ロミッタバンド団のお通りだ! かわいいでしょ? (カトラス@リトルジャックP)
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簡単な前書き! 事前知識コーナー!

2020/09/14 追記
【大幅な内容修正のマジ・スマーン】

この小説は「2020/09/03」の連載開始当時、劇中舞台として【第三管区】と呼ばれる場所が書かれていた。
作者には何の意図もなく、何となくで決まった地名のみの概念が【第三管区】であった。


だが、作者の知り合いのヴォーソスの狼さんが英語資料を解読した結果、三つの衝撃的な事実が分かった!

1.『ちょくちょくカード名になる【第10管区】は、「10のギルドが各々幅を利かせてる地域」と言う意味であり、「第一管区・第二管区…」に当たる物は存在はするものの全く話題にならない。』
2.『では実在するカードの【第1管区の勇士】は何者なのか?これはカードの日本語版化に際した翻訳で「district」と「precinct」が双方共に【管区】と訳されている事により発生している誤解であり、彼は正しくは【第1分区の勇士】である。』
3.『それはそれとして【第10管区の中にある第3分区】は「セレズニア」と「グルール」が幅を利かせてる農業畜産地帯であると資料に書かれていた。』

というカトラスにとって悪夢の様な情報が小説を七話まで進めた後に発覚した。


それに際し、いろいろ考えた、真面目に考えた。

結論として、「現在の内容を差し替えて数字を変えるしかない」と言う事に思い至りました。
管区の数字は適当に選んだだけであり、物語で描きたいテーマや今あるプロットを捨ててまで守るべき物ではない。
なのでこの前書きで素直に事情を書いて、舞台を【第5分区】に変更して続けていきます。

まあ、内容は変わらないのでこれからもよろしくね。

本当にすみません。


【MTG マジック:ザ·ギャザリング】

 

世界最初のトレーディングカードゲーム。

 

著者はアリーナからの新参だけど魅力的な背景世界が大好き。

 

無論カードゲームとしても面白い!

今ならPCがあれば無料で出来ます!!是非!!!

 

【ラヴニカ】

 

マジック・ザ・ギャザリングに登場する多元世界の一つ。

 

今作の舞台であり、時代としては「ドラゴンの迷路~ラヴニカのギルド」の中間の空白期。

 

世界観としては割と日本人のイメージする文明に近い程に都市文明が力を持っており、10のギルドが回している世界。

 

 

【第5分区】

 

第5分区は名門大学や専門学校、図書館が並ぶ学術区です。

ここの住民は誰もが強い学習意欲を持ち、日夜議論を交わすことを好みます、夜の酒場では劇の上映や歌、詩を披露することを目玉とする店舗も多い。

またシミックの本拠地である第7ゾノットが存在する。

 

 

【ラクドス教団】

 

10のギルドの一つであり、今作の主役達が所属するギルドである。

 

ショーマンの集まりであり、市民の娯楽である。

その一方でショーの中で過激で血生臭い事が起こる事も多く、悪魔崇拝教団としての側面も持つ。

 

 

 

 

===ここからはこの小説固有の設定===

 

 

【来電座】

 

第5分区に存在するショーパブ系劇場。

店に関する全ての事がゴブリンに一任されているのが大きな特徴。

主人公達「ロミッタ団・ロミッタバンド」はここの所属である。

 

 

【ロミッタ団】

 

ゴブリンの歌姫ロミッタを擁するバンド団。

 

バンドジャンルとしては「やな事もたくさんあるけど世界は素晴らしい!」系。

 

来電座で歌の出し物と言えば彼女達なのだが、一歩座の外に出れば知る人ぞ知るマイナーバンド程度の人気。

 

 

【ロミッタ】

 

ゴブリンの歌姫、生粋のラクドス生まれラクドス育ち。

22歳、女装の男性、ゴブリン。

酷いナルシストで褒めそやせば誰の言う事も聞いてしまう。

普段はかわいいバカだけど…多分過去編がクソ重になってしまうと思うから覚悟してくれ(それで「残酷な描写とR-15」オンにしてる)。

マイク付きのメイスを戦闘では使う。

歌と踊りとマラカス演奏が得意芸。

 

 

【ローギ】

 

ロミッタバンドの保護者担当。

36歳、女性、ゴブリン。

鍛え抜かれた肉体と精神力が強い!

昔はボロス軍に務めていたが、妹の殉職をきっかけに除隊して音楽を志した。

打楽器担当、メインは小太鼓。

 

【ゲグ】

 

ロミッタバンドのムードメーカー。

15歳、男性、ゴブリン。

イゼット団に篤い忠誠を寄せる両親に反発して家出して今に至る、

(正直思春期特有のあれで両親にも彼にも大した問題はない)。

イゼットの一族として修練した雷撃の魔法が少々使える。

弦楽器担当、メインはギター。

 

 

ちなみに現在の段階で「プレインズウォーカー」を劇中で出す予定はなく。

彼らのいずれも「プレインズウォーカーの灯」などは持たない。

 

この話はラヴニカのなんて事はない人々の物語として描いていきたいのです。

 

 



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記念すべき第一話! ロミッタ団のアクセサリー屋警備騒動

【来電座・舞台裏】

 

昼頃の劇場裏、出番を待っている三人の芸ゴブリンが居た。

 

 

「良い感じ!」

 

「今日のロミッタちゃん、超良い感じ♪」

 

その中で一人で踊り出しそうなぐらい盛り上がるゴブリンが居た。

 

ピンクの肌を黄色いドレスに包んで独り言を言っている。

 

 

他二人はそれについて特に気にもしていない様だ。

 

「さあ皆さん!来電座の歌姫の時間がやってきました~!」

 

舞台から呼び声が上がる、三人は準備万端と歩み出す。

 

「拍手でお迎えください!ロミッタちゃんだー!!」

 

パチパチパチ!

 

「みんなー!待ってたー?」

 

「…ああ、まあ」「早くうたえよ!」

 

「じゃあ早速一曲行くよー!」

 

パチパチパチ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【来電座・演者用下宿】

 

「何がダメなのかねぇ…」

 

そうゴチるのはロミッタバンドの小太鼓担当、ローギ。

 

「さあなぁ…俺達やれる事はやってると思うが」

 

と返すのはロミッタバンドのギター担当、ゲグ。

 

 

二人は悩んでいた。

 

「正直な話さ、あたしとあんたはロミッタが居ないとショーにも出れない三流の演奏家だよ?」

 

「またローギ姉さんの自己肯定感の欠如がはーじまっーた。ちょっとはロミッタを見習え」

 

「あんたとロミッタは良いさ、まだ若いんだから…36にもなって芽が出ない気持ちはわからないよ」

 

まあ言ってる様な事で悩んでいた。

 

「ローギ姉さんまた落ち込んでるの?」

 

そこへロミッタが三人分の芋煮をお盆に乗せて戻ってきた。

 

「ああ噂してたら元気の大将がやってきた」

 

やれやれと腕を振り出迎えるローギ。

 

「ええ!元気なロミッタよ!」

 

自信満々の彼女はロミッタ、ゴブリンの歌姫である。

 

「おお、飯食って忘れようぜ」

 

