イナズマイレブン 転生したらホモだった (トツキトウカ)
しおりを挟む

孤児院編
タイトル回収


初投稿です。

イナズマイレブンは123をやりましたが、かなり昔なので記憶はおぼろげです。知識はほとんど二次創作でつけて足りない部分はこれから補強していこうという見切り発車ですが、良かったら見て行って下さい。

我が家を見上げた。から先は「転生した」をながーく書いただけなので飛ばしても多分大丈夫です。最後の名前だけ覚えてあげてください。

始めます。



 

「着いたよ望太(もちた)君」

 

 

 

 車を運転していたおじいさんの声に反応して窓から外を見る。そこには周囲のものよりも大きい、教会ほどの大きさの建物が建っていた。大きな庭もあるようで、そこでは自分と同じくらいの歳の子たちが元気に走り回っていた。

 

 

 車を降りて隣に座っていたおばあさんと共に建物に向かうと、先ほどまで遊んでいた子どもたちから視線を感じる。

 

 

 

「今日から、ここが望太君のお家になるのよ。あの子たちと一緒に住むことになるわ。仲良くしてあげてね」

 

 

 

 そう言うおばあさんの横で、僕は新しい我が家を見上げた。

 

 

 

 *

 

 

 

「……?」

 

 

 

 ここはどこだろう。

 

 

 確か、

 

 

 自室のベッドで寝ていたはずだ。

 

 

 しかしここは、

 

 

 

「いや待て、俺は」

 

 

 

 そこまで考えたその時、頭の中で激しい頭痛が起こる。そして、あり得ない考えが頭に浮かぶ。自分にあるはずのない知識が起こるはずのない結果を伝える。

 

 

 なんだそれは。意味がわからない。そんなことあってたまるか。何の冗談だ? 

 

 

 しかし自分の中のなにかがそれを否定する。冗談ではない。

 

 

 冗談ではないなら何だと言うのか。夢か? 

 

 

 しかしその考えは再び、今まで自分にはなかった知識によって否定された。これは現実だ。

 

 

 そしてなぜか今度はすんなりと受け入れられた。そうか、これは現実なのか、と。

 

 

 そうして一度受け入れられると、それまで異物だと感じていたなにかが自分の一部であるのだと認識できた。今までこれは自分の知識でなかったと自覚しながら、しかし今はすでに自分の知識であると認識する。

 

 

 次に、自分が何者であるかを自覚した。先ほどまで赤の他人だったものを、自分であると認識した。

 

 

 自分は転生したのだ。より正確には憑依なのかもしれないが、この体に宿っていたはずの魂はすでに存在しない。空っぽの器に全く新しい自分という魂が入ったのだから、これはもう転生と言ってもおかしくはないだろう。

 

 

 そこまで考えるとスッキリした。ぐるぐると頭の中をめぐっていた考えがまとまり、失いかけていた自分を取り戻すことができた。そして、今度はゆっくりと知識を確認していくことにした。

 

 

 どうやら元の魂の彼は交通事故で両親を亡くして自分だけ生き残ったようだ。まだ就学もしていない幼い彼は自分も両親の元へ行くことを願い、肉体を手放して両親の元へ向かったようだ。そして自室のベッドで寝ていた俺は魂の状態で彼の器に入り込んだ。

 

 

 ……ん? 何で? 

 

 

 いや、彼の魂が抜けたのはわかる。彼がそのように願って旅立ったのは知識の中にもあるし、実際に魂が抜けたことについてもなんとなく理解している。

 

 

 問題はその次だ。なぜ俺の魂は自分の体から飛び出して彼の肉体へ飛び込んだのか。全くもってわからない。その部分については、ヒントも答えもない。

 

 

 ……まあいいか。どうせもう元には戻れない。それにもう俺には知識が入り込んで、この肉体に愛着を持っている。もしこうなったことに理由があるならば、それはきっと、悪い理由ではないだろう。ならば、これからは新しい自分として生きていこう。

 

 

 

 

 そう、洞木(ほらき)望太(もちた)として。

 

 

 

 

 




ホモ要素は名前だけです。洞木望太、略してホモ君です。

ちなみに彼の両親の死は影山のせい、ではありません。無関係です。残念。

彼が両親の元へ無事たどり着けるのか、それはわかりません。死後の両親はどこにいるのか、彼はどこに向かったのか、そもそも天国や地獄があるのか無いのか、わかりません。わかっているのは、それでも彼は両親の元へ向かうことを選んだということだけです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

鬼道兄妹現る!

完全オリジナル()

二次創作はそもそもオリジナルではな(ry

始めます。



 

「洞木望太です。よろしくお願いします」

 

 

 

 僕が言うと、孤児院の子どもたちは口々によろしくと返事を返してくる。彼らにとって新入りが入ってくることは、そう珍しくないのかもしれない。中にはいきなりじゃれついてくる子もいて、勝手にイメージしていた暗い雰囲気という先入観は完全に吹き飛ばされる。ここにいるのはそれぞれがそれなりの事情がある子たちのはずだが、そのようなことは全く関係ないと言わんばかりに、皆ここでの生活を楽しんでいるように見えた。

 

 

 その中で、ポツンと孤立している二人がいた。彼ら、特に兄の方は周囲全てが敵だと言わんばかりに辺りをにらんでおり、妹を庇うように一歩前に立っていた。それはまるで、自分以外に信用などできないし妹を守ることができる者は自分しかいない、兄として自分が妹を守らねばならない、という責任を負っているようだった。

 

 

 一方、妹も兄を信頼し、自分を守ってくれるのは兄であり、兄以上に信じられる人などいないのだと思いつつも、他の子どもたちと一緒に遊びたいという欲求はあるのだろう。兄の服の端をつまみ、その影の隠れつつも、周囲の様子をうかがってなにかそのきっかけがないだろうかと注意深く観察していた。

 

 

 周囲の子どもたちも彼らとはあまり積極的に関わろうとはせず、遠巻きにみることはあっても、近ずきすぎることがないように距離をとっていた。

 

 

 

 

 その中に一人……

 

 

 

 なんか見たことある顔だー! 

 

 

 

 ……テンション上げ上げで目立っている男の子がいた。

 

 

 

 

 すっげ、本物の鬼道(きどう)兄妹(けいまい)じゃん! しかもショタロリ! レアなんてもんじゃねーぞ! どうしよう、サイン? サインしてくれるかな? 

 

 

 ……よし、落ち着こう。さすがにこのテンションで行ったらアカンのはわかる。今の鬼道は一歩間違えば敵対ルート待ったなしって感じだしな。

 

 

 どうしようかな、初めての原作キャラと遭遇だし、二人とは絶対に仲良くなりたい。てかやっぱイナイレ世界だったのか! ホモ君の知識から多分そうだろうとは思っていたけど、実際に会うと想像以上に興奮する! ヤバい、喜びが抑えられない、落ち着け、俺! 

 

 

 ……よし、今度こそ大丈夫。まずは落ち着いて話しかけてみようか。第一印象が大事だ、慎重に。いや、いきなり話しかけて失敗したら目もあてられないぞ。先に観察か? 少しでも情報を集めてから 

 

 

 

「……」

 

 

 

 やべ、目が合った!! いや、まだいける、大丈夫、気のせいですよー、目なんてあっていませんよー、ちょ、なんでこっちにくるの、やめ、やめて、まだ心の準備が、

 

 

 

「おい、何を見ている」

 

 

 

 終わったー。

 

 




孤児院スタート、鬼道兄妹、どこかの五条さん家で見たことある構成ダナー、オカシイナー。だって羨ましいじゃん、僕だってショタロリ鬼道兄妹と仲良くなりたい!なりたい!なりたい!って感じで書きました。帝国には行かず、雷門ルートの予定なので許して!


キャラクター紹介のコーナー

鬼道有人(きどうゆうと) 中学サッカーの全国大会で四十年無敗の帝国学園のキャプテン。天才ゲームメーカーの異名を持つ。のちにイナイレ主人公の円堂守と同じチームに所属する。シスコン。

音無春奈 円堂のいる雷門中のマネージャー。元新聞部で情報通。兄とは一つ違い。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

シスコン

主人公のテンションが高いのは子どもの体に引っ張られているとか、いきなりのイナイレ世界に興奮しているから、みたいな感じです。もう少し落ち着いた感じで書きたい。

始めます。



 

「おい、何を見ている」

 

 

 

 先ほどから、チラチラとこちらを見ていた少年に対して、威圧するように話しかける。よく見ると、さっき自己紹介していた少年であるようだった。

 

 

 新入りか、どんなやつかわからないし、警戒しておいた方がいいだろう。先ほどからなにやら挙動不審であったし、もしかすると孤立している自分たちを見て、なにかよからぬことを企んでいるのかもしれない。

 

 

 

「え、えっと、その」

 

 

 

「なんだ」

 

 

 

 話しかけると、なにやら焦っているのか、さらに挙動不審になる。ますます怪しい。やはり、自分たちになにかおかしなことをするつもりなのではないだろうか。彼の中で疑念はますます膨らみ、警戒を強める。なにかあった時、妹を守ることができるのは自分だけなのだ。自分がしっかりしなければ。

 

 

 幸い、幼いころからサッカーをやってきたので、体力には自信がある。サッカーは、時には体と体がぶつかり合う、ハードなスポーツだ。いざという時も、同い年ほどの子どもたちに負けるつもりはない。

 

 

 孤児院の他の子たちもそれがわかっているのか、最近はわざわざ自分たちにちょっかいをかけてくる者はいない。最初の頃はしつこく仕掛けてくる者もいたが、今では近づかれることもない。この新入りさえ対処できれば、また平穏無事でいられるだろう。

 

 

 

「こちらを見ていたのはわかっている。言いたいことがあるならばはっきりと言え」

 

 

 

 追い打ちをかけるようにさらに一歩、詰め寄る。こんなやつに自分たちの平穏を壊させたりしない。

 

 

 

「と、友達に、なりたいな、って」

 

 

 

「は?」

 

 

 

「いっいや、だから、友達に、なりたい、です……

 

 

 

 友達だと? 俺たちの油断を誘って騙しうちをするつもりか? しかし、すでにこいつが怪しいやつであることはわかっている。なにか裏があるはずだ。こんな言葉に乗る必要はない。

 

 

 

「残念だが、俺は友達になるつもりはない。友達が欲しいなら、他のやつにしろ」

 

 

 

 相手にするつもりはないと、冷たく突き放す。まだ幼いとはいえ、未来の帝国のキャプテンにここまで威圧をされ、突き放されては、大抵の子どもたちは退却をするしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 しかし、幸か不幸か、目の前の少年は普通の少年ではなかった。見た目は少年だが、中身は全く別人の魂が入り込んでいるという、特殊な経歴の持ち主であった。そしてそんな彼にとって、目の前の兄妹は特別な存在だった。

 

 

 

 そのことが、今まで撃退されてきた子どもたちとは違う結果をもたらした。

 

 

 

 

 

 

「……違う」

 

 

 

「違う? 何が違うんだ?」

 

 

 

「友達が欲しいっていうのは、そう。

 でも、誰でもいいって訳じゃない。

 僕は……君たち二人と、友達になりたいんだ」

 

 

 

 *

 

 

 

 ふぅ、なんとか落ち着けた。いきなり話しかけられて、テンパって変な感じになっちゃったな。ていうか就学前の子どもが出していい威圧感じゃないだろあれ。最初は普通に緊張してたけど途中から別の意味で緊張感あったわ。

 

 

 確か、あの兄妹も飛行機事故で両親を亡くしたはずだから、妹を守ろうと必要以上に周囲を警戒しているって感じだな。それまでとは環境もガラリと変わっただろうし、いきなり頼れる大人がいなくなったら、自分がしっかりしなければってなるのは仕方ないのかもな。

 

 

 なればこそ、仲良くなりたいと思う。個人的な欲求ももちろんあるけど、彼らがもう少し、リラックスできるようにしてあげたい。普段からあのままじゃ、精神も身体も疲れるだろうし、なんとか彼らが安心して暮らせるようにできないだろうか。そのために、少しでもいいから力になれないだろうか。

 

 

 

「どうかな? ……僕がまだここにきたばかりだから気付かないだけで、知らないうちに気分を悪くするようなことことをしてしまって、怒ってらせてしまったなら、ごめんなさい」

 

 

 

 とりあえず、こちらに悪意はないことをアピールしよう。警戒されていたみたいだし、少しずつ誤解を解こう。

 

 

 

「君たちに何かしたりはしないよ。ただ仲良くなりたいだけなんだ」

 

 

 

「……何が目的だ」

 

 

 

「目的? ……うーん、わかんないけど、でも仲良くなりたいって思ったんだ! 一緒に遊びたいって」

 

 

 

 難しく考えることはない。自分は子どもなのだから、子どもらしく純粋に、思ったことを言えばいい。彼らだってまだ子どもだ。心のどこかでは、遊びたいと言う気持ちもあるだろう。

 

 

 

「……ならさっきも言っただろう。他のやつと「違うの! 二人と一緒に遊びたいの!」……」

 

 

 

 ……ちょっとあざとくし過ぎたか? 

