とある東京の運転・能力使い(ドライブテクマスター) (KBS滝原)
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第1話 転移!ディスティネート学園都市

シティーハンター×とある科学の超電磁砲の次に久々に書かせていただきます。
こういう小説を書くことがあまりないものですから、グダグダ&迷宮的な小説ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

埼玉県三郷市に住むバス運転士、子安はある日、自前のAE86スプリンタートレノで、走り屋と勝負していた。ゴールをしたその矢先、彼はある強い光の中に入ってしまう。移りこんだ先はなんと・・・


埼玉県三郷市。この街に走り屋バス運転士の若年準ベテラン運転士がいた。彼の名は、子安あずま。バス運転士歴11年の34歳だ。彼は乗り物すべてが好きで、全国の鉄道やバスを乗り通している。それだけではなく、山道や国道、都道府県市区町村道をドライブするのも好きだ。元々モータースポーツや刑事ドラマ・アニメのカーチェイスを見てきただけに、あずまは26歳で、なんと昔の名車、AE86スプリンタートレノを購入。以降は全国の山道に行き、走り屋の皆とドライブ、そしてバトルすることもしばしば。よく碓氷峠や秋名で走っている。3年前に公休を翌日に控えていたため、運転を終えたあずまは、深夜に秋名をすっ飛ばしていた。その技術を買われてか、あずまは、池谷浩一郎発足の、秋名スピードスターズに入った。そんなあずまだが、3年前の人事異動で、なんとあずまはただの運転士から、主任に昇格した。更に運転管理者の資格も持っているため、幅広い仕事をしている。この日、あずまは早番で出勤し、新三郷駅から三郷駅を結ぶ運用を担当。制服に身を包んだその姿は、紳士的である。

 

(今日もいつもと変わらぬ朝だな。このまま何事もなく、一日が過ぎてくれればいいんだけどね。このところ4日で、現金持ち合わせてない人が多すぎるから、会社としても精算処理するの大変だよ。でも運転しててこんなに楽しいことはないからな、一日を大切にしないとな。)

 

そう思い込んでいるあずま。40分後、始点である新三郷駅に到着。お客様を乗せ、狭い道を縫うように、三郷駅に向けて走っていく。実は生まれてこのあずま、バスを運転していて一度も事故に遭遇することはないという。車両故障には何回か遭ったことはあるようだが。

 

(明日のダイヤ改正から、しばらく俺は運行管理者になるからな、バスは運転できなくなるけど、自前のハチロクがあるから、それでしばらく我慢しようか。)

 

この日あずまは、新三郷駅から三郷駅を往路のみ、三郷駅からピアラシティに行き、そこから三郷中央駅とピアラシティを往復する仕業を繰り返し、車庫に戻った。時間は14時過ぎ。本数が少ないとはいえ、出勤は早朝だ。これもこれでありがたいと思うあずま。

 

すると、女性の、あずまを呼ぶ声がした。

 

あずまを呼んだのは、同期の女性運転士、秋川みついだ。みついも運行管理者の資格を持っていて、働く場所はほぼ同じと言ったところだ。2人はこのバス会社の中でも関係が深く、2人が一緒にいる姿は社内でも注目されている。みついが呼び出した理由は、今後の動きについての打ちあわせである。実はみついもしばらく運転から離れる関係で、車両のやりくりに関しての打ち合わせをしなくてはいけなくなったのである。50分の打ち合わせの上、2人は解散する。

 

深夜23時、神奈川県小田原市。ここにあずまはいた。そう、走り屋とバトルするためである。実は以前、小田原~三島国道1号峠越えバトルの際、あずまは宮ノ下付近を先頭で走っていた。すると後続のバトル車が悪意を含んだ追突をしたのである。あずまのハチロクはブレーキをその時踏んでいたため、ガードレールに右の部分をぶつけただけで済んだのであるが、その時同乗していた、藤原拓海の友人、武内樹が右足を捻挫するケガを負ってしまった。それと同時に、あずまは全てが変わってしまったのである。

仕業乗車するバスは少し荒っぽさが増した他、目はどんどん怒りに染まってしまっていた。

その時のバトル相手は、庄司慎吾。妙義ナイトキッズ所属の、EG6を持つFF使いだ。妙義ナイトキッズのリーダー、中里毅とは犬猿の仲であり、人望がないそうだ。

あずまは、その怒りを、樹が味わった痛みを、苦しみを感じさせようと、真っ当な手段を用いてバトルを行う。小田原駅には、浩一郎、樹、拓海が待機していた。あずまも同じ場所にいた。開始前、あずまの元に、拓海が寄ってくる。実は拓海、渋川の藤原豆腐店を出発する前、父の文太から、あずまにこうアドバイスするよう言われたのだ。

 

「あずまという運転士に伝えておくんだ。小田原を出発したら、登山電車の箱根湯本駅までは平坦で道幅もそこまで狭くないから普通にスピードを出せる。だが問題はここからだ。箱根湯本を出ると、温泉街に入り、コーナーがきつくなっていく。蛇骨川(じゃこつがわ)の陸橋があるが、そこは焦らず自分のペースを保って走ることだ。決め手の場所は、小涌谷、芦之湯、接待茶屋だ。小涌谷は5コーナーあって、そのうちの最終コーナーは、登山電車の踏切がある。あずまがそこで惑わされないかが問われる。芦之湯はダウンヒルがあるんだが、緩やかと同時にやってくる畑宿のカーブがある。あの部分は広いから、いかに大回りせず自分のポジションで曲がれるかが決め手だ。そして最後は、接待茶屋。バス停の手前の道路だが、コーナーがあまり見られない、片側で上下に分かれてる道路がある。ハチロクの小ささからすれば、そこで抜けると思う。小涌谷のコーナー、芦之湯、接待茶屋で決められるかが勝負になると伝えておくんだ。」

 

この言葉通りの通告を受けたあずまは、了解の返事を出し、スタートラインに立つ。そして倍返しの国道バトルが幕を開けた。

 

国道に入ったあずまは、この時点で95kmを出していた。横の登山電車の駅が刻一刻と過ぎていく。開始からわずか7分で箱根湯本駅を通過。この地点では、慎吾のEG6の少し前を走っていた。その頃、バトルを後から観察するため、池谷のR32で追いかける。温泉街。ここにギャラリーが163人いる。双方の速度は、この地点で120km。一般道をもはや走る速度ではない。

 

(自分のペースで…か。確かにこの先方向別に区画された陸橋がある。最初の難関って奴か。だがなぜ小涌谷が惑わされるんだ?)

 

あずまはつくづく疑問に思ってしまう。とりあえず頭の中を空にして走っていく。

 

(3カ月かかったか。まぁいい。もう一度痛い目に遭わせてやる。俺が小田原を制するためなら、こんな手段を使ってでもな!)

 

慎吾が卑劣な手を使いに出る。だがそれを察知したあずま。コーナーでぶつけられる寸前を切り抜ける!

 

池谷は、

 

「この前、樹はあずまが乗っていたときに、あのナイトキッズの庄司という奴から後ろをぶつけられたんだよな?」

 

池谷が以前の事故のことについて樹に尋ねる。

 

「はい。確かあの時は小田原に遠征していたときなんですけどね、あずまが大平台の近くに来た時、ナイトキッズのEG6の奴がトランクの部分をぶつけてきて、そのままぶつかったんですよね。あずま、あの事故以来またそうならないといいんですけどね。」

 

すると拓海が、

 

「いや、あずまは色々シミュレーションしていますから。あいつはバス運転士なので、何が起きるとかそういう予測は得意だと思います。だから今回は、あずまでも回避してみせると思いますよ。」

 

そう反論する。

 

(躱しやがった!まさか俺の読みがばれていたとでもいうのか!?ありえねぇ!)

 

慎吾は驚きを隠せない。その卑劣な動きがあずまには筒抜けだったのも無理はない。

 

(ナイトキッズの庄司慎吾。お前のやろうとしていたことは全てお見通しだよ。たとえそうされていても、俺には修正する力があるからね。さてと、もうそろそろ芦之湯か。ということは、もうすぐすると海賊船の港か。だとすると、そこから先は少し平坦と言うことか。)

 

2台は、畑宿交差点を通過。ギャラリーの興奮具合は半端ではない。

 

「すげぇ!こんな急カーブを150kmぐらいで通過してたぜ!?」

 

「ここは交差点自体が広いからな、何を考えてるか分からねぇ」

 

2台は、小田原駅出発からわずか40分で元箱根港に到着。元箱根港には700人近くのギャラリーが集結していた。この時間はバスが終了しているため、バス停にもあふれていた。

 

 

その頃2台は、箱根峠の近くに差し掛かっていた。すると慎吾がまた卑劣な手に出る!そう、車を衝突させるという卑劣な手段だ。この手をもろ受けてしまったあずまだが、すぐに体制を立て直し、走行する。

 

(マジでやってくれたな。だが今回の俺は一味違うぞ。俺の倍返しドリフト、受けてみろ!)

 

あずまの目の色が変わった!ハチロクはスピードを増していく!思えばあずまは、勤務先の同僚、秋名スピードスターズメンバーと、拓海を愛している、茂木なつきを同乗させてきた。明日からは運行管理者となる。ここで負けてはいられない。メンバーの期待を裏切りたくはない。頭の中に湧いてくる記憶。そして運命の接待茶屋に差し掛かる!

 

その頃、後追いの池谷たちのR32は、バトル車の100m手前を走行していた。

 

「おそらくそろそろ接待茶屋付近に来ているな。あの辺りは、進行方向によって上下に分かれる。もし追い抜くとしたら、このあたりだ。」

 

「でもよ、上下に分かれてるったって、2人が同じところを走るかもしれないんだぜ?抜く隙があるとしたら一体どこなんだよ?」

 

樹が反論する。だが拓海は、あずまは決めるところがあると分かったらそこでキメると話す。あずまはこれまでにそのポイント部分で抜いてきた。あずまなら今回もそうするだろうと信じている。

 

(ふっ、スピードを落としやがったぜ。この区間はスピード回復には時間がかかる。これはもうこっちのもんだぜ!!)

 

慎吾がそう踏み、ぶっちぎろうとした次の瞬間、後ろには前照灯が見えない!そう、あずまは無灯火で、慎吾を追い越していたのだ!

 

(バカな!スピードを落としたはずじゃ!?しかも見えないように追い越すとは・・・何が・・・どうなってやがる!?)

 

(慎吾、お前は誤算があった。スピードを落としてもな、接待茶屋までは上下に分かれている。隙を見て抜くことなんかお茶の子さいさいだ。俺には。倍返しさせてもらったぜ。)

 

その後、かなりの差が開いた2台。小田原駅から出発1時間20分後、2台は三島駅に到着した。だが、予想していない事態が起きてしまった。あずまが三島駅に進入しようとした瞬間、ハンドルのタイミングを見誤り、ロータリーの壁に衝突!と思いきや、なんと謎の光に進入!この姿を見たギャラリーたちが騒然に!

 

後日、メディアに取り上げられ、消えた車と運転士という名で世間を驚かせた。

 

変わって学園都市。広場前には4人の中学生がいた。学園都市の電撃姫、LEVEL5超能力者、御坂美琴、LEVEL4高能力者、ジャッジメント所属の白井黒子、LEVEL2で同じくジャッジメント所属の初春飾利、LEVEL0の佐天涙子の4人がいた。飾利が何か異変を感じる。そう、この白昼であるにも関わらず、銀行の非常シャッターが閉まっているのである。すると、大きい爆発音が!そこから出てきたのは、強盗の3人組の男!逃走しようとしたところを、黒子が塞ぎ、降参せよと警告。すると男3人は笑い出す。

 

「ジャッジメントも人手不足かよ」

 

黒子はなぜ笑ってるのか分からなかった。そして黒子は、テレポートの術を使い、1人を撃破!そして足に備え付けの針で1人を捕らえる。

 

「お嬢ちゃん。今更嘆いても遅いぜ。」

 

男が手から炎を出す!すると黒子は瞬間移動で避けようとする!逃がすものかと火を放出!だが黒子は背後に回り、また1人捕らえる。すると男1人は子供を人質にしようとしていた!涙子がなんとか必死に抑えようとするが、キックを喰らってしまう!犯人は車を走らせた後、転回し、車道上にいる美琴を跳ね飛ばそうとしているのである。すると、美琴の電撃が発揮!ところが、上には謎の光が!そこから降ってきたのは、なんと、AE86スプリンタートレノ!犯人はその衝撃でハンドルを切ってしまったため、車をガードレールにぶつけてしまう!あずまは急停止させ、様子を確認する・・・が、状況を分かる暇もないまま、そのまま現場を後にした。4人、いや、他の一般住民は唖然とした。突然降ってきた自動車。気が付いたらいなくなっていた。

 

「お姉さま!?今見ましたか!?上から自動車が降ってきましたわよ!?」

 

黒子が驚きのあまり美琴に聞く。美琴も驚きを隠せない。だが、4人が共通して分かったことは、この時代の車とは思えない自動車だったことだ。何せAE86は、25年も前の車両だ。(学園都市を2013年とみている)

その後、アンチスキルが到着し、3人組の男は護送車に乗せられた。アンチスキルの黄泉川が、4人に聞くと、ハチロクが降ってきた話を伺った。黄泉川も耳を疑った。直ちに捜査をすると話し、4人から離れていった。

 

その頃、あずまはここはどこかと唖然をしていた。車をとにかく走らせ、街を走る。だが、手掛かりらしきものは見つからない。どこか広い道路を探し、ようやく停車した。自前の携帯は、圏外ではないが、マップがすごいことになっている。見てみるとここは・・・学園都市・・・となっていた。

 

「学園都市!?しかもここは東京!?おかしいな。静岡から東京ってそんな短いか?というか東京に学園都市なんかあったか?・・・ん!?なんか駅の建て方が立川駅に似てるな。どうなってんだここは?」

 

ということで、ナビを見てみると、なぜか学園都市対応のナビに。おかしい。あずまは思った。そう困っている姿をしていると、

 

「何かお困りですか?」

 

と声をかけられる。前には制服を着た女子の学生が。ちょうどいいところだった。ここはどこかと聞こうとした。

すると返答が来たのは、東京の学園都市というところだ、と。学生は、あずまが行先に困っているかもと思い、どこか行きたいところあるかと尋ねた。あずまは今のところ大丈夫と言い、お礼を言った。すると学生から言われた一言は、

 

「変わった車ですね。これはなんという車ですか?」

 

学園都市ではあまり見ない車なようで、興味を持っていたらしい。彼は、トヨタ自動車が作った、AE86スプリンタートレノという車と説明した。すぐ解散したあずまは、どうすればいいかもわからず、そのまま夜を迎えた。これはまずい、どうにかしないとと思っていた。




久しぶりに書いたものですからストーリーがかなりぐちゃぐちゃで申し訳ないです。努力してまいりますので、皆様よろしくお願いします。

学園都市に突如来てしまったあずま。トレノが学園都市であまり見られないため、注目の的となってしまいました。そんな中彼は、自分の中でも異変を感じてしまうのです。彼が感じた異変とはなんでしょうか?

次回 第2話 注目と進化、今の自分とは


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第2話 注目·進化 自問自答

学園都市に転移してしまったあずまは、行く先もないまま、一日を過ごそうとしていた。そんな彼の車を珍車とみて注目する学園都市の住民を横目に過ごしていくのだが、あずま自身に変化が発生してしまう。あずまのハチロクを追うあの4人組は・・・


学園都市のモノレール駅前。美琴、黒子が散歩している。

 

「お姉さま、何か気になりませんの?」

 

黒子が突然何かに疑問を持ったかのように美琴に尋ねる。

 

「あの銀行強盗の時に降ってきた自動車のことですわ。第一この学園都市といえどもこんな非現実的なことが起きるなんてありえますの?」

 

「確かに非現実的よね。あの時、私が強盗を仕留めようとしたときに上から降ってきたんだものね。ただ、あの車は今この学園都市を走っている最新型の車じゃなくて、少し昔っていう感じがする車だったわ。」

 

美琴もあの事件の時に起きた出来事はあまりに非現実的であるという見解を示している。2人の意見としては、やはりその車をマークして、本人に聞くしかないという。その時、飾利から連絡が入る。

 

「白井さん、この前の銀行強盗の時に、上から車が降ってきたという話があったと思いますけど、おそらくこの車と思しき写真を入手したので確認をとってくれますか?」

 

飾利が黒子に写真を送信する。黒子の携帯に送られてきた写真は、AE86スプリンタートレノだった。これは前面の写真だが、下にスライドすると、あの時に見かけたそっくりな車両であると判明した。

 

「この車の名前は、トヨタ自動車が製造した、AE86スプリンタートレノという名前のようで、製造されてたのが1980年代だそうです。この学園都市に走っている車は大体、AT車なんですけど、そこまで古い車が走っているのは驚きです。」

 

飾利が言う。黒子は大至急集まるように指示をした。

 

一方あずまは、何かないかと思い、モノレール駅前にハチロクを止め、周囲を散歩していた。するとそこに、学園都市BRTサービスといった名前が。何か気になる、そう思ったあずまは、BRTの受付に行った。そこには、モノレール駅前→常盤台中学→七福神BRT→霧が丘女学院BRTターミナルの路線が。そこであずまは、

 

「モノレール駅前から霧が丘女学院BRTの往復乗車券を2枚お願いします。」

 

「はい。580円になります。」

 

元々BRTにも興味があったあずま。興味を引かれ、購入した。しかもこのBRTが動いているのは平日の学生が通学する時間帯だ。連接バスで運行するため、詰め込みや定時性に優れている。これは乗り逃すまいと決めた。予定は明日。これは逃すまいと決めた。駐車場に戻ると、そこには人だかりが。あずまのハチロクの物珍しさに人だかりができているのだ。あずまが来ると撮影をやめ、エンジンをふかすと歓声が。発車することを伝えると、ギャラリーが道を開き、すごい加速で走り去っていく様を見ていた。

 

「これはすげぇよな!今時この学園都市にハチロクのトレノだぜ?」

 

「もう学園都市の動態的な遺産だな。」

 

ギャラリーが口をそろえて言う。あずまはハチロクを走らせ、広大な敷地がないかと探しに向かった。あずまはハチロクの面で注目をされているが、服装に関してもかなり目立っている。それは、「KEIO」と文字が書かれ、ベージュカラーのラインが4本、腕にペイントされている。更に上着は青、下着は白、靴下はベージュカラーと言うかなり異彩な色の服装を身にまとっていた。

 

ジャッジメント第177支部。飾利、黒子と美琴が合流し、降ってきたハチロクを追う作戦に出ていた。古い年式の車両を含めれば10台強とそこまでいないが、25年前のハチロクとなれば、かなり絞られてくる。そこから探し出す作戦だ。まず、飾利がとったのは、学園都市すべての防犯カメラを確認し、ハチロクらしき車が通過しないかを強化。また、希少車であるため、人だかりができる可能性も視野に入れた。その2つから動いていく方針だ。飾利は防犯カメラを確認し、残りの2人は外に出て回る。すると、

 

「見た?あのAE86。まさか学園都市に走っているなんて思わなかったよな!」

 

「あの運転士もすげぇよな!ライトを開いてくれてさ、しかもすごい恰好だったけど!」

 

AE86というワードを聞きつけた美琴は、ギャラリーと思われた2人に尋ねる。ハチロクはモノレール駅前で10分前に見て、そのあとセブンスミストの方向に向かったそうだ。

 

3人はすぐにセブンスミストに急行。

 

セブンスミストでは、あずまはアイスクリームを食べながら、団体のテーブル席にかけている。すると、奥の方に集団が。すると、集団に囲まれた涙子がいた。

 

「ようお嬢ちゃん。ちょっとうちに来て遊んでいかない?」

 

「いいもん食わせてあげっからよ!」

 

というチンピラたちの誘い文句が。そこを割り込むようにあずまは、

 

「ちょっとやめていただけませんかね?うちの生徒が迷惑しているんですけどね。」

 

と注意した。するとチンピラたちは襲いにかかる!するとあずま自身が放電を開始する!そんなことは自分ではなかった!だがそれを気にしている暇はない!とにかくチンピラたちを木端微塵にする!

 

「覚えてやがれ!」

 

その一言を残し、チンピラたちはあずまの元を後にした。あずまは涙子に大丈夫かと尋ねる。涙子は大丈夫だと返答した。すると涙子はすぐに気付いたのだ。このKEIOと書かれていて、ベージュのラインが4本入っている上着姿。下着は白で、靴はベージュカラー、間違いなく目撃情報に聞いていた、ハチロクの運転士だと。一方あずまも気づいていた。自分を探そうとしているのは、この涙子と、飾利、美琴、黒子だと。いや、もっと大きな組織が絡んでいる可能性があると。とりあえずあずまは、涙子をハチロクに乗せ、家まで送る。

 

「君たちだろ?俺を探そうとしていたのは。ハチロクが上から出てきて銀行強盗の乗った車が急にハンドルを切ってあの有様になったとなれば、その元凶の人物を探すしかない。そうだろ?」

 

と涙子に尋ねた後、このことを他の人たちに知らせるか否かは涙子に委ねたのである。

 

あずまは自分の名前を言った後、涙子からも自己紹介を聞き、どうしてこうなったかを話す。事の経緯を聞いた涙子は・・・

 

「そういう事だったんだね。あずまさんも見た感じ、結構な走り屋みたく感じる。でもこのあとどうするの?」

 

するとあずまは、明日、例のBRTに乗ることを伝え、すべてを表に出すと宣言した。実はあずまには、何か気がかりなことがこのBRTで起きそうな予感がすると思っていたようだ。更に彼は、さっきの涙子を助けた際に発生した事象について気になっていた。先ほど、自分が放電をしたという事だ。こんな能力は元の世界にいたときにはなかった。どうしてこんなことが起きたのか?それが分からないまま車は進んでいく。

 

「あずまさんって、どこか泊まるところとかあるの?」

 

涙子があずまに尋ねると、あずまはそれが決まっていないことを伝えると、涙子がうちに来てと誘う。なんと考えられもしなかったことが起きた。今までこんな、他の人の家に泊めさせてくれることなどなかった。車は涙子の家に到着。思えばこの16年、学生の家に泊まることなんてなかった。多少の緊張を持って入るあずま。

 

「部屋は2階ね。何かあったら呼んで。」

 

言われるがままに移動した。明日はBRTに乗るために早朝、モノレール駅前に移動しなくてはならない。だがあずまはそれと同時に、何か嫌な予感がすると感じていた。それは決して直感ではない。

 

翌日、あずまはBRTに乗車するため、モノレール駅前に向かっていた。朝から自前のハチロクを飛ばして。

未だにAE86の人気具合が高く、朝にすごい注目を浴びるほどだった。15分後、モノレール駅前に到着した。車を降りたあずまは、BRTが発着するバス停にいた。そこには、霧が丘女学院の生徒でゆうに100人が乗っている。それもそのはず。連接バスなのだから、他の単車のバスとは違って定員が多く、多くの学生を1台に乗せることが出来る。そこに一般客としてあずまは乗る。すると、3分後に男3人が並んだ。あずまは感じた。これは何か起きる。昨日の嫌な予感がまさに的中する一歩手前まで来てしまったのである。

 

バスは5分後に到着し、すべてのドアからお客様を乗せる。バスは定刻通りに発車。何もない平和な日常をBRTは迎えた・・・と思いきや、発車してから10分後、さっきの男3人が暴れ出す!

 

「いいか?このバスに爆弾を仕掛けた!バス1台吹っ飛ぶだけじゃない!爆破してから700m圏内が爆発する!」

 

パニックになる車内。

 

すると、あずまは最前部に来て、

 

「どうせそうだろうと思ったさ。何か嫌な予感がすると思ったのでな。さぁどうする?この中に能力者がいて、それを敵に回したらどうなるか試してあげようか?」

 

と犯人を脅す。だがあずまはそれにある懸念を抱いていた。このバスはハイブリッド。急な高電圧がかかってしまった場合、最悪車両故障が発生してしまう可能性がある。一応自動車は落雷が発生しても逃がすという構造をしているのだが。するとあずまは、燃料タンクにある手すりを抜き取った!3人は中にあったナイフを取り出し、あずまに攻撃をしようとする!あずまは抜き取った手すりで反撃をする!かなりの手さばきだ。1人をまず撃破!

するともう1人が燃料をあずまに放つ!そして火を出し、あずまに放とうとするが、あずまは正面にいない。

すると後ろからあずまがキック!激しい攻防の末、バスは急停車!だがここで問題が生じたのだ。爆弾がなんと起動してしまったのだ!爆発までにあと50秒を切った!あずまはバス運転士の時の条件反射で、避難誘導を手伝った。幸い手伝う客が他にもいたため、避難は済んだのだが、あずまはまた車内に戻った。一人避難できていない人がいたのだ。後方に行くと、学生1人が座ったまま車内にいたのである。バス運転士はその対応をしていたのだが、動く気がしない。

 

「やめて!このままでいさせてください!」

 

なんと爆発と同時に自分の身を亡ぼすというのだ!見かねたあずまは車内に入り、無理やり学生の手を引く!バスの中に誰もいないことを確認して避難した次の瞬間、バスがものすごい勢いで爆発!あずまはその爆風で吹き飛ばされてしまう!

 

5分後、アンチスキルが到着し、現場の実況見分が始まった。事情聴取を受けるあずまだが、そこに現れたのは黄泉川だった。黄泉川はあずまの姿を見て驚いたのだ。

 

(もしかしてあの降ってきた自動車事件の者か?でもそれにしては格好が違うな。)

 

疑いを持ったままあずまと運転士に駆け寄る。運転士は黄泉川に事情を話し、あずまが手伝ったことも伝える。すると、

 

「もしかして、子安あずまさんですか?私はアンチスキルの黄泉川です。今の運転士の聴取で何か補足とかありますか?」

 

黄泉川はあずまに伝えると、あずまは駅前のバス停で待っていた時に、犯人3人が並んでいた時に嫌な予感がしていたことを伝える。何か起きるのではないかと悟ったとも伝える。

 

「そうですか。ご協力ありがとうございました。」

 

黄泉川は去っていく。すると運転士はあずまに、あの時の対応に驚いたことを話し、もしやバス運転士なのか?と聞いた。あずまは、かつてバス運転士をしていたが、今はやめたと伝えた。それはそうだ。元の世界でバス運転士をしていたなんて言っても信じてもらえるわけがない。

 

「あの、ちょっとよろしいですか?」

 

振り向くとそこには、黒子、美琴、飾利と、涙子がいたのだ。そう、ハチロクが降ってきたときの運転士がこのBRT爆破事件に巻き込まれていたことを聞いたようで、その運転士を探していたところ、服装が一致していたところから見抜いたようだ。

 

「ちょっとお名前伺ってもよろしいですか?」

 

飾利の質問にあずまは淡々と答える。その後黒子が尋ねたのは、銀行強盗の時に発生した、あのハチロクが降ってきた事件だ。どうして逃げたのかと聞く。あずまは、

 

「あの時は知らなかったが、後にあの銀行で強盗があったことを知った。犯人は車を使って逃げようとしたみたいじゃないか。逃走を阻止できたわけだし、それに俺には得しかない。それ以上は関係ないから帰ったんだ。」

 

とあずまは言う。すると美琴は、

 

「あの時は私が電撃を放つ寸前だったから良かったけど、もし撃ってたらあんた遅かったのよ?」

 

この一言にあずまはちょっとイラっとした。美琴の言い方がどうやら気にくわなかったらしい。

 

「あのなお嬢ちゃん。言い方ってもんに気を付けろ。」

 

怒り交じりにあずまは言った。

 

「もういいだろ?俺は帰る!」

 

そう言って現場を後にした。19歳差であることは気にしていなかったが、言い方ひとつであずまは気が変わりやすい。それになぜか能力がついていることに疑問を持っているあずま。その答えを見いだせずにおそらく怒りに駆られていたのだろう。

翌日、人命を第一に避難誘導を手伝ったことを顕彰されたあずまは、アンチスキルの総監より感謝状を受け取ったのである。これが報道された後ネット上では、

 

「あれってAE86のお兄さんだよな!?」

 

「バスジャックされた事件で何より他の人の命を考えて動いた子安さん素晴らしい!」

 

「これで日本も捨てたもんじゃないな!」

 

という絶賛の声が。自分の姿が写っている新聞を見ていたあずまに涙子は、いいことをしたものだと絶賛した。だがあずまは、これはあくまで当たり前のことをしたまでだと話した。確かにバス運転士は、自分の命を確保すると同時に、優先されるのはお客様の命だ。当たり前のことをしたという感覚があずまの中ではあるのだろう。あずまの活躍劇は、まだまだ続く。




BRTバスジャック事件が明け、避難誘導に尽力したことで絶賛されていたあずま。しかしそれを気に食わないと見ていた謎の走り屋が、あずまに挑戦を仕込んできた。
あずまはその挑戦を受けるが、果たして結果はどうなるのか!?

