最強の相棒として転生した件 (麒麟@)
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1話

 はぁ、こんな人生なんてつまらない。

 そう思ったのがきっかけだった。周りに信頼できる奴は学生時代からいない。告白されたことなんかもってのほかでそんなことにも興味がなかった。仕事を始めてからも毎日適当に生きてきた。

 そんなある日僕は信号待ちをしていて後ろからぶつかられた。

 

 

「あ」

 

 

 そんな一言と共に俺は車に轢かれた。周りでは凄いことになっているが体がもう動かない。俺は死ぬんだと思う。

 死ぬまで童貞か。この年までだれともやらなかったな。そういえばそういうのって世間では賢者って言うんだったっけ?

 

 

《スキル賢人(ケンジン)を取得しました》

 

 

 なんだ今の声?聞き間違いか?もう一度生まれ変わるならこんな人生じゃなくてちゃんと友達と仲良くしていきたい。こんなに体が痛い終わり方なんて嫌だ。

 

 

《スキル痛覚無効を獲得しました》

 

 

 血が抜けて体が熱いのか冷たいのかわからない。こんなのも二度と感じたくない。

 

 

《スキル氷炎(ひょうえん)無効を獲得しました》

 

 

 最後にいっぱい好きなものを食べたかったな。

 

 

《スキル暴食者(グラトニー)を獲得しました》

 

 

 そのまま俺の体はというより意識が混濁していき俺は次に意識を目を覚ますと目の前が真っ暗だった。というか体もおかしい。

 クルクル回っていくすると何かにぶつかる。

 

 

「ほぐ!」

「なんだお前?」

 

 

 へ?見えないけど目の前にいるやつも喋った?というか俺の体はまるでスライムだな。

 

 

「僕の体スライムみたいなんだよ」

「いや俺もだから」

「2人揃ってスライムなの?」

「そうみたいだな」

 

 

 俺たちはそこから2人でいろんなものを食べながら移動していく。するとあるオーラを感じる。

 

 

「スライムが2匹なんのようだ?」

「だれだ?」

「全く見えない」

「二匹とも周りが見えないようだな。魔力感知というスキルがある。周りが見えるだろう。しかし我の姿を見ても驚くではないぞ」

 

 

《告スキル魔力感知を獲得しました》

 

 

 だんだんと周りが見えてくる。となりにはスライムがいて目の前にいたのは

 

 

「「ドラゴンー!!!!???」」

「おい、我に驚くなと言っただろう」

 

 

 目の前にいたのはドラゴンだった。こんなの空想の物語だけだと思っていた。けれど目の前にいるので受け入れなければならない。

 そこからかなりのことを話した。俺と同じくとなりにいるスライムも転生者らしい。というか2人揃ってスライムに転生ってどういうこと?

 

 

「あ、そうだヴェルドラ聞きたいことがあるんだ。この世界に悪魔っているのか?」

「あぁいるぞ。召喚魔法で呼ぶのが主な方法だ。この世界に留めるために受肉ということもせねばならん」

「おいおいそんなことを聞いてどうするんだよ」

「いや一応な」

「最後に我から貴様ら2人に名前をつけよう。貴様らも共通の名前をつけるが良い。かっこいいのだぞ」

「「ならテンペストだ」」

「なにぃぃいいい!!我はヴェルドラ=テンペストだ」

「貴様にはリムルの名をやろう。お前にはシスタの名をやろう」

 

 

 その名付けが終わると俺たち2人はリムル=テンペスト、シスタ=テンペストと名乗ることになり僕とリムルでヴェルドラを半分ずつ捕食した。こうすることによって解析能力が上がるとかなんとか。

 

 僕とリムルの中にヴェルドラが入りなんだか変な感じになるのかと思ったりもしたけど何にもわからない。僕も賢人に命令して解析を行うように言った。

 

 そこから僕たちはいろんなことがありジュラの森大同盟までなんとかくることができた。

 

 

「何を感慨深くしてるんだ?」

「リムル、いやなんとなくな。なんだかいろんなことがあったなぁって」

「まぁ確かに、俺もシスタも擬態できるんだもんな」

「はは、それもそうだシズさんの擬態をお前がしてその分身体を僕が食べたことによって解析してできるんだから」

「賢人のおかげだけどな。何もわからん」

「こっちもそんなようなものだよ」

 

 

 俺たちはここまでのことを振り返っていた。ゴブリンに牙狼族、オーガにリザードマンまできたっけ。さらには森の管理者トレントなんてものもきた。名付けは2人で分かれてやったからかなりの人数がいる。

 この世界全員名付けすると美人なんだよなぁ。

 

 

「シオンはどうなんだ?」

「秘書としては……な」

 

 

 リムルの秘書にシオン、僕の秘書にシュナが名乗り出てくれた。最もシュナは衣服の作成なんかあるからほとんどいないが……

 すると賢人が最大アラートを鳴らしてきた。リムルも同様なようで同じように離れていく。




テスタロッサ、ウルティマ、カレラ、ディアブロぐらいまでは描きたいかなぁーと思ってます


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2話

まさかの1話投稿したら評価いただけました。

夜乃唱さんありがとうございます


 街から離れてかなり遠いところに来た。すると目の前で爆発が起こる。

 

 

「はじめましてわたしはただ1人の竜人族(ドラゴノイド)にして破壊の暴君(デストロイ)の名を持つ魔王ミリムだぞ」

 

 

 魔王かい!ってか魔王がなんでこの街に?

 

 

《告測定できるか現段階で魔素量が10倍以上です》

 

 

 賢人が訴えてきた。いや10倍って。少なくとも僕の10倍ってことだろ。そんな奴がなんで。嫌なんだかドワーフの王が言ってたな。モンスターの強さのレベル。

 もしかしてこの目の前にいる奴が天災級なのか?

 ツルペタ!こりゃ勝てないわ。

 

 すると隣からシオンが飛び出してくる。その後に続くようにソウエイ、ベニマルが攻撃を続けるが全くダメージを与えれてない。

 そしてリムルが前に出る。あれをやるのかな?小さき奴を相手にするにはぴったりだ。

 

 手の平にハチミツがだんだん浮いていく。そのまま突っ込んでいき顔面にぶつける。いや正確には口に押し込んだというべきかな。

 

 

「なんなのだこれは?」

 

 

 そこからはもうリムルのペースだ。なんだか引き分けって話になった。そこからはいろんなことがあり広場では僕とリムルの友達だと言い出すし、魔王とは思えない。

 

 

「ミリム、僕と喧嘩してくれない?」

「ほう」

「もちろん殺さない範囲でだよ。けどこの世界じゃ力がものを言うからな」

「なるほどいいだろう。やってやるのだ!」

 

 

 そこからミリムと2人で街からかなり離れたところに移動する。念のためシュナに弁当を使ってもらいそれを胃袋に入れる。

 

 腰から二本の刀を抜きそれで突進を仕掛ける。リムルは刀一本だが僕は二本だ。なんとなくで選んだけどしっくりくる。

 はじめはハクロウにボコボコにされたりもしたけど今じゃあかなり防げる。

 けれどミリムには通用しないみたいで突っ込んで全て防がれる。

 少し離れて黒火炎(ヘルフレア)を放つが全くダメージを与えられない。

 そのまま刀に切り替えて戦うが笑いながら防がれる。

 

 

「ワハハハハ、なかなかいい攻撃だぞ。ワタシはシスタやリムルが魔王になると言ってもワタシは反対しないのだぁ!」

 

 

 話しながら俺は吹っ飛ばされた。相変わらず理不尽な奴。これでも豚帝王(オークロード)を倒したんだけどそれでもミリムとは次元が違うらしい。

 

 

「ちょっと休憩しよう」

「なに!?」

「シュナの弁当あるけど」

「休憩も大事なのだ!」

 

 

 そこから俺たちは2人で食べていく。シュナは飯がうまい。オーガの姫さんだけはある。一度リムルがシオンの手料理を食べさせられているところを見たがあれ食べたら多分俺も死ぬと思う。

 実際ゴブタは口に入れられてもがき苦しんでいたし。

 

 

「うまいのだ!」

「確かにな。それにしてもミリムはなに食べてもうまいって言うよな」

「それはそうだのだ。竜の国の食事はなんでも生だから全然美味しくないのだ」

「うっわそれはきつい。確かに生で食べた方が美味しいやつもあるけどそれは無理だな」

「そうなのだ。だからここの料理は美味しいのだ!」

 

 

 そういいバクバク食べていく。いや待って。僕の分なくなるんだけど。はぁまぁいいか。特訓に付き合ってもらってるわけだし。そう思ってると本当になくなった。いやいいかと思ったけど一口、二口しか食べてないけど僕!

 

 

「ミリム食べすぎだよ」

「む、それは悪かったのだ。美味しくてつい」

「ついで済むかー」

「悪かったと言っておろうが!」

 

 

 僕とミリムは本気でぶつかった。いやミリムは本気じゃないと思う。本気なら僕は消滅しているから。

 

 

「ハァ、ハァハァ」

「なかなかやるではないか!やっぱり魔王になるのだ!」

「ならないって」

「なんでなのだ」

「あ、そういえばミリムは悪魔召喚の仕方知ってる?」

「これのことか?」

 

 

 そういい魔法陣みたいなものを空中に書く。それで悪魔が出てきたがミリムに一撃で沈められていた。この魔法陣欲しいなぁ。

 

 

《告悪魔召喚を獲得しました》

 

 

 流石賢人、欲しい時に活躍してくれる。ミリムにも見せてくれたお礼にハチミツを渡して俺たちは街に帰っていく。

 それにしてもあの悪魔下級って言ってたけどあれ基準で考えると痛い目に合いそうだ。

 

 

「どこに行ってたんだ?」

「リムル、特訓。この世界の物事はほとんど力で決まるから」

「なるほど、それもそうだな。明日からは俺も行っていいか?」

「構わないけど街の方はどうするんだ?」

「リグルドやゲルドになにをするか伝えてから行くよ。というか街の形は出来上がってきてるからな」

「まぁ確かに。この街はかなり綺麗だな。日本より」

「ポイ捨てする人とかいないしな」

「確かに」

 

 

 確かにこの街でポイ捨てなんてする奴はいない。それどころか綺麗な街をさらに綺麗にしようとする奴らはいっぱいいるけど。本当にいい奴らばっかりだ。

 

 

「そういえば前から聞きたかったんだけどなんでそんなにも悪魔を召喚したがるんだ?」

「それは言わないとダメか?」

「いやいいよ。けど街に、みんなに手を出すなら例えシスタでも許さないからな」

「わかってるよ。ただ……な」

「??」

 

 

 僕たちは飛んでいきミリムと特訓した。結局2人がかりでも負けてボコボコにされたが。

 



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3話

 ミリムが来て少ししてゴブタが人間の奴らを連れてきた。いや何人かは見たことがある。エレンにカバルにギドだったかな。

 

 

「それで何の用だ?」

 

 

 僕が少し威嚇気味に食ってかかる。エレンたちはあたふたしてるが少し悪い気になる。ただ僕の性というか人間はやっぱり信用しにくい。

 

 

「シスタ落ち着け。ここの領主のリムルとシスタだ」

 

 

 そこから周りの奴らをリムルが紹介していく。なんでも豚帝王(オークロード)のことできたらしい。

 

 

「フューズさんとやら俺たちが豚帝王(オークロード)を倒したという話広まってるのかね?」

「いや知ってるのは一部の上層部だけでよすよ」

「ならリムルやることはひとつだな」

「ああ」

「「ヨウムくん君勇者にならないかい?」」

「は?」

「だから勇者にならないかって話だよ」

「勇者はダメだぞ」

 

 

 突っ込んできたのはミリムだ。まさかこんな話に突っ込んでくると思っていなかっただけに驚きを隠せない。

 いやスライムだから汗なんかは出ないから動揺しているのがバレないけどそれでもびっくりしてる。

 

 

「勇者を名乗ると因果が回る。せいぜい英雄にしておくのだな」

「ほへぇー」

「なんなのだ?」

「ミリムって頭いいの?」

「シスタは失礼なのだ。これでも魔王なのだぞ。頭はいいに決まっておろうが」

「ヘェ〜」

「全く信用してないのだ!失礼なやつだ」

 

 

 このままいくと話しはどんどん逸れていきそうだったからヨウムのほうに向き直す。ミリムが隣で何か言っているが軽く聞き流しておく。

 

 

「この街を見てまわってもいいか?」

「構わないよ。いいだろシスタ」

「拒否する理由がないしな。いいよ」

 

 

 そこで会議は終わる。俺は少し疲れたからスライム状態になって椅子に座る。この状態気が楽だからな。何も考えずにも体が休まっていく。

 

 

「シスタ様どこかに移動なされますか」

「シュナ今回はいいよ。このまま溶けたい気分」

「溶けるのはダメです!」

「比喩だよ。シュナやっぱり移動してくれるか?」

「もちろんです。どこへでも」

「ハクロウのところに頼む。多分ゴブリンたちを鍛え上げてると思うけど僕も特訓したいから」

「わかりました。けれど休んでくださいね」

「シュナそれはありがたいけど断るよ。もっと強くならないといけないしな」

「わかりました。ではこのままゆっくりしていてください」

「へ?」

「私が連れて行きます」

「あ、はい。お願いします」

 

 

 なぜか断れない笑顔を浮かべながら歩いていく。今までシオンにシュナ、エレンなんかにも抱かれたことがある。なんでそんなにもだきたいのかわからないけど僕としても楽だからいいんだけど。

 

 

「ほほ、これはシスタ様どうかなされましたか?」

「よっと。ハクロウ。稽古つけてくれよ」

「ほほっほ。構いませんぞ。ただ少しお待ちを」

 

 

 そう言うとハクロウは刀を抜く。それを持ち振り回しながら倒れているゴブタや他のホブゴブリンを叩き起こしてから俺と同じく稽古を始める。

 ハクロウはたまに目の前から消えるから気配では感じられず魔力感知でもわからない。

 上だ!

 僕は片方の刀で防ぎもう片方で斬りかかろうとすると後ろから木刀でしばかれた。

 

 

「ほほっほ。シスタ様は防いだとと感じたら油断する癖がありますな」

「言葉もねぇ」

 

 

 確かに僕にはその節がある。というか人間だった時の癖と言った方がいいのかもしれない。油断したと思ったらこっちの動きまで鈍くなる。

 それで反撃されてたら言い訳にならないんだが……

 そこからも特訓を続けて陽が落ちるまで続けた。

 

 

「それにしてもシスタ様は変わり者っすよね〜」

 

 

 ゴブタがそんなことを言い出した。

 

 

「なにが?」

「だってジジイの修行に参加したいなんてリムル様は言わないっすから」

「誰がジジイじゃと?」

 

 

 ゴブタの後ろで刀を抜きながら恐ろしいオーラを纏ってるハクロウがいた。帰ったはずじゃ。

 

 

 

「ギャージジイ帰ったんじゃ」

「ゴブタはまだまだ元気がありそうじゃのう。もう少し特訓していくかのぉ」

「ギャーシスタ様助けてー」

「頑張れ〜」

 

 

 俺は手を振りながらこの場から離れる。嫌な予感がするからだ。このままだと俺まで特訓に付き合う羽目に。

 

 

「終わりましたか?」

「シュナ。ずっといたのか?」

「はい。秘書ですから」

「命令だ。今度からはゆっくり休むように」

「え?でも」

「確かに秘書をしてくれるのは嬉しいけど何時間も待つ必要なんてないから」

「ですが」

「シュナが倒れない方が大事だよ」

「シスタ様」

 

 

 なんだかこっぱずかしいことを言ったような気がする。けれど言ったことは本当だ。シュナに倒れられるぐらいなら秘書の仕事はいらない。

 

 まぁこの世界に倒れるなんて概念があるかどうかもわからないけど。実際僕もこっちの世界に来てからなったことないからわからないけど。

 シュナにいい負けて僕は運んでもらった。

 

 

「今食事をお持ちします」

「ちょっと待った」

「はいどうかされましたか?」

「シュナは座っててくれ。今日は僕がやるから」

「そんなわたくしが」

「いいから座ってる」

「はい……」

 

 

 僕は飯を持ってくる。シュナの前にも置き食べ始めるがシュナの箸が進まない。

 

 

「どうしたんだ?」

「シスタ様にはわたくしは不要ですか?」

「んぁ?」

「わたくしが用意しようとしても止められましたから」

「はぁシュナあのな僕はシュナに倒れて欲しくないんだよ。そんなことになったら僕が逆に死にたくなるから」

「それは……」

「だからこれからも秘書はお願いするけど無茶だけはしないでくれ。特に今回みたいな特訓の時はずっといなくていいから」

「わかりました。なら終わったら思念伝達で呼んでください」

「わかったよ」

「それならよかったです」

 

 

 シュナはそこから飯を食べ始めた。それにしても本当にシュナの食べ方って綺麗なんだよな。お姫様なだけはある。

 

 

「どうかなさいましたか?」

「いや食べ方が綺麗だなって」

「そんな//」

 

 

 シュナは顔を染めてそらす。そんなに恥ずかしいことを言ったかな?

 俺は食べ進めてそこからはシュナがやると言ったのでもう諦めた。シュナにやってもらい俺は自室に戻る。この家自体が俺の家なのだがもちろん自室もある。

 そこは立ち入り禁止でかなり頑丈にしてもらっている。

 

 たまに分身体相手に技の試し打ちをしたりするから硬い部屋にしてもらった。別に洞窟なんかでやってもいいんだけどこっちのほうが近いからこっちにしてるだけだ。

 けれど洞窟の方にもいく。技の規模が大きい時とかはヴェルドラがいた洞窟でやることにしている。

 

 

《告リムルテンペストより思念伝達です》

(どうしたリムル?)

(ヨウムたちが引き受けてくれたよ)

(了解。こっからは修行やら装備品を整えたりするので忙しいけどな)

(まぁ、そうだけど)

(なんとかやらないとな)

(そうだな)

 

 

 そう言ってリムルとの思念伝達を切った。なんだが引き受けないと思っていたりもしたけどこっちの世界の人間はなかなか話がわかる。

 向こうの汚い奴らとは大違いだ。

 

 僕は久々に向こうのことを考えてその日は眠った。

 



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4話

 次の日朝起きてヨウムのところに向かう。一応お礼を言っておかないといけないからだ。

 

 

「やぁヨウム。引き受けてくれてありがとう」

「えっとシスタさん?リムルさん?」

「シスタだよ。擬態してる時は髪の色が明らかに違うだろ」

 

 

 そうリムルは水色だけど俺は白に近い。髪の色がだけど。元々のスライムボディも白に近いのでこの色になったんだと思う。

 

 

「なるほどこっちがシスタの旦那か」

「まぁな。それで特訓に行くんだろ。俺も行くよ」

「ずるいのだ!今日シスタはワタシと遊ぶ約束をしていたではないか!!」

 

 

 そういいいきなり出てきたのはミリムだ。なんでこんなところに?いやそもそも遊ぶ約束なんてしてたかな?

 

 

《告数日前にしておりました。マスター》

(ありゃそうだっけ?)

《忘れすぎです》

(悪い悪い。まぁそれを補完してくれてるのが賢人なんだから)

《〜////》

 

 

 なんか最後照れてたような気もするけどまぁそこには突っ込まない。それよりも目下の問題はミリムとの遊びだ。

 

 

「なにするのだ?」

「なにする?」

「シスタが考えるのだ」

「それなら食べ歩きでもするか?」

「食べ歩き?なんなのだそれは?」

「まぁとりあえず行こうか。ヨウムまた今度な」

「あぁ、わかった」

 

 

 僕は人型のまま街を歩いていく。そのままいろんなものを買っては歩きながら食べていく。ミリムもこういうのは初めてのようで少し戸惑いながらもついてきてそのまま食べていく。

 

 

「シスタ様なぜそのようなことを?座って食べれば良いのでは?」

 

 

 言ってきたのはゲルドだ。おそらくリムルあたりに休めと言われているのだろう。

 

 

「ゲルドはわかってないなぁ。こういう風に歩きながら街の風景を見て食べるからいいんだよ」

「そういうものですか?」

「そういうものなの」

 

 

 もちろんゴミは俺が捕食して最後にまとめて捨てる予定だ。そのまま食べ進めてお腹いっぱいにはならないけど流石に食べ過ぎた感がある。

 

 

「眠くなってきたのだ」

「わかった。連れてってやるから寝てていいぞ」

「わかった……のだ」

 

 

 いうとすぐに背中に乗り眠ってしまった。こうしてみるといまだに魔王なんて信じられない。本当に1人の少女だ。

 僕は家にミリムを置きそのまま出て行く。そこからはヨウムたちの訓練に混ざって訓練して行く。

 そんな日が続きヨウムたちがいよいよ出発の日が来た。

 見た感じ英雄と言われても遜色ないと思う。まぁこっちでの英雄の基準が分からないから見たまんまを言っているだけだが。

 

 

「どうだシスタ、ヨウムたちは?」

「まぁ英雄と言われても分からないと思う。ましてや豚帝王ぐらいなら倒したと言っても分からないんじゃないかな」

「ほほ、短期間とは言え真面目に修行したからですな」

 

 

 それにしてもヨウムいつの間に髪切ったんだろう。この街に髪を切る施設なんてまだできていないし誰が一体?

 まぁ誰でもいいんだけど。

 

 

「それにしてもシスタの旦那とリムルの旦那が並ぶと確かに違うよな」

「まぁなリムルは髪水色っぽくてスライムっぽいけど僕は本当に白に近いからな。まぁわかるだろ」

「確かに」

 

 

 ヨウムたちはそのまま出発して行った。そこからは何事もなく日だけが過ぎて行く。

 けれどやっぱりこの世界ではなにもないという方が珍しいみたいだ。

 

 

「誰です!」

 

 

 シオンがいきなりリムルを投げてそれをミリムがキャッチする。

 

 

「「シオンその人は敵じゃない」」

 

 

 すると樹妖精のトライアさんだった。そう言えばガゼル王が来たときにもトレイニーさんの後ろにいたような気がする。

 

 

「その殺気、一体誰と戦ってたんだ?」

「いや、おそらく豚帝魔王(オークディザスター)と同じ部類だろう。殺気の種類が似てる」

「はい、その通りでございます。かの天空の支配者天空妖魔王(カリュブティス)が復活しました。姉トレイニーが足止めを行なっていますがそれも長く持ちません。つきましては盟主リムル様とシスタ様の手助けをお願いしたく」

「やるか」

「そうだな」

 

 

 僕たちの開戦が決まった。そして今回の参加メンバーはベニマルたち鬼人勢、ゴブタらゴブリンライダー、ゲルド率いるハイオークたち、ガビル率いるリザードマン、そしてガゼル王からの援軍が今回のメンツだ。

 シュナや他のゴブリンたちも来ているが今回はサポートとしてきてもらった。

 

 開戦の合図でベニマルが黒火炎(ヘルフレア)を放つ。あれは俺も使えるけど本来の威力を発揮されていたら中にいるものは跡形もなく消える。

 そこから全員で周りの奴らから落として行く。

 

 

「なぁなぁワタシも遊びたい」

「なんでいるの?街で待ってろって言ったよね」

 

 

 リムルが攻め気味に行く。本当に魔王を手玉にとってる。相変わらず子どもみたいなやつを手玉に取るのはうまいよなリムルは。

 

 

「シスタいいだろ?ワタシも遊びたいのだ」

「ダメだって」

「それならミリムは今ここで我慢するか夜飯抜きかどっちにする?これに勝てたら夜飯はあの飛んでた魚でうまいものなんだけどなぁ〜」

「ぐぬぬぬ、我慢するのだ」

 

 

 ミリムは少し膨れ気味に離れたところに行く。僕の説得は聞いたみたいだ。というか普通に説得するより飯を代償にしたほうがいいと思う。そっちの方が話を聞いてくれるから。

 そんなことを話しているとメガロドンが既にいなかった。僕とリムルは見ていただけだけどここから暴風妖魔王(カリュブティス)に仕掛ける。

 それと同時に暴風妖魔王(カリュブティス)は鱗の全てを飛ばし攻撃して行く。

 

 

「リムル!」

「あぁ」

 

 

 リムルに言う前にもうすでに動き出していた。流石にあの数はやばいと思ったんだろう。すると鱗の一部の飛んでいく方向が変わった。あの位置はリムルでも無理だ。そしてその方向には後方で支援してくれている部隊がある。

 

 僕はすぐに飛んでいきそこに向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シュナは内心自分の力のなさが悔しかった。お兄さまのような巨大な魔力もソウエイのような情報収集もハクロウのような剣技もシオンの力もない。クロベエのような鍛治技術もない。

 

 そして事態が動く。暴風妖魔王(カリュブティス)の鱗がこっちに飛んでくる。リムル様はシオンたちの前衛の方に向かって行った。

 こっちに飛んできたのは一部だけだからリムル様はおそらく気付いていない。シスタ様は多分見守っていて気づかないだろう。

 

 

「きゃっ!」

 

 

 周りに少し刺さってえぐれていく。そのまま地面が割れて他のゴブリンたちを助けていると私の下まで割れてきた。これも仕方ないのかもしれない。他のオーガならかわすなり地面が割れてもなんとでもできただろう。

 シスタ様申し訳ありません。リムル様申し訳ありません。

 そうして地面に落ちていく感覚が途中で消えたので目を開けるとシスタ様がいた。

 

 

「大丈夫か?」

「申し訳ありません」

「大丈夫だって。守るから」

「どうしてそこまでしてくださるのですか?」

「???ごめん質問の意味がわからないんだけど」

「わたくしは他のオーガたちとは違い非力で役に立ちません」

 

 

 その言葉にキョトンとして理解したのかシスタ様は指でおでこを弾いた。

 

 

「いた!」

「シュナあのな僕でも怒るよ。シュナが役に立たないなんて誰が決めたんだ?それを決めるのは関わってるみんなだ。もちろん僕も。だから自分に無意味なんて決めつけないでくれ。僕にとってはもうかけがえのない人なんだから」

「〜〜〜〜〜///////シスタ様はずるいです」

「??なにが?」

 

 

 わたくしはシスタ様に安全なところまで運んでもらいおろしてもらった。

 そのままシスタ様は分身体を出してわたくし達の護衛としておいて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ここまでしてくれたんだからあいつは殺さないとな。

 そう思い攻撃していくが超再生のせいでなかなかダメージがたまらないし、通らない。時間だけが過ぎていき結局あたりは夕方になり始めていた。

 

 

「ミリ、ミリムめぇ」

 

 

 あれこいつしゃべった?いやそれよりミリムって今言ったよな。僕とリムルは目を合わせてすぐにミリムに思念伝達しようとした。

 

 

「「寝てるし」」

 

 

 ミリムは木にもたれかかり随分気持ちよさそうに寝ている。やっぱりミリムからすると暴風妖魔王(カリュブティス)は歯牙にもかけない相手みたいだ。

 

 

「ミリムあのなこれ僕たちの相手かと思ってたから遠慮してもらってたけどこれお前への客みたいなんだ」

「なにぃ!?」

 

 

 ミリムは一瞬で僕たち2人の目の前に飛んでくる。そして依り代はフォビオだと言う。フォビオって言えば少し前にテンペストに来たやつだったはず。

 

 

「ミリムできればフォビオを生かしてたおせるか?」

「マブダチの頼みなら聞くのだ。最近学んだ手加減を見せてやるのだ」

 

 

 リムルがそういい僕たちは全員を避難させる。手加減とは言えこれだけダメージが通らないんだからそれなりの規模の攻撃をすることになる。巻き添えを食わないためだ。

 

 

「これが手加減というものだ。竜星拡散爆(ドラゴバスター)

 

 

 見ただけだけどこれ生きてないんじゃないのかなと思う攻撃だった。いやマジで。これで手加減って言うんだから一体どれだけ強いんだろうと思ってしまう。

 

 そこから黒い塊が落ちてくる。僕とリムルは急いで飛んでいき捕まえると辛うじて息があった。俺たちは2つの完全回復薬をかけて少しすると意識を取り戻した。

 

 

「ここは?」

「なにをしたか覚えているか?」

「お前本気で殺すとこだったぞ。こっちに怪我人が出てたらの話だったけど」

「すいませんでした。今回の一件全て俺の責任でカリオン様は関係ないんだ」

「今回は不問にしといてやる。いいだろリムル?」

「あぁ構わないよ。今回うちに怪我人は出なかったし。ミリムも構わないか?」

「いいのだ。本当は一発殴ってやろうと思ったがシスタとリムルに免じて許してやるのだ。それでいいだろうカリオン」

 

 

 はぁ?カリオンってと思っていると木の影から出てきた。僕とリムルは全く気付いていなかったみたいだ。賢人の魔力感知にも反応しなかった。

 

 

「お前たちだな。オークロードを倒したのは?」

「あぁそうだけど」

「何かあるのか?」

 

 

 そこからは話がとんとん拍子に進んでいき僕たちの国とカリオンの国で不可侵協定を結ぶことになった。僕は政治のことはてんでダメなのでそこはリムルや賢人に任せておく。

 そして俺たちはすべての後始末が終わりテンペストに帰っていった。



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5話

またまた評価をいただけました

yuーsuzuさんありがとうございます

UA、お気に入りも伸びてきていて嬉しいです


 街に帰ると早速宴会だ。この街の凄いところの一つで宴会と決まったらその日にすぐに実行してしまうところである。

 結局その日に宴会することになった。

 

 町をあげての宴会は何度見ても凄いと思う。こんな規模の宴会日本ではできるわけもなくこっちの世界では簡単にできてしまう。

 宴会も始まり何故か僕とリムルから一言ずつもらうとリグルドが言い出して言うことになった。

 

 

「えー今回の暴風大妖渦(カリュブディス)に関しては俺はうまくできてなかったと思う。みんなには迷惑をかけたしシスタにも迷惑をかけてしまった。本当に申し訳ない。これからも迷惑をかけると思うがみんなよろしく頼む」

 

 

 すると全員から歓声が上がった。みんなもおそらく自分に足りてない所を自覚した上で一人一人がそれを補うと覚悟した上での叫びだろう。僕にはこんなふうにみんなを鼓舞するのは無理だな。

 

 

「それではシスタ様も」

「あ、うん。正直に言うと僕にはリムルみたいに言うのは苦手なんだよ。だから一言だけ。みんな今日はお疲れ様。これからもこういうことがあるかもしれないからみんなよろしく。今日はお疲れ様!」

 

 

 それでも歓声が上がった。本当にみんなよくしてくれている。僕の感性も少しずつ変わってきているように思える。

 元の世界では人間も自分も大嫌いだった。それは転生したこっちの世界でも変わらないと思っていた。けれどここにいる奴らと関わることで少しずつだけど認識が変わってきている。

 

 

「シスタ様隣よろしいですか?」

「シュナ構わないよ。あれ?リムルの方に行ってたんじゃないの?」

「いえシスタ様とご一緒したくてこちらにきました」

「ほへぇ〜。どうしたの?」

「今日はありがとうございました」

「気にしなくていいって」

「はい、シスタ様ならそういうと思いまして言うのはやめにします」

 

 

 おお、急だな。しかし何度も謝られる方がよっぽどしんどいからこっちの方が助かる。そう思っていたら硝子の皿の上にこの宴会には出ていない料理があってそれを僕に渡してきた。

 

 

「これは?」

「わたくしが初めて作った料理です。お口に合うかわかりませんが」

 

 

 そこに乗ってたのは寿司だった。いや、僕はみたことあるし食べたこともあるけどシュナにとっては初めて作るはずのものだ。

 それに醤油に近いものまで作られている。シュナは一体どこまで料理できるんだ?

 

 

「あの、いやでしたか?」

「いや、そう言うわけじゃない。驚いただけだよ。もらうよ」

 

 

 食べるとうまいの一言だった。酢まで近いものを再現していて本当にうまい。全部食べそうになったがそこは止めておく。

 

 

「お口に合いませんでしたか?」

「違う違う。美味かったよ本当に。けど僕だけじゃなくてシュナも食べようよ。そっちの方が美味しいからさ」

 

 

 シュナも食べ始めてあっという間になくなった。シュナには別のところも回るように伝えて俺も別のところに行く。特に行くところはなかったがいろんな所を回っていくとなかなかみんな楽しそうだ。

 

 

「シスタ。楽しんでるか?」

「リムルか。楽しんでるよ。こっちはこっちで。それにそっちは大変だったみたいだな」

「これに関しては突っ込まないでくれ。俺としても恥ずかしいんだ」

 

 

 リムルはおそらくシオンたちに女装をさせられたんだろう。普段でもたまにされているが酒が入ったシオンに流された感じみたいだ。

 

 

「けど似合ってると思うぞ」

「ほほう、シスタくんはそういうことをいうのかね。ならば君にも着てもらおうじゃないか」

「い・や・だ!」

「待て!シオンって酔ってるしソウエイ、シスタを捕まえろ」

「御意」

「待て待て待てやめろソウエイ」

「リムル様の命令なので」

 

 

 そう基本テンペストでは僕たち2人がトップに立っているが基本的には全員リムルの方を優先させている。これは俺から言ったことでいずれ直近の下に欲しいと思った奴がいた時はリムルとの秘密の約束だ。

 

 

「やめろってのソウエイ」

「申し訳ありませんシスタ様。リムル様からの命令ですので」

 

 

 結局俺はソウエイから逃げることができず酔ったシオンやシュナ、女のゴブリンたちに着せ替え人形にさせられていく。ワンピースやスカートなんかもはかされて涙は出ないけど泣きそうだ。

 リムルは後で同じ目にもう一度合わせてやると内心決めた。

 

 

「シスタ様可愛いです」

「それを僕に言うのはどうかと思うよ」

「シスタ様次はこれを!」

 

 

 シオンが酔いながら出してきたのは軍服だった。これなら大丈夫、というかなんでこれを出してきたのかわからずとりあえず着替えにいくと理由がわかった。

 上は普通の軍服だけど下がスカートだ。なんてもの着させるんだと思いながらも着てみると想像以上にスカートが短い。

 こんなの着て出ていけなんてある意味自殺したくなる。とりあえず出ていくと全員の反応に困った。

 

 

「これは……」

「みてはいけないものを見てしまった気分です」

「よく似合ってます!」

「あははシスタよく似合ってるぞ」

「勘弁してくれ!」

 

 

 僕はすぐに元の服に着替えた。全く宴会なのにいつの間にかファションショーみたいになってるのなんでだろう。

 もう気にしてられない。そう思いそこからは普通に食事をし始めた。みんなも酒に酔っているのかその場で寝た奴もいたため何人も家に運び出した。

 リムルも途中から参加してくれたおかげでなんとか全員家に送り届けた。最後にはだいぶ片付けて残るは一つのテーブルになった。

 

 そこで最後まで手伝ってくれていたリグルドも帰らせて僕とリムルだけになった。

 

 

「それでシスタの目にかないそうなやつはまだ来ないか?」

「その言い方はあれだけどまぁまだいないな。また見つかったらリムルにも言うよ」

「あぁ、早く見つかるといいな」

「リムルがソウエイとかを使わなければ俺は今日捕まらなかったからな!」

「はは、それはお互い様だろ」

 

 

 憎まれ口を叩きながら僕たちは帰っていく。最後の机はもちろん片付けたよ。そうしとかないと明日リグルドとかが自分のこと責めそうだしね。

 家に帰り作ってもらったベッドに入って眠る。最近は疲れを感じる体なのか夜はよく眠れる。何せベッドに寝転ぶと僕の体がどんどん沈んでいく。一定のところで止まるけどだいぶ気持ちいいベッドだからよく眠れるのかもしれない。

 

 朝起きて起き上がろうとすると起きれない。何故かと思い体の上を見てみるとシオンが僕の上に乗っている。この部屋鍵はかけてないけどなんでここに?

 とりあえずシオンを起こさないようにスライム系になり転がりながらベッドから降りた。

 

 それにしてもなんでシオンがここにいるのかは不思議だ。なんとなく候補はつくけど。おそらくリムルのところに潜り込もうとして僕のところに来たのか。それか酔っぱらった勢いなのかはわからないけどとりあえずまだ寝かせておこう。

 

 僕は部屋を出てリビングに行くとシュナがいた。

 

 

「シスタ様だけですか?」

「??もしかしてシオン?」

「はい、起こしてきますと言うから任せたのにシオンは全く」

「いや構わないよ。ゆっくり寝かせてあげて。暴風妖魔王(カリュブティス)との戦いで疲れてるんだろうから。シュナも眠たいならゆっくりしてきて」

「いえわたくしは大丈夫です。それより昨日なにかいたしませんでしたか?」

 

 

 多分昨日の途中から記憶がないんだろう。酒特有の症状だけどまさか魔物にまで適用するとは。まぁ昨日の事は伏せておこう。無礼講だし僕が犠牲になってみんなが盛り上がってくれたならよかったと思う。

 

 

「いや何にもなかったよ」

「そうですか。良かったです。こちらが朝食になります」

 

 

 シュナは朝飯を出してくれる。こんなことしなくてもいいと言っているけどシュナがそこは聞いてくれない。この後もまだまだシュナは自分の仕事があるからいいと言ってもきてくれるから感謝だ。

 そんなこんなでまた1日、1日と過ぎていった。



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6話

 宴会から1週間ほどたった日に僕はリムルから呼ばれていた。特に用事もなかったのでいくことにして待ち合わせ場所向かう。

 

 

「悪いなシスタ。急に来てもらって」

「構わないよ。それで用事ってなんだよ」

「実はシズさんの未練の話だ」

「それか。確かに今が一番いいタイミングかもな」

「だからだよ。俺はいく。シスタはどうする?

「僕もいくよ。なんだかいかないといけないような気がするんだ」

「了解だ。みんなには伝えてからだけどな」

「わかってる。それからだな」

 

 

 そこから僕たちは準備を始めて次の日には出発だ。全員には事情をある程度話しながら僕たちは出発をすることにした。

 ちなみにシズさんの仮面はリムるのを借りて僕は似たやつに複製しておいた。

 

 ちなみに賢人さんがやってくれたので僕は特に何もしていない。

 

 

《否私はマスターのスキルですからマスターの力です》

(なんかやだよな。対等にいきたいから名前つけようか。ルウェルなんてどうだ?)

《!!ありがとうございます。進化してみます》

 

 

 おお、急に流暢に話すようになった。それに進化ってなんだよ。僕はまだ許可してないのに勝手にやり出した。

 

 

《だめでした。進化に必要な養分が足りませんでした》

(??養分?)

魔王への進化(ハーベェストフェスティバル)での祝福(ギフト)となります》

(それならまだいいや。魔王になんてなろうと思ってないし)

《了解しました》

 

 

 ランガが恐ろしいスピードで行くからあっという間にイングラシア王国についた。ちなみにギルドカードは前に作ってるからすぐに入れた。

 

 中に入って身分証明はリムルとの間を開けてなるべくバレないようにして中で合流した。それにしても中にはガラス製のものが多くウィンドウショッピングもできるほどだった。正直学園の方をリムルに任せて僕はこっちでいろんなものを見ておきたいがリムルから却下と言われたから僕もギルドに行くことになった。

 

 

自由組合総帥(グランドマスター)がお会いになるそうです。ここからは専属秘書である私が案内します」

「あ、はい」

 

 

 リムルは緊張してるからか口調おかしいけどこいつ嫌な感じがする。まだ何かはわからないけど危害を加えようとしているわけじゃなさそうだ。今のところはだけど。けれど嫌な感じある無し関係なくしたらこの人も美人なんだよな。エレンもそうだったけどこの世界基準高すぎない?そう思いついていくと応接室のようなところに通されリムルと僕は待つことに数分

 

 

「僕が自由組合総帥(グランドマスター)の神楽坂優樹……っ!」

「俺はリムルテンペスト」

「僕はシスタテンペストだ」

「俺は食った相手の姿になれるんだよ」

 

 

 その瞬間目の前の男は一瞬で詰め寄ってきた。そしてリムルが受け止めて僕は刀を首に当てた。

 

 

「僕は悪いスライムじゃないよ」

「!!」

「引けよ。このまま首切り落とすぞ」

「シスタ口が悪いぞ。それで俺たちが悪い奴じゃないって信用してくれたか?」

「シズ先生の未練ですか」

「あぁそのためにここまできたんだ」

「そして坂口日向ともう1人あれは誰だ?」

「もしかしてくれた今野真矢(いまのまや)ですか?」

 

 

 そうその名前を知りたかったんだ。坂口日向も敵対した目に見えたがもう1人の方はもっとやばかった。あれは昔の僕をみているようだった。周りの全てを敵だと思っている目だ。

 

 話を聞くと昔日向より早くシズさんを越してそのまま出ていったらしい。というか日向といいその真矢というやつといい強い奴多過ぎない?さっき見せた優樹もすごいスピードで寄ってきてたし異世界人と言われる奴はこんなやつばっかりなんだろうか?

 

 

「ありがとうございますししょー」

「はっはは!」

 

 

 何が何だか。人が考え事してる間に話をどんどん進めていくのをやめてくれませんかね。話についていけないと思っていたが周りを見たらなんとなく話がわかった。周りには恐ろしく漫画が積んでありそれをみている優樹が叫んでいるのだから。

 

 そこからの話はトントン拍子で進んでいき僕たち2人は教師をすることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全く厄介な2人がきたな。この件は日向と真矢に伝えておこう。

 

 

「ユウキさまこちらのものは?」

「あぁそれは運んでおいて。また後でみるから」

 

 

 そういうとその女は運んでくれた。とりあえず今打てる手は打っておこう。あの2人は本能がいっている。今すぐにでも消しておけと。

 僕は思念伝達で2人に事情を話し僕は思念を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はぁ、部屋を分けてくれたのはいいけど朝起きて普通に行かないといけないんだよな。朝起きれるかが問題なんだよなぁ。教師にしろ、仕事をするにしろ。

 

 

《わたしが起こします》

(あ、けんじ、違う違うルウェル頼むわ)

《かしこまりました。マスター》

 

 

 よし、これで朝の心配はなくなった。跡は現実的な問題なんだよな。余命が短いと知らされている子どもが取る行動は大きく分けて二つ。

 一つ目が素直になり、人生を諦めるやつ。こっちはまだ楽だ。楽しみを教えてその間に僕たちが最大限助ける方法を考えたらいい。

 もう一つは諦めて無茶苦茶元気になるやつだ。こっちは鼻っ柱へし折っていうことを聞かせるしかない。それでも聞かないなら多少強引な方法に出るけど。

 結局眠れず次の日になりリムルと一緒に教室に向かった。

 リムルは仮面をしているけど僕はしていない。別の教師が来たらすぐにつけるようにしているがそれ以外はつけない。

 シズさんの教え子というからつけなくても何となくわかるだろう。

 

 

「おはようござい!!」

 

 

 入った瞬間に炎が飛んできた。危ないな。しかもこれ元気が有り余ってる方だろ。最悪かもしれないな。

 リムルの方を見てみると僕と同様に驚きを隠せていない。

 

 元気すぎるがとりあえず教師と言えば出欠確認だな。もともと名簿には5人だけだったから見たらわかるけどこういうのは形から入らないとな。

 

 

「三崎 剣也くんー」

「…………」

「関口 良太くんー」

「………………」

「ゲイル・ギブスンくんー」

「…………」

「アリス・ロンドさんー」

「…………」

「クロエ・オベールさんー」

「…………」

 

 

 リムルが呼ぶが清々しいぐらいまでの全員無視。リムルは少し頭にきたのかランガを呼び出した。するとビビってしまい恐ろしいスピードで返事を返してくれた。

 

 

「おい卑怯だぞ!こんなでっかい犬で脅すなんて」

「我はランガよろしくな小僧」

 

 

 すっかりビビっちゃってる。さっきまでの威勢はどこに行ったのやら。

 

 

「ならテストをしよう」

「テストって何をするんだ?」

「実践だよ。お前らが勝ったら二度と授業も受けなくてもいい。ただ僕たちが勝ったらいうことを聞いてもらうからな」

 

 

 僕たちは中庭に移動してテストを開始する。割り当てを決めて僕が剣也、クロエ、ゲイルを相手にすることになった。

 そしてリムルがアリスと良太を相手することになった。

 

 

「よしそれじゃあ時間は10分だ。その間に僕たちに一撃を与えれたら合格ということにしよう」

「へ、シズ先生以外には負けたことないんだ。なめるなよ」

 

 

 剣也はそういいながら剣に魔力を送り炎を纏わせる。というか何で剣也はこんなにも炎をにこだわるんだろう。これだけ魔素があるなら他の属性でもいいと思うし、事実剣也は他の属性も使えそうな気がする。

 剣で切り掛かってくるがハクロウの地獄の訓練のスピードに比べたら避けていく。反撃してもいいけどそれで擦りでもしたら大事だからそのまま避け続けて10分たった。

 

 

「そこまで」

 

 

 良太の声で剣也も攻撃をやめて悔しそうにしている。そうそう悔しがれもっとな。そうしたらもっとお前は強くなれるんだよ。なんてことを考えたりもした。

 

 次はクロエオベールか。何だかこの子には既視感があるんだよな。どこかで会ってるってことになるのかな?こっちの世界じゃなくても向こうの世界って可能性もある。

 そして本を掲げる。あの本で殴ってくるのかな。痛みはなくても精神的に泣きそうだ。

 

 

「流れる水流よ我が敵を捕らえよ。ウォータージェイル」

 

 

 そう詠唱すると僕の周りに水の塊ができてその中で刃が回り始めた。なかなかにいい魔法だ。優秀で拘束力もある。

 

 

「降参するなら解除するけどしないなら死んじゃうよ」

 

 

 なんて恐ろしい子。けど僕には通用しない。暴風妖魔王から得たスキルで重力操作がある。

 自分の周りの重力を操って水を強制的に落として抜けた。そのまま抜けてもよかったんだけどこっちのほうがインパクトあると思ったからだ。

 

 

「え?」

「よくできてる魔法だった。これからも勉強する様に」

 

 

 泣きそうだったから頭を撫でてやった。すると泣き止んでくれたので助かった。

 次の相手はゲイルか。確か一番年上なんだよな。だったら何かしてきそうだな。

 

 

「行きます」

「いつでもどうぞ」

 

 

 すると大きな光の球を放ち飛んでくる。それを僕は刀で打ち返そうとしたがルウェルからそれは無理との警告が来たのでそれを食べた。

 

 

「何ですかそれ!ずるい」

「はっはは、大人はズルしてナンボなのだよ。よく覚えておくといい」

 

 

 そして僕の出番の3人は終わった。後はリムルの番だ。僕は木にもたれかかりみることにした。

 



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7話

 次はリムルの番だから見ることにした。その間にクロエたちが寄ってきて隣に座る。随分と心を許してくれたようにしてくれるので助かる。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、俺の相手は良太とアリスか。先に良太から来るみたいで前に出てくる。

 

 

「じゃあ始め!」

 

 

 シスタの掛け声で始まってすぐ良太は狂戦士化をする。この年で大したものだとも思いつつ避けながら思ったのは意識を飛ばすのは良くないな。

 最後に避けると良太はそのまま木に突っ込む。

 そして時間切れとなり良太もシスタの隣に行く。

 

 

「全く情けないわね!情けないあんたたちに代わってあたしがやってあげるわ」

 

 

 すごい自身満々にアリスが出てきた。しかし始まってすぐに泣き出した。理由は使い始めて気づいたようだけど剣也の炎でぬいぐるみの耳が焦げていたのだ。

 

 

「もーバカバカバカ!あんたがばかすか炎を使うから」

「悪かったって!」

「悪かったじゃないわよ!」

「まぁ待った待ったアリス」

 

 

 そういいシスタがぬいぐるみをとりそのまま修復した。俺にあんな細かい魔素の使い方はできない。あれができるのは今テンペストでもシスタぐらいだ。

 さてそろそろ全員を集めて話を進めるか。

 

 

「さてお前たちが経験したように俺たち2人は強い。その俺たちが約束する。お前たちを必ず助けると」

「あたしあんたらを信じる」

「わたしはねはじめから信じてたよ」

「僕も信じてもいいと思う。他の先生たちはお菓子とかはくれたけど誰1人僕たちを見ようとしなかったから」

「何だよお前ら。なら俺も信じるよ」

「「「「「お願いします先生!」」」」」

「お前らは俺の生徒だぁー」

 

 

 叫んで思った。みんなはキョトンとしてるし、隣でシスタは笑いを堪えているようだ。やってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リムルはおそらく嬉しさが堪えきれなかったんだろう。言った瞬間顔が赤くなることはないけど行動が止まってしまった。そこから僕たちは教師寮に戻っていく。その前に生徒たちを寮に送ったけど。

 

 ちなみに教師寮ではリムルとは隣の部屋同士だ。少しゴロゴロしていると部屋のノックがなる。

 大方リムルだろうと思って開けてみると違った。

 

 

「どうしたアリス?」

「シスタ、今日はぬいぐるみを直してくれてありがとう」

「気にすんな。僕にも非はあるから」

「うん、シスタはなにしてたのよ」

 

 

 おぉ、いきなり攻撃的な口調になったな。けど子どもはこれぐらいの方がいいと思う。むしろ入って早々攻撃喰らわされて急に塩らしくなられる方が困る。

 

 

「僕は…………あー明日なにしようか考えてたんだよ」

「何でそこで考えるのかしら?」

「まぁいろいろあるんだよ。それじゃあ寮に帰ろうか」

「大丈夫よ。1人で帰れるから」

「まぁまぁアリスぐらいの美人さんなら誰かに襲われるかもしれないしね」

「へぁ!?」

「ん?」

「そこまでいうなら送らせてあげるわ」

 

 

 いやそこまで言ってないし、何よりなんでこっちを見てくれないんだろう。顔を真っ赤にして一切こっちを見てくれはしない。はぁ嫌われたのかなぁーまだ1日目なのに。

 

 寮にアリスを送り届けてから僕は自分の部屋に帰っていく。するとリムルがいた。構わないけど勝手に入ってくるのは驚いてる。

 

 

「どうした?」

「あの子たちの魔素量を感じただろ。あれが体を崩壊させる量なんだな。それで制御する方法は何かないのかと思ってさ。シスタは何か知ってるのか?」

「と言ってもなぁ。僕もこっちに転生したのはリムルと同時期だし知ってる知識量に差はないと思うけど」

「それもそうだよなぁ〜」 

 

 

 2人ともベッドの上でスライム体型になるから誰かに入ってこられたりでもしたら大変なことになる。なにせ人間の国に魔物がいることになるのだから。

 リムルは少ししてから部屋に帰っていき僕も部屋で眠っていく。そこからの毎日はなにも変わらず毎日同じことだった。アリスに関してはなかなか顔を合わせてはくれないが会話はしてくれるため周りからも特になにも思われていない。魔素を消費させるために毎日軽くだが稽古をしている。けれどこの年代の子はなかなかやる気を見せないので勝てたら漫画という条件でやるとみんなすごいぐらい食いついてくる。

 

 

《告、大きな魔力体が接近中。数は2です》

 

 

 ルウェルからの警告を受け取るとリムルも気づいたんだろう。2人で顔を見合わせた。そして少しすると上に2匹のドラゴンが通り過ぎた。そして王都につく直前に別れてそれぞれが攻撃を始めた。

 

 

「シスタ!」

「わかったよ」

「先生!無茶だって」

「たしかに強いけどドラゴンには勝てないって」

「まぁ待っててよ」

「ランガお前はここでこの子たちを守っててくれ」

「御意」

 

 

 そこから僕たち2人は飛んでいく。リムルはまだ重力操作に慣れていないみたいだけど僕はもうこっちのほうが早い。しばらく飛んでいき別れる直前になり

 

 

「ここからは別れるぞ。あぁ、あと身元はバレないようにしてくれよシスタ」

「了解」

 

 

 僕は空を飛んでさっきとは逆側に来た。こっちに飛んでいったのが見えたから飛んでいきドラゴンの目の前にきた。こうしてみるとデカく見える。

 

 雷を打ってきたので避けようと思ったが避けると下の街の被害がすごいことになる。雷を避けるのはやめて捕食した。このまま広げて食べようかと思ったけど少し新技に付き合ってもらおうと思い雷を捕食しながら重力一点に集めていく。

 すると想像通りそれはブラックホールとなりドラゴンを完全に消滅させた。

 けれどそのあとそのブラックホールは収まることがなかったのでそれを捕食することになった。

 

 体の中で暴れていたがそこはルウェルがきっちり処理してくれたみたいだ。相変わらず僕にはもったいないぐらいの相棒だ。

 

 

《否わたしはマスターのためだけに存在します》

 

 

 ありゃばれてた。心の中まで読むのは勘弁して欲しいと思いながらみんなのところに帰っていった。

 

 

「なによなによ。その姿かっこいいじゃない」

「先生カッコいい」

 

 

 アリスにクロエも褒めてくれるけどちょっと体を大きくしただけなんだよなぁ。すると

 

 

「おいなんだ貴様!怪しい奴だな」

「ワシをミョルマイルと知ってのことかね」

 

 

 そういえば何にも話さなかったけどこのおっさん誰だ?リムルと一緒にきたみたいだけどさっぱりわからない。

 

 

「これは失礼しました。こいつ新人でして」

「ふむ」

 

 

 そういい賄賂を渡していた。このおっさん普通に渡しやがったぞ。

 

 

「これはこれはシスタ殿ですかな?」

「あぁ、あんたは?」

「ワシはミョルマイルと申します。リムル殿には先程危ないところを助けていただきましてな」

「なるほどね。それでどうしてここまでついてきたんだ?」

「後ほど話させていただきます。是非ともここにきてくだされ」

 

 

 渡されたのは住所が書いてある紙だった。リムルは少し内容を知ってるようだった。それにしてもここの住所って確か?

 

 

《高級料理店です》

 

 

 やっぱりな。なんか聞いたことがある。というか他の教師たちがいきたくてもいけないぐらい高い店とか言っていた気がする。こんなところに呼び出して一体何のようなんだか……

 

 

「シスタそう警戒しなくても大丈夫だから」

「とはいってもなぁ。僕たちあんまり金持ってないし、ましてや生徒たちまでなんて書かれてたらなぁ」

「大丈夫だって。何かあっても俺が対処するから」

「ならいいけど」

 

 

 そう言って全員で学校に帰っていく。時間までは各々自由時間とした。

 僕もまだまだ改良しないといけないものがあるし、新技もまだまだだし、それにいつの間にか悪魔召喚が上級悪魔召喚になっている。

 なんでも自分自身の魔素量や強さに比例して上がっていくらしい。悪魔の召喚に関してはこれが今のところ最大らしいがこれ以上にしようとするととんでもないものが出てくるとかなんとか。

 

 学校の中庭で重力の練習をしていると遠くから走ってくる影があった。

 

 

「シスタ、あたしが遊んであげてもいいわよ」

「なんでリムルには先生で僕にはタメ口なんだよ」

「いいじゃない。それでどうするのよ?」

 

 

 ここで断るとまた顔を合わせてくれなさそうだし僕もすぐに準備して夜の時間までアリスと街を散策することにした。




感想や評価欲しいです


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8話

少しアンケートをやります
回答していただけると嬉しいです。


 アリスと街に出かけることになってからすぐにいろいろなものが目に入る。この街は広いし、いいものばかり揃っているからついつい目移りしてしまう。

 

 

「ねぇ、シスタあれ食べたい」

「おいおい、このあとは飯なんだぞ」

「なら半分はシスタが食べてよ」

「はぁ、しょうがないか」

 

 

 その店でアリスが頼んだのはケーキだった。この世界でまさかケーキを食べることができると思ってもみなかった。

 アリスから半分切って貰って食べるとケーキはどこの世界でもうまいということが証明される。

 

 

「美味しいのかしら?」

「アリス僕に毒味をさせるのはやめてよ」

「そういうのじゃないわよ。ただシスタはどう感じたのか気になっただけよ」

 

 

 アリスはそう言いながらケーキを詰め込んでいく。あーあ、そんなに一気に詰め込んだら……

 案の定アリスは苦しそうにしていたので水を渡した。

 

 

「そんなに一気に詰め込むから」

「うるさいわね!いいでしょ」

「全くここにもクリームついてるし」

 

 

 僕は体を乗り出してアリスの口の周りについていたクリームを布巾で拭き取る。その際にもアリスから顔を逸らされたがそんなことをされると拭きにくいんだけどなぁ。

 

 

「ありがとう」

「いいえ、どういたしまして」

 

 

 アリスとそこからは街中を散策していく。僕は初めてだけどアリスにとっては何度も行っている街じゃないのかな?

 

 

「アリスは楽しいか?」

「なによいきなり?」

「ここはアリスにとっては見慣れてる街だろ」

「そうね、それならおんぶしなさいよ」

「なんでそうなるんだよ」

「いつもと目線が変わったら何か変わるかもしれないじゃない」

「はいはい仰せのままに」

 

 

 僕はそこからアリスをおんぶして歩くことになった。疲れることを感じない体でよかった。いや疲れるんだけどアリスは軽いから助かるのかな?

 

 

「シスタ重くないかしら?」

「全然、むしろ軽すぎるぐらいだよ。飯食べてる」

「失礼ね!食べてるわよ」

「ならよかったよ」

「あんたずるいわよ」

「ん?」

「なんでもないわ」

 

 

 そこからは街を散策してるうちにアリスは背中で眠ってしまった。このまま寝かせていてもいいけど着く前には起こさないとまたみんなになんか言われそうだな。

 

 

(シスタ!そろそろ時間だけどお前どこにいるんだ?)

(リムル、そろそろ向かうよ。そっちの4人連れてきてくれ。アリスはこっちにいるから)

(わかったよ。あと白い服にしてくれよ)

(ん?なんで?)

(こっちが全員そういう服なんだよ)

(りょーかい)

 

 

 僕はすぐに服屋に向かう。アリスを起こすのはついてからでも構わない。といってもあんまり時間がないのも事実なので僕は誰もいない路地から空に飛びそのまま店まで急降下していく。

 店の裏手には誰もいないのを確認してだが。アリスはついた時の衝撃で目を覚ましたようだ。

 まぁあえて衝撃はゼロにしてなかったのだけれどそれは言わないでおく。

 

 

「なんなのかしらこんなところに連れてきて」

「とりあえず服買うぞ。みんな白い服で行くらしいからアリスも好きな服を選ぶといい」

「わかったよ」

 

 

 アリスはそこから服を見ていく。あんまり時間がないから早くして欲しいんだけどと思っているともう帰ってきた。会計を済ませて店を出る。なんだか会計が少し高かったような気もするがそれは心の中にだけに留めておく。

 

 

「〜〜〜♪♪♪」

「なんかアリス上機嫌だな」

「そ、そんなことないわよ!」

 

 

 みんなのところについてそこからは僕とリムル、そして子どもたちに別れて飯を食べさせてもらう。リムルと僕はミョルマイルの前に移動する。僕は画面を外しているがリムルはまだつけている。

 リムルは正直人間と間違えるほどまだ魔素をコントロールできていない。僕はコントロールはできている。

 

 

「それでミョルマイルにはなにを頼むんだ?」

「それはうちでの仕事としてのノウハウを生かしてもらおうと思っている」

「はぁ、なるほどね。それじゃあ今ここで聞くのは失礼かもだけどあんたは信用にたる人物なのか?」

「おい、シスタ」

「いやリムル殿これは真っ当な質問ですな。確かにリムル殿と違いシスタ殿はワシとあったのは先ほどだけですからのぉ」

「そういうことだ。正直にいうと信用できる要素がない。特に商人という立場の人間は」

 

《マスター言い方が悪いですよ》

(やかましい、ほっとけ)

 

「確かにシスタ殿のいう通りです。ではあなたたちの街での自由行動の許可をいただきたい。それでワシの信頼性を確かめてくだされ」

「その辺りが妥当か。しばらくテンペストでの自由行動を許可する。うちの奴らには伝えておくから自由に行動してくれ」

「だからなんで俺蚊帳の外なんだよ」

 

 

 リムルがぶつぶつ何か言っているがお前だってユウキのとき僕も蚊帳の外だったんだからな。

 ミョルマイルはそこで立ち去り、ソウエイに連絡しておいた。ソウエイならうまくやってくれるだろうから。

 それにしてもここの飯はうまい。さすが高級料理店だよな。

 飯も食べ終わり奇跡的に僕たちは精霊の住処を聞くことができた。これでシズさんがこっちにきた時と同じようにこの子たちに上位精霊を宿すことができれば助けられるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白く透明な城の中歩く1人の影。本来であれば主人の許可がなければそのような行為も許されない。だが歩く人物はそのようなものを取りはしない。

 それは対等であるという証でもある。

 

 

「ギィ私少し出掛けたいのだけれど構わないかしら?」

「構わないぜ。けどどうした珍しいこともあるもんだ」

「少しだけ気になる人がいるのよ。いえ人と言っていいのかしらね」

「まぁ構わん。好きにしろ」

 

 

 そう言葉を発したのはギィクリムゾン。この世の頂点である十大魔王の一柱で最古の魔王の1人である。そしてもう1人この世における最強の生物竜種の一体である白氷竜ヴェルザード。

 この城においてはギィと対等なのは彼女ただ1人であり、それ以外にいるものは主人の許可なく行動を許されてはいない。

 

 

 

 

 ギィは珍しく思っていたヴェルザードが頼み事をしてくるのは珍しい。というか初めてである。今まで自由に行動を許していたがそんなことを頼んできたことは今の瞬間まで一度もない。ギイは珍しく思いつつも城を歩く。ヴェルザードはすでにたったようだ。それ以上はなにも考えずに城にある玉座に座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東の帝国。またの名をナスカ・ナムリウム・ウルメリア東方連合統一帝国。その皇帝であるルドラはかつてよりギィクリムゾンと世界を賭けたゲームを重ねるものである。その側近には蒼い髪をした女性がたたずむ。

 彼女は建国当時からいる人物であり彼女の本当の姿を知るものは少ない。

 

 

「ルドラ私少し出掛けるわね。気になるものがいるの」

「構わん」

 

 

 そう言ったのは帝国内ではグリンドと呼ばれる皇帝の側近であった。しかし実際のところは違う。グリンドとは名前の一部をとっただけであり実際は灼熱竜ヴェルグリンドなのだ。彼女もこの世における最強の竜種の一体である。

 しかし帝国内に置いて彼女の本当の姿を知るものは少ない。

 仙人と呼ばれる人物や一部の達人などは建国当時からいるので知っている者もいるがほとんどは大きくなると同時に増えていったので知っているものは少ないのだ。

 

 ヴェルグリンドは答えを聞いてある場所に向かう。その場所はイングラシア王国。そこである人物に出会うためだ。

 しかし彼女もいや彼女ですら想像にしていなかった。そこで姉に会うということは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨日は随分と美味しいものを食べさせて貰った。信頼に足る人物かどうかはさておき子どもたちも喜んでいたからよかったと思う。

 

 朝から準備していると部屋の扉がなった。いつもみたいにリムルかなと思い開けてみると1人の女の教師だった。

 

 

「シスタさんお客様が見えておられます。今日は学校には来なくていいとのことです。校長からそう聞いております」

「わかりました」

 

 

 はぁ?とりあえずこの人に当たってはいけないと思いその場は聞き流すが明らかにおかしい。こんなこと今までなかったのに今日お客が来るなんて聞いてもないし予定にしていない。

 そして客が待っているという応接間に行くと2人の女性がいた。

 

 

「初めまして、白氷竜ヴェルザードと申します。お見知り置きを」

「灼熱竜ヴェルグリンドと申します。以後よろしく」

 

 

 なんでこんなところに竜種が2体もいるんだよ!しかも目的は僕?なんで?ちょっと待て。これは夢だろうと思いほっぺをつねる。痛みがない。あぁ、やっぱり夢なんだ。さてともう一度寝るか。

 

 

《否痛覚無効のスキルです》

 

 

 ですよねー!!ルウェルからのツッコミを受けつつ現実に戻る。さて、なんでこの2体がいるのかを考えてみるもののなんでなのかは未だに意味不明だ。

 

 

「ところでヴェルグリンドあなたは帰りなさい」

「あら姉さん随分と冷たいのね。だから技も冷たいのね」

 

 

 2人とも笑っているけど体からまそが溢れ出てきている。そのせいでソファの一部が燃え、もう片方は凍り始めている。

 

 

「ストッープストップ」

「あらなにかしら?」

「邪魔するなら殺すわよ」

「殺されるのは嫌だけどとりあえず落ち着いて。もう少ししたら場所を移動しよう」

「今すぐじゃダメなのかしら?」

「まだ店が空いてないんだよ」

「なら加速させるわ」

 

 

 そういうとヴェルグリンドは世界の時間を加速させる。というか僕はなにもわかっていない。ルウェルが説明してくれただけでなにをされたかもわかっていない。

 時間が昼前になったので僕は2人を連れて店に向かう。向かうのはケーキ屋だ。

 2人とも女の姿なので甘いものは好きなのかもしれないと思い向かう。

 そしてなにも起こらず店につき店主に本音は隠しつつ店に通してもらうことになった。




評価1が入りました。まぁ現状これが周りからの意見だと受け止めたいと思います。

少しだけショックですが……


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9話

メロンカントクさん評価ありがとうございます


三人称で書いてて途中で迷走してしまいました
もう少し書きながら練習します


アンケートに答えてくださった方ありがとうございます


 イングラシア王国にある一つのケーキ屋に異様な雰囲気が漂っている。2体の竜種に一体のスライム。周りから見てみるとその光景は3人の美女がただ団欒しているだけに見えるが実際は違う。

 

 スライムの方、シスタテンペストは内心汗が止まっていない。前に美女2人いるだけならよかったと思うほどに。

 

 

「それで今日はなにしにきたんですか?ヴェルザードさん、ヴェルグリンドさん」

「ふふ、さんはいらないわ。ヴェルザードで構わないわよ」

「姉さんと同じ意見ね。ヴェルグリンドでいいわ」

「なら、なにしにきたんだ?」

「そうね。そろそろ本題に入りましょうか」

「そういえば姉さんはなにしに来たのよ」

「この子シスタテンペストに興味があるのよ」

「あら、私と同じ理由なのね」

 

 

 シスタは内心ドキドキしている。この2人の竜種見た目はとんでもないぐらいの美女なのだ。その2人から興味があると言われれば前世で男だったこともあり緊張してしまうのも無理はない。

 そんなところでケーキが出てきた。初めてみるものに警戒して手を出さないが目の前でシスタが食べることで2人も食べ始める。すると目を開き食べ始めた。よっぽど美味しかったんだろうとシスタは笑いながらその光景を見る。2人はそんなことを気にもせず、食べ進める。

 

 

「よっぽど気に入ったみたいだな」

「ええ、人間もなかなかの物を作ります」

「これはギィも喜びそうね」

「ギィ?」

「ええ、魔王ギィクリムゾンよ。私と同じところで暮らしているわ」

「なるほどね。それじゃあお土産も買って行こうか」

「そうね、と言いたいところだけどあそこに行くまでに固まるわ」

「それなんだけど僕が持って行ったら影響ゼロだよ」

「!!!。どういうことかしら?」

「胃袋に入れる。そしたら変わらない鮮度でいけるから」

「なるほど。それならいけるかもしれないけれどもぐちゃぐちゃになったら意味ないわよ」

「わかってるそこら辺ことは任せて」

 

 

 その言葉を聞きヴェルザードもヴェルグリンドも驚きの顔を隠せない。

 けれどシスタにとってはそんなことは関係なく2人を連れて出て行く。そして帰りにお土産も忘れずに買って行く。

 

 

「それで次はどこに行くのかしら?」

「ヴェルグリンドはせっかちだなぁ。とはいえ行くところぐらい言っておくよ。服を買いに行く」

「私たちに服なんて不要だけれど」

「ええ、その通りね」

「2人とも好きな人がいるんだろ。ならオシャレしないとな」

 

 

 シスタが放った何気ない一言に2人の竜種は顔を赤くする。2人とも好きな人がいるようでシスタが何気なく放った一言は2人の確信をついていたのだ。

 3人は何気なしに歩いて行く。けれどその一歩一歩は周りの目を確実に集める。この世のものとは思えない美女が2人そしてその隣を歩く男か女かわからない性別の者も顔が整っているのだ。

 歩くと周りからは嫉妬の目線が飛んできた。

 

 3人は服を買いに中に入る。そこでも3人の存在感は飛び抜けており、入ると周りからの視線を集める。シスタは気にしているようだが2人は気にしはしない。

 

 

「2人ともどんな服にする?」

「そうね、どんなのがいいのかしら?」

「わたしもわからないわ」

「それならいろんな服を着てみよう」

 

 

 シスタはそこから様々な服を2人に着せて行く。しかし途中で失敗したと思ってしまった。ヴェルザードもヴェルグリンドもどんな服を着せても似合ってしまう。素材が良いだけに服が負けてしまうこともあった。

 

 

「よしここからここまで全部ください」

「「!!」」

 

 

 2人は驚いているがシスタは驚かない。元々かなりの量を買うつもりだったし、そのためのお金は持ってきている。

 2人にはワンピースを着てもらい移動してもらう。ヴェルグリンドのチャイナ服よりはまだ目立たないと思うしまだこちらの方がマシだ。

 

 3人はそのままいろんなところを周り時間がたったので帰ると言ってきた。

 2人に言われてシスタは一度町を出る。少し歩いたところで2人は腕だけドラゴンの形態にして鱗を一枚ちぎった。そして2人ともそれをシスタに渡す。

 

 

「なにこれ?」

「今日のお礼です」

「ええ、受け取って」

 

 

 受け取り意味がわからずどうしようかもシスタは悩んでいるとルウェルから受け取るように言われたのでシスタは受け取ることにした。

 

 

「それじゃあシスタはギィのところに行きましょうか」

「あぁ」

 

 

 ヴェルグリンドは羽だけ出して飛んでいき、そのあとヴェルザードはドラゴン形態になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 音速の数十倍というスピードで飛ぶ、生物がいるとしたら竜種である。その上に一体のスライムが乗っているなんてことは誰にも予想も出来ず自分の城に帰ると上級悪魔に止められる。しかし彼女の隣にいる以上そこに住む悪魔たちはなにもいえない。

 彼女の隣に並んで歩いて進んでいくと2人は大きな扉の前に着く。

 扉の前にはメイドの姿をした悪魔が2人控えていてヴェルザードがなにも言わないでも扉を開けた。

 

 

「ただいまギィ」

「あぁ」

 

 

 シスタは本能が言っていることを理解した。この魔王はやばい。ミリムと同じ気配がする。この魔王相手に喧嘩を売る奴はいないと思う。

 

 

「お土産よ。シスタ」

「了解」

 

 

 胃袋の中からケーキを出す。するとメイドの2人がテーブルと机を持ってきてくれたので胃袋に収納してあったケーキの箱を出す。

 

 

「なんだこれは?」

「ギィ食べてみてちょうだい。びっくりするから」

「仕方ない」

 

 

 ギィと名乗る魔王はそれを食べて驚いていた。初めて食べたんだろう。この世界には甘い物を作れるものはなかなかいないし、これを作ったのも多分だが異世界人だ。

 

 

「ほう、なかなかの物だな」

「それじゃあ僕はこれで」

「まて!せっかくきたんだ。少しぐらい戦ってから行け」

「なぁ!?魔王相手になにをしろと」

「戦うのは俺じゃない。ミザリー!来い」

「はい」

 

 

 きたのはさっきのメイドさんだ。この人が纏っているオーラもベニマルほどだけど多分本気じゃないと思う。

 

 

「さてやってもらおうか」

 

 

 城の外に4人は出る。シスタは肩の双剣を抜きミザリーはなにも構えない。

 そして魔法を放ってきたのでシスタはそれを切るつもりで刀を構えたが片方で切った瞬間刀が砕けた。

 

 

[魔法を切るには魔法纏気が必要です》

 

(解説よりやり方!)

 

《魔法を刀を纏わせる感覚です》

 

 

 あーもうルウェルはなにを言ってるんだ!試しに砕けた刀の柄を黒炎を出して刀の形に制御する。これがなかなか難しい。

 その間にも魔法は飛んできてそれを黒炎を形作った刀で切る。

 

 

《マスターその感じで刀に纏わせてください》

 

 

 もう一つの刀に黒炎を纏わせる。これはあんまり時間が持ちそうにない。何せ刀自身が黒炎に耐え切れていない。

 時間がないので突進気味に突っ込んでいく。魔法を斬りつつ近づいていき目の前まで迫ると罠魔法が発動した。

 単純な拘束系魔法だが時間がない僕からすると鬱陶しい。

 重力で無理矢理周りを重くし相手を落としてなんとか勝った。今回は殺し合いじゃないので殺す必要もない。

 僕は自分が開けた大穴に入っていきミザリーを引き上げる。

 

 

「ハハハまさか勝つとな」

「ええ、驚いたわ」

「ミザリーには手加減するようには言っていたが勝つとは思ってなかったぞ!」

「はぁ……」

「お前俺の部下になれ」

「お断りします」

「ほうなぜだ」

 

 

 ここでの答えに間違えると僕は多分死ぬな。

 

 

「僕自身が命令されるのは嫌いだから」

「ハハハ!なかなかに面白い奴だ。俺を前にしてそんなことを言えるとはな」

「ふふ、ギィったら意地悪な質問ね」

「困ったら頼ってくるといい。手をかせることなら貸すと約束しよう」

「どうも」

 

 

 僕はそこからイングラシア王国に向けて飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その悪魔は妖艶に笑う。今の今まで見ていた戦いに興味が湧いたのだ。戦っていたのはかつて冥界に住んでいて、自分と同等と言われていた物だ。

 その相手をしていたのは人間だろうか。映像だけでは分かりにくい。

 だけれど興味が湧き配下に加わりたいと思うほどになってしまった。

 

 

「フフ、召喚していただけたら必ず」

 

 

 そういい妖艶に笑って召喚の日を楽しみに待つことにしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あーあつまんないの。

 その悪魔はつまらなそうに他の悪魔を殺す。決して自分から喧嘩を売っているわけではないが売られた喧嘩は買ってしまうのが悪魔だ。

 

 

「こちらを」

 

 

 配下の悪魔に見せられたのは一つの映像。そこに映っていたのはさっきまで行われていた映像だった。それはその悪魔にとって興味深く面白い物で目を惹かれていく。

 

 

「わぁ、すっごいねこの人?」

 

 

 悪魔は無邪気に笑う。やりたいことは決まった。召喚される時必ずこの人のところに行こう。そしてこの人の配下になると悪魔は決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また別のところでも惨劇は起きていた。その悪魔は極めつけに力が強くあたりは転がる悪魔だらけだった。

 

 

「つまらん、何か面白いことはないのか」

 

 

 その言葉に配下の悪魔たちは戦慄する。自分たちの主は力は大きいが俗に言う飽き性なのだ。その度に納めているが今回はそのネタがない。すると1人の悪魔が映像を出す。

 

 

「これなんていかがでしょうか?」

「ほう」

 

 

 見せたのは一つの映像の中での戦いだった。その映像に主は興味津々のようでどんどんとその映像に釘付けになっていく。

 

 

「命令だ。これからこの方が召喚なされるときは我が自らいく。その時には我に知らせよ」

 

 

 悪魔たちは一堂に返事をする。その言葉には今までの命令とは違う強い意志が篭っていたので誰も否定できずにいた。

 またその悪魔も楽しそうに笑う。やっと楽しめそうなことができたのだ。これを機に楽しまなくてどうすると言う気持ちで召喚の日を待ち遠しく思う。



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10話

エル1号さん評価ありがとうございます


初めての色は黄色!ここから赤にできるように頑張りたいです


 空を飛ぶ人間が1人。いや人間と言っていいのかはわからないが飛翔体がすごいスピードで飛んでいく。

 

 はぁ、イングラシアまで遠い。ヴェルザードも無茶苦茶なところに連れていくしやれやれ。

 

 

《スキル停止を獲得しました。スキル加速を獲得しました》

(ん?なにそれ?)