 

 

 おや、

 

 

 

「あのね、お兄ちゃん。私も一緒に遊びたい」

 

 

 

 キター! 春奈ちゃんの援護射撃! 妹のお願いに鬼道は耐えられるのか!? 

 

 

 

「いや、しかしな」

 

 

 

 頼む、春奈ちゃん! もう一押し! いけ、いけー! 

 

 

 

「お兄ちゃん、私あの子、悪い子じゃないと思うよ。本当に仲良くしたいだけだと思う。……ねぇお兄ちゃん、お兄ちゃんも一緒に、遊ぼうよ!」

 

 

 

「……」

 

 

 

 黙ったー! 勝ったな(確信)

 

 

 

「ほら来て、お兄ちゃん。よろしく、洞木望太(ほらきもちた)くん、だったよね。私は春奈、高島春奈だよ! ……ほら、お兄ちゃんも!」

 

 

 

「……高島有人だ」

 

 

 

「有人くん、春奈ちゃん、よろしく!」

 

 

 

「ねえねえ、望太くんはスポーツとかやってる? お兄ちゃんはね、サッカーがすごい得意なの!」

 

 

 

 

 

 

 

 よっしゃー! なんとかうまくまとまったー! ほとんど春奈ちゃんのおかげだけど結果オーライ! 二人もだいぶ力が抜けてリラックスしているし、案外きっかけさえあればなにもしなくてもなんとかなってたかもな。

 

 

 あとはせっかくのイナイレ世界だしサッカーしたい! 鬼道と練習できればそれだけで大きくレベルアップできそうだな。あ、でも鬼道兄妹がまだ一緒ってことはそのうち影山が来るのかな? 帝国かー、それよりは王道の雷門でフットボールフロンティア優勝したいな! 鬼道も途中から雷門来るだろうし。じゃあ、鬼道が影山につれていかれるまでは大人しくしているか? 万が一影山の目に止まったりしたら強制帝国ルートか、断れても目をつけられて、最悪潰しにくるかもしれないし。いやでも鬼道と練習できるアドバンテージは捨てがたい。そもそも超次元サッカーって一般人に可能なのか? 才能が必要とかだったらどうしよう。だとしたらうんぬんかんぬん……………………




書いてくうちに鬼道がどんどんシスコンっぽくになっていった。ごめんな、鬼道。

主人公は入れ替わるまでの洞木望太としての記憶を知識としてはもっていますが、記憶ではないので両親を失ったことに関して鬼道兄妹と真に共感することはできません。後で両親のことを聞いた鬼道兄妹側からは一方的に共感を持たれます。ちなみに主人公の入れ替わるまでの記憶も、今はもう知識として保存されています。なので、これから経験していくことが主人公ホモ君としての記憶となります。


用語紹介のコーナー

フットボールフロンティア 中学サッカーの頂点を決める大会。どうやら何十年も優勝し続けている有名な学校があるらしい。原作第一部ではこれで優勝するのが目標。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

厄介な客

本文書き終わって後書きを書いている時が一番筆が進む。
もっと本文も進めばいいのに。

始めます。



 あれから、鬼道兄妹とはよく遊ぶようになった。俺はそもそも彼らと仲良くなりたかったし、彼らは以前までのことを引きずっているのか、他の子とはまだ距離があるようだった。

 

 

 しかし、しばらくすれば自然と他の子たちとも交流が始まり、特に春奈ちゃんは積極的に馴染もうとしていた。鬼道はまだ距離を置こうとしていたが、孤児院のみんなは以前より近寄りやすくなった彼を放ってはおかなかった。今まで我慢していた分を取り返すかのように、積極的に話しかけていき、鬼道も徐々に彼らの一員となっていった。

 

 

 

 

 

 

「それでね、午後はみんなでサッカーやろうってことになったの! もちろんお兄ちゃんたちも一緒にやるでしょ?」

 

 

 

「ああ、たまにはこいつ以外のやつとやるのも悪くない」

 

 

 

 口ではそんな風に言っているが、その表情からはわくわくしているのが伝わってくる。そんな彼が周囲と馴染んでいるのを嬉しく思いつつ、自分も参加することを伝える。

 

 

 

「やったー! それじゃあ私はみんなに参加するって言ってくるね!」

 

 

 

 そう言うと春奈ちゃんは、他の子が集まっている方へ走っていった。彼女は自分だけでなく兄のことも気にかけて、お世辞にも人付き合いの上手くない彼をよくフォローしていた。彼が孤立することなく馴染めているのは彼女の力によるところが大きいだろう。

 

 

 

「……洞木、あの時、俺たちに友達になって欲しいと言ってくれたこと、感謝している。……今、春奈が楽しく過ごせているのは、お前のおかげだ」

 

 

 

 唐突に、鬼道が感謝を伝えてくる。しかし、それは自分の力ではないだろう。彼女や鬼道の努力があってこそ馴染めているので、俺は単なるきっかけに過ぎない。そのきっかけもさえも、あの時俺がなにもしなければ彼らは自分たちでつかんでいたはずだ。

 

 

 

「いや、仮にそうだったとしても、今の俺たちがあるのはお前のおかげだ。ありがとう」

 

 

 

 そう言いながら、鬼道はこちらをまっすぐ見て、一度頭を下げた。そして頭を上げると、少し恥ずかしそうに顔を背けて、やがて逃げるように妹のあとを追っていった。

 

 

 

 あの時俺がなにもしなくとも、彼らはきっと自力で乗り越えることができただろう。彼らが笑い合うことができる未来を、俺は知っている。だがそれでも、彼らの力になれたこと、感謝されたことが、俺はただ純粋に嬉しかった。

 

 

 

 *

 

 

 

 洞木望太としてこの孤児院に来てから、いくらかの年月が流れた。今日も俺は、鬼道と共にサッカーに励んでいた。

 

 

 鬼道のサッカーの実力は凄まじかった。もちろん知識として知ってはいたが、それを実際に目にすることで、改めて凄さを実感している。

 

 

 ここに来てからは毎日のように鬼道と練習をしているが、追い付けるビジョンが全く見えない。最初の頃はボールに触るくらいは、と思っていたが、鬼道がボールを持つと、未だに翻弄されてしまうのだ。結局、彼の持つボールに触ることは今日まで出来ていない。

 

 

 そんな俺だが、全く成長しなかった訳ではない。孤児院では一応、鬼道の次に上手くなっている。才能がないということではなさそうで、ひとまず安心している。

 

 

 とは言ってもやはり鬼道との実力の差は歴然であるし、気にしていたような、目立って鬼道と共に影山に目を付けられると言うのは杞憂だったかもしれない。だが一応対策として、今すぐの成長よりも将来の上達のために基礎の体づくりを中心にやってみたり、ポジションをキーパー含めてまんべんなくやって偏りをなくしてみたり、鬼道のプレーを見て彼と離れた後に使えるよう一つ一つノートにまとめてみたりと、出来るだけ目立ないように気を付けていた。

 

 

 

 

 

 

 そんな無駄な警戒をしながら日常を過ごしていたある日、孤児院に厄介な客が現れた。最初は院長に会いにきた普通の客だと思っていたが、どうやら鬼道について話をしていたようだ。どこから聞きつけたのか彼の実力を知っており、自分ならばその力をもっと上手く利用できるから自分に引き取らせろ、そうすればこの施設に資金援助をしてやる、ということのようだ。

 

 

 もちろん院長は断ったが相手は激昂し、何を思ったか自分の部下とサッカーをして、自分たちが勝ったら引き取らせろ、さもなければ孤児院がどうなっても知らないぞ、などと言い出した。

 

 

 

 いやそうはならんやろ。

 

 

 

 しかし話を聞いていた鬼道が出てきて、孤児院に被害を出すまいと思ったのだろう、相手の提案、というか脅しを受けてしまった。

 

 

 

 なっとるやろがい! 争いがあればサッカーで決着をつける。さすがイナイレ世界。

 

 

 

 

 

 

 ということで、厄介な客の部下 VS 鬼道率いる孤児院の子どもたちで、五対五で時間内により多く点を取った方が勝ちのミニゲームをやることになった。初めは、鬼道一人で戦うつもりだったようだが、さすがにおかしいとなって俺も含めて参加することになった。そもそも大人対子どもの時点で大分おかしいのだが。

 

 

 だがこの時点で俺は、俺たちの勝利を確信していた。ルールを決めている間、アップをしている部下の人たちの動きを見ていたのだが、どうみても鬼道の相手になるとは思えない。確かにフィジカルは凄そうだが、テクニックは素人に毛が生えた程度でお世辞にも上手いとは言えない。あれでは、既に天才ゲームメーカーの片鱗を見せている鬼道のプレーについて行けるとは思えなかった。

 

 

 それを踏まえて鬼道と相談し、俺は自分がキーパーをすることを提案した。どのポジションも一通りやっていたおかげでキーパーだけなら鬼道よりも少しだけ上手く、孤児院で一番だったからだ。それでも本当に少しなのだが。あいつキーパーの練習とかしてないのに。なんでだ。

 

 

 鬼道も相手の様子を見て賛成してくれた。フィールドは自分一人で十分だと思ったのだろう。正直、今の俺の実力では部下の人たちにどの程度通用するかわからないし、例え通用したとしてもあのフィジカルに複数で来られたらひびってしまいそうだ。それならば、キーパーの方が活躍できる。どのみち鬼道が点を取れば勝ちだし、俺が点を取られなければ負けないのだ。かくして俺の案は採用された。

 

 

 

 試合は終始一方的な展開だった。鬼道は相手を翻弄し、隙をつくってシュートを放ち、その度にネットを揺らした。厄介な客は怒り狂っていたが、部下たちにはどうにも出来なかった。彼らと鬼道とでは、そもそもレベルが違うのだ。途中、厄介な客がラフプレーを指示した時はヒヤリとしたが、鬼道は何事もないようにプレーを続けて相手を圧倒し続けた。最後には彼らにスタミナ切れを起こさせて戦意を喪失させてしまい、結局キーパーの俺に出番は回ってこなかった。結果的に最初のまま鬼道一人でも問題なかったな。さす鬼道。

 

 

 しかし、厄介な客はそれでも納得しなかったようだ。部下たちを強引に立ち上がらせ、鬼道を捕まえて無理やりにでも連れて帰ろうとする。

 

 

 

 だが、その行動に待ったをかける人物が現れた。

 

 

 

「そこまでだ」

 

 

 




なんという都合のいいタイミング。まるでどこかから事態の推移を見ていたかのようだなぁ。一体誰なんやろなぁ。

主人公の実力はサッカー未経験からなのを考えるとでむしろ凄い方。でも周囲がそれに気付くのはまだ先です。鬼道さんは気付いていますが、主人公が目立ちたくないのを察しているのか、黙っています。やだ、なにこのイケメン。

やっと孤児院での生活が楽しくなってきた鬼道さんに新たなる試練が襲いかかる。彼が安らかな生活を送れるようになるのは、いつになるのだろうか。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

影山、襲来!

