スーパー戦隊このすばメガフォース (伊勢村誠三)
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キャラ解説

前作を読んでなくても楽しめる様に書いてみました。


七海総一

 

年齢  今年で19

身長  175cm

誕生日 11月22日

前職  大学生

現職  冒険者、赤き海賊団団長

特技  パッチワークのぬいぐるみ、嫌がらせ

担当  レッドレンジャー

備考  本人曰く母似

専用曲 MONSTER WORLD(HOWL BE QUIET)

今まで使用したレンジャーキー

デカブレイク、アバレブラック、ボウケンレッド

ハリケンブルー、マンモスレンジャー

マジシャイン、ダイナレッド、ハリケンレッド

ガオレッド、ハリケンイエロー、ゴーオンレッド

シンケンゴールド、レッドホーク、ゴーカイレッド

 

ジョー・ギブケン

 

年齢  21

身長  180cm

誕生日 9月18日

前職  バーナード国騎士団団員

現職  上級剣士

特技  ケーキ作り(プロ並)

担当  ブルーレンジャー(男性)

    剣使いのレンジャー

備考  総一曰く喧嘩っ早い

専用曲 蒼い船(いきものがかり)

今まで使用したレンジャーキー

シンケングリーン、マジシャイン、キバレンジャー

ゴーカイブルー

 

ルカ(本名不明)

 

年齢  17

身長  160cm

誕生日 2月1日

前職  ???

現職  盗賊

特技  宝石鑑定(一目でわかる)

担当  イエローレンジャー(女性)

備考  総一曰く手癖が悪い

専用曲 Clutch‼︎(水樹奈々)

今まで使用したレンジャーキー

ゴーカイイエロー

 

リア

 

年齢  多分15

身長  和真と同じぐらい

誕生日 多分7月4日

前職  ???

現職  槍使い

特技  歌(本人も大好き)

担当  グリーンレンジャー

    ホワイトレンジャー

備考  記憶喪失。

専用曲 僕を探しに(シェル・シルヴァスタイン)*1

今まで使用したレンジャーキー

ゴーカイグリーン

 

佐藤和真

 

年齢  16

身長  165cm

誕生日 6月7日

前職  ヒキニート高校生

現職  冒険者、赤き海賊団参謀

特技  裁縫、ゲーム、じゃんけん(無敗)

担当  ブラックレンジャー

    グリーンレンジャー

    追加レンジャー

    ジェットマン

備考  ゲスマ、クズマ、パンツ脱がせ魔

専用曲 ろくでもないBLUES(佐藤和真)

今まで使用したレンジャーキー

ダイナブラック、ブラックコンドル、マジレッド

ハリケンイエロー、ゲキレッド、デンジブルー

デカレッド、シンケングリーン、タイムイエロー

ハリケンレッド

 

アクア

 

年齢  ??

身長  非公開

誕生日 8月1日

前職  女神

現職  上級僧侶

特技  宴会芸

担当  ブルーレンジャー(女性)

    その他追加レンジャー

備考  トラブルメーカー

専用曲 わたし音頭(アクア)

今まで使用したレンジャーキー

ブルードルフィン、アバレブラック、ブルースワロー

ダイナブルー、アバレブルー、ハリケンブルー

 

めぐみん

 

年齢  13

身長  8人の中で1番低い

誕生日 12月4日

前職  学生

現職  上級魔法使い

特技  爆裂魔法

担当  ダイナマン

    ピンクレンジャー

    ホワイトレンジャー

備考  爆裂魔法中毒

専用曲 Right☆eye(めぐみん)

今まで使用したレンジャーキー

ダイナピンク、ハリケンブルー、ダイナブルー

ダイナブラック、ホワイトスワン、ゴーカイピンク

 

ダクネス

 

年齢  18

身長  約170cm

誕生日 4月6日

前職  不明

現職  聖騎士

特技  胡桃を片手で割る。

担当  イエローレンジャー(男性)

備考  ドM痴女

専用曲 連れ去って・ 閉じ込めて・好きにして(ダクネス)

今まで使用したレンジャーキー

アバレブルー、マンモスレンジャー、ボウケンレッド

シンケンレッド(姫)、ダイナイエロー、ゴセイナイト

ハリケンイエロー

*1
絵本の劇中歌



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危険な遊び 前編

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊としての汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


1

「「はぁあああ!?しゃ、借金!?」」

 

ギルド中に俺、七海(ななみ)総一(そういち)と後輩の佐藤(さとう)和真(かずま)の叫び声が響く。

なぜなら辛くも今世界を震撼させている魔王を撃退したと思ったら、まだ受け取っていなかった前に魔王軍幹部を倒した時の報酬が払われないどころか見に覚えのない借金を背負わされていたからだ!

 

「いつ!?いつ俺たち借金しました!?

てか何で報酬なしなんですか!?」

 

「ま、魔王軍幹部を倒した時にアクアさんが壊した城壁の修理代とアクアさんの無差別攻撃によるフレンドリーファイアで怪我された方達の治療費です!

ソウイチさんのパーティーとカズマさんのパーティーに支払われた計6億エリスで相殺しても1億エリスは残っちゃうんです!」

 

「「い、いちおく……!」」

 

ハンマーで殴られた様なショック!

俺は崩れ落ちそうになるのを何とか踏ん張り、信頼する仲間たちの方を向いた。

 

長髪の偉丈夫、剣士のジョーは帽子を押さえる様なやれやれ、って感じのポーズ。

黒髪の槍使い、リアは引きつった笑みを浮かべており、

白いヘアバンドがトレードマークの盗賊、ルカは目を見開いたまま固まってしまっている。

 

和真のところの2人、金髪ポニーテールのグラマラスな聖騎士、ダクネスとチーム最年少の爆裂魔法の使い手、めぐみんも似た様な表情だ。

 

そして、一番の大戦犯である奴は!あのクソ女は!

 

「な、何?何よ皆?どうしてそんな怖い顔してるの?

と、特にカズマとソウイチ!

ブリンガーソードに荒縄なんてしまってよ。

ね、ねえ!ちょっと!」

 

「おいお前駄女神。」

 

「特別危険指定宗教団体教祖が……」

 

俺とカズマの行動は早かった。

すぐさま駄女神、アクアの前後に入り込み

 

「本当に余計な事しかしないやつメェ!」

 

「どうしてくれんだ!

どう責任とってくれるんだぁ!」

 

一も二もなく襲い掛かった。

 

「いやぁああ!何!?なんなのよぉ!」

 

「離せ!離せジョー!全ては借金返済の為だ!

こいつの髪と内臓売っぱらった後に変装して首を魔王軍に持ってく!」

 

「よせソウイチ!気持ちはわかるがそれはやめろ!」

 

反対側を見るとカズマもダクネスに羽交い締めにされている。

 

「ダクネス離せ!俺はお前みたいなドMと違って借金返済地獄で苦しみたい訳じゃないんだ!」

 

「私だってそんなプレイはごめん被る!

だがアクアを殺すのは駄目だ!

見捨ててやりたい気持ちは分かるが!」

 

そこで唯一遺憾の意を示したのが当の本人アクアだ。

 

「ねえちょっと皆!

なんで私が全部悪いみたいに言うの!?

あのデュラハン倒したのは私なのよ?

もっと私を褒めて甘やかして讃えてよ!」

 

「じゃあ借金も全部お前のだな?

よし皆ガレオンに戻ろう!アイツは借金返済が有るそうだ。」

 

和真がそう言うと優しいリア辺りは最後まで残ってだがやがてアクア以外の全員が続いた。

 

「わぁー!待って待ってごめんなさい!

調子に乗った私が悪かったから許してー!」

 

 

 

2

そして泣きじゃくるクソ女神を一通り叱り飛ばした俺たちは移動拠点のゴーカイガレオンに戻った。

 

「で、どうする!?1億だぜ1億!

しかもあんだけ苦労して倒したベルディアの分の報酬はびた一文出ないと来た。」

 

一先ずリアが入れてくれた紅茶のおかげで少しは落ち着いたが状況は最悪に違いなかった。

何せ俺たち全員冒険者。

命がけにも関わらず収入不安定な職なわけだ。

先行き不安で仕方ない。

 

「取り敢えず今すぐに金になりそうなのは俺たちの家とルカの指輪ぐらいだな。」

 

「はぁ!?なんでよ!大体アクアのせいで作った借金なんだから売っぱらうんならあの子の羽衣からでしょ!?」

 

あのなルカ、言わせてもらうけどお前が持ってる指輪やら宝石やらは8割がた俺とジョーに無理やり手伝わしたりして悪徳貴族やら奴隷商からパクったやつだろ?

 

そう言ってやろうと思ったが拗れるし理不尽な暴力が待ってるからやめといた。

代わりと言っちゃなんだが喧嘩を始めたルカとアクアに割って入り

 

「わかった!しばらく宝石の件は保留として、

取り敢えずガレオンの中身を探ろう。

もしかしたらなんか金目のもんがあるかも知れない。」

 

「宝探しって訳ですか。面白そうですね。」

 

「確かに宇宙ガレオン船の拠点なんてこの世広しと言えど私達ぐらいしか持ってないだろうしな。」

 

「よし、行こうぜめぐみん、ダクネス!」

 

「あ、ちょっと待ってよカズマ!」

 

カズマ達4人は早速はさっさと下のエリアに向かった。

いい加減借金以外の事を考えたかったんだろう。

 

「俺たちも行くか。」

 

「俺はリアと甲板の方を見てくる。

ジョーとルカはあの不運の女神がなんか変なもん触らないか見ててくれ。」

 

「了解だ。」

 

「もしお宝とか見つけたら見つけた奴の物ね?」

 

なんて軽口を叩くルカに決まりだなと言って別れる。

この時は思いもしなかった。

まさかあんな事態になるだなんて。

 

 

 

3

やあ皆!和真だよ。

俺たちは今新たに手に入れた移動拠点、ゴーカイガレオンを探索していた。

 

「外側から見るより随分広いな。」

 

「もう少し狭いと思ってました。」

 

船内は結構広くて良さげのホテルの客室みたいな1人用の部屋が10部屋。

確かにこれなら総一さん達の家を売っても問題ないだろう。

 

「それ以外は…エンジンとかそんなんなのかな?

食料庫とかはさっき通ったけど。」

 

「意外と部屋の種類はそんなでもありませんでしたね。」

 

「そうだな…ん?ルカ!ジョー!」

 

どうやら反対側から回って来たらしいジョー、ルカと合流した。

2人は白い四角い機械の前に立っていた。

 

「お、アンタ達もこっち見に来たの?」

 

「ええお2人も?」

 

「ああ、粗方調べたんだが、

この箱だけは使い方が分からないんだ。」

 

「確かに…なんでしょうかね?」

 

首をひねる4人。しかし和真とアクアはすぐにそれが分かった。

 

「「自販機だ。」」

 

「ジハンキ?」

 

「ってなんですか?」

 

まず使ってみせることにした。

右の腹ぐらいの高さに有るコインの投入口にエリス硬貨を投入して棚の様になってる部分のボタンを押して缶ジュースを購入した。

 

「おお!」

 

「これは物を売る道具なのか!」

 

「………誰もいないし、中の金抜き取ってもばれなさそうね。」

 

「おいルカ、それやったらリアにチクるぞ。」

 

冗談よ、と冗談に聞こえない感じで笑うルカ。

口止め料として先に買ったカズマ以外のジュースも買う。

 

「それじゃあ、誰かさんのせいで背負った借金完済の私からの前祝いって事で!」

 

「「「「「かんぱーい!」」」」」

 

「か、かんぱーい……」

 

ルカの言う誰かさんだけテンションが低かったが6人がジュースに口を付けると

 

「ふっふっふっふ!はーっはっはっはっ!」

 

自販機の方から野太い笑い声が聞こえて来たのだ。

 

「まんまと引っ掛かったな海賊共め!」

 

自販機がガタガタと不自然に震え、自販機に手足の生えた奇妙な怪人に変身した!

 

「な! 貴様いつから!?」

 

「お前たちが冒険者ギルドに行ってる間にさ!

俺は魔王軍幹部メレ様直属の兵士、ジハンキジゲン!」

 

「飛んで火に入る夏の虫とはアンタの事よ!

皆、変身いきましょう!」

 

アクアの掛け声でジュースを捨てて変身ケータイ、モバイレーツを構える一同、懐から取り出したレンジャーキーを変形させ

 

「「「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」」」

 

<<<ゴーーッカイジャー!>>>

 

<<<デーーッカレンジャー!>>>

 

「ゴーカイブルー!」

 

ジョーは帽子を正す様なポーズを取りながらゴーカイブルーに。

 

「ゴーカイイエロー!」

 

ルカは右腕をしゅっ!と横に払うようなポーズをしながらゴーカイイエローに

 

「ゴーカイピンク!」

 

めぐみんは胸に手を当てるポーズをしながらゴーカイピンクに!

 

「デカレッド!」

 

俺は右腕を大きく後方に伸ばしながら前屈になるポーズを取りながらデカレッドに

 

「デカイエロー!」

 

ダクネスは開いた両手を交差させるポーズを取りながらデカイエローに

 

「デカブライト!」

 

アクアは開いた右手を前に突き出し、左腕のブレスロットルを見せるポーズを取りながらデカブライトにそれぞれ変身した。

 

「特捜戦隊!」

 

「「「デカレンジャー!」」」

 

「海賊戦隊!」

 

「「「ゴーカイジャー!」」」

 

 

4

「わぁ……」

 

皆さんこんにちは。リアです。

今私は総一さんと一緒にゴーカイガレオンの甲板に出てアクセルの街を見下ろしています。

 

「こんなふうに景色を見下ろすのは久しぶりだな。」

 

「私もです…なんだろ、凄く懐かしい。」

 

「…戻るといいな、記憶。」

 

「はい。けどゆっくりでも良いと思ってます。」

 

「て言うと?」

 

「私は、赤き海賊団のみんなが好きです。

お姉ちゃんみたいなルカさんや、寡黙だけど仲間想いなジョーさんに、ぶっちゃけクズだけど頼りになる和真さん達。

この場所を失くしたくはないです。」

 

「嬉しい事言ってくれるじゃんか。」

 

と総一さんが私の頭を撫でた時、私達が入って来たドアから……自販機にゴツい手足を生やして、不細工な潰れた顔をつけた様な怪人が出て来ました。

 

「ま、魔王軍!」

 

私と総一さんはモバイレーツとレンジャーキーを構えて

 

「「ゴーカイチェンジ!」」

 

<<ゴーーッカイジャー!>>

 

私はゴーカイグリーンに、総一さんはゴーカイレッドに変身しました。

敵の自販機お化けを切りつけながらドアの方に回って退路を塞ぎます。

 

「ソウイチ!」

 

船内の方から他の6人も変身して飛び出て来ました。

 

「よっしゃ!一気に決めるぞ!」

 

そう言って一斉に攻撃しようとした時でした。

急にゴーカイブルー、ジョーさんが変身を解除したのです。

 

「え?ジョーさん?」

 

「はぁーー…つーかれた。皆!休もうぜ!」

 

なんとそのまま奥に帰って行ってしまいました。

 

「はぁ!?おいジョーお前何言って!」

 

「それもそうだな。

別にわざわざ俺たちがやる必要ないんだし!」

 

そう言ってデカレッド、和真さんも変身解除して戻って行きます。

 

「私は爆裂魔法がやりたくて冒険者になったんです!

こんな雑魚、別に放って置いても問題ありませんし!」

 

と、ゴーカイピンク、めぐみんまで我儘言って帰ろうとします。

 

「ちょっと皆!真面目に戦わないと駄目よ!

こんな調子じゃいつまで経っても魔王なんて倒せないわよ?」

 

そう言って皆にゲキを飛ばすのはルカさん…ではなくなんとデカブライト、アクアさんです。

ルカさん、ゴーカイイエローはいつ間にか何も言わずに居なくなってました。

 

「別にあんな奴らほっとけばいいだろ。

金さえ積めば魔王軍と戦う奴なんて幾らでも集まるだろ?」

 

「ダクネス!?お前まで何言って」

 

「あ、逃げるわ!」

 

見ると自販機怪人はロープを使ってガレオンを降りる所でした。

私達は何故か性格激変した仲間たちに気を取られてる内にまんまと逃げられてしまいました。

 

 

 

5

やあ皆、総一だ。

見事に敵、ジハンキジゲンの術にはまった6人をどうにかすべく話を聞き出したいところなのだが…

 

「そんなのどうでも良いです!

