う場所へと視線を向けた。するとその方角で神の光が降臨する様子がわかってしまった。



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儀式の始まり

~~魔術師side~~

 

「戻りましたか真那。ではこれより儀式を始めます。」

 

「長かったね……この時が。だけど始まるのさ……僕達の悲願がね。」

 

私達は生け贄が足りていない事に気がつきました。しかしこちらの戦力を割くつもりはありません。なので真那を負け戦に送り出し、手負いの彼女を生け贄にする事にしました。

 

「ごめんなさい真那。私達の悲願の為にその命を貰うね。」

 

「アルテミシア!何を……」

 

アルテミシアが真那の意識を刈り取り生け贄の祭壇に設置、そして私達はレイラインマップを使い〈神の力〉を降臨させる準備を終えました。

 

「アイク……エリオット……もうすぐですよ……」

 

~~魔術師sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~勇side~~

 

『アルカ・ノイズ及びバンダースナッチの反応を検知しました!装者達は至急現場に向かってください!』

 

友里さんから届いた一報は驚く物だった。正直に言うと原作四期の敵は師匠達だったが、僕がその未来を変えてしまったので敵の次の一手が予想出来ないでいた。

 

「クソッ!僕が動かなかったら敵の狙いがわかっていたのに!余計な事をしたばかりに後手に回ってしまった!」

 

嘆く僕は後ろから優しく抱きしめられた。その人物を確認するために振り返ると師匠達が立っていた。

 

「勇……自分を責める事はないわ。貴方は自分の信念に基づいて行動したし、そのおかげで私達は過ちを必要以上に重ねなくて済んだのよ?」

 

「そもそもこんな事態を引き起こした原因はあーし達にあるわ。だからケジメをつけるのもあーし達でなくてはならない事もあるのよ?」

 

「私達も自分達が果たすと決めた事を遂行するワケだ。その為の障害は覚悟していたワケだ。」

 

「サンジェルマン師匠……カリオストロ師匠……プレラーティ師匠…………。」

 

僕は言葉が続かなかった。しかし師匠は言葉を続けて来た。

 

「ならば私は勇が後悔している事の精算に付き合うわ。それがこの事態を引き起こした者として……そして貴方の師匠としての責任という物よ。」

 

「ならばオレ達でヴァイスハウプトを討てば良いだけだ。そして〈神降ろし〉とやらの妨害をすれば良い。そうだろう?」

 

キャロルの投げかけた言葉は僕達のやるべき事を明確にした。ならば後はそれを果たすだけだ!

 

「司令!僕からの提案があります!」

 

僕は司令に人員分けの提案を行う事にした。

 

「僕・サンジェルマン師匠達とセレナさんの旧パヴァリア組とキャロルで魔術師達を抑えます……いえ、倒します!」

 

「ならば響君達装者七人でアダムを討つと言う事か……。確かに戦力の投入は検討しているが些か少ないと思われるのだが……。」

 

確かに今の戦力に対しては明らかに人員が少ないだろう。だけど今この展開において僕達錬金術師組はケジメをつける必要がある。だからここは譲れない。

 

「すみませんがこれは僕達のケジメです。それに僕達は響達がいつまでも守られるだけのお姫様じゃない事も知っています。だから約束します。僕達がケジメをつけたその時は全力でアダムを討ちに合流します。」

 

「そうか……ならばわかった!お前達の思うようにやって来い!そして全員で帰って来い!

 

司令はなんてお人好しなんだ……なら僕達もその信頼を裏切る訳には行かないな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕達はオペレーターの指示により示されたポイントへと到着した。そしてそこには倒すべき人達が万全の状態で集まっていた。

 

「ようやく現れましたか〈精霊達〉。では始めましょう?私達と貴方達の信念のぶつけ合いを!」

 

「皆!世界を守る戦いだ!頼んだよ!」

 

「任せてよ勇君!私達は負けない!」《b》

 

《b》「貴方の帰りを待つ乙女として……そして一人の防人として恥じないように戦うわ。」

 

「愛しい弟の合流を前に倒れるつもりはねぇ!全力で行ってこい!」

 

「私達が信じた勇さん達が!」

「安心して戦えるようにする事が!」

 

「私(あたし)達の役目(デス)!」

 

「ここは私達に任せなさい!それが役目なんだから!」

 

「いいえ……ここで倒しましょう?私達の強さを勇君達にわかって貰うチャンスなんですから!」

 

「ありがとう皆……ここは任せた!」

 

僕達は言葉を交わし、各々の相手との戦闘をするべく分断を始めた。

 

~~勇sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~サンジェルマンside~~

 

私とセレナはアルテミシアと対峙している。今の彼女は結社にいた頃よりも遥かに強い。だから私達は彼女を引き受ける事にした。

 

「貴女達二人……ね。〈ゾディアック〉となったサンジェルマンと〈ハーミット〉となった新参者……か。私を相手にするのに戦力を集めるのはわかるけど、あまりジェシカを舐めない方が良いわよ?彼女だって私程じゃないとはいえ充分強いんだから。」

 

「それはこちらの台詞よアルテミシア。あまりカリオストロとプレラーティを舐めない事ね。彼女達は私の友であり、肩を並べる存在よ?それに勇の師匠であり、一度雪辱を味わった相手を彼女達が見くびると思わない事ね?」

 

「お二人を心配される前にご自身の心配をしてはいかがですか?貴女も充分不利なのですから?」

 

アルテミシアは余裕を崩さない。まるで想定通りという事かしら?

 

「なら始めようよ。〈本当の殺し合い〉ってのをね!」

 

〈アシュクロフト〉を用いた彼女の動きは素早い。故に私達もファウストローブと礼装の併用を始めた。

 

「〈スペルキャスター〉スタンバイ!〈ミカエル〉を展開!絶対にここで落としてみせるわ!」

 

「〈クラウ・ソラス〉起動!〈ザドキエル〉解放!貴女を倒します!」

 

私達はお互いに臨戦体勢だ。だから先に動けば何かしらの変化は訪れる。

 

「アイスメイク!〈ホーク!〉そして〈ローゼンメイデン!〉」

 

「ッ!なんて数の鷹と薔薇なの!?しかもそれを氷で造形するなんて!」

 

迫り来る氷の鷹と薔薇は確実に彼女の想定外の攻撃だった。恐らくこんな発想をする能力者は結社にはいなかっただろうし、元の世界ではまずいなかったはずだ。だから対処するまでの判断が遅れる。

 

「相手はセレナだけではないわよ!〈無限の銃弾!〉」

 

「ッ!その銃弾には何かしらの仕掛けがあるわね!防御すら遠慮したいわ!」

 

アルテミシアは動揺しながらもセレナの鷹を撃ち落とし、薔薇を回避した。そして私の銃弾は薔薇に当たるとその内部から無数の短剣が飛び出した。

 

「銃弾の中に仕込まれた短剣……〈随意領域〉で防げても数回止めれば恐らく内部構造がボロボロになるね。回避して正解だったよ。」

 

「それはどうかしら?既に私達は次の一手は打ってあるわ。凌げるものならやってみなさい!」

 

「それは……どういう……!まさかこの空間が!?」

 

「えぇ。外界と隔離したこの空間は現在も温度が下がり続けているわ。貴女の〈随意領域〉が後どのくらいもつかはわからないけど、そう長くは持たない筈よ?」

 

人間にとって〈温度〉とは絶対の法則を持つ。冷気に晒され続けて体温を失えば体は震えだし、果てには凍死する事例すらあるのだ。そしてそれは魔術師であろうと例外ではない。いずれ彼女にも限界がくる筈で、その前に勝負を決めに来るだろう。

 

「決着を急ぐ理由が出来たよ!直ぐに落としてあげるから!」

 

動き出した彼女だがやはり先程よりも〈遅い〉。それは彼女自身ではなく、その〈随意領域〉こそが急激な温度変化の影響を受けている為だ。

 

「その動きは貴女のイメージよりズレています!つまり貴女の視線の先が攻撃範囲であり、そこにたどり着くまでの誤差を狙えば攻撃は届かない!」

 

「援護するわセレナ!〈炸裂弾!〉」

 

私はアルテミシアが回避しうるルートに炸裂弾を放つ。しかもこれは只の弾ではない。着弾した物に重りを付与する弾を仕込ませた。

 

「恐らくサンジェルマンの弾は拘束用の筈!だったらハーミットの方を狙えば!」

 

「その動きは読めています!〈絶対切断!〉」

 

アルテミシアはセレナに斬りかかったが、その動きはもはや目で追える程に遅くなり、セレナは何事もなく受け止め、反撃の一撃を加えた。

 

「嘘……私の〈アシュクロフト〉が……」

 

彼女の〈顕現装置〉はセレナの一太刀で破壊され、更には氷漬けにより体の自由を奪われた。

 

「こっちは終わらせたわよ勇……カリオストロ達……。」

 

私達は装置者達の援護に向かう事にした。局長に制裁を加え、私達を騙した報いを受けさせる為に。



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神の力

~~翼side~~

 

私達はパヴァリア光明結社統制局長の〈アダム・ヴァイスハウプト〉と対峙し、神の力の降臨を阻止するつもりでいたわ。だけど私達の到着時には既に準備が終わっており、〈自動人形〉を依り代に神の力が宿る直前だった。

 

「遅かったね……少し。だけど見ていくと良いよ……せっかくだからね。」

 

彼は笑みを浮かべながら私達に語りかけた。

 

「何故貴方はこんな事をするんですか!わざわざこんな事をしなくても!」

 

立花は何故彼がこの力に拘るのか問いただすつもりだった。そして彼は律儀にも私達に答えてきた。

 

「せっかくだから伝えておくよ……僕の目的を。神々に復讐するのさ……この力で僕はね!」

 

「神々に復讐……?」

 

「なんて恐ろしい男……」

「マジでヤバい奴デスね。」

 

「そんな事って……」

 

マリア・月読・暁・小日向も疑惑の反応を示し、私自身も正直状況を理解しきれていないわ。だけど彼は更に驚きの言葉を告げてきた。

 

「通過点なんだよ……この儀式はね。彼女を破壊するのさ……手始めにね。」

 

「〈彼女?〉貴方は何を言っているの!まるで今もこの世界に神の生き残りがいるかのようなその発言は!」

 

「いるんだよ……本当にね。だけどそれは僕の役目だよ……譲れないね。」

 

アダムが言葉を終わらせると人形が本格的に輝き出してまさに力が宿ろうとした瞬間に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

起こっているんだい……何が?

 

今です翼さん!合わせてください!〈S2CAヘキサゴンバージョン!〉

 

響がこの隙に〈S2CA〉を発動させて、私達はエクスドライブに至り完全礼装を纏った。

 

ア……ダム……

 

人形はそう呟き崩れ落ちた。

 

ふざけるな!ふざけるなふざけるなふざけるなぁ!何故邪魔をされる……ここにきてぇ!

 

その答えを告げたのは槍を投げた人物だった。そしてその姿はこの場所にいる全員……特に私と立花が動揺する事になった。

 

「久しいな〈完成体〉。しかし貴様の願いを叶えるつもりは我にはない。この世界の我を屠ろうとしたお前には……な。」

 

何故ここにいるの奏!

何故ここにいるんだいシェム・ハ!

 

奇しくも私とアダムの声は重なった。

 

「どちらの問いも答えは否である。我の名は〈シャルロット〉だ。そして貴様の探していた物はこれだろう〈完成体〉?」

 

そう言うと奏は懐から腕輪を取り出して砕いた。

 

「あんまりだろう……それは。どうすれば良いんだい……僕は?」

 

崩れ落ちるアダムに奏は炎の球体を操りその体を包んだ。そしてその時アダムは悲鳴を上げ始めた。

 

あり得ない!あり得ないよ!完璧だった筈だよ!僕の計画は!なのに……なのにこうなったのは何故だぁ!何を間違えたんだ!僕はあぁぁぁぁ!

 

炎が消えるとそこにはアダムだった何かが存在していた。

 

「さて……では我の説明を始めよう。先程も言ったが我の〈今〉の名前は〈シャルロット〉である。そして嘗ての我の名は〈シェム・ハ〉……人が仰ぎし神代の改造執刀医……それだけだ。」

 

その言葉で一気に雰囲気が重くなり、皆はより強い警戒をした。しかし当の〈シャルロット〉と名乗る奏は戦闘態勢に入らない。何か理由があると言うの?

 

〈悪いんだけどさシャルさん……一度あたしと変わってくれない?どうせ勇君達が揃って始めるんだからさ。〉

 

「えっ?奏?どういう事なの!?」

 

すると奏は雰囲気が変わり、私達がよく知る〈天羽 奏〉の雰囲気へとなった。

 

「じゃあ勇君が来るまでの間にあたしの名前だけ明かすぜ?あたしの名前は〈天羽 奏〉だ。ただし異世界の……な。」

 

「異世界の奏……さん?」

 

響の言葉は誰もが呟きたい言葉であり、私達は余計に混乱してしまった。

 

「ならあとは勇君達が来た時に話すよ。それまでは皆ゆっくりしていてくれよ?」

 

私達は訳もわからないままに勇達の合流を待った。

 

~~翼sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~勇side~~

 

僕達が姉さん達と合流するとそこには困惑している響・翼さん・姉さん・切歌ちゃん・調ちゃん・未来と、状況を把握しようとするサンジェルマン師匠とセレナさんがいてその視線の先には〈天羽 奏〉さんがいた。

 

「なぜ……ここにいるんですか?奏さん!

 

〈やっと会えた……〉

 

小声で何かを呟いた奏さんが僕を抱き締めた。……何が起こっているんだ?