前話で引っ張っておいて、タイトルでネタバレしていくスタイル。

始めます。



 

 

「そこまでだ」

 

 

 

 門の方から、厄介な客に対して待ったをかける声がした。振り返ってそちらを見ると、そこには何人もの黒服を従えた男がいた。全身紫の服装で、長い髪は後ろで一つにまとめてられており、楕円のサングラスをかけた厳めしい顔の細身で長身の男だった。

 

 

 そして同じくそちらを見た厄介な客は突然現れたその人物を見て、驚愕する。

 

 

 

「な、なぜあなたがここに!」

 

 

 

「お前の部下から話は聞かせてもらった。才能溢れる若者を力ずくで己がものにしようとするとは。少年サッカー協会副会長として、見過ごす訳にはいかんな」

 

 

 

「んな、ち、違います! 私は、総帥のために「うるさい、もうその口を開くな、不愉快だ。おい、こいつをつれて行け」

 

 

 

 そう男が命ずると、黒服たちは厄介な客をがっちりと捕まえて連行する。

 

 

 

「や、やめろ! 離せ! 俺に触るな! ぐおっ!」

 

 

 

 厄介な客は拘束を振りほどこうと暴れていたが、黒服たちに強制的に黙らされた。

 

 

 

「お騒がせして申し訳ありません。あの男は以前から協会でも問題視されていたのですが、なかなか尻尾を出さなかったもので。しかし、今回のことでさすがの彼にも厳罰が下るでしょう」

 

 

 

 男は、今回の事件を防げなかったのは自分たちの責任であると謝罪をしつつ、こう切り出した。

 

 

 

「高島有人君の件なんですが、彼は私に預からせて頂けないでしょうか。今回のような馬鹿が、まだ潜んでいないとも限りません。私のところであれば馬鹿共も迂闊に手出しは出来ないでしょう。さらに、私であればサッカーをするのに最適な環境も提供出来ます。如何でしょうか?」

 

 

 

「……とりあえず、今回のことも含めてもう一度中でお話を聞かせてもらいます」

 

 

 

「ああ、これは失礼しました。そういえば自己紹介もまだでしたね。私の名前は」

 

 

 

 影山零治。男は、そう名乗った。

 

 

 

 *

 

 

 

 それから、院長夫妻と影山、そして今回の事件や影山の提案にも関係のある鬼道の四人で話し合いが行われた。おそらくこれで、彼は影山のもとへ行くことになるのだろう。影山の言うサッカーの為の環境も、鬼道にとって魅力的なはずだ。

 

 

 しばらくすると影山は帰った。どうやら鬼道は答えを先延ばししたようで、また一週間後に来る、いつ来てもいいように準備をしておくと言い残していったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……俺はどうすればいいのだろうか」

 

 

 

 そう鬼道に問われた俺は、しかし答えることが出来なかった。

 

 

 帝国で活躍する鬼道を知っている俺としては、影山のもとでサッカーをすることは正しい選択だと思う。転生した者として自分の知る通りに進んだ方が動きやすいというのもある。それに、断ってしまえば影山が鬼道に害を及ぼすという可能性が十分にある。

 

 

 しかし、その選択は兄妹を引き離す選択でもあった。影山はサッカーに集中する為に、妹の春奈とは離れて暮らして、フットボールフロンティアで三年間優勝し続ければ引き取れること、それまでは連絡を取ることは出来ない、という条件を出してきた。どちらがサッカープレイヤー高島有人にとって良い選択であるかは分かっていたが、実際に問われるとそれを強く勧める気にはなれなかった。

 

 

 だが、そうして話を聞いているうちに鬼道は自分の中で答えを出したようだ。それでも、まだ覚悟までは出来ず、決断しきれない様子だった。鬼道が決めたならもう口を出しても良いはずだ。そう思って俺は助け船を出すことにした。

 

 

 

「もし、有人の考え事が春奈ちゃんのことなら、心配しなくても大丈夫だと思うぞ。春奈ちゃんは有人が考えているよりも、ずっと強い子だ。あとは、いざとなれば俺もいる。有人の代わりにはなれないかもしれないけど、春奈ちゃんが寂しくならない様に頑張るよ」

 

 

 

「……そうか。ありがとう」

 

 

 

「それに、何かあれば俺に連絡すれば良い。春奈ちゃんと連絡するなとは言われたけど、俺と連絡するなとは言われてないだろ? たまたま俺と話していて、たまたま春奈ちゃんの近況を有人が聞いたり、たまたま春奈ちゃんに有人の話をしたりしても問題ないはずだ」

 

 

 

「!? ……ふふふ、そうだな」

 

 

 

「ああ、だから有人は自分のやりたいことをやれば良い」

 

 

 

「……なあ、お前は影山さんのもとへ来たいとは思わないのか? 少年サッカー協会副会長というのも本当らしいし、確かにサッカーをするのに最適な環境を用意してくれるだろう。あれだけサッカーに真面目に取り組んでいたお前には、理想の環境じゃないか?」

 

 

 

 確かに魅力的な提案だ。鬼道有人の幼なじみが、彼と共に影山のもとへ行く。最高の環境で成長して、帝国学園で活躍する。正直、心はかなり揺れている。そもそも今考えている雷門中には、行けるかどうかも分からないのだ。

 

 

 

「もしお前が望むなら、俺から影山さんにお願いしてみよう。春奈は許されなかったが、お前ならダメということもないだろう。俺がお前の実力を保証すれば、これからも一緒に練習出来るかもしれない」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いや、いい」

 

 

 

 だが、俺は鬼道の提案を断った。

 

 

 

「なぜだ?」

 

 

 

 鬼道は聞き返したが、最初からなんとなく断られる気がしていた。自分でもよく分からないが、こいつはそういうやつなのだ。

 

 

 

「……まだ、有人には一度も勝っていないからね。勝てないからって有人についていくのは気にくわないし、自分の力で貰われる訳でもなく、有人のおかげで行くのも気にくわない。それに」

 

 

 

「それに?」

 

 

 

「俺がよそで活躍すればあのおじさんも驚くでしょ? あの時有人と同じ場所にいたはずのに、この私が気付かなかったなんて! って。俺は、俺の実力を見抜けずに、有人だけを連れていくあのおじさんも気にくわないんだ。だから、俺のことはあのおじさんには内緒にしといてほしい」

 

 

 

「ふ、ははは、おもしろい。そうだな、それは確かに影山さんも驚くことだろう。ならば、お前のことは秘密にしておこう。……お前なら、必ず強くなって俺の前に現れることだろう。お前と戦うその日を、楽しみに待っている」

 

 

 

「ああ、俺もだ」

 

 

 

 そうして、二人は別々の道を歩むことに決めた。

 

 




主人公は偉そうなこと言ってますが、要するに帝国ではなく雷門が良かっただけです。鬼道にはそれっぽい理由を並べて、上手く影山から隠れました。一応、断った理由の悔しい(気にくわない)うんぬんは嘘ではありませんが、それだけでは主人公の中で断る理由としては弱いので、結局雷門に行きたかったというだけの話でした。

努力が実ったのか、諸悪の根源である影山からは未だにノーマークです。このまま本編開始まで、ある一件を除けば影山さんは出番無しの予定。(別に作者が影山と絡ませるのめんどくさいとか思っているのは関係)ないです。


キャラクター紹介のコーナー

影山零治 帝国学園総帥。少年サッカー協会副会長。何かと黒い噂のある人物。全ての悪事はだいたい影山のせい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

友との別れと新たなる出会い

 
ユニークアクセスが1000を超えていました。こうやって自分で書いてみると、月並みですが感想や評価のありがたみを感じます。どちらも活動の励みになるので気軽にしてもらって、どしどし増やして行って下さい!

始めます。



 あれから鬼道は無事、影山に引き取られて行ったのだが、それまでにひと悶着あった。春奈ちゃんは自分が見捨てられるのだと思ったらしく、兄に対してつらく当たるようになったのだ。だが、鬼道と俺の必死の説得もあり、なんとか誤解を解いて彼が孤児院を離れるまでに仲直りをすることができた。

 

 

 そうして、鬼道がいなくなってからしばらく経った。兄がいなくなった後の春奈ちゃんは今までにないほど静かで寂しそうであったが、俺や孤児院のみんなの協力もあり、時が経つにつれてもとの元気な姿が見られるようになった。というか、孤児院の子たちは春奈ちゃんを励ますのがとても上手かった。今までも他の子の仲の良い子が引き取られるような例があったからだろうが、鬼道に対して俺に任せろ的なことを言った割には、俺は大して活躍出来なかった。良いんだけどね、春奈ちゃんは元気になったから。

 

 

 それと、鬼道がいなくなった後から春奈ちゃんが俺のこともお兄ちゃんと呼ぶようになった。この兄妹は仲が良く、一緒に過ごしている時間も長かった。俺も鬼道と一緒にいることが多かったので、必然的に春奈ちゃんと俺も一緒にいる時間が長くなっていた。

 

 

 そして、両親を亡くしてからも一緒だった兄と生まれて初めて離れて、無意識に兄を求めるうちに、その兄と一緒の時間を過ごしていた俺を重ねたのだろう。

 

 

 お兄ちゃんと呼ばれるのは正直恥ずかしかったが、俺も妹のように思っていたのは確かだし、それほどまでに懐かれているのだと思うと素直に嬉しかった。

 

 

 しばらくすると、一時期のように頻繁に呼ぶことはなくなったが、やはり兄が恋しくなるのだろう、今でもたまに呼ばれることがある。兄妹が再開できる日が来るのはまだまだ先の話だが、それでも一日でも早くその日が来るのを祈らずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 さらに月日が流れ、春奈ちゃんもすっかり元気を取り戻して楽しい日々を過ごしていた頃、ついにその春奈ちゃんにも引き取りの話がきた。

 

 

 引き取り先の音無さん夫婦はどちらもいい人たちで、特にお母さんの方は、あの音無春奈の母親であるというのがしっくりくるような、そんな明るい家族だった。

 

 

 春奈ちゃんは最初少し戸惑っているように見えて、もしかしたらこれ以上知り合いと離れるのを嫌がるかもしれないと心配したが、それは杞憂であった。徐々にお父さんお母さんに懐いていき、ついに引き取りが決定した。

 

 

 

 

 

 

「じゃあね、望太お兄ちゃん。元気でね」

 

 

 

「うん、春奈ちゃんも元気でね」

 

 

 

「……」

 

 

 

「そんな顔しないでよ。住む場所は変わるけど、お父さんとお母さんはいつでも遊びに来ていいって言ってくれたんでしょ? ここのみんなに会いたくなったらまた来ればいいよ」

 

 

 

「……うん」

 

 

 

「それに俺も有人との連絡係があるから、春奈ちゃんとはこれからも会えるからね。たくさん遊べば、有人に話せることも増えるから、いろんなことをしていっぱい遊んじゃおう」

 

 

 

「……うん、分かった」

 

 

 

「よし、じゃあ今日はおしまい。また次のときに一緒に遊ぼう。春奈ちゃん、またこんど!」

 

 

 

「「「またこんどー!」」」

 

 

 

「!! うん! みんな、またこんどー!」

 

 

 

 たくさんの子どもたちに見送られながら、この日、音無春奈は新たな一歩を踏み出した。

 

 

 

 *

 

 

 

 鬼道が去り、春奈ちゃんも引き取られた、我らが孤児院。ここでは今、空前のサッカーブームが到来していた。

 

 

 鬼道がいた時から何度も孤児院のみんなでサッカーをすることはあったが、それはどちらかというとサッカーをしたい鬼道の為に影に日向にサポートしていた春奈ちゃんの影響が大きかった。そして鬼道がいなくなった後も、残った俺の為にサポートを続けてくれていた。

 

 

 だがその春奈ちゃんがいなくなった以上、もうみんなでサッカーをやることは自然と減るだろうと思っていた。だがここにきて、今までにないほどの盛り上がりを見せてきたのだ。

 

 

 初めはなぜ鬼道がいなくなっているこのタイミングで? と疑問に思ったのだが、これにはちゃんとした理由がある様だった。

 

 

 鬼道がいた頃は経験者もいなかったので初心者ばかりで、その中でテクニックも才能もある鬼道はやはり頭一つ抜けていた。そのためどうしても鬼道を中心とするサッカーになってしまい、鬼道 VS 鬼道以外のみんな、のような邪道な楽しみ方にしばしばなってしまっていた。鬼道も始めは周りに合わせようとしていたが、その方が練習になることもあって、最終的には諦めてそのまま続けていた。

 

 

 だが鬼道がいなくなってからはより王道なサッカーが出来るようになり、それぞれの実力もついてきたことでより深くサッカーを楽しめるようになった。そしてちょうど春奈ちゃんが引き取られた後のタイミングで、サッカーブームとして起こったのだった。

 

 

 正直、このタイミングでのブームはありがたかった。今までの練習相手だった鬼道もいなくなり、春奈ちゃんのサポートもなくなっては、いよいよ一人での練習しか出来ることがなかったからである。たまに練習に付き合ってくれる子もいたが基本は反復練習なのでどうしても飽きるし、技術を身に付けても試す場が無くて困っていたのだ。

 

 

 そしてこのブームは俺に、更なる幸運と出会いをもたらした。

 

 

 

 *

 

 

 

「はい、じゃあ今日は他の施設のみんなが遊びに来る日です! みんなが到着したらまずは元気良くあいさつをしようねー!」

 

 

 

「「「はーい!」」」

 

 

 

 はーい! ということで最近のブームによって、孤児院の人たちが対外試合を組んでくれました。やったぜ! サッカーブームだけでもありがたかったのに、まさかこんなサプライズがあるとは。しかも相手はかなり上手いらしく、大人顔負けのプレーを見せることもあるのだとか。サッカーチームではないということらしいが、とにかく上手い相手に飢えているのだ。今のうちに経験を積んで、雷門中で活躍したい! 