次回 学園都市のバトル


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第3話 学園都市のバトル

あずまは予約していたBRTに乗り、バスジャックしてきたグループを成敗。AE86の操縦者として一世を風靡しているが、その姿を気に食わない走り屋たちがいた。
その挑戦を申し込むあずまは、果たしてどう動くのか…。

(お詫び
前回、学園都市最大のバトルとして後書きに予告しましたが、早い段階から学園都市最大のバトルは早すぎたため、学園都市のバトルに修正しました。)


朝、涙子の家。

テレビをつけているあずまは、コーヒーを片手にソファに腰かけてみていた。彼は未だに答えを導き出せていない。能力が勝手についたことについてはどうにもならないので考えないが、この能力を今後どうすればいいのか。秋名スピードスターズの皆はどうしているかが気になるだけでなく、自分も今後どう生きていけばいいのか、まったく分からなくなってしまっている。だが、涙子をはじめ、美琴、黒子、飾利の3人は、俺が急に現れてきたことは知っている。説明ができない、そして学園都市の生まれでもない、言ってみれば化け物だ。もっと言えば、学園都市の住民はこの4人、いや、あの事件の関係者以外誰も知らないのだ。何も見えてこない答え。相棒はあのAE86トレノ。どうすればいいかもわからないあずまは、AE86トレノに乗り、区役所に向かった。彼は運転中に1つ決めた。学園都市の住民に、自分の名前が入っていなければ、涙子の家を出ていく、そういう覚悟がある。これ以上あの4人組と接していれば、今後自分がどうなるか分からない。言ってみれば、何か探りが入ってしまえば、自分は答えられない、いわゆる不法侵入とほぼ同じことだ。

 

区役所。

彼は住民票を発行する手続きを取った。すると、その学園都市の中に自分の名前は、入って・・・・いた。不思議だ。こんな自分なのに名前が入っていた。あずまはその後、第十九学区に向かった。この十九学区は、街を再開発したが、再開発に失敗してしまい、寂れてしまった学区だ。今では人口が片手で数えるほどしかいないのだ。車もあまり通らないこの学区に、なぜ来たのか。実はここに、あずまの今後勤める先がある。実は2週間前、あずまは学園都市トラフィックサービス東の採用試験に向かった。そして3日後、あずまは合格したのだ。学園都市の大多数は無人のバスになっているが、この会社は数少ない、ワンマンのバスだ。アミューズメント施設が集う第六学区と、食品施設のある第四学区から、第五学区の西部山駅までの社員輸送も行っている。数少ない路線だが、それでもあずまはこのバス会社を選んだ。

 

昼。あずまは涙子の家に戻った。涙子は授業があるため、現在は留守にしている。荷物をまとめ、彼は・・・家を出た。何も残さずに。

 

夕方、涙子はいつも通り帰宅すると、何かの違和感を感じとった。あずまの荷物がない。更にあずまのハチロクが帰ってきていない。彼は2日、3日と帰ってこなかった。

異変を感じた涙子は、美琴に電話をかける。

 

「もしもし?」

 

「あ、御坂さん?あの、昨日から今日にかけて、あずまさんに会ってませんか?」

 

涙子の質問に美琴は、会っていないと答えた。なぜそれを聞いたのかと尋ねると、涙子はあずまが3日も帰ってきていないことを耳にする。まずいと思った美琴は、黒子に電話をかける。だが黒子もあずまの姿を見ていない。異変を感じた3人は、緊急で集合する。

 

その頃、あずまは第十九学区にいた。すると、誰かわからない強面の男たちがあずまに近寄ってくる。

 

「おめぇ、ハチロクの使い手と言われている子安あずまだよな?」

 

男の1人があずまに尋ねる。あずまがそうと答えると、男たちはあずまを中傷する。

 

「もうハチロクなんて時代遅れなんだよ。とっととその車廃車しちまえ!」

「そうだぜ?時代はもうFDなんだよ!」

 

次々と中傷されるあずま。あずまは・・・

 

「だったら、見せてもらおうか。そのFDの力とやらを。」

 

なんと攻めの方向に入る!これは完ぺきな挑発に乗るということだろうか?更にあずまは、

 

「バトルは3日後の午後10時。第二一学区の川原から第十七学区の根本まで、都道194号線でどうだろうか?」

 

「いいだろう。絶対に約束守れよ!」

 

リスキーな約束を交わした3人。

 

その頃、美琴たち4人は、ジャッジメント一七七支部に集まり、緊急会議を開いていた。

 

「私が家に帰った時、あずま君の荷物がなかったし、深夜になっても全然ハチロクが見えてこなかったの。それに携帯もつながらない。」

 

涙子がその時の状況を伝える。最後に見たのはいつかと飾利に尋ねられると、涙子は朝の6時あたりと説明。更に6時30分あたりに、あずまは外出していたことも伝える。

それを基にすべての監視カメラを確認する。すると、7時44分に、区役所付近にてハチロクが発見された。ハチロクが区役所に入る姿を捉えていた。更に1時間20分後、第十九学区にハチロクがいたことも捉えている。そこから出てきたのは、やはりあずま。また、あの強面の男2人がいたことも捉えている。

 

「何か会話していますね。あ!胸ぐら掴んだ!」

 

飾利は他3人と状況を見る。カメラにはそのあと、あずまが後にしたところも映っていた。美琴は、飾利に、あずまが乗っているハチロクのナンバーを控えさせた。その後4人は、一七七支部を後にした。

 

午後5時。あずまはコーラを片手に、交通量の少ない陸橋にいた。この時間帯は車が通らないため、ハチロクを停車させていた。実は第十九学区を後にし、彼は第七学区のカフェに入った。すると、あずまの左3席側に座っていたある男が、突如あずまのすぐ隣の席に移動してきた。そんな気はしたが、あずまは無視。すると、男は、

 

「お前、ハチロクの兄ちゃんだろ?」

 

突然あずまにこう声をかけたのだった。あずまはそうと返事をすると、男はなんと、あずまの行動を知っているかのように尋ねてきたのだった。

 

「失礼だが、名前を名乗っていただけないですか?急に接近されて、その上急に私のことについて知っているような言動をされると、少し気に障るもので。」

 

怒り交じりに話すあずま。すると男は・・・

 

「俺は元学園都市ラピッドスピーズの戸田康広だ。お前さんのことについては色々と調べさせてもらったよ。銀行強盗が発生した時、突然巨大な光を放ち、その中から降りてきた。更にはあのバスで犯人たちを成敗させ、今では学園都市の人気者になっている。そんな奴がここに来るというのは何か違和感を感じたものでな。」

 

と、あずまの経歴を知っているような話し方だった。気に障ったあずまは、地団駄を踏み店を出ようとする。すると戸田は、

 

「お前、あの強面の奴らと戦うんだろ?第二一学区から第十七学区までバトル。奴らの持っている車両はFD。」

 

なぜそれを?あずまは戸田に伺う。戸田曰く、奴らは学園都市の走り屋を卑劣な手で沈めたと言われる、恐怖の走り屋連中のようだ。元々この学園都市には、3グループの走り屋がいたようだが、ある日、突然あの強面の奴らが集まり、バトルでは車両をぶつけるなどの悪質な行為で走り屋を沈めていったため、現在ではあの奴らの巣窟になってしまっているようだ。その警告をしようとしたようだ。あずまは、それを聞いているのか聞いていないのか分からないまま、店を後にした。

 

そして今現在。あずまはそれをふと思い出したのだった。缶のコーラを飲み干したあずまは、車にさっさと戻り、第二十一学区へと車を走らせた。

 

20分後、あずまは到着した。そこには、あずまに挑発してきた、あの男たちがいた。

 

「遅せぇじゃねぇか。34歳の人間が集合時刻に13分も遅れるとは、落ちたものだな。」

 

男の1人が話す。ここで奴らの紹介といこう。奴らはニュースピードライナーズというグループで、戸田の言っていた、3つの走り屋を沈めたと言われるグループだ。何かを感じ取ったあずまは、過去の対戦歴を振り返った。そういえば、こいつらみたいな卑劣な手を使った奴がいたような、そんな感じがした。すると、戸田の話をまた振り返る。

 

「勝負の決め所は、あの根本付近のらせん状の部分だ。それはお前さんが見ていれば分かることだ。とりあえずそこまでは、後ろを走っていることだな。」

 

そういわれたことを思い出す。いったい何を言っているのかわからなかったあずまは、とにかくハチロクを、スタート位置につける。

 

「ゴールは第十七学区の根本!では、始めます!Leady!! GO!!」

 

一人の男が、スタートを切った!順調な滑り出しをした2台。あずまは戸田の言われたとおりに後ろについていく。最初は少しきつめの上り坂だ。ハチロクは、非力と言われているほど、上り坂には弱い。拓海と一緒に改造させてもらった、回転数のメーターを、11000回転まできっちり回す!カーブは多少あるものの、スピードは95kmを突破。

 

「学園都市に来てからあまり経ってないからな。ルートに関してはだめだ。特にこの国道194号線とやらは!だが、奴らは本当に卑劣な手で追い落としてくるのか?あ、そういえば・・・」

 

あずまは拓海から話を聞いたことを思い出した。それは庄司慎吾と戦っていた時であった。その日はガムテープデスマッチといって、右手とステアリングホイールをガムテープで固定して走っていた。慎吾はなんと勝つためにと、拓海のハチロクにぶつかった。そうして勝とうとした慎吾を拓海は許せなかった。更に拓海が先頭を走っていた時も、拓海のハチロクに衝突しようとしていた。しかし拓海はそこを避け、慎吾はガードレールに激突させた。もしかしたらそれと同じ手口かもしれないと感じ取ったのである。

 

緩やかなカーブが続き、ついにスピードは160kmを越えた。そして25分後、ついにあのらせん状の道路に突入!左にカーブが続く耐久路線だ。するとあずまは何か違和感を覚えた。なんと相手方のFDが熱ダレを起こしたのである。そうか、そう思ったあずまは、これを言いたかったのだと改めて感じ取ったのだった。そしてあずまは、何と道路幅ギリギリのところを攻める!

 

「らせんカーブだというのに、外からだと!?」

 

相手は驚愕した。普通であれば、このような道路は外から攻めない。だがあずまのやろうとしていることが驚きでしかなかった。するとあずまは、カーブ途中でハンドルを右に切り、スピードを出す!そして先行があずまとなった時、道路は直線に入った!ここはラストスパート。だがあずまのハチロクも熱ダレをもはや起こしかけてきていた。この状況下の中、とにかく走ることに専念した。

 

「ここで負けると、俺らの面子は丸つぶれだ。だったら勝てばいいんだ!どんな手を使ってもな!」

 

あずまは察した。相手のやろうとしていることがまさしく、あの庄司慎吾の時と同じであることを!だがすぐ先には右カーブが!FDは右側に一度入り、ハチロクに衝突しようとした!だがハチロクは右カーブで後ろ部分を左に振った!ぶつかろうとしたFDはガードレールにそのままぶつかり、更に前照灯の左部分を破損。車そのままバックで下り坂を下っていき、ガードレールに後ろ部分をぶつけ停車した。

 

13分後、ゴールの第十七学区、根本に到着した。FDはその後遅れて到着した。

 

駐車場があったため、車を止め、車から出ようとしたその時だった。なんと右には、美琴、黒子、飾利、涙子の4人が立っていた!

 

「ようやく見つけましたわ。ハチロクの操縦者、子安あずまさんでしたわね。たっぷりとお話を聞かせてもらいますわ。さぁ同行を。」

 

抵抗をすることなく、あずまは黒子の指示に従った。4人の表情が険しいことに気づいたあずまは、これはやらかしたなと痛感したのだった。




ゴールをしたあとのあずまは、黒子ら4人にどこかに連行されたのだった。
険しい表情の先には、この4人の思っていたことが奥に組み込まれていたのだった。

次回 追跡


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第4話 追跡

この話では、あの4人がハチロクを追うまでの話をしますので、今回は子安あずま君は少ししか出ません。ご了承ください。

美琴、黒子、飾利、涙子の4人は子安あずまを追跡するため、あずまの情報についてをしらみつぶしに調べていた。追跡していく上で次々と現れる不可解な事実に、この4人はどう取るのか?


黒子と飾利は、書庫、つまりバンクから子安あずまの情報についてを調べていた。

 

「何を調べても見つかりませんわ。あの子安あずまという男の情報が。」

 

黒子がつぶやく。飾利も探すが、子安あずまの情報が載っていないためこれ以上の調べようがないと判断。一七七支部のデスクに戻り、逆に今度は学園都市の中で車を所有している住民を探す。だが全住民を調べてみても、車は全て4気筒の車、またはハイブリッドディーゼル、完全な電気自動車、そして燃料電池自動車などの現代的な車両しか走っていないため、ハチロクを持っている人がいないことが分かった。だが2人は確信したのである。全住民が現代的な車両を持っていないというのなら、ハチロクは1台しかいないということになる。一方美琴はというと、単独でハチロクを探していたのだ。

あの怒り口調に何が気にくわなかったのか分からなかったのだった。

 

「あのなお嬢ちゃん。言い方ってもんに気を付けろ。」

 

そんなあずまの一言にイラつき度が増していく美琴。BRTのバスジャック事件の時、あずまが電撃でジャック犯を仕留めたとなれば、負けず嫌いの美琴は勝負をしてみたくなってしまう。だがその後も、1時間近く探し回ったが、ハチロクは見つからなかったのである。埒が明かないと判断した美琴は、一度、一七七支部に戻る。

 

「そちらはどうでしたの?」

 

「全然いないわ。まったくどこ行ったのよ!」

 

すると後ろから、涙子がやってきた。

 

「ちょっといいですか?実は最近、あずま君の調子が良くないみたいなんです。私がいろいろ話しかけても何も応じてくれなくて、更に食欲もないみたいで・・・。」

 

涙子が感じ取った異変を3人に話す。

 

「まぁ突然学園都市に来たのですから、相当な迷いに侵されてるのは無理がないとは思いますけれど・・・」

 

黒子が言う。

 

「でもあのBRTのバスジャック事件では、御坂さんと同じ電撃で犯人を仕留めたって話ですからね、もしかしたらLEVEL5がまた一人増えるかもしれませんね。」

 

飾利が言う。この学園都市には7人しかいないのだが、もしあずまがLEVEL5なら、8人の超能力者がいるということになる。美琴はそれを聞いて闘志がみなぎってきている。元々負けず嫌いな性格であるがため、自分と互角な能力者がいるとなれば勝負したくなるのだ。そんな話をしていた、その時だった。監視カメラを開いていたパソコンに、なんとあずまの姿が!

 

「初春!パソコン見て!」

 

涙子の声に飾利は反応した。監視カメラには、交差点を渡るあずまの姿が見えていた。するとあずまは、ある建物に入った。

 

「あそこって確か、学園都市トラフィックサービス東というバス会社の本社よね?もしかして何か用があったのかな?」

 

美琴が疑問に感じていた。そういえばこの4人は、あずまがかなり交通機関好きであることを知らなかったのだ。BRTに乗った理由も分からない。更に言えば、どうやって電撃能力を習得したのかということが分からなかった。普通であれば、学校に通わなければ分からないもの。元々その能力は備わっていたのか?根底から疑問に思っていた。カメラをそのまま動かし続けると、会社から出てきたあずまの姿が。そして彼は、タクシーを走らせ、涙子の家へと向かった。

 

涙子は追跡していたということを知られないために、何食わぬ顔で帰宅したのだった。なぜ彼女たちはそこまであずまにこびりつくのか?先ほどの通り、あずまはハチロクで強盗現場に舞い降りただけでなく、BRTのバスジャック事件で能力的にジャックした犯人を成敗したからである。更に涙子は、チンピラたちに囲まれていたところをあずまに助けられたこともあり、4人はあずまが何者なのか、逆に興味を引き付けられたからである。涙子は帰宅した後、ご飯どうするかと聞くと、あずまはいらないと答えた。ここ数日であずまの顔色が悪い。見かねた涙子は、あずまの横に寄りそう。

 

「学園都市に来てあまり分からないことがあるのは分かるよ。でもさ、ここに来た以上は、やはり前を向かないといけないよ。」

 

宥めた涙子だったが、

 

「お前に・・・何が分かるんだよ・・・。俺がどうすればいいのか分からないその心情をお前にどうやったら分かるんだよ!」

 

激高したあずまは、ちゃぶ台をひっくり返した。もはや精神が錯乱状態と化してしまっていたあずまは、涙を一滴垂らし、2階に上がった。涙子はどうすればいいのか分からなかった。自分は何をしたのだろうか、それが分からないでいた。もしあずまを傷つけてしまったのなら、謝ろう、そう思っていた。そして翌日、あずまはこの日から3日も帰らないという事態に。

 

緊急会議の時。飾利は自分のパソコンを取り出し、インターネットを開いた。すると掲示板にこんな書き込みが発生した!

 

「ちょっと皆さん!見てください!」

 

飾利の言葉に3人が寄る。そこには・・・

 

「今日ハチロクとFDが第二一学区から第十七学区まで勝負するってよ!」

 

「久々にこれを見られるなんてなんという奇跡だ!」

 

「どっちが勝つと思う?」

 

「俺だったらハチロクだな。あの子安という奴なら、非力のハチロクでも巻き返しできそうかもしれないからな!」

 

ハチロクが戦うかもしれないという情報を聞きつけたつぶやき住民が掲示板に書き込みをしているのだ!

 

「もしかして・・・あの走り屋と戦うとかじゃ・・・!」

 

黒子は恐ろしいことが脳裏をよぎったのである。学園都市の走り屋を荒らした謎の走り屋たちが、あずまに挑発した可能性もあるということだ。謎の走り屋は、元々学園都市にいた3つの走り屋グループを卑劣な手を使って沈めたという話が広まっており、あずまが来る1カ月前、走り屋の1人がその事故で亡くなったという事案が発生した。この事件は、あの謎の走り屋たちが故意に衝突させて死亡事故を引き起こしたものだが、警察、学園都市で言うアンチスキルは、これをただの操作ミスによる事故として処理をしてしまった。その事件が起きてからか、第二一学区では治安が悪くなってしまったのだ。事件が事故として処理されたことに、3つのグループが怒りをあらわにしていた。

 

「それってまさか・・・」

 

飾利が思ったことを黒子に尋ねると、合っているとした。だとしたら、かなり危険である。急いで飾利は、学園都市にいる走り屋たちを検索し、そこから一人一人当っていく方式をとった。あずまの身に何が起きるか分からない。それは誰もが回避したいと思っている。4人は一斉に分散して動き出した。

 

各々が走り屋たちに尋ねていく。

 

第十九学区。午後6:00に謎の走り屋たちは車に乗ろうとしていた。するとそこに来たのは、なんと美琴だった!!

 

「なんだよお嬢ちゃん。俺らになんか用あんのか?

 

「ええ。たっぷり用件があるわ。」

 

そういい、美琴は、あずまの写真を走り屋たちに見せる。走り屋たちは知らないというが、美琴は、

 

「へぇー。じゃあなんであのカメラにあんたたちとこの男が話しているところが写っていたのかしらね?」

 

怒り口調気味に言う。謎の走り屋たちの返答は変わらない。すると美琴は体に電気を帯び始めた!それにびびる走り屋の2人。

 

「さぁ正直に話しなさい。この男となにをしていたのかを。」

 

「ちょ、挑戦してやりたかったんだよ!ハチロクが来たって言うから、そいつをおちょくってやろうかと思っただけだ!」

 

「それは違うでしょ?あんたたちはこの男にバトルを申し込んだんじゃなくて?」

 

「あ、ああ・・・。今夜、7:00に、第二一学区に集合となっている・・・。」

 

怯えながら話す男2人。美琴は黒子に連絡する。聞きつけた黒子は、10分後、4人を招集させ、スタート現場に向かう!しかし、時すでに遅し!バトルは始まっていたのだった!急いでゴールの根本に先回りする!

47分後、ゴールにたどり着いたあずまを見かけた4人は、すぐさま一七七支部に連行。

 

177支部。

 

「まぁお座りくださいな。」

 

黒子はあずまに、着席するよう命令。会議テーブル1台に、1台の椅子。あずまを囲むように4人が立っている。

 

「あなたに聞きたいことがありますわ。まず、あなたはなんというお名前ですの?」

 

黒子が聞く。あずまは自分の名前を言った。

 

「あずまさん。あなたはあの銀行強盗の事件の日、突然上から降りてきたんですけど、何があったんですか?」

 

「そんなの俺が知りたいよ!大体なんであんなやべぇところに舞い降りるんだか。」

 

「そんなことは知ってますの!私たちはあなたがここに来る前どうしてたのかを教えてほしいと言ってますの!」

 

「ここに来る前、俺は箱根というところでバトルをやってたんだ。小田原駅からスタートして、三島駅がゴールなんだ。そしたら、俺、ハンドルの切る位置誤って、壁にぶつかりそうになったんだよ。死ぬなと覚悟したあの時だったんだよ。黄色い光が出てきたのは。それでああなったんだよ。」

 

飾利、黒子の2人はあずまを徹底的に調べ上げる。あずまはそれにただ応じているだけだった。事の経緯を話すと、美琴は、

 

「これは私も聞きたかったんだけど、あんたなんであたしと同じ能力を持っているんのよ?どうやって習得したのよ?」

 

と聞く。

 

「それも知らんよ!こっちだって知りてぇよ。ってかおめぇよ、言ったはずだぞ?言い方に気を付けろと。ため口で結構。でもあんたという呼び方やめろと言ってんだ。おめぇ次そんな呼び方やったら、ただじゃすまねぇからな?」

 

美琴のあんたという呼ばれ方によっぽどグサッと来てしまったらしい。手は出なかったが、怒りに任せてか、美琴の胸ぐらを強くつかんでしまったあずま。

 

「ちょっと落ち着いてください!あずま君。私だって心配してたんだよ!なんで3日も帰ってこなかったの?」

 

涙子は強い口調であずまに聞く。

 

「どうせ俺なんかいらねぇんだろ?」

 

「は?」

 

あずまの腑抜けた答え方に疑問を抱く4人。

 

「俺なんかいらないんだろ!?学園都市に俺のハチロクは降ってきて現場はめちゃくちゃ。そのくせBRTでバスジャック犯成敗、それに急についた能力。電撃・・・俺は34歳なんだよ・・・俺は、元々バス運転士だったんだよ!変な能力がついて、下手すれば人を殺すかもしれないのに・・・それに、カフェで知り合ったおじさんが言ってたんだよ!俺は、学園都市に必要とされていなければ、その先どうにもならなくなるだろうって。とにかく34歳の俺は、君たち中学生に迷惑をかけたくないんだよ!だから3日、いや、永久に家を出ようと思ったんだよ!」

 

その言い分を聞いていた4人。するとそれを聞いていた涙子は・・・

 

「必要だよ!あずま君は、私にとっては必要だよ!そりゃ、学園都市の皆からすれば、この答えを聞けば、何だよこの人って思うけど、でもあずま君は、私を助けてくれたじゃない!そんな腑抜けたあずま君の言い分なんて聞きたくないよ!」

 

「そうよ!」

 

美琴が同情すると、胸ぐらをつかみ、

 

「どこで習得したか分からないその能力がついたからって、人生をやめるような発言をするんじゃないわよ!私だって、このレールガンの能力が付いたとき、本当に人を殺傷する恐れもある能力だって・・・でも私は、その能力を人のために使う。そう決めてるの!34歳といういい大人が、そんな腑抜けたこと抜かしてんじゃないわよ!」

 

美琴はその後、あずまの右頬に強烈な一発を食らわせた。あずまは・・・

 

「そうだよな・・・まだ未来のある君たちの前でそんな台詞を吐くって、どうかしてるよな・・・。俺は間違ってた・・・。皆に迷惑かけたくないって思ってやった行動がこれとはな・・・。」

 

後悔の一言を吐くあずま。美琴の一言が突き刺さったのか、彼は大粒の涙を流す。あずまは人生でこんなに大粒の涙を流すのは2回目だった。

 

「自分一人で抱え込もうとするなんて間違いですよ!佐天さんだって、白井さんだって、御坂さんだって、それに私だって、どうなるか心配だったんですよ!?別に迷惑をかけたって、いいじゃないですか・・・私だってまだ迷惑かけてしまってることたくさんあります!でも、協力して事を成し遂げるって、私はすごいことだと思います・・・だから、そうやって悲観的にならないでください!私たちも、できる限りのことはします!」

 

飾利が涙を垂らしながらあずまに一言発した。あずまは戸惑いを見せる。34歳の自分がこんな年下の中学生たちに支援を受けるなんて・・・でもこれを言われてしまったのだから、仕方ない、そう思った彼は・・・

 

「でも言っておくけど、俺は色々と頭悪いよ?ミスだって起きてしまうし、文句だって言われてしまうし、迷惑をかけること多いよ?そんな俺でも、大丈夫?」

 

「いいですのよ。ね?皆さん。」

 

黒子は尋ねる。全員OKしたのである。

 

「あなたは元々この世界の人間ではない、バス運転士をしているんですのよね。私たちは元々受け入れる準備はしてましたの。あなたが異世界の人間でも、別に堂々としていればいいと。これからよろしくお願いしますわ。」

 

あずまは涙を拭い、返事をした。

 

「改めて、俺は学園都市トラフィックサービス東の新人社員、子安あずまです。」

 

「常盤台中学2年、御坂美琴よ。」

 

「同じく常盤台中学の1年、白井黒子ですわ。」

 

「柵川中学1年、初春飾利です。」

 

「改めて、柵川中学1年、佐天涙子よ。」

 

こうして全員の自己紹介(改)が終わった。4人の中学生と1人の34歳新人社員の、新たな活躍に、青信号が点灯した!




5人が団結し、動き出した新たなグループ。果たして、彼らの活躍はどう輝くのか?

次回 消えない事実、やるせない気持ち


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第5話 消えない事実、やるせない気持ち

改めて絆が強まった5人。あずまは学園都市で第二のバス運転士としてスタートする。
しかし彼は、黒子や飾利の協力により、一応ジャッジメントの協力者という扱いにさせてもらったようだ。そんな中、あずまの今までの真実が暴露される。


あずまが立ち直り、絆が改めて強まった5人。実はこの1日前、ジャッジメント一七七支部ではありえない事態が発生していた。

 

「どういうことかさっぱりわかりませんのよね。」

 

黒子が突然そう言い始める。パソコンには、あずまが学園都市のジャッジメント協力者として認められたという証の書類が載っている。更に、勤務先も書かれているだけでなく、なんとそこには、涙子の家の住所が載っていた。更には、なんと、LEVEL5のランクがつけられていた。学園都市には7人しかいないLEVEL5。あずまの登場によって、8人目のLEVEL5が登場したという事だ。つまりこれは、誰もが予期せぬ、子安あずまが学園都市の住民として認められたということだ。これは真面目に、誰もが予期することのできなかったことだ。だがこれは、言い方を変えてみれば、ここに子安あずまという人物が載らなかった時点で、不法侵入として追い出されていたということになる。だが、そんなことをあずまは知る由もなかった。

 

そして翌日。あずまは涙子に、いってきますの一言を残し、敬礼して職場に向かった。初めての出社。彼はハチロクを走らせ、営業所に向かった。この日は、社内研修で、主にペーパーを使った研修だった。実はあずまが入社した、学園都市トラフィックサービス東という会社は、ほぼ中型車を使っており、中でもマイクロバスを扱うことが多い。だがこの会社は、1社と契約を結んでおり、それは特定輸送で大型車両を動かすことになっている。いくらあずまが経験あると言えど、バス運転士としての守らなければいけない鉄のおきてを叩き込めなければ、路線バス運転士で一人前としてやっていくことができない。これを3週間かけて叩き込んでいく。

 

そして3週間が経った日。彼は休みでこの日、ジャッジメント一七七支部に出向いた。

 

「お待ちしてましたわ。色々バス運転士になるために大変でしょうけど、一つお願いがありますの。」

 

黒子があずまを待っていた。早速お願いするのだが、それはなぜかというと、あずまの実力を確認するためだ。ジャッジメントは大きい事件現場が発生した際に、犯人がどう襲ってくるかもわからない。更に言えば、何が起きるかもわからないのだ。黒子はこの時のために備えられるよう、あずまの実力を知りたいというのだ。確かにその人の力を知っているのと知らないのとでは、大きな違いがある。論より証拠。あずまは黒子のお願いを承諾した。

 

3時間後、ジャッジメント訓練施設の体育館に集まった。それを見るべく黒子やあずまの他に、なんと涙子が来ていたのだった。

 

(相変わらず派手な服装ですこと。上着は水色でズボンは前は白で後ろは黒に3色を交わらせていますわ。)

 

あずまの派手な服装っぷりは、学園都市でも筋金入りだ。元々公共交通機関が好きなだけにその会社の塗装の色をした服やズボンを発注してもらっている。

 

「さぁ始めようか。」

 

あずまはそういうと、何かの液体を飲み始めた。

 

「何を飲んでいるんですの?」

 

「内燃車両によく使われる、軽油さ。」

 

「どうしてそんな物騒なものを飲むんですの!?体を壊しますわよ!?」

 

「昔から飲んでるけどさ、意外といけるんだよな。」

 

そういい、あずまは黒子に光のスピードで迫る!黒子の7cm手前まで接近し、右手に持っていたブレーキハンドルを振りかぶろうとする!しかし黒子はそれをテレポートで避けた!

 

(なるほど、私と同じテレポートが使えるんですのね。ならこれはどうでしょう!?)

 

黒子はそう思うと、あずまの周囲を瞬間移動し始めた!だがあずまは黒子の動いている経路を目で追っている!

 

(ありえないですわ!テレポートしてる私を目で追えるなんて!)

 

するとあずまは、予測能力が冴えているのか、なんと黒子が移動する先に回り、足を捕らえる!

 

「抜群な動体視力ですわね。どうやって習得しましたの?」

 

「俺は本当によく分からねぇ。でもな、かつて俺はサッカーやってて、キーパーをやったことがある。ほぼ完璧にボールを仕留めていたがね。最高で132kmくらいだったかな。」

 

あずまは理由を説明し始めた。彼は元々サッカーのポジションで後部を任されていたことがあり、予測能力をつけていたことがあった。それがあってか、彼は元の世界でバス運転士をしていた頃も、事故は起こしたことがない。厳密にいえば、事故を起こされたことはあるみたいだが。

 

「しかし、それでは目が疲れますわね。目を追い続けてやられるという可能性は高いですわ。」

 

「それはどうかね?」

 

すると黒子は、太ももに巻いているあの金属の針を持ち、あずまに攻撃を仕掛ける!あずまはさすがに追いすぎたか、目が疲労を起こしている。そして彼は、目をつむりながら、気配で動く!黒子が放った針は、あずまの頭上にある!そして、あずまはなんと、目をつむりながらその針を捕まえた!

 

(どういうことですの!?見えていないのに私の金属矢を捕らえた!?)

 

そうなると黒子は、あずまに30㎝ほど近づき、背中を一発蹴ろうとする!しかしこれも捕らえられた!

 

(やはりどう足掻いても敵いませんわね。)

 

「お見事な防御でしたわね。」

 

「あれがお見事なんて、俺は思ってない。俺は気配だけで攻撃を阻止しただけだ。更に言えば、こんな技は、黒子君だって身に着けられるはずだ。」

 

「でも、私が瞬間移動しているのに私の足を捕らえるって、本当に異常な動体視力ですわ。まぁいいですわ。あなたの実力はよくわかりましたわ。今回はここまでといたしますわ。」

 

お互いに一礼して終了した。実践試験から帰ろうとしたその時だった。なんとそこに来たのは、あの御坂美琴だった!

 

「やっと見つけたわ。黒子とあずま君が何をやっているのかと思ったら、やはりここにいたわ。」

 

あずまは何かポカーンとした表情だった。なぜ急に来たのか分からない。

 

「あずまさん、お姉さまにはお気をつけなさいまし。お姉さまは自分と互角の能力を持つ人間には本当に負けず嫌いな性格で勝負を挑んできますわ!私からなんとかしますから、あずまさんは一刻も早くお逃げくださいな!」

 

黒子が小声であずまに語り掛ける。美琴が何をぶつぶつ言っているのかと問い、更にあずまに勝負を強要。

 

「あんた、私と勝負しなさい!」

 

するとあずまは美琴に寄り、なんと胸ぐらをつかんだ!胸ぐらをつかまれた美琴は、地面から足が離れている!

