星のカービィ Wish in the Symphony (テンカイザー)
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唄い導く願い星
零星目 導かれる前に


見切りはっしゃです。あくまで自分の腕前が周囲からはどれ程の物かを確かめる為に投稿しました。
あまり期待せずに読んでいただければ幸いです。


 無数の星が広がる、広大な宇宙の闇。

 その遥か彼方に煌めく、一つのとある星。

 その外観は、二つの輪に囲まれた巨大な黄色い星型。

 

 ―――『ポップスター』

 

 豊かな自然に包まれ、そこに住む生命は何不自由なく過ごしている。

 まさに平和そのものとも言える穏やかな星。

 

 だが、この星も常に平和なわけではない。

 過去には悪意に満ちた侵略者により、危機に陥れられたことも少なからずあった。

 では何故この星はこれほどまで平和でいられるのか。

 それは、“勇者”がいたからだ。

 

 ポップスターの内に存在する、緑にあふれ、温かい風が吹く平和に満ちた国。

 

 ―――『プププランド』

 

 そこには、相も変わらず“彼”がいた。

 

 温かい太陽の光があたり一面を包みこむ中、大きな木の影の中でもたれかかる“彼”は、とても居心地良さそうに夢の中へと浸っている。

 

「……zzz」

 

 彼のその姿を形容するのであれば、相応しき言葉はまさしく『桃玉』。

 全身まっピンクに染まったまん丸いボールのような体。

 ちょこんと横に生えた小さな手と思われる突起と、下にくっ付いた楕円形の赤い足。

 ほぼ全身とも取れるような顔には、目と思われる箇所には目を閉じていることを現す二本の横線。

 その下のあたりには、口と思われる小さな穴が寝息の音をたてながら小さくなったり大きくなったりを繰り返している。

 

 一見人によっては心にときめいてしまいそうなとても愛くるしい見た目をしている。

 上記の姿からはとても想像もつかないであろうが、彼こそがポップスターの危機を幾度となく救った“勇者”である。

 

 ―――『星のカービィ』

 

 とても一般の勇者という概念からは遠くかけ離れた姿形ではあるが、決して間違いなどではない。

 彼こそがこの星の勇者である。

 これまで彼が成した偉業の数々は、この星はおろか、宇宙さえをも救ったほどの物であったが、詳細を記すのはまたこの次の機会としよう。

 

「…………んぅ」

 

 先ほどまでとても気持ちよさそうに寝ていた彼であったが、どうやら目が覚めたようだ。

 体ともとれるその顔にひかれていた二本の横線は次第にひろがって行き、その内のつぶらな瞳が徐々に明らかになって行く。

 目がちょうど半分開いたところで、体を起こしまたしても目をぐっと閉じ、体の横についていた両手を頭の上へと持って行く。

 

「……うぅ~~ん!」

 

 次の瞬間、彼のまん丸とした体がほんの少し縦に細くなり、彼の足がかかとから上がって行き、つま先立ちとなる。

 

「ぽぉ!」

 

 彼が行っていた一連の行動はそう、寝覚めの背伸びだったようだ。

 背伸びを終えた彼は、両手を下げ、足の全体をぺったりと地面に付け、閉じていた瞼をぱっちりと開き、その内に秘められていたつぶらな青い瞳を露わにする。

 温かい眠りから覚めたばかりで、彼の意識はまだ朦朧としている。

 だが、次の瞬間彼の意識は心の奥底から湧きあがったある感情によって瞬時に覚醒させられる。

 

 ―――おなかすいた

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

「お腹すいたよぉ~」

 

 そんなことをぼやいていたのは、とある少女である。

 その少女は椅子に座りながら、ぐったりと目の前のテーブルに上半身を倒している。

 

「もう、お昼も人一倍食べたくせに……。帰りだってクレープ屋さんにも寄ったのに」

 

 そんなお行儀の悪い格好の少女に呆れの籠った言葉をかけるのは、もう一人の少女。

 

「だって、今日の訓練物凄くきつかったんだもん……。師匠もなんかやけに乗り気でいつもの倍ぐらいされたし……」

 

 もう一人の少女に対し、彼女かどこか愚痴の混ざった返答を返す。

 

「はいはい。じゃあ今日は“響”が好きな物作ってあげるから。」

 

 その言葉を聞いた途端、『響』と呼ばれた少女はすぐさま体を起こしもう一人の少女に喜びに満ちた顔を向ける。

 

「本当!やったぁ~!やっぱり“未来”は私の一番の親友だよ~!」

 

 顔に満面の笑みを浮かべながら、響は『未来』と呼ばれた少女に喜びに満ちた言葉をかける。

 対する未来も、響の“一番の親友”という言葉に顔を赤らめながらも、自身の“大好きな親友”の喜びに満ち溢れた表情に自身も笑みを浮かべるのであった。

 

 とても穏やかで温かい日常を過ごす少女たち。

 

 しかし、彼女たちは知らなかった。

 このほんの少し先の未来で、新たな“出会い”が待っていることを……。




時系列などは後程ご説明いたしますが、カービィはスターアライズの後日談であることは確定です。


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一星目 少女の歌は、春風の如く

大変長らくお待たせして申し訳ございませんでした!(土下座)

シンフォギアの時系列はじっくり考えた結果XVの後日譚に決定致しました。
戦闘描写には自信がないので、おかしい部分があればどうか教えて下さい。


 国連直轄の超常災害対策機動タスクフォース。

 Squad of Nexus Guardians

 通称『S.O.N.G.』

 

 その本部である潜水艦の中に"彼女達"はいた。

 

 潜水艦内の司令室と思われる巨大な部屋。

 そこには、いくつものモニター画面が存在し、同じ制服を着た大勢の職員達がコンソールを弄りながらモニターを見ている。

 

 何故かその中には他の職員とはあきらかに違う"白衣を着た幼い女の子"もいた。

 

 何故この緊迫感漂う場所にどう見ても場違いな女の子がいるのか…?

 それを記すのはまた後ほど。

 

 その司令室の真ん中に位置する赤いシャツを着た屈強な外見をした、勇ましい雰囲気を醸し出す一人の男性。

 その目の前にいるのこそ"彼女達"だ。

 

 計六人の少女達。

 

 中には大人びた雰囲気のある女性もいたが、その殆どはまだ青春真っ只中な学園生活を送っているはずの女子高生であった。

 

 何故こんないかにも普通の人間なら無縁に思える場にうら若き少女達がいるのかは、それもまた後ほど。

 

 そんな中、最初に口を開いたのは少女達の前に佇む屈強な男であった。

 

「皆よく集まってくれた。早速だが、本題に入る」

 

―――『風鳴弦十郎』

 

 S.O.N.G.の司令官である。

 その巨体から放たれる威厳は、正に組織を率いる者の物であった。

 

 しかし、少女達はその威厳に屈することなく、真っ直ぐな眼差しで弦十郎と向き合っていた。

 それは、これまで彼女達が弦十郎との間に築き上げた信頼故の物であった。

 

 そして次の瞬間、部屋の上に設置されていた巨大なモニターに画像が映し出された。

 そこに写っていたのは、

 

 

 

 

 

 

―――光る球体に目と巨大な口、更に鳥のような羽と尾を持つ、明らかに異質な生命体であった。

 

『……っ』

 

 その画像を見た瞬間、その場の全員の表情が真剣な物になった。

 普通の人間が見れば驚愕するであろう物を見たにも関わらず、そのばにいた者で驚愕を浮かべる者は誰一人といなかった。

 

 ここまで記せばもうすでに察しがつくであろう……。

 そう、この少女達は()()()()()()()()

 

「司令、この生物は一体……?」

 

 次に声を上げたのは、青い長髪を櫛のような髪飾りでポニーテールに纏めた、少女達の中でも凛々しい雰囲気を出す少女であった。

 

―――『風鳴翼』

 

 翼が上げた疑問に誰もが同意しながら弦十郎の答えを待ち、そしてすぐにその疑問の答えが返ってきた。

 

「これは、先日から目撃情報が出ている"未確認生命体"だ。」

 

 次に声をはっするのは、メンバーの中で唯一大人のピンク色の髪を猫耳のような形に纏めた女性だ。

 

―――『マリア・カデンツァヴナ・イヴ』

 

「未確認生命体……?聖遺物ではないの?」

 

 彼女が出した疑問。それはこれまで自分たちがなんども関わってきたある物の存在を疑うものであった。

 

―――『聖遺物』

 それは現代では失われた異端技術によって生み出された英知の結晶。その殆どが、神話に登場するアイテムの名を冠しており、どれも人の身に余る強大な力を有している。しかし、殆どの聖遺物は長い年月の果てに機能は朽ちており、発見当初は機能を停止している場合が殆どである。

 そして、聖遺物を再び起動させる上で重要な物となるのが、『フォニックゲイン』である。

―――『フォニックゲイン』

 それは言うなれば歌に込められた力。聖遺物を起動させるのに欠かせない、人の歌にこめられた特殊な力だ。

 

 聖遺物について記すのは一旦ここまでとし、話しを彼女たちの視点へと戻す。

 

 マリアの疑問に答えたのは、弦十郎ではなかった。

 上記にあった、白衣を着た金髪を三つ編みにした女の子である。

 

「現段階ではまだ不明です。この生物についてわかっていることはまだ殆どありませんので……」

 

―――『エルフナイン』

 とある過去の事件をきっかけに、現在はS.O.N.G.の頼れる仲間である"錬金術師"である。

 

 そして次に発せられた弦十郎の発言により、一同はさらに緊迫感に包まれることとなる。

 

「だが、一つはっきりしていることがある。それは、この生物は"人を襲う"ということだ」

 

『………っ!?』

 

―――人を襲う。

 

 その言葉がその場にいた一同の胸に響いた。

 それは彼女達にとって、自分達が戦わなければならない()()()()となりうるかもしれない故に。

 

 だが、そんな中すぐさま驚愕から我に返った少女があらたに質問した。

 

「それで、襲われた人はどうなったんですかっ!?」

 

 その少女は周りと比較すればまだ若い方であり、どこか明るい雰囲気を放っていた茶髪の少女であった。

 

―――『立花響』

 

 響が上げた質問に、弦十郎は直様返答した。

 

「幸いにも死者は出ておらず、被害者も軽症ですんだようだ。その後この生物はすぐさま何処かへ姿を消したと言う」

 

 弦十郎の返答を聞いた途端、一同は心の中で安堵した。

 中でも響は「良かったー」と呟きながら、安心の笑みを浮かべていた。

 

 だが、弦十郎は安堵した一同に対し、再び言葉をかける。

 

「だが、今回の件はこれで終わったとは考えにくい。またこの生物が現れ、人に危害を加えるやもしれぬ。そうなれば、お前達にはまたしても戦場に立つ時が来るかもしれない。故に、気を引き締めておけっ!」

 

 弦十郎の言葉は、その場にいた一同の胸の中に重く響いた。

 そして彼女達も、弦十郎の喝に応えるべく、一斉に息を合わせて声を上げた。

 

『了解!(デース!)』

 

 それから程なくして、その場は解散となった。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 立花響は、自身の住む『リディアン音楽院』の学生寮へと帰っていた。

 そこには、彼女にとっての"陽だまり"がいた。

 どこかおとなしめな雰囲気を醸し出すリボンをつけた黒髪の少女が、響に話しかけて来た。

 

「響、大丈夫?」

 

―――『小日向未来』

 立花響の一番の親友にして、彼女の陽だまり。

 

 何処か不安げな表情を浮かべていた響に、未来は優しく声を掛ける。

 少しでも響の気持ちを和らげられたらなと。

 

 対する響は、未来に心配させてしまったことを心中で詫びながら、すぐさまこれ以上未来を心配させまいといつもの笑顔に戻す。

 

「うん、大丈夫だよ!ごめんね、心配かけて……」

 

 すぐさま未来にいつもの笑顔を見せた響であったが、未来は響の心中を察してすぐに問いただす。

 

「弦十郎さんに言われたこと、気にしてるの?」

 

 未来の言葉を聞いた途端、響の顔は図星と言わんばかりに不安げな顔に戻ってしまった。

 

「……うん。ちょっとね」

 

 これ以上誤魔化しても仕方ないと腹を括った響は、自身の胸中を未来に素直に話すことにした。

 

「……私ね、あれからいっぱい戦ったなぁって。了子さん、マリアさん達、キャロルちゃん、サンジェルマンさん達、ベルちゃん、シェム・ハさん……。色んな人達が色んな気持ちを持ってて、その度に何度も拳をぶつけて、分かりあえたり、分かりあえなかったり、色々あったなぁって……」

 

 彼女はこれまで、何度も色んな輩と対立し、その度に何度も拳をぶつけて来た。

 手を繋ぎたいと伸ばした掌を、何度も握って相手にぶつけて、痛みを与えて……。

 それでも彼女は手を伸ばし続けた。

 分かりあいたいと願って、分かり合えると信じて。

 そして、彼女が手を伸ばし続けたことにより、かつては敵であった者達も、今は仲間となり、世界の危機を救い、時には分かり合えた筈の者達が消えてしまったこともあり、そして神とも分かり合い未来を託され……。

 

「でも、それでも誰かが傷つくことはなくならない。この手を握らなくちゃいけないんだって……」

 

 そう、いくら彼女が戦っても、誰かを傷つける存在はなくならない。

 その度に彼女はまた拳を握らなくてはならない。

 誰かと手を繋ぐための手を……。

 

「……響」

 

 そんな響に、未来は優しい笑顔を浮かべながら響に声を掛けた。

 

「私は響の手が大好きだよ。ただ痛いだけじゃない。誰にでも伸ばすこの優しい掌が。あの時私を祝福して(助けて)くれたこの手が」

 

 そう言いながら、未来は響の両手を優しく自身の掌で包み込んだ。

 嘗て自身が響に気持ちを伝えたいがあまり、響の心を苦しめることになってしまった時の事を思い出しながら。

 

 未来の手から伝わってくる陽だまりのような温かさをしみじみと感じながら、響の心から不安はすっかり消えていた。

 

「……未来、ありがとう!なんかもうすっかり元気になっちゃった!」

 

 今度こそ響の顔に心からの笑顔が浮かぶ。

 

 響がすっかり元気になったのを見た未来もまた、温かい満面の笑みを浮かべる。

 

―――小日向未来は立花響の陽だまり

 

 それはなんの形容でもない、言葉通りであった。

 

―――ブオォォォォン!

 

 そんな二人の温かい時間を打ち壊すが如く、突如としてけたましい轟音が外から鳴り響いた。

 その音が意味することを、二人は瞬時に悟った。

 

 次の瞬間、さっきの轟音ほどではないものの、またしても音が鳴り響く。

 それは、響が常に携帯していた通信機から鳴った物だ。

 

 通信機を取り出した響は、すぐさまそれを耳にかざした。

 

「はいっ、立花です!」

『非常事態だ!未確認生命体が人々を襲ってる!』

「……!?」

 

―――『未確認生命体』

 その言葉を聞いた途端思い浮かべるのは、今日の緊急ミーティングで聞かされた例の生命体。

 

「それって今日言っていた――」

『いや、外見は似ているが、それとは別のなにかだ!』

 

 即座に疑問を上げた響であったが、通信機越しの弦十郎の声は響の疑問を言い切る前に否定した。

 弦十郎の言葉に困惑する響だが、今はそれどころではないと即座に気持ちを切り替えた。

 

「師匠、すぐに場所を教えて下さい!」

『勿論だ!直ちに移動用の車を手配する!直ちに急行してくれ!」

「了解です!」

 

 通信を切り、真剣な顔に切り替わった響を見ながら、未来は声を掛ける。

 

「響、行くの?」

 

 通信機越しの響の会話から察した未来は、響に不安げに声を掛けるが、対する響は未来に心配させまいといつもの笑顔で向き合う。

 

「うん。すぐに帰って来るから、安心して待ってて」

 

 響の言葉を聞いた未来は、すぐに元の笑顔に戻す。

 大事な人の帰りを信じて待つために。

 

「じゃあ、行ってくるね!」

「うん、いってらっしゃい響!」

 

 大切な人からの言葉を受け取った響は、すぐさま駆け出した。

 

―――この手で救える人を救うために

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 とある町の大勢の人が通る人通り。

 そこは今まさに"地獄"とかしていた。

 

 大勢の人が悲鳴をあげながら逃げ惑っている。

 更に逃げ惑う人々の中には、人ならざる異形が混じっているではないか。

 

 赤く光る球体のような体に、妖しく光る黄色い眼。

 さらにぱっくりと割れた口に、体の横には蝶を思わせるような羽が生えていた。

 それらの異形が大群を成し、人々をつけ狙っては噛み付いたり口から赤い光弾を吐いたりと暴れ回っていた。

 

――― Balwisyall Nescell gungnir tron

 

 そんな中、地獄と言えるこの状況には似つかわしくない歌が流れた。

 

 突如聞こえた歌声に、異形達は驚き即座に歌の発生源を探し始める。

 

―――次の瞬間

 

『……!』

 

 突如として異形達の前に謎の光が現れた。

 

 そして、なんと光の目の前にいた異形が、突如として吹っ飛び、空へと向かって行きながら粉々に砕け散ったのである。

 

 突然仲間が一体消えたことに慌てふためく異形達。

 次の瞬間、また更なる驚愕が現れる。

 

 先ほど異形の一体を吹っ飛ばした光。

 それが晴れると、中から新たな姿が現れた。

 

 それは、"響"であった。

 だが、その姿は先ほどまでとは変わり果てている。

 

 体にぴったり合った黄色をメインとし所々オレンジが混ざったインナー。

 脚や腕には白をメインに黄色が混じった機械的な装甲を纏い、頭にはヘッドホンを思わせる形をした機械的装甲を身につけている。

 

―――『シンフォギア』

 

 聖遺物を核とし、フォニックゲインを力として稼働する兵装。

 

 立花響が纏うのは、聖遺物『ガングニール』の力を秘めたシンフォギア。

 

 シンフォギアを身に纏った響は、先程吹っ飛ばそれた異形がいた位置へと握った拳を伸ばしている。

 

 そして、すぐさま腕を戻した響は、まだ残った異形達に向けて構え直す。

 

 対する異形達も、新たに響を敵と見なし、響へ突進をしかける。

 

―――次の瞬間

 

『……!?』

 

 突如空から降って来た大量の赤い光の矢が、異形達の身体を貫く。

 

 身体を貫かれた異形達は、一瞬で粉々に砕け散ってしまった。

 

 光の矢が飛んで来た方を見れば、そこには響と同じくシンフォギアを身に纏った少女達が集っている。

 

 先程の光の矢を打ったのは、赤いインナーの上に、各部に装甲を纏い、両手にクロスボウを携えた銀髪の少女。

 腰回りには白いユニットが取り付けられている。

 

―――『雪音クリス』

 

 聖遺物『イチイバル』の装者。

 

「……はっ、脆いモンだなっ!」

 

 クリスはどこか得意げに呟く。

 

「でもあれは一体……?ミーティングで見た生き物に少し似てるけど?」

 

 次に疑問の声を挙げたのは、桃色のインナーの上に装甲を纏った、黒髪のツインテールの少女。

 腰からはスカートを伸ばし、ツインテールにはヘッドギアが取り付けられている。

 

―――『月読調』

 聖遺物『シュルシャガナ』の装者。

 

 調の言う通り目の前の異形達は緊急ミーティングで見た生命体とどこか似ていた。

 

 異なる点は、ミーティングで見た生命体は紫だったのに対し、目の前の異形達は赤。

 

 その他にも、目の前の異形達は画像の生物よりも一回り小さい。

 どこか未確認生命体と関連性を感じずにはいられない程の類似度である。

 

「どちらにせよ、人に仇なす存在であるのならば、この場で斬り捨てるのみ」

 

 そう言い放ったのは、翼であった。

 

 翼が身に纏うのは、青色のインナーに装甲を纏った、聖遺物『アメノハバキリ』のシンフォギア。

 手には剣を携えている。

 

 翼の言う通り、目の前の異形達がなんなのかはわからずとも、異形達が人々を襲っているのは事実。

 ならば、"人類守護の盾"である彼女達にとって、成すべきことは一つ。

 

 改めて覚悟を決めた装者達は、それぞれの武器―――『アームドギア』を携え、異形達に向けて駆け出した。

 

 響は自身のアームドギアである"拳"を構えながら、異形に向けて駆けていた。

―――歌を響かせながら

 

 対する異形も、響へむけて次々と向かう。

 

 目の前に来た異形から、響は拳を振るう。

 殴り飛ばされた異形は空へと向かいながら、空へ辿り着くことのない内に亡き者となる。

 

 次に右から来た異形を殴り飛ばし、その場を軸に回転蹴りを繰り出し、背後にせまっていた異形を吹っ飛ばす。

 

 様々な方向から縦横無尽に飛んで来る異形を、次々と殴り飛ばし、時には足蹴りも混ぜ、異形をなぎ倒して行く。

 

 やがて、異形の数もすっかり減り、逃げ惑っていた人々も全員が見えない所まで避難していた。

 

 他の装者達も、各々の武器(アームドギア)を巧みに使いこなし、異形の数は見ればもう数えられる程しかいない。

 

―――その時

 

『―――!!』

 

 突如として謎の奇声が装者達の耳に響く。

 

 即座に発声源を探すべく、周囲を、見渡す。

 

―――そしてそこに"それ"は現れる

 

『……!?』

 

 装者一同が"それ"を見た途端驚愕に染まる。

 そこにいたのは、紛れもないあの"未確認生命体"であった。

 

 全身が紫の光る球体のような身体にパックリと割れた口、鳥のような羽と尾とトサカ。

 

「あれは、例の未確認!」

 

 マリアが言った通り、その容姿は紛れもなく緊急ミーティングで見た未確認生命体そのものである。

 

 一同が驚愕している中、未確認生命体はお構いなしと言わんばかりに一番近くにいた響へ向けて突進を繰り出す。

 

「……うわぁっ!」

 

 なんとか即座に身体をずらすことで響はなんとか躱す。

 だが、次の瞬間に安堵する暇もなく事は起こった。

 

『―――!!』

 

『……!?』

 

 突如として、先程と同じ奇声が今度は別の方向から鳴り響いた。

 装者達が発声源を探すまでもなく、"それ"は自ずから姿を現した。

 

「……もう一匹!?」

 

 マリアが言った通り、そこには先程現れた未確認生命体と全く同じ容姿の生命体がいた。

 だが、先程現れたのが紫だったのに対し、後から現れた方は全身が赤色である。

 

 戦う相手が二体に増えたことにより、装者一同は更に引き締め、その鋭い眼差しを相手へと向けた。

 

―――その時

 

『っ!?』

 

 紫の未確認生命体に突然何かが被弾したかと思えば、未確認生命体は突然の不意打ちによろめふためいた。

 

 装者達は何かが飛んで来た方向へ即座に振り向いた。

 すると、そこにいたのは

 

 

 

 

 

 

―――口を大きく開けたまん丸ピンクの生き物であった

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 カービィは困惑していた。

 気がつけば自分はプププランドとは違う、高い建物がたくさん並ぶ謎の場所にいた。

―――何故自分はここにいるのか?

―――ここは何処なのか?

 何も分からないまま慌てふためいていたカービィであったが、その思考は()()()()()()()()()()()()によって掻き消された。

 

「ぽよっ!?」

 

 見てみれば、明らかに自分よりも背格好の高い者達が顔に恐怖を浮かべながら皆同じ方向へ向かって走っていた。

 

 これはただ事では無いと悟ったカービィは、すぐに人々が走り去る方向とは逆の方向へ向かって駆け出した。

 

 暫く走り続けてカービィが見た光景は、

 

 

 

 

 

―――自身にとって見覚えのある敵と、それと戦う少女達であった

 

 つい先程自分が初めて見た生き物と同じ自分よりも背格好の高い者達がいたが、そこにいた者達は他の者達とは明らかに違っていた。

 

 さっきまで見ていた者達は皆一心不乱に逃げていたというのに、目の前の者達は逃げる姿勢を一切見せず、目の前の敵と戦っていた。

 そして何より、他の者とは格好が全く違っていた。

 何故あのような格好をしているのか、それを知る由はカービィには全く無かった。

 

 だが問題は、彼女達が戦っている敵についてだった。

 

 それは嘗て、カービィが"虚言の魔術師"の事件の際に出会った者であった。

 

―――『スフィアローパー』

 自分達が住む場所とは違う別の空間―――『アナザーディメンション』に生息する生命体。

 

 何故それらが此処にいるのかは分からない。

 しかし、スフィアローパーと戦う彼女達を見て、カービィの純真無垢な心に秘められた正義感が、ある感情を昂らせた。

 

―――助けなくちゃ!

 

 そして、カービィは己の感情に従い即座に行動にでる。

 あたりを見回したカービィは、たまたま近くにいたスフィアローパーと同じく異空間(アナザーディメンション)に生息する生命体―――『リーパー』を発見する。

 

 するとカービィはぐっと目を閉じ、リーパーに向けて口を大きく開けた。

 すると次の瞬間、なんとリーパーの身体がカービィの口の中へ吸い寄せられ始めた。

―――『すいこみ』

 文字通りあらゆる物を口の中へ吸い込む、カービィの得意技である。

 突然吸い寄せられたリーパーは抵抗する暇もなく、一瞬でカービィの口の中へと収まってしまった。

 

 リーパーを口に頬張ったカービィは全身が膨れ上がり、そのまま紫のスフィアローパーに向けて身体の方向をずらした。

 そして次の瞬間、カービィの口から星型の弾が発射された。

 

『っ!?』

 

 カービィに全然気が付かなかったスフィアローパーは、カービィの星型弾をもろに喰らってしまった。

 

 スフィアローパーと戦っていた少女達も気づけばカービィの方を向いていたが、カービィはそれに一切気付かないままスフィアローパー達の前へと出た。

 

「……へ?何あれ?」

 

 戦っていた少女の内黄色い格好の少女がカービィの姿を見て困惑の声を挙げるが、カービィはそれを気にすることなく、スフィアローパー達と向き合った。

 

 カービィの姿を視認したスフィアローパーもカービィを敵と見なし、カービィへ向けて突進を繰り出す。

 

「……危ない!」

 

 再び黄色い少女が自身に向けて声を掛けるが、カービィはそれを気にすることなく横へ跳ねることで紫のスフィアローパーの突進をかわし、遅れて来た赤いスフィアローパーの突進もバックステップで避ける。

 

 そして次に、赤いスフィアローパーはカービィに向けて口から赤い球体を放った。

 

 しかしカービィは、今度は避けるのではなく再び口を大きく開けすいこみを繰り出した。

 赤い球体はカービィの口の中へと収まり、次の瞬間カービィは今度は吸い込んだものを『ゴクン』と言いながら飲み込んだ。

 

―――次の瞬間、カービィに変化が起きる

 

 なんと、カービィの頭に緑色の宝石が嵌め込まれた金色の輪っかが現れ、輪っかの上からカービィの頭で炎が燃えだしたのだ。

それは正しく"炎の冠"。

 

―――コピー能力『ファイア』

 カービィのすいこみに続く得意技、吸い込んだ物の力をコピーする力。  『コピー能力』によって得た、カービィの新たな姿。

 

「デデデデース!調、あの子燃えてるデスよ!大丈夫なんデスか!?」

「……切ちゃん落ち着いて。私に言われてもわかんないよ」

 

 新たなカービィの姿に少女達は慌てふためいていたが、カービィはそれを余所にスフィアローパーへ向けて駆け出した。

 

 そして助走を付けた状態でカービィは高く跳び、紫のスフィアローパーへむかっていく。

 するとなんと、カービィの全身が炎に包まれ、火の玉へと姿を変えた。

 そしてそのまま火の玉となったカービィはスフィアローパーへ向けて激突した。

 

―――『バーニングアタック』

 

 そのままスフィアローパーは吹っ飛ばされ、地面をバウンドする。

 カービィの熱を帯びた一撃と地面にぶつかったときの衝撃が蓄積し、紫のスフィアローパーは大ダメージを受けた。

 

 仲間がやられたことに腹を立てた赤いスフィアローパーは怒り狂い、先程のカービィと同じよう全身に炎を纏ってカービィに向けて再び突進を繰り出す。

 

「ぽよっ!?」

 

 それをカービィは紙一重でかわす。

 だが、その背後からは先程吹っ飛ばされた紫のスフィアローパーの突進が迫って来る。

 

「危ない!」

「…ぽよっ!?」

 

 瞬間、先程の黄色い少女が即座にカービィを抱きしめ、そのまま転がり込むことでカービィはことなきを得た。

 

「……大丈夫?」

「はぁ〜い!」

 

 突然抱きしめられたことに、カービィは驚いてしまう。

 

 だが、黄色い少女が自分の身を守るために成したということを理解する。

 

 故に、カービィは黄色い少女の問い掛けに、笑顔で答える。

 

 だが、スフィアローパー達はそんな響とカービィの間を裂くかの如く襲い掛かる。

 

「ぽよっ!」

「うわっ!?」

 

 カービィは響の腕の中から飛び出し、再び火の玉となり、今度は回転しながら赤いスフィアローパーへと激突する。

 

―――『ひだるまスピン』

 

 赤いスフィアローパーは後方へと吹っ飛ぶが、今回は地面に着く前に踏み止まる。

 

 見れば紫のスフィアローパーも更に怒り狂った表情を浮かべながら、背後に並ぶ。

 

 カービィは地面に着き、二体のスフィアローパーへと向き直る。

 

「ねぇ、君!」

「……ぽよ?」

 

 するとカービィは突然黄色い少女に声を掛けられる。

 

「君がなんなのかよく分かんないけど、私と一緒に戦って!」

 

 突然声を掛けられて困惑したカービィであったが、先程自身が目の前の響に助けられたことを思い出す。

 

 あの時自身を助けてくれた顔は紛れもない優しい顔でだ。

 

 カービィの純真無垢な心は、カービィに答えをもたらす。

 

―――響を信じようと

 

「……はぁ〜い!」

 

 再び響に向けて笑顔で答えた。

 

「ありがとう!」

 

 対する響も、カービィに向けて笑顔でお礼を言う。

 

 一方で、二体のスフィアローパーはさらに強力な突進をお見舞いすべく、二体揃って回転を始めだす。

 

 それを迎え打つべく、響も右腕を引き構える。

 その途端、響の脚の装甲から展開されたパワージャッキが地面を削る。

 

 カービィもスフィアローパーをじっと見つめ、タイミングを見定めるかの如く構える。

 

―――次の瞬間

 

 二体のスフィアローパーは螺旋を描きながら響達に向けて強力な突進を繰り出す。

 

 そして、響も同じく動き出す。

 

 地面に取り付けられたパワージャッキが一瞬で響の脚へ戻り、その反動を利用し、響は一気に目の前のスフィアローパーズへむけて跳躍する。

 

 時を同じくして、カービィも響が飛び出した瞬間、全速力で駆け出す。

 

―――そして

 

「オリャァァァァォァォァァッ!!!」

 

 けたましい怒号と共に右腕を勢いよく前へ出す。

 そして、響の真隣を走っていたカービィも跳び、再び火の玉へと姿を変える。

 

―――そして次の瞬間

 

 火の玉となったカービィが響の拳と重なり、響の右腕が迸る炎に包まれる。

 

 そしてそのまま、拳を自身へ迫るスフィアローパーズへ思いっきりぶつける。

 

―――『我流・火炎桃玉』

 

 炎の拳とぶつかり合ったスフィアローパーズは、二体まとめて空へと吹っ飛ばされ、そのまま爆散した。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 事が終わった後、響達はS.O.N.G.本部へと戻っていた。

 

 他のリーパー達は、響とカービィがスフィアローパーズを相手している間に、他の装者達が片付けてた。

 

「ふむ、……それでそいつが助けてくれたと?」

 

 響達からの報告を聞いた弦十郎の視線は、響の腕の中に抱かれたカービィへと向けられる。

 

 あれからカービィの姿は、いつの間にか頭の炎が消え、元の姿に戻っている。

 

「はい、この子のおかげで皆を助けられました!」

「ぽよっ」

 

 響はどこか得意げに答える。

 響につられたのか、カービィも一緒に返事をするのであった。

 

「で、結局そいつなんなんだよ?」

 

 続いてクリスが、カービィを睨みながら疑問の声を上げる。

 彼女だけでなく、カービィに対して疑問を浮かべるのはこの場の全員が同じである。

 

 小柄で可愛いマスコットのような容姿を持ちながら、戦いでは姿を変える謎の力を発揮する存在。

 何から何まで疑問の尽きない存在だ。

 

「とにかく、そいつについては本部で預かって解析を進めることにする。そいつのためにも、暫くは本部に住んで貰う」

 

 カービィは強力な力を持つ謎の存在。

 そんな存在をつけ狙う輩は、残酷なことにこの世界にはたくさんいる。

 故に、弦十郎はカービィの安全のためにS.O.N.G.にて保護することにしたのだ。

 

「何、悪いようにはしないさ。彼女達を助けてくれた恩人だからな」

 

 弦十郎はカービィを安心させる為に、カービィに対して友好的な意思を示した。

 

 だが、肝心のカービィはちゃんと自身の立場を理解していないのか、終始キョトンとしている。

 

「そうだ!じゃあこの子の名前決めなきゃね!」

 

 突然響は突拍子なことを提案しだす。

 これには一同「いきなりなんだ?」と言わんばかりの呆れた表情を浮かべる。

 

「カービィ!」

「……へ?」

 

 そんな中、突然声を上げたカービィに響はキョトンとする。

 

「カービィ!カービィ!」

 

 誰もがカービィの突然の発言に疑問を浮かべる。

 そんな中、響は何かを察し、カービィに話しかける。

 

「……もしかしてそれ、君の名前?」

「……はぁーい!」

 

 響の問いに、カービィは「正解」と言わんばかりに笑顔で返事をする。

 

「……へぇ、君カービィって言うんだ。よろしくね、カービィ!」

「ぽよっ!」

 

 すっかり意気投合した響とカービィを見て、一同は「そんな訳あるか」と呆れの表情を浮かべる。

 それを真っ先に述べたのは、クリスだ。

 

「おい、何勝手に変な解釈してんだよ!」

 

 クリスは若干イラつきながら響に言葉を掛ける。

 

「へ?だってクリスちゃん、この子が名前はカービィだって――」

「だから何でお前はそいつの伝えたいことが分かるんだよ!」

 

 クリスの若干イライラが含まれた質問に、響は全く態度を変えず呑気に答える。

 

「ん〜………なんとなく?」

「お前なぁ――」

 

 クリスが更にイライラを増して響に言葉をぶつけようとしたが、それを遮ったのは翼だ。

 

「まぁ、呼び名がわからないままでは不便であろうし、取り敢えずはカービィと呼べば良いだろう」

 

 翼の発言にクリスは渋々黙る。

 

 取り敢えず、現段階ではカービィという呼び名がS.O.N.G.内にて定着したようだ。

 

「そうだ!私の名前も教えないとね。私はね、立花響っていうんだ」

 

 次に響は、自身の名前をカービィに教える。

 

「……ヒ…ビ…キ?」

「そう!」

「ぽよっ!ヒビキ!ヒビキ!」

 

 カービィは響の名前を楽しそうに連呼し、響もまた、カービィに呼ばれる度に笑みを浮かべるのであった。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

―――春風

 それは旅人にとって、新たな始まりを告げる合図

 

 こうして、星羅の遥か彼方から春風の如き歌声に導かれた旅人は、新たな友と出会うのであった。




次の更新は未定です。
どうか気長に待って貰えれば幸いです。

切歌の説明描写だけないのは仕様です。
切歌ファンの皆様、申し訳ございません!
切歌の説明描写は次回書きたいと思うのでどうかお待ち下さい!

オリジナル技の名前は、ただ単に良いのが思い付かなかっただけです。ご了承下さい。


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ニ星目 悪食

すみません。
あんだけ次は遅くなるとか言っときながら割と早くできちゃいました。
けど次はマジで遅くなると思いますのでどうかご了承下さい。

あと、前回あるお方から「もっと短くした方が読みやすい」という意見をいただいたため、今回から短くするよう意識いたします。


 ひなたぼっこをして……

 ウィスピーのりんごをたらふく食べて……

 釣りをして……

 カービィはいつもの通りきままに過ごし、気づけばプププランドもあたり一面が暗くなり、すっかり夜になっていた。

 

 幻想的な光を放つ三日月と、一面に無数の星が広がるプププランドの夜空。

 カービィは月の光に照らされた草原から、神秘に満ち溢れた夜空を見上げていた。

 

「ぽよ~」

 

 数え切れないほどの煌びやかな星に見とれながら、カービィはおっとりとしていた。

 だが、居眠り好きのカービィは、夜空に見とれているうちに意識がだんだんぼやけていき、視界も朦朧とし始めた。

 

「……うあ~。……ん」

 

 大きなあくびをあげ、今にも意識が暗転してしまいそうなのを何とかふんばり、今日はもう家に帰ってぐっすり寝ようと思ったカービィであった。

 

 

 

―――その時だった

 

―――ゴッゴッゴッゴッゴッゴッ!

 

「ぽよっ!」

 

 突如として地面が音を立てながら揺れだしたのだ。

 驚きの表情をうかべながら、カービィは慌てふためきだした。

 そして………

 

 突如として、何もない筈の空中に白い光の線が現れた。

 光の線は出てきて間もなく広がりだし、巨大な星型へと姿を変えた。

 星型の中には、全体が青い異様な空間が広がっていた。

 だが、カービィはそれに見覚えがあった。

 

―――『アナザーディメンション』

 

 前に起きた“虚言の魔術師”による事件の際に見た物であった。

 自分たちが住む世界とは別にある未知の空間。

 目の前に現れたのはその扉のような物であった。

 

 何故急にこんなものが現れたのか?

 

 そのような疑問が浮かび上がろうとしたが、それはできなかった。

 

「ぽよっ!?」

 

 カービィの身体が突然なにかに引っ張られるような感覚に陥った。

 自身の身体が引っ張られる先には、先ほど現れた異空間への扉が見えていた。

 そこからは、普段のんきで思考力の薄いカービィでも、想像するのは容易であった。

 

―――このままじゃすいこまれる!

 

 自身の未来を瞬時に悟ったカービィは、なんとかその未来を覆すべく抵抗を試みた。

 だが、カービィを吸い込む力はあまりにも強かった。

 そして………

 

「………ぽよおぉぉぉぉぉっ!!」

 

 カービィの抵抗もむなしく終わり、遂に彼の足は地面から離れてしまった。

 そのままカービィは空中をぐるぐると回りながら“異界の扉”へと飲み込まれてしまった。

 空間の裂け目に飲み込まれたカービィの姿は、次第に小さくなっていった。

 そして同時に、空間の裂け目(ディメンションホール)は一瞬にしてその姿を消してしまった。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

「zzz………ぽよ?」

 

 暖かい毛布に包まれながら安眠に浸っていたカービィの意識は、夢の中で自分が何故この世界にいるのかを思いだしながら目を覚ました。

 

 ディメンションホールに飲み込まれた後、気づけばカービィは地球にいた。

 そして装者達と出会い、現在はS.O.N.G.本部にて移住スペースを貰い、何不自由なく暮らしていた。それも、弦十郎の粋な計らいによる物であった。

 

 そして、ふかふかのベッドの上でいつも通りの寝覚めの背伸びを行った後、カービィの感情は、必ずあらゆる時にでも湧き上がるある衝動に飲み込まれた。

 

―――おなかすいた

 

 そしてカービィは、湧き立つ食欲を満たすべく、食べ物を求めて部屋から出た。

 カービィはS.O.N.G.において重要な監視対象であるが、弦十郎の粋な計らいにより本部内では基本自由に動けるのである。

 

 しかし、弦十郎を含めS.O.N.G.の者達は想像もしなかったであろう。

―――それが、ある悲劇を生むということを

 

 本部内を彷徨いていたカービィは、美味しそうな匂いを辿り、やがて誰もいない食堂へと辿りついた。

 

「ぽよ?………ぽよっ!」

 

 そしてカービィは食堂の裏側にある巨大な冷蔵庫をはじめ、あらゆる食材を見つけた。()()()()()()()()()

 

「ぽよぽよ!」

 

 自身が求めていた食べ物を発見したカービィは、即座に食べ物を手に取り次々と口の中へ頬張っていくのであった。

 

―――そして、悲劇は始まるのであった

 

 

★☆★☆★☆

 

 

「疲れたデスよー……」

 

 そんなことをぼやいていたのは、調と同じくらいの背の高さの金髪にばつ印の髪飾りをつけた少女だ。

 

―――『暁切歌』

 

聖遺物『イガリマ』の装者。

 

 今日は彼女達のようなうら若き少女達では本来なら休日である日だった。

 しかし、彼女達はいついかなる時も"常在戦場"を心掛けなければならない戦士なのである。

 故に、休日も本部にて戦闘訓練を行うのである。

 

 そして、今日はすでに訓練を終えた後であった。

 弦十郎による厳しい訓練を終えた彼女達は、すでに心身ともに疲れ切っている。

 更にその時は丁度お昼時なこともあり、疲労に加えて空腹までもが彼女達を苦しめていた。

 

「お腹すいた〜。早く食堂行こ〜」

 

 響は完全に気力を失った顔をし、お腹の底から湧き上がる空腹をなんとか耐えながら言葉を発した。

 

「ったく、お前は相変わらずの貪欲だな」

「だって師匠の訓練いつも厳しいじゃん。おかげでいつもすぐにご飯を摂取しないといけなくなるんだもん」

「にしてもお前の暴食っぷりは常人のそれを軽く超えてんだよ!少しは遠慮を学べ!」

 

 気怠げにぼやく響に、クリスは遠慮なしにずかずかと文句を言っていた。

 相変わらずの乱暴な口調でおかまいなく文句を言うクリスであったが、響はすでにこのやりとりに慣れているため、クリスの言葉を一切気に留めず気怠げに返すのであった。

 

 そして、色々と喋りながらいつの間にか一同は食堂に着いた。

 しかし……

 

「あぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

『!?』

 

 突如として食堂の中から辺りに響いた叫び声によって、全員の意識はすぐさま塗り潰された。

 そして、先程まで疲労で悲痛な表情を浮かべていた一同はすぐさまいつもの真面目な表情に切り替え、全員即座に食堂へ駆け出す。

 

 食堂の中へ入ると、そこには先程の声を上げた張本人であろう食堂係のスタッフの女性が、口をぽかんと開け大量の汗をかき、目をぱっちりと開きながら唖然と突っ立ている。

 

「どうしたんですか!?」

 

 食堂係の元へ全員が駆けつける中、真っ先に声を掛けたのは響だ。

 響に声を掛けられた食堂係は、驚愕の表情を浮かべながらなんとか響へ答えた。

 

「……………食材がぁ――」

「ぽよ!」

「……へ?」

 

 響は食堂係の声をほんの僅かに遮った聞き覚えのある声に疑問を浮かべるのであった。

 気になった一同は、すぐさま食堂の奥を覗いた。

 次の瞬間一同の目に写ったのは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 口の中で何かを美味しそうに味わうカービィと、ガラ空きになった大量の冷蔵庫や棚であった。

 

 「………」

 

 一同は食堂係と同じく、驚愕をうかべながら唖然としてしまった。

 

 よく見ると、冷蔵庫や棚がどれも開きっぱなしになっている。

 その中には本来ならある筈の食材の姿は一切確認できない。

 

 そして次に、一同の視線は目の前で無我夢中に何かを味わっているピンク球へと向けられた。

 

「……うぁむうぁむ――」

 

 周りに向けられている視線に一切気づかず、カービィはとても幸せそうな表情を浮かべながら、口の中の物を一心不乱に味わっていた。

 

 その場の全員が、瞬時に悟った。この事態を引き起こしたであろう元凶を……。

 

 にわかには信じられなかった。こんな自分達よりも小さい、両腕で抱き抱えられるくらいの者に食堂のほぼ全ての食材を食い尽くすなど……。

 

 しかし、目の前に広がる現状が、一同の考えを肯定させる。

 

「………か」

 

 一同が全員唖然としている中、先に声を上げたのは、先程に続いてまたしても響だ。

 

「…………かか、かかかかかかかか――」

 

 響はがくがくと震えながら声を上げていた。

 そして次の瞬間―――

 

「カぁぁぁぁぁぁぁビィぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!」

「ぽよっ!?」

 

 抑えられない空腹に耐えながら今一番待ち望んでいたお昼ご飯を奪われた憤りを、声によっていっきに解き放った。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 食堂での一件は、一時終わりを迎えた。

 

 あの後装者達は仕方なく外食へと赴くこととなった。

 

 カービィはもう二度と食堂の物を勝手に手を出せないよう厳重に監視されることとなってしまった。

 

 カービィも普段は優しい響の怒りを喰らったことにより、もう二度と勝手に食堂の物を食べないよう心に留めたのであった。

 

 そして翌日、装者一同は再び本部へと召集されていた。

 その場には、エルフナインの姿もある。

 

「早速ですが、カービィさんについてわかったことを報告します。」

 

 エルフナインが喋った直後、上に設置された大型モニターにが画像が写し出される。

 

 それは、カービィの画像とともに様々な数値などが写しだされた物だ。

 

 数値が何を意味するのかちんぷんかんぷんな一同であったが、すぐさまエルフナインが説明を入れるのであった。

 

「まず僕は最初に、カービィさんはネフィリムやカーバンクルのような自律可動型聖遺物である可能性を立てています。まだ確証はないのですが、そちらは現在も解析中です」

 

 エルフナインが話した内容は、カービィがまだ未知であるということ。

 これまでの彼女たちの経験から聖遺物である可能性を捨てきれない。

 だが、エルフナインも言うように確証はない。

 

 前回のスフィアローパーに続き、彼女達はまたしても新たな疑念を抱くのであった。

 

「次に、カービィさんの力についてです」

 

 エルフナインの台詞とともにモニターの画面が切り替わり、今度は映像が映し出される。

 

 そこに映っていたのは、先日のリーパーもといスフィアローパーとの戦いの様子だ。

 

 そして映像は、カービィがファイアのコピー能力を使った所で一時停止が掛けられる。

 

「このカービィさんの姿を変える力についてですが、映像を解析した所カービィさんは姿を変える直前に敵の光弾を吸い込んでいました」

 

 その言葉を聞いた途端、彼女達の脳裏に先日の戦いの記憶が甦る。

 

 カービィが敵の光弾を吸い込んだ直後にカービィの姿が変わったことを。

 

「じゃあ、カービィが姿を変えられたのは、敵の光弾を吸い込んだから?」

 

 エルフナインの解説に、調は疑問を挙げる。

 

「僕もまだ確証はないのですが、もしそうだとしたら、この力の秘密はカービィさんの体内に存在するのではないかと解析してみたんです。ですが……」

 

 調の疑問に答えつつ、新たな仮説を解説したエルフナインであったが、最後の方で突如声がくぐもった。

 

 そして、またしてもモニターの画面がまたしても切り替わる。

 

 次に映し出されたのは、カービィのレントゲンのような画像だ。

 

「カービィさんの体内をスキャンした結果、カービィさんには骨はおろか臓器が存在しないんです」

 

『!?』

 

 エルフナインが放った言葉に、一同は言葉を失う。

 

 モニターのレントゲンには、エルフナインの言う通り舌や喉彦はあるものの、歯がない上に心臓や胃といった本来生物にある筈の臓器が描かれていない。

 

「ちっと待て!こいつこの間食堂の食いモンほとんどたいらげたんだぞ!それはどうなってんだ!?」

 

 クリスはエルフナインの発言に新たな疑問を挙げる。

 

 その言葉により全員の脳裏に今度はついこの間の食堂での騒動が浮かび上がった。

 

 あのときカービィはその身の丈を遥かに超えた量の食べ物をたいらげたのだ。

 では、あの時カービィがたいらげた食材は何処へ消えたのか?

 その場の全員が同じ疑問を抱いた。

 

「それなのですが、カービィさんの体内には小型のブラックホールのような物があるのです」

 

『!?』

 

 またしても一同が驚愕に染まる。

 

―――ブラックホール

 

 誰もが聞いたことがあるであろう物。

 あらゆる物を飲み込んでしまうという黒い渦。

 

 それが小型とはいえ、カービィという生き物の体内に存在しているのである。

 

「おそらくカービィさんが体内に取り込んだものは、これによって吸収されているのでしょう。ですが、カービィさんの力の源がなんなのか、それはどうやっても解明出来ませんでした……」

 

 エルフナインは最後は何処か落ち込んだ様子で答える。

 自分に与えられた役目を全うできなかったことを気にしているのだろう。

 

「何、カービィくんは我々がこれまで遭遇したことの無い未知の存在だ。そう気に病むことはないさ」

 

 そんなエルフナインに励ましの声を掛けたのは弦十郎だ。

 

「弦十郎さん……」

「エルフナインくん。君には引き続きカービィくんの調査を頼む。やってくれるか?」

「はい、任せて下さい!いつか必ずカービィさんの力を解明してみせます!」

 

 弦十郎に励まされたエルフナインは、気持ちを新たにして宣言する。

 

 結局、一同はカービィへ多くの疑念を抱きながら解散となった。




次の更新は間違いなくかなり遅くなりますのでどうか気長にお待ち下さい。お願いします!(土下座)


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閑話星 星と陽だまり

一番大事なことを書き忘れていたのでこのような形で執筆いたしました。


 ある日のS.O.N.G.本部。

 その日は響の他に未来も来ていた。

 

 未来は響達と同じシンフォギア装者である。

 だが、彼女は装者達の中ではシンフォギアを纏ってから一番日が浅いのである。

 故に、任務に出ることは滅多に無い。

 

 そんな彼女だが、一応S.O.N.G.の一員として認定されているため、本部へは自由に行き来出来るのである。

 

「いやぁ、楽しみだなぁ。カービィに未来のこと紹介するの」

「響ってば、あれからそのカービィって子のことばっかり話してたもんね」

 

 そう、今日未来が本部にいるのは、カービィに合わせるために響が未来を誘ったからである。

 

 響はカービィと会った日から未来にカービィのことをじっくりと話していた。

 

 未来もずっと響から聞いていた話から、カービィに会ってみたいと思っていたのだ。

 

 そして二人はカービィが住んでいる部屋の前に辿り着き、すぐさま扉を開ける。

 

「カービィ、会いに来たよ!」

「ぽよ、ヒビキ!」

 

 響に声を掛けられたカービィは、満面の笑みを浮かべて響に返事をする。

 

「…ぽよ?」

 

 その直後、自身にとって見覚えのない姿がいることに気がついた。

 

「貴方がカービィ?はじめまして」

 

 カービィに目を向けられた未来は、笑顔でカービィに挨拶をした。

 

「私は小日向未来、響の親友なの。よろしくね」

 

「………ミ…ク?」

「そう」

「ぽよ!ミク、ミク!」

 

 新しい出会いに喜びを感じたカービィは、未来の名前を連呼する?

