猫神様「あの日から500年か...時の流れというものは遅いようで早いのう。」
いつもの音子猫神社の静かな夜。しかし今日は、あの事を思い出してしまい、少し寂しさを感じる夜。猫神様は、鳥居の前で、未だ落ち着かない哀愁を胸に、そよ風に吹かれていた。
猫神様「そろそろ巫女に、あの事について話してやらねばな...」
ふとそう思い立った。そして踵を返して本殿へと戻っていき、音子猫神社の巫女、音崎リタを呼んだ。
リタ「どうしたんですか?唐突に呼び出したりして。」
猫神様「巫女よ。ちょいとわしの話を聞いてくれんかのう。この神社の巫女であり、この山の住人であるそなたには知ってもらいたい事なのじゃ。」
リタ「なるほど...それで、その話とは?」
猫神様「この山を救った、1匹の少女の話じゃ。」
〜第壱話:珠彦と玉梓〜
時は500年前、音子猫神社ができる前の山。そこには猫神様という山の守り神と、珠彦という猫神から現人神ならぬ現猫神の称号を貰った1匹の猫がいた。珠彦は治癒能力や物体生成、大地操作、憑依能力といった不思議な力を猫神様から授かり、それを使って山の平穏を保ってきた。そのため、彼の真っ黒な毛の色と翡翠のように光る瞳は、猫達に好かれ、讃えられた。当時の猫神様も、そんな彼を猫神の跡取りとして期待していた。
珠彦「ふう、こんなところか。」
日課の見回りを終え、珠彦は自分の住処へと戻った。すると今日もまた、彼女が訪れてきた。
玉梓「やあ、珠彦!来たよー!どわっ!」
彼女の名は玉梓。珠彦の幼なじみで、よく珠彦のもとに遊びにくる、白色と茶色の毛と黄金の如く光る瞳が特徴の雌猫。普段は凛とした佇まいをしているが、どこか抜けている。そのため、しょっちゅう珠彦に悪戯される。仕掛けておいた落とし穴にはまる様はもう、お家芸だ。
珠彦「おお、玉梓。よく来たのう。さ、上がれ。」
玉梓「珠彦ー!」
そしていつものように玉梓が顔を赤く染めて怒鳴りながら笑う。珠彦は、そんな彼女との何気ない時間を癒しとしていた。
玉梓「あんたのその能力ってさ、ほんとに他の人は使えないようになってるの?」
珠彦「いつも言っているだろう。使えない。そなたのような一般の猫がこういう力を使う事は神の間で原則ご法度とされているんだ。生命力を失い過ぎてその生命の存在自体が消されかねない、つまり山の猫達やわし、さらには猫神様にもその存在を忘れられるのやもしれぬからのう。わしはなぜだか、いくら能力を使えども無事なのじゃが。」
玉梓「そっかあ...仕事、手伝ってあげたいなー。いつも珠彦、大変そうだし。この前なんか、でっかい竜巻追い返したんだってね。」
玉梓のこの世話焼きもいつもの事だ。玉梓も、現猫神の激務を強いられる珠彦を常に心配しているらしい。
珠彦「心配ない。この仕事は、わしの生業のようなものじゃからのう。」
玉梓「でもほんとに無理だけはしないでね!絶対だよ!」
珠彦「ああ、分かっているとも。」
訪れてくるたびにかけられるお節介な言葉は、珠彦にとって嬉しいものだった。自分を大切に思ってくれているのが分かるからだ。そんな玉梓の言葉に対して珠彦は軽い気持ちで受け答えをした事はない。
玉梓「そろそろ帰るね。また明日ー!うぎゃっ!もー、また...」
珠彦「ああ、またの。」
いつものように、来た時はまった落とし穴と同じものにはまりながら玉梓は帰っていった。彼女のその後ろ姿を見るたびに珠彦は思うのだ。玉梓のような愛おしき猫達が住うこの山を、これからもずっと守っていこうと。
...to be continued
〜木綿の犬の解説、雑談コーナー〜
木綿「こんにちは、木綿の犬です!猫神住う山第壱話、読んで頂きありがとうございます!このコーナーでは我が弟の木綿フリーゼとともに、本編で説明出来なかった設定を紹介したり、雑談したりします。このコーナーもよろしくお願いしますね!」
フリーゼ「こいつのペット件弟の木綿フリーゼだ。まあ兄ちゃんが本編で全部纏めたらいいだろって思うかもしれないけど、すまんな。兄ちゃん、小説初めて書いたど素人なんでな。こういうコーナーが必要なんだ。」
木綿「あー...そうなんですよねー...精進します...」
フリーゼ「さて、じゃあ俺からこの小説に関しての質問と意見、いいか?」
木綿「うん、なんなりと。」
フリーゼ「この山の事をもうちょっと詳しく教えてくれ。説明なさすぎてよー分からん。」
木綿「あー...そうだね...どこから説明しようか...まあまず、猫神様と現猫神の仕組みを説明しようか。猫神様は、本編にもあるように、山の守り神的存在。ただ、猫神様は現世、つまり山の事にあんまり影響を与える事が出来ないんだ。だから、その守り神の代行が必要なの。で、素質のある猫を探して能力を与えているの。それが現猫神で、選ばれたのは、今の猫神様の珠彦でした。って感じ。」
フリーゼ「珠彦さんをあ○たかみたいに言うな。」
木綿「こんな風に気になった事や質問等ありましたら、気軽に感想欄やTwitterで質問して下さいね!このコーナーで出来るだけ返しますので。」
フリーゼ「どしどし送ってくれたら、俺も兄ちゃんも喜ぶぞ。」
木綿「では、これにて。また次回、お会いしましょう!さよなら〜!」
フリーゼ「またな〜」
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