(ヴェルザード、ヴェルグリンドの因子から獲得した物です)

(んーよくわからん)

 

 

 試しに加速を使ってみると使いきれない。そのまま制御できずにイングラシアの前の草原に落ちた。

 

 

《マスターまだまだですね》

(やかましいわ!これ難しいんだからな)

 

 

 ルウェルが少しむかついたのでしばらく無視することにした。何か言っているがわからないので無視することにした。

 

 そのまま教師寮まで戻り部屋に入るとリムルが部屋にいた。少し疲れた様子をしていて何かあったんだろうかと不安になってくる。

 

 

「シスタ今日はどこに行ってたんだよ」

「急な来客だよ。校長から聞いてるだろ」

「まぁそれはいいんだけど明日アリスからすごい責められるぞ」

「なんで?」

「精霊の住処の話をしていて明日行く予定なんだよ。その準備があったんだけど特にアリスがシスタを気にしてたよ。明日は来るのか?とかなんでいないのか?とかな」

「マジか」

 

 

 そんな話を聞いていると部屋の扉がなる。もうかなり夜も遅いのにこんな時間に誰だと思いドアを開けてみるとクロエとアリスだった。

 

 

「どうしたこんな時間に?」

「ねぇ先生。わたし達明日も大丈夫だよね?」

 

 

 リムルが相手をしているのを聞いて納得した。この子達は不安なのだ。だからこそ毎日毎日を楽しく過ごそうとしている。たとえその結果が上の人間んに対してきつい結果になったとしても。

 

 

「そっか。ちょっと食堂に行こうか」

「シスタ?どうする気だ?」

「ほらアリスもクロエも」

 

 

 4人で食堂に向かう。そしてホットのココアを作る。こういう時に甘いのは落ち着くんだ。

 

 

「リムル明日はいやその前にお前らの分もあるぞ。良太、剣也、ゲイル」

「バレてた!」

 

 

 みんな美味しそうに飲んでくれる。小さい時に召喚されたからこういうのも知らないのかもしれない。可能ならたくさん教えてあげたい。けれど僕とリムルはこいつらを助けたら帰らないといけない。帰りを待ってる奴らがいるんだから。

 

 

「それでシスタ明日は遠征だからな」

「はいはい。みんなもその用意でな」

「今日はシスタがいなかったんじゃない」

「そうだよ!それなのにえらっそうに」

「あれ?これ僕が攻められてる?」

「「「「「「あはははは」」」」」」

 

 

 みんな笑う。こんなのでみんなが幸せになるなら僕はいつでも受け皿になるよ。アリスたちを部屋に送り僕は最後に外に出て新しいスキルの実験だ。なにがあるかわからないから試しておいて損はない。

 空を飛び加速を使う。これ使えるとかなり楽になるはず。結局何度か使ってみたがうまく使えない。そのうちになんだかやばいところにきたみたいだ。

 

 

(ルウェルここどこ?)

《傀儡国ジスターヴです》

(ん?周りからすごい圧を感じるんだけど)

《ここは魔王クレイマンの領地ですから》

 

 

 やばいここから逃げようとすると目の前から小さな狐がやってきた。いや狐と言っていいのかもわからない。僕が知っている狐は尾が一本なのにこの狐九本もある。

 

 

「どこだ!探せ」

「こっちじゃないのか?」

 

 

 よくみてみるとこの狐ところとごろに怪我をしている。慌てて完全回復薬を出してかけようとするとその狐は怒りながら睨んでくる。

 

 

「大丈夫だ。その怪我を治してやる」

「ガルルルル」

「ん?」

 

 

 狐ってこんな泣き声だったかな?そして少し考えたのか落ち着いて目の前で座る。完全回復薬をかけて傷は治る。すると僕に安心したのか頬ずりしてくる。

 

 

「名前をつけてやる。そうだな九本の尾だからクマラだ」

 

 

 すると目の前の狐はどんどん形を変えていき狐の耳がついた人の姿になった。体つきも変わり女の体型だ。

 そこに邪魔をするようにさっき叫んでいた奴らが目の前にやってくる。

 

 

「おいキサマここら辺に尾が九本の狐がやってこなかったか?」

「なんでそれを探している?」

 

 

 後ろに隠れているクマラに手で制しまだ待てという合図を送る。怖がりながらもさっきの仕返しをしたいみたいだ。

 

 

「キサマには関係ない。いたのかいなかったのか答えろ」

「ならはっきり答えてやる。クマラ!」

「了解でありんす。ありがたき幸せ」

 

 

 するとクマラが目の前に行きそこにいた奴らを蹂躙し始める。その時間はすぐにたち、10人ほどいた奴らは5分ともたないまま全員が死んだ。

 

 

「強すぎない?」

「ありがとうございます。えっと」

「シスタ、シスタテンペストだ。これからは大丈夫そうだな」

 

 

 その場を立ち去ろうとするとクマラが掴んでくる。いや進めないんだけど。

 

 

「わちしも連れて行って下さい」

「う、ん?あれ故郷には帰らないの?」

「故郷にて売り飛ばされた身ゆえ」

「なるほどね。それなら僕たちの国に来るか?」

「いかせていただきやす」

「じゃあ行こうか」

 

 

 クマラを抱き抱えて空を飛ぶ。今回は加速は無しだ。加速をしてもいいんだけどテンペストにうまくつける自信がない。

 そのまましばらく飛んでいくとクマラも景色を見る余裕が出てきたみたいでテンペスト付近になりなんとかテンペストに着く。2人で飛行って難しいと感じた時である。

 

 テンペストはもう夜も遅いため家に向かう。しかし遅いなんてことはなく向かう途中いろんな奴が挨拶してくる。後ろにいるクマラに疑問を感じながらも僕と一緒だからなにも言ってこないんだろう。家につき中に入るとリビングの机にふせてシュナが寝ていた。

 

 部屋に戻り布団をかけて紙に内容を書きクマラには今日はここで寝るようにいう。紙に書いたのはクマラのことだ。まだ帰ってこれないためシュナが面倒を見て欲しいと書きイングラシアに戻る。

 

 結局イングラシアに戻ってからはスキルの練習はしなかった。また朝になりみんなに責められるかもしれないからだ。部屋に戻りルウェルに起こすように言ってから寝る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自由学園の校門前。シスタやリムルをはじめとした7人、そしてランガには緊張が走っている。これから向かうのは精霊の住処だ。

 リムルたちは空を飛ぶ準備をする。けれどリムルはふと思う。自分は跳べるが子どもたちは飛べない。

 

 

「先生僕たち飛べないんですけど」

 

 

 ゲイルがそう質問する。それに同調するかのように他の生徒も無理とかできないという。それにはリムルも同じ意見だ。

 しかしシスタは違う。リムルよりも魔素の扱いにたけ、シスタが使う重力操作においては自分だけにとどまらない。周りの生徒たちを浮かせていく。

 

 

「ビビるなよ。無駄に動かれるとキツいからさ」

 

 

 その言葉に生徒たちは了解して体を委ねる。リムルまで及ぼさなかったのはリムルは空を飛べるからだ。

 

 そのまま飛んでいき、あっという間に7人はウルグレイシア共和国、精霊の住処の前についたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 精霊の住処。聞いていた以上になんか漫画に出てきそうな場所だった。扉を開けて中に入ると暗い。目の前に火の魔法を出して灯りがわりにして進んでいく。それでも子どもたちには恐怖を感じるようで服の裾を掴んできている。

 

 

「進みにくいんだけど」

「なによ!ちょっとぐらい掴ませてくれてもいいじゃいい」

「先生ごめんなさい。僕もちょっと怖くて」

 

 

 アリスに良太がそう言う。怖いのはわかったけどなんで掴んでてそんなにも偉そうなんだろう。ふとそう思うがそれ以上言うとさらに追撃が来そうなのでやめておく。

 進んでいくと広場に出る。なかなか広いがなんだか声が聞こえてきてでかい機械兵が来た。

 

 

「勝てるかな勝てるかな」

「どうするシスタ」

「僕がいくよ。この妖精にも腹立ってるし」

「了解だ。子どもたちは任せておけ」

「ああ」

 

 

 そういい機械兵がパンチを出してくる。でかい図体の割になかなか早い。けどミリムなんかと比べると話にならないスピードなので躱せる。そして手に入れた加速と重力を合わせて使う。するとその機械兵はすぐにブラックホールに飲み込まれていく。

 

 

「うそだ!そんな」

「早く出てこい。隠れてる場所はわかってるから出てこないと燃やすぞ」

「はいでます。でまーす」

 

 

 急いで前に飛んでくる。それは黄色い球が飛んできてそれは妖精の形になる。

 

 

「聞いて慄け。我は偉大なりゅ!」

「あ、かんだ」

「噛んだな」

「それで誰?」

「我は偉大なる十大魔王の1人迷宮妖精のラミリスなり」

 

 

 こうして僕たちの目の前に現れた魔王を名乗る妖精と会うことになったのだ。



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11話

 精霊の住処。その大広間で2人のスライムは固まった。目の前の妖精が魔王というのだから。子どもたちはともかくシスタとリムルこの2人はミリムという埒外な魔王を知っているためどうしてもあれ基準になってしまう。

 

 

「お前が魔王〜うそだろ」

「なにをー!失礼なやつ。あたしが魔王以外のなにに見えるってのさ」

「アホの子?」

 

 

 リムルがはっきりとそういう。それを聞くシスタは驚きを隠せない。いや確かにそうかもしれないけどはっきり言い過ぎだろうと思ってしまう。

 

 

「友達にミリムって魔王がいるんだけどそれに比べるとなぁ」

「ミリムってあんたらまさかジュナの森の盟主になったっていうスライム?」

 

 

 こいつ言いやがったとシスタは思う。今までリムルと僕は子どもたちに言っていない。けれどこの状況で隠すのはもう無理だ。2人で目を合わせてスライム体形になり、近くにいたクロエとアリスに飛びつく。

 

 

「わぁかわいい」

「なによシスタ教えてくれてもよかったじゃない」

「悪かったよ」

「それでなんのよう?」

 

 

 そこから僕とリムルは話す。その間子どもたちは精霊たちと遊んでいる。ランガも犬としての本能なのか動くものを追いかけている。

 

 

「なるほどね〜苦労してんのね」

「それで協力してくれるのか?」

「もちろんただとは言わない。代わりのゴーレムも用意しよう」

「へぇ、もちろん召喚に協力してあげる。あたしは平等だからね」

 

 

 2人は思う。その時のラミリスの姿言葉には確かな説得力があった。これを続けていたら確かに精霊女王と言われる所以もわかる。

 ただきた時の印象が強いからなんとも言えないが。

 

 そこから精霊を呼ぶという祭壇に向かう。まずはゲイルから行くみたいだ。年長だからというらしいがそんなことで行かなくてもいいと思う。付き添いにリムルと僕はついて行き上に上がる。

 

 

「先生無理だったらあいつらのこと頼みます」

「心配すんな」

「そうだぞ。最悪悪魔でもなんでも従えてやる」

 

 

 リムルがそういう。いやその顔こそ悪魔みたいなんだけどなぁとラミリスとシスタが思うがそれ以上は2人とも口にしない。

 

 ゲイルが目を瞑り祈りを捧げる。しかし来たのは下位の精霊だった。ここでリムルとシスタは目を合わせる。2人とも策があるようで下位の精霊のリムルが捕食しそれをシスタに渡す。

 

 

《告スキル変質者で精霊の統合を行いますか?》

 

 

 シスタは心の中でイエスと答える。するとルウェルはせっせと新しい精霊を作ってそれをゲイルに憑依させる。その間シスタは手をゲイルの頭の上に乗せてるだけだ。

 

 そして終わり2人は鑑定してみると魔素の流れが安定している。これでもう体の崩壊は防げるだろう。

 

 

「よくがんばったなゲイル。もう安心だ」

「先生」

「おっと泣くのはみんなが成功してからにしようぜ」

 

 

 そういいゲイルは降りていく。次はアリスの番だ。

 

 

「お願いシスタだけきて」

「だってさシスタ」

「了解」

 

 

 精霊の統合のやり方はすでに思念伝達でシスタからリムルに伝わっている。

 アリスと歩いて行こうとすると服を掴まれる。何かと思い振り向いてみると顔を赤くして下を向きながら

 

 

「連れて行ってちょうだい」

「仰せのままに」

 

 

 シスタはアリスをお姫様抱っこして連れて行く。それに少し安心したような表情を見せるアリス。

 祭壇に2人はつきアリスは祈り始める。しかしきたのは下位の精霊だった。それを捕食してアリスに統合する。

 

 

《個体名アリスロンドの属性は空です。影移動との統合を行い影移動が空間移動に進化しました》

 

 

 シスタはふと思う。ルウェルさんは精霊の統合よりスキルの進化をしていたみたいだ。まぁもっともこっちの方をちゃんとしてくれたら問題ないからなにも言わないでおこう。

 

 

「良かったなアリス成功だ」

「シスタありがと!」

 

 

 そういい頬のキスしてくれる。いや7歳だから欲情なんてしないし、スライムだから周りからはなにもわからないだろう。

 しかし隣でラミリスがおちょくるようにしているのは腹が立つ。炎を出して脅す。しかし本気ではない。このラミリスがいないとこんなことできなかったんだから。そしてアリスを連れて下に降りる。次は剣也の番だ。

 

 

 シスタとリムルは2人で上がっていく。剣也も上がり祈りをしようとした瞬間

 

 

「おいーす。オイラ光の精霊」

 

 

 軽い挨拶をしてきた。それに対してラミリスが口を開く。

 

 

「あーあんた人の家になにしにきてんのよ」

「そこの邪悪な精霊と違って純粋な光の精霊様さ」

「誰が邪悪よ!」

 

 

 そしてシスタとリムル2人でも話についていけないのにそれ以上に話についていけない剣也は周りをキョロキョロしている。

 

 

「君名前は?」

「剣也」

「そっかーならけんちゃんだ。けんちゃんが大人になるまではオイラが見守るよ」

 

 

 そういいその精霊は剣也の中に入って行った。

 

 

「あ、宿った」

「先生」

「あぁ、計算通り。心配すんな!あっははは」

 

 

 リムルがそういい誤魔化す。確かにゲイルとアリスは下位の精霊で2人とも統合してなんとかしたからてっきりそうなるものだとシスタも思っていた。

 だからこそ勇者の資質を持つ光の精霊には驚いた。まぁその辺はおいおいわかっていくだろう。

 リムルと剣也と下に降りていく。下の子どもたちに見られてないかだけが心配だ。

 

 

 

 

 

 

 その後良太の番になりリムルとシスタが一緒に上がっていく。良太が祈りを捧げるときたのは下位の精霊でそれをリムルが統合してそれを良太に宿す。

 ここまでは順調に進んでいった。なにも起こることなく。

 

 そして最後はクロエの番になりクロエはリムルに連れて行って欲しいと言ったのでシスタは下でお留守番だ。

 そしてクロエが祈りを捧げるとそれは起こった。目の前に精霊ではない人の形をしたものが現れた。

 

 

「待て、お前の好きにはさせないよ」

 

 

 そういいながらラミリスは手に魔力を集めていく。そしてそれを放とうとするとその人の形をしたものはリムル、そしてシスタの近くを通りクロエの中に入っていく。

 その時子どもたちは喜んでランガと遊んでいたため見ていた人間はいない。

 

 

「はぁーもうダメダメ。あたしは知らないからね」

「結局何だったんだ?」

 

 

 そう聞くリムル。話によればさっきのやつは精霊ではないとのこと。それを聞いてもよくわからない。リムルとシスタはそう思うが今2人の思っていることは一つだ。

 クロエが無事ならそれでいいんだ。

 

 

「ありがとなラミリス」

「あぁ本当にありがとう。おかげでこの子たちを助けられた」

「「「「「ありがとうございました」」」」」

「感謝する!」

「もーそんなのいいってば!」

 

 

 そう言いながらラミリスは恥ずかしそうに飛び回る。これが魔王だっていうんだから世の中不思議なこともあるものだ。

 そして帰る直前にリムル様魔鋼で作ったゴーレムに上級悪魔を召喚させてそれを憑依させた。

 

 ラミリスは驚いていた。悪魔召喚してそのまま自分の部下になるなんて思ってもしなかったから。最初は遊び半分でいってみたけどまさかここまでのものを用意してくれるとは思いもしなかったからだ。

 

 

「我が名はベレッタ。ラミリス様にこれからお仕えします」

「おお、頼むよ」

 

 

 せいぜい威厳を保ってくれよ。主人としてさ。と思ってその場を後にするリムルだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 精霊の住処から帰ってきた次の日。イングラシアの入り口で子供達5人は泣いていた。

 

 

「先生いやだよ」

「悪いな。クロエ」

「早く行きなさいよ。行けばいいのよ」

「あ、そうだ。みんなにお土産があるんだ」

 

 

 そういうシスタ。リムルもそれを聞いて思い出したように5着の羽織を出す。一人一人着せていく。

 

 

「そうそうアリスのだけだぞ。裾のところにレースがついているのは」

「わぁかわいい」

 

 

 シュナがつけてくれたものだ。流石シュナだな。特徴を言っただけなのにいい仕事をしてくれる。これで大丈夫だろう。

 

 

「じゃあまたいつでもテンペストに来いよ!」

 

 

 そういうリムル。シスタは何も言わずに行こうとすると

 

 

「やっぱりやだよ!先生」

「アリス。絶対別れるわけじゃない。それにいつでもテンペストに来てくれ。そうだなぁ。リムルが仮面をクロエにあげたから喜ぶかわからないけどこれやるよ」

 

 

 渡したのは二本の刀のうちの一本だ。片方は折れていたから折れていない方を渡す。

 

 

「じゃあなアリス。それにみんな」

「バイバーイ」

 

 

 リムルとシスタは手を振って帰る。シスタは予めリムルに話して空を飛んでいく。これはシスタがいまだに使いきれない加速の練習でもあるからだ。

 

 そこで2人は知らなかった。この時別れたことがこの後にあるピンチに関係してくるなんて。

 



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12話

なんだか途中で書き方がパニックになりました


 空を飛んでテンペストに帰るシスタ。加速を使っているがまだうまくいかない。

 すると身体中から力が抜けてそのまま落下して行った。

 周りを見てみると人一人居ない。

 

 

「あなたに今帰られると厄介なんだよ」

「お前確か今野真矢」

「知ってるんだ。なら自己紹介いらないね。あ、けど一応名乗っておこうかな。西方聖教会の騎士団団長補佐今野真矢。よろしくね。そしてさようなら」

 

 

 目の前に現れたのは長い髪に大きな目、日本人には珍しい青い瞳そしてミリムより大きい胸。

 うん、すっごい美人さんだなぁと思うシスタ。これでこの殺気がなければもっと良かったんだけど。

 

 

「ごめんね、君を殺さなくちゃいけないんだ」

《広範囲結界に閉じ込められました。結界外への空間干渉系の能力は封じられました》

 

 

 ルウェルがそう言ってくる。それ以上にヤバいことが聞き取れた。

 

 

《また広範囲結界に囚われましたので結界内部での能力使用を封じられました。魔素操作系の能力は全て制限を受けます》

 

 

 これはやばい。黒炎で刀を作ることもできない。流石にこの状況で勝てる気はしないが話し合いでなんとかなるかもしれないと思い話を仕掛ける。

 

 

「誰かと勘違いしてるんじゃないでしょうか?」

「あれ?確か魔物の国の主はシスタにリムルと聞いているんだけどなぁ。密告を受けてきたんだけどなぁ」

 

 

 言葉はふざけた口調だが本気でやばい気配だ。これは僕一人じゃ無理だ。ここは逃げるしかない。けれどなかなか逃してくれそうにない。

 

 

「さてそろそろ始めてもいいのかな?」

「できれば始めないで欲しいんだけど」

「それは無理。あなたがシズさんの仇だから」

「待て。僕も日本人だぞ」

「信じられるわけがないよ。それじゃあ始めるね」

 

 

 そこから腰の刀を抜く。それは敵が持っていても綺麗と思える刀だった。しかしいきなり襲ってきた剣撃は綺麗なんかじゃなかった。なんとか直撃はかわせたけど腕が切られる。

 

 

「へぇ、すごいね。かわせるんだ」

「だから話を聞けっての」

 

 

 魔素関係は使えない。そう思っていたのは悪い事で使い慣れている重力は使えた。しかし飛ぶなんてことは無理だった。

 四肢に使うぐらいしかできない。剣撃を受けながら手に加速を使ってパンチの速度を上げる。それでもかすりもしない。

 

 

「へぇ、なかなかやるなぁ。君、けどここで終わりだよ」

「それはどうかな?」

「ふぅん。やせ我慢も結構。切られた手が生えてきてないでしょ。それに傷も回復してない。次終わりにするよ」

 

 

 そういい突っ込んでくる。これはまじでやばい。ここで死んだな。そう思い目を瞑る。

 

 

「あら、この子は殺させませんわよ」

「姉さんまで来てたのね」

 

 

 刀が目の前で止まっている。そして止めた先を見てみるとヴェルザードとヴェルグリンドが来ていた。

 

 

「あら、どちら様かしら?」

「そうね。ヴェルグリンド少しだけ本気を見せるわよ」

「ええそうね」

 

 

 その言葉で二人とも竜形態(ドラゴンモード)になる。

 

 

「なぁ!?竜種ヴェルザード、ヴェルグリンドがなんでここに」

「ふふ、さてどうしてかしら?ここで引くなら殺さないでおいてあげるわ。ただ殺すというならまず私たちが相手よ」

「姉さんのいう通りね。さてどうするのかしら?」

「やれやれこれじゃあ勝てないな。ここは引かせてもらうよ」

 

 

 そういいそこから消えていく。周囲の結界も消え少しずつ魔素を扱える。体も元通りになっていく。

 

 

「なんで二人がここに?」

「ギィに聞いたのよ」

「飛行中にたまたま見えたからよ」

「まぁいいや、ありがとう助かったよ」

「ふふ、またお茶でもしましょう」

「ええ、楽しみにしているわ」

 

 

 そういい二人は飛んでいく。僕も加速を使いテンペストに向けて飛んでいく。なんだか襲われてからというもの胸騒ぎが止まらない。

 テンペスト付近で魔素の流れがおかしくなり落下した。そのまま走ってテンペストに急ぐ。

 

 

「シスタ様!」

「なんだこの騒ぎは」

 

 

 着くとシュナが来てくれる。そして街を見ながら歩いていくと家が壊れていたり道路が壊れていたりしていてなにがあったのかわからない。そして町の中央に着く。

 

 

「人間にやられた。奴らは結界を使ってきてそうじゃなければこんなことには」

「は?」

 

 

 目の前に見たのはたくさんの死んだ仲間たちだった。それは想定外で次に思い浮かんだのはそいつらを皆殺しにすることだけだった。

 

 

「私が大魔法を使用しなければこんなことにならなかったでしょう」

「お前がこれの発端か」

 

 

 その殺気を感じたのかベニマルが間に入り込んでくる。

 

 

「どけ」

「待ってくれ。せめてリムル様が帰ってくるまで」

 

 

 ベニマルの言っていることはわかる。しかし頭で納得できないのも事実。すぐに街を出ていく。とりあえずこいつの処分は後回しでも構わない。しかし人間は殺す。そう決めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 街は騒然となっている。今までキレたことのないシスタがキレたのだ。誰しもが驚きあるものは驚き、あるものは当然だ思わんばかりだった。シスタが出て行って少しした後にリムルが帰ってくる。

 リムルも同様に怒ってはいるがシスタほどではない。

 

 

「そういえばシスタはどうした?」

「シスタ様なら一人で人間の軍に向かって行かれた」

「な!?ベニマル、ソウエイ、ランガ止めろ!」

 

 

 3人はその命令を受けてすぐに飛び出す。リムルも町の奴らに指示を出しすぐに後を追いかける。今のシスタなら人間を皆殺しにしかねないと思っていた。

 

 そして誰も気付いていなかったのだ。リムルが飛んでいった後に誰にも気づかれないようにこの場を抜け出した者がいることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リムルは追いかけながら考える。なぜにシスタがあそこまでキレているのか?いや理由はわかる。町のみんなが殺されたからだ。しかしシスタが今までキレたところを見たことがないのだ。

 それにシスタのことを何も知らない。なぜあそこまで悪魔召喚にこだわるのかの理由すら知らないのだ。それに昔からシスタは人間と仲良くするのにそこまで積極的ではなかった。

 けれどエレン達や剣也たちと触れ合うことで少し変わっていたんだと思っている。けれど帰ってきてこんな時間があってはなんともいえないのが現状である。

 

 

《告個体名シスタテンペストがいました》

(了解。大賢者位置を頼む)

 

 

 大賢者からの位置を聞きそこに降りていく。するとシスタは感情を失くしたかのような戦い方をしてベニマルたちを追い詰める。

 ベニマルやソウエイが抑えてランガが遠くから攻撃しているがシスタはあまりに気にしていない感じだ。

 

 

「シスタ待て!」

「なんだ?まだ邪魔するのか?リムル」

「話を聞け。とりあえず街に帰るぞ。人間の処分は後だ」

「ふざけるな!ここで逃したらどうする気だ」

「その話少し待って欲しいです」

 

 

 そう言って出てきたやつはリムルは知らない。しかし隣にいる奴らをリムルは知っている。もちろんシスタも。隣にいたのはエレンたちだ。

 

 

「何しにきたクマラ」

「シスタ様を止めにきやした」

「えっと誰?」

「リムル様、こいつはシスタ様が拾ってきたやつだそうです」

 

 

 シスタは不思議に思う。なぜクマラがここにいるのか。そしてなぜ今この場にエレンたちがいるのか。

 またリムルも一つの疑問が湧いていた。シスタのやつこんな情報をもらっていないと。

 

 

「シスタさん、リムルさん話を聞いて欲しいの。あるのよ死者を蘇生させる方法が」

「わっちがこのものらを連れてきたのもそれを聞いたからでありんす」

「だからシスタ一度街に帰って話を聞こう」

「わかったよ。けど話の内容次第だからな」

 

 

 そこで空間移動を使い目の前まで飛んでいく。魔素が乱れて転移しにくかったがそこは強引にシスタが通す。

 

 街に帰りシスタ、リムル、そしてエレンたちは会議室に戻る。

 

 

「それじゃあ話します」

 

 

 魔法を使い隠れていた耳を出す。その隠れていた耳はエルフのものに近くその場には混乱が溢れた。

 

 そこから話始めるエレン。話の内容はかつて竜種と交わった子どもの話だ。そしてその子どもに託した子竜が殺され、こどもは魔王となった。そして死んだ小竜は混沌竜(カオスドラゴン)となりその魔王に封印された。

 その話での大事なのは魔王になると大事にしていた竜が生き返ったということだ。

 

 シスタはその話を聞き冷静になる。可能性があるかもしれないということに安堵する。

 

 

《リムルとの共同で行うことでかのうせいが3.14から6.28に上がります》

 

 

 ルウェルからの指示を聞きリムルの方を向く。するとリムルも同様に僕の方を向いたのでおそらく同じことを言われたんだろう。

 ひとまずやることは決まった。ミュウランと名乗る魔人の処分だ。

 

 リムルと行き、ついてきたのはベニマルだけだ。

 

 

「さて話してもらおうか」

「私は魔王クレイマンの配下五本指のミュウランです」

「続けろ」

 

 

 この話においてシスタは黙っておく。リムルが話を進めていき話を聞くことになっている。

 

 

「話はわかった。ミュウランあなたには死んでもらう」

「ま、待ってくれリムルの旦那、シスタの旦那も止めてくれよ」

「無駄だヨウム。あれは本気だ」

 

 

 そういいリムルは手のひらを突き出す。その間にグルーシスと名乗る魔人が間に入るがベニマルが止める。

 ヨウムは動かない。ミュウランは覚悟を決めたようにヨウムに口付けをしてこう言う。

 

 

「大好きだったわヨウム。今度は悪い女に騙されないようにね」

「いい覚悟だ」

「さて僕がやるよ。恨みもあるし」

「待ってくれ旦那!俺もあんたに尽くす。なんでもするからミュウランだけは!」

 

 

 ヨウムはそういうがリムルが糸で壁に貼り付ける。そしてリムルは諦めたように後ろに下がりシスタが前に出て手のひらに魔素を集めていく。

 そしてそれを心臓に刺す。するとミュウランは倒れていき、それをシスタが支えた。

 

 

「あれ?わたし今」

「死んだんじゃないかな。3秒ほど」

「なんだシスタ冷静だったのか」

「うるさい。わかってたよ」

「旦那あの、えっと」

 

 

 リムルは糸を外しヨウムを下ろす。グルーシスも攻撃をやめてベニマルは肩を竦める。

 

 

「そんなに慌てるなよ。彼女に笑われるぞ」

「あはは、ヨウムは驚いて仕方ないんじゃないのかな」

 

 

 そしてそこから事情を話す。ミュウランの心臓には盗聴器が仕掛けてあったこと。そしてなぜ助けたのかと聞かれる。

 まぁ当然のことだとシスタとリムルは思った。この街にこれだけの被害を出すことになった張本人の1人なのだから。

 

 

「別に特に意味はなかった。これから考えていることに関してヨウムの協力が不可欠なんだよ」

「そういうこと。それにはあんたの協力があった方がいいってことだよ」

 

 

 そう説明した。そして三人をここにおいていき幹部たちに思念伝達を送る。会議室に集まるようにと。




感想や評価欲しいです

誤字脱字の報告してくださる方ありがとうございます


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13話

 会議室内にテンペストの幹部たちが全員集まる。幹部だけではなく人間のミョルマイルやエレンたちも集まっている。

 

 

「それじゃあ結論だけ、僕とリムルは魔王になる」

 

 

 その言葉を聞いて誰一人反対するものはいない。自分たちの主人が決めたのだ。それを反対するなど持っての他だと思っていたから。

 

 

「私は人間は信用できません。魔物です。強いものに従うのは納得できますがあれは完全な不意打ちでした」

「確かにオイラも人間は信用できないっす。けれどヨウムさんたちは同じ釜の飯を食べた仲間だから信用できるっすよ」

「人間だからと言って一括りにするべきではないのではないか?」

 

 

 他にもいろんなことが飛び交う。リムルはそれを見て安堵する。

 

 

「あのなみんな俺は転生者だ」

 

 

 リムルが一言そういうと全員の顔が引きしまる。

 

 

「簡単に言うとこの街を襲った異世界人と同じなんだよ。こっちに転生してシスタと出会いある友達にも会った。寂しかったよ。人間を襲わないってルールも元々が人間だったからだ。お前たちが人間に近い姿に進化したのも多分そのせいだと思う」

 

 

 会議室は静かになる。リムルが話したことは想像を絶するものだったよ。そして口を開いたのはシスタだった。

 

 

「その話に補足するなら僕も転生者だ。リムルとほとんど同じタイミングでこの世界に来てリムルと過ごしてきた。その中で友達にもあったよ。けれど人間を信用するという点ではリムルとは逆の意見だった。けどお前たちやエレン、ヨウム、子どもたちに触れ合っていると信じてもいいかもしれないと思ったんだ。だからこそ向こうで長く過ごしすぎてこっちがこんなことになったんだと思う」

 

 

 会議室はさらに静かになる。しかし直後

 

 

「いえ、悪いのは俺です」

「いや僕がもっとしっかり目を張っていれば」

「いや、わたしも」

「俺も」

 

 

 会議室は一気に騒がしくなる。それを見てリムルとシスタは止めに入る。

 

 

「待て待てそれは俺たちが」

「そうだ。悪かったから」

「違いますわい。ワシらの甘え。リムル様やシスタ様がいつでも助けてくださると思っていたワシら自身の甘えです。違うのか皆のもの!」

 

 

 ハクロウがそういうとそれに同調するように全員が立つ。

 

 

「お前ら嫌じゃないのか。人間が主なんて」

「そうだ。街を傷つけた奴らと同じ存在ってことだぞ」

「??リムル様やシスタ様はそのままっすよね?」

 

 

 するとシュナとクマラがシスタとリムルを持ち上げる。

 

 

「わたくしたちが信じているのはリムル様とシスタ様です。前世がどうだと言われても関係ありません」

「そうでありんす。わっちもシスタ様もリムル様も信じております」

 

 

 会議はそこで終わった。そこから話したのはこれから人間に対してどう接していくのか、という点だ。リムルが出した結論は触れ合ってから考えるというもので今回はシスタも反対しなかった。

 

 リムルとシスタに連絡が入る。ソウエイからだ。

 

 

「街から西にそして南と北に分かれてテントを建てています」

「数はわかるか?」

「南が4万、北が2万です」

「了解だ。ソウエイたちは引き続き監視を頼む」

「御意」

 

 

 その言葉を聞きシスタは決めた。多い方をやると。それでも気分が紛れるわけじゃないがまだマシだと思うから。

 

 

「リムル今回は僕が多い方をやる」

「わかった。ただし生存者はゼロ。そして位の高いやつは残しておいてくれ」

「了解」

「それじゃあ言うぞ」

「あぁ」

 

 

 広場には戦闘員および魔法を使えるものが全員集まっている。非戦闘員にも今回は役割があるため伝達を出すことにしている。

 

 

「まず四ヶ所の布陣だ。東をベニマル。西にハクロウ、ゲルド、ゴブタ、リグルド、北にソウエイたち、南はガビルたちに任せる」

「今回は結界を張る。それにミュウラン、シュナ、そしてみんなの祈りを貸して欲しい」

 

 

 シスタがそういい街のみんなは全員が納得する。

 

 

「クマラお前はついてきてくれ。手は出さないで欲しいが構わないか?」

「もちろんでありんす」

 

 

 そこからシスタとリムル、そして戦闘員たちは街を出る。それぞれが己に言われたこと、決めたことを実行するために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 眼下に広がる人間たちを見て怒りが湧いてくるシスタ。こいつらが街で暴れてあんなことに。クマラはシスタの怒りを感じているが何も言わない。

 

 

「クマラ見ててくれ。最後にもしかしたら頼むかもしれない」

 

 

 クマラは意味はわからないが了解はする。自分を助けてくれて、頼ってくれているのだ。断る選択肢なんて毛頭ないのである。

 

 シスタもどうやって殺そうか悩んでいた。リムルから聞いた話だとリムルには神之怒(メギド)という魔法があるからいいが、僕にはそんな魔法はない。なんでもリムルも襲われてその時に見た魔法で覚えたらしい。

 ルウェルにできるかどうか聞いたが少し厳しいらしい。見たことのある魔法を改良することならできるらしいが見てないものは聞いただけでは無理という。

 森への被害がすごいことになりそうだけどヴェルザードの因子から手に入れた氷結魔法で辺り一帯凍らせる。ヴェルグリンドから手に入った火の方を使ってもいいけど流石にそっちは燃えすぎるからやめだ。

 

 シスタは下に降りて刀を抜く。二本ともなかったからこれはクロベエから借りたものだ。片方には炎をもう片方には氷を纏わせる。そのまま右左といる人間を次々に切っていく。昔なら何かしら躊躇ったかもしれないけど今はなんの躊躇いもない。 

 

 

「ヒィィィ」

「何者だ!?」

「おい、大人しく殺されていろ」

「殺されろと言って殺される奴がどこにいる!敵は1人だ。囲んで始末しろ。そして残りは周りの氷を破壊しろ」

 

 

 隊長らしき奴が答えるが無駄だ。それまでに殺すから重力操作と加速の並列使用。1人では無理だがルウェルにサポートしてもらう。動いていくだけで首を飛ばしていく。

 

 

「おい、逃げるな!戦え」

「お前そろそろうるさいよ。死ね」

 

 

 そういい首を飛ばす。そしてだんだん死体が増えていく。半分を切ったところで降伏するものが増えてくる。しかし許すわけがない。

 

 

《ユニークスキル支配者(シハイスルモノ)を手に入れました》

 

 

 なんだそれ?正直興味ない。降伏しているものたちを切っていく。そのうちの1人を捕まえて質問をする。

 

 

「おい、この部隊の一番偉い奴はどこだ?」

「あ、あの天幕にいらっしゃいます。なにとぞ命だけは」

「ああ、助けてやるよ」

「ありがたく」

「そんなわけないだろ」

 

 

 そう言い斬る。そこから氷を砕いているやつらも諦め始める。氷を砕いても砕いても先が見えないのだ。その上後ろでは悲鳴や恐怖が飛び交っているから降伏してくる。

 

 

支配者(シハイスルモノ)の解析が終わりました。能力としては恐怖を抱いているものを強制的に支配下に置くものです》

 

 

 そんなものはいらない。そう思い次々殺していく。少しずつ人数が減りもうだいぶ死体の山が増えた。

 

 

《告。進化の条件(タネノハツガ)に必要な人間の(ヨウブン)を確認します……認識しました。

 規定条件が満たされました。これより、個体名リムルテンペストの魔王への進化(ハーヴェストフェスティバル)が開始されます 》

 

 

 世界の声が響く。リムルの方はうまくやったみたいだ。さてこっちもそろそろ終わらせるか。残りの全員を氷と炎で殺し天幕に入る。

 

 すると女とその護衛がいる。

 

 

「お前がここの首謀者か?」

「妾はファルムス王国の王妃である。控えて話すが良い」

 

 

 何言ってるんだこいつ。というかなんでこんなにも偉そうなんだよ。状況を理解してないのか?頭にきたので氷の方で腕を切り落とす。

 

 

「ぎゃぁぁぁぁああああ。痛い痛い痛い痛い」

「うるさい。それ以上うるさくするならこれだけじゃ終わらないぞ」

 

 

 するとすごいスピードでうなずき始める。少しはだまったようだ。

 

 

「お前たちは自分が何をしたのかわかっているか?」

「妾はショウゴたちがあんな暴挙に出るとは思っておらんかったのじゃ。そちたちの国にこれほどのものがいるとも思っても見なかった。西方諸国最大級のファルムス王国が国交を結んでもよい」

 

 

 なんで王族たちはこんなにも偉そうなんだよ。聞いててイライラさせられる。これほどの戦力差を見せられても未だに上からものを言われるのが腹立つ。

 

 

《ユニークスキル支配者を使用しますか?》

(使わない。こういう奴らは徹底的に屈服させるまでなんだよ)

《了》

 

 

 ルウェルが少しショックそうに言ってくる。まぁスキルマニアのルウェルからすれば解析しても使ってみたいということだろう。

 

 

「おい、お前」

 

 

 そこで言葉が途切れる。急激な眠気が来たからだ。おそらくこの世界に来てから最大級の眠気だ。

 

 

《告。進化の条件(タネノハツガ)に必要な人間の(ヨウブン)を確認します……認識しました。

 規定条件が満たされました。これより、個体名シスタテンペストの魔王への進化(ハーヴェストフェスティバル)が開始されます 》

 

 

 世界の言葉が響く。やばいまだこいつらのことを決めてないのに。

 

 

「クマラ!」

「はい」

 

 

 クマラを呼び寄せる。そして

 

 

「最重要任務だ。なんとしてもテンペストに僕を連れ帰ってくれ」

「承知しました。生き残りはどうされなされますか?」

「それはこっちに任せる」

 

 横たわる大体40000ぐらいの死体。これを生贄に呼ぶ。

 

 

「出てこい悪魔!役に立て」

 

 

 上級悪魔召喚を行う。そして出てきたのは三体だけだった。あれだけの死体があってたったの三体とは想定外だけど…

 

 

「おい、なぜ貴様がここにいる」

「ふふ、あなたこそ帰りなさい」

「2人とも邪魔だよ」

 

 

 なんだか言い合いしているが眠気で頭に入ってこない。

 

 

「そこにいるやつと生き残りを連れ帰ってこい。クマラ顔つなぎを頼むぞ」

「うけたまわりやした」

「ふふ、これからもお支えしてもよろしいでしょうか?」

「貴様!我もだ」

「あー僕も僕も!」

「御託はいい。まずは役に立て。話はそこからだ」

「ふふ、たやすいことですわ」

 

 

 そこからは知らない。何が起こったのか、何があったのかなどはシスタの知る由もなかった。




シスタにつけるといい究極能力があったら教えて欲しいです。何個かは考えているんですがいまいちしっくりこなくて
たくさん書いてくださると助かります
できれば能力なんかも書いてくださると助かります


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14話

カイリ21さん
イセリアルさん評価ありがとうございます

励みになります


 シスタが消えた後に取り残された悪魔が三体。その三体は原初の悪魔とも言われて本来であれば上級悪魔召喚などで呼び寄せることのできない化け物揃いだ。

 

 

「黄、紫は帰ってよろしくてよ」

「何をいう白め。貴様が帰るといい」

「君たち2人とも帰りなよ」

 

 

 その言い争いを見て隙だと思った王妃は僅かな護衛と抜け出そうとする。しかし三体の悪魔がそんなミスをするわけもない。

 

 

「おや、どこへいくのだ?」

「ここから離れたらわかってるよね?」

「ふふ、ここで喧嘩をしても構わないのだけれど主のいうことを聞きましょう。それでいいかしら?」

「ああ」

「わかったよ」

 

 

 そこから三人は協力する。しかし本来であれば一体でも十分に足りるものを三体もいるのだ。過剰戦力というもの。

 王妃の護衛も頑張って足掻こうとしているが全く歯が立たない。

 

 

「この化け物め!死ね!」

「こんなもので我が倒せるとでも?ある意味屈辱だな」

 

 

 そういい目の前の人間をボコボコにしばいていく。殺してもいいのだがそれは自分の判断でやっていいものとは限らない。これからはあの人にお仕えするのだから。そう思い黄色の悪魔は戦闘を終了する。

 

 同じく紫の悪魔も同様だった。護衛の2人が攻撃するがそれを攻撃とも思っておらず全て片手で防がれる。それを見た護衛は怯えてもう何もできない。

 

 白も同じような状況だったがやり方が違う。2人が突っ込んできたところをかわすそぶりもなく構えそのまま瞬間的に後ろに回り、2人の首に爪を立てる。

 

 

「ふふふ、まだやられるのかしら?」

「まいった」

「命だけは」

「それは主に決めてもらいましょう」

 

 

 そうして戦いとも呼べぬままに6人の捕虜と王妃は連行されていく。しかしその間も三体の悪魔による口喧嘩は収まらなかったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 テンペストには歓声が上がっている。しかし一部には歓声を上げるものはいない。なぜなら自分たちの主たちから命令を受けていたからだ。

 

 

「もし俺たちが理性のない化物になっていたら戦えるものを指揮してすぐさま処理してくれ」

「頼んだぞ。ベニマル」

 

 

 そう言われて自分はなんて貧乏くじをひかされたと思うベニマル。心の中では主たちが何事もなく目を覚ましてくれるのを待つばかりである。

 

 

「クマラ、ランガ戻るのですね」

「シュナ様」

「シュナ殿」

「グルーシス様2人についていってもらえませんか?」

「俺か?何かあったときのためにゴブタの方がいいんじゃ」

「シュナ殿がいうのだ。間違いあるまい」

 

 

 そういいランガ、クマラ、グルーシスは結界の外に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結界の外にて主たちの命令通りに悪魔たちを待つ三人。先にきたのはリムルが召喚した悪魔だ。そのオーラはただの悪魔が放つには強すぎる。そして少し前に祝福によりランガ、クマラは眠ってしまっている。それにより起きているのはグルーシスただ一人。

 

 

「クフフフ、そう警戒しないでください。後ろの二人は雑用なのでお気になさらず」

「あ、あぁ悪魔のことは聞いているよ。それでそっちのでかいのが担いでる人間は?」

「ああ、この方のおかげで召喚されたので丁寧に扱ってあげたのです」

 

 

 丁寧という言葉を聞きグルーシスは一瞬考えてしまう。その人間はとても丁寧に扱われたものとは思えなかったからだ。体の至るところから血が出て、顔は腫れ上がっている。

 

 

「捕虜なら被膜結界を張っておいてやれよ。今中の魔素濃度は異常だ。人間には毒だ」

「そこまでしたら甘すぎませんか?」

「ふふ、少しよろしいかしら?」

 

 

 その言葉にその場にいた全員が振り向く。そしてグルーシスは全身の悪寒が止まらない。今例えここで全力で戦ったとしても5分も持たないまま殺されてしまうだろうと思う。

 

 

「それであんたは?」

「ふふ、主に召喚された名もない悪魔ですわ」

「そういうことだ。ところでこいつらはどうする?」

「そろそろ邪魔なんだけど」

 

 

 そういい三人は担いでいた人間を投げる。三人が担いできた人間はそれなりの強さを持っているが三人にとってはとるに足らない相手なんだろう。

 それを見てグルーシスは背中に冷たい汗が流れたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《告、魔王への進化(ハーヴェストフェスティバル)が開始されました。身体組成が再構成され、新たな種族へ進化します 》

 

 まず初めに起こったのはリムルの進化であった。そこからリムルの大賢者は及び進化は続いていく

 

 

《確認しました。

 種族:粘性生物(スライム)から魔粘性精神体(デモンスライム)への転生……成功しました。

 全ての身体能力が大幅に上昇しました。

 物質体より精神体への変換が自在に可能になりました。

 固有スキルは『分解吸収,無限再生』です。

 続けて、耐性の再獲得及び、新たな獲得を実行します……

 物理攻撃無効,自然影響無効,状態異常無効

 精神攻撃耐性,聖魔攻撃耐性

 再構築され、以上の耐性を獲得しました。

 尚、常用スキルとして、

『魔力感知』『熱源感知』『音波探知』『超嗅覚』『魔王覇気』

 が備わりました。

 以上で、進化を完了します 》

 

 

 それだけでは終わらず大賢者はさらなる進化を求める。

 

 

《以前より申請を受けていたスキルの進化を行います。

 ユニークスキル「大賢者(エイチアルモノ)」の進化を行います。

 失敗しました。

 再度行います。

 失敗しました。

 再度行います。

 失敗しました》

 

 

 それは永遠に続くかのように思われた進化の試み。しかし

 

 

《変質者を生贄に大賢者の進化を申請。成功しました。ユニークスキル「大賢者」は究極能力(アルティメットスキル)智慧之王(ラファエル)」に進化しました》

 

 

 それはほんの偶然の出来事。しかしこの世における最強のスキルの一つ。それがリムルの手に渡ったことは事実である。そして智慧之王は主の願いを叶えるためにさらに進化を遂げていく。

 

 

《心無者を生贄に暴食者を進化。「暴食之王(ベルゼビュート)」に進化しました》

 

 

 リムルの知らない間に次々と進化が行われていく。それは主の願いを叶えるために。

 そしてそれはリムルだけでは終わらない。系譜の魔物たちにも贈られるのだ。祝福として送られる。

 そしてそれはまた智慧之王によって最適化されていく。

 

 この日真なる魔王が2体もできたことは世界を震撼させることになった。

 

 

 

 

 

 

 そしてリムルの大賢者が智慧之王に進化することを密かに狙っていたものがいたことを誰も知る由がない。




まだまだスキルの案募集してます
次の話で書く予定ですのでお願いします


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15話

また書き方迷ってました


 リムルに智慧之王が宿ったことを確認した者がいた。そしてその者は二人の間にできている魂の回廊と呼ばれるものから智慧之王の因子を強奪したのだ。世界の誰にもバレないように。

 

 

《確認しました。

 種族:粘性生物(スライム)から魔粘性生物(デモンスライム)への転生……成功しました。

 全ての身体能力が大幅に上昇しました。

 物質体より精神体への変換が自在に可能になりました。

 固有スキルは『分解吸収,無限再生』です。

 続けて、耐性の再獲得及び、新たな獲得を実行します……

 物理攻撃無効,自然影響無効,状態異常無効

 精神攻撃耐性,聖魔攻撃耐性

 再構築され、以上の耐性を獲得しました。

 尚、常用スキルとして、

『魔力感知』『熱源感知』『音波探知』『超嗅覚』『魔王覇気』

 が備わりました。

 以上で、進化を完了します 》

 

 

《続いて賢人が智慧之王との統合を開始。神智核(マナス)ルウェルに進化しました。また世界の言葉から隠蔽できるようになりました》

 

《さらにヴェルザード、ヴェルグリンドの因子から究極能力「時間之神(クロノス)」を獲得しました。重力操作に支配者を統合し「重力之王(グラビティノス)」を獲得しました。さらに個体名リムルテンペストとの魂の回廊により「暴食之王(ベルゼビュート)」の因子を獲得。これにより暴食之王ほどとはいかないまでも同じ能力が使えます。また使うことによって同じほどに成長します》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベニマルたちの目の前で不思議なほどに変化していく主たち。突如ベニマルたちテンペストの住人すべてに急激な眠気が来る。それは誰もが争い用のない眠気。しかし侍大将であり、主の名を受けたベニマルは眠るまいと必死に抵抗する。

 

 

《告、後は任せて眠りなさい》

《もう大丈夫だから》

 

 

 その優しい声にベニマルは安堵を覚え周りの者たち同様に眠ってしまう。

 

 

《暴食者改め暴食之王よ。結界内の魔素をくらい尽くせ。一欠片も残さずに》

 

 

 その姿を見ていたミュウランは驚いている。自分が目指した完成形の魔法が今目の前で使われているのだ。目がどうやっても離せない。

 そして結界が割れた。そこから少しして音も立てずに6体の悪魔が膝まづいている。

 

 

「失礼ながら魔素が少々足りないご様子」

《告、その通りです。生命力を代用し発動します》

 

 

 その言葉を聞き4体の悪魔が慌てる。主の生命力を使わせることになるなんて思いもしなかったからだ。すると

 

 

「この者たちをお使いください。主の役に立つことこそ我らの喜びですので」

 

 

 そういう黒い髪の悪魔は自分の雑用を任せていた二体の悪魔を差し出す。それに納得したのか他の悪魔も何も言わない。

 主に使えたいのは最もだがここで死ぬわけにはいかないというのが三体の悪魔の共通認識だった。

 

 

《規定量の魔素量に達しました。反魂の秘術を行います》

《サポートをします》

 

 

 二人の悪魔を捕食しそして主の代行者。二人は対角になるように構えそして反魂の術を開始する。

 それは想像を絶する演算速度だ。進化前なら3.14という成功率。二人でも6.28だったが進化した今なら……

 

 テンペストの住人は次々と目を覚ましていく。そして幹部クラスが目を覚ますと次々とリムルとシスタの周りに集まる。祈りを捧げているのだ。その中にはシオンの姿もあった。

 

 そして時間が経つにつれて何故だかわからないがテンペストの住人たちは大丈夫という安心感が湧き少しずつ街はお祭りの準備移っていく。シオン、クマラはリムルの家の縁側で二人を抱えながら二人の目覚めを待つ。

 

 

「ここは?」

「お目覚めですかリムル様」

「ふぁーよく寝た」

「シスタ様もお目覚めでありんす」

 

 

 二人ともちゃんと自我を保っている。けれどそんなことよりもっと嬉しいことがあったのだ。

 

 

「リムル様、シスタ様我ら一名の欠落なく復活いたしました!」

 

 

 庭に死んだ奴らが全員が頭を下げてくる。それを見て二人は安心した。そして一人一人挨拶してくる。リムルもシスタもそれを聞きながら自分達が魔王になったのは間違いなんかじゃなかったと思っていた。

 

 

「リムル様、お目覚めになられましたか?」

「ベニマル、あぁもうバッチリだよ」

「合言葉は覚えておられますか? シオンの料理は?」

「ああ」

「私の料理がどうしましたか?」

 

 

 その瞬間リムルの体が震えた。いや震えていないのかもしれないがシスタの目からは確実に震えていた。

 

 

「えっと。確かベニマルくんが決めた合言葉は"シオンの料理はクソまずい"だったかな?」

「ベニマル様、いえ、ベニマル。私はリムル様の直轄なので敬語は不要でしょう。ふふ、遠慮など無用。満腹になるまで食べさせてあげましょう」

 

 

 その言葉を聞きベニマルは震えながらリムルに抱きつきながら震えている。そして結局リムルもベニマルに連れて行かれて行った。

 

 

「わっちたちも外に出ますか?」

「そうだな。どんな感じか見ておきたいし」

 

 

 街に出てみると何故かお祭りムードだ。いやお祭りモードになっていいいかもしれない。何せ自分たちの主が魔王になったのだ。こんな雰囲気になった方が良かったのかも。そんなことを考えながら街を回っていくシスタ。

 所々いい匂いもするしさっきリグルドから聞いた話だと獣王国(ユーラザニア)からの避難民も来るとか。そういえばそっちの件があることをすっかり忘れていた。というか今テンペスト厄介ごとに巻き込まれすぎな気がする。

 まずは西方教会の件、ミリムの件、ファルムス王国の件もあるし大変な気がする。一つ一つ当たっていては僕とリムルだけじゃ人数が足りない。まぁ僕一人で考えても仕方ないから考えないんだけど。

 時間は過ぎていき夜になり、いよいよ宴会の始まりだ。

 

 

「それではテンペスト復活祭(仮)を始める」

 

 

 そこから全員飲んだり食べたりの繰り返しだ。僕はリムルのところにいく。少しだけ話をするためだ。

 

 

「リムル」

「シスタ。どうした?」

「こんな時にあれだけどこれからどうするつもりだ?」

「なんのことだ?」

「これからだよ。テンペストは今問題の山積みだろ。僕とリムルが一つ一つ当たってもとてもじゃないけど間に合いそうにない」

「そうだよなぁ〜」

 

 

 二人して酒を飲みながら考える。酔うことはないんだけどこういう時は酒というのが相場だ。

 

 

「我が君魔王への進化おめでとうございます」

「誰だお前?」

 

 

 するとそう言ってたやつが少し揺らめく。ショックを受けているようだ。

 

 

「我が主。このものは貴方様に召喚された悪魔の一体です」

「ランガ殿!」

「うん、確かそういえば。あぁ、そっか長々と引き留め悪かったね。もう帰っていいよ」

 

 

 そういうと悪魔は泣きそうだ。少しだけ助けてやろう。

 

 

「おいリムル。こいつ泣きそうだぞ」

「あれ? 報酬が足りなかった?」

「いえ、そうではありません。先立って申していた通り配下の末席にでも加えていたいただければ」

 

 

 リムルのやつなんて者を呼び出してるんだ。この悪魔絶対上級悪魔どころじゃないだろ。前にギィのところで見たミザリーぐらいの強さはありそうだ。

 

 

「「「主様」」」

「ん、? 誰だ」

「この者たちもシスタ様が呼んだ悪魔たちでありんす」

「あれ? こんな奴らだったっけ?」

「わたくしたちも配下の末席に加えていただければ」

 

 

 こいつらもミザリーぐらいのインパクトがある。

 

 

「そういうばお前たち名前は?」

「名前など持っておりません」

 

 

 考えているとリムルの話し声が聞こえてくる。

 

 

「お前の名前はディアブロだ」

 

 

 あ、このやろう。悪魔といえばディアブロなのに候補を取られた。それにしても早く決めてやらないと可哀想だな。いつまでも膝ついてるし。

 

 

「それじゃあテスタロッサ、ウルティマ、カレラだ」

「「「はは! ありがとうございます」」」

 

 

 その三人は本当に喜んでいるみたいだ。というか魔素がほとんどないんだけどこれは死にそうだな。それに進化をその場で済ませて三人とも女になった。しかもかなり綺麗な女に。しかも全員服が軍服だ。リムルの方のやつは執事だがこういうのは性格が出るんだろう。それにしてもなんで魔素がかなりギリギリで残ったんだ? 本来なら倒れてもおかしくないと思うけど。

 

 

《人間からの魂の解析をしそれにて補填しました》

(ありゃルウェル。ずっと喋らないから消えたのかと)

《そんなわけがありません。それより手に入れたスキルの説明はどうされますか?》

(また明日にしてくれ。今回は少し楽しみたいから)

《了解しました》

 

 

 それにしてもルウェルのやつなんだか流暢に話すようになったな。まぁその点も踏まえて明日聞くことにしよう。

 

 

「それじゃあお前たち三人は僕の直轄に入ってもらう。これから頼むよ」

「お任せください」

「もちろんだよ」

「我にかかれば容易いことだ」

 

 

 この三人本当に頼りになりそうだ。このことはリムルにも伝えておこう。リムルに伝えると何も言わずに了承してくれた。

 

 

「そうか。その三人でいいのか?」

「構わないよ」

「そうか。それじゃあまた後でな」

「ああ」

 

 

 リムルはそういう。いつもなら隣にいるはずのシュナも今回はいない。けれど後ろに悪魔たちがいていろんなところに回って紹介しているから大変っちゃ大変だ。

 それに僕の進化を見て驚いているやつもいた。まぁ仕方ないといえば仕方ないんだけど。

 何せ身長が少し伸びて、髪の色はさらに白くなっている。何より目が赤よりも赤い色になっている。まぁそこまで怯えられなくて良かったけど。

 その日はいろんなところを周りいろんな意見を聞いた。人間に対しての意見や僕たちに対する意見。魔物は嘘をつけないらしいからみんな真実を語ってくれる。

 人間に関しては多種多様な意見があったが僕とリムルが異世界人という話でも誰一人としても構わないという意見だった。これを聞いて嬉しくなった。

 前世では誰一人として信用できなかったけどこの街の奴らは信用していいと思っている。いや、信用している。そう思える奴らばっかりだ。

 

 

「どうかしましたか? シスタ様」

「テスタロッサ。いや、信用って嬉しいなってさ」

「ふふ、わたくしにもわかるかもしれませんわ」

「テスタロッサも信用してるからね。もちろんウルティマもカレラも」

「お任せを」

「はーい」

「無論だ」

 

 

 そう言い街をさらに回っていく。そろそろ全体に挨拶も終わり家に帰る。

 そういえばテスタロッサ達にはまだ家もないしどうしよう。クマラは空き家を使ってもらっている。まぁ実際寝た頃にベッドに潜ってくるからあんまり関係ないんだけど。

 

 

(シスタ少しいいか?)

(リムル、どうした?)

(実は獣王国(ユーラザニア)でのことを聞いてもらおうと思ってな)

(了解。すぐに向かう)

 

「これから会議があるがどうする?」

「もちろん行かせていただきますわ」

「僕もいく!」

「我も行く」

「了解だ。だけどあんまり勝手なことをしないでくれよ」

 

 

 三人は了承していたが何かあったら止めればいいやぐらいの気持ちで三人を連れていく。クマラは家でお休み中だ。何せ体は成長してもまだ子どもなのだ。もう夜も遅いので眠たいんだろうと思い話す場所であるリムルの家につき中に入る。




評価や感想をいただけると喜びます。更新速度も上がるかも


後究極能力についてですが今回はまだ出てない分と合わせて後少しだけです。後々のことはまた考えて聞きたいと思ってます


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16話

お気に入りが100件超えたら閉話回をしたいと思います。また下にアンケートをしているのでお願いします


 リムルの家に入る四人。最後だったらしくすでに空いている席に座る。シスタの隣にリムルが座る形になる。その後ろに三人の悪魔。

 

 

「遅くなって悪かった。それじゃあ聞かせてくれ」

「「「まずリムル様、シスタ様魔王への進化おめでとうございます」」」

「ああ、ありがとう」

「それで話してくれるか?」

 

 

 リムルがそういう。シスタは正直内容は大体予想ついているためあんまり聞かない。

 

 

「ここからは黒豹牙フォビオが話させていただく」

 

 

 そこからフォビオは話していく。その内容ミリムが獣王国(ユーラザニア)に攻めてきたところから始まり、そこからカリオンとミリムの一騎打ちの話の内容だ。話の内容だけでいえばミリムの圧勝だが何個か気になることがあると思うシスタとリムル。

 

 

「それにしてもよくミリムの攻撃を喰らってよく無事だったな」

「転移先での回復薬感謝します」

「さて、話をまとめるとミリムの宣戦布告から強襲。そして魔王フレイの手助けか」

 

 

 そこが一番わからない。あのミリムが他人に喧嘩の手助けをさせるとは到底思えないから。それが二人の共通の認識である。何せ二人ともミリムにボコボコにされた記憶があるからだ。

 その時にも誰もミリムの方にはつかせてくれなかった。

 

 

「らしくねぇといえばフレイがフォビオを見逃したのもらしくねぇ。有翼族(ハーピィ)は高度から敵を仕留める種族だ。そんな女王がフォビオを見逃すはずがねえ」

「なるほどね、シオン地図を持ってきてくれ」

 

 

 リムルがそういいシオンは地図を取りに行く。その間ミュウランがやってきて話を進める。そのタイミングでちょうどシオンが戻ってきて地図を開く。

 

 

「ええ、その通りです。クレイマンは魔王ミリムに接触をしていました。ここからは私の想像になりますがミリムの想定外の宣戦布告で焦っているように思えました」

「お待ちください!クレイマンのことですか?あのものが獣王国の滅亡を図ったと?」

 

 

 そこから話は進んでいく。三人でクレイマンのところに行こうとするが勝てるわけもない。とりあえず一度休憩を挟むことにしてシスタとリムル、それに四人の悪魔は出ていく。

 

 

「何かお悩みですか?」

「一度にできることの量を超えている。まずはカリオンの件、ミリムのことは心配でもあるし、ファルムス王国の後始末、それに西方教会の件もあるしな」

「では私が一方面持ちましょう。ご命令を」

「シスタ様我らも何かできることは?」

「そうだな。明日の会議で話す。そこに参加するといい」

「「「はは!」」」

 

 

 そうして終わりかけになると二人のスキルに話が出てくる。

 

 

神智格(マナス)に進化したことにより演算能力が進化しました》

(ん?ルウェルさん自慢?)

《違います》

《演算能力の飛躍によりまもなく無限牢獄の解析が終わります。これを解放すれば西方諸国への牽制ができるでしょう》

 

 

 リムルと顔を見合わせるシスタ。そうかそろそろ2年になるのか。あの暴風竜ヴェルドラに会えるのだ。二人でいろんなことを経験した。そして今やっと会える時が来たのだ。

 この時の二人は早く明日にならないか待ち遠しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日世界は激震した。封印して消滅したはずの暴風竜ヴェルドラの復活が確認されたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝起きてシスタとリムルはまず幹部達を全員集める。話があるからだ。

 

 

「さて、僕たち二人は名実ともに魔王になることにした」

「もうなってますよね?」

「いやなったはなったんだけどさ他の魔王にまだ言ってないだろ」

「理由を聞いても?」

「喧嘩を売りたい魔王がいるんだよ」

「魔王クレイマン。やつはミリムを使い友好国である獣王国を滅ぼした」

「だから僕たちはクレイマンを叩く。異論のあるやつはいるか?」

 

 

 全員納得してくれる。そしてリムルはディアブロを連れてどこかへいく。僕も悪魔達に一言言っておこう。さもないとついてきそうだから。

 

 

「テスタロッサ、ウルティマ、カレラはクマラに街を案内してもらえ。クマラ頼んだぞ」

「了解でありんす」

 

 

 三人の悪魔達がついて行ったことを確認してからリムルのところに向かう。一人では解除できないからだ。あの時リムルと僕で捕食したから一人ではできないのだ。

 

 

「さてリムル行こっか」

「ああ」

 

 

 二人で飛んでいきヴェルドラとあった洞窟に向かう。そこにいくとガビルが来た。

 

 

「さっきの会議の内容を聞いてたな?」

「は、思念伝達により受け取っていました」

「それなんだけどガビルもこれからは幹部だ。生産部門を任せたい」

「や」

「やったーガビル様昇進だー」

「お前達落ち着け」

「これから洞窟には誰も近づけないように」

「は!」

 

 

 やれやれこういうところは来た時から変わらないな。リムルと二人して苦笑いをする。そして洞窟の最奥にいき二人でスライムになり並ぶ。

 

 

「智慧之王」

「ルウェル」

「「無限牢獄の解除だ!」」

 

 

 二人がそういうと体の中から何ががでくる。

 

 

「クハハハ、クァハハハハハハ。俺様復活!逆らうものは皆殺しだぁー」

 

 

 懐かしい威圧感だ。今まであったやつでここまでの威圧感を放っているのはギィくらいだと思うシスタ。シスタ自身はヴェルザードやヴェルグリンドは魔素を完全に押さえ込んでいたからそこまでの威圧感はなかった。

 またリムルは久しぶりの威圧感だと思っている。ここまでの威圧感を放つ奴と会うのはなかったからだ。

 

 

「よう!よく復活したな」

「久しぶり」

「お前達冷たくないか?我に久々に会えたんだぞ」

 

 

 二人共が思った。やっぱりこのおっさんめんどくさいと。

 

 

「それにしても随分と早かったな。もっとかかると思っていたぞ。名付けて魔素を持っていっていただろう。だからかかると思っていたのだ」

「実は僕とリムルは魔王になって能力が進化したんだよ。それで解析が終わったんだ」

「そういうことだな。それで」

「なるほど真なる魔王が二体か。それで」

「驚いていないんだな」

「いやいや我驚いてるよ。それよりお土産はないのか?」

「お土産?」

「例えばシュークリムル」

「あ、そういえば祝福(ギフト)が言ってるはずなんだけど何かきてないか?」

 

 

 リムルがそういう。確かにそれは気になると思うシスタ。なにせ系譜の魔物全てに祝福(ギフト)がいっているのだ。ヴェルドラとの魂の回廊ができている以上祝福がいっていてもおかしくない。

 

 

「おお!我の「究明者(シリタガリ)」が究極能力「究明之王(ファウスト)」進化しているぞ」

「気づくのおっそ!」

「シスタよ辛辣だぞ」

 

 

 指をモジモジするヴェルドラ。そんな竜を見て相変わらずだと思う二人。こんな日々が欲しかったのだと感じるシスタ。シスタ自身こっちの世界に来てからは前回のファルムスの件を除き楽しいことばかりだからだ。

 リムルもそれは同様であった。こっちに来てからも楽しいことばかりでこんな日々が続けばいいのにと思っていたほどだ。

 

 

「さて、そろそろここを出るか。ずっとここで話していてもいいけどな」

「それよりも街ではお前の魔素抑えておいてくれよ。弱い魔物もいるんだ。ヴェルドラの魔素だけで毒になる」

「シスタ、リムルよ。お前達は本当に王になったのだな」

「ああ」

「まぁな」

 

 

 ヴェルドラはそんなことを言っている。ヴェルドラにとっては二人はかけがえのない友達であり親友である。だからこそ間違ったことを言っていると感じていたら止めるし、自分ができることはする。そして二人が困っていたら全力で助けたいと思っているのだ。

 だからこそ王となった二人の意見を聞くことにした。なにせ封印前は暴れすぎたせいで姉達からもよく怒られていたのだ。

 もっともヴェルドラは知るよしもなかった。シスタがその二人の姉とすでに出会っていて仲良くなっていることを。

 

 

「それで我の体はどうするのだ?」

「それならなんとかなると思う」

 

 

 リムルがそういい分身体を出す。これにヴェルドラを入れるのだ。するといつまでもこの世界にいれるようになる。

 

 

「おお!進化して強化分身になってるな」

「お、わかる」

「クァハハハーいい依代だ。しかしシスタは何もしてくれないのか?我に何かしてくれないのか?」

「はぁしょうがない」

 

 

 そういいシスタは自分の分身体を出す。そしてリムルの分身体と自身の分身体を捕食しそれを融合させていく。

 

 

「これでどうだ?リムルと僕の分身体の融合だけど」

「ほほう、見た目に変化はそれほどないが中の魔素が少し変化しているな。クァハハハハハハー実にいい。良い依代だ。ありがたく頂戴しよう」

 

 

 そういいヴェルドラが入る。その姿は段々と変わっていき男の姿になる。それはまるでリムルやシスタを男の姿にしたような感じだ。

 

 

「クハハハ俺様完全復活!逆らうものは皆殺しだぁ」

「あれそのセリフ?」

「感謝するぞリムル、シスタよ。さすがは我が盟友だ」

 

 

 ヴェルドラはそういい二人と肩を組む。そして笑っている。

 

 

「さて、それじゃあそろそろ魔素を抑える訓練するか」

「クァハハハ簡単なのだ」

 

 

 そこからヴェルドラは魔素を抑える訓練を始める。これは今まで破壊の限りを尽くしてきていたヴェルドラにとってはなかなか難しいものみたいですぐにとはいかないみたいだ。その間にシスタとリムルは自分のスキルの進化具合を確かめる。

 

 

《マスター昨日確認しなかったスキルのことについて話してもいいですか?》

(ああ、忘れてた。頼むよ)

《まず初めにヴェルザードとヴェルグリンドの因子を統合し究極能力「時間之神」を獲得しました。さらに支配者と重力操作を統合し「重力之王」を獲得しました。さらに配下の魔物の系譜からの食物連鎖により究極能力「誓約之王(ウリエル)」を獲得しました。ベースは無限牢獄になっております。さらにヴェルドラの残留因子を解析した結果究極能力「暴風之王(ヴェルドラ)」を獲得しました》

(ふむふむ、ルウェルさんややりすぎだね。究極能力4つって何!?多くない!?)

《そんなことはありません。それでスキルの説明はどうされますか?》

(軽くしてくれ。わかりやすくな!)

《まず「時間之神」ですが簡単に言うと停止と加速です。しかし世界そのものを止めることもできますが対象を絞り停止や加速することができます。まだ他にもありますが今はこんなところでしょうか?》

(うん、その感じで頼むよ)

《次に「重力之王」は単純に操れる重力の範囲が広くなりました。かけられる重力も強くなり、念じるだけでブラックホールを作ることもできます。「誓約之王」は空間支配、防御結界、無限牢獄、断熱空間です。最後に「暴風之王」ですが暴風竜召喚、暴風竜解放、暴風系魔法です》

(ふむふむ、ところで暴風竜解放ってなんだ?)

《簡単に言えばヴェルドラが死んでもマスターが生きている限り復活できるということです》

 

 

 ルウェルさん簡単に説明してくれたのはいいんだけどちょっとバカにされてる感も否めない。まぁ僕がそうしてくれって言ったんだけど……

 ここで一つの疑問が浮かんだ。

 

 

(あれ?ルウェルは究極能力じゃないの?)

