TSゲーマー、Vtuberになる(旧題:逆行ゲーマー、Vtuberになる) (模芋)
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0章 ほんの少し先のお話
私はハソシウル


各種方針の違う新作です宜しくお願いします


 パソコンの画面に表示される諸々を確認して呼吸を整える。

 

 何かに限った話でなく、始める前というのはどうにも緊張してしまう。

『始まってしまえば緊張どころではなくなるのだからさっさと始めれば良い』

 そう言われればその通りだろう。

 だがそれはバンジージャンプで「さっさと飛び降りろ」と言われるのと同じ。

 つまり「それができれば苦労していない」と言う話だ。

 


【マ●オ!】16枚RTAやるよ!【ハソシウル】


 

 開始のボタンを押したらまずは配信画面に映っていることを確認。

 

「皆さんこんばんはー。マイク音量の比率などは大丈夫でしょうか」

 

上位チャット

:こんばんわー

:おk

:大丈夫

:実質新作やったー

 

 反応からしてマイクは入っているし音量関係も大丈夫。

 画面も自分で確認したし特に何も言われないから多分大丈夫。

 確認はくどいぐらいで良い。

 幸いにも今のところ事故は無いがミスがあると恥ずかしいことになったりする。

 

「それでは何故か私の配信では初、RTA界では定番な16枚をやります」

 

 タイマーをセットし、操作の確認。

 下準備として最速入力で選択できるセーブデータを消す。

 

上位チャット

:そういえば配信では初なのか

:ハソちゃんhshs

:記録動画を前から挙げてたから気にしてなかった

 

「ハスハスじゃないんですよ」

 

 チャットを軽く確認しつつ、ゲームの準備が整った。

 もしかしたらいるかもしれない初見向けにお約束の注意事項を口にする。

 

「走っている最中は基本的に反応を拾えませんのでそのつもりでお願いします」

 


 

「今回の記録は18分23秒ですね」

 

 これは『私』としてはまずまずのタイムだろう。

 

 本気でやっている人と比べれば経験も理屈も足りていない。

 だからどうしても突き詰めた人には勝てない。

 こういうところはどうにも根がライトゲーマーなんだなと思う。

 

上位チャット

:88888888

:思ってたより遅い

:ハソちゃんでこれってやっぱり上位陣おかしいのでは

:俺の方が100分の1倍上手いわ

 

「応援してくれた人はありがとう。それじゃあいつもの流れで――」

 

 クリア後は感想ついでに視聴者の反応を拾う。

 

 ゲームをやりながら拾える方が良いとは分かっている。

 ただ私には自己ベストを狙っている時に余所見(よそみ)できる程の余裕はない。

 勿論、全力での自己記録狙いでなければ反応できるだろう。

 しかしそれは私に期待された部分ではない。

 だからRTA中は視聴者に反応しない。

 その代わり、思考や反応はなるべく表に出すようにしている。

 それとRTAでない時はきちんと反応を拾うことにしている。

 

 今いる視聴者の大半には『そういうもの』として受け入れてもらった。

 

 

 RTA系Vtuber、ハソシウル。

 それが今の私だ。




中身の割にだらだらと長かった部分を削ったら今度はかなり短くなってしまった


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1章 『私』というVtuberになるまで
それを前世と仮称する


Vtuberとしての活動から見たい人は2章まで流し読み推奨
1章前半はかなりの頻度で時間が飛びます
あと最初の方だけ6時間置き更新します(今更)


 『私』には『私』ではない記憶がある。

 

 

 それは平凡な男の微妙な人生。

 客観的にはそこそこ恵まれているはずだが、主観ではそれ程恵まれていない。

 タバコ無し、彼女無し、お酒は軽く嗜む程度。

 それなりに見ていたはずのアニメは徐々に追えなくなった。

 ゲームもそこそこするがソシャゲなどは期間要素を理由に手出ししない。

 昔は笑えていたインターネット老人会をじわじわと笑えなくなっていく。

 そんな珍しくもなんともない、時代に置いて行かれつつある人間の一人だ。

 

 

 もうどんな理由だったかは覚えていない。

 その日は珍しくヤケ酒をしてみたくなった。

 偶然見つけた小さな居酒屋で、財布を叩きつける勢いで酒とつまみを注文した。

 

 確か、誰かに愚痴を漏らしていた。

 居酒屋で居合わせただけの初対面の他人に、だ。

 そんなことをする程度には疲れていたらしい。

 

 

 それでどんなやりとりをしたんだっけか。

 あまり内容を覚えていない。

 ただ一つだけ、覚えている会話がある。

 

「これまでの人生に後悔はある?」

 

 そいつの問いに、俺はこう答えたはず。

 

「後悔の無いやつなんているかよ」

 

 何かもっと大切な話をしていた気もする。

 その大切なはずの話よりもはっきりと覚えていた。

 

 それが『俺』としての最後の記憶だ。

 


 

 『私』が始まってから『俺』の記憶は邪魔なことの方が多かった。

 

 半端に男としての知識や経験の影響を受けた。

 それが原因で人付き合いでは結構苦労した方だと思っている。

 ぼっちとまでは言わないが特別仲が良いと言える関係もできなかった。

 

 『俺』と『私』では生まれた家は勿論、生まれた年も微妙に違った。

 その癖『俺』の最後の記憶よりも大分前、俗に言う逆行に近い何かだ。

 

 もしも『俺』と『私』の生まれた年が同じなら――

 あるいは『俺』の最後の記憶の頃から『私』が始まっていれば――

 生まれた年の違いが何らかの枷になる度に、そんな我儘を思った。

 

 親の違いについては何とも言えない。

 『俺』の時と比較すればやや放任主義でとんでもなく甘い人だろう。

 もしも『俺』の記憶が無ければ結構性格の悪い子に育ってた気がする。

 特にお小遣いの多さで金銭感覚がずれそうだ。

 まあ現実はコンシューマゲームを買う程度にしか使っていないが。

 

 それと、この世界だ。

 どうやら『俺』の生まれ育った世界とは微妙に違うらしい。

 見覚えのある何かの中に、たまに見覚えのない何かが混ざっている。

 テレビだと、よく見ていた番組の企画が見覚えのないものと入れ替わっていたり。

 ゲームだと、以前あったバグ技が消えたり、あるいはなかったバグ技が増えたり。

 バタフライエフェクトの線も考えたが、調べた限り歴史からして微妙に違った。

 これは『俺』だったときにあまり勉強していなくて気付くのが遅れた。

 あるいはテレビをよく見ているような人間だったらもっと早く気付けただろうか。

 記憶していないだけで芸能人も入れ替わっていそうだ。

 

 

 総合的に言うと、皆と違う記憶を持つ、というのはあまり有利に働かないらしい。

 あるいは有利に働いた例を自覚していないだけかもしれない。

 とにかく、主観では損の方が多い人生が続いた。

 


 

 なんだかんだで大学生になり、一人暮らしを始めて一年が経つ。

 ここで一つ問題が起き始めた。

 十分な仕送りをしてもらっているのに金銭面がじわじわと厳しくなっている。

 

 別にガチャやスパチャのような課金の沼で散財しているわけではない。

 食事の用意や片付けの手間を減らす為にお店に行ったりお弁当を買った。

 パソコンやスマートフォンがそろそろスペック不足だから買い換えた。

 気になったゲームを購入した。

 良さそうな同人誌を見つけて買い漁った。

 そういう積み重ねで目減りしてきたのである。

 

 勿論買い換えのような一時的な出費であることを考えればまだお金は何とかなる。

 食事の手間を惜しまなければ少しは余裕ができる。

 少なくとも『俺』は頑張っていたし『私』にもできないわけではない。

 ただ正直に言って、やりたくない。

 

 単なる金欠ならアルバイトでも始めたところだが今回は違う。

 働きたくない楽したいが本質である以上、アルバイトなんて(もっ)ての(ほか)だ。

 しかしそんな都合の良いものに心当たりはない。

 一度はギャンブル系の収入を連想したが、あれは最後に胴元が勝つ仕様だからな。

 やれば間違いなく出費の方が大きくなる。

 

「非課税の5000兆円欲しい」

 

 ベッドで転がりながら口にしてみる。

 残念ながらお金が降ってきたりしない。

 まあ、降ってきたら降ってきたで怖いと思うが。

 

 お惣菜(そうざい)を諦めて自炊するべきだろうか。

 でもお惣菜(そうざい)はプロの味を安く得られるし基本的にコスパが良いんだよなぁ。

 そんなことを考えながらパソコンで日課の消費を始めて気付く。

 

「そうか、この手があるんだ」

 

 何もせずにお金が入ったりはしない。

 ならば次点、楽をしてお金が欲しい。

 

 『私』にとって楽な方法でお金が降ってくる方法。

 理想は遊んでお金が貰える仕事。

 つまり『私』がゲーム動画を投稿して広告収入を得られればいいのだ!




本文に書く機会がありませんでしたが『俺』と『私』の身長は同じ169cmです。


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目標は個人から企業へ

当事者による個人と企業の比較ってそうそうないので大分想像で書いた感ある


 動画広告でガンガンお金を貰ってやる。

 そう思えたのは最初だけだ。

 

「想像より、ずっとめんどい!」

 

 収益化の条件はこの際どうでも良い。

 収入を得られる規模になれば勝手に達成できると見ている。

 問題は『私』の予定していた主力がゲームであることだ。

 

 ゲームには当然作った会社がある。

 配信で扱うには会社毎のガイドライン、つまり利用条件を確認する必要がある。

 個人相手は対応する手間を考慮して許可範囲がまとまっていることが多い。

 その場合は個別にどういう扱いなのかを確認する必要がある。

 確認した結果収益化不可という例も別に珍しくはない。

 うーん、やっぱり面倒だ。

 

 実のところ普段の動画投稿でこの辺りはあまり確認していなかったりする。

 その中には「止められてないからセーフ」という黒寄りのグレーなものもある。

 そういうのは収益化したら止められる可能性が跳ね上がる。

 こっちは当然と言えば当然だろう。

 


 

「さてどうするか」

 

 本来の目的を考えるならば節約かアルバイトが妥当だろう。

 でも何というか、勿体ない気がする。

 節約にしろアルバイトにしろ労力に対する収入は高々知れている。

 対して広告収入であれば最低額が保証されない代わりに上限も無い。

 緊急性の無い現状だと後者の方が魅力的だ。

 

「やっぱり企業の力を借りるか?」

 

 調べている最中、幾つかVtuberの募集を見つけた。

 私の認識では、形式がやや特殊な企業所属の配信者である。

 

 少なくとも私は配信をしたことがない。

 あるのは精々動画投稿ぐらいだ。

 そしてその動画投稿も大体ゲームをやっているだけ。

 再生数はそこそこだが、自分で喋ってないから配信の練習には全くなっていない。

 

「……まあ、挑戦しない理由にはならないか」

 

 企業であれば配信に必要な確認や交渉の一切を代わりにやってくれるはずだ。

 だが企業で配信者の募集をしている例は少ない。

 しかも募集を見つけた範囲では大体競争率が高い。

 やる気を出したからと言ってそれだけでなれるようなものとも思えない。

 

 最初は私に合いそうな、採用される余地のあるところを探してみよう。

 それで駄目そうなら総当たりするつもりでいろいろ受けてみることにする。

 


 

 私がゲーム動画の投稿を始めた理由は単純なものだ。

 

 ゲームをやっていると『俺』だった頃の知識が原因で楽しめないことがある。

 例えば、シナリオの重大なネタバレを知っているとか。

 例えば、強敵の簡単な倒し方を知っているとか。

 例えば、苦労して学ぶ要素を『俺』がやりこんでいたから難なくできるとか。

 

 勿論やっていないゲームはあるし、やっているゲームでも面白いものは面白い。

 だが『名作なのに経験があるから楽しめない』という例も幾つかあった。

 やってもあまり楽しめないがやらないのも勿体ない。

 そんな名作を楽しむ方法として『私』はRTAを始めた。

 

 RTAとはリアルタイムアタックの略称である。

 一般的にはゲーム開始時からゲームクリアまでの実時間を計る競技のことを指す。

 実時間なので失敗してリセットした時間なども計測に含まれる。

 早さを求める都合から通常プレイでは必要にならない技能を求められたりする。

 分かり易いのはアクション系で、移動が早くなる要素は過剰なぐらいに使われる。

 また実時間を扱う都合上、多少遅くても安定性を優先することもある。

 こういう点をどの程度に調整するかもRTAを楽しむの要素の一つだ。

 

 RTAという世界。

 それは『私』にとって、通常プレイと違う技能を求められる、という点が良い。

 仮に『俺』のやりこんだゲームであっても上達や研究を楽しむことができる。

 

 幾つかのゲームでRTAをするようになった後で『私』はその動画を投稿し始めた。

 気軽なRTAの土台が完成し、動画編集も楽にできるようになったからだ。

 ここで言う動画編集は、RTAの内容を解説するための機械音声の追加などを指す。

 これがあるか否かだけで視聴者の反応の量が数倍から数百倍単位で変わる。

 解説が無ければ例えスーパープレイの塊な世界記録であってもあまり見られない。

 その違いは投稿者に与えるモチベーションの差にも大きく影響してくる。

 

 とは言え、あくまでも楽しむ為の手段だ。

 ある程度の結果は目指して頑張るがそこまででしかない。

 それなりに満足のいくタイムと他のゲームに興味が出たらそっちに移る。

 浅く広く型のライトゲーマーと言えるだろう。

 

 そんなライトゲーマーな私に丁度良いところを運良く見つけることなんて――

 

「……これはつまり、受けろということか?」

 

 運良く見つけることなんて、あるようだ。




「ここ無駄に長いな削ろう」を繰り返していろいろ飛びました


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企業勢に向けて

話が無駄に長いからと幾らか削った影響が集中して短くなった回


 電車で二時間半。

 これが今住んでいるマンションからこれから面接を受ける会社まで片道の距離だ。

 

 面接は二回する予定と聞いている。

 おそらくは(ふるい)にかける都合とは分かるが距離的に面倒に感じる。

 会社側も一回で済ます方が楽だろうし何とかならないのだろうか。

 あるいは通話か何かを利用した面接をしてほしい。

 向こうの都合もあるからそうはできないのだろうが。

 

 知らされた予定には試験がある。

 試験が要るなら不正防止を考えて現地でするのは別におかしくないだろう。

 試験内容は伝えられなかった。

 なので対策は高校までの教科書の軽い流し読みで済ませた。

 関係ない可能性の方が高いがしないよりはマシだろう。

 

 

 下りの電車に乗りながら会社の概要を再確認する。

 割と最近になってできた創作全般を扱う会社だ。

 自社製の小説や漫画、ゲームなどのデータをオンラインで販売を行っている。

 その宣伝も兼ねてVtuberを扱っているそうだ。

 なんというか、効率を無視している感がすごい。

 

 Vtuberの募集内容だが、要するにゲームを沢山配信できる人が欲しいとあった。

 あと他の仕事としてゲームのテストプレイヤーを頼むことがあるともあった。

 はっきり言ってとても都合が良い。

 多様なゲームをしてきた経験が全面的に活かせる。

 一ヶ月以上募集を探し続けた甲斐(かい)があった。

 途中から普通にVtuberの配信を漁ってただけとも言う。

 

 他に見つけた募集は条件的に駄目とか募集が終了しているとかばかりだった。

 その間に節約の為に食事の見直しもしてお金に余裕ができ始めている。

 もし見つけたのがもう一ヶ月後なら面倒になってやめていたかもしれない。

 


 

 日曜だからか、会社にはほとんど人がいない。

 試験担当の女性がいなければ普通に休みにしか見えなかっただろう。

 案内の途中で何かパソコンで作業している人も見たけど。

 

「面接だけど、社内で共有するのに録画や配信をしても大丈夫?」

「え?配信って――」

「見るのは社内関係者に限るけど、人によっては顔を出すが駄目でVに来るし――」

 

 聞きたいのはそういう話じゃなかったんだけど。

 

 話の意味は面接用の部屋に通されてすぐわかった。

 会議室と思われる部屋に二台のノートパソコンが置いてある。

 片方は私が座る側、もう片方は面接相手が座る側。

 そして相手側には分かり易くwebカメラがついている。

 ここにいない人がグループチャットを通して質問をするかもしれないとか。

 


 

駒走(こまはしり)早成(さな)です。本日は宜しくお願いします」

 

 面接はそんな私の自己紹介から始まった。

 この面接ではある程度の建前は必要だろうが同時に本音も必要になる。

 特にやりたくないこと、苦手なことの情報ははっきりと共有しておく必要がある。

 ここで誤解があるとできないことを任されてお互い不幸になる。

 

 勿論、相手に採用してもらうには否定だけではいけない。

 きちんと『私にはこんなことができます』というアピールも要る。

 

 大切なのは勢いだ。

 面接はある程度勢いに任せた方が素直に答えられて良いと思う。

 それで落ちるなら募集と合わなかったのだと諦められる。

 

「Vtuberになってみたいと思った切っ掛けは何ですか?」

「はい!遊びながら遊ぶお金が欲しいと思ったからです!」

 

 勢い余って素直過ぎる回答をするのはよくないと思うぞ、私!




面接の自己紹介でやっと名前の出てくる主人公がいるらしい

正直ここで名前出さなくても良かったけど勿体ぶる程でもなかったから出しておいた


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面接

面接でやらかした時の自己フォロー難しいよね


「えっとこれは最初の切っ掛けで今はいろいろ学び考え方も変化したというか――」

「いえ、正直そのぐらい素直な方が変に拗れたりしなくて助かります」

 

 私の言い訳に対して面接の人は笑いをこらえながら答えてくれた。

 多分建前だろうな感のあるフォローを貰いとても恥ずかしい。

 穴があったら入りたい。

 


 

 それ以降は概ね問題なく進んだ。

 気になったのはこれまでの活動の話でアカウントを確認されたことぐらいか。

 

「残念なことに、たまに他人(たにん)の名義を使おうとする人がいるんですよ」

 

 聞いてみたところ、ネット上での私の名前を騙ったやつが既にいたそうだ。

 まさか私の名前を使うなんて、と思ったが本当らしい。

 確かに私の経歴は多様なゲームをやってますアピールには向いている。

 私としては他人の名前使うぐらいなら自分でいろいろやった方が楽しいと思うが。

 

 ……私は過去に、プロゲーマー志望で試験を受けたことがある。

 あの時も私のアカウントの話は出た。

 思えばあれで飽きっぽい人と捉えられ落とされた可能性があったかもしれない。

 そう思われてもおかしくないぐらいに私はいろいろ手出ししている。

 勘違いされる余地のある情報は伏せるべきだろうか。

 でもアカウントの存在は『私』の能力を伝えるのに都合が良いしなぁ……

 


 

「様々なRTAをされていますが、意図的に避けているゲームなどはありますか?」

「はい、競技人口の少ないゲームは避けています」

 

 これは主には他の人のモチベーションが理由である。

 世の中には『誰もしていないから』という動機で始める人がいる。

 そういう人がやる可能性を考えると私は競技人口の少ないRTAをしない方が良い。

 他の人がいないからと一人で研究し続けるような人にこそ任せたい。

 少なくとも私に一つのゲームでRTAを長期間やりこむ程の熱心さは無い。

 

 

「配信では実況やリアクションも必要になりますがその点は大丈夫ですか?」

「はい、どちらかと言うと視聴者の反応をきちんと拾えるかの方が不安です」

 

 一人暮らしを始めてから独り言が増えた。

 これは『口に出した方が考えを整理し易いから』と意図的にしている。

 その延長程度のことはすぐにでもできる。

 コメントを拾うのはどの程度できるか分からない。

 配信関係は調べただけで経験が無いから下手なことは言わない。

 

 

「初見でのゲーム配信が増えると思いますがどの程度できると考えていますか?」

「はい、ジャンルにもよりますが過去にしたゲームの経験則が通じる範囲なら――」

 

 正直これについてはよくわからない。

 何せ『俺』がやったことのある、あるいは知っているゲームかだけで話が変わる。

 一番警戒したいのは、初見のはずなのに本来無いはずの知識があるパターン。

 これは余計な疑いの元になる。

 

 ……もしかして配信者って結構リスキーな選択だったのでは?

 今更だからあまり気にしないでおくが。

 

 

「ゲームのテストプレイに参加してもらう予定もありますが大丈夫ですか?」

「はい、内容にもよりますがゲームの数はこなしているので――」

 

 ゲームのバランスは難しい。

 会社が本気で開発したゲームでも想定外のバランス崩壊要素が残っていたりする。

 あるいはプレイヤーに分かり辛い要素で想定よりも難しくなっていたりもする。

 そういう要素を見つけることはRTAの検証で慣れている。

 話す順序さえ間違えなければアピールポイントになるだろう。

 


 

 そんな感じで面接は終わった。

 途中パソコンを操作していたのはグループチャットとかで相談していたのだろう。

 そこまでするならビデオ通話とか使えばよかったんじゃないかと少し思う。

 そうならなかったということは口下手な人でもいるのだろうか。

 

 時間的に試験の前に昼食の時間が挟まる。

 特に食べる予定が無いなら、と昼食を奢ってもらえた。

 他人のお金で食べる回るお寿司はおいしかったです。

 さすがに自重して食べる量や値段を少なく済ませたけど。

 


 

 聞いた話だと、説明は13時から、試験は14時から。

 説明に一時間、ということは無いはず。

 質問や準備の時間だと思うが、予め伝えられたのはどういうことだろうか。

 

 場所は面接で使ったのと同じ部屋。

 パソコンの設置状況なども変わっていない。

 資料と思われるルーズリーフが何冊か持ち込まれたぐらいか。

 

「それでは試験内容ですが、実技試験ということで14時から配信をしてもらいます」

 

 ……え?




アカウント確認の部分補足
 雑に言うとアカウントのプロフィールを更新し会社のPCから確認。
 この手順を踏むことで端末に何か小細工を入れている線を潰した。


どうでもいい補足
 一箇所だけ「他人(たにん)」にルビがあるのは「他人(ひと)」とも読めるから。
 自分で読み直してて「どっちのつもりで書いたっけ」ってなりそうだったので。
 (口頭の台詞は区別できるようにしたかった)


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試験概要と準備

書いておいてあれだけどこういうのは小規模な会社じゃないとまずできないと思う


 実際の環境に近い形でのゲーム配信。

 これが試験の内容。

 

 なお配信の視聴やチャットは社員のみだそうだ。

 そりゃまあ一般公開してたら何かしら話題になっているはずだ。

 いや現状でも同じ試験を受けた人経由で話題になりそうな気はするが。

 守秘義務とかそういうのか。

 

 

 聞いた限り配信環境は大体揃っている。

 試験用の仮アバターはモブっぽい感じのが何通りかあった。

 パソコン備え付けのカメラから顔の情報を読み取って動くとか。

 ついでにボイスチェンジャーのソフトもあった。

 ボイチェンを使う予定の人はとりあえずこれを、とのこと。

 

 なお使う場合は一部活動に制限がかかるとか。

 具体的にはオフコラボができないなど。

 それでも用意してあるのはバ美肉(バーチャル美少女受肉)希望などに合わせられるように、だそうだ。

 他にも何らかの事情で地声NGな場合も使用を勧められるとか。

 私はボイスチェンジャーは使わないつもりなので詳しいところは聞かなかった。

 

 

 画面内の諸々の配置を考え調整する。

 音量調整を今やるのは難しいから配信開始時にさくさくとやりたい。

 そして肝心のゲームだが――

 


 

『 Fear Dream 』

 テーマは、割と何でもできるホラーゲーム。

 

 この世界で手に入る物は様々な形で使える。

 例えば、斧で扉を壊しても良い。

 例えば、ライターの火で障害物を燃やしても良い。

 例えば、燭台(しょくだい)の針で簡素な鍵をこじ開けても良い。

 だが忘れてはならない。

 お前のその行いが『恐怖』を呼び寄せるかもしれないことを。

 


 

 ――とまあそんな感じ。

 ホラーゲームでたまにある『これをここに使えれば』を実現させたゲームだとか。

 マップのランダム生成がある代わりに攻略法を限りなく増やしてあるそうだ。

 

 

 軽く説明を読んだ限りだと、情報量の割にリスクリターンが直感的に分かり易い。

 

 例えば斧で壁や扉を壊せばいろいろ無視して移動できる。

 だが壊すと敵性の存在である追跡者も移動が簡単になる。

 壊す過程の音で追跡者を呼び寄せる可能性がある。

 追跡者以外で会いたい存在が音を聞いて逃げる可能性がある。

 斧を消耗し過ぎて何かを壊す必要がある時に使えなくなる可能性がある。

 

 そういった可能性から『安直な行動はなるべくしない方が良い』という感じ。

 但し『なるべく』なので『した方が良い』か『必要になる』場合もある。

 マップがランダムなのである程度のアドリブ判断が重要になりそうだ。

 


 

 ここまでが配信前にチュートリアルで練習して分かったこと。

 配信中にチュートリアルからやるとグダグダになりかねないから予習は大切。

 ついでにちょっと聞きたいことができた。

 

「このゲーム、普通に面白そうなのにどうして売っていないんですか?」

 

 このゲームは私のような初見ゲーム配信の試験用の一つと聞いている。

 言い換えると初見になる仕様のゲーム、つまり販売されていないものだ。

 少なくとも販売されているなら受けに来た人が遊んでいる可能性は十分にある。

 

 正直、ほぼこのままでもそれなりに売れそうな気がする。

 少なくとも私は試験とは関係なく面白そうと思った。

 何か売れない事情があるのだろうか。

 

「いやこれね、いろいろ行動でき過ぎるからホラー要素が消し飛んじゃって」

 

 ……なるほど確かにそれはあるかもしれない。

 

 分かり易い例だと、追跡者から逃げる手段が地味に多い。

 扉を閉めて姿を隠すとか、別の音や光で誘導するとか、斧で殴って怯ませるとか。

 ゲームに慣れてくれば幾らでも対処法を見つけられそうだ。

 

 対処法が増えるということは、ホラーに求められる恐怖が減るということだ。

 ホラー要素を無視すると似たような自由度のゲームは幾らでもある。

 どっちつかずで微妙なことになりそうだから試験用にした、とそういうわけか。

 

 うーん、素人判断だが、それでもやっぱり勿体ない気がする。

 


 

 ゲームの確認が済んだので配信側の設定の微調整に入る。

 配信側として情報を把握し易い配置。

 アバターの動きの感度設定。

 飲み物の準備。

 初めて使うソフトの扱い方の確認。

 

「すみません、これって――」

 

 必要な諸々の確認を繰り返し、試験が始まる。

 




「要はローグライクの一種じゃん」と気付いたのは筆者が書いてから大分後のお話


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配信という名の試験

ゲーム要素のことを書いてたら情報量が思ったより偏ってしまった


「――ゲームとの音量比は大丈夫でしょうか」

 

 配信を始めたら軽く自己紹介をしつつ音量確認。

 こういうところはなるべくさくさくと進めていく。

 

「今回はですねこちら、FearDream、恐怖の夢というゲームをね、していきます」

 

 試験の都合上時間制限はある。

 但しこの試験では終了が試験担当者から伝えられたりしない。

 自分で時間を見ながら調整して進行する。

 時間の管理まで試験になっているそうだ。

 多少越えても良いとも聞いたが、なるべく時間内に収めたい。

 

「えー、声大きい?このぐらいでどう?」

 

 コメントを元に音量比の調整をする。

 

上位チャット

:おk

:良くなった

:今度は声ちょっと小さい

 

「声小さそうなのでちょっとだけ大きくして進めますね」

 

 当然のことだが、人によってゲーム配信で適切と思う音量比は違う。

 そして配信者として声が十分聞こえていないのはまずい。

 声とゲーム音の片方を犠牲にする可能性があるなら声を残す必要がある。

 だから声が小さいという意見は基本的に優先する。

 勿論やり過ぎもいけないので加減を考えながら。

 

「裏で軽くチュートリアルだけしたから、本編もさくさくと攻略をね――」

 

 最初は謙遜だろうが何だろうが後ろ向きなことを言わないようにする。

 変に保険をかけるよりは調子に乗って失敗する展開の方が見る側としても面白い。

 後ろ向きキャラが定着しているなら話は変わるが、今回は設定を盛る時間が無い。

 

「では、最初に長く時間をとってもあれなんでそろそろ始めます」

 


 

 このゲーム『FearDream』では持ち歩ける物がとても少ない。

 基本は両手それぞれに一つずつの合計二つだけ。

 しかも斧など一部の重い物は両手持ちをするので二つ分がまとめて埋まる。

 鞄があれば種類に応じて追加で持てるが、出し入れ中は周囲を確認できない。

 こういうところは単純にシビアだと思う。

 

 だが、これら厳しい要素だけのゲームでは終わっていない。

 

上位チャット

:木の扉壊してこん棒作ろう

:今の燭台使えない?

:誘導用に小石確保しよ

 

 持ち物が限られる分だけ各道具でできることの幅が広い。

 幅広く使えるが、道具毎の向き不向きはあるので取捨選択が必要になる。

 極端に手持ちが少ないから持っているはずの物を探す時間もかからない。

 

 鞄の重要度が高い分、最初から小さく勝手の良い鞄を持っている。

 入れられる大きさや対応できる重量を考えれば背負い鞄に変える方が便利。

 だが背負い鞄は一度置いて開ける分、隙が大きくなるから小さい鞄のままも有り。

 

 厳しさに見合うだけの自由度もあるしプレイヤーとしての勝手も考えられている。

 取捨選択の要素も人によって変わりそうな部分が多く、総じてよく練られている。

 

 本編をやってみて改めて思ったが、私的にはとても面白い。

 面白いと思うが、配信的にはそろそろ突破させてほしい。

 どう考えても制限時間付きの配信でやる難易度ではない。

 

 あっ背後から襲われて死んだ。

 


 

 予定よりも負けながらやり直す。

 合間で配信時間を確認。

 今から終了予定時刻まで残り7分程度。

 現在の手持ちは……できそうだ。

 

 木製の扉を斧で破壊して木材を確保。

 確保した木材にライターで引火。

 普通はこんなに早く燃えないけどゲームだから気にしてはいけない。

 

「火祭りじゃああああぁぁぁぁ!全部燃えさらせええええぇぇぇぇ!」

 

上位チャット

:やったぜ

:放火じゃねーか

:今日から毎日館を焼こうぜ!

 

 火の勢いが落ちないように手持ちや周囲の焼けそうな物をどんどん投入。

 いろいろ燃えるのは予め確認済み。

 ついでに柱や天井もきちんと焼けることを再確認。

 

 追跡者が現れたので動きを見て火を挟む位置に移動。

 火を越えようと突っ込んできたので合わせて長物でつついてやる。

 追跡者は火のダメージと合わさりノックバックと怯みで近付けなくなった。

 これは多分、かなり分かり易いパターンを引けた。

 

 このゲームは始める度に追跡者の認識手段がランダムで変わる。

 前回は音に反応してたけど今回は光に反応した、とかそんな感じだ。

 認識手段次第で見失ってランダムで動くか火を迂回するパターンも有り得た。

 あと長物でつついても怯みが足りず強引に押し切られるパターンも想定していた。

 それらと比べると対応含めて分かり易くて助かる。

 

 ゲームの舞台になっている館が燃え崩れる。

 いつでも使える焼死オチが本当にできて良かった。

 エンドロールまで流れるパターンは予想してなかったけどな!

 

「エンドロールが流れたので、多分、勝ちました」

 

上位チャット

:焼死してるが

:ひどいオチを見た

:勝利とはいったいうごごご

 

 それから終わりの挨拶をして、配信は予定時刻よりやや早いぐらいに終了した。




FearDreamの主なエンド集(下に行く程内容がバッドエンド寄り)
・撃退エンド 撃退に必要な正規のアイテムを使用した後に追跡者を撃退
・生還エンド 生還に必要な正規のアイテムを使用した後に舞台から離脱
・脱出エンド 壁の破壊など正規でない手順を用いて舞台から離脱
・封印エンド 追跡者を特定のマップから出られないようにして舞台から離脱
・焼失エンド 一定規模以上の炎で一定時間舞台を焼く
・崩落エンド 柱など舞台の建築上の要所を全て破壊する
・暴走エンド 敵性でない全てのNPCを殺害する


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連絡と相談と

気付ける人はツッコミどころの幾らかを「創作だから」で済ませて欲しい(前置き)


「マジですか」

『マジですよ』

 

 水曜夕方、18時を回った頃に電話がかかってきた。

 時間はこちらの希望に沿った形なので特に何も言わない。

 聞くとしたらこっちの方だろう。

 

「面接は二回あるって聞いてましたけど?」

 

 私は、予定されていたはずの二回目の面接を受けることなく合格になった。

 


 

『確かに最初はもう一度面接する予定だったんだけどね』

 

 最初の面接と試験の内容を元に会議でまとめ。

 大体は抜けや疑問点が出てくるから二回目の面接で埋める。

 そういう形式で進める予定だったらしい。

 

『活動歴も結構あるし、確認したい諸々もあの一回で済んじゃって』

 

 必要な要素を持っていて確認したいことも無いから合格。

 理屈は間違いではないだろうが、企業が本当にそれで良いのか。

 

『バーチャルの外観だけど、相談はネットでする?会社で会ってする?』

「その前に、これから作るんですか?」

『先にガワを作っても合う人を選べる程受けてくれる人が多くないから、自然とね』

 

 理屈は分かるが、デビューが結構先になりそうだ。

 


 

 私は会って相談することにした。

 絵は専門じゃないし、曖昧な表現で伝えることになりそうだから会う方が楽。

 それとネットを使ってのやり取りだと曖昧じゃない部分すら伝えられるか怪しい。

 私は午後に受ける講義が無い日を選び行ってみることにした。

 

「とりあえず今ある案ですけど――」

 

 平日の少数だが他にも人がいる会社。

 再度会ってみて不安の方向が変わった。

 既にラフが幾つか出来上がっていたからだ。

 相談しながらって聞いたからてっきりまだ何もないのかと思っていた。

 でもよく考えたらプロならそのぐらいの準備はしてておかしくない。

 私が大分甘く見ていたことを今更理解した。

 

 特に理由が無いならこの中から選ぶのか。

 そう思いながら順番に見ていく。

 

「何で回遊魚モチーフのやつまであるんですか」

「年中RTAしているイメージが強かったのでつい」

 

 その理屈なら普通は馬とかじゃないのか。

 いや馬だと有名なところと被るから避けたいのは分かる。

 分かるけどやっぱり違うと思う。

 


 

 順番に見ていって、目が留まった案を横に避け終えた。

 その中には一応程度のつもりで残したの案も幾らかある。

 だが見直すと、やはりというか――

 一目で良さそうと思ったそれが、私にしっくりと合うように感じた。

 

「これを元でお願いします」

 

 モチーフのところにはガイノイドとある。

 確かアンドロイドの女性型をそう呼ぶんだったか。

 スマートフォンの影響でアンドロイドって表現の厄介さがすごい。 

 何か一部ではRTAをする機械扱いされてるから合うと思う。

 

「色は白とか銀とか、やや古くなった未来イメージというか」

「ええっと、調整はこんな感じでしょうか」

 

 今、白い紙に一から描きましたよね?

 そう確認したくなる早さで描いて見せてきた。

 伝えたいイメージは伝わっているらしい。

 

「全体的に、髪や瞳孔、服まで基本は白か銀で、腕にそれっぽい端末を着けて――」

「それならついでに頭にヘッドフォンとか――」

「じゃあヘッドフォンは目立つよう黒を混ぜて、コードの先は腕の端末に――」

 

 そんなこんなで要望をすり合わせ、イメージイラストの元になる資料が完成した。

 ほとんど指示だけだった私が言うのもあれだがかなり良い感じにできたと思う。

 これを清書してイメージに差が無いか確認してから本格的な制作に移るそうだ。

 

「ところで、もしかしてイラスト担当の方ですか?」

 

 今日の分が終わったところで気になった点を聞いてみる。

 少なくともただの趣味と言うには線に迷いが無さ過ぎる。

 イラストレイターが面接官というのも変だが、兼任は有り得ない話でもない。

 

「確かに一部は担当しているけど、ってそういえば名刺渡し忘れてたか」

 

 言いながら内ポケットからホルダーを、ホルダーの中から名刺を出してきた。

 

「改めまして、私は日向(ひむかい)(のぞみ)。簡単に言うとここ、合同会社ニシツキシキの社長です」

 

 確かに受け取った名刺にはそう書いてある。

 ただちょっと確認したい。

 

「ホームページにあった代表の苗字は西月だったと記憶しているんですが」

「え?」

 

 確認して分かったのだが、載せる情報の更新を忘れていたらしい。

 私が顔を覚えるのが苦手でなければ、最初の自己紹介の流れで聞けたのに……




社長にドジっ娘属性が生えた気がしたけどそうなった理由考えたらいつも通りだった


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手続きと決定と

実際のところこの手の契約ってどんな感じに進めるのが一般的なの教えて有識者


 複数人が更新できるデータは意図せず複数人が同時に手出しすることがある。

 そうなった場合、先に更新した方は後に更新した方に上書きされる。

 (ゆえ)に一部のデータは、更新前に管理担当に連絡を入れて上書きを防止する。

 この会社のホームページは連絡が必要な種類に含まれるらしい。

 担当は何か金髪碧眼の如何(いか)にも日本人じゃなさそうな顔の事務員さんだった。

 

「もしかしなくても馬鹿なんですね?」

 

 これがホームページの情報更新を伝えた事務担当の言葉である。

 私もそう思います。

 あと外見の割に日本語めっちゃ流暢だった。

 

「誰も気付かなかったんだから私だけの責任じゃないよね?」

「確かに、名前関連の更新を自分ですると言われ確認しなかったのは手落ちでした」

 

 社長の反応からして精神的なダメージが十分に入ったようだ。

 分かり易く落ち込みながらパソコンのある席に向かって行った。

 ついでにいろいろ作業を進めるとか。

 

 ところで私はどうすればいいのだろうか。

 

駒走(こまはしり)さんですよね。この度担当となった水守(みずもり)(つぐ)と言います」

「あ、はい」

 

 考えてるところに事務担当の人から声をかけられた。

 急だったからか私の返事がなんというか、うん。

 それはそれとして日本人離れした顔から流暢な日本語が出てくる違和感すごいな。

 

「こんな顔してますが生まれも育ちも日本なのでそのつもりでお願いします」

 

 なるほど、よく言われるんだな。

 

「あと同じ顔した双子の妹がたまに来ますが、事務員らしい服をしていたら私です」

 

 なるほど、双子ね。

 見分け方の説明は分かり易いけど本当にそれで良いんだろうか。

 同じ苗字がいるなら名前で呼ぶ方が――あるいは担当さん呼びの方が良いのか?