 だがその直後、

 

グウゥゥゥゥゥゥ

 

「………ぽよぉ」

 

 突然謎の音が鳴り響く。

 同時に、さっきまで明るい表情を浮かべていたカービィの顔が、いっきに落ち込んだものとなった。

 

 二人は、今の音の発声源を悟ると同時に、小さく笑った。

 

「もう、カービィてば食いしん坊なんだから!」

「響だって同じでしょう。昨日もあんなにおかわりしたくせに」

「えぇ!それはないよ未来ぅ〜」

 

 カービィの食い意地っ張りに呆れた響は、未来からの指摘に痛い所をつかれ動揺する。

 

「でもまあ、もうお昼時だし、みんなで食べに行こっか」

「うん、賛成!私もカービィにつられてお腹空いちゃった」

「ぽよっぽよっ!」

 

 未来の言葉に響はうきうきと声をあげ、カービィもご飯が食べられると知り再び喜びに満ちた声をあげる。

 

(もう、二人ともそっくりなんだから)

 

 二人の喜びようを見て、未来は内心では呆れながらも暖かい笑みを浮かべた。

 

 それは正しく、陽だまりの如く。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 食堂へ着いた三人は、食堂係から料理を受け取り席へと向かう。

 

「カービィ、もう一人で全部食べたりしちゃダメだからね」

「……ぽ、ぽよぉ」

 

 カービィは響から釘を刺される。

 不本意そうではあったが、前回響にこっ酷く怒られたことを思い出し、渋々了解の意を示す。

 

 椅子に座った響は、テーブルの上に乗っていたカービィを持ち上げ、自身の膝の上へと乗っけた。

 世間一般的に見ればお行儀の悪い光景であろう。

 たが、カービィは隙を見せれば即座に食堂の食べ物を食い尽くそうとしてしまう。

 故に、カービィを抑えておくためにもこうする必要があるのだ。

 

 響と未来は席に着くと、手の平を目の前で合わせて、挨拶をする。

 

「「いただきます」」

「……イッタアキマ〜ス」

 

 二人の一連の仕草を見て、カービィも二人の真似をする。

 

 カービィが自分達の真似をしたのを見て、二人は小さく微笑んだ。

 

 響はお箸を手に取り、トレーの上に乗っていたハンバーグを一口サイズに切る。

 それを摘んでカービィの前へと持って来る。

 

「はいカービィ、あーん」

「うあ〜」

 

 響の呼びかけに、カービィは口を大きく開ける。

 

 カービィが口を開けたことを確認した響は、お箸をカービィの口の中へと入れる。

 摘んでいたハンバーグをカービィの舌の上で放しお箸を口の外へ出す。

 

 カービィは口に入れられたハンバーグを口の中でじっくりと味わい始める。

 

「どうカービィ、美味しい?」

「……んっ、ぽーよ!」

 

 ハンバーグを飲み込んだカービィは、響からの問いに笑顔で答える。

 カービィの笑顔を見た響もまた、満面の笑みを浮かべるのであった。

 

「カービィは食べるのが大好きなんだね」

「そうなんだよ、あの時も食堂の物を全部食べちゃって大変だったんだよぉ」

「本当、いっぱい食べる所も響に似てるんだから」

「ちょっと、私はいくら何でも食堂の物全部は食べないよぉ!」

 

 またしても未来に痛い所を突かれた響は、未来に抗議するのであった。

 

「でも、それだけじゃないよ」

「へ?」

「前に響達のこと、助けてくれたでしょう」

「うん、そうだけど……?」

「誰かを助けずにいられない所も、響に似てるなと思って」

「……あ」

 

 未来の言葉に、響はカービィと初めて会った時のことを思い出した。

 

 あの時未知の敵に困惑していた自分達の前に突然現れ、不思議な力で戦ってくれたこと。

 そして自分の「一緒に戦って」という言葉に、即座に応えてくれたこと。 

 

 あの時自身がカービィの立場であれば、きっとカービィと同じだったと響は思った。

 

 そういう意味では、未来の言う通りカービィと自分は似ているのかもしれないと響は思うのであった。

 

「……ぽよっ!ぽよっ!」

「……へ?あぁ、はいはいちょと待ってね」

 

 いつまで経っても次の一口をくれない響に痺れを切らしたカービィは、響に早く次の一口をくれるよう訴えの声をあげる。

 

 カービィの声に気がついた響は、すぐにご飯をお箸で摘み、カービィの口へと運ぶ。

 

「あむあむあむ……」

「まだまだあるから、ゆっくり食べてね」

 

 二人が仲良く食事を楽しむ光景を見た未来は、優しく微笑んでいた。

 

(本当仲が良いんだから、この二人)

 

 内心で二人の仲の良さを嬉しく思いながら、二人をそっと見守るのであった。




次回は良くて来週の土日、最悪の場合二週間以上先になると思います。


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三星目 その頃、盟友達は

………未だに物語は進展しませんが、どうかご了承を。(土下座)
今回は前回より短めですが、それもご了承を。(土下座二度目)


 プププランドに存在する巨大な山――『デデデ山』。

 その頂上に位置する顔のような装飾が施された巨大な城――『デデデ城』。

 その中ではある者達が集まっていた。

 

「それで、カービィがいなくなったというのは真か?」

 

 その中で先に声を挙げたのは、仮面の騎士だ。

 紺色の丸い身体に、顔全体を覆う白銀の仮面。

 背中からは漆黒のマントをなびかせ、腰には黄金の剣を携えている。

 

―――『メタナイト』

 

「……うん。気がついたらいつの間にかいなくなってて、家にもいなかったんだ」

 

 メタナイトの質問に答えたのは、彼より少し小さめの生き物。

 橙色にそまった丸い身体に、顔は肌色に染まっており、何故か口がない。

 頭には青いバンダナを巻き、背中には木製の槍を背負っている。

 

―――『バンダナワドルディ』

 

「だがあいつのことだ、また誰かにケーキでもとられて追いかけにいったんじゃないのか?」

 

 また次の者が声を挙げた。

 この場にいる者たちの中で最も背が高く、赤いガウンを着込んでいる。

 顔はまるでペンギンのようで、頭には金色の卵のような飾りのついた赤い帽子を被っている。

 

―――『デデデ大王』

 

 大王の名を冠しているが、それはあくまで自称である。

 

 デデデ大王が挙げた意見には、誰も反対の意を示さなかった。

 否、示せなかった。

 

 何せこの場の者達全員がカービィの大食いぶりを知っていたからだ。

 

 プププランド所か、ポップスター全体のレベルですらカービィほどの暴食など存在しない。

 なにせ以前とある事件で、カービィのおやつのケーキが紛失してしまい、それを取り戻すために宇宙にまで行ったほどである。

 

 だが、そこでメタナイトは新たな意見を言う。

 

「………確かにその可能性も否定出来ない。だが、カービィがこれまで関わってきたことはこの星(ポップスター)はおろか、宇宙全体の危機にまで至る程の物ばかりだった。もしやすれば、今回も何かの事件に巻き込まれたやもしれぬ」

 

 メタナイトが言ったことに一同は沈黙する。

 それは、肯定の沈黙だ。

 

 確かにカービィは基本的に自由奔放で気ままな故にすぐいなくなることもあった。

 

 しかし、メタナイトの言ったようこれまで何度も大規模な事件に巻き込まれたのも事実だ。

 

―――ある時はとある星から来た妖精を助けるために宇宙を巡り、

 

―――ある時は突如暴走した鏡の世界を救い、

 

―――ある時は突如天空の大陸へ誘われ、悪しき女王の圧政から天空の民を救い、

 

―――ある時は突如現れた侵略者により機械の世界に変えられた故郷を救い、

 

―――ある時は全てを破壊せし破神を仲間達と共に打ち倒し、

 

 とにかくカービィがこれまで為し得た功績は大規模な物ばかり。

 そのためカービィの存在は宇宙にまで知れ渡っている。

 

 その上カービィは純真無垢な故に、困っている人を見れば放ってはおけない性分なのだ。

 

 故に、カービィが大事に関わることは珍しくはない。

 

「………とにかく、私はこれよりメタナイツ総員を率いカービィを探しにいく。カービィがまた何かの事件に巻き込まれたのなら我々も無視する訳にはならん」

 

 メタナイトには彼の剣士としての腕前とカリスマ性に惹かれ、彼の元で日々共に強さを磨きながら共に戦う配下――『メタナイツ』がいる。

 

 そしてメタナイトは、配下達と共に宇宙の平和を守るため、そして自身の剣士としての腕を上げるための鍛錬として、愛機『戦艦ハルバード』で宇宙を彷徨っている。

 

 故に、メタナイトは宇宙の平和を守る者として、今回の件を放っておく訳にはならない。

 

「おい、少し大袈裟すぎんか?まだ結果は分からんのだぞ?」

 

 メタナイトの宣言に、デデデ大王は意見する。

 

 彼の言う通り、まだカービィが事件に巻き込まれたと決まった訳ではない。

 最初に言ったよう、ただ大したことのない理由で何処かへ消えただけかもしれない。

 

「……確かにな。だが生憎私は万が一のことも考慮せずにはいられないのでな、好きにやらせて貰う」

「……そうか」

 

 メタナイトの返答に、デデデ大王はただ一言だけ返した。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 その後、メタナイトは自身の拠点へ戻り、一同は解散となった。

 

 ワドルディは、一人帰り道で途方に暮れていた。

 

「………カービィ、何処にいっちゃったんだろう?」

 

 彼はカービィが心配でならない。

 もし、カービィの身に何かあればと。

 

 何せカービィはこの星を何度も救ってくれた恩人であり、彼にとっての掛け替えのない"友達"なのだから。

 

 

 

 

 

 

―――すると突然

 

ゴォォォォォォォッ!!

 

「……え!?」

 

 突然大きな音と共に地面が揺れだす。

 突然の事にワドルディは慌てふためく。

 

 だが、そんなのおかまいなしといわんばかりにまたしても事は起こる。

 

 突如何もない空中に、星形の穴が現れたのだ。

 それはカービィが別の世界へと飛ばされた元凶と同じ物であった。

 

「え、アナザーディメンション!?」

 

 ワドルディには、それに見覚えがあった。

 嘗てカービィやデデデ、メタナイトと共に冒険へと出た時に遭遇した"異界の穴"だ。

 

―――何でこれがここに?

 

 疑問を拭えないワドルディ。

 だが、目の前の異界の穴は、無慈悲にも彼を引きずり込み始める。

 

「うぅぅぅぅぅぅ……わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 足を地面にぎっしりとつけて何とか踏ん張る。

 だが、その抵抗は虚しく異界の穴へと吸い込まれてしまった。

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 S.O.N.G.本部。

 そこでは、再び装者一同並び弦十郎、エルフナイン、そしてカービィが集まっていた。

 ちなみに、カービィは響の腕の中で抱かれるのがすっかりお馴染みとなっている。

 

「それでエルフナイン君、何か分かったのか?」

 

 弦十郎はエルフナインへと真剣な顔で質問する。

 

「はい、あれからあの未確認生命体やカービィさんについて解析を行なっていました。その過程で、僕はあの未確認生命体が現れた日の現場を解析していました。」

 

 エルフナインが語り出すと同時に、彼女はコンソールを操作しながらモニターへ映像を映し出す。

 そこには、またしても装者達には理解できない数式やグラフなどが写る。

 

「すると、あのときあの場所から離れた所で未知の反応があったのです」

 

 エルフナインが挙げた言葉に一同は疑問を浮かべる。

 

「その反応とは?」

 

 エルフナインの言葉に先に疑問を挙げたのは、弦十郎だ。

 

「はい、それが今まで見たことのない未知の物だったので、詳しい所までは……」

 

 弦十郎の疑問に、エルフナインは自信なさげに答える。

 

「ただ、この反応は"ギャラルホルン"の反応に僅かながら似ていたんです」

 

『!?』

 

 エルフナインが後から言った言葉に、一同は驚愕する。

 

―――『ギャラルホルン』

 S.O.N.G.内で保管している完全聖遺物。

 嘗てS.O.N.G.の前身である特異災害対策機動部二課の研究員であった『櫻井了子』によって発見されたもの。

 

 その能力は、あり得たかもしれない可能性の世界――『並行世界』を繋げること。

 

 これまで装者達はギャラルホルンを使い幾多もの並行世界の危機を救った。 

 そして同時に、その世界の者達と絆を結んで来た。

 

 そのギャラルホルンに似た反応ということは、装者達にある可能性を浮上させる。

 

「つまり、あの生命体は並行世界から来たということ!?」

 

 一同が思い浮かべた疑問を真っ先に言ったのは、マリアであった。

 

「まだ確証はありません。この反応は確かに極僅かにギャラルホルンににていますが、ほとんどが完全に未知な物なので……」

 

 マリアの疑問にまたしてもエルフナインは答える。

 

「カービィは何か知ってる?」

「ぽよ?ぽよっぽよっ」

「ごめん、やっぱり言ってること全然わかりません!」

 

 響はなんとなくカービィへと問う。

 だが、カービィの言葉はやはり響には全く理解出来ない。

 

―――その時

 

ブォーーン!ブォーーン!

 

『!?』

 

 突如として本部内のアラートがけたましい音を立て、一同の耳を痛める。

 

「何事だっ!?」

 

 弦十郎は即座に思考を切り替え、職員達に何が起こったかを問いただす。

 

「さっきまで話しに上がっていた未確認生命体です!小型の方が大量に出ています!」

 

「既に民間人に被害が出ています!」

 

 弦十郎の問いに即座に答えたのは、二人のオペレーターだ。

 

―――『藤尭 朔也』

―――『友里 あおい』

 

 弦十郎は二人の報告を聞いた次の瞬間、すぐさま装者達の方へ向き直る。

 装者達の顔は、既に覚悟の出来た真剣な物となっていた。

 

「お前達、聞いての通りだ!直ちに現場へ急行してくれ!」

『了解(デース)!』

 

 弦十郎の発令に、装者達は気の入った声で力強く答えた。

 

「カービィ、すぐに戻って来るから此処で待っててね」

 

 響はカービィを放し、その場に置いて行こうとする。

 

 カービィに戦える力があるということは、すでに響も理解している。

 しかし、それでもカービィを危険な戦場(いくさば)へ連れて行くことは出来ない。

 まだ出会ってから日が浅いとは言え、彼はもう響にとって"友達"なのだから。

 

 しかし、カービィはそれを良しとしない。

 

「ぽよっ!ぽよぽよ!」

「……どうしたの?」

 

 カービィは響になにかを訴えるよう声をあげて響から離れようとしない。

 

 カービィは響達の話しを完璧には理解していなかったが、その慌てようからただ事ではないのは分かった。

 純真無垢なカービィは、すぐさま響達が何か大変なことになっていると思った途端助けずにはいられなかった。

 

 故に、彼女達の手助けをすべく響に自身を同行させるよう訴える。

 

 だが、当の響はカービィの言っていることが理解できず困惑する。

 

「何をしている立花、早く行くぞ!」

「翼さん!……でもカービィが、何か言っているんです!」

 

 翼は響の言葉を聞いてカービィへと目を向けるが、やはり翼にもカービィの訴えは伝わらない。

 

「立花、カービィには悪いが、今は後回しだ。我々は一刻も早く戦場(いくさば)へと赴かなくてはならぬのだ!」

 

 翼はそう言い残し、すぐさま司令室から駆け出す。

 そして響も、カービィに申し訳なさそうな顔を向けた。

 

「ごめんねカービィ、私行かなきゃ!」

「ぽよっ!ヒビキ!ぽよっぽよっ!」

 

 カービィの必死の訴えも虚しく、響はすぐさま司令室を出て行ってしまった。




色々悩んだ結果ここら辺で区切った方が良さそうだったので、今回はここまで。
…………大丈夫ですよね?


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四星目 再会の友

相変わらずの至らない点の多い文章ですが、どうか温かい目で見てくれれば幸いです。



 戦場(いくさば)へとたどり着いた装者たちは、即座にシンフォギアを纏いあたりを飛び交うリーパーたちへと向かい合う。

 

 翼は自身のアームドギアである剣で、リーパーを切り裂いた。

 

 斬られたリーパーは真っ二つになり、一瞬にして跡形もなく塵となる。

 一匹、二匹……

 リーパーは次々と斬られていき、数を減らしていく。

 

 そして翼が握る剣は、途端にその姿を変える。

 次の瞬間身の丈ほどはあるであろう大剣が現れる。

 

 大剣を持ち上げ、そのまま一気に振り下ろす。

 衝撃で風がなびくと同時に蒼く光る巨大な斬撃がリーパーの群れへと向かって行く。

 

―――『蒼ノ一閃』

 

 リーパーたちは、突然飛んで来た斬撃になす術もなく切り裂かれていく。

 

 だが、リーパーたちの数はまだまだ残っている。

 すぐにまた別の個体が翼に狙いを定めて突進を繰り出す。

 

 だが、リーパーは突如飛んで来た大量の弾丸によって葬り去られた。

 

「おいおい、仲間同士でぞろぞろしてんのはそっちだけじゃねぇぞ」

 

 翼が声が聞こえた方を振り向けば、そこには両手に銃を構えたクリスがいる。

 

 翼はクリスのどこか得意げな顔を見て、そっと微笑んだ。

 

 翼とクリスは互いに眼を合わせ、何も言葉を発することなく同時に駆け出す。

 言葉にせずとも、二人の中では通じ合っていた、

 

―――背中は預けたと

 

 クリスは銃をあらゆる方向へ向け、次々と引き金を引く。

 四方八方へ放たれる弾丸の数々が、リーパーたちをあの世へと送る。

 

 そんな時、

 

「えーいっ!」

 

『……!?』

 

 突然聞こえてきた聞き覚えのない声に、装者一同はあたりを見回した。

 

 すると、

 

「…やっ、やっ!」

 

 そこに声の主はいた。

 

 カービィと同じくらいの背格好。

 木製の槍を巧みに操り、リーパーと応戦している。

 

「……へ?あれなに!?」

「……どことなくカービィに似ている?」

 

 謎の生物を見て響と調はそれぞれ反応する。

 調の言う通り、謎の生物の外見はどことなくカービィに似ている。

 

 突然現れた謎の生物に呆気をとられていた装者たち。

 だが、すぐに我に帰り、リーパーたちへ向き直る。

 

 目の前の生き物がなんであれ、自分たちと同じ敵と戦っているのであれば、助けない道理などない。

 

 決意を固めた装者たちは、謎の生物の周りを飛び交うリーパーへ狙いを向けて駆け出した。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 バンダナワドルディは困惑していた。

 

 異界の穴に飲み込まれたと思いきや、気づけばプププランドとはあきらかに違う場所にいる。

 

 更に辺りには、かつてカービィと共に冒険したときに出会ったリーパーたちがたくさんいるではないか。

 

 そしてリーパーたちはワドルディに気付いた途端、見境もなく襲いかかって来る。

 

「わぁっ!?」

 

 いまだに混乱がおさまらないワドルディ。

 だが、悠長に考えている場合ではないと彼は悟る。

 そして、背中に背負っていた愛用の槍を取り出し、構える。

 

 自身に迫って来るリーパーを即座に突き、そのまま度振り回し背後にいたリーパーを槍の先端で切り裂く。

 何度も槍を振り回し、リーパーたちを倒していく。

 

 そんな時、

 

「はあっ!」

 

 突然聞き覚えのない声が響いた。

 同時に、自身の周りにいたリーパーの一体が何かによって切り裂かれた。

 

 そして今度は、自身よりも遥かに背が高い、全体的にピンク色の格好をした女の子が目の前に現れる。

 

「……えぇっ、なに!?」

 

 そして、辺りをよく見渡せば、彼女と同じくらい、はたまた彼女よりも更に背の高い者も含めた、色とりどりの女性たちが他にもいるではないか。

 

 その外見は、どことなく以前出会った仲間の一人である画家見習いの少女に似ている気がする。

 だが、格好や雰囲気などから、あきらかに違うのがわかる。

 

 突如現れた者に気付いたワドルディは驚いてしまう。

 

 すると今度は、銀色の格好をした、彼女たちの中で一番背の高い者が自身へと近づいて来る。

 

 これには突然ワドルディも警戒心を出さずにはいられなかった。

 

 しかし、……

 

「大丈夫、私たちはあなたの味方よ」

 

 なんと相手はこちらに対し、笑顔を向けてこちらに優しく声をかけて来たのだ。

 これには警戒心丸出しであったワドルディも拍子抜けしてしまった。

 

 だが、それが仇となってしまったことに、ワドルディは気付けなかった。

 

 今の彼は拍子抜けしたことで動きが止まってしまう。

 リーパーたちからすれば格好の的である。

 

 それをみすみす逃すほど、リーパーたちは間抜けではない。

 

 リーパーの一体が、ワドルディ目掛けて突進を繰り出した。

 

 しかし、

 

「うおりゃっ!」

 

 勢いの入った声に、ワドルディは朦朧としていた意識をはっと取り戻し、反射的に声が響いた方を向く。

 

「……えっ!?」

 

 するとそこには、黄色の格好をした少女が右拳を前に出していた。

 

 彼女の拳の先では何かが弾け塵となったのが見えたのだ。

 

 その塵の正体が何かなど、考えるまでもなかった。

 

 突然のことに驚くワドルディだったが、自身に迫っていた身の危険から彼女が助けてくれたことは辛うじて理解出来た。

 

「君、大丈夫?」

「……う、うん」

 

 今度は黄色の少女に自身の安否を問われる。

 ワドルディはそれに、思わず答えてしまった。

 

 次から次へと起こる事態に、ワドルディはまだ事態をちゃんと飲み込めていない。飲み込めるはずがない。

 

 だが、ワドルディは自身のなかから立ち込めて来る焦りをなんとか押し殺す。

 そして、頭の中で物事を出来る限り整理し始める。

 

 少なくとも、今自身の周りにいる彼女たちから敵意は感じられない。

 むしろ彼にとって願ってもいない救援ではないか。

 

 とすれば、すくなくとも今自身が向き合うべき相手はリーパーたちのみ。

 

 考えをまとめたワドルディは、リーパーたちを再び見据える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――その時であった

 

「ぽよー!」

 

『!?』

 

 それはどこからともなく聞こえてきた。

 

 緊迫感に包まれた、この戦場には似つかわしくない可愛らしい声。

 

 だが、その声を聞いた途端、自身の焦りと不安との戦いに傷ついていたはずの彼の胸中の痛みが、ほんの一瞬で和らいだのだ。

 

 その声は、ワドルディにとってとても馴染み深いものだった。

 

―――聞き間違えるはずがない

 

 それはずっと再会を望んでいた、彼の心からの"友"の声なのだから…。

 

 そこから、ワドルディがその声が発せられた方向に向き直るのは早かった。

 

 自身を助けてくれた少女たちは、何故か慌てふためいてた気がするが、今の彼にはそんなのなど眼中に入らない。

 

 そしてついに見つけた、―――

 

 

 

 

 星型の乗り物を優雅に乗りこなし駆けつけた、カービィ(最愛の友)の姿を……。

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 響に置いて行かれたカービィは、本部内のモニターから響たちの様子を見守っていた。

 画面の向こうの響たちは、それぞれの武器(アームドギア)を巧みに使いこなし、リーパーを次々と倒している。

 

 だがそんな時、

 

「司令、あの場所に新たな生態反応を確認っ!」

「なんだと……っ!?」

 

 友里からの報告に、弦十郎は驚愕を浮かべる。

 

「その生態反応を中心に未確認生命体の反応が少しずつ消失していっています!」

「なに……?」

 

 藤尭からの新たな報告に、弦十郎はまたしても驚愕する。

 二人の報告から何が起こっているのか想像するのは弦十郎にとって容易である。

 

「……何者かが、戦っているのか?」

 

 弦十郎の疑問に答えるが如く、その様子がモニターに映し出される。

 そこには……

 

「な……っ!?」

「これって……」

 

 モニターを見た途端、一同はまたしても驚愕した。

 

「カービィくん、に、似てる……ッ!?」

 

 そこに映っていたのは、槍を巧みに使いこなしてリーパーと戦うバンダナワドルディである。

 その背格好から、誰もがカービィへの類似性を感じられずにはいられなかった。

 

「ぽよ!?ぽよぽよ!」

 

 一同がカービィを見てみれば、案の定彼は映像に反応していた。

 何を言っているかまではわからない。

 だが、モニターを見た途端に反応しだしたのと、現在の驚きと喜びが入り混じったかのような反応から、一同は察した。

 

―――あれはカービィに関係があると

 

 だが、モニターをカービィに見せたのは痛手でもあったことに、一同はこの後すぐ気付くことになる。

 

 映像に釘付けになっていたはずのカービィが、突然司令室の出口へ向かって駆け出したのだ。

 

「おい、カービィくん!?」

 

 弦十郎の呼び止めも聞き入れず、カービィはすぐさま司令室を出て行ってしまった。

 

 カービィを止めに追いかけたい弦十郎だが、自身はこの場で指揮を取らなければならないゆえ、動くことが出来ない。

 

「司令、カービィが本部の外へ出ました!」

「…なんだとぉ!?」

 

 藤尭からの報告に、弦十郎はただ焦ることしか出来なかった。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 本部から脱走に成功したカービィは、入り口で佇んでいた。

 道中で何人もの職員に捕まりそうになったが、カービィの小さい身体からのすばしっこい動きに翻弄され、カービィを捕らえることは出来なかった。

 

 カービィは友だちが戦っている場所へ向かうべく行動を起こす。

 

 カービィはどこからともなくある物を取り出す。

 

 それは、"携帯電話"であった。

 全体的が彼の身体と同じくピンク色で、星型のアンテナが付いている。

 

 カービィは携帯電話のボタンを押し、すぐさま耳―――と思われる位置に持ってきて、何かを喋りだした。

 

 するとすぐに"それ"はやって来た。

 

 突如空から謎の光がやって来て、カービィのもとへと向かって来る。

 

 そして、その姿があらわになった。

 

 それは正しく、黄色い星型。それ以外何の表現のしようもない姿形である。

 

―――『ワープスター』

 

 長い間カービィとともに旅をしてきた存在。

 例えカービィが遠く離れたどんな場所にも現れる、正にカービィの相棒とも言える存在。

 その正体は、カービィですらわかっていなかったりする。

 

 長年の旅の相棒と再会を果たしたカービィは、ジャンプして己をワープスターに乗せる。

 バランスを整えながら、カービィは自身が向かうべき場所を思い浮かべる。

 

 カービィが乗ったことを確認したワープスターは、そのまま発射態勢に入りる。

 

 そして、溜め込んでいたものをいっきに解き放ち、一瞬で地平線の向こうへと飛び立って行った。

 

 友が待つ場所へと向かって―――

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 響たちがいる場所へと辿り着いたカービィ。

 

 すぐさまワープスターから降りて響たちの元へと走りだした。

 

「ぽよ!」

「カービィ、なんで来ちゃったの!?」

 

 響はカービィの身を案じて置いて来たのだ。

 なのに、カービィが自分から来てしまったことに困惑を隠せない。

 

「カービィ!」

「ぽよ!」

 

 だが、そんな響のことなど知らずに事は進む。

 

 ワドルディはカービィを見た途端に駆け出す。

 

「カービィ、会いたかったよ!心配したんだよ!」

「ぽよ、ぽよ!」

 

 一番の親友との再会にワドルディは大はしゃぎしている。

 カービィも同じように喜んでいる。

 

 だが……

 

「はぁ!」

 

 再会を喜ぶカービィたちをよそに、マリアが自身の武器(アームドギア)である短剣でカービィたちの方向へ向かっていたリーパーを切り裂く。

 

「貴方たち、今は悠長に喜んでいる場合じゃないわよ!」

 

 マリアの言葉に、一同は我に返った。

 

 リーパーたちはまだたくさんいる。

 これ以上危害を広めないためにも早く全て倒さねばならない。

 

 カービィは眉を上げてリーパーたちと向き合う。

 

「待って、カービィ!」

 

 そこでワドルディは待ったをかける。

 カービィが戦いにおいて本領を発揮するにはコピー能力が必要不可欠である。

 だが、今のカービィはなんの能力も持たない、いわゆるすっぴん状態だ。

 これでは敵を吸い込んで吐き出すことしか出来ない。

 

 攻撃手段が無いわけではないが、あまりにも効率が悪い。

 

 故に、ワドルディは、カービィが本領を発揮出来るようある物を取り出す。

 

「これをつかって!」

 

 ワドルディがどこからかともなく出したのは、ワープスターとも違う黄色い星型の物体。

 その中には、刃のような絵が描かれている。

 

 ワドルディは黄色い星をカービィ目掛けて投げる。

 カービィは、即座に吸い込みの体制に入り、黄色い星型を吸い込んだ。

 

 すると、カービィの身体に変化が起きる。

 

 カービィの身体が一瞬光り輝く。

 

 光が晴れると、カービィの頭にはさっきまでなかった筈の帽子がある。

 そのてっぺんにはギラりとひかる刃、左右には小さな羽が生えている。

 真ん中にはカービィと同じくつぶらな瞳が描かれている。

 

―――コピー能力『カッター』

 

「……また姿が変わった?」

 

 カービィの新たな姿に調はそっと声をもらす。

 

 カービィは帽子のてっぺんについた刃を取り外す。

 

 次の瞬間、刃をリーパー目掛けて投げ飛ばした。

 

 すると刃は空中で軌道を曲げながら飛び、次々とリーパーたちを横一文字に切り裂く。

 

―――『カッターブーメラン』

 

 投げ飛ばした刃は、ブーメランの名の通り孤を描いてカービィの手元へ戻って来る。

 

 刃を再び手にしたカービィは、今度はリーパーたちへむかって駆け出す。

 

 今度は、高くジャンプしながら刃を前に出し、リーパーを縦真っ二つに切り裂く。

 

―――『なでぎりカッター』

 

「斬撃武器だったら、あたしだって負けてないデス!」

 

 自分と同じ斬撃武器を使い出したカービィに何故か切歌は対抗心を燃やし始める。

 

 切歌は身の丈を超える巨大な鎌を構え、駆け出す。

 

 鎌を振り下ろすと、分裂した鎌の刃が、リーパーたち目掛けて飛んで行く。

 

――― 『切・呪りeッTぉ』

 

 飛んで行った刃は、リーパーたちを左右から挟み込むかの如く切り裂いた。

 

 見ればリーパーたちの数はいつの間にか減っており、残りは後僅かとなっていた。

 

 だがそこに"それ"は唐突に現れた。

 

『$♪#×$☆○%$○!!』

『―――!?』

 

 突然耳障りな鳴き声が聞こえたと思えば、"それ"はいきなり現れる。 

 

―――スフィアローパーだ

 

 だが、その姿は前回とは異なり、全身が緑色に染まっている。

 

「えぇっ、スフィアローパー!?」

「なに……!?」

 

 ワドルディがあげた驚きの声に、翼は反応する。

 

 今まで自分たちが未確認生命体と呼んでいた存在。

 だがワドルディは、それを明確な名称で呼んだのだ。

 それは即ち、バンダナワドルディは敵の詳しい情報を持っているかもしれないということに他ならない。

 

 だがスフィアローパーはお構いなく体当たりを仕掛ける。

 

「……!」

 

 単調な動きゆえ難なく躱せた。

 

 翼は詳しいことは後回しだとけじめをつけ、スフィアローパーと改めて対峙した。




中途半端になってしまいましたが、文字数が良い所だったので今回はここまでです。

携帯電話は、皆さんご存知64のアレです。←64未プレイ

一旦シナリオを整理したいため次回以降の更新は大分遅れると思いますが、どうかご了承下さい。


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五星目 友との絆の戦い、歌姫を交えて

今回は、私がお世話になっている師匠に文章の一部を添削していただきました。
これからも日々精進いたしますので、どうかこの作品をよろしくお願いします。
まだ文章でおかしい部分があると思いますので、もし気になる所があれば遠慮なくご指摘お願いします。

今回ようやく物語が少し進ん………だのでしょうか?

追記

前のは何か違う感があったためサブタイトルを変更しました。まだ装者たちとの絆はそこまで深まってないのに「友と歌姫との絆の戦い」は違うかなと思いまして。


 スフィアローパーへと向き直った一同は、それぞれのアームドギアを構え、スフィアローパーを真っ直ぐに見据える。

 

 先に行動に出たのはスフィアローパーだった。これまで同様、単調な動きでこちらへと突進する。

 

 しかし、今回のスフィアローパーは前回と違い、体に電気を帯びた状態で向かって来ていた。

 

『ッ!』

 

 これまで幾多の強敵達と対峙してきた装者たちに、スフィアローパーとは何度も戦ってきたカービィとワドルディ。

 単調な体当たりを避けるなど、一同には雑作もない。

 

 そして、今度は装者たちの番だった。

 

「はあっ!」

 

 調のヘッドギアの左右に装着されているホルダーが開き、その中から桃色の丸鋸が高速回転しながら大量に射出される。

 

―――『α式・百輪廻』

 

 自身へと向けて放たれた大量の丸鋸を避けるべく、スフィアローパーは空中を徘徊しだす。

 

 しかし、全て避けることは叶わない。いくつかの丸鋸はスフィアローパーの身体に命中し、火花を散らした。

 

 だが、スフィアローパーはリーパーほど脆くはない。ダメージを負いながらも尚、装者たちへと向かってくる。

 

 次の瞬間、上昇し空高く舞い上がったスフィアローパーの全身を、緑に輝く電撃がパチパチと弾けながら迸る。

 更に、電撃を纏ったスフィアローパーは、高速で回転し始めたでは無いか。

 

『っ……!?』

「ぽよっ!?」

「うわっ!?」

 

 スフィアローパーを中心に、縦一線に落雷が発生する。

 装者達は危険を察知し、咄嗟にかわした。

 

 幸い、誰一人として命中することは無かったが、落雷が落ちた場所には小さなクレーターが出来ており、煙が立ち上がっている。威力は相当なものらしい。

 

 だが、スフィアローパーの攻撃はこれで終わらない。一同の頭上から、再び雷が轟いた。

 

 避けても避けても、落雷は不規則ながらも次々と上空から降り注ぎ、装者達に息をつく間も与えない。

 

 だが、頭上をとられた程度で怖気付く彼女たちではなかった。

 

「制空権を取ったくらいで、いい気になるなよ雷野郎ッ!」

 

 クリスのアームドギアが弩弓型に変形し、通常のものより巨大な矢を発射する。

 放たれた矢は、スフィアローパー……ではなく、その更に上空へと飛んだ。

 

 外したのではない。スフィアローパーへの意趣返しでもあるが、この矢にはクラスター弾としての性質が備わっているのだ。

 

 次の瞬間、放たれた矢は無数の小弾へと分裂し、スフィアローパーの頭上へと降り注いだ。

 

―――『GIGA ZEPPELIN』

 

 突然頭上を取られてしまったことでスフィアローパーは対応し切れず、大量の弾をもろに喰らってしまう。

 翼にダメージを負ったことにより、スフィアローパーは飛行のバランスが乱れてしまい、そのまま地面へ落下し始めた。

 

 その隙を逃すほど彼女たちは甘くはない。

 

「はあっ!」

 

 マリアはアームドギアの片手剣を自身の左腕を覆う装甲へ収納する。すると左腕は砲身へと姿を変え、砲撃が放たれた。

 

―――『HORIZON†CANNON』

 

 スフィアローパーは砲撃をもろに受けてしまい、吹っ飛ばされ、地面に身体を叩きつけられる。

 

 だが、スフィアローパーはまだ終わらなかった。

 

 装者たちの技を連続で喰らい、ダメージが溜まりに溜まったスフィアローパーは、完全に怒りに駆られている。

 

『○*☆#〆*×☆ッ!!』

 

 そして、スフィアローパーは荒れ狂う獣の如く雄叫びをあげる。

 

 怒りに駆られ我を見失ったスフィアローパーは狙いも定まらないまま突進を繰り出す。

 

 だが、彼らがそれをただ黙って受けるはずがない。

 

「やあっ!」

 

 ワドルディは槍を地面につける。

 次の瞬間、地面を抉るかの如く勢いで突進を繰り出す。

 

―――『大地づき』

 

 突進と突進がぶつかり合い、両者は互いに距離を開ける。

 

「ぽよっ!」

 

 その隙を逃さない者がいた。

 

 そう、カービィである。

 

 ワドルディが突進する前に駆け出し、両者がぶつかり合い動きが止まる一瞬を待っていたのだ。

 

 そしてカービィは、友が作ってくれた隙を逃しはしない。

 

 走りながらスフィアローパーへ迫ると同時に、手に持っていた刃を横へ薙ぎ払う。

 

―――『ダッシュカッター切り』

 

 横一文字に切り裂かれたスフィアローパーは、再び吹っ飛ばされる。

 

 たった今受けた一撃により、スフィアローパーは標的をカービィに変える。

 

 今度は、口から自身の身体と同じ緑色の球弾をがむしゃらに吐き出す。

 

 カービィは自身へ降り注ぐ光弾を刃で切り裂いていく。

 そして再びスフィアローパーと間合いを詰めるべく走り続ける。

 

 この時、スフィアローパーは怒りに身を任せるが故に、ある重要なことを失念していた。

 

―――相手は一人ではないということを

 

 スフィアローパーの頭上より上に影が迫る。

 

 それは、ワドルディであった。

 

 ワドルディはなんと、槍を高速で回転させることによってヘリコプターの如く空へ舞っていたのだ。

 

 スフィアローパーはカービィへの攻撃に無我夢中になる余り、自身に迫るワドルディの気配に全く気づかない。

 

 故に、不意打ちを許してしまう。

 

 ワドルディは槍の先を自身の真下にいるスフィアローパーへと変える。

 そして体を回転させながら、全身の重心を下へ向け急降下する。

 

―――『月落とし』

 

 ワドルディの持っていた槍はスフィアローパーの頭へと突き刺さる。

 スフィアローパーの皮膚が硬いのか貫き通すことはない。

 だが、スフィアローパーは、そのまま地面へ向けて落ちて行く。

 

 完全にカービィに執着していたスフィアローパーは、自身の身に何が起きたのか理解出来ないまま地面へと叩きつけられた。

 

 ワドルディはスフィアローパーの頭から降り、その場を離れた。

 友にトドメを刺させるために……。

 

 スフィアローパーは全身に伝わって来る痛みを湧き上がる怒りによって堪えてながら、なんとか再び飛び立とうとする。

 

 だが、それは叶わなかった……。

 

 スフィアローパーの目前にはすでにカービィが佇んでいる。

 

 そしてカービィはトドメの刃を振り払う。

 

 あらゆる方向から繰り出される斬撃が、スフィアローパーの身体を切り裂く。

 

―――『カッターめった切り』

 

 何度か切り裂いたあと、刃を振り上げると同時に、カービィは空へ舞い上がる。

 

 そして、トドメの一撃を振り下ろす。

 

―――『ファイナルカッター』

 

 縦一線に切り裂かれたスフィアローパーは、最後の断末魔をあげる猶予さえなく爆散した。

 

 荒々しく燃え上がる怒りの炎は、戦姫の歌声と星の絆の前に沈下させられた。

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 戦いを終えた一同は、S.O.N.G.本部へと帰還していた。

 

 その場の全員の目はワドルディへと向けられている。

 だがそれもそうだ。ようやくカービィやリーパーたちについて知っていて、尚且つ自分たちと意思疎通が可能な者が現れたのだ。

 最近起きた異変について何の手がかりも掴めていないS.O.N.G.にとって、ワドルディは希望とも言える存在だ。

 

「……えぇと、君たち誰?カービィの新しい友達?」

 

 一方のワドルディは、自身の置かれた立場を理解出来ずにいる。

 だがそれもそのはず、突然訳の分からない場所に飛ばされたと思いきや、敵と戦う羽目になり、カービィと再会できたのは唯一の幸いであったが、今度はまたしても訳の分からない場所へ連れて来られ、周りから動物園のパンダの如くジロジロと見られている。

 普通なら誰でも混乱するであろう中で、今の状況を理解するなど無理難題にもほどがある。

 

「……あぁ、すまない。我々は君に敵意はないから、どうか安心して欲しい」

 

 ワドルディが不安になっているのを悟った弦十郎は、彼を安心させるべく声をかける。

 

「我々は君にどうしても聞きたいことがあるんだ。どうかこちらでの事態解決のためにも、協力してくれないだろうか?」

 

 弦十郎の言葉から、ワドルディは彼らが自身の敵ではないことは理解出来た。

 

 だが、突然の事態に彼の心情は未だに落ち着きを取り戻せずにいた。

 

「ぽーよ」

 

 そんなワドルディの気持ちを和らげるために、カービィは声をかけた。

 

「……そうなの?」

「ぽよ!」

「そっか、カービィが大丈夫って言うなら安心だね」

 

 どうやらカービィの言葉により、ワドルディは安心を取り戻せたようだ。

 

「……ちょっと待て。お前、ピンク玉の言ってることがわかるのか?」

 

 今まで黙っていたクリスが、突如として疑問の声をあげた。

 

 連続して訳の分からない者が現れたことにより、多少おかしな者が来ても驚かなくなったクリスであったが、目の前で全てが謎に包まれたカービィの「ぽよ」と言う言葉をごく自然に解読して見せたワドルディに、湧き上がる疑問が我慢を超えたのだ。

 

「うん、わかるけど?カービィとの付き合いは大分長いからねぇ。」

「……いや、それだけで飲み込めるほどあたしの頭は暴食じゃねぇ!!」

 

 ごく普通に答えたワドルディに、クリスは毎度お馴染みの独特な日本語で突っ込みをかます。

 

「……ともかく、我々の質問に答えてはくれないだろうか?」

 

 クリスとほんの少しばかり口論……というより漫才に近しいやり取りをしている中、弦十郎はワドルディに問いかける。

 

「うん、わかった。カービィが信じる人たちなら大丈夫だと思うから」

「……感謝する」

 

 突然の事態に困っているであろう中、自分たちを信じくれる意を示したワドルディに、弦十郎は感謝を伝えた。

 

 そして問いかけるのは、今までカービィやリーパーたちについて熱心に調べていたエルフナインだ。

 

「ではまず最初にお聞き致します。あなた方は何者なんですか?」

 

 エルフナインはまず最初に、自身を含めこの場の全員が気になっていることを聞いた。

 

 エルフナインは今までカービィについて何度も調査を重ねてきたが、体の構造も既存の生物とは大きく異なっており、戦闘で見せた謎の力についてもわからずじまいだった。

 

―――カービィは一体なんなのか

―――一体どんな異端技術が関わっているのか

 

 今までずっと解き明かしたかった疑問を、今ここで明らかにするべくワドルディへ問いた。

 

「……えぇと、ボクはバンダナワドルディって言うんだ。わかりやすく言えばカービィの友達だよ。ボクたちはね、ポップスターって云う星から来たんだ」

『ッ……!?』

 

 ワドルディから帰って来た答えは、全員の予想から遥かに外れたものであった。

 

―――ポップスターと云う星から来た

 

 それが意味することを確かめるべく、エルフナインは再びワドルディに問いただす。

 

「……つまり、あなた方は異星人ということですか?」

「…え?そうだけど?」

『ッ…!?』

 

 ワドルディは何の躊躇いもなく、ごく普通のことのように答えた。

 

 だが、S.O.N.G.の者たちにとってそれは衝撃の事実以外の何でもなかった。

 

「異星人……だとッ!?」

「えぇぇっ!?カービィって宇宙人だったの!?」

 

「調!あたしたち地球で初めて宇宙人と交流したデスよ!一緒に有名になれるかもしれないデスよ!」

「……切ちゃん、落ち着いて」

 

 誰も予想だにしていなかった事実に、弦十郎は毎度お馴染みのフレーズをあげ、響も驚きの声をあげた。

 切歌は新しい玩具を貰ったこどもの如くはしゃいでおり、それを調がなだめる。

 

「……え、何?そんなに驚くことなの?」

 

 一同がそれぞれ驚きの反応を示すなか、ワドルディは皆の反応に疑問を露わにする。

 

「あなた方の星では、異星人との交流は普通なのですか?」

「うん、そうだよ。カービィなんて今まで何度も宇宙を旅したしね」

「ぽよ!」

『ッ…!?』

 

 ワドルディがさりげなく発したセリフに一同はもう本日何度目かわからない驚愕を浮かべる。 

 

「……もしかして、カービィって凄いの?」

 

 その場の全員が同じく思った疑問を真っ先に聞いたのは響である。

 

「うん、いままでボクたちの星が悪い奴らにシンリャクされそうになるたびにカービィが何度も助けてくれたんだ!最近だとカービィはカミさまもやっつけたしね!」

『ッ…!?』

 

 ワドルディはまたしてもさりげなくとんでもないセリフを放ち、一同を驚愕させる。

 

 装者たちも、以前(アヌンナキ)と戦い、そして見事勝利し、この星を救ったことがある。

 だがまさか、自分たちと同じく神―――カービィと戦った神がどれほどの者かはわからないが―――と戦った者が、それも地球外生命体が現れるなど誰が想像出来ようか。

 

 しかも、カービィの外見はどちらかと言えばまるでどこかのマスコットと思い違うような愛くるしい見た目であり、それが星を救うほどの偉業を成し遂げるなどとても想像できるはずがない。

 

「へぇ〜そうなんだ!カービィってそんなに凄かったんだ!」

「ぽよ、ぽよ!」

 

 だが、そんな事実をあっさり受け入れ、カービィに慣れ親しむ者がいた。

 そう、響だ。

 

 いつの間にか響はカービィを抱いており、満面の笑みをカービィへ向けていた。

 

 一同がいまだ「信じられない」という表情を浮かべる中、一人呑気にカービィと親しむ響に一同は内心で呆れていた。

 

「では、あなた方は何故この地球へ来たのですか?」

 

 エルフナインは、次に気になっていた疑問をワドルディに聞く。

 

「……地球、それがこの星の名前?うぅん……それが、ボクにもわからないんだ。」

「……どういうことですか?」

 

 エルフナインの質問にワドルディははっきりとした答えを言わなかった。否、言えなかった。

 

「ボクも突然ディメンションホールに飲み込まれて、気がついたらこの星にいたんだ」

「…ぽよぽよ」

「あ、カービィも同じみたいだよ」

「……ディメンションホール?」

 

 エルフナインは、ワドルディが言ったディメンションホールなる謎の用語に疑問を浮かべる。

 

「ディメンションホールは、ボクたちが住んでいる場所とは別の次元『アナザーディメンション』を繋げる、異空間の穴のことだよ」

「……別の次元?アナザーディメンション?」

「アナザーディメンションは、色んな次元とつながっていて、それでたぶんこの星に流れてついちゃったんだと思う」

 

 ワドルディは自身たちが地球へやって来た経緯を憶測を交えながら話す。

 

 対するエルフナインは、ワドルディから発せられた単語の数々に、思考の海へと浸り始める。

 

 その時、エルフナインの頭の中であることが思い浮かぶ。

 

「……もしかして、あの謎の反応!?」

『ッ…!?』

 

 エルフナインが咄嗟に発した言葉に、一同は以前エルフナインが言っていたことを思い出す。

 

――― 僕はあの未確認生命体が現れた日の現場を解析していました

――― すると、あのときあの場所から離れた所で未知の反応があったのです

――― この反応は"ギャラルホルン"の反応に僅かながら似ていたんです

 

 エルフナインが以前言っていたギャラルホルンに似た謎の反応と、さっきワドルディが言ったディメンションホール及びアナザーディメンション。

 この二つが、一同の頭の中で結び付く。

 

 そしてエルフナインは確証を得るために、ワドルディへ更に問い詰める。

 

「バンダナワドルディさん、あなたとカービィさんが装者の皆さんと戦ったあの生命体は、そのディメンションホールと何か関係はありませんか!?」

「……え?それって、リーパーやスフィアローパーのこと?」

 

 ワドルディが放った発言により、これまで未確認生命体と呼んでいた謎の敵の名前が明かされた。

 

「うん、リーパーたちは元々アナザーディメンションに住んでいる生き物で、たぶんボクたちがこの星に来たときに一緒にディメンションホールから出て来たんだと思う」

『ッ…!』

 

 ワドルディの言葉によって、エルフナインは確証を得た。

 

「……この謎の反応の正体は、ディメンションホールだったのですね」

 

 そう、それこそがエルフナインが得た確証であった。

 

 これまで現れたリーパーやスフィアローパーは、全てディメンションホールから発生したものだったのだ。

 ギャラルホルンと反応が似ていたのも、両方とも同じく自身たちが住む場所とは別々の次元へと繋がる性質を持つが故だったのだ。

 

「けど、変なんだ……。」

「……変、とは?」

 

 だが、ここでワドルディにはある疑問が思い浮かぶ。

 

「ディメンションホールは、普通なら自然に出来るものじゃないんだ。発生させるには、何かとても強い力が必要なはずなんだ。」

「ッ…!?それは……」

 

 そう、ディメンションホールは本来自然発生するような物ではない。

 

 以前発生した時は古代の遺産に秘められた強大なエネルギーによって…

 またある時は強大な魔力が集まったことによって…

 

 ともかく、これまでディメンションホールが発生したのは、必ず強大な力による原因があった。

 

 ワドルディの話しから仮説を立てるのは、エルフナインにとって容易かった。

 

「それはつまり、

 

 

 

 

 

 

 

―――ディメンションホールを発生させている、"元凶"が存在しているということですか……ッ!?」




次回以降は一旦シナリオを整理するために、更新が大幅に遅れると思われますが、どうかご了承下さいませ。
……え?前回も同じこと言ったって?……今度はガチでもしかしたら二週間ぐらい遅れると思いますのでどうかご了承下さいませ(土下座)


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六星目 春風は、どこから吹いて来たのか

> 次回以降は一旦シナリオを整理するために、更新が大幅に遅れると思われますが、どうかご了承下さいませ。

………なんか出来ちゃいました。まあ、本筋は進んでいませんので。
次こそはマジで遅くなると思われます。多分もう今週と来週の更新は無理だと思いますが、どうかご了承下さいませ。


「それはつまり、ディメンションホールを発生させている、"元凶"が存在しているということですか……ッ!?」

 

 エルフナインは自身の想定の真偽を確かめるべく、ワドルディへ問いかける。

 

「……ごめん、それはボクたちにもわかんないや」

 

 しかし、ワドルディにはその真偽を答えることは出来なかった。

 

 だがそれも当然だ。

 カービィとワドルディは今回の異変に偶然巻き込まれただけ。

 元凶など知る由もない。

 

 エルフナインの期待に応えられず、ワドルディは少しばかり申し訳なく感じてしまう。

 だが、それでも何も答えられることなどありはしない。

 

「……そうですか」

 

 ワドルディの返答により、エルフナインは気を落としてしまう。

 

 彼女もカービィとワドルディの境遇は理解している。

 故に答えられなくても無理はないこともわかってはいる。

 

 わかってはいても、素直に受け入れることなどできやしない。

 彼女には、この事態の真相を解明するという、自身にら与えられた役目があるのだから。

 

「なに、そう気を落とす必要はない。得られたものだってあったしな」

 

 二人が落ち込む中、弦十郎は励ましの声をかける。

 

「最近起こった未確認生命体、改めてリーパー及びスフィアローパーによる被害。その原因は我々が住む世界とは違う別の次元、アナザーディメンションへと繋がるディメンションホールの発生。今までわからず仕舞いだったのが、ここまでの情報を得られたんだ。これも充分大きな進展じゃないか。」

 

 そう、弦十郎の言う通りだ。

 今までのS.O.N.G.は突然起こった未曾有の危機についてただ疑問ばかりを浮かべることしか出来なかった。

 

 だが、今は違う。

 ワドルディがもたらした情報によって敵の正体、その発生源、そして一連の事態を引き起こしている()()()()()()()ということがわかった。

 それは彼らにとって大きな進展である。

 その()()()()()という、自身たちのやるべきことを定められたのだから。

 

「この一連の事態に元凶が存在するということがわかったのなら、その元凶を探せばいい話しだ」

「……はい!必ず元凶を見つけてみせます!」

 

 エルフナインから落ち込んだ表情は消え、新たに決意を定め、必ず元凶を見つけ出すことを一同の前で宣言した。

 

「さて、今回はここまでにしておこう。これ以上はバンダナワドルディくんに悪いしな」

 

 弦十郎はここで、ワドルディからの事情聴取を切り上げることを告げる。

 

 ワドルディも一連の事態の被害者であり、慣れてない環境に突然放り込まれたのだ。とても安心出来るはずがない。

 

 故に、そんなワドルディにこれ以上無理をさせるのは酷だと思ったのだ。

 幸いにも、自分たちが一番知りたかった一連の事態に関する情報は得られた。ならばこれ以上は無理をさせる必要はないというのが弦十郎の考えだ。

 

「……えぇと、ボクこれからどうすればいいの?」

 

 尋問が終わったことを理解したワドルディは、自身に今一番の問題があることに気づく。

 彼は異星人であるが故に、地球には彼が住める住居など存在しないし、当然あてなどなにもない。

 このままでは自身は途方に暮れ、やがて飢えてしまう未来が目に見えている。

 

「あぁ、それなら安心してくれ。君は今日からここに住めるよう我々が手配しよう。衣食住はきちんと保証する。あと何か欲しい物があればいつでも言ってくれて構わない。それに、こちらの方でも君たちが元の星に帰れる方法を模索しよう」

 

 途方に暮れていたところ、弦十郎から願ってもない計らいが来た。 

 

 ワドルディは喜びを通り越し、驚きのあまり硬直してしまう。

 

 弦十郎がワドルディを本部へ住まわせるのは、彼の境遇を不憫に思ったのは勿論、カービィと同じく彼らを保護するためでもある。

 

 今回の話しから彼らの正体が異星人であることがわかった。

 

 そして、彼らの存在が明るみになればどこかの研究者や裏組織が彼らをつけ狙うなど容易く想像出来る。

 

 故に、彼らの存在を隠匿するためにも本部内に住んでもらうのが最善だったのだ。

 

「さて、それはそうとして、君には言わなければならないことがあるなカービィくん」

「…ぽよっ!?」

 

 思いもよらぬところから自身を名指されたことにより、カービィは一瞬驚いてしまう。

 

 一方で弦十郎の顔はとても引き締まっており、見る者からすれば尋常ではないほど真剣であることは明らかである。

 

「君は今回我々の許可なく勝手に基地を抜け出し現場へ向かったな。生憎だが、今回の件は黙認出来んな」

「……ぽよぉ」

 

 弦十郎からの指摘に、カービィはぐうの音もでない。

 

「彼女たちを助けたかったという気持ちは決して悪くない。君が協力してくれたおかげで被害を迅速に抑えられたのは事実だ。だが、君は我々にとって重要な保護対象だ。今回のような軽率な行動は今後許可出来ない」

「……ぽよぉ」

「今回は幸い目撃者はいなかったから大目にみるが、最悪の場合こちらも君たちにそれ相応の対応をせざるを得なくなる。だが、こちらとしてもそのようなことは望んでいない。故に今後は我々の許可なく勝手な行動は控えて欲しい。いいな……?」

「ぽよ…」

 

 弦十郎からの長い説教に、カービィは渋々返事をした。

 

 S.O.N.G.も国家組織であるが故、ある程度の情報隠蔽は出来るが、それにも限界がある。

 故に、カービィを外へ出すことは極力控えなければならない。

 

 そしてそれは当然、カービィと同じ境遇である彼も例外ではない。

 

「そしてバンダナワドルディくん、この件は君にとっても人ごとではないことを理解してもらいたい」

「……はいっ!?」

 

 ワドルディもまた、先程のカービィと同じく思いもよらぬところから自身を名指され驚きの声を上げる。

 

「君たちがこれまで交流してきた異星人たちがどうであったかは知らないが、この星では君たちはとても物珍しい存在だ。故に、悪意ある者たちが君たちを狙い、最悪の場合君たちは実験材料にされるかもしれない。そういう輩から君たちを守るためにも、君たちにはなるべくここから出ないでもらいたい。その分ここではなるべく自由にして構わない」

「……はい」

 

 弦十郎からの説明を受け、ワドルディは渋々納得した。

 

 ここ本部から出られないというのはほんの少しばかり不服そうだ。

 だが、弦十郎が善意から言っている上に、あてもない自分に住居を提供してくれた恩もある。

 故に、逆らうなど出来るはずがなかった。

 

 だがカービィは、日は短いとは言え新しく出来た友だちである響たちの助けになれないこともあり、不服そうな顔をしていた。

 

「大丈夫だよカービィ、私たちはカービィが助けたいって思ってくれるだけで充分だから」

「……ぽよぉ」

 

 カービィの気持ちを察したのか、響はカービィを抱きしめ、励ましの声をかける。

 だが、カービィの気持ちが晴れることはなかった。

 

あぁっ!!