《いいえ、神智格のルウェルです)

(あらそう、よくわかんないや)

 

 

 もうこれ以上聞いていると頭が痛くなってきそうなのでもうやめておくことにした。目の前のヴェルドラもそろそろできそうだから。

 さて、みんなにヴェルドラをなんて紹介しようかな?と悩むことになるリムルと僕であった。




それにしても低評価つける人ほどなんの小説も投稿してないのはなんなんでしょねー!
昔からずっと疑問でした


感想や評価もどんどんください


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17話

 リムルとシスタはヴェルドラの魔素コントロールを見守っていた。あと少しで終わりそうなのだ。するとヴェルドラが何かを思い付いたかのように手を顎の下にやり実行していく。すると魔素を完全に閉じ込めることに成功したのだ。

 二人は疑問に思ったがそれには突っ込んではいけない。なにせヴェルドラなのだ。なんだかんだでできてしまうのだろうと思いヴェルドラを伴って外に出ていく。

 

 

「それにしてもなんで急にできたんだ?」

「それはな聖典(マンガ)にあったのだよ。あれにはこの世の叡智が収められている」

「マンガかよ!」

 

 

 シスタがそう突っ込む。実際質問したリムルですらそう思ってしまったのだ。気になって聞いてみたら聖典という名のマンガからの知識であの荒れ狂う魔素をコントロールしたのだ。

 そして三人は洞窟の入り口までやってきた。すると声が聞こえる。何やら言い争っているようだ。

 

 

「おい、そこをどけよ!」

「ダメである。我輩は何者も通すなと命じられたのである」

「あの暴風竜が復活したんだぞ!主の危機に動かなくていいのかよ!」

「やれやれうるさい猫ですねぇ。いっそここで」

「やめろディアブロ。それじゃあ仲裁になってねぇ!」

「ここを通してくれ。リムル様は俺も心配だ」

「ウフフ、あなたもなかなかにうるさいわ。消してしまいましょうか」

「あ、それ賛成。一瞬で終わるから」

「我がやろう」

「待つでありんす。シスタ様がみたらお怒りになられます」

 

 

 なかなかにカオスな状況になっている。これは早く止めないといけないと思う二人。それをみても何も気にしない奴が一人いた。

 

 

「あー悪い心配かけたな」

「遅くなってすまなかったよ」

「リムル様、シスタ様安心しましたわ。なにせあの暴風竜が復活したので」

「あーそれなんだけど」

「こっちにいるのがヴェルドラ君です」

「「ちょっと人見知りだけどみんな仲良くしてあげてね」」

 

 

 リムルとシスタが二人揃って同じことを口にする。まるで前から決めていたかのようだ。まぁ実際のところは二人で思念伝達を行いいうことを決めていたのだ。

 

 

「みなも誰だか気になってるだろう。ヴェルドラテンペストだ。我とリムル、シスタの関係を答えてやろう」

 

 

 みんなは興味津々になって聞く姿勢になっている。そんなに大したことを言うわけでもないと思う。

 

 

「それは友達だ!」

 

 

 それを聞きみんなは喜びながら何か言っているがリムルは顔を真っ赤にし、シスタは手を額に当ててすでに諦めている。

 

 

「ヴェルドラ様ご復活心よりお喜び申し上げます」

樹妖精(ドライアド)か。久しいな。我が森の管理ご苦労であった」

「精霊女王よりはぐれた私どもを拾っていただいた御恩返しきれるものではございません」

「それでそのお体は?」

「これはリムルとシスタが用意してくれたものだ。二人とも我の妖気を抑える訓練にも手伝ってくれたのだぞ」

「ほう、あのオーラを抑える訓練とは。さすがはリムル様。後でその方法を聞いてみましょう」

「おいディアブロよ。貴様今シスタ様のことを無視したのか?万死に値するぞ」

「おやカレラ、それは喧嘩を売っているのですか?」

「そう捉えても構わないよ」

 

 

 二人の間に殺気が走る。そのほかのテスタロッサは我関せずというところ。なにせテスタロッサにとってはディアブロが何を言おうと関係ないのだ。ディアブロがリムルを慕っているようにテスタロッサもシスタを慕っている。その違いなだけなのだ。

 ウルティマはシスタにつきっきりだ。三人の中で最も少女のような外見をしているのがウルティマでそして行動も少女に近い。

 

 

「こらこら二人ともやめろ」

「カレラも落ち着け。僕は気にしてないから」

「しかし我が君」

「いいから。ディアブロにとってはリムルの方が大事なんだろう」

「は!それは我と同じということだな」

「あはは……はは。そういうことだな」

 

 

 若干諦め気味にシスタが答える。そしてソウエイがやってくる。その内容を聞くために会議室にリムルが集まるように指示を出す。実際は恥ずかしいことを早く逃れたいためだが誰も聞かないのでそれはシスタにしかわからないことであった。

 

 

 

 

 

 街に戻りさて会議を始めようと思うと街の入り口に気配を感じた。リムルも同様の気配を感じているらしい。魔王化により僕とリムルの魔力感知は万能感知に進化しているためにだいぶ広い範囲を感知できるようになった。

 

 そしてやってきたのはフューズだった。その後ろには50人ほどの武装した兵士たち。一体なんのようだろう?

 

 

「ブルムンドとテンペストの安全保障条約において馳せ参じた。相手は6万の大軍だと聞いている。我らも対ファルムスの末席に加えてくれ」

 

 

 その言葉を聞くと幹部の奴らもキョトンとしている。もちろん僕とリムルも口を開けたまま何も話さない。いや話せないのだ。するとリグルドが小声で話しかけてくる。

 

 

「使者を送ったのですがどうやら行き違いになってしまったようですな」

「あーフューズ君。もう終わったよ」

「は?終わった?」

「一言で言うとシスタと俺が全滅させちゃった」

 

 

 リムルはベロを出してまるでいたずらした子どものように言う。けれどフューズの顔は全く笑っていない。

 

 

《ここに近づいてくるものがいます。先頭はガゼル・ドワルゴです》

 

 

 次々からと忙しい。

 

 

「久しいなリムルにシスタよ。魔王になったらしいな」

「まぁな」

「仕方なくな」

「ちょっと待ってください。今聞き捨てならないことを言いましたか?魔王?」

「トイレならそっちに」

「シュナ案内してくれ」

「俺が聞きたいのはトイレの場所じゃないですよぉ!」

 

 

 するとまた誰か来たみたいだ。ソーカが近づいてくる。

 

 

「シスタ様、リムル様。この方は魔道王朝サリオンの大貴族エラルドさんだそうです」

 

 

 なんでまたそんな大物が来たんだよ。まだガゼル王ならわかるけど魔道王朝が来たのか全くわからない。

 

 

「あの物今シスタとリムルと呼ばれていたか?」

「ええ、そのようですな」

「そうか貴殿たちが我が娘をたぶらかした魔王リムルと魔王シスタですか!」

 

 

 そう言いながら超高等爆炎術式を起動し、呪文を唱え始める。いきなり何をする気だ。それにあの魔法式は多分。

 しかしその魔法式は不発に終わる。なぜならスッパーン!!と気持ちいいぐらいの音が鳴った。

 

 

「ちょっとパパ!いきなり何しに来たの」

 

 

 しばいた張本人はエレンだった。さっきの我が娘ってまさかエレンのことか?するとエレンってすっごいお嬢様なんじゃと思ってしまうシスタ。けれど冒険者やってるんだからなんて自由人なんだろう。

 

 

「ところでさっき言っていた会議、我々も混ぜていただけますかな?」

「ああ、わかった」

「いつもの会議室には入りきらないかもしれませんが」

「新しいところを手配してくれ。なんなら椅子を人数分用意してからそのほかのものは後で構わない」

「了解しました」

 

 

 リグルドは走っていく。そこに厄介な奴が来たのだ。

 

 

「おい、リムルにシスタよ。この続きはないのか?もう読み終わってしまったぞ」

 

 

 ヴェルドラはこっち帰ってきてすぐに漫画に没頭し始めたのだ。

 だから誰もまだみていなかった。それにしても漫画がなくなると来るなんてなんで自由な奴なんだろう。

 

 

「後でな。ヴェルドラ」

「なにぃ!今すぐ出すのだ」

「リムル殿シスタ殿そちらの方は?」

「あー驚かないで欲しいんだけど盟友のヴェルドラ君だ」

「ヴェルドラである。暴風竜と呼んでも構わんぞ」

「「「暴風竜ヴェルドラ!!?」」」

 

 

 そう言うとその場にまた混乱が起こる。やっぱりみんな知ってるんだよなぁ。ヴェルドラのことって。

 そこからかいつまんで2年前のヴェルドラ消滅事件の全貌を話した。

 

 

「なるほどヴェルドラの消滅は貴様たちの仕業であったか。しかし暴風竜復活となると西方教会が黙ってはおらんだろう。あそこは特に暴風竜を敵対している」

「もし俺たちが西方教会と敵対したらどっちにつく?」

「それを聞くかリムルよ。我らは西方教会に特に義理もない。こちらにつくであろうよ」

「兄弟子がそう言ってくれると助かるよ」

「それにしても貴様は少し腹芸を覚えよ。シスタはまだできておるが貴様は全くだぞ」

「ぐぅ」

 

 

 リムルは言われたことに少しショックを受けている。

 

 

「それで魔道王朝としてはどう考えておられます?」

「今の時点では難しいですね。けれどエレンなのでしょう。あなたたちの魔王化を促したのは。ならば黙認はできません」

 

 

 そこで会議室の準備が整い全員が移動する。

 

 

「それでは会議を始めさせていただきます」

 

 

 今回の司会進行役はシュナに頼んだ。ハクロウでもよかったが今回はシュナからやりたいと言ってきたのでやらせてみるのだ。

 

 

「ではすでに皆様自己紹介はお済みのようですので各国の代表のみ発表させていただきます。

 武装国家ドワルゴンより国王陛下ガゼル・ドワルゴ様。

 獣王国より三獣士が筆頭アルビス様。

 ブルムンド王国よりギルドマスター兼情報統括補佐フューズ様。

 魔道王朝サリオンより大公爵エラルド・グリムワルト様。

 そして最後にジュラテンペスト連邦国より盟主改め魔王リムル様、魔王シスタ様」

 

 

 

 こうして後に人魔会談と呼ばれる会議が始まったのだった。

 




感想や評価欲しいです

後クリスマスが今のところ一番です。自分の中では多分バレンタインになるかなーと思ってたんで想定外でした


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18話

 会議は始まりシスタとリムルは少しずつ話していく。今までのことを。

 自分たちは転生者であり魔王化に至るまでをおおまかに話始める。

 

 

「さてここまで話したが真実を語るには話の内容を変える必要がある」

「どのように変えるおつもりで?」

「返り血で染まった手で友好を求められても恐れられるのが目に見えておる。しかしそれが暴風竜の仕業なら話が別だ。その存在そのものが天災であり誰も異を唱えられん」

「私はこの筋書きを支持します。娘のせいで魔王ができたというようこっちの方がいい」

「パパ…………それって姑息〜」

 

 

 その瞬間エラルドに何かが刺さったように見えた。しかし話の内容的にはいいと思ってしまう二人。しかしどうしても確認しないといけないことがある。

 

 

「反対意見があったら言ってくれ」

「特にヴェルドラには僕たちの罪を背負わせることになるが……」

「クァハハハ、構わんぞ。我は貴様らと共に罪を背負うと決めたのだ」

「ヴェルドラありがとう」

「ありがとな」

 

 

 そのことにみんなは驚きを隠せない。なにせ暴風竜がいるとはいえ全員が思っていたことはリムルやシスタと名乗る魔王はあくまでも暴風竜の下についており対等とは思っていなかったのだ。しかし実際は違う。暴風竜ヴェルドラ自身が同じ罪を背負うと言ったのだ。

 代表及び、その従者は驚きを隠せなかった。

 

 

「なるほど、そっちはどうするかわかった。ところでリムル、シスタよ。捕虜はどうするのだ?」

「それは王と王妃は解放する。こちらへの賠償を行わせてファルムス王国は一度滅んでもらう」

「ほほう、それは急ですね」

「しかしリムル殿それは無理じゃないでしょうか?あそこは一部を除きほとんどの貴族が腐っておりますから」

「まぁ実際はそっちが目的なんだけどな。内戦を起こさせて英雄ヨウムを新たな国王にする」

 

 

 そしてヨウムは立ち上がった。それの話は前もってしてある。ヨウムには辛い立ち回りになるかもしれないがやってくれるだろうと思う二人。なにせこっちが持ちかけた話に対して真摯に向き合い、自分ができることを精一杯やってくれる人間なのだから。

 

 

「小僧驚いてはおらんな」

「まぁ旦那たちから聞いてたんで」

 

 

 そこでガゼルは英雄覇気を使う。あれはリムルも固められてた技だ。しかしヨウムは下がらない。

 

 

「ほう」

「旦那たちが信じて託してくれたからやってやるさ。それに好きな女の前ではカッコつけたいものだろ」

「あ、はははははは。ヨウムらしいな」

 

 

 そこで大笑いしたのはシスタだった。周りの奴らは動揺を隠せない。それはリムルも同様だ。

 こんな会議の最中に大きな声で笑うのは本来であればありえないことなのだ。

 

 

「お、おいシスタ?どうかしたか?」

「いやこういうのは羨ましいと思ってな。ヨウムはきちんと伝えられただろ」

「旦那…………」

「なるほど、流石はシスタ様だ。物おじしないとは。ドワーフの英雄王よ。こいつはバカだが無責任ではない。あんたのように英雄王と呼ばれる日まで見守ることをこのグルーシスが誓おう」

「で、あるか。困ったことがあれば頼るが良い」

「心強い」

 

 

 そこからも会議は加速していく。なぜブルムンドがこのテンペストと国交を結んだのか。こちらと西方聖教会の出方を見てからでもよかったのではないのかというのがエラルド公爵の言い分だ。

 それに対してのフューズの意見はもっともなものだった。西方聖教会と組むよりテンペストと組みなるべく国としての崩壊を避ける道だったのだ。

 

 

「なるほど。納得できたよ。試すような真似をしてすまなかったねフューズ殿」

「めざといなエラルド。リムルとシスタは俺が信用しているのだ。試すも何もないだろうよ」

「そうはいうがなガゼルよ。魔物を信じろと言われてすぐに信じられる方が難しいのだ」

「それで決断は下せたのか?」

「私自身としての決断は下せたがそれを答える前にリムル殿とシスタ殿に一つ尋ねたい」

「ちょっとパパァ!もったいぶらないで早く答えてよ」

 

 

 エレンに叱られる父親。しかし真面目な話だと思った二人は「魔王覇気」を出す。

 

 

「それで何を聞きたいんだエラルド?」

「答えてやる」

「あなた方は魔王としてその力をどう使うおつもりなのか?」

「なんだそんなことか」

「それならとっくに決まっている」

「俺たち二人はみんなが暮らしやすい国を目指しているできるだけみんなが笑って暮らせる国をな。ま、そんな簡単にはいかないだろうけどな」

「そんな夢物語を実現できるとでも!?」

「もちろんそのために僕たち二人は力を手に入れた。力がない理想は戯言だしね。それに理想なき力は虚しいだろ。僕たちはただ力を求めるなんてことはしないよ」

「ははははははは!これは愉快ですな。魔王リムル、魔王シスタ。貴殿たちが覚醒できた理由がわかった気がします。

 魔道王朝サリオンよりの使者として貴国ジュラテンペスト連邦国との国交をお願いしたい」

「もちろんこちらこそ」

 

 

 リムルがそういい周りは歓声が上がる。そこからシスタは休憩なので会議から抜けた。戦いになると頭がよく回るがそれ以外に関してはシスタはそこまで頭が良くない。

 いや、頭が良くないという表現はおかしい。昔一度だけリムルの前で計算式を書いてみたらシスタは怒られたのだ。出来すぎるというのも何気に苦労するものだ。

 会議から抜けても特にやることはないのでシスタはまた会議室に戻っていく。その途中であるやつを見つけた。先に戻っておいた方が良さそうだと思い瞬間移動で戻るとまた会議が始まっていた。

 

 

「悪いおくれた」

「いやいや」

「ちょっと待つでやんす。今は偉い人たちの会議中で」

「うっさいわね!私はこの国にとっての大事なことを伝えきたのよ」

 

 

 そういいシスタとリムルの前に現れたのは迷宮妖精のラミリスだった。

 

 

「この国は滅亡する!!」

「「「なんだってー!!」」」

 

 

 それに反応したのはベニマル、リグルド、リムルだったがシスタは反応しない。

 なにせさっき伝えにきたというのだ。何かあるだろうと黙っていた。

 

 

「リムル様この国が滅ぶなど巫山戯だことを抜かしています。どう処分しましょうか?」

 

 

 ディアブロがラミリスを捕まえてリムルの前に連れていく。それをみた三体の悪魔は悔しそうにしている。

 

 

「私が捕まえていたら」

「あーあ失敗しちゃった」

「我もすぐに出来たというのに」

 

 

 シスタは呆れていた。魔王の一柱であるラミリスをゲームセンターの景品か何かと勘違いしていたのだ。

 

 

「げっ!アタシの全魔力でも抜け出せない。只者じゃないわね!」

 

 

 まぁラミリスの何倍も魔素のあるディアブロから抜け出すのは無理だろう。そのままバタバタしながらリムルが連れていき

 

 

「ヴェルドラちょっと相手しててくれる?」

「我は今大いなる謎を解くのに忙しいのだ」

「あぁ、それ犯人○○だから。それじゃあ後よろしく」

 

 

 そういいラミリスを置いていく。ヴェルドラはショックを受けているがリムルにとってはそれより国の偉い人たちを待たせる方が大変なのだ。

 

 その後も会議は進んでいく。そしてシュナが最後に挨拶をして終わった。

 

 

「ラミリス様伝えるなら今ですよ」

「うっさいわね!アタシは今忙しいのよ。ヒロインがこの色男の中から誰を選ぶのか」

 

 

 ヴェルドラの方を見てみるとやれやれという顔だ。リムルは少しどうしようか悩んでいたがすぐに思いつく。

 

 

「おいラミリス。そのヒロインが誰とくっつくか言われたくなければ今すぐ要件を言え」

「は、はい!了解であります」

 

 

 最敬礼を行いながらリムルに飛んでいく。そしてとうとう話始めた。

 ラミリスがここにきた理由を

 

 

「クレイマンの発案で魔王の宴(ワルプルギス)が開催されたの。議題はカリオンを殺害したリムル及びシスタへの粛清。そして魔王を名乗っていることなのよ!」

「へぇ!いいじゃん。最高だよ」

「シスタお前何を言って」

「それでそのクレイマンは魔王の宴(ワルプルギス)と同時にテンペストへの軍を侵攻させているんだろ」

「え、ええ。なんでわかったのよ!」

「考えてみれば当然だ。なにせリムルと僕を魔王たちに討たせようとする。するとそっちへの警戒は僕たち二人がしないといけない。そしてクレイマンは僕たちの仲間より自分の方が強いと思っているならその隙にテンペストを襲うに決まっている」

 

 

 その場にいた全員が納得するような理由だった。しかし各国の重鎮は驚いていた。魔王シスタはこの会議においてもほとんど話すことはなかったし、なんならリムルへの相槌行っていただけなのだ。だからここまで頭が切れるとは思っていなかった。

 

 

「その魔王の宴(ワルプルギス)に俺とシスタが参加するって言えるか?」

「まっかせなさい!ラミリス様にかかればあっという間よ」

 

 

 そしてラミリスは魔法陣を開きある人物に連絡を行っていた。その間にこっちでやることがあるとシスタはいう。

 

 

「それならこっちの編成を発表する。まずはファルムス攻略にディアブロ、テスタロッサ」

「お、おいシスタ。テスタロッサもいいのか?」

「なるべくこっちも早く片付けてほしいし王妃とその護衛を連れていくにも人手がいるだろう。そしてクレイマンの軍を撃つのにベニマル、ソウエイ、ハクロウ、ゲルド、そしてクマラ」

「わっちもですか?」

「クマラは元々ジスターヴの出身だ。向こうでの地理を他の奴より知っているはず。頼んだよ」

「うけたまわりやした」

「僕の護衛にカレラとウルティマ。頼んだよ」

「はーい」

「お任せを」

「それじゃあ俺の護衛はシオン、そしてヴェルドラ」

「はい!」

「クァハハハ、任せておけ」

 

 

 こうしてテンペストは三方向同時に攻略することが決まった。




感想や評価など欲しいです


後次の更新は土曜の夜か日曜になると思います


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19話

今回はちょっと長めです


 魔王の宴(ワルプルギス)への参加が決まり、シスタとリムルは準備をしていく。

 そしてシスタはシュナのところに訪れる。

 

 

「シュナ、前に言っていたやつできたか?」

「もちろんです。こちらです」

 

 

 出してくれたのは白い軍服に黒い軍服だ。僕とリムルで色違いになっている。

 白が僕で黒がリムルだ。

 

 

「シスタ様お願いがあります」

「?なんだ」

 

 

 その時の真剣な表情をしたシュナにシスタも真面目な対応をする。実際何を言われるのかはわかっていなかった。

 

 

「わたくしもジスターヴの方へ行かせてください」

「!!?シュナそれがどういうことがわかっているのか?」

「もちろんです。新たな手に入れたスキル「解析者」も役に立つはずです」

 

 

 シスタは諦めた。その顔はとてもシスタに説得できる顔ではない。

 

 

「わかった。ただし、必ず生きて帰ってこい」

「はい!」

 

 

 その場でソウエイとハクロウに思念伝達をする。すると二人はすぐにやってきてくれた。

 

 

「お呼びですかな?」

「シュナもジスターヴに行く。だからお前たち二人に護衛を頼みたい」

「承知」

「あ、あれ?反対しないんだな」

「ほっほほ、こう見えてもシュナ様もオーガの姫様。こういうことになるだろうとは予測しておりましたわい」

「頼もしいな。頼んだよ」

 

 

 3人は出て行く。そして少しするとテンペストの結界の前に誰かやってきた。気付いたのは僕とリムル、ディアブロ、テスタロッサ、ウルティマ、カレラだけだった。

 もっともベニマルは気づくことはないだろう。今は軍の編成で頭がいっぱいのはずだ。

 

 すぐに結界の外に行くとそこにいたのは

 

 

「お久しぶりでございます。シスタ様。我が主ギィクリムゾンが城まで来るようにとのことです」

「あー!レイン」

「知り合いか?」

「まぁ、知り合いだな」

 

 

 そこにいたのはギィの城にいたレインというメイドだった。

 

 

「それでどうしたんだ?」

「それは私には計りかねます」

「まぁわかった。それで今回の魔王の宴(ワルプルギス)に連れて行く護衛は一緒でも構わないのか?」

「ええ、構いません」

「それじゃあウルティマ、カレラ行くぞ」

「お、おいシスタ」

「悪いリムル。今ギィと敵対するわけにはいかないんだ。敵対するとこのテンペストは滅ぶ運命を辿るしかないからな」

「はぁ、わかったよ。それじゃあ会場でな」

 

 

 そういいレインは転移門を作る。するとあっという間に辿りつく。

 幻想的のような氷の城に。歩いていき前と同様巨大な二体の悪魔が大きな扉を開く。

 

 

「シスタテンペスト様が到着なされました!」

 

 

 その声に怒りを荒げるものがいた。しかし手で制する。ウルティマとカレラだ。多分だけど魔王と言わなかったのが気に食わなかったんだろう。しかしそんなことレインからすると関係ない。なぜなら今はまだ自分たちが名乗っているだけで他の魔王から認められたわけではないのだ。

 そしてそのレインの声に反応したものがいた。一瞬で目の前にまで飛んできて頬を触る。

 

 

「へぇ、本当に魔王になったのねシスタ」

「ヴェルザード、久しぶり」

 

 

 その気配を感じ取り攻撃を仕掛けるウルティマとカレラ。しかし軍服を掴んで止める。

 

 

「我が君離してくれ」

「シスタ様、離して!」

「待て待て。ヴェルザードに攻撃の素振りはないだろ」

「ふふ、昔より落ち着きが出てるわね。ギィはもう魔王の宴(ワルプルギス)に行ったわ。今回来てもらったのはわたしのため」

「まぁ構わないよ。そっちに間に合うなら。それで要件って?」

「少しだけ付き合ってちょうだい。お茶のね」

 

 

 いつのまに用意されたのか机と椅子が用意されていた。そしてレインが紅茶を持ってきて扉の前に行く。

 その様子は前にも見た感じだ。ウルティマとカレラは背後に控えている。

 

 

「それでなんのよう?」

「ギィが……いえなんでもないわ」

 

 

 あーこれはそういうことか。他の奴らもいるから言えないこととかそういうことだな。

 

 

「まぁいいや。それで今度はいつ出かけるつもりなんだ?」

「そうね近々あなたたちの国には行こうと思っているわ」

「そっか。また来る時は言ってくれ。もてなすよ」

「ええ、期待してるわ」

 

 

 ヴェルザードと話しているとだんだん時間ばかり過ぎて行く。そして時間になる。

 

 

「我が君」

「シスタ様」

「あぁ、わかってる」

 

 

 ウルティマとカレラは後ろから言ってくれる。そしてそれをわかっていたかのようにヴェルザードは動き出す。

 

 

「レイン!」

「は!」

 

 

 そしてレインは転移門を作る。その中を通って行くと大きい扉の前に出た。そしてふと思いつく。

 

 

「ウルティマ、カレラお前たち擬態できるか?」

「どうして?」

「そこには同意だ。なぜ擬態などする必要があるのだ」

「まぁまぁ、する必要がないといえばないんだけどお前ら今までにこっちに出てきたことあっただろ」

「うん」

「もちろんだ」

「その時のことで恨みを買うのはめんどくさいからな。頼む」

「はーい。シスタ様の頼みだもん」

「やれやれ断る理由はないな」

「あと魔素もこんな感じで揺らしておいてくれよ」

 

 

 自分で手本を見せてみる。すると二人はすぐに擬態をして魔素のコントロールを乱した。

 流石にこんなに早くされるとは思っても見なかったのでショックであるがそれを顔に出してはいけない。

 

 

「これでいいのー?」

「我もできたぞ」

「あ、ああ完璧だ」

 

 

 一応リムルにも思念伝達をしておく。リムルはともかくシオンとヴェルドラは口を滑られそうだからな。

 

 扉を開けようとすると開ける前に扉が開いた。その扉を開けたのはミザリーだった。

 

 

「ありゃミザリー久しぶり」

「シスタ様お久しぶりでございます」

「それでなんで気づいたの?」

「以前戦った際に魔素の流れを覚えております。巨大になって妨害もありましたがなんとかわかりました」

「はぁ……ミザリーも大概化け物なんだよな」

 

 

 そういいミザリーの後について行く。部屋に入るとすでに3人もうきていた。そして一番奥にはギィ、その両隣は空いており、さらにその左側には巨大な男が座っている。さらにその隣にもハリウッドにいそうなくらいの男が座っていた。

 しかしこの一番左の男の従者のメイドさん。こっちの方が強そうなオーラをしている。もちろん座っている奴も強いオーラを纏っているんだけど。

 その直後にリムルたちがやってきた。すると皮切りのように次々とやってくる。

 金髪の人間らしき風貌こいつがレオンだとすぐにわかった。

 

 

「おい、シズさんから一発殴ってくれって頼まれてんだ。殴らせろ」

 

 

 リムルがそういう。僕自身も思っていたがそれをここでいうつもりはなかった。

 

 

「断る。だが城に招いてやるからそこでやるといい。罠だと思うなら来なくていいぞ」

「わかったよ。招待状でも出してくれ」

 

 

 リムルはそういいレオンの顔に少しだけ笑みが浮かんだ気がした。そしてだんだんと席に座って行く。そして最後にやってきたのは背中に羽の生えた女の人だった。その背後には同じく背中に羽の生えてマスクをした奴が控えながらは入ってきていた。

 

 そしていよいよ

 

 

「さっさと歩け!このグズが!」

 

 

 問題のクレイマンが入ってきてミリムを殴った。そしてそれは魔王間にも衝撃が走ったのだった。ミリムは中身が抜けたように何もし返さない。

 

 

「さぁ!今宵は私の発案に応じてくださってありがとうございます。始めましょう。魔王の宴(ワルプルギス)を」

 

 

 クレイマンはそう叫び魔王の宴(ワルプルギス)が始まる。そして長々と話し始める。時間にして30分ほどだったと思うけど聞いているだけで鬱陶しい。

 

 

「あの〜」

「なんだ?」

「魔王たちってそんなくだらないこと話すんですか?なんかもっと言葉より拳だと思っていたんだけど」

「くっ!邪竜の威を借りるスライム如きが生意気な」

 

 

 リムルとクレイマンがそう言い合う。それを聞くシスタは何も言わない。何せ二人の言い合いなのだ。手を出すのもご法度だろう。

 

 

「貴様もだ。低俗なスライムのくせに魔王を名乗るなど言語道断」

「ふーん、それでいい分終わり?」

「それだけではない。ミュウランを殺したのだろう。我が部下を殺したのです。皆様このものたちにわたしから裁きを下しても?」

「構わん」

 

 

 ギィがそう答える。そして結界を張り出した。その中にはリムルとシオン、ヴェルドラ、シスタ、ウルティマ、カレラ、そしてクレイマン、ミリム、クレイマンの従者であろう2匹の獣がいた。

 

 

「お前たちは魔王を名乗るのか?」

「ああ、すでにジュラの森では盟主だし関係ないよ」

「もちろんだ」

「ならクレイマンを倒すといい。ここには見届け人もいることだ。倒せたなら名乗ることを認めよう」

 

 

 ギィがそういう。あくまでもここでは他人のふりをしているのかもしれない。

 

 

「はっはは。そうですかギィよ感謝します。この者たちを殺す機会をくださったことを」

 

 

 クレイマンはそう言い喜ぶ。

 しかしギィにとっては感じていることが違っていた。元々シスタは悪魔公(デーモンロード)であるミザリーと互角に戦ったのだ。それもミザリーには手加減しろと言ってはいたがそれでも勝ったことには変わりない。そしてシスタの後ろに控えるあの従者。気づいているものは少ないかもしれないが間違いなく原初の悪魔だ。それを見てクレイマンがここで生き残ることは不可能だろうと思いながら戦いの決着を見守った。

 

 

「さぁミリムよ。このものたちを全員殺せ!」

 

 

 その声でミリムは動き出す。それを見たリムルとシスタは焦った。いくら進化したとはいえミリムは別格なのだ。勝てると思ってもいない。

 

 

「ヴェルドラ、ミリムの相手をしててくれ。ただし怪我をさせるなよ」

「なるほどこれが兄上の一粒種か。よかろう。少し遊んでやる。くるが良い」

 

 

 するとシスタの気のせいかもしれないがミリムが少し笑った気がする。

 リムルとシオンはクレイマンの相手。そして僕の相手はというと2匹の獣だ。

 

 

「なら僕が」

「我が」

「待て待て僕がやるから二人は待ってて」

《その獣は殺さずに捕まえてください》

 

 

 ルウェルからそんな警告が入ったのだ。訳はわからないがまぁその通りにしようと思い攻撃を見切って行く。これは何をしても勝てると思いめんどくさかったので捕食して終わった。

 後でルウェルから報告を聞くとしてリムルの方を見てみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてやるか」

 

 

 リムルの言葉と同時にシオンが殴りにかかる。しかしクレイマンも腐っても魔王の一人。懐から人形を出して対抗しようとする。

 

 

「踊り狂え、踊れ人形達(マリオネットダンス)

 

 

 そういい人形が動き出す。しかしシオンは意に介さず、愛刀剛力丸を一閃する。するとその人形たちはうごかくなった。

 

 

「はっはやるな。だが踊れ人形達(マリオネットダンス)は一体一体が上位魔人並みの再生能力を持っているぞ」

 

 

 そう発するクレイマン。しかしその人形達が動くことはない。

 

 

「なぜ動かない?何をした貴様!」

「はぁ教えてやるよ。シオンの持つ刀は魂食い(ソウルイーター)なんだよ」

「なんだと!それでは宝刀ではないか!?」

「知らないよ。俺たちが作ったんだし」

「なるほどこれは剛力丸・改なのですね」

 

 

 あ、あれ?渡した時に言ったよねと思うリムル。だが真面目に考えてはダメなのだ。相手はシオン。ゴブタ同様に話を聞いていないことの方が多い。いや、聞いていてもわかっていないことの方が多いと言った方がいいのかな。

 

 

「小癪な剣もこの私のコレクションに加えてやる。操魔王支配(デモンマリオネット)

 

 

 クレイマンから発せられた黒い光がシオンを包んでいく。しかし誰も慌てない。食らっているシオンですら慌てる様子はないのだ。

 

 

「ククク、喜べ魔王すら支配する究極の呪法だぞ。お前のような魔人に使用するのはもったいないがまぁ良い。下等なスライムどもはどうせ部下頼りなのだろう。所詮はオークロード如きに手こずる雑魚の魔物よ。貴様の主を殺したら貴様を私の配下にしてやろう」

 

 

 長々とクレイマンが話す。リムルは呆れて何もいえなかった。ヒナタを相手にしたらこいつすぐに殺されるだろうと思うほど弱いのだ。魔素量でさてシオンを下回っている。

 

 

「おい、これはどういう攻撃だ?痛くも痒くもないがもう少し待たないと効果を発揮しないのか?」

 

 

 イライラした声でシオンがそう言い放つ。やっぱりシオンにこの攻撃は通用しなかったと思うリムル。

 しかしクレイマンは慌て始める。

 

 

「そんなはずはない。魔王ミリムでさえ操った呪法なのだぞ」

 

 

 その言葉を聞きながらシオンは光により妖気を吹き飛ばした。それを見て本当の意味で慌て出すクレイマン。

 

 

「こいつ魔王を舐めきってますよ。皆さんここは粛清が必要なのでは?これでは殺されてしまったカリオンも浮かばれない」

 

 

 目を血走らせてそう言い放つクレイマン。しかし他の魔王達は何も言わない。

 

 

「おいおい、俺がいつ死んだって?リムルとシスタとは知り合いなんだが」

 

 

 魔王フレイの後ろに控えていた翼を生やしてマスクをしていたものはおもむろにマスクを外す。するとその顔は魔王カリオンだったのだ。

 

 

「なぁ!なぜお前が生きている?は!さては裏切ったなフレイ!」

「あら?いつから私があなたの味方になったのかしら?」

 

 

 そんなことをいうフレイ。それを聞くリムルは改めて思った。女って怖い、と。

 

 

「ふざけるな。もういいミリム。ここにいる奴らを皆殺しにしろ」

 

 

 クレイマンはそう言い放つ。流石にミリムはやばいと感じるリムル。そしてそれはこの光景を見ていたシスタも同様であった。

 

 

「??なぜそんなことをする必要があるのだ?リムルとシスタは友達なのだぞ」

 

 

 何事もなかったかのように言い放つミリム。その言葉を聞き混乱している魔王達。それはリムルとシスタであっても同様だ。

 

 

「それよりもフレイ。あれを持ってきてくれたのだろうな!?」

「はいはい、コレでしょ。それよりあなた全然演技ができてなかったわよ。口元もにやけていたしね」

「仕方ないだろう。あの2人がワタシのために怒ってくれたのだ。嬉しかったのだ。もう少しクレイマンの精神を弱体化させれば黒幕の正体をはかせることができたのだがな」

 

 

 そんなことを言い張るミリム。他の魔王達も呆れたように

 やっぱりな、

 だと思った。

 そりゃそうだよな。

 と心の声が響いたように聞こえた。

 

 そしてそそくさとドラゴナックル手にはめるミリム。

 しかし今の状況に納得しないものが1人。

 

 

「ちょ!ちょっと待てミリム。お前まさかノリノリで俺たちの国を滅ぼしてくれたの?操られてなくて自分の意思で」

「む!そんなことはいいだろうカリオン。クレイマンを追い詰めたのだ。さぁ黒幕を吐かせるぞ」

 

 

 涙目になるカリオン。なぜか少し可哀想だと思ってしまうリムル。騙されたもの同士2人の間に感じるものがあったのだろう。

 状況は既に詰んでいる。あとはクレイマンを始末するだけなのだ。

 

 クレイマンは状況を理解できていなかった。

 

 

「バカな!操魔王支配(デモンマリオネット)が効いていない。なぜ呪法の支配を受けていないのだ」

「うむ!大変だったのだぞ。ワタシは大抵そういう術は弾いてしまうからな。まず全部の結界を解除し、そして意志の力で抵抗(レジスト)を抑え込んだのだ。お前は用心深いからな。そうやってワタシに頑張って呪法をかけたと勘違いさせたのだ」

「なんだと……ワザと?魔王すら支配するそれが操魔王支配なのだぞ」

「そうなのか?だがワタシはそういうのを解除するのも得意なのだ」

 

 

 胸を張って言い張るミリム。その様子を見てため息を吐くフレイ。

 

 

「でも、クレイマンがミリムを殴った時は焦ったわ。

 ミリムの計画が失敗するのはどうでもいいんだけど、私のお家が壊されるのは、ね。

 本当、良く我慢出来たわね」

 

 

 そう言うフレイ。クレイマンのやつ今だけじゃなくて過去にもミリムを殴っていたのか。怖いもの知らずにも限度があると思ったシスタ。

 

 

「うむ、ワタシも我慢できる程度の大人になったのだよ」

 

 

 そういうミリムに対して少し笑いを堪えるリムル。大人は自分で言い張るものじゃないんだよ、と突っ込みたいんだろう。

 

 

「どこがよ。それにしても、一体何が目的だったの?」

「ん? いや何、クレイマンが怪しい会話をしていたのを思い出してな。

 何でも、テンペストの町を人間の敵に仕立て上げて人魔戦争を画策してたようだ。

 そんな事されたら面白くなくなるから、邪魔しようと思ったのだ!」

「へえ、貴女が自分の事以外で動くなんて……」

「わはははは! だから言ったであろう! 大人になったのだ!」

「はいはい。そういう事にしておくわ。

 でも、クレイマン。貴男、弱者や抵抗出来ない者の前では、威張り散らすのね。

 私、貴男に魔王を名乗る資格は無いと思うのよ。

 ミリムが我慢していたから口出しはしなかったけど……少し怒っていたのよ、私も」

 

 

 静かな怒りを結界の外から放つフレイ。それに同調するように

 

 

「そういう事なら、町ごと吹き飛ばされた俺にも、言いたい事があるぜ。

 なあ、クレイマン。取り敢えず、お前は許さん!」

 

 

 ミリムにやられたことを見事クレイマンに責任転換したカリオン。しかし最も怒りを感じているのはリムルとシスタだ。

 

 

「さて、そろそろいいかな?」

「シスタ今回は俺が」

「いーや僕だ」

 

 

 2人の言い合いを見ながらクレイマンは既に終わったと感じていた。ミリムの暴力的な攻撃を見てしまったのだ。そして今この結界の中に仲間はいない。

 クレイマンは心に決めた。せめて何人かは道連れにしてみせると。

 

 刹那、クレイマンの体が光り輝く。そして周囲の魔素をだんだん吸収していく。

 

 

「離れろシオン!」

 

 

 リムルの命令は既に遅かった。しかしそこはウルティマとカレラがシオンを抱き抱えて隣までやってくる。

 

 

「上出来だ。ウルティマ、カレラ」

「うん!」

「容易いことだ」

 

 

 そう言いながらも笑みを浮かべるウルティマとカレラ。そしてこのことはリムルも見ていた。

 

 

「さて、コレで僕がやってもいいよな?」

「仕方ない。今回は譲るよ」

 

 

 そしてシスタはそこからクレイマンの手と足を切り落とす。しかし魔王で「超速再生」持ちだったのですぐに回復する。思考加速を使いシスタは刀を振るう。

 

 

「さてクレイマン。ここで交渉をしよう。黒幕とやらを話したら助けてやらんでもない」

「話す!話すから殺してくれ」

 

 

 クレイマンが味わったのは世にも恐ろしい痛みを感じる斬撃だった。自分の認知できない速度で切られたために痛みを感じているのだ。

 

 

「私の黒幕は呪術王(カースロード)カザリーム様だ。そこのレオンに滅ぼされた魔王だ」

 

 

 他の魔王達もキョトンとしている。そんなやついたっけ?そしてそれはレオンも同様だった。

 いやいや、なんで君が覚えてないのよ。殺したの君でしょ。

 

 

「ああ、そういえばそんな奴がいたな。部下になるなら魔王に紹介してやると言ってきてむかついたら即殺したが。そうか部下にしたかったのか」

 

 

 なんで恐ろしいレオン。美形に関わらず性格は破綻しているようだ。

 

 

「さて、黒幕の正体も聞けたし何か言いたいことはあるか?あ、そうそう。お前復活はできないからな」

「な、なんのことだ?」

 

 

 嘘が下手すぎるだろと思ってしまう。しかしそんなことよりも話して絶望を与える方が大事なのだ。

 

 

「なんのことって?うーんお前の魂全てもらうからかな。それじゃあバイバーイ」

「やめろ!助けてカザリーム様」

 

 

 こうしてクレイマンは僕の中の魂の一つとなった。もっともルウェルに頼んで地獄を見せるように言っているので本人は今頃死ぬよりも辛い思いだろう。

 なにせルウェルはやると言ったらとことんやるのだから。

 

 

「素晴らしい、お前達が魔王を名乗ることを認めよう。異論のある奴はいるか?」

「まぁシスタとリムルはやってくれると思っていたよ。なんならアタシの弟子にしてあげてもいいけど?」

「結構です」

「また別でとってください」

「何よ!なってくれてもいいじゃない」

 

 

 ブーブ文句を垂れる妖精。それに対抗するように

 

 

「ふふん!シスタとリムルはワタシの友達だからな。お前とは仲良くしたくないようだぞ」

「え、ちょっとうそよね?」

「わはははは、お前は仲間はずれだなラミリス」

「なんだと!てーい」

 

 

 ラミリスがドロップキックをミリムに放つがミリムは軽やかにかわす。

 

 

「ワシも賛成だな!」

「俺はどーでもいい」

 

 

 そういうダグデュールとディーノ。

 

 

「俺は誰が魔王になろうと興味はない。勝手にするがいいさ」

 

 

 そう言い放つレオン。相変わらず冷めている奴だ。

 

 

「俺も構わん」

 

 

 そう言い放つロイ。

 さて、残るは二人なのだが。

 そう思い、フレイとカリオンを見やると、フレイが俺の視線を受け止めて此方を値踏みするかの様に見つめ返して来た。

 そして、

 

「いいかしら? 今は宴の最中で丁度良いから、私から提案というよりお願いがあるのだけど?」

 

 そんな事を言い出したのだ。

 

 

「先ず、そこのスライムさんを魔王として認める事に異議は無いわ。

 私の提案したい事は、その事とは無関係。

 ……いいえ、無関係と言う訳でもないわね。

 さっきの戦いを見ていて確信した。私は、魔王としては弱すぎる。

 クレイマンと戦っても、良くて互角。

 空で戦うならば、私が有利でしょうけど……魔王に言い訳は通用しないわね。

 私は、ミリムの配下につく事に決めたわ。

 ミリムも危なっかしいし、放ってもおけない。

 私も魔王としては劣るけど、戦力としてならそこそこだしね。

 どうかしら、この提案受けて貰えない?」

 

 

 しかしそれにはダクデュールが反論した。

 

 

「お主の攻撃性は高速機動による集団戦であろう。そこまで卑下にせんでも良いと思うが」

「もう決めたのよ」

「そうか」

 

 

 それ以上はダグデュールも何も言わなかった。そういいミリムとギィを交互に見るフレイ。ミリムが反論するよりも早くカリオンが言い放った。

 

 

「ちょっと待ってくれ。そういう事なら、俺も言いたい事がある。

 俺も、ミリムとタイマン張って負けた身だ。潔く、軍門に降ろうと思う。

 相手が勇者ならいざ知らず、負けた者がいつまでも魔王を名乗るのは烏滸がましいだろ?

 てな訳で、俺は今日からミリムの配下になる。宜しくな、大将!」

 

 

 もはやミリムの意思など関係なしだ。しかしカリオンの配下に入るのはギィが言い放つ。

 

 

「本当にいいのか?」

「あぁ、構わん」

「チィ、お前もあと数百年すれば覚醒すると踏んでいたのだが」

 

 

 しかしミリムは反論する。

 

 

「ちょっと待て、カリオン! タイマンはクレイマンが悪いのだぞ!

 ワタシは操られておったのだ。知らんぞ、そんな事!」

 

 

 それは無理だろうとその話を聞く魔王達。実際無理であると感じるシスタ。

 

 

「てめえ、知らばっくれるなよ。さっき自分で

『ワタシを支配するのは無理だっただろ』

『ワタシは、そういうのを解除するのも得意なのだ』って言ってやがっただろうが!」

 

 

 カリオンのやつ思ったより声真似が上手い。今度宴会にでも呼んでみようかなと思ってしまったことはシスタの胸の中にしまっておく。

 

 

「むぅ、それはだな」

「そこの筋肉バカはともかく私は加えてくれるわよね?」

「そ、そんなことを言って部下や配下になると気軽に話してくれなくなるだろ。一緒に悪巧みもしてくれなくなるだろ」

「あら?そんなことないわよ。いつでも一緒にいられるからもっと楽しいことができるかもしれないわよ」

 

 

 フレイがそう言い張る。それを聞くシスタは身震いが止まらない。実際はしてなくても。女というのはコレがあるから怖いのだ。

 カリオンはカリオンで

 

 

「大体だな、お前が俺の国を吹き飛ばしたんだろうが!

 お前には、俺達を養う義務があるんだぞ」

 

 

 難しい言葉でミリムを巻こうとしている。見た目に似合わず策士のようだ。

 ミリムは意味が判らなくなってきたようで、目を回す寸前である。

 そしてついに、

 

 

「ええええい!!! 分かったのだ。好きにするが良い!」

 

 

 火山の噴火のように頭から煙を出して、考えるのを止めた。

 流石はミリム。

 賢いようで、考える事は苦手なのだ。

 

 

「ははは。いいだろう! 今日より、フレイとカリオンは魔王では無い。

 ミリムの元で仕えるが良い」

 

 

 ギィが笑いながら宣言する。

 異論のある者は居ないようである。当然、僕にもリムルにも異論は無い。

 

 こうして魔王としての戴冠は正式に承認されたのだった。

 




正式名称何にしましょう。
ちなみに考えてるのは既にあるんですけどかっこいいのとか送ってくれたらそっちにします



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20話

東雲オルカさん評価ありがとうございます


 テンペスト・獣王国の連合はいた。彼らはリムルの転移門による移動によりほとんど体力を使っていない。慣れていないものは少しよっていたりしているがそれも範疇のうちだ。

 

 

「さてクマラどうする?」

「その前に伝えておきたいことがありんす」

「?なんだ?」

 

 ベニマルとアルビス、クマラによる会議が行われる。アルビスが参加しているのは獣人は基本プライドが高いためになかなかテンペストの住人の言うことを聞かないやつが多いのだ。

 

 

「クレイマンの配下には死霊の王(ワイトキング)がいるでありんす。このものはかなりの魔素を持っており、死者を使い攻撃してきます」

 

 

 その言葉を聞きベニマルはクマラの言葉の意味を理解する。つまり相手に死んだものがいてもそれを使い攻撃してくるのだ。

 

 

「なるほどならリムル様の言いつけ通り相手も捕縛した方が良さそうだ。それでも無理なら殺すしかないが」

「それは問題ないでしょう。数がいますので」

「シオンの紫克衆(ヨミガエリ)を使うが構わないか?」

 

 

 ベニマルは誰に確認したのかわからないが聞いてしまった。シオンは今魔王の宴(ワルプルギス)に行っているためこっちにはいない。アルビスは自分に聞かれたのだと思い答えてしまう。

 

 

「ええ、かまいませんわ。紫克衆(ヨミガエリ)に獣人をつけて数で押しましょう」

「それでいくか」

 

 

 そしてクレイマンの軍との衝突が始まる。結果は圧勝。なにせ数でも質でも上回っているのだ。負ける要素がなかった。

 

 

「大将俺たちも出撃させてくれ」

「俺も出させて欲しい」

 

 

 そういい出撃したがるのは三獣士のスフィアとフォビオだ。しかしアルビスもかなりうずうずしているようでベニマルは魔力感知を使い、存在値が高いやつのところにいくようにいい三人は出撃する。

 

 

「お兄様わたくしたちは城に突撃して参ります」

「シュナ、わかった。ソウエイ、ハクロウ、そしてクマラ。ついていってくれ」

 

 

 

 この四人で城に向かっていく。道中霧が濃く敵が多いのでシュナ、ソウエイ、ハクロウは気配を消そうとするがクマラは違った。

 クマラ自身かなり残虐な性格をしておりシスタの前ではそれを隠して甘えているのだ。シスタがいない、そして出撃命令が出たのなら今のクマラを止められるものはいない。

 霧を尻尾で吹き飛ばし、出てくるやつに対しても徒手格闘により吹き飛ばす。しかしギリギリで殺さない程度にだ。

 

 

「クマラはなかなかやりますの」

「ええ、シスタ様が褒めるだけはありますわ」

「………………」

 

 

 シュナとハクロウはそう言い褒める。ソウエイ自身顔には出ていないが少しだけ焦りが出ている。自身は影であり、テンペストではそれなりの強者だと信じていのだ。しかしここまでのことができるかと聞かれるとすぐには返答ができなかった。それほどまでにクマラの戦い方は無茶苦茶にしていたのだ。しかも強さを伴ってだ。

 

 

「我が主人の城を襲うとは下賤なものどもめ。ワシが殺してくれよう」

「アダルマン」

 

 

 クマラがそう呟くと目の前に死霊の王が現れたのだ。シュナ達は確かにこれはまずいと思う。シュナのユニークスキル「解析者(サトルモノ)」でもシュナの魔素量を遥かに上回っているのだ。

 

 

「ソウエイ、ハクロウこのものはわたくしが相手します。クマラさん援護お願いできますか?」

「お任せください」

 

 

 ソウエイもハクロウも何も言わない。それを納得したからだ。

 そして戦いの火蓋が切って落とされる。

 

 アダルマンが召喚した死霊はクマラが壊していく。クマラはシスタからの秘密の命令を受けていたのだ。シュナを守れと。

 他の奴らは戦闘経験が豊富だからなんとでもできるだろうといって何も言わなかったがシュナだけは戦闘経験がそこまで多くない。だからこそシスタは心配してクマラにそういったのだ。

 クマラはその命令を遵守するし、ジスターヴにはクマラとしても用事があったのだ。

 

 

「まさかお主クレイマン様のペットか?」

「ああ、そうでありんす。けれど今はシスタ様に支えている」

「お主もろとも灰塵にしてくれる」

 

 

 アダルマンは聖霊魔法を使い出す。シュナは慌てることなく対抗魔法を放つ。しかし魔素量の差により押し始めるアダルマン。それはクマラの出番であった。クマラがシュナの魔法を援護するように魔素を送り込む。すると押されていたはずの魔法は押し返すことになる。

 

 

「なぜワシの魔法が押されるのだ。キサマはワシより弱かっただろう」

「そうかもしれない。しかしシスタ様に助けてもらってからは昔のわっちではありんせん!」

 

 

 シュナの魔法を軸としアダルマンの魔法を押し返した。アダルマンは自身に当たる直前で魔法の発動を止め、ギリギリのところでかわす。

 

 

「あなたは自分に対して臆病です。だからこそ聖属性の魔法を全力で使えない」

 

 

 その言葉はアダルマンの呪縛を解き放つ一言となる。

 

 

「なるほどお主にはワシの聖霊魔法を見せてやろう」

 

 

 その言葉をシュナは待っていた。元々リムルからの情報でおそらく聖属性の最強魔法は霊子崩壊(ディスインティグレーション)だろうと言われていたのだ。そしてシュナは独自に編み出した魔法を使うことを決める。

 

 

「クマラさん失敗したらお願いします」

「了解しやした」

 

 

 二人は覚悟を決めてアダルマンの前に立つ。シュナの額には一筋の汗が伝わる。なにせ自分でははじめての魔法なのだ。失敗するかもしれないという不安が拭いきれない。

 

 

「くらうがいい。霊子咆哮(ホーリーカノン)

対魔属性結界(アライメントフィールド)

 

 

 シュナが使ったのは結界の類の魔法になる。そして飛んできた霊子咆哮(ホーリーカノン)はクマラが防ぐ。シュナが使った魔法これは完全に自分で編み出したものでありそれは他のものは入ることができない結界となった。

 

 

「シュナでしたかな?」

「ええ、その通りです」

「これから放つのはワシの最大攻撃。それに付き合っていただこう」

「かまいません。全力でお相手します」

 

 

 今度は霊子崩壊が来ると思いそれに備える。策は一つだった。

 

 

霊子崩壊(ディスインティグレーション)!」

霊子暴走(オーバードライブ)

 

 

 するとそれはあたり一面に広がりアダルマンにも当たった。そしてその光はアダルマンがカザリームによってかけられていた呪いまで解呪したのだった。

 

 

「あなたはもう縛られることはありません」

「感謝を、是非ともあなた方の神にお支えしたい」

「か、神!?わたくし達の主はリムル様とシスタ様です。神ではなく魔王ですが……」

「是非ともお会いしたい」

 

 

 アダルマンの強烈な懇願によりシュナは折れてしまった。そしてクマラはアダルマンにシュナの警護を頼み自身のやるべきことをやるためにジスターヴ内を走りだしたのだった。

 

 ベニマルは戦況を確認してこれ以上の増援はないと判断して降伏するものを連れて帰るためにテンペストに向けて帰り始めたのだった。残りはゲルド達の部隊がいればどうとでもなるだろうという判断だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔王の宴は終わりレインとミザリーが次々と食事を運んでいく。それは西洋の食事であり魔王達も喜んでいた。特にラミリスやミリムはおかわりを頼むほどだったのだ。

 ミリムはともかくラミリスの体のどこにそんなものが入るのだろうと思ってしまうシスタ。

 次々と食べていき食事も終わりリムルがふと呟いた。

 

 

「そっかもう十大魔王じゃないんだな」

 

 

 その呟きにより魔王達の顔色が変わる。

 

 

「困った……な。また新しい呼び名を考えなくては」

「お前たちこういう時こそ協力するのだ。ここには幸い全魔王もいることだしいい案も浮かぶというもの」

「そのとおり!全員で考えるわよ」

 

 

 ギィが言った言葉にラミリスが追い討ちをかける。しかし

 

 

「前の十大魔王で3ヶ月かかったんだっけ?俺はもうやる気でねー」

「興味ない」

「ワハハハハ。任せるぞお前たち」

 

 全くと言っていいほど協調性のない魔王。ギィも実の所考えるのがめんどくさくなってきたのか机を真っ二つに叩き割る。

 

 

「新しく魔王になったシスタとリムルよ。君たちに大変名誉なことを与えよう」

 

 

 二人の頬に手をやりそういう。しかし声はかなり怒っている。

 

 

「ギィお前」

「シスタ考えてくれるよな?」

 

 

 有無を言わせない笑顔だった。そしてリムルとシスタは観念して考え始める。

 すると他の魔王たちはお茶のお代わりやお菓子を頼み始めている始末。

 

 

「なら九星魔王(ナノ・グラム)なんてどうだ?」

「九芒星から取ったんだけど」

 

 

 少しの間魔王たちは考えている。

 

 

「決まりだな」

「素晴らしい!これで次の大戦も勝てるぞ」

「すげーな一瞬かよ」

「ワハハハハ流石はシスタとリムルなのだ」

「うんうん、やってくれると思ってたよ」

「…………」

 

 

 全員が各々に話し出す。そして今の今まで黙っていたヴェルドラが口を開いた。

 

 

「ところで貴様はいつまでそうしておるつもりだ。ミルスよ」

「ちぃ!気づいておったのか」

「姫ここは」

「構わん。ロイよ先に帰っておけ」

 

 

 そういいそのメイドは姿を表す。綺麗な金銀妖瞳(ヘテロクロミア)をした女だった。

 

 

「この邪竜め、どこまでも妾の邪魔をするか。それに名前まで忘れておるとは」

 

 

 何か言っていたがそれは二人の耳には届かない。しかし新たな魔王たち九星魔王は決定したのだ。

 

 

 悪魔族(デーモン)……"暗黒皇帝(ロード・オブ・ダークネス)"ギィ・クリムゾン

 竜人族(ドラゴノイド)……"破壊の暴君(デストロイ)"ミリム・ナーヴァ

 妖精族(ピクシー)……"迷宮妖精(ラビリンス)"ラミリス

 巨人族(ジャイアント)……"大地の怒り(アースクエイク)"ダグデュール

 吸血鬼(バンパイア)……"夜魔の女王(クイーン・オブ・ナイトメア)"ルミナス・バレンタイン

 堕天族(フォールン)……"眠る支配者(スリーピング・ルーラ)"ディーノ

 人魔族……"金髪の魔王(プラチナデビル)"レオン・クロムウェル

 そして新たに誕生した魔王

 妖魔族……"新星(ニュービー)"リムル・テンペスト

 妖魔族……"新人(ルーキー)"シスタ・テンペスト

 

 

 こうして新たに世界を震撼させる魔王たちができたのであった。

 

 

 

 

 




ちなみにクリスマスは少しずつ書いてます



感想や評価いただきたいです


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21話

 西方教会内部では問題が起こっている。今野真矢と坂口日向が倒したと言っていたはずの2匹の魔物は新たな魔王として名乗りをあげたのだ。そのことで二人は呼び出されている。

 

 

「何か弁明はあるか?」

「ありません。てっきり倒したものだと思っていました」

 

 

 ヒナタがそう答える。しかしマヤの方は一言も話さない。

 

 

「してマヤの方は何かあるか?」

「ごちゃごちゃうるさい。どつくよ」

 

 

 その言葉に七曜老師と呼ばれるものたちが激昂した。しかしマヤは慌てない。隣にいたヒナタはまたかと思いつつ頭を悩ませる。

 ヒナタ自身自分より団長に向いているのはマヤだと思っている。人当たりもよく、実力も自身よりあるのだ。

 最も実力だけで言えばヒナタとマヤの間にあるものは計り知れない。

 だからこそ七曜老師も黙ってしまう。もしもここでマヤが暴れ出したりでもしたら全員死ぬのがわかっているからだ。

 

 

「て、では貴様らに任務を与える。新たに誕生した二体の魔王を討伐せよ」

「了解しました」

「わかったわよ。もーうるさいな」

 

 

 そういいでていく。七曜老師は各々怒っているがそれを決して爆発させなかったのは正解だと言えよう。こっちの世界に転生してからマヤほど才能と努力を重ねて最強と呼ばれるものはいないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒナタとマヤはすぐに準備を始める。しかし戦いの準備ではない。二人は側近を数人連れてテンペストに向けて出発したのだ。

 

 

「討伐ね」

「えー、わたし嫌だけど。だってあそこの街綺麗って聞いてるし」

「しょうがないわよ。命令だもの」

「なら説得は?それでいいじゃーん」

「とりあえず話をしにいくわよ」

 

 

 そうして馬に乗り極秘に出発したのだった。普段使っている聖霊武装とは別にあるものを渡されていた。あの邪竜ヴェルドラを倒すための武器だと言われているが正直頼りないと思いつつ背中に背負うのだった。

 

 こうして出発すること2週間ほどがたちテンペストの街道に入る。すると全員の鼻にいい匂いがするのだ。

 しかし転生者であるヒナタとマヤには違った。懐かしい匂い。こっちの世界では食べることができなかった匂いなのだ。

 

 その匂いがする店に入ると店員がやってくる。二人はメニュー表を見てすぐに頼んだのだ。

 

 

「とんこつラーメンコッテリで」

「わたしは塩ラーメン。あと餃子2人前」

 

 

 他の聖騎士たちは急に頼むから何を頼んでいいのかわからない。だから二人と同じものを頼んだのだった。そして料理が運ばれてくるとヒナタとマヤは食べ始める。そしてそれは懐かしい味だったのだ。

 

 

「あ、隊長たち食べないんっすか?もらいます」

 

 

 そういい最後の餃子をアルノーが食べる。するとマヤとヒナタは立ち上がり腰にしている剣に手をかける。

 

 

「死にたいのかしらアルノー?」

「殺そっか」

「ヒィ!すんません。もう一度頼みましょう」

 

 

 そうしてもう一度店員を呼び餃子を頼む。しかし

 

 

「すいません、それは中央都市リムル・シスタから取り寄せていて在庫がなくなったんです。すいません」

「いや構わない。よし、アルノーを斬る」

「勘弁してくださーい」

 

 

 アルノーはそう言い逃げる。それを追いかけるヒナタとマヤ。お会計は他の団員たちがすることになってしまったのだった。

 

 そしてその道中魔物から指摘を受けて衝撃が残ったまま首都リムルについたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は少し遡り魔王の宴も終わりシスタとリムルは自国に帰ろうとする。しかしそれはギィによって阻まれることになる。

 

 

「シスタ貴様は俺のところに来い」

「なんで?」

「少し気になることがある」

「行かなかったら?」

「力尽くでも連れて行く」

「やれやれ」

 

 

 シスタはもう諦めた。こうなってしまっては断る方がシスタだけではなくテンペストまで危ないのだ。

 

 

「リムル先に帰っておいてくれ。ウルティマとカレラも」

「僕も行くー!」

「我もそっちに行くぞ」

「我慢して。僕がいない間テンペストを頼むよ」

「なら絶対帰ってきてね」

「約束だぞ!」

「わかったよ」

 

 

 そういいリムルたちは転移してテンペストに帰る。僕は全員が帰ってからギィと同じく転移してついたのは氷の大地、氷の世界だった。

 

 

「あらギィおかえりなさい。シスタまできたのね」

「ギィに言われてな」

「まぁそういうな。まずはお茶だな」

 

 

 そういうとミザリーがすぐに用意する。ほんと悪魔公(デーモンロード)がこの立場なんてギィはいったいどれほど。

 

 

「それで要件は?」

「シスタに聞きたいことはない。けどやってもらいたいことがある。今回も戦いだ。しかしミザリーとレインでこいつらにも本気で戦わせる」

「なるほどね。けどなんで?」

「お前今野真矢という人間と以前戦っただろう。あれは人でありながら魔王に匹敵する化け物らしい。まぁ俺様からしてみれば塵芥だがな」

「なるほど。それで負けると」

「いやそんなつもりはない。負けるなら所詮はその程度だったということだ。しかし俺はお前を気に入っているつもりだ。だからこの二人に勝って見せろ」

 

 

 ギィはこういうがシスタが負ける可能性を減らしておきたいのだ。口は悪くてもシスタのことを本気で心配していることがわかっているから何もヴェルザードは言わなかった。

 

 

「それじゃあはじめてもらおう」

 

 

 ギィがそういうと二人は戦闘態勢になりレインは分身していき、ミザリーの後ろに何個かの核撃魔法の魔法陣が現れる。

 

 

「ところでギィこの地面の氷も使っていいのかな?」

「構わん」

 

 

 地面を切り氷をそのまま浮かせる。そして最大スピードで何個もの氷をぶつける。二人とも避けながら魔法で破壊して行く。

 しかし本命はそれじゃない。刀を腰に当てて体を加速させ刀には加速、重力によって最速にさせミザリーを斬りかかる。氷に気を取られたようで僕に対しての対処が遅れた。

 

 

「残念」

 

 

 ミザリーを峰打ちで倒す。なんだか悪魔とは言え女の姿を斬るのは気が引ける。ミザリーも納得したのかそれ以上動かなかった。

 そしてレインは分身によって本体がわからない。今回はルウェルの力を借りないようにしている。

 

 

「さて、終わりよ」

 

 

 周り全てが核撃魔法で埋め尽くされる。それを飛んで避ける。

 

 

「終わり。できれば傷つけたくないから降参して」

 

 

 いつのまにか上にいて思いっきり殴られる。かなり痛いと思いつつ体を起こそうとすると馬乗りにされて首筋に爪を立てられる。

 

 

「降参してくれる?」

「さてどうだろう」

 

 

 指を鳴らすとあることが起こった。

 

 

隕石雨(メテオシャワー)

 

 

 僕がそういうとあたり一体が大爆発に巻き込まれる。レインもかわすために避けるがその一瞬が命取りだ。すぐに刀で回り込み首に刀を回す。

 

 

「降参してくれるかな?」

「はぁ、わかった。わたしの負けよ」

 

 

 レインも降参してくれる。これ以上やるのは勿体無いからな。

 

 

「はははまさか本当に勝つまで強くなってるとはな」

「強くなったわねシスタ」

「まぁなんとかだけどな」

「そういうな。ミザリーとレインにバレないように氷をあげたのは驚いたがな。あんな使い方をするとは」

「やっぱりギィからは見えてたか」

「それでなんの能力だ?」

傲慢之王(ルシファー)を持ってる奴に教えるわけないだろ」

「!!?なぜ知ってる」

「数ある究極能力の中で唯一他人のコピーができて全く同じ能力が使えるのは傲慢之王(ルシファー)だけだ。それならギィが知りたがっている理由もわかる。コピーには相手の能力を完全に知る必要があるからな」

「お、そこまで知ってるんならいいや。教えなくて。いつか解析してやる」

 

 シスタがこの結果を知っているのはルウェルによるものだがそれを知っているものは誰もいない。

 ギィは楽しそうに笑った。実際シスタが使った究極能力についてはヴェルザードの解析能力でも何を使ったのかわかっていない。

 

 

「それじゃあ僕は帰るよ」

「ああ、またな」

「また遊びに行くわ」

「待ってる」

 

 

 僕は転移してテンペストに帰る。そして入り口に着くとシュナとクマラに飛びつかれる。

 

 

「!!??なに?」

「心配したんですから。魔王に呼ばれたなんて」

「そうでありんす。心配かけないでください」

「悪かったよ。けどこの体勢恥ずかしいかな」

 

 

 二人とも乗ったまま泣いている。構図的にはなんだか押し倒された感じになっているから周りの目がすごい。

 

 

「シスタ様帰ってきたんだ」

「我が君待っていたぞ」

 

 

 その後ろにはウルティマとカレラもいた。帰ってきたと同時にこっちにきたみたいだ。

 

 

「それで何したの?」

「力比べかな?」

「何か失礼なことを言ってなかったか。あの赤は?」

「何にもなかったよ。カレラもウルティマも殺気抑えて」

 

 

 二人とも力比べと言った途端に殺気を出すから怖いったらありゃしない。それにクマラとシュナがここにいるってことはもうジスターヴの方は終わったってことでいいんだろう。後はテスタロッサだけど。

 

 

「うふふふ、わたしがどうかしましたか」

「テスタ気配消すなよ。びっくりするだろ」

「少し驚かせようと思いまして」

「それでファルムスの方はどうだった」

「後は向こうの取り方次第ですわね。それでご褒美はないんですか?」

 

 

 そう言い僕の顎の下に手をやり顔を近づけてくるテスタロッサ。3人の中で最も妖艶という言葉が似合う彼女なだけあってその雰囲気は凄まじい。

 

 

「おい貴様我が君に何をしている。殺されたいのか」

「ウフフ、少しだけおねだりしてるだけよ。あなたに文句を言われる筋合いはないわねカレラ」

「ふーんそれじゃあ僕も!」

 

 

 ウルティマまで抱きつく。カレラも悔しかったのかカレラも右腕についてきて大変なことになってる。しかしとんでもない寒気がして振り向く。

 

 

「シスタ様?お仕事が残っていますよ」

「シュ、シュナさん?」

 

 

 すぐにシュナは3人の悪魔を振りほどき僕を引っ張って行く。なんでだろう。痛覚無効が発動してるのに耳が痛い。

 しばらく歩いて耳を離してくれる。

 

 

「シュナさん?」

「シスタ様今回は無事で良かったです」

 

 

 そう言い抱きついてきたのでそれ以上は何もいうことなく頭を撫で続けていた。

 その日は結局仕事することなく、部屋でシュナと過ごしたのだった。



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22話

niftyさん評価ありがとうございます


 その日テンペストはリムルとシスタが魔王になって以来はじめての本格的な戦闘を行うことになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「シスタ様、リムル様西方教会の使者と名乗るものがきましたがどうしましょう?」

 

 

 聞いてきたのはゴブリンが進化した女の姿の子だ。二人とも重い腰を上げて一応刀を持ち街の外にいると聞いたので二人とも出て行く。

 ついてきたのはベニマル、四人の悪魔、クマラ、ハクロウ、ソウエイだけだった。二人ともヴェルドラが来るとめんどくさくなるのがわかっていたので漫画を渡している。

 

 

「ヒナタと誰?」

「また名乗らないといけないか。西方聖教会の騎士団団長補佐今野真矢よろしくね」

「それでなんでここに?」

「あなたたちとの決着をつけに」

 

 

 その言葉は周りを一気に凍らせる。四人の悪魔はともかくソウエイまでキレている。しかしヒナタというやつの実力は知らないがマヤの実力はギィが僕に対して忠告をしてくるほどだから多分やばいんだと思う。

 

 

「それじゃあヒナタの方は任せるよリムル」

「お前はどうするんだ?」

「マヤと向こうで決着つけてくる」

「わかった。ただわかってるよな?」

「わかってるって」

 

 

 そういい僕とマヤは移動して行く。三人の悪魔とクマラはついてくるようで後ろを歩いている。しばらく歩いて行くと

 

 

「前より随分存在が大きくなったね」

「まぁな。ところでなんでこんなことを?とてもじゃないけどお前そんなことをするタイプに見えないんだけな」

「あーそれは上の七曜老師がうるさくって。ヴェルドラを倒せなんて言ってこんな剣渡してくるけど正直頼りないかなー」

 

 

 そういい背中に背負っている剣を放り投げる。そして前と同様腰にしてある刀を抜く。しかし今回唯一違ったのは初めからやる気ということだ。僕も腰に刀を持ち替えて戦う準備を始める。

 そして戦いが始まったのは一瞬のことだった。静寂を張り詰めた中一枚の葉が落ちる。

 その瞬間に加速と重力を平行操作して間合いをつめて斬りかかろうとすると同じようにしていたマヤと肩がぶつかる。

 

 

「うそ!」

「マジ?」

 

 

 そのまま斬りかかってきた刀を片方の刀で受けてもう片方で斬りかかる。しかしその刀を避けてすぐに蹴りかかってきたので体を沈めて避ける。

 そして間合いを取ってから構え直す。

 

 

「まさかここまで強くなってるなんてね〜」

「今回は勝てると思ったんだけどな」

「それじゃあどんどん行くよー。霊子崩壊(ディスインティグレーション)、連」

 

 

 すると巨大な魔法陣が出てきて次々と放たれる。さっき霊子崩壊って言っていたしリムルから聞いていたやつなんだろう。

 それにしても破壊力がやばい光線だ。今のところテスタたちに当たらないように避けているが当たったらまず消えるだろう。

 そうなる前にあのスキルを使わないといけないが正直のところ使いたくないんだけどなぁと思いながら避けるシスタ。

 

 

「はぁー疲れた。これはやめ!」

「それなら撃つなよ……。森林破壊すごいんだから」

「仕方ないじゃん」

 

 

 そう言いながらまた刀での攻撃を仕掛けてくる。本当に疲れたんだろうかと思うような剣戟ばかりだ。ちなみに今回は思考加速は全く使っていない。使ったら勝てるのだがなんだか自分に負けた気がするのだ。

 

 

「今から使う技を防いだらわたしの負けでいいよ」

「言ったな」

「けどシスタも本気を出して。いくつか使ってないものあるでしょ」

「ほんとに使っていいんだな?」

「いいよ」

 

 

 そういい使うことを決める。マヤは刀を鞘に戻して構えを取る。刀は抜いていないが一部の隙もない。

 

 

崩魔霊子斬(メストスラッシュ)、極」

 

 

 それはすごい斬撃だったと思う。未来予測によりマヤの剣筋が全て見えたが実際は一つも当たっていない。それどころか

 

 

「わたしの負け。こんなことをされたら勝てないわ」

「なら僕の勝ちだな」

「刀の上に乗るなんてどうやったの?」

「教えない」

 

 

 そう僕は刀の上に乗り完全に読み切っていることを証明したのだ。これをするにあたって時間之神(クロノス)を発動している。

 この能力の本当に恐ろしいところは対象の一部すなわちどこでも止められるということだ。人間なら心臓、魔王たちなら体を止めてから殺すことさえできる。そしてそれは初見ではまず防ぐことは不可能。防ぐことができても支配下にあることを示すのでそこから主導権は僕に移る。

 

 

「ん?なんだこの感じ」

《今野真矢は支配を受けてるようです》

 

 

 ルウェルからそう聞かされる。そして場所を聞き僕はそれを解除しようと手を伸ばす。

 

 

「近いんだけど///」

「あ、悪い」

 

 

 何せ首元についていると言われたのだ。目の前から伸ばしたためにどうしても抱きつくような感じになってしまうのは仕方ない。そればっかりは我慢してくれしか言えない。

 

 

「終わり」

「何したの?」

「いーやなんでも」

 

 

 重力でバレないように潰した。これをつけた犯人をルウェルに聞いてみたがどれも材料不足で確認できないとのことだった。

 

 

「それじゃあとりあえずテンペストに行くか」

「わかったよ。負けた人が文句言えないしね。それで何するの?尋問?拷問?」

「しないわ!勝手なこと言うな。とりあえず宴会だな」

「え?しないの?こう見えてもいい体だと思うんだけどなぁー」

「はいはい、わかったから」

 

 

 たしかにテスタロッサ並みにいい体だと思うけど何か勘違いしてないかなこいつ。いや魔物のことだからそんなことをすると思われてるのかな?