ゲグの宣言と共に将来への悲観は一旦話題替えとなった。

 

 

 

―――

 

「うーん。」

 

二人が起きてくる前、まあ寝てるのはゲグだけでロミッタは絶賛お化粧タイムなのだが、そろばんを弄りながらローギは呻る。

 

今月のロミッタバンドの収支がこのままでは赤になってしまう。

ストリートショーか、バイトか、アドベンチャーか。

 

何かをしないといけない。

まあいつも自分とこにツケで飲み食いしてるから最悪食うには困らないが…

 

 

「おはよう!」

 

「おはよう。朝から化粧が綺麗だね」

 

「顔見ながら言いなさいよ!」

 

プンプンとしているロミッタを軽く無視して、昨日の座に集まっていた求人を見るローギ。

 

「おお、これなんか出来そうだな」

 

「なに?」

 

覗き込むロミッタに求人紙を見せるローギ。

 

「市場のアクセサリー屋が珍しいもん仕入れたらしいから護衛に強そうなヤツ募集してる、一人銅貨10枚」

 

「私達ゴブリンだよ?雇ってもらえる?」

 

「店主もゴブリンだから大丈夫さ。あんたみたいな美人が居たらきっと購買意欲が上がるよ」

 

そう言われた瞬間ロミッタはみなぎった!

 

「そうね!その仕事やるわ!!」

 

「へいへい」

 

と言う訳で本日のロミッタ団の目的が決定されたのだった。

 

―――

 

【市場】

 

「んじゃ、お願いしますよ」

 

「ええ!このロミッタ団に任せれば商売繁盛間違いなしだわ!」

 

「…ああ、そうですか」

 

店主は(めんどくせー)と思っている。

 

 

「よし、ゲグは店主の後ろに座ってな、ロミッタは前に。あたしが立ってるから」

 

「へいよ」

「わかったわ」

 

約20分後。

 

「おい、この店でサファイアを仕入れたって本当か?」

 

「ああ!たまたま捨て値で仕入れられてな!こんな露店で売るのは心配だから護衛まで雇っちまったよ!」

 

店主が視線を振るとロミッタは店主と話し相手に満面の笑みを浮かべて見せた。

 

「こんにちは!なにか買いますか?」

 

「ロミッタ、黙ってな」

 

ばっさり制したローギだが声色は決して厳しいものではなかった。

 

「まあ俺ら露天商には高嶺の花だよな、こんなとこまで門着きが買いに来るとは思えねえし…ん?」

 

 

ローギは明らかに警戒態勢に入る。

そこには五六人の人間からなるオルゾフの集団が集まっていた。

 

「へ、へいいらっしゃい!何か買いますか?」

 

「店主、お前が売っているサファイアはオルゾフの金庫から盗まれた物だ!」

 

オルゾフの男は高圧的に言い放った。

触発の雰囲気にロミッタとゲグも立ち上がる。

 

「え、いや、俺は仕入れ市場で買って…」

 

「二ヶ月前のイゼットの大爆発は知っているな、あの時我々の金庫も破損したのだ。中身が洗浄されて売りに出され始めたのが先週の事だ」

 

「ああ…それは災難で、…サファイアをお渡ししましょうか?」

 

そうして謙る店主を制してローギは前に出た。

 

「おいあんた、まさか利子付けようなんて考えてないだろうね?」

 

話に割って入ると、図星を突かれたオルゾフの男は不愉快そうに顔を顰めた。

他二人も状況を理解し、構えていく。

 

「おい、俺達はラクドスのもんだ、こんな事でギルド同士のトラブルになったらおっさんも困るんじゃないのか?」

 

ゲグが店主を押しのけてそう言い放つ。

 

「大体売り出されたのがわかってるなら売った方に文句言いなさいよ!この店は買っただけよ!」

 

ロミッタもメイスを手にして前に出る。

 

「…ふん、小賢しい芸ゴブリン共め。…分かった、サファイアだけ貰って帰ろう。」

 

そう言われると店主が小袋に入ったサファイアを出した。

 

「あたしが手渡す、下がってな」

「あんた達も店から少し離れて」

 

そう言って、ローギはサファイアを店主から受け取り、ロミッタはメイスで威嚇する。

 

「ほら、サファイアだ」

 

ゴブリンと言えど、明らかに鍛え抜かれた身体と所作の女に睨まれたオルゾフの男は何も言わずサファイアを受け取ると部下を引き連れ引き上げていった。

 

 

「なんとか何も起こらなかったな…」

 

ゲグがそう言うと、店主は本当に危機が去ったのだと安堵し始めた。

 

「相変わらずオルゾフはろくでもないわね!」

 

「ロミッタ、口は災いの元だ、人の悪口を言うのはかわいくないよ」

 

そう言われるとロミッタは本当にいけない事をした言う顔で口を抑えた。

ローギは店主に向かう。

 

「災難だったねぇ、店主」

 

「いや、無事に済んだだけでなによりだよ、本当に助かった」

 

「何か意趣返しが来るかもしれないから店仕舞いまでは全員立ってようか」

 

そうしてさっきまで騒然としていた市場もいつもの平静と活気を取り戻していく。

 

 

――

 

【夕暮れ・ゴブリン向けアパート前】

 

「家まで送って戴けて、本当に有難いです!本当にお世話になりました!」

 

深々と頭を下げる店主、家にも荒らされた形跡はなかったらしい。

 

「ああ、あの後何もなかったから安心したよ」

 

と、ゲグがやっと警戒を解くと、ローギが気まずそうに話しだす。

 

「で、ここからはみみっちい話にはなるんだけどさ…」

 

「はい。」

 

店主も大体流れで察して居る。

 

「あたしら金に困ってんだよ。助けてやった報酬って事でおまけしてくんないかね?」

 

「…ああ、でしたら…銀貨30枚ぐらいで許してもらえますか?」

 

店主の言い値にロミッタ団は沸き立つ。

 

「おお!大金じゃねえか!」

「すごい!太っ腹!!」

 

「じゃあそれで頼むよ、本当に恩に着るよ」

 

ローギも大層喜んでいる、来月の貯蓄まで出来る額だ。

 

 

そうして報酬を受け取り、ロミッタ団のアクセサリー屋警備騒動は無事に解決しましたとさ。



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日常! 昇給試験と姿見!