 

「これから幾つかお話があるので、ちょっと場所を移しましょう」

 

 そういえば普通にお仕事している場所でしたねここ。

 平日の割に人が少ないし普通に席を用意してもらえたから流しそうになってた。

 


 

 主な話は契約内容や配信時間、他所の権利などのコンプライアンス関連だった。

 持ち帰るようにと渡された冊子をめくりながら内容の確認をする。

 契約内容は目を通した限り特におかしいところはないはず。

 配信時間を捻るつもりはないので基本的に夜の時間帯を予定。

 何かあった時スタッフが対応できるよう必要に応じて連絡を入れることにする。

 

「というか、何で配信時間関連の話をこんな詳しくするんですか」

「配信時間不定期な上寝落ちするVのスタッフから苦労話を聞く機会がありまして」

 

 なるほど完全に理解した。

 

「ゲーム配信が主というお話ですが、権利関係もあるので相談した上で――」

 

 ゲームのスパチャで稼ぐのはいろいろ難しい。

 それでも手続き関係を会社に丸投げできるのは個人でやるよりかなり楽だ。

 チャートの話でもゲームをする場合と同じ扱いになるのは予想外だったが。

 

「解説にしろ研究にしろ、実際にやる方が早いという場面は確実にあるので」

 

 そういわれれば全くその通りな例が幾つか浮かんだので同意した。

 


 

「ところで、Vtuberとしての名前はどうされますか?」

 

 当然だが、Vtuberとして活動する場合はVtuberとしての名前が要る。

 前回決めなかったから勝手に決められるものかと思ったがそうでもないらしい。

 一人だけ突飛な名前だと浮くと考えれば会社側で調整するものだと思うが――

 

「配信で動画投稿が減るならいっそ名前を流用して本人と宣言するのも手ですが」

 

 なるほどその辺りの話で保留していたのか。

 それはそれでVtuberとしてどうなんだ。

 

 ……わざわざ提案されるからにはいろいろ調べたり考えたりした結果とは思う。

 不安は大きいが、許されるならここで乗るのも手かもしれない。

 

 実のところ『俺』の最後の記憶の時期にはもう追いついてきた。

 過去にやり込んだゲームはネタ切れが近く、配信と関係なく投稿頻度は下がる。

 だから配信を理由にする頻度が下がるという宣言も『私』としては悪くはない。

 そう、『私』としては悪くないが、『俺』としては()()()()

 

「名前ついでに設定を付け足したいのですが大丈夫でしょうか」

 

 私が前に相談したVtuberの外見。

 それは少し前の時代に広まったやや古臭い未来のイメージを元になっている。

 なんとなくこれは『私』にうまくかみ合ってくれるような気がした。

 ただ、その設定を使うのは大丈夫かと少しだけ迷ってもいた。

 だが今回の確認で『私』の迷いもなくなった。

 名前を使わせてもらえるというなら『私』も全力で応えるべきだろう、と。

 

 私がするRTA系Vtuber。

 その設定の詳細がここで決まった。




次でやっとVtuber回に入れます長かった(筆者基準)

Q.(つぐ)って一文字ではそう読まなくない?
A.分かる(訳:その通りだけどこの子の両親は絶対やると思ってそうなった)


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2章 最初は同期と組みつつ無難に?
【初配信】皆さん初めまし……て?【ニシツキシキ】


顔合わせ回は特に面白味がなかったので省略


 同期とのオンライン上での簡易顔合わせも済ませ、ついにデビューの日が来た。

 私はトップバッターである。

 後の方だと前に配信した人の話を振られた時に面倒だから、という理由だ。

 私が先なら後の人に丸投げできる。

 同期二人が男性でその辺りを何か言われても多分困るので助かった。

 ただそこで気を使えるなら女性をもう一人用意してほしかった。

 

『合格の基準を満たした人を全員採った結果がこれなので』

 

 言うだけならタダの精神で聞いてみたらそう言われた。

 ついでに運営側で十分な対応ができる人数の問題もあるとか。

 実際、もう一人増える予定はあるが対応が遅れて時期がずれるそうだ。

 そういう事情があるならまあ仕方ないと思うが……

 

 ……いや、やっぱりデビュー時期揃えて遅らせた方が良かったのでは?

 


 

 配信の練習では担当の水守さんに設定の確認をしてもらえた。

 だが今回からは家からの配信で、自分だけで設定の確認をしなければならない。

 

 最初から変なやらかしはしたくない。

 そう思った私はチェックリストを作っておいた。

 配信のタイトルやサムネイルなど下準備の部分までチェックリストを用意した。

 

 タイトルの初配信宣言と企業名と前振り良し。

 

 配信に利用するソフトの設定を確認。

 マイクはミュートではないし指定も大丈夫。

 ステレオミキサーでマイクとBGMが同時に流れるよう設定。

 BGMは気に入っているフリーゲームで使われたのを配布元で規約確認して使用。

 キャプチャソフトの設定も多分良し。

 V側の透過用の背景色はアバターに使われていない赤を選択。

 背景用の壁紙は会社側で用意してもらえたものを設定。

 チャット関連の設定も多分大丈夫。

 

 今回は配信の流れがあるから簡単なカンペも準備済み。

 余計なもの、特にカンペを映すなどの事故が起きないよう注意しておこう。

 失敗したら失敗したで面白ければ有りだが。

 

 よし、配信を始めよう。

 


【初配信】皆さん初めまし……て?【ニシツキシキ】


 

 わざとタイトルに入れなかった名前を画面に表示する。

 

「皆さん初めまして、ハソシウルちゃんです。BGMとの音量比は大丈夫でしょうか」

 

 以前思いつきで『(はし)る』と『(そう)』を組み合わせただけの安直な名前。

 これまで何度か文字で打ち込んだが口にしたことはあまりない。

 そしてこれが、これからの私のVtuberとしての名前でもある。

 

上位チャット

:やっと名前出たか

:音量比おk

:声ダウナー系?

:また性別不詳が増えた

 

「性別不詳じゃないですハソシウルちゃん女の子です」

 

 確かに声は低めだけど。

 同じ箱に性別不詳とか性別迷子がいるから気持ち分かるけど。

 ところどころ『俺』の影響で男っぽいとか言われるけど。

 それでもちゃんと声は女性だと思うんですけど。

 

 というか公式の告知でも女の子ってあったはず。

 バ美肉とかそういう(たぐい)の可能性も疑われていたのだろうか。

 

「じゃあちょっと自己紹介しながらチャンネルやSNSの設定弄りますね」

 

 ちなみに名前は配信開始まで完全に伏せていた。

 配信タイトルは勿論、SNSや公式告知でイラストを出しても名前は出さなかった。

 何ならSNSのIDすら『no_name』の後に適当な数字の羅列を入れたものだ。

 名前で先に調べられると面白くないからだ。

 

 知名度が低くても検索すればある程度の情報は出てくる。

 それで盛り上がるなら良いが、最悪の場合は初配信の前にピークが終わる。

 少なくとも『俺』は発売前がピークとか言われたゲームを知っている。

 だから情報を伏せることで、せめてピークが配信後に来るよう期待した。

 話題性で言えば先出しした方が強いが、安定性では後出し一択と思っている。

 

「どの程度の方がご存知か分かりませんが、私は以前からRTAとかやってる人です」

 

上位チャット

:マジであの人?

:ぐぐった、わからん

:一発目から分かり易い属性来たな

 

「本人証明は配信終了後、いつものハソシウルとしてのアカウントで告知を――」

 

 配信前から詳細を伏せて配信へ誘導する案もあった。

 ただこれまでのハソシウルとしてのアカウントは露骨にRTA関連に偏っていた。

 そんなアカウントでVtuberの告知をすると、まあいろいろ勘繰られる。

 どう転がるか分からないという点もありこの案も却下。

 水守さんと相談の末、話題が広まるであろう配信後に発表することに決めた。

 最善ではないが安牌だと思う。

 

「改めて、ハソシウルちゃんは近未来から来たほぼ人間な超高性能ガイノイドです」

 

 この辺りは相談して決めた設定だ。

 そして『俺』の話でもある。

 

「具体的には202X(にせんにじゅううん)年から200X(にせんうん)年に特に意味もなく送り込まれました」

 

上位チャット

:近未来(現代)

:目的とかないんかい!

:既にほぼ追いついてるパターンとか初めて聞いたわw

 

 これまでは『俺』がやり込んだゲームを中心にやっていた。

 だがこれから出てくるゲームは『俺』が経験していない。

 そういう部分によるずれをうまいこと設定に落とし込めていると思う。

 

 少なくとも――

 今まで経験したゲームだったから普通にやってもつまらないのでRTAをした。

 ――この『設定』は本当のことなのだから。

 

 他にも本当のこと交じりの設定を並べていく。

 その中の『以前の世界との微妙な違いが気になる』というのも本当だ。

 残念ながらこっちは『私』のような一個人がどうこうできることではない。

 だからこれは、そういう疑問がある、と記憶する程度の意味しかない。

 

「もっとお話をしたいところですが、最初の配信ですしハッシュタグを――」

 


 

 事前準備もありトラブルもなく、予定通りの流れと時間で配信を終われた。

 名前を利用しつつ事故要素を避けるという意味でも失敗らしい失敗は無かった。

 RTAの頻度が下がるという話も自然な形で組み込めた。

 

 ただ一つ、大きな誤算は――

 


 

ハソシウル異名一覧(未整理)

 

・新作走らないと死ぬ人

  Vtuber化以前にやたら新しいRTAに手出ししていたことから。

  配信を始めたので多分快方に向かっている。

 

・未来においていかれたガイノイド

・近未来(現代)出身

  過去に来たのに生まれた時代に追いついたという設定から。

 

・人生RTA勢

  初配信中に各種作業を並行して進めたことから。

 

・匿名希望さん

・名称不明さん

・名前を言ってはいけないVtuber

  配信直前まで名前が伏せられていたことから。

  なお配信前のイラスト公開時には「名称不明の人」と紹介された。

 

  ・

  ・

  ・

 


 

 まだ一回しか配信していないのに何故か非公式Wikiに異名一覧ができていた。

 どうしてそうなった?




いつもより長くなったから二回に分割したかった
他と比べて文字数過少とか面白い要素や分ける必要性に欠けるとかでしなかったけど


Q.実際配信者ってどのぐらい準備するの?
A.本文の準備は元PCゲー配信者視点で想像できる程度
 多分抜けがあるし複数の要素をまとめて管理するソフトが無いともっと大変
 いや普通はある程度まとめて処理してくれるソフト使うと思うけど


IDの確保について補足
 変更後に予定しているIDを別の鍵アカウントで確保
 配信中の修正時までに他に取られないようにした


途中の20XX年のくだり補足
 配信画面に設定を表示しているので200X(にせんうん)年は正しく伝わっています


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今後の配信方針とか

何か前回含め、主人公が筆者の予定よりも本気出している感ある


 用事で会社に行くと担当の水守さんに会って早々お祝いの言葉を貰えた。

 確かにエゴサした限り反応の数や内容からして成功したと言えるだろう。

 だが話題性を持っていき過ぎな気もする。

 バズったと言うには程遠いが同期と比べれば私の話題が桁違いに多い。

 正直これだと『追加』は要らなかったかもしれない。

 

「RTAの準備もお互い順調に進んでいるようで」

 

 私はあの配信の翌日から新規RTAの準備をしている。

 筋肉は一生の相棒なゲームを、Vtuberらしくバーチャルな身体を表示して、だ。

 身体を動かすゲームとVtuberは相性が良いし妥当な選択と思う。

 できれば土日か夏休みを使い配信上で通したい。

 ちなみにゲームソフト以外の機材他諸々は会社に相談して借りる予定。

 

 不安要素は、これがVtuberとしての宣伝を兼ねること。

 都合上、動画に付ける解説はいつもの機械音声でなく肉声でする必要がある。

 その手の経験は積んでいないので多分いつもより聞き取り辛くなるだろう。

 

「その件は本当にありがとうございます」

 

 まだ通せない程度のRTAを試走した感想。

 Vtuber用トラッカー(現在は重りで代用)が地味に重くてきつい。

 トラッカー付けたままトイレいける恰好とか謎の研究で試走の時間が減ってる。

 正直かなり遅くなる気しかしない。

 まあタイマーつけて完走すればRTAだから問題ないか。

 今から再走は考えておくが。

 

「ところで、よく最初から3Dのやつを用意できましたね」

 

 よく考えると3Dはわざわざお披露目配信をする程度には手間がかかるはず。

 ましてやまだアバターの相談をしてからあまり経っていない。

 なのに、私が見た限り何の問題もなく動いていた。

 

「これは弊社の都合なのですが――」

 

 以前から3Dを動かす技術は扱っており、フルトラッキングも扱うつもりでいた。

 その下地から『イラスト動かすより最初から3Dで良いのでは』となったそうだ。

 つまりこの会社、最初から3Dよりイラストを動かす方が苦手。

 

「実際、普段の配信用の弊社製ソフトでも3Dのアバターを動かしています」

 

 最初からアバターが3D対応済み。

 それを利用し普段の配信から3D用のトラッカーを着ける人もいるとか。

 多分おかしい。

 

「まず何でわざわざソフト開発からしているんですか」

 

 3Dのアバターをカメラ認識で動かすのはまだ分かる。

 分かるが、似たようなソフトは探せば既にあるだろうに。

 私は知らないけど。

 

「その点は社外秘が混ざるのでちょっと」

 

 そう言われると内容を聞くわけにはいかない。

 一応少ししたら情報を出せるようになるらしい。

 それまで期待して待っておこう。

 


 

 軽く話をしたところで場所を移す。

 今回私が会社まで来た理由は現状で配信できるゲームの一覧を受け取るためだ。

 

「とりあえずこちらが一覧です」

 

 なんとなく『俺』の頃に出張先用に作っていた説明書を思い出す冊子を渡された。

 ゲームタイトル、配信できる範囲、スパチャの可不可や注意事項が書かれている。

 

「あとこちらが各ゲームの軽い説明で、ついでにこちらが弊社製のゲームです」

 

 何か渡された資料が思っていたより増えた。

 分かり易いけどわざわざ三冊に分けるのか。

 というか、弊社製のゲーム?

 

「ええっと、宣伝的にこっちのゲームの配信をした方が良いですかね」

 

 会社的には自社製ゲームをしてほしいだろうと思って聞いてみたが否定された。

 

「一般には馴染みが薄く興味を持ちにくい上、知っている人には今更なので」

 

 だから、興味があったらたまにやる、ぐらいで良いのだそうだ。

 私的に入社試験でやったゲームのリベンジもしたかったが一覧にはなかった。

 当然と言えば当然だろう。

 

「それとこちらは要望であって強制ではないのですが――」

 

 水守さんから出た提案は、同期二人と何らかのゲームでのコラボ。

 それを通じて各々の様々な面を出して欲しいという話だ。

 私としても登録者数の差が悪い方向に進まない内にやっておきたいと思っていた。

 

 話題性がある内にどれだけ視聴者を稼げるかは大切だ。

 Vtuberに限らず、伸びる為には存在を広めてくれる人が必要になる。

 その最も分かり易い手段が視聴者だからだ。

 現段階の同期で身内を広める役目は話題性で注目の集まっている私が妥当。

 但し私の役目は私に興味を持った人を二人の配信の入り口に誘導するまで。

 そこから先は本人の能力次第。

 

 

 ……とても当たり前な確認をしよう。

 誰かの規模が大きくなればその近い人物にも影響が出る。

 例えば何らかの理由で誰かの登録者数が大きく伸びたとする。

 そこから何か繋がりがある相手という導線で別の誰かを見る人が出てくる。

 結果、特別何もしていない人が伸びた人から間接的な影響を受けて伸びる。

 これは別に珍しい話ではない。

 少なくとも私が今まで見ていなかったVtuberに興味を持つ例の一つだ。

 

 箱という概念が強いのはこの導線を作り易い点にある。

 対照、似た者、先輩、同期、後輩など、箱の中から幾らでも繋がりを探せる。

 だから私もこれを活かしたい。

 勢いがある内のコラボは余程の事故が起きない限り長期的には利があるはず。

 そういう打算込みだがコラボで同期を宣伝する程度の協力ならして良いと思う。

 

 

 ……とまあ、長々とそれっぽい理屈を並べてみた。

 実のところもっと単純な話、協力する方が将来的に面白くなりそうだと思った。

 最初の方の配信で何かが起きれば一周年とか事ある毎に弄れるし。

 

「分かりました。ちょっと後で二人と相談してみますね」

 

 問題は人数だ。

 二人か四人なら幾つかの候補がすぐに浮かぶ。

 だが三人となると少し難しい。

 特に対戦要素で敵味方に分かれるようなゲームは偏りが出るのでなるべく無し。

 パーティー系のゲームでも人数調整のCPUが混ざらない種類の方が良いだろう。

 

 

 尤も、私の中では何をやるか既にほぼ決まっている。

 後は二人と相談してそれ以上の案が出るかどうかだけだ。




実際三人コラボでやれるゲームの候補って交代でやるとかでないと結構制限かかるよね

元々は即RTA投稿してたけど逆算したら日数足りないと気付き即席で修正
急な修正で推敲足りてないのでどこかにおかしい文章残っているかも


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【雑談】マシュマロと予定の話【ハソシウル】

配信者の都合的にあって当然なのにうっかりで入れ忘れそうになった雑談回です


 配信用の諸々を並べる。

 チェックシートで配信に必要な諸々が揃っていることを確認。

 前回の初配信で話題になった要素もあってか視聴者数は多め、と思う。

 まあ残念ながら、今回は初回で拾い損ねた諸々の回収だけするつもりだが。

 


【雑談】マシュマロと予定の話【ハソシウル】


 

「雑談配信はぁじまぁるよぉ」

 

 何というかあれだが、RTAの人の認識が強すぎて私の挨拶はこれになった。

 本家の人じゃないし違うのを、と思ったが対案が無くて結局使っている。

 最初の配信前でも少し考えれば予想できた展開なので完全に私の不手際である。

 

上位チャット

:おま配

:待ってた

:ハソチャンハイシンヤッター!

 

 なお返しはあまり安定していない。

 最も多い『おま配』とは『お前の配信を待ってたんだよ』の略だそうだ。

 本当に、本っ当に、予め対案を準備しておけば良かった。

 

「初配信まで名前を伏せていた件もあるので、今回はマシュマロ重視で進めます」

 

 初配信までは、同期との情報の差は名前を伏せていた件以外にほぼなかった。

 ただ名前が時間差で判明したことからそれに関連したマシュマロが一気に増えた。

 この辺りは割と意図していたのできちんと回収しておきたい。

 

「えーでは最初、とても不本意ながら、目に留まってしまったのでこちら」

 

『配信外から失礼するゾ~(謝罪)

 このRTA面白スギィ!!!!!

 自分、見抜きいいっすか?

 淫夢知ってそうだから淫夢のリストにぶち込んでやるぜー

 いきなりマシュマロすみません!

 ゆっくり熱中症って言うのとカウントダウンください!

 なんでもしますから!

 (なんでもするとは言ってない)』

 

上位チャット

:これクソマロでは

:欲張りセットで草

:本当に開幕これで良いのか

 

 正直開幕としてはあんまり良くない。

 良くないのだが――

 

「熱中症とカウントダウンをまとめて入れてたから、つい……」

 

上位チャット

:やっぱりRTAじゃないか

:話題性を維持しつつチャート短縮に努める走者の鑑

:もしかして短縮要素あるマロの方が回収され易い?

 

 最初だからさくさく回収しようとかそういう話だから今後の基準にはならない。

 多分そのはずだ。

 

「えーでは少し恥ずかしいですが、ひぃと、すとろぉく」

 

 チャット欄に疑問符やらなにやらが流れ出す。

 うんまあ、多分自分がリスナーだったとしても同じ反応をしたと思う。

 

ヒート(heat)ストローク(stroke) は、ねっちゅぅしょぉ、の英訳ですね」

 

 訳と発音はGoogle先生に聞いたから多分正しい。

 でもって説明のついでに要望通りに日本語でゆっくり言えたわけだ。

 最初から素直に言うのも違う気がしてこうなった。

 拾っておきながらやらないのはもっと無いが。

 

上位チャット

:小ネタ助かる

:ありがとうございます

:やってくれない流れかと

 

 ついでにカウントダウンは実用性を考慮し対局時計の読み上げ音声の形式にした。

 読み上げソフトがどのぐらいあるかは知らないが流用できるはずだ。

 そしてその中にはお約束の10からのカウントダウンもある。

 ナニニツカウカヨクワカラナイケドナー。

 

「次のマロに移りまーす」

 

『お前の動画を待っているんだよ!

 ということで質問です。

 これまでされていたようなRTAの動画投稿は今後もありますか?

 また配信でのRTAはどの程度の頻度を予定していますか?

 気になって一日12時間しか眠れません教えてください』

 

「これツッコミ待ちですね。十分(じゅうぶん)どころか過剰に寝るな」

 

上位チャット

:寝すぎニキちゃんと起きて

:常識的に投稿もう無理では?

:確かに動画どうなるか気になってた

 

 元々していた動画投稿とどう折り合いをつけるかはいろいろと考えた。

 

 これまで通りの形式を求める層。

 記録の動画や解説だけ見たい層。

 過程や練習も含めて気になる層。

 Vtuberとしての活動を求める層。

 こういった層は似ていたとしても多少のずれがある。

 どれかに合わせることはそのまま他の層を切ることにつながる。

 まだどれを選択するのが良さそうか判断できる要素は少ない。

 少なくとも私はそう考えた。

 

「予定では過程の幾らかと通し何回かを配信、投稿は裏でやったの含め最短の――」

 

 だからとりあえず、目先は誤魔化す。

 検証、練習、通しをそれぞれ予告した上で配信。

 最終的に最短の動画を解説付きで投稿することにした。

 正直とても面倒だ。

 面倒だしいっそ配信で雑談しながら動画編集する配信も有りかもしれない。

 お絵描き配信とかあるぐらいだしいける気がする。

 

 そうだ、予告も忘れないようにしないと。

 

「ところで週末に同期とコラボが決まりまして――」

 

 この前した同期二人との打ち合わせは特に問題なかった。

 あとは配信の中身がどうなるか次第だろう。




同期との打ち合わせヨシ!


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【クラフト!】ゲームサイドのメンバーで拠点造る!【ハソシウル視点】

一人称視点なので本人の認識が間違っててもそのまま進行します(前振り)


 各設定の確認終了。

 今回は通話もするのでそちらとの音量の比率も調整。

 

 ゲームを起動、タイトル画面と自身のアバター、そして同期の画像を並べる。

 透過背景を利用すれば同期二人も私同様に範囲内でアバターが動ける。

 が、配信前に試しにやってみたら画面がわちゃわちゃし過ぎた。

 あと単純に別行動のあるゲームで常時全員の動きが見えるのは合わない。

 そういうわけで、今回のところは無しになった。

 この辺りは先にお互いに認識をすり合わせたので多分大差ない画面のはず。

 

「準備終わりました」

「こっちも準備が済んだでござる」

「なんか配信始まったっす」

 

 おいィ?

 


【クラフト!】ゲームサイドのメンバーで拠点造る!【ハソシウル視点】


 

「コラボですし軽い自己紹介から。私は近未来系ガイノイド、ハソシウルです」

「拙者はある血筋の末裔(まつえい)伊甲(いこう)天巌(てんがん)でござる」

「えっちょっ、聞いてなっ、えー、レトリクーンっす!」

 

 そりゃ言わなくても準備してると思ってたもの。

 早めに配信準備済ませて確認するつもりが勝手に始めちゃったんだもの。

 というか自己紹介しないつもりだったのだろうか。

 まあ名前は言えたしセーフと思いたい。

 自分の名前を確認したような間は気になるが。

 というか勝手に思った名前を言えたらって基準、なんか幼稚園児みたいだな。

 

上位チャット

:圧倒的現代人不足

:仲間外れなのかアドリブ力の差なのか

:早くも絵面が混沌とし過ぎている

 

「今回は、げぇむさいどの三人で皆の拠点を作るでござる」

「会社に共有サーバー用意してもらえましたし最低限の諸々は整えたいですね」

「特に食べ物は大事っすからね。釣りなら任せろっす」

 

上位チャット

:げぇむの言い方好き

:つまりパシリじゃな?

:犬猫もどきはケモノらしく狩りしろ

 

 同期の伊甲(いこう)天巌(てんがん)は侍と忍者を混ぜたようなやつ。

 レトリクーンは犬と猫を混ぜたようなやつ。

 そして私は少し過去に想像された未来という時間を混ぜたようなやつ。

 

 一応混ぜ物繋がりになのだが、何というか、私だけ方向性違うな。

 あと私だけ名前の由来と元があまり関係しない。

 

「目標ですが、安全地帯確保、食料確保、装備確保の順で大丈夫でしょうか」

「目標に収納と松明確保も入れておいた方が良いと思うでござる」

「あと水源の確保と緊急用のバケツも欲しいっす」

「はい、収納、松明、水源了解です。バケツはまず鉄が要るから後回しで」

 

 水源はある方が何かと便利だし、海を探すところから始めるかな。

 

 ・

 ・

 ・

 

 ……そっちが先に見つかるかぁ。

 

「あー、谷ありますね、谷」

「この谷と水を利用すれば拠点を守り易くなりそうでござるな」

「いやそれ普段からうっかり落ちそうで怖いっすよ」

 

上位チャット

:発想が完全に城の堀

:落下先に深い池作れば落ちてもセーフ

:降りて鉄探そうぜ

 

 この谷、単純に考えるなら、降りるか、渡るか、無視するか。

 もし今一人なら即座に降りただろう。

 だが今は三人で、降りると誰かがうっかり踏み外して落ちる可能性が高い。

 普通に配信する分なら撮れ高になるしそれでも良かった。

 残念ながら今回は明確に目的があるので余計な遠回りをしたくない。

 ここは渡る方が周囲の探索的に良いだろう。

 

「さっきの土ブロックで道を作るんで渡りましょう」

「何か出た時に突き落とし易いようにぐねらせてほしいっす」

「何故この(もの)()は落下がどうとか言ってた割に強気になれるのか」

 

上位チャット

:渡るだけって言ってるのに

:ござるさんまた素が出てますよ

:落とすなよ!絶対落とすなよ!

 

 うっかり落ちないよう気を付けながら土ブロックで橋を作る。

 と言ってもスニークしていれば普通落ちないのだが。

 

「あっ、ああああああああ」

「えっ、嘘でしょ」

 

 レトリクーンとか言う同期、押されたわけでも無いのに直線で落ちやがった!

 シフトキー押すだけで落ちないの知らなかったの!?

 

「むっ、丁度水に落ちて生きてるでござるよ」

「戻る手間的にはいっそ殺してほしかったっす」

「あーもう、いきなり配信的においしいところ持っていかれるとは」

「ハソシウル殿!?」

 

上位チャット

:まあ落ちた先で鉱物とか集められそうだし

:ついでに階段で行き来できるようにしよ

:ハソちゃんの発想が芸人で草

 

 結局、地味に蓄えていた持ち物を惜しみ、降りて合流することにした。

 途中で鉄とか見つかるかも知れないし。

 ……始まったばかりだからとにかく物が足りないんだよこんちくせう。




自由度の高いゲームって何かと性格出るよね


ついでの限りなくどうでも良い話
中身の設定あるけど名前やアバターの設定が無い同期の諸々くっそ苦労した


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【クラフト!】ゲームサイドで拠点拡張!【ハソシウル視点】

筆者、何気にこの有名ゲーやったことないから前回含めおかしい部分あったらそういう


「本っ当にすみませんでした!」

 

 これが配信終了直後、レトリクーン氏による謝罪である。

 結局彼はあれからもちょくちょくと事故を起こしていたのだ。

 初心者騙りの成立しないゲームだから先に初心者であると宣言してほしかった。

 ちなみに釣りとかを知っていたのは動画や配信で見たことがあったかららしい。

 

「まあ初心者なら仕方がありませんよ」

 

 そして伊甲(いこう)さんはキャラを作っているだけなので普通に喋れた。

 ところどころでキャラ抜けてたしまあそうでしょうね感がある。

 

 とりあえず目先は各自で気が向いたら手を加える方針になった。

 ぶっちゃけ初心者な(レトリクーン氏)にはそのまま自力でいろいろ学んでほしい。

 自力で学んでほしいが、それをするのは()()()()()()()()()

 

「明後日、もう一度このメンバー、同じゲームでコラボ配信しませんか?」

 

 多分間に合うだろう。

 既に日付が変わっているから昼の時間を二日分使える計算だ。

 生活や大学の講義の分だけ削れはするが、準備時間は十分足りる。

 


【クラフト!】ゲームサイドで拠点拡張!【ハソシウル視点】


 

「今回も、皆で拠点の拡張と諸々の備蓄を進めていきます」

「じゃあ自分は魚――」

「前の糸もあるし釣りは任せるでござる」

「えっ、ちょっ、ええええええええ」

 

 伊甲(いこう)さんの察しが良くて助かった。

 今回も拠点の拡張はするが本命ではない。

 本命は、レトリクーン氏向けにこのゲームの初心者講座をすることである。

 

「それでは各種素材を集めつつ初心者向け講座を始めます」

 

上位チャット

:初心者講座助かる

:知ったかを全力で広めていくスタイル

:教えながら稼ぎも進める効率厨の鑑

 

 真面目な話、向こうに任せて学習してもらうには不安が大きすぎる。

 でも普通に勉強会をするのはいろいろ勿体ない。

 折角だから配信でネタにしよう。

 大体そんな発想だ。

 大雑把な講習の過程(チャート)は二日で考えた。

 記録狙いとかも無いしアドリブで何とかできるだろう。

 

 ・

 ・

 ・

 

「これ知ってるっす!鉄っすよね!」

「鉄鉱石は素手だと砕けないから――」

「分かったツルハシっすね!」

「うん、木のツルハシでも駄目だから」

 

 そもそも石のツルハシを作ったのに何故木のツルハシを使うのか。

 

上位チャット

:話を聞け

:急いで空回りし過ぎ

:失敗例見せるの初心者講習としては優秀

 

 正直、想像以上に面倒だった。

 原因は何かを教える前に行動して失敗するところだろう。

 失敗例から学ぶという意味では楽だが、こちらの予定通りに話が進み難い。

 

 一応レトリクーン氏にも長所はある。

 一度教えたことをあまり忘れないから繰り返し説明しなくて良いところだ。

 その一度目が余計な行動で遠くなる欠点と併せて評価すると微妙になるが。

 というかまずその物覚えの良さでもっと仕様を把握しておいて欲しかったが。

 

 ・

 ・

 ・

 

「釣り竿を大分消耗したからそろそろ追加の糸が欲しいでござる」

「ごめん、まだ見つけてないから適当に探索しておいて」

「把握、別方向の探索に移るでござる」

 

 別にこれを機に合流でも良かったんだけどなぁ。

 

 最初の地下ダイブ後、運良く見つけたチェストから少量ながら糸を手に入れた。

 レトリクーン氏が落下した水場もある。

 それらを使いそこそこ釣りをしていたからしばらく食料の問題はないはず。

 

「そういえばハソちゃんってこのゲームどれぐらいやってるんすか?」

「私も動画や配信を見ていただけで、始めたのは配信前の予習が最初ですね」

 

上位チャット

:同じ見てただけでこの差

:もうとっくにやり込んでいたものかと

:予習何時間したんですかね

 

 私だってやる前に軽い調査ぐらいはする。

 初見である理由の薄いゲームだから尚更だ。

 元々あった知識と幾らかの資料を併せて軽く練習すればそれなりに動ける。

 やり込んでるように見えるのはまだ経験不足が響くような場面が無いだけだ。

 

「てっきり拙者と同じぐらいやっていると思っていたでござる」

「参考までに、どの程度でしょうか」

「ええっと、平均時間と期間から……惰性で1000時間ぐらいでござるね」

 

 このゲームをそんなにやってたらRTA動画作る暇が無くなってると思う。

 いや、始めた時期にもよるのか?

 時間だけなら一日平均一時間を三年でも良いわけだし。

 

「ところでこのゲームにもRTAってあった気がするっす」

「ありますね。私は好みと合わなさそうと感じて走っていませんが」

 

 私はチャートの研究と予行練習がタイムに反映され易いRTAが好きだ。

 そしてこのゲームのRTAは仕様上チャートを作る余地がほとんどないと感じた。

 実際は違うかもしれないが、タイムを出すのに練習と試行数の重要度が高すぎる。

 だから私はこのゲームのRTAをまだやっていない。

 

 なおゲーム自体はパソコンを買い換えた時点から入っていた。

 もしVtuberになる前にRTAのネタが切れていたらやっていたかもしれない。

 

「へぇそうなっあっ、ああああああああ!」

「何で今流れるように真下掘ったの」

 

 確かにそれが危険なことは伝えていなかったけど。

 その手の事故はいろんな動画や配信であるから知っていると思ったのに。

 ……下はただの空洞か。

 

上位チャット

:やはり直下掘りは危険

:あの犬猫また落ちてる…

:どうして溶岩で追撃するんですか

 

 追撃はするに決まってるでしょ。

 持ち物整理したばかりで大した物持ってなかったし。

 行き来よりリスポーンの方が楽そうだし。

 説明面倒だし、砂避けられそうだし、偶然溶岩使えるし、やるでしょ。

 いやぁ偶然って怖いなぁ!




最後の溶岩
 偶然近くにあったか偶然バケツで持っていたかは各々の想像にお任せします


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【雑談?】ちょっと今後の方針の相談をしたい【ハソシウル】(1)

書き忘れの補足ですが非公式wikiは熱心な人が作るやつなので大手でなくてもあります


ハソシウル異名一覧(未整理)

 

 ・

 ・

 ・

 

教育RTA勢

 同期のレトリクーンにゲームを教える過程から。

 始めて間もない(と本人は発言している)ことからチャート構築の早さが伺える。

 


 

 何か昨日の配信を元に非公式wikiが更新されていた。

 甚だ遺憾である。

 

 話を聞かずに自爆したら時間の都合を考えて止めを刺しただけなのに。

 素材節約の為に助けられそうな場面でも助けなかったりしただけなのに。

 上下移動で下の方に水辺を用意して落下で移動できるようにしただけなのに。

 それから、それから……

 

 あったことを思い出したら確かにRTAっぽい部分もある気がしてきた。

 

 

 ……それはそれとして今日も配信するか。

 


【雑談?】ちょっと今後の方針の相談をしたい【ハソシウル】


 

「相談という名の雑談配信はぁじまぁるよぉ」

 

上位チャット

:おま配

:なんか元気なさそう

:前にも増してローテンションだな

 

 よくダウナー系扱いされてるけど普通に声低めなだけだから。

 今回は本当にテンション低めだけど。

 

「真面目な話をしますが、現状、私は同期と比べ伸びしろが少ないと気付きまして」

 

上位チャット

:伸び…しろ…?

:まず現状が十分伸びてるが

:大物VtuberRTAでも始めたんか

 

 だから何で普通の配信までRTAにしたがる。

 

 RTA配信はする。

 するが、今回の配信でそういう意図まではしていない。

 そのことをどうか諸君らも思い出していただきたい。

 

「あれな言い方だけど、私が主力にするつもりのRTA配信って見てる側飽きるよね」

 

 何故ならRTAというのは結局のところ試行数が必要になる。

 試行数を重ねるということは同じような配信を繰り返すということだ。

 対人要素が絡むと話は変わってくるのだが、残念ながら一人用ゲームのRTAだ。

 端的に言って見飽きる。

 

「チャート作る期間や練習が要るから、新作ガンガンやったりもできませんし」

 

 そんなわけで、何か変化がなければ遠からず伸び悩むことは確定している。

 だから私は今の内から変化を付けるための準備をしたいのだ。

 

「あと配信するからにはね、視聴者の皆さんともお話したいわけですよ」

 

 私がRTAを始めたのはゲームを今までと違う形で楽しむ手段としてだ。

 しかしそれだけなら動画投稿まではしなかったし、しても続けなかった。

 何故投稿を続けているのか。

 それは他ならぬ視聴者の反応を楽しみにしてのものだ。

 配信もそこは大差ない。

 自分が楽しめることは前提で、どれだけの反応を得られるかも指標になる。

 視聴者と一緒に楽しめないなら配信という形式にしなくても良いのだから。

 

 ……勿論、反応を得る為に炎上する、などはまた違うわけだが。

 

「真面目なRTA中にコメントは拾えませんし、別の何かが要るかなぁと」

 

 私のRTAは手軽に安定しつつそこそこの記録が出せることを目標としている。

 この過程で妥協した部分はゲーム外に意識を向ける余力を作るものではない。

 これは『視聴者と一緒に楽しむ』という点では始まりからして失敗だろう。

 配信者としての楽しみ方に気付いたのが遅かったと言っても良い。

 ここで全力のRTAを切り捨てるのはRTAで興味を持った人に対する裏切りだと思う。

 だからそれ以外の面が欲しいのだ。

 

 ……そういう話をこの前担当の水守さんにした。

 相談の末、いっそ配信で相談した方が良いんじゃないかという話に落ち着いた。

 実際どうするかは別として、見えた方が面白い種類の裏話だと考えたからである。

 

上位チャット

:生き急ぎすぎてる

:地盤固めが先では

:初見ゲーム配信して気に入ったやつのRTAするとかじゃ駄目なん?

 

「えっ、地盤固めしてたら今までの動画の印象引きずったりしない?」

 

 そうなって他の配信が難しくなるの怖いから別方面伸ばそうとしていたんだけど。

 あと初見ゲーム配信からRTAに移行するのは有りと思ったので記憶しておいた。




予定より長くなったので分割した前編です。
筆者は読む側としては手軽に読める量で区切られていないと面倒に感じる人なので。


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【雑談?】ちょっと今後の方針の相談をしたい【ハソシウル】(2)

導入が「思ってもしちゃいけない話題は存在するし迷惑なので真似しないでね」案件


上位チャット

:伊甲に伸びしろなくない?

 

 そのコメントを見つけられたのは偶然ではない。

 現在のコメント数は反応しきれないだけで流し読み程度なら拾いきれる程度。

 更にこういう反応は予め想定していた。

 

「伸びしろ無いとか言ったやつ!お前は全然伊甲(いこう)さんのスゴさを分かってない!」

 

 伊甲(いこう)天巌(てんがん)さんは長期的に安定した人気を得られるタイプだ。

 振りに対して常に期待以上の返しをくれる。

 突発的なトラブルにも『ベストではないがベター』と言える対応ができる。

 察しの良さも含め、配信者視点ではコラボ先としてかなり助かる相手と言える。

 大規模コラボでは問題を起こし難い人の方が声をかけ易い。

 コラボが増えれば様々な方面の人の目に留まる機会も増えて伸びる。

 そして本人にはストレス要素もなく人が良いので視聴者が離れる要素も少ない。

 要するに長期間でじっくり伸びるタイプ。

 今はまだこれが活かされるだけの下地が足りていないだけだ。

 

 という話を懇切丁寧にした。

 

「理想を言えば何かもう一押し欲しいですが、それ以外欠点ありませんよ!」

 

上位チャット

:わかる

:うわ急に梯子外すな

:良い人止まり…

 

 長所ばかり言って分かり切った欠点言わないでいると詐欺みたいになるからね。

 そこはきちんとやっていきたい。

 

上位チャット

 伊甲天巌:最後まで褒めて欲しかったでござる

 

 あっ、本人いるじゃん。

 追い打ちしておこう。

 

「ぶっちゃけ今現在特別な属性が無い分何かが起きた時どうなるか注目してます」

 

 勿論、何の属性も付かない可能性もある。

 属性が付く付かないと関係なく引退、という可能性もある。

 ただ何か起きればそれだけでそこそこ長くやれそうなポテンシャルはある。

 少なくとも私はそう読んだ。

 

 というかまず会社側も何かを期待して採用したはず。

 それなのに期待された要素が見えてこない点が気になる。

 本当にただの良い人で採用されたなら今度は採用が三人だけな事情が気になる。

 

上位チャット

 レトリクーン:こっちも褒めて欲しいっす

 

 何故お前がここにいる。

 今のお前は切り抜き祭りで配信したらしただけ伸びそうなボーナス期間だろうが。

 何なら一人でクラフトしてても良いんだぞお前。

 

 正直完全無視でも良かったが勿体ないし拾ってはおこう。

 

「おい、配信しろよ」

 

 ついでに、褒めかどうかはともかく、伸びる要素の話をしておく。

 

 レトリクーンは知ったか振りで痛い目を見る展開でキャラが立っている。

 ゲーム配信が中心で、上手くないことはあっても下手という感じは受けない。

 何よりも物覚えが良い。

 一度学んだことはほとんど忘れないし活かそうとする努力も見える。

 ゲームによっては編集された動画のようなテンポで配信できるのは強み。

 最低限の下準備すらしてくれないから最初の方は見ててストレスになりそうだが。

 

上位チャット

:まあ妥当な評価

:逆に何で素直に聞いたり調べたりできないの

:ストレスかけられまくってた件を恨んで良いのよ

 

 比較して思ったけれど、やはり私には初動以外の強みが足りない。

 話を戻してその辺りを考えないと……。

 


 

 そんなふうに考えていた時期が私にもありました。

 

上位チャット

:あーうん確かに

:伸びない要素が分かっても伸ばせるかは別物だよなぁ

:むしろあの配信需要あるの?