 

 

「それじゃあよろしくね」

「はいはい」

 

 

 こうして僕たちはテンペストに向けてかえっていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三人の悪魔たちは体の震えを止められない。それもそのはずだ。自分たちは最強種族でありそして自分たちは主には及ばないまでも人間なんかには負けるはずがないと思っていたのだ。

 それがどうだ。先ほど見た主とマヤと名乗る女との戦いは地形すら変えてしまった。

 そして悟ってしまう。今の自分たちでは三人でかかったとしても5分も持たないことを。

 そして新たに決意する。主の役に立てるように更なる力をつけることを。

 そうして二人の後ろを歩いて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう二人この戦いを見ていたものたちがいた。リムルとヒナタだ。二人とも先に終わったので二人の戦いを見にきていたのだ。すると天変地異かと思うような戦いをしている。

 

 

「お、おいヒナタ。あの子なんであんなにも連射で霊視崩壊を撃てるんだ?」

「彼女は独自の発動形式で連射を可能にしているらしいわ。けれど私が聞いても教えてくれなかったのだけれど」

「それにしてもあれを捌くシスタも化け物だな。てっきり同格かと思っていたがシスタの方が数段上だ」

「クフフフ、たしかにシスタ殿は凄まじい。わたしが戦っても負けることは確実でしょう」

「なら最低限嫌いでも構わないから敬意を払ってくれよ。あいつはこの街では俺と同じでトップなんだ」

「かしこまりました」

 

 

 ディアブロもついてきていたようでシスタのことを認めたようだ。そしてシスタたちより先にテンペストに帰って行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そういえばなんかもらった剣忘れてた。取りに行ってくる」

「あ、ついて行くよ」

 

 

 シスタがそういいマヤについて行く。この時のこの選択は間違っていなかったのかもしれない。

 ついて行き剣を拾おうとしたマヤ。しかし剣の様子がおかしい。だんだんと光り爆発したのだ。

 

 

「シスタ!」

「な!」

 

 

 マヤがシスタを庇うように覆い被さる。そのこともありシスタは時間之神を発動できなかった。時間之神(クロノス)の弱点が発動してしまったのだ。

 時間之神はその強力な効果ゆえに今現在見ているものしか止められない。それは今現在の話でありシスタが進化した場合はわからないが今現在では止められない。

 

 爆発直後マヤはシスタの上で倒れている。かろうじて動くがかなりやばい状態だ。

 

 

『今野真矢、貴様には失望した』

『然り、あれだけのことを言っておきながらこれだけとは』

「七曜……老師。あんたら」

『貴様は死ぬが良い。神ルミナスに従わぬものには裁きを』

 

 

 その爆発を感じたのかリムルやヒナタまでやってくる。

 

 

「シスタ!」

「これは一体」

「ヒナタだったか?マヤを頼む。死なすな」

「何をする気?」

「今から西方諸国のすべてを潰す」

 

 

 その言葉にヒナタにリムルに緊張が走る。しかしあの戦いを見せられた後ではできないともいえない。

 

 

「ふぅ、やれやれマヤとヒナタの様子を見にきてみればこれはいったいどういうことじゃ」

 

 

 現れたのは夜の女王(クイーン・オブ・ナイトメア)魔王ルミナスバレンタインだった。

 

 

「ふむ大体の状況はわかった。七曜老師よ。裏切りはわかっておるの?」

『ルミナス様我らはただ』

『御身の役に立つために』

死せる者への祝福(デスプレッシング)

 

 

 その場にいたホログラムらしきものは消えた。そしてその本体もおそらく消えたとルウェルはいう。

 

 

「やれやれマヤは相変わらずじゃの」

 

 

 そういい傷口に手を当てマヤの傷を修復して行く。傷が完全に治った時にはマヤはピンピンして動き出す。

 

 

「お、おお!お前はルミナス。魔王ルミナスだな!」

 

 

 ちゃっかりきていたヴェルドラがそういうことをいう。すると今回きていた聖騎士に緊張が走る。自分たちが神と崇めていたものは魔王だと聞かされては流石に動揺を隠せない。

 

 

 

「この邪竜め!何度も妾の邪魔をしよって」

「姫わたくしたちは」

「かえって良い。ルイだけ残っておれ」

「は!」

 

 

 ヴェルドラは口笛を吹きながら聞き流そうとしてるがルミナスはそうはしない。空中ではすごい戦いが始まっている。

 

 

「さて、街に帰るか」

「そうだな」

「わたしもいいのかしら?」

「もちろん」

「わたしも行く」

「マヤはダメ」

「え──!何で!?」

「何だかややこしいことが起きそうだから」

「起こさない!約束します」

 

 

 

 マヤがそう言ったので仕方なく街に連れて行くことにした。ヒナタも問題を起こすと言う点では納得していたので本当に何かありそうな気配がする。

 

 

「シ、シスタ、リムルよ。あの聞かん坊を止めてくれ」

「またんか!この邪竜め!」

「まぁまぁ、とりあえず街まで行こう。美味しい酒もあるし」

「ほう、仕方ない。ここは新人(ルーキー)の顔を立ててやろう」

 

 

 こうしてなんとか場を収めてテンペストに向かって行くのだった。



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23話

ヒロ改さん評価ありがとうございます


 テンペストに着くとリグルドがやってきてリムルが宴会の指示を出す。すると忙しく走り出す。しかしそこまで急いでいるわけでもないのに走って用意するのはもう性分だろう。

 

 

「まぁまぁとりあえず風呂にでも入ってきたらどうかな?」

 

 

 リムルがそういうと聖騎士たちは本当に安堵したように感じる。そしてヒナタとルミナスも行こうとするがルミナスが止まる。

 

 

「ここの風呂は個室なんじゃろうな?」

「個室?」

「妾が入ると言うのじゃ」

「あーそういえばたしかドワルゴンでもそうだったような。ここは温泉だよ」

「それに混浴もあるけどそっちにする?」

 

 

 そういうと聖騎士の男たちの目の色が変わる。ヒナタとマヤの体を見たいんだろうと思うリムル。二人ともかなりスタイルがいいしなんならリムルも見たいぐらいなのだ。

 

 

「あなたたちわかってるわね。ルミナス様私たちは女湯にいきましょう」

「まぁヒナタが言うなら仕方ない。行くぞマヤよ」

「え?いやだけど」

「なに!?」

「だってわたしシスタと混浴入るんだもん」

「は?」

 

 

 その一言にあたりは騒然となる。本気で止めるヒナタ。それもそうだろうと思うシスタ。

 

 

「ちょっとマヤ。何考えてるの?」

「え?何って普通じゃないの?」

「違うわよ!あなた今自分が爆弾発言したことに気づきなさい」

「ちぇー。ならいいや。また今度入ろっかシスタ」

「いやだけど」

 

 

 シスタがはっきりそういいマヤはショックを受けたままヒナタに引き摺れながらマヤはいきその後ろにリムルがついて行く。

 

 

「なんであなたまできてるのかしら?」

「だってお前ら女湯の場所わからないだろ」

「あなた前世は男だったんでしょ。魂胆丸見えよ」

「わたしが案内します」

「シオンだけじゃ不安だからさ」

 

 

 何がなんでも女湯に行こうとするリムル。それを見ていたシスタは呆れてため息が出そうになる。

 シスタ自身男湯でのんびりしていることの方が多いがリムルは女湯に結構行っていることの方が多いのだ。それなのに全く……

 

 

「あなたもリムルに有能だと示したいんじゃないかしら?」

「はい!わたし一人でも十分です」

 

 

 完全にヒナタに言いくるめられるシオン。それを聞いたリムルも流石に諦めたようで男湯に入ると言っていた。

 

 

「なら我の背中をリムルが流してくれるのか?」

「なんでおれがしなくちゃいけないんだよ」

「僕は先に入るよ」

「ウフフフなら私も」

「僕も!」

「我も一緒に!」

「お前らは女湯に行ってこい!」

 

 

 三人の悪魔を叱り風呂に向かう。風呂ではヴェルドラがまた暴れだし風呂が大変なことになる。ヴェルドラはヴェルドラなのだとリムルと顔を合わせて笑ったのだった。

 

 風呂から出て宴会場で待つと浴衣や勘平を着た奴らが出てくる。前にリムルとルミナス、ヴェルドラが座る。今回はパスさせてもらった。しかし問屋がそうはさせない。

 

 

「この度の件、私の独断により其方に多大な迷惑を掛けた事、心より謝罪する。

 私の身一つで許して貰えるとは思ってはいないが、どうか部下には寛大な処置を……」

 

 

 ヒナタがそういい目の前で屈む。その隣にはマヤも屈む。そして浴衣のせいもあり見えそうになる。リムルは少し前屈みになっている気もするが気のせいだろう。シュナにどこを見ているんですか?と言われるのは仕方ないと思う。

 

 

「いや構わないよ。それよりシオンや紫克衆(ヨミガエリ)にしてやってくれ。あいつらが一番の被害者なんだ」

 

 

 

 そういいリムルがシオンたちの方向を指す。するとシオンたちは当てられると思っていなかったんだろう。挙動不審になる。そんなシオンたちに向けて二人は

 

 

「済まなかった。

 私は、魔物は邪悪なものだと思い込んでいたのだ。

 会話も成り立たない、油断したら全てを奪う敵なのだ、と……

 どうか、許して欲しい……」

「ごめんなさい。わたしも何も考えずにやってしまった。どうか許して」

 

 

 そういい頭を下げる二人。シオンも挙動不審はさらに進みどうしたらいいのかわからなくなってきている。しかしリムルが

 

 

「シオン、許してやってくれ。お前の痛み、お前の怒りは判る。

 だけど、人間は全てが邪悪じゃ無いんだよ。

 お前にも言っておくけど、人間は間違いを克服出来る生き物だ。

 だから、良く見極めて欲しい。その魂が高潔な者もいるのだから」

「その通り、だからこそシオンにも紫克衆もその目で見て判断してくれ。これはみんなだからな」

 

 

 シスタとリムル二人がいうとシオンはさらに迷っている。しかしその行動は一瞬でシオンは吹っ切れた顔でいった。

 

 

「わかりました! 良き者や悪しき者、私は魂を見て判断する事にいたします!」

 

 

 シオンはシスタとリムルに向かってそう叫ぶ。その笑顔はシオンに付いていた憑き物が落ちたような晴々とした笑顔でそう言った。

 紫克衆(ヨミガエリ)も口々に許すと言っているのだ。気のいい奴らなのである。

 シスタとリムルはその光景を見て嬉しく思う。気のいい奴らなのである。自慢の仲間なのだ。

 

 

 さて湿っぽい話をこれ以上するのもあれなので宴会を始めることにする。なにせこれ以上待つとヴェルドラが暴れだしそうなのだ。

 次々と料理が運ばれてきてお酒も運ばれてくる。イングラシア王国にもビールはあったのだが美味しくなかった。リムルも微妙な顔をしていたしそこまで美味しく感じなかったんだろう。なんだかぬるくて炭酸が弱いっていうか。そこからテンペストではいろんなものが開発されたのだ。ワインにビール、日本酒まで運ばれてくる。

 

 酒を飲み始めて少ししたらルミナスの方を見るシスタ。素手で天麩羅を食べているのになぜか気品がある。これが見た目の差というやつなのだろうかとショックを受けるシスタ。

 

 

「それにしてもルミナスは酒飲めるの?酔ってるのか?」

「当たり前じゃ。毒耐性を弱めて酔えるようにしておる」

「へぇ」

 

 

 リムルもそれを聞き嬉しそうに酒を飲む。今までは酔えていなかったんだろう。

 それに周りを見てみると人間と話しをしながら飲むみんなの姿が見える。それを見たシスタも嬉しく思う。

 そしてシスタ自身もやってみる。ルウェルに止められたがそこは気にしない。

 

 

《大変なことになりますよ》

(なんでだよ)

 

 

 そうして宴はだんだん進んでいく。そしてルミナスもかなり酔っているようだ。

 

 

「あ、そうだルミナス。わたし聖教会辞めるから」

「構わん」

「よし、言質とったよ」

「ん、妾今なんと言った?」

「ルミナス様マヤは聖教会をやめると言ったんですよ」

 

 

 ヒナタがそう諭すようにいうとルミナスの顔色がだんだんと変わっていく。

 

 

「ちょっと待て!お主やめてどこに行く気だ?」

「わたしはシスタと結婚するんだ〜」

 

 

 その瞬間宴会場は阿鼻叫喚になる。

 

 

「シ、シスタ様!結婚なされるのですか?」

「そんなことを言った覚えはない」

「ウフフフこの人間殺しましょう」

「我も賛成だ」

「僕も手伝うよ」

 

 

 悪魔3人娘はこの時に初めて本当に協力しようとした。しかし

 

 

「あんたたちでわたしに勝てるわけないじゃん。諦めなって」

「この!」

「調子に乗りすぎだな」

「殺しましょう」

「わかった!結婚云々は後回しにしてもここでの滞在を許可する。だからお前より先にいる奴らを決してバカにするな。あとルミナスが許すならな」

「ルミナスは何もいえないよ。だってさっきいいって言ったもん」

 

 

 その言葉にルミナスは少し悔しそうだ。酔っていたとはいえ勢いで言ってしまったんだろう。

 

 

「そ・れ・に」

「ん!ん──」

 

 

 マヤは一瞬で詰めてきてキスをしてくる。それは長く呼吸をあまり必要としないが苦しい。舌まで入れてくるのだ。

 

 

「ちょ!マヤ離れなさい!」

「べー!」

「マヤいい加減にしなさい!」

 

 

 チョップをヒナタが当ててなんとか離れてくれた。呼吸を必要としないのにここまで苦しくなるなんて想定外だった。

 

 

「それにしてもなんでここに移動なんだ?」

「あーわたし前からルミナスとの約束でね。移動する時に許可を取ったらいいって」

「たしかに妾は言った。だから認めよう」

「全く。けど僕は困るんだけどなぁー」

「それなら部屋で楽しもう」

 

 

 そういいマヤはシスタを引っ張って行く。しかし全力で拒否するシスタ。好きな人とならともかくシスタにそういう感情はない。それにこの体には息子はないのだ。

 

 

「なんでぇ。いい体だと思うんだけど」

「お前さては酔ってるな。少し寝てろ」

 

 

 そういい気絶させて布団を用意して寝かせるシスタ。なんとかその場は収めたが悪魔たちはすごい顔をしていた。

 それをシスタが慰めるために苦労することになったのだった。




高評価もらえたらそれに同調するように定評が入るのなんなんだろう。マジでイラッとくる。
そういう人に限って全然投稿してないとか、前提で投稿したことないやつばっかり〜


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24話

白神白夜さん評価ありがとうございます


 朝起きて布団から出ると頭が痛いと泣きそうになるシスタ。この世界に来てから病気関連は一切かかったことがないのだ。だからこそ一人でうめいている。

 

 

「ううん、布団取らないで」

「ん?だれ?」

 

 

 隣を見てみると下着姿のマヤがいた。その瞬間に布団を被して何も見てないとの表現。

 しかし現実はそう甘くない。部屋の扉が鳴る。

 

 

「おはようございますシスタ様。起きていますか?」

「あ、あぁ。起きてるよ」

 

 

 声の主はテスタだった。何故こんな時に限ってきたのかわからないが今のこの状況を見られるのは流石にまずい。

 

 

「失礼しますわ」

「わーわー、ストッープ」

 

 

 もう入ってきてしまった。もう手遅れだと思う。しかしこれがウルティマとかなら見た途端に殺していたと思う。

 

 

「うるさいよ〜」

「あら、あなた殺されたいのかしら?シスタ様のところに忍び込むなんて」

「あ、やばいやつだこれ」

 

 

 マヤはすぐに服を着て転移して逃げる。昨日みたいに喧嘩をしないところは素直に褒めないといけないかもしれない。もっともこっちが本来の姿で昨日のが異常だっただけかもしれないんだけど。

 僕も服に着替えて部屋を出る。テスタはすでに部屋から出ているためそこは気にしなくていいのだがなにぶん頭が痛いのだ。

 

 

《だから大変なことになるって言ったのに》

(こっちのことなんて知らなかったんだよ。まさか頭痛が起こるなんて想定外だろ)

《はぁ》

 

 

 ルウェルにため息つかれた!流石に少しショックだ。そのまま頭痛を隠して部屋を出る。しかし酒もまだ残っていたようでフラフラする。

 

 

「およよよよよ」

「シスタ様!?」

「悪いテスタ。なんでもない」

「しかし」

「あー酒が残ってるんだよ。苦手なんだけど」

「それならばお任せを」

 

 

 そういいテスタは僕の額に手を当ててくる。そして何かを唱えたあと立ってみると頭の中がスッキリする。それどころか体も軽い。

 

 

「楽になったよ。何したの?」

「少しだけ解毒の魔法を」

「あーなるほどね。ありがとう助かったよ」

「いえ、お役に立てたなら何よりですわ」

 

 

 テスタがそのままついてきてまた会議室に向かう。会議室に着くとすでにいろんなメンツがいた。ルミナスはもちろんリムル、ヴェルドラまでいるし、ヒナタとマヤも座っている。僕の席の後ろにはウルティマとカレラもいるし僕が最後みたいだ。

 

 

「リムルも二日酔いか?」

「ちょっとだけな。昨日は酔っ払いに絡まれたから」

「ぬ、それは妾のことか?」

「まさか」

 

 

 そう言いながら目を逸らしヴェルドラの方を見るリムル。リムル自身ルミナスにも飲まされていたのだがここでルミナスを敵に回すぐらいならヴェルドラを売ったほうがましだと思うリムル。最も本当に大事なときはヴェルドラを守るだろうと見守るシスタ。

 

 

「それじゃあ今日の議題は西方教会だ」

「それに関してだが妾としてもそなたらに借りを作りたくない。何かないか?」

「それなら僕たちの国との国交を結んでほしい」

「それで良いのか?なら構わんぞ」

「ル、ルミナス様!!」

 

 

 ヒナタが止めに入る。ここで負けたとわかっていても国としての問題は別なのだ。それがわかっているヒナタだからこそルミナスの意見に待ったをかけたのだ。しかし相手は魔王ルミナス。止まりはしない。

 

 

「うるさい!妾が決めたのだ。口出しするでないわ」

 

 

 ヒナタも押し黙る。ルミナスは元々短気であったがマヤが出て行くことによって今はいつ爆発してもおかしくない爆弾なのだ。それがわかっているヒナタだからこそ言葉を慎重にしなければならない。

 

 

「しかし聖教会としては魔物を」

「それをなんとかせい」

「はぁ……」

「まぁまぁ頑張ってねヒナタ」

「マヤ貴様表に出ろ!真っ二つにしてくれる」

「あ、やるの?いいよ」

 

 

 ヒナタとマヤはお互いに武器を出して出ていこうとする。周りの聖騎士も止めに入るがそんなことで止まる二人ではない。それを見ているヴェルドラは知らんぷり、リムルもやばいとおもっている。

 シスタといえばお菓子を食べている。

 

 

「シスタ様止めにいかないのですか?」

「ありゃテスタ。止めた方がいいのかな?」

「それは止めた方がいいかと」

「はいはい」

 

 

 シスタは二人の方を見る。そして時間之神(クロノス)で足を固定する。すると二人とも前のめりにこけた。足だけを固定されたことによって動かなくなったのだ。しかもその拍子に足を挫いてしまったようで痛がっている。

 

 

「な、何今の?」

「シースーターまたやったね」

「いやさ、喧嘩するから」

「でもやりすぎだよ。乙女が顔をうったんだよ」

「乙女?」

「そこは悩むところじゃなーい」

 

 

 マヤが必死に言っているがシスタは相手にしない。戦闘中のマヤの行動には目を見張るものがあるが私生活ではポンコツそのものなのだ。実際のところは見てはいないがそんな感じがするとおもっているシスタ。

 

 

「シスタなんか馬鹿にしてるでしょ」

「そ、そんなことないよ」

 

 

 シスタは女の勘をおそろしく思う。スキルとは違う何か。

 そんなシスタを置いてけぼりに会議は進んでいく。

 

 

「それなら百年間という条件を設けよう。その後のことはまた考えることにしようぞ」

「それならば」

「民たちの信頼を揺らがせてはならんぞヒナタよ」

「わかっております」

 

 

 会議は終わりまた宴会の準備を始めて行くリムル。ルミナスもそれに同調する。ヴェルドラは寝そべりお菓子を食べていてシスタはマヤに追いかけられてすぐに逃げたのだ。

 それを見てみたウルティマは少し疑問に思ったことがあったのでシスタのことを追いかける。

 

 

「ウルティマどうしたの?」

「ちょっとシスタ様が気になったの」

「ならば我も行こう。主人のことが気になるのは同感だ」

 

 

 悪魔三人衆というよりウルティマが気になったのはシスタのことだ。

 ウルティマの力の一つ記憶の抽出だ。それは触れないといけないためシスタに使ったことはないが経験上みただけである程度のことはわかるようになっている。しかし主であるシスタの記憶、魂はあまりにも黒過ぎるのだ。

 そして走っていき追いついた。

 

 

「ん?どうした?」

「シスタ様少し記憶見てもいい?」

「ウルティマにそんな力があるなんて知らなかったな。いいけどどうなっても知らないよ」

「長いこと生きてるからなんとかなると思うよ」

「ならいいけど」

 

 

 ウルティマはシスタの頭に手を当てる。そして記憶領域に踏み込んだ瞬間に意識がバラけそうになった。

 

 

「あぁぁぁぁぁあああ!」

「ウルティマ!?」

「シ、シスタ様。なんで平気なの?」

「なにが?」

「これだけの黒い魂、記憶を持っていたらとても耐えられない」

「それが普通だったら耐えれるんだよ。それより体は大丈夫か?」

「う、うん」

 

 

 シスタはウルティマを立たせる。しかしすぐにマヤが来たのでまた逃げ出したが……

 その後悪魔三人衆は、いや正確にはテスタロッサとカレラがウルティマに聞く。

 

 

「いったいなにを見たのかしら?」

「早く言いたまえ」

「ちょっと待ってよー。それに僕が見たのはシスタ様の片鱗。ほんの一部なんだよ。それに黒すぎてよく見えなかったんだよ」

「それでもいいわ。記憶を送ってちょうだい」

「我にもだ」

 

 

 その言葉を聞きウルティマは見た記憶の片鱗を二人に送る。

 

 

「うぁぁぁぁぁぁああああ」

「がぁぁぁぁぁあああ」

 

 

 2人ともウルティマが危惧した通り2人とも記憶の濁流に飲まれてしまう。そしてウルティマが意識を取り戻させるとなんとかこっちに戻って来れたみたいだ。

 

 

「どうだった?」

「シスタ様は何故こんな記憶を持っていて普通でいられるのかしら?」

「不思議だ。とてもじゃないが耐えられるものではないぞ」

「ええ、わたしたち悪魔公でも耐えられないのだから」

 

 

 三人は不思議に思ったがこれ以上考えても仕方ない。

 

 

「前にシスタ様が言ってたことと関係してるのかな?頼りにしてるってことと」

「そうかもしれないわね」

「それも我が君についていけばわかることだ。我らの忠誠が揺らぐことはない」

「ええ」

「もっちろん」

 

 

 三人はそう決めてシスタの後を追うために走り出したのだった。




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25話

ツヨトンさん評価ありがとうございます


 そして最終日シスタはルミナスに呼び出されていた。

 

 

「何か用か?」

「お主が連れていた()()原初の紫(ヴィオレ)じゃな?」

「そうだけど」

「あれは残酷非道極まりない。気をつけるが良い」

「ご忠告どうも。ただウルティマのことをあれ呼ばわりはやめてもらおうか」

「それはすまなかった」

 

 

 ルミナスは素直に謝る。それはルミナスにとってもわかることだったのだ。仲間をあれ呼ばわりされるとルミナスもキレる。ましてやヒナタやマヤをあれ呼ばわりされるとルミナスも相手がだれであれキレてしまうだろうと思ってしまったのだ。

 

 

「それで他に何か用があるんだろ」

「そうじゃな。マヤを頼むぞ」

「はぁ、あいつはそんなやわじゃないだろ。ましてや心配されるような球じゃないだろ」

「それはそうじゃがな。マヤは本来繊細な性格じゃ。だからこそ妾の近くに置いておきたかったのじゃがな」

「まぁ仕方ない。任せといてくれ。あといつでも遊びに来てくれ」

「フン!貴様に言われるまでもないわ」

 

 

 ルミナスは若干怒りながら先に帰って行く。ヒナタが後できたが馬のこともあるのでゆっくりと帰って行く。その様子を見てまた仕事に戻ったシスタなのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シスタを探して歩いていたらルミナスとシスタの声がしたのでドアからこっそり覗くマヤ。

 すると中から話し声が聞こえてくる。

 

 

「それで他に何か用があるんだろ」

「そうじゃな。マヤを頼むぞ」

「はぁ、あいつはそんなやわじゃないだろ。ましてや心配されるような球じゃないだろ」

「それはそうじゃがな。マヤは本来繊細な性格じゃ。だからこそ妾の近くに置いておきたかったのじゃがな」

「まぁ仕方ない。任せといてくれ。あといつでも遊びに来てくれ」

「フン!貴様に言われるまでもないわ」

 

 

 それを聞いたマヤは少し涙が浮かんできた。ルミナスは私のことをちゃんと見ていてくれたんだという安心感。

 シスタは私のことを信頼してくれている。けれどシスタはそれを聞いても何も変わらなかった。不器用だけれどその言葉は確かに何かあったら私を守ると言っているように聞こえた。

 

 そして前を見てみると私以上に驚いて固まってるのを見つけたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シスタ様はどこ〜かな。執務室を見てもいなかったからいろんなところを回ってみる。

 すると声が聞こえて足を止めるウルティマ。

 

 

「何か用か?」

「お主が連れていたあれは原初の紫(ヴィオレ)じゃな?」

「そうだけど」

「あれは残酷非道極まりない。気をつけるが良い」

「ご忠告どうも。ただウルティマのことをあれ呼ばわりはやめてもらおうか」

「それはすまなかった」

 

 

 それを聞いていたウルティマは体に熱が帯びて行くのがわかった。悪魔であるウルティマは主以外の評価はどうでもいい。だから他人にどう思われていようが興味などなかったのだ。

 しかし他人が言ったことに対して怒る主の言葉を聞いて嬉しくなったのだ。けれど少し恥ずかしいという感情が芽生えたウルティマはその場から動けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シスタは部屋から出ると部屋の近くにいた2人に会ってしまう。

 

 

「2人とも聞いてたのかよ」 

「ごめん、つい」

「ごめんなさい。聞こえてきたので」

「気にする必要はないけど。恥ずかしいことを言って気がするからな」

「ふふ、ありがと。私のこと守ってくれるんでしょ」

「シスタ様、リムル様が呼んでたよ」

「!ウルティマ今様って」

「う、うん。一応上司だし、ボクより強いから」

「それでいいんだよ。ディアブロも僕のことなんでか様付けで呼んでるし」

「わかった」

 

 

 そしてリムルのところに行くと何故かトレイニーさんとベレッタまでいた。そしてトレイニーさんは木材を持っているが。

 

 

 

「だーからアタシをここに住ませてってば」

「だからなんでそうなるんだよ」

 

 

 会話の内容を聞いたシスタはなんとなく察してしまった。内容的にラミリスがここに住みたいと言い出したんだろう。

 

 

「それでなんでトレイニーさんまで?」

「あーそれはトレイニーさんラミリスには甘々だから」

「我がついていながらすみません」

 

 

 ベレッタは謝る。本来であればラミリスが謝らないといけないのだが本人は知らんぷりだ。それにトレイニーさんの口添えがあることで他の魔物は何も言えない。

 なにせこのジュラの森における管理者の役割がトレイニーさんなのだ。

 その人に何か言おうなんて思ってる奴がいるはずがない。

 

 

「リムルちょっといいか?」

「シスタか。止めてくれよこの2人」

「ラミリス僕からの提案なのだけど呑む??」

「話してみなさい」

 

 

 ラミリスは偉そうにしているがうずうずしている。こういう時のシスタはいい案を出してくれるとラミリスは信じ切っているのだ。

 

 

「ラミリスの能力は迷宮を作れるんだったよな?」

「そうだけど……」

「リムル謁見式での出し物に困ってただろ?迷宮なんてどうなんだ」

 

 

 シスタが何気なく放った言葉リムルにとっても朗報だった。リムル自身悩んでいたのだ。テンペストの宿や宿泊施設においてはそこらへんの街の高級な宿よりも品質がいい。

 しかしそれを盛り上げるための娯楽がリムルには思い浮かばなかったのだ。

 しかしシスタの一言でリムルの問題は瓦解するのだった。宿は安くて品質は高い。なら冒険だと思ったリムル。あっさりとラミリスの在住を認めたのだった。

 

 

「シスタありがと!これでアタシもぼっち魔王なんて呼ばれなくて済むよ」

「構わないよ。また僕も助けて欲しいこともあるし」

「なになに?」

 

 

 ラミリスは食い気味に聞きに行く。今ならなんでもやりそうな雰囲気だが今じゃないと思ったシスタはそれを断る。話も終わったみたいなのでシスタは転移してクマラのところに行く。前持ってきてくれと言われていたからだ。

 

 

「それでなんのよう?」

「わっちを強くしてほしいですありんす」

「??十分強いと思うけど」

「シスタ様もわかっているはずでありんす。わっちはシスタ様の中では一番弱い。あのマヤという人間は愚か悪魔よりも弱いのですから」

「いや確かにそうかもしれないけど」

 

 

 シスタはそこまで言いかけて口を止めた。これは言っても聞かないやつだと確信したのだ。そして思案する。シスタでも鍛えることができるのだがシスタの戦い方は悪魔の戦闘法と人間の戦闘法を合わせたような戦い方なのだ。

 それに対してクマラの戦い方は人間のものに近い。そしてやることを決めたシスタ。

 

 

「強くなるなら僕じゃなくてもいいか?」

「シスタ様じゃないでありんすか。構わないです」

「ならちょっと待っててくれ。よんでくる」

 

 

 クマラは何も言わない。シスタが考えていることにクマラが口を出すことは烏滸がましいと感じているのだ。シスタがやることに間違いはないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 転移してある人物を探すシスタ。普段はよく隣にくるくせにこういう時はなかなか見つからない。そして屋台で立ち食いしてる奴を見つけるとすぐに捕まえる

 

 

「来い!」

「え?あっ!ちょっと〜!」

「いいから」

「また後で食べにくるからー」

 

 

 店員をしていたゴブリンの女は頭を下げる。そしてシスタはマヤを連れてクマラのところに飛んでいく。転移してもいいのだが2人同時の転移をするとなると少し難しいのである。

 マヤとシスタには魂の回廊ができていないのだから。

 

 

「で、なんでわたしはここに?」

「マヤに頼みがある。クマラを鍛えてやって欲しい」

「なんで?」

「僕からの頼みだよ」

「お願いします」

 

 

 クマラは頭を下げて頼み込む。クマラ自身からも頼まないと意味がないのだ。

 しかしそんなことで引き受ける気がないマヤに対してシスタはあることを条件をつけることにしたのだった。

 

 

「マヤ今回の依頼は僕からということにしよう。それでクマラ強くなったらマヤに対して僕が可能な限りの言うことを聞くよ」

「わかった!やる、やります。やらせてください」

「頼むよ。あと条件な。クマラを殺すな。無理のない範囲でな」

「了解しました!」

 

 

 敬礼をしてマヤはクマラを抱き抱えてどこかに行った。それを確認したシスタは少し不安になりながらも任せることにしたのだった。




評価や感想欲しいです


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26話

だいさむさん評価ありがとうございます


 クマラが連れていかれて数日間の間はシスタとリムルも建設の手伝いだ。

 言い出しっぺがサボるわけにいかないと2人が言い出したのだ。最初は断られたのだがやると言った2人は次々に仕事を終わらせていく。

 スキルとシスタの指示によるものだ。シスタは大まかな作業表を見てすぐに訂正したのだ。それにより大幅な作業の軽減が図れたのだ。

 内容は簡単なもので資材関連は全てシスタが運ぶというものだ。

 転移門を作るのにも魔素がいる。だからこそシスタの出した案は重力制御により資材を持ち一気に転移するものだ。これにより一度に大量の資材を運べ、転移者を作る魔素を節約できるのだ。

 もっともシスタ自身の魔素の消費は少しあるが本人はあまりに気にしない程度のものだったのだ。

 

 

「シスタ様少しお休みください」

「いや構わないけど……」

「我らが気にするのです」

「なら少しだけ休ませてもらおうかな」

 

 

 そういい執務室に戻るとマヤが椅子に座り仕事をしてくれていた。何故そんなことをしているのか気になり聞いてみる。クマラの件はどうなったのかと

 

 

「あーもうちょっとかな。けどびっくりすると思うよ」

「へぇ、マヤがそういうなんてな。ところでなんでこんなところに?」

「あー今は休憩中。それで仕事でもしてたら評価上がるかなーって」

「それって言っていいのか?」

「うん、どうせバレるし」

「はいはいありがと」

「軽いなー。まぁいいけど」

 

 

 シスタは口は悪いし軽いけど誰よりもみんなのことを心配してるのがわかってるマヤだからこそそれ以上は何も言わない。そしてその中に自分自身が入っていることもわかってうれしくなったマヤはどんどん仕事を終わらせていく。

 最も終わりせている仕事はマヤが手をつけても問題のないものばかりだからシスタにとっても何も心配することはなかったのだ。

 

 少しすると執務室に1人のハイオークがやってくる。

 

 

「シスタ様こちらは一段落しましたので後はお任せください」

「けどなぁ」

「ならいいんじゃない。仕事もあるし」

「そうです。シスタ様は仕事をしておいてください」

「わかったよ。それじゃああとは頼むよ」

「は!お任せを」

 

 

 ハイオークはホッとしたように出ていく。実際シスタがいるとそっちにも気を使うということもあるんだろう。

 シスタもそれがわかっていたからそれ以上は何も言わなかったのだ。

 

 

 

「それでこれからどうするの?」

「マヤも特訓を手伝ってくれ」

「それだけの力がありながら特訓するの?」

「それだけの力?」

「だって剣技もこのテンペストで多分一番でしょ。それに究極能力(アルティメットスキル)まで持ってるんだから」

 

 

 マヤに入っていないはずの究極能力(アルティメットスキル)のことまで知っている。人間の世界では基本的にはユニークが最高だと思われていることが多い。人間の中で究極能力(アルティメットスキル)を持っている奴なんて片手で数えるほどしかいないと思うシスタ。

 

 

「お前なんで究極能力(アルティメットスキル)のことを知ってるんだ?」

「あれ?言ってなかったっけ?わたし勇者の卵が宿ってて既に究極能力(アルティメットスキル)に目覚めてるよ」

「は、はぁー??なんだそりゃ!っていうか前の戦いの時究極能力使ってなかっただろ!」

「わたしの究極能力は使いたくないんだよ。勇者の卵って言うけど勇者らしくないしね。究極能力は特に……ね」

 

 

 マヤは俯きそう答える。シスタも空気を感じたのかそれ以上は何も聞かない。少しするといつものマヤに戻ってまた元気になる。

 この件に関しては誰にも言わない方が良さそうだと思うシスタなのであった。また機会があれば教えてもらおうと思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悪魔三人衆は意味現在進行形で修行中である。マヤに勝てるように。そして主の役に立てるように。

 

 

「まだまだいけますわね」

「うん、まだまだ強くなれるよボクたち」

「我もまだまだいけるぞ」

 

 

 3人はそう言いながら互いに組み手のように戦う。それぞれに得意な魔法や戦い方があり、それらを使って戦うことにより相手の技術ややり方を吸収していくのだ。それでも自分に合う合わないがあるからまだまだ時間がかかると3人は思っていた。

 

 

「よっ!頑張ってるな」

 

 

 現れたのはリムルだった。3人は少し残念な気持ちにもなる。本来であれば見られたくもない光景。しかし主に教えを乞いたいと言う気持ちがあった3人は来た人にショックを受けたのだ。

 

 

「悪いなシスタじゃなくて」

「いえ、そのようなことは思っておりません」

「ボクもそんなことないよ」

「我は不満だな!」

「ははは、それぐらい生意気なぐらいがいいさ。ところでディアブロ入れないのか?」

 

 

 リムルが何気なく放った一言に3人の顔が一気に歪む。

 実は3人とも一度ディアブロに挑んでいるのだ。主に対する生意気な態度を粛清しようとして戦いを挑み結果は惨敗。

 3人で挑んだら結果は違ったのかもしれないが一人一人挑んだのだ。それ以降テスタロッサはともかくウルティマとカレラはなんとなくディアブロに苦手意識を抱いているのだ。

 

 

「ディアブロはなんでもシオン殿から秘書の仕事を教わっているようですわ」

 

 

 テスタロッサがそう答えるリムルは頭を悩ませる。

 ディアブロはリムルが思う中でもテンペストで1、2を争う強さだと思っている。だからこそ自由にさせていたがまさか秘書の仕事を覚えるとは思わなかったのだ。それもシオンから教えてもらうとは想定外だ。

 シュナならまだしもシオンはいろんなところが残念なのだ。

 

 

「リムル様そろそろボクたち始めるから危ないよ?」

「あ、あぁ邪魔したな」

 

 

 ウルティマの言葉を聞きリムルが帰ろうとする。しかし足を止めて振り向きあることを言い放つ。

 

 

「クロベエのところに行って武器を作って貰えばいいんじゃないのか?」

「我らの最大の武器は魔法だぞ?武器だと?」

「何もそっちを極めるとはいってない。ただシスタもシスタのところに来たマヤも魔法と剣を両立させて使ってるぞ」

 

 

 その言葉を言いリムルは帰った。あとはあの悪魔次第だと思い、判断は委ねたのだ。

 そして3人の悪魔は少し考える。けれど答えは決まっていたのだ。主の役に立てるなら武器を作ると言うものだ。

 ウルティマに限って言えばそれを気にシスタに教えてもらえるということを考えていたのだ。

 

 

「あら、ウル何を笑っているのかしら?」

「うぇ!??何もないよ〜」

「何か怪しいな。教えたまえ」

「ええ、教えなさい」

 

 

 ウルティマは2人に迫られる。ここで逃げてもダメだと思い正直に話すことにした。

 

 

「いや、武器作ったらシスタ様が教えてくれるかなーって思って」

 

 

 それは2人に衝撃を与える言葉だった。2人ともその言葉に納得し急いでクロベエのところに向かうのだった。



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27話

弥七さん評価ありがとうございます
嬉しいです


 カレラたち悪魔三人衆は大急ぎでクロベエのところに向かう理由は武器を作ってもらうためだ。急いで中に入ると既に何人かの人がいたがそんなことは悪魔にとっては関係ない。

 

 

「な、なんだべ?」

「あなたかしらクロベエは?」

「んだ、おらクロベエだ」

 

 

 テスタロッサが確認のために聞く。そしてそれを聞いた3人はすぐに詰め寄る。

 

 

「ねぇ、武器を作っていただきたいのだけれど」

「じゅ、順番があるだ」

「ねぇ、僕たちの武器を先に作ってもいいよね?」

「だから」

「我の武器を作る権利をやろう」

 

 

 3人にとっては他人の順番なんてどうでもいいのだ。それよりも早く武器を作ってもらいたいと言う気持ちの方が大きいからだ。

 

 

「おーす。クロベエ。また空いてるって何やってんの?」

「シスタ様!」

 

 

 3人はその声を聞きギク!と体を震わせてクロベエから離れる。しかしすでに時はすでに遅かったのだ。

 

 

「それでテスタたちは何をしてたの?」

「それは……」

「ボクたち……」

「武器を作ってもらおうと」

 

 

 そこまで話すとシスタはすぐに理解した。この3人順番を飛び越して作ってもらおうとしてたんだと。

 シスタは3人を引きずり店を出ていく。自身も刀の出来上がりを楽しみにしてきてたのだがそれどころではない。

 

 

 街からも出てさらにどんどん人気のないところに3人を引きずっていくシスタ。そしてジュラの森でもほとんど人が来ないところに来た。手を離しその瞬間3人に拳骨が頭に落とされたのだった。

 

 

「お前らななんであんなに焦ってたんだよ」

「それは」

「だって」

 

 

 ウルティマとテスタロッサは口を開くがカレラは開かない。シスタも一度拳骨を落としたこともあり落ち着いている。

 

 

「我らは我が君と同じように武器が欲しかったのだ」

 

 

 はぁーとため息をつくシスタ。それを見た3人は少しショックを受けるがシスタがため息をついたのと悪魔たちがショック受けたのは少し理由が違う。

 

 

「シスタ様ひどいよ。ボクたち」

「違うっての。なんで相談しないのかなーって。僕はそんなに頼りないのかな?」

「ち、違いますわ!わたしたちが勝手に」

「もういいよ。それよりテスタたちは受肉できる肉体を変えられるのか?」

「え、ええ。できますけど」

 

 

 シスタはその言葉を聞き三体の分身体を作る。テスタたちと話し合ってる間にルウェルとも話していたのだ。

 内容はこいつらの武器を作るにはどうしたらいいのかと聞くと攻撃を喰らい魔力の流れを解析するか、もう一つは分身体に入ってもらいそして繋がっている魔力回路を解析するというものだ。

 

 

「これに入ってよろしいのですか?」

「いいからそれぞれ欲しい武器を教えて」

「わたしは鞭です」

「ボクは手にはめるような奴が欲しいなー」

「我は我が君と同じ刀がいい」

「わかった。それじゃあこっちに移動して」

 

 

 3人は一瞬で移動する。そしてシスタが用意した依代に入ると全員少しだけだが魔素量が上がった。

 その間に解析を済ませ3人の要望通りのものを作っていく。あくまでもつなぎのようなものでちゃんとしたものではないために少しでもいいものを作ろうとしたからシスタは依代を用意したのだ。

 

 

「ほらできた」

 

 

 それぞれに要望していた武器を渡す。テスタに渡したものは黒い鞭、ウルティマに金色のメリケンサックみたいなもの、カレラには黒曜石のような色をした刀だ。

 

 

「わたしたちがいただいてよろしいのですか?」

「構わないよ。ただあくまでも繋ぎだからクロベエに作ってもらうように言っておく。今度からは……!」

 

 

 そこまで言うと我慢できないウルティマが飛びついたのだ。ウルティマはこれを繋ぎだなんて思っていなかった。自分が欲しかったようなものに色まで付着しているとは想像を遥かに超えていたのだ。

 

 

「シスタ様!ありがと」

「我が君感謝する」

「ありがとうございますシスタ様」

「あ、あぁ気に入ったらならそれで。それじゃあ」

「持って!修行つけてシスタ様」

 

 

 ウルティマはすぐにでもやりたいと言う気持ちが抑えきれずに口に出してしまう。自分がほんの少し前まで怒られていたなどもう記憶にないと言う素振りだ。

 シスタも暇ではなかった。なにせこの街、いやジュラの森においては盟主兼魔王である。だからこそ仕事は山ほどあるのだがやると言ってしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シスタはやると言ってから空間から木刀を取り出す。

 

 

「真剣じゃなくていいの?」

「構わないよ」

 

 

 何気なく放つその一言は悪魔たちのプライドを刺激した。もちろん本気で怒っているわけではないのだが流石にこっちは本物の武器でシスタが木刀なんて馬鹿にされているとしか言えない。

 

 

「本当によろしいんですわね?」

「構わないよ。いつでも」

 

 

 その言葉を皮切りに悪魔たちは目配せをし攻める。ウルティマとカレラが前に出てテスタロッサが鞭によって後ろから攻撃すると言うものだ。

 しかしシスタはそれも予想していた。元々の武器の形状的にテスタが前に出てくることはほとんどないだろうと予想していた。

 カレラの刀を避けてウルティマ木刀の持ち手で腹を殴って吹っ飛ばす。そのまま回し蹴りでカレラも飛ばして鞭を木刀で弾きながら近寄る。

 

 するとそれを読んでいたテスタは鞭に力を入れて引き戻す。すると勢いを増した鞭がシスタに襲いかかる。

 しかしそれも読んでいたシスタ。しゃがんでその体制のまま持ち手でテスタを吹っ飛ばしたシスタ。

 3人とも降参と手を挙げて負けを認めたのだ。

 

 

「我が君は強すぎるのだ」

「そうだよ。ちょっと強すぎない?」

「ええ、なぜあの鞭が読まれていたのかも不思議ですわ」

「まだまだだな。3人ともこれから僕と特訓するか?もちろん仕事があるから合間合間だけど」

 

 

 

 3人は迷いなく答える。自分たちが望んでいた主人との修行なのだ。迷う必要がなかった。そして3人は順番を決めてそれぞれ武器に慣れるために解散して各々考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シスタが悪魔たちを鍛える約束をしているその頃クマラはマヤにコテンパンにされていた。

 

 

「どうするやめる?」

「もう少しやるでありんす」

「そうこないと!」

 

 

 そこからクマラもマヤに挑むがコテンパンにされる一方。ここ最近で自身の力が上がっていることを確信しているクマラ。しかしそれでもマヤにかすり傷すらつけることができないのだ。

 それどころかどんどん壁が高くなっていくようにすら感じている。

 

 

「ほらほら早くしないとどんどん傷だけ受けていくよ」

「これからでありんす」

 

 

 そういい尻尾での攻撃を繰り出すが当たらない。それどころか殴られて吹っ飛ばされる始末。そのまま続けて結局今日も触ることすらできずに終わったのだった。

 

 

「そういえばマヤさんはなぜわっちを鍛えてくれるでありんす?」

「あーお願いを聞いてもらうためかな。クマラを強くしたらお願いを聞いてもらうんだシスタに」

「変なことは言わないでありんすね?」

「違うよ。今度こそ勝つために戦いを受けてもらうんだよ」

 

 

 その時のクマラは確かに感じ取っていた。マヤは負ける気はなく何がなんでも勝つと言う強い目をしていたのだ。

 

 

「シスタ様が負けるとは思わないでありんすがマヤさんも頑張ってください」

「その前に受けてくれるかわからないけどね」

「わっちからも頼んでみます」

「いいの?それを言うとシスタに嫌われるかもしれないよ」

「構わないでありんす。マヤさんはわっちを鍛えてくれました。そのことはこれからも変わりないですから」

「そっか。ありがと」

 

 

 マヤは素直に感謝を述べる。あくまでもクマラは今鍛えているだけでありシスタの直属の部下の1人なのだ。そのクマラがシスタを危険に晒すようなことを言うとは思っていなかったのだ。それともシスタの勝利を信じているのかもしれないが……

 

 

「それじゃあ今日はここまで」

「でもわっちはまだ」

「明日シスタにクマラの成長を見せるよ。だからこそゆっくり休んで」

「わかりました」

 

 

 クマラは納得したように街に帰っていく。マヤはそれをみてちゃんと確認してから自身の究極能力(アルティメットスキル)を発動させる。

 見た目が気持ち悪いから、自身が認めていないから発動させることはなかった究極能力(アルティメットスキル)だが本気でシスタに勝つなら使わなければならないと心に決めたマヤなのだった。




今回途中からアンケートのことを忘れてて見てみたらバレンタインが一番になってたのでそっちにすることにしました。
入れてくださった方ありがとうございます
また今度アンケートをした際にお願いします



後高評価を入れていただいた瞬間に低評価入れる奴なんなんでしょう。
一気にやる気が失せます。
一瞬この小説も停止するか悩んだぐらいなんで……
それだけ低評価を入れるなら自分で書いたらいいのにと思ってしまった


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28話

ハカナキ@墓無しさん評価ありがとうございます



星10評価gurikobaさん評価ありがとうございます


 クマラとマヤはいつも通り修行を始めるために集まる。しかしマヤは訓練をする気はない。昨日言った通りクマラの力をみんなに教えるのだ。

 しかしこの場にシスタや幹部の連中は一人として呼んでいないマヤ。

 

 

「それじゃあその服の重り外していいよ」

「はい!」

 

 

 クマラは言われた通りに重りを外す。クマラにとってはただの重りだと思っていたがマヤは違う理由で付けさせていた。

 これは力を抑えるものだ。といっても元からあるものを抑えるのではなく伸びていくものを抑えるものだ。

 だからこそクマラも技術面が上がって強くなったと確信していたのだ。しかし実際は違う。

 重りを外した途端にクマラの成長と共に増えていた魔素が一気に溢れ出した。

 

 そしてマヤは確信する。今のクマラの魔素量の最大値はあの悪魔たちと同等だと。

 

 

「これは……?」

「それが今のクマラの実力だよ。ここからはシスタに聞いてみて」

「それはどう意味でありんす?」

 

 

 クマラが放つ言葉と同時ぐらいにシスタが転移してくる。そしてクマラの成長振りをみて嬉しくなってきているのが目に見えてわかっているマヤ。しかし約束は約束だと思い口を開く。

 

 

「さてと、シスタ約束は守ってもらうよ」

「あぁ、何が望みだ?」

「わたしともう一回戦ってもらう」

「それはなんで?」

「負けたままっていうのが悔しいから」

「負けず嫌いにも限度があるだろ」

「それでどうなの?」

「やるよ。クマラのことは感謝してるし」

「それで今からやる?」

「それはこっちからまた連絡する。近いうちにな」

「わかった。それじゃあね」

 

 

 マヤは転移して街に戻る。クマラは自身の力を改めて感じているようだ。

 シスタはクマラの頭を撫でる。シスタも感じていたのだ。ここまで力をつけるのにどれだけ大変なのか。どれほどの努力をしたのかを。

 

 

 

「おつかれよく頑張ったな」

「ありがとうでありんす。わっちは役に立てますか?」

「もちろん。今までもこれからもよろしくな」

「了解でありんす!」

 

 

 

 クマラを連れて街に戻る。そろそろ謁見式が始まるからだ。僕は出たくないといったんだけどリムルとシュナから大反対されたために出ることになった。

 

 

「時間ギリギリだぞ!」

「悪い悪い。ちょっと野暮用だ」

「全くシスタは」

「そういうリムルだって嫌そうだろ」

「まぁな」

「ン"ンン"」

 

 

 シュナが咳払いをすると2人とも背筋を伸ばす。2人とも魔王になってもこういう時のシュナには絶対勝てる気がしないのだ。

 そして謁見式が始まる。といってもそこまで硬いものでもなくジュラの森の各種族が挨拶に来るのだ。

 自分たちの森の盟主になったものたちへの挨拶、興味、畏怖、様々な目をしてやってくる。

 

 そしてうるさい奴らがやってきたのだった。

 

 

「おう、魔王様よ。戦に役に立つなら、俺達、牛頭族(ゴズ)だぜ?

 貧弱な馬頭族を滅ぼすなら、手伝うぜ?」

「ふん、馬鹿め! 魔王というからには、見る目もあるさ。

 迷う事は無い、我等、馬頭族(メズ)と組むがいい。

 牛頭族どころか、逆らう魔物ども皆殺しにして見せるぞ!」

 

 

 リムルとシスタはイラッと来たのだ。こいつらは自分たちを利用する気でいるのだ。しかしそこはゲーム脳のリムル。牛頭族をみた途端に迷宮のボスで使えると思ったのだ。

 シスタは何も言わない。しかし徐々に魔王覇気が漏れ出していた。

 それをみたクマラが肩を押さえる。そしてシスタは自分から魔王覇気が出ていることに気づきそれを止める。

 そしてシスタはシオンに目配せをする。するとシオンはいいの?みたいな顔をシスタを見る。

 何も言わずにシスタはうなずき

 

 

「貴様等、我が王達の御前にて、無礼にも程がある。礼を尽くせぬならば、相応の扱いを覚悟するが良い!」

 

 

 シオンはその一言を放つと2人をまとめてボコボコにする。一分もかからずに。リムルはやっちまったみたいな顔をするがそんなことシスタからすると関係ないから放っておくが最後に魔王覇気を放つと2人ともガクガクしながら部屋から出て行った。

 

 

「シオンってこんなに強かった?」

「まぁ色々あるだろ」

 

 

 話すと次に入ってきたのは問題の長鼻族(テング)の族長の娘のモミジという名のものだった。

 

 

「ふん。低級なスライム如きが、我等の上に君臨する時代が来るなんてね。笑えない冗談だわ……でもまあ、仕方ないでしょう。この森を支配する事は認めて差し上げます。ただし、我等への干渉は許しません」

 

 

 幹部達の目の前でこんなことを言うものだからピクッと反応するものがいた。しかし自制したのだ。特にシオンが自制したのはシスタやリムルにとっても驚きだったのだ。

 

 

「わかったよ。なら鉱山の使用許可をもらうぞ」

「構いません。我らには必要のないものだもの」

「あっそ。ならいいけど最後に一つだけ。もう少しでうちの武闘会があるんだよ。みていくといいよ」

「ふふ、スライム風情に仕えるもの達の実力を見せてもらうわ。どうせ魔王になったのも運が良かったのだろうし」

 

 

 後ろでベニマルのため息が聞こえてくるようだ。ベニマルは今回の長鼻族の交渉に行ったのだ。おそらく自由にしていいといったのだろう。しかしここまで言うとはベニマルも思っていなかったはずだ。

 

 2人ともあとが怖いと思いつつ長鼻族のものが帰っていくのを見届けたのだった。

 

 

「ベニマル、あなたは長鼻族の交渉に行ったのでは?」

「し、シオン落ち着け。確かに俺は行ったがあそこまでとは」

「ではなぜあそこまでリムル様とシスタ様に偉そうなのですか?」

「だからだなぁ」

 

 

 それをみていたリムルは可哀想だと思い助け舟を出すことにした。

 

 

「まぁまぁシオン。ベニマルにとっても想定外だったんだよ。むしろこの幹部だらけの部屋であそこまで啖呵を切れることを誉めるべきだな。

 それにシオンもよく堪えてくれた」

「い、いえ。私も我慢の限界でしたが」

 

 

 シスタはだろうね!と思ってしまう。元々オーガの中でもかなり短気なベニマルとシオン。その2人があそこまで黙っていた方が奇跡なのだ。もっともベニマルは総大将の座を渡してからは落ち着いてかなりキレることは少なくなった。

 しかし問題児のシオンが切れなかったのは意外だったのだ。あの聖騎士達との一件以来シオンの中にあった何かが消えたのかもしれないということだけがわかるシスタなのだ。

 

 

「これで最後でしたので今回はお疲れ様でした」

 

 

 シュナの一言によりシスタもリムルも緊張の面持ちを解く。2人ともこういう感じの堅い式は苦手なのだ。

 2人ともスライム状態になり明日の予定を聞く。そう明日からは武闘会なのだ。2人ともこれを楽しみにしていた。しかしシスタはすぐに人間の姿になり悪魔3人とクマラを収集する。

 

 秘密裏に話すことがあるからシスタの家でだ。

 

 

「まず始めにみんなすまない」

 

 

 シスタは全員の前で頭を下げる。4人はもちろん大慌てで止めるがシスタの頭はどんどん下がっていく。

 

 

「シスタ様なぜ頭を下げているのですか?」

「おまえたちに頼みがある」

「なんでもお聞きいたしますわ」

「お前たち4人の武闘会のエントリーを取り消したい」

「「「「!!!!」」」」

 

 

 4人はすぐに驚く。4人とも武闘会にエントリーしており、優勝してシスタに認めてもらおうと思っていたのだ。

 

 

「それはなぜなのだ!我らは」

「カレラ落ち着きなさい。シスタ様の意見を聞きましょう」

「うん、けどなんでなのかな?シスタ様」

「わっちも楽しみにしてたでありんす」

 

 

 4人の顔を見て申し訳なくなっていくシスタ。しかしここで下がるわけにもいかない。この4人にはもっと相応しい場面があるのだ。

 

 

「お前たちの意見はもっともだ。しかし今日一日別に分身体を動かした結果東の帝国が動き出しているんだよ。お前たちはその東の帝国が攻めてきた時の切り札にしておきたい」

「では我らは見捨てられたわけではないのだな」

「なんでそうなる!!?」

「じゃあシスタ様も一ついうこと聞いてよ」

「わかったよ。1人一つまでだからな」

「わたくしたちを切り札と思っていただけるのですね」

「もちろん。というか切り札だろ」

「わっちも役に立てるんでありんす?」

「何いってるんだよ。これからも助けてもらうよ」

 

 

 4人は歓喜の嬉しさに心を包まれる。主にとって自分たちは道具であり、盾であったと思っている。しかしそれは自分たちの大きな間違いだっと認識させられる。

 そして今回の武闘会参加のことなど頭から抜けるほどの歓喜だったのだった。




なんだかモチベが下がってきてます
年末だからなんでしょうかね…


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29話

遅くなってすいません
最近モチベが上がらないので
後今原作読んでるんですけど開国祭にやっと入ったくらいなのでまた内容がはっきりしてないです。
どんな感じか教えてくださる方がいたら嬉しいです
わからない場合自分で読んで書くのでまた時間がかかりそうです

fじぇjdxjmsっjsjsさん
米海兵隊G中隊さん評価ありがとうございます


 4人に謝ったシスタ。その夜リムルと幹部たちの話し合いがあるらしい。俺も混じることにした。話は詳しく聞いていないがなんでも四天王を決めるとかなんとか。

 面白そうなのでついて行くことにした。

 

 

「それでベニマル、シオン、ディアブロは参戦不可能だ」

 

 

 三人は驚きを隠せていない。自分たちは出るつもりだったのだ。しかしリムルから言われた理由そして新たにもらった四天王という称号に納得したのか満足そうに頷いている。

 そして後の一枠にゴブタを大会に出させてその一枠に入れるつもりらしい。

 会議が終わると明日に備えて全員が解散して行く。俺もクロベエのところに行き例のものができているかだけ聞きに行くことにした。

 

 

「クロベエ、例のものは?」

「んだ、できてるだよ。これでいいだか?」

 

 

 見せてもらったのはベニマルが今使っている刀よりまだ長い刀だ。刀という表現より太刀という表現の方が似合っているかもしれない。これをつくった主な原材料は魔鋼出てきている。

 これを空間にしまい時間之神(クロノス)との組み合わせにより魔素での変化を早める。

 これは僕自身にしかできないと思う。リムルたちの武器もやってもいいんだけど魔素を使うし何より僕色に染まってしまうからやることはないと思う。

 

 

「どうだか?」

「できてる。最高だよクロベエ」

「んだ、ありがとうだよ」

「こっちのセリフだ。それじゃあまた来るよ」

「んだ、いつでも待ってるだよ」

 

 

 シスタはそう言い出て行く。クロベエはシスタのことが好きなのである。もちろん好意的な意味ではなく鍛治をする上でだ。

 シスタは自分のことを優先しないのだ。配下の悪魔たちはこの前にもあったように自分優先なのだがシスタは決して自分のことを優先にさせたりはしない。空いてる時間でやってくれとしか言わないのだ。シスタやリムルの立場に立つと基本的に偉そうにしたくなるものだ。偉そうではなくても自分のことを優先したくなるものなのだ。

 しかしあの2人は全くそんなことはしない。むしろ街の人たちには下手に出るのだ。

 リムルはたまに偉そうになったりするのだがそれも気にならない程度。

 シスタに限って言えば全く偉そうにしないのだ。むしろ物まで出してくるからこっちが気を使う時まである。

 そんなことを考えてまた鉄を打つクロベエなのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クロベエの作ってくれた太刀これはいい物だなぁ。今僕の腹の中でルウェルが大急ぎで2本の刀を直しているけど多分明日の武闘会には間に合わない。

 だからこれを作ってもらった。もちろん間に合うとは思っても見なかったし、間に合わなかったら自作でやるつもりだったのだ。

 

 

(どうだ?)

《まだかかりそうです。粉々でしたから》

(ごめんなさい)

 

 

 ルウェルはちょっと怒っているようだ。何気に無茶振りしているし怒っていても仕方ないが顔が見えないだけに余計に怖い。

 顔が見えていたら多分かなり怒っているだろう。なにせ今まで馴染ませた感覚を残したまま直してくれと言っているのだから。

 後は明日の戦いに備えて寝るだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いくら刀を振っても今のシスタに勝てる気がしない。実際クマラの前ではカッコつけて言ったが今の私じゃ究極能力は使いきれない。前に一度使ったことがあるけどその時も暴走してルミナスに強引に止められた。あの時は死ぬかと思ったけど私自身使えないことは一番よくわかっている。

 けどプライドが邪魔をする。このままでシスタに勝てるわけがない。だから使わなきゃいけないんだけど後一歩が踏み出せない。

 

 

「悩んでいるようね」

「ヒナタ!?」

「そんなに驚かなくてもいいじゃない」

「いや、こんなところ来るなんて思わないし。それになんで?」

「てっきりあの魔王に挑むのにビビってると思ったわ」

 

 

 ヒナタが何気なく放った一言はマヤの体を振るわせる。マヤ自身わかっているのだ。相手は魔王。前回の戦いも本気を出してなどいなかったと。それはマヤもわかっている。だからこそ今回は本気を出して戦いたいと思っているのだ。しかしそのためには自身が持つ究極能力に向き合わないといけない。

 

 

「やれやれ一本だけ勝負してあげる」

「なんで?」

「そうでもしないとあなた眠れないでしょ」

「そうだね。それじゃあお願い」

 

 

 そこからヒナタは勝つのではなく長く剣を合わせることに集中して戦った。そしてマヤが疲れるまで付き合ったせいで手に力が入らないヒナタなのであった。

 しかしそのおかげもありマヤはその日ゆっくり眠ることができて明日に備えることができたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしていよいよ始まる開国祭。国のいろいろなところの発表から演奏会。この国が持っているものをさらけ出してお祝いする物だ。

 そして警備といえば

 

 

「頼むぞ」

「クフフフお任せを」

 

 

 リムルはディアブロに頼んだようだ。たしかにディアブロなら誰にもバレないでやれるだろう。警備隊も徘徊しているがそれだけで足りない時にディアブロの出番というわけだ。

 

 

「そして僕の方からはテスタ頼んだ」

「かしこまりましたわ。ご期待に応えてみせます」

「待て待て、何もなければそれでいいんだ。自分から厄介事を持ってくるなよ。今日は他国の重鎮もいるんだから。後試合前には戻ってきておいた方がいいよ」

「わかっていますわ」

 

 

 そういいテスタは気配を消してでて行く。しかしそれだけでは済まないのが今のこの部屋。

 

 

「我が君!我はどうするのだ」

「ボクも行きたいよ」

「2人はダメだ。そして2人に頼みたいことがある」

 

 

 2人とも首を傾げる。今回の開国祭に関してはほとんどやることは終わっているがこの世界の情勢は変わっていない。新たな魔王が誕生したというだけなのだ。

 だから人間の国で最も力を持つ東の帝国を常に監視しているのだ。リムルにも言っていないがヴェルグリンドとの関わりがあるボクからしてみればあそこの国は脅威で仕方ない。

 

 

 

「東の帝国の間者を見張っててくれ。何か不審な動きをしたらすぐに知らせること。そして2人は必ず手を出さないこと。わかったね?後僕の試合の前には戻ってきたほうがいいと思うよ。2人にわたした武器の使い方教えるから」

「はーい」

「了解した」

 

 

 2人は転移して出かける、後はクマラなのだがクマラには迷宮の方があるのでそちらを任せた。

 そして部屋で時間まで待っているつもりでいたのだが部屋の扉がいきなり空いた。

 この部屋にノックなしで入ってくるのはリムルかヴェルドラ、ラミリスぐらいな物だ。

 しかし入ってきた人物は違う。

 

 

「ちょっとシスタ、レディが来たのだから迎えぐらい来なさいよね」

「あららアリス。久しぶり。少し背伸びたか?」

「変わってないわよ!」

「そっか。それにごめんな。迎えに行きたかったんだけど忙しくて」

「リムル先生は昨日来てくれたわよ」

 

 

 あのやろう。いつ行ったか知らないが僕が悪いみたいじゃないか。いや悪いんだけども。

 すると後ろでユウキが手を頭にやっているので重力操作でアリスを膝の上に乗せ頭を撫でた。

 

 

「な、何よ、!こんなことをしても許さないんだから」

 

 

 まだ話すようなので口の中にアメを放り込んで黙らせた。そのまま他の奴らの口にも入るように操作して放り込む。

 

 

「それじゃあ今日は楽しんでいってくれよ。開国祭が終わったら僕の家に来てくれ。もてなすよ」

「絶対だからね」

「わかったってば」

 

 

 そしてアリスたちは部屋から出ていき僕も出て行くことになったのだった。




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30話

やっとオレンジまで評価上がりました
皆さんありがとうございます


 いよいよ始まる武道会。テンペストからの出場はゲルドとゴブタのみ。しかし優勝したのはゴブタなのだ。元魔王カリオンが参加していたのでかなり頑張ったんだと思う。これでリムルの四天王は決まった。

 ベニマル、シオン、ディアブロ、ゴブタの4名に。

 そして僕はいよいよ本題に入る。魔法を使いテンペスト全体に通信をする。もちろん制御は僕じゃ無いが……

 

 

「あーテンペストにお越しの皆様。今から10分後武道会場にてわたくし魔王シスタテンペストと人間の中でも上位に存在する元西方聖教会今野真矢との対戦を行います。見たい方はどうぞ」

 

 

 その放送にテンペストは揺れる。あるいは興味、あるいは観察のためなのだ。

 新たに魔王を名乗る者の実力を、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マヤは今心底驚いている。家でゆっくりしていた。していたというのは間違いで何をしても手につかなかったのだ。お茶を飲んでも手が震えて上手く飲めない。何をしても手につかないのだ。そしてあの放送。まるで私のほうの状況がわかっているみたいだ。

 

 

「さて、いよいよ行こう」

 

 

 刀を持ちその場を立ち上がり、そして指定された武道会場に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さてここまでやったからにはヴェルドラにも手伝ってもらわないと。

 

 

(ヴェルドラ聞こえる?)

(うむ、聞こえておるぞ)

(頼みがあるんだけど?)

(クァハハハハハ、我とシスタの仲だ。遠慮など無用)

(今から武道会場に結界はれる?中が見えるように、かつかなり強力なやつ)

(うむ任せておけ)

 

 

 ヴェルドラはそう返事してすぐに武道会場に転移する。いくら強固な結界とはいえ自身がいかないとはれないのだ。結界を張りそして少し前までシスタが座っていた席に着く。この席はこの国でも一番いい席なのだ。それと同等なのがリムルの席。

 しかしリムルはすでに席に座っている。そしてソーカがマイクを持つ。

 すでにシスタからお願いされていたのだ。

 

 

「さぁ、やってまいりました。東よりやってきたのは人間の中で最強とも名高い今野真矢だ。そして西からやってきたのは九星魔王(ナノ・グラム)の一柱のシスタテンペストだ」

 

 

 その言葉に会場にいたものたちがざわつく。ソーカの実況は想像以上にいい者だったのだ。所々のタメ口は今回は免除だ。

 

 リングの中央で刀を持ってすでに待っているマヤ。その焦りは気づいたが何も言わない。それをなんとかするのは僕ではなく自分自身なのだから。

 

 

「はじめ!」

 

 

 ソーカの一言によりマヤは自身が隠していた究極能力を発動させる。

 

 

天魔之王(メフィスト)発動」

 

 

 本来なら口に出す必要はない。しかし口に出して発動させたマヤ。次の瞬間にその姿はだんだん変貌していく。それを直に見てみたシスタは全力で止めようとするがすでに遅かった。

 

 

「ごろす、殺してやる」

 

 

 マヤから出た言葉は完全に能力に飲まれていることを示している。シスタは思いっきり刀を振り下ろすが片手で止められてしまう。

 止められたことにも驚きなのだがさっきから重力に対して全くどうしていないのだ。だんだん威力を上げていくのだが全く膝をつく気配すらない。平然と立っているのだ。

 

 

《それが天魔之王なのです》

(??どういうこと)

《重力之王もまた悪魔の能力。あの羽によってほとんど効果がない者だと思ってください》

(あーあの羽ね)

 

 

 あの能力を発動させた途端マヤの背中には8対16枚の翼が生えている。

 確かメフィストって天使と悪魔そして人間の顔をしたやつだったような。今のマヤを示すにはぴったりの言葉だな。

 

 

「あぁぁぁぁあがぁぁ」

「攻撃は強いけど雑だな。前の方が強かった、けどどうやったら止められるんだ?」

《精神世界に入り込んで今野真矢の精神を助けないといけません》

(どうやって入るのさ)

《今野真矢に触れてください。そこからは私が実行します》

 

 

 攻撃を避けつつ段々と近づき手を掴む。その瞬間僕の意識は体から離れていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どけぇ!」

 

 

 そういい天使と悪魔に暴れるマヤが見えたシスタ。あの2体がおそらくあのスキルの核となるものだろう。

 あれをどうしたらマヤの意思にできるのだろうか?

 そもそもこの世界でのスキルのほとんどが自身の意思や感情によって発現するもの。それがあんな風に対抗してくることが珍しいのだ。

 もしかして

 

 

《マスターの予想通りです》

(なーるほどね)

 

 

 僕はすぐに間に入り片方を受け持つ。

 

 

「シスタ!?」

「ヒントをあげるそのまま聞け。それはマヤの感情によってできたものなんだよ」

「つまり!なに?」

 

 

 マヤの一言によってシスタはこけそうになる。頭の上を悪魔の拳が通り過ぎてヒヤッとしたのは内緒だ。

 

 

「バカやろう、マヤ自身の気持ちだって言ってんだよ!」

「!!あ、そっかそういうことか」

 

 

 マヤはすぐに両手を広げる。持っていた刀は置いて2人が持っていた刀を受け止める。マヤの体に刺さるがマヤの口からは一切血が出ていない。精神世界だからかといえばその通りなのだが2体が刺した刀はマヤの中に消えていった。

 

 

「そっかこれもあたしなんだね。受け入れなきゃ。対抗するんじゃなくて」

「あ!これどうやって出るんだ?」

《全くマスターは。帰り道はすでに作っています。今野真矢に触れてください》

(りょーかい)

 

 

 マヤの手に触れる。少し顔を赤くするマヤだがそれ以上何も言わなかった。

 

 

「ありがと、助かったよ」

「向こうで待ってるからな」

「うん」

 

 

 シスタの体がだんだん消えていく。

 

 

「本当にありがとう。大好きだよ」

 

 

 マヤも誰にも聞こえないようにそう言い自身の意識も体の方に向けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人がつかみ合って5分ほどだったが全く動く気配がない。会場に来ている者たちも戸惑い始めている。

 リムル自身どうしようか悩んでいるほどなのだ。

 

 

「やっと戻ったー」

「ふぅ」

 

 

 そういい本人たちが戻ってくる。そして2人とも後ろに飛びのいたのだ。そのあとは刀を抜き互いに向き合う。

 しかしその降着もすぐに続かなくなる。シスタが刀を鞘にしまい地面に突き刺したのだ。

 

 

「?シスタそれなんのつもり?」

「別に武器を使うんだよ」

 

 

 そういい空間からシスタが取り出したのは鞭だ。シスタを知る人物は唖然とする。シスタは基本刀とスキルの併用使用なのだ。鞭を使うところなんて見たことがない。

 しかしこの試合を見ている3人は違う反応をする。各々が目を凝らし主の戦いを目に焼き付けようとしたのだ。

 

 

「ふーん、まぁいいけど負けてから文句言わないでよね!」

「僕がそんなタイプに見えるか?」

「そうだね、愚問だった」

 

 

 マヤは刀を向けてシスタに向かう。シスタも迎え撃つべく鞭を放つ。テスタが前に使っているのを見たが違うのだ。鞭は相手を捕まえたりもできるが本質は先になれば威力が上がるのだ。

 つまり先だけに魔素を込めるととんでもない威力になるのだ。

 

 マヤの刀を払ったシスタ。そのまま先に魔素を込めて放つ。嫌な予感がしたマヤは避けるが闘技場の床にヒビが入っているのだ。

 この闘技場の床は街の床よりかなり硬い構造になっている。だからこそその床にヒビを入れるほどの破壊力に驚いていたのだ。

 

 

「なんて威力……」

「あ、ははは」

 

 

 まさかここまでなるなんて。実際想像にしていなかった。鞭に関してはこれで終わり。次は手につけるメリケンサックをつける。

 

 

「また武器の交換?」

「うん、そうだな」

「舐めてるのかな?」

「さぁ?」

 

 

 拳に魔素を纏わせ刀を弾いていく。弾きながらかつすぐ反撃に移す。体の動かし方から弾き方まで全てを見せるように動いていく。そして地面に突き刺している刀を掴みそのまま体を回して蹴る。

 拳で戦う以上使えるものは全部使うのだ。

 ウルティマが見ていたのを確認してから拳につけているものを外す。そして地面に刺していた刀を抜いたのだ。今テンペストでこれ以上長い刀を持っているものはいない。

 ベニマルの刀よりも長いのだ。

 

 

「やっと刀抜いたね」

「さて、そろそろ時間だし終わらせるか」

「舐めないでよ」

 

 

 そういい2人が霊子崩壊(ディスインティグレーション)を放つ。それを見たヒナタは唖然とする。本来の霊子崩壊は止まって集中してから放つものなのだ。

 しかしあの2人は動いて放っている。こんなことはヒナタ自身にもできない。

 自身との力の差に悔しくて歯を噛み締めたのだった。

 

 

(ルウェルさんルウェルさん、刀に切り替えてから重力之王をマヤに使ってるのになんで普通に動けてるの?)

《おそらくですがあの悪魔の方の羽だと思われます。あの羽が軽減しているようです》

(けどこれ以上出力上げたら床が抜けるしなー)

《そうですね。これ以上あげてしまうと床が抜けてしまいます。そうなるとこの会場は沈みます》

(だよなぁー。どうしようか)

《おそらくですがあの天使の方の羽は聖霊魔法などの増強です。あのまま霊子崩壊を打ち続けたら負けていました》

(めちゃくちゃな能力だな。天魔之王)

《勝ち方はあります。一つ目は周りを気にしないで出力を上げること。しかしこれはここではできません。もう一つはマスター自身が持つ究極能力、時間之神です》

(それでどうしろと?)

