IS×仮面ライダー 炎竜シーズン2 仮面ライダー輝龍 (柏葉大樹)
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仮面ライダー輝龍 第1話

side3人称

 2014年、地方開発都市である沢芽市において異世界から襲来したヘルヘイムの森の侵略があった。その侵略を街に居た若者たちのグループであるビートライダーズの若者、葛葉紘汰が終わらせたのだった。その代償として彼は人ならざる者となり、同じく人ならざる者となった幼馴染みの高司舞と共にこの星から去った。それから10年後、宇宙開発用マルチスーツ、インフィニット・ストラトスが世に出た。通称ISと呼ばれるこのマルチスーツは女性の身しか動かせないという欠点があり、世界は徐々に女性の地位が上がっていくようになっていた。その一方でヘルヘイムの森の襲撃の後も世界の均衡を崩そうとする者達が後を絶たなかった。

 柏葉大樹、この世界に生まれ別の世界の記憶を持つ青年はあの葛葉紘汰と同じく戦極ドライバーを手にして仮面ライダー炎竜となった。彼はインベスとなって世界を破壊しようとした兄、柏葉勇悟と激しい戦いを繰り広げ、織斑一夏をはじめとした仲間達と共に勝利を納めた。それから一年の時が流れ、異世界から世界一つを容易く滅ぼした十三の異形たち、十三異界覇王と呼ばれる強大な敵が襲来した。

 戦いの中で大樹は仮面ライダー輝龍へと進化、仲間達と共に強大な敵に立ち向かっていく。

 これは仮面ライダーとして戦う若者達が身を投じた激しい戦いの日々の物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 篠之野神社の裏手にある山、その山頂では大樹が変身した仮面ライダー輝龍ゴールドドラゴンアームズが異世界からやってきた十三異界覇王の一角、イーヴィルアギトの眷属であるアギトたちと戦っていた。

 仮面ライダー輝龍は専用アームズウェポンである竜炎刀・陽炎を振るい、アギトたちを次々と切り伏せていく。

 輝龍が対峙しているアギトたちは紅蓮色の甲殻に大剣を持っている巨躯のアギト、紺碧の甲殻に両手に鋭い爪を持つアギト、桃色の甲殻と槍を持った女性型のアギト、そして金色の甲殻に細剣を持つアギトとそれぞれが全く異なった姿をしている。

 紅蓮のアギトが大剣をを大きく振りかぶり、紺碧のアギトがその爪をぎらつかせて輝龍に襲い掛かる。輝龍はそれをものともせずに、大剣をいなしては近づいてきた紺碧のアギトを下段からの切り上げで攻撃の出鼻に合わせて応じ技を見せた。そして、槍を振るう桃色のアギトに対してはもう一つの専用アームズウェポンである両刃の剣である光龍剣を抜き放ち、二刀流で攻めていく。

 

 「このまま押し切るか。」(輝龍)

 

 そう言うと輝龍は手にしていた竜炎刀・陽炎に柄と刃に分離させた光龍剣を合体させ、光炎龍刀オオダチモードへと変えた。

 輝龍はそのまま光炎龍刀を構え、アギトたちと戦い続ける。これまでとは違う長いリーチの刃はアギトたちを輝龍の間合いの中に入ることを一切許さず次々と切り伏せていく。

 

 ≪ソイヤ!ゴールドドラゴンスカッシュ!≫

 

 輝龍は戦極ドライバーのカッティングブレードを一回倒した。

 ドライバーにセットされたゴールドドラゴンフルーツロックシードから黄金色のエネルギーが光炎龍刀へと流れる。

 刃にエネルギーが走るのを見た輝龍は光炎龍刀を腰だめに引き、アギトたちから背を向ける程に上体をひねった。

 それを紅蓮のアギトと紺碧のアギトが輝龍に飛び掛かり、自分たちの武器を振るった。だが、その次の瞬間には輝龍が振るった光炎龍刀の刃が二人のアギトの体を横なぎに切り裂いた。

 二人のアギトは胴と足が離れ、そのまま切り口から光に包まれ爆散した。

 

 「貴様、何者だ。」

 

 金色のアギトが輝龍に問い掛けた。輝龍はアギトを見据えて力強く言った。

 

 「俺は柏葉大樹、仮面ライダー炎竜。いや、仮面ライダー輝龍だ。」(輝龍)

 

 その佇まいに一瞬気圧されるアギト。残ったアギトと共にその場を立ち去る。それを見て輝龍は手に持っていた光炎龍刀を2本のアームズウェポンへと戻す。

 

 「皆の所に行くか。」(輝龍)

 『ストームライム!』

 ≪ロックオン!ソイヤ!ストームライムアームズ!≫

 

 輝龍は敏捷性に優れた形態であるストームライムアームズへとアームズチェンジした。そのまま山道を疾走する輝龍はまだ戦っている仲間たちの元へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 輝龍が戦っていた場所から篠之野神社へと向かうようにして降ると出るある場所では織斑一夏が変身した仮面ライダー白銀が戦っていた。向かってくるアギト達を仮面ライダー白銀は専用武器であるバニシングブレードで次々と叩き斬っていく。

 白銀のその剣筋は輝龍と似たものである。触れるもの全てを一刀両断せんとする気迫を纏った刃は二人が同じ師のもとに師事していたことを示している。だが、白銀のそれは輝龍のものとは若干の差違がある。気質で言えば輝龍は相手の攻撃を受け流したりしてカウンター攻撃、剣道ではこれを応じ技と言うのだがを好んでいる。一方の白銀は紫電一閃!一撃必殺!と言わんばかりの真っ直ぐで素早いものであり、速さと共に重さも秘めた剣戟である。これは両者の性格の違い、輝龍に至っては前世における戦闘経験もあるためだが白銀のその斬撃はアギトたちの甲殻を容易く両断していった。

 

 「ハアッ!!」(白銀)

 

 そして、白銀自身もIS学園に居るということもあって普通の高校生と比べれば武器の扱い、特に剣の扱いには秀でている。まだまだ若いながらも卓越したものをすでに持っているのだ。

 

 「これで行くぜ!!」(白銀)

 『シャイニングエナジー!』

 ≪ロックオン!シャイニングエナジーアームズ!Light Wing!Light Wing!LalalalalalaLight!≫

 

 白銀は強力なロックシードであるシャイニングエナジーロックシードを開錠して、強化形態であるシャイニングエナジーアームズへとアームズチェンジした。

 白銀の全身が輝き始めるとほんの一瞬のうちにアギトたちが倒れていた。

 

 「これが俺の力だ!」(白銀)

 ≪ロックオン!シルバーチャージ!≫

 

 白銀はバニシングブレードにシルバーエナジーロックシードをセットする。するとバニシングブレードの刃に白銀の光が纏われ、白銀は残っているアギトたちを次々と斬り裂いたのだった。

 白銀に斬られたアギトたちは皆斬られた傷口から白銀の光を放出して爆散していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神社と山頂の中間地点では原作世界においては織斑一夏の敵として立ちはだかった織斑マドカ、この世界においては織斑万夏と呼ばれているがその彼女が変身した仮面ライダーヴァルキリーブラックベリーアームズが大剣オニキスクレイモアを振るいアギトたちを一掃していた。

 

 「イヤー!!」(ヴァルキリー)

 ≪カモン!ブラックベリーアームズ!≫

 

 オニキスクレイモアにロックシードからエネルギーがチャージされ、漆黒の刀身に紫色の雷が走り出す。その状態でヴァルキリーは近くに来ていたアギトたちを横なぎに振るった。

 刀身から放たれたのは紫色のエネルギーは巨大な光り輝く斬撃となり近くに来ていたアギトたちだけでなく残っていたアギトたちも吹き飛ばしたのだった。それはアギトたちに限ったことではなくヴァルキリーが戦っていたその場所の木々が根元から倒れその場だけが目立つように山肌も露出していた。

 

 「これでお終い。」(ヴァルキリー)

 

 そう言ってブラックベリーアームズからブルーベリーアームズへと姿を変えるヴァルキリー。そこに山頂から降りてきた輝龍がやって来た。

 

 「大樹!」(ヴァルキリー)

 「マドカ。大丈夫だった?」(輝龍)

 「私は全然大丈夫。大樹は?」(ヴァルキリー)

 「二人、逃がした。でも、他の皆の所に行くのが優先だと思って。」(輝龍)

 

 お互いにここまでの情報を共有する輝龍とヴァルキリー。その会話だが仲間同士の会話よりも恋人同士に近い、というよりこの二人は実際に恋愛関係にあり、現在既に交際しているのだ。だが、二人ともTPOをしっかりとわきまえており、会話のそこそこに切り上げて他に戦っている場所へと向かい始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 篠ノ之神社境内では織斑千冬、一夏の父である織斑秋人が、篠ノ之束、箒の父親の柳韻、叔母の雪子と共にアギトたちを迎え撃っていた。

 

 「確かに神経断裂弾よりえぐいね。」(秋人)

 

 秋人が使っている拳銃には特殊なナノマシンを搭載した弾丸が使用されている。この弾丸が相手の体内に入ると入っているナノマシンが損傷した相手の体組織を滅茶苦茶に切り取り、つなぎ合わせるというもので元々あった神経などがめちゃくちゃに再生されるためにアギトたちは撃たれた場所を抑えるどころか体を動かすことそのものが上手くできないようになってしまっていた。

 身動きが取れなくなったアギトたちは柳韻と雪子が対処していく。

 秋人が神社の建物などを遮蔽物として利用する一方でこの神社の神主である篠ノ之柳韻と篠ノ之雪子の兄妹は生身の人間であるのだが信じられないことにアギトたちを相手に全く怯むことなく、それどころかアギトたちが気圧される程だった。

 

 「はあ、全く。おい、骨のあるやつはいないのか?こんなんじゃ、稽古前の素振りにもならねえよ。」(柳韻)

 

 そう言ってアギトに突き立てていた日本刀を抜く柳韻。彼の足元には首を斬られてこと切れているアギトに、脳天から股間までを綺麗に両断された者や上半身と下半身で斬り分けられた者などが居た。

 死体を周りに置くにしてはあまりにもつまらなそうな声音で放たれたそのセリフは数々の犯罪行為をしてきた非道なアギトたちでも恐怖を感じるには十分だった。

 そして、細身の女性ながらにその鉄拳で次々とアギトたちを殴り殺していく雪子。その拳には返り血が付き、彼女が今纏っている巫女服にも返り血が付いているがその様子はどこか幻想的である。だが、傍目から幻想的に見えてもその行っている行為そのものは他者にはあまり受け入れらないものでありその結果はアギトたちの反応を見て明らかであろう。

 

 「さあ、ここいらで帰りたいって思うなら帰りなさい。でも、それでも向かってくるなら容赦なく拳骨を落としていくわよ。」(雪子)

 

 それでもなお、自分たちを簡単に苦しめている相手をそのままにしておけるアギトたちではなかった。彼らは秋人たちに対してその凶爪を振るおうとしたその時だった。

 

 ≪スキャニングチャージ!≫

 「はあ!!」(オーズNEO)

 

 この世界においてISの開発者である人類最高種の篠ノ之束と結婚をしており、彼女と同じ人類の最高種の一人である岩城正則が変身した仮面ライダーオーズNEOハヤガコンボが必殺技のハヤガキックをアギトの大群に放ったのだった。

 ハヤガキックを受けたアギトたちはキックの直撃を受け、さらには爆発に巻き込まれていった。

 

 「秋人さん、大丈夫ですか!」(オーズNEO)

 「まあ、何とか。」(秋人)

 「私と兄さんには無いのかしら?」(雪子)

 「いや、お二人は大丈夫かと。」(オーズNEO)

 「まあ、そうよねえ。兄さんに至ってはそこの奴らどんどん三枚おろしにしているし。」(雪子)

 「はあ、詰まらん。これならガキんちょたちを相手にする方がまだ良いわ。」(柳韻)

 

 不穏なことを言いながら次々とアギトたちを切り殺す柳韻。その様を見てオーズNEOは自分は秋人に危害が出ないように動くことに決める。そして、ハヤガコンボを形成するメダルからハヤブサメダルとヤドカリメダルを抜き、ドライバーのホルダーから新たに茶色系統の色の2枚のコアメダルを取り出した。

 

 「それじゃあ、行くか。」(オーズNEO)

 ≪キン!キン!キン!オオカミ!クマ!カンガルー!オオクガル!オオクガル!≫

 

 頭部がオオカミの意匠を思わせる形状で青色の瞳を持ち、腕部は肩までに発達したアーマーと筋肉に覆われ、。新たに誕生したNEO哺乳類系の3種類のメダルであるオオカミ、クマ、カンガルーの力を得た仮面ライダーオーズNEOオオクガルコンボ。パワーに優れた形態であり、そのファイトスタイルは

 

 「フン!!」(オーズNEO)

 

 カンガルーの脚力を活かしたフットワークを使い、オオカミの嗅覚で相手の感情や動きを読み取り、クマのパワーあふれる剛腕で相手をのし倒すというものである。

 オーズNEOオオクガルコンボの剛腕を受けたアギトは天高く放り出され、地面に落ちるその瞬間に強烈な蹴りを浴びせられた。さらに鋭く素早いフットワークを披露するオーズNEOはそのままクマアームのアーマーから巨大な爪を伸ばして力任せに振るう。

 アギトたちは次々と宙を舞い、そこをさらにオーズNEOは剛腕でねじ伏せていく。そこでオーズNEOはオースキャナーNEOを持ち、コアメダルを読み込んだ。

 

 ≪スキャニングチャージ!≫

 「ウオオオ!!」(オーズNEO)

 

 コアメダルを読み込んだオーズNEOは遠吠えを上げた。その瞬間、その遠吠えを聞いたアギトたちの動きが止まったのだ。それからオーズNEOは深く膝を曲げて天高く跳び上がった。

 

 「ハアアアアアア、セイッヤー!!」(オーズNEO)

 

 空中からきりもみ回転をしてクマアームによる強烈な叩きつけを行った。

 オオクガルコンボの必殺技であるベアウルフインパクトが決まり、そこにいたアギトたちは皆吹き飛ばされ微塵もその身を残すことは無かった。それでも、他にアギトたちは居て、味方の死を見てもなおオーズNEOたちに襲い掛かる。

 

 「どうして仲間が死んでるのに来るのよ!?頭、おかしいんじゃないの!!」(雪子)

 「正則君!このままだと弾が切れる!」(秋人)

 「なら、次はこれだ。」(オーズNEO)

 

 オーズNEOは黄緑色の3枚のコアメダルを取り出した。

 

 ≪ハヤブサ!フクロウ!ワシ!ヤーブーフシ!≫

 

 無音の高速飛行を得意とするヤブフシコンボにコンボチェンジしたオーズNEO。専用武器である風鳥鋸ヤブエッジをオーラングサークルから召喚するとそれに3枚のNEO鳥類系コアメダルをセットした。

 

 ≪ハヤブサ!フクロウ!ワシ!ギン!ギン!ギン!ギガスキャン!!≫

 

 オースキャナーNEOで読み込ませるそのまま刃にエネルギーが溜まる。そのエネルギーは巨大な光輪となり、オーズNEOの頭上で高速で回転する。

 

 「喰らえ!!」(オーズNEO)

 

 ヤブフシコンボの必殺技の一つであるソニックスライサーが後続のアギトたちを風の刃と共に切り裂いていく。

 ここまででこの場にいるアギトのほとんどをオーズNEOが撃破した。

 

 「なんだか、私達が居る必要が無かった気がするわね。」(雪子)

 「それを言ったらお終いだと思うんですけど。」(秋人)

 「はあ、親玉が居ねえなら仕舞えだな。」(柳韻)

 

 そんなオーズNEOの奮闘を見た保護者チームは、特に作戦を考えた秋人はどこか釈然としない気持ちを抱えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、それぞれの場所でアギトたちを撃破した輝龍の他に戦っている仲間がいた。仮面ライダーアギトこと津上翔一である。

 人類の進化種であるアギトに覚醒した歴戦の勇士である仮面ライダーアギトは基本形態のグランドフォームのままで次々とアギトたちを撃破していく。仮面ライダーアギトが拳を振り抜けば拳を受けたアギトはその場に倒れ、手刀が振るわれればその甲殻をいともたやすく切り裂き、蹴りは数人のアギトをまとめて後方へ飛ばした。

 

 「はああああ。」(仮面ライダーアギト)

 

 仮面ライダーアギトの頭部のクロスホーンが6本に展開された。地面に黄金に輝くアギトの紋章が浮かび上がり、アギトの両足へと吸い込まれる。

 

 「はああああ!!」(仮面ライダーアギト)

 

 仮面ライダーアギトグランドフォームの必殺技であるライダーキックが決まり、そこにいたアギトたちが爆散した。そこにいたアギトは既に倒されており、これ以上は戦う相手はいないかに思われた。

 

 「っ!!」(仮面ライダーアギト)

 

 仮面ライダーアギトは即座に察知した殺気に反応してその反応があった方向へ振り向き、ファイティングポーズを取った。

 そこには漆黒のアギト、イーヴィルアギトが居た。

 両者共に向かい合い、緊張が高まる。

 ファイティングポーズを取ったまま、距離を保つ仮面ライダーアギト。

 イーヴィルアギトは両手をぶら下げ、自然体に仮面ライダーアギトを見据える。

 緊迫した空気の中、火ぶたを切ったのは仮面ライダーアギトだった。仮面ライダーアギトは走り出すとそのままイーヴィルアギトに殴り掛かる。それをイーヴィルアギトは両腕を交差させることで防ぎ、反撃の蹴りを放つ。反撃の蹴りを仮面ライダーアギトは容易くさばき、それと同時にオルタリングにある左のスイッチを押した。その瞬間、オルタリングからストームハルバードが召喚され、アギトの姿も超越精神を司る疾風の形態ストームフォームへと変わった。ストームハルバードを手に仮面ライダーアギトはイーヴィルアギトに斬りかかる。

 敏捷性が向上するストームフォームによる攻撃はイーヴィルアギトを翻弄する。だが、イーヴィルアギトも系譜は違えど同じアギト。ストームフォームに対応する形態を持っているのだ。

 イーヴィルアギトは仮面ライダーアギトから距離を取るとそのまま精神を統一する。すると刺々しかったその甲殻に変化が見られた。右肩の甲殻が消失するとともに筋肉が発達、一方で左型の甲殻はそのまま丸みを帯び始めた。さらに漆黒の甲殻に緑と青のラインが走り出した。ストームペガサスフォーム、敏捷性に加えて鋭敏化した感覚によって見えない相手を察知することが出来る姿である。

 一気に向上したスピードを活かしてイーヴィルアギトは仮面ライダーアギトから距離を離し、オルタリングから銃口に金色の牙が生えたボウガンであるストームペガサスボウガンを召喚して仮面ライダーアギトを狙い撃つ。

 仮面ライダーアギトはストームハルバードでイーヴィルアギトの攻撃を何とか防ぐものの、イーヴィルアギトはその防御をすり抜けるように周囲を縦横無尽に動き回る。三次元的な攻撃を繰り出され、仮面ライダーアギトも苦戦し始める。

 仮面ライダーアギトは一度グランドフォームへと戻る。それを見たイーヴィルアギトはストームペガサスボウガンを引き絞り強力な空気弾を撃ち出した。

 放たれた空気弾は仮面ライダーアギトの元へ当たり、大きな爆発を引き起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 山道を掛ける輝龍とヴァルキリー。そこへ輝龍と戦っていたアギト2人が口元を隠した男と共に現れた。

 

 「お前がアギトたちを指揮している奴だな。」(輝龍)

 「私の名はドルド。アギトの審判役だ。ここには我が同胞たちはいないようだな。」(ドルド)

 

 目の前のドルドに輝龍はストームライムアームズの専用アームズウェポンであるストームランスを取り出す。ヴァルキリーもブルーベリーアームズの専用アームズウェポンのブルーライフルを取り出しドルドたちに銃口を向ける。

 

 「この私を罠にはめるとは全くリント風情が。」(ドルド)

 

 ドルドは怒りの感情をあらわにしてコンドル種のグロンギである本来の姿となり、装飾品をトンファーへと変えた。両隣に居たアギトは細剣と槍を持ち輝龍とヴァルキリーに飛び掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「駿河さん、これで良いんだね。これで五代さんを守れたんだ。」(イーヴィルアギト)

 

 爆発を見たイーヴィルアギトは本来の姿である漆黒の刺々しい姿へと変わる。そのままその場を去ろうとするイーヴィルアギトだったが突如として爆発した場所で燃え上がる炎がいきなり霧散した。

 爆発が消えるとそこに仮面ライダーアギトはいた。だが、その姿は基本形態のグランドフォームでは無かった。全身がまるで紅蓮の炎を思わせる鎧に変わり、深紅の染まったクロスホーンは既に6本に展開し、両目は赤色から黄色へと変化していた。そして胸部のモノリス・ワイズマンから走る亀裂から炎が吹き上がり始める。

 津上翔一が戦いの中で手にした進化したアギトの力の一つ、爆炎をその身に宿した剛力形態バーニングフォームである。

 仮面ライダーアギトは変身をするときに行う構えを取った。その瞬間に、銀色と赤色の色彩が目を引くアギトの最強武器のシャイニングカリバーが出現した。Z字に折り畳まれているそれを仮面ライダーアギトが手にすると刃が展開して双刃の薙刀の形状をしたシングルモードへと変化した。

 

 「はあ!!」(仮面ライダーアギト)

 

 仮面ライダーアギトはシャイニングカリバーを大きく振りかぶり、爆炎を纏った刃をイーヴィルアギトに叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ≪ストームライムオーレ!≫

 ≪ブルーベリースパーキング!≫

 「ハッ!」(輝龍)

 「イヤー!」(ヴァルキリー)

 

 仮面ライダーアギトがバーニングフォームとなり、イーヴィルアギトと戦っていた時と同じくドルドと共にいたアギトと戦っていた。

 輝龍がストームランスを振るうと巨大な竜巻が現れ、ドルドたちを飲み込んだ。

 

 「くっ!」(ドルド)

 

 ドルドは背中の翼を広げて竜巻の渦から飛び立つが、残っていたアギト二人はその場で足止めされてしまう。

 ヴァルキリーが竜巻の中にいるアギトたちに向かってエネルギーを限界以上にまで貯めて暴発寸前のブルーライフルの銃口から巨大な青色のレーザーを発射した。

 ブルーライフルから放たれた青い閃光は竜巻の中心にいたアギトを竜巻ごと消し飛ばした。それを見たドルドは初めて目の前にいる相手がただのリントではなく自分と同じかそれ以上の力を持っていることが理解できた。

 

 「バカな。リントがそこまでの、アギトたちが肉体を残さず倒されるなど。」(ドルド)

 

 目の前の光景が全く信じられないドルド。その動揺は自分の知っているリントに目の前でアギトを容易く屠った輝龍とヴァルキリーの存在が全く信じられなかったからだ。そして、相手の二人が自分の力が敵わない相手であることを理解したくなかったからだ。

 

 「ふざけるな!!」(ドルド)

 

 ドルドは翼を広げそのまま輝龍とヴァルキリーに迫る。だが、

 

 ≪ストームライムスカッシュ!≫

 

 戦極ドライバーを輝龍が操作。ロックシードからエネルギーを供給されたストームランスを引き、向かってくるドルドに向かってその穂先を突き出した。

 

 「グアアア!!」(ドルド)

 「はっ!」(輝龍)

 

 ストームランスの穂先はドルドの腹部、グロンギのベルトが巻かれている場所に深々と刺さっていた。

 

 「リントどもめ!我が王が!クウガを取り込み、究極の闇をも超えた最強のアギトが全てを滅ぼす!この世界も他の世界も全て破壊しつくす!」(ドルド)

 「ああ。なら、あんたの王と戦うさ。」(輝龍)

 「私達のいる世界を守る。私達の大切なものを傷付けようとするなら私達は最後まで戦う。」(ヴァルキリー)

 

 ドルドは痛みを感じながら最後に怨嗟を込めた言葉を吐く。だが、輝龍とヴァルキリーはそれを真正面から受け止め、戦うことを言った。

 

 「グウウ、ガアアア!!」(ドルド)

 

 ドルドは最後に断末魔の咆哮を上げて爆散した。

 だが、ここで終わりではない。全てはまだ始まったばかりである。そして、イーヴィルアギトと戦う仮面ライダーアギトの目前では途轍もないことが起こっていた。

 

 

 Next episode Coming soon

 




 戦いの最中で変化を遂げたイーヴィルアギト。その力は対峙する仮面ライダーアギトをも凌駕する。
 そして、明らかになる大樹の肉体の真実。

 


 「グオオオオアアアアアアアアアアア!!!!」

 輝ける龍はその輝く鱗の下から全てを焼き尽くす灼熱の熱血を迸らせ真の姿を見せる。
 
 


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仮面ライダー輝龍 第2話

side輝龍(大樹)

 

 俺とマドカの目の前でアギトたちを率いていたグロンギ、ドルドは死んだ。奴の言っていた究極の闇を超えたアギト、そいつがこいつらの長でたぶん十三異界覇王の一人だろう。

 

 「究極の闇って?」(ヴァルキリー)

 

 マドカが俺に尋ねた。俺の朧気になり始めている記憶からその事について話し出す。

 

 「究極の闇、グロンギたちの言うところの大量虐殺を行う者のこと。俺の知っている究極の闇はダグバのことだったけど。それがアギトの力を持った人物だったなんて。」(輝龍)

 

 アギトの力は本来グロンギとはあまり関係がない。ただ、アギトの力は進化し続けていく力。それゆえに最終的にクウガとグロンギと比較すると究極の闇と同等の力を得るということはそうあり得ない話ではない。だが、それはあくまで仮面ライダーを知っている人物たちが各作品を同列に見た時という条件であってアギトとクウガが全く同系統の仮面ライダーということではないし、この二つの仮面ライダーに限らず仮面ライダー全般に言えることで。要は究極の闇を超えたという表現は本来のアギトにはあまり使わないということである。

 

 「とりあえず、奴のボスに会えばそのこともはっきりするだろう。まずは小父さんたちの所に戻ろう。」(輝龍)

 「うん。」(ヴァルキリー)

 

 最初にこのアギト殲滅作戦を考えた小父さんたちの所に戻ろう。ここにいる俺とマドカが担当した場所に居たアギトたちは既に倒されている以上は残る必要もなし。

 俺はすぐにマドカと一緒に山を下り始める。ただ、この時点ではこの後に対峙する相手が俺の予想を超えていたということを思いもしなかった。そして、その後に分かる俺の体の秘密にも。アギトたちの戦いで俺は俺の知らない真実にたどり着くことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side3人称

 仮面ライダーアギトバーニングフォームとイーヴィルアギトの戦いは仮面ライダーアギトの優勢に進んでいた。

 シャイニングカリバーをバーニングフォームの尋常ではない力で振るう仮面ライダーアギトの攻撃をイーヴィルアギトはストームペガサスボウガンによる遠距離攻撃で何とかしのごうとするもののバーニングフォームが纏う炎で圧縮空気弾は仮面ライダーアギトに当たる前に消滅してしまい、そもそもシャイニングカリバーを振るうことで防御も行う仮面ライダーアギトにまともに攻撃を当てること自体が難しかったのだ。

 数度目に振るったシャイニングカリバーがイーヴィルアギトが持つストームペガサスボウガンを切り裂いた。

 

 「ハア!!」(仮面ライダーアギト)

 

 シャイニングカリバーの刃が燃え盛る炎に包まれた。仮面ライダーアギトは炎に包まれたシャイニングカリバーを大振りに振るいイーヴィルアギトの体に叩きつけた。バーニングフォームの必殺技の一つであるバーニングボンバーがイーヴィルアギトに炸裂した。

 

 「ああああああああああ!!」(イーヴィルアギト)

 

 シャイニングカリバーの刃を受けたイーヴィルアギトはそのまま全身を炎に包まれていった。

 かつては人類の創造主である闇の力、テオスの僕である水のエルをあと一歩のところまで追い詰めた技であるバーニングボンバーは容易くイーヴィルアギトを打ち倒せるほどの威力は十分にあった。だが、それはあくまで仮面ライダーアギトが過去に相対した敵を倒せるのに十分であるということだけで異世界を、自分の住む世界を滅ぼした十三異界覇王の一人であるイーヴィルアギトには当てはまらないものだった。

 イーヴィルアギトを燃やしていく爆炎は徐々に小さくなっていく、正確にはイーヴィルアギトが有するモノリス・ワイズマンとオルタリングに酷似した器官へと吸収されていったのだ。

 

 「っ!」(仮面ライダーアギト)

 

 それを見ていた仮面ライダーアギトは再度シャイニングカリバーを振るい、今度こそイーヴィルアギトを倒そうとする。だが、その振り下ろした刃は変化したイーヴィルアギトによって止められてしまった。

 仮面ライダーアギトはさらに力を込めるが止められたシャイニングカリバーは全く動くことは無く、それどころかイーヴィルアギトに掴まれている場所から徐々にひびが入りだしていた。

 シャイニングカリバーが破損したのを見た瞬間に仮面ライダーアギトはシャイニングカリバーを離し、今度は右手に高熱の炎を発生させて拳を握り締める。バーニングフォームの必殺技であるバーニングライダーパンチを仮面ライダーアギトは放った。

 放たれた拳もイーヴィルアギトによって止められた。そして、バーニングフォームが纏う炎をイーヴィルアギトはどんどんと吸収していく。仮面ライダーアギトは拳を引こうとするが力が増していっているイーヴィルアギトは決して離すことは無かった。

 

 「グッ、くっ!」(仮面ライダーアギト)

 

 バーニングフォームの持つ炎の力が瞬く間に吸収されてしまい、仮面ライダーアギトは基本形態であるグランドフォームへと戻ってしまった。

 バーニングフォームの力を吸収したイーヴィルアギトはその姿を大きく変化させ始めていた。刺々しい形状の甲殻は刺々しいフォルムを残しながらも丸みを帯びて巨大化していく。特に胸部の甲殻は内部にある筋肉がより発達するのに合わせ大きく分厚くなっていく。分厚い甲殻に覆われていない大腿部などは筋肉の発達が顕著に見える。胸部のオルタリングに酷似した器官は黄金色から紫色へと変わり、赤黒い爪が出現した。そしてその姿は漆黒から毒々しい赤紫色へと変化した。名付けるならばイーヴィルアギトバーニングフォーム、その肉体からは背後の景色がゆがむほどの熱気が放たれ、モノリス・ワイズマンから走る亀裂からは空気すらも焦がす黒炎が上がっていた。

 仮面ライダーアギトはそのまま引き下がり、クロスホーンを展開、必殺のライダーキックを放つ。

 イーヴィルアギトはそれをそのままバーニングライダーパンチで迎え撃つ。

 激突する両者の必殺技、その激突の余波は周囲の山林を根元からことごとくなぎ倒されていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ズドーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 篠ノ之神社では倒れたアギトの処理に追われていた正則たちが山の方から聞こえてきた爆発音を聞いた。

 

 「おい、山の方からとんでもねえ音がしたぞ。」(柳韻)

 「ねえ、正則君。まだ、皆が降りていないんじゃない?」(雪子)

 「だとしたら...。秋人さん、俺、皆の様子を見に...。」(正則)

 

 正則がそう言ったところで既に秋人が山の方へ走っていた。

 

 「いや、秋人さん!?お義父さん、雪子さん、俺行ってきます!」(正則)

 

 正則は秋人を追って走り出す。同じ頃の山の中腹付近では合流した輝龍、ヴァルキリー、白銀が爆音に気付く。

 

 「山のふもとか。」(白銀)

 「山のふもとって神社の近くだよね。お父さんたち、大丈夫かな。」(ヴァルキリー)

 「まず、行こう。それにこの爆音だと俺達のいるこの場所に近いし。何かあれば連絡も来るはず。」(輝龍)

 

 輝龍たちはそのまま山道を急いで下っていく。そして、彼らは仮面ライダーアギトとイーヴィルアギトが戦闘を行っていた場所へとたどり着いたのだった。そこは彼らの記憶にある山の風景ではなく、その一帯だけがまるで爆発が起きたかのように木々が倒れて山肌が露出していた。

 

 「翔一さん!!」(輝龍)

 

 そして、そこには変身が解除されて生身の姿となっている翔一に悠然とした姿でたたずむイーヴィルアギトバーニングフォームだった。

 輝龍たちは急いで翔一とイーヴィルアギトの間に入る。

 輝龍と白銀は自身の持つアームズウェポンをイーヴィルアギトに向ける。

 

 「翔一さん、私に掴まって!」(ヴァルキリー)

 「ありがとう、マドカちゃん。」(翔一)

 「マドカ!翔一さんを連れて先に行け!!」(輝龍)

 

 輝龍と白銀がヴァルキリーと翔一の盾となりながらイーヴィルアギトを牽制する。それを見てイーヴィルアギトが距離を詰めて攻撃を始めた。

 イーヴィルアギトの攻撃を真正面から受ける輝龍と白銀。だが、輝龍が持っていたストームランスはイーヴィルアギトの拳を受けていともたやすく半ばから折れてしまった。そして、白銀の方はバニシングブレードが破損することは無かったもののバニシングブレードを大きく弾かれ、その衝撃で両腕に強い痺れが走っていた。

 輝龍は相手となるイーヴィルアギトが凄まじい力を持っていることをたった一度攻撃を受けて見抜き、自身の中での警戒レベルを大幅に上げた。

 

 『ゴールドドラゴンフルーツ!』

 『ゴールドドラゴンフルーツエナジー!』

 「一夏!時間稼ぎ、頼む!」(輝龍)

 「分かった!」(白銀)

 

 輝龍は二つのロックシードを解錠し、戦極ドライバーと左腕に装備されている解放手甲デュアルギアにそれぞれセットする。

 輝龍が準備を進める間に白銀はイーヴィルアギトを相手にバニシングブレードを振るう。

 イーヴィルアギトは白銀の攻撃を両腕の甲殻で受け止めながらストレートパンチを放つ。その隙に輝龍が戦極ドライバーとデュアルギアを操作した。

 

 ≪ソイヤ!ゴールドドラゴンアームズ!黄龍、アップライジング!≫

 ≪ミックスアップ!デュアルゴールドアームズ!金・龍・覚・醒!≫

 

 輝龍は基本形態のゴールドドラゴンアームズの強化形態、仮面ライダー輝龍デュアルゴールドアームズへとアームズチェンジした。

 輝龍は強化前と比べて幅広の大剣になった光龍剣、光龍剣・剛を担ぎ、白銀が抑えているイーヴィルアギトへと走り出した。

 輝龍は走り出して担いでいた光龍剣・剛を一気にイーヴィルアギトに振り下ろす。

 イーヴィルアギトは白銀のバニシングブレードを右手で受け止めており、戻って来た輝龍の攻撃を空いている左腕の甲殻で受け止めた。

 

 ≪シルバーエナジースカッシュ!≫

 ≪デュアルゴールドスカッシュ!≫

 「うおおおお!!」(輝龍)

 「はああああ!!」(白銀)

 

 輝龍はデュアルギアを、白銀はゲネシスドライバーを操作。ロックシードから供給されるエネルギーをアームズウェポンにチャージする。光龍剣・剛の刃が金色に、バニシングブレードの刃が銀色に輝きだした。輝龍とは白銀はそれぞれ武器を振るい、イーヴィルアギトを切り裂こうとする。

 金色に輝く幅広の刃に銀色に輝く細身の刃、その二つを前にしてイーヴィルアギトは右手を前にかざしたのだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side秋人(切嗣)

 「待ってください!秋人さん!」(正則)

 「正則君、急いで!!」(秋人)

 「いや、急いでますよ!?」(正則)

 

 険しい山道を僕たちは急いでいた(とは言うものの後ろから着いてくる正則君を半ば置いて行くような形だけど)。ここまでの間で僕は今までにない程に嫌な予感を感じていた。

 正直なことを言えばまだ大樹たちが中学生だった頃、大樹の調子が回復した直後にあったインベスとの遭遇。その日に嫌な予感がしなかったわけじゃない。毎回毎回、仕事をしている時や家に居る時にどこか背筋に嫌な緊張が走る、そいう嫌なことが起きるということを子ども達が戦っている間はいつも感じていた。

 子ども達が戦う中で僕も愛理もあの日からいつか子ども達が死んでしまうのではないかと不安にさいなまれ続けていた。毎回毎回、子どもたちが帰って来た時はちゃんと戻って来たと安心していた。

 僕はかつては刑事だった。当然ながらにそういう荒事に関わり続けて不幸なことが起きることが決してあり得ないということは理解している。そして、そういった荒事に関わり続けるという決心をした子ども達を誇りにも思っている。それでも、それでも僕も愛理も千冬と一夏、万夏が傷ついて欲しくないし、大樹に至ってはそういうことに関わる宿命で避けられないにしてもこれ以上の苦しみを味わってほしくない。

 親だからこそ、あの子たちに父親にさせてもらった僕だからこそ子ども達に厳しい道を歩ませたくなかった。それが、あの子たちにとって避けられない運命だとしても。

 そういった思いに加えて、抑えきれない焦燥感、焦り、恐怖が子の胸に渦巻いている。今まで以上の荒れ狂う嵐のような感情は僕を突き動かすのに十分だった。

 山道を登る中で僕は変身した万夏が津上さんを連れて下ってくるのが見えた。

 

 「万夏!」(秋人)

 「お父さん!!」(ヴァルキリー)

 「はあ、はあ、待って。」(正則)

 

 僕は急いで万夏の所へ行く。見たところ、翔一さんは消耗しているらしく足取りもどことなくしっかりしていなかった。

 

 「なあ、万夏ちゃん。どんな奴が居るんだよ。アギトたちは既に倒しているだろ。」(正則)

 「分かんない。でも、今大樹と一夏兄さんが戦っている相手はたぶん...。」(ヴァルキリー)

 「あいつがきっとこの世界に来たアギトたちのリーダーだと思います。」(翔一)

 

 万夏に肩を貸してもらっている翔一君が話し出した。だとすると今大樹と一夏が戦っているのは話に合った別世界からやって来た敵。ここまでの話なら相手は二人だと敵わないかもしれない。幸いにも相手は神経断裂弾が効く可能性はある。そして、残っている神経断裂弾は今持っている拳銃に入る分だけの1発だけ。すぐに拳銃を撃てるようにしておく。

 

 「万夏は正則君と一緒に下りてくれ。父さんはこのまま上に行く。」(秋人)

 「待って、お父さん!私も!」(ヴァルキリー)

 「降りるなら秋人さんですよ。俺と万夏ちゃんで上に行きます。」(正則)

 

 僕の意見にそう言う万夏と正則君。二人の提案はありがたいし、従うべきだろう。でも、

 

 「いや、万が一にでも大樹と一夏が戦っている奴が神社の方へ行けば、柳韻さんたちが危ない。それにこの前の復活したアギトの一件もある。僕は様子見に徹するから二人は翔一さんを連れて下りてくれ。」(秋人)

 

 何があるか分からない以上は戦力を集中するわけにもいかない。それに、今万夏を一緒に連れていけばきっとこの後に起こるかもしれないことは見せられない。

 僕の言葉に万夏も正則君もいきなり是とはしなかったが二人はそのまま山を下り始める。その中で万夏が振り返った。仮面で観えないけど、たぶん不安そうにしている。僕は一度手を振って山道を登りだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side三人称

 「こいつ、全然歯が立たねえ!」(白銀)

 「動きは素人まで行かなくてもあまり戦闘慣れしてないけどな。それ以上に肉体そのものが丈夫なせいで攻撃が通らない。」(輝龍)

 

 イーヴィルアギトと戦闘を続ける輝龍と白銀。だが、二人の攻撃はバーニングフォームに進化したイーヴィルアギトにあまり効果はなく、二人もかなり連戦ということで消耗していた。

 

 「隙を作って逃げるぞ。これ以上は無理。」(輝龍)

 「分かった。」(白銀)

 

 いつもであればここで言い合いになるのだがお互いにかなり消耗していることで撤退することに意見が一致していた。

 一方のイーヴィルアギトは胸部のモノリス・ワイズマンに似た器官から熱気を放出し始める。それだけではなくイーヴィルアギトの全身の甲殻に走る亀裂から熱気だけではなく炎まで放出され始めた。輝龍と白銀はそれが危険な予兆と即座に判断、その場から離れようと背を向けて走り始める。

 

 「オオオオオオ!!」(イーヴィルアギト)

 

 その瞬間、イーヴィルアギトから強烈な熱と炎が一気に噴き出され、その場を吹き飛ばして燃やした。

 イーヴィルアギトから放出された爆発を受けて輝龍と白銀はそのまま吹き飛ばされてしまった。

 強化形態になっていた輝龍は大きなダメージを受けながらも変身が解除されることは無かった。だが、白銀は元々がスピードに秀でた性能であることから変身が解除されてしまっていた。

 

 「一夏!」(輝龍)

 

 地面に転がり、痛みに呻く一夏を心配して声を掛ける輝龍。ダメージを受けて起き上がれない一夏に、爆発で放出した炎と熱を右手に集中させ始めるイーヴィルアギト。

 

 「ハアアアアアア!!」(イーヴィルアギト)

 

 赤黒い炎を纏いながらバーニングライダーパンチを一夏に放ったイーヴィルアギト。一夏は数秒後に襲うであろう一撃から目をつぶった。

 

 「一夏!!」(輝龍)

 

 近くに居た輝龍は全力で走り、一夏を突き飛ばす。そして,イーヴィルアギトのバーニングライダーパンチが輝龍の当たり、大爆発を起こした。

 

 「大樹!!」(一夏)

 

 一夏がそう声を掛けるも、爆炎が晴れるとそこには胸にイーヴィルアギトの右腕が貫通した大樹の姿があった。イーヴィルアギトが大樹の胸から腕を引き抜くと大樹はそのまま地面に倒れ伏してしまう。

 イーヴィルアギトは今度は一夏にターゲットを変え、血に濡れた右手を握りしめてまたバーニングライダーパンチを放とうとした。だが、イーヴィルアギトの背後で大樹が、死に体で死を待つばかりの大樹が立ち上がっていたのだ。その腰に装着されていた戦極ドライバーが外れて地面に落ちるとそこにはオルタリングが、アギトの力を持っている証であるベルトのオルタリングが巻かれていたのだ。

 大樹の左胸に空いた大きな穴は徐々にふさがり始める。そして、オルタリングから光が放たれ、大樹の姿は仮面ライダーアギトバーニングフォームに似た、だが肩部のアーマーが巨大な角のような形状となり、オルタリングからは地面に触れる程のスカートが伸び、背部のアーマーには火山のような形状の巨大な突起がまるで翼のように二つが天に向かって伸びていた。全体にオレンジ色に黒のカラーリングが生える姿の仮面ライダーアギトがそこにいた。

 

 「大樹、なのか。」(一夏)

 

 そう呼びかける一夏に大樹は答えることは無かった。その次の瞬間に膝をつき、傷が治った胸のあたりを抑え出したからだった。

 

 「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」(大樹)

 

 

 

 

 

 

Nextepisode Comingsoon.

 




 突如としてアギトに変貌した大樹。その姿は燃え盛るマグマの如くだった。激痛の中で幼き日の記憶を思い出す大樹は自身の肉体の真実に気づく。

 新たな咢の出現に呼応して力を高めるイーヴィルアギト。そして、翔一もついに最強の力を見せる。

 「誰も人の未来を奪うことは出来ない。」

 悪しき力を得たアギト、光り輝く進化を遂げたアギト、太古より受け継いだ灼熱のアギト。三龍は集い、雌雄を決する。


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仮面ライダー輝龍 第3話

長らくお待たせしました。最新話、どうぞ。


side三人称

 「グオオオオオオアアアアアアアアア!!」(大樹)

 

 突如、その姿を変えた大樹。その姿はアギトそのものであり、その姿は目の前の敵のイーヴィルアギトを思わせるが燃え盛るマグマの様な色をしており、周囲の木々を自然に発火させる程の高熱を発していた。

 大樹はその姿になってからずっと大穴が空いた左胸を、すでに傷がふさがっているそこを抑えて痛みに叫んでいた。

 

 「ッ!ッ!ガアアアアア!!」(大樹)

 

 その声は痛みに苦しんでいるようであり、見ている一夏もその様子が尋常では無いことを察する。

 

 「大丈夫か!大樹!」(一夏)

 

 そう一夏が呼び掛けるも大樹はうずくまって痛みに耐えているだけで返事を返すことは無かった。イーヴィルアギトは右手に巨大な双刃の剣、イーヴィルシャイニングカリバーを出現させて大樹へと近づいた。

 

 「大樹!危ない!!」(一夏)

 

 一夏の呼びかけに大樹は反応を見せるも先にイーヴィルアギトが近づく方が先だった。

 

 「お前を殺さないと、五代さんが。だから...。」(イーヴィルアギト)

 

 ザシュッ

 

 その音が一夏の耳に届いた数瞬の後に大樹の絶叫が聞えた。

 

 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」(大樹)

 

 大樹の右腕が切り落とされており、大樹は切り落とされた自分の腕を、その傷口を抑えていた。

 

 「大樹!!」(一夏)

 

 一夏がそう呼びかけると一夏の耳に山の下の方から足音が聞こえてきた。

 

 「一夏!無事か!?」(秋人)

 「父さん!大樹が!」(一夏)

 

 拳銃を構える秋人は一夏の元に駆け寄る。

 

 「あの姿、護龍なのか。」(秋人)

 「父さん、大樹が大変なんだ。」(一夏)

 

 目の前で絶叫する大樹の姿を見て驚く秋人。一夏は痛み体に鞭を打ってロックシードを手に立ち上がろうとしていた。

 

 「一夏は下がって。父さんが奴の気を引いているうちに逃げるんだ。」(秋人)

 「そんな!父さんを置いて行けるか!それに大樹がやられているのに逃げれるかよ!!」(一夏)

 

 秋人は拳銃を即座に撃てるようにして一夏に言った。一夏は当然ながら秋人の言うことを聞くことは無い。自分も戦おうとしていた。

 

 「たぶん、大樹は大丈夫だよ。()()()()()()()()()()()。」(秋人)

 

 秋人のその言葉に一夏は大樹の方を見る。そこにはイーヴィルアギトが再度イーヴィルシャイニングカリバーを振り下ろそうとしていた。

 

 「大樹!」(一夏)

 

 一夏がそう叫ぶと同時だった。

 イーヴィルアギトはイーヴィルシャイニングカリバーを振り下ろした。だが、その刃を大樹は切り落とされたはずの右手であらん限りの力で握りしめていた。

 大樹はイーヴィルアギトからイーヴィルシャイニングカリバーを力ずくで奪い取り、完全に治った右腕の拳をイーヴィルアギトの顔面に叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

side大樹

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

 

 

 

 

 一夏を庇ったその瞬間から全身を激痛が走り続けていた。無我夢中だったからどうなっているのか全く分からなかった。ただ、一夏が呼び掛けたのだけは分かったけどその次の瞬間からまた今までに感じたことが無い激痛が走った。その直後に全身がまるで焼かれているように熱くなってどういうわけかそのことになのか傷ついたことになのか怒りがふつふつと湧き出してきた。そのまま耐えていると抑えきれないほどに怒りの炎が燃え上がりだしていた。

 今までにそんなことは一度もなかった。そのまま耐えきれそうになかったからすぐ近くにあったものを握った。この怒りの感情をどうにか発散させないと正気が保てなさそうだった。気付けば目の前に翔一さんが戦っていたあのアギトが居た。丁度いいと思った。こいつ相手ならきっと怒りを発散させても大丈夫だと、そう思った。

 

 「ガアッ!!」(大樹)

 

 俺は怒りに任せてそいつの顔面を殴り飛ばす。あいつはそのまま吹っ飛んでいったけど、そんなのは別に気にすることは無い。 

 その場をジャンプして地面に寝転ぶそいつの上に飛び乗る。そこから馬乗りになって何度も何度も何度も何度も拳を振り下ろす。こいつは両腕をクロスさせてガードするけどそんなのは大して関係ない。そのまま何度も何度も怒りに任せて殴る。その度に拳が痛むが気にせずに殴る、殴る、殴る、殴る。いつの間にかガードが外れたそいつの顔面にあらん限りの力で殴る。

 殴るたびに怒りの炎が燃え上がる。痛みが走るたびに怒りの炎が燃え上がる。とにかく、殴らないと、こいつを攻撃しないと、この怒りを発散させないと自分が何をするのか分からない。今のままだときっと大切な人達を傷付ける。絶対に、絶対にそんなことがあってはいけない。そんな事が起きれば俺はきっと正気を保てない。だから、だから...。

 

 「このまま死ねえええええ!!」(大樹)

 

 あらん限りの力を込めてこいつの顔面に右手の拳を叩き込んだ。その瞬間に、脳裏に急に何が流れた。それは...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side3人称

 実際のところは大樹は拳を振り下ろすことはなかった。右手の拳を振り上げたところで止まっていた。

 先程まで怒りの感情のままにイーヴィルアギトを激しく殴り続けていたが急に何かに気付いたのか困惑しているようで完全に攻撃の手が止まっていた。

 

 「今の、一体。」(大樹)

 

 そう大樹に隙が生じた瞬間にイーヴィルアギトは上体を勢いよく起こし、大樹にパンチを浴びせた。大樹は咄嗟に右手をかざしてパンチを受け止めていたためにダメージは無かったが馬乗りからそのまま立ち上がってしまいイーヴィルアギトの逃亡を許してしまった。

 

 「待て!」(大樹)

 

 大樹はその後を追おうとしたが急に膝から崩れ落ちて変身が解除してしまった。大樹は自分がかなり消耗していることに初めて気付いた。そのまま山道を下りてどこかへ遠く行ってしまったイーヴィルアギトの後ろ姿を見ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あの姿は護龍、柏葉家に伝わる守護神。僕はそう玲人さんに、大樹のお父さんに聞いた。」(秋人)

 

 その日の昼頃。大樹は篠ノ之神社にある道場でマドカ、一夏と共に話を聞いていた。

 

 「護龍の始まりは何か超常的な力を持った人間だったと玲人さんは考えていた。護龍のあの姿は、大樹が変身したあの姿は間違いなくアギトだった。恐らく護龍の超常的な力は超能力だったんじゃないかな。」(秋人)

 

 ここまでの話を聞いて大樹は俯いて何かを考えていた。

 

 「さっき、思い出したって言うか。俺、小さい頃の病気だけど。病気の進行が止まって治ったわけじゃないと思う。」(大樹)

 「どういうことだよ。」(一夏)

 「もしかすると俺、一度本当に死んでいるかも。」(大樹)

 

 大樹のその言葉に一夏が怪訝な表情になった。マドカは大樹の言葉にまさかと言った反応だった。大樹の言葉に秋人はやはりと言った表情を見せた。

 

 「大樹の超能力はたぶんだけど回復能力に関するものだと思う。死に瀕した時にだけ発揮される驚異的な自己再生、それが幼い頃の病気を完治させたと思う。」(秋人)

 

 大樹の言ったことから秋人も自分の見解を話し出した。

 

 「死に際になって初めて覚醒する驚異的な自己再生能力。大樹の病気の進行はこの町に移った時点で終末医療の対象になる、たぶん毎日襲い来る激痛をかなり強い鎮痛薬で治めるレベルの手の施しようがないレベルだったと思う。その時に、どのタイミングかは分からないけど移植した護龍の力で肉体が健康な幼児と全く変わらないレベルまで回復したんだろう。」(秋人)

 「あの時に、急に頭の中でどこかの情景が浮かんだ。たぶん、俺が初めて護龍に、アギトに変身した時だったと思う。あそこの、あの山にある研究所の地下で起きた記憶だと思う。」(大樹)

 

 そこまで言った時の大樹の表情から秋人は深く追求することはしなかった。

 

 「なあ、大樹。あの姿になっている時ってどうなんだ?体は平気なのか?」(一夏)

 「う~ん、身体はたぶん大丈夫。ただ、あの姿になっている間は全身に痛みが、それも我慢できないレベルの痛みが常時全身を襲っている。」(大樹)

 「それは大丈夫じゃないでしょ!!」(マドカ)

 

 マドカが身を乗り出して大声で言う。そのままマドカは大樹に詰め寄る。

 

 「それって病気が治っていないかもしれないってことじゃない!変身する度に体がボロボロになっているかもしれないでしょ!!」(マドカ)

 「いや、まだ何も「一夏兄さんは黙って!!」…………。」(一夏)

 

 一夏が口を挟もうとしたがマドカが一蹴する。それに対して一夏はそのまま正座をして黙った。

 

 「たぶん、病気の方はもう大丈夫だよ。」(大樹)

 「根拠は?」(マドカ)

 「これ。」(大樹)

 

 そう言って大樹は右腕の袖を捲った。そこは先程の戦いでイーヴィルアギトの切り落とされたはずの右腕である。そこには切り落とされたことで生じた切り傷の後がうっすらと残っていた。その傷跡もよく目を凝らさないと分からないほどにうっすらとしていた。

 

 「さっきの戦いであのアギトに切り落とされたけど全く違和感なく動かせる。俺の体の他の傷も痕は薄くなっていてそれも完全に治っている。だから、幼い頃にアギトに変身しているならその時も全く同じことが起きたと思う。」(大樹)

 

 自身の身に起きた過去の出来事、そのことの真実が垣間見えたことで大樹の中にあったあるわだかまりの解消されていた。

 

 「きっと、それを分かったうえで父さんと母さんは俺にアギトの力を移植したんじゃないのかな。」(大樹)

 「ああ、きっとそうだと思う。でも、あの姿には、護龍に変身するのは控えた方が良いかもしれない。」(秋人)

 「暴走の危険性が大きいから、だよね。さっき、変身した時には怒りの感情が抑えきれなかった。俺も皆のいる前で変身するのはかなり危険があると思うからなるべく変身しないようにする。」(大樹)

 「制御のヒントは柳韻さんから聞いてみる。そもそも、篠ノ之神社は柏葉家とかかわりが深い神社だから護龍に関するものも何かあるはずなんだ。」(秋人)

 

 そう秋人が言うと大樹は近くにあった鞄から以前に柳韻から渡された古文書の写しが書かれたノートを出した。

 

 「前に先生から借りたノート。今の状況と似たことが書かれてあるらしくて。」(大樹)

 

 大樹はそのノートを秋人に渡す。秋人はそのノートを開いて最初のページから目を通し始める。その表情は真剣そのもので彼のその表情を大樹たちは初めて見た。

 

 「大樹、しばらく借りても良いかな。」(秋人)

 「うん、大丈夫。」(大樹)

 

 大樹は秋人のノートを渡す。それから、4人はその場を解散。マドカは大樹のそばに居ようとするが大樹は翔一に話しをしに行くと言ってそれを断った。それから大樹は翔一の元へ訪ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side大樹

 翔一さんは既に回復していて篠ノ之神社の台所に居た。

 

 「あれ、大樹君。どうしたの?」(翔一)

 「あの、少し良いですか?」(大樹)

 

 俺の言葉に持っていた包丁を置いた翔一さん。俺は意を決して翔一さんに問うた。

 

 「翔一さんは、自分の肉体が普通ではないことで不安になったことは無いんですか。」(大樹)

 

 俺の問いに対して翔一さんはその表情を変えた。先程までの柔和な笑顔が消えて、真剣な表情になった。でも、すぐにあの笑顔を見せて「う~ん、そんなに不安に感じたことは無いかなぁ。」と言った。

 

 「俺、アギトに変身できるようになった時に記憶をなくしちゃって。だから、今までの俺が思い出せないなら今の俺を受け入れようって思ったんだ。それに、この力で大切な人を守れた。だから、俺はこの力を、アギトの力を受け入れている。」(翔一)

 

 そう言った翔一さんの表情は柔らかな笑顔のままその心の内が透けて見えるのではないのかという程に俺の心に突き刺さった。

 

 「大樹君はやっぱり不安かい?」(翔一)

 「まあ。普通じゃないかもしれないってずっと考えていたけど。いざ、答えが出るとそれはそれでやっぱり。」(大樹)

 

 ここじゃない別の世界。仮面ライダーもISも創作物だった世界に生きていた時の記憶はもうほとんどが薄れていた。それでも、薄れていてもその時の感情も、思ったことも覚えている。その中で俺が思ったのは、俺の体は既に普通の人間とは違うものになっていたということを知って俺がいの一番に思ったのは人間ではなくなった自分への大きな不安だった。

 今までも兄貴の所為で周りからひどい扱いを受けて疎外感そのものは感じていた。ただ、俺の周りにはマドカ、一夏、千冬姉ちゃんに小父さんと小母さんたちがいたから周りの俺に対する扱い自体はそういうものとして受け止めていたからそこまで不安を掻き立てることはなかった。

 俺にとって大きな不安なのは自分がこれ以上大切な人達から大きくかけ離れた存在になってしまうのではないのかということだ。俺は既に人間ではない、それがアギトであればなおさらこれから先その不安が現実のものになる可能性が高い。そうなってしまった時に、俺は自分の心を保てないのが怖い。

 

 「よし、これ食べてよ。」(翔一)

 

 翔一さんがそう言って渡してきたのはさっきから作っていたサンドイッチである。中身を見ると野菜だけが挟まっている。

 

 「なんですか、これ。」(大樹)

 

 失礼だとは思うけど口に出てしまった。だって、きゅうりと大根の薄切りしか挟んでないんだよ。肉とかなしで野菜も漬物、って言うかピクルス?みたいだし。

 

 「俺の店で出してるサンドイッチ。からしマヨネーズを塗ったパンにキュウリの浅漬けに大根の千枚漬けを挟んだんだ。」(翔一)

 「すごい、不思議チョイス。」(大樹)

 

 改めてこういう料理を渡されるとすごくこの人の発想って独特だよね。普通、漬物を挟む?サンドイッチに?でも、渡された以上は食べないと失礼だし、味はたぶん大丈夫だろうけど。

 

 「い、いただきます。」(大樹)

 

 俺は数秒ほどサンドイッチを見て一気にガブリついた。口の中で咀嚼するときゅうりの浅漬けの塩気に大根の千枚漬けの甘酸っぱさがからしマヨネーズを塗ったパンと好相性。パンは軽くトーストしてあって、漬物二つもシャキシャキザクザクの歯ごたえが楽しい。

 

 「お、おひしひ。」(大樹)

 

 率直な感想が自然と口から出た。ただ、食べながらだからすごく行儀は悪いけど。

 

 「きゅうりの浅漬けだけどただ塩を振るだけじゃなくて濃いめの出汁醤油に付けてあるんだ。それに合わせて大根の千枚漬けはお酢を強めにしているんだ。そのままだとパンに合わないから特性のマヨネーズにからしを混ぜて焼いたパンに塗ってあるんだ。」(翔一)

 

 翔一さんの説明を聞いているどうか別としてムシャムシャムシャムシャとサンドイッチを食べる俺。その食べっぷりを見た翔一さんは笑いながら俺に新しいサンドイッチを手渡す。それを俺はまた食べて、食べて、とにかく食べた。

 しばらく食べると不思議と心が落ち着いていた。

 

 

 

 「じゃあ、大丈夫だね。」(翔一)

 

 翔一さんの言葉が何を意味するのか、即座に分かった。俺はそのまま翔一さんと一緒に神社を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side三人称

 篠ノ之神社の本殿では秋人が柳韻に例のノートを見ながら話していた。

 

 「制御ねえ、まあ資料の整理は雪子の方が慣れているから何か知っているかもしれねえな。」(柳韻)

 「何かわかれば良いんだ。少なくとも先代の護龍についてほんの少しでも分かれば。」(秋人)

 

 本殿の方から二人は神社の御神体などに関わる資料を保管している倉へと向かっていた。

 

 「それで、大樹の変わった姿ってえのがそれか。」(柳韻)

 「たぶん。」(秋人)

 「なんで、男衆は遅いのよ!!」(雪子)

 

 話しながら歩いていた秋人と柳韻に掛けられたのは雪子の怒鳴り声だった。

 

 「私に力仕事を何でも任せんじゃないわよ!!バカ兄貴!!」(雪子)

 「おう、バカだが。」(柳韻)

 「それで、護龍について何か分かりましたか?」

 「もう。」(雪子)

 

 雪子は奥から出した資料を見せる。

 

 「たぶん、これよ。でも、暴走とかは書かれてないわよ。」(雪子)

 「まあ、書かれてあるもんを確認するだけだ。」(柳韻)

 「兄さんには聞いていないわよ。」(雪子)

 

 雪子から手渡された資料を見始める秋人。その資料はかなり古く、その書かれている字は古い書き方で書かれていたので読むのに一苦労だった。秋人が苦戦しているのを見た柳韻が代わりに読み始める。

 

 「この資料には今から200年前に居た護龍について書かれてある。恐らく、死んだ柏葉夫妻が大樹の奴に移植した護龍の力の大本はこの資料の護龍だったろうな。」(柳韻)

 「その護龍について何か書かれてありますか?」(秋人)

 「秋人が言ったようなマグマのような姿については書かれていねえな。基本的には山吹色、今でいう金色の姿が基本だった見てえだな。」(柳韻)

 「そう、ですか。」(秋人)

 

 柳韻の言葉に秋人が肩を落とす。だが、柳韻はそのまま資料を読みだす。

 

 「だが、この護龍が怒りに飲まれた時は村一つが無くなったって書いてやがる。その様は燃え盛る焔の如しって残されていることから大分ヤバい状態になったらしい。それがもしかすると大樹の変身したあの姿ってことだろうな。」(柳韻)

 「制御する、そもそもその状態にならないっていうことは書いていないの?」(雪子)

 「それは書かれていねえな。ただ、双璧を為す蒼き龍の巫女が沈めたとしか残っていねえな。」(柳韻)

 「蒼き龍の巫女?」(秋人)

 「それしかわからん。秋人の方で何か心当たりはないのか?」(柳韻)

 「蒼き龍の巫女...。」(秋人)

 

 秋人はかつて大樹の父、玲人と話した記憶を思い出していた。その中でマドカに対して行ったあることが脳裏をよぎった。

 

 「まさか、あの時に言っていて魔法石がそうなのか?」(秋人)

 「心当たり、あるんだな。」(柳韻)

 

 柳韻の言葉に秋人がうなずく。

 

 「停めてあるザルバにも聞いてみる。もしかすると万夏が鍵になるかもしれない。」(秋人)

 

 秋人はそう言って資料を雪子に渡す。

 

 「もう、良いの?」(雪子)

 「はい、ありがとうございます。」(秋人)

 

 秋人は倉を出ると神社裏にある駐車場へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これで終わりだ。」(イーヴィルアギト)

 

 東京拘置所、そこにイーヴィルアギトこと別世界の津上翔一が居た。別世界におけるアギトたちの始まりの場所。凶悪犯罪者が霊石に適合した結果、誕生したのが今回の事件を引き起こしたアギトたちだった。その扉の前に立つ彼はそのまま新たに手にした力を発揮して東京拘置所の敷地内へと入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「先代の護龍は一人では戦っていなかった、そう玲人さんは考えていたんだな。」(秋人)

 「たぶんだけどな。先代護龍の遺体、玲人の奴は即身仏って言ってたがそれと一緒に祭られていた魔法石が何かしらの封印の要石だと考えていた。」(Z.A.L.V.A)

 

 秋人は駐車場に泊めていたZ.A.L.V.Aに蒼き龍の巫女と関わりがありそうなことを聞いていた。

 

 「それが万夏に移植した魔法石、ということなんだろ。」(秋人)

 「ああ。その魔法石だがただの宝石ってわけじゃない。それは玲人からも聞いているだろ。」(Z.A.L.V.A)

 

 かつて、マドカも大樹と同じように普通の子どもとは違って肉体に問題を抱えていた。大樹のような大病と言うわけでは無かったがある事件と関係の深いマドカはかなり体が弱かった。それこそ、あまりベッドの上から動けないほどに。その彼女が人並みに動けるように、それどころか姉千冬を彷彿させるほどの活躍をISではしているのだ。そのことについては普通ではないことを秋人も春奈も薄々勘付いては居た。

 

 「旧約聖書に出てくる海の怪物、リヴァイアサンが封じ込められている、そう聞いていた。」(秋人)

 「まあ、間違ってはいねえな。正確にはその伝説の元になった怪物、ファントムのリヴァイアサンがあの魔法石に封じられた。いや、正確にはあの魔法石に宿っていたって言うのが正しいな。」(Z.A.L.V.A)

 

 Z.A.L.V.Aは秋人の問いに答えていく中でさらに話を続ける。

 

 「あの魔法石に宿っていたリヴァイアサンは先代の護龍と共に戦っていた、というよりはその護龍と関係の深かった人物の精神世界に居た奴らしくてな。そいつが護龍が暴走した時にリヴァイアサンの力を使ったんじゃないかって玲人の奴は言ってたぜ。」(Z.A.L.V.A)

 「リヴァイアサンにそう言った力が、相手を鎮静化させる力があったのか?」(秋人)

 「さあな。だけど、その力を使うためにウィッチドライバーを作ったって話だからな。それを取りに来たんだろ?」(Z.A.L.V.A)

 

 ザルバの後部にある荷台部分から青色の手形に似たバックルが現れる。

 

 「これがウィッチドライバー。」(秋人)

 「他にも魔法を使うための指輪もあるぜ。」(Z.A.L.V.A)

 

 さらに6種類の指輪、ウィザードリングがウィッチドライバーが出た直後に現れた。全てを取り出した秋人にザルバが語り掛ける。

 

 「さて、これで俺の役目を終わったぜ。」(Z.A.L.V.A)

 「ザルバ、一体...。」(秋人)

 「すべてを渡し終えたら俺は完全に消える、そう玲人の奴がプログラムしたからな。」(Z.A.L.V.A)

 「そんな!!」(秋人)

 「俺の体は使えるが俺が出来るのはここまでだ。達者でな。」(Z.A.L.V.A)

 

 画面に出てきたのはプログラムの完全消去の進行を示す表示であった。

 

 「お前と出会って、まあ楽しかったぜ。後は頑張れよ。」(Z.A.L.V.A)

 「ザルバ!待て!」(秋人)

 

 秋人がそう言うもののザルバのプログラムは完全に消去されてしまった。あとに残されたのは物言わぬ鋼のバイクのみ。かつて、大樹たちが知らぬ中で激しい日々を過ごした秋人。秋人にとってザルバは間違いなく共に戦った仲間であった。

 

 「...相変わらず、勝手に。」(秋人)

 

 そういう秋人の表情には悲しみの色があった。だが、秋人はそのままザルバだったバイクに手をやった。

 

 「ありがとう。これからは大丈夫だ。」(秋人)

 

 秋人はそのままウィッチドライバーを持って神社の境内へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東京拘置所は阿鼻叫喚のまさに地獄絵図だった。イーヴィルアギトは次々と拘置所内に居る犯罪者たちを血祭りにあげていく。

 

 「辞めろ!辞めてくれえええええ!!」

 

 グシャッ!

 

 「ヒイイイイイイイイ!!」

 

 ブシャッ!

 

 「あああああああ!!」

 

 ボンッ!

 

 悲鳴が上がるたびに増える死体。すでに拘置所内には生きている人間が一人も存在しなくなった。それでもなおイーヴィルアギトは止まらなかった。

 

 「まだだ。このままじゃあ、ダメだ。もっともっと五代さんを苦しめるやつをコロサナイト。ヒトリモノコラズニコロサナイト。」

 

 漆黒のその姿が徐々に歪に変化していく。ここまでに変身したフレイムタイタンフォーム、ストームペガサスフォーム、バーニングフォームのそれぞれの特徴を得ながらも甲虫らしさを色濃く有した姿であるイーヴィルトリニティフォームへと変化した。

 

 「コワサナイト、コワサナイト、コワサナイト、コワサナイト、コワサナイト!!」(イーヴィルアギト)

 

 イーヴィルアギトはクラッシャーを展開、口内に幾本にも生えている牙をぎらつかせる。

 イーヴィルアギトは両手に武器を出現させて辺り一面を瓦礫へと変えた。

 

 

 

 バイクを走らせていた大樹と翔一が東京拘置所から飛び出したものに気付いた。その飛び出したものを追うために大樹と翔一はバイクの進む方向を変えた。

 

 イーヴィルアギトは東京拘置所から場所を変え、新宿へと来た。都庁の前に降り立ったイーヴィルアギトはそのまま破壊衝動のままに暴れ出した。

 

 「グオオオオオオアアアアアアアアギヤアアアアアガアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」(イーヴィルアギト)

 

 最早獣同然の咆哮を上げながら暴れるその姿は既に元々の人を思わせることは無い。元は別の世界に居た津上翔一である彼は悲運の人生を辿っていた。その果てに精神は崩壊、その身に宿った力は歪な進化を遂げてその世界をアギト以外が生存できない荒廃した世界へと変貌した。そして、この世界もその破壊衝動のままに自分の世界と同じ荒廃した世界へと変えようとしていた。

 イーヴィルアギトが暴れる中でついに大樹と翔一がその場に到着した。

 

 「大樹君、行くよ!」(翔一)

 「はい!!」(大樹)

 『ゴールデンドラゴンフルーツ!』

 「「変身!!」」

 ≪ソイヤ!ゴールドドラゴンアームズ!黄龍、アップライジング!!≫

 

 大樹は仮面ライダー輝龍に、翔一は最強の進化形態である白銀に輝く仮面ライダーアギトシャイニングフォームへと変身した。二人は変身を終えるとそのままイーヴィルアギトに向かって走り出した。

 輝龍は光龍剣を振るい、イーヴィルアギトに斬りかかる。

 アギトシャイニングフォームは流れるような連撃でイーヴィルアギトを攻撃していく。

 

 「ガアアアアアッ!!」(イーヴィルアギト)

 

 バーニングフォーム由来の高い防御力を有する甲殻に全身を覆われているイーヴィルアギトは輝龍とアギトシャイニングフォームの攻撃をものともせずに反撃を行う。

 フレイムタイタンソードとストームペガサスボウガンを召喚して力任せの斬撃と全てを吹き飛ばす烈風で輝龍とアギトシャイニングフォームを攻撃する。

 輝龍は光龍剣でフレイムタイタンソードの重い斬撃を受け流し、ストームペガサスボウガンの烈風を軽々と躱していく。

 

 「コワス、コワスウウウウウウ!!ゴダイサンヲクルシメルヤツハスベテ!!」(イーヴィルアギト)

 

 既に正気を失いかつての光の名残を護る、いや独占したいという彼自身ですらも気付けなかった歪な思いのままに暴れるイーヴィルアギト。それを見た輝龍は意を決した様子でロックシードを閉じて変身を解除、戦極ドライバーを外したのだった。

 

 「大樹君!?」(仮面ライダーアギト)

 「翔一さん、最悪の時は止めてください。」(大樹)

 

 そう言うと大樹は両腕を胸の前でクロスさせ、腰の前まで下げた。その瞬間に大樹の腰にアギトシャイニングフォームのものと酷似した、赤い部分が黒色に銀色の部分が橙色に変化したオルタリングが出現した。オルタリングからブオンブオンと音が鳴る。クロスした両腕を開き、左の拳をオルタリングのボタンの近くへ、右手を前へと突き出した。

 

 「変身。」(大樹)

 

 大樹はオルタリングの左右のボタンを押した。その瞬間にオルタリングから強烈な光が放たれ、大樹の姿はイーヴィルアギトの前で変貌した仮面ライダーアギトヴォルカニックフォームへと変身した。

 

 「ぐっ!ウウウ!!ハアッ!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 アギトヴォルカニックフォームは一瞬痛みに呻いたが気合の声を発してイーヴィルアギトに向かって走り出した。

 

 「うおおおおお!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 「ハアアアアアア!!」(イーヴィルアギト)

 

 イーヴィルアギトは全てを吹き飛ばす烈風を、全てを打ち砕く剛剣をアギトヴォルカニックフォームに放つ。

 攻撃が当たるたびに血しぶきが上がり、傷が高熱と共に治るアギトヴォルカニックフォーム。そのまま右手を強く握りイーヴィルアギト目掛けて拳を撃ちだした。




 アギトヴォルカニックフォーム、アギトシャイニングフォーム、イーヴィルアギト。3体のアギトによる戦いは激化していく。
 激化する戦いの中でアギトヴォルカニックフォーム、大樹はまたも自身の中で燃え上がる怒りの制御に苦しむ。

 「大丈夫、一人でなんてさせないから。」

 蒼き龍の巫女、その力を受け継ぐマドカがその戦場へ。

 「変身!」
 ≪チェンジオーシャン!ザブーン、ザブーン、ザブーン!≫

 熱きマグマを癒す大海の魔法使いが現れる。


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仮面ライダー輝龍 第4話

 前回の投稿から時間が経ってすみませんでした。プライベートの方で色々と予定があって、落ち着いて執筆したのが10月の終わりから。また、展開の流れから1万字を超える長文になってしまいました。
 長らくお待たせしました。どうぞ。


side三人称

 「うおおおおお!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 大樹が変身したアギトヴォルカニックフォームはイーヴィルアギトにその鉄拳を叩き込む。その一撃は強化されたイーヴィルアギトですらもその場から数メートルほど後ずらせた。さらに、反撃の隙を与えずに2度目、3度目と何度も拳を叩きつけていく。

 

 「ウガアアアアア!!」(イーヴィルアギト)

 

 イーヴィルアギトが持つフレイムタイタンソードの鍔に当たる部分が6本に展開した。その瞬間からフレイムタイタンソードの刃が赤黒い炎に包まれ、その刃をアギトヴォルカニックフォームに振り下ろす。

 フレイムタイタンソードの刃がアギトヴォルカニックフォームの肉体に深々とめり込んだ。

 

 「ぐっ!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 「大樹君!!」(アギトシャイニングフォーム)

 

 アギトシャイニングフォームがヴォルカニックフォームに駆け寄ろうとする。

 イーヴィルアギトはフレイムタイタンソードを引こうとするがそれをアギトヴォルカニックフォームはフレイムタイタンソードとイーヴィルアギトの腕をあらん限りの力で動かせないように抑え込んだ。

 

 「翔一さん!このままやってください!速く!俺が正気でいられるうちに!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 アギトヴォルカニックフォームはそう言ってイーヴィルアギトが身動きが取れないようにその場に抑え込んだのだった。

 

 「っ!」(イーヴィルアギト)

 「逃がすかよ!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 アギトシャイニングフォームはその場で必殺技を放つためにその場で構えた。その瞬間に空中に蒼銀のアギトの紋章が浮かび上がる。

 

 「っ!」(アギトシャイニングフォーム)

 

 アギトシャイニングフォームは紋章に向かって走り出した。そして、そのまま空中へ跳び上がり紋章を蹴り抜いた。加速された飛び蹴りは身動きが出来ないイーヴィルアギトに向かっていく。シャイニングライダーキック、アギトシャイニングフォーム最強の必殺技であるそれはアギトヴォルカニックフォームによって抑え込まれてるイーヴィルアギトに決まった。

 

 「やった、か。」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 斬られた傷を抑えるアギトヴォルカニックフォーム。その視線の先にはシャイニングライダーキックを受けて倒れたイーヴィルアギトが居た。だが、イーヴィルアギトはその状態から立ち上がった。

 

 「ああ、やっぱりか。」(アギトヴォルカニックフォーム)

 「大樹君、ごめん。」(アギトシャイニングフォーム)

 「いえ、翔一さんが謝ることじゃないです。寸でのところであいつ、武器を盾にしていたんで。」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 イーヴィルアギトの様子を見て話す両者。アギトヴォルカニックフォームの言葉を示すようにイーヴィルアギトが持っていた武器は完全に破壊されていた。

 

 「ウオオオオオオオオオオオオ!!」(イーヴィルアギト)

 

 立ち上がったイーヴィルアギトはその場で咆哮をあげた。それは衝撃波を伴い、周囲の建物を文字通り激しく揺らした。その咆哮による衝撃波でイーヴィルアギトの全身を覆う甲殻が全て吹き飛んだのだ。

 土埃や建物の破片を伴った衝撃波を両腕を上げて防いだアギトシャイニングフォームとヴォルカニックフォーム。彼らが両腕を下ろすとイーヴィルアギトの姿はまたも変わっていた。その姿は先程までと違い二人のアギトとそう変わらないくらいの姿に、むしろ基本形態のグランドフォームに近くなっていた。だが、その姿は漆黒のままであり、その双眼も光を写さない漆黒に染まっていた。

 変化したイーヴィルアギトを見た瞬間にアギトの力が警告を発していたのを感じた。

 アギトシャイニングフォームとヴォルカニックフォームはそのままイーヴィルアギトに対してファイティングポーズを取った。ほぼ、直感的にそうした二人だったがそれを見たイーヴィルアギトはそのまま二人に向かってただ歩み始めただけだった。

 一瞬、虚を突かれた二人だったがその瞬間にイーヴィルアギトは二人に触れる程の距離まで詰めてきたのだった。

 

 「何!?」(アギトシャイニングフォーム)

 「っ!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 二人のアギトが動揺したその瞬間にイーヴィルアギトは目にも止まらぬ速さで攻撃を加えたのだった。

 宙に浮かぶほどにダメージを受けた二人のアギト。攻撃の瞬間はアギトシャイニングフォーム=翔一もアギトヴォルカニックフォーム=大樹も分かった。だが、分かったがその時には既に数え切れないほどの攻撃を受けた直後だった。

 変身が解除されることは無かったものの即座に立ち上がることが出来ないくらいにダメージを受けていた。そこへさらに追撃を行うイーヴィルアギト。先にアギトヴォルカニックフォームがその追撃を受けた。

 

 「っ!ガハッ!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 「大樹君!!」(アギトシャイニングフォーム)

 

 高く宙へ上げられ、地面に強く叩きつけられた。

 受けた傷が回復する能力を持つアギトヴォルカニックフォームでもダメージそのものを完治している訳じゃない。傷がふさがったとしてもその時に受けたダメージは消えずに残っているのだ。

 

 「っ、グッ!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 地面に倒れ伏せるアギトヴォルカニックフォーム。その身を案じてアギトシャイニングフォームが駆け寄ろうとするがその前にイーヴィルアギトが立ちはだかる。

 

 「...。」(イーヴィルアギト)

 

 無言のままにアギトシャイニングフォームと対峙するイーヴィルアギト。またしてもイーヴィルアギトは瞬時に距離を詰めたのだった。だが、アギトヴォルカニックフォームと違い、距離を詰められたその瞬間にアギトシャイニングフォームはイーヴィルアギトの攻撃を加えたのだった。

 イーヴィルアギトが距離を詰めた瞬間にストレートパンチ、そこから頭部を狙ったハイキック、体勢が崩れた瞬間にフックのコンビネーションと流れるような連撃を放つアギトシャイニングフォーム。だが、その攻撃を受けても微動だにしないイーヴィルアギト。それでもアギトシャイニングフォームは攻撃を叩き込み続ける。戦場となっている街中で鈍い衝撃音が響き渡る。

 

 「ハアッ!!」(アギトシャイニングフォーム)

 

 一際強烈なストレートパンチがイーヴィルアギトの胸部に突き刺さった。

 イーヴィルアギトはその場から数メートルほど吹き飛んだ。吹き飛んで空中へ身を投げ出されたが空中で身をひるがえし、何事もなく着地した。

 イーヴィルアギトはアギトシャイニングフォームを見据えると今度は先程まで受けていた攻撃をそっくりそのままアギトシャイニングフォームへ放ったのだ。その攻撃はどれも重くアギトシャイニングフォームでも防戦一方になるだけだった。

 アギトシャイニングフォームは倒れているアギトヴォルカニックフォーム=大樹の身を案じるが今はただイーヴィルアギトの攻撃を防ぐので手いっぱいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side大樹

 痛い

 

 まただ。

 

 痛い

 

 また、この感覚だ。

 

 痛い

 

 最初にこの姿に変身した時もそうだった。

 

 痛い

 

 全身に痛みが走り続ける。

 

 痛い

 

 まだ、変身してすぐは耐えきれないほどじゃない。

 

 痛い

 

 だけど、変身している時間が長引くほどに痛みは増していく。

 

 痛い

 

 痛みが増すだけじゃなく、それに比例してどうしようもない程に怒りが沸き上がっていく。

 

 痛い

 

 怒りはどんどん沸き上がって燃え盛る。

 

 痛い

 

 痛みと共に怒りは燃え上がって俺の理性を焼き尽くしていく。

 

 痛い痛い

 

 まだ、耐えられた。

 

 痛い痛い痛い

 

 でも、あのアギトの攻撃を受けた後からは耐えられる許容量を大幅に超えてしまった。

 

 痛い痛い痛い痛い痛い

 

 落ち着くのを待っていたけど、怒りが収まることは無かった。

 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

 

 地面に倒れている間も痛みと共に怒りが沸き上がって抑えきれない。

 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い怒痛い痛い痛い怒痛い痛い怒痛い怒痛い怒痛い怒怒、痛い怒怒怒怒怒、痛い痛い痛い痛い怒痛い怒怒痛怒怒怒怒痛い痛い怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒痛い痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ウオオオオオオオオオオワアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side3人称

 突如として雄たけびを上げたアギトヴォルカニックフォーム=大樹。その肉体からは周囲を焦がすほどの熱気が放出されており、そのまま立ち上がったのだ。

 

 「フーッ!フーッ!フーッ!ウオオオオオ!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 アギトヴォルカニックフォームはそのままイーヴィルアギトに飛び掛かる。

 

 「大樹君!?」(アギトシャイニングフォーム)

 「フン!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 アギトシャイニングフォームに攻撃をするイーヴィルアギトにつかみかかり、力づくで地面に叩きつけたアギトヴォルカニックフォーム。それだけではなく、そのまま馬乗りとなって何度も何度も拳を叩きつけていく。

 迸り沸き上がる怒りのままに攻撃をしていくアギトヴォルカニックフォーム。それと同時に彼から放出される熱もより熱くなっていく。

 

 「死ね!死ね!死ねえええ!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 響き渡る生々しい打撃音。イーヴィルアギトの顔面に亀裂が走り出しており、あらん限りの力でアギトヴォルカニックフォームが自身の拳を叩きつけていることが容易に窺い知れることが出来る。

 全く防御することなくただ攻撃を受け続けていたイーヴィルアギト。だが、アギトヴォルカニックフォームの何度目かの拳をイーヴィルアギトは両手でつかんだ。さらに、アギトヴォルカニックフォームの体勢を崩して倒し、今度はアギトヴォルカニックフォームの頭部に一撃を、パンチを入れた。顔面を地面に叩きつけるように撃ち込まれた拳はアギトヴォルカニックフォームの頭部を地面とサンドイッチさせることで大きなダメージを与えた。

 

 「グッ!ぬおおおおあああ!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 背中側で抑え込まれている左腕がミシミシと音を立てるのにも関わらず、力ずくで立ち上がるアギトヴォルカニックフォーム。ミシミシと音を立てる左腕を、イーヴィルアギトに掴まれている左腕をそのまま無理矢理力づくで大きく振りまわしたのだった。

 イーヴィルアギトは振り回される中でアギトヴォルカニックフォームの左腕を掴んだまま両足でさらに関節を固めたのだった。そして、イーヴィルアギトはそのままアギトヴォルカニックフォームの左腕を締める力を強めた。

 

 ボキ!!

 

 何が折れた音が周囲に響いた。

 

 「ッ!痛!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 アギトヴォルカニックフォームは体勢を崩し、左腕を抑える。その瞬間にイーヴィルアギトは地面に降り立っており、イーヴィルアギトが掴んでいたアギトヴォルカニックフォームの左腕はあらぬ方向へ折れ曲がっていた。

 

 「ハアッ!!」(アギトシャイニングフォーム)

 

 アギトシャイニングフォームはシャイニングカリバーを召喚、それを二本の剣からなるツインモードへと変える。

 シャイニングカリバーを両手に持ち、目にも止まらぬ速さでイーヴィルアギトを攻撃するアギトシャイニングフォーム。光の斬撃がイーヴィルアギトの肉体に幾筋もの傷跡を着けていく。

 イーヴィルアギトから受けた傷が回復したアギトヴォルカニックフォームは天高く跳び上がり、イーヴィルアギトの頭部目掛けて踵落としを放った。さらに、アギトヴォルカニックフォームはそこから何度も何度もイーヴィルアギトの頭部を踏みつけていく。ドゴッという鈍い音が何度も響き、さしものイーヴィルアギトもこれには無事では済まないと思われた。だが、アギトヴォルカニックフォームの踏みつけを躱してイーヴィルアギトが起き上がった。

 

 「俺にはもう、五代さんしかいない。あの人の笑顔を守るために、あの人を傷つけるものは全て俺が殺す。」(イーヴィルアギト)

 

 そう言ったイーヴィルアギトに対して怒りの感情のままに戦っていたアギトヴォルカニックフォームは冷静さを取り戻した。その話したことから察知できた歪さを見抜いたから。

 

 「へえ。それでそのゴダイって人は生きているのか?」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 そして、ここで一か八かの賭けに出たのだった。それこそ下手をするととんでもないことになりかねない賭けに。

 

 「ああ、五代さんは生きている。だから、俺はあの人を護る。」(イーヴィルアギト)

 「違うだろ。」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 イーヴィルアギトの言葉を遮ってアギトヴォルカニックフォームが話し出す。

 アギトシャイニングフォームはヴォルカニックフォームの目的が分からずにその様子を見守っていた。

 

 「お前はただその人に依存しているだけだ。護る?何を言っているんだ。お前が守りたいのはその心の拠り所を誰にも触れられたくないからだろ。」(アギトヴォルカニックフォーム)

 「違う。」(イーヴィルアギト)

 「おおむねストーカーだろ、あんた。」(アギトヴォルカニックフォーム)

 「違う。」(アギトヴォルカニックフォーム)

 「そもそも犯罪者を、それもとんでもないくらいに危険な犯罪者を数え切れないほど率いている奴の言い分なんて誰が信じるかね。」(アギトヴォルカニックフォーム)

 「違う。」(イーヴィルアギト)

 「お前の守りたいもの、それはあんたの心、あんた自身だろ。」(アギトヴォルカニックフォーム)

 「違う!」(イーヴィルアギト)

 

 ここまでのやり取りでアギトヴォルカニックフォームはあることを言うことにした。自身も過去に、幼い頃に何度も言われた言葉を。

 

 「さては、そのゴダイって人をお前が殺したんじゃないか。」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 その言葉を発してアギトヴォルカニックフォームは自身の中にあるいまだに荒れ狂う怒りの炎を抑えていた。そして、その言葉を投げかけられたイーヴィルアギトは沈黙のままに直立不動になっていた。

 

 (頼むぞ、今のままでただ怒ってくれ。くれぐれも完全に壊れた怒り方はしないでくれ。でないと、こっちが本当に我慢できなくなるし、こっちもうまく戦えるか分からないからな。)(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 アギトヴォルカニックフォームは背筋に冷たい汗が流れたようなそんな感覚を覚えた。

 沈黙したイーヴィルアギト。だが、耳を澄ますと黙っているのではなく、聞き取ることも難しいくらいに小さな声で何かを言っていた。

 

 「..................................................................................」(イーヴィルアギト)

 

 その姿を見て嫌な感覚を覚えるアギトヴォルカニックフォーム。そして、ここまでの様子を見ていたアギトシャイニングフォームも自身の本能が目の前のイーヴィルアギトに対して最大級の警戒をしていることが否が応でも分かった。

 

 「違う、俺は、何も、でも、これで、五代さんは、俺の、俺じゃない、俺だ、俺じゃない、俺だ、俺じゃない、違う、俺は、ただ、五代さんを守りたくて、五代さんだけだった、五代さんだけだったのに、俺には五代さんしか、違う、違う、違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!違う!俺じゃない!俺は!俺は!!」(イーヴィルアギト)

 

 今までにない程に混乱した様子を見せるイーヴィルアギト。その様子を見たアギトヴォルカニックフォームはその様子から自身の言ったことが当たっていたことを察した。そこで完全に大きな隙を見せたイーヴィルアギトとの距離を一気に詰めて限界まで引き絞った右手の拳を突き出した。自らが感じた危機感を払拭するために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 篠ノ之神社から車に乗り、現場へ急ぐ秋人。助手席にはマドカが乗っており、そのマドカの膝には秋人がZ.A.L.V.Aから受け取ったウィッチドライバーとウィザードリングがあった。

 

 「ねえ、お父さん。本当に、うまくいくの?」(マドカ)

 「分からない。でも、大樹のアギトの力を抑えるのは、たぶん。マドカの中に居るファントムの力が居る。その力を安全に使うにはウィッチドライバーと指輪が必要だって僕は玲人さん、大樹のお父さんから聞いた。」(秋人)

 

 車を運転する中で話す秋人とマドカ。マドカの表情はどこか重苦しいもので、一方の秋人の表情も険しいものだった。

 

 (玲人さん、マドカに移植したのは治療の他に大樹のアギトの力に対するカウンターもあるんだろう。でも、単なるカウンターではなく、きっと...。)(秋人)

 

 秋人は車を走らせる中で考えに耽る。そして、ホルスターに入ってある拳銃の重さを感じる。

 

 (きっと、今の大樹に最期の一撃を、あのアギトに最期を決めることはさせちゃダメだ。それは僕がやる。最後の1発で、大樹たちばかりに苦しい役目を背負わせない。)(秋人)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新宿都庁前、激しい戦いを続けているアギトヴォルカニックフォームとアギトシャイニングフォーム、イーヴィルアギト。だが、立っているのはイーヴィルアギトだけで他の二人は地面に倒れ伏していた。

 

 「あ、あ、あ、あ、あああああああああああああ!!俺は!俺は!!」(イーヴィルアギト)

 

 頭を抱え混乱する様子のイーヴィルアギト。その精神を現すようにその姿はどんどんと歪な物へと変わっていく。その姿はもうアギトのものとは程遠く、昆虫と人が混ざり合い、歪な怪人へと堕ちていった。

 そこへ、車を途中から乗り捨てていたと思われるマドカと秋人がやって来た。

 

 「何、あの怪人。」(マドカ)

 「既に人間では無いか。マドカ、ウィッチドライバーを使えるようにしておいて。お父さんは大樹と翔一君の援護に行く。」(秋人)

 

 秋人はそう言うとホルスターから拳銃を取り出して戦いの場のへと走って行った。

 

 「お父さん!!」(マドカ)

 

 走っていく秋人にマドカが呼び止めるが秋人はそのまま走って行ってしまった。

 マドカは渡されたウィッチドライバーを見つめて、意を決してそれを腰に当てた。

 

 

 

 

 

 

 

 倒れているアギトヴォルカニックフォームに駆け寄る秋人。

 

 「大樹!!大丈夫か!!」(秋人)

 「っ!痛!。」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 声を掛けるもののアギトヴォルカニックフォームは痛みに呻くだけだった。

 

 「秋人さん!あいつは危険だから大樹君を連れて逃げてください!!」(アギトシャイニングフォーム)

 

 アギトシャイニングフォームが何とか立ち上がり、秋人にそう言った。そして、シャイニングカリバーを携えてアギトシャイニングフォームはイーヴィルアギトに向かって行く。

 秋人はそれを見てアギトヴォルカニックフォームに肩を貸して、物陰へと移動する。

 

 「お、小父さん。」(アギトヴォルカニックフォーム)

 「大樹、まだ戦えるかい?」(秋人)

 「ああ、ちょっと休まないとキツイ。って言うよりもある程度冷静に話せるのが短いから。」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 自身の感情が爆発寸前であることを察しているアギトヴォルカニックフォームは自身の体を回復させることを優先することを考えていた。当然ながらその様子は秋人でもかなり消耗していることが見て取れた。

 

 「大丈夫。すぐに終わるよ。」(秋人)

 

 そう言って秋人は物陰から走ってしまった。その表情を見てアギトヴォルカニックフォームは秋人が何をするのかすぐに察した。

 

 「まさか、っ!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 痛む体に鞭を打ちアギトヴォルカニックフォームは立ち上がった。

 

 

 

 「たあっ!!はあっ!!」(アギトシャイニングフォーム)

 

 アギトシャイニングフォームはシャイニングカリバーを振るい、変貌したイーヴィルアギトに対して光速の攻撃を次々と繰り出していく。だが、変貌したイーヴィルアギトは半狂乱になりながら反撃をする。

 放たれた拳は斬撃を受けて切り裂かれるが即座に再生していく。より強靭になった腕を振るわれアギトシャイニングフォームのシャイニングカリバーが吹っ飛ばされる。

 素手になったアギトシャイニングフォームは変貌していくイーヴィルアギトに光速の連続攻撃を途切れることなく当てていく。

 戦いの様子を見る秋人は攻撃を受けるたびに変貌するイーヴィルアギトの様子から春奈を襲ったあのアギトのことを思い出した。

 

 (やはり、あのアギトも霊石の力で変身しているのか。あの姿、霊石の影響で肉体の再生が著しく高められている所為か。なら、これ以上の攻撃は奴を強化させる手助けにしかならない。やれるとしたら神経断裂弾。でも、最後の1発。確実に奴の霊石を破壊しなければ。)(秋人)

 

 秋人は様子を伺いながら拳銃に装填されている最後の神経断裂弾が弾倉に入っていることを確認する。イーヴィルアギトとアギトシャイニングフォームの戦いを見て、隙を伺う。

 徐々に、徐々に人から遠ざかるイーヴィルアギト。そのイーヴィルアギトの変貌に合わせるようにアギトシャイニングフォームの攻撃も激しさを増していく。

 

 「うわあああああああああああああ!!俺は!俺は!!何てことをおおおおおおおお!!うわあああああああああああああ!!」(イーヴィルアギト)

 

 イーヴィルアギトの脳裏には世界を滅ぼすまでの力を得たその瞬間がフラッシュバックしていた。始まりは、彼が心の支えにしていた五代雄介=クウガが彼の前に現れた時だった。イーヴィルアギト=津上翔一は普通に再会を喜んでいた。だが、五代雄介は違っていた。彼らの世界におけるメのグロンギ、ガリマは長い封印の中で人間とそう変わらない感情を得たのだった。そのガリマは五代雄介と惹かれ合ったのだ。だが、不幸なことに五代雄介に歪な執着心を見せるようになっていた津上翔一がガリマを殺害、津上翔一を操ろうとした警官駿河の手でガリマの遺体は警視庁の元で研究材料として扱われることになったのだ。

 ずっと、ガリマを殺した相手を追っていた五代雄介はどういった経緯で突き止めたのかは分からないがガリマを殺害したのが津上翔一であることを突き止め、彼の元へ真相を確かめに行ったのだ。この時、既に壊れ始めていた津上翔一はガリマを殺害を認め、あろうことかそれを五代雄介を守るためと言ったのだ。これに五代雄介は激怒した。

 五代雄介が激怒することに戸惑った津上翔一。本来であれば、壊れる前の彼であればそのことを知られた時点で罪悪感に苛まれ、五代雄介に真実を話したかもしれない。だが、この時には何もかもが遅かったのだ。

 五代雄介は大切な人を奪われた怒りを津上翔一に真正面からぶつけたのだった。そして、それが引き金となり津上翔一は自身の中の感情が荒れ狂う中で発狂、五代雄介の前にアギトとしての姿を見せたのだ。

 五代雄介は変貌した津上翔一の姿に驚愕を禁じえなかったが即座にクウガに変身したのだ。

 変身した両者の実力は拮抗しており、その戦いはかなり激しいものとなった。当然ながら警視庁に所属する五代雄介の協力者である一条薫もその騒ぎを察知して現場に向かった。当然だが駿河も同行しており、クウガの援護のためにアギトを発砲しようとした一条の妨害を行った。この戦いは結局のところはアギトの暴走ですべてが終わった。その結果、アギトはクウガの霊石を取り込みイーヴィルアギトへと変貌したのだ。

 イーヴィルアギトの精神は既に破綻している。そして、その半狂乱になったその瞬間にアギトシャイニングフォームは強烈なストレートキックをイーヴィルアギトの腹部に打ち込んだ。

 イーヴィルアギトはその場から数メートルほど下がり、動きが止まった。

 

 「っ!!」(秋人)

 

 ずっと機会をうかがっていた秋人がイーヴィルアギトの腹部の霊石を狙って銃の引き金を引いた。

 銃口から発射された神経断裂弾は狙いを外れることなくイーヴィルアギトの腹部の霊石に命中した。

 

 「っ、ギャアアアアアア!!」(イーヴィルアギト)

 

 神経断裂弾が命中した腰の霊石は内部から爆ぜ始めていた。連鎖的に全身へと広がる。傷が出来ると同時に傷の回復が行われるがその次の瞬間には別の場所が爆ぜていく。

 

 「秋人さん!?」(アギトシャイニングフォーム)

 「翔一君。神経断裂弾を奴の霊石に撃ち込んだ。どこまで効果があるかは分からないけど止めを頼む。」(秋人)

 

 冷静にイーヴィルアギトの様子を見る秋人はそうアギトシャイニングフォームに話す。全身から血を吹き出しているイーヴィルアギトは攻撃の矛先をアギトシャイニングフォームから秋人へと変えた。

 

 「うううううううああああああああ!!」(イーヴィルアギト)

 「秋人さん!」

 

 

 

side秋人(切嗣)

 やっぱり、仮面ライダーじゃない、柳韻さんや雪子さんのような力を持っていない僕がこういう場所に出るのは危険なのは承知していた。その所為で命を落とすことも当然理解していた。

 あのアギトがボロボロになりながら僕に向かってくる。あのスピードなら逃げる間もくれないな。

 春奈、愛理。ごめん。最後まで守ることは出来ないみたいだ。

 千冬。何かを隠しているのは分かっていた。でも、それをきっと打ち明けてくれるのを待っていたから。

 一夏。皆のことを守ってくれ。たぶん、頼まなくてもやるだろうけど。

 万夏。大樹と幸せに。いつも笑顔で居てくれ。僕の可愛い娘。

 大樹。こんな不甲斐ない父親でごめん。

 

 「辞めろおおおおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 大樹?

 

 

 

side大樹=アギトヴォルカニックフォーム

 小父さんが危ない。そう思った瞬間に、小父さんを殺そうとしているあいつに怒りが完全に振り切れた。今までにないくらいに怒りが全身を燃え上がらせる。そのまま俺は右手を固く握りしめた。

 誰にも、もう、俺の家族を失わせてたまるか。マドカ、千冬姉ちゃん、一夏、小父さんと小母さん、いや、父さんと母さんは俺が、俺が守る。家族を傷付ける奴は絶対に許さない!!

 視界が炎に包まれる。それでもあいつは分かっている。後は思い切りぶん殴るだけだ。

 

 「喰うらあええええええええええええええええええええええええ!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 

 

 

side3人称

 秋人を襲おうとしたイーヴィルアギトに肉薄するアギトヴォルカニックフォーム。その肉体には炎が上がり、右手は燃え上がるだけではなく曠劫と燃え盛り、光り輝いていた。

 

 「うおおおおおおおおおお!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 ヴォルカニックライダーパンチ、全てを燃やし尽くす一撃がイーヴィルアギトに炸裂した。

 

 「よし!」(アギトシャイニングフォーム)

 

 空中に浮いたイーヴィルアギトを見たアギトシャイニングフォームはその場で構えた。すると蒼銀のアギトの紋章が1つ、2つ、3つ、3枚の紋章がイーヴィルアギトに向かって並んだ。

 アギトシャイニングフォームは紋章に向かって走り出し、飛び出した。

 

 「ハアアアアアアッ!!」(アギトシャイニングフォーム)

 

 強化型のシャイニングライダーキック、それよりもより強力な必殺の一撃が崩壊していくイーヴィルアギトの霊石に決まった。

 

 「がっ、はっ!」(イーヴィルアギト)

 

 強烈な一撃を受けたイーヴィルアギトは肉体を崩壊させて爆散した。ついにアギトの首魁が倒れた。そのことに胸を撫で下ろすアギトシャイニングフォームと秋人。だが、この勝利の立役者の一人であるアギトヴォルカニックフォームはうずくまったままだった。

 

 「ハア、ハア、ウオオオオオ!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 アギトヴォルカニックフォームは咆哮を上げるとその場で暴れ始めた。

 

 「大樹!落ち着くんだ!!」(秋人)

 「大樹君!!」(アギトシャイニングフォーム)

 

 秋人が呼びかけ、アギトシャイニングフォームがアギトヴォルカニックフォームを抑える。だが、それでもなおアギトヴォルカニックフォームは暴れまわる。そのうちに秘めた怒りの炎のままに暴れていく。

 

 「何とかしないと。」(秋人)

 「お父さん、あとは私に任せて。」(マドカ)

 

 手立てを考える秋人に声を掛けたのはマドカだった。マドカの腰にはウィッチドライバーが装着されており、準備が出来ていることが分かった。

 

 「大丈夫、お父さん一人で何てさせないから。」(マドカ)

 

 そう言うとマドカは左中指に指輪をはめて、指輪の飾りを動かした。

 

 「変身!」(マドカ)

 ≪チェンジオーシャン!ザブーン、ザブーン、ザブーン!≫

 

 マドカの足元に青色の魔法陣が現れ、長大な大蛇のオーラが現れマドカの姿を変えた。

 青色のローブに、両手に輝く二つの指輪。頭部はサファイアのような宝石のようであり、魔女の三角帽子を思わせる衣装が目を引く。

 

 「仮面ライダーウィッチ。さあ、行くよ。」(ウィッチ)

 

 マドカ改め仮面ライダーウィッチがアギトヴォルカニックフォームの元へ歩みだした。




 暴走するアギトヴォルカニックフォームを止めるために新たなドライバーを手にしたマドカ。燃え盛るマグマの力を持つ龍を鎮めるべく蒼き龍の巫女がその神秘の力を振るう。そして、

 「まあ、皆まで言うな。」
 
 古の獣と契約を交わした魔法使い。

 「大丈夫、私も力を貸します。」

 数奇な運命をたどった魔法使い。

 「大丈夫だ。俺が最後の希望だ。」

 希望を持ちし指輪の魔法使いが姿を見せる。


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仮面ライダー輝龍 第5話

 2020年最後の投稿です。こちらも1万字オーバーとなっています。
 なんだかんだで描写と話にこだわるとなかなかコンパクトになりません。
 2020年、いろいろとありました。その中で私の作品を楽しんでいただきありがとうございました。
 それでは良いお年を!



side三人称

 マドカが変身した仮面ライダーウィッチはウィッチドライバーの左側にあるホルダーからオレンジ色のウィザードリングを取り出し、右手薬指に填まっていたウィザードリングと取り換えた。

 

 ≪チョーイイカンジ!コネクト!オ~ン!≫

 

 指輪をドライバーに読み込ませた仮面ライダーウィッチは魔法陣を召喚、魔法陣から杖型の武器であるウィッチランスケインを取り出した。

 

 「大樹、待ってて。今、楽にしてあげる!」(ウィッチ)

 ≪ルパッチタッチマジック!ハイタッチ!オーシャン!≫

 

 仮面ライダーウィッチはウィッチランスケインの手形に手を合わせた。その瞬間からウィッチランスケインに周囲から水が集まりだしていく。

 

 「ハアッ!!」(ウィッチ)

 

 仮面ライダーウィッチがウィッチランスケインを仮面ライダーアギトヴォルカニックフォームへと向ける。ウィッチランスケインに集まっていた水は空中で広がりそのままアギトヴォルカニックフォームを包み込んだ。

 

 「うおっと!」(アギトシャイニングフォーム)

 

 先程までアギトヴォルカニックフォームを抑えていたアギトシャイニングフォームは仮面ライダーウィッチがアギトヴォルカニックフォームを拘束した瞬間に離れたのだった。

 仮面ライダーウィッチはそのまま指輪を取り換える。

 

 ≪チョーイイカンジ!セデイション!オ~ン!≫

 「ハッ!」(ウィッチ)

 

 ウィッチは指輪からあふれ出てきた緑色の液体をアギトヴォルカニックフォームを拘束する水球へと放つ。二つの液体は混ざり合う。

 

 「ガアアアアア!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 アギトヴォルカニックフォームは水球の中で暴れまわるが徐々にだが動きが鈍くなり始めていた。

 

 「グッ、クッ。」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 徐々にだが獣のような狂乱は収まり、水球内で落ち着きを見せ始めるアギトヴォルカニックフォーム。それに伴って水球を弾けさせて解除するウィッチ。

 

 「はあ、はあ、はあ。」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 アギトヴォルカニックフォームは荒く呼吸し、オルタリングから光を発すると変身が解除された。

 

 「大樹!」(ウィッチ)

 

 それを見たウィッチも変身を解除して大樹に駆け寄る。

 膝をつく大樹に秋人と変身を解除した翔一が肩を貸して立ち上がらせる。

 

 「あ、えと、ありがとう。翔一さん、それと...。」(大樹)

 「ん?どうした?」(秋人)

 

 大樹が秋人に何か言おうとする。それに秋人が声を掛ける。

 

 「助けてくれて、ありがと。父さん。」(大樹)

 

 秋人に感謝の言葉を述べる大樹。だが、肝心の最後の言葉はかなり小さかった。

 小さかったものの、大樹の放った言葉は小さかったがそれはしっかりと秋人に届いていた。

 

 「ああ、大丈夫だよ。」(秋人)

 

 秋人はそう言うとそのまま前を向く。

 マドカが近づくと大樹は秋人と翔一の肩を借りずに立つ。

 

 「大樹!大丈夫!?」(マドカ)

 「ああ、ありがと。」(大樹)

 

 そういう大樹だったが体勢を崩してマドカに抱えられる。

 

 「ああ、ごめん。」(大樹)

 「良いよ。帰りはお父さんに送ってもらお?」(マドカ)

 「うん。」(大樹)

 

 こうして、十三異界覇王の一人であるイーヴィルアギトに関わる事件は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、篠ノ之神社にて。

 

 「あのね、ここはよその家よ。流石にそこでするのはどうなの?」(春奈)

 

 なぜかなぜか篠ノ之家の居間にて正座をして春奈に説教されている大樹がいた。

 

 「いや、あのさ、俺もダメって言ったよ。流石に箒の、束姉ちゃんのいるこの家でするのはダメだって。」(大樹)

 

 なお、正座はしているが弁明をしている大樹。その大樹に対して春奈は言うと大きくため息をした。

 

 「それでなんでしたの?我慢できなかったの?」(春奈)

 「それ、俺に言う!?俺、最後まで抵抗したのに!?」(大樹)

 「結局したならダメよ。」(春奈)

 「いや、襲われたの俺!」(大樹)

 

 まあ、速い話が余所様の家で致すことを致してのお説教だった。なお、これには一番の戦犯はお咎めなしだが。

 

 「まあ、良いわ。」(春奈)

 「何が!?何が良いの!?余所ん家で(ピー)したことをたった一人でお説教されて何が良いの!?」(大樹)

 「万夏にはあとで話すから。襲われただの抵抗しただのは結局やった以上は意味はないのよ。」(春奈)

 「すげえ、釈然としねえ。」(大樹)

 

 なお、この場合における大樹の心境はお叱りを受けていること自体はあまり文句はないのだが。

 

 「それであなたには罰を与えることにします。」(春奈)

 「いや、待ってよ。せめて家に戻ってからにして。」(大樹)

 「この話が終わった瞬間から私のことをお母さん、秋人君のことをお父さんと呼ぶこと。」(春奈)

 「............。」(大樹)

 

 春奈が言った罰は大樹にとってはあまり予想もしなかったものだった。なお、これは流石に、流石に心の中で、自身の中で織斑家の人々を家族と受け入れたもののこれをまともに口にするのは大樹にとってかなりのハードルだった。なお、これを拒否したところでまた別の機会で迫られるのは目に見えているのも分かっていた。

 

 「...はあ。」(大樹)

 

 天井を見上げて大きなため息を一つする大樹。しばし、考えること数分。

 

 「分かったよ、母さん。」(大樹)

 

 話題が終わる直前にさっさと言うということに決めた。大樹のその返答に春奈も驚いた。なにせ、こういったことでも頑なに距離を保っていた大樹がいきなりその距離を大きく縮めるようなことをしたのだ。

 大きな驚きの後に来たのは純粋な嬉しさが感じられてきた。それにつれて春奈は自分の視界が滲みだしていたことに遅れて気付いた。

 

 「ん、何?え?えっ!?」(大樹)

 

 そして、春奈は大樹を抱きしめていた。

 

 「良いから、今くらいは。あなたはいつもいつもそうやって遅いんだから。」(春奈)

 

 母として愛を注いできた。そのことが、欠片でも伝わっていたことに春奈は嬉しさを感じていた。

 

 「一番悩んで頑張って一緒に来たんだもの、こうでもしないとあなたが一生言わないじゃない。」(春奈)

 「ああ、その、うん。」(大樹)

 

 実の両親と死別して長い大樹。秋人と春奈から多大な愛情を受けている自覚はあった。それでも、久しぶりの母親からの抱擁はかなり気恥ずかしさがあったが。

 

 「あの、ありがとう。育ててくれて。」(大樹)

 「その言葉はまだ早いわよ。まだまだ一緒に居なさい。」(春奈)

 

 改めて、改めて大樹は、自分の家族を、居場所を手にした。それはとっくに手に入れていたもので彼がやっとそう認識したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side大樹

 小母さ、母さんとの話も終わって家に戻った俺達。家の方は束姉ちゃんと正則兄ちゃんが業者を頼んでくれたおかげですごくきれいになった。それと部屋の中を確認すると、まあ、減っていたよ、俺の持ち物。学園の新しい部屋に明らかに見慣れたものが送られていたからそうかもとは思っていたけど、まさか本当に送られているとは。久しぶりに見た部屋は今までに見た中で一番質素な部屋になっていた。いや、予想していたとはいえ、自分の部屋がまさかベッドと勉強机だけのあまりにも何もない部屋になっているなんて思わないじゃん!?あまりにも何もなさすぎて驚くことすらできなかったよ。いや、流石に何かしら娯楽の類は残っているでしょ、って思っていたいけどさ、こうまで何もないと逆に「まあ、良いか」とまで思っちゃうよ。

 話は片付けのことに戻すけど家の中はあの日アギトが現れた時からそのままで一夏、千冬姉ちゃんも加わって皆で後片付けに追われてた。まあ、家族6人でやればそれなりに速く終わるものだったからまだ良い方だ。庭の方の血痕とかは何にも残っていなかった。それくらいに本当にきれいになっていた。だから、束姉ちゃんにどんな業者を雇ったのかは怖くて聞けないと考えてしまった。まあ、聞く気も無いし、これについてはありがとうだけを言うだけにしておく。

 翔一さんはアギトたちが居なくなった以上はやることはないらしく、作り置きの総菜を作って母さんたちに渡した後は自分のお店に戻った。颯斗の方はと言うと色々と何とかしようとしているらしく、しばらくは土日は会えないらしい。

 それと、箒の家でマドカに襲われた(性的に)件についてだけど、まあいつも通りだった。でも、戦いが終わってからしばらくの間、倒れていた。幸いその日の夜には元気になって押し倒されたから問題にはしなかったが。

 マドカが使っていた新しいドライバー、それを使った後にそんな様子だから何か関係があるとは思うが。

 マドカのことの他は俺のアギトの力も問題だ。まだ変身して最初の2,3分なら正気を保てる。だけど、時間が経つにつれて全身を襲う痛みは強くなっていき、それに伴って怒りの感情の制御が利かなくなっている。ただ、変身して戦うにも怒りの感情が爆発したら多分敵味方の区別なく俺は暴れ続けるだろう。それを抑えるためにマドカの新しい力があるのだろうけど昨夜の様子を考えると正直なことを言えばあまり使わせたくない。

 あのアギトとしての姿に関係するかどうかは分からないけど、たぶんここまでに俺が使っているロックシードが変化したのは俺の中にあるアギトの力が一番の要因なんだろう。そうじゃなかったらヘルヘイムに由来するロックシードが変化するのに説明が着かない。

 

 「おい、大樹。手を動かせよ。」(一夏)

 「ん?ああ、うん。ごめんごめん。」(大樹)

 

 完全に手が止まっているところを一夏に注意された。ああ、そう言えば居間のものの整理をしながら考えていたから進行が遅くなっていたみたい。

 

 「どうしたんだ、考え事をして。」(一夏)

 「うん?ああ、まあ。色々。」(大樹)

 

 流石にこんなに手を止めていたら気になるよな。ただ、考えることが多すぎて話しきれないだろうし。たぶん、だけど考えていることを話したらなんとなくだけどお互いに言い合いになって終わりそうだから話さない。そもそも、何が良くて兄弟同然に育った幼馴染みに君の妹とセックスをしている時に気になったことがあってなんて話せるかよ。

 

 「なあ、俺に話してくれよ。」(一夏)

 「大丈夫だって。それほど重たいことを考えていたわけじゃあない。それとそっちは良いのか?一夏だって掃除をしていろって言われてるし。」(大樹)

 「ああ、俺はもう終わったぞ。」(一夏)

 「まじ?」(大樹)

 「おおマジ。」(一夏)

 「マジか。」(大樹)

 「手伝うか?」(一夏)

 「いや、良いよ。」(大樹)

 

 俺は一夏の申し出を断って掃除を再開する。まあ、考えたところですぐに解決策が出てくるわけでもない。ただ、今のままで戦い続けて良いのか。

 なんだかんだする中で掃除は終わった。実際には全部で1時間半くらいで終わることが出来た。

 久しぶりに大掃除になってしまった後片付けに俺はそのままリビングの定位置であるソファーの上にうつぶせに倒れた。

 

 「あ~、動きたくない。何もしたくない。このまま寝たい。」(大樹)

 「久しぶりに皆で大掃除だったもんね。」(マドカ)

 「にしても千冬姉、どれくらい部屋の片づけをしていなかったんだよ。千冬姉だけで洗濯機は一回、ゴミ袋は2つも出すなんてさ。」(一夏)

 「おい、一夏。」(千冬)

 「流石に社会人としてはアウトよ、千冬。もしかして、学園のあなたの寮監室も?」(春奈)

 「それは.............大丈夫だ。」(千冬)

 「今度、真耶ちゃんに聞いてみるわね。」(春奈)

 「それは待ってくれ、母さん!!」(千冬)

 「はあ、ああ、皆は終わったんだ。」(秋人)

 「ああ、父さん。終わったの?」(大樹)

 「うん。ああ、そうだ。大樹、渡したいものがあるんだけど後で良いかい?」(秋人)

 「うん。ちょっと、休憩してから。」(大樹)

 「良いよ。元気になってからで全然大丈夫だから。」(秋人)

 「いや、大樹。今、父さんって言ったのか!?」(一夏)

 「私のことをお母さんって呼んでくれるのよ。」(春奈)

 「はあ!?」(一夏)

 「なあ、大樹。何があったんだ?」(千冬)

 「まあ、ちょっと。」(大樹)

 「いや、絶対にちょっととかじゃないだろ!?」(一夏)

 「一夏のことはお兄ちゃんって呼ぼうか?」(大樹)

 「なんか、それは辞めて欲しい。」(一夏)

 「じゃあ、今まで通りに。」(大樹)

 「私のことは姉さんって呼んでくれるのか?」(千冬)

 「千冬姉ちゃんは千冬姉ちゃん。」(大樹)

 「変わらんのか。」(千冬)

 「もう、良いでしょ。部屋に行くよ。」(大樹)

 「何んにも無いのに?」(春奈)

 「...行くね。」(大樹)

 

 そう言って話を切り上げて部屋に戻るために体を起こしたその瞬間にマドカに手を引っ張られた。

 

 「ん、何?」(大樹)

 「良いから。」(マドカ)

 

 マドカは俺の手を引いて、皆が集まっている今のテーブルの辺りへ移動する。

 

 「皆で写真を撮ろう。」(マドカ)

 「そうね、ちゃんとした写真も少ないし。良いでしょ、秋人君。」(春奈)

 「うん、そうだね。一夏、カメラをお願い。」(秋人)

 「ああ、分かった。」(一夏)

 

 そうこうするうちにリビングで撮影会、なのかな。皆で集まって写真を撮ることになった。

 

 「ほら、大樹が真ん中で。マドカ、腕を組んで。一夏は大樹の隣で。」(秋人)

 「俺、真ん中で良いの?」(大樹)

 「良いから。秋人君、もう良いかしら?」(春奈)

 「よし、タイマーをセットしたから。あと、3秒。」(秋人)

 

 父さん、母さん、千冬姉ちゃんの並びに俺達3人。たぶん、まともな形で撮った初めての写真。その日のうちに印刷をしてリビングのテーブルの上に飾られるようになった写真。満面の笑顔の一夏とマドカに、優しい笑顔の千冬姉ちゃんと父さんと母さん。そして、気恥ずかしい表情で写っている俺。俺にとってただ一つの、たった一つ手元にあるちゃんとした家族写真。ただ、家族で撮った写真で最後に家族全員で撮ったのはこの写真が最後になる。そのことをこの時の俺は、マドカは、父さんと母さんも全く思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side三人称

 翌日、大樹とマドカ、一夏と千冬はIS学園へと戻っていた。何日かぶりの学園で学友たちと触れ合う大樹たちはひと時の平穏を過ごしていた。だが、その平穏もそう長くは続かなかった。

 

 「それでは行くぞ。」(???)