 

「ああいった配信も需要が視聴者数程度にはあるので下手に方向転換するのも――」

 

 私は何故か、同社の先輩Vtuberの配信考察をしていた。

 切っ掛けは話の流れで先輩Vtuberについて聞かれたこと。

 他の話題が浮かばず繋ぎにする気で乗ったら考察の流れに固定されてしまった。

 流れを戻せる程の話題が思い浮かばなかった私が悪い。

 

「すみません他社のVについてはちょっと――」

 

 他社については交流の無い現状で下手なことは言えない。

 そこだけはきちんと守った。

 

 正直言うと、他所(よそ)も研究目的も兼ねて沢山チェックしているから語りたかったが。

 


 

 後日、この配信の切り抜き動画を見つけた。

 タイトルは『自称同期最弱、身内にめちゃくちゃ詳しい』とかそんなのだった。

 最弱じゃなくて長期的な強みが無い話だからタイトルと全く違うんですけどねぇ。

 とりあえず間違ったタイトルには心の中で低評価を押しておいた。




タイトルの記憶が曖昧なのは興味の薄さの表れだったり


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事故は意図しないから事故と呼ぶ

※作中時間の密度は仕様です


「いや、確かに『何かが起きたら』みたいなことを言ったけどそれはずるいでしょ」

 


 

 配信の種類にもよるが、御馴染みと言われるような種類の事故が幾つかある。

 私も注意しているこれを順番に軽く確認したい。

 

 マイク関連の事故。

 主にミュート忘れや配信の切り損ねで余計な音声が入るパターンだ。

 これは素と配信でキャラを分けている人程、影響が大きくなる。

 極端に差があって尚且つ地の方が親しみやすいと切り抜きで広まったりする。

 逆に音声が入っていないパターンは余程のことが無い限り大きな話題になり難い。

 

 カメラ関連の事故。

 Vtuberの例だと、リアルの顔が映る、カメラ認識がおかしな挙動をするなどだ。

 近年ではソフトや環境の進歩もあって滅多にみることは無い。

 まあトラッキングの都合で変な挙動や体勢に見えることぐらいならあるが。

 ついでに貫通などアバターの仕様に由来するものはまた別枠だと思っている。

 

 リアル関連の事故。

 配信中に他人の声が入る、配信者だと隠していた知り合いに知られるなどだ。

 視聴者にとっては話題の一つ程度の内容でも当人には大ダメージが入る。

 最悪の場合はここからリアル割れしてストーカーだの引っ越しだのに発展する。

 今回の伊甲(いこう)さんは、限りなくライトなこれである。

 


 

 それが起きたのは私が方向性の話の配信をした同日の少し後。

 伊甲(いこう)さんがクラフトの拠点を整えるための配信をしていた時のこと。

 彼は素材集めが捗ったこともあってか予定より長く配信していた。

 

 そして真夜中、はっきりとはしないが別の人の声が入った。

 おそらく予め配信予定時間を伝えていてそれを大幅に越えたことでの事故だ。

 切り抜いた人によって何を言っていたかの解釈が変わる程度の音量だった。

 私がはっきり聞こえたのは『お父さんおやすみー』の部分だけ。

 もう少し前後はあるのだがそこはよく聞こえなかった。

 

 そういうわけで、暫定子持ち扱い。

 子は声からして多分十代半ば以上の女性。

 女性の声という点からプチ祭り状態となった。

 炎上でなかったことは幸いである。

 期間と規模の関係でガチ恋勢がいないから助かった、と私は思っている。

 

 一連の流れは一晩でそこそこ広まった。

 昨晩の配信中に娘関連のコメントが一気に増えて苦労していたことも確認済み。

 きっと今晩の配信では切り抜きで広まった分でもっと大変だろう。

 私の配信の直後なことを理由に仕込みと思われたら私も対応に苦労しそうだ。

 

 そう思いながら同期用のグループチャットを確認する。

 


【ニシツキシキゲームサイド用グループチャット】


 

伊甲天巌

 担当と相談した結果、今後の類似した事故を考慮し娘がいることは公開します

 

レトリクーン

 りょ、本当にいる、と

 

ハソシウル

 分かりました、ついでにレトリクーンさん炎上して話題上書きしてほしい

 

レトリクーン

 何のために社内教育受けたと思ってるの!?

 

ハソシウル

 え?受けたの?

 

レトリクーン

 会社でペーパー試験と解説の授業あった件

 

ハソシウル

 私は軽く説明されたけど詳細は渡された冊子か担当に聞けって

 

伊甲天巌

 ハソさんと大差ありません

 

レトリクーン

 えっ

 


 

 個別指導、そういうのもあるのか。

 というかかなり早い段階から何かあった時の対応の準備をしている、と。

 なるほど、運営も彼の突撃癖による問題を把握しているようだ。

 これが『致命傷さえ避ければ大丈夫』という判断の指導なら良い手だと思う。

 

 まだ金曜の早朝だが三人揃ったついでに今後の情報の扱いの確認を軽くしておく。

 抜けや勘違いから余計な事故を起こさないことは大切。

 特にレトリクーンは既に信用面が……。

 

 

 とりあえず特に大きな事故にはならなかった。

 今回のところは、それで良しとしておきたい。




連続更新はここで終了。
再開は章単位のストックができてから、毎日あるいは隔日更新を予定しています。


割とどうでもいい裏話
 自作品「推しを養うから起業するしVにもなる」について。
 一応裏設定として投稿日と作中時間がほぼ連動しています。
 曜日の都合で多少前後しているぐらいです。
 それを前提に並べるとまあ生き急いでるのかという流れがとても多い。
 気になった方はちょっと確認してみると面白いと思います。
 この話の進行速度のおかしさも(多分)分かるので。


執筆中の次章情報
 予定通り書けたら作中時間で約三十分後から始まります。事態が早い。


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3章 箱のオフでお互いを知って
交流会の予定


大変お待たせしました今回はほぼオフの話だけでできた章になります


 同期で今後のやり取りしている最中、会社用のグループチャットに連絡が入った。

 


 

西月ノゾミ

 ゲームサイド一人増えるから交流会代わりに土日に皆でゲームしよう!お泊り可!

 


 

 西月ノゾミというのは日向(ひむかい)(のぞみ)社長のVtuberとしての名前だ。

 Vtuberとしての活動は各種宣伝を兼ねているらしい。

 私から見た限りは宣伝でない普通のVtuberとしての配信の方が多いと思うが。

 

 それはそれとして社長、話の何がどうつながっているかさっぱりわかりません。

 それと連絡が急過ぎます。

 交流会とかもっと早く伝えて欲しかった。

 グループチャットに参加している他の人も突発交流会にはツッコミを入れていた。

 

 

 交流会の理由の一つとして、今日追加でデビューするVtuberの話があった。

 元々個人でやっていたのを移籍(?)してきたそうだ。

 移籍してきた人はコルスさんという。

 冷たい雪と書き、ColdSnowを略してコルス、と読むのだそうだ。

 私も冷雪(コルス)さんみたいに捻った名前の方が良かっただろうか。

 

 彼女のアバターは白い髪と水色系の防寒具を着込んだようなもの。

 配信は食事関連、コンビニ弁当や冷凍食品など全国区のものを中心に扱っている。

 案件を沢山やっているのかと思ったら完全に趣味の宣伝らしい。

 またその食事配信では白い手袋をした手元を映しているのも特徴。

 Vtuberとは何だったのか、というツッコミは、かなり昔からあったらしい。

 試しに遡るとVtuberになる前、イメージイラストだけあった頃の配信が出てきた。

 後にアバターに置き換わった箇所にイメージイラストが置かれているだけだった。

 多分だが、元々これが本命で流行りに合わせてライバーに移行したとかだと思う。

 

 

 ……というかそもそも今回の伊甲(いこう)さんの件の対応はいいんだろうか。

 もし仮に夜まで様子見とかそういうことならそう書いて欲しい。

 


 

 流れはともかく、私も交流会の参加を決めた。

 

 突然のことではあったが予定は大丈夫だ。

 以前から土日はRTA関連の諸々をする為に空けていた。

 なので大学の友人との予定も一切入っていない。

 空いた日をVtuber活動に充てると思えば良い。

 

 

 今でも距離の関係もあって会う必要がある場面以外で会社に行っていない。

 その分どうしても交流が限られている。

 更に私の行っている大学は三年からゼミ所属になる。

 それからもこの手の会に参加できるかわからない。

 そういう意味でも今の内関われる部分では積極的に関わっていきたい。

 

 間違ってもお泊り中の食費無料に釣られたわけではない。

 滞在を最大限見積もった三泊四日の食費より往復にかかる費用の方が大きいし。

 現実的には一泊二日になるし。

 

「……そろそろ大学行くか」

 

 気付けば結構な時間が経っていた。

 というか朝イチでグルチャ確認したから朝食準備し損ねた。

 今から用意しても良いが時間的に微妙になりそうな気がする。

 仕方がない、学食を使おう。

 労力を買ったと思えば安いもんだし。

 


 

 大学では残念なぐらいいつも通り。

 

 シャーペンを忘れた友人に一本貸した。

 分からない課題を友人達と一緒にした。

 昼食の日替わり定食がチキン南蛮で嬉しかった。

 空き時間で某有名なカードゲームをする集団がいた。

 新しいサークルを作ろうと走り回っている人がいた。

 

 本当にいつも通りだが……

 サークル作るって言ってるやつは諦めるか順序考えるかしろ。

 結構な頻度でやりたいことが変わるんじゃ集まる人も集まらないだろうが。

 

 ……私も配信で似たようなことをやらかさないよう注意した方が良いかも。

 手を広げ過ぎてあの人みたいに迷走する可能性はある。

 私の根がRTAプレイヤーであることは忘れないようにしよう。

 


 

 時間は夜八時。

 企業所属としては一週間後輩でほぼ同期な彼女の配信が始まった。

 とは言ってもVtuber以前に配信者としてかなりの先輩。

 経験を積んでいるからか、私から見た限り進行に問題はない。

 前世要素を一切隠していないのを利用していろいろ簡略化されているぐらいだ。

 質問も企業所属になった理由など少し踏み込んだものが多く見える。

 尤も『私と比べてそう』というだけなので普通に初見らしい質問もある。

 回答で用意した切り抜き動画を使い始めたのは面白いと思った。

 しかも『見てください』でなく『流します』というやり方。

 これは私には真似できない。

 同じ前世公開済みでも私のは大体ゲームだから権利問題にひっかかる。

 

 そういえば交流会以前で間違いなく顔を合わせていないのは彼女だけか。

 他の人は直接言葉を交わしてないだけで知らずに顔を見ていた可能性もあるし。

 そんなことを思いながら配信にチャットで少しだけ参加。

 彼女の配信修了後、私は先輩で後輩な同期のことに少し触れる雑談配信をした。




年内更新ヨシ!
……すみません長らくお待たせしました予定より一ヶ月以上遅い更新です
正直リアル回でこんなに詰まるとは思っていませんでした見通し甘かったです


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準備も交流の内

繋ぎ回


 時に、都会以外で電車が来る頻度をご存知だろうか。

 私の地元で行きたい方向に行ってくれる電車は約一時間に一本来る。

 ガチ田舎だと一日に何本という数え方になるのでまだ極まっていない。

 何が言いたいのかと言うと、一本逃すだけでめちゃくちゃ待たされるのである。

 ……時間できたし逃避やめてグルチャに連絡入れておくか。

 


 

「すみません!遅れました!」

 

 時間は11時を過ぎ、昼食の準備が始まりそうな頃。

 あるいは準備がある程度進んでいるであろう時間。

 各食事の準備や片付けを手伝うことは予め聞いていたので問題ない。

 どちらかと言うと参加予定と伝えていた準備に間に合わない方がまずい。

 間に合わないと本当に申し訳ないことになるのでこの時間で助かった。

 そう思ったのだが、見ると会社には担当さん以外いなかった。

 

「えっと、これは……」

「今は皆、会社寮の方に行ってて……んっと、ここで良いか」

 

 担当さんはそう言いながらパソコンでの操作を終える。

 音からして電源を切ったかスリープモードかだろう。

 

「お仕事であれば別に――」

「これは個人的な勉強ですし、待たせる方が良くないので」

 

 別に場所を教えてもらえるだけでも良かったのに。

 そう思ったが今回は好意に甘えることにした。

 馴染みのない人が一人で行ったらただの不審者に見られる可能性もあるし。

 


 

 会社寮は同じ敷地の中にあった。

 つまりめちゃくちゃ近い。

 計る区間によっては徒歩一分かからないレベル。

 近くにあるマンションか何かぐらいにしか思っていなかった。

 

「ただいま参りました」

 

 担当さん、何かそれ間違った表現って聞いたことある気が……。

 というかこの場合は帰りましたでは?

 あるいは自宅じゃないならこれで正しいのか?

 ……分からないし重要でもないから考えないでおこう。

 

 入って割とすぐのところにラウンジ。

 つけっぱなしのテレビの前、低いテーブルを挟んで将棋をしているのが見える。

 将棋をしているのは男女の二人で、横から見ている女性が一人。

 それと少し離れたところにおっさんが二人、多分囲碁をしている。

 ……実は五目並べとか言うオチはないよな?

 

「うげっ、もうこんな時間か。加瀬谷(かせたに)さんと(つぐ)はキッチン手伝って」

 

 そう言いながら将棋を横から見ていた方の女性が奥に向かった。

 見た感じあっちで料理する感じか。

 

「すみませんが、駒走さんは――」

 

 担当さんは、そのまま放置はない、と判断したらしい。

 先に他の皆がいる場所だけは教えてもらえた。

 合流ついでに集まっていた人達と軽く自己紹介を済ます。

 

 その間、おっさん二人は気付いたら階段で上の階に向かっていた。

 将棋の相手をしていた男性は一度料理の手伝いに加わろうとしていた。

 役に立たないからと追い返されたが。

 私も他の人視点では能力不明ということで料理には不参加。

 と言うか追い返された野郎はともかくおっさん二人と会話の機会逃したんだが。

 地味に重要な裏方とかやってそうな感じがしたから顔繋いでおきたかったのに。

 


 

 下準備と言ってもやることはいろいろとある。

 私は三階から食事用の机や椅子を運ぶ手伝いを頼まれた。

 三階から運ぶのは二階が男性、三階が女性と分けている都合である。

 間違っても下っ端に遠い場所を振られたとかそういうのではない。

 何故かある荷物用のエレベーターを使えるからかなり楽な方だし。

 

「本当はこういう作業は社内で先に済ませておくべきかもしれないんだけどね」

 

 とは一緒に作業している最中の社長の言葉。

 

「私としてはお客様として来たわけでもないので大丈夫ですよ」

 

 ついでに言うなら、そうされると結構困った。

 そもそもここに来た理由は交流。

 同じ目的の作業を協力してやる、というのは会話の切っ掛けを作り易い。

 だから参加させて貰える方が私としては助かるのだ。

 

 ……三階から椅子やテーブルを運ぶのが二人だけになるのは予想外だったが。

 原因は階で男女分けているのと女性陣が大体料理に回っていること。

 お陰で女性用の階に入れるのは私と社長だけだ。

 私としては三階のいろいろを片付けて男性に協力させてよかったと思う。

 なお交流という点では問題ない。

 どうせ一階で作業する時にでもやり取りあるし。

 

 というか、作業してて気付いた。

 よく見るとここ、巌●台分寮に配置が似ている気がする。

 荷物用エレベーターや追加の部屋で気付くの遅れたけどベースが近い。

 あのゲームをやったのが『俺』の頃でかなり昔で曖昧だけど。

 そう考えるとよく思い出せたな。

 

 ついでに手が空いたしちょっと確認しておくか。

 えーっと……よし、検索したら出てきた。

 うん、一部の部屋やエレベーター増えてるの以外大体同じ感じがする。

 

 

 そんなこんなの後、区切りとして軽い挨拶をしてから昼食が始まった。




巌●台分寮のくだりは間取り決めた後に気付いてそのまま入れた


Q.三階の片付けてないいろいろって?
A.分かり易いのだと下着の部屋干しとか


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大人数と言えば焼き肉だけどそれはそれとして今回は海産物

良いサブタイトル思い浮かばなかった修正したい(願望)


 出てきた昼食は大体海産物中心の料理だった。

 蟹グラタンとか、でかいエビフライとか、刺身とか、天ぷらとか。

 他にも何か(イワシ)を味噌で味付けしたやつとか、サバの刺身にゴマかかったやつとか。

 主観で言うと全体的に白米の進むものばかりだ。

 実際、白米がお店にありそうな大きな炊飯器で炊いてある。

 料理と白米を底が深めの紙皿に分けて食べる形式。

 

 なお食べる用のテーブルは普通に家にあるような四人掛けサイズ。

 一方、料理を並べる用のテーブルはオフィス用の折り畳みのやつ。

 会社だから後者で統一されているものと思っていたがそうでもないらしい。

 

「何でこういう集まりなのに焼肉じゃないの」

「言ってること結構失礼だからね」

 

 私の向かいに座っている失礼なやつは羽田野(はたの)(つばさ)

 要するにレトリクーンの中の人である。

 とりあえず私は顔を合わせておきたかったので彼の食べている席まで来た。

 初見の感想としては『性格だけでなく身長まで小学生みたいだな』である。

 小学生が身近にいないからどっちも完全にイメージだけど。

 これで私と一歳違いの大学一年生というのだから驚きだ。

 なお語尾はキャラ付けなので今は付けてない。

 今思うと私も配信用に何か語尾付けてよかった気がする。

 

「ついでに言うと海産物は大体江島(えとう)さんのお祝いで贈られてきたものです」

 

 羽田野(はたの)君の隣から事情を伝えたのは西月(にしつき)(まもる)さん。

 社長の親戚でその伝手から採用された自称雑用係。

 それと同期である伊甲(いこう)天巌(てんがん)さんの担当スタッフでもある。

 初見の限りなく偏見に満ちた感想としては『何かチャラそう』とかそんなところ。

 実際に話してみるとそうでもなかったわけだが。

 話しかけ易いように、という意図の髪型や恰好が変な化学反応を起こしている。

 

 お祝い、というのは江島(えとう)日和(ひより)さん、つまり冷雪(コルス)さんが企業所属になったこと。

 これを理由に実家から『皆で食べてね』的なノリで海産物が贈られてきたとか。

 皆で、という表現から分かる通り大人数で食べる前提の量がある。

 お陰で現在、冷蔵庫冷凍庫共に容量的にかなりきつい。

 軽く見た程度だか、海産物以外を見つけることが難しい密度だった。

 

 つまりこの昼食会は少しでも冷蔵庫を空ける為に人を集めた面もあるわけだ。

 実際、可食部の割に梱包だの何だのが沢山要る蟹や海老が並んでいるし。

 それと確認した限り、魚料理も明らかに足が早いものが優先されているし。

 

「焼き肉より準備や片付けの手間も増えていますが相応においしいですよ」

 

 私の隣から遠回しに圧をかけるのは私の担当の水守(みずもり)(つぐ)さん。

 その顔は金髪碧眼の如何(いか)にも日本人じゃなさそうなもの。

 しかし生まれも育ちも日本な上に、中学時代の英語の成績は微妙だったとか。

 今回、料理や片付けの手伝いに加わっている。

 つまり焼肉でないことによる負担がかかっている人物の一人だ。

 

 この言葉を受けてか、全面的によくない発言をした羽田野(はたの)君は素直に謝った。

 先にお祝いにケチを付けた点を謝った上で料理の手間のお礼を言えるのはさすが。

 発言のどこを悪く思われたかや行動の優先度をよく判断できている。

 そこまで判断できるなら、あとは考えなしの発言をやめてほしい。

 配信でやらかしてるのも大体そういうところだぞ。

 

 

 ……なおこの集まりに伊甲(いこう)天巌(てんがん)さんは来ていない。

 家の都合で土日は基本的に出てこれないとグルチャで言われた。

 この辺りの話の流れで聞けたところによると、面接や試験も平日にしたとか。

 ただの想像だが、土日の方が忙しい客商売とかそういう系だろうか。

 


 

 雑談をしながら料理を改めて確認する。

 どれも海産物をある程度含んでいる。

 食材の量もだが、これだけの種類の料理を用意できることもすごい。

 

「これって確か、大体江島さんが中心になって料理したんでしたっけ」

 

 海産物の出所である江島さんの実家は漁関係の仕事だとか。

 それで食べる機会も多ければ料理も馴染みがあるのだそうだ。

 ついでに現在は新人教育の都合で一時的にこの寮に移り住んでいると聞いた。

 どういう都合なのかは話の流れで聞きそびれた。

 

「そうですよ。まあ一部はシンプルに焼くだけとかの方が――」

 

 江島さんは雑談に途中から加わっている。

 第一印象は『背丈が(169cm)と大差ないな』とかそんなところ。

 海の人というと日焼けのイメージがあったのだが全然そんなことはなかった。

 出荷先の都合から仕事は夜から早朝になりそれほど日に焼けないらしい。

 言われてみれば、朝から店頭に並べるにはそれ以前に獲る必要がある。

 逆算すれば夜中の内に行動する必要があるのは当然。

 どちらかと言うと髪や肌を潮から守る美容品の方に力を入れているのだそうだ。

 

「時期毎の種類の偏りで飽きがこないように料理勉強したんだっけ?」

 

 その声は話の途中に、斜め後ろから降ってきた。

 振り返ると見覚えのない眼鏡の女性がいる。

 なんか眼鏡のレンズが四角くくて大きいしフレームも妙に太い。

 すぐ消える程度の芸人がかけていそうな感じだ。

 そしてそれが絶望的に似合っていない。

 

 あと突然背後に現れるとか、これが暗殺者なら死んでたぞ。私が。

 

「ニシツキシキ所属、主にソフト担当の(わた)志織(しおり)です。よろしく」

 

 後ろの女性はそう言いながら、首から下げていた社員証を向けてきた。

 何か出し方が名刺みたいな感じだな。

 反射的に取りそうになったじゃないか。

 というか、準備の時に見かけなかったような。

 

志織(しおり)さんは最近働き詰めだったので、この手の準備から外されているんですよ」

 

 私が疑問を口にするより先に隣に座った江島さんから補足が入った。

 なるほど、だから見かけなかったのね。

 

「正直フィジカル弱すぎて任せられる手伝いが少ないというのもありますが」

 

 追加の補足が反対側(渡さんから遠い側)に座っている(つぐ)さんから小声でされた。

 それはつまり、働き詰めとか関係なく準備から外されるような人なのでは?

 早成(わたし)は訝しんだ。




一応補足
 最後の方、駒走さんは緒さんと江島さんに挟まれてます
 元が四人掛けのテーブルでめっちゃ狭いけど人集まりつつあるから合わせた形


裏で出身県を設定していたお陰で料理の部分埋めやすかった(小並感)


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配信者視点の考え方

元々は前話後半部分だったけど気付いたら中身が濃く長くなっていたから分けた
あと名前沢山出てくるけどぶっちゃけ覚えなくても大丈夫です


 料理の話から始まり雑談に移行したわけだが、そこはライバー関係者の集まり。

 自然と配信の方針の話が出てくるようになる。

 

 

「やっぱり方向性を絞る部分と広げる部分をある程度はっきりとさせて――」

 

 私はメインをはっきりさせてそれ以外を混ぜる形が良いと主張。

 柱になる要素を決めておけば迷走しても最悪柱の部分に興味がある人は残る。

 根に当たる柱を決めずに活動すると興味を持ってくれた視聴者にも優しくない。

 こういう点で興味を持った、という人も活動の方向が見える方が追い易いだろう。

 

 

「ですがそうやって意図的に層を偏らせるより、偏りなく幅広くやる方が――」

 

 伊甲(いこう)天巌(てんがん)さん担当の(まもる)さんはやることの幅が大切だと主張。

 例えばいろんなゲームをすれば見慣れないゲームでも視聴するような人が残る。

 案件の受け易さや視聴者数の安定させ易さなどを考えれば偏らせない方が良い。

 概ねそんな感じの話だ。

 私としては本人のキャラが余程強くない限りは難しいやり方だと思う。

 

 ……なお名前呼びしている理由は苗字だとややこしいことになりそうだから。

 特に距離感が縮んだとかではない。

 

 

「そもそも配信者によって方針との相性が――」

 

 (ハソシウル)担当の(つぐ)さんは配信者の性格に合わせることが大切と主張。

 実際、私は研究を積み重ねるタイプなのである程度繰り返す方が持ち味が出る。

 対して、羽田野君(レトリクーン)は初見で四苦八苦しながら進める方が持ち味が出る。

 ある意味では私と(まもる)さんの折衷案と言っても良いだろう。

 問題は『その持ち味を活かせるやり方をどう判断するか』というところだが。

 

 

「配信者云々を言うなら、まず本人のモチベーションの問題も――」

 

 江島(えとう)日和(ひより)さんは配信者の感覚や感情が重要と主張。

 配信者の気分に合わせた配信なら少なくとも実力相応の力は発揮できる。

 言い換えると『気分に合わないものをやらせても微妙になる』という話だ。

 冷雪(コルス)さんとしての配信はむしろ偏りがはっきり出ていたので意外だった。

 私のRTAも(もと)を正せばモチベーションの話で始まっているので一理ある。

 でもこれを本気で重視すると活動の内容が不安定になる。

 個々はともかく全体のバランスは微妙なものになりそうだ。

 

 

「お金貰いプロとして活動する以上、モチベーションよりできること重視で――」

 

 (わた)志織(しおり)さんはできることから逆算するべきと主張。

 個性を活かす方向性はある意味(つぐ)さんに近い考え方だ。

 違いとして、あちらは配信者側の主観重視に対してこちらは視聴者側の主観重視。

 本人がどう思っていようと他の人が持たない強みを持つなら活かすべき、となる。

 但しこれは『期待されたことは嫌でもやる』みたいなのとはまた違う。

 この辺りの基準は詳しい話で逆によくわからなくなったのでノーコメント。

 

 

「でもまず大半の視聴者はある程度知っていることの方が楽しみ易いわけで――」

 

 途中から加わった日向(ひむかい)(ゆう)さんは知られている要素こそが大切と主張。

 例えば流行のものは多くの視聴者が知っているから自然と楽しめる人も多くなる。

 有名なレトロゲームや専門性の低い雑談も同様。

 つまり『広まる上では多くの人が知っている要素こそが大切』という考え方だ。

 私としては、自力の重要度が高くなるから人を選ぶやり方だと思う。

 

 

「そもそも求められる要素は幾らでも変わるし方針をはっきりさせなくても――」

 

 とはいつの間にか加わっていた日向(ひむかい)(のぞみ)社長の主張。

 でもそれは少し話が違う気がする。

 

「今は配信者単位の話であって企業とか界隈とかの規模の話じゃないんですよ」

 

 私の言いたいことは(ゆう)さんのツッコミ通りである。

 今しているのは『配信者視点でどういう方向を考え目指すか』という話だ。

 言い換えると『カレー屋にするか定食屋にするか』みたいなレベル。

 間違っても『必要に応じて変えればいい』みたいな無茶は含まれない。

 

「いやいや、それこそ視点が狭すぎるよ」

 

 聞いてみると、確かに考え方は違ったが、私の想像よりは現実的なものだった。

 

 社長曰く、複数の方針を抱え込み使い分けることは不可能ではない。

 例えばコラボであればコラボの趣旨によってはいつもと違う方針の活動になる。

 そのような『方針を切り替えて許される要素』を幾つも利用してやればいい。

 それなら本人を活かせる要素や求められる要素を臨機応変に全て活かせる。

 

「基本はあっても良いけど、そこに縛られ過ぎたら飽きが来やすくなるだけだし」

 

 なるほど、言いたいことは分かった。

 聞いた限りだとある程度は正しいだろう。

 だけど私は言いたい。

 

「その自由度を活かしきることってできるんですか?」

 

 方針の切り替えを前提にすると、今度はやれることの選択肢が広すぎる。

 そこから最適解を選び続けるというのはまず現実的ではない。

 高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に、とは要するに行き当たりばったりという。

 

「そうだね、最初からは難しいからまず考え方として――」

 

 

 そんな感じで大人数で集まり話し合っていたわけだが――

 

「えっと、ちょっとお茶取ってきますけどついでに何か要ります?」

 

 羽田野君(レトリクーンの中の人)は話に全くついてこれてなかった。

 なんとなく分かってはいたけど、君はフィーリング型(こういうこと考えないタイプ)だもんね。

 こっちばっかり盛り上がってごめんよ。

 何なら他所(よそ)の会話に交じりに行っても良いから。

 

 

 なおこの後、話が盛り上がり食事の片付けを忘れていた件で怒られた。




名前は必要なところで復習入れたりするのであまり覚えなくても大丈夫です
※大事なことなので以下略

一応興味ある人向けに章の最後に主人公視点で全員分の情報まとめを入れます


ついでの復習
【話題】配信の考え方【参加8人/全体12人】
 なお不参加の内二人はおっさん


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夏と言えば雪山。よしんば冬だったとしても雪山

赤い通信機追加のアップデートは7月16日で作中時間より前ってwikiが言ってた


 今回集まった中でライバーは八名。

 八名と言えば大人数でやるゲームの目安の一つでもある。

 そう、すなわち――

 

『それじゃあテストも兼ねて、社内雪山人狼始めるぞー!』

 

 社長の音頭に合わせて皆で声を挙げる。

 つまり、そういうことである。

 


 

 雪山人狼とは、一部で流行っていた雪山から脱出するゲームの通称である。

 ゲームをするのに必要な人数の目安は八人。

 サバイバーという役割の六名は制限時間内に施設の修理をして雪山から脱出する。

 トレイターという役割の二名はサバイバーの脱出を妨害する。

 脱出に成功したらサバイバーの勝ち、失敗したらトレイターの勝ちになる。

 

 この役割は最初ランダムに割り振られる。

 なので最初は誰がトレイターか分からない。

 そしてトレイターの妨害は人や場合によって様々なパターンがある。

 

 サバイバーに紛れて進行に必要な材料を隠して遅延を狙っても良い。

 同じくサバイバーに紛れて嘘の情報を流して混乱させても良い。

 あるいは状況を見て突然殺しにかかっても良い。

 そういった判断や駆け引きが肝になるゲームだ。

 


 

 始まった理由は幾つかある。

 その内配信上でやりたいゲームの候補として挙がっていたこと。

 試しにやれるだけの人数が集まったこと。

 配信に近い形式での接触を増やすこと。

 大体その辺りだ。

 

 なお何人かは寮から会社の方に移った。

 理由は単純に寮だけだとパソコンが足りないから。

 寮と会社の配信用パソコンを合わせれば数は足りるので人数を分けたのだ。

 それで良いのか、いろいろと。

 

 それはそれとして、交流会としてはどうなんだ、という疑問は一応ぶつけた。

 

『この手のゲームやってればお互いの性格ぐらい自然と分かるでしょ?』

 

 何当たり前の話をしているんだ、という反応を社長にされた。

 しかも他の人達も感じからして同意しているようだった。

 そんなバトルもので聞くような理論があってたまるか。

 

 

 そう思っていたんだがなぁ。

 

『ハソちゃんトレイターだったっす!今襲われてるっす!』

 

 拾った通信機(トランシーバー)からレトリクーンの声が聞こえる。

 だがこれは誰かの声真似であり本物ではない。

 何故なら本物のレトリクーンは私と一緒に行動しうっかり熊に襲われ既に死んだ。

 お陰で私は現在単独行動中だ。

 第三者視点、どう考えても私がトレイターです本当にありがとうございました。

 逆の立場なら死体見つけても『あの後始末したんだろうなぁ』と思う。

 いや、私は本当にサバイバーなんだけどね?

 通信機(トランシーバー)の声は誰かの声真似で確定しているんだけどね?

 

 こういう事態が頻発する原因は元ネット声優組二人が原因である。

 その二人は他の人の声真似をある程度の精度でできる。

 しかも特徴的な声に限定されないから咄嗟に見抜けなかったりする。

 この都合で通信機(トランシーバー)の使用や死体を着るなどした時の動きの幅がやたら広い。

 私の知ってる雪山と違いすぎませんか……?

 

 なおこの通信で反論するとそれはそれでまずいことになる。

 少なくとも私が通信機(トランシーバー)を持っていることがトレイターに伝わる。

 またサバイバーの誰かが通信機(トランシーバー)を持っているとも限らない。

 持っていたと仮定しても私の反論でサバイバーを証明できるかというと怪しい。

 

 以前なら状況次第で通信機(トランシーバー)を持っているとトレイターを疑われた。

 トレイターは最初から通信機(トランシーバー)を持っている。

 だから通信機(トランシーバー)を作る相談や拾う機会が明確でないと疑う余地になる。

 しかしこの前のアップデートでトレイター専用の赤い通信機が追加された。

 お陰で通信機(トランシーバー)を持っているだけではトレイターを疑われたりしない。

 が、通信機(トランシーバー)を所有しているという情報の価値は残っている。

 例えば今回必要な素材には通信機(トランシーバー)の材料も含まれる。

 トレイターが素材を消費する為に通信機(トランシーバー)を作った、という見方もできるわけだ。

 

 しかも今回は『偶然拾った』という事実を主張しても証明が難しい。

 詳細は略すが、大抵通信機(トランシーバー)を拾う場合は複数個あるし集団行動をしている。

 言い換えると、私が拾ったなら普通は一緒に拾った誰かがいるはずなのだ。

 そしてその一緒に拾ったレトリクーンは熊で死亡済み。

 ……もしかして、トレイターがレトリクーンの死体から回収したのか?

 

 うーん、最悪の場合はここから一気に詰みそうだ。

 でも一応サバイバーで同じ色の通信機を持っている人がいなければ害はない。

 そう期待して探索に――

 

 ん?何か聞こえるな?

 移動中に聞こえ始めたから向かっている側、つまり上の方か?

 えっと――

 

 行った先にあったのは二人の死体と一人の生存者。

 

「ハソシウルさん、丁度さっきトレイター二人倒しました」

「信じられるかぁ!」

 

 一対二で勝てるわけないだろ!

 

 なおこの後生存者の冷雪さんに殴り掛かって返り討ちにされた。

 しかも終わってみると本当にサバイバーだった。

 分かるわけないじゃん。




レトリクーンの声真似周辺の補足
 通信の意図は本文の考察通り撹乱が目的
 声や名前の選択はハソシウルと行動して熊に襲われる流れを隠れて見ていたから
 通信機(トランシーバー)の入手は本文の考察通り本物の死体から回収
 死体から回収できた時点で一緒にいたハソシウルも所有は濃厚と判断(本文参照)
 通信で反応を見た上で他の人が聞いているなら擦り付けるつもりだった
 死体にされて全部破綻した


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準備と確認は大切に

また繋ぎ回


 よく考えたら倒れていた二人がネット声優組だったから決めつけるのは早かった。

 

 死んでいるはずのレトリクーンの声が通信機からした時点でどちらかが狼確定。

 最低一人であって二人ともな可能性もあったので冷雪さんは黒寄りのグレー。

 仮に二対一を仕掛けて一対一交換したなら相方を起こせたはず。

 つまり倒れていた二人と生き残った一人は別陣営。

 そして倒れていた二人の最低片方は狼で……。

 あれ?もしかしてきちんと推理すればわかっていたのでは?

 まあどうあがいても一戦で四キルとるサバイバーは意味分からんが。

 そんな反省をしつつ何戦かこなし、適当なところで皆寮に戻った。

 


 

 それから、話をしながらでもできるゲームということで大富豪大貧民が始める。

 最初はローカルルール少なめで大富豪が指定したルールを追加する形式。

 追加できるのはある程度知名度のあるルールのみ。

 但しゲーム前、つまりトランプを配る時に関わるルールの追加は無し。

 するのは階級に応じた手札交換のみ。

 逆に下克上のような順位に関わるルールの追加は有り。

 要は手札が極端になるものやオリジナルルールは駄目とかそういうの。

 

 

 ……どうでも良いけどこう皆で集まって遊ぶ感じにとても懐かしさを感じる。

 具体的には『俺』の頃の中学とかその辺り。

 ここで『私』の方じゃないのがなんというか……

 

 大体は『私』の小学時代に同世代の男の子達をボコボコにしたのが悪い。

 正直『俺』の経験を活かして全力でかかったのは普通に大人げなかったと思う。

 一応中学に上がってその件を知らない相手と勝負する時には手加減を覚えていた。

 手加減が下手過ぎて大体は相手が察して嫌な顔をされてしまったが。

 

 確か一人、手加減を察した上で勝負を仕掛けて続けてきたやつがいたような。

 本気でやれとかそんな感じだった。

 結局根負けしてボコボコにし、以降も何度も挑まれては返り討ちを繰り返した。

 ただ、そいつが挑んで来た頃にはほどほどに勝ったり負けたりできてたはず。

 今思うとなんで手加減がばれたんだろうか。

 

 

 まあ今更大差がどうとかいう機会もあまり無いだろう。

 それこそ大抵のゲームには『俺』の底上げで足りないぐらい強い人はいる。

 ついでに大富豪は完璧にカウンティング(出たカードを暗記)しても勝てるかは別だし。

 

「江島さんって、料理配信とかされないんですか?」

 

 これは皆で遊んでいる最中、私から出た疑問である。

 昼食で多くの料理を作った時の中心人物だし全くできないということはないはず。

 以前から食事配信をしているのだから料理配信もしておかしくないと思う。

 事故が怖いならいつもの条件に近い完成品を食べる配信でも良いわけだし。

 それはそれで需要ありそうだし。

 

「自分で作って自分で、って言うのもあれなんですよね」

 

 ……なるほど、そう返されるとそうかもしれない。

 これで料理が下手ならネタにできた。

 だが普通の料理なら料理メインの人の配信の方が需要はある。

 となると、物珍しさで見に来る人の比率が高くなる。

 今まで食べる専で最近まで個人勢だった彼女(江島さん)がするには博打気味になるか。

 

「ならこれを機に誰かとのコラボで、という選択肢も有りですね」

 

 そう言ったのは篠原(しのはら)大輝(だいき)さん。

 同じ箱で性別不詳枠のVtuber●●○(くろく ろしろ)の中の人である。

 彼の言う通り、コラボならやりようはありそうだ。

 

「ところで言い出しっぺの法則というものがありまして」

 

 そう言いながら羽田野君が8切りからの革命をしてきた。

 手札的にとても厳しくなるので勘弁してほしい。

 

「つまり、最初に料理の話題を振った駒走さんが?」

「なんでやねん」

 

 篠原さんは強引に私に逸らしてくるな。

 しれっと革命返しをしてくれたのは助かったけど。

 


 

「夕食の手が足りなくなるので、少しだけ手伝ってもらいます」

 

 そういうわけで、私は夕食準備の手伝いをすることになった。

 とりあえず買い出しの荷物持ちから。

 買う内容は既に江島さんがある程度決めている。

 料理は実際揃った内容で判断するらしい。

 具体的な説明が無かったから多分割引で買う物変わるやつだ。

 

 というか近所のスーパーが本当に近い。

 具体的には寮からスーパーまでの間にスーパーの駐車場しか無い。

 近すぎて『夕食中に醤油足りなくなったから徒歩で買いに行く』とかできる。

 実際、今の持ち物は財布と買った物を入れる鞄だけだ。

 

 江島(えとう)さんと二人での買い物中、黙るのもあれなので適当に話を振る。

 

「そういえば、食費が会社持ちなのに泊る人少ないですね」

「その動機で泊る人は限られると思うし、五人は十分多いかと」

 

 そんなものなのだろうか。

 いや、確かに食費だけを目当てに泊るかと聞かれるとあれか。

 移動含めた諸々の手間的に泊る方が楽、という話の方が正確か。

 そうだ、手間と言えば――

 

「でも今までの印象から(つぐ)さん辺りは残りそうな気がしてました」

 

 私の担当である(つぐ)さんは物事の手伝いが好きなタイプだ。

 自分で主導するのではなく、誰かの活動を見て参加する側。

 そして誰かがやることを決めるとやらなくて良いところまで手伝いたがる。

 少なくとも今日まで私が関わった範囲ではそう感じた。

 仕事だから、みたいな感じはほとんどしなかったし。

 だからなんとなく、残っていろいろやるんじゃないかなぁと思っていた。

 

「実家暮らしの未成年ならそんなものじゃない?」

 

 なるほど、実家暮らしの……未成年?