「ぽよっ!?」

『ッ…!?』

 

 その時、カービィが尚不満そうにしている中、何故か響は突然大声をあげる。

 

 すぐそばにいたカービィは勿論、その場にいる全員が驚き、全員が響に視線を向ける。

 「一体なんだ?」と全員が思う中、

 

「そういえば、やっぱりカービィって名前だったんだ!」

(……は?)

 

 響が発した言葉は、一同を唖然とさせる。

 

 一方の響は、何故か得意げに喜んでいた。

 

 響たちが初めてカービィと出会ったとき、響は彼が必死に伝えようとしていた言葉を、彼自身の名前だと信じて止まなかった。

 だが、他の者たち――特にクリス――は響の言うことをにわかに信じてはいなかった。

 そのため、あくまで「カービィ」というのはS.O.N.G.一同――響を除く――の中で仮の名前ということになっていた。

 

 だが、ワドルディによって「カービィ」というのは紛れもなく彼の本名であることが明らかとなったのだ。

 

 今まで周りがにわかに信じてくれなかった自分の勘が当たったことが今ここに証明されたことにより、響は有頂天になったのてある。

 

「ほ〜らクリスちゃん、私の言ったこと間違ってなかったでしょ?やっぱり私とカービィは最高の友だちだったんだよ!」

 

 周りが唖然としていることなどいざ知らず、響は以前自身の主張を真っ先に否定したクリスに詰め寄る。

 

 一方のクリスは、何も言葉を発しないが、眉がピクピクと動き、右手を強く握りしめぎしぎしと音を鳴らしていた。

 

 そして、クリスのそれは、とうとう限界値を超えた。

 

「お前はしばらくその口に針でも縫い付けてろッ!!」

 

「ふぎゃッ!?」

 

 頭の奥底から湧き上がるものを全て右拳に込め、何の躊躇いもなく怒りの鉄槌を響の頭のど真ん中へと振り下ろした。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 翌日のS.O.N.G.本部。

 今回は未来も加え、装者たち全員が集まっている。

 

 そして彼女たちは、カービィとワドルディが住んでいる部屋へと向かう。

 

「カービィ、バンダナくん、会いに来たよ!」

 

「ぽよっ!」

「あ、みんなこんにちは!」

 

 部屋の扉を開けば、そこにはそれぞれのベッドの上にカービィとワドルディが乗っている。

 

 ワドルディはあれからカービィが住んでいる部屋で一緒に住んでいる。カービィ一人だけが住むには大分余裕がある部屋だったので、丁度良かったのだ。

 

「…あれ、きみは誰?」

 

 ワドルディは自身が初めて会う未来がいることに気づき、未来に声をかける。

 

「初めまして。私は小日向未来、よろしくね」

「うん、ボクはバンダナワドルディ。よろしくね!」

 

 未来とワドルディはお互いに自己紹介をする。

 

「今日はね、バンダナくんとお話しがしたくて来たんだ!」

「?…別にいいけど、何を話すの?」

「えへへ、それはね―――」

 

「まぁ、ここで立ち話もなんだ。ここは一先ず食堂へ場所を移すのはどうだ?」

 

 響がワドルディと話している中、待ったをかけたのは翼だ。

 

 今彼女たちがいる部屋は七人全員が何とか入りきれているほどで、悠長に話しをするには居心地が悪い。

 故に翼は、この場の全員が問題なく入れて、尚且つ座って話しが出来る食堂へと場所を移すことを提案する。

 

「そうね、それじゃあ話しの続きは場所を移してからしましょうか」

 

 翼の意見にマリアは賛成の声をあげ、他の者も皆心のなかで賛成し、全員部屋からで始める。

 

「ぽよ!ショクドウ!ショクドウ!」

 

 一方カービィは食堂という言葉を耳にした途端、目を輝かせながら興奮しだす。

 

「……たく、どこかのバカに負けず劣らずの大食い野郎だなこのピンク玉は」

「ちょっとそれ私のこと!?もぅクリスちゃんまでぇ!!」

 

 カービィの大食いっぷりにクリスがあげた呆れの声に響は前回未来に言われたことを思い出しながらクリスにつっかかるのであった。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 食堂へ着いた一同はそれぞれ椅子に座る。

 

「それでね、今日私たちが聞きたかったのはね、カービィについてなんだ」

「カービィについて…?」

 

 響は改めて今日ワドルディに聞きたかった内容を話す。

 

 カービィと初めて会ったときから、彼女たちはカービィについて何もわからなかった。

 

 戦いの際に見せた姿を変える力、食堂の食べ物を全てたいらげてしまうほどの巨大な胃袋など、カービィに関する謎は絶えなかった。

 

 カービィに直接聞こうにも、彼は「ぽよ、ぽよ」と彼女たちからすれば謎の言語で話すため聞くことが出来なかった。

 

 だが、今はカービィについてよく知り、尚且つ自分たちと意思疎通が可能なワドルディがいる。

 正に今までの謎を解く絶好の機会である。

 

「……うんわかった。だけど、ボクもカービィについて全部知っている訳じゃないんだ」

『……?』

 

 ワドルディが言うことに一同が疑問を浮かべる中、ワドルディは淡々と語り出す。

 

「まずそれを話す前に、ボクたちの故郷について話すね。ボクたちの住んでいる星『ポップスター』は、普段はとてものどかで平和な所なんだ。そしてボクたちは、『プププランド』っていう国に住んでいるんだ」

 

―――プププランド

 

 カービィたちが住む、とても穏やかで呆れ返るとまでいわれるほどの平和な国。

 だが、そんなプププランドも常に平和だった訳ではない。

 

「けどある日、プププランドの大王さまが国中のみんなの食べ物を奪っちゃったことがあったんだ」

『ッ…!?』

 

 ワドルディが語った内容に、装者たちは愕然とする。

 それもそうだ、本来国民を第一に思うはずの王が、国民から食料を奪うという悪虐の限りを尽くしたと言うのだから。

 

「なにそれひどい!ごはんを取るなんてなんでそんな酷いことが出来るの!?」

「……あなたたちの星にもいたのね。そうやって弱者を虐げる強者が」

 

 ワドルディの話しを聞いて響とマリアはそれぞれ反応を示す。

 

 装者の中で一番大食いの響にとって、食べ物を奪われるなど想像するだけでなんとも酷なものである。

 

 一方のマリアは嘗て自分たちが強い権力を持った者たちによって道具も同然にされた忌まわしき過去を思い出す。

 過去に自身も権力を持った者に虐げられたが故に、ワドルディが言う大王が誰よりも許せずにいる。

 

「……まあ、大王さまは今は一応良い人だから大丈夫だよ。」

『…?』

 

 ワドルディが言ったことに、装者たちは疑問を浮かべる。

 先ほどの話しから非道としか思えない暴君がいったい何があって良い人になったのか全く想像がつかなかったためだ。

 

「話を戻すけど、そんな時に突然現れたのがカービィだったんだ。カービィが大王さまを懲らしめてくれたおかげでみんなは食べ物を取り戻せて、大王さまも悪いことをしなくなったんだ」

 

 ワドルディが話した内容を聞いた装者たちは、国民が救われたことに安堵すると同時に、改めてカービィの凄さを知ったのだった。

 

 だが、そこで疑問を浮かべる者がいた。

 

「……ん?待て、カービィとはそのときに初めて会ったのだな?」

 

 疑問をあげたのは翼である。

 

「……え?うんそうだよ。ある日突然春風に流されて来たみたいに現れてね。それでカービィは一部の人からは"春風の旅人"なんて呼ばれているんだ」

 

 ワドルディは翼からの質問に、カービィの二つ名について交えながら答える。

 だが、当の翼はまだ疑念が残っているかのような顔をしている。

 一体翼が何を疑問に思っているのかわからない一同は首をかかげる。

 

 だが、次の翼の発言によりその疑問は明らかとなった。

 

「では、カービィは()()()()()()のだ?」

『ッ…!?』

 

 そう、翼が気になっていた疑念はそこだったのだ。

 

 ワドルディはカービィは突然現れたと言った。

 それは即ち、それまで国中の誰もが()()()()()()()()()()()ということである。

 ただ国民たちがそれまでカービィの存在に気づかなかっただけという可能性もある。

 だが、国民の誰もが手をあげていた大王を懲らしめるほどの力を持つカービィの存在にそれまで気づかないなどあり得ないと、その可能性は否定された。

 

「……そ、それは」

 

 一方でワドルディは、さっきまでなんの躊躇いもなく話していたのに対し、突然話しづらそうに口篭ってしまった。

 

「……ぽよ」

「……カービィ、いいの?」

「ぽよっ!」

 

 そんなワドルディに声をかけたのは、たった今話しの中心となっているカービィ本人である。

 どうやらカービィは自身のことで話しづらそうにしているワドルディに話しても構わないという意思を伝えたようだ。

 

 一方で、装者たちはワドルディとカービィの様子を見て、もしや自分たちは踏み込んではならない領域に入ってしまったのかと、僅かに罪悪感が沸き始めていた。

 

 だが時はすでに遅く、ワドルディは静かに語り出す。

 

「……カービィがどこから来たのかは、ボクも、………カービィ自身も知らないんだ」

『ッ…!?』

 

 ワドルディが語った内容に、一同は再び愕然となる。

 ワドルディならともかく、カービィ自身でさえ自身が元いた場所がわからないと言うのだから。

 

「前にカービィから聞いたんだけど、カービィは気がついたらプププランドにいたらしくて、その前までのことは何も覚えてないって言うんだ。もしかしたらカービィは、プププランドどころか、ポップスターとも違う所から来たのかもしれない」

『……』

 

 ワドルディが語り終えた頃、装者たちは皆沈黙した。

 

 完全に想定していなかった。

 ……否、出来なかった。

 

 自身の本当の故郷を知らない。

 それがどういうことなのか、それがわからない者など彼女たちの中にはいない。

 特に、同じく自身の出生について何も知らない調と切歌は、その辛さが身に染みるほど理解出来る。

 

 装者たちは、ワドルディが何故口篭ったのかを理解した。

 同時に、激しく後悔した。

 

 先ほど湧き上がった罪悪感は、一同の中で確実な物となった。

 

 先に謝罪を述べ出すのは翼であった。

 この話しへと切り出したのが自身であるが故に、全ての原因は自身にあると責任を感じていたようだ。

 

「……すまなかった。まさかそのような事情があろうとは…。私が軽々しく踏み込んだばかりに――」

「ぽよぽよ」

 

 翼が言い切る前に、カービィはいつものような笑顔で声をかける。

 まるで「気にしてないよ」とでも言うかのように…。

 

「カービィは気にしていないみたいだから大丈夫だよ。カービィがどこの誰かわからなくたって、カービィはカービィだからね」

 

 ワドルディの言葉を言い切ると同時に、翼は顔を上げた。

 

 確かにカービィがどこで生まれてどこから来たのかわからない。

 だが、それでも彼女たちにとってカービィはカービィだ。

 

 突然現れ、自分たちと一緒に戦ってくれた、とても大食いの、そんな謎の生物であり、今は彼女たちの大事な"友だち"。

 

「うん、そうだね!カービィはカービィ、私たちの友だちだよ!」

「はーい!」

「これからもずっと友だちだからね、カービィ!」

 

 響は笑顔を浮かべながらカービィを抱きしめ、カービィにあらためて友として誓い、カービィも響の誓いに笑顔で答えた。

 

 

 

 

 こうして、星は改めて歌姫たちとの友情を誓うのであった。

 

 だが、彼らの間で真なる絆の盟約が結ばれるのは、まだ先のお話…。




心理描写って難しいですね……。

本当はコピー能力についての説明も書きたかったんですけど、尺の都合上無理でした。


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不死火を振り払う白銀の絆
七星目 迷い鳥


……あれからなんだかんだでようやくシナリオがだいたいまとまったので執筆いたしました。
けどこれからも更新が遅れることは度々あると思われますので、そこはどうかご了承下さいませ。

さて、今回からようやく新章突入です。


―――とある並行世界 

 

 米国連邦聖遺物研究機関『Federal Institutes of Sacrist』。

 通称、『F.I.S.』。

 

 その日本支部の研究所にて、―――

 

「マム、お待たせしました」

 

 部屋に入って来たのは、穏やかな雰囲気の少女である。

 茶色い髪を肩まで延ばし、白を基調とし赤の混じった服を着ている。

 

―――『セレナ・カデンツァヴナ・イヴ 』

 

 セレナは部屋に入ると、真っ先に部屋にいた青髪の初老の女性へと向かう。

 

―――『ナスターシャ・セルゲイヴナ・トルスタヤ』

 

 この研究所の責任者である。

 

「えぇ、セレナ。では早速本題に入ります」

 

 セレナが来たのを確認するやいなや、ナスターシャは真剣な顔になる。

 

「先日、以前交流があった聖遺物研究機関が襲撃を受けたのです」

「ッ…!?」

 

 ナスターシャが言ったことは、セレナを驚愕させる。

 

「マム!研究機関を襲った敵って……!?」

「それは今から見せます」

 

 ナスターシャがコンソールを操作しだすと、目の前に設置されているモニターに画像が写し出される。

 

「マム、これは一体……?」

「これは先日現れた"未確認生命体"です」

 

 そこに写っていたのは、丸く光る身体に虫のような羽のついた小型の生物の大群。

 さらにその中には、他のやつとは違う、ひと回り大きい身体に鳥のような羽と尾を持つものが一匹紛れ込んでいた。

 

 これまで見てきた敵とはどれも違う異形の敵に、セレナは動揺する。

 

「先日我々とは別の聖遺物研究機関が、この生命体に襲撃を受けたのです。しかも最悪なことに、襲撃の際、聖遺物の一つをこの生命体に奪われてしまったようなのです」

「聖遺物がッ!?」

 

 ナスターシャの言葉が、またしてもセレナを驚愕させる。

 

 だが無理もない。聖遺物は無力な人類に強大な力をもたらす可能性であるが、同時に使い方を誤ればとてつもない脅威となる危険な物だ。

 そんな危険な物が得体の知れない謎の生物に奪われたのだ。何事も起こらない訳がない。

 

「それで、奪われた聖遺物とはなんなんですかッ!?」

 

 セレナはナスターシャに詰め寄り、今回の事件の要となる存在について聞きだす。

 

「研究機関からの情報によると、奪われたのは『フェニックスの羽』という物だそうです」

「フェニックスの羽……?」

 

 ナスターシャが語った用語に、セレナは首を傾ける。

 

「古来より伝承で伝わる不死身の鳥『フェニックス』。その羽の一部といわれています」

 

 ナスターシャが語った聖遺物の内容を踏まえ、セレナは自身の知るフェニックスについての知識を頭の中で掘り起こす。

 

―――フェニックス

 

 死んでも蘇る肉体を持つ、まさに不死鳥と呼ばれる鳥。

 その姿が炎で包まれていることから、火の鳥とも呼ばれている。

 

 自身が知る限りの知識を呼び起こしたセレナだが、それでも奪われたフェニックスの羽の力は想像出来ない。

 

「話しを戻しますが、この生命体は襲撃の後どこかへ姿を消したようです。それと同時に、フェニックスの羽の反応も消失してしまいました」

 

 未だ聖遺物について疑問が拭えないセレナだが、ナスターシャが話し出したため、即座に気持ちを切り替えて耳を傾ける。

 

―――謎の生命体と共に聖遺物の反応も消えてしまった

 

 ナスターシャが話した内容は、今度はセレナに不安を与える。

 

 聖遺物が消えてしまったため、探しようもない。

 だが、このまま放っておけばどんな危険なことが起こるかわからない。

 

「この生命体がどこから来て、次にいつ現れるかわかりません。だからこそセレナ、貴方には心得ておいて欲しいのです……」

「マム……」

 

 セレナはナスターシャの顔が辛そうなものに変わったのに気づく。

 

 セレナへの心配もあったが、それよりもナスターシャにはどうしても不甲斐ない思いがあった。

 

 セレナは本来なら実年齢は20歳になるはずであった。

 しかし、セレナは7年前に起きたある事故によって重傷を負い、7年間コールドスリープ状態だった。

 そのため、セレナは今もなお7年前と同じ、うら若き少女のままなのだ。

 

 故に、ナスターシャはそんな少女であるセレナに危険な戦いを強いるしかない自分を責めていたのだ。

 

 だが、そんなナスターシャとは裏腹に、セレナは笑顔を浮かべる。

 

「はい、任せて下さい。必ず私が皆を守ってみせます!」

「セレナ……」

 

 ナスターシャの心情を察したセレナは、せめてナスターシャにこれ以上心配しないよう笑顔を向けたのだ。

 

 セレナはこれまで何度もF.I.S.からの圧力により無茶な命令を強いられて来た。だが、セレナはそれに対し何も言わず、命令に従って来た。

 

 当然F.I.S.のためではない。

 この世界において人類を脅かす脅威に立ち向かえるのは、セレナだけなのだ。

 故に、セレナは弱き人々を守るために、いついかなる時も戦う覚悟はできている。

 

 

 

 

―――ブオォォォォン!!

 

『ッ…!?』

 

 そんな時、突如としてけたましい警報音が部屋中に鳴り響く。

 

「一体何事ですかッ!?」

「……この近くに、例の未確認生命体が現れたようです!」

 

 ナスターシャはすぐさま近くにいた研究員に事態を問う。

 返ってきた応えは、彼女を困惑させる。

 

「マム、私行きます!」

 

 一方で、セレナはすでに覚悟を決め、すぐさま戦場(いくさば)へ向かえる意を示していた。

 

 未だナスターシャは、セレナを戦わせることにもどかしさを感じている。

 たが、今は一刻を争うと割り切り、セレナへ目を向ける。

 

「……セレナ、頼みますよ」

「はいッ!」

 

 セレナは、すぐに駆け出し敵の待つ戦場へと向かった。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 研究所付近の森林。

 そこには大量の未確認生命体―――リーパーがいる。

 

 リーパーたちはあてもなく、ただ何かを求めて飛び回っている。

 まるで餌をひたすら探し回る飢えた獣のように…。

 

「あれが未確認生命体……。」

 

 森林に着いたセレナは、リーパーたちの様子を窺っている。

 

 リーパーたちが危険な存在であることはナスターシャから聞いている。だが、このリーパーたちが人を襲ったという報告はまだ届いていない。

 

 たとえ相手が異形とは言え、無抵抗の相手に攻撃するなど、セレナには出来ない。

 故に、まずは様子見に徹することにしたのだ。

 

 だが、―――

 

『来るぞ!』

「ッ……!?」

 

 リーパーの一体がセレナを見つけると、セレナにむけて突進を繰り出す。

 

 だがセレナは自身の中から聞こえてきた声により、なんとかリーパーを避けることが出来た。

 

「……助かりました、"ヴェイグさん"!」

『礼よりも、周りを見ろ!』

 

 見れば周りにいるリーパーが全員セレナを睨んでいる。

 今の彼女の状態は、まさに四面楚歌だ。

 

―――このままでは自分がやられる

 

 そう悟ったセレナは意を決して、首から下げていたペンダントを握り、詠唱を奏でる。

 

――― Seilien coffin airget-lamh tron

 

 詠唱が終わると同時に、セレナの全身が光に包まれる。

 

 次の瞬間、光が晴れると、そこには格好が大きく変わったセレナがいた。

 

 白を基調としたインナーの上に、各部に花びらのような意匠を持ち、その姿はまるでおとぎ話にでてくる妖精を連想させる。

 

 これがセレナのシンフォギア―――『アガートラーム』だ。

 

 アームドギアの短剣を構え、自身に向けて突進してくるリーパーから、次々と切り裂いていく。

 

 そして、今度は両手に片手剣を出現させる。

 するとどういうことであろうか、セレナの両手から片手剣が一人でに飛び出し、セレナの周りを旋回しだしたではないか。

 そしてセレナが左手を前に出したのを合図に、宙を飛んでいた二振りの剣は、リーパーたちへ目掛けて縦横無尽に飛び回り出した。

 

―――『FAIRIAL†TRICK』

 

 高速で飛び回る刃に、リーパーたちはなす術もなく切り裂かれていく。

 

 ある程度数を減らした所で、剣は元の一振りに戻り、再びセレナの手の中へと収まる。

 

 だが、リーパーたちの数はまだ大分残っており、全員がセレナを見据えている。

 

 そんな時―――

 

「ぴぃー!」

「……?」

 

 突然森林の奥の方から謎の声がセレナの耳に鳴り響く。

 

「今のは……?」

 

 疑問を拭えないセレナだが、リーパーたちはそんなセレナの心情などお構いなく再び突進を繰り出す。

 咄嗟に避けたセレナは、まずは目の前の敵をどうにかしてから、と割り切る。

 

 そして今度はなんと、セレナは片手剣を上に突き上げ、空高く飛び上がったのだ。

 

 突然舞い上がったセレナを、リーパーたちは見上げる。

 

 次の瞬間、セレナの周りに複数の紫色の球体が出現する。

 そしてセレナが片手剣を下へ振り下ろすと同時に、周りに浮いていた紫色の球体が大量の片手剣型のエネルギーとなり、リーパーたちへと降り注いだ。

 

―――『WARM†LUNALIGHT』

 

 大量に降り注がれる刃の雨は、地上近くを低空飛行していたリーパーたちをまとめて天へと召す。

 

 地上へ降り立ったセレナは、この辺りのリーパーを全員片付けたのを確認すると、すぐさま先ほどの謎の声の元へ駆け出した。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 セレナが向かった森林の奥、そこには、先程よりは少ないが、リーパーたちがまだ複数残っている。

 

 だが、セレナが真っ先に目を向けたのはリーパーたちではない。

 

 見れば、リーパーたちは"なにか"に群がり、次々と体当たりをかましている。

 

「ぴぃぃ……!」

 

 すると、先ほどセレナが聞いた謎の声が、なんとリーパーたちが群がっている"なにか"から発せられたのだ。

 だが、その声はさっきよりも明らかに弱っているではないか。

 

 このままでは声の主が息絶えてしまうことを悟ったセレナは、すぐさまリーパーの群れへと詰め寄る。

 

「貴方たちッ!そこから離れなさいッ!」

 

 珍しく強気なセリフを発したセレナは、自身に標的を変えたリーパーたちに向かい、片手剣を振り回す。

 

 リーパーたちは、仲間が切り裂かれたことに激情したのか、がむしゃらに体当たりを繰り出す。

 だが、それもセレナによって切り裂かれた。

 

 そしてセレナは、今度は片手剣を空へ目掛けて勢いよく投与する。

 すると片手剣は、リーパーたちの真上へ来たところで、更に勢いをつけ急降下を始める。

 

―――『XANA†TEARS』

 

 自身へ迫って来る音に気づき上を見上げるリーパーたちだが、すでに時は遅い。

 空から降って来た片手剣は、地面に激突すると同時にとてつもない衝撃波を起こし、辺り一面を吹き飛ばす。

 

 衝撃波が収まると、そこには剣が落ちた場所を中心に巨大なクレーターができており、リーパーたちの姿は亡き者となっていた。

 

 リーパーを全て倒し終えたことを確認したセレナは、先ほどまでリーパーたちが群がっていた"なにか"へ向けて駆け出す。

 

 するとそこにいたのは、―――

 

 

 

 

 

 

赤い衣服のような物を見に纏い、胸に緑色の宝石を付けた、一際大きい鳥であった。

 

「大丈夫ですかッ!?」

 

 謎の鳥は、弱々しく地面に横たわっており、そのまま動けずにいる。

 見る人からすればかなり危ない状態にあるのは明らかだ。

 見れば、先ほどのリーパーの襲撃の際に受けたのか、右の翼に怪我をおっているではないか…。

 

「ッ……!?怪我してる!すぐにマムの所へ……!」

「ぴぃっ!」

「ッ……!?」

 

 翼の怪我に気づき、すぐさま鳥を運ぼうとセレナは詰め寄る。

 だが、鳥はこともあろうことか、セレナが触ろうとした途端暴れ出したのだ。

 まるでセレナをはね除けるかのように……。

 

『……あぁ、こりゃ完全に警戒されてんな」

「そんな……」

 

 ヴェイグの言葉に、セレナは気を落としてしまう。

 

『だが無理もない、こんな大きさだが、こいつはまだ雛なんだ。突然敵に襲われてどうしようもなくて、何もかもに怯えてしまっているんだ』

「……ヴェイグさん」

 

 突然親とはぐれてしまい、理不尽に敵に襲われてしまったらどうであろうか。

 きっととても怖がってしまう。

 その上、自分がどうすれば良いのかもわからず、ただただ怯えてしまうだろう。

 

 だがセレナは、ならば尚のこと放っておくことは出来ないと意を固め、再び雛鳥に詰め寄る。

 

「大丈夫ですよ。私は貴方に酷いことは何もしません」

「ぴぃっ!ぴぃっ!」

 

 またしても暴れ出してしまう雛鳥。

 だが、セレナは雛鳥が暴れ出してもなお、雛鳥を優しく抱き続ける。

 

「……怖かったんですよね。親とはぐれてしまって、さっきのにいじめられて……けど、私は大丈夫です。私が貴方を守ってあげます。ちゃんと親とも合わせてあげますから」

「……ぴぃ」

 

 セレナの言葉を理解したのか、雛鳥は徐々におとなしくなっていく。

 やがて暴れるのを完全に止め、安心したことで一気に体の重荷が抜けた影響か、セレナに抱きしめられたまま眠ってしまった。

 

「……さて、マムのところへ連れていって、怪我の手当てをしないと」

『……お前は本当に優しいやつだな』

「えへへ、ありがとうございます、ヴェイグさん」

 

 ヴェイグにお礼を言いながら、セレナは雛鳥を抱え直し、ナスターシャが帰りを待つ研究所を目指して歩き出した。




……ハロウィン回、私も書きたかったなぁ。
こうなったら、なるべく物語を進めて来年こそ……。

あと、シンフォギアの戦闘描写ってやっぱり難しいです……。


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八星目 格闘家と槍使い

戦闘描写に不満がある場合は、どうか遠慮なくご指摘お願いいたします。


 S.O.N.G.のシュミレーションルーム。

 そこでは今日も装者たちは戦闘訓練を行なっている。

 

 だが、今日は装者だけではなく、別の者も混ざっていた。

 

「本当に大丈夫なの、カービィ?」

「は〜い!」

 

 そう、カービィだ。

 

 何故カービィが戦闘訓練に混じっているのか。

 それは数分前のことであった。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 シュミレーションルームに集まった装者たち。

 これから戦闘訓練を始めようと意気込んでいた所だったが―――

 

「ぽよっ!」

 

 何故かその場に紛れ込んでいたカービィが、突然待ったを掛ける。

 

「どうしたのカービィ?ていうかなんでいるの?」

 

 本来ここには装者たちと監督役の弦十郎、そして観測係のエルフナインしかいないはず。

 響はカービィへ、何故此処にいるのかを問う。

 

「ぽよっ!ぽよっ!」

「ごめん、やっぱり全然わかりませんッ!」

 

 だが、相変わらずカービィの言葉は伝わらない。

 

 そんな時だ。

 

「あ、カービィ!やっと見つけた〜!」

 

 その場に新たな者が入って来る。

 バンダナワドルディだ。

 

「もう、勝手に入っちゃダメだって。弦十郎さんに怒られちゃうよ〜」

 

 どうやらカービィを連れ戻しに来たようだ。

 だが、今の彼は響にとって救いの天使にも等しかった。

 

「あ、バンダナくん!ちょうど良かったぁ」

「へ?響、どうかしたの」

 

 響はすぐにワドルディに話しかける。

 

 ワドルディはやはり迷惑だったかと、響の次の言葉に不安になる。

 

「ねぇ、カービィがなんて言っているかわからない?」

「へ?」

 

 だが、実際に来た言葉は、彼が想像していたのとは違った。

 

「ぽよっ!ぽよっ!」

「えぇ、それはちょっと無理じゃないかな?」

「バンダナくん、どうなの?」

 

 響はワドルディに問いかける。

 

「えぇと、どうやら響たちと訓練がしたいみたいなんだ」

「えぇ……ッ!?」

 

 予想だにしなかった内容に、響は声を漏らしてしまう。

 他の者たちも驚いてはいたが……。

 

「カービィ、あれから響たちと一緒に戦えなくなって落ち込んでたらしいんだ。だから、せめて訓練ではみんなの役に立ちたいみたいなんだ」

「カービィ……」

 

 カービィは本部から出てはならないことを言い渡されてから、ずっと悩んでいたのだ。

 

 カービィにとって響たちはこの星に迷い混んでから出来た初めての友達。友達が戦っているのなら、自身も力になりたい。それが彼の心情であった。

 

 だが、弦十郎の言葉により、カービィは本部から出られない。故に、戦いでは装者(友達)の力にはなれない。

 カービィはずっとそのことにもどかしさを感じていた。

 

 だが、弦十郎から話された自身の立場を、カービィも理解している。

 故に、カービィも弦十郎に迷惑をかける訳にはいかない。

 

 だからせめて訓練では彼女たちの役に立ちたいと思ったのだ。

 

「うむ、本来ならば保護対象の君が戦闘訓練に出るのはあまりよろしくないが、君にはかなりの不自由を与えてしまっているからな……」

 

 弦十郎は、カービィの要求に頭を悩ませる。

 

 保護対象のはずのカービィに万が一怪我でも負わせてしまえば、保護している立場としての顔がない。

 だが、同時に不自由を強いている立場としては、カービィの望みを無下にする訳にもいかない。

 

「司令、私からもカービィの参加をお願い出来ないでしょうか?」

「翼さん……ッ!?」

 

 そこで声を上げたのは、意外なことにも翼である。

 響はあまりにも意外なために、思わず驚いてしまっている。

 そしてそれは他の者たちも同じだ。

 

「翼、理由を聞かせてもらおうか」

「はい、以前バンダナワドルディの話から、カービィは自身の故郷の危機を何度も救ったと聞きました。ならば、カービィも我々と同じく戦士です。本来何かを守るべき者でありながら、守られる立場として扱われるなどきっと耐え難いものです」

 

 装者全員は、以前ワドルディが語ったカービィの活躍を思い出す。

 

 カービィが保護対象というのは、あくまで地球上での立場だ。本来であれば、彼は装者たちと同じ、自身の故郷のために戦う戦士である。

 

 故に、翼は本来なら何かを守る立場であるはず、が守られる存在として扱われるカービィの気持ちをよく理解出来たのだ。

 

「わかった。特別にカービィくんの訓練への参加を認めよう」

 

 悩み続けていた弦十郎は、翼の言葉に折れ、渋々カービィの参加を許可した。

 

 だが、その時カービィは大事なことを忘れていた。

 

「……あ、カービィ、戦うなら"コピー能力"がないとダメだよ!」

「ぽよ!ぽよぽよ〜!」

 

 ワドルディが声を掛けると、カービィは慌てふためきだしてしまう。

 

 そう、カービィは自身が戦うために必要な一番大事なことを忘れていたのだ。

 

 それを知らない装者たちは、カービィが何に困っているのかわからず首を傾ける。

 

「えぇと、なんデスか、その"コピー能力"って?」

 

 切歌は、ワドルディが先ほど言った"コピー能力"なる謎の用語について聞き出す。

 

「えぇとね、皆ももう見たと思うけど、カービィは色んなものを吸い込んで、その吸い込んだものの力をコピーして戦うんだ。それがコピー能力だよ」

「それって、もしかしてあのカービィの姿を変える力?」

 

 調が言ったことにより、一同は以前の戦いで見たカービィの力を思い出す。

 

「なるほど。以前の戦いでカービィが炎の力を見せたとき、カービィは敵の光弾を吸い込んでいた。あれは光弾の炎の力をコピー(模倣)していたのか」

 

 一同は、何故カービィが慌てているのかを、ようやく理解した。

 

「うむ、とすると、カービィくんが戦うには、コピーする物が必要ということか」

 

 全員の答えを弦十郎が代弁する。

 

 そう、カービィが戦いにて本領を発揮するには、コピー能力の素となる物が必要なのだ。

 

 だが、カービィもワドルディも、今はそれに使えそうな物を持っていない。

 

「そういえば、あの時バンダナワドルディが持っていた星みたいなのはないの?」

 

 調は先日の戦いにて、ワドルディが持っていた星形のアイテムを思い出す。

 あのとき、カービィはあのアイテムによってコピー能力を発動していたためだ。

 

「あ、あれは『コピー能力の素』っていって、万が一のために持っていたんだけど、あれは一回きりしか使えなくて、ボクが持っていたのはあれだけなんだ」

 

 ワドルディは調の質問に応える。

 『コピー能力の素』は、文字通りカービィのコピー能力の力を秘めたアイテム。

 だが、ワドルディが持っていたのは前回使ったカッターの素のみ。

 現在彼の手元にはカービィのコピー能力の素なる物は何もない。

 

「ならば、これはどうだ?」

 

 そう言って弦十郎が取り出したのは、グローブである。

 

「これは普段、俺が鍛錬で使っている物の予備だ。これならどうだ?」

「うん、これならイケる。だよね、カービィ?」

「ぽよっ!」

 

 ワドルディの問いかけに、カービィは元気よく返事をする。

 

 そして弦十郎からグローブを受け取り、そのまま吸い込んだ。

 

 すると、カービィの身体が光り輝く。

 やがて光が晴れると、カービィの頭には、先ほどまではなかった赤い鉢巻が巻かれている。

 

―――コピー能力『ファイター』

 

「今度は、鉢巻?」

「これは、『ファイター』の能力だよ」

 

 首を傾ける響に、ワドルディは応える。

 

「ファイター……というと、格闘技を使うのか?」

「正解!流石弦十郎さん!」

 

 能力の特徴を言い当てた弦十郎に、ワドルディは賞賛の声をあげる。

 

「ともかく、格闘戦なら同じ響くんとが良いだろう」

 

 弦十郎の考えにより、カービィの最初の相手は響に決まった。

 

 だが、ここでまたしても待ったを掛ける者がいた。

 

「あ、あの!ボクにもやらせてくれませんか!?」

 

 ワドルディだ。

 

「む、バンダナワドルディくんもか?」

「はい、カービィがやるならボクもやらないと。ボクはカービィの友達だから」

 

 ワドルディは時にはカービィと共に戦う戦友でもある。

 カービィが己を鍛えるのであれば、彼自身も怠けている訳にはいかない。

 

「いいだろう。では、彼と戦う相手がもう一人必要だな」

 

 弦十郎はワドルディの参加を許可する。

 カービィが出るのならば、彼だけ出さないのは不公平だと思ったからだ。

 

 だがその場合、ワドルディの相手となる者がもう一人必要だ。

 

「では私が出よう。二人とは是非手合わせ願いたかった所だ」

 

 そこへ、翼が自ら名をあげた。

 彼女は以前からカービィとワドルディとは一戦交えたいと思っていた。

 そんな彼女にとって絶好の機会だ。

 

 こうして、カービィとワドルディ、響と翼、お互いペアを組んで模擬戦をすることとなった。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 カービィとワドルディ、響と翼はお互いを見据え合う。

 全員いつでも来いと言わんばかりにやる気に満ちた顔だ。

 

「カービィ、無理しちゃダメだからね」

「は〜い!」

 

 響は念のためカービィに無理をしないよう釘を刺す。

 カービィは元気良く返事を返した。

 

「それでは、……始めッ!」

 

 弦十郎の合図により、両者とも動き出す。

 

「行くぞ、立花!」

「はいッ!翼さん!」

 

「カービィ、行くよ!」

「ぽよっ!」

 

 互いにペアと合図を取り合う両者。

 

 先に動いたのは翼だ。剣をワドルディへと振り下ろす。

 ワドルディはそれをなんなく躱した。

 

 ワドルディは反撃に槍を突き出す。翼は剣でそれを受け止める。

 

(ッ……!重い)

 

 ワドルディの一撃は、想像以上だ。

 とても木製の槍で突かれたとは思えないほどの衝撃が剣を通して伝わって来る。

 

 一方響はカービィ目掛けて次々とパンチを繰り出す。

 だが、それをカービィは躱していた。

 

(当てづらい……ッ!)

 

 カービィは自身よりもずっと小さい背格好だ。普段彼女が戦っているアルカ・ノイズなどよりも小さい。

 故に、攻撃が当てづらいのだ。的が小さければ当てづらいのは当然の道理である。

 

 次に攻撃に出たのはカービィだ。響目掛けてパンチを繰り出すと、なんとカービィの拳から青い波動が放たれたのだ。

 

―――『スマッシュパンチ』

 

 波動を受けた響は、僅かに後ずさる。

 今の一撃は、それなりに効いたようだ。

 

 翼も後ろに下がり、響と顔を合わせる。

 

 元より油断などしていない。だが、ここからは更に気を引き締めるべきだと確信する。

 

「立花、二人の力は中々の物だ。気を引き締めて行くぞ!」

「はいッ!」

 

 お互いに意を固めた響と翼は、再びカービィたちを見据える。

 

 次の瞬間、翼が素早く踏み込み、素早い斬撃をカービィたちへと見舞う。

 ワドルディは槍を巧みに操り、何とかいなす。

 

 当然それを相方は見過ごしはしない。

 

「ぽよっ!」

 

 カービィは跳び上がり、翼へ向けて斜め下に蹴りを繰り出す。

 

―――『ふみつけげり』

 

 カービィの蹴りは、翼の手に当たる。その衝撃で、翼は斬撃を止めてしまう。

 

 カービィはそのまま追撃に出る。

 今度は横一線に蹴りを繰り出すと次の瞬間、先ほどのスマッシュパンチよろしく、カービィの足から波動が放たれた。

 

―――『ダブルキック』

 

 波動を喰らい、翼はほんの僅かに後退する。

 

 だが、相方がいるのはカービィたちだけではない。

 

「おりゃあぁぁぁ……ッ!」

 

 響は渾身の一撃を床に叩き込み、巨大な衝撃波を生み出す。

 

 衝撃波に飲み込まれたカービィたちは宙へ舞い、体勢が崩れてしまう。

 

「ぽよっ!」

「うわぁっ!」

 

 二人が空中で大勢が崩れた瞬間を、翼は逃しはしない。

 

「はあっ……ッ!」

 

 間髪入れずアームドギアを大剣に変形させ、蒼ノ一閃を放つと、蒼月の孤が二人が地面に着く前に迫って行く。

 

「はぁっ!」

 

 カービィは、咄嗟に両腕を前に出す。次の瞬間、彼の手からスマッシュパンチの時よりも、更に強力な青い波動の弾が放たれた。

 

―――『そっこうメガはどうショット』

 

 放たれた波動の弾は、蒼ノ一閃とぶつかり合い、互いに霧散する。

 

 空中を落下し、狙いが定められない中、カービィは咄嗟の判断と直感により、相手の攻撃をやり過ごしたのだ。

 

 カービィたちは着地し、再び構えた―――その時だった

 

―――ブォーン!ブォーン!

 

『ッ……!?』

 

 だが、突如として鳴り響くアラートの音により、彼らの模擬戦はうち止められた。

 

「何事だッ!?」

 

 弦十郎は通信機を取り出し、事態の確認をする。

 

『ギャラルホルンのアラートです!けど、いつもと違うんです!』

「なんだとッ!?」

 

 通信機の向こうから聞こえた藤尭の声に、驚愕する弦十郎の声が、シュミレーションルームへと響き渡った。




次回も気長にお待ち下さいませ。(おそらく来週以降になると思われます。)


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九星目 白銀の姉妹と、剣士の降臨

> おそらく来週以降になると思われます。
こんなはずじゃなかった!!

そして今回、タイトルから察せるよう、遂に"アイツ"が……。

それと、未来さん!お誕生日おめでとう!