 

お前は何者だ!勇になぜ抱きついている!そこはオレの指定席だ!今すぐ勇から離れろぉ!

 

「ごめんなキャロル・マールス・ディーンハイムさん……ほらシャルさんも謝ってくれよぉ。絶対勇君達に誤解されたからさぁ!」

 

奏さんが僕に抱きついてキャロルが激怒、だけど奏さんはもう一人の奏さんに謝罪を要求している……何が起こっているんだ?(二回目)

 

「とにかく全員揃ったわね。ならば説明して貰うわよシャルロット……いえ、〈シェム・ハ〉さん?」

 

師匠が冷静に話を切り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~15分後~~

 

「それじゃあ改めてあたし達の自己紹介を始めるぜ?あたしの名前は〈天羽 奏〉だ。ただし異世界のって付くし、実は今から紹介するシャルロットさんに命を助けて貰ったガングニールのシンフォギア装者さ。」

 

〈そして我の名はシャルロットだ。嘗ての名前はシェム・ハだ。そして我はこの世界のシェム・ハではない。〉

 

「なんだと!?お前達はこの世界の〈天羽 奏〉でも〈シェム・ハ〉でもないと言うのか!ならばどこの世界の人物だと言うんだ!答えろ!」

 

キャロルは想像以上に動揺していた。正直僕がシェム・ハさんに好かれた理由がわからない。そうしていると説明できる人物が転移してきた。

 

「その気配……やはりお前かシェム・ハ。やはりあの時に感じた気配はお前だと言うのだな?」

 

「ダ・カーポさん?どういう……意味……ですか?」

 

僕はその意味を知るべく彼女に尋ねたけど、答えは返って来なかった。

 

「お前は気づいているんだろうキャロル?」

 

その言葉でキャロルは全ての点が線に変わった顔をしていた。

 

「やはり……そうなんだな?〈あの時〉の人物がこの二人だと言うのだな?」

 

「ねえ?どういう意味なの?なんで三人はわかっているの?」

 

僕の言葉を聞いてダ・カーポさんは〈やはり〉といった顔をした。

 

「その為には嘗ての〈凶禍楽園〉の話をしよう。恐らくだがそこの天羽奏は嘗て私の住んでいた世界の奏だ。違うかシェム・ハ?」

 

「シャルさん……あたしの体を貸すよ。おもいっきり話してくれよぉ!」

 

〈感謝するぞ奏。〉

 

すると奏さんの雰囲気が少し重くなった。

 

「さて……その質問だが答えは肯定だ。しかし巫女よ……今の我の名はシャルロットである。覚えておけ。」

 

「了承した。そしてシャルロット……お前は勇の世界の存在ではないな?しかし関わりのある人物のいた世界の筈だ。違うか?」

 

「その質問の答えも肯定だ。我は閉じられた未来のシェム・ハだ。具体的には巫女よ……お前を倒す為に、勇とキャロルが共に肩を並べて戦った戦士である〈白黄 七海〉の世界の〈シェム・ハ〉それが我だ。」

 

「七海さんの世界の……シェム・ハさん?……でもどうして?」

 

僕の予想を大きく外れた答えが出てきた。まさかここで七海さん達の名前が出てきたなんて……。

 

「七海の世界のシェム・ハか。しかしなぜここで……。」

 

「すまないキャロル。その〈白黄 七海〉とは何者だ?」

 

師匠の問いは最もだった。だからキャロルは異世界での戦いをかいつまんで師匠達に説明するためにザフキエルを呼び出した。

 

「全員に一度に伝える為に〈十の弾〉を使う。受けとれよ!」

 

キャロルは全員に〈十の弾〉を放った。すると皆大雑把には理解してくれた。

 

「これが勇の体験した異世界なのね。よ~くわかったわ。あーし達もその功績には驚いたわよ?」

 

カリオストロ師匠が少し空気を和やかにしてくれたが、ここからが説明の本番だった。

 

「我は七海の世界では存在する事がなくなっていた。しかしあの時の戦いは偶然にも他の世界を観測した。それが勇……お前の世界だ。」

 

「僕の世界……まさかシャルロットさんはギャラルホルンを通じてあの戦いを……?」

 

「勇は我の事を〈シャル〉と呼んでくれ。そしてその通りだ。楽園での戦いを通じて勇は自らの信念を示した。しかしそれは我も見る事が出来たし、我も勇の心残りを救いたいと考えた。」

 

〈それがあたしだよ。あたしは翼とライブをしていたけど、了子さんの企みでノイズに襲われた。そして絶唱を使い命が果てる時にシャルさんに助けて貰ったんだ。〉

 

「それが奏さんがここに立つ理由なんですね。でも……僕が好かれた理由は……?」

 

「簡単だ。勇は自らに見返りを求めずに救うと決め、行動に移し続けた。神代にもそういた訳ではないタイプだ。そして天使の輝きに我は見いられた。そしてその瞬間に我は〈愛〉を知った。勇……お前が教えてくれたのだ。」

 

シャルさんの顔はとても美しく見えた。

 

「ならば私は問いかけよう。〈バラルの呪詛〉とはなんだ?」

 

「神代の時代に我を封じる為に〈エンキ〉が残した封印だ。改造執刀医である我を……な。」

 

「確かシャルさんは言語の中に潜む事が出来た筈です。だからエンキさんはやむを得ず呪詛を起動したんですよね?」

 

「然り。あの封印は強固な物だ。精神を呪詛に、肉体を先程の腕輪に封印した。まあこの世界の我は先程封印を壊したのでいずれ復活するであろうな。その時が勇達の〈最後〉の戦いになるだろうな。」

 

アニメで観た戦いか。そして僕が知っている!範囲の最後……僕自身の未来なんだろうな。

 

「お二人は僕達と行動を共にしませんか?」

 

「ありがたい申し出だが断るとしよう。我等はまだするべき事がある。その時に再び出会うとしよう。」

 

〈じゃあな勇君……案外可愛い顔をしてるよな!〉

 

二人はそう言うと姿を消した。そして僕達は最後の敵を見据える事になった。



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設定集 来る異世界の魔術師編

これにてAXZ編を完結とします。


〈SONG所属の基本戦力〉

 

◯雪音 勇

 

本作品の主人公にて精霊で仮面ライダーになった男。

 

・コラボ編で貰った変身道具は最強の切り札だけど、キャロルも同等の力が有るので条件は凡そ同じ。

・前世エピソードは作者自身の事を少し改竄してネタにした。

・パヴァリア組とのパイプは未だに健在なのでその手の出来事にも強い。

・本作品ではオリジナルの識別名として、ケルビエルの力から〈ゼウス〉とする事にした。

 

◯キャロル・マールス・ディーンハイム

 

圧倒的実力を誇るヒロインで、ビルドドライバー等が揃えばブラッドにも変身できる。

 

・もちろんメインの切り札は反転体の力なので、普段はそちらが主になる。

・番外編にてようやくひびみくの調教を終えた。長い道のりだった。

・識別名は勇が〈ゼウス〉ならその伴侶にあたる〈ヘラ〉としたが、反転体の事を考えた時にこれしかないと理解した。神咲胡桃さんありがとうございます!

・調教時に戦力がヤバくなったのは彼女のせいである。

 

◯立花 響

 

原作主人公にて反逆者の筆頭。しかし本気のキャロルによる調教でな服従を誓う事になった。

 

・ぶっちゃけ四期の時期がずれた事で課題の提出は間にあったし、講師の皆さんは頭が良すぎるので逃げられない。

・ただし元の残念ポイントの改善はされなかったので人への呼び方は変えられない。

・もはやオチの担当と化した。

 

◯小日向 未来

 

一応最強の装者ではある。しかし異世界から帰って来た二人のスペックに追い付けなくなった。

 

・広域殲滅能力と搦め手を多用するスタイルを基本的にはとるが、戦闘描写がほぼ勇君達に取られてしまい序盤~中盤までの活躍で終わってしまった。五期に期待。

・番外編にて響の巻き添えで調教されたが、実は響よりもしっかり影響を受けている。

・他装者からは背中を狙われる事もしばしば。

 

◯風鳴 翼

 

比較的優遇されたヒロイン。口調はデートの頃から乙女に戻りつつある。

 

・隠密行動や避難誘導を担当する事が多い。

・出国時には殿を勤めたので、陰ながらの活躍は多い。その為にキャロルからの評価は意外と高い。

・奏の再登場に一番動揺した装者。

 

◯雪音 クリス

 

バルベルテにはトラウマしかない。そしてまた過ちを重ねたと心を痛めた優しいお姉ちゃん。

 

・でも勇も心残りがあった為に二人で乗り越える決意をして何とか立ち上がる。

・何故か兵器との戦闘が多発した四期では彼女の働きは大きい。

・勇君を押し倒す機会は当然虎視眈々と狙っている。

 

◯マリア・カデンツァヴナ・イヴ

 

人手が足りなければまず呼ばれるのは彼女。だって〈八の弾〉があるからね。

 

・機械の操縦から身の回りのお世話まで何でもできる(ように見える)お姉ちゃんだが、勇に一番甘えたい。

・〈Linker〉のくだりがなくなってしまい出番も必然的に減ってしまった。

・響にゲンコツを下して回収したのは彼女だが、実はガリィとの仲は悪くはない。

 

◯月読 調

 

基本的には切歌と行動を共にするが、単独行動もこなせる程度には実力が向上している。

 

・出番がめっきり減った被害者。

・戦力が増えすぎた弊害である。

 

◯暁 切歌

 

此方も単独行動が可能な程度には能力が向上している。

 

・日常パートでもっと出番を増やせなかったのは作者の後悔。

・ラファエルとイガリマの親和性は高く、更には頼れるオペレーターが付けば恐ろしい程のトラッパーに化ける。

 

※ザババコンビがユニゾンした場合は勇とクリスの姉弟コンビ以上の連携力を誇る。

 

◯風鳴 弦十郎

 

頼れる司令!いつもサポートを欠かさないOTONAの鑑です!

 

◯緒川 慎次

 

裏方サポートありがとうございます!

 

◯フィーネさん

 

三種の完全聖遺物が復活した巫女。しかし主に活躍したのは二コルベルの撃破のみ。それでも充分ヤバイけど。

 

・時々未来を後ろから狙っている。ちなみに正面きって挑んでも絶対的に相性が悪く勝てない。

 

◯友里 あおい

 

頼れるオペレーターさん!あったかい物ありがとうございます!

 

◯藤堯 朔也

 

優秀な人なので任務外の方が忙しい時があるらしい。主に女性装者からの頼まれ事が多い。

 

◯エルフナイン

 

改造や強化で働きづめの裏方。ただし癒し枠も兼任している。

 

◯ノエル

 

出自はご存知アプリ版のイベントだが、此方においてはキャロルすらももて余す、優秀さを間違えた爆弾。

 

・ちなみに性別は女性で、ガリィと出会ってはダメなタイプ。

 

◯園神 凛祢

 

コラボ章より参加したニューヒロインだが、四期開始時点で既にヤンデレでコラボ章の黒幕の一人。詳細は該当の章で確認をお願いします。

 

・ブラッドに変身する時はダ・カーポに意識を渡すが、主人格は彼女。二度と精神攻撃は受けない。

 

◯ダ・カーポ

 

コラボ章の最強の黒幕。しかしブラッドの変身者として、更には勇君が救うべきと定義した事で救済された彼女。

 

・その実力はコラボ章の閲覧をお願いします。

 

 

〈自動人形の方々〉

 

◯ファラ・スユーフ

 

番外編でも本編でも頼れる従者。勇が困った時は実は彼女にまず相談する(キャロル関連の出来事が主)。

 

◯レイア・ダラーヒム

 

派手を好む彼女だが、地味な仕事こそ最も効率的にこなしてくれる。

 

◯ミカ・シャウジーン

 

好戦的で頼もしい重要戦力。だいたい彼女一人でユニゾンなしの装者二人分の戦力にはなる。

 

◯ガリィ・トゥーマン

 

番外編にはコレクションが増えてウッキウキの従者。もちろん主の醜態すらも楽しむ。

 

・ノエルと出会ってはいけない。主の胃が悲鳴をあげる。

 

〈パヴァリア光明結社〉

 

◯サンジェルマン師匠

 

見せ場をようやく貰えた師匠。実は勇君を押し倒す機会があったら行動していたレベルの好感度保持者。

 

・手に入れたミカエルを直ぐに使いこなせる。

 

◯カリオストロ師匠

 

実力派師匠で実は近接戦闘の技術をジェシカ戦まで隠し通していた。

 

◯プレラーティ師匠

 

同じ相手には二度負けない研究者でもちろん実力派。

 

◯セレナ・カデンツァヴナ・イヴ

 

ザドキエルの継承者で油断が目立つ愚か者。胸に秘めた想いはかなりのモノへと変わっている。

 

・聖遺物の〈クラウ・ソラス〉を獲得した。

 

◯ヴァネッサ・ディオダティ

 

ノーブルレッド所属で師匠達の協力者。

 

◯エルザ・ベート

 

ノーブルレッド所属で師匠達の協力者。

 

◯ミラアルク・クランシュトウン

 

勇の過った噂(ある意味では真実)を垂れ流した張本人。その裏には叶わぬ恋心があった事をまだ本人は語らない。

 

◯アダム・ヴァイスハウプト

 

ご存知の全裸だが、本作品ではまさかの出落ち同然の扱いを受ける。まさかのシェム・八が復活していたからね。

 

・真の姿に戻る前に消失させられた。憐れな男である。

 

◯アン・ティキ・ティラ

 

アダム大好きな自動人形。ただしガングニールの槍に貫かれて破壊された。

 

