魔王学院の仮面ライダー ~傍若無人な仮面ライダー、始祖の学校でカメンライドする~ (たかきやや)
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プロローグ

 

 

「んぁあ、ここは………」

 

「お、気がついた様だね」

 

 真っ白い空間にただ一人、たたずむ少女。もしかして──

 

「神様か?」

 

「YES! その通り!」

 

―なるほど、だいたいわかった―

 

「う~ん、察しがいいね♪そう!転生だよー!転生先は『魔王学院の不適合者』だから!あ、特典何にする?」

 

―心読めるのもテンプレだな。にしても軽過ぎないか?それに魔王学院か、あそこチートみたいなのが沢山いるからなー。ジオウだと魔王被りだし………よし、アイツにするか―

 

「仮面ライダーディケイドの力を頼むよ」

 

「オッケー!じゃあ追加である程度の魔法と武術の才能と『異空間収納』とこれもつけるね」

 

 そういって少女──神様は俺にディケイドのアイテムと何故か『アナザーディケイド』のライドウォッチを渡した。

 

 

「随分奮発しますね?」

 

「そりゃあ、神殺しが当たり前みたいな世界に行くもの。あ、名前どうする?前世みたく『田中太郎』にする?」

 

「いや、あの世界でその名前は浮くから流石に変えるよ?そうだな………ディケイド、『ディケイド=マスクドライド』でお願いします」

 

「ディケイドね。おKだよ!アイテムは『異空間収納』で取り出し自在ね。とりま混血にしとくからね♪あと『成長』で大きくなるんだよ~」

 

 そう言って神様は手を振ると、足元から光が満ちる。そして、俺は転生した。

 

 

 

 ─────────────

 

 

 

 二千年後。

 

 

 ある魔族の家に一人の赤ん坊が生まれた。

 

 

「ダーリン♪見て、生まれたわ。わたしたちの子が………」

 

 

 嬉しそうに、生まれた赤ん坊を抱える女性 シアン。

 

 その傍らには彼女の夫のロエイがいた。

 

 

「可愛いなぁ。立派な男になるんだぞ」

 

 

 赤ん坊の頬をロエイはつつく。

 

 

「ダーリン、名前を考えておいてくれた?」

 

 

「ああ、マイハニー。名前は――」

 

 

 ロエイが口にしようとした瞬間だった。

 

 

「ディケイド=マスクドライド、それが俺の名前だ」

 

 

 口をあんぐりと開き、目が飛び出るかと思うぐらいに剥き出しにして、ロエイとシアンは驚愕の表情を浮かべる。

 

 

 ディケイドは、驚いたままの夫婦に目を向けた。

 

 

「今日から二人の子供になる。よろしく頼む」

 

 

「しゃ……」

 

「しゃ……」

 

 

「しゃ?」

 

 

 夫婦は声を揃えて言った。

 

 

「「シャベッタァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアア!!?」」

 

 

 ―まあ、だろうな―と心のなかで思いながら、『成長』を使い、十代後半まで大きくなる。もちろん、服もつけて

 

 

「だいたいこんなの物か」

 

 

「な……お、あ……」

 

「え……あ、う……」

 

 

 視線を向ければ、わなわなと震えながら、またしてもロエイとシアンは驚愕の表情を浮かべている。

 

 そうして、声をそろえて言うのだ。

 

 

「「お、お……大きくなったぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」

 

 

 取りあえず二人を落ち着かせて、二人に事情を説明した。

 

 



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魔王学院

 

 

 事を話してから2ヶ月。魔王学院から招待状が来た。

 

 

「ついに来たか」

 

 そう呟いて、この事を俺は父さんと母さんに報告する。

 

 

「父さん。母さん。学院から招待状が来た。」

 

「お、そうか。で、受けるのか?」

 

「もちろん」

 

「だと思ったわ。ま、それは後にして、ご飯にしましょ」

 

「は~い」

 

 ここ2ヶ月でわかった事なのだが、父さんと母さんはとても頭が良く、理解が早い。なので、一回説明したらすぐ納得してくれる。

 

 と言う事なので、魔王学院の事は直ぐに承諾してくれた。まあ、そもそも近いし。

 

 と言う訳なので今日のご飯の準備をしながら魔王学院について少し話し、学院生活に期待を膨らませていた。

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

─数日後─

 

「じゃ、頑張れよ。お前なら合格出来る。」

 

「うんうん、ディケイドならきっと出来る!」

 

「ああ、父さん。母さん。行ってきます」

 

 そう言って学院にシャッターをきった後、俺は学院に向かう。後ろからは二人の応援が聞こえる。

 

 

「ディケイド~、ファイト~!」「出来る出来る、お前なら出来る!」

 

 後ろからの応援を受けながら歩いていると

 

 

「がんばれ、がんばれっ、アノスっ! がんばれ、がんばれ、アノスっ!」

 

「フレー、フレー、ミーシャッ! ファイト、ファイト、ミーシャッ!」

 

 父さんと母さんとは違う声の声援が聞こえて来た。

 

 後ろを見るとそこにはほぼ人間に近い夫婦と髭面の厳つい男

 

 その視線の先には黒髪赤目の男──「アノス」とプラチナブロンドの髪の少女──「ミーシャ」がいた。

 

 

―すげー!本物だ!特にアノスの雰囲気とか半端ねえ―

 

 そう思って二人を見ていると………

 

 

「あ……………………」

 

 二人と目が合った。

 

 

「お互い苦労するな」

 

 アノスそう口にすると、俺は少し笑って、ミーシャははにかんだように笑った。

 

「そうだな」

 

 

「……ん……」

 

 

 ミーシャは短く同意を示し、俺は簡単に同意した。

 

 

「俺はアノスだ。アノス・ヴォルディゴード」

 

「……ミーシャ…………ミーシャ・ネクロン……」

 

「俺はディケイド。ディケイド・マスクドライド」

 

 と、自己紹介しながら学院へと歩む

 

そのまま正門をくぐろうとすると、目の前に男が立ちはだかった。

 

 そう、イキり咬ませ犬の「ゼペス」君だ。

 

 

 ゼペスは見下すような底意地の悪い笑みを浮かべ、俺たちに言った。

 