それより爆裂魔法を撃たせてください!

もう起床してから3時間42分18秒もお預けをくらってるんですいい加減良いでしょ!?」

 

と、杖持ってずーっと落ち着きなく足踏みしてるめぐみんに

 

「別にわざわざ戻る方法探さなくてもいーじゃん。疲れるだけだよ」

 

ソファーでだらけるだけだらけてすっかりこう、溶け出してるジョー。

 

「確かに、1エリスにもならないな。」

 

引き篭もってしまったルカの宝石の手入れをしているダクネス。

ていうか地味に無器用な癖にそうゆうのは出来るのか。

もしかしたらこいつの無器用は戦闘限定なのかも知れない。

その上今は性格までこんなひがみとか最悪かよ。

 

「あーもー!皆普段は私を寄ってたかって叱る癖に今日はどうしたってのよ!

ほらカズマ!アンタもなんか言ってやりなさい!」

 

「えー、なんでお前なんかに言われてやりたくもない纏め役なんてやらなきゃいけないんだよ……」

 

ぱっと見いつも通りに見えるけど、怠ける和真にそれを叱るアクアって軽くホラーだな。

 

「うーん。アクアさん。この6人で何か同じもの食べたり飲んだりしてませんか?」

 

「同じ食べ物や飲み物?

今朝みんなで食べたじゃない。」

 

「性格多少マシになってもオツム足らないのは変わんねえな。

それはお前らみたいになってない俺やリアも食ってるだろ?」

 

「ッ!…そ、そうよね、私ったら、皆が大変な時に何的外れな事言ってるのかしら……。」

 

シューンと目に見えて落ち込むアクア。

リアが非難する様な目を俺に向けて来た。

何?俺が悪いの?

 

「大丈夫ですよアクアさん。

総一さんがアクアさんに当たりが強いのはいつもの事ですから。

それ以外で何かありませんか?」

 

「それ以外だったらジハンキジゲンが化けてた自販機から買ったジュースだけね。」

 

俺とリアはアクアの案内でジハンキジゲンのいたと言う場所まで案内された。

 

「この散らばってる缶がそうか。」

 

取り敢えず比較的中身が多かったのを持って行ってグラスに注いでみると、柑橘系の匂いのはずなのに何を混ぜたのか真ピンク色の液体が出て来た。

 

「うっわ!如何にも人工物混ぜてますって色ですね。」

 

「これ終わったら医者行くべきだな。

リア、ガレオンの設備でこのジュース解析してくれ。俺はギルドに報告してくる。」

 

俺は愛剣と何本かのレンジャーキーを持って船の底の方のエリアに向かって地上からの出入り口から鎖を使って降りた。

ガレオンは今アクセル郊外の平原の上にステルスモードで停泊している。

 

(さて、ギルドに報告して…昼飯とかはまだいいか。)

 

なんて思いながら歩いているとまだ何処かの後先考えない女神のせいで壊れて、ようやく修理に着工した城門が見えて来た。

 

「な、なんだテメェら!」

 

「黙れ!貴様らは今日から我ら魔王軍の為に働いてもらう!

ゴーミンども!連れてけ!」

 

今のうちのメンバーよか働き者らしいジハンキジゲン率いる魔王軍が土方さん達を連れ去ろうとしていた。

 

「たく、ちっとはこっちを休ませろよ。

ゴーカイチェンジ!」

 

<ゴーーッカイジャー!>

 

俺はゴーカイレッドに変身してゴーカイガンを打ちながらゴーミンどもに向かった。

 

「ゴー!」

 

銃弾を受けて倒れるゴーミン。

俺は自由になった土方に逃げろと叫びながら残る奴らに近接戦で挑んだ。

 

「ほう!統率が取れないからと1人で来るとは思い切ったなレッドレンジャー!」

 

「成り行きって感じなんだけど、まあいい。

1人でも派手に行かせてもらうぜ!」

 

俺は土方さん達を解放しながら戦った。

けど流石に多勢に無勢。

 

「ならこいつだ。ゴーカイチェンジ!」

 

<ジューーッウレンジャー!>

 

「ティラノレンジャー!龍撃剣!」

 

まずは近接特化のティラノレンジャーにチェンジ。

伝説の剣たる龍撃剣を持ってすればゴーミンの武器など簡単に切り裂けた。

 

「まだまだお代わりだ。ゴーカイチェンジ!」

 

<ハーーッリケンジャー!>

 

「超忍法!影の舞!」

 

背中の疾風丸を引き抜き影になって丸腰のゴーミン共を切り裂く。

あとはスゴーミンが五体とジハンキジゲン本体だけだ!

 

「やれ!スゴーミン!」

 

スゴーミンが武器腕からビームを飛ばしてくるが

 

「くらうかよ!超忍法、空翔!からのドライガン!」

 

空中にジャンプして回避してドライガンを連射する。

前方の3人は倒せたが残り2体は飛行モードに変形して突進攻撃を繰り出して来た。

 

「う、うわぁ!く、空中戦だったらぁ!」

 

<ジェーーットマン!>

 

レッドホークに変身してドッグファイトを展開した。

が、ジハンキジゲンが地上から投げる缶ジュース型爆弾を避けたりで想う様に動けない。

こんな時にアイツらが居ればとも思ったが、今の有様を思い出してやめておいた。

 

「もう少し、1人でも派手に行くか!」




次ーーッ回!第二話!

総一「流石に1人じゃジリ貧だ!」

アクア「直ぐ行くわ!」

ジョー「別にいいじゃん。」

リア「いい加減に働け!」

危険な遊び 後編!

リア「ここからは派手にいきましょう!」


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危険な遊び 後編

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊としての汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


1

「ナノマシン?」

 

「はい。簡単に言うと見えないぐらい小さな機械がこのジュースに入ってて、口から仇に入って悪さをするみたいです。」

 

ガレオンの設備で解析した結果なので間違いないと言うとアクアさんはきみ悪そうに頭をさすりました。

 

「性格が変わるくらいなんだって言うんですか。

私は爆裂魔法が使えさせすればなんでも良いです。」

 

「別にいいじゃんそれ以上何もないなら。」

 

「そうだなー。」

 

「他に被害者がいるなら何か毟り取れるだろうが治療法はわからないのだろう?だったら意味ないな。」

 

もうやる気の失せた皆さんは無視する事にします。

でも確かに皆さんの言う通り解決策は見つかってないわけで…

 

『もしもし!こちら総一。ゴーカイガレオン応答願う!』

 

緊急連絡が入りました直ぐにアクアさんがキーボードを弄りますが

 

「あーもー分かんない!リアやって!」

 

「はいはいお待ちをー。

上上下下左右左右ほほーいほいほい。」

 

「え?そんな隠しコマンドみたいなのでよかったの?」

 

オープンチャンネルになった所にマイクに向かって話します。

 

「こちらガレオン。状況は?」

 

『現在ジハンキジゲンと交戦中!

流石に1人じゃジリ貧だ。至急援軍を求む!』

 

「了解直ぐ行くわ!

ほらグータラしてないで行くわよ!

リアは風雷丸呼んで!」

 

「爆裂魔法の出番ですか!?行きます行きます!」

 

めぐみんは喜び勇んで付いてきましたが残り3人は案の定だったのでアクアさんは首根っこを掴んで甲板まで引きずって行きました。

 

「風雷丸!来て!」

 

私はクワガライジャーキーをモバイレーツにセットしてゴウライジャーの大いなる力、小型ロボの風雷丸を召喚しました。

私は可愛いデザインのこの子が大好きです。

 

「風雷丸、ただ今参上!

各々方、おつかりまり下さい。」

 

風雷丸に乗って飛んで行くとレッドホークに変身した総一さんが孤軍奮闘していました。

 

「行くわよ皆!ゴーカイチェンジ!」

 

<ジェーーットマン!>

 

アクアさんは同じジェットマンのブルースワローに変身して加勢しますが

 

「バードブラスター!」

 

「痛っ!おいもっとちゃんと狙え!」

 

「あ、ごめんってキャァ!」

 

元々剃りが合わない上にまともな共闘なんかはじめての2人では無様な姿を晒すだけです。それを見た皆さんは…

 

「はっ!いい女が台無しだな。」

 

「なーんだ、結局爆裂魔法の出番なしじゃないですか。

一抜けた。あとは好きにしてください。」

 

「手伝ったからと言って大して毟れる訳でもないしやる意味はないな。」

 

「アクアもソウイチも頑張っちゃって。」

 

……もう、もういい後輩辞めて良い気がしますね。

 

「おい。」

 

アーーッバレンジャー!

 

私はアバレキラーに変身して一番近くにいたジョーさんの首を掴み上げ

 

「ぐっ!り、リア苦し」

 

「いい加減働けこの█████(ピーーーー)!!」

 

そのまま真下に放り投げました。

和真さんもめぐみんもダクネスさんも投げ捨てます!

私も続いて飛び降りて

 

「う、嘘でしょリア!あなたここまでしますか!?」

 

「い、いいから変身するぞ!」

 

<<ジェーーットマン!>>

 

<<ゴーーッカイジャー!>>

 

めぐみんと和真さんはそれぞれホワイトスワンとブラックコンドルに、ジョーさんとダクネスさんはゴーカイブルーとゴーカイイエローに変身します。

 

「喰らえこの自販機野郎!」

 

私も4人に続いて飛び降りてジハンキジゲンにアバレモードを発動してエネルギーでサイズを広げた爪を振り下ろします!

 

「うわぁああー!!し、しまった!

ジュースのナノマシンを制御するための装置が!」

 

頸の辺りを押さえて狼狽えるジハンキジゲン。

見るとジョーさん達は一瞬はっ!となるとなると前に出て、なんとかスゴーミンを倒した総一さんとアクアさんも地上に降りて

 

「貴様よくも怠け者にしてくれたな!」

 

「人を玩具にして散々遊んでくれやがって!

末代まで呪ってやる!」

 

「私はあんなアクアみたいな空気読まない女じゃありません!

爆裂魔法は三度のご飯より愛してますけど!」

 

「よくも私の品位を地の底まで落としてくれたな!

ぶっ殺してやる!」

 

宝石を投げ捨てるダクネスさん。

それを見たアクアさんは慌てて拾い上げて

 

「おー勿体無い勿体無い…儲かっちゃった♪」

 

「お前だけは元に戻らない方が良かったかもしれないな。」

 

それは兎も角皆さんなんとか元に戻れた様なので

 

「ここからは派手にいきましょう!」

 

まずは私が。アバレモードのまま背後に回り空高く斬りあげる!

 

「次は私ね!」

 

<ハーーッリケンジャー!>

 

目立ちたがり屋のアクアさんがソニックメガホンを構えながら前に立ちます。

 

「くるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくる回って回れエ!」

 

音波を受けた瞬間ふわりと宙に上がり無茶苦茶に回転しだすジハンキジゲン。

 

「今よ!」

 

「次は俺たちだ。行くぞダクネス!

デンジスパーク!」

 

「勿論だ!イエロー!ライオン!」

 

<デーーッンジマン!>

 

<ラーーッイブマン!>

 

「デンジパンチ!」

 

「ライオンパンチ!アタァック!」

 

アクアさんを飛び越えてデンジブルーになったジョーさんとイエローライオンになったダクネスさんが地面に叩きつける様に殴り飛ばします!

 

「和真!私達も!」

 

「おう!」

 

<<ゴーーッオンウイングス!>>

 

「「テイクオフ!ゴーオンウイングス!」」

 

この前新たに手に入れたゴーオンゴールドとシルバーに変身して共通武器のジェットダガーを構えて

 

<<mission 6 full power!>>

 

「「ダガーアクロバット!」」

 

ようやく立ち上がったジハンキジゲンを四方八方から切り裂きます!

 

「トドメと行くか!ゴーカイチェンジ!」

 

<オーーッレンジャー!>

 

オーレッドに変身した総一さんがジハンキジゲンに迫り

 

「秘剣・超力ライザー!」

 

専用剣スターライザーに超力を込めて繰り出した必殺技が炸裂!

 

「ジュースの缶は!ちゃんと潰して捨てようねぇええ!!」

 

ジハンキジゲンは爆散。

中から飛び出たレンジャーキー、イエローオウルキーを回収。

任務完了です!

 

「これでジェットマンのキーはコンプリートだな。」

 

総一さんがそう言った瞬間でした。

どこからか飛んで来た紫色のビームがジハンキジゲンの残骸に当たり

 

「リベンジだぁああ!!」

 

なんと巨大化しました!

 

「おいおいマジか!」

 

「空き缶みたいに踏み潰してやるぅううう!!」

 

そう言って足を上げようとした時、ジハンキジゲンに砲弾が炸裂しました!

 

「今のは、ガレオンキャノン?」

 

「て事はルカか!」

 

見るといつの間にか街の方にルカさんが操縦するガレオンが回り込んでいました。

 

「さーて好き勝手してくれた分、お返ししてやるわよ!」

 

ガレオンキャノンが発射されてジハンキジゲンは大きく後退します。

 

「よし!風雷丸!もう少し時間稼ぎ頼む!

その間に海賊合体だ!」

 

頷くとジョーさんはゴーカイジェットに、ダクネスさんはゴーカイトレーラーに、和真さんはゴーカイジェットに、めぐみんはゴーカイマリンに、アクアさんは風雷丸に乗り込みます!

 

「「「「「海賊合体!」」」」」

 

ジェットとレーサーが両腕に、トレーラーとマリンが両足になり、ジェットの一部が兜になって装着され

 

「「「「「完成!ゴーカイオー!」」」」」

 

「まずは私ね!風雷丸!」

 

「御意!必殺奥義・乱れ桜!」

 

吹き荒れる桜吹雪と共に分身した風雷丸がクナイで連続攻撃を仕掛ける。

ジハンキジゲンはジュース艦型爆弾を投げるが質量をもった分身が肉壁になりゴーカイオーや風雷丸本体には届かない。

 

「それじゃあこっちも必殺行くわよ!」

 

「「「「「レンジャーキーセット!」」」」」

 

セットしたゴーカイジャーのレンジャーキーを捻り、ゴーカイオーの胸部から巨大な大砲が展開される。

 

「「「「「ゴーカイ!スターバースト!」」」」」

 

連射された大型砲弾にジハンキジゲンは爆散した!

 

 

 

2

無事、敵を撃破した私達はギルドへの報告を済ませて謝礼として10万エリスを受け取れる事になりました。

 

「けど半分は返済に持ってかれて5万か。

飯代にしかならなかったな。

いや、ダクネス的には飯代ぐらいにはなったってところか。」

 

「や、やめてくれソウイチ。

私のアレは…悪い夢でも見たと思って忘れてくれ。

本当の私はケチでもせこくもない。」

 

その一方で和真さん達は

 

「まさか…俺があんな怠け者だったなんて…」

 

「私が引きこもりとか有り得ない!

意味ある言葉を言うよりあんよのが早かった女よ?」

 

「逆にカズマさんは面倒ごとに関わりたがらない所とかまんまでしたよね?」

 

「ああそうだな!めぐみんの爆裂魔法依存症と何ら変わりないな!」

 

「逆にジュース飲まなかったリアも意外と容赦ない事がわかったわね。」

 

「そうですよ。

本当の私は恐ろしいんですよぉ…。」

 

なんて冗談を言いつつ、やっぱり私はこの赤き海賊団の雰囲気が好きなのでした。

 




次ーーッ回!第三話!

和真「魔王軍が墓荒らし?」

アクア「なんでキョンシーなんて出てくるのよ!」

ジョー「こいつら、強い!」

総一「この手紙、まさか!」

キョンシーの手紙

総一「絶対に、見つけ出してみせる!」


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キョンシーの手紙

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊としての汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!