いつか誕生日回も書きたいです……。


 装者たち及び弦十郎、そしてカービィたちは司令室へと集まっていた。

 

「それでエルフナインくん、ギャラルホルンは今、一体どういう状態なんだ?」

「はい……!?これは……」

 

 コンソールを操作していたエルフナインの顔が、突如変わる。

 

「この反応は、……ディメンションホールの反応に酷似しています!」

「なんだと……ッ!?」

 

 エルフナインの言葉を皮切りに、全員が最悪の事態を想定する。

 

「という事は、此処にもリーパーが……ッ!?」

「それは、現段階ではまだわかりません。ですが、今のところはリーパーの反応はありません」

 

 今はまだ最悪の事態は起きていない。だが、リーパーがいつ現れるかわからない故、装者たちは安堵など出来なかった。

 

「ただ、この反応はあくまでも似ているだけで、本来のディメンションホールの反応に比べて、とても安定しているのです」

 

 エルフナインは一同に説明するが、それを完璧に理解出来た者はいない。

 

「更にこの反応を照合したところ、どうやら既に繋がっているある世界への道を示しているようなのです」

「そのある世界とは……?」

「はい、照合によりますと、これは恐らく()()()()()()()()です」

「ッ……!?」

 

 エルフナインの言葉に一番動揺したのは、マリアだ。

 無理もない。セレナ(大切な妹)がいる世界に、異変が起きたのかもしれないのだから。

 

「何故ギャラルホルンがこのような反応を示したのかは、現段階ではわかりません。ですが、ギャラルホルンの反応はこれまで()()()()()()()を感知していました。恐らく今回も例外ではないと思われます」

 

 ギャラルホルンはもともと並行世界で起きた危機を感知する機能がある。

 これまでも装者たちはギャラルホルンの力であらゆる世界に赴き、その世界で幾多もの危機を解決して来た。

 故に、今回も例外ではないことが予想出来る。

 

「ならば、すぐにその世界へ赴き、異変を調査しなければならんな。それに、リーパーたちが本部に現れる可能性も危惧して、ギャラルホルンの調査のほうもしなければならん」

 

 弦十郎の言葉に、装者たちは真剣な顔に変わる。

 

「では、調査に行ってもらうメンバーだが、響くんに翼、そしてマリアくん、頼めるか?」

『了解!』

 

 弦十郎からの指名に、三人は返事をする。

 

 余談だが、マリアの指名は弦十郎による、セレナを心配する彼女への計らいであった。

 

「ぽよぽよっ!」

「待って、ボクたちも行かせて下さい!」

 

 三人がギャラルホルンの元へ向かおうとしたその時、カービィたちは待ったをかける。

 

「理由を聞かせてもらえるか?」

「今回の件は、ディメンションホールが関わっているんでしょ?なら、もしかしたらボクたちがこの世界に来た元凶が見つかるかもしれない。そうすれば、ボクたちも元の星に帰れるかもしれない。だから……」

 

 ワドルディが言った内容に、弦十郎は頭を悩ませる。

 

 確かに今回の件にディメンションホールが関わっているのなら、その元凶が絡んでいる可能性は充分にある。

 彼らとの約束を守るためにも、帰れる方法が見つかる可能性があるならば、彼らを同行させるべきだろう。

 

―――しかし

 

「すまないが、それは無理なんだ」

「えぇ、なんで……ッ!?」

 

 弦十郎はワドルディの頼みを拒否する。

 だが、これには明確な理由があった。

 

「ギャラルホルンのゲートを通れるのは、装者だけなんだ」

「へ……?」

 

 そう、ギャラルホルンが並行世界を繋ぐ際に生まれるゲートを通れるのは、シンフォギア装者だけなのだ。

 理由は定かではないが、ギャラルホルン自体が通す者を指定しているのでは、という仮説もある。

 

「すまないが、今回ばかりは我々でもどうしようも出来ない。どうかわかってくれ」

「はい……」

「ぽよ……」

 

 二人は渋々了解した。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 緑色の巨大な法螺貝のような物――『ギャラルホルン』が鎮座されている部屋。

 ギアを纏った装者たちは、ギャラルホルンの目の前へと来ていた。

 

―――その時

 

『ッ……!?』

 

 突如として、まるで装者たちが来たのに反応したかのように、ギャラルホルンの前に、異様な星型の穴が現れる。

 

 それはカービィたちをこの世界へと誘った元凶と同じ姿であった。

 

―――『ディメンションホール』

 

「これが、ディメンションホール……」

 

 初めて見た装者たちは、その異様な穴をじっと見ている。

 

「ともかく、行くぞ」

 

 翼の言葉を合図に、全員がディメンションホールへと進み出す―――と思われたその時

 

「ぽよっ!」

「カービィ!だがら勝手に入っちゃダメだってば!」

 

 突如として聞こえてきた声に、装者たちは一斉に後ろを振り向く。

 

「カービィ、なんでいるの!?」

 

 そこには、カービィを必死に止めようと彼にしがみつくワドルディと、彼を無視して進むカービィの姿があった。

 

 そして、カービィは目の前にあるディメンションホールに気づく。

 

 次の瞬間、カービィは何を思ったのか、しがみついていたワドルディを振り払って突然走り出し、なんと自らホールへと飛び込んでしまったのだ。

 

「カービィ……ッ!?」

 

 やがて、カービィの姿はホールの向こうへと消えてしまった。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 F.I.S.日本支部研究所。

 そこでは―――

 

「ほら、あーん」

「ぴぃー」

 

 先日セレナが保護した雛鳥――というには巨大――と、雛鳥にリンゴをあげるセレナの姿があった。

 

 あれから雛鳥は、傷の手当てを無事に受け、なんとか最悪の事態を逃れた。ナスターシャ曰く、かなり危険な状態だったそうだ。

 

 その後、雛鳥は、仕方なくこの研究所で保護することとなった。

 だが、本部に知れ渡れば、雛鳥が実験材料にされてしまう危険性があるため、ナスターシャが上手く情報を隠蔽してくれた。

 

 しかし、雛鳥はまだどこか警戒心を持っており、研究所の人間に頑なにに心を開こうとしない。

 だが、唯一セレナには、助けられた恩義くらか、ほんの少しだけ心を許しているようだ。

 

「セレナ、よろしいですか?」

「はい、マム。ごめんね、また後でね」

 

 ナスターシャに呼ばれ、セレナは一旦雛鳥から離れる。

 

「あの後、その雛鳥が発見された付近を調査した所、こんな物が見つかりました」

 

 そう言うと、ナスターシャはコンソールを操作し出す。すると、モニターの画面に、壊れた首輪のような物が写しだされる。

 

「これは、……首輪ですか?」

「えぇ、恐らくこれはあの雛鳥についていた物です。あの生命体に襲われた時に外れたのでしょう。そして、どうやらこの首輪は、遠隔操作で電流が流れる仕組みになっていたようなのです」

「ッ……!?まさか、あの子は―――」

 

 セレナがはナスターシャの言葉から、あることを悟ってしまう。

 

「もしかしたらあの鳥は、既に何処かで人間に酷い仕打ちを受けたのかもしれません」

「そんな……」

 

 一体誰が、何のためにしたのかはわからない。だが、まだ未熟な雛鳥にするなど、到底許されるはずのない行為だ。

 

 だが、セレナが感じていたのは、怒りよりも悲しみであった。

 

 あんなまだ幼い雛が、親とはぐれてしまった上に、人間の身勝手な理由で痛めつけられたのだ。

 

―――きっと、とても辛かったであろう……

―――寂しかったであろう……

 

「これより、この首輪の発信源を辿ってみます。もしかしたら、そこにあの雛鳥の親もいるかもしれません」

「ッ……!本当ですか!?」

「あくまで可能性の話しです、断定は出来ません」

 

 ナスターシャの話しはあくまで可能性に過ぎない。だが、希望がない訳でもない。

 セレナは決意を固めた、"雛鳥の親を絶対に探す"と。

 

―――ブォーン!ブォーン!

 

 そんな時、突然アラートの音が部屋全体に鳴り響く。

 突然響いたけたましい音に、雛鳥も怯えてしまっている。

 

「聖遺物保管庫付近に、先日の未確認生命体が……ッ!」

 

 研究員からの報告に、二人は動揺する。

 

 以前の話から、リーパーたちが聖遺物を狙うのは明白だ。このままでは、この研究所の聖遺物まで奪われてしまう。

 

「マム、私行ってきますッ!」

「頼みましたよ、セレナ」

 

 セレナはまず先に、怯えている雛鳥へ駆け寄る。

 

「大丈夫、すぐ戻るから、いい子で待っててね」

「ぴぃー……」

 

 そしてセレナは、すぐさま部屋から出て行った。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 聖遺物保管庫付近の森林。

 そこには、大量のリーパーたちが、何かを求めるかのように飛んでいる。

 彼らが向かう先こそ、聖遺物保管庫だ。

 

 その時―――

 

「はぁッ!」

 

 リーパーの一体が、突如真っ二つになった。

 突然仲間が亡き者となったことにより、リーパーたちは進行を止め、仲間を切り裂いた存在を見据える。

 

 そこには、ギアを纏ったセレナの姿があった。

 

「あなたたちに聖遺物は渡しませんッ!」

 

 セレナはアームドギアを構え、リーパーの群れへ向かう。

 

 リーパーたちは次々と突進を繰り出すが、その度にセレナに切り裂かれてしまう。

 

 すると―――

 

「ぽよっ!」

「え……?」

 

 突然この場に似つかわしくない、可愛らしい声が鳴り響く。

 辺りを見渡すと、そこにはまん丸ピンクの謎の生き物―――カービィがいた。

 

 リーパーたちも、カービィの存在に気づき、彼に突進を繰り出す。

 

「危ないッ!」

 

 すぐさまカービィの元々へ駆け出すセレナ。

 しかし、この距離では間に合わない。そう思われたその時―――

 

「はぁー!!……ゴクッ」

 

 カービィが口を大きく開けたかと思えば、そのままリーパーは彼に飲み込まれた。

 

「……へ?」

 

 唖然としてしまうセレナ。

 

「はぁっ!」

 

 するとまたしても乱入者が現れる。

 だが、その姿はセレナにとって、最も大切な存在であった。

 

「マリア姉さんッ!」

「セレナッ!」

 

 セレナとマリアは、互いの姿を確認するやいなや、お互いに駆け寄る。

 

「どうして此処に……?」

「話は後よ、今はリーパーたちを片付けるわよ」

「リーパー、あの生き物のこと?わかった!」

 

 二人は、再びリーパーたちを見据える。

 するとそこへ、またしても新たな姿が現れる。

 

「やっと見つけた!もうカービィ、何でいつも勝手なことするのッ!?」

「立花、今はそれよりも敵に集中しろッ!まさかリーパーがこの世界にも出現していたとは……ッ!」

 

 響と翼だ。

 更によく見ると、彼女たちの足元に、カービィと同じくらいの高さの生き物―――バンダナワドルディもいる。

 

 カービィやワドルディに対する疑問が絶えないセレナ。

 だが、今は割り切り、最も優先すべきことを皆に伝える。

 

「皆さん、この生き物たちはこの先の聖遺物保管庫を狙っていますッ!そこへ行かれる前に倒さないと……ッ!」

「えぇ、わかったわッ!」

「心得たッ!」

「任せてッ!」

 

 セレナの言葉に、全員了解の意を示す。

 そしてそれは、装者たちだけではない。

 

「ぽよっ!」

 

 カービィはリーパーを吸い込んでは吐き出すを繰り返し、リーパーたちを倒して行く。

 

 しかし、リーパーを頬張る時、カービィの動きは鈍くなり、隙が生まれてしまう。当然敵はその隙を逃しはしない。

 

 カービィの背後から、別のリーパーが突進を繰り出す。

 

「はぁッ!」

 

 それを翼が切り裂いた。

 

(やはりコピー能力がなければ、カービィは不利か)

 

 そう思われたその時だった。

 なんとカービィは辺りに生えていた木から、葉っぱを吸い込みだしたのだ。

 

「カービィ、何してるの!?」

 

 カービィの謎の行動に、響は困惑する。  

 だが、その行動の意味は、すぐさまあきらかとなる。

 

 葉っぱを飲み込むと、カービィの身体が光輝く。

 やがて光が晴れると、カービィの頭には、複数の葉っぱで出来た冠があった。

 

―――コピー能力『リーフ』

 

「え?葉っぱのコピー能力?」

 

 予想だにしなかったコピー能力に、響は愕然とする。

 

 そして、カービィが頭を振るうと、頭から葉っぱが独特の軌道を描きながら飛び、リーパーを切り裂く。

 

―――『リーフカッター』

 

 頭から次々と放たれるリーフカッターが、リーパーたちを切り裂いて行く。

 

 そして今度は、カービィを中心に、大量の葉っぱを巻き込んだ風が吹き始める。

 動きを止めたカービィに、リーパーたちは次々と突進を繰り出す。

 だが、カービィの周りを旋回していた葉っぱにより、リーパーたちは切り裂かれてしまう。

 

―――『リーフバリアー』

 

 リーパーたちの数が減って来たその時、"それ"は現れた。

 

「ぽよっ!?」

 

 突然どこからか不意打ちを喰らい、カービィは吹き飛ばされる。

 見れば、そこには赤いスフィアローパーがいる。

 

「スフィアローパーか!……?」

 

 スフィアローパーの存在に気づいた翼は、ある物を見つける。

 

「赤い……羽?」

 

 響の言う通り、スフィアローパーの口の中には、赤く煌めく羽のような物が見える。

 

 すると突然、セレナに通信が掛かってくる。

 

「マム、どうしたんですか?」

『セレナ、その付近から"フェニックスの羽"の反応が出ています!』

「ッ……!?まさか―――」

 

 ナスターシャの言葉から、セレナは確信する。

 

―――目の前の存在が、フェニックスの羽を奪った犯人だと

 

 すると、スフィアローパーは、口から辺り一面に火の玉を撒き散らす。

 

 飛び散った炎が、辺りの木々へと燃え移り、火事が起こる。辺り一面は。一瞬にして火の海とかしてしまった。

 

「けほっ、けほっ」

「カービィッ!?」

 

 すると突然、カービィは咳き込んでしまう。

 

 今の彼は、あからさまに弱っているのがわかる。

 燃え盛る炎の熱気、漂う黒い煙、飛び散る火の粉……

 これらがカービィのリーフの力を弱らせているのだ。

 

「ぽよっ!?」

 

 弱っていたカービィは、スフィアローパーの突進をモロに食らってしまう。

 その衝撃でコピー能力が抜け落ち、もとの状態に戻ってしまった。

 

 そして、スフィアローパーはら無慈悲にも倒れて動けないカービィに狙いを定め、突進の大勢に入ってしまう。

 

 装者たちは助けに向かおうとする。だが、リーパーたちに足止めを喰らい、向かおうにも向かえない。

 

―――このままではマズイッ!

 

 カービィは、己の運命を悟り、目を瞑る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――その時であった

 

―――ザッ!

 

 突如、謎の斬撃音が鳴り響く。

 

 いつまで経っても痛みが来ないことに違和感を感じ、カービィは目を開く。

 そこには―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「堕落したか、カービィ。この程度の者に何遅れをとっている」

 

 カービィと同じく丸い身体、顔全体を覆う仮面、そして手に携えた黄金の剣。

 

 その姿は間違いなく"彼"だ。

 時にライバルとして戦い、時に仲間として共に戦った存在。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――仮面の騎士、『メタナイト』

 

 孤高の剣士が、今戦場に降り立った。




なんかまたシナリオに行き詰まって来たので、また更新が遅れるかもしれませんが、どうかご了承下さいませ。


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十星目 三振りの剣と、白銀の翼

なんかもう、毎回次は遅れますとかいっときながら毎週更新してますね←
ですが皆さん、作者はリアルの都合上いつ週一更新が止まってもおかしくない状況であることをどうかご理解下さい。


 なんとかリーパーたちを退け、カービィの元へたどり着いた翼。

 だがそこで、初めて見る存在―――メタナイトに気づく。

 

「お前は……?」

「話は後だ、今集中すべきは目の前の敵であろう」

 

 目の前の騎士が何者かはわからない。

 だが、少なくとも今は同じ敵を見据えている。

 ならば、彼女にとってやるべきことは一つだ。

 

「あぁ、ならば共に戦ってくれるか?」

「無論だ、剣士の誇りに掛け、奴らを一匹残らず葬り去るッ!」

 

 その時、メタナイトはどこからともなく別の剣を取り出し、カービィの目の前へと投げる。

 

「使え、カービィ」

「ぽよっ!」

 

 すぐさまカービィは、剣を手に取る。

 次の瞬間、カービィの身体が一瞬光り輝き、頭に緑の帽子が現れる。

 

―――コピー能力『ソード』

 

 今ここに、三人の剣士が集った。

 

 先に翼が踏み込み、スフィアローパーへ剣を振るう。

 

 スフィアローパーはそれを躱す。

 だが、翼は即座にスフィアローパーが躱した方向へと振り上げた。

 避けられることを予測しての一撃であった。

 

 スフィアローパーは、翼の一撃に怯む。

 次にメタナイトが肉薄し、縦に回転しながら斬撃を繰り出す。

 

―――『スピニングナイト』

 

 さらにメタナイトは、そのまま剣をスフィアローパーの頭へ叩きつけ、地面へ叩きつける。

 制空権を失ったスフィアローパーは、それを取り戻すべくすぐさま飛翔しようとする。

 

 そうはさせまいと言わんばかりに、カービィが剣先を突出させながら突進を繰り出す。

 

―――『ドリルソード』

 

 スフィアローパーは剣先を刺されながら、後方に押される。

 

 だが、スフィアローパーは突如として、口から火炎放射を繰り出す。

 炎の熱気に押されたカービィは、突進を止め後退してしまう。

 

 カービィを退けたスフィアローパーは、再び飛翔し出しす。

 ダメージが残っている故か、まだ若干ふらついている。

 それでも何とか空中で体制を立て直す。

 

 次の瞬間、スフィアローパーは全身に炎を纏い出す。

 だが、その炎の勢いは、前に見た個体よりもさらに激しいものだ。

 

(……?炎の勢いが増している?)

 

 その様子に、メタナイトは違和感を感じる。

 

 彼は過去にスフィアローパーと何度か戦ったことがある。

 しかし、目の前の個体が出す炎はそれの比ではない。

 

 一方で、スフィアローパーは再び突進を繰り出す。

 激しく燃え盛る炎の熱気が、近づいて来るたびにに徐々に強くなる。

 

 三人は何とか横へ跳んでそれを躱す。

 スフィアローパーが通った跡は、激しく燃えている。

 それが、あの炎の凄まじさをより三人に思い知らせた。

 

 そして、今度はスフィアローパーは上空から火の玉をがむしゃらに撃ち出す。

 

「くッ……!」

 

 次々と降って来る火の玉を、三人は躱しつつ、時に剣で防ぎながらやり過ごしていく。

 だが、炎の雨は一向に止む気配を見せない。

 これではいつまでも相手に近づけない。

 

 だがその時、なんとカービィは炎の雨のなかを駆け出したのだ。

 

「―――ッ!?待てカービィ……ッ!」

 

 翼はすぐさま制止をかける。

 あの中を駆けるなど無謀でしかない。

 

 だが、カービィは翼の制止を聞かず、一目散に駆ける。

 自身へ迫る火の玉は剣で振り払い、少しづつスフィアローパーと距離を縮めていく。

 

 しかし、連続で来る火の玉を全てやり過ごすのは、やはり不可能であった。

 

 再び火の玉を薙ぎ払ったその時、丁度それと重なっていたもう一つに気づけなかった。

 勢いがついたカービィは、もはや止まることなど出来ない。

 

 

 

 

 

 

「はあッ!」

 

 しかし、突如後方から飛んできた光が、カービィに迫っていた火の玉を打ち消した。

 彼の後ろでは、メタナイトが剣を振り下ろしていた。

 

―――『ナイトビーム』

 

 火の玉が消えたことにより、カービィは尚も進み続ける。

 そして、遂にスフィアローパーの真下に来た。

 

 ジャンプと同時に剣を振り上げ、スフィアローパーを下から切り上げる。

 

―――『切り上げスラッシュ』

 

 さらにそのまま宙で一回転し、剣をスフィアローパーの頭へ叩きつける。

 

―――『メテオエンド』

 

 メテオの名の如く、スフィアローパーと共に地面へと降下する。

 スフィアローパーは地面に叩きつけられ、再び制空権を失う。

 

 何とか地面から起き上がり、再び飛翔しようと試みる。

 

 しかし、スフィアローパーはそこから全く動かない。

 否、動けなかった。

 

 突然身体が自分の意思に従わなくなったことに、スフィアローパーは慌て出す。

 

 スフィアローパーは気付いてなかったが、彼の影には小太刀が刺さっている。

 

―――『影縫い』

 

 翼が隙を見て、スフィアローパーの影へと投擲していたのだ。

 

 動けなくなったスフィアローパーは、正に格好の的。

 何とか動こうと精一杯もがいているが、既に手遅れだ。

 

 三人の剣士は、トドメを刺すべく動きだす。

 

 翼は剣を大剣に変形させ、蒼ノ一閃の体勢に入る。

 

 カービィとメタナイトは、それぞれ剣を天へと掲げ、力を溜める。

 すると、二人の力が剣先に宿り、光出す。

 

『はあッ!』

 

 そして、三人は剣を振り下ろした。

 同時に、剣から光の孤が放たれ、前方へ向けて飛んでいく。

 

 さらにそれだけではない。

 なんと、三つの孤が飛んでいく中で重なり合ったのだ。

 

―――『三閃・スカイエナジーソード

 

 スフィアローパーは最後の足掻きも虚しく、三振りの孤をモロに喰らう。

 最後に断末魔を上げ、爆発四散した。

 

 やがて爆発が晴れると、そこには先ほどまでスフィアローパーだった塵の中に、激しく光り輝く()()()が混じっている。

 やがて羽は宙を煌びやかに舞い、そのまま地面へ落ちた。

 

(あの羽が、奴の異様な力の元凶だったのか?)

 

 メタナイトは、羽を見ながら推測を立てる。

 この羽がなんなのかはわからない。

 しかし、スフィアローパーの炎の威力は、あきらかに異常に強くなっていた。

 原因があるとすれば、突然変異によるものか、外的要因によるものかのどちらかだ。

 そして、この羽は確かにスフィアローパーが持っていた物。

 ならば、このような推測に行き着くのが自然であろう。

 

「さて、あなたのお陰で敵を退けられた。改めて礼を言わせて欲しい」

 

 そんな時、メタナイトは翼に声をかけられる。

 

「何、私は剣士としての務めを果たしたに過ぎない。礼を言われるほどのことではない」

「それでも、私たちはあなたに助けられた。だからどうか受け取って欲しい」

「…………」

 

 メタナイトは何も言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

―――その時、

 

「クオォォォォォォッ!!」

 

『―――ッ!?』

 

 突如として、謎の奇声が森全体に鳴り響く。

 だが、カービィとメタナイトはその声に聞き覚えがあった。

 

 すると、三人のいる場所が、突如として巨大な影に覆われた。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

「はあッ!」

 

 FAIRIAL†TRICKを繰り出し、リーパーたちを一掃するセレナ。

 見れば、リーパーたちの群れは消えていた。

 どうやら残りは他の者たちが片付けたようだ。

 

 務めを果たしたことにより、安堵するセレナ。

 

 後は、森を消火するだけだ。

 それは恐らく、研究所の者たちがやってくれるだろう。

 

―――そう思ったその時である

 

「クオォォォォォォッ!!」

 

「―――ッ!?」

 

 突然森全体に響き渡った奇声にセレナは動揺する。

 すぐさま辺りを見渡し、発声源を探す。

 

 すると、空から飛んで来る巨大な影が目に写る。

 目を凝らして見ると、その姿がはっきりと見えた。

 

 その姿は正しく、巨大な鳥である。

 

 まるで刃物のように煌めく、鋭い白銀の翼。

 頭から生えた巨大な黄色い鶏冠。

 胸には、青く輝く宝石。

 

 その姿を見た途端、セレナの中であることがよぎる。

 

(あれって、もしかしてあの子の―――ッ!?)

 

 そう、巨大鳥の姿は、あの雛鳥に物凄く似ているのだ。

 セレナには思わずにいられなかった、

―――あれがあの子の親だと

 

 セレナはすぐさま巨大鳥の方向へ向けて走り出した。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 巨大な影の主は、カービィたちの目の前に降り立った。

 

 その正体は、異様な雰囲気を放つ巨大な鳥だ。

 

 巨大鳥を見た途端、翼はすぐさまアームドギアを構え直す。

 だが、カービィとメタナイトは、巨大鳥を見て驚いている。

 

「ぽよっ!ぽよぽよっ!?」

「馬鹿な、何故ここにいる!?"ダイナブレイド"!!」

 

―――ダイナブレイド

 

 それが巨大鳥の名である。

 

「二人は、あの鳥を知っているのか?」

「あぁ、奴は我々と同じ星に住んでいる鳥だ。だがまさかヤツもこの世界に紛れ込んでいたとは……!」

「ぽよ!ぽよぽよ!」

 

 一方でカービィは、何故かダイナブレイドへ向けて笑顔で手を振っている。

 

「あの鳥は、カービィとは親しい仲なのか?」

「まあな、ダイナブレイドはカービィにはある恩を持っていてな……」

 

 メタナイトの話から、翼はダイナブレイドがカービィの敵ではないということを理解し、アームドギアを下そうとする。

 

―――その時だ

 

「クオォォォォォォッ!!」

「―――ぽよッ!?」

『―――ッ!?』

 

 なんとダイナブレイドは、カービィを見るや否や、突然くちばしを彼に向けて突いて来たのだ。

 

 カービィは咄嗟に躱したが、ダイナブレイドの行動に戸惑いを隠せずにいる。

 

「どういうことだ、あの鳥はカービィの仲間ではなかったのか!?」

「そのはずだ、一体どうなっているッ!?」

 

 するとダイナブレイドは、今度は口から赤と白が混ざり合った炎を連続で吐き出して来る。

 カービィは、なんとか躱しつつ走り回る。

 

「ぽよ!ぽよぽよッ!?」

 

 必死に何かを訴えるが、その思いも虚しく、ダイナブレイドは翼を振るってくる。

 カービィは後ろへ跳ぶことで難を逃れる。

 地面には、巨大な斬撃の痕が残っている。

 

「ぽよぽよ!ぽよっ、ぽよよ!」

 

 カービィは尚も必死に訴えるが、ダイナブレイドは全く聞く耳を持たない。

 

―――何故こんなことに?

 

 戸惑い続ける中、カービィはある物に気づく。

 

 それは、ダイナブレイドの首についている首輪だ。

 もともと服のような装飾を身につけているダイナブレイドだが、あの首輪はどう見ても異様だ。

 

―――そんな時

 

「待って下さいッ!」

「ぽよっ!?」

 

 突然後ろから声をかけられる。

 

 そこにいたのは、セレナだ。

 セレナはダイナブレイドを見た途端、すぐさま近づく。

 

「あなたがあの子の親なんですよね?すぐに一緒に来て下さい!あなたの子どもが待っているんですッ!」

 

 セレナは必死に訴える。

 だが、ダイナブレイドはセレナの言葉にも耳を貸さず、今度はセレナにも炎を吐き出す。

 

「―――ッ!?」

「はあッ!」

 

 刹那、翼がセレナの前に出て、剣を高速回転することで炎を防ぐ。

 

「セレナ、お前とあの鳥の間に何があったかは知らない。だが、今の奴は我々を目の敵にしている。アームドギアを構えなければ、我々が先に朽ちるぞッ!」

「風鳴さん、でも―――」

 

 その時、ダイナブレイドは羽ばたき、飛翔する。

 そして、翼を勢いよく閉じる。

 すると、翼から羽が手裏剣の如く飛んで来る。

 

「はあッ!」

「おらぁっ!」

 

 だが、突然後方から現れた二つの影が、それぞれの武器で羽を防いだ。

 

―――マリアと響だ

 

「はあ、はあ、やっと追いついた……」

 

 さらに、後から遅れてワドルディもやって来る。

 

「お前もこの世界に来ていたのか、バンダナワドルディ」

「ん……?て、えぇっ!?メタナイト、何でここに―――ッ!?」

 

 ワドルディはメタナイトの存在に気づき、慌て出す。

 

「てえぇぇぇぇっ!!ダイナブレイドもいる!どうなってるの!?」

「話は後だ、それよりも早く構えろッ!」

 

 その時、ダイナブレイドは空中を旋回しだす。

 

「マズい、突進がくる!全員すぐに伏せろッ!」

 

 するとダイナブレイドは、旋回した勢いで加速し、メタナイトのいう通り突進を繰り出した。

 

 なんとか全員メタナイトの忠告により、身体を伏せることでことなきを得た。

 だが、先ほどの突進から伝わって来た勢いは尋常ではなく、一同の身体に染み染みと伝わっていた。

 

 ダイナブレイドは再び地面に足をつける。

 すると今度は、なんとダイナブレイドの首が伸び、前方に向けて勢いよく突きを仕掛けて来たのだ。

 

「うわッ!」

 

 丁度その目の前にいた響は、咄嗟に横に跳ぶことで躱す。

 

 ダイナブレイドは、地面に刺さったくちばしを引っこ抜き、首を元の長さに戻す。

 

 全員が奮闘する中、セレナは戸惑っていた。

 ダイナブレイドがあの雛鳥の親であることは間違いないであろう。

 故に、倒す訳にはいかない。

 

 だが、相手はこちらの話しを全く聞いてくれない。

 それ所かこちらに対して敵意剥き出しだ。

 

 どうすればいいのか、セレナはただ葛藤することしか出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――その時だ

 

『……?』

 

 突如としてダイナブレイドの目の前に、謎の赤い光が現れたのだ。

 よく目を凝らすと、その中には、"赤い羽"が見える。

 

「あれは、……フェニックスの羽!?」

 

 赤い羽―――フェニックスの羽は、そのままダイナブレイドへと近づいて行く。

 やがてダイナブレイドの胸の宝石に触れ合う。

 

「クオォォォォォォッ!!」

 

 突然ダイナブレイドが叫び出す。

 だが、その鳴き声は先ほどとは違い、まるで苦しんでいるかのようだ。

 

 すると、赤い羽はダイナブレイドの中へ溶け込むかのように、その姿を消してしまった。

 

―――そして

 

「クオォォォォォォッ!!」

 

 なんとダイナブレイドの身体が、炎に包まれたのだ。

 炎の中では、ダイナブレイドがもがき苦しんでいる様子が見える。

 

 セレナは黙って見てはいられなかった。

 すぐさま炎の中へ駆け込もうとする。

 

「ッ……!?セレナ、待ちなさいッ!」

 

 マリアはセレナの腕を掴むことで制止させる。

 

「マリア姉さん、でもこのままじゃあの鳥が―――ッ!」

「だからって闇雲に突っ込むのは危険よッ!落ち着きなさいセレナッ!」

 

 セレナはマリアと口論しながら、なんとか腕の拘束を逃れようともがく。

 対するマリアも、必死にセレナから手を放さずにいる。

 

「グオォォォォォォッ!!」

 

 すると、ダイナブレイドを覆い尽くしていた炎が晴れる。

 そこから現れたのは、変わり果てた異形の姿であった。

 

 翼や鶏冠など、至る所から炎が出ている。

 胸の青い宝石は、炎の如く真っ赤に染まっている。

 眼まで炎に包まれ、その奥の瞳が見えなくなっている。

 

「何だ、あの姿は……」

 

 メタナイトは、ダイナブレイドの変貌ぶりに驚愕する。

 他の者たちも、それぞれ驚愕をあらわにしている。

 

「グオォォォォォォッ!!」

「―――ッ!?不味いッ!」

 

 ダイナブレイドが再び咆哮を上げた途端、マリアは真っ先に前へと出る。

 

―――次の瞬間

 

 ダイナブレイドは、口から炎を吹き出した。

 その威力は先ほどの炎の比ではない。一瞬にしてこの場の全員を焼き尽くしてしまうかのような威力だ。

 

 だが、マリアが出した三角のエネルギーシールドが、なんとかそれを防ぐ。

  

 だが、ダイナブレイドの炎の威力は凄まじく、マリアは全身の力をシールドに込めることでなんとか耐えている。

 

「―――ッ!?くっ……!」

 

 やがてシールドは砕け散ってしまった。

 だが同時にダイナブレイドの火炎放射も止まる。

 

 するとダイナブレイドは、再び飛翔し出す。

 また突進を仕掛けて来ると思い、一同は警戒する。

 

 だが、ダイナブレイドは一同に目もくれず、どこかへ向けて飛び立って行く。

 

『―――ッ!?』

 

 逃がすまいと後を追おうとする一同。

 しかし、すぐにダイナブレイドの姿は空の向こうへと消えてしまった。




今回は、戦闘描写で色々悩みました。これでメタ様活躍出来てましたよね?
それとあくまで可能性の話ですが、もしかしたらこの章、割と早く終わるかもしれません。


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十一星目 不死鳥の依代

まさかの連続投稿!
やっぱ土日は執筆意欲が湧く!

それと、ようやくLOST SONG編2章始まりましたね。
ちなみにこの作品は、LOST SONGの前日談となっております。なのでanother組は出さない方針で行きたいと思います。


 ダイナブレイドが逃亡した後、一同はF.I.S.研究所へと集まっていた。

 

「まさか、あなたたちが来ていたとは……」

「えぇ、久しぶりマム」

 

 マリアの相変わらずの様子を見たナスターシャは、そっと微笑みを零す。

 だが、ナスターシャの目は、すぐさまマリアたちの背後にいるカービィたちへと向けられる。

 

「それで、彼らは……?」

「それも含めて、今回私たちが来た理由を話すわ」

 

 そしてマリアは、ナスターシャにことの全てを話した。

 

 ディメンションホールの発生……

 カービィたちとの出会い……

 ギャラルホルンの未知の反応……

 

「なるほど、こことは異なる次元を繋ぐ穴ディメンションホール、それの発生に伴うリーパーたちの出現にギャラルホルンの異常な反応、そしてディメンションホールを通じてこの世界に迷い込んだ異星人たち……」

 

 異星人の出現という、今まで経験のない事態に、ナスターシャは最初ほんの少しばかり疑惑を向ける。

 だが、マリアたちが自身にそんな出鱈目を言う筈がないのを、彼女はよく知っている。故に、疑惑はすぐに消えた。

 

 すると、一同はメタナイトへ目を向ける。

 

「それで、あなたは一体何者?」

「あぁ、そう言えばまだであったな。私の名はメタナイト、カービィとは同郷の者だ」

「やっぱりなんだ……」

「まあ、頭身がこれだしな……」

「……こんな頭身で悪かったな」

 

 どうやら響と翼に言われたことは、メタナイトの胸に相当刺さったようだ。

 

「そういえば、メタナイトはどうやってここに来たの?」

 

 するとそこで、ワドルディはメタナイトに問う。

 

「あぁ、私はカービィを探すためにポップスターの各地を回っていた。だがその途中、突然異界の穴が現れ、不覚にも私はアナザーディメンションへ吸い込まれてしまった。そして気づけばこの世界にいた」

 

 メタナイトは内心不甲斐なさそうに語る。

 

「ふむ、やはりお前もカービィたちと同じ経緯か。だが、何故こうもカービィと同郷の者ばかり現れるのだ?」

「さあな……?元々アナザーディメンションは様々な次元が乱脈したとても不安定な空間だ、何が起きても不思議ではない」

 

 この場でアナザーディメンションについて一番知っているのは、カービィたちだ。

 だが、そんな彼らでもアナザーディメンションについて全てを理解している訳ではない。

 

「だが妙だ、本来ディメンションホールは自然に開く物ではない。開くにはそれ相応のエネルギーが必要のはず。それに君たちの話によればこの世界だけでなく別の世界でもほぼ同時期に発生している。どう考えても異常だ」

 

 メタナイトは今の現状から、只ならぬ予感を感じていた。

 複数の世界でのディメンションホールのほぼ同時期の発生……

 これは彼らでさえ経験のない前代未聞の事態だ。

 

「それはともかく、あの鳥について聞かせてくれないだろうか?」

「そうです……ッ!あの鳥は一体……!?」

「セレナ……?」

 

 翼が鳥の話を持ち出した途端、異常に反応したのはセレナだ。

 セレナの慌ただしい様子を見て、マリアは違和感を抱く。

 

「ナスターシャ教授、雛鳥のメディカルチェックが終わりました」

「ぴぃー」

『―――ッ!?』

 

 すると、研究室の扉から研究員が入って来る。

 研究員の隣には、あの雛鳥が一緒に歩いて来ている。

 

 雛鳥を見た途端、カービィたちは驚愕する。

 

「ダイナベイビー!?君も来てたのッ!?」

「ぴぃ?……ぴぃー!」

「ぽよっ!?」

 

 雛鳥改め、ダイナベイビーはカービィを見た途端、真っ先に彼の元へ走り出す。

 そしてそのまま、カービィにべったりとじゃれついたのだ。

 

「あの鳥は……?」

「ダイナベイビー、私たちが先ほど戦った鳥、『ダイナブレイド』の子どもだ」

「―――ッ!?やっぱりッ!」

 

 メタナイトの言葉を聞いた途端、セレナはメタナイトに詰め寄る。

 

「あの大きな鳥は、やっぱりあの子の親なんですねッ!」

「セレナ、落ち着きなさい」

 

 マリアはそっとセレナを宥める。

 セレナも冷静さを取り戻した。

 

「……ごめんなさい、取り乱しちゃいました」

「セレナ、教えてちょうだい。あの鳥と一体何があったの?」

 

 マリアの問いに応えるべく、セレナは全てを話す。

 

 ダイナベイビーとの出会い……

 彼が誰かに拷問されていたかもしれないこと……

 そして、必ず親と会わせると約束したことを……

 

「なるほど、それであんなにあの鳥と戦うのを躊躇っていたのか」

「はい、あの子はずっと寂しかったんです。独りぼっちになって、誰かに酷いことまでされて、だから私は、あの子を早く親に会わせてあげたかったんです」

「セレナ……」

 

 セレナの思いは、全員の心に染みじみと伝わっていた。

 彼女がダイナベイビーのためにどれだけ必死だったかが、よく理解出来る。

 

「そうか、君がダイナベイビーを保護してくれてたのか」

「……へ?」

 

 突然メタナイトが言ったことに、セレナは唖然とする。

 

「えぇーっ!メタナイト、ダイナベイビーに会ってたの!?」

「あぁ……」

 

 ワドルディの驚きながら質問に、メタナイトは自然と答える。

 

「私が最初この世界に迷い込んだ時、私はこの研究所の近くの森にいた。そこでダイナベイビーを見つけてな、まるで何かから逃げて来たかのようだった。その時、私はアイツについていた首輪を斬った」

「え?あなたが斬ったんですか!?」

 

 ダイナベイビーに付けられていた首輪は、当初リーパーたちに破壊されたと思われていた。

 意外な事実が判明し、セレナは呆気に取られる。

 

「だがその後、ダイナベイビーは逃げてしまってな、後を追おうとしたが、リーパーたちに足止めを喰らってしまった。その後すぐに追いかけたが、既にその時は姿を消していた。恐らくその時に君が保護してくれたのだろう」

「はぁ……」

 

 メタナイトはセレナを向きながら答える。

 一方でセレナは、あの日あの場所にメタナイトがいたことに驚いている。

 

「それで、あの鳥……ダイナブレイドと言ったか?あれはなんなのだ?」

「ダイナブレイドは、我々の故郷に住む巨大怪鳥だ。普段はおとなしいのだが、子どものことになると手がつけられなくなるものでな……」

 

 仮面越しでわからないが、メタナイトは苦笑いを浮かべていた。

 

「その巨体怪鳥と雛が、何故この世界に……?」

「それは私にもわからない。だが、今の状況から見るに、恐らく彼女らも我々と同じくアナザーディメンションを通じてこの世界に迷い込んだのだろう……」

 

 メタナイトの言ったことに確証はない。

 だが、確かに今の事態を見てみれば、彼の推測が一番妥当である。

 

「だが、あの炎に包まれた姿はなんだ?あんな力、以前のヤツにはなかった筈だ……」

「それは恐らく、フェニックスの羽によるものでしょう」

 

 メタナイトが提示した疑問に、ナスターシャが応える。

 

「フェニックスの羽……?」

「フェニックスの羽とは、こことは別の研究機関にて研究されていた聖遺物です」

 

 ナスターシャは、マリアたち並行世界の装者たちに向けて説明する。

 

「もしや、あの時スフィアローパーが落としたあの羽か……!?」

 

 翼はスフィアローパーを撃破した後、チラッと見えた赤い羽のことを思い出す。

 あの時はすぐにダイナブレイドが現れたため、気にしている余裕がなかったが……

 

「けど、なんでそれをスフィアローパーが……?」

「先日、この聖遺物を保管していた研究所がスフィアローパーたちに襲撃を受け、その時にフェニックスの羽を奪われてしまったのです。今回あなたたちが戦ったのは、その時現れたのと同じ個体だったのでしょう……」

 

 ナスターシャの説明を聞き、メタナイトはスフィアローパーとの戦いを思い出し、一人で納得しだす。

 

「なるほど、やはりあの時のヤツの異様な強さはあの羽によるものだったのか。スフィアローパーは元々強力なエネルギーを秘めた物を好物とする。それ故、聖遺物に秘められたエネルギーに惹き寄せられたのだろうな」

 

 メタナイトは推測を交えながら語る。

 

「そして、戦闘中にあなたたちから放出されたフォニックゲインにより、フェニックスの羽が起動してしまったようです」

 

 聖遺物は歌に秘められた力―――『フォニックゲイン』を取り込み、起動することで真の力を発揮する。

 聖遺物に高い適性を持つ装者たちの歌には、強力なフォニックゲインが秘められている。

 故に、戦闘中に彼女たちが唄った歌が、フェニックスの羽を起動させるに至ったのだ。

 

「だが、何故フェニックスの羽はダイナブレイドに反応したのだ?」

 

 全員が思っていた疑問を、メタナイトが代表して提示する。

 

「それについてですが、この聖遺物を取り扱っていた研究機関から預かった資料があります」

 

 そう言うと、ナスターシャはいくつかの用紙を取り出す。

 

「この資料によりますと、フェニックスの羽には、僅かながらフェニックスの残留思念のようなものがあったそうです」

「残留思念……?」

 

 全員が、ナスターシャが発した残留思念という用語に反応する。

 

「起動したことで、フェニックスの意思が本格的に覚醒し、自身の肉体となる"依代"を求めたのかもしれません」

「それに、ダイナブレイドが選ばれたと……?」

「恐らく……」

 

 メタナイトの問いに、ナスターシャは答える。

 

「なるほど、今のアイツはフェニックスに意識を奪われた状態、差し詰め『ダイナフェニックス』とでも言った所か……」

「……ぽよぉ」

「カービィ……?」

 

 すると響は、カービィがどこか落ち込んだ表情をしているのに気づく。

 

「ダイナブレイドとカービィは、互いに助けられた仲だからな。思う所があるのだろう」

「カービィ……」

 

 カービィの心情を察し、響は顔を曇らせる。

 

 一方で、メタナイトはまだ疑問を浮かべている。

 

「だが、まだ気掛かりなことがある。ヤツはフェニックスに取り憑かれる前から我々を襲って来た。普段は温厚なヤツにしては妙だ……」

「それに関しては、あの"首輪"が関係しているのでしょう」

 

 ナスターシャは、今度はコンソールを操作し、ダイナブレイドが写った映像を出す。

 

「この首輪、あの子についていたのと似ているような……?」

 

 セレナは、ダイナブレイドに取り付けられた首輪を見て、ダイナベイビーに付いていた首輪を思い出す。

 

「恐らくこの首輪は、ダイナベイビーが付けていた物と同じ開発元でしょう」

「ていうことは、まさかダイナブレイドも……ッ!?」

「えぇ、ダイナベイビーと同じ場所に監禁されていたのでしょう。あなたたちを襲ったのは、人間にされた仕打ち、及び自身の子どもを傷つけられたことによる怒りかもしれません」

 

 ダイナブレイドが受けた仕打ちがどれほど辛いことか、想像するに容易かった。

 

 自身はおろか、子どもまで傷つけられて怒らない訳がない。

 響たちは、もどかしさを感じずにはいられなかった。

 

「だが待て、ヤツはカービィにまで襲いかかって来た。いくら人間を警戒していたとは言え、それはおかしい」

 

 だが、メタナイトはそこで異を唱える。

 

「ヤツが我々を襲ったのには、何か別の理由があった筈だ。だが、あの首輪が関わっているのは間違いないだろう……」

 

 ダイナブレイドは以前、カービィには大きな借りがあった。

 それ故、時にはカービィを手助けすることもあったぐらいだ。

 カービィに恩義を持っているダイナブレイドが、いくら怒り狂っていたからと言え、カービィを襲うとは考えられない。

 

「そう言えばマム、首輪の発信源はまだわからないの?」

「残念ながら、まだ解析中です……」

 

 セレナはナスターシャに問うが、期待していた答えではない。

 

「ともかく、今はダイナフェニックスをどうにかしなければならん」

 

 そこで、メタナイトは今やるべきことを宣言する。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ブォーン!ブォーン!

 

 その時、突如として、アラームが部屋中に鳴り響く。

 

「マムッ!一体何が……ッ!?」

「ダイナフェニックスが、町で暴れています!」

『―――ッ!?』

 

 ナスターシャの報告を聞いた一同は愕然となり、すぐさま町へ向かえるよう構える。

 

「あなたたち、頼めますか?」

「勿論です!必ずダイナフェニックスを止めて来ますッ!」

「ぽよっ!」

 

 ナスターシャの問いに、響とカービィが勢いよく答える。

 

 ここはS.O.N.G.ではないため、弦十郎の制止もない。

 ようやく響たちと戦えることで、カービィはやる気に満ちていた。

 

「ぴぃー」

 

 すると、さっきまでカービィにじゃれついていたダイナベイビーが、セレナに近寄ってくる。

 その表情は、セレナを心配しているかのようだ。

 

「大丈夫、私が必ずママに会わせてあげるからね!」

 

 それに対し、セレナは笑顔で答える。

 

 そして全員が部屋から出て行き、町へと向かった。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 本来なら大勢の飛び交うはずの町。

 だが、そこは今修羅とかしていた。

 

 辺り一面が炎に包まれ、多くの建物が焼け崩れている。

 

 そんな修羅の中に堂々と君臨するのは、一匹の異形の鳥

―――ダイナフェニックスだ

 

「―――ッ!?なんて酷い……ッ!」

 

 町へ到着した装者たちは、町の変わり様を見て驚愕する。

 そこにはもはや、人々が暮らしていた町の面影など微塵もない。

 

 装者たちは、町を修羅とかした元凶―――ダイナフェニックスを見据える。

 その炎に包まれた眼からは生気など感じられない。

 感じるとすれば、目に写る物全てを焼き尽くさんとする荒々しさのみ。

 

「ダイナブレイドさん、目を覚まして下さいッ!あなたの子どもが待っているんですッ!」

 

 そんなダイナフェニックスに、まだほんの僅かでも理性が残っていることを信じて、セレナは必死に訴える。

 だが、―――

 

「グ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"!!!!」

 

 セレナの言葉は届かず、ダイナフェニックスは装者たちを吹き飛ばすかの如く勢いで咆哮をあげる。

 

 なんとか踏ん張り、咆哮が止むのを待ち続ける。

 

 そして、咆哮が止んだと同時に、先に踏み込んだのはマリアだ。

 

 左腕から抜刀した小太刀を、振りかざすと同時に蛇腹状に変形させる。

 あらゆる角度から放たれる斬撃が、ダイナフェニックスの身体を切り刻む。

 

―――『EMPRESS†REBELLION』

 

 マリアはセレナの横に降り立つ。

 

「セレナ、いい加減構えなさいッ!」

「……マリア姉さん、でもッ―――」

「あなたの気持ちはよくわかる。けど、まずはダイナフェニックスを止めないことには何にもならないわッ!」

「マリア姉さん……」

 

 ダイナブレイドを助けたいが故、攻撃するのを躊躇ってしまう。

 だが、今はダイナフェニックスを止めなければ被害は広がるだけ。

 それにダイナブレイドを助けるにしても、まずは鎮圧化させる必要がある。

 

 マリアの説得により、セレナはようやくアームドギアを構える。

 

「マリア姉さん、一緒にお願い!」

「えぇ、行くわよセレナ!」

 

 白銀の姉妹(マリアとセレナ)は並び立ち、目の前の不死鳥(ダイナフェニックス)へと向かい合った。




すみません、やっぱりこの章おわるまでまだまだ掛かりそうです()
LOST SONGも早く終わらせて欲しい……
早くグレビッキー救われて……


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十二星目 極炎、向かうは竜巻

サブタイトル良いの思い付きませんでした。
やっぱり戦闘描写が書いてて一番苦労します。


 セレナはFAIRIAL†TRICKを繰り出し、ダイナフェニックスを切り刻む。

 だが、ダイナフェニックスは全く動じず、セレナに向けて火炎放射を放つ。

 

「はぁっ!」

 

 マリアがセレナの前に立ち、シールドを展開することでそれを防ぐ。

 

 次に翼が跳躍し、空中でアームドギアを大剣に変形させる。

 だが、今回は蒼ノ一閃とは違い、大剣を鞘に見立て、刀を抜刀する。

 そして、二本の剣を十の字に振り、そこから蒼い十文字を放つ。

 

―――『蒼刃罰光斬』

 

 十文字はダイナフェニックスの胸に当たり、傷をつける。

 

 

 

「グ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"!!!!」

『―――ッ!?』

 

 すると、ダイナフェニックスは突然、再び咆哮をあげる。

 同時に、傷を負った箇所が炎に覆われる。

 そして、炎が晴れると―――

 

「傷が、治った!?」

 

 なんと、装者たちの攻撃で受けた傷が、まるで何事もなかったかの如く再生したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハハハハッ!」

『―――ッ!?』

 

 突如として聞こえて来た謎の笑い声。

 すぐさまその声の主を探し始める。

 

 ―――そして、その者は現れた。

 

「見たかね、これがフェニックスの力だよ」

 

 白衣を纏った黒髪の男。

 その風貌から、恐らく科学者であることが窺える。

 

「お前は……?」

「私かい?今はそのフェニックスの主人さ」

 

 ―――フェニックスの主人

 

 男は堂々とそう名乗った。

 

「フェニックスの主人……どういうことだッ!?」

「そう焦らずとも、見せてやるさ」

 

 翼が問うと、男は服の中からリモコンのような物を取り出し、操作し出す。

 

「やれ、フェニックス!」

「―――グ"ォ"ォ"ォ"ォ!!!!」

 

 すると、ダイナフェニックスの首輪から電流が流れ出す。

 苦し紛れに咆哮を上げるダイナフェニックスだが、次の瞬間―――

 

『ッ……!?』

 

 ダイナフェニックスは苦しみながらも、一同へ向けて突進を繰り出したのだ。

 

 何とか全員横へ跳ぶことで難を逃れる。

 だが、ダイナフェニックスが通った跡は、炎が激しく燃え上がっている。

 

 そしてダイナフェニックスは、今度は空中で羽を振るい、炎の羽を飛ばす。

 瞬時に跳んで躱した装者たちだったが、次の瞬間―――

 

「―――ッ!?アッ―――!」

 

 地面に刺さった羽が突如爆発し出した。

 装者たちは爆発を喰らい、ぶっ飛んでしまう。

 

「素晴らしいッ!実に素晴らしぞッ!これこそ、私が追い求めたフェニックスの力だッ!」

 

 装者たちはなんとかダメージを耐えながら立ち上がる。

 

 その時、マリアはあることに気づく。

 

 先ほどから、男をがリモコンを操作するのと、ダイナフェニックスが攻撃を仕掛けるのが、ほぼ同時であることを……。

 

 それはつまり―――

 

「まさか、あなたがダイナフェニックスを操っているのッ!?」

「気づくのが遅いねぇ。だから言っただろう、私はフェニックスの主人だと」

 

 そこでようやく、全員がの男が言っていた言葉の意味を理解する。

 同時に、何故ダイナブレイドが自分たちを襲ったのかも―――

 

「この装置がある限り、フェニックスは私の思うがまま。この町での実験により、その立証性がより証明出来た」

「何……?」

 

 仮面越しでわからないが、メタナイトは眉を上げている。

 さらに、剣を握る力も強まっていた。

 

「つまり、この町の者たちは、お前のその装置の実験のために犠牲になったと言うのか……?」

「いかにも、お陰で良い成果が得られた。この町の者たちもさぞ幸福の限りであろう、この私の偉大なる実験に貢献出来たのだからなぁ」

 

 男は笑みを浮かべながら楽しそうに語る。

 

 そんな男の様子を見て、メタナイトの何かが切れた。

 

「ふざけるなっ!!」

『ッ……!?』

 

 メタナイトの怒声が、全員の耳に響き渡る。

 メタナイトのことをよく知るカービィとワドルディでさえ、普段の冷静さを保った彼とはかけ離れた姿に動揺している。

 

「幸福だと、……そんなばずがなかろうッ!この町の者は貴様の玩具ではないッ!平穏を生きる者たちの命を、貴様の身勝手な理由で弄ぶことが、許されるはずかなかろうッ!!