 

 

 それに上手いということは、原作キャラも一人くらいいるかも、という淡い期待もあった。今まで鬼道と春奈ちゃんで満たされていた原作成分が不足しだして、ミーハーごころが新たな原作キャラ、新たなるミーハーを求めていたのだ。

 

 

 

 

 

 

「あ、見て、来たみたいだよ!」

 

 

 

 その声に反応して窓から外を見ると、門の外に一台の大きなバスが停まっているのが見えた。うちの孤児院にはそもそもバスはないので、相手はうちよりも裕福な施設なのかな、などとぼんやりと考えていた。

 

 

 

「それじゃあみんな外に出て、きれいに並んでね! 私があいさつしたらそれに続けてみんなで元気にあいさつすること!」

 

 

 

 先導に従って外に出ると、小さな招待客たちは既にバスから降りて庭で整列を始めていた。対抗心からか、こちらの子たちも急いで整列をしだしたので、俺も合わせるように急いで列に加わった。

 

 

 

「はい、みんな揃ったー? それじゃあまずはあいさつをしましょうね。お日さま園のみんな、こんにちはー!」

 

 

 

「「「こんにちはー!」」」

 

 

 

「「「こんにちはー!」」」

 

 

 

 こんにちはー! って、お日さま園!? お日さま園ってあの!? 

 

 

 

「今日はわざわざ来て頂いてありがとうございます。本来ならお誘いしたこちらから伺うべきでしたのに」

 

 

 

「いえいえ、こちらこそお招きありがとうございます。孤児院事業はなかなか資金繰りが厳しいものですから。こういった所ではお互いに助け合うべきしょう」

 

 

 

 おい、子どもたちに生々しい話を聞かせるな! いやそうじゃなくて! お日さま園と言えばフットボールフロンティア後に襲来する、エイリア学園のメンバーがいた孤児院だったはず。……よく見ると、確かにどれも見たことある顔ばかりだ、と言うか引率の先生も瞳子監督じゃねーか! 確かに原作キャラに会いたいと言ったが、雷門を越えてエイリア、しかもお日さま園ごと来ることは無いだろ! 

 

 

 どうしよう、いや、どうしようもないが。存在感を消そうにも今この孤児院で一番サッカーが上手いのは俺だし、一番今回の試合を楽しみにしていたのも俺だ。動きがおかしければすぐみんなにバレるだろう。

 

 

 一応、エイリア編の後は和解して一緒にサッカーをすることになるから、ここで知り合っても大丈夫か? 問題無いのか? ……うーん、分からん! だが全く関わらないというのは無理だろう。仕方ない、なるようになれだ。とりあえずいつも通りサッカーをすることにしよう。

 

 

 

「それではさっそく準備をして始めますか」

 

 

 

 どうやらもう試合を開始する様だ。色々と衝撃的で混乱しているが、彼らとの試合が良い経験になるのは分かっている。将来強大な敵として立ち塞がる彼らと今やれるのだ、これを無駄にする手は無い。まずはこの試合で出来ることをしよう。

 

 




みんなでサッカーをする時に関してですが、低いレベルに合わせるのは鬼道より主人公の方が上手いです。主人公は最初そんなに上手くなかったし、上手くなる過程でも定期的に彼らのレベルに合わせる機会があったからです。もちろん鬼道ほどスキルの差が圧倒的で無かったのもありますが。

唐突にお日さま園を出してみましたが、孤児院つながりで出せそう!出したい!ってなったので出しただけです。なのでエイリア編でどう絡ませるかはまだ考えていない。まあまだ子どもの頃の話だし、最悪忘れられてることにすれば問題無し!

途中までお日さま園のことをひまわり園って書いていました。どこだよそれ。主人公が原作に全く出て来ない園の名前で驚く頭のおかしいやつになるところでした。

孤児院に関しては基本的に想像で書いているので、何かおかしな点があればご指摘下さい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

VS お日さま園

イナズマイレブン二次を書いていたはずなのに普通のサッカーの描写しか出てこない試合になってしまった。おそらく必殺技が出ない試合は最初で最後なので許してヒヤシンス。

味方の名前どうしようと思って適当につけたらいらない茶番が増えた。ちなみに実際の人物とは関係ありません。ないったら、ない。

始めます。



 さあ、さっそく試合が始まるみたいだがまずは自軍の戦力を確認しよう。と言っても何か特別なことがある訳じゃない。フォーメーションはオーソドックスな4ー4ー2で俺はダブルボランチの左だ。

 

 

    ○   ○      フォワード

   大泉

 ○         ○   

    ◎   ○  藤村  ミッドフィルダー

   洞木  (ボランチ)

 ○         ○  

    ○   ○      ディフェンダー

   嬉野     

      ●

     鈴井        ゴールキーパー

 

 

 ここを基点に全体に指示を出しつつ攻守のバランスを取るのが俺の役割だ。まだ鬼道がいた頃に彼がやっていたのを見本としている。さすがに彼にはまだまだ及ばないが、それでも孤児院では俺が一番ましなのだ。

 

 

 俺以外のメンバーもなかなか実力をつけて来ている。対外試合をしたことは無いが最近はチームとしての纏まりが出来つつあり、今日の試合にも行けるのではないかという自信があった。あくまで相手を見るまでは、であったが。今ではすっかり挑戦者の気分である。

 

 

       ○          前線

  ○   グラン   ○

 ガゼル        バーン

   ○       ○  

  レーゼ     ウルビダ    中盤

       ○

 ○           ○

 

     ○   ○        最終ライン

 

       ●

      デザーム

 

 

 その相手のお日さま園は豪華なメンバーだ。3トップはグラン、バーン、ガゼルと強力で、中盤にはレーゼやウルビダが控えている。キーパーにもデザーム様が居り、他のポジションも錚々たる顔ぶれが並んでいた。コートの外を見ると、試合とは関係無しに遊びに来た子たちが観戦していて、その中にも見たことのある顔がいくつもあった。そして俺は彼らのレアな幼少期を見ることが出来て感動をしていた。

 

 

 

 

 

 

 そんなことをしているうちに試合が始まった。スタートはお日さま園のボールで、キックオフのあと一度デザームまで下げた。フォワードの大泉がボールを奪うべくそれを追って行くが、それを見たデザームはすかさず前線へロングボールを送り、その先にはバーンが待っていた。

 

 

 あらかじめ読んでいたディフェンダーの嬉野はそのパスは通させまいと競り合うが、前に入ったバーンは上手くボールをキープして前を向く。そこに走り込んだグランにパスを出すと、彼はダイレクトでシュートを放った。

 

 

 回転のかかったボールは、キーパーの鈴井から逃げるような軌道を描いてサイドネットに突き刺り、俺たちは開始早々一点を決められてしまった。

 

 

 

 

 

 

 いやー、やられた。と言うよりは流石と言った方がいいか。とにかく、いきなり失点してしまった。何か難しい事をされた訳ではなく、攻め方としてはオーソドックスな形だった。だが彼らの個々の能力が想像以上に高く、普段通りの守りが全く通用しなかった。

 

 

 こうなっては仕方ない。試合は始まったばかりだが、とにかく引いて守ってカウンターを狙うしかない。いつも通りプレスをかけて行ってはまた同じように失点するだろう。

 

 

 そうしない為には、まず相手の3トップに対して5人のマークをつけよう。一対一では交わされてしまうが二人で挟み込めば前を向かれることは無いだろう。

 

 

 その上で、パスの出し手である中盤や最終ラインからのパスコースを限定させて、あわよくばそのパスを受けた選手を囲い込んでボールを奪い取ろう。例え3トップにパスが出ても、その時だけ中盤から一人戻れば全員に二対一を作れるはずだ。

 

 

 ゴールまでの道筋は遠くなるがそれはもうどうしようもない。どのみちこのままでは相手からボールを奪うことも出来ないだろう。ボールが奪えなければ得点の可能性すら無いのだから、一見遠回りに見えるがこれが一番の近道なのだ。

 

 

      ○ ○      ツートップ

     大泉

    ○  ○  ○    スリーセンター

      洞木  藤村     

 ○           ○

   ○   ○   ○   ファイブバック

      嬉野

       ●

      鈴井

 

 

 作戦を伝えてゲームが再開する。自分たちのボールからスタートなのでパスを回しつつ攻め上がろうとするが、前線へのボールをカットされてしまった。すぐに予定通りに下がるよう指示を出し、がっちりとブロックを組む。まずは3トップを五人で押さえ、次に相手の中盤をマークしつつ、3トップへのパスコースを塞いだ。

 

 

 これで失点の可能性はかなり減っただろう。だが、ここからボールを奪うのは容易ではない。そもそも3トップに五人つけた時点で、相手の中盤と最終ラインの七人プラスキーパーに対してこちらは五人で対処しなければならない。

 

 

 それに、中盤のうち二人はあのレーゼとウルビダだ。この二人も3トップと同じように上手いのだが一人づつしかつけないので、俺はもう一人の中盤を押さえつつ二人にパスが入ったら寄せて二対一をつくることもしなくてはならない。難しいタスクだが中盤は数的にも質的にも劣勢なので、やらざるを得ない。

 

 

 

 そのままなんとか耐え続けて前半が終わるかというその時、一瞬の隙が生まれた。大泉がマークしていたディフェンダーからウルビダへパスが通り、焦りからか今まで必ず二対一で守っていた藤村が一人で突っ込んでしまったのだ。

 

 

 

「そこ!」

 

 

 

 ひらりと交わされた藤村はしまったと言う顔をしたが、もう遅い。ウルビダはドリブルをしながらそのまま前線へ向かう。嬉野がマークを捨ててカバーしたが、彼女はふわりと嬉野を頭を越すような浮き玉のパスをグランに通した。さらにディフェンダーがマークをずらしてカバーに入るが、それによってフリーになったガゼルにパスが通ってしまい、ガゼルはそのままゴールを決めた。

 

 

 

 前半終了後、すぐに大泉と藤村が言い合いを始まってしまった。

 

 

 

「お前がパスを通されたのが悪いだろぉ?」

 

 

 

「なにおう、お前が馬鹿みたいに突っ込まなければカバー間に合ってただろぉ? 自分のミスを棚に上げて俺に擦り付けようとするなよぉ! キミみたいなのがいるからチームの輪が乱れるんだよぉ」

 

 

 

「なんだとぉお前! そんなに輪が大事ならみんなで団結して輪を描くかい? そしたら争いなんて無くなるぞぉ。それでもいいよぉ僕は」

 

 

 

「なんで俺たちが輪を描く必要があるんだよぉ! そんなにやりたきゃキミ一人で喜界島一周でも四国一周でも何でも好きにやればいいじゃないかぁ! 藤村の、サイコロの旅ぃー! って行けばいいじゃないか」

 

 

 

 そんな二人の不毛な争いは鈴井と嬉野が止めてくれた。

 

 

 

 後半も作戦は継続したが、だんだんと疲労も蓄積してミスも目立ってきた。そして今度はバーンにマークが剥がされてロングボールが通ってしまい、ついに3対0になってしまった。

 

 

 ここでついに作戦を捨てて4ー4ー2へ戻す決断をした。これ以上守っていてもジリジリと得点を積み重ねられて、追い付くことは出来ないだろう。もちろん失点のリスクはまた上がるが、少しでも勝てる可能性があるならそちらを追い求めることにした。

 

 

 みんなスタミナはかなり削れているはずだが、この方針転換でもう一度気合いが入ったようだ。これならまだ戦えるはずだ。俺もここからはガンガン行こう。多少守備が不安定になるかも知れないが今さらな話であるし、こうなったら得点することを優先しよう。

 

 

 

 失点した後なので自分たちのボールからスタートだ。大泉からボールを受け取りそのままドリブルで持ち上がる。3トップは油断しているのか特にブロックもせず、素通りさせてくれた。これ幸いと進むがその先にウルビダが立ち塞がった。

 

 

 藤村を見るがレーゼがマークについているようだ。ここは強引に突破するしかない。まずは軽くフェイントを入れてみるが動きはない。次にそのまま進むとボールを引っかけようと足を出してきた。ボールが足にかかる直前、軌道を変えて相手の股を通す。

 

 

 一人剥がして前を向くとすでに次が来ていた。寄せきられる前にサイドへパスを送ると相手を躱してもう一度パスを受けてドリブルを続ける。もうゴールは目の前だ。そこに大泉が走り込んだ。

 

 

 俺がそちらをチラッと見るとディフェンスが釣られて大泉を警戒した。そしてその瞬間、シュートコースができたのを俺は見逃さなかった。

 

 

 右足でのコントロールショット。一度キーパーを避ける様にしてゴールから遠ざかり、もう一度ゴールへ向かう。デザームの手が伸びるが届くことはなく、ボールは弧を描きながらそのままゴール右隅に突き刺さった。