1

「魔王軍が墓荒らし?」

 

ある朝、砂糖抜きのホットミルクを飲みながらギルドで情報収集をしていた和真はおかしな話を聞いた。

 

「正確には暴かれたり物が取られたりしてる訳じゃ無いから荒らしじゃなくて不法侵入なんだけどどうも怪しくてな。」

 

「どんな奴なんだ?」

 

「この前神父と一緒に墓を見に行ったプリーストの女の子が言うには白いゴキブリみたいな2本の触角が生えてる奴だったらしいぜ。

ま、プリーストじゃない俺たちにはあんまり関係ないけどな。」

 

情報の例に借金持ちの身の上だが酒を奢るとガレオンに戻った。

 

「ただいま〜」

 

「おかえりカズマ。何か有益な情報は掴めたか?」

 

キッチンの方から鎧の代わりにエプロンを付けたダクネスが出て来た。

どうやら他のメンツは自分がいない間に出かけた様だ。

 

「まあ次のレンジャーキーに繋がりそうな手がかりは。

所で総一さん達は?」

 

「ソウイチ達は家を売る準備で馬のドンを私達の屋敷に置きたいって事だったから今屋敷に馬小屋を増築しにな。」

 

「そんな金どこから?」

 

「また例によってルカの指輪を売っ払ったらしい。」

 

「あの人の指輪全部売れば借金返せるんじゃ無いか?」

 

「その見立てなんだが、本人が頑として拒否し続けててな。」

 

「ま、アクアのせいで背負った借金だしな。

そのアクアはめぐみんと1日1爆裂か?」

 

「ああ。戻ってきたら朝食にしよう。

準備手伝ってくれ。」

 

「了解。カズマさんが意外と家庭的なところ見せてやる。」

 

「それは楽しみだ。」

 

 

 

2

「『エクスプロージョン』ッ!」

 

平原に光が突き刺ささり光が爆ぜた。

遅れて熱風が吹き抜け一瞬だけ世界が無音に晒される。

めぐみんが力を使い果たし倒れ込んだ音にハッ!としたアクアはめぐみんを背負うと帰路についた。

 

「戻ったらダクネスがご飯用意してくれてる頃かしら?

めぐみん1人で食べれる?」

 

「座りさえ出来れば両手を動かすぐらいは出来ますよ?

ダイナマンのレンジャーキーを使ったら3本以上で失神しますけど。」

 

などと話しながら歩いていると前方から何やら霧が漂い始めた。

 

「こんな季節に珍しいですね。」

 

「珍しいどころか、なんか異様に濃くない?」

 

季節は肌寒さを感じ出す頃。

雪精が出てくるにもまだ早いぐらいだが、それでもこの時期に霧はおかしい。

 

「それになんだか異様に周りに人がいる様に感じますね…。」

 

あたりを伺う2人。

すると茂みの中から両手を前に突き出した青白い肌の、

明らかに腐ってないだけの死体が飛びながらやって来た!

 

「アンデッド!?」

 

「なんでキョンシーなんて出てくるのよ!」

 

キョンシー。地球は中国の死体妖怪の一種で、広東省での呼び方を言う。

アクア達の前に現れたキョンシーは映画などでよく見る清の時代の官服ではなくよく見る冒険者の服装をしていた。

 

「まさか、近くの墓から無理矢理連れて来たんですか?」

 

「その通りだ!流石紅魔族。

一芸しか能がない様だが頭は回る様だな!」

 

見るとキョンシー達の間をかき分けて白いずんぐりむっくりのゴキブリの様な二本角にお札を纏った怪人が現れた。

 

「「ゴキブリ怪人!」」

 

「違う!こいつの名前はプラズマヅノー!

お前たちを葬る為にこのギルド星人ギルドスが造った頭脳獣だ!」

 

ゴキブリ怪人、プラズマヅノーの後ろから緑色のリザードマンの様な怪人が現れた。

 

「今日は朝から随分賑やかですね。

魔王軍には違いない様ですけど怪人を造るとは何者ですか!?」

 

「俺は銀河の彼方ギルド星からやって来たギルドス!

魔王バスコに雇われて貴様らを始末しにやって来たのだ。」

 

そう言ってギルドスは月牙型の武器、キババックルを構える。

キョンシー達もアクア、めぐみんの方を向く。

 

「1人はガス欠、1人は両手が塞がっていて変身さえ出来まい!ここで殺してしまえ!」

 

ギルドスの号令で飛びかかるキョンシー達。

 

「させっかよ!」

 

しかし現れた総一、ジョー、ルカ、リアに阻まれた。

 

「残りのゴーカイジャー共か!?

貴様らどうやってここが!」

 

「ここにだけ霧が漂ってたらいやでも分かるっつーの。」

 

「だとしてもここに2人がいる保証は無かった筈だ!」

 

「アクアがこの手のトラブルに巻き込まれないとでも?」

 

それどうゆう意味よ!と喚きながらもアクアはめぐみんを潜伏スキル持ちのルカに預けて、ゴーカイピンクのキーを受け取る。

 

「じゃあいっちょ行きますか!」

 

「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」

 

モバイレーツにレンジャーキーをセット。

パワーが解放され4人はスーツに包まれた。

 

「ゴーカイレッド!」

 

「ゴーカイブルー…ッ!」

 

「ゴーカイグリーン!」

 

「ゴーカイピンク!」

 

「海賊戦隊!」

 

「「「「ゴーカイジャー!」」」」

 

 

 

3

「こいつら、強い!」

 

変身したはいいが、思いの外キョンシー達は強かった。

 

「『ターンアンデッド』!『ターンアンデッド』!

あーもーなんでこんな数いるのよ!キリがないわ!」

 

「当然だな!こいつらは魔王軍に殺された恨みから生まれた憎しみのカオスから作ったキョンシー!

魔王軍に死してなお利用される恨みで戦い続けるほど強くなり、この土地の前の神父が悪徳だっただけにいい亡霊も手に入れられた!」

 

得意げに語るギルドス。

なら可哀想だが無理矢理倒して成仏させるしかない。

 

「向こうは白だし、こっちも白ってのは?」

 

「悪くない…。」

 

ジョーがバックルから転送されて来たキーを取り出す。

俺たちもホワイトレンジャーのキーを取り出す。

 

「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」

 

アーーッバレンジャー!

 

「ときめきの白眉、アバレキラー!」

 

俺はアバレキラーに変身してウイングペンタクトでキョンシーを斬る。

 

ダーーッイレンジャー!

 

「吼新星!キバ!レンジャー!」

 

ジョーはキバレンジャーに変身して乱れやまびこを発動。

デスメタルの様な爆音でキョンシーを怯ませすれ違い様に斬り伏せて行く。

 

ジェーーットマン!

 

「ホワイトスワン!スワニーアタック!」

 

アクアはホワイトスワンに変身するウイングガントレットで殴りかかる。

 

ジーーャッカー!

 

「ビッグワン!」

 

リアはビッグワンに変身して得意の槍で敵を薙ぎ払う。

地味に前作と合わせても初めてランサー設定が活かされた瞬間かもしれない。

 

「ほう、一応は幹部を倒しただけ有るな。

プラズマヅノー!奴らからキョンシーを造るのだ!」

 

ギルドスの命令を受けたプラズマヅノーは4人に怪光線をはなった。

大しただダメージは受けなかったが、確かに4人に異変が起こる。

4人の体から数枚の紙が飛び出たのだ。

 

「な、何!?」

 

「なんだか知らんがそうはさせるかよ!

アバレイザー!ウイングペンタクト!」

 

遠距離モードの武器両手持ちで自身とジョーから飛び出た紙を撃ち抜く。

しかし距離的に遠かったリアのとあんまりに枚数が多かったアクアのはプラズマヅノーの方に飛んで行き、お札に変わってそこからキョンシーが生まれた!

 

「プラズマヅノーは生きてる人間のマイナスの気持ちからもキョンシーを造り出せるのだ!」

 

「まじかよ!」

 

「不利です撤退しましょう!」

 

「だな。ゴーカイチェンジ!」

 

総一とジョーはゴウライジャーに、リアとアクアはシュリケンジャー、ハリケンブルーに変身して撤退した。

 

「ちっ!逃げられたか。

だがプラズマヅノーを倒さなければ死んでる以上はこれ以上倒せない敵を増やされない為に奴らは必ず現れる。

その時こそ、ゴーカイジャーの最期だ!」

 

そう言ってギルドスはプラズマヅノーとキョンシー軍団を引き連れて帰って行った。

 

 

 

4

「この手紙、まさか!」

 

ガレオンに帰投して朝食を済ませた総一は自分から飛び出た紙に書かれた字を見て驚いた。

 

(どうしてこんな物が…!?

これは高校一年生の時に俺が書いたラブレター。

こんな物見られたら、俺は一生笑い者にされちまう!)

 

総一は初級火魔法ティンダーで手紙を燃やした。

彼はタバコを吸わないが灰皿は別に後から片付けるでいいだろう。

 

(問題は、あの時俺はラブレターを2枚に渡って書いちまったって事だ!

絶対に、見つけ出してみせる!

あれは、俺の一世一代の恥…!)

 

総一は早速リビングに戻った。

 

「ソーイチ、遅かったわね。

あの身体から出て来た紙はどうしたの?」

 

「ああ、急にキョンシーになったら困るから燃やした。」

 

咄嗟に嘘をついたがみんな意外と納得してくれた。

直接戦闘に参加してない和真、ダクネス以外はキョンシーの厄介さを分かっていたからだ。

 

「取り敢えず対策としてなんだが次プラズマヅノーと戦うのはさっき戦った4人だけにしようと思う。

もう既にキョンシーを作れる要素を抜かれてる俺たちなら敵を増やされる心配はないはずだ。」

 

本音は1人でも2枚目のラブレターを見られる人員を減らしたいだけなのだが、作戦としても利にかなっていた。

 

「ですね。けど私今日は隣町の聖歌隊の発表会で時間的に泊まりになっちゃいそうなんです。」

 

と、リア。確かに幾らか前からそんな事を言っていた。

確かルカもついて行くと言っていた筈だ。

 

「しっかし魔王軍来ちゃったしなぁ…」

 

するとダクネスが一歩前に出て

 

「なら私も行こう。

もしキョンシー?とか言うアンデッドが湧けば遠慮なく囮に捨て置いてくれ。」

 

「ダクネス良いのか?」

 

「ああ。それに私はクルセイダーだ。

多少ならプリーストの真似事も出来るしな。」

 

「わかったダクネス。

うちの会計と妹分を頼んだぜ。」

 

内心3人も遠ざけれてガッツポーズの総一。

 

「今日は出歩いてもまたキョンシーに襲撃されるだけだ。

ガレオンの整備と武器の点検!

めぐみんが爆裂魔法を使用可能になったら出発だ!」

 

 

 

5

「カズマカズマ!起きて!起きてよカズマ!」

 

頭がはっきりしない。

明らかに睡眠不足を感じながら俺、佐藤和真は起き上がった。

 

「ったくなんだよアクア…もう朝なのか?」

 

「まあ、朝っちゃ朝ね。今午前2時20分。」

 

「夜中じゃねーか!」

 

自分の声で目が覚めちまう。

仕方ない。ようやくはっきりした目で見るとアクアが俺のブリンガーソードとモバイレーツの入ったホルスターを持っていた。

 

「こんな時間になんだよ?」

 

「私ね、寝付けなくてお茶でも飲もうかな?

と思って台所に行こうとしたらソウイチが出て行く所を見たのよ。」

 

「総一さんが?トイレじゃないか?」

 

「普段着に剣まで持ってたのよ。

トイレとは考えにくいじゃない?」

 

確かにアクアの言う通りだ。

いくらこの前敵に乗り込まれたからってトイレに行くだけでそんな装備しなくていい筈だ。

 

「だからカズマ、一緒に来てソウイチの尾行を手伝って欲しいのよ。」

 

「うーん……ま、そうだな。1人で無茶されても困るし。

レッドを支えるのもブラックレンジャーの務めだしな。」

 

 

 

6

そんな風に尾行(つけ)られてるとも知らず彼、七海総一は墓所に向かっていた。

奴らがキョンシーを増やすならここだと思ったからだ。

 

(………いた!プラズマヅノーにギルドス!

皆の魂を集めてる!)

 

「ふーむ、もうこの墓地からとれる者は無いか。

プラズマヅノー、撤退だ。」

 

総一はモバイレーツにゴーカイレッドのキーをセット。

2人が後ろを向いた瞬間に飛び出す!

 

<ゴーーッカイジャー!>

 

敵が振り向くより早くゴーカイサーベルにキー差し込み必殺技待機状態にする。

 

「レッドレイジ!」

 

総一はゼロ距離でプラズマヅノーに斬撃を浴びせた。

続いてギルドスにも斬りかかる。

だがキババックルで防がれた。

 

「数で勝てぬと分かって不意打ちの強襲か!

思い切りは買うが惜しかったな!キョンシー共!」

 

周囲からキョンシーが現れた。

その数は明らかに昼間より増えている。

 

「ちっ!やるしかないか!ゴーカイチェンジ!」

 

<ゴーーッレンジャー!>

 

アカレンジャーに変身してニューレッドビュートを繰り出す。

キョンシーを絡め取ってはぶつけ、絡め取ってはぶつける!

 

(どれだ?どれが手紙のキョンシーだ?)

 

探しながらやるが中々見つからない。

その上手傷を負ってるとは言え行動隊長格の怪人に準幹部級の敵まで相手にするのだ。

流石に分が悪い。

 

「カズマ!最高にベストタイミングみたいよ!」

 

「よっしゃ来た!『スティール』ッ!」

 

プラズマヅノーの身体からメリメリと何が剥がれる音がして1つの赤い光が背後から現れた2人の元に飛んで行った。

赤い光、レッドファルコンレンジャーキーを抜き取られたプラズマヅノーは死にかけのゴキブリみたいになってしまった。

 

「和真!それにアクアまで…」

 

「ちぃっ!伏兵か!プラズマヅノー!

キョンシーを取り込んで回復しろ!」

 

プラズマヅノーはキョンシーを取り込み始める。

全てのキョンシーを取り込んだがプラズマヅノーは完全に回復した。

残った札だけが宙を舞う。

 

「天才を自称する割には悪手ねギルドス!

上級職が1人しかいないとはいえ3対2で勝てるとでも?」

 

「プラズマヅノーさえ居ればキョンシーなどいくらでも作れる!

貴様らさえ倒せば何も問題ない!」

 

ギルドスは顔に張り付いたお札を手に取るそれを見るとニィッ、と口を歪めて

 

「これは、これは。

レッドレンジャーはここで倒せるかもな!」

 

「何!?」

 

「どうゆう意味よ!?」

 

「まさか!そのお札は!」

 

走り出す総一。

しかしプラズマヅノーの光線に足止めされてしまう。

 

「見る者全てを痺れさせるその黒い瞳。

甘い匂いの花の唇。ハハハ!ハハハハハ!」

 

ガクリと膝をつき、頭を抱える総一。

嫌な思い出を振り払う様に何度も首を振る。

 

「嗚呼、あなたは女神。僕の女神、仙田ルイ様。」

 

ラブレターを音読するギルドス。

和真とアクア膝どころか両手までついた総一とギルドスを交互に見る、

 

「あなたの七海総一より、か。

ハッハッハ!熱烈だな。ハッハッハッハッハ!

だがこんな風に出てくるって事は結果はよろしくなかった様だな!」

 

「ああご明察だよ!入試首席の自分と平均よりやや上程度の俺じゃ釣り合わないって言われて目の前で破かれて排水溝に捨てられたよ!」

 

ついに戦意も無くなったのか変身まで解除される総一。

よく見ると半泣きになってる。

 

「うわぁ…それはエグいわね。」

 

「総一さん…。

いくら入学したてでその仙田ルイがどんな奴か分からなかったとは言え…それは…。」

 

と、2人は一通り呆れたがけど、と一白置いて

 

「誰にだって青春の過ちぐらいあるわよ。

私なんか一服盛られて和真に惚れさせられた挙句愛まで奪われて利用されたのよ?」

 

「俺だって手痛い失恋をした事ぐらいありますよ!