《能力自体を止めてしまえばいいのです》

 

 

 ルウェルの言っている意味がわかったシスタ。しかしそれはかなりの難易度の案件なのだ。そもそもこの世界においてスキルとは自身の魂と強く根付いているもの。自身が望んだもの、性格などが反映されたものがスキルになる可能性があるのだ。

 それを止めるのは魂を止めるのに等しい。それでは殺してしまい、観客にも恐怖を与えないようにか。

 

 刀で撃ち合いながらそんなことを考えるシスタ。魔素量の上昇、自身のスキルのレベルアップ。それらを駆使してマヤに立ち向かうのだった。




武道会編飛ばして申し訳ないです
けど読んだ感じなんか違うと思って飛ばしました

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31話

ウエダマさん
クビアさん評価ありがとうございます



 マヤとシスタが戦い始めた頃別の場所では暗躍が始まっていた。

 その場所は太古からあるが最古の魔王ギィクリムゾンやミリムナーヴァにすらばれていない場所なのである。

 その場所はこの世界を創造した星王竜ヴェルダナーヴァでさえほとんど知らなかったのだ。知らなかったと言うより創造した時にはなかったのだ。

 人間も悪魔も精霊も進化を続けるもの。その中には善意も悪意もあり、それらは限りなく肥大化していく。

 それがその場所なのだ。その場所も召喚魔法をしておりこちらの世界にシスタとリムルが来たとほぼ同時刻にある1人の人物が召喚された。その人物は自身にかけられた呪いなど一瞬で弾き飛ばしたのだ。

 そしてその人物はこう言う。

 

 

「ここを最強の王国にする。全国民、全兵士は全て──の参加だ」

 

 

 その一言はとても重くそして強く感じられた。だからこそその人物には向かうことはせず、誰にも気取られないように着々と準備が進められていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シスタがここまでとは思っていなかったマヤ。天魔之王が使えるようになった今なら勝てると思っていたのだ。実際かなりのところでこれは役に立ってくれているし、かなりのところでシスタの能力を制限しているのだ。それでも未だに決め手にかけている状態であった。

 その瞬間シスタの雰囲気が変わる。今までとは違う刀の持ち方。今までは普通に持っていた刀を逆手に持ち替えたのだ。

 

 その瞬間に2人の間に緊張が走る。それを知ってか知らずが観客たちも静まり返る。こういう時は互いに動かず刹那を見極めるのだ。

 そして観客の1人が飲み物をこぼしたのだ。その音に反応する2人。

 シスタは一言放つ。それが今のシスタの最強の技だとわかったマヤは自身が持つ最強の技で迎え撃つのだった。

 

 

「紫電一閃」

天魔の撃墜(メフィストストライク)

 

 

 2人が交差して光った後2人とも動かない。

 

 

「クソ、また私の負け……か」

 

 

 体から血を出して倒れ込む。シスタは倒れる直前に受け止めて自身の勝ちを表す。しかし内心は焦りまくりなのだ。

 魔素もほとんど残っていないし、マヤの心臓が今にも止まりそうなのだ。リムルに目配せをして最後の魔素で転移をする。そして自宅に着いてすぐに回復薬を飲ませようとするが口が開けられないようだ。

 塊の方は僕は作れないので方法はぶっかけるしか無かった。かけるとすぐに効果は出たようだ。

 

 

「あれ、私」

「はぁ、目覚めたか。何もあんなになるまでしなく……ても」

「シスタ!」

 

 

 シスタがスライム形態になって倒れてしまったのだ。理由は自身の魔素切れだ。そのまま意識がだんだんと遠くなっていくのがわかるシスタなのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シスタのあの姿を見たものは戦慄していた。今このテンペストにいる中でシスタに勝てる可能性があるとすればルミナス、リムル、必ず勝てると言い切れるのはヴェルドラぐらいなものだ。

 実際見に来ていたルミナスですら戦慄していたのだ。新たに生まれた魔王の強さではない。それにリムルという魔王もいるのだ。この国には手を出さない方がいいと思ったルミナスなのであった。

 

 

「クァハハハ、シスタもずいぶんと強くなったのだな」

 

 

 ヴェルドラはこう偉そうに言っているが時々感じた姉たちの気配に怯えていたのだ。ヴェルドラにとっては数少ない恐怖の対象なのだ。姉たちを力で上回るヴェルドラだが昔から埋め込まれた恐怖は時に力をも上回る。

 刻み込まれた恐怖とはそういうことなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらあなたたちは確か?」

「シスタは無事なの!?マヤさんは!?」

「少し落ち着いて」

 

 

 アリスたちがテスタロッサを見つけて話しかける。あの戦いを見ていたアリスたちは心配で仕方ないのだ。この後に招待されているシスタの家のことなどとうの昔にどこかに消えてしまっていて今はシスタとマヤの心配をしているのだ。マヤは西方聖教会にいた頃にシズの教え子たちと聞いてよく自由学園に遊びに行っていたのでsクラスのメンバーとも知り合いなのだ。

 

 

「わかったわ。シスタ様もこういうでしょうからワタシの方から言うことにしますわ。2人は今自宅におられますわ。だから安心なさってください」

「ならワタシたちもいくわよ!」

 

 

 アリスの掛け声に賛同するように4人は飛び出す。その姿を見たテスタロッサはすぐに捕まえて自身が連れていくことにしたのだ。ここで無視してもよかったのだがそんなことをすれば後でシスタ様からの説教を受けるのは目に見えていたのだ。

 

 そのまま連れて行きシスタの家に入る。悪魔3人とクマラ、マヤは鍵をもらっているので入れるのだ。実際ヴェルドラやラミリスも入っていくので鍵はほとんどかけていないのが現状なのだが……

 

 そしてそこではスライムの形態でピクリとも動かない自分の主を見たテスタロッサはマヤを吹き飛ばして抱き抱える。すぐに何がダメなのか考えてみる。そしてその答えはすぐにわかったのだ。魔素切れなのだということがわかる。

 テスタロッサは自身の魔素を輸血のようにシスタに渡していく。

 今のところこんなことができるのはテスタロッサ1人なのだ。

 テスタロッサはテンペストでも1、2を争うほどの精密な魔素コントロールなのだ。

 もっともテスタロッサ自身シスタ以外のものにこれをしようとは思ってもいないしするつもりもないのだが……

 

 

「う……ん、確か魔素切れで」

「お目覚めですか」

「テスタ、か。あぁ、そういうことか。助かったよ」

「お気になさらずに。それよりも……」

「シスタ!やっと目を覚ましたわね。それよりパーティーは!?料理は!?」

「あ……」

 

 

 アリスは先程までの心配していた姿などどこに行ったのかという感じだ。それよりもシスタは失念していたのだ。自身が言った言葉であったが……

 すぐにシュナや他の料理人たちに連絡する。自宅に来てもらい料理の手配をしてもらうことにしたが流石にこれだけの人数なのだ。かなりの量がいるに決まっているので子どもたちをなんとかすることにした。

 

 

「シュナこっちは任せても大丈夫か?」

「もちろんです。お任せください」

 

 

 シスタは料理の方をシュナに任せる。シオンがいたら大変なのだがシュナならなんの心配もない。シュナ主体でやってくれるのなら何も心配しない。

 

 シスタはその後に悪魔たちを呼ぶ。そして

 

 

「僕に魔力弾を打ってくれないかな。何なら核撃魔法でも構わない」

「それは危険なのでは?」

「いいからいいから早く」

 

 

 急かすと3人とも慌てたようにそれぞれが魔法を放つ。そしてそれはかなりの高威力の魔法なのだ。もし魔王になる前のシスタが喰らっていたら死にはしないまでも半身は吹き飛んでいたであろう威力。

 しかし今は魔王に進化しているのでそんな心配はない。

 

 

「暴食之王」

 

 

 シスタは暴食之王によって一瞬でそれらの魔法を喰らい尽くす。今のシスタには暴食之王を一回発動させるだけで限界だったのだがそれらの魔法によって魔素の一割ほど回復したのでスキルも普通に使えるようになった。

 

 

「助かったよ。もうこれで普通に動けると思う。3人ともここでパーティーするまで待っていてくれ。僕は子どもたちを連れて遊んでくるよ」

 

 

 3人とも了承して家の中に入る。そしてシスタはいつものように重力之王で子どもたちを浮かせる。テンペストが一望できる高さまで上がる。するとかなり綺麗な状況が見えているのだ。所々に光があり中央には一際大きな光がある。

 

 

「綺麗」

「すげぇー」

「綺麗だね」

「素敵」

「きれー」

 

 

 各々何か言っているようだがシスタにはあまり聞こえていなかったのだ。自分自身の力のなさを今日思い知らされたからだ。

 たしかに思いつきでやった紫電一閃はかなりの威力だった。しかしあれ一撃で魔素切れしてしまうようではいけないと感じていたのだ。

 実際使える能力を駆使してあれが使えるわけなのだが。

 そこで思念伝達で料理ができたとの報告が来たので全員で向かったのだった。




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32話

Remonさん
タカハシサトシさん
三歩進んでさん
評価ありがとうございます



今回から少しオリ回に入ります



 帰るとすでに準備はできていたようでみんなでパーティーの始まりだ。誰が言ったのかはわからないが勝手にパーティーは始まった。ここにいるのはごくわずかのメンバーのみだ。

 僕と子どもたち、悪魔3人とクマラ、マヤとリムルだけだ。

 

 

「シスタ食べてるの〜?」

「げ」

 

 

 そこにはマヤが酒を飲んでいる姿が見えたのだ。ここ最近の宴会で分かったのだがマヤはかなり酒癖が悪い。いつ飲んだのか誰が用意したのかは知らないけど余計なことをした奴がいるようだ。

 

 

「宴会といえば酒でしょう!」

「シ、シオン、何でここに?」

「リムル様、シスタ様ひどいです。ワタシを呼んでくれないなんて」

 

 

 今日この家には誓約之王による結界が張っておりあらかじめ入れているものたちとリムルか僕レベルじゃないと結界に対して入ることができないのだ。

 

 

「ワタシのスキル料理人で入りました」

 

 

 スキルは究極能力には勝てはしない。なぜならスキルの上位が究極能力であるからだ。それは全ての生物に適応される。悪魔でも、天使でも、精霊でもそうなのだ。下級悪魔は上級悪魔には勝てないし、下位の天使は上位の天使には勝てない。精霊も同様で下位の精霊がいくら足掻いても上位精霊には勝てはしないのだ。

 しかしシオンの持つスキル料理人。これはユニークスキルでありながら究極能力に届きうる能力なのだ。これはベニマルですら持っていないものである。

 

 

「全く、今回だけだからな」

 

 

 そういうシスタ。それもそのはず、今回この場にいるメンバーはあまりはしゃぐタイプではないメンバーばかりなのだ。強いて言うならリムルとマヤがはしゃぎそうな方に入るぐらいなのだ。

 

 

「マヤ、あとで付き合ってくれ真面目な話だ」

「ん、りょ〜かい〜」

 

 

 その時のマヤの反応は完全に酔っ払いのそれだ。全く覚えていないだろうと思いまた後で声をかけないといけないとため息をつきながら席に着いたシスタなのだった。

 

 シスタが感じたのは共振と呼ばれるものだった。それは本来であればこの世界ではあり得ないもの。元の世界でもごく一部の僅かなものたちにしかありえないものなのだ。それは何においてもごく一部の天才のみにあり得る現象。

 それがこの世界で起こったのだ。しかも何もしていない時に。

 シスタが感じた共振は寒気がするものだったのだ。

 

 

「テスタ、ウルティマ、カレラ話がある。クマラもだ」

 

 

 4人は首を傾げながら納得したのか了承する。しかし4人が4人とも感じ取っていたのだ。今までもシスタは真面目な言葉で話すことはあったが今回のは言葉の重みが違うと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリスたちとの宴会も終わり子どもたちを布団に移動させる。そして僕は外に出て静かなところに向かう。

 その後ろにはマヤがついてきている。正確には引っ張り出したなのだが。

 

 

「それで用って何?」

「あるところの調査に向かう。これは僕自身が行くんだけどもし僕が死んだらどうする?この国に敵対するかそれとも力を貸してくれるか?」

「それはどういう?」

「言葉通りだ」

 

 

 その言葉に4人は絶句する。それ以上の言葉が出てこないのだ。

 なにせこのテンペストいやこの世界でも上位である魔王の1人が死ぬかもしれないと言っているのだ。

 

 

「ならボクたちも連れて行ってよ」

「それは無理だ。お前たちはこれからのテンペストには必要だからな」

「我が君がいないなら……むぐ!?」

 

 

 カレラが言おうとした瞬間にクマラが口を塞ぐ。その言葉を放つとシスタが悲しむとクマラは知っているからだ。

 カレラも勢いで言ったがクマラに抑えられてすぐに口を閉じた。

 

 

「それじゃあ頼むよみんな」

「それならばシスタ様1つ約束してくれませんか?必ず帰ってくると」

「…………これじゃあ諦められないな」

 

 

 テスタロッサの一言にシスタは笑いながら出て行った。そして4人は何も話さずにただただ自分たちの力のなさを痛感していたのだった。自分たちが強ければシスタは連れて行ったであろうと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、カッコつけたからには帰ってこないとね」

「僕まだお前には何も言ってないけど?」

「私がわからないとでも?」

「いいのか?命の保証はできないぞ」

「構わないよ。シスタと一緒ならね」

「悪いな。たすかる」

 

 

 マヤはウインクをしながらシスタにいう。そうして誰もいない、気づかない夜の間に2人はテンペストを後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シスタとマヤが来たのはファルムス王国。上空から王城まで一気に降下していく。ここに向かうまでに2日ほどかけたために開国際も終わりヨウムたちも国に帰ってきている。

 王城の上空で兵士に見つかりそのまま降りていく。槍や刀で囲まれた2人だが全く動じない。それどころかあくびまでする始末なのだ。

 

 

「何者だ!?」

「ヨウムいる?もしくはミュウいる?」

「黙れ、この狼藉者め」

 

 

 話が通じない。呼んで欲しいと言っただけなのに。

 そこにミュウランがやってくる。

 

 

「なんの騒ぎかしら?」

「よ、ちょっと用事あるんだけど」

「シ、シスタ様。なぜここに?」

「ヨウムもいる?」

「とりあえず剣を引きなさい。シスタ様はこちらへ」

 

 

 ミュウランに連れられて王宮の中を歩いていく。その後ろにマヤがついてくる。

 

 

「それにしてもずいぶん変わったなファルムスも」

「ええ、ヨウムの人望で」

「可愛い嫁さんもいることだしな」

「〜〜〜///」

 

 

 ミュウランは顔を合わせてくれないまま訓練場についた。てっきり王室にでもいくのかと思ってたが……

 

 

「グルーシス!」

 

 

 ミュウランはそうでかい声でグルーシスを呼ぶ。グルーシスも気づいてこっちに寄ってくる。

 

 

「どうしたミュウラン?訓練場なんかに来て」

「シスタ様がヨウムに会いたいそうなのよ」

「なるほどね。そこで俺の出番ってわけか」

 

 

 話についていけないシスタだが2人の間で進んでいくのでそこまで気にせずに聞き流す。次はグルーシスについていくように言われたのでその後ろをついていく。

 着いたのは会議室のような場所だった。ファルムスは生まれ変わってからまだ日も短くまだまだ変えないといけないところがあるらしくて時間がかかるそうだ。

 

 

 

「まぁ任せといてください」

「任せるよ」

 

 

 グルーシスが会議に入ってすぐにヨウムに話す。すると会議はすぐに終わり部屋に残ったのはヨウムとグルーシスだけになった。

 

 

「やぁシスタの旦那、いやシスタ様か」

「そんなにかしこまらなくていいよ。ヨウム王」

「マジでやめて、というかシスタの旦那は遊んでるでしょ」

「まぁな」

「それで用件って何です?」

「ああ、こっからがマジな話だ。ファルムスの東の国境付近に誰にも近づかないところがあるよな?」

「あるにはあるけどあそこは確かに幽霊が出るって噂があるんだけど」

「そう、それだ」

「な、何が?」

「その土地を買いたい。これだけで」

 

 

 そこにシスタはお金を置く。その額は一等地に豪邸が立つレベルだ。それを見たヨウムは驚く。誰も近づかない秘境にそれだけのお金を出して買うというのだ。

 

 

「それじゃあ。後あそこには僕が作った結界を張るから」

「あ、あぁ」

 

 

 シスタはそういい出ていく。そしてヨウムは正気に戻りすぐに声を出すが時は遅かった。

 

 

「あ、シスタの旦那ぁ!」

 

 

 ヨウムの声は虚しく会議室に響いたのだった。




最近全くモチベが上がりません
まだまだ続きそうです…


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33話

ビッグカジキさん
もきゅさん
発光さん
Sariーshunさん評価ありがとうございます


 結界を張りいいポイントを探すシスタ。そしてついにその足が止まる。そこに重力之王で穴を開けて飛び込む。飛び込んで少ししてから自分の前に小さなブラックホールを作る。

 自身の能力で傷がつくことはないから自分の後ろにマヤを連れて進んでいく。2人の超速移動で100km以上出ているのだがそのスピードで進んでも1日ではつかなかった。

 

 

(そんなに深いのか?)

《おそらく後1時間ほどです》

(なるほどね)

 

 

 ルウェルからの距離を聞きそこからスピードを緩めるシスタとマヤ。そして着く直前になると重力之王を解除してそこからは暴食之王で進んでいく。突き破った場合ほんの少しの埃やゴミなんかでバレるのもめんどくさい。

 

 

《マスター刀の修復終わりました。性能もアップさせてあります》

(マジで?ありがとう)

《マスターのお望み通りの能力です》

(マジかー助かるよ。これで思いっきりいける)

《全てはマスターの望むままに……》

 

 

 最後の言葉には突っ込まないでおこうと思って刀を空間から出したシスタ。久々に背中に2本背負う感覚には流石に込み上げてくるものがある。

 

 

「久々だね。その姿を見るのは」

「誰かに刀をおられたからな!」

「さぁ、頑張って行こー」

 

 

 あからさまに話を逸らすマヤ。自分が折ったのがわかっているのだ。この話をされるとなかなか勝ち目がない。今でも敵同士なら気にしないのだけれど。

 

 2人は静かにその国の誰にもバレないように降りた。そして2人とも目を疑う。そこは自分たちの国よりはるかに発展しているのだ。

 テンペストは世界有数の発展途上国であり、世界的にもかなり発展している方だと思っていた。しかし目の前に映るのは高層ビル群が目に入る。そしてはるか先まで見えない広さ。どうしてここがギィやミリムにバレなかったのかもさっぱり意味がわからない。

 

 

「すごいねここ。まるで日本を見てるみたいだよ」

「いや日本でもこんなのは東京の首都なんかだけだろう。ここまで並んでいるのはないと思う」

 

 

 しばらく歩いて移動すると人が出てくる。それはこの世界にいる人間と大差ない人たちが出てきたのだ。

 

 

「あら、あなたどこから来たのかしら?」

「すいません、ここら辺に詳しくなくて」

「あらそう。なら覚えておくといいわ。ここは首都東京。そしてここを仕切っていらっしゃるのは来栖晃様よ」

「??いまなんて言いました?」

「来栖晃様って言ったのよ」

 

 

 

 その名前を聞いた瞬間シスタの脳内であらゆる可能性が弾き出される。それはあり得ないと。

 

 

「あらそろそろ映し出されるわよ」

 

 

 そこに映し出されたものを見た瞬間シスタは気持ち悪くなり意識を無くした。その姿を見たおばあさんは驚き、マヤはすぐにその場から離れる。かなりの距離を移動して洞窟の中に入り込む。

 

 

「シスタ?何かあった?」

「ゲホッ!やっと理由がわかった。共振の理由」

「どういうこと?」

「あいつは僕の双子の兄だ」

「!!??それで何で共振?」

「双子が意思が繋がってるかもしれないって話は聞いたことがあるだろ?」

「あるけど」

「それが顕著に出てたんだよな。僕たち双子の場合」

「ちょっと待ってその話おかしくない?」

「なにが?」

「その共振の理由はわかったけど何でこんなに大きくなるまで気づかなかったの?」

「?確かに。そこは謎だな。それにあいつが敵なら今まで以上に厄介なことになるからマヤにも帰っておいて欲しいんだけど」

「やだ」

 

 

 マヤははっきりとそう答える。ここまでいったシスタはあの男が敵だとわかった時点で自身のことなど顧みずに、いや死んでも構わないと思っているかもしれない。

 あの悪魔たちやクマラの気持ちを考えるとそんなことは絶対にさせられないそう考えたマヤは即答したのだった。

 

 

「それじゃあここからどうする?」

「ちょっと休んだら街に紛れ込もう。さっきのおばさん見た限り普通にしてれば何にも怪しまれなそうだ」

「うん、そうしよっか」

 

 

 2人は少し休んで転移の繰り返しで街の近くまでやってくる。こっちの場所では転移は難しいのかわからないために誰にも見られない位置で止める。

 そこからは歩きながら自分たちの魔素を完全に外に出さないようにしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シスタたちが地下の世界に来た同時刻にまた動きがあったのだ。

 

 

「何かわかった?」

「いえ、全くですわ。あの方は隙がなさすぎます」

「そう。あの男がここを支配している限り永遠に戦争の気配は止まないわ。今はまだ上の世界の魔王たちが強すぎるために攻め込めないけど」

「それも一体いつまで持つのか、ということですわね」

 

 

 

 2人して顔を悩ませる。そして2人ともまだ気づかなかったのだ。そのうちの1人の魔王がこの世界に来ていることを。

 そして後々にその魔王が全てを変えてしまうことを。

 




評価がだんだん落ちていく。
こうなるとやる気が少しずつ削がれていく
書いてる人ならわかると思います………


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34話

 2人はこの世界を歩いて情報を集めていく。この世界であっても元の世界であっても情報は武器なのだ。

 情報を制したものは状況が作れる。以前にクレイマンのところを攻めたのと同じことなのだ。

 

 

「それで何かわかった?」

「やっぱりこの世界は歪んでるな。少し出てわかったことだけどあいつが上に立つことを全員が納得している。それだけに他のやつからの情報はなかなかに聞きにくい。ある程度のことまでは聞けるけどある程度以上聴こうとすると答えないな」

「そっか、そっちもか。わたしの方も似たような感じ」

 

 

 やっぱりある程度の情報規制は食らっているようだ。これ以上探ると変な疑いをかけられる。

 

 

「こうなったら直接攻めるしかないか」

「だね。それ以外にこれ以上できること無さそうだし」

「なら2人とも完全に気配を断って中に潜入しよう。そして戦闘は最小限にな」

「わかってるよ」

 

 

 2人とも気配を消す。ある程度の実力のやつがよく見ればわかる程度だが2人とも気配を断つだけでなく自身の姿まで消したのだからなかなかわからない。

 2人はお互いの位置を確認しながら進んでいく。すでにかなりの距離を進んでいるがまだつきそうにない。

 調べてみてわかったのはいる場所とそこへの行き方ぐらいだ。

 

 

「今どれぐらい?」

「半分は超えたな」

「まだそんなもんかぁ〜」

 

 

 2人は誰にも聞こえない程度の声で目的の場所まで進んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シスタとマヤがテンペストを出て行ってから一日経った頃悪魔たちとクマラは正座させられていた。

 

 

「それで何で俺に言わなかったんだ?」

「我が君なにも言わなかったからだ」

「シスタ様は今回のことを誰にもいうなと言っておられましたわ。だから言わなかったのです」

「でどこにいくかも聞いてないんだな?」

「はい」

「あいつ魂の回廊も切ってるからわからないんだよな」

 

 

 リムルが言ったのは本当のことだ。シスタはみんなが寝ている夜に出ていき、その間に魂の回廊を切っているのだ。だからリムルにも逆探知ができずにどこにいるか全くわからない。

 

 

「全くあいつは……。お前たちはテンペストから出ることを禁止する!以上!」

 

 

 

 リムルの一言に反論することもなく4人は会議室から出て行く。そしてどこに行く当てもなくシスタの家の前に来てしまった4人。

 4人が4人ともなにも考えずにここに来てしまったので中に入ることにした。全員鍵はシスタからもらっていたので中に入り掃除をする。毎日シュナがやっていたためにほとんどすることがなく4人はなにも話さずに座り込む。

 そして1人、また1人と家から出て行く。しかし4人のついた場所は同じなのだった。

 それに気づいたのは全員同じなのだ。

 

 

「ラミリス様迷宮の部屋を貸してくださいませ」

「はぁーあんたたち遅い!元々シスタに頼まれて作ってたのに遅いわよ!」

「それはどういうことなのだ?」

「前にアタシがここに住むときにシスタに一つ借りを作ったのよ。それを使って作らせたってわけ。あんたたちが来るのがわかってて頭まで下げてってあ!」

「ラミリス様それは言わない約束では」

「べ、ベレッタ内緒よ!言わないでよ」

「わかりました。わかりました。わかりましたから」

「そういうことなの。あんたたちは多分修行しに来るだろうって言って復活の腕輪4本も作らされたんだから」

 

 

 そういいラミリスはそれぞれに作った腕輪を渡す。4人はそれを腕につけて部屋に入って行く。それの性能だけ聞くと早速4人は中で修行という名の殺し合いに近い戦いを始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マヤとシスタはいよいよ本拠地につき目的の場所までついた。そして扉を開けるとそいつは待っていたかのように座っていたのだ。

 

 

「やぁようこそ。というかよくここまできたね。魔王シスタ、聖騎士いや元聖騎士今野真矢だね」

「お前こそ来栖晃(くるすあきら)

「白々しいね。シスタだったかな。君がここにきた理由は共振を感じたからだろう」

「っ!」

「元々双子なんだ。感じないわけがないだろう」

 

 

 その言葉を聞きマヤは背筋に冷たい汗が流れる感覚を味わっていた。今までも何度か味わったことがある。けどこんなに冷たいのは初めてなのだ。

 

 

「さて出来損ないにはここで死んでもらおうか。といっても手を出すのは俺じゃない」

「はぁ?」

「まずは俺直属の部下を倒してもらおうか。といっても一番弱い2人だけどね」

 

 

 そういうと2人扉から出てくる。この2人の威圧感もなかなかのものでカリオンやフレイが多分このぐらいだろう。

 

 

「それじゃあ始めてもらおうか」

「シスタは休んでて。一瞬で終わるから」

「マヤ、けどな」

「大丈夫だよ。見てて危ないと思ったら助けてよ」

「わかったよ」

 

 

 マヤは刀を抜き構えを取る。そして勝負は言った通り一瞬で終わってしまった。一瞬で近づき首を跳ね飛ばしたのだ。

 そしてその2人は倒れ込む。

 

 

「見事だな。ただ倒した後も油断しない方がいい」

 

 

 その言葉と同時にだんだんと2人の体が膨らんでいくがそこはシスタが時間之神(クロノス)止める。途中でピタリ止まりそれ以上は動かなくなったのだ。

 

 

「へー止めたか。なかなかいいのを持ってるな」

「さて次はどうすんだ?」

「んーまだ部下を出してもいいんだけどめんどくさいから俺が直々に相手をしてやろう」

 

 

 立ち上がり空間から刀を出す。その刀は美しい刀身をしていてシスタに対して一瞬で詰めてきた。しかしシスタも反応して刀で受け止める。今回シスタがルウェルに頼んだのはただひたすらに硬い刀なのだ。

 しかしそれでも受けるので精一杯なのだ。実際のところ受けきれずに体に当たり始めている。そして異変はすぐに起こった。それに気づいたのはシスタではなく入っていなかったマヤなのだ。

 

 

「シスタ、一回下がって!」

 

 

 マヤの言葉に反応はするものの剣圧にやられてなかなか下がれない。しかしそれこそが来栖晃の狙いだったのだ。

 突如シスタが反撃も防御もできないまま体に刀が刺さった。

 

 

「ガッ!」

 

 

 そして刺さった瞬間にシスタもマヤが静止した理由が分かったのだ。口から出たものは紛れもなく血なのだ。そして身体中が痛いのだ。

 シスタには痛覚無効があり何より血が出るわけなんてないのだ。自身は魔物なのだから。

 

 

「これ……は?」

「気付くのが遅いなぁ〜。この刀は俺が自ら作ったもので相手を強制的に人間に戻すんだよ。初見で抵抗(レジスト)していたら防げるけどそこまで考えてやってる奴はなかなかいないよな」

「クソが」

 

 

 マヤはその場から動かない。シスタの邪魔をすると怒られるし何より自分でやると言っていても他の奴らがくるかもしれないのだ。

 すると魔力感知にてかなりの数の人間がこっちに向かって走って来ているのを感じ取ったのだ。

 すぐに入り口まで移動して刀を構えるマヤ。しかし最悪の事態は扉の手前から始まったのだった。

 




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35話

 マヤが扉の前で待っていると扉は開くことなく吹き飛ばされた。それを見たシスタも実際に受けたマヤでさえ意味がわからないのだ。

 

 

「な、なにが?」

「答えてあげようか?連鎖爆弾って知ってる?」

「連鎖爆弾だぁ?いや、まてマヤすぐに後ろに飛び退け!」

 

 

 シスタが考えた最悪の事態は連鎖爆弾という言葉についてだ。見た感じ一発しか爆発していない。しかしこいつは連鎖爆弾と言ったのだ。

 その言葉通り次々に爆発しながら部屋に入ってくる。

 しかもだんだんと威力が上がっている様な気がする。マヤも初手は食らったが二発目からは防いでいる。しかしそれに魔素をかなりの量を使っていてこのままでは削り殺されるのは明白だ。

 シスタは重力之王(グラビティノス)によってマヤを引き寄せて他の奴らを潰そうとするがそれができなかった。

 

 

「やれやれやっと気づいたのか?いくらなんでも遅すぎる」

「なにがだよ」

「何かおかしいと思わなかったのか?なぜここにきた時に人間に強制的に戻されたか。血が出ても回復しないのか?」

「まさか!?」

 

 

 その言葉はある疑惑を思わせる。シスタはすぐに確認したが自身では発見できない。

 

 

(ルウェル!この部屋のどこかに結界か何かあるか?)

《否、しかし不自然な魔素の流れです》

(不自然?)

《この部屋の魔素が薄いです》

(この部屋?)

《はい、そのせいでスキルに必要な魔素を出しても足りないのです》

 

 

 なるほどそれでか。マヤはまだ防御しきれている様だし僕は一気に体の魔素を放出させる。部屋の中の一気魔素が一気に増える。

 

 

「ありがたく頂戴するよ」

 

 

 そういい玉の様なものを投げると魔素が一気に吸い取られた。それは元々あった魔素までもがゼロとなったのだ。

 その事実にシスタは愚かルウェルまで驚いていたのだ。たしかに魔物たちは魔素を吸収して自身の魔素を回復させる。しかしそれは一気には無くなったりはしないのだ。濃ければ濃いほど回復は早いがそれよりも大気中の魔素が増える方が早いのだ。

 

 

「な!なんだその玉」

「ん?俺が作った玉だが?」

「そういうことじゃねぇ!」

「あ、そうそう。そっちの女はもう防御壁使えないから」

「え?」

 

 

 次々にマヤが爆発に巻き込まれる。すぐに移動して回復薬をかけるがショックが大きかったのだろう。なかなか起きそうな感じはない。

 

 

(ルウェル、僕の最後の魔素使っていいから転移門と重力之王を発動できるか?)

《可能ですがそれをしてしまうとマスターの生存確率が限りなくゼロになってしまいますが。今野真矢を見捨てれば生きられる可能性は上がりますが……》

(ルウェル怒るぞ)

《愚問でしたね。行いますので距離をとってください》

(了解!)

 

 

 その場からかなりの距離をとって転移門を開けるシスタ。しかしかなりの魔素を使っているので開けている状態を制御するので精一杯だ。その状況を見逃すわけがない。だからこそ一番使い慣れている重力之王にしたのだ。くる奴ら全てにかけてマヤを転移門の中に放り投げて制御を諦めた。その瞬間に転移門は消え、シスタはその場に1人取り残される。

 

 

「満足か?」

「ああ、満足だな。あとはお前を殺すだけだよ」

「強がりはよせ。この状況でお前に勝ち目なんかあるわけない」

「そうか?やり方はいくらでもある」

 

 

 2本の刀を構え迎え撃つシスタ。しかし結果なんてものは火を見るよりも明らかなのだ。体の至る所から血が出ていて刀にまでヒビが入っているシスタ。それに比べて完全に傷を負ってもいない来栖晃に勝てるわけがないのだ。

 全快の状態でも勝てるかどうかすら怪しいものだ。

 

 

「さてやろうか」

「いつでも」

 

 

 2人の兄弟喧嘩とも言える戦いは極めて激しく短い時間で終わりを迎えたのだった。1合、また1合と重ね、シスタの刀にヒビが入っていく。ヒビはだんだんと広がっていき刀はついに砕ける。

 

 

「チィ!」

「じゃあな」

 

 

 来栖晃がシスタの腹に刀を刺す。すでにかなりの量の血を流しているのでこの方が来栖晃にとっても都合がいいのだ。

 

 

「じゃあお前の究極能力はもらうから」

「そうはいくか。結界封印」

 

 

 それはシスタの最後の最後の悪あがきで自身を吹き飛ばしてその場から離れて封印を行なったのだ。

 

 

「こんなもんすぐに破壊して」

「無駄だ。お前は破壊できない様にしてある」

「それなら解除して」

「それも……ガハ!無理だ。それはお前には最低でも10年は解けない様にしてある」

 

 

 シスタはそこまでいうと倒れ込む。もうこれ以上は口を動かすことですらもう厳しいのだ。シスタの意識がだんだん遠くなっていく。その時にシスタが思ったことはあいつらのことだったのだ。

 もう帰れそうにない。テスタロッサ、ウルティマ、カレラ、クマラすまない。シュナはまぁ大丈夫だろう。

 シスタは静かに目を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マヤがテンペストに飛ばされたのは街の中心だったのだ。警備隊が常にテンペストを警戒しているために見つけられた。

 

 

「ゴブタ!すぐにリムル様に連絡だ」

「は、はいっす」

 

 

 ゴブタはすぐに思念伝達でリムルに状況を伝える。話を聞いたリムルはすぐに転移で移動してやってくる。そしてマヤの状態を確認してみるがリムルと智慧之王の結果は傷はなく、自身の意識が戻らないだけだと判断した。

 

 

「シュナ、シオン。こいつを家に連れていって寝かせておいてやれ。今は意識が戻らないだけだから」

「かしこまりました」

「わかりましたリムル様!」

 

 

 シオンがマヤを抱き抱えマヤの家に向かう。家に入りベッドにマヤを置くとシュナがマヤに布団を被せる。そして静かな寝息と共に眠っていたのだ。その間もシュナは解析者によって解析を行うが体にはなにも異常はなかった。

 

 ただその時はリムルもシュナも同じことを思っていたのだった。同じ様に出て行ったシスタはまだ帰ってきていないのだ。そして唯一の手がかりがこのマヤで今は目を覚ます時まで待つしかなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シスタが倒れた時に来栖晃は笑っていたのだ。やっと鬱陶しいやつが消えた。いつまでも続く結界なんてあるわけがない。自身の力も確認できたことだしこれで地上に攻めるための準備が進められる。自身は出られなくても力を蓄えるのとができるし、内から外に声も届けられる。

 封印といっても来栖晃が行動を制限しているだけなのだ。

 

 

「フローラ!あの人よ!」

「ええ、ビアンカさん。すぐに回復しますわ」

 

 

 

 フローラと名乗るその女はシスタを持ち抱えてすぐに治療にかかる。しかしそんなことは無駄だと思う来栖晃。シスタはすでにこの世の生物ではない。魔物と人間の混同の様なものだ。だからこそ完全回復薬も効かない。

 それを治しているのだ。少しずつだが。

 

 

「どうフローラ!?」

「わかりません。少しずつ回復はしているのですがそれよりも怪我が酷すぎます」

「その人は絶対に死なせちゃダメ」

「ええ、わかっていますわ」

 

 

 2人にとってこれは奇跡に近い出会いだったのだ。この人ならこの世界を変えられるかもしれない。そう思ってすぐに飛び出したがすでに時は遅かったのだ。けれどまだ助かる道はあると思ってこの場から離脱する方法が思いつかない。

 

 

「だれかは……知らないがこの地点に……」

「しっかりしてください!」

「フローラとりあえずいくわよ」

 

 

 そういい2人はとりあえずのその場から逃げていくのだった。シスタはそれ以上はしゃべることも厳しくなにも話せないまま意識だけをなんとか繋ぎ止めていたのだ。

 

 2人はそこを飛び出てすぐに指定された地点に向かう。その間も追っ手が来るがこのレベルなら正直のところ2人の相手ではないのだ。直属でもない部下が来たところで相手にはならない。しかし2人ともその地点についてもなにも見つけられないのだ。周りを見渡してもなにも見つからない。

 

 

「上……だ」

「!!ビアンカさん。上に穴が」

「考えてる時間はないわ。いくわよ」

 

 

 2人は飛んで進んでいく。しかしいくら進めど進めど全く抜ける気配がないのだ。2人ともそれでもスピードを上げるとなぜか空洞にたどり着く。しかも2人分泊まれるぐらいのスペースがあるのだ。

 

 

「あと半分だ。そのあとはテンペストを目指して……」

「ちょっと!しっかり」

「とりあえずそこに向かいましょうか。まだかなりの距離ありそうですから」

「そうね。それに途中で追っても来なくなったから」

 

 

 2人は飛んでいき、なんとか穴を抜ける。するとそこには王国があったのだ。しかし2人揃って全くわからない。どこかにいる人に聞けばわかるのだろうかと思い歩き出したのだった。




知ってる方もいるかもしれませんがあのゲームの某キャラです
内容は全く変わりますが見た目はあの通りだと思っていただければいいです
2人ともある究極能力を発現させるつもりなんですけど何かいいのがあったら教えていただきたいです


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36話

ナハァトさん評価ありがとうございます


 2人はシスタを抱き抱えていたが空間にシスタを入れてそこで治療することにしたのだ。なにせ血まみれの人間を抱えていると目立つからだ。

 

 

「あら、貴方達この辺りじゃ見ない顔ね」

「ええ、それより聞きたいことがあるのだけれどテンペストって知ってるかしら?」

「あの国に何か用があるのかしら?」

 

 

 話しかけたのはミュウランだった。それを2人は知らない。この人がテンペストに救われたということも。そしてなぜこの場にきたのかという理由も。

 

 

「なぜ貴方達はここにいるのかしら?返答次第では」

 

 

 そういい杖に魔素を集めていくミュウラン。しかし2人は慌てない。もっともミュウランよりはるかに強い2人は慌てない。しかしフローラは空間からシスタを出すことにしたのだ。もしかしたらこの人が何か知っているかもしれないという思いを込めて。

 

 

「シスタ様!?」

「知ってるの!?っていうか様?この人何か偉い人なのかしら」

「偉い人も何も。いやそんなことよりはやくテンペストに」

「そのテンペストなのですが方向はどちらなのでしょうか?場所さえわかればすぐにいくことができますので」

 

 

 ミュウランは首を傾げながらも方向を指さす。 そしてその瞬間に2人は宙を飛び一瞬でミュウランの視界から消え去ったのだ。

 ミュウランは慌てはしたもののそれ以上は何も考えなかったのだ。というか考えると頭が痛くなるからだ。シスタもリムルもミュウランにとっては埒外の化け物なのだ。

 ミュウランは考えるのをやめて頭を抱えながら王宮に戻って行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人は空を飛びながら下を見ているが街も見えない。それどころか見えるのは遥か先にある森だけなのだ。いったいどこにそのテンペストがあるのかと思いながらもだんだんスピードを上げていく。

 そして森の上を通り過ぎようとした途端に急に発展した街を見つけたのだ。

 そこに降りて入ろうとするが結界が張ってありそれは入りにくいものだったのだ。

 

 

「ビアンカさん、どうしますか?」

「うん、壊そっか。いつもならゆっくり待ってられるんだけど今回はそうも言ってられないし。後あの人出しといて」

「わかりました」

 

 

 そういい自身の鞭に魔素を込めていくビアンカ。その一撃はテスタロッサたち原初の悪魔が放つ核撃魔法よりも魔素が込められているのだ。

 

 

「ちょっと!ビアンカさんやりすぎは」

「わかってるわ。そーれ」

 

 

 可愛く言ったがその一撃は結界だけではなくそのあたり一帯を吹き飛ばしたのだ。誰もいなかったのが幸いだがそれ衝撃はテンペスト全域に広がり幹部以上の者たちはすぐに転移や移動できたのだ。

 

 

「おい、貴様らこんなことをしてタダで済むと思ってるのか」

「あらあらベニマル様お下がりください。修行の成果を試すのにちょうど良い相手かと」

「ち!」

「なーんか勝手に話進んでるけどこの人知ってる?」

 

 

 そういい背中で隠していたシスタを見せる。するとテンペストの連中は一気に顔色が変わりフローラからシスタを取り上げた。

 しかしそれはフローラが許さない。取られた瞬間に取り返したのだ。

 

 

「我が君に何をした!?」

「ボクも久々にカチンときちゃったよ」

「待て待てお前らが暴れたらえらいことになるだろうが!」

「あらベニマル様はシスタ様のことなどどうでも良いと?」

「そんなことは言っていない。ただリムル様を待てと言っているんだ」

「そんなことよりここにこの人を治療できる人はいるのかしら?フローラが治療しているのだけれどあまりに傷が深すぎて」

 

 

 そんなことをいうが悪魔やクマラにはその言葉が耳に入らない。なぜこいつがシスタを担いでいるのかそれが不可解で仕方なかったのだ。それぞれが自身の核撃魔法を放つ。

 しかしそれはビアンカの火球(ファイヤーボール)によって全て相打ちになったのだ。その事実は技を放った3人だけでなくその場にいたもの全てを戦慄させた。

 本来核撃魔法は火球の遥か上の魔法なのだ。たとえ自信が敬愛する主であるシスタであっても自分たちの核撃魔法を火球で防ぐなんてことはできるわけがないのだ。

 そしてそれは一つの事実を指し示していた。自分たちの目の前にいる2人はここにいる誰よりも格上であるということ。そしてそれは3人だけではなくここに駆けつけたもの全てが理解していた。

 2人が本気ならここにいるものたちはすぐに殺されると。

 

 

「なんの騒ぎだ!?なんで結界が壊れてる?」

「リムルさまこの者たちが」

「あ、あなたがここの一番偉い人なのかな?」

「まぁそうなるな」

「ならここで一番キレイな場所を用意してください。わたくしが治療いたしますわ。あとその白い髪の女性も来てくださいませ」

 

 

 そういいリムルは誰も寄り付かない街から離れた湖畔を案内した。そこは幻想的な風景が広がり確かにキレイな場所だ。

 フローラは当たりの草を集めて固め、即席のベットを作る。ここに来るまでにかなりの魔素使っていて回復に回せる魔素量が少ないのだ。常にシスタの周りを空気に触れないようにしていて大きい傷が塞がってからは仮死状態にしているのだ。

 つまり常に二重にスキルを発動している。問題はその精度なのだ。

 リムルですら仮死状態にしている氷の方しか気づいていなかったのだ。

 

 

「ビアンカさんそろそろですわ」

「ええ」

「あなたには私たちが倒れた場合少し魔素を分けてほしいのですわ」

「わかりましたわ。それでシスタさまが助かるなら」

 

 

 シスタの体は段々と浮いていく。そしてフローラは氷と空気の膜を一気に解く。そして2人はシスタに向けて全ての魔素をシスタに向けて流し出した。

 そしてシスタの体はそれを拒絶することなく受け始めたのだ。2人とも全ての魔素を流してもう一歩も動けないと言ったところでシスタの体には傷が一つも残っていなかった。

 しかしシスタはそれでも目を覚さなかったのだ。テスタロッサはとりあえず2人に動けるだけの魔素を流しシスタを受け止める。

 息もしているし血も止まっていたが二つの傷は消えていなかった。

 目にある傷と腹に空いた傷だった。テスタロッサはシスタを抱き抱え3人で帰っていく。

 シスタは何も言わない、それどころか目を覚まさないがテスタロッサにとってはさっきの姿を見ていたために今の体には十分安心している自分がいたのだった。

 

 

「シスタさま」

 

 

 テスタロッサはつぶやくがシスタからの反応は何もない。今はただそれでも良かったのだ。ただほんの少し、ほんの少しだけでも反応が欲しいと思ったテスタロッサなのだった。そしてそれは叶うことになる。

 シスタを抱き抱えながら握っていた手がほんの少しだけ反応するように握り返してきたのだ。

 

 

「シスタ……さま。いつまでもお待ちしております。必ずや帰ってきてくださいませ」

 

 

 そうつぶやくテスタロッサの頬には本来流れるはずのない涙が落ちていくのだった。




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37話

 テスタロッサたちは街に帰る。リムルはすでに先に帰っており今ここに来たのはビアンカとフローラ、テスタロッサ、そして目を覚さないシスタだけなのであった。

 

 

「あれ?テスタロッサ目が少し腫れてない?」

「そんなことないわ」

「いや腫れてるぞ」

「カレラまで、そんなことないのよ」

 

 

 実際は見てもわからない程度なのだが何百年も喧嘩をしてきた相手、ウルティマとカレラにはバレていたのだった。

 

 

「そんなことないわ」

「ううん、目腫れてるよ」

「ああ、腫れてるな」

「やかましいわよ」

 

 

 テスタロッサが放った怒気に2人はそれ以上は何も言わなかった。そしてテスタロッサたちにクマラはシスタを家に連れてかえる。後はシスタが目を覚ますのを待つだけなのだった。

 

 その日シスタが帰ってきたことは国中に知らされた。しかしシスタがどういった状況か知ってるのは幹部以上のメンバーしか知らないのだ。しかもその情報統制はかなり厳重にされている。

 そしてリムルは今回シスタを助けた2人を呼んだのだった。

 

 

「それで2人はなんでシスタを助けてくれたんだ?いやそれよりあいつはどこに行ってたんだ?」

「それに関しては私から話すわ。こっちとしても守秘義務というかいえないことはあるわ」

「それでも構わない。話せる範囲で話してくれ」

「そうね。まず一つ目に私たちはあなたの味方じゃない。彼の味方よ。何より彼の下につくわ」

「理由は?」

「彼を気に入ったからとでも言いましょうか。実際のところは少し違うけど大まかにはそんな感じよ」

「二つ目は?」

「正直にいうと彼がどこに行って私たちがどこの人かは言えない。彼の過去に関わるから。もっともさっきいた3人は何かしら彼の過去を知ってると思うけど」

「なるほどね。うちではシスタと俺がテンペストでは1番上ということになってる。ただそんなことに関係なくシスタを助けてくれたことには礼を言いたい。ありがとう。そして行く宛がないならうちで暮らすのも構わない。待遇は保証するよ」

「ならそうさせてもらおうかな。いいでしょフローラ」

「ええ、構いませんわ。わたくしもこの街に少し興味がありますので」

「なら決まりだ。今日はシスタの家にでも行っておいてくれ。それか旅館があるからそっちにするか?」

「いえ、シスタ様の方に泊まらせていただきますわ。何か悪化した場合も対処できますから」

「そっか。なら頼んだ」

 

 

 2人はそこから出ていきシスタの家に向かう。リムルは2人が立ち去ったのを確認してからゲルドのところに向かい空いてる敷地に新しい家を2軒建てるように指示したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シスタ直属の4人は自責の念にかられていた。自分たちがついていても同じことになったであろうがどうしても自分を責めるしかできないのだ。自分たちよりはるかに格上のマヤですらボロボロで帰ってきてシスタですから意識を戻さないのだ。

 

 

「わたしたちがついていれば」

「我が」

「やかましい」

 

 

 カレラの頭をはたいたのは先ほど目を覚ましたマヤだった。

 

 

「貴様!!」

「なに?いつまでもクヨクヨしてんならシスタのとこに行ってきなさい。起きた時に誰もいないなんて寂しいからね。それに今のシスタにはそれがいいから」

「っ!何も言わんからな!」

「勝手にしたらいいよ」

 

 

 マヤは松葉杖をつきながらさっきまでカレラが座っていた椅子に座る。松葉杖なんて今までついたことなかったのどう余計に疲れるのだ。これも今回無理言って速攻で作ってもらったものだ。自分の超速再生が機能しないのだ。それどころか超回復も機能してない。その他のスキルに関しては問題ないのだが回復に関するスキルは一切発動しないのだ。

 だからもう後は自然回復を待つしかなかった。多分だがシスタは直前で完全回復薬(フルポーション)をかけてくれたのだろうがそれもほとんど意味がなかったんだと思う。血は止まっても折れていた骨なんかは治らない。

 

 

「なんでかな〜」

 

 

 自分の服をめくり火傷の跡を見る。これも完全回復薬では回復しなかったものだ。不幸中の幸いは顔にまで火傷が広がってなかったことだ。ただお腹から膝ぐらいまでは火傷の跡が残っている。

 これじゃあとてもシスタに愛してなんて言えないぐらいの傷だ。もちろんシスタがそんなことを気にしないのはわかってるし、自分を責めるだろう。ただわたし自身が許せないのだ。

 もうわたしはシスタの隣にはいられない。わたしは全てを空間にしまい出ていく準備を始めた。夜に誰にも気付かれないように出ていくために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗い海の中を落ちてる気分だ。まるであの時のように。

 俺は昔から出来は悪くなかったと思う。何をするにしてもそれなりにできた自覚もあった。けれど俺が生まれた家はそれだけでは済まされなかった。日本に古くからある有名な家系。それ故に何事もそれなりではなく完璧にしないと許されなかった。

 だからこそ俺は努力もした。けれど本気で考えると頭が焼き切れるように痛くなったのだ。始めは親に相談したりもしたが結局現代の医学では何が原因か突き止めることはできなかったのだ。

 俺はその痛みに耐えることができずに本気で何事も取り組まなくなった。

 そこからの俺は家でもいないものと扱われ、兄であったあいつからはただのストレスの発散の道具として扱われた。

 するとだんだん体は傷ついていく。そうなれば学校でも相手にされなくなっていき頼る人すらいなくなった。あの時に教師も家からの圧力を受けており俺には干渉してこなかった。

 そして誰も信じられなくなって言ったが1人だけ俺に干渉してきた奴がいた。そいつは俺のことを真摯に受け止め全てを聞いてくれた。そのことで救われた気になっていたが全ては兄が仕組んだことだったのだ。

 全てを話してその録音を上手く処理して全てを俺が悪いように改造したのだ。それを流された時点で学校からも家でも居場所は完全になくなり俺はあの事故に巻き込まれた。しかし思い出せたのはここまでなのだ。まだ何かとんでもないものを忘れている気がするが思い出せない。

 事故が起こったあの時ら子どもは泣きそうな顔をしていたが俺は引かれて体の血が抜け冷たくなっていく体を感じるとやっと終われるのかと思ったのを覚えている。

 

 そしてこっちの世界に転生してリムルやヴェルドラと出会い、様々なやつと出会っていくが俺の心はどこか他人に一線引いてしまう。だからこそあの時悪魔を呼ぶことに固執したんだと思う。悪魔がいるなら俺を滅ぼしてくれるかもしれない。ギィやミリムに頼もうとしたが2人ともに何故か気に入られてしまいそんなことを頼めない。しかし時間とともにだんだんと力もついてきて滅ぼせる相手が少なくなってきているのは確かだ。

 竜種に魔王たちぐらいしか知らないのだ。それ以外の人物では殺すということまではどうやっても不可能なのだ。

 暗い海の中に落ちていた気分がだんだんと光を帯びていき目が覚めた。

 

 

「ここ、は?」

「「「「シスタ様!!」」」」

 

 

 4人の声で自分がどこにいるか気がついた。体を起こしてみると体中が痛いし、視界が半分しか見えていない。

 

 

「僕は一体どうやってここに?」

「覚えておられないのですか?ある方たちが連れて帰ってきましたけど」

 

 

 すると部屋の扉が開かれる。そして現れたのは見たことのない二人組だった。

 

 

「あ、目覚めたんだ?」

「ご無事で何よりですわ」

「えっと誰かな?」

 

 

 2人は一瞬固まるが納得したように話し始めた。

 

 

「そっかあの状況だったから覚えてないんだね」

「まぁあの来栖「待て!」どうかしましたか?」

「テスタロッサ、ウルティマ、カレラ、クマラここから出て行ってくれるか?」

 

 

 4人は何も言わずに部屋から出ていく。そして僕は部屋に防音の結界を張ろうとしたが何故かスキルがうまく発動できない。

 

 

「なんだ?体に何か」

《おそらく呪いのようなものです。目と腹に受けた傷から魔素の流れを乱されています。さらにこの傷から様々なものが封印されています》

(例えば?)

《痛覚無効、状態異常耐性、超回復、超速再生、万能感知、さらに魔素感知まで使えませんさらにマスターの体は人間になっております》

(!?そんなこと可能なのか?)

《まだ解除の仕方などは目処がついておりません。ですがすぐに見つけますので》

(頼んだ)

 

「ああ、それよりすまない。スキルが発動できない。防音の結界を張れるか?」

「ええ、できますわ」

 

 

 フローラは一瞬で結界を張る。そしてそれに気づいたシスタが口を開きはじめた。

 

 

「あの時僕を助けてくれたのは2人だね」

「間に合わなかったけどね」

「けどあのとき確かに僕は助けられた」

「それでなんでいまは僕なの?」

「何が?」

「だってあれだけ口の言い合いしててこの態度の変わりようは何?あいつと言い合いしてた時はもっと口が悪かったよ。それなら僕じゃなくて俺じゃない?」

 

 

 

 こいつのいうことはもっともだ。元々俺だったのだがこっちの世界に来てからはやめている。人間にしろ魔物にしろ対等でありたいと思ったからだ。俺という言葉はどうしても偉そうに感じてるのだ。前にも言われたことがあった。シュナから言われたのだった。

 なぜそんなにもわたくしたちと距離を測っているのですか?と

 まさかバレてるとは思いもよらなかったのでなんて返答しようか悩んだがその時は確かテスタに呼ばれてその場を抜けたんだった。

 

 

「距離は大事だろ。それに……いやなんでもない」

「ふーん、そうなのかな?少なくともさっき見た感じはそんな感じして欲しくなさそうだったけど。あの3人」

「わかってるつもりだ」

「ビアンカさんそこまでにしておきましょう。それよりもわたくしたちの聞きたいことが聞けておりませんわ」

「そうだね。じゃあ単刀直入に聞くけどあなたはまだ折れてない?立ち向かう勇気は残ってる?」

「分からんとしか言えない。今の僕じゃあいつに勝てないことはわかった。なら強くなるしかないだろ。一段一段じゃ無理だ。何個も飛ばして強くなるよ」

「なるほどね。それならいいわよね、フローラ?」

「ええわたくしは構いませんわ」

「なら決まりだね」

「何がだよ」

「私たち2人あなたの部下になるわ。よろしくね、シスタ様」

「ええよろしくお願いしますわシスタ様」

「シスタでいいよ」

 

 

 2人は話したいことを話したのか出ていく。テスタロッサたちは入れ替わるように入ってきた。しかしそこにはいつもうるさい奴がいない。

 

 

「お、おいマヤはどうした?」

「家で休んでいるはすですが?」

「そうか。今から行く」

「待ってくれ我が君。そんな体では歩くのすら厳しいのではないか?」

 

 

 シスタはそれを無視して立とうとするが立てずに思いっきりこけた。しかし腕をつきながら立ち上がろうとする。

 自分が一番わかっているはずだけど我が君はそれを止めようとしない。

 

 

「なら我が支える。あの女のところに行こう我が君」

「すまないなカレラ」

「むーボクも!」

 

 

 2人を肩を貸してもらいなんとか歩き出すシスタ。それでも足も腕もかなりきているようでほとんど引きずられているような感じなのだ。それでも2人は掴んでいるシスタの手を決して離そうとしない。

 本来悪魔は自分より強い相手にしか従わない。しかしここにいる3人それにクマラは知っているのだ。シスタが本当に望んでいることを。そしてそれを叶えるのは自分たちだと思っているのだ。

 

 外に出るとそこはすでに暗くなりはじめていて人気も少なくなってきている。そのせいもありなかなか僕の存在はバレていない。魔素を消しているからだろうと思っていたがここまでバレないのは助かる。

 そしてマヤの家について中に入るが人の気配はしない。進んでいきリビングに行くと一枚の手紙があった。

 

 

『ごめんシスタ。多分これを読んでるのはシスタだと思ってる。あたしは今回のことで自分の力の無さを痛感した。シスタを傷つけてしまいこんな体にしてしまった。だからもうシスタの隣にいたいなんて言わない。けどこれだけ伝えておくね。今までありがとう』

 

 

 手紙を見終わったシスタは全員に命令を出す。

 

 

「今すぐマヤを探せ!連れてこなくてもいい。見つけたらそのまま後を追ってくれ。思念伝達で他の奴に伝えてくれ」

「「「「は!」」」」

 

 

 4人はすぐに飛び出す。それはシスタからの命令。それは4人にとって至福でもあり、叶えたくない願いであったのだ。自分たちが主人にとっての一番でありたい。その願いは隠せないが今の主人にとっては何よりも大事にするものだと確信していたから4人はそれぞれの部下を使いマヤを探し出す。

 そしてそれはすぐに見つかった。テンペストから遥か彼方魔王ギィ=クリムゾンが住む白氷宮なのだ。

 

 

(シスタ様今野真矢を見つけましたわ。どういたしますか?)

(テスタ、マヤを止めることはできるか?できるならそのまま止めて欲しい。無理ならマヤを付けてくれ)

(わかりましたわ)

 

 

 はぁ、自分自身が嫌になる。自身は原初と呼ばれるまでの悪魔であり、この世界において最強の一角を担うものだと思っていた。しかし現世に顕現してからはその認識を変えられた。魔王は愚か人間である今野真矢にまで負けるなんて思ってもみなかったのだ。

 そして今野真矢の跡をつけると様子がおかしい。あの女は究極能力持ちで寒さにもそれなりに抵抗があるはずなのに全くそれが発動していないような感じなのだ。

 

 

「寒い、流石竜種ヴェルザードがいる土地」

「!!」

 

 

 その言葉にテスタロッサの足が止まる。竜種ヴェルザード、この世界のみならず悪魔たちが住まう世界にも名は轟いている。もちろんテスタロッサも知っている。

 そんな人物のところに向かうなんていったい何を考えているのか?

 

 

「やぁテスタ。待たせた」

「シスタ様。今あの女からヴェルザードの名が」

「なるほどそうきたか」

 

 

 シスタにとってそれは一足跳びの一つの手段であり、躊躇う一つの方法であった。

 

 

「テスタはついてきてくれ。ウルティマ、カレラは先に帰って街の防衛を頼む」

「「「は!」」」

 

 

 テスタに肩を借りて歩き出す。そして白氷宮に着く前にマヤの目の前に来ることができたのだった。




UAが10万超えたらまた何か番外編やろうかな〜なんて思ったりしてます
何か意見があったらお願いします
このキャラを出して欲しいなのでも構いませんし、こんなイベントをして欲しいとかでもいいです
両方でも構いません




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38話

どざさん
s777さん評価ありがとうございます


 シスタが自由行動している間のリムルはというと書類の山に埋もれていた。実際この町ではシスタかリムルの許可が必要なものが多いのだ。それでシスタの方に回していても処理されないから全部リムルの方にまわるのだ。些細なことでも書類で回すようにしているからリムルの方は必然的に多くなる。

 

 

「あのやろう、帰ってきたら覚えとけよー」

 

 

 その言葉でガラガラと資料が落ちていき、また詰み直して目の前にある資料に向かうリムルなのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて家出娘よ。何か言い訳は?」

「何もないよ。手紙に書いた通り」

「なら今すぐ引き返せ」

「嫌だね。力尽くでも連れて帰るんだね」

「ならそうさせてもらおう」

 

 

 シスタが構えるとマヤも刀を抜く。テスタに押し返してなんとか体を支えるシスタ。しかしその足は立っているのでやっとという状況だ。

 

 

「邪魔だよシスタ」

「ああ、知ってる」

 

 

 マヤの刀を避けるでもなく、防ぐでもなく体に受けた。体が真っ二つに切られそうになったがそこでマヤが刀を止める。

 

 

「なんで防がないの?なんで反撃しないの?」

「ぼ……くは、マヤ……を切る……資格はない……から」

「シスタ様!!今すぐ回復を」

「マヤ……がそれ……望む……なら。のぞ……まない……ならここで……果てるのも……仕方ない。あいつ……は僕の……運……めいについて……きて……くれたから」

 

 

 テスタロッサはシスタが何を言ってるのか理解する。たしかにここにウルティマやカレラがいたら自身が死んでも仇を取ろうとしただろう。テスタロッサはあの2人より冷静であることは自覚していたのだ。

 だからこそ怒りは腹の中に溜めている。ここでこいつがどんな答えをするのか。

 

 

「なんで反撃しないの?あたしはシスタになら」

「は……は、ワラ……わせるな。ぼくが……おまえをきれるとでも」

「テスタロッサ!今すぐシスタの回復を」

 

 

 マヤはここに来るにあたって回復薬の一つも持ってきていない。テンペストからもらったものは全て全て置いてきているのだ。

 

 

「シスタ様これを」

 

 

 テスタロッサは口を持ち上げて完全回復薬を飲ませる。すると受けた傷が治っていく。これで目や腹の傷も治るのかと思ったテスタロッサだがそう上手くは行かなかった。目のところの傷は全く回復する様子がない。

 

 

「悪いテスタ」

「ごめんシスタ」

「謝ることなんてないよ。それにマヤにも修行に付き合ってもらおうと思ってたし。いくところは一緒だから」

「マジ?」

「マジで」

 

 

 2人は顔を見合って笑う。そしてシスタは足が回復していることに気づくのだ。なぜ回復したのかはわからないが自分で立てるようになったことでだいぶ楽にはなった。

 そこから宙に浮き白氷宮に向かう。念のためヴェルザードに連絡しておく。

 前の魔王の宴(ワルプルギス)の時に軽くだが連絡を取れるようにしておいた。

 

 

『今からそっちに向かうよ』

『構わないけどどうしたの?』

『まぁまぁ、けど戦闘の準備しといてくれ。レイン、ミザリー、ギィ、それとヴェルザードも頼む』

『あら?それは戦争の知らせかしら?』

『一言もそんなことを言ってねぇ!じゃあ頼んだ』

 

 

 そこで通信を切る。そしていよいよ見えてきたのだ。氷の大陸。魔王ギィ、竜種ヴェルザードがいる白氷宮が。

 降りるとそこには言ったメンバーが揃っていた。

 

 

「さてシスタよ。これは一体どういうことだ?まさか俺と戦争する気か?」

「まさかヴェルザード本気でせんそうっていったのか?」

「ええ、違ったかしら?」

「戦争じゃなくて戦闘。俺たちに修行つけて欲しいんだよ」

「なに?お前たちにだと?」

「ああ、そういう意味だ」

 

 

 ギィは心の中で少し幻滅した。シスタというやつに対してリムルより期待していたのだ。それは一種の期待でもあったのだ。シスタに関してはレオンと同等かそれ以上気にいっていたのだ。それをこんなふうに幻滅させないで欲しかったのだ。

 

 

「仕方ない。ヴェルザード付き合ってやれ。ミザリー、レインお前たちもだ」

「ふふ、仕方ないわね。わたしの相手は誰かしら?」

「わたしよ」

「あらあなたなの。てっきりシスタかと。それがそこの原初の白(ブラン)か」

「ヴェルザード気持ちはわかるが前にも言ったけどその呼び名はやめろ。テスタロッサだ」

「それは失礼。テスタロッサ、あなたがわたしの相手をしてくれると思っていたけど。今野真矢、あなたにはシスタを傷つけたことがあるから容赦はしないよ」

「っ!望むところです」

 

 

 2人の間に恐ろしいほどの気合や魔素がぶつかり合う。ギィはやれやれという感じで見守っていた。テスタロッサ、レイン、ミザリーもすでに移動してどこかに消えた。ヴェルザードとマヤも移動を始める。

 そしてギィはつまらなそうに仁王立ちする。しかしそんなことは一瞬で吹き飛ばされた。シスタがある刀を自身で作ったのだ。それを見た途端にギィの警戒レベルが一気に跳ね上がる。

 

 

「ほう、そんなことをできたのか」

「??これがなにか?魔素を固めて作った今だけの刀だけど」

 

 

 ギィは目の前にある刀がなにかわからないが自身の神経全てが訴える。これは危険だと。だからこそ自身の持つ刀世界(ワルド)を構える。

 世界最強の刀である世界(ワルド)

 2人が交錯するまで世界の時は停止したかのように止まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ、わたくしの相手はあなたたちなのかしら?」

「やれやれギィ様の気まぐれにも困りましたね」

「レイン!口に気をつけなさい」

「チィうるさいやつですよ」

「何かいったかしら?」

 

 

 レインとミザリーが言い合いしているのを見てテスタロッサは柄にもなく感慨深くなってしまう。この2人は本当にいい関係なのだろうと。

 しかし2人がだんだんと魔素を高めていく。それを呼応するかのようにテスタロッサも魔素を高める。

 始まりはミザリーの核撃魔法で始まったがそこからは一方的だった。レインもミストを使って翻弄するがテスタロッサは何事もないと言った感じで全てを受け止める。そして自身も鞭で反撃する。このまま続けばテスタロッサの勝ちだが2人とも既に諦めた。

 なぜなら2人は核撃魔法などを使っているがテスタロッサに限っては核撃魔法を一度も使っていないのだ。

 核撃魔法の処理も鞭で弾くか、避けるかのどちらかなのだ。鞭に核撃魔法と同等の魔素を込めて弾く。言葉では簡単だが戦闘中にそれだけ細かい魔素操作をミザリーもレインもできるかわからない。つまり目の前にいる悪魔は自分たちより遥かに強いと分かったのだ。

 だからそこで攻撃の手を止めて降参した。前までの自分たちなら死ぬまで攻撃していただろうが今は違う。仮にも魔王ギィクリムゾンに仕えるものとして死ぬわけにはいかなかったのだ。

 テスタロッサもそれをわかっているのかそれ以上は何もせずに元いた場所に向かって転移をしようとした。が、急に近くまで転移できなくなったのだ。できる場所を探すが元の場所から少し離れている。シスタに何かあったのかとすぐに転移して移動するテスタロッサなのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、あなたと戦う気は無いのだけれど」

「あなたになくてもあたしにはあるのよ」

「そういうのはなんていうか知ってるかしら?無謀な挑戦よ。勝てもしないのはわかっているでしょう。シスタならまだしもあなたじゃ私に傷一つつけられないわ」

 

 

 マヤは頭に血が昇るが一瞬で冷静になる。ヴェルザードは何も間違ったことは言っていないのだ。竜種一体、一体が化け物なのだ。その鱗はあらゆる攻撃を弾き、その爪はあらゆる鎧をも裂くという。実際あたしの持つ攻撃で傷つけられないのは分かっている。けれどそこで終わるわけにはいかないのだ。

 

 

 

「いくよ。あたしの最強の一撃」

「ええ、勝手にしなさい」

天魔の撃墜(メフィストストライク)!」

 

 

 その巨大な一撃はヴェルザードの片手で止められた。

 

 

「こんなものなのね。つまらないわ。シスタの大事な人と聞いていたから殺すのはやめておくつもりだったのだけれどつまらない。シスタの隣にいる資格はないわね」

 

 

 ヴェルザードの一撃をギリギリで躱すマヤ。しかし本当にギリギリだったので頬を切る。すぐに反撃に移るが全て防がれる。代わりに飛んでくるヴェルザードの拳を間一発で躱す。所々当たる。

 

 

「なんであなたはそんなにも怯えてるのかしら?」

「なに……を?」

「あら自覚はないのかしら?ならそれまでね」

 

 

 ヴェルザードは呆れる。自分のことを何も見えていないのだ。周りから見ると怯えているのだ。常に何かに。いや自分に。

 

 

「シスタはわたしのお気に入りなの。あなたを殺してわたしのものにするわ」

「っ!シスタはあたし……の。あたしの何?なんであたしはシスタを」

「ふぅ、それがあなたの殻なのね。そんなものいらないわ。全て捨てなさい」

 

 

 ヴェルザードが言ったのは紛れもない事実なのだ。シスタが自身に抱えているもの同様マヤも抱えているものがあったのだ。しかしそれはシスタのものに比べれば大したことはないと自身で割り切って話さなかったのだ。

 ヴェルザードにはそれがわかった。自分もギィに対しての思いを隠していることがあるからだ。

 

 

「うるさい!うるさーい」

「殻をあと少しで」

《個体名今野真矢が勇者の卵を孵化。自身の壁を乗り越えました》

 

 

 世界の言葉が響く。それはヴェルザードにも聞こえており殻を破ったのだと確信した。

 しかしマヤも気付いていないが破ったのはヴェルザードが言っていた殻ではないのだ。破ったのはさらにやばい殻。

 

 

「さぁはじめましょうか」

「ふふ、少しはマシになったのかしら?」

 

 

 2人は切り結ぶ。しかし勝負はあっけなく終わったのだ。ヴェルザードがほんの一瞬時を止めたからだ。能力に目覚めたばかりで殻を破ったばかりのマヤには停止世界で動けなかったのだ。その間に一撃を入れた。しかしヴェルザードに停止世界まで使わせないと勝てないと思わせたのもまた事実なのだ。

 それほどまでに殻を別の意味で破ったマヤの攻撃は凄まじかったのだ。

 ヴェルザードはマヤを抱き回復しながら元の場所に帰っていくのだった。




今回で書ききるつもりだったんですが無理でした
次でなんとか終わらせます


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39話

EーSTさん
ヌヌヌ学院さん評価ありがとうございます


 ヴェルザードやテスタロッサたちは元の場所に戻る。もっとも立っているのは4人で1人は腕の中だが。

 そしてその4人は戦慄する。たとえヴェルザードであってもその間に入ることはできない。入った途端2人の剣気にやられるからだ。死ぬことはなくても致命傷は負わされる。それがわかっているからこそそこには踏み込めないのだ。

 

 

「いくぞ!」

「あぁ、来い」

 

 

 2人は一瞬で交錯する。その瞬間を見れたのはヴェルザード1人だろう。テスタロッサたち悪魔は呆然としていて結果を見守っている。

 2人の位置は入れ替わり一瞬の後結果が目に見える。

 

 

「クソ、僕の負けか」

 

 

 その言葉と同時に背中から大量の血を流して前のめりに倒れ込むシスタ。テスタロッサが慌てて駆け寄る。傷が相当深い。これはすぐに防がないと命に関わるがさっき完全回復薬は使い切ったのだ。

 こんなにもシスタが怪我をすると思っていなかったテスタロッサ。だから最低限しか持ってきていなかったのだ。

 

 

「なにが負けだ」

「ふふ、ギィも随分やられたわね」

 

 

 ヴェルザードの言葉と同時に片腕が飛び、もう片方は半分以上弾け飛んでいる。

 ギィはすぐにシスタに駆け寄る。駆け寄る瞬間に腕は回復したがシスタが人間になっていることに驚いたのだ。そしてその構造はかなりややこしいものでこの姿では少し無理がある。

 すぐに氷で血を止め女性型に変身する。そして演算にて体の組織一つ一つを解析し回復を施していく。途中究極能力も解析しようと手を伸ばしたギィだがそこは完全に防御されていて侵入できなかった。

 それ以上はなにも調べずに治していく。少しすると完全に傷は癒え目を覚ますシスタ。

 

 

「う、ん?そっか僕は負けたんだったな」

「よく言うぜ。魔王なりたてのやつにあそこまで傷つけられたら俺様の負けみたいなもんだ」

 

 

 声の方向に向くシスタ。するとそれが顔に出たのだ。

 

 

「ギ、ギィか?」

「俺様以外に誰がいる?」

「いや、だってその姿」

「あぁこれか」

 

 

 ギィは姿を男に変える。さっきの姿に目に悪い。かなり美人なのだ。テスタロッタたちを見ていなければ一目惚れしていたところだ。

 

 

「それでお前いつから人間になったんだ」

「気付いたか。悪いがこれは言えない」

「そうかそれなら構わんが」

「うふふ、ギィも変わったわね」

「そんなことはない。それとシスタあの刀は二度と作るな。寿命を縮めるぞ。今人間になっているお前はそこまで寿命があるわけじゃないだろう」

「バレてたか」

 

 

 その言葉にテスタロッサは肩を振るわせる。自分たち悪魔には永遠に近い寿命がある。主人であるシスタもそれに近いかそれよりも長い間あったはずなのだ。それが今聞いたのは寿命がないということ。

 

 

「シスタ様その寿命の長さは一体どれくらいなのですか?」

「そうだなぁさっきあれ使ったし後15年ぐらいかな」

「!!??シスタ様それは本当ですか?」

 

 

 テスタロッサがシスタに詰め寄る。15年なのだ。15年でシスタと別れなければならない。そんなことはとても認められないのだ。

 

 

「なにか方法は?」

「分からん。とりあえず今も解析はしてるけど全く進展がない」

「そんな……」

「別に今すぐってわけじゃないから。まだ先だから」

 

 

 テスタロッサはそれ以上なにも言わなかった。シスタが決めたことなのだ。けれど認められないもまた事実。ここで言っても仕方ないのでテンペストに帰ってからまた別の方法を考えるのだ。

 そして話が終わった途端にマヤが目を覚ましたのだ。

 

「ギィ助かったよ。それで僕はなにをすればいい?」

「それならヴェルザードを街に連れて行ってやってくれ」

「??ヴェルザードを?」

「あぁ。と言ってもお前たちの街じゃないがな。どこか人間の国だ」

「はいはい。わかったよ。また後で迎えにくる」

「それで構わん」

 

 

 シスタは転移魔法を使う。さっきマヤの攻撃を受けてから少しだが使える魔法が増えたのだ。他の2人もそれを見て転移魔法を使ってテンペストに帰る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 テンペストに帰ると誰よりも早くリムルがやってきた。シスタの首を掴みすぐに事務室に連れていく。

 

 

「お、おいリムル。痛い痛い」

「お前がいない間大変だったんだからな!その分今から働いてもらうから」

「鬼だ。鬼がいる」

 

 

 そんな会話を見ながらテスタロッサは別のところに急ぐ。魔力感知に似てすぐに見つけたが距離がある。2人とも別々のところにいるのだ。

 

 

 

「ウルティマ少しついてきなさい」

「なにテスタロッサ。いきなり偉そうなんだけど」

「早くしなさい!!」

 

 

 その強い言葉と裏腹に焦りがあるのを感じたウルティマはそれ以上はなにも言わずにテスタロッサの後ろをついていく。次についたのはカレラのところだった。

 

 

「カレラ少しついてきなさい」

「なに?我は今忙しいのだぞ」

「早く!」

 

 

 カレラもウルティマ同様それ以上はなにも言えなかったのだ。それほどまでに緊迫したテスタロッサを見るのは初めてでなにも言えない。

 そして3人は前にシスタから教えてもらったことのあるジュラの森のある場所に来ていたのだ。

 この場所を知ってるのはシスタとその直属の配下のみ。ここに貼られている結界は特定のものしか入れないようになっている。テスタロッサたちにも詳しくは教えられていない。

 中に入りそれぞれがテーブルに三角になるように座る。

 テスタロッサが紅茶を入れカレラはコーヒーを、ウルティマはここにしかないジュースを入れる。

 

 

「それでテスタロッサはいきなりなんなのさ?ボクたちをここに連れてくるくらいなんだから大変なことなんだと思ってるけど」

「ええ、そのことに関しては話しますわ。まずシスタ様は人間になられたと言うことは知ってますわね?」

 

 

 テスタロッサの質問に対して2人はうなずく。けれど次の言葉を聞いた瞬間恐怖に見舞われたのだ。

 

 

「ならシスタ様が生きられるのは後15年が限界だということは?」

「は?」

「どういうこと?」

 

 

 テスタロッサは全てを説明する。それでも自分が知ってる範囲でのみだが。しかしそれを聞いた2人はなにも言えなくなる。悠久を生きる悪魔だからこそその忠誠は失うこともある。しかしその忠誠を一生誓える相手に出会えたのにたった15年で死ぬなんてとても受け入れられなかったのだ。

 

 

「事実よ。それで」

「ふざけるな!貴様それを受け入れてるのか」

「カレラ!落ち着いて。万が一喧嘩でもしたらシスタ様が」

「クッ!」

 

 

 テスタロッサに掴みかかっていた手は自然と離れた。カレラもシスタから怒られるのは嫌なのだ。ここに来た当初に喧嘩ばかりしていた名残でシスタの前で喧嘩したときに誓ったのだ。言い合いならともかく喧嘩を二度としないと。

 

 

「そこでなのだけれど一度冥界に帰れないかしら?」

「なに?」

「どういうこと?」

「冥界にいる悪魔たちなら何か知ってるかもしれない」

「けどテスタそれって無理じゃない?こっちに悪魔公は全員いるんだし」

「ええその通りよウル。けれど召喚された悪魔たちなら何か知ってるかもしれない。それを聞きに行くのよ」

「なるほど、貴様のやりたいことはわかった。ただここから全員が抜けるとなるとシスタ様に疑われるぞ」

「ええ、だから1人だけよ。誰が行くのかしら?」

 

 

 誰も名乗り出ない。シスタのそばを離れたくないのだ。ましてやそんな雲を掴むような話を信じられるわけがないのだ。

 

 

「じゃあボクがいくよ」

「ウルティマ!?」

「ウル?」

「人間から情報を得た悪魔ならボクの方がいいと思うから」

 

 

 2人は納得した。情報を操ると言う面では3人の中でもウルティマは群を抜いている。ましてや冥界にいる奴らにウルティマが負けるとは思えないのだ。

 

 

「それじゃあシスタ様に一声かけてからいくよ」

 

 

 2人とも納得してテンペストに転移魔法で帰る。そしてシスタの下に急いで向かう。

 

 

「シスタ様!」

「ん?ってかどうしたそんなに急いで」

「ボクにしばらく休暇くれない?」

「まぁ構わないけど、いきなりどうした?」

「冥界にいる奴らで見どころあるのを連れてこようかと」

「そっか。それはウルティマが決めたことなんだな?」

「う、うん。そうだよ」

「ならいってこい。気をつけてな」

「うん、行ってきます」

 

 

 そしてウルティマはシスタに段々と近づきその唇でシスタの口を塞ぐ。

 いきなりこの事でシスタはなにもできない。しかこの場には2人だけではないのだ。テスタロッサたちがいた。それを見ていた2人は目を見開きなにも言わなかった。

 

 

「じゃあねシスタ様!」

「あ、ああ」

 

 

 なにも言わなかったがテスタロッサたちは違う。

 飛んでいた意識が戻ってきた2人はそのことに激情して身体中から魔素が溢れ出したのだ。

 それにいち早く気づいたシスタは暴食之王(ベルゼビュート)でなんとか溢れ出した魔素をくらい尽くす。

 その後にシスタからの説教を受けたのはいうまでもなかった。




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40話

すいません
ずいぶん遅くなってしまいました
まおりゅうが配信されてそっちに行っていましたがまたぼちぼち投稿していきたいと思います



投稿してない間にも評価をくださった方本当にありがとうございます


 ウルティマが出て行ってからシスタはふと思い出したのだ。ヴェルザードと出かけるのを忘れていたのだ。そう思った瞬間にそれはきたのだ。

 

 

(シスタまだかしら?)