 

 学園と本土を結ぶモノレールが発着する駅が隣接するアウトレットモール、レジデンス。そこに異様な姿をした怪人たちが現れた。

 レジデンスと駅をつなぐ遊歩道に出現した2体のうちの一体はさながら石像のような姿をしており、もう一体は植物がそのまま人型になったような姿をしていた。

 レジデンスの駐車場に現れたのは包帯で全身を包んだミイラのような姿をしており、その傍らに居るのはさながら蛇女と言うべき姿をしていた。

 出現した彼らはレジデンスで破壊活動を始めた。さらには彼らは人々を次々と怪人化させて配下としていた。

 当然ながらこの知らせを聞いた大樹、マドカ、一夏は現場に急行した。

 

 「十三異界覇王か。」(大樹)

 「我の名はマミーレジェンドルガのムンミヤ。我らレジェンドルガの王であるアーク覚醒の儀式の準備をしている。」(ムンミヤ)

 「私はメドューサレジェンドルガのゴルゴンよ。あなたたちも私達の眷属になってもらおうかしら。」(ゴルゴン)

 

 大樹とマドカは駐車場に現れた二体、マミーレジェンドルガのムンミヤとメドューサレジェンドルガのゴルゴンの方へと向かった。2体は既に複数の民間人を怪人へと変容させていた。

 ゴルゴンは蛇状の触手を、ムンミヤは体に巻き付いている包帯を大樹とマドカへと襲い掛からせた。

 

 

 

 

 

 

 「僕はガーゴイルレジェンドルガのガルグイユ。そして、こっちの無口なのが僕の相棒のマンドレイクレジェンドルガのドード。僕たちの王の完全覚醒の儀式の準備をしているんだ。」(ガルグイユ)

 

 一夏は民間人を避難させると出現していた2体のレジェンドルガのガルグイユとドードと対峙した。

 

 「お前たち、無関係な人々を襲いやがって!」(一夏)

 「だって、君達人間は13の魔族で一番弱くて数が多い。他の魔族から見ても君たちは搾取される側だよ?」(ガルグイユ)

 「何!!」(一夏)

 

 ガルグイユたちの凶行に怒りを燃やす一夏。その一夏を見たガルグイユは面倒くさそうにため息を漏らした。

 

 「はあ、君みたいなのが一番面倒なんだよね。そうやって自分たちこそ正義だって疑いもしない。そういう奴こそ僕たちレジェンドルガの一番嫌いな奴なんだよ。」(ガルグイユ)

 

 ガルグイユはそう言うと背中の翼を広げて一夏に向かって猛スピードで迫って来た。それに習いドードは周囲の環境を自分の得意なフィールドへと変え辺り一帯を植物が生い茂る環境へと瞬時に変えた。

 

 「もう良いよ、君。死んじゃいな。」(ガルグイユ)

 

 その冷たい響きは死刑宣告となって一夏に告げられた。

 ガルグイユは鎧の如き硬い表皮を纏った強靭な両脚が一夏へと襲い掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、未知の敵に対して彼らはそう簡単に後れを取ることは無い。

 

 ≪ゴールドドラゴンフルーツアームズ!黄龍、アップライジング!≫

 ≪ブルーベリーアームズ!マスティア―オブサファイア!≫

 

 大樹は仮面ライダー輝龍に、マドカは仮面ライダーヴァルキリーに変身して迫りくる蛇状の触手を、包帯を手に持ったアームズウェポンで切り裂いていく。

 

 ≪ソーダ!シルバーエナジーアームズ!≫

 

 一夏は即座に仮面ライダー白銀に変身。バニシングブレードを巧みに使いガルグイユのキックを防いだ。

 

 

 

 

 輝龍は2本の専用アームズウェポンである光龍剣と竜炎刀を構え、ムンミヤの包帯を次々と細切れにしていく。さらに、そこから竜炎刀を投擲してムンミヤの隙を突く。

 

 「ムン!」(ムンミヤ)

 

 ムンミヤは投擲された竜炎刀を払いのける。そこに瞬時に距離を詰めていた輝龍が光龍剣を両手で握り、横なぎに剣を振るった。

 輝龍が振るう光龍剣はムンミヤの肉体を切り裂き、火花が散った。

 

 「グっ!」(ムンミヤ)

 

 腹部を抑えて下がるムンミヤ。そこに輝龍はさらに追撃の攻撃を仕掛けていく。

 右手で光龍剣を振るいながら落ちていた竜炎刀を拾い、次々と攻撃を繰り出していく。

 ムンミヤは両腕で輝龍の攻撃を防ぎつつ体から包帯を伸ばして輝龍を拘束しようとする。

 攻撃の最中に自身を拘束しようとする包帯に注意しつつ、輝龍は強烈なハイキックをムンミヤの頭部に当てていく。

 ゴルゴンは頭部にある蛇の顔を伸ばしてヴァルキリーに猛毒が滴る牙で噛みつこうとする。

 ヴァルキリーは宙を舞い、ゴルゴンの攻撃を躱しながらブルーライフルから光弾を連射する。

 ゴルゴンはヴァルキリーの攻撃を防ぎきれずに何発かその肉体に攻撃を受けた。

 

 ≪ゴールドドラゴンフルーツスカッシュ!!≫

 「ハッ!」(輝龍)

 「くっ!」(ムンミヤ)

 

 輝龍は戦極ドライバーを操作し、光龍剣と竜炎刀にエネルギーをチャージしてムンミヤに連続斬りを放つ。

 ムンミヤは瞬時に包帯を伸ばして攻撃を凌ごうとするが黄金に輝く刃を止める程の力はなく、そのまま肉体に二筋の切り傷が生じた。

 

 「少し、分が悪いわね。退きましょう、ムンミヤ。」(ゴルゴン)

 「そうだな。王の覚醒の儀式の準備はまたの機会とするか。」(ムンミヤ)

 

 ゴルゴンはレジェンドルガの紋章を宙に描くとムンミヤと共に紋章を通ってその場を逃走した。

 

 「新たな十三異界覇王か。」(輝龍)

 「それより、一夏兄さんの所に。」(ヴァルキリー)

 

 輝龍とヴァルキリーは逃走した2体を追うよりもいまだに戦っているであろう白銀の元へ向かうことにした。そして、白銀はガルグイユとドードの連携に苦戦していた。そもそも、扱っている武器の相性から言えば白銀が相手取っているガルグイユは悪いとしか言えず、相棒のドードも周囲の環境を操作して白銀の戦い方を封じるような戦法を取っていた。

 

 「クソっ、大樹と万夏も居れば!」(白銀)

 「無駄だよ。そもそも僕たちの中でも最強のムンミヤとゴルゴンが相手なんだ。あの二人が本気を出す前に人間なんて僕たちの眷属になるか、それこそ死体になるだけだよ。ハハハハハハハハ!」(ガルグイユ)

 

 ガルグイユは一夏の仲間が自分たちの仲間の手で無残な末路を遂げていることを予想してあざ笑った。だが、それに対して白銀はバニシングブレードを持ち直してしっかりと向き合った。

 

 「それはあり得ないな。俺の仲間は、俺の親友と妹は強いからな。」(白銀)

 

 その白銀の言葉に答えるように植物で覆われたその戦闘空間が外側から一気に崩れた。

 崩れた穴から差し込む光に照らされるのは輝龍とヴァルキリーの二人である。

 

 「そんな!ドードが作った空間をいともたやすく!?」(ガルグイユ)

 「強化した武器で斬れば一発だったからな。一夏、平気か。」(輝龍)

 「おう!」(白銀)

 「くっ!ゴルゴンとムンミヤは一体!」(ガルグイユ)

 「あの二人なら逃げたよ。残っているのはあなたたちだけ。」(ヴァルキリー)

 「形成逆転、ってことだ。」(輝龍)

 

 ガルグイユとドードを挟んで輝龍とヴァルキリー、白銀が武器を構える。

 

 「フフフ、アハハハハハ!まあ、良いや。ドード、やっちゃおうか。」(ガルグイユ)

 

 一気に形成が逆転となったはずだがガルグイユとドードは全く持って怯んでいなかった。

 

 「ゴルゴンとムンミヤが撤退したなら君たちは相当な相手ってことだな。なら、手加減する必要はないね。」(ガルグイユ)

 

 そう言うとガルグイユは頭部の口らしき場所から大量の水を吐き出した。その水は瞬く間に輝龍たちの腰までに溜まる。

 

 「レジェンドルガ、それもガーゴイルの伝説の元になった僕の種族はそもそも大量の水を操る龍のレジェンドルガなのさ。ドードの種族はマンドレイクの伝説の元になった奴らで水さえあればどこでも生きることが出来る。僕たちがコンビで居るのは相性がすこぶる良いからだよ!僕の水を吸収したドードは本来の力を発揮する!!」(ガルグイユ)

 

 水を吐き出し続けるガルグイユとその水を吸収し続けるドード。その二人の様子を見た輝龍はその危険性にやっと気が付いた。

 

 「ヤバい!ここから逃げるぞ!」(輝龍)

 

 輝龍のその声にヴァルキリーと白銀が従うもののガルグイユとドードの準備が出来る方が速かった。

 大量の水を吐き出したガルグイユは石像のような姿から文字通り龍のような姿となり、ドードはより巨大に強くなってしまった。

 

 「僕らの王の障害になるであろうお前たちはここで殺す。」(ガルグイユ)

 

 真の姿を見せたガルグイユとドードはあふれる力のまま輝龍たちに襲い掛かる。

 水の中で今までにない程のスピードで襲い掛かるガルグイユ、その巨体とパワーで叩きのめすドード。

 3人はなすすべもなく追い詰められてしまう。

 

 「ぐっ、ここまでかよ!」(白銀)

 「流石に、一筋縄ではいかないとは思ったけど。」(輝龍)

 「もしかして、さっきの二人も?」(ヴァルキリー)

 

 変身が解除される一歩手前まで追い詰められてしまい、どうにか対抗策を考える3人。輝龍とヴァルキリーは新しく手に入れた力のことを考えるもののそもそも目の前の相手がその隙を与えてくれるかどうかも怪しかった。

 

 「じゃあ、終わりだよ!!」(ガルグイユ)

 

 ガルグイユとドードがとどめの一撃を放った。だが、その一撃は繰り出される前に2体が別の方向から放たれた攻撃を防御したことで3人に当てられることは無かった。

 

 ≪スペシャル!ナウ!≫

 ≪ファルコ!ファ、ファ、ファルコ!≫

 

 龍の吐息の如き炎がドードを、ハヤブサのような素早い一撃がガルグイユに迫る。さらに、彼らの戦いの領域になっていた植物の空間が燃え盛る炎の弾丸で消し炭となったのだ。

 

 「誰だ!」(ガルグイユ)

 

 ガルグイユは新手の出現に彼らの名を問う。

 膝をつく輝龍たちの前に3人の仮面の魔法使いが並び立つ。

 

 「あなた方は。」(輝龍)

 「まあ、皆まで言うな!ここからは俺たちに任せな。」(???)

 

 輝龍の言葉に右肩のハヤブサのマントを纏った獅子の如き仮面を被った仮面ライダーが言った。

 

 「大丈夫です。私達は味方です。ファントムの相手は任せてください。」(???)

 

 彼に続くように右手に巨大な爪を帯びた仮面ライダーが言った。その声と背格好から女性と言うのがすぐに分かった。

 

 「俺達が片付けるから君たちは休んでくれ。」(???)

 

 そして、彼らの真ん中に立つ赤き宝石の如き仮面を被った仮面ライダーが言った。その仮面ライダーはガルグイユとドードに向かって左手にはまっている指輪を見せつけるように言った。

 

 「俺達は最後の希望だ。」

 

 彼こそ指輪の魔法使い、仮面ライダーウィザード。彼の仲間である仮面ライダービースト、仮面ライダーメイジ。彼らもまた歴戦を潜り抜けた仮面ライダーである。




 新たな十三異界覇王との戦いで現れたのは魔法使いであるウィザードたちだった。そして、レジェンドルガたちが目指すアークの覚醒とは?戦いの最中で繰り広げられる十三異界覇王同士の戦い。
 新たな展開を迎える戦いに大樹たちは...。


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仮面ライダー輝龍 第6話

 新年一発目、輝龍最新話です。
 遅れました、明けましておめでとうございます。
 今年もよろしくお願いします。
 それでは最新話、どうぞ!


side三人称

 レジェンドルガと戦う輝龍たちの前に現れたのは人々の絶望より生まれる怪物、ファントムと戦う指輪の魔法使い仮面ライダーウィザード、仮面ライダービースト、仮面ライダーメイジだった。

 

 「さあ、ショータイムだ。」(ウィザード)

 「さあ、ランチタイムだ!!」(ビースト)

 「終わりの時よ。」(メイジ)

 

 新たに現れた敵にガーゴイルレジェンドルガのガルグイユとマンドレイクレジェンドルガのドードは不快感をあらわにする。

 

 「邪魔をしないでくれるかな。君たちも殺しちゃうよ!!」(ガルグイユ)

 

 ガルグイユは周囲に大量も水を吐き出す。

 ドードは水を吸って巨大化して体を活かしてウィザードたちを押しつぶそうとする。

 

 ≪チョーイイネ!ディフェンド!!≫

 ≪ド!ド!ドルフィ!≫

 ≪グラビティ!ナウ!≫

 

 ウィザードが炎を帯びた魔法陣でドードの攻撃を防ぎ、メイジがその隙にドードの重力を操作してその巨体を動かす。

 

 「おっしゃ、行くぜ!!」(ビースト)

 

 ビーストは右肩のマントをドルフィンに変えてガルグイユと激しい水中戦を繰り広げる。

 水中で翼を広げて空を飛ぶように動くガルグイユに水中を自由自在に動くビースト。

 

 「こいつでもどうだ!!」(ビースト)

 

 ビーストは自身の専用武器であるダイスサーベルの可動部分を回し、獅子の口にドルフィのビーストリングを押し込んだ。ダイスサーベルのサイコロの目が6と出た。

 

 ≪ドルフィ!セイバーストライクヘキサ!≫

 「よっしゃ!喰らえ!!」(ビースト)

 

 ビーストはダイスサーベルを振るい、6発のイルカ型の魔力弾を発射した。

 イルカ型の魔力弾は水中を高速で泳ぎ、ガルグイユを追尾する。

 

 「っ!ぐあっ!」(ガルグイユ)

 

 水中でガルグイユは逃げきれずに魔力弾が直撃した。

 水中で爆発が起き、ガルグイユが生み出した水中の環境も消滅した。

 一方のドードはその巨体に植物のレジェンドルガとしての能力を生かしてあらゆる場所から植物の蔦を発生させるが魔法と専用武器のウィザーソードガンによる遠距離攻撃で対応するウィザードとメイジには効果が薄かった。

 

 ≪エクスプロージョン!ナウ!アンダースタン?≫

 ≪チョーイイネ!スペシャル!サイコー!≫

 「「はっ!!」」(ウィザード、メイジ)

 

 ウィザードとメイジは爆発と火炎、二つの強力な魔法を同時に放ち二つの魔法の相乗効果で威力を上昇させた合体技をドードに放った。

 大量の水を吸収していたドードを一撃で倒すことは出来なかったものの彼に決して浅くはない傷を与えることに成功した。

 

 「まさか、古の魔法を扱える奴が居るなんて。」(ガルグイユ)

 

 倒れ伏すガルグイユがそう言うとドードはガルグイユを抱えてレジェンドルガの紋章を描き、その場から逃走した。

 

 「おいおい!待てよ、俺の飯!!」(ビースト)

 

 ビーストが逃走したガルグイユとドードを追おうとするがウィザードとメイジが止める。

 

 「おい、仁藤。逃げられちまった以上は仕方ないだろ。」(ウィザード)

 「マジかよぅ。そろそろキマイラが魔力を欲しがるのによぅ。」(ビースト)

 「この間のファントムを倒したから余裕があるんじゃないですか?」(メイジ)

 「その後、ずっとファントムじゃない奴を相手に戦っているだろ。それでキマイラの奴、そろそろ魔力が切れるぞってうるせえんだよ。」(ビースト)

 

 戦っていたというのに和気あいあいと話し出すウィザードたち。彼らを見て消耗した体に鞭を打って輝龍たちが駆け寄る。輝龍たちは変身を解除してウィザードたちに話しかけた。

 

 「あ、あの、あなた方は?」(大樹)

 

 大樹たちが近寄って来たのに気付いたウィザードたちも変身を解除する。

 

 「俺は操真晴人。さっきも見た通り魔法使いだ。」(晴人)

 「俺は仁藤攻介だ。考古学者をしてんだ。そして、俺も魔法使いだ!」(仁藤)

 「私は稲森真由です。私も魔法使いです」(真由)

 

 変身を解除したウィザードこと操真晴人、ビーストの変身者である仁藤攻介、メイジの稲森真由らが自己紹介をした。この時に大樹、一夏、マドカの三人は心の中で「魔法使いって...本当に居たんだ」と割と目の前の三人に失礼なことを思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 IS学園に戻った大樹たちは晴人たちを連れて応接室に入っていた。

 

 「お待たせしました。」(千冬)

 

 そこに千冬と真耶が入って来た。その二人が入ったのを見た晴人と真由は立ち上がり、頭を下げたが攻介だけはソファーに座りながら「お、先生が来たのか」と呑気に言っていた。

 

 「それで、あなた方は?」(千冬)

 「俺は操真晴人。魔法使いだ。」(晴人)

 「考古学者で魔法使いの仁藤攻介だ。」(攻介)

 「私は稲森真由です。晴人さんと同じく魔法使いで普段は国安0課にいます。」(真由)

 

 千冬の問いに晴人たちが当然のように決まっているその答えを言った。それを聞いた千冬と真耶がお互いに見合わせ、それから二人は晴人たちを連れてきた大樹たちへと視線を変えた。

 

 「いや、変な人とかじゃなくて...ねえ。」(大樹)

 

 大樹がマドカと一夏に同意を求めた。

 

 「その、本当の魔法使いの人達、見たい。」(マドカ)

 「信じられないだろうけど、本当なんだ千冬姉。」(一夏)

 

 そして、一夏とマドカもそう答えた。それを聞いてもまだ疑いのある千冬と真耶。

 

 「まあ、信じられないよな。」(晴人)

 

 晴人はそう言うと右手に指輪をはめてバックルにかざした。

 

 ≪コネクト!プリーズ!≫

 

 晴人は魔法陣を出すとそこに手を突っ込んだ。晴人が魔法陣から取り出したのはなんとドーナッツである。

 

 「晴人さんがしたほかにはこのような魔法もあります。」(真由)

 「それじゃ、俺もやるか。」(攻介)

 

 今度は真由と攻介が魔法を披露する。 

 真由は白い鳥の姿が描かれた指輪を、攻介は緑色のこれも鳥らしき絵が描かれた指輪をバックルにかざした。

 魔法陣から今度から出たのはランナーにはまっている2つのプラモデルだった。ランナーから外れたパーツが空中で合体すると白い鳥の姿をしたホワイトガルーダ、幻獣グリフォンの姿を模したグリーングリフォンになった。

 召喚された使い魔を見て千冬も真耶もようやく信じる気になった。それを表情からすぐに察した晴人と真由は視線を二人に向けた。

 

 「それであなた方は一体何が目的で我々に接触したのですか。」(千冬)

 「俺達は最近現れた謎の敵を追っていた。その中で俺達がずっと戦っているファントムが関与している噂があってな。それを調べていたんだ。」(晴人)

 「私達が調べる中で新しい敵と戦っていたこちらの生徒さんたちのことを知りました。それで協力をお願いしようと思って来ました。」(真由)

 

 晴人と真由の説明を受けて納得のいった千冬。そして、真由の答えに対して真耶が続いて質問をした。

 

 「ファントムと言うのは?」(真耶)

 「ファントムと言うのは魔力を持った人間が絶望した時に生まれる怪物です。私達魔法使いの魔力の源でもあります。」(真由)

 「それはあなた方もその怪物になる可能性があるのですか?」(真耶)

 「いや、俺と真由ちゃんは自分でファントムを抑え込んだんだ。だから、魔法使いになれた。仁藤は少し特殊だけどな。」(晴人)

 「俺はベルトに封印されたキマイラと契約することで魔法使いになったんだ。だから、元は魔力のない人間だったんだ。」(攻介)

 

 晴人たちの話を聞いて千冬と真耶は一度別の所で話をすることにする。

 

 「すまないが後日別の場所でまた話し合いをしたい。ここにいる私達の生徒たちとも関係のある人物たちにも話を聞いてもらいたい。」(千冬)

 「良いぜ。それで時間と場所は?」(晴人)

 「それは後日伝える。それと私の弟と妹を助けてくれたことに感謝する。」(千冬)

 「当然のことをしたまでさ。礼には及ばないさ。」(晴人)

 

 晴人たち3人を見送るために大樹たちが学園の校門前へと案内した。

 

 「危ないところを本当にありがとうございました。」(大樹)

 「さっき、晴人さんがあなたたちのお姉さんに言ったとおりに当然のことをしただけです。」(真由)

 「ま、そういうことだ。じゃ、またな!」(攻介)

 「ああ、それと何かわかればここに訊ねてくれ。大抵、俺はそこにいるから。」(晴人)

 

 晴人がそう言って渡したの「面影堂」と書かれたある宝石細工の店の名刺だった。

 後日、外出届を出した大樹とマドカは話し合いの場が出来る前に晴人が渡した名刺の場所へと訪ねていた。しばらくぶりに私服でデートと洒落込んで来た二人は一見すると寂れた佇まいの面影堂へと到着した。

 

 「お店はやっているみたい。」(マドカ)

 「じゃあ、入ろうか。」(大樹)

 

 そのまま、二人は店の中へと入っていった。

 扉を開けるとそのまま扉に備え付けられた鈴が鳴る。

 

 「は~い。」(???)

 

 奥にある工房から老年の男性が現れた。

 

 「いらっしゃい。これはまた若いカップルのお客様だな。おい、瞬平!お茶をお出ししろ!」(???)

 「いや、待ってください!新しい指輪を彫っているところなんですよ!」(???)

 「良いから、お客さんが優先だ!ごめんなさいね、うちの弟子が気が利かなくて。」(???)

 

 男性はそのまま奥に居る弟子らしい人物に大樹とマドカにお茶を出すように言った。そのやり取りの中で大樹はどうやら自分たちが普通の客としてこの店に来たと思われていることに気付く。

 

 「あの、僕たちはその...。」(大樹)

 

 大樹が話をしようとする奥から30代の男がお茶を出して来た。

 

 「すみません、お待たせしました。それではこちらの席へどうぞ。」(???)

 「あ、いや、僕たち、その...。」(大樹)

 「若いカップルってことは指輪ですか?うちの師匠、こう見えてかなりの腕なんですよ。」(???)

 「瞬平、良いから話が聞けないだろう。それではどのようなご用件で?」(???)

 

 流れで座ることになり、大樹とマドカはそのまま席を座ることに。

 

 「あの、僕たち、操真晴人って人からここを教えてもらって。」(大樹)

 「ええ!晴人さんが!」(???)

 「珍しいもんだな。あいつがこんな若い子たちにここを教えるなんて。もしかして、君達はゲートなのかい?」(???)

 

 晴人の名前を出したところで老年の男性とその弟子の表情が重くなった。その瞬間に大樹は別の話題を出すために考えるが。

 

 「あの、ゲートって何ですか?私達、晴人さんに会いたかったらこのお店に来て欲しいって言われて。」(マドカ)

 「ゲートではないんですか?」(???)

 

 そこで大樹は普段から隠し持っている戦極ドライバーを二人に見せた。

 

 「僕達、俺とマドカは先日危ないところを晴人さんに助けていただきました。それで、改めてお礼を言おうと思ってきました。」(大樹)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 老年の男性、指輪職人の輪島繁とその弟子の奈良瞬平は晴人の協力者であった。普段は指輪職人をしている二人は晴人が使う魔法の指輪の加工も行っていた。

 

 「そうか、ファントムもだいぶ居なくなったとは思ったが似たような奴はまだまだ居るのか。」(輪島)

 「だから、最近晴人さんも出ているんですね。」(瞬平)

 「ついこないだ、レジェンドルガという神話上の生物に似た怪人が破壊活動をしていました。そいつらのことを晴人さんたちが追っていたらしく。なんでもファントムが協力しているとか。」(大樹)

 「そういうことは晴人たちが詳しいから俺と瞬平は詳しいことは知らないんだ。すまないね。」(輪島)

 

 大樹とマドカは出されたお茶を飲みながら輪島と瞬平と話をする。その中でマドカは自分が使っているウィッチドライバーと指輪を輪島たちの前に出した。

 

 「あの、このベルトのことって何か分かりませんか。私のお父さんが大樹のお父さんから渡されたって聞かされたので。」(マドカ)

 「ふむ、どれどれ。」(輪島)

 

 輪島と瞬平はマドカが出したウィッチドライバーと指輪を見る。

 

 「ベルトは晴人さんと真由ちゃんが使っているものにそっくりですね。」(瞬平)

 「指輪は仁藤君のものに近いな。だが、はまっているのは俺達が加工している魔法石に近いな。これはどこで?」(輪島)

 「さあ、俺の両親が死んでからかなり経っているので詳しいことは。」(大樹)

 「今度はマドカちゃんのお父さんとお母さんも連れて来てくれ。詳しい話を聞いてみないと分からんな。」(輪島)

 

 輪島と瞬平は見ていたウィッチドライバーと指輪をマドカに返す。

 

 「あの、ところで晴人さんは?」(大樹)

 「悪いな。あいつ、今日はカミさんと愛娘と一緒に居るんだ。」(輪島)

 「「ええ!?」」(大樹、マドカ)

 「そうは見えんだろ。まあ、しばらくすれば顔を見せるだろうから待ってなさい。」(輪島)

 「その間、指輪とかを見ていきませんか。魔法の指輪じゃなくて普通の。」(瞬平)

 

 ここで大樹は「あ、営業入って来てる。下手すると買わされる。」と思った。一言、断りを入れようと考えたのだったが。

 

 「ペアリングとかエンゲージリングもありますから是非。」(瞬平)

 「おい、瞬平。そういうことで来ているんじゃないんだぞ。」(輪島)

 「でも、せっかく来てもらったんですし。どうですか?」(瞬平)

 「ああ、いや、その、僕達まだ学生なんで。」(大樹)

 「あと、オーダーメイドもしているのでそちらも。」(瞬平)

 

 矢継ぎ早に飛んでくるセールストーク。生来、大樹はこういうものに不得手だった。なので、こうも来られると単独での対応は難しいのだ。そこで助けを求めるようにマドカを見たのだったのだが「ああ、キラキラした目で俺を見てる~~!これ、俺が折れないとダメじゃん。」と即座に思う程にマドカが「ねえ、見させてもらおうよ」というキラキラした目をしていた。

 

 「ああ、じゃあ、ちょっとだけ見させてもらって良いですか?」(大樹)

 

 なんだかんだで彼女に甘い男であった大樹である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 亡国機業本部廃墟、そこでファブニールはここまでの情報を整理していた。

 

 「俺を含めてこの世界にやって来た十三異界覇王は9体。ダグバ、アマゾンネオ、初代オーズ、アギト、ダークドライブ、ゲムデウス、アーク、ドラス。この世界の仮面ライダーにダグバと初代オーズ、アギトが倒され、アマゾンネオは俺の手でやった。これで残るはまだこの世界に来ている分からない、キルバスと他の3人を含めて9体か。」(ファブニール)

 

 壁に書き記していくのはここまで分かっている情報だった。

 

 「ここまでで戦闘を続けているのはダークドライブとドラス、アークはそもそもこちらの世界で完全覚醒していないから活動の大半は配下のレジェンドルガたちが行っている。キルバスの配下のブラッド星人たちもどこかに潜伏中か。なら、次はダークドライブかドラス、ゲムデウスのどれかか。」(ファブニール)

 「次に狙う奴がその3体のどれかか?」(???)

 

 ファブニールを背後から声を掛けたのは眼鏡をかけた壮年の男性だった。

 

 「その顔にする必要はないだろ、魔蛇。」(ファブニール)

 「つれないな。」(魔蛇)

 

 ファブニールは振り返らずに冷たく言い放った。壮年の男はその姿を骸骨の顔を持った怪人へと変貌させた。

 魔蛇、かつてはこの星を去った葛葉紘汰から力の大半を奪い取ったヘルヘイムの森の邪悪なる化身の一体である。

 

 「その3体は今は辞めといたほうが良いぞ。」(魔蛇)

 「どういう意味だ。お前としても俺が奴らを倒す方が都合がいいだろ。」(ファブニール)

 「ダークドライブ、ドラス、ゲムデウスで潰し合いが始まったからだよ。」(魔蛇)

 

 魔蛇の言ったことにファブニールが魔蛇を見る。

 

 「三つ巴の戦いってことか。」(ファブニール)

 「まあ、そういうことだ。あいつら、お互いの戦闘空間を展開したせいで俺でも感知できん。」(魔蛇)

 

 魔蛇の言ったことにファブニールがその場を出ようとする。

 

 「どこへ行くんだ?」(魔蛇)

 「決まってる。あいつら、3体が戦えばどうなるか。それを少しでも防ぐ。」(ファブニール)

 「相変わらず、結局お前は仮面ライダーとして戦うんだな、柏葉大樹。」(魔蛇)

 「俺は、柏葉大樹じゃない。それと、魔蛇。お前の本当の目的はなんだ。ただ、単に俺達を戦わせるだけなんてことは無いだろ。」(ファブニール)

 「俺は全ての世界を手にする力を完成させる。それが俺の目的だ。お前はその力を手に入れて自分に関するすべての並行世界を閉じる、それは忘れていないよな。」(魔蛇)

 

 そう言う二人の間に緊迫した空気が流れる。

 

 「忘れていない。だが、その力を手にする前に戦いの場であるこの世界が壊れては不都合だ。この世界だけ閉じたとしても他の世界に行けないなら意味はない。」(ファブニール)

 

 そう言うとファブニールは黄金の果実を出してクラックを開く。そして、クラックの向こう側へ移動して姿を消した。

 

 「お前がどう考えようがお前は結局俺の前に立ちはだかった仮面ライダーたちと変わらん。それを自覚していないのがお前の世界が滅んだ最大の原因かもな。」(魔蛇)




 魔法使いたちとの邂逅を経て、大樹とマドカ新たに手にした力を使いこなすべく特訓を始める。一方で暗躍するレジェンドルガたちとその協力者が姿を現す。そして、ダークドライブ、ドラス、ゲムデウスの三つ巴の戦いに参戦したファブニールに待ち受けるのは。





 異世界の宇宙より来訪したブラッド星人たちの襲来が再び。


 「まあ、良い。戦うのなら戦うだけだ。」

 すべてを屠る漆黒の飛竜が再び姿を見せる。


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仮面ライダー輝龍 第7話

 東京都某所、そこには火星からもたらされたパンドラボックスによって日本が3つの国に分けられていた世界において秘密結社ファウストが使っていた地下施設があった。なお、この世界においてはそんなものはない、はずだった。

 

 「にしても、こういう場所があるのは便利やなあ。」(ゼブラロストスマッシュ)

 「そうね。あんな奴らに姿を隠し続けるのは面白くないけど。」(シザースロストスマッシュ)

 

 そのファウストを創設した異星人エボルトの同胞であるブラッド星人の二人、ゼブラロストスマッシュとシザースロストスマッシュ。そして、二人を従えるのは豪奢なローブに鎧の飾りが目を引く蛇の仮面ライダー、仮面ライダーブラッドである。

 彼らが居るのは東京都内にある地下施設でそこは異世界においてはファウストの人体実験の研究を行っていた場所であった。彼らは異世界においてはファウストを裏から操っていた黒幕であった。

 

 「我らの王であるキルバス様もこの世界に遠からず来る。その際には我らの本来の力を思う存分に発揮できる。」(ブラッド)

 「それにしても伊能さん、王様はいつになったら来はるんです?僕らに先にこの世界を手中を納めてこい言うたんにはあん人は来るのが遅いとちゃいますか?」(ゼブラ)

 「また、どこかで面白そうな相手を玩具に戦っているのでは?でも、流石にこのままいるのは面白くはないわね。」(シザース)

 

 1年前、仮面ライダービルドたちに新たな仮面ライダーであるシュバルツを相手に戦った彼らは自分たちの王である十三異界覇王の一人、星滅蜘蛛王キルバスの配下であった。この1年の間に彼らは王であるキルバスがやって来るを待っていたが痺れを切らそうとしていた。

 

 「我らが王、キルバスの到着を待てないか。」(ブラッド)

 「伊能さん、流石の僕らも暴れまわりたいんや。少しばかりええとちゃいますか?」(ゼブラ)

 「何も全てを壊しはしませんよ?ただ、ちょっとばかり、ね。」(シザース)

 

 数多の星を滅ぼしてきた異星人たちは目の前の貧弱な種族を痛めつけたい欲望を満たしたがっていた。

 

 「構わん。だが、完全に滅ぼすな。キルバス様が手にする為にはすべてを失っては元も子もない。」(ブラッド)

 「分かってますって。」(ゼブラ)

 「それでは郷原さん、行きましょ?」(シザース)

 

 ゼブラロストスマッシュとシザースロストスマッシュは自分たちの肉体を血色の液体へと変えてその場から居なくなった。

 

 「さて、われらが王は一体どこへ居るのか。」(ブラッド)

 

 ブラッドはそう言うと漆黒のパネルを眺める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロシア、チェルノブイリ。かつては原子力発電に関わる産業でにぎわっていた地域だが原子力発電所の爆発事故がきっかけで起きたメルトダウンによりゴーストタウンと化した土地である。現在は人々の生活の名残をとどめながら人間が入る前の自然豊かな姿に戻ろうとしていた。そんな場所に歪な巨大な球体が出来ていた。外観はさまざまな瓦礫やスクラップなどによって作られた醜悪な物であり、無機物であるのにまるで生きているかのような外観をしていた。その物体の近くに異界からの裂け目であるクラックが開き、そこから十三異界覇王の一人であるファブニールが竜人の姿で現れた。

 

 「まさか、こんな場所で戦い始めたのか。ドラス、ネオ生命体はともかくこんなインターネットにも接続されている環境が無いこんな場所でゲムデウスと108が?ゲムデウスはどこでも実体化できる以上はおかしくないが。」(ファブニール)

 

 ファブニールは周囲を警戒してその物体へと近づく。そして、背中に背負っていた薙刀を抜き放ち振るった。だが、ファブニールが振るった刃は物体の表面を多少削っただけでその内部までは届かなかった。

 

 「ドラゴンフルーツアームズの武器でこの程度か。ファブニールアームズに変われば一か八か破壊できるかもしれないが、まだ不安だな。」(ファブニール)

 

 ファブニールはこの物体の中へ入る方法を考えるが現状としては自身だけで何とかするには限界があった。

 

 「大樹。」(???)

 

 その時、ファブニール=異世界の柏葉大樹に声を掛けた人物が居た。

 

 「紘汰、随分と俺にご執心みたいだな。」(ファブニール)

 

 葛葉紘汰、仮面ライダー鎧武その人である。今は始まりの男としての白銀の姿ではなく、かつてこの世界で生きた時の姿で現れたのだった。

 

 「もう辞めろ。魔蛇が何を企んでいるのか分かっているだろ。」(紘汰)

 

 紘汰の言葉にファブニールはその姿を本来の姿である青年の姿に戻った。

 

 「それはそうだ。あいつは全ての並行世界を手にする為の強大な力を手に入れようとしている。俺をはじめとした13人の世界を滅ぼした力を持つ奴らを集めたのはその力を完成させるためだっていうことも知っている。」(ファブニール)

 「それがどういうことになるのか分からないのか。」(紘汰)

 「すべての並行世界にヘルヘイムの脅威、それも全てを侵食する魔蛇によって滅んでしまう。その危険性を分かったうえで俺は奴に協力している。」(ファブニール)

 「なぜ。大樹が元居た世界まで滅ぶかもしれないんだぞ!!」(紘汰)

 「その心配はいらない、俺の世界は滅んだからな。」(ファブニール)

 

 そこでファブニールは自分の世界が滅んだ経緯を話し始めた。

 

 「俺のいた世界はこの世界にかなり似ていて、まあアーマードライダーもインベスも最初はいなかったし、他の仮面ライダーも存在しなかった。俺は織斑一夏の幼馴染として過ごしていて、受験シーズンにISを動かした。そこから俺はIS学園へ入学して一夏たちと一緒に学園生活を楽しんでた。ある日、俺は戦極ドライバーを手に入れた。誰かが作ったもので3種類のロックシードと一緒に手に入れた。そこからだった、インベスの、ヘルヘイムの侵略が始まったのは。」(ファブニール)

 「お前の世界にも!?」(紘汰)

 「不幸なことに、この世界と違ってユグドラシルのようにヘルヘイムを研究して情報統制を行う組織がいないもんだから被害がどんどん広がっていってな。1年もたたないうちに世界の半分がヘルヘイムに覆われた。そうなれば当然黄金の果実が現れる。それをめぐって生き残った数少ない人類が争い始めた。その中で俺の大切な人々がどんどん死んでいった。ある奴は戦地で戦いながら、ある奴は生き残っている人間に裏切られて、ある奴は慰み者にされてインベスたちに襲われて、ある奴は家族と逃げている最中に。気付いた時には俺とマドカだけ残っていた。それで黄金の果実はマドカを選んだ。俺は世界を救うためにマドカと一緒にその力を使おうとした。だけど、それを他の奴らが、俺の兄貴が邪魔をした。マドカは最期に俺に黄金の果実を託して死んだ、俺に生きてと言って死んだ。俺は兄貴を含めた残っている奴らを皆殺しにした。そして、誰の手にもわたらないように黄金の果実を持って他の世界へ渡った。その瞬間、俺の世界はヘルヘイムを燃やし尽くすための核の炎で消滅した。だから、俺を待つ人間も、俺が帰るべき世界もない。」(ファブニール)

 

 ファブニールの言葉を受けた紘汰はかつてのユグドラシルが行おうとしていたことを思い出していた。そして、目の前の相手は紘汰にもあり得たかもしれない世界の終わりを体験してきたのだった。

 

 「その後は、黄金の果実の力を使って俺の世界が続く可能性を探し続けた。それこそ三千世界を超える世界を追体験し続けた。それこそ、生まれてから死ぬまでの80年近くを何度も何度も体験した。その結果な、結局俺の探していた可能性は一切存在しなかった。俺が生きている限り、俺のいる世界は俺が生きているうちに滅んでしまう。俺の愛した者が全て死んで、俺だけが残る結末、それしか俺には示されなかった。だから、紘汰、俺は魔蛇が手にする力を手に入れる。それを使って俺が望まないすべての可能性を消す。俺の愛する者を守るためにな。」(ファブニール)

 「大樹!それは違う!そうしても他の世界でも同じことが起きる!!」(紘汰)

 「いいや、それはない。なぜなら、全ての並行世界にいる俺を全て消せば良い。それだけでも違うさ。」(ファブニール)

 「世界が消えたのは大樹の所為じゃない!」(紘汰)

 「だけど、守れなかった。俺には一夏たちが、マドカがいればそれだけで十分だった。彼女たちが死ぬくらいなら俺は最初から居ない方が良い。」(ファブニール)

 「大樹、俺は、俺も裕也を、戒斗をこの手で殺した。だから、自分が死ぬなんて選んじゃいけないんだ。」(紘汰)

 「紘汰、俺はもうそうやって自分を許すことは出来ないんだ。数多の並行世界を追体験した俺にはそれを許す優しさも強さも残っていない。残っているのは自分に対しての、俺から大切なものを奪った奴らへの激しい怒りだけだ。止めたいなら、力づくでやれ。」(ファブニール)

 ≪ドラゴンフルーツ!≫

 

 ファブニールはドラゴンフルーツロックシードを開錠する。

 それを見た紘汰は悲痛な面持ちでオレンジロックシードを出した。

 

 「大樹、そんなことは俺が絶対にさせない。変身!」(紘汰)

 ≪オレンジ!≫

 

 クラックから巨大なオレンジの鎧が現れた。紘汰はそのまま戦極ドライバーにオレンジロックシードをセットしてカッティングブレードを倒した。オレンジの鎧が紘汰の頭に落ちてきて、紘汰の体を紺色のライドスーツが覆った。

 

 ≪オレンジアームズ!花道、オンステージ!≫

 

 戦極ドライバーから音声が流れるとオレンジの鎧が展開して変身が完了して、紘汰の右手に専用アームズウェポンの大橙丸が握られる。

 仮面ライダー鎧武オレンジアームズ、鎧武の基本形態である。

 

 「変身。」(ファブニール)

 ≪ロックオン!ソイヤ!ドラゴンフルーツアームズ!竜王、オン・バトルフィールド!≫

 

 ファブニールも仮面ライダー炎竜ドラゴンフルーツアームズに変身して専用アームズウェポンの竜炎刀を右手に持つ。

 

 「ここからは俺のステージだ!」(鎧武)

 「この戦場、俺が勝ち取る。」(ファブニール=炎竜)

 

 二人の仮面ライダーは駆け出してお互いの武器を振るった。大橙丸と竜炎刀の刃がぶつかり合い、火花を散らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 面影堂では大樹とマドカが輪島が手掛けた様々な指輪を見ていた。二人でこういった物を見る機会は学生の二人にはあまりなく、さらには二人とも仮面ライダーとして戦っていることもそれに拍車をかけている。なお、残った短い時間を二人の時間としているのだが。

 

 「それでどうだい、この指輪は?」(輪島)

 「はい!すごく良いです!ね!」(マドカ)

 「はい、俺も良いと思います。」(大樹)

 

 その中で今日は輪島が手掛けた指輪を見ていたのだった。その時に店の扉が開いた音がした。大樹とマドカ、輪島が扉の方を向くと小さい女の子を抱っこした晴人と傍らに共にいる女性が入って来た。

 

 「ふい~。ほら、到着したぞお姫様。」(晴人)

 「輪島のおじさん、来たよ!」(???)

 「輪島さん、遅くなってごめんね。」(???)

 

 入って来た彼らを見た輪島が声を掛ける。

 

 「お~、良く来たな暦ちゃん。晴人、凛子、遅いぞ。お客さんがお待ちだったぞ。」(輪島)

 

 晴人と共に入ってきた女性は妻の操真凛子と娘の暦である。そして、店にいる大樹とマドカに気付いた晴人は気付いた。

 

 「君達はこないだの。」(晴人)

 

 大樹とマドカは席を立ち、晴人に会釈した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さ~て、ほな行くで!!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 東京ではゼブラロストスマッシュとシザースロストスマッシュが破壊活動を始めていた。

 ゼブラロストスマッシュは両手の強固な蹄を使って次々とビルを破壊していく。一方のシザースロストスマッシュは全身に隠されているハサミを発射して走行する車を次々と斬り裂いていく。

 突如現れた2体の怪人の破壊活動によって多くの人々が逃げ惑う。所々では逃げ遅れた人々が傷を庇いながら、傷を負った愛する者を庇おうとしていた。

 

 「ほら、逃げないと死んでしまうわよ。まあ、逃げたところで皆死ぬのは変わらないのだけど。」(シザースロストスマッシュ)

 

 そして、逃げ遅れた親子に対してシザースロストスマッシュが刃を振り下ろそうとした。その時、どこからかシザースロストスマッシュに向かって2つの弾丸が撃たれた。一方の、ゼブラロストスマッシュには漆黒のコートを纏った何者かが姿を見せて強烈なハイキックを浴びせた。

 

 「なんや、前にあった小僧やないか。」(ゼブラロストスマッシュ)

 「1年ぶり、なるか。」(修羅)

 

 黒崎修羅、大樹の中にあった凶暴な別人格が仮面ライダー鎧武=葛葉紘汰によって肉体を与えられた存在である。そして、彼もまた仮面ライダーである。

 

 「へえ、私の相手はあなたたちね。」(シザースロストスマッシュ)

 

 シザースロストスマッシュを撃ったのはかつては亡国機業に所属していた元テロリストのスコール・ミューゼルとオータムのIS乗りだった。

 

 「今度こそは倒す。」(修羅)

 ≪ビルドドライバー!≫

 

 ハンドルが付いたバックル、ビルドドライバーを装着した修羅はワイバーン型ガジェットのシュバルツワイバーンにワイバーンボトルをセットする。

 スコールとオータムはそれぞれトランスチームガンにフルボトルをセットする。

 

 ≪イフリート≫

 ≪タランチュラ≫

 

 修羅はビルドドライバーにシュバルツワイバーンをセット、ハンドルを回す。

 

 ≪シュバルツワイバーン!≫

 「変身。」(修羅)

 「「蒸血。」」(スコール、オータム)

 

 修羅は漆黒の竜人仮面ライダーシュバルツに、スコールは爆炎の魔女フレアミストレスに、オータムは蜘蛛の女戦士であるスパイディアマゾネスに変身した。

 仮面ライダーシュバルツは武器を持たずに両手に備わった鋭い爪でゼブラロストスマッシュの頑丈な肉体を切り裂いていく。

 

 「まずはお前からだ、馬野郎。」(シュバルツ)

 「返り討ちにするわ、餓鬼!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 ゼブラロストスマッシュはシュバルツに右の強烈なストレートパンチを放つがそれをシュバルツはいとも簡単に躱し、ゼブラロストスマッシュの背後を取ってその背中を爪で切り裂く。

 

 「黙ってろ、馬刺しにするぞ。」(シュバルツ)

 「こんガキィ!!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 ゼブラロストスマッシュは大振りの剛腕でシュバルツを叩き潰そうするがシュバルツは敏捷性を活かして瞬時にゼブラロストスマッシュの懐へと入り込み、ビルドドライバーのハンドルを回した。

 

 ≪Ready Go!ワイバニックフィニッシュ!≫

 「破ッ!!」(シュバルツ)

 

 シュバルツは右手にエネルギーを集めてゼブラロストスマッシュの腹部を殴りつけた。それによってゼブラロストスマッシュの数メートルほど吹っ飛んだ。

 

 シザースロストスマッシュと戦うフレアミストレスとスパイディアマゾネスは長年培って来た阿吽の呼吸で息の合った攻撃を繰り出す。

 

 「くっ!厄介ね。」(シザースロストスマッシュ)

 「あらあら、これはまだ小手調べよ。もう終わりかしら?」(フレアミストレス)

 「残念だけど、まだ行けるわよ!!」(シザースロストスマッシュ)

 

 シザースロストスマッシュは両手のハサミをフレアミストレスに投げつけるがそれを突如フレアミストレスの前に出来た蜘蛛の巣が絡めとってしまった。

 

 「生憎だが、お前は動いて良いなんて言ってないけどな!!」(スパイディアマゾネス)

 

 スパイディアマゾネスが右手から蜘蛛の糸を放ち、シザースロストスマッシュの動きを封じ込める。

 

 「ごめんなさいね、相手の思うとおりに戦わせないのは定石なのよ。動きを封じるのも先手を取るのも。」(フレアミストレス)

 

 そう言うとフレアミストレスは全身から炎を放出し、それを集めて巨大な火球にする。

 

 「それじゃあ、これを受けたらどうなるかしら。」(フレアミストレス)

 

 フレアミストレスはそのまま火球をシザースロストスマッシュに当てた。シザースロストスマッシュは爆炎に包まれて消滅、その数秒後に赤い液体となって再生した。

 

 「よくも、やってくれたわね。」(シザースロストスマッシュ)

 

 怒りに震えるシザースロストスマッシュは両手のハサミを展開してフレアミストレスとスパイディアマゾネスに襲い掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なる程、だからおっちゃんの店に来たのか。」(晴人)

 「こないだのお礼を改めてと思って。」(大樹)

 「最近、仁藤君と真由ちゃんと一緒に追っているファントムの事件を調べている時に会った子たちなのは聞いていたけど。まさか、その子たちにIS世界王者の織斑千冬の弟と妹がいるなんて。」(凛子)

 

 東京で激しい戦いが起きている頃、面影堂では晴人・凛子夫妻が大樹とマドカの話を聞き始めていた。

 

 「お姉ちゃんはあまりプライベートのことは公表しないので。」(マドカ)

 「千冬姉ちゃんの素顔を知ったファンの顔を見てみたいよ。」(大樹)

 「それ、お姉ちゃんに言う?」(マドカ)

 「言ったらどうなるか目に見えているから止めて。」(大樹)

 「柏葉、ってもしかして。」(凛子)

 「ああ、10年前の事件のことなら、まあ。」(大樹)

 「いえ、お父さんとお母さんを殺した犯人は?」(凛子)

 「去年、世界各地で同時多発テロを起こした俺の兄貴です。兄貴よりも遠い親戚でしたが。」(大樹)

 「あの、晴人さんと凛子さんって夫婦なんですよね?」(マドカ)

 

 大樹の家族に起きた事件のことが話題が出てしまったことから大樹の雰囲気を察したマドカが話題を切り替えた。

 

 「ええ、それでどうしたのかしら?」(凛子)

 「その、私と大樹は付き合っているんですけど夫婦として仲良くする秘訣とかを聞けると。」(マドカ)

 

 その話題の中で面影堂のテレビを見ていた暦が晴人たちの元へ来た。

 

 「ねえ、なんかすごいことが起きてるみたい。」(暦)

 

 そこにはゼブラロストスマッシュとシザースロストスマッシュの破壊活動について速報だった。それを見た大樹とマドカ、晴人の表情が変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「まさか、こんなに傷を負うなんて。」(ガルグイユ)

 「古の魔法を扱う相手もいるとは。」(ムンミヤ)

 

 魔界城、レジェンドルガたちの居城であるそこには大樹たちと戦ったムンミヤ、ゴルゴン、ガルグイユ、ドードがいた。彼らのいる大広間には巨大な棺があった。

 

 「我らが王アークの覚醒のための儀式を行うにはあいつらは邪魔ね。でも、本来の力を発揮したガルグイユとドードが傷を負う程の相手なら油断はできないわね。」(ゴルゴン)

 「次は最初から本気で行く。それなら奴らだって。」(ガルグイユ)

 

 傷を抑えていたガルグイユとドードだったがその傷が癒えたらしくゴルゴンとムンミヤの元へ近づく。

 

 「指輪の魔法使いがいる、油断はするなと言ってであろう。」(???)

 

 そこにボロボロのローブに身を包んだ怪人が現れた。その姿は皮膚を張り付けた骸骨そのものだった。

 

 「それで、あなたの方の準備はどうなのかしら?ファントムのリッチさん。」(ゴルゴン)

 

 ゴルゴンがその怪人に話しかける。そう、ここに新たに現れた怪人こそが晴人たちが追っていたファントムである。リッチ、高名な魔法使いが死んだ末に変貌するという怪物の名を冠したそのファントムは指揮棒程度の長さだが禍々しい杖を取り出して魔法陣を描いた。

 

 「すでに儀式の準備は出来ている。後はお前たちの方の準備だけだ。」(リッチ)

 「それは心配することは無い。各地で集めた半分同化した人間たちがいる。残りも追々集まる。」(ムンミヤ)

 「ならば、俺様は流暢に待つとしようか。」(リッチ)

 

 リッチはそう言うと姿を消した。レジェンドルガとファントム、幻想の怪物の祖たる彼らの儀式まであと●●日。



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仮面ライダー輝龍 第8話

side3人称

 ロシア、チェルノブイリでは始まりの男=葛葉紘汰こと仮面ライダー鎧武が十三異界覇王の一人、ファブニール=仮面ライダー炎竜と激しい戦いを繰り広げていた。

 鎧武は最も使い慣れている基本形態オレンジアームズの姿で大橙丸と無双セイバーを使って次々と攻撃を繰り出す。一方の炎竜は武器を合体させてもっとも扱いなれている無双セイバーナギナタモードで鎧武の攻撃を防ぎながら自身も反撃を行っていた。

 互いの武器が激突する度に火花が散り、両者ともに一歩も退かない戦いを見せる。

 拮抗する戦局に鎧武は大技を放つことで変えようとした。

 

 ≪ソイヤ!オレンジスカッシュ!≫

 「セイッハー!」(鎧武)

 

 空中からのライダーキック=無頼キックを放ち、炎竜に向かって突進する。対する炎竜も大技で応戦する。

 

 ≪ソイヤ!ドラゴンフルーツスカッシュ!≫

 「フンっ!」(炎竜)

 

 エネルギーをチャージした無双セイバーを真正面から振るい、紅蓮の斬撃を鎧武に放った。

 両者の攻撃が空中で激突して大爆発を起こした。

 空中で無頼キックを放った鎧武は体勢を崩しながらも難無く着地する。それを見た炎竜は無双セイバーを振りかぶって鎧武を攻撃する。

 鎧武は炎竜の攻撃を躱すと戦極ドライバーに拡張ユニットであるゲネシスコアをセットした。さらに、新世代型のドライバーであるゲネシスドライバーで使用されるエナジーロックシード、レモンエナジーロックシードを取り出す。

 

 ≪レモンエナジー!ロックオン!ソイヤ!オレンジアームズ!花道、オンステージ!ミックス!ジンバーレモン!ハハ―!!≫

 

 ゲネシスコアにレモンエナジーロックシードをセットした鎧武は強化形態ジンバーレモンアームズにアームズチェンジした。武器をソニックアローに変えた鎧武はソニックアローによる遠距離攻撃で炎竜を追い詰める。

 遠距離攻撃を行うことが出来る鎧武ジンバーレモンアームズに対して、炎竜は次々と来る光の矢を無双セイバーを振るうことで防ぐものの得意戦術である被弾を気にせずに無理矢理距離を詰めての接近戦を行えなかった。鎧武の卓越した身体能力は炎竜の攻撃を軽々と躱してさらには反撃の一撃も迷うことなく放っており、炎竜もそう簡単には戦うことが出来なかった。

 

 ≪シークワーサー!≫

 

 だが、炎竜も太刀や大刀を使った力づくの近距離戦闘一辺倒の戦士ではない。新たにシークワーサーロックシードを開錠した。

 炎竜の頭上にクラックが開き、そこから抹茶色をした巨大な鋼のシークワーサーが現れた。

 

 ≪ロックオン!ソイヤ!シークワーサーアームズ!蒼雷、ライトニング!≫

 

 炎竜は敏捷性に優れた形態であるシークワーサーアームズにアームズチェンジ、無双セイバーからシークワーサーアームズ専用アームズウェポンの蒼雷杖に持ち変える。

 

 「行くぞ、紘汰。」(炎竜)

 

 炎竜はそのまま蒼雷杖を持ってジグザグに高速移動を始めた。

 鎧武は炎竜の狙いを即座に理解して、別のエナジーロックシードであるチェリーエナジーロックシードを取り出してレモンエナジーロックシードと入れ替えた。

 陣羽織の模様がレモンからサクランボへと変わり、高速移動能力を発揮するジンバーチェリーアームズへとアームズチェンジした鎧武。

 常人ではどのように戦っているかを捉えることが出来ない高速戦闘が始まった。

 高速移動能力を発揮する鎧武はソニックアローによる斬撃で炎竜を攻撃していく。

 炎竜は高速移動能力を発揮する鎧武に対して戦極ドライバーを操作した。

 

 ≪シークワーサースパーキング!≫

 

 炎竜は蒼雷杖を頭上で回転させて、杖の石突きの部分を地面に突きつけた。

 炎竜の周囲には巨大なシークワーサー型の光球がいくつも地面から出現し、空中へと浮かび上がる。

 

 「ハアッ!!」(炎竜)

 

 炎竜が掛け声を発すると光球は高速移動する鎧武へと次々と飛んでいく。

 鎧武も何とか高速移動能力を駆使して躱すものの一瞬だけ立ち止まってしまった。

 

 ≪シークワーサースカッシュ!≫

 

 その隙を逃さずに炎竜はシークワーサーアームズの必殺技であるボルトパニッシュを発動。エネルギーをチャージした蒼雷杖の穂先を鎧武に向かって突き出した。

 鎧武はソニックアローで攻撃を防ぐが蒼雷杖のエネルギーがソニックアローへと流し込まれソニックアローが内部から爆発を起こした。

 

 「くっ!」(鎧武)

 

 鎧武は寸でのところでソニックアローを手放し、難を逃れた。この攻撃で鎧武も炎竜の本気がどれほどのものなのか窺い知れた。だからこそ、鎧武も全力で応じることにした。

 

 ≪カチドキ!≫

 

 オレンジ色の大型のロックシード、カチドキロックシードを開錠した鎧武。新たに出現した鎧はこれまでに見せたアームズの鎧よりも大型だった。

 

 ≪ソイヤ!カチドキアームズ!いざ、出陣!エイ!エイ!オー!≫

 

 鎧武の姿はより大型の鎧を纏った最強の極アームズに進化する前の中間強化形態であるカチドキアームズへとアームズチェンジした。

 重装甲と高火力を誇るカチドキアームズにアームズチェンジした鎧武は背中に装備されているカチドキ旗を手を取り、炎竜に向かって大きく振りまわした。

 カチドキ旗がたどった軌跡はそのまま衝撃波となって炎竜に襲い掛かる。

 炎竜は放たれた衝撃波を真正面から受けて、吹っ飛ばされる。敏捷性に秀でているが防御力が低下しているシークワーサーアームズでは強力な上位ロックシードの攻撃はひとたまりもなかった。

 

 「大樹!もう諦めてくれ!」(鎧武)

 

 ここまでの攻撃であればそう簡単には立ち上がれない、そのことを理解している鎧武は炎竜にそう呼びかけた。だが、大きなダメージを受けた炎竜はそのまま立ち上がったのだ。途轍もない怒気を漲らせて、仮面に隠された素顔を憤怒の表情にして。

 

 「諦めろ?そう言ったのか?」

 

 その声音はかなり冷たかった。だが、次の瞬間に放たれたのは燃え盛る爆炎の如き怒声だった。

 

 「ここまで来て諦めるわけないだろ!!」

 

 鎧武に対して怒声を発した炎竜。溢れる感情のままに鎧武に自身の思いを告げたのだった。

 鎧武の放った諦めろと言う言葉、生半可に自身を救おうとする気持からの手加減が許せなかった。その思いから自身の前に立ちはだかるのかと怒りを感じたのだった。

 

 「良いか、殺さない限り俺は止まらない、止まるつもりはないっ!!父さんと母さんが、一夏が、箒が、鈴が、セシリアが、シャルが、ラウラが、簪が、楯無先輩が、千冬姉ちゃんが山田先生が弾が蘭ちゃんが、俺のそばで一緒に育った仲間たちが、家族が平和に暮らせる世界を作るためなら俺はどんなことだってする!そして、マドカが、俺の愛する彼女が平穏な世界で、平穏な何不自由のない当たり前の世界で暮らせるためなら、俺はどんなことだってしてやる!!それがどんな地獄を産もうとも!俺は!俺の大切な人達を護るために!今度こそ彼女達を護るためにここにいる!俺のしていることが悪なら喜んで悪になってやる!その果てが俺の死だろうとそんなものに構うものか!!俺の命一つで俺の大切な人達を今度こそ守れるなら本望だ!!」(炎竜)

 

 感情を爆発させて鎧武にぶつける炎竜。

 そう言うと炎竜はファブニールロックシードを取り出した。

 

 「葛葉紘汰!俺は十三異界覇王の一角、仮面ライダー炎竜!いや、俺はもう仮面ライダーじゃない、俺の名はファブニール!!黄金の果実を使い、俺の望みを叶えるために怒りの炎を滾らせる覇王!十三異界覇王、獄炎龍覇王ファブニールだ!!」(炎竜)

 ≪ファブニール!≫

 

 炎竜はファブニールロックシードを開錠したクラックから鋼のドラゴンが現れ火炎を吐いて周囲を炎が燃え上がる戦場へと変えてしまった。

 

 「俺を止めたいなら俺を殺せ!だが、俺は止まるつもりは毛頭もない!!俺が望む世界を作るために!俺の愛する者達が死ぬその時まで平穏を享受する世界を作る!!そのために数多の世界を滅ぼしてもな!!」(炎竜)

 

 炎竜=ファブニールはロックシードをシークワーサーロックシードからファブニールロックシードへと変えて、自身が持つ最強の姿になる。

 

 ≪ソイヤ!ファブニールアームズ!邪龍、アウトレイジ!≫

 

 鎧武に向かって攻撃をするドラゴンが炎竜の方へと向き直り、咆哮した。その瞬間、ドラゴンはバラバラになって炎竜に鎧となって装着された。

 仮面ライダー炎竜ファブニールアームズ、邪龍の名を冠する憤怒の戦士。他の十三異界覇王と違い、自身の手で自身の世界を滅ぼしたわけではない、その彼が十三異界覇王に名を連ねたのはひとえに黄金の果実の力があっただけ、ではない。彼の中にある自身に向けられる憤怒の炎、これから他の世界を破滅せんとする強い決意がただの人間である彼を人外たちと名を連ねる程の高みへと押し上げたのだった。

 邪龍ファブニール、元々は北欧神話にその存在が知られる悪しき龍である。その龍は元は人間だったがラインの黄金と呼ばれる呪いの黄金を発見し、その黄金を我がものとして独占すべく龍へと変貌したのだ。最終的にはファブニールはシグルド、もしくはジークフリートと呼ばれる英雄によって倒される。そんな邪龍の名前を名乗る、それは自嘲と自戒を込めたものである。

 おのが望みのために黄金の果実を独占する、彼の中で決してやってはいけないことをした結果として彼はファブニールと名乗っている。それを、目の前で彼と戦う鎧武は知らない。

 

 ≪邪龍DJ破断剣!≫

 

 右手に巨大な両刃の大剣、邪龍DJ破断剣を持つ炎竜は背中に備えらえた翼を広げて鎧武に襲い掛かった。

 鎧武は咄嗟に戦極ドライバーを操作、カチドキ旗にエネルギーをチャージして炎竜に向かって強化された衝撃波を放つ。

 強化された攻撃を邪龍DJ破断剣で切り伏せる炎竜。本来、必殺技級に強化された攻撃を打ち消すのは容易ではない。それを強化されていない武器で成し遂げるということからファブニールアームズの性能は非常に高い。それが怒りの感情でより性能が強化されていくという対峙する相手にとってはまともに太刀打ちすることが出来ないアームズである。

 

 「喰らえ!!」(炎竜)

 

 炎竜は邪龍DJ破断剣を振りかぶり鎧武に向かって邪龍DJ破断剣を振り下ろした。

 鎧武はカチドキ旗を交差させて炎竜の一撃を受け止めるもののその衝撃はすさまじく鎧武ごと地面を陥没させるほどの威力だった。

 

 (ここまでの力を発揮できるのかよ!?今ので持っている旗が完全に折れちまった!!)(鎧武)

 

 そして、鎧武が持っていたカチドキ旗が炎竜の邪龍DJ破断剣の攻撃により旗の中程で折れてしまっていた。さらには鎧武本人も動けるものの少なからずダメージを受けていた。黄金の果実を得て始まりの男、神になった彼でも決して軽くはない一撃を受けてしまった。

 

 (一度、距離を取って極アームズに、いや、下手すると大樹を殺してしまいかねない!)(鎧武)

 

 鎧武は炎竜から距離を取るためにその場から跳び退った。炎竜の力に自身の最強の力にして本来の姿である極アームズを使うか迷うもののカチドキアームズの専用アームズウェポンである火縄橙DJ銃を召喚した。鎧武はカチドキロックシードを戦極ドライバーから取り外して火縄橙DJ銃にセットした。

 

 ≪ロックオン!一、十、百、千、万、億、兆、無量大数!カチドキチャージ!≫

 

 火縄橙DJ銃の銃口にエネルギーが集まり、そのエネルギーはオレンジ型の巨大な光弾へと変わる。鎧武は火縄橙DJ銃の引き金を引いた。次の瞬間には巨大な光弾が炎竜に向かって放たれた。

 

 ≪ソイヤ!ファブニールスカッシュ!!≫

 

 炎竜は戦極ドライバーを操作、赤黒いエネルギーが邪龍DJ破断剣の刀身に集まり赤黒く光る巨大な刃を形成した。

 炎竜は向かってくる光弾を強化された邪龍DJ破断剣で両断した。

 両断された光弾は二つに分かれて、炎竜の背後にある巨大な球体へと当たって大爆発を起こした。

 そのまま、炎竜が鎧武に向かって行こうとした時だった。

 光弾を受けて大爆発を起こした球体がひび割れて崩れ出したのだった。球体は構成していた車や建物などの瓦礫へと戻っていき、激しい音を立てて崩れていった。そして、そこから1体の異形が土煙の中で佇んでいた。

 背後の変化に炎竜が、目の前のことに鎧武がそこへ注視する。

 土煙が止むとそこに十三異界覇王の一人、人工生命体ネオ生命体の戦闘用躯体である怪人ドラスがいた。

 

 「まさか、ダークドライブとゲムデウスが倒されたのか。」(炎竜)

 

 炎竜が聞いていた他の十三異界覇王であるダークドライブとゲムデウスの姿がそこには無かったのだ。そして、その理由もすぐに明らかになる。

 

 「おい、大樹。あいつの腰を見てみろ。」(鎧武)

 

 先程まで戦っていたとは思えない言葉を発する鎧武。炎竜は鎧武の言わんとすることを即座に理解した。

 

 「まさか、取り込んだのか。」(炎竜)

 

 ドラスの腰には仮面ライダードライブが使うドライブドライバーが、左腕にはシフトブレスが装着されていた。そして、ドラスが装着しているものは元はダークドライブが使っていたものである。そのことから炎竜は最悪の事態が起きていることに気が付いた。

 

 「取り込んだってどういうことだ。」(鎧武)

 「俺が魔蛇から聞いたのは目の前の怪人がダークドライブとゲムデウス、2体の十三異界覇王と戦っていたことだ。実際に現れたのは奴一人、奴の能力から考えて他の2体は取り込まれた可能性が高い。ドライブドライバーを装着していることから既にダークドライブ、ロイミュード108は吸収されているだろう。」(炎竜)

 

 鎧武と炎竜は目の前にいるドラスを警戒する。そして、ドラスは鎧武と炎竜を知覚するとドライブドライバーのエンジンを始動した。

 

 「恐らく、ゲムデウスも吸収されているだろう。その場合、俺と紘汰で勝つのはかなり難しい。」(炎竜)

 

 炎竜の言葉を証明するように禍々しい金色の剣型のシフトカーをドラスはシフトブレスにセットした。

 

 ≪ドライブ!タイプダークネス!トライイーヴィルズ、ユナイト!!≫

 

 ドライブドライバーから軽快な音声が響くとドラスの姿が変化した。その姿はバッタを思わせる有機的なものから仮面ライダーらしいフォルムへと変化した。元となったダークドライブがゲムデウスの体色となりながらもバッタの意匠が色濃く反映されたドライブ版ドラスとでも言うべき姿になった。

 十三異界覇王、新生鋼蝗王ドラスは時空氷結王ダークドライブと電脳主神王ゲムデウスを吸収して進化した。新生鋼蝗王仮面ライダードラス、3体の十三異界覇王が一つとなった姿である。

 仮面ライダードラスはそのまま鎧武と炎竜に襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は移って、面影堂。そこには戦うための準備を整えた大樹とマドカが店を出ようとしていた。

 

 「行くのかい。」(輪島)

 「はい。放っておけないので。」(大樹)

 「俺も凛子と一緒に現状を聞いてから向かう。」(晴人)

 「それじゃ、後で。行くよ、マドカ。」(大樹)

 「うん。」(マドカ)

 

 大樹はロックビークル、ハイビスカストライカーを起動してマドカと共に戦いの場へと向かった。

 

 「ねえ、今度の相手って。」(マドカ)

 「分かんない。あの映像だけじゃあなんとも。」(大樹)

 「その相手と戦っていたのって、もしかしてもう一人の大樹?」(マドカ)

 「まさか。」(大樹)

 「遺体はあったの?」(マドカ)

 「確認してない。だけど、あいつの体は紘汰さんが作った。残ってなくてもおかしくないって考えてた。」(大樹)

 

 現場へ向かう中でマドカが大樹に黒崎修羅について話しかけた。なお、大樹自身はそう口にした通りに修羅がすでに死んでいたと考えていたが。

 

 「大樹。」(マドカ)

 「何。」(大樹)

 「最初の前の世界の記憶を思い出した時、本当はもう一人の大樹だったんでしょ?」(マドカ)

 

 マドカの問いに対して大樹は答えなかった。否、答え難かった。だから、答えることが出来なかった。

 大樹自身はこの世界で転生したことを自覚している。だが、その直後の記憶というのはかなり朧気であった。実際にはこの世界で最初に目覚めたの人格は修羅だった。その修羅自身は葛葉紘汰によって大樹と別れるまでは自身のことを柏葉大樹と疑わなかった。その間の大樹本来の人格は深層心理の世界において閉じこもっていたのだ。葛葉紘汰の手によって修羅の人格を分けられた大樹はこの世界を生きた柏葉大樹の人格と融合して覚醒したのだ。そのため、大樹自身は転生をした当初の記憶はなく、その間のマドカたちとのやり取りもほとんど朧気であった。

 マドカの問いに対して答えられなかったのはそのことを肯定するのはその間の記憶がないということを認めてしまうからだ。

 

 「やっぱり、覚えていないんだ。中学の時に倒れて寝ていた間のこと。」(マドカ)

 「はっ!?俺、ええ!?」(大樹)

 

 いきなりのことで大樹はハイビスカストライカーを停めてしまった。

 

 「いや、体調が悪かったのは覚えているけど。ええ!?」(大樹)

 「3年生になる前、2年生の時の3学期の終わりに急に倒れたんだよ。覚えてない?」(マドカ)

 

 マドカの問いに対して今度の今度は答えられなかった。何せ、大樹本人は完全に覚えていなかったからだ。自身が覚えていないことで急に話題が出たのだ。それで驚かない方も無理はないだろ。

 

 「お父さんもお母さんも元気になったから大丈夫って言っていたから気にしなかったけど。」(マドカ)

 

 なお、この時のマドカの言葉は聞いてはいるものの大樹本人は「いや、戦いの場に行くのにこんなことを急に話すか!?せめて、他の時に話してくれよ...。」と思っていたが。なお、このことを言ったとしても特にマドカ自身が悪気があったわけでは無いのは大樹自身も分かっている。

 

 「そのこと、さ。終わったら話してよ。なんか、自分の知らない自分の時間があるのは気持悪い。」(大樹)

 「じゃあ、すぐに終わらせよ。」(マドカ)

 

 またすぐにハイビスカストライカーを走らせる大樹。なお、この時にはすでに大樹もマドカも意識を切り替えており、その腰には既に戦極ドライバーが装着されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「死に晒せや、餓鬼ぃ!!」(ゼブラロストスマッシュ)

 「喰らってろ、馬が!!」(シュバルツ)

 ≪ワイバニックフィニッシュ!!≫

 

 ゼブラロストスマッシュと戦いを繰り広げるシュバルツはエネルギーを込めた右足でヤクザキックをかましてゼブラロストスマッシュを撃破する。だが、倒したそばから再生復活するゼブラロストスマッシュ。

 

 「全く、何度丸焼きすれば完全に消えるんだよ。」(シュバルツ)

 「流石の僕もかなり削られてもうたわ。まあ、いろんな星を滅ぼした僕らを殺しきるのは難しいで。」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 驚異的な再生能力を見せるゼブラロストスマッシュ。だが、彼の再生能力の無限に近しいものでシュバルツも攻略の糸口を掴みあぐねていた。

 

 (彼此既に10回は殺した。それでも消耗した様子もなく復活している。このまま攻撃してもじり貧になるか。)(シュバルツ)

 

 なお、現状ではシュバルツ自身は冷静に戦い方を考えていた。無限に近い再生能力を突破する方法自体はそう難しいものではない。相手の身動きや生命活動を制限することと相手が再生出来なくなるまで倒し続けることと再生する瞬間を与えずに完全に消滅させることの3つの方法である。1番目のの方法は大半の者が選択することが多く、3つ目の方法で分かりやすいのは留芽颯斗こと仮面ライダーロードが十三異界覇王の一人である純白鏖殺王ン・ダグバ・ゼバとの戦いで不死身のダグバを倒すためにデッドゾーンオーバーヒートによる超高熱で再生を上回る焼却力で倒したことである。では、なぜ一つ目を選ぶ者が多いのかではあるがそもそも倒せない相手と戦い続けるのはかなりの労力であり、基本は相手を制限、つまり封印することを選ぶことそのものが最善だったりする。2番目のの再生出来なくなるまで倒し続けるという方法はいわば我慢比べである。倒す側は自身の持つ最大限の労力を注ぎ続けなければならず、倒される側の限界が分からなければ自滅という終わりを迎える可能性があるのだ。

 不死身の相手と戦う場合には颯斗のように相手を完全に消滅させることが出来る(颯斗の場合、自身も多大なダメージを負ってしまう危険性が非常に高いが)手段があれば容易ではあるものの仮面ライダーブレイドが戦っていた不死生物アンデッドはそもそも倒すことが出来ないためにカードに封印することしか出来なかった。仮面ライダーウィザードの宿敵のファントム、フェニックスは最終的には太陽に叩き込んで永遠に死と再生を繰り返すことで実質的な封印を行った。そのため、再生を繰り返す相手には基本的には封印若しくは完全消滅のどちらかしか対処法は無いと考えていることが多い。

 だが、仮面ライダーシュバルツが選んだのはここで挙げた3つの方法の中で最も現実的ではない方法である。

 

 ≪ワイバニックフィニッシュ!!≫

 「うおら!!」(シュバルツ)

 

 両手の爪にエネルギーを込めてゼブラロストスマッシュを切り裂いた。

 

 「ギャアアアアアア!!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 ゼブラロストスマッシュはまたも爆散するが即座に再生する。そして、再生が終わった瞬間にシュバルツはまたしても必殺技を放っていた。またしても再生するゼブラロストスマッシュに何度も必殺技を放ち続けるシュバルツ。ここでゼブラロストスマッシュはシュバルツの思惑に気付いた。

 

 (まさか、この餓鬼!僕が再生できなくなるまで殺し続けるつもりかいな!?)(ゼブラロストスマッシュ)

 

 シュバルツが取った方法は相手の限界が来るまで倒し続ける、というあまりにも厳しい方法だった。

 

 (それはそうだ。俺にはお前を瞬時に倒すすべはない。封印することも出来ない。なら、倒すなら取る方法は一つだろ。)(シュバルツ)

 

 だが、シュバルツは仮面に隠された口の端を歪に歪ませる。

 

 「さあ、俺が壊れるかお前が壊れるかのチキンレースだ。楽しもうぜ?」(シュバルツ)

 「ひぃ!!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 シュバルツの声音に恐怖を感じたゼブラロストスマッシュ。決して、臆することが無かった彼が初めて恐怖を、自分が劣等な種族と思っていた相手に感じたのだ。

 

 (あ、あかん!!こんな奴と戦り続けるのはあかん!!伊能さんと王様に伝えんと!!僕らが戦った仮面ライダーとこいつは違う!!)(ゼブラロストスマッシュ)

 

 ゼブラロストスマッシュは生まれて初めて目の前の敵に背を向けたのだ。背を向けて逃げたのだ。

 

 「おい、待てよ。どこへ行くんだ?」(シュバルツ)

 「ヒイイイイイイ!!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 逃げるゼブラロストスマッシュを追うシュバルツ。本来であれば人間を襲う悪の存在であるゼブラロストスマッシュが無様に悲鳴を上げて逃げているのだ。

 

 「全く、散々殺しまくって逃げるなんてな。」(シュバルツ)

 ≪Ready Go!ワイバニックフィニッシュ!≫

 

 背中の翼を広げて飛び上がったシュバルツはゼブラロストスマッシュの背後にライダーキックを撃ち込んだ。

 

 「ギャアアアアアア!!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 悲鳴を上げて爆散したゼブラロストスマッシュ。今度は血色の液体のままどこかへ消え去った。

 

 「逃げたか。まあ、良い。残っている鳥女の方を殺れば良いからな。」(シュバルツ)

 

 シュバルツはそう言うと別の戦いの場へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シュバルツとゼブラロストスマッシュの戦いが終わった時、

 

 「クククク、さあ、俺をもっと楽しませろ!!」(キルバス)

 

 十三異界覇王の一人である星滅蜘蛛王キルバスが仮面ライダー輝龍とヴァルキリーと対峙していた。



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仮面ライダー輝龍 第9話

 時間は遡り、大樹とマドカがシュバルツたちが戦っている場所へ向かっている時だった。

 突如として空間に裂け目が出現してそこから赤い蜘蛛の仮面ライダー、十三異界覇王の一人であるキルバスが出現したのだった。

 

 「遂にこの世界へ来れたか。俺を差し置いて楽しそうにしているじゃねえか。」(キルバス)

 

 大樹はハイビスカストライカーを停める。目の前の相手と対峙して大樹もマドカも全身の細胞から相手がかなりの危険な相手であることを察した。

 二人は即座にそれぞれのロックシードを取り出した。

 

 ≪ゴールドドラゴンフルーツ!≫

 ≪ブルーベリー!≫

 「「変身!!」」(大樹、マドカ)

 

 大樹は仮面ライダー輝龍に、マドカは仮面ライダーヴァルキリーに変身した。そして、時間はシュバルツとゼブラロストスマッシュの戦いが終わった時間となる。

 

 「クククク、さあ、俺をもっと楽しませろ!!」(キルバス)

 

 キルバスはそう言うと仮面ライダービルドが使う武器であるドリルクラッシャーを召喚して輝龍とヴァルキリーに襲い掛かる。

 輝龍とヴァルキリーは二手に分かれてキルバスを挟撃する。

 輝龍の光龍剣が、ヴァルキリーのブルーライフルの鋭い穂先がキルバスに向かって行く。

 二手からの攻撃をキルバスは持っていたドリルクラッシャーを手放して、あろうことか両手で受け止めたのだった。

 輝龍とヴァルキリーは武器を引こうとするが全くびくともしなかった。

 

 「おいおい、もう終わりか?」(キルバス)

 

 キルバスがそう言った瞬間、輝龍はもう一つの武器である竜炎刀・陽炎を鞘から抜き放ち、キルバスに斬りかかる。一方のヴァルキリーはブルーライフルを放して、キルバスの頭部に鋭いハイキックを放つ。

 両手が塞がっており、流石に攻撃そのものを防御する術がないと思われていたキルバスだがあろうことか手に持っていた光龍剣とブルーライフルを使って応戦を始めた。

 

 「良いぞ、良いぞ!もっとだ、もっと楽しませろ!!」(キルバス)

 

 扱ったことのないはずの武器を使いこなすキルバス。そこにキルバスは自身の腰に装着しているエボルドライバーを操作して、光龍剣とブルーライフルにエネルギーをチャージする。

 

 赤く輝く斬撃と光弾が輝龍とヴァルキリーに襲い掛かる。

 とっさの判断で輝龍は竜炎刀・陽炎と無双セイバーを合体させてナギナタモードに変える。

 

 ≪ゴールドドラゴンフルーツスパーキング!!≫

 

 輝龍はヴァルキリーの前に立つと戦極ドライバーを操作して無双セイバーナギナタモードにエネルギーを集中させて手前で高速回転することでキルバスの攻撃を防御した。

 攻撃を防いだ輝龍は無双セイバーナギナタモードを手にしながらキルバスを見据える。

 キルバスが攻撃に使った輝龍とヴァルキリーの武器は半壊しており、取り戻したところで使い物にならないことが窺い知れた。

 

 「さて、もう終わりか?」(キルバス)

 

 キルバスは半壊した光龍剣とブルーライフルを投げ捨てる。

 輝龍とヴァルキリーは他に手が無いか考えるものの目の前の相手がまだまだ底を見せていないことにそう簡単に手元にある他のカードを切るということを決めかねていた。

 

 「なら、俺から行くぞ!!」(キルバス)

 

 キルバスはエボルドライバーのハンドルを回して両手から蜘蛛の糸を放出、輝龍とヴァルキリーに向かって高速で伸ばした。

 輝龍は蜘蛛の糸を無双セイバーナギナタモードで斬っていく。ヴァルキリーは敏捷性を活かして迫りくる蜘蛛の糸を躱していく。だが、二人の奮戦も空しく、蜘蛛の糸は二人を拘束した。

 キルバスは蜘蛛の糸を操作して輝龍とヴァルキリーを自身の近くへと引き寄せていく。

 輝龍とヴァルキリーは逃れようともがくが二人を拘束する糸は全く切れる様子はない。

 

 (まさか、拘束からの攻撃技かよ!?このままじゃあ確実に相手の大技を貰う!!)(輝龍)

 (この糸、全く切れない!私はそんなに力は強くないけど、大樹が全く振りほどけないなんて。)(ヴァルキリー)

 

 輝龍とヴァルキリーが万事休すと思われたその時だった。キルバスがやって来た空間の裂け目から高速回転するエネルギー刃と無数の惑星型の光球がキルバスの糸を破壊した。

 

 「何!?」(キルバス)

 

 キルバスが動揺したその瞬間、空間の裂け目からジオウサイキョ―の文字が輝く巨大な光の刃がキルバス目掛けて伸びてきたのだった。

 

 「グアアア!!」(キルバス)

 

 キルバスは光の刃をそのまま喰らって吹っ飛んだ。

 糸が切れたことで地面に下りた輝龍とヴァルキリーは糸を振りほどいて空間の裂け目を見る。そこから4人の仮面ライダーが姿を見せた。

 マントを身に纏い、身体のアーマーには太陽系の惑星が描かれている仮面ライダーウォズギンガファイナリー。

 上半身を巨大なオレンジ色のアーマーで覆われた仮面ライダーゲイツリバイブ剛烈。

 白い天女のような姿をした仮面ライダーツクヨミ。

 最後に彼らのリーダー、2000年に現れた仮面ライダークウガから2018年に現れた仮面ライダービルドたち19人の平成仮面ライダーの力を受け継ぐ時の覇者にして魔王!!最高最善の魔王を目指す仮面ライダージオウⅡである。

 

 「祝え!今、ここにすべての平成ライダーの力を受け継ぐ時の王者、仮面ライダージオウが再臨を果たした瞬間である!!」(ウォズ)

 

 仮面ライダーウォズの言葉、仰々しい仕草に輝龍とヴァルキリーは仮面の下の素顔を鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。それに伴ってか風が吹き抜ける効果音がその場にいる全員の心に響いた。

 

 「んんっ!である!!」(ウォズ)

 「いや、無理にやらなくて良いよウォズ。」(ジオウ)

 「しかし、我が魔王!」(ウォズ)

 「そもそも戦っている最中でそんなことをする意味があるのか?」(ゲイツ)

 「ゲイツ君、ここは我が魔王が創造した世界とは別の世界だ。数多の世界に我が魔王の威光を広める良い機会では無いか。」(ウォズ)

 「そもそも、そんなことをする必要がないだろ!」(ゲイツ)

 「やれやれ、それだから君は我が魔王の臣下としての自覚が不十分なのだよ。」(ウォズ)

 「俺はソウゴの臣下じゃない!!」(ゲイツ)

 「ま~た、始まった。」(ツクヨミ)

 

 突如として始まった珍道劇に輝龍もヴァルキリーも頭の上でクエスチョンマークを浮かばせていた。

 

 「お前ら、良いぜ。やってやるぜ!!」(キルバス)

 

 キルバスはジオウ達に飛び掛かるも溜息を吐くツクヨミが時間停止でキルバスの動きを止めた。

 

 「ゲイツもウォズもそんなことをしている場合じゃないでしょ。」(ツクヨミ)

 「そうだよ。今はこいつを倒さないと!!」(ジオウ)

 「いや、しかし我が魔王!その御身より放たれる威光を、その覇業を広めねば!!」(ウォズ)

 「だから、それを今する必要がないだろ!!」(ゲイツ)

 

 空中で一時停止しているキルバスにまだまだ話をしているジオウ一行。あまりにも危機感のないやり取りをしているために輝龍もヴァルキリーも自分たちの方がおかしいのかという自問自答さえ始めていた。

 ここでジオウ一行の説明をしておこう。彼らは魔蛇による十三異界覇王大戦の目論見を察知して即座に魔蛇の野望を止めようと動いたのだった。彼らは元々はこの世界とは違う並行世界に居たのだがジオウが持つとある仮面ライダーの力を使って並行世界のはざまに潜んでいた魔蛇たちの元へ強攻したのだった。

 仮面ライダージオウこと常盤ソウゴはここでのウォズの説明の通りに彼の世界にいた仮面ライダーたち、クウガからビルドまでの19人の仮面ライダーの力を受け継いだ魔王である。19の仮面ライダーの力を使えるだけではなく未来予知を含めた時間に関する能力を持っている仮面ライダーである。

 仮面ライダーゲイツこと明光院ゲイツはソウゴの親友である仮面ライダーで、彼自身もソウゴが受け継いだ仮面ライダーたちの力を使うことが出来る。それだけではなく、パワーとスピードのそれぞれに特化した強化形態ゲイツリバイブの力を使いこなす戦士でもある。

 仮面ライダーウォズこと預言者ウォズはソウゴを我が魔王と心酔しているだけではなくシノビ、クイズ、キカイという並行世界の未来の仮面ライダーの力を使って戦う仮面ライダーである。さらに宇宙の力を使うギンガファイナリーはジオウとゲイツの最強形態と同等の力を有している。

 仮面ライダーツクヨミことツクヨミはこの一行の紅一点である。仲間であるジオウら3人とは違い、とある世界を統べる王族の生き残りで王族の力である時間停止の力を使う。また、仮面ライダーとしても強力な戦士であり、仲間の仮面ライダーの必殺技を受け止めて強化した状態で敵に放つなどの芸当を披露したこともある。

 一人一人が既に十三異界覇王と対等に渡り合えるだけの力を持つ彼らはずっとファブニールが作り出した世界でキルバスと戦っていたのだ。

 

 「それじゃ、皆行くよ!」(ジオウ)

 「おう!」(ゲイツ)

 「うん!」(ツクヨミ)

 「はっ!!」(ウォズ)

 

 ジオウ達は自分たちのドライバーを操作、時間停止により動きを止められたキルバスに向かって4人同時のライダーキックを放って撃破したのだった。

 

 「うわぁ。」(ヴァルキリー)

 「オーバーキルだ。」(輝龍)

 

 文字通りの瞬殺、さらにはもはや議論の余地のないオーバーキルに輝龍とヴァルキリーは完全に引いていた。

 

 「いよっし!次は別の奴を...。」(ジオウ)

 「それでは、我が王を回収させてもらおう。」(ブラッド)

 

 そこに仮面ライダーブラッドが出現した。仮面ライダーブラッドは撃破されたキルバスの細胞を回収する。

 

 「我らブラッド族は体の一部でもあれば再生できる。このレベルであれば我が王もすぐに復活できるだろ。」(ブラッド)

 

 ブラッドはそう言うと空中に浮遊してどこかへ飛び去った。

 

 「待て!」(ジオウ)

 「では行こうか、ゲイツ君、ツクヨミ君。」(ウォズ)

 「お前が命令するな!」(ゲイツ)

 「あなたたちはここに居て!」(ツクヨミ)

 

 仮面ライダーブラッドを追うべくジオウ一行もこの場を去った。ここで残された輝龍=大樹とヴァルキリー=マドカだった。二人はドタバタといなくなったジオウ達のいなくなった方向を見続けて変身を解除した。

 

 「あのさ、マドカ。」(大樹)

 「何。」(マドカ)

 「どうすれば、良い?」(大樹)

 「さあ。」(マドカ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ハア、ハア、ハア、あかん、あかん!!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 一人逃走を続けていたゼブラロストスマッシュ。とにかく遠くへ、遠くへ逃げようと走り続けるゼブラロストスマッシュ。数多の命を奪って来た彼が恐怖のままに逃走していた。そこを、その場に駆け付けようとしていたある二人の仮面ライダーが立ちはだかった。

 

 「いよ、久しぶりだな。」(一海)

 「一人だけで逃げているとは。修羅と戦った所為か。」(幻徳)

 

 猿渡一海と氷室幻徳、ゼブラロストスマッシュにとっては見知った相手で仮面ライダーシュバルツこと黒崎修羅と戦った後に出会いたくなかった相手であった。

 

 「なんでや、なんでこういう時に。」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 後退りするゼブラロストスマッシュ。彼と相対する一海と幻徳は既に腰に変身ベルトのスクラッシュドライバーを装着していた。

 

 ≪ロボットインジェリー!≫

 ≪デンジャー!≫

 「変身!」(一海)

 「変身。」(幻徳)

 ≪潰れる!溢れる!流れ出る!ロボットイングリス!ブラア!!≫

 ≪割れる!喰われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!ドリャア!!≫

 

 一海は仮面ライダーグリスに、幻徳は仮面ライダーローグに変身した。

 二人の仮面ライダーと対峙するゼブラロストスマッシュ。仮面ライダーシュバルツとの戦いで折れたプライドを立て直す。

 

 「お前さん方二人、すぐにでもひねり潰したるわ。」(ゼブラロストスマッシュ)

 「心火を燃やしてぶっ潰す!」(グリス)

 「大義のための犠牲となれ。」(ローグ)

 

 ゼブラロストスマッシュがグリスとローグと対峙している頃、キルバスを回収した仮面ライダーブラッドの前にジオウ一行とは別の仮面ライダーが立ちはだかった。

 

 「久しぶりだな、伊能。」(ビルド)

 「今度こそぶっ潰してやるぜ!!」(クローズ)

 

 赤と青のカラーが目を引くのは桐生戦兎こと仮面ライダービルド、青龍と呼ぶにふさわしい姿をしているのは万丈龍我こと仮面ライダークローズである。

 

 「やはり、ここでも我らの前に立ちはだかるか。桐生戦兎、万丈龍我よ。なぜ、お前たちは私達の前に立ちはだかる。片や全て記憶も素顔も奪われ偽りの正義の味方に仕立て上げられ、片や我が同胞エボルトの肉体として生まれ全てを奪われた。そんなお前たちがなぜ我らと戦う。」(ブラッド)

 

 ブラッドの問いかけにビルドとクローズは当然の如く、自分たちが持つ答えを言い放った。

 

 「簡単だ。それは俺が正義の味方だからだ。エボルトの作った偽りの正義の味方でも、俺は仮面ライダー、愛と平和を守る正義の味方、仮面ライダーだ!」(ビルド)

 「お前たちに全てを奪われた俺には何も残らなかった。だけど、そんな俺に手を差し伸べてくれた仲間が出来た。その仲間と共に戦えない奴らを守る、そこに理由なんかいらねえ!!」(クローズ)

 

 その二人を見たブラッドは汚物でも見るかのように言葉を言い放つ。

 

 「全く持って愚かな。」(ブラッド)

 

 ビルドとクローズはそれぞれの武器であるドリルクラッシャーとビートクローザーを手に取り、ブラッドを見据える。

 

 

 

 

 

 シザースロストスマッシュと戦闘を続けるフレアミストレスとスパイディアマゾネスの元に仮面ライダーシュバルツが合流した。

 

 「おい、俺が必要か。」(シュバルツ)

 「出来れば手伝ってくれると助かるわね。」(フレアミストレス)

 「良いから、さっさとやれ!死んでも生き返りやがるからどんだけやれば良いのか分かんねえ!!」(スパイディアマゾネス)

 

 車の屋根の上に座ってフレアミストレスとスパイディアマゾネスに話しかける仮面ライダーシュバルツ。その彼らを忌々し気に見る。

 

 「全く、いい加減にしなさい!!」(シザースロストスマッシュ)

 

 シザースロストスマッシュはハサミをシュバルツたちに投げつけるもそのすべてを彼らは真正面から跳ね返したのだった。

 

 「まあ、やるか。」(シュバルツ

 

 車の屋根の上から降りたシュバルツは瞬時にシザースロストスマッシュとの距離を詰めた。

 

 「なっ!?」(シザースロストスマッシュ)

 「簡単には逃げるなよ?面白くないからな。」(シュバルツ)

 

 

 

 to be continue .next episode coming soon.