【来電座・演者用下宿】

 

「美しきかわいい!ロミッタ様!」

 

ロミッタは姿見の前で何度もポーズを取っては大層愉しそうにしていた。

 

ゴブリンの男がドレスを何着も着せ替えしながらそうしている、そう聞いただけでは大半の者は正気を疑うだろう。

 

だが、ゲグとローギにとってこの姿は敢えて特筆する感情が何も湧かない日常である。

 

「ああ、私ってなんてかわいいだろう?すごい!」

 

最初はバンド組む覚悟で付き合っててもその行為に正気を疑ったし、

一週間ぐらい続くと「飽きないのか?」とも悩んだが、

こうしてさして広くもない下宿で半年も一緒に居ると、先に飽きたのはこっちだった。

 

「いぇい!ロミッタピース♪」

 

 

二人は全然違う話をしていた。

 

「それで今度の昇給試験はなにするかね?」

 

二人の議題はそれであった。

 

「ローギ姉さんはネタ切れっすか?」

 

「ああ、ああー芸人って大変だよな~…なんで月イチで新しい出しもん出せとか言われるんだ」

 

来電座では意欲のある演者を育てようと、月イチで昇給試験をしている。

 

人格はともかく歌姫であり、長年の芸歴がある生粋のラクドス育ちのロミッタと異なり、

中途採用でかつ「ロミッタのおまけ」とみんなに思われている二人からするとこの試験は重要なのだ。

 

実際問題、この部屋は”ロミッタの部屋”だ。

ロミッタが貰っている給料は、ゲグとローギの収入を足しても一人分足りないぐらいの額なのだ。

 

そうだ、話を戻そう。

この二人にはそもそもこの部屋でロミッタがやる事を否定する権利がないのだ。

 

「ゲグはなんかあんの?」

 

「先月ピアノをやったんだが、それの新曲を覚えようかと」

 

ちなみに先月のゲグの試験結果は【可】であった。

更にちなみに、ローギの結果は【不可】だった。

 

「あー、あんたは何でも出来ていいねえ!」

 

「いやぁ、ロミッタせんせーの教え方が上手いんだよ」

 

中途のこの二人に芸を仕込んでるのはロミッタである。

ますます本来逆らう事も出来ないのだ。

 

「あのね、人生の半分をマッチョになる事と相手ぶちのめす事に費やしたおばちゃんには新しい事覚えるのだけで大変なんだよ…」

 

そう言ってうんざり顔で紅茶を一気に飲みだすローギ。

 

「自分でおばちゃんなんて言っちゃダメよ!かわいくないじゃない!」

 

「グブッ!!」

「うわおい!テーブルが!」

 

急にこっちの世界に介入してきたロミッタに思わず紅茶を吹き出すローギと、大慌てで楽譜とネタ帳を避難させるゲグ。

 

「ハァッ、ふぅ…かぁわいいロミッタちゃん、鏡さんはもう良いのかい?」

 

ローギの煽りも気にせず、いやこの場合気にする頭がなく。

 

「だってローギ姉さんがネタ切れだって言うから…かわいいロミッタちゃんとしてはほっとけなくない?」

 

「へぇ、お師匠様の優しさが五臓六腑に染み渡りますわ」

 

こんな日常がロミッタ団の普段である。



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ロミッタの新しい帽子といつもの通院。

【第5分区・ゴブリンブティック】

 

ロミッタは行きつけのブティックで服を見て回っていた。

 

「お客様、こちら新色のクロッシェでございます」

 

いつもの店員が帽子を勧めていた。

 

「へぇ、綺麗な青ね!大人の色だわ」

 

ロミッタは楽しそうに帽子を品定めしていた。

 

「はい、他にも赤、緑、白、黒を取り揃えております!」

 

「いいわね!全部見せて!」

 

「はい、しばらくお待ち下さい」

 

店員はそう言うと奥へと引っ込んでいく。

 

ロミッタが他の商品を見ながら待つ事二分程。

 

「お待たせ致しました、こちらになります」

 

店員は両手にお盆を持って戻ってくる、左右のお盆に二つずつクロッシェが並ぶ。

ロミッタの目に映る四色、その中でロミッタは白に手を伸ばす。

 

「ふふっ、ああやっぱり薄紅ピンクの私の肌にとても似合う!」

 

白いクロッシェを被るロミッタ、鏡に映った最高の笑顔。

 

「そちら銅貨12枚となっております」

 

「買うわ」

 

「ありがとうございます!」

 

そうしてロミッタは白い帽子を被って店を出る、自信満々にドレスを纏って歩く姿は見る者に疑いの余地も持たせない。

 

実際、ゴブリンの性差が気になる者からすると、

今日のロミッタは女性にしか見えないだろう。

 

最も、ゴブリンの性差を真剣に気にする者が居るとしたら、

他種族なら「変わり者」で、ゴブリンなら「気にしい」である。

 

 

「さすがロミッタちゃん!予約までの待ち時間に素敵な買い物までできちゃった!かわいいに余念がないわ!」

 

ナルシーでうるさい独り言さえなければ完璧であろうか?

 

 

 

――

 

【第5分区・ジェンダークリニック】

 

診察室に通されたロミッタは促されるままに椅子に座る。

 

「はい、じゃあ注射の前に面談をしましょう。こんにちはロミッタさん」

 

「ええ、こんにちはイシヅ先生」

 

そう、ロミッタが待っていたのは病院の時間であった。

 

「最近はどうですか?」

 

「はい、特に苦しさはありません」

 

「なら良いのですが、何か副作用があればすぐに申し出る様に」

 

エルフの医師はそう言うと少し砕けた雰囲気を出し始める。

 

「心理的にはどう?」

 

「ええ、この二週間で辛かった事は…なかったわ!」

 

自信満々に答えるロミッタである。

医者は更にだらけた様子で、背もたれに寄りかかり次の質問をする。

 

「そっかぁ、良いじゃん!人間関係はどう?バンドの子達とか」

 

「そうね、先生は心配だと思うけど、本当に二人は私を大切にしてるわ」

 

「毎回聞いてごめんねぇ、まあロミッタちゃんが裏切られる度に話聞いてあげる羽目になってる僕だから許してよ」

 

などと言いながら茶目っ気のある笑みを見せる壮齢の女エルフ。

ロミッタも慣れたもので信頼しきっている。

 

「仕事の方はどう?」

 

「よく言えば安定してる、悪く言えばスターダムは遠いわ」

 

ロミッタにしては珍しく憂いの表情で手を払う。

 

「まあ、何もかも上手く行く訳ないわな。んじゃ今日の施術を始めようか」

 

そう言うと肘置きに両手をついて突き上がる様に立つイシヅ、彼女の脚は触手のみで地上生活に余り向かない。

 

「はい、お願いします」

 

二人は隣の施術室へと歩んでいった。

 

 

―――

 

「お疲れ様でした、本日の代金は銀貨12枚となります」

 

「ありがとう」

 

少し疲れた様子でロミッタは受付支払いを行う。

 

「大丈夫ですか?少し休んで行かれます?」

 

本当に心配というよりは業務的にそう聞く受付係から帽子で顔を隠しながら、

 

「ええ、大丈夫よ」

 

と答えてロミッタは出ていった。

 

 

特に寄り道をする余裕もなく、ロミッタは来電座の自分の部屋へと戻っていた。

 

「おかえり、なんか食う?」

 

「…今はいい、寝るから」

 

出迎えるローギにも冷めた反応をして、ロミッタは着替え始める。

 

「おやすみー」

 

ゲグは自分の居る部屋で服を脱ぎだすロミッタもその不機嫌さも特に気にならないとばかりに気の抜けた声を向けた。

 

「部屋に食えるもん置いとくから起きたら食いなよ」

 

ローギは一応背を向けてそう声をかける。

 

 

 

何の返事もしないロミッタがベッドに寝ると二人はまた各々がしていた事に戻る。

 

ゲグはコミックスを読み、ローギは片腕立て伏せを再開した。

 