(悪い悪い。今から行くよ)

 

 

 シスタは速攻で転移魔法を使う。聖霊魔法を受けてから何個か使える魔法の種類が増えたがそれ以降は変わらないらしい。これはルウェルに聞いたものだ。シスタ自身これ以上は増えないだろうと思っていたから納得した。

 おそらくだが正しい順番に受けて回復していくのだと思っている。

 だからこそギィの剣戟を受けても回復しなかったのだ。

 ギィは剣にも魔素をこめている。もちろんあの世界はなしでも硬いのだが魔素を込めるとそれ以上に硬くなる。

 なんて考え事をしてると目の前にヴェルザードが飛んできた。ただ前と違うのはドラゴンの状態ではなく人間の姿でこっちに向かってきていたのだ。

 

 

「それでどこに行く?」

「とりあえず東の帝国かしら」

「ちょっ!いや待て待て。確か僕が得た情報だと東の帝国とギィは確か」

「ええ、けど今の私には騎士(ナイト)がいるもの」

「いやヴェルザードの方が強いだろ」

「何か言ったかしら?」

「いえ何も!」

 

 

 シスタはそれ以上はいえなかった。まぁ実際ヴェルザードの方が強いのだがまぁ僕も多分それなりにできるはずだからよっぽどの奴が来ない限り負けないと思う。

 そうして東の帝国に着く。少し歩きながら散策している時にさっきの僕の予想は軽く覆されることになったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東の帝国それはこの世界において最大級の街であり軍事国家なのだ。

 それを治めているのは皇帝ルドラ。ここまでなら調べたらすぐにわかる。ただヴェルグリンドの存在や近衛兵士の存在は調べられていない。これはテスタロッサ達が調べてくれたおかげだ。

 

 

「ここでなにを?」

「そうね。まずはお茶でもしましょうか。その間にまってる人も来るでしょうから」

 

 

 そういうヴェルザードに従いシスタはカフェに入る。ここに来る前に前にファルムスから得た星金貨を持ってきているためにお金はいくらでも構わないのだ。

 席につきコーヒーとケーキを頼む。東の帝国にもあるとは想定外だったが頼むことにした。

 ヴェルザードは紅茶とチョコレートケーキを頼む。

 

 

「それで待ち人って?」

「そろそろ来るわよ」

 

 

 そういうヴェルザードに呼応するように店の扉が開かれる。そこにはチャイナ服で扇子を構えた人物が立っていた。いや人物とは言わないだろうか。ただその見た目に店の男だけならず女までも目を奪われていた。

 

 

「あらこんなところで何をしているかしら?姉さん」

「待ってたわよヴェルグリンド。いえ、ここではグリンドの方がいいかしら?」

「!!それよりなんのようなの?シスタまで連れて」

「あなた言っていたものは持ってきたのかしら?」

「ええ、持ってきたわよ。それより」

「そう、なら出してちょうだい」

 

 

 ヴェルザードの言葉にヴェルグリンドは空間から袋を出す。それに応じてヴェルザードも袋を出す。そしてその袋をシスタの前に押し出す。

 

 

「これをあげるわ。本当はあげる人物を探していたのだけれど」

「全く姉さんにも困ったものね。まぁ困っていたのは事実だしシスタなら構わないわ」

「??なにこれ」

 

 

 シスタは袋の中身を見る。その中身は以前シスタが貰ったことがあるウロコ、そして爪なんかなのだ。それを見たシスタは驚く。あの時も思ったが竜種には基本的に攻撃は効かない。しかし自身で剥がした鱗や爪なんかは多少なり痛みがあるようなのだ。

 

 

「こんなに、というかこれなんで僕に?」

「ふふ、シスタ見るたびにいつも違う刀使ってるもの」

「全く姉さんの提案でシスタだから聞いたのよ」

「これで新しい刀を作ってちょうだい。ただ一つだけ条件。これは鍛治職人に打たせるんじゃなくてシスタ自身が打つこと。それが条件よ」

「??それには何か理由があるのか」

「ええ、私たちの鱗や爪は基本的に神話級(ゴッズ)よ。それで打つのも構わないのだけれどシスタ自身の魔素を込めることによって本当の意味であなただけの武器になるわ」

「なるほどそういうことか。ただこんなものをもらえるほど僕は何もしてないぞ」

「構わないわ。シスタがいつかわたしや姉さんを助けてくれる気がするもの」

 

 

 その言葉にシスタは意味不明というふうに首を傾げる。この最強姉妹に何ができるのかと。

 

 

「まぁもらうよ。ありがとう。お礼というわけじゃないけど全部僕が持たせてもらうよ」

「そうならお願いするわね」

「ならご随伴に預かろうかしら」

 

 

 そこから二人は端から端のケーキを頼む。それを見たシスタも苦笑いなのだ。結局二人は全部食べてから店を出ることになった。

 僕もスライムの時とは違い腹に限界があるのだ。そこまで食べることはできない。

 2つでやめて後はコーヒーを楽しむだけにして店を出たのだった。

 

 そこから二人に付き合い服やらアクセサリーを買うことになった。二人ともの思い人はなかなか振り向いてくれないらしい。

 それどころか何も買ってくれないとか。まぁギィはわからなくもない。あの北の最果ての地で暮らしていて買うものなのないのだ。手作りなんかするタイプには見えないし、ギィが街に来たとなれば街は阿鼻叫喚なのだ。

 もっともヴェルグリンドの思い人の方はよく知らないためになんともいえない。

 

 

「今日はありがとうシスタ。また会いましょう」

「ええまたね。わたしもそろそろ帰るわ」

「ああまたな」

 

 

 二人とも飛び立つ寸前にシスタに近づきほっぺたにキスして飛び立ったのだ。それを見ていた周りからは黄色い声や妬みが上がったのだがそれ以上に白い顔を赤くするほど恥ずかしかったのがシスタでそこから逃げるように飛んだのだった。






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41話

更新が遅れてすいません
最近何にもやる気が出なくて



評価をくださった方ありがとうございます


 テンペストに帰ってきたシスタは一目散に鍛冶屋に向かう。中の内装を確認してそれを使うためだ。

 あの2人は僕にしか作ってはいけないと言った。それはつまり鍛治も自分でやることなのだが内装すら知らない。

 しかし内装をコピーしてしてしまえば後はルウェルがサポートしてくれる。

 

 

《お任せください》

 

 

 頼もしい限りだ。最初大急ぎで入っていった為に鍛治職人を驚いていたが何も言葉を発せずただただその行為を見ていた。

 シスタとしてもそちらの方が助かったのだ。何かと言われることが多い立場なのも理解しているが言われたくない場面というものもある。これからやることは誰にも知られるわけにはいかなかった為にジュラの森でも人里離れて誰も来ないところに構えた。

 そしてシスタは何重にも結界を張り誰にも入れないようにした。それはテスタロッサ達のことも含んでいる。

 そうしてシスタは1人鍛治を始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シスタの気配がして鍛治屋にやってきたリムルだが一足遅かったみたいだ。リムルはあたりを見渡しシスタがいないことを確認するとすぐに出ていく。

 鍛治職人達は一度手を止めるがまたすぐに作業にかかる。

 リムルはシスタを探していたのだ。あいつが消えたせいで仕事は全てリムルに回ってくる。テスタロッサ達が処理していたが最後はやはりシスタがリムルに回るのがこの街なのだ。

 開国祭の後シスタにも仕事が行く予定だったのだがなかなか処理されないからやはりリムルの方に回ってしまうのだった。

 

 

「リムル様すごい顔してますよ?」

「いや、シスタに一言文句を言ってやろうと思ってな」

「クァ────ハハハ、リムルよシスタを責めるでないわ」

「??ヴェルドラお前なんか知ってるのか?」

 

 

 ヴェルドラはシスタを庇う。それを疑うリムル。それは当然なのだ。なぜヴェルドラがシスタを庇うのか意味不明なのだ。

 しかしヴェルドラにとっては本当にシスタに助かっているのだ。

 ヴェルドラが庇うのは姉に合わなくて済んだからだ。ヴェルドラは気づいていたのだ。姉であるヴェルザードが近づいてきていたことに。しかし聖典を読んでいた為に気づいた時にはすでに遅かった。逃げ出したかったのだが今から逃げ出しても追いかけられるのがオチなのだ。

 そこにシスタが飛び出したのを感知してその流れを見ていた。

 ヴェルザードはシスタにあったところで別のところに向かったから安心したヴェルドラなのであった。そういう理由があるからヴェルドラとしてもシスタを責める気にはならないのだ。

 

 

「はぁ〜〜しょうがない。ディアブロ、シスタを探してこい」

「承知しました」

「お待ちくださいリムル様。その役目私に」

 

 

 そう言いでたのはテスタロッサだ。ディアブロ不機嫌なる。シスタ様のこととはいえリムル様からの頼みを横取りしようとしているのだ。

 それに対して不機嫌になるのは当然のこと。それをわかってるテスタロッサも引き下がろうとはしない。

 シスタのことはテスタロッサ自身気になっているのだ。最近のシスタは自暴自棄になっている部分がある。それを止めたいと思っていたのだ。しかしそれももう1人に止められる。

 

 

「待って欲しい!その役目我にやらせてくれ」

「カレラ」

「確かカレラだったな」

「その通りだ。その役目我にやらせて欲しい」

 

 

 カレラの物言いにディアブロの魔素が溢れ出す。しかしリムルはそれを手で制する。カレラのことはよく知らないリムルだがカレラのように馴れ馴れしい言葉遣いもいいのだ。ディアブロ達や街の人達の口調を嫌いではないがカレラ様な口調も気に入っているのだ。

 

 

「ならこうしよう。3人で探してこい。そして一番になったものには褒美を渡そう。テスタロッサ、カレラにはシスタを1週間好きにしていいようにする。それは俺から話す」

「「!!!」」

「かしこまりました。お任せください」

 

 

 テスタロッサ、カレラは張り切る。それぞれの思惑があるだろうがシスタを1週間好きにしていいということはかなりの褒美なのだ。

 それとは別の方向でディアブロも張り切っていたのだ。リムルからの命令。そして褒美とくればディアブロが張り切るのも当然なのだ。

 3人はその場で転移をしてすぐにシスタの捜索にかかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディアブロはそこまでシスタと関わりがあるわけではない。自身にとっての使える主人はリムルでありシスタではないからだ。しかしリムルからの褒美ということもあり魔力感知を最大にして探し始める。

 しかしどこにも反応がないのだ。どこを探してもわからない為に転移の繰り返しでディアブロは探し出したのだった。

 

 

 テスタロッサはディアブロとは別でなんとなくだが場所はわかっているのだ。

 それとなく森に入って行く。主人であるシスタは隠れる時は大体森の中の人気のないところに行くのだ。そしてこれはシスタ自身も忘れていたことだがテスタロッサたち悪魔との魂の回廊を切るのを忘れていたのだ。

 そしてテスタロッサやカレラは自身とシスタにその繋がりがあるのを知らない。

 しかし本能というのか感覚というのか2人がたどり着いた場所は同じなのだ。実際は何日もかかっているのだが。

 

 

「テスタロッサ」

「あらカレラもここに来たのかしら?」

「ああ、我が君を探しているときにな」 

 

 

 2人ともなんの変哲もない場所に辿り着く。しかしこの場の魔素の流れがおかしいことに気がつき核撃魔法を放つが全てその場に消える。

 弾くでも燃えるでもなく消えたのだ。

 2人はここにシスタがいることを確信して核撃魔法を連発するが全て無駄に終わる。そして無駄に終わったことにより一つの事実を確認する。これは壊せないということ。

 ならばどうするかと悩んだがそれは必要なかった。

 中からシスタが出てきたのだ。そしてそのタイミングで

 

 

「シ・ス・タ様ー」

 

 

 空間を割くように現れたのはウルティマだった。そしてそのままシスタに抱きつく。

 ウルティマはシスタに数日とはいえ会えてなかったから寂しかったのだ。

 

 

「「ウルティマ!?」」

「帰ってきてたのか。おかえり」

「うんただいまシスタ様。それとごめんなさい」

「何がだ?」

「探せなかった。シスタ様を元に戻す方法」

「なんだ。そんなことか。気にすんな。僕が悪いんだからな。ありがとウルティマ」

「うん。けど目を治す方法ならあったよ」

「え?」

「こうするの」

 

 

 シスタの目の傷にウルティマは目の位置を合わせる。そしてその位置でウルティマの目に手を当ててその後にシスタの位置に合わせる。

 

 

「シスタ様目を開けて」

「え?」

 

 

 目を開ける。それによって視界が開けるシスタ。しかしテスタロッサ、カレラは驚く。目を開いたシスタの目はウルティマと同じ金色になっていたのだ。

 

 

「な、何をしたの?ウルティマ」

「うーんとね。ボクの目を一時的にシスタ様に移して、その瞬間にシスタ様の細胞とくっつけたんだよ」

 

 

 ウルティマは軽く言っているがそんなことはなかなかできない。なにせ自分と違う生物に対しての融合に近い現象なのだ。

 

 

「それはボクたちの体だよ」

「?あ!そういうことか」

「どういうことだ我が君?」

「テスタロッサ、ウルティマ、カレラの体は最初こそ人間の受肉体だったけど今はボクの分身体だろ。だからそっくりとはいかなくてもほとんど同じ体の構成なんだよ」

「そんなことよりウルティマの目は?」

「ボクの方は大丈夫。超速再生はちゃんと機能してるから」

 

 

 そういい目を開くウルティマ。本当に目は回復してるのだ。

 こう考えてみると超速再生って卑怯だよな。元いた世界じゃ一生裕福に暮らせるだけの能力だ。

 

 

「それでは褒美は……」

「「何それ?」」

 

 

 シスタとウルティマは頭を傾げる。それもそうだ。この2人はそのことを知らないのだ。

 だがそんなことよりテスタロッサ、ウルティマ、カレラはシスタの腰にかけられている刀が気になって仕方なかったのだ。

 

 

「シ、シスタ様?その刀は」

「これか。ある素材を使っているがそれが何かは内緒だ。というか完成しても神話級(ゴッズ)にならなかったんだよな。伝説級(レジェンド)が限界だった」

「そうですか」

「まぁそう落ち込むな。しばらくは秘密だがある奴の反応見たらなんとなくわかると思うぞ」

「「「???」」」

 

 

 3人とも首を傾げるがシスタはそれ以上何も言わない。そしてシスタに促されるようにテンペストに帰って行ったのだった。




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42話

前に更新したのがかなり前です
すいません


 4人が帰って来た。それと同時にリムルと首を掴まれたヴェルドラがシスタの前にやってくる。

 

 

「シ、シスタよ。その刀はい、一体なんなのだ?」

「やっぱりヴェルドラは姉たちを苦手にしてるよな」

「姉ってなんだシスタ。ヴェルドラ」

「それは内緒。ところでなんでこんなに集まってるんだ?」

「そうだこっちが本題だ。お前しばらく部屋から出るな!仕事を終わらせてからだ」

「きびしー」

「後シスタを一番に見つけたのは?」

「ウルティマだけど」

「ならウルティマに褒美を渡しとけよ」

「はいはい」

 

 

 そんな会話をしながらもシスタは疑問に思う。本当にそんなことだけでここに来るのだろうか。又別の問題があるのじゃないかと。

 

 

 

「リムル本題は?」

「ちぇ、バレてたか。俺はこれからクレイマンのところの遺跡に出かけるからその間テンペストを頼む」

「了解。これぐらいは聞くよ」

「頼んだぞ」

 

 

 リムルは自室に帰るように歩いていく。その姿を見ていたシスタも部屋に帰る。

 それについて行く3人。そして部屋の隅で立ち命令を待つ。

 

 

「テスタ」

「はい」

「これから評議員のことを頼む。もちろんお前なら大丈夫だと確信しているが」

「お任せを」

「カレラもこれから司法府の方を頼む」

「もちろん任せておけ!」

「ウルティマもこれから刑事総長として頼むよ」

「うん、任せて」

 

 

 3人とも安心して任せられる。この3人には信頼を置いている。他のクマラやマヤも信頼している。ビアンカやフローラのことはよくわからないが助けてくれた恩もあるので感謝もしている。

 

 

「シスタ様その件に関して一つお願いが」

「??どうした」

「その役を引き受ける代わりにワタクシたちのお願いを聞いてほしいのです」

「そんなの関係なしに言えばいいのに」

「実は我らの配下を向こうに置いたままなのだ。こちらに連れてきても構わないか?」

「あぁ構わないけど肉体がいるだろ。作っておくから何体ぐらいなんだ?」

「うーんボクらそれぞれ200体ぐらいだと思うよ」

 

 

 シスタはその言葉を聞き飲んでいた飲み物を吹き出した。それぞれにつき200体の悪魔の配下。それがこのテンペストに来るのだ。想像に簡単な戦力の大幅な増強なのだ。

 

 

「わかった。肉体の方はなんとかする」

「我らの直属は2体なのだがその配下が100体ほどいたはずだ」

「なるほどね。まぁ構わないけど」

 

 

 確かラミリスのところで作れたはず。そこまでこだわりがないからすぐにできるだろう。昔取りすぎた魔綱石もあるしなんとかなるだろう。

 許可を出すと3人はどこかへ行ってしまった。そこからも書類に埋もれるシスタ。シュナは少し前に解任したからいない。

 自分でお茶を入れて作業の続きをする。

 

 

「シスタ様少し休憩にしませんか?」

「フローラ」

「もう4時間以上書類に目を通していますよ」

「え?うそ」

「やりすぎよ。休憩も挟まないと」

 

 

 シスタはビアンカに言われた言葉に対して意見しようとしたがそれを自分から切ったのだ。今まではシュナがある程度のところで声をかけていてくれたからだ。

 シスタは少し考えてシュナを戻そうか考えたがやはりやめる。これから僕が行くのは茨の道。最終的には全員を解雇するつもりだ。これ以上僕のやるこのに対して傷つく人がいてほしくないからだ。

 

 

「何か考え事?」

「いいやなんでも」

「わたくしたちにまで隠さないといけないのですか?」

「まぁな」

「なら聞かない。いつか話せる時が来たら話して」

「あぁ」

 

 

 そこからフローラが持ってきてくれたケーキを食べながら胃袋の中でもウルティマたちが言っていた魔鋼製の人形を作る。

 ラミリスたちの培養カプセルを使ってもいいがあれはまとめて作れるという利点があるがその分作成が遅いのだ。時間をかけて作る分には構わないけが今回はスピーディーに作らないといけない。

 なにせあの後3人なのだ。早く帰ってきてもおかしくない。だからこそのスピードなのだ。

 しかし魔綱石の数が足りない。なので

 

 

「ラミリスここでヴェルドラの魔素暴発させてもいいか?」

「うぇ!?あんた何考えてんの?」

「いや魔綱石の数足りなそうだからまとめて作ろうかと」

「いやいやあんたすでに500体近く作ってるじゃん。それでも足りないの?」

「まぁな。あと100体ぐらい」

「あんた一体何作ろうとしてるわけ?」

「僕に聞くなよ。あの3人に聞いてくれ」

「はぁー。ならあたしが貯めてる分あげるわ。使う予定だったけど培養カプセルで作るから」

「悪いな。また今度ケーキでも奢るよ」

 

 

 ラミリスは魔綱石を渡すことを忘れたかのようにシスタの周りを飛び出す。しかしそこはしっかりしていた。他の部屋にあったやつを取りに行った。

 シスタはふと思ったのだがあいつに運べるんだろうかと思って待っていたがそれは余計な心配だった。

 

 

「お待たせしましたシスタ様」

「ベスター。大変だったな悪い」

「いえお気になさらずに。私を受け入れてくれた恩は返し切れるものではありませんので」

「いやいや十分返してもらったから」

「そう言っていただけると恐縮です」

 

 

 ベスターはそう言い部屋から出ていく。乗せてきた荷台やベスターの部下たちは帰っていった。ラミリスは何も知らないと言った感じだ。というかこれだけの魔綱石なんでラミリスが持ってるんだ。それを聞くのはやめて次々に作る。

 

 

「シスタ様テスタロッサたちが帰ってきたみたいですよ」

「フローラよく居場所がわかったな。それに早いよ!!まだ1日経ってないだろ」

「わたしたちに言わないでよ」

「それもそうか。3人には少し待つように言っておいてくれ。1時間ぐらいで終わらせるから」

 

 

 シスタはすぐに分身体を作る。そして全ての意思を統一させて同時制作していく。神経を削られるし頭が痛くなるがそこはルウェル先生の出番だ。全ての分身体を並列に操作してくれている。今のところ10体だがこれでも1時間以内に作り終わるだろう。

 なにせヴェルザードたちからもらったものを刀に変えるときに鍛治をしたせいでかなりそういうことができるようになったのだ。スキルを獲得するほどではないがかなりできるようになっている。

 

 

「あーやっと終わった」

《お疲れ様でした。胃袋に収納しますか?》

(頼む。後はあいつらだな)

《了。そちらは任せます》

(見捨てたな)

《…………》

 

 

 ルウェルは何も言わないで胃袋に人形を収納してくれる。そこからは分身体を回収してそこから部屋に向かって歩き出す。部屋に着くと中にはすでに3人はいて他の悪魔はすでに僕を待っている状態だった。

 

 

「お待たせしましたわ」

「早く帰ってくる予定だったんだけど絡まれちゃって」

「??絡まれた?」

「赤の眷属にな。すぐに殺したが」

「それはギィに恨まれないかって心配することないか。あいつ弱い奴に興味ないから」

 

 

 シスタはそんなことをいいながら連れてきた悪魔たちを探すがどこにもいない。テスタロッサたちの近くにもいない。万能感知があればよかったが無い物ねだりしても仕方ない。

 

 

 

「悪魔たちは?」

「街の外に待機させてるんだ。街に入れると魔素で結界が壊れるからね」

 

 

 ウルティマの答えにシスタもその通りだと思う。テスタロッサたちほどでなくても数が膨大なのだ。その魔素量は計り知れない。街の結界が壊れたらまたリムルになんて言われるかたまったものじゃない。

 そして3人の後をついていく。街の外れに止まったが何もない。

 

 

「全員姿を表せ」

「「「我らシスタ様の忠実なる下僕(シモベ)です」」」

「我が君これで全員だ。それでだが」

「わかってる」

 

 

 シスタは胃袋から全部の魔綱石製の人形を取り出す。流石に目の前に出るととんでもない数だと思ったがこれに上級悪魔以上のものが宿るのだからとんでもない数だ。

 もっともこの世界では数の暴力よりも質の方が大事なのだがそれでも上級悪魔なのだ。

 

 

「わたくしたちの副官ですわ」

 

 

 テスタロッサがそういうと6人前に出てくる。最初に出てきた時もこの6人が前にいた。この6人には名前をつけたほうがいいのかもしれない。

 

 

「お前たちには名前を与える」

 

 

 そういうシスタは一人一人に名前をつける。

 モス、シエン、ヴェイロン、ゾンダ、エスプリ、アゲーラそれぞれに名前をつけるとかなりの量の魔素を持っていかれる。

 

 

「それじゃあこれからよろしくな。それとまだ体に馴染んでいない奴がいるだろうからここには結界を張っておく。まぁそれなりの強度だから壊れる心配もないと思う。全員の体が完成したら出てこれるようにしておくから」

「全く不甲斐ない。これぐらいで時間がかかるとは」

「まぁカレラたちに比べたらな。時間がかかるのもしょうがない。受肉じゃなくて言うなら受体だからな。人間の体じゃないし」

「まぁいいけどもちろん君たちは動けるよね?」

 

 

 笑顔のウルティマ。しかしその顔は笑っていない。そして副官である6人は恐怖を感じていてそれ以上何も言わずに立ち上がった。

 それにしてもアゲーラと名をつけた悪魔刀を持っているが使えるのだろうか?

 使えるなら是非手合わせしてみたいと思ってテンペストに帰っていくシスタたちなのであった。




感想や評価くれると嬉しいです
後次は半月以内には投稿すると思います


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43話

 全員で帰ってそれぞれの家に帰らせる。もっとも今来たばかりの6人は家がないのでどこかに消えたが。

 家にかえり眠る。その間何事もないことを祈って眠った。それが功を奏したのかその日は何事もなく終わることができ朝を迎える。

 

 

「ん、なんか動きにくい」

 

 

 シスタは体を動かそうとしたのだが寝返りすら打てない。不思議に思い首だけを動かせるだけ動かすと理由がわかった。紫色の髪そして乱れる様子のないポニーテール。

 

 

「ウルティマ──!!起きろ!」

「あらシスタ様おはよー」

「うんおはよう、じゃなくてなんでここにいるんだよ」

「シスタ様にいい忘れてたから」

「なにを?」

「ご褒美の件」

 

 

 シスタは体を振るわせる。なぜかわからないが嫌な予感が止まらないのだ。ウルティマがいう言葉は想像以上のことだった。

 

 

「それでなんだけどシスタ様はこれから一週間ボクと寝てね」

「??なんだって?」

「だからボクと寝るの」

「なんで」

「ご褒美」

 

 

 シスタはなにも言い返せなくなっていた。もちろんいろんな面で言い返すことはできるのだがもう負けだと降参した。

 確かに今回のことでウルティマには助けられてる部分が多い。目のことが大きいがそれ以外でも助けられている。渋々了承したのだった。

 といっても寝るのは夜だけなのでそれ以外は他の奴らと変わらない。

 

 

「それで今日はなにするの?」

「マヤ、けどやることないしな。昨日仕事終わらせたし」

「それなら」

『シスタ!聞こえるか?』

『んん、リムル。どうしたそんなに焦って。今から昼飯にしようと思ってるんだけど』

『悪いそれ後回しだ。今すぐこっちに来られるか?混沌竜が現れて手が足りない』

『りょーかい。すぐにいく』

 

 

 そしてリムルの位置を確認する。リムるとは魂の解放で繋がっているからこの世界から消えない限り、もしくはお互いが回廊を閉めない限りは基本的に位置を探れる。前に刀を作っていた時はシスタが切っていたためにリムルが探すことができなかったのだ。

 

 

「マヤ転移する掴まれ」

「了解!」

 

 

 マヤと2人で転移する。この場にいたのが2人だったのがあるがもし本当に混沌竜(カオスドラゴン)が出たならテスタロッサたちでは力不足だ。今のクマラも無理だろう。ビアンカやフローラならいけそうだがいなかったから連れていけない。

 急いで転移しようするが何かに妨害されているのか転移が発動できない。転移魔法に魔素を最大までかけて一時的に向こうの空間に穴を開ける。そして転移したのだが

 

 

「幼女?」

「マリアベルだとさ。ロッゾらしいぞ」

「なるほどね。それで混沌竜(カオスドラゴン)は?」

「上だ。今はミリムに抑えてもらってるよ」

「ふーんなるほど。マヤはこっちを手伝ってやってくれ。僕は上に。シオンたちがヤバそうだ」

「了解」

 

 

 シスタは上に行くとあのミリムが攻撃をしあぐねている。というより何かにためらっているのか避けるか受ける、もしくは混沌竜(カオスドラゴン)が死なないぐらいに攻撃している。

 

 

「ミリム!」

「シスタよワタシにはあの竜は攻撃できない。あいつは昔ワタシが封印したやつなのだ。友達なんだ」

「なるほどね。考えがある。けど僕だけじゃ不安だから足止めする。リムルとミリム、僕がいればなんとかなると思う。とりあえず友達には攻撃しにくいだろうから僕が出る。やばいと思ったら殺さなくていいから止めてくれ」

「わ、わかったのだ」

 

 

 シスタたちはかわしながら会話を続ける。そしてミリムはシスタの邪魔にならないように下がり目を凝らす。シスタはシスタで早速2本の刀を抜く。その間もルウェルによって相手の測定をしてもらっている。

 

 

混沌竜(カオスドラゴン)は危険度ヴェルザードなどと同等です》

(いやいやそれ足止めも難しくない?)

《しかし他の竜種と違い知能が失われているために攻撃が読みやすいです》

(なるほどなるほど。それならルウェル思考加速、他のスキルは暴食之王(ベルゼビュート)時間之神(クロノス)だけだ。誓約之王(ウリエル)はなしで)

《了解しました。しかしなぜ誓約之王(ウリエル)を使わないのですか?使ったほうが安全に戦えます》

(予防だよ。ミリムが裏切るとは考えられないが僕の場合はね)

《シスタ様はまだ……いえなんでもありません。思考加速を開始します》

 

 

 思考加速によりシスタの感覚、見え方は全て広がる。これにより爪での攻撃を刀で弾くか受けることができるようになった。

 また刀に刃こぼれひとつないためにシスタはどんどん斬撃の速度を上げていく。しかしそのシスタに呼応するように刀も切れ味、強度ともに増していく。

 

 

「シスタよ下がるのだ」

「?!」

 

 

 ミリムの声に反応したシスタだが少し遅い。竜と会ったことはあっても戦ったことはないのだ。そんなことは前世でももちろんあるわけがない。そしてブレスに反応が遅れる。

 可能な限り下がるがとてもかわせる距離じゃない。

 

 

《ヴェルグリンドの方の刀に炎を纏わせて斬ってください》

(は?けどわかった)

 

 

 ルウェルの指示通り飛んでくるブレスを斬る。ブレスは斬れたが今のシスタは呼吸を必要としている。ブレスを放ったのは渾沌竜。そのブレスにも様々な状態を変化させる効果があったのだがシスタには一つも届いていない。超速再生や状態異常無効が発動していないのにだ。

 

 

《ヴェルグリンドの方に炎を纏わせたのは火による消毒の効果です。もちろんそれだけでは防げませんがシスタ様はほとんど身体中を魔素が覆っております。余計なものはそれが全て無効、もしくは弾いています》

(なるほどね。それじゃあこのまま行きはサポート頼むよ)

《かしこまりました》

 

 

 

 シスタと渾沌竜はそのまま撃ち合いを始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シスタたちが戦いを始める時リムルたちの方にも動きがあった。

 

 

「それでリムルここはどうしたらいいの?このちびっ子殺す?」

「いやこっちはいい。シオンたちの方を手伝ってやってくれ」

「了解」

 

 

 マヤは飛び出し挨拶がてら刀を振り下ろす。簡単にやっているがその実力はヒナタをも上回る実力だ。床にヒビが入る。

 

 

「マヤ助かります。さっきから攻撃を繰り返しているのですがなかなか効かなくて」

「なるほどね。私がやってもいいけどあくまで手伝いだけにするよ。私がやったらそんなに時間かからないしね」

 

 

 マヤの言葉にラズルは激昂する。自分のことなど眼中にないという言葉に耐え難い屈辱を覚えたのだ。そしてマヤに飛びかかるが究極能力を持っているマヤに飛びかかったのが失敗だった。反撃を喰らい片腕が飛んでいく。マヤが手加減していなかったら今頃胴体が真っ二つになっていたというぐらいに鋭い一撃だったのだ。

 

 

「しまった。まぁいいか。あとはシオンたちよろしく」

「もちろんです。マヤは休んでいてください」

 

 

 シオンはそう豪語する。それもラズルを切れさせる言葉なのだがそれ以上頭に血を登らせない。いきなり来て偉そうなことを言われ、それに切れて動いたら片腕が飛んだのだ。

 ラズルは超速再生を持っていない。だからこそ完全回復薬がいるのだがラズルハ持ってきていない。自身が負けるとも傷をつけられるとも思っていなかったせいだ。そもそも完全回復薬はテンペストでは幅広く売っているが作ることは難しい代物なのだ。

 

 

「ランガいけますね?」

「無論」

 

 

 2人な攻撃を繰り返す。先ほどとあまり変わっていないがラズルの片腕がないことで攻撃回数自体が減っているのだ。そしてシオンたちは変わらず。その状態が続けば均衡はあっという間に崩れる。そしてシオンがラズルの体に触れ料理人(サバクモノ)を発動させると体が弾けるように爆発して消えた。

 

 

「なんだか悔しいです」

「なにが?」

「これではマヤのほうが功績が多いので」

「そんなことはどうでもいいよ」

 

 

 シオンが騒ぎ出して面倒だと思ったのかマヤはその場を退散する。上からすごい振動を感じるがこの場を後にもして置けない。リムルの相手はなかなかに厄介そうな小娘なのだ。

 

 

「やっほー変わろうか?」

「いやいい」

 

 

 そういうとマリアベルは逃走していく。リムルも深追いするつもりはないようでそれ以上なにもしなかった。

 

 

「早く上に行こう」

「あぁ」

 

 

 

 リムルとマヤは上に上がる。シオンは待機。ランガも同じく待機だ。リムルの判断に異議はないとマヤもなにも言わずに上がる。

 そして驚くべき光景を見たのだった。




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44話

シスタ陣営オリキャラ最後の1人です
知ってる人は知ってるかもしれませんがあのゲームのキャラです


 リムルとマヤが大急ぎで上に上がってみた光景は驚きのものだった。

 混沌竜とシスタの一騎打ちだ。しかもシスタはそれをやってのけている。リムルは流れないはずの汗が背中に伝っていくような感じが拭えなかった。リムル自身シスタとの力の差はそこまであるものでもないと思っていたのだ。しかし自身が逃げた混沌竜との戦いをシスタはやっている。それを見て戦慄しないわけがなかったのだ。

 マヤもリムルとは違う戦慄を感じずにはいられなかった。ヴェルザードとの戦いで自身は勇者の卵が覚醒したのを感じた。それがもう一つの究極能力を発現させるきっかけにもなったのだ。これでシスタと同等の能力を手に入れることができたと思っていた節がある。

 

 

「リムル擬似魂持ってるか!?」

「あ、あぁ持ってるけど」

「よしミリムさっき言ってたことやるぞ」

「わかったのだ」

 

 

 シスタは飛び退きミリムを中心にして横並びに並ぶ3人。そしてミリムが竜星拡散爆(ドラゴバスター)を放つ。少しして暴食之王を発動するリムルとシスタ。少しして慣れてきたところでシスタが慌て出す。それもそのはず少し前にルウェルから警告が出たのだ。

 

 

《マスター。混沌竜の後ろに生体反応があります》

(は?なんでそんなところに?ってかこのままじゃ瘴気かミリムの攻撃で)

《死にます》

 

 

 シスタはルウェルからの警告を聞いてそれ以上はなにも答えなかった。考えるよりも先に体が動いていたからだ。

 

 

「リムル後は頼んだ」

「は!?おい」

 

 

 ミリムが最強の竜星爆炎覇(ドラゴノヴァ)を放つ。シスタは自身の体に最大の加速を使いそれよりも早く動いて混沌竜の後ろに向かう。1人の女が倒れていて今の状況に気付いていないようだ。

 

 

「おい起きろ。死ぬぞ」

「ん、ここは」

 

 

 そんな会話をしてるうちに混沌竜の半身以上が消えかけていた。シスタはすぐに誓約之王(ウリエル)を発動して防ぐがすぐに破壊されていく。

 まだ寝ぼけているみたいだがまだ動きそうにない。体に引っ張って連れていくにも加速を使ったままじゃ腕がちぎれる可能性がある。

 

 

「おい!シスタ死ぬぞ」

「仕方ない。使いたくなかったんだけどなー。時間凍結(エターナルタイム)

 

 

 シスタが使ったのは範囲的な時間停止だ。この世界では全ての時が止まる。

 ヴェルザードとかの停止とかとは違いこの場だけの時間を止めたのだ。そしてこの空間では発動したシスタは動ける。ミリムも動けるようだ。しかし混沌竜やリムルは動く気配はなくもちろんシスタの隣で倒れているやつもだ。シスタはすぐに抱き抱えその場から離れる。

 そして技を解除すると何事もなかったかのようにシスタたちがいた場所を抉り取ったのだった。

 

 

「あたしがあそこにいたら」

「まぁ死んでたな」

「助かったよ。ありがとう」

「それはいいけどどこからきたんだ。あんなところで寝てるなんておかしいだろ」

「それは[グゥ〜〜〜]〜〜///」

 

 

 言いかけた途端に腹の音がなってしまった。恥ずかしかったのか腹を押さえて顔を赤くしている。

 それにしてもかなりの美人だ。長い銀髪に琥珀色の目。そして銀髪を片方の方でまとめていて目には丸眼鏡。それにテスタロッサと変わらないほどのスタイル。これが向こうの世界ならモテモテだろうなと思いながら話を続ける。

 

 

「とりあえず僕の国に来るか?飯ぐらい出すよ。その後どうするかは自分で考えてくれ」

「頼む」

 

 

 そこからはリムルたちに事情を話して先に帰ることにしたマヤは転移できるが今のやつはできない。

 街に行き食堂に向かう。ゴブイチがいたので料理をお願いする。

 

 

「ゴブイチ料理を頼むよ。軽いやつで。僕のじゃなくてあいつに」

「了解しましたシスタ様」

 

 

 ゴブイチは手際良く食材を切っていき炒めていく。その間に話すこともあるかと思ったがもう話す気力すらわからないようだ。

 机に突っ伏して動く様子はないが死んではいないので何もしない。

 

 

「ところでこの子は?」

「混沌竜の後ろに倒れてた」

「なんでそれでどこも侵されてないの?」

「マヤもっと深く観察しろ」

「えー?え!この子」

 

 

 マヤは驚きを隠せない。シスタも初めて見た時は驚いたがもう驚かない。この世界では理不尽なことが多いのだ。

 

 

「お待たせしました」

「ありがとう。ほら」

 

 

 目の前に理不尽な奴が1人いるのだ。拾ったいや助けたやつの魔素量はテスタロッサたちを大きく上回る。それどころか魔素量だけならシスタと同等なのだ。

 それを隠す様子がないしそして混沌竜からの腐食を防げた理由もわかる。

 その魔素の放出で防いでいたのだ。

 

 

「うま、この飯美味いよ」

「何日ぶりの飯なんだ?」

「3日ぶりかな。ほんとに死ぬかと思ったよ」

「それなら食べたら少しだけ付き合ってくれ」

「わかったよ」

 

 

 食べ終わるのを待ってから移動する。場所はシスタの家だ。和室もあるのでそこに通す。暖かいお茶を用意して和菓子を出す。

 そして少し話を始める。

 

 

「さて名前は?」

「和泉ユキだよ」

「そっか和泉質問していいか?」

「あぁ」

「それなら「シスタ様!!」お前ら勝手に」

「全くなぜワタシを連れていかなかったのだ」

「ボクも行きたかったよ」

「ワタクシも行きたかったですわ」

 

 

 ユキは驚く。3人入ってきたのだが3人とも多種多様な美人や美女、可愛い系なのだ。しかしとてもじゃないけど人間とは思えない。埒外の存在であるが故にこの美しさなのだと思ったユキなのだった。

 

 

「ユキの考えは当たってるぞ。3人とも悪魔だ」

「っ!なんであたしの考えを?」

「だって入ってきてから目を離してないじゃないか。なんとなくわかるよ」

「それでこいつは一体なんなのだ?我が君の新たな下僕か?」

「おいおい言い方。そうそうそれを聞こうと思ってたんだ」

「なにを?」

「うーんここからどうするか。一つはここに住む。二つ目は僕の直属の配下になる。そしてこれはあまりお勧めしないけどこの街を出ていく」

「あたしからもいくつか質問していいか?」

「構わないよ」

「この街で暮らすのに何かデメリットはあるのか?」

「うーんそうだな。特にはないけど仕事はしてもらう」

「なるほど。なら二つ目あんたの配下ってのはどういう意味だ?」

「口の聞き方を」

「テスタ落ち着け」

 

 

 言葉と手を使うことでテスタロッサを抑える。他の2人も何かしそうだったがここでは何もできない。同じく感情をうまくコントロールして耐えたのだった。

 

 

「それで二つ目だけどまず自己紹介しておこうかな。この国テンペストの盟主兼魔王のシスタテンペストだ。そして僕の直属の配下は今6人いる。さっきからそこでぐうたらしてるマヤとここにいる3人後2人は街で買い物をしてるよ。そして」

「ちょっと待ってくれ!魔王?国の盟主?一番偉くて魔王ってあの御伽噺とかに出てくるあの魔王?」

「うーん名手に関してはその認識だと思う。嫌だけど。魔王についてだけど簡単に話すとこの世界には9人の魔王がいるんだよ。そのうちの一柱」

「頭が追いつかなくなってた」

「最後に三つ目のデメリットはまぁこの世界にはいろんな種族がいる。この国は結界が貼ってあるし僕はもう1人の魔王もいる。だからそうそう攻められることはないけど外となると話は別。ここにいるマヤたちほど強い奴がいる可能性もあるし、話が通用しない奴もいる。殺される危険があるってことだな」

「わかった。少し考える時間をくれ」

「そうした方がいいよ。テスタロッサついてやっていってくれ。後質問には必ず答えること」

「承知致しましたわ」

「それと欲しいものがあったら遠慮しなくていいから。とりあえずこれを渡しておく」

 

 

 そういいシスタは星金貨を1枚渡す。それを見たユキは綺麗さに感動を覚えたが一枚だけでどうしろと問う。それもそうだ。この世界の貨幣の価値なんてわかるわけもないが一枚だけでなんとかできるわけもない。

 

 

「それ一枚で金貨100枚分の価値があるから今日1日は大丈夫だよ。それとテスタロッサもし足りなかったら僕の名前を出しておいてくれ。後その店の記録と。後で払いにいく」

「承知致しましたわ」

 

 

 2人はでていく。マヤは出ていったのを確認してからシスタに問いかける。

 

 

「あの子どうするつもりなの?」

「さぁどうするんだろ」

「シスタがその気になったら支配出来るでしょ。あれだけの子を手放すのは惜しいよ」

「そうかもな。けどわかってて言ってるだろ」

「もちろん。そんなことする奴ならここまで一緒にいないし」

「そっか」

 

 

 支配なんて興味がない。そんなことをするならそいつを知る方がよっぽど面白いのだ。もっとも知ってもいずれ来る別れの時には全員との別れを振るつもりだが今そんなこと気にしても仕方ない。

 悪魔たちが裏切るならそれまで。マヤやビアンカ、フローラが裏切っても何も咎めるつもりもない。結局それが僕自身の器ということなのだから。

 

 

「さて何するか」

「久々に本気で戦わない?」

「やだ」

「即答なのひどくないかな?」

 

 

 マヤと本気で戦うなんてごめんだ。街が壊れかねないし迷宮にそういう施設があるのだがそれはあくまでもトレーニング用。決して本気で戦うようではないのだ。ましてや2人とも究極能力を持っている。そんな2人が戦ったらどうなるかなんて目に見えているからだ。

 

 

「あ、そうだカレラ」

「ん?なんだ我が君」

「そういえばアゲーラって刀持ってたけど使えるの?」

「そうだな。私も刀だけならアゲーラには敵わないほどだな」

「へぇ。また今度手合わせしたいって言っておいてくれ。まだ魂の回廊が繋がってないからわかりにくいんだよ」

「任せておいてくれ。もちろん伝えよう」

 

 

 カレラは大きい声で言ったがシスタの家ということもあり家中にその声が響いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃テスタロッサたちはというと2人で歩いて街を散策していた。ユキ自身金を渡されたのだがどこで使おうか悩んでいるのもあったしそれに入りにくいのがもっともだ。

 

 

「テスタロッサさんでしたっけ?」

「ええ、その通りですわ」

「この世界のこと少し教えて欲しいんだけど」「構いませんが少し長くなるかもしれませんわよ」

「構わない。だから教えてくれ」

「かしこまりました」

 

 

 テスタロッサはユキを連れて近くの喫茶店に入る。座ってからメニューを見て頼み少しずつ話していく。自分たちの種族。この世界の情勢。魔王たちの力バランス。もっともテスタロッサはシスタが第一なので少しばかり嘘をついたりもしたが間違ったことは言っていない。

 

 

「これが最後の質問なんだがなんであいつのためにそこまで親身になれるんだ?話を聞いただけでも良くわかるぐらいに」

「??では質問に質問で返しましょう。好きな人のために尽くすのに理由がいるのでしょうか?」

「っ!!確かにな。つまんない質問をした」

「お気になさらずに」

 

 

 そこからも2人は歩いて街を散策してユキは何着かの服を買うことにした。まだ空間支配も保存もできないので手に袋を持ち歩く。

 

 

「それではそろそろですわね」

「あぁ、今日はありがとな」

「それで心は決まりましたの?」

「あぁあんたの意見を聞いてな」

 

 

 ユキは笑いながらそう答えてテスタロッサとともにシスタの家に向かって歩き出したのだった。




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45話

 ユキたちが家に着いた時シスタたちもまた家でゆっくりしていた。

 

 

「シスタ様失礼します」

 

 

 テスタロッサがそういうと扉が開かれる。さっきの和室ではなく今度は机を挟んで対面にソファーが置いておりその奥にシスタが座るような形の部屋だ。

 

 

「ユキは決めたのか?」

「あぁ、決めたよ」

「ならどうする?」

 

 

 シスタの言葉にその場に膝をつくユキ。形から入ろうしてそして膝をついたがシスタに止められる。

 

 

「そういうのはいらないよ」

「シスタ様にお仕えさせていただきたいです」

「それもいらない。普段通りでいいから。式典とかの時だけちゃんとやってくれればそれでいい」

「わかったよ。これから頼むな」

「あぁ、こちらこそよろしく」

 

 

 ユキはこの世界のことを聞いてとりあえずはシスタに仕えることにしたのだ。この世界の頂点ともいうべき魔王。その上の確認されている3体の竜種。人間にも恐ろしい力を持った奴がいるそうだし今ここを出ても死ぬのがわかっているだけだ。

 

 

「それであたしは何をしたらいい?」

「まずは力をつけてもらう。その膨大な魔素も使えなきゃただのおもちゃだ。それに慣れてもらうためにテスタロッサ、ウルティマ、カレラの3人から1週間ずつ教えてもらう。テスタロッサからは魔素のコントロール、カレラからは魔素による瞬発的な破壊力の出し方。ウルティマからは耐性を獲得してもらう」

「??わかった」

「それで武器を作るが何がいい?大概のものは作れると思うぞ」

「それなら銃かな。なんか刀よりしっくり来そうだし」

「なるほどな。まぁやってみるか」

「シスタ様が作るの?ボクには?」

「お前ら3人は前にもあげただろ」

「ならアタシは??」

「お前は自分の剣があるだろうが!!」

 

 

 そんなこんなでシスタが銃を作ることが決まった。ある機能をつけてみようと思って内心笑うがルウェルがいないととてもじゃないができそうにない。こんな時はルウェルに頼るのが正解なのだ。

 

 

《都合のいい時にしか使ってない気がしますが》

 

 

 何が幻聴が聞こえた気もするが何も聞こえなかったと聴かないふりをしたシスタなのであった。

 

 

「ユキの修行は3週間。それが終われば確認でテストをしてもらう」

「テスト?」

「実践形式での確認だ」

「誰がやるの。もしかしてアタシ?」

「お前にやらせるわけないだろ。加減も知らないのに。ズレたが戦うのは僕だ」

 

 

 その場にいた全員が驚く。シスタは確かに力加減もしっかりしてるので力を図るにはもっともな相手だ。しかし国の盟主、魔王が直々に力を図るなんてなかなか聞かないことなのだ。

 

 

「というわけで今日、明日はゆっくりしててくれ。けど夜9時にはここに来てくれよ。幹部全員招集するから」

「了解」

「あと他のやつは言葉遣いうるさいから気をつけてな」

「え?努力するよ」

 

 

 シスタはその言葉を聞き不安にもなるが最悪の場合なんとかしようと思って幹部たち全員に自然伝達を飛ばす。

 あと会議まで1時間ほどだが段取りを進める。リグルドたちのところに赴き話を詰めていく。場所はテンペストでも一番でかい会議室。それでも全員を呼ぶとやや椅子が足りないので追加で持っていく。

 

 

「シスタ様の手を煩わせるなど」

「リグルドいつもなら頼むが今回は僕から急遽言い出したことなんだから手伝うに決まってるだろ」

「しかし」

 

 

 まだ納得していないリグルドだが何も言ってこないところを見ると渋々という感じだろう。そもそも運ぶ椅子自体はそこまで多いわけでもないので時間がかかるほどではない。

 

 

「それでは私はこれで」

「あぁ、後は時間になったら頼むよ」

「もちろんです!お任せください」

 

 

 さて司会を誰に頼もうかな。シスタがうろうろしながら考えていると前からユキを連れたテスタロッサたちがやってきた。

 

 

「会議室の隣にいてくれ。こっちで合図するなら」

「了解」

 

 

 そう言いながらも顔は少し強張っている。まぁ会ったこともない奴らたくさんのところに放り込むわけだからな。手助けはするつもりでも自分で切り開いていかないといけないところなのだ。

 

 

「集まってきたな」

「シスタ今日はなんの集まりだ?お前から集めるなんて珍しい」

「まぁ新しいやつの紹介かな。それに見ると驚くぞ」

「何に?それともこの街中で感じてる魔素はそいつか?」

「内緒。まぁ楽しみにしといてくれよ」

「はいはい、厄介なことを持ち込まないでくれよ」

「失礼だな。今まで厄介なことなんて」

 

 

 シスタはそこまで言いかけて言葉を止める。今まで厄介ことを持ち込んだ記憶はないけど回した記憶はあるのだ。シスタの書類をリムルに回したこともあったから何もいえない。

 

 

「まぁ大丈夫だと思うよ……多分」

「おいおい勘弁してくれよ」

 

 

 シスタの言葉に言葉が出てこないリムル。また厄介なことに巻き込まれないという思考が頭を巡る。

 そんなことを話してる間に全員が集まった。ベニマルやリグルドは顰めっ面で座っている。何か重大発表があるとか勘違いしているのだろうか?

 

 

「それじゃあ集まったことだし始めるよ」

 

 

 全員がよく返事してくれるがそこまで求めているわけではないのだ。

 

 

「シスタ様それであの3人は?」

「3人って?」

「テスタロッサたちですよ」

「まぁそこは気にすんな」

「気にしますよ!シスタ様からの呼び出しに来ないなんて」

 

 

 ベニマルは怒っているが一応いるんだけどなぁ。隣の部屋にいるんだよなぁ。ユキはともかくあの3人は魔素を隠せるからなかなかバレない。

 最も隣の部屋から感じるこの異様なまでの圧に何かあるのだろうと気付いている奴もいるだろうけど。

 

 

「今日集まってもらったのは新しい僕直属の配下?下僕(シモベ)?うーんよくわからんけどできたからだ。だから「クァハハハ我も混ぜるがよい」ヴェルドラ人の話を遮るなよ」

 

 

 シスタからの圧にヴェルドラも悪かったとおもったのか静かになる。

 

 

「わ、我もそんなつもりはなかったのだよ。ほんとだよ。ただ我も会議に混ざりたかっただけで」

「わかったからはい座って。ラミリスも」

 

 

 ヴェルドラの後ろで怒られないように隠れていたラミリスもその隣に座る。これ以上何かいうとシスタからの怒りを買いかねないのだ。

 

 

「それじゃあ改めて紹介するよ。入ってきていいよー」

 

 

 すると部屋の扉からノック音がする。そしてテスタロッサ、ウルティマ、カレラが入ってくる。その後にユキが入ってきて全員に緊張感が走る。それを感じ取ったのかユキも顔が強張るがシスタを見つける。またシスタも笑う。

 

 

「シスタ様の配下になった和泉ユキだ。これからよろしく頼む」

「ま、そういうわけだからソウエイもそう殺気をはしらせない」

 

 

 口調が気に入らなかったのかそれとも不明な人物に対しての警戒なのかそれはソウエイにしかわかったからわからないけどさっきが一番出ていたからシスタが止める。

 

 

「は!」

「それじゃあ今回のもう一つの案件。ルミナスのところにいく面子をここで決めようか」

「!!おい!」

「まぁまぁいいじゃん集めたのもそれも理由なんだしさ」

「はぁ……おまえにはほとほとやられるよ」

「それじゃあリムルは決まってるのか?」

「まぁな。今回はシオンとディアブロを連れていく」

 

 

 その言葉を聞き2人とも顔色が明るくなる。2人ともお互いに置いていかれるのは嫌だったからだろう。

 まぁベニマルにはこの国の防衛があるし連れて行けない。ヴェルドラなんか連れていくとルミナスと喧嘩しかねないし無理。その他の候補もそれぞれの分野の仕事があるから抜けるのは難しいだろう。その点で言えばシオンとディアブロは仕事がないわけではないが抜けてもそこまで支障になるわけではない。2人ともリムルの秘書だと言って聞かないし。

 

 

「それでシスタは?」

「うーん誰にしようかな。ビアンカとフローラ。後修行が間に合ったらユキだな」

「やった」

「かしこまりましたわ」

 

 

 悪魔3人娘は明らかに落ち込んでいるがシオンとディアブロが抜ける以上あの3人かもしくはビアンカ、フローラが残ってないといけないのだ。戦力的に全員連れていくとテンペストが手薄になる。それにテスタロッサは前回ギィのところに行ったし、ウルティマはルミナスのところで暴れてたみたいだから無理。カレラはそもそも暴走列車だから連れていくと大変だ。

 

 

「それになんだか今回は嫌な予感がする。もしかするとお前ら3人も呼ぶかもしれないからそのつもりでいてくれ」

「かしこまりましたわ」

「はーい」

「了解だ我が君」

「あたしは!?あたしは」

 

 

 忘れてた。マヤのこと。元西方聖教会の人間がいかないとなるとややこしくなる。

 しかし連れていくのもめんどくさいというのがシスタの本音だ。

 

 

「はぁ行きたいのか?」

「もちろん!!というか無理矢理でもついていくけどね」

「仕方ないから。ベニマル、マヤが抜けても平気か?」

「大丈夫ですよ。俺たちのこと信頼してください」

「信頼してるよ。それなら任せる」

「お任せを」

 

 

 ベニマルからの頼もしい言葉にシスタもリムルも安心する。そこまで強い奴が攻めてきてもなんとか時間が稼げるだろう。もっともヴェルドラがいる以上この国に攻めてくるバカはいないだろう。

 

 

「それじゃあ今回決まったことを頼んだ!」

「は!」

 

 

 全員からの強い返事を聞きシスタとリムルは退席しようとしてシスタが立ち止まる。

 

 

「ラミリス頼みがある」

「ケーキで引き受けるのよ」

「全く。3つ出すよ」

「喜んで引き受けんのさ」

「僕の部屋を改造と後復活の腕輪を4つ作ってくれる。回数は無限のやつ」

「了解なのよさ。明日までには仕上げておくから来るといいのよ」

「了解。頼むだぞ」

 

 

 ラミリスは急いで飛んでいく。全くケーキ3つでいうことを聞いてくれるなんてな。まぁこの世界ではケーキなんて代物高くてなかなか手が出せないのも事実だからしょうがないと言えばしょうがないけど。

 

 

「それでは宴ですな」

「なんでだよリグルド」

「新たな仲間ですぞ。これは宴を開かねば」

 

 

 こうなった時のリグルドは止められないシスタ。仕方なしに許可をするが今日できると思っていない。

 

 

「では明日の夜にしますぞ」

「はぁ〜許可する」

「了解しました」

 

 

 リグルドはシスタに返事をしてすぐさま出ていく。ここからまた宴が始まるのかと憂鬱になるシスタ。シスタも宴が嫌いなわけではない。しかし酒が振る舞われるという場面においてどの世界、どの場面においても下のものは上のものに対して注ぎに来るのだ。シスタはそれが苦手で仕方がない。

 一人一人に相手をしているだけでもシスタは疲労が溜まって仕方なかった。

 

 

「やれやれだな」

「シスタ様我らにお任せを」

「何を?」

 

 

 歩きながらテスタロッサがそういう。今がわからないシスタだがウルティマもカレラも意味がわかっているようだ。

 

 

「なんのことだよ」

「あなたは全く、いえ初めてなら仕方ないというべきなのかしら」

「??」

 

 ユキはそんなことはわからないという顔で傾げているが正直のところシスタにもはっきりとわかっていないのだ。

 

 

「そういえばユキはどこに泊める?」

「シスタの家で構わないよ。お前を信用してるからな」

「口の聞き方に「待て」は!」

 

 

 カレラがキレかけたがシスタが止める。というかお前もそんな愚直の時あるだろ、とくたびれるシスタだがここで突っ込むのはやめておく。またややこしいことになりそうだからだ。

 

 

「それじゃあうちで寝るか。寝るところは決めていいから」

「了解」

 

 

 こうして全員が別れシスタとユキは家に戻って歩き出す。家につきユキは家に入る。さっきの会議で相当疲れたのか倒れたきり起き上がる気配がない。

 

 

「どうした?」

「なんであんな化け物ばかりなんだよ。特にあいつ」

「あぁヴェルドラか。けどそれ本人の前で言うと怒るからな。あいつ呼ばわりは」

「気をつける」

「それと少し出かけるから。どこかいくなら金を渡すぞ」

「いやいらない。少し休ませてもらうよ」

「そうか。食べ物ならそこに入っているから」

「ありがとう」

 

 

 そう言いながらもシスタは出ていく。いく先は工房だ。

 着くと同時に銃の設計図を頭に思い浮かべて一つずつ作っていく。そしてグリップのところにある仕掛けを施して完成する。

 そして工房から出るとウルティマが待っていたのだ。

 

 

「シスタ様のおそーい」

「?なんだ?」

「一緒に寝るんでしょ」

「あ"!」

「シスタ様?」

「いやなんでもない。帰るか」

「うん!!」

 

 

 ウルティマは本当に嬉しそうに笑いながら2人は帰路についたのだった。

 




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46話

いつのまにか650件までお気に入りが増えてました
驚きが止まりません
これからもよろしくお願いします


 ユキは朝起きてシスタを起こしに行こうと体を起こす。昨日はあのまま眠ってしまったのだ。外が寒いせいもありこたつの中で眠ってしまっていたのだ。想像以上の重圧によって神経が減らされていて眠ったまま起きなかったのだ。

 

 

「な、な、何やってんだー!」

 

 

 ユキが見たのはウルティマとシスタが一緒に寝ている姿だった。しかもウルティマはほとんど服を着ていないといった状態だ。ネグリジェを着てはいるが薄くてほとんど素肌が見えている。

 

 

「うるさいなぁ。眠れないよ」

「んん、あぁユキか」

「あぁあたしだ。じゃねぇ!なんで2人で寝てんだ!あたしがおかしいのか!?」

「はぁこれには色々訳があってだな」

「そうだよ。詮索は良くないと思うけど」

 

 

 ウルティマは体を伸ばしながらそう答える。こんなところをあいつらに見られたらなんて言うのかたまったものじゃない。シスタはため息をつきながらもユキを見てあることを思い出す。

 

 

「ユキ約束のものだ」

 

 

 そういい空間から拳銃を出す。色は黒、見た目は普通の銃だがグリップの部分にある仕掛けをしてある。それを2丁渡す。

 

 

「ありがとう」

「気にするな。その銃でいつか僕を助けてくれ」 

「頑張るよ」

 

 

 ユキはそんなことが来るのかと言う顔で受けとる。ホルスターも渡すがどのタイプがいいのかわからなかったので何種類か見せるシスタ。すると意外にもユキが手に取ったのは腰に巻くタイプだったのだ。

 

 

「それ取るんだ?」

「なんかいい気がして」

 

 

 ユキが手にしたのは昨日シスタが作った中で一番の失敗作であり成功作でもある作品だ。ホルスターに強化魔法が付与されておりその内容は自主の強化だ。ただ魔素をコントロールできるものからしたら当たりなのだがユキはまだできない。そのホルスターは永遠に魔素を吸い続けるのだ。

 

 

「ところでお前ら何やってんだ?」

「寝てた」

「ご褒美」

「は?」

 

 

 そこからシスタは呆れながらも訳を話す。それを聞きながら自分でもわかるくらい呆れていくユキ。もうこれはいうだけ無理だと思ってしまった部分もあるのだ。

 

 

「それはわかったよ。それで今日は何をするんだ?」

「自由だよ。明日から死ぬ気で修行してもらうから」

「マジでか」

「まぁな。だから今日はしたいことしてきていいぞ」

「そっか。少しだけ考えさせてくれ」

「構わないよ。僕は執務室にいるから何かあったら声をかけてくれ」

「了解」

 

 

 ユキの返事を聞いて執務室に向かうシスタ。少しだが仕事が残っているのだ。これを終わらせてからゆっくりしようと椅子に座ると部屋の扉がなる。

 

 

「今いいか?」

「なんだユキかどうした?」

「いや今日自由なんだろ」

「まぁそうだな」

「ならシスタが街を案内してくれないかなだと思ってさ」

「?まぁ「失礼ですよシスタ様は」いいよ」

「シスタ様!」

「テスタ、僕が決めたことだよ」

「!出過ぎた真似をいたしました」

 

 

 テスタロッサは引っ込む。シスタは今ほとんどラフな格好なため上からコートを羽織い街に出る。すでに街は宴一色に染まりつつある。至る所に飾り付けがあり、いい匂いも漂ってくる。

 

 

「まずどこにいきたい?」

「朝飯食ってないから何か食うところがいいかな」

「なら行くか」

 

 

 シスタが歩いていきそれに同調するように隣を歩くユキ。食堂につき適当に頼もうと思ったのだがそうは行かなかった。

 食堂に入るとシュナがいたのだ。シュナはまだこちらを見ていないがそのうち見るだろう。

 

 

「悪い先に食べててくれ。僕はちょっとだけ出かける」

「はぁ!?おいおいなにか」

 

 

 そこまでいうと食堂内に声が響くのも当然。その声に反応して厨房に立っていた奴らもシスタの方を見る。

 ユキはまだ何も知らなかったのだ。シュナとシスタの関係を。

 

 

「シ、シスタ様」

「シュナ……」

 

 

 恋人のような返事をしているが実際の空気はとんでもなく重い。ユキも何も言わずに飯を食べはじめている。早く食えと思うシスタなのだがやはり女子なのだ。そこまで早いわけではなくこの気まずい空気が少し続くと思って心の中で諦めて投げやりになりそうになった時に。

 

 

「あのシスタ様。これ味見してもらえませんか?」

「シュナ。けど」

「食ってやりゃぁいいじゃねえか」

「お前……」

「あー美味し」

「後で覚えとけよ」

「…………」

「それじゃあもらおうかな。少しだけな。あんまり腹減ってないし」

「はい!!」

 

 

 シュナが笑顔になりながらキッチンから少しずつ料理を装っていく。ユキはそれを見ながら一安心した。実のところユキはテスタロッサに街を案内されている最中に頼まれていたのだ。桃色の髪をしてツノを2本生やした子がいたらシスタと話せる状況にして欲しいと。無理にでも構わない。その場合は自身の名前を出しても構わないと。

 その時のテスタロッサの頼みを断れずに今実践したというわけだ。

 

 

「こちらです」

「お、おいちょっとって」

「す、すいません。つい」

「わかった。わかったこれは食べるよ」

 

 

 シスタが一つずつ口に入れていく。初めはなんとなく入れていたがその顔はだんだんと綻んでいく。料理に感動とかではなくその心はシュナとの仲直りをどうしたらいいのかという感じだったのだろう。

 

 

「さて、とシュナ悪かったな」

「い、いえ。そんな悪いだなんて」

「いやあの時急に解雇して悪かった」

 

 

 シスタは頭を下げる。それを対してシュナは慌てふためくがユキは干渉しようとしない。ただ隣で見ているだけだ。

 

 

「さてとそろそろいくかな。シスタはもうちょいかかりそうか?」

「いや僕ももう終わるよ」

 

 

 食べ終わってそれをシュナが下げる。2人とも秘書の件を話さなかったのは何か思惑があったわけでもなく、ただただシュナは久々にシスタとの会話を出さなかっただけなのだ、シスタはシスタでこの会話は出さない方がいいと思ったのだ。

 

 

「ごちそうさま。美味かったよ」

「はい、ありがとうございます」

 

 

 食堂を出て2人はどこにいくかを考える。しかしユキはある店で止まる。それは服が売ってある場所だったのだ。

 

 

「なんだ欲しいのか?」

「あ、いやこんな可愛いのあたしには似合わないよ」

「??なんで、というかユキにも全然似合うと思うけど」

「はぁ!?いやあたしには」

「入るぞ〜」

 

 

 シスタはユキを引っ張って店に入る。シスタが入ることによって店の店員たちに一気に緊張感が走るが今回は自身の服を買いに来たんじゃない。

 

 

「いらっしゃいませシスタ様」

「急に悪いな。こいつに似合う服を試してやってくれ。何時間かかっても構わないし金はいくらでも出すから」

「承知しました」

「お、おい勝手に話が進んでるけど「ではこちらに」って待てって」

 

 

 ユキは店員たちに連れて行かれる。その間やることもないので店を出ようとすると腕を掴まれる。

 

 

「シスタ様どこへ行かれるおつもりですか?」

「へ?」

「せっかくなのでここでお待ちください」

「はい?」

「お待ちください」

「あ、はい」

 

 

 店員は敬語で話しているがその圧に逆らえなかった。これなら他の魔王も一蹴できそうなぐらいだなと心で笑うシスタなのだった。

 少ししてユキが出てくる。肩は出ている服を着て下はジーパンだ。髪は片方で括るのではなく後ろにおろしている。というかなんで服ずれないんだろう?

 

 

「どうだ?」

「似合ってるんじゃねーのかな」

「適当だな」

「まぁ今日はそれで散策するか。こいつの元の服あるか?」

「はいこちらに」

 

 

 袋に入れて渡されたものを受け取る。それを収納したがそれをユキはゆるさなかった。

 

 

「おいおい。あたしの服どこにやった!?」

「空間にしまった」

「は?」

「わかったわかったから証拠を見せるよ」

 

 

 シスタは空間を見えるように展開して腕を突っ込む。そして掴むとさっきの袋がそのまま出てきたのだ。

 

 

「なんだそれ?」

「空間に収納してるんだよ。例えば」

 

 

 シスタは空間に手を突っ込む。そして空間から今まで使っていた刀を出す。シスタは今まで使っていた刀を一本も捨ててなどいない。折れたとはいえ確かにその時その場所では戦った武器なのだ。

 

 

「それあたしにも使えるか?」

「うーんわからん。やってみないとなんともいえないな」

「なら教えてくれ」

「しょうがない。手捕まって」

 

 

 シスタは手を差し出す。ユキはそれにつかまる。目の前に現れたのは一つの部屋だった。

 

 

「さてもうくるだろう」

「なにが?」

「シスタできたのよさ。これが復活の腕輪4つ」

「助かるよラミリス」

「それより約束のものなのよさ」

「はいはい」

 

 

 空間に手を突っ込んでケーキを3つ取り出す。ラミリスは嬉しそうに一つ目を食べる。残り二つはまだ食べないのかベレッタに預けたみたいだ。

 

 

「それで今日はそれでいいのか?最後の休みだと思うぞ」

「構わないよ。空間収納を教えてくれ」

「一つ目にこれはセンスが必要だ」

「うっ!そんなのがいるのかよ。それはあたしにはないだろ」

「まぁ説明していくぞ。まず点と点ををイメージしろ」

「は?」

 その点と点の位置はこの世界と空間だ。まぁ地球で言うところの宇宙みたいなものだ。もっと簡単に言うとこの収納魔法は全く別の世界にそれを保存して置いてるんだ。それは人それぞれ違う世界だ」

「イメージはできた」

「そのまままずは僕の空間に手を突っ込んでみろ。それが空間のベースになるように」

「わかった」

 

 

 ユキは手を突っ込む。本来空間転移のように他人は手を突っ込むと何かしらの異変が起こる。魔素がない人間もそうだ。しかしユキには溢れて止まない魔素が出ている。この状態なら手を突っ込んでも問題ないはずだ。

 

 

「うわぁ。なんだこの空間」

「まぁそれが空間のベースだ。それをより深くより鮮明にイメージして自分で作るんだ」

 

 

 ユキは作ろうとしているがなかなか難しい。そもそも悪魔たちは生まれた時から使えるやつが多い。僕の配下の悪魔たちは基本的には使える。今体に馴染んでる奴らはわからないがそれ以外は使えるみたいだ。そのまま作ろうとして何時間か経つがいまだにできる気配がない。

 

 

「うっ」

「ちょっと休め。魔素の使いすぎだ。このままだと倒れる」

「わかったよ。もうこれ以上は辞めておく」

「それがいい」

 

 

 ユキと迷宮を出るとすでに街は宴一色に染まっていた。

 

 

「我が君アゲーラを連れてきたぞ」

「あぁ、悪いな。足を運んでくれて」

「滅相もございません御屋形様のお呼びとあらばどこへなりとも」

「うーんその堅苦しいのはちょっと」

「申し訳ございませぬ。しかし言葉遣いを変えるのは」

 

 

 その瞬間カレラの殺気が飛ぶ。シスタに対しての反抗でもないのだが抵抗をしたからだ。しかしシスタはそこまでしてかえることでもないと思いカレラを止める。

 

 

「まぁいいや。アゲーラ、明日から剣の相手してくれ」

「かしこまりました。しかし剣だけなら尾屋形様をも上回るかもしれません」

「それでこそいいんだよ。ただ使うのは木刀な。お互いの武器なら性能の差がありすぎるから」

「かしこまりました」

 

 

 アゲーラと話終わってからシスタは家に帰っていく。できるまではもう何も手伝うのは辞めたほうがいいと思ったからだ。適材適所というやつだ。

 

 

《ずるいと思います》

(やかましい!これぞ賢い大人なんだよ)

《とてもそうとは思えませんが》

(うるさいわ!!)