酸いも甘いも通る人は通る道ですよ!」

 

しばらく思案していた総一だったが立ち上がるとズボンの汚れを払い、

 

「そうだよな…清濁も美味いも不味いも飲み込んでこその今だよな!」

 

総一にレッドファルコンのキーが投げ渡される。

3人は並び立ちアクアはブルードルフィン、和真はイエローライオンのキーを構えて

 

「「「ゴーカイチェンジ!」」」

 

<<<ラーーッイブマン!>>>

 

「レッド!ファルコン!」

 

「イエロー!ライオン!」

 

「ブルー!ドルフィン!」

 

「超獣戦隊!」

 

「「「ライブマン!」」」

 

(bgm 超獣戦隊ライブマン)

 

ポーズを決めた3人は先手必勝とばかりに腰に下げた銃を抜く。

 

「「「トリプルライブラスター!」」」

 

三つのビームがプラズマヅノーに炸裂した。

 

「ドルフィン!ライオン!」

 

「おう!」

 

「ええ!」

 

2人は腕を組み、それを足場に総一はプラズマヅノー目掛けて飛んだ。

手にはファルコンセイバーが握られている。

 

「やらせるか!」

 

「こっちのセリフだ!ライオンバズーカ!」

 

「ドルフィンアロー!」

 

2人の遠距離攻撃がギルドスを阻む。

その隙に必殺のファルコンブレイクがプラズマヅノーを切り裂いた。

 

「ダメ押し行くぜ!トリプルバズーカだ!」

 

ライオンバズーカをベースに下部にドルフィンアロー、

上部にファルコンセイバーを取り付け、和真が砲手を務める。

 

「「「トリプルバズーカ!」」」

 

発射された光線をモロに喰らいプラズマヅノーは爆散した。

 

「己海賊どもめ!必ずプラズマヅノーよりも強い怪人を用意して、お前たちを地獄に送ってやる!」

 

捨て台詞を残してギルドスは去っていった。

 

「おとといきやがれ!」

 

ギルドスが去って行った方に叫ぶ総一。

変身解除したその顔はとてもスッキリしていた。

しかし宙に舞う紙を見るうちに段々と険しくなっていき

 

「なんであのゴキブリ野郎は死んだのに紙の方は消えないんだよ!

どれだ!俺のラブレターはどれだ!」

 

ガクっ!とずっこける2人。

 

「いーじゃないの。青春の過ちなんて誰にでも…」

 

「アクアお前は昼間どんだけ紙が出てったと思ってる!

見られたら女神のイメージガタ落ちだぞ!」

 

面白いぐらいにアクアの顔が真っ青になって行く。

 

「カズマー!ボサッとしてないで拾うの手伝って!

このままじゃ私の痴態が知れ渡ったらこの星のアクシズ教団が崩壊しちゃう〜!」

 

うん、知ってたこんな残念なオチなのは。

なんて思いながら和真は必死に散らばって行く紙をかき集める2人を手伝った。




次ーーッ回!第四話!

ブッチー「ワシはチブチ星人ブッチー!」

和真「妊娠って、俺がぁ!?」

ダクネス「しかも頭脳獣の子供とは…」

アクア「降ろしなさい!」

ベガベビー「お願いママ!私を殺さないで!」

ママ!寄生怪物の叫び

和真「誰が化け物のガキなんて産むかぁーー!!」


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ママ!寄生怪物の叫び

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に反旗を翻し、
海賊としての汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


澄み切った青い空のお陰で差し込む日差しを遮るものはない。

お陰で程よく肌寒い程度のこのごろ。

佐藤和真は今にも小唄でも歌いながら踊りだすような上機嫌で歩いていた。

彼は知ってしまったのだ。

このアクセルの街の男性冒険者共通の秘密を。

 

(まさかエチチなサキュバスのお姉さんたちがやってるお店があるなんて!)

 

システムとしては、店で直接夢を見せてもらいたい人が内容を指定して、その夜枕元に立ったサキュバスに淫夢を見せてもらい、その間にサキュバスは冒険に障りがない程度に精を吸う。

冒険者はスッキリできてサキュバスは腹を満たせる。

まさにWIN-WINの関係なのだ。

 

(どんな夢みせて貰おうかなー……個人的には年上の方が好きだが…)

 

などと文字通り夢に思いをはせて居た和真だが不意に走って来た人に突き飛ばされる。

 

「痛っ!気を付けって……」

 

和真にぶつかった人はすぐに走り去って行き、

その後も次々と人が走り去って行く。

悲鳴をあげながら

 

「どんだけボーっとしてたんだ!

思いっきり魔王軍が暴れてんじゃねーか!」

 

<ゴーーッカイジャー!>

 

ゴーカイグリーンに変身して飛び出すと、

そこには赤いずんぐりむっくりな体系の怪人と、

気持ち悪い植物を真ん中あたりだけ割いたような見た目の怪人が暴れていた。

 

「テメェら魔王軍だな!」

 

「んー?おお!来たな海賊!ワシはチブチ星人ブッチー!

そしてこっちはワシが造った頭脳獣べガヅノーだす!」

 

「ベガヅノーだか弁当箱だか知らねえけど、人様のお楽しみを邪魔してくれたお礼!たっぷりしてやるぜ!」

 

そう言ってゴーカイグリーンはゴーカイガンとゴーカイサーベルを取り出し戦闘を始めた。

2対1とだけあって正面からでは勝ち目がない。

サーベルのワイヤーを建物に飛ばして壁を走りながら銃撃を与えていく。

 

「ムムム!中々やるだす!けど、これはどうかな?

目ん玉リボルバー!」

 

愉快な名前とは裏腹に強力なビームがワイヤーを付けていた建物の壁を屋根事消し飛ばした。

 

「うわだ!ててて……マジかよ。

だったら無敵防御のこれだ!ゴーカイチェンジ!」

 

<ジューーッウレンジャー!>

 

ドラゴンレンジャーに変身し獣奏剣をで斬りかかる。

 

「ぐわああ!」

 

「うう!」

 

「は!もういっちょ!」

 

しかしそこで横から入って来たキババックルが獣奏剣を受け止めた。

 

「な!?お前ギルドス!」

 

「如何にも!」

 

獣奏剣を弾いてキックを叩きこむギルドス。

 

「おおギルドス来てくれただすか!」

 

「ああ、こいつには俺も借りがある。行くぞ!」

 

「まずい!」

 

すぐに防御の構えを取るドラゴンレンジャー。

三体の怪人のビームが放たれる。

何とか拮抗するがじわじわと押され始める。

 

(こ、このままじゃ…)

 

「今だ!スゴーミン!」

 

「え?」

 

背後から連続して光弾を食らった和真は変身解除させられてしまった。

 

「よし!ベガヅノー!アイツに胎児を産み付けろ!」

 

指令を受けたベガヅノーが和真に向かってビームを放つ。

それを受けた和真のお腹は、ふっとたにしては不自然に膨らみ始める。

 

「……え?う、産み付けるってまさか…。」

 

「お前の想像通りだす!

元気な赤ちゃん生んでくださいだすねー!」

 

ゲラゲラと笑いながら魔王軍たちは去って行った。

そこにただ一人残された和真。

しばらく右斜め37度の方向から飛んできた事実に放心していたが

 

「に、妊娠って、俺がぁ!?

う、嘘だ…。嘘だぁあああああああああ!」

 

 

 

「マジですね。」

 

「チクショぉおおおお!」

 

和真の慟哭がガレオンに響く。

頭を抱えて大きなお腹を睨んだ。

 

「しっかし男だろうと妊娠させる怪人ですか。

魔王軍もまた奇妙な怪人を造りましたね。」

 

さっきまで使っていた聴診器を外しながらリアが和真のお腹を撫でる。

 

「あ、蹴りました。もしかしたらキック技が得意な怪人かもしれませんね。」

 

「呑気に言ってる場合か!

怪人の赤ん坊なんてどうすりゃあいいんだよ!?」

 

「確かにカズマの血を受け継いだ怪人などどんな鬼畜が産まれてくることか…。

そ、想像するだけで武者振るいが……っ!」

 

顔を紅潮させてだらしない笑みを浮かべるダクネス。

アクアはそんな彼女に肘打ちをくらわすと前に出て

 

「兎に角!どうするかなんて決まってるでしょ!

カズマ!降ろしなさい!」

 

「降ろすたってどうやって?」

 

アクアはドヤ顔でジョーとルカに目配せすると指を鳴らす。

意図を察した2人はゴーカイサーベルと荒縄を取り出した。

 

「いや待って待って何やろうとしてるんですか?」

 

「めぐみんもソーイチも退いて!

生まれてくる前にさっさと取り出す。」

 

「安心しろ。餓鬼しか切らん。」

 

「そう言う問題じゃねーよ!

人斬り包丁で開腹手術しちゃいけないぐらい医学のいの字も知らない俺でも分かるわ!

産ませるにしろ降ろすにしろ医者に診せるべきだろ?」

 

「怪物の子供を妊娠してる男を人間を妊娠した女しか診たことしかない医者に見せてどうするんだ?」

 

「少なくとも俺らより応用できる知識はある。

それに下手に取り出して和真を人質にして暴れても困るからな。」

 

 

3

結局和真は医者に診せることになった。

ガレオンの留守をダクネスとジョーに任せて残る6人で向かった。

 

「はぁーーー………。

俺、この先どうなっちまうんだろ…。」

 

「大丈夫よカズマ!

なんて言ったってこのアクア様がついてるのよ?」

 

「余計不安だわ!」

 

背後から和真が何かネガティブなことを言う度にアクアが励ますと言ったやりとりが続いている。

 

「和真の奴、思っきしマタニティブルーになってんな。」

 

「なんですかそれ?」

 

「女性が出産前に出産や育児なんかな対して抱く漠然とした不安の事だ。」

 

「和真さんは男性ですけどね。」

 

「うーん。流石に命ともなると『スティール』で取り出せそうにないしなー。」

 

話しながら歩いていると6人を囲む様に無数のゴーミンとブッチーにベガヅノーが現れた。

 

「お出ましか!」

 

「当然だす!折角孕ませたのに中絶なんてさせないだす!」

 

「野郎っ!良いぜさっきの借り返してやるぜ!

ゴーカイ…」

 

「ちょっとちょっと駄目ですよ!」

 

変身しようとした和真からリアがレンジャーキーを取り上げた。

 

「1人の体じゃないんですから無茶しないで下さい!」

 

「奴らは俺らが引き受ける。

お前はさっさと潜伏スキルで逃げろ!」

 

総一、アクア、ルカ、めぐみんもキーを構える。

 

「「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」」

 

<<<<<ゴーーッカイジャー!>>>>>

 

「ゴーカイレッド!」

 

「ゴーカイブルー!」

 

「ゴーカイイエロー!」

 

「ゴーカイグリーン!」

 

「ゴーカイピンク!」

 

「海賊戦隊!」

 

「「「「「ゴーカイジャー!」」」」」

 

「派手に行くぜ!」

 

和真が隠れたのを確認して5人は戦闘開始した。

ルカはリアと武器を交換して二刀流+ワイヤーの遠距離攻撃で、リアは槍先でも見る様に軽快に敵の銃口を避けながら狙撃を。

 

アクアとめぐみんも武器を交換し、インファイトにガン=カタ風のスタイルで攻めていく。

総一もアクロバットなキックを織り交ぜた銃撃と剣戟でゴーミンを減らしていく。

 

「ええーい焦ったいだす!目ん玉リボルバー!」

 

ブッチーがゴーミン諸共ゴーカイジャーに強力なビームを放った。

 

「よしよし、これで全滅…」

 

「する訳ないでしょ、バーカ!」

 

煙の向こうから5人の戦士が現れた。

 

「ゴセイナイト!」

 

「ガオシルバー」

 

「メガシルバー!」

 

「ボウケンシルバー!」

 

「ゴーオンシルバー!」

 

「スーパー戦隊!」

 

「「「「「シルバーレンジャーズ!」」」」」

 

「ぜ、全員シルバー!?そんなの有りだすか!?」

 

「有りよりの有りよ!」

 

「ま、変化球って奴?」

 

「目が眩むぐらい輝いてやるってな!」

 

 

 

4

和真は街外れの方に来てようやく潜伏スキルを解除した。

頬にはじっとりと汗が浮かび、息切れを起こしている。

 

(ま、まずい…腹が、さっきより大きくなってる…。

このままじゃこいつが産まれちまう!)

 

「ママー!見て、何あれ!」

 

「きっとアクシズ教徒よ!見ちゃいけません!」

 

それにこれ以上周りから変な目で見られるのもごめんだった。

まあパンツ脱がせ魔とか借金海賊とか色々悪評は尽きない和真だが、それとこれとは話が別だ。

 

(誰が化け物のガキなんて産むか…)

 

絶対に降ろす。

改めて決心して和真は病院を目指した。

 

(お願いママ!私を殺さないで!)

 

「え?」

 

ふと、声がした。

辺りを見回すが、自分に話しかけてる様な人影は無い。

 

「ま、まさか…お前、脳内に直接!」

 

(はい、ママ。)

 

「ママ!?俺がお前のママだって!?」

 

周りからの視線は一層キツくなったが、それ以上に和真は混乱した。

 

「誰がお前のママなんかなもんか!

お前なんかさっさと降ろす!」

 

(なんでですか!?私、ママに殺される嫌われる事をしてしまったんですか!?)

 

「それは……」

 

宿った子供に罪はない。

安い何回も俳優変わってるだけのようなドラマでよく聞いたセリフが和真に纏わりつく。

 

(ママ、私を好きにならなくてもいいです。

けどママがくれた命で生きてみたいです。)

 

「や、やめろ…やめろ良心に訴えるなぁあーーーーーッ!」

 

和真は走った。

人目も気にせず何も見ないように走った。

耳を塞いでも聞こえてくる赤ん坊の声を振り払うように。

 

(畜生…畜生なんで俺ばっかこんな目に…)

 

疲れ切った和真は道の脇に座り込んだ。

体力は有るが気力がなかった。

 

(参ったな……なんだか可哀想になっちまったよ…)

 

この佐藤和真という男、基本的に助平で金に汚く楽な方に流され易い人間だが根は善人で、もし会社員とかになったら部下の為に土下座ぐらい出来る人間である。

そして現代日本人的な人並みの良心も持った人間である。

今にも泣きそう(胎児が、それも頭脳獣が泣くか知らんが。)な声で訴えられれば心も揺らぐのだ。

 

(もし、もし俺が母さんに死ねと言われたら?)

 

自分がトラクターに轢かれてショック死したと聞いて思わず笑ってしまった様な親だが、それでも自分を産み落としてくれた親である。

そんな親に『死ね』と言われたら自分はどうだろう?

そう思ってしまう程度には和真は善人だった。

 

「…ごめんな。」

 

(ママ?)

 

「俺は…レンジャー失格かもだけど…」

 

 

 

5

「その子を産む!?和真さん本気ですか!?」

 

ガレオンに戻った和真は自身の決断を伝えた。

当然と言えば当然だが、やはり反応は良くない。

 

「か、カズマ?あなた自分が何を言ってるか分かってるんですか?」

 

めぐみんがこめかみに手を当てながら尋ねる。

 

「わかってるよ。この子をアホみたいな借金がある中で育てるなんて至難の業だ。

皆に迷惑をかけないようにするなんて無理だと思う。」

 

「いやそこじゃない!

そこじゃないぞカズマ!

私達が言ってるのはその腹の子が、お前の中からどうやって出てくるかだ!

もしお前の腹を食い破って出てくるような奴だった場合お前の命は!」

 

ダクネスが本気で焦りながら肩を掴んで言った。

さっきと違いかなり取り乱した様子だ。

 

「この子はそんな子じゃねえ!

もしダクネスお前の言う通りなら俺が降ろそうとしてるのを察して『殺さないで』なんて言うかよ!」

 

「それが罠だったら?

そうじゃない保証なんてないでしょ!」

 

ルカが間髪入れずに鋭く言う。

 

「もしそうなら俺がケジメを付ける!」

 

「だーかーらー!そう言う問題じゃないのよ!

問題はソイツが魔王軍の生物兵器って事!

ほっといても暴れるの確定じゃない!

何かあってからじゃ遅いのよ!」

 

「じゃあ何もしてないのに殺すのかよ!」

 

「居る事自体が問題じゃない!もういいわ!

ヘタレだとは思ってたけど魔王軍に絆されるなんて!

私が掻っ捌いて取り出す!」

 

そう言ってサーベルを構えるアクア。

和真は躊躇いなくブリンガーソードを抜いた。

 

「いいぜ相手になってやる!」

 

2人は同時に斬りかかる。

それを間に入った総一とジョーがそれぞれの愛刀で受け止めた。

 

「な!邪魔しないでよ!」

 

ジョーは全く答えない。

対して総一は和真に問う。

 

「本気なんだな?」

 

「…はい。」

 

「行け。」

 

「!?…はい!」

 

和真はそのまま居間を後にした。

 

「ソーイチ!アンタ正気!?」

 

「正気じゃねぇのはお前らだろッ!!!」

 

静まり返る一同。

総一の目には怒りと、確かな失望が見て取れた。

 

「お前らには分かんないのか?