二人の態度は冷たいのではない、受け入れているのだ。

 

 

―――

 

三時間後。

 

ロミッタが起きると、時刻は夜も九時になろうとしていた。

 

店が最も盛り上がる時間であり、主演級のロミッタと違ってゲグ達は裏方演奏の仕事をしているので部屋には他に誰も居ない。

 

ネグリジェのまま部屋のテーブルに向かうと、皿にライチが五個置いてある。

カクテルや果実盛りの為に店で仕入れてはいるが、そんな安い物ではない。

 

おそらく、爽やかで食べやすい物をと気を使われたのだろう。

 

皮を剥きながら思う、爽やかな果実を頬張りながら思う。

 

大丈夫、体調も戻ったし、気分も良い。

 

「…そうだ!帽子を買ったんだったわ!どのドレスが一番合うか試さないと!!」

 

そうしてロミッタは笑顔爛漫で衣装棚に向かう。

 

最高の組み合わせを見つけて、戻ってきた二人に最高の笑顔を見せる。

 

その事でロミッタはいっぱいだった。

 

 



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自叙伝「ゲグの偉大な自分探し」

――

 

どうも、ラクドス教団で演奏家をやっているゲグ・レッドセルだ。

座長からのお題として、今日から自叙伝を書く事にした。

 

まず俺というゴブリンがどういう幼少期を過ごしたかについて書こう。

 

 

 

俺はイゼット団の薬術師の家庭に生まれた。

 

幼少の頃から両親は”研究の喜び”や”魔術の持つキラメキ”、

そして何より”ミヴ・ミゼットへの敬愛”を語っていた。

 

当時の俺にとって、両親はまさにヒーローだった。

 

電撃魔術を習いながら、「俺も一角の魔術師として大成する」と願ったもんだ。

 

じゃあ今はどうなのか?

と思った諸兄、もし今もそう思ってたら俺がなんでラクドス教団に居ると思う?

 

 

そんな思いが変わっちまったのは12歳の頃だ。

 

俺は仕事が手伝える歳になり、両親の仕事を手伝う様になった。

 

そこで見た現実は、俺の夢とは違った。

 

ヒーローだと思ってた俺の親父とお袋は、いつも誰かに頭下げて調子合わせてばっかで、上司共に顎で使われていた。

 

俺は、そんな姿を見ているのがうんざりする程、嫌だった。

 

そしてそんな上役共は、俺や両親なんか比じゃない高度な魔法を使っていた、当たり前の様に。

 

俺は、頑張った。

仕事も、新しい魔法の習得も、

だが一年ぐらいした頃には何もかもにうんざりする様になった。

 

うだつの上がらない両親も、魔術って概念も、イゼット団ってギルドも。

 

「俺もこんな風になるのか?誰にでも頭下げてあのドラゴンに忠誠を誓う?」

 

俺には耐えられなかった。

 

俺は、何でも良いから”俺だけにしか出来ねえ事”がしたかった、

それが何かも分からねえが、”俺だけの何かが欲しかった”!

 

そんな思いを初めて両親にぶつけたのが二年前ぐらいか。

 

お袋は凄え怒って怒鳴ってた、でもお袋が一頻り怒鳴った後に親父は静かに、

 

「お前もそんな歳になったか」

 

と言って家財から銀貨を五枚出して言った。

 

「これで世界を見てこい、それで帰ってくるかはお前が決めろ」

 

そうして、タイトルにもある通り。

「ゲグの偉大な自分探し」が始まった。

 

―――

 

 

そんな訳で家を飛び出した俺だが、とりあえず金はあるので最初に図書館に行った。

 

そこで「若くして人生に悩んでいる、どんな生き方をしたらいいんだろうか?」と相談して。

 

いくつかの本を提示されて、それを読んだ。

 

【全種族対応12歳からの生涯設計】

【パーフェクトライフ 貴方もギルド員に!】

【徹底解明!9つのギルド!】

【門なしでも楽しく生きられる!】

 

そうして読んでいる内に、分かった事は。

 

「黙って本を読んでても金は減る」って事、

「いくら本を読んでても座学に過ぎない」って事、

 

そして何より「仮に本を読んで人生が上手くいくなら、”人生に悩む系の本がこんな数ある訳がない”」と言う事だ。

 

図書館でその学びが得られたのは一枚目の銀貨が溶けて溶けて銅貨30枚程になった頃だった。

 

―――

 

何か行動を起こそうと思った俺は、こう思いつく。

「グルールの諸族でなら俺程度の電撃術でも評価されるのでは?」

 

結論から言おう、これは大失敗だった。

 

科学文明一族の家でぬくぬく育った俺は瓦礫帯の暮らしと人々にさっぱり適応出来なかった。

 

 

とか何とかしてる間に銀貨は2枚になっていた。

 

 

とにかく何か収入を得なければと思った俺は、門なしギャングの下っ端になった。

 

そこでは雷撃術の評価はそこそこで、グルールよりはまともな連中で、どうにかやっていた。

 

 

だが、自分自身がどうだったかと言うと。

 

正直かなり辛かった。

 

何故ならそこで自分がやってた事は、”周りの空気を読んで上役に服従する”。

俺の両親と何も変わらなかったんだ。

 

 

そうして鬱屈しきった俺は”お付き合い”ってヤツで同僚達と劇場を見に来ていた。

 

そこで、俺のゴブリン生が開いた。

 

―――

 

歌姫のショーが始まると皆が口々に言っていた。

 

同僚曰く、「女装のイカレゴブリン」が今から出てくるらしい。

 

俺は生まれの都合上、ラクドスに偏見を持っていたから、どんなしょうもないもんが出てくるかと思っていた。

 

 

そうして出てきたのが、今は俺のお師匠様であるロミッタそのゴブリンだ。

 

ひと目見て俺は、素直に思った。

「同僚と来ていなかったら、同僚が先に言ってなければ、俺は何の疑いもなく美女が出てきたと思っただろう」と。

 

そして歌姫は歌った、力強く、何の迷いもない強い瞳と声で。

 

今思えば多くの客はそれすら嘲笑していたのだろう。

 

だがその時俺は、心を奪われた。

 

 

歌が終わった後、歌姫からしばし客席へ会話を持つ。

 

「どう?私の歌はかわいかった?」

と言う歌姫に客の酷く酔ったケンタウロスは言った。

 

「いいぞ!デカ鼻のゴブリンにしてはなぁ!ハッハッハッ!」

強い嘲笑だ、それに呼応する様に俺の同僚達も目の前の歌姫を馬鹿にした。

 

俺は何故か怒りを覚え、突発的に指先に電撃を溜めようとした。

 

だがそんな思いも掻き消える事が起きた。

 

「そうね♪私は世界一かわいいゴブリンだわ!」

 

ステージの歌姫は、そんな空気の中でさえ、何に屈する事もなくそう言った。

何の疑いもないと言わんばかりの満面の笑みで。

 

それはさっきまでの劇場中が「おかしいのはこっちなんじゃないのか?」と思うぐらいに自信に満ちた物だった。

 