 

「お前まだ懲りねぇのか?言ったはずだ。名前で呼べと。中学2年になってまだそれも出来ねぇのか?今のお前に、俺は勝負する気は起きねぇ。こんな突発的に強制的に勝負をさせようとして、あげくには俺を、あんた呼ばわりか?」

 

電気を帯びたあずまは、怒りに狂っていた。そしてなんと・・・あずまは美琴の頬に一発拳を入れた。美琴はその力を受け、86mも吹き飛ばされた。

 

「次俺のことをあんた呼ばわりしたら、俺の拳一発では済まないぞ?俺を怒らせたらどうなるか、覚悟しとけ。」

 

強い口調で美琴に警告し、訓練場を去っていったあずま。この状況に黒子、涙子は何も突っ込むことができなかった。涙子はあずまに呼ばれたため、何かの神妙な面持ちであずまと共に訓練場を去った。

86m吹き飛ばされた美琴に駆け寄る黒子。

 

「大丈夫ですの?お姉さま。」

 

「さっきのあずまさんとは人が変わってましたわね。何が起きたんでしょうかね・・・」

 

黒子も、戦っていた時のあずまとは人が違っていたことに驚愕していた。

 

夜、涙子の家。

涙子があずまの部屋に来る。ノックし、少しお話がしたいとの用件を言い、部屋に入る。

 

「戦ってた時のあずま君じゃなかったよ。急にどうしたの?」

 

涙子は何が起きたのかをあずまから聞き出したかったようだ。確かに1箇月近くも住んでいて、こんなにパートナーが豹変するのは、絶対に何かあったはずだ。涙子はそう思った。すると、あずまは、いずれ言っておかなければいけないのかもということで、ここに至るまでの経緯を話した。

 

「会社に入社してさ、2年目の頃だったんだよ。俺は年下の社員が本当に一人前になってもらいたいと思って、熱心に指導してたんだ。だけど同じミスを繰り返すから、俺はついに、荒らげた言葉を言ってしまったんだ。罵詈雑言の嵐よ。だがそれだけじゃない。」

 

今までの経緯を話していくあずま。あずまの目からは、涙が出てくる。

 

「俺と同期で入社した女性の社員で、俺はその社員とあるとき、旅行してたんだ。その踏切で電車が通過するのを待ってた時なんだ。そこは踏切も遮断機もないただの踏切で、俺とその社員は電車が来るのに気づいてたから、待ってたんだ。そしたら、後ろから急に押されて、女性社員は電車に轢かれてしまったんだ・・・。時速70kmで。犯人はすぐに押さえてやったけど、社員は死んでしまったんだ。無残な姿で。その女性は、俺が行き詰っていた内容を、必死に教えてくれたんだ。本当に親切で、一緒に運転士になろうって決めてたんだ。そこからだよ。俺の心の歯車が狂い始めたのは。色々物を壊しまくったり、警察のお世話になったり、アルコールにふけっていたり・・・あの事件から2年経つけど、未だに忘れられないんだよ・・・俺は今も、心にその傷が残ってるから・・・だから涙子君だって、俺がカプセルの薬を飲んでるのを知ってるんでしょ?」

 

経緯を説明したあずま。すると涙子は、あずまを抱きしめる。あずまはその気持ちを本当に分かってくれる人に出会えた、その安堵感からか、大粒の涙を流す。涙子はその大粒の涙を流すあずまを、泣き止むまで抱きしめた。同時にあずまは、

 

(これだけはお願いだ涙子君。俺がもし暴走しそうになったら、止めてほしい。)

 

そう心からお願いした。

 

翌日。彼は吹っ切れたのか、昨日よりかなりハイテンションなあいさつで家を後にした。今日は実車を使って訓練だ。いきなり運転はさせられないので、まずは指導者の運転を見る。そして自分で運転し、同時にどういうスタイルかを理解するという内容になっている。

 

研修終了後、あずまの元に、ある女性社員が寄ってきた。33歳の女性社員、その社員は、ガクトラアイドル(学園都市トラフィックサービス東のアイドル)こと、女性運転士の、二十六木由美子(とどろき ゆみこ)が寄ってきた。由美子は学園都市トラフィックサービス東ではかなりの人気者で、LEVEL4、つまり高能力者になっている。

 

「君が、噂の子安あずま君ね?よろしく。私は二十六木由美子よ。」

 

あずまは自己紹介する。すると由美子は、

 

「ねぇ、このあと予定空いているかな?一緒に焼き肉でも食べにいこ?」

 

「ちょっと由美子君。子安君が困ってるじゃないか。」

 

上司が注意するが、あずまは由美子の誘いに乗った。あずまは誘ってくれる代わりに、自分がハチロクを運転すると主張。40分後、営業所を出た2人は、ハチロクで第3学区の焼き肉屋へ。そして24分後、到着。だが実はこの姿を偶然目撃していた美琴は、自らのゲコ太携帯で、あずまと女性社員がいるところを撮影したのだった。

そう、美琴はこれを使って、いやでもあずまを勝負させに行かせようとしたのだった。

写真には、由美子とあずまが手をつないでいる写真が。

 

一方、店内では・・・

 

「しかし34歳でこのガクトラに入るとは、どうしてこの会社選んだの?」

 

「元々、バス運転士がしたかったんです。公共交通機関が好きで、いつかは人の役に立ちたいって。」

 

「へぇー。私よりしっかりしてるじゃん。あ、それと、ため口でいいよ。あずま君は34歳なんだから。」

 

「じゃ・・・由美子・・・さん?」

 

「由美子君でも、由美子でもいいよ♪」

 

なんと意気投合してしまった。入社1箇月でこんなに女性社員と意気投合は初めてだった。緊張して体が固まっているあずま。注文したお肉が届き、焼いた肉を食べると、うまい!というように、平らげていく。

 

「今日は食べたいだけ食べていいよ。」

 

由美子が優しい一言を言う。あずまは思った。この由美子、亡くなった女性社員に似ているようだと。気のせいだと思い、あずまは普通に焼き肉を食べていく。

 

午後7時。2人は解散し、各々帰宅した。




ようやくバス運転士の花形であるバスを操作し始めたあずま。一方であきらめのつかない美琴は、ついにあずまと・・・

次回 LEVEL5対決


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第6話 LEVEL5対決

実車を使って研修を終えたあずまは、営業所のアイドル二十六木由美子と一緒に、焼き肉を食べに行った。あずまは由美子の姿そのものが、かつての同期だった女性社員と瓜二つと感じるようになった。しかしその姿を見ていたのは、あの負けず嫌いな、御坂美琴だった。美琴は勝負するために、ある仕掛けをする。


夜の学園都市。自動販売機で炭酸飲料を3本分購入したあずまは、ハチロクを走らせ、涙子の家に戻った。彼はその後私服に着替え、少しの間出かけることにした。時刻は午後7時30分。こんな時間になぜ出かけるのか、涙子は心配になった。あずまはハチロクを使わず、徒歩で出かけることにした。セブンスミスト方面に向かったあずまは、炭酸飲料片手に中に入ろうとする。すると、後ろから右肩を掴まれる。誰だ?そう思い振り向くと、なんとそこには、美琴がいた!

 

「さぁ捕まえたわよ。今日こそは勝負をしてもらうんだから!」

 

「嫌だね!俺は君みたいな人と戦う気など起きねぇわ!」

 

「じゃあ、この写真ばらしてもいいのかしら?」

 

美琴が脅しをかけた。なんだと思いあずまが尋ねると、そこにはあずまと由美子が一緒に歩いているところの写真が!しかもそこには、手をつないでいるという写真が!

 

「この写真を黒子たちに見せたらどうなるかしらね?更にあんたが本当は学園都市の人間じゃないってばらしたら、あんたの人生は終わりよ。」

 

美琴の脅しの一言に、ビビるどころか、あずまはむしろ突っ込みたくなってしまう。

 

(なんかどこかで見たことのあるような脅し方だなww こんな脅し方で俺は動じると思うのかな?ww あ、でも美琴君の能力を見てみたいからな、今回は敢えて脅しに乗りますか!)

 

「ちょっとあんた、聞いてんの!?人生どうにかなっても知らないからね!?」

 

「分かった。今回は美琴君の求めに応じて、勝負を承ってやる。いいか?今回はだ。俺がその勝負に勝ったら、その写真消してもらおうか。」

 

敢えて応じる姿勢を見せる。20分後、2人は貨物の操車場に到着した。

 

「ここなら誰だって迷惑かからないし、勝負にはもってこいの場所だ。貨車があるからな。どこからでも勝負に来なさい。」

 

すると美琴は電気を帯び始める!この勝負を待っていたんだからと言わんばかりに、高圧電流を流し始める!無防備のあずまはその電流を受け流した。

 

(電撃が効かない・・・?まさか!?)

 

電流を受け流したあずまに驚く美琴。まさかあの男と!?そう思った美琴は、あずまに尋ねる。

 

「なんで無防備なのにあずま君は感電しないのかしら?まさかあいつと同じじゃないとかいうんじゃないわよね!?」

 

「あいつって、あの上条とかいう男だったか?聞いた話では右手で能力をぶっ壊してるみたいだが?だけど俺はそいつとは能力が違う。だが俺はこんなことより、美琴君に聞いておきたいことがある。あの時の俺は、精神が錯乱していて、君の頬に一発拳を入れて、推定80m以上飛ばされたんだぞ?なのになんで美琴君はそんな平然とした態度で俺に勝負挑めるのかね?」

 

自分が美琴に何をしていたのかを分かりつつ、あずまはなぜそんな勝負をしたいという気持ちでいられるのかが気になっていた。

 

「あずま君に殴られて倍返ししてやりたいという気持ちはあるけど、私はそれ以上にあずま君と勝負したいという気持ちが勝ってるのよ。」

 

「なるほど。だが、あいにく私は今精神的肉体的にも疲れが発生しているのでな、あまり時間はない。勝負は手短に済まさせてくれ。」

 

「弱気になったのかしら?その台詞を吐くというのは。あずま君が何と言おうと、私は全力で勝負するだけだから!」

 

そういい美琴は、砂鉄の剣を作り出した。あくびをしながらあずまは、砂鉄の剣かと尋ねた。美琴は、チェーンソーみたいになっているので、触れたら出血するかもと言い、あずまに接近する!あずまは身のこなしに徹する!あずまの動体視力は並大抵のものではない。振ってくる剣の特性を分析する。そしてあずまは、分析に成功した。だがあずまは敢えて泳がせ、美琴がどう攻撃してくるのか、パターンを見つけることに徹していた。

 

「ちょこまか逃げ回ったって、こいつには、こんなこともできるんだから!」

 

そういい美琴は、砂鉄の剣を鞭に変化させた!あずまはその鞭の内側に入り、美琴の持っている鞭の持ち手に一発キックを入れる!砂鉄が散りばめられていく!あずまはその後、近くにある貨車に隠れた。

 

「さぁ出てきなさいよ!隠れるなんて男気がないわ!」

 

美琴があずまをけん制する!あずまはというと、貨車の下に入り、コンテナを積載する部分に捕まっていた!偶然にも貨車はつながっており、そこから伝って逃げようとしたのだ。だが車止めに足が当たってしまったか、音を鳴らしてしまった!

 

「そこにいたのか・・・逃がさないわ!」

 

あずまが逃げようとしたが、手を掴まれてしまった!

 

「電流は打ち消せても、感電してしまえば終わりよ!」

 

そう言ったが、あずまに流した電流は全て熱として捨てられてしまっている!それどころか、手がどんどん熱くなってきている!

 

「どういうことよ!あずま君の手はどうなってんのよ!?」

 

「君は知ってるか?電車では古くから使われてきた制御装置、抵抗制御を。」

 

抵抗制御。美琴はそれを初めて聞いたため、分からなかった。あずまは抵抗制御についての説明を始める。

抵抗制御とは、電車では古くから使われ続けてきた制御装置で、電車はモーターに電気を流して走行する。しかし、そのまま高圧の電流を流すと、モーターは焼損してしまうため、変電させて、少量の電流だけをモーターに流す。余った電気は全て熱として捨ててしまうのだ。あずまはその制御装置と同じ方式の技が使えるのだ。

 

「だから君の電撃でも、俺には効かないってわけよ。さぁもういいだろ?俺は疲れてんだ。君と勝負する時間はない。」

 

だがその時、

 

「おい、こっから声がするぞ!」

 

操車場の作業員と思しき人たちが声を聞いて駆け付けた。見つかるとまずいと思ったあずまは、美琴をお姫様だっこした!

 

「ちょっと、どういうつもりよ!?」

 

「少々手荒だが、我慢してくれ。」

 

そういうと、ポケットから透明の筒を出し、軽油を飲み込んだ!

 

「美琴君。俺に電気を流してくれ。」

 

あずまはそういい走り出す。美琴はあずまにしがみつき、不本意ながらも電気を流し始めた。すると、徐々にスピードを出し始めた!抵抗制御は、ある一定のスピードになると、スイッチを閉じ、スピードを徐々に上げていく。これは界磁弱めでスイッチを閉じていくという方式だ。

 

美琴は顔を赤くしながらしがみついている。14分後、第七学区、学舎の園に到着した。あずまはかなり疲弊してしまっている。美琴は大丈夫かと尋ねる。ここまで疲弊し切っているあずまは初めて見たようだ。あずま自身も、ここまで息を切らしたのは初めてのようだ。

 

美琴を寮の近くに置いたあずまは、息を切らしながら、よろけながら、涙子の家へ向かった。午後9時。涙子の家に到着したあずまは、すぐ部屋に戻り、入浴した。その後彼は、夕食を食べずに部屋でぐっすり寝たそうな。

 

午前8時。この日あずまは休みのため、ジャッジメント一七七支部に向かった。そこには、黒子、飾利と、もう一人の女性がいた。

 

「あなたがバス運転士の、子安あずま君ね。私は固法美偉。よろしくね。」

 

眼鏡を装着しているこの女性は、固法美偉。黒子の先輩だ。あずまは少しばかり驚いている様子だ。無理もない。見たこともないのだから。

 

「さっそくだけど、あずま君には巡回に行ってほしいの。今後巡回するというのも仕事に入ってくるから、今から研修しておけばいいと思うわ。じゃあ、初春さん、お願いします。」

 

飾利は返事をした。あずまは飾利にお願いし、一緒に巡回へと向かった。一七七支部には巡回する範囲が決まっており、その範囲を巡回するが、ただ巡回すればいいというわけではない。道を覚えなくてはいけない上、その管轄する巡回範囲内を走る路線も覚えておかなくてはならない。また、どこがどのお店というのも覚えなくてはいけない。あまり分からない人からすれば、人に聞くのが最終手段となるためだからだ。

 

30分後、あずまと飾利は、あるお店に寄った。名前は、「海浜スクリーンシール」だ。あずまはネーミングセンスに疑いを思った。スクリーンシールをとっさに訳すと、何か聞いたことのある地名が浮かんだ。そんなことを考えていると。

 

「あずまさん?急にぼーっとしてどうしたんですか?」

 

飾利はあずまがぼーっとしていたことが気になり、話しかけてしまう。ふっと覚ますあずまは、飾利に何かと聞き始める。

 

「ここ、人気のケーキがおいてあるお店なんですよ。これです。しじみケーキです。しじみって、独特のにおいが発生すると思うんですけど、それを消して、でもしじみの味は残しているという新種のケーキです。私が出しますから、食べましょう!」

 

「でも、今は業務中だぜ?」

 

「大丈夫ですよ。」

 

そういわれ、渋々食べることに。テーブル席で食べると、今まで食べたことのないケーキだと実感するあずま。スプーンの勢いが増す!

 

「確かにしじみの味は残ってるね。においがないから、これならいけるわ!」

 

そのあずまの姿を見た飾利は、なぜかあずまがかわいく感じてしまった。だがその時、

 

「なんか遅いと思ったら、こんなところで油を売っていたとは、呆れましたわ。」

 

黒子がいた!目は怒りモードになってしまっている。2人の体がすくむ!そして2人は強制連行。

 

一七七支部。

戻ってきた3人は、今回の研修を含め、次回の研修についてを話し合った。そしてさきほどの路線。各路線のルートが載っているマップを渡される。

 

「まぁ、あずまさんだったら、こういう交通機関系については詳しいでしょうから、すぐに覚えられると思いますよ。」

 

飾利が一言付け加えた。期待を裏切りたくない、そんな決意が固まったあずま。そして3人は、今日の研修はここまでという事で解散した。

 

一七七支部を後にしたあずまは、徒歩で涙子の家に帰宅しようとしていた。すると道中で、財布を無くしたと叫んでいる中学生に会った。黒い髪に少し噴火しているような頭、ワイシャツは飛び出ていて、ズボンに入っていない。その姿は、何を隠そう、上条当麻だった。

 

「何かお困りですか?」

 

そう声をかけると、当麻はあずまに事情を説明し始める。これは大変だと思ったあずまは、すぐさま捜索に入った。捜索に入ったあずまは、どこに落としたのか、今どの道中かを尋ねた。この日はどうやら、買い物からの帰りだそうで、そのお店からさかのぼって調べることにした。しかし、探しても未だに見つからない。あずまは、能力を発動する。すると、

 

「もしかして、さっきスーパーに行ったとき、落としたと思うんですが。」

 

あずまは当麻に聞き、さきほどのスーパーに入る。店員に尋ねると、当麻の財布が出てきた!財布は貴重品だ。無くしてしまうと大変なことになってしまう。

 

「ありがとう。ところでお前は、何者?」

 

「私はバス運転士兼ジャッジメント協力者の子安あずまです。」

 

そう紹介すると、あずまはその証明するカードを提示する。

 

「俺、昔から運悪くてさ、こういうことしょっちゅうあるんだよな。俺もよくよく運のない男だな。」

 

「それは俺も同じさ。学園都市にかなり最近に入ってきた新人なんですけどね、前は他のところでバス運転士やってたんだよ。だけど、客からクレームが毎日来るわ、バスになんか知らないけどキッズたちがボール当ててしまったり、挙句にはスケボーで制動効かずにぶつけられたこともあったからね、私もよくよく運のない男だな。」

 

「そりゃバスはお客さんと近いだろ?それに事故の頻度も電車と違って多いからな。」

 

話が進むあずまと当麻。2人は当麻が住んでいるマンションまで行った。

 

「ありがとな!あと一つ気を付けてほしいのが、最近電撃をぶっ放すビリビリ中学生がいるから、気を付けろよ。」

 

あずまは、美琴の事かと察した。そんなこんなで2人は解散した。

 

(上条当麻・・・あの男がか。なかなかいい男だったな。)

 

(子安あずまか。あいつならあの御坂の暴走を食い止めてくれるだろうな。期待してるぜ。)

 

涙子の家。帰宅したあずまは、お土産にと買った、あのしじみケーキを涙子に上げる。

 

「どうしたの?」

 

「これね、しじみケーキって言って、せっかくだから涙子君にも買ってあげようかとおもったのさ。」

 

涙子は何だかうれしかった。早速開封すると、円柱にしじみが4地点もあるのだ。食べると涙子は、おいしいと叫ぶ。そして涙子は、あずまに、口を開けてといい、ケーキをあずまに食べさせた。これはまさにカップルというか、なんというか・・・

いつもの夜を迎えたあずまは、今日はコーラを2杯ほど飲み、眠りについた。




ジャッジメントの研修が始まったあずま。バス運転士も大変だが、学園都市の人間として、倦まず弛まず頑張ることを決意した。だが早速、あずまにミッションが発生する。

次回 都市伝説と1st mission


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第7話 都市伝説と1st mission

涙子たちは都市伝説をファミレスで話していた。しかし内容がお粗末なものだったものであるため、雰囲気はぶち壊しに。そんな中、事件が発生する。


あるファミレス。美琴、黒子、飾利、涙子、あずまは5人で、ブラックシートに被りながら、都市伝説を話していた。

 

これは、先輩の友達の彼氏が、実際に見たという話だ。ある蒸し暑い夏の夜、その彼氏さんが、人気のない公園を通りかかった時のこと、ある女性に、駅までの道を尋ねられた。その彼氏が、快く道順を説明していると、どこかうつらな女性が、ふわーっと手を挙げ、突然がばーっと、

 

ブラウスを脱いだという話だ。

 

涙子がその話をしていたが、雰囲気が破壊された。

 

「って、全然怖くないじゃん!!」

 

美琴がブラックシートが起き上がって言った。黒子がその次に、雰囲気を作ってもそんな話をしてはまったく怖い要素がないと両断してしまった。涙子は実際に実現したら怖くないのか?と話した。美琴は怖くないと言い、それは変質者だと指摘した。

するとあずまは、以前いたところの都市伝説を話す。それは、2004年にネット社会を騒がせた、「きさらぎ駅事件」だ。

 

「これは、2004年に発生した、ある奇怪な事件の話だ。ある掲示板に、はすみという女性が、いつも使っている電車が止まる様子がないと話し、掲示板に書き込んだ。そして到着した駅はきさらぎ駅といい、周りは草原に囲まれている。更に深夜のため、タクシーやバスはなく、家族に迎えに来てもらおうとしたが、そんな駅は知らないとはじき返され、警察にもいたずらだろと言われてしまった。しょうがないので歩いてみると、遠くで太鼓の音が、更にそれに混じって鈴が聞こえた。成す術もなくなったはすみさんの書き込みに、ネットの方は駅に戻れと言うが、はすみさんはそれを無視。更に太鼓と鈴の音が徐々に近づいてきた。そのまま歩き続けたはすみさんは、伊佐貫トンネルと言うトンネルに近づいた。そして勇気を振り絞り、トンネルを抜けようとして、書き込みはストップ。25分後、トンネルから出たはすみさんは、前に人がいたため、近くの駅まで送ってもらう事をお願いした。その方は親切な方で、ビジネスホテルがあるという紹介もしてくれた。ネットは落ち着いたが、さっきからどんどん山の方に向かっていて、運転士も一切話しかけてくれない。そしてバッテリーが切れたため、この書き込みを持って、掲示板から姿を消しました。そしていまでも、そのはすみさんの生存は、分かっていません。」

 

この話を聞いた4人は体がすくむ。

 

「はすみっていう女性は大丈夫なの!?」

 

「今でも見つかってないって、まさか亡くなってたりするとか!?」

 

4人がざわつき、いろいろな考察をし始めた。

 

「まぁまぁ、落ち着きなさい。これは、俺がここに来る前に起きた出来事であってな、今、学園都市では起きてないだろ?」

 

場を収拾させようと頑張っているあずま。そんな5人のところに、黒子から連絡が入った。黒子の表情が険しくなる。黒子が飾利、あずまを招集し、現場へと向かった。

 

事件は第二十二学区の地下街の駐車場。ハチロクを走らせてきたあずまは、黒子と飾利を地下駐車場に向かわせ、あずまはハチロクを待機させていた。

地下駐車場。そこには、車上荒らしをしていた男1人組を発見した。黒子が最初に飛び出し、あの台詞を吐く。

 

「ジャッジメントですの。器物損壊および窃盗の罪で拘束しますわ。」

 

そういい、黒子は犯人近づいたその時、後部座席のドアが突然開き、黒子を吹っ飛ばす!後ろにいた飾利が止めようとするが、スタンガンで気絶させられる!男3人は別の車に乗り、地下駐車場を後にした。

 

音を聞いたあずまは、ハチロクを追跡体制に入れていた。そして、出てきたのはRX-7!急加速させ、車を追っていく!

 

地下駐車場では、黒子が飾利を起こそうとしていた。意識を取り戻した飾利だが、ここでは少し前の犯人を追い詰める件について、その動きの衝突が発生した。

 

「大体いつも白井さんはそうじゃないですか!無茶して独断先行ばっかり!だから始末書の数が減らないんですよ!」

 

「聞き捨てなりませんわね!私がいつ独断先行を・・・」

 

「いつって、いつだってそうじゃないですか!今回だって応援が来るまで待っていればよかったのに!」

 

応援が到着するのを待って追い詰めたい飾利と、犯人を逃がさないために独断で向かいたい黒子の意見の衝突が勃発。

 

一方その頃、あずまはというと、ハチロクで犯人を追跡していた。

 

「後ろから追っかけてる奴って、あの子安あずまって男ですよ!?ハチロクの使い手と呼ばれている恐ろしい走り屋ジャッジメントですよ!?」

 

「だが、奴の乗っているハチロクは非力だ。俺らのRX-7とは比べ物にはならない。こっちは上り坂に強いんだよ!」

 

犯人は上り坂のある第十三学区方面へ逃走した!奴らはハチロクが非力であることを知っている!上り坂には弱い。つまり上り坂で振り切るという作戦だ。あずまにはこの作戦が読めていたようで、追跡中に作戦を練っている。

 

(やはりあいつらは上り坂に持ち込む作戦か。確かあの上り坂となるところには、そこにつながる回り道があったはずだ。つまりそこに行けば、奴を倒せる!)

 

あずまはこの作戦で行くため、犯人の行く道を先回りしようという作戦だ!あずまは犯人の行く道路からそれ、すぐ先のわき道を通っていく!片輪走行で900m走行!そして犯人は予定通り坂道のある道へ!犯人はハチロクに驚き、急ハンドルを切ったが、ガードレールに激突してしまう!

3人を引きずり下ろし、ガードレールの円柱部分に縄を3人ごと縛り付けた。

 

その頃、一七七支部には、飾利と美偉、そして涙子がいた。そこには黒子の姿がなかった。その時、電話が入る。

 

「あずまです。第十三学区にて、地下街の車上荒らし犯人、捕まえました。アンチスキルには、連絡済みです。」

 

その話を聞いた2人は現場に急行した。13分後、あずまの元に2人が到着した。

 

「お疲れ様です。犯人はそこにみんな縛り付けられてます。ガードレールにRX-7を物の見事にぶつけてくれましたが。」

 

「それより、あなたのハチロクという車は大丈夫なの?」

 

「大丈夫ですよ。」

 

美偉は驚いた。なんで犯人を仕留めることが出来たのか。というかどういうテクニックを使ったのか。飾利は思った。もはやこれは何でもありだ。と。

 

「さぁ聞かせてもらいましょうか。なんでお前らは地下駐車場であんなことをした?」

 

そう聞くと、犯人は黙り込む。するとあずまはガードレールを蹴る。

 

「どうなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

険しい表情で蹴り続けるあずま!見かねた飾利が、あずまの体を抑え、どうにか冷静にと言うが、あずまはかなりお怒りの様子。すると、

 

「あるゲームをやっていたからだよ。それで実際にやったら、面白くなってよ、お金まで手に入るというのだから止められなかったんだ。」

 

犯人の1人が自供すると、あずまは先ほどよりも大きい怒りを感じるようになった。危ないと思い、体を必死に押さえる美偉と飾利。あずまの異常な力についていけない。

その時、アンチスキルが到着した。

 

到着した際に出てきた黄泉川は驚いた。RX-7がかなり無残な状態になっていることを。

 

「君がハチロクという車で犯人を追い詰めたのか。」

 

「ええ。だって私、昔は走り屋やってたんですよ。」

 

そういう黄泉川はもっと驚いた。犯人3人組は護送車に乗せられ、連行された。

 

その頃、常盤台中学の寮208号室。黒子がベッドに口を当て、何か嘆いている。美琴はそれにイラついてきたのか・・・

 

「あーうっとうしい!あんたね、そんなに気になるならとっとと初春さんと仲直りしてきなさいよ!」

 

黒子が渋々拒否のような反応をすると、美琴は、このまま行けば、飾利は本当にコンビを解消される可能性が高いと警告した。黒子は・・・

 

「それぐらいで終わるなら、所詮その程度の関係だったってことですわ、」

 

美琴は疑問に思った、飾利と黒子は性格が違う。なのになぜコンビを組んでいるのか。それは、ある誓いがあったからだった。銀行強盗の事件の後、まだ小さい飾利は、約束することを誓った。己の信念に従い、正しいと感じた行動をとるべし。自分の信念を曲げず、黒子のようなジャッジメントを目指すと。黒子もお約束を守りたいと言った。そして、黒子と飾利で、一人前になろうという約束を交わしたのだった。

 

それを聞いていた美琴は、

 

「へぇー。いい話じゃん。」

 

とは言ったが、黒子の表情が何かこわばっていることを感じた。黒子はその約束だったのかと気づいた。黒子は美偉からの連絡を受け、RX-7が事故を起こしたという現場に向かった。現場を見た黒子は、

 

「本当にハチロクで仕留めてしまうなんて、これはもはや次元を超えていますわ。何があったか説明してくださいまし。」

 

「奴らが、この上り坂の方向に、向かおうとしてたんだ。俺のハチロクが非力だっつう事を知ってたのかもしれないけど、俺はそれで感づいたよ。先回りしてやるってね。だからここから出てきて犯人を仕留めたんだが、犯人がハンドルを切ろうとしたみたいなのか、そのガードレールにものの見事にぶつけてくれたわけよ。」

 

黒子は大きなため息をつく。現場検証が終了したのは午後3時。涙子の家に向けてハチロクを走らせるあずまは、かなり疲弊しきった表情で戻っていった。

 

だが、このハチロクを操る子安あずまを、気にくわない人物がいたのだ。

 

ある男の家。

部屋を真っ暗にしていた男は、爆弾の開発をしていた。

 

「子安あずま、貴様は終わりだ。」

 

そういい男は、パソコンを閉じた。そして、子安あずまの写真に、ダーツの矢を投げる!

 

涙子の家。

帰宅したあずまは、着替えて入浴をした。15分後に出たあずまは、なぜか咄嗟に、涙子を抱きしめた。涙子もどうしたものかとあずまに聞く。すると、

 

「お願いだ。ちょっとだけこうさせてくれ。」

 

5分後、抱擁を解いたあずまは、涙子に尋ねられた。

 

「どうして、急に私を抱きしめたの?」

 

「あのさ、涙子君の前でかなり大粒の涙を流した時あったじゃん?あの時ってさ、俺があの事故に巻き込まれたというところでおかしくなったって話したんだけど、実はさ、俺の就職した会社でね、その亡くなった同期の女性とさ、瓜二つの人がいてさ、またおかしくならないかなぁって心配になってたんだよ。だから急に抱きしめないといけなくなっちゃったんだ。ごめんね?気分悪くしてたら。」

 

すると涙子は、

 

「決めたでしょ?私はあずま君の力になりたいって。だから、何か精神的にやばいことがあったら、私に相談してね。他の人に相談してもいいから。」

 

そういわれて心を打たれたあずま。すると、飾利から連絡が来た。

 

「初春です。今お時間よろしいですか?」

 

「いいよ、どうしたの?」

 

「実はお願いがありまして、明日、一七七支部に急なお願いなんですけど、来ていただけますか?」

 

「ちょっと待ってね。」

 

すると、あずまは仕業表を見る。

 

「14時に退勤するから、16時あたりに行けると思うんだけど。」

 

「そうですか。実は、ジャッジメントの定例会議がありまして、それに明日、あずまさんにご出席していただきたく連絡を差し上げました。なんでも、新しく入った方なので、出席いただきたいとのことなんです。」

 

「そうか。じゃあ出席できるけど遅れるかもしれないということをお伝えお願いできるかな?実は明日、ちょっと営業路線やったあと、特定輸送やらなきゃいけないから。」

 

そう言って、あずまは電話を切った。ジャッジメントとして一人前に育てたい、そしてガクトラの社員の熱意、それを背負わなくてはいけないあずまは、明日も忙しい朝を迎える!




ジャッジメントの初仕事をこなしたあずま。しかしあずまを気に食わない男がいた。その男がとった行動に対し、あずまはどうするのか?

次回 ハチロクの実力者、2nd mission


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第8話 ハチロクの実力者、2nd mission(前編)

ジャッジメントの仕事に慣れ、更にバス運転士として本格デビューして1箇月が経ったあずまは、ある事件に見舞われてしまう。更に追い打ちをかけるように、2つの事件に見舞われるジャッジメント。
この事件にあずまは・・・


朝。

出社時間に合わせて車を動かそうとしたあずまは、自分の車にある男がいるところを確認。だが、いつもと様子が違う事から、あずまは・・・

 

「何か私の車に御用ですかね?」

 

そう尋ねると、男は、ハチロクが気になってしまったものでと言い訳をするが、あずまは見逃さなかった。なぜ窓ガラスが割れているのか。それを聞くと男は逃げる!

何をしていたんだ?そう思っていたあずまは、ドアを開けようとする。するとぬいぐるみが置いてある。するとそのぬいぐるみが縮む!異変を感じたあずまは、とっさにぬいぐるみを持ち、バントキックでぬいぐるみを上空に蹴り上げた!するとぬいぐるみは爆発した!