 

 

 

「「「うおおおぉぉぉ!!!」」」

 

 

 

 ついに得点が生まれた。あのお日さま園から一点を奪ったのだ。前半から守備に徹した故に生まれた相手の油断。今日初めて見せた突破。サイドとの絶妙なワンツー。大泉の完璧なデコイの動き。そして必殺コンシュー。すべてが噛み合って生まれた得点だった。

 

 

 

「やったぜ、流石洞木!」

 

 

 

「なんだよぉ、出来るなら最初からやりなさいよぉ!」

 

 

 

「いや、たまたまだって! 練習でもあんなに上手くいくことなかなか無いよ!」

 

 

 

「またまたー、うちで一番上手いのお前なんだからもっと自信持てよ!」

 

 

 

 今日初めての得点に、チームも大いに盛り上がる。前半から守備を固め、堪え忍んだ末の得点。一度も破ることの出来なかった相手の防御をようやく破る事が出来た。半ば諦めていた孤児院の子たちも一点が入ったことでこの勝負まだ分からなくなったぞと一気に期待を高め、止んでいた応援の声を再びあげ始める。フィールド内の選手たちも今までの疲れを吹き飛ばすかの様に歓喜の声をあげた。

 

 

 一方、お日さま園側はそこまで深刻な雰囲気では無かった。確かにあの個人技は脅威だが、相手と同じように複数人でマークにつけば問題ない。3トップの守備の怠慢を責める声もあったが、ウルビダが突破されるとは誰も思わなかったのだ。三人も次からは守備に加わると約束した。

 

 

 全体的な質では自分たちが勝っているのだし、二点のリードもある。それにがっちりと守備を固めていた相手からも得点出来たのだから、追加点を取るのは難しくないだろうと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 こちらが得点したので今度は相手ボールから試合が再開する。彼らは前半開始と同じ様にデザームまでボールを下げると、バーンへのロングパスを繰り出した。シンプルだが、フィジカルで勝る彼らには合理的な選択だ。

 

 

 

「駄目に決まってるでしょ!」

 

 

 

 しかし二度目も同じ事はやらせるものかと、嬉野が必死に妨害しバーンが競り合うのを一瞬遅らせると、そこに右ボランチが飛び込んでボールを弾き返す。

 

 

 

「ちっ、そう簡単には行かないか」

 

 

 

 ルーズボールを拾った藤村がドリブルを開始するとすぐさまレーゼが前に立ち塞がった。

 

 

 

「行かせないよ」

 

 

 

 だが藤村は相手にせず前線から降りてきたフォワードに預けるとレーゼの横をすり抜けてリターンをもらい、そのまま駆け上がる。レーゼは藤村を追おうとするが、彼を止めるべく向かい合っていたのでドリブルで加速していた藤村には追い付けなかった。

 

 

 俺もその隣に走り込んで最終ラインへ切り込もうとする。ディフェンダーに加えてウルビダもついて来るがお構い無しにボールを呼んだ。

 

 

 

「こっちだ! パス来い!」

 

 

 

 そう声を出すとさらにもう一人がこちらに注目して動きを妨害しようとする。だが藤村は俺にはパスを出さなかった。そして俺が引き付けたディフェンダーたちが空けてしまったスペースへとパスを流し込んだ。

 

 

 そこにはぽっかりとマークの外れた大泉が居た。先ほど得点した時とは逆のパターンで見事に相手を出し抜いたのだ。フリーでパスを受けた大泉は落ち着いてコースを狙ったシュートを放った。ディフェンダーが居らず一対一になったデザームは急いで距離を詰めたが、コースを限定するには間に合わず大泉のシュートはネットを揺らした。

 

 

 

「「「うおおおぉぉぉ!!!」」」

 

 

 

「すげえ、二点目だ!! まぐれじゃ無かったのか!?」

 

 

 

「まじかよこれ! まじで行けそう?」

 

 

 

「これは分からなくなってきた!」

 

 

 

 観客は再び大いに盛り上がる。一点ではまだ半信半疑だった子たちも、徐々に同点への期待を高めていく。一方グラウンドでは大泉と藤村がどちらの手柄が上かでまた揉めていた。

 

 

 

「あんたはパス出しただけでしょう。私がシュートを決めたんだから当然私の手柄に決まっているでしょう? そう思いますよね、ミスター?」

 

 

 

「いいや、俺はディフェンスを突破したり洞木の指示を無視してお前にパス出したりしたけど、お前なんかただ俺のパスをゴールに向かって蹴っただけでしょう。俺の方が活躍しましたよ、そうですよねミスター?」

 

 

 

「あんた洞木が声出したのはフェイクで、ちゃんと手で指示出してただろぉ。何をそれまで自分の手柄にしようとして、浅ましいやつですよ。こんなやつどう思いますミスター?」

 

 

 

「きちっと指示の意味を最後まで汲み取って実行したんだから、あれは俺の手柄でもあるだろぉ? それをまるで俺が何もしてないかのように言いやがって、最後に点を決めただけで俺の活躍を一切無かったことにするなんてひどいやつですよ、ねえミスター?」

 

 

 

 彼らの不毛な喧嘩にミスターこと鈴井は苦笑いするばかりだった。

 

 

 

 その頃お日さま園側では反省会が行われていた。

 

 

 

「まんまとはめられたね、まさかあいつが囮だったとは」

 

 

 

「うん、一番上手いあいつに当然パスを出すと思っちゃったよ。まさか一度もパスが来ないなんて」

 

 

 

「それもあるけど彼以外に抜かれたのも想定外だった。てっきりドリブルだと思ったらあんなパスを出されるとはね」

 

 

 

「でもやっぱりあの子が要注意だよ! 声を出したあと手で指示出していたみたいだったもん!」

 

 

 

「そうだな、だが俺たちもこのままで終わるつもりはない。彼らにはもう一度どちらが上か教えてやろう」

 

 

 

「「「おー!」」」

 




長い、長くない?試合は全部一話で終わらせるつもりだったのに初回から分割。書いてて全然展開が進まない。試合を書くのって難しい。

お日さま園のスタメンを全部決めなかったのは強すぎるからです。主要なキャラを出しただけでもどうやって戦うか悩むのに全員ネームドとか確実に勝ち目が無くなる。決めるのが面倒だったとかは関係ありません。

あと主人公以外に喋らせると口調が難しい。今回お日さま園組の口調はどれが誰とかは決めませんでした。


キャラクター紹介のコーナー

グラン、バーン、ガゼル、レーゼ、ウルビダ
ウルビダだけ女の子。第二部まで出ないのでここでは詳しく書きません。第二部まで行ったらそこでやるかも。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

続 VS お日さま園とこれから

 
前回
お日さま園「このまま追い付かれてたまるか!負けないぞ、おー!」

試合の描写を書くと、どんどん体力が吸われていく。たすけてー。

始めます。



 二対三となり試合の行方が分からなくなったことで、会場は大いに盛り上がっていた。そして両チーム共に配置についたところで試合が再開した。

 

 

 お日さま園のボールからリスタートしてすぐに、ウルビダがボールを受けてドリブルを開始する。すかさず俺がマークするが、相手にする気が無いのか後ろの味方にあっさりと預けてウルビダはそのまま上がって行った。

 

 

 そして受け取った味方は俺とは逆のサイドにいたレーゼにパスを送る。そこには藤村ともう一人のボランチがついていたが、相手もレーゼの後ろから上がってきたディフェンダーが来て二対二にされてしまった。

 

 

 そうなると質的に優位な相手に軍配が上がり、なんとか食らいつこうとしたが見事に突破されてしまった。ゴール前にはグラン、バーン、ガゼルがおり、さらにはウルビダも迫っていて俺たちは早くもピンチに陥った。

 

 

 レーゼは突破した勢いのままサイドを駆け上がり、ゴール前へシンプルにクロスを上げた。バーンが反応して頭で合わせようとするが、嬉野が高い身長を生かしてなんとかクリアする。クリアしたボールを回収しようとするが、ボールがグランの元に渡ってしまった。

 

 

 そして、彼がそのままシュートを放つと、彼のシュートは見事ゴールの枠を捉えたのだが、運良くグランの前にいたディフェンダーに当たって跳ね返ってひとまず危機を脱したかに思われた。

 

 

 だが跳ね返ったボールを回収したのはまたしてもお日さま園だった。そして攻撃を続けるべく、もう一度レーゼへパスを回した。

 

 

 レーゼの前には先ほど躱した二人が再び現れて、今度は抜かれないように二対一でレーゼの動きを封じた。近くへのパスコースも塞がれて、彼にはなす術が無いように思えた。

 

 

 だがレーゼは一枚上手だった。すぐに突破が無理だと悟ると、逆サイドを見てそこにいたガゼルへロングパスを通したのだ。先ほどのような突破を警戒してレーゼとの距離が開いていた二人では、ロングパスを防ぐことは出来なかった。

 

 

 逆サイドにいたガゼルは、先ほどの攻撃で相手の守備陣が内側に寄っていたことによりフリーでボールを受けることが出来た。ウルビダのマークについていた俺は急いでガゼルのシュートコースを塞ごうとするが間に合わず、彼のシュートが放たれた。だがそれでもコースを限定することは出来たのか、そこにはキーパーの鈴井の手が伸びていてガゼルの強力なシュートをなんとか弾いた。

 

 

 しかし三度目のルーズボールが渡ったのはまたもやお日さま園だった。俺が先ほどまでマークしていたウルビダはフリーのままボールを回収し、そのままシュート体制に入った。そこに最前線から降りてきた大泉が必死にブロックに入るがウルビダはキックフェイントで躱し、シュートコースをつくって右足を振り抜いた。

 

 

 シュートは地を這うような軌道でディフェンダーの合間を縫うようにゴールへ向かう。キーパーの鈴井がなんとか触ろうと飛びつくが、無情にも届かずにゴールへ一直線に向かった。

 

 

 ゴールラインを割るかと思ったその時、大泉の必死のブロックのおかげか、奇跡的に追い付いた俺は体を投げ出すように倒れ込んで、なんとかボールをかき出した。かき出されたボールは転々と転がり、やがてタッチラインを割った。

 

 

 

 ようやくプレーが切れて一息つけた俺はリスタートを警戒しつつ周囲を見渡した。あれだけ激しい一連の攻撃を受けたにも関わらず、みんなの気持ちは切れていなかった。むしろ今日イチの攻撃を防いだことで自信をつけたのか、今までよりも頼もしく見えた。

 

 

 

 それからもお日さま園の猛攻は続いたが、俺たちは何度もピンチになりながらあと一歩のところで必ず防いで同点への望みを繋いだ。すでにフォーメーションなど関係無くなっており体力もへとへとであったが、気合いで立ち上がり全員でゴールを死守する。

 

 

 それにつれて、お日さま園もどんどん前がかりになっていき、後方には広大なスペースが出来ていった。彼らはすでに点差をリードをしており追加点が無くとも勝利するのだが、なかなか得点出来ないことに苛立っているのか、あるいは俺たちが防戦一方なので危険は少ないと思っているからか、徐々にスペースが広がっていることにも気づいていないようだった。

 

 

 そして後半も終わりに差し掛かった頃、お日さま園もようやく疲れてきたのか、はたまた気が緩んだのか分からないが、攻撃が単調になってきた。そして俺たちは、訪れた最後のチャンスを決して見逃さなかった。

 

 

 

 嬉野のシュートブロックによって珍しく正面にきたボールをがっちりとキャッチした鈴井は、すぐさま俺へとパスを送る。不意を突かれたお日さま園は慌てて俺に対応するが、俺は藤村とパスを交換しつつ前へ進む。ようやく追い付いてきたディフェンダーを一人二人と躱して、前線を走る大泉へと大きく蹴り出した。

 

 

 大泉は相手を引き連れながらぐんぐんと加速していく。俺たちも負けじと走ってゴール前へ急いだ。お日さま園の面々もゴールを守るべく走っているが、一歩目が遅れたせいで対応はまばらだった。

 

 

 ゴール前には俺、藤村、ボールを持っている大泉が走り込んで、相手も三人が戻ってきて三対三の構図になった。大泉はサイドに流れて一人を引き付けつつ、クロスを狙った。藤村は自分が決めるのだという気迫でニアサイドへ飛び込んだ。それを見て、俺はあえてスピードを落とし、パスを受けるスペースをつくった。

 

 

 果たしてディフェンダーは藤村の気迫につられて俺が速度を落としたのに気付くのが一瞬遅れた。そしてその瞬間を見逃さず大泉から絶妙なパスが来て、俺はダイレクトでシュートを放った。