俺達も、まあそうなんじゃないかと思わされたと言うか、常識を揺さぶられた。

その事に俺は指先の電気以上の衝撃を受けた。

 

 

…俺は、見つけた。

 

”俺はこれになりたい。”と思えるもんを俺は見た。

 

 

―――

 

その夜、俺はひたすら反芻していた。

 

どうすれば、あんなに揺るぎない信念を持てるだろうかと。

 

悩みに悩んだ末に、朝の俺はギャングに銀貨一枚を添えて置き手紙を残して、来電座に入門する事にした。

 

入門料として最後の銀貨まで失い、飯と雑魚寝部屋だけはあるが過酷で収入のない生活に突入した。

 

それが何故かイゼットの頃やギャングの頃と違って、嫌じゃなかった。

 

まあ、自分の意志でやってるのも大きかっただろうが、何よりあの日の歌姫を見た後だったからだ。

あの強さを見た後なら、イゼットでもやってけたと思うぐらいだった。

 

思うに俺は、自信がなかったんだ。

自分に自信がないから、自分の在り方に不満を持ったりする。

 

あの歌姫は、あの場ですら自信に満ちていた。

心から幸福そうな笑顔だった。

 

自分の幸福を疑わない者の顔だった。

 

 

 

 

 

 

そうして修行の二ヶ月、

いろいろ試した結果みっちりギターをやる事になって、なんとかコードを意識的になら全部出来る様になったが、それでもいざ曲をやろうとするとそっちに気を取られて途中で指がもつれる頃だ。

 

そうなんだよ、それだけに集中してればギターのコードは意外と簡単だ。

 

 

「ねえ、貴方」

 

突然あの日の歌姫が声をかけてきた。

 

確か、初めてだったと思う。

 

「はい、なんですか?」

 

「座長から聞いたんだけど、私のショーを見てここに来たってほんと?」

 

なかなか本人に聞かれるのは複雑なものがあった。

だが先輩であるし、事実であるし、

 

「はい。ロミッタさんに憧れて」

 

と断言した。

 

 

「うん、それは嬉しいわね!よいしょっと」

 

そう言ってロミッタは隣に座ると、楽譜を渡してきた。

 

「これ、簡単な練習用の曲なんだけど。これで練習して見せてくれない?」

 

「はっ、はい!」

 

俺はその曲を弾こうとした、

 

~♪

 

拙い演奏だったと思うが、ロミッタは笑顔でそれを見続けた。

 

「…ど、どうでしたか?」

 

「うん、ちゃんとコードを習得してる!その調子ならもう少し無意識にやれる様になればすぐ弾けるよ」

 

ロミッタは嬉しそうにそう言うと、話し出した。

 

「俺が逃げ出さずに、真面目にやって成果が出始めるまでは座長から接触を止められていた」と。

 

そして今日、「もしお前が気に入ったなら、お前の弟子にしてやれ」と言われていたと。

 

 

「そういう訳だからさ!ゲグ!私の弟子になりなさい!」

 

と手を差し伸べるロミッタ、俺はその手を取った。

 

 

―――

 

そうして現在15歳の俺はロミッタバンドのメンバーとして、楽しく生きている。

 

俺の自叙伝は一先ずここまで。

 

 

 

 

 

PS

 

恥ずかしいからロミッタには絶対見せないでください。

 

 

 

 

=====

 

夜の裏方演奏後、ゲグは座長から先日提出した自叙伝について感想と評価を伝えるとして呼び止められた。

 

座長室で真面目な顔の座長と見つめ合う緊迫の瞬間。

 

「お前さんの自叙伝、読んだぞ」

 

「はい!どうでしたか?」

 

「お前さん自身、書いてみてどうだ?何か得られたんじゃないか?」

 

「…ええ、自分のルーツを見つめ直せました!ありがとうございます!」

 

それを聞くと座長は笑顔で言う。

 

「それが大事だ。お前さんは特に書いたり読んだりする事で思いを強くするタイプだと思う。」

 

「はい!では失礼します。」

 

ゲグも笑顔でそれに答え、座長室の扉を開こうとした瞬間。

 

「ああ、お前達が演奏してる間にロミッタに読ませたら喜んでたぞ」

 

と後ろから座長の声がした。

 

「なんで見せたんっすか!!!??」

 

と振り返るゲグに座長は悪戯な笑みで答える。

 

「いや、内容を見て、ヤツにも見せたら良いと思っただけだが?」

 

 

そんな訳で下宿部屋に戻れなくなったゲグを二人が探しに来たのは一時間後であった。

 



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天使のエロ本の話、あるいは天使を見る元軍人の話

【第5分区・大手書店】

 

「えーと、週刊新聞と芸能情報誌とコミックスと…たくっ、女にエロ本を買わせるな」

 

ローギは買い出しメモを読みながら、口で言うより他愛もなくエロ本を買い物カゴに入れていく。

 

大体部屋で本を読んでるのは殆どゲグなのだからヤツが買い出しに行けばいいのに、と思いつつも。

 

 

まあ実際、ローギも時間を持て余した時に雑に読める本があるのは有難く思っている。

何より「本は芸の種」としてお師匠様の金で買えてるから最高だ。

 

 

――

 

「ただいま。誰も居ないのかい?」

 

来電座のいつもの部屋には、いつもの騒がしさはなかった。

 

ローギはエロ本だけをゲグのベッドにはたき捨てると、テーブルに縦置きされた芸能誌を最新の物に替え、買い置きの出来合い紅茶を飲みながら穏やかに新聞を開く。

 

今週のラヴニカも平和で素晴らしい。

 

 

などとゴチていると。

 

「ただいまー!」

 

賑やかなお師匠様が帰ってきた。

 

「おかえり、お釣りはテーブルに置いてあるよ」

 

ロミッタは向かい席に座ると、紅茶をカップに注ぎながら聞いてくる。

 

「どう?なにか面白い記事はある?」

 

ローギはしばらく悩んで、

 

「なにもないね、良い意味でも悪い意味でも、いつものラヴニカさ」

 

と返して、新聞を畳む。

 

 

「ロミッタ、ゲグはどこに行ったんだい?」

 

視線を向けるとロミッタは芸能誌を読んでいた。

 

「天使の女の子と遊んでくるってさ」

 

ロミッタはあっけらかんと言う。

 

「またかい」

 

ローギもさして興味はないと返す。

 

 

 

 

しばらく間をおいて、

 

「天使なんかのなんがいいんだか」

 

ローギはつい口をついて出てそう言う。

 

「知らないわよゲグの性癖なんて」

 

気が付くと女子の下世話で赤裸々な会話の雰囲気に部屋はなっていた。

 

ロミッタは本を置いて話を聞く。

 

「大体ローギはなんで天使がそんなにイヤなの?」

 

「ああ、あたしゃ軍を辞めて以来どうも天使がダメだ、どうにも天使を見るとボロス軍に居た頃の習性で畏まっていけないよ」

 

「ああ、へぇーそういうのもあるのね」

 

ロミッタは興味深そうに聞く。

 

「あぁ、ロミッタは上司も親も友達もゴブリンだから珍しいか」

 

 

何の気のない言葉である、

 

失言に気付くのは、

 