自分の子供を無理矢理取り上げられる和真の気持ちが。

親から無理矢理引き剥がされるあの赤ん坊の気持ちが。」

 

そして総一はアクアの胸ぐらを掴むと壁に叩きつけ小さく、そしてとても低い声で呟いた。

 

「信仰なんてあやふやな物から産まれる神々(おまえら)なんかには一生分かんないさ。

命の尊さや親子の情なんて。」

 

アクアを乱暴に放ると総一は和真に続いて出て行った。

 

 

 

6

和真は優しくお腹を撫でながらよく日の当たる広場の一角で『こんにちは赤ちゃん』を歌っていた。

腹に時々痛みが走る。きっともうすぐだ。

 

「あの時、なんとなくお前の考えが読めてたから一応アクアを止めはしたが…本当にあれで良かったのか?」

 

その様子を近くから見ていたのは魔王軍と他に2人。

総一とジョーだった。

 

「アイツがやりたいようにやらせただけだ。

良いも悪いもない。」

 

「そうか…」

 

ジョーの分析としてはアクアが和真に理不尽を与えるのが我慢ならなかったのと、それ以上に血の繋がった家族を引き裂きたくないだけでは?

といったものだがあえて言わなかった。

 

「ウゥッ!」

 

「!?」

 

「来たな。」

 

和真が悲鳴になってない悲鳴をあげて仰け反る。

大きくなったお腹から光が飛び出した。

それは太った小鳥の様な人型の怪人になった。

ベガヅノーには体色ぐらいしか似ておらず、

当然ながら和真ともあまり似ていない。

 

「やっと、やっと産まれる事が出来た!

ベガベビー!こんにちは、ママ!」

 

「ベガベビー!」

 

和真は生まれたばかりのベガベビーを抱きしめようと近付いた。

 

「お前の役目はそこまでだす!」

 

和真とベガベビーの間にベガヅノーのトゲミサイルが発射される。

隠れていたブッチー、ギルドス、ベガヅノー、ゴーミンの大軍が現れる。

 

「ベガベビー!お前の親はこのベガヅノーだす!

さあ、ベガヅノーの言う事を聞け!」

 

しかし、ベガベビーは言う事を聞くどころか立ち上がると和真が倒れている事を確認して

 

「ママ!ママーッ!」

 

「な、何!?何故ベガベビーがアイツの方に!?」

 

「たりめーだろ!」

 

総一とジョーがキーとモバイレーツを持って立ちはだかる。

 

「あのバブちゃんは知ってんのさ。

仲間と斬り合いになろうと産む決意を変えなかったアイツを。

男でも立派に生もうとしてくれた母親と、望まぬ戦いを強いようとしてる父親。

どっちを取るかなんて分かりきってるさ!」

 

「えーい!だったらそんな出来損ない要らないだす!

ゴーミンども!ベガヅノー!」

 

ベガヅノーとゴーミンが和真とベガベビーに向かう。

 

「ジョー、行くぞ!」

 

「ああ!」

 

「「ゴーカイチェンジ!」」

 

<<ゴーーッカイジャー!>>

 

ゴーカイジャーに変身した2人が走る。

しかしそこにブッチーとギルドスが割って入る。

 

それを見た和真はブリンガーソードを杖代わりに立ち上がりベガベビーの手を取って走った。

 

「ママ…」

 

「大丈夫だ。ママがついてるからな。」

 

和真は産後の痛みも引かないまま走った。

正直かなりキツかったが、産まれた我が子への愛情を思えば乗り越えられる気がした。

たとえ仲間と戦う事になっても。

 

「カズマ!」

 

前方からアクア、めぐみん、ダクネスの3人が走ってくる。

和真はブリンガーソードを上段に構えた。

 

「カズマ?……!?

お腹が元に!じゃあその怪人が…」

 

「ああ。俺の息子だ。指一本、触れさせない。

俺が居る限り殺させない!

下がってるベガベビー!ママが絶対守ってやる!」

 

和真は3人に斬りかかった。

アクアは拳を、めぐみんとダクネスは杖と剣を構える。

元々非力な上にレベルとスキルのランクだけで言えばぶっちぎりで『赤き海賊団』最低値の和真は当然明らかにダクネス、めぐみんに手加減されていても良い様にやられた。

だが何度でも立ち上がり何度でも剣を握った。

 

「いい加減!諦めが悪いのよ!」

 

アクアの左ストレートが和真の顔面を捉える。

鼻血が弧を描きながら仰向けに倒れた。

 

「ママァ!」

 

「「カズマ!」」

 

思わず駆け寄るダクネスとめぐみん。

和真はそれを振り払うとベガベビーに向かうアクアの形のいい足首に飛び付いた。

 

「俺のぉ!俺の息子に手を出すなぁ!

そいつは!ベガベビーは俺が必ず幸せにする!」

 

「この!離せ!離しなさいよ!」

 

アクアは和真の頭を容赦なく踏みつけた。

 

「あんなカズマに似ても似つかない化物が幸せになって良くて!

何で私はダメなのよ!

私は!私は魔王軍を倒さないと帰れないのよ!」

 

何度も何度も和真を踏みつける。

2人はボロボロと涙を流すアクアを止められなかった。

 

「確かに帰ったって仕事ばっかの毎日しかないわよ!

アンタらみたいにパパやママが待ってる訳じゃないわよ!

だけど私にとっては故郷なのよ!

そっから無責任に連れて来た癖に!

無責任に仲間にしたくせに化物を優先させるとか何考えてるのよ!

ふざけんなふざけんなふざけんな!!!」

 

そして漸く和真が離れるとブリンガーソードを奪い取りベガベビーに迫った。

 

「あ、アクアよせ!」

 

「ベガベビー!やめろ!」

 

アクアは、こちらに怯えながらもどこか憐れむ様な瞳を向けるベガベビーが心底気に入らなかった。

 

(こいつさえ!こいつさえ居なければ!)

 

両手で構えたブリンガーソードを振り下ろす。

 

「危ない!」

 

ベガベビーがアクアを突き飛ばした。

さっきまで彼女が居た場所にベガヅノーのトゲミサイルが飛んで来る。

それをもろに受けたベガベビーは火柱を上げて倒れた。

 

「う、嘘……なんで!?なんでよ!

なんで私を……。」

 

思わず駆け寄るアクアにベガベビーは優しく言った。

 

「あなたは、ママの大事な人だから…。

私の事で喧嘩してても仲良しなのはママの記憶が教えてくれたから……。

あ、なたが…ママの、事大好きな、の。

知ってた、、から。お腹にいた頃から、ずっと…。」

 

それが彼の最期の言葉だった。

呆然としてしまうアクア。

そんな事は構いもせずにベガヅノーは次のミサイルを放つ。

だがそれは当たる直前に横から割り込んできたブラックコンドルに、和真にウイングガントレッドの裏拳弾かれた。

 

「お前は、お前だけは許さない!」

 

ブラックコンドルは飛びながらビークスマッシャーとバードブラスターを引き抜いてミサイルを撃ち落とし迫った。

飛びながら多段蹴りを浴びせて着地する。

 

「カズマ!協力します!」

 

「行くぞめぐみん!」

 

<<オーーッレンジャー!>>

 

和真はキングレンジャーに、めぐみんはオーピンクに変身する。

 

「「超力!ダイナマイトアタック!」」

 

火の玉となった2人のタックルが炸裂。

しかしまだ終わらんと和真は新たなレンジャーキーを構えた。

今度はダクネスが並び立つ。

 

「「ゴーカイチェンジ!」」

 

<ターーイムレンジャー!>

 

イエロー専用バイクのベクターサイクルが同時に出現してダクネスがそれを運転。

和真は後ろに乗り、DVディフェンダーを構える。

 

「DVチェンジ!バルカンモード!」

 

接近しながら銃撃し、距離が詰まってきたところでスイッチを押し

 

「DVチェンジ!ソードモード!」

 

スピードに乗ったまま思い切り斬りあげる。

そして最後にバイクを降りた和真はカブトライジャーのキーを構える。

並び立つのは、アクア。

 

「……何よ?」

 

「決めるぞ。」

 

<<ゴーーッウライジャー!>>

 

「二重連!」

 

「「ダブルガジェット!」」

 

「サンダー!」

 

2人の固有装備を合体させたバズーカから迅雷のパワーが凝縮された光球が放たれる。

防御もかなわず直撃を受けたベガヅノーは爆散して粉々になった。

中からグリーンサイのレンジャーキーが飛び出る。

 

「……。」

 

和真はそれを拾い上げ強く握りしめた。

その時聞こえた鼻をすする音や、嗚咽の声をあえて指摘すり者は居なかった。




(bgm 激走戦隊カーレンジャー instrument)

ジョー「最悪の空気だ…。」

リア「まあ、仕方ないですよ。」

ルカ「大変よ!アクアが変な芋羊羹食べて巨大化して街で暴れてる!」

一同「「「「はぁ!?」」」」

ジョー「どうするソウイチ!?」

総一「付き合いきれっか!俺はゴーカイオーで行く!」

一同「「「「えっーーー!?」」」」

リア「和真さん知恵を貸してください!
このままだとアクアさんがゴーカイオーに!」

ルカ「次回、『巨大化アクア大逆走』!」

総一「飛び出すな、車は急には止まれない!」キリッ


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巨大化アクア大逆走

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


1

ベガヅノーを倒してから1週間。

我らが『赤き海賊団』の空気は

 

「何よ……」

 

「お前こそなんだよ?」

 

最悪の一言だった。

特に和真とアクア間で。

無理もない。和真はアクアのせいでお腹痛めて産んだ我が子を失い、アクアはこの中で誰よりも長い付き合いの和真との友情に決定的な亀裂を作ってしまったのだ。

険悪になるなと言う方が無茶だろう。

 

「ごちそうさま…」

 

やがて耐えられなくなったアクアが席を立った。

皿にはまだモーニングが半分ぐらい残ってる。

 

「あ、アクア大丈夫なの?

アンタここ数日毎日朝食残してるわよ?」

 

「いいのルカ、気にしないで。

ただ食欲ないだけだから。」

 

そう言ってトボトボとアクアは居間を後にした。

そしてアクアが完全に居なくなった瞬間、一気に泣いてるのか泣いてないのか分からない表情になり、無茶苦茶に残っていた朝食をかき込むと去って行った。

 

「「「「「「………。」」」」」」

 

痛い様な沈黙の時間が流れる。

ここ最近ずっとそうだ。

アクアはこのまま財布も持たずに飲んだくれてベロベロに酔っ払って夜中に帰ってくるし、和真は和真でアクアと違ってクエストについてくるがボーっとしてる事が殆どでロクに使えない。

 

「…なぁ。」

 

総一は沈黙を破って立ち上がった。

自分のフォークをとりアクアが残した皿の前に立つ。

 

「空気は悪りぃ…」

 

ドス!フォークを残っていた手付かずのウィンナーに突き立てる。

 

「景気は悪りぃ…」

 

ドス!フォークを残っていた手付かずのウィンナー(2本目)に突き立てる。

 

「おまけに俺の虫の居所も悪い!」

 

ドス!フォークを残っていた手付かずのウィンナー(3本目)に突き立てる。

 

「このジットジトな空気のおかげでウチはこの冬期に加湿器要らずだわバーカ!

おまけにあの馬鹿女神が毎日毎晩浴びる様に酒を飲むお陰で手元に一銭も残んねえから貯金をパクられる心配もねえと来た!

和真も気持ちはわかるが!自分からあの馬鹿女神に歩み寄らなくていいから話しかけるなオーラを出すのをやめろ!纏まる話も纏まんねぇんだよ!」

 

一通り喚き散らして乱暴にウィンナーを3本丸ごと頬張った。

 

「…ソーイチ、そうは言うけどどうしようってのよ?」

 

「アクアは兎も角カズマは…」

 

「簡単だ!あの馬鹿女神は首輪でもつけて引張りゃいい!和真はあの馬鹿女神と殴り合いの後にキャッチボールからの乾杯でもすりゃいいんだよ。」

 

「そんな安い青春小説みたいなのでいいのか?」

 

「ダクネス、そこは気にしないであげて下さい。

ソウイチは疲れてるんです。

察してあげて下さい。」

 

和真とアクアが使い物にならないここ数日、ガレオンの炊事洗濯家事の類は殆ど総一がこなしていた。

 

ジョーはケーキ以外の料理はからっきしだし、

ルカは宝石しか磨いた事ないし、

リアは洗剤と柔軟剤の違いも分かってないし、

ダクネスは知っての通り不器用だし、

めぐみんは一日一爆裂とか言って朝の忙しい時間に決まって行動不能になるし、

アクアはまるで駄目亭主の様にめちゃくちゃに酔っ払って帰ってくるし、

和真はひどい時には一日中ベガベビーの墓の前から動かない。

消去法で全ての負担が総一にかかる事になった。

 

「おまけに和真さんに代わってアクアさんのツケを待ってもらう様に頭下げて回ってるのも総一さんですしね。」

 

「あー!クッソ!どっかでアクアがトラブルでも起こして俺が八つ当たりするいい口実にでもなんねーかなぁ……。」

 

口は災いの門、6人はこの言葉の意味を思い知る事になる。

 

 

 

2

少し時間が経って、アクセルの街を歩く青髪の少女がいた。アクアだ。

 

(なんで、殺そうとした私の事なんか守ったのよ?)

 

アクアの頭の中をぐるぐると回るのはただそれだけだった。

しかも守った理由が和真にとって大事な人だから。

 

(私はアンタ達の仲を裂こうとしたのよ?

アンタばっか構う和真を見て嫉妬したのよ?

なのに、なのになんでよ……)

 

ずっと胸にそれが燻っていた。

アクアは、それを追い出そうと酒に逃げていた。

 

「羊羹ー!芋羊羹は要りませんかー!」

 

道端で誰かが売り声を上げていた見るとそこで芋羊羹を売っていたのは、海牛とピエロを混ぜた様な怪人だった。

 

「ま、魔王軍!」

 

「あ、そっちのメチャクチャ美人なお姉さん!

芋羊羹買って行きませんか?」

 

「誰が買うのよアンタみたいな化物の作った羊羹!」

 

アクアはこんな状態でも持ち歩いていたレンジャーキーを構える。

 

「ひ、ひぃ!ま、待って!俺は別に戦うつもりは!」

 

「そんな事信じれる訳!………信じ、れる訳…」

 

力なく項垂れ、変身をやめてしまうアクア。

 

「あの、大丈夫ですか?

良かったら、これでも食べて元気出して下さい。」

 

そう言ってピエロ怪人は元気をなくしたアクアに売り物の羊羹を差し出した。

 

「え?…いいの?これ、売り物なんじゃないの?」

 

「まあ、売り物だし、なんなら家計もキツいですけど貴女も何か辛いことがあったみたいですし、放って置けませんよ。」

 

そう言って改めて差し出された芋羊羹がぐしゃぐしゃに見えてくる。

アクアは鼻水を啜ると

 

「ありがとう、ありがとうね。

モグモグモグ…ん!結構おいしいじゃない!」

 

そう言ってぱっ!とアクアが顔を上げるとそらがガレオンから見た時ぐらいに近く、何故か右を見ても左を見ても視線の先に建物が無い。

 

「え?え、えぇー!!?

な、何がどうなってるのよ!

助けてカズマ!カズマさーん!!」

 

パニックになってその場でオロオロし始めるアクア。

その度にズシンズシンと地響きが起こり少し身体が当たるだけで、建物に大きなヒビが入る。

 

「え?あ、ちょギャアアアアアアアア!」

 

人々は降ってくる残骸と今まさに踏みつぶされた彼の様になってはたまらんと()()()()()()()()我先にと逃げ出す。

まだイマイチ状況を掴めてないあなたの為にただ一行、たった一行だけ残された『赤き海賊団』のこの日の航海日誌の記述を引用しよう。

 

『謎の怪人の手作り羊羹を食べたアクアは巨大化してし暴れた。』

 

 

 

「………。」

 

ベガベビーの墓石に水をかけながら、和真はずっとその場に立ちつくしていた。

 

「ベガベビー…ママは、本当にレンジャー失格だよ。

くすぶってアクアも許してやれないで何やってんだろうな?」

 

アクアのせいでベガベビーは死んだ。

だが、それでアクアを見捨てるのはベガベビーの意思を無視することになる。

 

「はぁ………。」

 

自分自身に向けた深い深い溜息をつく。

視線を広がった水面に向けると、それが不自然に揺らぐのが分かった。

 

「な、なんだ!?まさか魔王軍!?」

 

和真はブリンガーソードを引き抜き、飛びのく。

もつれ合いながら揺れる水面から現れたのは、騎士風の仮面を付けた2人の戦士だった。

一人は赤のスーツに銀と黒のアーマーで、左手のバイザーや仮面は東洋龍を模している。

 

もう一人は黒に、日向で見ないと分からいぐらい黒寄りの青のアンダースーツに銀に水色のラインで縁取られたアーマー。

仮面と腰に刺した剣は蝙蝠を模していた。

 

「イテテ……蓮どいて!」

 

「す、すまんケイタ!怪我はないか?」

 

「ああ。変なとこには出たけど。」

 

アーマーの泥を払うと2人は立ち上がり和真の方を振り返る。

 

「お、和真!久しぶり!元気にしてた?」

 

「しけた面だな。アクアかダスティネスあたりと喧嘩でもしたか?」

 

蝙蝠の仮面に冗談めかして言われる。

思わず目を逸らした。

 

「……図星なのかよ。」

 

「まあ、色々あって。」

 

「そっか。ま、兎に角。今日はこれを渡しに来たんだ。」

 

そう言って東洋龍の仮面は和真の手に7本のレンジャーキーを握らせた。

 

「これって!?」

 

「皆と話し合ったんだけど、やっぱりこれはお前らスーパー戦隊が持ってるべきだと思って。」

 

「仮面ライダーの『大いなる力』、託すからには正しく使えよ?