 

「は。親同伴で入学試験たぁ、いつから魔王学校は子供の遊び場になったんだ?」

 

 何かほざいていたので無視して、くぐっていく

 

 

「二人は戦うのは得意か?」

 

 

「……あまり……」

 

「まあ、得意ではある方だな。」

 

 三人で会話を楽しみながら進んでいると

 

 

「貴様等ぁ……!! おいっ、貴様等だっ、貴様等っ!!」

 

 

 あまりに鬱陶しかったので振り向いたら、先程の男が俺を睨んでいた。

 

 

「ふん。ようやくこっちを向いたか」

 

「悪いな。あまりに魔力が小さすぎて、目に入らなかった」

 

「な……んだとぉ……!?」

 

「ブフォオ!」

 

 俺が吹き出した途端に、怒り狂ったようにゼペスは目を剥いた。

 

 

「このオレを、魔公爵ゼペス・インドゥと知っての侮辱か?」

 

 

「魔公爵……? いや、聞いたこともない。有名なのか?」

 

「さあな。もしかしたらよくある地元で、有名だけど外では誰も知らない的なアレじゃないか?」

 

「ふむ、なるほど。そういう事もあるのか」

 

「おい。貴様等、謝るなら今のうちだぞ」

 

 

 ひどく冷たい声だった。

 

 ゼペスは容赦のない視線を向け、ぐっと拳を握る。魔力の粒子が集い、そこにいくつもの魔法陣が描かれる。

 

 

 ―あー、マッチ火か―

 

 ゼペスがぱっと彼が手の平を開けば、闇を凝縮した漆黒の炎が召喚された。

 

 

「な……!?」

 

 

「ほうら、驚いたか。いいぞ。命乞いをしろ? 俺の靴を舐めれば許してやる。でなければ、神々すら焼き尽くすと言われたこの闇の炎、<魔炎>で、そのお嬢ちゃんの顔を骸骨のようにしてやってもいいんだぜぇ。ひゃはははははっ!!」

 

 

 ―うわー、原作通り。むしろ可哀想だわ~(笑)―

 

 

「ふっ」

 

 

 と、アノスが息を吐く。

 

 

「……なん……だと……馬鹿なっ!? そんな馬鹿なっ!?」

 

 ゼペスの手の平に召喚された<魔炎>は、アノスの息に吹き消されていた。

 

 

「貴様、貴様ぁぁ……いったい、なにをした……!?」

 

「なにを驚く。マッチの火を息で吹き消しただけだ」

 

「俺の<魔炎>が、マッチの火だと……!?」

 

「貴様ぁ……これほどの侮辱……生きて返すと思うな……」

 

「ちょっと待て」

 

 

 そう声を発するとゼペスは硬直したように固まった。

 

「……どうした?」

 

 

「な……う、動かな……な、なにをしやがった……!?」

 

 

 ―あ、アノスの言霊にかかったか―

 

 

「まあ、しばらくそこで反省しろ」

 

 

 言った途端、ゼペスはひどく申し訳なさそうな顔をした。

 

 

「俺はなんということを……初対面の人間に対する口の利き方ではなかった……ああ、穴があったら、入りたい……なんと申し訳ないことをしてしまったのか……」

 

 

 案山子のように突っ立ったままゼペスは反省を続ける。

 

 

 それを見た先程の受験者が驚いたような声を発した。

 

 

「……すごいぞ、あいつ。あのゼペスを謝らせてやがる……」

 

 

「ああ、しかも見たか。<魔炎>を一瞬で消しやがった。相当な反魔法の使い手だぞ……」

 

 

「……見ない顔だが、混沌の世代のダークホースになるかもな……」

 

 

「待たせて悪いな。行こうか」

 

 

 アノスを待っていてくれた俺達に、アノスはそう声をかけ、歩き出した。

 

 

「……アノス……」

 

 

 小さな声で、ミーシャがアノスを呼ぶ。

 

 

「なんだ?」

 

 

「……強い……?」

 

 

 は、と思わず笑い声が漏れた。

 

 

「否定はしないが、この場合は適切じゃない」

 

 

 きょとんと小首をかしげ、ミーシャは聞いた。

 

 

「……なにが適切?」

 

 

「『あいつが弱すぎるんだ』か?」

 

「ああ、お前とは気が合いそうだな」

 

「俺もそう思うよ。」

 

 俺たちは試験会場である闘技場の中へ入っていった。

 




まだ変身しないなー


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通りすがりの仮面ライダーだ

おのれディケイド!貴様の戦闘シーン大変だったんだぞぉー!少しは感謝しろよー!


 

二人と別れて、別々の会場で試験が始まった。流れは実技→魔力測定→適正検査らしい。まあ、実技さえ合格すれば入学決定だから割りと簡単かも知れない。そして、試験が始まったが【ライドブッカー】をガンモードで使って足を撃ち抜く工程の後に【オーロラカーテン】で場外に送る作業を四回やって、ついに最後の相手となった

 

 

「貴様が最後の相手か」

 

 と紫の髪を書き上げながら、全身に鎧を纏った男が闘技上に上がる

 

「にしても、貴様はやってはいけない事をした」

 

「皇族相手にやった事か?」

 

「ほう、自分の罪を理解していたか」

 

男は汚い笑顔を浮かべながら言いかかるが、全くもって──

 

 

「くだらない」

 

「なに?」

 

ピク、と男のこめかみが痙攣する。

 

 

「くだらない……だと?」

 

「ああ」

 

どこからか説教用BGMが流れ、俺は続ける

 

 

「王とは民や部下を守り、支え合う者だ。純血も混血も関係無い。それに、くだらない特権階級とやらで弱体化した子孫を魔王が見たら多分悲しむどころか呆れてると思うぞ」

 

と、一通りの言い終わると前にいた皇族は殺気だった視線を俺に飛ばす

 

 

「今の言葉、皇族批判と断定し。我、氷魔冷鬼 グレイシャ・ブリゲイルが直々に死刑を執行する。貴様、名は? 」

 

俺は腰にマゼンタカラーのベルト【ネオディケイドライバー】を装着。ディケイドの【ライダーカード】を目の前につき出して名乗る

 