〈異世界の魔術師〉

 

◯エレン・M・メイザース

 

今回の実質的なラスボス。しかし戦闘描写は二度しかない。向こうの世界では最強の魔術師。

 

・〈ニコルベル〉や〈或守 鞠奈〉の召喚等、原作以上の戦力を保持し、専用の顕現装置の〈ペンドラゴン〉の使い手だが、相手が悪過ぎた。

 

・〈ゲーティア〉二度目の敗北ももちろん想定外の出来事である。

 

◯アルテミシア・ベル・アシュクロフト

 

エレンを支える魔術師だが、その相手は覚醒したサンジェルマン師匠とセレナさんのパターンや、勇とキャロル等相手には恵まれなかった。

 

◯ジェシカ・ベイリー

 

もはや見せ場らしい見せ場さえない敗北キャラになってしまった。申し訳ありません。

 

◯アンドリュー

 

描写不要で倒された犠牲者。噛ませ犬担当。

 

 

◯崇宮 真那

 

〈ベルゼバブ〉の能力より呼び出された彼女の再現体。そして儀式の生け贄にされた。

 

◯或守 鞠奈

 

※本来は魔術師ではないが、今回は此方で解説。

 

〈電子精霊〉の彼女。その出自はデアラ二期終了後にエレンとアイクが二亜の力から再現した為に本来は士道さん達の敵だった。

 

・しかし今回召喚された彼女は、〈凛緖リンカーネイション〉の鞠奈ルート後の〈ルーラー・或守鞠奈〉の様子。

・勇に開放された時に礼を告げるが、心に傷を残して行った。

 

◯ニコルベル

 

※此方も本来は魔術師ではない。

 

〈ラジエル〉の反転体〈ベルゼバブ〉から作り出された少女達。通常兵器の攻撃では倒せない。

 

・しかし例外として〈ラジエル〉の力が使えるメンバーの攻撃は確実に通る。

 

〈平行世界からの人物〉

 

◯シャルロット(平行世界のシェム・八)

 

此方はコラボ当時の神咲さんからいただいたキャラの一人。勇君のヒロイン枠で採用する場合にこのタイミングしか用意できなかった。

 

・(平行世界の)奏さんを救済してケルビエルを獲得させる。

・平行世界での戦いを見た事が惚れたきっかけ。そしてその歪みを利用してこの世界へとやって来た。

・勇君に会う為にアダムの企み全てをぶち壊した。この時に神の力は地上のレイラインに流した。

・勇君と五期で再会を誓う。

 

◯天羽 奏

 

シャルロットさんに命を救われた平行世界のシンフォギア装者。

 

・現在、適合係数の問題は解決済みとなっている。

・シャルさんの恋が実る事を応援している。

・五期で再登場する事が確定している。

 

 

〈バルベルテの人物〉

 

◯ステファン・ヴィレーナ

 

バルベルテで勇達を助けてくれた英雄の一人であり、周囲の心配や不安を募らせた愚者でもある。

 

・英雄としての側面は人質の救出やクリスへの叫びが該当する。

・愚者としての側面は姉やクリス等の自らを守る存在に対して、危険行為に及び怪我を負い不安やトラウマを刻み込んだ事が該当する。

 

◯ソーニャ・ヴィレーナ

 

2035年にバルベルテで雪音姉弟が生き別れた顔馴染み。そしてステファンの姉として再会した人物。

 

・夫妻を危険に巻き込んだ事を悔やむも、ステファンを危険に巻き込んだクリス・勇の姉弟に複雑な心境だった。

・しかしステファンの勇気を信じると決めた為にこれからは前を向いて歩けると思われる。

 

〈現在の継承者達の状態〉

 

ぶっちゃけ天使を継承してからは体に変化が発生し、能力の向上がされ続けた。〈バラルの呪詛〉?何だっけ状態。現在は神獣鏡の光を浴びるより勇の霊力が体の内部構造を変化させた模様。




次の更新で五期編を一気に更新します。
順番でみたい方は更新後に一話ずつ確認をお願いします。


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XV その輝きがさし示すは……
護国の鬼が動く


~~ヴァネッサside~~

2044年12月某日

 

私達は結社がサンジェルマン様による解体の際に〈風鳴 訃堂〉にコンタクトを受けた。

 

「貴様達が常人では無いことも、その身を保つ為に特別な血液を欲していることを儂は知っている。大きな組織とは崩れると再建には時を要するであろうな。しかし儂等ならば支援ができる。この意味はわかるな?」

 

私達は三人で顔を見合わせた。そしてこの状況こそが勇様の見た展開なのだと確信をした。

 

「なるほど……とても光栄なお話です。確かに今の我々を支援してくださる組織は皆無です。もしその血液をいただける事を確約してくだされば我々は〈何でも〉致しましょう。」

 

訃堂は顔を歪めた。吐き気のする笑みだ。

 

「頭が回る兵は嫌いではない。しかし貴様達は我々にとっても脅威である。故に通すべき筋があるだろう?」

 

なるほど……本当に話通りの人物のようですね。ならばここはあの方々より賜りし献上品の使いどころと言う事でしょう。

 

「ならばこれをお納めください。〈神の力〉を得たレイラインマップと、貫かれた人形の腕です。そちらの機関で力の解析がすめば真偽はわかるかと思われます。」

 

「ふむ。此方の望みを見抜く洞察力もなかなかよな。あいわかった。正式に協力関係を築こうではないか。しかし我々は貴様達のような異形には恐れる物が多い。故に保険も幾つか掛けさせて貰うぞ?」

 

そう言うと訃堂は輸血用の液パックを踏み砕いた。

 

「ああ済まんな……先程仕舞い忘れた上に一つ無駄にしてしまった。しかし取り引きに相違はない……良いな?」

 

「構いませんよ。二人も大丈夫よね?今までの逃亡生活においては次の保障はなかった。しかしここはかろうじてその保障があるのよ?」

 

「……悪くはない条件だからあたしは乗るぜ?後ろ盾って奴は重要だ。それも裏に通じるような人物のは……な。」

 

「私も異論はないであります!二人の信じる道が私の道であります!例えそれが地獄に通じるとしても!」

 

私達の決意を聞いて訃堂は、少しだけ意外と言いたげな表情を見せたがすぐに持ち直した。そして私達にとても重要な提案をしてきた。

 

「では〈神の力〉に関する正しい情報を儂に供給せよ。これは儂個人に直接送る物とする。くれぐれも仲介を立てるなよ?」

 

「了解しました。混乱する結社より該当資料を精査した後に確認してお届けします。その暁には……」

 

「良かろう……先の分まで血液の便宜を図ってやる。しかしその場合は出来高で供給量が増減する事をしかと覚えよ。」

 

「構いませんよ。私達は生き残る事をあきらめていました。しかし貴方と出会えた事でまだ希望を持てそうです。そのご恩には必ず報いて成果でお返しする事を誓いましょう。」

 

訃堂は多少疑いながらも、我々がそれほど切迫している状況だとうまく認識してくれた。後は彼の掌で踊る演技をするだけだ。

 

「その為には汚れ仕事だろうが密偵だろうが何でもやるぜ!」

 

「私達は既に異形の身であります!それゆえにプライドは当に捨てたであります!」

 

私達の決意を聞いた訃堂はますます笑みを浮かべる。まるで思い通りであるかのように。

 

「働きには期待しているぞ?」

 

「おまかせください。そしてゆくゆくは神の力を再度降臨させましょう。」

 

私達は会話を終えると退出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり勇さんの予想通りと言う訳ね。」

 

「私達が身を粉にする事を誓った時に、奴の口元は笑っていたであります!」

 

「そして手を汚す事を示唆していたぜ。多分近い内にアイツは何かをやらかすぜ?」

 

私達は先程の会話を振り返る事にした。そして奴の目的を絞り込む事にした。

 

①奴が欲しているのは〈神の力〉であり、その力は現在レイラインに沿って流れているということ。

 

②私達を使い捨ての駒として扱うつもりでいる事、その為にはおそらく追ってを差し向けるということだろう。

 

③奴は後に私達が手を汚す事をさせるつもりがあるという事。

 

私達はその情報を念話で勇さんに送る事にした。

 

〈お久し振りです勇さん。貴方の予想通り彼が私達に接触しました。そして血液を提供してきたした。〉

 

《お久し振りですヴァネッサさん……予想通りですね。そしてその血液は此方へこっそりとテレポートで送ってください。》

 

私達は事前に渡されていた〈鍵〉を使い、勇さんに伝えました。

 

《確認がとれました。やはり微量の毒を仕込んでいます。血液の交換頻度から見て凡そ3ヶ月で中毒死させるつもりだろうと思われます。》

 

〈3ヶ月……ですか。ではもう時間がないと言う事なのですね?〉

 

《はい。そして最初の大規模襲撃ポイントは既に判明しています。次の翼さん達のコンサート会場です。》

 

〈!?歌姫達のコンサート………ですか?〉

 

《そしてミラアルクさんの能力で洗脳をさせる筈です。しかし気にせず洗脳をしてください。来るとわかっている手は潰せます。貴女達が安全である事が一番です。此方が演技を合わせますので、ヴァネッサさん達は本音で僕達に伝えてください。》

 

〈ありがとうございます勇さん。それでは来るコンサートの日に……〉

 

私達が通信を終えると訃堂の使いがやって来た。

 

「これが次の仕事だ。生きたいと願うなら下手な事は考えない事だな。」

 

そう告げると使いは去って行った。

 

「フムフム……。南極におけるシェム・八の資料の強奪でありますな。勇さんはこの事を告げていませんでしたな。その理由は一体?」

 

「簡単だよエルザ。おそらく勇さんは既にその内容を知っているんだ。そして油断していたように立ち回る事であたし達を動きやすくしてくれているんだ。」

 

「ミラアルクちゃんの予想はおそらく当たりよ。勇さんは終始落ち着いていたわ。その情報は〈伝えそびれた〉じゃなくて〈伝えなかった〉筈よ。ならば私達は派手に立ち回りますよ?」

 

そして私はミラアルクちゃんを呼び止めた。

 

「もうひとつの伝吾よ。装者達の洗脳に遠慮はいらないそうよ。ならここはおもいっきり洗脳して訃堂への貸しと、勇さんの反撃を特等席で鑑賞しないかしら?」

 

「ならばまずは神降ろしの詳細を調べるであります!そして準備ができた時には!」

 

「ターゲットを事前に洗脳してあの美しい姿を見せて貰おうぜ!」

 

「ならばこれからは忙しいわよ!お姉ちゃんについて来なさい!」

 

私達は手始めにサンジェルマン様より厳選された資料を読むわよ!

 

「任せろヴァネッサ!」

「やるであります!」

 

その後私達は一週間後には南極にてシェム・八の封印痕跡の詳細を調べに行き装者達と戦闘になるけど、おそらく勇さんがこの時には次の手を打ってくれると信じて待つ事になる。

 

 

 

 

~~キャロルside~~

 

2045年1月某日

 

ある朝オレはふと目を覚ましたが勇は目を覚まさない。深い眠りについているようだが、呼吸は安定しておりバイタルサインも異常は検知されなかった。更に昨日はノーブルレッドとの打ち合わせをしていた筈だが、その報告を聞くのが今日だったが未だに目を覚まさない。

 

「何が起きているんだ?」

 

オレは一人呟いた。そしてその呟きを聞いてかもう一人部屋に入る人間がいた。

 

「キャロルちゃん……おそらくだけど……勇君は今。」

 

「その〈可能性〉に賭けるしかないということか。そして凛祢は他の用事でもあったのか?」

 

「うん。この世界の〈彼女の棺〉が見つかったよ。勇君が目を覚まさないなら私達が行かなきゃね。」

 

そうか……とうとう奴の棺が見つかり防衛機能が暴れ出したか。ならばオレ達とて動かねばならない事態の筈だな。

 

「ならば行くぞ凛祢。ブラッドの変身道具はオレが持って行ってやる。」

 

オレ達は未だに目を覚まさない勇に代わり、奴の棺をこじ開けることにした。

 

「しかしシャルロットちゃんはどうやって開けたんだろうねぇ?」

 

「奴は仮にもアヌンナキだ。恐らく無条件に起動ができただろうが、今回の発見者が別人ならば防衛機能が動いた筈だ。そしてこれは………」

 

「彼女達からの合図だね。とうとう訃堂が動いたってことか。」

 

「らしいな……では始めるとしよう。圧倒的な魔王と闇の力を!」

 

~~キャロルsideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~勇side~~

 

僕が見ているモノはなんだ?

 

〈よう後輩!大分修羅場を乗り越えたな!〉

 

その声は僕にとって聞き覚えのある声だった。

 

「貴方は士道……さん?」

 

〈あ~そうか俺とお前は一応初対面だったな。すまんかった。〉

 

そういうと士道さんは頭を掻きながらバツが悪そうにしていた。

 

「でもそれは十香さん達も同じでした。しかし意外ですね。なぜ僕にコンタクトをしてきたんですか?」

 

〈それはだな。お前に伝言と説明をする為なんだ。〉

 

「伝言と説明ですか。じゃあ伝言からお願いします。」

 

「おう!まずは伝言だが、鞠奈からだな。

 

〈キミのおかげで私達は無事に帰ることができた。そしてエレン達もそれぞれの世界へとね〉

 

ってよ。でも確かに全盛期のエレンさんが標的に定めた事を知ったら驚くよなぁ……。」

 

「えぇ。僕も彼女達の目的を知るまでは同性同名の異世界の人物だと思っていましたけど、まさか本人だとは思いませんでした。」

 

〈でも彼女達を救ってくれてありがとうよ!〉

 

「いいえ……僕は真那さんを救えませんでした。それは変えようのない事実です。」

 

〈いや、真那の事は仕方ないさ。お前にも守るモノがあった。だからそれは間違いじゃないよ。〉

 

士道さんは僕の胸を叩いた。そしてこう続けてきた。

 

〈恐らくもうすぐお前の知る戦いは終わると思う……だからお前のもう一人の妹に伝えて欲しい。あれが必要になる。そして■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ってな。〉

 

士道さんの声の続きが僕は聞こえなかった。そして僕は目が覚める事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは?……現実か?」

 

「はい兄様。僕達がいる現実世界です。そして姉様達は先程出撃されました。場所は南極にて〈彼女の棺〉が発見されたそうですがどうしますか?」

 

ホムンクルスがそこにいて、彼女は確か……

 

「〈ノエル〉ですよ兄様。最も……姉様は慌てて名付けたみたいでしたけどね。」

 

彼女がいるならちょうどいいのかな?

