カネキ(女)のヒーローアカデミア (青青)
しおりを挟む

僕は、喰種だ。

もし、金木研(女)が雄英でヒーローを目指すなら。

金木研ではあるけど喰種の世界の彼ではなく、あくまで喰種の世界の彼に限りなく近い別人です。

性格や口調は研くん寄りですが、一応オリ主に近いのでそういうのが苦手な方はブラウザバックお願いします。

ついでに、評価が良ければこちらも更新していきます。


「おい、カネキ。今日は電車なんだろ。帰るぞ。」

 

綺麗な紅と白のツートンカラー。サラサラとしたストレート。

見れば見るほど引き込まれそうな、右とは違う色の左目。

 

彼とは幼稚園からの仲で、たまたま今までずっと同じクラスだった。

合計13年彼とは同じ教室で過ごしている。

 

彼は有名なヒーローの息子で、偶に傷だらけで学校へ来たり学校に来なかったりした。

小学校低学年の頃だっただろうか。彼の綺麗な左目の周りが大火傷によって傷ついているの見て、とても心配したのを覚えている。

 

今ではその火傷跡によって綺麗な左目が引き立っていてそれもまた良いな。と思える程には慣れているけど。

 

「うん。帰ろうか焦凍君。」

 

僕は、自分の名前が嫌いだ。

男の子みたいで嫌いだ。

それをお母さんに言うといつも顔を赤くして怒られる。

だから嫌いだ。

 

そのお母さんももういないけど。

 

自分の名前が嫌いだから、彼に‘ケン’と呼ばれた時は少し嫌な顔をしてしまった。

理由を言ったら、直ぐに「ごめん」と言ってカネキ呼びに戻してくれた。

彼はとっても優しいと思う。

 

「今日は具合が良いのか?」

 

僕は‘個性’の都合で栄養がすごく偏ってしまう。

だから、いつも栄養失調気味で肌も病的に白いし髪も‘ストレス’やそのことがあり真っ白だ。

最近は身体が出来上がって来たからか体の調子が悪い事が少なくなったけど、でも保健室にはよくお世話になっている。

 

「そうだね。最近は具合がいい日が多いんだ。」

 

「そうか。それは、良かった。」

 

僕達はどっちも口下手で感情が表に出ない。

だから、会話も最低限だしあまり大声て笑ったりもしない。

でも、‘最低限’で‘最大限’のコミュニケーションをとっていると思う。

一言で彼の感情を理解できるのは僕だけだと思うし、僕の感情を理解してくれるのも彼だけだと思う。

 

「志望校。決めたのか?」

 

こちらの顔を見ながら呟く。

 

「決まったよ。やっぱり僕は焦凍君と同じ所にいきたい。」

 

僕は少し顔を赤らめながら言う。

 

「そうか。うん。いいな。」

 

少し嬉しそうだ。僕も嬉しい。

 

「ふふ」

 

少し笑って、他愛もない話を続けた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

金木研

 

女 16歳

 

個性 喰種

 

背中〜腰から赫子と呼ばれる触腕を出す事が出来る。

普通の人間とは比にならない強靭な肉体と身体能力。

具体的には、悉くの刃物は体に通らず、ありとあらゆる攻撃をほぼ無効化する。仮に攻撃を受けて腹に穴が空いても異常な回復力で即座に傷が無かったことになる。

赫子を出す際右眼が紅と黒に染まる。

本人はこれを忌避していて、眼帯を欠かさずしていたがある切っ掛けで眼帯をしなくなった。

 

喰種の最大の特性は、動物の‘生肉’からしか栄養が取れないことであり、その他の食べ物や、調理済みの肉からは栄養が取れず味も感じない。

そのため成長期真っ只中である中学では保健室登校であった。

 

本人はあっさりとした鶏肉や個人的に美味しい組み合わせを探していた時に巡り会った『羊肉と豚肉の合い挽きミンチ肉』が好きで良く食べている。

 

ここからは本人が知る由もないのだが、喰種の個性は自分の赫子を喰う事により強化される。

赫子から細胞を摂取しその細胞を増殖させることで肉体、赫子を大幅に強化することが可能なのだ。

しかし本人は喰種という個性に強い忌避感があるので自分で自分の肉、人肉を食べる。という事はしないであろう。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

雄英入試

1日で1000UAありがとうございます。
とりあえず二話目更新です。

感想お待ちしています


『リスナー達ィ!今日は俺のライブに来てくれてありがとう!!!』

 

五月蝿い...。

金髪の派手な髪型なDJ

彼はこの雄英高校の教師であり、実技試験の試験監督でもある

 

僕は、焦凍君が推薦で受かった雄英の一般入試に来ている。

ついさっき筆記が終わったところだ。

僕は病弱だったこともあって読書や勉強等の体を動かさず出来る事しか出来なかったから結構頭は良い。自分で言うのも恥ずかしいんだけどね。

だから、筆記は心配ない。

心配なのは実技なのだけど...

 

『これで説明は終わりだァ!各自自分の指定された会場に移動してくれェ!』

 

あ、全く聞いてなかった。

まぁ何とか...なるかな?