 

「ディケイド・マスクドライド。通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ!」

 

「それでは実技試験を開始します。始め!」

 

使い魔の掛け声と同時にバックルを開き、カードを裏返し、ベルトに入れる

 

 

『KAMEN RIDE』

 

ウーウーと待機音の中俺はバックルを閉じると同時にいい放つ。

 

「変身!」

 

『DECADE!』

 

音声と共に俺の周りにグレーで19個のライダーズクレストが現れるとそれがスーツの形へと変化し、集約されると俺はライダーの姿と変わる。ベルトからカードが出てくるとそれが頭へと突き刺さって緑の複眼に黒い線が入る。カードはさながらバーコードの様になり1番中央のカードの先の黄色い部分と複眼が光り、全体に色がつく。

 

 

マゼンタのボディに胸や左肩にはには白と黒の、右肩にはマゼンタと黒のラインが入っている。下半身は足の外側がマゼンタ、内側が白になっておりそれが足に真っ直ぐに引かれている黒いラインで分けられている。

 

 

「な、何だ貴様は」

 

グレイシャが困惑するように声を荒らげる。

 

 

「いや、さっき自己紹介しただろ」

 

と返して俺は接近して殴りかかる。するとグレイシャは壁まで吹き飛び、そのまま壁にめり込んだ。

 

 

「ば、馬鹿………な」

 

その状態で喋れるのは凄いなと感心してたら観戦席から黒服の魔族が、沢山降りてきた。皇族だ。まあ別にいい。

 

 

「来い!遊んでやる」

 

と軽い挑発を掛けたら皇族達は、同時に違う属性の魔法を放ってきた。が、

 

 

「ふん!」

 

【ライドブッカー】をソードモードにし、全て切る。

 

 

『はあ!?』

 

皇族達が驚いている間に【ライドブッカー】をガンモードに切り替え、ベルトにカードを一枚読み込む

 

 

『ATTACK RIDE BLAST』

 

音声と共にトリガーを引き乱入した皇族を撃ち抜く。安心しろ、死んでない。

 

 

そして俺はいつの間にか回復していたグレイシャの方を向き、

 

 

「終わりだ」

 

そう言って〝黄色いカード〟をベルトに入れる

 

 

『FINAL ATTACK RIDE』

 

待機音が響く中、グレイシャは「ちょ、おまっ!」で叫んでいたが

 

 

「安心しろ。手加減する」

 

と、信用出来ない言葉と共にバックルを閉じる

 

『DE DE DE DECADE!』

 

すると目の前に出現したカード型のエネルギーと共に飛び上がる。

 

 

 「ハアァアアァァ―――ッ!!」

 

俺はエネルギーをくぐり抜け、グレイシャにキックを叩き込む。

 

 

「ぐああああああぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁぁあ!」

 

と断末魔を上げながら倒れ、後ろに着地した後にグレイシャは爆発する。まあ、死んではない………うん。

 

 

「勝者、ディケイド・マスクドライド。実技試験を終了します。合格者は、大鏡の間へ移動してください」

 

 

俺は変身を解き、奥へと歩き出す。

 

 



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もろもろの検査

 

フクロウに言われた通り、俺は大鏡の間にやってくる。姿見よりも大きな鏡がいくつも置いてある部屋だ。中にはすでに多くの魔族たちがいた。ざっと百名ほどか。実技試験の合格者たちだろう。

 

 

その中に見知った顔があった。

 

 

「アーノス。ミーシャ」

 

 黒髪の青年とプラチナブロンドの少女はこちらを振り向く。

 

 

「二人とも試験を突破したみたいだな」

 

「あの位、雑作も無い」

 

「……たまたま……」

 

 まぁ、知ってた。原作読んでたし。

 

 

「ところで、さっきから凄い避けられてるんだけど」

 

「なんだ? 人見知りする奴らだな?」

 

「アノスの魔法に怯えてる」

 

「アノス………なにつかったんだよ?」

 

「『腐死』」

 

 うん。知ってた

 

 

「でも、何で俺まで避けられてるんだろう?」

 

「ディケイドの魔導具に怯えている」

 

「俺の?どれだ?」

 

「魔法を使わないで長距離攻撃ができて、剣にもなるやつ」

 

【ライドブッカー】か

 

「アレは………しゃあない。便利だもん」

 

「しかし、『腐死』に怯えるというのは解せないな。大した魔法じゃないと思うが」

 

 とアノスが言うが、俺とミーシャは無表情でじーっとアノスの顔を見つめている。

 

 

「……ひどいか?」

 

 こくり、とうなずく。

 

 

「ちなみに聞いておくが、どのぐらいひどい?」

 

 

 

 俺は少し考えてミーシャが答えた後に答える

 

 

「……鬼畜外道魔法……」

「血も涙も無え非魔道的行為」

 

 

 

「ははっ。またまた。手持ちの魔法の中でも『腐死』は健全な方だぞ」

 

 

 

 爽やかな声が出た。

 

 

 

「…………」

「…………」

 

 

 俺らはまたじっくりと考え、小さな声で言った。

 

 

「撤回する」

 

「そうだろそうだろ」

 

「「魔法じゃなくて、アノスが鬼畜外道」だったわ」

 

「今のはほんの冗談だ」

 

 んな訳ねえだろ。普通に本当だろ

 

 

「よかった」

 

 信じんのかい!知ってたけど

 

 

 

「でも、ディケイドとミーシャは怯えないんだな」

 

「怖いものはない」

 

「俺は見ていない」

 

「ミーシャは見かけによらず、度胸があるんだな」

 

「普通」

 

と楽しく話していたらフクロウが飛んできた。

 

 

「只今より、魔力測定を行います。魔力水晶の前にお並びください。測定後は隣の部屋に移動し、適性検査を行います」

 

「で、その魔力水晶はどこにあるんだ?」

 

「こっち」

 

 

 ミーシャが歩き出したので、俺達はその後についていった。

 

 

 大体のロケーションは原作通りだ

 

 

「126」

 

「218」

 

「98」

 

「145」

 

 

 魔力測定は数秒で結果が出る。列はみるみるうちに進み、ミーシャの十万台を叩き出した後は俺の番だった。

 