俺はケイタみたいに甘くないからな?」

 

「おい蓮悪く言うなよ。そこは紳士だとかさぁ。」

 

「どっちも同じだ。帰るぞ。

エリーも一夏も待たせたら後が怖い。」

 

「違いない。それじゃあまた!総一さん達にもよろしく!」

 

仮面ライダーを名乗る二人は入って来た水溜りに再び飛び込み消え去った。

 

 

「誰だったんだよ…全く記憶にないぞ。」

 

 

ところ変わってゴーカイガレオン。

終始イライラしながら家事をこなす総一の負担を少しでも軽くしようと自分たちから手伝いだした海賊団一同だったが

 

「ジョー!包丁を剣でやるみたいに研ぐんじゃねえ!」

 

「駄目なのか?」

 

自前の砥石で包丁研ぎを始めるジョーに、

 

 

「ルカ!雑巾はもっとちゃんと絞れ!」

 

「ちゃんと絞ってるわよ!」

 

「まだ水滴が垂れてんじゃねーか!」

 

雑巾絞りが下手過ぎて二度手間の乾拭きが必要になりそうなルカ。

 

「リア!洗濯物を畳むんあらもう少し皴に気を使えアイロンがけしたんだから!」

 

「す、すいません!」

 

はっきり言って歌と槍以外全部ガサツなリア。

 

「めぐみん頼むからコンピューターに触ろうとするな動くんじゃない。」

 

「まだ何もしてないじゃないですか!?」

 

「何もしてなくていいんだよ俺がやるから!」

 

かっこいいモノなら無条件に触りたくなるめぐみん。

 

「ダークーネース!皿を割ろうとするんやない台所に近付くな!?」

 

「わ、私だって皿洗いぐらい!」

 

「そう言って昨日俺のお気に入りのマグカップをお釈迦にしたのはだぁれ!?」

 

言わずもがな不器用の極みの様なダクネス。

逆に総一の負担を増やしていた。

 

「くっそ!これ以上面倒が重なったら切れる自信があるぞ俺!」

 

「す、すまん。」

 

「謝んな悪気ねえのは分かってるから。」

 

そう言って時ドタバタと入り口の方から誰かが走って帰ってきた。

 

「あーもー次は何だよ!和真ぁ!

さっき箒掛けしたのに走って来るんじゃねぇ!」

 

ぜーぜーと息を切らしながら入って来た和真は呼吸を整えると

 

「皆大変だ!望遠鏡持って甲板に来てくれ!」

 

あまりに緊迫した表情に言われた通りに外に出てみると

 

「痛い痛いやめて攻撃魔法を当てないで!

好きで大きくなったんじゃないわよウミウシの怪人が作った芋羊羹を食べたらこうなっちゃっただけなの!

う、うわあああああん!何とかしてよカズマぁ!

お願い助けてカズマ様ーーーー!」

 

巨大化したアクアがギャン泣きしながら街を走り回っていた。

いや、何を言ってるか分からんと思うが事実そうなのだ。

ゴーカイオーと同じぐらいの大きさになったアクアが大粒の涙で街に水害をもたらしながら当たりの建物にぶつかって甚大な被害をもたらしている。

 

「……皆さん、どうやら私は夢を見ているようです。

現実に戻る為に寝直してきますね。おやすみなさい。」

 

「ダクネス、めぐみんを気持ち弱めに叩け。」

 

ゴン!と鈍い音がしてめぐみんが頭を抱えたまま蹲る。

現実を見たくないのかそのまま動かない。

 

「なあソウイチどうす……ッッッッ!!!」

 

後ジョーは語る。

 

『火薬や爆裂魔法って爆発する寸前、一瞬静かになるよな?

あれって人の感情も同じなんだよ…。』

 

後たまたまその時の総一の表情を見ていたルカは語る。

 

『あんな顔のソーイチ初めて見た。

あんなひどい笑顔、とても子供に見せらんない。

レッドレンジャーがしていい顔じゃなかった。』

 

「お前ら、船降りろ。」

 

「そ、総一さん?」

 

「いいから降りろ全員今すぐだぁ!」

 

有無を言わさないその気迫に六人はすぐさま下に降りる。

そうするとガレオンは街の方に向かいながら残り四機のゴーカイマシンを発進させ、街に入りながら合体する。

 

「ま、まさか総一さんアンタ!」

 

『もう我慢できん!!!借金に山みたいなツケに永遠に終わらない家事!

やってられっかってんだよ!こいつさえいなくなれば半分は解決するんだ!

俺はゴーカイオーで出る!』

 

「「「「「「えええーーー!!?」」」」」」

 

 

 

「ど、どうしましょう!

このままゴーカイオーと巨大化アクアが街で暴れ続けたら大変なことになりますよ!?」

 

めぐみんが叫ぶ。

 

それは全員が思ってることなのだが、如何せんサイズがデカすぎる。

ジョーの剣でも流石に斬れんだろうし

ルカや和真のスティールで何か盗れても人間に支えられるサイズか分からんし、

ダクネスのパワーも流石にゴーカイオーには負けるだろう。

リアの神器のバリアは、流石にゴーカイオーやアクアを包むような大きさは無理だろうし、

めぐみんの爆裂魔法じゃ双方を殺しかねない。

 

「カズマなんかないの?」

 

「俺っすか!?」

 

「毎日のように私の胸やリアの太ももを見ながらどんな辱めを与えようかと考えてるようにお前ならここぞという時に何時も奇策を思いついてくれるだろう!?」

 

「おい待てダクネス今の物言いには抗議するぞ!

そんなことないからリアも槍しまって!」

 

「それで結局どうするんですか?

流石にこの局面で爆裂魔法は使いたくないですよ?」

 

全員の視線が和真に集まる。

正直言って彼は関わりたくなかった。

難ならこれを理由にアクアとかかわりを断っても良いだろう。

けど、それは……。

 

「…カズマ、どうしても動けそうにないならこう考えろ。」

 

「ジョーさん?」

 

「アイツを泣かせていいのは、俺だけだ。

俺はいつかソウイチを倒すつもりだが、そう考えればアイツに背中を預けられる。」

 

ジョーはそう言い切った。

ルカはそれを聞いて

 

「妬けるなぁ。ソーイチと一番付き合い長いのは私なんだけど?」

 

「それを言うなら私だって皆さんを皆さんに負けないぐらい信じてるつもりですよ?

ダクネスさんとめぐみんは?」

 

「私か?もちろん、守り守られる仲間だ。

いい加減借金癖は勘弁だがな。」

 

「おや、ダクネスが苦境に文句を言うとは。

明日は雨ですね。」

 

「はぁーー……本当にしょうがねぇなあもう!」

 

「おお!てことは?」

 

「何か秘策、有るんですか?」

 

「ああ!ブラックレンジャーの!

『赤き海賊団』参謀の!あの駄女神のやりたくもない尻拭い係の意地!見せてやるよ!」

 

 

 

「海賊合体!完成!ゴーカイオー!」

 

アクアの前にゴーカイオーが降り立つ。

 

「ゴーカイオー?皆来てくれたのね!

お願い助けて!」

 

『うるせぇえええー!』

 

…ゴーカイオーがアクアにビンタした。

何されたのか分からないのか目をパチクリさせながらゴーカイオーを見るアクア。

 

『テメェ俺たちの懐が寒いのを知っときながら自分だけ飲んだくれて暖まりやがって畜生!

ツケが幾らになってると思ってる!?』

 

ヤクザキックで転ばせてそのまま馬乗りになったゴーカイオーは胸ぐらを掴んで往復ビンタをし始める。

 

「いだぁ!いた、痛い痛いやめて!」

 

『そんな女に酒を出す酒屋も酒屋だ!

どうせ「後でカズマさん達に払わせればいいから」とか言ったんだろう!?知ってるぞ!

そんなんだから増長してどんどんツケにするんだろうが!』

 

遂にはサブウェポンの左腕のビーム銃を飲屋街に向けて発射した。

もはや正義の味方の『せ』の字もない。

 

『あーくそ!喋り出したらだんだんムカっ腹が立って来た!

ギルドォ!テメェらにも言いたい事がある!』

 

ビシッ!とギルドのある方を指差し、アクアの胸ぐらを揺らす手を休めず捲し立てた。

 

『緊急招集とかなんとか言って戦わせといてコラテラルダメージ戦った俺らに払わせるとか何様だ!

確かにこの巨大馬鹿女神が馬鹿やったせいさ!

だけど直すの手伝わせるとかもうちょっとなんかあったろ!

無理矢理矢面立たせて自分は剣も持たないくせにざけんな!』

 

言いたい放題のゴーカイオーに流石にカチンと来たのか誰かが叫ぶ。

 

「正義の味方のくせにメチャクチャ言うな!」

 

「「「「「そーだそーだ!」」」」」

 

『俺は兵隊じゃねぇー!』

 

ゴーカイオーの拳が地面に叩きつけられる。

それだけで一同青ざめて静まり返った。

 

『俺たち海賊!好き好んでお前らなんかの為に命張るかバーカ!

たまたま俺たちの敵が魔王軍ってだけだし!

お前らの安全なんか知るか!

守ってもらって当たり前とか思ってんなら思い上がりもはだはだしいんだよ!』

 

それには冒険者の中にも何人か頷いてる奴らがいた。

 

『言わせてもらうが俺たちは欲しいもん手に入れる為なら魔王軍についた方が楽なんだからな!

それでもアイツらについてないのは単に奴らが気に食わないのとギルドが金払うからだかんな!

「金の切れ目が縁の切れ目」ってやつよ!

それにこれ以上借金増えるぐらいなら暴れ倒して元締めも綺麗に更地にして全額チャラにしてやらぁ!』

 

再びゴーカイオーがガンガンとアクアが取っ組み合いを始める最早止めようと思う者は1人もいなかった。

 

 

 

7

「よし、行くぜ!」

 

和真は先程受け取った新しいレンジャーキーを使って変身する。

 

<カーーッメンライダー!オーズ!>

 

タカ!トラ!バッタ!

タ!ト!バ!タ!ト!バ!

 

「おお!中々カラフルなのになりましたね。」

 

「信号機?」

 

「それから、今の…歌?は何?」

 

「歌は気にするな!」

 

そう言って和真が変身した仮面ライダーオーズは一緒に出現した自販機、ライドベンダーにベルト脇のケースに入っていたセルメダルを入れてボタンを押す。

中から青いラベルの缶が出て来た。

 

「柄的には炭酸ジュースか?

しかしカズマ、それで何をするんだ?」

 

「文字通り一泡ふかせんのさ。」

 

そう言って和真はもう一枚メダルを入れて1番でかいボタンを押す。

するとライドベンダーはバイクモードに変形した。

 

「おお!かっこいいです!」

 

「ライダーだし何かに乗るとは思ったけどジハンキとは!」

 

「それじゃあ行ってきます!」

 

和真が思い切りバイクのアクセルを開く。

アクセルの城門を走り抜け、瓦礫を避けながらアクアとゴーカイオーを目指す。

走って行くとアクアにヘッドロックを仕掛けるゴーカイオーの姿があった。

 

「おーい!アクアー!総一さーん!」

 

『ん?その声は和真!良いところに来た!

お前も乗れ!この馬鹿女神にキツいお灸を!』

 

「だったらこいつを飲ませて下さい!」

 

和真は持っていたジュース缶、フリフリカンアワーカンを投げる。

放物線を描きながら缶は巨大化してゴーカイオーに丁度いいぐらいのサイズになった。

 

『オラ口開けろ馬鹿女神!

お口を綺麗にしてやる!』

 

無理矢理むせるのもお構いなしにサイダーを飲ませるゴーカイオー。

 

「んぐぅ!ごくごくがぶがぶ!!!

ぷはぁ!何すん………ッッッッ!」

 

急にアクアが口を押さえて何かを耐え始めた。

 

「これで元に戻るはずだ!」

 

「元に戻る?まさか…」

 

「そのまさかだ!」

 

涙を溜めて堪えていたが

 

「げぇええええええええええええええええええええええええええええええええ!」

 

…めちゃくちゃ野太いゲップがこだました。

それに合わせてシュルシュルと縮んでいくアクア。

 

「まさか、ゲップで巨大化させてた『何か』を吐き出したのか?」

 

「そんな馬鹿な……。」

 

そんな馬鹿な事で元に戻ったアクアは

 

「うわぁあーんカズマぁああああ!

ありがどおぉーー!」

 

いつも通り泣きついたきたアクアを優しくなでる和真。

 

「アクア、お前この馬鹿野郎。

俺に感謝するより周りを見ろ。」

 

「え?……か、カズマさんもしかして怒ってます?」

 

「そう見えるか?」

 

全く見えない。その表情は吹っ切れた様に穏やかで、その声は幼児をあやす様に優しい。

 

「アクア、それに総一さん。

お前たちは、馬鹿か?周りを見てみろ。」

 

見渡せば壁、建物、地面あちこちにヒビが入り、飲み屋街の方は鎮火こそ迅速に行われた様だが、火事の跡が見て取れる。

 

「え、えっとカズマさん?これは、その…」

 

「アクア、総一さん。正座。」

 

「『は、はい…。』」

 

「全部片付けて全員に謝るまで屋敷の敷居は跨がせない。いいね?」

 

その後、アクセルの街名物に『工事する巨大ゴーレム』が加わったのは完全に余談である。




次ーーッ回!第七話!

ギルドス「甦れギルードヅノー!」

めぐみん「馬鹿な!?」

ダクネス「今のお前じゃ奴には!」

ジョー「お前なんかに何が分かる!?」

怪!? ギルドス最期の姿

ジョー「奴は俺が斬る。」


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怪!? ギルドス最期の姿

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


「むっすー……」

 

憮然とした顔で総一はただ淡々と朝食を口に運んでいた。

 

「嫌ですよ!私は絶対行きません!」

 

「爆裂魔法使わないとこでだったら荷物持ちでもなんでもいいって言ったのはめぐみんだろ!入り口まで荷物持ってきてくれるだけでいいんだって!」

 

理由は簡単。

折角復活した和真だったが、今朝からめぐみんとこの調子で朝食を作ってくれなかったのだ。

そうなると必然的にお鉢が回って来るのがようやく家事から解放されたはずの総一なわけで

 

「だーーーッ!もう!うるさーい!

めぐみん!そんなに嫌なら行かなきゃいいだろ!

荷物持ちならそこの雑魚女神と筋肉ダルマがいるだろ!」

 

「誰が雑魚女神よ!」

 

「おい筋肉ダルマとは私の事か?」

 

「事実だろ!とにかくただでさえ不味い飯をこれ以上そのどうでも良い喧噪で不味くするんじゃねえ!」

 

「不味くするって…別に下手じゃないだろ?」

 

そもそも現代人で舌の肥えてる総一基準と言うのももちろんあるのだが、今まで流浪の冒険者でまともな物を食べれない状態が長かったジョー、ルカ、リア的には全然普通に喰える飯である。

だが

 

「お前ジョー何言ってんだ?

目の前に俺よりうまく飯作れる奴がいるのにそいつが怪我病気してるわけでもないのに飯作らなかったんだぞ?これ以上の拷問が有るが?」

 

美味い物を食べれる時に食べれないのは総一的に何より許せないことである。

 

「はぁ……ソーイチ。そうカッカしないの。

それで?カズマ達は何を喧嘩してたの?」

 

「ああ。最近大体の盗賊スキルの使い方覚えたんで、

近くのダンジョンにでも潜ろうと思って。」

 

「ああ、あの貴族の亡霊がどうのとか言う噂の?

