陰陽絶唱シンフォギア~戦姫と十三人の転生者~ (はんたー)
しおりを挟む

設定

陰陽絶唱シンフォギア~戦姫と十三人の転生者~

 

設定

 

主人公

焔 太陽(ほむらたいよう)

16 歳

焔魔堂ろくろの力を持つ転生者

ケガレの腕を持っている(これは生まれつきであり、生まれた当初から封印状態のため、親や医者も知らなかった)

前世では赤ん坊の頃に親に捨てられた過去を持つが今世は優しい両親に廻り合い幸せに過ごしていた

ところが六歳の頃にノイズに襲われ、両親を亡くす

この過去からノイズを恨んでいる

二課に入ることを拒絶したのは親しい人を亡くすというトラウマゆえ

家に置いてあったご先祖様の書したという陰陽術の巻物を読みながら十年かけて陰陽師としての腕を磨き、現在は三つまで連装できる

巻物は所々虫に食べられたりもしているので我流の部分が強い

最近まで復讐以外のことは考えず、娯楽などに疎かったが天羽奏に出会ったことで彼女の歌のCDを聞くことが趣味となる

そして、奏の過去を知った後は今までの自分の戦い方を改め、特攻まがいの戦いをすることはなくなった

奏と共振をすることができ、ライブ会場の惨劇の後、神様にその理由を知らされてから奏の事を意識するようになり、再開後彼女への好意を自覚する

戦姫絶唱シンフォギア原作のことは知らない

 

 

 

 

 

朝鳥 飛鳥(あさどりあすか)

16歳

十二天将朱雀の力を持つ転生者

前世では普通の高校生であり、恋人の白との下校中、白がトラックに轢かれそうになりそれをとっさに覆い被さる形で庇うも白とともに死亡

神様により式神、朱雀の札を渡される

しかし、朱雀の札は彼が六歳のころまでは影も形もなく、彼がその事を忘れかけた頃に親に言われて遊びにきていた白とともに掃除していた倉の中で白虎の札ともども発見する

何故神様に渡された札が自分の家の倉にあったのか疑問に思っている

前世では両親に何の恩も返せず死んだことを悔やみ、せめて今世の親は幸せにしようと考え、ノイズなどから守るため札の中の式神に師事を受け、白とともに陰陽師の修行を開始する

現在、連装は六つまで使うことができる

白とは今世でも交際中

原作のことは知らない

また、白にキスなどをされると鼻血を出して倒れてしまう

ごくまれに人前でもこういうことが起きるため、皆からは漫画みたいな奴と言われている

現在は白とともに纏神呪の修行を行うと同時に正体不明の陰陽師である青龍について弦十郎とともに追っている

 

 

 

 

虎居 白(とらいましろ)

16歳

十二天将白虎の力を持つ転生者

飛鳥とは恋人同士であり、少しばかり天然でおっちょこちょいな部分がある

前世で飛鳥を巻き添えにしてしまったことを後悔しており、陰陽師の修行を始めたのも飛鳥を守れる自分になるため

学業面があまりよくなく、飛鳥によく勉強を教えてもらっている

また、二課司令である風鳴弦十郎に訓練でボコボコにされたことがあり、そのことから彼を微妙に恐れていたりする

恋愛もののマンガが大好きで、双星の陰陽師などの恋愛の絡むものであればバトル漫画も結構みてた

シンフォギアについては友達がはまっていたという程度の認識で男女の恋愛要素がないので興味がなかったとのこと

使える連装は現時点では四つまで

ライブ会場の惨劇において、目の前でなんにんもの人々がノイズに殺されていくのを見て、助けられなかったことへの後悔と恋人である飛鳥を守れる自分になるため纏神呪の修行を開始する

 

 

 

 

 

碧 海龍(あおいかいり)

25歳

鳴神高校養護教諭をやっている十二天将青龍の転生者

前世では子供を襲うためにやってきた通り魔を食い止めようとするもナイフで刺され死亡

神様により転生させられる

シンフォギアの原作のことをしっており、原作でおこる惨事の被害を少しでも小さなものにするのが目的

フィーネを警戒しており、自ら姿を表すことは今のところないため、現時点では誰も彼が陰陽師であるということを知らない

子供が好きで

子供たちは無邪気で怖いものしらずだからよくケガをする

そんな時すぐに見てあげれるようにと養護教諭になった

一年前までは小学校で養護教諭をやっていたが、鳴神高校に十二天将の転生者がいることをしり、見極めや監視の意味も含め鳴神高校に転勤した

転生者とはいえ、まだ高校生の子供に対し監視をすることに罪悪感を感じており、飛鳥と白のやり取りを見て後悔しちゃったりもしている(独り身にはつらい)

纏神呪は既に発動することができるかフィーネに手の内を悟らせないため現時点では少なくともフィーネと戦うまでは使う気がない

 

 

 

 

 

大蔭 創太(おおかげそうた)

13歳

響と同い年の中学生

十二天将大陰の力を持つ転生者であり、本人は前世ではテレビも漫画も読まない人だったため、シンフォギアも双星も御存じない(今世では響に進められたりして漫画を読むことも…)

前世ではいじめにより殴られ、当たり所が悪かったためそのまま死亡してしまった

転生後、祖母から札を渡され、その札に宿っている式神十二天将・大陰により、陰陽師の修行を受けた

(ちなみに祖母は見た目とても若々しく十代の頃から姿が変わってないらしい)

料理やぬいぐるみ、音楽などが大好きで特に家庭科では教師をも上回る技量を発揮し「家庭科の神」というアダ名で呼ばれている

性格はつっけんどんな態度ながらもお人好しで響と一緒に人助けをしたりしており、そのことで未来に呆れられることもしばしば

この世界においても前世と同じ理由でいじめられていたが立花響によって助けられ、それ以降彼女を守れる男になることを誓い陰陽師の修行を行うようになった

 

 

 

 

 

風鳴 結澪(かざなりゆみ)

39歳

旧姓出海(いずみ)

翼の母親にして……

剣道六段、柔道五段、弓道にいたっては十段という物凄い経歴を持つ

他にもライフル射撃の大会で何度も優勝したりと射的が得意なようである

京都弁を使う

風鳴八紘とは大学時代……をしていた時に出会い、不器用ながらも自分を心配してくれる優しい性格の彼に徐々に惹かれてゆき結婚したとのこと

しかし、八紘にしか話していないはずの自分の秘密をどこからか知った風鳴訃堂に襲われ翼を孕む

このことから訃堂を憎んでいる

翼を授かった当初はその経緯のため、酷く翼を嫌悪していたが翼が生まれた際の顔を見ることで生まれてくる子供に罪はないと思い直し、彼女を愛するようになる

なお、翼の件で一時期ギクシャクしてたものの八紘との夫婦仲は今も良好で本人は今は幸せとのこと

 

 

 

 

現在

 

貴人 ???

騰蛇 ???

白虎 虎居 白(所属・二課)

青龍 碧 海龍(所属・フリー)

朱雀 朝鳥 飛鳥(所属・二課)

天后 ???

天空 ???

六合 ???

勾陳 ???

玄武 ???

太裳 ???

大陰 大蔭 創大(所属・フリー)

 

 

 




オリキャラの設定です
随時更新予定


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

原作前
1話


神様転生ものです
オリ主とかいやという方はここで戻ることをおすすめします

そうじゃない方はどうぞ





 side??? 

 

 

 

 

 

 ………………

 

「あれ、ここはどこだ……?」

 

 何もない空間の中、俺────( ほむら)太陽(たいよう)は辺りをキョロキョロしていた。

 

 

 えーと、なにやってたんだか記憶があやふやだな

 ひとまず今わかっているのは気が付いたら何もない真っ暗な場所にいたということだけ……

 

 

 

 

 

 いや、本当にどこだよここ!! 

 え、拉致? 拉致られたの俺? 

 

「気が付いたか少年よ」

 

 誰かの声がしたので振り向くとそこには昔の漫画とかでありそうな、いかにも仙人って格好をした老人がいた

 

「あの、あなたは一体……」

 

「私は神じゃ」

 

「神っ!!!??」

 

 え、神様って実在したの? 

 確かにそれっぽい雰囲気は……

 

「知りたいことなんでも教えてあげよう」

 

 そう言いながらWi◯ipediaを開いてあるスマホをかざした

 恐らくポプテピピックを意識しているんだろう……

 ……前言撤回、こいつ絶対オタクだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、座ってお茶でも飲みなさい」

 神様はそう言うと指パッチンでちゃぶ台とお茶を出した

 ……すげー本当に神様なんだ

 

「まずは君の現状を話そう

 簡潔に言えば

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 君は死んだ」

 

 

 

 

 

 what? 

 え、死んだ? 誰が? 俺が!? 

 いや、待てよどんどんおぼろげだった記憶が……

 

 そうだ思い出した! 俺はいきなり道路を飛び出して車に轢かれそうになった猫を助けて……

 

 

 そうか、死んじゃったんだ俺……

 なんかショック……

 

 まあ、いいか

 俺が死んで悲しむ人なんかいないだろうし……

 

 だけど一つ気になることが……

 

「あの、猫はどうなりましたか?」

 

「安心しなさい

 君が助けた猫はちゃんと五体満足でいるよ」

 

 そうかよかったー

 これで猫も死んでたら俺無駄死にだしな

 

「で、俺はこれからどうなるんですか?」

 

「通常ならば天国行きじゃが……

 てか自分が死んだってのに随分落ち着いてるね君」

 

「まあ、猫を助けられたのは満足ですし

 元々俺は施設に捨てられた孤児だし、友達も一人もいなかったから悲しむ人なんていませんし……」

 

「そうかそうか

 君も辛いめにあったんじゃのぉ(まあ、知ってたけど)

 そんな君にお知らせじゃ」

 

「?」

 

「君には転生する権利が与えられたのじゃよ」

 

 転生……って今流行りのあれか! 

 

「まじすか?」

 

「まじもまじ、大まじじゃ! 

 君にはこれから双星の陰陽師の焔魔堂ろくろの力を与えよう

 君の名前的にもピッタリだし」

 

 焔魔堂ろくろ

 俺が施設ではまってた漫画の主人公だ

 やったぜ! 

 でも、一つ気になるのは……

 

「なんで俺にそんなたいそうな権利が与えられるんですか?」

 

 俺はそんなに大した人間ではないと思う

 勉強もできないし、スポーツも得意ではないし……

 

「それはまあ、命を助けたご褒美といったところかの

 自分の身を省みず猫を助ける姿は立派じゃったぞ」

 

 ……なんかむず痒いな……

 

 ……で、もう一つだけ気になるのは

 

「俺は双星の陰陽師の世界に行くんですか?」

 

「いや、君が行くのは戦姫絶唱シンフォギアの世界じゃ」

 

 そう神様は言いながらキメポーズを決めていた

 

 

 …………? 

 

 

「……わ、わかりました」

 

 俺の言葉に神様は満足そうに頷き、数枚の札を取り出す。

 

「先に伝えておこう。双星の陰陽師の“共振(レゾナンス)“は知っておるか?」

 

「え? あ、はい……一応……」

 

 “共振”────双星の陰陽師にしか使うことのできない秘術。

 双星の男“太陽”と、双星の女“太陰”が手を繋ぎ、互いの呪力を増幅することで凄まじい力を発揮する────って!? 

 

「そうだよ! “共振”!! いかに“焔魔堂ろくろ(太陰)”の力だけ持ってても、“化野紅緒(太陰)”がいないと駄目じゃん!!」

 

 太陽単体でも強力だけど、進化を発揮するのは太陰と二人の時だ。故に“双星”の陰陽師なのに……そう考えていると、神様は面白そうに笑う。

 

「確かに……焔魔堂ろくろの力をもらってもその片割れ足る化野紅緒……双星の女の方がいなければ共振という最大の攻撃手段を失われ意味がなくなってしまうのぅ。じゃが、安心せい! 転生するに当たり、“共振”の仕様は変更させてもらうつもりじゃ」

 

 そ、そうなのか……それなら、共振もキチンと使えるわけだ。

 

「……その、共振の方法……とは……?」

 

「それはヒ・ミ・ツじゃ。まあ、お主が共振を使えたら、仕様説明で一度だけ連絡しておいてやる」

 

「そうですか……ありがとうございます」

 

 俺が礼を言うと、神様は慈しみを込めた瞳で俺のことを見つめる。

 

「君にはこれから辛いことが降りかかるかもしれん

 だが、猫を助けた時のように命を守るために、

 その力を正しいことに使うことを祈るぞ」

 

「はい!!」

 

「いい返事じゃ……

 では、この扉を潜るがよい

 そうすれば君は赤ん坊として転生する」

 

 神様は突如として現れた扉を叩きながらそう言った

 

「では、行ってきなさい」

 

「ありがとうございます。神様」

 

 俺はそう言って門を潜った

 

 すると光の中に包まれ、どんどん意識が無くなっていった

 

 ただ、一つ疑問に思うことがある……

 

 神様がすごいノリノリに言ってたから聞くのがはずかしいと思って聞かなかったこと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦姫絶唱シンフォギアって何? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 side神様

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。これで最後の転生者が戦姫絶唱シンフォギアの世界に行ったか……」

 

 神様は少年が扉を潜ったことを見送ると、椅子を召喚し、腰掛ける。

 

「シンフォギア……あの世界には、非業の死を遂げた人物が数多くいる。……そんなのつまらん」

 

 彼は数多の世界を管理する神────その内の担当に、シンフォギアの平行世界が一つだけあった。このまま原作通りに進めば、悲しい死を遂げる者達がいることを、彼は知っていた。

 

「見るのならばハッピーエンドじゃ。彼と儂の選んだ()()()()()()()()()が戦姫絶唱シンフォギアの世界をどう改編していくのか、今から楽しみじゃのう」

 

 そう言って彼は本棚を召喚した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこには漫画・双星の陰陽師全巻と戦姫絶唱シンフォギアの全期のdvdが入っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 side太陽

 

 

 

 

 

 

「太陽は何が欲しい?」

 

「えっと……あ、これほしい……」

 

 転生してから六年が経った

 俺は今、両親と一緒にショッピングモールに来ていた

 

 今は買い物も終わり、モール内のレストランで食事をしている

 

 ……家族と買い物なんて前世ではしたことなかったな……

 

 前世の俺は赤ん坊の時に両親に捨てられ以来ずっと孤児院で暮らしていた

 でも、俺は施設でも馴染むことができずにいた

 

 

 ……よそう、思い出したくもない

 

 それに比べれば今世は幸せだ

 なぜなら今は親がいるんだから……

 

「おいしい!!」

 

 家族と食べる食事は前世の一人で食べる食事と違って美味しく感じる

 

 こんな幸せがずっと続くといいは……

 

 

 

 

 

ドン

 

 

 

 そんなことを考えてたら突如として爆発が起こった

 

「な、なに?」

 

 見れば両親も周りの人たちも何が起こったのかわからないようで混乱している

 

 すると目の前に奇妙な生き物が現れた

 

 なに? あれ……? 

 

ノ、ノイズだぁ────!!!!! 

 

 

 あ、あれがノイズ!? 

 

 ノイズはこの世界に存在する人間の天敵だ

 正体不明の謎の存在で人間を襲い炭素の塊にしてしまうらしい

 

 ノイズを確認するや否や何人かの人がテーブルから飛び上がり逃げようとする

 

「た、助け……うわあ──ー!!!」

 

 するとノイズはその人たちも目掛けて突進し、逃げようとした人たちを炭素の塊に変えた

 

「ひ、ひ──ー!!!」

 

「い、いやだ──ー!!!」

 

(お、俺は、ど、どうすればいいんだ……?)

 

 この時の俺は突如として起こった事態にどうすればいいのかもわからず呆然としていた

 

 すると俺を目掛けてノイズが突進してきた

 

「危ない太陽!!!」

 

 俺は母さんに突き飛ばされ椅子から転げ落ちた

 

 

「か、母さ……」

 

 俺は焦りながら母さんの方を向いた

 しかしそこにあったのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 母さんだった塊だけだった……

 

 

 

「うそ……、母さん……?」

 

 俺は炭素の塊に変えられた母さんに触ろうとした……

 すると俺は父さんに抱えられ、母さんから放された

 

「離してよ父さん! 母さんが! 母さんが!!!!」

 

 俺が暴れても父さんは決して力を緩めない

 

「大丈夫だ太陽。父さんが必ず守ってやるからな……」

 

 父さんは泣きながらそう言った……

 

「!? そんな……」

 

 父さんは俺を抱えながらショッピングモールの出口まで走った

 

 しかし、火災が起きたために防火シャッターが閉じてしまい、通路は行き止まりとなっていた

 

「父さん!! 後ろ!!!」

 

「!??」

 

 後ろには数匹のノイズが迫ってきていた

 

「……」

 

「父さん……?」

 

 それを見た父さんは何かを決意したような顔をして俺を降ろした

 

「……じ、自慢じゃないけど……

 俺、学生時代駆けっこで負けたことないんだぞ……」

 

 父さんは震えながらそう言った

 そして俺に顔を向け……

 

 

 

「頼む。絶対に生きてくれよ。太陽。

 そして、必ず幸せになりなさい。それが父さんと母さんの願いだ……」

 

 穏やかな声でそう言いながら走り出した

 

「こっちだ!! こっちにこいノイズども!!!」

 

 

 そう叫びながら走る父さんを見てノイズたちはターゲットを父さんに絞ったようだ

 

「だ、だめ!! 父さん!!!」

 

 ノイズたちは父さん目掛けてどんどん攻撃していく

 それを父さんはなんとか避けた

 攻撃を外したノイズはそのまま消えていくがまだノイズは残っている

 

「太陽!! お前は速く逃げなさい!!!」

 

 そう言いながら父さんは走り続けていた

 何匹かの攻撃は避けることができてたが

 

「ぐわぁ!!」

 

 最後の一匹のノイズの攻撃を避けきれずに直撃してしまい、炭素の塊に変えられてしまった……

 

 

 

 それを見た俺は……

 

う、うわあ──ー!!! 

 

 叫ぶことしかできなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日、俺は幸せを失ったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 

 あれから十年……

 

「……見つけたぞ……!!」

 

 鳴り響く避難警報を聞きながら、俺は目の前の敵を見据える

 

 今の俺には一つの目的しか頭になかった……

 

 

 

 この世界でできた父さんと母さんはとても優しい人だった……

 

 前世の顔も知らない肉親とは違い、俺を息子として愛情をたっぷり注いでくれた

 

()()()がくるまで、俺は本当に幸せだったんだ……

 

 だが、六歳の日、遊びに行ったショッピングモールで全てが変わってしまった

 

 こいつらによって、俺の両親は目の前で殺されたのだ

 

 俺は当時、両親に隠れて陰陽師の修行を行っており呪装を使うことも六歳の時点ですでにできた

 

 

 だがその日起きた出来事はあまりにも突然すぎた

 

 逃げ惑う人々、何かが引火したであろう焼ける内装

 

 あまりのことに俺自身どうすればいいのかわからず呆然としてしまった

 

 そこを奴らに襲われそうになり、俺を庇って俺の目の前で二人は死んだ

 

 全ては俺が弱かったからだ……

 

 もしも俺があの日ノイズと戦っていれば父さんと母さんは死ななかったかもしれない

 

 だが、あの時俺は怖くて動くことができなかった……

 

 俺が弱かったから両親を死なせてしまった

 

 俺はそんな弱かった俺が憎い……

 

 だが、それ以上に目の前の元凶が憎い!! 

 

 

 あの日俺は……こいつらに復讐することを誓った

 

「祓へ給へ、清め給へ! 星装顕符! 喼急如律令! 

 

 俺は戦う……

 

 目の前の雑音を祓うために

 

「いくぞ!!! ノイズ!!!!!」

 

 俺は目の前の敵に拳を構え……

 

全員纏めて祓ってやらぁ!!!!!! 

 

 目の前の敵どもに向かっていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 side??? 

 

 

 

 

 

「また、先を越されたか……」

 

「相変わらずすごい破壊跡ね」

 

 太陽がノイズを祓ってしばらくした後、

 剣を持った青い髪の少女と槍を携えた赤髪の少女が現れた

 

「この感じ……間違いなく陰陽師の呪装が使われてるね」

 

「ああ、だが一体何者なんだ……」

 

 その後ろには巨大な爪のような装備を持つ少女

 そして赤い羽を持ち槍を携える赤髪の少女よりも濃い真紅の髪を持つ少年がいた

 

 

「二人にもわからないのか?」

 

「ごめんカナちゃん

 私たち他の陰陽師の人と会ったことないから……」

 

「俺たち陰陽師はそれぞれ交じらわずに隠れてその力を使っていたからな

 そもそも俺たち二人が例外のようなものだ……

 スマン……」

 

 

 

「まあ、仕方ないか……」

 

 赤髪の少女……天羽奏はため息をつきながら空を見上げた

 

「……とりあえず司令の元に戻ろう。白、朝鳥」

 

「うん」

 

「そうだな」

 

 

 青い髪の少女……風鳴翼にいわれ

 

 虎居(とらい) (ましろ)朝鳥(あさどり) 飛鳥(あすか)は二課に戻った

 




駄文です
はい、
ちょっとネタを思い付いたので書くことにしました

小説書くのほぼ初めてみたいなもんなので悪い点とかあればビシビシ言ってください

2023/7/3 修整

連載するかは微妙
正直設定は考えているもののいざ文にするた想像以上に大変だったので…



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2話

続きました


 side飛鳥

 

 

 

 

 

 

「急ぐぞ皆!」

 

「わかってるって」

 

「正体不明の陰陽師……今度こそその顔を拝んでみせる」

 

「皆はりきりすぎだよぅ……」

 

 俺の名前は朝鳥 飛鳥。

 白虎の継承者である白と同じく十二天将“朱雀”の力を持つ転生者だ……

 といっても朱雀に認められるのには苦労したがな……

 

 まずは俺たちが転生した経緯を述べたほうがいいかな

 

 俺は“白虎”の転生者である白と共にこの世界に転生した

 

 白とは家が隣でずっと一緒にいたいわゆる幼馴染みというやつだ

 

 俺は死ぬ数ヵ月ほど前に彼女に告白し晴れて恋人になることができた

 前世では両親も祝福してくれたし、かなり幸せだったのを覚えている

 

 だが学校から家に帰る帰路、飲酒だか居眠りだかでトラックが突っ込みとっさに白を庇うも二人とも命を落としてしまった

 

 その後妙なノリの神様に双星の陰陽師の斑鳩士門の使う式神十二天将朱雀の札を渡され転生した

 

 なんでも戦姫絶唱シンフォギアとかいうアニメの世界と言っていたな……

 俺は普段漫画ばっか読んでてアニメにあまり興味がなかったから名前しか知らないが……

 

 ちなみに転生後も白とはお隣さん同士。それを知ったときは純粋に嬉しかったな。

 

 その後、白と共に色々とこの世界についてを調べ、結果としてこの世界にケガレは存在しないということがわかったが、その代わりにノイズと呼ばれる異形の存在がいることを知った。

 

 ノイズとはこの世界で人類を脅かす認定指定災害とされる謎の異形で空間から滲み出るように突如として発生し、触れた人間を自分もろとも炭素の塊にしてしまうという恐ろしい怪物だ。

 

 

 ノイズはいつ現れるかも予測できない存在であり、正しく人類の天敵そのもの。

 俺は今度こそ、陰陽師としてこの世界でできた新たな家族たちを守るため白と共に研鑽し、共に式神十二天将に認められ、十二天将となった俺たちは家族を……そして罪無き人々を守るためにノイズと戦うことを決意した。

 

 幸い、陰陽術は奴らにも有効なようでしばらく俺たちは陰陽師としてノイズを祓う活動をしていた

 

 そんなある日俺たちの前にノイズを倒すための武装……シンフォギアを纏う二人……天羽奏と風鳴翼が現れた

 彼女たちに連れられ俺たちは二課という組織に所属することになった(ちなみに転生者云々は言うわけにはいかないので[古くから人々から隠れて秘かにノイズを祓っていた]と説明した)

 

 最初の頃は奏さんがノイズに突っ込んで行ったりするがためにあまり足並みが揃わなかったが

 

 徐々に俺たちに心を開くようになってくれたおかげでかなり連携も様になってきた

 そのことに関しては好ましく思っている

 

 話がそれたな

 今俺たちはノイズを倒すことともう一つ

 

 ここ最近現れるようになった謎の呪力の持ち主を捕らえることを目的としている。

 

 ノイズを倒すとすぐどこかへ消えてしまうため、いまだ接触することは叶っていないが、今まだその呪力の持ち主が戦闘中らしい

 このペースで行けば間に合いそうだ

 今回こそ接触できそうだな……

 

 

 

 

 

 

 

****************************

 

 side太陽

 

 

 

 

 

 

「ハア、ハア……」

 

 不味いな、ノイズの数がいつもに比べて多い

 このままじゃジリ貧だ……

 

「************」

 

 

 ……

 不快な鳴き声だな……

 まるで嘲笑ってるように感じやがる

 何がそんなに楽しいんだよ……

 何がそんなに可笑しいんだよ……

 そうやってたくさんの人の幸せを壊しやがって……

 そうだ、こんな穢れた奴ら一匹たりとも残しちゃいけないんだ

 

「かかってこいよ雑音ども……」

 

 だからここで

 

「全部纏めて祓ってやらああああ!!!!」

 

 祓わないと……

 

 

STARDUST∞FOTON

 

 

 

 俺がそう吠えた瞬間空から大量の槍が降ってきた

 その槍は的確に俺の前にいたノイズを祓っていく

 

「どうなってんだ……?」

 

 これは呪装……? 