 

爆発に驚いた住民は外に出る。上には爆発した痕跡が。それを見た住民はあずまに何かあったのかと聞く。涙子も緊急事態に慌てて外に出る。

 

7分後、ジャッジメントが緊急出動し、到着した。

 

「何があったんですの?」

 

「俺のハチロクに爆弾しかけた奴がいた。男はこの道を常盤台中学方面に逃走した。幸いけが人はいなかったんだが・・・肝心のコックピットは窓ガラスやられたよ。これじゃ直せやしない。」

 

怒りをあらわにしたあずま。黒子が気を利かせたのか、あずまは早く出勤するよう黒子に命じられた。バス運転士になって1箇月。ここで一度の休みを入れるわけにはいかないのだ。あずまは黒子に自分のスマホを渡して急いで会社へと向かった。幸い2時間前に家を出るという日課になっているからか、出勤10分前に到着した。

 

「おはよう。あずま聞いたよ。君の車が爆発されそうになったんだって?」

 

「はい。幸い車がやられることはなかったんですが、運転席側の窓ガラスがやられてしまいまして・・・」

 

「学園都市、ここは十九学区であっても、何が起きるか分からん。運転も重要だが、細心の注意を払う事も仕事のうちだぞ。」

 

今日の研修担当者に一発背中を押されたあずま。しかしあずまは、何が起きるのか気が気でならなかった。運転士の仕事は、お客様を輸送するだけでなく、事故の芽を摘むことが必要だ。それを改めて実感したあずまだった。

あずまはこの学園都市に来てからハチロクの人気が高いことにより、自分の車を狙う人がいる可能性があることはうすうす気づいていた。しかし今回は不意に起きてしまったためにこのような事態が起きてしまった。

 

「認めたくないものだな。私の若さゆえの過ちというものを。」

 

34歳の自分がこんな過ちを犯してしまったことを後悔している。こんなはずじゃなかった・・・

ジャッジメント一七七支部に入っても同じことになった。

 

「今回はいくら不意とはいえ、事態が起きることへの危機的意識が欠如し過ぎてますの。あずまさんはバス運転士なんですよね?バス運転士なら事故の芽を摘む。そう教えられているはずではありませんの?」

 

黒子に叱られるあずま。

 

「まぁまぁ。今回は不意だったけど、最近はそういう犯罪を防止するシステムみたいなものがいろいろ開発されているから、そういうものにも少し目を向けてみたらどうかしら?」

 

美偉が場を丸く収め、更に防犯システムに目を向けてみればと提案。

あずまはまた、

 

「認めたくないものだな。私の若さゆえの過ちというものを。」

 

という台詞を吐いてしまう。

 

「34歳で若いんですかね?」

 

「さぁ?でも私たちよりは、歳は上ですわよ。」

 

小声で飾利と黒子が話す。だがあずまが勤務している途中で、事件が起きてしまったようだ。それは、第一八学区で発生した爆発事件だ。一八学区では、BRTのバス停で爆発が起きた。幸いバスがいなかったことや、待機していた客がいなかったため、けが人や死者が出なかった。実はこの事件の前日、第二二学区の地下街で、爆発事件が起きた。この爆発事件では、16人がケガをした。幸い死者はでなかった。

 

「あずまさんのハチロク爆破事件と、二二学区の爆発事件、そして一八学区のバス停爆破事件。何か関係はありますかしら?」

 

するとあずまは、急に一七七支部をとび出した。向かった先は、涙子の家。ポストの中を見ると、そこには、15.86と書いてある紙が。いったい誰が?そう思ったあずまは、一七七支部に急いで戻る。

 

「急に抜け出すって何かありますわ。心当たりが。」

 

「ねぇみんな。今、涙子君の家を見てきたんだが、ポストに身に覚えのない数字があったんだ。」

 

そういい、15.86と書いてある紙を見せる。

 

「見知らぬものが入っていたから、もしかしたら関係あると思って持ってきてみたんだ。」

 

だが、これを見ても分からない。事態が収まるまで、あずまはしばらく、ハチロクを休車扱いにすることを決めた。

5日後、今度は第七学区の七福神商店街にて爆発事件が発生した。これにより、七福神商店街の屋根が崩壊。3人が死亡するという大惨事が起きた。

 

「今回は大変だわ。まさか3人亡くなるなんて・・・」

 

「ん?ちょっと待って。なんか変だぞ。ここだけちょっと重力がおかしい。もしかしたら犯人は、重力を使った爆発を引き起こしたんじゃないかな?」

 

あずまが推理する。どういうことかというと、アルミの爆弾を使ったという事になる。

 

「グラビトン・・量子変速というわけですか。しかしもしグラビトンだとしたら、重力子の加速が衛星に観測されるはずですわ。」

 

黒子が見解を言う。するとあずまが黒子を一七七支部に連れていく。黒子は驚く。渋々ついていく黒子。あずまがパソコンを操作し、衛星につなぐ。すると重力子の加速が観測されていた。つまりシンクロトロンによる、アルミを使った爆発が行われているという事になる。そして書庫でシンクロトロンのつかえる人物を調べると、1人が判明した。しかし、行動記録を調べるとアリバイがあるため、不可能と言える。

 

「しかし変だな。BRTの爆発が起きた1日前にはあの地下街で爆発があったのに、5日たった今日に七福神商店街を爆発させるとは、犯人もすごいことを・・・」

 

するとあずまは何かひらめいた。するとあずまは、学園都市の一七七支部が管轄するマップを取り出す。爆発があったところを鉛筆でチェックし、分度器と定規で図る。すると、あずまは分かった。黒子に至急全員を集めるよう指示。

 

「犯人の動きが分かりました。5日前、私が涙子君の家にポストを見に行った時、私は、15.86と書かれた紙を持ってきましたね。犯人は、BRTのバス停で爆発が起きたその前日に、二二学区の地下街を爆破させました。そして5日経った今日、七福神商店街で爆発を起こしました。分かったことがかなりあります。

一つは、直線距離。二二学区の地下街からBRTのバス停までは、約16km。そして、このバス停から七福神商店街までも、15.86km。そして、1日開けて、今日5日開けて爆発。犯人は、七福神商店街から15.86km離れた、セブンスミストを狙う可能性があります。それも、8日後に。」

 

「どういうこと?」

 

「15.86kmの小数第1位と第2位を見てください。86。86はハチロクのことです。そして十の位と一の位を見てください。1と5。私はよくわからなかったんですよ。何を考えても。しかし、あることから私はついにわかりました。アルファベットです。」

 

そう言ったあずまは、タブレットを出す。

 

「ここで話が逸れますが、この蒸気機関車は、D51と呼ばれる機関車で、今でも人気の機関車です。なんでDというアルファベットがついているか。それは、動輪が4つあるからなんですよ。Dは、Aから数えて4番目。つまりこれと同じ法則を使ったんです。つまり、15.86kmの1と5は、AとE。つまり、AE86のことを意味していたんです。また、犯人はこの軌道から、雷マークのルートを描こうとしています。」

 

「だとしたら、あずまさんのハチロクが狙われていたというのも・・・」

 

「ええ。私を殺すという予告みたいなものでしょう。」

 

あずまの推理を聞いていたジャッジメントの3人は、犯行を阻止するための手立てを考えて居た。3時間後、4人は解散した。

 

涙子の家。

 

「お疲れ。大変ね。あずま君のハチロクは狙われ、爆発が起きて、もう何が起きるか分からないよ。初春から聞いたんだけど、もしかしたらあずま君、狙われてるんだって?」

 

「ああ。だが今の状況では、犯人がどう動くか分からない。だが、見える。敵が、いや、犯人が見える。絶対にこの借りは、必ず返してみせる。」

 

本気になったあずまを見ている涙子は、その調子だと背中を押し、気が済むまで相手を追い詰めてやれと後押し。あずまは犯人を捜すため、これ以上に躍起になるのだった。




あずまのハチロクが狙われ、更には15.86キロ置きに事件が多発。犯行が行われるだろう時間と場所が割り出された今、犯人を追い詰め、犯行を阻止することができるのだろうか?

次回 ハチロクの実力者、2nd mission(後編)


お詫び
今回は長くなりそうなので、前後編方式とさせていただきます。ご迷惑をおかけいたしますが、後編は首を長くしてお待ちください。


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第9話 ハチロクの実力者、2nd mission(後編)

バス運転士のあずまが出勤しようとした瞬間、愛車のハチロクが爆発される寸前までに追い込まれた。ハチロクは幸い壊れなかったものの、コックピット部分のスライドガラスは破損。更に二二学区の地下街、十八学区のBRTバス停、第七学区の七福神商店街が爆発。更に涙子の家には、15.86と書かれた文字が。
それらからあずまは、次の犯行が行われる可能性がある場所と日付を断定することに成功した!

果たして、犯行を阻止できるだろうか!?


一七七支部の会議室。ここには一七七支部のメンバー全員がいた。ここの会議室では、今回の発生した事件の特別捜査本部的な何かが行われていたのである。

 

今回の事件で使われた爆発物の遺留品をスクリーンに映していた。

 

「地下街の爆発、学園都市BRTのバス停爆発、七福神商店街の爆発、いずれも爆発物に共通点は見つかりません。更に、子安氏の車両を爆発させようとした事件でも、共通点と見られるものもありません。」

 

美偉が話す。そう、この事件には、グラビトンで扱われた事件以外の共通点が見つかっていない。しかし・・・

 

「犯行についての共通点が見えてきたみたいだが?」

 

捜査官と思われる人物が質問をする。それに立ち上がり、答えるのはあずまだ。

 

「はい。私が住んでいる家のポストを確認したところ、その犯人かは定かではありませんが、15.86という文字の書いた紙が投函されていました。最初の地下街爆発、その翌日に学園都市BRTの停留所爆発、5日後に七福神商店街の爆発。そして爆発した地点から地点までの距離、これらはすべて、15.86という文字が引き起こしたものと考えています。」

 

そう話すあずま。いずれにしてもアンチスキルとの連絡は密にしなくてはならない。今以上に緊迫している学園都市。

 

会議を終え、巡回をしているあずま。犯人の標的がセブンスミストであるとするならば、グラビトンを使える人物が犯人だが、それをできる人物はアリバイがあったため、犯行を企てることができない。すると、あずまは、あることを思い出した。それは、美琴たち4人と集まった時に話した、あの都市伝説だった。

風車が逆回転すると街に異変が起こるという伝説や、どんな能力も効かない能力という伝説以外に、もうひとつ、レベルアッパーというものであった。

レベルアッパーは、能力のない人でもレベルアップすることができるという、ゲームではチートと呼ばれるものであるが、それが行われているのではないかという可能性がでてきたのだ。だが、これを話してもソースがこれでは誰も賛同しない。そう思ったあずまは、ある賭けに出たのだ。

 

ある朝。この日は公休だったため、セブンスミストに向かってハチロクを走らせた。すると、ある男に目が止まった。一見何の変哲もない学生に見えるが、あずまには何かおかしいという感覚に縛られている。男が向かったのは土手。そのまま追っていく。橋の下に向かったため、ハチロクを降りると、なんとそこには、暴行されているあの男がいた。2人がその男の財布からお金を盗る。

 

「出世払いで返すと言ったろ?」

 

「とにかくここから逃げねえと、ジャッジメントの奴らが来るぞ。」

 

「ジャッジメントなんて、何か起きねぇ限りは動かねぇよ。」

 

するとあずまは、

 

「そのジャッジメントの人間ならここにいるぜ?」

 

「誰だ!?」

 

2人は驚く。するとあずまは、空中宙返りして登場した。

 

「悪いが、お前らのやっていることは、アウト·オブ·眼中にできないんでな。そのスッたお金を返してもらおうか。」

 

すると2人は、あずまに向かって殴ろうとしてきた。あずまは背負い投げと大外刈りで成敗した。

 

「次その行動が俺の目に止まったら、ただでは済まされないぞ。」

 

といい、あずまは盗った少年のポケットからスられたお金7000円を取り、男に返す。すると男は、何も言わないまま、お金を無理やり取り、その場を後にした。すると男は、端末と思われるものを落としていった。それを回収したあずま。何が起きているのか、あずまは大変と思い、急いでハチロクに戻った。

 

(この端末、一見音楽プレーヤーっぽいが、この音楽プレーヤーに何かあるのか?それを聴いて何かあるのか?とにかく一七七支部に直行しないと!)

 

レッドゾーンまで回して、最高速度を超えるスピードでジャッジメント一七七支部へ向かった。

 

ジャッジメント一七七支部では、あずまを狙った犯行の視点で引き続き捜査が行われていた。そんな中、突然現れたあずまに一行は驚く。

 

「あら?今日は非番ではありませんの?」

 

「とにかく調べたいことが。パソコンを貸してくれ。」

 

あずまの依頼に驚きながらも承認する黒子たち。あずまがUSBを自分の携帯とパソコンに接続をさせる。画像で出したのは、暴行を受けていたあの男だ。あずまは13秒間の動画を録った後、暴行をしていた男2人を成敗。まずはこの暴行を受けていた男を書庫から徹底的に洗い出す。

 

「何を調べているんですの?」

 

「この男が暴行されていてな、俺が止めに入った後にこの音楽プレーヤー落としてったんや。一見普通の音楽プレーヤーに見えるけどなんか思うんだよな。ただ事じゃないって。とにかくこの男がどういう奴か調べないと。」

 

とのことから、動画にある男の顔部分をスライドさせ、拡大させる。その後、書庫にアクセスさせる。すると出てきたのは、その男に関する情報だ。

 

名前は介旅 初矢(かいたび はつや)。レベル2で、量子変速。ということは、シンクロトロンを使えるという事は、もしかしたらという可能性が見えてきた。

 

「おそらくこの男は、音楽プレーヤーをいつも持ち歩いていたんだろう。得体のしれない音楽プレーヤーを。ただその中身が分からない。だがなんか感じるんだよ。この音楽プレーヤーから。」

 

するとパソコンに、警報ブザーが鳴った。それは、衛星の爆発的観測がされたというブザーだ。場所は、第七学区、セブンスミスト!

 

「私が初春に連絡しますから、あずまさんは、セブンスミストに向かってくださいまし!後から追いますわ!」

 

その頃、セブンスミストでは、美琴、飾利、涙子が買い物に出かけていた。飾利の携帯に、一本の電話が入った。

 

「もしもし?」

 

「落ち着いて聞いてください!今、衛星による爆発的観測がされましたの!場所は第七学区、セブンスミストですわ!今、あずまさんがそちらに向かわれましたわ!とにかくお客様の避難誘導を頼みますわ!」

 

あずまは、急いでハチロクを走らせる。爆発の感覚的には8日後に観測されると思っていた。だがその事件が起きようとしている。そしてあずまは、あることが考えられた。それは、ハチロクを爆発させたという事件だ。ということは、犯人はセブンスミストを爆発させると同時に、あずまを消そうとしているかもしれないということが考えられた。

 

5分後、あずまはセブンスミストに到着した。ジャッジメントの証明書を見せ、美琴と飾利、涙子の元に合流。急いで避難させるように通達した。その後、セブンスミスト付近にいたジャッジメントたちが到着。

場内には臨時閉店の放送が流れる。何が起きたのか分からずにそのまま避難する客たち。急いで巡回し、避難完了したことを告げる。すると黒子は、今すぐそこを離れるよう指示!なぜなら、今までの事件での死傷者は、全員ジャッジメントだ。つまり、ジャッジメントを狙った犯行であることは間違いない。更に犯人は、あずまを殺そうとしている。ジャッジメントを狙った犯行であるなら、あずまを殺すという犯行予告でもあった。すると避難に遅れていたのか、小さい女の子があずまのもとによって来る。女の子が持っていたのは、ペンギンのぬいぐるみだ。女の子曰く、男の人よりぬいぐるみを、笹の葉の色をしたお兄さんに渡して欲しいと言われたそうな。するとぬいぐるみが縮まっていく!異変に気づいたあずまは、ぬいぐるみを奪い、瞬足でぬいぐるみを外に持っていく!すると、あずまが外に投げた次の瞬間、爆発した!あずまは爆発で吹き飛ばされただけではなく、隣接していた道路に背中から落ちてしまった。激痛が走るが、なんとか立ち上がった。すると、あの男と思われる姿を発見した。後を追っていく。男は狭い路地に入り、ジャッジメントの士気が落ちるだけでなく、あずまも死んだと思い込んでいた。だがあずまはその後ろにいた。

 

「それで俺を殺したつもりかい?」

 

あずまが生きている姿に驚く男。あずまは威力は大したものと言ったが、自分以外怪我した人どころか、かすり傷負った人もいないということを話す。すると男はスプーンを取りだし、あずまに攻撃しようとしたが、あずまではなく、誰かが背後から攻撃してきた。そこには、美琴の姿が!

 

「美琴君!?どうしてここに?」

 

「あずま君がなんか追ってた感じがしたから、ついてきてみたら、まさかこんなところにいたとはね。爆弾魔さん。」

 

そう言うと男は、

 

「殺してやる、お前みたいなのが悪いんだ!ジャッジメントは使えない!更に、子安あずま!貴様は運転スキルが高いことをいいことに、古い車で、悠々と走ってやがる!そんな子安あずまを殺してやろうと想った!」

 

その呆れた言い訳に美琴がキレてしまい、頬に一発拳を入れる。あずまは男にこう言う。

 

「ジャッジメントに対して何か不満があるんだったら、その悩みを聞いてあげたいが、お前は俺を殺そうとした。そんな奴の悩みなんて聞きたくないね。」

 

そう言い離れていった。路地裏から出てきたあずまだが、突然頭を押さえ、意識は朦朧とし、倒れてしまう。

美琴があずまを起こそうとするが、反応がない。とにかく救急車を、そう思い連絡する。

 

3時間後、あずまは救急病院の中で目覚める。激しい痛みが襲う。回りには美琴、黒子、飾利、涙子、美偉がいた。目覚めた瞬間、美琴があずまに抱きつく。あずまは激しい痛みが走るなかで、皆には済まないという気持ちでいっぱいだった。あのカエル医者がくると、カエル医者は···

 

「脳波は異常ないし、レントゲン見ても、損傷してる箇所はないから、明日には退院できるね。しかし3階から落ちて傷はないって言うのは不思議だな。」

 

カエル医者が言う。あずまのゴキブリなみの生命力に驚いている。

 

「なんであの時私に言わなかったのよ!あずま君が何か

大変なことになってると思ったから、私は声をかけたのに!」

 

美琴は泣きながら言う。美琴はあずまが倒れてから、本当に心配していたのだった。だがあずまはそれより重要なことがあったのだ。犯人の素性についてだ。それを調べようとしたが、この体では動けない。飾利たちに聞く。すると、

 

「逮捕されたのは、介旅 初矢。供述によると、相当私たちジャッジメントを恨んでいたようですわ。」

 

黒子が言う。更に飾利は、

 

「話しによれば、不良たちからお金を巻き上げられていたようです。被害額は2万近く。これを続けられていたようですね。あと、あずまさんに聞きたいんですが、不良グループからお金を取り上げたみたいですけど、何があったんですか?」

 

飾利があずまに聞く。実は監視カメラに、介旅 初矢が不良から取り上げられているところを撮していた。するとそこに、あずまが入ってくるところも写っていたそうだ。

 




学園都市を散歩していたあずま。するとあるところであずまは、少し危険な人間を見つけてしまう。だがこの危険な人間は、果たして事件の元凶者か!?普通の人間か!?

次回 危険な匂い


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第10話 危険な匂い

退院したあずまは、修復したハチロクで第七学区を走っていた。しかしその道中、ある予想外な事態に直面してしまう。だがその先には、危険な匂いが待っていたのだった。


退院してから1週間後、あずまは日常に戻っていた。この日は何もないとのことで、愛車のハチロクを走らせ、第七学区を走っていた。

あずまはこの日、靴・靴下は黒、下着は緑に上着は白、別の人のマスクと、緑色のカツラをリュックに忍び込ませていた。というのもあずまは、美琴と関わりたくないからである。

操車場での脅し対決から、あずまは美琴と仕事以外で関わりたくないとした。プライベートでは何をされるか分からない。そんなあずまは、ハチロクを降りて、セブンスミストの中に入っていった。あずまが入っていったのは化粧室。その中に入り、彼は着替えた。何食わぬ顔で出てゆく。

2階の部分に出てゆくと、そこに困っていた女性がいた。変装しているあずまとて、さすがにジャッジメントに所属している以上は見過ごせない。そこであずまは、女性に何があったのかを聞くことにした。

 

「実は、自分の止めた駐車場が分からなくてな・・・」

 

聞くと、その女性は、どうやら自分が停めた駐車場が分からないそうだ。34年間生きてきて、あずま自身それは初めてだった。元鉄道員でバス運転士のあずまは、少々驚いている。

 

その頃、美琴は近くのコンビニで雑誌の立ち読みをしていた。美琴は、以前に聞いた都市伝説の話で、掲示板に、どんな能力も効かない能力と言うところにひっかかっていた。実はこれ、都市伝説ではなく、学園都市に実在している。その人物は、何を隠そう、上条当麻という人物だった。当麻は能力レベルとしてはゼロ、いわゆる無能力者だが、右手でどんな能力も打ち消してしまうという異能の力がある。実はこれも、以前に美琴が深夜、チンピラたちに絡まれていたことがあり、そこを救い出そうと当麻がやってきた。すると、美琴は誰なのかと言ってしまい、当麻の救出作戦が水の泡となった。すると、その後当麻が説教としてチンピラたちに警告を鳴らしたのだが、その際に、当麻は、

 

「よく見てみろよ。まだガキじゃないか!」

 

と失言してしまった。それがどんどん美琴の怒りのボルテージを上げてしまい、ついに怒りが爆発。その際に大きい電流が流れてしまった。チンピラたちは感電して倒れてしまったが、なんと当麻だけは、右手で電流を無効化してしまっていた。それから、美琴は絶対ありえないと思った。コンビニを出ていく美琴。そこには、道案内で聞いている、変装したあずまの姿が。あずまは美琴の姿に気づかぬまま、女性の道案内をしている。

 

道案内をしていたあずまは、まだジャッジメントの人間になってあまり経っていない。そこにツンツン頭をした、ワイシャツを出した男が来る。上条当麻だ。

 

「何かあったのか?」

 

「実は、止めた駐車場が分からないみたいなんですわ。ぜひお力添えを・・・」

 

そういうと当麻も応援に入る。

 

「何か目印になるものってありましたか?」

 

「確か、横断歩道があったような・・・」

 

「横断歩道では目印とはなかなか・・・じゃあ、ここまでどれぐらい歩いてきたか分かりますか?」

 

すると美琴は、男を呼ぶと、

 

「よっ!ビリビリ中学生!」

 

「ビリビリじゃない!御坂美琴!今日と言う今日は決着つけてやるんだから!」

 

決着を迫られている男は、上条当麻。暇か?と言い、女性の案内をあずまと一緒に行ってほしいとお願いした。すると美琴は、適当な理由で逃しているため、それは効かないとして逃がすまいと粘り強く行く。すると・・・

女性は暑いのか、なんと、ワイシャツを脱ぎ、ブラウス1枚の姿をさらしてしまっていた!嫌な予感がしたあずまと当麻、美琴は、その姿に驚いてしまう!さすがにまずいと思い、前を隠せと指示!だが、

 

「女性が襲われてるわ!」

 

「変態よ!」

 

そんな罵詈雑言が聞こえてきた。当麻は誤解だ!と言い、逃げた。危機的状況に立たされたあずまは、とにかくワイシャツを着よと指示!なんとか事態を回避できたが、こんなことになるとは思っていなかった。

 

当麻を追ったあずまは、当麻に事情を聞く。更に、マスクを外し、自分の姿を見せた。

 

「そっか。お前も俺と一緒にあいつから勝負掛けられているのか。」

 

「この前なんか操車場でやりましたからね?危うく貨車ぶっ壊しそうだったんですよ?たぶん線路に過大電流が流れて、変なセンサーでもついてなければいいんですがね・・・」

 

美琴に対しての思いを話す。2人とも美琴に翻弄されて疲れている。特に当麻は、右手の件があってか、それが未だに解決できていない。更に当麻は、あずまにこう警鐘を鳴らした。

 

「あいつはほぼ地獄まで追うぐらいの執念深さだからな。LEVEL5なら気を付けろよ。」

 

そういい、当麻は去っていった。

 

5分後、2人で一緒に女性を待っていた。あずまは変装した姿で、美琴と話していた。

 

「そういえば、あなたは誰なんですか?」

 

「私ですか?私は、通りすがりの、城陽真治です。」

 

「私は、常盤台中学の、御坂美琴です。」

 

「あー、なんかお話し聞いたことあります。常盤台中学ではエースとされている、学園都市第三位の方だと。お会い出来てうれしいです。これも何かの縁。どうぞよろしくお願いいたします。」

 

なんとか変装で頑張っているあずま。美琴と話を全部合わせている。すると美琴の携帯に、一本の電話がかかってくる。

 

「お姉さま?今どちらですの?これから初春とお茶しに行くのですけれど、お姉さまも来られますか?」

 

黒子からの電話だった。だが美琴は、なんか変な人に絡まれたと話す。黒子が何かと聞き、美琴から話を聞くと、黒子は驚く。すると涙子と飾利が騒ぐ。それを聞いていた美琴は、

 

「あのね、変わってるけど中身は普通の・・・」

 

「変わっているというのは、私の事かな?」

 

すごい目力で来た女性。美琴が驚き、思わず電話を切る。黒子から電話がかかってくるが、出られず、応答拒否をした。女性が買ってきたのは、熱いカレースープだ。

すると女性は、

 

「熱いときは温かい飲み物の方がいいのだよ。それに、カレーのスパイスには、疲労の回復を促すものが含まれている。」

 

そういうが、美琴は理屈は分かるけど気分的には冷たいものの方がいいかなと話す。女性は、若い女性はそういう選び方をするものだったと思い出し、買いなおそうとするが、美琴はそのままでいいと流す。あずまも美琴に同乗。女性は研究ばかりしているものだからと理由を説明する。

 

「研究って、学者さんなんですか?」

 

「大脳生理学、主にAIM拡散力場の研究をしているんだ。」

 

すると美琴は、人間が無自覚に周囲に発散している微弱な力の事だと思い出す。女性は授業で習ったのかと聞くと、美琴はそうと言う。

 

「人間の五感では感じ取れず、機械でないと計測できないぐらいの弱い力って。」

 

すると女性は、自身がそれを応用したものを研究していると話す。すると美琴は、能力についても詳しいのかと聞く。女性は何かを調べたいと思ったのか、美琴に聞く。美琴は、都市伝説であった、どんな能力も効かない能力なんてあるのかと聞いた。女性は、能力とはいっても色々なものがあるため、美琴に具体的なものを聞く。

 

「高レベルの電撃を受けてもなんともなかったり・・・」

 

「電撃…か。例えば避雷針のようなものを発生させ、電流をそらせるような能力とか。」

 

「そういうものとは、また違う感じなんですけど…。」

 

女性は美琴に、知り合いなのかと聞くと、美琴はあくまで都市伝説で聞いたものだからと話す。するとあずまは、自分が話に乗って行けていないと思ったのか、思わず・・・

 

「では、私からもいいですか?」

 

「君も何か調べたいことが・・・?」

 

「実はその今の関連なんですけれどもね、なんでも、高レベルの電流を流したけど、それが全部熱として捨てられているという話も聞いたんですよ。」

 

「あれ、城陽さんもそれ知ってるんですか?」

 

「私も職場で色々お話を聞いたんですよ。」

 

自分の能力を聞くという驚きの話に出た。さすがにやりすぎたかと思ったあずまだが、気づかれていないようで一安心をする。

 

「確か、電車と同じ能力だって聞いたぞ。」

 

「どういう能力なんでしょうか?」

 

「確か、電車では昔から使われていた、抵抗制御というものだったな。少量の電圧をモーターに流し、他は全部熱として外に捨ててしまうという奴だったな。」

 

「なるほど。その抵抗制御というのが、可能性は高いと。」

 

あずまはやはり自分の能力はそういうことだったのかと分かった。自分自身で使っていた能力が分からなかったのだが、ついにこれではっきりした。だが話をしている時、子供が2人、その付近を走っていた。だが、男の子がつまずき、アイスクリームが女性のスカートについてしまった。男の子は謝ると、女性は大丈夫だと言い、なんとスカートを脱ごうとする!

 

「だから脱ぐなって!!」

 

美琴とあずまが突っ込む。

 

その頃、ファミレスでは、黒子が美琴に電話をかけ続けていた。だが、つながらない。すると涙子は、脱ぎ女に襲われたのだと話すが、黒子は信じない。美琴は常盤台のエース。エースがそんなことに遭遇するはずはないと信じているからだ。

すると飾利は、脱ぎ女についての掲示板を発見、涙子に見せると、なっ!?驚いてしまった。

 

「白井さん···脱ぎ女に遭遇した人は、叫び声を最後に残して、連絡が取れなくなるって···」

 

「またそんなヨタ話を···大体お姉さまは、常盤台が誇るエースですのよ?」

 

「いや。もっと恐ろしいことが起きてるのかも···」

 

意味深な発言をする涙子。すると涙子は、脱ぎ女が伝染すると話す。それは、脱ぎ女に遭遇した人が、その呪いで、自らも脱ぎ女になるとのこと。飾利がもしかしたらと話し、あれだけ信じていなかった黒子も、恐ろしい想像をしてしまう。そして、黒子は不安定になり、頭をテーブルに激しくぶつける。更に飾利に、それを解くための方法を見つけよと指示。飾利は焦らないでくださいといい、更に涙子も、都市伝説だからと話す。

あれだけ信じていたのに、開き直るか。

 

その頃、美琴とあずまたちは、トイレの自動乾燥機能で、スカートを乾かしていた。アイスクリームがスカートについてしまったからである。美琴はスカートを渡し、あずまは外で待っている。

すると女性は、あずまのことについて話し始めた。

だがそれは、城陽真治の姿をしているあずまだ。

 

「あの方は別に知り合ったというわけではないですよ。でも、あいつに似ているというか、変わったスタイルというかなんというか。」

 

「あいつってのは、誰だ?」

 

「子安あずまって奴ですよ。学園都市に突然やってきた、なんかボロそうな車で、34歳のくせに、ジャッジメントの仕事とか、バス運転士とか、色々やってるんですよ。ちょっと表に立ちすぎなんですけどね。でも、本当はいい人なんですよ。いざって言うときには、冷静な判断ができて、分からないところには真剣に向き合って教えてあげられる、温かい人なんです。」

 

それを聞いていたあずまは、そう思われていたのだと感じる。この声を聞いたからには、自分も磨かなくてはなと思った。今まではただ生きていればいいと思っていた。だがそれは間違い。これだけ期待されたことはないと悟った。だが急に非常ベルが鳴動。急いで2人が出てきた。何があったのかはあずまは察しがついていた。更に、あずまは何かわからないが、そんな異変を感じていた。何かは分からない。だが危険な匂いがすると。

 

10分後、なんとか、駐車場にたどりつくことに成功。ここまでの時間は5時間だ。女性を見送る2人。あずまと美琴は別れようとしたその時だった。美琴があずまの肩を掴んだ。

 

「あなた、城陽真治じゃないでしょ?誤魔化しても無駄よ。子安あずま君。」

 

「なんのことかさっぱり分かりませんな。」

 

「あんたが来た時、いつもと同じ匂いがした。更に非常ベルが鳴ったとき、何があったのかを聞こうとしなかった。絶対にその能力を知ってるってことよね。」

 

美琴がそれらからあずまであることを掴んだ。正体をばらそうとする美琴。あずまは観念し、マスクとカツラを外した。どうしてそんなことをしたのかを聞こうとする。すると当麻の叫び声が。

 

そこには、当麻が無残な姿になっているところが。パックで買ったたまごが割れてしまっていた!ほぼ液体になっている。特売で買った品は水の泡。これぞ不幸な男の宿命と言うところか?