 

 メタナイトの怒りは、全員が同じである。

 目の前の者は、見ず知らずの命をなんとも思わない、正に外道その者だ。とても許せる筈がない。

 

「黙れッ!私の研究は偉大なのだッ!フェニックスを制御し、その力を研究すれば、不死身の肉体の神秘に迫れるかもしるはない!そうすれば、人は永遠の命を手にすることが出来るのだッ!永遠の命のためならば、僅かな犠牲など大した物ではなかろうッ!」

 

 だが、目の前の外道は全く悪びれる様子もない。

 それどころか、自分のことを正当化する始末。まるで駄々をこねる子どものようだ。

 

「どんな理由があろうと、誰かを平然と犠牲にすることが、許される筈がありませんッ!」

 

 次に怒りをあらわにしたのは、セレナだ。

 

「それに、あの鳥には大事な家族がいるんですッ!あの鳥の子は、今もひたすら親の帰りを待っているんですよッ!」

 

 セレナが怒りを示すのは、町の人たちへの仕打ちだけではない。

 目の前の外道は、己の身勝手な欲望のために、ダイナブレイド親子を引き裂いたのだ。

 普段は優しいセレナも、今回ばかりは怒りに燃えていた。

 

「あぁ、あの雛か。なるほど、キミたちの所にいたのか」

「―――ッ!?」

 

 その時、セレナは自身が犯した失態に気づく。

 男がダイナブレイドを操っていた犯人―――それは即ち、ダイナベイビーに首輪をつけていた犯人でもあると言うことだ。

 セレナの言葉により、ダイナベイビーの居場所が知られてしまった。

 

「未確認生命体の襲撃の際に逃げられてしまったが、そうかキミが保護してくれてたのか。礼を言うよ、私の貴重な実験材料を見つけてくれて。ではすぐに回収させて貰おう、あれもフェニックスの実験体だからね」

「…………」

 

 セレナはアームドギアを握る力を更に強める。

 目の前の男は親子を引き裂いたことを悪びれる所か、そもそも親子を親子としてすら見ていない。

 この男は、元は仲良く暮らしていた親子を、自分の道具も同然に言い放ったのだ。

 その上、まだ幼いダイナベイビーを実験体にするとまで言った。

 

 ダイナブレイド親子の命を踏み躙り、その上自分の欲望のために関係の無い命を平然と犠牲にする。

 

 もはやセレナの怒りは頂点に達していた。

 

「そんなことさせませんッ!あの子は絶対に私が護りますッ!そしてダイナブレイドも返してもらいますッ!」

 

 だが、セレナはそれを抑え、今自身がやるべきことを優先する。

 今はまだ怒りを解き放つ時ではない。

 今やるべきことは、ダイナブレイド親子を護ることなのだから。

 

「えぇい、やかましいッ!やれっ、フェニックスッ!」

「―――グ"ォ"ォ"ォ"ォ!!!!」

 

 またしても苦し紛れに男に従うダイナフェニックス。再び火炎放射を繰り出す。

 だが、何度も見たが故に、全員はそれを難なく躱せた。

 

「―――はぁぁぁっ!」

 

 そしてカービィは火炎放射の一部を吸い込み、ファイア能力を発動する。

 さらにダイナフェニックスの胸に、バーニングアタックで激突した。

 

「―――ぽよっ!?」

 

 だが、ダイナフェニックスにダメージを与えた様子はない。

 それ所か、そのまま胸を前に出し、カービィを弾き返してしまう。

 

 ダイナフェニックスの属性は炎。

 炎に炎で攻撃したところで、意味がないのは明白である。

 

「カービィッ―――!!」

 

 カービィが地面へ叩きつけられる前に、駆けつけた響が何とか彼を受け止める。

 

「カービィッ!大丈夫ッ!?」

「……ぽよ」

 

 響の必死の問いかけに、カービィは苦し紛れに答える。

 ダメージを負いながらも、何とか立とうとしている。

 

「ハァッ!」

 

 するとメタナイトがダイナフェニックスへ一撃を叩き込み、押し出す。

 ―――二人から距離を離すためだ。

 

 そして二人の元へ降り立つ。

 

「カービィ、コレを使え!」

 

 メタナイトが取り出したのは、以前ワドルディが持っていたのと同じ『コピー能力の素』。

 しかし、前回とは違い、今回のは全体が白く竜巻のようなものが描かれている。

 

「ぽよっ!」

 

 すると、カービィは響の腕の中から跳びだす。

 どうやら先ほどのダメージはある程度回復したようだ。

 

 そして、メタナイトが取り出した素を吸い込んだ。

 

 すると、カービィの頭にファイアのときのに似た輪っかがはまる。

 その上からは、小さい竜巻が吹いている。

 

―――コピー能力『トルネイド』

 

 すると突然、カービィは身体を高速回転し始める。

 次の瞬間、カービィの姿が小型の竜巻にかわり、ダイナフェニックスへ激突する。

 

―――『トルネイドアタック』

 

 そして今度は、空中で身体を横にした状態で竜巻に変身し、突進を繰り出す。

 

―――『スクリュータックル』

 

 一撃を喰らったダイナフェニックスは、ほんの僅かに後退する。

 その体格差故に大きく押し出すことは叶わない。

 だが、先ほどに比べ手応えは確かにあった。

 

「カービィッ!」

 

 すると今度はワドルディが駆け寄ってくる。

 

「トルネイドなら"アレ"、出来るよね」

「ぽよっ!」

 

 すると二人は、何かのやりとりをし出す。

 近くで聞いていた響は、ワドルディの"アレ"と言う言葉に首を傾ける。

 一体何をし出すのかと思っていると、二人は早速実行し始めた。

 

 ワドルディはカービィの前で、突然槍を掲げだす。

 すると何と、カービィは再び竜巻に変身し、ワドルディの方へ向かってるではないか。

 

「ちょっとカービィッ!何してるの―――!?」

「いや、あれで良いんだ」

 

 すぐさま響は止めに入ろうするが、メタナイトがそれを止める。

 何故止めるのか分からず戸惑う響だが、次の瞬間―――

 

「はあっ!」

 

 カービィがワドルディに当たると、彼の身体を覆っていた風が、なんとワドルディの槍に纏わり始めたのだ。

 

―――フレンズ能力『ウィンガスピア』

 

「あれって……?」

「フレンズ能力、カービィと絆で結ばれた者のみが扱える力だ」

 

 ワドルディは早速その力を見せつけるべく、動き出す。

 

 だが、ワドルディは突然何もない目前に槍を振るい出す。

 一見空振りかと思われたが、次の瞬間―――

 

「グォッ!」

 

 何とワドルディの槍から突風が放たれ、ダイナフェニックスに激突したのだ。

 

 さらにワドルディは、ワドコプターを繰り出す。

 だがその様子は以前とは違い、突風を身に纏っている。

 そしてそのまま、ダイナフェニックスへと突撃する。

 

「グォォォォッ!」

 

 突進の衝撃と共に、吹き荒れる風の刃がダイナフェニックスの身体を連続で斬りつける。

 

「グ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"!!!!」

 

 だが、またしても傷を再生させてしまう。

 

「いくらやった所で無駄だ!フェニックスの不死身の力にはどうやっても勝てないのさっ!」

 

 これではいくらダメージを与えてもまたすぐに再生されてしまう。

 このままではジリ貧だ。

 

(―――?首輪が……)

 

 その時、セレナはダイナフェニックスの首輪に傷が入っているのに気づく。

 どうやら先ほどのワドルディの攻撃で傷ついたようだ。

 

(あの首輪を壊せば―――)

 

 先ほどから、男が命令する度にダイナフェニックスが苦しんでいる。

 あの首輪を破壊すれば、ダイナフェニックスを苦しみから解放出来るに違いない。

 

 セレナは、再びFAIRIAL†TRICKを繰り出し、首輪を攻撃する。

 

「―――!?まずい!フェニックス、あの娘から焼き払えッ!」

 

 すると、男はセレナの意図を悟り、ダイナフェニックスの標的をセレナへ移させる。

 やはりあの首輪がダイナフェニックスを操っているようだ。

 

 ならばやるべきことは一つ。

 セレナはダイナフェニックスへ迫り、跳躍して首輪を切り刻む。

 時折来る火炎放射を躱しつつ、首輪へダメージを与えていく。

 

「くっ……!何をしてるフェニックス!さっさとそいつを倒せっ!」

 

 この時、男は自身が犯した過ちに気づかなかった。

 本来なら首輪に傷がついた時点で撤退すべきであったのだ。

 だが、フェニックスの力を過信するが余りに、敵を倒すことを優先してしまった。

 

「―――!待て、今首輪を破壊しては不味いっ!」

 

 だが、そこでメタナイトまでもがセレナを止めに入ろうとする。

 

「……?何故止めるの?」

「彼女はダイナフェニックスの束縛を解くつもりだ。だが、今のヤツの意識は―――」

「―――ッ!」

 

 メタナイトが言い切る前に、マリアはその意味を瞬時に理解する。

 

「セレナ、止まりなさいッ!今彼女を解放しては不味いわッ!」

 

 すぐさま制止をかけるが、すでに遅かった。

 

「―――!?首輪が―――!」

 

 遂に首輪は砕けて()()()()

 

「くそぉっ!!あいつ、なんて物を渡してるんだ!全然丈夫じゃないじゃないか!!」

 

 男は愚痴を零しながら地団駄を踏み出す。

 まるで玩具を取られた子どものようであった。

 

 だが、この時彼は怒る余りに大事なことを忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 ―――自身に迫る()()()()を。

 

「グ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"!!!!」

 

 男の束縛から解放されたダイナフェニックスは、先ほどよりもさらに激しく咆哮を響かせる。

 

 そして次の瞬間―――

 

「―――!止めて下さい!どうしたんですか!?」

 

 ダイナフェニックスは威力の増した火炎放射を放ち、辺り一面を焼き尽くす。

 セレナが何度も呼び掛けても、止まる気配は微塵もない。

 

 この時、セレナはダイナブレイドを助けようと必死になるあまり、大事なことが抜け落ちていた。

 

 ダイナブレイドは聖遺物に意識を奪われた上で、男に無理やり使役されていた。

 例え束縛を解いても、ダイナブレイドの意識は乗っ取られたままなのだ。

 

「グ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"!!!!」

 

 制御が効かなくなったダイナフェニックスは、目に映る全てを焼き尽くすだけ。

 束縛が解けたことにより、その勢いはさらに増している。

 

「―――ッ!!うわあああああ!!??」

 

 その時、ダイナフェニックスの吐いた炎が、男を目掛けて飛んでいく。

 迫り来る死の恐怖で、男は叫び出す。

 

「はあっ!」

 

 だが、響が彼を抱えて離れたことで、男は最悪の運命を魔逃れた。

 

 この男のしたことを響は許した訳ではない。

 だが、例えどんな人間であろうと、死の危機に接してるのを見逃すなど、彼女には出来なかった。

 

「お願いです!止まって下さいッ!」

 

 一方で、セレナは尚も必死に訴え続ける。 

 だが、やはり声はダイナフェニックスには届かない。

 

 セレナは困惑する。

 ダイナブレイドを助けるためにしたことが、かえってダイナブレイドを余計に暴走させてしまっている。

 

「はあっ!」

 

 その時、翼が空中から自身の身の丈を遥かに超える巨大な剣を、ダイナフェニックスへ向けて蹴り飛ばす。

 

―――『天ノ逆鱗』

 

 しかし、ダイナフェニックスは翼を振るうことで、翼の大剣を振り払ってしまった。

 

 次にダイナフェニックスは翼へ狙いをつけ、飛翔する。

 

「―――ッ!」

 

 そしてなんと、その足で翼を鷲掴みにしてしまった。

 余りの速さに、翼も反応しきれなかったのだ。

 

 さらにそこから、翼を蹴り飛ばしてしまう。

 

「―――ッ!風鳴さんッ!」

 

 翼は近くの建物へと激突した。

 

 自身がダイナフェニックスの制御を解いてしまったばかりに、次々と最悪の事態が起こる。

 この現状に、セレナは焦る。

 

 その時―――

 

「―――きゃッ!?」

 

 考え込む余りに、ダイナフェニックスの頭突きをモロに喰らってしまう。

 セレナはそのまま吹き飛び、後ろの建物に激突する。

 その衝撃で、瓦礫が辺り一面に崩れ落ちる。

 

「……うぅ」

 

 先ほどのダメージが余りにも大きかったが故に、セレナは立ち上がろうにも立ち上がれない。

 

 さらに最悪なことに、ダイナフェニックスはセレナに向けて火炎放射の体制に入る。

 しかも、見れば口の中で炎を溜めているのがわかる。

 どう見ても喰らったら不味い。

 

「―――セレナッ!」

 

 すぐさまマリアが駆けつけようとする。

 だが、セレナとの距離は遠すぎる。

 

 ―――もう間に合わない

 セレナは自身の未来を悟り、咄嗟に目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時―――

 

「ぽよっ―――!」

 

 突然身体が、横から何かに突き飛ばされた。

 訳がわからず、セレナは目を開き、自身を突き飛ばした犯人を探す。

 

 するとそこには、

 

「ぽよおぉぉっ!?」

 

 自身が喰らうはずであった火炎放射を、モロに浴びるカービィの姿があった。

 

「―――ッ!?」

 

 刹那、カービィの姿が巨大な火の海に飲み込まれ見えなくなる。

 やがて炎が晴れると、そこにいたのは、身体中黒焦げになってうつ伏せになるカービィであった。

 

「カービィぃッ!!」

 

 すぐさまワドルディが彼の元へ駆け寄る。

 だが、カービィはワドルディの呼び掛けに、ピクリとも反応しない。

 

(……そんな、私のせいで……)

 

 セレナは目の前の光景を見て唖然とする。

 

 ―――何故(カービィ)が喰らったのか?

 ―――自分を庇ったからだ

 

 ―――何故ダイナフェニックスが暴走したのか?

 ―――自分が首輪を壊したからだ

 

 ―――何故……

 ―――何故……

 ―――何故……

 

 

 

 

 

 

 

 ―――()()()()()……

 

「セレナッ!」

 

 マリアはようやくセレナの元へ辿り着く。

 だが、今のセレナは最愛の姉(マリア)の声さえ耳に入らない。

 

「セレナ!聞きなさいッ!」

「―――ッ!?」

 

 自分の世界に入り込んでいたセレナだったが、マリアの呼び声でようやく意識を取り戻す。

 

「―――グォォッ!?」

 

 その時だ―――

 突然ダイナフェニックスが攻撃を止めたのだ。

 一体何事かと思って見てみると、ダイナフェニックスは何かにもがき苦しんでいる。

 

「一体何が―――?」

 

 すると、ダイナフェニックスは再び飛翔しだした。

 すぐさま警戒する一同だが、次の瞬間―――

 

「―――ッ!?逃げるつもり!?」

 

 何とダイナフェニックスは一同に目もくれず、空の彼方へと姿を消してしまった。

 

 ―――一体何故ダイナフェニックスは突然逃亡を図ったのか?

 

 一同が疑問を残したまま、その場は一先ず終戦を迎えた。




はい、と言う訳で黒幕は名もなきモブでした←
最初は名前考えていたんですけど今回限りの出番なので良いかなと思いまして。

気づけばお気に入り数が800突破。
こんな半人前のポッと出の作品を気に入ってくれて本当にありがとうございます。


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十三星目 迷えるイノセント

前回から、お気に入り数が減りました。
………何で?(ToT)


 またしてもダイナフェニックスに逃げられてしまった一同。

 その後、研究所に帰還し、現在はそれぞれ休息に努めていた。

 

 だが、唯一重症を負ったカービィは、メディカルルームにて手当てを受けている。

 

「カービィ……」

 

 響は、カービィのことを尚も心配している。

 響だけではない、ワドルディは勿論、他の装者たちも同様だ。

 その中でも、セレナは一番落ち込んでいる。

 

「ごめんなさい、私を庇ったせいでカービィさんが……」

「そんな、セレナちゃんのせいじゃ―――」

「私のせいなんですッ!」

「…………」

 

 セレナの声に、響は思わず黙ってしまう。

 一方でセレナは、暗い顔で語り出した。

 

「あの時私が首輪を壊したせいであんなことになってしまったんです。私がダイナブレイドさんを助けることばかり考えていたせいで、皆さんまで危険に遭わせてしまって、私があの時もっとしっかりしていれば、こんなことには―――」

「そこまでにしなさい、セレナ」

 

 セレナの話を遮ったのは、ナスターシャだ。

 

「今すべきことは、過去の失敗をいつまでも悔いることではありません。これからどうすべきかを考えることです」

「……マム」

 

 ナスターシャはセレナの失敗を許した訳ではない。

 だが、セレナを責めたところで、事態は何も解決しない。

 今やるべきことは、事態を解決するために何をすべきかを考えることなのだから。

 

「あぁ、その通りだ。それにカービィのことは心配ない、あいつはあの程度でやられるほど柔ではない」

 

 そう綴るのは、メタナイトだ。

 彼は他の者たちとは違い、カービィを心配している様子はない。

 だがそれは、彼のカービィへの信頼故のものである。

 

「うん、そうだね!カービィならきっと大丈夫!その内お腹空いた〜、って起きてくるよ!」

 

 続けてワドルディもセレナを励ます。

 

 セレナはまだ立ち直れてはいない。

 だが、ナスターシャの言う通りだと割り切り、一旦自分を責めるのをやめた。

 

「早速ですが、あなたたちが捕らえて来た男から、尋問を行いました」

 

 すると、ナスターシャは装者たちが捕らえて来た、ダイナフェニックスを操っていた男へと話を移す。

 

 あの後、男はF.I.S.に引き渡し、今回の事件について尋問を行なわれていたのだ。

 

「あの男は、以前スフィアローパーたちに襲撃された研究所の責任者で、『フェニックス計画』と言う計画を取り締まっていたようなのです」

「フェニックス計画……?」

 

 一同はナスターシャの言う『フェニックス計画』と言う用語に疑問を浮かべる。

 

「聖遺物フェニックスの羽を解析し、不死鳥フェニックスの不死身の神秘に迫り、永遠の命を手に入れる。それが『フェニックス計画』だったようです」

 

 ―――永遠の命を手に入れる

 まさに狂気とも言えるその目的に、一同は唖然とする。

 

「そしてその計画のためには、フェニックスの依代となる存在が必要でした。しかし、フェニックスの力に適合しうる存在はこの現世に於いては見つかりませんでした。ですがそんな時、彼等は偶然にも手にしたのです、フェニックスの依代となりうる存在を」

 

 それが何なのか、一同には言わずともわかる。

 ―――ダイナブレイドとダイナベイビーだ

 

「偶然にも良い依代を得た彼等は、それを使ってフェニックスを顕現させる準備をより推し進めました。しかし、一つ問題がありました。それは、フェニックスの羽を起動させるためのフォニックゲインです」

 

 そう、聖遺物を起動させるには、それ相応のフォニックゲインが必要だ。

 だが、フォニックゲインを得るには、聖遺物に適正を持った者の歌声が必要である。研究所にはそれがなかったのだ。

 

「そんな時、スフィアローパーたちの襲撃を受けました。計画の要となる聖遺物とダイナベイビーを失ったことで、一時は計画の凍結を測ったそうです。ですが、あの男は諦めませんでした」

 

 多くの研究者が計画を諦めかけた中、あの男だけは頑なに諦めなかった。

 そのフェニックスへの執着心は中々の物であろう。

 一同はその執着心に、ほんの僅かに身震いする。

 

「そしてその後は、あなたたちの知る通りです」

「待て、いくらなんでも話が出来過ぎていないか……?」

 

 メタナイトの言う通りだ。

 この一連の事態は、男にとって余りにも都合の良いことが重なり過ぎている。

 

 ダイナブレイド親子の確保

 聖遺物を奪ったスフィアローパーの再出現

 装者たちの歌によるフェニックスの羽の起動

 

 どう考えても異様である。

 

「えぇ、ですがあの男は、依代の確保と聖遺物を奪ったスフィアローパーとあなたたちが鉢合わせたのは偶然だとばかり主張するのです」

 

 ナスターシャの言葉から推測出来る答えは二つ。

 

 男が嘘をついているか。

 もしくは、()()()()()()()()()()()()かだ。

 

「この事件には、まだ黒幕が他にもいるということか……」

「えぇ、間違いないでしょう。そのことを裏付ける証拠がもう一つあります」

 

 そう言うと、ナスターシャはコンソールを操作し出す。

 すると、モニターにダイナブレイドを操っていた首輪が写し出される。

 

「これは、あの首輪」

「解析したところ、確かにこれはダイナベイビーにつけられていたのと同じ構造でした。そして、あの男は、この首輪はある者から貰ったと言っていました」

 

 次に写し出されたのは、首輪の内部について細かく書かれた画像だ。

 

『―――!?』

 

 ナスターシャの言葉に、一同は驚愕する。

 

(―――!そう言えば……)

 

 その時、マリアは男が言っていた言葉を思い出す。

 

 ―――くそぉっ!!あいつ、なんて物を渡してるんだ!全然丈夫じゃないじゃないか!!

 

 男が言っていた"あいつ"なる人物。 

 その者こそが首輪を渡した張本人で間違いないであろう。

 

「ですがあの男は、首輪は極秘ルートで送られて来た物で、開発者とは直接会ったことがないと言うのです」

「え?それじゃあ犯人は……」

「残念ながら、現段階では不明です」

 

 響の疑問に、ナスターシャは申し訳なさそうに答える。

 

「待ってくれ、もしかしたら犯人は、我々と同じ次元の者かもしれない」

 

 メタナイトが言ったことに、全員が目を向ける。

 

「どういうこと?」

「犯人はダイナブレイドの存在を知っていた。だからフェニックスの依代になり得ると思ったんだ。ならば、ダイナブレイドを知っている者など―――」

「君たちが元いた次元の者しか、知り得ないと言うことか」

「左様だ」

 

 翼の言葉を、メタナイトは肯定する。

 

 一方で、メタナイトはタダならぬ危機感を覚えている。

 ディメンションホールを開ける者など、普通ではない。それ相応の強大な力を持っているに違いない。

 

 その時、翼はあることが頭を過ぎる。

 

「もしや、この事件の黒幕と、我々が現在追っているリーパーの発生事件の元凶は、同じなのではないのか?」

 

 翼の疑問に、一同が唖然とする。

 確かに翼の推測は真である可能性が高い。

 

 だが、メタナイトにはまだ腑に落ちないことがある。

 

「もしそうだとすれば、私やカービィをこの世界に呼び寄せた理由がわからない」

 

 そう、黒幕がカービィたちと同じ次元に住んでいるのであれば、カービィを知らないとは思えない。

 カービィの名は宇宙中に轟いており、知らぬ者など滅多にいない。

 仮にカービィの存在を知らないとしても、カービィを呼び寄せる理由がない筈だ。

 

「いずれにせよ、この事件はまだ終わっていません。一刻も早くダイナフェニックスを止めなければなりません」

 

 全員が疑問が尽きない中、ナスターシャはそい言って話を切り替える。

 

 ダイナフェニックスは現在制御から解き放たれ、あらゆる物を見境なく襲うほど危険な状態となっている。

 被害が広がる前に何とかして止めなければならない。

 

「―――!?これは……」

 

 だがその時、ナスターシャが操作していたコンピュータに通信が届く。

 それを見ていると、ナスターシャの顔は深刻なものになる。

 

「どうしたの、マム?」

「…… F.I.S.本部からの命令です。ダイナフェニックスを見つけ次第、殺処分せよとのことです」

『―――ッ!?』

 

 ナスターシャの言葉に、一同は愕然となる。

 

「殺処分って、どうしてそんな酷いことを―――!?」

「本部の狙いは、フェニックスの羽でしょう。制御が効かないダイナフェニックスは、本部にとって利用価値はない。フェニックスの羽さえ手に入れば、また次の依代を探して制御する手段を模索すれば良いと考えているのでしょう」

「そんな……」

 

 一同はF.I.S.本部に怒りを感じる。

 尊い命をなんとも思わないばかりか、自分たちの身勝手な理由で平然とその命を切り捨てようとする傲慢さに。

 

 すると、メタナイトは突然一同に背を向け、部屋から出て行こうとする。

 

「待ってメタナイト!どこ行くの!?」

 

 メタナイトの突然の行動に、ワドルディは慌てて待ったを掛ける。

 

「知れたこと、ここを出て行く」

「どうして!?」

「私は君たちとはあくまで利害の一致で行動を共にしていただけだ、この組織に属した覚えはない。故にそのような命令に従う義理はない。私は私のやり方でダイナフェニックスを止める」

 

 メタナイトもまた本部の人間へ怒りを感じていた。

 故に、身勝手な命令には従えない。ここからは自身のやり方で行動しようと考えていたのだ。

 

「待って!ダイナブレイドを助けたいのは私たちも同じよッ!」

 

 そこで待ったをかけたのは、マリアだ。

 マリアの言葉に、メタナイトは足を止める。

 

「ああ、私とて同じだ。なんの罪も無い命を犠牲にするつもりなど毛等もない」

 

 次に言葉を発したのは、翼だ。

 

「勿論私もだよっ!だからお願い、私たちと一緒に戦って!」

 

 次に響が、メタナイトにお願いする。

 

「メタナイト、みんなはダイナブレイドを助けようと必死になってくれてるんだ。力を貸してあげようよ」

「…………」

 

 ワドルディも声をかけるが、メタナイトはだんまりとしてしまう。

 するとメタナイトは、セレナの方を向く。

 

「君はどうなのだ?」

「……え?」

 

 思わぬ所から声をかけられ、セレナは驚いてしまう。

 

「君はダイナベイビーと約束をしたと言っていたな。今はどうなのだ、君はその約束を果たせるのか?」

「…………」

 

 セレナはメタナイトの問いに答えられなかった。

 今でもダイナベイビーとの約束を忘れてなどいない。

 

 だが、今のセレナには自信がない。

 先ほどの戦いで、自身が犯してしまった失敗のせいで、ダイナフェニックスを暴走させたばかりか、皆んなに迷惑を掛けてしまった。

 そんな自分が、果たしてダイナブレイドを救えるのか?

 今のセレナには、とても出来るとは言えない。

 

「だがまあ、カービィを放っておく訳にもいくまい。カービィが目を覚ますまで、もうしばらくいさせてもらうとしよう」

「メタナイト……」

「だが誤解するな、私は命令に従う気はない。ダイナフェニックスが見つかれば、その時は私のやり方で止めさせてもらう」

 

 一先ず、メタナイトはもうしばらく研究所にいることとなった。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 一同は、カービィがいるメディカルルームへと赴いていた。

 カービィのことが心配になり、様子を見に来たのだ。

 

 だが、当のカービィは―――

 

 

 

 

 

 

 

「すぅぅぅ……」

 

 気持ち良さそうに寝ていた。

 

 戦いで受けた傷は一切見当たらず、全身を焼き尽くされたというのに、火傷の一つも無い。

 

「……カービィ?」

 

 これには全員が唖然としてしまう。

 だが、ワドルディとメタナイトはやっぱり、と言ったような表情である。

 

「ふ、だから言ったろう、アイツはあの程度でやられるほど柔ではないと」

 

 見ればカービィは、口から涎を垂らしている。

 美味しい物を食べている夢でも見ているのであろう……

 

「あ、これならきっとその内お腹を空かせて起きるね」

「起きたら真っ先に食事か、つくづく立花に似てるな、カービィは」

「ちょっと、翼さんまで〜!」

 

 翼の発言に、響は痛い所を突かれて動揺する。

 

「カービィさん、本当に大丈夫かな……」

「セレナ、まだ気にしているのね」

 

 一方で、セレナはカービィが自身を庇ったことを尚も気にしている。

 

「カービィさん、私を庇ったせいでこんなことになって……」

「本当、私たちと出会った時と同じね。出会ったばかりの私たちを助けようとしてくれて」

「……え?」

 

 マリアの言葉に、セレナは首を傾ける。

 

「私たちもまだカービィと会ってから数日しか経ってないけど、彼がとても優しいってことはよく知ってるわ。初めて会った時も、私たちと一緒に戦ってくれてね。今回もきっと同じよ、カービィはあなたを助けたくて必死だったのよ」

「どうして、出会ったばかりの私のためにそこまで……」

「それがアイツの性分なのさ」

 

 セレナの疑問に、メタナイトが応える。

 

「あなたも、カービィについて知っているのよね?」

「あぁ、アイツはいつも呑気でお気楽だが、困っている人を見過ごせない大のお人好しでな、そのせいで何度か騙されたこともあったな」

 

 メタナイトは仮面越しに苦笑いを浮かべながら語る。

 一方で、マリアは彼の話から、ますますカービィと響の姿を重ねていた。

 

「何度も言うが、今回の件は気にすることはない。カービィの無茶は今に始まったことじゃないからな」

 

 セレナは、メタナイトの話から、カービィの優しさをしみじみと感じとっていた。

 

『お前によく似た奴じゃないか』

「ヴェイグさん……?」

 

 すると、セレナの中から再びヴェイグの声が響く。

 

『甘すぎるくらい優しい奴だが、そのおかげで救われた奴らがいる。お前とよく合ってるじゃないか』

「ヴェイグさん……」

『前にも言ったろ、お前の優しさは弱さなんかじゃない。その優しさがお前の強さなんだ。何も迷わずに、お前のやりたいようにやれば良いのさ、こいつみたいにな』

「私のやりたいこと……」

 

 ヴェイグの言葉が、セレナの心にそっと響く。

 

 セレナが今最もやりたいこと。それは、ダイナブレイドを助けることだ。

 だが、その度にまた迷いが生じてしまう。

 ―――自分に出来るのか、と。

 

 それでも、ヴェイグは何も迷うことはないと言ってくれている。

 

(私は……)

 

 それでも、過去の失敗の記憶が尚もセレナを縛り付けていた。




と言う訳で、カービィは焼かれた程度でどうにかなる訳ないのでした〜
次は来週……に出来ると良いなぁー


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十四星目 不死鳥の幻影

今回は予定を変更して、"アイツ"を早めに出すことにしました。



 セレナは一人思い悩んでいた。

 

 ―――ダイナブレイドを助けたい

 その思いは尚も変わってなどいない。

 

 だが、考える度に先の戦いがフラッシュバックする。

 

 暴走するダイナフェニックス

 自身のせいで傷つく仲間

 

 思い出す度に、心の底から湧き上がる"何か"が、セレナを縛り付けていた。

 

(私はどうすれば……)

 

「ぴぃー」

「へっ!?」

 

 すると、近くにいたダイナベイビーが、セレナに向かって寄り添って来る。

 いきなり来たことにセレナは驚いてしまう。

 

「ぴぃー」

 

 ダイナベイビーは、顔をセレナに擦り付ける。

 その顔は、優しさに満ちていた。

 

「心配してくれてるの?」

 

 セレナは嬉しく思うが、同時に不甲斐なくも思う。

 

(この子だって、今すぐにでも親に会いたい筈なのに……あっ―――)

 

 そこでセレナは思い出した。

 ダイナベイビーが今どんな思いかを。

 

(そうだ、この子だって辛い筈なんだ……)

 

 セレナには、両親の記憶がない。

 だからこそ、幼少期から自身を大切に育ててくれた姉が親のような存在だった。

 だが、セレナの姉はもういない。

 今一緒にいるのは、並行世界の別人。決して本人とは言い切れない。

 

 だからこそ、姉がもういないと知った時、とても辛かった。

 前まで当たり前のように感じていた温もりが、もう二度と感じられないと知った時、頭が真っ白になった。

 とても苦しくて、胸が張り裂けそうだった。

 

 セレナは、大切な存在を失う悲しみをよく知っている。

 そして、今自身に笑顔を向ける雛鳥も、それを味わうかもしれないのだ。

 

 本当は誰よりも悲しい筈、怖い筈だ。

 なのに自分を励ましてくれている。

 

 ―――それで良いのか?

 否、良い筈がない。

 

 目の前のまだ幼い雛が、自身のために本当の気持ちを押し殺しているのだ。

 

 だと言うのに、自身がいつまでも迷っている場合か?

 否、迷うよりも先にすべきことがあるではないか。

 

(そうだ、約束したんだ、親に会わせるって―――!)

 

 その瞬間、セレナから迷いは消えた。

 同時に決意を改めて固める。

 

「ありがとう。私はもう大丈夫、必ず親に会わせてあげるからね!」

「ぴぃー!」

 

 セレナはダイナベイビーを抱きしめ、迷いなく言い切った。

 

(ふふ、もうあの子は大丈夫みたいね)

 

 そんなセレナの様子を、背後からそっと見守る影があった。

 ―――マリアだ。

 

 彼女はセレナが迷いを振り払った様子を見て、そっと微笑んでいた。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 カービィの様子を確認した一同は、再びナスターシャが待つ部屋へと集まっていた。

 

「マム、ダイナフェニックスは見つかった?」

「残念ながら、現在調査隊が全力をあげて捜索していますが、まだ見つかっておりません」

 

 マリアの問いに、ナスターシャは申し訳なさそうに応える。

 

「ですが、まずはそれよりも考えなければならないことがあります。ダイナフェニックスの再生能力についてです」

 

 そう、戦うにせよまずはあの再生能力をどうにかしなければならない。

 そうでなければまた次もジリ貧になってしまう。

 

「ですが残念なことに、今の私たちにはあれを攻略する手段がありません。そのためにも、一度あなたたちの誰かが元の世界へ一時帰還するべきでしょう」

 

 ナスターシャの言ったことに、全員がうなずく。

 

 この世界にダイナフェニックスの再生能力を攻略する手立てはない。

 だが、別の世界であればそれがあるかもしれない。

 そうでなくとも、ヒントを掴める可能性もある。

 響たちの元いた世界には、そういったことに関しては頼れる仲間(エルフナイン)がいる。

 

 それに、彼女たちは本来ならもっと早くこの事態を報告すべきだった。

 だが、立て続けに事態が起きたため、戻れずにいたのだ。

 そう言う意味も含めて、丁度良い機会であった。

 

 だが、ダイナフェニックスが次にいつ現れるかわからない。

 もし次戦うことになった時、向かえるのがセレナだけでは厳しいだろう。

 故に、誰か一人が行く必要がある。

 

「ふむ、ならば私が戻ろう」

 

 そこで名乗りを上げたのは、翼だ。

 

「所で、異星人の彼らは連れて帰らなくて良いのですか?」

 

 ナスターシャにそう言われ、全員の顔が歪む。

 

「話によれば、彼らは保護対象でありながら無許可でギャラルホルンのゲートを通ったそうですね。この事件に対応してくれているとはいえ、本来なら連れ戻すべきなのでは……?」

 

 ナスターシャの言うことは的をついている。

 確かにカービィたちは本来ならすぐに連れ戻すべきであろう。

 

「わかっています。けど……」

 

 そこで声を上げたのは、響だ。

 

「カービィは、ずっと私たちの力になりたいって思い悩んでたんです。私も、カービィが危険な目に遭うのは嫌だけど、力があるのに、誰かを助けられるのに助けられないなんて、とても辛い。私には、カービィの辛い気持ちがよくわかるんです。だから責めて、今だけでもカービィのやりたいことをやらせてあげたいんです!」

「立花……」

 

 響は、自身の気持ちを精一杯に込めて伝えた。

 

 彼女もカービィを危険な目に遭わせたくないと、戦いに巻き込まないようにしてきた。

 だが、同時にカービィが感じていたもどかしさも充分に理解していたのだ。

 

 自身にはシンフォギアがある。この力のおかげで誰かを助けることが出来る。

 だが、もしこの力を持っていながら誰も助けにいけないとしたら?とても辛いに決まっている。

 助けられる筈のものを、助けられずにいるなど、その苦しみは計りしるない。

 

 カービィは、まさにそう言った苦しみを受けている。

 だからこそ、この世界にいる間だけでもカービィのやりたいことをやらせてあげたかったのだ。

 

「カービィがこの世界にいるって言うのなら、ボクも一人だけ帰る訳にはいかないよ!だってボクたち友だちだから!」

「バンダナくん……」

 

 次に声を上げたのは、ワドルディだ。

 彼も自身の気持ちを精一杯語った。

 

「……本来なら、見過ごせませんね。ですが、あくまでそれはそちらの世界の問題です。今回は目を瞑りましょう」

「ありがとうございます!」

 

 ナスターシャの粋な計らいに、響は笑顔でお礼を言った。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 時は遡り―――。

 響たちが並行世界へ向かった少し後。

 

 S.O.N.G.本部では、緊迫した空気が漂っていた。

 

「ったくあのピンク球、また勝手なことしやがって!」

 

 クリスは、カービィの勝手な行動にイラついていた。

 だが、それはカービィを心配するが故の物だ。

 

「ですが、何故カービィさんはギャラホルンのゲートを通れたのでしょう?」

 

 エルフナインが疑問の声を漏らす。その疑問は、この場の誰もが思っていた物だ。

 本来ならギャラルホルンのゲートを通れるのは装者だけ。

 だが、カービィとワドルディは確かにゲートを通れたのだ。

 

「それに、ディメンションホールと同じ反応を示しておきながら、リーパーたちの反応がない。これは一体どう言うことなのでしょう?」

 

 疑問ばかりが尽きないエルフナイン。

 彼女は尚もひたすらコンソールを弄り、必死に調べていた。

 

 その時―――

 

 ブォォォォォォォォンッ!!

 

『―――ッ!?』

 

 突如、アラートの音が部屋全体に響き渡る。

 

「何事だッ!?」

「正体不明の怪物が町を襲っていますッ!」

 

 弦十郎の問いに藤尭が応えると、モニターに画像が写る。

 そこに写っていたのは、全身が炎に包まれた巨大な鳥であった。

 

「なんデスかこれはッ!?」

「話は後だ、今は早急に向かってくれッ!」

『了解(デース)!』

 

 かくして、装者たちは敵の元へと向かった。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 辺り一面を炎が包み込む、修羅と化した町。

 そこに佇むのは、一体の巨大な炎の鳥。

 

「おらっ、はちゃめちゃすんのもそこまでにしなッ!」

 

 その場に訪れたのは、装者の三人。

 

 巨大鳥は装者の存在に気づくや否や、火炎放射をお見舞いする。

 

「うわッ!?」

 

 かろじて全員避けたが、その跡は激しく燃えている。あれを喰らったら無事で済まないのは明白だ。

 

「そんなにファイアーダンスが踊りたきゃ、コイツで派手に舞いなッ!」

 

 すると、クリスの腰部アーマーが展開し、そこから大量の小型ミサイルが発射される。

 

 ―――『MEGA DETH PARTY』

 

 ミサイルの雨は巨大鳥に全弾命中する。

 

「次は私たちが―――」

「華麗に舞うのデース!」

 

 今度は調は跳び上がり、両手に持ったヨーヨーを飛ばす。

 するとヨーヨーは縦横無尽に駆け巡り、巨大鳥の身体を切り刻む。

 

 ―――『終β式・縛戒斬鋼』

 

 次に、切歌の肩アーマーからバーニアが噴射される。

 その勢いで高速回転し、巨大な緑の独楽へと姿を変える。

 そしてそのまま、巨大鳥へ激突する。

 

 ―――『災輪・TぃN渦ぁBェル』

 

 火花を散らしながら、巨大鳥を切り刻んで行く。

 

 身体中切り刻んだ所で、切歌は一旦巨大鳥から距離を取る。

 

「グ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"!!!!」

『―――ッ!?』

 

 すると、突然咆哮をあげると同時に、巨大鳥の身体から傷が消えた。

 

「再生した……ッ!?」

「デデデースッ!?そんなのアリですかッ!?」

 

 巨大鳥の再生能力に驚愕する一同。

 だが、そんなこともお構いなく、巨大鳥は再び回転火炎放射の体制に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時―――

 

『―――!?』

 

 突然の巨大鳥顔に何かがぶつかり、怯んだ。

 

 巨大鳥にぶつかった何かは、そのまま地面へ落ちる。

 そこにあったのは、()()()()()()()()()()()()であった。

 

「オラっ!!」

 

 次に、謎の影が回転しながら巨大鳥にぶつかる。

 二度までして不意打ちを喰らった巨大鳥は、ほんの僅かに後退する。

 

 やがて謎の影は、地面に着地し、その姿を露にする。

 そこにいたのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――木槌を持った、ペンギンのような生き物であった。

 

「……は?」

「ペンギン……?」

 

 謎の生き物は、装者たちの方へ振り向く。

 

「おい、このオレさまが助けてやったと言うのに、何をポカンとしている!」

 

 謎の生き物は、上から目線に話しかけて来た。

 装者たちは、思わずイラッと来る。

 

 だが、それよりも意識は後ろで起きた異変に向けられる。

 

『―――ッ!?』

 

 なんと、巨大鳥の姿が徐々に薄れ始めたのだ。

 

「待てっ!どこへ行く気だダイナブレイドッ!」

 

 一方で、謎の生き物は消えゆく巨大鳥に向かって怒鳴っている。

 しかも、巨大鳥を知っているかのような口振りだ。

 

 だが、巨大鳥はついにその姿を完全に消してしまった。

 

「くそぉ、ダイナブレイドめ……どこへ消えた!」

 

 謎の生き物は、悔しそうに地団駄を踏む。

 

「おいっ」

 

 すると、クリスの呼びかけに反応し、謎の生き物は振り向く。

 

「お前一体何なんだ?あの鳥のこと知ってるのか?」

 

 クリスは謎の生き物に問いかける。

 それに対し謎の生き物は―――

 

「聞きたいのはこっちだ。ここはどこだ?突然飛ばされたと思ったらこんな場所にいるわ、ダイナブレイドがおかしくなってるわ、訳がわからん!?」

 

 クリスの質問を無視し、自分の言いたいことをずがずがと言い放つ。

 余りのマイペース振りに、クリスのイライラは増す。

 

「おいっ、今はこっちが聞いてんだろ!まずはそれに答えろ!」

 

 溜まっていた怒りを、僅かに含めて再度問いかける。

 

「ふん、オレさまを誰だと思っている?」

 

 そう言うと、謎の生き物は木槌を肩にかけ、胸を前に出す。

 

「オレさまこそプププランドの大王、『デデデ大王』様だぞ!」

 

 ――― 『デデデ大王

 

 謎の生き物は、堂々とそう名乗った。

 

 すると、デデデの話を聞いた装者たちの顔が、驚愕に染まる。

 

「プププランドって……」

「前にバンダナワドルディが話してた、カービィたちの故郷の国デス!」

 

 デデデが言った『プププランド』なる名前を聞いて、全員前のワドルディの話を思い出したのだ。

 

 次に反応したのは、デデデの方だ。

 

「なんだと!?お前たち、どこでカービィとバンダナワドルディのことを知った!?アイツ等は今どこにいる!?」

 

 本来なら知らない筈の名前を目の前の者たちは知っている。

 これにはデデデも驚きを隠せずにいた。

 

「それを知りたきゃ、あたしたちの所に着いてきて貰うぞ」

「ふん、何故オレさまがお前たちの指図をうけなければならない?いいから答えろ、アイツ等は今どこにいる?」

 

 クリスとデデデの間に、ギスギスとした空気が流れ始める。

 まさに一触即発となっていた。

 

「ちょっと待つデース!」

「私たちはあなたの敵じゃない。お願いだから、私たちと一緒に来て」

 

 そんな中、調と切歌が二人を止めに入る。

 

「ふん、お前たちを信じる根拠がどこにあると言うのだ?オレさまの言うことが聞けないのなら、力尽くでやったって良いんだぞ?」

 

 だが、デデデは二人の言葉に聞く耳を持たず、尚も彼女たちへ敵意を向けている。

 

「カービィとバンダナワドルディは、私たちの友だちなの」

「……何?」

 

 調の言葉を聞いた途端、デデデの表情が僅かに揺らぐ。

 

「カービィは、突然この世界に迷い混んで大変だったのに、見ず知らずの私たちを助けてくれた。だから私たちは、カービィの力になりたい。あなたがカービィの仲間なのなら、あなたも助けたい。だから、どうか私たちを信じて欲しい」

 

 調の話を聞き、デデデは戸惑い始める。

 

 目の前の者たちの言うことはまだにわかに信じられない。

 だが、もし仮に本当にカービィがこの世界に来ているのなら、彼の性格上目の前の者たちを助けるのも納得だ。

 

 すると、クリスは構えていたアームドギアを突然降ろす。

 

「まあ、あのピンク球には確かに借りがある。お前もピンク球と同じ立場だってんなら、あたしたちに着いて来てくれ。あたしたちで、お前等を元の世界に返す方法を探してやる」

「…………」

 

 クリスの言うことに、デデデは黙り込む。

 

 口だけならなんだって言えるかもしれない。

 だが、目の前の者たちは真剣な眼差しで自身と向き合っている。

 ―――果たして、これが嘘を言う者の眼であろうか?

 デデデには、とてもそうとは思えなかった。

 

 やがてデデデは、構えていた木槌を降ろす。

 

「ふん、オレさまを連れて行くのだろう。さっさと連れて行かんか」

「―――!?お前なぁ……ッ!!」

 

 だが、デデデは態度を曲げず、相変わらずの上から目線であった。




本当ならこの章今年中に終わらせたかったんですけど、ちょっとキツそうです……


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十五星目 大王の到来

遅れてすんません!!(スライディング土下座)
リアルで色々と忙しかったものでして……。


「失礼します。風鳴翼、ただいま帰還いたしました」

 

 元の世界へと戻って来た翼は、司令室へと入る。

 そこには、弦十郎の他にクリスの姿もある。

 

「先輩ッ!?大丈夫だったのか!?」

「……?どうした雪音、何をそんなに慌ただしくしている?」

 

 入るや否や、クリスは翼を見た途端に駆け寄る。

 クリスの様子を見て、翼は違和感を感じる。

 

「よく戻って来てくれた翼。戻って来て早々に悪いが、至急報告を頼む」

「畏まりました」

 

 翼は並行世界で起こった事の全てを話した。

 

「なるほど、あの鳥は並行世界で現れたものだったか。だが、まさかカービィくんと同郷の者が別の世界にまで現れるとは……」

「―――!?もしや、この世界にもダイナフェニックスが……」

「あぁ、数時間前クリスくんたちが交戦した」

「―――ッ!?」

 

 弦十郎の話を聞き、今度は翼が驚愕する。

 

「こちらの世界に現れたのは、並行世界の干渉による鏡像です。なので、正確にはまだこちらの世界にはいません」

 

 エルフナインが説明を入れる。

 

 並行世界は互いに干渉し合い、影響を及ぼし合う特性がある。

 それ故に、並行世界の存在がこの世界に鏡像として現れることがごく稀にあるのだ。

 だが、あくまでそれは一時的なものであり、時間が経てば世界からの揺れ戻しで消えてしまう。こちらの世界のダイナフェニックスが消えたのはそのためだ。

 

「ともかく、そのダイナブレイドから聖遺物の力を引き剥がす必要があるわけだな?」

「はい。しかし、ダイナフェニックスには強力な再生能力があり、こちらが有効打を与えることが出来ません」

「うむ……」

 

 翼の話を聞いた弦十郎は、すぐさまエルフナインの方を向く。

 

「エルフナインくん、頼めるか?」

「はい、任せてください!」

「ナスターシャ教授から預かったフェニックスに関する資料だ。役に立てば良いのだが……」

「ありがとうございます」

 

 翼から資料を受け取ったエルフナインは、早速コンピューターに向き合い、解析に没頭し出す。

 

(フェニックス、不死鳥の名の如き再生力を持つ怪鳥。その再生力を破るには……)

「おいっ!!」

 

 エルフナインが思考の海に浸っていると、突如として第三者の声が司令室に響く。

 自身の聞き慣れない声を聞き、翼は僅かに困惑する。

 

「どうなっている!?食堂の奴ら、オレさまに料理を出さんぞッ!」

 

 声の主は、デデデだ。

 デデデの顔は、何故か怒りに染まっている。

 

「司令、彼は……?」

「彼の名はデデデ、カービィくんたちの故郷の王らしい……」

「―――ッ!?」

 

 弦十郎の言葉に、翼は驚愕する。

 

「ちょっと待つデス!」

「あんなに食べたのに、まだ足りないの!?」

 

 すると、後から調と切歌も入って来る。

 だが、二人とも汗をかき、何かに困っているようだ。

 

「お前たち、一体どうしたんだ?」

 

 弦十郎はすぐさま調と切歌に質問する。

 

「実は……」

「デデデが食堂でご飯を食べてたんですけど……

 

 

 

 

 

 

食堂の食材の大半がなくなるまで食べちゃって……」

『……は?』

 

 調の言ったことに、一同は唖然となる。

 

「オレさまをこんな所に連れて来ておいて、食事もろくに出さないとはどう言うつもりだ!?」

「だからあれ以上食べたら食材がなくなったゃうんデスよぉ〜!!」

「知ったことかッ!オレさまは大王だぞッ!」

 

 切歌の言うことも聞かず、デデデは我がままを言う。

 

 一方で、唖然としていた藤尭が、ガクガクと震えながら口を開く。

 

「……おい、今食材の大半を食べたって言ったか?」

 

 藤尭は胃を痛め始める。

 

 さらに藤尭の言葉を皮切りに、全員が以前の悪夢を思い起こす。

 以前カービィが食料を全て食い尽くしたあの日のことを。

 

「この前のカービィの時だって、食費が大分吹き飛んだんだぞ……」

 

 今回唯一の幸いは、全てが食い尽くされずに済んだことだろう。

 だが、これでまたS.O.N.G.の予算の大部分が、文字通り()()()()()()()()のに変わりはなかった。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 ―――翼が去った後のF.I.S.研究所

 

 翼の帰還を待ちながらも、こちらでもダイナフェニックスを救う方法を模索していた。

 

「翼さん、良い方法を持って来てくれますよね……?」

「今はまだわからない。けど、期待するしかないわ」

 

 不安になる響に、マリアが声をかける。

 

「例え何があっても、私は絶対にダイナブレイドさんを元に戻します!」

「セレナちゃん……?」

 

 そん中、セレナが強い気迫を込めて宣言する。

 

 先ほどまでの落ち込み具合からのあまりの変わりように、響は思わず驚いてしまう。

 一方で、マリアはそっと微笑んでいた。

 

「ふ、どうやら迷いは晴れたようだな」

「はい、私はあの子(ダイナベイビー)のためにも、もういつまでも迷いません!必ずあの子を元の幸せな生活に戻してあげます!」

 

 前とは違い、セレナは迷いなく言い切った。

 その様子に、メタナイトは仮面の裏でそっと微笑む。

 

「それはそうと、気になることがあったんだ」

「気になること?」

 

 セレナの方はもう心配ないと判断すると、メタナイトは即座に話を切り替える。

 

「ああ、最後の戦いで、ダイナフェニックスは何故撤退したのかだ」

 

 メタナイトの言葉を皮切りに、全員が同じ疑問を浮かべる。

 

 思えばあの時、明らかに不利だったのは装者たちの方であった。

 ダイナフェニックスに撤退する理由など無かった筈なのだ。

 

「そう言えば、あの時何故か苦しんでいたわね……」

 

 するとそこで、マリアがダイナフェニックスが撤退する際に苦しんでいたことを思い出す。

 あの再生能力故にダメージなど与えられていなかった。その上、あの時既にダイナフェニックスは首輪の束縛から解き放たれていた。

 苦しむ理由などなかった筈だ。

 

「……あくまで、これは憶測に過ぎないのだが―――」

 

 すると、またしてもメタナイトが声をあげる。

 

「もしかしたら、ダイナブレイドの意識がまだ僅かに残っているのではないだろうか?」

『―――ッ!?』

 

 メタナイトが言ったことに、全員が注目する。

 

「それはどう言うことッ!?」

「落ち着け、あくまで憶測だと言ったろう。だが、一応そう思った理由がある」

 

 一同は沈黙し、メタナイトの言葉に耳を傾ける。

 

「まず、あの時のダイナフェニックスの苦しみ方だが、私にはまるで何かに抵抗しているように見えた」

 

 その言葉に、全員がその時の様子を思い出し、納得する。

 確かにあれは見方によっては何かに抵抗していたように見えるだろう。

 

「そして、その抵抗していた物が聖遺物の力だと言うのですね?」

「ああ、聞けばこの世界で言う聖遺物とは欠片のことだそうじゃないか。欠片の力なら、本来の力より衰えているのが普通なのではないのか?」

「ええ、その通りです」

 

 メタナイトの言うことは的を突いている。

 この世界で言う「聖遺物」とは、あくまで古代の異端技術の欠片のことを指している。

 故に、本来の状態と比べて力は劣っている。

 ならば、ダイナブレイドが抵抗出来る可能性もあり得るのだ。

 

「ならば、その隙を突けば……!?」

「ダイナブレイドを助けられるかもしれない……!」

 

 ここで、希望が見え始めた。

 

「おい、これは憶測に過ぎないと言っているだろう」

「でも、私たちには十分希望だよッ!」

 

 メタナイトの言葉に、響は明るく笑顔で応える。

 

 確かに、これには確証がない。

 だが、今まで何の可能性も掴めずにいた彼女たちにとっては、十分希望である。

 

 メタナイトは内心呆れる。だが、そこまで悪い気はしていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ブォーン!ブォーン!