 あれ?私より年上(二十歳以上)じゃなくて?

 

「本人のいないところで失礼かもしれませんが、あの人何歳ですか?」

 

 昔から『日本人は童顔で若く見られる』という話はよくある。

 これを逆に言えば『外国人は大人びて見える』という話になる、のか?

 

「高校に通ってたら二年生って言ってたので、今年で十七になるはず」

 

 ……マジか。




みずもりつぐさんじゅうななさい(お約束)


あと篠原(しのはら)さんを配信者視点回で出し忘れてたのに気付いて急遽説明入れた


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雨降ってお風呂入る

書いてたら元々予定していた話が大体吹き飛んでしまったどうして(猫顔)


 会社の寮から近所のスーパーが本当に近い。

 具体的に言うと寮からスーパーまでの間にスーパーの駐車場しか無い。

 近すぎて『夕食中に醤油足りなくなったから徒歩で買いに行く』とかできる。

 実際、今の持ち物は財布と買った諸々を入れた鞄だけだ。

 

「傘、用意しておくべきでしたね」

 

 私達の敗因は、近さに甘えて天気予報を確認しなかったこと。

 急に雨降るなよ聞いてない。

 


 

 残念ながら、誰かが傘を持ってきたりしないことは分かっている。

 

 まず時間からしてやや(おそ)くなったので泊る予定の五人を除いてもう帰っている。

 その五人の内おっさん二人は機材を運ぶ都合で出て夜中まで帰って来ない。

 残り一人、(わた)さんだが――

 

「今の志織(しおり)さんにそういう気遣いを期待するのは無理です」

 

 詳しくは聞かなかったが、江島さんに可能性を否定された。

 そういうわけで諦めて濡れる前提で走って帰ることにした。

 片方だけが急いで往復して傘を回収、という手は帰りついてから気付いた。

 どうせ運ぶ手間とかあるし雨も激しくはないから誤差ということで。

 

 ……私は悲しい。

 


 

 それはそれとして、雨にやられたので風邪をひかない内にお風呂である。

 

 元男とはいえ『俺』から『私』になって二十年経つ。

 だから女性を男性的な視点で見るかと言うと微妙。

 実際修学旅行で仲の良い友人達と一緒に温泉に入った時も特にどうもなかった。

 でも恋愛だの何だのを考えると感覚的には女性が先にくる不思議。

 というかこの手の『俺』の影響は一部男性に対する余計な拒否感が大きい。

 例えば『俺』と比べて明確に顔の良いやつは嫌いだとか。

 

 まあ私の主観はおいておく。

 今回、話の流れとはいえ一緒にお風呂は急に距離が近い感じがする。

 それとも私の感覚がずれているだけだろうか。

 その点が気になったからと軽く話を振ってみたところ――

 

「別に私は混浴だろうが衝立(ついたて)の無い露天風呂だろうが気にしないけど」

 

 ――そんな返答をされた。

 なるほど、参考にはならないな。

 もう少し気にしてくれ。

 

 

 一緒に入るついでにお風呂関係をいろいろ教えてもらった。

 用途毎のタオルの場所とか。

 洗濯物の扱いとか。

 こういう(雨にやられた)時に備えてフリーサイズの着替えが置いてあるとか。

 ここの給湯器を扱う上で覚えておきたい仕様とか。

 置いてある石鹸類は誰かの私物だから使いたいなら自分で用意することとか。

 

「でもここからここまでは私の私物だから、後で補充するなら使っても良いよ」

 

 お風呂場には何故か扉に磨りガラスが使われている棚が置いてある。

 扉は多分、使っていない諸々にお湯がかかるのを警戒しての選択だろうか。

 中には、シャンプーリンスボディソープ固形石鹸洗顔フォーム――とにかく沢山。

 今日泊ってる人数どころか今日集まった人数を元に考えても多い。

 そんな棚の何段かを指しての私物発言である。

 指した範囲にあるのはどう見ても一人分の数や種類ではない。

 あと湯舟で説明を受けながら注視して気付いたがほとんどシャンプーとリンスだ。

 

「石鹸の類が多過ぎませんか?」

 

 しかもさっき私物と言った。

 私物ということは経費で日用品を買っているとかそういうのでもない。

 というかよく見たら結構お高いのが混ざっている。

 記憶が正しければ以前薬局で『こんな高いの買う人いるの?』と思ったやつだ。

 これが勘違いでなく、他に並んでいるのも同程度の値段なら相当な金額になる。

 それこそ、私物の部分だけで私の一ヶ月の食費を平気で超えそうな……。

 そうでなくとも何でこんなにあるの……。

 

「趣味が(こう)じて、とだけ」

 

 なるほど、江島さんが沢山シャンプーやリンスを持っているのは趣味らしい。

 どんな趣味だよ目を逸らすな。

 あとこれだけ多いと仮に私が普段使っているやつがあっても見つけられん。

 そんなわけで銘柄だけ伝えて後で探して貰おうと思ったのだが――

 

「ちょっと明日帰る前に買い物行きません?」

「え、どうして?」

「何と言うかこう、使っているのが微妙というか……」

 

 言葉濁してる雰囲気出してる割に濁しきれてませてませんけど?

 

 一応、一人暮らしを始めた頃に御試し用の少ないやつを幾つか買って試している。

 特別肌に合わないとかは無かったが『安いのは駄目だな』という感じはした。

 だから少し高めのやつを買っているつもりなのだが、あまりよくない、と。

 いや、今言ったのは『安い』じゃなくて『微妙』だった。

 つまり『一般人には高いけどガチ勢には半端に安い』とかそういうのだろうか。

 私に分かる例だとマイクとイヤホンがそれぞれ3000円みたいな。

 

「とりあえず話を聞いた限りで、この中から出せる候補は――」

 

 髪を洗い終わった後『お試しに』と棚に並んでいるシャンプーを勧められた。

 差異も軽く説明してもらったがよくわからない。

 ということで聞いた限り一番無難そうなやつを借りる。

 無難らしく値段もお安い方とか。

 あと今回はお金や使う量を気にしなくて良いと言われた。

 それはそれで後から値段を知る時が怖い。

 

 さて、借り物のシャンプーとリンスである。

 こういうのは良い物でも使ってすぐには実感が出ない。

 しかも合わない場合は結構な悪影響が出るらしい。

 だから試すならまず少量を薄く伸ばすつもりで――

 

 あれ?

 よく考えなくても、棚に並んでるのって私の普段使いが微妙扱いされる世界?

 そんな物が十数本単位?

 

「何で入れ替わりで座った途端椅子の位置ずらしてるの」

「値段を考えたら怖くなったから」

 

 私はうっかりでぶちまけないよう、気を付けながら距離を取った。




補足
・浴室はそこそこ広い(大きさのある棚が許される程度には)
・棚は微妙に傾いて水がはける仕様(扉付き、棚部分の手触りはプラとかそういう系)
・浴槽はシングルの敷布団程度の広さ(一般の浴槽としてはそこそこ広い)


元々あったお風呂に入る前の江島さんの台詞(要約)
「ほら、早く脱がないと風邪ひくよ。
 着替えならこういう時用に常備されているから洗濯機に入れて大丈夫。
 もしかして肌着と上着まとめて洗うのに抵抗あるタイプとか?
 それならとりあえずそっちの洗濯かごに入れて後からね。
 浴槽の広さなら一緒に入っても狭く感じない程度の広さはあるし。
 でもってお湯入れるのも早いからもう最低限は溜まってるはず。
 あ、肌に見せたくない傷とかあるなら見ないように注意するけど。
 それとも――」
※上記は筆者のイメージであって実際の台詞とは異なります


元々の話では先に渡さんが入ってたしなんなら幾らか前の軽い会話も前振りだった
ただ『今のあの人が自分でお風呂用意できるわけないだろ』と筆者が気付いて消えた
完全に消すのもあれだから前振りだけ残った


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【雑談】ちょっとお泊りしてきた【ハソシウル】

この章に配信回が無いと後から気付いたので〆は配信回


「――という感じで、翌日、つまり今日、シャンプーとリンスを買いに出まして」

 

上位チャット

:まずコルスさん料理できたんだ

:値段が解釈一致

:お風呂配信して

 

 

 なお帰り着いたのは午後五時。

 お風呂と夕食、明日の大学の準備を済ませ、八時から配信を始めた。

 明日の準備は最悪配信後でも良かったが、時間が半端に余ったので先にした。

 危うく配信に遅刻するところだったが視聴者視点では分からないので略しておく。

 

 あとお風呂配信はねぇよ。

 


【雑談】ちょっとお泊りしてきた【ハソシウル】


 

 配信でオフの話をすることについてはあまり問題ない。

 この辺りはどこまで話して大丈夫かをきちんと相談している。

 というか話のネタにできそうな箇所が全体的においしすぎた。

 

「買い物の案内はことねさんが地元なのでお任せして――」

 

 実は江島さんは普段通販で済ませているから地元のお店をあまり知らなかった。

 それで担当さんに相談したが、こちらは普段自分で買わないから知らないという。

 そんな話を偶然聞いた優さんに心当たりがあるとのことで案内をしてもらった。

 つまり買い物のメンバーは四名。

 私、(担当)さん、江島(冷雪)さん、(ことね)さんで四人。

 しれっと(つぐ)さんが入っているのはそろそろ勉強しろという意味も含まれる。

 順調に進学してたら来年大学に行くぐらいのお年頃だからね。

 一般女性相当の日用品の知識はあって良いだろう。

 まあ私はもう二歳上なのに全く勉強していなかった分野なわけだが。

 

 なお、優さんに心当たりがあった理由は女装沼の人間だかららしい。

 女装ガチ勢はシャンプーやリンスまで(こだわ)るのか、とちょっと引いた。

 化粧品はまだしも、髪はウィッグとかで済ますイメージしかなかったし。

 

上位チャット

:女子会かな?

:通販はまあ地方なら仕方がない

:シャンプーは匂いの話で真っ先に挙がるし詳しいのは妥当

 

 実際買い物では優さんが女装していたので見た目だけなら本当に女子会に近い。

 あるいは一人は年齢が離れているので年上のお姉さんから身嗜み用品を学ぶ感じ。

 私より知識が無い(つぐ)さんも面白かったが、これは配信向けの話ではない。

 話題に出し易いようVになってくれと頼みたかった。

 

「それで今日買ったやつを帰って早速試した感想ですけれど――」

 

 話の内容はなるべく主観で、感情的な面を重視して説明する。

 何故なら一緒に行動していた以上、他でも同じ話が出る可能性が高いからだ。

 

 例えば、冷雪(コルス)さんが勧めたシャンプーの意図の話をしていた場合。

 私の使った感想と組み合わせることで情報が掘り下げられる。

 認識が一致してもずれても全く違う方向に向かってもそれはそれでネタになる。

 そういう話が切り抜かれるレベルで面白くなることだってある。

 客観的な説明を重視した場合は起き難い現象だ。

 逆に面白くならなくて碌に反応が無いということも十分あり得るけど。

 それはそれで極端に滑らない限りはいいだろう。

 

「あ、それと夕食は手土産にと持たされた冷雪(コルス)さんが作ったパエリアで――」

 

 パエリアは昼食を作る時に、夕食にする前提で一緒に作られたものだ。

 これは私も幾らか手伝った。

 片付けの面倒さを除けば大満足の品である。

 持ち帰った私は勿論、作った向こう側の人達も夕食に食べているはず。

 

上位チャット

:入れ物返す為にもう一度会うやつじゃん

:お風呂だの手料理だのもう実ックスでは

:ハソちゃんがコルスさんで染まっていく

 

「いやお前ら距離感の認識大丈夫か」

 

 距離が近いと感じる部分は確かにあった。

 あったが、リスナーの言うような何でもかんでも距離近い扱いは違うと思う。

 深読みは深読みで楽しんでると伝わるが直で言われたら否定するしかない。

 


 

 なお配信後、切り抜きは一応された。

 されたのだが、大分想像と違う方向だった。

 


【切り抜き】ハソ・冷雪・リスナー(こいつ距離感バグってんな)【ニシツキシキ】


 

 私視点だとお風呂などで急に距離が近いと思っていた。

 ただ向こうは向こうで別の方向から似たような感想を持っていたらしい。

 

 例えば配信方針の話をしていた時。

 彼女は四人掛けのテーブルの横に加わった。

 そして私は人が増えるのを見越して椅子を寄せて、一人分の空間を用意した。

 

『人が増えたから詰めるならともかく先に詰めるとかどういうことなのって――』

 

 どういうことも何も『話に入りたい人が入り易いように』と配慮したつもりだが。

 それで距離が急に近い扱いはどうなんだ。

 物理的な距離は確かに近かっただろう。

 だがそっちの話だとすれば、二人で浴槽に入った時はもっと近かったぞ。

 

 

 私の主観はさておいておく。

 向こうの配信ではそういう程度の話が幾つか出ていたようだ。

 切り抜きの内容から察するに私が近く感じた要素も同レベル扱い。

 そしてお互い特に気にしなかった部分をリスナーが深読みした部分も切り抜き。

 三者三様の距離感で局所的な混乱が生まれた。

 

 

 うん、もう知らん!




これで本編三章は終わりです
次章は短編集みたいな感じの日常回寄りな内容を予定
まあつまり、うん、いつになるんだろう()
ただ既にちょっと路線ずれてます(二話目修正しつつ)


その前に軽い資料集を挟むためもう二日更新


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(資料)ハソちゃんメモ(会社寮編)

興味ない人は読み飛ばし推奨

PC前提で書いているので(改行的に)携帯端末の場合文字サイズ調整した方が良いかも
参考として↓は筆者がPC環境で一行の目安にしてる棒
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


建物の仕様

・壁が大体防音

 ・夜中でも余程騒がなければ大丈夫な程度(完全ではない)

 ・国道が近いため騒音対策も兼ねている

  日や時間帯によっては窓を開けるとうるさい

・wi-fi完備

 ・中継用のルーターが数台有り、寮の中なら大体の場所に電波が届く

 ・wi-fi用のパスワードはラミネートした紙に書いて壁に貼ってある

・大型エレベーター有り

 ・大きい荷物を二階以上に運ぶことを考慮して設置

 ・普段は本来の目的であまり使われていない

  エレベーターが入り口付近、階段が奥なので行き先によってはこちらの方が楽

 

一階(全員共有)

・リビング

 ・テレビの前に低いテーブルとソファ(ソファにクッション幾つか)

・キッチン

 ・冷蔵庫は一般家庭用の大きめが一台、一人暮らし向けの小さめが一台

 ・調理器具は電子レンジ、IH、ホットプレートなどがありオール電化仕様

 ・キッチン近くに足が高く長いテーブルと沢山の椅子(調理や食事で使用)

  なお用事で持って行ったり戻したりをかなり勝手にするため数が不定

  主に椅子が各階の共有スペースへ持っていかれる

  机は面倒なのでそれぞれに一つ持っていくか否かぐらい

・配信用共有スペース

 ・パソコン4台

  ・会社の配信用アカウントでログイン可能、別PCから各種設定を引き継げる

   社員兼配信者は仕事用と配信用で二つのアカウントを持っている

  ・配信用のカメラ有り

   トラッカーなどは用意されていない(必要なら会社まで回収に行くこと)

 ・テレビ(ゲーム用)2台

  ・テレビの向きは台を動かすことで調整が容易に可能

   携帯型ゲーム機の対戦をテレビでする時に相手画面が見えない角度にできる

 ・各種ゲーム機

  ・外部機器で各種配線を挿し直さなくてもゲーム機を切り替えられる(詳細略)

  ・電源タップはオンオフを切り替えられる種類で使ってないものはオフ

   たこ足配線なのできちんとオフにしないといろいろと危険

・お風呂場+洗濯機

 ・お風呂利用時は入り口に『使用中』の立て札を正面に置く

  立て札の表裏がそれぞれ青と赤で入っている人の性別が分かるようにする

 ・お風呂使用中はなるべくリビングに誰かが待機

  上記立て札を含めてトラブル防止用のルールだがこちらは緩めというか声かけろ

 ・突然の雨を考慮し着替え常備

  ・おいてある着替えは無地の上下のみ(男女それぞれフリーサイズのもの)

  ・使ったら使用者が洗濯に出し、畳んでから返すこと

・トイレ(男女別)

 

二階(男性用階)、三階(女性用階) ※基本仕様は同じなのでまとめて記述

・個室×4

 ・内側から鍵をかけられる

  ・外から使える鍵は部屋の使用を連絡する際に借りる

 ・寝室兼私物置き場を想定

  ・都合上、他の部屋に比べ狭い

  ・全ての部屋に布団一式(夏冬兼用)が用意されている

   基本放置なので泊る場合は一度シーツなどの洗濯推奨

  ・水道など(後述)は基本的に共有スペースを利用

  ・コンセントは部屋毎に一箇所に二口ある

・共有スペース

 ・簡易リビング

  ・共有スペースの入り口に当たる空間

  ・中央にテーブルとソファー(二組、向かい合う形)がある

  ・他の共有スペースに繋がっており基本はここから移動する

 ・洗濯物用の部屋(建物の角の部屋)

  ・室内用の物干しが中央に並んでいる

  ・窓が二箇所、方角が違い両方開けると風通しが良い

  ・布団を干す場合などは窓から出す

  ・窓を開ける場合は扉を閉めたりで防音推奨

  ・雨の日用の除湿器有り

 ・簡易キッチン

  ・流し台(狭)、電子レンジ、IH、冷蔵庫(小)有り

・トイレ(階に合わせた性別を想定したもの)




抜けを理由に修正するかも


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(資料)ハソちゃんメモ(人物編)

前回と同じく興味ない人は読み飛ばし推奨

設定資料集とか好きな人向けの主人公視点の情報まとめです
読んでいなくても必要な情報は必要な時に出すつもりです
あるいは読者側で説明が不足した時に読み返す場所候補の一つ

駒走早成(主人公)の主観なので部分的に(勘違いや情報不足による)間違い有り
一部の年齢認識がシンプル失礼とか


【社員兼Vtuber】

 

日向(ひむかい) (のぞみ)

・Vtuber「西月ノゾミ」の中の人

・二十代半ば?女性

・髪は肩にかからないぐらいの長さ

・合同会社ニシツキシキの社長

・筋トレで大分筋肉ついてて体重が重い方らしい(笑い話にしてた)

 

日向(ひむかい) (ゆう)

・Vtuber「七色ことね」の中の人

・二十代前半?男性

・髪は耳にかかるぐらいの長さ

・合同会社ニシツキシキのまとめ役ポジ?社長の推しで夫

・声変わりしてる割に地声高め、他の人の声真似が上手い

 

加瀬谷(かせたに) 鏡子(きょうこ)

・Vtuber「ミロリーム」の中の人

・二十代半ば?女性

・髪は(わき)にひっかかる程度の長さ、癖毛なのか先が少し丸まってた

・合同会社ニシツキシキのメインイラストレーター

・雑にまとめるとお母さん力(?)が高い。焼肉行ったらひたすら焼いてそう(偏見)

 

(わた) 志織(しおり)

・Vtuber「リュッケペルタ」の中の人

・三十前後?女性

・髪は腰ぐらいまでの長さで荒れ気味、人見知り発揮して長らく散髪してないとか

・合同会社ニシツキシキの現プログラマ

・顔は悪くなさそうなのに似合わない(でかくて四角い売れない芸人が付けてそうな)眼鏡してて勿体ない

 

篠原(しのはら) 大輝(だいき)

・Vtuber「●●○(くろく ろしろ)」の中の人

・二十代前半?男性

・髪は(わき)に届かない長さ、後ろで束ねている(音楽系っぽいからと伸ばしてるらしい)

・合同会社ニシツキシキの音楽担当

・最初顔を見た時は髪の長さもあって女性かと思った(少し会話して男性と分かった)

 

 

【非社員、所属Vtuber】

 

羽田野(はたの) (つばさ)

・Vtuber「レトリクーン」の中の人

・十九歳、男性

・髪は全体的に短めで特に前髪が短い。前髪が短いのは散髪の頻度を減らすためとか

・会社と同じ県で大学生してるとか。こっちは隣県から電車で来てると言うのに……

・背低いしで合法ショタ感あるが私とは一歳差。一歳差かぁ

 

江島(えとう) 日和(ひより)

・Vtuber「冷雪(コルス)」の中の人

・二十代半ば?女性

・髪は耳にかからない程度に短い(短い方がウィッグ付けるのに向いてるとか)

・漁関係の仕事をしていたとかで肌や髪の対策他、シャンプー等にも詳しい

・何か実家が新人教育するから離れる為に一年休暇貰ったらしい何で

 

 

【社員、非Vtuber】

 

水守(みずもり) (つぐ)

二十代半ば? → 十七歳、女性

・髪は肩にかかる程度の金髪、あと碧眼。生まれ育ち日本とかマ?案件

・合同会社ニシツキシキの事務担当(主に経理と備品管理)

・Vtuber「ハソシウル」の担当

・何か双子の妹(同い年)がいる(未確認)

 

西月(にしつき) (まもる)

・二十代半ば?男性

・髪はスポーツ刈り、から少し伸ばした感じ?

・合同会社ニシツキシキの雑務担当(主に買い出しや営業っぽいことと言われた)

・Vtuber「伊甲(いこう)天巌(てんがん)」の担当

・社長の親戚らしい(西月は社長の以前の苗字)

 

おっさんA(仮称)(名前聞き損ねた)

・四十代?男性

・頭がスキンヘッド、怖がられるからと帽子と眼鏡(サングラス)してたけどそれはそれで怖い

・合同会社ニシツキシキの雑務担当(出張の運転や技術手伝い等)

・Vtuber「レトリクーン」の担当

・寡黙らしく今回は声を聞けなかった。それで担当と会話できてるの?

 

おっさんB(仮称)(名前聞き損ねた)

・四十代?男性、パッと見の印象は日焼けした筋肉

・髪は角刈り、色が抜けているのか生え際以外の髪が白い

・合同会社ニシツキシキの雑務手伝い(会社としては見習い枠)

・Vtuber「冷雪(コルス)」の担当で個人だった頃から手伝いをしていたとか

・顔が鉢巻してたこ焼きを作ってそうな感じの似非関西弁使い

 


 

上記人物を身長順で(性別添え)(イメージ用なので具体的な数字は無し)

 

~背が高い方~

 

男性 おっさんA(担当:レトリクーン)

男性 おっさんB(担当:冷雪)

 

~この辺りが大体180~

 

男性 西月(にしつき) (まもる)(担当:伊甲)

女性 (わた) 志織(しおり)(リュッケペルタ)

男性 篠原(しのはら) 大輝(だいき)(●●○)

女性 江島(えとう) 日和(ひより)(冷雪)

 

~この辺りが大体170~

 

女性 駒走(こまはしり) 早成(さな)(ハソシウル)

女性 加瀬谷(かせたに) 鏡子(きょうこ)(ミロリーム)

男性 日向(ひむかい) (ゆう)(七色ことね)

女性 日向(ひむかい) (のぞみ)(西月ノゾミ)

 

~この辺りが大体160~

 

女性 水守(みずもり) (つぐ)(担当:ハソシウル)

 

男性 羽田野(はたの) (つばさ)(レトリクーン)

 

~この辺りが大体150~

 

~背が低い方~




合同会社ニシツキシキの人全員(所属V一人を除く)が出揃いました
もしかしなくてもフルネームの用意でめっちゃ時間かかった
おっさんがおっさんで済まされたのはそのしわ寄せ


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4章 視野は広く客観的に
話題は上書きで消すもの


お待たせしました隔日更新の章です
予定していた日常回は吹き飛びました


 少し前に伊甲(いこう)さんの配信に娘の声が入るという事故が起きた。

 私視点はオフの諸々を挟んでいる。

 だが、視聴者側からすればついこの前のこと。

 この辺りのフォローをどうするのかは少し気にしていた。

 

 結論だけ言おう。

 相当な荒業が使われた。

 荒業過ぎて非公式wikiにまとめができた。

 


 

暴露連鎖事故事件

 伊甲天巌の娘の声が配信に入った件から始まった明らかに故意の事故のこと。

 途中からは明らかにわざと漏らしておりどこまでが本当かは不明。

 というか一部明らかにおかしいのでネタに走ったものと思われる。

 

 以下は情報を簡易にまとめたもの。

 

 伊甲天巌「十代後半の娘がいる」

 ・一度声が入っただけな上にはっきり聞こえなかったため年齢は不確定。

 

 リュッケペルタ「就活中、現社長に大学まで凸された」

 ・なお当時通っている大学やいつ何をしているなどの情報を社長に伝えていない。

 ・これに対し社長は「雇いたかったけど連絡付かなかったから凸した」と主張。

 

 ミロリーム「社長は初対面で高額小切手出してきた」

 ・これに対しミロリームは明らかにヤバい人だったので通報しかけた。正しい。

 ・両者が詳しい経緯を話す気は無いと発言しているため詳細は聞かないように。

 

 

  ・

  ・

  ・

 


 

 こんな感じでうっかりと言う名の故意でした話題が並んでいる。

 中には『いやそれは無いでしょ』と言いたくなるようなものも多い。

 そして配信中に話題の相手が凸してきてレスバが始まるまでがテンプレ。

 裏では凸できる時間か、出して良い話題かなど打ち合わせする徹底ぶり。

 個別で相談しないのは事故を起こす時間被り対策だろう。

 

 なるほど、話題を話題で上書きしていくという手は有りだ。

 全部が全部本当とは思えないネタ寄りの内容を含んでいる点も良い。

 一部嘘っぽいからうるさい奴に『何ネタを本気にしてんの?』と返せる。

 

 ……それはそれとして何で半分以上が社長に集中砲火してるの。

 

 

 気になったので『どこまで本当なんですか?』とは個別で聞いた。

 返答は『とりあえず全部本当』というものだった。

 それはそれで聞きたいが余計な情報を漏らしそうなので聞かないでおく。

 あと『とりあえず』って表現が使われている辺り嘘混じってそう。

 

 よし、流れは理解した。

 付き合いが短い私に出せる話題はとても少ない。

 だがそれは少ないだけで存在しないわけではない。

 乗るしかない、このビッグウェーブに!

 


 

「だから寿司屋はお寿司を食べるところで玉子なすカルビとかは――」

『寿司はおかずとご飯のセットが強みで魚前提なら最初から刺身――』

 

上位チャット

:何 こ れ

:食堂みたいな扱いが意外と解釈一致

:寿司屋の常連対魚系頼まないやつ

 

 私が面接に行った日、社長の奢りで回転寿司に行った。

 行き先の回転寿司は社長が決めた。

 それにも拘わらず、その時社長は何故か魚系を一切食べていなかった。

 後のオフの時に魚を食べていたから苦手ということはないだろう。

 使う機会があるか微妙な話だが『この流れなら言える』とばかりに使う。

 

「でもそれはラーメン屋でラーメン食べない並みの――」

『メニューにある時点で店は売るつもりで客が難癖付けるのは――』

 

上位チャット

:子供と親の喧嘩みたいになってきた

:さてはハソちゃんレスバ弱いな?

:あかん意見はハソちゃん寄りなのに社長が正しく聞こえてくる

 

 実際、私がレスバ弱い点を差し引いても話題の流れの変え方とかうまい。

 前やった雪山人狼で社長は大体暴力で解決した。

 だが普通の人狼だったら議論で負け越していたかも。

 私は今回の内容からそう思った。

 

 今後を見越して鍛えたいな。

 でもレスバってどうやったら鍛えられるんだろう。

 少なくとも喧嘩凸とかは無し。

 鍛えずにボクシングの試合に出る並みの危なさだし。

 

『外道云々言うなら冷凍技術が進歩する前の基準で見れば生魚だって――』

 

 今回の話も前例に倣い配信で話題にすると予め伝え許可を貰っておいた。

 だが伝えた中身はか大雑把なもの。

 確認を取ってから半日経ってない。

 それなのに短期間でここまで準備できるのは軽く感動するレベルである。

 もしこれが審判によって勝敗が付く勝負ならKO負けになってただろう。

 

上位チャット

:今回は諦めるしかなさそう

:社長またそれっぽい理屈でごり押してる

:【悲報】寿司に外道無し理論勝利

 

 ……次の機会があれば回遊魚モチーフのやつがあった話で攻めてみるか。

 思い返したらあの日私が食べた寿司って半分以上回遊魚だった。

 デサインはあの後だしいけるはず。

 共食いさせる気かよ、は弱いかな。

 

「駄目そうなので今回は捨てゲーにしてパターンの学習に移りまーす」

『ちょっとそれ本人を前に言う!?』




良い子は真似しないでね方式


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配信初心者の視聴勉強(バーチャルファンタジー編)

多分先駆者から学ぼうとする新人の鑑


 私はVtuberとして配信者になった。

 それ以前は動画投稿者だった。

 

 配信と動画の最大の違いはリアルタイムであること、と私は思っている。

 

 例えば動画では時間をかけてでも最善(ベスト)を尽くす能力が求められる。

 使いたい話題を用意、精査して、伝わり易い表現を考え――

 そうやって長時間試行錯誤を積み重ねてエンコード(動画化)直前まで改善する。

 締め切りという名の制限時間があったりもするが考える時間がある。

 

 対して配信では最短で次善(ベター)を出す能力が求められる。

 何か起きて反応が遅れるなどもまた配信の内。

 後からより良い選択を思いついても戻ることはできない。

 だから瞬間的な判断力の価値が高くなる。

 

 勿論これらは今の『私』の認識。

 はっきり言って、かなり投稿者寄りの価値観だ。

 そうなる理由は、私が元々動画投稿者で配信者としての日は浅いから。

 だから間違っても『どちらがどう優れている』と深く語ったりできない。

 そんな私でも分かる程度には『動画』と『配信』で勝手が違う。

 ならば先人から学ぶのは必然。

 

 

 そういうわけで、Vtuberの配信のチェックが増えた。

 主にVtuberを目指し始めた頃から。

 まあ大体普通に視聴者側として楽しんでいたりもするわけだが。

 でもって見てるのはほとんど配信歴が長い人のアーカイブぐらいだが。

 リアルタイムは配信時間がどうしてもある程度被るから限られるし。

 長い配信者は大体方向性が固まってるから安定して楽しめるし。

 

 そう考えると私のキャラ付けって足りているんだろうか。

 RTAの予定はあっても配信だとまだ全然できてないんだよなぁ。

 


 

 最近はバーチャルファンタジーというグループの一期生をよく見ている。

 現在でいう『箱』の概念が生まれてやや後にデビューした人達だ。

 その箱の大元はゲーム会社。

 技術的にもゲーム開発で培われたと思われる表現が混ぜられている。

 (中の人)もそこを理解している節あり。

 本職から他分野に手出ししたタイミングも含めて先見性のある企業。

 

 ……というのは概要程度に調べた段階での私の評価。

 実のところデビュー当時は社内の問題が多かった、らしい。

 残念ながら当時興味が薄かったのでリアルタイムでは確認していない。

 もし社外まで影響する問題ならネットニュースとかで目にしてただろう。

 現実がそうなっていない辺り謎のバランス感覚を持っているようだ。

 なお『当時目が滑っただけ』という説もあるがそこはどうでもいい。

 

 各所(配信やSNS)から分かる会社側で起きた問題は非公式wikiにまとめてある。

 当時あった分かり易い問題だと――

 

 最初『何か流行ってるから』ぐらいの感覚で一人の中間管理職に丸投げ。

 表記ミスが起き易いと前から問題提起されていた手続き用の書類にミス。

 丸投げされた人がミスを知った上で一桁増えた予算を使用。

 予算が一桁多くなったのを利用して採用人数の目安を倍に増員。

 募集期間が足りなかったから知り合い経由の紹介で補充。

 最悪これでクビになってもVとしての活動が続けられるように手回し。

 デビュー前に一人抜けて穴埋めで丸投げされた管理職の人で穴埋め。

 結果、一期生は男性一人女性六人。

 

 ……初配信までの情報量じゃない。

 何でこれだけ滅茶苦茶やってるのが序の口なんだろうね。

 あとツッコミどころも結構あるし。

 一桁ミスったのが何でそのまま通用したんだよ、とか。

 Vのガワを会社で作った以上クビになったら普通使えないだろ、とか。

 そこまでして最後の最後に穴埋めで男入れるなよ、とか。

 そもそもなんでこんな情報ばらまいてるんだよ、とか

 

 補足をするなら、これらの問題はオープンにしている範囲のもの。

 伏せている情報に『より危険な何か』を抱えている可能性だってある。

 というかこれだけしたのに会社が活動を許している時点で絶対何かある。

 調べた範囲だとデビュー直後に分社化されたぐらいしかわからなかった。

 でもってその親会社、以前一度私が足を運んだところだ。

 最初子会社の名前しか確認しなかったから気付くのに遅れた。

 だから何、な話に過ぎないが。

 


 

 不祥事はさて置き、この箱の配信の魅力について確認しよう。

 バーチャルファンタジー一期生は総じて配信者として強い。

 キャラ的な意味での特徴がはっきりし、尚且つ早い内から安定している。

 これは言動が素に近いか意識した立ち回りがうまいのかはわからない。

 だが、特定の要素を期待する人にとってはかなりの安心感がある。

 この基準で見ると私はそこそこぶれているな。

 正確には最初の自己紹介がRTAな部分以外はぶれていないはずだが――

 うん駄目だ配信でRTAやってない。

 実質キャラ崩壊してたわ。

 

 

 えーと、今配信しているのはラスリ・ルクトさんだけか。

 彼女の公式の肩書は『バーチャルセンシティブ嬢(自称)』である。

 補足すると括弧書きの自称まで含めて肩書になる。

 その名の通り『(意味深)』と付け足したくなる言動や甘い声が特徴。

 セウト(グレーゾーン)狙いで配信サイトから収益化を取り上げられたことも何度かある。

 その方面で過激な人には劣るが比較対象がおかしいだけだし十分だろう。

 公共の場でイヤホンが要る点では大差ないし。

 

 今配信しているのはピ●ミンの初見プレイか。

 結構昔のゲームと記憶しているけどいつ頃だったっけ。

 これは『俺』としてはそこそこやったが『私』は全くやってない。

 思い出したついでに今度のRTAの候補に入れて良いかもしれない。

 

 あとこの人がやってる時点で何というかもういろいろ予想できてしまう。

 一応先にイヤホンを装備。

 

『待ってお花散らないで急いで抜くから我慢、あっ駄目ええええぇぇぇぇ』

 

 ……ゲーム的におかしくないことを声色であれな感じにするのうまいな。

 方向性が違いすぎて全く参考にできないけど。

 参考にはできないけどボイスはこの前あるだけ買った。




知らない人の為の補足
 ピ●ミンは地面に埋まったままだと『葉→(つぼみ)→花』と成長する
 更に埋めたままにすると花が散って葉に戻る
 雑に言うと花の方が良いので目の前で散るととても悲しい


本文で略された『バーチャルファンタジーの問題』の例
・略称登録問題
 本来であれば『Virtual(バーチャル)Fantasy(ファンタジー)』なので略称は『VF』になる
 しかし手続きの際に別の候補の情報と混ざり『BF』で登録
 判明したのは大分後で修正するよりネタにした方が良いという結論で続行
・無許可連続配信
 BF(バーチャルファンタジー)一期生のデビュー配信から九日間(金曜から翌週の日曜)常に誰かが配信
 が、これは会社側に一切伝えず決行
 更に全員初配信直後からボイス販売など収益要素を開始
 これに関連して会社側から連絡も試みられた
 しかしこの期間中、関係者は会社からの連絡手段を絶って強行
 なお社員は有給を取っていたなど手続き上の問題は起きていない、らしい
・一期生リギス・ファナ
 上記連続配信中に生えた新人
 連続配信中のトラブル対応に何人かのスタッフが待機
 対応の過程である女性スタッフの声が配信中に何度も配信に入っていた
 そして視聴者に『通称が欲しい』と言われVとして没になった名前を使用
 結果、Vtuber扱いされているが立ち絵もチャンネルも無い同期が成立
 現在は公式運営用アカウントをしつつ配信トラブルの一部を対応している


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配信初心者の視聴勉強(LiveWorld編)

 大体の配信者は『この辺りの時間に配信する』というのを決めている。

 配信者側の都合もあるが、視聴者側が合わせ易い、という理由もある。

 例えば『配信は基本この時間から』と決めれば視聴者も合わせ易い。

 それこそ熱心な人は『配信を見るから』と普段の生活から調整する。

 予約録画が一般的でない時代にアニメを見ようと早起きしたのに近い。

 リアルタイムの配信ならコメントで関われるから尚更だ。

 

 つまり時間を選べば一定数の視聴者を期待できる。

 逆に言うと不定期配信や合わせ辛い時間は視聴者数も安定しない。

 

 視聴者数が安定しないというのは余程の大手以外は不利になる。

 視聴者数やコメントの量は初見にとってそこそこ影響のある情報だ。

 やることが同じでもこれらが多い方が盛り上がって見える。

 そういうわけで、平日なら夜、休日でも昼以降から配信する人が多い。

 例え他の配信者が多い時間でも、それ以上に視聴者が集まり易いからだ。

 

 ……例外も幾つかあるが、これは特殊な個人の話にしかならないので略。

 


【憂鬱を吹き飛ばせ】おはようございます月曜朝です【ノイト・クーテス】


 

 朝に配信する人は限られる。

 単純に『朝の時間が貴重』という人は視聴し難い。

 あるいは起きるのが遅めの人もリアルタイムは視聴難しい。

 ただ朝の準備時間や通勤時間などに聞く程度の人ならそこそこ集まれる。

 

『おはよう世界。ノイト・クーテスの時間です』

 

 LiveWorld所属一期生、ノイト・クーテス。

 彼女の月曜朝の相談配信は、出発前や通勤時間を想定したもの。

 但しこれは寝坊などの要因でリアルタイムの視聴者が減る危険がある。

 

『現在時刻は朝6時50分。予定時刻から私が配信を始めるまで5分かかりました』

 

 ついでに配信者側もこのような失敗が通常より起き易くなる。

 

 

 この配信のメインはマロを利用した視聴者からの相談の受け答え。

 相談の回答の方向性は概ねタイトル通り。

 つまり『辛い月曜朝に元気になれるような話を』という感じ。

 回答がパワー系だったり馬鹿話だったりで参考にならない場合もある。

 ただ『元気になれるような内容を』というのは一貫している。

 だから月曜が辛くて時間が噛み合う人の継続視聴率は高い、と思う。

 コメント欄を見ての主観であってきちんと統計取ったわけじゃないけど。

 

『これを以て回答とします。それでは皆様、いってらっしゃいませ』

 

 締め括りの言葉を終えてエンドカードに切り替わる。

 今回も良い配信だった。

 

 今日は午後に試験が一つあるだけだし対策も十分だからのんびりするか。

 というか公式カンニングペーパーって何だよ。

 公式に認められた時点でカンニングって表現はおかしいだろ。

 

『ええっと鞄、鞄っと……』

 

 ……あれ? 配信切れてない?