「…?ローギの親はゴブリンじゃないの?」

 

いつだって言いっぱねた後なんだ。

 

 

重たい沈黙、

あたしが二の句を次ぐ前に、

 

「…あ、ごめん。忘れて」

 

ロミッタはそう述べると顔を背けた。

 

 

「ああ…いや、気にしなくていいよ。あたしを育ててくれたボロスの人間は良い人だったよ。いや、だから」

 

ガチャ

 

「ただいま」

 

間が良いのか悪いのか、ゲグが帰ってきた。

 

 

ロミッタは無言で顔を壁に向けたままだ、だがあたしにとってこれはチャンスだった。

 

「やあ、お師匠様の金でやる天使風俗は楽しいかい?」

 

ローギは話を無理矢理引っ張ってそちらに向ける事にした。

 

「…っ、年頃の男はどうしても溜まるもんがあるんすよ…」

 

ローギは嘆く、なんでこんな時に限って買い言葉を返してくれないのか。

 

 

 

 

 

だがこういう時にムードを変えるのが我らが歌姫である。

 

「天使さま、いいじゃない!今度飾り羽着きの衣装とか作ってみようかしら?」

 

ロミッタはそう言いながら力強く右腕を振り上げて立ち上がる。

 

「おお!ロミッタには似合うだろうな!俺の秘蔵の天使エロを見せようか?」

 

「あははっ、いいわね!衣装の参考になるわ!」

 

二人は平常に戻った、ならばあたしも戻らねばならないだろう。

 

「やれやれ、特注衣装は高く付くよ?」



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実際ロミッタ団のショーってどんな感じなの?

【来電座・ステージ】

 

~♪

 

「足枷も絡む程に~♪幸福求めてみたーいぃ♪」

 

ロミッタ団のショーが行われていた。

過激なショーもある中で、観客達の数少ない癒やしの時間でもある。

 

ゴブリンしか居ないのもあり、比較的【安全度が高い店】と世間的にされている来電座だが、

ナイフ投げの的にされたり、服に爆竹を入れられたり、電気ショックを食らったり、股間を強打してどれぐらい高い悲鳴が出るか試されたり、

しない訳ではないのだ。

 

最も、ラクドスの劇場に「癒やし」を求めて来ているとしたら、おそらくそいつが一番狂っている。

 

「両手枷に繋がれても♪踊り続けてみせっるわー♪」

 

~♪

 

「誰だってぇ♪世界に繋がれた囚人~よ♪」

 

「でも、この世界でなりたい者になると決めたその日から!」

 

「世界は輝いた!この牢獄は無限の舞台よ!」

 

「いいぞー!」「かわいいぞー」

「お、おー …?」「ロミッタちゃんにもう一杯!」

いつも曲に挟まるその決めゼリフに喝采が上がる。

観客の、一部は心から、残りは雰囲気で。

 

 

~♪

「願いが~あれば~♪世界はこんなに華やいで~♪」

 

正直な話、今日は客のノリが割と良い。

だがロミッタは何の反応もない時も、罵詈雑言が飛び交う中でも、ショーをやめる事はない。

 

以前ロミッタに向けて罵声とともに酒瓶を投げつけたバカが居て、

さすがにバンドメンバー二人がブチキレてその客に電撃魔術と椅子による執拗な殴打を加えつつ黒服も混じって店中を大騒ぎになってもロミッタ一人歌い続けていたのは、

来電座武勇伝の一つとして同座の講談演者達が挙ってやり始めた程である。

 

~♪

 

「貴方も、なりたい者になれるー♪」

 