 

「ごめんノエル……用意して欲しいモノがあるんだ。〈あれ〉がいるらしい。そして僕は聞こえなかったけど、それに関係する何かも必要らしい。」

 

「〈あれ〉ですね?わかりましたよ兄様。では僕にキスをしてください。兄様の記憶が欲しいです。」

 

「はぁ……キャロルには内緒だからな?ヤンデレ怖いから。」

 

「大丈夫です。僕はクローンなので浮気じゃありませんから。」

 

「そういうモノなのかな?」

 

僕は疑問を感じつつもキスをした。



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南極の棺

~~キャロルside~~

 

「行くぞお前達!シェム・八の復活が近いという事は世界の危機が訪れているという事だ!」

 

オレが号令をかけると全員がオレを見て物言いたげな表情をしていた。まあ内心はこんなところか?

 

〈お前が言うな〉

 

さて、勇の前世情報では奴の防衛機能は恐ろしいほどのスペックを誇っていたな。ここは全力を注ぐ良い機会だ。

 

「では頼むぞキャロル君。」

 

「任せておけ。………とはいえ恐らく有益な情報には期待はするなよ。」

 

オレ達は南極へと移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが防衛機能……」

 

オレ達が目にしたのは人型と言えなくはないが何かを守護せんと活動する先史文明の遺産だった。もちろんフィーネに解説させる腹積もりだがな。

 

「まったく……私まで出撃とはな。」

 

「当然だろう?アレを見た事があるのもこの場所ではお前だけだ。」

 

当然本部への防衛戦力も配慮して〈自動人形〉達は全員本部で待機命令を出しておいた。そしてサンジェルマンにもこの遺産の件は報告を済ませてある。

 

「やるぞお前達。まずは義姉が初撃を放て。そして奴が対応して来たのを見計らい翼と響が突撃する。マリアとザババの二人はこの響達の援護だ。」

 

「私の役割は?」

 

「敵の形態変化にて現れる武装の対応だ。正直その方が荷が重いだろうし、代わってやっても別に良いが?」

 

「大丈夫ですよキャロルさん?あまり私達を過小評価……いえ、今回は違いますね。アレは未知の敵ですから。」

 

〈未知の敵〉……それは戦場においては最も恐ろしいモノだ。自分たちの攻撃が通じない事による動揺や、埒外の攻撃による武装の破損は戦闘続行に多大な影響を及ぼすだろう。なので今回は技術面も当時から存在する人物を連れて来たのでな。オレ達に油断はありはしない。

 

「動いたぞ!アイツは観測基地に向けて移動をしてるのか!?」

 

「作戦を開始するぞ!絶対に奴の動きを変えろ!後はオレが引き受ける!」

 

了解!

 

響達は戦闘を開始した。

 

「ダ・カーポ……お前の目から見ても奴は〈同じ〉か?」

 

「確かに私達の世界の奴と同じだ。しかし私達の世界では既に技術力を神代まで匹敵する程にしていたのでな。撃破するだけならば苦労はしても可能だった筈だ。」

 

「そう……か。」

 

ダ・カーポとの確認の最中状況に変化が生じて来た。防衛機能が小型端末の散布を始めた。

 

「成る程な。おいフィーネ!アレはどう対処するつもりだ!」

 

「既に策は用意している。あの胸元の結晶体の奥にこそ奴のコアが存在している。そこを撃ち抜けば後は時間の問題の筈だ。」

 

「成る程な……聞こえたかお前達!胸元の黄色の結晶体を砕くぞ!マリアと響が攻撃を当てられる様に援護しろ!」

 

『了解!』

 

するとクリスと翼・調と切歌はペアでの行動を開始した。残る未来は観測所方面へのバリアを既に発生させていた。成る程……良い動きだ。

 

「ガヴリエルの〈行進曲〉で火力を底上げして!」

「ザフキエルの〈八の弾〉で手数を増やす!」

 

「「そしてガングニール(アガートラーム)の一撃を叩き込めばコアは砕ける筈だ!」」

 

既に天使の力とギアの併用を済ませた装者達には火力は充分に足りている。しかしそれでも不安ならば〈アレ〉を使わせれば良いだけだ。

 

「数に物を言わせた戦術ならあたし様の土俵だぁ!纏めて打ち落としてやるよ!」

 

「確かに私の力は単騎を相手にする事に力を入れているわ。だけど多数の相手の仕方もまた慣れているのよ!」

 

「私達は元々多数を落とす訓練を積み上げて来た!」

 

「だからここはあたし達の見せ場なのデス!」

 

道は拓くからぶちかまして来い!(デス!)

 

すると防衛端末の群体は鮮やかな勢いで掃討されたために充分な道を確保し、響・マリアは攻撃のチャージをより安心して行えた。

 

吹き飛べぇ!

 

シンフォギアの機能だけでもダメージを与え得るだけの状態から、更に天使の加護を得た二人の攻撃は防衛機体の胸元に盛大な穴を開けた。しかし機体は吹き飛ばされる衝撃を生かして二人を薙ぎ払う。

 

「神獣鏡!〈閃光!〉メタトロン〈砲冠!〉」

 

未来はその動きを見て援護射撃に入ったが、二人への反撃を防ぐには少し遅かった。しかし攻撃自体は充分な威力となっていたので叩き落とす事には成功した。

 

「大丈夫かお前達!」

 

「大丈夫だよキャロルちゃん!」

 

「不味い!アイツもう起きて次の攻撃を!」

 

すると機体が既に起き上がり埒外物理攻撃を仕掛けて来る直前だった。しかし此方もその攻撃を予想していたので迎撃は任せる事にした。

 

「やれフィーネ!」

 

「承った!」

 

フィーネはデュランダルを振り下ろしその衝撃で競り合いを仕掛けた。そしてもう一人が既に攻撃発動の準備を整えている。

 

「久方ぶりに喰らうが良い!〈ゼネベイトスネイカー!〉」

 

ダ・カーポが弱まる範囲から奴の攻撃をぶち破り反撃に転じた。その結果攻撃は装者達から左右に逸れたし、奴自体もそれなりのダメージを蓄積させて来ていた………筈だった。

 

「ッ!皆!」

 

未来やオレ達が見たのは結晶に拘束された六人の装者達だった。

 

「やるぞダ・カーポ!フィーネと未来は響達の救出を行え!その現象は聖遺物由来の物だ。〈神獣鏡〉の力で皆を解放しろ!」

 

「救出後は私達が護衛して基地本部へと帰投するぞ。後はあの二人に任せておけ。」

 

フィーネと未来は救出活動に入った。さて……オレも奴の動きを読み違えた責任を取るとしよう!

 

「三分注意を逸らすぞ!全力をくれてやれダ・カーポ!」

 

「良いだろう!シェム・八の遺産よ!私達は既に明日へと歩み始めている!故に眠るが良い!」

 

オレ達は奴が装者達への注意を向けない様に攻撃に入った。

 

〈ハザードフィニッシュ!〉

 

〈砲!〉〈砲冠!〉〈蒼穹を喰らう者!〉〈最後の剣!〉

 

流石に大技のフルコースを受けた機体は深刻なダメージを受けたようだ。しかしまだ動く意思と呼べる物があり、今度はオレ達を結晶化しようと光を放ってきた。しかしここには魔を払う鏡を扱う事ができる者が存在する。

 

「では〈ハニエル〉よ!〈千変万化鏡〉だ!〈神獣鏡〉を再現しろぉ!」

 

そしてオレ達に向かう光は鏡の輝きによって機体へと叩き返された。しかし腐っても先史文明の技術力と言うだけあり、簡単に結晶とはならなかった。

 

〈これで終わりなら楽だったのにね。〉

 

腹立たしくもこの局面まで凛祢は寝ていた。しかし今ようやく目が覚めたようだ。

 

〈だけど勇君も目が覚めたみたいだよ?そして士道に出会えたみたいだね。〉

 

「……そうか前任者との邂逅だったという訳か。」

 

するとオレの心は重荷を降ろして調子が良くなった。

 

「では終焉としよう!〈魔王〉の力よ!今ここに現れよ!」

 

オレはサンダルフォンを触媒に魔王の顕現を果たした。そしてこの戦いに幕を降ろす事にした。

 

「狙うは胸元だ。そこが最もダメージを蓄積している。」

 

「理解したぞ!では〈夜十神 天香〉よ!お前の力を使わせて貰うぞ!〈終焉の剣〉だ!」

 

オレは拓かれた道を歩み機体を胸元から横向きに両断した。そして機体は倒れ落ちた。

 

「後の事はフィーネの仕事だ。ダ・カーポ……フィーネが戻り次第お前は帰投しろ。オレは来る奴らに情報を伝えるとする。

 

「了解した。では凛祢に人格を返そう。」

 

〈わかったよ。じゃあお休みダ・カーポ……。〉

 

こうして二人は意識を入れ換える。しかしこの現象は恐らく後に参考になるとオレの勘が告げていた。



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語るべき言葉

~~勇side~~

 

 

僕が士道さんと邂逅している間にキャロルが現場で戦ってくれた。そして南極での初戦を無事に終えたと本部より報告が入った。

 

「遅くなり申し訳ありません。」

 

「気にするなよ。君の昏睡状態はキャロル君を始め複数のスタッフから仮説を得ている。恐らくは君の力に関連する何かの現象が起きているのだろう?」

 

流石司令だ……隠し事はできないな。

 

「そうですね。前任者の……いえ、偉大なる先輩との邂逅をしていました。そこで僕が戦っていた魔術師その後の行方を聞きました。」

 

「成る程な。確かにその情報はオレ達では手に入らないだろうな。良ければ教えてくれないか?」

 

隠す理由が無くなったので僕は司令に全てを打ち明けた。

 

「エレンさん達は元々の世界へと送り返せました。しかし生け贄にされた真那さんだけは救えなかった事を僕は士道さんに告げました。」

 

「そうだな。生け贄の少女の身柄はオレ達も周知していない人物だった。彼女達の世界の魔術師とやらなのだろう?」

 

「はい。真那さんは士道さんの生き別れた実妹です。しかし、僕は彼女が祭壇にくべられた時に止められませんでした。」

 

それは僕の後悔だ。そしてそれを士道さんに謝罪できた事は僕のせめてもの償いだろう。

 

「では此方も二つの報告に入ろう。まずは厳しい報告から入るとするか。

一つ目はこれから発見された先史文明の遺産を調査する事になる。敵の襲撃を考慮して君にも協力を頼みたい。大丈夫か?」

 

「問題ありませんので、キャロルや凛祢達と当たります。なので現場組は帰還をお願いします。」

 

「良いだろう。切歌君と調君に後の護衛を引き受けて貰うつもりだったが彼女達も帰還させるか?」

 

「お願いします。ですが二つだけ頼みがあります。」

 

「〈お願い〉だと?一体何をするつもりだ?」

 

ここからが僕達の戦いの仕込みだ。うまくいって欲しいな。

 

「一つ目ですが、〈風鳴 訃堂〉の動きに警戒をお願いします。具体的には八絋さんとの連携の強化をお願いします。」

 

「八絋の兄貴………か。わかった要請しておこう。親父殿の動きは確かに危険な気配がするな……神の力の降臨となればそれは特に……か。」

 

「ええ。先に手を打たなければ彼は何をするかわかりません。確か犠牲を是とする考え方の持ち主ではありませんか?」

 

「そうだな……すぐに対応協議を行う事は難しいが、後手に回る事態には恐怖を感じるな。」

 

「お願いします。そして次は司令のもう一つの報告をお願いします。」

 

「ああ……翼達のチャリティライブのチケットが確保できたぞ!存分に楽しんで欲しい……と言うつもりだったのだがな。」

 

「あ~そうなりますよね。でもその事なら心配無いですよ。今回は彼女達に動いて貰いましょう?」

 

「彼女達……おぉ!そうかファラ君達〈自動人形〉達がオレ達にはついていたな!頼もしい戦力じゃないか!」

 

「ええ。それが僕の二つ目のお願いですよ。」

 

僕は本当にこの世界のライブが厄ネタである事を知っている。だけど今回はやるべき事の為に切り捨てる命がある事をまだ司令には隠せないし、ミラアルクさんにも接触する必要があるからね。

 

「現場でライブを楽しめるのは司令の好意のおかげです!だから彼女達にも協力して貰います!」

 

「うむ!確かに彼女達ならば一晩くらいならば余裕で凌げるだろうな。しかしそれはオレ達も同じだ。ならば皆で協力しよう!」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

僕はこうしてライブ会場の悲劇をただの犠牲で終わらせない為の準備を始めた。本当は起こらない事が当たり前なんだ。だけどあの妖怪は必ず命令を下すだろう。だから洗脳される翼さんの分まで僕が頑張らないとね?