 

「さっきはよくも逃げてくれたわね!そんなときに呑気に買い物か!?」

 

「貧乏学生にとっては死活問題なんだ!常盤台のお嬢様には分かるまい!」

 

美琴は今までに起きたことを当麻に話す。するとその後にツンデレと言おうとしていたが、言葉に詰まり、顔を赤くしてしまう。誤魔化そうとして、自分と勝負せよと言った。

 

「お前またこれか?上条さん迷惑してるの気づかないか?彼は確かに右手で能力を消せるけど、だからと言ってむりやり勝負に引きずり込ませるのかいささか疑問に思うけど?」

 

「あずま君には関係ないでしょ!!これは私とこいつの問題なの!!」

 

「だからと言ってそれを見逃すと俺が思うか!?お前はその傲慢さで、上条さんがけがをしたらどうするんだ?尻ぬぐいはどうやってするんだ?」

 

「あずま、いいよ。何を言ってもこのビリビリ中学生には、伝わんないわ。そこまで言うなら、戦ってやる。」

 

あずまは呆れ果ててしまった。もう知らんと言わんばかりに立ち去る。だがあずまはその後に・・・

 

「言っておくぞ。勝手に勝負させていてもいいが、お前がどうなろうと俺は知ったこっちゃない。自分で蒔いた種だ。自分で尻を拭え。」

 

そういい放った。

 

翌朝。

常盤台208号室。そこにある女性が入ってくる。

 

「御坂。聞きたいことがある。ちょっと来なさい。」

 

「りょ、寮監!?」

 

険しい顔で入ってきたのは、常盤台の寮を仕切る寮監だ。美琴は連行される。

 

「お前、昨日ある男子中学生に勝負と言う名目で一方的に能力を放ったみたいじゃないか。報告が入っておるぞ。」

 

「えっ!?」

 

(あのバス運転士め・・・余計なことを・・・)

 

「で、どうなのだ?」

 

寮監の問い詰めにかなり圧縮される美琴。それを認めると、寮監は美琴に厳しい制裁を下した!




追い詰めた犯人から回収した音楽プレーヤー。爆発事件が発生して以降調べることができていない。改めて調べようとすると、あずまが当事者としての呼び出しを喰らう。果たしてその呼びだしをした人物とは一体?

次回 正体


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第11話 正体

あずまはグラビトン事件を起こした介旅 初矢が落としていった音楽プレーヤーの正体を掴もうとするが、様々なハプニングに巻き込まれていく。そんなハプニングを捜査していた矢先、グラビトン事件についての呼び出しを喰らった。その呼び出しした人物とは?


朝6時。涙子はあずまを起こそうと、あずまのいる部屋にいた。あずまはかなりの熟睡状態にあっているため、大きないびきをかいている。

あずまは夢の中で、以前いた世界の、かつて勤めていた、同期の女性と出かけていた。だがそれは、彼が実際に経験した、踏切事故だった。

踏切が鳴り、待っているあずまと女性の横を、男性が遮断機を越え、線路にしゃがみ込んでいる!それを助けようとした女性は、なんとあずまの目の前で人身事故に巻き込まれてしまった!女性の名前を呼ぶあずま。精神的に錯乱していたあずまは、警察に両腕を掴まれ、近づこうとするが抑えられてしまっている。

起き上がったあずまは、涙を流している。その姿に驚く涙子。涙子はしっかりせよとあずまの肩をたたく。正気になったあずまは、涙子の呼びかけに応じる。

 

「あれ?涙子君じゃないか。どうしたの?」

 

「どうしたも何も、あずま君泣いてたよ?なんか女性の名前呼んでたし。」

 

「あ・・・昔の起きたことが夢に出てきたよ・・・。」

 

「もしかして、あずま君が目の前で見たという事故?」

 

涙子は察したのだった。涙子は、あずまから自分自身が経験した事故を話されたのを思い出し、それを話す。あずま自身は何が起きたのか未だに分からなかった。

 

午前8時。学園都市BRT 末広3丁目で待ち合わせをしていた5人は、買い物しに第七学区のショッピングモールへ向かった。

 

「あるこう♪ あるこう♪ 私は元気♪ 歩くの大好き~ どんどんゆこう」

 

あずまは4人の後ろで、「さんぽ」という曲を歌っていた。4人が何を歌っているのかを疑問に思っていた。

 

「何を歌っているんでしょうか?」

 

「さぁ?聞いたことない曲だけど・・・今日、あずま君が昔起きた事故の夢を見たんだって。朝から気分どうしたのかなと思えば、かなりの開き直りっぷりだよ。」

 

それはそうだ。あずまの前向きな姿勢と言うのは並大抵のものではない。それよりか、あずまはまた派手な服装をしている。それは、黒い靴に前方は下着がオレンジ一色に上は白一色、後ろは上がオレンジ一色、下は白一色という斬新なスタイルだ。4人はあずまのスタイルにかなり気になっているらしい。

 

「そういえばあずま君ってさ、上着とか下着ってどういうスタイルしてるのかしら?いつもこの色はこの色ってセットにしてるし。というか、どうやって買ったの?」

 

美琴が聞く。

 

「これはね、俺が業者に発注したんだよ。こういう服とかこういうズボン作ってくれって。今まで撮ってきたバスとか電車の写真を業者に提出して、それをもらったら、これはこれってセットにまとめてるの。更に、何かあった時のために、スーツケース3箱にかなりストックしてあるんだ。今回の場合はそれが功を奏したのか、そういう衣服系では困らなかったけどね。」

 

あずまの答えに4人は驚愕する。ということは、もしかしたらあずまは、この先自分は違う世界に行くことを想定していたのではないか?そういう説が出た。それをあずまに聞くが、あずまはそれは全く想定していなかったようだ。あくまで緊急時とだけしかあずまも答えられない。そんな話をしていたら、買い物をするというショッピングモールに到着した。実は今回、あずまをこの買い物に誘った理由は、あずまがまだ学園都市に来て間もないからだ。それ、ジャッジメントの研修でやればいいのではと思うかもしれないが、このショッピングモールは、東京ドームの1.94個分あり、限られた時間で回るのは不可能だからだ。その研修がてらとして買い物をするというわけである。

 

「このショッピングモールは、AC-DC ナンバー7と言いまして、第七学区の住民はもちろん、私たち常盤台中学や、初春たちの柵川中学も寄り添う第七学区最大のショッピングモールですわ。地上4階、地下中2階までありますの。地下中2階はスポーツジム、地下1階はスーパーマーケット、地上1階から4階までは、サイド側にお店が並んでいますわ。真ん中は1階まで吹き抜けですわ。」

 

「なるほど。俺が昔よく行ったショッピングモールと変わらぬな。」

 

「へぇー、じゃあこのショッピングモールと同じなんだ。」

 

あずまは、よく葛飾区のショッピングモールに出かけていたようで、そこから連想したそうだ。4人はいつもあずまを不思議に思う。本当は何者なのか。素性をはっきりさせたいのは同じだ。しかし、あずまが4人と買い物に付き合っていると、何か気配がする。それは、後ろを付けられている感じがするのだ。あずまがジャッジメントでも所属している柄、恨む者も多い。それはあずまも承知している。だがここまでつけるというのは何が起きているのか?

 

「ちょっと済まない。行ってくる。」

 

美琴たちの制止を聞かぬまま、あずまは全速力で走り始めた!

一方その尾行者は、美琴や黒子、飾利と涙子の前に姿を見せずあずまを追跡する!姿の見えぬ追跡者。あずまが230m先のコーナーを左に曲がり、追跡者を振り切る。追跡者はあずまの姿を確認できない。するとあずまは、追跡者の背中を一発蹴る。すると追跡者は姿を現す。更に追跡者は、スタンガンを落とす。

 

「おやおや、俺を追跡してどうするつもりなのかね?」

 

後ろから4人が追いかけてくる。

 

「どういうことですの!?」

 

「この女、俺をつけてやがった。さぁどういうことか説明してもらおうか。」

 

強制的に立たせる。そしてスタンガンを持っていた理由を聞く。その間飾利は、一七七支部にいる風紀委員に電話をかける。そして5分後、追跡していた姿が防犯カメラに映っていた。

 

「ここには黙秘権はないぞ!」

 

胸ぐらを強い力で掴み、追跡者を壁に打ち付けさせる!

 

「私が追跡したっていう証拠がどこにあるのよ!証拠を出しなさいよ!」

 

女が言うと、飾利が証拠映像を見せる。すると女は、上の命令でやったと話す。

 

「上の命令?誰だ?そしてその上というからには組織があるんだろうな!?」

 

だが女は答えない。するとあずまは女を一度引き、更に強い力で壁に押し付ける!その行動を見かねた4人があずまを落ち着かせるためにあずまと女を離そうとする!

 

「やめなさいよ!あずま君それでもジャッジメントなの!?」

 

「そうですわ!あずまさんのやっていることは恥!節制していただかないと・・・!」

 

離そうとした次の瞬間、女が倒れる。現場が騒然とする。しっかりせよと起こすあずまだが、反応がない!さすがにまずいと思い、救急車を呼ぶ。

 

7分後、女は病院へ向かった。その後、ジャッジメント一七七支部へ戻った3人。あずまが黒子より厳重注意を受ける。

 

「まったく!何をやってますのあなたは!!いくら追跡者がいるとはいえ、さすがにやりすぎですわ!壁に打ち付けるだの、胸ぐらをつかむだの、もう一歩一線を越えていれば暴力行為になっていましたのよ!34歳と言ういい歳した運転士さんがどういう醜態をさらしているんですの!?」

 

「しかし、あんなに尾行されてて、しかもスタンガンまで持ってたんだぜ?完全に俺を被害に遭わせる気にしか捉えられないぞ?」

 

「それでも!!あなたはまだ新人なんですのよ!?いくらなんでも見逃せませんわ。今回は私がどうにかしますから、しばらく休職しててくださいな。」

 

黒子の言っていることに腑に落ちない。彼は怒りのボルテージが上がってしまう。

 

「じゃあお前は同じことされても大人しくしてろと?俺をケガさせようと奴に何もするな?確かに暴力行為はいけない。でもああやってしないと分からんだろ?本人があのあと倒れたけどよ、あれは俺がやったんじゃねぇんだ。34歳のいい歳した運転士が醜態晒した?ふざけた口利くな!」

 

といい、彼はジャッジメント証明書を床に投げ捨てた。

 

「やってられっかよ!」

 

そういい放ち、一七七支部を出ていった。場の空気が悪くなってしまう。

 

1時間後、あずまの元に着信が来る。飾利からだ。

 

「あ、あずまさん?実は先ほど意識不明になった女性なんですけど、その女性はあずまさんの問い詰めで意識不明になったのではなく、どうやらレベルアッパーという物で意識不明になったみたいなんです。女性の名前は、椿野豊美。16歳でLEVEL3です。それで、実はその当事者であるあずまさんに・・・」

 

「今その情報俺に言わないでくれ。それと二度と業務の電話はするな。」

 

そういい、強制的に電話を切ってしまった。浅かった空洞が、あっという間に大きく深い空洞にならないといいが、あずまは無欲になってしまった。

 

翌日、あずまは出勤をした。しかし、あずま自身は頭の中にどうすればよかったのかが分からずにいた。そんなことを考えていると、あずまは、乗客がいるにも関わらず、バス停を通過しかけた。それがかなり頻発してしまう。営業所に戻ると、上司があずまに寄ってくる。

 

「子安君今日どうしたんだい?」

 

何があったのかを聞くと、あずまが乗務していたバスに乗っていた客からかなりの苦情が来たそうだ。あずまが乗務を終えたため、上司はあずまに理由を聞く。

 

「実は昨日、ジャッジメントの件で色々考えて居たんですよ。私をつけていたのでそれを問い詰めたんですけど、やり方でちょっともめてしまって、それでわだかまりが残ったままなんですよ・・・。」

 

「まぁ分かるけど、それ一番やっちゃいけないやつよ。重大インシデント。つまり君は事故を起こす寸前まで来ている。それでぼーっと運転してたら、乗客を殺そうとしていたも同然だぜ?今回は厳重注意でとどめてくれるかもしれないけど、次はないからね?」

 

そういわれ、あずまは返事をした。更に上司は、そのもめた人と関係を修復させることに努めよと指示。だがあずまに、それを言われても修復できる状況にはとてもできなかった。

 

一方、喫茶店では、美琴と黒子がお茶をしている。

 

「聞いたわよ。昨日あずま君とかなりもめたんだって?」

 

「ええ。あずまさんは34歳ですのよ?本当なら、私たちからすれば上の存在。34歳がやることではありませんわ。それを注意したら、あずまさん怒ってしまって・・・。」

 

「まぁ確かにあれはやりすぎだったけど、あずま君もあずま君で感情が入ってしまっていたんだろうね。で、どうするの?このままにしてもいいの?ジャッジメントの仕事場にあずま君最近来てないみたいだけど?」

 

「さすがにこのままではまずいですわ。でも精神的に追い打ちをかけてしまったのですから、あずまさんが私を許すことは考えられませんの・・・」

 

「今日、先生が来るんでしょ?あずま君来るの?」

 

あずまが来るかどうかがもはや分からなくなってしまった。そこに、白衣を着た女性が入店する。

 

「君たちか。私を呼んだのは。」

 

「ええ。実は、今回のグラビトン事件に関して、先生の意見を頂戴しようと思いましたの。それで当事者のあずまさんをお呼びしようとしたのですけど、今はこの状況では・・・」

 

そういうと、駐車場にハチロクが入ってきた。あずま自身は、車を見て何か見覚えがあるようなと思った。それは、ランボルギーニガヤルドの青が止まっていたからだ。実はあずま、以前困っていた女性を駐車場まで連れて行った時、その女性がランボルギーニの車に乗っていたことを思い出した。だがそこには黒子がいる。自分はどうすればいいのかわだかまりが未だに残っていた。だがなぜ来たのか。それは飾利からの催促のメールが来たからだ。

 

「明日、白井さんが11時にあずまさんにお会いしたいそうです!私からもお願いです。とにかく行ってください!」

 

そんなメールを見たが、あずまは最初は拒否をするつもりだった。だが業務上のことかもと思い、あずまは車を出したのだった。

 

恐る恐る入店すると、左2列目の片側3人席に美琴、黒子と、見たことがある女性の姿が。

 

「この方は?」

 

「紹介しますわ。この方は、木山春生先生ですの。実は当事者として、あずまさんの話をお聞きしたいとのことですわ。」

 

「はるみ・・・か。そういえば東京にも晴海という場所があったな。東京駅から約30分。選手村があることで有名だ。」

 

「何の話?」

 

美琴に突っ込まれる。あずまは喉を鳴らし、意見を話す。

 

「実はですね、私が追っていた介旅 初矢。その方は私が金銭をカツアゲした連中から取り上げようとしたところ、この音楽プレーヤーを落としていきました。更に、意識不明になった女性、椿野豊美という女性からも、同じ音楽プレーヤーが出てきました。これがレベルアッパーとの関係があるかは分かりませんが、私はこれがおそらく鍵を握っていると思います。」

 

「なるほど。もしこれがレベルアッパーと関係があるのなら、大脳生理学者として興味があるな。ところで、さっきから気になってはいたんだが、この子達は知り合いかね?」

 

そこにはガラスに貼りついている涙子と、申し訳なさそうに見ている飾利の姿が。

 

店に入って、話をする。何の話をしているのかを尋ねると、黒子はレベルアッパーの話をしていたと説明。すると涙子が、何かを取り出そうとした。それは、音楽プレーヤーだ。あずまは涙子の方を見る。

 

「レベルアッパーの所有者を保護するんだって。」

 

美琴に理由を尋ねる飾利。黒子は、はっきりしたことは分からないが、副作用が出てしまう可能性があるうえ、犯罪に走る傾向があることを伝える。

 

「涙子君。君の右手に持っているものを見せなさい。」

 

あずまがそういうが、涙子が振動で飲み物をこぼしてしまった。スカートが濡れてしまう。すると春生は、スカートを脱ぐ。

 

「お前はそれでも大脳生理学者か!!人前で脱ぐという醜態をさらすとは何たるけしからん女じゃ!!」

 

あずまが大声で叫ぶ!更に、

 

「お前それやったらシティーハンター冴羽リョウに飛び込まれるぞ!!」

 

そういうと、4人がまた疑問に抱く。冴羽リョウとは誰か?あずま曰く、あずまが生まれる前に放送されていた作品だそうだ。

 

夕方。黒子が春生にお礼を言う。あずまは教師をしていたのかと聞くと、春生は昔やっていたと言い、去っていった。

 

「ランボルギーニの先生があれじゃな・・・。」

 

心の声を漏らす。未だに分からないレベルアッパーの正体。それが分かる日は来るのか?




※本編に出てくる歌詞は、となりのトトロのOPより、「さんぽ」です。
仕様楽曲情報のコードは、JASRACより抜粋。

レベルアッパーの正体が未だに分からぬまま、捜査は難航に。そんな中、涙子が事件に巻き込まれているところを発見!果たして今度こそ、レベルアッパーの正体が判明するのか!?

次回 上の更に上


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第12話 上の更に上

色々やばい状態が続いている学園都市では、レベルアッパーの正体とは何かを捜査していた。あずま自身は、介旅 初矢及びあの尾行していた女性から回収した音楽プレーヤーがカギを握っているとしながらも、可能性は少に等しいとした。だがこの後、あずま周辺の人物に異変が!!


ジャッジメント一七七支部。ワインレッドの服装で出勤したあずまは、黒子とともに状況を伺う。

 

「どうですの?」

 

「それが、暗号や仲間内の言葉が多くてよくわからないんですけど、レベルアッパーの取引場所と思われるところがいくつか判明しました。」

 

飾利の解析力にあずまも黒子もさすがと評価。飾利はその取引場所が書かれている場所のコピーを渡す。結構ある。ということは、レベルアッパーは色々なところで取引されているものと考えることが出来る。この量はさすがに多いので、黒子とあずまで分担して動くこととなった。

 

立体交差下。涙子はレベルアッパーと思われる音楽プレーヤーを持っていた。それを聴こうか聴かないかの境をさまよっていた。更に、あずまに気づかれていることを感じ取っていた。それもそのはず。あずまはあのファミレスで、涙子に持っているものを見せよと指示したからだ。そんな時、男性の声が聞こえた。

 

「レベルアッパーを譲ってくれるはずじゃなかったのか!?」

 

現場では、かっぷくのいい男がチンピラと思われる連中に囲まれていた。この男も、レベルアッパーを購入しようとしていた。しかしチンピラたちは、値上がりしたのでもう10万よこせと指示。すると男は、それなら返金しろと言う。チンピラたちは暴力に走った。その現場を見ていた涙子。ジャッジメントかアンチスキルに連絡しようとしたが、まさかのバッテリー切れ。窮地に立たされた涙子。

 

「やめなさいよ!」

 

涙子が男たちに警告。するとある男が、涙子の横にある壁に一発キック。頭を掴み、

 

「何の力もない奴にごちゃごちゃ言われる筋合いはないんだよ。」

 

するとそこに、ある男が現れた。靴は青、下着は白に上着は若干の赤線に青の男。髪の毛は前面が青で後ろは白。マスクをつけている。この男こそ、変装したあずまだった。

 

「貰い物の力で自慢される筋合いこそ君たちにはないと思うが?ジャッジメントだ。暴行罪で拘束してやる。大人しくお縄につくんだな。」

 

「何かと思えばただの貧弱そうな若造が増えただけじゃねぇか。」

 

「貧弱?なるほど。それは君たちの事を示してるんじゃないのかな?年単位で開発をしていく能力を音楽プレーヤーただ一つで開発するっていうのは、ただ貧弱から一時的に自分が頂点に立った気になっているのと同じではないかと思うが?それに、この取引現場で、俺の頼もしい恋人がお前たちによって侵されているのを見逃せないからね~。」

 

するとあずまは、体を前に動かし、チンピラ一人を壁を通り越して押した!するともう一人の男が鉄パイプで襲撃をしてくる!あずまは上に高くジャンプし、空中前転をしたのち、腰に重いキックを一発かます!

 

「軽々とジャンプしてくれるじゃねぇか。それも能力と言う奴なのか?」

 

「他人事のように言わないでほしいね。まぁこれは、昔俺が特撮ドラマだのなんだの見てきて、それで練習してたらいつの間にかこれぐらい躱せるほどの力をつけたってわけなんだけどな~。次はお前だ。」

 

すると男は、今までジャッジメントにびくびくしていたが、レベルアッパーを使っているため、その能力でジャッジメントをいたぶると宣言!男があずまの元に向かう!あずまを掴もうとした次の瞬間、あずまは反射神経柄、早くかわすことに成功。だが男の姿はない。すると横からキックが!反射神経が功を奏したか、片手でキックを防ぐことに成功。だがあずまは、一応その能力を証明してもらいたく、一歩も動かないことにした。男はあずまの方に走り、横からキックをする!無防備なあずまは諸喰らってしまい、廃ビルの中に入ってしまう。

 

(やはりそうか。今のキックは時速で換算すると38kmか。)

 

「いい感触だったぜ。大男なお前でもあばらは逝っただろうな。」

 

「その能力を期待してたんだよ。レベルアッパーと言うのがどういうものか、見させてくれたぜ。だがそんな能力のショータイムもそろそろ終盤に近付いてきたみたいだな。じゃあ一つ君にミッションを課そう。俺を追いかけられるかな?」

 

するとあずまは、瞬足で上へ向かった!時速およそ95km!男は廃ビルを拠点としているため、どういう形状かが丸見えだ。だがあずまには、これぐらいおもしろいものを期待していたのだ。だがあずまが最上階に向かう途中、男がもう3階にいた!あずまはそれに気づかず、通過しようとした次の瞬間、膝でキックをもらってしまう!

 

「この廃ビルは俺たちのたまり場なんだ。中の事はすみずみまで知っているのよ。それに、よく響く。」

 

「お見事だな。だがお前の力はそんなものではないはずだ。さぁ来い!」

 

そういいあずまは、また最上階方面へ走っていった!あずまが最上階についた13秒後、男が到着。

 

「そろそろ鬼ごっこも飽きてきたしな、ケリつけようや。かわいそうだ。自分がどんな能力にやられたのか分からずに死んでいくのだからな。」

 

あずまはその能力を一瞬で見抜いた。男の能力は目くらまし。自分の周囲の能力を捻じ曲げるだけ。なぜかというと、足がありえない角度で曲がるところからだった。それにこの能力は、投げたものを不自然に軌道を外させるという力もある。男はこれをトリックアートと言った。あずまに、何ができるのか、自分の目に頼るしかないだろうと話す。そして・・・

 

「じゃあ、鬼ごっこ終わりついでに言っておくか。」

 

といい、マスクを外す。すると男は、子安あずまであることに気づいたのだった!

 

「ようやくお気づきかな?まぁ能力を見させてもらったところで、今度はこっちの番だ。」

 

するとあずまは、支柱の一本を取り出し、ガラスをすべて割った!更に窓枠をぶち抜き、かなりの強度を持たせたうえで、投げる体制をとった!

 

「貧弱なものでも、強度を高くするという事はできるんだ。これがもし、ビルの支柱を全部切り取っちゃったら、どうなるかお分かりかな!?」

 

そういいあずまは、窓枠を投げる!男は何が起きるか分からなかった!すると、ビルが崩壊を始める!むちゃくちゃだ!そういう声をあげる男。ビルは全壊し、現場付近はがれきだらけになった。あずまは瞬足の力でなんとか外に逃げ出せていた。元々取り壊し予定だったようだが。あずまはレベルアッパーを入手しようとする。男が出したのは音楽プレーヤーだった。

 

「また音楽プレーヤーか。お前嘘ついてないだろうな?」

 

すると男は、レベルアッパーは、曲だと話す。サイレンの音が聞こえる。そこにはアンチスキルが。

 

「ご苦労様。お手柄なことしてくれたじゃんよ。」

 

そういい話すのは、学園都市BRTバスジャック事件のときにお会いした、あの黄泉川だった。

 

「黄泉川さん!お会いするのは学園都市BRT事件以来ですな。」

 

「そうか?他の時も会ったことあると思うじゃんよ。まぁ、派手な服装の男がいるからっていう話を聞いて、あずま君と思ったじゃん。」

 

黄泉川は気づいていた。あずまがかなり凝った服装でいつも巡回しているというのを。その後、あずまは他の取引現場を8件回り、すべてレベルアッパーを回収することに成功した。

 

「すいませんね。振り回してしまって。」

 

「いいじゃんよ。むしろ犯人を抑えられるのは好都合じゃん。」

 

「またなんかあったら連絡しますんで、じゃあ僕は先に戻りますわ!」

 

黄泉川そういわれ、見送った。だが黄泉川はあずまのことがかなり気になっていた。それはなぜかというと、あずまは元々学園都市にいたのではなく、銀行強盗の事件から急に出現して、学校に通っているわけでもないのになぜか能力が開発された。あずまもあずまで自信を無くしかける。もはや自分は、レベルアッパーを使っている疑惑を持たれているのではないかと。

 

一七七支部。あずまは黒子と飾利の3人でまた捜査をしていた。飾利はどうやらレベルアッパーのソフトの件で掴んだものがあるらしい。そこで飾利は、音楽をダウンロードしていた。完了すると飾利は、音楽でレベルアップなんてできるのかと少し否定方に近い発言をした。

黒子曰く、提供者からの話はそう言っていたと話す。あずまも同様。

すると黒子の着信機に着信が。内容は、また学生が暴れているとのことだ。黒子が向かい、あずまに待機をするよう指示した。飾利はあのAIM研究所の木山春生に電話をかけた。

 

「現物は届いてるよ。」

 

「本当に音楽を聴くだけで能力を上げること可能なんでしょうか?」

 

春生は難しいと話す。だがテスタメントというワードが出てきた。飾利はその後電話を切った。あずまは居ても立っても居られなくなったのか、涙子に電話をかけた。だが電話がつながらない。すると黒子から電話がかかってきた。手伝ってほしいとのことだ。これはかなり深刻だと感じたあずまは、すぐ出動する。

 

何件か回ったが、すぐに決着がついてしまった。あずまもかなり疲弊しきっている。

 

戻るとそこには応急処置を受けている黒子の姿が。あずまも右部分がけがをしている。

 

「大丈夫ですか!?そんなに暴れたんですか!?」

 

「別に暴れたとしても軽い傷だよ。こんなもの絆創膏貼ってしまえば終わり!」

 

だが飾利はだめだといい、消毒をする。しかしこんなにレベルアッパーの使用者が増えているとしたら、事態は深刻になっている。黒子は、成すべき点を3つ話す。

 

レベルアッパーの拡散阻止

昏睡した使用者の回復

レベルアッパー開発者の検挙

 

この3つを行い、特に開発者にはその目論見を吐かせるという狙いだ。

 

あずまは黒子が飾利に胸の部分をガーゼでまかれるところを見ることもなく、スマホに集中していた。それはスマホをいじりたいからではなく、異性として当然のことを成したいからである。

 

飾利が黒子にガーゼを巻いている時、飾利が本当は美琴に巻いてもらいたいのかと聞くが、黒子はそんな姿を見せたくないと話す。だが飾利がこの一言を黒子に言ってしまう。

 

「大丈夫ですよ。誰も見たくありませんから。」

 

グサッと来たのか、黒子は怒りをあらわにし、前後に動かす!更に飾利をテレポートさせ、逆から落っことそうとした!だがタイミングが悪く、美琴が入ってきてしまう!美琴は飾利が上にいることを知らず、頭突きされてしまう!共倒れしてしまった。

 

美琴は捜査の進捗状況を聞くと、黒子が春生から聞いた情報を話す。それは、さきほどのテスタメントという装置の話だ。だが、これは人間の五感を刺激するものだ。レベルアッパーはただの音楽ソフト。聴覚だけを刺激していたにすぎない。更に植物患者と化してしまった被害者の部屋を捜索してもそのデータ以外見つかっていない。

するとあずまは、あることを話す。

 

「共感覚性じゃないか?」

 

「どういうこと?

 

「共感覚性というのは、一つの刺激で五感全てを刺激するものだ。かき氷だよ。」

 

すると黒子と美琴が思い出したのだ。

 

「ある種の感覚を刺激することによって、別の感覚も刺激されることよ。」

 

すると飾利が、音で五感を刺激し、テスタメントと同じような効果を出していると推測。飾利が春生に連絡すると、春生はその可能性を示唆。飾利はその線で調査をお願いした。すると春生は、ツリーダイアグラムの許可が下りるだろうと話す。飾利はそのツリーダイアグラムを使えば一発だと期待を寄せる。あずまは疑問に思っていた。ツリーダイアグラムとは?

 

黒子から説明を受ける。

 

「ものごとを考える過程で、ある項目と因果関係のある複数の項目を順次ツリー状に結び付けてゆくことで系統的に整理する方法ですわ。」

 

飾利はその現場に行きたいと話す。

 

あずまは引き続き巡回に回る。すると一件の着信が。涙子からだ。だが声を聞いた瞬間、異変に気付く。

 

「アケミが急に倒れちゃったの。レベルアッパーを使ったら倒れちゃうなんて、私知らなくて・・・。」

 

「そのアケミっていうのは君の友達かい?というか、やはりレベルアッパーを使っていたのか・・・!?」

 

「所有者を捕まえるっていうから、でも・・・捨てられなくて…それで・・・アケミたちがレベルアッパーが欲しいって・・・いや、本当は一人で使うのが怖かっただけ・・・。」

 

涙子の話を聞いている間、あずまは急いで涙子の家に向かっていた。

 

「家にいるのか!?」

 

すると涙子は、自分がもう倒れるのではないか、そしたら、もう二度と起きられないのかと恐れる。涙子自身も、力がないのが嫌だったのだ。憧れが捨てられなかった。

レベル0は欠陥品なのかとも思っていた。そんな泣いている涙子の声を聞いていたあずま。

 

「涙子君は欠陥品ではない!能力が使えなくたって、君は俺を色々牽引してくれるんだ!俺だけじゃない!君の大親友の飾利君をけん引してくれる!君は機関車なんだ!力がなくたってな、涙子君は涙子君じゃ!いくら機関車だろうと電車だろうとな、力のない車両なんているんだよ!でもそれがなんだよ!?交通機関はお客様を安全に運ぶのが仕事なんだ!君がたとえ力がなかったとしても、飾利君たちをけん引できる明るい涙子君は、立派な機関車じゃないのか!?だから・・・そんな苦しいこと言わないでくれ・・・」

 

涙を流しているあずま。涙子はその電話を聞いて、涙を流す。

 

「あとは、よろしくね。」

 

その言葉を最後に電話を切った。

 

あずまが家に入ると、うつぶせに倒れている涙子の姿が!

 

「涙子君!大丈夫か?しっかりしたまえ!」

 

人が家で倒れている姿を見たのは初めてだったあずま。もうどうにもならないのか・・・。急いで救急車を呼ぶあずま。

 

 

病院。

涙子が病床のベッドで寝ている。あずまと美琴、黒子がいた。あずまは涙子の左手を握ったまま離さない。身近な人がこんな目に遭った姿は、あずまには堪えられないのだった。




涙子が倒れた姿を見て、あずまはまた精神的な苦痛を抱えてしまった。彼の目はもはや復讐の域に達してしまっている。だがついに、その犯人が明らかに!!

次回 走り屋の意地


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第13話 走り屋の意地

涙子が入院してしまい、目の色が復讐に染まってしまったあずま。捜査が進むうちに、ついに犯人が分かったのだ!果たしてその犯人は!?