 いや、呪力は全く感じない

 これは一体……

 

 

「あんたがあの二人以外の陰陽師だね」

 

 その言葉に反応しビルの上に目を向けるとそこには妙な姿をした少女がいた

 なんだあの装備は?

 始めてみるぞあんなの?

 それに、あの二人以外の陰陽師……?

 まさか俺以外にも陰陽師がいるってのか……? 

 ……いや、そんな事は()()()()()()()

 興味もないし、考えるのは後でいい。

 

「話しは後だ、ひとまず一緒にノイズを……」

 

「必要ない」

 

「!?」

 

 よくわからんが今のでこの人がノイズを倒せる武装を持ってるというのはわかった

 

 この人が強いっていうのもなんとなくわかる

 

 でも、助けなんていらない、必要ない……

 ノイズは……

 父さんと母さんを殺したノイズは……

 

 

 

 

俺がこの手で祓わなくちゃいけないんだ……!!

 

 

 

 

****************************

 

 

 side奏

 

 

 

 

 

 

 ノイズを倒すため一緒に戦おうと提案したが即座に断られた

 

 いやそれは今はいい。

 

 問題なのは今一瞬見えた……

 

 あいつの目だ!

 

 あの目は……

 

「私と……同じ目……?」

 

 似ている

 

 復讐のためにシンフォギアの力を手に入れたばかりの頃の私と……

 復讐のために無茶ばかりしてた頃の私と……

 

 呆然としていた私にノイズが襲いかかる……ってまだ戦闘中だったな

 考え事は後にしないと

 

 三人も到着したっぽいしな……

 

「♪ ~♪ ~」

 

 私は唄いながら目の前の敵に向かって構えた

 

 

 

****************************

 

 side太陽

 

 

 

 

 

 どういう装備なんだあれ? 

 歌いながら戦ってやがる……。歌う必要とかあるのか?よくわからん。

 

 ーーーーでも強い!

 

 赤毛の女はどデカい槍で確実にノイズを祓ってやがる……

 

 それに……

 

「綺麗な歌声だ……」

 

 こんな綺麗な歌声を聞いたのはいつぶりだろう

 

 思わず小さな声でそう呟いてしまった

 

「ナモハキャバチロタラヤミンナゴウハラヤ

 サバビナエンカラヤ

 サツバセツトロビナシャヤオンカロシヌルシンナカバラブロ

 ロトロキニョウハヤテイソワカ!!」

 

 

「!!!??」

 

 空からなにか詠唱のようなものが聞こえてきた

 それと同時にすさまじい呪力を感じる

 

 上を見上げるとそこには真紅の髪の()()()()()を持つ男とそれに抱きつく片腕に()()()()()()()()()()()()()()()を纏う白髪の女がいた

 あれはまさか!? 

 

赤鶙無限屏風(せきていむげんびょうぶ) 喼急如律令!!!」

 

 そう唱えると三十六本の羽根が飛び出し、ノイズを貫き始めた

 

「今だ! 白!!」

 

「任せて! 飛鳥君!!」

 

 籠手を持つ女は男から飛び降り

 

「うぉりゃああああああ!!!」

 

 その籠手でノイズを切り裂いていく

 

 だが、破壊力が桁違いだ

 

 おれの一撃よりも遥かに上だ

 

 間違いないあれは……

 

「十二天将……朱雀と白虎……」

 

「そういうお前は……双星の陰陽師か……?」

 

 こうして俺は初めて自分以外の陰陽師と後に知ることになるシンフォギア装者に出会ったのだった

 

****************************

 

 side???? 

 

 

 

 

 その頃、ノイズと戦う彼らを遠くから眺めるものがいた

 

「あれがシンフォギアの装者と

 そして……()()()()()()()十二天将の力を持つ陰陽師……か」

 

 コクり

 

 一見幼い容姿を持つ金髪の子供が共にいた少年に問い、少年は頷く

 

「そうらしいです。でもあの程度なら……」

 

「正直言ってあの程度の奴らがアタシ達の脅威になるとは思えませんよぉマスター♪」

 

「たしかに……だが、シンフォギアはともかく

 陰陽師どもは脅威となりうるかもしれんな……」

 

 金髪の幼女と一人の少年と一人の少女

 そして人らしき四体の人形はいずれ来るだろう戦いに備えようとしていた

 

 

 

 

 

****************************

 

 side????? 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、先程の幼女たちとは別の場所から彼らを眺める女性が三人いた

 

「あれが()()()と同じ陰陽師か」

 

()()()()比べると口ほどにもないワケだ」

 

「確かに、あれくらいならあーしでもやっつけられるかも……」

 

「でも、油断は禁物よ

 ただでさえ陰陽師のデータは少ない……

 日本に滞在している今のうちに取れるだけデータを取っておきましょう

 

 いずれ、敵対することになるのだから……」

 

 彼女達のリーダー格であろう女性は二人にそう告げた

 

 

 

 

 

 

****************************

 

 side??? 

 

 

 

 

 

 

「十二天将に陰陽師……

 懐かしいね本当に」

 

 一人の男が優雅に風呂に入りながら呟く

 

「会いたいなぁ皆に」

 

 この場所は日本より遠く離れた場所

 しかし、この男はまるでなにが起きているのかが分かっているように空に向かって話す

 

「軽蔑するかもね君は

 今の僕がやったいることを見たら

 だが、償うよ終わったら……

 世界をカストディアンから守った後にね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()

 

 寂しそうに男はそう呟いた




続くかもしれないし続かないかもしれない

最後の方にでてきた謎の集団×2と男はまあわかると思います

色々設定は考えてるんだけど文にすると大変なのでここまで書いといて続くかは微妙
ちなみに時系列はライブ数ヵ月前です

設定

オリ主は強化版の札もちゃんと待っていますが現在は通常の星装顕符しか使えません
これはオリ主が呪力的にも精神的にも成長していくことにより解放されるようになっています


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3話

連載してみました

ただし、更新速度は亀並みに遅い上いつ失踪するかもわかりません
それでもよろしければどうぞ


 side太陽

 

 驚いたな……

 あの女の人の発言で俺以外にも陰陽師がいるというのはわかっていたが、まさか十二天将だったとは……

 

 そう思っていると朱雀らしき男が俺に近づいてくる

 

「俺は朝鳥飛鳥

 僭越ながら十二天将朱雀の称号を預かっている者だ」

 

 向こうは俺に向かって自己紹介をしてきた

 ……ならこっちも返すのが筋だな……

 

「俺は焔太陽

 一応陰陽師だ……」

 

 

「ほへー

 それって星装顕符のケガレの腕でしょ? 

 私初めて見たよ!」

 

 白虎らしき女性が俺の右腕を触りながらそう言ってきた

 

 陰陽師とはいえ、俺の星装顕符のことを知っている……? 

 ということはこの人達は……

 

「おい、白! いきなり失礼だろう!」

 

「あ、ごめんね

 私は虎居白

 十二天将の白虎だよ!」

 

 彼女はそう言いながら俺から離れる

 

 その様子を見ていた三人がため息をついていた

 

「私は天羽奏! 

 二課のシンフォギア装者やっている

 んで、こっちが風鳴翼だ!」

 

「よろしく」

 

 ……二課にシンフォギア装者……

 聞いたことないな……

 

「二課ってのは、簡単に言えば政府直轄のノイズ専門部隊。

 シンフォギアは二課が開発した対ノイズ用のプロテクターと言ったところか……」

 

 そう朝鳥さんが教えてくれた

 そして一呼吸置いた後、

 

「単刀直入に聞こう

 双星の陰陽師・焔太陽

 俺たち二課に協力してくれないか?」

 

 俺にこう告げた

 

「……理由を聞いても?」

 

「簡単に言えばノイズを倒せる者同士

 手を取り合おうってことだ

 

 ノイズを倒せる存在は希少だ

 現に政府直轄の二課ですら俺たち四人しかノイズに対抗できる人間がいない

 俺たちとしてはお前の存在をほっとけないという事だ

 

 

 それに……何かがあったとき、仲間がいると心強いぞ」

 

 彼はそう言った

 

 確かに今回、俺一人だけで戦ってたからピンチになったわけだしな……

 俺は少しだけ考えて答えを告げた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お断りします」

 

 断った

 

 この反応に風鳴さんと虎居さんは少し驚いたような表情をみせる

 逆に天羽さんと朝鳥さんは落ち着いている

 

「……理由を聞いても……?」

 

「……俺は二課という組織を全く知らない。

 陰陽師の中でも最高位の十二天将とは言え、まだ会ったばかりのあなた達をそこまで信用できない」

 

 これもまた理由の一つではある

 実際、十二天将といえど俺にとって信用するしないは別の問題。

 そしてなにより……

 

 

 

「それに……

 ノイズは俺が全部祓います……

 

 

 

 あいつらは……」

 

 俺は懐から韋駄天符を出し……

 

俺が祓わなくちゃいけないんだ!!!! 

 

 そう言い残しながら、飛天駿脚を呪装し、その場を離れた

 

 ノイズは父さんと母さんを殺した

 俺がノイズを祓うのは言ってしまえばただの復讐でしかない

 そんなやつがいきなり仲間になっても迷惑でしかないだろう……

 俺は一人でいい

 他の人と一緒にいても……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 死んじゃったときに悲しくなるだけだ……

 

 

 

 

 side奏

 

俺が祓わなくちゃいけないんだ!!!! 

 

 そう言いながら太陽は足の速くなる呪装を使ってその場から逃走した

 

 

 やっぱりあいつは……

 

「逃げられちゃったね」

 

「あの剣幕……

 尋常じゃなかった

 

 それに今のノイズへの呪詛のような言葉……

 まるで……昔の……」

 

 翼は昔の私のことを思い出しているようだな

 

 プルルルル

 

 そんなことを考えていると二課から連絡がきた

 

「旦那か?」

 

『ああ、彼の速度から今さら追跡は困難だろう

 

 だが、名前がわかればこっちから調べることもできる

 こっからは俺たちの仕事だ! 

 お前たちはすぐに二課に帰投しろ』

 

「了解しました」

 

 飛鳥がそう答え私たちは一度本部に戻ることになった

 

 ……次会ったときは

 あいつのことをもっと知りたいな……

 

 

 

 

 

 

 

 side三人称

 

 奏たちが太陽と接触してから数日の月日がたった頃、弦十郎は二課が調べあげた情報を告げることとなった

 

「どうだったんですか? 

 弦十郎司令?」

 

 飛鳥の言葉に弦十郎は答える

 

「彼の名前は焔太陽、16歳

 十年前に起きたショッピングモールの惨劇の犠牲者の一人だ!」

 

「「「「!?」」」」

 

 その言葉に全員が黙ってしまう

 

 ショッピングモールの惨劇……

 

 

 十年前に大手ショッピングモールにノイズが現れたという事件だ

 

 現れたノイズの数は少なかったものの、パニックによる引火が原因で防火シャッタがしまり、多くの人が閉じ込められ命を落としたという

 

 その場にいた人間1/3が命を落としたと言われる未曾有の大事件だった

 

「彼はその後、何とか保護されたらしいが、

 彼の両親はそこで亡くなっており現在は独り暮らしをしてるようだ」

 

 両親をノイズに殺された

 

 その言葉を聞いて、奏はまるで何かを思い出したかのような悲しそうな顔となった

 

 

 

 

 

 

 

 

 side奏

 

 弦十郎の旦那の言葉を聞いて納得がいった

 

 やっぱりあいつは私と同じなんだ

 

 私と同じでノイズに家族を殺され、幸せを奪われた

 

 だからノイズを恨んでいる

 

 でも……今の私には翼がいる

 翼だけじゃない、飛鳥や白、二課の皆がいる

 

 

 

 でも、あいつは一人だ

 ずっと一人で戦っていたんだ

 十年もの間ずっと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……? どうしたの奏?」

 

「え?」

 

 翼にそう言われ私は頬に涙が伝っていたことに気づいた

 

「カナちゃん……?」

 

「いや、なんでもない……」

 

 私は涙をぬぐいながら決意した

 

 あいつを絶対二課に入れてみせる

 

 あいつには、一緒に戦ってやれる仲間が必要だ

 

 そうじゃなきゃ

 あいつが報われない

 

 

 

 

 

 side太陽

 

 あの日から数日……

 俺はこの世界に来て初めてCDを買ってみた

 

 ノイズへの復讐には全く関係のない代物だが、あの天羽奏という女性の曲があったので、気になってしまった

 

 天羽さんとその相棒である風鳴翼さんはツヴァイウイングというユニットを組んでいて全国的にも人気らしい

 全然知らなかったけど……

 

「……早速聞いてみるか……」

 

 イヤホンを使ってツヴァイウイングの曲を聞いてみた

 

 ……やっぱり

 

 

 

 

 

 

「綺麗な歌声だな……」

 

 

 

 

 俺はまるで自分の心が洗われるみたいに

 清々しい気分となった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 side??? 

 

 とある公園のベンチで時期外れであるにも関わらずマスクをつけている青年が本を読みながら座っていた

 

「原作の流れで行けばもうすぐライブが始まるかな……」

 

 そう言いながら、彼は本を閉じ立ち上がった

 

「そろそろ僕も動きますか……」

 

 その青年は自分の青い髪をいじりながらその場を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 




青い髪、マスク

もうおわかりでしょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4話

 side太陽

 

「……」

 

「よう! 太陽!」

 

 昼になったのでいつもの日課である連装の修行をしに修行場に出掛けようとした矢先、インターホンが鳴ったので開けてみると

 先日お世話になった天羽さんが立っていた

 

「……何しにきたんですか?」

 

 そもそもどうやって住所を……

 いや、政府直轄って言ってたし、そこは不思議じゃないか……

 

 

「ちょっと遊びに……ね」

 

 わざわざやってきた人を無下にするほど性根が腐ってるわけではないので俺は取り敢えず彼女を家のなかにいれた

 

「お、ツヴァイウイングのCDじゃん

 嬉しいね~」

 

 テーブルの上に置いてあったCDを見るや否や彼女はニヤケながらそう言った

 

 ……しまった、しまっとくの忘れてた……

 

「……どうぞ」

 

「お、悪いね」

 

 取り敢えずそれを片付け俺は彼女に飲み物を渡す

 

「……で、本当に何しに来たんですか?」

 

「だから言ったろ? 遊びにだよ」

 

 ……いや、あり得ないだろ

 先日が初対面だぞ……

 

「別にいいですよ……

 俺は一人のほうが性に合っていますから」

 

 まだ、一回しか会ったことがないうえ友達でもなんでもない人に遊びにこられても戸惑うだけだわ

 

 何か目的でもあるのか? 

 

 

 

 

 

 side奏

 

 こいつが私たちのことを警戒しているのはわかってる

 だからまずは警戒を解くことから始めないとな……

 そう思って今回私はこいつの家を訪れた……

 

 それにしても……

 

「簡素な部屋だな……」

 

 子供の頃に遊びに行った友達の家とかとは偉い違いだ

 

 娯楽の類いがほとんどない……

 

 CDプレーヤーが机の上においてある程度か……

 

 

「簡素で悪かったですね……」

 

 そう言いながら太陽は自分のぶんのジュースをすすった

 それを眺めながら私もジュースを飲む

 

「……旨いなこれ!」

 

 冗談抜きで滅茶苦茶旨い

 どこで売ってるんだろう

 

「そうでしょう

 何せ色々な果物をブレンドして作った

 我が家特性の焔スペシャルなんですから」

 

「え? これお前が作ったのか?」

 

 すごいな……こんな美味しいジュースを作れるなんて

 こんなの店でもなかなか見ないぞ……

 

「母さんがよく作ってくれましてね……

 昔は二人で一緒に作ったりしたものですよ……」

 

「……そうか……」

 

 こいつにとってこのジュースは思いでの詰まったものなんだな……

 そりゃ旨い訳だ……

 

 

 そう思いながら私は再びジュース……焔スペシャルに口をつけた

 

 

 *********

 

 

「ところでさ……」

 

「? なんですか?」

 

 私は焔スペシャルを飲みながら太陽に質問をしてみた

 

「さっき、どこかへ出掛けるような格好してたけど、どこ行くつもりだったんだ?」

 

 今回私がここに来た目的は太陽との距離を縮め信頼を得ることだ……

 

 しかし、娯楽と言えるようなものがほとんどないこの家では距離を詰めようにも共通の話題ができない(さっきCDのことを聞こうとしたらはぐらかされたし……)

 

 なんでもいい

 とりあえず話題を作るべきだと思い私は聞いてみた

 

「…………修行ですよ

 ちょうどいい修行場所があるんで……」

 

 そう言うと太陽は立ち上がり、家をでた

 

 慌てて私もついていき、しばらく歩くと大きな森に到着した

 

「この森の木がなんなのかは俺にもわからない……

 わかっているのは……」

 

 そう言うと太陽は石を拾い呪文を唱えた

 

み恵み受けても背く敵は篭弓羽々矢もてぞ射落とす

 

 お、これは私も知っているやつだ

 

 白がたまに使う……

 

裂空魔弾 喼急如律令

 

 そう唱え、太陽は指で石を弾く

 

 石はまるで弾丸のようなスピードで目の前の木に命中した……

 

「な……?」

 

 あの技の威力は私も知ってる

 

 白との訓練のときはさばくのに苦労したものだ……

 

 それにもかかわらず、木は倒れることなく悠然と立っていた

 

「この木は呪力を弾く力があるんです

 まあそれでも、一定以上の呪力をぶつけると倒れますけど……」

 

 なるほど……この木の生い茂っているこの場所ならば回りの被害を考えずに陰陽術の修行ができるってことか……

 

 でも……

 

「どうしてそんな大事な場所教えてくれたんだ……?」

 

 別にどこ行くかを聞いただけなんだから誤魔化すこともできたはずた ……

 

「別に隠すほどのことでもないし……」

 

 太陽はそっぽを向きながらそう答えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 side三人称

 

 どうしてこの場所を教えてしまったんだろうか

 

 太陽はそうかんがえていた

 

 自分にとってこの場所は単なる修行場所であるというだけではない

 かつて両親と何度も遊びに行った思いでの地でもあるのだ

 

(……無意識のうちに舞い上がっていたんだな……)

 

 彼はそう結論付けた

 

 

 

 遊びにきた……奏は自分にそう告げた

 その様に太陽はまるで……

 

 

 

 

 前世の自分が欲しかった友達のやり取りのようだと思った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 プルルルルルルルル

 

 

 突如、奏の端末が鳴り響き、奏はそれに応えた

 

『奏! 聞こえるか!』

 

「ああ、どうしたんだ! 弦十郎の旦那!」

 

 弦十郎の慌てようからなにかがあったことを察した奏は簡潔に用件を求めた

 

『市街地にノイズが現れた……』

 

 

 それを聞いた太陽は瞳に憎悪を宿しながら現場に向かおうとした

 

 

 

 

 ********

 

 

 

 

 

 市街地にて、風鳴翼は一人でノイズと戦闘をしていた……

 

「はあああああ」

 

 彼女は形状を変化させ、自分目掛けて飛んでくるノイズを自らのアームドギアで片っ端から真っ二つにしていた

 

 だが……

 

(くっ、これではキリがない……)

 

 今回のノイズは数も多く、翼一人では上手く立ち回ることができずにいた……

 

 しかし、後ろには避難の完了していない自衛官たちがいる

 

「防人として、ここは絶対に通さない!」

 

 飛鳥と白は現在とある聖遺物の発掘チームの護衛についているため、二人の増援は期待できない

 

 奏は来るまでにまだ少し時間がかかるだろう

 

「♪ ~♪ ~」

 

 自分が到着するまでの時間を稼いでくれた自衛隊達の避難が完了してない現在は自分が彼らの防衛線なのだと言い聞かせ、翼は歌を唄いながらノイズを蹴散らしていく

 

 しかし……

 

「!? しまった!」

 

 一匹のノイズが翼を抜け、退避に遅れた自衛官に突っ込もうとしていた

 

 助けに行こうにも背を向けば他のノイズも自分を突破してしまうかもしれない

 

「うわあああああ!!!!!」

 

 

 やられる

 

 

 翼も自衛官もそう思った

 

 

 

 

 しかし……

 

 

 

 

 

 バシュッ!! 

 

 

 自衛官に触れる前にノイズは霧散した

 

「……はっ……えっ?」

 

 自衛官は自分の身が無事なことに驚いたのか間抜けな声でそう発した

 

「……今のは……一体……?」

 

 翼も何が起きたのか把握はできなかった

 

 しかし、なにかがノイズを倒したということは認識できた

 

 自衛官には見えなかっただろうが、鍛えられた翼の眼は確かに確認した

 

 

 

 

 

 一瞬でノイズを貫いた青い何かを……

 

 しかし、今はそれを気にしている暇はない

 翼は今のような失敗を二度としないためにも再びノイズに切っ先を向けた

 

 

 

 *************

 

 

 

「風鳴翼も案外爪が甘いんだな~。まあ、まだまだ成り立てだし、仕方がないかな?」

 

 そこから50mほど離れた物陰で一人の男がそう呟いた

 

 その男は両腕に蒼い籠手が携えてあった

 

 

 

 *************

 

「待たせたな! 翼っ!」

 

「奏!」

 

 ずっと待っていた片翼の到着に翼は喜色をあらわにした

 

裂空魔弾 喼急如律令

 

 そして、奏と共に来たもう一人の声を聞き、彼女はそちらを見る

 

「あの男は……」

 

 裂空魔弾により強化された小石が的確にノイズを仕留めていく

 

 そして気づけばノイズの数は最初の半分以下にまで減っていた

 

「……すごい」

 

 あれだけの数のノイズを相手に一匹も外さずに仕留めることができる太陽の裂空魔弾の命中精度に翼は驚きを隠せなかった

 

「私たちも行くぞ!」

 

「うん」

 

 奏と翼も気後れせずにノイズと戦おうとしたが……

 

「大丈夫ですよ……」

 

 太陽がそれに待ったをかけた

 

「太陽……?」

 

 奏は心配そうに彼を見つめるが、太陽の眼はノイズにのみ向けられていた

 

 その眼には凄まじいほどの憎悪が込められていた

 

「こいつらは……

 全部俺が祓いますから」

 

 そう言うと太陽は懐から黒い札を取り出し、呪文の詠唱を始めた

 

「祓へ給へ、清め給へ……」

 

 すると太陽の右腕が光っていく

 

『ヴォハハハハハ』

 

 するとまるで右腕が意思を持つかのように笑いだした

 

「あれが……」

 

「太陽の……陰陽師の力か……」

 

 そして太陽は自らの右腕の力を解放した札の名前を言う

 

星装顕符! 喼急如律令! 