 イヤホンを付けたまま、目を離していた端末の方を再度見る。

 配信画面はエンドカードが表示されたままだ。

 というか声の感じちょっと違う?

 

『何で今着信来るかなぁ!』

 

 声の感じが違うというのはこの際置いても構わない。

 割りと長く配信してるのに地声と違う声で続けられるのすごいなで済む。

 問題は素の声に聞き覚えがあるということだ。

 

『えっ、今から? 車で片道何時間かかるかご存知ない?』

 

 やっぱりそうだよなぁ。

 半ば確信しながら連絡用の端末を手に取り準備。

 配信上で聞こえる通話の終了に合わせてこちらからかける。

 

『はいもしも――』

「配信画面確認してください終わってません」

 

 余計なことを言われる前に発言をかぶせる。

 間違いなら『私の勘違いでした朝からごめんなさい』という話で済む。

 

『え? ……本当に?』

 

 困惑したような声の後にキーボードを叩くような音が聞こえる。

 うん、やっぱりというか、何かこれ当たりっぽいな。

 

『……本当だ』

 

 そこから改めて〆の挨拶をしてアーカイブの削除を宣言。

 というか動揺で普段言わなさそうなネタを交えてる。

 いや、素の性格だとむしろガンガン言ってそうな方だが。

 単に今している配信のキャラとは解釈違いなだけで。

 

『なるべく早くどう処理するか決めるからそれまで知らぬ存ぜぬでお願い』

「はい大丈夫ですよ」

 

 配信を本当に切った後、そんなやりとりを軽くして通話が切れる。

 他所の企業が絡む以上はそうなって当然だろう。

 ただ一つ言わせてほしい。

 

 他所の箱(他社)で何やってんだよ社長(西月希)




公式カンニングペーパー
 ある講義の配布物
 必要な情報を判断できる能力を測る、という名目で採用
 試験で筆記用具以外に持ち込んでいいのはこの紙だけ
 試験に持ち込むこの紙に書き込んでいいのは指定の範囲だけ
 当然試験範囲全部を書き写すのは難しいしこれでも駄目という人はいる
 筆者が通った大学のある講義に実在しました


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試験と続き

誰かサブタイのセンス分けて


 今日の試験は大体何とかなった。

 最初から分かってたけど、この講義はほぼ高校の延長だし当然だろう。

 

 私が通っている大学は高校からエスカレーター式で上がったりしない。

 そして高校は中学までとは違い義務教育ではない。

 つまり個人の能力どころか習っている範囲から大きな差があったりする。

 なので底上げの為か必修の講義に高校レベルの内容も混ざっている。

 私が今日受けた講義はその延長にある選択科目に当たる。

 内容としては幾つかの講義の前提で、人によっては実質必修。

 私にとってはほぼ高校の内に学んだ範囲なのでボーナスのようなもの。

 得意でもないが『ある程度合格してほしい前提の試験』程度なら通る。

 別に大学教授だって落としたくて落とすわけじゃないから尚更に。

 

「駒ちゃん二問目どうやった!?」

「むしろあの問題聞くレベルで他のはできたの?」

 

 ……私の場合はそうだったというだけでできない人はできない。

 試験終了後即私に聞いてきた友人なんかはそうである。

 というか他の科目でも同じようなこと聞いてきてるんだよなぁ。

 しかも一年の時点で必修を落としたらしいけど本当に大丈夫なのか。

 

 そんなことを思いながら要点だけまとめて教える。

 詳しく知りたいなら教科書を読め。

 

「う゛ー、もういっそ駒ちゃんの家で勉強会でも」

「今からやっても間に合わないし、駄目なら諦めてもう一年頑張りなさい」

 

 あと突発勉強会は時間次第で困る。

 主に配信的な意味で。

 サムネの準備とかスケジュール管理とか不慣れな分時間かかってるし。

 

 

 今回試験に使われた講義室は次の時間に使われない。

 なのでそのまま友人と残り共通する科目の確認。

 正直言うと『こいつよくこの大学に受かったな』と思わなくもない。

 私に限らずいろいろな人から教えてもらって辛うじて、という感じだ。

 それはそれで正しいけど、まず講義をきちんと受けたらどうだ。

 

 そんな感じで勉強していたら――

 

「ねぇねぇコマバシリさん」

「コマ『ハ』シリですけど」

 

 濁らないんだよ、というやり取りは自己紹介とかの時によくやる。

 逆に言うとここを間違えるのはあまり縁のない人に限られる。

 というかこいつあれじゃん。

 サークル作る詐欺のやつじゃん。

 

「ちょっとサークル作りたくて人を集めてるんだけど」

「やりたいこと決めてサークル作る段階になってから話振ってください」

 

 未だに進捗無しとかそのサークルいつできるんだ。

 少なくともサークル作りたいが先に来る時点で駄目だろ。

 やりたいこと決めて興味ある人探すのが正攻法だろうが。

 

「いやそこはちゃんとね、今はVtuber愛好会括弧仮ぐらいが目標で」

 

 発言が『今は』とか『ぐらい』とか『目標』とか曖昧過ぎるわ!

 

 ……私がVtuberしているとバレなかったのはセーフと思っておこう。

 

 実際、客観的にはあんまりバレないものと思っている。

 私の所属企業はあまり大きくない。

 箱単位で見ても中堅ぐらいの位置。

 だから知らなくても普通。

 しかもマイクやスピーカーを通すと声は少し違って聞こえる。

 だから限られたパターン以外は大丈夫なはず。

 

 例えば、通話経験が多い人に配信を見られるとか。

 例えば、話し方に何らかの特徴があるとか。

 例えば、知り合いに特定されるような話題を配信でするとか。

 

 理屈の上では不注意でやらかさない限りはほぼ大丈夫だろう。

 そう思っていてもVtuberが話題に出てくるとちょっとビビってしまう。

 

 そんなことを考えながらサークル厨は追い払った。

 

「おー、何か一発目に炎上っぽいのがヒットした」

 

 追い払ったけど今日一緒にいる友人がVtuberに興味を持った。

 というか横目で覗いたらウチの社長絡みの記事かよタイミング悪いな。

 あと検索に迷いが無さ過ぎないか。

 

「その好奇心がもう少し勉強に向いていれば試験で楽ができたろうに」

「今日の駒ちゃん当たり強くない?」

 

 気のせい気のせい。

 


 

 それから数日後。

 SNSで前振りをした上で西月ノゾミの配信で幾らかの情報が公開された。

 要するにノイト様の中の人が西月希社長な話。

 ついでにもう一人やっていた過去の話も出てきたがこちらは引退済みだ。

 

 まあ元の性格が性格だ。

 西月ノゾミとしては適当に流していればほぼノーダメージと言って良い。

 実際、配信の情報量から配信は炎上どころでなくなった。

 

 ノイト様側はそうとはいかない。

 何せこれまでは『清楚(暴力)』ぐらいの位置にいた。

 括弧書きの内側に思うところはあるが天然寄りの清楚枠である。

 ガチ恋勢がいそうな世界で事故って既婚判明はまずいけどどうする気だ。

 そんなつもりで見ていたわけだが、事態はSNSの方で動いた。

 


 

ノイト・クーテス LiveWorld一期生 @noit_curtes

 人妻で~す♪

 

 @noit_curtes

  何故煽った

 

 @noit_curtes

  アカウント乗っ取りかな?

 

 @noit_curtes

  で~すじゃないが

 


 

 よりにもよってその話かよ!

 無敵属性でも付ける気か!

 公式の解釈違いやめてください!

 明日朝の配信を地獄確定させるな!

 

 たった六文字なのにツッコミどころが多過ぎる!

 あーもう! 知らんぞこれ!




上書きに上書きを重ねていくスタイルが強すぎる(他人事)


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筋肉は一生の相棒なRTA

作中の日付を整理したらこのRTAが最速でここになってしまった(無計画)


「こんにちは社長貴女(あなた)は馬鹿ですか」

「そんな挨拶ある?」

 

 大学の全ての単位認定試験を終え、私は合同会社ニシツキシキに着いた。

 幸か不幸か、社長には会社どころか敷地に入ってほぼ即会えた。

 その時自然と出てきた発言がこれ。

 一応場所を移しながら聞き直す。

 

「ならもう少し具体的に、何故炎上を煽るような真似をしたんですか」

 

 あの状況からして遠からず炎上はしただろう。

 だからと言って『わざわざ火に油を注ぐ必要があったか』と考えれば否。

 少なくとも私から見れば悪手極まりないものだった。

 

「どうせ燃えるんならきっちり燃えた上で処理した方が楽だし」

 

 不死鳥は生焼けでは蘇らないみたいなこと言うなよ。

 


 

 会社まで来たのは別に社長に苦言を呈する為ではない。

 目的は、機材と環境を借りること。

 すなわち、筋肉は一生の相棒なゲームのRTAである。

 

 このゲームのRTAは既にある。

 このゲームを配信でしたVtuberも既にいる。

 だが、このゲームのRTAをしたVtuberはまだいない、はず。

 そういう意図で選択した。

 

 ちなみに私は一人暮らしで置き場の都合からテレビがない。

 なので真面目に練習するならゲームをできる環境を借りる必要がある。

 実際は不真面目なので部屋でRTA動画を見ながら動いてただけだが。

 ……今度家に帰る時幾らかのゲーム機持って行かないとな。

 なおRTAを配信でする案もあったが事故が怖いからやめた。

 

 このRTAは厳密に言うと運動負荷だのany%か100%かだのと分岐がある。

 が、面倒なので詳しい話は省略。

 今回は運動負荷最小のany%という最も軽い条件のものをした。

 最も軽いが、私の身体能力では丸一日以上かかる計算になり十分きつい。

 でもって長期戦だからきちんと眠って朝十分に目が覚めてから走る。

 ということで到着した今日のところは寮にお泊り。

 


 

 そして朝。

 会社側からは社長含めた女性三名が録画関係をサポート。

 それ以外はRTA的に引っ掛かる可能性があるので無し。

 

「では順番にチェック入りまーす」

 

 チェックシートを利用しての各環境を確認。

 服装はトイレや汗を考慮し薄着。

 部屋は運動を考えて軽い冷房。

 飲食は両手が塞がることを考慮し流動食のゼリーを準備。

 トラッカーはゲーム用と録画用のをそれぞれ装着しずれないよう固定。

 それから――

 

 なお記録を全力で目指すならトイレの手間も減らす必要がある。

 今回はトイレ近くの部屋で薄着で済ませているが、究極系は多分――

 ……そこまで本気を出すのは人としてどうかと思うので私はやらない。

 どうせ筋肉と膀胱のハンデ抜きでも世界一位にはなれないし。

 

 ・

 ・

 ・

 

 半日以上が経過した。

 今回のRTAは当然ながら走りながらの解説ができない。

 よってリアル側の録音はしない。

 後でゲーム音声に後で録音した解説音声を乗せる。

 つまり、録画班の仕事はトラブル時以外は交代で確認するだけ。

 もっとぶっちゃけると暇になる。

 

「一応知ってたけど女の子がこのゲームの移動の動きするのえっいてっ」

 

 ありがとう江島さん。

 私が余計な体力を使わずに済んだ。

 あと社長。

 それは既に一部のVの配信で言われてるから改めて言わなくても良い。

 

 というか普通に疲れが大分きつくなってきた。

 途中で小休止ぐらいは挟んでいるがもうほとんど回復していない。

 

「すみま、せん、ちょっと、一時間、休憩、仮眠」

 

 一応これも考慮済み。

 汗はシャワーを浴びる時間はないので適当にタオルで拭く。

 バスタオルで身体が冷えすぎないようにしつつ椅子に座り休憩。

 時間的に2/3は終わっているし完走の為にも無理はしない。

 

 ・

 ・

 ・

 

 疲れからかがっつり寝てしまった。

 

「ごめん、起こすとどういう扱いになるか分からなかったから」

 

 起こさないという判断は渡さんがしてくれたらしい。

 さすがだぞ! RTAの記録として扱われるかを心配しているんだな!

 RTA優先でちゃんとした返答ができない件は後で謝っておこう。

 

 実際、起こされると記録的に見方次第で怪しくなるので助かった。

 なおバーチャルの時点で記録として怪しくなる件に触れてはいけない。

 どうせ新記録とか出ないなら厳密にする意味も薄いし。

 ついでに起きた理由は朝食の匂いが届いたから。

 ある意味周囲に起こされているが大丈夫ということにしたい。

 匂いからしてウィンナーとスクランブルエッグ。

 組み合わせ的に食パンも付くかな。

 丸一日ゼリーな今は羨ましい。

 

 

 結局RTA終了は二日目昼過ぎ。

 タイムは現記録と比べるとかなりボロボロになってしまった。

 一応今の『私』の身体能力は全盛期の『俺』よりも上なんだけどなぁ。

 でもまあタイマーを付ければRTAだし平気平気。

 がっつり寝たお陰で区間は練習から想定していたタイムより早いし。

 いややっぱり区間早くても睡眠分の遅れが大き過ぎるわ。

 

 なお後に『露骨過ぎるガバ』としてネタにされるが、それはまた別の話。




レギュレーション云々は書く直前に調べた情報が多いので間違いあるかも


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炎上のその後の見通し

大雑把には触れておくやつ


 元から寮には予備日を考慮し三泊四日のつもりだった。

 でもってお盆は帰りに両親の実家に直で向かえば間に合う計算。

 結構スケジュールに無理がある。

 けどこのタイミングでなければRTAが難しかったから本当に仕方がない。

 ここから更に編集の時間とかも確保する必要があるし。

 

「そして私は今年のコミケをことねさん一家に任せることに」

「いや社長はRTAの話以前から都合で行けないって言ってましたよね」

 

 そこで噛み合ったから頼んだのは覚えてるぞ。

 あと一家でコミケ行ってるのもビックリなら任せるのもビックリだよ。

 買う側の話だけだと思うけど。

 


 

 RTA中に余計なことを気にしてミスったりしたら勿体ない。

 それでスルーしてきたがRTAはもう終わった。

 よってもう少し掘り下げた話を社長に聞く。

 

「結局、炎上はどう解決するつもりなんですか」

 

 手元の端末で軽く検索をかける。

 予想通り、炎上煽りが目的っぽいブログだの何だのがヒットした。

 正直ここから立て直す方法が全く思いつかん。

 落ち着くまで謹慎しようにもニシツキシキ関係全部噛みつかれそうだ。

 少なくとも好き好んで炎上煽りする連中ならそうするだろう。

 

「それが、下手に対応するより平時の対応を続けて良いって結論になって」

 

 これは社長がLiveWorldの関係者に相談した上での結論らしい。

 

 そもそもの話、今回の炎上の大元はガチ恋勢がメイン。

 謝罪しようが何しようが既婚の情報が出た時点で離れる人は離れる。

 だからもういっそ堂々と公開してさっさと離れてもらう方向にするとか。

 なるほど理屈は分かった

 それでも思い切りが良すぎる。

 

「幾らなんでも話の出し方ってもんがあるでしょう」

 

 やったことは完全に煽りだったし。

 これ炎上しなかったら嘘だろって煽り方してたし。

 今のフォロワー数分かってんのか。

 

「このぐらいはっきりさせた方が選別にもなって丁度良いから」

 

 社長曰く、実はガチ恋勢さえ無視すれば既婚によるデメリットは無い。

 目指している方向にアイドル要素も無かったので余計な期待を消せる。

 どころか、一部のお母さん扱いしてどうこう言ってる人が追い風になる。

 そういう発想らしい。

 何でそんな業が深い層を前提にしているんだ。

 あと素が母性から程遠過ぎるからそういう層の人も反応に困ると思う。

 

 でも好き好んで炎上を煽るタイプの人が暴れるのはどうするんだろう。

 そう聞く前に話が続いた。

 

「今は悪質なところに裁判起こして煽ってる連中を牽制しようってところ」

 

 へー、裁判ね。

 

 炎上目的で活動している中でも悪質な連中は情報を盛る。

 そういうの相手に勝てるかどうかや利益を考えないなら裁判は起こせる。

 裁判になったという話が出れば軽い気持ちでやってる連中は黙る。

 油を注ぐ連中が黙れば騒ぎも一部以外は収まる。

 ……本当にそうなるか?

 

 今聞いたのは大雑把な概要だけ。

 だから実際は他にも手を打っているだろう。

 この辺りの話はあまり掘り下げて聞いても仕方がない。

 なので私からはもっと根本的な疑問を投げておく。

 

「そんな理由で裁判起こすのって『割に合わない』んじゃありません?」

 

 裁判を起こさない理由の一つに『割に合わない』というのがある。

 当然だが、裁判をするにはお金も時間もかかる。

 元が取れないなら自然と『別の方法で対応か放置する方が良い』となる。

 例えば前者はなんらかの予防ができれば今後の対策にもなるし。

 

 予防の話はさて置いて――

 少なくとも今回の例は個別に対応するなら『割に合わない』はず。

 そう思っての質問である。

 

「あー、そうか、知らなかったんだ」

 

 社長は頬をかきながら小声で言った後に続けた。

 

「そもそも私は『安全圏から殴る輩』を殴るのが趣味だからね!」

 

 その発言を聞いて理解するまでに再走級の時間がかかった。

 

 ……つまりこういうことか。

 最初から炎上煽る連中相手に裁判起こしたいという意思はあった。

 それで今回丁度よかったから煽り易い材料を撒いた。

 今は『さあ殴るぞ』という段階。

 なるほどそういうことかな。

 いややっぱり意味わからんわ。

 

 意味不明過ぎるのでこの件はなるべく遠くから眺めることにする。

 同じ箱で飛び火してもスルーできる程度で済むことを期待しよう。

 私は社長の黒い笑みを見ながらそう思った。




「推しを養うから起業するしVにもなる」の方を読んでない人向け補足
社長の趣味は「推し」「筋トレ」「訴訟」です


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【クラフト!】個人用拠点を拡張したい【ハソシウル/ニシツキシキ】

この章に配信回が無いと書いてる途中で気付いたので途中に配信回入れた


 今回の泊りは最初から予定済み。

 なので当然相応の準備がしてある。

 

 例えば、旅行用の鞄にいろいろつっこんだとか。

 例えば、RTA予定の期間は配信できないことを告知したとか。

 例えば、マルチプレイゲームの所持アイテムを全部拠点に置くとか。

 


【クラフト!】個人用拠点を拡張したい【ハソシウル/ニシツキシキ】


 

「拠点拡張はぁじまぁるよぉ。ちょっとRTAしてきましたハソシウルです」

 

上位チャット

:きちゃ

:ついに始まるんやなって

:RTAは配信でしないの?

 

 今回みたいな長時間は何が起きるか分からな過ぎるので勘弁してほしい。

 何も起きなくても動画に解説付ける手間がかかるし。

 一応内容は伏せておいた方がおいしいと思うからまだ言わない。

 

「今回のは勘弁してください。次回からは練習含め配信する予定なので」

 

 今回の配信予定はニシツキシキサーバーで私個人用の拠点の拡張。

 一応既に個人拠点はあるが持ち物を置く為に作っただけ。

 ぶっちゃけほぼ豆腐と変わらない。

 何なら別で拠点を作っても良いかもしれない。

 

「それと、環境の都合上別アカウントなのでまず装備回収から始めます」

 

 今回は操作環境を考慮し会社側の端末で別のアカウントからログイン。

 なので自分の豆腐もどきな拠点に向かい持ち物を回収する必要がある。

 どうせPCに何かあったら同じようなことをするだろうし良い練習になる。

 

上位チャット

:管理側に相談して何とかならなかったの?

:ログインアカウントってどういう仕様だっけ教えて有識者

 

 そうだね、普段がソロだから管理者に相談とか気付きませんでしたね。

 もうログインしたし他の選択肢は無視してまずは共有拠点に向かう。

 

 初期リスポーンから共有拠点周辺までの整備は済んでいる。

 でもって共有拠点から私の豆腐もどき拠点までも整備した範囲内。

 事故も迷いも一切ない。

 

 そして共有拠点だが、私は以前の配信でここに無限丸石製造機を作った。

 お陰で最低限の装備や建材は共有拠点で集められる。

 欠点はまだ手動なところだろう。

 ツルハシや材料が尽きると丸石が確保できない。

 その内自動化で解決したいな。

 

 なおどこかの誰かが使い方ミスってマグマに焼かれるパターンは知らん。

 やらかしそうなやつにどれだけ心当たりがあっても、だ。

 ともあれ、今は拠点開発。

 

「新しい拠点か今ある拠点か、どちらを目標にしても材料が要りますね」

 

 丸石が手動なこともあってか材料の余分は少ない。

 うっかりで丸石の余分を大量に作ったりしないからだ。

 自動なら『作り過ぎたから残りは置こう』が起き易いんだけどなぁ。

 とりあえず話題が尽きるか作業に飽きるかするまで丸石を回収するか。

 

「しばらく丸石稼ぐ作業をするので、この時間を使ってマロを消化します」

 

上位チャット

:えぇ(困惑)

:まさかの開幕雑談

:先に済ませてもろて

 

 うるせぇこっちはRTAで疲れて忘れてたんだよ。

 

 ・

 ・

 ・

 

 丸石を確保したので拠点を拡張。

 作業中、遠くから敵が拠点近くに来ているような声が聞こえる。

 

「……光源はともかく敵がこないような何かをいちいち作る手間がなぁ」

 

 とりあえずベッドで寝て対処。

 入り口はちゃんと閉まっているのでそのまま日光に焼かれてほしい。

 

上位チャット

:掘に落として水流で流すとか?

:柵とか壁作るの面倒だもんね

:出入りを扉か梯子使う構造で何重かに増やすとか

 

 チャットに流れてきた中で一番使いたいのは水流だろうか。

 水流主体なら水源さえ守れば匠にリフォームされても修復が楽。

 ただ光源の方はそうもいかないわけで――

 

「いや、これは、有りか?」

 

 とりあえず拠点周辺の壁と床を丸石にして堀も作る。

 あと念のために周辺に水源を用意。

 出入口を梯子を使う必要のある高さにして幾らかの敵の侵入を防止。

 更に梯子の後は四方が丸石で作られた通路を経由する構造。

 勿論通路に松明も忘れない。

 

 準備ができたので拠点より少し高くなるよう丸石を積み上げる。

 ここから横に伸ばして――

 

上位チャット

:ん?

:何やってんの

:あっ(察し)

 

「どうだ、明るくなったろう」

 

 拠点頭頂部にマグマを設置。

 周辺はマグマが光源兼敵処理をしてくれる。

 延焼は周辺が丸石な上に水源まであるから大丈夫。

 拠点内部も丸石通路がマグマの侵入を防いでくれる。

 これで欲しい要素は大体満たせたのでは?

 

上位チャット

:どうして

:これいつか絶対やらかすやつ

:普通の手段が普通な理由考えて

 

 ……まあ大丈夫だろう。




なお後に設置した本人以外がマグマに焼かれる施設になるもよう


ついでに調べたらマグマブロックで拠点作る動画が出てきてビビりました
興味がある人はぐぐって、よかったらチャンネル登録高評価コメント以下略

※動画投稿者と筆者は特に関係ありません


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『私』と『家族』と『俺』と

多分この章で一番重要な回


 毎年『私』の一家はお盆に父の実家へ帰る。

 そして『私』は、お墓参りに行く度に思うのだ。

 ここにいる『私』は本当にこの家の子と言って良いのか、と。

 

 ……毎回最後は『そんな深く考えても無駄』という結論になるわけだが。

 これって前世的なのが無くても同じことを言えるし。

 


 

 それはそれとして、今の私には頼んでおきたいことがある。

 

「お父さん、帰りに幾らかのゲーム機と一緒に送って欲しいんだけど」

 

 一人暮らしを始めてからのRTAはPCゲーに偏っていた。

 これは単純に物を置くスペースに困ると想像できたからだ。

 だがゲーム配信のことを考えれば幾らか持って行った方が良い。

 特にスペースをあまり取らない携帯ゲーム機。

 これの画面をパソコン側に出力するだけで選択肢が大きく広がる。

 なおテレビが無いので据え置き機は基本的に却下。

 

「それは問題ないけど、持っていくならついでにあ●森始めたりしない?」

 

 あー、森と言いつつ最新作では島を開拓するあのゲームか。

 やること自体は問題ない、というか最初からやる候補にはあった。

 但しそれはVtuberとして、だ。

 

 なんだかんだでVtuberになったと両親に伝えるタイミングを逃している。

 この際伝えても良いけれど今伝えるのは何というか勿体ない気がする。

 だが情報を伏せてうっかり別ルートからバレるのはもっと勿体ない。

 そしてオンラインでできるゲームはこのバレる展開になる要素の一つだ。

 具体的には名前の関係で。

 

「うーん、その内始めると思う」

 

 なので答えは濁しておく。

 ……でもよく考えるとフレンド登録は話の流れですることになるよなぁ。

 あのゲーム機のフレンド機能ってどうなってたっけ。

 というか以前使ってた時のアカウント設定どうしてたっけ。

 二台以上持つ場合の設定があったのは覚えている。

 買ってアカウント設定したのが昔過ぎて覚えてない。

 当時は親に見られる想定で名前をハソシウルにしなかったはず。

 

 というか、今家にあのゲーム機一台しかなかったよな。

 本体を買い足したとは聞いてない。

 この父から具体的なタイトルが出る辺り既にやっている可能性は高い。

 

「もしかして私の置いて行った端末でゲームやってる?」

 

 返答は濁されたけど、もうそれがもう答えなんよ。

 


 

 この世界は『俺』だった時と共通点が多い。

 しかし同時に、全く同じというわけでもない。

 では『この世界』とは何だろうか。

 

 この疑問に関連して確認したい候補が――二つある。

 今まではお金か時間、あるいは両方の問題でできなかった。

 いや、やろうとすれば一人暮らしを始めた去年には確認できたかも。

 多分あの時は覚悟が足りなかった。

 覚悟の不足を『お金の不足』に置き換える為に散財していたのかも。

 今考えればそう解釈できる程にお金を使っていた。

 

 しかし『理由を付けて見ない』という姿勢はVtuberになった時変わった。

 形式的な自己紹介の『以前の世界との微妙な違いが気になる』という話。

 これをはっきりと口にしたことで、行動しようという覚悟を決められた。

 


 

 『私』には『私』ではない記憶がある。

 

 それは平凡な男の微妙な人生。

 客観的にはそこそこ恵まれているはずだが、主観ではそれ程恵まれていない。

 タバコ無し、彼女無し、お酒は軽く嗜む程度。

 それなりに見ていたはずのアニメは徐々に追えなくなった。

 ゲームもそこそこするがソシャゲなどは期間要素を理由に手出ししない。

 昔は笑えていたインターネット老人会をじわじわと笑えなくなっていく。

 そんな珍しくもなんともない、時代に置いて行かれつつある人間の一人だ。

 

 その記憶の最後は、偶然見つけた小さな居酒屋。

 ――なら、記憶の後はどうなった?

 

 仕事は?借家は?残した私物は?

 両親は?弟は?祖父母は?友人は?

 SNS……はこの際どうでも良いか。

 

 いっそこれが転生で『俺』が明確に死んでいれば分かり易かった。

 先立つ不孝をお許し下さい、な話で済む。

 でも仮に『俺』が行方不明になっていたら?

 他にも例えば『俺』が植物状態になっていたら?

 あるいは――

 もしくは――

 

 可能性だけなら幾らでも、とまでは言えないが挙げられる。

 だが観測できない以上どれも推測に過ぎない。

 どんな推測をしようとも何もできないのだから考える意味もない。

 意味もないのだが、気になるものは気になる。

 あの後はどうなったのだろう、と。

 そんなことを考えていた時期もあったので『私』は当然気付いた。

 

 

 手掛かりは『俺』が育った土地。

 確認したい候補の一つは、記憶の最後にあった居酒屋。

 覚えている通りなら、そこで『誰か』に会ったのは来年の二月半ば。

 今年で『私』が二十歳になっているのは偶然か仕組まれたものなのか。

 どちらであっても確認して損はないだろう。

 ここまで引き延ばしたついでに、記憶にあるあの日に合わせて行きたい。

 

 

 ……長々と考えたが、やっぱりこれも言い訳かもしれない。

 もっと単純な目的がある。

 

 確認したいもう一つの候補は『俺』の家族。

 そこにはこの世界の『俺』がいるかもしれない。

 でもそこに『俺』が『いる』『いない』はあまり関係ない。

 皆ただの一般人で特に何もわからない、という可能性が高いからだ。

 そもそも今は『私』だから客観的に言えば会う意味だってない。

 けれど『私』であっても、顔を見るぐらいはしたい。

 

 記憶の最後の質問が脳裏に浮かぶ。

 

『これまでの人生に後悔はある?』

 

 ああ、あるよ。

 そうはっきりと言い切れるものができてしまった。

 

 最後に『俺』が『俺の家族』の顔を見たのはいつだったか。

 大学卒業後に会ったのは本当に数える程だったはず。

 別に不仲とかでなく、単純に帰る手間を惜しんだだけ。

 それが積もって帰らなくなった。

 そして『どうせ近くだし何かの拍子に会えるだろう』とも思っていた。

 

 今考えれば、もう少し会っておくべきだった。

 突然だったし不可抗力と言えばそうだろう。

 それでもこれは間違いなく『俺』の後悔だ。




以上で4章本編終了
進んでいそうな雰囲気を出しつつ全く進んでいません
あと同じペースでもう二回、資料情報を投稿して次の章の準備に移ります
次章は今のところ同棲コラボ回を予定


以下蛇足なので反転
社長視点で炎上に対処中の話を書こうとしましたが没にしました
内容が作風に合わないしぶっちゃけ無い方がまとまりも良かったので

ただ炎上対応の情報がちょっと不足するので軽く補足すると
全体的に法をチラつかせて相手を減らすスタイルで対処中

例としてノイト様側では『職場が合わなかった人の為に』という配信で
・辛い職場を辞めたい時の手順
・ブラック企業告発で便利な証拠の集め方
・相談先の弁護士のお勧めの探し方
など法律関係の話をして遠回しな圧かけ

またVの前世云々の話をする配信ではもう一人分の経歴を公開
その一人は過去に『炎上時に誇張記事に対して訴訟』という実績有り
ここから一部が「まずそう」と判断して距離を取るのを待っているところ


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ニシツキシキ非公式wiki-ハソシウル(はそしうる)

作中一年目、八月半ばのものより抜粋
特殊タグを使ってwiki風にしたかったけどいろいろ面倒になってやめました


ハソシウル

 

「雑談配信はぁじまぁるよぉ」

 


 

ハッシュタグ

 配信用 #ハソライブ

 創作物 #ニジシウル

 

ファンの呼称:ダイオード

 

配信の挨拶

 終わりの挨拶:おつシウル

 


 

公式紹介文

 202X年製造の高性能ガイノイド。

 何者かによって200X年へと送り込まれた過去を持つ。

 それから製造時期に近づくにつれ別次元であると認識。

 違いを知る為にインターネットを使うようになった。

 

デザイン:西月ノゾミ

イラスト:ミロリーム

グラフィック:リュッケペルタ

 


 

プロフィール

 誕生日:11月8日(起動日)

 性別:女性(ガイノイドなので)

 身長:169cm

 利き手:両利き(普段はほぼ右利きとして生活)

 前世:RTA動画投稿者(現在休止中)

 ・ニシツキシキ特有の前世公開だがそれが非配信者のライバーは同箱で初

 


 

エピソード

 

・RTAのRTAプレイヤー

 ・記録は特別早くないが研究や試走から一定の記録を出すまでが早い

 ・教育RTA

  レトリクーンのマ●ンク●フトの師匠として教えた過程に由来

  主に教える準備期間の短さと教え方の乱暴さがRTA

 

 ・

 ・

 ・

 

・起源信者(自称)

 ・起源になった要素をある程度尊重する、という姿勢(本人談)

 ・例えば、寿司の邪道系も食べるが魚系は必ず食べるなど

  類似例は蕎麦屋のカツ丼など

  なおこれに関連して配信中で西月ノゾミ社長との論争が起き負けている

  レスバの弱さが露呈した内容に思えるが実は相手が強すぎるだけ

 ・同じ理論でツンデレは昔ながらの「ツン状態からデレへの移行」が好み

 

・RTAプレイヤー特有のリスク管理

 ・ある程度効率は求めるが多少のリスクは認めるような判断が基本

 ・マ●ンク●フトでは丸石の拠点の上部からマグマを流した

  ・本人曰く、手軽にできる光源兼敵対策らしい

  ・僅か30分後にク●ーパーに丸石の壁を破壊されマグマで大惨事になる

   フラグ回収としてあまりにも完璧すぎた

   なおチェスト(ほぼ空)は失ったが本人は無事生存

  ・第二の対策として高高度からマグマを流すマグマカーテンを制作

   製作途中に一度落下死、その時の持ち物は流したマグマに焼かれた

 


 

名言

 

「この方が早い」

 デスルーラする、あるいはさせる理由を聞かれての回答

 特に急ぎでなくとも時間を大切にするRTAプレイヤーの鑑

 

「あーもう知らんぞこれ」

 何かが起きて丸投げする時の言葉

 この発言は無意識らしく「そんなこと言った?」と不思議がっている

 

 ・

 ・

 ・

 


 

ハソシウル異名一覧(未整理)

 

・新作走らないと死ぬ人

  Vtuber化以前にやたら新しいRTAに手出ししていたことから

  配信を始めたので多分快方に向かっている

 

・未来においていかれたガイノイド

・近未来(現代)出身

  過去に来たのに生まれた時代に追いついたという設定から

 

・人生RTA勢

  初配信中に各種作業を並行して進めたことから

  配信も何故か急ぎ足になりがち

 

・匿名希望さん

・名称不明さん

・名前を言ってはいけないVtuber

  配信直前まで名前が伏せられていたことから

  なお配信前のイラスト公開時には「名称不明の人」と紹介された

 

 ・

 ・

 ・

 

・教育RTA勢

  同期のレトリクーンにゲームを教える過程から

  始めて間もない(と本人は発言している)ことからチャート構築の早さが伺える

 

 ・

 ・

 ・

 


 

wikiの都合上省略されたハソシウル外見情報(最終的に採用されたもの)

 

全体

・肌は白寄り

 ・日本人の引きこもり(日焼けしてない)ぐらい

・服も全体的に白

 ・雑に言うと袖の長いワンピースをベースにしている

 ・各所が直線か曲線イメージで布感薄め(ゴムとかプラとかシリコンとか)

 ・袖は前腕の途中から広がっている(電気スタンドカバーとか)

 

・髪は白

 ・ほぼおかっぱ

 ・線の集合体というよりもヘルメットのような塊状

・瞳孔は白

 ・碧眼をモノクロにして色を薄めた感じ

・ヘッドフォンをヘッドバンドが頭の上を通るように装着

 ・全体的に髪を外側から抑えるよう

 ・ヘッドバンドは黒で厚みあり、肉抜き的なの無し

 ・耳当て部分が橙色中心で一部黄緑や黒が混ざる感じ

 ・前から垂れたコードはへその辺りから腰の右側を回り背面へ

 ・設定資料ではコードの先の端子が尻尾的な感じで刺さっている

 

身体

・胸は少し影ができるぐらい

 ・特別大きいとかはなく「膨らみがあるのは分かるよね」程度

・手は白い手袋

 ・手袋は厚手非透過

 ・設定資料では素手の指関節が球体関節人形の仕様

  他の関節部分も同様で基本服に隠れている

・スカートも堅く広がる感じの膝上丈

 ・形状でイメージに近いのは電気スタンドカバー

 ・スカートの中は暗闇になる仕様

 ・暗闇は上に向けた状態で撮られるとかしない限りはそれっぽく見える

 ・設定資料では下着は上下共に飾り気のない白

 

・白いオーバーニーソックス装備

 膝関節が十分に隠せる程度

・白いエンジニアブーツ

 身体や脚に対してやや大きめ




「電気スタンドカバー」としか表現できないのは筆者が悪い(断言)


ついでの補足
ハソシウルの諸々は大体駒走早成が元
但し髪はおかっぱではない
誕生日も本人は4月2日で半年以上前
11月8日の由来は『俺』の誕生日


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LiveWorld非公式wiki-ノイト・クーテス(のいとくーてす)

作中一年目、炎上前のものより抜粋


ノイト・クーテス

 

「おはよう世界。ノイト・クーテスの時間です」

 


 

ハッシュタグ

 配信用 #ノイトの時間

 配信で出して良いファンアート #ノイト様への貢物

 └それ以外 #ノイト様の裏側

 切り抜き #クーテスの遺物

 

メンバーの呼称:信者(さん)

 

配信の挨拶

 始まりの挨拶(朝):おはよう世界

 終わりの挨拶(夜):おやすみ世界

 


 

公式紹介文

 ある世界に気紛れで現れた破壊神の依代。

 その気になれば原理不明の力で世界がやばい感じの力を持つ。

 だがそれをすると各所に怒られるので普段は現地人並みに抑えている。

 最近は別世界に興味を持ち配信を通じて複数の世界を観測している。

 


 

プロフィール(依代のもの)

 誕生日:9月ぐらい

 性別:女性

 身長:161cm

 利き手:右

 好き:暴力(振る方)、鶏肉料理全般

 嫌い:遠回しな言動、納豆

 


 

概要

 

 ・

 ・

 ・

 

・終了時間厳守

 ・主な配信時間は19時から21時で予定時間が来たら適当なところで終わる

  これだけ聞くと普通なのだが融通があまり利かない

  それこそ「10分あればキリの良いところまで進む」とかでも打ち切る

  コラボ配信でも内容によっては〆に入る

  翌朝の予定まで影響が出る社会人に配慮したものらしい

  その一方で配信開始に遅刻もしない→そこそこ遅刻するようになった

 

・ゲームの好き嫌い

 好き

 →大人数でわいわいやれるもの

  補足するとゲーム進行にあまり会話が要らないもの

  一方、人狼など対話を前提としたゲームは嫌い(嫌いの項目で補足)

 →ある程度運で逆転が望めるもの

  実力差があってもワンサイドゲームになり過ぎないものが良い

  ただ極端に運ゲーだったり参加者の特色が出にくいものとなると微妙

 

 嫌い

 →時間に追われるタイプのゲーム

  格ゲーなど突然秒以下の対応を要求されるゲームは大体嫌い

  その一方ターン制のゲームでは多少持ち時間が短くても大丈夫

  なお嫌いなだけで苦手ではない

 →発言、会話を前提としたゲーム

  声の大きさや聞き取りなど個人差の大きい要素が進行に影響するから

  実際コラボで何度かやってはいるが大体会話に割り込むのが下手

  声の大きさでマウントを取りに行かない協力ゲーならマシな方とか

 →長時間ゲームに干渉できないプレイヤーができるもの

  勝敗が確定、あるいはゲームから離脱した状態で長時間放置が嫌い

  理想は勝敗が決まってゲームが終わるまで全員が進行に関われること

 

・殴り合い偏重

  対戦ゲームの傾向として「とりあえず殴る」がある

  守っていれば勝てる場面でも大体自分から仕掛ける

  相手から殴られないように殴り続けているらしいがその分隙も大きい

  以下は成功、失敗、どちらとも言える(or言えない)に分類した一覧

  成功例一覧[+]

  失敗例一覧[+]

  不明例一覧[+]

 

・箱外コラボ嫌い?