 

ーーーーー

 

「...凄い人」

 

目の前には、ヒーロー志望の同い年が沢山。

と言っても見た目はバラバラだ。

言葉通り、腕が6本あったり足が異様に長かったり。

それぞれの‘個性’だろう。それにある程度のアイテムは持ち込みOKというルールなので、鉄パイプを背中に背負う人や刀を腰に掛ける人、中には全身ガチガチのスーツで固めている人もいる。

かく言う僕の姿は、中学のジャージだ。

別にアイテムは必要ないし、見た目にこだわりがある訳でもない。

だから僕はジャ「ハイ、スタート」

 

「......?!」

 

いきなり発せられたスタートの一言。

多くの人は「は?」と疑問符を浮かべている。

そして先生からの「賽は投げられてるぞ」という言葉で慌てて、自分の個性を使い駆け出していく。

 

「僕も行かなきゃ」

 

スゥッと息を吸い込み、身体を落とし、胸が地面に着くかと錯覚するような前傾姿勢で駆け、速度を上げる。

先に飛び出して行った人達を抜かしみるみるうちに距離を離す。

 

「速...!!?」

 

隣をすれ違った他の受験生が、思わず呟く。

 

 

 

 

ドンッ!

 

「あれ、意外と脆い」

 

持ち前の素早さを活かしロボットの下に潜り込み、下からアッパーカットの容量で駆動に必須であろう部品を壊す。

 

「よし、次」

 

ーーーーー

 

「WOW、あの子凄いな」

 

「あぁ、確実に弱点を潰してる」

 

「他の会場にも結構いい子がいるぞ」

 

「今回は豊作か!」

 

「いーや、まださ。これからが...“本番”さ」

 

ーーーーー

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

 

大地が揺れる

 

「地震...じゃない?」

 

地震にしては揺れが不規則...いや規則的過ぎる。

 

「オイ、オイオイ!ありゃあ、やべぇだろ!アレがゼロポイントなのかよォ!?」

 

地震の発生源。それは超巨大なロボットだった。

あれは所謂おじゃま虫なのだろう。

それにしても巨大だ。

 

「逃げろォ!」「あんなの無理だろ!」「うわぁぁ!!!」

 

周りの受験生達は一目散に逃げ出して行く。

 

「僕もぼちぼち逃げようかな。」

 

そうして踵を返したその時だった

 

「きゃっ!」

と、声が聞こえた。

 

良く目を凝らしてみると、ロボットが通るであろうその道の真ん中に黒髪ショートの女の子が瓦礫に足を挟んで倒れていた。

 

「ッ、抜けない!」

 

抜け出せずにいるようだ。

 

「うーん、僕が助ける必要は無いよね。どうせ監督してる先生が止めてくれるだろうし。」

 

これは試験だ。もし人を殺しでもしてしまったら学校の信用に関わる。

踏み潰す前にロボットが止まるだろう。と考えた金木はそのまま立ち去ろうとした。

 

「ごめんね......ッ!」

 

そうして一瞥して去ろうとした時、その子の顔が見えた。

ショート、にしては長いような髪。

片方が目にかかり片目しか見えないが、その片目は綺麗な蒼色で、でも少しツリ目気味で。

何故か懐かしい顔だった。

 

 

 

ダッ!

 

「もう...知らない!」

 

一気に加速しその女子へ駆け寄る。

 

「大丈夫?」

 

そうして、目線を合わせて話しかける

 

「う、うん。私のことはいいから早く逃げて!」

 

彼女は僕の事を心配してくれているのだろう。

見捨てて逃げろと言ってくる。

 

「僕も最初はそのつもりだったけど、君の顔が......大切な人に似ていた気がしたから。」

 

そう言って何も言わせずにその子を抱えあげる。

 

「えっ、ちょ」

 

そして有無を言わさずに加速して試験開始の合図のあった場所へと走った。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

合否

感想、評価お待ちしております。
尚マイページにて、主のTwitterのURLを掲示しておりますのでそちらのフォローもよろしくお願いします。


入試から4日経った。

未だ合否は出ていないが、きっと受かって居るだろう。

筆記も実技も自己採点でボーダーを余裕で超えていた。

例年よりもボーダーが高いとしても受かっている筈だ。

 

トントン

部屋のドアがノックされる。

 

「どうぞ」

 

そして、ガチャとドアを開けたのは僕が居候させてもらっているお店の店主だ。

 

「金木君、届いていたよ。」

 

そう言って封筒を渡してくる。

 

「店長。ありがとうございます。」

 

少し厚めの封筒を受け取る。

宛名は雄英から。

合否通知だ。そそくさと部屋に戻り中を確認する。

 

「あれ?機械...?どうするんだろう。」

 

封筒を開けると、円形の機械が出てきた。

使い方がわからないので、封筒の中をよく見てみると取扱説明書の様な物が入っていたので確認してみる。

 

「えっと、円周にボタンが...あった」

 

取説の通りにボタンを押すと「端的に説明する。これは合否通知だ。」

 

と、小汚いホームレスのような格好の人が投影され喋り出す。

 

「本来は俺ではなくオールマイトが合否通知をする筈だったが、お前に少々言う事が増えたのでな。とりあえずお前は合格だ。」

 

合格...よかった。

 