 

 それを見て警戒でもしているのか、ノイズは寄声をあげる

 

『******』

 

 ノイズたちの寄声にいら立ちながら太陽は言った

 

「来いよノイズども……

 

一匹残らず祓ってやらぁ!!!! 

 

 

 そう吠えた太陽はノイズに向かっていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、面白い子がいるなぁ」

 

 そんな彼を見ている青い影に気づかずに……

 




公式の不正で貰う石は嬉しいね( ´∀`)

貯めるか引くか迷うな


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5話

 side三人称

 

「……凄まじいものだな……」

 

 太陽の戦いの映像を見た弦十郎はそう呟いた

 

「ホントにね~、あの鬼気迫る表情……

 ノイズへの復讐心という点は奏ちゃんにも負けていないのかもしれないわね」

 

 そう言ったのは二課の技術主任・櫻井了子

 シンフォギアの産みの親でもある女性だ

 

 彼女と弦十郎は奏のノイズに対する復讐心の凄まじさを知っている

 

 そもそも天羽奏はシンフォギアの適合者ではない

 

 シンフォギアには適合係数というものがあり、それが低いとシンフォギアを纏うことができない

 しかし、ノイズに家族を殺された奏はノイズに復讐するための力を求め、適合係数を上げる劇薬「LiNKER」を過剰投与することで後天的な適合者となった存在だ

 しかし、劇薬である「LiNKER」の投与は奏の体を確実に蝕んでいく

 それでも彼女はノイズと戦うために今なお「LiNKER」の投与をし続けているのだ

 

 全てはノイズへの復讐のため……

 

 今でこそ翼や飛鳥、白といった仲間との触れ合いで落ち着いてきたが、昔はノイズ相手に特攻のような危険なことも平気でやってのけていた

 

 そのせいで大怪我をしたことも何度かあった

 

 太陽の戦いはその頃の奏に近い

 

 ノイズへの復讐以外頭にないかのような戦い方だ

 

 目の前のノイズにひたすら向かっていき殴り飛ばし、逃げようとすれば裂空魔弾で弾き飛ばす

 こちらが攻撃されても意にも介さず、傷だらけになりながらただひたすらに……

 こんな戦いかたでは命がいくつあっても足りない

 

「どうすれば、彼を救うことができるだろうか……」

 

 弦十郎は子供である太陽が自分を何とも思わないような戦いをするのを見てやるせない気持ちになっていた

 

 

 ****************************

 

 side太陽

 

 

 

 

 

「はあ、はあ……

 これで……終わり……か……」

 

 俺はノイズを全て祓ったことを確認して星装顕符の力を解いた……

 

 すると、天羽さんがすごい剣幕でこちらによってきた

 

「おい、なんだ今の戦いかたは! 

 あんな戦い続けてたらいつか死んじまうぞ!!」

 

「大丈夫ですよ

 今までずっとこのやり方でなんとかなったんだから……」

 

 俺は十二年もの間陰陽師の修行をしている

 俺が四歳の頃、家の古い蔵で見つけた黒い札と赤い札、そして陰陽師について書かれた書物を使って……

 多分神様が用意してくれたんだろうな……

 でも、十年以上かけて修行をしても俺は三つまでしか連装できず、札も黒い札……星装顕符しか使うことができない

 

 

 俺には陰陽師の才能がない

 だからノイズを倒すために手段を選んではいられないんだ

 

「だからって、こんなの絶対間違っている!!」

 

 天羽さんは俺にそう言う……

 

 イライラするな……

 

 どんな戦いかたしようが俺の勝手だろ……

 

「ほっといてくださいよ! 

 俺は俺のやり方でノイズと戦ってきたんだ

 今までも、そしてこれからも……」

 

 会ったばかりの天羽さんに俺の気持ちがわかるわけがない

 才能のない俺にはこの方法しかないんだ……

 

 そう考えながら俺は飛天駿脚で家に戻った

 

 早く家に戻って傷の手当てをしないとな……

 

 

 

 

 

 

 *******************************

 

 side奏

 

 

 

 

 

 

 

 太陽がどこかへ行くのを私は呆然と眺めていた

 

 あいつの怪我は結構やばそうに見えた……

 

 陰陽師には治癒の符があるとはいえ、癒えるには数日はかかるだろう

 

 あいつはずっとこんな戦いかたをしてきたのか……

 

 昔の私と同じような戦いかたを……

 

 

 あいつには昔の私と同じような間違いをしてほしくはない

 

 あいつの事を助けてやるにはどうすればいいんだ……

 

 私は無意識に拳を強く握りしめた

 

「……奏?」

 

 翼が心配そうに私を見ていた

 

「……大丈夫だよ翼」

 

 私は微笑みながらそう翼に言った

 

 

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 side白

 

 

 

 

 

 

「ふえ~

 つかれたよ~」

 

「お疲れ様、白」

 

 皆様はじめまして

 私の名前は虎居白

 鳴神高校の一年生で十二天将白虎の力を受け継いだ転生者です

 

 ……ん? 誰に向かっていったんだ私? 

 

 まあいいや……

 

 今回、私は成績がやばく、赤点を取りそうになってしまったので放課後の図書室で飛鳥くんと一緒に勉強をしていた

 

 この図書室、放課後はいつも人いないから勉強場所にはちょうどいいんだよな~

 

 飛鳥くんはよく学業と陰陽師を両立できるよな~

 翼ちゃんとカナちゃんもきちんと装者と学業両立できてるし……

 

「……どうした白? 変な顔して……」

 

「別に~」

 

 私は購買で買ったポテチを食べながらそういった

 ……うん。やっぱりのり塩は正義だ

 

「……そういえば、この間発掘した

 聖遺物一体どうするのかな……」

 

 聖遺物というのは神話なんかに登場する現代の技術では製造不可能と呼ばれる異端技術の結晶の事だ

 シンフォギアはその欠片で産み出されているんだって

 

 これは何度も説明されてやっと覚えたんだよな……

 

「今回発掘した聖遺物、天叢雲剣はひとまず二課本部の最奥区画アビスに保管されるらしい……

 

 最終的には海底の隔離施設、深淵の竜宮に封印予定だ」

 

 ……天叢雲剣

 翼ちゃんのシンフォギア、天羽々斬と同じ日本神話の神剣の一振り……らしい

 

 よくわかんないけど……

 

「あと、この間会った焔くん……だっけ

 また、カナちゃんや翼ちゃんと一緒にノイズと戦ったらしいね」

 

「その話は俺も聞いた……

 最も、その後逃げられたらしいがな……」

 

 私たちが天叢雲剣の発掘チームの護衛をしていたときに発生したノイズとの戦い……

 そこではあの時の双星の人────焔くんも一緒に戦ってくれたらしい

 

 ただ、その話をしてた時、カナちゃん辛そうにしてたな……

 やっぱり彼がカナちゃんの過去とそっくりだから色々気にしているのかもしれない

 

「あいつは昔の奏さんに似ている

 だからあいつの事は奏さんに任せたほうがいいだろう」

 

「そうだね」

 

 家族をノイズに殺された

 なんて経験私にはないから私には彼の気持ちはわからない

 ならば、同じ気持ちを理解できるカナちゃんに任せた方がいいだろう

 

 私たちはそう結論付けた

 

 

 

 

 ……それにしても

 

 

「……最近、ノイズ増えたよね……」

 

 

 私たちが二課に入る以前は月に一度ノイズが出れば珍しいという認識だった

 

 人類の脅威といっても、本来ノイズに遭遇する確率は通り魔に出会う確率よりも低いらしい

 

 それがここ最近は週に二、三度の頻度で出現している

 

 

「やはり、ノイズを操っている何かがいる

 と考えた方がいいかもな……」

 

 ノイズは生物のような形状をしてはいるが意思というものが見られず、コントロールすることは不可能だと言われている

 だから可能性は低いと弦十郎さんと了子さんは見ている……

 

 それに私は何度もノイズと戦ってるからわかる

 

 あれには心なんてものは存在していない

 

 ただただ無機質に人を殺そうとしてくる……まるで機械のようなよくわからない存在だ

 

 そんなノイズを操れる存在なんて本当にいるのかな……

 

 いるとしたらどんな化け物なんだろう……

 

 もし、そんなやつと戦うことになるとどうなるんだろう

 

 ……少し不安になってきたな

 

 すると飛鳥くんが私の髪を撫でてくれた

 

 

「そんな顔するな白

 例えどんなやつと戦うことになっても、次こそは絶対に、死んでもお前の事を守るからさ……」

 

 

 ああ、飛鳥くんはいつもそうだ

 いつも私を守るために動こうとする……

 前世の時だってトラックに轢かれそうな私を助けなければ飛鳥くんは死なずにすんだ……

 

 私と飛鳥くんは距離が少し空いていてトラックの直線上に飛鳥くんはいなかったのだから……

 

 でも、飛鳥くんは私をかばった

 

 結局二人して死んじゃったんだけど、その後神様のところで見た飛鳥くんの顔は忘れられない

 

 いつもはクールな飛鳥くんがあんなに泣くところ始めて見た

 

 それも私を助けられなかったことによる後悔の涙……

 

 私は飛鳥くんにそんな顔させたくない

 

 だから私も強くなりたい

 

 

「私も……」

 

「?」

 

「私も飛鳥くんを守りたい

 これからも飛鳥くんと一緒に生きていきたいの! 

 だから死んでもなんて言わないで飛鳥くん」

 

「白……」

 

「どうせ一度は一緒に死んだ身なんだから

 次死ぬときも一緒だよ!」

 

 そう言って私は飛鳥くんと唇を合わせた……

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 side三人称

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 マスクをつけた青い髪の青年は監視用の式神から現在進行形で送られてくる映像を見て頬を赤くしていた

 

「……いや何このラブコメ!」

 

 それが彼の率直な感想だった

 

 自分と同じく十二天将の力を持つ転生者……

 自分と同じく物語のイレギュラーである以上油断はできない

 どんな奴らなのか調べようと数ヶ月の間監視を放ったのだが、彼はその事を少しだけ後悔していた

 

 

「……全く、誰もいないとは言え、神聖な学舎でなにやってるんだか……

 そういうのは家でやってほしいなぁ……」

 

 

 独り身にはきつい

 

 

 彼はそう思いながら式神からの映像を切った

 

 後の展開が見えていたからだ……

 

 

 

 コンコン

 

 自分の部屋の扉がノックされたで

 彼は入る許可を出す……

 

 

「どうぞ」

 

 ガラガラと音を立て、扉を開けた彼の生徒はこう言った

 

「碧先生! 飛鳥くんの鼻血が止まらなくって……」

 

 それは彼が今さっき見ていた二人だった

 

 白は慌てながらドクドクと鼻から大量の血を流し、気を失っている飛鳥を肩に乗せていた

 

 これを予想していたのか彼はため息をつきながら

 

「はいじゃあ、いつも通り血止めとティッシュあげるからそれで止めてね……」

 

「碧先生最近なんか冷たくありません?」

 

「そんなことないですよ~」

 

 そう言いながら鳴神高校養護教諭であり十二天将青龍の転生者・碧 海龍(あおい かいり)はいつものように彼らに血止めとティッシュを渡すのだった

 

 




飛鳥、白は海龍が青龍の転生者であるということを知らない
彼は普段自らの呪力を一般人並みに押さえているのが理由


鳴神高校
リディアンの近場にある共学校
リディアンと比べると特に有名ということもなくそこらへんにある普通の高校
最初白は奏、翼と同じリディアンにいた方がいいのではと言われたが女子校のため、飛鳥と同じ高校に行きたい白は断った


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6話

 side三人称

 

「ふぅ……、かなり回復してきたな……」

 

 市街地での戦いから数日

 自らに使った治癒符の効能もあり、太陽の怪我は完治していた

 

 最も、呪力は戦闘+治癒符で使い果たし、すっからかんになっているが……

 

 呪力を回復させるには休息をとるのが一番

 そう考え、太陽はベッドに横たわる

 

「……」

 

 

 

『ほっといてくださいよ! 

 

 俺は俺のやり方でノイズと戦ってきたんだ

 

 今までも、そしてこれからも……』

 

 

 

 

 太陽は数日前の戦いでの奏とのやり取りを思い出し……

 

「……この間は少し言いすぎたかな……」

 

 奏に言った言葉に若干後悔していた

 

 奏は本気で自分のことを心配していた

 にも関わらずそれを突っぱねてしまったことに

 

 何故かは太陽もわからないが、太陽は十二天将よりも風鳴翼よりも天羽奏に興味を持っていた……

 

「……なんでだろ」

 

 彼女とはまだ少し顔を合わせただけ……

 にも関わらず、太陽は彼女のことが気になって仕方がなかった……

 

 

「それに……あの時の目は……」

 

 太陽は飛天駿脚で帰宅しようとする瞬間に見た奏の目……

 

 

 彼女はまるで、自分のことを理解しているのかのような、それでいて悲しそうな目で太陽のことを見ていた

 

 あんな幸せそうな人に自分の気持ちがわかるわけがない

 

 そう思いつつも……

 

「……」

 

 彼はあの時の目が忘れられずにいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 

 

 その頃、二課では天羽奏と風鳴翼、朝鳥飛鳥と虎居白の二組がチームに別れての戦闘訓練を行っていた

 

『今回の訓練は翼と奏のフォニックゲインの上昇率を確かめることとチームワークの向上が主な目的だ! 

 

 気を引き締めていけよ!』

 

 スピーカーから聞こえる弦十郎の声を聴きながら互いに自らの力の源を構える

 

「手加減はしないよ」

 

 奏と翼はペンダントを握りながら不適に笑い

 

「こっちもな……」

 

 飛鳥と白は札と共に古びた剣と白い手袋を構える

 

 

Croitzal ronzell gungnir zizzl(人と死しても、戦士と生きる)

 

Imyuteus amenohabakiri tron(羽撃きは鋭く、風切る如く)

 

 奏と翼はシンフォギアを起動するための唄……聖詠を口ずさむ

 

 すると二人のペンダントはエネルギーに還元され、二人の身を包み始めた

 

 そして天羽奏は北欧神話の神槍・ガングニールのシンフォギアを……

 風鳴翼は日本神話の神剣・天羽々斬のシンフォギアをそれぞれ纏った

 

「こっちの準備は終わったよ!」

 

 

 

 それを見た飛鳥と白も札を構え、自らの力を解放するため札の名を唱える

 

「天翔顕符!」

 

「獣爪顕符!」

 

 飛鳥と白はそれぞれ古びた剣と白い手袋に呪力を込める

 すると、古びた剣は巨大な剣に、白い手袋は巨大な籠手に変化していく

 

朱染雀羽(しゅぜんざっぱ)! 喼急如律令!!! 

 

白蓮虎砲(びゃくれんこほう)! 喼急如律令!!! 

 

 そして二人は巨大な剣と白い籠手を構えた

 それを見た奏は獰猛に笑う

 

「いくぞ!!!」

 

 先手を取ったのは奏だった

 

 シンフォギアには身に纏う人間の戦意に共鳴し旋律を奏でるといえ機能があり、その旋律に合わせ唄を歌うことでシンフォギアを稼働させるためのエネルギー・フォニックゲインを高め、そのポテンシャルを上げるという特性がある

 

 

「♪ ~♪ ~」

 

 奏は唄を歌い、フォニックゲインを高めながら奏は二人に向かって槍を向ける

 

 奏は自らのアームドギアの槍の穂先を回転させ、巨大な竜巻を作り出した

 

 

 

LAST∞METEOR

 

 

 まるで嵐のような竜巻が二人に向かってくる

 

 しかし、二人は慌てることなく冷静に対処をしようとする

 

「オンギャロダヤソワカ」

 

 飛鳥は剣に向かって詠唱を唱える

 

降天迦楼羅(ごうてんかるら)! 喼急如律令! 

 

 飛鳥は自分の呪装を発動

 

「やあああああああ」

 

 そして白はそれと同時に竜巻に向かって白蓮虎砲の斬撃を放った

 

 白虎の呪装・白蓮虎砲は十二天将の呪装の中でも破壊力に特化した呪装であり、その斬撃はたった一撃で巨大竜巻をかき消し、あたりにはその衝撃で凄まじい爆風が起こった

 

 奏は爆風に怯まず真っ直ぐに前を見据える

 

 風が止むとそこには奏が予想した通り白だけしかいなかった

 

「翼っ!!」

 

「わかってる!!」

 

 翼はアームドギアの剣を巨大化させ、天井に向かって飛ぶ斬撃を放った

 

 

 

蒼ノ一閃

 

 

 

 そこには機械のような翼で空を翔んでいる飛鳥がいた

 

「さすがにこんな単純な手は通用しないか……」

 

 翼の飛ぶ斬撃を弾きながら飛鳥は呟いた

 

 十二天将朱雀の呪装・朱染雀羽は数千という膨大な数の陰陽術でも一つしかない飛行能力を持つ唯一の呪装……

 

 空を翔ることで十二天将でも随一の機動力を保持している

 

 彼は爆風に紛れ空から彼女たちを攻撃しようとしていたらしいが奏と翼はそれを見破っていたのだ

 

 最も本人も通用するとは微塵も思ってないが……

 

赤鶙無限屏風(せきていむげんびょうぶ) 喼急如律令! 

 

 飛鳥は素早く詠唱をし、術の名前を唱える

 すると朱染雀羽の翼から三十六枚の羽根のような剣が飛び出した

 

 赤鶙無限屏風の羽根は一枚一枚が飛鳥の意思で操作することができ、敵にとっては三十六本の剣が意思を持ちながら襲ってくるようなものである

 

「なんの!!」

 

 しかし、奏は全く恐れず先程より規模の小さい竜巻を起こす

 

 その竜巻は全ての羽根を巻き込んでいき、一ヶ所に固め……

 

「はああああ」

 

 それを纏めて翼が一刀両断した

 

「なっ!?」

 

 発動してすぐに赤鶙無限屏風が破られたことに飛鳥は一瞬驚くがすぐに落ち着きを取り戻す

 

「……やるな二人とも」

 

「こっちも負けてられないね」

 

 飛鳥は翼に呪力を込め、白もまた籠手を構え二人を見据える

 

 それを見た奏と翼もそれぞれ槍と剣を構えた

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 

 

「はあ~~、疲れた────!」

 

 訓練終了後、奏たちは倒れるようにソファーに座り込んだ

 

「お疲れ様♪ 皆~

 はい奏ちゃんの分」

 

 そう言って二課の技術主任・櫻井了子は奏にスポーツドリンクを渡した

 

「ありがとう、了子さん」

 

 奏はスポーツドリンクを飲み干した

 

「今回の訓練でいいデータがとれたわ♪ 

 この数値ならば問題なさそうね……

 

 

 

 

 

 

 ネフシュタンの鎧の起動実験は……」

 

「……成功するといいな」

 

 飛鳥の言葉に皆が同意する

 

 三ヶ月後に奏と翼のユニット・ツヴァイウイングのライブが開かれる

 

 しかし、これはただのライブではなく、完全聖遺物ネフシュタンの鎧の起動実験でもあるのだ

 

 ネフシュタンの鎧はシンフォギアのような聖遺物の欠片とは違い、完全な状態で残っている貴重な聖遺物

 そして、それを起動するにはそれ相応のフォニックゲインが必要となる

 

 ライブという大きな会場で歌うことにより二人の歌唱とオーディエンスからの熱気でフォニックゲインを高め、起動を試みるというのが大まかな内容である

 

「…………」

 

 奏はそれを聞いてあることを考えていた

 

 

 

 

 

(……太陽にも見てほしいな)

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 side??? 

 

 

 

 

 

 

「は~お腹空いた……」

 

 私の名前は立花響

 

 鳴神中学に通ういたって普通の中学生で好きなものはご飯&ご飯

 

 今、私は昼食だと言うのにお弁当を忘れてしまい絶望の淵に叩き落とされていた

 

「全く響ったら

 はいあーん」

 

「わぁ、ありがとう未来」

 

 そう困っていたら私の親友の一人、小日向未来がお弁当のたこさんウインナーを私に食べさせてくれた

 

「全く、本当におっちょこちょいだよなお前……

 便りにも今日は給食がないからお弁当でって描いてあるじゃん」

 

 そう私のもう一人の親友、大蔭 創太くんは言った

 

 彼は口ではつっけんどんな態度だけどすごく優しい人なんだ

 

 実際今お弁当の玉子焼きを私にくれたし……って旨っ!! 

 さすが家庭科の神なんてアダ名を持ってるだけのことはある

 料理や裁縫、後音楽なんかもか……創太くんはプロ顔負けレベルに凄いんだよな……

 

「……あ、そうだ響、創太

 

 二人に渡したいものがあるんでけど……」

 

「……? なんだ? 未来?」

 

 創太くんがそう言うと未来はチケットを三枚出した

 

「じゃーん、ツヴァイウイングのライブチケット! 