 

「がんばれ」

 

 

「おう!」

 

 俺はそう返事をして、魔力水晶に触れた。

 

 数秒後、大鏡に結果が表示される。

 

 

「200000」

 

 割りといい数値を出せたと思う。女神さんアザッス

 

 

「二人とも凄いな」

 

「……アノスは、もっとすごい……?」

 

「ああ」

 

 

 そう口にして、アノスは魔力水晶に触れた。

 

 

「0」

 

 フクロウが言うのと同時、バシュンッと音を立てて魔力水晶が粉々に砕け散った。

 

 

「計測は終了しました。適性検査にお進みください」

 

「そう言われても、0はありえないと思うぞ……」

 

 アノスはそう反論するが、

 

 

「計測は終了しました。適性検査にお進みください」

 

「使い魔は命令に従うだけ」

 

「まあ、そうみたいだな」

 

そうして俺達は適正検査に進んだ。

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 適性検査が行われている部屋に入ると、石像の上にいたフクロウが口を開いた。

 

 

「魔法陣の中心に入り、適性検査を受けてください」

 

 床にはいくつもの魔法陣が描かれており、すでに適性検査を受けている生徒たちはその中心に立っていた。

 

 

「……じゃ……」

 

「行ってくる」

 

「おう。後でな」

 

 二人は空いている魔法陣の中心まで歩いていった。

 

 

 俺も適当な魔法陣を見つけ、その中心に立つ。

 

 

 すると、頭の中に声が響いてきた。

 

 

『適性検査では、暴虐の魔王を基準とした思考適性を計ります。また暴虐の魔王に対する知識の簡単な確認を行います。思念を読み取るため、不正はできません』

 

 

さて、どうするか?正解を答えるか?間違いを答えるか?………怪しまれたく無いし間違えよう。

 

 

『では最初に、魔王の始祖は名前を呼ぶことさえ恐れ多いとされていますが、その本名をお答えください』

 

 迷うまでもない。アヴォス・ディルヘヴィアだ。

 

 

『神話の時代。始祖はディルヘイドを壊滅させる、『獄炎殲滅砲』の魔法を使いました。これにより、ディルヘイド全てが焦土と化し、多くの魔族の命が失われました。なぜこのような暴挙を行ったのか、このときの始祖の気持ちを答えなさい』

 

 えっと、戦いについていけない者を、別の時代に転生させるため?

 

 

『では、続いての問題ですが――』

 

 

 

 などと、適性検査は続く。

 

 とりあえず、それっぽい回答をし、適当終わらせた。

 

 

 

 それから三○分後――

 

 

 

 適正検査が終了し、俺はその部屋を後にする。

 

 帰り際になにやら入学について説明していたフクロウの言葉を軽く聞き流して、大鏡の間を抜ける。

 

 

 

 すると、外にミーシャが立っていた。

 

 なにをするわけでもなく、ぼんやりと虚空を見つめている。

 

 

 

「なにしてるんだ?」

 

 

 

 声をかけると、ミーシャは顔をこっちに向けた。

 

 相変わらず無表情だ。

 

 

 

「……アノスを待ってた……」

 

 あーね。そゆこと

 

「後でって言ってたしな」

 

「………うん……」

 

「俺も待つか」

 

「いいの?」

 

ミーシャは首を傾げて俺に聞く

 

 

「ああ。問題無い」

 

と答える俺達はアノスを待って、その後合流した

 



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お邪魔します

 

 

 

俺達がアノスと合流した後、アノスが家に招待してくれたので、行く事にした。

 

 

『転移』で飛んだ次の瞬間、目の前には鍛冶・鑑定屋『太陽の風』の看板が見えた。

 

 

 木造で、二階部分が住居になっている。

 

 

「ついたぞ。俺の家だ」

 

 アノスがそう口にするが、ミーシャはじーっと目の前の看板を見つめたままだ。

 

 

俺は内心で生転移にはしゃぎながら、魔法について呟く

 

 

「『転移』か。便利な魔法だな」

 

「そうだ。だが貴様も似たようなのを使えるだろう?」

 

「あー『オーロラカーテン』か。確かに似てるな。」

 

 ミーシャは呟くように言葉を漏らした。

 

 

「……失われた魔法…」

 

「なんだそれ?」

 

「使い手がいなくなった魔法のこと。主に神話の時代に失われた」

 

 ―うん、知ってた―

 

「……アノスは天才……?」

 

「規格外の方が合ってたりするかもな」

 

と言うとアノスは笑う

 

 

「……本気……」

 

「いやいや、悪い。これぐらいで天才や規格外って言われるのがこそばゆくてな」

 

「……アノスは何者……?」

 

「魔王の始祖だ」

 

―ああ、知ってる―

 

俺は遠い眼で明後日の方を向いた。ミーシャが目を丸くして驚いている。

 

 

「……転生した……?」

 

「信じるか?」

 

「普通は証拠を求めるな」

 

と、俺が言うとアノスは堂々と言い放つ。

 

 

「俺が証拠だ。この俺の魔力がな。もっとも、この時代の連中は魔眼が弱すぎて、俺の力の深淵を見ることさえできないようだが」

 

 困ったようにミーシャが黙り込む。

 

 

「まあ、見てれば分かるだろ?」

 

とフォローを入れて、区切りをつける

 

 

「そうだな、そのうちわかる。行こうぜ」

 

「……ん……」

 

 アノスは家のドアを開けた。

 

 

 カランカラン、と店のドアベルが鳴った。

 

 

「いらっしゃ――あ、アノスちゃん、おかえりなさい」

 

 店番をしていたアノスの母さん。イザベラさんがアノスの方へ歩いてくる。

 

 

「……ど、どうだった?」

 

「合格したよ」

 

「おめでとうっ!おめでとう、アノスちゃんっ!すごいわ! 一ヶ月で学院に合格しちゃうなんて、本当にどうしてそんなに賢いの、アノスちゃんはっ!今夜はご馳走にするわねっ!!アノスちゃんはなにが食べたい?」

 

「そうだな。できれば、キノコのグラタンがいい」

 

―うん。知ってた―

 