 

『―――ッ!?』

 

 すると突然、またしてもアラートの音が鳴り響く。

 

「何事ですかッ!?」

「ダイナフェニックスがまたしても現れましたッ!更にそれだけじゃありませんッ!リーパーたちもいますッ!」

 

 研究員の報告を聞き、全員が驚愕する。

 

「そんな、まだ翼さんが戻って来てないのにッ!」

「それでも、今は私たちで行くしかないッ!」

 

 翼はまだ帰還していない上に、カービィもまだ眠ったまま。戦力は以前よりも明らかに減ってしまっている。

 カービィに関してはただ寝ているだけかもしれないが、一応メディカルチェックを受けているため、今は連れて行くことは出来ない。

 その上今回はリーパーの群れまで加わっているのだ。どう見てもこちらが不利なのは目に見えている。

 

 だが、マリアの言う通り、だからとてこのまま野放しなどと言う訳にはいかない。

 例え戦力が不利でも、今の自分たちにやれるだけのことをやるしかない。

 

 決意が固まった一同は、すぐさま外へと駆けて行った。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 ―――とある町。

 そこはダイナフェニックスの手によって、何時ぞやの時と同じく修羅と化していた。

 

 それだけではない。辺りにはたくさんのリーパーたちが徘徊している。

 

「止めなさいッ!」

 

 そこへ駆けつけた装者たち及びメタナイトとワドルディ。

 すぐさまマリアが声を飛ばすが、ダイナフェニックスは聞く耳など持たず尚も暴れる。

 

「止めて下さいッ!あなたはちゃんと自分の意識を持てる筈ですッ!どうか聖遺物の力に負けないで下さいッ!」

 

 次に、セレナが必死に訴える。

 だが、やはりダイナフェニックスは止まる気配がない。

 

 ―――やはりやるしかない

 

 意を決した一同は、それぞれアームドギアを構え、前へ出る。

 

 だが、各々の行方をリーパーたちが阻む。

 

「そこをどきなさいッ!」

 

 大元のダイナフェニックスへ辿り着くべく、それぞれリーパーたちと交戦する。

 

 だが、当然それをただ黙って見ているダイナフェニックスではない。

 翼を激しく羽ばたかせ、巨大な熱風を巻き起こす。

 

 熱風はリーパーたちもろとも装者たちへと襲いかかる。

 

 リーパーたちが吹き飛ばされる中、一同は吹き飛ばされまいと、必死に地面へとへばり付く。

 だが、風と共に伝わってくる強力な熱気が、一同の体力をじわじわと奪って行く。

 

「―――ッ!はあッ!」

 

 その時、メタナイトが何とか耐えながらナイトビームを放つ。

 ナイトビームはダイナフェニックスの胸に直撃し、怯ませることに成功する。

 

 刹那、全員がこの瞬間を勝機とみなし、一斉にダイナフェニックスの元へ駆ける。

 リーパーたちは先ほどの熱風で吹き飛ばされたため、今度は邪魔はない。

 

 辿り着くや否や、全員ダイナフェニックスへ攻撃を仕掛ける。

 

「お願い、目を覚ましてッ!」

 

 時折ダイナブレイドの意識に訴えながら攻撃する。

 ダイナフェニックスも反撃に、口から火炎弾を放つ。

 

 時に躱し、時にいなし、なんとか追撃を仕掛けて行く。

 だが、一向にダイナブレイドの意識が戻る気配は無い。

 その上―――

 

「グ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"!!!!」

 

 またしても再生能力で回復されてしまう。

 これではダイナブレイドを助ける所か、被害を食い止めることも出来ない。

 

(どうすれば……!?)

 

 どうすれば良いかわからず、葛藤する一同。

 

 

 

 

 その時―――

 

「はあッ!」

 

 突如聞き覚えのある声が響く。

 同時に、蒼い斬撃の孤がダイナフェニックスへとぶつかる。

 

「待たせて済まない、みんな」

 

 振り向けば、そこには翼がいる。

 

「翼さん!戻って来てくれたんですね!」

「ああ、だがすまない。肝心な情報はまだ得られていない」

 

 翼はどこか不甲斐ない顔をしながら答える。

 自身が元の世界へ帰還したのは、フェニックスの再生能力を破る手段を見つけるため。

 その役目を果たせていないまま戻って来てしまったことを、彼女は気にしていたのだ。

 

 それでも翼が戻って来たのは、またいつ現れるかわからないダイナフェニックスを見過ごせなかったからだ。

 

 そして、そんな彼女を責める者などいない。

 むしろ今の状況では、彼女の存在はとても頼もしいのだから。

 

「それでも、今はあなたが来てくれて助かるわッ!」

「ああ、だが援軍は他にもいるぞ」

『―――?』

 

 翼の言葉に全員が首を傾ける。

 

 一瞬他の装者かと思う一同。

 だが、答えはすぐさま自ら姿を現した。

 

「ふん、ダイナブレイドめ、おどろおどろしい奴になりおって」

 

 全員が聞き覚えの無い声を聞き、すぐさま発声源を探し始める。

 するとそこには彼―――デデデがいた。

 

「へ、また別の鳥?」

 

 装者たちがその異様な姿を見て唖然とする。

 だが、一部の者たちは違った。

 

「―――な、デデデ大王じゃないかッ!?」

「えぇぇぇぇっ!!大王さま、なんでここにッ!?」

 

 メタナイトとワドルディは、デデデを見て大いに驚く。

 

「ほぉ、お前たちもいたのか。それで、カービィの奴はどうしたのだ?」

「あ、カービィは―――」

 

「グ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"!!!!」

 

 ワドルディが答えるのを遮るかのように、ダイナフェニックスが咆哮をあげる。

 

「―――と、どうやら話してる場合ではないようだな」

「ああ、……」

 

 全員がダイナフェニックスに向き直る。

 装者たちは、未だにデデデに対する疑問が絶えないが、それは後にすべきと割り切る。

 

 そして、全員がダイナフェニックスへと向かって行った。




最近はReach for the Stars(ソニックカラーズのop)と言う曲をよく聴いています。←ソニックシリーズ未プレイ

もう少しでこの章終わりますので、どうかよろしくお願いします。


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十六星目 雛の思い

今回、遂にカービィSSの特権である"アレ"を出すことが出来ました!(活躍は次回からだけど)
ただ、その分字数が多くなってしまいました。どうかご了承下さいませ!!(土下座)


 研究所のモニターから、ナスターシャは装者たちの戦いを見守っている。

 

(このままでは、一体どうすれば……?)

 

 戦いを彼女たちに任せ、安全な場所から見守ることしか出来ない自分にもどかしさを感じる。

 だが、今は自分のやるべきことがあると割り切り、彼女たちの勝算を考える。

 

 何度も頭をフル回転させ、試行錯誤を繰り返す。

 だが、彼女たちの助けになるような物は、未だわからない。

 

 そんな時―――

 

「ぴぃー……」

 

 部屋の隅で大人しくしていたダイナベイビーが、ナスターシャに近づいて来た。

 

「おや、どうしましたか?あなたには悪いですが、私には今あなたに構っている余裕は―――」

「ぴぃ……」

 

 すると、ダイナベイビーの顔が悲痛な物へと変わる。

 その視線の先には、モニターの向こうで戦っている装者たちの姿が写っている。

 

「彼女たちが心配なのですね?」

「ぴぃー」

 

 ナスターシャの問いに答えるかのように、ダイナベイビーは鳴き声をあげる。

 

 ダイナベイビーは、装者たちの中でもセレナのことを心配していた。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 彼は突然親と一緒にこの世界に迷い混み、混乱していた。

 更にその上、研究所の者たちに捕まり、身勝手な理由で非道な仕打ちを受けた。

 更に、自身だけでなく唯一の親までもを傷つけられた。

 助けたかった。

 だが無理だった。

 彼は生まれて数年経つとは言え、まだ未熟な雛だ。

 彼にはそれほどの力などなかったのだ。

 とても苦しかった。

 自由を奪われて、家族を傷つけられて、何も出来なくて……

 

 そんな時だった、偶然研究所がリーパーの群れの襲撃を受けたのだ。

 その混乱に乗じて、彼は逃げ出した。

 

 本当は親と一緒に逃げたかった。

 だが、非力な彼には親の束縛を解くことが出来なかった。

 その上、研究所には大量のリーパーたちが群がっており、このままでは自分も危なかった。

 そんな時、親は苦渋の決断を下し、こう言ったのだ。

 

 ―――お前だけでも逃げろ

 

 最初は拒否した。

 だが、それでも親は何度も繰り返すだけだった。

 

 そして、彼は一人で逃げ出した。

 とても悔しかった。

 自分が許せなかった。

 それも当然だ、親を見捨てたのだから。

 

 その後は必死に逃げた。

 行き先もわからないまま、ただひたすら。

 

 だが、リーパーたちはすぐに追って来た。

 全速力で飛んだが、数には勝てなかった。

 なんども叩きつけられ、噛みつかれ、とても苦しかった。

 その時に、彼は翼を傷つけられ、飛べなくなった。

 

 だがそんな時、彼を助けてくれた者がいた。

 ―――メタナイトだ。

 自身を襲っていたリーパーたちを倒してくれた。

 更に、研究員たちに無理やりつけられた首輪も切ってくれた。

 

 だが、その時の彼はメタナイトを振り払って逃げてしまった。

 無理もないだろう、彼は酷い仕打ちを受けて、その上一人ぼっちになり途方に暮れていた。そこを襲われたのだ、トラウマを間近に植え付けられたも同然だ。

 恐怖に支配された彼に、何かを信じることなど出来るはずがなかった。

 

 それからは、またひたすら逃げ続けた。

 

 だが、またしてもリーパーたちは追って来た。

 またしても身体中のあらゆる所を傷つけられた。

 逃げ回って体力を消耗したこともあり、その時の彼に抵抗するほどの気力は残っていなかった。

 

 もはや彼は、死を待つだけであった。

 自身の命が尽きるまで、ただひたすら恐怖に縛られ続ける。

 

 そう思われた時だった。

 

 ―――貴方たちッ!そこから離れなさいッ!

 

 誰かが近くに来た。

 リーパーに覆われていて、どんな姿かはわからなかった。

 だが、何かを切り刻む音や爆発音から、戦っていることはかろうじてわかる。

 やがて音が止み、気づけば自身を覆っていたリーパーたちはいつの間にかいなくなっていた。

 

 ―――大丈夫ですかッ!?

 

 そして、先ほどまで戦っていた誰かが近づいて来る。

 言葉の内容から、自分のことを心配しているようだった。

 

 だが、それでも彼はその者を信じられなかった。

 もしかしたら、また痛い目に遭わされるかも知れない。

 そう思うと、自然に身体が動いていた。

 その者が自身に触れた途端、反射的に翼をバサバサと動かし、振り払っていた。

 

 早く逃げなければ。

 だが、衰弱しきった彼の身体は思うように動かない。

 このままじゃまた捕まる。

 そう思ってると、その者はまた自身に触れて来た。

 また暴れ出し、抵抗する。

 だが、今度はそれでも自身を放さなかった。

 何度も抵抗を繰り返すが、全く放す様子を見せない。

 そしてあろうことか、自身を抱きしめて来たのだ。

 

 ――― 大丈夫ですよ。私は貴方に酷いことは何もしません。

 ――― 怖かったんですよね。親とはぐれてしまって、さっきのにいじめられて……けど、私は大丈夫です。私が貴方を守ってあげます。ちゃんと親とも合わせてあげますから。

 

 最初は信じられなかった。

 どうせ自分を騙してまた酷いことをされると思った。

 

 だが、その者の手からは、他の者にはない温もりを感じた。

 恐怖に縛り付けられていた筈の自身の心も、いつの間にか和らいでいた。 

 

 やがて、ようやく久々の安心を得た彼は、身体中からあらゆる重荷が抜け、気づけば眠ってしまった。

 

 次に気がつくと、少し前まで自身を閉じ込めていた場所に似た場所に連れて来られていた。

 またしても、恐怖が自身の心を蝕み始める。

 

 ――― 大丈夫、ここの人たちは悪いことは何にもしませんよ?

 

 すると、またあの声が聞こえて来た。

 そこで、ようやく声の主をはっきりと見た。

 周りの者たちよりも小さい、可憐な少女だった。

 他の者たちの話から、セレナと言う名らしい。

 

 それからは、その研究所で過ごし始めた。

 

 何度も傷の手当てを受けた。

 最初は怖くて拒絶の意を示した。だが、その度にセレナが優しく宥めてくれた。

 それから、何度もセレナが自身に優しく寄り添ってくれた。

 

 ――― ほら、あーん。

 

 ――― 翼の傷は、まだ痛みますか?

 

 ――― 大丈夫、何も怖くないですよ。私がずっと傍にいますから。だから、ゆっくりおやすみ……

 

 

 ご飯をくれて、一緒に寝てくれて、歌を聴かせてくれて……

 

 気づけば、セレナといる内に恐怖心も消えていた。

 セレナはとても暖かくて、まるで自分を育ててくれた母親のようであった。

 

 そのセレナが、自身を親に会わせるために、今必死になって戦っている。

 ボロボロになって、傷ついて、それでも何度も立ち上がって……

 

 なのに、自分はただ見ているだけ。

 このままで良いのか?

 

 ――― いやだ

 

 このままセレナが傷つくのを黙って見ているなど耐えられない。

 ならばどうするか?

 答えは決まっていた。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

「はぁーい!」

 

 メディカルチェックを終えたカービィは、皆が待っているであろう部屋へと戻って来た。

 

「ぽよ?」

 

 だが、いる筈と思っていた響たちがいない。

 すぐさまカービィは違和感を感じる。

 

「あなたは、もう大丈夫なのですか?」

「はぁーい!」

 

 ナスターシャの問いに、カービィは元気良く答える。

 カービィの様子を見て、ナスターシャも「大丈夫だろう」と安堵する。

 

「ぴぃっ!」

「ぽよ?」

 

 すると、先ほどまでモニターをじっと見ていたダイナベイビーが、カービィへ近寄って来る。

 その眼差しは、何かの覚悟を決めたかのようだ。

 

「ぴぃー!」

 

 ダイナベイビーは、真剣な様子でカービィに鳴き声を上げる。

 まるで何私かを訴えてるかのようだ。

 

「うぃっ!」

 

 一方で、カービィもダイナベイビーの意図を理解し、強くうなづいた。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 辺り一面を、またしてもリーパーの群れが覆う。

 先ほど吹き飛ばされたのが戻って来たのだ。

 その上、どこから湧いて来たのかわからないが、あきらかに最初よりも増えている。

 

 一同はリーパーの対応に追われるが、その度にダイナフェニックスの攻撃が飛んで来る。

 辛うじてやり過ごせているが、体力は消耗する一方。

 このままではジリ貧なのは目に見えている。

 

「くっ、やはり数が多いッ!」

「おい、コイツら鬱陶しいぞッ!どうにかして纏めて減らせんのかッ!?」

「そう思うのなら考えろッ!それが駄目なら口より手を動かすんだッ!」

 

 愚痴を溢すデデデに、翼が喝を入れる。

 デデデは不満そうであるが、やむを得んとばかりに再びリーパーたちを見据える。

 

 そこへ、ダイナフェニックスが再び火炎放射を放つ。

 全員瞬時に気づき、何とか事なきを得る。

 同時に、リーパーたちの大半は焼き尽くされた。

 

 だが、それでもリーパーたちの数はまだ大分残っている。

 

(例の黒幕が呼び寄せているのか?それとも―――)

 

 密かに考え事をするメタナイト。だが、リーパーが突進してくるのに気づき、瞬時に考えるのをやめ、リーパーを切り裂く。

 

 

 

 

 

 その時―――

 

ぴぃぃぃぃっ!!

『―――ッ!?』

 

 突然聞こえて来た謎の鳴き声に、全員が意識を持っていかれる。

 だが、その中で唯一セレナは、その鳴き声がなんなのかすぐに理解した。

 同時に、あり得ないと思う。何故ならそれは、本来ならここにはいない筈の者なのだから。

 

 やがて一同は、声の発声源を見つけた。

 そこにいたのは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カービィを背に乗せて羽ばたくダイナベイビーであった。

 

「カービィッ!?」

「はぁーい!」

 

 響が驚きの余り声を漏らし、それにカービィは何故か元気良く返事をする。

 

 一方でセレナは、ダイナベイビーが来たことに驚愕している。

 

「どうしてここにいるんですかッ!?危ないですよッ!」

 

 ここは戦場だ。

 こんな所にいてはダイナベイビーに危険が降りかかるのは間違いない。

 

 すると―――

 

「―――ッ!リーパーが!」

 

 ダイナベイビーを見つけたリーパーの一部が、狙いを定めダイナベイビーへ飛んで行く。

 

「―――ッ!?危ないですッ!早く逃げて下さいッ!」

 

 セレナはダイナベイビーへ逃げるよう叫ぶ。

 だが、リーパーたちの速さからして、もう間に合わない。

 

 そう思われたその時―――

 

「ぴぃー!」

 

 何と、ダイナベイビーは優雅に滑空し、リーパーを全て避けたのだ。

 

「……え?」

 

 最初、セレナは信じられなかった。

 だが、ダイナベイビーは今も尚目の前で飛んでいる。

 

「ぽよっ!」

 

 すると、背中に乗っていたカービィが、手にダイナベイビーと同じ色の羽を持って飛び出す。

 そのまま空中で手に持っていた羽を頬張り、飲み込んだ。

 

 次の瞬間、カービィの姿がまた新たなものへと変わる。

 緑と白の羽で構成された飾りを頭に被り、目の横に赤い横線が二本描かれる。

 さらに特徴的なのは、背中から生えた鳥の如き翼だ。

 

 ―――コピー能力『ウィング』

 

 カービィは翼を羽ばたかせ、空を飛び始める。

 そして、自身に迫って来るリーパーたちへ向け、翼から羽を射出する。

 

 ―――『フェザーガン』

 

 羽はリーパーの躰を貫き、塵へと変える。

 

 更に今度は、斜め下へ向かって急降下を始める。

 地面へ近づく度に、カービィの身体が青い光で覆われて行く。

 

 ―――『コンドルダイブ』

 

 地面に激突した瞬間、衝撃波が発生し、辺りにいたリーパーたちを吹き飛ばした。

 

 やがて煙が晴れると、そこには無傷のカービィの姿がある。

 

「カービィッ!大丈夫なのッ!?」

「はぁーい!」

 

 響は瞬時にカービィに駆け寄り、安否を確かめる。

 問題なさそうだったとは言え、先ほどまで休養していたのだ。心配にならない筈がない。

 

 それに対し、カービィは元気良く答えた。

 

「良かったー、もう大丈夫なんだね」

「ぽよっ!」

 

 カービィの様子を確認した響は、安心し笑みを溢す。

 

 一方で、カービィと共に来たダイナベイビーも、セレナの元へ降り立つ。

 

「大丈夫ですかッ!?」

「ぴぃー!」

 

 心配するセレナに、ダイナベイビーは大丈夫だと言わんばかりに鳴き声をあげる。

 

「翼の怪我は、もう大丈夫なんですね?」

「ぴぃー!」

 

 よく見れば、以前まであった筈の翼の怪我は、すっかりなくなっていた。

 たった今自身の目の前であんな優雅に飛んでいたのだから、問題無いだろうと安堵する。

 

「でもここは危険です、早く逃げて下さいッ!」

「ぴっぴぃ!」

 

 セレナはダイナベイビーに逃げるように言う。

 だが、ダイナベイビーは一向に逃げようとしない。それどころか、この場にいると言わんばかりに鳴き声をあげる。

 

「もう、どうしたら―――」

「グ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"!!!!」

 

 ダイナベイビーの対応に困っていたその時、ダイナフェニックスが雄叫びを挙げ、辺り一面に火炎弾を放つ。

 

「―――ッ!?」

「ぴぃっ!?」

 

 セレナは何とかダイナベイビーを抱えて回避する。

 すると、ダイナベイビーはセレナから離れ、ダイナフェニックスへ向けて鳴き声をあげる。

 

「ぴぃー!ぴぃー!」

 

 その様子は、何かを必死に訴えているかのようだ。

 目には今にも溢れんばかりの涙が溜まっている。

 

 セレナとの約束は、最悪な形で果たされてしまった。

 ダイナベイビーの目の前にいるのは、彼が再会を望んだ母親の姿では無い。

 

 セレナは悔やんでいた。彼に変わり果ててしまった母親の姿を見せてしまったことを。

 

「ぽよっ!」

「―――ッ!?」

 

 すると、突然どこからか飛んで来た青い光が、ダイナフェニックスにぶつかる。

 よく見れば、光の正体はカービィであった。

 

 ―――『コンドル頭突き』

 

 すると、カービィはそのまま空中へ飛び、ダイナフェニックスの頭上を取る。

 ダイナフェニックスは先ほど受けた一撃で標的をカービィに定め、彼を追って飛ぶ。

 

 だがそれは、カービィの狙い通りである。

 彼の先ほどの一撃は、自身に注意を向けさせることで、ダイナベイビーから引き離すための物だったのだ。

 

 狙い通り自身を追って飛んで来るダイナフェニックス。

 カービィは更に飛行し、ダイナフェニックスから距離を開ける。

 

 しかし、ダイナフェニックスの飛行速度は思った以上に速く、瞬く間に距離を縮められてしまう。

 そして、遂に追いつかれてしまい、カービィは突進を喰らってしまう。

 

「ぽよッ―――!?」

 

 カービィは飛行を乱し、そのまま落下し始める。

 落ちる途中でコピー能力も解け、元の状態に戻ってしまう。

 

 そして、カービィは地面へ激突した。

 彼の柔らかい身体のおかげか、衝撃は弱かったようだ。

 

 だが、近くにダイナフェニックスも降り立つ。

 カービィを見据えたダイナフェニックスは、トドメを指すべく火炎放射を放つ。

 

 だが―――

 

「はあッ!」

 

 突如として何者かが両者の間に割って入って来る。

 ―――マリアだ

 

 マリアはエネルギーシールドを展開し、カービィを火炎放射から護る。

 

「これで、妹を助けて貰った借りは返せたかしら?」

 

 マリアは得意げに笑みを浮かべながら、カービィに向き合う。

 カービィはすぐさま起き上がり、彼女の隣に立つ。

 

 そして二人は、再びダイナフェニックスへと向き合う。

 

「セレナはあの子のために、精一杯頑張っている。何度も悩んで、苦しんで、それでもあの子は約束を果たそうと必死だわ。なら、あの子の姉として、支えてあげない手はないッ!私たちで、ダイナブレイドを助けるわよッ!」

「ぽよっ!!」

 

 マリアの言葉に、カービィは力強くうなづく。

 

 ダイナブレイドは、かつてカービィを助けてくれた。故に彼にとって友達も同然だ。

 ならば、友達を助けない手などない。

 ―――必ず助ける。

 

 今この瞬間、マリアとカービィの思いは一つとなっていた。

 ダイナブレイドを助ける、と。

 

 

 

 

 

 

 その時だ―――

 

「ぽよっ!?」

「―――ッ!?何!?」

 

 突然カービィの身体から、淡い桃色の光が放たれたのだ。

 やがて光は一点に集まり、濃い桃色のハート型の物体へと姿を変える。

 

 それをカービィは知っている。

 

 ―――『フレンズハート』

 

 以前とある事件の際にカービィが手に入れた絆の力だ。

 

 やがてフレンズハートは一人でに動き出し、マリアの方へ向かう。

 

「これは一体……?」

 

 するとフレンズハートは、マリアの中へと溶け込むように入っていったのだ。

 

「―――ッ!?」

 

 すぐさま自身の安否を確かめるマリア。だが、特に異常は見られない。

 すると、またしても事は起こる。

 

「ッ!?アームドギアがッ!?」

 

 マリアの握っていたアームドギアが、彼女の意思に反して勝手に宙へ舞い、動き出したのだ。

 やがてアームドギアは、カービィの眼前で止まる。

 

 そしてカービィは、迷いなく()()()()()()を握った。

 さらに―――

 

 ――― Seilien coffin airget-lamh tron

 

 ()()()()()()のだ、あのカービィが。

 

 次の瞬間、カービィに変化が起こる。

 突如として彼の身体が銀色の光に包まれ、同時に周りに何かのパーツの様な物が現れる。

 そしてそのパーツは、カービィの身体の至る所に纏わり付き、装甲へと変わる。

 

 やがて光が晴れると、カービィの姿は変わり果てていた。

 

 顔の横にはヘッドギアを付け、左肩は装甲に覆われ、その先の腕は白銀のガントレットが嵌められている。

 そして右手には、先ほど手にしたマリアのアームドギアを握っている。

 

 その姿はまるで、()()()()()()()()()()()()であった。




次回、遂に本作のオリジナル能力が猛威を振るう。
のですが、作者はリアルで忙しいため次回の更新は遅れるかもしれません。どうかご了承下さい!!(ジャンピング土下座)

―追記―

色々考えて聖詠を追加しました。
あのカービィが何故聖詠を歌えたのか、それは今後をお楽しみに。


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十七星目 聖腕の力

カービィが歌ったたらヤバいんじゃないかと言った読者の皆様へ。
これが私の答えです!

前回の最後の辺りも少しあるものを付け足したので、良ければ見返してみて下さい。


 姿を変えたカービィは、ダイナフェニックスへ向けて駆け出す。

 するとカービィは、アームドギアを蛇腹剣に変え、鞭の如くダイナフェニックスへ振るう。

 

「マリアッ!」

「マリアさんッ!」

 

 するとそこへ、散り散りになっていたセレナを除く全員が集う。

 全員がカービィの姿を見て、その変化に気づく。

 

「カービィのあの姿は、一体……?」

「あれ、何だかあの姿、マリアさんのギアに似てる……?」

 

 響が言ったことに、全員が頷く。

 

 だが一方で、メタナイトたちは唖然としている。

 それもそうだ、何故なら彼らの目の前で―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()のだから。

 

「……カービィが、唄っている?」

「どう言うことだ?我々は無事だぞ……?」

「おい、もしやオレさまたちは、既にこの世にはいないのではないか……?」

 

 本来なら、彼らの知っているカービィの歌は一種の()()()()である筈。

 だが、今のカービィが唄っているのはその様な面影など一切無い、とても綺麗な物であるのだ。

 

 メタナイトたちが何故唖然としているのか、装者たちはわからずにいる。

 だが、それよりも彼女たちはあることに注目していた。

 

「あれって、マリアさんと同じ歌……?」

 

 そう、カービィが唄っているのは、マリアが戦う際に唄うのと同じ歌なのだ。

 現在のカービィに対し、一同は疑問が尽きない。

 

「とにかく、私たちも行くわよッ!」

 

 だが、そこでマリアの言葉に全員がはっと割れに返り、それぞれ構える。

 マリアも左腕のガントレットから新たなアームドギアを引き抜く。

 

 今自分たちがすべきことは、ダイナフェニックスを止めることなのだ。驚いてばかりいる場合では無い。

 すぐさま全員カービィに加勢する。

 

「遅れてごめんカービィ!私たちも一緒に戦うよッ!」

「ぽよっ!」

 

 まず響が前に出て、ダイナフェニックスに拳を叩き込む。

 更にパイルバンカーが作動し、激しい衝撃が躰中を駆け巡る。

 

「せいやッ!」

 

 今度は翼が、脚部の装甲から刃を展開し、逆立ちになる。

 そのまま高速回転し、ダイナフェニックスの脚を斬り付ける。

 

 ―――『逆羅刹』

 

 脚を斬られたことにより、ダイナフェニックスはバランスを崩し、倒れてしまう。

 

「はぁッ!」

 

 更にマリアが前に出る。

 

「やあっ!」

 

 すると、カービィも同時に出て来て、二人の攻撃が重なる。

 二人の攻撃は、異様なほどに息が合っていた。

 

(―――?今のは……)

 

 そこでマリアは違和感を覚える。

 まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()かの様であった。

 

 だが、ダイナフェニックスは起き上がり、お返しと言わんばかりに熱風を起こす。

 

「くっ……!」

 

 全員なんとか踏ん張ることで、地面に張り付く。

 

 すると、カービィはアームドギアで弧を描く。

 そこからアームドギアが複数展開される。

 そして、カービィがアームドギアを振り下ろすと同時に、複数の小太刀が射出された。

 

 ―――『INFINITE†CRIME』

 

 ダイナフェニックスは小太刀を喰らい、熱風が止む。

 一同は、先ほどのカービィを見て驚きを隠せずにいる。

 

「今の技は、マリアの―――!?」

 

 そう、カービィはマリアの技をそっくりそのまま使ったのだ。

 これにはマリア本人も驚いている。

 

「一体どうなっているのよ?何から何まで、まるで私じゃない!」

 

 驚いている一同を他所に、カービィは更に追撃に出る。

 ダイナフェニックスの火炎放射を避けながら、切り刻んで行く。

 

(―――ッ!これは……)

 

 その時、マリアの頭―――正確には心に何かが伝わって来た。

 だが、マリアには何故かそれが何なのか謎の確信があった。

 

 故に、彼女はその感覚のまま前へ出る。

 ダイナフェニックスはマリアが近づいて来るのに気づき、火炎弾を乱れ打つ。

 それをマリアは、アームドギアでいなしながら近づいて行く。

 

「はあっ!」

 

 すると、カービィは蛇腹剣をダイナフェニックスの首へ巻き付ける。

 喉が締められたことにより、ダイナフェニックスは火炎弾が出せなくなる。

 

 そして、マリアはのガントレットを砲身に変え、砲撃を放つ。

 砲撃が当たる寸前、カービィは蛇腹剣を解いた。

 

 ―――『HORIZON†CANNON』

 

 砲撃を喰らったダイナフェニックスは、後方へ大きく吹き飛ばさる。

 だが、ダイナフェニックスはすぐさま立ち上がり、低空飛行を始める。

 そして、突進を繰り出す。

 

 マリアとカービィは同時に飛び上がり、蛇腹剣でそれぞれダイナフェニックスの両翼を拘束する。

 

「―――ッ!?」

 

 そして、柄の部分から銀色の光が剣先を伝い、ダイナフェニックスへと向かって行く。

 

 ――― 『BRILLIANT†ROAD』

 

 光が到達すると、その場で爆発が起こる。

 そして爆風の向こうから、カービィとマリアが降り立った。

 

「凄い、二人とも息ぴったり!」

「ああ、だがいつの間にあんな連携を……?」

 

 響は二人の連携に感嘆する。一方で、翼はいつあんな連携を身に付けたのか疑問に思う。

 彼女たちは、まだカービィと出会ってから僅か数日しか経ってない。おまけにカービィと共に戦う機会など滅多になかった。

 あんな連携を身に付ける機会など無かった筈だ。

 

「それなんだけど、さっきからカービィの考えることが伝わってくるのよ」

「え、カービィの考えることが……?」

「ええ、何故かはわからないけど、カービィが何をしようとするのかが自然とわかるの。だからカービィに動きを合わせられたの」

 

 そう、マリアが感じていた謎の感覚の正体、それはカービィの心だったのだ。

 カービィが何かしようと考える度に、カービィの思いがマリアに伝わっていたのだ。それ故にあそこまでの連携を為し得ていた。

 

 その時―――

 

「グオォォォォォォッ!!」

 

 爆風が晴れると、そこには先ほどダメージなどまるで無かったかの如く五体満足のダイナフェニックスが姿を現した。

 

「くッ……、再生能力か!」

 

 翼の推測通り、ダイナフェニックスは再生能力により先ほどのダメージを回復したのだ。

 

 更に―――

 

「―――ッ!?リーパー!?まだこんなにいたのッ!?」

 

 どこからともなく、またしてもリーパーの大群が現れたのだ。

 

 すぐさま皆それぞれリーパーと応戦し始める。

 だが、そこへダイナフェニックスが火炎放射を放つ。

 

「くッ……!」

「うわっ!?」

 

 辛うじて避けることに成功する。

 だが、このまま避けながら戦うのは至難だ。

 

「やっぱりダイナフェニックスをなんとかしないとッ!」

「だが、あの再生能力はどうするッ!?」

 

 ダイナフェニックスを抑えるにも、まだ再生能力の攻略法は見つかっていない。

 このままでは彼女たちの体力がもたない。

 どうすれば良いのか、全員が思考の渦に呑まれる。

 

 

 

 その時―――

 

「ていッ!」

「―――ッ!?」

 

 突如空から飛んで来た謎の影が、ダイナフェニックスを切り裂いた。

 突然の不意打ちにより、ダイナフェニックスは僅かに怯む。

 

 やがて謎の影は、地面に降り立つ。

 

「お待たせさました、皆さん!」

「ぴぃー!」

 

 影の正体は、セレナを背に乗せたダイナベイビーであった。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 時は僅かに遡り、カービィがセレナたちからダイナフェニックスを引き離した後の時間。

 

 ダイナフェニックスが離れたのを確認したセレナは、すぐにダイナベイビーに向き直る。

 

「さあ、今のうちに早く逃げて―――」

「ぴぃー!」

 

 下さい、と言おうとしたセレナだが、ダイナベイビーの鳴き声に遮られる。

 

 ダイナベイビーの眼差しは、とても真剣な物だ。

 その瞳の奥から、確かな覚悟を感じ取れる。

 

「……本当に行くんですか?」

「ぴぃー!」

 

 セレナの問いかけに、ダイナベイビーは根気よく答える。

 

「今のあなたの母親はあなたが知っているものではありません。もしかしたらあなたにまで攻撃するかもしれません。それでも本当に行くんですか?」

「ぴー!!」

 

 ダイナベイビーは迷いなく答える。

 その威勢、眼差しから、セレナは彼の思いを感じ取った。

 

「わかりました、なら一緒に行きましょうッ!」

「ぴー!」

 

 すると、ダイナベイビーは後ろを向き、前身を前に倒し、背中を出す。

 まるで乗れと言っているかのようだ。

 

「乗せてくれるんですか?」

「ぴぃー!」

 

 ダイナベイビーはまたしても根気良く答える。

 まだ幼いこどもに乗せて貰うのに抵抗があるが、彼の思いに応えるためにも、セレナはダイナの背中に乗った。

 

「ぴぃー!」

「うわっ!」

 

 そして飛行を開始する。

 その際に揺れたことにより、セレナは一瞬バランスを崩すが、すぐに持ち直す。

 

 そのまま二人は、空の向こうへと飛んで行った。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 セレナはダイナベイビーから降り、ダイナフェニックスを見据える。

 

「今度こそ、必ずあなたを助けますッ!」

「ぴぃー!」

 

 セレナはダイナフェニックス―――否、ダイナブレイドに向けて宣言する。

 ダイナベイビーも同意を示すべく鳴き声を上げる。

 

「ぽよっ!」

 

 そんなセレナの隣に、カービィが並ぶ立つ。

 

「……?カービィさんの格好、まるでマリア姉さんみたい……」

「話は後よセレナ、今はダイナブレイドを助けるわよ」

 

 マリアを筆頭に全員が並び立つ。

 するとリーパーたちが、一斉に体当たりをしかける。

 

『はあッ!』

 

 だが、それをワドルディ、メタナイト、デデデの三人がそれぞれの武器で薙ぎ払う。

 

「リーパーたちは我々に任せろッ!君たちはダイナフェニックスを頼むッ!」

「大丈夫なのかッ!?」

「ふん、オレさまを誰だと思ってる!?」

「大丈夫、ボクたちリーパーとは戦い慣れてるからっ!」

 

 メタナイトとワドルディの実力は既に知っている。

 デデデについてはまだ知らないが、他の二人が信頼する程なのだから問題はないと全員が判断する。

 

 画して、リーパーたちの相手を三人に任せ、残りの者たちはダイナフェニックスへ向けて掛ける。

 

「はあッ!」

「おらあッ!」

 

 翼が四方八方から斬り、響が胸元を叩き込む。

 

「はあぁッ!」

「ていッ!」

「やあっ!」

 

 そしてセレナが片手剣を自在に操り、マリアとカービィが息のあった蛇腹剣による斬撃をお見舞いする。

 

(凄い、マリア姉さんと息ぴったり……)

 

 セレナは二人の連携に、思わず見惚れてしまう。

 しかし―――

 

「グオッ!!」

『―――ッ!?』

 

 突如ダイナフェニックスを中心に、強大な爆撃が放たれる。

 予想だにしなかった攻撃に、全員が吹き飛ばされてしまう。

 

 何度か地面を跳ね、そのまま倒れ伏す。

 そしてそこへ、ダイナフェニックスは無慈悲にも火炎放射の溜めの体制に入る。

 なんとか全身の力を振り絞り、立ちあがろうとする。

 だが、傷ついた身体は言うことを聞かず、中々立ち上がれない。

 

「ぴぃっ!!」

 

 そこへ、ダイナベイビーが全員を護るかの如く前へ出てくる。

 

「ダメ……早く逃げ……」

「ぴぃー!ぴぃー!」

 

 このままではどうなるか目に見えている。()()()()()が。

 一刻も早く逃げるように声を振り絞るが、ダイナベイビーは全く逃げる様子を見せない。

 

 そして―――

 

「グオッ!!」

 

 ダイナフェニックスの口から眩い紅が放たれ―――

 刹那、激しい爆音がその場を包み込んだ。

 

「…………え?」

 

 思わず全員が目を見開いた。

 そこには―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まったく無傷のダイナベイビーが立っていた。

 

 見れば、ダイナベイビーの横には激しく焼き尽くされた痕がある。

 そう、火炎放射は大きく狙いを外れていたのだ。

 

「グオッ!!グオッ!!」

 

 そしてその前には、必死に何かを抑え込んでいるかのような仕草を取るダイナフェニックスの姿がある。

 

「まさか―――!?」

 

 その時、全員の脳裏に以前メタナイトが言っていた言葉が過ぎる。

 

 

 ――― もしかしたら、ダイナブレイドの意識がまだ僅かに残っているのではないだろうか?

 ――― 聞けばこの世界で言う聖遺物とは欠片のことだそうじゃないか。欠片の力なら、本来の力より衰えているのが普通なのではないのか?

 

 その場の全員が、瞬時に状況を理解する。

 

「あの子のために、必死に戦ってる……」

 

 目の前でダイナブレイドは、自身の大事な子どもを傷つけまいと、フェニックスの力と必死に戦っている。

 

「助けなくちゃ……だって……」

 

 全員が倒れ伏す中、セレナは身体の底から僅かに残った力を全て出し切り、真っ先に立ち上がる。

 

「あの子と…………約束したからッ!」

ぽよっ!

 

 刹那、セレナの言葉に呼応するかの如くカービィが立ち上がり、セレナの横に立つ。

 

 セレナのダイナブレイド、及びダイナベイビーを助けたいと言う思いが、カービィの心に響き、彼を突き動かしたのだ。

 

 その時―――

 

「ぽよっ!」

「―――ッ!?これは一体―――!?」

 

 カービィの身体が再び桃色に光り輝き、フレンズハートを生み出したのだ。

 

「あれは……フレンズハート!?」

 

 その様子を、リーパーたちと戦いながらメタナイトは遠目から見た。

 

 そして、フレンズハートはセレナの前に移動し、そのまま彼女の中に溶け込んだ。

 

「―――ッ!?一体何が―――!?」

『何だこれ?……まさかコイツ、セレナと精神を同調させているのか!?』

 

 次の瞬間、セレナの握っていた片手剣(アームドギア)が一人でに動き出し、カービィの目の前に移る。

 

 すると、カービィの握っていた短剣が()()()()()へと姿を変え、カービィの中へ溶け込む。

 するとカービィは、一旦元の姿へと戻る。

 

 そして、目の前に浮かぶ片手剣を握り―――

 

――― Seilien coffin airget-lamh tron

 

 聖詠を奏でた。

 

 刹那、カービィの身体が銀色の光に包まれ、再びその姿を変える。

 

 背中に桃色の花びらのような装飾が付き、両肩には白銀の装甲。

 身体の下辺りには、セレナの胸元の装飾を小型化したような物が付いている。

 そして右手には、先ほど手にしたセレナのアームドギアである片手剣を握っている。

 

 その姿は正しく、セレナのギアを模した物であった。




次回、遂に決着!(章末ではない)


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十八星目 不死火を振り払う白銀の絆

今回の展開は大分悩みました……。
それと今更ながら、まさか最初のボスがダイナブレイドになるなんて誰も思わなかったでしょう。


 再び姿を変えたカービィ。

 その姿を見て、全員が驚愕する。

 

「あれって……」

「今度は、セレナのギアを……」

 

 そんな中、セレナとカービィはダイナフェニックスに向かって駆け出す。

 

「ていッ!」

「はあっ!」

 

 セレナが先に斬りかかり、別の方向からカービィが斬り付ける。

 セレナが斬ればカービィが、カービィが斬ればセレナが、次々とあらゆる方向から二人の攻撃が飛んで来る。

 

 ダイナフェニックスも、四方八方からくる連続攻撃に翻弄される。

 

 ここまで息の合った連携に、セレナ自身も驚いている。

 自分はまだカービィと出会ったばかりだ。それなのに、ここまで息の合った連携を成し得られるのは―――

 

(何でだろう、カービィさんの考えがわかる!)

 

 セレナもマリアと同じく、カービィの考えがわかるようになっている。

 二人の見事な連携は、それ故のものだ。

 

「たあッ!」

 

 戦っているのは二人だけではない。

 響が跳び上がり、またしても渾身の一撃を叩き込む。

 

「グオッ!!」

 

 ダイナフェニックスは嘔吐し、僅かに後ずさる。

 

「やあッ!」

 

 更にマリアが蛇腹剣をダイナフェニックスに巻き付け、拘束する。

 なんとか抜け出そうともがくが、拘束が解ける気配はない。

 

「はあッ!」

 

 翼が剣を掲げると、空に大量の蒼い光が煌めく。

 刹那、大量の剣の雨がダイナフェニックスへと降り注ぐ。

 

 ――― 『千ノ落涙』

 

「グオォォッ!!」

 

 躰中を切り刻まれ、ダイナフェニックスは悲痛の声を上げる。

 

 その時だ―――

 

「今のは……」

 

 先ほどの翼の攻撃で、ダイナフェニックスの翼を覆っていた炎が一瞬晴れたのだ。

 その中に、一際目立つ紅い羽を見た。

 その羽は、見覚えがある物であった。

 

「――― フェニックスの羽!」

 

 そう、それは現在ダイナブレイドをダイナフェニックスへと変えている元凶――― 『フェニックスの羽』である。

 

「グオォォォォォォォォッ!!」

 

 セレナが驚く傍らで、またしても再生能力により、ダメージを回復されてしまう。

 

「くっ、やはり駄目か!」

 

 理解はしているが、再生能力の攻略法は未だ見つかっていない。

 どうすれば良いか悩む中、声を上げる者がいた。

 

「私に任せて下さいッ!」

「セレナ……?」

 

 声を上げるや否や、セレナは一目散にダイナフェニックスの元へ走り出してしまう。

 

(上手くいくかはわからない……それでも!)

 

 彼女がやろうとしているのは、はっきり言って()()だ。成功する保証は無いに等しい。

 恐らくこんな方法では無茶だと止められるだろう。

 だが、他に打つてが無い以上、これしかない。

 

「ぽよっ!」

 

 だが、彼女と志を同じくする者が居た。

 ―――カービィだ。

 

「一緒にやってくれますか?」

「はぁーい!」

 

 カービィは元気良く返事をする。

 

 カービィは現在セレナと心が繋がっているが故、彼女がやろうとしていることを理解していた。それが無茶だと言うことも。

 それでも尚、カービィはセレナを止めはしない。

 それは彼女を信じるが故であった。

 

「ありがとうございます。…では、行きましょうッ!」

「ぽよっ!」

 

 二人は頷き合い、そして同時にアームドギアを掲げる。

 すると、二人のアームドギアは空中へ浮遊し出し、大きく旋回を始める。

 やがて巨大な光の渦が現れる。そこから青く煌めく流星が大量に降り注ぐ。

 

 ――― 『IGNIS†FATUUS』

 

 流星の雨を浴び、ダイナフェニックスは身動きが取れなくなる。

 

(―――今だ!)