 二人の分もちゃんと持ってきたんだ」

 

「「え!? ツヴァイウイング!!?」」

 

 ふえー驚いたー

 ツヴァイウイングのライブチケットはめちゃくちゃ人気でなかなか手に入らないって話だったけど……

 

「よく手にいれたな……」

 

「この間、商店街の福引きで当たったんだ

 

 三枚あるからちょうどいいと思って……」

 

 そういって未来は私と創太くんにチケットを分けてくれた

 

「わあーありがとう未来~♪」

 

 こんな貴重なものをくれるなんて未来って本当太っ腹だな

 

「これ、俺も欲しかったんだよな

 抽選落ちてがっかりしてたからすごくありがたいや……

 サンキュー未来」

 

 そう言って創太くんは未来からチケットを受け取った

 かなり喜んでいるのがわかる

 

 ツヴァイウイングは創太くんイチオシのユニットだからそれはそれは嬉しいんだろうな

 

 かくゆう私も創太くんに進められ、今では立派なツヴァイウイングファンの一人だしめちゃくちゃ嬉しい

 

「早く三ヶ月後にならないかな~」

 

 そう言って私は楽しい未来に思いを馳せた




はい、来ました原作主人公&五人目の転生者
五人目の転生者は大蔭 創太(おおかげ そうた)
家庭科の神とうたわれており、料理と裁縫がめちゃくちゃ凄い
趣味は手作りのぬいぐるみを子供たちにあげること

ちなみにシンフォギア原作のことは一切知りません

なんの能力かは現時点では内緒です(まあ、趣味でもろばれだが…)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7話

今回短いです


 side創太

 

「速く行かねぇと遅刻だぞ! 急げ響!!」

 

「ちょっと待ってよ~、創太くん!」

 

 俺の名前は大蔭(おおかげ) 創太(そうた)

 いたって普通の中学生……ではないな……うん。

 俺は前世で死に、神様とやらによってこの世界に転生させられた、所謂“転生者”というやつだ……

 なんでも自分はいじめられていて、殴られた時に当たり所が悪くてそのまま死んでしまった……らしい……。神様が言うからには……だけど……。

 我ながら、悲惨な死に方だよな。

 

 

 

 まあ、前世に何の未練もなかったから別にいいんだけど……

 

 

 

 俺は前世からぬいぐるみを作ることが趣味だった。

 そしてそのぬいぐるみを女の子とかによくあげたりしていた。当初は、女の子達が喜んで姿がとても嬉しかったんだよな。

 そんなんだから知らないけど、学校で悪ガキのグループに目をつけられて、俺は結構壮大ないじめを受けることになった……

 

 その時、助けてくれる誰かでもいれば、何か違ったかもしれないケド……俺にはそんな存在は誰もいなかった……。

 教師にも、ぬいぐるみをあげてた女子からも、友達だった奴らからも、俺は無視されるようになり、挙げ句の果てには両親さえも俺が悪いというようになった。

 

 

 ────ぬいぐるみ作りなんてふざけた趣味を持っているからだ

 

 

 それが両親の言葉だった……。

 そんな前世だったから、正直未練すらない……。

 

 

 

 

 

 

 この世界に転生した俺は、つっけんどんながらも優しい祖母に裁縫や料理を習っていた。

 祖母はぬいぐるみの職人でよく俺と一緒にぬいぐるみを作ってくれた……

 最初は前世の記憶からかこの世界でぬいぐるみを作ることに少し躊躇いがあったが祖母と一緒に作っているうちに、やっぱり俺はぬいぐるみを作ることが好きなんだと気付くことができた……

 祖母と一緒にいるときは楽しかったな……

 

 

 

 でも、今世でも前世と似たような事が起きた

 今世では割と早めに……小四の時点でそういういじめが起こったんだ

 

 最初はこの世界でも前世と同じか……と失望にもにた思いが芽生えた

 ……でも

 

「いじめなんて絶対ダメだよ!!」

 

 そういって俺を助けてくれたのは当時違うクラスだった立花響だった

 響は俺をいじめてた奴らに真っ向から向かっていき

 俺を助けてくれた

 

「へいき、へっちゃら」

 

 そう言ってボロボロになりながら俺を守ってくれた響は誰よりもかっこよく見えた

 

 そこから俺は響、そして響と親友だった未来とも一緒にいるようになった。

 未来もとてもいいやつで俺がまたいじめられそうになったときは響と二人して庇ってくれた

 いつしか俺のいじめは無くなっていった……

 

 

 俺は二人に助けられた……

 いじめから守ってくれた未来にも感謝してるが、俺はそれ以上に響に感謝している……

 響と出会えたから俺は二人の掛け替えのない友達に出会えた

 多分響に出会えなかったら俺は今なお一人ぼっちだったと思う

 未来と仲良くなることもなかったと思う……

 全部響のおかげだ

 

 だから俺は響を守れる男になりたい……

 そう考え、当時ずっと拒んでいた陰陽師の修行も受けるようになった

 

 今では式神曰く、十二天将として最低ラインの実力は身に付いたとのこと……

 

 話がそれたな

 俺と響は今全速力で走っていた……

 

 響はよく人助けをする

 正直最初はどうして見ず知らずの他人を助けようとするのかわからなかった

 でも、響と一緒に人助けをするうちに俺もやりがいを感じるようになった

 助けた人にありがとうと呼ばれると嬉しくなる

 助けた人の笑顔を見ると俺も自然に笑いたくなる

 気付けば俺も響と一緒に人助けをすることが日課となっていた……

 

 もっとも……

 

 

 

「急げ! あと五分で遅刻だぞ!」

 

 

「「うわああああ!!」」

 

 そのせいで遅刻ギリギリに登校することも日課となってしまったけど……

 俺は先生の言葉を聞いて響と一緒に走る速度を速めた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ************

 

 side奏

 

 私は太陽のことを考えながら歩いていた

 

 太陽は昔の私と同じだ……

 ノイズへの復讐以外をどうでもいいと考えている

 

 かつては私もそうだった……

 ノイズを倒すためならば自分の事なんかどうでもいい……

 そう考えていたんだ……

 おかげで何度も弦十郎の旦那や飛鳥の奴に怒られたっけ……

 今思い返せば、あのときは翼や白にも心配かけたりして悪いことしたなと思っている

 それでもかつての私は私のことを心配してくれる人達にも気付かぬふりをしてひたすらノイズを狩り続けていた……

 

 

 そんなある日、私は自分が助けた自衛官に()()()()()を言われた……

 

 

 その言葉で私の歌は復讐だけじゃない……

 それ以外でも……誰かを救うことや勇気づけることもできるんだって……

 

 それ以降、私は復讐だけじゃなく、他の誰かを助けるために歌を歌うようになった……

 おかげで私は復讐以外にも目を向けられるようになった

 そして仲間の大切さを知ることができた……

 

 

 

 だから私は太陽をほおってはおけない……

 

 昔の私と同じようなことをする太陽を……

 

 あいつにも、仲間の大切さを知っててほしい……

 復讐以外にも目を向けてほしい……

 

 

 だから私はあることを決めた……

 

 それは……

 

「よ、またきたぜ! 太陽!」

 

「………………」

 

 そう言って私は太陽の家を尋ねた

 太陽は私が来ることはないと思っていたのかすごい顔をしてやがる

 

 今はまだ太陽を救ってやる方法が思い付かない

 今の太陽にはどんな言葉を言っても聞く耳を持たないだろう

 でも、何度でも太陽の元を訪ねて見ようと思う……

 

 いつかこいつが私に心を開いてくれるその時まで……

 私の言葉に聞く耳を持ってくれるようになるまで……

 何度でも……




文章うまくなりたいなぁ~


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8話

今回かなり駆け足です


 side太陽

 

「おりゃあ!!!」

 

 そう言いながら俺はノイズを殴り飛ばす

 

 俺はいつものようにノイズを祓うために戦っていた

 

 ただ、いつもと違うのは……

 

「はぁー!!」

 

 天羽さんが一緒に戦っているという点

 

 最近天羽さんが家に来ることも多くなった(曰く遊びに)

 以前心配してくれた天羽さんに強く当たってしまったにも関わらず、彼女は何度も俺の家にやってきた

 理由はわからないけど彼女は俺のことを気にかけているようだ

 

 今回俺はいつものように修行場に行こうとした矢先、ノイズが出現したので戦うことにした

 

 俺は一人でもいいと言ったにも関わらず、天羽さんはそれを聞かず、一緒に戦い始めた

 

「♪ ~♪ ~」

 

 ……わかってはいたことだが彼女は強い

 

 その槍さばきは凄まじく、どんどんノイズを祓っていく

 

 それに

 

 

 

 

 

 

「やっぱり綺麗な歌声だな……」

 

 俺は思わず小さな声でそう呟いてしまった

 

「ん、なんか言ったか?」

 

「いいえ、なんにも……」

 

 っとそんなこと考えてる場合じゃないな……

 

 俺はノイズの攻撃を避けずに受け、カウンターを喰らわした

 

 本来、ノイズに触れると人間は炭素の塊になってしまうのだが、俺には身を守るための呪装・鎧包業羅によって守られているため、炭素になることはない

 

『*************』

 

「!?」

 

 背後からノイズの不快な鳴き声が響いた

 後ろを振り向くと大量のノイズがドリルのように形状を変化させながら俺に迫ってきた

 

 まずい、これは受けきれねぇ

 

「任せろ!!」

 

 すると天羽さんが俺の前に立ち、槍を回転させノイズの攻撃を凌ぐ

 

「ふぅ、危ないとこだったな」

 

 ノイズの攻撃を凌ぎきった天羽さんが俺にそう言った

 

「…………ありがとう」

 

 小さな声で例を言った俺は即座にノイズに向かっていった

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 

 

「ふう、これで終わりだな

 お疲れ様」

 

 俺たち二人はノイズを全ての祓ったことを確認すると近くにあったベンチに座った

 

 

 ……よく無事だったな

 

 

 

 

 

「……なんで俺を助けたんですか?」

 

 俺は先程のことを聞いてみた

 あの時天羽さんに助けてもらったから俺は大したダメージを受けずにいられた

 

 だが、彼女には俺を助ける理由なんてなかったはずだ

 身を挺してまでどうして……

 

「変なこと言うね

 仲間を助けるのはあたりまえだろ」

 

 彼女は俺にそう答えた

 

「……別にあなたと仲間になった覚えはないですよ

 俺は今まで一人でノイズを祓ってきた

 これからもそうするつもりです

 仲間なんて俺には必要ないですよ……」

 

「そんなこと言うなよ

 誰がなんと言おうと私はあんたのことを仲間だって思っている。

 だから、あんたにあんな戦い方してほしくないんだ」

 

 天羽さんは悲しげな瞳で俺を見ながらそう言った

 

 まるで俺の気持ちがわかっているかのように……

 

「どうしてそんなに俺に構おうとするんですか……」

 

 そんな天羽さんの前だからか、俺は言う必要のないことを語り始めた

 

「俺がノイズを祓うのは復讐心からだ……

 あんたたちみたいな正義感からじゃない! 

 俺はあんたとは……あんたたちとは違うんだ!!」

 

「…………」

 

 天羽さんは俺の話を黙って聞いてる

 それに対し俺は本心をぶちまけた

 

「俺には陰陽師の才能がない……

 十年以上かけても連装だって三つまでしか使えない。

 才能のない俺がノイズと戦うにはこのやり方しかないんだよ……」

 

 俺は拳を握りしめ、涙を流しながらそう言った……

 

「私も……」

 

 それからしばらくたった後、天羽さんがぽつりと話し始めた

 

「私もさあんたとおんなじなんだ

 あんたとおんなじで最初は復讐心からノイズと戦っていた」

 

「……え?」

 

 俺は心の底から驚いた

 天羽さんが復讐心からノイズと戦っていただって? 

 今の明るい彼女を見るととても信じられない

 

「私の両親はさ

 聖遺物っていう代物の発掘チームのメンバーでね

 私は妹と一緒に両親の仕事を見学しに行ったんだ」

 

 天羽さんは自分の過去のことを話し始めた

 

「……でも、そこにノイズが現れた……」

 

「……」

 

「私はなんとか助かったんだけどさ……

 両親と妹はノイズに殺されちまった……」

 

 そう言いながら彼女は哀しそうな顔をした

 その顔を見て俺は天羽さんに自分自身を重ねた

 

(俺と……同じだ……)

 

 そして天羽さんは間を置いてその後のことを話し始めた

 

「その後私は二課に保護され、ノイズを倒せる力……

 シンフォギアの力を望んだんだ……」

 

 この人も俺と同じでノイズに家族を奪われた

 そして、復讐のために力を手に入れたのか……

 

「でも……」

 

 そこに天羽さんは一拍おいた……

 

「私はシンフォギアを纏うことができなかった……

 シンフォギアの適合者ではなかったのさ……」

 

「え!?」

 

 彼女の言葉に俺は信じられない気持ちになる

 シンフォギアを纏うには適合しなきゃいけないというのも初めて知ったが、問題なのは天羽さんが適合者じゃないという点だ

 

「私はLiNKERっていう薬物を投与して後天的に適合者になったんだ。

 最初は副作用で何度も死にかけたけど、最終的にシンフォギアを纏うことができるようになった……って言っても毎回LiNKERを投与してないと持続できないんだけどな……」

 

 言葉がでなかった

 復讐のために力を求めて……でも、才能がなくて最初はシンフォギアを纏えないでいた

 

 その過去に俺はますます自分のことと重ね合わせてしまった

 

(ああ、そうか……

 だから俺はこの人のことが……)

 

 同時に俺は天羽さんの事が気になって仕方がなかった理由を知ることができた気がした

 

 

「最初はあんたと同じように復讐のことだけ考えてノイズと戦ってた

 そのお陰で昔はよく旦那や飛鳥に怒られたっけ……

 

 

 

 でもな、ノイズから助けた自衛官の人が私にこう言ったんだ」

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

『ずっと歌が聞こえていた。だから諦めなかった』

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

「この言葉で私は気付いたんだ

 私達の歌はノイズと戦うだけじゃない

 誰かを勇気付け、救うことができるんだって」

 

「…………すごいですね」

 

 俺は天羽さんの強さの根元を見た気がした

 天羽さんは命懸けで力を手に入れ、それを正しいことに使っているんだ

 

 罪なき人々を雑音から守るために……

 

「……だから私はあんたのことがほっとけないんだ

 

 私と似た過去を持つあんたのことが!!」

 

 天羽さんは一筋の涙を流しながらそう言った

 

「今の私がいるのは翼や飛鳥、白が一緒に戦ってくれているからなんだ! 

 私はあんたに、仲間と一緒にいることの楽しさを知ってほしいんだ! 

 

 

 ……だからさぁ、お願いだから仲間なんていらないなんて寂しいことを言うなよ……」

 

 その言葉を聞き、俺は両親が死ぬ何日か前に両親から貰った言葉を思い出した

 

 

 

『私は太陽に色々な人を助けることができる立派な人になってほしいの

 お日様のように皆を照らしてあげられる立派な人に』

 

 

 

 そしてもうひとつ……転生する直前神様から貰った言葉も

 

 

『その力を正しいことに使うことを祈るぞ』

 

 

 

 そうだ、両親にも神様にも言われたじゃないか

 俺はずっと復讐のことだけを考え続けてすっかり忘れていた

 

 俺のこの力は……正しいことに

 人々を守るために授かった力だったんだ

 

 

 

「……ありがとう。()()()

 君のおかげで俺は……大切なことを……思い出すことが……できたよ……」

 

 俺は両目から大粒の涙を流しながらそう言った

 

「奏でいいよ……敬語もいらない……

 かたっ苦しいのは好きじゃなくてね……」

 

 天羽さん……奏は涙を流す俺の頭をそっと撫でてくれた……

 

 俺は泣きながら決意した

 

 今はまだ復讐を完全に忘れることはできない

 

 でも、復讐のためだけじゃない

 

 陰陽師として……この力を使って

 両親を守れなかった分、他の誰かを守ろうと

 

 

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 side弦十郎

 

 

 

 

 

「そんなことがあったのか……」

 

 俺は奏からの報告を聞き、そう答えた

 

「ああ、しばらくは一人で自分のことを見つめ直したいとかで二課にはまだ入れないって言ってたけど

 

 必ずいつか二課に入るって言ってたぜ」

 

「そうか、ご苦労だったな」

 

 あの固く冷たくなってしまった彼の心を奏が溶かしてくれたということか……

 たく、本来そういうのは大人の役目なんだが……

 奏には感謝しなければな……

 

 

「では奏

 ライブまであと1ヶ月、そろそろ……」

 

「ああ、わかってるよ旦那

 不確定要素はできる限り排除したいってことだろ

 言われた通り、LiNKERの使用はしばらく控えるよ」

 

 ライブの起動実験では可能な限り不確定要素が混入しないようにしたい

 

 故にLiNKERの使用はしばらく禁止にしなければならない

 

「……昔は断固拒否したんだろうけどさ

 今は翼に飛鳥、白がいる

 戦えなくなるって言っても

 ほんの一月ぐらい大丈夫だよ」

 

 

 それに、と奏は付け加え……

 

「ライブには太陽も見に来てくれるんだ

 戦いじゃあない

 私の歌を大きな会場であいつにも聞いてほしいんだ! 

 今のうちに翼と練習しないと」

 

 そう言い残し、奏は部屋を飛び出してしまった

 

 それを見た了子君が

 

「青春ねぇ~」

 

 そう呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 side海龍

 

 

 

 

 

「この太陽って子も悪い子じゃなさそうだな……」

 

 僕はそう言いながら式神からの映像を見ていた

 

 僕の名前は(あおい) 海龍(かいり)

 

 神様に式神十二天将青龍の力を受け継いだ転生者で、前世から養護教諭をやっている

 

 転生した理由は学校に通り魔が襲ってきたから……かな

 通り魔の目的は子供を殺害すること。神様が言うからには、自分より弱い存在を傷付けることで自尊心を保ちたかったがゆえの犯行……らしい。

 そんな通り魔のナイフから生徒をかばい、僕は命を落とした

 

 神様曰く、通り魔は自分を刺した後すぐ捕まったので他に怪我人はいなかったとのこと

 それだけが心残りだったから、正直良かった。生徒達の心には傷をつけてしまったかもだけど、皆いい子だったし、生きてさえいれば必ず前を向けるはず。

 だから、前世の生徒たちの心配はあまりしていない。

 

 その後、神様にシンフォギアの世界に転生させらへ今にいたる

 

 僕は前世からシンフォギアのことは知っていた

 

 だから少しでも色々な事件の被害を防ぐため、隠れてこそこそ活動していた

 

 最も天羽奏の両親が聖遺物発掘に赴いた山の名前とか細かい設定は思い出せず(そもそも設定されてたかどうかも思い出せないし……)助けにいくことができなかったけど……

 

 

 そして、シンフォギア装者を見張っているうちに僕は焔太陽、朝鳥飛鳥と虎井白という三人の転生者の存在を知る

 

 彼らは原作に登場しない完全なイレギュラー

 彼らが邪な心を持っているのならなんとしても止めなくては

 

 そう思い僕は彼らに監視の式神を送った

 

 結果彼らはシロ

 

 邪な心など皆無な子供であるということが判明した

 

「ふう、よかった~

 これで敵対とかはしないですみそうだな~」

 

 そう言いひとまず安堵はするものの僕にはまだ懸念があった……

 

「……確実にいるよな

 他の陰陽師の転生者……」

 

 これが僕だけならそんな疑いはもたなかった

 

 

 だが、朝鳥飛鳥、虎井白

 

 この二人の転生者の存在が自分の思考を加速させ、とある結論を導きだした

 

 

 

 

 

 自分以外の十二天将の転生者は確実に存在している

 

 まだ見ぬ転生者がどんな人間なのかわからない以上、僕は憂鬱になっていく

 

 

 もしかしたら戦うこともあるかも知れない……

 

「まあ、その時はその時か……」

 

 やるしかない

 

 僕は陰陽師として……

 大人として……

 そして教師として、子供たちに手を出すのであれば戦うべきだと僕は静かに覚悟を決めた

 

 

 

 

 

 まあ、相手が子供であれば戦いたくないんだけど……




ごめんなさい
かなり駆け足でしたね


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

9話

 side三人称

 

 

 

 

 

 

 ガヤガヤ

 

「ここか……」

 

 ツヴァイウイングのライブ当日

 太陽は奏に貰ったチケットを持ちながら会場にいた

 

「……でかい会場だな」

 

 太陽はその会場のあまりの大きさと人の多さににすこし尻込みしていた

 

(こりゃ数万人はいそうだな……

 本当に人気なんだなあの二人……)

 

 あの戦いの後も奏は太陽の家に何度か遊びに行き、太陽とノイズ以外のことも語るようになったりとなかなか良好な関係を築いていた

 

 そして一ヶ月前、太陽は奏にツヴァイウイングのライブのチケットを渡されたのだ

 

『CDもいいけどさ、折角だから私たちのライブに来てくれよ! 

 チケットは渡すからさ』

 

 太陽はそう言われ、チケットを受け取った

 

「……そういえば」

 

 戦場以外で奏の歌を生で聞くのは初めてだなと太陽は思った

 奏一人の歌も翼とのデュエットもCDで聞いてるだけでも凄まじいものだった

 生で聞いたらどれほどなのだろう

 

 太陽は楽しみにしながら行列にならんだ

 

 

「えっ!? 創太くんも来れないの?」

 

 そんな中、太陽は大きな声で叫ぶ少女に目をやった

 どうやら約束をドタキャンされたみたいだ

 可哀想だが自分にはどうすることもできないと思い、太陽は再び並ぶことに集中した

 

 

 

 

 ****************************

 

 side響

 

 

 

 

 

「え、本当? 

 じゃあ私も……、え、……うん、わかった

 じゃあね」

 

 ピッ

 

 そう言って私は電話を切った……

 

 はぁ~、未来に続き創太くんも来れなくなってしまうとは……

 

 なんでも、未来は盛岡の叔母さんがケガをしてしまったらしい

 創太くんに至ってはなんとお祖母ちゃんが病気でお亡くなりになってしまったそうだ

 

 そんな状況で私一人が楽しい思いをするわけにはいかない

 そう思い私は創太くんの家に向かおうとしたが……

 

『気持ちだけで嬉しいよ

 でも、俺と未来も行けないんだから

 お前は俺たちの分までライブを楽しんでくれよ

 感想楽しみにしているぜ……』

 

 そう電話越しでもわかる弱々しい声で創太くんは言った

 

 創太くんのことは心配だけど、それが創太くんの気持ちならば汲み取るべきなのかもしれない

 

 ならば私は二人の分までライブを楽しもう

 

 そして、帰ったとき二人にライブがどれだけ凄かったかを話すんだ

 

 そしたら創太くんの気分も少しは晴れるかもしれない

 

 そう考え、私は列に並んだ

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 side三人称

 

 

 

 

 

 ステージの舞台裏

 風鳴翼は緊張でコートを着ながら隅に座っていた

 

「大丈夫か? 翼?」

 

「わぁ!??」

 

 すると頬に冷たいなにかが当たり、振り向くと冷たい飲み物を持つ奏がいた

 

「驚かさないでよ、奏」

 

「悪い悪い」

 

 そう言うと奏は翼の隣に座った

 

「間が持たないっていうか何て言うか、

 開演するまでのこの時間が苦手なんだよね

 こちとらさっさと大暴れしたいのに、そいつもままならねぇ!」

 

 強気な奏の発言に翼は頷く

 それを見た奏は翼の緊張に気付く

 

「もしかして翼! 緊張とかしちゃったり?」

 

「あ、当たり前でしょ! 櫻井女史も今日は大事だって……」

 

 それに……と翼は付け加え、

 

「奏にとって大切な人が見るんだから

 私も頑張ろうかなって思うと余計に……」

 

 

 

 ……大切な人? 

 そう言われ奏は太陽の顔を思い出しながら少し頬を赤く染めた

 

「ば、ばか

 あいつは別にそんなんじゃないよ!」

 

 奏は慌てながらそう言い、それを見て翼はすこしクスっと笑った

 

 

 

 翼は当初、奏が太陽の家にいくことにあまり納得してなかった

 自分の相棒である奏が盗られるのではないかと思ったからだ

 しかし、太陽の家に行くようになって奏は以前にも増していい笑顔で笑うようになった

 他の人たちは気付かなかったが、奏とずっと一緒にいた翼だからこそ、彼女のささいな変化に気付いたのだ

 翼の心はまだ納得できていない

 でも、それが奏の気持ちならば応援しようと翼は決意したのだ

 

 

「ここにいたか」

 

「大丈夫? 翼ちゃん?」

 

 その声に奏と翼は振り向く

 そこには二課司令・風鳴弦十郎と自分達の仲間である二人の陰陽師が立っていた

 

「司令! それに朝鳥と白も……」

 

「こりゃまた皆さんお揃いで……」

 

 緊張している翼といつも通りの奏を見て弦十郎はため息をつける

 

「わかってるとは思うが今日は」

 

「大事だって言いたいんだろ! 

 わかってるって……」

 

 そう答える奏を見て弦十郎は頷く

 

「わかってるならいい……

 今日のライブの結果が人類の未来を懸けてるってことにな」

 

 今回のライブはただのライブではない

 

 ライブによって発生するフォニックゲインを利用した完全聖遺物・ネフシュタンの鎧の起動実験なのだ

 

 完全聖遺物であるネフシュタンを起動、解析することで聖遺物の欠片からシンフォギア以上にノイズの対策に活用できると考えられる

 

「二人ならきっと成功するよ!」

 

「ああ、二人の力を俺たちはよく知っている

 きっと大丈夫さ……」

 

 白と飛鳥は翼と奏の二人に激励の言葉をかけ、二人はそれに答えるかのように笑った

 

 ちなみに飛鳥と白は警備としてここにおり、万が一なにかがあったときは観客たちを守りながら避難させる役割を持っている

 

「ステージの上は任せてくれ」

 

「絶対成功させてみせます」

 

 二人の言葉に元気付けられたのか翼にも生気がわいてきた

 

 時間です

 

 スタッフの言葉が聞こえてきたので奏と翼の二人は三人に手を振りながらステージに向かう

 

「行こう翼!」

 

「うん」

 

 

 

 ****************************

 

 side太陽

 

 

 

 

 

 ふぅ、もうすぐ開演か……

 

 歌うの俺じゃないにも関わらず、謎の緊張が俺を襲う

 

 やばいな、凄くドキドキしてきた……

 

 そんなことを考えていると

 突如としてステージの灯りが消えていき館内は暗くなっていった

 

 そろそろ始まるのか……

 

 

 ♪ ー♪ ー

 

 音楽が鳴り響くと共に観客が沸き上がり、たくさんの羽と共に奏と風鳴さんの二人がステージに降り立った

 

 そして観客たちに向かって手を振りながら

 ダンスを躍りながら歌い出した

 

♪ ~♪ ~

 

 

 

 はは、すげえ

 生のライブなんて前世含め一度もいったことなかったけど、CDとはこうも違うものなのか

 周りから激しい声が聞こえる

 でもそれに全く遮られずに二人の歌声は会場全体に響いていた

 

 そして二人が観客にマイクを向ければ観客たちもそれに応え歌詞を歌う

 

 まるで会場全体でひとつの音楽を作ってるかのように……

 

 すげぇ、これがライブなのか……

 俺は盛り上がる観客たちと共にこの時間を目一杯楽しんだ

 

 

 ****************************

 

 side弦十郎

 

 

 

 

 

 

「フォニックゲイン

 想定内の伸び率を記しています」

 

「成功みたいね~

 お疲れ様」

 

 ふう

 成功か……俺は了子くんの言葉に胸を撫で下ろす

 

 これで、国のノイズへの対策も向上するだろう……

 

 翼と奏には後で礼を言っとかないとな……

 

 

ブーブー

 

 

 

 そう考えていたところで突如警報が鳴り響き、実験室が赤く染まる

 

「どうした!?」

 

 すると研究員たちが慌てながら報告をする

 

「上昇するエネルギーにセーフティが持ちこたえられません!!!」

 

「このままでは暴走します!!!」

 

 その報告を聞いた瞬間、ネフシュタンの鎧はエネルギーを放出し、大爆発を起こした

 

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 side太陽

 

 

 

 

 

ボカ──ン!!