 ビルド、ジオウが集結。相対するキルバスたちブラッド族との激しい戦いが始まる。

 「生きていたのか。」
 「1年ぶりだな。」

 そして、大樹と修羅の再会。双竜が荒振り、魔王がその力を見せ、正義の味方はベストマッチの奇跡を見せる。


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仮面ライダー輝龍 第10話

 「ハアッ!!」(ブラッド)

 

 仮面ライダービルドと仮面ライダークローズは仮面ライダーブラッドと激しい戦いを繰り広げていた。

 ブラッドは次々と光球をビルドとクローズに放つがビルドは多種多様なフルボトルを次々と入れ替えて対処する。クローズは持ち前の身体能力と高いハザードレベルによって強化されているステータスを活かしてビートクローザーで光球を弾き返していく。

 

 「ビルドドライバーでいつまで私と渡り合えるかな?」(ブラッド)

 「ご心配なく。そこはちゃんと考えてあるんだよ。」(ビルド)

 ≪ラビットタンクスパークリング!≫

 「ビルドアップ!」(ビルド)

 ≪シュワっと弾けるスパークリング!ラビットタンクスパークリング!!≫

 

 ビルドは強化形態のラビットタンクスパークリングに変身。より高まった敏捷性で空中に居る仮面ライダーブラッドと戦いを始める。空中を自在に浮遊するブラッドがわずかに優位に立っていたが、

 

 ≪Ready GO!!ドラゴニックフィニッシュ!≫

 「戦兎、避けろ!!」(クローズ)

 「はいよ!!」(ビルド)

 「っ!?」(ブラッド)

 

 地上に居たクローズが右手に青い炎を纏っていた。そう、ビルドはあくまでクローズが大技を放つための時間を稼いでいたのだ。

 

 「オラァ!!」(クローズ)

 

 クローズは空中に居るブラッド目掛けて炎を龍の形に変えてパンチと共に放った。

 ビルドはブラッドが躱せないようにクローズの攻撃が来る方向にブラッドを蹴りだした。

 ブラッドはそのまま躱すことも出来ずに炎の龍と真正面から激突する。

 爆炎に包まれたブラッドにビルドも追撃を仕掛ける。

 

 ≪Ready GO!!スパークリングフィニッシュ!!≫

 「ハアアアアアア!!」(ビルド)

 

 爆炎に包まれたブラッドはビルドに引き寄せられながらその攻撃を受けてしまう。そのまま、ブラッドはどこかへ飛んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 普段は仲の良いそぶりが無い、そもそもがそんなに仲の良い二人とは言えないコンビであるグリスとローグ。その二人はゼブラロストスマッシュを相手に卓越したコンビネーションを見せていた。

 

 「オラア!!」(グリス)

 「グッ!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 重たいローリングキックを放つグリス。ゼブラロストスマッシュはそれを何とか防御するがあまりの威力に数歩後退りする。その隙を逃さずにローグが重たいボディブローを放つ。既にシュバルツとの戦闘で蓄積しているダメージもあり、ゼブラロストスマッシュは息も絶え絶えだった。

 

 「舐めるなあああああ!!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 ゼブラロストスマッシュはやけくそになりながらグリスとローグに向かって行く。

 

 ≪スクラッシュフィニッシュ!≫

 ≪スクラップフィニッシュ!≫

 

 グリスとローグは同時にスクラッシュドライバーを操作、二人同時のライダーキックが決まりゼブラロストスマッシュを彼方へとフッ飛ばした。

 

 「おい、ヒゲ。思い切りやるんじゃねえよ。追うのが大変だろうが。」(グリス)

 「黙れ、ポテト。お前こそ本気でやるからだろ。」(ローグ)

 

 言い合いをしながらゼブラロストスマッシュが吹っ飛んだ方向へ向かうグリスとローグ。そして、別の場所に居たゼブラロストスマッシュと仮面ライダーブラッドは偶然にもある場所に向かっていたのだった。

 

 

 

 

 同じ頃の仮面ライダーシュバルツはシザースロストスマッシュを相手に戦っていた。その戦い振りは獰猛そのもので数多の星を滅ぼしてきたシザースロストスマッシュが防戦一方になっていた。

 

 「おいおい、どうした?この程度で終わりか?」(シュバルツ)

 

 地面に倒れるシザースロストスマッシュを足蹴にするシュバルツ。その様は正義のヒーローというよりは無法者、アウトレイジを思わせた。

 

 「ば、バカにするな!!」(シザースロストスマッシュ)

 

 シザースロストスマッシュは両腕のハサミを展開してシュバルツを挟み込むように両腕を振るう。それに対してシュバルツは両手を上げるということすらしなかった。シュバルツの後方からオレンジ色の光弾と緑色の光弾が飛んで来てシザースロストスマッシュの両腕のハサミを破壊したからだった。

 

 「そんな!?」(シザースロストスマッシュ)

 「少しくらい自分の身は自分で守りなさい。」(フレアミストレス)

 

 光弾を撃ったのはシュバルツと行動を共にするフレアミストレスとスパイディアマゾネスだった。

 フレアミストレスの言葉に答える代わりにシュバルツはビルドドライバーのハンドルを回した。その次の瞬間にはシザースロストスマッシュを踏んでいる右足にエネルギーが集まり、そのままシザースロストスマッシュの胴に風穴を空けた。

 

 「きゃああああ!!」(シザースロストスマッシュ)

 

 爆発を起こして消滅するシザースロストスマッシュ。だが、爆発が収まると同時に血色の液体が現れて体を形作ってシザースロストスマッシュへと戻った。

 

 「はあ、はあ、無駄よ。何度倒したところであなたたちに限界が来る方が速いわ。」(シザースロストスマッシュ)

 「かもな。でも、お前の方がもう息が上がっているみたいだけどな。」(シュバルツ)

 

 シュバルツの指摘通りにまだ余裕があるはずのシザースロストスマッシュの方が追い詰められていた。シザースロストスマッシュは目の前にいる相手が並対手の相手では無い、それも自身が同胞と共に滅ぼしてきた数多の星々に居た戦士とは比べ物にならないほどの相手であることはわずかな戦闘の間に嫌という程に思い知らされた。

 何とか打開策を考えようとシザースロストスマッシュが考えていた時だった。シザースロストスマッシュの背後に2つの大きな衝突音が響いた。彼女が後ろを振り返るとそこにはこの場から逃走したゼブラロストスマッシュとビルドとクローズの二人の仮面ライダーと戦っていたブラッドの姿がそこにあった。

 

 「そんな!?」(シザースロストスマッシュ)

 

 驚愕の声を上げたシザースロストスマッシュを尻目にビルドとクローズ、グリスとローグがこの場に駆け付けた。

 

 「ああ、あんたたちも来たのか。」(シュバルツ)

 「それはそうだろ?さて、行きますか。」(ビルド)

 

 この場に仮面ライダーが揃った。それを見たブラッドはゼブラロストスマッシュとシザースロストスマッシュに視線をやる。

 

 「郷原、才賀。キルバス様の肉体を戻すぞ。」(ブラッド)

 「せやかて、伊能さん!そんなことをすれば僕らの肉体が!」(ゼブラロストスマッシュ)

 「伊能さん、申し訳ないですが私も郷原さんも奴らにかなり削られてしまいました。ここで一度死んだキルバス様を復活させるとなると。」(シザースロストスマッシュ)

 「もはや、こいつらを殲滅するにはその手しかない。何、削られていてもすぐに死なない。そして、ブラックパネルも使ってキルバス様を戻すのだ。良いからやるぞ。」(ブラッド)

 

 ブラッドの指示に従ったゼブラとシザースは自分たちの右手からから血色の液体を出した。。そして、ブラッドは自身の肉体から血色の液体を出し、さらにはキルバスが使っていたエボルドライバーと隠し持っていた漆黒のパネル=ブラックパネルを取り出した。

 ブラッドたちは自身から出した液体をエボルドライバーに注ぐ。するとエボルドライバーを中心に血色の液体が肉体を形作り、ブラックパネルも飲み込んだ。十三異界覇王、星滅蜘蛛王キルバスが復活した。

 

 「ハア~、良くやったぞ、お前たち。さて、魔蛇の奴の言っていた戦いももう良いか!!この星を破壊してやるか!!」(キルバス)

 

 復活したキルバスはもはや十三異界覇王との戦いに興味を無くしていた。そして、自身の本能に従いこの星を破壊することに決めた。

 

 「さて、お前たちは俺を楽しませてくれるのか?」(キルバス)

 

 キルバスがそうビルドたちに問い掛けた時だった。

 

 「俺達もいるよ!!」(ジオウ)

 

 専用巨大マシン、タイムマジ―ンに乗ってジオウ達がその場に駆け付けたのだった。

 ビルド、ジオウ、クローズ、ゲイツ、グリス、ウォズ、ローグ、ツクヨミ、そしてシュバルツの9人の仮面ライダーが揃った。

 

 「久しぶりだね、戦兎。」(ジオウ)

 「ソウゴたちも来てたのか。」(ビルド)

 「なんか、危ない感じがして。じゃあ、一緒に戦ってくれる?」(ジオウ)

 「それはこっちのセリフだ。戦ってくれるか、ソウゴ。」(ビルド)

 「うん!」(ジオウ)

 

 そう話したビルドとジオウ。彼らの仲間もキルバスたちを見据える。

 

 「キルバス様、いかがいたしましょう?」(ブラッド)

 「お前らは好きにしろ。」(キルバス)

 

 キルバスはブラッドたちの前に出ると自身の体から100を超える分身体スマッシュを出現させた。

 

 「さて、始めるぞ!!」(キルバス)

 

 キルバスの号令の下に分身体スマッシュたちが仮面ライダーたちに殺到する。

 

 「おい、スコール、オータム。引っ込んでろよ。」(シュバルツ)

 「分かっているわよ。あなたは残るのよね。」(フレアミストレス)

 「ああ。」(シュバルツ)

 

 撤退しようとするフレアミストレスとスパイディアマゾネス。シュバルツにフレアミストレスが声を掛けるがそれもどこ吹く風という様子で応えるシュバルツ。その背中を見つめるフレアミストレスだったがシュバルツがそれ以上のやり取りをする気が無いことを察してスパイディアマゾネスと共にその場を離れた。

 

 「さあ、そいつらを殺せ!!」(キルバス)

 

 キルバスの呼びかけに生み出された100を超えるスマッシュたちが仮面ライダーたちに襲い掛かった。だが、迫りくるスマッシュを相手にライダーたちは勇猛に戦い始めた。

 まずは、仮面ライダービルド。ラビットタンクスパークリングの特性によりドリルクラッシャー、ホークガトリンガー、四コマ忍法刀、カイゾクハッシャ―の武器を次々と持ち変えてスマッシュたちを撃破していく。

 仮面ライダークローズは次々と迫りくるスマッシュたちを殴り飛ばしていく。一体一体がキルバスの力の片鱗であるとは言え、それを軽々とフッ飛ばしていく。時折、ビートクローザーを手に取っては野球のバットを振る要領で大きく振るう。

 迫るスマッシュたちを前にビルドとクローズは背中合わせで戦う。

 

 「おい、戦兎!!数が多すぎるぞ!!」(クローズ)

 「んなこと、最初から分かってたでしょ?」(ビルド)

 

 お互いにそんなことを言い合いながら二人は戦っていく。流石に数も数であり、敵も手強い。

 

 「万丈、エボルトが憑依している今ならクローズエボルに変身できるはずだ。」(ビルド)

 「急にどうした!?」(クローズ)

 「あのキルバス、黒いパネルを吸収していた。恐らくは完全体になったエボルト以上を持っているはずだ。」(ビルド)

 「それがどうだって言うんだよ。」(クローズ)

 

 いつもであればビルドがここでクローズのことを茶化すのだがその次に放たれた一言は現状を言い表していた。

 

 「最悪、俺達全員が負ける。」(ビルド)

 「なら、今まで通りに戦うだけだろ。俺達より強い相手だろうが関係無えだろ。」(クローズ)

 

 だが、クローズの返答はビルドが予想していたものと違い、さも当たり前のように言ったのだ。

 

 「今までだってやべえ敵ばっかだったろ。今更怖気づいていられるかよ。」(クローズ)

 

 そのクローズの言葉にビルドはハッとさせられた。長らく苦しい戦いを共に続けてきた盟友に改めて心を奮い立たせるビルド。

 

 「そうだな。」(ビルド)

 「だったら、やろうぜ!!」(クローズ)

 

 そう言うとクローズは自身の究極形態に変身するためのアイテムであるマッスルギャラクシーフルボトルを取り出した。それを見たビルドは自身が生み出した最強の力、ジーニアスフルボトルを手にする。

 

 「さあ、実験を始めようか。」(ビルド)

 ≪グレイト!オール、イエーイ!≫

 「行くぜ、エボルト。力を貸せよ。」(クローズ)

 ≪マッチョ、フィーバー!≫

 【全く、相変わらず人使いが荒いな。】(エボル>

 

 二人をそれぞれのフルボトルを作動させるとビルドドライバーにセットした。

 同時に回されるハンドルにフルボトルから流れる喧しい音声が響き合って襲い掛かっていたスマッシュたちも攻撃の手を止めてしまった。

 

 ≪Are you ready?≫

 

 ビルドドライバーから変身の準備を知らせる音声が響いた。次の瞬間、ビルドとクローズの姿が光に包まれた。

 

 ≪完全無欠のボトル野郎!ビルドジーニアス!≫

 ≪銀河無敵の筋肉野郎!クローズエボル!≫

 

 純白の姿に数多のボトルが刺さったビルド最強の姿、仮面ライダービルドジーニアスフォーム。

 宿敵のエボルトの力も使ったことでエボルの姿も思わせるクローズ究極の姿、仮面ライダークローズエボル。

 この場における正しく最強の二人が満を持してその力を見せた。

 

 「祝え!世界を救った完全無欠のヒーロー!仮面ライダービルドジーニアスフォーム!銀河無敵の力を持つドラゴンヒーロー!仮面ライダークローズエボル!再び、歴史の表舞台に姿を見せた奇跡の瞬間である!!」(ウォズ)

 

 仮面ライダーウォズの祝福の言葉が彼らに届いたかさておき、ビルドとクローズは目の前のスマッシュたちを瞬時のうちに攻撃、瞬く間に撃破したのだった。

 同じ頃、仮面ライダーグリスとローグはそれぞれで迫りくるスマッシュたちを撃破していった。

 己が心を燃やしているように激しく戦うグリス。一方のローグは冷静にスマッシュたちを一体ずつ確実に倒していく。

 

 「これだけの祭りだ、本気で行くしかねえよな!!」(グリス)

 「お前たちはここで完全に倒す。」(ローグ)

 

 グリスとローグは装備していたスクラッシュドライバーを外してビルドドライバーに取り換えた。

 

 ≪ウェルカム!一致団結!グリスパーフェクト!≫

 ≪プライムローグ!≫

 

 二人はそれぞれの最強アイテムをビルドドライバーにセットして、ハンドルを回す。

 

 ≪ファーマーズフェスティバル!グリスパーフェクト!ガギン、ゴギン、ガゴン!ドッキング!!≫

 ≪大儀晩成!プライムローグ!ドリャドリャドリャドリヤアア!!≫

 

 グリスは自身の仲間である三羽ガラスのスマッシュの力を宿した仮面ライダーグリスパーフェクトに、仮面ライダーローグは白いマントを纏った仮面ライダープライムローグに変身した。

 グリスは上空高く跳び上がるとスマッシュたちに目掛けて急降下、両腕に装備された青色のブレードで次々と斬り裂いていく。

 ローグは次々と迫るスマッシュたちを躱して強烈無比にして、急所に寸分たがわない一撃を次々と決めていく。さらに、襲い掛かってくるスマッシュには羽織っているマントを巧みに使って翻弄する。

 

 「祝え!四身一体のロボットヒーロー!仮面ライダーグリスパーフェクト!大儀のためにその力を振るう高貴なるヒーロー!仮面ライダープライムローグ!ビルド、クローズ、グリス、ローグ。世界を救ったヒーローたちのその究極の姿が今ここにそろった奇跡の瞬間である!!」(ウォズ)

 

 なお、聞いていようがいまいが仮面ライダーウォズは盛大に祝福して器用にスマッシュたちを倒しながら戦っている。

 ジオウ、ゲイツ、ツクヨミはそれぞれに迫ってくるスマッシュたちと戦い続けている。

 

 「あいつ!こんな時にまたやっているのか!?」(ゲイツ)

 「もう、いつものことじゃない。」(ツクヨミ)

 「でも、俺はやっといつもの感じに戻った気がするなあ。」(ジオウ)

 

 危険な戦闘をしている最中だというのにまるで学校の中にいるかのような空気感で話すジオウ達3人。その彼らは会話を続ける中で迫ってくるスマッシュたちを倒していく。

 

 「それじゃあ、俺達もやろうよゲイツ。」(ジオウ)

 

 その中でジオウは黄金の輝くライドウォッチを手に取っていた。

 

 「仕方ないな。」(ゲイツ)

 

 ゲイツはジオウが持っているライドウォッチに似た赤く輝くライドウォッチを手に取っていた。

 

 ≪ジオウ!≫

 ≪グランドジオウ!≫

 

 ジオウは自身の基本形態に変身するためのライドウォッチと手に取っていたライドウォッチ、グランドジオウライドウォッチを起動させた。

 それを見たゲイツは手に持っている赤く輝くライドウォッチ=ゲイツマジェスティライドウォッチを起動する。

 

 ≪ゲイツマジェスティ!≫

 

 ジオウとゲイツはそれぞれにライドウォッチをジクウドライバーにセット、その力を開放した。

 

 ≪グランドタイム!クウガ!アギト!龍騎!ファイズ!ブレイド!響鬼!カブト!電王!キバ!ディケイド!W!オーズ!フォーゼ!ウィザード!鎧武!ドライブ!ゴースト!エグゼイド!ビルド!祝え!!仮面ライダー!グランド!ジオウ!!≫

 ≪マジェスティタイム!G3!ナイト!カイザ!ギャレン!威吹鬼!ガタック!ゼロノス!イクサ!ディエンド!アクセル!バース!メテオ!ビースト!バロン!マッハ!スペクター!ブレイブ!クローズ!仮面ライダー!!ゲイツ!!マジェスティ!!≫

 

 ジオウの体に平成ライダーの黄金に輝く彫像が現れ、ゲイツの体には数多のライドウォッチが装着されていく。彼ら二人の最強の姿が顕現、これに黙っている彼ではなく、

 

 「祝え!平成ライダー20人の力をその身に宿す最高最善の魔王!仮面ライダーグランドジオウ!暗き闇を払う19人の平成ライダーの力を持つイル・サルバトーレ!仮面ライダーゲイツマジェスティ!ここに魔王と救世主が並び立つ奇跡の瞬間がここになった!!」(ウォズ)

 

 ビルドたちと同じように、いや、それ以上の熱量を持って仮面ライダーウォズが祝福したのだった。

 

 「ねえ、今日は奇跡の瞬間って使い過ぎじゃない?」(ツクヨミ)

 

 なお、ここでツクヨミの冷静な突っ込みが入った。なお、突っ込まれた当人は気にすることなく自身の言葉に酔いしれていた。

 

 「ハハハハハハハハ!!面白くなってきたじゃねえか!!」(キルバス)

 「それでは。」(ブラッド)

 「良いぞ、お前たちも好きに暴れてこい!!」(キルバス)

 

 キルバスの号令でブラッド、シザースロストスマッシュ、ゼブラロストスマッシュはそれぞれに散った。

 ブラッドは究極の姿になっているビルドとクローズの前に立ちはだかる。

 

 「今一度、貴様らを叩きのめしてくれる。」(ブラッド)

 「行くぞ、万丈。」(ビルド)

 「ああ。」(クローズ)

 

 ビルドとクローズはブラッドに向かって行く。ブラッドは蛇のオーラを複数出現させてビルドとクローズを襲わせる。

 

 

 

 

 

 

 「久しぶりね、氷室さん。」(シザースロストスマッシュ)

 「才賀か。」(ローグ)

 「へえ、お前たちのリーダーは後ろで見ているだけか。」(グリス)

 「そうよ、グリス。私達の王が出るのはこの星を完全に破壊する時だけ、それに今は別の所に興味があるようだし。あなたたちの相手は私達で十分よ。」

 「今の俺達を相手に随分と舐められたものだな。」(ローグ)

 

 両腕のハサミを展開するシザースロストスマッシュ。彼女を見るグリスとローグはそのままに彼女に対して指を指す。

 

 「心火を燃やしてぶっ潰す!」(グリス)

 「大義のための犠牲となれ。」(ローグ)

 

 シザースロストスマッシュはグリスとローグに向かって襲い掛かる。

 触れるものを切り裂く邪悪な刃が二人に触れるその瞬間、グリスとローグは瞬時に反撃へと転じてシザースロストスマッシュを粉砕する。

 体がバラバラになったシザースロストスマッシュはその肉体を即座に再生させる。消耗した様子を見せずに今度は全身のハサミを展開するシザースロストスマッシュ。

 グリスとローグはそのままシザースロストスマッシュへと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 「死に晒せや、クソガキ!!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 ゼブラロストスマッシュは複数のスマッシュと戦っているシュバルツに対して飛び掛かりアームハンマーで叩き潰そうとした。

 シュバルツはゼブラロストスマッシュの方へ一切視線をやらずにただビルドドライバーのハンドルを回転させる。シュバルツの右足にエネルギーが集まり、それが黒い閃光となってゼブラロストスマッシュのアームハンマーと衝突した。

 

 「っ!」(シュバルツ)

 

 とっさの判断で攻撃を中断して、その場を離れた。その次の瞬間にはゼブラロストスマッシュが周囲に居たスマッシュを気にすることなく地面に勢いよく落ちた。

 スマッシュたちは消滅、ゼブラロストスマッシュが落ちた場所にはクレーターが出来ていた。

 

 (さっきまで攻撃した感触じゃない。さっきよりも数段硬くなっていた。)(シュバルツ)

 

 先程の攻撃の感触から先刻までのゼブラロストスマッシュと違うことに気付いたシュバルツ。そして、再び現れたゼブラロストスマッシュの姿もわずかながらに変化していた。元の体色が白、紫、金という3色だったが全身に血色の血管のような模様が浮かび上がっていた。

 

 「まさか、自分を強化したのか?」(シュバルツ)

 「そうや!僕の中に残っている力を全て使って僕の肉体を限界まで強化した!!これならそう簡単に僕を倒すことは出来ん!!お前を絶対に殺したる!!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 ゼブラロストスマッシュの変化に相手が本気で自分を殺す気でいることに気付いたシュバルツ。そこに、スマッシュたちを跳ね除けてシュバルツとゼブラロストスマッシュの元へ向かう者がいた。スマッシュたちの大群から飛び出したのはハイビスカストライカーを駆る輝龍とヴァルキリーだった。

 

 「お前。」(シュバルツ)

 

 空中に躍り出たハイビスカストライカーを操る輝龍に向かってなのかそう言葉を発したシュバルツ。輝龍はハイビスカストライカーの進む方向をゼブラロストスマッシュに向けてその前輪をゼブラロストスマッシュに叩きつけた。

 

 「グアッ!!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 不意の攻撃を躱しきれなかったゼブラロストスマッシュはそのまま吹っ飛んだ。ゼブラロストスマッシュが飛んだ先には複数のスマッシュがおり、そのスマッシュたちと激突していく。

 

 「大樹、逃げ遅れている人がいないか確認するね!」(ヴァルキリー)

 「ああ。危険を感じたらすぐに退いて、安全な場所に。」(輝龍)

 「いつも、殿をするような人に言われなくても大丈夫!」(ヴァルキリー)

 

 輝龍とヴァルキリーは分かれ、ヴァりきりーは逃げ遅れた人の確認に走る。なお、襲い掛かってくるスマッシュたちをブルーライフルで撃ちながら颯爽と走っていった。

 二人きりになった輝龍とシュバルツ。そこで輝龍が初めてシュバルツと真正面から向き合った。

 

 「生きてたのか。」(輝龍)

 「まあな。随分と頑丈な体を貰ったらしくて、この通りだ。」(シュバルツ)

 「兄貴はもういない。何が目的で戦っているんだ。」(輝龍)

 「それは俺のセリフでもあるがな。まあ、お前の方は理由なんて決まり切っているだろうが。」(シュバルツ)

 

 二人の間の空気が緊張したものとなる。そこに、倒れた場所から突進してくるゼブラロストスマッシュが大声を上げながら迫って来た。

 

 「こんのガキィ!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 そのゼブラロストスマッシュに輝龍は光龍剣を、シュバルツはハイキックをかました。

 顔面に強烈な攻撃を受けたゼブラロストスマッシュはいくら強化したとは言え、二人の仮面ライダーの容赦のない本気の攻撃は響いた。

 

 「とにかく、今は目の前のこいつを倒すか。」(シュバルツ)

 「言われなくてもやるよ。」(輝龍)

 「邪魔になるならお前も殺すからな。」(シュバルツ)

 「邪魔をする気は無い。それと、殺すつもりで来るなら手加減はしないぞ。」(輝龍)

 

 緊迫した空気感のままに輝龍とシュバルツの共同戦線が始まった。

 ゼブラロストスマッシュを左右から挟むように攻撃を繰り出す輝龍とシュバルツ。片や質実剛健な太刀筋の剛剣、片や獣のように激しく素早い爪撃という正反対な攻撃である。

 二人の攻撃を両手の蹄で防御するゼブラロストスマッシュ。自身の中に蓄えた力を全て使い限界まで強化した肉体は生半可な攻撃ではかすり傷一つ付くことが難しいほどである。その中でも最も強固な蹄はもはや仮面ライダーの必殺技ですらも破壊することが難しいほどである。

 輝龍もシュバルツも流石の固さに多少の驚きはしたものの、

 

 (あまりにも硬い!重たい光龍剣でこの手ごたえ、合体させればなんとか行けるか。いや、それよりも他の部分を攻撃するべきか。)(輝龍)

 (あの蹄には攻撃を当てない方が良いな。多少硬くなっているが体の他の部分にはまだ攻撃は通る。)(シュバルツ)

 

 既に対策を考え始めていた。

 

 ≪ギュイン!ギュイン!Ready Go!ワイバニックフィニッシュ!≫

 

 シュバルツがビルドドライバーを操作、全身に漆黒のエネルギーを漲らせ超高速で移動を始めた。瞬撃のライダーキックがゼブラロストスマッシュに迫る。

 

 「なっ!!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 咄嗟に防御しようとしたゼブラロストスマッシュだったがあまりの速さに防御することが間に合わなかった。

 

 「グッ!!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 胸部にライダーキックを受けたゼブラロストスマッシュだったが咄嗟に攻撃を受けた胸部にエネルギーを集中して一時的に防御力を高めていたために難を逃れた。だが、そこに追撃を仕掛ける者がいた。

 

 ≪ロックオン!1、10、100、1000!ゴールドドラゴンフルーツチャージ!≫

 「ハッ!!」(輝龍)

 

 輝龍が竜炎刀・陽炎と無双セイバーを合体させた無双セイバーナギナタモードにロックシードをセットしていた。無双セイバーにロックシードから供給されたエネルギーが迸り、輝龍はそれを地を走る衝撃波としてゼブラロストスマッシュに向かって放った。

 衝撃波はゼブラロストスマッシュに命中すると金色の龍となってゼブラロストスマッシュを拘束する。

 

 「グッ!このぉ!!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 ゼブラロストスマッシュは拘束を振りほどこうとあがくがそれよりも輝龍が必殺の間合いに入る方が速かった。

 竜炎刀・陽炎側の刃がシュバルツが当てたライダーキックの痕が付く胸部に突き立てられた。ナギナタ無双スタッビング、輝龍が複数有する必殺技の中でも速さと命中性においてはトップクラスの大技である。

 突き立てられた刃からはロックシードのエネルギーが注ぎ込まれ、ゼブラロストスマッシュを体内から焼き尽くそうとする。だが、

 

 「ふん!!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 ゼブラロストスマッシュは拘束を自力で破壊、その強固な蹄で輝龍を叩き潰そうとした。

 輝龍は咄嗟にゼブラロストスマッシュを蹴り、蹴りの反動を利用してゼブラロストスマッシュから距離を取った。

 

 「はあ、はあ、ぶっ殺す!!」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 怒り心頭のゼブラロストスマッシュはそのまま輝龍とシュバルツに向かって突進する。

 輝龍は無双セイバーナギナタモードを地面に突き立てると戦極ドライバーを操作する。

 

 ≪シャキン!シャキン!シャキン!ゴールドドラゴンフルーツスパーキング!!≫

 

 そして、シュバルツもビルドドライバーを操作する。

 

 ≪ギュイン!ギュイン!ギュイン!Ready go!!ワイバニックフィニッシュ!!≫

 

 輝龍とシュバルツは同時に飛び上がり、ゼブラロストスマッシュに向かってライダーキックを放った。

 二人のライダーキックは既に攻撃を加えていたゼブラロストスマッシュの胸部に命中、ゼブラロストスマッシュを粉砕した。

 

 「そんな、バカな。僕が、こんなガキどもに。」(ゼブラロストスマッシュ)

 

 ゼブラロストスマッシュはそう最後に言い残して消滅した。

 

 

 

 

 

 

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仮面ライダー輝龍 第11話

 長らくお待たせしました。私生活で引っ越しがあるのと執筆が難航していたこともあって大幅に遅くなってしまいました。最新話を待っていた皆様にはお詫び申し上げます。ということで最新話をどうぞ!!


side3人称

 仮面ライダー輝龍と仮面ライダーシュバルツにより十三異界覇王の一人であるキルバスの眷属であるゼブラロストスマッシュが撃破された。

 いまだにキルバスが生み出した複数のスマッシュたちが闊歩する中で仮面ライダーたちとブラッド族の戦いは続いていた。

 

 「死になさい!!」(シザースロストスマッシュ)

 

 シザースロストスマッシュは次々と体に隠されたハサミを仮面ライダーグリスパーフェクトと仮面ライダープライムローグに投げつけていく。

 空中を高速で飛んでいく無数のハサミはスマッシュたちを切り刻みながら、グリスパーフェクトとプライムローグに迫っていく。だが、グリスパーフェクトとプライムローグは飛んで来たハサミを次々と叩き壊していた。それだけではなく自分たちに襲い掛かるスマッシュたちも撃破していく。

 

 「全く、大した事ねえな。」(グリス)

 「このまま一気に決めるぞ、ポテト。」(ローグ)

 「指図するんじゃねえよ、ヒゲ!!」(グリス)

 

 そのやり取りから激しい攻撃を始めるグリスパーフェクト。スマッシュたちが次々と爆散する中で飛行し、両腕のブレードで切り裂いていく。

 

 ≪レッド!キャッスルブレイク!!≫

 「喰らいやがれ!!」(グリス)

 

 グリスパーフェクトは空中から両肩のシールドからレーザーを発射、スマッシュたちを次々と灰へと変えていく。

 その攻撃を見たシザースロストスマッシュは倒されるスマッシュたちの間から空中に飛び上がり、グリスパーフェクトの背後に回ってそのハサミを振り下ろそうとした。だが、グリスパーフェクトは背部のブースターを点火し、シザースロストスマッシュが振り下ろしたハサミを寸でのところで躱したのだった。

 

 「なっ!!」(シザースロストスマッシュ)

 「激昂!!」(グリス)

 

 グリスはそこから空中でシザースロストスマッシュに向かって突進する。高速で迫るグリスに空中を自由自在に動く術を持たないシザースロストスマッシュは防御することも出来ずに空中で攻撃を受けてしまう。

 

 「激震!!」(グリス)

 「くっ!!」(シザースロストスマッシュ)

 「激突!!」(グリス)

 「きゃあっ!!」(シザースロストスマッシュ)

 

 3度の空中突進によりシザースロストスマッシュは防御する力が残っていなかった。

 

 ≪イエロー!オウルアタック!!≫

 「もっと、俺を滾らせろ!!」(グリス)

 

 グリスはビルドドライバーを操作し、黄色のエネルギーを纏ってシザースロストスマッシュに空中での高速錐揉み突進で勢いよくぶち当たった。

 シザースロストスマッシュは空中で爆散するも、地上に落ちた破片が血色の液体となって再集合し再生した。だが、ここまでのダメージとキルバスの復活のためにシザースロストスマッシュはかなり消耗していた。

 

 (さすがに逃げないと!このままだと、こいつらに殺される!)(シザースロストスマッシュ)

 

 撤退を考えていたシザースロストスマッシュ。だが、逃亡を許されるはずもなかった。

 

 ≪クロコダイル!ファンキーブレイク!!≫

 「っ!」(シザースロストスマッシュ)

 

 シザースロストスマッシュが気付いて音が鳴った方向を見るとそこにはネビュラスチームガンにクロコダイルクラックフルボトルをセットしたプライムローグの姿だった。

 ネビュラスチームガンの銃口はシザースロストスマッシュを狙い、引き金が引かれた。紫色の光弾が真っ直ぐにシザースロストスマッシュへと飛んでいった。

 光弾が直撃したその瞬間にシザースロストスマッシュが再度爆散した。

 ローグの隣にグリスが降り立つ。

 

 「これで終わりだ!!」(グリス)

 「これで片付けてやる。」(ローグ)

 

 またも再生するシザースロストスマッシュに対してグリスとローグはビルドドライバーを操作を操作してエネルギーを脚部にためる。

 再生したシザースロストスマッシュはグリスとローグのエネルギーを見て、それが攻撃を受けてしまえば二度と生き返ることが出来ないほどのものだということを察した。

 

 「っ!!」(シザースロストスマッシュ)

 

 シザースロストスマッシュはグリスとローグに背中を見せて逃げ出した。少しでも遠くへ、彼らの一撃が届かない場所へ走り出した。なお、それを許すほど彼女の相手は外道に容赦しない相手である。

 既にエネルギーのチャージが完了しているグリスとローグはシザースロストスマッシュが逃げ出すと同時に飛び上がったのだ。

 

 ≪パーフェクトキングダムフィニッシュ!!≫

 ≪プライムスクラップブレイク!!≫

 「おりゃああああああ!!」(グリス)

 「ハッ!!」(グリス)

 

 赤、青、黄、金の輝くエネルギーを纏ったグリスと右足に黄金と紫色の輝くワニの頭部を出現させたローグがダブルライダーキックを放った。

 背後からそのままグリスとローグのダブルライダーキックを受けたシザースロストスマッシュはキックを受けた個所から自分の肉体が消滅しているのを感じていた。

 

 「きゃああああ!!」(シザースロストスマッシュ)

 

 悲鳴を上げるのと肉体が完全消滅するのが全く同時だった。こうしてシザースロストスマッシュは完全に息絶えたのだった。

 

 「よし、戦兎たちのとこに行くか。」(グリス)

 「まだ、伊能とキルバスが残っている。俺達も行った方が良いだろ。」(ローグ)

 「珍しく意見が合うじゃねえか、ヒゲ。」(グリス)

 「黙ってろ、ポテト。」(ローグ)

 

 軽い掛け合いをしながら二人は仲間たちの元へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、仮面ライダーブラッドを相手に仮面ライダービルドジーニアスフォームと仮面ライダークローズエボルが激しい戦いを繰り広げていた。

 

 「フン!!ハアッ!!」(ブラッド)

 

 仮面ライダーブラッドは漆黒と黄金に輝く巨大コブラを次々と放ち、ビルドとクローズを牽制する。

 ビルドとクローズはブラッドの攻撃を見てから瞬時に躱し、まるで瞬間移動のように攻撃を躱したその次の瞬間には攻撃に転じていた。

 

 「ハアッ!!」(ビルド)

 

 兎を思わせるジャンプで空中高くに飛び上がったビルドはブラッドに肉薄する。ビルドはタカのように空中を自由自在に飛び、ブラッドにまるで戦車のような砲撃やライオンの咆哮のような衝撃波など多種多様な攻撃を放っていく。

 

 「どおおおおりゃああああ!!」(クローズ)

 

 クローズは地上を疾走し、迫ってくるスマッシュたちを殴り飛ばす。さらには右手に燃え盛る炎を灯してスマッシュたちを灰燼に帰した。それだけでなく、スマッシュたちを倒した後は自身も空中に飛び上がってビルドの加勢を始める。

 ビルドをブラッドを殴った次の瞬間にはクローズがブラッドの背後に回り回し蹴りを放ち、その次の瞬間にはビルドが吹っ飛んだブラッドを殴った。

 

 「調子に乗るな!!」(ブラッド)

 

 ブラッドはエボルドライバーを操作してエネルギーを開放、全身から漆黒のエネルギーを迸らせてそれを自身の頭上に集めて巨大な光球へと変化させた。

 

 「これで消え去れ!!」

 

 光球をビルドとクローズに投げつけるブラッド。

 巨大な光球はビルドとクローズを飲み込み、その場で大爆発を起こした。

 

 「フン、流石に奴らも無事ではないだろ。」(ブラッド)

 

 そう言うブラッドだった。だが、煙が晴れてくるとそこには無傷のビルドとクローズが並び立っていた。二人は既にビルドドライバーを操作して必殺技を放つ準備を完了させていた。

 

 「ハッ!」(ビルド)

 「おう!!」(クローズ)

 

 空中に飛び上がったビルドとクローズはブラッドに向かっていく。

 

 「くっ!」(ブラッド)

 

 ブラッドは即座にコブラのオーラを複数放ち、ビルドとクローズに攻撃する。

 ビルドとクローズは迫りくるコブラを次々と空中で躱していき、ブラッドの懐に入り込んだ。

 

 「「ハアッ!!」」(ビルド、クローズ)

 

 ビルドとクローズはエネルギーを込めた拳を二人同時にブラッドの胸部に叩きつけた。

 ブラッドは体内で攻撃で受けたダメージを修復しようとするが、ビルドジーニアスフォームのネビュラガスの無効化とクローズエボルの全てを破壊するエネルギーがブラッドの肉体を破壊していく。

 

 「私を倒してもキルバス様がいる!お前たちなど、グアアアア!!」(ブラッド)

 

 ブラッドはそのまま叫んで爆散、消滅した。

 

 「さて、ソウゴたちの所に行くか。」(ビルド)

 「おっしゃ、このままぶち倒すぜ!!」(クローズ)

 

 強敵を倒して勢いづく仮面ライダーたち。

 ビルドたちの奮闘はジオウ達にも届いていた。

 

 「よし、俺達も!!」(ジオウ)

 「さあ、来い!!」(キルバス)

 

 最後に残ったキルバスを相手にジオウ、ゲイツ、ウォズ、ツクヨミの4人が戦いを始める。

 大手を広げてジオウ達の攻撃を待つキルバス。ジオウは最強武器のサイキョ―ギレードを、ゲイツはジカンザックスを、ウォズはジカンデスピアを、ツクヨミは両手に時計のような魔法陣を出してキルバスに攻撃を仕掛けていく。

 4人の攻撃を軽々と躱していくキルバス。ツクヨミが時間停止を行っても強引に自らの力でその拘束を破り、

襲い掛かるジオウ、ゲイツ、ウォズの攻撃をドリルクラッシャーでいなしていく。

 

 「どうした?どうした!!もっと来い!!」(キルバス)

 「フッ!!」(ツクヨミ)

 

 ツクヨミは再度時間停止でキルバスの動きを止める。その瞬間を狙ってジオウ、ゲイツ、ウォズは自分たちの武器にエネルギーをチャージして攻撃を浴びせる。だが、攻撃が当たる直前に拘束を破ったキルバスはドリルクラッシャーの一振りでジオウ達の攻撃をかき消した。

 

 「俺の中には黒いパンドラパネルがある。お前たちの攻撃を受けても痛くもかゆくもないなぁ~。」(キルバス)

 

 余裕に満ち溢れたキルバス。そのセリフからも分かる通り黒いパンドラパネルを吸収したことでかなり強化されている。そして、その上にキルバスはブラッドが撃破したことで自身の近くに落ちていたエボルトリガーを手にしていた。

 

 「もっと面白くしてやるよ!!」(キルバス)

 ≪オーバーオーバーザエボリューション!キルバススパイダー!≫

 

 キルバスはエボルトリガーをドライバーにセットして、エネルギーを増幅させていく。それにつれてキルバスが纏っている外装が漆黒に染まっていく。

 ジオウ達はキルバスがやろうとしていることを止めるべく動き出すもののキルバスのエネルギーの余波で近づくことが容易でなかった。

 

 「良いぞ、良いぞ!力がみなぎるぜぇ!!」(キルバス)

 

 キルバスから迸るエネルギーが最高潮に達したその瞬間、爆発が起きてキルバスの姿を隠した。

 爆発した炎や煙が広がろうとしたその次の瞬間には一か所に集まっていた。

 爆発の炎と煙を吸収してキルバスがその真の姿を現した。かつて、ビルドたちを苦しめたエボルトの真の姿に酷似していたがその細部はまるでクモを思わせる形状をしていた。

 

 「この姿になるのも久しぶりだなぁ。」(キルバス)

 「姿が、変わった。」(ジオウ)

 「先程以上のプレッシャーだ、気を付けろ。」(ゲイツ)

 

 真の姿を現したキルバスのプレッシャーにジオウ達は身構える。対するキルバスは自身の肉体を確かめるように腕や肩を回している。

 

 「さて、死んでもらうか。」(キルバス)

 

 キルバスはそう言うと瞬時にジオウ達と距離を詰める。

 身じろぎ一つせずに気付いた時にはジオウ達の目と鼻の先に触れる程近づいていた。

 あまりのことにジオウ達が驚いているその間にキルバスはツクヨミとウォズに攻撃を仕掛けていた。

 攻撃に入った瞬間もジオウ達に近づいた時と同様にそれと分かる前に、否、分かった時には既に攻撃を受けていた後だった。

 

 「キャッ!!」(ツクヨミ)

 「ツクヨミ!」(ゲイツ)

 

 攻撃を受けて後方へ吹き飛んだツクヨミを呼び掛けるゲイツ。

 

 「ガッ!!」(ウォズ)

 「ウォズ」(ジオウ」

 

 攻撃を受けたウォズに声を掛けるジオウ。

 ジオウもゲイツも仲間がやられたという事実に気を取られていた。

 

 「次はお前たちだ!!」(キルバス)

 

 ジオウとゲイツがツクヨミとウォズに気を取られていたその隙にキルバスは両腕から漆黒の衝撃波を放った。

 ジオウとゲイツはキルバスが声を発したその瞬間にキルバスの方を向いたが防御することが即座に出来ずにキルバスの攻撃を受けてしまった。

 

 「うわああ!!」(ジオウ)

 「ガアアア!!」(ゲイツ)

 

 最強形態である二人が真正面から攻撃を受けてしまい倒れてしまう。

 ジオウ、ゲイツ、ツクヨミ、ウォズ。この場にいる仮面ライダーたちの中でも屈指の戦闘力を誇る4人が倒れ伏してしまっている。

 

 「良いぞ、良いぞ!力がみなぎるぞ!」(キルバス)

 

 自身の内から湧き上がる力をそのまま振るうキルバス。

 その力は様々な星々を滅ぼして、その果てに自身の世界をも滅ぼした十三異界覇王の一人に違わぬ力だった。

 

 「さあ、死ねえ!!」(キルバス)

 

 キルバスは右手に漆黒の光球を生み出し、倒れているジオウ達に投げつける。

 漆黒の光球は倒れているジオウ達に襲い掛かる。

 大きなダメージから回復できていないジオウ達の前に彼らの命を吹き消す光球が迫りくる。

 最早、これまでと思われたその瞬間、ジオウ達とキルバスが放った光球の間に何者かが割って入った。

 

 ≪ゴールドドラゴンスパーキング!≫

 「フッ!!」(輝龍)

 

 輝龍が光龍剣と竜炎刀・陽炎にエネルギーをチャージして光球を受け止めたのだった。だが、キルバスが放った光球は輝龍では一瞬押しとどめるのが限界で数秒もたたずに光球の勢いに押されだしていた。

 

 「っ!グウウ!!」(輝龍)

 

 輝龍は押し負けそうになりながらなんとか踏ん張る。

 

 (このまま受け止められない!なら...。)(輝龍)

 

 輝龍は光球の勢いをそのままにジオウ達の元へ光球が飛ばないように両手に持ったアームズウェポンで受け止めながらキルバスに向かって投げ飛ばした。

 輝龍の手によって軌道を変えられた光球は主であるキルバスの元へ飛んでいく。

 

 「はあ、中々やるな。だが、この程度で俺に傷一つ付けることすら出来ねえぞ。」(キルバス)

 

 キルバスは余裕のある態度を崩さずにいる。だが、

 

 「フン!」(輝龍)

 

 輝龍は両手に持っていたアームズウェポンをキルバスに向かって投擲した。

 光龍剣と竜炎刀・陽炎はその刃をキルバスに向かって高速で飛んでいく。

 放たれた刃がキルバスに傷を付けることは出来なかった。だが、その攻撃がキルバスの立ち振る舞いに隙を作った。

 

 ≪ワイバニックフィニッシュ!≫

 ≪ゴールドドラゴンスカッシュ!≫

 「喰らえ!!」(シュバルツ)

 

 キルバスの頭上にはシュバルツがエネルギーを貯めた右足でキルバスの頭部に踵落としをぶち当てたのだ。

 それと同時に輝龍は駆け出してキルバスの光球に黄金に輝くエネルギーを込めた拳を叩き込んだのだ。

 輝龍の拳に宿ったエネルギーは黄金に輝く龍となって光球に食らいついてキルバスに向かって飛んでいった。

 光球がキルバスに当たると大爆発を起こす。

 

 「やった?」(ツクヨミ)

 「いや、まだだ。」(ゲイツ)

 

 爆炎の中から五体満足なキルバスの姿があった。

 

 「言っただろ、この程度で俺に傷一つ付けることすらできないと。」(キルバス)

 「だが、これで隙が出来た。」(輝龍)

 「何?グッ!」(キルバス)

 

 キルバスの背後には白いパネルを持ったビルドがそのパネルを押し込んでいた。

 

 「これでお前から黒いパネルを引きずり出す!」(ビルド)

 「なる程な。だが、ロストボトルが無いのに、どうやって...。まさか...。」(キルバス)

 「そのまさかだよ。」(ビルド)

 

 ビルドが持っている白いパネルにはキャッスル、フクロウ、クワガタ、ペンチ、CD、シマウマ、ハサミ、スパナ、コブラ、コウモリのロストボトルがはまっていた。

 

 「こっちにはエボルトがいる。三羽ガラスと幻さんが持っている以外のボトルも含めて使えるようになるのは難しくなかった。」(ビルド)

 「エボルトの奴。」(キルバス)

 「万丈!かずみん!幻さん!やれ!!」(ビルド)

 

 ビルドの呼びかけにクローズ、グリス、ローグがキルバスにそれぞれが変身に使用しているボトルのエネルギーをぶつけた。その瞬間、キルバスの体内から黒いパネルが飛び出てビルドが持つ白いパネルに引き寄せられた。

 飛び出てきた黒いパネルをビルドは手に取る。

 黒いパネルが出てきた瞬間、キルバスの姿は本来の物から赤い蜘蛛の仮面ライダーのものへと戻る。

 

 「ほう、それが狙いだったか。だが、黒いパネルが無くなっただけで俺自身はまだまだ力が有り余っているぞ!」(キルバス)

 

 黒いパネルが無くなっただけ、大幅な弱体化であるはずなのにその言葉通りにキルバスの力はまだまだ底知れなかった。

 

 「でも、さっきまでの力じゃないよね。」(ジオウ)

 「それならば、俺達の力が通用するだろ。」(ゲイツ)

 

 ダメージから回復したジオウ達が立ち上がる。そして、キルバスを囲む仮面ライダーたち。

 仮面ライダーたちはそれぞれのベルトを操作する。

 

 「「これで終わりだ、キルバス!!」」(ビルド、ジオウ)

 

 グリスが赤、青、黄、金の輝きを纏ってキルバスに連続攻撃を叩き込む。

 グリスの攻撃を受けて宙へあげられたキルバスを今度はローグが紫と金に輝くワニの頭部を模したオーラを纏った両脚で何度も挟み込み、地面に叩きつけた。

 

 「ハハハ、やるじゃねえか。」(キルバス)

 

 地面に叩きつけられたキルバスを挟むように輝龍とシュバルツが今度は仕掛ける。

 輝龍は光龍剣を、シュバルツが輝龍が持っていた無双セイバーと竜炎刀・陽炎でキルバスを切り裂く。

 黄金に輝く一振りの太刀に漆黒に輝く双刃がキルバスの体に深々と切り傷を付けた。

 遂にキルバスが目に見える程の大きなダメージを負ったのだ。

 そこへツクヨミがキルバスの動きを止める。動きを止めたところで白く輝く光球をキルバスに幾度も投げつける。そこへさらにウォズが惑星型のエネルギー弾を無数にキルバスへと降らせていく。

 度重なる追撃はキルバスに反撃の隙を作らせなかった。

 クローズとゲイツがそこへダブルライダーキックを放った。青き龍と赤い大蛇、19の平成ライダーたちのオーラがキルバスを吹っ飛ばす。

 

 「勝利の方程式は決まった!」(ビルド)

 「なんか、行ける気がする!!」(ジオウ)

 

 ジオウ、ビルドがキルバスに向かって走り出す。二人同時に飛び上がり、宙に浮いているキルバスに19人の仮面ライダーと共にライダーキックを叩き込んだ。

 ここまでの大技の連発により流石のキルバスもその体が限界になった。

 

 「俺を倒すのは出来ないぞ!数多の星を滅ぼした俺は死なない!ハハハハハハハハ!」(キルバス)

 

 キルバスは笑いながら爆発四散した。だが、キルバスの肉体を形作っていた血色の液体が集まりだしてまたしてもキルバスが復活しようとしていた。そこにビルドが空っぽのボトル、エンプティボトルをその液体に向けた。

 液体はボトルに中に吸い込まれるように入っていき、ボトルの中が血色の液体で満たされた。

 

 「何度も復活するなら復活できないようにするのが賢明だ。ソウゴ、後は頼む。」(ビルド)

 

 ビルドはそう言うとジオウに血色のボトルと黒いパネルを渡す。

 

 「うん、分かった!」(ジオウ)

 

 ビルドからキルバスだったボトルとパネルを受け取ったビルドは仲間たちと共に時空転移マシーン、タイムマジ―ンに乗り別の時代へと渡った。

 これを持ってキルバスとの戦いは終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side大樹

 十三異界覇王の一角であるキルバスを倒した後、変身を解除した俺はもう一人の俺と顔を合わせていた。

 

 「今もスコールたちといるのか。」(大樹)

 「ああ。」(修羅)

 

 どこか緊張感が伴った奇妙な会話。戦闘が終わり、瓦礫だらけの街中で話しているということを差し引いても俺とこいつの間に走り続けている緊張感は消えるものではなかった。

 

 「それで、お前はどうなんだ?今の所、マドカたちと一緒でお前が望んだ生活ができているんだろ。」(修羅)

 「お前が考えているような形じゃないよ。なあ、それよりもこの世界で初めて覚醒した時、お前だったのか。」(大樹)

 

 何となく、こいつにマドカとの関係を話したくなかったから本題に入る。

 

 「ああ、そうだ。ただ、あの時の俺は俺のことをお前だと思っていたが。」(修羅)

 

 やはり、キルバスとの戦いの前にマドカが言っていたことは合っていた。たぶん、皆がそんなに言及しなかったのはこいつも俺だと思っていたからだと思う。流石に当時のことをみんなに聞くのは気が引けるが。

 

 「お前、人間から離れてきているだろ。」(修羅)

 

 修羅の言ったことに身をこわばらせる。俺の中にあるアギトの力、気付いていたのか。

 

 「俺が使っていたロックシードとドライバー、あんな姿になるものじゃない。ヘルヘイムではないが人間じゃない力がお前にもあるんだろ。戦っている間もその力、感じたぞ。」(修羅)

 

 そこまで感づいている以上、俺が何も言わないのも無駄だな。

 

 「ああ。こないだ、その力が分かった。」(大樹)

 「まあ、聞かないでおくさ。特に興味も無いしな。」(修羅)

 

 そう言うと修羅は俺に背を向けて歩き出した。

 

 「お前も良い加減に覚悟を決めろよ。そうでなくても戦う理由があるのに迷い続けるのはどうなんだ?」(修羅)

 

 俺からの答えを聞かずに修羅はその場から姿を消した。例え、修羅が俺の答えを聞こうと思ってこの場に残り続けても俺にはまだ答えが無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分が怪物になる可能性がある、アギトの力があった時にその可能性が脳裏に走った。これまでのようにただ守りたいからという理由で戦うことが難しくなってきている。ここまでで順調に敵を倒すことは出来た。でも、俺の心はこれまでのように戦い続けることに疑問も感じ始めていた。

 大切な人を守れるだけの力だけで良い、大切な人達を護ることが俺の戦う理由だった。マドカと結ばれて、家族に恵まれ、友もいる。だからこそ俺は戦う、その前提が揺らいできたのだった。その理由は勿論アギトの力もある。だけど、それだけじゃなかった。そもそも、俺が戦う理由を定めたのは兄貴のことがあったからだ。その兄貴も居なくなった今は新たな敵を相手に剣を振るい続けることにどこか疑問があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side3人称

 その日の夜、大樹とマドカは家に帰らずにホテルへと入っていた。翌日からはIS学園に戻らなければならない、それでも二人はどこか気乗りもせず、そして強くそうしなければならないという思いも無かった。

 

 「珍しいね、大樹からホテルに誘うなんて。」(マドカ)

 

 恋人が初めて自分を誘ったことにマドカ本人は上機嫌だった。だが、恋人がただ一緒に居たいからという理由だけで誘った訳ではないのは分かっていた。

 

 「まあ、たまには良いかなって。」(大樹)

 

 マドカの問いに対しての大樹の答えは心ここにあらずという体だった。

 マドカは大樹を見るがその表情がどこか浮かないものであるのはように見て取れた。伊達に付き合いが長い訳ではないのでマドカは大樹が何に悩んでいるのかは分かっていた。

 マドカは思い切ってある行動に出た。スマホを取り出すと実の姉である千冬に電話を掛けたのだった。

 

 「もしもし、お姉ちゃん。今、大樹と一緒。学校だけど私と大樹、少し休むね。うんうん。今週いっぱいは戻らない。もしかすると結構休むかも。うん、家にも戻らない。大樹と、大ちゃんと一緒に少し旅行する。うん、分かってる。本当にお願い、これだけにするからお願い。うん、うん、ありがとう。大好き、お姉ちゃん。」(マドカ)

 

 電話で学校を休むことに許可を得たマドカは大樹の元へ向かう。

 

 「ねえ、大樹。明日から私と旅行しよ。」(マドカ)

 「いや、急にどうしたの?学校は?」(大樹)

 「お姉ちゃんに電話して休ませてもらった。」(マドカ)

 「じゃあ、明日は家に戻る?」(大樹)

 「家に戻らないよ。」(マドカ)

 「っ?」(大樹)

 

 マドカの言葉に理解が追い付かない大樹。

 

 「明日、ホテルを出たらそのまま二人で旅行に行く。しばらくは戦いのことも忘れて二人だけでいる。」(マドカ)

 

 それに対してマドカはそう言う。

 

 「いや、旅行たってどこに?それに、まだ他の十三異界覇王もいる。そう簡単には戦いを抜けられないよ。」(大樹)

 

 当然ながらに大樹はそうマドカに言った。

 大樹の性格からそう返されるのを分かっていたマドカは今回ばかりは無理矢理にでも、それも初めて前世の記憶を取り戻したあの夜に大樹を押し倒して求めるがままに大樹と体を重ね合わせた時と同じように強引に引っ張っていくつもりだった。

 

 「ずっともやもやを抱えたまま戦うの?自分のこともあやふやで。」(マドカ)

 「それは...。」(大樹)

 「戦いから逃げようなんて言ってないよ。でも、いろいろ考えるために戦いから離れないと。このままだと大樹、答えを出せないままだよ。」(マドカ)

 

 マドカの言葉に大樹も自分の中で整理が付いていないことは分かっていた。持ち前の責任感から目の前の戦いから離れるわけにはいかないと考えていた大樹は自身の問題を後回しにしようと、現実に後回しにしていたのだった。

 

 「ちゃんと大樹が、大ちゃんがまた戦えるように、それも心の底から戦うことを決められるようにするための旅行なの。また、二人で皆と一緒に戦うために。」(マドカ)

 

 大樹に関わること、それらを全て整理するため。マドカはそのための時間を作るために大樹を旅行に連れ出そうとしていた。そして、それを分からない大樹ではない。現に戦うための理由が、その心がぶれだしていた大樹はマドカの誘いを了承することに決めた。

 

 「そうだね。なら、俺達がいない間のことを皆に頼まないと。二人で旅行に行くのはそれが終わってからにしよう。」(大樹)

 「うん。」(マドカ)

 

 それから大樹は仲間たちに自分がいない間のことを頼んでいた。それが終わった時、マドカが共にシャワーを浴びようと誘っていた。その誘いを大樹は無下にしなかった。

 その夜、二人はただただお互いに溶け合ってしまいそうなほどに愛し合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大樹とマドカが戦いから離れてから数日が経ったある日、沢芽市に強大な敵が現れた。鋼色のバッタの怪人、十三異界覇王の一人ドラスだった。その眼が赤く輝くとドラスはドライブドライバーに手を掛けた。

 

 ≪Start!Your engine!≫

 

 ドライブドライバーから起動音が鳴るとドラスの姿は変異する。その姿は鎧武とファブニールの前に見せたバッタ型ドライブではなく、以前に鎧武の力を受けて変身した仮面ライダードライブタイプフルーツに酷似してしていた。その姿は赤黒く、血濡れの剣客を思わせるものになっていた。




 沢芽市に襲来したドラスは複数の十三異界覇王を吸収したことで強大な力を振るう。大樹とマドカが不在の中で仮面ライダー鎧武=葛葉紘汰は仮面ライダーロード=颯斗と仮面ライダーエグゼリオン=陸に白羽の矢を立てる。
 一方、篠ノ之神社で正則たちはある古文書を見つける。そこには過去に起きた十三異界覇王大戦について書かれていたのだった。


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仮面ライダー輝龍 第12話

 皆さん、お久しぶりです。前回から1か月近く時間が空いてしまいすみませんでした。それでは、最新話、どうぞ。


side颯斗

 大樹が万夏ちゃんと一緒に帰る日にちが全く分からない旅行に行ってから早5日が経った。キルバスっていう十三異界覇王が倒された後に大樹から電話があってしばらく万夏ちゃんと二人きりで旅行に行くって伝えられた。順調に倒してきている中での電話、それも大樹が戦いから遠ざかる旨の話をした。

 正直、大樹の性格だとこの戦いが終わるまで絶対に戦いを抜けるなんてことをしないと思ってた。というより、この戦いが終わったところでまた別の戦いに関わる感じがするけど。そもそも、僕が倒したダグバ、正則さんが倒した初代オーズ(初代って何!?)、大樹が倒したアギトっていう奴に桐ケ谷君が戦ったアマゾン、そこにキルバスを加えた5体を倒したけれども単純計算であと8体も残っている。

 その残っている8体の内にあのファブニールもいる。そんな状況のままで大樹がしばらく戦いから離れるなんて考えられなかった。

 今回、しばらく二人でいるというのはかんちゃん曰く万夏ちゃんが考えていたということではないかとのこと。

 普段の二人の様子を見ていると大樹はこうと決めたことは例え万夏ちゃんの言うことでも基本絶対に曲げない(まあ、万夏ちゃんが強引に押し倒しているみたいだから絶対に曲げないとは言えないかもしれない)。そんな大樹が万夏ちゃんの誘いを受けてそうするのは余程のことだろう。

 実際、お兄さんとの戦いが終わってからの大樹はどこか戦っている時に迷いみたいなのがあったし、その時の戦いで見せた覇気もあまり見られなくなっていた。

 ここ最近の戦いで迷いが出るようなことがあったのは確かみたい。大樹にもいろいろと考える時間が必要だし、そのためには今回のことは良いと僕は思う。

 大樹と万夏ちゃんがいないその間に他の十三異界覇王が暴れた時には僕の他にも過去に戦って来た仮面ライダーの先輩たちもいる。戦力的には余程のことがない限りは引けを取らないはず。

 ここまでのことと戦力に余裕がある。

 それを踏まえて、僕は大樹に気にしないで旅行に行って休んできてよと言った。それくらいの休みを取っても罰は当たらないはず、そう話した翌日に大樹と万夏ちゃんは東京を離れた。

 この数日は万夏ちゃんがかんちゃんに送った旅行の写真を見るだけだけどこれで僕は良かったと思う。戦いばかりを考えるのは良くないし、二人で水入らずに過ごすのは大事、大事。

 ただ、送られてくる写真がどれも大樹が見ていないなってタイミングを狙った写真が多いけど。すごく、気が抜けてる様子だから完全に油断したタイミングなんだろうな。ちなみに、大樹なのか万夏ちゃんなのか何を血迷ったのか明らかに事後どころか致しているよね?的な写真があった。

 そんな写真をかんちゃんと二人で見るのはかなり恥ずかしかったよ。

 大樹と万夏ちゃんがそれはもう毎日ムラムラしてお盛んでIS学園在学中にベイビーちゃんを生むつもりなの?ってくらいにしているのは知っているけど、改めてそう言う写真を見せられるとこっちはかなり恥ずかしいよ。

 まあ、そういうのをするってことは精神的にはリラックスしているってことだと思うから良いけどね。

 そんなこんなで今の僕は次の敵に備えて、相も変わらずにガドラさんの所に通ってる。

 最近、素手で木に穴を開けるくらいまでには鍛えてきたからより強くなるためにガドラさんの所へ来ている。

 ガドラさん以外の他のグロンギの皆はと言うと、僕たちと年齢が近いジャラジ君とザザルちゃんは刀奈姉ちゃんの手回しで学校に通っている、それもIS学園に。流石はロシア代表、影響力が違う。

 ジイノさんとベミウさんは刀奈姉ちゃんが作ってくれた戸籍を使って仕事に着いている。

 ジイノさんはなんと保育園で働いているみたいだし、ベミウさんは夜にジャズバーでピアノを演奏してるみたい。一度見に行こうと思ったけど未成年はダメってなってた。

 解せぬ。

 バベルさんとジャーザさんは一緒に生活しているらしく、今でもジャーザさんがFXや株とかでガンガン稼いでいるらしい。

 バベルさんはと言うと他の皆と違って時たまガドラさんの所に顔を出したり、長野県の九郎ヶ岳遺跡の方に出向いたりしている。遺跡の方はこの世界のグロンギたちがどんな感じだったのかを知るために行っていることをこないだは話してくれた。で、僕と殴り合いをしたガドルはまたどこかに行っているらしい。バベルさんたち曰く、「ハヤトにボコボコにされたのが相当気に食わなかったんだろうな。また、しばらくしたら顔を出すだろうから気にしなくていい。」

とのこと。まあ、僕は今はそんなに気にしていないし。

 そして、僕は目の前の木に正拳突き1000本を撃ち込んでいる。最初のころは痛かったけど今は全然痛くない。それどころか一本入れるたびに樹皮が弾け飛んでる。いや~バ〇とかゴ〇とか夢じゃないぞ!その内、ス〇ンドとか波〇とか出せるんじゃないのかな!!

 

 「颯斗、特訓中悪いが敵が現れたぞ。」(ハート)

 

 10本目の正拳突きを撃ち込んだ時にハートが敵が来たことを知らせてくれた。

 

 「うん!行こう!!」(颯斗)

 

 僕はハートにそう言うとこの場を後にする。

 

 「ガドラさん!また、後で来ます!」(颯斗)

 

 ガドラさんがいる小屋に声を掛けたけど返事はない。まあ、毎度のことだからそのまま僕はライドローダーに乗って敵が現れた場所に向かう。

 

 

 

 

 僕がガドラさんの息子、ガミオに瓜二つだからいっぱい話しかけてくれるのかなと思っていた。

 大切な家族が死んでしまう、僕はそんな経験はしたことが無い。だから、ガドラさんの気持ちを分かることはできない。でも、でも、いつかは、ガミオさん、ガドラさんの息子がどんな人だったのか話してくれると僕は嬉しいかな。

 

 

 

 

 

 

side三人称

 「ブレン、敵が現れた場所までのルートを教えて。」(颯斗)

 

 ライドローダーに乗る颯斗は運転をしながらブレンにナビゲートを頼む。

 

 「ライドローダーのナビに表示しました。最短最速ルートを表示しています。」(ブレン)

 「ありがと!」(颯斗)

 

 ライドローダーに表示されたルートを通って颯斗は敵が現れた場所、沢芽市へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 沢芽市、幾度となく驚異の侵略者たちからの侵略を受けてきたこの地に新たな侵略者が現れた。かつて、この地で戦った仮面ライダー鎧武と共闘した仮面ライダードライブ、鎧武の力を受けたその姿に酷似した敵が現れた。赤黒い陣笠を被り、無双セイバーと竜炎刀を持つバッタを思わせる仮面、ゲムデウスとダークドライブを吸収した十三異界覇王の一体ドラスの進化した姿である。そして、この姿の元になったのは大樹たちが最初に対峙した十三異界覇王、異世界の柏葉大樹であるファブニールである。どうして、このようになったのか、それを知るのはこの場に駆け付けたアーマードライダーたちが良く知る人物だけだった。

 

 「城之内は関係ない人たちを避難させろ!」(ザック)

 「その間に僕たちが奴と戦って時間を稼ぐ。」(光実)

 「二人とも、無理はするなよ。」(城之内)

 

 この地で戦い続けるビートライダーズだった青年たち、呉島光実、ザック、城之内秀保の3人。城之内が市民の非難をする中でドラスと対峙する光実とザックが戦極ドライバーとロックシードを構える。

 

 ≪ブドウ!≫

 ≪クルミ!≫

 「「変身!!」」(光実、ザック)

 ≪ブドウアームズ!龍砲、ハッ!ハッ!ハッ!≫

 ≪クルミアームズ!ミスターナックルマン!≫

 

 光実は仮面ライダー龍玄ブドウアームズに、ザックは仮面ライダーナックルクルミアームズへと変身した。

 二人はそのままドラスへと向かっていく。

 ドラスは自身に立ち向かってくる二人の仮面ライダーの気配を察知するとそのまま龍玄とナックルに斬りかかった。

 龍玄とナックルはドラスの凶刃を躱し、攻撃を撃ち込む。

 龍玄はブドウ龍砲を使った射撃を、ナックルはクルミボンバーによる強烈なパンチをドラスに浴びせていく。

 ドラスは無双セイバーと竜炎刀を巧みに使い、龍玄とナックルの攻撃を防いでいく。

 

 ≪クルミオーレ!≫

 「オラァ!」(ナックル)

 

 ナックルは戦極ドライバーを操作してクルミ型の巨大なオーラ弾をドラスに撃ちだしていく。

 ドラスはナックルの子の攻撃にも対応してきたが攻撃を防御したために龍玄とナックルから距離が出来てしまう。そこをすかさずに龍玄が攻撃を加える。

 

 ≪ブドウスカッシュ!≫

 

 龍玄の必殺技、ドラゴンショットがドラスの炸裂する。

 ドラゴンショットが命中したことによる爆炎が生じ、ドラスの姿を煙が隠す。

 生じた煙を無傷のドラスが両手に持った武器でかき消す。

 ドラスのその姿からは龍玄とナックルの攻撃が有効打になっていないことが容易に窺い知れた。

 ドラスは左手のシフトブレスにセットされているシフトカーを操作して、両手の武器にエネルギーを貯めた。

 赤黒い稲妻状のエネルギーを帯びた無双セイバーと竜炎刀をドラスは龍玄とナックルに向かって振るった。

 赤黒い稲妻はそのままエックス型の斬撃となって龍玄とナックルに向かって高速で飛んでいく。

 放たれた斬撃は龍玄とナックルに直撃、大爆発を起こした。

 爆発は戦いの舞台となっている街中の建物に被害を出した。

 龍玄とナックルは吹き飛ばされて、地面に転がる。

 ダメージを受けてなお立ち上がる二人だったがそこにドラスが無双セイバーと竜炎刀を振りかぶる。

 龍玄とナックルは迫りくるに凶刃に自らの武器で防御しようと動いた。その次の瞬間、ドラスを何かが吹っ飛ばした。

 

 「光実さん!ザックさん、大丈夫ですか!」(ロード)

 

 颯斗が変身したロードが龍玄とナックルを間一髪のところを助けたのだった。

 ロードはライドローダーをパワードアーマー型のバトルモードに変形させて装着し、その巨大な拳でドラスを殴りつけていたのだった。

 

 「颯斗君、助かったよ。」(龍玄)

 「大樹の奴は?一緒じゃないのか。」(ナックル)

 「所用でしばらく帰ってこないです。それより、あいつ。ドライブみたいですけど。」(ロード)

 

 ロードは攻撃したドラスを見て、仮面ライダードライブに酷似していることに気付いた。

 

 「もしかして、今回の十三異界覇王ってドライブ?」(ロード)

 「いや、俺達が知っている泊進ノ介ならあり得ない。それに、十三異界覇王になら108の可能性が高いが。」(ハート)

 

 ロードはハートと話して十三異界覇王が誰かを予想する。だが、その予想を決する前にフッ飛ばされたドラスが目の前にいた。

 

 「それで、ハート。あいつは108?」(ハート)

 「108ではないな。僅かながらに奴がいた痕跡はある。ロイミュードの肉体に、ドライブシステム。108も使っていたが108はすでに消滅しているみたいだ。」(ハート)

 

 ドラスは攻撃目標をロードへと変えて、瞬時に距離を詰めて、無双セイバーと竜炎刀をロードに叩きつけようと振り上げる。。

 ロードはライドローダーの装甲でドラスが振るう刃を防ぎ、巨大なアームでドラスを鷲掴みにする。

 メカアームに捕まったドラスは脱出しようともがくがロードはそのままドラスを地面に叩きつけた。

 そこへロードは両腕のメカアームを何度も何度もドラスに叩きつける。

 

 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」(ロード)

 

 巨大な鉄拳(文字通り)による無限ラッシュ、ドラスの強化された肉体がギシギシと軋み出してきた。

 

 「トドメ!!」(ロード)

 

 ロードがドラスに強力なフィニッシュブローを繰り出そうとした。だが、その一瞬の隙を突いてドラスはその場から大きく跳び上がってその場の近くにあったビルの屋上へと移動した。

 ドラスはコウモリとクモのバイラルカーを取り出す。

 ドラスはロードたちに向かってバイラルカーを放ち、自身はその場から離れた。

 

 「颯斗!このままだと逃げられるぞ!」(ハート)

 「分かってる!」(ロードは)

 

 ロードはドラスを追いかけようとするがドラスが残したバイラルカーが怪人に変化して足止めを食らってしまう。

 バイラルカーから変化した怪人、コウモリ男と蜘蛛女は周囲に重加速フィールドを展開する。

 ロード以外のものを動きが大幅に抑えられてしまい、ロードはコウモリ男と蜘蛛女を相手に戦うことを余儀なくされた。

 

 「仕方ない。こいつらを片付けるぞ、颯斗!」(ハート)

 「うん!」(颯斗)

 

 ロードとハートを切り替えて、目の前の敵を対処することに決めた。

 ロイミュードと比べ、有機的な見た目をしているコウモリ男と蜘蛛女。防御力が低そうな見た目から予想出来ないほどの強固な甲殻を持っている2体は、モチーフとなった生物の特性を生かした攻撃でロードを翻弄する。

 

 「ああ、もう!戦いにくい!!ライドローダー、バトルモードオフ!」(ロード)

 

 パワードスーツとなっていたライドローダーからロードは降りると、身軽になったことでコウモリ男と蜘蛛女を相手に対等に渡り合う。

 コウモリ男は空中を飛びながら、超音波を放つ。それだけではなく、両腕の鋭い爪で引掻く。

 蜘蛛女は蜘蛛の腹に似た器官から糸を放つ。

 ロードは違う方向から来る攻撃をかいくぐり、燃え盛る鉄拳をぶつけていく。

 決して深追いせずに的確にパンチを放つロード。一発だけでも下級怪人を撃破できる程の威力を持つ鉄拳を何度も当てていく。空中からの攻撃を察知すれば、即座に攻撃を辞めて距離を取り、攻撃を回避する。

 今までの戦い方と比べ、冷静に敵の攻撃をさばいていくロード。これまでの戦い方はパワーを前面に押し出した漫画やアニメの主人公を模したケンカ殺法だった。だが、グロンギのガドラ、バベルの元で鍛錬を積むうちに洗練された格闘技のような戦い方を身に付けたのだった。

 

 ≪急に!デッドヒート、ハート!デッドゾーン!≫

 「ハアッ!」(ロード)

 

 ロードの体がデッドゾーンの発動により赤熱化する。そのまま、ロードは跳び上がってコウモリ男の顎に強烈な右アッパーをぶちかました。

 強化された攻撃によって爆殺するコウモリ男。

 爆発に巻き込まれたロードを見た蜘蛛女は戦っている相手が死んだものと思い、重加速現象によって動きがなおも鈍くなっている龍玄とナックルに向かっていく。だが、龍玄とナックルの元へ蜘蛛女が歩を進めることは無かった。

 蜘蛛女の胴に赤熱した拳が刺さっており、それを蜘蛛女が知る前に蜘蛛女も爆殺した。

 コウモリ男と蜘蛛女が倒されたことで重加速現象が消失、龍玄とナックルはその束縛から解放された。

 

 「おおっ。大丈夫か、ミッチー。」(ナックル)

 「大丈夫。動きが鈍くなっただけでなんともないよ。」(龍玄)

 

 無事を確かめ合う龍玄とナックル。敵がいないことを確認して変身を解除する。そこに同様に変身を解除した颯斗も加わる。

 

 「光実さん、ザックさん。敵のボス、逃がしてごめんなさい。」(颯斗)

 「いや、あれは仕方ねえ。それに次に来た時に倒せば良い。だろ、ミッチー。」(ザック)

 「うん。幸い、颯斗君が来てくれたおかげで僕たちも助かった。次は倒せるさ。」(光実)

 

 颯斗はドラスを逃がしたことを二人に謝るが光実とザックから救援に来てくれたことの礼が帰って来た。

 

 「それと、大樹君が所用でいないって言っていたけどどうしたんだい?」(光実)

 「しばらくは万夏ちゃんと旅行に行くって。数日前に旅行で東京にはいないんです。学校もしばらくは休んでいるんで。あ、でも宿題は出されたみたいで織斑先生が毎日パソコンに送られたものを確認しているみたいですね。」(颯斗)

 「旅行って、どこに?」(ザック)

 「さあ、それはさっぱり。あ、写真見ます?毎日、万夏ちゃんからかんちゃんに送られてて。」(颯斗)

 

 颯斗はスマホに入っている大樹と万夏の写真を見せる。それを見た二人はどこか優しい眼差しでそれを見る。

 

 「良い表情だな。」(ザック)

 「良いんじゃないかな。二人だけの時間も必要だし。」(光実)

 

 大紀と万夏の写真を見る光実とザックはそう言う。2年前、まだ中学生だった大樹と出会った二人は当時からの大樹の様子を考えると写真にあるような穏やかで楽しそうな大樹は見たことが無かった。

 

 「ちなみに明らかにあれを致しているではないかという写真も。」(颯斗)

 「いや、何で見せるんだよ。」(ザック)

 

 件の問題の写真を見せようとするのはいらないだろうが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どこかの廃工場。そこで傷を負ったドラスは元の姿であるバッタ型の怪人の姿で傷を癒していた。その体内には...

 

 「しくじったな。」(ファブニール)

 

 チェルノブイリでドラスと戦っていたファブニールが囚われていた。



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仮面ライダー輝龍 第13話

 前回、チェルノブイリで仮面ライダー鎧武と十三異界覇王ファブニールと激しい戦いを繰り広げた十三異界覇王ドラスは新たな姿となって沢芽市へと襲来した。
 ドラスに対処するアーマードライダーたち。だが、ドラスは吸収したダークドライブことロイミュード108の力によって重加速現象を発生、アーマードライダーたちを苦しめた。
 窮地に陥った彼らを救ったのは仮面ライダーロード。ロードはドラスを撃退、ドラスが生み出した2体の怪人を撃破したのだった。


sideファブニール

 チェルノブイリでドラスを相手に紘汰と共に戦っていた俺は今はドラスの体内に囚われていた。

 油断していたのではなく、紘汰を庇った結果がこれだ。

 

 「俺もまだまだだな。戦っていた相手を庇うなんて。」(ファブニール)

 

 誰にも聞こえない、そんなことを分かりながら独り言を言う。まあ、一人になってから話し相手に恵まれた記憶がない所為もあるが。まだ、俺にも他人を気遣う情が残っているなんて。

 

 「魔蛇と手を組むことを決めて、他人を助けるなんて思わなかったが。あいつがまだ仮面ライダーって言ったのはそう言うことだな。」(ファブニール)

 

 俺の脳裏にはここまでの間に黄金の果実の力で見た数多の並行世界の記憶がある。留芽颯斗、岩城正則、桐ケ谷陸、彼らも俺が見た並行異世界に居た。

 留芽颯斗はどの世界でも俺とは共に戦う仲間だった。当然ながら、一夏と俺と彼の3人で仮面ライダーとして戦っていた世界は多かった。仮面ライダーとして戦うことは無い世界でも俺と彼はISの操縦者と技術者としてコンビを組むことが多かった。留芽颯斗は他の二人と比較的、彼と俺は良好な関係を築いており、共闘することが多かった。IS学園卒業後も友人として関係が続いていた数少ない人物でもあった。

 岩城正則は俺と協力関係にあるか、敵対関係にあるかのどちらかしか無かった。ただ、この世界のように完全な味方というわけでは無かった。協力関係にある世界では俺は亡国機業に属しており、岩城正則は篠ノ之束と同類にありながら人類滅亡を企んでいた人物だった。当然、その世界では俺はIS学園のメンバーとは敵同士だった。敵対関係にある世界では、当然ながら俺はIS学園側の人物だったからなのが大きな理由だったが。この世界のように篠ノ之束と夫婦で平穏に暮らしている世界は初めてだった。

 桐ケ谷陸はほとんどの世界では俺との接点は少なく、彼に関しては数多くの異世界で様々な立場に居た。俺とは明確な協力関係よりも事件に関わる第三者として関わるのが多かった。ただ、どの世界でも軽薄だが、その性根は一本芯が通った人物であった。

 なお、俺はこの3人が一堂に会する世界を見たことがない。少なくとも、俺が見てきた並行世界では彼らと共にいることはあっても留芽颯斗と共にいれば他の二人と会うことは無く、これは他の二人であっても同様だった。

 彼らが同じ世界に居る、これは俺が見てきた並行世界の中で唯一のことだ。そして、この世界の俺はアギトの力を持っていた。それだけではなく、戦極ドライバーの力もある。俺が体験してきた並行世界には無かったこと、それがこの世界には溢れていた。当然ながら、マドカも仮面ライダーに変身して戦うこともこの世界が初めてだった。 

 この世界は俺が見たことがない並行世界だった。だからこそ、俺の目的を達成できると考えた。俺ではない俺による世界の可能性、俺が望む可能性が見つかったから。俺が生きる世界は遅かれ早かれ、俺が生きているうちに終わってしまう。その中で見た俺が見たことのない世界、ここでなら俺が求める世界が、俺が愛する人たちが最後の時まで平穏な日々を送ることが出来る世界が出来るかもしれない可能性がやっと現れた。

 

 「まあ、それだけではまだ足りないが。」(ファブニール)

 

 だが、今のままでは十分ではない。俺がこれまでに見てきた並行世界の仲間たちと同一の存在がいる、共に戦う仲間たちが大勢いるだけではまだ足りない。

 俺がこの世界での未来を黄金の果実で見ようとするとある時間から先は見ることが出来なかった。そこから先の未来が決まっていないのか、世界が終わってしまったのか判別できなかった。恐らく、この世界が終わるかどうかがその時間に掛かっているだろう。そして、その時間にはこの世界の俺とマドカがいた。二人だけでいる時に何かが起きるのだろう。

 

 「そのことを見据えて、力をつけてもらいたかったがな。まだまだ、この世界の俺では今の俺を倒すほどの力も無い。」(ファブニール)

 

 そのために、この世界の俺の前に敵として出てきたが、俺の思惑通りにはなかなかいかなかった。俺が他の十三異界覇王の牽制をしているほかに、魔蛇と協力しているのが大きな理由だ。俺個人で好きに動けるタイミングが少ない、それに魔蛇と協力していることも俺の動きを大きく制限していた。あいつがどこまで勘付いているのか、それが分からない以上は下手に動けない。

 

 「いや、まずはドラスの体内から脱出する方が優先だ。頼むぞ、紘汰。」(ファブニール)

 

 そして、俺はこの空間、ドラスの体内から脱出するために外からの救援を待つことにする。その前に、何とか動けるようになって、ドラスの力を削いでいきたいが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side颯斗

 「あのドライブもどきになら、新兵器を使えると思ったんだけどなぁ。」(颯斗)

 

 僕はIS学園の生徒会室でぐうたらしていた。ガドラさんたちとの特訓で強くなってきているほかに、新しく作った新兵器もあった。今までになかった、僕の強化アイテム、名付けてビーストガンナー!(設計図はハートたちが持っていたデータにあったブレイクガンナーって武器から)。グロンギの皆の中にあった魔石ゲブロンの欠片を貰って作ったビーストバイラルカーを使って拡張武装が出来る新兵器!を作ったは良いけど試す機会が中々ない。さっき会ったあのドライブもどきになら使うかもしれない!って思ったけど。

 

 「あのドライブもどき、何が目的なんだろう。」(颯斗)

 

 ここまでの十三異界覇王って何かの目的があるみたいだった。僕と戦ったダグバ、こいつは強い相手と戦うこと、桐ケ谷君が出会ったアマゾンって奴はエサを求めて(そのエサが僕たち人間なんだから、たちが悪い。)、正則さんが戦った初代オーズはメダルを狙って、って感じで何かしらの目的があって行動しているらしかった。それは当然、さっきのドライブもどきもそうじゃないのかな。

 ただ、まあ、今度の相手のあのドライブもどきの目的は全く分からないけど。

 

 「ねえ、ハート。こないだのドライブもどきだけど、ロイミュードではないんだよね?」(颯斗)

 「ああ。108のボディや未来のドライブの力、108の残滓があったがあいつ自体はロイミュードではない。」(ハート)

 

 そう、あいつがどんな奴なのかもよく分かっていない。ハートの分析ではあのドライブもどきはドライブシステムを本当に使っているし、そのボディはロイミュードの物なのは分かった。でも、あの編み笠を被った剣士のような姿はドライブを始めとした共通システムの仮面ライダーにはない(ハートは見たことないけど、泊さん=ドライブには近い姿には一度なっているとのこと)。

 ロイミュードとドライブシステムを吸収、ハートたちの生みの親である蛮野天十郎博士が失った体に変わって作り出したゴルドドライブ、その前にはメガヘクスっていうトランスフォーマーもどきがやったみたいだけど。

 ドライブもどきが出した重加速粒子、ドライブもどきが生み出した2体の怪人は間違いなくロイミュードの力を持っていた。今の所は僕だけが重加速粒子を発する奴に対抗できる、どうしたもんかなぁ。

 そんなこんなで考え事をしているとスマホが鳴り出した。スマホの画面には現在、休暇旅行をしている(僕が勝手に思っているだけ)大樹の名前が表示されていた。

 

 「もしもし?」(颯斗)

 [今、大丈夫?](大樹)

 「考え中だけど、良いよ。煮詰まって来てたし。」(颯斗)

 

 気分転換には良いと思って電話を取った。電話越しの大樹の声はかなりリラックスしているみたいなのが分かった。

 

 [新しい十三異界覇王が現れたって。](大樹)

 「うん。良いの、旅行中にその内容の電話をして?」(颯斗)

 [マドカがいる前でするわけないだろ。今、一人だから。](大樹)

 「なるほど。ああ、戻らなくて良いよ。今回は相性の良いのは僕だから。」(颯斗)

 [そう言うってことは相手はロイミュードなのか?](大樹)

 「を、吸収したみたい。目的はまだ分からずじまいだけど。」(颯斗)

 

 僕の話を聞いて、スマホの向こう側の大樹が考え込むのが分かった。それから、すぐに大樹が話し始めた。

 

 [とにかく、気を付けて。何かあれば、他のメンバーにも。](大樹)

 

 こういう時の気遣いはかなりありがたい。でも、本当はそういうことを大樹に言わせるのは後ろめたいけど。

 

 [あ、今マドカが戻って来たから、後で!?](大樹)

 

 しばらく、電話越しで大騒ぎする大樹と万夏ちゃんの様子を聞く。万夏ちゃんが結構大声を出しているのが分かる。そこに、大樹があたふたと弁明をするのが聞えてくる。ただ、すぐに電話越しからかなりデープな音と発情した動物のような息が響き始めたからすぐにスマホの通話を切った。

 大樹と万夏ちゃんのやり取りを聞いて思ったこと、せめてするなら電話を切ってよ。

 

 

 

 

 

 

side三人称

 篠ノ之神社、資料が保管されている古い蔵では秋人と柳韻が、日が暮れてもなお資料を見ていた。

 

 「なあ、切嗣。今日はここまでにしないか。」(柳韻)

 

 資料をあらかた整理している中で柳韻が秋人に問い掛ける。

 問い掛けられた本人は資料を険しい表情で見ていた。

 

 「護龍に関すること、ほとんどないんですね。」(秋人)

 「ごめんな。向こうの家とやり取りをしたのは大分昔で、その時には柏葉の家にある資料の大半が処分されてた。」(柳韻)

 「柳韻さんが謝ることはないですよ。でも、ほんの少しの望みが見つからないのはきついかな。」(秋人)

 

 見ていた資料を閉じて秋人が柳韻に答える。古い時代の資料でも江戸時代まで(歴史的に見れば、それでも大変貴重だが)であり、護龍(柏葉家に伝わるアギト)や過去の十三異界覇王について記述は見られるがそれほど多くはない。さらには、どの記述もあまり詳しいことは書かれておらず、精々が英雄として村を守り続けたや町をいくつも滅ぼしたという程度だった。

 

 「一度、本殿に戻るか。」(柳韻)

 

 目当てのものが無かったため、二人とも蔵を後にする。

 

 「それにしても、護龍ってなんなんだろうな。」(柳韻)

 「アギト、人間の進化、のはずですよ。」(秋人)

 「それなら、かなり崇め奉ったはずだ。生ける神として、英雄として大層祭り上げたはずだ。それなのに、どの資料も居たとか、どこの街で妖怪と戦った程度のものしか残っていない。昔は今よりもそう言う存在を大切にしたはずだ。それなのに、ここに寄せられた資料の情報は少ないだろ。」(柳韻)

 「ええ、それは僕も引っ掛かってました。僕が柏葉さんから護龍について聞いた時には柏葉の守り神と言っていました。でも、それも大分廃れていたとも。」(秋人)

 

 秋人の話を聞いた柳韻はふと思い浮かんだことを言葉にした。

 

 「案外、護龍は荒神だったかもな。」(柳韻)

 「荒神、守護神であるのに。」(秋人)

 「守護神だからこそ、かもな。日本にいる八百万の神様は人に益を与える一方で恐れられる荒神でもある神様がいる。前に見せた資料にあった姿を見た昔の人間は守護神よりも荒神と思ったかもな。だから、信仰が廃れていった。」(柳韻)

 

 柳韻の言葉に秋人はまさかと思いつつも否定できないでいた。大樹が変身したアギトの姿を見たことで、柳韻の説も一理あることを思ったからである。

 

 「ただ、そうだとしても信仰が廃るのは考えにくいけどな。余程の恐怖心から名前すらも一切伝えないなら分かるが。」(柳韻)

 「謎は多い、それも解けるかどうかが分からない謎ばかり。」(秋人)

 

 秋人の言葉からも分かる通り、今現在に集まっている資料では現在起こっている十三異界覇王たちの事件の解決にも繋がらない。

 

 「そう言えば、大樹と万夏ちゃんが旅行に行ってもう5日だろ?心配じゃないのか?」(柳韻)

 「二人なら大丈夫。身の危険に関してはあの二人に心配することは無いよ。」(秋人)

 「年頃の若い二人だぞ。間違えの一つや二つなんて旅先で有り得るだろ。」(柳韻)

 「それくらいのかわいい間違いはもうしてますよ。せれに、親として伝えるのは助けが必要な時は呼んで欲しいことと節度ある交際をして欲しいことだけですよ。」(秋人)

 「俺が切嗣なら、大樹の奴をボコボコにしてるけどな。」(柳韻)

 「万夏が押し倒して大樹が心を開いてくれたんです。そう言うこともあるから、反対する大きな理由になりませんよ。」(秋人)

 「流石は元警官だな、人間が出来てやがる。」(柳韻)

 

 本殿へ向かう中で秋人は今は旅行中の大樹とマドカのことを考えていた。

 血のつながりは一切ないが秋人にとって最愛の子どもたちである大樹とマドカ。その二人が戦いから離れて平穏な時間を過ごしている、それを思うだけで親として秋人は喜ばしかった。なお、恋人への性欲に忠実な愛娘であるマドカに対しては父親として教育が必要だと痛感しており、常日頃から頭が痛い思いをしているのは言い出せないが。

 

 「一番の手掛かりはこいつだよな。」(柳韻)

 

 本殿に到着して、中へ入った時に柳韻が天井を見上げる。そこには豪華絢爛な巨大な絵が描かれていた。

 その絵には古の時代に猛威を振るった13体の異形が描かれていた。古代の魔物たちで構成されたデルザー軍団の岩石大首領、古代よりこの世界の全ての支配していたゴルゴムの王である創世王、恐竜を絶滅に追いやったフォッグ、グロンギのンに近い力を持っていたゴ・ライオ・ダ、禍々しい姿をしたアギトらしき者、魔物魔化魍である土蜘蛛に八岐大蛇、ファンガイア最強の鎧を纏ったダークキバ、メダルの怪物であるグリードの力を使うオーズ、幻獣ドラゴンそのものであるファントムのドラゴン、異世界の民フェムシンムを思わせるオーバーロードインベス、見たことのないベルトを身に付けた3体のライダーらの争いが天井に描かれていたのだった。

 

 「この神社が出来るずっと前にこの地に言い伝えられてきた伝説。この神社が建立される数年前にあったとされる話があった。それを再現したこの天井の絵が一番の手掛かりだよな。」(柳韻)

 「確か、その伝説が十三異界覇王大戦伝説。」(秋人)

 「眉唾と思っていたがここ最近の事件で本当かもなと思い始めてきたがな。」(柳韻)

 

 大樹たちが住むこの街には古くから伝わる伝説があった。古の時代から何度か繰り返されて来たという異形たちの戦い、13体の異形たちが争い覇権を競ったというそれはその異形たちがこの世界ではない魔境・異界より来たことから十三異界覇王大戦と呼ぶようになった。

 

 「この天井画はこの神社が建立される前にあった十三異界覇王大戦を描いたものらしい。」(柳韻)

 「この神社が建立されたのは確か安土桃山時代って。」(秋人)

 「恐らくは平安時代にも似たようなもん、あったろうけどな。ただ、戦国の真っ只中にそんな戦いが何度もあったとは思えねえけどな。」(柳韻)

 「周期があるかもしれない、ってことですか。」(秋人)

 「それが何年かずれるだろうけどな。神社の古い資料に目を通してみたが今起きている戦いの前は江戸時代から戦国時代だったろうな。それもこの天井画の戦いが前回大会だろうな。」(柳韻)

 「少なくとも300年前後になりますね。」(秋人)

 「まあ、おおむねその周期かもな。それと資料を見てもどいつが勝ったのかは分からんがな。もしかすると、優勝者なんて端から出す気が無かったとかな。」(柳韻)

 「まさか。これだけの戦いで勝者がいないなんて。」(秋人)

 「勝者が決まっていれば、俺達はこの世にはいないはずだろう?まあ、実際の処は分からんのはこれも変わんねえか。」(柳韻)

 

 この時の柳韻の「勝者はいない」という言葉、これは後に事実であることが判明する。その最中で十三異界覇王との戦いの中で最も激しい戦いが起きる。



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仮面ライダー輝龍 第14話

 ドラスの体内に囚われていたファブニール。ファブニールでドラスの体内でその脱出の隙を伺っていた。
 一方、篠ノ之神社では秋人と柳韻が神社の中にある資料を調べていた。彼らがこの戦いの謎を解くカギと見ているのは篠ノ之神社本殿の天井に書かれた以前この地で行われた十三異界覇王大戦と思われる絵だった。


side三人称

 ドラスとロードが激突した翌日、颯斗は沢芽市へと向かっていた。

 ドラスの目的が何なのか、ロイミュードの力を吸収した上で沢芽市へと来たその理由は何なのか、ここまでの戦いの中で比較的沢芽市に被害が集中することが多い理由を颯斗は知ろうとしていた。

 颯斗はライドローダーに乗り、シャルモン1号店へと停めた。

 シャルモンのドアには本日貸し切りと看板が立てかけられており、颯斗はそれを確認すると扉を開けて中へ入った。

 

 「お邪魔します。」(颯斗)

 「いらっしゃい、坊や。席に座ってなさい。」(鳳蓮)

 「は~い。」(颯斗)

 

 シャルモンには既に待っていた鳳蓮と貴虎の姿があった。

 

 「時間を作ってくださってありがとうございます。」(颯斗)

 「いや、ここまで来てもらって感謝する。君から話をしたいとあっては私達も話すべきだろう。」(貴虎)

 「まさか、あなたから話をしたいって、ワテクシ達とあまり話はしていなかったわよね。」(鳳蓮)

 

 突然の颯斗からの連絡に驚いた貴虎たちだったが若い世代からの助けとあれば快く引き受けたのだった。

 

 「ここまでの十三異界覇王の襲撃についてなんですけど、ここ沢芽市に集中しているじゃないですか。」(颯斗)

 「ああ。」(貴虎)

 

 早速、颯斗は貴虎に質問をした。その質問に対して口を開いたのは鳳蓮だった。

 

 「そうね。あなたたちが戦う前、沢芽市に戦いが集中したのはそもそもここにクラックが出現しやすいというのが理由の一つだったのよ。」(鳳蓮)

 

 貴虎、鳳蓮が激しい戦いをしていた頃より前から沢芽市では異界の裂け目=クラックが頻出していた。そのためにそのほかの地域と比べてインベスの出現率が高かった。そのインベスに対処するために当時ユグドラシルにいた貴虎が前線に出ていた。

 

 「だが、沢芽市での戦いが激しかったのはクラックの所為、というよりも私を含めたユグドラシル側の動きが大きな理由だ。」(貴虎)

 

 その頃のユグドラシルでは戦極ドライバー実用化のために戦極ドライバーを街の若者=ビートライダーズにばらまいた。その結果、戦いが激化したのである(これはインベスの対策のためのインベスゲームに合わせて行ったため)。最終的に戦いの激化はクラックより異界ヘルヘイムの森より襲来したフェムシンムの民に伴った。

 

 「その当時から、ここでは激しい戦いがあったのはクラックが多く出現するから、というのが理由と言うことですか。」(颯斗)

 「当時について、その認識で間違いはない。だが、今の十三異界覇王たちに対しては正直なところは我々も分からない。」(貴虎)

 「IS学園に現れたのはワテクシたちが対峙したオーバーロードに近い存在ではあるけど、他の十三異界覇王に対してはお手上げね。ワテクシ達はアーマードライダーとインベス、ヘルヘイムの森に関するものであれば詳しいけれども。」(鳳蓮)

 「颯斗君が撃破したン・ダグバ・ゼバは過去に東京で連続殺人を繰り返した未確認生命体の首領と酷似していること、大樹君が撃破した異世界のアギトは我々でも認知しているが...。」(貴虎)

 

 実際の処、貴虎と鳳蓮はアーマードライダーとインベスの専門家であるがその他については颯斗に対して十分な答えを出せるわけではない。

 

 「じゃあ、現時点で貴虎さんたちは今回の相手はどう考えていますか?」(颯斗)

 「と言うと?」(貴虎)

 「今回の相手、それぞれが独自の目的を持っていると思うんです。僕が倒したダグバ、CRの仮面ライダーたちが倒したアマゾンっている奴ら、鴻上コーポレーションを襲撃したオーズ、大樹が倒したアギトたち、そして僕たちの前に最初に現れたファブニールとこないだのドライブもどき。ドライブもどきに関してはまだなんとも言えないけど、それぞれの行動に決まった目的がバラバラだったんじゃないのか、って。」(颯斗)

 

 だが、颯斗は貴虎と鳳蓮から明かされた情報から推測を始めていた。颯斗はその推測を貴虎と鳳蓮に話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 颯斗が貴虎たちと話している時と同じ頃、東北地方宮城県仙台市仙台駅。そこに大樹とマドカの姿があった。

 旅行という形で彼此五日目となる今日、大樹とマドカはある目的のために東北の地へ訪れていた。

 

 「ええと、ここから行くにはバスに乗るしか方法は無いか。しかも、もうバス出てるのか。次のバスはかなり後だな。」(大樹)

 「ねえ、今のうちにご飯を食べに行こう。」(マドカ)

 「ずんだ餅?」(大樹)

 「名物だけど、お昼に食べたいの?」(マドカ)

 「言ってみただけ、本気じゃないし。せっかく仙台に来たんだ。牛タン、牛タン。牛タンを食べないと。」(大樹)

 「近くにあると良いね。」(マドカ)

 

 まずは、昼食ということで二人は仙台駅の近くにある牛タンの店へと入る。

 二人はそれぞれ牛タン定食を頼んだ。

 

 「ありがとう、ここまで一緒に来てくれて。」(大樹)

 「うんうん。私から最初に誘ったから。もしかして、大樹の中のアギトの力について?」(マドカ)

 

 定食が来るまでの間、大樹とマドカは仙台に来た目的について話し始めた。

 

 「それだけじゃないよ。マドカの中にいるファントムについてもだし。柏葉の本家、篠ノ之神社とやり取りしてた神社に何かあるかもしれない。」(大樹)

 

 大樹とマドカが宮城県、東北の地を訪れたのは大樹のアギトの力、マドカのファントムについて手掛かりを得るためだった。

 既に一族が途絶えた柏葉の本家は東北にあった。今回の旅で大樹は自身の中にある力のルーツを、先代の護龍についてその謎を解くつもりでいた。

 

 「私の中にある魔法石も一緒に保管されていたんだっけ。」(マドカ)

 「話によると、だけどね。」(大樹)

 

 マドカと話す中で大樹は脳裏では考え始めていた。

 

 (ただ、死んだ父さんはどこでそんなものを手に入れたんだ。アギトの力、俺の幼い記憶にあったオルタリングにマドカに移植された魔法石、柏葉の本家が保管していたならそう簡単には持ちだせないはず。)(大樹)

 

 なぜ、死んだ両親がアギトの力と魔法石を持ちだしたのか。そして、

 

 (そして、俺が変身したアギトの姿は基本形態のグランドフォームではなかった。恐らくは護龍が進化する中で獲得した姿だ。一体、あの姿になる時に何があったんだ。)(大樹)

 

 護龍と呼ばれた柏葉家のアギト、謎が多いその人物についても大樹はその真実を求めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 沢芽市、颯斗が貴虎たちと話している時に撤退したドラスがその姿を再び現していた。

 その姿は颯斗が撃退した時と同様に鎧武者のようなドライブに酷似した姿である。

 旧ユグドラシルタワーの跡地に降り立ったドラスは無双セイバーと竜炎刀を持ち、赤黒い斬撃を放ち、破壊活動を始めた。

 シャルモンで話していた颯斗、貴虎、鳳蓮は破壊による爆発音を聞きつけ、現場へ向かっていた。

 

 「まさか、あのドライブもどきが。」(颯斗)

 「颯斗君、敵は重加速現象を起こすなら君が適任だ。行ってもらえるか。」(貴虎)

 「ワテクシとメロンの君は市民の避難をするわ。」(鳳蓮)

 「分かりました。」(颯斗)

 

 颯斗はそう言うとマッハドライバーを腰に装着し、ドラスの元へ向かう。

 

 「ハート!」(颯斗)

 「分かっている。行くぞ、颯斗!」(ハート)

 

 颯斗の呼びかけに即座に答えたハート。颯斗はハートを掴み、走りながら叫んだ。

 

 「変身!!」(颯斗)

 

 颯斗は仮面ライダーロードに変身、地面を強く蹴って宙高く跳び上がった。

 

 

 

 

 

 ドラスは破壊活動を繰り返しながらある方向へ向かって進んでいた。そこに爆炎を纏いながらドラスに飛び掛かるロードがその進行を妨げた。

 

 「ハアッ!!」(ロード)

 

 爆炎を纏った拳を、腕部アーマーに装備されているブースターで加速させてドラスの胸部に叩き込んだ。

 ロードの爆炎を纏った鉄拳を受けたドラスは胸部に爆発を起こして、後退りをした。

 

 「どこへ行くのか分からないけど、ここで倒させてもらうよ。」(ロード)

 「颯斗、このまま押し切るぞ。」(ハート)

 

 ロードはデッドゾーンを発動、全身の装甲が高熱を帯びていき、その姿が赤く輝き始めた。

 ロードは赤熱した拳をドラスの体に叩き込んでいく。

 ドラスの肉体は金属で構成されており、ロードが放つ高熱によって確実にダメージが入っていた。

 ロードの拳が叩き込まれていくにつれてドラスの体にはロードの拳の跡が付き始めていた。

 

 ≪ヒッサーツ!フルスロットル!デッドヒート、ハート!≫

 「ドリャアア!!」(ロード)

 

 必殺技デッドヒートパニッシュを発動したロードは赤く輝く拳をドラスに叩き込んだ。

 拳がドラスに触れたその瞬間、ドラスは大爆発を起こした。

 

 「よし!」(ロード)

 

 ロードは必殺技の感触から確実にドラスを撃破したと感じた。だが、爆炎が晴れるとそこには黄金色の、悪魔を思わせるような姿に変化したドラスがいただけだった。

 

 「おわ、何あれ。」(ロード)

 「ブレン、分析できるか。」(ハート)

 「そうおっしゃると思い、すでに始めています。」(ブレン)

 

 ドラスが姿を変えたことで警戒するロード。

 ドラスは右手に大剣、左手に楯を召喚してロードに襲い掛かる。

 ロードは振り下ろされる大剣を躱して、ドラスに拳を振るうが盾に阻まれて思うように攻撃を繰り出せない。それだけではなく、ドラスは大剣を地面に突き刺すと周囲を謎のフィールドへと変えていく。

 

 「何、これ。」(ロード)

 「俺達の重加速現象とは違うようだが。」(ハート)

 

 ロードが見ていく中で変化していく世界、そこはまるでゲームに出てくる神殿ような世界だった。

 ドラスは背中から黄金の両翼を広げて、ロードに向かって勢いよく迫った。

 ロードは一瞬たじろくものの、寸でのところで切り替えてドラスにパンチを放つがそれよりも速くドラスが大剣を振り下ろした。

 デッドゾーンにより防御力が低下している状態で強烈な一撃を受けてしまったロード。

 それによって変身が解除され、地面に倒れた颯斗。

 

 「痛っっっったぁ。」(颯斗)

 

 受けた一撃によるダメージは大きく颯斗は呻きながら地面に倒れることしか出来なかった。

 ドラスは倒れた颯斗にその大剣を振り下ろした。

 颯斗は両手をかざして、振り下ろされる凶刃から身を守ろうとする。だが、

 

 「ふ~、間一髪!」(エグゼリオン)

 

 颯斗をドラスの大剣から守ったのは碧き獅子。仮面ライダーエグゼリオンアクションゲーマーレベル2だった。エグゼリオンはガシャコンスピアーを大きく振るう。

 ドラスはそのままその勢いのままに後方に跳んで距離を取った。

 

 「桐ケ谷君?」(颯斗)

 「おっす、留芽。バグスターウィルスの反応があるって聞いたから飛んで来たらビンゴだったか。」(エグゼリオン)

 

 ドラスと距離が出来たことで一息を付けた颯斗。

 

 「あいつ、ロイミュードも吸収してバグスターウィルスも取り込んでいるなら手に負えないよ。」(颯斗)

 「おお?ってことは裏ボス並みの高難易度か、腕が鳴るぜ。」(エグゼリオン)

 

 エグゼリオンはそう言うとガシャットギアデュアルγを取り出す。

 

 「いや、だから僕もやるってこと。重加速を使ってくるならハートたちの力が必要なんだよ。」(颯斗)

 「OK、OK。じゃあ、頼むぜ。」(エグゼリオン)

 ≪ビーストコンバット!≫

 

 エグゼリオンはガシャットギアデュアルγを起動する。

 

 「ゲームスキルレベル50、大・変身!」(エグゼリオン)

 

 エグゼリオンはビーストコンバットゲーマーレベル50にレベルアップするとドラスに躍りかかる。

 

 「ああ、話聞かないのね。」(颯斗)

 「颯斗、どうするんだ。」(ハート)

 「やるに決まってるでしょ。」(颯斗)

 

 颯斗はやや呆れながらも再度ロードに変身する。

 ロードはドラスがエグゼリオンの攻撃を躱したその瞬間に強烈なアッパーを浴びせた。

 意識外からの攻撃だったためにドラスはまともにロードの攻撃を受ける。

 浮かび上がったドラスに目掛けてエグゼリオンが両手の鋭い爪で切り裂く。

 有効打を浴びせてもなお、疲労の色を見せないドラス。そこでロードが新兵器を取り出した。

 

 「それじゃあ、試運転させてもらうよ。」(ロード)

 

 ロードは赤いボディに獣の爪のようなパーツが付いたブレイクガンナー、ビーストガンナーとシフトハートロンに似たバイラルシフトカーシフトビーストロンを取り出した。

 シフトビーストロンの起動ボタンをロードは押した。

 

 ≪Fire! All BEAST!!≫

 

 シフトビーストロンから起動音声が響く。起動を確認したロードはシフトビーストロンをビーストガンナーにセットする。

 

 ≪Tune up! Beast LOAD!≫ 

 

 ロードはビーストガンナーの銃口を押し込み、ビーストロンの力を開放。ビーストガンナーの銃口をドラスに向けて引き金を引いた。

 銃口からは巨大な動物たちが飛び出した。

 トラ、カマキリ、ヤマアラシ、サソリ、イノシシ、ウミヘビ、サメ、バイソン、カブトムシという9体の動物たちのオーラがドラスを攻撃していく。攻撃した動物たちは次々とロードの元へ戻り、ロードのアーマーへと変換されていく。

 タイプデッドヒートハートの上から動物たちが変化したアーマーが装着されていく。

 

 ≪BEASTS FULL TUNE!≫

 

 ロードの姿はマッシブなスタイルが特徴的なタイプデッドヒートハートと比べるとスマートな姿へと変化した。アーマーの色はえんじ色へと変わり、右肩の装甲にはトラ、左肩の装甲にバイソン、右手のアーマーにはカマキリ、左手のアーマーにはサソリ、右大腿部にはウミヘビ、左大腿部にはサメ、両足にはヤマアラシ、胸部のアーマーにはイノシシ、頭部にはカブトムシの意匠が現れていた。

 仮面ライダービーストロード、グロンギたちのゲブロンを分析して開発したシフトビーストロンの力を専用武器ビーストガンナーで引き出したロード最強の姿である。

 

 「デッドゾーンの向こう側まで、付き合え!!」(ロード)



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仮面ライダー輝龍 第15話

 仮面ライダーロードの新たな姿、ビーストロード。異世界のグロンギたちとの絆を現したかのようなその姿は今までのロードとは違い、スマートなアーマーには9体の動物の意匠が形となっていた。

 ビーストロードはビーストガンナーにセットしたシフトビーストロンのボタンを押した。

 

 ≪SHARK, SNAKE, HEDGEHOG!BEASTS'CHIMAIRAISE!!≫

 

 シフトビーストロンの音声が響くと、ビーストロードはビーストガンナーの銃口を押した。

 

 ≪BEASTS'UP!! BRASTING BEASTSHOT!!≫

 

 ビーストロードのアーマーに書かれたそれぞれの動物たちの目が光る。すると、ビーストロードが持つビーストガンナーにはサメ、ウミヘビ、ヤマアラシの顔が付いたマシンガンウェポン=ブラスティングビーストショットが装備された。

 ビーストロードはブラスティングビーストショットの銃口をドラスへと向ける。

 

 「行っけえ!!」(ロード)

 

 ビーストガンナーの引き金を引くビーストロード。その動作によって、ビーストガンナーと接続されているブラスティングビーストショットが起動する。

 ブラスティングビーストショットの銃口からは針状の弾丸が無数に撃ちだされ、ドラスへと向かって行く。

 ドラスはビーストロードの攻撃を盾で防ぐ。そこへ、エグゼリオンビーストゲーマーレベル50が両手に装備されている鋭い爪でドラスの体を切り裂いていく。

 

 「俺が居るのを忘れるなよ!」(エグゼリオン)

 

 エグゼリオンへとドラスの注意は向き、ドラスは盾をビーストロードへと投げつけて自身はエグゼリオンに攻撃を繰り出していく。

 ビーストロードは投げられた盾をブラスティングビーストショットの銃撃で破壊すると、シフトビーストロンのボタンを再度押した。

 

 ≪MANTIS, TIGER, SCORPION! BEASTS'CHIMAIRAISE!!≫

 

 シフトビーストロンの音声が再び響くとブラスティングビーストショットが分解され、今度はビーストロードの両手に刃が逆手に、左手に一本の鋭い刺、右手にトラのような爪が付いた手甲が装着される。

 

 ≪BEASTS’UP!! SLASHING BEASTEDGE!!≫

 

 新たに装備した武器スラッシングビーストエッジを持って、ビーストロードはドラスに斬りかかった。逆手に装備された刃はカマキリの鎌のようになっており、引っ掛けるようにして振るって行く。

 ドラスはシフトカーを操作して、大剣にエネルギーをチャージする。ドラスはエネルギーがチャージされた大剣を横なぎに振るい、黒と金色の斬撃をロードとエグゼリオンに放つ。

 ビーストロードとエグゼリオンはドラスの攻撃を躱して、距離を取った。

 ビーストロードとエグゼリオンは着地した瞬間にそれぞれのベルトを操作する。

 

 ≪ヒッサーツ!フルスロットル!デッドヒート、ハート!≫

 ≪キメワザ!ビーストクリティカルレイジング!!≫

 

 ビーストロードはデッドヒートパニッシュを、エグゼリオンはビーストクリティカルレイジングをドラスに放つ。

 爆炎燃え盛る鉄拳と不規則な軌道で暴れまわる暴れ独楽がドラスに襲い掛かる。

 ドラスは再度大剣を振るうもののビーストロードとエグゼリオンの攻撃を受け、大きく吹き飛ばされて地面に倒れた。

 

 「どうだ!」(エグゼリオン)

 「確実に攻撃が入った手応えだから、たぶん。」(ロード)

 

 ビーストロードとエグゼリオンは確実に攻撃が入ったことを確信した。だが、その核心と裏腹にドラスは不意に起き上がり、その赤い複眼でビーストロードとエグゼリオンを見据える。その胸部にはビーストロードとエグゼリオンの攻撃の跡を深々と刻まれていた。

 

 「嘘でしょ。確実に入ったのに。」(ロード)

 「これは行動パターンが変わるかもな。HPが減ると行動パターンが変わるのが定番だからな。」(エグゼリオン)

 「それ、今の状況で言う?」(ロード)

 

 会話をするビーストロードとエグゼリオンの前でドラスは赤黒いシフトカーを手に取り、シフトブレスにセットした黄金色のシフトカーを一体化させる。一つとなったシフトカーは赤黒いボディに金色のラインが走り、有機的な形状をしていた。

 ドラスは新たなシフトカーをシフトブレスのセットした。

 

 ≪DRIVE!TYPE MEGA EVIL!! DLAS THE DARKRIDER!≫

 

 ドラスの背後にゲムデウス、ダークドライブ、ファブニールの幻影が現れる。3体の幻影とドラスが一体となるとドラスの姿は3体の十三異界覇王と融合した姿となる。ダークドライブの装甲とファブニールの具足が本来の姿となったドラスに装着される。そこにゲムデウスの翼や角、大剣と盾が出現する。体色もゲムデウスのものとなり、先程まで以上のプレッシャーを放つようになっていた。

 

 「ああ、フラグだったじゃん!」(ロード)

 「やっぱ、お約束なんだな。」(エグゼリオン)

 

 ドラスが全力を出すであろうことを察知する二人。その二人とドラスの間にクラックが開いた。

 新たな敵と考えたビーストロードとエグゼリオンは身構えるが、クラックから無数のアームズウェポンが次々と飛び出してドラスを攻撃する。

 突然の攻撃にドラスは盾を前に出して防いだ。

 ドラスの動きが止まった時に、クラックから姿を見せたのは白銀の創造神=仮面ライダー鎧武極アームズであった。

 

 「おお、銀ピカ。」(エグゼリオン)

 「腰には、それ戦極ドライバー!?」(ロード)

 

 鎧武の登場に驚くビーストロードとエグゼリオン。

 鎧武は極ロックシードを操作して大橙丸を召喚する。

 武器を召喚した鎧武を見て、ドラスは標的を変える。

 

 「ここは俺に任せてくれ。」(鎧武)

 

 鎧武は自分に任せるようにビーストロードとエグゼリオンに言って、前に出る。だが、

 

 「いやいや、まだやれるのに辞めるなんて。面白くないでしょ。」(エグゼリオン)

 「ぼくたちも一緒に戦います!」(ロード)

 

 ここまで戦っていたビーストロードとエグゼリオンが鎧武の言ったことを実行するわけはなく、二人は鎧武の前に出るとドラスと見据えてファイティングポーズを構える。

 鎧武は若き二人の仮面ライダーの姿を見ると、かつて共に戦った仲間たちを思い出した。かつての仲間と関りが無いはずの二人の若い仮面ライダーの姿を見た鎧武はかつてのことを思い出し、仮面の下で笑みを浮かべた。

 

 「分かった。」(鎧武)

 

 鎧武はそう言うとビーストロードとエグゼリオンの間に並び立つ。

 

 「さあ、ここからは俺達仮面ライダーのステージだ!」(鎧武)

 

 鎧武があの、決め台詞を言う。

 ドラスは大剣にエネルギーをチャージして、鎧武たちを攻撃する。

 ドラスの強力な攻撃を鎧武は大橙丸で真っ向から打ち消していく。

 ビーストロードは武装を解除して、ビーストガンナーでドラスを殴りつける。

 エグゼリオンはガシャットギアデュアルγを操作して、ハザードゲーマーに変身してガシャコンガトリングでドラスに無数の光弾を浴びせていく。

 鎧武は長く愛用している大橙丸を振るい、ドラスの肉体を切り裂いていく。

 3人の仮面ライダーを相手にドラスはその身に吸収したダークドライブ、ゲムデウス、ファブニールの力を開放する。

 戦いの地には爆炎が上がり、戦いはより激しいものとなっていく。

 

 「ハアッ!!」(ロード)

 

 ビーストロードはスマートになったその姿の通り、以前よりも切れのある動きでドラスを攻撃していく。共に戦う仲間が増えたことでビーストロードは新たな武器を召喚するのではなく、ビーストガンナーを用いた打撃でドラスにダメージを与えていく。ドラスが盾で防ごうとすると途中で攻撃する箇所を変えて対処するなど、以前のようなパワー一辺倒ではない戦いを見せる。

 高火力重武装のハザードゲーマーにレベルアップしたエグゼリオンだがその戦い方は他の二人の邪魔にならないよう必要最低限のものだった。ドラスが他の二人を攻撃しようとした瞬間にガシャコンガトリングで攻撃を中断させ、距離を取ろうとしたところも同様に攻撃することでドラスの動きを封じていたのだ。

 二人の若き仮面ライダーに一切引けを取らずに戦う鎧武。使っている武器は大橙丸だけだが、その堂々たる太刀筋はドラスに反撃を許すことは無かった。だが、計3体の十三異界覇王を吸収しているドラスにはここまでの攻撃が微々たるダメージしか与えていなかった。そして、強大な力を大剣に乗せて放出するドラスに3人の仮面ライダーは一時距離を取る。

 

 「やっぱり、一回の攻撃が強過ぎるな!ヒリヒリするぜ!」(エグゼリオン)

 「そもそも、装甲が固すぎてダメージが入らないよ!それに攻撃は一発でも当たっちゃダメなんて無理ゲーだよ!?」(ロード)

 「それなら!」(鎧武)

 

 敵の強大さに打つ手がないと思われた時、鎧武は火縄橙DJ銃を召喚。オレンジロックシードをセットして、必殺技を放つ準備をする。

 鎧武の動きを見たビーストロードとエグゼリオンも最大火力の必殺技を放つべく、鎧武の両隣に並び立つ。

 

 ≪オレンジチャージ!一、十、百、千、万、億、兆、無量大数!!≫

 ≪BEASTS’UP!!BEST’S BURST!!≫

 ≪キメワザ!ハザードクリティカルバースト!!≫

 

 ドラスに向けて3人の仮面ライダーが一斉に武器の銃口を向けて強力なエネルギー弾やレーザーを浴びせた。

 ドラスは盾で防ぐものの、盾は数秒ももたずに破壊された。追撃の攻撃により強固な外骨格を持つドラスの肉体は多大なダメージを受けたのだった。

 ドラスはダメージを受けた肉体を再生するべくシフトブレスを操作しようとする。だが、ドラスがシフトブレスに触れようとしたその瞬間にドラスの姿は元のバッタを思わせる怪人の姿へと戻ったのだった。

 

 「いよっし!」(エグゼリオン)

 「今のうちに!!」(ロード)

 

 ドラスの変化からビーストロードとエグゼリオンはドラスに猛攻を仕掛ける。

 急な弱体化の理由が分からないドラスはビーストロードとエグゼリオンの猛攻に対応できずに次々と強力な攻撃を受けてしまう。

 ドラスが弱体化し、ダメージを受けた今こそ勝負を決する時だと察した鎧武は戦極ドライバーを操作する。

 ドラスは鎧武の攻撃が自身を終わらせるに足る一撃だと察してその場から逃走しようとするがビーストロードとエグゼリオンが押さえつける。

 

 「逃がすか!!」(ロード)

 「これでゲームクリアにしてもらうぜ!」(エグゼリオン)

 

 ドラスはもがくが二人の仮面ライダーの力を簡単にほどくことが出来なかった。

 

 「セイッハー!」(鎧武)

 

 光り輝く右足が、鎧武の無頼キックがドラスの胸部に深々と刺さる。

 ビーストロードとエグゼリオンは鎧武の無頼キックがドラスに決まったその瞬間にドラスから距離を取った。

 鎧武の無頼キックがドラスの胸部を貫通、鎧武はそのままドラスの背後に着地する。

 胸部に大穴が空いたドラスは全身から火花を散らし、爆散した。

 ドラスが爆散したその場には赤黒い鎧に身に包んだ竜武者、ファブニール(炎竜ファブニールアームズ)がいた。

 ファブニールは小さな傷がいくつも付いたその姿でしっかりと立っており、鎧武を見て口を開いた。

 

 「殺し合いをした相手を助けるとは本当にお人好しだよ、お前。」(ファブニール)

 

 エグゼリオンはファブニールを見て、武器を構える。

 

 「へえ、次の相手はあんたか?」(エグゼリオン)

 「馬鹿を言うな。ドラスを相手に消耗しているところで戦うつもりはない。」(ファブニール)

 

 ドラスとの戦いで消耗していることを見抜くファブニール。邪龍DJ破断剣を手に持つ彼もダメージはあるが、エグゼリオン、ビーストロードと比べるとその消耗は少ない。

 エグゼリオンは構えるが、目の前の相手に戦いを仕掛けても無駄と分かる。

 ビーストロードは最初、ファブニールを見てファイティングポーズをとるが、ファブニールが自分たちを攻撃する意思がないことに気付く。そして、その穏やかな声音が自分の友人の、今は戦いの場を離れている柏葉大樹に酷似していることに初めて気付いた。

 鎧武はファブニールと距離を詰める。

 

 「魔蛇と協力するのは辞めろ。あいつは絶対にお前を利用している。」(鎧武)

 「それを承知の上でやっている。じゃあな。」(ファブニール)

 

 ファブニールは黄金の果実の力を使い、クラックを開ける。

 

 「留芽颯斗、桐ケ谷陸。次は容赦はしない。それをよく覚えておけよ。」(ファブニール)

 「待って!」(ロード)

 

 ビーストロードが呼び止めようとするもファブニールはクラックの先へと姿を消した。あとに残された3人の仮面ライダーには三者三様の思いが胸の中に暗雲の様に立ち込め始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東北、宮城県某所。大樹とマドカはバスに揺られながら目的の場所へと向かっていた。山奥の停留所にバスが留まった時に二人はバスから降りた。

 

 「残りは徒歩で30分。長旅だな。」(大樹)

 「じゃあ、行こう!」(マドカ)

 

 目的地までの道のりは遠く、到着する時には疲労も溜まっていることが想像に難くなかった。それでも、マドカは威勢よく歩き始めており、大樹はマドカの後ろをついて行く形で歩き始めた。

 柏葉、その本家は源流に源義経がいるだとか、奥州平泉氏の血筋があるだとか、伊達政宗の家臣だっただとか、速い話が武家の血筋を引いていたと言われる地方の豪族だった一族である。

 大樹の実の父である柏葉玲人はそんな家の分家の人間であり、どこか閉鎖的で高圧的だった一族から距離を置いていた。そんな、玲人と同じく柏葉の本家の雰囲気を嫌う分家の者たちもそう少なくはなかった。だが、そんな分家の者が本家に強硬に出ることが無かった。その要因は不明だったのだが、大樹とマドカはそこに護龍と魔法石が関係していると考えていた。

 なお、真相があると思われたその地に着いた二人を待っていたのは寂れた廃村だった。

 村にあった建物は皆朽ちており、既に人がいなくなってからそれなりの時間が経っているのが容易に窺い知れた。

 大樹とマドカは村の中心にそびえたつ巨大な大木へと来た。

 

 「大きい。」(マドカ)

 「屋久杉と同じくらいか。屋久杉を見たことないけど。」(大樹)

 

 二人が見るその大木は非常に大きく、村の半分ほどを枝が覆い隠すほどだった。

 

 「ねえ、他に何もないけど。」(マドカ)

 「廃村、だからな。仕方ない、帰るか。」(大樹)

 

 めぼしいものが無いことを知って、大樹とマドカはその場を離れようとする。そこに、巨木の幹にクラックが開き始めていた。

 背後のクラックに大樹とマドカは気付いていなかった。そして、クラックからは眩い光が漏れ出していた。



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仮面ライダー輝龍 第16話

 前回までのあらすじ、
 十三異界覇王ドラスと激しい戦いを繰り広げたロードとエグゼリオン。他の十三異界覇王を取り込み強大な力を持つドラスを前に苦戦する二人の前に仮面ライダー鎧武が駆けつけた。3人の仮面ライダーはドラスを撃破する。その頃、大樹と万夏は目的地である柏葉の本家のある村へ到着した。だが、村は廃村となっており、二人は村の様子を見て帰ろうとした。その次の瞬間、二人は別の世界へと転移することになった。


side 大樹

 「んっ、グゥ。」(大樹)

 

 日が暮れて、暗くなり始めていた山の中が急に明るくなっていた。気付かないうちに倒れていたらしく、俺は近くにマドカの姿があるか確認する。俺と同じようにマドカも倒れていたらしく、倒れたマドカに息があるか確認する。

 

 「マドカ、大丈夫?」(大樹)

 「うう、んん。」(マドカ)

 

 うん、うめき声がエロい。ただ、異常事態なので反応はしないが。

 

 「何があったの?」(マドカ)

 

 起きたマドカの問いに、俺はすぐに答えることが出来なかった。なぜなら、俺の目の前には空に輝く太陽があっただけではなく、朽ち果てていたはずの村の建物もまるで立て直したかのように真新しくなっていたからだ。

 マドカも周りの変化に気付き、俺と同じく驚いていた。

 

 「ねえ、私達さっきまで廃村に居たよね。何があったの?」(マドカ)

 「俺もさっぱり。」(大樹)

 

 目の前で起きた信じられない出来事。ただ、転生している俺とマドカに信じられないことがあるのかと聞かれれば、「あるに決まっているだろ。」と断言できるくらいに今起きたことは信じられないことのはず。

 このまま居ても情報も手に入らないことは明白だった。

 俺とマドカは情報を手にれるべく村の方へと歩き始めた。

 

 「建物には触れるから、夢ではない、か。」(大樹)

 「今って何時だろう。私達があそこに着いた時には6時過ぎだったのに。」(マドカ)

 

 俺はスマホの時間表示を見るが時間は俺とマドカがあそこの大木に居た時から数分しか立ってないことしか分からない。

 

 「スマホの時計じゃあ信用できないかも。デジタル表示で18時55分ってなっているから、今の時間には合っていないかも。」(大樹)

 「ねえ、人がいるから聞いてみようよ。」(マドカ)

 

 マドカの指の指す方に確かに人がいた。俺とマドカは話を聞くべく集まっている人の方へ駆け寄る。

 

 「あの、すみません。聞きたいことがあるんですが。」(大樹)

 

 近づいた人は着物を着た女性だったが俺はそのまま話しかけた。だが、話しかけた相手は何も反応することなく、まるで聞こえていないようだった。

 

 「あの、すみません。」(大樹)

 

 俺は相手に触れようとするが俺の手は相手の体をすり抜けた。よく見ると、相手は若干だが透けていた。

 話そうとした相手は俺とマドカの方を一切向くことなく、村にいる他の人間に話しかけに行った。

 ここで、俺とマドカはここが俺達がいた世界ではないことを理解することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side3人称

 大樹と万夏(マドカ)が迷いこんだこの世界は村にある大木が見せている世界である。柏葉の一族の村で起きた様々な歴史、人の業と人ならざる者たちとの激しい戦いが絡み合う歪な運命に翻弄されたある青年とこの地の神に仕えた巫女の歴史の断片が具現化した世界である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大樹と万夏(マドカ)の前では村にいる様々な人が話していた。だが、大樹と万夏(マドカ)はその言葉を聞くことは出来ず、何となく話している雰囲気からその内容を推測していた。

 

 「何か、話しているけど。」(マドカ)

 「ああ、世間話か?特に何も問題は無いようだけど。」(大樹)

 

 話している人達の様子から単なる世間話をしていると推測していた。

 その中で話している人達の視線が動いたの気付いた大樹と万夏(マドカ)。二人は、その視線の先にある者を確認するためにそこへ移動する。だが、二人がそこへ移動した次の瞬間、大樹と万夏(マドカ)は夜のとばりが降りた村の外へ出ていた。