 

 

 

~~勇sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~弦十郎side~~

 

俺は勇君の忠告に対して考える事にした。確かに親父殿ならば〈神の力〉程のモノを見逃す事はあり得ないな。ここは少年の勘を信じるとしよう!

 

「八絋の兄貴……俺だ。一つ確認したい事がある。」

 

『奇遇だな弦。私もお前に話すべき事がある。』

 

兄貴が俺に?何の為だ?

 

「すまないが先に兄貴の話を聞きたい。構わないか?」

 

『そうだな。では遠慮無く話させて貰おう。あの妖怪がキナ臭い動きをしている。まるで私兵を手に入れた様に動いている様に感じるのだ。』

 

「親父殿が新たな私兵?兄貴は冗談らしい冗談を言わない事を考えればその可能性は高いな。そしてその私兵の詳細はわかっているのか?」

 

確かにあり得なくはない話だと思っている。しかしそんなリスクを犯す程あの男が動くのか?

 

『だが先日瓦解した組織があるだろう?恐らく訃堂はその残党に接触した筈だ。目下行方を調査中だが、もし予想通りならば最悪の組み合わせになりかねないぞ?』

 

「パヴァリア程の組織に所属していた奴らを親父殿が飼い慣らす……か。恐ろしい話だな。せめて次の一手が解ればな」

 

『いや、その必要はないだろう。実はサンジェルマン殿から私に直接連絡が届いてな。訃堂に接触されたと思われる三人の女性のデータが送られて来ている。私の勘が外れてなければこの三人こそが奴の私兵だ。しかし今は証拠がない。』

 

「わかった。もし現場に現れた場合は兄貴と情報を共有したい。その三人の写真を貰いたい。」

 

『良いだろう。そして勇君に伝えてくれないか?

 

〈奴がついに行動に移す。本当に救いたいモノは間違えないで欲しい〉

 

とな。頼んだぞ弦……。』

 

「ありがとう兄貴。すぐに勇君に伝えるさ。」

 

俺は通話を終了させて写真の到着を待った。そして兄貴はすぐに準備を始めたのか五分程で到着した。

 

「〈ヴァネッサ・ディオダティ〉・〈ミラアルク・クランシュトウン〉・〈エルザ・ベート〉か。彼女達が親父殿の新しい私兵かもしれない訳で、俺達の敵であり勇君の嘗ての仲間かもしれない者達か。」

 

俺は複雑な心境で勇君に連絡した。

 

『どうしましたか司令?定時報告には少し早いと思いますが?』

 

「勇君……俺達はまだ確信を得ていない情報を君に伝える。しかし君が知らない内に遭遇する事態は避けたい。この情報が杞憂であればすぐに忘れてくれ。」

 

『……??……わかりました。まずはお願いします。』

 

「では単刀直入に伝えるぞ。〈ヴァネッサ・ディオダティ〉・〈ミラアルク・クランシュトウン〉・〈エルザ・ベート〉この三人の名前に聞き覚えはあるか?」

 

『………パヴァリア時代の同期です。彼女達に何が?』

 

「君の忠告通りに親父殿の動向を探る為に俺は八絋の兄貴に連絡をした。するとサンジェルマン君からその三名が行方をくらましていると報告を受けたそうだ。もし最悪の可能性ならば………」

 

『彼女達が訃堂の手先であり僕達の敵という事ですね?わかりました。まずはその心配が杞憂である事に賭けます。しかしそれが本当になった時には改めて協議しましょう。』

 

勇君はそう言って通話を終了させた。

 

「俺達は若い世代になんて無茶を頼んでいるのだろうな……。」

 

その呟きを聞いた司令室の雰囲気は重くなってしまった。ここで通話をしたのは間違いだったな。

 

~~弦十郎sideout~~



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すがる様に願っていても……

僕が司令から受けた連絡はある意味予想通りの内容だった。だからこそ受け止められるモノでもあった。

 

「じゃあ皆は戻っていてね。そして翼さんとマリアさんは頑張ってください!」

 

「えぇ……わかったわ。私達のライブを楽しみにしていてね。」

 

「勇……後は任せるわよ。でも何かあればすぐに向かうからね?」

 

「まずは僕が引き受けます。お二人のライブを楽しみにしているのは僕達だけじゃあないですからね。」

 

マリアさん達はそう言って日本へと向かった。

 

「じゃあキャロル達も休んでいて。僕が引き受けるから。」

 

僕はキャロルに声をかける際に念話を併用した。するとキャロルは笑みを浮かべつつ了承した。

 

「……成る程な。ではオレ達も休むとしよう。行くぞ凛祢……先程の戦闘で疲れたからな。」

 

キャロル達もこの場所を後にして僕だけが棺の護衛として残って五分立つと彼女が動いた。

 

『アルカ・ノイズの反応を検知!勇君は対応をお願いします!』

 

「任せてください!敵の目的を探ります!」

 

僕は彼女が現れるのを待ち続けた。そしてとうとう待ち人は来た。

 

「勇さん……でありますか。しかし私達には退けない理由があります!そこをどいて貰うであります!」

 

「……エルザさんか。一応言っておくよ。退いた方が君達の為だ。そして師匠達は君達の捜索を今もしている。」

 

真っ赤な嘘だけどここは彼女達の為に敢えて合わせるのが僕の役割だ。

 

「私を嘗めると痛い目をあいますよ!」

 

エルザさんはそういうと僕にボディブローを仕掛けて来た。しかしこれを敢えて反応せずに受け入れた。そしてその際に服の内ポケットに何かが投入された。

 

「……この早さ……まさか今も!」

 

「想像通りであります!さあ!早く戦闘態勢に入るか撤退するであります!」

 

「こっちも任務中でね!なら覚悟して貰うよ!〈アガートラーム〉と〈ガングニール(黒槍)〉を展開!」

 

僕はマリアさんのアームドギアを展開した。やっぱり礼装とアームドギアの併用はありがたいな。戦術の幅が広がるからね。

 

「ッ!装者の武器でありますか!ならば容赦しないであります!」

 

「さて……まだまだ行くよ!〈イガリマ〉と〈シャルシュガナ〉も展開!」

 

「武装を四つもでありますか!……ならば私も全力であります!」

 

エルザさんは僕の展開した武装を見て真意を理解してくれた。そして僕は〈銀の左腕〉に〈ガングニール〉を所持して右腕に鎌を持ち指にはヨーヨーを見える用に持ち直した。

 

「しかしそんなに欲張れば隙が生まれるであります!それも右腕に注意を向ければ!」

 

予測通り彼女は〈左側〉に回り込む。だけどここは南極なんだ。だから〈ザドキエル〉も容易に出力が上げられる。

 

「僕の本来の戦い方を忘れましたか!」

 

エルザさんの進行方向左側に氷壁を作り出して僕は彼女を牽制した。そしてその動きを見て僕に恐怖の爪を振り下ろして来たけど、僕は鎌と槍を使って攻撃を受け止めた。

 

「やはりシンフォギアは強固であります!しかし弱点もわかっているであります!」

 

「僕達は常に進化してきた!だから簡単には行かせないよ!」

 

僕は一度全ての〈ギア〉を解除した。そして〈ダヴルダヴラ〉を展開した。そして氷壁に向かって弦を飛ばして簡易的だが凶悪な結界を作り出した。

 

「ッ!まさかこの糸は!」

 

「遅いですエルザさん!」

 

動揺する彼女を僕は蹴り飛ばした。そして彼女の体は氷壁に直撃した。

 

「これは……致命的であります……一度撤退させていただくであります。」

 

そう言って彼女は転移して行った。そして僕は懐に先程彼女が入れた物を確認する事にした。

 

「これは……手紙か。そして内容は……」

 

僕は渡された手紙を読み進めた。そして予想通りの内容が書かれていた。

 

〈次のライブコンサートで襲撃を行います。そこで証拠を押さえてください。〉

 

内容はそれだけだが充分だ。後は司令達と協議をしよう。

 

「司令……今すぐにファラさん達をここにお願いします。僕は一度本部に向かい、皆さんに話すべき事を話します。」

 

『わかった。すぐに連絡しよう。』

 

司令は短くそう伝えてくれた。そして僕はファラさん達の到着を待った。すると十分程で彼女達は現れた。

 

「到着致しましたわ旦那様。何なりとご命令を。」

 

「じゃあここの護衛をお願いするよ。僕は少し急ぐからね。」

 

ファラさん達に後の事を任せて僕は本部へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか勇君……それは本当……なのか……?」

 

司令は僕が到着してすぐに話した内容に驚愕していた。

 

「事実です。南極で襲撃してきたエルザさんからの情報で判明した次の襲撃ポイントは、横浜で行われる翼さん達の合同コンサートです。」

 

『そしてそこで次の一手を打つという事か。』

 

「はい。しかしまだ訃堂は実害を出してはいませんし、彼女達も非道な行動を起こしてはいません。〈今はまだ〉証拠が足りません。しかし現在彼女達は訃堂に命を握られており、その証拠までは師匠達の協力もあり確保してあります。」

 

『そして次が確実に容疑を確定する機会か。確かにこの期を逃せば奴は更に手を広げるだろうな。』

 

「では勇君は何を考えている?一体何を知っているんだ?」

 

「僕の持つ平行世界の知識も今のペースで事態が動けば後三週間以内に追い付きます。なので最後の悲劇だけは防ぎます。」

 

『君が知る知識も底を尽きるのだな。ならば遠慮する事はない。君は今まで我々に協力してくれたのだ。最後くらいは甘えて行け。』

 

ごめんなさい八絋さん。僕はこの後の悲劇を防ぐ事はできないでしょう。

 

「次のライブ会場には僕が潜みます。そして八絋さんは、その時にこれから送る資料を元に訃堂の罪を確定させてください。これを最後の犠牲にする為に。」

 

司令は険しい顔をしていた。僕が犠牲を出せないとはっきりと言ってしまった為だ。

 

「……俺にできる事があれば言ってくれ。」

 

司令は良い人だ。だから最後までその言葉に甘える事ができる。

 

「訃堂の策略で本部に査察が入ります。僕達はその時に別行動を取りますので、〈知らぬ存ぜぬ〉を貫いてください。そうした時に奴と最後の準備をします。」

 

「わかった……。ではその時もしアルカ・ノイズ反応が出れば連絡しよう。」

 

「助かります。そして八絋さんが証拠を押さえて風鳴本邸を捜索する時には合流します。その時はこの端末を起動してください。」

 

僕は使い捨ての端末を二人に渡した。そして僕はライブ会場の悲劇までの時間を過ごす事にした。



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あってはならない悲劇も

ついに悪夢の夜が始まる。

 

「お二人共……ごめんなさい。」

 

僕は今回の悲劇を最後にする為に証拠を押さえる事にしたけど、その代わりにこの会場の人の命を切り捨てた。

 

「だから最後まで見届けよう。そして一人でも多く救おう。」

 

僕はライブが始まった時から警戒を始めた。そして自分の潜むエリアには〈ザドキエル〉を展開させて最低でも百人ぐらいは助けられるだけの結界を準備した。この人達は救う人達であり証人だ。だからなんとしても守り抜く!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんな~ありがと~う!

 

翼さん達が僕達観客に手を振っていたその時……錬金術が発動した。

 

「これは……〈アルカ・ノイズ〉!でも……なぜここに!」

 

翼さんは嘗ての悲劇の記憶がフラッシュバッグして崩れ落ちた。すると上空から〈彼女〉が現れた。

 

「よう歌姫達……あたしが相手だぜ!」

 

「パヴァリアの残党か!何が目的だ!」

 

翼さんは……まだ立ち上がれない。代わりにマリアさんが立ち上がったが、ミラアルクさんは観客の一人を引き寄せ、こう告げてきた。

 

「大人しくしてな歌姫共。あたし達には果たすべき目的がある。まずは動くなよ?」

 

ミラアルクさんは翼さんに〈刻印〉を刻み込み、翼さんは胸を抑えて叫び出した!

 

う……あああアアアアアアアア!

 

「翼ァ!」

 

「動くなっただろぉがぁ!!」

 

更にミラアルクさんは人質の女性の胸を貫いた。目の前で人の死を見せつけられたマリアさんも絶望から膝を着いた。

 

「やめろ……やめろぉ!やめてくれぇ!