良いじゃないそれぐらい。」

 

「嫌ですよ。

さっきも言いましたけど爆裂魔法の使いどころがないじゃないですか?」

 

「一日一爆裂ぐらいダクネスでもジョーでも何なら俺でも付き合うぞ?」

 

「いや、それは……」

 

「?」

 

急に俯いためぐみんによく分からず頭を掻く総一。

一方女性陣はほほぅ、と顎に手を当て

 

「ま、もう既に色々取り尽くされてるダンジョンだし、

お宝は逃げないしゆっくりでいいんじゃない?」

 

とルカ。

そう言って食器を片付けるとリアと共に仕事に向かって行った。

 

「皿洗いは俺がやっとくよ。」

 

「ジョー、お前は…」

 

「今日も稽古だ。夕飯までには戻る。」

 

 

 

不気味に機械が蠢くどこかの地下。

そこで機械を動かすは人ならざる怪人、ギルドス。

 

「つぎの頭脳ジュウか?」

 

背後から現れたメレが問いかける。

それにギルドスは極めて高圧的に答えた。

 

「ああ。あんなしょぼい魔道具制作が精々の貴様では到底作れない様な素晴らしい怪人さ!」

 

「なにぃ……」

 

「事実だろう?まあ指をくわえて見てろ。

海賊どもを一人づつ血祭りにあげてやる。」

 

「ふん、大した自信だ。そこまで仰るからには、

余程すごい所をお見せ願えるのでしょうな?」

 

「最初のターゲットはブルーレンジャーの男、ジョー・ギブケン!」

 

 

 

「お、やってるやってる。」

 

昼間、荷運びの仕事を終えた総一は帰りにわざと遠回りしてジョーの指導風景を見物することにした。

 

「西洋剣は突く!断つ!斬る!の三拍子だ!どれが掛けても完璧でない!

突きがまとも過ぎる!もっと意表を突け!

武器に振り回されるな!軸をしっかり保て!」

 

ジョーの活を受けて金髪の少年は動きを変える。

フェンシングの様なフェイント有りの突きを動きに入れ始める。

 

「良し!そのまま俺から一本取ってみろ!」

 

いなされた少年は受け身を取ってすぐさま立ち上がりまたジョーに向かって行く。

 

「わーおスパルタ。まあ口より先に手が出る奴だからな。」

 

なんて思いながら帰ろうとすると

 

「なんだレッドレンジャーまでいるのか?これは好都合。」

 

前方から隊列を組んだゴーミンを率いたギルドスと二体の頭脳獣が現れる。

 

「よう宇宙ワニ。養殖所のチキンは飽きたのか?」

 

「ああ!今日は貴様の血の味を確かめに来た!

行け!ギルードヅノー!」

 

上半身の胸より上が巨大なワニの顔みたいになった怪人、ギルードヅノーが向かってくる。

総一は前転しながら攻撃を避け、ゴーミンの相手をしながらモバイレーツにレンジャーキーをセット。

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

<ゴーーッカイジャー!>

 

ゴーカイレッドに変身し、サーベルとガンで応戦する。

 

(さっきギルドスの奴、レッドレンジャー()って言ったよな?

なら最初から狙いはジョー?)

 

そうと決まれば即行動。

総一は前方のゴーミンを蹴散らしながら走り、同じように突っ込んできたギルードヅノーに向かってジャンプ!

そのままデカい頭を踏み台に飛び上がり新しいレンジャーキーとモバイレーツを構え

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

<シーーッンケンジャー!>

 

シンケンレッドにチェンジしてメッセンジャーのシシオリガミを放ち、戦闘を続行する。

 

「ふん、無駄なあがきを。」

 

そう呟くとギルドスはジョーの方を見る。

ジョーは弟子の少年と共にゴーミンと戦っている。

 

「ケンヅノー、何をすべきか分かっているな?」

 

「無論。頭脳獣ケンヅノー、参る!」

 

そう言って飛び出したケンヅノーはジョーの前に躍り出る!

 

 

「お前は…ゴーカイチェンジ!」

 

<ゴーーッカイジャー!>

 

ゴーカイブルーにチェンジし、ケンヅノーに斬りかかる。

ケンヅノーはそれを上体を逸らして避けるとまず一太刀。

 

「ぐあぁあああああ!」

 

咄嗟に左手で持ったゴーカイガンで受けたジョー。

だがゴーカイガンは真っ二つに切られ白い手袋に血が滲む。

 

「先生!」

 

「ッ! ロボフ!自分の事に集中しろ!」

 

あの剣はマズい。

斬れるなんてもんじゃ無い。

 

「まだまだ、行くぞ!」

 

「ははは!恐れるがいい!ケンヅノーの剣は、

この俺様の自信作、ギガゾメタルで出来ているのだ!

それを砕こうと思うのなら核弾頭でも持ってくるんだな!」

 

ケンヅノーの怒涛の攻め。

ジョーはどうにかサーベルを振るって受けるが、

掠めるだけでもスーツに傷がつき、武器もどんどん刃こぼれしていく。

 

(バカな!?剣の腕も剣の鋭さもなんてレベルだ!)

 

このままでは文字通り押し斬られる。

そう思ったその時

 

「『エクスプロージョン』ッ!」

 

破壊と閃光の嵐が巻き起こった。

それと同時に黒焦げになったシンケンレッドが受け身も取れずに二人の間に落ちてくる。

 

「許さん……マジで許さんめぐみん。」

 

「めぐみんだけではないぞ!」

 

そう言ってケンヅノーの背後からゴーカイイエロー、ダクネスが現れる。

持ち前のパワーファイトを生かすために剣の振れない超近距離戦でケンヅノーの動きを抑え殴り飛ばす。

 

「さあ!ゴーミンは全てさっきの爆裂魔法で倒しました!

次はどうしますかギルドス!」

 

倒れない為にゴーカイピンクに変身しているめぐみんが言う。

総一もゴーカイレッドにチェンジしなおし立ち上がると

 

「これで四対二だ。まだやるか?」

 

「ああ。甦れギルードヅノー!」

 

ギルドスはさっき爆裂魔法の当たった場所の中心、総一とギルードヅノーが戦っていた場所にエネルギーを撃つ。

すると土と見分けがつかなくなっていた残骸が集まり元通りのギルードヅノーに再生した。

 

「馬鹿な!?」

 

「これが宇宙最強の生命力の再生パワーだ!

貴様らは勝てない!文字通りこのギルードヅノーを倒せないのだから!」

 

(マズイな…めぐみんは何とか戦闘続けられてるけどガス欠寸前だし、ジョーはダメージがデカい。

ここは……)

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

<ハーーッリケンジャー!>

 

ハリケンレッドにチェンジして他三人とジョーの弟子と共にその場を後にした。

 

「ふん、逃げたか。

だがすぐに追いついて必ず倒す!行くぞ!」

 

 

 

「はい、これで大丈夫なはずです。」

 

アクアは和真とダンジョン探索で結構深くまで潜って行ったので今日は夕方まで戻らないだろうという事で、船にある医療品でリアが手当てを行った。

左手の傷は深いが、それ以外はスーツのお陰かそこまでの物でもなかった。

だが敵に、それも同じ剣使いに背を向け逃げたことはジョーの中で結構大きいらしい。

 

「……行ってくる。」

 

「ちょ!ちょっとまちなさいアンタその怪我で行くつもり!?」

 

「ああ。奴は俺が斬る。」

 

そう言ってジョーは上着を羽織って剣を持つと出口に向かいだす。

慌ててダクネスとルカが止めに入った。

 

「私らよりもアンタ自身の方が分かってるわよね?

奴の方が一瞬速いって。それでも行くの?」

 

「要はやつより速ければいい話だ。」

 

「今のお前じゃ奴には!」

 

「お前なんかに何が分かる!

……分かってたまるか。ドマゾの年中発情期のいつも自分のお楽しみだけ考えて敵に向かってるお前なんかに。」

 

そう言ってダクネスを突っぱねるとジョーは足早に出て行った。

 

「ジョー!アンタ言って良い事と悪い事が!」

 

いきり立ちその後を追おうとするルカだがその肩をダクネスが掴む。

 

「いいんだ!……いいんだ。ジョーの言ってることは、正しい。」

 

「ダクネス…。」

 

それを見ていた総一はリアに目配せして

 

「めぐみん!ガス欠で動けないんならガレオンの留守番頼んだ。

俺は坊主を家まで送って来る。」

 

「はぁ!?ソーイチアンタまで何悠長なことを!」

 

「今のアイツは言って聞かないだろ?

だったらそっとしといてやれ。頭冷えりゃあアレにも勝てるだろ。」

 

そう言って総一はロボフを連れて出て行った。

 

 

 

「なあ少年。お前の先生はどんな人だ?」

 

帰り道。

昼飯にと買ったサンドイッチを食べながら総一はロボフに尋ねた。

ルカにはあんな事言ったが、総一もジョーの事が気掛かりなのだ。

 

「よく悪くも真面目過ぎ、ですかね?

遊びがないって言うか…。」

 

ジョーは剣に真摯だ。

執着してると言っても良い。

そんな彼だから今日の様に余裕がなくってしまう時もある。

 

「もう少し肩の力抜いてくれるといいんだけどなぁ…。

なんか良い案ないかね?」

 

「うーん…料理とか?ケーキ作るの上手いですし。」

 

「却下」

 

最低あと3日は厨房に立たない。

家事を全くやらない訳ではないが、2度とあれを1人でやるものかと総一は固く誓っていた。

 

「あとはいっそもう好きにさせるとか?

結果周りが心配したりすれば多少は…」

 

「少年、君前世の記憶あったりしない?

師匠の醜態に冷静過ぎない?」

 

そう言われたロボフは懐から一本の鍵を取り出した。

 

「レンジャーキー!?」

 

「先生が似たのを持ってたのを見て、自分で探してお守りにしてたんです。

多分今、先生にはこれが必要だと思うので。」

 

そう言われて渡されたのは侍戦隊シンケンジャー、シンケンブルーのキーだった。

 

「お願いできますか?

流石に僕からだと先生、余計に落ち込んじゃうと思うんで。」

 

「 ……おう。その依頼、相談料と相殺にしてやる。

吉報を待ってな!」

 

 

 

6

「はぁ……。」

 

「そんなに落ち込むことないわよ。

ジョーの奴が勝手に焦ってるだけなんだから!」

 

ルカがプリプリ怒りながら野菜サラダを口に運ぶ。

それを見てあははと苦笑いしながらもリアもジュースを飲む。

 

「大丈夫ですよ。ダクネスさんはやる時はやる人だってみんな知ってますよ。」

 

「……だがジョーに言われたこともまた事実だ。

私は、私も他の皆の様に何か攻撃スキルを取るべきなのだろうか?」

 

「それは…」

 

「別にいいわよ取らなくて!」

 

ルカはテーブルを思い切り叩きながら立ち上がり

 

「アンタらには言うつもりなかったけど、別に私はね。

金や宝石や貯金が好きなわけじゃないの!

でっかい夢があってそれを叶えるのに大金がいるから稼いでるの!

守銭奴と罵られようと、誇り以外全部売っ払うわ!それで夢がかなうなら!」

 

「ルカさん…」

 

「だからアンタもそんなふうに簡単に今まで貫いてきたもん売っ払うんじゃないわよ。」

 

「ルカ……ありがとう。ようやく吹っ切れた気がする。」

 

そう言うとダクネスは立ち上がり、お代をテーブルの上に置くと装備を着直し、店を出て行く。

 

「あれでよかったんですか?」

 

「いいのよ。我儘同士がぶつかった方がかえっていい結果出るかもよ?」

 

この人たちは…とリアは困ったように小さく笑った。

 

 

「遅かったな。」

 

「支度に時間がかかってな。」

 

どこかの丘にて。ジョーはギルドス、ケンヅノー、ギルードヅノーと対峙していた。

 

「ゴーカイ…」

 

「チョーッと待った!」

 

ジョーが自分のサーベルを地面に刺し、

変身しようとした時彼の後ろから見慣れた人影が現れる。

 

「ソウイチ…」

 

「そっちのおかわり野郎は俺がやる。

お前はお前の戦いをしろ。」

 

 

そう言って総一は自分のサーベルとシンケンブルーキーを差し出す。

 

「……ふ、師匠を助けてくれたな、ロボフ。」

 

「「ゴーカイチェンジ!」」

 

<<ゴーーッカイジャー!>>

 

レッドはギルードヅノーに。

ブルーはケンヅノーに向かって行く。

 

「参る!」

 

「はぁああああああああ!」

 

2人の剣が交差する。

二刀流で本領を発揮できてるはずのジョーに深い一撃が決まった。

対してケンヅノーの受けた傷は浅い。

 

(やっぱりあの剣にはビビっちまうか。)

 

とは言うが、総一も助けに行けるほどの余裕がある訳ではない。

しかも武器はゴーカイガン一丁なのだ。

正直、キツイ。

 

「ま、あきらめないけどな!」

 

そう言って銃撃は最小限のカウンターに止め、蹴り技を多く取り入れてみる。

これなら何とかなりそうだ。

 

「さて、これはこれで派手に行きますか!」

 

 

 

「ぐああああああ!」

 

十四斬。またしてもブルーのスーツにアバンギャルドな傷跡が増える。

とうとうジョーは膝を付いた。

 

(このままでは……このままでは!)

 

「ふん…覚悟!」

 

ケンヅノーが大上段から刃を振り下ろす。

ジョーも死を覚悟したその時!

 

「あああああああああああ!」

 

滑り込むようにイエロー、ダクネスが間に入る。

激しい火花と共にスーツごと切り裂かれたダクネスは変身解除されて膝を付いた。

 

「ダクネス!?」

 

「これが!……遊びに見えるか?」

 

そう言われたジョーは後ろに飛びながら立ち上がり、まず一本目のサーベルを投げつける。

その間にレンジャーキーを手元の二本目にセット。

更にもう一本、シンケンブルーのキーを用意。

 

「む!」

 

サーベルを上に打ち上げたケンヅノー。

ジョーは大きくジャンプし、空中のサーベルにキーを投げる。

それがスロットに刺さるとキャッチし、血振るいの様に剣を振りスロットを戻す!

 

<<ファ~~イナルウェイ~~ブ!>>

 

「やぁあああああ!」

 

そして落下しながら二本の剣を振るう。

ケンヅノーも振るう。

 

(もう恐れん!それにここは空中、避ける先もない!)

 

一撃目。ケンヅノーの攻撃を受ける。

そして剣が両断されるより早くもう一本を逆手に持ち、身体を捻って首を落とす!

 

「………見事。」

 

ボトリ、とケンヅノーの頭が落ちて倒れた。

ジョーはすぐさまダクネスの方に向かい

 

「ダクネス!お前、なんて無茶を…」

 

「お前ほどじゃ、ないさ。

それより何か、、言う事は?」

 

「…お前のお陰で何かつかめた。おかげで勝てたよ。」

 

ジョーは変身を解除してダクネスに肩を貸した。

 

「ちっ!まあいい。あれだけ弱らせればあとは俺が直々に…」

 

「いーや!それはどうかな!?」

 

昼どすの行く手を阻むように復活しためぐみん、和真、なぜかボロボロのアクア、ルカ、リアが立ちふさがる。

 

「貴様ら!どうやってここが!?」

 

「ガレオンで空から探せばすぐでしたよ!

それにこっちには新戦力も有りますしね!」

 

戦力?と聞き返すギルドスに五人は得意げに新しいレンジャーキーを見せ

 

「「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」」

 

<<<<<ゴーーッセイジャー!>>>>>

 

天使の羽の様なエネルギーを纏った五人は新たな戦士に変身する!

 

「嵐のスカイックパワー!ゴセイレッド!」

 

めぐみんがレッドに

 

「巌のランディックパワー!ゴセイブラック!」

 

和真がブラックに

 

「恵みのランディックパワー!ゴセイイエロー!」

 

ルカがイエローに

 

「怒涛のシーイックパワー!ゴセイブルー!」

 

アクアがブルーに

 

「命のシーイックパワー!ゴセイグリーン!」

 

リアがグリーンに

 

「星を守は天使の使命!天装戦隊!」

 

「「「「「ゴセイジャー!」」」」」

 

「降臨!」

 

「どれだけ姿を変えようと同じ事!