 

 

 ルウェルからの突っ込みに疲れてもう聞くのも辞めたシスタ。そして時間になると呼びにきたものの後ろについていきそこに座る。毎回思うけどこの馬鹿でかいテーブルに僕とリムルだけというのもおかしいと思う。しかし今回は椅子がもう一つあった。

 

 

「ユキもそこだよ」

「ここかよ。緊張して何もとおらねぇぞ」

「まぁまぁそこはまぁリムルが上手いことやってくれるよ」

「はぁ!?俺かよ」

 

 

 隣で黙って会話を聞いていたリムルがシスタの言葉に思わず突っ込む。リムルは昨日の会議で一目見ただけなのだ。リムル自身転生前もそこまで女性と交流があったわけではない。仕事の上で話すだけだ。こっちの世界に来てから少し離れたつもりだが緊張を解くとなるとまた別の話だ。

 

 

「なーんて冗談だよ。ユキここにいる奴らは信用できるか?」

「正直わからない。あたしもここに来てまだ少しだしそこまでの関係が築けているとは思えないしな」

「そうそれが普通なんだよ。だから緊張してても構わないんだよ。猛獣の中にいるわけじゃないんだから」

「例えが意味不明だけどわかったよ」

 

 

 わかりにくかったか。まぁ明日から存分にテスタロッサたちからしごいてもらうといい。多分だけどウルティマのところで地獄を見ることになるだろう。

 

 

 

「それでは宴を始めますぞ。リムル様、シスタ様、ユキ殿よろしいですかな?」

「ああ」

「構わない」

「よろしく」

 

 

 リグルドの言葉でユキにマイクが渡させる。ユキは困惑していたがすぐに状況を理解したのだろう。口を開いて話し始めた。

 

 

「今日はあたしのためにありがとう。ここテンペストでこれからお世話になると思う。これからよろしくお願いします」

 

 

 その言葉にテンペストが揺れたんじゃないかと思うほど感性が飛ぶ。シスタやリムルは毎回のことなので慣れたがユキは驚きを隠せない。

 

 

「ではではシスタ様」

「これ毎回いる?しかも僕なんかの」

「何をおっしゃいますか!シスタ様とリムル様の言葉を皆待っております」

「はいはい。とまぁあんまり堅苦しいのは嫌だから一言。ユキが配下になったわけだがあることを考えてる。それをみんなにも納得してほしい。けどそんなこと今は発表するつもりもないから今日は飲み潰れるまで楽しもう」

 

 

 シスタの言葉にユキ以上の歓声が飛ぶ。これだけ声を出しても声が枯れないのがすごい。シスタはリムルにマイクを渡す。

 

 

「あーほとんどシスタが言ってしまったからいうことないけどシスタの提案は俺も聞いてない。けど否定するつもりはない。まぁそれは置いといて今日は歓迎の宴だ。楽しもう」

「「乾杯!!」」

 

 

 リムルとシスタは息を合わせてそういうと全員がグラスを上に掲げる。そして宴の幕が上がる。少しするとユキのところにもたくさんの奴らがくる。ユキもユキで1人1人丁寧に相手をするから長くなっている。

 

 

「あのシスタ様、注がせてもらってもよろしいでしょうか?」

 

 

 そういいやってきたのはシュナだった。テスタロッサたちが通したのもシュナだからだろう。そのテスタロッサたちが視界の映るところにはいない。いったいどこに行ったのやら。しかしテスタロッサたち直属の6人は飲み比べをしている。なんとなく状況が読めた。あいつらは僕に次ぐなら自分たちに飲み比べで勝つようにと指示をしたのだ。

 

 

「シスタ様。これで大丈夫ですわ」

「テスタ鬼だな」

「そんなことございませんわ」

「まぁ助かったといえば助かったから何もいえないか」

 

 

 シスタはそういうが隣でリムルがシオンにどんどん酒を注がれている。それをみてシスタは立ち上がり席を後にする。人気のないところに行きすぐに家に向かう。

 シスタは昔のことがあるせいでどうにもこういう宴の雰囲気が苦手なのだ。1人で空を見ながら飲んでいる方が落ち着く。

 家につき縁側に腰を下ろして空を見ながら酒を飲む。こういう1人の時間はシスタにとって落ち着くのだ。

 

 

「シスタ様こちらをどうぞ」

「あぁ、ありがとう」

 

 

 注がれた酒を飲んでシスタはふとそちらを見る。なぜ1人しかいないこの場に誰かがいるのか。

 そしてお酒を注いでくれたのはフローラだった。

 

 

「なんでここに?」

「シスタ様がこちらにいらっしゃったので」

「はぁ、なんでわかったんだ」

「シスタ様が席を立ったのが見えたので」

「そこから見てたのか」

「シスタ様は少しわかりやすいので」

 

 

 フローラは可愛らしく笑う。シスタは呆れながらこれは勝てない気がすると思いながら酒を口に運ぶ。そこからしばらくするとシスタの直属の配下たちが集まってくる。しかしまだ街の方では宴が続いている。

 

 

「シースータ。あたしをほっていかないでよ」

「この酔っ払いめ。早く寝ろ」

「ダメだよー。まだ飲み足りない〜」

 

 

 文句を言っているのはマヤだ。こいつもそれなりに酒には強いはずなのだがとれだけ飲めばこれほどの酔っ払いに変わるのか。

 

 

「どれだけ飲んだんだお前」

「一杯や二杯、三杯や四杯飲んでも変わらないよ。団長補佐なんだから」

「酔っ払ってるね」

「テスタ。マヤを布団に」

「承知致しました」

「はーなーせ。まだ飲み足りないんだ〜」

 

 

 テスタロッサに抱き抱えられてマヤは部屋に向かう。何か言っているがテスタに抱き抱えられて動きが制限されたのか一気に酔いが来たのだろう。消える前に静かな寝息が聞こえた。

 

 

「あたしを置いてくなよ。おかげで大変だったんだからな」

 

 

 そういうユキだがまだ全然酔いが回っていないみたいだ。というかそもそも飲んでいないようにも見える。

 

 

「飲んでないのか?」

「未成年だからな」

「気にしてるのか。まぁ構わないけど」

「それでシスタ聞きたいことがあるんだが」

 

 

 ユキは周りに目をやる。シスタはカレラたちを下がるように命令してユキと2人きりになる。

 

 

「それで聞きたいことって?」

「お前のことだ。会ってからずっと気になってたんだ。その面の皮を」

「それはどういう意味だ?」

「だって会ってから少しするけどシスタお前は一度も笑ってない」

「なんのことだか」

「まだいうか。なら話してもらうまであたしはここから動かないからな」

 

 

 そうしてユキは動く気配もなくその場にあった料理に少しずつ手をつけ始めたのだった。

 

 




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47話

 ユキとシスタ2人は無言のまま座る。しかしそれはすぐに壊れる。ユキの眠気が限界に来たのだ。

 

 

「あたしの負けだ。今回は諦めるけどまた……」

「おやすみ」

 

 

 ユキを抱えて布団に寝かせる。そしてまた縁側に行くと起きている面子がいた。

 

 

「こういう静かならいいんでしょ」

「まぁな。けどもう寝ててもいいぞ」

「我らは我が君と飲みたいのだ」

「そーそシスタ様がいいんだったらだけどね」

「まぁいいけど」

 

 

 シスタたちは各々酒を飲みながらたわいもない話をする。その中には明日から行うユキの訓練の事も話した。

 なるべく軽くしてやって欲しいと。

 

 

「お任せください」

「努力はするぞ」

「気をつけるよ」

「まぁほどほどだからな」

 

 

 テスタロッサたちは納得してくれた。そこからは眠くなったのでシスタは部屋に戻る。ウルティマもついてきてそこで言い合いになっていたがもう頭が回らないのでほっておくことにした。

 

 

「ん、重い、暑い」

 

 

 頭が回らない。ウルティマだけならこうはならないはず。目を擦りながら起きると上にはカレラが乗っていて左にはテスタロッサ、右にはウルティマがいた。全員が薄い服だから肌が当たってる感じする。

 

 

「暑い。どーけ」

「キャッ!」

「うわ!」

「グフッ」

 

 

 シスタが起き上がって手をいきなり動かしたために3人ともに当たった。3人とも起き上がってシスタの方を見る。

 

 

「あら、おはようございますシスタ様」

「あぁ、おはよう、じゃなくて何事!?」

「昨日ウルティマから話を聞いてこれが妥協点になったんだ」

「なるほどね。じゃねーよ。しんどいわ。休めるところまで気が休まらないわ!」

「それは我々に緊張したということですか?」

 

 

 テスタロッサのその言葉に言葉が詰まるシスタ。いくら興味がないと言っても周りにいるのは以上なまでの美人。大人の美貌に妖艶さを持ち合わせたテスタロッサ。ロリキャラとも言い難いキャラをもっているウルティマ。いかにも高校生ぐらいでいそうなキャラなのにその容姿、雰囲気はそこら辺にいる大人を遥かに凌駕しているカレラ。この3人が寝ているとなれば話は別なのだ。

 

 

「とりあえず今日から始めるからな。服着替えて迷宮に集合な」

 

 

 3人ともに伝えてユキが起きてきた。

 

 

「さて今日から死ぬ気で特訓してもらうからな」

「マジか」

「マジです」

 

 

 ユキは呆れながらも嫌そうではない。昨日それなりにみんなことが少しわかったんだろう。

 

 

「さてと着替えたら昨日行ったところに」

「了解」

「僕はアゲーラと特訓でもするか」

 

 

 シスタはアゲーラを探しに行く。少ししてすぐに見つかったので一緒に迷宮に行くと前に4人がいた。

 

 

「とりあえずある場所をラミリスに作ってもらったからそこに行こうか」

 

 

 4人とも移動する。アゲーラも一緒に移動する。

 

 

「さてとお前たちはそっちで特訓しててくれ。後これと」

 

 

 そういいながら四つの腕輪を渡す。それを見た3人は意味がわかったように手につける。しかしユキは意味がわからないようだ。

 

 

「まぁ腕につけとけよ。じゃないと死ぬから」

「え"っ!?それなら」

 

 

 ユキはいそいそと腕につける。そして中に入ってまとめて転移する。

 すると目の前に広がったのは大小様々な岩が転がって平地だ。

 

 

「なんだここ?」

「最終日は僕との対戦だろ」

「シスタ様は銃にとって有利な場所を用意してよろしかったのですか?」

「僕にとってはそっちの方がいいよ。特訓も兼ねてるし」

「今のこいつがシスタ様の特訓になるとは思えないのだが」

「は、はーん。なるほどね。そこまで鍛えられないのか。じゃあ僕が変わろうか?」

「!我が君が行うまでもなく我らで十分だ!」

 

 

 カレラのその言葉に各々が賛同する。決して怒るわけではないがそれでもシスタの手を煩わせずとも自分たちがそれほど鍛えるということだ。

 

 

「さてアゲーラ僕たちは向こうでやろうか」

「御意」

 

 

 さすが武人肌。挨拶までも武人っぽい。アゲーラと部屋の隅により2人は向かい合う。

 

 

「さてお互いの武器でやろうかといいたいところだけど流石に性能の差ですぐに壊れる。ということでこれを用意した。なかなか壊れないなら思いっきりやっていいぞ」

 

 

 そういい空間から取り出した木刀をアゲーラに投げる。話した通りかなりの強度があり例えヴェルドラが殴っても一撃なら耐えられる。まぁ二発目には木っ端微塵になっているんだけど。

 

 

「それじゃあやろうか」

「では」

 

 

 そういいシスタとアゲーラが木刀での勝負を始めた頃ユキたちはというと。

 

 

「さてまずはわたくしですわね。以前にもお話しした通りこの世界においては魔素と呼ばれるものがあると話しましたわね」

「あぁ」

「その量はいろいろな方法で増やすことができます。あなたの魔素量はここにいる3人よりも多いです。しかし使えなくてはただのゴミと同然」

「キツイな言い方」

「しごきますので」

「まぁそれがあたしにあることすらわからないんだけどな」

「わたくしはあなたに対してコントロールを1週間で叩き込みます。少々きついですが耐えてくださいね」

 

 

 そこからテスタロッサは確かに鬼のようにしごき始める。

 

 

「まずはあなた自身が魔素を感知できなければいけません」

「どうやったらいいのか教えてくれ」

「では少し。今のわたくしを感じてください」

「??」

「少し放ちます。気をしっかり持ってください」

 

 

 その言葉を言い終わると同時にテスタロッサは自身が抑えていた魔素を放つ。

 

 

「うっ」

「わかりますか?」

「これが魔素の解放。これを抑えているのが普段です。彼方が解き放ってるのはこれと同等です」

「なるほど体の内側に押さえ込むイメージか」

 

 

 ユキは少しずつだが体の中に魔素を抑えていく。それを見たテスタロッサは満足していた。

 

 

「けほっ!」

「あらここまでのようですわね。これ以上は死にますわよ」

「もうちょっとだけ」

「やれやれ。少しだけですわよ。体が壊れますわ」

 

 

 テスタロッサが諦めた瞬間にユキは魔素のコントロールを物にした。しかしそこで張り詰めていた糸が切れたのか前のめりに倒れる。地面に着く直前それをテスタロッサが受け止めたのだった。

 

 

「ここまでの人だとは驚きね」

 

 

 カレラたちはすでにシスタとアゲーラの戦いを見に行っている。本音を言うとテスタロッサも気になってはいたがこっちも重要なのだ。

 

 

「それにしても1日で魔素を抑えることができるなんてね。3日はかかると思っていたのだけれど」

 

 

 テスタロッサはユキを抱えながら回復薬を腕にかける。まだ慣れていないのもあって押さえ込んだ魔素に体がついてきていない。そして部分的に崩壊を繰り返して慣れていっている。

 そして段々と崩壊が小さくなっているのだ。倒れてテスタロッサの腕の中にいる今も体が魔素に順応している。恐ろしいと言うほどの順応の高さだ。テスタロッサとの訓練は1時間にも満たないが内容自体は恐ろしく濃いものとなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてとそれじゃあやろうか」

「承知いたしました」

 

 

 アゲーラとシスタはそれぞれを構える。シスタは一枚のコインを投げるとそれが地面に落ちたと同時に2人は動き出す。武器の性能は同じ。勝負を分けるのは単純な実力の差だ。

 アゲーラは刀を振り下ろすとシスタはそれを受け止めるのではなく体を横に回転させながらそれを避けてそのままの勢いで刀を横に刀を振るう。しかしアゲーラはそれを読んでいたのか体を地面スレスレにまで倒してそのまま反転するように体を上げてシスタの顔の前に木刀を構える。

 

 

「マジか」

「御屋形様もなかなかです。自力でここまで剣を扱うとは」

「けどそれでも勝てなかったんだしな」

「もうすでに300年以上剣を使っておりますので。剣を持って数年でここまで来られるのは驚異かと」

 

 

 アゲーラはそういい褒めてくれるがなかなか自身で納得できない。立ち上がりもう一度といい立ち上がって2人は斬り合う。

 初めはカレラがアゲーラに斬りかかろうとしたが逆にシスタに斬られそうになった。

 邪魔をするなと言わんばかりカレラに斬りかかったのだ。そこからカレラは一度も邪魔をすることはなく部屋の隅でシスタとアゲーラが斬り合うところを見ていた。2人は一度の瞬きすらしていない。息を呑む戦いとはこう言うことをいうのだと思う。

 ほんの一つの動作。それが互いの駆け引きになっている。

 シスタはそれでやっているがアゲーラは違う。ほんの一つの動作、呼吸それらを全て直感に委ねているのだ。だからシスタよりも攻撃が早く常にシスタは後手に回らざる得ない。

 

 

「今日はここまでだな」

「承知いたしました」

 

 

 前もって見えるように置いていた時計がいい時間を示している。結局2人は何回もやりあったがシスタが勝てたのは一度もない。

 

 

「御屋形様、失礼を承知でお聞きします。なぜ一本しか使われないのですか?」

「まぁ失礼でもなんでもないけどアゲーラは一本しか使ってないのに僕だけ2本って言うのもなぁ」

「本当にそれだけが理由なら宜しいのですが」

 

 

 その言葉にシスタの背中に冷たい汗が流れる。人間の体になってからヒヤヒヤさせられっぱなしだ。実のところ左手がほとんど動かない。刀を持って振るとかはできるのだが肘から下は感覚がない。ギィとの対戦の時に刀を作ってからはなかなか反応しない。人間の脳みそはどれだけ鍛えても0.1秒以上はなく伝達はできない。命のやり取りにおいてそれは致命的だ。

 

 

「ユキはどんな感じだ?」

「恐ろしいと思うほどの順応の速さですわ」

「そうか。なら休ませてやってくれ。家は僕のところでもテスタのところでも構わないから」

「承知しましたわ」

 

 

 テスタロッサはユキを抱えながら迷宮から出ていく。シスタたちも少ししてから出ることにした。4人で歩いて途中で別れてバラバラに歩き出す。シスタは家に帰る。その他の奴らはそれぞれの職場に顔を出すと言った感じだ。

 家に帰り中に入ると人の気配がする。1人はまだわかる。しかしもう1人いたのだ。刀に手をかけて中に入るとそこには

 

 

「おかえりなさいませシスタ様」

「シュナなんでここに?」

「テスタロッサ様から頼まれまして。シスタ様がお疲れで帰ってくるから食事を用意してあげてほしいとのことです」

「あー、そういうことか」

 

 

 テスタロッサはユキの修行をしながら逐一視界で戦闘を見てたからな。状況を察したんだろう。それにこういう気遣いはあの3人の中ではずば抜けて高い。本当に秘書に欲しいくらいだ。これから行われる西側の代表にしてなければ間違いなく任命してたな。

 

 

「お待たせしました。ユキ様は起きたら食べれるようにしておきました」

「?シュナ食べていかないのか?」

「宜しいのですか?」

「構わないよ。ましてやシュナが作ったんだからそんな気遣いしなくても」

 

 

 言ってて嫌になる。自分から言っててこんなことを言うんだからな。シスタは嫌気がさしていたがシュナは前に座り同じように飯を食べ始める。

 そしてその日は終わった。そこからはあっという間で3週間が経つことになりいよいよシスタがユキのテストを行う日になったのだ。シスタはシスタでこの3週間でアゲーラに何百回と挑んだが結局勝てたとは一度だけだった。

 




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48話

 ユキとシスタの対戦の日。その日はシスタの直属の配下全員がシスタの家に集まっていた。

 

 

「今日ユキと対戦することはみんなも知ってると思う。それでユキと1対1をしても勝ち目がないからここから誰か1人選んでパートナーとして手伝ってもらえ」

「そんなこと言われてもあたしが知ってるのは3人だけだし」

 

 

 たしかにユキのいう通りテスタロッサたちのことは知っていてもその他の3人のことは全く知らない。

 

 

「それぞれにまぁ得意分野があるけどビアンカはほとんどテスタロッサとスタイルは変わらないと思う。フローラは魔法、回復が得意で残りの問題児は僕と変わらないぐらい剣が強いかな」

「ちょっと問題児はひどくない!?」

「事実だし」

 

 

 シスタがいうと誰も肯定はしなかったが否定もしない。問題児という点では全員の共通認識なのだから。

 

 

「それならマヤさん頼みます」

「りょーかい任せて」

 

 

 ユキが選んだのはマヤだった。この中の全員の共通認識の問題児を選ぶとは想定外だった。けれど相手になるなら一番めんどくさいかもしれない。剣の腕は僕と同等クラス。魔法もそれなりに使えるから先手を取れない。

 他のやつならまだ僕が何かしら先手を取れるがマヤなら話が違う。僕から却下も出せないし、仕方なく迷宮に向かっていった。

 

 

「それじゃあ始めるか。時間は10分。その間に僕に究極能力を使わせるか、僕に傷をつけるか。マヤももちろん究極能力は使用禁止ね。思考加速も今回はなし」

「えーそれじゃあ戦えないよ」

「当たり前だ!今回は僕と戦うことが目的じゃないんだから」

「わかったよ」

 

 

 そこから一枚コインを出してシスタはそれを上に投げる。下に落ちるまでに全員が理解したのだ。これが落ちたら始まるのだと。

 コインが甲高い音を立てて地面に落ちる、その瞬間に動くと思っていたユキだがマヤもシスタも動かない。ユキは疑問に思ったがこのまま膠着状態だと時間がなくなるので一発撃つことにした。

 撃った球と並行にマヤが進んでいく。短い距離だからスピードはほとんど変わらずシスタに剣を合わせる。

 しかしシスタはそんなマヤを見て心底嫌そうな顔をしたのだ。

 

 

(こいつついさっき言ったこと忘れてやがる)

 

 

 シスタが嫌がったのはマヤが殺る気満々なところだ。その一太刀目を受けとてるのではなく避けてユキが飛ばしてきた弾丸を切るシスタ。

 切った直後を狙ってきたかのように刀を振り下ろすマヤだがそれをシスタは弾き飛ばす。

 

 

「なぁ!?」

「こんなので驚いてたらキリがないよ。攻撃しないと」

 

 

 ユキはマヤの言葉にわかったというばかりに両手に銃を構え連発する。それに合わせて逃げる場所を塞いでいくマヤ。こればかりは無理だろうと見ていた5人だったがシスタは避ける気はなく目を閉じた。

 

 

「何してんの?死ぬよ」

 

 

 シスタは避けるそぶりなく弾丸を最小限の動きで交わすだけでなくその動きに連動するようにマヤに反撃を繰り出していく。

 

 

「はぁ!?なにそれ。というかシスタこんなことできたの」

 

 

 マヤのキレ気味の質問にも無言で回答する。それを見たマヤはバカにされていると思い剣にどんどん魔素を集めていく。頭にきたのだ。もうシスタが最初に行ったことなんて覚えていない。天真之王(メフィスト)を発動させたのだ。流石のシスタもこれは見て避けないと本当に死ぬと思ったのだろう。

 目を開けて迎え撃つ。ユキもどんどん打つ速度を上げていく。

 シスタはマヤを迎え撃ちつつユキの弾丸を防ぐが後手に回っているせいで段々と捌ききれなくなっている。

 

 

「鬱陶しいわ!」

 

 

 シスタが大声で叫ぶと全員が驚くことが起こった。シスタの口から炎が出たのだ。しかもとんでもなく広範囲に。

 

 

「あっつ。ってかなんだこれ」

「あつつつつ。なにそれ?」

「隙あり」

 

 

 ユキは全員が驚いていたところでシスタの前で銃を構える。

 

 

「あたしの勝ちだな」

「さぁてな。その銃撃っても当たらないよ」

「は?」

「撃ってみろよ」

 

 

 シスタがそういうとユキはトリガーに指をかける。しかしそこから全くと言っていいほど指が動かないのだ。

 シスタはユキの指を見ると微かにだが震えていた。

 

 

「ここまでだな」

「あたしは!」

「仮の合格だ。多分だけどユキは前の記憶ないだろ」

「あ、あぁ。思い出そうとしてもモヤがかかったみたいに出てこない」

「やっぱりな」

 

 

 2人が話しているがまだ決着がついてないことで納得してない奴が1人いた。

 

 

「まだ決着はついてないよ!」

「あぶな!」

 

 

 マヤが横なぎに振った刀はユキごと斬りかねない勢いだった。ユキを即座に持ち上げて交わしたが本当にギリギリの紙一重だったのだ。

 

 

「お前」

「まだだよ」

「はぁ、一回完膚なきまでに叩きのめすか」

 

 

 ユキを浮かせて刀を右手に持つ。そして停止世界を限定的に発動させる。しかしシスタが驚いたのは停止世界でもマヤが動けていることだ。現にテスタやビアンカたちは止まっている。

 

 

《ヴェルザードとの戦いにて覚醒したようです。しかしそのせいで力に飲まれつつもあります》

(なるほどね。だからさっき言ったことも)

《その説が一番高いかと》

(りょーかい。このまま停止世界を使うのはやばいな)

《はい。魔素の消費が激しいのでやめた方がいいです》

 

 

 ルウェルからの警告でシスタは停止世界を解く。しかし万能感知もない今マヤを殺さずに止めるのか。なかなかにハードだな。ユキの重力を解除して下に落とす。

 

 

「ユキ手伝え」

「けどあたしは……」

「人間を撃てねぇのはわかった。けど守りたいものを浮かべろ。ここにいる奴らを守りたい、その気持ちがあるならそれを抜け。何ならそこでずっと倒れてろ」

 

 

 ユキは立ち上がりシスタの隣に並ぶ。そして銃に手をかける。

 

 

「あたしはまだ撃てないかもしれない。けどこの世界でお前とあいつらと生きていきたいと思ってる」

 

 

 ユキはそう言いながら端にいるテスタロッサたちに目をやる。

 なるほど、散々やられたようだけどしっかりと絆はできてたわけか。

 

 

「なら前に出なくていい。最後の一撃をうて。それまではしっかり戦いを見て考えろ。自分が撃った弾丸がどうなるか。それを考えて予測しろ」

「わ、わかった」

 

 

 ユキの声は震えている。それもそうだ。さっきまで撃てなかったのに急にやれと言わんばかりに言ったからだ。

 しかしここで壁を超えない限り考えていることすら実行できないのだ。

 

 

「さてと付き合ってやるか。とことん来いよ。全てを投げ出して相手してやる」

「し、シスタ。あたしと、あたしを」

 

 

 ?最後なんて言ったこいつ。いやそれよりまずは相手をしないとな。真剣に相手にするのはあの時以来か。ただあの時とは2人とも違う成長を遂げている。一度目は僕の負け。二度目は勝ち。三度目はどうなることやら。

 2人とも話しながら高速で斬りあう。上から、下から、左から、右から多種多様なシスタの攻撃に対してマヤの攻撃は単調そのものだ。

 

 

「あれはあいつの攻撃じゃないな」

「ええ、何かに取り憑かれているようですわ」

「うん、そうだよね。少なくともシスタ様が何回もやってるフェイントに今までだったら反応してたもん」

 

 

 テスタロッサたちはそんなことを言いながら見ていた。3人とも手を出す気は一切ない。しかしそれとは別のことを警戒していたのもまた事実。それを止めるために常に臨戦態勢を取っていたのだ。

 

 

「はぁこいつ勇者の卵が孵化してから強くなりすぎだろ」

《レベルで言えば今テンペストで勝てる可能性があるのはマスター、リムル、後ビアンカとフローラです》

(僕とリムルはまぁ相手のことを解析できるけど後者の2人は?)

《正直にいうとあの2人の実力はまだ見ていないために図りかねます》

(なるほどね。まぁ仕方ないか。今からマヤを徹底的に倒すからそっちの方で計算よろしく)

《了解しましたマスター》

 

 

 シスタとマヤは剣で打ち合う。しかしシスタもさっきのようにフェイントを入れずに一撃、一撃に力を込める。フェイントに一度も乗ってこないからだ。しかし一向に決着がつく気配がない。

 シスタは一度距離を取り刀を鞘にしまう。そして刀を想像で作ろうとした瞬間にその手は止められた。

 

 

「シスタ様今なにをしようとされましたか?」

「いや、これしかないと思って」

「それは禁止のはずですが」

「え、いや、はい」

 

 

 テスタロッサに手を止められてお説教を食らってしまう。その威圧感に逆らえるわけもなくどちらが上の立場かわからない状態だった。その間ウルティマとカレラでマヤを抑えている。

 しかしそう長くは続きそうにない。この3人の中ではあの2人がマヤとの相性がいいだろうが何より技術の差が明らかだ。

 

 

「悪かったよテスタ」

「こちらこそ偉そうに申し訳ありませんでしたわ」

 

 

 テスタロッサは頭を下げる。あの時は頭の中でシスタを止めるということしかなかったために偉そうな言葉遣いになってしまったのだ。しかし現状そこまでなにも言えない。

 視線を動かしカレラたちの方を見ると魔素がどんどん削られていっている。

 

 

「カレラ、ウルティマ交代だ。あとはゆっくり見ててくれ」

「承知したぞ我が君」

「はーい」

 

 

 シスタは二本の剣だけでなく空間からありとあらゆる剣を出す。それを重力之王にて操作して手数を増やす。それに呼応するかのようにマヤの攻撃も増えていく。

 しかし攻撃の数が違う。捌くので精一杯という感じだ。

 

 

「ユキ!」

「わ、わかった」

 

 

 返事はするが銃弾は飛んでこない。そうなると段々とマヤが慣れてくる。変幻自在の刀でも本数は変わらないのだ。その分撃ち落とす刀と避ける刀の選別が出来始めている。

 

 

「テスタ、ウルティマ、カレラなんとかあいつに撃たせてやってくれ)

(かしこまりましたわ)

(なぜあいつにそこまでこだわるのだ我が君。我1人では無理でもここにいる全員でかかればあいつを倒すことぐらい余裕だろう)

(カレラ?シスタ様がそう言ってるのに)

(まぁまぁ、カレラの言い分はわかるよ。けどそれで見捨てる気にはなれないかな)

(なぜだ我が君?)

(うーんそれこそ説明が難しいんだけど僕の直属の配下つまりテスタロッサたちはいつか僕を助けてくれる気がするんだよ。その中にはユキも入ってる)

(〜〜〜!納得いかないが了解した。我が君のその直感を信じよう)

 

 

 魂の回廊で話していたためにマヤにはなにも聞こえない。そしてシスタはさっきよりも攻撃の速度を上げていたためにマヤもそれに手がかかるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、あなたをこの3週間徹底的に鍛えました」

「あぁ、けどあたしは」

「我が君に言われたのだぞ。死んでも応えろ」

「カレラそれではただの脅しよ」

「けど脅したぐらいのほうがいいと思うな」

「いいえ、あなたが撃てないことはわかりましたわ。けれどシスタ様をマヤを助けたいのならばその手に握っているものを使いなさい。あなたの一発が勇気がこの現状を変えるのです。まぁ無理なら構いませんが。あなたが無理ならわたくしたちがやるまでです」

 

 

 テスタロッサはそういい前を向く。次の瞬間からユキの方を向くことはなかった。




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49話

遅くなってすいません
次からはもう少し早く描けるように頑張ります


 ユキは眼前の戦いを見て自分が嫌になる。一度目は失敗してもシスタが頼ってくれている自分に。何よりそこまでしてもらってもまだ覚悟が決まらない自分に。テスタロッサたちに言われてようやく目が覚めた。

 

 

「テスタロッサ正直あたしじゃあの戦いの全てを見ることができない。だから教えてくれないか?」

 

 

 テスタロッサは後ろを向きユキの顔を見る。その顔を見て返事はしなかった。しかし魂の回廊によってシスタにお願いしていたのだ。

 

 

(シスタ様、今から30秒ほど同じ攻撃をしてもらうことは可能ですか?)

(はい?いやそういうことか。まぁやってはみるが期待はするなよ)

(はい)

 

 

 テスタロッサの返事は期待のこもった返事だったことにシスタは顔を顰める。しかしその様子は相対しているマヤにしか分からず、マヤも今は感情がないために気にしなかった。

 

 

「はぁ、やるか」

 

 

 シスタは刀の操作に全てを振り速度を上げる。そしてマヤを磔にしたのだ。動けなかったら30秒はなんとか行けるだろうと判断したためだ。段々と刀のスピードを上げる。重力之王(グラビティノス)時間之神(クロノス)を同時に使っているのだ。

 マヤの体に停止をかけるが効かないために刀に加速を使う。そして段々とスピードが上がっていく。ただ一度でも落ちてしまうと加速の効果が切れてしまうためになんとか落ちないように保っている。

 

 

(これ思いついたけど魔素の消費が半端じゃない。長続きしないぞ。早くしてくれ)

 

 

 チラリとシスタに見られたユキはトリガーに手をかける。そしてその指を動かしたのだ。乾いた音が響く。しかしそれに気づいたのはシスだと見ていた奴らだけだった。マヤは剣を防いで気づいていない。正確には弾いた時に出る音で気づいていないのだ。

 刀の間を正確に縫うように一発の弾丸が飛ぶ。それはそのままマヤの左手に当たり刀を落とす。その瞬間にシスタはマヤとの距離を一瞬で詰めて手を魔素を集める。それに気づいたマヤは右で刀を取り横薙ぎに振るう。

 シスタは素手で、マヤは刀で互いが互いに最後の攻撃だとわかったからその一撃の破壊力すごかった。爆炎が上がり立っていたのはシスタだった。

 

 

「ったく無駄に疲れさせやがって。ユキいい攻撃だったな」

「あ、あぁ」

 

 

 ユキはそういうと顔を赤くしながらそらす。マヤはシスタの手に倒れ込むようにして動く気配がない。

 

 

「あとこいつ起きるまでここで寝かせてやってくれ。頼んだ」

「あ、おい!」

 

 

 シスタはそれだけいうと部屋から出ていく。そして誰もいないことを確認するとその場に倒れ込む。地面に当たるかというところで体が持ち上げられる。

 

 

「あの最後の攻撃当たってたんですね」

「フローラ。それにビアンカまで気づいていたのか」

「ちょっと爆炎のせいで見えにくかったけどね」

 

 

 あの瞬間シスタの手はマヤの心臓を貫いた。貫くと同時に回復をしたためになんとかなったがマヤの刀はシスタのお腹付近を半分ぐらいまで切っていたのだ。シスタはバレるとまずいので瞬間的に回復薬をかけたがほとんどかからず変な感じでくっついたのだ。その間も血が流れて今貧血と傷のせいで倒れたというわけだ。

 

 

「ではシスタ様回復致しますので横になってください」

「なんで?このままで良くない?」

「見られたら……な」

「了解」

 

 

 ビアンカは言葉を聞いて結界を張る。しかしそれは外から見えないように張ってくれる。その結界の規模は小さいが移動できるようだ。その中を誰にもバレないように移動したながらシスタの隠れ家の方へ歩いていく。

 

 

「ここなら結界を解いても大丈夫でしょ」

 

 

 そういいビアンカは指を鳴らす。すると結界は消えシスタは寝かされる。フローラは回復しながら話し始めた。

 

 

「シスタ様無茶ばかりしないでくださいませ」

「しかしな……」

「私たちは頼れませんか?」

「いや……そういうわけじゃ」

「フローラそれ以上はダメだよ。シスタの性格わかってるでしょ」

「はい。ですが私たちの力も使って欲しいです」

 

 

 ビアンカとフローラはあの地下での戦いを見ていた。そしてシスタならと助けたのもある。あの時躊躇うことなくマヤを転移で飛ばして離脱させたからこそ2人は信頼できると感じてついてきたのだ。

 

 

 

「わかりました。なるべく私たちを頼ってくださいとだけ愚痴を言わせてもらいます」

 

 

 

 フローラはそれだけ言って体を治していってくれる。

 体の傷は塞がったが魔素がそんなに早く回復するわけがないのでソファーに体を落とす。今回のメンバーは決まった。

 

 

《解析が終わりました》

(で、なんだったのあれ)

《所謂嫉妬ですね。それが進化とともに膨張したものかと》

(へー嫉妬ね。って嫉妬!?あいつが何に)

《マスターよく女心がわからないと言われるのでは》

(そんなこと……ないと思う)

 

 

 ルウェルも呆れて何も言ってこなかった。ただ嫉妬うんぬんは置いといて二度と暴走しないように祈ろう。また暴走されたら止められるかも疑問だし。

 

 

「少しゆっくりしていてください」

「わかったよ」

 

 

 フローラは立ち上がりキッチンに向かう。そしてコーヒーを作る。ビアンカもそうだがこの2人料理のレベルが高い。シュナともいい勝負するほどに。部屋全体にコーヒーの匂いが充満していく。

 そして目の前に持って来てくれる。置いたコーヒーと砂糖があるがほとんど砂糖入れない。

 ビアンカは味覚がおかしくなるんじゃないかというぐらい入れるがまぁそこは気にしない。

 

 

「さてと一息ついたところでそろそろすり合わせするか」

「なんの?」

「ルベリオスの裏について」

「それを知ってるの?」

「まぁ僕じゃなくてテスタロッサが集めて来てくれた情報なんだけどまだ仮だから他の奴には他言無用で」

「了解」

「了解しましたわ」

「ルベリオスに行く当たって今回手を出してくるのはおそらくロッゾ一族だ」

 

 

 2人はロッゾと聞いても頭の上に疑問符が浮かんでるのがわかるぐらいになっている。まぁこの世界に詳しいわけではないし、実際僕も詳しくは知らない。ただこの西側諸国の裏で暗躍している物たちだということだけわかった。そしてあのマリアベルの祖父というか育て親がいるらしい。

 ならリムルと僕は恨まれていてもしょうがないと思う。

 

 

「さてとここまで話したが2人には頼みたいことがある。過保護だとはわかっていてもユキの警護をどっちかに頼みたい。もちろん僕も意識しているが今回は嫌な予感がするからな」

「了解。私が着くよ」

「ならわたくしはマヤ様に」

「それで頼む。あいつも来る予定だが暴走しないとも限らないしな」

「任せてください」

 

 

 そこからはたわいのない話が続く。ある程度の時間が経つとその部屋がノックされる。部屋というより家といったほうがいいが。この場所を知っているのはシスタ直属の配下のみ。

 部屋の扉を開けるとマヤがいた。その後ろに控えるようにテスタロッサたちがいて何も言わない。

 

 

「シ、シスタあの……」

「あー腹減った。何か食べに行こう」

 

 

 シスタはマヤの言葉を遮るようにわざと大きな声を出す。それに気づいたのかそれともただ言葉に従ったのか全員移動する。シスタの部屋に着くとすぐに用意を始めるメンバー。いつ来たのかはたまた最初からいたのかは分からないがシュナもいた。

 

 

「さぁお召し上がりください」

 

 

 シュナは料理を用意してくれる。今日は天麩羅のようだ。全員が箸を使う。僕が使っているのを見てテスタロッサたちは真似をしたみたいだ。はじめは手で食べていたのだが何故か品があったのだ。それでもいいかと思ったがテスタロッサたちが箸を使い始めたのだ。

 テスタロッサは良かったがウルティマが一番大変だった。ポロポロこぼすし、食べ物を掴めないなどよくあった。

 

 

「シスタ様何考えてるの?」

「いやウルティマも成長したな〜と思って」

「嫌味を言われた〜!!」

 

 

 ウルティマは何故か胸を押さえながらそういい悶える。何故押さえたのかはシスタには皆目検討つかないがみんなからの視線がシスタに刺さる。何故かシュナまでも下を向いて胸を押さえているが意味がわからないといった感じのシスタ。

 

 

「?どうした。前より箸の使い方が成長したなと思っただけなんだけど」

「〜〜〜///シスタ様のバカァ!」

「グハァ!」

 

 

 ウルティマはシスタの腹を殴り飛び出していく。

 

 

「シスタ追いかけて」

「え?」

「いいから早く!」

 

 

 マヤの強い言葉に押されるように部屋から飛び出していくシスタ。

 

 

「いいのですか?」

「うん、まぁシスタも悪いし今回に言えばテスタロッサ達にも助けられてるしこれぐらいはね」

「ふん、相変わらず情けないやつだな。我が君がそんなの気にするわけないだろう」

「わかってるよ。だからこそかな」

 

 

 マヤは顔を伏せてそういう。カレラはこいつ何をいっているんだという顔だがテスタロッサは意味が分かっていた。

 自分自身が許せないのだろう。例えシスタ様が許しても自分が許さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一体ウルティマはどこまで走っていったんだ。

 街中を走り回ってみるが見つからない。魔素を感じてみるが完全に隠しているようで見つかる気配がない。

 1時間ほど探しても見つからないので家に帰って来て入ろうとすると見つけた。

 

 

「よっと。こんなところで何やってんだ?」

「シスタ様のバカ」

「悪かったって」

「じゃあ今からやることに拒否しないでね」

「はいはい」

 

 

 あぐらをかいていたシスタの足にウルティマは寝転がる。そしてシスタの手を掴みそのまま頭を往復させる。そして手を離す。

 

 

「シスタ様続けて」

「仰せのままに」

 

 

 シスタはウルティマの頭を撫でる。そして思ったことあるけど本当にこいつ髪サラサラ。一応同じのを使っているはずなのに。目を閉じて寝転んでるから猫のような感じがするがめちゃくちゃかわいい。

 

 

「シスタ様?」

「あ、悪い止まってたな」

「何か考え事?」

「いやなんでもない」

 

 

 本当になんでも。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 こんな日々も楽しいと思ってるの全てシスタとしての仮面を剥ぎ取れば全てが真っ黒なのだ。だからこそあの虚無というエネルギーを発現できたということもある。あのエレルギーは今の僕で発現できるものではないとルウェルは言っていたが可能性の一つとして僕自身の黒さから生まれたものだと言っていた。

 

 しばらくウルティマの髪を撫で続けていると今度はこっちが眠たくなって来た。寝るわけにはいかないと思ったがとうとう限界が来てしまい落ちてしまった。

 

 

「シスタ様ゆっくり休んでね」

 

 

 ウルティマは起き上がり今度はシスタを自身の膝に乗せる。ウルティマはシスタの記憶のかけらを見たことがあるためにシスタの苦しみが少しわかるのだ。そうしてウルティマは日が昇るまでシスタのことを寝かし続けたのだった。次の日起きて早々シスタが慌てたのはいうまでもない。

 




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50話

長いこと投稿しなくて申し訳ないです
その間にもお気に入りが増えてて嬉しいです


 いよいよルベリオスに行く日。先導は全てリムルに任せてある。僕が面倒見なきゃいけない人物は全て目の届く範囲にいる。

 

 

「それにしてもなんか旅行って感じだな」

「まぁいいんじゃない。たまには」

「マヤお前ははしゃがないんだな」

「まぁ、わたしからすれば里帰りみたいなものだしね」

「そんなもんか?」

「そんなものなの」

 

 

 マヤは付かず離れずでシスタたちの行軍についていく。まぁ行軍なんて仰々しい言い方だが5人しかいない。シスタとマヤ。ユキ、ビアンカ、フローラの5人だけだがここで進んでいるメンツの中ではトップの実力を持っている。

 

 

「それでどんなところなのルベリオスって?」

「うーんテンペストとは違うけど発展してる国だよ。フローラやビアンカ、ユキにとっては驚くんじゃないかな?」

 

 

 ビアンカの質問に淀みなく答えるマヤ。シスタも正直そこまでわからない。正直そこまで発展していても驚くことはないだろうと思っていたのだ。

 しかし次の日についた時には驚かされた。ここまで発展しているのかと度肝を抜かれたほどだ。

 

 

「さてと本番は明日だから各々今日は自由で。金は渡しておくよ」

 

 

 シスタは驚きを隠すようにそういう。それに気づいたものは少ない。全員が金を受け取り別々の方向に歩き出す中マヤとユキだけが残った。

 

 

「何してるんだ?行って構わないぞ」

「わたしはここにいるよ」

「アタシもだな」

 

 

 2人ともそうは言っているがテコでも動きそうにない。とりあえずシスタは2人を連れて歩き始めた。2人とも何も話さないために気まずい空気が流れている。シスタ自身無言が嫌いというわけではない。ただそれにも空気がある。今流れている空気はどうにも苦手だ。張り詰めているというかなんというか。

 

 

「とりあえず甘いものでも食べるか」

「あぁ」

「りょーかい」

(誰かこの空気なんとかしてくれ)

 

 

 シスタのその願いを聞き遂げたのかある人物がシスタたちの前に現れた。

 

 

「やっと見つけたわ。あなたたちリムルとは別行動なのね」

「あ、ヒナタ」

「はぁまたこの状態か。全くしょうがないわね」

「へ?」

「マヤのことだからどうせ何かやらかしてショック受けてるんでしょ」

「はぁ!?違うし」

「ならこの空気は何よ。あなたがやらかすことなんていつものことでしょ。聖協会にいた時だってイライラして書類破るわ、まともにやってるかと思ったら他の人間に押し付けて自分は遊びまくるわ、それに極めつけだってあなたわたしのこと「あ、あぁーそれはダメ!」何よ」

 

 

 マヤの声がヒナタの言葉をかき消す。それどころか周りの人間まで驚いてこっちを見てくる。

 とりあえず立ち上がり頭を下げ何もないとの意思表示。すぐにヒナタも同様のことをする。

 マヤは顔を赤くして立ち上がれないほど真っ赤になっていた。

 

 

「それでその内容ってなんなんだ?言えないほどか?」

「ええ、そうね。自業自得とは言えまさかここまで否定されちゃあね」

「うぅ〜」

 

 

 机に蹲りながら唸りをあげるマヤを横目にシスタはヒナタの方に向かう。ここにきたのはおそらくマヤに会うためだけじゃあない。

 

 

「さてと本題を聞かせてくれ」

「さっきリムルたちにも話したのだけれど会議中は絶対にキレてはダメ。この会議はあなたたちのところのように纏まることはないわ。そしてあなたたちを下につけようと言葉を回してくる。だからこそ」

「ん、りょーかい。キレなかったらいいんだな」

「え、ええそうだけれどできるのかしら?リムルからの話だとあなたかなりの短気みたいだし」

「あいつ失礼なやつだな。僕がキレるのは多分なかったはず」

「いーやあったよ。あの時。あの人間を「マヤ」ごめん」

 

 

 マヤは言葉にしてはいけないことをしようとした。それをシスタが止めたがヒナタもユキも首をかしげた。しかしそれ以上踏み込むとシスタが暴れかねないと判断した2人は何もいうことなく目の前の甘味を味わう。

 

 

「そうだヒナタここで暴れられる場所ってあるか?」

「あるにはあるけど騎士団の修練場とかなら」

「そこに行こう。マヤ、ヒナタ相手してくれ」

「は、はぁ!?なんで」

「特訓だよ。僕にはこんなものじゃ足りないぐらいの力がいるからな」

 

 

 ヒナタは手を頭に当てて修練場に向かう。その後ろについていくように3人が歩く。修練場に着くとすごい騒ぎになった。

 

 

「ヒ、ヒナタ様、それにマヤ様もどうされましたか?」

「少し修練場を借りる」

「承知しました」

 

 

 見張りにそう伝え修練場に向かう。中に入ると特にこれ言ったものは置いてなく端に鎧やら剣が置いてあるだけだった。

 

 

「さてとやるか。ユキ出てろよ」

「あ、あぁ」

 

 

 ユキの返事を聞いて指を鳴らすシスタ。するとに誓約之王(ウリエル)よる結界が張られる。中でどれだけ暴れても外には影響しない。

 3人が刀を抜きそれぞれ構える。シスタも刀を抜くがやはり一本だけだ。一瞬の静寂の後3人が3人とも動く。

 マヤとヒナタは斬りかかるがシスタはそれを刀を使って受け流す。

 そんな斬り合いが行われている様子を聖騎士たちは固唾を飲みながら見守る。しかし1分、2分と経ってもシスタからの攻撃は一切ない。

 

 

「どういうつもりかしら?」

「んー、修行中」

「くそ、シスタ本気出すよ」

 

 

 マヤの言葉を聞くとシスタは一段階警戒を上げる。この戦闘中シスタは一度も思考加速を使っていない。いつ切られてもおかしくない状態なのにマヤの本気という言葉。

 刀が光り輝く。それを見た瞬間ヒナタは距離を取る。

 崩魔霊子斬(メストスラッシュ)だったからだ。ヒナタも日々努力を欠かさず強くなっているがそれを実感すればするほど自信とマヤとの差を感じてしまう。

 マヤはそんなこと梅雨知らず構えをとる。放つのは全ての破壊力を乗せた上段からの振り下ろし。それに対してのシスタのとった行動は最低限の魔素を刀に流してのマヤの刀の受け流しだった。

 コンマ数ミリずれたら自身が受けたダメージは計り知れない。しかしシスタはルウェルの補助なしにそれをやって退けた。

 

 

「はぁ〜ショック」

「ここまででいいや。ありがとな」

「あなたの戦い方おかしいわよ」

「なにが?」

「なぜそこまでするの?こんな戦い方してたら死ぬわよ」

「おやおや団長とあろう人が魔物のしかも魔王の心配ですか?」

「茶化さないで」

「はぁ、どうしても力がいるんだよ。誰にも負けないためにな。力だけじゃ限界があるから殻を破るために一足飛びで技術を磨いてる最中ってわけ」

「マヤあなたは知ってたの?」

 

 

 疲れたのか寝転んでいたマヤにそれを聞く。マヤはあの時の当事者の1人だ。知らないわけがない。しかしここで本当のことを答えるかどうかはまた別の問題だ。

 

 

「もちろん知ってるよ。あたしも当事者だし。だからシスタに全力で応えるしあたしももっと強くならないとね」

「はぁ……あなたたち似たもの同士ね」

 

 

 ヒナタは心底呆れる声でそう言う。言い返せないので何も言わないがシスタは一つだけ引っかかる。マヤと似てるなんてなんて心外な。

 

 

「マヤとは似てないだろ。あんなにわがままじゃないし」

「む、あたしそんなにわがままじゃないよ」

「「えぇ〜」」

「ヒナタまで!?」

 

 

 3人が顔を合わせて笑う。修練場はいつの間にか人だらけになっていてヒナタが怒って全員を修練に戻す。まぁ気持ちはわからなくもないがほとんど全員が来ると言うのはどうかと思う。

 

 

「ところでアタシの存在忘れてるだろ」

「!!そ、そんなことないけど」

「忘れてたな」

「そんなことないですよユキさん。さっさ宿に向かいましょう」

「なんか強引に終わらせようとしてないか?」

 

 

 まやの言う通りユキの存在を忘れていた。完全に途中から頭から抜けていて下手に出ないと後が怖い。

 宿に着くと部屋が3つ予約されていた。一応襲撃用にリムルとの宿は別々だ。お互いの位置に瞬間的に転移できるようにしてある。

 

 

「それで3つどう分ける?」

「あたしはシスタと一緒の部屋ー」

「冗談言ってないでさっさと分けるぞ」

「冗談じゃないのに」

「それじゃあビアンカとマヤ、フローラとユキ、僕は1人な」

「けどそれじゃあ襲撃の時に」

「1人で充分だ」

「ぶー」

 

 

 マヤは嫌々文句を言いながらもビアンカに引っ張られて部屋に連れていかれる。

 シスタは部屋に結界を張りある魔法を使う。

 

 

「悪魔召喚」

 

 

 すると出てきたのは3体の悪魔。それぞれがこの時間を待っていたようでひざまついている。

 

 

「お待ちしていましたわシスタ様」

「待っていたぞ我が君」

「待ちくたびれちゃったよ」

「悪い悪い。色々あってな。それでどうだった?」

「結論から申しますと既に何人ものものがいますわ。その中でもグランベル翁と呼ばれるものにはお気をつけください。その配下にも何体か厄介なものが」

「そっかありがとなテスタ」

「恐縮ですわ」

「それでウルティマの方は?」

「うん調べさせたけどそっちの方は何もないみたいだよ」

「ごくろうさまウルティマ」

「カレラは?」

「あの国はとてもじゃないが入りにくいな。想像に以上に厳重だ。表向きは豊かに暮らしているが俯瞰的に見ると奴隷に近い」

 

 

 シスタが顔を歪めながら詳細を聞く。怒りが込み上げてくるが途中で消えてしまう。それを感じたのはシスタだけだったがやっぱりなと自分自身に呆れてしまう。目の前の3人やマヤ、ビアンカ、フローラ、ユキに助けられているがやはり自分はどこまで行っても転生前から何も変わっていないということだった。

 

 

「わかった。今回はここまでで構わない。3人とも呼び出して悪かったな。あとは自分の仕事に戻ってくれ」

 

 

 3人とも返事をして転移する。シスタはベッドに寝転ぶと全ての情報を整理する。帝国のことは今は放っておいていい。ただ今回のグランベル翁は放って置けない。

 最悪僕が相手しないといけない。それだけは避けたいのだけれど状況が状況だしな。確実に勝てると言えば僕がリムル、ビアンカ、フローラだけだと思っている。

 

 

「全くこの世界は強い奴が多すぎる」

 

 

 誰も返事をしない独り言に意味はなかった。シスタ自身がそう思っていただけで本当の意味は別にあったことをシスタ自身は知らない。

 

 

 




評価やお気に入りが増えると嬉しいです


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51話

 シスタが眠りにつくとそれを見過ごすまいと動き始めた人物がいた。

 

 

「どこだここは?」

「よく来ましたね。シスタ=テンペスト」

「よく来ただと?お前がここに連れ込んだろう」

「ふふ、その生意気な口も素敵。あなたの化けの皮が外れたところがとても」

「わかったわかった。ところで俺を連れ込んだ理由は?」

「そこから話します。まず私の名はアンピトリテ神の一柱です」

「アンピトリテたしか逸話の中ではポセイドンと婚約した神だったか」

「その通りですわ。まずあなたを召喚した理由から話さないといけませんわね」

「召喚?」

「まずはじめにあなたがいる世界は一層。そしてあなたがこの世界に転生したのは完全にイレギュラーですわ」

「なるほどこの世界いや、世界は何層かあるわけだ」

「その通りですわ。全十層ありますわ」

「けど疑問に浮かんでくるのはなぜいまその話を?」

「あなたが異分子だからです」

 

 

 なるほどここまでの話を考えると俺は本来この世界に呼ばれるはずがなかった存在だった。そして十層あることから考え導き出されることは。

 

 

「なるほど俺はその十層を支配下に加える、もしくは協定を結ぶと言うことか」

「ええ、話が早くて助かりますわ」

「ちなみに聞くけどニ層の敵の強さは?」

「そうですね。あなたの世界で言うところの竜種全員で挑んでも勝てない程度でしょうか」

「マジか。聞き方を変える。魔素量で言うと?」

「最低でも1億は超えてないと厳しいですかね」

「なるほどね。その話を受ける、受けないにしてもこれだけは聞いておかないといけないんだけどお前の力を借りてあいつを殺すことはできるのか?」

「その質問に対しての答えはあなたの意思次第ですね」

「なら受ける。それなら?」

「可能ですがそれはあなたの体を遥かに超える強さ。地道に努力してそれと同様に体の強度が上がるのとはわけが違います」

「それが聞けただけで十分だ。その話受けるよ」

「そうですか。まだお話したいですがここまでのようですね」

「は?」

 

 

 そういうときえるアンピトリテは消えていき次に来たのは腹への衝撃だった。

 

 

「ぐへぇ!」

「いつまで寝てるのよ」

「すいませんマヤさん止められませんでした」

「寝すぎだよったく」

 

 

 すでに4人来ていた。マヤは僕の腹に飛び込んできたみたいだ。起き上がり服を着替える。4人は放り出してだが。

 一応会議に出席するとのことだったのでそれなりに綺麗な格好をしていく。

 宿を出ていくとすでにリムルたちが僕のことを待っていた。

 

 

「悪い悪い」

「気にしなくていいぞ。まだ時間までずいぶん時間がある」

「そうか。どうする。僕たちは最後に行くか?」

「いや初めての出席だしなるべく早くついておこう」

 

 

 リムルと僕。それにシュナとマヤを出席させることになった。今回はユキとマヤで悩んだが決めてはマヤの認知度だった。ヒナタ同様西側だけではなく東側にも顔が知れている。

 4人は正装を着て会場向かう。場所を見て会議室に入るとすでに何人か待っていた。まだ時間まではかなりあるがここにきているということはそれなりに人格ができていることなのだろうか。

 そして円卓の席が全て埋まる。少しずつ話は進んでいくが明らかに作為的な進め方だ。リムルはなにも話さないが明らかに怒りが溜まってきている。そして我慢がきてのだろう。

 

 

「お前ら魔王に対して殿って舐めてるよね?」

「い、いえそのようなつもりは」

「全くそんな気はありません」

 

 

 ヒナタが呆れたように手を頭に当てている。僕もこんな状況じゃなければまず間違いなく呆れている。なんとか顔に出さないようにしているが後ろがすでに限界のようだ。

 後ろから怒気がすごい当たってくる。これは間違いなくマヤだろう。横目から後ろを見てみるとユキがなんとか抑えようとしているがもう止まらない。

 

 

「あんたらさぁ仮にも魔王2人に対してその言い方はないんじゃないの?なんなら西方国全てと戦ってもいいよ。戦うのはシスタと私、それにシスタ直属の部下だけでも勝てるよ」

「おいマヤ」

「シスタは黙ってて!」

「はい……」

 

 

 シスタはその言葉で静かになる。他に人間から見ると魔王が尻に敷かれているように見えるが実態を知っている人間は笑いを堪えるので必死だ。さっきまで怒っていたリムルでさえ何も言わなくなっている。

 

 

「それでヤルの?ヤラナイの」

「じ、人類の守護者が何を言っている」

「そうだ。率先して戦うなんてふざけるな」

「はぁ、別にこっちは無理に入れろだの、無理な価格での取引をするとか言ってない。それでも入れないならあと残ってるのは力だけでしょ」

 

 

 その言葉に全員が沈黙する。この世界の事実を今マヤは突きつけたのだ。言葉で無理なら武力で解決するしかない。確かにそうだけれど直球すぎる。

 

 

「はぁ落ち着け」

「シスタ、けど」

「落ち着けと言ってるんだけど?」

「うぅ、りょーかい」

 

 

 マヤは大人しくシスタの後ろに立つ。今の言葉は予定外だったがある意味いい雰囲気を作ってくれた。

 

 

「さてと話を進めたいと思ってるんだけど別にマヤの言ったことも僕自身間違いではないとは思っている。言葉で通じないなら武力行使もありだ。それに僕たちだけで十分というのも言葉通りだ。この呼び方はしたくないが配下に原初の白(ブラン)原初の黄(ジョーヌ)原初の紫(ヴィオレ)がいる。それでもやるか?」

「っ!それは……」

「それでもいいならやろうか」

「こちらこそ失礼致しました」

 

 

 1人が頭を下げると全員が頭を下げてくる。それ以上は何もいうことなくリムルに任せることにした。

 

 

《テスタ、ウルティマ、カレラ今いけるか?》

《もちろんですわ。シスタ様からのお話とあればどのような状況でも断ることなどありません》

《すまない。僕がお前たちのことを原初の白、原初の黄色、原初の紫と呼んでしまった》

《ふふ、お気になさらないでください。シスタ様がそう呼ばれるということは何か理由があるのでしょう。ウルやカレラもそれはわかっています》

《我が君が気にすることはない。魔王ルミナスの件も知っている》

《うん、あのときは嬉しかったよ》

《掘り返すのはやめてくれ》

 

 

 シスタは繋いでいた回線を切る。恥かしくなったので切ったのだ。その間に何やら西方議会に加入することが決まっていた。後でユキに詳しく教えてもらおう。

 リムルが先にたちシスタが立ち上がる。それは魔王間の間でもパワーバランスを匂わせるためだ。古き魔王たちはその長い年月によってそれぞれの力が大まかにではあるが世界中に知られている。

 しかしここにいるのは新人もいいところだ。だからこそ力はわからない。しかもリムルはヒナタに負けたという噂まで流れている。

 しかし原初の悪魔はここにいる人間より遥かに長く生きてその恐ろしさが各地に伝わっている。だからこそ恐れられているのだ。

 

 

「シスタ帰るか」

「ふぇ?もう終わったのか」

「お前聞いてなかったな」

「途中からは」

 

 

 リムルとシスタの2人しかいないために怒っているが他の人間がいたらこうはなっていない。

 その様子を見たマヤは笑っているがユキは呆れている。結局宿に着くまでシスタは怒られっぱなしだったのだった。



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52話

感想や評価などここ好きとかもあるみたいなのでたくさん欲しいです


 いよいよ音楽祭が始まる。全員が席に着くとテンペストからきた音楽団が演奏を始める。ルミナスはそれを大層気に入ったようで耳を傾けている。

 

 

「ビアンカ攻めてくるならいつだと思う?」

「私なら今来るかな。何より人質にできるのが多いし」

「顔に似合わずいうことえぐいな」

 

 

 ビアンカはそういい席で万能感知を最大まで広げる。それはシスタは気づいていないがなんとなくでわかっていた。

 そして音楽が流れ始める。少ししたときにビアンカとフローラが立ち上がる。

 その瞬間に

 

 

「ドォォォォオオン!」

 

 

 ドアが破られ、天井は抜けている。そして壁までもぶち抜かれていた。

 

 

「リムル!」

「シスタ。どうする?」

「僕たちは前持って3グループに分かれてる。2つは請け負うから1番めんどくさそうなやつは頼んだ」

「え"マジか」

 

 

 シスタは有無を言わさず行動を起こす。シスタの方にはユキとフローラが来る。

 その背後に構えてビアンカとユキがやってきた。

 

 

「ユキ、マヤを中心に二箇所に展開。僕は気になる反応があったら動くから。後ヤバくなったときにね。ビアンカとフローラはあの時言った通りに」

「了解」

「かしこまりましたわ」

 

 

 ユキ、フローラの方には2人組の女が。マヤの方には蟲が来た。

 

 

「さてと、僕はじっくり音楽でも聞かせてもらおうかな」

 

 

 音楽は騒動に対して鳴り止むことはなく続けられている。音楽に耳を傾けながらも2人の戦いを横目に見続けた。

 

 

 

 

 

 

 この蟲うざい。私の剣が届かないギリギリのところで構えて攻撃が届かない。霊子崩壊(ディスインティグレーション)使ってもいいけどそこまで効果があるとは思えないし、何より避けられる可能性が高い。

 

 

「ツマラヌ。この程度カ。人類最強の守護者とは」

「は?あんた必ずミンチににしてやるから黙ってなさい」

 

 

 その言葉と同時に切り込むけどあんまり効果がない。相手は複眼を持っているせいか私の攻撃を当たらない。しかも万能感知まで持っている可能性がある。

 

 

「手伝おうか?」

「いらない」

「それよりなんで天魔之王(メフィスト)使わないの?」

「うるさい!私は」

「ふーんそれならいいけど。もしかして怖がってるとか?」

 

 

 その言葉に反射的に刀を振るった。それも仲間に。しかしその瞬間を見逃してはくれなかった。

 

 

「ガハッ!」

「仲間割れとはツマラヌ」

「まぁいいか。私がやろうかな」

「うっさい。私がやるって言ってるでしょ」

「ふーん。それじゃ私はここで見てるね」

 

 

 そういいビアンカは瓦礫の上に座る。本当に手を出す気はないみたいに。

 気に入らない。ビアンカが偉そうなのも。この蟲が調子に乗ってるのも。何より自分自身が気に入らない。

 

 

霊子崩壊(ディスインティグレーション)、連」

 

 

 本来霊子崩壊は縦に発動する魔法だ。しかし、それを改良して横に発動するようにしたマヤ。本来ならば当たれば倒せる技だ。当たらなければ当たるまで放つのだが数発打っただけで当たらないとわかったマヤはもう打つのをやめた。

 

 

「ビアンカ」

「なーに?」

「もし私が暴走したら殺してでも止めて」

「それがマヤの望みなの?」

「死にたくない!シスタともっと一緒にいたい。けど迷惑かけるぐらいなら死んだほうがマシ」

「そ、けどその願いは一部聞き遂げれないかな」

「はぁ!?どういうこと」

 

 

 ビアンカは立ち上がってマヤの隣に並ぶ。

 

 

「それシスタの意志に反するから。マヤを殺そうとするなら何が何でも止めろってね」

「!?シスタらしいね」

「だからこそなにがなんでも天魔之王(メフィスト)をコントロールして」

「この脳筋め」

「マヤにだけは言われたくないよ」

 

 

 その言葉に怒りでもなく何かの感情が湧くかと思ったがなにも湧いてこず天魔之王(メフィスト)を発動する。初めて使った時はなにも考えずに使えた。けれどそんなことはすぐに終わり使うたびに何かに蝕まれていく感覚があったから使うのをやめた。幸いそれなりに実力もあったから使わなくてもそれなりのことはできたのだがこれからの戦いに使わないという選択肢が残っていない。力を持つものは使わないといけない。そうしないといつか本当に助けたいときに助けられないから。

 

 

「ツマラヌ人間がと思ったガ楽しめソウダ」

「うるさい。その口閉じてあげる」

 

 

 天真之王を発動したとき本当に自身の一部になった感じがした。そして相手との力の差がわかる。こんな奴に苦戦してた自分が恥ずかしい。

 

 

「遺言聞いてあげよっか?」

「勝ってからホザけ」

「あっそ」

 

 

 次の瞬間マヤが動き出す。その蟲の最後の言葉は聞くことなくチリになった。マヤが細切れにしたのだ。

 

 

「ふぅ」

「だいぶ疲れたみたいだね」

「なんか久々に扱えた気がする」

「そっか。後は私が見てるから休んでていいよ」

「それじゃあよろしく」

 

 

 ビアンカの言葉を聞きマヤは椅子に寝転ぶ。寝転ぶと一気に疲れが押し寄せてきて周りから戦闘の音聞こえてくるがそんなのも気にならないくらいの眠気が襲ってきたのでそれに逆らうのをやめた。

 

 

 

 

 

 

「ユキさん相手は2人ですが1人でやってください」

「鬼だな」

 

 

 フローラは何も返さず立っている。実際こんなことをやるのはしんどいのだがシスタ様からのお願いなのだから仕方がない。

 手を出さないでほしいと言われて仕方なく了承したのだ。今回の件に置いてビアンカとフローラに言われたのは手を出さないこと。ピンチになったらシスタ自身が出ると言っていた。

 ユキの相手は2人。銃を使うタイプのユキにとってはかなりきつい。そもそも銃を使って戦うことができるのは近接戦闘ができることが大前提。

 相手の攻撃を捌くか避ける、そのどちらかができないと厳しい。

 1対1なら距離をとりつつ攻撃もできなくはないけど2対1ならそれは叶わない。銃という武器の性質上射線は一つしかない。もちろんマシンガンのように連発できるものもあるかもしれない。けれどユキの持っているのは普通の銃の形だ。連発なんてできるものでもない。

 現に戦いが始まってからユキは何発も打つが結局片方にしか飛んでいかずどちらかの攻撃は喰らう。魔素をコントロールできるようになったとはいえそのレベルはとても上手いとは言い難い。

 

 

「よ、手伝おうか?」

「馬鹿にしにきたのか?」

「そんなんじゃないって。それよりもあの二人はまだユキには早いわ」

 

 

 シスタが刀で受け止めてそういう。ユキも違和感はあったのだ。この2人と戦っているが何かが引っかかっていた。

 

 

(どう思う?)

《まず間違いなく呪いをかけられています》

(解くには?)