 

マリアさんも戦意を喪失する。そして僕はなぜ彼女達がここで心を折られてしまったか気付いてしまった。

 

「僕のせい……だな。僕は知らず知らずの内に皆の成長の機会を奪っていた。今までは万全以上の状態で挑んだからこそできた勝利だったけど、その前提が崩れた皆の心は脆い。それは僕が手を回しすぎた責任なんだね。」

 

僕は自分の行いを後悔しながらアルカ・ノイズの殲滅を始めた。

 

「時間はかけない。すぐに終わらせる!〈一の弾!〉〈八の弾!〉〈ラファエル!〉」

 

僕は殲滅の手数を増やす為に一の弾と八の弾を自らに撃ち、ラファエルの機動力で分身達は殲滅を始めた。そして僕はミラアルクさんに接触した。

 

「なぜ貴女はこんな事を!」

 

「そこを退くんだぜ勇さん!あたし達はやるべき事がある!そこを退かないなら力ずくで押し通る!」

 

ミラアルクさんは翼を広げると僕を蹴り飛ばした。しかし彼女も接触の瞬間に僕の手にチップを握り込ませた。

 

「ガハッ!……本気なのか!もう止められないのかよミラアルクさん!」

 

僕は膝をついた。(ようにしてチップを確実にラボへ転移させた)しかしすぐに立ち上がり彼女へと向き直る。

 

「貴女達が犯した罪を僕は許さない!だからここで捕える!覚悟しろぉ!」

 

僕は〈メタトロン〉を展開して接近して彼女に攻撃を開始した。そして〈天羽々斬〉と〈イチイバル〉で更に追い詰める。

 

「逃げるな!僕達と……ここにいた人達と向き合え!」

 

イチイバルの銃弾とメタトロンのビームが徐々にミラアルクさんの事を追い詰める。

 

「ッやっぱり勇さんは強い!だけどあたし達もまだ負ける訳にも捕まる訳にもいかない!だからここは退くぜ!」

 

そう言って彼女はジェムを起動して撤退した。僕はそれを確認した後に結界を解除して僅かながらの人達を助け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令……解析結果は出ましたか?」

 

「ああ。彼女が託してくれたチップには親父殿との取り引きもとい脅迫の映像及び音声とそれを裏付ける材料が記録されていた。」

 

『これを基に私は奴の悪事を証明しよう。だが気をつけてくれ。鎌倉が妙な動きをしている噂を耳にした。前回の報告通りならばそろそろ査察という名目の足止めに入るだろう。』

 

「分かりました。こちらのメンバーの動きに気を配ります。」

 

そう伝えると八絋さんは通話を終了した。しかし僕の不安はもう一つ存在した。

 

「司令……今は翼さんだけではなく、()()()()()()目を覚まさないんですよね?」

 

「ああ。二人共トラウマを刺激された事による心因性の昏倒だろうと医療班より報告があがっている。」

 

マリアさんも……か。神の力の生け贄に検討がついたな。恐らく訃堂は〈マリアさん〉を使うつもりなんだね。なら……こっちも乗ってやるよ。僕の全力で必ずアンタは倒す。

 

「それと勇君……サンジェルマン君から君宛の連絡だ。後で折り返して欲しい。」

 

「わかりました。ありがとうございます。」

 

僕は司令室を出て師匠へと連絡を始めた。

 

「お久し振りです師匠。」

 

『要件を伝えるわ。神の力は儀式を行えばすぐに降臨するわ。だけど生け贄には見当がつかないの。今は目下調査中だから待っていて貰えるかしら?』

 

「わかりました。こちらも彼女達より確実に証拠を集めています。師匠達に協力していただいているので今は順調ですが……」

 

「次の一手が気になるのね?わかったわ。次はセレナと来日するからその時に話を詰めましょう?」

 

「ありがとうございます。では次の機会にお願いします。」

 

僕は師匠との通話を終了した。そしてエルと打ち合わせをする事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕が人質にされる……ですか?」

 

話を伝えるとエルは驚いていた。

 

「うん。間違いなくエルは狙われる。次の査察の時に休暇が出る筈だからそこで操られた人にね。」

 

「僕にできる事はありますか?」

 

「恐らくファラさん達が本気を出せば襲撃者の撃退自体は可能だと思う。だけどその作戦は囮なんだよね。もちろん敵にとってはどちらの作戦も本命なんだけど、今回もその作戦に乗ろうと思う。エル達はこちらの作戦が終わるまで時間を稼いで欲しい。」

 

「時間を……稼ぐ……ですか?撃退ではなく?」

 

「うん。時間稼ぎだよ。彼女達は脅迫をされている。僕達がその黒幕を倒すまでは撃退を待って欲しい。」

 

エルは悩んでいた。そして答えを出してくれた。

 

「わかりました!勇さんの作戦に乗ります!」

 

「ありがとうエル。その時はキャロルが救援に来るから安全は保証するからね。」

 

「もう!勇さんは過保護です!」

 

僕達はまた一つ仕込みをした。だけど不安は拭えなかった。



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重なる思惑

~~ヴァネッサside~~

 

「これで勇さんは証拠を固める事ができるでしょう。ですが私達に残る時間も多くはないわね。」

 

「勇さんからの指示とはいえ虐殺ってのは胸糞悪いぜ。でもあれを最後にする為に共有コードを訃堂に教える次の機会が……。」

 

「奴との最後の接触であります!その為に今もサンジェルマン様達と勇さん達で準備を進めているであります!」

 

そう。私達は確実に訃堂に強要されたと立証できる材料を探している。その為に今はどれ程手を汚す事になっても背負うと決めたのよ。

 

「やるわよ二人共……。まずはシンフォギア装者に接触ね。」

 

私達は恋敵達と女としての戦いを挑む事にした。奇しくもこの行動は全ての陣営にとって最高の目眩ましになる。だから私達は全力で時間を稼ぐとするわ。

 

~~ヴァネッサsideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~勇side~~

 

最近は妙に体が重い。まるで何かを示してるかのように感じる〈それ〉は僕の運命なのかもしれない。だからもしもう一度あの人に会えた時は伝言をしよう。僕の愛するキャロルを悲しませない事は不可能でも……。

 

『装者達は至急司令室へと集まってくれ!』

 

「司令が呼んでいる。早く……行かないと……。」

 

僕は司令室へと向かおうとしたが、また体を襲う〈何か〉に蝕まれて意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは……どこだ?

 

〈ごめんな勇君。また無理やり呼び出した事は謝るよ。だけどお前には伝えないといけない事があるんだ。〉

 

僕を呼び出したのは士道さんだった。だけど彼とはつい最近会話をしたばかりの筈だ。一体何を話すつもりなんだろうか?

 

「再び会えた事は感謝しますよ士道さん。僕も貴方に会わなければならない理由がありました。恐らくは士道さんも同じ理由ではありませんか?」

 

〈ああ。多分同じ理由だろうな。なら俺から切り出すよ。勇君はこれまでたくさんの人達を救ってきた。その為の努力は惜しまなかったし、周囲の人達からの支援も得る事ができた。これはすごい事だよ。〉

 

「ありがとうございます。士道さんに認められた事は素直に嬉しいです。……しかしもう僕は……。」

 

〈気づいたんだな?自分の限界……いや、「死」が近い事に。〉

 

「はい。恐らくですが後二回程大きな戦いが起こり、僕がそれに参戦すれば僕の命は尽きるんですよね?」

 

直感だがまず間違いないと思っている。

 

〈ああ……後二回だな。そしてごめんな。だからお詫びをさせて欲しい。〉

 

「お詫び……ですか?」

 

士道さんの言葉に僕は疑問を抱いた。詫びられる理由が思いつかなかったからだ。

 

〈その内容なんだけど、今度こそ天使を継承させたい。本来勇君に託す天使は今の継承者達と同じレベルの力を継承させる予定だった。その為に下地を作ってもらったし、扱いには俺達も協力するつもりだった。〉

 

ん?〈だった?〉士道さんの最後の言葉に僕は新たな疑問を持ったが、すぐにそれが何かに気付いてしまった。

 

「まさか〈アイン〉がそうだと言うんですよね?僕は十香さん達から力を継承しました。更に響達も同じ様に継承した。そうですよね?」

 

〈そうだな。澪が誤って原初の精霊の力を渡した事が発端だった。本当に必要な事態にしか現れない例外的な力の筈だったけど、勇はそれすら使いこなす努力を怠らなかった。だけど器が完成していない内に継承した事が問題だったんだ。〉

 

「器が完成していなかった……ですか?」

 

心辺りは一つだけある。それはきっと僕達が澪さんと邂逅した時だ。本来はあの時が継承の時だった筈なんだ。

 

〈そうなんだ。だからそれを待たずに継承させてしまった事は俺達の失敗でもある。だからもう一度勇に会う理由ができたんだ。本当は充分立派でこれ以上の忠告なんて不要な状態なのにな。〉

 

「買いかぶりすぎです。僕は結局たくさんの人を見殺しにしたり、姉さんを救う時には〈時喰みの城〉を使い人を呑み込みました。」

 

〈それは不可抗力でもあるんだ。本来は勇達が別れた後に別々に保護されて記憶が戻る筈でもあった。結局はそこも背負う必要のない「死」を重ねさせた。力に溺れない様に導くべきなのに!逆の事態になり得る事をさせてしまった!俺達の力不足なせいで!〉

 

士道さんは泣いていた。僕の為に涙を流してくれたんだ。

 

「ありがとうございます士道さん。お陰で僕は覚悟を決める事ができました。僕は最後まで戦います。そして自分が最後まで救いたいモノを救って来ます!」

 

〈そこまで覚悟を決めたなら俺にもケジメをつけさせてくれ。改めて俺達の力を継承して欲しい。だけどそれはこの世界じゃあない。俺たちの世界で……だ。〉

 

「一つ良いですか士道さん?」

 

〈ああ。言ってくれ!〉

 

「僕の命が尽きた時、キャロルには士道さんから伝言を伝えてください。」

 

〈わかったよ。なんて伝えれば良いんだ?〉

 

「じゃあこうお願いします。

 

〈僕達は生まれ変わってもまた会える。だから待っているよ僕のお姫様!〉

 

とお願いします。」

 

〈わかったよ。必ず伝えるさ。後一番大事な事なんだが、勇の死因は霊力の暴走じゃあないぜ。これは「ラジエル」で俺が調べたから間違いない。そしてこの夢の記憶は目覚めたら忘れるよ。そして俺たちの世界でもう一度試練を乗り越えてくれよ。もちろん全力で健全なサポートはつけるからさ!〉

 

「本当にありがとうございます。〈崇宮 真士〉さん。」

 

〈ああ。今度こそ頑張れよ「雪音 勇」後輩!〉

 

僕達はその言葉を最後に後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目覚めたか勇!

 

聞き覚えのある声で僕は目が覚めた。

 

「キャロル……ごめんね。」

 

「当たり前だ!俺たちは心配したぞ!」

 

キャロルの目には涙があった。僕はどのくらい倒れていたんだろう?

 

「キャロル……ライブの日から何日経過した?」

 

「五日だ。その間に本部への査察が入ったが奴等は未だにこっちの弱みを握れない事から強硬手段に撃って出た。その結果翼とマリアの寝返りが行われた。」

 

不味いな。そこまで展開が進んでいたなんて……。

 

「エルは無事なの?」

 

「ああ。今もシャトーにて過ごしている。まずは

〈風鳴 訃堂〉の捕縛が決定した。罪状は〈脅迫による大量殺人の教唆〉だ。既にカリオストロが欧州を纏めあげてサンジェルマンがこちらに滞在している。そしてマリアの離反の際にセレナへとザフキエルの力が受け継がれた。」

 

四糸乃さんの伝言はこういう事だった訳か。成る程ね。

 

「なら僕も風鳴邸に向かうよ。そして翼さんを叩き起こす!」

 

「ならばオレがマリアの相手をしよう。……後一つ言っておこう。オレはお前を必ず見つけ出すさ。そして今度こそオレ達は契るぞ!」

 

「ありがとうキャロル!最後まで頼んだよ!」

 

僕達はお互いに次の世界での再会を約束した。



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ぶつけるべき想い

「マリアさんの事は頼んだよキャロル!」

 

「任せておけ!オレを誰だと思っている!お前の伴侶だ!だから安心して行ってこい!」

 

僕達はお互いの無事を信じて別々の目的地へと転移した。そして僕は風鳴邸に向かい翼さんをひっぱたいてでも目を覚まさせる!

 

「大丈夫だ。その為に覚悟を決めたんだから!」

 

「なら……あたし様も連れて行きな!愛しい弟の為に一肌脱ぐのが姉ちゃんだ!」

 

僕が本邸に入ろうとした瞬間に声をかけてきたのは姉さんだった。

 

「既に未来が邸内でアルカ・ノイズと交戦中だ。しかし勇も連れねぇなぁ!アイツらと仲が良くてその上に惚れられてたんだ!姉にあたるあたし様に態度がなってなかったからぶっ飛ばしてやろうと思ってたんだがな……」

 

姉さんの言葉のキレが悪くなった。

 

「姉……さん?」

 

「そしたらマリアと先輩があたし達に刃を向けて来やがった。先輩の刃だけなら未来の敵じゃあなかったんだが、マリアに宿る力は明らかにヤバイ力だった。」

 

「でも僕達はその正体を知っていたよね?」

 

「ああ。この世界のシェム・ハだろ?アダムを消し炭にした力の正体はあの力と同じだ。そしてフィーネの奴が調べてわかったよ。そしてマリアのアガートラーム自体が奴の力を受けていた聖遺物だったって事もな。」

 

ドゴォォォォン!!

 

すると屋敷から轟音が聞こえてきた。

 

「今の音はなんだよ!クソッ!早く中に急ぐぞ!」

 

僕達は急いで邸内に入り現場を目撃した。するとそこには、アルカ・ノイズと交戦する未来と、不敵に笑う訃堂と今までに見た事のない表情をしている司令が立っていた。

 

「出てこいよ先輩!まさかあたし様に怯えるなんてオチはねえよなぁ?」

 

姉さんは空へ閃光弾を放った。するとこちらへと剣が降って来た。

 

「甘ぇよ先輩!」

 

姉さんは飛来する剣をあっさりと撃ち抜いた。そして折れた剣を一瞥すると翼さんへと向きあった。

 

「雪音か。なぜここへ来た?私達は袂を別った筈だが?」

 

「ハッ!馬鹿かよ先輩!あたし様にとっては先輩ですらも義妹なんだよ!なら姉ちゃんとしてアホな事をしでかした義妹に教育する必要があるんだよ!」

 

「そうか。勇の姉たるお前にとって私は妹に過ぎないか。傲慢だな雪音……お前ごときに遅れをとる私だと思うなよ!」

 

「ならここで白黒つけようぜ翼ぁ!」

 

姉さんは手始めにいつものミサイルをぶちかました。だけどこれは翼さんも良く見る技だ。躱すことも防ぐことも表情一つ変わることなく対処されてしまっている。……まあ姉さんも対処される前提で放ったみたいだけどね。

 

「私を相手に定番の流れに持ち込めると思うなよ!」

 

千ノ落涙!