「世界は、夢舞台ー♪」

 

~~~♪!

 

そうして締めの演奏が図られ、

バンドはお辞儀をする。

 

パチパチパチパチ!

 

「みんなーありがとうー!」

 

手を振るロミッタへの反応も、今日は好意的な雰囲気だ。

 

「どう?ロミッタちゃんかわいい?」

 

「おー!」

「じゃないかー?」

 

「嬉しいわ!みんなありがとう!」

 

 

 

「素晴らしいロミッタの歌唱でしたね!」

 

ステージと歌姫の対話がまとまった瞬間に進行役が次に繋げようとした。

それに気付くとロミッタは笑顔で手を振りながら、舞台袖へと進む。

 

「次のショーはみんな大好き爆竹野郎のバクチマルだー!!」

 

 

 

――

 

【来電座・舞台裏】

 

「ようお疲れさん、今日はえらく好評だったな!」

 

そう声をかけるのは座長である。

 

「お疲れ様です」と一同が一礼し頭を下げる。

 

別に何か悪い知らせがある訳でもなく、座長は現場主義であり、可能な限り役者の受け方は肌感で確かめておきたい派なので、ここに居るのはあまり珍しくはない。

 

「いや、いいね。大分安定感が出てきた」

 

と座長が嬉しそうに言う。

 

 

「ロミッタの歌はいつも完璧ですよ」

 

「あたしらの演奏は日によって良い日悪い日がある、ロミッタはそれがない」

 

と言うと座長の目が鋭くなった。

 

「いや、俺から見るとロミッタも調子が良い時と悪い時はある。むしろ一流の役者ってのは”調子が悪い時に絶賛される”ぐらいにならないとな」

 

それを聞いてきりりとする二人に、こう続ける。

 

「でもお前らも日々上達してるじゃねえか!まだまだ役者人生は長いぞ!」

 

そうして機嫌良く座長は次のショーを見るのに集中しだしたので、三人は部屋に戻っていった。

 

 

 

 

――

 

【来電座・演者用下宿】

 

「ぃいっやったぜ!!」

 

ローギは高笑いしながらエールを飲んでいた。

 

「乾杯だ!今日までの俺達に!」

 

ゲグも大層満足そうにエールを飲んでいた。

 

「ええ!ロミッタ団の栄光は間違いないわ!」

 

ロミッタも満足そうだ、珍しくエールを飲んでいる。

 

 

「めでたいねぇ、ロミッタから飲もうなんて提案されるのはそんなないよ」

 

「ええ、お酒は体に悪いもの!あははっ!」

 

ロミッタはそう言いながらもエールを手に朗らかに笑う。

 

 

「そうかそうか、ハッハッ」

 

「まあ、仲間と飲んでるのは楽しいわ。そう思える仲間が出来たから、私は幸せ者よ」

 

「ああ、無理すんなよ。ロミッタ本当にめったに飲まねんだから」

 

 

 

 

そんな訳で小さな祝杯も終わり。

 

ロミッタはベッドに入って考える、酔いが回ってつい尊大な事を考える。

いつか、偉大なるラクドス様の御前で歌を捧げ、私を「かわいい」と言ってほしい。

 

願わくば、その時隣に立つのはこの二人であってほしい、と。



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ロミッタナイトメア(R-15)

注意書き。

結構マイルドに表現したけど、例のロミッタの過去編です。

R15ですし所謂…あれですね。
性的被害描写が有りますんで!

そういうのが苦手な方は気をつけてください!


夢を見ている、と言う感覚がある。

 

私には、稀にある。

 

自分は小さな劇場の客席に座らされて居て、自分が昔体験した出来事が演目として行われるのを、身動ぎ一つ出来ず見ているのだ。

 

 

私は今、悪夢を見ている。

 

何が悪かっただろうか?

何が許されなかっただろうか?

 

 

これは私が今日まで積み重ねた、失意の演目だ。

 

―――

 

私は、「かわいい」に成ろうとした。

 

誰もが嘲笑した、だが、なりたかった。

 

 

いろんな事を試していた。

 

周りを黙らせる為に、より芸を高めようとし続けた。

 

 

そして、騙されてきた。

 

中傷が、略奪が、暴力が、陵辱が、

 

繰り返される内に、私の中で二つの現象が起きたのだ。

 

 

一つは、虚栄に近しいナルシズムの肥大化。

一つは、他者への諦観。

 

この二つが私を悪しき道へ導く事も多い。

 

だが、道具は使い方だ。

 

”頭のおかしいナルシストに成れば良い。”

 

そうすれば、他人の悪い言葉に惑う事は無くなる。

 

十代の私は、そう動いていた。

 

 

けれど、この思想には酷い副作用があった。

 

私は、「私をかわいいと言う者」の言う事ならば、何でも聞く様になってしまったのだ。

 

 

そうして、私の十代は破滅に満ちたモノとなった。

 

あるいはその方が、ラクドスらしかったかもしれない。

 

 

今日もあの頃のワンシーンが流れる。

 

殴られ、辱められ、嘲笑われる、あの日の私。

 

それを目の前にして、身体も動かず、言葉も出ない今の自分。

 

 

目の前の惨状を、どうにかしたいはずなのに、何も出来ない。

過去を変える術など、誰も持たない。

 

―――

 

 

ふと、意識が戻る。

 

ここは私のベッド、私の部屋だ。

 

「…ッ!ローギ!ゲグ!」

 

咄嗟に不安になって大声を上げる。

 

二人は居るのか?

あの二人は私が作り上げた架空の存在じゃないのか?

あの二人も私を騙して―

 

「煩いよぉ!ロミッタ!!何時だと思ってんだぁ!!!」

 

その大きな怒鳴り声一つで、心の底から安堵したロミッタが居た。

 

とても良かったと、”戻って来れた”と。

 

 

そしてロミッタがすすり泣きを隠す様な声を上げ出して、ローギはやれやれと思いつつまた目を閉じる。

 

こんな時は、ボロスで身に付いた危機を察知したら目覚める技能が役に立つ。

などと思いながら。

 

 

――

 

二時間後。

 

「おはよう、ローギ姉さん」

 

相変わらず一番最初に起きて細々とした書類に目を通すローギに挨拶をする寝起きのゲグ。

 

「おお、おはよう。ロミッタは起こすな」

 

「またうなされてたんすか?」

 

ロミッタが自分より遅く起きる日は大概そうだとゲグは思っていたのでそう聞いた。

 

「まあね、昨日の酒が悪かったんかね。ともかく、今は寝かせとけ」

 

「へいへい」

 

ゲグはそう言うと、洗面所に向かうべく部屋を出た。

 

 

「まだ起きなくていい」

 

ローギは突然そう言う、動きすらしないベッドの上の小さな塊から声がする。

 

「いいえ、今起きたの、本当よ」

 

ロミッタのいつもよりか細く、正気臭い声に、ローギは更に続ける。

 

「あたしとゲグが不安になるから元気なロミッタちゃんになるまで寝てろ」

 

「…うん、ごめんなさい」

 

 

「ほら、紅茶飲め」

 

ローギはロミッタに紅茶を差し出す。

ロミッタはそれを受け取らない。

 

「置いとくよ、何も答えなくていい」

 

とだけ残すとベッド際から離れていった。

 

 

 

 

―――

 

眠るのは恐ろしいので、記憶の中で再生する。

 

私の原初の記憶。

 

何故私がロミッタとなったかの記憶。

 

芸ゴブリンの一座で生まれ、ずっと芸事を修めて生きてきた私の初舞台の記憶。

 

幼い芸ゴブリン達が一同に男女も問わずドレスと化粧をして踊って歌うと言う演目がある。

 

嘲笑の為の芸であると共に、実戦度胸を着ける演目だった。

 

多くのゴブリンの子供にとって、それは気恥ずかしく、けれど幼い日の思い出になる様な。

そんな他愛のないモノである。

 

だが、カロッサという一人の男にとって、その演目は運命だった。

その男は、出会ったのだ。

 

【この世で最も美しく可愛らしい女】に。

 

それは、”女装した”カロッサ自身だった。

 

 

それからカロッサと言う名前は消えた。

 

”私はロミッタと名乗り、今日まで、どうにかこうにか生き延びてきた。”

 

 

そしてあの日から地続きに、あの悪夢があり、今日がある。

 

それは、とてもとても、得難い。

 

 

―――

 

昼間頃。

 

「我こそは!最強かわいいロミッタちゃん!!」

 

ロミッタは姿見の前で何度もポーズを取っては大層愉しそうにしていた。

 

ゴブリンの男がドレスを何着も着せ替えしながらそうしている、そう聞いただけでは大半の者は正気を疑うだろう。

 

だが、ゲグとローギにとってこの姿こそが日常である。

 

「まあ大分安定してる、今日は大丈夫だろう」

 

「無理してないかな?」

 

「ゲグ、こういうのは”多少無理に修正しないと駄目なんだ”よ」

 