《見たところ心臓付近に仕掛けられています。心臓を貫いて新たな呪いで上書きすればいいのです》

(なるほどね)

 

 

 シスタは刀で受けるか避けるかの二択をしながらルウェルとの会話を済ませる。

 

 

「お、おい。押されてるじゃねぇーか」

「そう見える?」

「そうにしか見えねぇよ」

「最近は魔王としてもギリギリの戦いばかりだったからな。ここらでもう一度魔王としての核を見せようか」

 

 

 シスタは魔素を全開に放つ。普通の人間ならこの時点で死んでいるが前の2人は死んでいない。ビアンカとフローラはその魔素が音楽を流しているものたちに当たらないようにしている。

 

 

「さて」

 

 

 その言葉の瞬間シスタがあたしの目の前から消えた。次に映ったのは2人の心臓が貫かれているところだった。左右両手で心臓を貫いている。

 

 

「シスタ!」

「なんだ」

「なにも殺さなくてもいいだろ」

「甘いな。やっぱりお前は戦いには向いていない。相手が人間の形をしているからか?それとも何か別の要因なのか」

「だからって」

 

 

 ユキのその言葉を遮るかのようにさっき心臓を貫かれた2人が立ち上がった。それを見たユキは言葉が出ないのか口を開け閉めするだけだ。

 

 

「どういうこと?」

「私たちはさっき心臓を貫かれて」

「お前たちの呪いを強制的に上書きした」

「「!!」」

「まぁ信じられないという顔だね。最後まで聞いてもらった方が話が早くて済む。その呪いの内容はそこで今放心状態になっているやつに逆らわないこと。ただそれだけ」

「それはどういう」

「ことなのでしょうか」

「簡単に言うとお前たちにかけられた呪いは僕が解除した。ただ予想より遥かに強力な呪いだったから消すのではなく上書きさせてもらった」

「それがさっき言った内容?」

「そーいうこと」

「魔王は冷酷無慈悲と聞いていましたがそうではないのですね」

 

 

 ったくだれからそんなことを聞いたんだか。まぁ実際僕も魔王の宴に参加するまではそう思っていなかったといえばそうなるし、参加するより前にギィに会っていなければ攻撃を仕掛けていたのかもしれない。

 人間と同じでそれぞれの個性があった。それを知っていたからこそ話し合いができたのだ。

 

 

「んじゃユキ後はそーいうことだから」

「お、おい」

 

 

 転移する。さっきから妙な視線を感じてしょうがないからだ。この視線は何回も感じたことがある。そして転移した先にはディアブロがいたのだった。

 



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53話

なんか知らないうちにすごいお気に入りが増えてました。
これも映画の力ですかね
まぁ評価は下がってたんですけども


 ディアブロとレインが向かい合っている。なぜここまで二人とも殺気立っているのかは不明だけどとりあえず何も言わずに過ごすつもりだ。

 

 

「三連霊子崩壊」

 

 

 ディアブロの魔法の直後レインの分身体が消えた。ここにきた時から違和感はあった。本来感じるはずの圧が半分より低かったのだ。僕はルウェルがいないと正確な魔素量が測れないが大体はわかる。

 

 

「ディアブロお前やりすぎ」

「クフフやりすぎと言うことはないでしょう。青は分身でしたよ」

「いやわかってるけどさぁ」

 

 

 どうにも女に手を出すのは気がひける。いやわかっている。あの時のことはどうしようもなかったんだと。自分が弱かったから、止めるだけの力がなかったからだと言うことがわかっている。わかっていても頭では納得できそうにない。

 

 

「よぉ、久しぶりだな黒」

「その名で呼ぶな。私にはリムル様より名付けられたディアブロという名がある」

「ディアブロか。そうかそれは悪かったな」

 

 

 ギィは素直に謝る。しかし全く悪いと思っていないような感じで謝るものだからディアブロも顰めっ面になっている。

 

 

「それでここに何の用?」

「少し気になったことがあってな」

「?」

 

 

 全く言ってる意味がわからない。ただの戦闘でその場にいない魔王が出張る理由なんてあるわけがないし何か理由があるはずだ。

 

 

「それをいうのは構わないのか?」

「構わんさ。俺にとって所詮塵芥の考えることだ」

「ふーん。それでどうする。全員のところに戻るか?」

「そうだな。まぁ俺がいるとわかったらなんて反応するかわからんけどな」

 

 

 ギィと一緒に歩いて行く。その間にテスタロッサたちからの連絡があったがなにもないと伝える。あいつらからの連絡の内容が聞くに耐えない内容だったからだ。

 

 

「終わっ……た?」

「シスタ」

「まぁ一通りはね。それで一度ヒナタが死んだんだけどなんでか生き返った。それで最大の問題がその子なの」

 

 

 そこにはリムルにくっついて離れない美女が立っていた。けどこの美女どこかでみたことがあるような気がする。

 

 

「シスタ先生!」

「は?」

 

 

 間髪入れずに抱きついてくるが誰かいまだにわからない。しかも先生だなんてそんなはずは。

 

 

「ま、まさかクロエ?」

「うん。私やっと先生たちの力になれるよ」

「そういうことだ。なんでか大人になったんだよ」

「おいおいそこが1番大事だろ。あとレオンさん、殺気がすごいんですけど」

「なんか面白そうな話してんな。混ぜてくれよ」

 

 

 

 その場にいたルミナス、レオン、リムルに緊張が走る。元々いないはずの魔王なのだ。まぁ僕からしてみればレオンがいることにも驚いたがそこはまた別の話だ。

 

 

「お前が新しい勇者か」

「そうよ」

 

 

 その瞬間に世界が止まる。それを見えていたからこそ刀を二本抜き2人の交錯する位置で構えて受け止めた。

 

 

 

「痛い」

「シ、シスタ先生。そんな無茶を」

「おいおい何してんだシスタ。お前に死なれたら困るんだが」

「なら試すようなことはやめとけ。僕の教え子のこの子に手を出すってことはそういうことだ」

「なるほどな」

「その通りじゃ。この子に手を出すと言うことは妾たちを敵に回すと思って良いぞ」

 

 

 レオンもリムルもそれに賛同する。ギィは諦めたのか何も言わない。

 

 

「シスタ先生大丈夫?」

「もちろん。少し腕が痺れたぐらいだな」

「無茶しないで。私はもう先生たちを守れるから」

「ならまだ強くならないとな」

「どうして?」

「簡単だよ。僕が教師でクロエが生徒。僕が生きてるうちは守らないとね」

 

 

 クロエが顔を赤くしていてレオンが睨んでくる。ルミナスはルミナスで睨んでくるししんどいのが事実なのだが気にしたら負けだ。

 

 

「まぁそれはそれとしてこれからどうするんだ?」

「俺としてはクロエの居場所がわかった。これ以上求めることなどない」

「妾としてはまだ不満があるがとりあえずは置いておく」

「なら決まりだな」

「何がよ」

「クロエを含むあの5人はしばらくの間テンペストで暮らしてもらう」

「ん、了解」

 

 

 シスタはあっさり同意する。てっきり反対でもするものかと思ったがすぐに受け入れた。リムルは少し驚いた顔をしたがすぐに元を戻る。

 僕自身イングラシアに預けておくより手の届く位置にいてもらった方が助かる。すぐに助ける際にも体制を整えられるし何よりあいつも信用できない。

 

 

「じゃあ俺様は帰るぜ」

「あぁ、またなギィ」

「またこっちに来いよ。ヴェルザードがいつでも来てくれだとさ」

「はいはい。何をそんなに気に入ったんだか」

 

 

 ギィは転移していく。レインもそれに着いていくように転移をしてそこからレオンも帰る。なんだか嫌な予感がするから先に帰ることにしよう。

 

 

「リムル先に帰ってあいつら迎えにいってくる」

「あぁたのんだ」

 

 

 さっき戦いがあったところに向かいマヤたちを迎えに行く。

 

 

「おかえりー。どこかにいくの?」

「あぁ、マヤとユキ、あと2人は先にテンペストに帰っておいてくれ。ビアンカとフローラは今から行くところについてきて欲しい」

「了解」

「かしこまりました」

「えーあたしも行きたいよー」

「ダメ。顔が知れすぎてる以上今回のところは向いてない」

 

 

 あいつらを迎えにいく以上秘密裏に動きたい。顔なんかは隠していくが魔素もなるべく使いたくない。最悪向こうで戦闘にでもなった時に使いたくない。

 

 

「それに最悪の事態になるとテンペストまで攻められる。マヤはそっちの防衛に当たってくれ。多分東の方からだ」

「りょーかい。けどこのことリムルに言っとかなくていいの?」

「まぁ今の段階では可能性の段階だからな。テスタやウルティマに手を借りたらいいよ」

「あれ?カレラは」

「あいつは遠慮ってものを知らないからな。ウルティマも遠慮したいが数で攻めてきたらこっちも最低限頭数を揃えないとな」

「了解。これから戻るよ」

 

 

 マヤはすぐに転移して消えていく。胃袋からフード付きのコートを羽織りすぐに向かう。話がどこから漏れているかわからないために今すぐにでもいく必要があった。

 

 

《テスタ、ウルティマ今大丈夫か?》

《シスタ様からのお話は何よりも優先されることですので》

《うんうん、ボクも》

《今からマヤが帰る。マヤからの指示に従ってくれ。詳しく話してる時間はないんだ。頼む》

《わかりましたわ》

《もーあいつの指示は従いたくないけどしょうがないか》

 

 

 2人との会話を切る。すぐにイングラシアに入る。検問をされたがギルドカードを見せて2人は付き人というと通してくれた。

 

 

「ここから最短で向かう。ごねた場合は実力行使だ」

「はーい」

「話を聞いてる限りごねる子どもたちではないと思いますが」

 

 

 学園に入る前にフローラの魔法で全員が透明になって中を進んでいく。前の僕の治療の時とは違って周りに影響を与える。足音なんかは消しているが通った時の風が出るために人の横を通るときは要注意だ。

 

 

「この部屋だ」

 

 

 シスタがその部屋を開けると子どもたちはびっくりを隠せていない。誰もいないのに急に扉が開いたのだ。

 

 

「な、なに!?」

「幽霊かな?」

「ケンちゃんそう言うのは良くないよ」

「み、みんなとりあえず落ち着こう」

 

 

 フローラに言葉を送り透明化を解く。すぐに落ち着きを取り戻したかのように見えたが別の意味でうるさくなってしまった。

 

 

「やれやれここをこんなにうるさくされると迷惑なんですけどねぇ」

「誰だお前?」

「これは魔王とあろうものが私を知らないとは」

「言葉はうまいけどそれに対しての実力が伴ってないんじゃない?」

「これはこれは随分と甘い見積もりだ」

「ビアンカ、フローラ!!そいつら頼む」

「了解」

「かしこまりました」

「お前らその人たちについて行け」

 

 

 すると目の前のやつはローブを脱ぐ。するとさっきまで隠れていた魔素が溢れ出す。その量だけで言うと僕と変わらない量だ。

 ただそれを制御できてはいないようで溢れ出てた。

 

 

「コロスコロ、す」

「お前さっきのローブ着てろよ」

「お前を殺さないとあの、方に殺される」

「あの方って?」

「話すわけがないだろぉ!」

 

 

 そりゃそうだ。負けたら殺すとまで脅すような相手だからな。話した時点で殺されると言うこともある。

 かかってくる以上仕方がない。殺すか

 

 

「おいおい魔法は使えないのか?」

「知るかんなもん」

「その割には」

 

 

 殴りかかってくる一撃一撃が重い。うけながしてはいるがあたるとかなりいたいだろうなぁ。当たればの話だけども。

 

 

「さて、と死ね」

「なにを」

 

 

 重力之王を発動させて動けなくする。早く終わらせないと床が抜けるなこれは。一応床にも強化をしているが重力の方が強い。

 

 

「死ね」

「ダメェ!」

 

 

 振り下ろす刀をアリスの人形と手裏剣が軌道を逸らす。

 

 

「何してんだ」

「自分でもわからない。わからないけどシスタが人を殺すよを見るのはイヤ!」

「お、おい。そんなことを言ってる場合じゃ」

「イヤなのはイヤなの」

「はぁ、仕方ない」

 

 

 シスタは重力を解く。そいつにもう抵抗する気がないとわかったからだ。

 アリスに必死に腕を止められているが力を入れた瞬間にアリスは吹っ飛び首を飛ばすことができるだろう。

 それでもしなかったのは僕自身にもわからない。

 

 

「お前にかけられた呪いは解いてやる。ただ二度とテンペストに手を出すな」

「俺にかけられた術はそんなに簡単じゃない」

「そうか。なら死ね」

 

 

 アリスが掴んでる腕とは逆の腕で頭を潰す。その瞬間アリスの目は少し腕を動かして隠すようにしたけど血が飛び散る。

 

 

「俺は今……」

「アリスに感謝するんだな。本当なら殺してたから」

「まさかあの方に匹敵する方が現れるとは。お前があの方のおっしゃっていたシスタなのか?」

「それも知らずにきてたのかよ」

「話には聞いてはいたがここまでの人物とは」

「それでどうする?」

「貴方様に多大な感謝を」

 

 

 そういいそいつはアリスの前に膝まづく。アリスは腕に抱きついている力をさらに強くして怖がっている。それもそうだ。自分よりはるかに年上の男が自分に対して膝まづいているのだ。

 

 

「お前の忠誠は本物か?」

「疑うならこの首飛ばしましょう」

「なるほど。ならこれを飲め」

 

 

 そういい丸薬を渡す。それはシスタが一時期作っていたもので相手に対して反抗の意思があると即座に相手の生命を奪うものだ。もっともシスタよりも弱いものしか使えないのだが。

 

 

「アリスはこれを」

「ネックレス?」

「あぁ、お前を守るネックレスだ。これに魔素をこめるとお前を守るように組んである」

「ありがとシスタ」

 

 

 アリスの首にネックレスをつけると本当に嬉しそうにした。

 

 

「嬉しい」

 

 

 その一言でケンヤは落ち込んでいるがそれはシスタにはわからない。リョウタが慰めてはいるものの全く聞こえていないような感じだ。

 シスタは諦めて全員をテンペストに連れて行くことにするのだった。




随分と本編からずれてる気もしますがそれも創作の意義なので温かい目で見てもらえれば


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54話

次の投稿は早くできると思います


 テンペストに着くとこいつらの家がないことが気がついた。

 

 

《マヤさんや何か変わったことはあった?》

《ここで話してもいいけど直接話すよ》

《了解。なら僕の家に集合で》

《はいはーい》

 

 

 マヤとの会話を切る。目の前を見るとアリスの横に適度な距離を持って座ってるやつ。ケンヤは涙を堪えながら倒れ込むし、それを慰めてゲイルとリョウタ。

 

 

「はぁ……」

「お菓子でも食べませんか?作ってきましたので」

「もらうよ」

「貴方たちはどうされますか?」

「ありがとう」

「「いただきます」」

「ん〜もらう」

 

 

 4人とも現金なもので食べた途端に顔が一気に明るくなる。そこにテスタたちが帰ってくる。なんだか嫌な予感がするために立ち上がった途端マヤが信じられない速度で手を伸ばしたのでそれを掴む。

 

 

「む、シスタ何するのさ」

「お前今全部取ろうとしたろ」

「だってあったから」

「ガキか!お前の分はなしな」

「おに!」

 

 

 マヤの手を押さえつけて動けなくする。抑えた手を動かして抜こうとするがなかなかに抜けないようで諦めたのか静かになった。そのタイミングで全部なくなったのを確認してマヤの手を離す。

 

 

「さて、とどうだった?」

「大方シスタの予想通りかな。来てたよ東帝国の奴ら」

「間違いありませんわ。ワタクシは元々あの付近を縄張りにしていましたから」

「なるほどね。マヤ、テスタ、ウルティマ、カレラ、ユキ、ビアンカ、フローラは力をつけてもらう。各々に最適な相手をつける。明日から開始な」

 

 

 全員からの異論はなくその場での返事が聞こえる。元々返事あるかもしれないと思って色々考えていたのも無駄になったが全く感じにない。

 

 

「それじゃあとりあえず解散だな。アリスたちは宿に泊まっておいてくれ。今学校を作ってるからそこに泊まれるようにする」

「あたしはここに泊まりたい!」

「おいおい」

「それは少し調子に乗りすぎでは?」

「うん、黙ってたけど目に余るね」

「我が君に対しての無礼もだ」

「待て待て。とりあえず落ち着けお前ら」

「シスタ様それは聞けませんわ」

「ちょっと我慢できないかな」

「無理だな」

 

 

 3人とも殺気を放っている。アリスも怯えているが一歩も引いていない。そのさっきに当てられたケンヤたちは僕の後ろに隠れているのに。

 

 

「シスタ様も罪作りですわね」

「何言ってんだ?」

「本当にわからないって顔してるよね」

「いやわからないから」

 

 

 ビアンカとフローラは頭に手を当ててため息をついているが全く身に覚えがない。

 しかしこのままじゃテスタたちがアリスを殺しかねない。

 

 

「とりあえず宿ができるまでの処置な。気になるならお前たちも来ていいから」

「そ、それなら仕方ありませんわ」

「それならしょーがないかな」

「そうだなしょうがない」

 

 

 3人とも納得したのかさっきが収まる。アリスも緊張の糸が解けたのか怖くなったのかわからないが腕にしがみついている。

 

 

「大丈夫だから」

「うん」

 

 

 アリスの護衛として付いてきたやつも恐怖に負けたのか動けていない。

 

 

「はぁ……とりあえずそういうことだから」

「宴だよね」

「はい?」

「小規模のシスタの家でやろう」

「お、おい」

「いいですわね」

「ボクも」

「それなら料理は作りますわ」

「私も手伝うよ」

 

 

 なんか否定の前にどんどん話が進んでいるような気がしてならない。

 というかここで却下できないわけではないがするとグレるやつもいるだろう。

 

 

「アリスたちはどうする?」

「参加するわ!」

「俺は遠慮しとく。怖いもんその人たち」

「ぼ、ボクも」

「僕もです」

「あはは、テスタたちは殺気を出しすぎたからな」

「むぅ」

「まだ本気で出していないのですが」

「我もだ」

「3人ともの意見は分かったがお前らが魔王からも恐れられてるのは分かってるよな?」

 

 

 3人とも本当に知らないという顔で頭の上のハテナが見える。まぁいいやこれ以上言っても無駄だろうし、それならいうだけ無駄だ。

 

 

「後で少しよろしいですかシスタ様」

「?構わないが飯の前か?」

「できれば2人きりの方が」

「ん、りょーかい。飯の後にでも。寝るやつもいるからな」

「かしこまりました」

 

 

 そこから少しの間子どもたちと街を見て回る。いろいろなものが必要になるだろうし必要なものをそれぞれに選ばせて買っていく。どこに行ってもお金はいらないと言われるのだがそういうわけにもいかない。

 

 

「それにしてもシスタって本当に好かれてるわね」

「なんでそんなに上から目線なんだ」

「だってシスタだもの」

「はぁ……まったく」

 

 

 アリスのわがままにも慣れてきた。最近は周りにわがままな奴しかいないせいか慣れてきた部分がある。

 

 

「それでどうする?」

「俺はもう疲れたし寝ることにするよ」

「僕もです」

「僕も」

「あたしは今からパーティに向かうわ」

「なら剣也たちにお金を渡しておくよ。どこでも泊まるといい。何かあれば僕の名前を出すとなんとかなると思うから」

「わかった」

 

 

 

 剣也たちは街中を散策し始める。

 

 

「おい出てこい」

「なんだ?」

「やっぱりいたか。あいつらを見張ってろ。街から出ないように」

「断る。俺の主はアリス様だけだ」

「お願い。ケンヤたちを見張ってて」

「了解しました」

 

 

 すぐに姿を消しどこかに消えた。僕はアリスを連れて家に帰るとすでに料理が机の上に庭にも机を広げて料理がある。

 

 

「いつでも始められますわ」

「それじゃあ小さい宴だけど乾杯!」

「「「「「「「「乾杯」」」」」」」」

 

 

 全員が飲み始める。ジュースを飲みもの。アルコールを飲むもの。様々だがほとんどがアルコールだ。かくいう僕もアルコールを飲んでいる。半分だけ毒無効を消している。少しずつだが酔いが回ってきているために気持ちいい。

 

 

「シスタ」

「ん、アリス?」

「シスタ、シスタシスタ」

 

 

 そこ言葉を話しながら足取りははっきりとしていない。こいつまさか。

 

 

 [ドン!]

「ア、アリス!?」

 

 

 床に顔面からぶつける。

 

 

「痛い」

「そりゃあなぁ」

「シースーター」

 

 

 抱きついてくるのでこれ以上は勘弁だ。睡眠を促すように魔法をかけて膝の上に乗せる。後5分もすれば寝るだろう。

 

 

「シスタ。あたしがいていいのか?」

「なに気にしてんだ。今更だな」

「まぁそりゃそうだけどさ」

「そういうことだ」

 

 

 ユキはいまだに遠慮しがちなところがある。まぁ異世界でそれも知らない連中の一員と言われて警戒も遠慮もするだろう。

 

 

「それよりもなんでこの街の奴らは毎回宴をしないといけないのか?」

「それは僕も思う」

「だよな」

 

 

 けれど一番息が合うのはユキなのかもしれない。

 

 

「シスタ様そろそろよろしいですか?」

「あぁ。上に行こうか」

 

 

 部屋から出て二階に上がる。それだけでもいいのだが窓から身を乗り出してそのまま浮かぶ。

 屋根に上り寝転んで話す。前に座ったまま話したことがあるのだが周りから見えていたのかえらい盛り上がったために危なかった。

 

 

「で、話って?」

「シスタ様は私たちに何を隠しておられるのですか?」

「!?は、はぁ?なんのことだ」

「前々から疑問に思っていたのです。あの時なぜあれほどの怪我をしていたのか」

「あーあの時か」

「そしてそのことを話そうとする今野真矢を固く禁じていることを」

「…………」

「その理由が分かりましたわ。帝国との終わりにあるものを見つけました、その一部です」

 

 

 それは間違いなくあの結界が貼ってあった場所のものだ。しかも結界が壊れないギリギリを持ってきている。今のテスタではおそらく結界の本当の部分まで読めないはずなのに大したものだ。

 

 

「あの時何があったのか教えてくださいませんか?」

「その話なら我らも聞きたいぞ」

「うんボクも」

 

 

 カレラとウルティマが天井に登ってきた。2人ともかなりの酒が入っていたから来ないとかって予想していたが意外とシラフで絡んでくる。

 ここ最近絡みが激しいのもあり早く寝てほしいためにこの家で飲む際は毒無効の効果を切ることを強制している。

 

 

「それならこれを飲んでまた同じ質問ができたなら答えよう」

 

 

 そういい一つの瓶を置く。これは試作段階のものだがかなりアルコールがきつい。ワインやウイスキーなんかとは比較にならないほどだ。毒無効を切っている今の状態では一本飲んだらすぐにでも倒れるだろう。

 

 3人がコップに入れてそれを口に含む。すると喉を通った瞬間にフラフラし始めた。それほどアルコールが強いのだ。

 作った本人ですらいまだに飲み慣れていない。

 

 

「さてと。3人とも布団に運ぶから」

「ま、まだ質問……zzz」

 

 

 他の2人も同様にすぐに寝てしまう。もともとかなりの量を飲んでいたところにとどめを食らった感じなのだ。

 

 

「やれやれ。布団まで運ぶか」

 

 

 3人を浮かせて屋根から飛びおりる。そのまま部屋に向かい布団を取り出して3人とも寝かせる。まだ何人か飲んでいるようだがこれ以上付き合うと何か大変なことに巻き込まれそうなので執務室に向かって残りの仕事に手をつけ始めたのだった。

 




次からは本格的に帝国編です。
ただかなり変えるつもりなので


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55話

 暗い暗い夢の中。それは少し前の記憶。

 あることを思い出していた。俺の前世は碌でもなかった。小さい時の記憶は覚えているのはごくわずか。紛争地帯に生まれそのまま知らない奴らに拾われた。

 そこからの記憶はあまり思い出したくもない。常に暴力を振るわれる日々。小さい時はなかったが4.5歳あたりから振るわれていたと思う。

 そしてそこから数年後僕は全てを変える出会いがあった。

 

 

「ここにいる人たちみんな助けなさい」

 

 

 その一声で全てが終わり僕は助けられた。救助された僕はそのまま広い屋敷に連れて行かれた。連れていかれたのは一つの部屋の中だった。

 

 

「あなただけはこの屋敷で働いてもらいます」

「…………」

「まぁ今はいいけどいずれは私を助けてね」

 

 

 そこからは言われるがまま動いた。今にして思うとあの頃があの世界で一番楽しかったのかもしれない。そこからしばらくした頃僕もようやく話せるようになった。

 

 

「お嬢様早く食べてください」

「いや〜」

「食べないと育たなくて将来の旦那に嫌われますよ」

「いいもん。その時は結婚してね」

「無理です。万が一できても好き嫌いする人嫌いなので」

「わかった、わかったよー食べるからー」

 

 

 こんな毎日が続くならそれも悪くない。そう思って毎日を暮らしていた。そんな毎日が崩れたのは全てあの時だった。

 それが夢に出てきた瞬間に僕は目が覚めた。

 

 

「ここは……」

「随分休まれていましたね」

「シュナ」

「もうお昼前ですよ。こんな時間まで寝るなんて珍しいですね」

「そうだな」

 

 

 久々に嫌な夢を見たせいか服の中はかなり濡れている。汗を書いたのだろう。寝る直前まで仕事をしていたおかげでかなり余裕があるために風呂に向かう。

 風呂で汗を流すとすぐに出ていく。そろそろ全員集まっている頃だろう。自宅に向かい中に入ると全員が揃っていた。

 

 

「さてとそれぞれの特訓相手を言うか。テスタロッサはディアブロ」

「は、はぁ!?あの黒と特訓?冗談でも笑えませんわよ」

「それでカレラはアゲーラとハクロウだ」

「了解した」

「ウルティマはヴェルドラと」

「はーい」

「ビアンカとフローラはお互いに特訓しててくれ」

「りょーかい」

「かしこまりましたわ」

「マヤとユキは僕が鍛える」

「了解」

「やった〜」

 

 

 カレラたちがかなり睨んでいるが無視だ。それよりもテスタロッサから放たれている殺気がやばい。かなりというか人によってはそれだけで死にそうだ。

 

 

「それじゃあ解散。それぞれのところには話はもうしているから」

「ちょっとシスタ様!?」

 

 

 テスタロッサが何か言っているが無視だ。それぞれがバラバラに移動する。マヤとユキも僕の後ろについてくるのでテスタロッサの意見は今回無視だ。

 

 

「迷宮に向かうか」

「了解」

「はーい」

 

 

 3人で迷宮に移動する。入り口付近に来ると入場する人がいたのでその列から少し離れたところで迷宮に用意している部屋に移動する。

 転移すると誰もおらず3人だけの空間になった。

 

 

「さてとお前らの特訓だが実際にはユキとマヤで戦ってもらう」

「ちょ!」

「でもそれって実力差ありすぎない?」

「まぁそうなんだが実際は少し違う。ユキには全力でやってもらうがマヤが使っていいのは身体強化と体だけだ」

「変態」

「ちがうわ!徒手格闘だよ。そっちの方面鍛えてないだろ。今マヤが使ってる武器は確かに性能が高いけど万が一吹き飛ばされたりでもしたら笑えない」

「まぁ確かにその可能性がないとは言わないけど今のあたしに勝てるのなんて少なくない。一部の魔王、それと竜種くらいじゃない?」

「はぁ、自己評価がちゃんとできてるなら何より。けどマヤには言う必要ないと思うけど」

「っ!あいつらか。わかったよ」

 

 

 ユキが銃を打ち始めたのを見て僕も分身体を出す。その分身体は

 

 

「それでは始めます」

「頼んだぞ」

 

 

 僕の癖ややり方などを知っているルウェルを分身体に宿らせた。ルウェルは最高の特訓相手とも言える。使うのはお互いに自分にあっている武器。僕は刀を抜きルウェルも刀を創造する。

 リムルやヴェルドラクラスになると物を作るのも意外と簡単になる。もちろん鍛治師が作ったものに及ぶはずがないのだが。

 

 

「それでは始めましょうか」

「あぁ」

 

 

 僕が踏み込むとルウェルも踏み込んで迎え撃つ。何度か斬撃を繰り出すとルウェルはそれを全て避ける。予備動作や今まで見てきた経験があるのだろう。

 そして右手を上から振り下ろした瞬間ルウェルはそれを最小限に避けて

 

 

「隙だらけですよ」

 

 

 体を回転させてそのまま左脇腹を蹴られる。ほんとに手加減がなくその瞬間骨にヒビが入ったのがわかった。身体強化しか使っていないのにかなり実力に差がある。数度挑んで勝てないことがわかったので少しやり方を変えることにした。

 身体強化を発動しながら目を一番に強化する。攻撃を繰り出しながら相手の反応を常に観察する。

 

 

(それでいいのです)

「まだまだ」

 

 

 そこからは一進一退の攻撃が続く。20分ほど続くとルウェルが刀を手放す。

 

 

「もう十分です」

「そうかな」

「後はゆっくりしておきましょう。そろそろ帝国が攻めてきますので」

「そろそろか。予想より早いな」

「テスタロッサたちの情報からの分析です」

 

 

 ルウェルは分身体から僕の体に戻ってくる。隣では激しい土煙と爆撃音が鳴り戦いが続いている。自分の戦いの最中に横目で見ていたがユキは上手く戦っているようだ。様々な銃弾の威力を使い土煙を起こして戦っている。

 

 

「うまく戦ってるな」

《ユキはかなり頭がいいのでそのおかげもあるのでしょう》

「だろうな。あの7人と比べても上位に入るだろう。テスタロッサと同じくらいだな」

 

 

 ユキはなんとか戦っているがそれでも実力差は歴然だ。剣を使っていないとはいえ2人の実力差は見て明らかだ。本来であれば瞬殺されてもおかしくないのだがそれでも僕が戦っている間一度も倒されていない。

 戦い方としては倒すと言うより粘ると言う感じだ。撃ってる弾幕の壁が破られたら自身を身体強化して一気に間合いを詰める。そのまま殴ったり銃身で脇腹を殴る。

 魔素量に関しては僕に引けを取らないのでただのパンチなどでもマヤが引くわけだ。

 

 

「あーもう腹立つ」

 

 

 そういい空間を開き剣を取り出す。

 

 

天魔の一撃(メフィストストライク)

「は!?」

 

 

 ユキは言葉と裏腹にかなりの数の弾丸を放つ。しかしそれでは剣を持ったマヤは止まらない。やばいと思った僕は間に入り剣を受け止める。そのまま勢いを使いマヤを転ばす。

 

 

「はいここまで。マヤの負けね」

「うぅ」

「ユキもマヤも戻るよ。帝国が動いたって報告が入った」

 

 

 

 帝国が動いたのでここまでだ。本当ならもう少し鍛えたかったが動いたなら備えないといけない。リムルには今回軍の方を任せてある。テスタロッサたちもそっちに参加だ。ただユキ、マヤ、ビアンカ、フローラは僕の指示で動くことになっている。広場に向かうともうすでに各部隊の隊長たちがいてテスタロッサたちの配属も決まったようだ。

 

 

「さてとリムル後は任せるよ」

「は?お、おいおいおいシスタはどうするんだよ」

「ちょっとね。気になることがある」

「はぁ〜なら本隊が出てくるまでに帰ってきてくれよ」 

「それは約束する」

 

 

 リムルはそれ以上何も言ってこなかったので僕たちは広場から離れる。

 

 

「それでどうするの?」

「とりあえず誰にも見えないところまで上ろうか」

「なぜですか?てっきりまたあちらに行かれるのかと」

「悔しいけど今の僕の力でもあいつには勝てない。なら結界が有効の間に力をつけるよ」

「そうですか」

「それで何するのさ。ここからなんて何にもできないよ」

 

 

 今僕たちがいるのは地上から遥か上空。ここから魔法を撃っても届くまでわずかだが誤差が出るだろう。

 

 

「目的はある人物の呼び出しかな」

「こんなところに来る物好いるの〜?」

「まぁしばらくは様子を見てようか」

 

 

 そこからホログラムで各戦場の様子を映し出す。なかなか面白いことになっているようだ。これはリムルにも言っていないがリムルの様子も写している。リムルの対応も見てみたいからだ。

 そこから1時間ほど経った頃莫大な魔素がこの場に近づいているのがわかった。

 

 

「シスタ!」

「わかってるよ」

 

 

 そして目の前に現れたのは待っていた人物その人だった。



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56話

「久しぶりね」

「やっぱり来たな」

 

 

 目の前に立つのは蒼髪にチャイナドレスを着た人物だった。

 

 

「ヴェルグリンド」

「ふふ、久しぶりの再会を喜びたいのだけれどその前にテンペストを渡してくれる?」

「それをどういう意味で言ってるのか教えてくれるのか?」

「言葉通りよ」

「それの意味を分かってて俺に言ってるのか?」

 

 

 その言葉にマヤたちは驚く。いやマヤは動揺があったがそれほど驚いてはいない。

 前にこの言葉遣いを聞いているのだ。

 

 

「それは本当に戦争をするということでいいんだな」

「ええ、そもそもあなたがここにいることがわたしからしてみればよかったのよ」

「もしかして俺を消せるともでも」

「そのために私自ら来たのだもの」

 

 

 ヴェルグリンドは魔素を解放する。しかしその威圧感は何か物足りない。いや足りないというより今のヴェルグリンドではこれが全開のようだ。

 

 

「まさかそれで戦う気か?」

「ええ、あなたを滅ぼすのはこれで十分よ」

「そうか。さてと4人とも手を出さないでくれよ。すぐに終わらせてくる」

 

 

 飛び出すとヴェルグリンドはタイミングを合わせて刀を創造して斬りかかってくる。その瞬間刀を構えるのではなく手のひらの上に一つの球体を作った。今の俺が作れる最強のうちの一つだ。それに刀が当たると刀は砕けて吸収されていく。

 

 

「仮にも神話級を砕くなんてなんなのそれ」

「さてここで問題だ。神話級が厄介な点とは」

「そんなの性能でしょう」

「まぁそれもあるんだけど一番は修復能力だ。壊れようが欠けようがある程度の時間があれば修復する。それが厄介なんだよ。ならどうすればいいのか。考えた答えがこれだ」

 

 

 重力を極限まで固めてブラックホールを作る。ただ作るだけでは周りの人や物を全て吸い込んでしまう。だから層の境目を作る。その周りに普段の重力を纏うということをすると周りには何も被害が出ない。それに対して刺激が加わるとそこからそこが弾けてそこから全てを吸収する。

 

 

「あなた一体どこまで強くなるのかしら?」

「んーわかんないけどとりあえずこの世界の誰よりも」

「そう」

「それでまだやる?マヤの時助けてもらったからできれば殺したくはないが」

「そうね。ここでやりあうのは得策じゃないわ。とりあえず引くわね」

「それなら軍を引いてくれると助かるんだが」

「それは無理よ。ルドラが望んだことだもの」

 

 

 その時のヴェルグリンドの言葉は声色自体はいつもと変わらなかったがとんでもない重さを感じた。これはもう決定事項なのだろう。

 

 

「はぁ〜分かったよ。とりあえず帰れよ。殺したくはないからな」

「分かってるわよ」

 

 

 ヴェルグリンドは落ちていく。比喩ではなくそのまま落ちていったのだ。あの服で落ちていって大丈夫なのか?下でたまたま上見たやつとか卒倒しそうだが……

 

 

「シスタ様何を考えているのですか?」

「フ、フローラ。何も考えてないわ。気にすんな」

「あっやしぃなぁ〜。何かやましいことでも想像してたんじゃないの?」

 

 

 なんでこういう時の女は極端に鋭いんだ、らまぁ考えてただけで実際のところ興味はないのだが考えたのは事実だから何も言えない。

 

 

「まぁ後は戦況を見ておくか。テスタたちにも本気は出すなと言ってあるし」

「シスタ〜お腹すいた」

「お前は全く」

 

 

 マヤが文句を言い出したので仮の地面と机を出す。最低限の強度はあるために後は浮かせる力さえ発動していればいい。そこに飲み物とお菓子を用意する。後は戦場の映像を流すだけだ。

 

 

「ところでよシスタはあの女が来ることわかってたのか?」

「んー半々ってところだけどヴェルグリンドの性格からしてくると思ってたよ。何気に神経質だから。戦争を仕掛けてくるくらいだから余計な目は積んでおきたいんだろうね」

「そこまで分かってるならなんでこのメンツなんだ。本来ならもっと戦力がいるだろ。あいつヴェルドラと同じ気配がしたから」

「そこまで感じ取れるなら上等上等。ユキもだいぶこの世界に慣れたようで」

「まぁ嫌でもなれるな。殺伐としすぎだろ」

「ユキが元いた世界はどうだった?」

「何にも覚えてねぇ」

 

 

 その言葉に絶句した。正確には何も言えなかった。ユキが元いた世界でどういう扱いだったのかは知らないが少なくとも戦いに近いところに身を置いていたはず。今も人を撃つのには躊躇いがあるが体の動かし方は戦いに身を置いていた物の動きだ。

 

 

「まぁ思い出したら教えてくれ」

「了解だ」

「さてさて戦況はいかがかな」

 

 

 戦況を見ると最初は五分。しかしすぐに巻き返していくテンペストの軍隊。直ぐに巻き返す。その直後帝国軍が次々に死んでいく。映像だけではわからないがおそらくテスタたちが殺ったんだろう。

 

 

「やっぱり強いなぁ〜」

「それをシスタが言ってもねぇ」

「そうだね。シスタは私が知ってる限りじゃ一番強いから」

 

 

 やめてやめて恥ずかしい。ビアンカまで賛同するとなるとなかなか恥ずかしい。ユキは世界を知らないと言ってもいい。ただビアンカとフローラはあの世界のことを知っている。お世辞とわかっているから恥ずかしい。

 

 

「まぁその話は置いといて流れを見るか」

「そうだねー」

 

 

 お茶のおかわりを要求してくるマヤにお茶を入れて今の状況を改めて確認する。なんだかんだでテスタロッサたちが大暴れしているようだ。とりあえず今のところは手を出さないほうがいいだろう。先遣隊とも言える部隊が壊滅したことで一時的に休戦のような状態になったみたいだ。 

 

 

「さてとそろそろ降りるか」

「え、もう?」

「まぁな。むしろここからが僕たちが出る本番だよ」

 

 

 シスタたちが空から降りてテンペストに向かう。その道中に何体かの魔物がいたが知性がなく襲いかかってきたので簡単に蹴散らす。

 

 

 

「リムルお疲れさん」

「俺は何もしてないけどな」

「けど途中何度か立ち上がって行こうとしてたじゃないか」

「お前見てたのかよ」

「なかなか面白かったぞ。あそこまで慌てるリムルはシオンの料理の時ぐらいだからな」

「やめろやめろ」

 

 

 これ以上弄ってもいいことがないのでやめておく。とりあえずテスタたちを労おう。

 

 

「お疲れ様テスタ、ウルティマ、カレラ」

「あの程度疲れたうちに入りませんわ」

「ボクも全然だよ」

「我は暴れ足りなかったがな」

「3人にもそっちの関係ない顔してる4人にも頼みがある。特に3人はな」

 

 

 内容を少しずつ話していくと6人は直ぐに納得してくれた。ただ1人だけ納得してくれない。このまま話が進まなかったらなかなかにややこしいことになりそうだ。

 

 

「だからなんであたしがそんな役なんだよ」

「強さはともかく魔素量は幹部を含めてトップクラスだし」

「それだけじゃ話にならないだろうが」

「まぁそうかもな。だから基礎さえできて仕舞えば後は徹底的に鍛えるよ。全員で」

「…………鬼だな」

「なんとでもいえ」

 

 

 いくら僕でも知り合いに死なれるのはごめんだ。だからこそ生きるためのすべを教える。助けられる範囲の人間は生きてて欲しいと思っている。

 

 

「まぁやれるだけはやってみるよ」

「それでなんだけどクマラを説得してきてくれ」

「クマラ?」

「迷宮のボスの1人だよ。元々助けたうちの1人だったんだけど最近の伸びが凄くてな」

「それならそいつを────にしたら」

「却下」

 

 

 ユキが文句を言ってるが聞き入れるつもりはない。ただクマラも基本的には言うことを聞いてはくれるがここという場面ではかなり頑固だから説得自体はユキだけにやらせる。僕が出ていけば渋々だが従う可能性はある。ただそれではダメなんだ。クマラとユキはいいコンビになる。接近戦の成長過程のクマラ。中距離、遠距離特訓中のユキ。この2人が噛み合うことでかなり強力な戦力になるはずだ。

 

 

「さてとそれじゃあ軽く宴にしますか」

「シスタ様は参加されるのですか?」

「僕?しないよ。だって今回は何にもしてないもん」

「シスタ様が参加しないならボクもいいや」

「お前ら3人は強制だからな。拒否権があると思うなよ。後そこで抜け出そうとしてるカレラも」

「我が君がいない宴などに意味があるか!」

「はいはい。抵抗は無駄だから」

 

 

 パチン!と指を鳴らすと3人の体が固定される。その間に3人の部下を呼び宴の会場に連れて行くように指示する。

 

 

 

「さてと僕たちは迷宮に向かうか、家に帰るか悩むけどどうする?」

「んー迷宮に行かない?ちょっと戦いたいし」

「アタシも行きたいかな」

「なら行こうか。僕もゆっくりと休ませてもらおうかな」

「ダメです」

 

 

 にっこり笑いながら後ろから声がする。振り向くとシュナが圧を放ちながら笑っている。

 しかしその圧には例え魔王であっても逆らえない。あのミリムですらシュナには敵わないのだ。

 

 

「はい……でも仕事は終わらせてませんでしたか?」

「今回の戦争の中間処理です。後何より宴会に来ないなどと言われるのですか?」

「い、いや今回僕何もしてないし」

「そんなの関係ありません。シスタ様が来て嫌がる方がいらっしゃるとでも?」

「い、いや、けど」

 

 

 その間もずっと笑ってる。何も言えずに完敗した僕はスライムの形態でシュナに連れていかれたのだった。

 



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57話

久々の投稿です
しばらく休んでたんでまた少しずつ書いていきたいです



 ヴェルグリンドはルドラからの本隊に構えている。もちろんそれは並列存在ではなく本体で顔色ひとつ変わらない。

 しかし内心は少し違う。ヴェルグリンドは自他ともに認めるこの世の最強の一角の1人だ。

 その自分が本体じゃなく並列存在とはいえ何もできずにシスタに滅ぼされた。あの時のシスタはそもそも優しさという点ではまだあったほうだと思う。しかしシスタがあの時使った力は見たこともない力だ。もちろんヴェルグリンド自身が見たことない力などたくさんあるが見てしまえば大抵のことはわかる。しかしあの力の根源が全くわからないのだ。

 シスタが使っていたあの球体。外見は真っ黒で何もない物だった。しかしほんの少し攻撃が当たると何かが破れたかのように強烈な吸引力を発したのだ。しかも周りには一切の被害はなかった。後ろにいた人間たちには何も影響もなくお茶を飲んでいたのだから、

 あれほどの吸引力なら世界すら崩壊させてもおかしくない。それなのに周りには影響の影がなかったのだ。ヴェルグリンドは帝国本陣で涼しい顔をしながらシスタのことで頭がいっぱいになっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方でシスタ、リムルのテンペストでも一時的に祝賀会が行われていた。といっても活躍した人物に報酬を与えると言うものだが。これになぜか僕まで参戦したいたのが不明で仕方がない。ほとんど何もしてないし、なんなら僕がヴェルグリンドと戦っていたのは誰も知らないはずなのに。

 家でのんびり飲もうとまで考えていたが途中で考えを改める。前から考えていたことを実行するために動き出す。

 

 

「シュナ」

「はい。なんでしょうかシスタ様」

「少し正装を用意してくれ。やることができた」

「わかりました。前から用意してあるものがあるのでそちらを」

「頼んだよ」

 

 

 シスタからは見えなかったがシュナは上機嫌で部屋から出ていく。前から用意していたものだがシスタからなかなか言われることがなかったためにお蔵入りする可能性があったのだ。

 すぐに取りに行くと汚れ一つない状態で保存されている。シスタ自身が白いために黒を基調とした服。それに羽織れるようにマントまで付いているものだ。シュナはそれをシワがつかないように抱えてシスタの家に向かう。

 

 

「シスタ様こちらをどうぞ」

「え!?めっちゃいいんだけど。こんなの作っててくれたんだ」

「シスタ様に似合うと思ったらつい」

「ありがとなシュナ」

「いえ、光栄です」

 

 

 シスタは着替えに向かい、それを着て出てくる。シュナは自身が作ったはずなのにその姿に見張れてしまう。

 

 

「シュナ?」

「あぅ、こんなに似合うなんてずるいです」

「ん?なんて?」

「なんでもないです。会場に向かいましょう」

 

 

 シュナは早足でその場から出ていく。まだかなり時間があると思うんだけどな。シュナが出ていったと入れ替わりでリムルが入ってくる。

 

 

「シスタお前また何かしたのか?」

「人聞きの悪い。何もしてないぞ」

「なるほどね。その格好か」

「は?」

「いや分からなくていいよ」

「それよりなんの要件だ」

「お前の直属の3人の悪魔に役職を与えないとなと思って」

「なるほどね。それは僕も考えていたけど、ただちょっと考えていることがあるんだけど」

「へぇー聞こうかな」

 

 

 僕は考えていたことをリムルに話す。初めの方は難色を示していたが、空の上で起こったことの一部を話す。ヴェルグリンドのことを内緒にして上手く話せたと思う。するとリムルはそれを了承すると思ったが一部だけ内容を被せてきたのだ。しかしそれ自体元々考えていたものの一つなので特に否定することはない。

 しかし今回のことで確信した。あの七人にはある事をすると。これがなくてはなんともならないが色々と問題がある。

 第一にビアンカとフローラ、そしてユキだ。ビアンカとフローラは単騎で僕と変わらない戦闘能力があるために部下を必要になる時があるとしたらその時にでも考えればいいだろう。

 問題はユキだ。この国に来たのも最後で僕の直属という立ち位置にいる。そのせいで一部からよく思われていないとソウエイからの報告で聞いたことがある。

 たかが僕の部下になっただけでなんでそんなにも当たりがきついのかわからないがまぁそれぞれに思うところがあるんだろう。

 だからこそユキの力を解放させてやりたい。

 

 

「シスタ様失礼します」

「シュナどうした?」

「クマラさんが来ておりますが」

「なるほどね。通してくれていいよ」

「承知しました」

 

 

 シュナが出ていくとそれと入れ替わるようにクマラが入ってくる。いつもは基本笑顔か見ただけでわかるほどテンションが高いのだが今回は違う。

 

 

「突然な訪問失礼します。しかしわっちは聞きたいことがあってきやした」

「へぇ、聞きたいことって?」

「シスタ様が考えていることでありんす」

「僕の考えを聞きたいと」 

「わっちの

 

「先程ソウエイ殿から話していただきやしんた」

「なるほどね。それを聞いて僕に一体何を」

「なぜわっちではなくあの新参者なのでありんす!?」

「まぁ言いたいことはわかるよ。実際その手の報告はソウエイからも聞いている」

「なら!」

「ただ少しだけ落ち着いて僕と話をしようか。少し座ってくれ。まだ正式な発表には少し時間があるから」

 

 

 クマラは僕の言葉を聞いて座ってくれる。しかしまだ納得していないのが目に見えてわかるような状態だ。お茶を入れてから席に着く。クマラは少し不満そうにしながらも入れたお茶に手を伸ばす。

 落ち着いたタイミングを見計らい言葉を話し始める。

 

 

「クマラの言い分はわかった。新しく新設する────ーに任命しろってことだろ」

「そうでありんす」

「ただそれに任命されなかったからといって僕とクマラの関係が変わるわけじゃないのにそこまでこだわる理由はなんだ?」

「わっちはシスタ様に仕えてきました。その中での特別な席があるとわかってその席に座りたいと思うのはおかしいことでありんす?」

「いやクマラがそこまで慕ってくれてるのは嬉しいよ。今のクマラの意見は100人が聞いたらその通りだと思う」

「なら」

「ただ僕が考えているものにクマラはサポートに回って欲しいんだよ」

 

 

 この話はいくらしても平行線になる。サポートをしてほしい僕とその席に座りたいクマラ。平行線になるならやることは決まっている。この世界ではただそれだけが全てを表すのだから。

 

 

「ならわっちがサポートに回ったらシスタ様は喜んでくれるでありんすか?」

「へ?あ、うんもちろん。すっごく助かるよ」

「分かりました。まだ納得いっていないところはありやすが今は納得しておきます」

「クマラ本当にありがとう」

 

 

 僕はたまらずつい抱きついてしまった。絵面的にかなりやばいのだがそこまで気にしていなかったが

 

 

「シ、シスタ様。あわわわわわ」

「あ、ああ。悪い悪い。ついつい」

「あ、いえ。ではこれで失礼します」

 

 

 もちろんクマラが最後まで抵抗することもあった。というかそっちの方を警戒していたから最悪の場合ユキと戦わせることさえ頭に入れていたのにクマラが想像以上に成長していることにびっくりが追いつかない。まぁクマラに抱きつくとも思っていなかったが。

 クマラが出ていったために部屋は静かになる。シュナもいないために部屋の雰囲気は静かそのものだ。

 小説を取り出して読む。リムルは漫画再現しているために僕は小説だ。というか漫画より小説の方が好きなため小説を出しているのだが読むのは限られている。ウルティマやカレラは読まずテスタやビアンカ、フローラはよく読んでいる姿を見る。また意外にもシオンも読んでいる。

 シオンはこういうのに興味がないと思っていたのが本人曰く面白いのだと。音楽祭でもシュナとの絶賛の演奏をしていたし少し考えると不思議ではない?のかも

 そんなことを考えているうちに先の準備が整ったと連絡が入ったので僕は移動することにした。




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58話

 今回の表彰式だが僕はほとんど何もしない。あいつらの発表も実際のところ秘密裏に行うことにした。本来なら発表する予定だったのだが急遽予定を変えることにした。帝国からの攻撃は一時的に止んだがヴェルグリンドが出てきていない時点でおかしいのだ。西側諸国を蹂躙するだけならヴェルグリンド1人で十分足りる。実際にヴェルドラは姉に苦手意識があるみたいだし、あの反応なら勝てるかどうかも怪しいだろう。

 ヴェルザードには完全に苦手意識があるみたいだしヴェルグリンドにも持っていても不思議じゃない。

 

 表彰式が始まり1人また1人と表彰されていく。そして悪魔3人になった途端にリムルは僕に目配せして代わる。

 

 

「テスタロッサ、ウルティマ、カレラお前たちの働きは素晴らしかった。テンペストの幹部に任命する。虐殺王、残虐王、破滅王を名乗ることを許す。これからも頼むぞ」

「「「は!」」」

 

 

 3人とも膝をつきそれに従うように返事をする。それに関して突っ込む気はないがシスタは思念伝達にて指示を出す。

 

 

《お前たち3人と、マヤ、ユキ、ビアンカ、フローラは後で家に来てくれ。大事な話がある》

 

 

 7人を家に呼ぶことにする。この後宴があるらしいが初めに顔だけ出しておけば後原村がなんとかするだろう。

 シスタという人間は元々関わり合いを嫌う。嫌っているが周りに合わせるということができるので他の人に押し付けるということができるようになった。

 宴が始まり、少しして家に帰る。入るとすでに待っていたかのように7人ともいた。

 

 

「じゃあ言うわ。ここにいる7人を僕の直属の部下、『七魔戦姫』に任命したい。もちろん断ってくれても「断るわけないじゃんいいけ……ど」

「そ、そうか」

 

 

 否定される可能性もあったがあそこまで即答されるとも思わなかった。

 

 

「七魔戦姫ですか?」

「そ、まぁネーミングセンスはともかく全員が女で魔族や人間もいる。だから魔と姫って字を入れたんだけども」

「わたくしはとっても気に入りましたわ」

「ボクもボクも」

「私も異論ないな」

「私もですわ」

「私もかな」

「あたしも異論なんかあるわけないじゃん」

「アタシか!?最後なのにそんな異論あるわけないだろ」

 

 

 全員からの賛同が得られたのでそれぞれの役職を決めていく。

 

 

「マヤお前を七魔戦姫筆頭にする。お前は「力」の称号を与える」

「りょーかい。謹んで受けるよ」

「テスタロッサ。お前には「知」の称号を与える」

「ありがたく頂戴いたしますわ」

「カレラお前には「暴」の称号を与える」

「受けるとも。ありがたい」

「ウルティマお前には「酷」の称号を与える」

「うん、ありがとシスタ様」

「ビアンカお前には「補」の称号を与える」

「ありがと。受けるよ」

「フローラお前には「支」の称号を与える」

「お受けいたします」

「ユキお前には「魔」の称号を与える」

「ちょっと待て!なんであたしが魔なんだよ!おかしいだろ」

「そんなことないですわ。わたくしたちからしてみれば十分魔にふさわしいですもの。あなたの成長速度は魔物たちの進化よりもさらに早いですもの」

「〜〜〜〜わかったよ!うけるよ」

「うにゅ」

 

 

 全員が受けたことによってそれぞれに新たなギフトが配られる。これはシスタ直属ということもありかなり魔素を使ったためにボクはスリープモードに落ちたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スリープモードから目が覚めるとそこはマヤの膝だった。

 

 

「あ、起きた?」

「まぁな」

「それじゃあそろそろ始まるから迷宮にいこっか」

「本隊が来るのか?」

「違う違う。リムルからの案だけど説明するのがめんどくさいから本人から聞いて」

 

 

 マヤはそういい転移して先に向かう。転移しようとしたがその前に

 

 

『ルウェルさんや。なんでスリープモードになったのかな?』

《なぜとはどう意味ですか?》

『魂を使うと思っていたんだけど』

《魂は今回使うことをやめました。理由はこれから先に使うことがあるかもしれないからです》

『その時は人類を殺せばよくない?』

 

 

 シスタはリムルと違って人間に対してそこまで干渉しない。ただ邪魔してくるわけでもないので生かしているだけだ。そんなシスタを放っておかないのがルウェルなのだ。なんだかんだで反抗したりもするがシスタのことを考えての行動なのだ。人間を殺すということも後になればシスタの心を蝕む。そうならないようにシスタの妨害を行なっているのだ。少しずつほんの少しだけでも人間に対しても、他の人間に対しても優しさを持って欲しいのだ。シスタは自身の中にある矛盾にすら気づいていないのだから。だからこそルウェルはシスタにスキルを使いこなされる前に……

 

 

『まぁいいや。それならリムルのところに行こうか』

《了解しました》

 

 

 リムルは迷宮の奥にいるみたいなのでそこまで転移していく。そこにはかなりの人数がいた。席に案内されて座る。そこで話したのはこれからの帝国の出方。まず間違いなくリムルは殺される未来があったということ。それは強者が潜んでいることを示す。間違いなくヴェルグリンドのことだと思うがそれ以外にいてもおかしくはない。

 

 

「リムルはどうする気?」

「俺はベニマル、ソウエイ、テスタロッサ、ディアブロ、シオンを連れて皇帝に会いに行ってくる。シスタはどうする?」

「僕はなんだか嫌な予感がする。こっちに残ってるよ。ただ少しいくところがあるけど」

「了解。テスタロッサを借りるけど大丈夫か?」

「そこは本人が了承してるなら構わないよ」

 

 

 テスタロッサが了承してるなら僕が断る理由もない。ましてや帝国は確かテスタロッサの縄張り付近だったかそんなことを言っていた気がする。

 僕は僕で動かしてもらうとしよう。嫌な予感は大体当たるというから余計に嫌な感じだ。七魔戦姫を呼び指示を出す。

 

 

「ビアンカ、フローラ。お前たちは2人でドワーフ王国に向かってくれ」

「あたしたちも?なんで」

「嫌な予感がする。おそらく当たってるはず。帝国が西側を掌握するためのルートの一つだしな」

「わかりましたわ。すぐに向かいます」

「それからマヤお前はこれからリムルと行動してくれ。そっちでも何かが起きる」

「リムルに?結構なメンツが揃ってるから必要ないと思うけど」

「そっちでもおそらく何かが起きる。もしリムルが暴走したら止めてやってくれ」

「りょーかい。シスタは何するの?」

「ユキと僕は迷宮の守護だな。僕がヴェルグリンドの立場なら同時進行だ」

「?どういうこと?」

「ヴェルグリンドは竜種だし魔素量も膨大だ。並列存在を使おうと1割でも残っていればそれなりの防御ができるだろ。それに前にあった時に好きなやつがいるみたいな感じだったからそいつの防御に5割残したとしても5分割にすればそれなりの戦力になる。ましてや今ドワーフにいるメンツじゃ勝てないしな。迷宮でも相手にできるのはヴェルドラとゼギオンくらいだろ」

「確かにね。それなら迷宮最優先か」

「そういうこと」

 

 

 マヤたちは各々の飛ぶ位置に飛んだり、出発を待っている。この予感が当たらないといいんだけどこういうのは当たる。さてとそれまでにやれることをやるか。

 迷宮の奥でアルゴスを覗きながらいつでも対応できるように待ち続けることにした。

 



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59話

 アルゴスで見ていると何故かテスタロッサがドワーフ王国にいた。あいつ確か帝国に行くとか言ってたような気がするんだが。

 

 

《ドワーフ王国だけヴェルグリンドの出現が早かったのでテスタロッサを回したのだと思われます》

 

 

 なるほどね。まぁビアンカとフローラも行っているから何があっても死ぬことはないだろう。少ししてこちらにもヴェルグリンドが現れる。

 その他には中華服がよく似合う扇子を持っていてそれには羽までついている。

 

 

 [ヴェルドラでてらっしゃいな]

 

 

 その一言は迷宮の中で響く。本来外で話したことが中で聞こえるなんてあり得ないことだ。そこは流石の一言に尽きる。

 

 

「ぎゃわ!姉上が来たぞ」

「師匠ど、どうする?」

「何このまま籠っておれば姉上は何も出来ぬ。そのまま迷宮の罠にかかってしまえばよいのだ」

 

 

 ヴェルドラがそんなことを言う。中のことが見えていないからだろう。けれど外の声が聞こえるのだ。中の声が聞こえてもなんら不思議じゃない。

 

 

 [ヴェルドラちゃんなかなか面白いことを言うのね。それなら]

 

 

 ヴェルグリンドは手に槍をつくる。あれはやばい。そろそろ僕が出たほうがいいか。ラミリスが慌てている。それを躊躇いなく放つと50階層まで吹き飛んだとの報告が飛んでくる。

 

 

「ありゃまぁ。ヴェルグリンドも今回は本気か」

「ウソ……階層ごと吹き飛んじゃった」

「まぁあれを止めないといけないからな。ヴェルドラ僕が出ようか?」

「いや我が出よう。シスタはここにいるものを守っていてくれ」

「了解。負けるなよ」

「クァハハハ。我は最強なのだ。姉上だろうと負ける気はないとも」

 

 

 ヴェルドラはそう言って迷宮から転移していく。そういうことなら手を出すのも僕が戦うのも野暮だ。僕自身自分の戦いを邪魔されるとキレる。ましてやあいつとの戦いを邪魔でもされたらたとえ誰であっても殺すだろう。

 そんなことを考えてるうちに2体の竜種が向き合う。2体は軽い殴り合いから互いにスキルを使い始める。そんな戦いを僕はただ見ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドワーフ王国内会議室では大慌てになっていた。ヴェルグリンドが出現したのだ。これはダメだろうとガゼルは思う。ガゼル自身テンペストでヴェルドラを見ていたため力の差は歴然だが一矢報いると思っていたが本気の竜種を見てこれはダメだと思った。あの時のヴェルドラはかなり魔素を押さえていたが本機になるとここまで違うのかと絶望する。しかも急に現れた軍隊もかなりの猛者が乗っている。

 

 

「ガゼル王お久しぶりですわ。早速なのですがヴェルグリンド様はわたくしたちが相手をしてもよろしいですか?」

「テスタロッサ殿か。それは願ってもないことだ。正直にいうと我らでは手も足も出ないのでな」

「かしこまりましたわ。では」

「テスタロッサ〜負けたら私が変わってあげるからね」

「ビアンカさん!」

 

 

 

 テスタロッサは何も言わなかった。わかっていたのだ。あれがビアンカなりの励ましだと。ガゼル王のことは何も心配しなくていい。だからこそ全力で戦えとそう言っていたのだ。

 

 それはテスタロッサだからわかった。カレラやウルティマは実際にかなり怒っていたのだがそれでもこれから戦う相手を前に冷静さを失ってはいない。それだけのプレッシャーを放っているのだ。

 

 

「さて、やりましょうか」

「ふふ、そうですわね」

「テスタ笑ってどうしたの?」

「いえシスタ様ならやりたくないと言いつつ最後には勝つのを思い出しただけよ」

 

 

 テスタロッサの言う通りシスタは口ではめんどくさい、やりたくないなど言うがなんだかんだで終わらせるのだ。実際シスタは一度だけ負けている。その事実を知らないテスタロッサにしてみれば怪我をしたが勝ってきたと思っているのだ。

 

 

「確かにシスタならそう言うわね」

「!!?我が君を知っているのか!」

「知っているの何も色々と交流があるわ。あの子が急に強くなったでしょ。少しだけ力を与えてあげたのよ」

 

 

 3人に初めて聞かされる新しい事実。シスタ様のことは信頼している。いや3人とももはや信頼という言葉では足りない。そのシスタ様から信頼されようと努力を重ね向こうにいた頃より遥かに強くなったつもりだった。いつかシスタ様から頼ってもらえるように努力をしてきたがまだまだ足りないことがわかった。

 

 

「シスタ様、ボク達に教えて欲しかったな」

「ふふ、そうね。けれどそれはわたくしたちが不甲斐ないからよ」

「それもそうだ。まずはヴェルグリンド様を倒すところから始めよう」

 

 

 3人が魔素を上げるのに対してヴェルグリンドはどこ吹く風だ。3人よりも後ろの2人を気にしている。あの2人そこが見えないのだ。シスタも一体どこであんな子達を味方にしたのか。そして原初と竜種の戦いは始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マヤは今ある結界内に囚われていた。リムルについてきて転移した途端にここに連れてこられたのだ。けど気は抜けない。目の前にいるのは誰か知らないけどその隣にいる人物はよく知ってる。

 

 

「ヴェルグリンド」

「あら久しぶりね。あなた昔シスタを殺しにきた人物ね」

「そんな昔のこと言われてもわからないなぁ」

 

 

 マヤは腕を振りかぶる。その瞬間にヴェルグリンドのいる周りが魔法陣が現れて次々に放たれて行く。放たれるのは霊子崩壊(ディスインティグレーション)だ。究極能力を上乗せしているので一撃の強さは昔とは比べ物にならない。そして魔法陣が消えて少ししてから煙が晴れる。

 しかしそこには無傷のヴェルグリンドと椅子に座ったままの人物がいた。

 

 

「なるほどね。それが王宮要塞(キャッスルガード)か」

「あ、おいマヤ。何いきなり放ってんだ」

「えー。ここで殺せたらラッキーだし、それに元々効くとは思ってなかったから」

「はぁ、シスタはいつもどうやってマヤをコントロールしてるんだ?」

 

 

 リムルは頭を抱えながら少なくないシスタへの敬意を覚えたのだった。



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60話

 シスタは今戦場を俯瞰から見ていた。ヴェルグリンドが本気で暴れたらさてさて今の僕に止められるかどうか。さてとそろそろ準備をしよう。空間から刀を出し腰に下げる。

 

 

「シスタのその姿久々かも。なんだかんだで抜刀はほとんど使わなかったから」

「まぁ確かに。けど相手はヴェルグリンドだからな」

「んーあの人ならシスタの方が強いと思うけどなぁ」

「それには私も賛成ですわ。シスタ様出られてはいかがですか?」

「まぁあいつらにもいい経験になるでしょ」

 

 

 シスタはそういいビアンカとフローラの意見を聞き流す。2人はその姿にふと疑問を感じる。シスタが警戒しているのはヴェルグリンドではないのではないか。別の何かを警戒しているように見える。それほど態度と警戒するレベルがあっていない。

 何か警戒に値するものがあるのだろうか?2人のそんな予感は戦いがかなり進んでから当たることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘が始まってからヴェルグリンドは一歩たりとも動かずに3人の原初の攻撃を凌いでいる。普通の人間であれば全身全霊で避けるような攻撃。それをヴェルグリンドは手だけで全て防いでいる。

 

 

「ここまで舐められると悔しいわね」

「確かにな。ヴェルグリンド様は一歩も動いていないぞ」

「次はボクの毒だね」

 

 

 ウルティマは手に毒を生成してヴェルグリンドに攻撃を仕掛ける。それも防がれるのだが今までとは様子が違う。防いだ瞬間にヴェルグリンドの顔色が変わる。

 

 

「これはなかなかに厄介な毒ね」

「そうでしょ。あのゼギオンですらこの毒を喰らって動きが鈍ってたからね」

「けれど」

 

 

 ヴェルグリンドは並列存在を出してから毒を喰らった方の並列存在を消す。すると毒は綺麗に消えていた。

 

 

「ウル、あの毒でどんどん攻撃してちょうだい。おそらく並列存在が何かを喰らってから消えると本体の魔素量が減るわ」

「りょーかい。ならどんどん行くよ」

 

 

 ヴェルグリンドは自身の認識を誤っていた。原初などおまけにすぎない。自身の手札という点でシスタを手に入れることさえできればあとはどうでも良かったのだ。しかしその認識は誤りであることに気づく。目の前の3人も侮ることなどできない強者の者たちなのだ。

 

 

「あなたたちを侮っていたことは謝るわ。その上で帝国に服従しないかしら?」

「「「断る!」」」

「そうなら本気で服従したくなるように全力で相手をすることにしましょう」

 

 

 ヴェルグリンドが魔素を限界まで高めていく。それは並の人間なら立っていることですら不可能なほどの高まりだ。

 しかし3人は倒すべき相手の姿をはっきりと見据えて武器を構える。

 その時だった。空中に黒より黒い魔法陣が出現したのは。それに初めに気づいたのはウルティマだ。

 

 

「なにあれ?」

「ヴェルグリンド様が呼んだ新たな援軍でしょうか?」

 

 

 その言葉にヴェルグリンドの後ろに出現した魔法陣を見る。あんなもの自身ですら知らない。しかし見ているとまるで兄上と対峙した時のような恐怖を覚える。

 

 

「なにかしらあれ」

「ヴェルグリンド様ですら知らないとは」

 

 

 そしてそこから1人の人間が出現する。出現したのは確かに人間なのだが4人は恐ろしく戦慄を覚える。あれはどうにかなる相手ではない。4人が飛び掛かるまでそう時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は4人の戦いを見ながら自身の警戒を高めていく。そしてそれは起こったのだった。魔法陣から1人の女が出現する。しかしその纏っている重圧は他のやつとは比べ物にならない。あれは化け物だ。

 

 

「来たか」

 

 

 その女はまるで戦場の状況がわかったかのようにゆっくり動き出す。それに呼応するようにあの4人が動き出したのだ。

 嫌な予感がしたがこんなところで当たるとは想定だったのですぐに行動する。そして間に入るように移動するとそこに剣が振り下ろされる。認識できる速だったので刀で受け止めた。二つの刀がぶつかる音は戦場中に響く。

 

 

「あら、防がれるなんて想定以上だわ」

「馬鹿が。防いてなんていねーよ」

 

 

 その言葉と同時にシスタの肩に切り傷が入る。それは深くもないが決して浅くもない傷だ。

 

 

「「シスタ様!」」

「我が君」

「お前ら早く逃げろ。戦争は終わりだ。こいつの狙いはヴェルグリンド、お前だ」

「あらあら、気づかれていたのね。そう私の目的はそこにいる竜種ヴェルグリンドなのよ」

「なるほどね。竜種を集める理由は他所に攻め込むためだ」

「御名答。あなた私の部下にならないかしら?」

「そこまで考えてるなんてあの方が仰った通りね。あなたは消すしかないみたいね」

「なら始めから部下になんかしようとするな」

「ふふ、私気に入ったものは必ず手に入れるタチなの」

 

 

 それ以上の問答はなく2人は斬り合う。ヴェルグリンドから見ても2人の技術にそれほど差はないように見える。片方が斬りつけるとその瞬間にやり返している。しかし体の傷は別だった。シスタの体には目に見える数が増えていく。それに比べて相手の傷はすぐに回復していく。

 

 

「んーこのままじゃ勝負がつきそうにないね。そろそろ本気の一端を見せようかな」

「は、言ってろ」

 

 

 それに反応するように女の目の色が変わる。片目だけだが輝くように光を放つ。それはシスタにとって最悪の光となるのだが今この時はまだ知ることはなかった。



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番外編
バレンタイン


ごめんなさい
本当は日が変わると同時に投稿したかったんですけど




siki901さん評価ありがとうございます


 

 

 

 その日が来る1週間ほど前テンペストはざわざわしていた。リムルがいい出したのだ。もうすぐバレンタインがある.と

 しかし魔物たちにとってはバレンタインというものが何なのかわかってはいない。そんなことも露知らずリムルは次々に内容を話していく。

 内容は至って簡単に短く話したつもりと本人は言っていたが何か恨みでもあるのかという感じの顔をしていた。

 そんなわけで今僕はリムルの家に来ている。

 

 

「で、なんであんな顔だったのさ」

「なにがだよ」

「バレンタインになんか恨みでもあるの?」

「うっ!バレンタインなんてリア充のイベントなんだよ」

「おいおいリア充なんて言ってもこっちの世界の奴らほとんどわからないだろ。それにリア充ってベニマル、ソウエイとかだろ」

「そうなんだけどなぁ」

 

 

 リムルは苦い顔をする。案外他の奴らももらえそうだなと思っているのだ。ガビルもおそらくソーカにもらうしゲルドももらうだろうと思って大きなため息をつくリムル。

 自分にもくることなんて予想だにしていないほどのため息だったのだ。

 そんな2人をよそに街ではバレンタイン一色に染まっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さーてとバレンタインか。何作ろっかな?チョコそれともクッキー?はたまたケーキか何にしよう。

 自宅のキッチンの前に立ち思考を回す。しかし目の前にきた悪魔に一瞬で現実に戻されたのだった。

 

 

「うわぁ!なんでいるのよ」

「実は聞きたいことがあってだな」

「なに?」

「じ、実はチョコの作り方を教えて欲しいのだ」

「なんで私なの?」

「マヤは我が君と同じ世界出身だからな。詳しいと思ったのだ」

「へーそれで」

「だ、だから教えてもらいたく」

 

 

 カレラは頬を赤くしてマヤに頼み込む。それを見たマヤはカレラが可愛く見えたのだ。そして仕方なく引き受ける。

 普段は自由気ままに核撃魔法をぶっ放して自由にしているイメージが崩れた瞬間だったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウフフ、さて私はどうしましょうかと思って歩き出す。マヤさんはカレラを見るようだしわたくしはっと

 

 

「シュナどのお買い物ですか?」

「テスタロッサ様。ええ、今回リムル様が仰ったバレンタインというイベントをやってみようと思いまして」

「よろしければわたくしにも教えていただけませんか?」

「テスタロッサ様にですか?」

「ええ」

 

 

 シュナは不思議に思う。テスタロッサ様をはじめとするシスタ様が連れてきた悪魔三人はなんでもできそうなイメージがあるのだ。

 

 

「わかりました。何を教えたら良いのでしょうか?」

「シスタ様が喜ぶお菓子を作ろうと思いまして」

「シスタ様はテスタロッサ様が作られたものだとなんでも喜びそうですが」

「ええ、シスタ様は喜んでくださると思いますわ。ですが無理してまで褒めて欲しくないのです」

「わかりました。美味しいものを作って喜ばせましょう。精一杯お手伝いします」

 

 

 こうしてテスタロッサはシュナに教えてもらうことになって2人は材料を買って作る練習から入ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃ウルティマは誰よりも早く作り始めていた。

 

 

「ヴェイロン!これできないんだけど」

「お嬢様それはわかりますがその度に燃えカスにしていてはいつまでもできませんぞ」

「なに?」

 

 

 ヴェイロンが何気なく放った一言はウルティマの逆鱗に触れた。三人の悪魔の中でもっとも残酷なのがウルティマだろう。

 そのウルティマの逆鱗に触れたのだ。ここで死ぬかもしれないと思った。しかしそれは状況が許さなかった。

 

 

「よ!なに魔素が乱れてるんだウルティマ?ウルティマたちが暴れるとこの街が壊れるんだけどな」

「シ、シスタ様!!なんでもないよ。ちょっとだけ気が立ってただけ」

「そっか。なるべく抑えてくれよ。しょうがない時もあるからな」

「うん、ごめんなさい。迷惑かけて」

「そんなことないよ。ウルティマたちには助けられてるからな」

「ありがとシスタ様。待っててね」

「??なんのことだ?」

 

 

 シスタは不思議に思いつつ転移していく。ヴェイロンは心底安心する。シスタがくると主人であるウルティマは猫をかぶる。そしてそれはなかなかに取れなくなっていて安心の一言に尽きるのだ。

 

 

「では始めますかな」

「うん!これはどういうこと?」

 

 

 こうしてウルティマとヴェイロンのペアでチョコ作りが始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バレンタイン当日になると街が騒ぎ出す。それぞれにチョコを渡すもの逆にもらうもの。

 その中にはいろいろな感情を持つものばかりだ。今までの感謝を伝えて渡すもの。友達として渡すもの。そして自身の気持ちを伝えた上で渡すものがいる。

 そしてもそんなことが行われている中シスタはというと朝から彼らに呼び出されていた。

 

 

 朝部屋から出ていくと手紙の中に悪魔たちからのお願いが書いてあったのだ。

 朝はカレラ、昼はウルティマ、夜はテスタロッサとの予定が入っている。まぁもっとも俺の予定なんて全く関係ないようなギチギチに詰め込んだような感じだから倒れることのない体で良かったと思ったのは別の事実。

 

 

「我が君!それではいくぞ」

「お、おう」

 

 

 カレラがいつの間にか目の前にきていて驚いた。それに今日のカレラはいつもと格好が違う。ここ最近敵が攻め込んでくることもなかったせいだろう。それにバレンタインということでこのあと誰かに渡しに行くのだろう。

 いつもの軍服ではなくジーパンに白いTシャツ、その上にカッターシャツを着ている。一見簡単な服装なのだがカレラほど整っている女がやるとこれがかなり目に毒なのだ。

 

 

「それで今日はどうしたんだ?ずいぶん気合が入ってるみたいだけど」

「ん、んん!なんでもないぞ。このくらい当たり前だ」

「そっか。よく似合ってると思うよ」

 

 

 カレラはそれを聞いて顔を真っ赤にして背ける。ただ一言似合っていると言われただけでこんなにも胸が弾むのだ。

 こんなことは冥界にいた時はなかった。我が君のそばにいるとこの気持ちが抑えきれなくなる時があるのだ。

 もっと役に立ちたい、もっと見てほしいという願望があるのだが押さえつける。

 

 

「我が君、デートというのはどうするのだ?」

「デート?なんで急に。まぁそうだな自分たちの好きなところにでも行くんじゃないのか?」

「ならどこに行く?」

「??ん?よく話が見えないけどどこかに行きたいのか?」

「我が君が行きたいところでいい」

「それなら森の奥でゆっくりするか」

 

 

 そうして2人は並んで歩いていく。周りから見たら恋人に見えるのだが相手がシスタということもあり女の魔物たち、人間たちは気づいていたのだった。

 カレラが誘ってシスタが付き合っているのだと。

 2人は誰もいそうにない森の奥につく。なにをするのかと思ってシスタは待っていたが意外にもカレラはなにも言ってこない。

 木にもたれかかりのんびりしている。顔が整っているためにその行動一つでもかなり破壊力がある。

 

 

「我が君はゆっくりしないのか?」

「そうだな。たまにはゆっくりさせてもらおうかな」

 

 

 カレラの隣に座り腰を下ろす。そうして疲れていたのかだんだんと体が倒していくシスタ。そして当たりそうになったところでなんとか持ち堪えて体を元の位置に戻す。

 しかし何回か繰り返しているうちに体を倒されてカレラの膝の上に寝かされる。

 

 

「少しゆっくりするといい」

「ああすまない」

「気にするな」

 

 

 カレラの言葉は普段から自由気ままに生きている人間の言葉ではなく相手を気遣った上での言葉だったのだろう。その言葉を部下にもかけてやればいいのにと思ったが口には出さないシスタなのであった。

 そのまま時間は過ぎていき昼になりそうだったので街に帰ることにした。

 

 

「我が君これを」

 

 

 カレラから差し出されたのは綺麗にラッピングされた箱だった。

 

 

「これは?」

「チョコなのだ。多分うまくできてると思う」

「食べてみても?」

「ああ」

 

 

 箱を開けて中を見てみると綺麗とは言い切れないが頑張った証のチョコが入っていた。それを口の中に運ぶ。

 すると甘くおいしいちょこの感じが口の中に広がる。

 

 

「カレラありがと。すっごいうまいよ」

「!!」

 

 

 それだけを言うとカレラはなにも言わず間に転移してどこかに行ってしまったのだった。

 

 それにしてもこのチョコかなりうまいと思うんだけどなぁ……

 俺も街に転移した。次はウルティマなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 待ち合わせ場所に行くとウルティマはいなかった。なので少しだけ待つことにして近くの椅子に腰を下ろす。

 そして少しすると目の前が真っ暗になる。

 

 

「だーれだ?」

「ウルティマ。いきなりだな」

「なんだバレてたかー」

 

 

 そしてウルティマの方を向く。すると紫のドレスをきたウルティマがいて一瞬止まった。

 

 

「どぉシスタ様」

「よく似合ってる」

「ありがと!」

 

 

 何より一番印象的だったのはいつもサイドテールで固めている髪の毛を下ろしていたのだ。

 それがやたらと印象につく。そしてウルティマにも先程同様どこにいきたいか聞く

 

 

「いろんなところで食べ歩きしたい」

「なるほどね。それじゃあ行こうか」

 

 

 こうしてウルティマといろんなところを見て食べ歩く。そうして時間だけが過ぎていき最後にいけるところが一軒と言うところでウルティマが突然あそこにいきたいと言い出してその店に入る。

 それはこのテンペストでも1、2を争うぐらいうまいケーキ屋さんだったのだ。

 

 

「どうもー」

「お、シスタ様じゃねぇか」

「ヨシダさん。どうも」

「それにそっちの嬢ちゃんははじめましてだな」

「うん、よろしくね」

 

 

 そう言うやりとりがあった後に席に着く。そして俺はショートケーキを。ウルティマはチョコレートケーキを頼む。

 来るまでの間に一応聞いておくことにした。

 

 

「なんでここを知ってたんだ?」

「有名だもん。みんな知ってるよ」

「そうか」

 

 

 そうしてウルティマはずっと見てくるので気まずくなって目を逸らす。

 そうしている間にケーキが出来上がって持ってきてくれる。

 すぐに食べ始めたウルティマ。よほど美味しいのだろうか。口の周りに所々チョコがついている。まぁ手下の悪魔たちからもお嬢様なんて呼ばれるぐらいだからあまり気にしないのだろう。机から体を伸ばしてそれを拭く。

 

 

「付いてたの?」

「うん」

 

 

 ウルティマは恥ずかしかったのだろう。顔を背けて真っ赤にしている。

 俺もケーキを食べることにして口に運ぶ。すると確かにうまかったのだ。なんだかんだでこのケーキ屋に来るのは初めてだったから想像以上の味に驚いている。そして食べ終わり店を出る。

 

 

「あ、あのシスタ様これ」

「ん?」

 

 

 渡されたのはラッピングがされた袋だった。開けてみるとカレラはチョコだったがウルティマはクッキーだったのだ。

 形は綺麗にできているがなんだか違和感を感じる。

 

 

「ウルティマこれ本当に作ったやつか?」

「え!?うん。そうだけど……」

「なら俺はいいけど本当に作ったやつが欲しいかな」

 

 

 そういい口に入れようときた瞬間にその腕を掴まれた。そして少し恥ずかしそうにもう一つの袋を渡してきた。

 

 

「それがボクが作ったやつ。美味しくないけど」

「どれどれ」

 

 

 口に運んでみると確かに上手くもなくまずくもなくといった感じだがこれにどれだけ頑張ったか感じられたのですごい嬉しく感じた。

 気がつくとウルティマの頭に手を置いて撫でていた。

 

 

「ありがとう。すっごい嬉しいよ。それにおいしかったよ」

「〜〜〜///」

 

 

 ウルティマは転移して逃げるようにどこかに行ってしまったので少し早いが次に会う予定のテスタロッサとの待ち合わせ場所に向かう。

 そして行ってみるとやはりまだきていない。暇なのでベンチに座って待つことにする。

 そして時間になる少し前にテスタロッサがやってきた。

 テスタロッサも気合の入った服装でやってきた。白と緑のドレス。肩ははみ出ていてスタイルの良さが際立っている。

 

 

「テスタロッサずいぶん気合が入ってるな」

「そうでしょうか?ウフフもちろんですわ」

「よく似合ってるよ」

 

 

 ここ三人と会ったけど全員が全員気合の入っていていつもと格好が違う。だからこそだろうか三人が三人とも破壊力がすごいのだ。

 

 

「それでテスタロッサはどこに行くんだ?」

「ウフフ少し歩きませんか?」

「歩く?」

「ええ。それがいいですわ」

 

 

 テスタロッサのお願い通り街の中を歩いていく。あくまでもテスタロッサが進んでいく方向についていっているだけであってどこに行くかは全くわからない。

 しばらく歩いていくと森の中に入っていく。しかしテスタロッサの足は止まることなく進んでいく。

 

 

「ここですわ」

「うわーめっちゃ綺麗だな」

「ウフフここを知ってるのは私だけですから」

「なんで俺に?」

「シスタ様だからですわ」

 

 

 意味はわからないが近くに何故かあったベンチにテスタロッサが腰をかけたのでその隣に座る。そこは湖に小さな虫が飛んでいる。しかもその虫は光っており湖の周りを飛んでいる幻想的でとても綺麗だ。

 

 

 

「ウフフ綺麗ですわね」

「テスタロッサはなんでここに?」

「今日一日ずいぶんと回ったようなので落ち着ける場所に行こうと思いましたので」

「気にしなくていいのに」

「それにここにはシスタ様と2人で来たかったのですわ」

「そっか」

 

 

 そこから2人でいろんな話をする。今までのこと。これからのこと。

 話をしているうちに時間はだんだんと過ぎていく。そしてそろそろ日が変わると思った時テスタロッサがあるものを取り出す。

 

 

「シスタ様、これを受け取ってください」

「これは」

「今日はバレンタインというらしいので」

「ありがと。食べてもいいか?」

「ええ、もちろんですわ」

 

 

 開けてみると繊細に飾り付けられた細い糸が入っていた。食べてみると口の中で溶けていく。しかし味はアメのような感じがする。

 

 

「うまいよ。これはアメかな?」

「ええ、そうですわ」

「ありがと。シュナに教わっただろ。大変だったな」

「いえ、そんなことは」

 

 

 口では否定してるがかなり大変だったんだろう。シュナは料理のことに関してはかなり厳しい。そのシュナの料理になんとなく似ている気がしたのだ。

 

 

「まさかバレるとは思いませんでしたわ。シュナ様から教えていただいた料理ですわ」

「やっぱりか。美味しくできてる。ありがとう」

「ウフフありがたい言葉ですわ」

 

 

 2人は言葉を交わしてベンチから立ち上がる。そして日は変わりシスタは家に帰ったのだった。




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