 

「ふふー、わかったわ。キノコのグラタン、アノスちゃん、大好きだものね。そう言うと思ってお母さん、ちゃーんと下ごしらえしてあるのよ」

 

「ああ、それと母さん、お客さんがいるんだが」

 

「ん? お客さん? だあれ?」

 

 アノスは振り向き、背中に隠れるようにしていたミーシャと後ろにいた俺を紹介する。

 

 

 

「ミーシャ・ネクロンとディケイド・マスクドライドだ。今日学院で知り合った」

 

「……よろしく……」

 

「お邪魔します」

 

と俺とミーシャは挨拶する

 

「アノスちゃんが……アノスちゃんが……」

 

 イザベラさんは動転したように大声で口走った。

 

 

「わたし達のアノスちゃんが、もうお友達を連れてきちゃったよぉっーーーーーーーー!!!」

 

 家中に響き渡る声。

 

 

 すると、バタンッと勢いよく工房のドアが開かれた。

 

 

「イザベラ!本当か!?アノスに初めての友達が出来たのか!!」

 

とアノスの父さん。グスタさんが歓喜の声で入って来る。

 

 

「振り返れば、お前が生まれたのがつい先日のように思い出される」

 

 グスタさんはなんだか気取ったポーズを決めて、窓に視線を注いでいる。

 

 

「いつか、父さんはこんな日が来るだろうと思っていたんだ。だけど、長いようで少し短かったな」

 

 はは、と爽やかにグスタさんは笑った。

 

 

「いや、めでたい。イザベラ、今夜はご馳走だ。派手におもてなしするぞ」

 

「うん、わかってるわ、あなた。アノスちゃんのお友達だものね」

 

 満面の笑みを浮かべる父さんと、また涙ぐむ母さん。

 

 

 二人は向かい合い、うんうんとうなずいている。

 

 

「とっても賑やかで楽しい人達だな」

 

「うむ」

 

「ああ、そうだ、アノス。今日は手伝わなくても、父さんたちだけでやるから」

 

「ほらほら、ミーシャちゃん達に部屋でも見せてやりな」

 

と言って二階押されるが

 

 

「流石にただでご馳走になるのもアレなので、少しは手伝わせて下さい」

 

「そう?じゃあ、お願いしようかしら?」

 

「そうか。そこまで言うなら頼むぞ」

 

俺は二人の手伝いに回り、アノス達を二人っきりにする。

 

 

「よし、じゃあ━━」

 

 

レシピを読みなから、約一時間程で。キノコグラタンを完成させ、ついでにもう一品作った。

 

 



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等作品は飯テロ作品ではございません

 

 

 

夕食の準備ができたということで、アノスとミーシャは居間に移動した。

 

 

 食卓にはアノスの大好物であるキノコのグラタンを始めとして、豪華な料理が並べられていた。

 

 

「さあ、召し上がれ。二人ともも、沢山食べてね」

 

 

 

イザベラさんがそう言って、大皿に入ったグラタンを、小皿に取り分けてくれる。

 

 

「……ん……」

 

「いただこう」

 

 俺はスプーンでグラタンをすくう。

 

 

「これは……?」

 

 

 

 アノスは驚いた。それもそうだ、このグラタンには、キノコが三種類も入っている。いつもは一種類だけなのだから。

 

 

エリンギ、マッシュルーム、ポルチーニダケ。

 

 

「お母さん、奮発しちゃったわほらほら、召し上がれ」

 

 アノスはうなずき、グラタンを口に含んだ。

 

 

 するとアノスは凄く幸せそうな顔をする

 

 

「ふふー、アノスちゃんはすぐに大きくなっちゃったけど、食べてるときの顔はまだまだ子供だよねー」

 

 イザベラさんがそんなことを言う。

 

 

 アノスは夢中になって、グラタンに食らいついていた。

 

 

 

「ところで、お母さん、ちょっと訊きたいんだけどね……」

 

 そう前置きをして、イザベラさんは笑顔で。

 

 

「二人は、アノスちゃんとどんな風に出会ったのかな?どっちから声をかけた?」

 

「……声をかけてきたのは、アノス……」

 

「だね。確か二人の親と俺の親が応援してた時にだね」

 

と、俺は内容の詳細を補足を付け加えていく

 

「へ~、どんな風に声をかけられたの?」

 

 

 

「……お互い苦労するな……」

 

「それで? 二人はなんて答えたの?」

 

「……ん、って……」

 

「だな、と」

 

「凄いわね~アノスちゃんはまだ一ヶ月なのに。これは将来が凄く楽しみだわ」

 

「……一ヶ月……?」

 

「そうなのよ、びっくりするでしょ? アノスちゃんってすっごく賢くて、生まれたときから喋れたのよ。それに魔法も使えて、『成長』でこんなに大きくなっちゃったの」

 

「あ、『成長』なら俺も使えますよ?」

 

と、手を上げると場が静まった

 

 

「ん?何か?変な事言った?」

 

と首をかしげるとイザベラさんが

 

「もしかして…………アノスちゃんと同い歳!?良かったわねアノスちゃん!同年代のお友達よ!」

 

と、凄くはしゃぐ。楽しそうで何よりです

 

 

 あれよあれよという間に夕食は終わり、デザートに俺が作ったアイスを食べながら、そのまま賑やかに喋り続けている間に夜もすっかり遅くなってしまった。

 

 

 途中までミーシャを送るということで、俺たちは外に出た。

 

 

まあ、送ると言ってるけど、『転移』させるだけだけどな。

 

 

俺はアノスがミーシャを送った後、オーロラカーテンを開き

 

「じゃあな、アノス。学院で!」

 

「ああ、じゃあな。」

 

俺はオーロラカーテンを抜けていく

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

数日後――

 

 

 

 俺はフクロウが届けてきた制服に身を包み、デルゾゲード魔王学院へ足を向けた。もちろん、白服。

 

 

校章は五芒星といたって普通の生徒だ

 

 

 俺の名前は2組の欄にあった。アノスと同じ組だ。教室は第二教練場である。

 

 

多少、迷いながらも教室を見つけた。

 

 