 

翼さんも面での反撃に撃って出た。だけど狙いは姉さんの足を止める事だろうな。そしてそこから近接に持ち込めるなら流れは翼さんに流れるかもしれない。

 

「足止めたぁ随分消極的だな先輩!ならあたし様の特盛をもって行けやぁ!」

 

MEGA DEATH PARTY!

 

もちろん姉さんもただでは攻撃を受けない。迎撃ついでに当たれば致命傷になるミサイルを放てるのは姉さんの強みだ。だから翼さんは一度体勢を立て直した。

 

「なんだよ先輩!接近戦がしてぇならさせてみろよ?あたし様の弾丸の雨を凌げるならなぁ!」

 

「フンッ!銃火器便りのシンフォギアで私の間合いを制する事が出来ると思わない事だ!」

 

翼さんは礼装を纏い出した……どうやら本気みたいだね。

 

「礼装を展開したよな?行くぞカマエル……あのアホな先輩をぶっ飛ばしてやるぞ!」

 

対抗して姉さんもカマエルを顕現させる。これで姉さんも幾分かは近接が出来る状態にはなった。

 

「カマエルを出したな?ならば遠慮は不要と言う事だな雪音!」

 

「ハッ!良く言ってくれるな先輩!あたしの怒りの限界も近いからなぁ!全力をくれてやるよ!」

 

姉さんはイチイバルの銃弾にカマエルの力を乗せて放った。すると翼さんは〈逆羅刹〉で戦場を駆け回る。

 

「チッ!やっぱり先輩の動きは早えな。だけどその攻撃には恐怖は感じねぇ!そこにあるのは〈怯え〉だけだ!」

 

そう口では言う姉さんだけど翼さんの動きは捕えきれてはいない。その証拠に斬られてはカマエルの炎が体を駆け回っていた。

 

「どうした雪音!口先は達者だが実力がついて来ていないぞ!」

 

……そろそろだな。

 

姉さんは何かを小声で呟いた。そして自分の上空に砲身を向けると矢の雨を降らせた。

 

「なっ!?自分諸ともだと!?」

 

動揺した翼さんは動きを一瞬鈍らせた。そしてその隙を逃す姉さんではなかった。

 

「その隙は致命的だぜ!」

 

〈RED HOT BLAZE!〉

 

必殺の一矢が翼さんに直撃した。

 

「うあぁ!」

 

壁に叩き付けられた翼さんは泣いていた。

 

「私は……防人……なのだ。人を……守れなければ……この身に……意味は……。」

 

姉さんはそんな翼さんの事をひっぱたいた。

 

「甘ったれるなよ先輩。今までの先輩が積み上げたモノってのはそれだけなのか?本当にその程度のモノしかなかったのか?」

 

続けて姉さんは翼さんの事を抱きしめてから続ける。

 

「あたしも間違い続けたよ。だけどこの手を引いてくれる奴もいるんだ。だから先輩も自分の事にきちんと向きあってみろよ?今日から〈風鳴 翼〉として生きれば良いんだからさ。」

 

「雪音……私は……。」

 

翼さんは姉さんの胸で泣き続けた。そしてもう一つの戦いも事態が動いていた。

 

ドゴォォォォン!!

 

その音が響いた先には倒壊した屋敷の一角と不敵に笑う訃堂……そして地面にめり込まされる司令の姿があった。

 

「オッサン!」

 

「悲しきかな。やはり貴様は甘い。今の一合も儂を殺す気であればあるいは……」

 

そして消えるような速度で振るわれた拳が姉さんを木へと叩きつけた。

 

「あぁ!」

 

「雪音!」

 

「翼……貴様に最後の機会をくれてやる。儂の剣と化せ。そうすれば使命は果たせるであろう。」

 

「……お断りします。」

 

「ほう?やはり貴様も出来損ない……か。ならば仕方あるまい。儂自ら世界を掌握しよう!その為にも貴様達は消えろ!」

 

訃堂は翼さんに銃を放つ。しかしその弾は〈降り注いだ光〉によって遮られた。

 

「未来!片付いたのか!?」

 

「終わらせたよ。だけど義姉さんの事を傷つけたあの人を私は許さない。」

 

未来は〈ダイン=スレイフ〉に手をかけようとしていた。しかし翼さんがその前に声を上げた。

 

「すまないな雪音……小日向。私にやらせてくれ。一人の人間として……〈風鳴 翼〉として歩き始める為に!」

 

その雰囲気に先程までの怯えた表情は見当たらず、代わりに皆を包むような雰囲気を出していた。

 

「任せて良いんですね?」

 

「〈防人の風鳴 翼〉は今日で別れを告げる。明日から立ち上がるのは〈一人の乙女としての風鳴 翼〉だ!行くぞ風鳴 訃堂!その怨念はここで砕く!」

 

翼さんは〈アマルガム〉を起動した。どうやらエルは間に合わせてくれたみたいだ。

 

「やはり貴様に防人は似合わぬ!ここで叩き潰してくれるわ!」

 

その雰囲気に違わぬ速度はギアを纏う皆を凌駕しただろう。だけど今の翼さんが纏うのはギアだけじゃない!

 

「行ってください翼さん!その胸に宿る想いを乗せて!」

 

訃堂は翼さんの豹変に対して怒りを露にしながら剣を振り抜いた。しかし翼さんは〈サンダルフォン〉でその斬撃を受け止めた。そして太刀の長さを縮小させて訃堂へと肉薄した。

 

「見えておるわ!」

 

しかしここで思わぬ出来事が訃堂を襲った。

 

「ぬおぉ!?」

 

すると横から矢が突き刺さっていた。

 

「姉さん!?」

 

「さっきあたし様に一撃をかましたお返しだ。そんじゃ決めろよ先輩……。」

 

「雪音!後で言いたい事があるからな!」

 

すると翼さんは手に持つ刃を訃堂の影へと放ち拘束した。そしてバーニアをふかして加速して一つの技を放った。

 

〈逆羅刹!〉

 

「ぬおぉ!?」

 

回避のできない訃堂はこの攻撃が直撃して意識を刈り取られた。

 

「翼……よくぞ踏み止めたな。」

 

「叔父様……私には愛する人がいます。その人の前で命を絶つ事は私にはできません。」

 

僕達がその光景を微笑ましく見守ると研究機関から光が上がった。どうやら彼女が動くみたいだな。



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対峙しているのは……

~~ヴァネッサside~~

 

私達を切り捨てた訃堂が戦闘を始めた時、私達はシェム・ハのコントロール権の強奪に乗り出した。しかしそこには一人の先客がいた。

 

「ようあんた達。待ってた甲斐があったもんだよ。」

 

「天羽……奏。なぜここにいるのですか?」

 

〈天羽 奏〉平行世界の住人にて別の世界の〈シェム・ハ〉こと〈シャルロット〉の協力者だ。

 

「話したいことがあるってシャルさんが言うからさ。だからここで待ってたよ。」

 

「そうですか。では私達は役目を果たしますよ?」

 

彼女はそう伝えると道を開けた。どうやら邪魔をするつもりは本当にないようだ。

 

「準備は良いわね二人共。それじゃあ始めるわよ?」

 

「任せてくれよ。」

 

「了解であります!」

 

私達はすぐに権限を奪い取った。しかしその瞬間()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「やっぱりそうなるよな。じゃああたしは始めるぜ?」

 

そしてその触手は()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

~~ヴァネッサsideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~奏side~~

 

「やっぱり予想通りの展開になったなシャルさん?」

 

〈やはり奴も我だと言うことか。では奏……手筈通りにやれよ?〉

 

「了解したよ。さあて……大物捕りといきますか!」

 

すると奴は怪訝な表情をしてあたし達に問いかけた。

 

「そこにいるのは……我……か?随分と様子が違うみたいだが?」

 

〈そうだな。この世界の我よ。だが貴様の前に立つのもまさしく我だ。〉

 

二人のシェム・ハさんが対峙した。その影響でここの雰囲気はとても重くなっていった。

 

「だがやるべきことは変わらぬ。たとえ他の我が神殺しの槍を携えようとな。」

 

やっぱり見抜いているよな。

 

「さて……ここはあたしが引き受けるからあんた達は逃げなよ。いずれ勇君もここに着くからさ。」

 

「勇さんが……か。ヴァネッサ……エルザ…すまねえがあたしは残るよ。多分最後の挨拶になってしまう……そんな気がするからさ。」

 

へぇ……どうやらこの人が継承者なのかもしれないな。

 

「ミラアルクちゃん……わかったわ。ただし生きて帰りなさい。それならばお姉ちゃんも認めるわ。」

 

「ならば約束するであります!私達は笑顔で再会するであります!」

 

そう言って二人は転移して行った。

 

「アンタは良かったのか?ここは命の保障がないぜ?」

 

「ハッ!もとからついえていた筈の命だ!ならば恩人の為に使いたいってモノだろ!」

 

「違いないな!じゃあ自分の身は自分で守ってくれよ!」

 

あたし達は共闘を決めた。そして彼等の到着を待った。

 

 

 

~~奏sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~勇side~~

 

僕達は屋敷の方から昇る光を見た。そしてここへ本部にいた装者皆と、サンジェルマン師匠とセレナさんにキャロルも到着した。

 

「来てくれたんですね。ありがとうございます。」

 

「……もう覚悟を決めていたみたいね。なら私達は最後まで見届けるわ。」

 

「姉さんを救います。その為にザフキエルが私に宿ったのですから。」

 

「勇君……世界を救おう!」

 

「後は私達で」

「虹の旋律を奏でるデス!」

 

「……〈最後〉ではないな。〈始まり〉だ!」

 

僕達は合流した皆と共にその場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!はぁっ!やはり我の攻撃は逃がせないか。」

 

「そりゃそうだろ。こっちはシャルさんが付いているんだ。そして同じ存在の筈のアンタにないモノを知ってるか?」

 

「我にないモノ……だと。」

 

僕達が到着した時、奏さんがシェム・ハを押していた。その要因は手にした武器と同一の概念を用いて戦うというところにあった。

 

「シェム・ハが……押されているのか。」

 

「チッ!精霊達まで現れたか!なぜだ!なぜ我が追い詰められている!」

 

僕達が見たシェム・ハはこの現状が理解できていないようだった。そして僕は生きていたミラアルクさんと目があった。

 

「勇さん。これが最後になる予感がしたからあたしは待ってたぜ。だからこれだけは言わせて欲しい。アンタが好きだからあたしは頑張れた。」

 

その言葉を彼女が告げた時に最後の〈霊結晶〉が輝き出して彼女へと吸い込まれた。

 

「……これは?」

 

「……七罪さん。貴女が託してくれたんですね……。」

 

「何が……何が起こっている!我はなぜ未だ満たされない!神代でも!この時代でも!」

 

「なら教えておくよシェム・ハ。人が積み上げたモノは力だけじゃない!〈愛〉と〈歌〉があるんだよ!だから人は希望を持って未来に進めるんだ!」

 

「愛……か。我にはわからぬ感情だな。」

 

僕が言葉を紡ごうとした時に星が揺れ出した。

 

「この揺れ……まさか!?」

 

「察したか精霊。そうだ。ユグドラシルの活動だ。」

 

事態が早すぎる!なんで今このタイミングで!

 

「しかし我も力を消耗したのでな。もはや制御はままならん!止めたくば止めてみよ!」

 

シェム・ハは最後の足掻きをしたという事か。なら僕は最後に皆を救おうかな。

 

「なら僕が止めて見せるよ。この世界を終わらせない為にね!」

 

僕は星の中枢へと向かった。

 

~~勇sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~響side~~

 

あの後キャロルちゃんが勇君を追って星の中枢へと向かった。そしてシェム・ハが私達に話を持ちかけた。

 

「貴様達は気づいているだろう?あの精霊がもうすぐ限界を迎える事を。」

 

「勇自身が言ってたよ。もうすぐ限界が来るってな。」

 

クリスちゃんは既に知っていたみたいだった。でもそれを知らされてからあまり時間が経っていない事も同時に伝わってしまう。

 

「ならば我から提案をしよう。」

 

「提案だと?一体何をするつもりだ?」

 

「奴を一度殺す。その後我の力を以て作り変える。神代の力を持つ我ならば可能な事だ。」

 

「その提案には貴女のメリットがないわ。何が目的かしら?」

 

サンジェルマンさんがシェム・ハに問いかけた。

 

「精霊の語った〈愛〉とやらを示せ。そして次の世界でそこの我に見せろ。あまねく平行世界の我は一種の同一個体だ。それが我のメリットだ。」

 

「なら……その方法を教えてください。私達は勇さんに何をするべきなのですか?」

 

「この宿主の記憶より垣間見た方法は接吻だ。貴様達が精霊に接吻をせよ。それで貴様達に力が託されるであろう。」

 

キス……か。でも……勇君がそんな簡単にさせてくれるわけが……。

 

「その心配はない筈よ。」

 

「翼さん……。」

 

「おそらく勇は全てを知っているわ。だから私達も覚悟を決めましょう?」

 

すると奏さんが驚きの言葉を告げた。

 

「それとシャルさんからの言葉だけどさ。勇君は次の……いや、本来の世界へと向かうらしい。だからあたしが道を作るよ。そして皆……向こうの世界で落ち合おうぜ!」

 

「〈向こうの世界〉か。多分それは琴里さん達の世界なんだろうな。」

 

多分そうだろうね。クリスちゃんの予想は当たりだと思う。

 