「が、お前はあの試験の場で本気を出さなかった。本当に雄英に入学したいなら出し惜しみなんかしないはずだ。まぁこれはお前が本気を出すまでもなく合格できると判断したのだろうが...本題はここからだ。お前、試験の最終場面でロボットに潰されそうだった少女を無視しようとしたな。俺にはこう見えた、どうせ試験だから教師が止めに行くだろう。私には彼女を助ける義理も義務も無い。ってな。結果的にお前は彼女を助けたが、それは結果的にだ。他の教師はその行動に、どう助けるか考えていた、なんて甘い事を言っていたが俺にはそうは見えなかった。お前はヒーローに向いていない。だが試験には受かってしまった。しかも次席で、お前は俺が見る。そしてお前が少しでもヒーローとしての素質を見せないのならお前を除籍にするつもりだ。」

 

...長くてよくわからなかったけど、結局の所、率先して人助け出来ないのならヒーローを諦めろって事かな。

ヒーローになりたい訳じゃないけど、雄英には入りたい。ヒーロー科でね。

除籍は、困る。

奨学金まで貰っているのに除籍になんかされたらもうそれこそ終わりだ。

 

「来い、ここがお前のヒーローアカデミアだ。」

 

髪を掻き上げ、にへらと笑う未来の担任であった。

 

ーーーーー

 

「じゃあ、行ってきます。店長。」

 

店を出る前にカウンターでコーヒーメーカーを掃除している店長に声を掛ける。

 

「いってらっしゃい」

とにこやかな笑顔で微笑んでくれる店長。

 

「はい!」

そうして僕は、未来への第1歩を踏み出した。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

戦闘訓練

「HAHAHA!じゃあ戦闘訓練、始めるよ!最初の組は準備してね!」

 

信号機のようなカラーリングのスーツを着た、僕達とは画風やらなにやら全てが違う多くの人の憧れであるヒーロー。

NO.1ヒーロー、オールマイト。

ヒーローに興味が無い僕でも知ってるヒーローだ。

 

今僕達は、運動場で戦闘訓練と題した授業を受けている。

運動場と言ってもまるで1つの街みたいだけど。

 

ヒーロー科に入学して2日目、もうここまでで濃い内容だった。

入学式だと思って行った初日には個性把握テストという物があり、その結果によっては除籍、と煽られたり。

帰り際には見た目まるで個性使ってない様に見えるのに普通に上位に入った僕に対して、どんな個性!?だとか質問攻めにされるし、金髪のチャラそうな子にはいきなりナンパされて焦凍君が凍らせようとしたり。

 

本当に濃い一日だった。

 

「金木君?次は君たちの番だぞ?」

 

おっと、昨日のことを思い出してたら僕の番が回ってきたみたいだ。

 

この訓練は、2人組になりビルの中で『ヒーロー』と『ヴィラン』に別れて『核』を防衛したり、確保したりする訓練だ。

私のペアは尻尾の個性の子。

相手は焦凍君と触腕が4本ぐらい生えてるタコみたいな子。

 

「そうですか、じゃあ行こうか。」

 

ペアの子に声をかけビルの中へと入っていく。

因みに僕たちはヴィランチームだ。

 

「作戦。どうする?」

 

僕は後ろに着いてきている尻尾君に聞く。

 

「うーん、正直何も思い浮かばないんだ。そっちは何か有る?」

 

頬を掻きながら申し訳なさそうに言う。

 

「うん、大丈夫。焦凍...轟君がビルごと凍らせてから突入してくると思うからーーー」

 

そうして作戦を組みたてていく。

尻尾君はキチリと僕の話を聞いて、分からない所や修正案を出してくれる。

やはり倍率300倍の学校、性格が良い人ばっかりだね。

 

「さて、ではSTART!!」

 

一通り相談が終わり一息着いていた所でオールマイトから合図が出た。

 

「じゃ行こっか」

 

ーーーーー

 

「轟、始まったぞ。」

 

首元をマスクで覆った大男のクラスメイト、障子が俺に言う。

 

「あぁ、少し下がってろ。牽制程度に終わるだろうが凍らせる。」

 

俺は目の前のビルに手を付ける。

ヒタッと右手で触り、そこを起点としてビルを氷で包んでいく。薄く、広く伸ばしてある程度経ったところでそれを止める。

 

「本当にこれが牽制なのか?もう制圧出来てるんじゃ...」

 

その光景を見て障子は心配して言うが、こんなので止まるような奴じゃねぇ。

 

「いいや、きっとアイツのことだ。絶対に躱してる。」

 

「お前がそこまで言うのならきっとそうなのだろう。俺はどうする?」

 

「そうだな、常に耳を使ってて貰いたい。それと死角になりそうな場所に目を向けておいてくれ。あとは俺に着いてきてくれれば大丈夫だ。」

 

「あぁ、分かった。」

 

そう言って、触腕の先を目と耳に変え周りを見始めた。

それを確認した俺は、確保テープを巻き付ける、又は核を抑えるために玄関の中へと踏み込んだ。

 

 

 

「おい轟、この階段の上の先で少し音がする。何かを喋っているようだが小さすぎて聞こえない。」

 

先へと進み、1階、2階と1部屋ずつ確認していく。

そうして3階へと上がる階段の前で変化があった。

 

「そうか俺が先に出る、お前は後ろで警戒、戦闘に移行したら出来る限り早く離れて核を探してくれ。」

 