「…姉さんがそう言うなら、そうなんだろうな」

 

 

「ゴブリン史上!最もオレンジが似合う美少女!ロミッタ様!」



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自叙伝「30過ぎにして人生を見つける。」

あたしの名はローギ。

 

ファミリーネームはもうない。

思い出す程の過去なんかない。

 

そんなあたしの、うんざりする様な半生をゲグがどうしてもと言うから書いてみる。

 

―――

 

幼少の頃、割と早く気が付いた事がある。

 

自分はゴブリンで、なのに両親はゴブリンじゃないと。

 

 

理由は割とすぐに分かった。

 

父はホライゾン軍学校の教官で、社会的身分に伴う責務として孤児であるあたしを引き取ったのだと。

 

良く言えばノブレス・オブリージュ。

悪く言えば、いずれボロス軍に入れる為の行為だった。

 

そのどちらの比重が大きかったのか、今となっては知る由も無い。

 

強いて言うなら、あたしは幸せだった。

両親は義理堅く誠実で、あたしを我が子同然に育ててくれていた。

 

―――

 

そしてあたしがボロス者として立派に成長し、訓練の末に現場に出る様になった十代半ばの頃。

 

母が実子を身籠った、両親にとっては念願の事だった。

 

あたしもそりゃあ嬉しかった。

ひょっとしたらお払い箱かもとは思ったが、それならそれでここまでの恩義で感謝しながら去るつもりで居た。

 

けれど両親はあたしに「長女として良き模範になれ」と言ってくれた。

そうして妹が、みんなに求められてこの世に生を受けた。

 

かわいい妹だった。

 

―――

 

そしてあたしが二十歳になった頃、両親は言った。

「お前の本当の両親は、殉職した教え子、ボロスの戦友達だった。」と

「その頃の二人に、お前は本当にそっくりになった。」と

 

そう言うと両親は一本の剣を出した。

「これがお前のお父さんの剣だ、今の体躯なら使えるだろう。使ってあげなさい。」

 

それは所謂ロングソード、ゴブリンにとっては大剣であった。

だが、あたしは喜んでその剣を受け取った。

 

それを携えた姿を、「お姉ちゃんかっこいい!」と言う妹は本当にかわいかったよ。

 

―――

 

あたしが一角の軍人として、多くの修羅場をくぐり抜け、現場以外の仕事も増えてきて指揮スキルや対話スキルなどを習得していた油の乗った三十代。

 

母は隠居し、父も現場に出る事を辞め教官業に専念していた。

 

愛する妹もまた立派なボロス者へのルートを歩き、ついに部隊への配属が決まった。

 

妹は「いつかお姉ちゃんの様な立派な軍人になる!」と言っていたのを、おそらく生涯忘れないのだろう。

 

 

その時まであたしの人生は完璧で、いつか軍人として死ぬ事を含めても、幸せだと断言出来るもんだった。

 

―――

 

規模拡張による4小隊の新規結成の後、僅か半月。

【シミックの混成体の暴走を鎮圧すべく行われた6部隊連携任務にて、ミガン小隊が全滅】の一報が飛び込んできた。

 

そう、【ミガン隊】とは、妹の配属された部隊だった。

 

妹は鋭い触手の一撃で首を抉られ、踏み潰された下半身は圧潰した状態で見つかった。

 

何故ミガン隊だけが大きな損害を受けたのかはすぐ分かった。

構成員の殆どが新兵だった事、指揮官も現場叩き上げで人の上に立つ訓練が未熟だった事、素人の調達係が用意した装備の多くが不良品だった事、ほぼ初陣の状態で暴走する混成体と言う最悪の相手にぶつかった事。

 

どんな悲劇もそうさ、原因を探るといくつかの小さな問題が積み重なっていただけなんだ。

 

 

妹の死は家を一変させた。

 

母さんは精神的に不安定になって、全く笑わなくなった。

父さんも精神的に不安定になって母さんや生徒に暴力を振るう事が目立つ様になった。

 

あたしも正直大分落ち込んだが、誤魔化す様に軍務に打ち込んだ。

 

―――

 

そんな生活が一年した頃。

大喧嘩する両親を仲裁している時に、両親があたしに向ける目線と罵声に、気付いちまったんだ。

「今やあたしはこの家の娘でも何でもない、この家の娘は妹だけで、あたしは居候のゴブリンに過ぎないんだ」ってね。

 

あたしは両親を責める気はない。

誰だって自分の子供が死んだらそれぐらい不安定になるもんだ。

 

 

あたし自身、精神的に衰弱してたんだろうね。

家を出る時、自分でも理由は分からないんだが、ボロスを除隊していた。

 

出世出世で責任と部下が増えるって言う環境にも疲れていたからね。

 

 

結果自由人になったあたしは第4分区の荒事依頼を請け負う事を主にした門なしフリーランスの暮らしを始めた。

長年の腕っぷしで生活に困る事は何もなかった。

 

―――

 

んで、ここまでが前日談で。

ここからゲグの気になってるロミッタ団に入った経緯に入るよ。

 

あたしがロミッタに出会ったのはそんな暮らしを始めて七ヶ月が経った頃だ。

 

あたしは合同学祭の臨時警備員の募集で第5分区に来てたんだ。

それで警備員面接の時に、あたしは経歴からVIPの護衛に急遽抜擢されたんだ。

 

そのVIPが学祭のステージに出る予定だったロミッタだったのさ。

 

あたしからロミッタへの第一印象かい?

一番最初の印象は”歩き方が女なのに腰の動きが男で変だな”だったよ。

 

まあ気さくに声をかけてくれたよ。

「私はロミッタ、ラクドスの歌姫をしてるわ。かわいいでしょ?」

と言う今となっては定番の自己紹介も受け入れて「まあかわいいんじゃないですかね?」と返していた。

 

 

んで、その日はロミッタのショーじゃなかったんだわ。

所謂【討論会】ってヤツだ、テーマは【学生達に向けて、ラヴニカの明日をどうするか?】みたいな感じで、

イゼット・シミック・ラクドス・ゴルガリ、みたいな革新派ギルドの論客を一人ずつ招いてて、ラクドスから来たのがロミッタだったのさ。

 

ロミッタの演説はまあ良いもんだったよ、「誰でもなりたい自分になれる」って話をその日もしてた。

 

 

討論会は平和に終わって、護衛としてロミッタと一緒に屋台巡りをしつついろんな話をしていた。

 

その時に思ったのは、”このお嬢ちゃんはどうしてこんなに自由に生き生きと生きられるんだろう”とね。

 

だから聞いてみたのさ、

「良い演説だった、あたしは”そうあるべき”と定められた事ばかりしてきた、そんなあたしでも”なりたい自分”とやらになれんのかい?」

とクロワッサンを頬張るロミッタに聞いたんだ。

 

ロミッタは少しだけ悩んだ後に、何の迷いもないって顔を作って答えた。

「なれるわ。貴女は”そうあるべき”をたくさん努力して実現してきたでしょ?そんな貴女なら後はたった一つだけ頭に念じればなりたい自分としても生きられるわ」

とね。

 

「そりゃなんだい?」

と聞いたさ、すぐ聞いた。

 

 

「なりたい自分を見つけたらいいの、毎日毎日、自分はそのなりたい自分になれているだろうか?って考えて生きていくの。それだけ」

鋭い目だった、本当に揺らぎのない信念を持った眼だ。

 

あたしは、それに惹き込まれてならなかった。

自分もそんな風に生きられるなら、そうしてみたいとね。

 

―――

 

んで、後はあんたも知っての通り、あたしは来電座の門を叩き、ロミッタ団に加入した訳だ。

 

ああ、あたしの場合は最初からロミッタと顔見知りで、かつボロスでの前歴で真面目なのが知れてるから最初からロミッタの直弟子になったんだ。

羨ましいか?羨ましいか?

 

=====

 

【ロミッタ団の下宿部屋】

 

「…、なんか…聞きにくい事を聞いちまったんだなぁ…俺」

 

ゲグは完成したローギの自叙伝を読み終わると頭を抱えた。

 

「いいさいいさ、別に嘆く程悪い事ばっかじゃないさね」

 

ローギは事もないと返して、剣の鞘を磨いていた。

 

 

「その剣、そんな大事なもんだったんすね」

 

とゲグは覗き込む。

 

 

「ああ、荒事から遠のいてあんま持ち歩かなくなったもんね…昔は何するにもこれ担いで動いてたもんさ」

 

そう言うとローギは剣をゆっくりと抜いて、輝きを見せる。

 

「けど今となってはこいつはベッドの飾り付けに、代わりに持ち歩くのは小太鼓になっちまった。考え方は人それぞれだと思うけど…それが”あたしらしい”って事だと思うんだよ」

 

としみじみ、けれどどことなく嬉しそうにローギは笑った。

 

 

「あたしは、軍人やってた頃より、ロミッタやあんたとショーをやる今日が楽しいよ。」

 



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