 ・現状LiveWorld所属ライバー以外の相手とのコラボがほぼ無い

  特定の条件を満たした相手とはコラボするようだが詳細は不明

  なおコラボしないからと言って絡みが無いわけではない(関連人物参照)

 

  以下箱外でコラボした相手

 ・

 ・

 ・

 


 

主な配信

 

・朝マロ相談

  休日明けの朝6時45分から最長15分程度を目安にした配信

  マロを通じて投げられた辛い話に対して明るい解決策を示す

  なおゴールデンタイムに流せない要素(下ネタなど)を含む話題はNG

  ……と言っているがたまに謎の基準で採用されることもある

  なお回答は暴力で解決しがち

  ふざけた回答も少なくないのであまりガチなものはやめた方が良い

  と、少なくとも本人は主張。

 

・休日前夜ゲーム配信

  主にリスナー参加型のゲーム配信

  休みの前日なら寝坊の心配がないからと土曜夜などにしている

  皆で楽しむ、という目標から脱落者が長い間観戦するゲームは避けがち

  設定で観戦するだけな時間を減らせる場合は全力で減らしに行く

 

・ライバー相談室

  ざっくり言うと朝マロ相談のコラボ配信版

  ……のはずだが、何故か相談内容のクソマロ連投率が高い

  また「問題有り」と判断された場合はコラボ相手に黒目線が採用される

  この時の線の太さは問題の度合いに合わせた太さ

  当然クソ相談が続くと追加で太くなっていく

  [作中一年目]二月時点の最高記録は顔の上半分が隠れる程度

  この記録の更新を目標にされたという理由でこの企画は一時休止中

 

 ・

 ・

 ・

 


 

wikiの都合上省略されたノイト・クーテス外見情報

 

全体

・大体濁った黒寄り

 ・髪と服は黒をベースに青と赤が混じっている

  イメージは宇宙空間的なの

 ・髪と服それぞれの輪郭に白い線

  これが無い初期は境界が分かり辛かった

 

・髪は長髪、黒ベースで青と赤が混ざったもの

 ・公式で長さ不明(限界未確認)

  床の先など表示領域の外枠に当たるとその先は消える設定

 ・混じった色の部分は画像で透過背景を利用して表示

  頭を揺らしたりすると色の位置が背景依存とよく分かる

 ・髪の透過背景部分は常時ゆっくりと横に動いている

  その為時間が経つと色の位置も変わる

  服の色も同じ画像素材を利用しているがこちらは動いていない

・瞳孔は金色ベースで青と黒が混ざったもの

 ・色の仕様は概ね髪と同様

・頭に大きさの違う二つの丸を重ねて組み合わせたような髪飾り

 ・黄色い丸に一回り大きい黒い丸をずらして重ねたと思えば大体合ってる

 ・位置は正面額より向かって右側

  髪が前に垂れず横に向かうよう留めている感じ

  留めているので髪は3:7で分かれている

 

身体~脚

・胸の大きさは可変(月の満ち欠けに依存)

 ・満月の日が最大、両腕で支えられる程度

 ・新月の日が最小、壁

・ロングスカート

 ・足元が完全に隠れるマキシ丈

 ・色は服と同じ仕様

  足先に向かう程明るめの色になる(黒→紺ぐらい、朝焼け前のイメージ)

 ・他と接触すると3D特有の貫通をしがち

・靴は紺のハイヒール

 ・設定資料のみ

  スカートの長さからほぼ映らない




公式紹介文が頭悪そうなのは仕様


次章も書き終わってから投稿予定
ストックはまだないです


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5章 お泊りコラボ
[-n日目]そもそもの始まり


お待たせしました本章も隔日更新となります
あとプロット見直してて逆行要素が弱かったので改題しました
併せてプロットの変更もありましたが投稿済みの内容に修正はありません


 それは社長の炎上の幾らか前、本当にデビューして間もない頃。

 ――と言っても今でも一ヶ月かそこらなので十分間もないのだが――

 私は複数社合同コラボに誘われた。

 

『いやこれ私だけ登録者数が桁違いに少ないですよね』

 

 別に登録者数が全てとは思わない。

 しかしこの時点での私のチャンネルの登録者数は何とか5桁に届く程度。

 対して他の参加予定メンバーは上下差こそあるが基本6桁に届いている。

 はっきり言って場違い感が強かったので断りたかった。

 結局理屈で受け入れることになったわけだが。

 


 

 前提として、Vtuberのジャンルとしての扱いには微妙なところがある。

 その例として、ほぼ生ものなのにカプ概念に巻き込まれるとか。

 まず三次元の人間としての面が出る配信をしており供給量が多いとか。

 その一方でガワは二次元なので一部ではこれに近い認識もされるとか。

 これが組み合わさるとコラボ内容でどうこう言われたりするわけだ。

 

 そして元々はこれを利用したコラボの準備を進めていたとか。

 仲の良いペアを集め『どの組がより気持ちが通じているか』で勝負する。

 要するにそんな感じの企画である。

 勿論可能な限りギスギスする要素は回避する方向で。

 

『この準備でちょっと失敗しまして』

 

 企画主の篠原さん(●●○の中の人)曰く、予定は割と初歩的なところで崩れた。

 

 そもそも現在のニシツキシキのライバーは九人。

 ただペアを作るだけならまだしも仲の良い組み合わせは限られる。

 特にコラボで複数のペアを作ると無理が出易い。

 最初は『それでも良いか』と準備を進めていた。

 だが後に『やっぱりそれでは面白くない』と外部にコラボを持ちかける。

 ここから話が元々の想定以上に大きくなってしまう。

 最終的に四つの箱、進行役を含め計十人が参加する大型コラボになった。

 

 そこまで進んでから問題が発覚。

 予定メンバーの内、西月ノゾミは外部コラボにNGがあったのだ。

 

『説明聞いた段階では内部コラボの予定だったから受けたんだけどね』

 

 とは社長談。

 篠原さんもまさかそこがNGとは思っていなかった。

 そこはちゃんと確認をとれよ。

 私はそう思ったが、よく考えると篠原さんは社会人一年目。

 でもって企画していた頃は忙しかったとも聞いている。

 どの程度かは知らないが聞き辛い状況で後回しにしたと思われる。

 聞こうにも今忙しいし性格的に受けるから大丈夫だろう、とか。

 確認していないので全て推測だが。

 

 この件は各所に連絡と謝罪済み。

 ついでに埋め合わせとして『何でも手伝います券(意訳)』が発行された。

 その後『企画は面白いんだから続けよう』という方向に話が進む。

 改めてニシツキシキの候補として挙がったのが私と江島さんである。

 これには他の大丈夫な候補は時期が噛み合わなかったという理由もある。

 

 この話が私に回ってきた時点ではまず『何で外部NGなの?』と思った。

 今なら分かる。

 複数のVtuberを掛け持ちしていると発覚する危険があったからだ。

 そりゃ下手にコラボできんわな。

 結局別で起きた問題の延焼を回避する為に掛け持ちをバラしたわけだが。

 


 

 この大規模コラボを受ける上で一つ重大な問題がある。

 私と江島さんの関わりの浅さだ。

 

 コラボの性質上『お互いをどの程度知っているか』という話になる。

 プライベートで多少仲が良かったところでまだまだ期間が短い。

 どう考えても圧倒的に不利、なのはこの際諦める。

 私にとって重要なのは、ここで迷惑をかけないこと。

 

 コラボというのはお互いの利益になってこそ意味がある。

 付け加えるなら『できる準備をしないこと』は私の主義にも反する。

 だから私が足を引っ張る要素は削っておきたい。

 その為は私と江島さんがお互い積極的に関わる必要がある。

 というわけで――

 

「一週間宜しくお願いします」

「こちらこそ宜しくね」

 

 大規模コラボ前の一週間に会社寮のお泊りコラボをすることに決まった。




「おかしい、これは何かがおかしいぞ
 プロットは半年以上前に完成済みで
 執筆は前章投稿中から始めている」
「え? そんなに早く?」
「なのに
 二ヶ月何の音沙汰も聞こえないとは
 これは、絶対におかしい
 何かが、あったに…違いない…」

そう、もうお分かりだろう
執筆の時間を取れていないのである!



……すみません書きたかっただけです
環境が変化した都合で更新頻度やクオリティは悪化する見込みになります


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[1日目(金)]【クラフト】告知しつつゲーム【冷雪/ハソシウル】

 お泊りコラボ、と言ってもそう大層なものでもない。

 金曜から一週間会社寮に泊まる。

 夜は適当にその日あったことを中心とした雑談を含む配信をする。

 決まっているのはこの二点ぐらい。

 強いて言えば雑談の話題の為に積極的に動く必要もあるわけだが。

 


【クラフト】告知しつつゲーム【冷雪/ハソシウル】


 

「そういうわけで夜はなるべくコラボをやっていこうと思います」

 

 概要はSNSで告知しているが配信上でも説明をする。

 説明しないとSNSを見ていない人やアーカイブ勢には意味不明になるし。

 

上位チャット

:コラボ週間たすかる

:つまり寝室も一緒?

:昼はコラボしないの?

 

 寝室は別だ何期待してんだこいつ。

 単純にベッドが二人だと狭いし。

 そう思ったがスルーしておく。

 

「お昼は日によりますね」

 

 昼配信の件は冷雪さんが答えてくれた通り。

 配信することもあればしないこともある。

 二人で配信していたとしても個別だったりもする。

 この辺りは詳しく決めていない。

 

 というかずっと二人で配信してると使える話題がすぐ無くなる。

 そういう意味ではある程度別で行動していた方が楽なぐらいだ。

 二人が別行動すれば話のネタが増える機会も二倍。

 別行動なら二人ともが配信しても配信上で起きたことを話題に使える。

 配信上では既知の出来事でも相手にとって未知なら反応を聞ける。

 

 

 それはそれとして、夜の配信を雑談だけで続けられるとは限らない。

 話題はマロを使えば持つだろう。

 しかし、折角の長期コラボがそれだけでは物足りなくなる。

 そう考えて使えそうな企画を幾つか準備した。

 一つ目は起動しているゲームの時点で幾らかの人は察していたわけだが。

 

「ではまず、共同で制作する大型建造物の候補を発表します」

 

 うん、まだ候補なんだ。済まない。

 仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。

 以下略。

 

 このゲーム、ニシツキシキサーバーではまだまだ開発が進んでいない。

 なので『需要はあるが造られていない施設』の候補は多い。

 個人的な一押しは全自動の生産系。

 生産的な意味で欲しい物は無限にあるからな。

 そう思いながら配信で聞いてみたのだが――

 

「ではコメントを反映して、天空トラップタワーを制作します」

 

 票は厳密に集計していない。

 それは意見が割れた時にこちらの都合で選ぶ余地を残したかったから。

 なのに圧倒的に天空トラップタワーが多くて選ぶ余地は残らなかった。

 お前ら本当に意味分かって選んだのかよそれ。

 

 天空トラップタワー。

 それは暗闇に敵が出現する仕様を利用した施設。

 大雑把な構造としては次の通り。

 意図的に敵が沸く空間を作る。

 敵を水流で誘導、特定のポイントから落下させる。

 この誘導先に十分な落下距離を用意し落下ダメージで敵を倒す。

 敵が勝手に即死するので残ったドロップから汎用素材を稼げる。

 また落下距離を減らし一撃で倒せるよう調整しても良い。

 その場合、落下先は段差を利用して一方的に攻撃できる構造にする。

 そうすることで楽に敵を倒して経験値を稼げる。

 ついでにスイッチを利用してこの二種類を切り替える、というのもある。

 どう作るにしろ沸きの空間や落下距離の都合でかなり広い範囲を使う。

 でもって施設の規模相応に大量の素材と時間が必要になる。

 でも一度作れば稼ぎとして便利。

 以上説明終わり。

 

 いや気持ちは分かるよ?

 超大型施設見たいもんな。

 最低限の仕様は単純に作れるから素材を見つけられない可能性も低い。

 特にこの前全自動丸石製造機が作れて素材集めが楽なのは救いだろう。

 根気と時間があれば拡張し易いのも加点要素。

 でもな、制作に見所が無さ過ぎるんだがそこのところはどうなんだ。

 お前ら本当にそれで良いのか。

 

 なお何気に一番の問題は『二人で連携して制作できるか』だったりする。

 座標確認の都合上ある程度一人でやる方が失敗しないだろうし。

 片方が素材を集めもう片方が制作、なら簡単だが何か違う気がするし。

 やるなら片方が骨組みを作ってもう片方が隙間を埋めるとかだろうか。

 

「近くに作っても邪魔だしネザー経由で遠くまで行かない?」

「普通に遠くまで線路引きましょう」

 

 確かに近くだと何が起きるか分からないから遠くに作りたいけど!

 遠くへ行くのにネザーが優秀なのも分かりますけど!

 まず今の装備でネザー行って通路作るのが大変でしょうが!




どうしてやることを増やすんですか?(現場猫顔)


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[2日目(土)]卒業アルバム

 お泊りコラボだからと言って一日中配信しているわけではない。

 寝坊気味な時間に一階に下りるとリビングに謎の集まりができていた。

 

 切っ掛けは社長(希さん)が自身の高校時代のものを見つけたこと。

 軽い話題程度から『皆で持ち寄ろう』という話に発展したとか。

 ……年齢の話って触れて良いの?

 今まで確認すれば分かるかもしれないのをあえてスルーしてきたけど。

 


日向希(西月ノゾミ)の場合】


 

「私はどれでしょう!」

 

 社長(希さん)が集合写真の(ページ)を広げての問である。

 これ『私何歳に見える』並みに厄介だと思うんですけど。

 

 名前付きの写真は別の頁なのでカンニングはできない。

 聞いたところ当時を知らない何人かに同じ問題を出したとか。

 その中で正答したのは一人だけ。

 唯一当てた日向優(七色ことね)はメタ読みを含めての答えだったとか。

 そこまで当たらなかったなら私が外しても大丈夫、と思いたい。

 別に景品は出ないだろうがちょっと当てにいってみよう。

 

 こういう時は妥当性の高いところから消去法で候補を減らす。

 まず本人は女性なので男性を外す。

 現在の身長から大きく外れるような人を外す。

 正答率が低い点から現在の外見に近い感じのする人を外す。

 視力が良く普段眼鏡をしていないので眼鏡をかけている人を外す。

 でも写真の髪が長いのはイメチェンで切ったりしそうだし外さない。

 

 それから、それから――

 

 ……削れそうなところ削ったら一人しか残らないぞ?

 ということは違うんだろうなぁ。

 同じような発想をした人が今までいなかったとも――

 もしそれが唯一の正解者だったら?

 正答率の低さは最初の方に答えた人には無い情報。

 そして『メタ読みで当てた』という前提にも一致する。

 ……悪くない気がしてきた。

 ということでその人を指す。

 

「何で皆同じ人指すの?」

 

 私は三人目だったらしい。

 普通そこまで同じこと考えないだろ、常識的に考えて。

 

 なお本物は眼鏡かけて窓際の席で読書してそうな感じの雰囲気だった。

 連想した言葉は『詐欺』『戻して』『どうしてこうなった』など。

 私は悪くねぇ。

 


渡志織(リュッケペルタ)の場合】


 

 もしかして女子高だった?

 私がクラスの集合写真を見て真っ先に出た感想である。

 

「元女子高で共学になった私立だよ」

 

 本人がそう言いながら別のページをめくると確かに男子がいた。

 客観的にはハーレムだけど実際は大分悲しいことになるやつだこれ。

 まあそれはさて置いておこう。

 

 なお渡さんは社長(希さん)と違って一発で見つかった。

 残念な四角眼鏡が特徴的過ぎる。

 そんな眼鏡だが、聞いてみたらきちんと由来があった。

 

 好きな子に嫌がらせをする男子の話を聞いたことはあるだろうか。

 あれは『否定的なものでも反応が欲しい』という心理が元らしい。

 で、彼女の場合それを二人の同級生からされていた。

 理由が理由なので行動は徐々にエスカレート。

 最終的に転校して問題から距離を置くことで解決した。

 

「私が美人だから仕方がないとはいえ予防はしておきたくてね」

 

 そんなわけでわざと残念な眼鏡を選んだそうだ。

 というか自分で美人と言い切るか。

 

 なお集合写真には似た系統の瓶底眼鏡の人もいた。

 こちらは渡さんの話を聞いて真似した人。

 同じ理由ならほぼ女子高な環境でする意味は薄そうな気がする。

 


駒走早成(ハソシウル)の場合】


 

「今度機会あったらで良いから駒ちゃんも卒アル持ってきてよ」

 

 流れでそんな話を振られるのは別におかしくはない。

 私はまだ卒業して一年数か月だから容姿はそこまで変わっていない。

 でもそこから学校関連の話題にも発展した件もある。

 それはそれとして、私はこれから残酷なことを伝えなければならない。

 

「私の通ってた学校、アルバムじゃなくてDVDなんですよ」

 

 近年はそういう学校もですね――

 その説明でアルバムが標準だった人達にダメージが入った。




その他削った話
日向優(七色ことね)加瀬谷鏡子(ミロリーム)は同じ公立高校出身
 やり取りをするようになったのはオフ会で顔を合わせてから
 それまでは学年が違うこともあり学校で直接会話する機会はなかった
 一応その時点でもお互い相手の噂程度は聞いている


ところで今の卒業証書って二つ折りのファイルなんです?(筒世代)


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[3日目(日)]【練習】地下を皆殺すRTA【ハソシウル】

他の内容的に差し替えようかと思ったけど特に思いつかなくてそのままな回
一部ネタバレ含みます


 別にお泊り企画だからと言って常にコラボ配信をするわけでもない。

 今回は以前配信で言っていたRTAの練習配信。

 需要もクソもない気はするが興味のある人はいるらしい。

 最悪の場合雑談混じりで進行すれば大丈夫だろう。

 


【練習】地下を皆殺すRTA【ハソシウル】


 

「今回するゲームはこちらです」

 

上位チャット

:タイトルがケツイ

:さてはGルートじゃな?

:誰も死ななくていい優しいRPGとは

 

 だって仕方がないだろ。

 このゲームは『俺』の頃に興味を持って『私』がクリア済み。

 しかも三つのエンド全てを、だ。

 細かい分岐要素はあるがそれ以外見ているし覚えている。

 正直Pルートは何度見ても泣く自信があるがそれはそれ。

 初見でないのだからそれ前提の配信をするべきだろう。

 そんな話を一部ぼかしながらした。

 

 ではここでエンド分岐のお話。

 このゲームは限りなく雑に言うと以下の三つのエンドがある。

 Pルート、条件を満たした上で全員と仲良くなる。

 Gルート、皆殺しにする。

 Nルート、上記どちらの条件も満たさない。

 

 今回やるのはGルート。

 このルートで戦う相手に、ゲーム全体でも特に難易度が高い二人いる。

 Gルートを選んだ理由はぶっちゃけその点にある。

 というかGルート選ぶ理由って究極的には強敵との戦いに尽きると思う。

 

「序盤は戦闘中に回復使わずいければ十分、と思っておきます」

 

 GルートのGは虐殺(Genocide)に由来する。

 実際途中から一部の相手以外はかなり一方的な戦闘になる。

 そういう意味ではこの表現はとても分かり易い。

 あとGだけでグロテスク(Grotesque)(Guilt)にもかかるところは面白いと思う。

 ただの深読みだけど。

 

上位チャット

:親の顔より見たGステップ

:ネタバレ配慮の台詞飛ばし助かる

:全体的に操作に迷いが無さ過ぎィ!

 

 ネタバレ配慮とか言ってる人はまず何でここにいるんだ。

 素直に初見でやってる人のを見てからこっちに来いよ。

 

 

 ……そういえば説明の抜けがあることに気付いた。

 ということで配信で軽く追加説明。

 

 今回はGlitchless(バグ禁止ルール)でやる。

 理由は単純にいろいろ覚えるのが面倒だから。

 このルールでも憶える部分はあるが大分減る。

 フレーム単位の入力や目盛り単位の位置調整は本気の人に任せたい。

 

「あとバグをフル活用したTPルートRTAは一度見ることをお勧めします」

 

 主にイベントスキップ的な意味で。

 何か紙眺めてたらいろいろ飛ばせるらしいっすよ。

 

 そんな宣伝とかを交えつつ本命の戦闘の一つ目まで来る。

 

『* ゆうしゃが あらわれた。』

 

「本当にBGMかっこいいですよね」

 

上位チャット

:それな

:わかる

:でも×すんでしょ?

 

 ということで勇者戦。

 知ってはいたが普通に強い。

 久しぶりなこともありまずは負け。

 

 負けて、負けて、何度も挑戦を繰り返し――

 アイテムを活用して勝利した。

 

「いやあ、勇者は強敵でしたね」

 

 ということでリセット。

 

上位チャット

:えっ

:どうして

:あっそっかぁ

 

 うん、そうなんだ。

 これはRTAの練習。

 練習と言うことは当然本番がある。

 RTAの本番では一発突破したい。

 

「回復アイテム無しでの安定突破を目標に練習しまーす」

 

 ということで本番に向けた練習の為に繰り返し挑戦。

 それだけだと見栄えが悪いので合間でマロ返しもする。

 ただ配信的には思った以上に微妙だったので今後練習配信はしたくない。

 やるとしたら作業前提のメンバー限定配信とか。

 そんなこんなで夕方頃には結構安定して戦えるようになった。

 

 この件で冷雪さんに弄られるのは想定通り。

 切り抜きで勇者に勝ち越していたと判明するのは想定外。

 そんなに何度も戦っていたのか。

 本番ではきちんと一回で倒してあげよう。




このゲームはいろいろ書きたいけど一つ選ぶならラスボスの対比が好き
Pのラスボスは『負ける気がしない最強の友』
Gのラスボスは『勝てる気がしない最弱の敵』


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[6日目(水)]あの騒ぎは今

一話一日ペース進行だといつから錯覚していた?
筆者は初期プロットから


 今日は同棲コラボ六日目。

 予定ではコラボとして社長(西月ノゾミ)が来る日である。

 七日目は総括なのでその前に、という感じだ。

 

 向こうの騒ぎはとりあえず落ち着いてきた。

 駄目そうなら別案を用意したそうだがそうならなくてよかった。

 別案のことを聞いても説明して貰えなくて不安しかなかったし。

 

 

 落ち着いた理由の一つには『明確な被害者がいない』ことがあると思う。

 強いて言うならガチ恋勢は被害者だがこれは置いておく。

 

 社長曰く、違法性などは当事者以外にはそこまで大きな問題ではない。

 面白ければある程度は気にしない。

 面白くなければ問題として広がる。

 炎上の根本は『被害者周辺にとって面白くない』ことに由来する。

 そんな感じのことを言っていた。

 

『実際、ハソシウルとしては覚えがあるでしょ?』

 

 ……社長が付け加えた一言に覚えがありすぎて耳が痛い。

 なにせ私のRTA動画の大半は権利問題にひっかかる。

 当然、公式で明言されているならばそれに従っている。

 しかしほとんどは動画投稿について明言されていないグレーの状態。

 被害者である公式から見逃されているだけの状況だ。

 

 これは私が過去の投稿とVtuberのアカウントを分けた理由にも繋がる。

 だからまあ、社長の判断を否定はできなかった。

 


 

 とりあえず向こう側の流れを確認。

 

 まずは予定通り、見当はずれな誹謗中傷の類に対応。

 悪質な相手には法的措置の催告をした、らしい。

 らしいというのは『脅迫じゃね?』と言う主張が出てきたてから。

 要は勧告された側が騒いだからだ。

 そしてこれには西月ノゾミ側でツッコミが入っていた。

 

『別に威嚇射撃無しで脳天ぶち抜いても良いならやりますけど』

 

 あの人なら本当にやる気がする。

 経営者のはずなのに挙動が無敵の人寄りだもん。

 やらない理由は手続き上の問題か相手の多さからか……

 

 この話もあってか炎上屋の擁護を続けている人は少ない。

 私が確認した限りだとやられる側関係者っぽいのしか見当たらなかった。

 

 

 法的な対応方針が固まったところでノイト様側で謝罪配信。

 謝罪内容は『事情説明の遅れ』と『キャラにそぐわない煽り』のこと。

 

 重要なのは『掛け持ちそのものについて謝っていない点』だろう。

 何故なら向こうの運営関係者は掛け持ちを知った上で続けさせていた。

 つまりこれが問題なら運営そのものに問題があることになる。

 だから別の問題を挙げて落としどころを見出したわけだ。

 契約上問題が無くても全く何もなしだと心情的に受け入れ辛いし。

 

 そして謝罪配信に合わせて配信に関する三つの連絡をした。

 

 

 連絡の一つ目は罰ゲーム配信。

 

 謝罪に合わせてバランスを取るつもりらしい。

 内容は苦行と名高い壺に入ったおじさんで上に進むゲームのRTA。

 これが終わるまで一部の定期配信以外禁止となった。

 

 普通は一周クリアで十分な苦行なのだが幸か不幸かクリア経験有り。

 なので単純なクリアでなく、10分以内という条件が付いた。

 時間の根拠はショートカット無しRTAで検索をして出てきた記録。

 ショートカットできる分で追い抜く計算だとか。

 

 次点として1時間半以内に5回クリアでも可としている。

 1時間半というのは普段ゲーム配信をしている時間に由来する。

 10分を超えても気軽にリセットしない、という意味では良い調整だろう。

 一つ目の条件だけだとリタマラが始まりそうだし。

 なおこちらの条件を達成するには単純計算で一周18分程度。

 緩い条件に見えて一つのミスが他の周回にも負担になる鬼畜仕様。

 少なくとも私だったら10分が難しそうな時点でリセットする方が楽そう。

 

 

 連絡の二つ目はコラボの全面解禁。

 

 今までは掛け持ちバレを考慮してコラボが制限されていた。

 この制限を全面撤廃するとか。

 制限認めて良いのかよ、と思ったが今更である。

 

 勿論これは誰とでもするというわけではない。

 それでも今まで門前払いだった人に可能性ができたというのは大きい。

 でもやるとしても諸々が落ち着いてからになるだろう。

 コラボ相手にしてみると今手出しするのはリスクが重すぎる。

 少なくとも私は嫌だ。

 

 なおこの解禁は西月ノゾミ側でも告知された。

 こっちは『そりゃそうだよなぁ』という感じ。

 

 

 連絡の三つ目はボイス販売。

 

 実はノイト・クーテスは過去にボイス販売を行ったことが無い。

 他のグッズだ何だには参加していたのだがボイスだけは売らなかった。

 なので通常のボイス販売だけでもかなり需要があったりする。

 加えて今回は『特注』の枠がある。

 

 ここで言う特注ボイスとはLiveWorldのボイスの売り方の一つ。

 簡単に言うと『ボイスの内容をライバーに指定できる』というもの。

 通常では期待できない『自分の名前を呼んでもらう』なども可能になる。

 そしてこのボイスは文章量が制限内なら幾ら増やしても良い。

 例えば本命を終えた余りに『●●君大好き』とか入れられる。

 

 この特注ボイスは手間や収録時間の都合から滅多にできない。

 そんな代物が出てきたことがお祭り騒ぎと言って良い状態になった。

 抽選の当選数や文章量が過去の例より多いから尚更。

 試しに逆算したら時間どうやって作ってるのかちょっと聞きたくなった。

 

 

 この情報で一部でまた荒れそうな気もしたが私の想定よりは小さかった。

 多分先に積極的に炎上させる人を牽制した影響だと思う。

 勿論これで騒動が完全に消し飛んだかと言えばそうでもない。

 でも配信の低評価やアンチが少し増えた件を除けばほぼ以前同様の状態。

 言い換えると、対応でこれ以上の良好な変化は望めない程度に回復した。

 なのでまあ、余程のことが無い限りはスルーが正解だろう。

 結果がこれなら実質ボヤの内に消火できたと言っても良い。

 

 ……詐欺師とかの手法ってこんな感じなのかなぁ。

 話題を話題で上書きするやり方を見て、ちょっとだけそう思った。

 


 

 騒動も落ち着いて社長(西月ノゾミ)とのコラボは問題なくできる。

 そんな状態だったが、私は江島さんからの連絡で頭を抱えることになる。

 

「急用が入ったからプランBで行こうとか言われたけどプランBって何?」

 

 あ? (聞いて)ねぇよそんなもん。

 この後普通に連絡した。




この回が長すぎて複数話使うことになりました


ライバー掛け持ちの合法性について
 ・ライバー掛け持ちについても相手側は間違いなく了承済み
 ・一部では『後付けでそう言ってるだけ』と主張しているが無理筋

 掛け持ちが後付けでないと判断された理由
 ・ニシツキシキとLiveWorldのライバーはコラボ経験有り
 ・ニシツキシキについてきちんと調べれば社長の情報が出てくる
 ・LiveWorldの運営側にライバーの情報はあって当然
 ・ここまで揃って把握していないならLiveWorld運営にこそ問題がある

 大体そんな感じ


LiveWorldの特注ボイスについて
 ファンの『こんなボイス欲しいなぁ』を間違いなく満たしてくれるもの
 そこそこ高いことが気にならない程度の価値はある
 特注をするのは基本人気ライバーなのでまず応募者から抽選
 当選者数は多くても3桁乗る程度
 内容によっては弾かれるがこれは大体弾かれる側が悪いので略
 多く収録する都合からほぼ一発録りでクオリティやや低めの配布遅め

 今後のボイス販売と系統が被った時の救済有り
 系統がかぶったという連絡を入れれば被ったボイスを無償で貰える
 これを狙って様々なシチュの短い台詞を注文する人もいる
 値段から逆算した感じでは運営もこの抜け道を多少狙っている節有り

 購入手順
 1、期日までに公式の購入ページに各種情報を入力して送信
   ボイスの中身についてもここで指定(転売対策)
 2、締め切り後に抽選を行い入力した連絡先に当落通知が届く
   内容に問題があると運営で判断された場合は落選扱いになる
 3、ボイス収録後、指定の手段で音声データが送られてくる
   収録が送れた場合などは代わりに進捗状況の連絡が来る
 4、データ受け取りから一ヶ月以内に指定の口座に振り込みをする
   振込は当選通知後から可能


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[6日目(水)]【何かやる】コラボ前哨戦やるぞ!【グラーラ・グトン/スロディ・アケス/冷雪/ハソシウル】

 恒例となった夜のコラボ配信。

 まず最初に私と冷雪さんの恒例の自己紹介。

 そこから予定通り相手に引き継ぐ。

 

「みんなー!こんばんわー!」

「うるせぇ」

 

上位チャット

:でかい、声が

:鼓膜ないなった

:ツッコミの気合が足りない

 

 声大きいのは知ってたし音量下げてたけどやっぱり大きい。

 相方のツッコミが『わ』の余波で半分かき消されてしまった。

 多分音量じゃなくて声の出し方で大声に聞こえるやつだこれ。

 


【何かやる】コラボ前哨戦やるぞ!【グラーラ・グトン/スロディ・アケス/冷雪/ハソシウル】


 

「改めまして!バーチャルファンタジー所属!グラーラ・グトンです!」

「同じく一期生、スロディ・アケスだよー」

 

 プランBはバーチャルファンタジー一期生の二人とのコラボ。

 そしてこの二人は明々後日に控えた四社コラボの参加者でもある。

 

 今回は私のチャンネルのみで配信。

 登録者数の差がえげつない状態を少しでもマシにする意図が含まれる。

 登録者数的に圧倒的に少ない私としてはとても助かる。

 建前上は『サムネイル作るの面倒だから丸投げできるならしたい』とか。

 ……建前なんだよね?

 本音じゃないよね?

 

 突発ということもあり準備に使えた時間は短い。

 しかし、この手のコラボで使えるネタの備えはある。

 配信前に候補の一覧を送りやりたいことやできないことの確認もした。

 その上で相談して何をするか決定したわけだが――

 

「えーでは何故か、四人将棋します」

 

上位チャット

:どうして

:そうはならんやろ

:思ってたやつと違う

 

 本当になんでだろうね。

 コメントに心の内で同意する。

 万が一にも本命のコラボと被らないって条件が強すぎた。

 今回の件は次回の参考にさせていただきます。

 

 なお配信タイトルや概要に四人将棋と書かれていない。

 これは告知段階ではまだ相談している最中だったから。

 後でタイトルだけ弄っても良いかもしれない。

 

「将棋は全員チョットデキルということなので、信じてますからね!」

 

 チョットデキルを信じたので持ち時間は少し長め。

 経験者なら時間切れオチは回避できる、はず。

 私が経験者かと言うと若干怪しいところもあるが。

 具体的には某ハムスターをRTAする為に勉強した頃が最盛期。

 

 一応撮れ高が無さそうなら他の候補に移行する予定。

 そもそもコラボの趣旨としてどうなんだというのは考えない。

 


 

 そもそも四人将棋は四方向から一つの盤面を囲むバトロワ形式。

 強い人、有利な人がいても集中攻撃でバランスが取れる。

 仕様上隣の人を狙うという定石もあるがこの話は一旦略。

 そして今回はあえて二人一組のチーム制にする。

 これはルールとして存在するらしいが今回使うサイトの仕様にはない。

 なので単純に『一位になった人のいるチームの勝ち』にした。

 結果として、この判断は大当たりになった。

 

 分かり易い例としてはわざと味方に王手をかけるというもの。

 四人将棋では王手がかかるとかけられたプレイヤーの手番になる。

 これを利用し――

 ・相手チームの手番をスキップ

 ・味方に駒を献上

 ・味方が守りに使える手数を増やす

 などの要素を複数満たす手がバンバン指された。

 そんなやりとりから、ついに冷雪さんがスロディさんを倒す。

 

「あれ? もしかしてこれ、私がわざと倒されたら勝ちじゃない?」

 

 四人将棋は『倒した人数』で順位が決まる。

 最後に残るのは一人だから倒されるのは最大三人。

 その半数以上の二人を倒せば条件上の勝利。

 つまり二対二のルールでは相手側を一人倒した人が相方を倒せば勝ち。

 

「お気づきになりましたか」

「むしろスロちゃん気付いてたの?」

 

 で、実際ここから冷雪さんが私の王を詰めて終了。

 多分詰められる直前に相方に詰められるのが正解。

 幾らなんでもこれはつまらない、ということで二戦目から修正する。

 当然、最後まで生き残ったら勝ち。

 これでも二対一になった時点で相当きついんだけどね。

 

 

 最終的に将棋が多少でも分かれば楽しめる配信になった、と思う。



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[6日目(水)]配信後

「今日はありがとうございました」

 

 コラボ配信を終了して改めてお礼を伝える。

 

 経緯的に考えて連絡はかなり突発だったはず。

 でもって登録者数が桁違いに少ない私のチャンネルで配信。

 加えて各自で告知してもらった。

 はっきり言って、かなり私の得になっている。

 別に同じ箱で支援が要るわけでもないのに、だ。

 

「まあ特に予定も入れてなかったし」

「あとこっちも下心で動いた部分あるからねぇ」

 

 そうは言ってもらえたが、二人はあのバチャファンの一期生。

 やることは無限に出てくるはずだしその分休日も貴重なはず。

 そんな中、突発にも拘わらずコラボ配信をしてくれたのは本当に有難い。

 

 ……そういえば希さん(社長)はこのコラボは別案と言っていた。

 本人が参加できない場合の控えで他の箱の一期生ってどういうことだ。

 しかも当日に急遽コラボができるのは都合が良すぎる。

 となると、予め準備しておいたと考える方が自然。

 

 ならちょっと聞いておきたい。

 

「つかぬことを伺いますが――」

「先に言うと別に二人は弱み握られてるとかそういうのじゃないよ」

 

 私が投げようとした質問は冷雪さんに先回りされてしまった。

 私達のやりとりを聞いてか、笑いを堪える声が二人分漏れ聞こえる。

 その笑いはどの部分に対する反応なんですかね。

 


 

 よく考えてみればバーチャルファンタジー勢との繋がりはあった。

 なにせニシツキシキ社長の日向(ひむかい)(のぞみ)はVtuberの掛け持ちをしている。

 判明している範囲でデビューが新しい順に並べると次の通り。

 

 ニシツキシキ所属のクリエイトサイド、西月ノゾミ。

 LiveWorld所属の一期生、ノイト・クーテス。

 BF(バーチャルファンタジー)所属の二期生、エフィセテス・ルヴィートア。

 

 つまりBF(バーチャルファンタジー)でもう関わっていたわけだ。

 そりゃ連絡先ぐらいは……

 あれ?

 エフィセテスって引退してたよな?

 ライバー用のスマフォとかって普通引退する時に返すよな?

 ってことはライバーとしての連絡先は無くなってるよな?

 つまりそれ以外の私的な連絡先が無いと成立しないな?

 どういう関係なのか読めたと思ったが読めてなさそうな気がする。

 

 そんなことを考えていたら、どうやら伝わってしまったらしい。

 

「折角だし、私からオフレコで話せる範囲だと――」

 

 なんと希さん(社長)BF(バーチャルファンタジー)設立時の関係者らしい。

 具体的には聞けなかったが結構重要な位置だとか。

 でもって内部の問題が無ければ一期生候補にもなっていたとか。

 まさかリギスさん(チャンネル持ってない一期生)では、と少し思ったが流石に違った。

 もしそうなら二期生デビューする時そのまま名前使ってるか。

 

 この話を聞いててなんとなくわかってしまったことがある。

 BF(バーチャルファンタジー)の最初の配信はやや暴走気味だった。

 暴走の理由は『丸投げした上司に対する不満』に集約される。

 お前が丸投げしたんだからやりたい放題やらせてもらうぜ、的な感じ。

 そして日向(ひむかい)(のぞみ)は設立時の関係者。

 ついでに殴られたら全力で殴り返す性格である。

 なるほど、話せない部分はそういうことかってなもんだ。

 これだけの条件が揃って騒動に関わっていなかったら吃驚するぞ。

 

「というか元々そっちの内部でコラボする予定だったんだよね?」

 

 嫌な可能性に気付いてしまったがどう話の逸らすか。

 そんなことを考えていたら向こうから逸らしてくれた。

 大変助かるので私も便乗しておく。

 

「私もそう聞いていたんですけど急にやめることになって――」

 

 掛け持ち騒動がある程度落ち着いたからコラボはできる予定だった。

 しかし昼前になって急遽キャンセル、別案に移行した。

 急ぎだったそうで本人からは何も聞けていない。

 こっちも予定変更の準備や打ち合わせに忙しくて確認できなかった。

 

「冷雪さんは何か聞いていますか?」

 

 別案への移行を知らせやその後の確認の電話をしたのは彼女だ。

 となると何か情報を持っている、あるいは経過を聞いているはず。

 

 なおライバー名で呼んでいるのは事故を考慮してのもの。

 具体的にはリアルでのやり取り以外は基本ライバー名。

 それでうまくいっているのは我ながら不思議である。

 

「何か祖母が熊を撃って倒れたとか」

 

 恐らくだがその瞬間、聞いていた三人全員の頭の上に疑問符が浮かんだ。

 

 聞いた経緯をまとめるとこうだ。

 まず希さん(社長)の祖母が今朝山へ熊狩りに行った。

 発砲したら足場が悪く反動ですっ転びどこかを殴打、意識を失った。

 この連絡を受けた希さん(社長)は祖母を煽る為に車で向かうことにした。

 着いた時点で祖母が普通に元気だった為希さん(社長)は悔しがった。

 

 ……ツッコミが全然追いつけねぇ!