この先に誰かいる、そう想定して動くのであれば俺が先に出て戦闘するべきだ。範囲や殲滅力だけで言えば俺の個性はプロにも劣らない。

そうして戦闘している間に察知系の障子に核を抑えてもらう。とりあえず最前の道を選ぼう。

 

ゆっくりと、ゆっくりと階段から頭を出した。

 

そこには、白い髪の、不気味なマスクをした、一人の女が立っていた。

 

「アハハ、凍っちゃった。ねぇこれ溶かしてよ。冷たくて、壊死しちゃう。僕の身柄は確保しちゃってくれていいから、ね?」

 

金木は、心底困った様な顔をして俺に話しかけて来る。

 

「なんだ、やっぱり凍ってるじゃないか。とりあえず確保テープは任せてもらうぞ」

 

障子は、金木が何も出来ない木偶の坊と化したと思い近付く。

 

「ッ!!」

 

待てっ!と止まれっ!と声を出そうとするが、後ろからの衝撃に驚き声を引っ込めてしまった。

カラカラと俺の後頭部にぶつかったであろう氷の塊が砕ける音が響く。

衝撃が来た方向に顔を向けるが特に何も無い、がそこに絶対何か居たはずだ。

 

そうだ!障子は!

 

先程までの状況を思いだし、金木の方へと振り返る。

 

「ッ!」

 

すると、先程まで金木がいた場所には紅い水溜まりが広がっていて、その水たまりから大幅な感覚で足跡が刻まれている。その足跡を目で追うと、足元を真紅に染めた金木と、その足に蹴られ脳を揺らされたであろう障子が横たわって居た。

そして、金木はマスクによって隠されていない、片目を合わせて喋り出す。

 

「フフ、痛いね。でも、思ったほどじゃ...っない!!」

 

言い切る前に低姿勢で飛び出してくる。

しかし、それを見切れないほど俺の目は節穴じゃない。

 

「フッ!」

 

突撃して来た金木を、半身になることよってゆらりと躱し自分の横を通り過ぎる金木の背中に向けて肘を落とす。

だが、それすらも読んでいたのか未来が見えるかの如く速度で左足を踏切り、ステップで回避する。

そのステップを右足で同じように踏み、左足が顔面目掛けて向かってくる。

 

「っぶねぇ」

 

息付く暇も個性を出す暇も無く、蹴りや殴りのラッシュを叩き込んでくる。

右手をいなし左手を躱し右足を受けて左足を止める。

 

そして止めた左足を凍らせようと個性を発動させようとしたその時

 

『終了!ヴィランチームの勝利!!』

 

とアナウンスが入る。

よく見てみると、後ろから尾白が確保テープを巻き付けて来ていた。

 

「っ、クソ。ミスったな。熱くなりすぎた。」

 

「へへ、勝ったよ焦凍君。」

 

 

ーーーー

 

 

「さて、講評の時間...なんだが金木少女。その足は大丈夫なのかい?」

 

さっき焦凍君の氷から足を引き剥がした時に皮が無くなったことを言っているんだろう。

 

「はい、もう治ってますよ。」

 

まだ洗ったり拭いたりしてないので紅いまんまだから心配してくれたのだろう、さすがヒーローお優しい。

 

「え?金木って増強系の個性じゃないのか!?」

 

クラスの誰かが驚きを声に出す。

 

「まぁ、僕の個性は複合型だから。一言で言うならパワーアップと超回復。かな?」

 

その驚きに答えると、クラスの中でざわめきが起こる。

 

「ンンッ!その話はまた後で、いまは講評の時間だよ!少年少女!」

 

そうして、講評をした後また別の組が訓練を始めたのだった。

 

 

 

 




感想、評価よろしくお願いします。

初の戦闘回でしたね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

USJ・1

お待たせしました。


「動くな...アレはヴィランだ...!!」

 

「はぁ!?なんでヴィランがいるんだよォ!」

 