 

 「なっ!」(大樹)

 「どうして!」(マドカ)

 

 村の周りの森から異形の怪物たちが現れる。その姿は古来の巻物に描かれた鬼そのものに見えた。

 村に向かって前進する鬼を止めようと大樹と万夏(マドカ)が変身しようとする。その際、大樹は自身が取り出したロックシードが元の色に、本来のロックシードに戻っていることに気付いた。

 

 「え、一体。」(大樹)

 

 大樹がロックシードの変化に驚いた次の瞬間、大樹と万夏(マドカ)の背後に突如として眩い光が放たれた。

 大樹と万夏(マドカ)は咄嗟に後ろを振り向くがその光はある青年の腰から強く放たれていた。青年の顔は光によって大樹と万夏(マドカ)が見る側から確認できなかった。

 青年はそのまま歩き始め、鬼たちの元へ向かう。その中でその姿が変化していった。大樹と万夏(マドカ)の間を通る時には青年の姿は金色の龍人、仮面ライダーアギトへと変身していた。

 アギトは鬼たちと戦いを始める。鬼たちの攻撃をアギトは真っ向からねじ伏せていく。その戦い方は翔一が変身したアギトよりも激しいものであった。

 鬼たちの肉体が歪に破壊されていく。その様は最早一歩的な虐殺とも言えるものだった。

 

 アギトと鬼の戦いが終わった瞬間に、大樹と万夏(マドカ)はまた別の場所に来ていた。そこは神社の境内であり、村の中心にある大木を見据えることが出来た。その神社に鬼との戦いからアギトが戻っていた。アギトを出迎えるように誰か女性が駆け寄って来た。

 女性はアギトに抱き着き、アギトは女性を優しく抱きしめた。その次の瞬間にはアギトの姿は人間の者になっていた。

 アギトに変身していた青年は中性的な風貌をしており、どこか大樹に似た面影だった。女性は長い黒髪の美しい女性でその顔は万夏(マドカ)を思わせるものだった。

 

 「私達!?でも、どうして?」(マドカ)

 「きっと、アギトに変身していたのは俺の御先祖様、先代の護龍じゃないかと思う。女の人は服装からこの神社の巫女なんじゃないかな。でも、マドカに似ているのはどうも、腑に落ちないけど。」(大樹)

 

 大樹との疑問に答える人物は誰も居ない。二人の疑問を解消することは無く、場面は大樹に似た青年と万夏(マドカ)に似た女性が共に過ごしている様子に変わっていく。

 大樹に似た青年はどうやら、この神社に住み込みで働いているらしく、神社内の力仕事をこなしていた。

 万夏(マドカ)に似た女性は大樹の読み通り、神社の巫女だった。神社を管理しながら、祈禱を行っていたりしていた。

 二人の関係はとても仲睦まじく、女性が青年に握り飯を渡しに行ったりするなど当時の時代背景から見てもかなり親密な関係なのが見て取れた。その一方で、青年は幾度もアギトに変身していた。村では怪物に襲われるのは珍しいことでは無いようで、その度に青年はアギトに変身して戦っていた。その戦いぶりは荒ぶる龍そのもので最も激しい時は村が入りそうなほどの面積の木々が軒並み倒れていた。

 ここまでの様子を見る中で大樹と万夏(マドカ)は護龍の青年が村の人々とのかかわりが極端に少ないことに気付いた。また、村の人々も護龍の青年のことを居ない者として扱っているようだった。

 

 「どうして。」(マドカ)

 「アギトの力であんな戦い方をすれば、無理もないけど。それにしては透明人間みたいな扱いだよな。」(大樹)

 

 その様子の理由は詳しくは分からなかった。分かったのが護龍の青年が村の中で孤立しているということだった。それでも、万夏(マドカ)に似た、神社の巫女は変わらずに護龍の青年に接していた。

 たった一人、そばに居てくれる人がいるのがどれだけ心強く満たされるのか、大樹もマドカもよく分かっている。二人は目の前にいる自分たちによく似た二人がその後も平穏な生活を享受することを願っていた。だが、二人の願いを見せることなく、場面は変わり始める。

 早回しのように村の様子が変化していく。その中に断片的に護龍の青年が一人で佇んでいる光景や、護龍の青年の腕の中で眼を閉じている巫女の姿が見えた。それから、二人の姿は消え、時代が変わっていく。

 時代が変わるにつれて段々と建物が新しくなっていく。大樹たちが見た廃村の建物の朽ちる前の原型を見せた後、徐々に村が寂れていく様子へと変化する。最後には神社、森、村、家など様々な風景がないまぜになり、それぞれの境界があやふやになっていく。

 全ての境界が無くなると、大樹と万夏(マドカ)の周囲は一切の光のない漆黒の空間へと変貌した。

 大樹と万夏(マドカ)は周囲を見渡して走るものの、漆黒の空間に終わりはなく、ここから出ることは不可能だった。

 漆黒の空間に誰かの足音が響き始める。それは大樹と万夏(マドカ)の背後から響いていた。

 大樹と万夏(マドカ)が音の出る方を見ると漆黒の空間の奥から護龍の青年が現れ、大樹と万夏(マドカ)の数歩手前で立ち止まった。

 護龍の青年のその表情は激しい憤怒で歪んでおり、その瞳にはありとあらゆるものへの憎悪が燃えていた。。

 

 「よくも、よくもよくもよくもよくも!!」(護龍)

 

 その腰には橙の爪と紅の装飾が付いたオルタリングが顕現していた。

 次の瞬間にはオルタリングから爆炎が放出され、護龍の青年は仮面ライダーアギトヴォルカニックフォームに変身した。

 

 「ウオオオオオオオオオオオオ!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 アギトヴォルカニックフォームはそのまま大樹とマドカに向かって躍りかかって来た。

 大樹と万夏(マドカ)は瞬時に跳び退って、アギトヴォルカニックフォームの攻撃を躱す。

 大樹は意を決して、元のロックシードに戻っていたドラゴンフルーツロックシードを開錠する。

 

 ≪ドラゴンフルーツ!≫

 「変身!」(大樹)

 ≪ソイヤ!ドラゴンフルーツアームズ!竜王、オンバトルフィールド!≫

 

 大樹は通常のドラゴンフルーツアームズを装着した輝龍、仮面ライダー輝龍ドラゴンフルーツアームズに変身した。腰に携えた竜炎刀を抜き放つと、この異常事態に弱体化しているにも関わらず、使い慣れたアームズにどこか安心感を覚えた輝龍。

 変身を終えた輝龍は竜炎刀を中段に構えて、アギトヴォルカニックフォームの様子をうかがう。

 アギトヴォルカニックフォームは高熱を発しながら、鋭い爪で輝龍に襲い掛かる。

 輝龍は冷静にアギトヴォルカニックフォームの攻撃を躱していく。一度でも当たってしまえば決して軽くはないダメージを受けてしまう。それでありながら輝龍は冷静にアギトヴォルカニックフォームの攻撃を見切っていく。

 

 「大樹!!」(マドカ)

 

 万夏(マドカ)は輝龍を助けるべく、ウィッチドライバーを召喚する。だが。ウィッチドライバーは召喚されると独りでに空中に浮かび上がる。空中に浮かび上がったウィッチドライバーにオーシャンウィッチリングが読み込まれる。

 

 ≪チェンジオーシャン!ザブーン、ザブーン、ザブーン、ザブーン!≫

 

 魔法陣をウィッチドライバーが通過するとそこには仮面ライダーウィッチが居た。

 万夏(マドカ)はすぐに戦極ドライバーを取り出し、ブルーベリーロックシードを開錠する。

 

 「変身!」(マドカ)

 ≪カモン!ブルーベリーアームズ!マスケティアーオブサファイア!≫

 

 は仮面ライダーヴァルキリーブルーベリーアームズに変身する。

 仮面ライダーウィッチはウィッチランスケインを召喚、青色の魔力弾を撃ち出していく。

 仮面ライダーヴァルキリーは専用アームズウェポンのブルーライフルを構え、魔力弾を次々と撃ち落としていく。それだけでなく、ヴァルキリーはウィッチに向かって走り出し、ブルーライフルの引き金を何度も引く。

 ウィッチは魔法陣でヴァルキリーの攻撃を防ぐ。

 ヴァルキリーはウィッチの手前で空中に跳び上がって、ブルーライフルを連射。ウィッチの背後に降り立つと鋭い上段回し蹴りでウィッチの頭部を狙う。

 ヴァルキリーの攻撃が確実に入ったと思われたがウィッチはウィッチランスケインでヴァルキリーの回し蹴りを防いでいた。

 自身の攻撃を防いだことで目の前の相手が並大抵の相手では無いことを察したヴァルキリー。相手の正体を探るよりもこの場をどう切り抜けるか、それを最優先に考えねばならないことを理解した。

 一方の輝龍はヴァルキリーの様子を気にしながらもアギトヴォルカニックフォームの攻撃を冷静にさばいていく。触れるもの全てを破壊するアギトヴォルカニックフォームの攻撃は安易に受けることは許されないものだった。それでもなお、輝龍はこれまでにない程に集中してアギトヴォルカニックフォームと対峙する。

 

 「俺から、俺から全てを奪いやがって。どいつもこいつもぶっ殺してやる!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 アギトヴォルカニックフォームは右手の拳を固く握り、爆炎を上げながら輝龍に向かって殴り掛かる。

 輝龍は向かって来たアギトヴォルカニックフォームの拳に対して、自身のドライバーを操作する。

 

 ≪ドラゴンフルーツスカッシュ!≫

 

 輝龍の左拳にロックシードのエネルギーを宿し、アギトヴォルカニックフォームの攻撃に合わせて拳を突き出した。

 真正面からぶつかり合った拳は拮抗しあう。

 

 「ウウウウウウ!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 「そうか、俺の中にあったあの怒りの感情はあなたのものだったのか。」(輝龍)

 

 輝龍は自身がアギトヴォルカニックフォームに変身した時の抑えられない怒りの感情が目の前にいるかつての護龍、アギトヴォルカニックフォームのものだということを理解した。そして、その怒りの根源もおのずと輝龍は理解した。

 

 「そうか、なら、その激しい憤怒の炎を俺が受け止める。」(輝龍)

 

 輝龍は仮面ライダーとして全てを燃やし尽くせんとする憤怒の業火を滾らせるアギトヴォルカニックフォームを止めることを決意する。

 

 「ふざけたことを、ぬかすな!!お前も、お前も殺してやる!この世の全てを、俺から全てを奪い取ったこの世の全てを殺し尽くしてやる!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 拳を突き合わせる中で怒りの言葉を輝龍にぶつけるアギトヴォルカニックフォーム。

 全てを破壊せんとする業火の如き憤怒と己が守るべきもの全てを守ろうとする鋼の決意、時代を超えて激突する二人の龍は真正面から対立する二つの感情をぶつけるのだった。




 不思議な世界の中で自分たちの新しい力と対峙する輝龍とヴァルキリー。戦いの中でかつての先代護龍と巫女の間に起きた悲しい出来事が明らかとなる。

 「俺は人間として、仮面ライダーとしてあなたを超える!」
 「私は人間として、仮面ライダーとしてあなたを止める!」

 悲しみから始まった怒りを鎮めるべく、輝龍とヴァルキリーの新たな決意は新たな力となって具現化する。

 ≪バハムートアームズ!龍帝、メガブレイズ!!≫
 ≪リヴァイアサンアームズ!龍后、メガウェイブ!!≫

 原初の巨獣の力を纏い、龍戦士と戦乙女は古の戦士と戦う。


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仮面ライダー輝龍 第17話

 柏葉家の地へ来た大樹と万夏の前に先代護龍、柏葉弘宗が変身したアギトヴォルカニックフォームが襲い掛かる。さらには、万夏が使おうとしたウィッチドライバーも一人でに動き、仮面ライダーウィッチとなって襲い掛かったのだった。


side3人称

 漆黒の空間にて、仮面ライダー輝龍ドラゴンフルーツアームズと仮面ライダーヴァルキリーブルーベリーアームズは仮面ライダーアギトヴォルカニックフォームと仮面ライダーウィッチと戦っていた。

 

 輝龍はアギトヴォルカニックフォームの攻撃をいなしながら、竜炎刀で隙を見つけては斬りつけていた。

 ヴァルキリーはウィッチに対してブルーライフルを連射し、懐に入り込んではブルーライフルの剣を突き出したり、鋭い蹴りを繰り出していた。

 輝龍が戦うアギトヴォルカニックフォームは受けた傷を意に介さず、剛力による攻撃で輝龍を追い詰める。

 ヴァルキリーと戦うウィッチは指輪による魔法とランスモードのウィッチランスケインで戦いを有利に進めていた。

 輝龍は激しい攻撃を冷静に、的確に躱していく。そこから攻撃に転じては、また攻撃を見切ることを集中する。ほんのわずかでも気を抜いてしまえば変身が解除されるほどの威力の攻撃を冷静に対処する輝龍。前世からの培われた戦闘経験を遺憾なく発揮して輝龍はアギトヴォルカニックフォームと戦う。

 自身の攻撃が当たらないことに苛立ちを隠せないアギトヴォルカニックフォーム。様々な人外を相手に戦っていた自分が目の前の相手に有効打を当てられないことにより怒りを燃やすようになっていた。

 単純な戦闘経験では輝龍がアギトヴォルカニックフォームを上回っている。

 輝龍にはアギトヴォルカニックフォームのように剛力に秀でている相手と戦った経験がある。かつてのサメインベス、ゴリラインベス、ティラノインベスなど剛力に秀でた相手に対して、輝龍は攻撃を見切りいなす、躱すなどの動きから攻撃へ転じていた。だが、その経験をもってしても輝龍はアギトヴォルカニックフォームに有効打を与えることが出来なかった。

 

 「やっぱり、再生能力が厄介だな。」(輝龍)

 

 自身の難病を完治させた自己再生能力、いざ自分がその戦う相手になるとその厄介さがより理解できる。ここまでで輝龍の攻撃はアギトヴォルカニックフォームには効いておらず、瞬時に回復してしまう。

 輝龍はまずは手数で攻めることで様子を見ることにする。

 

 ≪シークワーサー≫

 

 輝龍の頭上に鋼のシークワーサーが現れる。

 アギトヴォルカニックフォームの攻撃を躱しながら輝龍はロックシードを入れ替えた。

 

 ≪ソイヤ!シークワーサーアームズ!蒼雷、ライトニング≫

 

 輝龍はシークワーサーアームズにアームズチェンジ、蒼雷杖を構えてアギトヴォルカニックフォームに攻撃する。長いリーチと素早い連撃でアギトヴォルカニックフォームを牽制する。

 

 ヴァルキリーは放たれる魔法から距離を取りながらウィッチを狙い撃つ。お互いに遠距離攻撃を主軸とする両者の戦いは拮抗していた。ヴァルキリーは戦いの均衡を崩すために、別のロックシードを開錠する。

 

 「これなら、どう?」(ヴァルキリー≫

 ≪ブラックベリー!≫

 

 ヴァルキリーは重装甲形態のブラックベリーアームズにアームズチェンジ、大剣オニキスクレイモアを両手に持ち、ウィッチに斬りかかる。

 ウィッチはヴァルキリーの攻撃に魔法陣を展開して防御する。

 ヴァルキリーはドライバーを操作してオニキスクレイモアにエネルギーをチャージしてウィッチに向かって大きく振るう。エネルギーを帯びた刃は魔法陣を粉々にする。

 ウィッチは自身の防御を打ち破った刃をウィッチランスケインで防ぐ。

 ヴァルキリーはそのままオニキスクレイモアを握り直して、ウィッチに向かって行く。

 

 「あなたは誰なの。」(ヴァルキリー)

 

 オニキスクレイモアを振るいながらウィッチに問い掛けるヴァルキリー。だが、ウィッチは無言のままで言葉を発することは無かった。

 ヴァルキリーは答えが返ってこないことに違和感を感じながらもオニキスクレイモアを振るう。

 

 

 輝龍は戦極ドライバーを操作、アギトヴォルカニックフォームにボルトパニッシュを放つ。蒼雷杖の先端がアギトヴォルカニックフォームの胸部に当たり、ロックシードから流れるエネルギーがアギトヴォルカニックフォームの体内へと流れていく。流れるエネルギーはアギトヴォルカニックフォームを体の内側から爆ぜさせていく。

 

 「体内からなら、流石に効くだろ。」(輝龍)

 

 輝龍は蒼雷杖の先端を強く押し込む。だが、体内からダメージを受けているアギトヴォルカニックフォームは蒼雷杖を掴む。その力で蒼雷杖の先端を握りつぶした。

 輝龍は武器を破壊されたことで腰にある無双セイバーを抜いて、アギトヴォルカニックフォームに斬りかかる。それよりも早くアギトヴォルカニックフォームが固く握りしめた右手の拳を突き出すのが速かった。

 輝龍はそのまま胸部にアギトヴォルカニックフォーム一撃を受けて後方に勢いよく弾き飛ばされた。

 

 「っ、大樹!」(ヴァルキリー)

 

 輝龍が攻撃を受けて、ウィッチから注意をそらしてしまうヴァルキリー。そこをウィッチは魔法陣から大量の水を勢いよく放出、ヴァルキリーを押し流す。

 

 お互いに手痛い攻撃を受けて変身が解除された大樹と万夏。二人とも闘志は衰えてはおらず、再度変身しようとする。そこにアギトヴォルカニックフォームとウィッチが止めを刺さんと二人に向かって走り出す。

 大樹は咄嗟に万夏を抱きしめ、せめて自分が盾になって守ろうとする。

 万夏は襲い来る悲劇を想像して、瞳を強く閉じる。

 アギトの燃え盛る拳が、ウィッチの激流の魔法が大樹と万夏に襲い掛かるその瞬間だった。

 万夏の胸に青白い光が放出され、宙に魔法陣が描かれた。その光は魔法陣を通過すると巨大なウミヘビ型のモンスターに変化してアギトヴォルカニックフォームとウィッチを尻尾の一撃で吹き飛ばす。

 ウミヘビのモンスターは大樹と万夏をその背に乗せると漆黒の空間を切り裂いてその場から消えた。

 

 

side万夏

 私も大樹も死んでしまうかもしれないと思ったその瞬間、どこからか現れたドラゴンみたいなウミヘビ?に助けられてあの黒い場所からどこかの海のような別の場所に移動した。

 

 「ここならば、彼らから攻撃を受けることもないでしょう。」(???)

 

 ウミヘビのモンスターは砂浜に降りると背中に乗っていた私と大樹を砂浜に優しく降ろしてくれた。

 

 「あの、助けてくれてありがとう。」(大樹)

 「礼には及びません。会うのは初めてですね、現代の護龍と蒼龍の巫女。私はリヴァイアサン、蒼龍の巫女と共に護龍を支えてきました。」(リヴァイアサン)

 

 私と大樹を助けてくれたウミヘビ、リヴァイアサンは私と大樹の味方らしい。

 

 「あなたたち二人は神木が持つ護龍と蒼龍の巫女の記憶の断片を見たことでしょう。」(リヴァイアサン)

 「記憶の断片?」(マドカ)

 「最初に俺達が見たあの世界のことじゃないのか。」(大樹)

 「流石は現代の護龍。あなたたち二人が見たあの世界こそ、ここ柏葉の地の神木が見せた記憶です。ですが、長い時間の中で断片しか残っていません。あなたたちが見た彼らこそ護龍と呼ばれた青年、柏葉弘宗と蒼龍の巫女である夏江です。」(リヴァイアサン)

 

 弘宗さんと夏江さん、私達よりも前の護龍と蒼龍の巫女。あの二人の生活を見た私はとても他人事とは思えなかった。

 

 「柏葉弘宗と夏江に何が起きたんだ?さっきの様子だと、何かあったのは確かなはずだろ。」(大樹)

 「一瞬、目を閉じた夏江さんのことを弘宗さんが抱いているのを見たの。二人に何があったの?」(万夏)

 「分かりました。二人に話しましょう。」(リヴァイアサン)

 

 リヴァイアサンは私達にあの二人に何が起きたのか話してくれるようだった。

 

 「柏葉弘宗と夏江は幼馴染で許嫁でもありました。柏葉弘宗は村を納める柏葉家の跡取り、夏江はこの地の神社に仕える巫女でしたが二人は幼い頃より愛を育んでいました。しかし、二人の周りの環境が変わったのは柏葉弘宗がアギトの力に覚醒してからでした。」(リヴァイアサン)

 

 そう話すリヴァイアサンは私達に分かるように水面にその時の様子を見せてくれた。

 

 「人外と恐れられた弘宗を家族は勘当しました。でも、幼い頃より共に育った夏江は弘宗を神社に住まわせて世話をしました。弘宗はその恩を返すべく、村を襲う化生と戦っていました。化性と戦いながらも村では弘宗に対して村八分が続きました。ですが、神社では夏江を始めとしたごく少数の人が弘宗を支え続けていました。決して多くはない、数少ない理解者と共に弘宗と夏江は穏やかに過ごしていました。そんな中で柏葉家から夏江に新たな許嫁を取るように話がありました。その頃には弘宗と夏江はお互いに愛を育んでいたのですが、柏葉家は強引に話を進めました。それに異を唱えた弘宗は勘当した家に殴り込みを掛けました。その隙を、弘宗がいない時に神社を化生たちが襲いました。その時に夏江は命を落とすことになりました。知らせを聞き弘宗が駆けつけた時には神社の人間は皆命を落としました。化生たちはそのまま村の方へ襲おうとしましたが弘宗が全て殺しました。その時の出来事で弘宗は村の人間から護龍と呼ばれるようになりました。その心にあらゆるものを燃やし尽くさんとする怒りの業火を燃やし続けながら。」(リヴァイアサン)

 

 弘宗さんと夏江さんの別れの場面、私は前世での大樹との別れを思い出して涙が止まらなかった。

 

 「怒りの業火を燃やし続けた弘宗は憤怒を抱えて戦い続けました。死ぬその時まで戦いに身を置き、全てに怒りをぶつけながら。弘宗は大切なものを奪った者達への、大切なものを護れなかった自分自身への怒りを燃やし続けて生涯を閉じました。」(リヴァイアサン)

 「柏葉弘宗と夏江のことは分かった。でも、君は。君は全てを知っているようだけど、何者なんだ。」(大樹)

 

 大樹がリヴァイアサンに問い掛けた。私は流れた涙を拭いて、リヴァイアサンを見る。

 

 「私はファントムと呼ばれる存在です。私は夏江の中に、その心のなかに彼女が生まれた時から居ました。私は夏江の死と共に覚醒して、世に生まれました。夏江は死の絶望の中でありながら最後まで弘宗のことを思っていました。私は夏江の思いを継いで弘宗を支えました。ですが、私のことを最期まで彼は受け入れることはありませんでしたが。」(リヴァイアサン)

 

 仮面ライダーウィザード、晴人さんたちが戦う魔獣ファントム。目の前の彼女もそのファントムだけど、その雰囲気は優しいもので安心感を覚えた。

 

 「じゃあ、俺がアギトに変身した時に感じた怒りの感情は柏葉弘宗のものだったのか。」(大樹)

 「ええ。アギトの力をあなたが受け継ぐと同時に彼の怒りの感情もあなたの中に入ってしまったのでしょう。」(リヴァイアサン)

 

 大樹がアギトに変身したあの様子、大樹が持っていた感情じゃなかったことに私は安心した。あんな、狂ったように怒るなんて大樹にはできないことだから。

 

 「君が俺達を助けてくれたのはマドカが今代の蒼龍の巫女だから、君がマドカの体内にある魔法石に宿っているからか?」(大樹)

 「ええ。私はずっと私の力を持つべき者を待っていました。そして、私はあなたたちに全てを話すために覚醒しました。」(リヴァイアサン)

 

 大樹の問いに答えてくれたリヴァイアサン。

 

 「あなたたちを襲ったのは柏葉弘宗が生涯抱き続けた憤怒と夏江が死んだ後も残り続けた妄執です。あの二人が使うであろうはずだった力、それをあなたたちが手にした結果が歪なままにその力を使うことになりました。それが、神木の記憶と惹かれ合って肉体を得ました。あなたたち二人にお願いがあります。あの二人を開放してください、その怒りと妄執から。護龍と蒼龍の巫女に選ばれ、新たな未来を進もうとするあなたたちの手で弘宗と夏江を救ってください。」(リヴァイアサン)

 

 リヴァイアサンの話を聞いて、私はもう心は決まっていた。それは大樹の同じだったみたい。

 

 「頼まれなくても、あの二人を救う。」(大樹)

 「私達がきっと助ける。」(万夏)

 

 私も大樹もリヴァイアサンをまっすぐ見て言った。

 

 「分かりました。では、二人とも強く思ってください。ここは神木が見せる世界、あなたたちが強く思う力をその手にすることができるはずです。」(リヴァイアサン)

 

 リヴァイアサンの言葉に私はあることを強く思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side3人称

 リヴァイアサンの話を聞いて大樹と万夏は強く思う。

 

 (俺に、俺に愛する人達を護る力を。)(大樹)

 (私に愛する人の未来を切り開く力を。)(万夏)

 

 二人が思い描く力、大樹の愛する人達を護りたいという思いが、万夏の愛する人の未来を切り開くという思いが神木の作ったこの世界において奇跡を起こす。

 大樹が持っていたゴールデンドラゴンフルーツエナジーロックシードが、大樹の思いを受けて新たなロックシード、金と赤に彩られた大型のロックシード=バハムートロックシードに変化する。

 万夏の思いはリヴァイアサンに影響を与えていた。精神世界に住むファントムである彼女は万夏の強い思いを受けてその身を変化させた。リヴァイアサンは紺碧に紫のラインが走るリヴァイアサンロックシードへと変化したのだった。

 

 (お願いします。護龍と蒼龍の巫女を救い、あなたたちが進む未来へ。)(リヴァイアサン)

 

 大樹と万夏は新たなロックシードを手にして、アギトヴォルカニックフォームとウィッチが待つ漆黒の空間へ戻った。

 

 突如、姿を見せた二人に戦意を露にするアギトヴォルカニックフォームとウィッチ。対する大樹と万夏は戦極ドライバーを腰に装着し、新たに手にしたロックシードを掲げる。

 

 「「変身!!」」(大樹、万夏)

 ≪バハムート!≫

 ≪リヴァイアサン!≫

 

 開錠したロックシードを戦極ドライバーにはめ、同時にカッティングブレードを下ろした。

 

 ≪ソイヤ!バハムートアームズ!龍帝、メガブレイズ!!≫

 ≪カモン!リヴァイアサンアームズ!龍后、メガウェイブ!≫

 

 ロックシードから音声が流れると大樹の頭上に金と赤の巨大な鋼のドラゴンが、万夏の頭上に紺碧の鋼の体に紫のラインが走る巨大なウミヘビが現れる。

 アギトヴォルカニックフォームとウィッチを牽制するドラゴンとウミヘビは大樹と万夏に近づくと体がバラバラにはじけ飛び、大樹と万夏の体に鎧として纏われていく。変身が完了するとそこには金と赤の龍を模した鎧を全身に纏う龍戦士と紺碧に紫のラインが走るウミヘビを模した鎧を纏った戦乙女が居た。

 

 仮面ライダー輝龍バハムートアームズ、仮面ライダーヴァルキリーリヴァイアサンアームズ。原初の巨獣の名を冠する鎧を身に纏い、憤怒の化身となった古の戦士と妄執の亡霊と化した巫女と対峙する。

 

 「俺は人間として、仮面ライダーとしてあなたを超える。」(輝龍)

 「私は人間として、仮面ライダーとしてあなたを止める!」(ヴァルキリー)

 

 強い決意を持ってアギトヴォルカニックフォームとウィッチを見据える輝龍バハムートアームズとヴァルキリーリヴァイアサンアームズ。二人は背中合わせで目の前の相手に向かって、ある言葉を言い放つ。

 

 「「この戦い、俺(私)たちが勝ち取る!!」」(輝龍、ヴァルキリー)

 

 その言葉を聞いたアギトヴォルカニックフォームとウィッチは輝龍とヴァルキリーに襲い掛かる。

 輝龍はゴールドドラゴンフルーツアームズと同様に光龍剣と竜炎刀・陽炎を両手に持ち、アギトヴォルカニックフォームの攻撃を防御する。

 ウィッチの魔法をヴァルキリーはリヴァイアサンアームズの武器であるリヴァイアガンソードでまるでバターを熱したナイフで切るかのように切り裂いた。

 

 「ふざけるな!!死ね!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 アギトヴォルカニックフォームは拳に高熱を帯びて輝龍に殴り掛かる。

 輝龍はアギトヴォルカニックフォームの拳を光龍剣、竜炎刀・陽炎で受け流していく。ドラゴンフルーツアームズで戦闘していた時よりも一つ一つの攻撃を受け止めながらさばいている。

 

 「ふざけていない。あなたのその怒り、俺が受け止める。今までのように、大切な人を護るだけじゃない、人間として、仮面ライダーとして俺は愛する人達を護りたい、絶対に護る。」(輝龍)

 

 輝龍は攻撃を受け流しながら、胸中の思いを口に出す。

 

 「今までの俺はあなたと同じだった。ただ、愛する人との生活さえ続けば良い、愛する人たちが幸せならそれだけで良いって。でも、それじゃあ不十分だった。そのために、絶対に生きて帰る覚悟が、戦い続けても必ず帰るって言う覚悟が俺には無かった。」(輝龍)

 

 輝龍はリヴァイアサンから柏葉弘宗の話を聞いて、彼と自分が似通った人間だと思った。だからこそ、大切な人を失った自分がどうなってしまうか、それを弘宗に写していた。

 輝龍=大樹は自分がそうなってしまうと考えたが、その怒りを燃やし続けるほどの激情を持ってはいなかった。だからこその自己犠牲だったが、それは大樹が自分は仮面ライダーにはなれないと思っていたからに過ぎない。柏葉弘宗を止めるために、大樹は、輝龍は初めて仮面ライダーとしてあろうとしていたのだ。そうでなければ、古の仮面ライダーである彼を越えねば、彼を止めることなど、救うことは出来ないと強く思ったからである。

 輝龍の独白に対してアギトヴォルカニックフォームはヴォルカニックライダーパンチを放った。普通であれば、受けてしまえばひとたまりもない一撃。それを輝龍はただ、右手の掌を広げて待った。

 アギトヴォルカニックフォームの拳が輝龍の右手にぶつかった。本来なら、受けた右手が爆ぜてしまう一撃、それを輝龍は真正面から受け止め、アギトヴォルカニックフォームの拳を握っていた。

 

 「でも、その覚悟はもう俺の中にある。今までの俺を超える、そのために生きて帰る覚悟を、俺はもう持っている。」(輝龍)

 

 その言葉にあるのは強い思い。ここまでの戦いで輝龍は既に自分の帰るべき場所が、帰りを待ってくれる愛する人達が居ることを知っている。その人達の元に生きて帰る覚悟を、その人達を絶対に護りたいという強い思いを持った輝龍は本当の意味で名乗りを上げる。

 

 「俺は柏葉大樹、仮面ライダー輝龍だ。愛する人達を護る、仮面ライダーだ。」(輝龍)

 

 輝龍はアギトヴォルカニックフォームの拳を離す。光龍剣と竜炎刀・陽炎を合体させた光炎龍剣・ナギナタモードを構える。

 

 「柏葉弘宗、古き時代の戦士護龍。あなたを止める。」(輝龍)

 

 輝龍は光炎龍剣を振るい、アギトヴォルカニックフォームの肉体に斬り傷を付けていく。付けた傷は端から再生していくために無駄と思われるその攻撃だが、輝龍が光炎龍剣を振るうたびにその傷はどんどんと増えていった。技の切れが、威力が徐々に上がっているために、アギトヴォルカニックフォームの再生力を徐々にだが突破することができるようになっていたのだ。

 輝龍バハムートアームズ、巨龍バハムートを模したこの姿の最大の能力は変身者である大樹の「愛する人達を護るという強い思い」に応じてその能力が上昇していくことである。つまり、大樹のその思いが強ければ強い程に輝龍バハムートアームズは強大な力を発揮することが出来る。アギトヴォルカニックフォームの攻撃を受けて無傷だったのも、再生能力を超えての攻撃を繰り出し続けることができるのはその能力にある。

 アギトヴォルカニックフォームは自身の肉体に深々とつけられていく傷を見て、より激昂する。その憤怒を現すように肉体から高熱を帯びさせていく。アギトヴォルカニックフォーム。

 輝龍は光炎龍剣を構えて、アギトヴォルカニックフォームに斬りかかる。守勢から攻勢へ転じ、戦いを終わらせるべく輝龍は駆け出す。

 

 一方のヴァルキリーは持ち前の反射神経でウィッチの攻撃を躱しながらリヴァイアガンソードを振るう。

 ウィッチは魔法陣を出してヴァルキリーの攻撃を防ごうとする。だが、ヴァルキリーの振るうリヴァイアガンソードはウィッチの魔法陣をまるで紙のように容易く切り裂いた。

 リヴァイアガンソードの刃は魔法陣を切り裂き、ウィッチの体にも当たり火花を散らした。

 ウィッチは何が起きたのか理解できなかったが新たに魔法を使い、水の鎖でヴァルキリーを拘束しようとする。

 魔法でできた水の鎖をヴァルキリーは軽やかに躱してリヴァイアガンソードで容易く切り裂いていく。

 ウィッチはさらにヴァルキリーを変身解除まで追い込んだ津波を発生させる魔法を使い、ヴァルキリーを押し流そうとする。

 ヴァルキリーはウィッチの動きを見て、リヴァイアガンソードを変形させて銃型のガンモードに変形させる。そして、変形させたリヴァイアガンソードの銃口をウィッチに向けて引き金を引いた。

 リヴァイアガンソードの銃口から放たれた光弾は水流を切り裂き、魔法陣を撃ちぬいてウィッチにまで届いた。

 

 「今のあなたに私の攻撃は防げない。私の力は大樹の未来を切り開く力、どんな障害でも私に崩せない物はない。」(ヴァルキリー)

 

 ヴァルキリーリヴァイアサンアームズの特殊能力、それは「あらゆる障害を突破、切り開く力」である。例え、全ての攻撃を防ぐ盾であってもヴァルキリーリヴァイアサンアームズはそれを打ち破る。相手がどんなに強い力を持っていようとそのすべてを突破する力を今のヴァルキリーは持っている。

 ウィッチはその妄念のままに、決められた動きを繰り返すようにヴァルキリーに魔法を放つ。

 ヴァルキリーはリヴァイアガンソードの銃口を向けて、ウィッチの魔法を放たれる前に魔法陣を撃ち抜いていく。

 ウィッチの、蒼龍の巫女夏江の妄執。それを相手にするヴァルキリー=万夏は前世での大樹との別れを思い出していた。その時の、言い表せないほどの深い悲しみ、喪失感は彼女の中にまだ息づいていた。愛する人を残して去ってしまうことを、その苦しみを考えるだけで万夏は胸が苦しくなった。だからこそ、万夏は愛する人と共に生きる戦乙女としてではなく、愛する人の未来を切り開く仮面ライダーとして戦うことを決意したのだった。その決意の元で彼女を止めるために。

 

 新たな力を手にした輝龍とヴァルキリーの前に追い詰められだしたアギトヴォルカニックフォームとウィッチ。

 アギトヴォルカニックフォームは自身を追い詰め始めている相手になぜという思いを抱き始めていた。だが、それも全てを燃やす怒りの炎に変わってしまう。今の彼にはその心を燃やす怒りの炎しかない。

 ウィッチはただただ攻撃をするだけだった。なぜならば、今の彼女はかつての夏江の妄執であり、そこにはもうかつての思いがほとんど残っていない。彼女は今の自分のことを理解することも出来ずに傷ついていくだけだった。

 

 「もう終わりにしよう。」(輝龍)

 ≪ソイヤ!バハムートスカッシュ!≫

 

 輝龍は戦いを終わりにするべく、戦極ドライバーを操作した。

 戦極ドライバーから光炎龍剣ナギナタモードにエネルギーが走る。輝龍はアギトヴォルカニックフォームに対して自身がこれまでに磨いてきた得意技、それも自身が磨き続けて編み出した必殺の技を放つ。

 輝龍は光炎龍剣を振るい、X字の斬撃を放ち、斬撃はアギトヴォルカニックフォームを拘束する光の輪となる。

 輝龍はアギトヴォルカニックフォームに向かって一直線に突進、その胸に光炎龍剣の刃を突き立てた。ナギナタ無双スタッビング、その強化技である薙刀龍帝スタッビングがアギトヴォルカニックフォームに炸裂する。

 

 

 ヴァルキリーも目の前のウィッチを哀れに思い、せめて一思いに終わらせることにした。

 

 ≪カモン!リヴァイアサンスカッシュ!≫

 

 戦極ドライバーからリヴァイアガンソードの銃口にエネルギーが集まっていく。

 銃口をウィッチに向けるヴァルキリーは引き金を引いた。銃口から放たれた極大レーザー、エンプレスサファイアフレアがウィッチに放たれた。

 

 「ッ、夏江!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 アギトヴォルカニックフォーム=柏葉弘宗は胸に突き立てられた刃を無理矢理引き抜き、ウィッチ=夏江の元へ走る。内側から焼かれる中で弘宗はエンプレスサファイアフレアの前に、ウィッチの前に身を投げたのだった。

 

 「アアアアアアアアアアアアアアア!!」(弘宗)

 

 変身が解かれる中ですべてを浄化する紺碧の光に身をさらす弘宗。そこにあったのは怒りではなく、愛する人を護りたいという思いだけだった。だが、浄化の光は弘宗を貫き、ウィッチにまで届く。ウィッチの鎧が、衣が、ウィッチドライバーが光を受けて崩壊していく。

 

 「ダメだ!!」(弘宗)

 

 弘宗は消えいくウィッチを抱きしめて、その場に繋ぎ止めようとする。

 

 「今度こそ、今度こそは、だから消えないでくれ!!」(弘宗)

 

 懇願の声も空しく、ウィッチも自分自身すらも崩壊していく。

 

 「頼む、頼むから、置いて行かないでくれ!。」(弘宗)

 

 そこにあったのは人の心が宿った涙だった。それを見たウィッチは弘宗の涙を指先で拭う。その動作は先程までとは違い、明らかに変身した人物の意思があった。

 

 (今度こそ、共に逝きましょう弘宗様。あちらで皆が待っています。)(夏江)

 

 声ではない、だが明確な意思が伝わる。それを聞いた弘宗は首を横に振る。

 

 「イヤだ、俺はお前と共に居たい!まだ、まだ!!」(弘宗)

 (弘宗様、置いては行きません。これからは共に、それこそ、これまで以上にお傍におります。私と共に居たくない、そう思わせてしまうかもしれないほど長い時間を共に過ごすのです。)(夏江)

 

 光の中で対話する二人。永劫の時をさまよい続けた二人がやっと共にあれたのだ。

 

 「俺は、俺はお前に何もできなかった。護ることも、共に過ごすことも。こんな俺にお前のそばにいる資格はない。」(弘宗)

 (相変わらずの頑固者ですね。そんな頑固者相手に巫女がそう簡単に閨に誘いませんよ。あなたの、あなた様のその強い思いに惹かれたのです。だからこそ、今度こそは私の言うことを聞いてもらいますよ。)(夏江)

 

 対話をする中で既にウィッチの変身も解かれていた。そこにいたのは美しい巫女、夏江だった。夏江は弘宗の手を取る。

 

 「さあ、行きますよ。これからはあの二人が私達の思いを継いでくれます。私達は天上から彼らを見守りましょう。」(夏江)

 

 夏江は弘宗の手を引き、歩き出す。涙を流す弘宗は涙を拭いて、笑顔を見せる。

 

 「ああ。このままでは俺の子孫に笑われるな。」(弘宗)

 「ええ。さあ、行きましょう弘宗様。」(夏江)

 

 白い光が差す方へ歩き出す二人。その光に包まれると同時にエンプレスサファイアフレアの光が消えた。そこにはもう何も残っていなかった。

 

 「ねえ、大樹。聞こえてた?」(ヴァルキリー)

 「ああ。聞こえた。」(輝龍)

 「私達はずっと一緒だよ。」(ヴァルキリー)

 「ああ。でないと、ご先祖様がたたりに来るかもな。」(輝龍)

 

 古の戦士、その戦士を愛した巫女の思いを継いで輝龍とヴァルキリーは共に生きる。そして、漆黒の空間が光で満たされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白い光が消えると大樹と万夏は元いた寂れた村の神木前にいた。

 

 「いつの間に?」(万夏)

 「時間は、と全然経ってない。」(大樹)

 

 大樹はスマホの時計を確認する。その時刻はここに着いた時のままだった。

 

 「あれ、ウィッチドライバーと指輪が無い!!」(万夏)

 「え?マジ?」(大樹)

 「無くなったの?どうして?」(万夏)

 「あれだけ派手にやれば無くなるもんじゃない。」(大樹)

 「私がやったの?まだ、輪島さんたちに見せないといけないのに。」(万夏)

 (大丈夫ですよ、私がいるのであれば指輪とドライバーが無くても問題は無いですよ。)(リヴァイアサン)

 

 混乱する万夏のズボンのポケットにはリヴァイアサンロックシードがあり、そこからリヴァイアサンの声が聞こえてきた。

 

 「でも。大樹のお父さんとお母さんが残したものなのに。」(万夏)

 「良いよ、俺は。万夏たちが居てくれるなら十分だよ。」(大樹)

 

 そう言う大樹の手にはバハムートロックシードと、新たなロックシードがあった。アギトヴォルカニックフォームの横顔が書かれたロックシードを見る大樹の表情は決意を秘めながらもどこか晴れやかだった。

 

 「おい、そこにいる二人組!!」

 

 大樹と万夏に声を掛けた人物が居た。

 

 「まあ、今日の寝泊まりするところに困ることは無いみたいだし。」(大樹)

 

 大樹と万夏はそのまま声のする方へ移動を始める。その二人を見守るように神木に柏葉弘宗と夏江の幻影が立っていた。その表情は穏やかで遂に安らぎの時間を得られたのだった。




 残る十三異界覇王はファブニール、アークを含めた5体。遂に、十三異界覇王大戦を仕組んだ魔蛇の目論見が明かされる。それと同時に明かされるファブニール=異世界の大樹の旅路。これは邪龍へ落ちし焔の龍が辿った旅路である。


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仮面ライダー輝龍 第18話

 柏葉の神木が見せた記憶の世界で護龍=仮面ライダーアギトヴォルカニックフォームと蒼龍の巫女=仮面ライダーウィッチと戦う輝龍とヴァルキリー。
 輝龍とヴァルキリーは新たな力バハムートアームズとリヴァイアサンアームズを手にすることでこれを撃破したのだった。


side3人称

 大樹と万夏は朽ち果てた柏葉の村を今でも管理している神社の住職に勧められ、神社に泊まらせてもらった。

 翌朝、神社を発つ前に大樹と万夏は住職から話を聞くことになった。

 

 「なる程、君が柏葉家最後の生き残りというわけだったのか。」(住職)

 「はい。あの、柏葉の本家って確かあの村に居たはずですが。」(大樹)

 「今から10年ほど前だが、一族全員がある日突然死をして、一夜にして一族が断絶されたんだ。その所為で、あの村に住んでいた他の家族は皆村を捨てて行った。今はあそこの御神木の管理のために私が村に立ち寄る程度だがね。」(住職)

 

 10年前、柏葉勇吾が大樹の両親を殺害した時期と柏葉の本家全員が突然死した時期が合致していたことが住職の話から分かった。村に住んでいた人は柏葉の本家全員が突然死した出来事から村を捨てたのだ。

 

 「あの時に無縁仏になってしまうから柏葉の親戚筋に連絡をしたのだが、あの日を境に柏葉の本家とつながりのある分家筋は皆事故や自殺などで死んでしまったいたらしい。神社で供養したが墓参りに来る者は誰一人として居なかった。」(住職)

 

 以前に大樹は正則を通じて柏葉家の現在の状況を知っており、ほぼ自分の親戚がいないこと自体は知っていた。その際に柏葉本家の様子も知っており、ここでの話は差し当たって特に新しい情報は無かった。

 

 「あの、護龍と蒼龍の巫女について知っていますか?なんでも、柏葉家に関係のあるものらしくて。」(万夏)

 「護龍伝説のことかい。その昔、柏葉の村を護った英雄がいたという伝説で、蒼き龍を祀る巫女と龍の力を持った英雄が村を護ったのだとか。ただ、かなり前からその詳細を知る人が少なくなっていたみたいでね。私でも今話した内容が精々なんだ。」(住職)

 

 住職の話を聞いて、大樹と万夏は神社を発った。泊まらせてもらったお礼に二人は神社を参拝した。

 ここで、大樹と万夏の旅行は終わりになると大樹は思っていた。

 

 「帰ったら、皆にちゃんと礼を言わないと。」(大樹)

 「そうだね。まだまだ、旅行は終わらないし、皆にお土産を買わないと。」(万夏)

 「そうそう、終わらない、、、え?」(大樹)

 

 万夏の終わらないという言葉に大樹は足を止めて万夏を見る。

 

 「どうしたの?」(万夏)

 「いや、今日はもう向こうに帰るんでしょ?」(大樹)

 「旅行休みは来週の火曜日までだよ。月曜日に帰るよって皆には言ってあるよ。」(万夏)

 「いや、それって休み期間さ、一週間超えてるでしょ!?流石にやりすぎでしょ!?」(大樹)

 「ヤリ過ぎって、旅行中そんなにしてないでしょ。」(万夏)

 「万夏さん、なんか話している内容にずれを感じるんだけど。ええ?目的は達成したでしょ。」(大樹)

 「私は、大樹の目的が達成したら帰るなんて一言も言っていないよ。」(万夏)

 「いや、だからってさ。万夏!!」(大樹)

 

 この後、大樹は移動の中で仲間たちと家族に連絡した。そこで聞いたのは自分たちの戻る予定が本当に月曜日であることであった。その夜、宿泊先のビジネスホテルで朝日を拝むまでに搾り取られたのは言うまでもないく、それが仲間たちの元に戻るまでずっとだったのは当然のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideファブニール

 ドラスが倒されて、俺はアジトである亡国企業の基地に戻った。部屋に着くやいなや、脂汗を流しながら、俺は膝を着く。

 

 「はあ、はあ、はあ、身体も限界か。」(ファブニール)

 

 体が言うことを聞かなくなってきている。それが分かるくらいに自分の肉体がボロボロなのはよく分かっていた。ドラスに吸収されたダークドライブとゲムデウスとの戦いのダメージもあるが、それだけではない。

 

 「あまり、時間はないみたいだな。」(ファブニール)

 

 恐らく変身して戦えても2,3回で限界だろう。この世界に来るまでの間、数多に存在する多次元並行世界で戦い続けてきたことに加えて黄金の果実の力も使ってきた。それらの所為で限界が近づいてきてもおかしくないか。

 俺は壁に身を預けて、床に座り込む。

 

 「まだまだだって言うのに、まあやることは決まっているか。」(ファブニール)

 

 そう、俺にはまだやらねばならないことがある。ここで終わることは、まだ出来ない。

 

 「ただ、少し休むか。」(ファブニール)

 

 この後のことを考えても、今は体を休めるべきだ。俺は壁に身を預けて、瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の世界が滅んだあの日、俺の腕の中で冷たくなっていったマドカを抱えていた。

 黄金の果実を手に、敵を殲滅した俺は世界が終わるその瞬間にマドカと共にあろうとした。そして、俺の頭上を数多のミサイルが飛んでいった。その数秒後、俺の目にはミサイルによる、人類の叡智の炎が世界を焼き尽くす瞬間が映った。

 俺はヘルヘイムの森の環境で活動するべく、仮面ライダーに変身していた。そのため、世界が焼き尽くされたあの瞬間を間近で体験しながら生きていた。

 全てが終わった後、マドカの遺体をIS学園の跡地に埋めた。そこには一夏を始めとした俺の仲間たちが眠っていた。せめて、死んだ後は親しい人たちと共にあって欲しかった。

 

 「皆のこと、よろしく頼む。」(ファブニール=大樹)

 

 ここで死ぬことも考えた。だが、俺にはマドカからの願いがあった。それは、「生きて。」というその一言だけだった。たった一言だったが、彼女の、俺の愛する彼女からの最期の願いだった。その彼女の最期の願いを破るわけには行かなかった。

 俺は手にした黄金の果実の力を使って、俺以外の全ての命が消えた俺の生まれ育った世界を、俺の愛する人たちが眠る世界を離れたのだった。

 数多の並行世界を旅する中で俺は自分の世界が滅びない可能性を探っていた。それを黄金の果実の力で何度も、何度も、何度も体験した。それこそ、1万を超える可能性を俺は追体験した。

 それほどの可能性を追体験したその結果は非情なものだった。

 俺の生きた世界はどうあがいても数年の誤差はあれど、俺がIS学園に入学してから数年後以内に滅ぶことが分かったのだ。言い知れない絶望を感じながらも、俺は旅を続けた。もしかすると、別の可能性があるのではないか、その期待を胸に抱いて俺は並行世界を渡り歩き続けた。

 それから俺は数多の世界を旅した。

 ある世界では光の巨人が巨大な怪物から地球を守っていた、ある世界では4体の機械生命体と一人の青年が悪に立ち向かっていた、ある世界では少女たちが正義の心と光の力で悪と戦っていた、ある世界では神や天才、世界最強のソルジャーが仲間を率いて世界を護っていた。

 その他にも悪魔になった少年が仲間たちと共に成長していく世界、世界を滅ぼす力を持った少女たちを救おうとする少年の世界、数多の英雄たちと一人の少年が世界を取り戻す世界、数え切れないほどの様々な世界を渡り歩いた。

 俺は旅をする中でそれぞれの世界で戦う彼らと共に戦った。その彼らと絆を結び、多くの世界を護った。だが、その度に俺を襲うのは俺の世界が終わったあの瞬間、俺の腕の中でマドカが死んだその時のことが頭によぎり、俺の中にその時の絶望が蘇る。その絶望はすぐに大切なものを護れなかった俺自身への怒りにとって代わってしまう。世界を渡り歩く中で、当然だが様々な敵と出会った。その敵を倒す度に俺の心は荒んでいった。

 数多の世界を旅する中で俺は邪龍ファブニールの力を手にした。ファブニールロックシード、俺の怒りに呼応して現れたそれは俺に絶大な力を与えた。それでもなお、俺の心を癒すことは無かった。

 それから、世界を旅する中で、俺はある星にたどり着いた。そここそ、かつての黄金の果実をめぐる戦いに勝利し、故郷の世界を護るべくヘルヘイムの全てをある星に移住させたある仮面ライダーがいた星だった。

 

 「お前は誰なんだ?」(紘汰)

 「俺は、柏葉大樹。只の人間だよ。」(ファブニール=大樹)

 

 白銀の戦神、仮面ライダー鎧武こと葛葉紘汰と俺の出会いだった。

 俺は黄金の果実を手にしていたが、人間のままでいた。そのため、俺は戦極ドライバーを常時装着して、その星で過ごしていた。俺は紘汰と共に助けを求める誰かの元へ駆けつけて戦った。その後の俺は、紘汰たちの星に立ち寄りつつ、他の世界を巡っていた。その中で、俺はついに別の、俺が求めていた可能性が見つかった。期しくも、その世界は紘汰のいる世界だったのだ。遂に、俺の旅に終わりが見えた、そう思った。だが、黄金の果実で見たこの世界の未来は、俺の求める可能性では無かった。

 この世界はこの世界の俺が20歳になった時に、自分たちの世界を文字通り破壊した13の異形である十三異界覇王によって滅ぼされてしまう未来があった。俺を含めて数々の仮面ライダーが立ち向かうが為す術もなく滅ぼされてしまうのだった。

 俺はこの世界を救うべく、黄金の果実の力で複数の未来を、そこに至る過程を見た。その中で、確実にとは言えないが、世界を護る可能性が見つかった。その可能性を、確定させるために俺は十三異界覇王を集めている最中の魔蛇に声を掛けた。

 

 「お前が魔蛇か。」(fファブニール=大樹)

 「誰だ、お前は?」(魔蛇)

 

 魔蛇は最初俺を警戒したが、俺が全ての世界を手にする力が欲しいと言い、十三異界覇王になると伝えると魔蛇は喜んで協力した。その中で俺はダグバ、イーヴィルアギト、アマゾンネオ、初代オーズ、ダークドライブ、ドラス、ゲムデウス、キルバス、アークの9体の十三異界覇王に選ぶことを勧めた。魔蛇が選んで連れてきた奴らは俺が知っている奴らよりも強大だったが、この世界の俺が戦うには十分だった。そして、俺も十三異界覇王として参戦することを決めた。その上で魔蛇に十三異界覇王が揃い次第に十三異界覇王による戦い、十三異界覇王大戦を始めるように進言した。それにより、想定されていた可能性よりも早く十三異界覇王が現れることになった。まだ成長途中の俺が数多くの強大な敵を相手に戦うことでその成長を加速させる。それこそが、俺が見つけた可能性、俺が出来なかった大切な人達が幸せを享受できる可能性を確定させる手段だった。

 

 「俺は柏葉勇吾に接触する。オーバーロードになったあいつを仕向ければ良いのだろう?」(魔蛇)

 「ああ、そうすることで俺の方も動けるからな。」(ファブニール=大樹)

 

 十三異界覇王たちを速くにこの世界へ来させるための前段階として、この世界の兄貴、柏葉勇吾をけしかけて戦いを起こした。この時の戦いをきっかけに、この世界の俺が持つアギトの力を覚醒させることに成功した。

 

 「さて、柏葉勇吾は死んだ。いよいよ、始めるぞ。」(魔蛇)

 「ああ、俺の契約を忘れていないだろうな。」(ファブニール=大樹)

 「分かっているさ、お前の望む力をこの戦いで完成させる。それによって、お前は自分の望む世界を作り、俺は数多の世界をヘルヘイムで満たす。お互いの利益が一致している以上は協力するさ。当然、お前も俺に協力してくれるよな。」(魔蛇)

 「そのために、俺も十三異界覇王として戦う。忘れていない。」(ファブニール=大樹)

 

 ここまでに起きた十三異界覇王大戦、俺がこれを仕向けた理由は、この世界の俺が世界を護ることが出来る力を手にするように成長させることだ。魔蛇にも、紘汰にも伝えていない俺の真意、俺が出来なかったことをこの世界の俺が出来る可能性がある、それを確実なものにする為である。

 はた目から見れば、俺のしていることはとんだ傍迷惑な行為なのは分かっているが、大切なものを護れなかった俺が出来るのはこの程度のことしかない。俺は、この世界の俺に期待している。だからこそ、俺は彼の敵として立ちはだかることを決めたのだ。

 

 「差し当たって、十三異界覇王としてのお前の名前を決めないとな。」(魔蛇)

 「それはもう決まっている。」(ファブニール=大樹)

 

 全ての十三異界覇王が決まった時、俺は既に自分の新たな名を決めていた。この時、俺は魔蛇にファブニールロックシードを見せた。

 

 「邪龍ファブニール。英雄ジークフリートが倒した邪悪なる龍。黄金の果実を独占して世界を作り替えようとする俺に相応しい。」(ファブニール=大樹)

 

 呪いの黄金を欲して人間ならざる者へと変貌した邪龍ファブニール。黄金の果実を独占し、自らの願いのために世界を敵にする俺の新たな名前、自らの自嘲と戒めとしてその名を名乗ることにした。

 

 「なら、お前は怒りの獄炎を纏う龍王、獄炎龍覇王ファブニールだ。」(魔蛇)

 

 そう、全ては俺が望む可能性を実現させるため。かつての仲間も、友も敵に回して俺は自分の望みを叶えるために邪龍へ堕ちたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝日が昇り、その光で俺は目を覚ます。残る十三異界覇王は俺を含めて5体。アークが倒されたその時、魔蛇を出し抜いて俺は俺の願いをかなえるべく動き出す。

 体はもうボロボロだ。心を蝕む怒りの業火は常に燃え続けている。だが、それらが関係ない程に俺は自分のやるべきことが分かっていた。

 

 「この戦場、俺が勝ち取る。」(ファブニール)

 

 もう、俺の中で燃える炎は怒りの業火ではない。静かに燃える決意の炎が俺を奮い立たせる。




 再び動き始めたレジェンドルガたち。大樹と万夏がいない中、一夏は指輪の魔法使いウィザードと共に伝説の怪物たちを相手に激しい戦いを繰り広げる。
 戦いの中でレジェンドルガに協力するファントム、リッチの悪しき企みが明らかになる。
 激しい戦いの中で一夏は新たな力を手に入れる。

 ≪ゴッドエナジーアームズ!≫

 その力は、禁断の力。人を神へと至らせる力。


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仮面ライダー輝龍 第19話

 


side3人称

 アーク覚醒の儀式まで、残り●日。

 

 「待て!!」(白銀)

 「フン!!」(ムンミヤ)

 

 アーク覚醒の儀式のための生贄を集めるマミーレジェンドルガのムンミヤに一夏が変身した仮面ライダー白銀シルバーエナジーアームズがバニシングブレードを大きく振るう。

 白銀が振るうバニシングブレードをムンミヤは右手で刃を掴み、その攻撃を止めた。

 ムンミヤは4体のレジェンドルガの中でもパワーに優れていた。それだけではなく、彼自身の肉体を守る包帯は強靭であり、白銀が持つバニシングブレードでも切り裂くことは容易では無かった。

 

 「くっ!」(白銀)

 「この俺の体を守る包帯はレジェンドルガの魔術で生み出したものだ。そう簡単に切り裂くことは出来んぞ。」(ムンミヤ)

 「なら、これはどうだ!」(白銀)

 

 白銀はゲネシスドライバーを操作してバニシングブレードにエネルギーをチャージする。バニシングブレードの刃が青白く光り輝き始める。

 白銀はそのまま力を込めてムンミヤを切り裂こうとする。だが、その刃をムンミヤは全身の包帯で包み込むことで無効化した。

 

 「そんな!」(白銀)

 「甘いな。フン!!」(ムンミヤ)

 

 ムンミヤは動きが止まった白銀に強烈な拳による殴打で後ろに吹っ飛ばされてしまった。

 ムンミヤの攻撃を受けた後、体勢を立て直した白銀はシャイニングエナジーロックシードを開錠、仮面ライダー白銀シャイニングエナジーアームズにアームズチェンジしようとするがムンミヤは魔法陣を展開して、その場を去ってしまった。

 

 「クソっ!」(白銀)

 

 残る白銀は拳を固く握りしめていた。

 

 

 

 

 

 アーク覚醒の儀式まで、残り■日

 別の日、ガーゴイルレジェンドルガのガルグイユとマンドレイクレジェンドルガのドードが人々を同族へ転化させていた。その知らせを聞きつけて、颯斗=仮面ライダーロードが現場へ向かったが2体の連携の前に逃亡を許してしまった。

 

 

 アーク覚醒の儀式まで、残り▲日

 その翌日、一夏たちはここまでのレジェンドルガの動きを整理するべく集まっていた。

 

 「あいつら、こっちを倒す訳じゃないから。邪魔されそうなところで撤退しているのが気になるなぁ。」(颯斗)

 「恐らく、奴らの作戦に優先順位があるのだろう。今は怪物化させた人々を確保するのに留めているところから、そこに目的があるのだろう。」(ラウラ)

 「逃がさないようにぶっ飛ばせば良いじゃない。」(鈴)

 「出来れば良いんだけどねぇ。ねえ、さっきから怖い顔して無言だよ。」(颯斗)

 

 颯斗は隣にいる一夏に声を掛ける。

 

 「悠長にしていられないだろ。どうにかして奴らを止めないと。」(一夏)

 「とは言っても、僕達と戦闘する前に逃げられたりするし、戦闘してもこっちの隙を作って逃げられるし。どうするのって話をしてるんだよ。」(颯斗)

 「そんなに悠長にしていられないだろ!!」(一夏)

 「悠長に待っていないって。今度、あいつらが来た時に逃がさないための話をしてんでしょうが。」(颯斗)

 

 ここまでの戦いでレジェンドルガたちを抑えられなかったことから一夏は内心焦りを感じていた。その様子はその場にいた全員にも見て取れた。

 

 「イライラするのは分かるけど、冷静に作戦を立てて戦わないと。特に、大樹と万夏ちゃんが帰ってこないうちは。」(颯斗)

 「そんな時間があるのかよ!!」(一夏)

 「一夏、ちょっと落ち着きなさいよ。ここであんたが熱くなってどうすんのよ。」(鈴)

 「だけど!」(一夏)

 

 一夏は歯を食いしばり、その場を後にする。

 

 「ちょっと、一夏!!」(鈴)

 「仕方ないな。私は教官に話をしておく。留芽、簪は準備と柏葉と万夏に連絡を入れてくれ。」(ラウラ)

 「了解。出てくれるかな?」(颯斗)

 「こんな昼間にすることは無いと思うけど。」(簪)

 

 一夏が席を立ったことからその場での会議は結局結論が出ないまま解散となってしまった。

 

 「ああ、クソ!」(一夏)

 

 席を立った一夏は学園敷地内を歩いていた。その様子から話しかけようとする者は居なかった。

 

 「どうすれば良いんだよ。」(一夏)

 

 そう言いながら一夏がたどり着いたのは学園敷地内の端、海を臨む広場だった。

 学園の入学して以来、思い悩むことがあれば一夏はここによく来ていた。

 その表情は普段の自信のあるものではなく、不安に満ちた表情だった。

 

 

 

 

 颯斗を始めとしてIS学園入学以降に知り合ったクラスメイトは一夏についてあまり悩むことは無く、勢いのままに突っ走っていくタイプの人間だと思っていた。万夏、鈴、弾、数馬もおおよそ似たような評価をしていたが、兄弟同然に育った大樹は少し違う評価を下している。

 

 「というわけです。」(颯斗)

 [分かった。明日にはそっちに到着するから、その後の動きを話そう。](大樹)

 「いや、イライラしてる一夏の所為で話は進まなかったよ。」(颯斗)

 [ああ。やっぱ、俺が抜けてる分焦るよな。](大樹)

 「皆、同じなのに。もう、自分本位な奴だよね。」(颯斗)

 [自分本位って一夏のこと?](大樹)

 「そうだけど。」(颯斗)

 [それは違う。](大樹)

 

 颯斗から話を聞いていた大樹は颯斗の一夏に対しての言葉を切り捨てる。

 

 [あいつ、いつも先に突っ走って他人の都合を考えないで動くけど。あいつが自分本位なことは一度も無いよ。](大樹)

 

 幼少のころから共にいる大樹は一夏とは喧嘩も絶えなかったがその上で学園や幼馴染も含めて一夏のことをよく理解していた。

 

 [一夏、家族も含めて大切な人を護りたいんだよ。どんなに力が無くたって俺のできることをするって、昔俺に言ってたんだ。だから、万夏や箒、鈴についてはイジメてくる奴を真正面からぶちのめしに行ってたよ。大切な人を護りたい、単純に正義感からそうやっているんだよ。考えなしで動くことが多いけど、あいつが自分本位で誰かを助けたことは一度もない。あいつ、唐変木で意地っ張りだけど自分本位な奴なんかじゃ絶対にない。](大樹)

 

 友人からの思いがけない言葉に言葉が出ない颯斗。それを知ってか知らずか大樹は電話越しで続ける。

 

 [俺の知っている人間で一夏以上に真っ直ぐな奴は居ないよ。フォローとか大変だけど、一緒に戦うなら俺は一夏のことを決して疑わないし、あいつのことを信じてるよ。](大樹)

 

 あいつを信じている、その言葉を聞いた颯斗は納得した。

 

 「分かったよ。でも、皆と足並みをそろえて欲しいけど。」(颯斗)

 [俺が戻るまで我慢して。それじゃ。](大樹)

 

 電話が終わり、大樹は一夏のことを考える。

 

 「やっぱ、俺がブレーキかけないとかな。」(大樹)

 

 そう言ってバハムートロックシードを取り出す大樹。

 新たに手にした力よりも幼い頃より見知っている親友のことを何よりも信頼していた。その上で、その親友について、大樹自身は苦労も絶えないがフォローに動くのが常である。それでも、大樹にとっては既にかけがえの無い家族である。最早、苦労があるのを分かっている上でフォローするのは当たり前だと考えるくらいに長くいるのだ。

 

 「頼むから無茶をするなよ、兄弟。」(大樹)

 

 口から出た言葉は純粋に親友のことを心配しているものだった。

 この時、大樹はどこか言い知れぬ不安を感じていた。それが的中することが無いことを今は祈ることしか出来なかった。

 

 

 

 

side一夏

 ここまでで俺は何一つ守れていない。俺が誰かを守れた時はそのどれもが仲間が、大樹が居る時だった。

 俺一人で守ることが出来ない、誰かを守る力が無い事実に俺は焦っていた。

 

 「大樹。俺一人じゃ誰も守れないのかよ。」(一夏)

 

 ここに居ない親友、俺にとっては兄弟同然のあいつが居ないことに俺は不安も苛立ちも隠せなかった。

 大樹は小さい頃からすごかった。何がすごいって、家族がいなくなっても弱音を吐かずにずっと生きてきた。俺だったら、きっと父さんと母さん、万夏、そして千冬姉が居なくなったら耐えられないだろう。自分がつらいはずなのにいつも大樹は周りのことを気に掛けていた。そんな大樹を俺の家族は受け入れた。

 正直、一緒に暮らすようになって大樹とケンカをしなかったことは無い。殴り合いまではしなくても、言い争いはよくしていた。

 俺が箒をイジメていた奴らとケンカをしたこと、鈴をイジメていた奴らをぶん殴ったこと、万夏をイジメる奴らをぶん殴ったことではいつもいつも大樹と言い争いをしていた。大樹はそう言う時は俺を止めようと喧嘩の中に入って、いつもボコボコになっていた。結局のところ、大樹は俺を庇ってくれていた。なお、結果として大樹がボロボロになることで相手側にも指導が入って丸く収まることが多かった。そして、俺がいない時は万夏たちを守っていたんだ。拳を振るうんじゃない、あいつらしい方法で。

 

 「なんで手を出すのさ!!」(大樹)

 

 俺が殴り合いをした後、家に帰ってから大樹が怒る所から俺達の喧嘩が始まる。大樹が言うには自分が来るまで待てないことと拳を使うのはいけないってことだった。俺は誰かを守るのに間に合わなかったらダメだろって言っていた。二人して大声で言い合うものだから最終的に二人そろって鬼になった母さんから説教を食らって終わりになっていた。

 それを、それを俺と大樹は一緒に暮らすようになってからよくしてた。

 だから、大樹は強い。拳じゃない方法を知ってて誰かを守っていた。万夏、箒、鈴、そして俺ですらあいつに守られていたんだ。

 大樹が仮面ライダーになって、俺は大樹との距離が遠くなったように感じた。

 大樹が戦う度に俺はどんどん置いて行かれている気がした。そのままじゃあ居られなくて俺は貴虎さんに頼んでドライバーを手に入れた。そして、俺は仮面ライダーに変身して戦った。最初の頃は、これでやっと大樹に追い着いたと思っていた。

 追い着いたと思っていた。一緒に戦って、肩を並べて戦うことが出来て、俺はやっと大樹に追い着いたと思っていた。やっと、あいつと肩を並べて戦うことができると思っていた。

 現実は、俺が思っていたような形じゃなかった。結局、俺は大樹のことを追いかけ続けていた。追い着いたと思っていたら、大樹は少しずつ前へ進んでいた。俺が追い着いてから少しずつ大樹との距離が離れ始めていた。

 あいつが、大樹が進んでいる時にはいつも万夏の姿が大樹の隣にあった。そう、大樹が進み続けていられるのは万夏が居るから、万夏が居るから大樹はどんな奴が居ても前に進み続けることができるんだ。大切な人が居る、それが大樹にとっての力なんだ。

 

 「俺には、俺には力が無いのか。」(一夏)

 

 俺には大樹が持っているような、心の強さはきっと無い。剣道での強いとは違う力を、俺には無い。それでも、誰かを守れるくらいの力はあると思っていた。

 自分の手を見つめるけど、答えは出ない。

 

 「随分とお悩みのようだな。」(???)

 

 俺は背後から声を掛けられ、後ろを振り向いた。

 

 「あんたは、あの時の。」(一夏)

 「俺のことを覚えていてくれて嬉しいね。」(サガラ)

 

 俺の前に民族衣装を着たオッサン、サガラがいた。

 

 「悩んでいるお前さんにプレゼントを持って来た。」(サガラ)

 

 サガラはそう言って俺に白色のロックシードを差し出した。

 

 「ゴッドエナジーロックシードだ。神の領域に至る究極のロックシード、まさに神の名を冠する究極の力だ。お前さんなら使えるはずだ。」(サガラ)

 

 ゴッドエナジーロックシード、俺は差し出されたロックシードを受け取る。そのロックシードから感じる力、尋常ではない力を感じる。

 

 「使うかどうかはお前さん次第だ。ただ、これから先の戦いでお前さんに必要だろう。じゃあな。」(サガラ)

 

 そう言って立ち去ろうとするサガラを俺は呼び止める。

 

 「待ってくれ!あんたは何者なんだ。どうして、俺に力を?」(一夏)

 「俺が何者かについては1年前に話した通りだ。そして、二つ目の質問だが簡単な話だ。俺はお前に期待しているんだ、織斑一夏。人間が生み出した人類の最高傑作、その分身で番であるお前はこの世界に居る全ての人間を超えて神へと至るかもしれない存在だ。そんな奴に力を貸して、その行く末を見るのが俺に楽しみなんだ。」(サガラ)

 

 サガラの言葉を聞いて、俺は手にしたゴッドエナジーロックシードを見る。

 人類の最高傑作、昔父さんと母さんから聞いた言葉だ。このおっさん、俺と千冬姉の秘密を知っているのか。

 

 「一夏。」(千冬)

 

 俺は千冬姉の声を聴き、顔を上げた。そこにはもうサガラの姿はなかった。

 

 「あのおっさん、どこに。」(一夏)

 「どうした?」(千冬)

 「いや、なんでもない。」(一夏)

 

 千冬姉は俺の隣に立つと海を見る。

 

 「いつも、悩むときはここだな。」(千冬)

 「まあ。」(一夏)

 「大丈夫だ。一夏、お前は強い。私が保証する。」(千冬)

 

 千冬姉はいつもそうだ。俺が悩んでいる時はいつもそう言ってくれた。

 

 「でも、千冬姉のような強さも大樹のような強さはないよ。」(一夏)

 「私や大樹の強さを一夏が持つ必要はない。一夏には、一夏だけの強さがある。それは私も、父さんと母さんも、万夏も分かっている。そして、大樹もそのことを分かっているはずだ。」(千冬)

 

 千冬姉の言葉に俺は千冬姉の言う俺の強さをまだ分からない。

 

 「お前は迷わずに進み続けろ。」(千冬)

 

 千冬姉は俺を見てそう言った。

 千冬姉は振り返って学園へと戻る。

 

 「今日、部屋の掃除をしようと思う。手伝ってくれるか?」(千冬)

 

 俺の返事を聞かずに学園へ戻る千冬姉。その言葉を聞いて、俺は寮へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side三人称

 アーク覚醒の儀式まで、残り1日。

 

 魔界城、その最奥にある巨大な棺に4体のレジェンドルガが跪いていた。

 

 「いよいよ、われらが王アーク覚醒の時が来る。我ら最後のレジェンドルガはそのために儀式を万全にしましょう。」(ゴルゴン)

 「最後の時まで、儀式を完遂させよう。」(ムンミヤ)

 「我らが王アークが全ての覇権を手にする為に。」(ガルグイユ)

 「...。」(ドード)

 

 遂にアーク覚醒の儀式が明日へとなった。王へ忠誠を誓う4体は儀式の完遂のために自分たちの中にある力を開放する。

 伝説の怪物たちによる魔宴が始まる時が来たのだ。

 

 

 

 

 同時刻、宿泊先のホテルにて夜のレスリングをした大樹と万夏。

 万夏の方は満足いくまでに大樹を絞り上げたために肌艶が良く、上機嫌だった。

 一方の大樹はと言うと疲労を見せながらも満更でもないようであった。

 一息つくと大樹はスマホにある一夏の名前に電話を掛けることにした。

 

 「一夏兄さんに電話?珍しいね。」(万夏)

 「颯斗から電話が来て、今度の相手に焦っているらしくて。」(大樹)

 

 視線で万夏に許可を求める大樹。

 兄と恋人の関係性を幼い頃から知っている万夏は笑顔で許可を出した。

 大樹は心の中で胸を撫で下ろし、一夏に電話をかける。数回のコールの後、電話に出た。

 

 「ああ、一夏。夜遅くにごめん。」(大樹)

 [おう、どうした?](一夏)

 「いや、今度の相手に焦っているらしいって聞いたから。」(大樹)

 [ああ、まあ。](一夏)

 

 電話越しでやっぱり焦っていたのかと思った大樹。

 

 「明日、戻るから。あんま無茶しないで。」(大樹)

 [分かってる。それじゃあ、切るぞ。](一夏)

 「待って、最後にちょっとさ。」(大樹)

 [おう、良いぞ。](一夏)

 「迷わずに突っ走りな。フォローはするから。」(大樹)

 [おう、頼むぜ親友。](一夏)

 「分かったよ、兄弟。」(大樹)

 

 会話を終えて、電話を切った大樹。

 

 「どう?」(万夏)

 「まあ、多分大丈夫だと思う。」(大樹)

 

 万夏の言葉にそう答えた大樹。

 笑顔で笑い合い、手を取る。交わった熱は落ち着いており、二人にあるのは心行くまで交わったことの充足感とこれから待ち受ける戦いへの強い覚悟だった。

 

 「絶対に護る。」(大樹)

 「一緒に生きて帰ろ、皆と一緒に。」(万夏)

 「ああ。」(大樹)

 

 お互いの思いを言葉にして確認しあう。

 お互いの思いを確認した二人はそのまま眠りにつく、お互いの右手を固く握って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side一夏

 大樹からの電話で俺の中で踏ん切りがついた気がした。

 

 「大樹と話か?」(千冬)

 

 隣で横になっている千冬姉から声を掛けられた。

 

 「ああ。」(一夏)

 「良かったな。」(千冬)

 「いや、別に千冬姉が言うような関係じゃねえよ。知ってるだろ。」(一夏)

 「そうだな。」(千冬)

 

 そう言うと千冬姉は俺に近づく。

 

 「なら、お前が迷わないようにまだするか。」(千冬)

 

 千冬姉はそう言うと俺にキスをする。

 

 「もう大丈夫だよ。迷わないさ。」(一夏)

 

 そう言って、俺は千冬に言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side3人称

 アーク覚醒の儀式、当日。

 

 その日の夜、突如大都会東京の空に巨大な城が現れた。

 魔界城、レジェンドルガたちの居城が遂に姿を見せたのだった。

 

 魔界城の下、街ではレジェンドルガへ転化された人々が次々と他の人々を襲っていたのだ。

 そこへ変身していた仮面ライダーロード、エグゼリオンは人々を傷付けさせないように対処していた。

 

 「もう!無理!足を凍らせる以外に何もできないし!!」(ロード)

 「じゃあ、俺飛んでいくわ。そっちは任せた!!」(エグゼリオン)

 「ちょっと、この人数は一人じゃあ無理だって!!」(ロード)

 

 エグゼリオンはドラゴナイトハンターZガシャットを起動し、アクションハンターゲーマーレベル5にレベルアップして魔界城へ飛んでいく。

 

 「置いてかないで~!!」(ロード)

 

 一人残されたロードは殺到する人々を前にファイティングポーズを取る。

 

 「ゾンビものとか聞いてないよ!!」(ロード)

 

 腰が引きつつ、闘争心が揺らいでいるロードに援軍が来たのだった。

 

 ≪バインド!プリーズ!≫

 

 人々の足元に橙色の魔法陣が現れ、魔力で来た鎖が人々を拘束する。

 

 「大丈夫ですか!?」(メイジ)

 「だ、ず、が、り、ま、じ、だ。」(ロード)

 「ほら、立てよ。」(ウィザード)

 

 ウィザード、メイジの二人がロードを助けたのだった。

 そして、彼らの頭上で戦っているエグゼリオンにも援軍が来るのだった。

 

 「近付けさせてくれねえか。」(エグゼリオン)

 「おい、大丈夫か!!」(ビースト)

 

 魔界城の下部からは赤い雷が常に放たれており、エグゼリオンは容易に近づけなかった。援軍にファルコマントを装備したビーストが来たが魔界城に近づくことが出来ないでいた。そこにエグゼリオンとビーストにガルグイユとドードが襲い掛かった。

 

 「はっ!!」(ガルグイユ)

 

 ガルグイユとドードの急襲によってエグゼリオンとビーストは地面に叩きつけられてしまった。

 

 「桐ケ谷君!!」(ロード)

 「仁藤!!」(ウィザード)

 「仁藤さん!!」(メイジ)

 

 エグゼリオンとビーストの元に駆け寄ろうとするがそこへムンミヤとゴルゴンが姿を見せた。

 

 「我らが王アーク覚醒の儀式を邪魔させるわけにはいかぬ。」(ムンミヤ)

 「あなたたちにはここで死んでもらうわ。」(ゴルゴン)

 

 ゴルゴンは手にあった複数の石をばらまく。

 石は下級ファントムのグールに変化する。

 

 窮地に陥る仮面ライダーたち。だが、バイクの轟音を響かせて若き3人の戦士がこの場に駆け付けた。

 柏葉大樹、織斑一夏と万夏の兄妹だった。

 

 「遅い!!さっきまで乳繰り合ってんじゃないの!?」(ロード)

 

 遅れてきた大樹を指さして戦いの場で言うには控えるべき内容を大声で言うロード。

 それに対して否定も肯定もしないで無視をする大樹。

 

 「無視!?」(ロード)

 「一夏、万夏。行こう。」(大樹)

 

 大樹の呼びかけにドライバーを取り出す万夏と一夏。

 

 ≪バハムート!≫

 ≪リヴァイアサン!≫

 「「変身!!」」(大樹、万夏)

 

 大樹と万夏は仮面ライダー輝龍バハムートアームズと仮面ライダーヴァルキリーリヴァイアサンアームズに変身する。

 残る一夏はシャイニングエナジーロックシードを開錠する。

 

 「変身!!」(一夏)

 

 一夏は仮面ライダー白銀シャイニングエナジーアームズに変身する。

 輝龍、ヴァルキリーは武器を手にムンミヤとゴルゴンに向かっていく。

 

 「援軍が来たから行こうぜ!!」(エグゼリオン) 

 「これだけグールがいれば当分は大丈夫だな。あ、グールは全部俺に回せよ!」(ビースト)

 「言われなくてもやるって。」(ウィザード)

 

 援軍が来たことで勢いづく仮面ライダーたち。

 ムンミヤとゴルゴンを相手に新たな力で戦う輝龍とヴァルキリー。

 負けじと奮戦するロードとエグゼリオン。

 無数のグールに躍りかかるビーストに、重力の魔法で転化した人々を無傷で抑えるメイジ。

 そして、

 

 「さっさと死になよ!」(ガルグイユ)

 

 ガルグイユとドードが白銀に襲い掛かるがウィザードが防御魔法でガルグイユとドードの攻撃を防ぐ。

 

 「邪魔だね、そこの君。」(ガルグイユ)

 「まあ、お前たちみたいな奴を邪魔するのが俺達の仕事でもあるからな。」(ウィザード)

 

 急な中で共に戦い始める白銀とウィザード。真正面から切り込んでいく白銀をウィザードが魔法で援護する。

 白銀の剣戟にウィザードの魔法にガルグイユとドードは真の力を開放する。

 ガルグイユは大量の水を生成して竜人態へと変化した。ドードはガルグイユの水を吸収してビル並みの巨体の巨人態に変貌する。

 

 「おい、行けるか?」(ウィザード)

 「はい!行けます!!」(白銀)

 

 ウィザードは最強の力、インフィニティーウィザードリングを取り出した。

 白銀はサガラから受け取ったゴッドエナジーロックシードを開錠する。

 

 ≪ゴッドエナジー!!≫

 ≪インフィニティー!ヒー!スイ―!フー!ドー!ボー!ザバ!ビュー!ドゴーン!≫

 

 

 ウィザードはインフィニティ―スタイルに変身、アックスカリバーを手に取り構えた。

 

 白銀はシャイニングエナジーロックシードを取り外し、ゲネシスドライバーにゴッドエナジーロックシードをセットしてシーボルコンプレッサーを押し込んだ。

 

 ≪ロックオン!ソーダ!ゴッドエナジーアームズ!皇神、覚醒!≫

 

 白銀の頭上のクラックからは碧く輝くラインが目を引く純白の鎧が現れた。鎧はそのまま白銀へと装着される。

 白銀に鎧が装着された瞬間、白銀の体に強烈な力が流れ込む。

 

 「っ!グアアアア!!」(白銀)

 

 その力の強大さに白銀が痛みの叫びをあげる。

 ウィザードが駆け寄ろうとするが白銀はそれを手で静止する。

 

 (俺の強さが何なのか分からない。だけど、この程度の痛みはどうってことない!!)(白銀)

 

 白銀=一夏は全身に力を入れて、気合を発する。

 

 「ハアッ!」(白銀)

 

 白銀の気合の声が響くと鎧の各部が展開、白銀の背部には光輪を模したパーツが現れた。その姿は正しく神の名にふさわしい神々しいものだった。

 

 「さあ、行くぜ。」(白銀)

 

 白銀はバニシングブレードの剣先をガルグイユとドードに向けた。




 刻一刻と迫るアーク覚醒の時。新たな力で戦う白銀、最強の力を使うウィザードの前にファントム=リッチが姿を見せる。
 魔界城へと戦いの場を移し、激しい戦いを繰り広げる仮面ライダーたちとレジェンドルガ。神話の怪物が真の力を発揮して、その猛威を振るう。


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仮面ライダー輝龍 第20話

 皆さん、お待たせして申し訳ございませんでした。新年(始まって1か月が経過してしまいましたが)1発目、どうぞ!


side三人称

 ガーゴイルレジェンドルガ=ガルグイユ竜人態、マンドレイクレジェンドルガ=ドード巨人態を前に仮面ライダー白銀ゴッドエナジーアームズ、仮面ライダーウィザードインフィニティ―スタイルが並び立つ。

 

 「行くよ、ドード。僕達の王に愚か者の命をささげるよ!!」(ガルグイユ)

 

 ガルグイユは周囲を自身に有利な水中環境へと変化させて白銀とウィザードに襲い掛かる。

 ドードは巨大な拳を白銀とウィザードに振り下ろした。

 白銀は向かってくるガルグイユに対して、ゲネシスドライバーを操作する。

 

 ≪サンダーゴッドエナジースカッシュ!≫

 

 バニシングブレードに雷が走り、剣先をガルグイユに向ける。その瞬間、剣先から青白い雷がガルグイユに向かって放たれた。

 

 「何!?グアッ!!」(ガルグイユ)

 

 雷を胸に受けたガルグイユを足を止めてしまう。そこへ白銀は距離を詰めてバニシングブレードを振りかぶり、振り下ろした。

 ガルグイユはバニシングブレードの刃を掴み、攻撃を止める。

 

 「調子に乗るなよ、人間!!」(ガルグイユ)

 「ここでお前たちを倒す!!」(白銀)

 

 白銀とガルグイユの戦いが始まった時、ドードの拳がウィザードに叩きつけられた。かに見えたがダイヤモンドのような輝きを放つインフィニティ―スタイルの防御力の前では巨大化したドードと言えど傷一つ付けることは出来なかった。

 

 「さあ、ショータイムだ。」(ウィザード)

 

 ウィザードはインフィニティ―リングを再度読み込ませて、高速移動を発動する。

 ウィザードは高速移動の中でドードの体を幾度も切り刻んだ。

 植物でできたドードの体は幾つもの断片に分かれてしまう。だが、ガルグイユが生成した水を吸収することで即座に再生、さらに巨大化する。

 

 「厄介な相手だな。」(ウィザード)

 

 ウィザードはそれでも引くことなく、マントを翻してアックスカリバーを構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 輝龍バハムートアームズはマミーレジェンドルガ=ムンミヤと戦っていた。

 光龍剣と龍炎刀・陽炎の二刀流で戦う輝龍。バハムートアームズの特性から強力なパワーを誇るムンミヤの攻撃を受け止めながら、力強く振るう二刀流でムンミヤにダメージを与えていく輝龍。

 

 「むう。その姿は前には見なかったな。」(ムンミヤ)

 「こけおどしと思ったのか。」(輝龍)

 「いや。その程度ならば、俺を倒せんぞ。」(ムンミヤ)

 

 ムンミヤは全身の包帯を伸ばして輝龍を拘束しようとする。

 輝龍は向かってくる包帯に対して戦極ドライバーを操作する。

 

 ≪ソイヤ!バハムートスカッシュ!!≫

 

 光龍剣と龍炎刀・陽炎にエネルギーが集まり、輝龍はX字の斬撃を放つ。

 光の斬撃波は包帯を切り裂いていく。

 

 「その程度では、俺を倒せないと言ったはずだが。」(ムンミヤ)

 

 ムンミヤの言葉を証明するかのようにムンミヤの包帯はバラバラになっても輝龍に向かって飛んでいく。

 バラバラになった包帯は輝龍に巻き付き、動きを封じる。

 

 「これで終わりだ。」(ムンミヤ)

 

 ムンミヤはそう言って輝龍の体を押しつぶそうとする。だが、巻き付いた包帯は一切びくともしなかった。

 

 「フッ!!」(輝龍)

 

 輝龍は渾身の力で包帯を引きちぎる。さらに、そこから駆け出してムンミヤとの距離を一瞬で詰めた。密着するその距離でムンミヤを蹴り上げる。

 宙高く浮かび上がるムンミヤは包帯を伸ばして空中で体勢を立て直した。その間、輝龍は光龍剣と龍炎刀・陽炎を合体、光炎龍剣・オオダチモードを構える。

 ここまでの戦いでムンミヤは輝龍が並大抵の相手ではないことに確信を得た。

 

 「ならば、俺の真の姿を見せてやろう!」(ムンミヤ)

 

 ムンミヤは顔を隠している包帯を掴むと力任せに包帯を引きちぎった。その次の瞬間、ムンミヤの体は包帯を引きちぎる。包帯の下にあったのはマミー=ミイラを連想する乾燥した姿では無かった。

 

 「我が真の名はオシリス。冥府の力を見せてやろう。」(ムンミヤ=オシリス)

 

 その姿は褐色の肌をした筋骨隆々の姿をした壮年の男性だった。ムンミヤ、真の名はエジプト神話の冥府神と同じ名を持つ存在だった。

 ムンミヤ=オシリスは右手に身の丈を超える大鎌を手にする。

 輝龍は光炎龍剣・オオダチモードを構え、ムンミヤ=オシリスと対峙する。

 ムンミヤ=オシリスが大鎌を勢いよく振るう。

 輝龍は大鎌を光炎龍剣で防ぐ。

 速さと重さを兼ね備えた大鎌の一撃は輝龍を後退りさせるほどの威力があった。

 

 (かなりのパワーだ。防ぐので手一杯だ。)(輝龍)

 

 繰り出される攻撃をいなしつつ、輝龍は隙を伺う。

 

 「ムウン。」(ムンミヤ=オシリス)

 

 ムンミヤ=オシリスは大鎌に力を込める。

 大鎌の刃が青白く輝き始めた。

 輝龍は大鎌の様子を見て、相手が大技を繰り出そうとすることを察知する。

 ムンミヤ=オシリスは大鎌を大きく横なぎに振るう。大鎌の刃から青白い光の大鎌が輝龍に向かって飛んで来た。

 輝龍は光の大鎌を咄嗟に避ける。

 光の大鎌はそのまま近くにあった車を両断、街路樹を切り裂き建物に大きな傷を付けた。

 光の大鎌を受けた街路樹はその次の瞬間には急激に枯れていき、最後には朽ち果てて砂にまでなってしまった。

 輝龍は街路樹の様子を見て、今現在最強の姿であるバハムートアームズでもただでは済まないだろうということを察した。

 

 「我が真の力、命あるものから命を奪い、命なきものに命を与える。レジェンドルガの中でも俺だけが有する力だ。」(ムンミヤ=オシリス)

 「なる程、さっきの攻撃は樹木から命を奪ったということか。」(輝龍)

 

 輝龍はムンミヤ=オシリスの能力がどういうカラクリか別としてかなりの脅威であることを理解した。だが、対処法が一切ない訳ではない。

 

 「それでも、この戦場は俺達仮面ライダーが勝ち取る。」(輝龍)

 「ほざけ。」(ムンミヤ=オシリス)

 

 輝龍のセリフを聞き、ムンミヤ=オシリスが大鎌を大きく振りかぶる。

 輝龍は光炎龍剣・オオダチモードを構え直す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「私達レジェンドルガに似た雰囲気を感じるわ。あなたのその姿、何かしら。」(ゴルゴン)

 「それを答えると思っているの?」(ヴァルキリー)

 

 ヴァルキリーリヴァイアサンアームズはゴルゴンと対峙する。

 ゴルゴンはヴァルキリーの新たな姿からどこか自分たちに似たものを感じた。

 ゴルゴンがリヴァイアサンのことを聞いていることを察したヴァルキリーはそれに対して答えるつもりはなかった。

 

 (万夏、あの相手は私達ファントムに近しい存在です。神話の中で語られる存在、人の恐怖が具現化した存在でしょう。)(リヴァイアサン)

 (でも、相手はファントムなんて言ってないけど。)(ヴァルキリー)

 (種としてくくる名前に意味はありません。私から忠告するのはあなたが対峙している相手はファントムの中でも最上位に位置する者たちと同等の力を持っています。油断しないで。)(リヴァイアサン)

 (うん、大丈夫。)(ヴァルキリー)

 

 精神内でリヴァイアサンと会話するヴァルキリーは改めて自分のなすべきことを確認する。

 

 「さっさとあなたを倒す。あなたの疑問に答える気もないし、あなたたちの王も私達が倒す。」(ヴァルキリー)

 

 手に持った長剣リヴァイアガンソードを持ち直してゴルゴンに言い放つヴァルキリー。

 

 「生憎だけど、それは出来ないわ。私の目に写ったものは全て石になって死んでしまう、あなたも石となって死ぬのよ。」(ゴルゴン)

 

 そう言うとゴルゴンの姿が変化を始めた。頭部から無数の蛇が生えていく。それだけではなく、ゴルゴンの下半身が巨大な蛇のものへと変化した。

 変化が終わった次の瞬間、ゴルゴンの頭部から生えている無数の蛇がヴェルキリーに向かって襲い掛かった。

 迫りくる蛇をリヴァイアガンソードで切り裂くヴァルキリー。そこへ、ゴルゴンが両目を大きく見開いた。

 ゴルゴンの両目から光線が放たれ、ヴァルキリーに向かって光線が走っていく。

 咄嗟にヴァルキリーは後方へジャンプしてゴルゴンの光線を躱す。

 ゴルゴンの光線が当たった場所はコンクリートも車も、建物も石へ変化した。

 ゴルゴンはヴァルキリーを石へと変えるべく、その魔眼の視線をヴァルキリーへ向ける。

 ヴァルキリーはゴルゴンの視線を躱すべく、着地したビルの屋上を駆けだす。

 ビルからビルへ飛び移り、ゴルゴンの視線を躱す。

 

 (あの目から出すレーザーに当たると危ない。他にどんな力を持っている分からないから。)(ヴァルキリー)

 

 ヴァルキリーは一気に勝負をつけるために屋上から飛び降りた。

 落ちる中でヴァルキリーはリヴァイアガンソードをライフル型のガンモードに変形させる。そして、

 

 ≪カモン!リヴァイアサンオーレ!≫

 

 戦極ドライバーを操作、リヴァイアガンソードの銃口が蒼く輝き始める。

 ゴルゴンは屋上から飛び降りたヴァルキリーに頭部から生えている無数の蛇を勢いよく向かわせる。それだけでは無く石化の視線もヴァルキリーに向ける。

 襲い掛かる無数蛇と石化の視線、それに対してヴァルキリーはエネルギーがチャージされたリヴァイアガンソードの引き金を引いた。

 銃口から放たれた蒼い閃光は無数の蛇を切り裂き、石化の視線を打ち消していく。

 蒼い閃光が自身の視線を容易く打ち消したことからゴルゴンは咄嗟に身を翻して躱す。

 リヴァイアガンソードから放たれた閃光はゴルゴンの頭部から生えている無数の蛇の髪を焼き、道路を穿った。

 

 「私の髪を、よくも!!」(ゴルゴン)

 「そんなに大事な髪なら今度から帽子を被って来れば!」(ヴァルキリー)

 ≪カモン!リヴァイアサンスカッシュ!≫

 

 ヴァルキリーは着地するや否やゴルゴンに向かって飛び掛かった。

 ロックシードから供給されたエネルギーを右足に集め、延髄斬りのフォームを空中でとるヴァルキリー。

 ヴァルキリーの必殺技サファイアレッグ、その強化技であるエンプレスサファイアレッグをゴルゴンに放つ。

 ゴルゴンは石化の視線をヴァルキリーに向けるも、ヴァルキリーのエンプレスサファイアレッグがその視線を切り裂いていく。

 ゴルゴンは咄嗟に蛇の集めて楯とする。

 エンプレスサファイアレッグが蛇を切り裂いていく。

 ゴルゴンは盾にした蛇によって直撃を免れており、蛇の髪は三分の一程斬られていた。

 攻撃を防がれたヴァルキリーは着地するとすかさず攻撃を続ける。

 始まった戦いは激しく街中を荒廃した戦場へと変えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、魔界城最深部にあるアークが眠っている石棺の前ではファントム=リッチがアーク覚醒の儀式を進めていた。

 

 「フン、バカな奴らめ。転化した人間などを使うものか。そいつらはあくまで俺の魔力源だ。そして、ここで眠っている奴の力を全て俺様の物にしてやる。」(リッチ)

 

 リッチが杖を振るとレジェンドルガへと転化した人々の魔力が集まってくる。

 集まって来た魔力はリッチに吸収されていく。

 

 「指輪の魔法使いめ。今度こそお前の最期だ。」(リッチ)

 

 リッチは増幅した魔力を使い、石棺の中で眠っているアークの力を吸収する。

 

 「フハハハハハ!俺様の思惑通りだ!さあ、全ての力を俺様に寄越せ!」(リッチ)

 

 石棺から黒い煙が沸き上がりリッチへ吸収されていく。だが、吸収してもそれが終わる兆しはなく、吸収しているリッチは吸収している中で自身の力が強化されていないことに気付く。

 

 「なんだ、一向に力を感じないぞ。」(リッチ)

 

 何かがおかしいことに気付いたリッチ。そのリッチに石棺から巨大な三叉の槍、アークトライデントが勢いよく飛び出して腹部を貫いた。

 

 「がああっ!!」(リッチ)

 

 そのまま壁に磔となるリッチ。杖を落とし、自身の腹部に刺さったアークトライデントを抜こうとする。だが、刺さったアークトライデントはびくともしなかった。

 そんなリッチの目の前でアークが眠る石棺が大きく震えだす。そして、石棺から血の底から響くような声が響いて来た。

 

 【我の力を奪おうとした不届き者よ。貴様程度ではレジェンドルガの王である我の力を奪うことなど出来んよ。】(アーク)

 

 吸血鬼、狼男、半魚人、人魚、人造人間、小鬼、雪男、小人、竜など伝説上の魔獣の元になった存在が居た世界において最も恐れられた種族が居た。世界各地に伝わる様々な魔獣・幻獣・神獣の伝承の元となった彼らは他の種族を自らの同族へ変化させてしまうことから他種族から非常に恐れられた。

 レジェンドルガ、伝説をその名に関する彼らは本来の歴史であれば吸血鬼=ファンガイアとの戦争の末に絶滅した。

 この世界にやって来た彼らはその戦争で勝った世界よりやって来たのだ。その世界のレジェンドルガの王アーク、石棺の中で眠りについていた彼こそが十三異界覇王の一角を担っているのだ。故に、リッチではその力を奪うことはそもそも出来なかったのだ。

 

 【そもそもが魔術師の成れの果てでは大したことも出来ん。】(アーク)

 「なぜだ!?お前はずっと眠っていたはずだ!!」(リッチ)

 【眠っていたさ。その眠りを邪魔したのだから起きるのは当然だろう?】(アーク」

 「何!?」(リッチ)

 【全く、ゴルゴンたちは貴様に何も言っていないのだな。そもそも、我に覚醒の儀式は不要。この世界で生きるに十分な力を蓄えたら自然と起きるのだ。】(アーク)

 「だから、俺様はお前の目覚めを早めるためにと!」(リッチ)

 【それが不要なのだよ。そもそも、我は外から力を吸収することは出来ん。我の力は既に完成しておるのだ。】(アーク)

 

 アークの言葉に驚愕するリッチ。ここまでレジェンドルガたちを言いくるめてきたのが結局のところは無意味だったのだ。

 

 【力が溜まり切ったとは言え、最悪の目覚めだ。その責、その身でもって償え。】(アーク)

 

 アークがそう言うとアークトライデントはリッチが突き刺さったまま部屋の壁を崩していく。

 

 「ギャアアアアアア!!」(リッチ)

 

 壁へあらん限りの力で押し込まれる圧痛、腹部から走る激痛によって叫び声をあげるリッチ。

 リッチはそのまま魔界城の外へ押し出される。

 アークトライデントの進行方向はそのまま地面へと進む、と言うよりも落ちていく。激しい戦いが繰り広げられる真っ只中にリッチは地面に磔となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side一夏=白銀

 レジェンドルガたちと戦いをする中で上にある城から何かが落ちてきた。そいつはミイラのような姿をしていて、腹を俺の背丈をはるかに超える巨大な槍に貫かれていた。

 

 「リッチ!」(ウィザード)

 

 晴人さんが地面に磔になっている奴を見て、そう言った。俺から見たそいつは息も絶え絶えに見える。

 

 「まさか、俺様の計画が!?」(リッチ)

 

 巨大な槍を引き抜こうとしているところに俺達の頭上の城がゆっくりと落ち始めてきた。

 

 「何が起きているんだ。」(白銀)

 

 徐々に落ち始めている城を前に他の皆が逃げ始めている。

 

 「一夏!逃げるぞ!!」(輝龍)

 

 大樹の声を聞いて、俺も逃げ始める。俺の背後でバキガキと言った激しい音が響く。

 

 「バカな、バカな!辞めろ!」(リッチ)

 

 後ろを振り返るとリッチは城の下敷きとなって地面の中へ消えていった。それを気にすることは無く、俺は走る。

 大樹たちと合流すると空中にあった城が俺達の前でそびえたっていた。

 

 【この世界の人間の戦士たちよ。我はアーク、13の魔族の頂点に立つレジェンドルガの王である。我が臣下、ゴルゴン、オシリス、ガルグイユ、ドードを前に怯まぬその勇猛に賞賛を送ろう。そんな貴様らにこの我自身の手で討ち滅ぼしてやろう。】(アーク)

 

 城から低く響く声が聞こえてくる。俺達が戦っていたレジェンドルガたちも城の元へ集まる。

 

 【さあ、あがけ。あがいて見せろ。】(アーク)

 

 俺は城を睨みつける。その隣に大樹が並ぶ。

 

 「やろうか、兄弟。」(輝龍)

 「おう。行くぜ、親友。」(白銀)




 遂に覚醒したレジェンドルガたちの王、アーク。魔界城の中へ入っていった仮面ライダーたちを待ち構えていたのは悠久の時を生きた魔王である。

 【行くぞ、アークキバット。】
 「さ~て、行きますか。ドロン、ドロン。」

 巨大な鎧を纏う漆黒の悪魔に白銀が立ち向かう。

 「行くぜ!」


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仮面ライダー輝龍 第21話

side三人称

 レジェンドルガたちの居城、魔界城。その中へ仮面ライダー白銀ゴッドエナジーアームズ、ウィザードインフィニティースタイルが入るべく、駆け出した。

 白銀とウィザードの行く先をゴルゴン、オシリス、ドード、ガルグイユが立ちはだかる。だが、そのレジェンドルガの前に輝龍とヴァルキリーが出てきた。

 

 「大樹!万夏!」(白銀)

 「一夏はそのまま行け!!」(輝龍)

 「私達は大丈夫!!」(ヴァルキリー)

 

 輝龍とヴァルキリーを案ずる白銀だが二人は力強く先へ行くように言った。

 白銀は一瞬踏みとどまるもすぐに魔界城の中へ入っていった。

 

 「無事でいろよ!!」(白銀)

 

 白銀の言葉に返事を返す代わりにレジェンドルガたちへ攻撃する輝龍とヴァルキリー。

 背中を預け合う輝龍とヴァルキリー、その二人をゴルゴンたちは囲む。

 

 「僕たち4人を相手にどこまでやれるかな。」(ガルグイユ)

 「そう簡単に死ねるとは思わないことね。」(ゴルゴン)

 「お前たち二人をまずは我らは王アークへの手土産としよう。」(オシリス)

 

 輝龍とヴァルキリーを血祭りにあげるべくそれぞれの武器をぎらつかせるレジェンドルガたち。絶体絶命に思えるその状況に、遠くで転化した人々を抑えるメイジが、グールを倒しているビーストが輝龍とヴァルキリーの元へ行くとする。

 

 「大丈夫です。あの二人なら問題ないです!」(ロード)

 「確かに。あそこのカップルは問題ないな。」(エグゼリオン)

 

 メイジとビーストを呼び止めたのはロードとエグゼリオンだった。その二人は純粋に輝龍とヴァルキリーを信頼していた、二人ならば目の前の敵を倒せることを。

 

 「ねえ、どう?」(ヴァルキリー)

 「何が?」(輝龍)

 

 強敵に囲まれている状況でいたって普通に話し始める輝龍とヴァルキリー。だが、武器は常に使えるようにしており、二人の視線は目の前にいる敵に注がれていた。

 

 「この人たち、私達を八つ裂きにするって。」(ヴァルキリー)

 

 ヴァルキリーの言葉に対して輝龍は振り返らずに口を開いた。

 

 「されるつもりはない。」(輝龍)

 

 輝龍のその言葉は普段話しているような調子だった。だが、ヴァルキリーはその言葉を聞いて仮面の奥では笑みを浮かべていた。

 

 「じゃあ、行っちゃお?」(ヴァルキリー)

 「ああ。」(輝龍)

 

 ヴァルキリーの言葉を皮切りに輝龍とヴァルキリーは同時に走り出した。

 

 輝龍は光炎龍剣・オオダチモードを振るい、ガルグイユとドードを同時に叩き切った。

 ヴァルキリーはリヴァイアガンソードでゴルゴンを撃ち抜きながら、オシリスに跳び蹴りを当てる。

 圧倒的な数のアドバンテージをものともせずに戦う二人に一瞬怯むレジェンドルガたち。

 レジェンドルガたちが体勢を立て直す間を与えずに猛攻を仕掛ける輝龍とヴァルキリー。その様子を見るロードがメイジとビーストに言った。

 

 「あの二人、僕たちの中で最強ですから。」(ロード)

 

 最強、その言葉を示すように輝龍とヴァルキリーは4体のレジェンドルガたちを圧倒する。

 追い詰められ始めたレジェンドルガたち。

 ドードは自身の一族の特徴である聞いた者を死に追いやる叫び声を上げた。

 

 「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」(ドード)

 

 ドードの動きを察したヴァルキリーはゴルゴンとオシリスを蹴りで牽制、ドライバーを操作してリヴァイアガンソードにエネルギーをチャージする。すぐさま、銃口をドードに向けて引き金を引いた。

 リヴァイアガンソードの銃口から放たれた青色の閃光はドードの顔面を貫き、その叫び声を途絶えさせた。

 ドードの動きが止まった一瞬を逃さずに輝龍が動き出した。既に必殺の準備を終えており、黄金に輝き、煌炎が揺らめく光炎龍剣・オオダチモードを上段に構える。

 ドードに向かって天高くジャンプした輝龍は一気に光炎龍剣・オオダチモードを振り下ろした。

 ドードは頭頂部から一刀両断され、切り口から黄金の炎に焼かれ消滅した。

 

 「ドード!!」(ガルグイユ)

 

 相棒が倒されたガルグイユは輝龍に向かって襲い掛かる。

 大量の水を吐き出し、自身が得意とする水中で攻撃を仕掛けるガルグイユ。

 輝龍は光炎龍剣・オオダチモードを分裂させて、光龍剣と龍炎刀に戻す。

 水中で襲い掛かるガルグイユに対して両手に持った2本の剣で的確に対処する輝龍。

 水中という環境でも十全、アームズの特性で常に高まり続ける力を遺憾なく発揮する輝龍。

 

 「このまま死ね!!」(ガルグイユ)

 

 ガルグイユは鋭い爪をぎらつかせて輝龍に向かって突進する。

 輝龍は戦極ドライバーを操作して、光龍剣と龍炎刀に炎を纏わせる。水中であっても曠劫と燃え上がる炎、炎の刃はガルグイユの体にX字の切り傷を深々と付けた。

 

 「この、人間風情がっ!」(ガルグイユ)

 

 その言葉を残してガルグイユは爆散した。

 ガルグイユが死んだことで周囲の環境が元に戻る。

 

 「こっちは負けられないんだ。人間を舐めるな。」(輝龍)

 

 その言葉には並み居る強敵を打ち破って来た輝龍のプライドが込められていた。

 輝龍がガルグイユと戦闘を行っていたその時、ヴァルキリーはゴルゴンとオシリスと言う強敵を相手に一歩も退くことなく、それどころかたった一人で2体のレジェンドルガを圧倒していた。

 ゴルゴンの石化の視線を、オシリスの命を刈り取る大鎌を軽々と躱し、手に持っているリヴァイアガンソードをソードモードへ変形して斬りつける。

 見る者を魅了する舞を披露するヴァルキリー。だが、その舞は対峙している2体には自分達を死へ誘う舞踊である。

 攻撃は当たらず、相手からの攻撃ばかりが自分たちに当たっているという事実に焦りを見せ始めるゴルゴンとオシリス。

 ヴァルキリーは戦極ドライバーを操作して、リヴァイアガンソードの刃にエネルギーを集中させる。

 青白く輝く刃はオシリスとゴルゴンに横一文字の深い切り傷を付けた。

 オシリスとゴルゴンは傷口を抑えながら苦悶の声を上げる。

 

 「そんな、私達が!?人間なんかに!!」(ゴルゴン)

 「最早、これまで、か。」(オシリス)

 

 苦悶の声が断末魔の叫び声へと変わり、2体は爆散した。

 4体のレジェンドルガが倒されたことで転化された人々が元に戻る。

 敵が倒れたことで一息つくヴァルキリー。そこに輝龍が駆け寄る。

 

 「大丈夫?」(輝龍)

 「うん、平気。」(ヴァルキリー)

 

 ひとまず、お互いの無事を確認する二人。

 輝龍=大樹は魔界城の方へ視線を移す。どこか胸中にざわめきを覚える彼はその内部で行われているであろう白銀=一夏と十三異界覇王アークの戦いを考えていた。

 

 「前のシャイニングエナジーロックシードと言い、今日使ったあのロックシード。あいつ、一体どこで。」(輝龍)

 

 小さく呟いたその言葉、ここまでの戦いでの白銀の強化形態についてだった。出所が不明なロックシード、ここまでの生活や戦いでそのことを詳しく聞くことが無かった。

 

 「大樹、どうしたの?」(ヴァルキリー)

 

 魔界城を見続ける輝龍にヴァルキリーが言葉を掛ける。

 

 「あ、いや。大丈夫。まずは、元に戻った人たちを避難させよう。」(輝龍)

 

 輝龍はそう言うと人々の避難を進めるロードたちの方を見る。

 胸のざわめきを抱えたまま輝龍は一度魔界城から視線を外した。

 

 

 

 

 

 輝龍とヴァルキリーがレジェンドルガを撃破した時、白銀とウィザードは魔界城の最深部へ足を踏み入れた。

 

 「すげえ。」(白銀)

 「随分と広いな。」(ウィザード)

 

 そこは巨大な玉座がある大広間であった。

 白銀とウィザードは敵が現れるのを想定して、武器を構えたまま周囲を警戒する。

 その時、広間の床が大きく開き、そこから巨大な石棺が現れた。

 白銀とウィザードが見る中で石棺が開いた。

 石棺から何者かが現れ、白銀とウィザードの目の前に姿を見せた。

 

 「ッ!」(ウィザード)

 「なっ!」(白銀)

 

 白銀とウィザードの前に現れたのはなんと一夏と瓜二つの人物だった。

 

 「よくぞ、来た。レジェンドルガの王、アークの力を見せよう。アークキバット!」(アーク)

 

 アークの呼びかけに応じたのは機械でできたコウモリ、アークキバットだった。

 

 「や~い、行きますか~。ドロン~ドロン~。」(アークキバット)

 

 アークキバットはアークの腰に召喚されたベルトにさかさまになってぶら下がる。すると、アークの体が宙に浮き始める。

 

 「変身。」(アーク)

 「ヘンシン!!」(アークキバット)

 

 漆黒の巨大な鎧がアークを包む。黄金の複眼から伸びるのは漆黒の角、胸にはすべてを食らう煉獄の大口を封じる鎖が見る者に悪魔を連想させる。

 変身が完了したアークは広間にあった玉座に腰を下ろした。

 様々な魔獣、神獣の伝承の元となった魔族レジェンドルガ。

 レジェンドルガを統べる王、仮面ライダーアーク。十三異界覇王、煉獄魔皇王仮面ライダーアークがこの世界に顕現した。

 

 【さあ、人間の勇者よ。死力を尽くせ、その上で惨たらしく死ね。】(アーク)

 

 地の底から響くような声に変化したアーク。玉座に座ったまま、白銀とウィザードに力の一端を見せる。

 複眼を光らせると白銀とウィザードの足場から赤黒い爆炎を発生させる。

 白銀とウィザードは防御するものの間髪入れずにアークは次なる力を見せる。周囲に霜が降りると瞬く間に氷柱が出来上がり、白銀とウィザードの動きを封じる。

 

 「っ!これはどうだ!!」(白銀)

 ≪ファイヤーゴッドエナジースカッシュ!≫

 

 白銀はゲネシスドライバーを操作、バニシングブレードから高熱火炎を発生させて氷柱を切り裂く。

 

 【なる程、これはどうだ。】(アーク)

 

 今度は、アークはアークトライデントを召喚。召喚したアークトライデントを操り、白銀とウィザードを攻撃する。

 空中を不規則な軌道で襲い掛かる巨大な三叉槍に対して、ウィザードは防御魔法のディフェンドを発動する。魔法陣から煌めく結晶が現れ、アークトライデントを防ぐ。だが、アークトライデントが当たった瞬間、魔法陣を容易く突破してしまった。

 白銀とウィザードは瞬時に回避行動を取った。そこへ、アークは無数の雷を二人に降らせる。

 

 「っ、ぐっ!」(ウィザード)

 「がっ!!」(白銀)

 

 防御行動を取ることが出来ず、アークの雷をまともに受けてしまった白銀とウィザード。いかに最強の姿であるとは言え、小さくないダメージを受けてしまった。

 白銀とウィザードは膝を着いて、荒く肩で呼吸する。

 

 【どうした?まだ、小手調べだぞ。】(アーク)

 

 ダメージを受けている白銀とウィザードを見下ろすアーク。

 玉座に腰かけ、頬杖を突くその姿は目の前で対峙している二人の仮面ライダーを格下として見下しているように見える。

 事実、ここまでのアークの攻撃は彼が言ったとおりにまだ小手調べである。だが、その小手調べは数多のファントムを倒してきた仮面ライダーウィザードですらも、その最強形態であるインフィニティースタイルの防御力でもってしても決して小さくないダメージである。

 

 「まさか、これで小手調べとはね。恐れ入るよ。」(ウィザード)