 

 

 さしものデザームも一人で守るにはゴールが大きすぎた。一か八かで横っ飛びをするが予想は外れ、ピンと伸ばした彼の足を掠めながらボールはゴールへ吸い込まれていった。

 

 

 

「「「わああああぁぁぁぁ!!!!」」」

 

 

 

「ついに、ついに同点だああー!!」

 

 

 

「す、すごい! まさか本当に追い付くなんて!」

 

 

 

「嘘だ、こんなの信じられない!」

 

 

 

 観客からは歓喜の声と悲鳴が飛び交い、最高潮に盛り上がっていた。そしてそのまま試合終了の笛が鳴り、両者にとってそれぞれな思いがある引き分けという結果になった。

 

 

 試合が終わると孤児院の面々は皆一様に地面へ倒れこんだ。ここまでの戦いですべてを出し切ったのだ。今日はもう動きたくない、そう思いながら空を見上げていた。

 

 

 一方、お日さま園側は悔しさをにじませていた。勝てた試合だった。何か一つでも違ったら追い付かれるはずが無い試合だった。もう一度やれば必ず自分たちが勝つ。それだけに悔しさが増すのだ。

 

 

 その一方で、清々しい気分でもあった。こんなに全力で戦ったのは初めてだったのだ。最初はいつものように遊んでいた。だがいつの間にか彼らのペースに飲まれ、最後には点差も忘れて真剣に攻撃していた。そしてそれによって追い付かれたのに、あの時間こそが今までで一番楽しかったのだ。

 

 

 もう一度やりたい、もう一度あの楽しみを味わいたい。勝ちたいではなく、今はただ純粋にそう思っていた。

 

 

 

 *

 

 

 

 結果から言うとあれから彼らと戦うことは無かった。別に俺たちが試合から逃げたとかではない。いや、彼らから見れば逃げたように見えたかも知れないが原因は別にあった。

 

 

 単純に、ブームが過ぎ去ってしまったのだ。あの試合の後、しばらくみんなはサッカー以外のことで遊んでいた。そのうちまたやりたくなるだろうと思い俺は一人で練習を続けていたが、いつになってもその日は来ない。いよいよ自分からサッカーをやろうと声をかけるとその日はサッカーになったのだが、普通に楽しんだ程度で以前のようには盛り上がらなかった。

 

 

 そこで初めてもうやらないのか聞いてみると、どうやらあの試合で燃え尽きたらしい。確かに素晴らしい試合だったが、あれだけで燃え尽きてしまうのはもったいなく思った。

 

 

 だが元々彼らはサッカーが好きだったわけではなく、いくつもある遊びの中でたまたま流行っただけであったので仕方ないかと思いつつ、以前よりは練習相手が増えたのでそれは良かったなと考えることにした。

 

 

 

 お日さま園からの誘いはあれから何度も来ていたようで、あちらがバスを出すから遊びに来ないかという誘いもあったらしい。しかしこちらのみんなは既にサッカーをする気が無いので、ただ遊びに行くのは悪いと思って断っていたようだ。

 

 

 だがいよいよ断り続けるのも悪くなってきたので、唯一未だに熱心にサッカーをしている俺に遊びに行って来ないかと提案された。

 

 

 俺としては断る理由が無い。お日さま園がどんなところか見てみたいし、彼らとサッカーが出来るならもっと上手くなれるだろう。それに、彼らとまだまだ交流したいという思いもあった。

 

 

 あの試合の後、かなり活躍したこともあって彼らとは自然と話す機会があり、それから一緒に遊んだりもしたのだ。彼らと過ごした時間はとても楽しかった。そしてまた遊びたいとも思っていたのだ。

 

 

 彼らと今の時点で関わり過ぎるのは良くないのではという考えもあった。だが目の前の誘惑に、俺は勝つことが出来なかった。

 

 

 

 *

 

 

 

 そうして何度かお日さま園に遊びに行ったりして充実した日々を送っていた俺に、ついに引き取りの話がきた。

 

 

 引き取り先は子どもがいない家で、もし子どもが出来たらサッカーを好きな子どもに育って欲しいと思っていたそうだ。結果として子を授かることは出来なかったので、身寄りの無い子どもを引き取って育てたいと考えたのだとか。そうして里子を探しているうちに、ちょうど俺が夫婦の希望とも合うので良いのではという話になったらしい。

 

 

 俺としてはまたとない話だった。住む家も雷門中に通える距離で、サッカーをすることも反対されない。雷門中が私立なので中学は私立に行きたいと言ってみたところ、それでも良いと言ってくれた。学費は自分の親が残してくれたものから出しますと言っても、子どもはそんなこと気にしなくていい、将来の為に残しておきなさいと言われた。なんていい夫婦なのだろうか。

 

 

 そのままトントン拍子に話は進み、ついに引き取られることが決定した。長く過ごした孤児院を離れるのは寂しさもあるが、新たな生活にワクワクもしていた。お世話になった人たちや一緒に遊んだ子どもたちに感謝と別れのあいさつもして、みんなに見送られながら俺は孤児院を後にした。

 

 

 そして名字も普段は引き取り先の名字を名乗ることにした。きちんと話し合いをして、最後には自分で決めるように言われた。まだこの夫婦と会って日は浅いが、つくづくこの家に貰われて良かったと思う。この先何があるか分からないが、彼らに不義理を働くことが無いようにしたいと思った。

 

 

 

 

 そうして俺は今日から、洞木(ほらき)望太(もちた)から星宮(ほしみや)望太(もちた)になった。

 

 

 




これ以上お日さま園と絡んだら仲良くなりすぎると思ったのでダイジェストにしました。これでサッカーも上手くなっただろうし、完璧だな!

名字変更は最初から考えていました。しかしホモの呪縛からは逃れられない!がやりたかっただけとも言う。

主人公君は転生者なだけあって、周囲の子たちよりも賢いと認識されています。なので少々大人びたことを言っても、あまり気にされることはありません。

次回で雷門に入学すると思います。鬼道や音無さんの話も書いてみたいけど、どうしようかな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

雷門中入学編
ようこそ雷門中へ


一気に時間を飛ばします。

ようやく超次元サッカーっぽくなってきた。

始めます。



 星宮家に貰われて星宮望太となってから、今まで日課となっていたサッカーだけでなく勉強も始めた。雷門中は私立なので入学試験があるし、私立に入りたいと言った以上何もしないと言うのは道理でないと思ったからである。

 

 

 もちろんサッカーも続けていた。新しい両親はサッカーを観るのは好きだがプレイヤーとしての経験はあまり無いらしく、親子の付き合いでたまにやる程度で練習相手としては物足りなかった。そこで地域のチームに所属しつつ、足りない分は自主練などで補うことにした。

 

 

 そうして月日が経っていき、ついに雷門中の入学試験の日がやってきた。

 

 

 

 試験当日、俺は緊張していた。いや、試験に受かるか心配で緊張している訳ではない。人生二周目なので当然落ちる気はしなかった。ではなぜ緊張しているかと言うと、雷門中に特待生として入学することを狙っていたからだ。

 

 

 特待生とは学校によって異なるが、基本的に家庭などの事情で学費が払えない生徒を支援したり、成績の優秀な生徒の学費を免除して学業の向上を目指す制度の事である。そして俺が狙っているのは後者の学費免除であった。雷門中ではその枠が一学年につき二人分用意されており、一年毎に成績上位二名に与えられる。そして新一年生は試験の成績上位二名に適用されるので、入試で結果を出せば特待生として入学出来るはずだ。

 

 

 別にどうしても特待生にならなければいけない理由がある訳ではない。だが、自分が望んだ私立に行かせてくれる両親に少しでも恩返しがしたかったのだ。星宮家は決して貧しい訳ではないが、特別裕福な訳でもない。それでも里子の自分に対して我が子のように愛情を持って接してくれ、私立への進学も認めてくれた両親と過ごしているうちに、せめて自分のことを自分が出来る範囲でやろうと思うようになったのだ。

 

 

 そして何か出来ないかと考えるうちに、転生のアドバンテージを生かせば特待生になれるかもしれない、そうなれば私立の中学に行きたいという自分のわがままも気兼ねなく実現できる、と考えたのだった。

 

 

 そんな訳で自分だけ縛りプレイをしている状態の俺は、今日はいつになく緊張していた。

 

 

 

 

 

 

 試験が終わり帰宅した俺は、すぐに両親と答え合わせをする。一通り確認したが、間違えた箇所は見つからなかった。結果が出るまで安心は出来ないが、ひとまずやるべきことは出来たと思う。

 

 

 そして二週間後、ついに合否通知が届いた。結果は合格。得点も全教科満点。そして俺にとって一番大事な特待生の通知も、一緒に入っていた。

 

 

 ふぅ、良かった。思いつきから始めた特待生縛りだったが、なかなかに大変だった。合格と違って何点くらい取ればいいというのがなく、満点を目指す以外に方法が無かったのが辛かった。それと意外にも雷門中の偏差値は、帝国ほどでは無いが高かった。原作の彼らは本当にこの試験に合格出来たのか少し疑問である。まあ何はともあれ合格をして、特待生も取れて、言うこと無しの受験だった。

 

 

 

 ……ちなみに彼は雷門中に入ってからサッカーに打ち込めるように、既に中学三年分を一通り学習し終わっていた。本人としては二回目の中学生ということもあり復習のような気分なのだが、私立に行きたいとしか聞いてなかった星宮夫婦は端から見れば猛勉強しているように見える彼を見て、てっきり幼なじみの鬼道が行くであろう帝国学園に入りたいのだと思っていた。そして雷門の特待生を取ったことによって、自分たちに学費を負担させない為に帝国ではなく雷門中にしたのだと勘違いしてしまった。……彼がその勘違いに気付いて誤解を解くのはまだ先の話。

 

 

 

 *

 

 

 

 さあ、今日は雷門中の入学式だ。ようやくこの日がきた。どれほど今日という日を待ちわびただろうか。ついに今日から雷門イレブンを始めとする、原作の彼らと同じ学校に通い、会うことが出来るのだ。本当は試験の時に会っているかもしれないが、あの時は緊張してそれどころではなかった。だが今日からは毎日顔を合わせるのだ。彼らと仲良くなる機会もきっとあるだろう。今から楽しみで仕方ない。

 

 

 

「いってらっしゃい」

 

 

 

「いってきます!」

 

 

 

 玄関先で母親に見送られつつ、俺の中学校生活が始まった。

 

 

 

 

 

 

「……以上をもちまして、新入生代表のあいさつとさせていただきます」

 

 

 

 パチパチパチ。壇上では雷門夏未お嬢様によるスピーチが行われた。とても先日まで小学生であったとは思えない、堂々とした立ち振舞いだった。理事長の娘だからではなく彼女自身の優秀さ故にこの場に立つのだということを、会場にいた人たちは見せつけられた。

 

 

 

 入学式も全ての行程が終わり、クラス毎にそれぞれの教室へ移動する。知っている顔は大谷さんやあずま、夏未お嬢様も同じクラスの様だ。円堂キャプテンや染岡さんや木野マネージャーとは違うクラスであることに少しがっかりしつつ、これから毎日通うことになる教室へ入る。

 

 

 まだ席が決められておらず、先生は各々適当に座るように言うとどこかへ行ってしまった。とりあえず後ろの席が空いていたのでそこに座ると、他の生徒も座りバラバラと席が埋まっていく。偶然にも俺の隣には大谷さんが座り、前にはあずまが座った。

 

 

 

「初めまして、私は大谷つくし。これから一年間よろしくね」

 

 

 

「俺は(あずま)(きょう)、よろしくな! 男同士仲良くしようぜ」

 

 

 

 俺がどうやって話しかけようか考えていると、向こうから話しかけてくれた。

 

 

 

「二人ともよろしく、僕は星宮望太。うん、これから仲良くしてくれると嬉しいよ」

 

 

 

「よろしく! ……にしてもさ、さっきのスピーチ凄かったな! 雷門さんだっけ? 生徒会長や校長先生よりも迫力あったと言うか、なんか強そうだったよな!」

 

 

 

「強そう、かどうかは分からないけど、確かに迫力があったね。カリスマ性があって、生徒会長よりも学校を率いるみんなのリーダーって感じがしたよ」

 

 

 

「雷門さんってこの学校の理事長の娘さんらしいよ。見た目も気品があって、お嬢様って感じだよね。すごく綺麗で私もあんな風になりたい! って憧れるな~」

 

 

 

「へぇ、だから雷門って名字なのか。言われてみれば確かに学校と同じ名字だもんな!」

 

 

 