何か説明回っぽくなってしま……
説明回? これが?(正気に戻る)


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[7日目(木)]【クラフト】雑談とまとめをしつつゲーム【冷雪/ハソシウル】

 今日はお泊り配信最終日。

 実際は明後日の大規模コラボ終わりまで外泊だがそれはそれ。

 お泊り関係の配信をする予定はないので誤差みたいなもの。

 

 ……いや、ちょっと待て。

 今日は配信の都合から寮に泊まる。

 明日はコラボ準備の都合からスタジオ近くのホテルに泊まる。

 明後日はコラボ後、状況次第でホテルか寮か選択して泊る。

 まだ三泊四日あると思うと誤差扱いはちょっと無理があった。

 


 

 この一週間はいろいろありすぎて配信のネタに困らなかった。

 

 

 例えばマグロカツ丼を作った。

 

 切っ掛けは某漫画の『ウマくないわけがないやろ!』が話題に出たこと。

 検索したらそれっぽいレシピはそこそこ出てくる。

 が、今回は見ないで作った。

 普通のカツ丼の手順をベースに一部弄る感じ。

 理由は単に『俺』の得意料理がカツ丼だったから。

 当時の経験を元にマグロでどこまでいけるか試してみたかったとも言う。

 

 マグロの提供元の冷雪(江島)さんに嫌な顔をされたが最終的に許された。

 アドリブ多めの初めてな割に美味しくできたことは大きいと思う。

 駄目だった部分は思っていたよりマグロに熱が通ってしまったこと。

 焼き魚としては焼き足りなく感じる程度で鶏肉みたいな感じがした。

 

 

 例えばコスプレ会があった。

 

 まず冷雪(江島)さんはコスプレイヤーで部屋に道具だの何だのが沢山ある。

 そして彼女はこれを使いまわすなどの行為に特に抵抗がない。

 ということで、試しにやってみたい、と頼んだところ快諾。

 

 最初は慣れていない私一人。

 軽く覚えたところで二人で合わせ。

 そこから話が広がって何か女性陣を中心にいろいろと。

 既にあるものをとっかえひっかえするだけでも結構時間がかかった。

 ぶっちゃけ平日の昼の半分ぐらいはこれに使った気がする。

 

 なおVtuberのコスプレはあったが基本的に他社のもの。

 ニシツキシキ所属は冷雪(江島)さん本人のもののみ。

 付け加えると移籍前の衣装だった。

 箱としての歴史の浅さを考えれば仕方がないだろう、多分。

 

 それと以前にも思ったことを一つ。

 いつの間にか自然と女性陣に混ざっていたことねさんは何なんだ。

 

 

 配信で挙げられないような話も幾らかあった。

 

 特に駄目なのは社長の突然の実家帰り周辺の話。

 というかこの手の話をするなら本人から話すのが筋だし。

 あと今日も向こうに泊まるとか。

 それで普通に配信できるのは必要な諸々を持って行ったからだろう。

 こちらに帰ってくるのは明日で明後日(大型コラボ)には間に合う予定。

 

 

 微妙な話も幾つか。

 

 例えばニシツキシキの人達で流しそうめんをした。

 その際にお高いお肉による焼肉も食べた。

 曰く、お中元で貰った分を食べきれそうにないから持ってきたとか。

 お肉を持ってきた社長はと言えば大体焼きおにぎり焼いてた気がする。

 

 ついでに伊甲(いこう)天巌(てんがん)の中の人こと(はやし)(さとる)さんと初対面。

 配信のイメージとやや違ってとても腰の低い中年男性だった。

 あと途中お酒が入ってからめちゃくちゃ口が滑ってた。

 急な解雇と離婚のコンボを喰らったとか。

 今は娘と一緒に実家に帰って暮らしてるとか。

 ニシツキシキにはスタッフ募集と勘違いして受けに来たとか。

 勘違いは判明したけど結局相談の末にライバーになったとか。

 これだけの情報量でまだ半年経ってないとか何かのバグでは?

 

 この辺りの話は多少連動している。

 そこから余計なことを漏らす危険があるので無難な部分も出し辛い。

 ということで私の中ではできれば使いたくない話枠になった。

 幸い今日まで使わずに済んでいる。

 

 

 そんなこんなの末、とにかく配信上では最終日。

 今日は総まとめを兼ねた配信。

 総まとめで振り返りの雑談は当然。

 更に今回成果物のお披露目もする。

 


【クラフト】雑談とまとめをしつつゲーム【冷雪/ハソシウル】


 

「予定していたトラップタワーもこの通り、無事、完成しました」

 

上位チャット

:え

:何が起きた

:キ●グク●ムゾン使った?

 

 ……いや、だってそうなるでしょ。

 一週間とは言っても建築は夜の限られた時間だけ。

 しかも昨日みたいに進められない日もあった。

 どう考えても当初の予定時間での完成は無理。

 なら昼に造るしかないじゃない。

 そんな理由から今日の昼はずっと建築をしていた。

 

「完成しないよりマシだから仕方ないということで」

 

 うんまあ、配信としてはともかく私達個人としてはそうなんだ。

 付け加えると作業しながらの雑談配信って割と大変だし。

 脳死作業と雑談をセットでするのって割と地獄なんだよ分かってくれ。




オチが弱い気しかしませんが本章は終わり
今回は追加資料もありません

次章は大型コラボとその前後の話、のはず(プロットが既に怪しい)



補足、作中で略されたお話の一部(名前はVの方を二文字表記)
・A5和牛さん
 ノゾ「私がお歳暮で貰ったA5和牛だ感謝して食べろ」
 リュ「(お肉に向かって)A5和牛さんありがとう」
 ノゾ「そっちじゃない私の方」
 リュ「(社長に向かって)A5和牛さんありがとう」
 ノゾ「私はA5和牛じゃねぇ!」

・会社の漫画
 こと「娯楽室の漫画の一部は借りて帰れるよ」
 レト「何かお勧めの漫画ある?」
 ハソ「ワ●トリお勧め。9巻まで借りれるって」
 (後日)
 レト「何で9巻までなの」


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6章 大型コラボ
前日の準備


おまたせしました本編書けたので投稿
いつも通り隔日更新です


 明日土曜日は複数社合同コラボ。

 開始は視聴者が昼食を食べ終わっているであろう13時から。

 配信が多少長引いても何とかし易い時間というのも条件だったとか。

 が、これは視聴者のお話。

 

 当日の演者やスタッフは準備の為に朝から現場に着く必要がある。

 流れの確認やら機材のチェックやらを考えれば当然だろう。

 そしてこれも当然だが、当日の朝にするのは本当に最終確認。

 トラブルを考慮するなら何日も前から準備や確認が必要になる。

 

 企画の都合上(中の人)の私に詳しい内容は知らされていない。

 でも当日円滑に進める為には現場の下見や企画の最低限の情報は要る。

 余程場数を踏んでない限り当日いきなり上手くやれるはずがない。

 ということで、今日は確認を兼ねて当日使うスタジオへ。

 


 

「本当、駒さんいて助かりましたわ」

 

 社用車を運転しながらそう発言したのは松尾さん。

 江島さんの担当をしている似非関西弁使いのおっさん。

 口下手を治す為に口調を変えてみたという経歴の持ち主。

 

「別にアラームを用意してたから何とかなったと思うけど」

 

 私の隣、運転席の後ろでそう言い訳するのは冷雪(江島)さん。

 最近(お泊まりで)知ったが江島さんは朝がやや弱い。

 そして階で男女を分けている都合から起こしに行けるのは基本女性。

 いざという時頼める人が限られていたので候補が増えて助かったとか。

 実際今日も私が起こしに行った。

 私の場合は起きようとすれば起きられる側だし適任だろう。

 というか起きられなかったのにその自信はどこから生えた。

 

「以前そう言って起きられずぎりぎりになって急いでましたよね」

 

 車の助手席からそうツッコんだのは私の担当()さん。

 彼女は普通に実家通いなのだが江島さんの起床時間より早く来た。

 参加者側のネタバレを防ぐ都合上各種相談は彼女に向かっている。

 そこで負担がかかっているのに早い時間に起きられるのは多分若さ。

 これは『俺』の頃の経験則を含む判断だから違うかもしれないが。

 


 

 泊まる予定のホテルに荷物をおろしてからスタジオ。

 そう聞いていたはずなのだが――

 

「スタジオというか会場というか」

 

 感覚的には合唱コンクールとかそういうのをやっていそうな場所。

 正面にはステージがあり客席が長く階段状に並んでいる。

 現在、ステージには各種機材が並びスタッフが手を加えているところだ。

 

「都合の良い場所で借りられるのがここしかなかったそうですよ」

 

 

 そもそも、大型のオフコラボには幾つかの問題があった。

 

 

 まず丁度良いスタジオが無かった。

 

 各会社の中には配信用のスタジオを用意している場所はある。

 ただそれは同社での配信を想定した程度のもの。

 間違っても四社合同で詰め込める程広い環境ではない。

 入るスタッフを減らすにも限度があるのだから尚更。

 そういう経緯で外部の環境を借りる必要があったわけだ。

 

 最低条件は十分な空間と電源。

 加えて借りられる期間の都合が合い、四社から極端に遠くないなど。

 実際ニシツキシキの会社からは高速道路を使わない程度の距離だった。

 

 

 次に日付の調整。

 

 誰かが大丈夫な日でも他の誰かが駄目な日、というのは有り得る。

 本人の調整ができても必要なスタッフや機材の都合もある。

 勿論調整はできるだろうけれど限度だってある。

 まして四社ともなればかなり大変だったはずだ。

 関わっていないから推測だけど。

 

 

 そして技術的なすり合わせ。

 

 分かり易いところではトラッカーの干渉だろう。

 トラッカーというのは位置情報をやり取りするための機器のこと。

 Vtuberの3D配信はこれを利用して行ったりする。

 身体に装着してパソコンで人の動きを読み取らせるわけだ。

 で、これは一人で大体10個付ける。

 場合によって数が増減するがこれは重要じゃない。

 通信機器を一人平均10個、十人が身に着ければ大体100個。

 一箇所で扱うにはかなり多い。

 しかも普段はこれの設定を会社毎に行っている。

 なので他の会社と設定が重複して誤認識を起こすことも十分ある。

 技術関係者はここの調整や正常に動くかのチェックが必要になる。

 少なくともりゅっけ()さんが愚痴る程度には大変なことになっていた。

 

 

 そんな問題を乗り越えて最終調整に入った現在。

 ニシツキシキスタッフのところへ挨拶に来たわけだが――

 

「あの井戸から出てきそうな髪をしたりゅっけ()さんはどこに」

「誰がホラー映画の主演女優って?」

 

 そこには散髪を済ませ真っ当な眼鏡をした渡志織さんの姿があった。

 これ、人によっては眼鏡キャラが眼鏡外す並みに許せないやつでは?




導入の裏方の話が思っていたより長引いて二話分になりました


前書きで察した方もいそうですが
現在まだ追加資料までできていません
日付の都合から本文だけ先に投稿


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顔合わせ(ニシツキシキ編)

 りゅっけ()さんが髪を切りまともな眼鏡をかけた。

 この経緯はめちゃくちゃ浅かった。

 

 まず渡さんはやや変則的な人見知りである。

 そのことから散髪などはいつもの場所以外にいかない。

 だから就職して住み込みを始めてからは全く切っていなかった。

 そして元々行っていたのはこの近くにある。

 つまり『こっちに来たついでに』と切ったわけだ。

 

 

 眼鏡の方はもっと単純。

 

『短期的には顔が良い方がお得』

 

 とは本人談。

 要するにここで顔の良さを利用しようとしたわけだ。

 彼女の場合は髪切って眼鏡変えるだけでも十分効果はある。

 眼鏡を準備済みということは前から利用する気はあったのだろう。

 よく見ると薄く化粧をしているような感じもするし。

 

 この判断は一時的に他社の人との交流が増える件を考えれば有りと思う。

 判断や行動が人である限りその人の認識は影響が出る。

 少しでも印象が良くなれば大なり小なり有利に働く。

 容姿は初対面での印象を決める最大の要素である。

 つまり、容姿を良くできるならした方が基本的にお得なのである。

 ストーカーとかそういう迷惑な人を考慮しなければ、だが。

 

 というか改めて見て思うけど、整えたら普通に美人なんだよな。

 


 

 仕事の方は丁度キリの良いところだったらしい。

 時間が昼頃なのも併せて考えれば出すのは今だろう。

 そんなわけで飲食用の部屋に移動。

 

「今回の差し入れと試作品です」

 

 来る前に準備したおにぎりの入ったタッパーを出す。

 差し入れ側の具は捻りが無いもの。

 試作品側はいろいろ試し過ぎて美味しいか分からなくなってきたもの。

 個人的には後者の評価が欲しい。

 前者は素直なのが食べたい人用兼後者が失敗作だった時の保険だし。

 そんな感じで試作品を食べたスタッフそれぞれの感想を記録。

 意見が一致している部分を中心に味の調整を考えないとな。

 

 

 今更だがここにいるメンバーには初対面の相手もいる。

 大体は人数の不足を埋める為に一時的に雇った人達が該当する。

 まずニシツキシキは素のスタッフの人数が少ない。

 特に今回はライバーの男女比の都合上女性スタッフが多く要る。

 なので関係者の伝手で何人か一時的に呼んだわけだ。

 だから基本的にニシツキシキ所属で見覚えのない人は臨時スタッフ。

 そう思って問題ないわけだ。

 でも中には単純に会う機会が無かっただけの人もいる。

 

「あっこれツナマヨか。マヨ少なめな気がするけど」

 

 彼はニシツキシキの主力プログラマーの『みずたま』さん。

 名前だけはちょくちょく聞いていたが実際に会ったのは今回が初。

 見た目は中学生ぐらいと間違われそうだが一応高校生らしい。

 

 正直最初は他社所属のライバーの誰かかと思った。

 次にニシツキシキ所属を表す腕章を見た時はアルバイト枠かと思った。

 自己紹介された時は納得と驚愕が混ざっていた。

 

『初めまして、僕は水守(みずもり)(たまき)。ニシツキシキのメインプログラマだよ』

 

 それを聞いて私は横に視線を向けて確認を取った。

 担当(水守緒)さんの親は再婚している。

 両方子持ちで現在は五人で生活しているとも聞いた。

 それだけ情報が揃ってて同じ苗字なら似てなくても連想するだろう。

 

『血の繋がってない兄です』

 

 見た目は姉と弟なのに実態は兄と妹とかどういうことだ。

 その本名から『みずたま』というハンドルネームはどうなの。

 などのツッコミは飲み込んだ。

 


 

「今更ですけどニシツキシキって身内色強いですよね」

 

 今回はっきりしたみずたま(水守環)さんと担当(水守緒)さんの繋がりでそう思った。

 

 ニシツキシキは同人サークル『さんりんせかい』が元になっている。

 会社になった時の追加メンバーはサークルメンバーの身内のみ。

 何なら冷雪(江島)さんもライバーとして入った時に身内(現担当)を連れてきている。

 

「私が聞いた話だと――」

 

 担当()さん曰く――

 新規で何かを始める時はそのメンバーで雰囲気が決まる。

 だから長期の何かを始める場合はよく知る問題ない人で集まる方が良い。

 この理屈から、知り合いで呼べそうな人を集めたのだとか。

 

「そういえば『嫌な風潮』を入れない為のメンバーとも言ってたような」

 

 冷雪(江島)さんが補足を入れてくれた。

 ここで言う『嫌な風潮』とは――

 

 ・残業を前提とした仕事

 ・クソみたいなマナー関係全般

 ・ほぼ強制なのに参加費を求められる飲み会

 

 ――などが該当するとか。

 

 そういえばこれまで一切参加費の(たぐい)を要求されたことなかったな。

 聞いた限りだと現代基準で相当優良企業なのでは?

 

「何なら忙しくなければ労働時間中にアニメやゲームも許されます」

「労働ってなんですかね」

 

 担当()さんにツッコんだ私は悪くないと思う。

 




飲み会廃止する
→内部交流の機会減る
→それはそれでよくないよね
→何か交流の機会を入れたい
→代案まで不定期焼肉(社長の自腹)
 ↑今ここ


労働時間中の娯楽系(漫画やアニメ、ゲームなど)の補足
・割り振れる時間は一日二時間まで
 終業二時間前からにする人が多い
・定期的にレポートにまとめて発表
 内容が十分ならRTAのチャートも可
・以下提出されたレポートの内容例
 ・原作付きアニメで使われた表現方法、および原作との比較
 ・ソシャゲのながら周回における体感上の負担要素まとめ
 ・ライバーの配信や切り抜きを元にした流行や視聴者傾向の記録

他のスタッフの話は冗長になるので追加資料(書けてない)にまとめる予定


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顔合わせ(LiveWorld編)

しばらく準備絡みの回が続きます


 ほぼおにぎりでできた昼食の後は機材の操作確認。

 動作チェックとかならスタッフだけでやれる。

 でも実際に操作が必要な部分はこちらで覚える必要がある。

 例えば、解答用のタブレットの操作とか、専用のモニターの見方とか。

 

 

 配信のスペースでトラッカーを付けて諸々の勝手を確認。

 

 カメラが集まっている場所の隣には大きな確認用のモニター。

 配信でどう見えるかが分かるようにと置かれたもの。

 これは左右反転してあるので鏡感覚で見ることができる。

 ただどうしても処理の都合からはっきり分かる程の遅延がある。

 仕方がないことだけど見ながらだと違和感が辛いな。

 何かの拍子に確認する時だけ見るようにしておこう。

 

 

 違和感がはっきりする程の遅延には当然理由がある。

 

 複数社でコラボするということは当然他社の人がいる。

 他社は他社でライバー関係の諸々を開発している。

 その都合から配信上の難点が幾つかできる。

 問題の詳細は略すとして、今回解決した手順は次の通り。

 

 一、各社がそれぞれの端末で3Dの画面を処理する。

 二、各社の画面を配信用端末に送る。

 三、配信用端末で各社の画面を合わせたものを作る。

 四、合わせた画面を各所に送り表示する。

 

 ……力業が過ぎませんかね。

 

 一応これには『今までの諸々をそのまま流用できる』という利点がある。

 既に使っている物の流用なら下手な手段より問題は少ないだろう。

 ついでに遅延分事故で配信を止める時に余裕がある、と思いたい。

 が、それ以外は大体欠点。

 分かり易い部分だとなるべく重ならないようにとか注意された。

 二人がすれ違う程度ならレイヤーの順番を切り替えて対応できる。

 でもそれ以上はきついそうだ。

 うんまあそうだよなって感じ。

 


 

 遅延の同期チェックはスタッフ側が現地入り前に済ませている。

 さっきまでは現地でも同じように動作するかの確認をしていた。

 現在私は操作関係を覚える為に交代したついでに確認の手伝い中。

 どうせ画面の遅延に慣れる必要もあるし。

 

 練習ついでに確認の手伝い、という流れは私に限った話ではない。

 今私達と一緒にいるのはLiveWorld所属、ナルリオの二人。

 この人達も同じ理由で参加中。

 

 ナルリオはほぼ色違いで双子っぽいキャラをしている。

 っぽい、なのは公式で明言されていないから。

 アクセサリーなどで差はあるのだがベースがほぼ同じ。

 そして両方とも公式で性別不詳。

 運営はどういうつもりでそういう設定にしたんだ。

 二期生だから三期生のあれとは関係ないだろうし。

 

 それはそれとして――

 まさかリアルでも性別がわからんオチとは思わなかった。

 聞くタイミングを逃してしまい今でも分かっていない。

 ……ちょっとトイレ行く時にでもすれ違えないかな。

 

 

 ナルさんは活発系。

 外見から女の子っぽいけど男の娘でもあり得る範囲。

 少なくとも誰かさんと違い意識して女装してるとかではない。

 

「試しにアルプス一万尺やろう!」

「すみません私分かりません」

「そっか! 私も分からないから一緒だね!」

 

 なら何で提案した。

 早い動作と発声を同時にするから同期チェックに使えるのは確かだけど。

 ナルさんはそれっぽいけど多分間違っている動きを始めた。

 どうやって合わせろと?

 

 

 逆にリオさんはダウナー寄り。

 見た目は男の子っぽいけどボーイッシュ女子の可能性もある。

 動き易さを追求してそうなりました、とかそういうの。

 

「ごめん僕も無理」

「私は正しい手順ならできますけど、一人じゃ意味ないですね」

 

 悲報、四人中一人しかできない。

 でも何故かリオさんはナルさんの変な動きに合わせられている。

 凄いけど同じ箱でやっても目的に合わないんですよ。

 というか冷雪(江島)さんができるのはなんとなく納得できてしまうのは何だ。

 

「では山手線ゲームはどうでしょう」

 

 皆やり方を知ってそうで動作と発声を同時に、と考えて提案。

 最悪知らなくてもこの場で教えれば済む程度のゲーム。

 幸いにしてルールを知らない人はいなかった。

 

 最初のお題はナルさんが提案。

 

「じゃあライバーの名前で」

 

 私知ってるよ。

 他所のライバーが沢山出たり先輩の名前間違えたりするんでしょ。

 でもって雑談配信とかでネタにされるんでしょ。

 私はどちらかと言うとネタにする側な気がするけど怖いものは怖い。

 

「そういうはやめよう」

 

 こうして、ナルさんの凶行はリオさんによって防がれた。




実際複数社絡みの3D配信っていろいろ面倒と思うんですよ

作中で出たLiveWorld三期生のあれは追加資料に入れます


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顔合わせ(バーチャルファンタジー編)

 コラボ当日朝の控室。

 スタッフさんに呼ばれるまでライバー達で軽い打ち合わせをする時間。

 と言ってもすることが少ないのでほぼ交流の時間と言って良い。

 

 キメラキャスト所属組は少し遅れるらしい。

 ということでバーチャルファンタジー組に挨拶に行くことにする。

 

 ……やっぱり何か差し入れ用意した方が良かったかな。

 でもパッと思いつくの食べ物だし。

 今食べ物はちょっと都合悪いし。

 うーん、なるようになってくれ。

 


 

 スロディ・アケスさんと言えば寝落ちと遅刻。

 これは視聴者の多くが思っている。

 だが経歴をきちんと確認した人なら見え方が少し変わる。

 

 まず最初、デビュー時の話。

 一期生デビューから一週間ちょっとやっていた疑似リレー配信。

 彼女はリスナーが少なくなるような時間の配信を積極的にしていた。

 その中には寝落ちもあったが他の人の配信時間までは持たせてある。

 

 次にコラボなどでの姿勢。

 一人の配信の時はそこそこ話すが積極的という程でもない。

 二人の配信の時に振られた話題はどんなものでもきちんと拾う。

 三人以上なら他の話題が途切れそうになった時にフォローする。

 

 加えてコラボだけでなく案件なども含めて他者が絡む配信。

 実は突発でない限り遅刻や寝落ちをしていない。

 その代わり前日の配信は休み。

 多分体調の調整しているのだろう。

 

 要するに面倒見や責任感という意味では十分大人な人。

 そんな彼女は見た目が中学生で通るレベルだった。

 

「先に言うけど私アラサーだから」

 

 なんとなく哀愁を感じたのは多分気のせいじゃない。

 


 

「それ挨拶直後に言うことかなぁ」

 

 まともなツッコミを入れてくれたのはグラーラ・グトンさん。

 LiveWorld(ナルリオ)組もだが本名は基本的に聞いていない。

 うっかり本名で呼ばない為には知らないのが一番だからだ。

 

「では改めまして、この間ははありがとうございました」

「いえいえ、助けられたのはこちらの方で――」

 

 グラーラさんと冷雪(江島)さんの真っ当なやりとり。

 そうだよ大人ってこういうのだよ。

 最近地味に精神年齢が幼い人を見る機会が多過ぎて感覚麻痺してたわ。

 

 にしても、BF(バーチャルファンタジー)組は並ぶと大分齢が離れているように見える。

 具体的には干支が一周違うとか言われても納得できるぐらい。

 この二人、これで同い年かぁ……

 


 

「そういえばお二人はアルプス一万尺ってできます?」

 

 話してて思い出したので経緯を含めて説明。

 年齢的に縁が薄い範囲と思うが一応聞いてみた。

 先に答えたのはスロディさん。

 

「ぼくなつのなら最速でもいける」

 

 つまりできない、と。

 一方グラーラさんは確認するように軽く手を動かしていた。

 

「一部怪しいけど覚えてる、かも?」

 

 ということで、冷雪(江島)さんと席を隣り合わせにして挑戦。

 最初は確認も兼ねてゆっくり。

 一周終わる毎にちょっとずつ速度を上げ始めた。

 ところで見て覚えるつもりがきつい速度になってきたんですけど。

 いや、速度はともかくその聞き慣れない歌詞は何なの。

 

 この私の疑問はスロディさんが解決してくれた。

 

「確か歌詞は29番まであったはず」

 

 なるほど知らんわ。

 問題なく歌える二人は何なんだ。

 片方が知ってるぐらいならまだ分かるけど何できっちり揃ってる。

 

「ゴムとびの歌ってどんなだっけ」

「『ぼくなつ』から離れましょうか」

 

 スロディさんは何でその歌を出したんですか。




「29番まで~」は何か調べてたら出てきました
調べた経緯は忘れた


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加瀬谷

完全に横道だけど触れない方が不自然だったので


 私は以前プロゲーマーを目指した時期があった。

 その時見つけた会社は何かと都合が良かった。

 それこそ『これで駄目なら諦めよう』と思える程度の条件。

 

 会社までは家から電車で無理なく行ける距離。

 求める能力は特定のゲームに限定されない。

 募集の条件の年齢が高校生以上。

 過去のゲームプレイに関する諸々があれば採点要素に入れられる。

 

 結論だけ言えば落ちた。

 後になって『落ちて良かった』とも思った。

 理由は合格したメンバーの配信を見たから。

 皆の配信からは少なからずゲームに対する『本気』を感じられた。

 それは半分惰性に近い状態の『私』に足りなかったもの。

 ただ同世代より上手い(強くてニューゲーム)程度では駄目だろう。

 あの時『私』は確かにそう感じた。

 


 

「あの時無理を通しておけば――」

「でも上手くいくかは別で――」

 

 私と話している男性は――

 バーチャルファンタジー一期生、プラビア・スペードであり――

 バーチャルファンタジーを運営する会社の社長であり――

 私がかつて受けたプロゲーマー試験の面接官である。

 

 折角だからと落とされた理由を聞いたら男女比の問題だったらしい。

 この問題が無ければ十分合格圏内だったとか。

 そういえば採用されたの全員男性だったな。

 言われてみれば『一人だけ混ざるのも』という感じはする。

 主観では社交辞令の範囲だが素直に受け取っておこう。

 下手に疑っても誰も幸せにならん。

 

 それに今回はこの辺りの話よりも聞きたいことがある。

 

「ところで、答え辛ければ答えなくても良いお話なんですけど――」

 

 彼の本名は加瀬谷(かせたに)(あきら)

 ライバーとしてのママ(ハソシウルのイラストレーター)ミロリーム(加瀬谷鏡子)さんと同じ苗字。

 加瀬谷というのは苗字は少なくともこの辺りでは珍しい方。

 何か関係あるんじゃないかと思うのは自然なことだろう。

 

 気付いたのが最近でこっちで確認した方が早いという事情もあるけど。

 あと無関係でも話題の入り口としては使えるし。

 


 

「んー、まあその話を本人に振るよりはマシか」

 

 声を潜めながら彼がした話はとても短いもの。

 

 彼女の両親に問題があった。

 親戚も当てにならなかった。

 だから彼女を引き取った。

 

 なんか想像してたのより重い話だったりしませんか?

 

「詳しい話は『あの子が話したくなったら聞く』ぐらいにしてほしい」

 

 どんな問題があったのか。

 どういう関係からそうなったのか。

 そういう話はなかった。

 私もそれ以上聞かないでおいた。

 

 それはそれとして横で聞いてた冷雪(江島)さんから質問が出た。

 

「というか養子? は異性って大丈夫なの?」

 

 言われてみればそこは確かに。

 そう思ったらスロディさんが説明してくれた。

 

「特別養子縁組の条件だけど――」

 

 一つ目、実親の同意。

 但し親が意思表示できないか親として不適当な場合は略せる。

 

 二つ目、養親の年齢。

 既婚且片方が25歳、もう片方が20歳以上でなければならない。

 

 三つ目、養子の年齢。

 基本的に手続き時点で15歳未満でなければならない。

 

 四つ目、半年間の監護。

 半年以上共に生活した上で状況を見て成立を決定する。

 

 なお特別養子縁組とは別に普通養子縁組というものもある。

 こちらは主に家の存続などを目的として使われる制度。

 条件としては特別養子縁組よりも緩く独身でも可。

 但しこちらは親の問題を発端とした養子縁組には不適当。

 実親の許可が必要だったりつながりが残ってしまうとか。

 

「妙に詳しいですね」

「どこかの馬鹿が条件の確認を十分せずに話を進めようとしたお陰」

 

 そう言いながらスロディさんはプラビア()さんに視線を向けた。

 なるほど、それはそれで何か騒ぎがあったわけね。

 というか条件的に彼は既婚なのか。

 そんなことを思っていたらスロディさんが話を続けた。

 

「まあ、私は親の結婚しろ圧や子はまだか攻勢を防げた点で助かったけど」

 

 ……なるほど?

 言い方からしてスロディさんが相手って意味ですよね?

 それは想定外過ぎるんですけど?

 あと助かったの内容の何だそれ感も強くない?

 両親が何も言わないのって呆れてるからだったりしない?

 プラビア()さんの顔を見ながら私はそう思った。

 


 

「ところで、ミロリーム(鏡子)さんは何でバチャファン所属してないんですか」

 

 経緯的にその方が自然だろう。

 そう思いプラビア()さんに質問した。

 

「前に頼んだけど最終的にコネ感が強くて何か嫌だって」

「一期生なんて全員コネみたいなもんなのにね」

 

 スロディさんそういう身も蓋もない感じのやつやめましょうよ。

 




養子縁組は厚生労働省の特別養子縁組のページを参考にしました
が、付け焼刃なので間違っている部分があるかもしれません
(軽く検索した時は子の条件が「6歳以下」って出てきましたし)
もしおかしい箇所があれば筆者のミスですが作中は多分これで通します

参考元
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169158.html

裏話
 調べてたら諸々の都合からミロリームさんの誕生日を変更
 まだ作中で扱ってなかったはずですが書いてたら確認次第修正します


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顔合わせ(キメラキャスト編)

 反応に困る話題で微妙な空気に。

 しかもその癖原因は全く気にしていないとか(たち)が悪い。

 そんなことを思っていたら丁度よくキメラキャスト組が来てくれた。

 


 

 キメラキャストは情報の癖が強い箱である。

 

 まず共通点として外見が女性をベースにした人外っ娘である。

 (中の人)が男性でもこの条件は同じ。

 このことは一時期『強制バ美肉箱』とかネタにされていた。

 最近『バ美肉おじさん限定の箱』に話題を持っていかれたがこれは略。

 今回のコラボに参加するエクログさんは男性でこの被害者枠。

 アバターは獣人ベースで蜘蛛の脚を背中から生やした巨乳キャラ。

 冗談半分で女性声に挑戦したら好評で後に引き辛くなった一人。

 声の上達具合からして他の人より本気でやってる説がある。

 

 次の共通点として(中の人)に何かしら尖った要素がある。

 特に分かり易いのは今回のコラボに参加するネリスさん。

 アバターは上半身は腕が翼(ハーピー)、下半身が魚の尾(人魚)というキメラなキャラ。

 彼女はほぼ毎日のように新曲を作っては歌っている。

 ほぼ伴奏を付けないので一部は人によって受ける印象が変わる。

 ファン的にはこの解釈の差もまた魅力の一つだったりする。

 本人曰く絵で言うラフ未満の出来だそうだが話題としては十分強い。

 強すぎて二期生なのに箱の顔みたいな扱いになっているレベル。

 

 そして今回のコラボ参加に関わる重要な共通点。

 3Dのアバターがあってもスタジオでの配信がほとんどない。

 理由はいろいろ考察されているが推測の域を出ない。

 でも今回見てなんとなく理解した。

 推定ネリスさんが車椅子に乗っていたから。

 

 ……で、そのシートベルトらしきものは何でついてるんですか。

 


 

 車椅子を使っているのは昔遭った事故の後遺症だそうだ。

 

「見ため勘違いされがちだけどそこまで重症でもなくて――」

 

 曰く、車椅子を使っているが全く歩けないとかではない。

 たまに動かなくなったり感覚が無くなったりするとか。

 不安定だから歩けない前提のふるまいをしているだけとか。

 私見だけど十分重症だと思います。

 

「いっそ切断して義足にした方が楽じゃないかと何度思ったことか」

「冗談なら笑い辛いし本気ならもっと反応に困るやつやめろ」

 

 エクログさんもっと言ってやってください。

 ツッコミがいないとさっき以上に空気が死にかねない。

 

「イメージ的には不便そうだけど実際どう?」

 

 次の話題を考えようとしたところにスロディさんが疑問をぶつけた。

 私も気になっていたがノータイムで聞けるのは無敵が過ぎる。

 

 ネリスさんはよく歌っている。

 歌というのは座っている状態よりも立った状態の方が歌い易い。

 そういう話を聞いた覚えがある。

 私生活抜きにしてもそういう面で不利になりそうな気はする。

 

「実は『たまに』以外は動けるから未だに慣れなくて」

 

 そこから出てくる沢山の『転びそうになった』シリーズ。

 転んだら悲惨な場所候補は階段、風呂場、トイレの三択らしい。

 悲惨だからこそ注意して行動しているのだそうだ。

 多分最後だけ悲惨の意味が違う。

 

「まあ、肺がやられなかっただけマシなのは確かかな」

 

 彼女は歌は特別うまいと称賛するほどではない。

 彼女の歌は特別熱を感じるようなものでもない。

 それでも彼女の歌は『歌うことが楽しい』と叫んでいた。

 彼女の歌を聞いた私の感想はそんなところ。

 

 座った状態では歌い辛い。

 でも歌えないわけではない。

 彼女にとってはそれが救いなのかもしれない。

 


 

「ところで飴要る?」

「いえ、配信始まるのも近いですし」

 

 何か大阪のおばちゃんみたいなこと言い出したぞ。

 本当に大丈夫だよなこの人(ネリスさん)

 大きめの飴を口にする姿を見てそう思った。




エクログさん掘り下げ損ねた
というかリアル容姿の話完全に入れ損ねた
でもライバーの話の部分に混ぜてもテンポ悪くなるのでこのままです


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【箱越えコラボ】仲良しVtuber対決【本部】(開始)

紛らわしいけどちゃんと違う色です()


 今回のコラボで初めて会った、という組み合わせが幾らかある。

 素顔、Vの姿、名前の三つがすぐに一致しなかったりもする。

 特に私は他の箱のライバーは全員初対面なので起き易い。

 それに対し今回用意された対策はとても単純。

 首から名前とVの姿が描かれたプラカードを下げるというもの。

 

 ……正しいはずだけど絵面的に何かツッコミを入れたくなるんだが。

 


【箱越えコラボ】仲良しVtuber対決【本部】


 

 進行役二人のオープニングトークが終わり順番に自己紹介。

 今回はこういう全員が関わる順番はいろいろ考慮して箱の開始日順。

 これは知名度が低めのニシツキシキを後回しにする配慮でもある。

 よく知らんのが前に出てきても困るでしょ的なあれだ。

 正確には少し前一人知名度が跳ね上がったけどそういう話ではない。

 

「みんなー!こんにちはー!」

 

 グラーラさんは挨拶から既に相変わらずな感じ。

 スタッフの構える集音マイクも気持ち遠めな気がする。

 

上位チャット

:大声助かる

:話し方がうるさい

:露骨に音量下げられてるの草

 

 カメラ近くのモニターからそのカメラからどう見えるかが分かる。

 それとは別にチャットの様子も表示されている。

 距離の都合からかなり大型のものを使っているのは本当に助かる。

 私じゃなくて冷雪さんが。

 最近眼鏡買うか考えてるぐらいの視力らしいし。

 

 自己紹介は都合上最後になった私まで問題なく進行。

 そこから進行役二人で大雑把なタイムスケジュールの説明。

 ……何度見てもここからずれる要素が無数にあるのが怖い。

 実際は休憩時間である程度調整されるけど。

 

 最初に表示されているものは幾らか伏せてある。

 多分一部の人達にはとても負担がかかった場所だ。

 

「この時間ですが、各箱毎に短い何かを用意してもらいました!」

 

 はい、考えるのに苦労しました。

 


 

 折角大人数なのにただ課題をこなすだけではつまらない。

 企画移行の時間長いから合間に何かを挟もう。

 詳しい過程はともかくそういう話が挙がった。

 挙がって、しまった。

 

 企画の間の休憩時間はスタッフ側の準備の都合もある。

 だがこの準備時間、特に道具を使わない活動なら間に挟める。

 なので元々はトークか何かでつなぐ予定だったらしい。

 私のところに話が回ってきた頃にはこの持ち込み企画が前提だったけど。

 

「私達が用意したのはこちらです」

 

 ニシツキシキは順番的には最初。

 内容はおにぎりの具材当てにした。

 割り振られた時間はこれに関わる諸々の説明に使う。

 用意したおにぎりのほとんどにはぶりの照り焼きが入っている。

 これ以外の具も混ざっているが現時点では秘密。

 

「メインのぶりは冷雪(コルス)さんに用意してもらいました」

 

 私は主に調理担当。

 期間の都合で完璧とは言えないが結構真面目に研究した。

 数の都合で一部の作業はスタッフさんに手伝ってもらった。

 具体的にはおにぎりと具を型に入れたり海苔を巻いたりの辺り。

 

 食事はトラッキング用の手袋の都合から箸を利用。

 箸で食べ易いようにおにぎりは俵型にして海苔を巻いてある。

 

「というかゲーム関係ではないのか」

 

 プラビアさんからツッコミが入る。

 正直我ながらそれは思う。

 ただその場合はゲームに関わる諸々の準備が要る。

 準備が要るものは企画の趣旨(時間稼ぎ)的に宜しくない。

 準備が要らないものだと見栄え的に難がある。

 そんな理由と昼食の混雑問題からこの企画が生まれた。

 当然配信上で裏事情は出さない。

 

「実はグラーラさんから要望がありまして――」

 

 この要望も嘘ではない。

 前の緊急コラボの後に私達の料理を食べてみたいという話をされた。

 

『じゃあ今度のコラボでおにぎり作って出しますよ』

 

 こう送ったらそれとなく不満そうな反応を返された。

 気持ちは分からんでもない。

 でもきちんと研究した美味しいやつだから食べてほしい。

 

「待って魚ってことはもしかして私喧嘩売られた?」

「売ってません」

 

 ネリスさん(下半身魚な御方)はそれで喧嘩売った扱いなら今回の具材大体駄目です。

 どう対応するか考えていたら冷雪さんが無視して進めてくれた。

 

「勿論ゲーム要素もありますよ」

 

 改めて企画の内容説明。

 

 今回持ち込んだのはおにぎりの具材当てゲーム。

 用意した内、ぶりの照り焼き以外の具材を当てるというもの。

 握った後混ぜたからどれがどのおにぎりかは私にもわからない。

 

 回答は配信中いつでも可。

 当たった場合は具材に関連する商品が()()()配られる。

 本題の邪魔をしない程度に答えましょう、という意味でこうした。

 これなら空気を変えたい状況で割り込むこともできる。

 配信上は盛り上がりの都合から当てた人が持ち帰る扱いだけど。

 

 そして当然だが口に入れた後吐き出すのは禁止。

 画面上に表示されないとはいえいろいろと良くない。

 嫌いな具を各スタッフ経由で確認したから素で吐くことはないはず。

 

「私さっき飴口にしたから溶けるまで食べられないんだけど」

 

 ……ネリスさんはやっぱり気付いてなかったのか。

 昼食食べないでって連絡来た時点で察してくださいよ。




この後の明かすタイミングが消えたのでここで補足するとランダムの具は
・鳥の照り焼き(当てたら鶏肉)
・ツナマヨ(当てたらマグロの切り身)
・味卵(当てたら生卵)

また流れの都合で省かれましたがランダム無しのおにぎりも
具は梅干し、明太子、昆布、おかか、高菜など
こちらはスタッフ含めて小腹が空いたら自由に食べられる感じ
配信内でもこの後説明が入る、はず


Q.箱の開始日順って具体的には?
A.各箱最初の配信は古い方から順に
 作中二年前8月 BF(バーチャルファンタジー)
 作中一年前4月 LiveWorld
 作中一年前10月 キメラキャスト
 作中一年目6月 ニシツキシキ
 となっています
 二期生以降は追加資料に載せます

Q.バチャファンの一期生のデビューってそのタイミングで正しい?
A.筆者の勘違いが無ければ合ってます
 某おじさんが広まった翌年8月です
 判断が遅い


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【箱越えコラボ】仲良しVtuber対決【本部】(問題)

いつもならここが章最終話ですが今回は何故かまだ続きます
話がだれないよう削りに削ったはずなのに……


 今回のコラボは企画やゲーム毎に点数が出る。

 最終的にはこの点数を比較する。

 内容は一部以外で点数差が大きくなり難いようにしているとか。

 

「まずはお互いをどの程度知っているかという問題で――」

 

 最初は点数差の出易いペア型以心伝心ゲーム。

 出題に対してそれぞれが回答する。

 相方と一致で2点、更に他の人と違えば違う人数分の点数が追加。

 相方と不一致の時点で0点確定するのが普通にきつい。

 回答が一致したら点数2倍とかで良かったでしょこれ。

 

「回答用のタブレット練習も兼ねて例題を出します」

 

 例題は『かき氷にかけるもの』

 私達は前泊った時に好みは分かってるから後はお互いが一致するか否か。

 

冷雪:メロン

ハソシウル:レモン

 

 知ってた。

 今回はお互い相手の好きなやつを書いてすれ違った。

 私はメロンのシロップが好き。

 冷雪さんはレモン汁が好き。

 シロップじゃなくて果汁。

 これ豆な。

 

 

 まずバーチャルファンタジー組。

 二人は元から好みが一致していた。

 

グラーラ:黒糖きな粉

スロディ:こくとうきなこ

 

「これ素で好み一致してるペアが有利過ぎない?」

 

上位チャット

:かき氷?