 

 

 な、なんだ? 

 突如として会場の一角が大爆発を起こした

 

 一瞬演出か? とも思ったが、観客も奏も風鳴さんも何が起きたのかわかっていないような様子だった

 

 

『************』

 

 すると空から聞きなれた不快な声が鳴り響き……

 

 

 

 

ノイズだぁ────!!! 

 

 空から地面から雑音共(ノイズども)が現れた

 

 

 

 

 ****************************

 

 side海龍

 

 

 

 

 

「さてと……」

 

 僕は自分の素性が誰にもばれないように龍の模様が彫ってあるお面とフードを被り会場に向かった

 

 陰陽師としてノイズから人々を……子供たちを守るために

 

「竜鱗顕符」

 

 僕は懐から札を取り出し呪力を込め

 

 自らの力の名前を述べる……

 

青閃龍冴(せいせんりゅうご)! 喼急如律令!!! 

 

 僕は両腕に青閃龍冴を呪装する。

 本当は事件そのものを起こさないのが一番いいんだけど、原作の道から大きく外れると、この先どうなるのかがまるで予想がつかなくなる。

 そうなれば、後々の事件が悪い方向に傾く可能性だってあるんだ。

 ……全員は助けられないかもしれない。それでも────

 

「一人でも多く、助けないとね」

 

 どこまでいけるかわからないけど、死者を一人でもなくすために頑張ろう。

 僕は決意を新たにライブ会場に向かった……

 

 

 

 

 

 




海龍が素性を明かさないのはフィーネを警戒しているからです

自分の素性がバレればフィーネはおそらく先手を取ろうと考えるだろう

そうなればなにも知らない生徒たちが危険な目に会うかもしれない

そう考えた海龍は誰にも素性がばれないようにお面とフードを被っています


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

10話

 side奏

 

 

 

 

 

 ちょうど地下の実験室がある地点で爆発が起こりそれと同時にいままでにないほどの数のノイズが出現した

 

 何が起こってやがる……

 

 旦那と了子さんは無事なのか……? 

 

 ……!? まずい

 ノイズが観客を襲い始めた

 考えてる暇はなさそうだな……

 

「行くぞ! 翼っ!!!」

 

「でも、司令からは何も……」

 

 翼は戸惑っているがそうしてる間に犠牲者がでてしまう

 

 早く行かないと

 

「うわぁ──

 助けてくれ──ー!」

 

 まずい、早くしないと……

 

裂空魔弾(れっくうまだん) 喼急如律令!!! 

 

 その時、客席から小石が飛び出しノイズたちを貫いた

 

「……テメーらふざけるなよ……

 今日は皆がめちゃくちゃ楽しみにしてた日なんだぞ……!?」

 

「太陽!!」

 

「狙ってこの日に現れたんなら

 相当タチ悪いぜっ!!!」

 

 太陽は裂空魔弾を使いながらノイズを倒していく

 

 気付けば飛鳥や白もバルコニー席やスタンド席でノイズと戦っているようだ

 

 私も観客たちを守るために戦わないと……

 

 私は自らの力を解放するための聖詠を唄った

 

Croitzal ronzell gungnir zizzl(人と死しても、戦士と生きる)

 

 するとペンダントが光輝き、私の身を包み込む

 

 そして様々なパーツが付与されていき、私はガングニールの装着を完了させた

 

♪ ~♪ ~

 

 私は歌を歌い、フォニックゲインを高めながらノイズを槍で切り裂いていく

 

「きゃああああ」

 

 っ!? まずい!! 

 悲鳴の方を見るとまだ幼い女の子がノイズに襲われようとしていた

 間に合え……

 

「おりゃああ!!」

 

 そこへ間一髪太陽がノイズを殴り倒した

 ふう、危ないところだったな……

 

「早く逃げるんだ」

 

「……うん」

 

 太陽は女の子が無事に逃げていったことを確認するとと再びノイズに向かって拳を構える

 その戦いかたは以前とは違う……

 特効まがいの戦いかたではなく、巧みに防御しながら相手の動きに対処している

 そして、太陽は突然巨大な瓦礫を持ち上げて呪文を唱えた

 

「み恵み受けても背く敵は

 篭弓羽々矢もてぞ射落とすっ! 

 

 

 やけくそだけど、喰らいやがれ!!! 

巨大裂空魔弾 喼急如律令!!! 

 

 そう言うと太陽は人の何倍もある巨大な瓦礫に呪をかけノイズに向かって投げ飛ばした

 そしてその瓦礫に潰されかなりの数のノイズが姿を消していく

 

「私も負けていられないな」

 

 私は槍を分裂させ、ノイズに向かって放った

 

 

STARDUST∞FOTON

 

 

 

 私の槍はノイズたちを確実に仕留めていく

 しかし、今回のノイズの数はいままで一度も経験したことがないほどの数だ

 

「っ!??」

 

 私は後ろからノイズの気配を感じ、振り向くと今まさに私を攻撃しようとしているノイズの大群がいた

 

「危ないっ! 奏!!」

 

 

逆羅刹

 

 

 

 シンフォギアを纏った翼は逆立ちをしながら脚に展開された剣を使いノイズを切り裂いた

 

「よーし、まだまだ行くぞ……」

 

 私がノイズに突っ込もうとした矢先、槍の光が消え、力が出なくなってくる

 

「っ!? くそ!! 時限式はここまでなのかよ!!!」

 

「!? 危ねぇ! 奏!!!」

 

 太陽が私に向かってそう叫んだ

 その瞬間、ノイズの攻撃が私を襲う

 防御はしたが、「LiNKER」の効果時間が切れ、シンフォギアの適合係数が低下したため、私はノイズの攻撃に踏ん張りきれず吹き飛ばされてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *****************************

 

 side飛鳥

 

 

 

 

 

 

 俺は目の前で人間を襲おうとしているノイズを片っ端から切り裂いていた

 

「速く逃げろ」

 

 そう言うと観客たちは礼を言いながら逃げ去っていく

 しかし……どうなっているんだこの数は祓っても祓ってもキリがない……

 いや、それだけじゃない

 ノイズの数が多いだけなら正直な話問題はなかった……

 問題なのは観客たちだ

 今回のライブには10万を越える数の観客がいる

 そんな大勢の人間が短時間に避難を完了させられる訳がない

 必然的に俺たちは観客たちを守りながら戦うことになる

 そうなってくると圧倒的に人手が足りないのだ

 懸念要素はまだある

 もうひとつが奏さんのことだ

 奏さんは今回のライブで不確定要素が混入しないように「LiNKER」の使用をしばらく前から控えている

 そんな奏さんがシンフォギアをいつも通りに扱えるとは思えない

 

赤鶙無限屏風(せきていむげんびょうぶ) 喼急如律令!! 

 

 おれは赤鶙無限屏風の羽根でノイズたちを祓っていく

 しかし、三十六枚の羽根では対処できる数にも限りがある

 俺は何匹かのノイズの突破を許してしまった

 そしてノイズは何人かの観客を襲おうとした

 

「きゃああああああ!!!!!」

 

「しまった!?」

 

 まずい、このままではあの人達がノイズに殺されてしまう

 しかし、羽根を戻そうにも間に合わない

 どうすれば……

 

蒼穹龍眉之諧謔(そうきゅうりゅうびのかいぎゃく)!!! 

 

 その瞬間、何者かによる蒼い弾幕がノイズたちを貫いた

 

「……今のは……?」

 

「大丈夫ですか?」

 

 上の席から声が聞こえ、そちらの方に目をやると、龍の装飾の彫ってある面を被るフードの男がいた

 そして、その両腕にはまるで龍のような形状をした籠手が装備されていた

 

「朱雀も案外、爪が甘いんですね~」

 

「あんたは……十二天将青龍なのか……?」

 

「はい

 お察しのとおり、僕は十二天将の青龍ですよ

 

 もっとも、正体は企業秘密ですが……

 あ、君速く逃げた方がいいよ……」

 

 そう言いながら青龍は観客を逃がした

 驚いたな……

 この世界にまだ、俺たち以外の陰陽師がいたとは……

 これでこの人を含め、十二天将は三人……

 もしかしたら、この世界で十二天将の力を受け継いだ転生者がまだいるのかもしれないな……

 

「考え事をしてる暇はありませんよ

 

 今はここにいるノイズたちを祓わないと……」

 

 青龍の言うとおりだな

 考えるのは後回しだ

 

 俺は陰陽師として、人々を守るために赤鶙無限屏風の羽根をノイズ共に向けた

 

 

 

 




今回のノイズの量は原作シンフォギアよりもはるかに多いです(三~四倍ぐらい)
これはネフシュタンの鎧を手に入れるため、シンフォギア装者と陰陽師相手の時間稼ぎのため
この数ならば装者も陰陽師も手こずるだろうと計算され、この数になりました




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

11話

 side太陽

 

「大丈夫か!? 奏!?」

 

 俺はノイズに吹き飛ばされた奏の方に向かった

 なんだかいつもの奏らしくない

 

「ああ、大丈夫だ……」

 

 息切れをしながらそう答える奏……

 とても大丈夫には見えない……

 

 するとノイズが俺たちに向かって攻撃をしてきたため、俺たちは二手に別れてノイズの攻撃を回避した

 奏のことは心配だが、今は一刻も速くノイズを祓うべきだと判断した俺はノイズに向かおうとした

 

 

 

 

 

 

****************************

 

 side響

 

 

 

 

 

「……あれは……?」

 

 私は本来ならば未来と創太くんの三人で楽しいライブを見るはずだった

 それが二人はやむにやまれない事情があり来れないことになってしまい、私は一人だけでライブを見ることになった

 最初は楽しかった……

 翼さんと奏さんの歌に合わせ、まるで会場の人たちがひとつになって歌を歌ってるような感覚になり心が踊った

 これがライブなんだって思った……

 二人にいい土産話ができそうだと……

 

 それが突如として現れたノイズにより、会場は地獄と化した

 

 ノイズに触れれば炭素になって死んでしまう

 私はノイズが怖くて逃げようとした……

 

 しかし逃げようとする最中、私は見てしまったのだ……

 

 ノイズと戦う奏さんと翼さん、そして知らない人……

 

「……すごい……」

 

 その光景に私は思わず魅入ってしまった……

 

 

 

 

 

 

ガラガラ

 

 

 

 

 

「……え? うわあああ?」

 

 すると突如として私のいた場所は砕けてしまい、私は三人がノイズと戦っている場所に落っこちてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ************

 

 side太陽

 

「「っ!?」」

 

 突如として上の階の客席が落ちてしまい

 奏の後ろには客席と一緒に落ちたであろう女の子がいた

 

「まずいっ!?」

 

 速く女の子を避難させなければ……

 そう考えた矢先、俺の目の前にノイズが立ちはだかり、道を塞がれてしまった

 そして殺しやすい女の子を狙ってか、奏の方にも大量のノイズが形状を変化させ、女の子目掛けて攻撃を始めた

 

「くそっ!!」

 

 奏は後ろにいる女の子を守るために槍を回転させ、ノイズの攻撃を防いでいく

 

「うおおおおおおおお!!!」

 

 奏は叫びながらノイズの攻撃を防ぐがいくら槍を回転させてもノイズの勢いは止まることなく続いていく

 

 そして、奏のシンフォギアのパーツはどんどん砕けていき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 砕けたパーツが女の子の胸を貫いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「えっ?」」

 

 俺と奏は信じられないものを見るように、女の子の方を見た

 

 女の子は瓦礫に叩き付けられそのまま倒れ込んでいく

 

 奏は槍を放り出し、女の子の方に駆け寄った

 

「おい! 死ぬな!! 

 目を開けてくれ!!!」

 

 肩をつかみながら奏は女の子にそう叫んだ

 しかし女の子は答えない

 あの状態はまずい

 速く治療しなければ……

 そう思い俺はようやく道を塞いでいたノイズを祓い終え、俺も奏と女の子の方に駆け寄った

 

「生きるのを諦めるな!!!!」

 

 奏は大声で叫ぶ……

 

 すると小さく、だか確実に

 

 女の子は目を開け応えてくれた

 

 

 

 ……よかった

 これならまだ間に合う

 

「太陽っ!!」

 

「わかってる!!」

 

 俺は懐から治癒符を取り出し治癒の詠唱を唱える

 

「アビラウンケンソワカ

 アビラウンケンソワカ」

 

 すると女の子の傷は完全に治すことは叶わなかったがそれでも傷はある程度は治り、弱っていた顔には生気が取り戻されていった

 

 

 ……他人にやるの初めてだけどこれなら大丈夫そうだ

 

 

「これで大丈夫……だと思う……」

 

「そうか……

 よかった~~」

 

 ほっとしたのか奏は膝をついて安堵する……

 

「……じゃあ、速いところここにいる奴らを倒さないとな……」

 

 奏はそう言い再び槍を構える

 その顔は何かの覚悟を決めたような顔だった……

 

「なんかいい方法でもあるのか?」

 

「……絶唱を使えばここにいるノイズは全部倒せると思う……」

 

 絶唱? なんだそれ……? 

 

「シンフォギアの最後の技さ……

 歌唱によって増幅したエネルギーを相手にぶつけるんだ」

 

 最後……その言葉を聞いた俺は最悪の想像をしてしまい、即座に却下する

 

「却下だっ!! 最後ってことはお前の身もただじゃすまねぇってことだろ!!」

 

 そう言うと奏は気まずそうに笑った……

 やっぱりそうか……

 

 

「……でも、この数のノイズを一度に倒すにはそれしかない……

 

 治癒の符を使ったとは言え、完全に治ったわけじゃないんだろ

 この子を一刻も速く病院に連れてかなくちゃいけないし……」

 

 恐らく奏はこの子に怪我をさせてしまった罪悪感からそんな提案をしたんだろう

 でもそんなこと絶対させない

 俺は奏だけには……

 

「それでもだ!! 

 ノイズと戦うためにも奏の力は絶対必要だからな!! 

 なにがあろうとお前にそんな自爆技は使わせないぞ!!!」

 

「焔の言うとおり……

 

 だめだよ! 奏!! 絶唱だけは……」

 

 言い合っている内に風鳴さんもこちらに合流してきた

 いい流れだぞ……

 

「これで反対二人だ! 

 多数決で俺たちの勝ちな!」

 

 それを見てチャンスと思った俺はそう言った

 

「なっ!? 多数決なんてとってねぇだろ!」

 

 すると奏は俺に突っかかってくる……

 

「うるさいな……」

 

「なんだと!!!」

 

 俺がそう言うと奏はかちんときたのか青筋を立てて俺の方を睨んできた

 でも怒りたいのは俺の方なんだよ……

 俺は奏の肩をつかみながら叫んだ

 

 

お前が言ったんだろ!!! 

自分を犠牲にするような戦いかたをしていた一月前までの俺に!!! 

あんな戦いかたをしてほしくないって!!! 

 

 

 すると彼女はハッとしたような顔で俺を見つめる

 

 

俺はお前の言葉で大切なことを思い出すことができた! 

お前のおかげで、あの日から止まっていた俺の時間は動き始めたんだよ!!! 

 

 

 

 俺は奏に出会うまで復讐のためだけにノイズを祓っていた

 十年もの間ずっとな……

 でも、奏に出会って俺は復讐以外のことにも目を向けられるようになった……

 奏に出会えたから俺は両親の言葉と神様の言葉を思い出せた……

 奏に出会えたから俺は今までの自分を見つめ直すつもりになれた……

 

 

 奏に出会えたから俺の時間は進み始めたんだ

 

 

 

 

 

 

「音楽聞く楽しさも、仲間と一緒にいるやすらぎも……

 全部お前が教えてくれたんだ! 

 全部お前のおかげなんだ! 

 

 

だからっ! 俺はお前にだけは死んでほしくねぇんだよ!!! 

 

 俺は涙を流しながら奏にそう言った

 

「……太陽……」

 

 

 

 

カッ

 

 

 

 

 

 その瞬間、俺の懐から一枚の札が凄まじい呪力を放ちながら発光を始めた

 それは今まで一度も使うことが出来なかった紅い札だった

 

『ウォハハハハ』

 

 紅い札に共鳴するかのように俺の右腕は笑う

 

「た、太陽……お前……?」

 

「その札は……一体……」

 

 二人は俺の持つ紅い札を見てそう呟く……

 

「……その子を連れて下がっててくれ奏、風鳴さん

 こいつらは……」

 

 俺はそう言うと視線をノイズに向ける

 

「こいつらは俺が全部祓ってやる!!!」

 

 いつも俺が言っている言葉

 しかし、今回は違う

 いつもは復讐としてこいつらを祓うために言っていた

 だが今回は奏を……皆を守るために叫んだのだ

 

「星装顕符《焔》……

 

 これが俺の……新しい力だあああああ!!!!!」

 

 そして俺は笑いながら紅い札を構えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 side飛鳥 

 

 

 

 

 

「!!??」

 

 なんだ? 

 さっきまで湿気っていた会場の空気が……

 乾燥していく

 

 それにこの呪力は……

 下手したら俺を上回っているかもしれない……

 

 俺は客席から会場にいる奏さんたちの方を向く

 

 すると巨大な呪力が焔太陽の右腕に集まっていた

 

 あれはまさか……

 

「へぇ~、今まで使ったことがなかったから……

 てっきり使えないんだと思っていたけど……

 いや……今使えるようになったのかな?」

 

 気付けば青龍の男も下の階にいた白も焔太陽の方に注目している

 

「あれが……双星の陰陽師の力か……」

 

 

 俺は()()()()()を携えた焔太陽を見てそう呟いた

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

12話

 side太陽

 

「祓へ給へ清メ給へ

 守り給へ幸メ給へ……喼急如律令!!」

 

 凄い……どんどん右腕に今まで感じたことがないほどの力が集まってくる

 それに共鳴するかのように右腕は笑い

 

 俺は新たなる力を解放させた……

 

「これは……?」

 

 奏は俺の右腕を見て呟いた

 俺は奏の疑問に答えるべくこの力の名前を言った

 

「これが俺の……新しい力……だ……

 

 

重奏陰陽術式(じゅうそうおんみょうじゅつしき)星方舞装(アストラル・ディザスター)!!! 

 

 俺は早速目の前のノイズに向かって呪文を唱えながら拳を構える

 

「東海の神名を阿明、西海の神名は祝良

 南海の神名は巨乗、北海の神名は愚強

 四海の大神 百鬼を退け凶災を祓い給えっ!!」

 

 そして俺は左手で星を描きながら右手を突き出す

 

流星拳(メテオスマッシュ)!!!! 

 

 すると凝縮された巨大な呪力の焔を拳から出し、目の前にいたノイズを蹴散らした

 

 

 

 

 

 

 

 

 ************

 side奏

 

「……すげぇ……」

 

 私は思わずそう呟き、翼も驚いたような表情を見せる

 

「あれが……太陽の新しい力か……」

 

 まるで本当に太陽の熱を凝縮したような一撃でかなりの数のノイズが倒されていく

 

 その光景を見ながら私は頭のなかでさっき太陽に言われた言葉を反芻していた

 

『お前が言ったんだろ!!! 

 自分を犠牲にするような戦いかたをしていた一月前までの俺に!!! 

 あんな戦いかたをしてほしくないって!!!』

 

 ああ、そのとおりだ

 私は太陽に自分を犠牲にするような戦いかたをやめてほしくてあいつにそう言った

 

 にも関わらず、私が自分を犠牲にして戦うなんて可笑しい話だ

 

 それに……

 

『生きて……奏……』

 

 私は私をかばって死んだ父さんと母さんが遺した最期の言葉を思い出す

 

 そうだ、こんなところで死ぬなんて父さんも母さんも妹も

 ここにいる誰も望んでいない

 

 ならば生きる

 生きて皆と一緒に戦うべきだ! 

 

 それに、あの子に生きるのを諦めるななんて言っておいて自分が諦めるのも可笑しいしな……

 

 そう思いながら私は再び槍を構える

 

「奏……?」

 

 翼が心配そうに私の名を呟く

 

「ごめんな翼

 もう大丈夫さ!」

 

 私は笑いながらそう応えた

 

「私は太陽と一緒に戦ってくる!」

 

「でも」

 

 翼はLiNKERの効力が切れかけているのを心配してくれているのだろう

 

「大丈夫だって! 心配性だなぁ翼は……」

 

 そう言って私は翼の頭を軽くなでた

 すると翼は少しだけ安心したような表情になった

 それを確認して私は自身の肩翼にあの子を託した

 

「その子を安全なところに移してくれ

 頼んだぞ翼!!」

 

「うん! わかったよ奏!」

 

 そして私は戦場に舞い戻った

 LiNKERの効果もじき切れる

 でもこんなところじゃ死ねない

 私は死ぬために戦うのではなく生きるために戦うんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ************

 side太陽

 

 すげぇ、これが星方舞装の力か……

 今までの星装顕符とはまるで違う

 その圧倒的破壊力に俺は少し身震いした

 今の流星拳でかなりの数のノイズを祓うことができた

 それでもまだかなりのノイズがいる

 俺はそいつらを祓うため、ノイズに向かって走り出す

 

「おりゃあ!!」

 

 右腕を振るうだけでノイズたちは消滅していく

 この力ならばここにいるノイズ全てを祓うのも不可能じゃないかもしれない

 とは言えちんたら時間をかけてはいられないな……

 呪装は維持するだけでも呪力を消費する

 強力な呪装であればあるほど消費する呪力もそれに比例して高くなっていくものだ

 恐らく星方舞装を維持していられる時間は持ってあと五分ってところか……

 

「危ない! 太陽!!」

 

 そう言われ俺は奏に左腕を引っ張られる

 すると、先程まで俺が居た場所をカッターのように回転する飛行ノイズが攻撃をした……

 危ねぇ……

 

「あの子は……!?」

 

「安心しな、翼が安全な場所に連れてったよ!」

 

 そうか……よかった

 それにしても……

 

「大丈夫なのか? 奏?」

 

「ああ、あんたに言われた言葉で頭を冷やせたよ

 もう大丈夫さ」

 

 さっきまで自分を犠牲にしてあの子を守ろうとした奏だが今の奏にはそんなつもりはないようだ

 

「なら一緒に行くぞ! 奏!!!」

 

 俺は奏と手を繋いだまま()()()()()()()()を構え、ノイズに攻撃しようと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん? 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、お前の腕、さっきより大きくなってないか?」

 

 奏の言うとおり、俺の星方舞装は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 奏と手を繋いでノイズと向き合ったときから……

 

 ……まさか、これって!? 