「それにうちの学校って新入生代表のスピーチは試験で優秀だった特待生の人がやるらしいから、きっと頭も良いんだろうな~。理事長の娘としてじゃなく、自分の力で特待生になってスピーチするなんて、かっこいいな~!」

 

 

 

 確かにそうか、となると俺がスピーチをする可能性もあったのか? だとしたら夏未お嬢様が特待生になってくれて良かった。俺にはあんなスピーチは出来ないし、人前で話すのもあまり得意じゃない。

 

 

 

 そんな風に話していると教室の雰囲気が変わったように感じた。前を見るといつの間にか先生が帰って来たようで、俺たちも会話を中断して前に向き直り先生の話を聞く態勢になった。

 

 

 先生はあいさつから始めて、これから学校に通うにあたって必要な、様々な事を説明する。それが終わると教科書が配られ、時間割などの説明の後クラスメイトたちの自己紹介が始まった。

 

 

 それらが一通り終わると、最後に部活動について説明された。しばらくの間、仮入部としていろいろな部活を見て回れるので、その中から自分にあったものを選ぶことをオススメされた。

 

 

 俺はまあサッカー部一択だ。今はまだ無いのだが、確か同じ一年の我らが円堂キャプテンがサッカー部を創部するはずなので、それが創られたら入ろうと思う。それまでは早く帰って練習をしてもいいし、他にどんな部活があるのか見学にいってみるのもいいだろう。

 

 

 全ての説明が終わると本日は解散となった。今日からすでに部活動の見学が出来るらしく、参加する生徒もいるようだ。

 

 

 

「くぅー、やっと終わったな! 部活かー、まだ決めて無いんだよなぁ、どうすっかなー」

 

 

 

「いっぱい説明あったねー。私もまだ部活決めて無いんだ。たくさんあるみたいだし、まずはいろいろ見て回ろうかな~。星宮くんはもうどの部活にするか決めた?」

 

 

 

「あ! まだ決まって無いなら、よかったら俺と一緒に見に行かないか?」

 

 

 

「ああ、僕は「ちょっといいかしら?」……?」

 

 

 

 先ほどまでの三人で話していると、突然前の方から声がかかった。誰だろうと顔を向けると、雷門夏未がこちら見ていた。位置的に声をかけたのは彼女だろう。

 

 

 

「ど、どうした? 俺になんか用、ですか?」

 

 

 

「あなたじゃないわ。用があるのはそっちの彼よ」

 

 

 

 あずまが気圧されつつ話かけたが、どうやら彼でなく俺の方に用があるらしい。何故だ、彼女とはまだしゃべったこともないはずだ。それとも気付かないうちに何かやってしまったのだろうか? 

 

 

 

「貴方がもう一人の特待生の星宮望太君ね。貴方、生徒会へ入りなさい。私、入学したら生徒会に入ってお父様の学校運営を手伝うことなっているの。貴方も特待生なら、その能力を学校の為に使いなさい。同じ特待生として貴方がどれだけやれるのか、私が見てあげるわ」

 

 

 

「ええ! お前、特待生だったの!? すげえな、何で言わなかったんだよ」

 

 

 

 どうしよう、学費が浮くからという理由で特待生になったのに、それで目をつけられることになるとは思わなかった。と言うか生徒会なんて絶対忙しいだろ! なんか学校運営を手伝うとか言ってるし! 生徒会が学校運営をするなんて聞いたことがない。確かに雷門夏未は原作で生徒会長であり学校の運営を任されているという話だったが、いくら優秀だからといって中学生の娘に任せるとか理事長もどうかしてやがる。超次元な世界だからって限界があるだろ! もしそんなことになったら、サッカー部に入れなくなるかもしれない。そもそも俺は転生というズルをしてるだけで、特別優秀な生徒という訳では無いのだ。

 

 

 

「返事が無いようだけれど。私直々に勧誘しているというのに、まさか断ったりしないわよね? とりあえず、この後生徒会室へ来るように。話があるならそこで聞くわ」

 

 

 

 そう言うと、彼女は教室から出ていった。

 

 

 

 とにかく行かないという選択肢は無いだろう。同じクラスで毎日顔を合わせるので無視したら気まずいし、そうでなくとも雷門夏未というキャラクターは好きなのだ。そんな相手と険悪な仲にはなりたくない。

 

 

 その上で、なんとか生徒会に入るのは断れないだろうか。もし生徒会に所属してしまえば、忙しくてサッカーどころではなくなるかもしれない。だが、彼女の意思は固そうだった。特待生なのだから生徒会に入れというのも暴論なはずなのだが、転生というズルをして学校に学費を負担してもらっている身としては一理ある気もしてしまう。

 

 

 

「星宮くん、大丈夫? なんだかボーッとしているみたいだけど」

 

 

 

「ああうん、大丈夫。少し考え事をしてて」

 

 

 

「にしても、まさか星宮が特待生だったなんてな! そんな風には見えなかったからビックリしたぜ」

 

 

 

「東君、そんな言い方したら失礼でしょ! 確かに私も知らなかったからびっくりしたけど。……とりあえず、星宮くんは生徒会室に行ってみたら? 雷門さんが呼んでたみたいだし」

 

 

 

「……そうだね、そうしてみるよ。ありがとう大谷さん」

 

 

 

「ううん、気にしないで。それじゃあ、私は仮入部の方に行くから今日はお別れだね」

 

 

 

「そういうことならしょうがないな。俺もとりあえず一人で行ってみるか。また今度予定が合ったら一緒に行こうぜ!」

 

 

 

「うん、それじゃあ今日はありがとう。明日からもよろしく、またね」

 

 

 

「また明日な!」

 

 

 

「バイバイ!」

 

 

 

 

 

 

 それから俺は生徒会室へと向かった。生徒会室は校舎の三階にあり、三階の窓からはグラウンドがよく見えていた。

 

 

 そして生徒会室に着いて扉をノックすると、中へ入るように促された。声に従い中へ入るとそこには雷門夏未が一人でいた。

 

 

 

「来たようね、なら入部届を書いてここに置いていきなさい。それで生徒会に入る手続きは完了だわ。本来なら厳正な審査をするのだけれど、貴方は特別に免除よ。まさかあの入試を全て満点で合格する人がいるなんてね」

 

 

 

「……なんで僕の点数を知っているんですか?」

 

 

 

「私は学校の運営を手伝う準備をする為に、入学前から学校の情報を閲覧することが出来たの。その中に特待生に関する情報があっただけよ。これほど優秀な生徒はだいたい帝国に取られてしまうのだけれど、貴方は何故かうちを選んだみたいだしね」

 

 

 

「……ちなみに雷門さんは何点だったんですか?」

 

 

 

「……それは貴方が知る必要の無い情報よ」

 

 

 

 どうやら満点では無かったようだ。解釈一致だ。勝手なイメージだが、完璧に準備をしてもどこか一つ取りこぼしてしまう感じがする。

 

 

 とりあえず、生徒会の話は一度断ってみよう。簡単に許してもらえるとは思えないが、きっかけぐらいは掴めるかもしれない。

 

 

 

「それと、夏未と呼んでいいわ。雷門の名字も好きなのだけれど、学校の名前と被って紛らわしいものね。貴方とはこれから生徒会で何度も会うのだから、許可するわ」

 

 

 

「その事なんですが、生徒会に入るのはお断りしたいと思います」

 

 

 

「あら、それはあまりオススメ出来ない選択ね。さっきも言ったけれど、私はこの学校の運営に関わっているの。その一環で特待生には学業に専念してもらう為に、部活動や場合によっては校外での活動を制限することも可能よ。無論私もこのようなことは出来るだけしたくないのだけれど、特待生に問題があった場合はやらざるを得ないわね。……ちなみに、特待生を返上したりは出来ないわよ。既にこちらで負担する手続きを行っているので一年間は特待生としての待遇を保証しているわ。例え返上出来たとしても、他にも方法はいくらでもあるのだけれどね」

 

 

 

「……」

 

 

 

「さあ、入部届を書きなさい。今年からは学校運営も手伝わなければならないから、生徒会の仕事はたくさんあるの。だから貴方のような優秀な人材を遊ばせておく余裕は無いのよ。あの入試を満点でクリアした貴方がどれだけやれるのか、見せてもらうわ。貴方と私、どちらの特待生がより優れているのか勝負よ」

 

 

 

 どうやらここまでのようだ。これ以上抵抗しても無意味だろう。掛け持ちぐらいはと思っていたが、それも難しそうだ。せめて残業だけはさせられないようにしておこう。

 

 

 ……ふと、俺を生徒会に入れるのに固執するのはもしかしたら入試で自分より高い点数を取られたからかもしれないと思った。そう考えると少し、目の前の雷門夏未が可愛らしく思えた。

 

 

 

「……その日の自分の仕事を全て終わらせたら、自由に帰らせて下さい。それが条件です」

 

 

 

「良いわ。仕事さえこなせば、いつでも好きなときに帰りなさい。最も、生徒会の仕事はそう簡単に終わらせられるほど楽じゃないわよ」

 

 

 

「分かっています。……では、これからよろしくお願いします、夏未お嬢様」

 

 

 

「ええ、って夏未お嬢様? ……とりあえずお嬢様はやめなさい。それと、今日は仕事を用意していないから明日から来るように。では、さようなら星宮君?」

 

 

 

「さようなら、夏未お嬢様」

 

 

 

「だからお嬢様はやめなさい」

 




お嬢様とお呼びできて、余は満足じゃ!

人生二周目要素を何かで生かしたいと思って書いてるうちに特待生を思いつき、よっしゃやったろと書いてるうちに生徒会へ入っていた。


キャラクター紹介のコーナー

大谷つくし かわいい。優しい性格で、隠れファンが多いらしい。

東 京(あずま きょう) イナイレ主人公の円堂守のご近所さんで幼なじみ。フツメン。

雷門夏未 お嬢様、ツンデレ、理事長の一人娘。原作では生徒会長だが、さすがに入ってすぐは違うだろうということで本作では一年の夏に選挙があってそこで当選するということにした。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

愛すべきサッカーバカ

初めての感想をいただききました!ありがとうございます、嬉しいです!活動の励みになるので、評価、感想などなど軽い気持ちでどしどし送って下さい!お待ちしております!

始めます。


 雷門中に入学して中学校生活にも慣れた頃、今日も今日とて俺は生徒会の仕事をしていた。夏未お嬢様が言ったようにいくら仕事をこなしても次の日にはたくさん仕事が溜まっており、未だにサッカー部に顔を出すことすら出来ていなかった。

 

 

 これこそ学業に影響が出るだろうと思ったのだが周りをよく見てみると、俺の仕事量が一番多い気がした。それを指摘してみようかとも思ったが、自分の仕事をやってから帰ると言った手前、なかなか言い出せずにそのままずるずると続けていた。

 

 

 それでも俺は転生した分、彼らよりも長く生きていてこういった作業の経験も多くしているので、時間の制約が無いの彼らより、早く帰ろうと仕事に励む俺の方が終わるのは早い。と言うか普通に中学生がこなしていいレベルの仕事じゃないだろ。さすが超次元な世界である。

 

 

 そうして今日の分の仕事を終わらせると、既に他の部活動をしていた生徒たちも帰り始めていた。俺も早く帰らないと日課の自主練や勉強の時間がなくなってしまう。そう思って帰宅の準備を始めた。

 

 

 

「……さすが星宮君ね。あれだけあった仕事をこんなに早く終わらせるとは、私が見込んだだけのことはあるわね」

 

 

 

「ありがとうございます。では、僕は今日はこれで。お先に失礼します」

 

 

 

「あら、もう帰ってしまうの? そんなに急がなくても、せっかく早く終わったのだから少し休んでから行ったら?」

 

 

 

「いえ、僕は帰ったらやることがありますので、早く終わった分の時間はそちらに使おうかと思います。それでは、お疲れ様でした、夏未お嬢様」

 

 

 

「そう、お疲れ様。星宮君」

 

 

 

 ……行ってしまったわね。全く、毎日毎日よくも飽きずに早く帰宅するわね。それにしても、いつまで彼はあの呼び方をするつもりなのかしら。さすがにクラスではしてこないようだけれど、もしかしたら嫌がらせのつもりなのかしら? ……やはり生徒会へ強引に入れたのは失敗だったかしら? 