:何でそこで揃うの

:世界観仕事しろ

 

 ツッコミは皆してるし私はスルーで良いよね。

 

 

 次にキメラキャスト組。

 こっちは読みが変な方向にずれた。

 

ネリス:うじきんとき!

エクログ:ピーチ

 

「……最近ずっとももの飴食べてたしこうなるでしょ普通」

「それはそれ、これはこれ、かき氷は宇治金時だよ」

 

 それはそれ、の流れは分かる。

 でもノーヒントはきついから普段の要素に合わせてあげてよ。

 

 最後に本命のLiveWorld組

 こちらは全員の予想通り見事一致。

 

ナル:いちご

リオ:苺

 

 無難過ぎて何か逆に吃驚だよ。

 ナルさんの好みで合わせたらそうなっただけらしいけど。

 

 

 この例題だけでも十分に分かる。

 違いが出る内容はどちらに合わせるかで回答がぶれてしまう。

 なので本題ではどちら側視点かの条件が付けられている。

 該当する側ならどう答えるか、というものだ。

 

 例えば、登録者数やら配信時間やら配信頻度やら……

 時間に対する平均コメント数など普通分からない条件もある。

 それでいてどこかがどちらのことか確信を持てるやつが多め。

 でもってこれが分からなくても本題に影響はないのも面白い。

 

 進めるとネリスさんとナルさんはどの条件も自分側が多いと思ってた。

 自己肯定感の強さもだが合わせられる相方の理解があり過ぎる。

 私だったら多少自信ある程度では途中でひよるぞ。

 ……冷雪さんの本名が日和(ひより)なこととは関係なく。

 

 なおナルリオはチャンネルが一つなのでSNS基準で調整された。

 何と言うか、もうちょっと何とかなりませんでしたか。

 


 

 ゲームが進んで点数は思っていたより拮抗している。

 問題の良さもあるけど相手に合わせるだけなら割と何とかなるんだな。

 今までやった範囲の感想はそんなところ。

 一組(ナルリオ)だけ点数飛び抜けてるけどここは分かりきっていたし除外したい。

 

「折角全員3Dなのでな、次からその点を使おうと思う」

 

 プラビアさんが次の説明を始める。

 今まではタブレットに書いて回答。

 ここからはポーズでの回答。

 3Dを活かして全身を使うわけだ。

 

 ポーズ中の人が他の人から見えないように衝立(ついたて)が用意された。

 それはそれとして一つ問題がある。

 

「待ってこれ私どうするのこうなるんだけど」

 

 ネリスさんのアバターの足は魚になっている。

 たまに力が入らなくなる不調による動きを抜きにしても違和感が強い。

 歩き回るのを前提にした今回のような企画は不向きだ。

 ()()()()()()()()()()()()()

 おそらくここまで考慮した上であのアバターになったのだろう。

 

 ネリスさんがわざとらしく歩き回って違和感をアピール。

 チャット欄はツッコミで盛り上がっているがこっちはとても怖い。

 即座に支えられるよう両脇にスタッフがいるけど絶対じゃないし。

 

「申し訳ありませんが座ったままでお願いします」

 

 これに対し本人は不満そうに文句を言うがこれもアピールの範囲だろう。

 ……本気で言ってないよね?

 今までの言動から少しだけ不安だ。

 

 そんな不安を無視するようにスロディさんの発言が入る。

 

「あっ、今違う味だったのに飲み込んじゃった」

 

 ……もしやマイペースな人の方が多いのでは?

 おにぎりを食べての発言でちょっとだけそう思った。




元々予定していた例題
日向希「私の名前を言ってみろー!」
エク「こっちだけ不利じゃねーか!」←キメキャスのみ未所属

 元々はここでネタ回答が沢山並んでいましたが
「ただでさえ社長のキャラ濃いのにこれ以上の情報出さなくても」
 ということから出す予定だったネタ含めて没りました
 前章のA5和牛さんはこの時出す予定だったネタの一つです


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【箱越えコラボ】仲良しVtuber対決【本部】(終了)

企画の話を真面目に全部やるとだれるのでカット
べっ別に企画を沢山用意できないとかそんなことあるんだからね!


 予定していた一通りの内容が終わりスコア発表に移る。

 一位は皆予想できた通りLiveWorld組(ナルリオ)が持って行った。

 実はこいつら頭の中に通信機でも仕込んでたりしない?

 そう思った私は悪くないはず。

 

 一位の景品は温泉旅行。

 予算内であれば好きに指定できる。

 ついでに九州某所なら割引券が適用される。

 控えめに言って露骨だと思う。

 

 ナルさん指定の行き先は北海道。

 多分リオさんは遠い目をしてる。

 表情見えてない角度でも分かる。

 

上位チャット

:ステマ失敗で草

:そういえばこういうやつだったわ

:さっきから蟹と海老しか言ってないやんけ

 

 ステマ目的とかなら最初から場所を指定すれば済む話。

 何で某所とぼかしつつも半端に指定したんだろう。

 頭の片隅でそんなことをぼんやりと考えていた。

 


 

「では最後に、何か告知があれば順番にお願いします」

 

 告知の順番は順位が低い方から。

 最初に聞いていたけど念押しとばかりにカンペが向けられている。

 

 一番低いのはキメラキャスト組(エクログさんとネリスさん)

 大体ネリスさんが気紛れで変なことをやらかしたのが悪い。

 そういう事故以外ではうまくいっていたと思う。

 つまりエクログさんは理解してる。

 保護者扱いの理由がよく分かった。

 

「本当はあったんだけどね、間に合いませんでした!」

 

 告知終わり。

 そんなことある?

 間に合わなかったということは何か予定はあったんだろうけど。

 

 

 三位はニシツキシキ組(私と冷雪さん)

 一番痛かったのは配信関係の理解が切り抜き中心だった点。

 プライベート絡みは大体お互い分かっただけ余計に浮いた。

 またところどころで認識がすれ違った部分もある。

 でも逆にうまくいった部分もあるので差し引きゼロ。

 

「私事ですが我々の収益化が通りまして――」

 

 箱としての告知は無い。

 なので代わりに私達の話を出す。

 この点は冷雪さんとも相談済み。

 私は水曜、冷雪さんは木曜にする。

 

「土日とか使わないの?」

「御冗談を」

 

 そっちの告知知った上でそうする気は起きないっての。

 

 

 二位はバーチャルファンタジー組(グラーラとスロディ)

 良し悪しはともかく無難に点数を稼いで上に行った感じ。

 休憩時間に取れ高が少なめなことを気にしていた。

 私はお互いを理解してる感があってよかったと思う。

 

「こちらからの告知は二点あります」

 

 一つ目、明日日曜日の昼から二周年記念配信。

 二つ目、来週金曜日夜から日曜日夜にかけて四期生お披露目。

 日付が極端に近いのは運営側の都合らしい。

 

「正直明日に向けた準備が一番大変かもしれない」

「なんで裏事情暴露しちゃうの?」

 

 裏事情も何も分かる人は勝手に察するレベルと思いますけど。

 

 これらはそこそこ前から告知されていたものばかり。

 他の箱にしてみたら記念配信と被るのは不利なので活動を調整済み。

 新人だけならまだしも周年記念は対抗として強過ぎる。

 

 私が記念配信をずらしたのもこの対応の一つ。

 大型コラボ後の方が人が集まると読んで少し後の平日に決まった。

 私が水曜日なのはお金を使って欲しいという願掛けも兼ねたから。

 冷雪さんが木曜日にしたのは日付調整の関係。

 

 ……改めて聞くと本当にこの日で良かったのか不安になってくる。

 早く当日になってくれ。

 多分忙しさで不安が飛ぶから。

 

 

 なお一位のLiveWorld組(ナルリオ)から告知は無かった。

 新人のお披露目予定が一ヶ月以上先なことが悔やまれる。




ニシツキシキ組の収益化について
 二人とも移籍に伴って別のチャンネルから配信
 主人公の前のチャンネルは条件を満たしていましたが収益化していません
 冷雪さんの前のチャンネルは収益化済みでスパチャも貰った経験有り


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後片付け

帰るまでが遠足なら配信ではこうなる


 戦場と言われてどんな場所を思い浮かべるだろうか。

 

 多くの者や勢力が戦う場所?

 時間をかけて力をぶつけあう場所?

 気を抜いた者や性格の良い者から消える場所?

 

 今の私はこう答えたい。

 

「荷台空いたよ!」

「2カメ解体終わりました!」

「さっきあったはさみは!?」

「この無地のダンボールどこの!?」

 

 全ての者が必死になって何かに立ち向かう場所、と。

 


 

 配信で説明した通り明日はバーチャルファンタジーの周年記念配信。

 箱規模での記念なので当然とばかりに3Dでの配信をする。

 そして今回のコラボで3Dに必要な機材は全て持ってきている。

 

 お判りいただけただろうか。

 もう一度確認しよう。

 

 今は夜と言って良い時間。

 明日の昼から記念配信が始まる。

 つまりこの間に会社のスタジオを準備する必要がある。

 コラボに持ち込んだ機材全てをだ。

 控えめに言って地獄だと思う。

 これでまだ都合の良い条件とか、普段はどんな感じなのやら。

 

 勿論記念配信はバーチャルファンタジー側の都合である。

 だが他社がのんびりできるかと言えば全くそんなことはない。

 複数社で持ち寄った中には順番にしか片付けられない物がある。

 他社があれ片付かないとウチのあれを回収できない、という感じ。

 その関係で全ての会社が大忙しで片付けをすることになった。

 

 かく言う私と冷雪(江島)さんも待っている側である。

 持ち込んだ一部の調理器具やクーラーボックスは私物だし。

 会社の車は容量きついから自分で持って帰る必要あるし。

 でも大人数が動き回っている中に飛び込む程急ぎでもないし。

 本当にやることなくて隅で待ってるだけという。

 会場が広いから全体を見られる場所を容易に確保できたのが救いか。

 

 

 今回の諸々でスタッフ一同は本当に大変だった。

 ニシツキシキで一番影響が大きいのはりゅっけ()さん。

 何でもあの人は熱中すると頑張り過ぎて反動がひどいらしい。

 次に影響が大きいのは冷雪(江島)さん。

 反動で動けないりゅっけ()さんの補助は彼女がやるそうだ。

 

「本職程じゃないけどやることはほぼ介護なんだよね」

 

 介護って貴女それで良いんですか。

 良いんだろうなぁ。

 りゅっけ()さんを見る目が手間のかかる子に向けるそれだし。

 あるいは諦めの境地に入ってる。

 

 なお当人は何か座席で寝てる。

 地味に邪魔そうな位置だしせめて控室とかに行ってほしい。

 今運ぶと迷惑になるだろうから手出しできないけど。

 


 

 ここで待ち時間ができたのは私だけではない。

 その内の一人、スロディさんから相談を受けた。

 

「年末にRTAのコラボ動画を投稿してみたいんだけど――」

 

 当然私は二つ返事で快諾。

 

 実のところRTA関係の企画は前からやってみたかった。

 でもなんだかんだで振る機会も相手もなかった。

 冷雪さんは同じゲーム繰り返す時は効率化よりも縛り派だし。

 下手に誘うとRTA慣れしているこっちがマウント取る形になるし。

 相手に困ってた状況だから誘ってもらえるなら本当に助かる。

 

 にしても、この話がスロディさんから出たか。

 以前軽く配信を見た限りあまりRTAのイメージに合わない。

 どちらかと言うとターン制のゲームをじっくり考えて進めるタイプ。

 何か心境の変化でもあったのかな。

 

 とりあえず詳細は再来週から相談。

 やるゲームもその際に決める。

 予定としてはクリスマス辺りに投稿できたら良いな、ぐらい。

 私はともかく向こうは練習期間とか足りるんだろうか。

 

 

 この時の私は知らなかった。

 コラボ『配信』でなくコラボ『動画』を提案された理由を。

 この時気付いていればあんなことには――

 

 ――とはならないでほしい。

 本当に何もないよね?

 動画なことにちょっと引っ掛かったのは確かだけど。




連絡先は今回のコラボで交換したのを流用
と本文に自然に組み込めなかったのでこちらに追記


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【ニシツキシキ実況用グループチャット】

 翌日日曜日。

 朝の内に借りているアパートまで荷物を持ち帰る。

 正しくは荷物含めて車で送ってもらっているとも言う。

 各所の送り迎えのついで、と言われたが助かることに変わりない。

 これで学食が開いていればもっと楽だったけどまあ無茶な話だろう。

 

 当然学食は日曜にやっていない。

 ただ時間の都合もあるので外に出るのもちょっと微妙。

 余りの食材で軽く料理……駄目だ、お弁当か何か買った方が早い。

 忙しい時用の冷凍食品が残ってたはずだし諦めてそっちにしよう。

 


【バーチャルファンタジー】周年恒例企画 一期生集合コラボ【#バチャファン二周年祭】


 

 昼食を雑に済ませた頃に配信が始まる直前の時間になった。

 今日の一番重要な予定はこの記念配信を見ること。

 どこがどんなことをしてどういう反応があったかは重要だ。

 少なくとも今の私には研究をせずに生き残れる程の強みがない。

 だからこういう企画はアーカイブ含め積極的に確認している。

 ところでまだ二回目なのに恒例企画ってタイトルは良いのか。

 

 バーチャルファンタジーは一期生から既に七人と一般的な箱と比べ多い。

 この点を活かして人数が必要な企画や交代での休憩ができる。

 特に縁のある組み合わせは意図的にやっているようだ。

 でも三大欲求組(スロディ、グラーラ、ラスリ)を進行に使うのは無いと思う。

 難があるのは分かっているし進行役を別で用意してですね――

 いや、あっちもプロだ。

 そのぐらいは分かった上でやっているはず。

 その後に進行慣れした騒音組(プラビア、スーラ)で調整したのは分かるし。

 

 

 なおニシツキシキ内で視聴用のグループも出来ている。

 別で作ったのは連絡事項が流れるのを考慮したものとか。

 


【ニシツキシキ実況用グループチャット】


 

レトリクーン

 なんかもうこれずるい

 

西月ノゾミ

 やっぱりこれ許されるのはおいしい

 

リュッケペルタ

 この人数が問題なく動くPC羨ましいからウチでも買って

 

みずたま

 これが現代の寝てるだけでお金を貰えるお仕事

 

ミロリーム

 今のところ以前のスーラちゃんなら拳が出てた

 

七色ことね

 さりげなくグリディさん抜けてる

 

●●○

 効果音準備できている辺り扱い分かってる感

 

ハソシウル

 こういうお約束あると便利ですね

 

つぐ

 りゅっけさんはちょっと予算のこと考えてください

 

冷雪

 カメラ位置を使ってないタイミングで調整するの上手い

 

 天丼と見せかけて全部展開違うやん

 


 

 おかしい、ここは企業用のグループチャットのはず。

 どうして匿名掲示板みたいになっているんだ。

 これで技術やら進行やらの真面目な話が混ざるのも意味分からん。

 特に休憩時間とか研究職みたいなやり取りしてるし。

 

 内容は普通に視聴しても楽しめていたと思う。

 今回はグループチャットの情報で更に楽しめた。

 一人だったら気付かなそうな情報を誰かが見つけてくれるお陰だ。

 

 私の収益化配信の時もこんな感じになったら良いなぁ。

 そう思いながら、この前来たメールを確認する。

 


 

 件名:配信見たよ

差出人:母

 本文:

 

 https://……

 

 収益化決定おめでとう

 できれば予め教えてほしかったかな

 お祝いしたいから次帰ってくる日決まったら教えてね

 


 

 ……相変わらずクソリプおじさんみたいな文章打ってる。

 まあそれより内容だ。

 まだ勘違いの可能性残ってたりしないかな。

 うん、添付のURLが私のチャンネルだし無理か。




>>さりげなくグリディさん抜けてる
 トイレ離席を気付かれないようにしたお話


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【収益化記念】スタジオで3D配信(重大発表もあるよ)【ハソシウル/ニシツキシキ】

「ということがありまして」

 

上位チャット

:ホラーやん

:重大発表これか

:肝試しの時期過ぎてるぞ

 

 いや実際ホラーなんですよ。

 電話で念押し確認したんですよ。

 やっぱりというか駄目でした。

 あと重大発表は違います。

 

上位チャット

 ママシウル:20年ぐらい前から推しです

 

「……後で確認して本人ならスパナ付けます」

 

 こういうときどんな顔すればいいかわからないの。

 


 

「では体力のある内に重大発表済ませましょうか」

 

 発言に合わせスタジオの端へ移動。

 遅れて画面上のスタジオが変化。

 私の移動した先が丁度カウンターの奥側になった。

 

「定期配信『ハソちゃんの月一カラオケ喫茶』が決定しました」

 

上位チャット

:お歌助かる

:何気にセット凝ってる

:ゲームじゃないのか

 

 なおこの舞台セット、やはり過去に作った物の使いまわしである。

 過去にどれだけ作ったんですか。

 ライバーのアバターも過去の遺物を調整した物とか言ってたし。

 助けられてるし文句を言うつもりもないが気になる。

 

 

 今回●●○(篠原)さんから『何でも手伝います券(意訳)』が発行された。

 この発行対象には私も含まれる。

 で、折角だし何か企画の手伝いをしてもらおうと社長(日向希さん)に提案。

 提案時点ではゲーム関係だったのだが――

 

『これ先駆者が強すぎるから駄目だ』

 

 相談の詳細は省くが言いたい内容はこれに尽きる。

 そういうわけでゲーム方面は没。

 他に何をできるだろうか、で考えた末に歌に行き着いた。

 

 正直、私では歌を主力にしている方々には勝てないだろう。

 だが今回のネリスさんの歌を聞いてはっきりした。

 必ずしも自力勝負をする必要はないのだと。

 

 ネリスさんは作曲速度が注目されがちだが多分本質ではない。

 歌が限りなく好きで感情を歌で表したりする。

 丁度良い歌が出てこなくて代わりに自分で作曲をする。

 今の感情をぶつけた歌を即行で用意できる。

 多分その辺りが魅力の本質に近い。

 

 私もこれに倣うならゲーム配信にするべきだろう。

 好きなゲームを好きだと表現する配信の方が多分正しい。

 だがきっとそれは相応しくない。

 RTAを始めた理由は経験による飽きから逃げる為なのだから。

 

 それでまあ改めて私の諸々を考え直してみた。

 その結果、歌が残った。

 

 記憶というのはそれ単体で残るものではない。

 他の情報と結びつくことでよりはっきりと頭に残るものだ。

 その中でも歌はかなり分かり易い部類になる。

 実際『俺』が『私』になるだけの年月が経っても覚えていた。

 

 小学生時代必死に覚えた校歌を。

 昔熱中して見ていたアニメのオープニングやエンディングを。

 暗記科目の語呂合わせに音程を付けそれっぽくしたこともあった。

 

 あの頃の自分はあんな風に感じた。

 今の自分ならこう感じる。

 正しいかは確認できないが、そんなことすら想像できる。

 

 だからきっとこれが良い。

 これが『俺』と『私』の両方に相応しい答え。

 相応しい答えを『私』は表現したい――

 

 

 

 ――というのが『私』に対する言い訳。

 本音はもっとシンプル。

 趣味や中身の年代の差で欲望のまま歌う機会が無さ過ぎるんだよ!

 

 

「スタジオですし歌の前振りもあったので歌いながらゲームします」

 

上位チャット

:セイバー振り回すやつ

:歌いながらとか死ぬわあいつ

:まず音ゲーやったことあるの?

 

 うるせぇこっちはやりたくて準備してきたんだよ。




これで本章は終わりです
追加資料が間に合ったので隔日更新で続きます


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(資料)端折られた人物まとめ

ライバーはwiki形式にしたかったけど書く情報足りなくなりそうで中止
ついでに別にしても短くなるからと全部を程々にまとめました
今更ですが横幅の都合から資料は全てPC推奨


ニシツキシキ関係者


水守(みずもり) (たまき)

・ハンドルネーム「みずたま」で活動している人

・男性、十八歳(外見は中学生で通りそう)

・合同会社ニシツキシキのメインプログラマ

・親の再婚なので私の担当(水守緒)さんと血縁はない

・ソフト関係のニシツキシキ代表として調整や相談をしていた

・何か他の人ことにやたら詳しい黒幕か何か?

 

西月(にしつき) (かえで)

社長(日向希)の親戚

・女性、ニ十歳(女子大生、栄養学専攻)

・合同会社ニシツキシキの臨時スタッフの一人

初手七色ことね(日向優)の未来の妻を名乗ったヤベーやつ

・家事全般がこなせるとかで今回料理手伝いをしてもらった

・みずたまさん曰く趣味が資格の取得でいろいろ持ってる

 

日向(ひむかい) 裕子(ゆうこ)

七色ことね(日向優)の母親

・女性、親世代なので若くとも五十近いはず

・合同会社ニシツキシキの臨時スタッフの一人

・見るからに陽キャオーラが強い

・機材関係の手伝い中心に参加してた

・みずたまさん曰く趣味の延長で技術を学んだタイプで気が合う

 

(わた) 直美(なおみ)

りゅっけ(渡志織)さんの母親

・女性、親世代なので若くとも五十近いはず

・合同会社ニシツキシキの臨時スタッフの一人

・りゅっけさんはこの人の血を引いてるんだなと思える程度には美人

・進行やトラブル対応の指示を出していた

・みずたまさん曰くデキ婚その情報どこから仕入れたの

 


他社ライバーの情報


 

スロディ・アケス

・バーチャルファンタジー一期生

・初期から他の人が配信を終える時間を縫う形で配信

 そこから隙間需要で伸びた

・伸びた理由から登録者数に対してアクティブ人数が少ない

 この差の大きさから一部で登録者数購入疑惑有り

  ※幾ら払ったらフォロワー何人とかそういうやつ

 私見ではそういうのは「面倒だから」でやらなそう

・配信中の初大声は「働きたくないでござる」

 実際配信時間とプライベート関連の話から働いてない説は強い

  ※厳密には配信関係の仕事と収入がある為無職ではない

 働きたくないという意思表示から多分ニート予備軍

 

グラーラ・グトン

・バーチャルファンタジー一期生

・初期は「何か元気の良い人」程度で伸び悩む

 マロの「お勧め商品教えて」に長文解答した切り抜きから伸びた

 その関係で同期と比べて企業案件や専門外の質問が多い

 何なら同期の商人キャラより商人してる

・専門外の質問例

 Q.地元の自治体で田植え機を買いますお勧めはありますか

 A.その分野は素人なのでお約束の回答になりますが

  少し古い型を調べてレビューを参考にするのが良いと思います

  (しばらく古い型を選ぶ利点の話)

  今軽く調べた感じだと(以下少し古い製品の軽くない紹介)

 さすがグラーラ・グトンだ専門外の質問にも動じない

 

 

ナル・リオ

・LiveWorld二期生

・初期から一つのチャンネルを二人で使う形式で活動

 声被りまとめの切り抜きで登録者数が伸びた

・元々片方が長期間配信できない可能性があったらしい

 その割にこれまで二人揃うのが基本な上に配信頻度は高め

 配信上でラグの少なさや家の情報を共有していることから同棲説有り

・常連には「二人の関係は理解が一周する」と言われている

 初心者:言動も性格も似通ってる

 中級者:お互いをよく理解してるから合わせられるだけで結構違う

 上級者:表現や結論に差があるだけで根はほぼ同じ

 

 

ネリス

・キメラキャスト二期生

・配信初期から歌キャラと演奏で局所的に有名

 自前のオリジナル曲まとめ動画が広まって登録者数が伸びた

・気分で歌うのが好き

 顕著な例だとマロの返答でそれっぽく音程を付けたりする

 歌の多さから多分Vtuber界で一番「●●に似てる」と縁がある

 また気分に合わせるだけなので配信上で積極的な作詞作曲などはしない

 歌を入れ難い種類の配信(主に一人用ゲーム)は避けがち

・作曲依頼の窓口はあるが仕事をかなり選り好みしている

 本人は選ぶ基準を「どの程度興味を持てるか」と説明

 情報が不十分、あるいは不明瞭なものはその時点で不可とか

 

 

エクログ

・キメラキャスト一期生

・同期含めて配信初期はアバター関係ばかりで配信内容は話題にならなかった

 後輩のネリスとコラボした時に手綱役としての地位を確立

 そこから徐々に中身を見る人が増えて現在伸びつつある

・伸びた過程から一部では寄生扱いされている

 本人はノーコメント

 自称関係者曰く「コメントさせたら炎上しそう」で黙らせたらしい

 当然信憑性は全くないがリスナー間は「ありそう」で一致

・どちらかと言うとフィジカルで解決したがるタイプ

 ゲームの選択肢で「謎解きか戦闘で突破」なら迷わず戦闘を選ぶ

 何ならギミック要素のある戦闘も「面倒」の一言でごり押す

 ごり押しなのに手段が賢くて「普通に頭使え」と言われたりする




カットした情報の補足
 上記ニシツキシキ関係者は全員何かエピソードが入る予定でした
 他の箱も企画中それぞれに何かしらのエピソードが入る予定でした
 削った話はどこかに組み込めそうな時に入れられたら良いなぁ(願望)


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(資料)ハソシウルレポート

元々四回に分ける予定が短くなりそうだからと削ってまとめました


ニシツキシキ(箱)

・[作中一年目]6月に始動

 運営は創作(主に小説、漫画、ゲームの三種)が主力の会社

 イラストやシステム関係などの外注も受け付けている

・自社の創作類の宣伝を兼ねて始動

 単なる紹介だけでなく開発者側の話が混ざったりで一部の人に好評

・特徴として全員最初から3D配信できる

 むしろ現在主流のイラストベースのものの方が難しいらしい

 過去の開発の流用だそうだがそれはそれで何だそれ感ある

・実は箱の名前が決まっていない

 現在は会社名を代用しているがとても紛らわしい

 

前世公開(ニシツキシキ)

・企業所属のVtuberとしては珍しく前世の公開が条件付きで可

 具体的には過去に活動していた時の名前の流用など

・前世公開許可の理由の一つに

 『Vtuberに直接関係しないクリエイターのVtuber化』

 を目標にしていることがある

・上記の動機を要約すると

 『イラストレーターなどはアバターの自作が可能

  また加えてそれが仕事に繋げられる場合もある

  主力が違うクリエイターは相対的に不利になる

  でも他の分野の人ももっと配信者活動してほしい』

 という考え

 この都合から活動歴の公開が可能になった

・ゲームサイドもテストプレイヤー視点が理想らしい

 今後増やすなら遊び方の傾向が違う人を優先する予定とか

 

 

バーチャルファンタジー(箱)

・[作中二年前]8月に始動

 元の運営はゲーム開発がメインの会社

・様々な技術宣伝を兼ねるつもりで始動

 企画担当の杜撰さを悪用して最終的に子会社として独立した

・特徴として一度のデビュー人数が多くその分新人加入の頻度が低い

 人数を活かし同期での多人数ゲーを自己紹介代わりに使ったりする

 実際誰かが何かやらかした拍子に一気にキャラ付けが進んだ例有り

・箱の名前は「バーチャルでファンタジーものをやりたかった」から

 事実どの期にもファンタジー世界特有の職業や生物が混ざっている

 

 

LiveWorld(箱)

・[作中一年前]7月に始動

 元となる会社のない新規事業

・キャストと会話するコミュニケーションサービスの予定で始動

 宣伝を兼ねた配信の反応が良くてそのまま配信が主流になった

・特徴として収入に繋がる展開が他より多い

 例としては特注ボイスや受注生産のグッズ等など

 また当初の一対一の会話サービスも扱っており競争率が高い

・箱の名前は「暮らしに寄り添える世界」から

 補足するとLiveは「配信」だけでなく「生活」の意味も含んでいる

 

繰り上げ三期生(LiveWorld)

・三期生の初期発表メンバーは男性一人に女性複数

 この時点では問題なかったのだが一部で

 『これバチャファン一期生(男1女6)を意識してね?』

 との声が出た

・これ自体は大した問題ではなかったのだが運営側で過剰反応

 少し遅れて追加の発表が行われた

 この後の追加されたメンバーや四期生の諸々の遅れから

 『元々四期生の予定だった人を繰り上げたのでは』

 という推測がされた

・この経緯から非公式では同じ三期生でも区別されており

 初期メンバーは『正規三期生』

 追加メンバーは『繰り上げ三期生』

 と呼ばれている

・なお繰り上げ組の中でもセイリ・アードの魂問題が発生

 リスナーからは準備期間の不足によって起きたと見られている

 

 

キメラキャスト(箱)

・[作中一年前]10月に始動

 運営はイラストとデザインが主力の個人

・最初は「こんなアバター用意できます」という宣伝目的で始動

 広告役数名だけの予定だったが要望の多さから二期生以降もできた

 一期生は全員デザイナーの関係者

・特徴として全員人外っ娘

 (中の人)が野郎だろうが何だろうが関係なし

 お陰で3D配信に難を抱えている人も多い

・箱の名前は「嵌合体(キメラ)出演者(キャスト)」から

 人外要素を複数混ぜているが分かり難い部分が多々ある




各所属ライバーのデビュー時期
・ニシツキシキ
 一期生 作中一年目6月~7月
・バーチャルファンタジー
 一期生 作中二年前8月
 二期生 作中一年前3月
 三期生 作中一年目2月
 四期生 作中一年目9月予定
・LiveWorld
 一期生 作中一年前7月
 二期生 作中一年前10月
 三期生 作中一年前1月~3月
 四期生 作中一年目10月予定
・キメラキャスト
 一期生 作中一年前10月
 二期生 作中一年目1月
 三期生 作中一年目4月

Q.●期生の括り方おかしくない?
A.便宜上近い時期にデビューした面々をまとめました
 なのでニシツキシキのゲームサイドも同期扱い
 他の箱の同じ項目も似たような処理になっています

Q.何か不自然にデビュー時期空いてる箇所無い?
A.その時期に何かあったり無かったりしました
 あった方は大体運営の都合
 現実にも人数増やす気ない感じの箱あるしへーきへーき


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(資料)ニシツキシキゲーまとめ

これまで同様主人公によるまとめなのでツッコミもそういうこと
本編的には他の資料以上に読まなくても影響ありません


怪盗の七つ道具(ゲーム)

 作:ニシツキシキ(共同)

・いわゆるステルスアクションゲー

 どこかに忍び込み捕まらずに目的の物を入手、脱出するゲーム

・ストーリーモード

 ・ストーリーでは最初に奪われた七つ道具を回収

  その後奪った主犯の元へ行き主犯の宝を奪う

  要はロッ●マン形式で能力が増えて終盤は全部持った状態

  怪盗の癖に仕事道具盗まれるとか恥ずかしくないの?

 ・七つ道具を回収する程各ステージの警備は厳重になる

  例えば一箇所攻略で以後は目的の物を入手した時点で警報が鳴る

  序盤なら大したことないけど終盤は他よりきつくなるマップもある

 ・ストーリーの範囲は全ステージ道具無し攻略が可能らしい

  但し警備の動きを先読みした行動や誘導が必要なやり込みの一種

  特に終盤は目安無し特定のタイミングでの行動が多々必要

・エクストラモード

 ・ストーリークリア済みを前提にした難易度の追加ステージ集

  挑戦そのものは最初から可能

  中には使える道具や時間制限のあるステージもある

 ・MODでステージを追加する場合もここ

  自作要素の作成や導入の方法は公式で紹介されている

・怪盗の七つ道具(装備品)

 ・ワイヤー

  長いワイヤーを飛ばしたり固定したり引っ張ったりができる

  二点を結ぶように固定すれば何かを運んだりにも使える

 ・バウンド

  近づいたら弾かれる空間(小)を作り出す

  開き戸に隣接させて開けた瞬間閉じる状態にすることも可能

 ・ワープ

  二個設置することで空間を繋げることができる

  似た景色が続くマップで使えば警備に場所を誤認させられる

 ・ミュート

  設置した近くの音を消す

  一部のアラームを無効にできる一方環境音を消すとバレたりする

 ・ステルス

  設置した対象が視覚で認識され辛くなる(近いとバレる)

  自分が隠れるのは勿論、物を一時的に隠して誘導するなども可能

 ・グランス

  いつでも設置した場所にいるかのように情報を確認できる

  予め設置して警備の居場所や会話の情報をローリスクで得られる

 ・リード

  設置した近くで仕掛けの存在やパスワードを読み取れる

  但し起動条件のみなので鍵と思ったら警報だったなども有り得る

 


モンスターパニック(ゲーム)

 作:ニシツキシキ(共同)

・ホラー型対戦ゲーム(自称)

・基本ルール

 ・プレイヤーには人間と怪物、二つの状態がある

 ・人間が条件を満たすと怪物になる

 ・但し他の誰かが怪物の時は条件満たしても怪物になれない

 ・怪物は人間を襲うことでスコアを稼げる

 ・怪物は弱点によって倒される

 ・怪物に襲われるか弱点で倒されると時間差でリスポーンする

 ・最終スコアで順位が決定、基本は一番多いプレイヤーの勝利

・ルール補足

 ・スコアはゲーム終了時まで自分のもの以外確認できない

  沢山稼ぐのと同じぐらい稼いだことをバレないのが大切

  複数のプレイヤーからマークされると以後の稼ぎが困難になる

 ・怪物になっている時プレイヤー名が表示されない

  これを利用して誤認させればスコアが有利でも狙いを逸らせる

  あえて全員同じ怪物を選んで誰か分からなくする遊び方も有り

 ・ゲーム開始時は他プレイヤーが選択した怪物は分からない

  上手く利用すれば不意打ちで襲える

  逆に先にどの怪物かバレると対策される危険もある

・怪物化の条件や弱点を把握した上での立ち回りが重要

 ・例えば人狼は素の身体能力が高く咄嗟の反撃を受け辛い

  その代わり人狼は怪物になる条件が月でマップ依存

  出現可能な場所から襲撃を予想できれば対応の難易度が下がる

 ・例えば吸血鬼は特殊技能が多く使いこなせれば強い

  その代わり多くの弱点や移動の制限がある

  移動制限を利用できるか否かで対応の難易度が別物になる

・怪物狩り

 ・CPUを相手にした一人での練習用モード

  マップは勿論相手側の怪物を指定できる

   ※どちらもランダム指定も有り

 ・何気に相手は個別で情報管理や思考判断を行っている

  こちらの怪物がバレた場合など条件次第で対策行動もとる

  不確定の時に決め打ちはしない

 ・AI特有の挙動は結構ある

  分かり易い例はエイムの精度や待ち伏せの許容時間

  特に高レベルは格ゲーのCPU並みに人との違いがはっきり出る

  モード名の由来は開発の最高難易度挑戦中に出た発言




小説や漫画も入れようとしたけど無駄に長くなったので削りました
入れてたら倍以上になっていたという


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(資料)ニシツキシキに提出されたゲームレポートの一例

何か部分的に書けてしまったので


 (前書き略)


 

1.1 多人数参加型勝ち抜きゲームと連続性

 

 まず前提として本ゲームは大人数から最終的に一人が勝利するタイプのゲームである。

 この形式は古くからあり有名なところではFPS、近年では落ち物パズルゲームなどでも採用されている。

 過去に出た多くのゲームと比較した場合最初に挙げられる重要な違いは『連続性の不在』である。

 

 例えばFPSの場合は序盤に拾った物を終盤まで持つことがある。

 これを逆に言えば序盤からきちんと立ち回らなければ終盤まで生き残っていても不利になるということである。

 特に経験の浅く目先の情報を追うだけで精一杯な初心者はこれによる不利を受け易いと考えられる。

 

 対して本ゲームでは「上位であれば次に進める」以上の影響がない。

 ぎりぎりの順位が続いても最終戦で不利にはならないし最終戦で勝てば一位になれる。

 即ち相対的に問題や失敗を取り返し易くなっている。

 

 また「×回戦目」という区切りはモチベーションの維持にも有利である。

 これは順位形式のものと比べて「ここまで勝てた」というのを実感し易いことに由来する。

 加えてゲーム選択が毎回ランダムで変わる為、飽きや特定分野の苦手による不利が起き難くなっている。

 基本ルールがシンプルなことを含め、他の勝ち抜き型ゲームのように初心者が不利になり過ぎない配慮がされていると考えられる。

 

 

1.2 ランダム性とリトライによる初期条件の解消

 

 初期条件に非対称の要素を含む多人数参加型のゲームではこの初期条件による有利不利が生まれることがある。

 例としてFPSでマップ上のアイテムを集める時に初期で拾った物の差などがこれに該当する。

 

 本ゲームにおいてもこの点が出るものは存在する。

 分かり易い例だとゴールを目指すゲームは初期位置が前の方、つまりゴールに近い側の方が明確に有利である。

 だがこれが実際の順位に影響する場面は限られている。

 仮に終盤まで先頭集団にいたとしても一つ何かがあっただけで一気に一番後ろに、という現象がおきるからだ。

 こうなる理由は主にランダム性とリトライ要素に分けて説明できる。

 

 1.2.1 ランダム性

 

  本ゲームでは進行にランダム要素を含む箇所がある。

  例として、通れる扉と通れない扉、踏んで消える床と消えない床など、同一の視覚情報に異なる効果を付与されたものが該当する。

  これらは先頭が引っ掛かった時点で後続は回避できるが次に引っ掛かるのはそれで前に進んだプレイヤー、という形になり単純に前に進むことが有利になるとは限らない。

  その為初期位置は勿論、ゴール以前の位置が最終的な順位での有利不利に直結し難くなっている。

 

 1.2.2 リトライ要素

 

  本ゲームでは失敗することで巻き戻される箇所がある。

  例として、通過に偶発的な要素を含むもの、落下によってリスポーン地点まで戻されるものなどが該当する。

  加えてこれは一発攻略の難しい要素を持つものが多い。

  その為初期位置の有利よりもここを少ない回数で突破できることの方が重要となる。

 

  以下は該当する要素の解説および考察である。

 

  1.2.2.1 回転プロペラ

 

 (以下略)




アンケートの話
 上記レポートはある人物が書いたものをイメージしています
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 なおこの投票は完全に筆者の興味によるものです
 投票結果は特に何かに影響しません

 投票対象は存在をわずかでも確認できるニシツキシキ関係者全員
 情報の足りない人や明らかに違う人が混ざっているのは仕様です


注意
 下記アンケートには作中で出ていない本名情報が混ざっています
 ネタバレは含みませんが気になる方は気を付けてください


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