 

~~~

 

これから始まるは金木研の物語、その序章である

 

〜〜〜

 

USJ災害エリアの1つ、火災エリアの空上に黒いモヤが広がりその中からしっぽの生えた少年が落ちて来る。

 

「ッ、痛つつ...ここは?」

 

「ここは火災エリアだね。また僕達2人か、君とは何かあるのかな。」

 

落ちてきた尾白に先に降りていた金木は手を差し伸べる

 

「金木さんか、うん、ありがとう。それで、とこれからどうする?」

 

金木の手を取り置き上がる

 

「正直僕は戦況とか組み立てるのは得意じゃないんだ。君が僕を動かしてくれよ。君の指示通り動くからサ。」

 

眼帯の着いた歯茎と歯が剥き出されたような黒マスクの、眼帯で塞がっていない瞳で尾白の瞳を捉える。

 

「うーん。そう言われると弱るんだが...分かった。」

 

少し思案していた様だが何かいい案が浮かんだのか、了承する。

 

「まず、俺たちは広場に向かって先生達と合流する。多分これが一番生存率が高いと思う。」

 

懐から取り出したUSJの地図を開き、広場に指を指してそう言う。

 

「分かった。でも、向かう途中にはきっと敵がいる。どうするの?」

 

今USJ内には少なくとも40人以上のヴィランがいる。

あのモヤが金木らを散らして殺すと言った通り、飛ばされたこの付近に敵が居るはずだ。

 

「そう、それだ。最初に謝らせて欲しい。俺はそんなに強くないから、女の子の君を戦わせることになってしまうことを。そして、ここからはお願いだ。もし嫌なら断ってくれて構わない。別のルートを探すだけだからね。」

 

申し訳なさそうに頭を下げながら言う尾白に金木は

 

「大丈夫。言ったでしょ?君の指示通り動くって。それに僕は戦うことぐらいしか出来ないから、喜んで協力するよ。」

 

黒マスクで表情は見えないが、声色から彼女はきっと笑っている。

 

「そう言ってくれると有難いよ。それじゃあ作戦だけど...」

 

ーーー

 

「ヒャァッハァ!!マブイメス1人確保だぜェ!」

 

開けた場所で座っていた金木は、背後から近付いてきていたカメレオンのような男に拘束されてしまう。

 

「オイ、おめェら!見たところこいつしかいねぇ!出てきていいぞ!」

 

カメレオンが大声で周りに呼びかけると、周囲にある廃ビルから6人の敵が集まってくる。

 

「オイオイ、コイツァ激マブだなァ!」

 

「そうか?俺としちゃあ身体がガキ臭くてイケねぇ。」

 

「お前分かってねぇなぁ、これがいいんだろ」

 

「ったく、てめえ見てぇな異常者と同じにしないでくれ。」

 

「おい、いいからさっさとヤっちまおうぜ」

 

集まってきたヴィラン達があーでもないこーでもないと言い合っている中、金木はさっき尾白に言われたことを思い出していた。

 

『敵はチンピラレベルだ、多分数だけの雑兵だよ。だから、俺達がちゃんと戦えば勝てる。問題なのは伏兵や罠。だから逆に俺たちがそれを利用する』

 

「フハ、ヨダレが止まんねぇぜ」

 

『金木さんには本当に申し訳ないんだけど、君には囮になって欲しい。君は普通に可愛いから、きっと敵は下衆な事をしようと殺しはしない。だから、君が捕まって注意を集めて欲しいんだ。』

 

「オイオイ、ちゃんと順番を決めてからシよう。後腐れなしのジャンケンだ。」

 

『君にして欲しいのは、その、“事”に及ぶ瞬間の1番気が緩んで居るところで1番厄介そうなのを倒して欲しい。戦闘が起きたのを確認したら俺も直ぐに行く。頼むぞ』

 

「グヘ、よおし!」

そして、敵が金木のスーツに手をかけたその瞬間、金木の顔付きが変わった。

 

「千引く七は」

 

その唐突に呟かれた言葉に、意識を取られた。その一瞬、腕の拘束具を一息で破壊しその勢いのまま1番近くにいた敵の顔面に裏拳を入れる

 

「グハァッ!!」

 

意識外からの攻撃に対応出来ず、その攻撃を食らった敵は倒れる。

 

「ッコイツ!」

 

今起きた事を把握し、戦闘態勢に入ろうとするカメレオン男を捕捉し全速力の加速から懐に入り、足で腹を蹴り上げる。

 

「グフッ!」

 

しかしそれでは足りないと判断したのか、その状態から1回転し踵落としを首に決める。

その決定打によりカメレオン男も意識を失う。

 

「あと4人...」

 

そう呟き、腰を落とすと敵のその奥から声が聞こえてくる

 

「あと3人だ!」

 

目を凝らしてみると、敵の背後をとった尾白がそのしっぽで1人ノックアウトさせている所だった。

 

「あと...2人ッ!」

 

加速し敵の背後をとると、映画でよくある手刀で首を叩き気絶させる。という離れ業をやってのける。

 

「あと1人だァ!」

 

しっぽで自分を打ち出した尾白はその勢いを活かしてボディブローを入れる。

常人の足の3倍以上の力があるしっぽで加速した尾白の、渾身のボディだ。

一撃で意識を沈める。

 

「これで...終わりィ!」

 

「ガァ!」

 

金木は死角から近付き、後ろで掴み攻撃をしようとしていた敵に回し蹴りを頭に食らわせ一撃で沈めた。

 

「ハァ、ハァ、流石金木さん。余裕そうだね。」

 

息も絶え絶えに尾白が言う。

 

「そんな事ないよ、結構緊張した。」

 