 

 

 

 私でさえ満点は取れなかった入試で満点を取った子がいると聞いて、自分とどちらが優れているのか試してみようと思ったのがきっかけだった。だけど生徒会での彼の働きは誰よりも多くて、私でさえもその仕事量には追い付くことが出来なかった。

 

 

 それでいて彼は仕事にまるで興味無い様子だった。普通あれだけの仕事量を成し遂げたら、もう少し仕事に対して何かしら感じることがあるように思うのだけれど、淡々と仕事をこなした彼からはようやく帰れるといった感情しか感じられなかった。

 

 

 だけどそれでも彼は仕事に手を抜いたことはないし、そのクオリティは誰よりも高い。作業態度もいたって真面目なものだし、やりたくないという言葉さえ一度も聞いたことがない。

 

 

 なぜ彼は私に従っているのだろう。最初は反発してくるだろうと思っていた。確かに脅しはしたが、彼ならば抗おうと思えばいくらでも手段はあったはず。仕事をこなしても彼にメリットはないのだからボイコットしてもいいし、あえて仕事のクオリティを下げることだって出来るはずだ。あるいは生徒会そのものを内側から攻撃する方法だってある。もちろんやらせるつもりは無いけど、確実に仕事は滞るはず。そうなってしまえば私も彼を生徒会から追い出すだろうし、彼は合法的に生徒会を辞められる。私もそこまでして彼が辞めてしまうなら仕方ないと思っていた。

 

 

 だけど彼は私の生徒会への勧誘を断った時以外、一度も抵抗してこない。仕事であれば何でもやるし、辞めようとする素振りすら見せない。何か嫌がらせや妨害工作などするわけでもなく、素直に仕事を続けている。せいぜいお嬢様と呼び続けることと、仕事が終わったらすぐに帰ってしまうことぐらい。

 

 

 あんまりにも無抵抗なので何をしたら文句を言うのか少し気になって、すぐに帰りたがる彼に仕事を増やして帰るのを遅らせようとしてみたけれど、増やす度に仕事の効率が上がってあまり効果は無かった。まあ効率が上がったのは良いことなので仕事は増やしたままにしているけれど。

 

 

 とにかく、彼という人間が理解出来ない。彼が嫌がるだろう事を私はしているというのに、私は彼に嫌われていない。少なくとも、そのような素振りを彼は私に一切見せていない。私から彼に勝負を仕掛けたのにも関わらず彼より仕事で劣っている私に対して、馬鹿するでもなくむしろ敬意を持って接してくれている。もし自分が嫌がらせをされたらその様なことは無い。きっと相手を嫌いになって、何らかの形でやり返すだろう。

 

 

 私より優秀であるのに、面倒な存在であるはずの私を嫌うこと無く、反発もせずに従っている。なぜ彼がそうするのか、私には理解出来ない。始めはただなんとなく目についただけだったのに、今では彼が私に対してどう考えているのか、何を感じているのか、それが気になって仕方がない。最初は私が彼を試しているはずだったのに、いつの間にか彼に私が試されている様な気さえした。

 

 

 

 *

 

 

 

 ふぅ、やっと終わった。帰ったらすぐに自主練を始めないと。ある程度は許してくれるが、あまりに遅い時間だとさすがに両親が怒るからな。

 

 

 それにしても、夏未お嬢様はどうするべきか。あれから事を荒立て無いように彼女の命令に従うようにしていたのだが、最近はますます目を付けられている気がする。仕事もきちんとこなしているし、言葉遣いにも気を使っている。お嬢様呼びは、まあ趣味だ。普段から言われ慣れてそうなのだが、俺がそう呼ぶと同級生からは呼ばれるのは慣れてないからか、彼女は少し恥じらいの表情を見せるのだ。生徒会には貴重な時間を費やしているのだ、それぐらいの役得はあっていいだろう。

 

 

 やはり仕事で頑張り過ぎていることが問題なのかもしれないが、そればかりはどうしようもない。他の部活動が終わる頃には帰らないと自主練の時間が足りないので、あの仕事量を時間までに終わらせる為には全力でやるしかない。いくら夏未お嬢様でも自主練の時間を削られる訳にはいかない。俺にとって最優先なのはイナズマイレブンの彼らとサッカーをする事で、そのサッカーの時間を減らして、もし実力が足りなくなれば本末転倒になってしまう。

 

 

 だが、彼女が嫌いな訳ではない。むしろ好きだ。そもそも原作キャラである時点で、俺からの好感度は一方的にプラス補正がかかっている。彼女に嫌われてしまうことの方が俺は心配だ。

 

 

 彼女のわがままには困ってはいるが、それで彼女を嫌いになることはない。ツンデレお嬢様のわがままだと思ってしまえば嫌な気はしなくなる。

 

 

 それに、優秀過ぎるので忘れがちだが、彼女はまだ中学生になりたてなのだ。それくらいの年頃なら同じくらいのレベルの子をライバル視したり、意地悪をするくらいはあるだろう。

 

 

 今まではその優秀さ故に同年代で彼女の相手になる人がいなかったのだろう。しかし、俺というイレギュラーが図らずも彼女の現在の実力を少しだけ上回ってしまった。そのせいで初めてのライバルに対抗心で意地悪をしてしまったのだろう。そして、意外にも反撃しなかった俺に対してどう接していいか分からず、さらにいたずらを重ねてしまったのだろう。

 

 

 現在の能力では転生というアドバンテージによってわずかに俺が勝っているようだが、将来性という面では彼女に遠く及ばない。あと一、二年して仕事にも慣れてくれば、才能ある彼女はすぐに俺を追い抜いて行くだろう。そうなれば彼女も冷静になって、俺に構うことも無くなるはずだ。

 

 

 それまで少しの間なら、彼女のわがままに付き合うのも悪くない。今俺が彼女に対抗出来てしまっているのは転生などというズルをしている結果なのだから、むしろ彼女に追い抜かれて成長の糧になるのが俺の役割であるとも考えられる。

 

 

 原作のスタートする二年生になるまでには、生徒会を辞めてサッカー部に行くつもりだ。それまでに追い抜かれるかは微妙だが、それは彼女に頑張ってもらおう。その間になんとか円満にサッカー部へ入部出来るように、彼女との関係を改善していかなければならないだろう。

 

 

 

 *

 

 

 

 それからしばらくして、ようやく生徒会の仕事も落ち着いてきた。以前は慣れない仕事で思うように進まずに毎週土日も自主的に登校する有り様で、自分だけ休む訳にもいかず休日返上が続いていた。

 

 

 しかし、さすがに全く休まない訳にもいかず、また仕事に慣れてきて効率が上がったこともあって、少しだが自由な休日が取れる様になった。それによって使える時間が出来たので、念願のサッカー部に行ってみようと思った。

 

 

 その為に生徒会の資料で休日のサッカー部の活動に関するものを探したのだが、いくら探しても見つけることは出来なかった。どうやらグラウンドなどが取れないので部としては活動せず、校外で自主練などをしているようだった。

 

 

 なのでとりあえず彼らが居そうな場所を探して見ることにした。と言っても俺が知っている場所はあまり多くない。原作でも彼らの普段の様子はあまり描写多くされていなかった。

 

 

 そこでまずは鉄塔へ行ってみる事にした。この鉄塔は稲妻町のシンボル的存在であり、イナズマイレブンの主人公である円堂守が原作で特訓をしていた場所としても有名である。ここなら彼に会える可能性は高いだろう。

 

 

 今までも生徒会の仕事が終わった後に行ってみた事はあったのだが、遅い時間だったので彼に会う事は出来なかった。しかし今日はまだ日も高く、彼がいてもおかしくないだろう。

 

 

 

 鉄塔前に着くと、果たして彼はいた。ちょうどあの特訓をしているようだ。

 

 

 彼がしているのは、大きなタイヤを木の幹にロープでくくりつけ、振り子の要領で押して戻ってきたタイヤを受け止める、というのをさらにタイヤを背負いながらやるという頭のおかしい特訓だ。これを見てキーパーの練習だとは誰も思わないだろうが、実際に彼はこの特訓で必殺技を覚えることになるので馬鹿には出来ない。

 

 

 そんな特訓をしばらく眺めていると、一息つこうとした彼と目があった。せっかく会えたのだから話しかけてみようと近寄ると向こうから声をかけられた。

 

 

 

「……ん、どうしたんだ? 俺に何か用か?」

 

 

 

「いや、なんかすごく危なそうな事しているなと思って。大丈夫? けがしたりしない?」

 

 

 

「ああ、これはじいちゃんのスゴ技特訓ノートに書いてあった、キーパーの練習方法なんだ! だから大丈夫だ! この練習でじいちゃんみたいなスゴ技を身につけて、すっげえゴールキーパーになるのが俺の夢なんだ!」

 

 

 

「ゴールキーパー……もしかして君、サッカーやってるの?」

 

 

 

「ああ、もちろん! 俺は雷門中のサッカー部でキャプテンをやってるんだ! まあ、サッカー部はまだ出来たばかりで部員も三人しかいないんだけどな」

 

 

 

「ああ、それは知ってるよ、僕も雷門中の生徒だからね。君がサッカー部のキャプテンだったのか。実は僕も小学生の頃はサッカーをやっていたんだ。だから雷門中に入ってサッカー部が無いって知った時はショックだったけど、新しく出来たって聞いて前から気になってたんだ」

 

 

 

「そうなのか! じゃあ、サッカー部に入って一緒にサッカーしないか? 今はまだ部員は少ないけど、これから部員を集めて来年こそはフットボールフロンティアに出場するんだ!」

 

 

 

「……誘ってくれてありがとう。でも僕、生徒会に入っててさ、生徒会と他の部活を兼部するのは仕事が忙しくて難しそうなんだ。だから今サッカー部に入るのは無理だと思う」

 

 

 

「う、そうなのかー。確かに委員会とかってめんどくさそうだもんなぁ」

 

 

 

「うん。だからね、二年生になったら、サッカー部に入ろうと思うんだ。一年生の間は忙しくて難しいかもしれないけど、二年生になったらきっと仕事も減るだろうし、そうなったら生徒会を辞めてサッカー部に入れるようになると思う。その時は、僕もサッカー部に入れて欲しい」

 

 

 

「!! ああ、もちろん大歓迎だ! その時は一緒に、サッカーやろうぜ!」

 

 

 

「うん! それと最近は少しだけ休みが取れる様になったから、もしよかったら時間が合う時は一緒にサッカーの練習をしない? 君のしていた特訓っていうのも気になるし、一人で練習をするよりずっといいと思うんだ」

 

 

 

「もちろん、俺も練習相手が欲しかったんだ! 一緒にやってくれるなら大歓迎だぜ! 一人でやるより二人でやる方が、サッカーは楽しいもんな! そういえばまだ名前を言ってなかったな。俺は円堂(えんどう)(まもる)、よろしくな!」

 

 

 

「僕は星宮望太、こちらこそよろしく!」

 

 

 

 よし、とりあえず円堂守と知り合うことが出来た。しかもついでにサッカー部入学の事まで話すことも出来た。さらに休みの日は練習相手になってくれるということでいいことずくめだ! 彼の特訓ノートにも興味があるし、その話もいろいろ聞いてみたい。

 

 

 

 それからその日は、日が暮れるまで一緒にサッカーをした。タイヤの特訓も試させてもらったが、なんとか耐えることが出来た。原作で彼の活躍を支えた特訓なので、これから一緒やらせてもらうのも良いかもしれない。

 

 

 普段はどのような練習をしているのか聞いてみると、ここで特訓したり河川敷で練習したりしているらしい。他の部員についても聞くと、染岡さんや半田は最近はだんだんとやる気がなくなって、あまり練習に付き合ってくれないそうだ。木野さんもいるが、マネージャーだけでは練習が出来ないのでサッカー部としての活動もあまり出来ていないんだそうだ。

 

 

 それから特訓ノートを見せてもらったが、やはり独特の字で書かれていて俺には解読出来なかった。円堂には読めるようなので内容を教えてもらい、様々な特訓方法を知ることが出来た。これが実践出来れば実力アップにつながるはずなので、出来るだけ再現出来るか試してみようと思う。

 

 

 

 そんな充実した休日を過ごしていた俺だが、あの事件の日は着々と迫ってきていた。




主人公は基本的に原作キャラには甘いです。多少いじわるされてもスパイスとして、むしろ自分を気にかけてもらえている事に喜びます。本気で嫌われたらへこみますが、嫌悪感程度ならむしろご褒美かもしれない。

主人公はまだ必殺技を覚えていません。とりあえず覚える為の準備はしていますが、今までは影山に目をつけられたくなかったのと、実際に必殺技をみたことがないのでそれが実在するのか、あるいは自分に使えるのか、などといろいろなことを考えて結局試していません。


キャラクター紹介のコーナー

円堂守 イナズマイレブンの主人公でキーパー、キャプテン。サッカーやろうぜ!の一言で多くの登場人物を魅了するカリスマ性を持つ。宇宙一のサッカーバカで熱血漢だが礼儀正しく周囲に気を使うことも出来る愛すべき人物。Mではないかと疑惑が出るほど練習や強敵が好き。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。