 

 その時、ダイナフェニックスは翼にも流星を受け、翼を覆っていた炎が晴れる。

 それこそが二人の狙いであった。

 

 すぐさま二人はアームドギアを再び構え、跳び出す。

 ―――目指すはフェニックスの羽だ。

 

 そして、セレナのアームドギアが、ダイナフェニックスの翼―――更にその中に紛れたフェニックスの羽に突き刺さる。

 同時に跳び出したカービィも、セレナの手を握る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして二人は、()()を唄い始める。

 

 ―――Gatrandis babel ziggurat edenal

    Emustolrozen fine el baral zizzl

    Gatrandis babe ziggurat edenal

    Emustolrozen fine el zizzl

 

「これは、絶唱―――!?」

「セレナ、一体何を―――!?」

 

 全員が二人の行動に困惑する。

 それは二人がしていることが如何に危険かを知るが故だ。

 

 ―――絶唱

 シンフォギアに備えられた最大の攻撃手段。

 だが、それは自身さえもを道連れに全てを破壊する、正に()()()()

 

 そして、二人は絶唱が唄い終える。

 刹那、瞬く間にして辺り一面が激しい衝撃と共に光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

 やがて光が晴れ、全員が視界を取り戻す。

 

「セレナ―――!?」

 

 マリアは瞬時に、自身の最愛の妹(セレナ)を探す。

 

 まず先に眼に写ったのは、うつ伏せに倒れ伏すダイナブレイド。

 ダイナフェニックスではない、元の姿に戻っている。

 そのすぐ近くに、フェニックスの羽と思わしき羽が落ちている。

 

 そしてその傍に、彼女はいた。

 

「セレナァッ!」

「マリア―――!」

 

 力なく膝を地面に付く彼女に、マリアはその名を叫びながら駆け寄る。

 あとから気づいた響と翼も、マリアの後を追う。

 

 セレナの元に着いたマリアは、そっと彼女を優しく支えた。

 

「……マリア、姉さん」

「セレナッ、あなたなんて無茶を―――!」

 

 マリアは眼の奥に涙を溜めながら、セレナに怒鳴りつける。

 彼女のしたことは、とても危険なことだったのだから。

 

「ごめんなさい、これしかないと思って……」

 

 セレナは身体に残る痛みを何とか耐えながら答える。

 

 セレナは如何にしてダイナブレイドを元に戻したのか。

 それは、セレナの絶唱に秘められた特性によるものである。

 

 ―――エネルギーベクトルの操作

 その力により、ダイナブレイドの体内に流れ混んでいた聖遺物の力を、フェニックスの羽へと一点集中させたのだ。

 

「だからってこんな無茶を―――!!」

 

 それでも、マリアは尚もセレナを叱る。

 結果的に成功したとは言え、下手をすればセレナとカービィが重症を負うだけで終わる可能性もあったのだ。

 

「ぴぃー!」

 

 そこへダイナベイビーも駆け寄って来た。

 彼もまたセレナを心配しているようだ。

 

「私は大丈夫です、それより……」

 

 セレナは倒れ伏すダイナブレイドを見ながら、ダイナベイビーに伝える。

 

「お母さんの傍に、行ってあげて下さい……」

「ぴぃー……」

 

 ダイナベイビーはセレナの言う通りにし、ダイナブレイドの元へと駆け寄った。

 

「全くもう、世話の焼ける妹なんだから……」

 

 ある程度叱った所で、今はセレナの治療が先だと割り切る。

 セレナはマリアに支えられながら、何とか立ち上がった。

 

 そこで、全員がある違和感に気づく。

 

「ん?絶唱を唄った割には、やけに負荷が少なく見えるが……?」

「あれ、そう言えば……」

 

 そう、本来絶唱を使えば装者はかなりの重症を負う筈だ。

 だと言うのに、現在のセレナは五体満足で、見た限りでは重症を負った様子は見られない。

 

「―――あッ!そう言えばカービィは!?」

『―――ッ!?』

 

 響の一言で、全員が気づく。

 すぐさま全員がカービィを探し始める。

 

 すると―――

 

「―――ッ!?カービィッ!」

 

 響が瞬時に駆け寄る。

 そこには、仰向けになって倒れ伏すカービィの姿があった。

 

「カービィ、しっかりして!」

 

 響が抱きかかえ、必死に呼びかける。

 だが、カービィから返答の気配は全くない。

 

「まさか、絶唱の負荷の大半を一人で受け負ったのか!?」

「そんな!?カービィ―――!」

 

 翼が推察を言葉にし、響が更に慌て出す。

 

 カービィがセレナを止めなかった理由、それは()()()()()()()()()()()だったからだ。

 

 セレナのシンフォギアをコピーしたカービィもまた、エネルギーベクトル操作を使えるようになっていた。その力により、セレナが受ける筈だった負荷の大半を自身が代わりに請け負ったのだ。

 

「―――今の衝撃は何だッ!?」

「カービィ、みんな、大丈夫!?」

 

 するとそこへ、リーパーたちと応戦していた筈のメタナイト、ワドルディ、デデデの三人も来る。

 どうやら無事リーパーの討伐は終わったようだ。

 

 そして三人も、気を失ったカービィに気がつく。

 

「カービィ……」

「どうやら、また何か無茶をしたようだな……」

「まったく、とんだお節介焼きだな相変わらず」

 

 三人はカービィがしたことを察し、それぞれ言葉に出す。

 

「ごめんなさい、私のせいでまたカービィさんが……」

 

 セレナは謝罪を述べる。

 

 二度までして自身のせいでカービィに無茶をさせてしまった。

 それにより、セレナはとてもやるせない気持ちになってしまう。

 

「言ったろう、カービィの無茶は今に始まったことじゃないと。君が気に病むことではない」

 

 そんな彼女に、メタナイトは励ましの声をかける。

 

「それに、どうやらまだ終わってないようだぞ」

「―――え?」

 

 メタナイトの言うことが理解出来ず、声を漏らしてしまう。

 次の瞬間、メタナイトの目の焦点が自身の後ろに向けられていることに気づく。

 後ろを振り向くと、そこには―――

 

『―――ッ!?』

 

 ダイナブレイドから剥がれ落ちていたフェニックスの羽が、強大な炎に包まれていた。

 

 更に炎は瞬く間により巨大になって行き、鳥の形を形成する。

 

「これは一体―――!?」

「もしや、聖遺物の力が暴走しているのかッ!?」

 

 またしても翼が推測を述べる。

 彼女の推測はまたしても的を射ていた。

 

 ダイナブレイドの体内に流れ込んでいた聖遺物のエネルギーが、セレナとカービィの絶唱によりフェニックスの羽本体に集められたのだ。

 そして、ダイナブレイドという強大な器を失った聖遺物のエネルギーが、現在暴走しているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「―――後は我々に任せろ」

 

 そこでメタナイトが言葉を発し、装者たちの前に出る。

 彼に続いて、ワドルディとデデデも来た。

 

「二人とも、やるぞ!」

「ふん、お前たちがオレさまに合わせるんだぞ!」

「よーし、行っくよー!」

 

 すると突然、デデデの頭の上にメタナイトが乗っかる。

 更に、続いてメタナイトの頭の上にワドルディが乗っかる。

 

 一体何をする気なのか、装者たちは疑問を浮かべる。

 

 すると三人は、それぞれ険しい顔になり、何やら力を溜めるような体制に入る。

 すると、何と三人の身体が白く光り始めたではないか。

 

「行くぞ!息を合わせろ……」

「だからお前たちがオレさまに合わせるんだ!」

「行くよおー!せーので―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ドオォォォォォォォォォンッ!!!』

 

 刹那、三人から巨大な白い光線が放たれる。

 光線は瞬く間に炎の鳥を飲み込み、その場を再び光で覆った。

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

 光が晴れると、そこには炎の鳥も、フェニックスの羽も消えていた。

 

「凄い……」

「今のは、一体……?」

 

 装者たちは、先ほど三人が放った技に感嘆の声を漏らす。

 今目の前で起こったのは、彼女たちにとってデタラメに等しかった。

 

 すると、そのデタラメを成し得た三人が、彼女たちの元へ戻って来る。

 

「さて、まだ問題は残っているぞ」

 

 そう言うと、メタナイトはダイナブレイド親子へと視線を向ける。

 

「あ……」

 

 それに気づき、全員が同じ方を向く。

 

 すると―――

 

「あ―――!」

 

 なんと、ダイナブレイドが目を覚ましたのだ。

 

「ぴいっ!」

 

 それに反応し、ダイナベイビーは声を上げる。

 それに気づき、ダイナブレイドは自身の子供を見つけた。

 

「ぴいー……」

 

 ダイナベイビーは涙を流しながら、ようやく再会出来た母親に顔を擦り付ける。

 ダイナブレイドは、その感触を味わいながら、大切な子どもが無事であることに安堵した。

 

「―――ッ!」

 

 だが、すぐさま装者たちの存在に気づく。

 

「クオッ!」

 

 すぐさま立ち上がり、ダイナベイビーを背後に隠す。

 そして装者たちを威嚇し始める。

 

 ダイナブレイドは以前まで人間に酷い仕打ちを受けていた。

 その上自身の子どもまで傷つけられたのだ。

 警戒するのも無理は無い。

 

「私たちに敵意を―――!?」

「違うよ、私たちは酷いことはしないからッ!」

 

 装者たちは何とか誤解を解こうと慌て出す。

 

「ぴいー!」

 

 だがそこへダイナベイビーが前に出て、再びダイナブレイドに声を上げる。

 その様子は、彼女たちについて弁明しているようだ。

 

「…………」

 

 ダイナベイビーの弁明を聞き、ダイナブレイドは威嚇を解く。

 

「クオー」

 

 するとダイナブレイドは、再び装者たちへ鳴き声を上げる。

 だが、今度は先ほどと違い敵意は感じない。

 

「……へ、何?」

 

 だが、装者たちはダイナブレイドの言ってることが理解出来ず、首を傾ける。

 

「たぶん謝ってるんだと思うよ。あと、助けてくれてありがとうって」

 

 そこで、ワドルディがダイナブレイドの言っていることを推測を交えて弁明した。

 

「そっか、どういたしまして!」

 

 響は笑顔で答えた。

 

「それでだ、問題の方だが……」

 

 メタナイトの言葉により、全員が問題に気づいた。

 

「そうだ、このままではあの親子はF.I.S.本部に―――!」

 

 そう、F.I.S.本部はダイナフェニックスの討伐命令を出していた。

 もしダイナブレイドが生きていると知れば、間違いなくただでは済まないだろう。

 良くて実験材料、悪ければ殺処分されるだろう。

 

 そしてそれは、ダイナベイビーも同じだ。

 今はナスターシャが上手く隠蔽してくれているが、長くはもたないであろう。

 

 全員がどうすれば良いか悩み出す。

 その時―――

 

『セレナ、グレイプニルを使うんだ』

「ヴェイグさん……?」

 

 セレナの中から、ヴェイグが声をかけて来た。

 

『コイツ等をミレニアムパズルの中に隠すんだ』

「―――そうか!」

 

 ヴェイグの意図を理解したセレナは、即座に行動に出る。

 

 次の瞬間、セレナのシンフォギアが変化を起こす。

 背中から巨大な羽のような装飾が、全身を覆っている。

 その羽の下からは、花の形をした飾りが垂れ下がっていた。

 

 ―――デュオレリックギア

 

 二つの聖遺物の力を秘めたシンフォギアの形態。

 

「今からあなたたちを誰にも見つからない場所に連れて行きます」

 

 ダイナブレイド親子は、セレナの言うことが理解出来ず困惑する。

 

「大丈夫です、何も酷いことはしません。どうか私を信じて……」

 

 未だにその意図は理解出来ない。

 だが、ダイナベイビーはセレナを信じる。

 ダイナブレイドもまた、ベイビーが信じるのであればきっと大丈夫だろうと思い、セレナにその身を委ねた。

 

 次の瞬間、親子の周りに色とりどりの正方形体が複数現れ、親子を覆って行く。

 瞬く間に親子の姿が見えなくなってしまった。

 

 すると今度は、正方形体の集合が徐々に小さくなって行く。

 やがて手に握れる程の小さな光へと姿を変えた。

 

 そして、その光はセレナの元へ来て、そのまま彼女の中へと入っていった。

 




次回かその次でこの章は終わりにしたいと思います。
グレイプニルギアの描写、こんなんで大丈夫でしょうか……?


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十九星目 影で微笑む者

連"続"投"稿"!
ただ今回は大分短めです。

今回にてこの章は一旦完結です。
次回からは幕間を挟みながら新章を書く予定です。

なんとか今年中に終わらせられてよかったあ……


「みなさん、お待たせしました」

「ぽよっ!」

 

 治療を終えたセレナとカービィが、皆が待つ部屋へと入って来る。

 二人とも元気そうだ。

 

「本当に大丈夫なのですね……?」

「はい、心配いりません」

 

 尚も心配するナスターシャに、セレナは笑顔で返事をする。

 ナスターシャもセレナの様子を見て安堵した。

 

「カービィも本当に大丈夫なの……?」

「うぃっ!」

 

 次に響がカービィに心配の声を上げる。

 だが、カービィはいつものように元気良く返事をした。

 

「カービィの方が重症だった筈なのに、何で……?」

「それがカービィなのさ……」

 

 カービィの余りの回復力に響は疑問を浮かべる。

 それにメタナイトがさり気なく答えた。

 未だに理解しきれてはいないが、カービィの摩訶不思議は今に始まったことではないため、それで飲み込むことにした。

 

「まったく、突然いなくなって何をしていたのかと思えば、相変わらずお節介を焼いていたとはな」

 

 カービィの相変わらずの様子を見て、デデデは呆れの声を漏らす。

 

「さて、あなたたちのおかげで、フェニックスの羽による騒動は無事終息しました。本当にありがとうございます」

「何、これくらいどうってことないわよ」

「ああ、いつだって人々を守護するのが我らの役目だからな」

 

 ナスターシャのお礼に、装者たちはそれぞれ答える。

 

「ですがセレナ、あなたは今回無茶をしましたね」

「―――ッ」

 

 ナスターシャの言葉に、セレナは思わず反応する。

 

「絶唱のバックファイアがどれほどのものか、あなたもわかっている筈です」

「はい……」

「あなたはこの世界で唯一の装者なのです。あなたがいなくなってしまえば、それだけ大勢の人間が救われなくなってしまうのです。それをお忘れなく」

「はい、ごめんなさい……」

「わかったのなら、今後は二度とこんなことをしないように」

 

 ナスターシャは鋭く言い放つ。

 セレナはそれに、ただ頷くだけであった。

 

「今回はここまでにしておきます」

 

 そう言うと、ナスターシャは話を切り替える。

 

「あの親子は、無事なのですね」

「はい、ヴェイグさんのおかげで、ミレニアムパズルの中で安心して過ごせています」

 

 セレナが親子を隠すのに使ったのは、聖遺物『グレイプニル』。

 その力は、特殊な空間『ミレニアムパズル』を自在に操ること。

 それにより、ダイナブレイド親子はミレニアムパズルの中に隠すことができた。

 

「ならばあの親子はもう安心ですね。本部の方には、私から都合良く言っておきましょう」

 

 本部にはグレイプニルやミレニアムパズルの情報は行き届いていない。

 故に、ダイナフェニックスは装者により討伐されたと言っておけば誤魔化せるであろう。

 フェニックスの羽についても、ダイナフェニックスとの戦いの末跡形も無く破壊されたと言えば問題無い。

 

 かくして、ダイナフェニックスの事件は終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

「だが、まだ全てが終わった訳ではない」

「―――へ?」

 

 メタナイトの言葉に、気が緩んでいた響が思わず声を漏らす。

 

「まだ今回の件の黒幕が見つかっていない。奴はまた何か事件を起こすやもしれない」

 

 その言葉により、響もようやく理解した。

 

「えぇ、ですが一先ずその黒幕の目論見は失敗しました。次に出るまでまだ時間があるでしょう」

 

 ナスターシャはそう言う。

 だが、全員が安堵などせずにいられた。

 

「一先ずあなたたちは一度元の世界へ戻るべきでしょう。そしてこのことも報告しなければなりません」

「そのことだが、少し良いだろうか?」

 

 ナスターシャが言い終わると、そこへメタナイトが割って入る。

 

「私もなるべく多くのことを調べたい。そのためにも、どうか私を君たちの世界に連れて行ってはくれないだろうか?」

 

 メタナイトの言葉に、全員が俯く。

 

「ああ、それなら歓迎しよう」

「感謝する」

 

 そして一同は、元の世界へと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

「失礼します。全員帰還いたしました」

「うむ、みんなご苦労であった」

「あ、お帰りなさいデース!」

 

 司令室には、弦十郎の他にクリスたち装者もいる。

 

 弦十郎は全員が無事帰還したことを確認し、安堵する。

 すると、初めて見る姿―――メタナイトの存在に気づく。

 

「む、もしや君が翼からの報告にあった―――」

「ああ、メタナイトだ。よろしく頼む司令殿」

 

 メタナイトは礼儀良く弦十郎に挨拶をする。

 

「おい、何かまたちっこいのが増えたぞ。一体あと何匹増えるんだよ……」

「……小さくて悪かったな」

 

 クリスの言葉に、メタナイトは思わず反応する。

 

「んんっ!とにかく、報告を聞かせてもらおうか……」

「はい、まず―――」

 

 そうして、翼は弦十郎にことの全てを話した。

 

「なるほど、今回の異変の黒幕が影を見せ始めたか……」

「はい、ですが尚その足取りは掴めずにおられます」

 

 その言葉に、全員が思い悩む。

 

「だが、黒幕の存在が明らかになったんだ。これもまた一歩全身だ!」

 

 そこで、弦十郎は全員の気を持ち直すべく励ましの言葉をかける。

 

「だが、我々の世界だけでなく並行世界にまで異変を起こすほどの者だ。間違いなく相当手を焼くであろう。全員気合いを入れておけ!」

『はいッ!(デース!)』

 

 全員が弦十郎の言葉に、根気良く返事をする。

 

「そう言えば、本部にリーパーは現れなかったの!?」

 

 するとそこで、マリアが以前危惧していたことを思い出し、慌てて問い出す。

 

「いや、そのようなことはなかったぞ……?」

「そう……」

 

 マリアは安堵するが、同時に疑問も湧く。

 ギャラルホルンが出したのは、確かにリーパーの発生の元凶であるディメンションホールであった。

 それなのに、何故本部にリーパーが現れないのか?

 

「そのことですが、詳しい理由はまだわかりません」

 

 そこで話に入って来たのは、エルフナインだ。

 

「ですが、ここには僕たちよりもディメンションホールについて知る方たちがいます」

 

 そう言うと、全員がメタナイトの方を向く。

 

「ああ、あのディメンションホールについてだが、あれは私たちの知る物とは別物だ」

 

 メタナイトの言うことに、全員が疑問を浮かべる。

 

「私たちは過去に何度かディメンションホールに飲み込まれたことがある。だが、今回見たのはそれとは明らかに違う。ディメンションホールの先に続く空間、アナザーディメンションは様々な次元が入り乱れたとても複雑な空間だ。だが、先ほどのあれは一本道であった」

 

 その言葉に、先ほど並行世界へと赴いた一同が俯いた。

 

「まず我々は君たちの言うギャラルホルンとやらについて知り得てない。まずはそれを教えてくれないか?」

「わかりました。僕たちが知り得る限りのギャラルホルンについての情報を説明します」

 

 そうしてエルフナインは、メタナイトにギャラルホルンについて説明した。

 話しを理解出来ないカービィたちは途中で寝ていたが。

 

「うむ、あくまでこれは私の推測だが、聞いてくれるか?」

 

 全員がメタナイトの話に耳を傾ける。

 

「要するに、そのギャラルホルンというのは並行世界の異変を感知する機能を持っている。それにより、並行世界でのディメンションホールの発生を捉えたのだろう」

 

 そして、とメタナイトは続ける。

 

「恐らく、それに合わせてアナザーディメンション内に我々を異変が起きた世界へ導くための通り道を作ったのだろう、何者の干渉も受けないな。リーパーが現れなかったのはそのためだろう」

 

 メタナイトの言うことはあくまで憶測に過ぎない。

 だが、それが間違っているか確かめる術など今のS.O.N.G.には無い。

 故に、今はその憶測で納得する他なかった。

 

「では、装者でない筈のあなたたちが通れたのは何故なのでしょうか……?」

 

 そこでエルフナインは、新たな疑問を提示する。

 

「それは私にもよくわからん。アナザーディメンションが及ぼした影響で特性が変化したのか、今回の異変は君たち装者だけでは解決出来ないと判断されたのか……」

 

 メタナイトは更に憶測を並べるが、結局はっきりとした答えは出ない。

 

「うむ、取り敢えずギャラルホルンの変化については追々調べて行くとしよう。それはさて置きだ―――」

 

 そう言うと弦十郎は、カービィの方を向く。

 

「カービィくん、君はまたしても俺の許可無く勝手なことをしたな」

「ぽよっ!?」

 

 カービィは驚き、思わず跳び上がってしまう。

 

「おまけに君は並行世界で重症を負ったそうじゃないか?結果的にすぐ回復したとはいえ、これは黙認出来んな」

「ぽよぉ……」

 

 カービィは蹲ってしまう。

 

 並行世界を渡ったことに関しては、ワドルディも同罪と思われるだろう。

 だが、彼はカービィが並行世界へ移動した後弦十郎から特別な許可を得て、装者たちと同伴することを条件に行動していたのだ。

 故に、ワドルディへのお咎めはない。

 

「だが、今回の件で一連の事態の黒幕が並行世界間で動き回っていることがわかった。そして、その黒幕こそが君たちが元の星に帰るための鍵となり得る可能性も充分にある」

 

 故に、と弦十郎は言葉を続ける。

 

「今後は、ある程度の範囲内での行動は許可しよう。ただし、今回の件に関することのみ、そして必ず装者の誰かを同伴すること、これが条件だ。良いな?」

「ぽよ!?はぁーい!」

 

 カービィは行動の制限が緩和されたことに心から喜びを感じる。

 条件の範囲内とは言え、これでようやく響たちと一緒に戦えるのだ。

 

「が、それはそれとして今回の件に関しては処罰を下さなければならんな」

「ぽよっ!?」

 

 喜んでいたカービィが一転、嫌な予感を感じ始める。

 

「カービィくん、君は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――しばらくの間おやつ抜きとする!」

「ぽよおぉぉぉぉぉっ!!」

 

 その言葉により、カービィは床に手を付き、ドーンと落ち込む。

 

 一方で、他の者たちはカービィを見て呆れていた。

 

「おいおっさん!そんなんで良いのかよ!?」

「まあ、今回は並行世界であったし、情報の漏洩の恐れはないだろう。

 それに、彼には良い処罰さ……」

 

 弦十郎の視線の先では、未だに落ち込むカービィと、それをそっと励ます響の姿が写っていた。

 

「ぽよ……」

「カービィ、辛いのはわかるけど、師匠はカービィのためを思ってくれてるんだよう……」

 

 そんな様子を見て、装者たちは勿論、メタナイトたちも呆れていた。

 

「カービィ……」

「まったく、あいつと言う奴は……」

「はっはっはっ、ザマアないなカービィ!」

 

 唯一一人だけ、デデデはカービィを見て嘲笑っていた。

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

 ―――人気の付かない暗闇の中

 "その者"は、不気味な笑みを浮かべていた。

 

「ア〜ア、折角ボクが首輪をプレゼントしてヤッタのにナアー」

 

 その者は愚痴を零しながらも、顔はニヤニヤと笑っている。

 

「でもまあイッカ。オカゲでこの世界のセイイブツってヤツが面白いってワカッタしネェ……」

 

 その笑みからは、とてつもない怪しさが溢れ出ていた。

 

「サア、また次の世界にイッてイタズラしてヤンナキャ。

 次はモット面白くしてヤンナイとネェ、ソシテそのまま世界を…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――支配してアゲルヨォ!




さて、敢えてききましょう。
あのイカサマ野郎がシンフォギア世界に来て悪巧みしないと思いますか……?


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幕間星 シンフォギア能力

捕捉回です。
今回はシンフォギアコピーについて説明します。


「それと、もう一つ気になることがあります」

 

 エルフナインはそう言い、話を切り出す。

 

「先ほどの報告にあった、カービィさんがシンフォギアの力を使ったことについてです」

『―――ッ』

 

 その言葉を聞き、先ほど並行世界へ赴いていた者たちが思い出す。

 ―――カービィがマリアとセレナのシンフォギアの力を使って戦ったことを

 

「そう言えば、…あれは何だったのだ?」

 

 全員が思っていた疑問を、翼が代表して言う。

 

「恐らくは、コピー能力の一種であろう……」

 

 そう言うのは、メタナイトだ。

 

「コピー能力って、確か……」

「吸い込んだ物の力をコピーする力だったデスよね?」

 

 調、切歌の順にそれぞれ言葉を出す。

 

「それでですが、その能力はマリアさんとセレナさん、それぞれお二人のギアに酷似していたのですね?」

「ええ、間違いないわ」

「そう言えば、見た目だけでなく歌や戦い方まで似ていたぞ」

 

 マリアの返答に、翼が付け加える。

 

「だとすると、気になる点がいくつかあります」

『……?』

 

 エルフナインの言葉に、全員が疑問を浮かべる。

 

「みなさんもご存知の通り、シンフォギアは本来適性が無いと使えません。それをカービィさんが使えたと言うことは―――」

「―――!カービィも適合者と言うことか!?」

 

 全員が悟ったことを、またしても翼が言う。

 

「おい待て、そもそもコイツ人間じゃねぇだろ。適性とかそんなのあるのか?」

「それは、…僕からはなんとも」

 

 クリスの言葉に、エルフナインはしょんぼりと答える。

 だが、カービィは全てが未知に包まれた存在だ。わからないのも無理はない。

 

「あなたたちは、何か知らないの?」

「すまぬ、我々もカービィの全てを知っている訳ではないのだ……」

 

 次にマリアがメタナイトに問う。

 だが、またしても明確な答えは出なかった。

 

「まあいずれにせよ、シンフォギアの力を使えた以上、カービィくんも適合者と見て良いだろう」

 

 弦十郎の言葉により、一同は一先ず納得するのであった。

 

「それで、他に気になることは?」

「はい、それはカービィさんのギアの形状やアームドギアがマリアさんやセレナさんと同じだったということです」

『……?』

 

 またしても全員が首を傾ける。

 

「シンフォギアの形状やアームドギアは、装者の心象によってその形状は異なります。それがカービィさんのは他の装者と同じ物を使っていた、それはつまり―――」

「カービィはシンフォギアの力だけでなく、装者の心象までコピーしているということね……」

 

 エルフナインが言おうとしたことを、今度はマリアが言う。

 

 だが、全員がその言葉に納得しきれずにいる。

 

「心象をコピー、そんなことが可能なのか?」

「正直、これは僕にもわかりません。メタナイトさんたちは何か知らないでしょうか?」

 

 エルフナインは再びメタナイトに問う。

 メタナイトには、その疑問について心当たりがあった。

 

「それは恐らく、フレンズハートの力が関係しているのだろう」

「フレンズハート?」

 

 メタナイトはあの時リーパーと戦ってる最中に、フレンズハートがセレナに宿ったのを見たことを思い出す。

 一方で、フレンズハートのことを知らない一同は、全員疑問を浮かべる。

 

「君たちなら見ただろう、カービィから出たあのハートを」

「―――!まさかあの時の!?」

 

 メタナイトの言葉で、件の三人はカービィから出たハートのことを思い出す。

 

「そう言えば、カービィがギアをコピーする時、必ずあのハートが現れていたわね」

 

 マリアが思い出し、言葉に出す。

 一方で、当事者でない者たちは首を傾ける。

 

「それで何なのだ、そのフレンズハートとは?」

 

 翼がメタナイトに問い、それにつられて全員がメタナイトを凝視する。

 

「フレンズハートとは、カービィの中に宿っている神の心の一部だ」

『―――ッ!?』

「神の、心の一部だとッ!?」

 

 メタナイトの言葉に、全員が驚愕してしまう。

 

「そんな物が、カービィの中に……」

「ああ、以前の冒険で色々とあってな」

 

 メタナイトは嘗ての()()()()との決戦を思い出しながら言う。

 一方で、装者たちはメタナイトが言う冒険が全く想像出来ず困惑してしまっている。

 

「それで、そのフレンズハートがどのように関係しているのでしょうか?」

 

 全員が愕然とする中、エルフナインはメタナイトに元々聞きたかったことを改めて問い直す。

 

「ああ、フレンズハートには宿主とその力の影響を受けた者の絆を繋げる力がある。それによりカービィは君たちと心の繋がりを生み出したのだろう」

「では、それを媒介にして装者の心象をコピーしたということなのですね?」

「ああ……」

 

 メタナイトの説明に、エルフナインはようやく納得出来たようだ。

 だが、一部の者は未だ良く理解出来てないようである。主に、響と切歌だ。

 

「えぇと、ようするにどういう事?」

「お前はいい加減理解力をつけろッ!」

「イダッ!?…殴ることないじゃんクリスちゃん」

 

 クリスは響の理解力の無さに、思わずいつもの勢いで殴る。

 

「まあ、とにかくカービィに新しい力が増えたってことだね!」

「はぁーい!」

「シンフォギアをコピーしたんだから、『シンフォギア能力』だね!」

 

 ワドルディはカービィの新たな力に喜ぶと同時に、名前を付ける。

 

「随分短絡的だな……」

「そうか?私は良いと思うぞ、シンフォギア能力」

「先輩……」

 

 ワドルディが付けたあまりにも安直な名前に、クリスは言葉を漏らす。

 だが、翼はそれに肯定的であり、思わずクリスは呆れてしまう。

 

「そう言えば、まだ気になることがある」

 

 そう言ったのは、マリアだ。

 

「あの後出て来た、あの星はなんだったのかしら?」

 

 マリアが思い出すのは、ダイナフェニックスとの決戦の際に現れた銀色の星形。

 カービィがマリアのギアからセレナのギアをコピーする際に、カービィが握っていたアームドギアが変化した物だ。

 更に、カービィが向こうの世界にて二度目のメディカルチェックを受ける際、能力が解除された時にも同じような物が現れていた。

 その後、その二つの星はどちらもカービィの中に溶け込むかのように入っていったのだ。

 

「あの星は、私とセレナのアームドギアから生まれていたわ。あの後、カービィの中に入ったのだけれど……?」

 

 マリアの言葉を聞き、エルフナインは思考の海に浸り始める。

 エルフナインの中で、ある予感がよぎり始めたのだ。

 

「アームドギアが変化し、それがカービィさんの中に……まさか―――ッ!?」

 

 すると、エルフナインは突然立ち上がり、険しい表情になる。

 

「すぐにカービィさんを検査させて下さい!」

「エルフナインちゃん……?」

 

 エルフナインの突然の変わり様に、一同は疑問を抱く。

 

「何か気になることがあるのか?」

「はい……」

「でも、向こうの世界で治療を受けた時は、もう大丈夫だったけど?」

「だが、それはあくまで応急処置にすぎなかった。詳しい検査まではしない内にカービィがすぐ元気になったから、そのまま戻って来たのだろう……」

「あっ……」

 

 翼の指摘で、響は気づいた。

 確かにその通りであった。カービィがあまりに早くもいつも通りの元気な姿に戻ったため、見落としていたのだ。

 

「とにかく、直ちに検査をさせて下さい!もしかしたら、カービィさんは……」

「わかった、許可しよう。だから少し落ち着け」

 

 そうして、弦十郎の言葉によりほんの少しばかり冷静になったエルフナインは、カービィを連れて医療室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

「検査が完了しました……」

 

 医療室から出てきたエルフナインは、未だ険しい表情のまま出てきた。

 

「それで、どうだったの?」

 

 その様子から嫌な予感がする中、マリアが問いかける。

 

「それなのですが、カービィさんの体内から、聖遺物の反応があったんです」

「それって……?」

「まだはっきりとはわかりません。けど、もしかしたら今のカービィさんは、()()()()に近い状態かもしれないんです」

『―――ッ!?』

 

 その途端、全員に衝撃が走る。

 

 ―――融合症例

 

 それは、嘗ての響がそうであった、聖遺物が肉体に文字通り融合した状態のこと。

 聖遺物の力をより引き出すことが可能となるが、その代償に聖遺物に体内の器官を侵食され、やがてその者は死へと至る。

 

 カービィが今まさにそのようになっていると言うのだ。同様せずにはいられない。

 

「カービィは、大丈夫なのッ!?」

 

 響は顔を険しくしてエルフナインに問いかける。

 嘗て自身も融合症例だった故に、その危険性は身を以って理解していた。

 今自分の友だちが、過去の自分と同じ目にあっているかもしれないのだ。

 

「それが、確かにカービィさんから聖遺物の反応がありました。ですが、それがカービィさんの体のどこにあるのかがわからないんです……」

「……へ?」

 

 エルフナインの言うことが理解出来ず、響は思わず変な声を出してしまう。

 

「おい、一体どういうことだよッ!?」

 

 クリスが苛立ちを浮かべながら、エルフナインに詰め寄る。

 

「いくら検査をしても、聖遺物の反応は捕捉出来るのに、その反応の出所が特定出来ないんです。そもそもカービィさんの身体の構造自体が全くの謎で、何がどうなっているのかまったく……」

「んだよそりゃ……」

 

 エルフナインは、やるせない気持ちで答えた。

 

「お前らはどうなんだ!?お前らアイツと長い付き合いなんだろ!?何か知ってんじゃねぇのか!?」

「……すまないが、先ほども言ったよう我々もカービィの全てを知っている訳ではない」

「―――くッ」

「雪音……」

 

 クリスの中で、行き場のない苛立ちが駆け巡る。

 この場の誰もが悪い訳ではない。どうしようもないことを怒ったって仕方がない。

 頭の中ではわかっていても、苛立ちは消えることはない。

 

「だが、カービィに関しては問題ない筈だ」

 

 それを言ったのは、メタナイトだ。

 

 その言葉を聞いた途端、クリスの何かが弾けた。

 そしてそのまま、メタナイトの頭をがっしり掴んだ。

 

「―――ッ!?雪音!!」

「何勝手なこと言ってんだよテメェッ!問題ないだぁッ、アイツのことわかってんのかッ!?アイツはあのままじゃ死ぬかもしれねぇんだぞッ!」

「―――そこまでにしなさいッ!」

 

 マリアが止めに入り、クリスの怒号は止む。

 溜まっていた怒りを粗方出したクリスは、メタナイトを掴んでいた手を放す。

 メタナイトは、そのまま上手く床に着地した。

 

「君の優しさに感謝する。そして謝罪も、確かに私の発言はアイツの命を軽んじたものだったと捉えられてもおかしくない。すまなかった」

「…………」

 

 メタナイトは謝罪の言葉を送る。

 クリスはただそれを聞いて、何も言わなかった。

 

「だが、何度も癪に障るようかもしれないが、アイツに関しては問題ない」

 

 だが、こともあろうことか、メタナイトはまたしても先ほどと同じ言葉を口に出す。

 

「別に私はアイツの命を軽んじてる訳ではない。だが、私は知っているのさ、アイツはこんなことでくたばる奴ではないと」

「……どういうことだよ」

 

 溢れんばかりの怒りを抑えながら、クリスは話を聞き続ける。

 

「アイツには、昔から私たちにもわからない不思議な力があってな。今までもどんな危機に陥っても、アイツは必ずその不思議な力で乗り越えて来た。それが何なのかは、未だにわからない。だが、確かにアイツにはあるんだ、理屈などすっ飛ばすほどの、何を用いても解明出来ない"何か"がな」

 

 メタナイトの言うことには、全くクリスを納得させるほどの物などない。

 どう聞いても、何の根拠も理屈も何も無い。

 

「クリスちゃん、メタナイトくんの言うことを信じよう」

 

 そこで声をかけたのは、響だ。

 

「何言ってんだよお前、お前だってアイツが心配なんじゃねぇのかよ!?」

「うん、勿論心配だよ。だけどね、何故か私も大丈夫な気がするんだ」

「……は?」

 

 クリスは響の言ってることが理解出来なかった。

 

「私もまだカービィとは会ったばかりだし、カービィのことちゃんと知れた訳じゃないのかもしれない。けど、カービィを見てると、何故かメタナイトくんの言う通りな気がするんだ。だから、きっとカービィは大丈夫。それに私だって助かったんだもん、きっとカービィだって危なくなったら助かるよ。ううん、私たちが助けるもん!」

 

 響は笑顔で言い切る。

 響のあまりの能天気ぶりに、クリスの怒りは逆に呆れた末に鎮まっていた。

 

「ぽよっ!」

 

 すると、検査を終えたカービィが、一同の元に駆け寄って来た。

 

「あ、カービィ!検査お疲れ様」

「はぁーい」

 

 響はカービィを抱き抱え、二人は互いに笑顔を浮かべ合う。

 

 そんな二人の様子を、一同はそっと見守るのであった。

 




次の章は、現在内容をまとめ中なのでどうかもう少々お待ち下さい……()

クリスマス回も同時に見て下さい!


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幕間星 DDD

補足回その2
デデデがこの世界に来た経緯についてです。

それと今回いつもに比べて遥かに短いですが、どうかご了承下さい(土下座)


「そう言えば、まだわからないことがあったな」

 

 メタナイトはそう言うと、デデデに向き合う。

 

「デデデ大王、君はどうやってこの世界に来たんだ?」

「……ん?ああ、オレさまか?」

 

 そう、ダイナフェニックスの騒動で後を追われていたため、デデデがこの世界に来た理由を聞きそびれていたのだ。

 

「わからん!いつも通り城の中で食事をしてたら突然宙に穴が開きそのまま吸い込まれた!そして気づけばここにいたのだ!」

「なるほど、私たちと同じような経緯か……」

 

 メタナイトはデデデの言葉を聞き、更に頭を悩ませる。

 

「となると、余計に黒幕の意図がわからん。一体何のために我々を呼び寄せたのだ……?」

 

 メタナイトが考えていたのは、黒幕が何故自分たちをこの世界に呼び寄せたのかである。

 一体自分たちは黒幕にとってどう言う必要性があるのか、未だ読めない。

 

 一方で、デデデはメタナイトが考え込んでることなど気にも止めず、尚も話し続ける。

 

「最初は訳がわからずあたふたしたもんだ!そしたらコイツらがダイナブレイドと戦っているのと偶然鉢合わせてな、あまりにも不甲斐ない戦いぶりだったからオレさまが加勢してやったのだ!」

「―――んだとッ!?」

 

 横から話を聞いていたクリスが、デデデの言葉に苛つき詰め寄る。

 

「そしたらオレさまをこんな所へ閉じ込めたのだ!碌に食事も出さんし、どうなっているんだここは!」

「―――ッ!お前な―――!」

「クリスちゃん落ち着いて!」

 

 デデデのまったく遠慮のない言葉に苛立ちを募らせるクリス。

 だが、その苛立ちを解き放つ前に、響がそれを宥める。

 

「大王さま、そんな風に言うのはよくないですよ」

「えぇい黙れッ!オレさまは大王なんだぞッ!その上この外に出せないとはどう言うことだッ!?」

「この星ではボクたちは物珍しいんです!だからボクたちが狙われないためにもなるべくここにいた方が良いんですよ!」

「黙れ!このオレさまを狙うヤツなど、オレさまが直々に返り討ちにしてくれるわッ!」

「大王さまーっ!」

 

 いくら言ってもまったくデデデは収まる様子はない。

 そんなデデデの対応に追われ、ワドルディは困り果ててしまう。

 

「そう言えば、私もあなたに聞きたいことがある」

 

 そこで新たに声をあげるのは、調だ。

 

「あなたは以前大王でありながら国に住む人々から食べ物を奪った、とバンダナワドルディから聞いたのだけれど……」

「あ?あぁ、そう言えば昔にそんなことしたこともあったな」

『―――ッ!?』

 

 調の問いに、デデデはなんの躊躇いもなく平然と答えた。全く様子を変えることなく。

 

「どうしてそんなことをッ!?」

「酷いのデス!大王さまがやることじゃないのデスッ!」

 

 調、切歌の順に問う。

 デデデの犯した所業は、とても国民の上に立つべき大王としてとてもあるまじき姿だ。

 更に、過去に権力者によって虐げられた経験のある二人にとって、とても許せる筈が無かった。

 

「美味いものがたらふく食いたかったから、ただそれだけだ」

『―――ッ!?』

 

 一同は沈黙する。

 デデデが放ったのは、なんともわかりやすく、なんとも浅はかな理由。

 それは、彼女たちの内なるものに火を付けるには充分なものであった。

 

「そんな、それだけの理由で……」

「なんであなたみたいなのが大王なのッ!?あなたみたいな、人をなんとも思わない、ただ権力を振り翳すだけのやつばかりが、どうして―――ッ!?」

「―――調ッ!」

「…………」

 

 熱くてなっていた調を、マリアが強く叱ることで宥める。

 調は一旦冷静になり、言葉を止めた。

 

 一方で、デデデはただ黙っている。

 調は、そんな彼の姿を米国政府の者たちと重ねていた。

 

「実を言うとな、彼は大王であって大王ではない」

「……へ?」

 

 そう言ったのは、メタナイトだ。

 彼の言うことの意味が理解出来ない調は、思わず声を漏らしてしまう。

 

「彼は、我々の故郷でもかなりの実力を持っていたが故に上に登りついただけの、名ばかりの大王なんだ」

「……えッ!?」

 

 思わぬ事実に調は勿論、その場の全員が驚く。

 

 そう、デデデは大王を名乗っているが、あくまでそれらしい身分を取り繕ってるだけの"自称大王"なのだ。

 

「…だとすると、君たちの故郷の政治を担っているのは、彼でないなら誰なんだ?」

「そもそも我々の故郷に政治と言う物は存在しない。国民は皆おとなしく平和を愛している。故に、我々の故郷では争いが全く起こらない。誰かが国民の上に立って法を強いる必要がないんだ」

『…………』

 

 あまりの話に、全員がまたしても沈黙してしまう。

 メタナイトの言うことは、一同にとってとても想像の出来ない物だ。政治が必要のない国など。

 

「けど、カービィは故郷の危機を何度も救ったんだよね?」

「ああ、いずれも外宇宙からの侵略者による物ばかりだったがな」

『…………』

 

 もはや一同は何も言えなくなってしまう。

 あまりにも話の次元が飛びすぎている。

 もはや自分たちの基準がおかしくなるほどに。

 

「だが、デデデも変わったものだ」

『……?』

 

 全員が唖然とする中、メタナイトが発したのは、デデデへのフォローだ。

 

「確かに彼は過去に悪虐の限りを尽くしたのは事実だ。だが、少なくとも私からすれば彼は充分償ったさ」

「え……?」

 

 先ほどまでデデデに対し怒りを燃やしていた調だが、メタナイトの言葉に首を傾ける。

 

「彼はかつてカービィに負け、それ以来は悪行はしなくなった。時には我々の星のために共に戦ったこともあった。実際私もカービィも、彼に何度も助けられたものだ」

「…………」

 

 メタナイトの言うことを、にわかには信じられない。

 やはり調の中では一度彼をかつて自身たちを虐げた者たちと重ねてしまったこともあり、彼に対する見方を簡単に変えることは出来ない。

 

 メタナイトが嘘を言っているようには見えない。もしかしたら、自身の勝手な先入観でデデデを見てしまっているだけなのかもしれない。

 

 だが、いくら頭の中でそう考えても、胸の奥から湧くモヤモヤが、それをすぐ塗り潰してしまう。

 

「まあ、今はすぐ信じることが出来なくても無理は無い。だが、少なくとも今の彼は決して君たちに害を成すことはない。私が保証する」

「…………」

「調……?」

 

 調はただ黙っていることしか出来なかった。

 確かに少しイラつく態度を取るが、デデデは自身たちがダイナフェニックスの幻影との戦いの際に加勢してくれた。その上、強引ではあったが並行世界へ赴き仲間たちと共に戦ってくれた。

 彼がいなければ、今回の事件は収束出来なかったかもしれない。

 

 調はデデデの前へと出て、彼に視線を合わせる。

 

「なんだ……?」

 

 調の行動に疑問を感じたデデデは、彼女と目線を合わせて問う。

 

「さっきは流石に感情的になりすぎた。でも、私はあなたを信じられるまで謝らない。でも、これだけは言っておく。

 

 

 ―――これからよろしく」

「……ふんっ」

 

 デデデは素っ気なく声を出し、調から目線を外しその場から離れていく。

 

「え?あ、ちょっと大王さまぁ〜!」

 

 ワドルディは、そんな彼の背中を追いかけて行くのであった。




一応言っておきますが、多分これが今年最後の更新だと思います。

第3章はまだいつ投稿できるかわかりませんが、どうかお待ち下さいませ。


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月魄の絡める契りの糸
二十星目 新たなる異変


今年初の投稿です。
皆様、大変ながらくお待たさせして本当に申し訳ございませんでした!!(泣)


 とある日の本部。

 今日は、装者の一部は出張任務にいっているため何人かが欠けている。

 残ったのは翼、クリス、未来の三人のみ。

 

「ふッ、やるな!」

「そちらこそ、たぁッ!」

 

 そんな中、訓練室にて翼とメタナイトは互いに剣を交えていた。

 

 メタナイトは常に己を磨き続けるために鍛錬を怠らない。

 故に弦十郎に頼んで訓練室の使用を要請したのだ。

 

 弦十郎はこれにすぐ許可を出した。

 これからは限定的とは言え彼らは共に戦う仲間だ。ならば仲間として鍛錬くらいは自由にさせてやらねばと思ったのである。

 

 そんな時、メタナイトの相手として名乗りを挙げたのが翼だ。

 メタナイトも自身と同じ剣士と言うこともあり、是非とも手合わせしたいと思っていたのである。

 

「まったく嬉しい限りだ、君ほどのやり手の剣士と剣を交えられるのはッ!」

「あぁ、こちらとて同じだッ!」

 

 言葉を交わしながらも、剣をぶつけ合う。

 両者とも目にも止まらぬ速さで剣を振るい、刃が交わる度に火花を散らす。

 

 互いに一歩も譲らず、詰め合う。

 

「はあッ!」

「せやあッ!」

 

 両者共に再び剣を振り下ろそうとしたその時、

 

 ブォーンッ!ブォーンッ!

 

『ッ!?』

 

 突如鳴り響いたアラートの音により、両者ともに剣を止める。

 すぐさま翼は通信機を取り出し、弦十郎に繋ぐ。

 

「何事ですかッ!?」

『ギャラルホルンのアラートだッ!至急発令室に集まってくれ!』

「了解!」

 

 翼の様子から、メタナイトも只事ではないのを悟った。

 

「どうやら並みならぬ事態のようだな」

「あぁ、ともかく共に来て欲しい」

「了解した」

 

 かくして二人は発令室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

 発令室には既にクリス、未来、そしてカービィたちが集まっていた。

 

「それでおっさん、一体何だってんだよ?」

「うむ、またしてもギャラルホルンが以前と同じ反応を示した」

 

 ギャラルホルン。

 その単語が出てきただけで全員瞬時に悟った。

 再び並行世界での事件だと。

 

「以前と同じということは、またしてもディメンションホール絡みか?」

「恐らくは……」

 

 その中で、メタナイトは"以前と同じ反応"と言う部分に反応する。

 それはつまり、この異変の元凶が関係していると言うことだからだ。

 

「そこでだ、君たちに異変の起きた並行世界の調査を頼みたい。勿論、今回はカービィくんたちの同行も許可する」

 

 許可を貰ったカービィたちは、新たなる戦いに向けてそれぞれ心意気を整える。

 

「あの、私も行かせてくれませんか?」

「ん、未来くんもか?何故これまた……」

 

 そこで未来が自身も同行することを要請する。

 

 だが、翼とクリスがいる上、カービィたちも戦力となってくれる。

 さらに未来は装者の中で一番経験が浅い。わざわざ無理に行くこともない筈だ。

 故に、弦十郎は問いかけた。未来の真意を聞くために。

 

「響がいない間、カービィは私が守らなくちゃいけないから……ッ!」

 

 響は出張任務に行く前、未来にあることを頼んでいた。

 カービィを守ってと。

 

 前回のメディカルチェックから、カービィが融合症例に近い状態になってしまったことは未来にも伝わっていた。

 

 嘗て響が融合症例になってしまった際、未来が纏う神獣鏡(シェンショウジン)の輝きによってことなきを得た。

 いざと言う時は、神獣鏡の力を使えばカービィを救える。

 故に未来は決心していたのだ。

 いざと言う時は、カービィは自分が救うと。

 

 未来にとって響は自身の大切なお日様のような存在。

 響の友達であるカービィもまた彼女にとって大切な存在だ。

 なんとしても守らなければならない。

 

「うむ、わかった。未来くんの同行を許可しよう」

「ありがとうございます!」

「ただし、無茶はするなよ」

「はい!」

 

 未来は返事をし、弦十郎はそっと笑みをみせる。

 そして一同はギャラルホルンの元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

 アァ、さっそく新しいオモチャを見つけちゃった♪

 

 これでまた面白いアソビができちゃうネ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ケド、これで来てくれるカナァ、カービィ?

 

 キミがいてくれなきゃ面白くならないんだヨォ……

 

 だからお願いだヨォ、……またボクと遊んでヨォ……

 

 ボクがまた悪いことをすれば、キミはまたボクを邪魔するんだロォ……

 

 

 

 

 またボクと遊んでヨォ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボクを一人にしないで……ヨォ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボクを寂しくさせないで…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボクを…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タス……ケテ…………

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

「ここが、今度の異変が起きた世界か……」

 

 ギャラルホルンのゲートを抜けた一同は、自身たちが着いた場所を確認する。

 そこは、特に変わった様子は見られない街であった。

 何の変わり様もない、至って平和な光景が広がっている。

 

「特になんともないですね」

「あぁ、だがギャラルホルンがアラートを発したということは何かあるはずだ。油断はするな」

 

 翼は全員に用心するよう言葉をかける。

 今は何もなさそうに見えても、ギャラルホルンが反応を示したと言うことは何か原因がある筈。今までそれは大抵が碌な物ではなかった。故に、充分に警戒する必要があるのだ。

 

 すると、

 

 –––––!!!

 

 程なくして異変は起こった。

 突如として辺りに巨大な悲鳴が鳴り響く。

 すぐさま一同は異変の根源を探すべく動き出す。

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

 あれから走り続け、ようやく悲鳴の根源の場所に辿り着く。

 

「–––––!?あれは」

「リーパー!」

 

 そこには、またしてもリーパーたちが人々を襲っていた。

 

「予感はしていたが、やはりまたコイツらか……」

「でも、リーパーぐらいならどうにかなる!」

「当たり前だ!オレさまが全部けちらしてやるわ!」

 

 メタナイトたちはそれぞれ武器を構え出す。

 

「我々も行くぞ!」

「はい!」

「あいよ!」

 

 装者三人もペンダントを握り、詠唱を奏でる。

 

 ––––– Imyuteus amenohabakiri tron

 ––––– Killter Ichaival tron

 ––––– Rei shen shou jing rei zizzl

 

 三人の身体を光が包み込み、ギアが纏われる。

 未来のギアは紫を基調とし、手にはアームドギアである扇子を握っている。

 

 かくして一同は戦闘に突入する

 

 

 

 

 –––––と思われたが、そこでまだカービィが無防備状態なのを思い出す。

 

「ほら、お前はコレを使え!」

「ぽよ!」

 

 デデデがそう言いながら取り出したのは、爆弾が描かれた黒い能力の素であった。

 

 カービィがそれを吸い込むと、頭に花火のような模様が描かれたとんがり帽子が現れる。

 さらにカービィの手には、導火線の付いた爆弾があった。

 

 ––––––コピー能力『ボム』

 

 カービィは手に持つ爆弾をリーパーの群れへと投与する。

 次の瞬間、爆弾が弾け数体のリーパーを吹き飛ばした。

 

 さらにカービィは今度はどこからともなく取り出した爆弾を両手に持ち、辺りに乱れ投げる。

 あちこちで爆弾が弾け、次々と花火が上がる。

 

「おい、もう少し慎重にやりやがれっ!」

「雪音こそいつも何でも吹き飛ばしてるだろう」

「あたしはあんな乱暴じゃねぇっ!なりふり構わずやるのはあのバカのほうだろ!」

 

 カービィの荒れ狂う爆弾の雨にクリスは怒鳴る。

 そこへ翼が口を挟み、クリスは頬を染めながら抗議する。

 

「はあっ!」

 

 傍らで言い合う二人を他所に、未来はアームドギアからビームを放ちリーパーたちを葬って行く。

 

「早く逃げて下さい!」

 

 時折逃げ遅れた人を庇いながらも、順調にリーパーたちを減らしていく。

 

「はあっ!」

「えいっ!」

「おりゃっ!」

 

 装者に続き、メタナイトたちもリーパーたちを倒していく。

 メタナイトが空中を滑空しながら華麗に切り裂き、ワドルディが巧みな槍捌きで翻弄し、デデデが豪快な一振りで蹴散らす。

 

 カービィはリーパーの群れを駆けながら、次々とリーパーたちとすれ違って行く。

 一見ただ通り過ぎているだけで、何もしてないように見え、リーパーたちも呆れている。

 

 だが、その頭にはいつのまにか爆弾が乗せられていた。

 次の瞬間、リーパーたちに乗せられた爆弾がほぼ同時に爆ぜ、辺りを黒い煙が覆う。

 

 –––––『おき逃げ爆弾』

 

 次々と数を減らしていく。だが、それでもリーパーの群れはまだ無くなる様子を見せない。

 

 

 

 

 

 

 

「おりゃあああああああっ!!!」

 

 –––––!?