いつもと変わらぬ真顔でそういう金木

 

「アハハ」

 

その顔につい苦笑いを浮かべてしまう尾白であった。

 

 

 

 




編集データが吹っ飛んで3000文字くらい消えました。
僕のモチベが持たないので今回はここまでです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

USJ・2

感想、評価お待ちしております


広場へと駆ける。

 

 

悪意の元へと。

 

ーーー

 

「脳無やれ」

 

脳みそがむき出しの大男に体の至る所に手の模型を付けたひょろひょろの男が言う。

すると、その脳無と呼ばれた大男は目の前に居る標的(イレイザーヘッド)を殺さんと駆け出す。

駆ける、とは言うがその速度たるはまるで新幹線だ。

普通の人間なら反応も出来ず轢き殺されミンチにされるだろう。

だが、仮にもプロヒーロー。幾つもの修羅場を超えPlus ultra(更に向こうへ)して来た戦闘のプロだ。目は肥え、感覚は研ぎ澄まされている。

イレイザーにとって()は最大の武器。

動体視力や反射神経、この場にいる誰と比べてもイレイザーの()は抜きん出ている。

だから、新幹線のような速度のその拳も巨体も、イレイザーにとってはただの()()()()()()()()()()()()()()()であり()で、

()()では無い。

 

「残念、俺の目に写ってる時点でお前は終わってんだ。」

 

そう言って個性を発動、飛んでくる拳をスレスレで回避し空いているボディに拳を突き入れる。

しかし相手からの反応は鈍く、あまり効いていない。

大幅に距離を取り目を紅く染め、髪を逆立てて敵を威圧するイレイザー。

 

「うーん、やっぱりそれ強いなぁ。普通に性能だけ見たらチートだし。その個性厄介だよなぁ。経験値もレベルも他よりずば抜けてる。」

 

頸を掻きながら手を付けた男はブツブツと何かを語り出す

 

「うん。うん?いや、待てよ。そんな強い能力でデメリットなし?いや有り得ないよな。きっとMPか反動がある筈だ。なら、時間をかけて分析しよう。よし、そうだ。ゆっくり観察して突破口を見つける。はは、RPGの醍醐味だよな。よしよし。」

 

この襲撃をゲームかなにかだと思っているのか、子供大人な手を付けた男はニヒルな笑みを浮かべながらイレイザーに対する分析を始める。

 

「1.2.3.4...」

 

その間にもイレイザーと脳無の戦いは続いている。

戦いと言っても、脳無の攻撃をイレイザーが躱し続けるという単調な物だが。

 

「ッ、クソ。視えてるから何とかなってるがこれは不味い。アイツに対する決め手が無い。このままじゃあ削りきられて終わりだ。折を見て離脱するのが合理的だが、教師としちゃあそりゃあ出来ない。」

 

攻撃を避けながら、今も逃げ、戦っている生徒達のことを思い浮かべる。

 

「全く本当に、教師ってのは大変だ...!取り敢えず時間を稼ぐ...!なるべく早く、頼みますよオールマイトさん...!!」

 

そうして、脳無を見据えて首元の捕縛布を掴む。

 

ーーー

 

手を付けた男は、脳無と戦うイレイザーを観察している。

 

「21.22.23.24...見つけたァ」

 

そして、何か数を数え出したと思えば何かを見つけたと口元を緩める。

 

「髪が落ちるタイミングが、あるな。それも一定の間隔で。」

 

「ッ!!」

 

その表情を言葉で表すなら、まさに悪者の笑み。ニヤァと笑みを浮かべた顔でイレイザーへと語り掛ける。

 

「そして、その間隔も段々短くなりつつある。おまえ、無理して個性使ってるだろ。そんな強個性、デメリットがないわけない。お前の場合使えば使うほど目が乾くとかそんな所だろ。目が乾けば目を閉じなきゃあ行けないよなぁ?でも目を閉じればその分自分が後手に回るよなぁ?お前それ、致命的だろ。」

 

言い終わると同時に駆け出しイレイザーの肘を掴む。

 

「ぐっ」

 

「残念、ヒーロー。お前の負けだ。」

 

そして、掴まれたその肘からポロポロと崩れて皮膚が落ちていく。

皮膚が落ち、肉が落ちようとしていたその時手を付けた男は手を離した。

 

「ククッ、ここで崩してやっても良かったんだがまぁそれじゃあ面白くないよなぁ。生徒がその姿を見て、絶望に悶え苦しむ姿を見なきゃあ面白くないよなぁ!脳無!死なない程度に壊せ!」

 

愉快そうに笑い声を上げながら脳無へと司令を出す。

その脳無は、のそりと歩き出しイレイザーの腕を掴む。

 

「グッ...ァ!」

 

そうして、掴んだその手を握り潰す。

右手、左手と潰されそのダメージで身動きも取れない。

 

 

「ハッハッ!コレで!イレイザーヘッドの!ヒーローとしての!生命は!終わっ「らせないッ!!SMASH!!!」

 

緑色のイナズマが、脳無の右手を焼いた。

緑色のイナズマも焼いたというのも比喩だ。だがその一瞬、そう見えた。

そうとしか見えなかった。

そのイナズマの正体とは...

 

「み、どりや...おまえ...なぜ、きた...」

 

正義感、ヒーロー感、価値観、()()()()で有りながら雄英でヒーローを目指す、いわば主人公のような男。

 

緑谷出久だ。

 

血を吐き、地を這う相澤を抱えた緑谷は涙を浮かべた顔で無理矢理笑顔を作りこう言った。

 