 【お前たち、人間にとっては必殺であろうが我には精々そよ風程度のものだ。それに、まだ全力を出してはいないのだろう?】(アーク)

 

 全力を出していない、アークのその言葉に奮起したのは意外にもこの場で最も若い白銀だった。

 仮面の下にあるその顔は苦悶の表情を浮かべているも右手に持ったバニシングブレードをしっかりと握り閉める。

 

 「ああ。まだ、全部じゃないぜ。」(白銀)

 

 そう言った白銀はバニシングブレードをアークに向ける。

 アークはアークトライデントを操り、白銀を攻撃する。さらに、雷、巨大な氷塊、火球を次々と白銀に向けて襲わせる。

 白銀は襲い掛かるアークの攻撃を躱し、切り裂き、その足を決して止めずにアークに迫る。

 

 「うおおおおお!!」(白銀)

 

 決して折れることのない強い意志を持って白銀は玉座に座るアークにバニシングブレードを振り下ろす。だが、バニシングブレードの刃はアークの手前で目に見えない壁で阻まれてしまう。

 

 「くっ!!」(白銀)

 【ほう。中々の気概だな。だが、気概だけでは我に傷を付けることは出来んぞ。】(アーク)

 「それはどうかな?」(ウィザード)

 

 アークの言葉にウィザードが言葉を発する。

 

 ≪チョーイイね、キックストライク。サイコー!!≫

 

 必殺魔法、キックストライクを発動したウィザードはシャイニングストライクウィザードを放つ。

 魔法陣によって強化された右足が見えない障壁と激しくぶつかる。そこへ、白銀はシルバーエナジーロックシードをバニシングブレードにセットする。

 バニシングブレードの刃が白銀に輝き、見えない障壁とぶつかって火花を散らす。

 白銀のバニシングストライザーとウィザードのストライクウィザードが見えない障壁を軋ませ始める。

 見えない障壁が軋み始めると白銀のバニシングストライザーが、ウィザードのストライクウィザードがぶつかっているところから亀裂が走り出す。

 亀裂が生じたことで白銀とウィザードはより力を込める。その結果、アークを守っていた見えない障壁は見事に粉々に砕け散った。

 

 「はあああ!」(ウィザード)

 「たあああ!」(白銀)

 

 白銀とウィザードはそのままアークに向かって行く。

 アークは白銀とウィザードの攻撃を躱すのではなく、そのまま玉座に座したまま受ける。

 ウィザードのストライクウィザードが、白銀のバニシングストライザーがアークの体に炸裂する。

 強力な必殺技の余波で玉座は大破した。だが、そこに座していたアーク自身は無傷と言って良い程に健在だった。

 

 【なる程。我が防壁を突破するか。そう来なくてはな。】(アーク)

 

 そう言うとアークはアークトライデントを右手に握り、それを横なぎに大きく振るった。

 白銀とウィザードはそれを躱す。だが、アークは立ち上がり、間髪入れずにアークトライデントを振るう。

 その巨体から想像できない俊敏な動きでアークトライデントを振るうアーク。

 巨大な金色の三叉槍の刃が白銀とウィザードを襲う。衝撃の余波だけでダメージを受けてしまう程に、強力な攻撃が繰り出されていく。

 アークは先程も使っていた火炎や氷、雷などの攻撃を放っていく。

 多種多様な必殺の攻撃、レジェンドルガを統べる王であるアークの力は絶大だった。

 

 「まだまだ!」(白銀)

 ≪グランドゴッドエナジースカッシュ!≫

 

 白銀は大地の力を発動し、巨大な岩石を放ってアークに対抗する。白銀の攻撃もアークに劣るものでは無く、真っ向からぶつかり合って相殺されるほどである。

 ウィザードも多種多様な魔法を使い、アークに肉薄する。

 

 【流石だな、人間の勇者よ。我が居た世界の人間も魔族の中ではもっとも弱かった。だが、時に他の魔族を討つほどに予想もしないことを起こす存在だった。】(アーク)

 「それならどうして人間と共存しない!!」(ウィザード)

 【共存して、どうする。人間は他の魔族を追いやった。そこには共存という選択肢などなかった。所詮は弱肉強食、どちらかが滅ぶまで戦うしかない。】(アーク)

 

 ウィザードの言葉にアークが答える。

 

 【貴様らの冥土の土産に我の目的を聞かせてやろう。我は、レジェンドルガを統べる王として我が一族を再興する。我を含めた5人のみとなったレジェンドルガを再興することこそが我の悲願である。】(アーク)

 「あんた、自分の仲間をよみがえらせるのか。」(白銀)

 【ああ。故に我はこの戦いを勝ち残る必要がある。我が悲願を達成するべく、貴様らにはその生贄となってもらう。】(アーク)

 

 アークの目的はこの世界にてレジェンドルガを再興すること、そのためにこの世界の人間全てを生贄にすることである。

 

 【強き者の生贄こそが我らの復活に必要だ。さあ、我が同胞の糧となれ!!】(アーク)

 

 アークはアークトライデントを広間の床に突き刺す。それにより広間の床に大きな亀裂が走り、魔界城を崩壊させていく。

 亀裂が広がると、そこには巨大な眼を持つ怪物、月の眼が出現した。月の眼は植物の蔦によく似た触手を白銀とウィザードに伸ばす。

 白銀とウィザードは迫りくる触手を武器で切り裂いていく。それを見て、アークは鍵の模様が彫刻された笛、ウェイクアップフエッスルを手に持つ。

 

 【さあ、アークキバット。我が力を開放しよう。】(アーク)

 

 アークはフエッスルをアークキバットに吹かせる。すると、アークキバットの外装が剥がれ、基盤が露出したメカキバットへ変化する。

 

 「ゴートゥーヘル!!」(メカキバット)

 

 メカキバットのゴートゥーヘルによりアークの胸部にある鎖=カテナが砕け散る。胸の巨大な口を開き、アークは月の眼を吸収した。

 月の眼を吸収したアークの姿が刻一刻と変化していく。

 月の眼の触手が巨大な腕や翼となり、さらには全身を覆って行く。最終的には4本の巨大な角に、6枚の羽根、巨大な両腕を備えたまさに神とも悪魔と言える姿となった。

 

 【さあ、死ねえ!!】(アーク)

 

 アークは翼を広げて、空中からありとあらゆる天変地異を起こして白銀とウィザードを苦しめる。その力は圧倒的であり、先程までとは比べ物にならなかった。

 

 「どうすれば。」(白銀)

 「奴に弱点があれば違うんだけどな。」(ウィザード)

 

 本来の力を開放したアークを前に防戦一方の白銀とウィザード。ここで、白銀はアークの胸部にある月の眼に注目した。

 

 「あれを破壊すれば、内側から奴を倒せるかもしれない。」(白銀)

 

 白銀のその言葉にウィザードは奥の手である魔法を使うことにする。

 

 「それじゃ、ショータイムだ。」(ウィザード)

 

 ウィザードは胸部にドラゴンの頭部、両腕にドラゴンの爪、背中には翼、臀部には尻尾を有した金色の究極形態インフィニティーゴールドドラゴンへ変身した。

 

 「一夏君、俺の背中に乗ってくれ。一気にあいつの所まで行くぞ。」(ウィザード)

 「はい!!」(白銀)

 

 白銀を背に乗せ、空中へ舞い上がるウィザード。迫りくる火球、氷塊、轟雷を躱してアークの元へ到達する。

 アークの元へたどり着いた白銀はウィザードの背から飛び出し、アークへ迫る。

 白銀は空中でバニシングブレードにゴッドエナジーロックシードをセットする。

 眩い光を纏った刃をアークの胸部、月の眼へ突き立てる白銀。

 体内から全てを焼き尽くす光を感じたアークは苦しみ始める。そこへ、ウィザードが空中できりもみ回転をして突進する。

 ウィザードの攻撃はアークの胸部に深々と刺さり、その体内を貫通して巨大な穴を穿った。

 

 【くううう、見事だ。人間の勇者たちよ。強き者と戦う、レジェンドルガとして本望だ。無念は一族の再興を果たせないことだが。】(アーク)

 

 アークのその言葉を遮るように白銀は突き立てた刃を大きく横なぎに振るった。

 空中で真一文字に斬られたアーク、その漆黒の巨体を聖なる光によって爆散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 亡国機業アジト、そこにいるファブニールはアークが撃破されたことを察知する。

 

 「遂にこの時が来たか。この戦場、俺が勝ち取る。」(ファブニール)

 

 そう言うとファブニールはクラックを開き、戦場へ向かう。

 クラックを抜けるとそこには輝龍たち仮面ライダーが居た。

 ファブニールが来たことに気付いた彼は即座に臨戦態勢に入る。

 

 「さあ、行くぞ。」(ファブニール)

 

 ファブニールは黄金の果実による擬態を解き、仮面ライダー炎竜としての本来の姿を見せる。

 二つの世界の記憶を宿す大樹=輝龍と数多の並行世界を渡り歩いた大樹=炎竜のぶつかり合いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 炎竜シーズン2 仮面ライダー輝龍 十三異界覇王大戦編 第2章 龍王覚醒 アベンジャーズアッセンブル開始。




 十三異界覇王大戦編 第2章 龍王覚醒 アベンジャーズアッセンブル 開幕。
 激突する二人の大樹。激しい戦いを繰り広げる彼らの前に並行異世界より来訪したスーパーヒーローチーム、アベンジャーズが姿を見せる。
 並行異世界の彼らは仲間である炎竜を止めるべくこの世界へやって来た。


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仮面ライダー輝龍 第22話 十三異界覇王大戦編第2章 龍王覚醒アベンジャーズアッセンブル

side貴虎

 私の名は呉島貴虎。かつてはユグドラシルに所属し、ヘルヘイムからの侵略から人類を守るべくプロジェクトアークを推し進めていた。だが、葛葉紘汰、私が見下していたビートライダーズの青年が全てを変えた。私がいつの間にか諦めていたことを彼はやり遂げたのだった。

 今の私はかつてのユグドラシルに居た者達、あの時にこの街を守ったビートライダーズの彼らと世界を守るための組織であるヴァルハラを設立した。当時から私と共に戦って来た光実、鳳蓮らを始めとしたアーマードライダーらとユグドラシルから流出した技術の回収やインベスなどの対処を行って来た。その中で私はかつてユグドラシルに居た研究員である柏葉玲人と柏葉陽菜の行方を捜していた。

 彼らを捜索していたのは彼らの幼い息子である柏葉大樹君のことが気がかりだった。彼は幼くして全身の細胞が急速に壊死していく難病を患っていた。大樹君の治療はあくまで痛み止めほどにできず、夫妻は来る日も来る日もその術を探していた。私は前線に出ながらもそのことを知っていた。そして、彼らはオーバーロードの侵攻を前に町を去った。

 オーバーロードとの戦いが終わり、ヴァルハラを設立してほどなく私は柏葉夫妻の行方を捜し始めた。その後の足取りがなかなかつかめなかったのだが彼らがある町に住んでいたことがやっと判明した。だが、その時には夫妻は死亡しており、大樹君の身柄は夫妻の遺言から友人夫婦に引き取られていたことを知った。

 大樹君は私が知った時には余命幾ばくも無い状態だった。その時の彼は既に中学生になっていた。私はその点から夫妻は大樹に何らかの手段でヘルヘイムの物質を治療薬に精製、若しくは精製前のヘルヘイムの物質を彼に投与し続けたと考えた。そうでなければ、彼の回復の理由の説明が付かなった。

 私は光実とザックに大樹君に接触するように指示を出した。そこでさらに驚愕のことがあった。なんと大樹君は戦極ドライバーを使いアーマードライダーに変身、出現したインベスを撃破したのだった。さらに、彼はその後に出現したインベスを光実とザック君と撃破、ヴァルハラに来てもらった。そこで私は大樹君に対してどこか違和感を感じた。それをその場ではっきりさせることは出来ず、ヴァルハラを襲撃したインベスの対処に私と大樹君が対処した。そして、それから時間が経ち、ナイトと呼ばれる傭兵の襲撃を受けた大樹君は単独で撃退、その後に会った彼との会話から彼は、この世界に生まれる以前にアーマードライダー、仮面ライダーとして戦っていた。その彼はそこで親しいものの死を経験し、自分も戦いの場で死んだことを告白してくれた。

 しばらくの間、大樹君は戦いの場から距離を置いていた。だが、オーバーロードになったナイトとの戦いで再び彼はアーマードライダー、否仮面ライダーに変身して戦った。その後は、柏葉夫妻を殺害した犯人である兄勇吾の凶行を止めた。

 彼は世界を守った後はインベスの駆除に協力しながらも平穏な高校生活を送っていた。傍らに愛する恋人がいる彼の前に異世界からやって来たオーバーロードに匹敵する敵、十三異界覇王が現れた。各地で暴れる彼らを前に大樹君を筆頭とする若き仮面ライダーたち、フューチャージェネレーションズが戦っていた。

 私達の前に初めて現れた十三異界覇王、オーバーロードファブニールとの戦いに決着を着ける時が来たのだった。

 

 「光実。私も後から現地へ向かう。」(貴虎)

 

 東京に出現した十三異界覇王の撃破伝えられた直後にファブニールが姿を現したことが私に伝えられた。先に現地へ向かっていた光実とザック君に後から合流することを伝える。

 私は保管している戦極ドライバーを取り出すとトルキア共和国の事件で葛葉から渡されたカチドキロックシードを持つ。

 

 「遂に決戦ね。」(鳳蓮)

 「ああ、ここで奴を討つ。」(貴虎)

 

 私は先に待っていた鳳蓮と共にヘリに乗り、東京へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

side大樹

 俺の目の前で龍人のオーバーロードだったファブニールは、俺が前世とこの世界の最初のころの戦いで変身していた仮面ライダー炎竜の姿になった。

 オーバーロードとしての姿が掻き消えるように現れたその姿は、俺が変身していた頃よりも細かい傷が無数にあり、長く険しい戦いを続けていたことが窺い知れた。

 

 「さて、邪魔が入る前に終わらせるか。」(ファブニール=炎竜)

 

 そう言うとファブニールはクラックから複数のインベスを召喚する。インベスたちは仁藤さんと真由さんの方へ殺到する。

 ファブニール=炎竜は俺の方を向き、無双セイバーと竜炎刀を持つと一歩踏み出した。その瞬間、俺に当てられた強烈な殺気に反応して俺は咄嗟に変身した。

 

 ≪ドラゴンフルーツアームズ!竜王、オンバトルフィールド!≫

 

 俺は仮面ライダー輝龍に変身すると竜炎刀を鞘から抜く。その次の瞬間にはファブニール=炎竜は振るう無双セイバーと竜炎刀を俺に振り下ろした。

 俺は竜炎刀で炎竜の刃を受け止める。実際の処、性能は互角であるために受け止めることは難しくない。だが、炎竜の剣筋は目の前の相手を両断するという強い意志が感じられ、思わず後退りしてしまうほどだった。

 

 「大樹!!」(万夏)

 「っ!」(颯斗)

 

 俺の視界の両端で万夏と颯斗がロックシードとハートを構える。

 

 ≪ブルーベリーアームズ!マスケティアーオブサファイア!≫

 ≪ライダー!デッドヒートハート!≫

 

 ヴァルキリーに変身した万夏とロードに変身した颯斗が俺を援護するべく炎竜を攻撃する。

 万夏と颯斗の攻撃を躱して、俺と距離を取る炎竜。そこへエグゼリオンへ変身した陸が武器を持って炎竜に躍りかかる。

 陸が近づいたその瞬間、炎竜は陸の首を掴んだ。

 

 「ぐっ!!」(エグゼリオン)

 「フン!!」(炎竜)

 

 炎竜は陸を地面に叩きつける。

 俺と颯斗はそのまま炎竜に向かって走り出す。

 万夏は援護射撃で俺と颯斗をサポート。

 俺と颯斗は左右から炎竜を攻撃する。そこで炎竜から陸と距離を遠ざけることができた。

 一緒にレジェンドルガと戦っていた仁藤さんと真由さんは新たに現れたインベスの対処に追われていた。

 レジェンドルガを相手に激しい戦いを終えた直後の俺達には厳しい戦いだった。

 

 ≪ソイヤ!ドラゴンフルーツスカッシュ!≫

 

 炎竜は無双セイバーと竜炎刀にロックシードのエネルギーを集中させる。

 俺は無双セイバーと竜炎刀を合体、無双セイバーナギナタモードにロックシードをセットする。

 

 ≪ロックオン!1,10,100、1000!ドラゴンフルーツチャージ!≫

 

 炎竜が無双セイバーと竜炎刀を振るう。それに対して俺は無双セイバーナギナタモードを大きく横なぎに振るう。

 炎竜が放ったX字の斬撃と俺が放った真一文字の斬撃が空中で衝突する。

 衝突した斬撃は空中でともに爆発した。爆発の煙に紛れて俺はそのまま炎竜に向かって斬りかかる。

 煙を切り裂いたところ、そこには炎竜の姿はなかった。

 

 「煙に紛れて攻撃は悪くない。だが、焦り過ぎたな。」(炎竜)

 

 背後から聞こえた声に咄嗟に振り向く。その瞬間、竜炎刀と無双セイバーが振るわれた。

 無双セイバーで防ごうにも間に合わない、俺はアームズの最も硬い部分に炎竜の攻撃をわざと当てた。

 受けた攻撃はかなりのものだが受けるダメージを最小限に抑えることができた。

 

 「あそこから咄嗟にアームズの最も防御の高い部分に攻撃を当てさせたか。」(炎竜)

 

 炎竜は無双セイバーをガンモードに切り替えて、銃口を俺に向ける。そこへ颯斗と陸が炎竜を攻撃する。そこへ万夏も援護射撃を行う。

 万夏たちの攻撃を全く怯むことなく対処する炎竜。そこに全くの隙は無く、颯斗たちもかなり厳しいようだ。

 俺はバハムートロックシードを取り出す。

 

 

 

 

 

side三人称

 輝龍はドラゴンフルーツロックシードをバハムートロックシードに切り替えて、仮面ライダー輝龍バハムートアームズにアームズチェンジする。

 光龍剣と竜炎刀・陽炎を手にして、輝龍はロードとエグゼリオンの加勢をする。

 炎竜は輝龍が加わったことで四方向から攻撃を受けるも、それすらもものともせずに目の前にいる3人の仮面ライダーと応戦する。

 炎竜は攻撃の中で戦極ドライバーを操作、竜炎刀と無双セイバーを合体させて回転斬りを放った。

 攻撃をしている輝龍、ロード、エグゼリオンは炎竜の攻撃を受けてダメージを受ける。

 強化形態になっていた輝龍と咄嗟に回避したロードはダメージを抑えることが出来たが最も防御力の低いエグゼリオンは胸のライフゲージが3分の1を切っていた。

 

 「それが本気か。俺を止めたいならもっと本気で来い。それこそ、殺す気でな。」(炎竜)

 

 対峙する者全てを鏖殺せんとするその気迫、それを受けたロードとエグゼリオンは背筋が凍り付く感覚を覚えた。

 ロードとエグゼリオンはあまりの殺気に動けなくなってしまう。

 輝龍はそのまま光龍剣と竜炎刀・陽炎を振るう。

 さらに、ブルーベリーアームズからリヴァイアサンアームズにアームズチェンジしたヴァルキリーが加わる。

 強化形態二人を相手に基本形態であるドラゴンフルーツアームズで応戦する炎竜。

 輝龍とヴァルキリーは息の合ったコンビネーションで炎竜を攻撃していく。

 輝龍の斬撃が放たれるとヴァルキリーの光線が空中を走る。

 炎竜は輝龍とヴァルキリーの攻撃を最小限の動きで躱していく。

 

 「大樹!一気に決めよう!」(ヴァルキリー)

 「ああ。」(輝龍)

 ≪バハムートスカッシュ!≫

 ≪リヴァイアサンスカッシュ!≫

 

 輝龍とヴァルキリーは同時に戦極ドライバーを操作、それぞれの右足にロックシードのエネルギーを集中させる。

 輝龍とヴァルキリーは同時に跳び上がり、炎竜に向かってライダーキックを放つ。

 金色と赤色の輝きを宿した輝龍のライダーキックと紺碧の輝きを宿したヴァルキリーのライダーキックを炎竜は迎え撃つ。

 

 ≪ドラゴンフルーツスパーキング!≫

 「フン!!」(炎竜)

 

 炎竜は最大出力のエネルギーで斬撃を放ち、輝龍とヴァルキリーのライダーキックの軌道を逸らした。

 輝龍もヴァルキリーも炎竜の技量の高さに驚愕した。上位のロックシードを利用した形態の必殺技を必殺技で迎撃するのではなく、軌道をずらして無効化するその技量の高さに驚いたのだ。

 炎竜の技量の高さに輝龍はある男を脳裏で思い浮かべた。心強い味方であるその男と同等か、それ以上の技量を持つ炎竜を相手に警戒を強める。

 その一瞬だった。炎竜は輝龍の左腕に装着しているデュアルギアを掴んだのだ。

 

 「申し訳ないが、返してもらうぞ。」(炎竜)

 

 炎竜の言葉に輝龍は咄嗟に右手の光龍剣を炎竜に向かって振るう。

 刃が当たる前に炎竜が輝龍の胴を蹴り、強引にデュアルギアを剥がした。

 

 「大樹!」(ヴァルキリー)

 

 ヴァルキリーが輝龍に駆け寄る。

 炎竜は奪い取ったデュアルギアを自身の左腕の装甲に装着する。

 

 「ふむ、それなりに使っていたみたいだな。」(炎竜)

 

 炎竜はデュアルギアを少し操作すると赤色のエナジーロックシードを取り出した。

 

 ≪ブラッドオレンジエナジー!≫

 

 炎竜は取り出したエナジーロックシードをデュアルギアにセットする。

 炎竜のその行為が自身の強化であることを輝龍はすぐに理解する。

 即座に強化される前に止めようと動く。そこへ、魔界城で十三異界覇王仮面ライダーアークを倒したウィザードと白銀がその場に加わる。

 

 「大樹、万夏!無事か!?」(白銀)

 「なんとかな。相手、かなりの奴。」(輝龍)

 「私と大樹が一緒に戦っても攻撃を当てられなくて。」(ヴァルキリー)

 「それなら、俺がやってみよう。」(ウィザード)

 

 ウィザードはインフィニティースタイルの特殊能力である高速移動を発動、白銀も炎竜に斬りかかる。

 炎竜は攻撃を躱しながらデュアルギアを操作する。

 

 ≪デュアルアップ!デュアルブラッドオレンジアームズ!邪道、レッツダンス!≫

 

 炎竜の姿は血のような赤色の甲冑を纏ったデュアルブラッドオレンジアームズに変化した。

 大橙丸・紅を構えると高速移動するウィザードを一刀で切り伏せ、白銀にはカウンターの回し蹴りを頭部に叩き込んだ。

 増援に加わったメンバーも瞬殺した炎竜。

 回復した輝龍とヴァルキリーが白銀とウィザードの元へ、ロードとエグゼリオンはビーストとメイジの元へ駆けつける。

 それぞれが動いた瞬間、炎竜に向かって雷が、無数のミサイルが飛んで来た。

 炎竜は即座に回避するもそこへ一本の矢が飛んで来た。その矢を見た炎竜はその矢を斬り、全ての攻撃が飛んで来た方向を見る。

 

 「まさか、そんなはずは。この世界に居るはずはない。」(炎竜)

 

 そう言う炎竜の目の前には鋼色の戦斧を持った雷神が、無数の兵器を纏った鋼鉄の鎧が、アメリカ国旗を模したシールドを持った鳥人がいた。さらに、輝龍たちの前に弓矢を構えた男が、緑色の肌をした大男が、機械でできた左腕を持ったソルジャーがいた。

 その彼らを炎竜は知っていた。むしろ、ある世界にて大きな戦いを潜り抜けてきた仲間たちであった。

 

 「どうやって来たんだ。」(炎竜)

 

 炎竜の言葉に答えたの緑色の大男だった。

 

 「ドクターストレンジのおかげだよ。マルチバース間で抜け道を作ってもらった。」(緑色の大男)

 

 緑色の大男の答えに、炎竜の脳裏にはひげを蓄えた大魔術師の姿が浮かび上がった。

 

 「なるほどな。でも、君達だけみたいだけど。」(炎竜)

 「そんなことは無い。双子も居るし、小さくなる奴もいる、それに蜘蛛の子どももな。」(雷神)

 「なる程。他はピエトロとワンダ、スコットにピーターか。ワカンダとガーディアンズ、キャロルは来ていないのか。まあ、無理もないか。」(炎竜)

 

 炎竜は今いるメンバーを、彼らを見据える。

 

 「良いか、ダイキ。バカなことをするな。」(鋼の鎧の男)

 「トニーと一緒に居た俺にそれを言う?説得なら無駄だよ、ローディ。」(炎竜)

 

 鋼の鎧を装着していた男は顔を隠していたアーマーを収納して素顔を見せた。それが何を意味しているのか、それを分からない炎竜では無かった。だが、かつての仲間であってもその説得に応じるつもりはない。

 

 「さて、偉大なソルジャーも、世界を救った鋼鉄の男も居ない。そんな状態で俺と戦うのか、アベンジャーズ。」(炎竜)

 

 正義の名の元に報復する者たち、アベンジャーズ。さまざまな能力、出身の彼らは異世界の旅人であり、共に戦った仲間である炎竜を止めるためにこの世界へやって来たのだった。

 

 「それでも、バカなことをする坊主を引っぱ叩く必要があるだろ。」(弓矢の男=ホークアイ)

 「そのために、この世界に来たのか。それをするなら家族サービスをすれば、クリント。」(炎竜)

 

 アベンジャーズを前に軽口をたたく炎竜。状況を飲み込めない輝龍たちはどうにかしようとするが、それを緑色の大男=ハルクが静止する。

 

 「一先ず、彼のことは僕たちに任せて欲しい。君たちは少し休んで。」(ハルク)

 

 ハルクの言葉にダメージを受けている白銀とウィザードを介抱する輝龍とヴァルキリー。二人はロードとエグゼリオンの方を見るがそこにはアベンジャーズの他のメンバーであるピエトロ・アシモフ=クイックシルバーとワンダ・アシモフ=スカーレットウィッチ、スコット・ラング=アントマン、ピーター・パーカー=スパイダーマンが加わり、戦況が変化していた。

 その様子を炎竜も見ていた。計画に支障をきたす可能性が出てきたことで舌打ちをする。

 

 「どうするんだ。さっさと投降すれば穏便に済むぞ。」(鳥人=ファルコン)

 「俺がそれを聞いて投降するわけないだろ、サム。」(炎竜)

 「それは俺もダイキに同意だな。だが、スティーブたちの意思を継いだお前が間違っていることをしているなら俺達全員がお前を止める。」(ソルジャー=ウィンターソルジャー)

 

 アベンジャーズ、異世界からやって来た彼らと炎竜の関係。そして、輝龍と炎竜を中心に十三異界覇王大戦の真の目的が明かされる。



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仮面ライダー輝龍 第23話 十三異界覇王大戦編第2章 龍王覚醒 アベンジャーズアッセンブル

side三人称

 十三異界覇王の一角、獄炎龍覇王ファブニールこと仮面ライダー炎竜との戦い。突如として輝龍たちの援軍に現れたのは異世界からやって来たスーパーヒーローチーム、アベンジャーズだった。

 力強き最強の雷神マイティ・ソー、スーパーソルジャーであるキャプテンアメリカの魂を受け継いだファルコンとウィンターソルジャー、アイアイマンの盟友であるウォーマシーン、剛腕と知性を併せ持つ緑の巨人ハルク、世界最高の弓手ホークアイ、超能力と魔術を操るスカーレットウィッチ、銀色の光速クイックシルバー、小さき巨人アントマン、鋼鉄の意思を継ぐ親愛なる隣人スパイダーマンの10人のアベンジャーズが輝龍たちのいるこの世界へやって来たのだ。

 かつての仲間であるファブニール=炎竜を止めるべく、超魔術を操る魔術師ドクターストレンジの力でこの世界へやって来た彼ら。その彼らと対峙する炎竜は軽口を叩きながらも苛立ちを見せていた。

 

 「わざわざ、マルチバースを股にかけて来たのはそんなことを言うためか?そんなセリフで止まる人間だと思われて心外だな。」(炎竜)

 

 目に見えて苛立ち始めた炎竜を包囲するソー、ファルコン、ウィンターソルジャー、ウォーマシーン、ホークアイ。

 ダメージを負っている輝龍たちを介抱するハルクは腕に装着しているデバイスを確認する。

 

 「よし、僕達の数値が安定している。思う存分、戦って良い。」(ハルク)

 

 ハルクの言葉に早速攻撃に移ったのは雷神マイティ・ソーである。

 失われたムジョルニアに変わって手にした戦斧ストームブレイカーを両手で握り、雷を走らせながら炎竜デュアルブラッドオレンジアームズに振り下ろした。

 走り出す雷を前に炎竜はデュアルギアを操作、大橙丸・紅にエネルギーを宿す。

 迫りくる雷を横なぎに振るった大橙丸・紅で打ち消す炎竜。

 

 「ダイエットに成功したようだな、ソー。」(炎竜)

 「目を覚ませ!サノスと同じになるつもりか!!」(ソー)

 

 炎竜の軽口にソーはかつて対峙した巨悪サノスの名を出す。

 ストームブレイカーの刃が通る軌道には青白い雷が走る。

 紅蓮に光る大橙丸・紅を振るう炎竜。

 戦斧と刀がぶつかり合う中、炎竜を包囲している他のアベンジャーズもただ見ているだけでは無かった。

 ファルコンは背中に装備しているウィングを展開、空中を自在に飛び始める。

 ウォーマシーンは内蔵されている重火器を稼働、炎竜に向けて撃ち始める。

 ウィンターソルジャーは手にするグレネードガンで炎竜を攻撃、ウォーマシーンの補助を行う。

 ホークアイは彼らから距離を置き、安全な場所から炎竜を狙う。

 

 「まあ、あの宇宙人と同じだと言われても仕方ない。」(炎竜)

 「ダイキ!」(ソー)

 「それでも、俺は止まる気は無い。」(炎竜)

 

 炎竜はソーを掴むと空中に居るファルコン目掛けてソーを投げ飛ばす。空中でファルコンとソーが激突、地面へ落ちてしまう。さらに、炎竜は自身を足止めするウォーマシーンに目を付ける。

 重火器を鎧の防御力に任せて無視する炎竜はウォーマシーンとの距離を一気に詰める。

 距離を詰めた瞬間にウォーマシーンに強烈な前蹴りを放つ。

 ウォーマシーンは咄嗟に胸のアークリアクターからユニビームを放つ。

 蹴りの威力を完全に無効化することは出来なかったが、距離を取ることが出来た。

 射線が開いたことでホークアイが炎竜に向かって矢を放った。だが、その矢も大橙丸・紅で切り伏せられてしまう。ホークアイは続けざまに矢をつがえ放つ。

 炎竜はウィンターソルジャーが撃ったグレネード弾を弾く中でホークアイの矢を再び切り伏せようと大橙丸・紅を振るう。

 大橙丸・紅の刃がホークアイの放った矢に当たった瞬間、矢が爆発したのだった。

 矢の爆発により炎竜に隙が生じた。そこへ体勢を立て直したファルコンとソーが攻撃を加える。

 ファルコンが投げたシールドとソーの雷撃が炎竜を大きく後方へ飛ばした。

 

 「いい加減、俺も本気で行くぞ。」(炎竜)

 

 炎竜はデュアルギアと戦極ドライバーを操作、大橙丸・紅に二つのロックシードから解放したエネルギーを纏わせる。

 大橙丸・紅に纏われたエネルギー刃は赤く輝く巨大な光刃となる。

 

 「ハアアアアアア!!」(炎竜)

 

 炎竜は大橙丸・紅を大きく横なぎに振るう。

 その攻撃を見たソーたちは急いでその場を離れようとする。

 巨大な光刃はそのままソーたちを飲み込み、爆発を起こした。

 戦いの場となった市街地のビルを崩壊させる一撃は炎竜を支点として扇状に広がっていた。

 

 「流石に吹っ飛んだか。」(炎竜)

 

 炎竜がそう言うと、そこにはインベスの対処に追われていたスカーレットウィッチが超能力で仲間を守っていた。

 

 「ワンダ。」(炎竜)

 「ダイキ。」(スカーレットウィッチ)

 

 スカーレットウィッチは炎竜に対して何かを言おうとした。だが、それを聞く前に炎竜はクラックを召喚、その場から立ち去ろうとする。

 

 「次は最初から本気で行く。仲間だろうと、俺は止まる気は無い。」(炎竜)

 

 炎竜はそう言い残すとクラックの中へ姿を消した。

 炎竜が消えても輝龍たちもアベンジャーズもクラックが消えた場所を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side大樹

 ファブニールとの戦いが終わった後、遅れて到着した貴虎さんと鳳蓮さんが現場での調査と住民の避難をする中、俺達はIS学園へ戻っていた。当然、異世界から来たアベンジャーズもIS学園に居る。

 俺達はISの整備室に集まっている。

 

 

 「へえ、これすごいね!!」(ピーター)

 「でしょ?力作なんだ。」(颯斗)

 

 颯斗が新武器ビーストガンナーを見せているのはスパイダーマンことピーター・パーカー。

 

 「え、まじ?アベンジャーズ居ないの?」(スコット)

 「てか、アベンジャーズって?」(陸)

 「マジで知らないの!!キャプテンアメリカやアイアンマンすらも!?」(スコット)

 

 陸と話しているのがアントマンことスコット・ラング。

 

 「それにしても、君のような若い少年が戦っているとはね。」(クリント)

 「家族を守るためだ。その家族が戦っているならなおさらだ。」(一夏)

 

 一夏と話しながら弓の調整をしているのはホークアイことクリント・バートン。

 その二人からある程度距離を離れているのはクイックシルバー=ピエトロ・アシモフとスカーレットウィッチ=ワンダ・アシモフ。万夏がワンダさんと話しており、万夏の表情を見る限りはそう悪い内容ではなさそうだ。 

 

 「なる程ね。良い家族ね。」(ワンダ)

 「はい。」(万夏)

 

 ワンダさんと話していると二人共笑顔で話をしている。それをピエトロさんが見守っている。

 

 「まさか、こういうことってあるのか。」(ソー)

 「ああ、俺も驚きだ。」(ローディ)

 「いや、マルチバースの世界で考えればおかしいことではないよ。」(ハルク)

 「....。」(大樹)

 

 そして、俺を見るソー、ウォーマシーン=ジェームズ・ローディ・ローズ、ハルクことブルース・バナー(今はハルクがあっているのか?)。この3人は俺の顔を見て驚いていた。流石にこの面子に囲まれていると流石の俺も圧倒される。だって、筋肉(雷神)と鋼鉄の鎧(軍人)と筋肉(ハルク)の三人だよ?威圧感がヤバい。だけど、彼らが俺の顔を見て驚いていること、ファブニールのことを大樹と呼んでいたことから何となく察することが出てきた。そこへ、整備室に席を外していたウィンターソルジャー=バッキー・バーンズ、ファルコン=サム・ウィルソンが千冬姉ちゃんと山田先生と共に入って来た。

 

 「とりあえず、あなた方の身分を保証できるものがない以上は簡単に受け入れることはできない。」(千冬)

 「おい、本気で言っているのか。この女は?」(ソー)

 

 千冬姉ちゃんの言葉に詰め寄るソー。まあ、遠路はるばる来たところ身分証明書がないから出てけだから。詰め寄るのも無理はない。

 

 「まずはこちらの話を聞いてください。」(千冬)

 「この人の話を聞いてくれ。俺とバッキーが聞いた話もあるんだ。」(サム)

 

 サムが千冬姉ちゃんの言葉を引き継いだ。それを聞いてソーは腕を組んで、続きを話せと態度で示した。

 千冬姉ちゃんと真耶さんが視線を交わすと真耶さんが口を開いた。

 

 「皆さんが異世界から来たことについては、ここで深く言及はしません。あなたたちの拠点としては、ヴァルハラという組織の方たちが保証してくださいます。」(真耶)

 「そのヴァルハラって組織はどんな組織なんだ?」(ローディ)

 「あなた方アベンジャーズと同じように世界を守っている組織だ。」(貴虎)

 

 真耶さんがローディさんの質問に返そうとすると、貴虎さんと鳳蓮さんが入って来た。

 

 「君達を我々の本部へ来てもらう前に、あのオーバーロードと君たちの関係を話してもらいたい。」(貴虎)

 「オーバーロード?」(ローディ)

 「恐らくはダイキのことだろう。僕達は彼のことをマスクドライダーと呼んでいた。そして、彼は僕達アベンジャーズの仲間だ。」(ハルク)

 

 貴虎さんの質問にブルースさんが答えた。

 

 「彼の名はダイキ・カシワバ。僕達アベンジャーズを繋いだ異世界の旅人、激戦を終えて行方不明になっていた。」(ハルク)

 

 

 

 

 

side3人称

 ブルース・バナーの後を継ぐようにローディが話し出した。

 

 「初めてダイキと会ったのはアベンジャーズの一員で俺の友人だったトニー・スタークだった。アイアンマンとして活動をしていたトニーの前に突然、姿を見せたのがダイキだった。」(ローディ)

 「あなたたちはあのオーバーロード、ファブニールのことを大樹と呼んでいるの?」(鳳蓮)

 「彼は自分から名乗った。正直、そこの彼が俺達の知っているダイキとそっくりなのは驚きだが。」(ローディ)

 

 アベンジャーズの面々が大樹のことを見る。彼らの言うダイキが大樹たちが戦っていたファブニール=炎竜と同一人物なのは分かる。だが、この場に居たメンバーの中でファブニールと大樹の関係について誰もが頭を悩ませていた。

 ただ、その関係について一人は結論が出ていた。

 

 「ファブニールは、アベンジャーズに居たダイキは並行世界の俺ってことじゃないのかな。」(大樹)

 

 大樹本人はファブニールと自分の関係が並行世界における自分同士だと結論が出ていた。その結論について一夏と陸、スコットがまさかと口にするが他のメンバーは大樹が言ったことが事実ではないかと考えていた。

 

 「恐らくはそうだろう。君は僕たちの知るダイキのマルチバースにおける別のダイキ・カシワバ、そうでないとそのことに説明が着かないからね。」(ハルク)

 

 大樹の考えにブルースさんが同意する。ここまで、大樹達と戦っていたオーバーロードファブニール。その正体は並行世界における柏葉大樹である。ここで初めて大樹たちはそれを知ったのだ。

 そんな中、外から警報が聞えて来た。

 

 「なんだ?」(ソー)

 

 警報を聞き、その場にいる彼らはその警報が出ている方向を見る。

 

 「第5アリーナだ。」(千冬)

 

 千冬の言葉に大樹、一夏、颯斗、陸、万夏がその場から走り出す。それを追い、貴虎と鳳蓮、アベンジャーズのメンバーも走り出す。

 大樹たちが第5アリーナに着くとそこには朝焼けを受けて一人の男が居た。

 大樹と瓜二つのその表情は長い戦いを潜り抜けたことで険しいものになっていた。

 

 「どの世界でも、ここは変わらないな。」(ダイキ)

 

 そう言う彼に対して誰も答えない。

 

 「一つ教えておく、この世界も終わりの時が来る。13の異世界からやって来た最凶最悪の侵略者、十三異界覇王の侵略でな。俺はそのうちの一人、獄炎龍覇王ファブニール。文字通り、この世界の終わりを齎す者だ。」(ダイキ)

 

 ダイキはそう言うと懐から黄金の果実を取り出した。ダイキはその視線を大樹たち若き仮面ライダーに向ける。

 

 「君たちの奮闘でダグバ、オーズ、アマゾンネオ、アギト、ドラス、ダークドライブ、ゲムデウス、アークが倒された。まだ、キルバスの回収をしていないが。中々の戦士だよ、君たちは。でも、ここで終わりだ。」(ダイキ)

 

 ダイキは黄金の果実の力で大量のインベスを呼び出した。

 

 「申し訳ないが、キルバスの回収もさせてもらう。君達がここにいるのは好都合だ。俺の目的が達成される。」(ダイキ)

 

 かつての友も、異世界の自分をも敵に回してダイキは戦極ドライバーを腰に装着する。

 大樹たちも変身の準備をする。それを見て、ダイキはドラゴンフルーツロックシードを取り出す。

 ドラゴンフルーツロックシードを開錠したダイキは仮面ライダー炎竜ドラゴンフルーツアームズに変身する。その直後に、大樹たちもそれぞれ変身した。

 炎竜は輝龍たちの準備が整ったその瞬間にインベスたちを輝龍に差し向けた。

 無数のインベスの大群に果敢に挑む輝龍たち。それを見た炎竜は竜炎刀を抜き放つ。

 

 「この戦い、俺が勝つ。」(炎竜)




 獄炎龍覇王仮面ライダー炎竜と激しい戦いを繰り広げる輝龍たち。戦いの中で炎竜は最凶最悪の力を手にする。

 「邪王アームズ!!」
 「さあ、終極だ。」

 炎の竜は邪悪なる力を纏い、邪なる王となる。


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仮面ライダー輝龍 第24話 十三異界覇王大戦編 第2章 龍王覚醒 アベンジャーズアッセンブル

 side3人称

 獄炎龍覇王ファブニールこと仮面ライダー炎竜と輝龍たちの激しい戦いが朝焼けに包まれるIS学園第5アリーナで始まった。

 無数のインベスたちを輝龍たちフューチャージェネレーションライダーたちが立ち向かう。

 炎竜に対してアベンジャーズが立ち向かう。

 ソー、ハルク、ホークアイ、ウォーマシーン、ファルコン、ウィンターソルジャー。さらに、スカーレットウィッチ、クイックシルバー、アントマン、スパイダーマン。

 10人のアベンジャーズはあらゆる方向から炎竜を攻撃する。

 無数のインベスたちを相手にする輝龍、白銀、ヴァルキリー、ロード、エグゼリオンは各々で対処することを強いられており、単独戦闘を余儀なくされている。敵に多さに白銀、ヴァルキリー、ロード、エグゼリオンは現在使用できる最強形態に変身、強化された武器で一気にインベスたちを撃破する。その中で輝龍は竜炎刀と無双セイバーを合体させ、迫りくるインベスたちを一振りで撃破する。

 

 「ッ!」(輝龍)

 

 輝龍は道を切り開きながら、アベンジャーズと炎竜が戦っている場所へ向かって行く。

 異世界の自分、ここにいる自分とは違う道を進んだ自分を知り輝龍は心の中で決意を決めていた。

 

 (何があったかは知らない。だけど、俺を狙ってきたのは理由がある。なら、俺が相手になる。)(輝龍)

 

 激震地となっているアベンジャーズと炎竜の戦場へ走る輝龍。彼はまだ、この後に待ち受ける展開を知らなかった。

 IS学園で戦いが始まった時と同じ頃、東京某所にある仮面ライダービルドこと桐生戦兎の研究所である倉庫に大量のインベスたちが殺到していた。

 

 「急に現れやがって!キリがねえぞ!!」(クローズ)

 

 殺到するインベスを殴り飛ばす仮面ライダークローズこと万丈龍我。ただし、撃破するたびに襲い掛かるインベスに悪態をつく。

 それに対して仮面ライダービルドはラビットタンクスパークリングフォームに変身し、複数の武器を変えながらインベスたちを攻撃する。

 

 「どうやら、俺達の研究所にあるものが目的らしいな。ま、何を狙っているとしても!通す訳ないけど!!」(ビルド)

 

 インベスたちがビルドとクローズの拠点を襲ったのは炎竜の指令でキルバスが封じ込められているフルボトルを回収するためである。それを知らないビルドとクローズは殺到する無数のインベスに手を焼いていた。

 ビルドとクローズが戦っているところを遠巻きに見ている人物が居た。

 漆黒のコートを羽織り、浅黒い肌と鮮血のような赤い両目。その風貌は大樹と瓜二つである。

 黒崎修羅、大樹から生まれた別人格であり、仮面ライダーシュバルツに変身する青年である。

 

 「ここまで大量のインベスが居るなんてな。」(修羅)

 

 修羅はそう言うとビルドドライバーを取り出し、装着した。さらに、そばにいたサポートメカ=シュバルツワイバーンを手に取るとワイバーンフルボトルをセットしてビルドドライバーを合体させる。

 

 「変身。」(修羅)

 

 修羅はビルドドライバーを操作し仮面ライダーシュバルツに変身した。

 シュバルツは無数のインベスに苦戦するビルドとクローズの元へ駆け出す。

 スピードの乗ったシュバルツは初球インベスに飛び掛かり、両手に備わった爪で切り裂く。

 

 「おいおい、大丈夫かよ先輩方。」(シュバルツ)

 「修羅!!」(ビルド)

 「良いから、手伝え!!」(クローズ)

 「はいはい。」(シュバルツ)

 

 シュバルツも加わってインベスと戦うビルドとクローズ。戦う仲間が一人増えたことで明確に戦局が変わり始めた。その中でビルドとシュバルツはインベスの動きに何か明確な理由があるのを察知した。

 

 「修羅、こいつら。」(ビルド)

 「俺も薄々は勘付いた。ここにある何かを狙っているな、こいつら。」(シュバルツ)

 

 ビルドは自身の研究所にあるもの、フルボトルやホワイトパネルが狙われていることを予想する。一方のシュバルツはインベスたちが狙いを持って襲撃していることを理解しているが、それよりも殺到するインベスたちを迎撃することに集中する。

 

 ≪ワイバニックフィニッシュ!!≫

 「まあ、全部殺せば同じだな。」(シュバルツ)

 

 殺到するインベスをライダーキックで撃破するシュバルツ。仮面の下にある素顔を凶暴な笑みで歪ませるシュバルツ。その時、シュバルツの背後でビルドとクローズの研究所のシャッターをインベスたちが破ってしまった。

 

 「なあ!?」(クローズ)

 「まずい!!」(ビルド)

 

 破られてシャッターからインベスたちが研究所の中へ大挙して押し入ってくる。

 その動きを見てシュバルツが迅速に動いた。

 破られたシャッターから中を覗くシュバルツ。中ではインベスたちが研究所の中を荒らしまわっていた。その中でホワイトパネルとフルボトルに見向きもしないことをシュバルツは気付いた。

 

 「まさか、こないだのキルバスか。」(シュバルツ)

 

 そう呟いたシュバルツの目の前でインベスがキルバスを封じている赤いボトルを持っていた。

 それを見たシュバルツはボトルを持ったインベスを抑えようと動く。

 インベスたちは開いたクラックの先へ入っていく。

 

 「逃がさねえよ。」(シュバルツ)

 「修羅!!」(ビルド)

 

 ビルドとクローズがシュバルツの元へ駆け寄ろうとするがその前にクラックがシュバルツとインベスを飲み込んで閉じてしまった。

 

 

 

 

 

 

sideシュバルツ

 クラックの先へ飛び込んだは良いが、

 

 「おいおい、学園に出るなんて聞いてないぞ。」(シュバルツ)

 

 まさか、学園にまた来るとはな。ふと見るとあいつが見たこともない奴らと昔の俺に似た仮面ライダーと戦っている。

 

 「どいつも忙しいらしいな。」(シュバルツ)

 

 まあ、ここにいるインベスを全て殺せば良いか。

 俺は混乱する戦場を見て、殺意を漲らせながら襲い掛かるインベスに爪を振るう。

 

 

 

 

 

 

 

 

side輝龍

 「これで揃った。」(炎竜)

 

 炎竜の言葉に俺は嫌な予感がした。

 

 「何をする気だ。」(輝龍)

 

 鍔迫り合いをしながら俺は炎竜に聞く。それに対して炎竜は俺を押し返した。

 俺は体勢を立て直すために自分から跳び退って、無双セイバーを構える。

 

 「俺は、葛葉紘汰と同じ高みへ行く。」(炎竜)

 

 炎竜が話し出す。俺はアベンジャーズのメンバーを見るが誰もがインベスに対処に追われていた。

 

 「俺の目的は、俺の望む世界を作る。だが、黄金の果実を使うことは無い。」(炎竜)

 

 そう言うと炎竜は光り輝く果実を取り出した。ここまでの戦いで、黄金の果実を持っていることは予想していた。でも、それを使わない?自分の望む世界を簡単に生み出せるものを持ちながら、別の物で代用する。その理由はなんだ?

 

 「黄金の果実を使って異世界を移動していたんだろ。それなのに、なぜ使わない。」(輝龍)

 

 俺の問いに黄金の果実に視線を落とす炎竜。すぐに顔を上げ、俺を見据える。

 

 「マドカのこと、愛しているのか。」(炎竜)

 「ええ?」(輝龍)

 

 なぜ、万夏のことについて聞く。分からないけど、答えない限りはこっちの質問の答えを話してくれそうにはない。

 

 「ああ。」(輝龍)

 「そうか、大切か。」(炎竜)

 「当然。なあ、これを聞い「この黄金の果実はマドカが手に入れたものだ」っ!」(輝龍)

 

 炎竜のマドカが手に入れたもの、それを聞いて俺は薄れている記憶から黄金の果実について思い出す。

 

 「まさか、あんたの世界は。」(輝龍)

 「そう。ヘルヘイムの侵略を受けた。彼女が黄金の果実を手にし、二人で世界を救おうとした。邪魔が入った所為で彼女は死んだ。」(炎竜)

 

 ヘルヘイムの侵略、黄金の果実を巡る争奪戦。その過程で黄金の果実は炎竜の世界のマドカを選んだ。本来であれば、俺の目の前にいる炎竜は黄金の果実を手にして始まりの男になるはずだった。だけど、そうはならなかった。

 

 「彼女は俺に生きてと言った。その彼女が残した黄金の果実を、俺だけの願いのためには使えない。だから、俺は世界を滅ぼした13体の怪人、十三異界覇王の力を集める。それを集めた力で俺の望む世界を生み出す。」(炎竜)

 

 万夏が死んだとなれば俺もそうなるだろう。そして、彼女が残したものを自分の望みのためには使えないということも理解できる。

 必要だと判断すれば、俺も同じことをするかもしれない。だけど、それはきっと、超えてはいけないことだ。それをすれば、それをしてしまえば俺は、俺の全てを否定することになる。この世界で育った僕と、前の世界で皆を守るために一人で戦い続けた俺の全てを否定することになる。

 俺の目の前に立つもう一人の俺はここまでで生きてきた()を否定する相手だ。そして、それは()も同じだ。

 

 「そうなる前に、あんたを止める。」(輝龍)

 ≪バハムートアームズ!龍帝、メガブレイズ!!≫

 

 俺はバハムートアームズに変身し、光龍剣と竜炎刀・陽炎で炎竜に斬りかかる。ここで炎竜を止めないと俺が恐れている以上のことが起きてしまう。

 

 ≪ファブニールアームズ!邪龍、アウトレイジ!!≫

 

 炎竜は大剣を装備した赤黒い姿=ファブニールアームズに変身して俺を迎え撃つ。

 俺は二刀流で戦い、炎竜は大剣を片手で振るう。

 両手に持った光龍剣と竜炎刀・陽炎を振るうも大剣で弾き返される。

 一太刀を入れるべく向かって行くがそのどれもが無情な一振りで叩き潰される。

 

 「でも、ここまでで倒した十三異界覇王は半数にも至っていない。それなのに、これで揃ったってどういうことだ。」(輝龍)

 

 武器を振るいながら俺は引っ掛かっていたことを炎竜に問いただす。さっき話したことから考えると炎竜に必要な数の十三異界覇王を倒していないはずだ。

 

 「お前が言っているのはダグバ、アマゾンネオ、オーズ、アギト、キルバス、ドラス、アークのことだろ?」(炎竜)

 「足りていないだろ。」(輝龍)

 「ドラスにはダークドライブとゲムデウスが吸収されていた。その他に、必要な数は揃えてある。」(炎竜)

 

 そう言った炎竜がクラックを開いた。

 クラックの数は4つ、足りない分はストックしていたらしい。

 クラックから出てきたのは巨大な白い邪神、八つ首の大蛇、体に星座を刻んだ怪人、黄金のローブを纏った仮面ライダーの4体。どいつも危険度はクソ兄貴をはるかに超える天変地異を引き起こす相手ばかりだ。

 

 「フォーティーン、魔化魍ヤマタノオロチ、サジタリアス・ゾディアーツ、仮面ライダーエクストリーマー。お前も知っているよな、こいつらのこと。」(炎竜)

 「危険度は死んだクソ兄貴をはるかに超える奴らだろ。」(輝龍)

 

 まさか、こいつらは,,,。

 

 「ちなみに、ここにいる奴らは過去に行われた十三異界覇王大戦を勝ち抜いた勝者だ。」(炎竜)

 

 最悪のパターンだ。

 最悪の展開に、俺の、俺達の手に負える範囲を大幅に超える事態になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side三人称

 クラックから出てきた4体の十三異界覇王、かつての十三異界覇王大戦を勝ち抜いたと言う彼ら。

 敵も味方も入り乱れて戦う混乱の中、炎竜の思惑が遂に動く。そして、それをアリーナの観客席から見ているのは大樹の兄、柏葉勇吾の部下である藤村の姿をしている魔蛇だった。

 

 「そうか、遂に動くか柏葉大樹。最後まで見させてもらうぞ。」(魔蛇)

 

 炎竜は邪龍DJ破断剣にファブニールロックシードのエネルギーを集める。

 刃を巨大な光刃にしてそれをクラックから出した過去の十三異界覇王を切り裂いた。さらに、インベスの1体が持っていたキルバスのボトルを炎竜に渡す。

 炎竜は戦極ドライバーを操作して手にしたボトルを握りつぶした。

 これで4体の十三異界覇王がその命を終えた。ここに魔蛇が画策した十三異界覇王大戦という儀式が完了する。

 

 「まあ、俺の考えたものとは違うが始めるか。」(魔蛇)

 

 魔蛇はスーツの上着から骨の意匠があるロックシードを取り出した。

 魔蛇が持っているロックシードに、今倒された十三異界覇王の力が集まっていく。

 全ての力がロックシードに吸収されるとロックシードは漆黒に染まった。

 

 「邪王ロックシード。俺が求めた俺の黄金の果実だ。精々、うまく使えよ。」(魔蛇)

 

 魔蛇はアリーナに居る炎竜へ邪王ロックシードを投げ渡した。

 炎竜は空を飛ぶ邪王ロックシードを見て、手に取った。

 

 「魔蛇の奴、取り敢えずは俺にやらせてくれるってことか。」(炎竜)

 

 炎竜は手にした邪王ロックシードを開錠する。

 

 ≪邪王!≫

 

 ぐぐもった音声が響く。クラックからはアームズでは無く、漆黒の瘴気が大量に出始める。

 

 「さあ、終わりの時間だ。」(炎竜)

 

 炎竜は邪王ロックシードをデュアルギアにセットする。

 

 「この時のために準備してきた。ここですべてを終わらせる。」(炎竜)

 

 炎竜はデュアルギアを操作、邪王ロックシードがその力を開放する。

 次の瞬間、漆黒の瘴気が炎竜に集まっていく。

 

 「っ、っ!ぐああ!!」(炎竜)

 

 漆黒の瘴気に覆われた炎竜が苦悶の声を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side炎竜

 全身に激痛が走る。普通の人間が使うにはやはり無理があったか。

 痛みの中に、ここまでに倒された十三異界覇王の怨嗟の声が響く。

 怨嗟の声の他に奴らの力が俺を蝕んていく。

 奴らの力が、声が俺を蝕むたびに俺の中にある大切な物が消えていく。その中で、遂にはマドカとの思い出まで、消え,,,,,,,,。

 

 

 

 

 

 

 「良いから、言うことを聞け。」(炎竜)

 

 消えさせてたまるか。俺を蝕む奴らをねじ伏せて言い聞かせる。

 

 「敗者は黙って従え。俺に、お前たちの力を全て寄越せ!!」(炎竜)

 

 奴らから全ての力を奪い取る。俺が力を奪ったことで消えていく。

 

 ≪デュアル邪王アームズ!魔の道、オンステージ。≫

 

 アームズの力をものにしたために、漆黒の瘴気が鎧の形をとる。俺は目の前にいるこの世界の俺を見る。

 

 「さあ、抗え。」(炎竜)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side三人称

 漆黒の瘴気が形作ったのは鎧武極アームズに酷似した鎧だった。

 仮面ライダー炎竜デュアル邪王アームズ、十三異界覇王の力を宿した邪なる王。

 十三異界覇王大戦は遂に佳境を迎えた。




 最凶最悪の力を手にした炎竜。その猛威は輝龍たちを圧倒する。
 戦いの中で輝龍たちはアベンジャーズと協力、炎竜を打倒すべく動き始める。


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仮面ライダー輝龍 第25話 十三異界覇王大戦編 第2章 龍王覚醒 アベンジャーズアッセンブル

 皆さん、お待たせしました。それでは、第25話をどうぞ!!



 ファブニール=炎竜がIS学園を強襲した。
 輝龍は炎竜と真正面から戦うも、ビルドたちがフルボトルに封じ込めていたキルバスを炎竜の手中に収められてしまった。
 過去に十三異界覇王大戦を勝ち抜いた十三異界覇王をも生贄に究極の力を手に入れた炎竜。全てを屠る邪なる王が誕生した。


side3人称

 漆黒の瘴気が鎧へ変わり、炎竜を包み込んだ。余剰な瘴気が吹き飛ぶとそこには鎧武極アームズに酷似した漆黒の戦士がいた。

 仮面ライダー炎竜デュアル邪王アームズ、13体の十三異界覇王を生贄に生み出された究極の邪なる王である。

 眼前でその姿を見た輝龍バハムートアームズは自身の本能が最大限の警告を発することに気付いた。目の前の相手は今までに戦った相手とは違う、まさに格上の存在だということを否が応にも感じていた。

 輝龍は光龍剣と竜炎刀・陽炎を握り直し、炎竜デュアル邪王アームズに戦いを挑む。

 

 

 

 

 複数のインベスに対処するアベンジャーズたちも炎竜の変化を目撃していた。それに対して口を開いたのは最年少スパイダーマンだった。

 

 「ねえ、あれやばくない?」(スパイダーマン)

 「聞かれなくてもヤバいだろ、あれ。」(アントマン)

 

 目の前のインベスに対処する中で、輝龍と炎竜が戦う中で向かい始めるアベンジャーズたち。大量のインベスに対して、ソーが戦斧ストームブレイカーに雷を走らせて衝撃波と共に無数の雷を落として殲滅する。

 道が開けても次から次へと殺到するインベスたち。それはこの場とは違う場所で戦っている者たちも同様だった。

 アリーナの外でも無数のインベスたちが現れており、そこを仮面ライダー斬月・真メロンエナジーアームズと仮面ライダーブラーボドリアンアームズが対処していた。

 

 「全く、キリがないな。」(斬月・真)

 「そうね、ワテクシ達二人で対処するのも厳しいわね。」(ブラーボ)

 

 向かってくるインベスは幼体である初級インベスから強力な成体であるカミキリインベスやライオンインベス、暴走体に変化しているセイリュウインベスとシカインベスなど大小さまざまであった。

 歴戦の戦士である斬月・真とブラーボですらも手を焼くほどに大量に様々なインベスたちが襲い掛かる。

 彼ら二人はこの場を切り抜けて、アリーナ内で激しい戦いの渦中にいる若き仮面ライダーたちの元へ急ごうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 炎竜デュアル邪王アームズに斬りかかる輝龍バハムートアームズ。距離を詰めるべく、走り出すと同時に光龍剣を大きく振るう。光龍剣を振るった右腕を引き戻し、その反動で左手に握った竜炎刀・陽炎の剣先を突き出す。

 輝龍が繰り出す斬撃を炎竜デュアル邪王アームズはアームズの鎧で全て受け止めてしまう。

 防がれる中で次々と斬撃を繰り出す輝龍。だが、繰り出す斬撃は尽く防がれてしまう。

 

 ≪デュアル邪王スカッシュ。≫

 

 攻撃を防ぐ中で炎竜デュアル邪王アームズはデュアルギアを操作、サジタリアス・ゾディアーツが使う弓=ギルガメッシュを右腕に召喚する。

 

 「っ!!」(輝龍)

 

 輝龍は攻撃をする中で炎竜デュアル邪王アームズが武器を召喚、さらには必殺技を発動することを即座に察知する。だが、いまだに攻撃の最中であり、それを中断させることが出来なかった。

 炎竜デュアル邪王アームズはギルガメッシュの銃口を輝龍に向けた。そこから無数の矢を発射。

 近距離で繰り出された無数の矢は輝龍バハムートアームズに多大なダメージを与えた。

 

 「があっ!!」(輝龍)

 

 零距離で放たれた攻撃は輝龍を軽く吹っ飛ばした。

 輝龍は地面に転がり、倒れ伏す。その瞬間に、輝龍の変身が解除される。

 

 「「大樹!!」」(白銀、ヴァルキリー)

 

 倒れる大樹の元へ白銀ゴッドエナジーアームズとヴァルキリーリヴァイアサンアームズ。

 遠くでその様子を見ていたビーストロードとエグゼリオンビーストゲーマーレベル50も襲い来るインベスたちを倒しながら、大樹の元へ急ぐ。

 

 「もう終わりか。」(炎竜)

 

 倒れる大樹に炎竜が聞く。

 倒れる大樹はけがを負いながらも炎竜を睨む。

 

 「まだ気力はあるみたいだな。」(炎竜)

 

 炎竜はそう言うと右腕に装着したギルガメッシュを消し、ダークドライブが使っていたブレイドガンナーを召喚した。

 炎竜はブレイドガンナーの銃口を大樹に向けて引鉄を引いた。

 ブレイドガンナーから放たれた銃弾は大樹の右手を貫いた。

 

 「っ!!」(大樹)

 

 ダメージを負い、即座に動くことができない状態だった大樹は痛みに呻くことも出来なかった。

 

 「お前!!」(白銀)

 

 そこへ白銀とヴァルキリーが駆けつける。だが、あと少しの所を無数のインベスたちによって道を阻まれる。

 アベンジャーズの面々もインベスたちを撃破しながら進むもののまだ大樹の元へ到着するまでに時間がかかる。

 誰もが大樹の危機に駆け付けることが出来ない中、たった一人だけ即座に動いた人物がいた。

 

 ≪ワイバニックフィニッシュ!!≫

 

 漆黒の稲妻が宙から大樹と炎竜の間に凄まじい勢いで落ちてきた。

 漆黒の稲妻はそのまま炎竜に向かって回し蹴りを放つ。

 炎竜はブレイドガンナーを盾代わりにしてその攻撃を防いだ。

 

 「お前。」(大樹)

 「何を無様な姿を。」(シュバルツ)

 

 もう一人の大樹、黒崎修羅こと仮面ライダーシュバルツだった。期しくも並行世界における柏葉大樹が、この世界において存在する柏葉大樹が揃った瞬間だった。

 

 「お前は、いやお前もか。」(炎竜)

 

 シュバルツを見て、炎竜は即座に彼も自分と同じ、並行世界の柏葉大樹であることを理解した。そして、修羅から感じる気配からある人物の関与も察した。

 

 「なる程な。紘汰、何をしたかは知らんが。少し想定と違うがやることに変わりはない。」(炎竜)

 

 再度、ブレイドガンナーを構えて銃弾を放つ炎竜。

 回復した大樹と駆けつけたシュバルツはそこから即座に回避する。

 大樹は戦極ドライバーではなく、オルタリングを出現させる。

 

 「変身!!」(大樹)

 

 大樹はアギトヴォルカニックフォームに変身、右手の傷を回復させると同時に専用武器であるヴォルカニックセイバーアローを召喚する。

 シュバルツが自身のスピードを活かして、三次元的な動きで炎竜を翻弄する。

 大樹が変身したアギトヴォルカニックフォームはヴォルカニックセイバーアローで攻撃する。

 炎竜はブレイドガンナーを左手に持ち変え、右手にアマゾンネオの武器であるアマゾンブレイドを生成する。

 二刀流で戦う炎竜に、迅雷の如きシュバルツと業火の如きアギトヴォルカニックフォームが立ち向かう。

 

 「大樹、良かった。」(ヴァルキリー)

 「万夏!急ぐぞ!!」(白銀)

 「うん!!」(ヴァルキリー)

 

 恋人が無事なことを確認して安堵するヴァルキリー。そこに白銀が急いで駆けつけることを言う。

 白銀とヴァルキリーは一人で戦っている家族のもとへ急ぐ。

 混沌とした戦場を、安全な観客席から眺めている藤村=魔蛇。

 

 「さて、お前さんの目的を完遂させることは出来るかな。」(魔蛇)

 

 炎竜の様子を見て、それを愉快そうに見る魔蛇。

 魔蛇の右隣にクラックが開く。

 開かれたクラックから現れたのは仮面ライダー鎧武極アームズ=葛葉紘汰であった。

 

 「久しぶりだな、葛葉紘汰。」(魔蛇)

 「魔蛇、大樹を止めろ!」(鎧武)

 「お前の言うダイキはあそこにいるどいつのことだ?それと、俺がカシワバダイキのことを操っていると考えているならそれは違うぞ。奴は自分の意思で俺の元へ来た。そして、十三異界覇王大戦についても奴が協力している。」(魔蛇)

 

 魔蛇は鎧武を挑発するようにここまでの経緯を話す。

 

 「まあ、あそこに居る奴らは俺の想定外だがな。アベンジャーズ、と言ったか。報復する者達とは、随分と傲慢な名前だな。」(魔蛇)

 

 魔蛇は擬態である藤村としての姿から骸骨の異形としての本来の姿となる。

 

 「さて、始まりの男。今回はお前が目的ではないが、お前の力も渡してもらおうか。」(魔蛇)

 

 魔蛇は周囲にいるインベスとは別のインベスを呼び出す。そのインベスはかつて現れたフェムシンムのオーバーロード、デェムシェとレデュエに似た姿をしていた。

 新たに現れたインベスに対して鎧武はバナスピアーを召喚する。

 

 「そうはさせるか。お前を倒して、大樹を止める!」(鎧武)

 「やってみろ、葛葉紘汰!!」(魔蛇)

 

 新たに始まる戦い。世界を救った始まりの男とヘルヘイムの森の意思が今再び激突する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 炎竜を前に共闘するアギトヴォルカニックフォームとシュバルツ。

 二人が揃って戦っているものの圧倒的な力の差を埋めることが出来ない。

 

 ≪デュアル邪王オーレ!≫

 

 炎竜はデュアルギアを操作、ブレイドガンナーから巨大な光弾を放ち、アマゾンブレイドから放った斬撃と合体させてアギトヴォルカニックフォームとシュバルツに放った。

 アギトヴォルカニックフォームはヴォルカニックセイバーアローを盾にする。

 シュバルツはビルドドライバーを操作して、エネルギーをチャージする。

 強力な一撃はアギトヴォルカニックフォームとシュバルツの居た場所を無数のインベスを巻き込んで大爆発を起こした。

 炎竜は手にしていた武器を消す。そこへ、インベスたちを薙ぎ払っていたアベンジャーズのメンバーが姿を見せた。

 

 「ダイキ!お前、自分が何をしたか分かっているのか!!」(ハルク)

 

 メンバーの中で最も温和なハルクが声を荒げた。それに対して炎竜からの返事はない。

 そこへ、クイックシルバーとアントマンが即座に動き始めた。

 スピードで翻弄するクイックシルバー、時折パンチなどの攻撃を繰り出す。

 クイックシルバーの拳を止める炎竜。

 

 「ダイキ、俺を助けたお前が。なぜ、こんなことを?」(クイックシルバー)

 「ピエトロ、俺には俺の目的がある。」(炎竜)

 

 そこへさらにソーがストームブレイカーを振りかざす。

 それを視界の端に見ていた炎竜はクイックシルバーを突き飛ばす。

 

 ≪ドラゴンフルーツスカッシュ!≫

 

 右足にエネルギーを集め、ソーが振りかぶるストームブレイカーの刃を蹴りで受け止める。

 ストームブレイカーから放たれるエネルギーと炎竜の右足から迸る爆炎が拮抗する。

 

 「相変わらず、神様ってのは伊達じゃねえか。」(炎竜)

 「っ!俺が本命ではないぞ!!」(ソー)

 

 ソーの言葉を証明するように炎竜の背後にホークアイ、ウィンターソルジャー、ファルコンが攻撃する。

 ウィンターソルジャーの鋼の剛腕が炎竜を抑え、ファルコンが投げた盾とホークアイが放った矢が当たると巨大な盾となって炎竜に激突する。

 だが、炎竜は空いている手で盾を受け止めた。

 

 「今の俺はサノスと遜色ない力を持ってる。もう少し援軍が必要だろ。」(炎竜)

 

 そう言った炎竜を横から強烈な一撃を見舞ったのはハルクだった。

 

 「君の動きを少しでも止めれれば良い。」(ハルク)

 

 ハルクに続くようにスパイダーマンがウェブシューターから糸を次々と出して炎竜を拘束する。そこへ、ピム粒子で縮小していた車や何やらを次々と出して炎竜の上にぶん投げるアントマン。

 

 「これで良いかな?」(スパイダーマン)

 「これだけやれば動けないだろ、流石に。」(アントマン)

 「仕上げは彼女がやってくれる。」(ハルク)

 

 瓦礫の中から頭だけを出している炎竜。そこへスカーレットウィッチが近づき、炎竜の頭に手をかざす。

 

 「ごめんなさい、ダイキ。」(スカーレットウィッチ)

 

 そのまま彼女は炎竜の、ダイキの心の中へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ワンダが入ったのは前後左右上下が真っ白な空間だった。そこに、先程まで戦っていた炎竜=ダイキがいた。

 

 「ダイキ、もう辞めて。こんなことをしても誰も喜ばない。きっと、あなたの愛した彼女だって。」(ワンダ)

 「...はあ、ここまで来ちゃったか。」(炎竜=ダイキ)

 

 ワンダの言葉に苦笑しながら頬を掻くダイキ。

 

 「ねえ、ダイキ。あなたは強い人よ、誰かに操られているなら...。」(ワンダ)

 「ワンダ、ここに来て理解してるだろ。俺は誰にもマインドコントロールされていない。ここまでは全て俺の意思だ。」(ダイキ)

 

 ワンダの訴えに微笑むダイキ。それを見て、全てを理解するワンダ。

 

 「あなた、もしかして。」(ワンダ)

 「これしか思いつかなかった。でも、こうしないとこの世界の俺は強くなれない。」(ダイキ)

 

 ダイキの言葉に、表情に、そして精神内にいることでダイキが考えていることを全て理解してしまったワンダ。それが意味することも、その終わりも全て知ってしまった。

 

 「ダメよ、ダイキ。そんな、そんなことをしても!!」(ワンダ)

 「これは俺の望んだことなんだ。そして、そのためにここまで来たんだ。皆にも伝えてくれ、俺の邪魔をしないでくれ。」(ダイキ)

 

 その言葉を境にダイキは炎竜へと姿を変える。それと同時に二人のいる純白の世界は漆黒の闇へと変わり、その闇に怪物たちの唸り声を響く。

 

 「ダイキ、待って!!」(ワンダ)

 「ワンダ、サヨナラだ。」(炎竜)

 

 ワンダの声に背を向ける炎竜。その瞬間、ワンダは現実の世界へ引き戻された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 現実の世界では、スカーレットウィッチが炎竜から弾き飛ばされた。彼女を兄であるクイックシルバーが受け止める。

 

 「どうした、ワンダ。」(クイックシルバー)

 「ダイキを止めないと!!」(スカーレットウィッチ)

 

 スカーレットウィッチの切羽詰まった様子からアベンジャーズのメンバーは状況が思っていたよりも危険なことを理解する。

 身動きが取れない炎竜は邪王ロックシードに吸収させた魔化魍ヤマタノオロチを召喚、自身を縛る拘束を破壊して抜け出す。そこへ、炎竜の攻撃を受けて姿が見えなかったアギトヴォルカニックフォームとシュバルツが炎竜に飛び掛かる。

 

 「俺を超えて見せろ、柏葉大樹。」(炎竜)

 「うおおおおお!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 




 炎竜の真意を知ったワンダ。
 激闘の中でその真意を知った大樹たち。

 「これが、俺の答えだ。」

 この世界を生きる柏葉大樹として、かつて世界を守るために命を落とした柏葉大樹として今現在の自分の答えを示す。


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仮面ライダー輝龍 第26話 十三異界覇王大戦編第2章 龍王覚醒アベンジャーズアッセンブル

 デュアル邪王アームズとなった炎竜を相手に戦う大樹。
 強大な力を前にアギトの力も解放した。
 戦いの中でアベンジャーズも戦う。その中でワンダはついに炎竜の精神世界へ入ることができた。そこで、炎竜の真意を知るのだった。


side三人称

 巨大魔化魍ヤマタノオロチを召喚した炎竜デュアル邪王アームズにヴォルカニックセイバーアローを叩きつけるアギトヴォルカニックフォーム。

 炎竜はヴォルカニックセイバーアローを右手の装甲で受け止める。

 

 「っ!っっ!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 「アギトの力か。制御に成功しているようだが、あと一歩だな。」(炎竜)

 

 ここまでの戦いで決定打を見いだせない輝龍=アギトヴォルカニックフォーム。それだけ、経験値も扱う力も埋め切れない差がある。

 炎竜が召喚したヤマタノオロチは残る頭をアギトヴォルカニックフォームに向ける。

 ヤマタノオロチの口から全てを燃やす炎を燃やし始める。

 

 「ヤバい!!」(アギトヴォルカニックフォーム)

 「まずは、ヤマタノオロチの炎から生き延びてみろ。」(炎竜)

 

 炎竜が言い終えるとヤマタノオロチの口から豪炎を吐き出す。

 アギトヴォルカニックフォームは咄嗟にヴォルカニックセイバーアローで豪炎を少しでも防ごうと防御姿勢を取った。

 ヤマタノオロチがはなった豪炎はアギトヴォルカニックフォームの肉体を焼く。

 自身の再生能力で傷を癒すアギトヴォルカニックフォームだが、ここまでの連戦で消耗していることもあり、変身が解除されることは無かったがその場から立ち上がるのが難しかった。

 

 「大樹!大丈夫!?」(ヴァルキリー)

 

 倒れるアギトヴォルカニックフォームに駆け寄るヴァルキリーリヴァイアサンアームズ。

 ヴァルキリーの介助を受けてを受けて立ち上がるアギトヴォルカニックフォーム。

 その様子をヤマタノオロチの頭部の乗ったまま見る炎竜。仮面の下の表情を伺うことは出来ない。

 

 「どうして、攻撃しないの。」(ヴァルキリー)

 

 その様子をアギトヴォルカニックフォームを支えるヴァルキリーが見る。

 ヴァルキリーの言葉に傷が癒え始めているアギトヴォルカニックフォームも炎竜を見る。

 

 「攻撃、できないんだと思う。多分ね。」(炎竜)

 

 炎竜の経緯を、その詳しい詳細を炎竜自身から聞いたアギトヴォルカニックフォームはその理由を推測していた。その二人の前に炎竜が召喚した大量のインベスたちが立ちはだかる。

 

 「こんな時に。」(ヴァルキリー)

 「万夏、少し回復したから大丈夫。」(アギトヴォルカニックフォーム)

 「そんな怪我をしてるのに、無茶しないで!」(ヴァルキリー)

 

 アギトヴォルカニックフォームは戦おうとするもいまだにその傷は回復していない。それをヴァルキリーはたしなめる。

 ヴァルキリーはアギトヴォルカニックフォームを支えながら、リヴァイアガンソードの銃口をインベスたちに向ける。そこに白銀ゴッドエナジーアームズが駆けつけ、インベスたちを一掃した。

 

 「二人とも、無事か!」(白銀)

 「一夏兄さん!」(ヴァルキリー)

 「怪我してるけど、大丈夫。」(アギトヴォルカニックフォーム)

 

 白銀の他にも戦っていた仮面ライダービーストロード、仮面ライダーエグゼリオンビーストゲーマーレベル50が駆けつける。

 

 「随分やられたな、柏葉。」(エグゼリオン)

 「うるせ。」(アギトヴォルカニックフォーム)

 「まずは、ここを乗り切ろうよ!学園にいる皆の避難もさせないと!!」(ロード)

 

 仲間たちが集まってきたことで戦況が良くなる、ということでもなく戦況は厳しいままだった。

 

 「おい、お前たち聞こえているか!?」(千冬)

 「千冬姉!!」(白銀)

 「お姉ちゃん!!」(ヴァルキリー)

 

 そんな中で一般生徒の避難など学園側で動いていた千冬から連絡が入った。

 

 「一般生徒、教員を含めた職員は私と山田先生を除いて避難が完了した。お前たちも撤退を始めろ。」(千冬)

 

 千冬から生徒を含めた学園に居る人間の避難の完了、自分たちの避難が指示ざれた。それを聞いて、白銀たちも撤退の準備をする。

 

 「ブルースさん!!撤退、撤退します!!」(ロード)

 「分かった。ソー、頼む。」(ハルク)

 

 遠くにいるハルクに撤退を伝えたロード。ハルクは近くにアベンジャーズを集め、ソーに移動することを伝える。

 ソーは仲間たちが集まったことを確認するとストームブレイカーを掲げる。それによって、天より虹色の光がアベンジャーズのメンバーに降り注ぎ彼らを戦場から連れ去った。

 

 「一気に道を作るぞ!!」(白銀)

 

 白銀の掛け声にロードとエグゼリオンが合わせる。

 3人は必殺技でインベスたちを撃破、道を作る。

 アギトヴォルカニックフォームを支えるヴァルキリーを連れ立って、彼らも無数のインベスたちがいるこの場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side炎竜=ファブニール

 俺はこの世界の俺が仲間たちと共に撤退するその背中を見ていた。

 アベンジャーズも居なくなり、文字通りここには俺しか居なくなった。

 ヤマタノオロチをロックシードを戻すと、魔蛇が俺の所へ歩いて来た。

 

 「紘汰に倒されたと思ったが。」(炎竜)

 「そう簡単に倒されはしないさ。それで、お望みの力はどうだ?」(魔蛇)

 

 魔蛇が言ったお望みの力=デュアル邪王アームズの具合は俺が予想していた以上に良かった。

 

 「想像以上だ。黄金の果実とはまた違う。世界を滅ぼした13体の覇王の力を合わせればそれも当然だが。」(炎竜)

 

 正直なところ、俺はこの邪王ロックシードの力をあまり信用していなかった。

 人間の身で黄金の果実の力を乱用していた俺は既にボロボロになっていた肉体は限界を迎えていた。

 ボロボロの肉体を最期の時まで戦うことが出来るようにするためにこの力を手にした。だが、俺が予想していたよりも十三異界覇王たちの力は強力なものだった。

 

 「ところで、そいつはどうするんだ?」(魔蛇)

 

 魔蛇が指を指したところには白髪に浅黒い肌をした若い俺、どうやらあの黒い仮面ライダーに変身していた奴が変身が解けて気を失っていた。

 俺の目的であるこの世界の俺、というわけではないのは一目見て分かった。俺自身は特に彼をどうこうしようとするつもりはない。

 

 「彼も別世界の俺らしい。俺の目的はそこの彼じゃないからな、放っておくつもりだが。」(炎竜)

 「ほう。」(魔蛇)

 

 俺の言葉に魔蛇が何やら思いついたようだ。

 骸骨の表情を見て、何かが分かるわけではないがそのしぐさから何かを企んでいるのは分かった。

 俺はそのまま魔蛇に背を向ける。

 こいつが何を企んでいようが関係ない。

 俺はもう俺の目的を達成するまで終われない。この命が終わるまで、俺は終われない。

 

 「さあ、俺と同じ境地まで来い。」(炎竜)

 

 俺から漏れ出る瘴気が徐々に形を作る。それは骸骨で出来た城になり始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side3人称

 大樹たちはIS学園から脱出した。

 貴虎と鳳蓮も合流し、彼らは一度ヴァルハラへ拠点を移した。

 大樹はヤマタノオロチから受けた傷をアギトの力で回復していた。だが、回復に伴い体力の消耗が激しくそのままヴァルハラ内の医務室で休むことになった。

 大樹のそばには万夏、一夏、秋人と春奈がそばに着き、様子を見守っていた。

 同じ頃、颯斗と陸はハルクとホークアイ、ソーと共にヴァルハラのアーマードライダーたちと情報共有を行っていた。学園側からは同行した千冬と真耶がおり、現状に至るまでの状況整理を行っていた。

 

 「まさか、ファブニールが異世界の大樹君だとはな。」(貴虎)

 「初めて現れた敵がまさかの自分だなんて、あの子には気の毒ね。」(鳳蓮)

 

 ここまでの情報を知り、大樹に降りかかった運命を苦々しく思う貴虎と鳳蓮。その二人に、ハルク=ブルースが口を開いた。

 

 「僕たちの知っているダイキ、君たちの言うファブニールの目的にあの子が、こちらの世界の大樹が関わっているのは間違いないだろう。ただ、その目的も僕達ですら予想できない。」(ハルク)

 「俺達の仲間のワンダは何かを知ることができたとは思うが。」(クリント)

 「あいつは誇り高き戦士で俺達の友人だった。今では信じられない相手になってしまったが。」(ソー)

 

 ブルースに引き続きホークアイ=クリントも話す。ソーもかつての仲間が敵対している現実に怒りを覚えている。現時点ではファブニール=ダイキの真意を知っているワンダも医務室で手当てを受けている状況であり、精神世界で知り得た情報をまだワンダ以外は知らなかった。

 

 「唯一ファブニールと戦った大樹の話だと、これまでに倒した敵の力を吸収して手が付けられないって言ってました。」(颯斗)

 「十三異界覇王、今回行われている戦いの前にもあった過去の奴らも吸収したからだ。」(紘汰)

 

 颯斗の言葉を続けるかのように紘汰がかつての姿でこの場に入って来た。

 

 「葛葉。」(貴虎)

 「みずがめ座の坊や。」(鳳蓮)

 

 懐かしい人物の登場に厳しい表情を一度緩める貴虎と鳳蓮。

 新しく登場した人物に颯斗たちを始めとして他の面々は誰もが理解の追いつかない表情をする。

 

 「彼は葛葉紘汰。16年前、沢芽市を救った人物だ。アーマードライダー鎧武、黄金の果実の力を手にして戦った私達の仲間だ。」(貴虎)

 

 貴虎が紘汰のことを簡単に紹介する。16年前から変わらぬ風貌の彼について彼を初めて知る人物たちへの疑いが出ないように説明した。

 

 「君達がずっと戦って来た相手である十三異界覇王はそれぞれが自分たちのいた世界を滅ぼした存在だ。」(紘汰)

 「確か、ファブニールもそんなことを言っていたけど。それがファブニールのパワーアップに何の関係が?」(颯斗)

 「ファブニールは数多くの世界を変えることができる力を求めた。それを、世界を滅ぼした13体の十三異界覇王から手にすることにした。ヘルヘイムの森の化身、その一人である魔蛇の協力を得て。」(紘汰)

 「魔蛇って、昔私達が倒した相手じゃない。生きていたのかしら。」(鳳蓮)

 「奴らは肉体が滅んでも蘇る、恐らく魔蛇は長い時間を掛けて肉体を復活させたんだろう。」(紘汰)

 

 今回の黒幕である魔蛇。この世界を侵略してきたヘルヘイムの森、その化身である魔蛇はかつて紘汰らアーマードライダーと激しい激闘を繰り広げた。

 ヘルヘイムの化身として様々な力と謀略を駆使してアーマードライダーたちを苦しめてきた。

 魔蛇の名を再び聞いた貴虎と鳳蓮を表情をより一層厳しいものへ変えた。

 

 「魔蛇の目的はヘルヘイムの森を拡大、その過程で多くの世界を滅ぼすことだ。ファブニールに協力しているのはその目的を達成できるからだ。」(紘汰)

 「じゃあ、ダイキはそいつに利用されているのか?」(クリント)

 

 紘汰の話を聞き、ファブニール=ダイキが利用されているのではと考えたクリント。そのクリントの言葉に紘汰が頷く。

 

 「ああ、恐らく。だが、ファブニール、ダイキも奴を利用するつもりだ。現に、今の状況は魔蛇のことを利用した結果だろう。」(紘汰)

 

 この現状にかつての仲間、別世界の人物とは言え共に戦っている自分たちの仲間がこの状況を作り出すべく行動していたという事実に全員が沈黙する。

 ここまでで大樹と共に戦うことが多かった颯斗の表情は重苦しいもので、陸はその場の空気から軽口を言おうとするも他の面々の表情を見て取りやめる。

 貴虎も鳳蓮も悩ましいらしく、眉間にしわが寄る。

 ブルース、クリント、ソーは反応はそれぞれだがこの場にいる他の面々と同様である。

 沈黙が続いた頃、部屋の扉が開く音が響いた。

 そこには手当てを受けていたワンダに、共に居たピエトロ。スパイダーマン=ピーターとアントマン=スコットの姿もあった。そして、その場には一夏に手を貸してもらっている大樹の姿まであった。その背後には万夏と春奈、秋人の姿もあった。

 入って来た大樹に視線が集まった。

 

 「あいつの、ファブニールのこと?」(大樹)

 

 大樹の言葉に反応は様々だが大樹の問いかけには重い沈黙で答えた。

 

 「なあ、まずは彼の話を聞いてやってくれ。」(ピエトロ)

 

 ピエトロの言葉を聞き、一同が大樹に注目する。

 大樹は一夏から離れ、背筋を伸ばして一同を見る。

 

 「さっき、病室でワンダさんからファブニールのことを聞いた。その上で、俺は...。」(大樹)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side大樹

 俺が病室で休んでいる時、手当てを終えたワンダさんが俺達の方へ来た。

 

 「少し、良いかしら?」(ワンダ)

 「ええ。じゃあ、私とお父さんは席を外そうかしら。」(春奈)

 「あの、出来ればあなたたちにも聞いて欲しいんです。その、彼に関わることなので。」(ワンダ)

 

 席を外そうとした母さんたちをワンダさんが呼び止めた。

 俺に関わる、それを聞いた時にファブニールのことが俺の脳裏によぎった。

 ここまでの戦い、父さんと母さんには詳しいことをあまり話していない。でも、ここまで話さないという選択肢は存在していない。

 俺を見る二人に、俺は首を縦に振る。

 

 「じゃあ、春奈さん。」(秋人)

 「ええ。分かりました。良いわね、皆。」(春奈)

 

 座っていた椅子に座りなおした父さんと母さん。そこで、ワンダさんが話し始めた。

 

 「ファブニールは、私達の知るダイキは、私とピエトロの恩人よ。彼のおかげで、私はたった一人の家族を失わずに済んだ。」(ワンダ)

 

 ワンダさんが話し始めたのはその世界でのファブニールとの出会いからだった。

 ワンダさんとピエトロさんはヒュドラと言う秘密結社によって超人となった。

 ワンダさんはその能力でヒュドラの基地を襲撃したアベンジャーズのメンバーだったファブニールにマインドハックを行ったそうだ。その際に、ファブニールが経験したこと、自分の世界を、愛する者を守れずに自分一人で生き残ってしまった記憶を見たそうだ。

 その壮絶な経験を見たワンダさんは、どうしてファブニールがアベンジャーズに居るのか気になったそうだ。その戦いで人類滅亡をもくろんだ人工知能ウルトロンと戦うことになったファブニールはその戦いの中でワンダさんを、ピエトロさんを救った。

 それからは多くの敵と戦い、仲間との別れを経験したファブニール。ある日、やることがあると言って姿を消した。それから、なんとか所在を突き止めこの世界に来たと話してくれた。

 

 「ダイキの目的は、この世界を滅ぼすことでも、自分の世界を滅ぼすことでもない。あなたが、別世界の自分が愛する人達を護れるように、護る力を身に着けさせること。そのために、自分があなたにとって倒すべき敵となってあなたに倒されること。」(ワンダ)

 

 そして、先ほどの戦いで分かったファブニールの目的を教えてくれた。その最後は、俺に倒されることですべてを終わらせようとしていた。

 それを聞いた時に、何とも言えない表情で俺を見たのは万夏、一夏、父さんと母さんだった。正確には、「ああ、お前ならやるな。」と言った表情だった。

 

 「別世界の大樹、とんでもなく迷惑なことを自分にするのね。」(春奈)

 「良かれと思ってやることが周りから賛同されないのは変わらないみたいだな。」(秋人)

 

 保護者からの俺の評価は知っていた。それでも、そんなことをこの子が!くらいは欲しかった。明らかにまあやるよねっていうリアクションをされるとは思わなかったわけではないが、、、。

 

 「お前、そんなことするのかよ。」(一夏)

 「俺じゃない、別の俺だ。俺は巻き込まれた側だ。」(大樹)

 

 一夏にさも俺がしたかと言われた。それは違う、絶対に違う。そして、最後に残るのは最愛の彼女である万夏。俺は一夏からすぐに万夏に視線を移した。

 万夏の表情からがいい加減にしてという思いがありありと伝わった。だから、俺じゃねえって。

 

 「あなたに頼むのは違うと思う。だけど、彼を、ダイキのことを助けて欲しいの。」(ワンダ)

 

 ワンダさんからの頼み、安易に助けるなんてことをファブニールが受け入れることは無いだろう。でも、ファブニールの考えに対して、俺の答えは決まっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ファブニールの目的は、俺が十三異界覇王を倒せる、それこそ世界を護ることが出来る力をつけることだ。それをワンダさんから聞いた。」(大樹)

 

 俺は先に話していた颯斗たちにワンダさんから聞いた話を簡潔にした。そして、俺の考えを、思いをそのまま伝えた。

 

 「俺はたった一人で、世界を護れるほどの力を欲しい訳じゃない。俺はただ愛する人たちを護ることが出来れば良い。そして、俺の力は、俺の力は共に戦う仲間たちなんだ。たった一人で守って戦うのは俺の目指す姿じゃない。」(大樹)

 

 相手が俺に求めているものが分かった。なら、それに対する答えをぶつけるだけなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side3人称

 IS学園、戦いの場となったアリーナには巨大な城郭が出来上がっていた。その城郭は無数の骸骨でできていた。その内部に、城の天守閣に炎竜は居た。

 天守閣の部屋にて椅子に座る彼は、部屋に入って来た人物たちに視線を向けた。

 

 「一人で来ると思っていたが。」(炎竜)

 

 炎竜の視線の先には大樹、一夏、万夏、颯斗、陸の5人が居た。

 

 「皆、行こう。」(大樹)

 

 大樹の言葉に4人はドライバーを装着する。

 遅れて大樹も戦極ドライバーを装着する。

 

 「これが俺の答えだ。」(大樹)

 

 そう言って大樹はロックシードを開錠。仲間たちの変身する。

 大樹の、俺の答えだという言葉に炎竜は心の中でまさかと思った。

 

 「俺は仲間たちと戦う。一人で究極の力を手にするのではなく、俺の力は共に戦う仲間たちだ!!」(大樹)

 

 力強くそう言った大樹。それを聞いて、炎竜はワンダが全てを大樹に伝えたことを察した。だが、それでも炎竜はこの世界の大樹が自分を倒して自分と同じ境地に至る選択をすると考えていた。

 炎竜の誤算、それはこの世界で生きた大樹はすでに自身の答えを決めていること、その答えが炎竜の目指す者では無かったことである。

 

 「卑怯かもしれないが、仲間たちを頼らせてもらう。」(大樹)

 「それでは、その答えではすべてを護ることは出来ないぞ。」(炎竜)

 「知ってるさ。でも、俺のできないことは仲間たちが、仲間のできないことは俺がするだけだ。」(大樹)

 

 真っ直ぐ炎竜を見据える大樹。その瞳には強い光が宿っていた。

 炎竜は、かつての自分の、まだ正義の心に燃えていた頃の、全てを護れると信じて疑わなかった頃の自分を見てしまった。違う生き方をした異世界の自分が、異世界の自分の愛する者と共に並び立つその姿が、かつての自分と被ってしまい無償に苛立つ。

 

 「ふざけるな、そんな甘い考えで世界を護れるか。」(炎竜)

 

 炎竜から怒気が、殺気がその場にいる全員に向けられた。

 それに怯むことなく大樹はロックシードを戦極ドライバーを装着、仮面ライダー輝龍に変身した。

 

 「この戦場...。」(輝龍)

 「俺達が!」(白銀)

 「私達が!」(ヴァルキリー)

 「僕たちが!!(ロード)

 「俺達が!」(エグゼリオン)

 「「「「「「勝ち取る!!」」」」」

 

 各々の武器を炎竜に向ける仮面ライダーフューチャージェネレーションズ。

 

 「甘い考えのガキどもめ、現実を見せてやる。」(炎竜)

 「ねじ伏せてみろよ、先輩!!」(輝龍)

 

 ここにファブニール=炎竜との決戦が始まった。




 遂にファブニール=炎竜との決着が着く。
 暗躍していた魔蛇が、ついに表舞台にて動き始める。

 「散々、引っ掻き回してくれたな。その礼として受け取れ!!」

 遂に始まるヘルヘイムの再侵略。立ちはだかるは全てを喰らう蛇。

 ≪魔蛇アームズ!魔の道は蛇。邪王アームズ!邪悪王、オンダークフィールド!≫


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仮面ライダー輝龍 第27話 十三異界覇王大戦編 第2章 龍王覚醒 アベンジャーズアッセンブル

 前回投稿から時間が空き、すみませんでした。長くお待たせしていた皆様、お待たせいたしました。今回の話で遂にファブニール戦は決着です。今回、かなりの長文となっていますのでご了承ください。それでは、どうぞ。


side大樹=輝龍

 ファブニール=炎竜との4度目の対決が始まった。

 向こうは既にデュアル邪王アームズに変身しており、こっちは全員基本形態となって戦っている。本来ならばこちらの最大最強戦力で戦うところであるがこの戦いの目的は炎竜を倒すことではない、否倒すことに変わりないかもしれないがこれまでの十三異界覇王との戦いとは違う。

 仮面ライダーとして、同じく仮面ライダーとして戦って来た先輩に対して俺の答えを示すための戦いだ。そのために、俺達がここで戦えるように多くの人達の協力があった。

 

 

 

 

 

 

side3人称

 戦いの舞台となっているアリーナ、その中央にある禍々しい城郭の周りにはインベスを始めとした様々な怪人たちが無数にひしめき合っていた。そんな中で大樹たちをファブニールの元へ行かせるべく、多くの仲間たちが戦っていた。

 

 ≪オレンジスカッシュ!!≫

 「セイッハー!!」(鎧武)

 

 仮面ライダー鎧武オレンジアームズが無頼キックにより無数のインベスたちを撃破する。

 別の場所では仮面ライダー龍玄ブドウアームズが必殺技ドラゴンショットで空中を飛び回るコウモリインベスなどを撃ち落としていた。

 

 「紘汰さん!」(龍玄)

 「ミッチー!前に会った時よりもすげえな!!」(鎧武)

 「ミッチーだけじゃねえぞ!!」(ナックル)

 

 襲い来るインベスを前に仮面ライダーナックルクルミアームズがその拳を振るう。そして、

 

 「どおおりゃ!!」(グリドン)

 「ワテクシ達だって、坊やが居ない間に強くなったのよ。」(ブラーボ)

 「ああ。私達全員があれからも戦い続けてきた。」(斬月)

 

 この場に駆け付けたのは仮面ライダーグリドンドングリアームズ、仮面ライダーブラーボドリアンアームズ、仮面ライダー斬月メロンアームズである。かつて、沢芽市にてさまざまな思惑の中でぶつかり合い、最終的に手を取り合った仲間たち。今なお戦い続ける彼らアーマードライダー。長い月日が経とうともその絆は切れることなく、彼らを導き続けていた。

 

 「後輩が頑張っているんならって来たけど、聞いてないよ。」(グリドン)

 「なに、弱音を吐いてんのよ!!先輩らしくシャキッとしなさい!!」(ブラーボ)

 

 戦いの場においても弱音を吐くグリドン。そのグリドンに発破をかけるブラーボ。

 

 「変わんねえよな、城之内の奴。」(ナックル)

 「まあ、シャルモンのパティシエをやっているならしょうがないよね。」(龍玄)

 

 師弟コンビのやり取りを見て呆れながら言うナックル。仮面の下で苦笑しながらフォローをする龍玄。

 彼らのやり取りを見ている鎧武は戦いの場にありながら懐かしさを感じていた。

 

 「さあ、戦いの場だ。気を取り直そう。」(斬月)

 

 この場において空気を引き締める斬月。ここで、斬月が鎧武の肩に手を置く。

 

 「葛葉、行くぞ。」(斬月)

 「ああ。」(鎧武)

 

 斬月の言葉に強くうなずく鎧武。

 鎧武が前へ歩みだした瞬間、仲間たちが鎧武と同じ方向を向く。

 鎧武たちを見るインベスはその気迫に押され、攻撃することが出来なかった。

 

 「ここからは、俺達アーマードライダーのステージだ!!」(鎧武)

 

 武器を構える鎧武たち。その次の瞬間、駆け出した彼らは無数のインベスたちを前に己が武器を振るう。初級インベスの他に、ビャッコ、シカ、セイリュウ、ライオン、ヘキジャ、ヤギ、カミキリ、コウモリなどの上級インベスを前に彼らの刃が、拳が、弾丸が遺憾なく振るわれていく。

 鎧武たちが戦っているなかで、遠くからそれを見守るのはアベンジャーズの面々である。

 ヘルヘイムの森から出現するインベスたちとの戦いではアーマーを装着しているローズを除けば、ヘルヘイム植物の毒素を受ける危険性から貴虎たちから戦いを避けるように言われた。また、この世界においての戦いの中心は大樹、自分たちの仲間であるファブニール=ダイキが別世界=マルチバースの自分を成長させるために起こした戦いであることを知った。

 その彼らに大樹は自分がこの戦いを終わらせると強く言った。その大樹の決意を汲んだ彼らは戦いの行方を見守ることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白銀シルバーエナジーアームズとロードタイプデッドヒートハートが真っ先に斬り込む。白銀はバニシングブレードを上段から振り下ろし、ロードは拳を赤熱させて炎竜に正拳突きを放つ。

 白銀とロードが動く中、エグゼリオンレベル2はガシャコンスピアーを構え、腰を低く落とす。

 輝龍ドラゴンフルーツアームズとヴァルキリーブルーベリーアームズもアームズウェポンを構える。

 炎竜デュアル邪王アームズは向かってくる白銀とロードの攻撃を難無くさばき、二人を真っ向から攻撃する。

 白銀とロードが炎竜の反撃を受けてしまうなかでエグゼリオンは持ち前の身体能力で戦いの場となった天守閣の壁を走り、炎竜の死角へ回り込む。

 

 「ふん!!」(炎竜)

 

 エグゼリオンの動きに対して炎竜は無双セイバーを召喚、振るった剣圧でエグゼリオンを抑える。

 エグゼリオンが抑え込まれた瞬間、輝龍が走り出す。

 炎竜に向かって走り出した輝龍を援護するため、ヴァルキリーはブルーライフルから光弾を無数に撃ち出した。

 放たれた光弾を炎竜は無双セイバーを振るうことで打ち消す。

 間合いに入った瞬間、輝龍は竜炎刀を炎竜に向かって振り下ろす。

 自身の間合いに入った輝龍を迎え撃つべく、炎竜も無双セイバーを振り下ろした。

 刃と刃がぶつかり合い、火花が散る。

 

 「いい気になるな!!」(炎竜)

 

 力づくで輝龍を押し込もうとする炎竜。

 相手が押し込んで来たところを輝龍は炎竜が押し込んでくる方向に向けて、力を受け流す。

 一瞬、体勢が崩れた炎竜。その背後にロードが走り込んでドロップキックを見舞う。

 背後からの強烈な衝撃で前方へ転がる炎竜。

 すぐに立ち上がる炎竜に白銀とエグゼリオンが息もつかせぬ連撃を繰り出す。

 咄嗟に使い慣れた竜炎刀を召喚する炎竜。二刀流で次々と繰り出される連撃を受けていく。そんな中で、輝龍たちの狙いも察していた。

 

 「ここから突き落とすつもりか。」(炎竜)

 「ここじゃあ狭いんだよな。だから、場所を変えさせてもらうぜ。」(エグゼリオン)

 「俺達はあんたに勝つ。そのための作戦は立ててある。」(白銀)

 

 炎竜は白銀とエグゼリオンの会話からその作戦を立てたのが輝龍=大樹だと勘付く。

 

 「舐められたものだな、この程度で何とかなると思われるのがな!!」(炎竜)

 ≪デュアル邪王スカッシュ!!≫

 

 炎竜は邪王ロックシードのエネルギーを無双セイバーと竜炎刀に纏わせる。

 漆黒の瘴気と紫電が走る二振りの刃を構える炎竜。それを見て、白銀とエグゼリオンは攻撃を中断して距離を取る。

 

 「ムン!!」(炎竜)

 

 炎竜は無双セイバーと竜炎刀を同時に振り下ろし、紫電を纏った漆黒の斬撃を放った。

 X字の斬撃はそのまま白銀とエグゼリオンに襲い掛かる。

 白銀とエグゼリオンの前に輝龍とロードが並び立ち、爆炎を帯びた斬撃と拳で炎竜の攻撃を真正面から受け止めた。

 

 「消し飛べ、ガキども!!」(炎竜)

 

 炎竜が怒りのままにそう言った瞬間、炎竜の右側に居たヴァルキリーが必殺技サファイアフレアを発動する。

 ブルーライフルの銃口から極大のレーザーが放たれ、炎竜を飲み込んだ。 

 ヴァルキリーの攻撃により天守閣から落とされた炎竜。それを見て輝龍たちも炎竜が落ちた場所へ降り立つ。

 

 「さあ、これで終わりだ。」(輝龍)

 「終わりだ?何が終わりだ。結局、仲間の力を借りて勝つってんなら間違いだぞ!!柏葉大樹!!てめえの力が高が知れてているから助けを求めるだと!!ふざけるな!!そこにいる奴らもお前の守りたい人だろうが!!」(炎竜)

 

 輝龍=大樹に対して怒りをあらわにする炎竜=ダイキ。その怒声はその場にいる面々に身動き一つ許さないほどの圧があった。事実この場で炎竜と対峙しているロード、エグゼリオンはその圧を前に動くことが出来なかった。

 白銀とヴァルキリーはそれぞれアームズウェポンを構え、輝龍を護るように前へ出る。だが、二人も炎竜の圧に気圧されており、炎竜を注視するも二人とも即座に攻撃することができなかった。

 その場にいる面々が動けない中、輝龍は堂々と炎竜を見据える。それだけではなく、白銀とヴァルキリーよりも一歩前へ出た。

 

 「ああ。ここにいる仲間たちも俺の守りたい人たちだ。」(輝龍)

 「なら、なぜ!!戦いの場に共にいることがどういうことか分かるだろ!!そこにいる奴らも守りたいなら全ての超える力を、たった一人で全てを護ることができる力を手に入れなければならない!良いか、お前の守りたいものを守るにはたった一人で戦い続けなければならないんだよ!!」(炎竜)

 

 輝龍は炎竜の言葉に同意する。

 炎竜は輝龍が自身の言葉に同意してなお、自身の思う道へ進まないことに怒号を発する。

 輝龍は炎竜の言葉に、ここではない別の世界、前世における自分の戦いを思い出した。たった一人で全てを背負い、傷だらけになりながら戦い続ける孤高の道。炎竜の言葉は、かつての自分が辿った道筋そのものだった。その結果は愛する者を守り切れず、最愛の人を残して若くして命を散らした悲惨なものだった。

 炎竜の言葉に、怒気に気圧されながらも輝龍と共に戦って来た仲間たちがその言葉に大なり小なりの反発を覚えた。

 ロードは炎竜の言葉に、自身の意思を無理矢理輝龍=大樹に押し付けようとするその意思に否定の思いを抱いた。

 エグゼリオンは炎竜の言葉に、仲間の存在を否定する意思を感じ取った。

 白銀は炎竜の言葉に、自身の友が、大樹が言うであろう言葉だと感じながらもその言葉が共に育った親友が決して言うことは無い言葉であると思った。

 ヴァルキリーは炎竜の言葉に、前世での大樹の死に様を思い出した。その言葉がまたも最愛の人を孤独の道へ誘うものとして大きな怒りを覚えた。

 炎竜の発した言葉に対して白銀たちはおのずとファイティングポーズを取った。それは言葉ではない明確な拒絶の意思だった。

 

 「お互いに言っても意思が変わらないのは分かるだろ。なら、最後までぶつかり合う以外に方法はないだろ。」(輝龍)

 

 炎竜の言葉に静かに言う輝龍。

 

 「俺は全てを守る力が欲しい訳じゃない。この世界の全てを守りたいわけじゃない。ただ、大切な人たちと幸せに生きていきたいだけだ。俺一人で戦い続ける道を、もう選ぶことは出来ない。俺は、ここにいる仲間たちと一緒に未来を生きるために、共に戦い続ける。あんたの望む道に俺は進まない。」(輝龍)

 

 竜炎刀と無双セイバーを合体させる輝龍。無双セイバーナギナタモードの切っ先を炎竜に向ける。

 

 「行くぞ、カシワバダイキ。」(輝龍)

 「生意気ぬかすな、ガキども!!」(炎竜)

 

 炎竜は怒りのままに邪王ロックシードの力を開放する。漆黒の瘴気と紫電が炎竜から放出され、その複眼が赤く輝く。

 

 「お前たち子どもに教えてやる。絶対に超えられない力の差をな!!」(炎竜)

 

 変貌した炎竜のプレッシャーを受けて、遂に最終局面へ入ったことを察した輝龍らフューチャージェネレーションたち。各々が武器を構え、炎竜を迎え撃つ姿勢を示した。

 邪王ロックシードの力を感情のままに開放して襲い掛かる炎竜。これまでと違い、手にした力を怒りの感情のままに振るうその姿は正しく邪龍に相応しい姿だった。

 怒りの感情のままに振るわれる刃はあらゆるものを粉砕する。

 炎竜の振るう刃から放たれた漆黒の斬撃はインベスも戦いの場となっているアリーナも切り裂き、甚大な被害を出していた。

 炎竜の攻撃を躱しながら輝龍たちも応戦する。

 無数のインベスたちのいるアリーナで戦うのは至難の技、それが怒り狂う炎竜によって自分たちに危険が及びながらもチャンスとして行動したのだった。

 怒りのままに刃を振り下ろす炎竜。輝龍はその刃を一歩も引き下がることは無かった。それどころか無双セイバーナギナタモードを巧みに使い、炎竜の攻撃を全て防いだ。

 輝龍へ注意が向いていることで白銀、ヴァルキリー、ロード、エグゼリオンは四方に散らばる。

 炎竜は白銀たちの動きに注意を向けるも攻撃が緩んだ瞬間に輝龍が攻勢へ転じる。

 炎竜の二刀流を封じるように無双セイバーナギナタモードを振るう輝龍。無双セイバーナギナタモードが回転し、遠心力と輝龍の腕力によって振るわれるその攻撃は炎竜を瞬く間に防戦一方まで追い詰めた。

 

 (おかしいだろ。こっちは13体の十三異界覇王の力を使っている。それなのに、クラスAとは言え通常のロックシードを使っているこいつに押されているのは、なぜだ、なぜだ!!)(炎竜)

 

 気付けば形勢が変わっていた。なお、炎竜を追い詰めていた輝龍はその精神が今まで以上に落ち着いているものだと気付いた。

 

 (こんなに落ち着いて戦うのは初めてだ。こんなにも目の前の相手に集中することができる。近くにいる一夏や颯斗、桐ケ谷の動きがよく分かる。それに、見えないけど後ろにいる万夏も何をしているのか分かる。一緒に戦っている仲間たちがいることがこんなにも頼もしいなんて。)(輝龍)

 

 自然と仮面の下で笑みを浮かべる輝龍=大樹。その大樹の心情を現すように彼が使っているロックシードとアームズに小さな亀裂が走る。亀裂からは黄金の輝きがチラチラと漏れる。

 輝龍は無双セイバーナギナタモードを大きく薙ぎ払い、炎竜を大きく弾き飛ばした。

 輝龍と炎竜の距離が離れたことですかさずロードが炎竜に殴り掛かる。

 拳に炎を纏い、炎竜を殴りつけるロード。その拳は炎竜が持っていた無双セイバーを弾き飛ばした。がら空きになった胴にロードは赤熱し、爆炎を上げる拳を叩き込んだ。

 ロードの一撃に怯む炎竜。だが、即座にロードを前蹴りでどかし、輝龍に詰め寄ろうとする。

 ロードが避けられたその瞬間にエグゼリオンが炎竜の頭上から急降下の一撃を放つ。

 頭上からの攻撃を竜炎刀で防ぐ炎竜。すかさずエグゼリオンを押し返す。

 エグゼリオンは炎竜に押し上げられたその瞬間に大きく宙返りをして着地する。その瞬間、ガシャットをキメワザホルダーにセットしていたエグゼリオンはエネルギーのチャージに合わせ炎竜の周囲を高速で走り出す。

 まるで複数のエグゼリオンが走っているような様子に炎竜は竜炎刀に邪王ロックシードのエネルギーを纏わせて振るう。

 エネルギーが斬撃へと変わりエグゼリオンへ襲い掛かる。

 爆音と同時に土煙が上がり、エグゼリオンの姿を隠す。だが、土煙から右足を蒼く輝かせたエグゼリオンが炎竜に向かってライダーキックを放った。

 エグゼリオンの一撃を防御する間もなく受けてしまう炎竜。そこへ白銀とヴァルキリーが攻撃を始める。

 近距離から体術と銃撃で息もつかせぬ連続攻撃で攻め込むヴァルキリー。バニシングブレードを振るい、剣術で炎竜を追い込む白銀。兄妹ならではの息が合った連続攻撃で炎竜に息もつかせない程の激しい攻撃を加えている。

 炎竜は別世界とは言え、かつての親友と愛する人を前に太刀筋が少なからず鈍ってしまう。だが、心を鬼にして白銀=一夏とヴァルキリー=万夏に竜炎刀を振るう。

 二人が竜炎刀の一撃を武器で防御し、距離を取った時だった。

 先程まで仲間たちの様子を見ていた輝龍が前へ歩みだした。

 一歩、一歩と炎竜に近づくにつれてドラゴンフルーツアームズの鎧の亀裂が広がり始める。

 亀裂が漏れ出る光が徐々に強くなる。

 ドラゴンフルーツアームズの鎧全てに亀裂が走ると鎧がボロボロと崩れ始めた。

 崩れたドラゴンフルーツアームズの鎧の下から黄金に輝く鎧が出現する。それに呼応するように輝龍が持っていたシークワーサーロックシードとパッションフルーツロックシードの外装も剥がれた。

 

 ≪ゴールドドラゴンフルーツアームズ!!光龍、アップライジング!!≫

 

 仮面ライダー輝龍ゴールドドラゴンフルーツアームズ。この世界を侵略せんとした大樹の義兄である柏葉勇吾こと仮面ライダージャークを撃破した姿。大樹が自身に宿ったアギトの力によりロックシードを進化させることで発現した最強の姿の一つである。

 輝龍は無双セイバーナギナタモードにロックシードをセットする。

 

 ≪ロックオン!ゴールドドラゴンフルーツチャージ!!≫

 

 ロックシードのエネルギーが無双セイバーと竜炎刀、竜炎刀が強化された竜炎刀・陽炎の刃に集まっていく。

 輝龍の武器に集まるエネルギーを見て、怒りの感情を爆発させる炎竜。

 

 ≪デュアル邪王スパーキング!!≫

 

 竜炎刀に漆黒の瘴気を纏わせ、長大な刃へと変わる。

 

 「ひれ伏せ!柏葉大樹!!」(炎竜)

 

 炎竜は竜炎刀を天へと突き上げ、そのまま上段から振り下ろした。

 自身に襲い掛かる漆黒の刃を輝龍は見据え、無双セイバーナギナタモードで切り上げる。

 激突する黄金の輝きと漆黒の瘴気。ぶつかり合ったエネルギーは爆散する。

 爆散したエネルギーの中で輝龍は無双セイバーナギナタモードを地面に突き立てた。

 冷静な挙動により流れるようにドライバーを操作する。

 