病院。

身近な人が倒れ、完全に精神的苦痛を受けていたあずまは、美琴と黒子に背中を押され、屋上に向かった。あずまは自分の胸の内を明かした。

 

「俺がレベルアッパーの正体を捜査している時、涙子君の様子がおかしかったんだ。いつも明るくあれだけ振舞ってくれる涙子君なのに、様子がおかしいと気づいていながら、俺は何もできなかった・・・。もっと早めに気づいて、レベルアッパーを回収できていればよかった・・・。いや、その時点で強制的に回収すりゃよかったんだ…。身近な人が・・・。」

 

あずまの目からまた出てくる大粒の涙。あずまの後悔の念が垣間見える。あずまはこれまでに、目の前の人が負傷したり、死亡したりなどの悲惨な現場を見てきた。特に踏切事故で亡くなった同期は、あずまの目の前で亡くなってしまったのだから、あずまとしては、身近な人が亡くなるところはもう見たくない。

 

美琴自身も胸の内を明かした。美琴は、涙子自身が学園都市に来る前、母から御守をもらった話を思い出した。そこで何かを話したかったのかもしれない、そんなことを思っていた。

 

「私ね、目の前にハードルが置かれたら、飛び越えないと気が済まないタチでさ、LEVEL5もその結果なだけで、正直、どうでもよかった。でも、ハードルの前で立ち止まっちゃう人もいるんだよね。そういう人がいるってこと、考えたこともなかった。LEVELなんてどうでもいいんじゃないって。無神経な話だよね…。」

 

胸の内を明かした美琴は、黒子に捜査に加わりたいと請願。黒子はそれを了承。だがあずまの目は、復讐の色に染まってきている。3人は病棟の中に移動。すると後ろから3人を呼ぶ、カエル顔の医者が。美琴はリアルゲコ太と勘違いしてしまった。

 

医者から見せられたのは、レベルアッパー使用者の脳波パターンだ。通常、脳波は個人個人で違うのだが、レベルアッパー使用者の脳波パターンがまったく同じになっている。もし誰かに操られているのであれば、人体に多大な影響が出てしまうのは間違いない。

 

バスの車内。

飾利は春生の研究室へ向かっていた。飾利の脳裏には、涙子との思い出が。

 

研究室に到着して、春生にも涙子が倒れたことを伝えた。

 

「この間の子が・・・。」

 

「私が悪いんです…。」

 

「あまり自分を責めるものじゃない。少し休みなさい。」

 

コーヒーを持ってこようとする春生。飾利は悠長なことを言っている場合ではないと話そうとするが、春生は、解析結果はまだだが、涙子が目覚めたときに飾利が倒れては元も子もないと話し、研究室を出ていった。

 

ジャッジメント一七七支部。

特定の人物の脳波パターンであることははっきりしているが、飾利は不在。そこに美偉がやってくる。

 

あずまは精神的な苦痛が発生してしまっているため、ジャッジメント一七七支部の応接セットに腰かけている。

 

美琴と黒子は美偉に事情を話す。すると、バンクへのアクセスを認められると話す。能力開発を受ける学生はもちろん、病院の受信や職業適性テストを受けた大人のデータも保管されている。

だが美琴は、なぜレベルアッパーを使うと同一人物の脳波が測定されるのかが不思議に思う。

コンピュータも、あるソフトを使ったとは言っても、性能が格段に上がるわけではない。ネットワークにつながるならいざ知らずだが。

黒子は、そのネットワークと言うところに視点を置いた。

 

「ネットワークにつなぐと性能が上がるんですか?」

 

「個々の性能が上がるわけじゃないわ。でも、いくつものコンピュータをつなげば、演算能力が上がって・・・」

 

すると、ここで出てきたのは、レベルアッパーを使って、ネットワークを構築したという点だ。可能性はあるのだが、どう皆の脳をつなげているのか。

ここでまた出てきた可能性は、AIM拡散力場だ。能力者は、無自覚に力を周囲に放出している。もしそれがつながったら・・・と思ったが、あれは無意識下にあり、コンピュータは使用しているOSはまちまち。つながっても意味がないのではと美琴は話す。

 

「コンピュータネットワークもOSはバラバラだし、使っている言語は違うわ。でも、ネットワークが使えるのは、プロトコルがあるからでしょ?」

 

美偉が言う。

 

「特定の人物の脳波パターンが、プロトコルの役割をしていると言うんですの?」

 

黒子が尋ねる。これはあくまでも可能性であるのだが、脳を並列につなげば、莫大な脳の計算をすることができるというところだ。単独では弱い能力しか持っていない人でも、ネットワークと一体化することにより、能力の処理能力が向上することに加え、同系統の能力者の思考パターンが共有されることで、より効率的に能力を扱えるようになるのだ。つまり、昏睡患者は、脳をネットワークに使われているというわけだ。

 

すると、脳波パターンから1人の人物が特定できた!

 

一方、研究所では、飾利が研究資料を見ていた。すべてが共感覚性の論文が並んでいた。するとそこに、春生が来た。

 

「いけないな。勝手に人の研究成果を見ては。」

 

脳波パターンから、木山春生であることが分かった!

 

美琴と黒子は、飾利が危険に晒される可能性を示唆!飾利は研究所に行っており、もしかしたらという可能性が出てきた。黒子が飾利に電話するが、応答なし。

美偉はアンチスキルに、春生を確保するように連絡を指示!

するとあずまは、一七七支部を出ていく。

 

「あずま君!?」

 

「奴を片付けてくる。」

 

様子がおかしいことに気づく3人!追いかけようとするが、あずまはハチロクに乗り、研究所に向かって車を走らせた。実はあずま、飾利が研究所に向かうという話を聞き、何かの予感がしていたため、飾利の携帯にGPSアクセスできるようにしていた。あずまの運転も、いつものあずまの運転ではなかった。

 

市民もハチロクが走ってくる姿に写真を撮る姿が。ギャラリーもいる。

 

一方、ランボルギーニガヤルドの車内では、飾利が手錠をつけられた状態で、春生の車に乗っていた。

 

「ところで、気になっていたんだが、その頭の花はなんだい?君の能力に関係あるのかな?」

 

春生が尋ねるが、

 

「お答えする義務はありません。そんなことより、レベルアッパーってなんですか?なんでこんなことをしたんですか?眠っている人たちはどうなるんです?」

 

飾利に黙秘され、逆に質問された。

 

「矢継ぎ早だな。こっちの質問には答えてくれないのに。」

 

飾利は、誰かの能力を上げてぬか喜びさせて、何が楽しいかと聞く。すると春生は、

 

「他人の能力に興味はない。私の目的はもっと大きなものだ。」と話す。

 

その頃、ジャッジメント一七七支部では、美琴が出動すると話す。

 

「お姉さま!初春もジャッジメントの端くれですの。いざとなれば自分の力で・・・たぶんなんとか・・・それに、一科学者に過ぎない木山に、アンチスキルを退ける術はないかと!」

 

「何千人もの昏睡した人たちの命が握られてるのよ?それに、何か嫌な予感がするの・・・。」

 

黒子が出動しようとすると、美琴は黒子の左肩をたたく。黒子に強烈な痛みが。美琴はそんな体で動こうとした黒子に、まだ後輩であるから、こんな時ぐらい自分に頼ってほしいと話す。

 

あずまは飾利の位置から、高速道路に乗ったと思い、あずまは高速道路に入る。あずまは時速139kmで高速道路を走る!その後もスピードを上げ続け、7km進んで時速171kmに!カーブをドリフトで通過し、超特急のスピード並みに走る!

すると900m先に事故で通行止めになっている渋滞が!スピードを200km以上出し、更に車を右にふらつかせ、片輪走行で通過させる!キャリアカーの後ろに乗り、高速道路の上空へ大ジャンプ!!

 

直進距離でまたスピードを上げる!

目の色が復讐に染まったあずまは、もう止められない。

 

ランボルギーニの車内では、

 

「演算装置?」

 

「あれは、AIM拡散力場を媒介としてネットワークを構築し、複数の脳に処理を割り振ることで、高度な演算を可能とする。それがレベルアッパーの正体だよ。」

 

レベルアッパーの正体を話していた。どうしてこんなことを春生は行ったのかと言うと、あるシミュレーションをするときに、ツリーダイアグラムの使用申請をしたのだが、なぜか却下されてしまい、代替の演算装置が必要だったと話す。

すると春生は、ポケットから、メモリーカードみたいなものを取り出す。

レベルアッパーをアンインストールする治療プログラムだ。それを飾利に渡す。

 

「後遺症はない。すべて元に戻り、犠牲者も出ない。」

 

だが飾利は信用できないと話す。臨床研究が十分でないものを安全と言われても、気休めにもならないと話す。

 

すると、後ろからかなりのスピードで追ってくる車の姿が!AE86スプリンタートレノ、あずまがやってきた。あずまは速度268kmからランボルギーニガヤルドに衝突させる!

 

「君のお友達が来たようだね。」

 

「あずまさんの様子が・・・!」

 

飾利の目に映ったのは、復讐の色に染まった、あずまの姿だ。あずまではないあずまだ。すると春生は、ハチロクに仕返しで衝突させようとした!だがあずまはスピードを落とし、衝突を回避した。しかし、ハチロクが非力であることが災いし、ガヤルドに先行されてしまう!時速128kmに落ちたハチロク。ここから回復運転をさせるあずま!

 

ガヤルドは10km先を先行するが、その先にはアンチスキルの部隊が!急停車させる春生。

 

出てきたのは、黄泉川だ。

 

「木山春生だな。レベルアッパー頒布の被疑者として勾留する。ただちに降車せよ!」

 

命じる黄泉川。春生は飾利に、レベルアッパーには副産物があると話し、面白いものを見せてあげようと話す。春生は車から出る。

 

「確保じゃん!」

 

この一言から、アンチスキルは徐々に接近していく!すると春生の左目が充血する!するとある一人の隊員が、他の隊員に銃を向け、発砲!自分の意志ではないと話す!

と、その時、アンチスキルの進行方向から、あのハチロクの音が!接近時のスピードは時速235km!部隊に気づき、急ブレーキをかけようとするあずまだが、このまま急ブレーキをかけても止まり切らないことを話す!左右に大きくふらつかせ、ランボルギーニの真正面に停車させた。

 

下の国道では、タクシーから降りる美琴の姿が!黒子に連絡すると、黒子がアンチスキルと交戦していると驚いた声で話す!しかも能力を使って交戦していると!だが、バンクには春生が能力開発を受けた記録がない。更に完全に暴走したあずまの姿が映っていることも話す!

 

「やっぱりあずま君はそこにいたのね!」

 

だがこれよりあることが分かったのだ!普通であれば、能力者はある一つの能力しか使えないが、春生は複数の能力を使っている!黒子はレベルアッパーではないのかと主張。これが本当であれば、春生はデュアルスキル、いわゆる多重能力者だ!

 

美琴が高速道路の本線に上がると、横転した二台の護送車が!アンチスキルも全滅している。車には気絶した飾利が!駆け寄ると、春生は、飾利は戦闘の余波で気絶しているだけだと話す。更に、美琴とあずまに、一万の脳を統べる自分を止められるかと挑戦する!

 

「てめぇ、よくもそんなことが言えるな!!脳を統べている?笑わせるな!貴様のためにあいつらは、脳を支配されているんだ!そんな脳を支配されてる姿を見た友達の気持ちを考えたことないだろ!?俺はお前を許さない。止めること以上にお前を追い詰めて、自分の犯した罪以上の苦しみを味わわせてやる!やられたらやり返す、86倍返しだ!」

 

あずまは瞬足で春生に向かう!果たしてあずまと美琴の運命は!?




レベルアッパーの犯人を追い詰めたあずまと美琴たち。復讐の色に染まったあずまのかつてない暴走と脳を統べる春生の暴走が衝突する!

次回 無制動


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第14話 無制動

春生を確保するため、アンチスキルは春生に接近しようとした。しかし春生がデュアルスキル、多重能力者であったため、アンチスキルは全員倒されてしまった。
1万人を統べる春生を止められるかと挑戦されたあずまと美琴。
制動力が効かなくなったあずまを美琴たちはどう思うのか、そして春生を止められるのか?


「やられたらやり返す。86倍返しだ!」

 

瞬足で向かったあずま!だが春生は、あずまの歩幅に落とし穴を作ったため、あずまはそこに足を突いてしまい、倒れてしまう!

 

「デュアルスキルか・・・おもしれぇ。だが、覚悟するんだな!」

 

実はあずまも、LEVEL5とはいえ、デュアルスキルの持ち主だ。だがあずまのデュアルスキルは、復讐の色に染まってしまったあずまを更に暴走させてしまう。

 

「こっちの攻撃だわ!」

 

美琴は電力系統の攻撃をしたが、バリアを貼られてしまう。

 

「どうした?複数の能力は使用できないと踏んでいたのかね?」

 

春生はそういうと、何かの波を振動で伝えさせる!すると高速道路が崩れ始める!美琴とあずまは構える姿勢を取っていたため、着地に成功。春生はLEVEL5はこの程度のものかと挑発する。

 

「おっとそのセリフを吐くのは、時期尚早なんじゃないのかよ!!」

 

そういい、あずまは瓦礫を投げる!だが春生はそれを電気式の剣で斬っただけでなく、がれきを浮かせ、あずまの元に落下させる!

 

「もう終わりにしないか?私はあることを完成させたい。誰も犠牲にはしない。」

 

「ある研究を完成させたいから終わりにしろ?誰も犠牲にしない?木山さん。あなたいつからそんな政治家みたいな発言をするようになったんですか?そんなことを言って自分が解放されると思ったら大間違いだ。」

 

「そもそも何万人もの市民を巻き込んだ人間が言う台詞なの!?そんなもの、見過ごせるわけないでしょうが!!」

 

「やれやれ、LEVEL5とはいえ、所詮は世間知らずの若造とお嬢様か。」

 

すると春生は、学生たちが受けている能力開発が人道的かつ安全なものと思っているのかと問う。学園都市の上層部は、能力に関する重大な何かを隠しているとし、それを知らずにこの街の教師たちは、学生の脳を日々開発していると話す。それがどんなに危険か分かるかと問う春生。

 

「おもしろい話ね。あんたを捕まえた後で、じっくり調べさせてもらうわ!」

 

そういい美琴は、砂鉄のミサイルを放つ!だががれきでバリアをされてしまう。

すると春生は、空き缶の入ったごみ箱を浮かせる!美琴の脳裏には、セブンスミストで起きた、あのグラビトン事件が蘇る!あずまも同様だ!

そしてあずまは、がれきを採取し、一つの細長い棒を作る!そして、上空に舞い上がる空き缶を一刀する!空き缶は爆発していく!

春生はすごいとしながらも、空き缶をテレポートさせ、爆発させる!それに気づいたあずまは、美琴に飛びかかった!爆発した衝撃で、がれきが2人の上にのしかかった・・・と思いきや、実はこれ、あずまと美琴が磁力で足蹠の盾を作っていた!ゼロ距離からの電撃は、当麻には効かなかったが、それを持っているわけはないと踏んだ美琴!あずまと美琴は羽交い締めし、春生は攻撃を仕掛けようとしたが、2人は高圧電流を春生に流す!更に春生は美琴からの電流があずまに流れているため、抵抗器のような能力を持つあずまから熱を受けていた!大きく叫ぶ春生。気絶する。

 

「交流25000V。その怒りを味わったか。やられたらやり返す。倍返しだ。これが私のりゅう・・・」

 

とすると、美琴とあずまの脳に、子供たちの声が聞こえてくる。

 

「これは、木山春生の記憶・・・まさか、あずま君と私の間に、電気を介した回線がつながって・・・」

 

見えてきたのは、今までの春生のやりとりだ。

 

春生は木原という科学者から、教師になってほしいと頼まれた。それを断ったのだが、木原は、

 

「君は、教員免許を持っているよね?何もおかしくはないじゃないか。」

 

と言われたのだが、春生自身は、研究のついでに取っただけだと話す。それでも木原は、

 

「研究から離れろと言っているわけではないよ。それどころか、統括理事会肝入りの実験を、任せたいと思っているんだよ。」

 

と言われ、春生は少しうれしく思う。すると木原が見ていたのは、グランドで遊ぶ子供たちだ。チャイルドエラーといい、なんらかの事情で学園都市に捨てられた、身寄りのない子供たちだと木原は言う。そして今回の実験の被験者であり、春生が担当することになるというのだ。更に・・・

 

「実験を成功させるには、被験者の詳細が成長データをとり、細心の注意を払って調整を行う必要がある。だったら、担任として受け持った方が手間が省けるでしょ?」

 

と話す。春生は乗り気ではなかった。

 

初日、教室に入り、自己紹介したのだが、やはり乗り気じゃない。春生を悩ませたのは、子供たちのいたずらだ。更に子供たちからセクハラともとれる発言がとれ、子供がなれなれしい。そこから子供が嫌いになった。

ある時だった。受け持っているクラスの子供が1人、転んでしまっている現場を見た。ずぶぬれになっているところを見るに見かね、風呂を貸してあげた。

その時、子供から聞かれたことが。

 

「私でもLEVEL4になれるのかな?」

 

だが春生には、今の段階ではなんとも言えなかった。高レベルの能力者に興味があるのかと聞くと、それもあるが、学園都市で育ててもらってるから、この街の役に立てるようになりたいなと子供は話す。

 

だが春生には、その研究の時間がなくなってしまったのだった。子供が嫌いになってしまった。だが春生は、悔やんでも悔やみきれない、深刻な事態を起こしてしまった。

それはある研究をする時の事だった。

春生の実験をするため、子供2人を呼んだ。これで先生ごっこもおしまいだと思った時だった。

突如緊急事態を知らせるブザーが鳴動した。

荒廃熱傷による併用療性ショックが発生したのだった!乳酸カロリンゲル液と輸血を急ごうとしたのだが、これ以上何もできないことが発生した!科学者たちはすぐに緊急事態を知らせるため、病院に連絡をしようとした。しかし木原は、

 

「浮足立ってないでデータをちゃんと集めなさい。」

 

といい、病院の連絡を後回しにしたのだった。更に何も見なかったとし、この実験は恙なく終了したとしたのだった。

実験を受けた子供2人は、亡くなってしまったのだった。

 

それを見ていた美琴とあずまは、

 

「なんだと・・・ということは、もっと上に黒幕がいたということか・・・!こんな事態を引き起こしたのは、その木原という科学者か・・・!それのために、子供2人を実験台にして、2人の命を奪ったというのか!?どうしてそんなことをした!?」

 

あずまが問うと、春生は、あれは表向きと話し、AIMの拡散力場を制御するための実験とされていたが、実際は、暴走能力の法則解析用誘爆実験と話す!AIM拡散力場を

刺激して暴走の条件を知るのが本当の目的だったという。春生自身それを後になって知ったという。

 

「あの子たちは目覚めることなく、今も眠り続けている!私たちはあの子たちを、使い捨てのモルモットにしたんだ!」

 

「だったらそれをアンチスキルに連絡すれば話は済んだはずでは・・・!?」

 

「23回、あの子たちを回復させるため、そして事故の原因を究明するシミュレーションをするために、ツリーダイアグラムの使用申請をした回数だ。ツリーダイアグラムの演算能力をもってすれば、あの子たちを助けられるはずだった!もう一度太陽の下を走らせてやることもできただろう!だが却下された!23回ともすべて!統括理事会がグルなんだ!アンチスキルが動くわけがない!」

 

「だからと言って、なんでそんなやり方をしたんだ!?」

 

「君らに何が分かる!?あの子たちを救うためなら、私はなんだってする!この街を敵に回してもやめるわけにはいかないんだ!!」

 

事故の原因究明を拒否されたことに驚くあずま。自分自身も実際に事故を起こし、どうすればいいかみんなで対策を講じた。それがこの学園都市ではまったくされていないことに、また疑問を立てるあずまだった。

その時、春生が頭を押さえる!すると春生は、ネットワークの暴走が起きたと話す!前のめりに倒れる春生。頭の中から出てきたのは、奇妙な得体のしれないものだ!

生き物のように叫ぶ!

 

その頃、ジャッジメント一七七支部では、大変な事態が起きていた!

監視していたカメラがすべて砂嵐になり、更に電話もつながらない状態が!黒子はどうにもならなくなり、現場へ向かおうとするが、美偉に止められてしまう。

 

「お姉さまとあずまさんを助けなければいけないんですのよ!!」

 

「御坂さんとあずまさんを信じなさい!彼女たちならきっと・・・!」

 

現場では、更に深刻な事態が!

得体のしれないものが大きくなっていく!その得体のしれないものが、美琴とあずまをロックオンし、上からクリスタル状のものを降らせ攻撃する!逃げる美琴とあずま!その先には飾利が!

 

「俺がなんとかするから、美琴はとりあえず非常階段使って、高速道路へ逃げろ!」

 

「しかし今度はあずま君が!!」

 

あずまは返事する間もなく、クリスタル状のものを電気系統の攻撃ではじく!大きい爆風が吹く。

 

「だめじゃないか!そんなところに降りては!そこからとにかく動くな!」

 

攻撃しようとするが、追ってこない。だが何かもがき苦しんでいる。

 

病院では、それに連動されているからか、患者たちが暴れ始める!他の患者たちも同様にだ。

 

アンチスキルは何の新型兵器かと少し引いていた。黄泉川は動いているものでなんとかするしかないと、実弾の使用を許可!全員が得体のしれないものに発砲する!

 

春生は意識を取り戻した。春生自身もこんな化け物になっているとは思わなかった。もはやあの子たちを取り戻すこともできなくなったと諦めかけていた。だが、

 

「諦めないでください!」

 

飾利が言う。春生は3人に、AIM拡散力場の集合体であると話す。名前は一応、AIMバーストと話す。レベルアッパーのネットワークによって束ねられた、1万人のAIM拡散力場。それらが触媒となって生まれた、潜在意識の怪物。言い換えれば、1慢人の子供たちの思念の塊。

 

1人1人の思いがAIMバーストに込められている。どうすればいいかを聞くが、春生は、自分の言っていることは信用ならないだろうと話す。だが飾利は、手錠を外してくれたことを話す。更に、春生が嘘をつくはずはないとし、信用する。

 

春生は、AIMバーストは、ネットワークが生み出した怪物。ネットワークを破壊すれば止められるとする。もらった治療用プログラムで試す!美琴は、あずまと一緒になんとかすると話し、飾利にそれをもってアンチスキルのところへ行けと指示。

美琴はあずまに作戦を話すが、あずまはいない。あずまは何か別のルートをたどっていた。それは物理的に攻撃をするというわけだ。あずまは非常階段を上がり、高速道路のがれきを採取し、飛び台を作る!

 

「何をする気!?」

 

「俺はもう一つの手を考える!このハチロクで、あの怪物をぶっ壊してやる!」

 

「無茶よ!そんなことしたら、あずま君のハチロクが!」

 

「美琴君。俺は走り屋をやってきて12年。無敗神話を持っている。だが今回は一筋縄ではいかないことは俺も分かっている。でもやるっきゃないだろ!?」

 

そういい、あずまはハチロクを現場の反対方向に走らせた!あずまは22.3kmほど助走をつけて、ハチロクを怪物にぶつける計画だ!あずまの命を、いや、あずまのハチロクを傷つけるかもしれないが、あずまには他のルートでやるとしたらこうするしかないと決めた。

 

22.3km過ぎたところで、あずまはロケットスタートをする!ハチロクは非力でも、技術さえあれば行ける!そう信じるあずま!

その頃飾利は非常階段をのぼり、アンチスキルの車へ急いでいたが、踏み台に気づいた。更にハチロクがないことにも気づく。飾利も気づいた。だがハチロクは、スピードを187kmまで出し、残り10km近くまで来ている!飾利は無茶だと気づく。

 

黄泉川も気づく。

 

「まさか、それは無茶じゃん!?」

 

残り1km。スピードは242kmまで上がっている!

 

AIMバーストは美琴と応戦していたが、一発、飾利の方に向いていた!それは非常階段の方に!攻撃があたり、非常階段を破壊!飾利は動いていた。

 

「私の方に向かってきなさい!」

 

そういった次の瞬間、高速道路からハチロクが!その時のスピードは、274km!

 

ハチロクはAIMバーストに向かって猪突猛進!だがAIMバーストは、ハチロクのフロントガラスを突き破った!

 

「行ける!ターゲットへ、向かってくれ!俺のハチロク!」

 

そしてハチロクは、AIMバーストに衝突した!だがAIMバーストに吹き飛ばされてしまう!

 

「無理だったか・・・でもなんとか意味はあっただろう・・・。」

 

AIMバーストと美琴たちの戦いは果たして!?




様々な攻撃をもってしても、AIMバーストに効かない。2人は果たして、AIMバーストを破壊できるだろうか?

次回 Breakdown


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第15話 breakdown

AIMバーストの正体が分かり、攻撃中のアンチスキル、美琴、あずま。だが何をしても攻撃が効かない。それどころか、どんどん大きくなっていく始末。そんな中、ついに患者たちを回復させるところまで来たのだった!

ちなみにこの後、日常の非常にどうでもいいお話があります。


吹き飛ばされたハチロクから出てきたあずま。

 

「なんて無駄なことしたの!物理的な攻撃させても、あいつには効かないんだから!とにかく、そこには原子炉があるから、あずま君は、高速道路側から攻撃して!」

 

そういい、二手に分かれて攻撃をしようとした!すると美琴は足を巻き付けられ、原子炉の壁に投げられる!なんとか着地した美琴。その頃アンチスキルでは、黄泉川が連絡をしていた。それは、治療用プログラムをありとあらゆる手段を使い、学園都市中に流せと話す!そして飾利は転送に成功し、学園都市に流す!

 

すると、病院では、暴れていた患者たちが、安静になる。

 

そしてあずまは、引き続き電気系統の攻撃をする!すると、治療用プログラムが流れているからか、再生しなくなった。

 

「悪いわね。これでゲームオーバーよ!」

 

AIMバーストは叫び、赤褐色に変色し、倒れる。一息ついたのもつかの間、すると春生は、気を抜くなと言う!ネットワークの破壊に成功しても、1万人の思念の塊。普通の生物常識では通用しないのだと話す!話が違う!さっきの話では、そんなことは効かされていなかった!

 

「だったらあれだよ!核を破壊すればいいんだ!破壊に成功しても、重要な核があるとしたら、それはまだ再生される証拠だ!それを破壊すれば!」

 

あずまはすぐに思いついた!すると、そこには、その思念の声が聞こえてきた。

 

「俺がやってやる。下がれ。」

 

そういうと、春生は構うものかと言い、生み出した責任があると話すが、

 

「お前が良くてもお前の教え子はどうするんだ?お前の顔を見たいんじゃないのかい?」

 

「それに、あいつに巻き込まれるんじゃない。私が巻き込んじゃうって言ってるのよ!」

 

そういい、電撃を放ち続ける!美琴は別の攻撃をしていた。包み込むように攻撃をしていく。美琴も砂鉄の中でバリアを張る。その中には、あずまの姿が。すると美琴は、コインを一枚、あずまに渡す。そうそれはつまり、レールガンを放つということだ!2人はそれを放ち!AIMバーストの核を破壊した!これがLEVEL5の力だ。

 

護送車に連行される春生。

 

「どうするの?あの子たちのこと。」

 

美琴が聞くと、

 

「諦めるつもりはない。もう一度やり直すさ。刑務所だろうと、世界の果てだろうと。私の頭脳はここにあるのだから。ただし、今後も手段を選ぶことはない。気に入らないならまた邪魔しに来なさい。」

 

春生が言い、乗り込む。だが、

 

「待ちな。これだけは俺に言っておく。俺はお前を許さない。だが、お前にはまた、新たな出発信号機が、進行現示をしている。子供たちのことについて諦めないのなら、手段は選ばないとしても、今度は合法的な手段で走行することだ。」

 

「よくわからないが、君の言いたいことは分かったよ。LEVEL5のマニア君。」

 

護送車は出発していった。するとタクシーがやってきて、黒子が美琴に飛びつく!すると黒子が飾利に伝達する。

 

「レベルアッパーの使用者が、徐々に意識を取り戻しているとのことですわ。あなたのおかげですわ。初春。」

 

黒子と美琴のパターンはもはやテンプレと化している。だがそこに、あずまの姿はなかった。あずまはハチロクを動かし、そのまま下道で、学園都市中心部へ向かっていった。あずまは、かなりの擦り傷を負っている。

 

病院の屋上。

涙子がいる。そこに飾利とあずまが入ってくる。涙子の通常運行に安心した2人。すると涙子は、あずまと飾利を抱きしめる。そこには、申し訳ないという気持ちがこもっていたのだ。そして涙子は、飾利のスカートをめくる!あずまは一生懸命に目をつむる!だが、あずまは涙子を強く抱きしめる。あずまは、涙子が元通りになって戻ってきたこともそうだが、身近にいた存在としてだった。それにあずまは、涙子に言いたいことがあった。

 

「涙子君も、能力がないことに葛藤したんだろ?涙子君は、出口のないトンネルを走り続けたけど、停止信号も現示されていない、その区間に止まってしまっていたんだろう。でもね、俺は言いたいよ。能力の有り無しは関係ない。目の前のことに全力を注ぐ。涙子君は今、長いトンネルからやっと抜け出したんだよ。それは同時に、涙子君に対して、出発信号機が進行現示になったことを示しているんだ。この先、大きいカーブだったり、分岐器を渡らなくちゃいけなかったり、更には道床が悪い線路を走らなきゃいけないことがあるかもしれない。でも、大事なものを忘れず、目の前のことに全力でやれば、それは涙子君に+になるだけじゃなくて、もっといいものが涙子君についてくると思うよ?」

 

涙子が涙を流す。

 

「ほら、よく言うじゃないか。線路は続くよ、どこまでもって!」

 

「あずまさん。それはあずまさんの鉄道に絡めて、ただ言いたかっただけなんですよね?」

 

「いいじゃないか。ほら、泣くんじゃない。君のその前照灯が、濡れてはいかんじゃないか。さぁ涙子君。学園都市のこの先に、人差し指を向けて、出発進行と言おう。まさに涙子君には、今、出発信号機が進行現示になったんだ!さぁ。」

 

すると、美琴と黒子が集まる。

 

「出発進行!」

 

まさに5人の、再スタートが切られた!