 

 

「れ、共振(レゾナンス)か!??」

 

「れ、れぞなんす?」

 

 奏は双星でもなければ陰陽師でもない

 そもそも奏には呪力だって一般人程度しか存在しないんだ

 それなのになんで共振が発動するんだ……

 

 いや、考えてる隙はない

 それにこの力ならノイズを一気に祓うことができる

 

「奏! 力を貸してくれ!」

 

「……おう!」

 

 俺の言葉に少し戸惑ったが奏ははっきりとそう応えた

 そして俺は巨大になった星方舞装をノイズたちに向け……

 

共振(レゾナンス)っ……

 

紅蓮流星拳(クリムゾンメテオスマッシュ)!!!!! 

 

 俺たち二人の一撃を喰らわした……

 この一撃でこの会場にいたノイズどもは全て祓われたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ************

 

 side海龍

 

「………………」

 

「………………」

 

 嘘だろ

 あ、ありのままに今起こったことを話そう

 太陽くんが星方舞装を使ったと思ったら天羽奏と手を繋いで共振発動させた……

 何を言ってるんだと思うだろうが僕も何言ってるのかわからない……

 

 

 

 いや、どゆこと? 

 なんで双星でも陰陽師でもない天羽奏と共振を起こせるわけ? 

 

 隣を見れば飛鳥くんもかなり驚いている

 

「……どうなってるんだ……?」

 

 うん、僕が聞きたい

 

 もしかしたらこの世界では共振は太陽くんと手を繋げば誰でも起こせる……? 

 いや、それは考えにくいかな……

 共振は双星の陰陽師の世界でも特別な力だ

 勝手の違うこの世界に来たからと言ってそこまで簡単な技にはならないはずだ

 

 う~ん、だめだ判断材料が少ない

 

 

 

 

 下を見てみると太陽くんが天羽奏と談笑でもしているのか笑いあっている

 

 ひとまずは天羽奏を死なせずに全てのノイズを祓うことができたということを喜ぶかな……

 犠牲者もでてしまったがそれでも原作よりも少ない方だろう

 最良とまではいかないが、それでも原作に比べればましな結果だったと思う……

 

 

 本来ならば一万人以上の死傷者がでる大事件だ……

 僕一人が加わったところで最初から全員救えるとは思ってなかった……

 

 それでもやっぱり、助けられなかった人のことを思うと胸が締め付けられるよな気持ちになるな……

 

 

 そんな事を考えながら僕は天羽奏の方に視線を向ける

 

 天羽奏が生きている時点でかなり原作改編になるが、僕たちというイレギュラーがいる時点でもう原作通りに行くとは思えない

 

 これからどうなるのやら……

 

 僕は今だ呆然としている飛鳥くんを他所に飛天瞬脚で一足先に帰宅させてもらった

 

 

 

 

 ************

 

 side太陽

 

 あのライブから数日がたった

 今世間はライブの後処理でかなり混乱している

 

 そして俺もかなり混乱していた……

 

 なんで俺は共振を使うことができたんだ? 

 

 ……考えても全く答えはでなかった

 

 

 

 ジリリリリリリリリ

 

 

 

 

 ん? 電話がなった

 誰だろう……? 

 

 

「はい、もしもし焔です」

 

『あ、どうもお久しぶりです

 神です』

 

 

 

 

 

 ………………え? 

 

 

 

「神様!?」

 

『久しぶりだね太陽くん。元気にしてた?』

 

 突如として神様からの電話に俺は心底驚いた

 今まで神様が電話してくるなんてこと一度もなかったぞ……って、そうだ! 思い出した! 共振できたら、どういう仕様なのか神様が教えてくれるんだった! 

 

「あの、お久しぶりです神様

 早速聞きたいことが……」

 

『わかってるって

 どうして天羽奏と共振の件でしょ

 ワシもそれを伝えに電話したんじゃよ』

 

 ちなみに神様曰く、電話するのはこれが最後で以後こちらからもむこうからも連絡することはできなくなるとのこと

 

『こうして電話してるのも、本来は禁止されてることじゃからの……』

 

 じゃあ、なんでやってるんだよ。この神様、わかってたけど、かなり適当な人だよな。

 

『さてと……では何故天羽奏と共振できたのか……』

 

 ゴクリ……。

 俺は急に威厳ある感じになった神様の声に少し緊張してしまった。

 

『この世界

 本来双星もなければ陰陽師どころか、ケガレもない世界じゃ

 焔魔堂ろくろの力をもらってもその片割れ足る化野紅緒……双星の女の方がいなければ共振という最大の攻撃手段を失われ意味がなくなってしまう……

 

 そこで、お主を転生させる際に共振の条件を変えさせてもらったんじゃよ……』

 

 それは転生することになったあの日に聞いた言葉だ。

 その条件が奏と手を繋ぐこと……なのか? 

 

『いや、違う。この世界での共振の発動方法

 それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お主が()()()()()()()()()()()()と手を繋ぐことじゃ』

 

 

 

 

 

 

 

 へ? 

 

 

えぇぇぇぇ──────!!???? 

 

 予想の斜め上をいくその言葉に俺は絶叫した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ************

 

 

 

 

 

 side響

 

 

 

 私、生きてるの……? 

 

 

 

 ライブ会場で起きた出来事を思い出し、今の状況を確認する

 どうやら手術室のようだ

 

 ガラス張りに見える手術室の外からはお父さんやお母さん、お祖母ちゃんに未来、創太くんもいるや……

 

 

 皆ひどいかお……早く大丈夫だよって言わないと

 

 

 そう思いながら再び私の意識は闇に閉ざされた……




とりあえず原作前一区切りです
原作開始はもうちょっと先になりそう…



今回のライブの死者は五千人ほど
原作の3~4倍の数のノイズ相手に原作の半分程度しか死んでないあたり皆の頑張りが見てとれるな


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

閑話1

side三人称

 

あのライブから三ヶ月…

しばらく検査や入院などで身動きの取れなかった天羽奏は久しぶりに太陽の家に遊びに行こうと向かっていた

 

(まったく…とっくに治ったって言ってんのに…

弦十郎の旦那も心配性だなぁ…)

 

会場のノイズを倒し終え、奏たちは二課に帰投した

幸い、ネフシュタンの鎧の実験現場にいた弦十郎と了子は大した怪我もなく無事だった

もっとも、それ以外の研究者のほとんどが爆発に巻き込まれたり瓦礫に潰されるなどして大半が命を落とす結果となってしまったが…

というかあの規模の爆発に至近距離で巻き込まれて五体満足無事な弦十郎の肉体が異常と言えるだろう…

了子はそのころたまたまお手洗いに行っていたため無事だったらしいが…

 

(何度も考えてることだけど、旦那は本当に人間なんだよな…?)

 

生身で十二天将やシンフォギア装者である自分が束になっても勝てない人間超越者である弦十郎の存在に疑問を覚えながら奏は歩を進める

 

(……それにしても…)

 

弦十郎のことは一旦置いといて、奏はネフシュタンの鎧についてを考え始めた…

あの爆発の後、完全聖遺物・ネフシュタンの鎧は行方不明になってしまったという

原因は不明…だが、弦十郎含む二課の面々は()()()()()()()()()()()()()

そもそも完全聖遺物の暴走とノイズ出現はなんの因果性もない

タイミングが良すぎるのだ

かつて飛鳥の行っていた通りノイズを操る何者かがおり、その何者かがノイズを操り、その隙をついてネフシュタンの鎧を強奪したのではと二課の一部は考えている

それでも考えすぎなのではという意見もでているが…

 

(ま、考えても仕方ない…か…)

 

仮にその仮説が本当だとしても現時点ではどうすることもできない

そういったことは弦十郎や了子に任せ、自分は自分にできることをやろう

 

そう考えてる内に彼女は太陽の家に到着した

 

(あの時の礼を言わないとな…)

 

奏はあの時、絶唱を使い死ぬつもりだった

それを止めてくれたのは他でもない太陽だ

そのことに感謝の意を述べるためにも奏は太陽の家のインターホンをならした

 

「おーい、遊びにきたぜ!太陽ー!」

 

するとバタバタという音が聞こえ、ドアから太陽が現れた

 

「や、やあ奏…お久しぶりですね…」

 

何故か他人行儀で目線も合わせようとしない太陽に不思議がりながらも奏は太陽の家に上がった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

************

side太陽

 

俺は遊びにきた奏を家に上げた

……上げたはいいが

 

「…………」

 

「……どうした?太陽?」

 

緊張して何も話せずにいた…

 

くっそ!!

駄目だ…どうしても意識しちまう…

 

 

 

『お主が一番大切に思っている異性と手を繋ぐことじゃ』

 

 

 

あの日の神様の言葉のせいか、俺はどうしても奏の事を意識してしまうようになってしまった

 

何か喋ろうとしても緊張して喉で止まっちまう

奏を見るだけで心臓がすごいバクバク言うようになったのだ…

このままじゃ会話もできない…

どうすれば……

 

いや、まてよ

そもそも神様も「大切に思ってる異性」って言ってただけだし、仲間として大切に思っているってことなんじゃないのかな?

うん、きっとそうだ!これが恋愛感情なのかどうかはまだ確定したわけじゃないんだから…

そうだよ、これはきっと恋愛感情でもなんでもないはず

ほら、そう思えば奏の顔を見てもなんとも………

駄目だ

めちゃくちゃ可愛く見える

くそ、恨むぜ神様…なんて言葉残してくれやがったんだ…

 

「なあ…」

 

そんなことを考えていたら奏が話しかけてきた

やっぱりあんな綺麗な歌声出せるなら声も綺麗だよな…って違うわ!!

 

「な、なんでございましょうか?」

 

思わず変な敬語になってしまった俺を一瞬怪訝な顔をしながら見ながらこう言った

 

「あの時はありがとな!」

 

一瞬なんのことかわからなかったが多分俺が絶唱とやらを使おうとした奏を止めた事を言ってるんだと察した

 

「別に礼なんていらないよ

あの時の言葉は本心なんだ!

俺はお前に死んでほしくなかった…

それに、仲間を助けるのは当たり前…なんだろ」

 

俺は前に奏に助けられた時の言葉を言った

すると奏は一瞬呆けたがすぐにいつもの調子に戻って

 

「そうだな…」

 

笑いながらそう答えた

その姿は何よりも綺麗だった…

 

「あ、そういえばさっきのへんな敬語なんだったんだ?」

 

「それは聞かない方向でお願いします…」

 

そこからはいつものように談笑をした

俺も途中から調子を取り戻し、いつも通りに喋れるようになった

そんな中でも久しぶりに笑う奏の顔は天使のように見えた

 

(やっぱり、神様のいう通りなんだな…)

 

今回三ヶ月ぶりに会って俺は確信した

俺は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏のことが大好きなんだと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

************

 

side白

 

あのライブから三ヶ月…

私は飛鳥くんと一緒に二課保有の山の中で修行を行っていた

 

「…やるよ!飛鳥くん…」

 

「ああ

でも、俺が危険だと思ったらすぐ止めるからな…」

 

そう言って飛鳥くんは心配そうな顔をしながら私のことを見る

やっぱり飛鳥くんは優しいなぁ…

そんなことを考えながら私は札を取り出し詠唱を唱える

 

白虎明鏡符!白蓮虎砲(びゃくれんこほう)纏神呪(まといかじり)”!!!!

 

そう唱えた瞬間私の指から物凄い激痛が全身を襲った

 

「う、うわああああああああ!!!!!」

 

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!

私は右手の指一本にこの呪装をかけただけ…

にも関わらず、全身を内側から溶かされるような痛みがするのだ

 

「ま、白!今助け…」

 

「待って!!飛鳥くん!!!」

 

まるで体内を巨大な蛇が暴れまわるかのような感覚

でも、私はそれを我慢しながらそういった…

 

「わ、私はあのライブのとき、大して役に立てなかった…

目の前で何人もの人がノイズに殺されるのを助けることができなかったの…」

 

私の呪装、白蓮虎砲は飛鳥くんのような機動力特化ではなく破壊力に特化した力だ…

 

私の呪装は乱戦に向いてない

 

普段の連携ならまだしも目の前の人を傷つけないように戦うといったことが苦手なんだ

 

撃てば人を巻き添えにしてしまうかもしれない

 

そう考えた結果、私は白蓮虎砲を使わず通常の呪装で戦うことになってしまった…

 

結果として目の前で何人もの人を見殺しにしてしまった

 

乱戦の中でも白蓮虎砲を使うだけの技量が私にあれば…

 

そう考えた私は呪力コントロールを重点的に磨くことにした

そして呪力コントロールの極致・纏神呪の修行も始めたのだ

 

纏神呪は十二天将の秘奥義中の秘奥義…

 

本来、呪装は衣服や装飾品などにかけるものだ

例えば自らの身を守るための呪装・鎧包業羅は衣服に呪力を通して全身を守るという物だ

白蓮虎砲ならば手袋に白虎の力を送り込んで式神の力を解放する

 

だが纏神呪は違う…

 

纏神呪は自らの肉体そのものに式神十二天将の力を呪装するのだ

 

しかし、そのコントロールの難しさは桁外れ

指一本でこれ程の痛みが襲うのだ…

でも、これをクリアしたということは白蓮虎砲を完璧にコントロールできたということ

逆に言えばクリアできなければこの先似たようなことがあった時、また目の前の人たちを守れなくなってしまうかもしれない…

 

 

そして何より…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥くんを守れなくなるかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう考えたとき、私はゾッとした

そんなの絶対いやだ

私は飛鳥くんに助けてもらってばっかりなんだ…

守ってもらってばっかりなんだ…

 

 

だから、私は…

 

 

「私は、目の前の人達を助けられるくらい強くなりたい…

飛鳥くん(一番大切な人)を守れるぐらい強くなりたい…

二つとも全部守れる力がほしい…

 

だから……」

 

そして私は痛みに耐えながら右手を空に掲げる

 

私は絶対!

そのための力を手に入れて見せる!!!

 

そう言った時、私の手を飛鳥くんが握ってくれた

 

 

「…わかった

ならばせめて、俺に白を支えさせてくれ…

 

俺もまだまだ弱い…

俺も青龍が来なければきっと目の前で多くの人を亡くしてただろう…

それでも、俺は必ずお前を守れるくらい強くなる…

お前と一緒に生きるためにも…

だから、二人で、一緒に頑張ろう!!」

 

 

そう言って飛鳥くんは私の手を握ってくれる…

ああ、やっぱり飛鳥くんは優しいな…

飛鳥くんが手を握ってくれる…

それだけで私はなんでもできる気がする…

 

「あれ…」

 

その瞬間、全身を襲ってた痛みが引いていった

あれだけ体の中が熱かったのに今はほんのり暖かい程度だ…

 

「おい、見ろ白!!」

 

「え?あっ!」

 

私は右手を見ると右手は異質な形状に変化していた…

どうやら指一本どころか手首まで纏神呪に成功したらしい

 

「すごい…これが纏神呪…」

 

右手だけでもわかる圧倒的パワー

大きさは白蓮虎砲よりも小さい…

でも込められた呪力が桁違いだ…

これが纏神呪なんだ…

 

「やったな白!!

凄いじゃないか!!」

 

「えへへ、ありがとう飛鳥くん

飛鳥くんのおかげだよ…」

 

(また、助けられちゃったな…)

 

そう考えながら私は再び変化した右手を眺めた…

 

(この力をコントロールして、絶対に皆を…飛鳥くんを守ることができる陰陽師になってみせる)

 

そう思いながら私は修行を続けた

 

 

 




閑話
空白の二年間です


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

閑話2

今回新しいオリキャラ+オリ設定が追加されます


 side海龍

 

 

 

 

 

「白ちゃんすごいな……。まだ纏神呪の修行を初めて数週間程度でしょ……?」

 

 僕は式神から送られてくる映像を見て思わずそう呟いた……

 ここ三ヶ月、たいした怪我もせずにすぐ退院できた飛鳥くんと白ちゃんは何かあのライブで思うことがあったようですぐに陰陽師の修行を始めた

 

 特に白ちゃんはここ二ヶ月で呪力のコントロールをめきめき伸ばしていき、ここ数週間で右手のみとはいえ纏神呪を呪装するまでになった……

 

(僕が右手に纏神呪できるようになるまで三ヶ月近くかかったんだけどなぁ……)

 

 纏神呪は陰陽術の修行の中でも最も難しい奥義であり、本来全身を纏神呪できるようになるまで一年……そこからその状態を五分保てるようになるまでに三年ほどの年月を費やすと言われている

 実際僕も右手で三ヶ月かかったし、全身できるようになるのに一年費やし、それを五分維持できるようになるまで二年と半年ほどかかったのだ

 

(それを数週間で……自信なくすなぁ……)

 

 そう思いながら僕は視線を映像に向ける

 

 そこには仲睦まじそうに一緒に談笑しながら弁当を食べる二人の姿があった……

 

(もしかしたら……)

 

 これが愛の力なのかもしれないなとその光景を見ながら僕は思った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ******************************

 side創太

 

 

 

 

 

 ツヴァイウイングのライブから三ヶ月……

 俺はリハビリを続ける響を見ていた……

 

「きゃっ!!」

 

「大丈夫か? 響!?」

 

 長い間寝たきりだったがためか少し歩いただけで倒れてしまった響に俺は駆け寄りながらそういった

 

「うん、へいきだよ……」

 

「……そうか。でも、まだ病み上がりなんだから無理しない方が……」

 

 俺は響が心配だ。

 つい先日までずっと寝たきりだったわけだし、今だって立ち上がるだけで既にフラフラじゃあないか……

 それでも響はめいっぱいの笑顔でこう答えた

 

「確かにリハビリは大変だけど、これ以上お父さんやお母さん、創太くんや未来にも心配かけたくないの……そう思うと、私は頑張れるんだ……それに、また創太くんと未来の三人でお出掛けもしたいしね……」

 

 ……本当、響は強いよな……

 それに比べて俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 病院での面会時間もすぎたので俺は病院をでた……

 でも、俺は家には戻らず人気のない廃工場にやってきた

 

「聞こえているか?ーーーー大陰?」

 

 俺は懐から札をだし、札に話しかけた……

 

 ーーーー瞬間世界が変化した……

 

 もともと静かだった場はさらに静寂に包まれ

 空を飛んでいた鳥も静止している

 

『珍しいのぉ~お主から私を呼び出すとは……』

 

 声がした方を振り返ると、そこには巨大なウサギのぬいぐるみのような姿をした式神……式神十二天将・大陰の姿があった。

 大陰は大陰陽師・安倍晴明が使役したと言われる伝説の式神、十二天将の一角であり俺の陰陽師の師でもある。

 俺はこの世界で婆ちゃんから託された大陰の札に宿っていたこいつに陰陽師としての修行をつけられたんだ……

 

「……お願いがあるんだ……大陰……」

 

 俺は大陰に向かい合い

 

「俺を強くしてくれ!!」

 

 頭を下げてそう述べた……

 

『……ふむ、今の今まで修行に消極的だったお主が……どういう風の吹き回しじゃ?』

 

 大陰の言葉に俺は答える。今まで抑え込んでいた俺の気持ちを吐露した。

 

「……俺は駄目な男なんだ! あいつに救ってもらったから、俺もあいつを守りたい……そう思って陰陽師の修行も始めたのに……あいつを……響を守れる男になりたいって誓ったはずなのに……俺は響を守ることが……できなかった」

 

 俺は涙を流しながらそう言う

 

『それは仕方ないことじゃろ……お主はその時、その場にいなかった……運が悪かったんじゃ……』

 

 確かにそうだ……あの時俺は婆ちゃんの葬式でライブに行くことができなかった……

 それでも考えてしまうんだ……

 もしも俺がライブに行っていれば響を助けることができたかもしれない

 

 俺は危うく大切な人を二人も同時に失いそうになってしまったんだ……

 

「俺はもう二度と響から離れない!! だから! 例え何があっても響を守れるような力がほしいんだ!!」

 

『…………』

 

「お前は前に言ったよな……

 今の俺は十二天将の中でも最低ラインの力しかないって……それって、つまりまだまだ伸び代があるってことだろ? 今より強くなればそれだけ響を守れる可能性も上がるかもしれない! だから、お願いします!!」

 

 そして俺は再度頭を下げる。大陰はしばらく考え込むような仕草をする。

 しばらくすると、大陰は俺と目線を合わせてきた。

 

『わかった……そこまで言うならこれからお主に課す修行のレベルをあげてやろう……じゃが……覚悟はよいか? 下手を打てば命を落とすかもしれぬぞ……? 本当にお主にはあの小娘のために命を懸けられる覚悟があるんじゃろうな?』

 

 大陰は挑発するような口調で俺にそう言った

 そんなもの答えは決まっている……

 

「ああ!!」

 

 即答で俺は応えた

 すると大陰は満足そうに笑いながらこう言った

 

『ククク、よかろう……お主の覚悟はわかった……望み通り、今まで以上に厳しい修行を課そう……』

 

「望むところだ!!」

 

 早速俺は修行を開始した……

 響は俺をひとりぼっちの孤独から救ってくれた恩人なんだ!

 婆ちゃんのいない今、俺にとって響は太陽にも等しい存在なんだ!

 そんな響を守るためならば……

 俺はどんな苦行だろうが受け入れられる!!

 

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 side翼

 

 

 

 

 

 

「はあああああ!!」

 

 私は三ヶ月前のライブの事を思い返しながら剣を振るった

 あの時、奏は絶唱を使うつもりだった……

 そうなれば奏は死んでいたかもしれない……

 

 そして、私はそれを止めることができなかった

 それを止めたのは焔だ……

 もし焔がいなければ奏は死んでいたかもしれない……

 そんなんで何が奏の片翼だ……

 なにが人々を守る防人だ……

 

(……情けない……)

 

 奏が絶唱を使おうとするまでに追い詰めたのは私が弱かったからだ……

 正規の適合者である私が、防人たる私がノイズから人々を守ることができなかったから……

 もっと私が強かったら犠牲も減ったかもしれない……

 もっと私が強かったら奏も絶唱を使おうとはしなかったかもしれない……

 

(強くならなきゃ……

 奏に頼らなくてもノイズと戦えるように……

 ノイズから人々を守る防人であるためにも……)

 

 そして再び私は剣を振るった

 

 二度と目の前の人々を失わないようにするためにも……

 二度と奏に無理をさせないためにも……

 

 

 すると背後から凄まじい殺気が私を襲った

 

「っ!!?」

 

 とっさに回避し、先刻まで私がいた場所を見るとそこには竹刀を振り下ろした女性の姿があった

 

「よぉ躱したな。久しぶりやな……翼……」

 

 私は下手人の姿を見て息を呑む。

 そこにいたのは美しい水色の髪をした剣道着の婦人。私はこの人のことをよく知っている。

 

「お、お母様!!?」

 

 私を背後から攻撃したのはなんと私の母親────風鳴結澪(ゆみ)その人だった! 

 

「ふむ……よう避けた……とええたいとこやが、まだまだ修行が足らへんな〜。気づくんやったら部屋に入ったとき気づかなあかん」

 

「うっ……」

 

 ぐうの音もでない……

 しかし……

 

「なぜお母様がここに?」

 

 お母様は現在、服飾関連の大企業の代表取締役として、世界中を飛び回っている。

 ライブの衣装なども用意してくれるのだが、その分かなり忙しいらしく、実際、私も会うのは数カ月ぶりになる。

 

「なぁに、弦十郎くんに翼がなにやら悩んでいるって聞いてなぁ、一肌脱ごうと駆けつけてきたちゅうわけよ」

 

 そう言いながらお母様は私を見て呟く。

 

「よかったら何に悩んでるかうちに聞かせてくれへんか?」

 

 お母様はそう言いながら、慈愛を込めた瞳で私を見つめる。

 ……昔からそうだ。お母様はいつも鬼子たる私に優しく接してくれている。そんなお母様に隠し事など出来る筈もない。

 

「……実は」

 

 私はお母様に自らの悩みを打ち明けてみた……

 あの日死ぬところだった()を自分の手で助けられなかったこと……

 防人でありながら多くの人を助けることができなかったこと……

 その全てを……

 

 

 

 

「なるほど……。それで強ぉなりたいってことやな」

 

 お母様は茶を啜りながらそう言った

 

「はい……しかし、強くなるにはどうすればいいのか……」

 

 そう言うとお母様は一拍おいて私にこう言った

 

「ほな……うちはしばらくここにおる予定やさかい。よかったら久々に稽古つけたってもええで」

 

「本当ですか!?」

 

 実はお母様は風鳴の家に嫁ぐだけのことはあり、かなり凄まじい経歴の持ち主だ。

 剣道六段、柔道五段、弓道にいたっては十段という凄まじい実績を持っている。数多の大会を総嘗めし、その道では知らぬ者はいない伝説とまで謳われている。

 そんなお母様に稽古をつけてもらえれば強くなるためのいいきっかけになるかもしれない! 