「では……精霊の帰還を待つぞ。」

 

私達は勇君の帰りを待った。そしてしばらくすると星の動きは穏やかになって勇君が戻って来た。

 

「皆の表情からこれから何が起きるかわかるよ。だから僕はこの言葉を送るよ。

 

〈ありがとう。皆のお陰で僕はこの人生を楽しめたよ!〉

 

だからまたいつか会おうね。」

 

そう言って勇君はシェム・ハに胸を貫かれた。今度は私達の番だ。

 

「勇君……私は勇君が大好きだよ!」

 

私は勇君の唇にキスをした。

 

「勇……貴方のお陰で私は一人の人間として生きて行けるわ。」

 

翼さんがキスをした。

 

「お前はあたし様の愛しい弟だ。次の世界でも捕まえるからな?」

 

クリスちゃんがキスをした。

 

「貴方に出会えた私は一人の乙女だったわ。愛してるわよ。」

 

マリアさんがキスをした。

 

「私達二人に」

「絆の強さを教えてくれた勇さんが」

 

「「すごく離れたくないよぉ!!」」

 

切歌ちゃんと調ちゃんがキスをした。

 

「次は逃がさないからね?」

 

未来が勇君にキスをした。

 

「勇さんが私をみてくれた事は嬉しかったです。」

 

セレナさんがキスをした。

 

「一人の弟子だった筈なのに立派になったわね。」

 

サンジェルマンさんがキスをした。

 

「短い付き合いだけど救われたぜ!」

 

ミラアルクさんがキスをした。

 

「お前はオレの伴侶だ。未来永劫な。」

 

キャロルちゃんがキスをした。

 

「今度はちゃんとデートしような。」

 

奏さんがキスをした。

 

「ふん。私より先に逝くなどひどい奴だ。」

 

フィーネさんがキスをした。

 

「では始めるぞ。」

 

私達は勇君の様子を見守った。そしてその体は光に包まれてなにかに吸い込まれた。

 

「ねえ皆……提案があるんだけど良いかな?」

 

「奇遇だな。あたしも提案したいところだった。」

 

皆の表情は同じだった。どうやら次の言葉も同じみたいだ。

 

『次の世界では負けないよ!絶対に私(あたし/オレ)が勇(君/さん)の一番になるから!』

 

私達は奏さんが開いたゲートへと足を運んだ。しかしキャロルちゃんは来なかった。

 

「キャロルちゃん?」

 

「オレは少し準備をして行くとしよう。だがこれはハンデだ。次もお前達に勝つのはオレだからな!」

 

「その言葉……後悔しても遅いんだからね!」

 

私達は〈精霊〉になった。だから勇君が現れるまでは〈隣界〉で眠りにつくよ。

 

「最後に我からの手向けだ。精霊の力はお前達に。お前達の力は精霊に宿した。そしてお前達の力は精霊が目覚めた時に覚醒するだろう。」

 

ありがとうシェム・ハさん。私達の姿をしっかり見守っててね!

 



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キャロルの準備

~~キャロルside~~

 

「さて……オレも準備を始めるとするか。」

 

オレは本部に赴き今回の事情と出来事を全て報告する事にした。そしてその内容はパヴァリア本部にも同時中継させた。

 

「シンフォギア装者とフィーネ・サンジェルマン・セレナ・ミラアルクは勇が転生する世界へと旅立った。オレももうすぐ向かう事になる。」

 

「そうか。響君達も行ってしまったか。」

 

「寂しくなりますね。」

 

「彼女達……あんなに勇君が好きでしたからね。」

 

『サンジェルマンも行ったのね。でもその様子なら彼女は覚悟を決めて行ったという事なのね?』

 

『それはセレナも同じワケだ。』

 

『ミラアルクちゃんも同じよ。』

 

『きっと後悔していないであります!』

 

全員この事態を受け入れていた。ならばオレは伝えるべき事を伝えよう。

 

「そこでオレはお前達に提案がある。」

 

「提案……か。教えてくれないか?」

 

弦十郎は躊躇いなくオレに確認をしてきた。おそらく次の言葉はわかっているのだろう。

 

「まずは本部のメンバーだが、オレはお前達の死後まで眠りにつく。そしてお前達が天命を向かえた時に今のお前達の魂を向こうの世界へ連れて行く。もちろん記憶は抜いて行くがな。」

 

「オレ達もキャロル君と共に……か。しかし良いのか?それでは勇君とキャロル君の再会が……。」

 

お人好しめ。まあ……心配している事はわかっているがな。

 

「正確にはオレ自身も今から仕込みを行う。そしてそれが終わり次第眠りにつくだけだ。休息を兼ねてな。」

 

「ボク達はどうしますかキャロル?」

 

「すまないがエルの話は後だ。先に此方の片をつける。」

 

エルを制止してオレは連中に答えを聞いた。

 

「無論オレは行こう。彼等を守れなかったのはオレ達の後悔でもある。ここでその汚名を注ぐさ。」

 

「気の長い話だけどこっちに不利益はないからな。良いよ。僕達も同行させて欲しい。」

 

弦十郎とオペレーターは了承した。次はパヴァリア組だな。

 

「次はお前達だ。お前達には今から協力して欲しい事がある。頼めるか?」

 

『構わないわよ。言ってみなさい。』

 

『まあ……見当はついているワケだ。』

 

『ええ。おそらくは……』

 

『私達にしか頼めない事であります!』

 

もはや説明すら不要……か。良い仲間を持てたものだな。

 

「お前達とダ・カーポにオレ達が旅立った後のこの世界を任せたい。お前達にしか頼めない事だ。」

 

『構わない。むしろよろこんでやるわよ!』

 

『むしろ此方が考えていたワケだ。お前の尻拭いをしてやるからさっさと寝るワケだ。』

 

『ミラアルクちゃんの為にも……ね。』

 

『私達に任せて欲しいであります!』

 

「まさか私に世界を預けるとはな。あの時の激闘をした仲だが、本当に良いのか?」

 

ダ・カーポだけは此方に疑問を投げかけた。しかし大して考えて言った訳ではない様子だな。

 

「今のお前がそんな事を考えていない事などすぐにわかるさ。それがオレ達だからな。」

 

「違いないな。」

 

そして最後にエル達に向き直る。

 

「待たせたなエルフナイン……。最後はお前達だ。」

 

「はい!言ってくださいキャロル!ボク達は一緒ですから!」

 

やはり流石は妹という事か。

 

「エルフナイン・ノエル・ファラ・ミカ・ガリィ・レイアはオレが調整を施した後に次の世界へ向かうぞ。その為に今からはスリープモードに移行してもらう。」

 

「わかりましたわ。」

 

「派手にかしこまりました。」

 

「アタシも構わないゾ!」

 

「マスターの頼みですからねぇ。ガリィ了解です!」

 

「ありがとうございますキャロル!」

 

「まあ……やはりこうなりますよね。僕も行きます姉様。」

 

一人可愛くない奴がいたと思うが気のせいだろう。

 

「そしてお前達に施す事だが、〈自動人形〉組はオレの持つ霊力を全て使い永久機関を建造する。これで出力は落ちるが外からの補充を少なくさせる事が出来る。」

 

「ですがキャロル……霊力は使えば……。」

 

エルの懸念は最もだろう。だがそこにも既に策はある。

 

「心配するな。奴等が活動すれば自然と〈マナ〉が発生する事になる。しかも隣界組のもたらすエネルギーは相当なモノだろうな。それを収集できれば心配はあるまい。しかもあの世界には〈顕現装置〉も存在するからな。エネルギーには事欠かんだろうさ。」

 

「なるほどな。キャロル君の企みはよくわかった。では俺達からも提案をして良いか?」

 

「珍しいな。言って欲しい。」

 

「いずれ転生してからで構わないが、また組織を立ち上げてくれないか?今度こそ彼女達を支えたい。」

 

「アテはある……がそれは向こうに着いてから仕込む事だ。オレ達で生じる変化を見極めた後に……な。」

 

すると弦十郎は笑った。

 

「末恐ろしい限りだ。やはりキャロル君は希代の天才という事か。」

 

「ではオレも仕込みを始める。後の事は任せたからな?」

 

「応ともさ!期待しているぞ!」

 

「任せろ!それがオレの使命だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オレはその数十年後にファラ達の調整を施した。後に同行するメンバーの魂を回収してオレより先に送り出した。最後になったがオレも旅立つとしよう。

 

「さあ!オレも戦争(デート)を始めるぞ!」

 




これにて本作品を完結とします。凡そ3ヶ月のお付き合いありがとうございましました。


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解説回

最後のおまけ回です。


キャ「作者……なぜ五期があんなにガサツな展開になった?」

 

〈正直な話をすると、執筆の限界を感じた。〉

 

勇「あれだけ伏線を作りまくったのに?」

 

〈回収が困難にもなったし、何よりも書きたいネタが尽きてしまった。〉

 

キャ「そういえばDr.ウェルはこのまま放置か?」

 

〈この話では放置になります。しかし次回作の執筆を決めました。〉

 

勇・キャ「ハ?なんで次回作?」

 

〈いくつかの事情がありますが、理由の解説を始めます。

一つ目の理由ですが、今回の執筆の反省点が幾つも発見されたものの現状からいえば修正ができないほどに膨れ上がり過ぎました。〉

 

キャ「そういえば序盤は仕込みを意識し過ぎてつまらん展開が続いたな。いつまでも原作に入らなければ戦闘回もほぼ無しときたからな。」

 

〈さいです。そこはおおいに反省しています。なので次回作はその反省を踏まえていきなりアクセルを踏みます。〉

 

勇「それはそれで読者の方が置いてけぼりになるからね?本当に配慮してあるの?」

 

〈次回作のプロローグは勇君達の転生回になります。そして第二話が本作品のキャラの解説回であり、その世界での役割の発表回でもあります。〉

 

キャ「そういえばXV編だけ設定回を作らなかったな。つまりそれがこの作品のあらすじも兼ねるという事か?」

 

勇「僕〈達〉ってどういう事?」

 

〈そのままの意味です。まず前提条件に勇君は既に死んでいます。そしてシェム・ハによって体を作り変えられた後に転生します。その過程をプロローグの前半で投稿します。そして後半でキャロルちゃんがわざわざ残ってまで行った仕込みの解説をします。〉

 

勇「そういえばキャロルはまだ転移していないのか。何を準備するの?」

 

キャ「オレが転生するにあたり、このままだとこの世界の守護者がいなくなるからな。だからコラボ回でいただいた〈ダ・カーポ〉とカリオストロ・プレラーティ・ヴァネッサ・エルザのメンバーに、この世界を託す事を発表するつもりでいる。」

 

勇「あれ?凛祢は?」

 

〈彼女はデアラアニメ一期終了相当のあたりで再会というプランですね。また、この流れで他の方々もデアラ原作の時系列で合流していただきます。〉

 

キャ「なるほどな。という事はプロローグと解説回は相当な文字量を覚悟して見る事になりそうという事か?」

 

〈そうなりますね。という訳で勇君は二回目の神様転生を、プロローグでしてもらいます。〉

 

勇「ひどい話だね。僕は作者に殺されたというのに。これで終わりとかただのデッドエンドじゃないか!」

 

キャ「そもそもこの作者がハッビーエンドを作れる性格とは思えなかったがな。」

 

〈めちゃくちゃな言われようだね。君たちは少し自由過ぎな気がするけど?〉

 

勇「そういえば他に次回作を書かないといけなくなった理由があった筈だけど?」

 

〈ヤンデレメイキングを間違えました。序盤はアレで回っていたけど、終わり際が単調になっていたから完全に失敗しました。〉

 

キャ「言われてみればそうだな。ならば次回作はそこの改善をするという訳だな?」

 

〈必ずします。その為に幾つかのヤンデレ・メンヘラ作品を読みまくっています。〉

 

勇「と……いう事は……?」

 

〈転生した勇君にはまた悲劇が降り注ぎます。〉

 

キャ「作者が学習している事を願うぞ。後さっきお前は次回作の一話に転生回を、二話に解説回と言ったがその後はどうするつもりだ?」

 

〈三話で前日譚を投稿します。そして四話にて本格的にヤンデレとエンカウントをしてもらいます。そして好感度がヤンデレなヒロイン達(精霊)と勇君が関わる事で生まれるデアラ物語となります。〉

 

勇「デアラ物語って事は登場順番は……まさか?」

 

〈継承した天使の登場順番です。つまり初回は翼さんになります。〉

 

キャ「つまりデアラの登場順番でシンフォギアヒロインが登場する訳か。配役や舞台はどちらだ?」

 

〈世界観はデアラで、ヒロインはシンフォギア。そしてエンカウントシチュエーションは現在構想中ですが、作者の方でも実は今トラブルを抱えています。〉

 

キャ「トラブルだと?」

 

〈現在執筆に使っているスマホを機種変更します。それも相まって投稿するのは年明けからになるかと思われます。アプリやデータの引き継ぎがありますので。〉

 

勇「そればかりは仕方ないね。まあそれは終わらせないと投稿の再開は無理だよね。」

 

〈そういう訳で、諸々の準備が出来た時に改めて続編をデアラ原作で投稿します。その時にはその作品の登場人物・扱う天使・勇君との関係性までを軽く纏めておきます。それが二話の内容です。〉

 

キャ「具体的な流れが出来ているだけましか。では次の投稿までのお別れという事だな。」

 

〈はい。本作品を楽しんでくださった皆様は本当にありがとうございました。もしよろしければ次回作でお会いしましょう。〉




そして次回作の制作を決定しました!
投稿する日時をまだ決めてはいませんが、可能になり次第活動を再開します。

それでは皆様また会う日まで。


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