 

翌日。

この日は5人全員で通勤通学をしていた。美琴は、あずまの昨日の涙子に対することで何か疑問を持っていた。

 

「あずま君さ、昨日佐天さんに言っていたことで気になったんだけど、停止信号も現示されていない区間で止まってしまっていたと言ってたけど、どういう意味なの?」

 

「普通の電車って、赤信号、鉄道では停止信号と言うんだけど、それがついているのよ。ところが、停電だったり、故障したりすると、赤がつかなくなるわけよ。それで、赤がつかなくなるということは、停止という意味になるんだよ。だって、その先に電車がいるかもわからない状況だから、マニュアルでは、停止せよという意味になるんだよ。それで、司令に連絡して、指示を仰ぐわけよ。当然その先に何が起きるか分からないから、動かすときは、15kmの最徐行で動かすの。」

 

「停止しなくちゃいけないんでしょ?動かして大丈夫なの?」

 

「速すぎるとだめなんだよ。だから何が起きるか分からないから、指定された区間までは最徐行までって指示がされるから、それに従うんだ。」

 

美琴に教え込むあずま。あずまは6年間運転士をやってきて、なんとか、教え込むほどにまで知識を詰め込んだ。だがそれ以前に、他の3人はあずまに関して気になっていたことがあった。なぜ鉄道の乗務員を6年しかやらずに辞めてしまったのか。あずまは元々鉄道で働きたいという思いがあったが、バスも好きであったため、このまま何もできずに人生を終えていくのかと考えたときに、その決断を自分で下したのだとか。

 

「いいかい?俺みたいな人間になっちゃいけないよ?それは確かに俺みたいに他の事もやりたいと思うかもしれないけど、目の前のことに全力で行うのが先決だと俺は思う。だから、俺みたいに頭の悪い奴を参考にしちゃいけないよ。」

 

と自分を卑下して話す。4人は卑下して話すあずまにそんなことはないと話す。5人は分かれ、自分の持ち場へ向かった。

 

あずまは営業所に出勤し、点呼を受け、乗務するバスの点検やセッティングをした後、営業所に戻り、指差確認の励行として、点呼者と共に確認を行う。

 

あずまはバスに戻り、駅へ向けて発進していく。この日は学園都市トラフィックサービス東が自分で敷設した路線の1路線を担当していた。あずまの働く学園都市トラフィックサービス東は、主はタクシー業だが、今後の需要変化を見越して、副としてバスを受け持つという、先を見据えた会社だった。あずまはこの会社に入って感じ取ったのが、もしバス需要が増えるとなれば、分社化する可能性があるという予感がしている。まぁ、もっと先にならないとこれは分からないのだが。

 

「今日は初めての燃料電池バスだからね、普通のバスと違って扱いがかなり違うし、アクセルをちょっと踏んだだけでかなり加速するから、気を付けるように、今日も一日頑張っていきましょう。」

 

上司と思われる男性が同乗する。この燃料電池バスは、アクセルをべた踏みしただけですぐに高速域に入る。しかもお客様を乗せるのだから、これはもっと慎重にならなくてはいけない。

 

最初の出発地へ行くと、お客様がかなり並んでいる。ざっと30人ぐらいだ。現在は8時30分だが、これが時間を経つごとにどんどん並んでいく。当然乗り切れない場合もあるので、アナウンスをする。

 

「お時間に余裕がありますお客様は次のバスをお待ちください。」

 

バスは2分遅れて出発した。この時間帯の学園都市は、交通量が多いだけでなく、路上駐車も多い。あずま自身、前の世界では路上駐車からの飛び出しで事故を起こす間際まで追い込まれたこともある。それの経験もあるため、あずまは今以上に慎重になる。加速が早い燃料電池バスと、飛び出し。いわゆる、「かもしれない運転」だ。そんな神経をすり減らす日々を過ごしている。3往復して余裕が出たころ、あずまは上司からアドバイスをもらっていた。

 

「普通のディーゼルのバスって、アクセルをちょっとしか踏まなくてもあまり加速しないわけよ。だけどこの燃料電池バスと、あの電気バスって、燃料で使っているのは軽油じゃないし、モーターだから、そこも気を付けないと、お客様ひっくり返っちゃうからね。特に車内人身事故というのは以ての外だから、気を付けて。」

 

そんな指導を受けていた時だった。指導していた上司の乗務用携帯電話に、営業所から電話が入る。上司があずまに渡し、応答する。

 

「変わりました、子安です。」

 

「指導受けているところ申し訳ないね。次で一旦戻るでしょ?実はお客様が、君に話があるといって、うちに来ているんだ。」

 

「分かりました。」

 

あずまはこんな時にどういうことかと不思議に思う。

営業所に戻るあずまと上司。そこには、ある女性がいた。

 

「お待たせしました。見習い運転士の子安あずまです。」

 

自己紹介をする。すると女性から、あずまにお願いをしたいという。

 

「実は、今度の大覇星祭で、一般の部を設けることになったんですが、その中に、モータースポーツを取り入れるという案がありまして、それが可決されたんです。」

 

あずまはそれを聞いて驚いた。普通なら、学生たちが主役のはずでは?と。更に大覇星祭は、この学園都市トラフィックサービス東は臨時便の担当になるはずだと思った。なぜこんな話をあずまにしたのか。

 

「そこで、ぜひ、子安さんに出場してほしいんです。」

 

あずまは驚いた。どうしてこんなことになったのか。




突然の願いに驚くあずま。あずまの走行スキルはどうやって入手したのか。更にそれをやったところで何のメリットがあるのか、それがあずまには疑問が残っていた。あずまの決断は果たしてどっちに転がるのか?

次回 決断


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第16話 決断

突然の願いに戸惑いを見せるあずま。大覇星祭は元々学生が主役の祭りだ。なぜモータースポーツが出てくるのか。あずまは疑問を持っていた。瞬く間にその噂は広まるのだが、あずまはどっちに決断が転がるのか。


「その件に関しましては、お断りいたします。」

 

所長と女性は驚いた。こんな重要なことを逃すとはと。あずまは更に続ける。

 

「大体、大覇星祭は学生の普通の運動会に能力を一部解禁するということで開催されているんですよね?一般の部がそもそも設けられることなどおかしい。本当に設けられたんですか?」

 

すると女性は、大覇星祭のプログラム用紙を見せてくる。そこには、一般の部、モータースポーツと書いてある。だがあずまはどうしても納得いかない。

 

「いくら本当であっても、学生に事故とかそういうものを見せることになるんですよ?一歩間違えればモータースポーツは死亡事故につながる恐れがある。そんなものを見せていいとおっしゃるんですか?それに私たちは、臨時便の兼ね合いだってあるんですよ。運転士一人欠けたらどうなるかお分かりですか?その話をされるんだったらもう用はございません。お引き取りください。」

 

そういい、あずまは応接室を出る。所長は女性に謝罪をする。

 

「すいません。入社4カ月でして。走りたくないって言ってるでしょうけど、本音は走りたいんだと思います。」

 

あずまはバスに戻った。あずまの脳裏には、またしても悲しい経験が。前の世界でのこと。あずまは友人に誘われ、富士スピードウェイに向かった。自分のハチロクを走らせ、10周ほど走っていたが、友人の車はヘアピンカーブの壁に高速で突っ込んだ。それも尋常じゃないスピードで。友人の乗っていた車両は、クラウンだった。クラウンの前面は大破した。さすがのあずまも、車を降りた。その友人は、搬送先の病院で亡くなった。これ以降、あずまはサーキットで走るのをやめ、同時にモータースポーツから引くことになった。あずまのトラウマがまた蘇ってしまう。

 

営業所から帰宅したあずまは、涙子と大覇星祭の話になった。

 

「あ、そういえば、大覇星祭が今年も開かれるんだけど、、今年から一般の部が開かれるみたいで、その中にモータースポーツが入るみたいなのね。あずま君にもしかしたらオファーがかかったんじゃないかなぁって思ったの。」

 

「俺はモータースポーツには出ない。モータースポーツがやりたいなら、勝手にしてほしい。」

 

そういい、部屋に戻った。モータースポーツの言葉を聞いた瞬間、あずまの様子がおかしくなる。

 

翌日。4人は公園で大覇星祭の話をしていた。その中で、あずまの様子がおかしいことも伝えた。

 

「あずま君、大覇星祭でモータースポーツの話をした瞬間、様子がおかしくなったの。何があったのだろう・・・。」

 

「たぶんトラウマがあるのかな・・・。」

 

涙子の家に到着した4人は、あずまの部屋から、資料をあさる。各々が資料を探していく。すると、美琴が何かを見つけた。そこは、静岡県の新聞が。

 

「1998年10月8日の新聞だわ。富士スピードウェイで1人が死亡。スピードの出し過ぎかという記事があるわ。午後2時13分頃、静岡県富士市の富士スピードウェイにて、レースをしていた1人が壁に激突した。病院に搬送されたが、その後死亡した。」

 

4人はこれではっきりした。あずまがモータースポーツに出場しないわけが。あずまは同期を亡くした悲しみと、サーキットで友人を亡くした悲しみが。あずまはそれを背負っている。営業所では、あずまが一人佇んでいる。蘇ってしまったトラウマ。営業所からの帰り、あずまは公園に寄った。その近くには、サーキットが。すると・・・

 

「ここにいたのね。」

 

「君たち…どうして…。」

 

後ろを振り返ると、美琴、黒子、飾利、涙子の4人が。

大覇星祭のモータースポーツについての話をすると、

 

「だから参加しないって言ってるだろ。君たちにはその参加しない意味が到底分かるまい。俺は帰る。」

 

「分かってるわよ。参加しない理由。11年前に起きた、富士スピードウェイでの事故でしょ?」

 

どうしてそんな話をと思った。

 

「あずまさんの部屋を調べさせてもらいましたの。新聞の切り抜き。そして、あの写真に写っていたのは、あずまさんと親しかった友人、弁天町 博光(べんてんちょう ひろみつ)。」

 

あずまは4人がたどり着いた真実に何も言い返すことができなかった。空き缶を握りしめ、ゴミ箱に捨てたあずまは・・・。

 

「そうだ。俺の車好きの友人で、元々そいつは身寄りのない、施設で育った子だったんだ。高校時代、博光は俺にいつも車の話をかけてきた。俺自身も小さい時から車が好きで、いろいろ話が噛み合ってた。高校卒業するとき、博光は言ったんだ。一生モータースポーツを楽しもうぜって。高校時代はあまり口数も少なかったけど、久しぶりに会った時はかなり明るくなってた。俺は心から喜んだ。だが、富士スピードウェイで勝負しようという話になった時、俺は止めたんだ。ケガをしたら、万が一死亡でもしたら・・・でも博光はな、その時はその時って、言ってたんだ。それは、自分が死を覚悟しているようなものだった。だが俺はそれに気づけず、バトルした。10周してヘアピンカーブを曲がる時だった。博光が先行で走っていた時、ヘアピンカーブの壁に、時速150kmで突っ込んだんだ。救急車を呼んで、搬送されたけど、戻ってくることはなかった・・・。それから俺は、もうこんな思いはしたくないと、モータースポーツを一切見ることはしなかった。だから俺は、大覇星祭のモータースポーツなんて出ないんだ!俺はそんな死亡事故を起こさせたくない!」

 

あずまが過去の記憶を話した。

 

「あずま君の気持ちは分かったわ。でも、その博光さんと言う方は、モータースポーツをしないあずま君の姿を見て、どう思うのかしら?一生モータースポーツを楽しもうって言った博光さんの思いを踏みにじることになると思うよ?」

 

そういい、美琴はなんと、あずまを抱きしめる。黒子がその姿を見て、なんと!驚く。

 

「それに、学園都市の皆は、あずま君のハチロクを見たいと思ってるわよ?その思いを背負って、走り続けるあずま君を、博光さんは望んでると思うわ。佐天さんに言ってたでしょ?出発信号機が、進行表示になったって。」

 

涙を流すあずま。そうだよな。34歳が涙子に言っておいてこれはさすがになとあずまは思う。

 

「ほら。一緒に言おう。あずま君が言った、あの言葉。ほら。」

 

「出発進行!」

 

気を取り直したあずま。今考えてみれば、あずまと仲良かった、博光の思いを踏みにじっているようなものだった。それを考えれば、こんなところでくよくよしてはいけないと、気づかされた。あずまの思いを受け入れてくれた4人に感謝するあずま。だがあずまたちは、知らなかった。この大覇星祭で、大変な事件が起きようとしていることを。

 

翌日、あずまは出勤をした。すると、朝から営業所長に呼ばれる。

 

「あのモータースポーツの件は、もう一回考えてくれたかな?」

 

「はい。出場します。」

 

「本音は走りたかったんだろ?素直に言えばよかったのに。」

 

そんな会話があった。今日はこの学園都市トラフィックサービス東で、ある訓練が行われるという。それが、大覇星祭前に新設される路線だ。それは、第七学区、学舎の園を巡回するルートで、本数は1時間に1本だが、地下鉄二日駅発の大型路線バスを走行させるという話だ。そんなこんなで、訓練を受けるあずま。いつもの通常運行の指導を受けながら運転するのに加え、新設路線も走る。車両は今の車両でやりくりし、必要に応じて増減するという。そんなことも始まるのか。彼のすり減らす神経は、またすり減っていくのだった。

 

あずまは会社からの帰り及び、休日にサーキットを借り、練習をしていた。本番は何周するかはまだ分からないが、練習させておくに越したことはないと考える。

コースは、東京ドーム2.8個分あり、途中には上り坂かつ160度のカーブがある。何度も練習をしていくあずま。帰ってくるときのあずまは、かなり疲れきっていた。

 

実は今年から、大覇星祭は7日間の開催から9日間の開催に変更された他、さきほどの一般の部、モータースポーツに加え、5人でペアを組んでクイズを行う、頭脳系も加えられたのだ。また、学園都市トラフィックサービス東は毎年、臨時便としてバスを増発している。あずま自身も、34年生きてきてこんなハードなことは無かったのだった。

 

実はその頃、アジトでは、ある計画が始動していた。

それは、あずまの殺害計画だった。

 

「情報を掴みました。子安あずま、34歳。学園都市トラフィックサービス東のバス運転士をしていて、ジャッジメント協力者の超能力者、LEVEL5です。」

 

「子安あずまにかなり親密な学生が4人いるそうね。誰なの?」

 

「佐天涙子。柵川中学1年で、無能力者、LEVEL0。子安あずまと共に生活しているそうです。次に、初春飾利。同じく柵川中学1年で、低能力者、LEVEL2。ジャッジメント一七七支部所属で、子安あずまも同じ所属である模様です。そして、常盤台中学1年、白井黒子。高能力者、LEVEL4で、同じくジャッジメント一七七支部に所属しています。」

 

「これだけ見ると、そこまで大した人間じゃなさそうね。」

 

「いえ、もっと厄介な人物がいます。常盤台中学2年、御坂美琴。超能力者でLEVEL5。学園都市第三位の超能力者で、電気系統の攻撃を行っています。今までこの御坂美琴に向けて、勝った人物は一度もいないそうです。」

 

あずまの殺害計画に関して、あずまの身辺の人物を洗いざらい探っていたのだった!

 

「そうか。我々の目的は、子安あずまを葬り去り、学園都市の長を目指すことだ。まずは無能力者である佐天涙子を拉致監禁するんだ。子安あずまは解放させるための要求なら飲むだろう。」

 

「いえ、それには及ばないかと。情報によれば、1週間後に開催される大覇星祭の、モータースポーツの部で、子安あずまは出場するとのことです。つまり、静かに殺すのではなく、大勢の観客の前で、子安あずまを葬り去るのが一番有効かと。」

 

「それはおもしろい。早速子安あずまを尾行しろ。何か情報を得られるかもしれない。至急、第1両隊を編成し、出動だ。」

 

子安あずまを殺害する計画がひそかに動いている!この先、あずまたちはどうなってしまうのか!?




大覇星祭の大きな改正により、出場することになったあずま。しかし子安あずまを殺害する計画がひそかに動いていることを学園都市の住民は知らない。果たして、この計画を阻止できるのか!?

次回 前夜祭


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第17話 前夜祭

あずまの殺害計画が進行していく中、その犯人の手がかりが得られた。だがそれは、あずまたちを激震させるものだった!


練習を終え、あずまは美琴と一緒に、第七学区を歩いていた。あずまは、美琴が苦手としながらも、人間関係維持のため、適当に付き合っていた。専ら付き合うのは、4人揃ったときだ。

 

実は最近、あずまと美琴の関係を、ハイブリッドカップルと呼んでる話を聞くそうだ。

美琴は、電撃関係の能力を持ち、あずまは多重能力を持っているのだが、よく軽油を飲んでいる。

そもそもハイブリッド自動車の仕組みは、モーターがエンジンをアシストするという仕組みになっている。

つまり、電撃を放てる美琴が、エンジンの能力を持つあずまをアシストしているということになる。

 

「どうして俺を呼んだんだ?」

 

「暇だし、あずま君でも掴まえてどっか出かけようかなーって。」

 

「言っとくぞ。俺は34歳。君は14歳。20も違うんだぞ?俺が君を連れているってだけでも視線が熱くなってしまうんだから。」

 

「兄妹だって思われれば大丈夫なんじゃない?そんなこと言ってたら、私だけじゃなく、黒子や初春さんたちと出かけられなくなるわよ。」

 

「似てねぇし。」

 

理由のない会話が続く。その頃、あずまの後ろを31人の部隊と思われる人物たちが尾行していた。無論アンチスキルではない。あずまがそれに気づき、美琴に走れという。

 

「どういうことよ?」

 

「後で説明する!」

 

とにかく走り、七学区の住宅密集地に逃げ込む。逃げ込んだ先は、人一人分が入る狭い通路。部隊から一度くらまし、上空から攻撃する!

美琴はテンプレの、電撃で一気に11人を殲滅。

 

すると部隊は、マシンガンであずまを攻撃しようとした!だが、あずまも電撃の剣状のようなものでマシンガンの弾丸を破壊!更に7人を倒した!すると残りの隊員は退散した。あずまは逃がすものかと、口に含んでいたガムに発信機をつけ、隊員の靴に貼りつける。

 

「さてと、まずはジャッジメントに連絡だな。ん?」

 

2人が倒した隊員の手から、EWNSと書かれた通信機が。他の隊員からも回収すると、EWNSと書かれた通信機が出てきた。それらを押収したあずま。

4分後、アンチスキルとジャッジメントが到着した。

 

「ご苦労じゃん。どうした?」

 

「こいつら、俺と常盤台のエースを追ってたみたいで、ここに逃げ込んで何か用かと聞いたところ、突然マシンガンぶちかましてきました。」

 

「随分と厄介な連中じゃん。ここから先は、我々が引き継ぐから、あずま君はジャッジメントに・・・」

 

するとそこに、黒子が寄ってきた。テンプレの黒子が美琴にアップローチするところは変わらない。すると黒子が、

 

「ちょっとあずまさん?私のお姉さまと何かやらしいことをしたとかはありませんわよね?」

 

「そんなことするわけないだろ?逆にこっちが呼ばれたんだよ。」

 

黒子がそれを聞き、美琴に事情を聞く。美琴はここに至るまでの経緯を説明する。

 

「そういうことでしたの。」

 

「まったく誤解しないでくれ。それより、こいつらのポケットから、EWNSと書かれた通信機が発見されたんだ。それも隊員全員。」

 

すると黒子が、何か見たような聞いたような既視感のある表情を出した。あずまはとにかく、ジャッジメント一七七支部にむかった。美琴と黒子も。一七七支部には、飾利がいた。どうしたのかをあずまに聞く。

 

「飾利君、至急調べてほしいことがある。EWNSと書かれた発信機が、さきほど拘束された隊員からすべて見つかった。」

 

すると飾利も、何か疑問に感じていた。

 

「EWNSって、確か2年前に学園都市で超能力者と高能力者を誘拐して殺害したグループだよね?どうしてあずま君を尾行していたのかしら?」

 

「もしかしたらそのEWNSっていうグループがまた再結成したのかもしれんな。解散したけど裏では普通に結成して動いているグループもある。」

 

あずまは、学園都市に来てばっかりとしながらも、今までの経験から可能性を話した。あずまは、走り屋をやってきて、勝負で色々卑劣な手で狙われたことはあったが、命を狙われることがあったのは2回目だ。1回目は、何を隠そう、ジャッジメントの協力者となってから、グラビトンで狙われた事件だ。

 

その頃、あるアジトでは・・・

 

「子安あずまと、御坂美琴、かなり厄介な人物です。作戦に当たった数名が拘束されました。」

 

側近と思われる人物がボスと話していた。

 

「だがこれはまだまだ序の口。子安あずまを殺しさえすれば、学園都市の長はこの私になるのだからな。ついでに御坂美琴も殺してしまおう。LEVEL5・・・この2人の命も、あとわずかなのだからな。」

 

前夜祭。5人は涙子の家で、ジュースを飲んでいた。一斉に乾杯する。

 

「今回の大覇星祭は、9日間開催の一般の部新設ということになりましたわね。」

 

黒子が話す。

 

「ホント。しかもあずま君は、モータースポーツで出場するんだからね、AE86、スプリンタートレノで。作戦はもう考えてあるの?」

 

「ああ。練習も何回か行ってるし、今回協力してくれる人もかなりいるから、はかどってるよ。だが、さっきのあの事件が絡むと厄介なんだよなー。」

 

あずまは、練習は通常通り行えてるとしながらも、先ほどの美琴とあずまの事件がまた起きるのかもしれないと危惧している。しかもあずまは、モータースポーツの部のみならず、5人1組を組んで出場するクイズに関してもまた出場しなければならない。かなり負担を強いられているが、ここであきらめたら、負け。そう思い、あずまはひるまず前に進む。涙子は何があったのかを聞くと、あずまはその経緯を話す。

 

「まぁでも、ジャッジメントもいるし、何かあればアンチスキルが動くから、あまり気にしなくていいでしょ?」

 

涙子はそう話す。だがあずまには、その心配が拭えていなかった。

 

そして、大覇星祭当日。

 

あずまはこの日、モータースポーツの練習をやめ、ジャッジメント協力者として、巡回をしていた。

 

その頃、あるアジトでは、

 

「大覇星祭のプログラムですが、9日間開催され、そのうち、一般の部は、2日目と5日目に行われ、2日目にモータースポーツの部、5日目に5人1グループで出題するクイズがあります。これに、子安あずまと、御坂美琴が出場します。」

 

「そうか。では、今夜第2両隊から第4両隊と、殺戮兵器「J-EB」を出動させよう。2人を消し飛ばしてしまえば、学園都市の長を取れるのだからな。」

 

大覇星祭の借りもの競争では、こんな問題が出た。

 

「勝どき橋の跳ね上がる瞬間の動画」

 

「東京発大阪行きの夜行バスチケット」

 

「学園都市トラフィックサービス東の燃料電池バス」

 

など、かなり無理難題な問題も出た。当麻は燃料電池バスを借りるという問題になっていた。当麻は学園都市トラフィックサービス東の営業所に行き、借りもの競争のお題を伝える。営業所は、あずまに連絡した。

 

「子安君?あのね、ちょっとお願いがあって、借りもの競争で、一人燃料電池バスを借りたいという高校生が来てるのよ。申し訳ないけど今から大丈夫かな?」

 

そういわれ、あずまはそれを了承し、急いで営業所に向かった。

 

10分後、営業所に到着したあずまは、燃料電池バスを起動させ、驚異のスピードでゴールへ向かう。

 

7分後、あずまは燃料電池バスをスタジアム内に入れる。

 

「ありがとな。それにしても、この燃料電池バス、加速がめちゃくちゃ速いな。おかげで腰を抜かしちまったぜ。」

 

「まぁ、こいつの燃料は軽油ではなく、水素だからな。モーターで動いているから加速がバカみたいに速いのさ。」

 

大覇星祭1日目が終了し、あずまは涙子の家に戻った。翌日は、あずまの出場する、モータースポーツの部。あずまも気を抜けない。

 

第3学区。午前3時すぎ、トラック3台が停車。

大勢の隊員と、殺戮兵器がトラックから降車。あずまと美琴の殺害計画が、進んでいた!

 

2日目、モータースポーツの部に出場したあずま。

このサーキットには、大勢の観客がいる。それも大半が学生だ。また、大覇星祭は世界に中継しているため、モータースポーツを取り入れるというのも、また一つ違う味を出している。

今回は初の試みではあるが、サーキット内はかなりの歓声が。

 

「来たぞ!ハチロクだ!」

 

あずまのハチロクがサーキット内に入る。今回のモータースポーツは、あずまのハチロクのみならず、RX-7、クラウン、ゴルフ、エスティマ、BB、ポルシェ911、パジェロ、ハイエース、キャラバンの10台が出場。27周することになっている。ピットインするコースもあり、世界的に開催されているモータースポーツのグランプリのようになっている。なお、エントリーは自車。つまり、自分でエントリーして勝負するというわけだ。

 

「あずま君ならきっと、優勝できると思うわ。」

 

「そうですわね。」

 

美琴、黒子、飾利、涙子も観戦に来ていた。あずまは試運転でサーキットを1周する。コースの形状、坂、シケインなどいろいろなものをもう一度確認し、シミュレーションをする。あずまはこれまでにも、他の山岳地帯で他の走り屋と勝負するときにそのスキルを身に着けてきた。今回はそれが久しぶりに生きる瞬間でもある。全員が一周し、車両を各々のポジションにつける。

 

「さぁ大覇星祭で新しい試みが開催されます!果たしてAE86は30年前の力を活かして優勝にこぎつけるのか!?それとも現代に製造された車両が優勝を取るのか!?」

 

実況も盛り上げに動いていた。赤のランプが1つずつついていき、そして、青ランプに変化!スタート!

 

あずまは5番手からのスタート。最初は右カーブになっているため、各々が車両を右側に寄せる。そして780mの直進の後、今度は左に100度のカーブ!サーキットでの戦いは、どこの部分で車両を追い越すのか、どの部分にどのスピードで進入するかを計算しながら走る。

 

あずまのハチロクはやはり非力であるためか、少しずつ追い抜かれてしまう。走り屋の意地をかけてでも、あずまの負けたくないという気持ちは強まる。更に言えば、あずま自身もモータースポーツの中継番組を見ていて、出場したいという気持ちはあった。だがそれよりも強い気持ちを持っている。

 

「やはりハチロクは非力なんでしょうか?」

 

飾利もハチロクの出力に少し疑問を持っている。

 

「あずまさんが乗っているハチロクは、非力だったみたいで、特に上り坂は不向きだったみたいです。今回のサーキットも、第5コーナーの左カーブ、150度に曲がるんですけど、その際に上り坂があるんです。」

 

飾利がサーキットの中身から、ハチロクの進行具合に疑問を感じていた。だが、他に信じるとしたら、あずまの技術次第。4人はあずまの技術に信じていたのだ。

 

だがその頃、サーキット周辺では、あずまと美琴の殺害計画に加わっていた部隊と殺戮兵器が、サーキットに集まっていた!果たして、あずまと美琴の運命は!?




モータースポーツで戦っている中、あずまの走行を妨害する者が現れた!殺害計画との関連性は果たしてあるのか!?あずまはこのモータースポーツの戦いで、頂点に立つことができるのか!?

次回 大覇星祭モータースポーツ 学園都市グランプリ


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第18話 大覇星祭モータースポーツ 学園都市グランプリ

大覇星祭では初の試みであるモータースポーツが開始した。あずまは5番手からスタートしたが、非力であるからか、思うスピードがでない。
そんな時、美琴とあずまを狙った集団が近くまで来ていたのだった!


ここで、モータースポーツで使用されるサーキットを説明。使用するサーキットは、東京ドームおよそ7.8個分あり、コースの距離は38.74キロ。コーナーは14コーナーある。一番難易度が高いのは、第5コーナー。このコーナーは、150度の鋭角になっており、更に上り坂になっている。更に、第9コーナーは、長い直線距離のあとに出てくる、157度のカーブだ。更にこのカーブは、第5コーナーとは違い、19‰の勾配だ。そのあとは、緩やかなコーナーがあるが、いかにコーナーでのテクニックにより相手を追い越すか、いかに直線距離で追い越すかがこのモータースポーツの勝負を決める鍵となる!

 

モータースポーツ開始前、あずまは4人と一緒に話し合っていた。色々な話を終え、あずまはピットインエリアにいる仲間たちの元へ向かおうとしていた。美琴が呼び止める。

 

「これを。御守りとして、持っていって。」

 

美琴は自分の髪をほどき、花のヘアピンをあずまに御守りとして渡す。あずまはそれを受け取り、代わりに、全員に御守りとして、電車のネクタイピンを渡した。

 

「美琴君、黒子君、飾利君、涙子君。君たちは最高のメンバーであり、最高の後輩だよ。どんな結果でも、俺は皆と一緒になれてよかった。そう思ってる。」

 

「あずま君。もう一回言ってくれる?記念に録っとくから。」

 

あずまは真面目に言ってると話すが、黒子はオーバーだと言った。更に飾利も、今生の別れじゃないしと言う。

あずまは言わなきゃよかったと後悔する。

 

 

そして、今現在、あずまのハチロクは3周目を迎えた。2番手に追い上げた。だがその時、あずまは異変を感じた。サーキットの上に、何かきらんと光る物が!まさか!あずまは急ブレーキをかけ、更に急ハンドルを切った!

 

「おっとどうしたことか!?ハチロクがスピードを落としてふらついた!」

 

会場の空気が慌ただしくなる。そう。実はこのとき、あずまを狙撃しようとしたスナイパーがいた!察知したあずまは、弾の軌道がみえるため、左にきり、更にブレーキでスピードを落としたのだった!

 

観戦していた4人も様子がおかしいことに気づく。と、その時、美琴の携帯に電話が入る。あずまからだ。

 

「大丈夫なの!?さっきふらついてたみたいだけど、というかレース中でしょ!?携帯大丈夫なの!?」

 

美琴があずまに聞くと、あずまはそれより重要な通告があるとし、今から言う指示を聞くよう話す。

 

「第7コーナーを曲がった時に、スナイパーみたいな奴がいたんだ!おそらく、俺らを襲った奴らだ!美琴君と黒子君は、スタジアム外に行って、奴らを倒せ!更にアンチスキルに連絡して、EWNSの奴らが来たと話せ!涙子君と飾利君は、ピットにいる仲間と合流して!俺が無線飛ばすから!」

 

「だけど大丈夫なの!?あずま君がレース中に狙われたんだから、また狙われる可能性は····」

 

「大丈夫だ!俺は俺でなんとかする!こんなつまらないことで、死んでやるものかよ!」

 

そう言い、あずまは電話を切る!更にピットと無線を飛ばす!

 

「これからピットインするけど、重要な案件だ!とりあえずこれで話すぞ!緊急事態が起きてる。女子中学生2人が来てたら、そのピットで待機させて!」

 

その時、あずまのハチロクは、ピットインの近くまで来ていた。あずまはピットインし、その最中にメモを書く!

 

メモには、

SOS サテン ウイハル wait と書かれている。

 

その頃、サーキット周辺では、部隊が殺害計画を進行していた。

 

「あなたたちですか。まったく世話を焼かせますわね。ジャッジメントですの。殺人未遂の容疑で、拘束しますの。」

 

すると奴らは銃を向かせ、黒子に放とうとする!黒子はテレポートで攻撃を回避!後ろに回り込み、3人をまず倒した。

美琴は17人を引き付け、更に電撃で一網打尽にした。

 

その頃、飾利と涙子は、ピットに入っていた。

 

「君たちが初春さんと佐天さんか。話は聞いているよ。さぁここへ。」

 

ピットの作業員が飾利と涙子を案内する。

 

あずまはピットインし、燃料補給ならびにタイヤ全てを履き替えた後、出発。

ピットインしていたため、7番手まで落ちた。だがあずまは、これ以上にもっと事が重大であることを知らなかった。実は、この出場しているドライバーの中に、あずまの殺人を計画した男がいた!それにまったく気づいていないあずま。だがあずまは、それ以上に、皆の期待を裏切りたくないという思いがある。それは、会場の観戦に来ている約6.7割は、あずまに期待しているということだ。あずまはその期待を背負い、ハチロクを走らせている。中途半端な気持ちで走り屋とかモータースポーツをやるのはごめんだと思っていた。すると、ここであずまが見せる!あずまの前を走るエスティマ。なんと第5コーナーの上り坂で失速!アウトから攻め込み、追い越した!

このシーンに観客は盛り上がる!

 

その声を聞いた美琴は、更に40人を撃破!黒子は7人を撃破し、これに至るまでに137人を撃破!だが、まだまだ相手は、246人近くいる!すると、美琴の近くに、殺戮兵器が寄ってくる!美琴が電撃を放つが、なんとコンクリートでブロック!

 

一方、レース中のあずまは、黄泉川に連絡。

 

「レース中じゃん!?大丈夫か!?」

 

「黄泉川さん!部隊は攻撃範囲を広げようと、第7学区のサーキット付近から遠ざかろうとしています!サーキットから3km圏内を封鎖してください!」

 

「了解したじゃん!」

 

黄泉川は、アンチスキル部隊を3km圏内に回し、封鎖を指示!