 

「昔はよぉやったのぉ。よく翼が泣いてもうたの覚えとるわ」

 

「昔の話です。今は違いますよ」

 

 私は少し気恥ずかしくなりながらも竹刀を構える。

 それを見たお母様は雰囲気を変える。

 先程までは柔和な雰囲気だったが……今のお母様はさながら獲物を見据える鷹のような目をしている。

 

「ほな、早速始めよか」

 

 そう言いながらお母様は竹刀を構えた。

 ────瞬間、凄まじい圧力(プレッシャー)が私を襲う! 

 肌に突き刺すこの感覚! 奏や飛鳥、白との訓練ですら、これほどの危機感を覚えたことはない! 

 

「いつでもかかってきてええで」

 

 それに武者震いをしながら私は竹刀を構え、突っ込んだ

 

「行きますよ! お母様!!」

 

 目の前の壁を越えた時、私は防人としてさらに強くなれるのだろうと予感をしながら……

 

 

 




オリキャラとして翼のお母さん登場
この人の正体がなんなのかはしばらくはお楽しみということで

まあ、しゃべり方と特に弓道(射的)がすごいでわかるかもしれませんが…

一旦ここで投稿は休止して
しばらく(数ヶ月くらい?)したら本編に入ろうと思います
理由としてdvd買ってシンフォギアの本編見直したいからです
去年の一挙配信で全話見ましたが最近記憶があやふやになってまして…
それ見ながら書いてストックが貯まったらまた投稿したいと思います


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

閑話3

しばらく投稿しないと言ったな
あれは嘘だ…


本当は前回あとがきを投稿予約した後に書き加えていたのですが、加える順番を間違えたというのが本音です
さっき見直してみて気づきました
ごめんなさい


 side弦十郎

 

 

 

 

 

「……これは……一体……?」

 

「ほんと不思議よね~、こんなことが起こるだなんて……」

 

 俺は了子くんと共にライブ事件後の奏のカルテを見ていた

 奏はライブ事件後病院にて以前よりもはるかに体が軽くなったと述べ、実際退院後も以前に比べると動きがよくなっていることがわかった

 そのため奏の身体に何が起きているのかを先日検査し、その結果を見て俺たちは絶句していた……

 どうゆうわけか今までLiNKERの副作用により蝕まれていた奏の身体の毒素が消失していたのだ

 何が起きたのか……

 考えられる点といえば……

 

「あの共振(レゾナンス)

 という力の影響なのかもしれないわね……」

 

「……やはりか……」

 

 あの時、焔太陽と奏が使った共振と呼ばれる現象

 飛鳥の話によると本来は双星の陰陽師と呼ばれる特別な陰陽師同士が手を繋ぐことで発動することができる力らしい……

 互いの呪力の相乗効果で破壊力は通常の五倍から十倍にまではね上がるらしい

 確かにそれならば、あの絶唱級の攻撃を放つことができたのにも納得がいく……

 

「これは私の仮説になるんだけど……

 共振とやらは本来、互いの呪力とやらを重ね合わせることで発動するもの……

 おそらく奏ちゃんと手を繋ぎ、その共振が発動したことで奏ちゃんの中に呪力が流れ込んだ……

 飛鳥くんや白ちゃんの話では呪力は悪霊のような人に害を成す物を祓う(取り除く)力があるというじゃない……

 実際それでノイズを倒せるわけだしね……

 この場合、奏ちゃんの体内にあったLiNKERの毒素を人に害成す物として祓った(取り除いた)のではないか……

 と考えられるわ……」

 

「……なるほど、だが疑問も残る

 何故陰陽師ではない奏が、その共振という術を発動させることができたのか……」

 

「その点についてはあの二人もわかってないみたいだし……

 やっぱり本人に聞くのが一番だと思うわぁ」

 

 それもそうだなと思い、俺はこれから来る新しい仲間を待つことにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 side太陽

 

 

 

 

 

 う~、緊張してきたな……

 俺は今、長い廊下を歩きながらそう考えていた……

 考えてみれば政府直轄ってかなり凄い場所なんだよな

 地下にあんなでかいエレベーターやこんなでかい基地を作ることができるぐらいだし……

 

 あのエレベーター作るのにどれだけ手間かけたんだろう

 軽く1000mは越えてるだろあの長さ……

 

「ここが二課の基地さ

 どうだ? 結構広いだろ?」

 

 そう奏は軽そうに言うが……

 結構どころではない

 こんな長い廊下初めて見たわ

 

 え? 俺がここにいる理由? 

 それは俺が今日から二課に入るからだ

 以前俺はそう奏と約束をしたこともあり、今回奏への好意を自覚したことを期に二課に入ることを決めたのだ

 二課に入れば奏と一緒にいられるという自分でも割りと不純な理由で……

 

(我ながら情けない理由だな……)

 

「ん? どうした太陽?」

 

「……なんでもねーよ……」

 

 ちょっと前まで復讐以外のことは心底どうでもいいと思っていたはずなのに、どうしてこうなったんだっけ……

 そう考えながら俺は奏の案内にしたがい長い廊下を歩いた

 

 

 

 

 

 *****************************

 

 

 

 

 

 

「ここが二課の司令室さ」

 

 ここが二課の司令室か……

 やっぱり、司令官とかいるんだろうな

 どんな人なんだろう

 こんな大きい組織を束ねてるような人だ

 さぞかし厳格な人に違いない

 

 

「じゃ、開けるよ」

 

 奏の言葉に頷いて俺たちは司令室の扉を開いた

 そこには……

 

 

 

パンパンパーン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ! 人類守護の砦、特異災害対策機動部二課へ!」

 

 クラッカーを炸裂させた職員たちが複数人、そして拍手をする職員が複数人

 その中央にはやけにガタイのでかい赤いシャツの男が被り物をしながら歓迎していた

 ちなみに後ろには「熱烈歓迎! 焔太陽様」と書かれた横断幕がある

 あまりにも予想と違いすぎる光景を見た俺は……

 

 

「へ?」

 

 

 平凡な反応しか出せずにいた

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 

「では改めて自己紹介だ

 俺は風鳴弦十郎、ここの責任者をしている」

 

「そして私は出来る女と評判の櫻井了子

 よろしくね」

 

 しばらくした後、ガタイのでかい人といかにも研究者ですって感じの眼鏡の女の人が俺に自己紹介をしてきた

 

「俺は焔太陽

 陰陽師やっています

 よろしくお願いします」

 

 俺は最初が肝心と思い、結構大きな声で自己紹介をした

 

「ハッハッハッ

 なかなか元気がありそうだな

 そういう奴は好きだぞ」

 

 弦十郎さんはそういいながら笑った

 最初は妙なイメージ抱いていたけどいい人そうだな……

 でもなんだろう

 本能的って言えばいいのかわからないけど……

 この人だけは敵に回してはいけない気がする

 そう俺の中のナニかが訴えている

 

「じゃ、太陽くん

 早速で悪いんだけど……

 ちょっと私に教えてほしいことがあるんだ~」

 

 了子さんは俺にそう言いながら近づいてきた

 教えてほしいこと……ってやっぱり、あれだよな……

 

「共振……のことですか?」

 

 そう言うと了子さんの口がにやついた

 

「わかってるなら話が早いわ~

 どういう術なのかは二人に聞いたけど

 飛鳥くんも白ちゃんも詳しいことがわからないっていうし……

 

 でも、双星の陰陽師である太陽くんなら

 なぜ奏ちゃんと共振ができたのかわかるんじゃない?」

 

 ……鋭い質問だな

 

「俺は俺と奏が共振することができた理由を知っています

 でも、それを教えることはできません」

 

 そう言うと二課の職員たちはざわついた

 奏も驚いているようだ

 

「……理由を聞いても?」

 

「ノーコメントでお願いします」

 

 俺は少し目線をそらしながらそう言った

 恥ずかしくて話せるかっての……

 

「……共振の理由は今は話せません

 それでも、俺はここで皆さんと共にノイズと戦いたいと思っている

 これは本心です

 だから……どうかお願いします」

 

 俺はそう言いながら頭を下げた

 すると弦十郎さんが頭をかきながらため息をついた

 

「わかった

 今は話せないのであればそれでも構わん

 いつか話したいと思えるときに話せばいい

 改めて、人類を守るため君に協力をしてほしい

 我々は君を歓迎する」

 

 そう言いながら弦十郎さんは俺に握手を求めてきた

 

「ありがとうございます

 これからよろしくお願いします!」

 

 俺は握手に答えながらそう言った




はい
これで本当に次回投稿は数ヶ月
早くても一ヶ月後ぐらいになると思います
それでも必ず帰ってくる予定なので楽しみにしてください


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

無印編
13話


お待たせしました
亀更新ですがゆるゆる再開します


 ツヴァイウイングのライブの惨劇から2年

 私立リディアン音楽院では今日も生徒たちの楽しげな声が響いてた

 

「立花さん!!!」

 

「ご、ごめんなさい!!!??」

 

 一部を除いて……

 

「はあ~、今日もつかれた~」

 

「今日もお疲れ様、響」

 

 人助けが趣味の少女・立花響は幼馴染みの小日向未来と共に私立リディアン音楽院に入学していた。

 

 響は二年前のライブで自分を助けてくれたと思っているツヴァイウイングの二人……風鳴翼と天羽奏に会うという目的で風鳴翼が通っているこの学校に入学したのだ

 なお、小日向未来は本人曰くピアノを学ぶため入学したらしい(真相は定かではない……)

 

(あの時、私を助けてくれたのは確かにツヴァイウイングと変な武器を持つ人たちだった……

 でも、報道ではノイズの被害により犠牲者が大勢でたということしかかかれてなかった……

 あの時のあれは夢だったのかな……? それとも……)

 

 当時はツヴァイウイングに助けられたと感謝しかなかった響だったが、時がたつに連れ災害であるノイズを倒す武器なんて本当にあるのかと響は自分の記憶に疑いを持つようになった。

 その真偽を確かめるためにも響はツヴァイウイングに会いたいのだ。

 

「でもよかったじゃない? 憧れの翼先輩に会うことができて……」

 

「でも、翼さんには絶対におかしな子だと思われてるよ……」

 

「間違ってないんだからいいんじゃない?」

 

 実は響は本日、学食中に風鳴翼に対面することができたのだが、緊張のあまり声を出すこと後できず挙げ句の果て頬についたご飯粒を指摘されてしまい、結構な恥をかいていた

 

 そのときの恥ずかしさを思い出しながら響は課題のレポートを行う未来を眺めていた……

 

「……それ、もう少しかかりそう?」

 

「あ、そうか! 響今日ツヴァイウイングの新作CD買いにいくんだっけ?」

 

「うん! 創太くんと待ち合わせしてるんだ!」

 

 彼女たちにはもう一人……

 大蔭創太という幼馴染みの少年がいる。

 だが、リディアンは女子校のため彼はリディアンの近場にある鳴神高校に入学したのである。

 

「じゃあ早くいかないと」

 

「え、で、でも……」

 

 響は今日ツヴァイウイングのcdを買うに当たって幼馴染み三人で楽しみたいと考えていたため、未来の言葉に少し渋る態度を見せる

 

「いいからいいから。早くしないと売りきれちゃうよ」

 

「う、うん。わかったよ。ごめんね未来……」

 

 未来の言葉に少し躊躇いながらも響は教室をでた……

 

(響のためにも、たまには創太と二人きりになったほうがいいと思うしね)

 

 未来は響が創太に対し、朧気ながら意識しているということを把握していた。創太側も響を大切に思っているというのは何度か相談に乗っているため知っている。

 

(まあ、創太ならば響を大切にしてくれるのはわかっているから文句ないんだけどね。でも響の親友というポジションは常に維持しないと……)

 

 人助けが趣味である響は入学してからまだ一月もたってない現在でも、その性格や行動から既にかなりの人気を獲得している。そのため、未来はどう今のポジションを維持するのか思考を巡らせるのだった……

 

 

 

 

 

 *****************************

 

 

 

 

 

「誰かなあの人……」

 

「結構イケメンじゃない?」

 

「誰かの彼氏かな……?」

 

 女子校であるリディアンの校門に男性がバイクを止まらせてるのを見て下校中の女生徒たちからかなり注目していた。大蔭創太は現在幼馴染みの立花響を待っていた。

 

 

(う~、少しハズイなこれ……

 響~! 早く来てくれ~!)

 

 まるで見世物のようになって内心かなり恥ずかしい思いをしながらも、彼にとっては最も大事な女性である立花響を待ち続けていた

 

 

「創太く~ん!!! お待たせ~!!!!」

 

「……遅いぞ響」

 

 彼はやっときてくれた幼馴染みに内心喜びつつもそれを悟らせないように努めて普段通りに話した

 

「じゃあ、さっそく行くか……」

 

「うん! そうだね!」

 

 響は満面の笑みで、創太は少し微笑をしながらバイクに跨がり行きつけのcdショップへとバイクを走らせた。

 

 

 

 キャーキャーっ

 

 

 

 いいものを見たと甲高い声で叫ぶ女生徒たちには気付かないまま

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

「cd特典! cd特典!」

 

「……嬉しそうだな、響……」

 

 自分にしがみつきながら嬉しそうにはしゃぐ響の姿に苦笑しながらも創太は呟いた

 

「そりゃそうだよ! cdは特典が盛りだくさんなんだから!」

 

 響は満面の笑みで創太の呟きに答えた

 その笑顔に創太は少し赤面をしながらドキドキしていた……

 

(やっぱ響可愛いな……)

 

 そんなこと考えながら創太はCDショップ最寄りの駐車場にバイクを止め、響と共に地に足をつけた

 

 

「早く、早く」

 

 そう呟きながら駆け足でCDショップに急ぐ幼馴染の背を見ながら創太はまたも苦笑をした

 

(どんだけ楽しみだったんだか……)

 

 そんなことを考えながら創太は響の後に続いた。

 しばらくしてもうすぐCDショップというところまで来ると彼女は曲がり角で突如として歩みを止めた。

 

「? おい、どうしたんだひび……き……」

 

 まるでありえないものでも見たかのように大きく目を見開きながら呆然となる響を創太は訝しげに眉を潜めたが、響がそのような表情になった原因を響と同じ方向にあるものを見て理解した。

 そこには人だった炭素の塊がいくつも辺りに転がっていた。

 

「ノイズ……」

 

 響にとってはかつてのトラウマであり、恐怖の対象……

 人類では太刀打ちできないとされる天敵が近くにいるということに顔を青ざめた

 

 

 

 キャ──────

 

 

「!?」

 

 二人が呆然としていると突如、悲鳴が聞こえた。

 悲鳴が鳴ったほうへ行くとそこには今にもノイズに襲われそうになっている小学校低学年くらいの少女が涙を浮かべている光景が映し出された。

 

「~%>&=)」

 

「っ!? 危ない!?」

 

 理解不能な不可解ななき声を出しながらノイズが少女目掛けて突撃しようとする。

 響は慌てて少女を庇おうと近づき、少女に抱きついたがそれが限界であり猛スピードで自分ごと少女を殺そうとするノイズをみて響と少女は恐怖から目をつむった。

 

 やられる

 

 少女も響もそう思ったが……

 

 

「み恵みを受けても背く敵は篭弓羽々もてぞ射落とす」

 

裂風魔嘴(れっぷうまし) 喼急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)!!」

 

 響が先程までいた方向から複数の石つぶてが形状変化していたノイズにぶつかり相殺した。

 

「「……へ?」」

 

 いつまでたっても予想していた衝撃が来ないことから疑問を感じた二人が目を開けるとそこにはノイズを前に仁王立ちをする幼馴染みの姿が映った。

 

「響に手を出してるんじゃねぇよ……」

 

 響の側からは表情を読み取ることができないがそれでも彼女は創太から発する凄まじい怒気を明確に感じとることができた。

 

「創太くん……?」

 

 今まで感じたことのない幼馴染みの雰囲気に少し躊躇いながらも響は彼に話しかけた。

 

「……こいつらは俺が足止めする。響はその子を連れて早く安全なところに……」

 

「……えっ? 何行ってるの!? 早く一緒に逃げないと!!!」

 

 ノイズは一般的に人間では太刀打ちできない。

 ノイズの特性である「位相差障壁」の影響でいかなる攻撃も無効化されるのだ。

 故に響は創太に向かって一緒に逃げようと逃亡を促したのだ。

 だが……

 

「大丈夫だ響」

 

 創太は響を安心させるために一瞬、彼女に顔を向け優しげな口調で微笑みかけた。

 そして再びノイズに向かい合い強い口調でこう叫んだ。

 

「俺はノイズ(こいつら)からお前を守るために今まで必死こいて修行してきたんだからな!!」

 

「え?」

 

 

 その言葉に呆けながら響は懐から札とリコーダー、ぬいぐるみを出しノイズに構える創太を眺めた。

 一瞬なぜ今ぬいぐるみやリコーダーなんてものを出したのかと疑問を覚えたがその疑問はすぐに解消された。

 

 創太は札を構え、守ると誓った大事な幼馴染みを守るため、札に呪力を込める……

 

魔軍顕符(まぐんげんぷ)

 

 すると彼の握りしめるリコーダーが淡く光りながら形状を変え、ぬいぐるみはまるで意思をもつかのように立ち上がり始めた。

 

大戯陰葬(たいぎおんそう) 喼急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)!!」

 

 そう唱えるとぬいぐるみたちは列を造りながら創太と共にノイズ相手に向かい合い始める。

 

 数十ものぬいぐるみたちが隊列を組むその光景はさながら軍隊のようであり、響と少女はその光景に驚嘆のあまり声を出すことができなかった。

 

 

「かかってこいノイズ共。全部まとめて祓ってやるよ」

 

 創太はノイズに向かって高らかににそう宣言した




書き方少し変えました


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

14話

誰も待ってないだろうけど


 二課・司令室

 

 

 

 

 

「ノイズの反応を検知しました」

 

「現在、位置の特定を最優先としています」

 

「位置の特定が済み次第、陰陽師と装者を向かわせろ!!」

 

 二課司令、風鳴弦十郎はノイズご現れたことにより、警報が鳴り響くなか位置の特定ができていないことに歯がゆい思いをしていた。

 

 プシュー

 

「状況はどうですか?」

 

「位置の特定はまだ終わらないのか?」

 

 するとシンフォギア装者・風鳴翼と天羽奏が司令室に入ってきた。

 翼の通うリディアンは二課本部と直接繋がっているため早く来ることができたのだ。

 

「待ってて、もう少し……

 !? ノイズの反応が急速に消失していってます!!」

 

「なんだと!?」

 

 ノイズは通常兵器では倒すことができない。

 ノイズを倒すことができるのはシンフォギア装者か陰陽師だけなのだ。

 

「まさか、あの時現れたという青龍か!!」

 

 奏は二年前に現れたという十二天将青龍の陰陽師が現れたのかと疑うが、青龍はここ二年一度も姿を現していない。普通に考えればそうだろうがこのタイミングで出てくる違和感を拭うことができない。

 ゆえに弦十郎は全く別のことを想像していた。

 

(まさか、新しい陰陽師が現れたというのか?)

 

 

 

 

 

 *****************************

 

 

 

 

 

「すごい……」

 

「あのぬいぐるみさんかっこいー」

 

 響は目の前の光景を見て唖然としていた。

 響の目の前にいるのは人類の天敵であるノイズだ。

 本来人間では決して敵うことのできない存在だ。

 

 それを……

 

 

 

 ドガ、バキ、メキ

 

 

 巨大化した愛らしいぬいぐるみが蹂躙しているのだから……

 

(これ……夢じゃないよね……?)

 

 無邪気な少女は素直に感嘆するが響は目の前の光景が本当に現実なのかわからないでいた……

 

 

「よし! 今のうちに逃げるぞ!」

 

「ふぇ?」

 

 すると先程までリコーダーを吹いてぬいぐるみを操っていた幼馴染みが呆然としていた響の手を引っ張った。

 

「そ、創太くん。これって……」

 

「……説明は後でする。今は早くここから離れるぞ」

 

 聞きたいことはあったが実際危機が去ったわけではない。

 まずはこの少女の安全を優先するべきだと考え、響は少女を抱え創太と共に走り出した。

 

「'{¥=~¥).#」

 

「邪魔だ!!」

 

 

 

 裂風魔嘴(れっぷうまし)喼急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)

 

 

 

 道を塞ぐかのように立ちふさがるノイズを創太は小石をぶつけることで撃退する。

 この光景に響は既視感を抱いた。

 

(そうだ……あの時、ツヴァイウイングと一緒に戦ってた人も……こんな力を使っていた)

 

 自分たちを助けてくれた人と似た力を使う創太を見て彼女はなにか関わりがあるのではないかと考えていた。

 

「な!?」

 

「へ?」

 

 当時のことを思い出していた響の思考は創太の声により現実に引き戻される。

 慌てて前を見るとそこには百を越えるであろうおびただしい数のノイズが待ち受けていた。

 

「くそっ!!」

 

 後ろを振り返るとやはりかなりの数のノイズがいる。

 完全に囲まれた状況だ。

 

「こ、こわいよ……」

 

「そ、創太くん……」

 

 響と少女は膨大なノイズの数を見て恐怖で震えてしまった。

 いくら不思議な力と不思議なぬいぐるみがあるとはいえ多勢に無勢だ……

 

「大丈夫」

 

 眼前の脅威に怯える少女と響を安心させるように穏やかな顔で創太は笑う。

 無論本人もそこまで余裕はない。

 なにしろ二年間みっちり修行してきたとはいえ今回が初実戦なのだ。

 恐怖はある。

 それでも彼は武器(リコーダー)を構える。

 自分の恩人足る幼馴染みを守るために……

 

「この二人には指一本触れさせねえぞ」

 

 強い覚悟を感じさせる声でそういいながらリコーダーとぬいぐるみを構える創太の背を見て響は自分を奮い立たせる。

 

 幼馴染みがこんなに頑張ってるのになに諦めそうになってるのかと……

 

(なにか……私にできることは……)

 

 不思議な力でノイズと戦う幼馴染みの背を見て彼女は願う。

 力がほしいと……

 

(できることがきっとあるはずだ……)

 

「う、う」

 

 自分が抱える震える少女を元気づけるために彼女は叫ぶ。

 自分を救ってくれた言葉を

 

「大丈夫! 生きるのを諦めないで!!」

 

 その時、彼女の胸のなかに戦う戦姫の唄が浮かんだ

 

 

 

 

 

Balwisyall Nescell gungnir tron(喪失までのカウントダウン)

 

 

 

 

 

 瞬間彼女の胸からでるまばゆい光が彼女の身体を包み込んだ。

 

 

「響!!?」

 

 

 創太はなにが起こっているのかまるでわかっていない。

 だが目が眩むほどのまばゆい光のなか、創太は確かに彼女の身体を未知なるプロテクターが包み込むのを見た。

 

(なんだ!? なにが起きてるんだ!?)