 

 その時、突如としてどこからともなく来た"ナニカ"が巨大な地響きとともに地面を大いに揺らす。

 すると強大な衝撃波が広がり、辺りを砂埃が覆う。

 

 突然のことに困惑する一同。

 警戒心を向けながら砂埃が晴れるのを待つ。

 

 やがて砂埃が晴れると、そこには

 

 

 

 

 

 

 まるでヒーローを思わせる黒いスーツを見に纏った巨体が佇んでいた。

 

「……え?」

「……はっ?」

 

 顔はバイザーで覆われている。

 だが、その見覚えのある体格からそれが誰なのか理解するのは容易であった。

 

「まさかこんな所で君たちにあうとはな!」

「おっさん!」

 

 そう、そこにいたのは正しく『風鳴弦十郎』である。

 カービィたちは最初半信半疑であったが、その声を聞いたことにより確信した。

 

「……弦十郎司令殿、なのか?」

「うむ、君たちは一体?見るからに人間でないが……」

「え、ボクたちはさっき弦十郎さんとは会ったばかりじゃ……」

 

 まるで自分たちを初めて見たかのような反応にワドルディは首を傾ける。

 そこにメタナイトが説明を入れる。

 

「バンダナワドルディ、ここは私たちがさっきまでいたのとは別の世界だ。だからこの司令殿も私たちの知る司令殿ではない」

「あぁ、そっか」

 

 メタナイトの説明に納得し、ワドルディは手をポンと打つ。

 そう、彼はこの世界に生きる並行世界の風鳴弦十郎。これまで装者たちとも何度も共に戦って来た仲だが、今の彼らは知らないこと。

 

「だが、何故司令殿が前線に出てるのだ?もしやこの世界では組織の司令ではなく–––––」

「話はそこまでだ」

 

 疑問を言おうとしたメタナイトだが、弦十郎に遮られ話を止める。

 目の前にはまだリーパーたちがいる。まずはそちらを片付けるのが先決だ。

 未だ疑問を拭えないメタナイトだが、一先ず置いておくことにし改めて剣を構える。

 

「おいおっさん、出てきて大丈夫なのか?またフィーネに怒られんぞ」

「なに、そのための変装さ」

 

 変装というには趣味が出過ぎている気がするが、一旦それは置いといて敵を見据える。

 

「はあっ!」

 

 先に出たのはメタナイトだ。リーパーたちを切り裂き、時に翼を広げ空中を飛びながらリーパーたちを切り裂いていく。

 

「あんな成だが、彼らも戦えるのか」

「はい、彼らも我々と同じく戦士です。まだ少ないですが、我々と肩を並べて戦ってくれます!」

「そうか、ならば遠慮はいらんな!」

 

 そう言い、全員が踏み出しリーパーたちへ向かって行く。

 弦十郎は拳を振るい、リーパーたちを吹き飛ばす。その拳からは一回振るい毎にとてつもない威力を出していた。

 

(何故普段前線に出ない筈の司令殿があんな凄まじい力を?やはりこの世界では戦士なのか?)

 

 そんな弦十郎の様子を見ながら、メタナイトは先ほどの疑問をまたしても思い出していた。

 彼らの知る弦十郎は、普段は組織の司令として後方から指示を出しており決して前線に出ることなどない。故に多少の心得はあるにしても、戦闘には向いてない筈であった。

 

 だが、目の前の弦十郎は前線にて優位に戦っておりとても普段は後方にいる者とは思えない程の戦いぶりだ。

 故にメタナイトは思った、彼はきっとこの世界では司令ではなく前線に立つ戦士なのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、彼らは知らなかった。

 彼がこの世界でも司令であることを。

 そして自分たちがいた世界の司令もまた規格外の強さの持ち主であることを。




という訳で今回から先覚世界が舞台となります。
ちなみにアイツがヤンデレっぽくなってるのにはちゃんと理由がありますのでどうかご了承を……

今回のように更新が大幅に遅れることが今後も多々あると思われますが、どうか今後もこの作品をよろしくお願いします!!(土下座)


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二十一星目 奈落の使者

えぇ、この作品の読者の皆様へ。
誠に申し訳ございませんでした!(全力土下座)

詳しい謝罪の方は、後ほど活動報告にてあげたいと思っていますのでどうかしばしお待ちを。


 弦十郎が参戦して、それから数分と掛からずリーパーの群れは全滅寸前となった。

 

 それぞれが自身の武器を巧みに使いこなし、多彩な技を繰り出しリーパーは倒されていった。

 だが、やはり決めてとなったのはやはり弦十郎の存在である。

 拳を地面に叩けば地割れが起き、宙に震えば突風で吹き飛ばし、次々と繰り出されるその規格外の数々は、ここに集う戦力の中でも常を逸していた。

 おそらくリーパーを蹴散らした数では彼が最もであろう。

 

 別の世界の存在とは言え、これにはカービィの仲間たちも唖然としてしまっていた。

 

「こっちの世界の弦十郎さん、強いんだね……」

「我々が知る者とは別人とは言え、ここまでとは……」

 

 だが、そこで彼らの話をこっそり聞いていたクリスが言葉を漏らす。

 

「いや、実はあたしらの世界でもおっさんはバケモンだぞ」

「へ?それってどういう–––––」

 

 バンワドが言い切る前に、新たな異変は起こった。

 

 突如として虫の翅のような謎の音が響き渡る。

 それと同時に地面には影が現れた。

 やがて音が大きくなっていくと同時に、地面の影が大きくなっていく。

 そして程なくして"ソレ"は空から舞い降りた。

 

 まるで巨大な蝗を思わせるかのような躰に鬼の様な形相を浮かべる歪んだ人間の顔。尻の先からは蠍のような棘のある尾が生えている。

 

「な、なんだコイツは!?」

 

 突如として現れた異形を前に、一同は戦慄する。

 その視線からは知性を感じさせない、ただ何かに突き動かされるだけのような無機質さを感じさせる。まるで人形のような……

 

「……ッ!?来るぞ!」

 

メタナイトがそう言ったと同時に、一同は瞬時に後ずさる。

 彼女等がたった今までいた場所には、異形が地面へと爪を深く突き立てていた。

 

「なんだか知らないが、向こうはやる気のようだな!」

 

 改めて向き直り、全員が各々の武器を構え異形へと向き合う。

 それぞれ異形とリーパーを相手取りながらなんとか対応して行く。しかし、全てが自身たちを標的と定めている訳ではなかった。

 

「−−−!!コイツら一般人を狙って!?」

 

 そう、異形の数体は未だ逃げ遅れていた一般人へと牙を剥けていた。

 それを見て咄嗟に前へ出たのは、クリスだ。

 

「オラっ!こっちむきやがれ!」

 

 弾丸を数発放ち、異形を僅かに怯ませた。その隙にクリスは、一般人の前へと跳び込む。

 

「早く逃げろ!」

「……は、はいっ!」

 

 逃げたのを確認しながら、クリスは異形へさらに弾丸を浴びせる。だが、僅かに怯んではいるものの決定打には至らない。

 

「ぽよっ!」

 

 そこへカービィが横から爆弾を投げ込み、爆発の衝撃で異形は吹き飛んだ。

 

「ぽよ」

「わりぃ、助かった」

 

 カービィはクリスの無事を確認し、安堵する。

 だが、先程吹き飛ばされた筈の異形はダメージを負った様子を見せながらも、未だその牙を研ぎ澄ませていた。

 

「……ぽよ!?」

「マジかよ、アイツどんだけタフなんだよ……」

 

 他のメンバーもそれぞれ応戦しているが、みんなが謎の異形に手間取っている様子だ。

 いくら攻撃を与えても中々倒れない異形、加えて未だ鬱陶しく群れてくるリーパーたち。このままでは埒が開かない、なんとか打開策を撃たなければ−−−

 

「くっ、ならば!」

 

 そう思い動き出したのは、メタナイトだ。

 瞬間、メタナイトの身体が青い光を放つと同時に、閃光の如き速さで次々と敵を切り裂いて行く。

 

「なっ!?メタナイトの動きが……」

「アレは『メタクイック』、メタナイトの得意技だよ!」

 

 ―――『メタクイック』

 その速さは残像さえ残る程の速さは、翼の眼に深く焼き付いていた。

 まだほんの僅かながら、翼とメタナイトは共に剣を交えた仲。だが、彼の実力は幼少期から鍛錬を積んできた翼でさえ認める程の腕前であった。そんな彼が、さらに自身の知らない手の内を見せてきたのだ。翼の心の奥底では同じ剣士として彼への闘志が燃え上がっていた。

 

(なんとも驚かされる、彼とは是非ともまた手合わせ願いたいものだ。今度はこちらもまた更なる磨きを掛けてな、故に―――)

 

 刹那、翼は振り向き様に剣を横に薙ぎ払い自身に迫っていたリーパーたちを一刀両断にした。

 その刃は、彼女の闘志に応えるが如く研ぎ澄まされているようにも見える。

 

「防人として更なる高みへいたるべく、この刃を以って悪鬼を断つ!」

 

 続け様に翼は異形へと剣を振るう。その刃は先程よりも明らかに重みを増していた。

 

(ふっ、中々やるではないか。流石は私が見込んだだけのことはある)

 

 闘志を燃やしていたのは翼だけではない、メタナイトもまた同じであった。

 メタナイトは表面こそ誇り高き騎士、だがその内には戦いを生き甲斐とする武人の如き一面を秘めている。翼の闘志に感化され、メタナイトの武人の一面もまた熱く滾り始めていた。

 

(ならば、こちらも特大級のをお見せしよう!)

 

「全員離れろ、巻き込まれん内にな!」

「なっ、お前まさか―――!?」

 

 デデデが言い切る前にメタナイトはソレを始めてしまう。

 突然宙に浮き始めたと思えば、なんとメタナイトは目にも止まらぬ速さで回転しだしたのだ。

 ソレを知らない装者たちは一体何が始まるのかと困惑しだす。だが、ソレがなんなのかを知っていたカービィたちは冷や汗を流しながら即座に声を上げる。

 

「マズイ、お前ら全員離れろ!」

「おいっ、いきなりなんだ?一体何が始ま―――」

「今話してる場合じゃないんだ!メタナイトのアレは……」

 

 すると今度は、回転を増していくメタナイトを中心に突然地面が大きく揺れ始める。その衝撃で、地面が一部割れ始めていた。

 さらにはなんと、メタナイトを中心に巨大な赤い竜巻が起こり始めたではないか。

 

「ぽよぽよ!」

「はっ!?んだありゃ!」

「それよりも全員衝撃に備えるんだ!」

 

 未だに困惑しながらも、装者たちは全員が本能的に悟った。

 ―――アレは不味い、と。

 

「はぁっ!!」

 

 すると突然、弦十郎は拳を深く地面に打ち込んだ。

 今度はカービィたちが困惑し出すが、次の瞬間なんと拳の余波で地面の一部が大きく浮き上がり、自身たちを守る盾と化したのだ。

 

「さぁ、早く伏せるんだ!」

「え、えぇぇぇぇ!!??」

 

 弦十郎がやってのけた奇想天外な行動にバンワドは驚きのあまり叫んでしまう。だが、全員が伏せ始めたのを見て咄嗟に我に返り自身も伏せ始める。

 

「受けるがいい、異形共よ!」

 

 そしてメタナイトは、すでに竜巻に巻き込まれていた異形やリーパーたちを余所に、竜巻の余波で周囲を吹き飛ばし始めた。

 

―――『マッハトルネイド』

 

 周囲にいた異形やリーパーたちは瞬く間に吹き飛ばされ、一瞬にして空中で塵となった。

 

「ふう、少し熱くなりすぎてしまったか……」

 

 見事大技を決めたメタナイトは、静かに降りながら余波で傷だらけとなった地面へと足を付けた。

 

「少しどころではないわ、俺さまたちを巻き込むつもりか!」

 

 そこへ苛立ちを見せながらデデデが駆け寄り抗議し出す。

 他の者たちも弦十郎が咄嗟に取った行動により無事であった。

 

「あぁ、すまん。久々に血の気が騒いでしまってな」

「キサマ!すまんで済むと思っているのか!帰ったらキサマが隠し持っているチョコレートパフェをもらうからな!」

「なっ、キサマ何故それを!?アレは―――」

 

 次第に何やら漫才じみてきたやりとりを見せて来る二人。

 傍で聞いていた者たちは突然出てきたチョコレートパフェなる謎の用語が少し気になる一同であったが、一先ずそれを聞き流し二人に声をかけようとしたその時であった。

 

 ―――キャアァァァ!!!

 

『―――ッ!?』

 

 突如として大勢の悲鳴が全員の耳に鳴り響いた。声の大きさから恐らくここからそう遠くない場所だと推測出来る。

 

「どうやらまだ終わってないようだな!」

「あぁ、行くぞ!防人の務めを全うする」

 

 かくして一同は悲鳴の発声源へと駆けつけていった。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

「なんなのネ、アイツ等は……」

 

 "彼"は苛立っていた。自身が操る使者たちが得体の知れない連中にことごとくやられてしまったためだ。

 

「許さないのネ、ワタシのシメイを邪魔するヤツらは絶対に……!」

 

 彼は思わぬ邪魔者に怒りを顕にしながらも、再び使者たちを各地に繰り出す。全ては自身に課せられた"使命"のため。

 

「ケガレた奴らはゼッタイに許さないのネ、スベては綺麗にトリノゾかないといけないのネ、それがワタシが"女王様"に与えられた使命なのネ……!」

 

 ―――女王様

 それこそが彼が使命を全うする理由であり、自身の全てである。

 女王様に尽くすことこそが自身の生きる意味、絶対に期待を裏切ることは許されない。それだけが今の彼を突き動かす全てとなっていた。

 

「本当にソレがキミのスベキことなのサ?」

「……ッ!?ダレなのネ!?」

 

 突然聞こえてきた知らない声、すぐさま声の主に問いだすが返事は返ってこない。

 

「女王様にツカえることがそんなに大事なのサ?本当にキミにはソレ以外何もないのサ?何か変だと思ったこと……ないのサ?」

「―――ッ!うるさい、うるさいのネ!!」

 

 どこか自分を小馬鹿にしてるような喋り方、いつまでも姿を現さない声の主に彼の苛立ちはますます募っていく。

 

「ワタシは女王様が全てなのネ!女王様がいたからこそ今のワタシがいるのネ!ワタシには最初から女王様しかいないのネ!」

 

 苛立ちを抑えきれず、彼は怒声を響かせる。

 未だ収まらない苛立ちを抱えながらも、いきなり怒声を上げたことで息切れを起こしてしまう。

 

「ふーん、そんなに女王様が大事なのサ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 けどその女王様は、本当に"アイツ"なのサ?」

「……?」

 

 その言葉を聞いた途端、彼の中で突然謎の違和感がで初める。

 すると頭の中が次第に訳のわからないことになり出した。自分は女王様に仕えることこそ全て、女王様の命令は絶対、女王様は美シイ……、女王様…………、女…オウ……サマ………………

 

 

 

 

セ……ニア…………マ

 

「ッ!?なんなのネ!?一体なんなのネこれは―――ッ!!??」

 

 瞬間、彼は頭を抱え始める。

 頭の中で色んなことがゴチャゴチャになり、もう何がなんなのかわからなくなっていた。

 

『……ラ……ザ、タ…………ンザ』

「―――ッ!?あっ、アッアァァァァ!!」

 

 すると今度は、脳裏からほんの僅かながら声が聞こえてく。

 なんとも儚げな様子で、今にも散ってしまいそうな声。だが何故だろうか、彼はこの声がほんのり暖かく感じた。

 この声は誰なのか、全くわからない筈なのに何故だが物凄く暖かくて、懐かしくて、ずっと前から大事にしていたような……

 

「アッ!アァァァァァァァッ!!」

 

 瞬間、彼の頭に激しい痛みが駆け巡り、あまりの痛さに大声を上げてしまう。

 痛みにもがきながらぐちゃぐちゃに頭を掻きむしり、悲痛な声を止められずにはいられなかった。

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

「……ぽよ?」

 

 謎の異形から人々を守りつつ戦っていたカービィたちであったが、突如として彼等はまたしても困惑する自体となる。

 それもその筈、謎の異形が突然として動きを止めたのだから。

 

「止まっただと?」

「一体どうなってやがんだ……?」

 

 先程までなんとか異形を対処していた彼等だが、決して彼等が押していた訳ではない。むしろ、異形のタフさに加え数の多さにより彼等の方が危うく追い込まれる程にまでなっていた。

 だと言うのに、突然として異形は動きを一斉に止めた。この隙になんとか逃げ遅れた人々を逃しつつも、一同は警戒を解かずにいた。

 

「ぽよぉ?」

「あ、よせバカピンク球!」

 

 だが、なんとカービィが突然異形に近づきこともあろうか異形をツンツンと触り始めてしまった。

 彼の純真無垢な心故に出てしまった行動だが、あまりにも不用心な行動にクリスは思わずカービィに叫ぶ。

 

「ぽよっ!?」

「―――ッ!?……消えた?」

 

 そして今度は、異形たちが突然光出したかと思えば瞬く間にその姿を消してしまった。街中を埋め尽くす程いたであろう異形たちの姿は、もう一匹も見えなくなっていた。

 

「終わった、のか……?」

「なんだったんだよ一体……」

 

 一先ず騒動は一時収まったものの、一同の困惑は解けずにいた。

 一体あの異形はなんだったのか、何故突然消えたのか、各々が多くの疑問を抱えたまま、戦闘は幕を閉じた。

 

「……ん?なんだこれ」

 

 そんな中でクリスだけがある物を見つける。それは、四角い折りたたみ式の機械のような物であった。異様な雰囲気を漂わせながらも、クリスはふと折りたたまれた機械を開いた。

 

「―――ッ!?これは……」

 

 そこに写されていた物を見た途端、クリスは戦慄した。




久々の投稿でかなり不安になっております。
ですが私はどのような罵詈雑言でも受け止めるおつもりでございます。

所で皆様、『星のカービィディスカバリー』は楽しんでおられますでしょうか?私はつい先日前に100%クリアいたしました。ネタバレ防止のためあまり深くは言いませんが、ただ一言。……タマコロェ()

次回もなるべく早く投稿できるよう努力いたしますので、どうかしばしお待ちを。


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番外編
聖夜の星 2020


クリスマス回でございます!
思いの他長くなっちゃいました……


「ふふふーん」

 

 響と未来が住む寮の部屋。

 今日の響はやけにご機嫌な様子である。微笑みを浮かべながら愉快に鼻歌を口ずさむその様子は、誰から見てもウキウキしていることが明白であった。

 

「響、やけにご機嫌だね」

「だって、明日はいよいよクリスマスだもん!」

 

 そう、響がご機嫌な理由はそれであった。

 明日は毎年人々が盛り上がる特大イベント『クリスマス』だ。辺り一面が飾り付けで煌びやかになり、子どもから大人まで世界中の人々がご馳走やプレゼントを前に最高に盛り上がる日。

 響もまた、今年の終わりが近づいた頃からクリスマスを楽しみにしていた。

 

 さらに、彼女が明日を楽しみにしているのには明日が今までの中でも最高に特別な日となりうる理由があった。

 

「それに何より、明日はカービィたちと一緒にパーティーが出来るんだもん!」

「本当、弦十郎さんたちに感謝しないとね」

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

 時は数日前まで遡る。

 S.O.N.G.本部では、今日も装者たちは相変わらず厳しい訓練を終え休息を得ていた。その中には勿論カービィたちもいる。

 

「あ、そう言えばもうすぐクリスマスだね!」

 

 全員が各々の休憩を取っている中、突然として響がそのようなことを言い出した。

 

「ほう、この星にもクリスマスの文化があるのか……」

「む、と言うことはポップスターでも?」

「ああ、毎年冬に行われるのだ」

「そこもこの星と同じなのだな……」

 

 翼とメタナイトは、そんな会話をする。

 二人の話を聞き、カービィたちも普段自分たちが毎年この時期にクリスマスで盛り上がっていたのを思い出した。

 

「そうだ!どうせだから、みんなでクリスマスパーティーやろうよ!」

 

 すると、またしても響は唐突なことを言い出した。

 響の言葉には、当然ながら一同が唖然としてしまっている。

 

「は?突拍子に何言ってんだお前?」

「だって折角のクリスマスだよ?それに今年はカービィたちだっているんだよ?みんなでパァーと盛り上がりたいじゃん!」

「いや、お前なぁ……」

 

 目の前ではしゃぐ響に、クリスは呆れ始める。

 いきなりクリスマスパーティーと言われても、そんなすぐに賛成とはいかない。毎度のことながらクリスは響の見切り発車な発言に頭を抱えた。

 

「ぽよ、ぽよぽよ!」

 

 すると、今度はカービィまでもが響に乗じてはしゃぎ始めた。

 

「えっと、カービィもやりたいみたい、クリスマスパーティー……」

「本当!ほら、カービィだってやりたいって言ってるんだからやろうよ!」

「お前らなあ……」

 

 目の前ではしゃぐ者が増え、クリスも呆れの末何も言えなくなる。

 

「待て、パーティーをやるとは言っても、どこでやると言うのだ?」

「……あっ」

 

 メタナイトの言葉で、響は思わず黙ってしまう。

 

「我々は弦十郎殿の指示で迂闊にはここを出られないぞ」

「うぅ……」

 

 彼の指摘が鋭く刺さり、響は蹲ってしまった。

 

「あ、だったら本部(ここ)でやるのはどうデスか?」

 

 そう提案したのは切歌であった。

 

「切ちゃん……?」

「ここでならみんなでパーティー出来るデスよ!」

「けど、弦十郎さんが許可してくれるかなあ?」

「うぅ……!」

 

 調の指摘に、今度は蹲った。

 

「だが、聞いて見る価値はあるのではないか?」

 

 そう言ったのは、意外なことに翼である。

 

「そうね、聞いてみるだけ聞いてみるのも良いんじゃない?」

 

 さらにマリアまでもが賛同の声を上げた。

 

「そうだよ!師匠は優しいからきっとやらせてくれるよ!」

 

 すると、先ほどまで蹲ってた筈の響が一瞬で立ち直る。

 

「それじゃ早速お願いして来るねぇー!」

「あ、おい待てバカ!」

 

 かくして、響は弦十郎の元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

「うむ、クリスマスパーティーか……」

「はい、ここでやらせてくれませんか……?」

 

 弦十郎は考えた末、答えを出す。

 

「わかった、許可しよう」

「本当ですか!?やったー!」

 

 響はまたしても大はしゃぎし出した。

 

「おい、本当にいいのかオッサン?」

「ああ、君たちはいつも人類のために戦ってくれているんだ、そのくらいの要望は叶えてやるさ」

 

 それに、と弦十郎は続ける。

 

「カービィくんたちにだって、助けてもらっている上に、半ばここに閉じ込めてしまっているからな、クリスマスぐらいみんなで楽しんで欲しいのさ」

 

 弦十郎の言葉に、クリスも納得するのであった。

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

メリークリスマス!

 

 クリスマス当日、S.O.N.G.本部の一室にて、クリスマスパーティーが始まった。

 

 部屋には、巨大なクリスマスツリーに、煌びやかな飾り付けがある。

 テーブルの上には、沢山のご馳走が並んでいた。

 

「ぽよぉ〜」

「コラ!カービィ、また一人で全部食べたらダメだからね!」

「……はぁーい」

 

 ご馳走を前にして涎を垂らすカービィであったが、響に釘を刺される。

 カービィは響に渋々返事をするのであった。

 

「…………」

「……なあ、メタナイト」

「ん、どうした?」

「今、どうやって仮面をつけたままケーキを食べたんだ」

「…………」

「あ、おい……」

 

 翼が問うと、メタナイトは何故かその場から離れてしまった。

 

「あ、それはオレさまが狙ってたチキンだぞ!」

「へへん、こう言うのは早い者勝ちなんデスよ!」

「ええい、黙れ!いいからそれをオレさまに返せ!」

「これはあたしのなのデス!」

 

 デデデと切歌は、何やらチキンの取り合いで揉めているようだ。

 

「こら二人とも、喧嘩はよしなさい!」

「大王さま、チキンならまだたくさんありますから!」

「切ちゃんも落ち着いて!」

 

 そんな二人を、マリアとワドルディと調が宥めるのであった。

 

 何だかんだあり、みんなそれぞれパーティーを楽しむのであった。

 そんな時―――

 

「はーい、それじゃ本日のメインイベントー!」

『―――?』

 

 何やら響が、いつの間にかマイクを持ち、全員の前で言い出す。

 

「今日は師匠に頼んで特別にこちらを用意してもらいましたー!」

 

 すると、どこから持って来たのやら、響の隣には布で覆い隠された何かがあった。

 

 一体何が始まるのかと、全員が思う中響はまたしても言い出す。

 

「本日の大目玉は、……こちら!」

 

 そう言うと、響は何かを覆っていた布を一瞬で剥がす。

 そこにあったのは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()であった。

 

「と言う訳で、これよりS.O.N.G.クリスマスカラオケ大会を開催しま〜す!」

―――ッ!?

 

 その言葉にとてつもない寒気が迸ったのは、メタナイト、ワドルディ、デデデの三人である。

 

 ―――カラオケ

 

 この単語に、三人はこれまで以上にないほどの危機感を感じていた。

 その元凶に目を向けると―――

 

「ぽよ!ぽよぽよ!」

 

 ()()()()()()であった。

 

「それじゃあ、最初はクリスちゃんに唄ってもらいまーす!」

「……はッ!?何勝手に決めてんだおいッ!?」

 

 クリスが響と言い合う。

 そんな中、三人は密かに話し合い始めた。

 

(君たち、わかっているな……?)

(キサマに言われるまでもない)

(うん、みんなのクリスマスを守るためだもんね!)

 

 三人の思いは一つであった。これまでにないほどに。

 

(いいか、絶対カービィにマイクを握らせるな!)

(おう!)

(うん!)

 

 かくして、三人は硬く誓い合った。

 

「いいじゃないか、私も久々に雪音の歌が聞きたいぞ」

「よ、クリス先輩デース!」

「うぅぅ、あー!」

 

 クリスは翼と切歌の後押しにより、やむなく唄うのであった。

 

 そして、クリスの歌が終わる。

 

「うん、クリスちゃんのやっぱ良い歌だよー!」

「ええ、前よりも上手くなったんじゃない?」

「よっ、クリス先輩デース!」

「勘弁してくれよ……」

 

 クリスは顔を真っ赤にする。

 

「ね、バンダナくんたちも良かったでしょっ!」

「……え!ああ、うん凄く良かったよ!クリスって歌上手いんだねー」

「……?」

 

 カービィの様子を伺っていた中、突然声をかけられる。

 ワドルディは慌てて答えた。

 

 そんなワドルディの様子に、響は違和感を感じるのであった。

 

「じゃあ、次に唄う人だけど―――」

「はぁーい!」

―――ッ!!

 

 カービィが響の言葉に反応したのを、三人は一瞬にして察知する。

 

「え?もしかしてカービィが唄いたいの?」

「はぁ―――む!」

 

 刹那、三人がカービィの前に現れ、周りにバレないよう口を塞ぐ。

 

「い、いや、あのね、カービィは翼の歌が聞きたいって言ったんだよ!ね、ねえ、そうだよねカービィッ!?」

 

 ワドルディは慌てて嘘の通訳を伝える。

 どうもワドルディたちの様子がおかしいことに疑問を抱くが―――

 

「そ、そうだ、聞けば翼は歌手だそうじゃないか!是非とも私たちも聞いてみたい!」

「……そこまで言うのであれば」

 

 メタナイトの後押しにより、翼は了承した。

 

「ん―――ぽよ、ぽよぽよ!」

 

 一方で、突然口を塞がれたことに抗議するカービィ。

 

「あ、ほら、このチキンは美味いぞ!お前も食べるが良い!」

「ぽよ!?ぽよ―――」

「ええい、オレさまがわざわざやってるんだ!つべこべ言わずに食べろ!」

「あむっ!?」

 

 デデデは、カービィの口に無理やりチキンを入れ込み、カービィの言葉を遮るのであった。

 

 そして、翼の歌が終わり―――

 

「うわぁー!やっぱり翼さんは凄い!」

「流石トップアーティスト」

「ああ、何だかそう言われると少し照れ臭いな……」

 

 そう言いながら、翼は赤らめた頬を指で掻く。

 

(なあ、一体いつまでこんなこと続けるんだ?このままでは埒が開かんぞ)

(なんとか隙を見てカラオケ大会を終わらせるしかあるまい、だがどうしたものか……)

(うぅ、ボクもう疲れたよお……)

 

 一方で、三人はまたしても片隅でひそひそと話していた。

 だが、必死の誤魔化しにより、三人の疲労はかなり溜まっている。

 

「ぽよ!ぽよ!」

「ん?今度はカービィが唄いたいの?」

―――ッ!!

 

 刹那、三人の疲労は一瞬で吹き飛び、即座にカービィを抑えた。

 

「はぁ―――む!?」

「いやいや、今度はその……切歌!切歌に唄って欲しいんだよねカービィ!?」

「へ、あたしデスか?」

 

 思わぬ指名に、切歌は驚く。

 

「むぅ、む―――っ!?」

「ほ、ほら、今度はこのパイも美味そうだぞ!食え食え!」

「あむ―――っ!?」

 

 デデデは今度はパイをカービィの口に入れ込むことで彼の言葉を遮るのであった。

 

「ほら、とにかく唄ってよ!ボクも切歌の歌聞きたいなあー!」

「そ、そうデスか……。そこまで言うなら仕方ないデスね―――」

「ジーーー」

 

 すると、突然調がワドルディたちをじっと見始める。

 

「……な、何?」

「さっきからなんか変」

―――ッ!?

 

 調の発言に、思わず心臓がドキッとなってしまう三人。

 頭からは大量の汗を流し始める。

 

「な、何のことかなぁー?」

「さっきからカービィが何か言おうとする度にソワソワしてる」

―――ッ!!??

 

 その言葉に、三人はさらに大量の汗を流す。

 

「何か隠してるんじゃないの?」

「そっそっそっ、そんなことないよー……」

「ジーーー」

 

 いくら誤魔化しても、調は尚も見つめ続ける。

 もはや言い逃れ出来ない、そう思われたその時―――

 

 ―――ブォーン!ブォーン!

 

『―――ッ!?』

 

 突然アラートの音が部屋全体に響き渡る。

 

『諸君、パーティー中に悪いが非常事態だ!町にまたリーパーが現れた!至急対処に向かって欲しい!」

 

 通信機から聞こえた弦十郎の言葉に、全員すぐさま気持ちを切り替える。

 

「よし、みんな行こうッ!」

「オレさまは嫌だぞ!今日は気分が乗らんからなー」

 

 全員が出動の準備を終える中、デデデはそんなことを言い出す。

 

「はあ!?お前こんな時に何言って―――」

「ああ、そうか。なら勝手にするが良い。リーパーは我々だけで対処して来よう」

 

 デデデの態度に怒るクリスだが、メタナイトがその言葉を遮る。

 

「はあ!?お前まで何言って―――」

「やる気の無い堕落者など返って邪魔になるだけだ。ならば我々だけの方が良い」

「だからって―――」

「今は話している場合ではない、直ちに参るぞ!」

「あ、おいッ!」

 

 またしてもクリスの言葉を遮り、メタナイトは走り去って行った。

 その時、メタナイトは一瞬後ろを振り向き、デデデに視線を向ける。

 視線を受け取ったデデデは、頷くことでメタナイトに返事を送った。

 

 ―――任せたぞ

 ―――ああ、任された

 

 他の者たちもメタナイトに続いて出ていった。

 

 誰もいなくなったのを確認した後、デデデはカラオケマシンの前に立つ。

 

「これもお前らのためだ、悪く思うなよ!」

 

 そして、どこからともなく愛用のハンマーを取り出し、振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

「はあー、疲れたー……」

 

 何とか無事リーパーを討伐し終えた一同は、パーティー会場へと戻って来た。

 

 だが、中へ入るとそこには―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アァァァァァッ!!!!カラオケマシンがぁぁぁぁぁ!!!」

『―――ッ!?』

 

 破壊されたカラオケマシンと、その近くに佇むデデデの姿があった。

 

「いやぁ、スマンスマン!お前たちが戻って来るまでの間オレさまも歌の練習をしようと思ったのだが、どうも機械の使い方がわからなくてな、うっかり壊してしまったわ!」

 

 と、デデデはそんなことを言う。

 

「っざけんな!うっかりでこうなるか!?」

 

 クリスはデデデの言い分に怒りをぶつける。

 

「ぽよぉ……」

「カービィ……」

 

 一方で、カービィは落ち込んだ雰囲気になってしまう。

 

「やっぱり、唄いたかったんだね?」

「ぽよ……」

 

 カービィもみんなと楽しく唄いたいと思っていたのだ。

 だが、それはもう叶わないものとなってしまった。

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

 それからと言うものの、カラオケ大会は中止になり、その後はみんなでご馳走を食べたりして、クリスマスパーティーは終わりを迎えた。

 

「はあ、一時はどうなるかと思った……」

「ああ、だがよくぞやってくれた二人とも……」

「おかげで今度はオレさまがおやつ禁止を喰らったぞ、どうしてくれるんだ……」

 

 三人は疲れ果て、本部の廊下でぐだぁと倒れ伏していた。

 

 デデデに関しては、カラオケマシンを壊した罰として、おやつ抜きを喰らったことを愚痴っている。

 

「ん?あれって……」

 

 そんな時、ワドルディが壁の端からあるものを見つける。

 

「…………」

「カービィ……」

 

 それは、元気なさそうにベンチの上に座るカービィであった。

 ワドルディに続き、メタナイトとデデデもその姿を見る。

 カービィの様子を見て、三人の中で罪悪感が湧いて来た。

 

「ボクたち、悪いことしちゃったかな……」

「いくら皆の身のためとは言え、我々のやったことは結果的にアイツを傷つけてしまったか……」

「ふん、ああでもしなければここは今頃木っ端微塵になっていたんだぞ、仕方ないだろう……」

 

 デデデもそんなことを言うが、内心ではほんの少し申し訳ない気持ちがあった。

 

 三人はそれぞれどうすれば良いか悩み出す。

 

 その時―――

 

「あ、カービィやっと見つけた!」

 

 カービィの元に、響が近寄って来たのだ。

 

「……ヒビキ?」

「カービィ、はいコレ!」

 

 そう言って響が差し出したのは、緑色のリボンの付いた赤い箱であった。

 

「ぽよ?」

「クリスマスプレゼントだよ、開けてみて」

 

 そう言われ、カービィはリボンをほどき、包みを剥がして箱を開ける。

 そしてカービィは、箱の中身を手に取った。

 

「ぽよっ?」

「未来と一緒に作ったんだ、美味しいよ!」

 

 箱の中身は、クッキーであった。

 カービィはクッキーを口に入れ、一心不乱に味わい始める。

 

「どう、美味しいでしょ?」

「ん、はぁーい!」

 

 先ほどまで落ち込んでいたカービィの顔も、すっかり元の元気な顔に戻っていた。

 

「よっと」

「ぽぺっ!?」

 

 すると、突然響はカービィを抱きしめる。

 カービィは思わず驚き、声を漏らす。

 

「メリークリスマス、カービィ」

「……はぁーい!」

 

 そしてカービィは、響の腕の中でクッキーを食べ続けるのであった。

 

 その様子を片隅から見ていた三人は、安心した。

 

「ふっ、私たちが心配するまでもなかったか」

「カービィ、良かったね」

「ふん、余計な世話をかかせおって」

 

 三人はそのまま、二人の様子をそっと見守り続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今度は一緒に歌おうね」

 

 その言葉が聞こえた途端、またしても三人に悪寒が迸った。




それでは皆さん、メリークリスマス!


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30周年記念特別ストーリー『彼方夢の物語』

「んぅ〜……あれ?」

 

 深い眠りから僅かに目覚めた響は、未だ朧げな意識の中で目を擦る。

 その瞬間、彼女の視界に入った物を見て未だ眠りから目覚めきっていない意識は一気に覚醒することとなった。

 

「ここ、どこ……?」

 

 彼女の視界に入ったのは、辺り一面に広がる緑の大地。あちこちに花が咲き誇り、綺麗な蝶が宙を舞う。優しい風が吹きかかり、身体の隅々まで暖かさが染み渡る。

 

 まさに『平和』という言葉その物を表したかのような光景に、響は唖然としてしまう。

 

「へ?なんで私こんな所にいるの……?」

 

 何度も頭の奥から記憶を掘り起こそうとするも、何故か彼女の記憶は曖昧な物しか出てこない。

 自分はどうやってここへ来たのか。ここへ来る前自分は何をしていたのか。

 いくら頭の隅々を掻き回っても、答えは全く出てこなかった。

 未だに困惑が解けない響だが、そんな彼女の耳に突然どこからか声が響く。

 

「ん?あれって……」

 

 声が聞こえて来た方を見てみると、遠くにちっちゃい影がいくつか見える。

 気になって近くに行ってみると、そこには響もよく知る姿があった。

 

「アレって、バンダナくんと同じ……?」

 

 そこには、現在S.O.N.G.本部にて生活している友達のバンダナワドルディとまったく同じ姿をした生き物が数人いた。

 だが、そこにいるのはいずれも自身が知っているのとは違い、頭にはバンダナを巻いておらず全員が全く同じ姿であった。

 

「どうしたんだろう……」

 

 ワドルディたちはいずれもその顔にはどこか暗い表情が浮かんでおり、明らかに様子がおかしいことが明白である。

 

「お腹すいたなぁ……」

「でも、大王サマがボクたちの食べ物ぜんぶ持っていっちゃったし」

「もうボクたち、食べられるもの何もないよ……」

 

「え、えぇぇ!?」

 

 彼らが落ち込んでいる理由は、すぐさま明らかになった。

 食べ物を取られた、それは人々が誰しも持つことを許される幸せを奪われたも同然。さらに、誰よりもよく食べる響にはその苦しさがとても重く伝わっていた。

 

「酷い、許せないよ!ごはんはみんな自由に食べていいはずなのに!」

 

 響は目の前の事態に酷く怒りを感じていた。誰よりも食べるのが大好きな彼女だからこそ、食べる喜びを奪われた時の悲しみは計り知れない物だと思っている。だからこそ、そんな悲しみを与えるような輩が非常に許せなかった。

 

(あれ、でもこんな話どこかで聞いたような……?)

 

 怒りを感じていた響だが、今自身の目の前で起きている一連の事態について何かが引っかかった。

 自身はこんな目に遭ったことはない、そもそもこの場所がどこなのかもわからない。だが響はこの光景についてどこかで聞いた記憶が僅かにあった。

 

 そんな時だった。

 突如としてまた風が吹いて来たのだ。その風を浴びた途端、何故だか辺りの風景がより温かみを増したかのように感じた。それはまさしく、季節の変わり目を示す春風であった。

 

 そして"ソレ"は、先ほどの春風が運んできたかのごとく現れた。

 

 響の目に先ほどまでいなかった新たな姿が写り込む。だが、響はその姿についてよく知っていた。

 

「カービィ……?」

 

 そこにいたのは紛れもない自身の友達の姿であった。

 ある事件をきっかけに突然現れた宇宙人であり、今では共に戦いごはんを一緒に食べる仲の友達。

 

 だが、彼は響にまったく目もくれずにワドルディたちの方へと駆け寄った。

 

(カービィ、私のこと見えていない……?)

 

 すぐ近くにいるはずの自身にまったく気づかないカービィに響は違和感を感じた。まるで自身が視界に入ってないかのようだ。

 いつもの彼であればあり得ない。いつも自身と会う時は笑顔で手を振るなどと言った反応を見せるはず。こんなに近くにいて気づかないなんてのもおかしい。

 

 一方で、カービィはワドルディたちと何やら話をしていた。

 

「キミは、ダレ?」

「見ない顔だね、旅の人?」

 

(……へ?)

 

 またしてもおかしなことが起こった。

 響はバンダナワドルディしかみたことないが、目の前にいるのが彼の同族であることは間違いない。以前バンダナワドルディから聞いた話では、カービィは自身たちの間ではそれなりの有名人だと言っていた。

 それなのに、目の前の彼らはカービィのことを全く知らないのだ。たまたまという可能性もあるが、妙にしっくりこなかった。

 

「うぃ!」

「へ?ボクたちの食べ物とりかえしてきてくれるの?」

「でもでも、大王サマとても大きいしそれにすっごく怖いんだよ?」

「ぽよ!」

 

 ワドルディたちは大王の恐ろしさを話し、カービィを引き止めようとする。だが、カービィはそれに引き下がらず尚も自身が食べ物を取り返しに行くと訴える。

 

(……あっ!)

 

 そんな光景を見ていた響は、ようやく自身の中にあった違和感の正体を思い出した。

 それは、まだカービィたちと出会って間もない頃、バンダナワドルディから聞かされた、彼らの故郷に初めてカービィが現れた時の話であった。

 

(もしかしてここは、カービィの過去の記憶……?)

 

 過去に聞いた話と現在目の前で起きている事を照らし合わせ、響は一つの推測を出した。

 ここはカービィの過去の世界。

 あまりにも非現実的であり得ない話だが、響にはそれ以外に考えられなかった。

 

「わかったよ、気をつけてね」

「絶対に無事にかえってきてね」

「はぁーい!」

 

 一方で、ワドルディたちはいくら言っても引き下がらないカービィにとうとう折れたのか、カービィを見送ることにした。

 するとどこからともなく、まるで彼の思いに呼応するかの如く現れた彼の愛機------ワープスターに乗り込み、カービィは出発の準備を整えた。

 

「気をつけてね!」

「ムリしちゃダメだからね!」

「はぁーい!」

 

 カービィはワドルディたちの声を受け取りながら、旅立ちの挨拶として笑顔で手を振る。

 そして彼を乗せたワープスターは、彼が挨拶を終えると同時にもの凄い勢いで飛び立っていった。

 ここから彼、『星のカービィ』の冒険は始まったのだ。

 

「……へ?何!?」

 

 その様子を傍から見ていた響に、突然異変が起こる。

 突如として彼女の視界が白い光に包まれ、何も見えなくなってしまう。

 

(------!?カービィ!)

 

 やがて視界が晴れると、そこは先ほどまでとは全く違う風景が広がっていた。

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 それからカービィは大王のいる城を目指し、ある時は森の中を突き進み、ある時は海を超え、ある時は空の上を登り、果てしない旅路を彼は超えて行った。ある時は巨大な敵との激しい戦いをも乗り越えた。

 そんな彼の様子は響はずっと見ていた。にも関わらず、カービィは愚か誰も響に気づくことがなかった。まるで世界その物に認識されていないかのようであった。

 何故そんなことになっているのか、響にはまったく検討がつかない。だがそれでも響はカービィの後を追いかけていった。彼がある程度進むとまた謎の白い光に飛ばされる現象に遭ったが、それでも響はなんとかカービィの後を追っていた。

 その過程で、響はカービィの色んな姿を見てきた。時にはお腹を空かせて途中でどこから出てきたのかわからない食べ物を食べたりしながらも、カービィは突き進んだ。ある時は景色に浸ったり、ある時は疲れて居眠りしてしまったり、またある時は敵に立ち向かったりと、彼は呑気ながらも果てしない旅路を止めることはなかった。

 全ては、みんなの食べ物を取り戻すため。

 そんなカービィの姿が、響の心に強く残っていた。

 

「ふふっ、カービィも誰かのために頑張ってたんだね」

 

 そんな時響は、以前未来から言われたことを思いだす。

 

 ------誰かを助けずにいられない所も、響に似てるなと思って

 

 今のカービィを見ていた響には、その言葉の意味がよりわかった気がした。

 そんなカービィにシンパシーを感じたのか、響はなんだか嬉しい気持ちで包まれた。

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 やがてカービィは大王の城へと辿り着き、みんなから食べ物を奪った張本人である『デデデ大王』との直接対決が始まった。

 結果、デデデは手強い相手であったものの、国中のみんなの思いを背負ったカービィの力の前に敗れた。

 そして奪われた食べ物は全て国中の者たちへと返され、プププランドに平和が訪れたのであった。

 

 国を救った勇者であるカービィは、多くの人々から称賛と感謝を受けた。この件をきっかけに、瞬く間にカービィの名は国中へと広まったのであった。

 

「そっか、カービィはこの時からみんなのヒーローだったんだね」

 

 一部始終を見ていた響は、カービィの姿を見て笑みをこぼしていた。

 カービィが数々の危機を救って来た戦士であることは以前から聞いてはいたが、響の知っている彼は友達として自身に接してくれる優しい姿であった。

 だが、今の彼は数々の困難を乗り越えみんなの思いに応えた、正真正銘の勇者の姿だ。そんなカービィの姿が、響の心に強く焼き付いていた。

 

「------!?へ、また!?」

 

 すると、またしても響は謎の白い光に包まれ別の場所へと飛ばされるのであった。

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 それから、響は何度も色んな場所へ転々と飛ばされながらカービィの冒険を見てきた。

 中には宇宙の危機とも言えるほどの壮大な物まであった。

 だが、カービィは数々の旅を経て出来た仲間たちと協力し、時には新たなる奇跡の力を何度も手にし、見事全ての危機を救って来た。

 そんな冒険の数々を見て、響は彼がこれまでどれだけ壮大な冒険を繰り広げたのか、いかにして仲間との友情を育んでいったのかを知った。

 

(そっか、カービィも私たちと同じで、今まで人と繋がってきたんだね)

 

 ------繋がり

 それは響が戦う理由でもあり、何よりも大切にするものであった。

 それを得るまでには何度も辛いこともあった。けどそれでも響たちは最後まで諦めず何度も繋がりを紡いできた。

 まるで今までのカービィのように。

 

(------っ!?)

 

 するとまたしても場所が変わり、今度は最初にみた豊かな緑の大地へと戻ってきた。

 

「……カービィ?」

 

 そこには、レジャーシートの上でよだれを垂らしながらお弁当を見つめているカービィの姿があった。

 今にも食らいついてしまいそうであったが、カービィはなんとかそれを抑えて周囲に声をかけ始めた。

 

「はぁーい!」

 

 すると、そこに突然たくさんの者が集まって来た。

 彼らはこれまでカービィが長い旅の中で得た"友達"であった。

 その中にはかつてはカービィと敵同士だったものも混じっていたが、彼らはそんなことを一切気にすることなくみんなでお弁当を食べ初める。

 

 彼らはカービィがこれまで過ごした時間の中で紡いで来た"繋がり"、様々な困難を乗り越えて手に入れた絆の証であった。

 そんな彼らの様子を見て、響はとても和やかな気持ちになっている。

 今目の前に広がる彼らの繋がりは、響にはとってもとても尊く見えていた。

 

「------ヒビキ」

「……へ?」

 

 その時、突然カービィの声に思わず響は変な声で驚いてしまう。

 先ほどまで自身はカービィには認識されていなかったはず、なのにカービィは今確かに自分を見て、名前を呼んだ。

 

「何いつまでも突っ立ってんだよバカ」

「……えっ!?」

 

 今度は大分馴染み深い乱暴な台詞が聞こえてきたかと思えば、突然変わっていた目の前の光景に響は驚く。

 そこには、いつのまにか自身の仲間である装者たちまでもが混ざっていたのだ。

 

「立花、一体さっきから何を驚いている?」

「みなさんいつからいたの!?さっきまでいなかったですよね!?」

「……へ?私ずっといたよね切ちゃん」

「当たり前なのデス、響さんはおかしなことを言うデスね調」

「へ、へぇ……!?」

 

 突然起こった事態に響は未だ困惑が収まらない。 

 先ほどまでいなかったはずの仲間、自身の方がおかしいと言われる立場、響はますますわけがわかんなくなった。

 

「ヒビキ!」

「はっ、……カービィ?」

 

 そんな響に、カービィはまたしても声をかけた。「いっしょにおいでよ」と。

 

「ほら、カービィも呼んでるんだし、響も早くこっちに来なよ」

「早くしないと、あの子たちが先にお弁当を平らげちゃうわよ?」

 

 訳がわからない、そもそも眠りから覚めた時から訳がわからないことだらけだった。

 

「……うん、そうだね。早く行こっか」

「はぁーい!」

 

 だが、響はもう困惑するのをやめ、カービィと共にみんなの和に混ざるのであった。

 

 出会いは偶然だったかもしれない。本来なら起こり得なかった奇跡。

 だが、それでも響たちとの出会いは、カービィにとって新たに出来た"繋がり"だ。

 今はその繋がりを、みんなで分かち合うのであった。

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

「……きて…………きてってば」

「う、うぅん……」

 

 朧げな意識の中、僅かに聞こえる声によって響は眠りから目覚めた。

 

「未来ぅ……あれ?」

 

 なんとか覚醒した響であったが、目にした光景に彼女は頭にはてなマークを浮かべる。

 気づけば自身がいるのはS.O.N.G.基地内の部屋のベッド。そして響の腕には、未だ夢の世界へと旅立っているカービィの姿があった。

 

「あれ?未来、これどうなってるの?」

「もう、何寝ぼけたこと言ってるの?みんなが準備を終わらせるまでカービィの相手をしててって頼んだんじゃん。なのに響ったら、カービィと一緒に寝ちゃうんだから」

「へ?…………はぁ!」

 

 未だ状況を理解出来ない響であったが、未来の言葉により頭の奥からある大事な記憶が呼び覚まされた。

 そう、今日はバンダナワドルディから聞かされたある大事な日なのだ。それを思い出した響は、慌てだした。

 

「そうだった!未来、準備は!?」

「もうみんなのおかげで終わったよ、二人がぐっすり眠っていたおかげでね」

「うぅ……」

 

 未来の言葉にぐうの音もでず、響はしょんぼりとし出す。

 

「……ぽよぉ?」

 

 すると、二人の会話によってカービィが夢の世界から戻ってきた。

 

「あ、カービィおはよう」

「……はぁーい」

 

「ほら、カービィも起きたんだし、そろそろ行くよ」

「うん、そうだね」

「……ぽよ?」

 

 眠りから覚めたカービィは、二人の会話の内容が全く掴めないままどこかへと連れ出される。

 やがて、大きな部屋の扉の前へとたどり着いた。

 

「それじゃカービィ、いくよ」

「ふふっ、きっと驚くからね」

 

 すると扉は開き、三人は中へ入っていった。

 

 パパパッアァァァンッ!

 

「ぽよ!?」

 

 部屋に入った途端、突然響いた音にカービィは驚き響の腕の中で思わず飛び上がる。

 そこには、クラッカーを持っていた装者たちが立っており、奥には巨大なケーキを取り囲むようにカービィの仲間たちが並んでいた。

 そして、みんなが一斉に並べて声を上げた。

 

 

 

 

 

『カービィ、お誕生日おめでとう(デース)!!』

 




なんとか間に合ったぁ……(遅いわ!)
即興で書いたので、雑な部分は多々あるかもしれません、ご指摘は大歓迎です。

という訳で、カービィ30周年おめでとう!!
本当私にとってカービィとの出会いは奇跡でした!という訳でみなさまも、これからもカービィをよろしくお願いします!


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