 

その頃、あずまは3番手にまで追い上げた!残り7周!するとあずまの後ろをべったりくっつく、ポルシェ911の姿が!そう、あずまの殺害を企んでいたドライバーだ!すると、ポルシェ911は、あろうことか、あずまのハチロクにぶつかりに行こうとしていた!あずまはそれに気づき、スピードを落として回避!すると、このポルシェ911にブーイングの声が!それは当然だ。フェアプレーの精神に反する行為だ!あずまは回避したあと、スピードを回復させる!そして、スタート位置である周回境界点には215kmで進入した!そして第1コーナーに進入しようとした次の瞬間!ポルシェ911が故意に衝突し、あずまのハチロクは制御不能に!そしてハチロクは横転をしたあと、7回転し、壁に衝突し停車。この事態にスタッフたち大勢がハチロクに駆け寄る。ハチロクは大破していて、中を覗くと、意識のないあずまの姿が!

救急車が1台、サーキットの中に入る!飾利と涙子はあずまの元に駆け寄ろうとするが、ピット作業員に止められる。

 

「だってあずまさんが!」

 

「気持ちは分かるが、レース中だ。危険すぎる!」

 

サーキット会場は騒然としていた。その話を聞いた美琴は、怒りが頂点に達し、攻撃が倍増した!

その時、常盤台中学の制服を来た女子2人が到着!

 

「ここは私たちにお任せを!」

 

2人は、湾内絹保と、泡浮万彬だ。

絹保は、水流操作(ハイドロハンド)、万彬は、流体反発(フロートダイヤル)の能力をもっている。黒子と同級生だ。美琴は2人に任せ、その場を立ち去る!立ち去る美琴を追おうとする9体の殺戮兵器!2人はそれを攻撃しようとする!万彬はフロートダイヤルで9体の殺戮兵器を地面に押し付ける!そこをハイドロハンドで攻撃!あまりの呆気なさに驚きを隠せない2人。美琴と万彬、絹保はあずまが入院している病院に向かった!

 

病院に行くと、そこにはあずまの姿が。頭には包帯が巻かれている。カエルの顔をした医者が来る。

 

「先生!あずま君は?」

 

「幸い、強靭な体のおかげで、骨折等は体に見受けられなかったが、頭をおそらく強く打ってしまったんだろう、意識が未だにない。しかし、200km以上のスピードで激突されてしまって、更に車両は大破。特に車の頭上部分が壁に当たってしまってみたいだ。」

 

このあずまの姿を見た美琴。怒りがこみあげてくる。

 

「私行ってくるわ。あずま君をこんな目に遭わせたあげく、あずま君の大事な、ハチロクを破壊されて、許せるわけがない!」

 

その姿を見た万彬、絹保は、美琴に落ち着くよう話すが、

 

「私を止められる奴は倒せ!どうなっても知らないわよ!」

 

2人は固まる。あずまの無残な姿を見た美琴は、サーキットに向かった。

その頃、サーキットでは、あずまに激突したポルシェ911に激しいブーイングが。

すると、怒りが頂点に達したのか、ポルシェ911に物が投げられる!

 

「ハチロクに激突し、ポルシェ911には走行資格が失われました!」

 

ピットに戻るポルシェ911から出てきた運転士。

 

「よくやったな。これで子安あずまも、終わりだ。報酬は後で払う。」

 

ピットの作業員を装っていたEWNSの11人は、ピットに通じる通路を歩いて戻ろうとする。と、その時!

 

「ただで戻ろうとするなんて、甘いわ。あんたたちだったのね。あずま君と私を殺害しようとしたのは。どうしてそんなことをしたのかしら?」

 

美琴の怒りは頂点に達していた。

 

「子安あずまを殺害すれば、俺たちが学園都市の頂点に立てると思ったからさ!奴はハチロクで名をはせ、更に貴様、御坂美琴とつながっていると聞いた。お前ら2人を殺してしまえば、更に学園都市の頂点に立てる。世の中は弱肉強食だってことを、思い知らせてやるのさ!たとえLEVEL5だろうとな!」

 

小太りの男が話す!その発言を聞いて、美琴の怒りのボルテージは更に上がる!そして、電撃を放った!

 

「あんたたちがやろうとしたことが、いかにあずま君を苦しめたか、思い知らせてやるわ!」

 

11人に対して電撃を放つ!11人は気絶し、美琴は更に続ける。

 

「言っておくわ。力さえあればなんとかできると思ったら大間違いよ。あんたたちは、LEVEL5の器じゃない。」

 

そういい、黒子に電話する。その時、黒子はようやくEWNSの連中を撃破したばかりだった。

 

「どうされましたの?お姉さま。」

 

「あずま君を卑劣な手で倒した連中を捕らえたわ。今、サーキットの中にいるわ。」

 

電話を切る美琴。すると、黒子が瞬間移動で到着する!

 

「お姉さま~!心配しましたのよ?お怪我は!?」

 

「大丈夫よ。それより、こいつらがあずま君を卑劣な手で倒した連中よ。さすがの私でも、怒りを抑えられなかったわ。」

 

説明する美琴。その後、アンチスキルの隊員が到着し、男たちを拘束する。

 

病院では、意識を無くしていたあずまが、意識を取り戻す。急いで戻らないととし、動こうとすると、絹保があずまを止めようとする。

 

「だめです!そんな体で動いてしまっては!」

 

「誰だ君たちは!?」

 

とりあえず先生を呼ぶようにと指示!すぐにカエル医者が到着した。

 

「大丈夫だね。脳波に異常はないから、おそらく明日には退院できるだろう。しかし、あの200km以上の走行で、かなり損傷を受けるはずなのに、君の体は骨折どころか、外傷もない。一体どういう体をしているんだい?」

 

「それは分からんのですよ。何か偶然でも起きてるんですかね。俺、34年生きてきてますけど、ほとんど偶然に救われてるんですよ。今回、こうやって体に傷がないのも、たぶん偶然なのでしょう。」

 

そう話すあずま。今思えば、今までの事故で入院してきて、外傷がなく、退院がそこまで長くない。どういう生き方をしてきたのか、自分でも分からない。

 

「俺のハチロクをぶっ壊した奴には、それ相応、いや、それ以上の苦しみを味わってもらう。美琴君を巻き込んだその代償も、払ってもらう。

やられたらやり返す。倍・・・いや、356倍返しだ。それが私の、LEVEL5としての流儀なんでね。」

 

「さすがハチロクの操縦手!噂はかねがね、あのハチロクを操れるLEVEL5のバス運転士ですね!」

 

「元々走り屋か何かをされていたんですか!?」

 

2人の質問に戸惑うあずま。そもそも誰?あずまにはそれしかない。

 

「失礼しました。私、常盤台中学1年の、湾内絹保と申します。」

 

「同じく常盤台中学1年、泡浮万彬と申します。」

 

「1年?ということは、黒子君と同級生というわけか。失礼した。私は学園都市トラフィックサービス東、運転士見習の、子安あずまです。以後お見知りおきを。」

 

3人の関係が始まった瞬間であった。




大覇星祭中に激突されてしまい、入院したあずま。諦めまいという精神が強く、あずまはその連中のいるアジトをようやく特定。倍返しなるか!?

次回 LEVEL5の流儀


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第19話 LEVEL5としての流儀

事故から一夜明け、退院したあずま。EWNSのアジトを突き止め、倍返しを企む。果たして決着をつけることができるのだろうか!?


5日目。この日の大覇星祭は、一般の部、5人グループのクイズが開催されていた!

参加するグループは、11グループで、それぞれ別々の会場にて開催されていた。

それには、あずまも参加していた。あずまは、テンプレの4人、美琴、黒子、飾利、涙子と出場していた。

 

クイズのルールとやり方はこうだ。クイズは2ndstageまで開催され、1stステージは、答えが5文字の問題に1人1文字ずつ回答。5問1セットで、チャレンジできるのは2回までとなる。

2ndステージは、答えが5つ以上ある問題を5人が1つずつ回答。1人正解で10pt獲得でき、チャレンジできるのは3問。電車が5編成ずつ走り、車止めに突っ込むまでに正解できればクリアとなる。

 

開催前日、涙子の家では、打ち合わせが行われていた。そこには、美琴、黒子、飾利の姿があった。

 

「なんかこのクイズ形式、どっかで見たことがあるような・・・。」

 

あずまにはデジャヴ感がとれて否めなかった。当然、以前の世界ではこれと同じ番組が放送されていたのだから。

 

「知っているという事は、どういう問題が出るか分かるってこと?」

 

涙子が聞く。

 

「そうだね。俺が今まで見てきた問題は、一般常識問題かな。あとは時々時事問題も出てくるよ。例えば、ことわざだね。親しき中にも礼儀ありという言葉あるけど、その部分をひらがなで書きなさいという問題だったり、あとは、英語のスペルを書けとかだね。色々出るよ。だから、あまり難しく考えないで解けば、おそらく全問正解できると思う。しかも今回は、参加するグループは、最初みんなリーグ方式で戦っていくからね。それで決勝まで進むって感じかな。」

 

あずまが知らないと思われることを話した。

 

そして当日。あずまは、グループのうち5番目にいた。

 

「それでは、5日目の一般の部、クイズを始めていきたいと思います!」

 

司会者がルールを説明する。そして、まずは3会場に分かれて開催。そして、あずまたちのクイズ戦が幕を切って落とされた!

 

「第一問。これ、何?」

 

スクリーンには、ガソリンスタンドが出てきて、燃料を給油する姿が。

 

「カタカナで書いてください。ディーゼル車で使用されている燃料のうち、よく使用されている燃料です。」

 

(これはもう余裕ですわね。)

 

(あずま君がいつもハチロクで使っている燃料だからね。)

 

各々が余裕で答えを書く。そしてすべての答えが出そろった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ディーゼル車で使用されている燃料のうち、よく使用されている・・・レギュラーガソリン、正解!1問クリア!10pt獲得でーす!」

 

司会者が言う。その後、あずまたちは全問正解をし、ついに決勝戦にまで上り詰めた!するとあずまの元に、当麻がやってくる。

 

「決勝まで上り詰めたんだって?あずまなら絶対優勝できるさ!頑張れよ!」

 

当麻があずまに激励の言葉を放ち、立ち去る。美琴と黒子はテンプレのじゃれあいだ。そこに、絹保と万彬がやってくる。

 

「すごいですね!御坂さん!白井さん!」

 

「湾内さんに、泡浮さん。」

 

「優勝までもう少しですね。御坂さんと白井さん、あと、あのあずまさんという方と他の2人さんの力なら、なんとか優勝できると思います!」

 

2人もまた、激励の言葉をいただいた。時間は昼食時間帯に差し掛かっていた。

美琴は、両親の元で昼食を食べていた。母は、御坂美鈴。父は、御坂旅掛。

そこを、あずまが通過しようとした。あずまはイヤホンで何か音楽を聴きながら歩いていた。そこを美琴が呼び止める。

 

「あなたが子安あずまさん?私は、美琴の母、御坂美鈴です。」

 

「どうも、学園都市トラフィックサービス東、運転士見習の子安あずまです。」

 

「それにしても、あずま君も美琴と同じLEVEL5とはね、驚いたよ。両親はいるの?」

 

返答に詰まったあずま。それはそうだ。元々この世界にいたわけではなく、両親はいない。

 

「両親はいますけど、今は働いているので、今日はここに来ません。」

 

なんとかそれで返答したあずま。あずまはこれが聞かれることをまったく予想していなかったのである。それに気づいていた美琴。美琴は何も言う事が出来なかった。

 

そして午後1時。運命の決勝戦が始まる。

 

「さぁ、子安あずまさん率いる、柵川常盤台高速線チームと、小竹愛羅さん率いるダブルミックスステーションチームの決勝戦が始まります!では、行きます!最初は、ダブルミックスステーションチームからです!

 

第1問! これ、どこ?」

 

司会者が話すと、スクリーンには、ひしめき合うトラックの姿が。そして、トンネルの幹線道路。

 

「漢字でお答えください。お台場から少し離れたところにあり、不純物で埋め立てられたこの島はなんでしょうか?」

 

ダブルミックスステーションチームは、余裕で回答をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不純物で埋め立てられた島、オープン!

 

中央防波堤 正解でーす!1問クリア、10pt獲得でーす!」

 

ダブルミックスステーションチームは、1回戦を全問正解し、2回戦は3問止まりの80ptを獲得した。少し焦りを感じるあずまたち。

 

「それでは、次は柵川常盤台高速線チームのクイズでーす!第1問!この駅は、どこ?」

 

スクリーンには、黄色い帯の電車に、ピンク色の地下鉄の電車、更に茶色の電車と、緑の電車、青の電車が映っている。

 

「ひらがなでお答えください。東京都文京区の、東西南北が交差する駅です。ちなみに子安さん。この問題は余裕ですよね?」

 

「まぁそうですね。何せ学生時代よく通いましたからね。」

 

(確かあずまさんがおっしゃっていた、あの駅ですわ。)

 

(東西南北の交差地点。面白い場所のはず!)

 

少し戸惑いながらも、13秒後に回答が出そろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「東京都文京区にある、東西南北が交差する駅、オープン!

いいだばし駅 正解! 1問クリア 10pt獲得でーす!さぁ、どんどんまいりましょう!第2問!この英語のスペルを書け。

 

スクリーンには、地球が映っている。これも余裕で回答をするあずまたち。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「地球のスペル EARTH 正解!2問目クリア 10pt獲得でーす!さぁ子安さん。まだまだ余裕の表情ですけど、いかがですか?」

 

「まぁ余裕とは思いますけれども、余裕な時ほど兜の尾を締めよと言いますから、気を引き締めていこうと思います!」

 

司会者からのインタビューに答えた。観客からはあずまたちを応援する声が!あずまは事故直前の、あのサーキットのことを思い出した。学園都市のみならず、学園都市以外の方も期待していることを察し、なんとしてでも正解して、優勝させてみせると誓った。

 

「さぁ行きましょう。第3問。これ、なんという?」

 

すると、今度は方角を英語に直し、カタカナで直した問題が出てきた。

 

「カタカナで書いてください。東は、イースト、西は、ウエスト、南は、サウス、北は、ノース、では、中央は、なんというでしょう?」

 

(これはさすがに分かるわ。だって俺の地元の大手のバスがそうだもん。)

顔に笑みを浮かべるあずま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中央をカタカナで、オープン! セントラル正解!3問目クリア!御坂さん。これはいい展開になってきましたね!少し全問正解が見えてきましたよ?」

 

「そうですね。目標は全問正解ですので、最後まで気を抜かず、答えていきたいですね。」

 

「さぁ全問正解も見えてきました。少し難易度が上がります。第4問!この大学は、何?」

 

すると、銅像が出てきて、校舎が出てきた。だがここで歯車がかみ合わなくなってしまう!

 

「漢字でお答えください。大隈重信が開設した、東京都新宿区にある大学です。おっと!白井さんと初春さん、2番目と3番目の方が悩んでいるぞ!!」

 

ここに来てまさかの回答に詰まる事態発生。黒子と飾利は、どうにでもなれということで、とにかく回答した!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大隈重信が開設した、新宿区にある、早天田大学、残念!白井黒子さんが間違えたー!」

 

黒子が落ち込む。

 

「もしかして黒子君さ、順天堂大学と答えようとしたろ?」

 

「そうでございますの・・・。」

 

「順天堂大学は大隈重信が開設したんじゃないんだよ。大隈重信が開設したのは早稲田大学なのよ。」

 

すると黒子はここであっと気づく。

 

その後、あずまのチームは、2回戦で3問目止まりになり、70pt獲得。ダブルミックスステーションチームがここで10ptリードしている。果たしてこのままどうやって追い越すのだろうか?

 

「さぁ決勝戦もいよいよクライマックスに入ってまいりました!さぁ向原さん。10ptリードしていますけれども!」

 

「絶対に逃げ切って見せます!」

 

少し焦りを感じるあずまたち。だが勝負を分けるのは、この2ndステージになる。3回戦までにいかに決着を付けられるかが求められる!

 

「第1問!問題、山手線の駅、5つ答えろ。」

 

1番手は、上野と答え、2番手はすぐに秋葉原と答え、3番手は新橋と答え、4番手は少し迷いながら、渋谷と答えた。そして5番手はすぐ後に新宿と答え、1問目は正解した。」

 

その後、ダブルミックスステーションチームは、110ptを獲得した。これで、差は120ptに広がった。あずまたちのチームは、残り13回答えると優勝。つまり、飾利が答えられなかった瞬間、柵川常盤台高速線チームは敗北が決まってしまう。応援の声が増し、緊張感が更に高まる。

 

「第一問!問題、東京都の駅で、町が入る駅、5つ答えろ。

 

美琴は、信濃町と答え、黒子はすぐに永田町と答えた。だが飾利がつっかえてしまった!なんとか思い出そうとするが、あまり思い出せない!5秒前に、なんとか、御徒町が出た。涙子も悩んでいたが、上野御徒町が出てきた!そして衝突1秒前に、あずまが、板橋本町と答え、第1問はなんとかクリア!会場はウェーブし、あずまたちは輪になって喜ぶ!

 

「いやー、危なかったねー!」

 

「アメ横に、御徒町と言うのが出てきて、なんとかそれで答えられました。」

 

飾利が安堵しながら言う。

 

「私も、上野御徒町と答えて、だめかなと思ったら合ってて、驚きましたよ。」

 

「このクイズはね、場所が同じとはいえど、違う駅名だったらいいんだよ。例えば今みたいに、御徒町って言って、涙子君が上野御徒町って言ったでしょ?仲御徒町でもOKだし、新御徒町でもOKなんだよ。」

 

すると司会者が、

 

「さすが鉄道マニアのLEVEL5!このクイズを分かってらっしゃいますね!さぁ、まいりましょう、第二問!問題、五月七日で、つゆり、というように、日付が苗字になっている漢字、5つ答えろ!」

 

美琴は少し考えながらも、ほずみ(八月一日)を回答。黒子も少し時間がかかりながら、わたぬき(四月一日)を回答。飾利はすぐに、くさか(六月一日)を回答!涙子は、3秒前に、しわすだ(十二月一日)を回答!だがあずまは、答えられず、スクリーンに映っている電車が車止めに激突!

 

「ゲームオーバー!柵川常盤台高速線チーム、40pt!さぁ子安さん。」

 

と言われた瞬間、あずまが何かを思い出したかのように、あーっ!と叫んだ!それは、さおとめ(五月乙)の存在だった。

 

「まぁこれはしょうがないわ。」

 

「そうですわね!次がラストチャンスですから、気合を入れていきましょう!」

 

全員がオーッと返事する!

 

「さぁ柵川常盤台高速線チーム。優勝には、全員正解が必要です!さぁ優勝をかけた戦い!それではラストチャンスまいりましょう!第3問!問題!」

 

この声に、会場の空気が張り詰める!それは、あずまたちのチームの優勝にかけていたからだ。全員が祈り始める!

 

「サッカーワールドカップで、2009年までに開かれた国、5カ国答えろ!」

 

美琴はメキシコと答え、黒子はアメリカと答え、飾利はブラジルと答えた。涙子がかなり苦戦していた!同じ国を答えたがだめだ!衝突2秒前、涙子はドイツと答え、そしてあずまは、ウルグアイと答えた!

あずまたちのチームが勝利し、会場は大きな拍手と歓喜に包まれた!5人が輪になって喜びの舞をした!そして会場には、無数の紙吹雪が噴射された!

 

「2009年大覇星祭、一般の部クイズ部門!優勝は、柵川常盤台高速線チームでーす!」

 

するとさっきより更に大きい拍手が!会場がかなり熱気に包まれている!

 

そして6分後、表彰台に上ったあずま。大覇星祭責任者から、首のついた金メダルをかけられる。そして、美琴が登場し、賞状が美琴に贈られた。

 

「賞状、大覇星祭、一般の部クイズ部門 柵川常盤台高速線チーム殿。貴チームは、大覇星祭一般の部クイズ部門において、チームワークを発揮し、フェアプレーの精神のもと、多大なる成績を納められました。よって、ここにこれを称します。2009年6月27日、大覇星祭主催者」

 

賞状を受け取り、更にあずまが、優勝トロフィーを受け取った!

 

会場は大盛況に見舞われた!

 

大覇星祭一般の部閉会式の後、あずまは4人の元に集まった。あずまの目からは、勝利をした涙が。

 

「みんな、ありがとう!一生懸命に戦ってくれて、互いにフォローして、そしてこの結果にこぎつけることが出来た。俺は君たちと、本当にチームを組めてよかった!俺はこの世に生まれて最高だよ!君たちは最高の後輩だ!」

 

4人も涙を流す。あずまは1人ずつ抱きしめていく。あずまは未だかつてない喜びを分かち合えたのだった。すると、あずまの携帯に、一本の着信が入る。

 

「はい。」

 

「黄泉川じゃん。EWNSというグループの一味の男1人が、吐いたじゃんよ。アジトを。」

 

「了解しました!」

 

すると、奴らのアジトの場所、そして居場所が、あずまの目に現れた!果たしてこの先の行方は!?




一般の部クイズ部門で優勝し、更にアジトを割り出すことができたあずま。果たして、あずまと美琴を殺そうとした奴らに対して、倍返しなるか!?

次回 レッドゾーン


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第20話(最終話) レッドゾーン

あずまと美琴の殺害を企んだEWNSの奴らのアジトを特定したあずま!思念の固まったあずまと、美琴たちの倍返しが始まる!


あずまはアジトへ向かっているが、ハチロクではなく、ワーゲンのゴルフで向かっていた。ハチロクはあの衝突事故で大破してしまい、シャーシ以外すべて取り換えなくてはいけない事態に。新造したほうが早いのではないのかとディーラーから言われたのだが、あずまはハチロクが好きなので、どうしても残しておきたいようだ。

ゴルフの中には、美琴が助手席に、涙子、飾利、黒子が後部座席に座っている。

 

「そういえば、あずま君はなんであのハチロクにしたの?今の車だっていいのに。」

 

「小さい時にね、近所でものすごい車好きがいたんだ。しかもその車好きは兄の知り合いで、よく乗らせてくれたんだ。RX-7と言って、俺の群馬の知り合いの走り屋にもいたんだけどね。その近所の車好きの人が持っていた車なんだ。それ以来車も好きになったし、電車もバスも色々好きになったんだ。特に俺の乗っているハチロクは、レビンと違って、リトラクタブルライトという、ライトが開いて点灯する、俺にとっては心が打たれた車両なんだ。それを偶然夜中走っていたら、勝負持ちかけられて、結局勝ったって話なんだけどな。」

 

あずまが車が好きになった経緯を話す。あずま自身も、こんな生き方をするとは思ってみなかった。すると、あずまが車を急停車させた。

 

「何かありましたか?」

 

「ちょっと待った。奴ら逃げたぞ?あ、アンチスキルが動くの知ってたのか!?アンチスキルが到着寸前のところで車に乗って出やがった。車両は・・・マーチ!ナンバーは、学園都市259 げ 71-71 第七学区から高速道路に向けて走っていきやがった!」

 

車を走らせたあずま!奴らはアンチスキルが動くのを察知してたのだ。あずまはそれが分かるため、急いで高速道路に向かった!

 

「ちょっと運転荒すぎますわ!」

 

「わりぃわりぃ。だがこれは急を要する。君たちに協力してほしいことがこの後山ほど発生するぞ!!」

 

その時、奴らの車両は、高速道路に向けて走っていた。

ボスの側近と思われる男と、ボスがいた。

 

「なんとか、巻いたようですね。」

 

「ああ。それにしてもこの殺害計画が失敗に終わるとは、まぁいい。だが奴らも、私が超能力を持っていることを知らないのだからね。」

 

実はこのボスも超能力を持っていて、あずまと同様、何が近づいているのかが分かる。

 

高速道路に乗った20分後、あずまは高速道路を時速190kmで走行!そのままスピードを上げる!前方には追っていたマーチが見えてきた!あずまはなんとしてでも止めてやると誓った!そして、ゴルフをマーチに衝突させる!

 

「ボス!!横から奴らが!!」

 

「子安あずま!?御坂美琴!?」

 

2人も動揺を隠せない。あずまの目には、怒りのこもった笑顔が見えた。すると奴らは、ぶつけた仕返しに、ぶつけ返そうとした!だがあずまはそれを制動させてブレーキ!するとその先には、カーブが!ドリフトで通過する2台!ドリフトが終わると、双方はスピードを上げ、時速250kmに上げた!するとあずまが、

 

「美琴君!ハンドルを頼む!」

 

「ちょっ!私、操作分からないのよ!?いくらLEVEL5でもそれはないでしょうが!」

 

「そうだよ!いくらなんでも危険すぎるよ!」

 

「美琴君。それに君たち。俺は絶対にやり遂げて見せる。自分を信じているし、君たちを信じている。アクセルとブレーキは右足で踏めばわかる!頼むぞ!」

 

あずまはドアを開け、車の上に登る!時速268kmまで上がっており、かなり風が強い!そしてあずまは、前にいるマーチに飛び込む!それに気づいたのか、奴らはあずまを振り落とそうと蛇行運転する!だがあずまは粘着能力を上げる能力を持っており、振り落とされないようにしている。そして、足を高く上げ、フロントガラスを蹴る!4発ほど蹴り、5発目で、ガラスが粉砕!すると側近の男が拳銃を発砲!なんとかして避けるあずま!

 

一方、美琴の方はというと、ハンドルを握り、スピードを上げる!

 

「お姉さま!?どうなさるおつもりですの!?」

 

「あずま君が捕まえるために体を張っているのよ?私たちが援護するしかないでしょ!」そういい、ゴルフを、また衝突させる!すると車は、高速道路の終点に差し掛かる!するとマーチは、終点の道路の切れ目に突っ込む!車は前面から下の道路に突っ込み大破!側近の男は気絶していたが、ボスは気絶していない!

 

「さすがやってくれるわね。LEVEL5の子安あずまさん。」

 

なんと女の声をした男が出てきた。

 

「楽しませてもらったわ。西部警察ごっこ。でも、あなたは終わりよ。覚悟なさい。」

 

「それはどうかな?」

 

すると美琴が、レールガンを発射!ボスのすぐ手前の道路を破壊!

 

「俺の頼もしい後輩、いわゆる御坂美琴君の攻撃さ。LEVEL5をなめてかかると、こうなるってことを教えてやる。」

 

すると、あずまは右手を振りかぶり、ボスの頬を一撃、そして交流25000Vを発射!ボスは感電し、気絶してしまう。

 

「分かったか?LEVEL5の力を。二度とその面下げて俺の、いや、美琴君たちの前に現れるな。」

 

そういう。するとアンチスキルが到着し、2人を拘束していった。高速道路の上に上がるあずま。

 

「大丈夫か?これで俺たちを取り巻く有害物質は全て消去されたさ。」

 

「なんか西部警察ごっこをやっているみたいでしたね!」

 

「そうですわね!でも、西部警察というより、湾岸深夜急行とスピードフォーゲットを掛け合わせた感じでしたわ。」

 

あずまが笑う。あずまと美琴の殺害計画を企てた奴らを逮捕したことにより、大覇星祭の緊急事態は、幕を閉じた。

 

最終日の夜。涙子たちが集まっていた。ジュースの入ったグラスを合わせ、乾杯コールをして、一斉に飲む。

 

「それにしても、一般の部で優勝できるとはね。」

 

「本当ですね。これもあずま君の活躍のおかげですね。」

 

「いやいや、あれは偶然俺が得意とする問題が出てきたのであって、あの1ststageの時には、俺間違えてたじゃん?だけど、それを回復させたのは、君たちなんだから。」

 

各々が感想を言い合っていた。思えば、あずまはこの大覇星祭に至るまでに、いろいろ協力をしてきた。時には意見がぶつかり合い、時には勝負し、関係が難しくなる時もあった。だがこの団結力が大覇星祭一般の部クイズ部門で優勝したことにより、このグループの力は確かなものであることが証明された。あずまも、ここまで生きてきて、最高の後輩を持つことはなかなかなかった。人生も捨てたもんじゃない。そう思っていた。

 

「あ、そうだ!美琴君。この花のヘアピン返すよ。御守に渡したんだろ?返すよ。」

 

「いいよ。それはあずま君が大事に持っていて。私は別のヘアピン買うから。」

 

「それだったら俺がプレゼントしよう。」

 

すると、あずまは全部朱色の国鉄型車両のヘアピンを美琴に渡す。

 

「美琴君もそうだけど、君たちはよくやってくれた。たとえ歳が離れていても、こんなに最高の後輩を持つことができるのは、俺の誇りだ。34年生きてきて、最高のひと時を楽しませてもらったよ。本当に、ありがとう!」

 

拍手をする4人。そして、あずまのカメラで、全員と写真を撮った。

 

「君たちは最高の後輩さ。俺はもう、思い残すことはない。」

 

翌日。

あずまの携帯に一報が入る。

 

「あずまさん?今、あずまさんの近くに、女の子一人をリンチしている連中がいますの。すぐに向かってくださいまし。場所は西部山公園ですわ。」

 

黒子の指示を聞き、あずまは向かう。

 

「お嬢ちゃん、俺らと遊ばねぇか?」

 

「おっとそこまでだ。中学生の女子を寄ってたかっていじめるのは男として恥だが?」

 

「なんだおめぇって、子安あずま!!」

 

あずまの姿を見た瞬間逃げ出す男たち。

 

「大丈夫か?」

 

「はい。ありがとうございました!」

 

「そうか。名前は?」

 

「向原弘子です!柵川中学2年です!」

 

「向原って、ん!?まさかこの前、ダブルミックスステーションチームの!?」

 

あずまは驚いた。そういえば、ダブルミックスステーションチームには、小竹愛羅、向原弘子、白金沙雪、高輪真子、牛込かぐらの5人がいたことを思い出した。

 

(なんか聞いたことのある苗字過ぎて逆に驚きMAXなんですけど・・・)

 

また翌日。

 

「今回から新人が入ってくるわ。しかも5人よ。」

 

美偉が言う。すると、扉を開けて入ってきたのは、なんとあの5人だった。

 

「ダブルミックスステーションチーム・・・!」

 

「お知り合いかしら?」

 

「クイズ部門で出てきた方たちですよ?思いっきり思い出しましたよ。」

 

すると、各々自己紹介し始めた。すると、5人がまとめてあずまの元へ駆け寄る。あずまはもう戸惑いを隠しきれない。さらに美偉から、教えてあげてねと言われ、焦る。

 

「ちょっ!なんでこうなるんだ~!!」

 

そして大覇星祭から1週間後のモノレール駅前には、大勢のファンが駆け付けていた。そこには、美琴たちの姿が。

 

「新線が開業するんですね!」

 

「ええ。しかもその一本目の出発式、あずま君が運転するからね。」

 

すると、あずまの乗ったバスがやってきた。そこには、学園都市トラフィックサービス東の社長をはじめ、複数の関係者が出席していた。そして、

 

「本日、一本目の運行を担当いたします乗務員は、学園都市トラフィックサービス東、第十九営業所運転士、子安あずま運転士です。」

 

司会者が名前を言う。あずまは全員に一礼し、そして、くす玉のひもを持つ。そして、どうぞ!という合図で、4人で引っ張る!そこには、

 

祝!第七学区循環線運行開始という文字が。出発式が終わり、あずまは運転に戻る。そして大勢のお客様を乗せ、モノレール駅前を出発した。そこには、美琴たちが手を振る姿が。あずまも手を振り返し、出発。あずまたちの忙しい毎日は、今後も続いていく!




いかがでしたでしょうか?もはや何をしているのか分からなかったと思いますが、あずまの心の荒れ具合が見て取れたと思います。
つまらない作品ではございましたが、見てくださった方々に、感謝申し上げます。ありがとうございました!!


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