「ヒーローは、綺麗事実践するお仕事です!!」

 

「この、バカが...」

 

相澤はそこで限界が来たのか、目を瞑り意識を落とした。

 

「あっす梅雨ちゃん!相澤先生をお願い!」

 

後ろに着いてきていた蛙吹と峰田に相澤を渡し、敵と向き合う。

 

「分かったわ、緑谷ちゃん。無茶だけはしちゃダメよ。」

 

「うん、大丈夫。頼むよ!」

 

その様子を見ていた手を付けた男は、緑谷に向かって言葉をかける。

 

「あぁ、うん。学生の援軍か。うん。面倒だね。それより、君SMASHって、オールマイトのフォロワーかい?趣味悪いから辞めた方がいい。イライラして、殺しちゃうからね」

 

キッと音が出たかと錯覚するような憎悪の籠ったその眼力に睨まれ、腰が引けてしまう緑谷。

しかし、緑谷の目指すものはヒーローである。しかも、ただのヒーローではなくオールマイトの様な最高のヒーロー。

そんな彼が、クラスメイトの前で、敵から逃げるなんて言語道断。

 

「負ける...もんか!」

 

ファイティングポーズを取り、睨み返す。

 

「脳無、殺せ。」

 

しかし、無慈悲な一言。

感情も色もない無情な瞳が緑谷に向く。

そして、踏み込み、走り向かってくる。

 

「ッ!」

 

オールマイトの様な巨躯、力。

イレイザーならば躱すことが出来るその攻撃も、この前まで非力の無個性で、中坊だった緑谷が躱すのは至難だ。

 

「しっ!」

 

なんとか1発目を躱すも2発目が飛んでくる。

その2発目に対し緑谷は懐へと飛び込む。

いきなり、自らの元へ飛び込んできた事に対応出来ず脳無は拳を空に振り切ってしまう。そして、拳を振り切ったことにより無防備になったその体に、緑谷は今持てる全ての力を持って、殴った。

 

「SMAAAAAAAASH!!!!!!!!!!!」

 

オールマイト並みのパワー、それを持ってして脳無を殴った。

衝撃で地面が蜘蛛の巣状に割れ、空気が巻き上がり、砂埃を巻き起こした。

 

「がぁ!」

 

反動により右手を失ったが、その損失もあの凶悪な敵を討ち取った事と比べれば少なくとも分の悪い物じゃない。

 

()()()()()()()()()()

 

「は?」

 

砂埃が晴れたその先には、今までと変わらぬ姿で立つ脳無が居た。

その姿に思わず滑稽な声で呟いてしまう。

 

「ハハハ、物凄い威力だった。オールマイトにも匹敵するようなね。でも残念、そいつの個性はね。ショック吸収。攻撃を食らってもその衝撃を吸収して無かったことにできる。オールマイト用のサンドバッグさ!残念だよ本当に!じゃあ脳無、トドメだ。」

 

手の男は喜々嬉嬉と自分のおもちゃを自慢する子供のようにはしゃぐ。そして、無傷の脳無に指示を出した。

 

ここで緑谷の運もツキたかと、思われたその時だった。

 

キィィィィン!と甲高い音と共に氷山が脳無へと襲いかかった。

 

「悪ぃ、遅くなった。」

 

その氷山を出した主がそう言うと後ろから爆撃音が響いてくる。

 

「オラァ!どけやクソデク!足でまといのクソナードは黙って死んどけぇ!」

 

「かっ、ちゃん...」

 

緑谷の幼なじみである爆豪と、推薦入学者の轟であった。

 

「言ってる場合か、前見とけ。」

 

「うるせぇ半分野郎。てめぇこそ邪魔すんじゃねぇぞ。あの敵ヤローは俺がぶっ殺す。」

 

さすが爆豪、糞を下水で煮込んだ性格なだけあって暴言の嵐だ。

 

「またチートが出てきたよ。うん、そろそろ面倒臭いし飽きてきた。脳無、今度こそ殺せ。」

 

「あぁ!?飽きただぁ!?てめぇその口燃やしてやっからそこで死んどけやァ!」

 

爆豪、お前もうヴィランよりヴィランらしいぞ。

 

 

 

 

そして、爆豪&轟対脳無の勝負が始まった。

 

 

と、思われた。

 

「ガッ!」

 

「グアッ!」

 

轟と爆豪は見誤っていた。

敵が脳無と手の男だけだと。

 

「よくやった黒霧。」

 

そう、この場には、3人目の敵がいた。

 

「すみません死柄木弔。1人逃げられました。」

 

そう言う黒霧。

 

「はぁ!?はぁ...お前、ゲートじゃなきゃ殺してるぞ。はぁ、仕方ない。帰ろうか、ゲームオーバーだ。」

 

天を仰ぎ、地に俯き、そして、告げた。『帰る』と。

 

「帰る?カエルって言ったのか!?」

 

「そう聞こえたわ。」

 

水難ゾーンの端、壁の裏で相澤を手当していた峰田と蛙吹がその会話を聞いて安堵する。

 

「でもまぁ、雄英の面子を少しでも潰して置いても、遅くない。脳無、転がってる奴らにトドメを刺せ。黒霧、後始末だ。この施設内に残ってる残党と死んでねぇ奴らを連れて行け。終わり次第すぐに戻ってこい。俺たちの情報は少しでも抑えておきたい。」

 

死柄木はそう指示を出す。

そして、脳無はトドメを刺しに。

黒霧は味方を拾いに動き出した。

 

「まだ僕が居る!かっちゃん達はやらせないぞ!」

 

潰れていない左手を構え、敵にそう言う緑谷

 

「お前、利き手右手だろ。利き手もまともに使えねぇのに何粋がってんだ?あ、良いこと思いついた。脳無あいつの足と残ってる腕壊せ。」

 

目にも止まらぬスピードで緑谷へと迫る脳無。