 ≪ゴールドドラゴンフルーツスカッシュ!!≫

 

 輝龍の右足が黄金に輝く。そのまま輝龍は走り出し、炎竜に向かって必殺技の輝龍蹴を放つ。

 宙に跳び上がった輝龍の右足はそのまま前へ突き出され炎竜に向かって勢いよく進んでいく。

 攻撃を中断された炎竜は咄嗟に竜炎刀で防御するが心技体が共に充足している輝龍を前に防御を突破され、地面に倒れ伏せるのだった。

 炎竜が倒れたことで白銀、ヴァルキリー、ロード、エグゼリオンが輝龍の元へ駆け寄る。

 地面に倒れた炎竜の変身は解除され、カシワバダイキは未だに止まぬ怒りの表情のままに輝龍を睨みつける。

 

 「これが、これがお前の答えだって言うのか。それが正しいと?甘い、甘いんだよ!!何もかもが甘いんだよ!!」(ダイキ)

 

 ダイキの怒りの言葉の中、輝龍たちの周囲にいたインベスたちも鎧武らの活躍によって全てが撃破された。

 もう変身している必要がないことを確認した輝龍たちは変身を解除する。

 

 「例え、俺の答えがあなたにとっては子どもの夢物語のような甘い代物だとしても。俺は、俺の答えを曲げるつもりはない。ここまで戦い続けてきた俺が、一夏、颯斗、陸、色々な仮面ライダーの先輩たちと戦って来た中で見つけた答えだ。当然、俺の愛する人と共に生きるために。」(大樹)

 

 あくまで穏やかに、相手を刺激しない口調で話す大樹。そこにはただただ一人の人間として、目の前にいる別世界の自分を、別の道を歩んだ先達への敬意と自身の答えに対する確固たる意志が存在した。

 

 

 

 

 

 

 

side大樹

 目の前で怒りの表情のままに俺を見つめるもう一人の俺がいる。今の俺よりも年齢を重ね、数多くの、数え切れないほどの戦いを潜り抜けた仮面ライダー。俺が憧れたであろう戦士として生きて来た俺、ファブニールと名乗った彼は俺にとってはどこまでもよく似ている他人でしかなかった。

 この人にとっては俺はまだまだ未熟な過去の自分として映っているんだろう。だけど、この人が見ているのは俺であって俺ではない。それを、そのことをはっきり伝える必要がある。

 

 「俺を成長させるため、ならここまでする必要は無かっただろ。」(大樹)

 「なんだと!」(ダイキ)

 「あんたが強くしたかったのは、ここにいる俺じゃなくて自分自身なんじゃないのか。」(大樹)

 

 俺の言葉にファブニールの表情が強張った。

 

 「違う、そうじゃない。俺は、俺は、君が二度と大切な人を失わないために...。」(ダイキ)

 「ごめん、その気遣いは嬉しいけど。俺はもう俺の答えがある。」(大樹)

 

 後ろから大きな音がする。振り返るとアベンジャーズのメンバーがその場にいた。

 俺は皆に目配せをして、アベンジャーズのメンバーと位置を入れ替わる。

 後のことはきっとファブニールの仲間であるアベンジャーズがやってくれるだろう。

 

 

 

sideファブニール=ダイキ

 俺の前にアベンジャーズの面々が並ぶ。こんなことをしでかして、正直会わせる顔が全くない。

 俺がそのまま俯いていると誰かが俺の襟を掴んで立たせた。

 

 「自分で何をしているか分からないのか!!」(ソー)

 

 ソーが怒り心頭で俺に言った。

 

 「分かってたさ、だけど、俺は。何もせずにいられなかった。」(ダイキ)

 「お前のやったことはサノスと同じだ。自分の正義だけで周りを考ずに、周りを苦しめた!!」(ソー)

 

 ソーに捕まれる襟が首を絞める。そのソーにクリントが肩を置く。

 

 「おい、そのままじゃあ殺しちまうぞ。一度離してやれ。」(クリント)

 

 クリントの言葉にソーが俺を離す。かと思えば今度はクリントに殴り飛ばされた。

 

 「全く、自分勝手にやるのはスタークに似てるな。」(クリント)

 

 今のパンチで口の中が切れた。それでも、俺はクリントを見る。

 

 「俺はそれで許してやる。だが、チームを蔑ろにしたのは許さんが。」(クリント)

 

 クリントの言葉に俺は首を縦に振る。パンチ一発で済ませてくれた辺り、クリントはこれでチャラにするつもりみたいだ。

 

 「お前とはそう付き合いが長い訳じゃないが、お前のことは嫌いじゃなかった。」(サム)

 

 次に来たのはサムとバッキ―、スコットだ。スティーブと関わりの深い三人からは正直何が来るか分からない。

 

 「だけど、今回のことは俺も許さない。チームの蔑ろにして、こんなことをしたのは許されないだろ。」(サム)

 「ああ、サムの言うとおりだ。」(ダイキ)

 「それだけじゃない、スティーブも今回のことを知れば落胆する。あいつは君のことをしっかりと評価していた。それだけに俺もがっかりだ。」(バッキ―)

 

 サムとバッキ―からは厳しい言葉が投げかけられる。

 

 「なあ、ダイキ。君とは付き合いが長い訳じゃないが、今回のことは皆が傷ついた。それだけは分かってくれ。それに、また君と一緒に仕事をしたい。だから、戻ってくれ。」(スコット)

 「ここまで厳しいことを言われた中で一番それが堪えるよ、スコット。俺は、俺は君達の所に戻れない。」(ダイキ)

 「大丈夫だ。犯罪者だった俺もアベンジャーズとして、アントマンとしてやっているんだ。なあ、また一緒にやろう。」(スコット)

 

 スコット、その優しさが本当に俺には堪えるよ。そのスコットの言葉を否定しない辺り、サムもバッキ―もそう思っているのは想像に難くない。

 最後に残っているのはローディ、ブルース、ピーター、ワンダ、ピエトロ。俺と最も親しい人たちが残っていた。

 ピーターは何を言おうか考えているらしい。さっきからあまり落ち着きがない。

 ピエトロは厳しい表情で俺を見る。ああ、かなり怒っているのがよく分かる。

 ワンダは、、、もう俺の考えていることもここにいるメンバーの考えは分かっているな。それでも俺と話せるからか、俺の気持ちを知ってなのか安心した表情を見せる。

 ブルースはただ、優しい表情で俺を見る。トニーと一緒に居る時に見せた、俺に向けている表情だ。

 ローディは、トニーが面倒を起こした時に見せた表情を俺に見せていた。俺も、トニーを、ボスのことを強く言えないな。

 

 「その、ごめん皆。」(ダイキ)

 「そうだな。トニーの奴と同じくらいに迷惑をかけてたな。」(ローディ)

 「あのさ、ダイキがこんなことをした理由って?その、この世界を滅ぼすんじゃなくて?」(ピーター)

 「いや、世界を滅ぼす気はないよ、ピーター。そこが目的じゃない。」(ダイキ)

 

 俺の言葉を聞いて苦い表情になるローディ。ピーターに至っては困惑している。

 

 「ダイキ、なぜ何も言わなかった。」(ピエトロ)

 「ピエトロ、待って。」(ワンダ)

 「ワンダ。」(ダイキ)

 「さっき言った通り、なんでしょ。」(ワンダ)

 

 ピエトロが厳しく表情で俺に問い掛ける。それをワンダが遮り、俺に言った。

 ワンダの言う通り、いやワンダにはもう全てが明かされてしまった。否定したところでそれは意味をなさない。

 

 「ダイキ、君のやることは終わった。そうじゃないのか?」(ハルク)

 

 ブルースが俺の肩に手を乗せる。ハルクの姿でそんなことを言われるのは未だに慣れないが、遠くにいる彼らを見て、俺のしようとしたこと、ここまでにしたことが完全に終わったことを嫌でも理解させられた。納得したくはないが。

 

 「認めたくないさ。ここまで来たのが無駄になる。」(ダイキ)

 「無駄じゃない、お前が歩んできたことは無駄じゃない。お前が居たことで俺達はチームになれたんだ。アベンジャーズを一つにしたのはダイキ、君だ。それまで否定するのか?」

 

 ローディの言葉に、アベンジャーズの、トニーとの日々を思い出す。

 

 「否定できるか、否定できるわけないだろ。」(ダイキ)

 

 全てを失い、紘汰の星に時々立ち寄りながらも腰を落ち着かせていたアベンジャーズの世界。全てを失った俺を優しく受け入れてくれた仲間たち、ここまでに歩んできた数多くの世界でのことを否定したことは一度もない。

 

 「さあ、戻ろう。帰ってやることがたくさんあるからな。」(ローディ)

 

 アベンジャーズの仲間たちが俺を受け入れる。でも、このままでは、俺のしたことにけじめが付かない。

 

 「その前に、彼らに謝罪するよ。迷惑をかけたから、せめてそのくらいは。」(ダイキ)

 

 俺の言葉に各々が納得した表情を見せる仲間たち。俺はそのままこの世界の俺の元へ,,,,,,,,

 

 「それでハッピーエンドは無いだろ?なあ、ファブニール。」(魔蛇)

 

 その瞬間、俺の背中が急に熱くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side3人称

 ファブニール=ダイキのそばにいたアベンジャーズの仲間たちは異変に即座に気付いた。だが、気付いた時には遅かった。

 

 「ッ!ガハッ!!」(ダイキ)

 「ここまでお互いに利用し合っていたんだ、お前が俺を利用した分、しっかりと返してもらわないとなぁ。」(魔蛇)

 

 ファブニール=ダイキの背後に突如として出現した魔蛇は黄泉丸を手にしていた。その黄泉丸の刃は深々とファブニール=ダイキの背中から胸まで刺し貫かれていた。

 

 「ダイキ!!」(ワンダ)

 

 アベンジャーズは即座にファブニール=ダイキを助けるべく動くが、すぐさま魔蛇は姿を消す。

 突如、姿を見せた十三異界覇王大戦の黒幕に大樹たちも即座に警戒態勢を取る。

 

 「魔蛇!!」(紘汰)

 「おう、葛葉紘汰。そして、地球の仮面ライダーたちよ。俺の名は魔蛇、ヘルヘイムの化身だ。それと、柏葉大樹。お前にはこちらの姿の方が分かりやすいか。」(魔蛇)

 

 魔蛇はその姿を骸骨の姿から藤村正東、かつて世界を滅ぼそうとした柏葉勇吾の配下としての姿に変わった。

 

 「お前、兄貴の所に居た奴か。」(大樹)

 「覚えてくれていたようで嬉しいよ。お前の兄貴は本当に良く動いてくれたよ。俺がそそのかしたら、そのまま育ての親を殺したんだからな!!」(魔蛇)

 

 魔蛇の言葉からかつての、大樹の幼い頃に起きた事件が魔蛇の手によって引き起こされたことを明かされた。ここに来て思わぬ事実が判明したことで大樹の中に決して小さくない衝撃が走る。

 

 「そうか、お前が兄貴を。」(大樹)

 

 その眼に怒りの感情を燃やしながらロックシードを構える大樹。

 

 「むかつく眼をしているな。だが、お前の相手は俺じゃない。」(魔蛇)

 

 そう言うと魔蛇は自身の近くにクラックを出現させる。

 出現したクラックからはヘルヘイム植物で拘束されている黒崎修羅が現れた。

 

 「さて、お前たちガキどもはガキ同士でやりあえ。ほら、やれ。」(魔蛇)

 

 魔蛇の指示で動き始める修羅。だが、その表情はどこか虚ろだった。

 修羅はそのままビルドドライバーを装着、シュバルツワイバーンとワイバーンフルボトルを使い仮面ライダーシュバルツに変身した。

 仮面ライダーシュバルツはそのまま大樹たちに襲い掛かる。

 大樹たちはそれぞれ変身、シュバルツと戦闘を始める。

 

 「さあ、散々引っ掻き回してくれな。その礼として受け取れファブニール!!そこでお前が築こうとしたものが、護りたかったもの全てが壊れるのを見ていろ!!」(魔蛇)

 

 魔蛇は倒れ傷口を抑えるファブニール=ダイキを見て高らかに宣言する。その宣言と共に無数のクラックが開き、中から無数のインベスたちがヘルヘイム植物と共に姿を見せる。

 魔蛇はゲネシスユニットをセットした戦極ドライバーを装着する。

 

 「さあて、俺のロックシードも返してもらったわけだ。」(魔蛇)

 

 魔蛇はいつの間に奪い取った邪王ロックシードを手にする。すると邪王ロックシードから魔蛇ロックシードが分離、それらは魔蛇の手から離れて戦極ドライバーにセットされた。

 

 「さあ、終わりの始まりだ!変身!!」(魔蛇)

 ≪ロック、ロック。オン、オン!!魔蛇アームズ!邪の道は蛇。邪王アームズ!!邪悪王、オンダークフィールド!!≫

 

 魔蛇を漆黒の瘴気が包み込む。次の瞬間、漆黒の瘴気は吹き飛び骸骨の蛇の鎧を纏った邪悪な鎧武者=仮面ライダー魔蛇・魔蛇邪悪王アームズが顕現した。

 十三の邪悪なる覇王の力を纏い、ヘルヘイムの化身が暴威を振るう。




 仮面ライダー魔蛇、全てを破壊すべく強大な力を使いヘルヘイムからの侵略を開始した。その中で仮面ライダーシュバルツと戦う仮面ライダー輝龍たち。敵に心を奪われたシュバルツを救うべく鎧武の力を借り、シュバルツの精神世界へ飛ぶ。一方、深手を負ったファブニールは最後の力を振り絞り、輝龍たちに次へ託す。

 



 三龍集いし時、龍王が覚醒する。

 ≪龍王アームズ!!三龍轟一!!≫


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仮面ライダー輝龍 第28話 十三異界覇王大戦編 第2章 龍王覚醒・アベンジャーズアッセンブル

 明けましておめでとうございます。
 仮面ライダー輝龍最新話、長らくお待たせしました。
 一か月もお待たせしてしまい申し訳ございません。今回で第2部十三異界覇王編のファブニール編が完結します。過去最長の話となりました。ボリューム満点の第28話を楽しんでいってください。それでは、どうぞ!


side三人称

 「さあ、この世界の全てを破壊してやる!やれ!!」(魔蛇)

 

 仮面ライダー魔蛇・魔蛇邪悪王アームズは無数のクラックを開き、ヘルヘイム植物とインベスによる侵略を開始した。

 

 「やらせるか!!皆、行くぜ!!」(紘汰)

 「はい!」(光実)

 「ああ!」(ザック)

 「ああ、もう。やるしかないか!」(城之内)

 「ワテクシ達も。」(鳳蓮)

 「そうだな。」(貴虎)

 

 魔蛇の行動から紘汰たちも変身、鎧武は魔蛇と、龍玄らは無数に出現したインベスたちと戦い始める。

 そんな中で魔蛇の攻撃を受けたファブニール=ダイキは膝を着き、胸の傷を抑える。

 

 「ダイキ!!」(ワンダ)

 

 アベンジャーズの面々がファブニール=ダイキの元に駆け寄る。

 ファブニール=ダイキの傷は深く、一目見てファブニール=ダイキが長くないことは分かった。

 

 「流石に...これはダメかもな。」(ファブニール=ダイキ)

 

 それはファブニール=ダイキも分かっていた。だが、ファブニール=ダイキは強い眼差しで近くで戦っている輝龍たちを見る。

 

 「でも、まだ死ねない。まだ、やることがある。」(ファブニール=ダイキ)

 

 ファブニール=ダイキはその強靭な精神力でなんとか自身を保っていた。

 

 「ワンダ、俺の傷を何とかふさぐことはできないか。」(ファブニール=ダイキ)

 「出来ないわけじゃないけど、それよりも早く手当てをしないと!!」(ワンダ)

 

 誰が見ても一刻も速い手当てが必要な怪我、それをファブニール=ダイキも理解していた。だが、それ以上にこの傷により自分の命がそう長くないこともよく理解していたのはファブニール=ダイキ本人だった。その上で彼は自身のやるべきことを最期の瞬間まで果たそうとしていた。

 

 「頼む。こんなことをして、この事態を引き起こした以上、俺はあそこにいる彼らにやらなくちゃいけないことがあるんだ。だから、頼むワンダ。ほんの少しだけで良い、ほんの少しだけ俺が最後までそれをするために。」(ファブニール=ダイキ)

 

 ファブニール=ダイキの強い眼差しを受け、ワンダは彼の決意が固いことを理解する。それが家族の他に愛した男の最期の願いでもあることを読み取ってしまった。だからこそ、ワンダもファブニール=ダイキの決意を、その意思を尊重した。

 

 「分かったわ。でも、私だけじゃ完全にはふさげない。皆の手も借りるわ。」(ワンダ)

 「ああ、頼む。」(ファブニール=ダイキ)

 

 ワンダがファブニール=ダイキの傷に手を当てる。彼女の念動力を受けて徐々に塞がり始める傷。その傷をピーターがウェブシューターから出した糸で保護、ハルクとスコットはハルクが持っているデバイスで疑似的なペースメーカーを作成しファブニール=ダイキの傷ついた心臓に埋め込む。

 

 「とりあえず、今は何とかなるだろう。だけど、ダイキ。これはあくまで応急措置だ。今の君の状態だと長く持たない。それは分かってくれ。」(ハルク)

 「大丈夫だ。ここまでしてもらえば、十分だ。」(ファブニール=ダイキ)

 

 ファブニール=ダイキは何とか力を振り絞り、ドラゴンフルーツロックシードを起動する。

 

 「変身。」(ファブニール=ダイキ)

 

 ファブニール=ダイキは仮面ライダー炎竜ドラゴンフルーツアームズに変身するとふらつきそうになる体を奮い立たせる。

 

 

 

 

 

 

sideファブニール=ダイキ

 ほんの少しでも気を抜いてしまえば意識を失いそうになる。

 何とか気力を振り絞り、気を強く持つ。

 懐にある黄金の果実を、マドカから託された思いを決して無駄には出来ない。

 

 「マドカ、もう少しだけ、もう少しだけで良いんだ。力を貸してくれ。」(ファブニール=ダイキ)

 

 届くかどうかわからない。とうに愛想をつかされているかもしれない。それでも、それでもその思いを口にする。

 俺は戦いの場となっている目の前の、紘汰たちとこの世界の俺を見据える。

 

 「スティーブ、トニー。これが俺の最期の戦いだ。力を貸してくれ。」(炎竜)

 

 この場に居ない、戦いの場を離れた仲間と死ぬ最期の瞬間まで戦った俺のボスに言った。

 俺は息を大きく吐き、後ろにいるアベンジャーズの仲間たちを見る。

 ローディ、ブルース、ワンダ、ピエトロ、ピーター、ソー、クリント、サム、バッキ―、スコット。こんな俺を止めるためにマルチバースを飛んで来た仲間たち。その仲間たちに頭を下げる。

 

 「頼む、力を貸してくれ。」(炎竜)

 

 俺の言葉に沈黙が返される。その次の瞬間、俺の肩に手が置かれた。

 顔を上げる皆が既に準備を終えた姿で居た。

 

 「さて、さっさと終わらせて祝杯だ!!」(ソー)

 「一先ず、帰ったあとは俺の家族サービスに付き合え。」(クリント)

 「俺とバッキ―の仕事、手伝ってもらうか。」(サム)

 「仕事を手伝ってもらうよりもスティーブのところへ行ってもらおう。」(バッキ―)

 「さあ、仕事にとりかかろう。」(スコット)

 「じゃあ、皆で一緒に!!」(ピーター)

 「あなたの手伝いならいつでもするわ。」(ワンダ)

 「準備は出来てるだろ?時間が無いならさっさとやろうか。」(ピエトロ)

 

 俺の肩に手を置くローディとブルース。その表情は戦いの場で何度も見た表情だった。

 

 「さあ、行こうかサムライボーイ。」(ローディ)

 「今日は僕もかなり怒っているからね。目一杯暴れさせてもらうよ。」(ブルース)

 

 傷が痛むのを押して俺はアベンジャーズの輪に加わる。そんな時、俺の持っている黄金の果実から黄金色の波動が溢れ、目の前に二つの時空の裂け目が生じる。

 俺達の目の前で時空の裂け目から見知った二人の人物が現れた。一人はアメリカの国旗、星条旗を模したコスチュームにシールドを持った人物、もう一人は赤と金に彩られ、胸部に輝くリアクターを装備した男だった。

 

 「おいおい、こんなことがあるのか。」(ローディ)

 

 驚くローディのセリフに他の皆も驚愕を禁じえなかった。ただ、俺だけはこの現象が誰の手によって起きたのか、ここに呼び出された二人の人物をしっかりと認識した。

 

 「ごめん、引退したっていうのに。」(炎竜)

 「仲間が戦っているんだ、呼ばれたらそれに応じるべきだろう。」(シールドを持った男)

 「全くだ。こっちは死んだっていうのに、君の彼女が君に力を貸せってうるさくてね。それで、どんなことに首を突っ込んだんだ、サムライボーイ?」(赤と金の男)

 

 ボロボロの体のことを忘れる程の衝撃。そして、それ以上の安心感が俺の胸中を満たす。

 

 「ハハッ、いや、我が彼女ながら素晴らしいことをしてくれたよ。」(炎竜)

 「こっちは良い迷惑だ。それで、僕の力が必要か?」(鋼鉄の男)

 

 俺の言葉にシールドを持った男=スティーブ・ロジャースことキャプテンアメリカと赤と金の鋼鉄の男=トニー・スタークことアイアンマンが加わる。

 かつての戦いで俺達と共に巨悪サノスと戦った最初のアベンジャーズが、俺の信頼するボスと歴戦のソルジャーが帰って来た。

 トニーの言葉に俺は首を縦に振る。

 

 「よし、皆準備は良いな。」(スティーブ)

 

 スティーブの声かけに全員が武器を、能力を開放する。それを見たスティーブは目の前のインベスたちを見据える。

 

 「アベンジャーズ!!アッセンブル!!」(スティーブ)

 

 スティーブの掛け声に俺たちアベンジャーズが無数のインベスたちを攻撃していく。瞬く間になぎ倒されるインベスたち。俺は開かれた道を走り出し、この世界の俺が戦っている場所へ向かう。

 迫ってくるインベスを俺は竜炎刀で切り伏せる。その俺の行く道をトニーが、ローディが、ブルースが切り開いてくれる。

 

 「さあ、行ってこいサムライボーイ!」(アイアンマン)

 「言われずとも!!」(炎竜)

 

 ボスの、トニーの声に俺は力強く駆け出す

 

 

 

 

side三人称

 仮面ライダーシュバルツと戦う輝龍ドラゴンフルーツアームズ。その近くで共に戦うのは白銀シルバーエナジーアームズとヴァルキリーブルーベリーアームズである。

 ロードタイプデッドヒートハートとエグゼリオンレベル2は輝龍ら3人がシュバルツとの戦闘に集中できるようにインベスたちを対処していた。

 仮面ライダーシュバルツはその爪を輝龍、白銀、ヴァルキリーに振るう。輝龍たちは襲い掛かるシュバルツの攻撃をいなし、なんとか抑え込もうとする。

 

 ≪ワイバニックフィニッシュ!!≫

 

 シュバルツはビルドドライバーを操作し、漆黒の迅雷を纏い輝龍たちに回し蹴りを放つ。

 突然の必殺技により、ダメージを受けてしまう輝龍、白銀、ヴァルキリー。

 一撃を受け、距離が離れるがそこをシュバルツは追撃する。

 

 「おい、大樹!!あいつは一体何なんだよ!?さっきからとんでもなく強いぞ!?」(白銀)

 「一言で言えば、もう一人の俺だよ。俺の中にあった負の感情、それがあいつだよ。」(輝龍)

 「一夏兄さん、大ちゃんの言う通りだよ。でも、この人の様子が変だよ。まるで、機械みたい。」(ヴァルキリー)

 

 シュバルツとの戦いの中で白銀は輝龍に疑問をぶつける。その疑問に輝龍も答えるものの戦いの中ということもありその会話も続かないが。

 ヴァルキリーの言葉の通り、シュバルツの動きは本来の獣のような荒々しいものでは無く機械的な単調なものとなっている。それでも、その攻撃の鋭さはかなりのものである。

 

 「ああもう、全くキリが無いよ。」(ロード)

 「確かに、さっきから倒しても倒してもどんどん出てくるしな!!」(エグゼリオン)

 

 一方でロードとエグゼリオンはクラックから際限なく現れるインベスの対処に追われていた。一撃でインベスを殴り倒すロード、ガシャコンスピアーで複数のインベスをまとめて切り裂くエグゼリオン。それでもなお、現れるインベスは終わりが無かった。そして、それは歴戦のアーマードライダーたちも同じだった。

 

 ≪魔蛇スパーキング!!邪悪王スパーキング!!≫

 「フン!!」(魔蛇)

 

 魔蛇が戦極ドライバーを操作し、黄泉丸を振るい巨大な蛇のオーラとなった斬撃で鎧武たちを攻撃する。

 強化体となった魔蛇の一撃は鎧武たちの周囲に大爆発を複数引き起こし鎧武たちを襲う。

 魔蛇の攻撃を受けた鎧武たちはそのダメージの大きさに全員が変身解除まで追い詰められた。手傷を追う光実、ザック、城之内、貴虎、鳳蓮。さらに紘汰は本来の姿である始まりの男としての姿をさらしている。

 

 「どうだ?これが俺が求めた究極の力。世界を滅ぼし続けた13体の覇王の力を束ねた邪悪王アームズの力は!!」(魔蛇)

 「まさか、ここまでの力を。」(紘汰)

 「ファブニールの奴はセーブしていたからな。だが、俺はこの力を思う存分に振るわせてもらう。あいつが守ろうとしたこの世界を破壊しつくしてな!!」(魔蛇)

 「そんなことをさせてたまるか!!変身!!」(紘汰)

 ≪極アームズ!大・大・大将軍!!≫

 

 遂に紘汰は最強にして真の姿、仮面ライダー鎧武極アームズに変身する。

 

 ≪バナスピアー≫

 「はあ!!」(鎧武)

 

 鎧武はバナスピアーを召喚し魔蛇に斬りかかる。魔蛇も負けじと応戦する。

 ここまでの十三異界覇王との戦いとは比にならない激しい戦い。応戦する誰もがこの戦況を変えるための何かを見つけ出せずにいた、ただ一人を除いて。

 輝龍たちの元へ駆けつける迫りくるインベスたちを次々と切り伏せる炎竜。襲い来る初級インベス数体を竜炎刀の一太刀でもって切り伏せていく。複数現れる上級インベスも冷静に対処していく。だが、シカ、セイリュウ、イノシシといった巨大インベスたちまでも姿を見せる。その巨体から繰り出される攻撃を前に炎竜の足が止まる。

 

 「時間が無いってのに、こいつらは少し骨が折れるな。」(炎竜)

 

 目の前に現れた巨大な獣を前にどう突破するか考える炎竜。そこに、炎竜の後方から無数のミサイルや光線が巨大インベスたちに当たる。

 炎竜の後方から勢いよく飛んで来て着地したのはアイアンマンとウォーマシーンだった。二人はアーマーに内蔵された銃火器を始めとした装備を存分に使用する。

 次々と叩き込まれる強力な兵器により巨大インベスたちは倒れ伏していく。

 

 「先を急げ、ダイキ!」(ウォーマシーン)

 「ほら、行った行った。」(アイアンマン)

 「ボス、ローディ。サンキュー!!」(炎竜)

 

 炎竜はアイアンマンとウォーマシーンに礼を言うと再度駆け出す。その後ろ姿を見るアイアンマンとウォーマシーン。すぐにインベスたちに注意を戻すと背中合わせになって攻撃していく。

 

 「全く、またお前と戦うなんてな。」(ウォーマシーン)

 「文句ならサムライボーイのガールフレンドに言ってくれ。こっちは休暇中だったんだ。」(アイアンマン)

 「そうかい、そうかい。まあ、お前とまた戦えて良かったよ。」(ウォーマシーン)

 「僕もだ。君と、ピーター。そして、ダイキとまた会えた。」(アイアンマン)

 

 感傷に浸りながらも戦う二人。その仮面の下の表情は共に笑顔だった。

 アイアンマンとウォーマシーンの助力で遂に輝龍たちのところまで数mまで来た炎竜。最後に群がるインベスたちを強化した竜炎刀の一撃で撃破する。

 遂に道が開いたことで炎竜はロードとエグゼリオンに迫るインベスを切り伏せる。

 突如、救援に来た炎竜ーファブニールに動きが止まるロードとエグゼリオン。

 

 「あれ、ええと。あ、ありがとうございます。」(ロード)

 「うっす。」(エグゼリオン)

 

 なんとも気の抜けた感謝の言葉を述べるロードとエグゼリオン。

 その二人に対して炎竜は竜炎刀を持ったまま輝龍たちがどこにいるか指を指す。

 

 「あそこ、あいつらが困っているみたいだから。良いか?」(炎竜)

 

 炎竜の言葉にロードとエグゼリオンは顔を見合わせるも炎竜が輝龍たちのところへ行けるように道を開けた。

 

 「ありがとう。」(炎竜)

 

 炎竜はそう言うと輝龍たちの元へ向かった。

 それを呆然と見ているロードとエグゼリオンだったが再び殺到してきたインベスを見て、再度戦い始めるのだった。

 その頃、シュバルツが再度ビルドドライバーを操作していた。再びエネルギーをチャージして強力な一撃を入れようとしていた。

 輝龍たちは何とか応戦していたものの、確実に相手を無力化するための一撃を放つ決心が付かないでいた。だが、輝龍だけはその決心がやっと着いたのだった。

 前世において仲間たちを手に掛けたことで発現した人格であるシュバルツ=黒崎修羅を、輝龍=大樹はいざという時には自分で倒すことを決めていた。

 

 「恨みがあるわけじゃない、だけどこうなった以上は、もう。」(輝龍)

 

 輝龍が戦極ドライバーに手を掛けようとした時だった。

 

 ≪ドラゴンフルーツオーレ!!≫

 

 輝龍のそばを赤い斬撃が飛び、エネルギーをチャージしていたシュバルツに命中した。

 大技を中断され、シュバルツは自身を攻撃した相手を注視する。

 輝龍も攻撃が放たれた方向を見る。そこには白銀とヴァルキリーを守るように立つ炎竜の姿があった。

 突如、加勢に来た炎竜に対し白銀もヴァルキリーも呆気を取られるも輝龍はすぐに切り替えてシュバルツの方を向く。

 

 「さて、厄介なことになっているな。」(炎竜)

 「あんたが、魔蛇にあいつを操るよう指示したのか。」(輝龍)

 「いや、俺は何もしていない。そもそも、目の前の彼は紘汰の手によって肉体を得た。魔蛇にとって洗脳するのに苦労する相手では無いということだ。」(炎竜)

 

 輝龍と炎竜は会話するもシュバルツはそのまま二人に攻撃を仕掛ける。

 シュバルツの攻撃に散開する輝龍と炎竜。輝龍はシュバルツの攻撃を凌ぎながら炎竜に話しかける。

 

 「何か手がある?」(輝龍)

 「黄金の果実の力で彼の精神世界に入り込む。そこで彼の洗脳を解いてやる。少なくともそれで魔蛇の支配下から脱するはずだ。」(炎竜)

 

 炎竜が黄金の果実を取り出し、シュバルツを魔蛇の呪縛から解放する方法を話す。それでもなお、半信半疑である輝龍。そこに白銀とヴァルキリーが声を掛ける。

 

 「大樹。このおっさんが言うなら他に方法はないんじゃないのか?」(白銀)

 「一夏。でも、何があるか分からないんだぞ。」(輝龍)

 

 呪縛を開放するとは言え、魔蛇による罠の可能性も有る。そもそも、前世にて分離した自分の負の人格であるシュバルツ=黒崎修羅のことを輝龍=大樹はかなり危険視していた。そのことから今回のことも含めてすぐに決心が付くことは無かった。

 そこへ襲い掛かるシュバルツ。それを黄金の果実を仕舞い炎竜が応戦する。

 

 「しばらくは俺が抑える。早い内に結論を出してくれ。」(炎竜)

 

 そう言ってシュバルツと戦い始める炎竜。

 その様子を見る中で悩む輝龍。そこにヴァルキリーが寄り添う。

 

 「大ちゃん。」(ヴァルキリー)

 「万夏。」(輝龍)

 「あの人がどんな人だろうと、大ちゃん自身なんでしょ。そうじゃなくても大ちゃんと関係のある人ならなら、大ちゃん自身が助けるべきでしょ。」(ヴァルキリー)

 

 幼い頃からの愛称で輝龍=大樹のことを呼ぶヴァルキリー=万夏。そのヴァルキリーの言葉に輝龍はただヴァルキリーを見つめる。

 

 「行って。私達は大丈夫。」(ヴァルキリー)

 

 その一言がついに輝龍の背中を押した。これまで口を閉じていた輝龍がそのまま炎竜とシュバルツの処へ向かう。

 

 「すぐに終わらせる。終わったらすぐにこの戦いを終わらせよう。」(輝龍)

 

 そう言って走り出す輝龍。それを見送る白銀とヴァルキリー。

 

 「やっぱり、万夏の言うことは素直に聞くよな。」(白銀)

 「一夏兄さんと違うから。一夏兄さんとは親友、でしょ?私はそうじゃないから。」(ヴァルキリー)

 

 輝龍が言ったのを見て話し合う白銀とヴァルキリー。そのヴァルキリーの言葉はどこか明るい空気があった。

 

 「なんでだよ。」(白銀)

 「だって、私は大ちゃんの恋人だから。」(ヴァルキリー)

 

 その発言から親友への大きな信頼を感じた白銀。それと同時に自分の言葉がその親友を動かすということをよく理解してそれを利用する女性として強かな部分も感じ取っていた。

 

 「分かった分かった。じゃあ、俺達は大樹の邪魔をさせないようにするか。」(白銀)

 「うん。」(ヴァルキリー)

 

 親友を、恋人を守るべく二人は自分たちの武器を手に取り襲い来るインベスたちと戦い始める。

 輝龍は炎竜に攻撃をするシュバルツを蹴り、距離を取った。

 

 「決心は付いたか?」(炎竜)

 「ああ。」(輝龍)

 「じゃあ、始めるぞ。」(炎竜)

 

 炎竜は黄金の果実を取り出す。次の瞬間、黄金の果実から黄金の波動が放たれる。

 黄金の波動を受けた輝龍と炎竜の精神はシュバルツの精神の中へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

side大樹

 意識がほんの一瞬途切れた瞬間、俺は見慣れた場所に居た。

 

 「ここは、俺の家、か。」(大樹)

 

 俺が幼い頃住んでいた家、正確には前世の世界で過ごしていた最後は自ら燃やした実家だった。

 

 「ファブニール!?どこにいる!!」(大樹)

 

 近くに誰も居ないことからファブニールを呼んだ。それでも、誰も返事をすることは無かった。

 ここで待ち続けるのが本来なら正しい選択かもしれない。ただ、ここはもう一人の俺の精神世界。魔蛇の洗脳を受けているなら何が起きるか分からない。待っているよりもどこかにいるもう一人の俺を探すべきだろう。

 

 

 

 

 

 

sideファブニール=ダイキ

 意識が戻った瞬間、俺は暗闇の中に居た。

 

 「さて、狙い通りだな。彼の救助はここの俺に任せるとして俺はお前を倒すべきだからな。」(ファブニール=ダイキ)

 

 そう。魔蛇のやった洗脳がどういったものか分からない。だが、精神を縛ることでコントロールしているならそのコントロールを魔蛇側と彼の側から揺さぶってやれば良い。

 

 「なる程な、葛葉紘汰と戦っている今なら精神操作を解除できると考えたか。」(魔蛇)

 

 俺の目の前には魔蛇がいる。骸骨の顔には表情はないがその声音からはかなり不機嫌になっていることが分かった。まあ、紘汰の相手をしながら精神操作なんて芸当は難しいだろうからな。

 

 「流石のあんたも黄金の果実による介入には抗えないだろう。」(ファブニール=ダイキ)

 「今の俺は十三異界覇王の力がある。お前程度の介入など大したことは無い。」(魔蛇)

 

 この精神世界にダグバ、オーズ、アマゾンネオ、ドラスを出現させる魔蛇。ダグバたちは俺に襲い掛かるが彼らと俺の間に黄金の障壁が現れる。黄金の障壁により彼らは俺に傷を付けることは出来ない。

 その様子を見た魔蛇は何が起きたか理解して驚愕した。

 

 「何!?黄金の果実がお前を守っただと!!」(魔蛇)

 「この黄金の果実はマドカが手にしたもの。ずっと、彼女が意思があったんだよ。ここでは始まりの女となった彼女の力で俺に干渉することはできない。さっさと居なくなってもらうぞ。」(ファブニール=ダイキ)

 

 黄金の果実の力を使い、この世界から魔蛇を追い出す。

 魔蛇が消えたことで暗闇を構成していた漆黒の靄が晴れていき、彼の心の世界が見えて来た。

 

 「想像はしていたが酷いな。」(ファブニール=ダイキ)

 

 ありとあらゆる場所が荒廃し燃えていた。IS学園を始めとしたありとあらゆる物が崩れ燃えていた。

 俺の世界の最期の瞬間を思い出し、胸糞悪い思いを抱くが俺は歩き出す。きっと、ここの俺が彼を見つけているはずだ。

 

 

 

 

 

side大樹

 俺は最初に居たリビングから自分の部屋がある2階へ上がった。ただ、家の中を見ていくとなつかしさよりもどこか落ち着かない、他人の家を見ている感覚だった。どうしてなのかを考えながら2階の奥に進むとそこに俺の部屋があった。ドアノブに手を掛けて開くとそこは俺の部屋ではない全く別の空間が広がっていた。そこは俺の心の傷にもなっているあの日のIS学園だった。アリーナも校舎も何もかもが壊れてしまっていた。そこに、もう一人の俺が居た。

 

 「があ!!どこだ!!どこだ!!おい、どこに行きやがった!!」(修羅)

 

 漆黒の竜炎刀を乱暴に振り回すその姿は前世の世界での死に様を思い出した。だけど、その記憶を思い出すよりも、その姿を見てどこか胸が締め付けられる感覚を覚えながら俺は少しずつ少しずつ距離を詰めていった。

 

 「ふざけるな、ふざけるな!!俺から全てを奪って、そのまま、そのまま、あああああああああああああああああ!!」(修羅)

 

 誰に聞かせるでもない怒りの感情が乗った言葉を吐き続けるもう一人の俺。その姿は、その姿を見て俺は予想していた感情が、怒りも悲しみも後悔も湧いてこなかった。その姿を、感情を見てももう俺はもう一人の俺のことを自分の一部とは違う者として見ていた。

 

 「俺が君に言ったとおりだ。マルチバースにおける自分はあくまで違う世界を生きる別人だ。あそこにいるのは君のもう一つの人格ではない。もう、別の人物だ。」(ファブニール=ダイキ)

 

 近くにファブニールが来ていた。俺は、俺は修羅の姿を見てあの時に感じた感情も何もかも思い出すと思った。怒り、悲しみを始めとした感情が出てくると思った。でも、感じたのは胸を締め付ける苦しさだった。そして、今まではただ自分が憤怒や憎悪の感情に飲まれている者と思っていた彼の姿は、大声で泣く子供のように見えた。

 

 「そっか、もう俺はあいつにとっての自分じゃなかったんだ。苦しんで生きた俺が、近くの人から優しさと愛情を受けて育った僕と混ざったから。あそこにいるもう一人の俺はもう俺じゃなかったんだ。」(大樹)

 

 そう、ここにいる俺は前世で戦った俺そのものじゃない。この世界を生きて来た僕と前世で戦った俺が一つに溶け合った存在。別れた瞬間からもう彼は俺じゃなかった。

 どこまでも似通った他人。それでも見ず知らずの他人ではない彼の姿はとても痛々しかった。気付けば俺は彼に声を掛けられる距離まで歩いていた。近づくたびに彼の姿が今の俺から段々と幼くなっていく。その姿は家族の温もりを求めているようで、涙を流しながら怒っていた。そして、俺が触れる程の距離まで来た時に彼の姿は前世で俺が大人になろうとした年齢まで止まっていた。

 

 「返せ!返せ!返せ!」(修羅)

 

 幼くなった彼は体格に合わない竜炎刀を振り回す。それを俺は優しく止めた。

 止められて怒りの感情のままに俺に竜炎刀を振るうもう一人の俺。だけど、俺はただ彼を抱きしめた。自分がこれまでにしてもらっていたように。

 

 「ごめんな、ずっと一人にして。もう大丈夫。大丈夫だよ。」(大樹)

 

 彼を抱きしめて思い出した。前世の俺は仕事中心の両親と親子の時間が無かった。転生して記憶を持っていた俺はどこか大人であろうとした、幼い自分の心を押し殺して。俺が抱きしめている彼は、戦いの日々の中で生まれた負の感情じゃない。俺が切り捨ててきた幼い俺だった。親の愛情を求めた寂しさを抱えた少年だった。まわりへの怒りを貯めて、その怒りをぶつけることしか知らない幼い俺だった。

 

 「もう一人じゃないよ、俺がいるから。」(大樹)

 

 そう言うと彼は竜炎刀を持った手を下ろした。

 

 「あ、あ、あ、あああああ!!」(修羅)

 

 そのまま大声を上げて泣き始める。抱きしめ続ける中で大声で泣き続けるもう一人の俺。彼も俺のことをきつく抱きしめ続けながら大粒の涙を流しながら大声で泣き続ける。俺はそのまま彼の背中をさすり続ける。ひとしきり泣いて落ち着いたのか、彼は俺を見る。

 

 「お兄ちゃんは僕を一人にしない?」(修羅)

 

 その問いかけに俺は頷いた。

 

 「ああ。一人にしないよ。お兄ちゃんの他にも美人なお姉ちゃんや優しい友達や家族が居る。」(大樹)

 「本当?」(修羅)

 「あのさ、名前聞いても良い?」(大樹)

 「名前、僕の名前は、修羅。スコールとオータムがくれた名前。」(修羅)

 

 6歳の俺が、スコールとオータムが名付けた名前を教えてくれた。二人の名前が出たことから決してひどい関係では無いことが分かった。

 

 「よろしく、修羅君。」(大樹)

 「うん!!。」(修羅)

 

 修羅が笑顔で頷く。すると、修羅の右手が黒く輝きそこから黒色のワイバーンが描かれたロックシードが現れた。

 修羅は不思議そうにそれを見るがそれを俺に差し出す。

 

 「これ、お兄ちゃんに。」(修羅)

 「いいの?」(大樹)

 「うん!」(修羅)

 

 俺は修羅から新たなロックシード、ワイバーンロックシードを受け取る。その瞬間、俺達は光に包まれた。

 

 

 

 

 

side3人称

 現実世界、炎竜の手でシュバルツの精神世界に入った輝龍たちを守って白銀達が奮闘していた。だが、戦っているものたちは皆疲弊していた。

 

 「まだか、大樹の奴。」(白銀) 

 「もう限界だよ。」(ロード)

 「俺もゲージが危険域だぜ。ここで撤退なんて、できないもんな。」(エグゼリオン)

 「まだ、大ちゃんが、大樹が帰っていない。まだ、やるよ。」(ヴァルキリー)

 

 体力が限界に達しようとしているフューチャージェネレーションライダーズ。別の場所で戦っている鎧武極アームズと魔蛇邪悪王アームズの戦いも拮抗していた。アベンジャーズたちも次から次へと殺到するインベスに疲弊していた。

 その場にいた誰もが心が折れそうなその時だった。炎竜、輝龍、シュバルツの居た場所から黄金の波動が放たれ辺りに居たインベスたちを一瞬のうちに消し去った。

 黄金の波動が消えると変身を解除した大樹とファブニール、幼くなり6歳ほどになった修羅が居た。

 

 「皆、待たせてごめん。」(大樹)

 「おせえよ。」(白銀)

 「とりあえず、交代。休憩させて。」(ロード)

 

 大樹は修羅をヴァルキリーのそばへ案内すると修羅に話しかける。

 

 「よし、兄ちゃんはあそこの悪い奴を倒してくるから。姉ちゃんのそばに居るんだぞ。」(大樹)

 「うん!」(修羅)

 「ねえ、大樹。この子は?もう一人の大樹は?」(ヴァルキリー)

 「この子がそうだよ。もう、戦うことはできないけど。俺が戻るまで一夏たちと一緒に頼む。」(大樹)

 

 大樹の言葉にやや戸惑うもヴァルキリーはすぐに了承した。

 

 「分かった。気を付けて。」(ヴァルキリー)

 「おい、行く前にこれを持っていけ。」(ファブニール=ダイキ)

 

 ファブニールが大樹を呼び止めるとデュアルギアとファブニールロックシードを渡す。

 

 「魔蛇にどこまで通用するか分からんが邪魔にはならないはずだ。」(ファブニール)

 「ありがとう。」(大樹)

 

 感謝の言葉を言った大樹はさらにポケットからバハムートロックシードと新たに誕生した漆黒のロックシード=ワイバーンロックシードも取り出す。

 バハムート、ファブニール、ワイバーン、ドラゴンの名前を冠する3つのロックシードが共鳴し、デュアルギアを新たなドライバーへ変貌させた。大剣型のカッティングブレードに3体の龍が咆哮する絵が描かれたドライバー、龍王ドライバーが誕生した。さらに、3つのロックシードは合体し龍王ロックシードへと進化した。

 

 「3つのマルチバース。そこで柏葉大樹が手にした3つの力が共鳴することで全てを打ち倒す力が手に入る。そのドライバーを使って奴を倒して来い。」(ファブニール=ダイキ)

 「言われずとも。」(大樹)

 

 大樹は龍王ドライバーを腰に装着、龍王ロックシードを開錠した。

 

 ≪トリプルドラゴン!!≫

 

 大樹の頭上に3つの巨大なクラックが出現、鋼の3体のドラゴンが現れる。

 

 「変身!!」(大樹)

 

 大樹は力強く叫び、カッティングブレードを下ろした。

 

 ≪ライズアップ!!龍王アームズ!!三龍轟一!!ドラゴンキング、ニューボーン!!≫

 

 龍王ドライバーの音声が響き、3体のドラゴンが鎧となって大樹の体に装着されていく。

 その姿は輝龍でありながらもアギト、シュバルツの面影もあった。天を貫く六本の角、龍を模した黒と赤の複眼に紅蓮のタテガミがたなびく仮面。両手足には鋭い爪が備わった鎧が装着され胸と肩部にはそれぞれドラゴンの頭部が敵を睨みつけていた。さらに背中には折りたたまれた翼が見える。赤、金、黒に彩られたその姿は正に龍王だった。

 仮面ライダー輝龍龍王アームズ、柏葉大樹が到達した究極の力である。

 

 「この戦場、俺が勝ち取る!!」(輝龍)

 

 輝龍は背中の翼を広げ飛翔した。その姿を見たファブニール=ダイキは笑いながら、ついに膝を着く。

 

 「そうだ、行け。そのまま、自分の信じる道を突き進め。」(ファブニール=ダイキ)

 

 ファブニール=ダイキはついに大樹が究極の力を手にしたことに満足して瞼を閉じる。

 複数のアームズウェポンを召喚して魔蛇に攻撃を仕掛ける鎧武極アームズ。

 襲い来るアームズウェポンを次々と破壊する魔蛇は邪悪王アームズの力を遺憾なく発揮する。漆黒の瘴気を大蛇へと変え、鎧武極アームズに襲い掛からせる。

 無数の大蛇に追い詰められていく鎧武極アームズ。遂に大蛇たちは鎧武を拘束する。

 

 「さあ、死ねえええええ!!」(魔蛇)

 

 魔蛇が黄泉丸を鎧武に振り下ろす。

 禍々しい刃が鎧武を切り裂こうとその瞬間、空から何かが高速で魔蛇の居る所へ落ちた。

 魔蛇は咄嗟に跳び退り、難を逃れた。

 その落ちてきた者による衝撃波によって大蛇たちが消滅した。それにより解放された鎧武は土煙が収まるとそこにいる新たな戦士に目を見張る。

 

 「ほう、ファブニールの思い通りになったか。」(魔蛇)

 

 魔蛇の視線の先には仮面ライダー輝龍龍王アームズが居た。背中で大きく広げている翼を折りたたむ輝龍。

 輝龍の新たな姿を見た鎧武。自身と同じオーバーロードとなったのかと考えるが輝龍の気配が人間の者であることに気付く。

 輝龍は地面に刺さっていたアームズウェポンの中で十文字槍型の影松・真を手に取って下段に構える。

 

 「それで俺に対抗するつもりか!!」(魔蛇)

 

 魔蛇が黄泉丸を振りかぶるもその動きを影松の矛先を上げることで牽制、魔蛇の動きが止まった瞬間に突き、斬る、薙ぎ払う。

 

 「くっ!粋がるな!!」(魔蛇)

 

 魔蛇は上段からの振り下ろしで影松・真を叩き折る。

 輝龍は折れた影松・真から近くにあった大橙丸をメロンディフェンダーを拾い構える。

 

 「これだけ多くの武器が落ちている。俺にとっておあつらえ向きの場所だよ。」(輝龍)

 

 輝龍は魔蛇の攻撃をメロンディフェンダーで防ぎ、大橙丸で切り込んでいく。だが、その攻撃も魔蛇を苛立たせるだけで有効打になり得ない。

 

 「ふん!その武器で俺に対抗できると本気で思っているのか?邪王ロックシード、十三異界覇王の力を束ねた今の俺に通用しない!!」(魔蛇)

 ≪魔蛇スカッシュ!邪悪王スカッシュ!≫

 

 漆黒の瘴気を纏った黄泉丸を横なぎに振るう魔蛇。輝龍はその攻撃を大橙丸とメロンディフェンダーで防御するが一瞬で砕け散ってしまった。だが、その次の瞬間、魔蛇に二つの閃光が走った。二つの閃光は魔蛇の胴にX字となって刻まれる。

 魔蛇も、その戦いを見守る鎧武たちも何が起きたか分からなかった。だが、竜炎刀・陽炎と光龍剣を両手に持っている輝龍はそれを分かっていた。

 

 「な、なにを?」(魔蛇)

 

 体に刻まれた傷を抑える魔蛇。その動揺を逃さずに輝龍が畳みかける。次々と繰り出される剣撃は魔蛇を確実に追い詰めていく。

 みるみるうちに傷が増えていく魔蛇。咄嗟に魔蛇は邪王ロックシードに封じられているヤマタノオロチとフォーティーン、ゲムデウスを召喚し、輝龍に攻撃させる。

 ヤマタノオロチの火炎が、フォーティーンの天災が、ゲムデウスの刃が輝龍に襲い掛かる。

 輝龍は竜炎刀・陽炎と光龍剣を地面に突き刺すと今度は邪龍DJ破断剣を手にする。襲い来る巨大な敵の攻撃をいなしながら、邪龍DJ破断剣にドラゴンフルーツロックシードをセットする。

 翼を広げ、空中高く跳び上がる輝龍は一瞬のうちにヤマタノオロチとフォーティーン、ゲムデウスを撃破する。

 

 「ば、バカな。こんなことがあってたまるか。」(魔蛇)

 「散々、人の人生を引っ掻き回してくれた礼だ。たっぷり味わえ。」(輝龍)

 

 輝龍は龍王ドライバーのカッティングブレードを3回倒す。

 

 ≪ライズアップ!!龍王スパーキング!!≫

 

 輝龍の右腕が赤、金、黒の輝きに染まる。そのまま、宙高く跳び上がり魔蛇に拳を叩きつける。

 魔蛇は黄泉丸で防御するがその一撃は強力で黄泉丸を打ち砕くだけでは無く、魔蛇の胸に叩き込まれる。

 

 「ぐおっ!!」(魔蛇)

 「はああああ!!」(輝龍)

 

 輝龍はそのまま魔蛇を殴り飛ばす。宙へと浮かぶ魔蛇に輝龍は延髄斬りのフォームで右足に赤、金、黒の輝きを宿す。

 

 「ハアアアアアアアア!!」(輝龍)

 

 雄々しく響く掛け声に合わせ輝龍の右足が魔蛇に撃ち込まれる。

 

 「なっ、がっ!!」(魔蛇)

 「二度と、この星に来るな。」(輝龍)

 

 輝龍のその言葉を最期に魔蛇は爆散。さらに邪王ロックシードも破壊された。

 爆発が晴れるとそこには輝龍が健在だった。

 これで、輝龍=大樹を取り巻く因縁に決着が着いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「じゃあ、これで僕たちは元の世界に帰るよ。」(ブルース)

 

 ボロボロの学園の校庭でトニーとスティーブをアベンジャーズの面々が大樹たちに別れを告げていた。

 

 「ありがとうございました。元気で。」(大樹)

 

 大樹を筆頭にこの短い期間で戦った彼らにそれぞれが思い思いの品を渡す。

 

 「ファブニールは?」(大樹)

 

 大樹はその中で姿の見えないファブニールの行方について問う。

 

 「先に帰ったよ、自分の世界に。」(ブルース)

 「返したいものがあったんですけど。」(大樹)

 

 そう言って大樹は龍王ドライバーとファブニールロックシードを取り出す。

 それを見たブルースは首を横に振り、大樹に渡す。

 

 「それはダイキが君に渡したものだ。大切に使って欲しい。」(ブルース)

 

 ブルースのその言葉に大樹は何か引っかかりを覚えるも笑顔で彼らを見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 並行世界=マルチバース同士のはざま、そこにスティーブとトニーが居た。トニーはファブニール=ダイキを肩で支えていた。

 

 「それで、ダイキの世界に行くのか?」(スティーブ)

 「それがサムライボーイの願いだ。それに、僕はダイキのガールフレンドのおかげでここに居られるだけだ。ダイキを送れば僕も消える。」(トニー)

 「そうか、後は頼む。」(スティーブ)

 「ああ。じゃあな、キャプテン。」(トニー)

 

 スティーブと別れたトニーはファブニール=ダイキと共にある世界へやって来た。そこは荒廃し、空が赤く染まっていた。ここでは町も何もかも、世界にある全てが焼き尽くされていた。

 

 「おい、ダイキ。着いたぞ。」(トニー)

 

 トニーは肩を貸すファブニール=ダイキに声を掛ける。だが、返事は無かった。

 

 「さて、あそこに君の大切な人たちが居るんだろ。最後まで頑張れ。」(トニー)

 

 そう言って歩き出すトニー。その体は徐々に黄金の粒子に変わり始めていた。その中でトニーは目的の場所へ着くとファブニール=ダイキを寝かせる。

 

 「よし、これでお別れだ。先に待っているぞ、サムライボーイ。」(トニー)

 

 そう言い残すとトニーは完全に黄金の粒子となって消えた。

 残ったファブニール=ダイキの顔はとても穏やかだった。そして、懐にあった黄金の果実はその輝きを失い砂となる。一陣の風が吹き、砂となった黄金の果実を運ぶ。

 次の瞬間、赤く染まった空が青く本来の姿となる。そこから差し込む日の光が当たるとファブニール=ダイキの横たわる場所が照らされる。

 そこには墓標の代わりにISの武器が刺さっていた。そして、ファブニール=ダイキが来るのを待っていたかのように黒いネックレスが漆黒の大剣、フェンリルブロウから落ちる。

 ファブニール=ダイキの胸に落ちたそれは既に止まっていた胸の鼓動を感じてなのか一瞬煌めいた。そして失われていく熱を受けてなのか、持ち主の意思を受けてなのかネックレスはIS・黒騎士へとなる。黒騎士はファブニール=ダイキに覆いかぶさる。その姿はまるで愛する人のそばで眠りにつく乙女のようだった。

 




 これにて、十三異界覇王大戦編の初期から登場したファブニールとの戦いに決着が着きました。賛否両論あると思いますがファブニールについては今回の終わり方で決まっていました。
 これで残る十三異界覇王は3体、十三異界覇王大戦編も終わりが近づいてきました。次回はお正月にちなんでIFの世界に迷い込んだ颯斗の話を書きます。その後は、残る十三異界覇王との戦いを通して万夏と一夏について話を書いていきます。
 長くなりました今年も仮面ライダー輝龍を楽しんでいってください。
 それでは。


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仮面ライダー輝龍 第29話

 前回の話から1か月近くお待たせしてしまい申し訳ございませんでした。
 ほぼほぼ月光機ミカヅキ(雨宮慶太監督による特撮番組、全6話で後半は次回放送まで1か月ほどかかった)状態になっていますが前回の予告通り、颯斗が主人公の番外編的な話です。
 なお、当初は第29話のみの予定でしたが執筆した結果全3話でお送りすることになってしまい申し訳ございません<m(__)m>。なお、十三異界覇王大戦編の最終戦も執筆中ですので今しばらくお待ちください。

 それでは、今回の話もどうぞ!!


side颯斗

 IS学園でのファブニール、異世界の大樹との戦いに決着が着いてから半年がたったある日のこと。これは僕がお正月に体験した出来事。正確には、年が明けての元旦の昼時だった。

 

 「ひい、ふう、みい、よう。おお、これだよ、これだよ。」(颯斗)

 

 僕は今年も特大で大量のきな粉餅を目の前にしていた。僕はとにかくきな粉餅が大好き、どれくらい好きかというと小さい時はそれこそ毎日お母さんにねだるほどだった。ちなみに、僕は毎年毎年きな粉餅を大量に食べるため、何度か喉に詰まりかけたことがある。その度に怒られるけど、これは早々に辞められない。

 

 「いただきまーす!」(颯斗)

 

 その中で僕はきな粉をたっぷりかけたきな粉餅を口いっぱいに頬張った。口いっぱいに広がるきな粉の香ばしい香りに餅の食感が心地良い。そして、それを数回咀嚼して飲み込んだ。1個目、2個目と次々と口の中に運んでいく。

 

 「んぐ、ぐっ!!んん!!」(颯斗)

 

 餅が喉を塞ぎ、呼吸が出来なくなった。呼吸が出来ずにジタバタと暴れる。薄れる意識の中で僕は残りのきな粉餅を食べられないことを悔やんだ。そんな後悔の中、徐々に僕の意識は薄れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…、…と、お…。」(???)

 

 薄れる意識が徐々に目覚め始めた。何だか、誰かが僕を呼んでる気がするけど。

 

 「…、…やと、はやと。颯斗!放課後だぞ。起きろ。」(???)

 「んん?」(颯斗)

 

 僕は顔を上げて瞼を開けるとそこには見慣れない制服を着た大樹がいた。

 

 「大樹?」(颯斗)

 「まだ寝ぼけてんの?もう放課後だからさ、起きなって。」(大樹)

 「???」(颯斗)

 

 頭の中が疑問符で埋め尽くされる。ぼくはさっきまで家に居たはずなのに、気が付けば見慣れない教室で寝ていた。

 

 「ここ、どこ?」(颯斗)

 「いや、本当に寝ぼけてる?俺達の学校だよ。で、俺達の教室2年C組。」(大樹)

 

 大樹の説明に理解が追い付かない。

 

 「え、ここIS学園じゃなくて?それと僕達、別の学科でクラスも違うはずだけど?」(颯斗)

 「まだ、寝ぼけてんの。男がIS学園に行けるわけないでしょ。ここ、藍越学園だよ。それと去年から同じクラスなのにさ。」(大樹)

 

 大樹の言葉を理解することが出来なかった。なぜなら、僕の知っていることと全く違うことを言っていた。それも、ただ冗談を言っているだけなら分かる。でも、大樹はこんなことを冗談でも言わない。それに、今は大樹が話している中で全く冗談を話しているように感じられなかった。

 狐につままれる、そんな状況になった僕はただただ帰る支度をするほかになかった。

 帰り支度を終えた僕を待っていた大樹と共に学校を出る。

 僕たちが出た学校は僕の知るIS学園では無かった。確か、大樹と一夏の友人の五反田君が通う私立の学校、藍越学園だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side3人称

 颯斗は大樹に促されるままに家路に着く。どうやら、自分と大樹がここ藍越学園に通っていることそのものは事実らしかった。自分の記憶との違いに戸惑う颯斗。それを見た大樹はおかしいと思いながらも二人は家路に着くのだった。

 それぞれの家に向かう中、颯斗は自分の身に起きたことを考え続けていた。そんな中で歩いているため、颯斗は大樹の様子に気付くことが出来なかった。

 この時、大樹は家のある方向では無く、別の方向に視線を向けていた。その表情はとても鋭くものだった。

 この時の大樹の表情を颯斗が見ていれば、それが戦いの場でよく見るものだとすぐに気づいたはずだった。

 

 「う~ん、なんなんだ一体。」(颯斗)

 

 颯斗がそう独り言ちた時だった。

 ダッ!と隣で誰かが駆け出した音が聞こえた。

 

 「ん?あれ、大樹?」(颯斗)

 

 颯斗が隣を見るとそこに大樹の姿は無く、目をぱちくりさせるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 颯斗を置いて走り出した大樹は街中のある場所へ到着した。

 大樹の視線の先には年若い男女のカップルを狙う昆虫の異形が居た。

 人類の創造主、闇の力=オーバーロードの僕である超越生命体アンノウンの一体である。

 漆黒の甲殻に天を貫く一本角、カブトムシの特質を有するビートルロードである。

 ビートルロードはカップルに狙いをつけると殺しのサインを切っていた。その瞬間だった。

 カップルへと近付こうとしたビートルロードを何者かが背後から蹴り飛ばしたのだ。

 

 「おい、物陰からカップルの観察なんて趣味の悪い天使だな。」(大樹)

 

 走ったために息が上がりながら大樹がビートルロードに声を掛けた。

 ビートルロードを蹴り飛ばしたのは大樹であり、その妨害によってカップルは大樹とビートルロードに気付くことなくその場から離れていった。

 ビートルロードは横やりを入れて来た大樹に視線をやる。表情は分かりにくいが強い不快感を現していた。

 ビートルロードは角から打ち込まれたものを灰へと変える小針を大樹に向かって撃ちだした。

 大樹は背負っていたリュックを放り投げながらビートルロードの小針を躱す。

 アスファルトの上を転がりながら、大樹は右手と左手でまるで日本刀を抜くような動作を取った。次の瞬間、大樹の腰に黄金に輝くベルト=オルタリングが出現した。

 それを見たビートルロードは驚きと共に大樹のことを警戒する。それが、今は長き眠りにつく主が殲滅せんとした存在を証明することを知っていたからである。

 

 「変身!!」(大樹)

 

 大樹はオルタリングのボタンを両手で押し込む。その瞬間、オルタリングから波動が溢れ大樹を包む。その直後、オルタリングから眩い光が放たれ大樹の全身を隠す。光が消えるとそこには姿を変えた大樹の姿があった。

 人類の進化系の一つ、闇の力と争った光の力が人類に与えた力。アギト、仮面ライダーアギト。その基本形態である黄金のグランドフォーム。大樹が変身したのは人類の進化系であるアギトそのものだった。

 アギトはファイティングポーズを取るとビートルロードに向かって走り出す。

 ビートルロードは頭上に光の輪を出現させ、そこからメイスと盾を取り出した。

 アギトに対しメイスを振るうビートルロード。それに対してアギトは腕の装甲でメイスの柄を受け止め、盾で防御できない右の脇腹に蹴りを入れる。

 ビートルロードが怯んだところをアギトはすかさず追撃する。その顔面に強烈な右ストレートを浴びせるとストレートキックを放つ。

 ビートルロードは咄嗟に左手に持った盾でアギトのキックを防御する。距離が離れるもビートルロードは右手に持ったメイスをアギトに振り下ろす。連続で振るわれるメイスは風を斬りながらアギトに迫りくる。

 自身に迫るメイスをアギトは冷静に見切り、それをすれすれのところでかわしていく。

 ビートルロード、アギト=大樹が交戦している個体はメイスと盾を使用した攻防一体の戦いを得意としている。メイスによる強烈な一撃にかつてG3-Xとギルスの攻撃さえも防いだ盾は並大抵の相手では突破することは出来ない。過去に出現した個体は津上翔一が変身した仮面ライダーアギトシャイニングフォームによって撃破された。それほどまでの強敵にアギト=大樹は対峙していた。

 大樹=アギトは目の前の相手の武器から即座にその戦い方を理解した。そのため、不用意に攻めるのではなく相手の攻撃に対してかわしながら一撃必殺のカウンターで仕留める戦法を取った。戦いを終わらせるべくアギトは攻撃を躱しながらオルタリングの右のボタンを押し込んだ。

 オルタリングの中央にある賢者の石が赤く変わると同時にアギトの姿を覆うように波動が溢れる。波動が消えると赤い右腕に深紅の剣=フレイムセイバーを持ったフレイムフォームとなっていた。

 アギトフレイムフォームはビートルロードのメイスをフレイムセイバーで防御する。

 突如、姿を変えたアギトにビートルロードは変わらずに攻撃を続けるもその攻撃はフレイムセイバーに全て阻まれる。その防御を崩すために一際大きくメイスを振りかぶった。

 メイスが外れたその瞬間、アギトは右肩からビートルロードに突っ込む。

 メイスを大きく振りかぶっていたため、盾も体の中心から外れていた。急に突っ込んできたアギトの動きに反応できずに体制を大きく崩すビートルロード。

 遂にできた必殺の勝機、アギトはフレイムセイバーの柄に備わった角を展開する。柄にある角が2本から6本になった瞬間、フレイムセイバーの刃に陽炎が揺れる。がら空きになった胴に対して、アギトはフレイムセイバーを真一文字に振るった。

 ビートルロードの胴にフレイムセイバーを振るわれたことで生じた切り傷が出来ていた。その切り傷から爆炎が上がり、ビートルロードの頭上に光の輪が現れる。

 ビートルロードは苦しみながら全身を炎に焼かれ爆散した。

 ビートルロードの撃破を確認したアギトは変身を解除する。

 

 「はあ、はあ、帰るか。」(大樹)

 

 大樹は近くにアンノウンが居ないことを確認すると地面に投げ捨てていたリュックを持つ。

 

 「うわ、こんな時間だ。あ、颯斗のことをほっといていたな。後で謝っとかないと。」(大樹)

 

 そう言いながら家路に着く大樹。この世界でも人類の未来を脅かす敵との戦いはあったのだ。その戦いの中に、大樹はその身を置いていた。

 息が上がりながら大樹は戦いの場から離れるのだった。

 颯斗が迷い込んだこの世界は、颯斗が生まれ育った世界とは別の世界である。その違いをこの時の颯斗は知ることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 都内某所、川の氾濫を防ぐために建設された緊急貯水槽。知らない人間が見れば巨大神殿と見まごうそこには水とは別の者達で満たされていた。

 アリがそのまま人間になったかのような異形、アントロード。アンノウンの中でも集団戦を得意とする種族である彼ら。軍隊アリの特性を有する漆黒のフォルミカ・ぺデスは数え切れないほどの数で貯水槽を埋め尽くしていた。

 無数のフォルミカ・ぺデスを統率する役目を担うのは赤く染まった胸部の甲殻と右手に持った大鎌が特徴のフォルミカ・エクセス。そして、そのエクセスをも統べるクイーンアントロード。その彼らは皆、ある一体の異形を前に膝を着いていた。その様子からその異形がアントロードたちよりも高位の存在であることが窺い知れた。

 

 「さあ、時は来た。我らが主の命を果たす時だ。今度こそ、アギトを根絶やしにするのだ!」(???)

 

 その異形、バッファローの特質を有するバッファローロードは手に持った槍を掲げ叫ぶ。

 今は沈黙し、人類の行く末を見守る選択をした闇の力。その彼の配下であるアンノウンは闇の力の選択から人類、正確にはアギトに覚醒する人々を殺害することを辞めていた。だが、彼らの一部は未だにアギト、正確には人間の殲滅を目論んでいた。それを先導するのはこのバッファローロードであった。

 

 「まずは、海に浮かぶ醜い島。そこにいるアギトに進化するやもしれぬ者達の抹殺だ。」(バッファローロード)

 

 バッファローロードが槍で指し示した方角、そこにはIS学園があった。

 バッファローロードの指示を聞き、アントロードたちが動き出す。かつて、自衛隊を襲った惨劇。超能力者を使ったG4システムを使ったことにより、大量のアントロードを呼び寄せてしまい甚大な被害を出した。その当時のような惨劇がIS学園で再び起きようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自宅に帰って来た颯斗は即座にこの世界に関することを調べていた。過去に起きた事件を徹底的に調べていた。

 

 「う~ん、IS学園関係は全然違うなあ。男性操縦者なんか一夏だけだし。」(颯斗)

 

 その結果、自身が入学したIS学園関係の出来事そのものが全くないことを知ることになった。また、幼少期のアルバムを見て、幼馴染である簪と本音との関わりが一切ないことも知ることとなってしまった。そして、颯斗の戦友であるロイミュードのハート、ブレン、メディックとも出会っておらず、マッハドライバーも手元になかったのだ。

 

 「ここじゃあ、僕はただのモブか。」(颯斗)

 

 ベッドの上でそう独り言ちる颯斗。戦う力を持たない、その状況が今の颯斗にとって重くのしかかる。正義のヒーローに憧れ、挫折を経験し、ヒーローとして再び立ち上がった颯斗にとって戦う力が無いことは胸中に大きな不安を感じていた。だが、挫折を経験し、再び立ち上がった彼は戦う力を持っていない事実では心が揺らぐことは無い。

 

 「でも、こんな僕にもできることがある。」(颯斗)

 

 その瞳はどこか強い色を持っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり、本来の世界。

 

 「颯斗!颯斗!あれだけ、食べないでって言ったのに!!」(簪)

 

 自宅で泡を吹きながら倒れている颯斗を簪と颯斗の母が介抱していた。




 バッファローロード率いるアントロードの襲撃を受けるIS学園。
 大樹はマドカの危機を察知して戦いの場へ向かう。
 この世界で戦う力を持たない颯斗。戦う力を持たない彼もIS学園へ急ぐ。
 颯斗が見るのはアギトとなって戦う大樹の姿。この世界で颯斗は何を掴むのか。


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仮面ライダー輝龍 第30話

 長らくお待たせいたしました。
 29話から始まったお正月ストーリー(もう5月も終わりなんですが)、ついに完結です!!
 それでは、どうぞ!!







side3人称

 颯斗が迷い込んだのは別の世界、そこでは自身と大樹はIS学園では無く藍越学園に通っていた。なお、その世界では颯斗はロイミュードたちとの出会いは無く、戦う力を持たない普通の高校生として暮らしていた。

 この世界ではかつて人類の創造主である闇の力の僕であるアンノウンが今もなお平穏に暮らしている多くの人々を脅かしていた。

 アンノウンたちから人々を守るためにアギトの力に覚醒した大樹は仮面ライダーアギトとして戦っていた。そんなな中、アンノウンの一体であるバッファローロードがアントロードたちを率いてIS学園へ狙いを定めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ビートルロードとの戦いを終えた大樹は帰宅していた。

 

 「ただいま。」(大樹)

 

 戦いの疲労が滲み出ているもののはた目から見れば学校での疲労に見えるだろう。

 なお、大樹のただいまと言う声に返事を返す人物はいない。

 大樹は荷物を持ったまま、自室へ入っていった。

 自室に入り、荷物を置いた大樹は制服からジャージに着替えてベッドの上に身を投げた。

 疲労がある中で大樹はハンガーにかけた制服のポケットからスマホを取り出してある電話番号にかけた。

 数度のコールの後に電話の相手が出た。

 

 「もしもし?」(???)

 「今、帰って来た。」(大樹)

 「そう、お帰り。」(???)

 「ただいま、マドカ。」(大樹)

 

 電話の相手はこの世界の織斑マドカ、秋宮マドカであった。大樹はそのまま今日学校であったことをマドカに話し始める。一方のマドカもIS学園であった出来事を大樹に話していく。

 ひとしきり学校での出来事を話した大樹とマドカ。その後、マドカが大樹にある話題を切り出す。

 

 「ねえ、また戦ってたの?」(マドカ)

 

 マドカに言葉にやや口ごもる大樹。マドカの言葉に大樹は正直に答えた。

 

 「うん。また、アンノウンが出てさ。」(大樹)

 「無茶してない?」(マドカ)

 「いや、それは大丈夫。そっちにアンノウンが出たってことはない?」(大樹)

 「今の所は無いよ。」(マドカ)

 

 マドカの言葉に安心する大樹。だが、どこで何が起きるか分からない以上は油断はできない。

 

 「何かあったら、すぐに連絡して。」(大樹)

 「うん。じゃあ、お休み。」(マドカ)

 「うん、お休み。また、明日。」(大樹)

 

 大樹とマドカの電話が終わり、大樹はスマホを充電器に繋ぐ。

 ベッドの上で大の字のまま、天井を見る大樹。しばらく、その状態で居たままだった大樹。疲れが溜まっていたらしく、そのまま瞼を閉じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人々が寝静まった深夜。IS学園と本土をつなぐモノレールに無数の異形の姿があった。

 

 「さあ、行くぞ。」(バッファローロード)

 

 バッファローロード率いるアントロードたちだった。彼らはIS学園のある方向を見ており、それぞれが武器を手に持ち殺意を漲らせていた。

 バッファローロードは傍らにいるクイーンアントロードに視線をやる。

 クイーンアントロードはバッファローロードの意を組み、アントロードたちに指示を出す。

 

 「行け!いずれアギトに至る者たちを殺せ!!」(クイーンアントロード)

 

 クイーンアントロードの指示を聞き、アントロードたちが一斉にIS学園に向かって進軍する。

 神の僕による虐殺の行進が始まった。行進から間もなくIS学園に到達するアントロードたち。モノレール駅の降り場からIS学園の敷地内へ殺到するアントロードたち。

 その異変をいち早く察知したのは警備員だった。かつてのアンノウン、それを確認した警備員は急いで教員たちに連絡をする。だが、既に敷地内へ侵入されており事態は一刻を争う事態になっていた。

 アントロードたちが敷地に入った頃、大樹は家の前に停めていたバイクに乗り急いでいた。

 この直前に寝ていた大樹を起こしたのはアンノウンの出現を察知したアギトとしての本能と激しく鳴り響くスマホの通知音だった。

 スマホの画面にはマドカの名前が表示されており、大樹は即座に行動を起こしたのだった。

 バイクを運転する中で大樹は自身の意思でオルタリングを出現させ、仮面ライダーアギトに変身する。大樹の変身に応じてバイクもマシントルネイダ―に変化する。変身を終えたアギトは一気にスピードを上げてアンノウンたちが向かうIS学園へ急ぐのだった。

 

 「このままじゃあ間に合わないな。」(アギト)

 

 アギトはマシントルネイダ―をスライダーモードに変形させ、高速飛行で現場へ急行する。

 

 アギトが到着したころ、既にアントロードたちがその獰猛な武器を振るっていた。

 アギトはマシントルネイダ―をスライダーモードからバイクモードに戻し、アントロードたちの中に突っ込んで行った。

 マシントルネイダ―のスピードを保ったままアントロードの群れに突っ込んだアギト。次々とアントロードたちを撥ね飛ばし、マシントルネイダ―を止める。

 アギトを見たアントロードたちは次々とアギトに襲い掛かる。

 アギトは襲い掛かるアントロードたちを迎え撃つ。

 向かってくるアントロードたちを次々と打ち倒すアギト。グランドフォームの強靭な肉体から繰り出される一撃は撃破まではいかなくてもアントロードたちにダメージを与えるには十分であった。

 アギトの攻撃を受け、アントロードたちは闇雲に攻撃するのではなく、アギトを囲んでその動きを伺っている。

 

 「来ないなら、こっちから行かせてもらうぞ。」(アギト)

 

 そう言うとアギトはオルタリングの左部にあるボタンを押し込んだ。その瞬間、アギトの姿は超越精神を司る青色のストームフォームに変身した。

 オルタリングから専用武器ストームハルバードを召喚するとアギトはそのままアントロードたちの中へ一気に入り込んだ。

 集団の中へ入ったアギトはその瞬間にストームハルバードを展開、そのリーチの長さを活かして複数のアントロードを一度に撃破する。

 次々と襲い掛かるアントロードの大群。それをアギトストームフォームは自身の間合いに入ったアントロードを次々と切り裂いていく。

 だが、撃破されていく端から新たなアントロードがアギトに対して武器を振るう。さらに、ストームハルバードを振り回しながら、風を巻き起こしていく。風と共に相手を切り裂くハルバードスピンで一気に複数のアントロードを撃破する。

 アギトも複数の敵を相手に戦ったことはあるものの、今回のような数え切れないほどの大軍を相手に戦った経験は無かった。

 徐々にアントロードたちの数に圧され始めていた。

 撃破しても次から次へと新たなアントロードが現れる。

 ストームフォームで戦うも数の優位を覆せないことを悟ったアギトはグランドフォームへ戻る。

 一度、迫るアントロードを蹴り飛ばしたアギトは再度姿が変化する。その姿はここまでで見せたグランドフォームの金色の胴、フレイムフォームの紅蓮の右腕、ストームフォームの紺碧の左腕を持った形態となる。

 アギトトリニティフォーム、3つの形態の力を同時に発現させた姿である。

 アギトは右手にフレイムセイバー、左腕にストームハルバードを持つとアントロードの大軍に対して振るった。

 フレイムセイバーを振るうと火炎が、ストームハルバードを振るうと突風が起こり、アントロードたちの大軍を瞬く間に爆散させていく。

 ストームファイヤーアタック、トリニティフォームで発動可能となるこの技でアギトはその場にいたアントロードたちを全滅させることに成功する。

 

 「はあ、はあ、やっと全員か。」(アギト)

 

 アギトはアントロードたちの撃破を確認して、学園の中へ入ろうとした。その時、学園の門から闇に隠れ2体の新たなアントロードの姿が見えた。

 隊長格の赤い甲殻を持ったフォルミカ・エクセスとアントロードを統べるクイーンアントロードである。

 

 「お前らが首謀者か。」(アギト)

 

 アギトの言葉に大鎌と杖を構えることで答える2体のアントロード。

 アギトはフレイムセイバーとストームハルバードを構え、2体の動向を伺う。この時、アギトの意識は目の前の2体に向けらていた。そのため、2体の他に居た、今回の首謀者に気付くことが出来なかった。そして、それはアギトの身に全てを焼き尽くす雷光が炸裂したことで判明するのだった。

 

 「がっ!!」(アギト)

 

 自身を焼く雷光を感じた時にはアギトの姿は本来の人間のものになっていた。

 大樹は雷光を受けたことで生じた全身の火傷の痛みに呻く。

 その大樹に3体目の異形、バッファローロードが近づく。

 

 「まさか、アギトにまで会えるとは。今宵は、我らが大願に近づく記念すべき日になるだろうな。」(バッファローロード)

 「お前が、首謀者か。」(大樹)

 

 膝を着きながら大樹がバッファローロードに言う。そのバッファローロードは大樹に目をくれず、クイーンアントロードに指示を出す。

 

 「このアギトは私が始末する。お前たちはこのまま例の者達を探せ。」(バッファローロード)

 

 バッファローロードの指示を聞き、クイーンアントロードは学園内に未だに潜んでいたアントロードたちを呼び出し、学園内へ入っていく。

 

 「待て!!」(大樹)

 

 大樹がアントロードたちを止めようとするが、バッファローロードが駆け出そうとする大樹を踏みつける。

 

 「お前は我らの邪魔となるならば今ここで始末してしまおう。」(バッファローロード)

 

 バッファローロードは手に持っている杖を掲げる。すると、杖の先端が輝きだし、バチバチと激しい音が鳴り始める。

 大樹は背後に聞こえる自身の命を終わらせるであろう音を聞く。

 

 (ここまでか、クソッ!)(大樹)

 

 為す術なし、そう大樹が思った瞬間だった。

 

 「うおおおおおお!!」(???)

 

 何者かがバッファローロードに斬りかかった。

 突然の乱入者の攻撃を躱したバッファローロード。

 バッファローロードに踏みつけられた大樹はその乱入者に抱えられ、その場を離れるのだった。

 

 「邪魔が入ったな。まあ、良い。」(バッファローロード)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大樹を助けた乱入者=秋宮一夏は専用ISである白式に駆り、大樹を共だって学園のアリーナへと飛んでいた。

 

 「一夏、サンキュ。」(大樹)

 「おい、大樹。大丈夫か!?」(一夏)

 

 一夏の呼びかけに傷を負いながらも首を振る大樹。なお、一夏から見てもかなりの傷を負っている現状ではどのように言ったところで説得力は無いが。

 

 「皆は?」(大樹)

 「今、アリーナで籠城してる。千冬姉たちが指揮をして何とか持ち堪えている。」(一夏)

 

 そのまま、一夏はアリーナの中へ入る。

 そのアリーナの中にはIS学園にいる人々が皆肩を寄せ合っていた。

 一夏が大樹を連れ立ってある場所へ向かった。

 

 「なあ、どこに行くのさ。流石に横になりたいんだけど。」(大樹)

 「そんな傷で何も知らない皆がいる場所で休めないだろ。千冬姉たちがいる場所まで連れていくぞ。」(一夏)

 

 一夏はそのままアリーナにある管制室へ大樹を連れていく。

 一夏と大樹がそこに入るとそこには一夏の姉である秋宮千冬、一夏の双子の妹で大樹の恋人のマドカ、二人の幼馴染である篠ノ之箒と鳳鈴音、代表候補生であるセシリア・オルコット、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒ、更識簪、ロシア国家代表でIS学園の生徒会長である更識楯無。一夏と共に修羅場を潜り抜けた仲間たちであり、彼に好意を向けるヒロインズたちだった。

 

 「大樹!」(マドカ)

 

 大樹の姿を一目見て駆け寄るマドカ。

 幼馴染の鈴も駆け寄り、一夏に変わって肩を貸す。

 

 「ちょっと、大樹!?あんた、その傷!?」(鈴音)

 「ああ、鈴。傷に響くからあんま大声出さないで。」(大樹)

 

 大樹を支えるマドカと鈴は大樹を管制室に備えられている長椅子に座らせる。

 肩で息をする大樹。少しずつではあるが全身の傷は治り始めていた。

 この世界の大樹はアギトの力を覚醒させる前に、幼少期にある超能力に目覚めていた。それは、超再生能力。常人とは比べ物にならない驚異的な治癒能力である。

 一見すれば、念動力や透視などと比べれば地味ではあるもののアンノウンとの戦いでは死ななければ圧倒的なまでに高い生存率を誇る力である。この力のおかげでこの世界の大樹は激しい戦いを生き延びていると言っても過言ではない。だが、痛覚そのものは人間のものであり、アンノウンとの戦いでは想像絶する激痛を受けても来た。

 傷が塞がり始めている大樹を介抱するマドカ。

 大樹はマドカから水の入ったペットボトルを受け取り、中身を一気に飲み干す。

 大樹が一息ついたところで千冬が口を開いた。

 

 「大樹、今回のアンノウンは一体何が目的なんだ?見たところ、かなり大量に出ているが。」(千冬)

 「目的はここにいる誰か、アギトに覚醒するかもしれない人間の殺害だと思う。特定の誰かを探しているらしい。それと今回のアンノウンは見たところ、アリに似てた。多分、兵隊アリのアンノウン。学園に来て、入り口前に密集していた奴らは倒した。だけど、隊長格と女王アリを逃がした。それに、他にも居た。」(大樹)

 「他にも?今回の首謀者はその女王アリではないのか?」(ラウラ)

 

 ラウラの質問に大樹が答える。

 

 「兵隊アリに指示を出してんのは女王アリで間違いないと思う。だけど、その女王アリよりも格上の奴が居た。そいつに不意打ちされて、この傷。」(大樹)

 

 治りかけの傷を見せる大樹。大樹の言葉に暗部の長でもある楯無が言葉を発する。

 

 「つまり、今ここを攻め込んでいるのは下っ端ってことなのね。そして、そのボスは安全圏で目的が達成されるのを待っているということね。」(楯無)

 「ボス格はウシの見た目をしていた。身に着けているものも兵隊アリなんかよりもよっぽど立派な装飾が付いていた。そいつ、何かは分からないけどかなり強力だと思う。3つ合わせた力で一撃で元に戻るくらいのを喰らったから。」(大樹)

 

 3つ合わせた力、トリニティフォームが一撃で変身が解除されたことから首謀者=バッファローロードの実力の高さが伺える。

 大樹がアギトとして戦っているここのメンバーは今回の相手がかなりの相手ということで重い空気になる。

 そこで千冬は一度、一夏とマドカを除くメンバーにISを起動させる準備をするように伝え、部屋から出した。

 大樹はマドカ、一夏、千冬のみになったことを確認して口を開く。

 

 「たぶん、ウシのアンノウンの目的は3人だと思う。織斑計画で誕生した3人、ここの学園に居る誰よりもアギトに近い存在を狙ってきたんじゃないかな。」(大樹)

 「それで、私達にどうしろと?」(千冬)

 

 千冬の言葉に口をつぐむ大樹。その表情から大樹の思いを察する3人。だからこそ、大樹は自身の思いを言葉にする。

 

 「出来れば、ここから離れて欲しい。安全な場所に逃げて欲しい。」(大樹)

 「なあ、大樹。そんなことできるかよ。これまでも一緒に戦ってただろ。」(一夏)

 「そうだよ、それだったら一緒に戦おう?」(マドカ)

 

 大樹の言葉に対して一夏とマドカは一緒に戦うことを率直に伝える。そして、千冬も大樹に伝える。

 

 「去年、一夏とマドカとも戦っていた。それも危険な場を何度もな。アンノウンだけに限らず亡国機業とのことでは何度もお前に助けられた。今更だろう。それに一夏もマドカも代表候補生だ。私も教師として指示をしなくてはならない。そもそも逃げることなど出来ないさ。」(千冬)

 

 千冬のその言葉に大樹は固く重い表情になる。だが、それも苦笑いの形に変化する。

 

 「だよね。いや、分かってる。だから、どうする?このまま籠城戦するのか、打って出るか。」(大樹)

 

 大樹の問いに一夏は歯を見せてニッと笑い、マドカも柔らかく笑みを浮かべる。

 

 「だったら、準備が出来たら打って出るに決まってるだろ。」(一夏)

 「皆で一緒に、ね!!」(マドカ)

 

 彼らの姿を見て、決意を新たにする千冬。そこに扉をノックする音が響く。

 

 「秋宮先生、良いですか?」(真耶)

 

 ノックの主は千冬の後輩にして一夏たちのクラスの副担任である山田真耶だった。

 真耶が入って来て、新しい情報を聞く大樹たち。

 大樹は傷の癒えた拳を握り、戦意を宿す眼でアンノウンたちのいる方向を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間はさかのぼり大樹がIS学園に到着してアントロードの大軍と戦闘をしていた頃、颯斗は深夜でありながら寝付けずにブラブラと自転車で走っていた。

 この世界の自分が戦う力を持たないという事実、共に戦っている仲間であるハートたちがいないという事実。二つの事実は颯斗の胸中にモヤモヤとしたものをもたらしていた。

 どこか落ち着かない颯斗は寝付くことも出来ずにこうやって深夜の町を自転車で走っていたのだ。

 

 「はあ、なんだかなぁ。」(颯斗)

 

 当てもなく、目的も無く、ただただ走るだけの颯斗。年相応の男子高校生である颯斗、そんな自分はどうすれば良いのかについて考えていた。だが、今の颯斗の脳裏には答えが出ることなく堂々巡りを繰り返していた。

 ため息を繰り返し、深夜の夜空を見る颯斗。

 視線を夜空から街の方へ移す颯斗。深夜の街の様子はネオンにきらめく繁華街、静まり返る住宅地とそれぞれの場所の営みを写していた。

 

 「まあ、平和な世界なら良いのかな。」(颯斗)

 

 そう颯斗がつぶやいた時、視界の端にどこか異質なものが写った。それは、颯斗がIS学園に入学してから見慣れたものを、異形の怪人たちとの戦いを思わせた。

 

 「まさか、ね。」(颯斗)

 

 そうは言うものの、落ち着かなさの中で自身の正義感から自転車をその方向へ走らせる颯斗。それから1時間ほど後に颯斗は重大な戦いに首を突っ込むことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリーナの出口、そこにはISを展開した一夏たちに傷が癒えた大樹の姿があった。

 全員、アリーナに残る千冬と連絡ができるようになっている。

 

 「お前たち、敵の情報を警視庁未確認生命体対策班、G3ユニットから提供された。過去の情報と柏葉からの情報を照合した結果、敵はアントロードと思われる。大群での戦闘を得意としており、過去に自衛隊の施設を襲撃して壊滅させたことがある。奴らの口から吐き出される液体を浴びると地上にいながら窒息死する。それに注意しろ。では、作戦開始!!」(千冬)

 

 千冬の指示を聞き、一夏、箒、セシリア、シャルロット、ラウラ、楯無が先行して出撃した。

 大樹、マドカ、鈴、簪はその後に続き、別方向へ向かう。

 一夏たちはアントロードたちの不意を突き、一気に攻め込む。

 混乱のさなか、大樹はオルタリングを出現させる。

 大樹の姿を確認したアントロードたちは襲いかかるも、それに対して大樹は冷静に対処していく。

 

 「変身!」(大樹)

 

 オルタリングのボタンを押し込み、攻撃を躱す大樹。

 躱しながら攻撃を与えていくうちにオルタリングが強く輝く。一際強く輝いた次の瞬間、大樹は仮面ライダーアギトグランドフォームに変身した。

 迫りくるアントロードに対して次々と打ち倒すアギト。それをマドカたちがサポートする。

 マドカがサイレント・ゼフィルスのシールドビットを展開して、アンノウンの攻撃を防ぎ、簪が打鉄弐式のミサイルポッドから無数のミサイルを発射する。鈴は青龍刀で中距離から攻撃しながら衝撃砲を撃つ。

 マドカたちのサポートで無数にいるアントロードたちが次々と爆散していく。

 最初の戦いと比べ、圧倒的に有利な状況で戦い始めることがアギト。仲間たちがいることで心境にも余裕があった。

 

 「やっぱ、みんなと一緒だと違うな。すごい楽。」(アギト)

 「楽とか言ってないで動け、バカ大樹!」(鈴)

 「大樹、今のうちに!」(簪)

 

 鈴と簪の言葉を聞き、アギトはアントロードたちの後方にいるクイーンアントロードと隊長格のフォルミカ・エクセスを確認する。

 

 「マドカ、あいつらの後ろに女王アリと隊長格を見つけた!鈴たちと一緒に雑魚を押さえて!」(アギト)

 「うん!」(マドカ)

 

 マドカに指示を出したアギトはクロスホーンを展開、地面にアギトの紋章を浮かび上がらせる。

 それを見たマドカたちは離れたところにいる一夏たちと連携してアントロードたちを攻撃する。

 アギトの紋章がアギトの両足に吸収されていく。

 紋章が全て吸収され、そのままアギトは飛び上がる。空中でキックの姿勢となり、勢いよくクイーンアントロードとフォルミカ・エクサスに向かって飛んでいく。

 アギトのライダーキックがアントロードたちの頭上を切り裂き、そのままフォルミカ・エクセスの胸部に深々と突き刺さる。

 ライダーキックを受けたフォルミカ・エクサスは勢いよく飛ばされる。頭上に光輪を出して、断末魔を上げる間もなく爆散した。

 すぐ隣で眷属が爆散したことに驚愕するクイーンアントロード。すぐさま、大鎌をアギトに振るう。

 アギトは振るわれる大鎌を躱し、オルタリングのボタンを押し込んだ。

 アギトの体を爆炎が包み込み、まるで火山の噴火のように爆発した。

 爆発が収まり、粉塵が収まるとそこには新たな姿となったアギトがいた。全てを燃やし尽くすマグマのように熱気を放つその姿は正しく溶岩の龍という姿だった。

 仮面ライダーアギトヴォルカニックフォーム、この世界では大樹が戦いの中で手にした進化の形。全てを燃やし尽くす熱を纏い、目の前の敵を粉砕するべく拳を握る。

 アギトは右手の拳を固く握り、拳とする。そのまま、尋常ではない熱を右拳に込めてクイーンアントロードの顔面目掛けて拳を突き出した。ヴォルカニックライダーパンチ、その威力はかつて闇の力に使えた3体のエルロードをも屠るほどである。

 クイーンアントロードは寸でのところで大鎌で防御する。だが、盾とした大鎌越しでクイーンアントロードは殴られた。

 殴り飛ばされた先には無数のアントロードたちがおり、クイーンアントロードは同族の仲間の元へ飛ばされ、そのまま爆発四散した。

 リーダー格がまたたく間に撃破されたことでアントロードたちに動揺が走る。それを知ってか知らずアギトと一夏たちが次々と畳み掛けていく。有利と思われたその瞬間は戦場に落とされた雷光によって空気を変えられた。

 雷光が消えるとそこに今回の首謀者であるバッファローロードがいた。

 

 「まさか、アギトだけではなく人間にまでも良いようにされるとは。」(バッファローロード)

 「あとはお前だけだ、牛野郎。さっさとぶっ潰してやる。」(アギト)

 

 再び姿を見せたバッファローロードに殴りかかるアギト。高熱を帯びた拳を振るい、今度こそ勝利するのだという思いを込めて戦う。それに続くように一夏たちも戦う。だが、それを一瞬で叩き伏せるようにバッファローロードが杖を天に掲げる。すると、次の瞬間には天から雷が落ち、触れたものを焼き焦がす。

 アギトは目の前の相手がここまでに戦った相手とは一線を画す存在だと理解する。初めての格上の相手、それも叶うかどうか分からないほどの強大な相手である。

 バッファローロードの攻撃に一夏たちも初めて対面する強大な相手に戦慄する。

 

 「さあ、人間ども。愚かなアギト共々滅ぼしてやろう。」(バッファローロード)

 

 まさに神の使い、その本性を見せてバッファローロードは杖の穂先をアギト=大樹に向ける。

 手がないと思われたその瞬間、アギト=大樹たちの通信にこの場にいるはずのない人物の声が響いた。

 

 「皆!そいつを空いているアリーナに誘導して!!」(颯斗)

 「颯斗!?お前、どうして!!」(アギト)

 

 留芽颯斗。大樹の友人である彼が通信に出てきたのだ。

 戦場で戦うアギトたちに驚愕が走る。

 

 

 

 

 アギトたちがアントロードと戦闘を始めた際、颯斗は自転車を爆走(その際にはモノレールの線路を走るという曲芸まで披露していた)していた。その爆走の甲斐もあってかIS学園敷地内に苦もなく突入することができた。だが、この世界では戦う力を持たない颯斗は自転車を猛スピードで走らせたまま使われていないアリーナの管制室に立てこもったのだ。

 あとは、単独で仮面ライダードライブのシステムをジャンクパーツから再現できる彼のことだ。アギトたちの通信に入り込むなど大したことではなかった。そして、今回の首謀者であるバッファローロードへの対策も考えていた。

 

 「お前、どうやって来たんだよ!!てか、どこだよ!!」(アギト)

 「誰も使っていない第3アリーナの管制室!とりあえず、ここにそいつだけでも誘い込んで!!」(颯斗)

 

 突然の乱入者、それもIS学園とは関係のない学生。誰もが迷う中、たった一人だけ、一人だけは颯斗の問いかけた。

 

 「冗談、言っているんじゃないんだよな。」(アギト)

 

 アギトの問いかけに少しの間沈黙する。だが、次の響いた言葉は力強いものだった。

 

 「うん!僕がいる第3アリーナにそいつを連れてきてくれれば何とかできる!少なくとも、真っ向勝負まで持ち込める!」(颯斗) 

 

 その言葉に一人だけ、たった一人が即座に行動を移した。

 

 「ウオオオオオオオオオ!!」(アギト)

 

 バッファローロードに向かって走り出したアギト。

 向かってくるアギトに雷光を落としていくバッファローロード。

 アギトは自らが持つ再生能力任せに雷光を受けながらバッファローロードに掴みかかる。

 

 「ぬう!!」(バッファローロード)

 

 アギトはバッファローロードを掴むとそのまま第3アリーナに向かって走り続ける。

 

 「大樹!!」(一夏)

 「そのままアリの方を頼む!!」(アギト)

 

 アギトは一夏にそう言うと第3アリーナ目掛けてバッファローロードを投げ飛ばした。

 バッファローロードを投げ飛ばした直後、自身もアリーナの中へ入る。

 

 

 

 

 

 

 第3アリーナ管制室にいる颯斗は秘策のため、管制室内の機材をいじっていた。短時間で自身が考える秘策を実現させるべくあらゆる工程を省略しながらも行動する。

 そんな中、管制室の窓からバッファローロードとアギトがアリーナ内に侵入したのを確認する颯斗。

 この場に来て、アギト=大樹たちが自分のことを信じてくれる保証が無かった。部外者ということで突っぱねられることも覚悟していた。だが、颯斗の予想に反して大樹は颯斗の言葉を信じてくれたかのような行動をした。

 この世界での記憶のない颯斗、それ故の不安があった颯斗だが大樹の行動に自身のやるべきことをする。

 

 アギト=大樹は同じ高校に通う友人がどうしてここにいるのかそれを問い詰めることはしなかった。否、心境としてはすぐにでも隠れている場所に行くつもりだった。その心境の中、聞いたのは力強い友人=颯斗の言葉だった。颯斗の言葉に即座に決心した。

 この戦いの最中、大樹は最後の切り札を切るべきか考えていた。だが、バッファローロードの力から安易に最後の切り札を使っても有利な状況に持ち込める保証がなかった。

 そんな中で聞いた颯斗の力強い声、自身の変身した姿を見たであろうはずなのに助けるために危険の中に飛び込んだ友人を突っぱねるほどドライではない大樹。

 この世界では仕事で家を空けがちの両親の元、一夏を始めとした秋宮家の人々との交流は年相応に正義感の強い青年へと大樹を育てていた。そんな大樹だからこそ、颯斗の言葉を純粋に信じることができた。

 

 「よし、颯斗。あとは頼む。」(アギト)

 

 そう言うとアギトは灼熱を纏いバッファローロードに攻撃する。

 灼熱をまとう拳を振るうアギトにバッファローロードは天から複数の雷光を落とす。

 一撃で全てを消し去る雷光を数え切れないほど落とし続けるバッファローロード。その雷光の数はアギトの眼前で光り輝く壁となるほど大量のものだった。

 攻撃を思うように出せず、距離を取って攻撃を躱すアギト。戦いはバッファローロードの有利に進んでいた。

 

 「あきらめろ。お前もあそこで戦っている者たちも我らの裁きを受けて死にゆく運命だ。ただただ、従順に自らの命を差し出せ!!」(バッファローロード)

 

 人より高位の存在としての言葉。それを聞いてアギトはバッファローロードを見据える。

 

 「死にゆく運命?従順に?命を差し出せ?随分と上から目線の言葉だな。お前らが神様の使いっていうのはもう飽きるくらいに分かってるよ。だけど、そんな神様の使いが、一人ひとりの意思を持つ人間を好き勝手に殺すはどうなんだ?」(アギト)

 「お前たちアギトは我らが主が忌み嫌うもの、お前が守る者たちも人間を超える可能性を持つ。そんなものを許すわけには行かない。我らが主は人はただ人であれば良いと言った。ならば、人を超えるお前たちは存在すべきではないのだ!!」(バッファローロード)

 

 アギトの問いを下らないものとするバッファローロード。それを聞き、アギトは目の前の相手に何を言っても無駄だと思うも、一人の人間として神の使いであるバッファローロードに物申した。

 

 「人は人であれば良い。だとするならアギトであっても人としてあろうとする人達も人ではない、それどころかアギトに覚醒する可能性のある人物も同様に、か。それはお前たちの考え方だろ。それを押し付けるのが神の使いのやることかよ。お前たちアンノウンも対して俺たちと違わないな。」(アギト)

 「お前たち、アギトと一緒にするな!!」(バッファローロード)

 「一緒だろうが!!自分の考えを、感情を持つお前たちと俺たちが違うと言えるのか!!姿かたち、能力が違うだけで中身は同じだよ!意思を持って生きる者を否定するお前たちも俺たち人間と同じだ!!勝手に自分たちが偉いなんて決めるな!!」(アギト)

 

 アギトの怒声にバッファローロードは雷光をアギトに落とす。

 自身を焼く雷光を構わずに歩みだすアギト。その姿はまるで怒れる龍、堂々とした足取りでバッファローロードに近づく。雷光を受けることで生じる傷を気にする素振りを見せず、一歩ずつ距離を詰めていくアギト。

 

 「ここにいる皆は自分で未来を切り開こうとしているんだ。それを甘く見るな。それに、一夏を、千冬姉ちゃんを、マドカを狙うならどいつだろうとぶっ飛ばす!!」(アギト)

 

 触れるほどの距離、そこで拳を振りかぶりバッファローロードの顔面目掛けて拳を振るうアギト。

 そのアギトの拳を防ぐべく雷光を落とそうと杖を掲げるバッファローロード。

 空が光り、またも雷光がアギトに向かって落ちてくる。だが、雷光がアリーナに落ちる寸前、アリーナを覆うシールドに弾かれ霧散する雷光。

 

 「何!?」(バッファローロード)

 

 驚愕するバッファローロード。その顔面に、アギトの拳が深々とめり込んでバッファローロードをふっ飛ばした。

 地面に倒れるバッファローロードを見下ろすアギト。

 

 「それと、あまり人間を見下すな。お前たち相手に追いつけないなんてことはないからな。」(アギト)

 

 アリーナの管制室では颯斗が汗だくになっていた。その颯斗の作業で管制室の至るところでは基盤と基盤、電力制御などを司る機械がコードで繋がれていた。

 IS学園を始めとしたISの競技用アリーナには観客席を保護するエネルギーシールドを展開する機能がある。そのシールドはISに使われているシールドと同じものである。そのシールドはミサイルを始めとした近代兵器の他、紫外線などの人体に有害な影響を与えるものを遮断する機能がある。

 限られた時間で行った突貫工事、それはアリーナ内で発生させるシールドの範囲を広げつつ、アリーナ内の物質の電荷の変異を抑えるものへ変更するのが目的だった。つまり、今第3アリーナではバッファローロードは雷を落とすことができなくなったのだ。

 

 「な、何を!!」(バッファローロード)

 

 バッファローロードは再度雷を落とそうとするも、その結果は先程と同じだった。

 

 「まさか!!」(バッファローロード)

 

 バッファローロードは管制室の方へ視線を向ける。そこからアギトに視線を戻す。

 

 「ならば、先に貴様を殺す。その後に、こんな下らないことをした人間も殺す。その後は、外にいる人ならざる者たちだ!」(バッファローロード)

 

 怒りをあらわにするバッファローロード。その体からバチバチと音がなり、それが激しく鳴り響くとその姿を大きく変貌させた。

 銀色の鎧は金色に、漆黒の毛は純白へと。角はより巨大化し、雷を帯びる。肉体もより筋骨隆々としたものへ変化した。バッファローロード強化態、怒りの感情から強化されたその姿は、かつて津上翔一=アギトらの前に立ちはだかった3体のエルロードと同等の力を有していた。

 バッファローロードの変化を見て、ついにアギトも最後の切り札を使う。

 オルタリングの前に両手を構え、その両手をクロスさせる。

 オルタリングの形状が変化、橙色と黒色のドラゴンズネイルが金色と銀色に変化した。賢者の石もヴォルカニックフォームを表す橙色からここまでにアギトが変身した各形態の色が同時に発現する。

 オルタリングのボタンを押すとヴォルカニックフォームの甲殻、鎧がひび割れて弾け飛んだ。

 全体は津上翔一が変身したアギトシャイニングフォームに酷似している。だが、その姿はより鋭角的でシャープな印象と共に龍のイメージを連想させる。そして、目を引くのは基本形態グランドフォームと同じようなカラーリングの胴とヴォルカニックフォームを思わせる肩の装甲、フレイムフォームの紅蓮の右腕、ストームフォームの紺碧の左腕である。

 これぞ、この世界の大樹が到達した最強の姿、ドラゴニックフォームである。

 ドラゴニックフォームはオルタリングから大剣型の専用武器、ドラゴニックブレードを両手で構える。

 アギトドラゴニックフォームがドラゴニックブレードを持ち、バッファローロードは杖を両手で持つ。

 両者同時に走り出し、武器を振るう。

 武器同士が衝突すると強烈な衝撃波が発生、管制室を含めたアリーナ全体を揺らした。

 

 「うわっ!!」(颯斗)

 

 衝撃波を受けた颯斗は管制室の壁に叩きつけられ、意識を失うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side颯斗

 「、、、と。、、、やと。」(???)

 

 彼かが僕を呼んでいる。確か、僕はアリーナでアギトになっている大樹の助けに。

 

 「颯斗!!」(???)

 「グエッ!!」(颯斗)

 

 強い衝撃がお腹に感じて僕は喉の奥にあったものを吐き出す。

 目を覚ますとそこにはかんちゃんが、近くには大樹と万夏ちゃんの姿もあった。

 それに、目を覚ますとそこは僕の家だった。

 

 「あれ、皆?え、僕の家?なんで、さっきまで、アリーナだったのに?」(颯斗)

 「大丈夫か?餅食って喉詰まらせたって聞いたけど。」(大樹)

 「へ、餅?え、ウシの怪人は?アリの怪人とか、え?」(颯斗)

 

 混乱する僕の様子を見て皆怪訝そうに見る。

 

 「ウシの怪人とアリの怪人?大樹、心当たりは?」(万夏)

 「いや、ないけど。アリならアリインベスだけど。」(大樹)

 「いや、インベスじゃなくて。あの、あれ?」(颯斗)

 「大樹、万夏、ありがとう。あとは私が診るから。」(簪)

 

 混乱する僕をよそに皆は話していた。僕はその後、お母さんにものすごく叱られた。5時間くらい正座で説教も。

 説教を受けている中、僕は気を失っている間に見た世界のことを考えていた。多分、僕が見たのは別の世界。あの戦いのことが気になるけど、そんな中で僕は普段の日常に戻ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side三人称

 颯斗が見た別の世界。朝日が登る中、残っているアントロードたちが撃破されていた。

 戦いを終えたマドカたちは瓦礫を撤去する中、話し声を聞く。

 

 「ほんとに覚えてない?」(大樹)

 「いや、わかんない。ほんとに放課後?くらいから全く覚えていない。」(颯斗)

 

 マドカたちが振り向くとそこには肩を支えてもらう大樹に、首を傾げながら大樹を支える颯斗がいた。ボロボロだが晴れやかな表情からマドカたちは大樹がバッファローロードとの戦いに勝利した事を知る。

 

 「大樹!」(マドカ)

 

 マドカたちが駆け寄り、お互いの無事を称え合う。



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仮面ライダー輝龍 第31話 十三異界覇王大戦編第2章 蒼龍姫乱舞 アナザーオーマジオウ襲来

 お正月ストーリーも終了し、十三異界覇王大戦編第2章に戻ります。それでは、どうぞ!!


side万夏

 「どうしたもんかね。」(大樹)

 

 いつも通りに大樹と週末の予定について話していた。いつも見るその横顔。空白の予定を、脳内にきっと予定表を出して考えているだろうその表情。幼い頃から知っているその表情を見て、私はこの週末のことを考える。そうするだけで、ただ、考えるだけだけなのに胸の中が暖かいもので満たされていく。

 旅行をしたいわけでないけど、行くのならそれはそれで楽しみだけど、そこまでをしたいとかじゃなくて、ただ大樹と一緒にどこかへ行ったり、一緒に美味しいものを食べたり、ただただ体を重ねたりすることが私にはこの上なく幸せなこと。

 今、この瞬間もただただ愛しい人と一緒にいる、そんな当たり前なことが幸せだった。前世の私には、当たり前では無かったこと、何もかもが現実には無いと思っていた平穏な幸せ。かけがえのない、この時間を、当たり前だけど当たり前じゃないこの時間が続いて欲しい。それくらい、私には大樹の存在がかけがえのないものだった。

 

 「どうした?」(大樹)

 「うんうん、何でもない。」(万夏)

 

 大樹の言葉にそう答えた次の瞬間、私は一瞬気が意識が遠くなった感覚を覚えた。そして、気が付くと隣に居たはずの大樹の姿が無かった。

 

 「大樹、どこ!?どこなの!」(万夏)

 

 近くにいるか確認するけど、さっきまで居た形跡すらなく、呼びかけにも返事が無かった。

 不安に駆られそうになるけど、落ち着いて周囲を確認する。

 

 「ここ、廊下じゃない。でも、学園の中だけど。」(万夏)

 

 私がいたのは大樹と一緒に歩いていた学園の廊下ではなく、どこかの一室だった。さらに、私の服装が学園の制服では無く、黒一色のワンピースだった。そして、その恰好は前世の私が、亡国機業に所属していた私が身に着けていた服装だった。どうして、この格好をしていてこの場所に居るのか、私にはまったく分からなかった。

 

 「早く、大樹を探さないと。」(万夏)

 

 突然の出来事、それに嫌な胸騒ぎを覚えた私はその場から出るべく部屋の扉を開けた。

 

 

 

 

 

side3人称

 ファブニールとの決着、十三異界覇王大戦を仕組んだ黒幕であった魔蛇の撃破から半年近くが経過した。大樹たちが進級し、3年生となったある日だった。IS学園を中心とした東京は人が誰も居ない無人の土地となっていた。否、IS学園では、ここに激しい戦いを繰り広げていた二人の人物が居た。

 

 「はああああ!!」(輝龍)

 

 黄金の龍の鎧を纏う輝龍バハムートアームズ。竜炎刀・陽炎と光龍剣を手に目の前の相手に斬りかかる。

 輝龍の振るう刃を輝龍が対峙する相手はそれを二本の時計の針に似た剣で応戦する。

 輝龍が対峙するのは新たな十三異界覇王、偽りの平成ライダーの歴史を統べる魔王。世界の歴史を塗り替える虚飾の魔王、歪曲逢魔時王アナザーオーマジオウである。

 

 「フン。この程度で俺に勝てると思ったか。」(アナザーオーマジオウ)

 

 輝龍を蔑む声音で輝龍に問うアナザーオーマジオウ。それに対して輝龍は仮面の下の顔を怒りの表情に染める。

 

 「皆を返してもらうぞ。」(輝龍)

 

 輝龍はそう言ってアナザーオーマジオウを前蹴りで蹴り出す。距離が空いた瞬間に輝龍は戦極ドライバーを操作、竜炎刀・陽炎と光龍剣にエネルギーをチャージしてX字の斬撃を放つ。

 強化された斬撃は遂にアナザーオーマジオウに直撃、ダメージを与えた。だが、その次の瞬間には空間にガラスの割れ目のような裂け目が生じてそこから輝龍が放ったものと全く同じ斬撃が輝龍に向かって飛んで来た。

 咄嗟に防御する輝龍だったが強化していた攻撃ということもあり吹き飛ばされ変身が解除されてしまった。

 地面に転がる大樹はアナザーオーマジオウを睨む。

 倒れる大樹を見下ろすアナザーオーマジオウは変身を解除する。アナザーオーマジオウの変身者、加古川飛流は大樹に近づく。

 

 「お前では俺を倒すことは出来ない。俺を倒すことができるのはオーマジオウ、常盤ソウゴだけだ。その常盤ソウゴもこの世界に居ない以上はお前に打つ手は無い。」(飛流)

 

 飛流の言葉に歯を食いしばりながらも立ち上がろうとする大樹。

 その大樹に対して飛流はクウガ、アギト、龍騎のアナザーライダーを召喚する。

 召喚されたアナザーライダーが大樹に襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事の始まりは大樹と飛流が戦い始めるよりも数時間ほど遡る。

 世界と世界のはざま、かつてジオウたちとファブニールが衝突したそこに残る3体の十三異界覇王が揃っていた。

 

 「残るは俺達だけになったってわけか。」(???)