 

 

 

 

 ******************************

 

 

 

 

「遅くなりました!!」

 

「状況を」

 

 一方二課では太陽、飛鳥、白といった陰陽師の面々も本部に到着し、急ぎ状況を把握しようとしていた。

 

 だが、困惑しているのは二課の方であった。

 ノイズの数がどんどん減っていくなか、今度は謎の高エネルギー反応が出現したのだ。

 

 いや……

 

 このエネルギーを彼らはよく知っていた。

 

 

「これって……アウフヴァッヘン波形!?」

 

 二課の技術者である櫻井了子の言葉に皆驚愕する。

 だがそれは序の口。モニターに映された聖遺物の波形を見た者は例外なく動揺を露にした。

 

「え?」

 

「はあ!?」

 

「これは……」

 

「ど、どういうことだよ……」

 

「っ……」

 

 

 

 

 なぜなら標示された聖遺物のパターンは……

 

「ガングニール……だとぉ!!?」

 

 それは彼らの仲間である天羽奏のシンフォギア……ガングニールの反応であったのだから。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

15話

おくれました


 創太は困惑していた。

 何故ならば……

 

「な、なにこれ!?」

 

 響が突如として謎の光を発し、光が収まると謎の装束で身を包んでいたからである。

 

(なんだあの装束は? 呪装……なのか?)

 

「!? 危ない響!!」

 

「へ? ……うわぁ!?」

 

 二人が呆けていたとしてもノイズにとっては待つ理由にはならない。

 ドリルのように形状を変化させたノイズが響と少女を炭素に分解しようと襲い掛かっていた。

 とっさに響は右手を翳すがノイズは本来触れただけで人間を分解してしまう存在だ。

 響と少女はなす術もなくノイズに殺されてしまうだろう。

 

 ……本来ならば

 

 

 ドガッ

 

 

 響の拳が直撃したノイズは響を分解することなく消滅した。

 

「……あれ? 私が倒したの……?」

 

「だ、大丈夫か!? 響!!!」

 

「あ、うん。なんか平気……みたい?」

 

 返事をしつつも響は困惑していた。

 響自身、シンフォギア(これ)がなんなのかはわかっていない。

 ただ、呆然としつつもわかっていることがひとつだけあった。

 

 

(……この力があれば、この子を守ることができる)

 

「よくわからないけど、私も戦う!」

 

 そういいながら拳を構えた響を見て創太は少し考える素振りを見せる。

 

(よくはわからないし響自身もわかってないっぽいけど確かにあの妙な狩衣もどきはノイズにも有用っぽいな……

 でも……)

 

「駄目だ! 響はその子を守りながら極力手を出すな!」

 

「え!?」

 

 創太にとって響は自分の命よりも大切な幼馴染み。

 ゆえに彼は響をあまり前線には出したくはなかったのである。

 

(響に無茶はさせない。そのためにも、ここでノイズ共(こいつら)は俺が祓う!!)

 

 

 

裂風魔嘴(れっぷうまし)喼急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)!! 

 

 創太は軌道を変え敵を追尾する裂空魔弾、裂風魔嘴で的確にノイズを仕留める。射ち漏らしたノイズも大戯陰葬(大陰の力)により軍隊と化したぬいぐるみにより一掃されていく。

 だがやはりというか多勢に無勢。数は一向に減らないでいた。

 

(減る気配がまるでねえ……。どうなってるんだ……?)

 

 最近ニュース等を見て薄々頭によぎっていた懸念。

 本来ノイズというのは発生件数が年に数回あるかないかの物。東京都心の人口密度や治安状況、経済事情をベースに考えた場合、 そこに暮らす住民が、一生涯に通り魔事件に巻き込まれる確率を下回るものらしい……。

 にもかかわらず、この近辺ではノイズが現れる頻度があまりにも多すぎる。まるでなにかがノイズを呼び寄せているかのように……。

 

(やっぱりノイズを使役、もしくは呼び出せる存在がこの近くにあるたいうことか? いや、ノイズを生み出すナニカがあるという可能性もあるかもしれねぇ……)

 

 そこまで思考を巡らせながら創太は考えることをやめた。

 少女を抱き抱える響の姿が視界に写ったからだ。

 創太の言う通り響は少女を守ることを優先とし、ノイズの攻撃をなるべく躱そうと努力している。

 今はそのことを考えるよりも目の前のことを優先しなければ……。

 

(とはいえやはり数が多い……。

 使うか(・・・)……? いや、今の俺じゃもって1分しか保たねぇ。まだ実戦で使えるレベルじゃない……)

 

 ドシュ

 

「っ!?」

 

 思考を切り替え、ノイズ殲滅を優先させようとした創太。

 しかし、その一瞬の間に自らをドリル状に形態変化させた一匹のノイズが、創太の足に直撃した。

 鎧包業羅(がいほうごうら)で身を守っているため炭素と化すことはないがそれでも高質化しドリルと化したノイズの一撃は高い威力を持つ。そのノイズの一撃は創太の足を貫いた。

 

「創太くん!!!」

 

「大丈夫だ! 心配するな……!」

 

(とはいえヤバイな……。結構な血の量だ……。このまま出血し続けるのは不味い……)

 

 本来ならばすぐに止血したいがその暇を目の前のノイズは見逃してくれないだろう。

 

(今のは完全に俺のミスだな……)

 

 自分の不手際を悔やみながら響の方を見る創太。

 視界には心配そうにこちらを眺める響の姿があった。

 

(響にそんな顔は似合わないよな……)

 

 響の顔を見て覚悟を固め、再び創太はノイズに向き合った。

 

「かかってこいよノイズ共! 全部祓ってやっからよ!」

 

 叫び、笑いながら創太はぬいぐるみにノイズを攻撃させるためにリコーダーを構えた。

 響に心配させないため。絶対不安にさせないために……

 

 

奇一奇一たちまち雲霞を結ぶ 宇大八方ごほうちょうなん たちまちきゅうせんを貫き 玄都に達し太一真君に感ず 奇一奇一たちまち感通

 

金烏天衝弾(ゴルドスマッシュ)喼急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)!!!!! 

 

 その時、突如として上空から出でし呪力による複数の炎がノイズをやきつくした。

 

「え?」

 

「なんだ!?」

 

 声と炎が出た上空を見上げるとそこには一機のヘリコプターがあり、そこから複数人の人影が飛び出すのが見えた。

 

 

 

Croitzal ronzell gungnir zizzl(人と死しても、戦士と生きる)

 

Imyuteus amenohabakiri tron(羽撃きは鋭く、風切る如く)

 

 二人の女性の影が唄を口ずさむ。すると眩しい光が二つの影を包み込んだ。

 

「なんだ?」

 

 光が収まるとそこには響と似た装束を纏う二人の女性と自分と同じく呪装で自らを強化した三人の陰陽師がいた。

 

 

 

 

 

 

 *****************************

 

 

 

 

 

 一方、二課本部にて。

 

「ガングニール、天羽々斬、双星、白虎、朱雀、戦闘を開始!」

 

「よし! 即座にそこにいるノイズを片付け、彼らを保護させろ!」

 

 二課本部ではシンフォギア装者と陰陽師たちをサポートすべく動いていた。

 

「なんとか間に合いましたね」

 

「ああ……だが、装者や陰陽師が現着できたからといって油断は禁物だ」

 

「「了解」」

 

 弦十郎は装者と陰陽師から送られたモニター映像を見て新たなる陰陽師とシンフォギア装者の姿を確認した。

 それを見て自分の考えが正しかったことを認めながら二人の映像をじっと見ていた。

 

(新たなる陰陽師とシンフォギア装者……。俺たちと共に戦ってくれれば大きな戦力となるだろう……)

 

 子供に戦わせねばならない現状に罪悪感を覚えながらも人々を守るため弦十郎は彼らに二課に入ってもらえないものかと思案していた。

 

 

 

 

 *****************************

 

 

 

 

「すげぇ……」

 

「ツヴァイウィング。それにあの人達は……」

 

「カッコいい!!」

 

 創太と響は突如として現れたシンフォギア装者と陰陽師たちに驚きを隠せないでいた。(少女は興奮しているが)

 響は二年前のライブの時、助けてくれたのがツヴァイウィングだったということを確信して、創太は始めてみる自分以外の陰陽師の登場に動揺をして。

 

「陰陽師は俺以外にも存在したのか……」

 

『あ奴らはお主と同じ式神十二天将に選ばれた陰陽師たち。もう一人は双星の陰陽師と呼ばれる陰陽師じゃ……』

 

 歌っている二人は知らんがのと付け加えながら式神・大陰は創太の疑問に答えてくれた。

 それを聞いた創太は驚愕を隠せなかった。

 

(いや、考えてみれば()()天将なんだから俺以外にも陰陽師がいてもなにもおかしくはないか……)←双星の陰陽師を知らない

 

 そう考えた創太は視線を歌いながら戦う二人のシンフォギア装者に移した。何故歌いながら戦うのかは創太にはさっぱりわからないが、彼女たちが纏っている装束が響が纏っている装束と同じものであるというのは理解することができた。

 

(もしかしたら、響が纏っている装束がなにか解るかもしれない……)

 

 そう思いながら、現状響を守ることに専念すべきだと考え、創太は彼女たちの戦いを見守ることにした。

 

 

 

 

「いけえええええ!!!」

 

 

虎槍(こそう)瓊瓊杵(ににぎ)

 

 白は白虎の呪装・白蓮虎砲の斬撃を極限まで狭め、槍のようにしてノイズを攻撃した。

 この技は人々を避けながらノイズに攻撃を当てるために編み出した技で命中精度もかなりのものとなっている。

 これならば白虎の高すぎる攻撃力でも人々に被害がいかないだろう。

 

赤鶙無限屏風(せきていむげんびょうぶ) 喼急如律令!!!」

 

 飛鳥は朱雀の呪装・朱染雀羽により造られた三十六本の羽根によりノイズ一体一体を確実に切り裂いていく。

 

 

「防人の剣! 受けてみよ!!」

 

千ノ落涙

 

 翼は無数の小さな刃を具現化させ、それを雨のように降り注がせノイズたちを切り裂いた。

 

「あとはあそこにいるでかいのが三匹だけだな!」

 

「よし、一撃で決めてやろうぜ太陽」

 

 そう言うと奏は太陽に手を差しのべ、少し照れながら太陽もそれに答えるように奏の手を握った。

 

「ん、どうした? 太陽?」

 

「い、いや。何でもねぇよ!」

 

「?」

 

 顔を赤くした太陽を訝しげに見ながらも奏は顔を上げ、太陽もまた目の前の(ノイズ)に顔を向けた。

 

「いくぜ奏!!」

 

「OK! 太陽!!」

 

 二人は手を繋いだまま奏の持つガングニールの槍をノイズに向ける。すると槍は通常時よりもさらに大きくなる。所々陰陽師の呪装のような紋様が浮かび上がっており、いつもとはまるで違うエネルギーに満ち溢れていた。

 

「「共振(レゾナンス)!!」」

 

 二人が叫ぶと槍は回転を始め竜巻……いや、まるで台風のような強烈な風を生み出した。しかもただの風ではない。炎が燃え盛る火炎の竜巻である。

 

「「光双覇炎撃(METEOR∞BREAKER)」」

 

 

「うおっ!?」

 

「キャ!?」

 

 余りの破壊力に一瞬吹き飛ばされそうになる二人。響は抱えている少女に負担にならないよう背を向けながら、創太は呪力で足を強化し踏みとどまる。

 

「相変わらずすごいね……あの二人の共振」

 

「そうだな……」

 

 炎の竜巻は瞬く間にビルほどの大きさを持った巨大ノイズたちを廃工場ごと全て切り刻み、焼き付くす。煙が晴れるとそこには最初から荒地だったかのごとく、なにも残っていなかった。

 

 

「……これが、俺以外の陰陽師の力……。凄すぎるだろ……」

 

 創太は今の自分とは次元の違う破壊力に唖然としていた。特に最後の二人の使った技の威力は他と比べても明らかに桁が違う。

 そしてそんな技を使用した奏と太陽はというと……

 

 

「やべえ……」

 

「やりすぎちゃった……かな?」

 

 荒地と果てた廃工場跡地を見て共振を使用したことにかなり後悔していた。

 後日二人は弦十郎によりカンカンに怒られたというのは言うに及ぶまい。




オリ技
光双覇炎撃(METEOR∞BREAKER)
奏と太陽の共振で発動するLAST∞METEORな強化版
炎を纏った巨大な竜巻が敵を焼き付くす。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

16話

待ってる人がいるかも定かではないけど


 三人称side

 

 

 

 

「全く……お前らというやつは……」

 

「いてて……。わ、悪かったって旦那!」

 

「ほんと、反省してます」

 

 戦いの終わったあと、創太と響は二課に保護されていた。

 二課の職員たちが事後処理を行い、奏と太陽が拳骨で怒られている光景を眺めながら響は先程の出来事をぼんやりと思い出していた。

 巨大化したぬいぐるみでノイズと戦った幼馴染み、その幼馴染みと似た力を使って戦った三人と歌いながら戦うツヴァイウィング。そして、ツヴァイウィングとよく似た衣装を纏う自分。とてもではないが現実に起きたこととは思えず響はいまだ呆然としていた。

 

「あっ」

 

 少し離れたところで紙コップに入った湯気の立つ飲み物を飲む少女の姿に響は安心したように笑みを浮かべる

 

(あの娘、無事でよかった……)

 

「あの……」

 

「へ……?」

 

「ん?」

 

 呼びかける人物に響と創太は視線を向けた。

 そこには紺の制服に身を包んだ短髪の女性がおり、にこやかに紙コップを差し出していた。

 

「二人ともあったかいもの、どうぞ」

 

「あっ、あったかいものどうも」

 

「ありがとうございます」

 

 二人は紙コップを受け取り、ふぅふぅと息を吹きかけて少し冷ましてから口に付けた。

 

「プハァ~!」

 

「温まるな……。それにめっちゃ旨い……。豆……? いや、注ぎ方がいいのか?」

 

 笑みを浮かべる響とブツブツと味についての考察をする創太。創太は学校では「家庭科の神さま」なんてあだ名をつけられるほど料理と裁縫に関しては他の追随を許さないほどの腕前を持っている。そんな彼をして唸らせるほどの美味しさが紙コップの中にあった。

 料理のことになると相変わらずだなと響が考えているとその身を突如光が包み

 

「へ?」

 

「っ? 響!?」

 

 わけもわからず呆けているうちに光は強まり

 

「っ!?」

 

 光が弾ける様に身に纏っていた装束が消え、響は元の制服姿に戻った。

 

「うわっ!? わわわっ!?」

 

「だ、大丈夫か? 響!?」

 

 それを見て創太は響のもとに駆け込み、異常がないかの確認をする。

 

「う、うん? た、多分?」

 

「……よかった~」

 

「そ、創太くん!?」

 

 創太は響の無事を確認すると、安心したようにへたり込んだ。そんな創太を見て、響は困惑してしまう。

 

「俺、もう二度と響を危険な目に合わせたくないんだよ……」

 

「創太くん……」

 

 響は創太の言葉に戸惑うも、嬉しく思っていた。

 創太が自分のことをここまで心配しているということが伝わったから……。

 

「話は終わったようね……」

 

 突如として、自分たちに話しかける声が聞こえてくる。

 振り向くと、そこには翼が立っていた。

 響同様先ほどの鎧姿ではなくリディアンの制服になっている。

 

「大丈夫みたいだね。無事で良かったよ」

 

 先程まで怒られていた奏も響達の元へと近づいてきた。

 奏だけでなく、陰陽師らしき者達も二人の元へとやってきた。

 

「え、え〜と、ありがとうございます」

 

「響を助けてくれて、本当にありがとうございます!」

 

「いいってことよ」

 

 奏は大したことはしていないといった風に言う。

 そんな奏に響は感謝の言葉を述べる。

 ────今回だけでなく、ライブの時の感謝も一緒に。

 

「実は、奏さんと翼さんに助けられたのは、これで二回目なんです!!」

 

「……やっぱり、そうか……」

 

「……?」

 

 奏は響の言葉を聞くと、少し申し訳無さそうな表情になる。隣りにいる男性も同じだ。

 

「「?」」

 

 響達は何故、そのような表情をするのかが分からないでいた。

 

「ママ!!」

 

「っ?」

 

 と、近くから先ほどの少女の声が聞こえ、そちらに視線を向ける響。

 そこには先ほどの少女が母親らしき女性と抱き合っているところで

 

「よかった! 無事だったのね!」

 

 母親は少女を愛おしそう抱き寄せ、涙を流す。そんな彼女に横から女性が歩み寄る。その女性は先ほど響に飲み物をくれた女性と同じ制服を着ている。

 

「それでは、この同意書に目を通した後、サインをしていただけますでしょうか?」

 

 女性は母親にタブレットを差し出しながら淡々と言う。

 

「本件は国家特別機密事項に該当するため、情報漏洩防止の観点から、あなたの言動および言論の発信には今後一部の制限が加えられることになります。特に外国政府への通謀が────」

 

「は、はあ……」

 

 響は女性の言葉にポカーンと母親と少女が口を開けているさまに苦笑いを浮かべる。

 

(もうちょっと空気を読んだほうが……)

 

 創太も同じでせめて、二人が落ち着いてからにでもしたほうがと考えていた。

 

「響。そろそろ帰らないと。未来も心配するだろうし……」

 

「あ、そうだね。じゃあ……私もそろそろ────」

 

「あなたをこのまま返すわけにはいきません」

 

 二人が帰ろうとした刹那、赤髪の陰陽師が行く手を阻む。

 

「な、なんでですか!?」

 

「どういう……っ!?」

 

 赤髪の陰陽師────飛鳥の言葉に響と創太は困惑する。

 

「貴方方は特異災害対策機動部2課まで同行していただきます」

 

 飛鳥の言葉の直後、響の隣に歩み寄った男性が響の腕に大きな手錠をかける。ガチャンと言う音と共に手錠がロックされる。

 

「っ! 響────!」

 

 創太は手錠を掛けられた響に駆け寄ろうとすると、白髪の少女────白に手錠を掛けられた。

 

「なっ!?」

 

「悪いですね。署まで同行願いましょうか?」

 

「へ? あ、あの……」

 

 状況が分からずに困惑する響。

 そんな響に手錠を掛けた男性が優しく耳打ちした。

 

「すみませんね。あなたの身柄を拘束させていただきます」

 

 そう言って男性は申し訳なさそうに微笑みかける。

 状況を理解した響は一拍おいて────

 

「ええええええええええ!?」

 

 辺りに響く絶叫を叫んだ。

 

 

 

 

 ****************************

 

 創太side

 

 

 

 

 

「おい! 響を離せ!」

 

「ごめんね。悪いようにはしないからさ」

 

 手錠をかけられた俺達は為す術もなく、車の中へと連行された。

 響は手錠を掛けられたおかげで不安そうにしている。

 

「言っとくが、響に傷でもついたら承知しないからな!」

 

「は、はい!」

 

 俺が怒鳴ると同じ車に乗る白さんという名らしい白髪の陰陽師が少し怯えた様子で返事をした。

 それを見た飛鳥という赤髪の陰陽師が俺を睨みつける。

 

「そ、創太くん。もうちょっと穏便に……」

 

「いや、何でお前が落ち着いてるんだよ!? 手錠掛けられてるんだぞ!?」

 

「だ、だって、それは創太くんも同じだし……」

 

 ……まあ、確かにそうだけど、俺と響じゃ響のほうが優先順位高いんだよ! 

 ……でも、響が落ち着いてると、こうして叫ぶのもあれかもな。

 

「白の言う通り、お前達に危害を加えるつもりはない。安心してほしい」

 

「だったら手錠外してほしいんですけど……響だけでも……」

 

「悪いがそれはできん」

 

 いきなり手錠なんか掛けられて信用できるわけがない。

 目的地すらわからんし……何処に向かってるんだ……

 …………ん? 

 

「……どうやら、着いたみたいだね」

 

 白さんの言葉に俺達は車の外の景色を見つめる。

 

「あれ? ここって……」

 

「なんで……学院に?」 

 

 そう。そこは響の通う“リディアン女学院”。ついさっき、響と待ち合わせた学校施設だ。

 何でこんなところに……? 

 

「こっちこっち!」

 

「付いてこい」

 

 学舎へと躊躇わずに進む白さんと飛鳥。

 俺達二人も顔を見合わせ、響に手錠をかけた男性と共に夜の校舎の中を進む。

 

「あ、あのぉ……?」

 

「ん?」 

 

「ここ、先生たちがいる中央棟……ですよね?」

 

「ああ。そうだが?」

 

「何でこんなところに?」

 

「それはすぐに分かるよ」

 

 ここに俺達とは別の車に乗っていたツヴァイウィングの天羽奏がやってくる。

 隣りには風鳴翼と……陰陽師の男が一緒に歩いている。

 

「ツヴァイウィングと…………え〜と……」

 

「あ、そういえば自己紹介してなかったな。俺は焔太陽。太陽でいいよ」

 

「あ、はい! 立花響です! よろしくお願いします!」

 

 ……よく手錠を掛けた人達にあんな挨拶できるよな。まあ、その素直さが響のイイところか。

 

「では、どうぞ」

 

 響が自己紹介をしてる間に、手錠を掛けた男がパネルを操作する。すると、エレベーターの扉が開いた。

 俺達は促されるままそこに入る。一体何なんだ? 

 入って向かいの端末に男性が何か機械をかざすとピコンと音が鳴り、背後で扉が閉まる。と、その扉を覆うように頑丈そうなシャッターが現れ周りに手すりが現れる。

 

「あ、あの……これは……?」

 

「さぁ、危ないですから捕まってください」

 

「へ? 危ないって……?」

 

 男性は手錠をされた響の手を取り手すりを掴ませる。直後────

 

 ガクン! 

 

「うおおぉぉぉぉぉぉぉ!!?」

 

「のわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 エレベーターが高速で降下し始めた! 

 エレベーターの壁の階層表示のパネルが明滅を繰り返す。

 

「いや、地下何階だよ!?」

 

「あ……あ、あははは……」

 

 響はわけがわからないまま手すりにしがみ付き笑顔を向ける。

 しばらくして、上へ流れていくだけだった無機質な灰色のエレベーターの窓の外の光景が変わる────っ!? 

 

「わぁ……」

 

 響はその光景に思わず感嘆の声を漏らす。

 当たり前だ。俺もこんな光景は見たことがない。

 そこにはまるで何かの宗教の壁画のようなカラフルな模様の刻まれた壁が広がっていた。そんな中をエレベーターは降りていく。

 

「なかなか絶景だろ? 俺も始めてきた時はビックリしたし……」

 

「はい! とてもすごいですね!」

 

「……確かに……」

 

 しばらくすると、ようやくエレベーターが止まる。

 

「もうすぐゴールだよ」

 

 何やら嬉しそうにする白さんに案内され、俺達は道なりに進む。

 しばらくすると、一つの大きい部屋の前に到着した。

 

「ここだ」

 

 ここがこの人たちの本拠地か……鬼が出るか蛇が出るか……。

 覚悟を決め、俺達は部屋の扉を開ける、そこにあったのは────

 

 

 

 パン! パン!! ドンドン!! パフパフ!! 

 

 

 

 軽快な音ともにクラッカーと紙吹雪が舞い、色とりどりに飾り付けられ、天井からは「熱烈歓迎! 立花響さま&大蔭創太さま! ようこそ2課へ」と書かれた垂れ幕のつるされた部屋と、豪華な食事とともににこやかに拍手をする人たちがいた。

 

「ようこそ~! 人類守護の砦! 特異災害対策機動部2課へ!」

 

 その中心にいるのは赤いシャツにピンクのネクタイ、クリーム色のスラックスを履いた筋骨隆々のシルクハットを被った男性。今までに見たこともないほどの存在感を放っており、笑顔で俺達を歓迎してるようだ。

 それを見た俺は────

 

「────は?」

 

 あまりにも予想と違いすぎる光景に呆然とすることしかできなかった。

 




最後に投稿したの二年前なんですね(笑)


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。