 扉を開け、第二教練場に入る。机と椅子がずらりと並んでいる。中には生徒達がいたが、皆アノスの方を向いている

 

 

「やあ」

 

 挨拶すると、アノスと隣にいたミーシャは俺に目を向けた。

 

 

「おう」

 

「……おはよう……」

 

「隣いいか?」

 

「ああ」

 

 

 

 椅子を引き、アノスの隣に座る。ついでに聞いてみようと思った。

 

 

「さっきからずっと見られている気がするんだが、なにか知ってるか?」

 

「……噂になってる……アノスが……」

 

「俺がか? なんて?」

 

「……怒らない……?」

 

「こう見えて、怒ったことはない方なんだ」

 

「……その烙印……」

 

 ミーシャがアノスの校章を指す。

 

 

「魔力測定と適性検査の結果を表してる」

 

「ああ、そういうわけか。どういう仕組みなんだ?」

 

「多角形や、芒星の頂点が増えるほど、優良」

 

「へー」

 

 と、俺は自分の星を見る。三角形よりも四角形、四角形よりも五芒星の方が魔力測定と適性検査を足した結果が良いってわけか。

 

 

「俺の校章は芒星すらなくて、十字だが?」

 

 

 

 アノスの三角形でも四角形でもない。それが示す事は一つ。

 

 

「……魔王学院で初めての烙印……」

 

「どういう意味なんだ?」

 

ミーシャが間を開けて言う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不適合者……」と

 

 

 

 

 

 



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判別試験

 

 

 

 

淡々とした口調でミーシャは言う。

 

 

「魔王学院は次代の魔皇を育てる学院。魔王族だけが入学を許可される」

 

「これまで魔王族で魔王の適性がないと判断された者はいない。アノスは初めての不適合者」

 

「だから、噂になった」

 

「魔力測定は俺の魔力が大きすぎて計れなかったからわかるが、適性検査は満点のはずなんだがな」

 

「……自信がある……?」

 

「ああ」

 

と、二人の会話をBGMに、しばらくすると、遠くで鐘が鳴った。

 

 

「皆さん、席についてください」

 

 顔を向けると。教室に入ってきたのは黒い法衣を纏った女性だった。

 

 

 彼女は黒板に魔法で文字を書く。

 

 

――エミリア・ルードウェル――

 

 

「2組の担任を務めます、エミリアです。1年間よろしくお願いします」

 

―悲惨な結末を迎える人だ―

 

 

「早速ではありますが、まず初めに班分けをします。班リーダーになりたい人は立候補してください。ただし、これから教える魔法を使えることが条件になります」

 

―『魔王軍』の魔法陣か。ここは関係無いな。アノスの班に入るから―

 

と、俺はぼーっとアノスの活躍を眺めていた。

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

「以上で全員の自己紹介が終わりました。それでは班リーダーに立候補していない生徒は、自分が良いと思ったリーダーのもとへ移動してください。まだよく知らないでしょうから、第一印象で構いません。班には人数制限がありませんので、大人数の班になることもあります。またいつでも班を変更することは可能です。ただし、班リーダーは班員を班に入れるかどうか選ぶことができます。また班員が一人もいなくなった場合、班リーダーは資格を失います」

 

「なあ、おい。どうする?」

 

「やっぱり、サーシャ様の班だろ」

 

「そうね。破滅の魔女って言ったら、混沌の世代でも有望株よ。彼女こそ転生した始祖に違いないって噂されてるもの」

 

「ええ、わたしもよく知ってるけど、とんでもない魔力と魔法の持ち主よ」

 

 隣にいたミーシャが立ち上がる。

 

 

 一瞬、サーシャの方へ視線をやり、次に無表情のままアノスを見た。

 

 

「姉のもとへ行きたいなら、行っていいぞ」

 

「アノスの班には俺がいる」

 

 ふるふるとミーシャは首を振った。

 

 

「……アノスの班がいい……」

 

「そうか?」

 

「……ん……」

 

「それは助かる」

 

 ほんの少し照れたようにミーシャは言う。

 

 

「……友達だから……」

 

「そうだな」

 

―さて、こっからは原作通りだし、読者を送るか―

 

と。俺はオーロラカーテンを開き、シーンを移す

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

一週間後――

 

 

 2組の生徒たちは、班別対抗試験のためデルゾゲード魔王学院の裏側にある魔樹の森へ来ていた。

 

 

薄気味悪さの漂う深い森が広がっており、渓谷や山が見える。その広大な土地は、魔法の訓練をするのにちょうどいい場所だ。

 

 

「それじゃ、二班に分かれて、早速班別対抗試験を始めます。最初は、サーシャ班」

 

 エミリアがそう口にすると、サーシャが前に出る。

 

 

「皆さんにお手本を見せてあげてください」

 

「わかったわ」

 

 ふっとサーシャが微笑する。

 

 

「じゃ、相手の班は……」

 

サーシャがアノスをじっと睨んでいる。

 

 

そんな顔をしなくとも、逃げるわけがないだろう。

 

「俺がやろう」

 

 

 

 と、アノスが答え、俺とミーシャと一緒に前に出た。

 

 

「では、最初はサーシャ班とアノス班による班別対抗試験を行います。結果は成績に影響しますから、手を抜かず、しっかりやってください」

 

そう言って、エミリアは他の生徒をつれて森から出ていく。

 

 

 監視は使い魔や大鏡を使って行う。

 

 『魔王軍』の班別対抗試験は、言わば模擬戦争だからな。

 

 

「覚悟はいいかしら?」

 

 『破滅の魔眼』で強気にサーシャが睨んでくる。

 

 

 俺はそれを堂々と受けとめた。

 

 

「誰にものを言っている?」

 

「相変わらず、偉そうな奴だわ。ちゃんと約束は覚えてるわよね?」

 

「ああ」

 

 

 

「口約束じゃ信用できないわ」

 

と、サーシャはミーシャを指して

 

 

「その子にやらせなさい」

 

と言う。多分アノスに『契約』で変な事を割り込ませない為だろう。する意味が無いが

 

 

「……わたしでいい……?」

 

「ああ、別に誰がやっても問題ない」

 

 ミーシャは手の平をかざし、『契約』の魔法陣を展開する。

 