 

 茶髪に青色のメッシュが入った男、永遠の記憶を内包したエターナルメモリを使う不死身の兵士である大道克己。またの名を仮面ライダーエターナル、蒼炎永遠王仮面ライダーエターナルである。

 

 「もう誰にも邪魔が入ることは無い。最後に勝つのは俺だ。」(???)

 

 王であることを示す服装で誰に対しても攻撃的な意思を隠さない青年、加古川飛流。この後に大樹と戦うこととなる十三異界覇王である。ジオウたちが戦った改ざんされた歴史により誕生したアナザーライダー、その頂点であるアナザーオーマジオウである。

 そして、克己と飛流の他に、最後の十三異界覇王がいた。それは、二人と違い人間の姿をしてなかった。不気味な一つ眼の姿をしているそれは、輝龍=大樹に撃破された魔蛇が呼び出した最凶最悪の十三異界覇王である。

 

 「矮小な人間如き、貴様ら等がこの我を打ち倒すことは出来ぬ。」(???)

 

 大樹たちのいるこの世界、始まりの仮面ライダーである仮面ライダー1号=本郷猛が悪の秘密結社ショッカーと戦っていた。そんな中、1号と2号、1号と2号の力を受け継いだV3、世紀王と呼ばれるBLACK、闇の力と戦った仮面ライダーアギト=津上翔一が時空を超えて協力して対峙した巨悪があった。。

 ショッカーが誕生する以前、遥か古の時代より地球の覇権を握っていた秘密結社が存在した。その秘密結社の名は暗黒結社ゴルゴム。

 そのゴルゴムを支配する創世王、その創世王と創世王の座を巡り争った存在が居た。名前を失った彼は永い時間を眠り続けていたが人類の創造主である闇の力の消滅により覚醒した。時空を超えた暗躍により新たな肉体を手に入れた彼はその姿から邪眼と呼ばれるようになった。

 邪眼はBLACKの力の源であるキングストーンを奪い、創世王へと至ろうとした。だが、1号、V3、BLACK、アギトの4人の仮面ライダーを前に敗北したのだった。

 この場にいる邪眼は全ての仮面ライダーを打ち倒しただけではなく、BLACKとシャドームーンのキングストーンを手中に収めたのだった。最後の十三異界覇王、邪悪創世王邪眼。ゴルゴムを統べる創世王と同等の力を手に入れた最凶の十三異界覇王である。

 邪眼は相対する克己、飛流ですらも気圧されるほどの邪悪な気を放っていた。

 

 「最後に残った貴様らを下し、ここに我が暗黒の治世を敷こう。」(邪眼)

 「それは大層なことだな。地獄を楽しませてやるよ。」(克己)

 「うるさい、最後は俺が勝つ。」(飛流)

 

 話はそこで終わった。それから彼らはそれぞれの本拠地となる場所、克己は風都に、邪眼はある廃発電所、飛流は都内某所の洋館に移動した。

 それぞれの場所に移った十三異界覇王、その中で彼らは同時に動き始めた。

 その頃、大樹たちはそれぞれの場所で平穏な時間を過ごしていた。

 

 「それで、今週末はどうするの?シュウちゃんと一緒にどこかに行く?」(万夏)

 「そうだな、こないだスコールたちに会ったばかりだし。まあ、母さんと普段から出かけているって話だしな。どこに行くかは本人と要相談かな。それとも、二人だけでどこか行く?」(大樹)

 「私は良いよ。二人でも、シュウちゃんが一緒でも。」(万夏)

 

 大樹と万夏は学園内の廊下で週末の予定について話していた。

 

 「よし、調整完了。準備OKだよ、かんちゃん。」(颯斗)

 「うん、じゃあ、始めるよ。」(簪)

 

 学園の整備室では颯斗と簪が打鉄弐式の整備を行っていた。

 

 「はあああ!!」(一夏)

 「まだまだよ!」(鈴音)

 「わたくしも居ましてよ!!」(セシリア)

 

 同じ頃の一夏は箒、鈴、セシリアとアリーナでISの訓練をしていた。

 

 「おし、ここいらでその数式を使うんだよ。」(陸)

 「あっ、本当に解けた!」(シャルロット)

 「ふむ、じゃあ次はこの問題だな。」(ラウラ)

 

 陸とシャルロット、ラウラは勉強会をしていた。

 IS学園でそれぞれが平穏な時を過ごしていた。それは織斑家にいる修羅、春奈、秋人や篠ノ之神社にいる正則と束、黒江も同様だった。

 そんな中、異変が起きたのだった。

 

 残る十三異界覇王の中で最初に行動を起こしたのはアナザーオーマジオウこと加古川飛流だった。

 

 「さあ、始めるぞ。」(飛流)

 

 飛流はそう言うと自身の変身アイテムであるアナザーウォッチを起動する。

 

 《オーマジオウ。》

 

 くぐもった音声が響き、飛流はアナザーオーマジオウウォッチを自身の肉体に押し当てる。次の瞬間、飛流の姿が歪められた歴史によって誕生した仮面ライダー、アナザーライダーであるアナザーオーマジオウへ変身した。

 アナザーオーマジオウは右手を掲げると頭上に巨大な時計を出現させる。

 時計には1から20まで数字が刻まれており、それぞれの数字には歪な歴史より誕生したアナザーライダーの顔が浮かび上がっていた。

 時計の針が10、アナザーディケイドを指し示す。その瞬間、巨大な灰色のオーロラが現れ、アナザーオーマジオウを中心に東京と隣接する都市まで包み込み、消えたのだった。

 

 

 

 

 

 灰色のオーロラが現れ、消えた直後のIS学園。そこには大樹を除いてすべての人間が姿を消していた。

 

 「万夏、万夏!」(大樹)

 

 つい先程まですぐ隣りにいた恋人の姿が消えた。大樹は彼女がいないか呼びかけるも反応が帰ってくることはなかった。

 さらに、万夏と話す中で聞こえていたIS学園にいる生徒や教員の話し声が一切聞こえてこないことに気付く。

 大樹は近くの教室を確認する。どこの教室ももぬけの殻となっていた。先程まで人がいた痕跡だけ残して人だけが消えていたのだ。

 

 「一体、何が起きているんだ。まさか、残っている十三異界覇王か。」(大樹)

 

 学園中を走り、一夏、颯斗、陸ら仲間たちの姿も探すが彼らまでもが消えてしまっていた。

 アリーナまで来て、誰一人としていないこと、電話で織斑家と篠ノ之神社に連絡するも誰一人として出ることは無かった。

 

 「皆、一体。」(大樹)

 「残っているやつがいたのか。」(飛流)

 

 何が起きたか分からない大樹の背後に加古川飛流が姿を見せた。

 飛流の方へ振り向いた大樹は飛流の放つ風格から彼が常人ではないことに気づいた。

 

 「あんたは。」(大樹)

 「俺は加古川飛流、全て仮面ライダーの力を持つ王だ。」(飛流)

 

 飛流はアナザーオーマジオウウォッチを起動、大樹の目の前でアナザーオーマジオウに変身する。

 大樹は目の前の人物が十三異界覇王だということを理解、即座に仮面ライダー輝龍バハムートアームズに変身した。

 変身した二人は両手に武器を持って戦いを始めた。そして、その結果は輝龍の敗北だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アナザークウガ、アナザーアギト、アナザー龍騎の攻撃から大樹はバハムートロックシードを解錠することで対応しようとした。だが、それは3体のアナザーライダーの攻撃よりも一瞬だが遅かった。

 アナザークウガの腕が、アナザーアギトの牙が、アナザー龍騎の火炎が大樹に当たると思われたその瞬間、アナザーライダーと大樹の間に巨大な何かが立ちふさがった。

 

 「何!?」(アナザーオーマジオウ)

 

 突然の乱入者の姿を見てアナザーオーマジオウは驚愕する。

 大樹は目の前に出現した銀色を主体としたロボット、赤色を主体としたロボットを見ていた。

 タイムマジーン、大樹がいるこの世界とは別の世界、2068年で作られたタイムマシンである。そして、その2代のタイムマジーンより人影が降り立った。

 その人影を見てアナザーオーマジオウは内心に憎しみの炎を燃やす。

 

 「常磐ソウゴ!!」(アナザーオーマジオウ)

 

 大樹と同い年と思われる青年の名を呼ぶアナザーオーマジオウ。

 大樹はタイムマジーンから降りてきた人物たちが直感的に十三異界覇王の一体であるキルバスと戦ったときに出会った仮面ライダーたちであることを理解した。

 

 「加古川飛流、これ以上好きにはさせない。皆、行くよ!」(ソウゴ)

 

 ソウゴは近くにいる3人の仲間、明光院ゲイツ、ツクヨミ、ウォズに呼びかける。

 3人はソウゴの呼びかけに応じる。

 ソウゴ、ゲイツ、ツクヨミはジクウドライバーを、ウォズはビヨンドライバーを装着する。彼らはそれぞれのライドウォッチを起動、ドライバーにセットする。

 

 「「「「変身!!」」」」

 

 仮面ライダージオウ、仮面ライダーゲイツ、仮面ライダーツクヨミ、仮面ライダーウォズ。最高最善の魔王とその仲間たち、平成の時代に生きた全ての仮面ライダーの力を継承する仮面ライダーたちである。

 

 「なんか、行ける気がする!!」(ジオウ)

 




 新たな十三異界覇王、アナザーオーマジオウの手に落ちた万夏。そんな中で万夏は自身の負い目とも言える記憶と対峙する。
 常磐ソウゴことジオウの参戦、それでもなお戦況は思わしくなかった。

 「ここで何もしないわけにいかないんだよ。」

 仲間を、愛する者を奪われた大樹は自身の身を顧みずアナザーオーマジオウとの戦いを行う。


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仮面ライダー輝龍 第32話 十三異界覇王大戦編第2章 蒼龍姫乱舞 アナザーオーマジオウ襲来

 皆さん、お久しぶりです。最新第32話が完成しました。それでは、どうぞ!!



 十三異界覇王大戦を仕組んだ魔蛇を撃破してから、時間が経ち大樹たちは3学年へ進級していた。
 平穏な時間を過ごす中で新たな十三異界覇王、アナザーオーマジオウが出現した。
 アナザーオーマジオウの手により多くの人々、仲間たちが消される中、孤軍奮闘する大樹。だが、その圧倒的な力を前になすすべ無かった。そんな時、キルバスとの戦いで出会った仮面ライダージオウこと常磐ソウゴたちが救援に駆けつけたのだった。


 side三人称

 十三異界覇王の一人、歪曲逢魔時王アナザーオーマジオウの前に仮面ライダージオウ、仮面ライダーゲイツ、仮面ライダーツクヨミ、仮面ライダーウォズが並び立つ。

 

 「俺の世界のお前たちは俺が殺した。別の世界のお前たちも同じように殺してやる!」(アナザーオーマジオウ)

 「これ以上はやらせないよ、加古川飛流。皆、行くよ。」(ジオウ)

 「ああ。」(ゲイツ)

 「ええ。」(ツクヨミ)

 「わが魔王、仰せのままに。」(ウォズ)

 

 アナザーオーマジオウに対してそれぞれが武器を手に取るジオウたち。倒れていた大樹も何とか立ち上がるも膝に手をつく。

 

 「君は休んでいて。こいつは俺たちが倒す!」(ジオウ)

 「いや、待て。俺も、っ!」(大樹)

 

 自身も戦おうとする大樹だったが、先程までのアナザーオーマジオウとの戦いによりかなり消耗していた。

 その大樹を置いて、アナザーオーマジオウと戦闘を始めるジオウたち。

 ジオウはジカンギレードを、ゲイツがジカンザックスでアナザーオーマジオウに斬りかかる。それにアナザーオーマジオウは時計の針を模した2本の剣で対応する。

 アナザーオーマジオウの隙を突くべくウォズがジカンデスピアでアナザーオーマジオウに飛び掛かる。

 アナザーオーマジオウはジオウとゲイツを相手に切り合いをしながら、ウォズを迎撃しようとする。そこをツクヨミが時間操作でアナザーオーマジオウの動きを封じる。

 

 「小癪な!!」(アナザーオーマジオウ)

 

 動きを封じられたアナザーオーマジオウはアナザーライダーを召喚、アナザー響鬼とアナザーカブトにツクヨミとウォズを攻撃させる。

 アナザー響鬼がツクヨミを、アナザーカブトがウォズを攻撃する。

 アナザーライダーからの攻撃により時間操作を中断させられたツクヨミ。クロックアップしたアナザーカブトの攻撃を受けてしまうウォズ。

 

 「やっぱり、一筋縄じゃいかない。」(ツクヨミ)

 「別世界とは言え、我が魔王のアナザーライダーである加古川飛流だ。これくらいできて当然だろう。」(ウォズ)

 

 反撃を受けてなお、冷静さを失わないツクヨミとウォズ。

 その二人の視線を向けるアナザーオーマジオウ。その背後をジオウとゲイツが斬りかかる。

 攻撃が当たる直前、アナザーオーマジオウの額にある角が回転する。するとジオウとゲイツの動きを予め知っていたかのように回避、攻撃の直後のスキを攻撃する。

 攻撃を受けて飛ばされるジオウとゲイツ。予想していたとは言え、軽くはないダメージを受けてしまった。

 

 「痛たたた、やっぱり俺の力って強いな。」(ジオウ)

 「恐らく、ソウゴの力はすべて使えるだろう。オーマジオウの力を持っているんだ、かなり厄介だぞ。」(ゲイツ)

 

 自身と同じ力を持った相手、決して生半可な相手ではない。それでも、ジオウもゲイツも、ツクヨミもウォズも勝負を諦めていなかった。

 幾度も戦いを繰り広げた因縁の相手、その別世界の存在との戦いはジオウたちに譲れない強い思いを抱かせていた。

 

 《ジオウⅡ!》

 《ゲイツリバイブ、剛烈!!》

 

 ジオウとゲイツは新たなライドウォッチを起動、ウォズとツクヨミはその変身までの時間を稼ぐべくアナザーオーマジオウへ向かっていく。

 アナザーオーマジオウは召喚したアナザーライダーをウォズとツクヨミに向かわせ、自身はジオウとゲイツ、正確にはジオウを狙って躍りかかる。

 襲い来るアナザーライダーに対し、ツクヨミは事前にジオウから渡されていたアギトライドウォッチを、ウォズはシノビミライウォッチを起動する。

 ウォズはフューチャーリングシノビに、ツクヨミはアギトアーマーに変身。向かってくるアナザー響鬼とアナザーカブトに対抗する。

 その間に、ジオウはジオウⅡへ、ゲイツはゲイツリバイブ剛烈となる。

 向かってきたアナザーオーマジオウに、ジオウⅡは最強武器のサイキョーギレードを、ゲイツリバイブはジカンジャックローノコギリモードで応戦する。

 双剣で襲いかかるアナザーオーマジオウに、未来を先読みして対抗するジオウⅡと持ち前の防御力とパワーでゴリ押しするゲイツリバイブ。

 最強格の仮面ライダー同士の激闘は凄まじく、その余波だけで大樹は身動き一つ取れずにいた。

 

 「っ、くっ!」(大樹)

 

 精々がその余波に耐えて戦いの行方を見守ることしかできなかった。

 クロックアップを使用するアナザーカブトにウォズはシノビの力で翻弄、クロックアップを使用する相手の攻撃を全て躱していた。

 

 「やはり、矢車が変身したアナザーカブトでないならこの程度。そろそろ終わりにするとしよう。」(ウォズ)

 

 そう言うとウォズはジカンデスピア鎌モードにエネルギーを集める。そこから複数体に分身、四方八方から光の手裏剣を放ち、アナザーカブトにダメージを与えた。

 

 「これで終わりよ!」(ツクヨミ)

 

 ツクヨミはジクウドライバーを操作、右足にアギトの紋章を吸収してアナザー響鬼にライダーキックを放つ。

 アナザーカブトもアナザー響鬼もアナザーウォッチを破壊するまで行かなくてもかなりのダメージを受けた。

 アナザーカブトとアナザー響鬼は攻撃を受け、アナザーオーマジオウの方へ飛ばされた。

 

 「流石にアナザーライダーで足止めはできないか。」(アナザーオーマジオウ)

 「ソウゴ!一気に決めるぞ!」(ゲイツ)

 「ああ!ゲイツ!」(ジオウ)

 

 ジオウとゲイツはそれぞれの武器にエネルギーをチャージする。アナザーカブトとアナザー響鬼、2体のアナザーライダーが自分たちとアナザーオーマジオウの間に入った瞬間に自分たちの武器を振り抜いた。

 高められた一撃をジオウとゲイツはアナザーオーマジオウに対して同時に放った。

 二人の放った一撃はアナザーライダーの力の源、アナザーウォッチを確実に破壊することができるものだった。波の相手であれば十分すぎるほどのその一撃、2体のアナザーライダーを撃破したその攻撃をアナザーオーマジオウは武器ではなく自身の拳で降り払い無効化するのだった。

 その様子を見たジオウたちは予想していたが一切のダメージを負っていないことに驚愕を禁じ得なかった。

 

 「この程度で、俺を倒せると思ったか。この程度で、この俺を倒せると思うな!!」(アナザーオーマジオウ)

 

 そう叫ぶと、アナザーオーマジオウは頭上に時計盤を出現させる。

 時計盤の針が数字の10と20を指し示す。次の瞬間、アナザーオーマジオウの両隣にアナザーディケイド、アナザージオウの幻影が出現する。

 2体の幻影はアナザーオーマジオウと重なり、アナザーオーマジオウの瞳が怪しく輝く。

 アナザーオーマジオウは腰にある漆黒のオーマジオウドライバーを操作、ジオウⅡとゲイツリバイブの周囲を歪なキックの文字が囲み、アナザーオーマジオウの正面には紫色に染まったカード状のエネルギーが10枚出現した。

 それを見たジオウⅡは自身の特殊能力である未来の先読みを発動する。

 数秒後の未来、アナザーオーマジオウの攻撃を受けて変身を解除され、自身とゲイツが命を落とすその未来を見たジオウⅡ。

 ジオウⅡはゲイツリバイブを顔を見合わせる。

 仮面越しから事態を把握したゲイツリバイブ。その瞬間にはゲイツリバイブライドウォッチを操作していた。

 

 「死ねええええええ!!」(アナザーオーマジオウ)

 

 殺意を込めて放たれたアナザーオーマジオウの一撃。それに対してジオウⅡは再度サイキョーギレードにエネルギーを集め、二度目の必殺技を放つ。

 ぶつかり合う二人のジオウの攻撃。その勝敗はジオウⅡの攻撃が容易くアナザーオーマジオウに粉砕されていくことで着いた。

 必殺技のぶつかり合いはアナザーオーマジオウの勝利となり、ジオウⅡはその衝撃でふっ飛ばされてしまう。

 

 「うわああああ!」(ジオウ)

 

 ジオウⅡは地面に転がり、変身が解除されてしまう。それを見たアナザーオーマジオウは因縁の相手の死に様を確認するべく近づこうとした瞬間だった。

 自身の知らない方角から投げられた武器、竜炎刀を躱したアナザーオーマジオウ。投げられた方角を見るとそこにはボロボロになりながらもアナザーオーマジオウを見据える大樹の姿があった。

 

 「なら、お前から殺してやる。」(アナザーオーマジオウ)

 

 アナザーオーマジオウは双剣を持ち、大樹の方へ向いた。その瞬間、アナザーオーマジオウの目の前にゲイツリバイブが武器を構えていた。

 ゲイツリバイブはパワー特化の剛烈からスピードに特化した疾風に変身しており、爪モードのジカンジャックローでアナザーオーマジオウに攻撃する。

 アナザーオーマジオウは大樹に注意を向けていたことや、自身の攻撃をゲイツリバイブが受けていたと思っていたことからゲイツリバイブの攻撃を受ける。

 決して大きなダメージを与えたわけではないが、アナザーオーマジオウを後退させることができた。そして、変身が解除されていたソウゴが立ち上がり、ジオウライドウォッチとグランドジオウライドウォッチを起動させていた。

 

 「変身!」(ソウゴ)

 《グランドタイム!クウガ、アギト、龍騎、555、剣!響鬼、カブト、電王!キバ、ディケイド!W、オーズ、フォーゼ!ウィザード、鎧武、ドライブ!ゴースト、エグゼイド!ビルド!祝え!!仮面ライダー!グランド!ジオウ!》

 

 クウガからビルドまでの仮面ライダーの名が呼ばれ、ソウゴは仮面ライダーグランドジオウに変身する。

 グランドジオウは体の各部の仮面ライダーのレリーフに触れる。

 仮面ライダー龍騎サバイブ、仮面ライダー555ブラスターフォーム、仮面ライダー電王クライマックスフォーム、仮面ライダーゴーストグレイトフル魂が召喚され、ゲイツリバイブと共にアナザーオーマジオウを攻撃する。そこへ、ツクヨミとウォズも加わり、アナザーオーマジオウへ攻撃を加えていく。

 強化形態の仮面ライダーたちの攻撃を受け、さすがのアナザーオーマジオウもダメージを受けると思われた。だが、彼らの予想に反しアナザーオーマジオウはたった一人で召喚された仮面ライダーたちと互角と渡り合い、それらを強化した武器で消滅させるのだった。

 予想していた以上の力を見せるアナザーオーマジオウ。それに対してジオウたちは即座に行動に移した。

 ゲイツリバイブは高速で大樹の元へ駆け寄り、この場を離脱する。

 ウォズフューチャーリングシノビとグランドジオウが武器から斬撃を放つ。

 ツクヨミがアナザーオーマジオウを時間停止で動きを封じる。

 動きを封じられたアナザーオーマジオウはそのままグランドジオウとウォズの攻撃を真正面から受けてしまう。

 

 「よし!」(グランドジオウ)

 「それでは、我が魔王。ここは退きましょう。」(ウォズ)

 「今なら安全に撤退できる。撤退して今後のことを考えましょう。」(ツクヨミ)

 

 グランドジオウは電王のレリーフに触れると、電王の専用マシンであるデンライナーを召喚する。召喚したデンライナーに乗り込んだグランドジオウとウォズ、ツクヨミもゲイツリバイブと同じくこの場を撤退するのだった。

 ジオウたちの攻撃を受けたアナザーオーマジオウは煙を振り払う。その時にはもう、グランドジオウたちの姿は無かった。

 アナザーオーマジオウは変身を解除、姿を消したジオウのことを考え憎しみで表情を歪める。

 

 「逃げたか、常磐ソウゴ。だが、逃げていられるのも今のうちだ。次に会った時こそ、お前の最後の時だ。」(飛流)

 

 飛流はそのまま灰色のオーロラを出現させ、この場から姿を消したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 side万夏

 私は迷い込んだこの場所についてある程度分かった。

 私の今いる場所がIS学園のどこかということは分かった。でも、詳しい位置まではなぜか分からなかった。扉を開けてもこの部屋から出られない、と言うよりも扉を開けて外に出たと思ったらこの部屋に戻ってしまう。それに、今の私には皆と連絡を取る方法もない。普段持ち歩いているスマホもなく、部屋の中には外に連絡を取る手段も無かった。

 

 「もしかして、新しい敵?それなら、ここはどこなの。」(万夏)

 

 さっきまで、一緒だったはずの大樹がいないことで不安な気持ちが芽生えてくる。

 初めて会ったときから一緒にいることが当たり前だった。前世の記憶を取り戻して、付き合うようになって、一緒に戦っていることが私の中で当たり前になっていた。

 いつだって、皆のために戦って、皆をまとめてきた大樹。

 そんな大樹は、大ちゃんはいつも私のそばにいた。こんな形で離れることなんて無かった。IS学園に入学して、初めての臨海合宿でのことで大ちゃんが撃墜された時にも感じた不安感がどんどん強くなっていく。

 

 「大ちゃん、会いたいよ。」(万夏)

 

 届くか分からない、でも、自分の気持ちを口にしないと芽生えた不安が私を蝕みそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

side三人称

 万夏が大樹への思いを募らせる中、大樹はソウゴたちと共に沢芽市のヴァルハラに移動していた。

 そのヴァルハラには幸いにも仮面ライダー龍玄=呉島光実と仮面ライダーナックル=ザック、仮面ライダー斬月=呉島貴虎がいた。

 

 「つまり、東京は新たな十三異界覇王の手に落ちたということか。」(貴虎)

 「話が早くて助かるよ、仮面ライダー斬月。アナザーオーマジオウ、加古川飛流は自身の力で東京にいる人々を異世界へ取り込んでいるだろう。」(ウォズ)

 

 初対面であるソウゴたちの説明を聞いた貴虎たち。

 今回の相手である新たな十三異界覇王、その力はかつて貴虎たちが対峙したオーバーロードたちを彷彿させた。

 

 「多くの人々を異空間に閉じ込め、そこからアナザーライダーと呼ばれる存在を生み出す。それだけではなく、歴史を書き換え、未来さえも見る力を持つ。そんな相手と君たちはどうやって戦ったんだ?」(光実)

 

 光実の問いにソウゴが口を開いた。

 

 「俺たちが加古川飛流に勝ったのは、皆で力を合わせて何とか勝てたんだ。それに、俺自身の力も。」(ソウゴ)

 

 そう言うとソウゴは腰に黄金のベルト=オーマジオウドライバーを装着する。

 

 《祝福の時!!オーマジオウ!!》

 

 ソウゴは真の姿である仮面ライダーオーマジオウに変身する。

 

 「全ての平成ライダーたちの力、俺が受け継いだ全ての仮面ライダーの力に、未来の俺も加わって何とか倒したんだ。今の加古川飛流は俺でも勝てるか分からない。」(オーマジオウ)

 

 変身したオーマジオウの圧倒的な力を感じ取った大樹、貴虎、光実、ザック。その圧倒的な力を持つソウゴでも勝てるかどうか分からないという加古川飛流の力に貴虎ら3人は苦い表情となる。その中で、傷を負いながらも大樹は立ち上がり、席を離れる。

 

 「大樹くん!どこへ行くんだい!?」(光実)

 「あいつのところに、加古川飛流のところへ行く。」(大樹)

 

 大樹の言葉にその場にいる全員が大樹を止めようとする。

 

 「最善とは言えないな、仮面ライダー輝龍、柏葉大樹。いくら君が十三異界覇王を倒せる力を持っているとしても、あの加古川飛流は容易く太刀打ちできる相手ではない。」(ウォズ)

 「俺達に任せて、お前は待っていろ。」(ゲイツ)

 

 厳しくもその言葉の真意は大樹のことを思っての言葉。だが、大樹はその言葉に振り返ることなく、会議室の扉を開ける。

 

 「だからって、何もするなって?」(大樹)

 

 背を向けたまま発した言葉には感情が感じられなかった。否、今にも爆発しそうな感情を抑えているからこそだった。

 

 「仲間が、親友が、家族が、あいつの手にあるのに何もするなって。あいつは、あいつは俺の大切な人たちに手を出したんだ。ここで何もしないわけにはいかないんだよ。」(大樹)

 

 振り向いた大樹の表情は、憤怒と殺気に満ちたものだった。

 

 「例え、俺が死んでも、あいつから絶対に取り戻す。絶対に。」(大樹)

 

 そう言った大樹はそのまま部屋から出てしまう。

 その表情を見て、言葉を聞いた光実とザックは会議室から出て大樹を追いかける。

 大樹の姿を横目で見るオーマジオウは変身を解除する。

 その場に残った貴虎はソウゴたちに問いかける。

 

 「それで、何か手はあるのか?」(貴虎)

 「加古川飛流の力の源、アナザーウォッチを破壊する。」(ソウゴ)

 「その前に消された人々の解放だ。やつは人々をアナザーディケイドの力でアナザーワールドに閉じ込めている。そのままでは、やつはアナザーライダーの他にダークライダーも呼び出せる。」(ゲイツ)

 「私達でまずは加古川飛流を何とかする。あなた方には被害が出ないように、他の街へ警戒をお願いしたいです。」(ツクヨミ)

 「分かった。できる限り、隣接する街への被害を食い止めるよう対策を立てよう。」(貴虎)

 

 貴虎は残っている戦力を使って東京に隣接する都市の被害を食い止めることをソウゴたちに約束した。




 敵の手に落ちた万夏。孤独に苛まれる中で、ついにアナザーワールドの魔の手が伸びる。
 一人で加古川飛流の元へ乗り込む大樹。

 「皆を返してもらうぞ。」

 燃え上がる憤怒の炎で紅蓮の龍となる仮面ライダー輝龍。
 大切な者を奪われ、その身を燃やす怒りの業火をアナザーオーマジオウへぶつける。


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仮面ライダー輝龍 第33話 十三異界覇王大戦編 第2章 蒼龍姫乱舞 アナザーオーマジオウ襲来

 皆さん、お久しぶりです。お盆も過ぎて、輝龍第33話となります。それでは、どうぞ!


side三人称

 ソウゴたちの話を聞いた大樹は傷を負いながらも、ヴァルハラの基地にある地下駐車場に来ていた。

 仲間たちが、家族が、自身が最も愛する者が敵の手に落ちているということが、大樹を戦場へ駆り立てていた。

 前世において、大樹が最も恐れていたのは、敵の作戦により自身の仲間や愛する者に被害が出るということだった。それは、今世でも同様であり、大樹自身が最も強硬的になることでもあった。

 以前にアギトの襲撃があった際も敵に対して情け容赦ない攻撃をすることもあった。

 大樹はハイビスカストライカーを起動、ビークルモードのバイクに変形させる。

 

 「おい、大樹!待て!」(ザック)

 

 ハイビスカストライカーに乗り、エンジンを吹かす大樹の前にザックが立ちはだかる。そこに、大樹の肩に手を置いた光実。

 

 「大樹君、焦るのも分かる。だけど、傷も癒えていないんだ。ここは体勢が整うまで待つ方が良い。」(光実)

 

 大樹に声を掛ける光実。息を上げながらも大樹の前に立つザック。二人共、会議室を出た大樹の様子から尋常ではないものを感じ取っていた。

 今の大樹を一人で行かせてしまえばどんな結果になるか、嫌な想像が脳裏によぎった光実とザックは、あの場にいたメンバーの中で即座に動いたのだった。

 その二人に対して、大樹は殺気と怒気のこもった眼差しで睨みつける。言葉にしないものの、不満を持っていることは容易に伺い知れた。

 光実とザックも大樹と似たような経験をしている。

 ザックはインベスの襲来、フェムシンムたちとの戦いで仲間たちが傷付いたこと、自身が日本を離れている間にチームバロンの仲間がかつての仲間の手により窮地に陥ったことがあった。最終的にはザックの手で解決したこともあるが、結果としては必ずしもザックの思うようなものではない時もあった。

 光実についてはインベスの襲来、その初期の頃まで遡る。その頃の彼はビートライダー、呉島家の人間という2つの立場から仮面ライダー鎧武=葛葉紘汰のサポートをしていた。二重生活故に、自分の思いどおりにならない仲間に対して苛立ちを向けるようになった過去は今でも光実にとっては悔やむべき過去であり、その果ては自身が慕う高司舞を失う結果となった。

 そして、光実とザックにとって今の大樹と同じような状況になった事件があった。

 かつて、沢芽市で事件を起こしたカルト教団である黒の菩提樹。その教祖であり、オーバーロードに近い存在になった仮面ライダーセイヴァーの手により、戦極ドライバーを持たない沢芽市の人々全員がマインドコントロールされた事件である。

 人々をマインドコントロールしたセイヴァーの目的は、人々の生命エネルギーを自身に集めて黄金の果実を生み出すことだった。

 黄金の果実を生み出したセイヴァーと光実=龍玄たちアーマードライダーは激闘を繰り広げた。最終的には、仮面ライダー鎧武が駆けつけてセイヴァーを撃破して事件は解決した。

 当時の事件のことから光実とザックは事前にできる限りの準備をすること、いざとなったら最後まで諦めずに戦うことを誓うのだった。

 

 「俺たちも黒の菩提樹の事件で沢芽市の人々、ビートライダーズの仲間たちが危険な目にあった。だからこそ、今はしっかりと準備する必要があるんだ。」(ザック)

 「それに、傷が治っていない中で戦えば大樹くんがもっと傷つくことになる。それは大樹くんの大切な人が一番悲しむんじゃないかな。」(光実)

 

 光実とザックが大樹に声をかける。

 

 「俺はどうなっても良い。だけど、皆は、万夏は絶対に取り戻す。」(大樹)

 

 だが、大樹からの返答は決して穏やかなものではなかった。

 大樹はハイビスカストライカーのアクセルを踏み、素早くターンをしてその場をあとにする。

 光実とザックが大樹を止めようとするが、大樹はスピードを上げてヴァルハラから出ていくのであった。

 

 

 

 「やはり、行ってしまったか。」(貴虎)

 

 会議室に一人残る貴虎はスマホから連絡を受けていた。

 そのスマホの連絡の相手は光実である。光実はザックと共にロックビークルのローズアタッカーとサクラハリケーンを使って、大樹を追っていた。

 

 「そのまま、大樹君を追ってくれ。今の彼では力づくで戻すしかないかもしれない。協力を申し出た彼らはもう向かった。私は各所に避難を呼びかけていく。光実とザック君は大樹君を確保次第、戻ってくれ。」(貴虎)

 

 光実にそう連絡をした貴虎は会議室の窓から東京の方面を見る。

 

 「葛葉、お前なら大樹君に何を言う。彼に、別の世界のつらい記憶を持ち、家族を失った彼に、お前なら何て言う。いや、お前ならきっと大樹君と共に戦うのだろうな。」(貴虎)

 

 ここにはいない、遠くの星へ行ってしまったかつての仲間に問いかける貴虎。スマホをしまい、会議室を出た彼の表情は迷いのないものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ハイビスカストライカーでかなりのスピードを出す大樹。その大樹の行く先を塞ぐように新たなアナザーライダー、アナザーオーズとアナザーフォーゼが現れる。

 

 「どけろ!!」(大樹)

 

 大樹はハイビスカストライカーのアクセルを踏み、一気にスピードを上げる。アナザーオーズとアナザーフォーゼにぶつかる寸前に大樹は仮面ライダー輝龍ドラゴンフルーツアームズに変身する。

 変身したこととかなりのスピードで突っ込んだ輝龍はアナザーオーズとアナザーフォーゼを弾き飛ばした、かに見えた。

 アナザーオーズは元となった仮面ライダーオーズタトバコンボの持つバッタレッグの力で天高く飛び上がっていた。

 アナザーフォーゼは仮面ライダーフォーゼと同様にスイッチの力を発動、右腕にロケットを装備して飛行していた。

 輝龍は回避したアナザーオーズとアナザーフォーゼを無視してそのまま進んでいく。

 輝龍の後を追っていた光実とザックも敵に気付き、仮面ライダー龍玄と仮面ライダーナックルに変身した。

 仮面ライダー龍玄はブドウ龍砲で飛行するアナザーフォーゼを狙い撃つ。

 仮面ライダーナックルは飛び上がるとアナザーオーズに殴りかかる。

 

 「っ!」(輝龍)

 

 背後に龍玄とナックルがいることに気付く輝龍。ヴァルハラを出る前のやり取りを思い出し、ハイビスカストライカーを止める。それを見た龍玄は輝龍に向かって強く言う。

 

 「大樹君は先に行くんだ!ジオウたちがもう敵の方へ向かっているんだ。万夏ちゃんたちを取り戻しに行くんだ!!」(龍玄)

 「俺たちは大丈夫だ!こんな奴ら、すぐに倒すからよ!!」(ナックル)

 

 龍玄とナックルの言葉に、輝龍は意を決して先へ進む。

 輝龍がアナザーオーマジオウの元へ向かったことでアナザーオーズとアナザーフォーゼが輝龍を追いかけようとする。だが、それを龍玄とナックルが阻む。

 

 「さて、後輩の邪魔はさせねえぞ。」(ナックル)

 「ここからは僕たちが相手だ。」(龍玄)

 

 龍玄とナックルに対してアナザーオーズとアナザーフォーゼが襲いかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 輝龍がハイビスカストライカーを走らせる中で、ある洋館にたどり着いた。

 その洋館の前には19体のアナザーライダーと加古川飛流の銅像があり、そこには「加古川飛流、変身の像」と銘があった。

 

 「悪趣味だな、王様気取りかよ。」(輝龍)

 

 その銅像を見て、輝龍は毒づく。

 ハイビスカストライカーから降り、ロックシードに戻すと輝龍は竜炎刀を抜く。周囲を警戒する輝龍の前で洋館の扉が開く。

 扉の向こう側、洋館の奥に玉座があり、そこに加古川飛流が鎮座していた。

 

 「お前か。常磐ソウゴはどこだ。俺の相手は常磐ソウゴ、お前程度は敵ではない。」(飛流)

 「俺に用が無くても、こっちはあるんだ。それに、前のようにやられるつもりはない。」(輝龍)

 

 輝龍は竜炎刀の切っ先を加古川飛流に向ける。

 切っ先を向けられてなお、飛流は不遜な態度を崩さない。

 

 「お前程度なら、こいつらが相手をする。」(飛流)

 

 飛流の言葉に応じて、新たなアナザーライダーが出現する。

 前に姿を見せたアナザー龍騎に似た漆黒のアナザーライダーと、漆黒のフードにオレンジ色の顔が特徴のアナザーライダー、朽ち果てたような鎧をまとい、大刀を持ったアナザーライダーが姿を現した。

 アナザーリュウガ、アナザーゴースト、アナザー鎧武である。

 輝龍は姿を見せた3体のアナザーライダーに対して即座にロックシードを変えた。

 

 《ファブニール!》

 「一気に終わらせる。」(輝龍)

 《ソイヤ!ファブニールアームズ!邪龍、アウトレイジ!》

 

 輝龍はドラゴンフルーツアームズからファブニールアームズにアームズチェンジする。

 専用武器の邪龍DJ破断剣を構え、輝龍は3体のアナザーライダーに斬りかかる。

 輝龍の攻撃を回避し、反撃に移る3体のアナザーライダー。

 アナザーリュウガが青龍刀を、アナザーゴーストが手刀を、アナザー鎧武が大刀を振るう。

 3体のアナザーライダーの攻撃を輝龍は邪龍DJ破断剣で防御する。そこからカウンターの横一文字に邪龍DJ破断剣を振るう輝龍。

 奮闘する輝龍を一瞥することなく飛流は扉の方を、ここに来るであろう宿敵を待つ。そして、扉が勢いよく開け放たれた。

 扉の先にはソウゴ、ゲイツ、ツクヨミ、ウォズがいた。

 

 「待っていたぞ、常磐ソウゴ!」(飛流)

 

 憎悪をみなぎらせて飛流はアナザーオーマジオウに変身する。それを見たソウゴたちも変身、最高最善の魔王と偽りの最低最悪の魔王が激突する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 輝龍らが戦っている頃、アナザーワールドでは万夏が脱出する方法を探していた。だが、万夏が理解できたのは、自分が閉じ込められたこの世界は自分のいるこの部屋以外の空間がないこと、どうあがいてもは出口から出てもこの部屋に戻ってしまうことだけが分かった。

 

 「早く出ないと、出ないと、、、。」(万夏)

 

 突如、万夏に強烈な睡魔が襲いかかる。意識を保とうとする万夏だが、その場に倒れ込むほどに睡魔は強力だった。

 尋常でない睡魔から、これが普通ではないことを察する万夏。それでも、睡魔に抗いきれずに瞼を閉じてしまう。 

 瞼を閉じてしまった万夏は深い眠りに着いてしまう。

 万夏が眠りについたその瞬間、その空間に何者かが出現する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アナザーワールドで万夏が眠りについたその瞬間、ジオウたちはアナザーオーマジオウと激しい戦いを繰り広げていた。

 ジオウⅡ、ゲイツリバイブ、ウォズギンガファイナリー、ツクヨミの4人の猛攻を前に一歩も遅れないアナザーオーマジオウ。少し距離の離れた場所では輝龍ファブニールアームズが3体のアナザーライダーを前に大技を放つ準備をしていた。

 

 《ソイヤ!ファブニールスパーキング!》

 「はあっ!!」(輝龍)

 

 邪龍DJ破断剣の刃にエネルギーが集まり、赤黒く輝く。

 アナザーリュウガ、アナザーゴースト、アナザー鎧武に連続斬りを放つ。

 輝龍の攻撃を受け、膝をつくアナザーリュウガ。

 アナザーリュウガの特殊能力である攻撃の反射能力が発動し、赤黒い斬撃が輝龍に襲いかかる。

 輝龍は近くにいたアナザーゴーストを掴み、アナザーリュウガからの攻撃反射の盾にする。

 アナザーゴーストは過剰なダメージを受けて爆散、その爆発の中で輝龍はアナザーリュウガに止めを刺す。

 残るアナザー鎧武は大剣を振りかぶり、輝龍に斬りかかる。

 向かってきたアナザー鎧武を輝龍は邪龍DJ破断剣で下段から斬り上げる。

 股間から頭頂部まで一刀両断されたアナザー鎧武は大剣を持ったまま爆散した。

 

 「はあ、はあ、これで終わりか。」(輝龍)

 

 輝龍は消耗しているものの、ジオウたちに加わってアナザーオーマジオウを攻撃しようとする。

 アナザーオーマジオウは3体のアナザーライダーを撃破した輝龍を一瞥する。

 

 「ちょうどいい、お前はこいつの相手をしてろ。」(アナザーオーマジオウ)

 

 アナザーオーマジオウはそう言うと輝龍の前に灰色のオーロラを召喚する。

 灰色のオーロラが輝龍の前に出現、そこから何者かが出現する。

 灰色のオーロラの向こう側に、薄っすらと万夏の姿を確認する輝龍。

 

 「万夏!!」(輝龍)

 

 輝龍はオーロラの向こう側にいる万夏に声をかける。だが、彼女からの反応は無かった。

 輝龍の前に現れた人物、それは真っ黒な人型だったが、徐々にその姿がはっきりとしてきた。

 

 「っ!」(輝龍)

 

 輝龍の前には自分と瓜二つの人物がその姿を見せた。

 

 「もう、自分との戦いは懲り懲りなんだけど。」(輝龍)

 

 直近のファブニール、異世界の自分との戦いがあった。その後に、またも自分に似た相手との戦いは若干辟易する。そんな輝龍の思いとは裏腹に目の前の相手はブラックドラゴンフルーツロックシードと戦極ドライバーを取り出す。

 

 「変身。」(???)

 

 眼の前の人物は輝龍の前で漆黒の輝龍、仮面ライダー黒龍ブラックドラゴンアームズに変身した。

 黒龍は漆黒の竜炎刀と無双セイバーを手に輝龍に襲いかかる。




 輝龍の前に姿を表したのはアナザーワールドによって誕生した仮面ライダー黒龍だった。輝龍は戦いの中で第3のドラゴンロックシードを使う。

 「これならどうだ!」

 そして、アナザーワールドの中で万夏は幻の喜びに浸ろうとしていた。


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仮面ライダー輝龍 第34話 十三異界覇王大戦編 第2章 蒼龍姫乱舞 アナザーオーマジオウ襲来

皆さん、一ヶ月ぶりです。
それでは、仮面ライダー輝龍第34話、どうぞ!


side三人称

 アナザーオーマジオウにより召喚された仮面ライダー黒龍ブラックドラゴンアームズ。

 輝龍ファブニールアームズは新たに出現した敵を前に邪龍DJ破断剣を構える。

 黒龍は漆黒の竜炎刀=黒龍刀と無双セイバーを持ち、輝龍に斬りかかる。

 

 「っ!!」(輝龍)

 

 輝龍は邪龍DJ破断剣を盾にして黒龍の攻撃を防御する。

 攻撃の威力は強化形態のファブニールアームズと比べると低いものの、絶え間ない連撃が輝龍を襲う。

 輝龍はあまりの連撃を前に防戦一方となる。

 怒りの感情により大幅な強化を発揮するファブニールアームズは、パワーに秀でている形態であるためスピードについてはそこまで秀でている形態ではない。そのため、スピードに秀でている相手とはあまり相性が良くない。

 

 (こいつ、とにかく先手を取る戦いをしてきてる!この形態、そんなにスピードに秀でていない所為で余計に動けない!)(輝龍)

 

 黒龍は攻撃の合間に戦極ドライバーを操作する。

 

 《ソイヤ!ブラックドラゴンスカッシュ!》

 

 無双セイバーと黒龍刀に漆黒のエネルギーが集まる。そこから放たれたのはまさに暴風の如き連続斬りだった。

 輝龍は一層踏ん張って耐えるものの、ついに邪龍DJ破断剣が輝龍の手から弾き飛ばされた。

 防御する術を持たない輝龍は黒龍の攻撃を受けてしまう。流石に、まともに攻撃を受けたことで少なからずダメージを受けてしまう。

 輝龍は攻撃を受けた胸部を抑える。

 

 「はあ、はあ、この形態じゃなかったら危なかった。」(輝龍)

 「流石に、これで終わりにはならないか。」(黒龍)

 

 安心の一言を漏らした輝龍に黒龍が言葉を発した。その声は輝龍=大樹と全く同じだった。

 

 「お前、俺なのか。」(輝龍)

 「アナザーワールド、別世界の可能性だからな。さて、まだやるか。」(黒龍)

 

 黒龍が生み出されたのはアナザーディケイドの能力である。

 アナザーワールドという世界に人間を取り込み、取り込んだ人間の望む別の世界を生み出すことでダークライダーを召喚する能力である。その詳細を知らない輝龍はどうにか突破口を探していた。

 

 「じゃあ、一撃で吹っ飛ばしてやる!」(輝龍)

 《ソイヤ!ファブニールスカッシュ!!》

 

 輝龍は戦極ドライバーを操作、右足にエネルギーを集めて前蹴りを放つ。

 真正面から輝龍の攻撃を受けた黒龍は爆散した。

 

 「今度は、加古川飛流だ。」(輝龍)

 

 そう言って輝龍はアナザーオーマジオウの方へ向かおうとする。その輝龍の目の前に灰色のオーロラが現れ、黒龍が再度姿を現した。

 

 「残念だが、アナザーワールドがある限り俺は復活する。マドカが別の世界を望む限りな。」(黒龍)

 

 再度現れた黒龍の言葉から、輝龍は事態が非常に危険なことを察した。

 アナザーオーマジオウの手により、人々が囚われている今の状況。それは敵が際限なく現れることを意味していた。

 アナザーオーマジオウと激しい戦いを繰り広げるジオウたち。ジオウたちも輝龍と黒龍の会話を聞いていた。

 

 「加古川飛流!囚われている人々を開放しろ!」(ジオウ)

 「お前の言うことを聞くものか、常磐ソウゴ。ちょうどいい、ここでお前たちにも見せてやろう!」(アナザーオーマジオウ)

 

 アナザーオーマジオウはアナザーワールドから新たなダークライダーを召喚した。

 仮面ライダーゴーダ、仮面ライダーシルフィー、仮面ライダーアマゾンネオアルファ、仮面ライダー4号。それぞれがここではない別の世界で仮面ライダーたちを苦しめたダークライダーたちである。

 

 「ついに出してきたか。」(ゲイツ)

 「仮面ライダーゴーダ、仮面ライダーシルフィー。我が魔王が初めて変身した後に現れたダークライダーだね。さらに、アマゾンネオアルファと4号か。別世界のダークライダーを出すとはあちらも相当本気のようだ。」(ウォズ)

 

 新たに姿を見せたダークライダーたちはそれぞれの武器を展開し、ジオウたちに襲いかかる。

 ジオウたちは、新たに現れたダークライダーたちを相手に戦いを始めることとなる。そこへアナザーオーマジオウまでも加わり、互角だった戦況もアナザーオーマジオウが有利になり始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アナザーワールド内、万夏が囚われている世界。

 強烈な睡魔に襲われ、眠りの中にあった万夏。いつの間にか、ベッドの上で眠っていた万夏のそばに誰かが居た。

 そこで、万夏の目が覚めた。

 覚醒した万夏は目の前の誰かを見る。

 

 「大樹?」(万夏)

 

 万夏は最愛の人の名前を、目の前の人物を大樹だと思って呼びかける。

 万夏が覚醒したことで朧気だった相手の姿は大樹の姿となる。

 

 「ただいま、マドカ。」(大樹)

 

 そういった大樹は万夏のことを抱きしめる。

 万夏は自身を抱きしめる大樹に驚きながらも、抱きしめ返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 現実世界で黒龍と戦い続ける輝龍。スペックの差でなんとか有利に戦おうとするが、形態の相性が悪いために決定打を見出すことができないでいた。

 

 「くっ、はあ!!」(輝龍)

 《ファブニールスカッシュ!》

 

 輝龍は戦極ドライバーを操作、向かってきた黒龍に邪龍DJ破断剣を振るう。

 断末魔を上げる前に、黒龍は爆散した。だが、またもアナザーワールドから黒龍は復活する。

 

 「はあっ、はあっ、きりがないな。」(輝龍)

 「だから、言ったろ。マドカが別の可能性を望む限り、俺は存在し続けるってな。」(黒龍)

 

 輝龍はファブニールアームズで戦い続けていたが、如何せん相手が何度も復活することから疲労が見え始めていた。

 

 (どうする、このまま戦ってもジリ貧だ。なにか、なにか手を。)(輝龍)

 

 疲労の中に、焦りも混じり始める輝龍。その輝龍を見て、黒龍は襲いかかる。

 

 「マドカを助けたいんだろ?だが、俺を倒してもマドカは戻らない。どうする、柏葉大輝!」(黒龍)

 

 思考することで隙を見せてしまった輝龍。

 黒龍は激しい二刀流で輝龍の装甲が薄い場所を何度も切り刻んだ。

 

 「グッ!」(輝龍)

 

 ついに明確なダメージを受けてしまった輝龍。怯んだ輝龍の腹部に黒龍の無双セイバーの刃が刺さる。

 

 「さあ、終わりにしようか。」(黒龍)

 

 ついに、輝龍も最後かと思われたその瞬間。

 

 《ブドウスパーキング!》

 《クルミスパーキング!》

 

 洋館の入り口から紫色の龍が、胡桃色の巨大な拳が勢いよく飛んできた。

 ジオウ一行とアナザーオーマジオウ陣営、輝龍と黒龍の間を切るように放たれたそれらは洋館の壁を破壊する。

 ここまでの戦いを仕切り直すかのような攻撃、それは輝龍のよく知る二人の人物の必殺技であった。

 

 「ここからは僕たちも加わるよ。」(龍玄)

 「道中の奴らは倒したぜ。後は、ここにいる奴らだけだ。」(ナックル)

 

 アナザーオーズとアナザーフォーゼと戦っていた仮面ライダー龍玄と仮面ライダーナックルだった。

 龍玄とナックルは輝龍のそばに駆け寄る。

 

 「大樹くん、大丈夫かい?」(龍玄)

 「すみません、結局一人じゃあ解決できませんでした。光実さんとザックさんが止めたのに、ごめんなさい。」(輝龍)

 「気にすんな。俺達がいる。」(ナックル)

 

 腹部の傷を押さえる輝龍。ヴァルハラでのやり取りも含め、龍玄とナックルに謝罪する。

 輝龍の謝罪に対して、龍玄は首を横に振り、ナックルは気にするなと言って輝龍の肩に手を置く。

 

 「大樹くん、大切な人たちを取り戻す方法がある。」(ジオウ)

 

 そこにジオウが輝龍に話しかける。それを見ていたアナザーオーマジオウは不機嫌になる。

 

 「そんな雑魚にかまっている暇があるのか、お前たちはここで終わりだ!」(アナザーオーマジオウ)

 

 アナザーオーマジオウの言葉にダークライダーたちが襲いかかる。

 

 「じゃあ、後は頑張って。君の力ならなんか行ける気がするから。」(ジオウ)

 

 ジオウたちは武器を構え、アナザーオーマジオウとダークライダーたちと戦う。

 輝龍はジオウの言葉に、冷静に考えた。そして、ワイバーンロックシードを取り出す。

 

 「やる気十分だな。」(ナックル)

 「それで、作戦は?」(龍玄)

 

 輝龍の様子から心配はないと結論づけた龍玄とナックル。

 龍玄の問いかけに輝龍は二人を見る。

 

 「まずは、もう一人の俺を倒します。そこで灰色のオーロラが出たら、俺がそこに飛び込みます。」(輝龍)

 「その後は?」(龍玄)

 「向こうの世界で大暴れしてきます。」(輝龍)

 

 作戦のようではあるが、決して理論的ではない作戦。それでも、輝龍の言葉には決意と覚悟がにじみ出ていた。

 龍玄とナックルはそれを聞き、前を見る。

 

 「この戦場、俺たちが勝ち取る!」(輝龍)

 《ワイバーン!》

 

 ワイバーンロックシードを解錠、輝龍の頭上にクラックが開く。

 クラックからは漆黒に煌めく黒曜石の飛龍が姿を表した。

 輝龍はファブニールロックシードを戦極ドライバーから取り外し、ワイバーンロックシードに付け替えた。

 

 《ロックオン!ソイヤ!ワイバーンアームズ!黒翼龍、ブラックトルネード!》

 

 輝龍の姿は漆黒に煌めく軽装の鎧をまとったワイバーンアームズへと変わる。

 輝龍ワイバーンアームズは薙刀型の専用アームズウェポン、翼竜嵐刃を手に取る。

 輝龍の両隣に並ぶ龍玄とナックル。

 

 「じゃあ、やろうか。」(黒龍)

 

 黒龍は無双セイバーと黒龍刀を構える。それに対し、輝龍と龍玄とナックルも構える。

 輝龍たちと黒龍が同時に駆け出す。

 輝龍は翼竜連刃を振るい、黒龍も二刀流で応戦する。そこに、龍玄がブドウ龍砲で遠距離から攻撃する。

 黒龍は輝龍の攻撃を中断し、龍玄の攻撃を回避することに専念する。

 ナックルは黒龍が攻撃の手を止めた瞬間に、インファイトを仕掛ける。

 3対1の状況になったことで、黒龍も先程と違い防戦一方になり始める。この状況になった要因は龍玄とナックルが加わっただけではなかった。

 輝龍ワイバーンアームズ、魔蛇との戦いで黒崎修羅=大樹の別人格との和解で入手したワイバーンロックシードで変身したこの形態。先程まで変身していたファブニールアームズと違う特性を有していた。

 ワイバーンアームズは大樹の感情で大幅に強化されるという特性はない。だが、この形態は輝龍の変身する他の形態にはない特性を有していた。

 

 「はっ!」(輝龍)

 

 輝龍が翼竜連刃を振るうと小規模の竜巻が発生、黒龍に襲いかかる。

 黒龍は襲いかかる竜巻に飲まれ、吹き飛ばされてしまう。

 輝龍ワイバーンアームズの特性、それは自由自在に風を操ること。バハムートアームズが持つ誰かを守りたいという思いによる能力の強化、ファブニールアームズが持つ怒りの感情によるパワーの上昇のような強化系の能力ではないが、スピードに秀でているスタータスに周囲の環境を操作することができるこの能力は非常に強力である。

 さらに、ワイバーンアームズは比較的鎧が多い形態だが、そのスピードは尋常ではない。さらに、パワー面もある程度の高さを有していることから戦闘力の高い形態と言える。

 歴戦のアーマードライダー二人と輝龍の新たな姿。それはここまでの劣勢を覆すほどに強力な布陣だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side輝龍

 仮面ライダージオウ、常磐ソウゴが話したこと。

 

 「俺はゲイツとウォズ、二人の力と仮面ライダーエターナルの力を使ってアナザーワールドを破壊した。その時は、アナザーワールドの中になんとか入り込んで、エターナルの力を利用して破壊した。同じ方法は使えないかもしれない。けれど、君の力ならなんか行ける気がする。」(ジオウ)

 

 彼は仲間たちの力とその時に出現した仮面ライダーエターナルの力を利用したと言っていた。仮面ライダーエターナル、風都を未曾有の危機に陥れた仮面ライダー。その力は風都の仮面ライダーの仮面ライダーWでも苦戦した。

 それほどまでの力を使って、破壊できたアナザーワールド。それを俺の力なら行ける気がすると言った。

 正直、今の自分の力がそれほどまでのものとは思えない。だけど、俺の力で、自分の力で大切な人たちを取り戻せるなら、ためらうことなんてない。

 

 

 

 

 もう一人の俺、仮面ライダー黒龍を前に戦極ドライバーを操作する。

 俺の動きを見た光実さんとザックさんも戦極ドライバーを操作した。

 

 《ソイヤ!ワイバーンスカッシュ!》

 《ハイー!ブドウスカッシュ!》

 《クルミオーレ!》

 

 湧き上がる竜巻を武器に集中させる。

 黒龍を、光実さんとザックさんが遠距離攻撃で抑える。

 武器の刃に竜巻の刃が出来上がる。

 一気に黒龍との距離を詰め、武器を振り抜く。

 風の刃が相手を一刀両断する。

 黒龍の肉体が爆散すると灰色のオーロラが現れた。

 この瞬間を待っていた。

 

 「うおおおおおおおお!!」

 

 俺はあらん限りのスピードでオーロラに向かう。

 

 《ソイヤ!バハムートアームズ!龍帝、メガブレイズ!》

 

 オーロラに竜炎刀と光龍剣を突き刺し、俺はあらん限りの力でオーロラをこじ開けようとする。

 俺の力はオーロラをただ押し込んでいるだけ、まだ何も起きていない。

 

 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」(輝龍)

 

 だけど、それは関係ない。ただ、力を、思いを、この瞬間に、不可能を打ち破るために、俺の思いを果たすために、持てる全てを注ぎ込む!!

 眼の前のオーロラに変化はない、そんなのは関係ない。

 今の俺にあるのは、思いを力に変えることだけ。その思いが俺の限界を突破させ続ける!!

 

 「開き、やがれえええええええええええええええええええええええええ!!」(輝龍)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side三人称

 アナザーワールドに繋がる灰色のオーロラ。そのオーロラを前に輝龍は竜炎刀・陽炎と光龍剣を突き出す。

 全く変化のない状況で、撃破された黒龍がまたも復活する。

 

 「おっと、大樹の邪魔はさせねえよ。」(ナックル)

 「ここは僕たちが相手だ。」(龍玄)

 

 龍玄とナックルが黒龍の前に立ちはだかる。

 拮抗するに見えたこの状況、黒龍は武器を納めると輝龍を見る。

 

 「もう十分だ。あとは、あそこの俺がこの世界のマドカを助けに行くだけだ。」(黒龍)

 

 黒龍のその言葉、それが何を意味するのか龍玄とナックルにはすぐには理解できなかった。

 輝龍はあらん限りの思いを、力を刃に込め続ける。

 バハムートアームズの特性、それは護りたいという思いの強さを反映して能力を際限なく強化すること。その強化はファブニールアームズのような爆発的なものではない。だが、その能力の強化というのはステータスの強化に留まらない。

 輝龍の全身が光り輝き始める。輝きが増していくごとに、竜炎刀・陽炎と光龍剣の切っ先がオーロラに突き刺さり始める。徐々に、切っ先がオーロラに刺さり始める。

 

 「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」(輝龍)

 

 バハムートアームズの能力、それは輝龍の思いを実現する力。不可能を可能にする輝龍の最強の力である。

 光龍剣と竜炎刀・陽炎の刃が深々と灰色のオーロラに刺さる。そこから輝龍は灰色のオーロラを切り裂いた。

 遂に、アナザーワールドへの道が開かれる。




 ついに、アナザーオーマジオウとの決戦。
 アナザーワールドに囚われた万夏。そこで、理解した彼女の真実とは。

 「ごめんね、もう私は大丈夫。」

 偽りの世界で、蒼龍姫は乱舞する。


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仮面ライダー輝龍 第35話 十三異界覇王大戦編第2章 蒼龍姫乱舞 アナザーオーマジオウ襲来

 皆さん、お久しぶりです。これにて、アナザーオーマジオウ襲来編は最終話です。それでは、前回のあらすじからどうぞ!



 アナザーオーマジオウとの激戦、愛する者たちを取り戻すために大樹はそれに身を投じる。
 龍玄とナックル、ジオウたちの助力でアナザーワールドへ突入するべく輝龍バハムートアームズの力を発揮するのだった。


side三人称

 アナザーワールドに通じる灰色のオーロラ、ついにそれを輝龍は斬り裂いたのだった。

 灰色のオーロラに生じた亀裂に仮面ライダー輝龍は身を投じるのだった。

 

 「万夏ああああああああ!!」(輝龍)

 

 愛する人を取り戻す、その思いから輝龍はこれまでに経験したことのない戦いに赴くのだった。

 

 「ふん、あいつ。自分からアナザーワールドに取り込まれに行ったのか。もう、終わりだな。」(アナザーオーマジオウ)

 

 輝龍がアナザーワールドへ行った姿を見たアナザーオーマジオウはそれを嘲笑った。

 

 「違う!彼は自分の仲間たちを、大切な人たちを取り戻しに行ったんだ!」(ジオウ)

 

 輝龍を嘲笑うアナザーオーマジオウにジオウは反論する。そこからジオウはジオウトリニティライドウォッチを起動する。

 

 《ジオウトリニティ!》

 

 ジオウはジオウトリニティライドウォッチをジクウドライバーにセット、ジクウドライバーを操作する。

 近くで戦っていたゲイツとウォズ。迫ってくるダークライダーに攻撃、距離を取る。そこからゲイツとウォズはジオウと合体する。

 仮面ライダージオウトリニティ。ジオウ、ゲイツ、ウォズの3人の仮面ライダーが一つとなった形態。ジオウが変身する形態の中でトップクラスの力を有する形態である。

 ジオウトリニティはゲイツが使用していたジカンザックスとウォズが使用していたジカンデスピアを持つ。

 

 「はっ!」(ツクヨミ)

 

 仮面ライダーツクヨミがダークライダーの動きを時間停止で止める。

 動きが止まったダークライダーたちをジオウトリニティがジカンザックスとジカンデスピアで撃破する。

 

 「流石は我が魔王、華麗なお手前で。」(ウォズ)

 「おい、ウォズ!油断するな!まだ、来るぞ!」(ゲイツ)

 

 ジオウの手際を称賛するウォズ、それに対して油断するなと言葉をかけるゲイツ。

 彼らの前にアナザーオーマジオウが立ちはだかる。

 様子を見ていた龍玄とナックルはジオウたちに加勢しようとするがアナザーワールドから新たなダークライダーが現れたことでその対処に追われていた。

 

 「今度こそ終わりだ、常磐ソウゴ!」(アナザーオーマジオウ)

 「いいや、俺に終わりはない。平成ライダーがいる限り、俺の道に終わりはない!!」

 

 ジオウトリニティはジクウドライバーを操作する。

 ジオウ、ゲイツ、ウォズのオーラが現れ、ジオウトリニティと一体になる。

 ジオウトリニティはアナザーオーマジオウにライダーパンチを放つ。

 アナザーオーマジオウもライダーパンチを放つ。

 2つのライダーパンチが衝突する。

 衝突したライダーパンチは拮抗し、どちらも退かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side万夏

 私を抱きしめる大樹。

 私はただ抱きしめ返す。だけど、すぐに大樹を押し返す。

 

 「ごめんね、もう私は大丈夫。」(万夏)

 

 私は大樹から離れる。

 

 「前の世界はずっとここで待ってた。あなたのことをずっと待ってた。いつになるか分からないあなたの帰りをずっと待ってた。」(万夏)

 

 ここがどんな場所かやっと分かった。そして、それと同時に私自身のことも分かった。

 

 「でも、それはどこまで行っても前の世界の記憶。この世界で生きてきた私が覚えている記憶。」(万夏)

 

 前の世界のことは今でも自分のこととして思い出せるし、自分の記憶だって考えている。でも、やっぱり私にとっては記憶でしかなかった。

 

 「だから、ここは前の世界の私の記憶、私がやり直したいって一度思った過去の世界。もう、私の生きる世界じゃない。」(万夏)

 

 幼い頃、沢芽市から引っ越してきた大ちゃんと初めて出会った。幼い時から私のことを守ってくれた大切で、大事で、大好きで、最愛の人。ずっと、ずっと一緒に居た大樹とこれからも一緒にいる。そのために、待っているだけでいるのはおしまい。それは、去年の春の終わりに、タッグトーナメントの始まる時に決めたこと。

 改めて分かった、私は前の世界の事も今の世界の事も自分の世界として生きてきた。

 

 「今の私には前の世界の事も大事。だけど、今の世界はそれ以上に大事になったの。もう、私は待っているだけの織斑マドカじゃない。愛する人と一緒にいる秋宮万夏だから。」(万夏)

 

 否定する訳では無いけど、私は大丈夫。だって、一緒にいようとすることに不安なんてないから。

 

 「だから、もう辞めて。こんな世界、あの世界を生きてきた私達を否定する世界なんていらない。」(万夏)

 

 私の眼の前にいる大樹に似た誰かに言う。うんうん、もっと別のこの世界を作った人に言う。

 

 「私の思い出を汚さないで。」(万夏)

 

 そう言うと同時に、大樹に似た誰かがかき消える。私のいるこの世界を壊すように、見慣れた姿が見えた。

 

 「万夏!!」(輝龍)

 「大樹!!」(万夏)

 

 変身が解除されて、傷だらけの大樹の姿が見える。

 フラフラの大樹に駆け寄って抱きしめる。

 もう離さない、どこにいるのも一緒。

 だから、私は負けない。

 

 

 

 

 

 

 

side三人称

 輝龍=大樹と万夏がアナザーワールドで合流した時と同じく。ジオウトリニティと戦っていたアナザーオーマジオウは異変を感じた。

 

 (なんだ?力が入らなくなった?)(アナザーオーマジオウ)

 

 先程まで感じていた力が徐々に失われている感覚を覚えたのだ。

 力が消えていくことに、なぜと一瞬考えるがすぐに戦闘へ集中する。

 

 (まあ、いい。まだ、常磐ソウゴを殺すには十分な力がある。この程度、大したことはない。)(アナザーオーマジオウ)

 

 アナザーオーマジオウは変わらずにジオウトリニテに攻撃を繰り出していく。

 一方、ジオウトリニティはと言うと、アナザーオーマジオウの力が落ちていることに気付いていた。

 ジオウトリニティの精神世界内にて、そのことに気付いたソウゴたちが話していた。

 

 「おい、ソウゴ。気付いたか?」(ゲイツ)

 「うん、大樹がやってくれたと思う。」(ソウゴ)

 「なるほど、我が魔王はこうなることを見越していたのですか。さすが、我が魔王。」(ウォズ)

 

 ソウゴはこうなることを確実に予想していた訳では無い。だが、輝龍=大樹の持つ力ならばアナザーオーマジオウのアナザーワールドを覆すことができるのではないかと予感はしていた。

 その予感は時期に明確な形で的中する、ジオウはそれを確信していた。

 

 「ふん、これで終わりだ。」(アナザーオーマジオウ)

 

 アナザーオーマジオウは腰にあるオーマジオウドライバーを操作、エネルギーを右腕に集中させてジオウトリニティにパンチを放つ。

 ジオウトリニティはサイキョーギレードを召喚、オーマジオウの攻撃に合わせていく。

 衝突する2つの強大な力、その衝撃は戦いの場となっている洋館を吹き飛ばす。

 

 「死ねええええええええええええええええええええええええ!!」(アナザーオーマジオウ)

 「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」(ジオウトリニティ)

 

 どちらも全く退かない。拮抗勝負となる両者の激闘は、アナザーワールドにいる大樹と万夏によりその均衡が崩れることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「大樹、大樹!大ちゃん!!良かった、良かった!」(万夏)

 「ごめん、待たせてごめん。ただ、もうちょっと、優しく、ああ、良いよ。」(大樹)

 

 アナザーワールド内、大樹をキツく抱きしめる万夏。この世界に閉じ込められていた不安から開放されたことで、大樹の存在を確かめるようにキツく抱きしめる。

 大樹の方はと言うと、万夏に遅れたことを謝る。だが、彼女が自身をキツく抱きしめることで、黒龍との戦いでできた傷が痛む。そのことを伝えようとするも、彼女の様子から言うことをやめる。

 しばらく、万夏が大樹の胸に顔を埋め、抱きしめていたが顔を上げる。

 

 「会いたかった。」(万夏)

 「うん、俺も会いたかった。」(大樹)

 

 しばし、見つめ合い唇を合わせる二人。ほんの一瞬だが、お互いの気持ちを確認するには十分だった。

 

 「みんなは大丈夫?」(万夏)

 「ここに来るまでの間で、起きれるようにはした。あとは、ここを破壊するだけ。」(大樹)

 

 そう言うと大樹は戦極ドライバーを万夏に渡す。

 その戦極ドライバーのフェイスプレートにはヴァルキリーの横顔が書かれたそれは万夏のものだった。

 それを受け取った万夏の姿は前世の黒のワンピースからIS学園の制服に変わる。

 

 「うん、こんな場所は全部壊そう。」(万夏)

 

 万夏は戦極ドライバーを装着、リヴァイアサンロックシードを取り出す。

 大樹は龍王ドライバーを取り出す。それと同時に3つのドラゴンロックシードが龍王ロックシードに合体した。

 

 「「変身!」」(万夏、大樹)

 

 万夏は仮面ライダーヴァルキリーリヴァイアサンアームズに、大樹は仮面ライダー輝龍龍王アームズに変身した。

 最強形態になった二人はそれぞれのドライバーを操作、手にしている武器にエネルギーがチャージされていく。

 

 「行こう、大ちゃん!」(ヴァルキリー)

 「うん。手加減はなしだ。」(輝龍)

 

 輝龍とヴァルキリーは手にしている武器を振るい、巨大な斬撃を放つ。

 ヴァルキリーが放った蒼色の斬撃、輝龍が放った金・赤・黒の斬撃が空間を切り裂きアナザーワールドを破壊していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現実世界、拮抗するジオウトリニティとアナザーオーマジオウ。その均衡はアナザーオーマジオウが持っていたアナザーディケイドウォッチが破壊されたことで崩れた。

 

 「何!?」(アナザーオーマジオウ)

 

 自身が持っていたアナザーウォッチが急に爆発したことに驚くアナザーオーマジオウ。

 一瞬の隙が生じたことでジオウトリニティの攻撃がアナザーオーマジオウに直撃、アナザーオーマジオウが所有していたいくつかのアナザーウォッチが破壊される。

 破壊されたアナザーディケイドウォッチから無数の光の玉が放出される。その中に輝龍とヴァルキリーの姿があった。

 

 「馬鹿な、アナザーワールドを破壊するなんて。一体、何をしたんだ!?」(アナザーオーマジオウ)

 

 アナザーオーマジオウにとってありえないこと、アナザーワールドが破壊されたことを、その原因を輝龍とヴァルキリーに問う。

 

 「リヴァイアサンの力で、破壊した。私の力は未来を切り開く力、だから不可能なんてない。」(ヴァルキリー)

 「そこに俺も加わっているんだ。内側から破壊することはできるさ。うっ!」(輝龍)

 

 アナザーオーマジオウの問いに答える輝龍とヴァルキリー。

 輝龍は急に腹部を押さえる。そこにヴァルキリーが輝龍を支える。

 

 「はあ、はあ、ごめん。ちょっと休む。」(輝龍)

 「うん、あとは私がやるから。大ちゃんは休んでいて。」(ヴァルキリー)

 

 ヴァルキリーは近くに来たツクヨミに輝龍のことを頼む。

 

 「あの世界を作ったあなたを許さない。私の思い出を弄んだこと、後悔させてあげる。」(ヴァルキリー)

 

 そう言うとヴァルキリーはアナザーオーマジオウに肉薄、手にしたリヴァイアガンソードを振るう。

 その姿は正しく戦乙女、その戦いは乱舞と言えるほどに美しく、苛烈であった。

 当初、アナザーオーマジオウはヴァルキリーのことを自身より格下と侮っていた。いくつかのアナザーウォッチを失うも、最強の平成ライダーであるアナザーオーマジオウの力を持つ自身が負けることはないと思っていた。だが、アナザーオーマジオウの予想を裏切り、ヴァルキリーはアナザーオーマジオウを追い詰めていた。

 ヴァルキリーの縦横無尽な攻撃はアナザーオーマジオウにとって未体験のものであった。

 一息つく間もない乱舞、その攻撃は無敵かと思われたアナザーオーマジオウの鎧に無数の傷を刻み込む。

 

 「よし、俺も行く。」(ジオウ)

 

 ジオウはジオウトリニティの変身を解除、仮面ライダーオーマジオウへ変身する。

 

 《終焉の時!逢魔時王必殺撃!》

 

 オーマジオウは必殺技を放つ準備をする。

 同じくヴァルキリーも戦極ドライバーを操作し、必殺技の準備をする。

 

 《カモン!リヴァイアサンスパーキング!》

 

 ヴァルキリーの右足にリヴァイアサンの頭部を模したオーラが出現する。

 

 「はっ!」(ヴァルキリー)

 

 ヴァルキリーは飛び上がり、右足にオーラを纏わせたまま延髄斬りのフォームでアナザーオーマジオウの頭部を蹴りぬく。

 エンプレスサファイアレッグ、ヴァルキリーの最強技の一つがアナザーオーマジオウに炸裂した。

 

 「ぐあああああああああああ!!」(アナザーオーマジオウ)

 

 ヴァルキリーの攻撃を受けたアナザーオーマジオウ。体勢が大きく崩れる。

 アナザーオーマジオウが大きなダメージを受けた瞬間、オーマジオウは飛び上がり必殺の逢魔時王必殺撃を放つ。

 金色のエネルギーを帯びたライダーキックがアナザーオーマジオウのドライバーを破壊、そのままアナザーオーマジオウのアナザーウォッチを全て破壊した。

 地面に転がるアナザーオーマジオウこと加古川飛流。持っていたアナザーウォッチ全てを失い、戦う力を全て失った。

 

 「うあああああああ!!こんな、こんなことがあってたまるか!!」(飛流)

 

 地面に拳を何度も叩きつける飛流。憎悪を宿した瞳をオーマジオウ=ソウゴへ向ける。

 

 「お前さえ、お前さえ居なければ!俺から全てを奪ったお前さえ居なければ!!」(飛流)

 

 飛流の近くに集まる一同。

 憎悪の感情をソウゴに向ける飛流。その場にいる誰もが飛流に対してお門違いの憎悪をぶつけるだけの人物と思っていた。たった一人を除いて。

 

 「俺も、僕もそのことを何度思ったことか。」(大樹)

 

 ツクヨミの手当を受けた大樹だけは飛流に言葉をかけた。

 

 「僕も、自分の家族を奪った兄貴のことを何度憎んだことか。でも、憎み続けたところで家族が戻ってくるわけじゃなかった。それに、周りは僕のことを人殺しの家族って言って、酷いよね皆。最初はなんでって思った。それが周囲への怒りに変わるのも時間はかからなかったと思う。だけど、その怒りや憎悪を燃やし続けることはできなかった。そうしたら、自分に限界が来るのが分かったから。」(大樹)

 

 この場で飛流の境遇に最も近いのはソウゴと大樹だった。

 すでに、ソウゴは自身の世界にいる飛流との関係から和解は難しいことは分かっていた。だからこそ、言葉をかけることはなかった。だが、大樹は言葉をかけずに居られなかった。

 

 「辛くない、一人で全てを憎む続けるなんて。」(大樹)

 

 自身と似た境遇の相手を見て、大樹は突き放すことができなかった。飛流の根底にあるものが決して邪悪なものではないことを理解しているからこそ。

 穏やかに話しかける大樹に対して飛流は驚いていた。先程まで戦っていた相手にこんな風に話しかける相手を、飛流は知らなかった。

 

 「別世界の君のことはツクヨミさんから聞いた。君も、自分の家族を失ったんだろ。」(大樹)

 「どうして、どうして俺にそんなことを聞く?お前は、お前は何も関係ないだろ!!」(飛流)

 「大樹は、大ちゃんは優しいの。お父さんとお母さんが死んで、一人ぼっちだったのに私のことをずっと守ってくれた。」(万夏)

 

 飛流の疑問に万夏が答える。その中で、大樹に寄り添う。

 

 「自分と似たあなたが、全てを憎み続けていることをどうしても見過ごせない。自分の大切なものを奪ったあなたを見過ごせない、そういう人なの。」(万夏)

 「そんな、そんなやつが居てたまるか!どいつも俺のことを分かった口をきくな!」(飛流)

 

 飛流の言葉に、その心に根深くある憎悪はそう簡単に消えない。それでもなお、大樹は言葉を続ける。

 

 「誰も、全てを理解なんてできない。でも、それはずっと辛いよ。辛かった、だろ。」(大樹)

 

 他人の本質を見抜くことに長けている大樹。眼の前の人物がすでに限界を超えていることを見抜いていた。だからこそ、敵としてではなく、一人の人間として理解しようとしていた。

 

 「やめろ、やめろ!その目で、その目で、俺を、俺を!」(飛流)

 

 大樹の眼差しから目を背ける飛流。これにより、歪曲逢魔時王アナザーオーマジオウは倒されるのだった。

 

 「うっ!」(大樹)

 「大ちゃん、大丈夫?」(万夏)

 「ちょっと、ヤバい。」(大樹)

 

 限界が近かった大樹。大樹を支え、声をかける万夏。

 

 「もう、休もう?十分戦っているから。」(万夏)

 「そうだな、しばらく休むかな。」(大樹)

 

 大樹はそう言うと万夏に支えられながら、その場を後にする。

 

 




 アナザーオーマジオウとの戦いで傷を負った大樹。
 主力の離脱と同時に新たな十三異界覇王の情報を得る。

 「さあ、死神のパーティータイムだ。」

 「風都は俺の地元、なら俺が適任だ。」

 「俺が、俺が皆を守るんだ。」

 風が吹く街に永遠の名を持つ死神が姿を現す。


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仮面ライダー輝龍 第36話 十三異界覇王大戦編第2章 白夜両断 白き死神のパーティータイム

 皆さん、お待たせしました。
 十三異界覇王大戦編第2章、仮面ライダーエターナル編が始まります。
 それでは、どうぞ!!


 三人称

 アナザーオーマジオウ=加古川飛流との戦いから10日が経った。

 風吹く街、風都。

 風都へ向かう高速道路を走るワンボックスカーに一夏の姿があった。

 一夏が乗るワンボックスカーはISの開発者である篠ノ之束と夫の岩城正則のものである。当然、車を運転しているのは正則である。

 

 「それにしても、どうして正則兄が今回出るって言ったんだ?」(一夏)

 

 一夏は車を運転する正則に話しかける。

 

 「ん?ああ、適任についてなら他に居ねえよ。」(正則)

 

 運転する正則が一夏にそう答える。

 正則の答えに一夏が質問をしようとするが、後ろの座席に座っている束が口を開く。

 

 「マサくん、風都の出身なんだよ。それなら、ヴァルハラにいる仮面ライダーよりも土地勘のあるマサくんが適任だよ。」(束)

 

 まるで、自分のことのように自身満々に話す束。それに対して、一夏が反論する。

 

 「いや、前に風都の出身だって聞いたから分かるけど。なんで、今回の相手に正則兄が適任なのかを聞きたいんだよ。」(一夏)

 

 一夏の疑問は、今回の相手になぜ正則が適任なのかということだった。その疑問には、正則本人が答えた。

 

 「本気のヤツを相手にするなら、単純に俺が相性が良いってことだ。仮面ライダーエターナル、大道克己を相手にするならな。」(正則)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏と正則、束が風都に向かう5日前。

 アナザーオーマジオウとの戦いで負傷した大樹は聖都医大附属病院に入院していた。

 今回はかなりの傷を負ったことで戦線から離脱を余儀なくされた。

 

 「腹部の傷の手術は無事に成功しました。数日もすれば回復するでしょう。」(飛彩)

 

 仮面ライダーブレイブこと鏡飛彩。大樹の手術の執刀医をした。

 病室のベッドにいる大樹、隣に座る万夏、万夏の反対側に万夏の両親の秋人と春菜が飛彩の説明を聞いていた。

 

 「先生、ありがとうございます。」(秋人)

 「今回は運が良かった。腹部の傷は重要な臓器や血管を避けていた。そうでなければ、ここに来る前に息子さんの命はなかった。」(飛彩)

 

 飛彩の説明を聞き、胸をなでおろす秋人と春菜。

 戦いに関わるようになってから傷の絶えない大樹を心配することが多い。一夏と万夏が戦っていることも心配の種にもなっているが、その二人を守るために無茶をする大樹に対してはより一層の心配をしていた。

 そんな中で、今回の手術は気が気ではなかった秋人と春菜。それが、無事に終わったことでやっと安心できた。

 

 「しばらくは安静にするように。それでは、私はこれで。」(飛彩)

 

 説明を終え、病室から出る飛彩。病室には大樹たちが残る。

 

 「はあ、もう、本当に心配したのよ。」(春菜)

 「ああ、ごめんなさい。」(大樹)

 「でも、良かった。酷い傷だったけど、何ともなくて。」(秋人)

 

 大きいため息を吐き、大樹に話す春菜。その表情からとても心配していたことが分かる。

 穏やかに話す秋人もどこか疲れた表情を浮かべていた。その様子からかなりの心労が伺えた。

 保護者二人からの言葉に、大樹も流石に謝罪の言葉を言った。

 

 「ねえ、大ちゃん。先生が息子さんって言ったけど、良いの?」(万夏)

 「いや、まあ、僕はそんなに気にしなかったけど。」(大樹)

 

 大樹と万夏の会話を聞き、笑い合う秋人と春菜。

 

 「じゃあ、大樹。今日は私達も家に戻るから。」(春菜)

 「明日、春菜さんと万夏は見舞いに行くから。じゃあ、週末に。」(秋人)

 「またね、大ちゃん。」(万夏)

 

 万夏、秋人、春奈は病室を後にする。

 一人残された大樹は手術が終わった腹部を抑える。

 

 「まさか、治りやすくなるようにわざとなのか?」(大樹)

 

 自身の傷の具合から、アナザーワールドから召喚された黒竜がわざと急所を外したのかと考える。答えを確かめる術はないが、自分ならそうするかと思う大樹。

 

 「まあ、もう少し寝るか。」(大樹)

 

 大樹が寝ようとか思ったその時だった。

 病室の扉が開く音がした。その音に気付いた大樹は扉の方を見る。

 

 「万夏?」(大樹)

 「残念だったな。」(飛流)

 

 扉を開いていたのは加古川飛流だった。数日前まで戦っていた相手、本来であれば警戒するべき相手。だが、大樹は警戒するのではなく、軽く応じるのだった。

 

 「君か。俺になにか?」(大樹)

 「警戒しないのか?俺は敵だぞ。」(飛流)

 「攻撃するんだったら分かるよ。今の君に攻撃の意志はない。それなのに、来たのは理由があるんだろう?」(大樹)

 

 飛流が来たこと理由を聞く大樹。それに対して、飛流が答える。

 

 「残る十三異界覇王のことだ。お前たちが最も欲しがる情報だ。」(飛流)

 

 飛流が大樹の元へ来た理由、それは残る2体の十三異界覇王のことだった。

 

 「残りは、君を除いて2体。その2体のことか?」(大樹)

 「1人と1体だな。聞きたいか?」(飛流)

 「ああ、聞かせてほしい。」(大樹)

 「俺以外の残っている十三異界覇王、一人は大道克己と名乗る男だった。今は風都のどこかに潜伏しているだろう。残る一体は邪眼と名乗る目玉の怪物だ。どこにいるかは分からないが、かなりの力を持っていた。オーマジオウ、常磐ソウゴと同等かそれ以上に。」(飛流)

 

 飛流からもたらされた情報、大樹にとって、この世界で戦う仮面ライダーたちにとって重要な情報だった。

 

 「大道克己と邪眼、か。ありがとう、教えてくれて。」(大樹)

 「後は、お前たちが勝手にやれ。」(飛流)

 

 飛流はそう言うと病室から出ようとする。そこを大樹が呼び止めた。

 

 「あ、待ってくれ。どうして、教えてくれたんだ?」(大樹)

 

 大樹の問に飛流は背中を向けたままで答えた。

 

 「ただの気まぐれだ。お前が、俺に言った言葉だってそうだろう。」(飛流)

 

 飛流はそう言うと病室を後にする。どこにも行く宛のない彼はただ一人の、生まれて世界では会えなかったであろう理解者になるかもしれない相手とこれ以上の言葉を交わさないとでも言うように、去っていった。

 閉じられた病室の扉を見る大樹。

 

 「気まぐれ、か。そう受け取っても構わないよ。元気で、飛流。」(大樹)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大樹と飛流が出会った翌日。大樹が入院している病室に、一夏、颯斗、陸、正則が居た。颯斗の手にはタブレットがあり、そこには貴虎が写っていた。

 

 「つまり、加古川飛流が昨日大樹くんに接触したのか。」(貴虎)

 「はい。俺に残る十三異界覇王の情報を渡すために。」(大樹)

 

 大樹の話から集まっている面々はどこか渋い表情をしていた。今回は特に何も無かったが、本来であれば敵が無防備な大樹を狙っていたことになる。幸い、飛流が大樹に対して攻撃の意思が無かったために、無事に済んでいる。

 

 「まずは、その情報の詳細を聞こう。話してくれ、大樹くん。」(貴虎)

 「飛流が話した情報から残る2体の十三異界覇王の名前がわかりました。一人は大道克己、茶髪に青のメッシュが入った男。残る一体、最後の一体は邪眼を名乗る目玉の怪物だったと。大道克己は風都のどこかに潜伏しているだろうと話していました。邪眼の潜伏場所は分からないけど、かなりの力を持っていて飛流との戦いやキルバスとの戦いで協力してくれた仮面ライダージオウ、常磐ソウゴ以上の力を持っていたと。」(大樹)

 

 大樹は飛流から知らされた情報をこの場にいる全員に話した。

 

 「大道克己と邪眼。もう少し、情報がほしいな。特に、邪眼と呼ばれる最後の十三異界覇王は。」(貴虎)

 「邪眼についてはそれ以上の情報はなかったです。大道克己についても聞いた以上の情報はなかったです。」(大樹)

 「もうちょっと、特徴が欲しいなぁ。邪眼って奴、どんだけ強いのかあんまり分かんないし、どんな能力を持っているのかも分からないし。」(颯斗)

 「でも、どうせ戦うだろ。名前だけでも分かるだけ、前よりは良いんじゃないのか?」(一夏)

 「俺も織斑と同感かな。最後に戦うんだから、名前だけでも分かるだけ十分だろ。」(陸)

 

 もたらされた情報について話し合う。ただ一人、正則だけは口を閉じていた。

 

 「ただ、大道克己は風都を襲ったテロリストだ。それも仮面ライダーだったらしい。」(貴虎)

 「じゃあ、大道克己は俺が行く。」(正則)

 

 ここまでヴァルハラとの接点が少なく、十三異界覇王との戦いも数少ない正則が声を上げた。

 

 「待ってくれ、岩城博士。確か、君は。」(貴虎)

 「大道克己のことはよく知ってる。それに、俺の知り合いはこの世界の大道克己と戦ったことがある。その人たちと一緒にやる。」(正則)

 

 そう言って正則は立ち上がる。

 

 「じゃあ、後は俺がやっておくんで。おい、大樹。大人しくしてろよ。」(正則)

 「いや、無理はしないよ。いや、本当に大人しくしてる。無理はしないですよ、本当に。」(大樹)

 「颯斗、そいつを見張れ。ボーナスは弾んでやる。」(正則)

 「はっ、社長!!あざます!!一生ついていきます、社長!!こいつ、ずっと見張ってるんで!!」(颯斗)

 「買収されるなよ。」(大樹)

 

 ワイワイ話し始める大樹と颯斗。その様子を見て正則は病室を出る。そして、話が終わったとばかりに陸も立ち上がる。

 

 「それじゃ、俺の出る幕はないらしいから。またな。」(陸)

 

 正則が出た後、陸も病室を出る。

 

 「それでは、私はこれで。大樹くん、ここまでの戦いの傷と疲れをしっかり癒やしてくれ。」(貴虎)

 「はい、貴虎さん。いつも、ありがとうございます。」(大樹)

 「何、この程度しかできないが。」(貴虎)

 

 貴虎の通信が切れ、病室には大樹と一夏、颯斗が残る。

 

 「でも、社長大丈夫かな。残ってる敵、かなりの強さだよね。」(颯斗)

 「名前しか知らない、だけど自分が動くって言ったあたり宛はあるんじゃないのかな。正則兄ちゃんのことだから、何かあるかもしれないし。」(大樹)

 「なあ、俺たちは行かなくても本当に良いのか?」(一夏)

 

 残る3人は、今回の相手に対して名乗りを上げた正則のことを心配していた。

 加古川飛流との戦いで傷を負っている大樹は即座に動くことはできない。残る3人の中で動けるのは一夏と颯斗。だが、颯斗は言うと、

 

 「ごめん、ボーナス欲しいから僕行かない。」(颯斗)

 

 すでに、金に目がくらんでいた。

 

 「あのさ、そのボーナス出してくれる人に何かあったらボーナス出ないぞ。まあ、正則兄ちゃんが死ぬの想像付かないけど。」(大樹)

 

 大樹と颯斗はしばらく見合わせて、一夏へと視線を移した。

 

 「じゃあ、動けるのは一夏だよね。」(颯斗)

 「う〜ん、まあ、だよな。一夏、大丈夫?」(大樹)

 

 この中で唯一動ける一夏に問う二人。

 

 「おっ、俺!?いや、他なら桐ヶ谷にも話をするか?」(一夏)

 「ダメ元で聞いてみて。僕、ボーナスのために大樹を見張ってないといけないから。」(颯斗)

 「桐ヶ谷の様子だと一緒に行くってならないかもな。一夏なら正則兄ちゃんも駄目とは言わないと思うけど。一人で正則兄ちゃんと一緒に戦うことになるけど大丈夫か?」(大樹)

 「いや、まあ。俺は大丈夫だ。とりあえず、正則兄と一緒に大道克己って奴と戦ってくるよ。」(一夏)

 

 二人の問いかけ(内一人は問いかけではないが)に一夏は強く答える。

 颯斗はサムズアップ、大樹はやや心配そうな表情を見せるも拳を突き出す。

 そんなこともあり、一夏は正則とともに風都市へと向かうことになったのだ。

 一夏と正則が束と千冬を連れ立って車を走らせる中、同じ時間の風都では、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風都某所の倉庫、そこに大道克己の姿があった。

 

 「さて、始めるか。お前たち。」(克己)

 

 克己が声をかけると背後にいたメンバーがそれぞれのメモリを起動する。

 

 《ルナ!》

 《トリガー!》

 《メタル!》

 《ヒート》

 

 金色の神秘、ルナ・ドーパント。

 青色の狙撃手、トリガードーパント。

 銀色の闘士、メタルドーパント。

 赤色の灼熱、ヒート・ドーパント。

 大道克己の背後に居たメンバーがそれぞれのガイアメモリを使用、ドーパントへと変化した。

 克己は赤と銀のバックル=ロストドライバーを取り出し、装着する。

 ロストドライバーを装着した克己は白色のボディにEの文字が書かれたガイアメモリを起動する。

 

 《エターナル!》

 「変身!」(克己)

 

 克己は白色のガイアメモリ=エターナルメモリをロストドライバーにセット、スロットを倒した。

 克己の姿は純白のボディに、蒼炎に染まる両腕。漆黒のローブに、複数のマキシマムスロットが装着された仮面ライダーへと変わった。

 仮面ライダーエターナル、この世界では風都の街を恐怖に陥れるだけではなく、仮面ライダーWと仮面ライダーアクセルを追い詰めた最凶の仮面ライダーである。

 蒼炎永遠王仮面ライダーエターナル、異世界の覇王となった仮面ライダーエターナルである。

 

 「さあ、地獄を楽しみな。」(エターナル)

 

 不死身の傭兵集団NEVER。彼らの脅威が再び風都を襲う。

 

 

 

 

 

 

 穏やかだった風都の風が変わりだす。

 

 




 次回、風都へとやって来た一夏。そんな一夏の前にNEVERのドーパントたちが襲い掛かる。
 一方の正則は大道克己、仮面ライダーエターナルと相対する。


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仮面ライダー輝龍 第37話 十三異界覇王大戦編第2章 白夜両断 白き死神のパーティータイム

 皆様、お久しぶりです。11月に投稿後、何とクリスマスイブである今夜の投稿となってしまいました。それでは、白夜両断仮面ライダーエターナル編の最新話をどうぞ!!


side三人称

 一夏、正則は束と千冬を連れ風都市へと到着した。

 正則は車を風都にあるかもめビリヤード、鳴海探偵事務所へと走らせる。

 

 「まず、大道克己と戦った仮面ライダーのところへ行く。異世界の奴とは言え、ガイアメモリを使うはずだ。翔太郎さんたちの力を借りるに越したことはない。」(正則)

 「正則兄は大道克己のことはどこまで知っているんだ?」(一夏)

 「名前以外なら、この街でやったことは知っているぞ。まあ、風都の出身で知らないのは事件の後に生まれた世代くらいだろうな。」(正則)

 

 正則の言葉に、一夏はどこかピンときていない表情を見せる。

 

 「確か、テロだったか。」(千冬)

 「まあ、遠からずってところだな。かくいう俺も事件の詳細を知ったのはこれから行く鳴海探偵事務所の世話になった時だからな。」(正則)

 「翔太郎さんたち、かなり驚くだろうねえ。」(束)

 

 運転する正則は助手席にいる一夏に話しかける。

 

 「大道克己、不死身の傭兵集団NEVERのリーダー。風都でガイアメモリをばらまいていたミュージアムっていう組織から新世代型のガイアメモリを強奪、それを使って街の人間を自分と同じ存在に変えようとした最悪の仮面ライダーだ。」(正則)

 

 車を走らせる正則の脳裏には、かつての事件の光景が蘇っていた。

 街中で起きる爆発音、切断され崩壊した風都タワー。そこで戦う仮面ライダーWと仮面ライダーエターナル。それは正則を始めとした街の人々は決して忘れることのない出来事として記憶していた。

 その記憶から、今回の大道克己に戦うことを決めた正則。そのためにも、仮面ライダーW=左翔太郎とフィリップの協力が必要不可欠だった。

 

 (少しでも速く翔太郎さんたちに知らせないと。以前の大道克己とは違う、異世界の大道克己だと言うことだけでも知らせないと。相手が何者なのか、それを伝えないと勝ち目は薄い。)(正則)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから程なく一行は鳴海探偵事務所に到着した。

 

 「なあ、正則兄。ここで合ってんの。」(一夏)

 「おう。まあ、見た目ボロっちいけど気にすんな。それにここの事務所はいつも閑古鳥が鳴っているから。」(正則)

 「気にする要素しかないだろ。」(一夏)

 

 一夏の言葉を無視して建物を見る正則。そして、建物の前に黒と緑のバイク=ハードボイルダーが停まっていることを確認する。

 

 (よし、ハードボイルダーがある。バイクを使わない依頼が入っていないなら翔太郎さんとフィリップさんはいるな。それなら、所長さんも普通に対応できるな。)(正則)

 

 正則と束が先頭に、後ろに一夏と千冬が続いて建物の中に入る。建物の中になる未探偵事務所と書かれた看板が掛けられた扉があった。

 正則はドアノブに手をかけ、扉を開けて中に入る。

 

 「翔太郎さん!所長さん!来たぞ!!」(正則)

 「正則兄!?失礼すぎないか!!」(一夏)

 「今更、礼儀なんて気にする関係じゃねえから大丈夫。」(正則)

 「はいはい、聞こえているわよ。いらっしゃい、正則くん。」(亜樹子)

 

 失礼と言える正則の言葉に一夏が咎める。それに答えるように、掃除をしていた鳴海亜樹子が出迎えた。そして、事務所の奥から一人の男性が歩いてきた。

 

 「久しぶりだな、正則。」(翔太郎)

 

 左翔太郎、ここ鳴海探偵事務所の探偵であり、風都を守る仮面ライダーの一人である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それで、僕たちのところへ来たのはどういう理由だい?君がここに来たっていうことは相当なことなんだろ?」(フィリップ)

 

 事務所のソファーに座る正則に言葉をかけるのは、鳴海探偵事務所のもう一人の探偵で翔太郎の相棒であるフィリップである。

 正則の隣に座るのは束。別の席では一夏と千冬が亜樹子のもてなしを受けていた。

 

 「去年から続いている異世界からの侵略者、十三異界覇王。その一人が風都に居ます。」(正則)

 

 ソファーに座る正則が口を開いた。

 

 「その情報はどこから?」(翔太郎)

 「ついこないだ交戦した十三異界覇王の一人から。情報そのものの信頼性は高いはずですよ。俺の弟分2号が直接聞いたんで。」(正則)

 

 翔太郎の問いに淀みなく答える正則。

 

 「それで、風都にいる十三異界覇王の正体は分かるのかい?別世界の相手だと、地球の本棚で検索しても調べられない可能性があるからね。」(フィリップ)

 「まあ、調べられない可能性があるのは百も承知ですよ、フィリップさん。でも、大道克己なら話は違うでしょ。」(正則)

 

 正則が言った大道克己の名に、翔太郎とフィリップが表情を険しくした。別の席で一夏と千冬の茶菓子を出していた亜樹子が「私聞いてない。」とお決まりのセリフを言った。

 

 「大道克己だと。」(翔太郎)

 「悪い冗談、とは言えないね。君がその名を口にするとは。」(フィリップ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大道克己、仮面ライダーエターナルと知られる彼は翔太郎とフィリップにとって最も苦しめられた最凶の相手であった。

 傭兵としての戦闘経験、エターナルメモリによるT2ガイアメモリ以前に作られたガイアメモリの機能停止。これまでの相手とは一線を画すその力に苦しめられたのだ。

 フィリップの機転により、機能停止したガイアメモリの機能の復活。街の人々の願いがこもった風を受けた奇跡の力、サイクロンジョーカーゴールドエクストリームによってようやく撃破できた強敵だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「異世界の大道克己。ということは、僕たちが戦った大道克己とは別の力を持っている可能性がある。」(フィリップ)

 「そうだな。ガイアメモリを使わないことも考えられる。そうなれば、俺たちよりも別の仮面ライダーの協力も必要だろ。」(翔太郎)

 「そこは問題ないでしょう。ここにいるってことは恐らくガイアメモリを使うはず。ただ、ガイアメモリを使っている以上はハイドープになっている可能性もある。」(正則)

 

ハイドープ、ガイアメモリの長期使用により超能力に目覚めたドーパント、その変身者のことを指す。

 翔太郎とフィリップがミュージアム壊滅後に戦ったとある組織、その組織の幹部は皆そのハイドープだった。

 

 「ハイドープになった大道克己、そんなの想像したくもねえよ。」(翔太郎)

 「だけど、そうだとしたらかなり厄介だ。」(フィリップ)

 「だから、ここで情報共有してるんですよ。まずは、俺が大道克己と戦う。その間に翔太郎さんとフィリップさんは攻略の算段を付けてくれ。攻略法が分かり次第、全員で大道克己を叩く。」(正則)

 

 正則からの提案、それはガイアメモリに詳しい翔太郎とフィリップが大道克己と万全に戦うことができるようにするためのものだった。

 

 「危険すぎる。正則だけで「正則兄だけにそんなことさせられるかよ!!」、っと文句のあるやつもいるぜ。」(翔太郎)

 

 だが、正則の作戦には翔太郎とフィリップは苦い表情を浮かべた。翔太郎に至っては危険だと言ったが、そこに割り込んで一夏も正則だけにはさせられないと言った。

 

 「今回のやつもかなりの相手になるだろ。正則兄だけでなんて戦わせるわけには行かないだろ!」(一夏)

 「落ち着け、一夏。別に算段なしで行くわけじゃない。」(正則)

 「そうだよ。マサくんも作戦なしで行くんじゃないんだよ。」(束)

 「なら、それを話したらどうだ?ここにいる人たちと一夏は納得しないぞ。」(千冬)

 

 千冬の言葉に、正則が懐から2つのバックルを取り出した。

 

 「俺の持っている2つのオーズドライバー。オーズNEOとして戦えば、複数のガイアメモリを使う大道克己に対応できる。最悪、ヘキサオーズに変身してドライバーからガイアメモリまでを封じてしまえば良い。そうすれば、翔太郎さんたちの損害も少なくすむはずだ。」(正則)

 「エターナルメモリの能力を考えたら、マサくんと戦えば皆安全に戦うことができる。それに、束さんも居て相手を調べたり、装備の調整をするから大丈夫!」(束)

 

 正則と束、二人は事前に大道克己が相手であることからある程度の準備をしてきた。

 束はタブレットを取り出し、あるプログラムを見せる。

 

 「前に風都で起きた事件を聞いて、それの打開策のプログラムを作成中。26本のガイアメモリが起動したら、それに対するカウンターを発動させるプログラムだよ。以前のデータと今回の相手のデータもあれば十二分にできるよ。」(束)

 

 束のプログラムを見る翔太郎、フィリップ。それを見て、フィリップが興味を示す。

 

 「へえ、興味深いね。大道克己が風都市民をNEVERにしようとしたものに対するカウンタープログラムね。」(フィリップ)

 「束ちゃん、確実にできるのか。」(翔太郎)

 「束さんの力だけでもできるよ。でも、速くに完成させるなら今いる大道克己のデータが必要。」(束)

 

 正則と束の作戦を聞き、考える翔太郎。それでもなお、正則一人に大道克己の相手を任せるのは危険だと考えている。

 

 「それでも、正則に危ない橋を渡らせるわけには行かない。少なくても、俺も行く。」(翔太郎)

 「分かりました。でも、大道克己がエターナルメモリのマキシマムドライブを使おうとしたら確実に止めますよ。使われて翔太郎さんたちが戦闘不能になりますし。そうなったら、俺と一夏で本気の大道克己に勝てるか分かんないんで。」(正則)

 

 翔太郎の言葉に正則も自身だけで戦闘することを固辞することはなかった。というよりも、それなりの付き合いになる翔太郎のことを考えてそうせざるを得ないだけだった。

 そうして、話が一段落したときだった。

 

 「あっ、もしもし。どうしたの、竜くん?え、ドーパント!?」(亜樹子)

 

 亜樹子のケータイに夫の照井竜から電話がかかってきた。街にドーパントが出現したという知らせをもたらして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風都市の街中、そこに4体のドーパントが姿を見せていた。

 

 「さて、徹底的にぶっ壊してやるぜ!」(メタルドーパント)

 

 先端にハンマーを有する棍を持つ鋼色のドーパント、メタルドーパントは包囲するパトカーを次々とスクラップにしていく。

 

 「私を熱くできないのなら、消えなさい!」(ヒートドーパント)

 

 燃え上がる炎のような赤色のドーパント、ヒートドーパントは全身から発する炎で警官たちを吹っ飛ばしていく。

 

 「さあ、あなたたち。いってらっしゃ~い!」(ルナドーパント)

 

 黄金の月のようなドーパント、ルナドーパントは両手から発した黄金の光からマスカレイドドーパントを複数体召喚する。

 ルナドーパントによって召喚されたマスカレイドドーパントたちは次々と人々に襲いかかる。

 

 「・・・。」(トリガードーパント)

 

 他のドーパントたちの後方にいるのは青色のスナイパーのドーパント、トリガードーパント。そのトリガードーパントは警官たちの中にいる赤いジャケットを着た人物、照井竜をスコープ越しに狙っていた。

 

 「これじゃあ、埒が明かないな。応援はまだか。」(照井)

 「まだ、来そうに無いですね。まさか、NEVERのドーパントがまた出てくるとは。」(刃野)

 

 突如襲撃してきたドーパントたちの対処に追われる照井たち。その対処もままならなかった。そこへ、一陣の風が吹いた。

 警官たちの間を縫うように黒と緑のバイクが駆けていき、ルナドーパントが生み出したマスカレイドドーパントを蹴散らしていく。

 黒と緑のバイク=ハードボイルダーに乗っていたのは仮面ライダーW、左翔太郎とフィリップが変身した仮面ライダー。風都の守護者が華麗に参上した。そして、この場に駆けつけたのはWだけではなかった。

 大型装甲車、リボルギャリーがWに遅れて到着すると中から白銀のアーマードライダー、仮面ライダー白銀と3色の仮面ライダーオーズNEOハヤガコンボがWの両隣に並び立った。

 

 「仮面ライダー!3人も来てくれたのか!」

 

 その場に居た警官たちの表情に希望が満ちた。

 

 「あんたたち、ここまでありがとう。後は俺たちが奴らの相手をする。」(W:翔太郎)

 

 W、翔太郎が警官たちに゙言葉をかける。その言葉に警官たちを指揮していた照井が頷く。

 

 「動けるものは動けないものの補助に回れ。後は彼らに任せて、市民の避難を急げ。」(照井)

 

 照井は動ける警官たちに指示を出す。その動きを見ていたWたちはドーパントたちに向き直る。

 

 「さて、久しぶりの相手だな。」(W:翔太郎)

 「昔出てきたNEVERの奴らと同じ、ですね。おい、一夏。一人で先走るなよ。相手は傭兵、ガイアメモリを使わなくても並のやつを余裕で殺せる奴らだ。」(オーズNEO)

 「分かってるって、正則兄。」(白銀)

 

 ドーパントたちに向けて武器を構える3人。

 Wと白銀が4体のドーパントに向かって走り出す。同じくオーズNEOも続こうとしたが、背後に感じた殺気に振り返る。

 

 「前に会ったか?」(エターナル)

 「いや、俺が一方的に知っているだけだ。まさか、NEVERのリーダーが直々にお出ましとは。」(オーズNEO)

 

 蒼炎永遠王仮面ライダーエターナル、NEVERたちを率いるリーダーがそこにいた。

 

 「用はあそこのやつだったが、どちらにしろ全員始末するからな。先にお前からやるか。」(エターナル)

 「いいぜ。来いよ。」(オーズNEO)

 

 エターナルに対してオーズNEOがファイティングポーズをとる。

 エターナルは右手に持ったエターナルエッジをオーズNEOに振り下ろす。

 オーズNEOはヤドカリアームの装甲でエターナルエッジを受け止める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風都でのこの戦いを、一夏は後に自分にとってのターニングポイントだったと話す。

 それがはっきりと分かるのはそう遠くない未来だった。




 エターナルと激しい戦いを繰り広げるオーズNEO。そこで予想だにしないことが起きた。そして、一夏は大道克己と素顔で邂逅する。

 「お前はどうしたい。」

 その問いに一夏はどう答えるか。


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仮面ライダー輝龍 登場人物①

柏葉大樹=仮面ライダー輝龍(イメージC.V松岡禎丞)

 

 16歳。本作の主人公。前作、仮面ライダー炎竜の主人公でもある。元はISや仮面ライダーが小説、テレビ番組である世界で生きていた特撮オタクの青年であったがある神によってIS世界に転生した。本作の時点では転生は2回目であり、前の世界の記憶を引き継いでいる。ISに適性があり、原作主人公の一夏と同じようにIS学園へ入学した。

 過去に兄である柏葉勇吾によって両親を惨殺されている。その事件の所為で周囲からは人殺しの家族と迫害を受けてきた。その所為か自己評価は低く、人付き合いも少ない。だが、心を開いた人物には優しさを見せ、自分にとって大切な人達に危害が加わればそういったことに真っ向から立ち向かう強い正義感を持っているが抱え込みやすく、過去の事件の失敗なども引きずることが多い。最初に転生したIS世界においては友人である鈴音たちが犠牲になってしまい、そのことがトラウマとなっている。前述の事件での経験もあってPTSDを発症しており、それと併発して睡眠障害もある。PTSDと睡眠障害は現在はある程度落ち着いている。幼少期に「進行性全身性細胞崩壊症候群」という難病にかかっていた。そのために余命はわずか5年とされていた。現在まで生存しているのは護龍と称された柏葉家から出たアギトの力を人工的に移植、その結果発現した驚異的な自己再生によって病気が完治した。

 現在は織斑家に居候、正確には織斑姉弟の両親である秋人と春奈が後見人として引き取っている形である。去年までは織斑家の人々に精神的に一定の距離があったものの異世界からやって来たアギトとの戦いで自分も家族の一員なんだと理解し、本当の意味で心を許すことが出来るようになってきている。

 最初のIS世界で亡国機業に所属していた織斑マドカと心を通わせる。秋の修学旅行の際に一時行動を共にし、その夜に保護した。その後、面会を日常的にしていたのが大樹だけということもあり、お互いに惹かれ合って行った。この世界においては幼少期から幼馴染として心を通わせ、現在は恋人として付き合っている。マドカには普段から心を許していたのもあって熱烈な夜の営みを押し倒れてされる程には好意を持たれている。

 一夏とは仲の良い友人同士であり、これは最初のIS世界と本作では共通。時折、喧嘩をすることはあるがお互いに相手の言い分はよく理解しており、その上で譲れないものがある時に喧嘩をすることが多い。二人で何かをすることは少ない。趣味嗜好があまり合致しないために普段のやり取りはそこまでの仲が良くはないが悪くもない兄弟レベルで終わる。

 戦闘においては最初のIS世界での経験もあり、この世界では箒と束の父である柳韻から実践式古武術(という名の我流戦闘術)を仕込まれているために生身でも訓練された兵士相手であれば対等に渡り合える。これに対してはマドカからは「基本的に何でもありなら千冬姉さんとも戦える」と言われている。

 ISの適性はCであり、ISの操縦はそこまで得意としていない。実際にISを使った模擬戦の成績はクラス内では下の方にいる。だが、タッグやチーム戦では司令塔兼サポート役で高い能力を発揮しており、その点では高い評価を受けている。

 自身に宿ったアギトの力でドラゴンフルーツロックシードから変化したゴールデンドラゴンフルーツロックシードと戦極ドライバーで仮面ライダー輝龍に変身する。現在はアギトの力が覚醒して仮面ライダーアギトヴォルカニックフォームに変身している。

 ゴールドドラゴンアームズは専用アームズウェポンである光龍剣、竜炎刀・陽炎の2本の剣を使って戦う。防御力は作中のライダーの基本形態の中でトップクラスであり並の相手であれば防御力の高さを生かしてカウンター、連撃などの多彩な攻撃を見せる。さらに遠距離高火力特化のフレイムカキアームズ、敏捷性に秀でたストームライムアームズにアームズチェンジすることで相手の特性に合わせた戦いが出来る。輝龍、大樹がもっとも得意としているのが戦闘中に次々とアームズチェンジをする戦法で、相手がそれぞれのアームズに対応出来る前に次々とアームズチェンジを行い、なおかつ各アームズの多彩な攻撃で相手を圧倒する。

 アギトヴォルカニックフォームでは傷を負ってもすぐに回復し、尋常ではないパワーで戦う。輝龍と比べると圧倒的なステータスを有するものの変身している間は常時痛みに襲われ、それにともない怒りの感情のままに暴れてしまう。

 現在ではアギトの力を完全に制御、同時に入手したバハムートロックシードを使い仮面ライダー輝龍バハムートアームズへ変身することができるようになった。それと引き換えにゴールドドラゴンフルーツアームズを含めた3形態が元のロックシードに戻っている。

 最初に対峙した十三異界覇王ファブニールとの決戦を終え、彼からファブニールロックシードを受け継ぐ。その直後の魔蛇戦の前に自身の別人格である修羅と和解、ワイバーンロックシードを入手する。その際にファブニールから正式にデュアルギアを受け取るがバハムートロックシード、ファブニールロックシード、ワイバーンロックシードが共鳴したことで誕生した龍王ロックシードの影響から龍王ドライバーに進化する。これにより究極の力、龍王アームズへの変身が可能となった。

 龍王アームズはバハムート、ファブニール、ワイバーンという三つの並行世界の大樹が入手した(するはずだった)ロックシードの融合形態である。各形態のアームズウェポンを使用することが出来、背部の翼を広げることで高速で飛行することが出来る。なお、龍王アームズ最大の能力は輝龍バハムートアームズ、炎竜ファブニールアームズ、黒龍ワイバーンアームズを召喚する能力である。召喚する輝龍たちは全て大樹の意識があり、それぞれが意思を持って活動することが出来る。

 

 

 

 