べキィ!バギィ!

 

「ぐガァァ!!!!!」

 

万全の状態の緑谷ならまだしも腕が砕け、疲弊している状態、躱せる訳もなく、なすすべなく四肢が使えなくなってしまった。

 

「お前はそこでお前が救えなかったガキ共が死ぬのをよく見とけ、お前は生かしといてやるよ。お前のせいで死んだヤツらの恨みと怒りを背負ってこれから生きてくんだ。楽しそうだなぁ!!」

 

これまでにないほど、口が裂けそうなほどの笑みでそう言う死柄木。

 

「クソ!クソ!オール...マイトォ...」

 

涙を流して、今ここに居ない平和の象徴へと縋る緑谷。

 

「ハハハ、そうだ!オールマイトが全部悪いんだ!あいつがヘラヘラ笑ってるからこうなるんだ!憎むなら俺らじゃなくてオールマイトを憎むんだなぁ!」

 

「...ク...ソ...」

 

緑谷は、戦意を喪失し今にも精神が壊れてしまいそうな顔をして涙を流す。

 

 

 

 

 

幸か不幸か、その涙は、血塗られた光を、黒と白と言う相反する色が混ざった希望を呼び立てた。

 

 

 

ーーー

ここからは脳内で『unravel』を流してお楽しみ下さい。

ーーー

 

そして、脳無は轟へと足を進め、その頭を踏み潰さんと、足を上げた。

 

 

 

 

 

 

しかし、その足が振り下ろされることは無かった。

 

 

 

 

それは、紅く、黒く、そして美しい、『赫子』によって斬り飛ばされてしまったから。

 

「君が、コレを、したの?」

 

赫子を仕舞い、マスクを外しながらそこにいるヴィランに問い掛ける。

 

「ッ、何者だ!お前、生徒か!?クソ、なんでこんな所にまだ!いや、脳無!そいつを殺せ!」

 

明らかに動揺し、焦った死柄木。

きっと、トドメをさして援軍が来る前に逃げる算段だったのだろう。

しかし先に援軍が来てしまった。一見優秀な参謀、いや指揮官に見えるがまだ成熟しきっていないのが見て取れる。

 

「君がしたんだ」

 

金木は単調に、真顔で言う。

 

「ハ、ハハ!そうさ、俺がやった。コイツらが弱いから!弱いくせに出しゃばるからなぁ!脳無!」

 

脳無を使い、金木に特攻を仕掛ける。

 

「そう。それが分かれば十分。この肉ダルマを殺したら、君の番だから。」

 

そう言って、金木は脳無を見据える。

 

「パキッ」

 

右手の人差し指を、同じ手の親指で鳴らす。

 

知っているだろうか、『ルーティーン』というものを。

何かをする前に事前に決めておいた何かで集中力を極限まで高め、パフォーマンスを最高に発揮するための行為。

 

これは金木のルーティーン。

指を同じ手の親指で鳴らすという独特なもの。

この動作をしている時、彼女は自覚がない。

所謂癖だ。

 

戦闘に入る前や、戦闘中等に、自分の意識の外で起こってしまう。

 

様はこれでスイッチを入れているのだ。

戦闘のためのスイッチを。

 

 

脳無はそれを隙と見て突撃し、拳を打ち込む。

 

ダァン!

 

もろに食らった金木はボール球のように飛んでいき、広場の外の木にぶつかり止まった。

 

「っ、なんだよビビらせやがって。やっぱりただのガキじゃねぇか。殺すとか抜かすからどんな奴かと思った...!?」

 

期待はずれと言わんばかりの瞳で金木を一瞥し、手を仰ごうとしたその時、捉えてしまった。

 

オールマイトですらダメージを受ける脳無の拳をもろに食らって

 

何一つ傷を負わずに、澄ました顔で立っている金木を。

 

 

「何ィ!?」

思わず素っ頓狂な声を上げる死柄木。

 

「ありえない!オールマイトですらダメージを食らうんだぞ!それを無傷だと!?チートがァ!」

 

 

「次は、僕の番。」ポキッ

 

そう言って指を鳴らし、笑顔をうかべる。

その左目は、黒く、そして紅く染まっていた。

 

そして、脳無へと駆け赫子で脳無の腹を打ち抜く。それの連打。

どこか別の人間にやれば『死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!』

と、悲鳴をあげそうなそのラッシュ。

 

「なんだよ、それ。なんなんだよその触手はァ!脳無は、超再生だぞ!?ショック吸収だぞ!?なんでいとも容易く脳無を穿いてるんだァ!?」

 

そして、脳無は数分と経たずにバラバラになり、再生することもなく息絶えた。

 

「次は、君の番。」

 

脳無の返り血を浴び、髪は所々、体は半分以上紅くなっている。

 

笑みを浮かべながら歩いてくるその姿は、まるで幽鬼の様で...

 

「黒霧ィ!撤収だァ!いそげぇ!」

 

気付けばワープゲートで逃げ出していた。

 

ーーー

 

「はぁ、はぁ、なんだあいつ、俺が言えたことじゃあねぇが、俺以上に敵やってやがる。血を浴びながら笑顔でこっちに向かってきやがった。先生!なんだアイツは!脳無を瞬殺しやがった!」

 

早口で、思ったことを全て吐き出す。

 

「へぇ...」

 

先生と呼ばれたその男は、それ以上何も言わなかった

 

ーーー

 




今回は少し長めですね。

感想と評価よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。