 

 魔法文字で条件を記すと、サーシャはそれに調印した。

 

 

 両者の同意がない限りは、決して違えることのできない魔法契約が結ばれる。

 

 

「陣地はどちらがいいかしら?」

 

「好きに決めればいい。どこでも同じだ」

 

「そ。じゃ、東側をもらうわ」

 

 必然的に、俺達の陣地は西側となる。

 

 

「ねえ。覚えてなさい。その傲慢な態度、後で後悔させてあげるわ」

 

 ぷいっと振り返り、サーシャは班員たちを引き連れて、魔樹の森の東側へ去っていった。

 

 

「俺たちも行くか」

 

「……ん……」

 

「おう」

 

 適当に歩き、森の西側に辿り着く。

 

 

 そこでしばし待機した。

 

 

「さて、そろそろだな」

 

 上空を飛ぶフクロウから、『思念通信』が送られてくる。

 

 

「それではサーシャ班、アノス班による班別対抗試験を開始します。始祖の名に恥じないよう、全力で敵を叩きのめしてくださいっ!!」

 

そう言えば『魔王軍』の説明がまだだったので、説明をしておこう。

 

 

『魔王軍』は集団を率いて戦う際、全体の戦闘能力を底上げするための軍勢魔法である。

 

 

 術者とその配下には、七つのクラスというものが与えられる。

 

 

 魔王。築城主。魔導士。治療士。召喚士。魔剣士。呪術師。

 

 

 この七つにはそれぞれ魔法によって付与されるクラス特性が存在する。

 

 

 このクラス特性を守る限り、集団での総合的な魔法力が向上するのが、『魔王軍』の魔法である。

 

 

 

 術者は必ず魔王となり、配下の者たちに絶えず魔法効果を付与し続ける。また魔力を供給することも可能だ。

 

 

 魔王キングが死亡、あるいは魔力が枯渇すると、当然のことながら『魔王軍』の魔法は維持することができず、魔法効果は消える。対抗試験は、この魔法効果が消えた方が負けだ。

 

 

「……作戦は……?」

 

 ミーシャが淡々と尋ねてきた。

 

「といっても、三人だからな」

 

「それな」

 

 サーシャ班はクラスの半数、ざっと十倍位はいる。

 

 

「二人の意見は?」

 

 アノスに尋ねられると、無表情でミーシャは考え込む。

 

 

「……わたしのクラスは築城主。『創造建築』の魔法が得意……」

 

「俺は召喚士だから使い魔を呼び出す位かな?」

 

 すでに『魔王軍』の魔法は使用済みだ。

 

 配下にはクラスを自由に割り振ることができるので、俺は適当に召喚士を選択した。

 

 理由は、〝アレ〟の力を使うからだ。

 

 

「で魔王城を建築する。魔王城は加護により魔王の能力が底上げされる。籠城には有利」

 

「更に、使い魔を配置して、相手の戦力を分散させる事も出来るから、ますます籠城が有利になる」

 

と、提案すると、アノスは

 

 

「だが、たぶんサーシャはそう来るだろうと読んでるぞ」

 

―うん。知ってた―

 

「……じゃ、どうする……?」

 

 まあ、正直な話、戦術は考えるだけ無駄だ。なにをどうやったところで、アノスも俺も負けるわけがないのだからな。

 

 

 取りあえずここらで活躍したいから俺は手を上げて作戦を提案する。

 

 

「アノス。俺が単独で攻めに行くのはどうだ?正直言って、それで勝てると思うけど?」

 

「ふむ。だが召喚士ではクラス特性上、攻撃魔法が弱体化しているぞ?」

 

「大丈夫だ。問題無い」

 

「何か手があるのか?」

 

「ああ!」

 

そう堂々と答えると

 

「そうか。なら任せた」

 

「おう!それと使い魔は置いて行くから」

 

そう言って俺は体内の『アナザーディケイドライドウォッチ』の力で、リュウガ、ダークカブト、ネガ電王、ゲンム、メタルビルドの五体のネガライダーを召喚し、城の警護を任せる。

 

 

「行ってきます」

 

「行ってらっしゃい」

 

「楽しんで来るがいい」

 

「おう!」

 

そう言って俺はオーロラカーテンで、サーシャの城の前に出る。

 



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無慈悲な弾丸と一番ヤバイ蛇

 

 

 

「サーシャ様。敵陣に三つの城が建てられました」

 

「恐らく二つは罠ね。残りの一つに、向こうの魔王キングが潜んでいるはずよ」

 

「一つずつ城を破壊しますか?」

 

「いいえ。この短期間じゃ、ミーシャでも完全な魔王城は創造できないわ。時間を稼いで、その間に堅牢な魔王城にするつもりでしょう。その前に叩くわ」

 

「了解。ご指示をください」

 

「魔剣士、治療士、魔導士、召喚士の部隊編成で、それぞれの魔王城に向かってちょうだい」

 

「了解しました!」

 

指示を出し終えるとサーシャは機嫌を良さそうに鼻で笑う

 

 

「城の完成前に乗り込めばそれでお終い。ネクロンの片割れに近づくだけあって馬鹿な勝負をするわ」

 

サーシャは机に座って髪をいじりながら呟く

 

 

「せいぜい友達くらいは守って見せなさい。自称魔王さま(笑)」

 

「悪いが、俺はそこまで弱く無い」

 

と何処からか聞き覚えのある声と共に、二発の銃弾がサーシャの足を撃ち抜く。

 

 

「きゃああああ!」

 

「さ、サーシャ様!誰だ!?」

 

と近くにいた生徒が銃弾が放たれた方を向くとソコにはオーロラカーテンが存在しており、カーテンから一人の男が現れた。

 

 

「くっ………ディケイド・マスクドライド…………」

 

サーシャはその瞳に『破滅の魔眼』を浮かべ、睨みながら言うが俺には効かない。何でかって?反魔法を常に纏っているからだ。

 

 

―さて、ここまで弱いとつまらないから帰るか―

 

そう。ディケイドの立てた作戦とはいたってシンプル。適当に遊んでつまんなくなったらネガライダーに任せて帰る。の外道戦法だ!