織斑マドカ(万夏)=仮面ライダーヴァルキリー

 16歳。本作、前作仮面ライダー炎竜のヒロイン。原作世界においては亡国機業に所属するテロリストにして織斑一夏、千冬姉弟とも深いかかわりがある織斑計画に関係していた。大樹が初めて転生したIS世界にて出会い惹かれ合った彼女が自身と繋がっていた別世界の自分に記憶を移したことで転生を果たした。

 この世界においては一夏、千冬の姉弟に加えて両親の秋人と春奈の元で家族5人で暮らしている(前述の大樹も加わると6人家族)。3人姉弟の末っ子ということで家族からは愛されて育って来た。幼少期は病弱だったものの現在は同じ年齢の少女と何ら変わらないくらいに健康である。

 大樹に対しては幼い頃から好意を寄せており、大切な幼馴染みから身近な異性として意識するのにそう時間はかからなかった。大樹が最初に転生したIS世界での記憶を取り戻した瞬間に一気に距離を縮めた。

 千冬、一夏との仲は良好。前の世界での記憶を引きずるということはなく、あくまで前の世界の自分と今の世界の自分は同じだが違うというスタンスであるために姉弟へは普通に接している。

 記憶を取り戻した後に戦極ドライバーを貴虎から鳳蓮を通じて渡され、仮面ライダーヴァルキリーに変身して戦うようになる。

 生身では生来の高い身体能力を生かしての戦いを得意としており、脅威的な反射神経によって相手の予測を超えた動きで戦う。

 当然ながらISの戦闘は得意であり、この世界に置いては代表候補生になっていないにも関わらず高い成績を納めている。

 戦極ドライバーとブルーベリーロックシードで仮面ライダーヴァルキリーブルーベリーアームズに変身。銃槍型のアームズウェポンであるブルーライフルを使い近距離~遠距離と距離を問わない戦いを見せる。さらにマドカの高い身体能力から低いステータスからは考え着かないほどに高い戦闘力を有する。また、ブラックベリーロックシードを使って変身するブラックベリーアームズは大剣型アームズウェポンオニキスクレイモアを使って戦う重武装型のアームズだがマドカに合わせて調整されているために厚い装甲を持ちながら驚異的な身体能力で相手を圧倒するという芸当を見せる。

 何やら幼少期に魔法石というものを移植されたらしく...。

 魔法の指輪とウィッチドライバーを使い仮面ライダーウィッチへの変身能力も得た。魔法石に宿っていたファントム、リヴァイアサンがロックシードに変化したことで変身できるようになった仮面ライダーヴァルキリーリヴァイアサンアームズに変身するようになった。リヴァイアサンロックシードの入手時の戦いでウィッチドライバーが消滅したことにより仮面ライダーウィッチへの変身能力を失ってしまった。

 

 

 

留芽颯斗=仮面ライダーロード(イメージC.V山下大輝)

 16歳。前作より登場のオリジナルキャラクター。IS学園整備科2年生。大樹がIS学園に入学してから出会った。容姿は眼鏡をかけた黒髪の短髪の少年だが整備科ということもあってかかなり肉体を鍛えているため実は高校生ながらに格闘家並みの肉体を持っている。大樹とはほどなく打ち解けて学園内ではよく二人でいる場面が多い。更識簪、布仏本音とは幼稚園からの幼馴染で簪の専用機の開発には独学ながらもサポートをしていた。ISの適性は無い一般の生徒である。

 性格は真面目で人懐っこく、周囲にはよく笑顔を見せることが多い。また、よく大樹のことを茶化すことも多い。相手の機微を察知することに長けているために割と人間関係は良好に築くことが出来る。

 小学生の頃に撲滅されたロイミュードであるハート、ブレン、メディックが自宅のパソコン内で復活したのを目撃、それ以降は彼らと共にいる。ハートたちの過去に起こした事件はハートたちを通しても知っているが彼らが悪人では無いことはすぐに分かり、そこからは友人として共にいる。ハートたちといた影響もあってかこの世界にやって来た異世界のグロンギたちに対して基本的には友好な姿勢で接している。

 ハートたちが持っていたデータをもとにジャンクパーツからマッハドライバー炎とハートたちの新たな体であるバイラルシフトカーを開発するなどその技術は年齢からは考え着かないほどに高く、マッハドライバーとバイラルシフトカーの制作はなんと小学5,6年生のころである。本人の自覚は薄いが天才である。

 前述のマッハドライバー炎を使い、ハートたちの力を借りることで仮面ライダーロードに変身する。変身後は漫画やアニメからインスパイアされた徒手空拳で戦う。現在はグロンギのガドラの指導の元、しっかりとした格闘技としての戦い方を学んでいる。ハートの力で変身するタイプデッドヒートハートはハートが持つ高熱を発生させるデッドゾーンに加えてパワーあふれる剛腕によるストロングスタイルの戦い方を得意とする。ブレンの力で変身するタイプテクニックブレンは様々な効果を持つ毒を生成するほかには精密動作、ハッキングや相手の弱点のサーチを行う。そして、因縁の相手であったロイミュード109との戦いで合流したロイミュード001=フリーズの力で変身するタイプフォーミュラフリーズは絶対零度の冷気と高速戦闘を得意としている。基本的にはハートと行動を共にすることが多いことと、本人の特性からタイプデッドヒートハートで戦うことが大半である。タイプデッドヒートハートの切り札としてデッドゾーンオーバーヒートというデッドゾーンの強化版の能力がある。デッドゾーンオーバーヒートは相手を瞬時に蒸発させるほどの高熱を発することが出来るが安全に稼働できる時間が非常に短いことと熱暴走によって変身者の颯斗に多大なダメージを与える危険性がある。

 異世界のグロンギたちから魔石ゲブロンの欠片を利用して開発したバイラルシフトカーシフトビーストロンとビーストガンナーで最強形態ビーストロードへ変身できるようになった。

 

 

 

 

桐ケ谷陸=仮面ライダーエグゼリオン(イメージC.V KEN)

 16歳。颯斗と同じく前作から登場のオリジナルキャラクター。大樹、一夏と同じくISを動かせる男性操縦者。授業や行事は不参加が多いがテストの成績は良い。本人は医師を志望しているために勉学については真面目に取り組んでいる。重度のゲーマーであり、勉学と共にゲームもかなりやり込んでいる。そのやり込み具合はすさまじく小遣いのほとんどをゲームに費やしている。

 聖都医大付属病院電脳救命救急センター、通称ERのメンバーと親交が深い。仮面ライダーレーザー=九条貴利矢が面倒を見てくれていることもあって彼と共にいることが多い。

 IS適正があり、1年生の時の1学期の途中でIS学園へ編入学した。IS適正はBと高め。操縦もうまいために平均以上の成績を収めている。現在は訓練機を支給されているので専用機はない。

 カミカゼアクションガシャットとゲーマドライバーで仮面ライダーエグゼリオンに変身して戦う。カミカゼアクションは非常に高い身体性能を誇るガシャットで同系統のゲームであるマイティアクションよりもスピード面で高い性能を有していて、生身で高い身体能力を持っている陸が使いこなしている。レベル3ガシャットで回避してからのカウンター攻撃を主体としているキルキルサムライ、レベル5ガシャットのドラゴナイトハンターZ、ビーストコンバットとバイラスハザードと言う2種類のゲームが入ったガシャットギアデュアルで変身する2種類のレベル50の形態で戦う。



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仮面ライダー輝龍 登場人物②

織斑一夏

 原作インフィニット・ストラトスの主人公で大樹の幼馴染であり、万夏の双子の兄。原作と同じく大切な人々を守るべく戦いに身を投じる。なお、原作と同様に自身に向けられる恋心に対しては鈍感である。大樹とは半分兄弟半分親友といった奇妙な関係であるが仲は良好。なお、大樹があまり話したがらないことに対しては普段から不満を感じている。そのことや一夏が突っ走ってしまうことから大樹と衝突することもそう珍しくはない。だが、戦いの場においては万夏に次いで大樹と呼吸を合わせて戦うことを得意としている。基本は一夏が先陣を切り、大樹が露払いを行うことが多いが自然とお互いの立ち回りを補助するように戦うことができる。

 貴虎から受け取ったゲネシスドライバーとリンゴ型のロックシード、シルバーエナジーロックシードを使って仮面ライダー白銀に変身して戦う。専用武器バニシングブレードを使ったスピードを活かした戦闘スタイルを得意としている。なお、シーズン1仮面ライダー炎竜におけるグリフォンインベスとの戦いで入手したシャイニングエナジーロックシードを使った強化形態シャイニングエナジーアームズは高速移動能力を有しており、それを利用して相手が知覚する前に複数の斬撃を叩き込むスタイルで戦う。

 十三異界覇王仮面ライダーアークとの戦いの前にDJサガラから渡されたゴッドエナジーロックシードを使って変身したゴッドエナジーロックシードは一夏=白銀の最強形態で、あらゆる自然のエレメントを利用した強力な技を使用することが出来る。

 

 

岩城正則

 織斑千冬と篠ノ之束の幼馴染で束の夫。束と同じく生まれながらの人類の最高種である存在。風都市の出身でオーズNEOドライバーと新造されたオーメダルを使い仮面ライダーオーズNEOに変身する。かつてはショッカー、ゲルショッカー、デストロン、ゴッド、ガランダー、デルザーの悪の組織のコアメダルと六連オーズドライバーを使ってヘキサオーズに変身していた。有事の際は仮面ライダーとして戦うことも辞さないが本業は束と共にISの研究を行い、その他にISに関わる講演も行っている。過去にドイツ軍の秘密研究施設を強襲したことがあり、その際に原作のクロエ・クロニクルこと篠ノ之黒江を保護している。黒江を娘として引き取り、束と共に愛情を注いでる。現在では年長組の常識人で大樹たち若いメンバーの良き兄貴分として助言を送るが、中学生時代は家庭環境から他者を拒絶していた。ヘキサオーズに変身することができるようになったある事件から風都の鳴海探偵事務所に一時期世話になっていた。

 オーズNEOに変身する正則は火野映司が変身する仮面ライダーオーズと同様にオーメダルを使いコンボチェンジを駆使して戦う。扱うコアメダルはハヤブサ、フクロウ、ワシの黄緑色のNEO鳥類系のコアメダル、オオカミ、クマ、カンガルーの茶色系のNEO哺乳類系のコアメダル、シャコ、ヤドカリ、カブトガニの水色系のNEO甲殻類系のコアメダルの計9枚。これに悪の組織コアメダルも入る。ハヤブサ、ヤドカリ、カンガルーを使用した基本形態ハヤガコンボ、NEO鳥類系コンボで無音高速飛行を得意とするヤブフシコンボ、高い柔軟性と高いパワーを有するNEO哺乳類系コンボのオオクガルコンボ、切断された手足を瞬時に再生させる再生能力と高い防御力と瞬発力を有するNEO甲殻類系のシャドカブコンボを状況に応じて使い分ける。

 最強形態にして本来の基本形態でもあるヘキサオーズは正則と最も相性が良く、長い間この姿で戦っていた。固有能力はあらゆる機械を自身の制御下に置くことができる機械操作。また、専用武器の大剣メダバキボロスはセルメダルを投入することで高い威力を発揮する。ヘキサオーズのステータス自体は仮面ライダーオーズプトティラコンボに匹敵する。

 

 

 

 

黒崎修羅=柏葉大樹

 仮面ライダー炎竜episodeダウンフォールンドラゴンにて前世での勇吾との決戦で瀕死の重傷を負い、精神的にも大きな傷を負った大樹が無意識のうちに生み出した別人格。仮面ライダー鎧武=葛葉紘汰の手により、大樹と分離して誕生した。大樹の持っていた怒りの感情と殺意を色濃く受け継いでおり、かなり凶暴性の強い人物である。一方で仮面ライダービルド=桐生戦兎らの姿を見て、ヒーローへの強いあこがれも有している。

 シーズン1における勇吾との決戦までは戦極ドライバーとブラックドラゴンフルーツロックシードを使い仮面ライダー黒龍ブラックドラゴンアームズに、それ以降はビルドライバーとシュバルツワイバーンを使用して仮面ライダーシュバルツに変身する。その戦闘スタイルは荒々しく相手が完全に行動を停止するまで執拗に攻撃を続ける。また、相手の行動を停止=殺すという思考となっており、確実に相手を殺すために必殺技を連発するなど容赦のない戦い方をする。

 十三異界覇王大戦を操っていた魔蛇により洗脳されファブニールとの決戦を終えた直後の大樹たちに襲い掛かる。その戦いでファブニールと輝龍=大樹が黄金の果実による精神世界への介入によって洗脳を解除されることとなる。その際に、6歳ほどまでの年齢まで退行する。修羅の凶暴性の起因となったのは前世までの記憶を有していた大樹が年齢不相応の成熟した精神により年相応の衝動などを抑え込んでいたことである。修羅の人格そのものはepisodeダウンフォールンドラゴンの際に育つはずだった幼い大樹の物だったことが判明した。

 修羅が所持していたビルドドライバーとシュバルツワイバーンは大樹に譲渡されることとなった。現在、大樹たちからシュウの愛称で呼ばれている。これまでと違い周囲からの愛情を受けて生活することとなる。



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仮面ライダー輝龍 登場ライダー解説 輝龍・白銀・ヴァルキリー編

仮面ライダー輝龍

 

 柏葉大樹が戦極ドライバー若しくは龍王ドライバーとロックシードを使用して変身する仮面ライダー。使用するロックシードはドラゴンフルーツロックシード、シークワーサーロックシード、パッションフルーツロックシード、バハムートロックシード、ファブニールロックシード、ワイバーンロックシード、龍王ロックシードの全7種類である。

 基本形態は重装甲に太刀型アームズウェポン=竜炎刀を使ったカウンター主体の戦いを得意とするドラゴンフルーツアームズ。ドラゴンフルーツアームズは大樹の持つアギトの力によりゴールドドラゴンフルーツアームズに進化することができる。これは大樹の感情が高ぶることで発現する。ゴールドドラゴンフルーツアームズは単純なスペックそのものは鎧武極アームズに匹敵する。

 敏捷性に特化し、三節根にも変形する杖型のアームズウェポンの蒼雷杖を使用するシークワーサーアームズ。グレネードガン型のアームズウェポンのパッションフレアカノンを使用した中距離戦を得意とするパッションフルーツアームズ。ドラゴンフルーツアームズを含めたこの3形態が輝龍の基本形態になる。

 バハムートロックシードを使用して変身するバハムートアームズは輝龍の中間形態に当たる。金色の龍炎刀=竜炎刀・陽炎と両刃剣型の光龍剣を使い(ゴールドドラゴンフルーツアームズでも使用)、力強い二刀流、合体させて光炎龍剣ナギナタモードとオオダチモードで戦う。大樹の「大切な人を護りたい」という思いからパワー、スピード、防御力などのステータスが上昇し続ける特性を有する。

 ファブニールロックシードを使用して変身するファブニールアームズは大剣型のアームズウェポン邪龍DJ破断剣を使って戦う。邪龍DJ破断剣を使用して地面を掘るなど、多種多様な環境で戦うことができる。怒りの感情によりパワーが大幅に強化される特性を有する。元は並行世界の大樹=ファブニールが所有していた。魔蛇との決戦の折に託された。

 ワイバーンロックシードを使用して変身するワイバーンアームズは諸刃の薙刀型のアームズウェポンである翼竜嵐刃を使って戦う。バハムート、ファブニールの2形態とは違い、スピード面に秀でており、空中での高速飛行を得意とする。また、風を操る能力もあり、これを使って竜巻を発生させることができる。

 龍王ドライバーと龍王ロックシードを使用して最強形態である龍王アームズに変身する。正式名称は「仮面ライダー輝龍・龍王 龍王アームズ」となる。飛行能力を有するほかにバハムート、ファブニール、ワイバーンの各形態の武器を召喚することができるほかに、輝龍バハムートアームズ、炎竜ファブニールアームズ、黒龍ワイバーンアームズを召喚して戦うことができる。そのスペックも非常に高く、かつて鎧武らアーマードライダーたちと激闘を繰り広げた魔蛇を単独で撃破することに成功している。

 龍王アームズを除いて全形態に共通兵装として無双セイバーを使用している。

 

 

仮面ライダーアギトヴォルカニックフォーム

 大樹が変身したアギト。燃え盛るマグマのような形態で大樹が変身する仮面ライダーの中でもトップクラスのパワーを誇り、再生能力を有している。弓矢と双剣になるヴォルカニックセイバーアローを使用して戦う。変身中は激痛に襲われ、怒りの感情に囚われてしまうことで暴走する。大樹が柏葉家本家にて先代アギト(大樹の持つアギトの力を持っていたアギトで護龍の名で知られていた)との邂逅でコントロールすることができるようになる。

 

 

仮面ライダー炎竜

 大樹がかつて変身していた仮面ライダー。戦極ドライバーとロックシードを使用する点は輝龍と同じ。姿は輝龍のカラーリングが金色から紅色になっているもの。使用するロックシードはドラゴングルーツ、シークワーサー、パッションフルーツの3種。

 

 

 

 

 

 

 

仮面ライダー白銀

 織斑一夏がゲネシスドライバーとロックシードで変身する仮面ライダー。使用するロックシードはシルバーエナジーロックシード、シャイニングエナジーロックシード、ゴッドエナジーロックシードの3種類である。

 基本形態はシルバーエナジーロックシードを使用して変身するシルバーエナジーアームズである。全形態で使用する武器として刀型のアームズウェポン、バニシングブレードを使って戦う。シルバーエナジーアームズは機動性に優れたスピード型のステータスの形態であり、素早い動きからの強烈無比な斬撃で戦うのが白銀の基本戦術である。ゲネシスドライバーを使用していることから鎧武らアーマードライダーの中でも次世代型の仮面ライダーであり、性能そのものは大樹の変身する輝龍よりも高い。

 強化形態のシャイニングエナジーロックシードで変身したシャイニングエナジーアームズは高速戦闘を得意としており、高速移動能力が発動してい間は肉眼で視認することは難しい。

 上位形態のゴッドエナジーアームズは火、水、風、土、雷、氷、光の属性攻撃を得意としている。それぞれの属性をバニシングブレードに纏わせて攻撃する。高速移動能力は無いが、その分高いステータスによる攻撃力が特徴である。

 シャイニングエナジーロックシード、ゴッドエナジーロックシードの2つは謎の男=サガラによって一夏に渡されたものである。そのことは一夏のみ知っている状態であり、他の人物はそのことについて知らない状態である。

 

 

 

 

仮面ライダーヴァルキリー

 織斑万夏(マドカ)が戦極ドライバーとロックシードで変身する仮面ライダー。使用するロックシードはブルーベリーロックシード、ブラックベリーロックシード、リヴァイアサンロックシードの3種類である。

 基本形態のブルーベリーアームズは銃剣型(ライフルの銃口下部にナイフを取り付けた武器)アームズウェポンのブルーライフルを使った遠距離特化型の形態である。万夏の高い身体能力を活かし、相手の攻撃を軽い身のこなしで回避しながら、怒涛の連続攻撃で相手を追い詰める。

 ブラックベリーアームズは大剣型アームズウェポン、オニキスクレイモアを使用する重武装高パワー型の形態である。蛇腹剣のように可変するオニキスクレイモアを使った近距離~中距離戦を得意とする。重装甲ではあるが、万夏は相手の攻撃を最小限の動きで回避=鎧で受け流すといったスタイルのためアクロバティックな動きも披露する。

 リヴァイアサンロックシード、ファントムであるリヴァイアサンが変化したロックシードを使用したリヴァイアサンアームズは可変式銃剣型アームズウェポンであるリヴァイアガンソードによる距離に囚われない戦いを得意とする。このリヴァイアサンアームズは万夏の「未来を切り開く」という強い思いを反映し、相手の防御を一切無視してダメージを与えることができるという性質を有する。なお、攻撃面だけでは無く、防御面でも作用しており、大抵の攻撃には鎧にかすり傷すらも付けることは出来ない。



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仮面ライダー輝龍 登場仮面ライダー解説 ロード・エグゼリオン・ヘキサオーズ

仮面ライダーロード

 留芽颯斗がマッハドライバー炎とバイラルシフトカーで変身した仮面ライダー。ロイミュードの幹部であるハート、ブレン、フリーズの力で戦う仮面ライダー。重加速空間での活動ができる仮面ライダーである。基本形態にしてハートの固有能力デッドゾーンをコントロールして剛腕で戦うタイプデッドヒートハート、ブレンの持つ毒の生成能力と分析能力を発揮するタイプテクニックブレン、フリーズの持つ凍結させる力とスピード戦を得意とするタイプフォーミュラフリーズの3形態で戦う。颯斗自身がパワー戦を得意とするため基本タイプデッドヒートハートで戦闘することがほとんど。また、異世界からやってきたグロンギたちの魔石ゲブロンの欠片を活用して開発したバイラルシフトカービーストロンとビーストガンナーで強化形態であるビーストロードに変身する。

 ビーストロードはグロンギたちの能力の元となった動物の特性を混ぜ合わせた武器を生成して戦う。

 ロードタイプデッドヒートハートの切り札にデッドゾーンオーバーヒートがある。これは十三異界覇王の一体であるン・ダグバ・ゼバとの戦いで使用した。極めて短い時間、ハートのデッドゾーンのリミッターを解除し、周囲の物を自然に発火させるほどの高熱を発する。なお、自爆の危険性の他に変身者の颯斗へのダメージもあることから諸刃の剣とも言うべき力である。

 

 

 

 

仮面ライダーエグゼリオン

 桐ヶ谷陸がゲーマドライバーとカミカゼアクションガシャットで変身した仮面ライダー。スピードに秀でているカミカゼアクション、カウンターからの連続攻撃を得意とするキルキルサムライ、スピード特化であり激しいバトルスタイルが特徴のビーストコンバットと重武装高火力特化のバイラスハザードの2つを有するガシャットギアデュアルを使う。

 カミカゼアクションでは高いスピードを活かしながら三次元的な動きで相手を翻弄する戦いを得意をする。キルキルサムライではカウンターからの怒涛の連続攻撃を得意とし、1対1の戦いでは負けなしである。上記の他にドラゴナイトハンターZガシャットも所有しており、空中戦も得意とする。

 ガシャットギアデュアルの2つの形態はアマゾンたちへの対策として開発されており、溶原性細胞を始めとしたアマゾン細胞に対して大きなダメージを与えることができる。現在はアマゾン細胞の他にもインベスウィルスなどの様々なウィルスや細胞への対処ができるようにチューニングされている。

 

 

 

 

仮面ライダーオーズNEO

 岩城正則がオーズドライバーNEOと新造コアメダルで変身した仮面ライダー。トータルバランスに優れるハヤガコンボが基本形態である。鳥類系のコアメダルを使用して変身するのは、無音高速飛行が得意なヤブフシコンボ。哺乳類系コアメダルを使用して変身するパワーに優れるオオクガルコンボ、甲殻類系コアメダルを使用して変身する水中と水上の戦闘を得意とする敏捷性に秀でたシャドカブコンボ。ヤブフシコンボは無音高速飛行、オオクガルコンボは柔軟性と高いパワー、シャドカブコンボは再生能力と固有能力を有している。

 オーズNEOの最強形態はショッカーアンドゲルショッカーメダル、デストロンアンドデルザーメダル、ゴッドアンドガランダーメダルを使って変身するカルデルドーコンボである。ショッカーからデルザーまでの悪の組織の力を有するこの形態の力は強力である。現在はコアメダルが元に戻っていることから使用することはできない。

 正則は六連オーズドライバーとショッカーからデルザーまでの悪の組織コアメダルを使って変身することができる。六連オーズドライバーで変身した姿はヘキサオーズと呼ばれ、大剣型の専用武器であるメダバキボロスを使用して戦う。さらに、ヘキサオーズは背部の翼を使った飛行能力も有している。

 ヘキサオーズには機械を意のままに操作する固有能力を有している。そのため、機械の相手との戦いでは圧倒的に有利な環境で戦うことができる。6枚ものコアメダルを使用して変身しているため、作中でも屈指の戦闘力を誇る仮面ライダーである。また、正則と悪の組織コアメダルの相性がいいことも戦闘力の高さに直結している。

 



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仮面ライダー輝龍 十三異界覇王解説

前作、仮面ライダー炎竜十三異界覇王大戦編から本作仮面ライダー輝龍で登場した十三異界覇王についての解説です。本編の進行に合わせて情報を更新していきます。


獄炎龍覇王ファブニール

 最初に大樹たちが遭遇した十三異界覇王。見た目は紅蓮の竜の姿をしたオーバーロードで腰には戦極ドライバーを装着している。この姿は黄金の果実によるカモフラージュで本来の姿は輝龍の強化前の姿である仮面ライダー炎竜。変身を解除したその素顔は輝龍の変身者である大樹に酷似した青年である。

 黄金の果実を使った権能によってヘルヘイム植物とクラックの操作、インベスの使役を行える。それ以外には黄金の果実を使って複数の未来を疑似体験することで戦闘においては相手の行動を予測した戦いを行う。なお、ファブニール自身はオーバーロード化しておらず、生身の人間と変わらない肉体であるため能力を使った反動で実際の処は肉体は限界が近づいている。それでもなお、単体で複数のライダーを相手に対等に渡り合える卓越した戦闘力を有している。

 目的は不明。ただ、輝龍=大樹に何度も攻撃をするなど大樹に対して何らかの目的がある様子。イーヴィルアギトを逃がす際に大樹のことを「この世界の俺」というなど深い関係があると考えられる。

 使用するロックシードは炎竜が使っていたドラゴンフルーツロックシード、シークワーサーロックシード、パッションフルーツロックシードを使っていた。これらのロックシードの特性を完全に把握しており、戦闘に応じて使い分けている。さらに仮面ライダー鎧武極アームズとの戦いで初めて使ったファブニールロックシードを使った姿であるファブニールアームズは仮面ライダー鎧武と互角の戦いを見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 獄炎龍覇王ファブニール 真名 仮面ライダー炎竜 柏葉大樹

 大樹たちの前に立ちはだかった最初の十三異界覇王。

 その正体は並行異世界で生きた柏葉大樹本人である。自身の居た世界がヘルヘイムによる侵食と黄金の果実を巡る戦いで滅亡した。

 黄金の果実の力で複数の異世界を渡っているために実年齢は不明(最低でも40代)。その目的は滅ぶ可能性があった本編の大樹たちの世界を守るために、大樹の成長を促すことであった。前作、仮面ライダー炎竜において魔蛇=ビショップを通じて柏葉勇吾を世界征服へ駆り立てた。元々、デュアルギアはファブニールの物で、葛葉紘汰から鬼武者明智左馬之助を通じて大樹に渡した。

 自身の行いが他人を苦しめるものだと理解しながら、本編の大樹の成長を促すべく、敵として暗躍を続けていた。遂に大樹たちとの戦いに決着を着けるべくIS学園を再度襲撃する。その際に、過去の十三異界覇王やダグバたち倒された十三異界覇王の力を集めた邪王ロックシードを手にして、邪王アームズとなって大樹たちと最後の戦いを始める。大樹たちフューチャージェネレーションライダーとの決戦により敗北する。その直後、魔蛇により瀕死の重傷を負う。最後は大樹にファブニールロックシードとデュアルギアを託す。龍王アームズとなった輝龍の姿に満足し息を引き取った。

 魔蛇との戦いで呼び出されたアイアンマン=トニー・スタークにより元の世界へ戻り、死んだ愛する者達の近くで眠り続けることとなった。

 

 

 

 

 

 

純白鏖殺王ン・ダグバ・ゼバ

 仮面ライダーロード、颯斗が対峙した十三異界覇王。異世界の古代日本においてリント、グロンギを虐殺した果てに全てを破壊した。その姿は仮面ライダークウガが対峙した純白の姿と変わっていない。扱う能力は基本的には仮面ライダークウガ本編と変わりはしないが霊石の力によるものなのか頭を潰されようが体を半分に切られようがそこから再生するするという不死身の肉体を持っていた。現にファブニールの攻撃を受けて即座に再生しており、ロードとの決戦の際には頭が吹き飛ばされても体だけでロードを攻撃するといった行動が見られた。

 戦いにおける目的は不明、と言うよりは戦いそのものが目的だったと思われる。

 仮面ライダーロードが使ったデッドゾーンオーバーヒートによって再生する前に超高熱で細胞そのものを焼失させる作戦によって霊石ごと消滅させられた。

 

 

 

感染蒼獣王アマゾンネオ

 仮面ライダーエグゼリオン、陸が異世界からやって来た仮面ライダーである仮面ライダーアマゾンオメガと共に戦った十三異界覇王。元は仮面ライダーアマゾンズに登場する仮面ライダーの一人、作中の事件の根幹に関わる仮面ライダーアマゾンネオである。このアマゾンネオは最終的にアマゾンを率いて人間を捕食していった。だが、アマゾン達の食欲が満たされることは無く彼が居た世界は最終的にはアマゾン達が飢えるのを待つだけの世界となってしまった。同胞たちを救うために異世界へ侵攻するための力を得るため、戦いに参加。

 原作のアマゾンネオとは違い、アマゾン化をコントロールできる。アマゾン細胞が持つ驚異的な再生能力も有しているため並大抵の攻撃では致命傷まで追い込むことが難しい。

 アマゾン細胞を弱体化させるワクチンの開発に成功したエグゼリオンによって瀕死の状態まで追い詰められ、最後は伴侶のカラスアマゾン=イユと共にファブニールに倒された。

 

 

 

 

 

 

欲望獣心王オーズ・トゥルース

 仮面ライダーオーズNEO、正則が対峙した十三異界覇王でその正体は異世界の初代オーズ。原典とは違い全てのコアメダルの力を取り込み、まさに真のオーズへと至った存在である。その力ですべての大陸を制覇して自身の欲望のままに支配した。その結果、初代オーズが生きていた時代から技術革新などが起こることが無くなり、中世のままにオーズ・トゥルースが居た世界は停滞した。完全に世界そのものが無くなった、破滅したわけではないが停滞したままに滅びを待つだけの世界となってしまった。

 コアメダルを狙い鴻上コーポレーションを襲ったが悪の組織コアメダルを鴻上コーポレーションで保管しようと来ていた正則と戦闘を始めることになる。終始、タトバコンボでオーズNEOを圧倒し、さらには悪の組織コアメダルに大量のセルメダルを与えてグリードへと変化させた。駆け付けたオーズとバースを相手に全く劣ることなく戦っていた。

 最終的には真のオーズとなったことで手にしたトゥルースタトバコンボに変身して3人の仮面ライダーを相手に戦うがそれぞれが最強形態となった彼らに敵うはずもなく最後はオーズNEOカルデルドーコンボ、オーズスーパータトバコンボ、バース・デイのトリプルライダーキックを受けて撃破された。

 

 

 

漆黒進化王イーヴィルアギト 

 仮面ライダー輝龍、大樹が仮面ライダーアギトこと津上翔一と共に戦った十三異界覇王。異世界のアギトたちを率いており、その正体は異世界の津上翔一本人である。テレビ本編のアギトとは違い、仮面ライダークウガやグロンギと同じく霊石の力で人間が変化した存在である。アギトの霊石の他にクウガの霊石を取り込んでおり、相手の攻撃を受け続けると驚異的な進化を遂げる。作中では大剣を扱った近接戦闘に特化したフレイムタイタンフォーム、遠距離高速戦闘に特化したストームペガサスフォーム、仮面ライダーアギトバーニングフォームの力を吸収してバーニングフォーム、大樹が変身したアギトヴォルカニックフォームと翔一が変身した仮面ライダーアギトシャイニングフォームとの戦いでさらに進化を果たし、漆黒のグランドフォームへと変化して二人のアギトを追い詰めた。

 他のアギトたちはイーヴィルアギトに従っているわけではなく、コンドル種のグロンギであるドルドの命令の元で動いていた。

 精神が破綻しており、一見意思疎通が出来そうに見えるが実際には彼にしか聞こえない幻聴にだけ耳を傾けており、平常時の意思疎通は完全に不可能である。そのために目的はあくまでクウガ=五代雄介を護ることとしているが当の五代雄介はイーヴィルアギト自身が殺害している。

 最期は秋人が腰の霊石に神経断裂弾を撃ち、霊石そのもののダメージと共にアギトヴォルカニックフォームのヴォルカニックライダーパンチ、アギトシャイニングフォームのシャイニングライダーキックの連続攻撃で撃破された。

 

 

星滅蜘蛛王キルバス

 仮面ライダージオウが対峙している十三異界覇王。その正体はかつて仮面ライダービルドたちを苦しめた仮面ライダーエボルこと異星人エボルトの兄キルバスのパラレルワールドの存在である。たった一人でジオウ、ゲイツ、ウォズ、ツクヨミという強力な4人の仮面ライダーと互角に戦いことが出来るほどの力を持っている。

 ビルド、ジオウを始めとした総勢10名の仮面ライダーと激闘を繰り広げた。最終的には撃破されて細胞だけになったところをビルドの手によりボトルに封印されている。

 

時空氷結王ダークドライブ

 仮面ライダードライブが過去に戦った未来の仮面ライダードライブ、その力を奪ったロイミュード108、その異世界での同一存在である。チェルノブイリにてドラス、ゲムデウスと三つ巴の戦いをしていたがドラスに吸収されてしまった。ドラスの体内に手ファブニールに撃破された。

 

 

煉獄魔皇王アーク

 13の魔族の一つ、様々な神獣や魔獣の伝承を残したレジェンドルガの王である。変身前は一夏に酷似した青年だったが、このアークのいた世界でアークの器となったのが織斑一夏である。残った同胞である4体のレジェンドルガたちを引き連れ、大樹たちの世界へ現れた。その目的は絶滅寸前の一族の再興であり、そのために異世界へ侵略したのだった。彼のいた世界は彼らレジェンドルガとファンガイアの二度目の戦争によって荒廃した。

 アーク単体で見えない障壁、火炎弾、落雷、巨大な氷塊などを生み出して攻撃するほか、専用武器のアークトライデントは手に持たずとも自身の思考で動かすことができる。月の眼を吸収することでレジェンドアークへ進化する。進化後は身長15メートルに巨大化、月の眼から伸びた蔦で出来た肉体を巨大化したアークの鎧で強化している。進化後はその巨体で空中を飛び回り、無数の火炎弾を放った。最後は月の眼を白銀に破壊され、ウィザードにとどめを刺された。

 

 

 

 

 

新生鋼蝗王ドラス

 人工生命体、ネオ生命体が生み出した戦闘用ボディである怪人。無機物、有機物を吸収する能力を有しており、チェルノブイリで戦ったダークドライブとゲムデウスをその能力で吸収した。その結果、ドライブドライバーでの変身能力を獲得。ダークドライブとゲムデウスの力を融合したシフトカーで仮面ライダーに変身した。さらにファブニールを吸収し、沢芽市で猛威を振るった。最後はロード、エグゼリオン、鎧武によって撃破された。

 

 

電脳主神王ゲムデウス

 仮面ライダーエグゼイドがブレイブ、スナイプ、レーザー、ゲンムと協力して倒したゲーム仮面ライダークロニクルのラスボスのバグスターであり、その異世界での同一存在である。チェルノブイリでドラス、ダークドライブと三つ巴の戦いをしていたがダークドライブともどもドラスに吸収されてしまった。ドラスの体内にてファブニールに撃破される。

 

 

歪曲逢魔時王アナザーオーマジオウ

 

蒼炎永遠王仮面ライダーエターナル

 

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魔蛇(マージャ)

 十三異界覇王大戦を画策した存在。かつては仮面ライダー鎧武たちの前に立ちはだかった存在であり、ヘルヘイムの森のアバターの一体である。シーズン1にて大樹の兄勇吾の側近として藤村正東を名乗り暗躍した。勇吾が大樹の両親を殺害するきっかけを作ったのも魔蛇である。その目的は黄金の果実とは別の破壊の力を手にすることであり、ファブニールと共に十三異界覇王大戦を始めた。

 ファブニールとは表面上の協力関係を築いていたが、ファブニールが輝龍たちに敗北したことで裏切る。邪王ロックシードを使い、仮面ライダー魔蛇邪悪王アームズとなって鎧武たちを苦しめた。最後は輝龍龍王アームズと戦闘を行うも、究極形態となった輝龍に圧倒され、最後は龍王双牙撃を受けて撃破された。

 

 



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仮面ライダー輝龍 総集編1

 本編では断片的に語られていた大樹が最初の世界で戦っていた情報を総集編としてまとめました。前シーズンにおけるストーリーを簡潔にまとめていきます。今回はその最初の一つ目です。どうぞ。


 俺は柏葉大樹。戦極ドライバーとロックシードを使って仮面ライダーに変身してこの世界を守っている。これは俺と仲間たちがどんな出会いをして、どんな敵と戦って来たのかをまとめたものになる。これはその記録の一番最初、俺が最初に転生した世界での戦いを記録したものだ。俺がその世界の記憶があるうちに書き記したものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世界の最初の戦いの前に俺は少々奇妙な体験をしてきた。この世界に生まれる前の記憶、いわゆる前世の記憶があって前世でも仮面ライダーとして戦って来た。前世において記憶している限りのことをここに書き記していく。

 前世において俺は織斑一夏の友人の一人として過ごしていた。ある日、一夏がISを動かしたことで日本全国の同世代の男性を対象にIS適正検査が行われた。その時の俺は既に志望校に合格していたこともあって出来ることならIS学園への入学はしたくなかった。そもそも、一夏の友人たちの中で言えば俺は特撮オタクで、あの女子高に入って一から人間関係を構築するのに苦労することが目に見えていた。それに、一夏が超が付くほどの朴念仁であるために恐らくはその尻拭いをそちらでもすることになるのが嫌だった。私的なことを書いても良いならここで心置きなく書かせてもらうが俺と一夏の付き合いは小学校からになり、それこそ数えることを辞めるくらいにあいつが関わったトラブルとかも後始末と言うかフォローをしまくっていた。そ・れ・を!小・学・校・か・ら!9・年・間・も・だ!!そりゃ、高校に受かって一夏がIS学園に行くということになって「災難だなぁ、でも、俺は楽!」ってなったよ!!いや、人の不幸を笑うと罰って当たるもんだな。お察しの通り、俺も適正があってIS学園に行くことになったよ。

 学園に入学して最初にあったのはイギリスの国家代表候補生のセシリアと一夏の喧嘩を発端とするクラス代表決定戦だった。経緯に関してはまあお互いに国の悪口を言って、という流れで仲裁しようとした俺がそのとばっちりを喰らって巻き込まれたというあまりにも理不尽な経緯だった。あと、この時の俺に渡されたのは倉持技研の倉庫で眠っていた第2世代IS打鉄の試作機である打鉄零式というISで性能で言えば装備群の豊富さが特徴の打鉄というじゃあ訓練機を渡してくれよ!という奴だった。本当に、なんでこんな仕様のISを俺の専用機にするんだよ!って思ったよ。そもそも、剣道をやっていたとはいえずぶの素人が1週間で才能の塊の友人と代表候補生相手にまともにやり合えるなんて奇跡が起きるはずもないんだよ!!結果は試合にすらならななかった。正確にはセシリアとの試合は玉砕覚悟で突っ込んだら、地面に頭から刺さってた。いや、気付いたらもう視界が真っ暗でうん。それで地面から脱出しようとしたら全然出られなくて。その後は一夏との試合をせずに俺は試合そのものを辞退することになった。ブースターをふかし過ぎて頭から地面にツッコんで犬神家する奴と試合をするのはダメになり、さらにさらにはそんな奴をクラス代表にすると悲惨としか言えないということでクラスの皆の意見が一致した。それからはISの操縦をとにかく練習した。おかげでアリーナに何度ぶつかったことか...。

 訓練による生傷が着き始めてきたゴールデンウィークに俺は一度家に帰ることにした。その世界での俺の家族についてここで触れることにする。俺の両親である柏葉玲人、柏葉陽菜(二人ともこの世界での生みの親と同姓同名)は研究者をしていた。その詳しい研究内容は俺は知らなかったが遺伝子操作に関することをしていることは何となくだが聞いたことがあった。そのためか幼い頃から両親は家を空けていることが多かった。だから、俺自身も両親とは本当に数える程度しか会話をしていないと思う。愛情が無かったわけじゃないのは分かっているがすこぶる家族仲が良好というわけでもない家族だった。そして、俺の家族にはもう一人いた。俺の兄の柏葉勇吾だった。

 兄貴と俺は一夏と千冬姉ちゃんと同じくらいに年の差がある兄弟だった。兄貴は端的に言えば天才だった。それも本当に天才だった。努力するというよりも本質的には束姉ちゃんに近い存在だったと思う。周囲からほめたたえられることが多かった兄貴はそれはそれは尊大な人物だった。自分より劣っている奴は屑扱い、周りは道具同然、自分こそが全てなんていうはっきり言えば弟の俺から見れば本当に人間としては問題大ありな人物だった。そんな奴だから年齢を重ねるにつれて俺も兄貴のことが大嫌いになっていった。

 そんな俺の家族だが俺自身は、今も俺にとっては大切な家族の一つだ。それははっきりと言える。

 俺の家族の話は一度ここでお終いにしてゴールデンウイークにあったことを書こうと思う。俺の両親は共働きでそれも世間の休みなんて関係ないくらいに仕事があった。その休日にどう食材をやりくりしようかと考えて家に帰ったら父さんと母さんがすでに家に居た。この時は平日の夕方6時と普段であれば仕事でいないはずだった。その時はまあ珍しいこともあるもんだって思った。

 翌日、久しぶりに慣れた家で寝れた俺は大きくあくびをしながらリビングに来た時だった。

 

 「大樹、渡したいものがある。」

 

 そう父さんに話しかけられた。その時、俺の方では特に心当たりになるようなことは無かったはずだ。その時には母さんから父さんの話を聞くように言われ、俺は父さんとリビングの机を挟むようにして向かい合った。

 その時、父さんが机の上に出したのは銀色のアタッシュケースだった。どういった物が入っているのか全く見当も着かなかった。

 

 「中を見てみろ。」

 

 父さんの言葉に従ってケースを開けた。そこには小刀型のパーツがついた黒いバックルとドラゴングルーツ、シークワーサー、パッションフルーツがモチーフとなっている3つの錠前が入っていた。戦極ドライバーとロックシード、その世界に転生する前に俺が見ていた特撮番組に出てくる仮面ライダーへ変身するための重要なアイテムだった。

 

 「これって。」

 「戦極ドライバーとロックシード、極限状況下において使用することを想定されたパワードスーツを使うためのアイテムだ。」

 

 父さんの説明を聞いていたようで聞いていなかったと思う。目の前にあるのが俺が生きていた世界で映像越しで見ていたものと全く同じものだった。手に取ると玩具なんかじゃなくてしっかりとした重量を持っていた。

 

 「重装甲と大太刀による近接戦闘を行うドラゴンフルーツロックシード、錫杖を使った中距離戦を得意とする敏捷形態のシークワーサーロックシード、重火器による遠距離戦を行うパッションフルーツロックシードの3種類だ。」

 

 父さんが朱色のパインロックシード=ドラゴンフルーツロックシード、緑色のオレンジロックシード=シークワーサーロックシード、銅色のメロンロックシード=パッションフルーツロックシードの説明をした。そのすべてを手に取るがこれらも玩具なんかじゃない、金属の冷たくて重い感触が手のひらから伝わった。これらを見た時に俺は

 

 「IS、じゃないの。」

 

 と聞いた。IS、戦極ドライバーを見た時にその考えがよぎった。なんせ、神様転生の二次創作ではISのコアを加工して仮面ライダーの変身アイテムを作るパターンもあった。

 

 「いや、これはISとは全く別物だ。男性でも女性でも誰でも使えるものだ。」

 

 この説明で俺の中でこれがIS由来という可能性が完全になくなった。

 

 「なんで俺に?兄貴もいるじゃん。」

 

 この時、就職してから疎遠になっていた兄貴のことを口に出した。悔しいが人間として問題は大ありだったがどんなことでも常人を超える結果を出せる兄貴ではなく俺に渡すということに引っ掛かった。

 

 「いや、勇吾には頼めない。大樹にしか頼めないことだ。これを渡すというのはそういうことだ。」

 

 俺にしか頼めない、その言葉に嫌な予感がした。一夏との付き合いとかでもあったけど、俺はよく何らかの頼まれごとをすることが多い。それは大体俺以外にする人間がいないことが多かったりする。その中で、その世界で15年生きてきた中で最大級の、俺の残りの人生までも決定づけるような、それを引き受けたら最後もうこれまでのような平穏な生活に戻れない、そんなことをたった数秒の間に感じた。

 

 「これを使って実験生物、インベスと戦ってくれ。」

 

 その言葉を聞いた時に即座にやらないと言って戦極ドライバーを突っぱねればまだ違っていたかもしれない。いや、俺のことだ。なんだかんだ理由をつけてやらないと言っても引き受けていたと思う。そして、この時は俺の返事を聞く前に父さんがインベスの資料を渡してきた。それを見たときに「いや、拒否権ないじゃん」と思った。たぶん、顔には出ていただろうけど。

 この時、この世界で戦うことになった13体のインベスについて初めて知った。

 この世界におけるインベスはよく知られる仮面ライダー鎧武のインベスとは発生の経緯が違う。仮面ライダー鎧武では異世界を侵食するヘルヘイムの森の植物からなる果実を摂取した生物が遺伝子レベルで驚異的な変化を遂げたことで誕生する。インベスはヘルヘイムの森でなければ生存することが出来ないので作中では仮面ライダー鎧武こと葛葉紘汰たちのいる世界に出現しても長くは生きれない可能性が示唆されている。なお、ヘルヘイムの森と異世界をつなぐクラックから瞬時にヘルヘイムの森の植物が発生、増殖をするためにインベスたちがヘルヘイムの森の浸食を受けていない世界で飢え死にするということは無い(インベスが出現した=ヘルヘイムの森の侵略がほぼ同義であるため)。

 この世界でのインベスというのは遺伝子改造によって誕生した生物である。ベースになる生物に複数の生物の遺伝子を組み込むことで誕生した。元は遺伝子病の治療目的の技術をラットやモルモットなどに行うことで哺乳類でも使えるかどうかを実験の過程で誕生したのがこの世界のインベスである。元々、俺の両親は生物関係の、それも遺伝子に関わる分野で研究者をしていて、インベスの誕生も知っていた。

 逃げ出した13体のインベスは父さんから渡された資料のコードネームからスパイダー、スネーク、アント、イーグル、シャーク、ゴリラ、アンテロープ、Tレックス、ドラゴンフライ、ホッパー、ケラトプス、キマイラ、グリフォンと種類を分けられていた。絶滅した動物から幻獣まで、資料を見たときの詳細を見たときには背筋が凍ったものだけど。

 話は戦極ドライバーに戻すが、そもそもはISが出る前から構想があったもので父さんと母さんが勤めている研究所でやっと完成した唯一のものだった。それを俺に託すということ、それを使ってインベスと戦えということ、課せられたことの大きさだけを実感していた俺がその本質を知るのはあまりにも遅かった。

 学園に戻るとほどなくスパイダーのコードネームが付けられたインベス、クモインベスと戦うことになった。この時の俺はまだ十全に戦極ドライバーの性能を把握できていなかった。そもそも、学園内で変身するわけにもいかず、変身して各アームズの性能を確認するのも皆が寝静まった深夜だった。深夜に戦極ドライバー、基各アームズの特性を知るために変身していた時だった。俺が持っていた戦極ドライバーにはインベスたちが近くにいると即座に知らせるアラームがシステムに搭載されていて、変身している時にはインベスたちの接近を知らせることが出来る。俺はその知らせに従ってクモインベスが出現した場所へ向かった。

 この時の俺の移動手段にロックビークル、この世界でも使っているバイク型のロックビークルのハイビスカストライカーである。ハイビスカストライカーも戦極ドライバー、ロックシードと共に父さんから渡された。

 学園と本土はモノレールで結ばれていて、本土へ向かう移動手段はそれだけである。それを解消するためにハイビスカストライカーをよく使っていた。前の世界でのハイビスカストライカーはクラックを自動作成、では無かったが一定の速度を超えると目標地点に瞬間移動のような形で移動することが出来る。それを利用してインベスが現れた現場に即座に駆け付けることが出来ていた。

 初めての相手であるクモインベス、資料には粘着質の糸を臀部から形成された尾のような器官から出すことで巨大な蜘蛛の巣を作ることが出来ると書かれていた。さらにはタランチュラを超える毒性を有する毒液を牙から分泌することが出来る。まあ、大体の人間がクモと聞かれて想像する特徴を持っていると考えても良い。そこにさらには鋼鉄をかみ砕く強靭な顎と牙、100メートルを5秒台で走破する脚力、大人一人をグズグズの肉片に出来る剛腕を持っている。速い話がバ〇オハ〇ードに出てくるようなクリーチャー、それも中ボスクラスに相当する奴ということ。そんな奴が剣道をやっていた以外にはそこらの平均的な高校1年生男児の手に負えると?そんな俺の初戦闘は憧れていたヒーローのような恰好の良いものじゃなかった。

 クモインベスは郊外の森に巨大な巣を作っていた。四方八方に張り巡らされた奴にとって有利な環境は初戦闘の俺に即座に対応できるものでは無かった。まだアームズの適正に慣れていない俺は自分のアームズを使いこなすことが出来ず、三次元的な攻撃を繰り出すクモインベスに翻弄され、蜘蛛の糸でぐるぐる巻きにされて振り回された挙句何度も何度も地面に叩きつけられた。幸い、そこで変身が解除されることは無かったが。クモインベスは俺が食べられない(それもそうだ、硬い装甲で身を守ってんだから)と分かった瞬間にぐるぐる巻きにした俺を宙へ放り投げたのだった。その時の俺が見たのは山から見える深夜の街の風景だった。

 

 

 

 

 

 

 

記録2巻へと続く。



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仮面ライダー輝龍日常編第1話 正月

仮面ライダー輝龍、初の日常編です。正月と書いていますが、投稿時期はまさかの2月、、、ですが、正月メインと言うよりも前作の炎竜での日常編と同様です。それではどうぞ。


side大樹

 IS学園入学から始まり、兄貴との決着、颯斗が対峙した新たなロイミュード、フランスで起きたバグスターウィルスによるテロ事件と色々とあった。そんな今年は異世界からやって来た十三異界覇王という常識を超えた相手との壮絶な戦いだった。前世でのインベスによる事件から数えると何か悪いものが俺に憑いているのではないかと考えてしまう。いや、とんでもない神様には会ったな。もう、ほとんど覚えていないけど。

 そんな中で新たな事件が起きるかも(実際には兄貴が流したインベスウィルス関連のインベス退治がちらほら)と身構えていたが世界を揺るがすレベルがそう何度も起きることも無く、クリスマス=俺の誕生日から大晦日、年越しとなった。

 

 「お待たせ。」(万夏)

 「ん。」(大樹)

 

 そして、1月1日深夜1時。

 玄関前で厚着をしている俺は着物を着た万夏と一緒に初詣へ行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺と万夏が初詣に行くのは篠ノ之神社である。

 俺と万夏に限った話ではないが、千冬姉ちゃんや一夏、鈴や弾たち同年代の皆が初詣に行くのは篠ノ之神社である。ちなみに、こんな時間に初詣に行くのは俺と万夏だけ。俺と万夏はあまり人混みが多い場所は得意ではない(二人ともだいぶましになって来たが)ので町の人が寝入っているこの時間に神社へお参りするのが精神的に負担が少ない。今では、と言うよりも万夏と付き合い始めてからは二人だけで居たいのが一番の理由になってきた。

 

 「この時間にお父さんが連れて行ってくれたね。」(万夏)

 「俺、ものすごく眠かった記憶があるんだけど。」(大樹)

 

 元は万夏の父さん(十三異界覇王の一人であったアギトの事件から俺も父さんと呼ぶようになった)が俺と万夏を連れてこの時間に初詣に行っていたのが始まりだった。今思えば、いじめられることが多かった万夏に、事件のことで天涯孤独の俺に気に掛けてそうしたのだろう。ただ、小さい頃の俺は眠い目を頑張って開いて家から神社までの道を歩いてた。時折、寝てたけど。

 幼い俺と万夏を両手で繋いで、暗い道を怖がる万夏を励ましながら夜道の空を見上げていた父さん。神社に着くと俺と万夏にお参りの仕方を丁寧に教えて、俺と万夏よりも真剣に手を合わせて何かを祈っていた。

 

 (何を祈っていたんだろうな。)(大樹)

 

 空には満天の星空、この空を見ながら父さんは何を考えていたのか。

 

 (まあ、聞けば教えてくれるかな。)(大樹)

 「ねえ。」(万夏)

 「ん?」(大樹)

 

 万夏が俺に左手を差し出していた。その意図が何なのか、それ自体はすぐに分かった。

 いつの頃か万夏の手をつなぐのは俺の役目になっていた。

 俺は差し出された万夏の左手を右手で繋いだ。

 寒い真冬の夜中、つないだ手のぬくもりを感じていた。

 ふと、着物を着ている万夏を見る。紺色の着物に髪を結った万夏の姿は初めて見た姿だった。

 お世辞抜きに似合っていて、綺麗だ。そう言う感想よりも今まで一度も見たことないものの出所が知りたいのが先に来てしまうことに内心苦笑いするが、それくらいしか自分から話すきっかけがない。こんな時くらい気楽に話せるネタがない当たり、普段の自分の生活の質がたかが知れている。でも、こんな、こんな平和な時くらいは普通の恋人同士の会話をしたいのが普通だろう。

 俺は隣にいる万夏に声を掛ける。

 

 

 

side万夏

 繋いだ手から大樹の体温が伝わる。

 中学校の途中までは一緒に行けなかった初詣、中学3年生はやっと久しぶりに行けるようになった。

 小さい頃、お父さんも含めた3人で真夜中に歩いた道は町並みは変わっても変わらずにあった。

 小さい頃はこの暗い夜道が怖かった。そんな私を優しく連れて行ってくれたお父さん、お父さんに連れられてあくびをしながらも頑張って起きていた大樹。一夏兄さんと千冬姉さんは規則正しい生活をしているから一緒に来ることは無かった。

 お母さんはいつも私達を笑顔で見送って家で待っていた。夜遅くの初詣、3人で篠ノ之神社まで行ってお参りをして戻るとお汁粉を用意して待ってくれていた。

 熱いお汁粉と冷ましてもらっていると大樹がうつらうつらと頭を揺らしながら食べていた。

 前世ではこういう行事ごとになんて縁は無かった。それどころか、家族の温もりすらも無かった。

 前世の私にとっては手に持っていたナイフと強奪したISが全てだった。

 愛されていない、あの場所で聞かされたその言葉が私のことをずっと縛っていた。千冬姉さん、あの計画における最高傑作。姉さんの隣には一夏兄さんがいた。そこは私の場所だと、嫉妬に駆られていた私の前に現れたのが大樹だった。

 裏の世界のことなんて知らない一般人、突如として現れたイレギュラー。当時の私は会うその日まで何も思わなかった。でも、初めて会った日にそれが間違えだと思った。お世辞にもISの戦闘に慣れているとは言えなかった。それなのに、その姿はあまりにもそこにいたIS代表候補生と一夏兄さんよりも戦場にいることに違和感が無かった。その姿に、裏の世界を、戦場を知らない奴がどうしてそんなにも戦場に居た人間の佇まいで居られたのか興味を持った。その日の夜、一夏兄さんを強襲した時に変身した大樹と出会った。姿が違っていてもその立ち振る舞いからすぐに大樹だと分かった。

 大樹のことが会えば会う程に分からなくなった。そして、私は一夏兄さんへの嫉妬よりも、千冬姉さんへの執着よりも大樹のことが気になりだしていた。

 戦いの場で会うたびに私は大樹への興味を強めていった。その日が来るまではあくまで他の男とは違う程度にしか考えていなかった。

 私と大樹が初めて心を通わせた京都での出来事。その時に、私の中で大樹は興味を引く男性操縦者から好きな相手、愛する人に変わった。

 夜の京都、その時の戦いで一夏兄さんの白式が暴走した。私は、大樹と戦っていた。その戦いの最中で白式の暴走で私は黒騎士の制御を失った。大事にしていたペンダントを取ろうとした時に大樹が私を呼び掛けて手を伸ばして飛んで来た。

 私は大樹の手を掴むと大樹は私のことを抱きしめた。初めて誰かに抱きしめられた私は不覚にも胸がときめいた。

 私と大樹はそのまま地面に勢いよく落ちた。幸い、私は軽い傷で済んだ。でも、大樹は私を庇って左手を痛めていた。ISが待機状態になっている私達の前にアリに似た怪物、インベスが多数現れた。

 

 「こんな時に。」(大樹)

 

 そう言うと大樹はどこからか黒いバックル、戦極ドライバーを取り出して腰に装着した。

 

 「すぐに片付ける。そこを動かないで。」(大樹)

 

 そういうと大樹は仮面ライダーに変身した。私が初めて見た大樹の変身、ボロボロなのにその姿は変身した姿そのものの武士だった。

 

 

 

 

 

 

 「あの、さ。」(大樹)

 

 前世でのことを思い出している時に大樹が言葉を発した。

 

 「どうしたの?」(万夏)

 「その、着物さ。どうしたの?初めて見るけど。」(大樹)

 

 私が来ている着物についてらしい。見惚れている、と言うよりも今まで見たことないからどうしたのかということを聞いてきた。

 この着物を大樹に見せたのが初めてだからだと思う。だけど、彼女の初めての着物を見てどうしたのは無いと思う。開口一番に褒めるタイプじゃないのは知っているけど、少しは綺麗だねとかを率直に言って欲しい。

 

 「これ、皆と一緒に見に行った時に買ったの。どう?」(万夏)

 「ああ、似合っているよ。」(大樹)

 

 似合っている、悪くないけど。正直、それを言って欲しい訳じゃないのに。そんなことを思っていると大樹はそれを察したらしく、

 

 「それと、綺麗だよ。紺色、やっぱり似合うよ。」(大樹)

 

 と言ってくれた。

 こうやって、まっすぐに言ってくれるのは何度言われても嬉しい。

 

 「ありがと!」(万夏)

 

 私はそう言って、大樹の腕にしがみつく。こういうやり取りができることが私にとって何にも代えがたい幸せな時間。いつの日か、戦いが終わった時にこういうやり取りをずっとしていたい。そこに、お父さんとお母さん、お姉ちゃんに一夏兄さんが居て、隣に大樹が居て、私達の子どもがいるのが私の望む未来。でも、今は二人だけのこの時間を楽しみたい。

 冬の寒さも夜の暗さも気にならなくなっていた。

 

 

side大樹

 「あけおめ~、だい君、まーちゃん。」(束)

 「よっ。」(正則)

 

 篠ノ之神社の鳥居の前では束姉ちゃんと正則兄ちゃんが俺と万夏のことを待っていた。俺と万夏は二人に新年のあいさつをして神社の境内へ。

 俺と万夏の初詣のために篠ノ之神社ではその年の1月1日の日の出の時間までは参拝客が来ないようにしている(表向きは深夜におけるトラブルの回避のため)。

 そのため、この時間で初詣する参拝客は皆無である。俺と万夏はそのまま参拝の作法にのっとって初詣をした。

 おさい銭だが万夏は小さい頃にご縁があるようにということで5円玉を、神社の裏事情を子どもながらに知った俺はいつの頃か5円玉から財布にある小銭の半分(100円以上500円未満)をおさい銭として投げ入れている。

 

 

 

 

 おさい銭を投げ入れ、俺は居もしねえだろと思っていた神様にこれまでの無礼を詫びつつあることを願った、その願いが届くは別としてだが。でも、その願いと言うのは俺が自分の力で叶えられるようにしないと。その決意を、受け継いだ意思を胸に改めて誓う。

 参拝を終え、俺と万夏は福引を行う。毎年毎年、凶若しくは大凶という不吉なものが出てしまう俺の運勢。さあ、今年こそはこの不吉な文字から解き放たれるか!!いざ!!

 

 「こいつ!!」(大樹)

 「はい。」(正則)

 

 お金を渡し、その場でおみくじを見る。

 

 「来い!」(大樹)

 

 だが、虚しいかな。無情にもおみくじの文字は凶の一文字である。

 

 「あちゃ~、だいくん記録更新だね。」(束)

 「本当に面白いくらいに引くよな。」(正則)

 

 今年もどうやら凶と言う文字を背負うさだめにあるらしい。

 

 「束姉ちゃん、お祓いして。」(大樹)

 「10年物はどうしようもないかも。」(束)

 

 神社の跡取り娘の天災でも俺に憑いた凶と大凶を払うのは難しいらしい。

 それでもなお、今年はそんなに大きな事件が起きないことを祈りつつ、おみくじを結ぶ。

 

 「おし、帰る?」(大樹)

 

 ここまでの流れが終わり、俺は万夏に声を掛ける。

 

 「うん、良いよ。」(万夏)

 

 万夏も終わって家路に戻る。

 

 「ねえ、今年のおみくじは?」(万夏)

 

 手をつないで戻る中で万夏が今年の俺のおみくじについて聞いてきた。

 

 「今年も凶。」(大樹)

 「大凶じゃないなら大丈夫じゃない?」(万夏)

 

 そう、大凶については引いた年に必ず悪いことが起きていた。それを考えれば凶を引いたのなら今年も例年通りの1年になる、と考えてもまあ変ではない。

 

 「万夏はどうだった?」(大樹)

 

 俺がそう言うと万夏は引いたおみくじを出してきた。俺と違って結んでいないということはそういうことだ。

 

 「大吉。」(万夏)

 

 満面の笑みでそれを見せてくる万夏。大吉ならまああるけど、それだけが満面の笑みではない。

 

 「ここを見て。」(万夏)

 

 そう言った万夏が指を指したのは恋愛に関することだった。そこには順調、そのままであるべしとあった。なる程、そりゃ嬉しいわ。

 

 「今年もよろしく、万夏。」(大樹)

 「うん。」(万夏)

 

 そう言うと万夏が俺の顔を見つめて、顔を近付けてきた。

 俺も万夏に顔を近付ける。

 俺と万夏の唇が触れ合う。

 真冬の深夜、誰も見ない中でお互いの愛情を確かめ合う俺と万夏。冬の寒さの中、お互いの唇同士で伝わる熱が寒さも静けさも気にならなくさせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side万夏

 私が大樹の変身を初めて見た時、複数のアリインベスを前に大樹が赤い鎧を身に纏い、紅蓮の刀と銃と合体した刀の二刀流で戦った。

 その時、私を庇うために左手を痛めているはずなのに、大樹は痛めた左手をそのまま何の問題も無く使っていた。相手の命を奪う、それを目的とした大樹の剣はインベスの甲殻を砕いて、その下にある柔らかい部分を力任せに切り裂いた。

 大樹とインベスの戦いは、戦いと呼べるようなそんなものでは無かった。命のやり取り、殺すか殺されるかのやり取り。まさに殺し合いと呼ぶにふさわしい戦いだった。

 インベスから攻撃を受けて、一歩も退かず傷だらけになりながら戦う大樹の姿は私には無い強さがあった。でも、剣を振るうたびに、拳を振り下ろす度に、インベスを蹴り上げる度に大樹が苦しんでいるように見えた。その時にはそれがなぜなのか分からなかった。でも、私はIS学園に身柄を拘束されて大樹と話をするようになってやっと分かった。

 そもそも、大樹は戦いを好んでいなかった。必要だったから、そうせざるを得なかったから戦っていた。その戦いに勝つために相手を殺す術を自分で磨かなければならなかった。大樹は望んで戦っていたわけではなく、必要に迫られて戦っていただけだった。

 大樹は戦うために、傷を負った体を動かせるためにと薬に手を出していた。後になって大樹は体の傷よりも心の傷の方が深かったと思うようになった。その心の傷をごまかすために薬をしていた。麻薬ではないのがまだ良かったのかもしれない、でも、あの時の大樹は間違いなく薬物中毒だったと思う。身も心も文字通りすり減らして戦っていた。

 

 「それでも、戦えちゃうんだよね。」(万夏)

 

 初詣から帰って来てお汁粉を食べた後、すぐに寝てしまった大樹を見ている。

 大樹は自分の体も、心もごかますのが得意な人。誰よりも優しいから、誰かに心配を掛けさせたくないからそう言うことが出来てしまう。

 思うがままに生きることが出来ればまだ幸せだったかもしれない。でも、大樹はその生き方を出来るように育っていない。前世でも、この世界でもそれは根本的に変わっていない。

 

 「でも、大丈夫だよ。ずっと、私が居るから。ずっと一緒だよ。」(万夏)

 

 だから、私は今度こそは大樹のそばを離れない。大樹のことを守るにはきっとそうしないといけない。

 私はその決意を胸に抱き続ける。大樹が本当に戦う必要が無くなるその日まで。



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仮面ライダー輝龍 日常編第2話 クリスマス

 皆様、特別回のクリスマス回です。クリスマスということである怪人が出ます。ヒントは、最近Youtubeで登場しました。それでは、どうぞ!


side大樹

 ファブニールとの戦いが終わり、世はクリスマス。

 俺の生まれた日で、一夜に家族を失った日でもある今日この日。忌まわしい記憶と同時に、今の家族が祝ってくれるこの日。今年からは俺の弟として住むようになった修羅が主役(と言いながら、俺も主役だと言われるだろうけど)になるだろうクリスマスに俺は修羅へのプレゼントを買いにレジデンスへ来ていた。

 買い物を終え、レジデンスを出た時に街中でとんでもないものを見た。

 

 「クリスマスには、鮭を食え!!」(???)

 

 魚の怪人が鮭の切身を持って、街中の人々に迫っていた。人々は急に現れた魚の怪人が逃げていた。

 

 「インベス?オーバーロード?え、なんで鮭?え?」(大樹)

 

 喋る怪人が鮭を食えと切り身を持って人々に迫っている。さっきと同じことを繰り返し言っているけど、まじで目の前でそんなことが起きてた。あ、魚の怪人がこっちを向いた。

 

 「お前も鮭を食え!!」(???)

 「いや、なんでさ!?」(大樹)

 

 迫る怪人に俺はいつもどおりの動作で戦極ドライバーを取り出して、腰に当てた。

 この怪人との遭遇がいつも憂鬱なクリスマスがどこか愉快な、されど精神的にかなり疲れた一日になったのは間違いない。そして、それは俺だけではなかったとだけ言っておく。

 

 

 

side三人称

 大樹は知らないが、怪盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャーというスーパー戦隊シリーズがあった。毎年恒例のクリスマス回、ネットミームにまで発展したある怪人が初めて出てきたのがルパンレンジャーVSパトレンジャーである。

 異次元の犯罪組織、ギャングラーの構成員であるサモーン・シャケキスタンチン。この怪人の登場により現実世界ではクリスマスに鮭を食えというのが恒例となった。挙句の果てに農水省ともコラボしている。

 複数の異世界で、サモーンによるクリスマスの鮭テロ(と本作品では呼称)が毎年の如く起きるようになってしまったのだ。そんなことをつゆ知らず、大樹はいつもどおりに仮面ライダー輝龍ドラゴンフルーツアームズに変身してサモーンと戦い始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「え、弱。」(輝龍)

 

 戦闘開始数秒で輝龍の前にはボロボロになり地面に倒れたサモーンの姿があった。

 輝龍の転生前の知識は仮面ライダービルドで止まっている。さらに、この世界では十三異界覇王を除けば基本的にインベスを相手に戦ってきた。

 言葉を喋るインベスということでオーバーロードである可能性を考慮したうえで戦ったのだが、開始数秒ではなった数回の攻撃で既にサモーンが息も絶え絶えの状態になってしまったのだ。

 サモーン・シャケキスタンチンという怪人、戦隊で言うところの1話に登場する怪人でそれもクリスマスのコメディ色強めの話に登場した怪人である。基本、戦隊ヒーローが複数で対応するレベルの怪人だが、輝龍=大樹はここまでの激戦で早々苦戦することはない程度に実力のある戦士である。であれば、この結果も当然だろう。

 

 「き、貴様。よくも、やってくれたな!!」(サモーン)

 「ボロボロで倒れている状態で言われてもな。てか、あんたインベス?」(輝龍)

 

 倒れた状態で輝龍を睨むサモーン。対する輝龍は地面に倒れたままのサモーンにインベスかどうか質問してみた。

 

 「俺はギャングラーのサモーン・シャケキスタンチンだ!俺の力でこのクリスマスを鮭一色にしてやる!!」(サモーン)

 

 フラフラと立ち上がったサモーンが輝龍の質問に答える。

 

 「インベス、ではない?ギャングラー、って何?そもそも何でクリスマスに鮭?てか、なんで切り身を持ってんの?」(輝龍)

 

 ツッコミどころ満載のサモーンに困惑する輝龍。ここまで一見してふざけているように見える相手は初めてだった。

 輝龍にとって意思疎通のできる敵は軒並み相容れないような相手ばかりだった。今回のサモーンも意思疎通はできるがこれまでの敵とは別ベクトルで相容れない相手だった。

 

 「俺がクリスマスを鮭一色にする目的を教えてやろう!」(サモーン)

 「教えてくれるんだ。てか、フラフラなのに大丈夫?やっておいて、こんなことを聞くのもあれだけど。」(輝龍)

 「正直、かなりキツい。」(サモーン)

 「じゃあ、座ろう。俺も座るし、一応武器は置いておくから。」(輝龍)

 「ほう、お前案外いい奴だな。」(サモーン)

 「怪人にいい奴って言われてもな。」(輝龍)

 

 周りで人々がいる中で座り始める輝龍とサモーン。そんなこんなでサモーンは自身の目的を輝龍に話し始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 輝龍がサモーンの目的を聞いている頃、別の場所では颯斗と簪がクリスマスパーティーの買い物をしていた。

 

 「ねえ、かんちゃん。飾りとかはこれで良い?」(颯斗)

 「うん。帰ったら飾り付けしよう。」(簪)

 「じゃあ、次はパーティーの食べ物だね。」(颯斗)

 

 クリスマスパーティーに使用する飾りを買った二人は次の買い物へ向かおうとしていた。そこに、普段は見ないであろう光景が視界の端に捉えるまでは。

 

 「どうですか?北海道産の鮭です。このクリスマス、鮭も食卓に加えてみませんか?どうですか?」(???)

 

 魚の怪人が道行く人々に鮭の街頭販売を行っていた。それも様々な鮭料理の試食を提供しながら。

 

 「あれ、何?」(颯斗)

 「鮭の怪人?」(簪)

 

 道行く人々に試食を呼びかける魚の怪人、それは大樹が遭遇したサモーン・シャケキスタンチンと瓜二つだった。なお、こちらのサモーン(仮)は人々に試食を呼びかけるだけで常識的な行動をしていた。

 

 「鮭、鮭どうですか?はあ、流石に買わないよな。」(???)

 「あの〜。」(颯斗)

 

 その様子を見ていた颯斗と簪はサモーン(仮)に話しかけていた。

 

 「ああ、いらっしゃい。鮭、どう?」(???)

 「ええと、この時期に鮭の販売を?」(颯斗)

 「ああ、まあ。ええと、見てくかい?」(???)

 「あの、全然人が止まってませんけど。」(簪)

 「まあ、クリスマスに鮭を買う人はそんなに居ないよね。それでも、恒例というか、なんというか。」(???)

 

 はっきりとしない返答をするサモーン(仮)。

 颯斗ははっきりしないその話し方に、特殊な事情があると思った。なお、これはアニメオタクである彼特有の深読みとも言えるものだが。

 

 「あの、もしかして普通の人じゃないですよね。」(颯斗)

 

 颯斗の問いにサモーン(仮)がはっとしたようなリアクションを取った。

 

 「まあ、こんな格好だからね。」(???)

 「僕、留芽颯斗と言います。高校生で仮面ライダーやってます。何か困っているなら相談に乗ります。」(颯斗)

 

 颯斗と簪は持ち歩いているマッハドライバーをサモーン(仮)に見せる。

 

 「仮面ライダー!?君たちが!?」(???)

 「はい。話してくれますか?」(颯斗)

 

 颯斗の言葉にサモーン(仮)が話し始める。

 

 「俺はサモーン・シャケキスタンチン、とは言ってもこの姿の時はね。本当の名前は神一海(ジン カズミ)。ちなみに、こんな姿だけど本当は人間なんだ。北海道で漁師兼魚介類の販売をしている。」(神)

 

 颯斗と簪に自己紹介するサモーン(仮)改め神一海。

 

 「ここ2,3年は、クリスマスの時にはいつも怪人の力が強くなるんだ。それで、ここ最近はクリスマスにはこんな姿になってね。」(神)

 「怪人に変身、何かの特殊能力ですか?」(颯斗)

 「う〜ん、君たちは前世の記憶を持っているって言ったら信じるかい?」(神)

 

 神の言葉に颯斗は親友である大樹のことを思い出す。

 

 「もしかして、転生者なんですか?」(颯斗)

 「その反応からすると君も?」(神)

 「いや、僕じゃなくて友達がそうなんです。その、神さんのその力って?」(颯斗)

 「この姿に変身して鮭をきれいに捌いて、完璧に調理する力なんだ。お陰で三枚おろしは楽にできるよ。お腹の金庫は特に能力はないから保冷庫にして鮭を入れているんだ。」(神)

 

 神の説明を聞いて、脳内で「鮭を完璧に調理する力って、すごい限定的だなぁ。てか、お腹の金庫ってそんなふうに使えるの?」と思った颯斗。それは簪も同様だったらしく二人して微妙な表情をしていた。

 

 「ああ、まあ鮭を調理する力の怪人なんてね。生憎、戦うにはちょっとね。」(神)

 

 二人の微妙な表情を察して苦笑しながら話す神。傍目から見て魚の怪人のコスプレをしている販売員に話しかける高校生二人という奇妙な風景である。

 

 「でも、クリスマスの日に力が強くなるってどういうことなんですか?」(颯斗)

 「俺の力、サモーンは元々この世界とは別の世界の怪人で。クリスマスの時に鶏肉を奪って、鮭を押し付けていった怪人だ。まあ、特に破壊活動をしていないけどね。」(神)

 「鮭を押し付ける、嫌がらせじゃないですか。」(簪)

 「うん、元のサモーンは大好きな鮭を無理矢理押し付けていた迷惑な怪人だった。好きな食べ物をみんなに知ってもらいたいって気持ちは分かるけどそれは良くないだろ。サモーンの力を持っているけど、俺はみんなが幸せになれる形で鮭を食べてもらいたい。漁師をして、販売をしているからなおさら。」(神)

 

 そう言って神は颯斗と簪に試食の鮭を差し出す。

 

 「流石にクリスマスの時期に塩鮭は雰囲気が合わないと思って、鮭のムニエルにしてみたんだ。どうぞ。」(神)

 

 神から手渡された颯斗と簪は試食のムニエルを食べる。

 

 「っ!!美味しい!!」(颯斗)

 「うん、本当においしい。」(簪)

 

 試食のムニエルは程よい塩味とバター風味、レモンの仄かな酸味で鮭の旨味を十二分に引き出していた。プロの料理人が手掛けたとも思えるその味は颯斗と簪を虜にした。

 

 「これ、すっごい美味しいです!!今までで食べた鮭の中で一番美味しいです!!」(颯斗)

 「本当にすごく美味しいです。」(簪)

 「いやあ、そう言って貰えるのはありがたいな。試食はまだまだいっぱいあるけど食べるかい?」(神)

 「良いんですか!!頂きます!!」(颯斗)

 

 颯斗は神から試食のムニエルを受け取ると勢いよく食べ始まる。周りに居た人々は颯斗の様子を見て、近寄り始めた。

 

 「あの、うちに3切れ貰えるかしら?」

 

 最初に近づいた主婦が神にそう言った。

 

 「ええ、はい3切れですね。こちらになります。」(神)

 

 最初の主婦を皮切りに次から次へと鮭が売れていく。瞬く間に鮭は売り切れた。多くの人が買いに来たので颯斗と簪も手伝った。

 

 「いやあ、ありがとう。君たちのお陰で売り切ることができたよ。」(神)

 「いえ、試食ごちそうさまでした。」(颯斗)

 「売り切れることができてよかったですね。」(簪)

 「ああ、ありがとう。それと申し訳ないけど仮面ライダーの君たちの力を借りたいんだけど良いかな。」(神)

 

 神の言葉を聞き、颯斗と簪の表情が年相応の高校生らしい表情から戦いを知る戦士の表情に変化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「もう、どこでトラブルに巻き込まれているの?」(万夏)

 

 万夏は買い物からまだ戻ってこない大樹を探していた。

 織斑家でクリスマスパーティー+大樹と修羅の誕生日パーティー(元々は同一人物だった)の準備を家族としていた万夏。修羅のプレゼントを買いに行った大樹の帰りが遅いことから準備が終わった万夏が探しに出たのだった。

 なお、大樹のことをよく理解している万夏を始めとする織斑家一同は寄り道よりもどこかでトラブルに巻き込まれているだろうと予想していた。なお、その予想は間違っては居なかった。

 レジデンスの近くへ来た時、万夏は変身した大樹=輝龍の姿を見た。大樹がいることで安心すると同時に、変身していることで警戒レベルを一気に引き上げる。

 

 「大ちゃん!!」(万夏)

 

 急いで輝龍のそばに駆け寄る万夏。

 万夏の声に気付き、輝龍は振り返る。

 

 「万夏。どうして?」(輝龍)

 「どうしてって、帰りが遅いから。敵がいるの。」(万夏)

 

 万夏が来たことで輝龍は変身を解除する。

 変身を解除した大樹は腕時計を見る。

 

 「あ、時間大幅オーバーか。敵は居たけど、もう終わったよ。」(大樹)

 

 大樹は万夏に戦い終わっていることを伝える。その大樹の足元にはボロボロのサモーンの姿があった。

 

 「え、それってインベス?」(万夏)

 「インベスじゃない、と思う。ただ、すごく弱かった。」(大樹)

 

 万夏が来る前、サモーンの目的を聞いていた大樹=輝龍。

 

 「俺の目的はクリスマスを鮭一色に染めることだ!!クリスマスの風景であるチキンを消して、俺様の大好物の鮭にすることでこの世界を俺様のものにしてやる!!」(サモーン)

 

 輝龍の前で胡座をかいたサモーンは意気揚々と自分の目的を話した。なお、それを冷静に聞いていた輝龍。ただのイタズラをしている怪人かと思ったら、これまたおかしな考え方をしていた。

 この1年、十三異界覇王という強敵と戦っていた輝龍。世界征服を企んでいるのであれば、話は早かった。

 

 「じゃあ、世界征服を考えているならぶっ倒させてもらうぞ。」(輝龍)

 

 その言葉と同時に竜炎刀を振るいサモーンを斬りつける輝龍。強化をしていない一撃、それで十分であることを理解していた輝龍はためらいもなくサモーンを切り捨てた。それが万夏が来る前にあったことである。

 

 「じゃあ、おしまい?」(万夏)

 「確実に入ったから、もう動かないと思う。」(大樹)

 

 倒れて動かないサモーンを見る大樹と万夏。同じ頃、颯斗と簪は神と共に急いでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「じゃあ、この世界にそのサモーンがいるんですか!」(颯斗)

 「ああ。ここ2,3年で、俺のなかにあるサモーンの力がクリスマスに活性化した理由はそれだ。5年前にサモーン本人が現れ、世界征服を持ちかけられた。断ったから、こうなったけど。」(神)

 「ここ2,3年って十三異界覇王が出始めた時期だから。その影響で神さんの怪人化も。」(簪)

 「多分ね。奴はこの世界を征服するって言ってた。それを協力するように言われたけど、断ったんだ。」(神)

 「ああ!!だから、異世界関連は嫌なんだよ!!毎回毎回事件ばっかり!!」(颯斗)

 

 神が颯斗と簪に協力を頼んだこと、それはこの世界に来ているサモーン・シャケキスタンチンを倒すことだった。神は実は、この世界に転生した当初は自分の力をコントロールすることができたいた。それが変化したのは5年前だった。漁の準備をしている神の前にサモーン・シャケキスタンチンが現れたのだった。同じ能力を持つ神に世界征服を持ちかけたが断られたことで、クリスマスの日に怪人化するようにしたのだった。

 

 「実際にやつと会ったけど、戦えなかった。それを関係ない君たちにお願いするのはお門違いなのは分かっているけど。」(神)

 

 神が申し訳ないと締める。隣で走る颯斗は口を開く。

 

 「それは違います。僕たちは仮面ライダー、だから困っているなら助けるのは当たり前です。それが異世界の敵でも。」(颯斗)

 「ありがとう、颯斗くん。」(神)

 

 颯斗たちはいつもの如くブレンにサモーンの探索を任せていた。その結果、大樹=輝龍とサモーンが交戦していることを知り、そこへ急いでいた。

 

 「あ、居た!」(簪)

 

 簪が大樹と万夏、倒れているサモーンの姿を確認した。3人は大樹と万夏と合流した。

 

 「大樹!」(颯斗)

 「ん?颯斗、ってええ!?サモーンがもう一人!?」(大樹)

 「大ちゃん、驚いていないで!!」(万夏)

 

 突如現れたサモーン=神の姿に驚く大樹。万夏が戦極ドライバーを出して臨戦態勢になろうとしていた。

 

 「待って待って!ストップストップ!この人は良い人だから!」(颯斗)

 

 颯斗は急いで神のことを説明。それを聞いた二人は納得した。

 

 「俺と万夏以外の転生者、か。兄貴以外にも居たなんて。」(大樹)

 「でも、この人が言っていたサモーンは大樹がもう倒したよ。」(万夏)

 

 大樹と万夏の話を聞き、倒れているサモーンを見る3人。そう、普段であれば終わりである。普段であれば。

 

 「いや、サモーンはルパンレンジャーとパトレンジャーの世界の怪人だ。戦隊ヒーローの怪人は一度倒されると復活して巨大化する。」(神)

 「そういうことだ!!」(サモーン)

 

 神の説明を聞いた4人の前で倒れているサモーンが起き上がった。

 

 「よくもやってくれたな!お返しにお前たちを踏み潰してやる!そのためにお前の力を俺によこせ!!」(サモーン)

 

 そう言うとサモーンは神の中にあるサモーンの力を吸収する。

 

 「うっ!」(神)

 「神さん!」(颯斗)

 「よ〜し、これで!!」(サモーン)

 

 サモーンは神の中にあるサモーンの力を根こそぎ奪う。それにより、神が本来の人間の姿になる。それと同時にサモーンが50m大まで巨大化する。

 

 「さあ、この力でこの世界を俺様の思い通りにしてやる!クリスマスには鮭を食え!!」(サモーン)

 

 巨大サモーンは足を振り上げ、大樹たちを踏み潰そうとする。

 大樹たちはそれぞれ回避し、巨大サモーンを見据える。

 

 「神さんはここで待ってて。」(颯斗)

 「いや、でも。あそこまで巨大な敵は仮面ライダーの君たちでも危険すぎる。」(神)

 「大丈夫です。私達、負けませんから。」(簪)

 

 神に力強く言う颯斗と簪。

 大樹と万夏の隣に並び立つ。

 

 「さっさと終わらせよう。シュウのクリスマスパーティーと誕生日会があるんだ。」(大樹)

 「違うよ。シュウちゃんと大ちゃんの、だよ。」(万夏)

 

 大樹の言葉に対して万夏が修正する。特に、大樹のことを強調して。それを隣で聞く颯斗と簪。

 

 「じゃあ、早く終わらせないとね!」(颯斗)

 「うん、私達もお姉ちゃんたちが待っているから。」(簪)

 

 家族が待っていること、クリスマスという1年に一回の特別な日であることから4人は決意を改める。

 4人は同時にドライバーを装着し、叫ぶ。

 

 「「「「変身!」」」」

 

 仮面ライダー輝龍、仮面ライダーヴァルキリーブルーベリーアームズ、仮面ライダーロードタイプデッドヒートハート、仮面ライダーロードレディに変身した4人。

 輝龍は竜炎刀の切っ先をサモーンに向ける。

 

 「この戰場、俺たち仮面ライダーが勝ち取る!」(輝龍)

 

 力強く宣言する輝龍。4人の仮面ライダーは同時にサモーンに飛びかかり、攻撃する。

 4人の仮面ライダーの攻撃を受けて倒れるサモーン。いくら巨大化したとはいえ、輝龍ドラゴンフルーツアームズの強化していない攻撃で大ダメージを受けるサモーン。巨大化したところで4人の仮面ライダーの敵ではない。

 

 「よし、この巨大鮭を一気に料理するぞ。万夏と簪は遠距離攻撃で動きを止めてくれ。俺が斬った後は、颯斗がとどめを刺してくれ。」(輝龍)

 「分かった!」(ヴァルキリー)

 「うん。」(ロードレディ)

 「こんがり焼いてやるぜ!!」(ロード)

 

 ヴァルキリーとロードレディはお互いのシステムを同期、ヴァルキリーの攻撃を強化させる。

 ヴァルキリーはブルーライフルの銃口をサモーンに向けて、引き金を引いた。

 放たれたレーザーはロードレディの操作により、ある一点から複数に枝分かれしてサモーンを撃ち抜いた。

 

 「ぎゃああ!!」(サモーン)

 「今度は手加減なしだ、喰らえ!!」(輝龍)

 

 輝龍は無双セイバーナギナタモードにロックシードをセット、サモーンの脳天に刃を突き立て股下まで一気に斬り裂いた。

 完全に息も絶え絶えなサモーン。そこへ空中に飛び上がったロードが右腕を引いていた。

 

 「デッドゾーンの向こう側まで付き合えっていつもなら言うけど、今日は特別!絶品ムニエルにしてやる!!」(ロード)

 

 赤熱化した右腕を勢いよく前に突き出した。空気の摩擦で発火、必殺のデッドヒートパニッシュがサモーンの胸部に炸裂した。

 

 「がああああああ!!クリスマスには鮭えええええええええええ!!」(サモーン)

 

 断末魔を上げてサモーンは炎上、消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから1時間後、織斑家では大樹と修羅の誕生日会とクリスマスパーティーが行われていた。

 

 「よし、シュウ。これ、兄ちゃんから。」(大樹)

 「兄ちゃん、ありがとう!!」(修羅)

 

 修羅は受け取ったプレゼントの箱を開封、中に入っていたおもちゃで遊び始める。それを穏やかな笑顔で見る大樹。

 

 「じゃあ、大ちゃんにもプレゼント。」(万夏)

 

 そう言うと万夏がある紙を大樹に見せる。

 

 「ん、これ婚姻届。どうして。」(大樹)

 「大ちゃんのプレゼント、大ちゃんの欲しいものを考えたらそれが一番だと思って。」(万夏)

 

 すでに万夏と秋人と春奈、正則と束の署名の入ったそれは万夏の隣の欄だけが未記入だった。

 

 「私達と家族になろう。心だけじゃなくて、本当の意味でも。」(万夏)

 

 万夏を始めとした織斑家の人々が考えた大樹へのクリスマスプレゼント、それは自分たち家族だった。

 

 「いや、でも。」(大樹)

 

 紙と万夏たちを何度も見る大樹。心の準備ができていなかった、考えても居なかったもの。もう二度と手に入らないと思ったもの、渇望していたものが予期せぬ形で目の前で現れた。

 

 「兄ちゃん、泣いてる?」(修羅)

 「え?」(大樹)

 

 おもちゃに夢中だった修羅が大樹の顔を覗き込む。気付かぬ内に涙を流していることに自覚する大樹。

 

 「いや、大丈夫だよ。うん、嬉しいんだ。」(大樹)

 

 涙を拭き、大樹は万夏を織斑家の人々を見る。

 

 「もう、みんな俺の家族だと思ってた。そうだね、本当の意味でも家族にね。」(大樹)

 

 そう言って婚姻届を受け取る大樹。

 

 「来年、みんなで役所に行こう。大樹が18歳の誕生日を迎えたらそうするのが良いって、そう話し合ったんだ。」(秋人)

 「あなたはうちの子、それは変わらないわ。だからこそ、そういう形がある方があなたもいいと思ってね。」(春奈)

 「万夏のことをよろしくな、大樹。」(千冬)

 「親友から、兄弟になるんだな。なんか良いなって思ってさ。」(一夏)

 

 言葉をかけられるたびに涙があふれる大樹。そうしたかった、でも、迷惑になるかもしれないと思っていた大樹。

 

 「1年後に結婚、してくれる?」(万夏)

 

 そして、万夏からの逆プロポーズの言葉。それに対して涙を流しながら笑顔を見せる大樹。

 

 「うん、結婚しよう。絶対に幸せにするから。」(大樹)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ありがとう、颯斗くん。」(神)

 「僕の方こそありがとうございます。」(颯斗)

 

 颯斗と簪は挨拶をしたいと訪ねてきた神と会っていた。

 

 「神さんはどうするんですか?」(簪)

 「まだ、年内の仕事があるからね。君たちと出会えてよかった。やっぱり、好きな魚を美味しそうに笑顔で食べてもらうのは良い。それを二人の姿を見て、改めて思ったよ。」(神)

 

 神にとって颯斗と簪と会えたことは良かったことだった。力を失ったものの、自分の仕事に改めて誇りを持つことができたのだ。

 

 「お礼に、良い鮭が入ったら送るよ。」(神)

 「良いんですか!!」(颯斗)

 「あの、大丈夫ですか?お金とか。」(簪)

 「良いよ、お金は。じゃあ、元気で。」(神)

 

 そう言って神は北海道へと帰っていった。それから、毎年の秋に神から秋鮭が送られるようになった。

 颯斗が送られてきた鮭を三枚おろしにしようと四苦八苦することになるのは別の話。




 ギャグ多めの予定でしたが、実際に書いてみるとラストは感動系になりました。まあ、こんな話もいいのではないのでしょうか。それでは、皆様。良きクリスマスの夜を。



 登場怪人
 サモーン・シャケキスタンチン
 「怪盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」に登場した怪人。クリスマスの鮭ネタの始まり、現実世界の侵略を成功させたという稀有な怪人。なお、作中では2大戦隊を相手に互角に渡り合うという実力を見せた。今回の話に登場したのはルパンレンジャーVSパトレンジャーの世界で撃破された本人で十三異界覇王たちの影響で復活した存在。
 輝龍たちと戦うも、ファブニールを始めとした十三異界覇王と戦った輝龍たちの敵ではなかった。


 登場人物
 神 一海
 北海道で漁師兼魚介類の販売を行っている男性。見た目は「獣電戦隊キョウリュウジャー」のキョウリュウブルーこと有働ノブハル(仮面ライダーギーツで最速退場した仮面ライダーシローの人)。
 サモーンの力を持って転生した転生者だった。事件後、颯斗と簪と交流が続くことになる。


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デイゴッドコラボ 輝龍×ディゴッド NOVEL大戦 輝神撃龍

 神谷陸さんとのコラボ、仮面ライダーディゴッドとのコラボとなっています。プロローグや各話は神谷陸さんの仮面ライダーディゴッドにあります。そちらを読んでいない方はリンクからどうぞ!


 それでは、どうぞ!!


 仮面ライダーディゴッド世界を救う旅 https://syosetu.org/novel/118371/


side三人称

 遊園地を襲った氷のオーバーロードインベス=オーバーウェンディゴインベスを撃破した輝龍たち。

 その前に突如して姿を見せた闇のオーバーロードインベス、オーバーアポピスインベス。さらに、元守護者ゼウスとの戦いを終えた仮面ライダーディゴッド、ディフェンド、ツヴァイが輝龍、大樹たちの世界へやって来たのだ。

 

 「なる程。このままでは分が悪いようだ。」(オーバーアポピスインベス)

 

 オーバーアポピスインベスは灰色のオーロラを通ってその場を立ち去った。

 

 「どうする?」(ロード)

 「行くしかない。向こうの陣地に行くから罠だろうけど。」(輝龍)

 「罠でも、行くしかないなら。」(ヴァルキリー)

 

 オーバーアポピスインベスがオーバーウェンディゴインベスと関係があることを察した輝龍たちはオーバーアポピスインベスを追うことを決意する。

 

 「待ってくれ、俺たちも行く。」(ディゴッド)

 

 ディゴッドの言葉にロードとヴァルキリーは初対面に彼らの言葉に輝龍に視線を向ける。

 

 「分かった。一緒に行こう。」(輝龍)

 

 輝龍のその言葉に彼らは灰色のオーロラの先へ足を踏み入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 仮面ライダー輝龍 ディゴッドコラボ

 

 

 

 輝龍×ディゴッド NOVEL大戦 輝神撃龍

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「来たか。」(覇道)

 

 輝龍たちを灰色のオーロラの先へ待っていたのは漆黒の鎧を纏ったアーマードライダーだった。

 仮面ライダー覇道、輝龍とディゴッドの世界で起きた事件の黒幕である。

 

 「どうして俺達を襲った。」(輝龍)

 「忘れたとは言わせないぞ、柏葉大樹。お前は俺の覇道を遮った。弱者には恐怖を、強者には圧倒的な力を振るいねじ伏せる。この俺の矜持に賭けても貴様を亡き者にする。そして、仮面ライダーの始祖ディゴッドよ。お前が居てはいつかは我が覇道の邪魔となる。ここで共に死んでもらおう。」(覇道)

 

 輝龍の言葉にそう答えた覇道。その答えに輝龍は心当たりはなかった。だが、自身を狙って数々の人々を巻き込んだ相手に輝龍は静かに怒りを燃え上がらせる。

 ディゴッドは数多の世界を救って来た。その自分を狙って来た覇道を警戒する。

 

 「なら、あんたをここで倒す。」(輝龍)

 

 輝龍の声音から殺気を感じた覇道。

 

 「そうだ、その立ち上がる殺気。俺が対峙したのはお前だ。さあ、ここで決着を着けさせてもらおう。」(覇道)

 

 覇道の言葉に応じるかのように輝龍、ディゴッドたちを囲むように怪人たちが現れた。過去に輝龍とヴァルキリーが戦ったインベスたち、ロードに力を与えるハートたちロイミュードの素体、ディゴッドたちが旅をしてきた各世界の怪人たちがその場に集まっていた。

 

 「ロイミュードの素体、それ以外にもグロンギたちも!?」(ロード)

 「クモ、アリ、ゴリラ、俺が戦ったインベスたちも居るのか。」(輝龍)

 「インベス以外も見たことない奴らも。」(ヴァルキリー)

 

 かつて戦った敵が目の前にいる事実、それがこの場において自分たちをはるかに超える数で立ちふさがっているのだ。

 

 「理沙、海里。気を付けろ。」(ディゴッド)

 「ええ。」(ディフェンド)

 「うん。」(ツヴァイ)

 

 まさに大軍である敵の軍勢を前に気圧されるも各々の武器を手に取り構える仮面ライダーたち。それを見た覇道は怪人軍団に指示を出す。

 

 「やれ。」(覇道)

 

 覇道の指示に怪人軍団が輝龍・ディゴッドたちに殺到する。

 殺到する怪人軍団、圧倒的な数の差に怯むことなく仮面ライダーたちは立ち向かう。

 輝龍とヴァルキリーは即座に背中合わせになってあらゆる方向から殺到する怪人たちに攻撃する。

 一人で殺到してくる怪人たちを次々と殴り飛ばしていくロード。時折、奇声を上げるがそれと同時に怪人たちが宙へ飛んでいくというおかしな様子が出来上がっていた。

 

 「あああああ!!なんで、異世界ってなるとこんな目に遭うのさアアアアアア!!(# ゚Д゚)」(ロード)

 「「ウルサイ颯斗!!」」(輝龍、ロード)

 「ふぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!」(ロード)

 

 ここまでに異世界関係で事件に巻き込まれているロードは不満を叫ぶがそれを輝龍とヴァルキリーは一蹴する。そもそも、前世から戦いに身を置いている輝龍とヴァルキリーからすればこの状況もそう苦ではない。

 

 「大樹。私が援護するから気にしないで行って!!」(ヴァルキリー)

 「分かった!!」(輝龍)

 

 背中合わせで戦っていたがヴァルキリーは援護射撃によって輝龍の道を切り開く。

 輝龍はヴァルキリーの援護射撃を受けて、光龍剣と龍炎刀・陽炎の二刀流で大勢の敵を一気に切り伏せていく。

 輝龍が切り伏せた敵は次々と爆散する。

 輝龍は距離を取って見ている覇道を見据える。ここまでの事件の元凶に対して闘志を静かに燃え上がらせて怪人たちを切り伏せていく。自らの進む道を阻む者を容赦しない、その意思を隠すことなく突き進んでいく。

 

 「死にたい奴から来い。切り伏せてやる。」(輝龍)

 

 次から次へと殺到する怪人たちに言い放つ輝龍。戦いは始まったばかり、目の前の強敵を前に静かに燃え上がる闘志は敵を屠る刃となる。

 輝龍は覇道に立ち向かうべく、両手に携えた2本の剣を力強く振るう。

 

 

 

 

 

 

 同じく怪人軍団の猛威を受けるディゴッド、ディフェンド、ツヴァイ。だが、彼らも数々の戦いを潜り抜けてきた戦士である。

 ディゴッドの前にセイリュウインベス、ライオンインベス、スコーピオンロード、ビートルロード、複数の素体ロイミュードが立ちはだかり襲い掛かる。

 

 「まずは、これから行くか!」(ディゴッド)

 

 ディゴッドは鎧武が書かれたカードを取り出し、ディゴッドドライバーに読み込ませた。

 

 ≪カメンライド、鎧武!≫

 

 ディゴッドの姿は鎧武へと変化、ディゴッド鎧武は無双セイバーと大橙丸を召喚してインベスたちを撃破する。そこへスコーピオンロードとビートルロードがそれぞれの武器である盾と手斧、鉄球を光の輪から取り出してディゴッド鎧武に襲い掛かる。

 ディゴッド鎧武はスコーピオンロードとビートルロードの攻撃を躱しながら、今度はアギトのカードを取り出す。

 

 ≪カメンライド、アギト!≫

 

 今度はアギトのカメンライドしたディゴッド。襲い掛かる2体のアンノウンの攻撃を躱し、カウンターの一撃を次々と決めていく。

 ここまでのディゴッドの変身を見て、輝龍は共に戦った鎧武とアギトの姿にディゴッドが変身したことに内心驚いていた。

 

 「紘汰さんと翔一さんと同じ姿に。」(輝龍)

 

 かつて、柏葉大樹として生まれる前に生きた世界で同様の能力を持つ仮面ライダーのことを知っていた輝龍。だが、今ではその記憶は薄れてきており、この場ではそのことに気付くことは無かった。

 無数の敵を倒す中で輝龍は覇道へと迫る。

 あと一歩と言うところで、輝龍の足元から突如として漆黒の刃が現れた。

 現れた漆黒の刃は輝龍へと襲い掛かる。

 咄嗟に躱した輝龍に次々と漆黒の刃が足元から現れる。

 

 「なんだよ、一体!?」(輝龍)

 「それこそが、私の能力です。」(オーバーアポピスインベス)

 

 突如として始まった攻撃の主であるオーバーアポピスインベスは無数の怪人たちの足元から伸びる陰から出てきた。

 

 「私の能力は影を操り様々な攻撃を繰り出すことができることです。」(オーバーアポピスインベス)

 「種明かしされても突破しようがないだろ、それ。」(輝龍)

 

 オーバーアポピスインベスの言葉に毒づく輝龍。

 影から攻撃を繰り出すということは自身の足元を常に注意する必要があるということである。それを戦う間ずっと行うのは至難の業である。

 どうにか、突破できないか輝龍が考えあぐねいていたその時だった。

 どこからバイクの轟音が響き、次々と怪人たちがはねられていく。

 輝龍とオーバーアポピスインベスの間に、突如として現れたバイクが止まった。

 バイクを操縦していたのは、一目で女性と分かるプロポーションをした人物だった。その人物は体のラインがくっきりと分かるヒョウ柄のキャットスーツに、ヒョウを模した仮面をしていた。

 

 「あなたは?」(輝龍)

 

 輝龍は突如として現れた人物に訊ねた。

 

 「それは後で良いかしら。今は、先を急いで。」(???)

 

 その人物は輝龍に先を急ぐように言った。

 輝龍はその場を現れた彼女に任せ、自分は怪人たちを倒しながら覇道の元へ急ぐ。

 

 「あなたは何者でしょうか?見たところ、我々の味方ではなさそうですが。」(オーバーアポピスインベス)

 「私の名前は仮面ライダーキャットレディ、今はあなたたちの敵よ。」(キャットレディ)

 

 オーバーアポピスインベスの問いに答えた仮面ライダーキャットレディ。その彼女に対して、オーバーアポピスインベスは彼女の足元の影から無数の漆黒の槍を突き出す。

 キャットレディはオーバーアポピスインベスの攻撃を察知して、宙高く跳び上がった。

 

 「無駄ですよ、どこにいようと影がある限り私の攻撃からは逃れられない!」(オーバーアポピスインベス)

 

 オーバーアポピスインベスの言葉を証明するように空中のキャットレディは今度は無数の漆黒の牙が襲い掛かる。

 キャットレディは空中に居ながらオーバーアポピスインベスの攻撃を軽やかに躱していく。彼女の力のベースになったのはヒョウ、猫科の動物の特徴であるしなやかを存分に発揮する彼女に攻撃を当てるのは難しいことだった。

 

 「ならば、これはどうですか!!」(オーバーアポピスインベス)

 

 オーバーアポピスインベスは奥の手を出した。周囲の影を操り、それを一つにして巨大な漆黒のドームへ変えた。

 空中から着地したキャットレディは周囲の環境が変化するのを見ていた。

 

 「この空間は全てが影です。漆黒の闇から放たれる攻撃を流石のあなたも躱すことはできまい!!」(オーバーアポピスインベス)

 

 オーバーアポピスインベスの言葉を証明するようにキャットレディを取り囲むように攻撃が放たれた。

 漆黒の刃が、槍が、牙が、爪が、彼女の豊満な肉体を切り裂こうと襲い掛かったのだ。

 攻撃が殺到する中、キャットレディの姿が完全に隠れたかに見えた。

 

 「ふう、さて私はファブニールを追うとしましょうか。」(オーバーアポピスインベス)

 

 そう言って、オーバーアポピスインベスが背を向けた時だった。

 

 ガキン!!

 

 「ぐあっ!!」(オーバーアポピスインベス)

 

 オーバーアポピスインベスは背後に強い衝撃を受けた倒れる。

 

 「確かに危なかったわ。」(キャットレディ)

 

 その犯人は攻撃を受けて死んだかのように見えたキャットレディだった。

 

 「バカな!あの攻撃を躱すなんて!!」(オーバーアポピスインベス)

 「猫は夜目がきくのよ。ここのような漆黒の闇なんて大したことは無いわ。それに、あなたの攻撃をそのまま足場にさせてもらったの。」(キャットレディ)

 

 逃げ場のない攻撃を足場にして回避したキャットレディはそのままオーバーアポピスインベスを攻撃したのだった。

 

 「さあ、これで終わりよ。」(キャットレディ)

 

 キャットレディは腰にあるキャットドライバーを操作する。

 

 ≪ビューティービーストアーツ!レオパルドストライク!!≫

 

 ドライバーから力が開放され、キャットレディが宙高くジャンプする。

 空中で華麗に一回転するとその勢いのままにキャットレディは右足をオーバーアポピスインベスに突き出した。

 オーバーアポピスインベスの胸部にキャットレディのライダーキック=レオパルドレッグが炸裂する。

 

 「覇道様、お許しを!!」(オーバーアポピスインベス)

 

 断末魔の声を上げてオーバーアポピスインベスは爆散した。

 

 「さあ、次はあなたたちと戦いを見せて。」(キャットレディ)

 

 そう言うとキャットレディは覇道の元へ向かう輝龍とディゴッドを見るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 輝龍とディゴッドは遂に仮面ライダー覇道の前にたどり着いた。

 

 「ふむ、やはりここまで来たか。」(覇道)

 

 そう言うと覇道は自身の武器である覇王剣を握り、輝龍とディゴッドに襲い掛かる。

 覇道の攻撃を躱しながら、初めて出会ったはずである輝龍とディゴッドは卓越したコンビネーションで攻撃する。繰り出す攻撃すべてが防がれるなかで、ディゴッドは自身の最強形態である光闇状態へ強化変身する。

 

 「輝龍、俺の光の力を受け取ってくれ!!」(ディゴッド)

 

 ディゴッドから光の力を受け取った輝龍はゴールドドラゴンフルーツアームズから黄金の竜騎士バハムートアームズに強化変身した。

 強化変身した二人の仮面ライダーは覇道に向かって、強烈なパンチやキックなどの格闘戦で追い詰める。

 

 「ふむ、そう来なくてはな。」(覇道)

 

 覇道はそう言うと銀色の極ロックシード=究極ロックシードを取り出す。

 究極ロックシードを自身の戦極ドライバーにセットしている覇王ロックシードと合体させた。

 

 ≪究極アームズ!覇の道、オンステージ!≫

 

 その姿をより禍々しいものへ変貌させた覇道。

 覇道はかつては仮面ライダーマルスが使っていたアップルブリンガーを、フィフティーンが使っていた黄泉丸を両手に持ち、輝龍とディゴッドに襲い掛かる。

 強化されている二人の仮面ライダーは究極アームズに変身した覇道の攻撃に基本形態まで追い詰められてしまう。

 

 「こうなったら、あれを使うか。」(ディゴッド)

 

 ディゴッドはそう言うと輝龍と光龍剣が描かれたカードを手にする。

 

 ≪ファイナルフォームライド、輝、輝、輝龍!≫

 

 ドライバーにカードをセットして輝龍の背後に回るディゴッド。

 そのディゴッドの動きに訳が分からずにいる輝龍。

 

 「さあ、行くぞ!」(ディゴッド)

 「え、何々!?」(輝龍)

 

 輝龍が焦る中でディゴッドは輝龍の背中に手をやる。すると瞬く間に輝龍は巨大な光龍剣へ、輝龍光龍剣へ変形したのだった。

 

 「え、ええええええ!!」(輝龍)

 

 突如の変形を驚く輝龍。確かに、いきなり剣に変形とは当の本人は非常に驚きだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うおおおおお!!」(ロード)

 「はあ!!」(ツヴァイ)

 

 別の場所で戦っているロードとツヴァイはまさに高速の戦いを繰り広げていた。

 ロードは高速戦闘を行うタイプフォーミュラフリーズへ、ツヴァイはアクセルフォームへ変身し並み居る敵を一掃するのだった。

 

 「やるね、君。」(ツヴァイ)

 「僕も仮面ライダーだからね。」(ロード)

 

 ロードの戦い振りを称えるツヴァイ。彼女からの賞賛に胸を張るロード。そして、

 

 

 

 「あなた、やるね!!」(ディフェンド)

 「それは、どうも!!」(ヴァルキリー)

 

 別の場所で戦うヴァルキリーとディフェンド。彼女たちは迫りくる敵を次々と撃ち抜いていた。

 向かってくる怪人の急所を寸分違わずに撃ち抜くヴァルキリー。多くの戦いを潜り抜けたディフェンドから見ても非常に高い実力を持つ彼女は距離を詰めてくる怪人を蹴り倒してもいた。

 

 「私も負けてられない!!」(ディフェンド)

 

 ディフェンドはそう言うと自身のライダークレストが描かれたカードをドライバーにセットした。

 

 ≪ファイナルアタックライド、ディ、ディ、ディフェンド!≫

 

 ディフェンドはディフェンドドライバーの銃口を怪人に立ちに向ける。

 ディフェンドの真正面に12枚のカードが現れる。

 引き金を引き、銃口から光線が発射された。ディメンションバースト、ディフェンドの必殺技である。

 それと同じく、ヴァルキリーも戦極ドライバーを操作、必殺技サファイアフレアで敵を焼き尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「行くぞ、輝龍!!」(ディゴッド)

 「何が!?え、俺このままでいくの!?」(輝龍)

 

 驚く輝龍をそのままにさらにディゴッドはカードをドライバーに読み込ませる。

 

 ≪ファイナルアタックライド、輝、輝、輝龍!!≫

 

 輝龍光龍剣に

ヒカリが走り始める。それを見た覇道はドライバーを操作する。

 

 ≪究極スパーキング!≫

 

 アップルブリンガーと黄泉丸にエネルギーがチャージされる。

 

 「ハアッ!!」(ディゴッド)

 「ムン!!」(覇道)

 

 両者同時に武器を振り下ろす。放たれたエネルギーはぶつかり、激しく爆発した。

 爆風から身を護る覇道。彼は輝龍とディゴッドが居るはずの場所を見ると二人の姿は無かった。

 

 「どこへ消えた。」(覇道)

 

 そう覇道が言った時だった。

 

 ≪ファイナルアタックライド、ディ、ディ、ディゴッド!≫

 ≪ソイヤ!ゴールドドラゴンフルーツスカッシュ!!≫

 

 空中でライダーキックの姿勢に入る輝龍とディゴッド。既に準備は出来ている。後は目の前の敵にぶつけるだけだ。

 

 「「はあああああああああああああ!!」」(輝龍、ディゴッド)

 

 黄金に輝く二つのライダーキック。それを見て覇道は自身の敗北を悟った。

 

 「そうか、俺の負けか。」(覇道)

 

 そのまま輝龍とディゴッドのライダーキックが覇道に決まる。

 覇道は何も言い残すことなく爆散、輝龍とディゴッドは爆炎を突き抜けて着地した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 変身を解除した大樹と陸はお互いに顔を見合わせていた。

 

 「ありがとう、おかげで助かった。」(陸)

 「それはお互い様だよ、ありがとうディゴッド。」(大樹)

 

 言葉を交わす二人に仲間たちが駆け寄る。激しい戦いが終わり、彼らの表情も晴れやかだった。

 そこへ仮面ライダーキャットレディが現れる。

 

 「どうやら、終わったようね。」(キャットレディ)

 

 バイクに乗ったままキャットレディは変身を解除する。

 ボブカットの美女、ヒロミはそのまま大樹たちに声を掛ける。

 

 「私は私の世界へ帰るわ。それじゃあ、また会いましょう。」(ヒロミ)

 

 そう言ってヒロミはバイクに駆り、姿を消した。

 

 「すごい人だったね。」(颯斗)

 「そう、だな。」(大樹)

 

 ヒロミが消えた後、颯斗が大樹に耳打ちする。その二人の横で陸が口を開いた。

 

 「それにしても綺麗な人だったな。」(陸)

 

 その言葉を聞いた瞬間に理沙と栞が目に見えて不機嫌になった。

 

 「ふ~ん、陸ってああいう人が良いんだぁ。」(理沙)

 「ねえ、僕達はどうなの?」(栞)

 

 理沙と栞の発言に?マークを浮かべる陸。その様子を見た大樹と颯斗は共通の友人であり、万夏の兄であり一夏のことを思い出す。

 

 「ねえ、もしかしてあいつと同じタイプ?」(颯斗)

 「かもな。」(大樹)

 

 そう二人でひそひそとしていると残されていた万夏が大樹の肩に手をやる。

 

 「ねえ、さっきの人のこと見てたでしょ?」(万夏)

 

 聞いてすぐに嫉妬していることが分かる声音から大樹は自身の背筋が凍るのを感じた。

 

 「いや、俺は万夏一筋だよ。さっきの人はあくまで助けてくれただけだよ。」(大樹)

 「ふ~ん。」(万夏)

 

 万夏はそのまま大樹の耳もとであることを言った。

 

 「じゃあ、今夜は朝まで、ね。」(万夏)

 

 その発言に頬をひくつかせ天を仰ぐ大樹。それを颯斗は爽やかな笑顔で肩を叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 陸たちが元の世界へ戻った後、大樹と万夏は面影堂へ向かっていた。そして、これからも続く十三異界覇王との激しい戦いに身を投じるのだった。

 




 神谷陸さん、コラボありがとうございました。
 今回の話、書いていてとても楽しかったです。
 今回の話に出てきた仮面ライダーキャットレディはR18版で出しています。そちらも興味があればどうぞ。

 輝龍本編はついにファブニールとの直接対決となっています。今後の展開にご注目ください。それでは。


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