 

 

「それじゃあ。任せようかな?」

 

と俺は新たにオーロラカーテンを二つ開き、片方から立ち去る

 

サーシャ班の生徒が追いかけようとしたその時!

 

『Are you ready?』

 

反対側のオーロラカーテンから誰かからの問いが聞こえた

 

「な、何だ?」

 

他の生徒が、困惑の声を上げると〝奴〟は現れた

 

『コブラ! コブラ! エボルコブラ!』

『フッハッハッハッハッハッハ!』

 

二匹の蛇が睨み合う様なデザインの複眼と肩には地球駒、胸には正座表をモチーフにしたアーマーを纏っている。腰には赤いボディカラーに青と金色の装飾、惑星図のような円盤と青いレバーのついたもの。【エボルドライバー】を巻いた赤黒く禍々しい仮面ライダー──エボルトこと、『仮面ライダーエボル コブラフォーム』が姿を表した。

 

「やあ、魔王学院生徒諸君。楽しんでるかい?」

 

「な、何なんだコイツ!」

 

「俺はエボルト。お前らの相手だ」

 

「な、何なんだよコイツは…………!」

 

と生徒達は同様するが彼女だけは違う

 

 

「うろたえないで!ソイツは多分アイツの使い魔。私達全員でかかれば倒せるわ!」

 

と、サーシャの声に生徒達は我を取り戻しエボルトに攻撃をするが

 

 

「ハハハハッこんなお遊びで俺を倒せると思ったか?」

 

エボルトは笑いながら全てを捌き、サーシャに近づく

 

 

「皆!サーシャ様を守れ! 」

 

と、一人の生徒の掛け声で集まって守ろうとするが、

 

「邪魔だよ」

 

と言い残して二匹の大きなコブラを呼び出し、薙ぎ払う。

 

「な、何なのよ………アイツは………」

 

「さーて、そろそろ終わらせるか」

 

エボルトは腰に巻いてある【エボルドライバー】のレバーに手を掛けて回す。

 

 

すると、待機音が流れ、レバーから手を離して回すのを止めると

 

 

『READY GO』

 

と共にエボルトは蹴りを構えて放つ

 

 

『エボルテェックフィニッシュ!』

 

放たれた蹴りはサーシャを捉え、そのまま城の外に放り出した

 

『チャ~オ♪』

 

 

 

 

 




オマケ

「……美味しい………」

「ふむ、まさか試験中に、こんな美味しい物を食べれるとはな。これは何と言う食べ物だ?」

「それは光る蕎麦だ。旨いだろ?」

「ああ」

「……うん」


魔王城でのんびりご飯の図(サーシャ班の人はネガライダーにコテンパンにされました)


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やり過ぎた。反省はあるが後悔は無い

長らくお待たせしました新作です!


 

 

 

『サーシャ班『魔王軍』消滅。勝者、アノス班』

 

と梟の声を聴いてアノス達は窓からサーシャ班の魔王城を見るとサーシャが落ちて来ていた。

 

 

「親方、空から女の子が!」

 

「いや、貴様のせいだろう」

 

アノスは的確に突っ込みを入れた。本当にその通りである

 

 

「うん…………何か悪い事したな………」

 

ディケイドは少し反省した。エボルトではなくブラットスターク辺りに止めけば良かったかもと思った。

 

 

「まあいい、サーシャを助けて来るとしよう」

 

「お願いします」

 

「 …………お願い」

 

二人の言葉を背にアノスは『転移』を使い、飛んで行った

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

一方、上空のサーシャは魔王城からどんどん地面に近づいて来ていた

 

 

―ああ、落ちて行く………―

 

サーシャは自身が刻一刻と死に近づく中、走馬灯が巡る。

 

 

―私が死んだら、あの子がオリジナルになるのかしら………―

 

―もしそれならそれでいいわ。サヨナラ、ミーシャ―

 

圧倒的な力と自身に近づいてくる死を前にしてサーシャは諦めた様に目を閉じる。

 

 

その時何かがサーシャに触れる

 

 

―え!?―

 

驚いたサーシャは目を開くと目に入ったのはさっきまで戦ってた相手。アノス・ヴォルティゴードだった

 

 

そして、現在空中でお姫様抱っこに加え、足を治療中と異常な状態にサーシャは狼狽える。

 

 

「な、何でアンタがいるのよって!何で助けたのよ!」

 

「言っただろ?配下にすると。だから助けたのだが」

 

「そ、そう………」

 

アノスは「それに」と続ける

 

 

「試合はもう終わった。だったら敵も味方も関係無かろう」

 

「でしょうね………なんなの………あの化け物は………」

 

「ディケイドの話では奴は星が主食らしく、アレで2%程の力らしい」

 

「アレで2%ってアレを使役するアイツどんな化け物よ………」

 

サーシャは表情が引きつっているが、アノスはサラリと答える

 

 

「そうか?あの程度の猛者なら2000年前にはゴロゴロといたぞ」

 

「アレがゴロゴロと………考えたく無いわね………」

 

サーシャは更に表情を引きつらせ、これ以上追求するのを諦めた。

 

 

「ねえ。一つ聞くわ」

 

「なんだ?」

 

「わたしを誘ったのは、あの子のため?」

 

「まあ、そうだな。ミーシャがお前と仲良くしたそうにしていた」

 

「そ。ふーん」

 

 興味がなさそうに彼女の視線は明後日の方向を向いた

 

 

「ああ、それともう一つ」

 

「なによ?」

 

「お前の魔眼が綺麗だった」

 

 途端に、サーシャの顔が真っ赤に染まった。

 

 

彼女は逃げるように顔をそらした

 

 

「言っておくが、本当だぞ。そんな綺麗な魔眼は見たことがない。まあ、今はまだ未熟にもほどがあるがな。………聞いているのか?」

 

そっぽを向いたままのサーシャにそう言うと、彼女はまたこっちを向いた。

 

 

「……聞こえないわよ、馬鹿……!」

 

 アノスに褒められて照れたのか、弱々しく言うばかりだった。

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「………後で詫び入れよう」

 

「………ん」

 

『遠見』の魔法で、二人を見るディケイドとミーシャであった



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