やれ!ギルードヅノー!一人目のレッド諸共倒せ!」

 

ギルードヅノーは総一を豪快に投げ飛ばし、五人の前に躍り出る。

総一も身を捻って着地する。

 

「俺はジョーとダクネスを。ワニはお前らで頼んだ。」

 

「ええ!」

 

「了解です!」

 

まずアクアとリアがテンソウダーとゴセイカードを構えて走り出す。

 

「「アイストップカード!天装!」」

 

放たれた冷気がギルードヅノーを氷漬けにして拘束し、そこに五人一斉にゴセイブラスターを打ち込む。

ギルードヅノーは氷ごと粉々に砕けた。

 

「無駄な事を!甦れギルードヅノー!」

 

復活するギルードヅノー。

今度は和真とルカが前に出て

 

「「ロックラッシュカード!天装!」」

 

出現した無数の岩がギルードヅノーに殺到する!

 

「今です!スカイックブラザーカード!天装!」

 

この隙にめぐみんがタカ、クロウ、プテラノドンのヘッターを呼び出しそれをリア、アクアと共にブラスターにセット!

 

「「「スカイックバレット!パニッシュ!」」」

 

再び爆散するギルードヅノー。

しかしギルドスはなお余裕を崩さない。

 

「甦れギルードヅノー!」

 

またしても蘇るギルードヅノー!

 

「しつこいやつ…」

 

「こうなったら完膚なきまでに粉々にしてやりましょう!

ゴセイダイナミックです!」

 

まずリアが前に出る。

 

「プレッシャワーカード!天装!」

 

ギルードヅノーの周りに高圧の水柱が立ち上がる。

その隙のほか四人はそれぞれの武器を呼び出す!

 

「スカイックソード!」

 

「「「ランドシーバスター!」」」

 

まず走り出しためぐみんが大きくジャンプ!

そのタイミングで残る三人がバスターを撃つ!

 

「「「ランドシーダイナミック!パニッシュ!」」」

 

直撃したギルードヅノーは後ろに吹き飛ぶ!

丁度その先には着地前のめぐみんが!

 

「レッドダイナミック!」

 

横梛野一閃が炸裂し、またしてもギルードヅノーはバラバラになった!

 

「まだ終わらん!ギルードヅノーよ蘇れ!」

 

そう言ってギルードヅノーに手を向けるギルドス。

しかしそこからエネルギーが出ることはなく…

 

「ぐ、ううぅ!うわぁあああああ!」

 

逆にギルドスの身体が激しい火花を上げて壊れだした。

 

「はぁ!?」

 

「な、なんですか急に…」

 

ギルドス含めて全員が困惑する中漸く煙が晴れる。

そこにあったギルドスの姿は

 

「金属!?てことは、あいつエイリアンじゃないのか!?」

 

「ゴーレムだったのか?」

 

「そ、そんな筈は…俺は、俺は宇宙一の生命力を持つギルード星人のはずだ!

一体、いったいこれは何の冗談だぁああああ!」

 

そう叫び終えるとギルドスは爆散してしまった。

乾いた音を立てて金属の塊と、動力になっていたらしきレンジャーキー、ゴーオングリーンのキーが落ちてきた。

 

「マジかよ…」

 

「いったい何なんだ…」

 

底知れぬ魔王軍の陰謀の片りんを肌で感じ取った海賊たち。

果たしてアクセルの街はどうなってしまうのだろうか?




次ーーッ回!第八話!

ブッチー「破れかぶれの恐ろしさ!見せてやダス!」

ルカ「あいつは!」

デンソーヅノー「頭脳獣デンソーヅノー!」

???「この街は終わりよ!」

和真「させてたまるか!」

巨大要塞の挑戦!

ルカ「好き勝手してくれた分、きっちり落とし前付けてもらうわ!」


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巨大要塞の挑戦

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


どこかの地下、不気味な機械が並ぶ空間で一人自分を検査する者がいる。

チブチ星人ブッチーだ。

彼は何度も指を引っ込めては伸ばし、やがて意を決したようにキーボードのエンターキーを押した。

 

「ああ…そんな……。」

 

画面には無情にも彼が機械人形である証拠がこれ以上なくつらつらと表示されていく。

ガクリと膝を付くブッチー。

 

「ワシも…ワシもロボットダス。

ギルドスと同じロボットだったのダスよ……!

知らなかったダス……ワシの美しいこのボデーラインの下が、こんなになっていたなんて……!!」

 

ボロボロと涙を流し始めるブッチーしかしふと思い立ち

 

「待てよ?それじゃおかしいダス。

だったらワシがチブチ星で生まれ育った記憶は?」

 

「そんなもの作り物に決まっているだろう?」

 

ガサガサと不気味な声を上げながらメレの女がブッチーの前に現れる。

そして女はローブの下からリモコンを取り出し、カチカチとダイヤル式のスイッチを押す。

するとブッチーはたちまち意識がもうろうとし、再び膝を付いた。

 

「こ、これはぁああ……」

 

「見ての通りキサマはただの人形。

こわすも使うもこちらシダイ。」

 

もう選択肢はない。言外にそう言われたブッチーは唸り声を上げて立ち上がると怪人制作質の方に向かって行った。

 

 

 

「………。」

 

総一はガレオンの船長用の椅子に座ってずっと虚空を睨んで考え事をしていた。

 

(ギルドスはロボットだった…。

けどなぜ?なぜわざわざエイリアン設定まで与えてあんな真似させたんだ?

故郷とかがあった方が俺達が手加減する事に期待した?)

 

色々考えてみるが答えは出そうにない。

ギルドスの残骸も半分は証拠としてギルドに提出してしまったので調べられる部分は少ない。

 

「ソウイチ?大丈夫か怖い顔して。」

 

「ああ、ジョー。なんでもない。

ちょっと魔王軍の動向が気になってな。」

 

「あのワニがゴーレムだったことか?

確かにアイツの死は悲しむべきだが、今はそれよりこの剣の切れ味を…」

 

「それケンヅノーの剣?何しれっと戦利品で持ち帰ってるんだよ。」

 

「あまりに良い剣だったので、つい。」

 

「羨ましいな…おいジョー。

今度同じの見つけたら私に言ってくれ。溶かして鎧にする。」

 

「二本目にするから嫌だ。

…と言いたいところだがお前のお陰で勝てたからな。

当然いいぞ。」

 

そう言ってジョーはダクネスと共にクエストに出かけて行った。

 

「あれ以来すっかりラブラブね。」

 

「ま、俺とお前ほどじゃないな。」

 

何言ってのよ、と総一の頭を小突いくルカ。

 

「で、今日のデートはどうする?」

 

「そうだな…軽くカエル狩りなんてどうだ?」

 

「ナンパされても嫉妬しないでね?」

 

なんて冗談を言い合いながら二人もクエストに出かけて行った。

 

 

 

「ベルディアが来たすぐあとはなんかちょっと暗い感じありましたけど、

街もだいぶ元気になってきましたね。」

 

「時々俺らを見てビビって逃げてく人も居るけどな。」

 

「特に酒屋さんとか、飲み屋街の人とか、ね。」

 

一日一爆裂を終えた和真、アクア、めぐみんの三人はアクセルの街を歩いていた。

半分は借金で持っていかれてしまったが、昨日レンジャーキーをくれたダンジョン奥に居たアンデッドに貰ったお宝が結構な額になったのでそこそこ余裕が有るのだ。

 

「で、今日はどうする?

めぐみん動けないし、ダクネス達と合流したいとこだけど…」

 

「多分ソウイチ達と一緒にクエストに行っちゃってるでしょうしね。」

 

「となるとそうそう難しいクエストは受けれないわね。

魔王関連以外でレンジャーキー使うとソウイチがうるさいし、どうする?」

 

なんて話していると三人の行く手を塞ぐように

 

「それは良い事を聞いたダス!」

 

ゴーミンを引き連れたブッチーが現れた。

 

「げ!お前は!」

 

「最悪のタイミングで現れてくれたわね!」

 

「ワシには、ワシにはもう後が無いんダス!

お前達には死んでもらうダス!ブッチーパーンチ!」

 

ブッチーは一時的に巨大化させた腕を三人に振るう。

もろに受けてしまった三人は積まれていたダンボールを派手に倒しながら吹っ飛ばされた。

それをみて道行く人々は悲鳴を上げて逃げ出し、居合わせた冒険者はゴーミンに向かって行く。

 

「あ、カズマさんたち!大丈夫ですか!?」

 

「あなたは!霊園で会った駆け出しプリーストの子!」

 

「ちょっとめぐみんえを頼む!早く逃げて!」

 

「は、はい!」

 

プリーストの子にめぐみんを任せて二人はレンジャーキーとモバイレーツを構える。

 

「「ゴーカイチェンジ!」」

 

<<ゴーーッカイジャー!>>

 

変身して武器を交換。

アクアは二刀流で、和真は二丁流でブッチーに挑む!

 

「たった二人の戦隊なんぞ恐れるに足らんダス!

目ん玉リボルバー!」

 

直線状に他の冒険者も居る中、容赦なくビーム技を使うブッチー。

避ける訳にはいかず身構える二人だが、いつまで経ってもビームは来ない。

 

「な、何故ダス!?何故撃てないダスか!?」

 

「?……チャンス!」

 

「……! 待てアクア!」

 

和真が何かに気付いて制止しようとしたが、止まらずアクアはサーベルを投げつけ

 

「ブルーレンジャーゴットブロー!」

 

そのまま渾身の右ストレートを叩き込んだ!

 

「うぎゃああああ!」

 

殴り飛ばされたブッチーはの矢撃ちまわって苦しみ始める。

すると体中から火花が上がり、破けた人造皮膚の中から配線チューブが飛び出てきた。

 

「あいつもなのか!?」

 

「ならさっさと廃品屋送りにしてやるわ!」

 

そう言って勇んで駆けだそうとするアクアを止める和真。

 

「何よカズマ!アイツを倒さないと!」

 

「よく見ろ!あいつの目、泣いてる。」

 

よく見るとブッチーの目はオイルと涙でぐちゃぐちゃだった。

どうやらそれが原因で目ん玉リボルバーが打てなかったらしい。

 

「こんなところで終わらせるかダス!

破れかぶれの恐ろしさ!見せてやダス!」

 

そう言ってブッチーはスゴーミンを呼び出すと逃げ出した。

背後に戦闘音を聞きながら走って走って走り続ける。

 

「はぁ……はぁ……ここまでくれば……」

 

疲れ果てたブッチーは座り込んで息を整える。

 

(もう、失敗は許されないダス。何としてでもあれを悟らせないように…)

 

そう考える一歩でここはどこか分からなくなってしまったブッチーは耳を澄まして情報を集める。

かすかに、かすかにだが子供の声が聞こえてくる。

 

「これは、歌?」

 

ばれないように注意しながら覗いてみると、子供たちと何人かの若い冒険者たちが輪になって歌っている。

 

「水を引くんだウンガ!」

 

「お米作ろうタンボ!」

 

「石をぶつけてファイヤー!」

 

「ごはんできたらバンザイ!」

 

「流れ星だぞハーレー!」

 

(ああ、皆笑顔で、楽しそうダス…)

 

ブッチーは再び泣き出した。

それは自由で未来もある子供たちへの嫉妬か、ただ単純に信じていたもの全部を壊された事実を突きつけられての絶望だろうか?

それは本人にもわからない。

 

「ん?」

 

「ベスちゃんどうしたの?」

 

「誰か、泣いてる。」

 

茂みをどかされブッチーは見つかってしまった。

しかも

 

「な!?魔王軍!」

 

「お、お前は女のほうのグリーンレンジャー!?」

 

リアは仲間に頼んで子供たちを下がらせるとモバイレーツを取り出す。

 

「よくこんなところに……あなた、その傷…」

 

「絶対に、絶対に終わらないダス!

ワシは、まだ死にたくない!死にたくないんダス!」

 

そう言って走り出したブッチーにリアはモバイレーツをしまうと神器を取り出すと、キーボードに指を添えて、メロディーを奏でる。

 

「地球がまーるく青い事を♪誰だって知ってるけど♪

ずっと昔はわからなかった~♪」

 

「な、なにを?」

 

驚くブッチー。

子供たちも始めぽかんとしていたがリアに続いて歌い始めて

 

「もっともっと!」

 

「冒険してラッパピーヤ!」

 

「探検してパッパルーラ!」

 

「きっと見つかる素敵な世界~!」

 

「「「ジャンボ~!」」」

 

「な、なにを?」

 

「あなたのことはよくわからないけど、悲しいことがあったら歌いましょう?

そんな風に泣いてるのはもったいないですよ?」

 

ブッチーは差し出されたリアの手に吸い寄せられるように手を伸ばす。

しかし

 

「ぐ!ああ、ああああああーーーーーー!」

 

体からさらに火花が噴き出て倒れこんだ。

 

「ブッチー!?」

 

「まったく。レンジャーにほだされかけるとは。

やはり役に立たないゴミは早めに始末しておくべきだったか。」

 

そう言ってブッチーの背後から現れたメレの女がボタンのスイッチを目いっぱいひねる。

ブッチーの体が内側からマグマのような色に輝きだした。

 

「まさか…ブッチー!」 

 

ブッチーはすかさずその場を飛びのき

 

「リアさん!散々な人生だったけど、あなたに会えてよかったダス!」

 

そう言って爆散してしまった。

 

「ブッチィイイイ!……嘘。」

 

「はっ!マケイヌの遠ぼえね!しょせん人形だったということかしら?」

 

そう言ってあざ笑うメレにリアは

 

「黙れよ阿婆擦れ。」

 

「……はぁ?」

 

「はぁ!?ですって!こっちのセリフよ!

その悪趣味なローブ剝ぎ散らかして!

その不細工なにやけずら苦痛にゆがめてやる!」

 

そう言ってリアは改めてモバイレーツを取り出す!

 

「お前の相手はこいつよ!」

 

そう言ってメレが指を鳴らすと、リアの背後に一体の怪人がテレポートしてくる。

 

「頭脳獣デンソーヅノー!」

 

気味の悪いカエルに機械をくっつけて人型にしたような外観の怪人、デンソーヅノーは変身してないリアに容赦なく殴りかかろうとする。

 

「させっか!」

 

「邪魔よ!」

 

なんとかスゴーミンを倒して追いついた和真とアクアに妨害される。

 

「リア大丈夫か!?」

 

「ええ!それより行きましょう!いま私、すごく怒ってます!」

 

「お、おい!」

 

リアは生身のまま駆け出し、神器を奏で、デンソーヅノーを包むようにバリアを発生させる。

 

「ええーい小癪な!」

 

デンソーヅノーはすぐにバリアを破るが、その隙さえあれば十分だった。

 

<ファ~イナルウェイィーッブ!>

 

アクアの斬撃がさく裂し、大きく切り傷が入ったところにリアがすかさず槍をねじ込む!

 

「がぁああああ!おのれぇええ!」

 

「和真さん!」

 

「ああ!『窃盗(スティール)』!」

 

デンソーヅノーの体の中から一本のレンジャーキーが飛び出す。

ブラックバイソン、最後のライブマンのレンジャーキー!

 

「行くぞ!」

 

「「「ゴーカイチェンジ!」」」

 

<<<ラーーッイブマン!>>>

 

「ブラックバイソン!」

 

「ブルードルフィン!」

 

「グリーンサイ!」

 

「超獣戦隊!」

 

「「「ライブマン!」」」

 

三人はすかさずヘルメットのシグナルを発して最高の火力を持つ武器を呼び出した!

バイモーションバスター。

ライブマンの代名詞の一つにして、砲身に組み込まれたピストン装置で倍加したエネルギーを打ち込む必殺武器だ!

 

「「「バイモーションバスター!」」」

 

放たれた虹色の光がデンソーヅノーを貫く!

 

「ま、魔王軍に栄光あれぇえええ!」

 

敬礼をしてデンソーヅノーは爆散した。

 

「終わったか?」

 

「いえ、まだです。」

 

グリーンサイ、リアがきつい口調で言い切った。

 

「これ見よがしにブッチーを暴れさせて、今まで取っておいたテレポートなんて便利な能力を持ってるデンソーヅノーも使い切る。

なんだか、まるで…」

 

「囮みたい?」

 

妙な胸騒ぎを感じた三人はほかの冒険者たちに子供たちを任せると、ギルドに急いだ。




次ーーッ回!第九話!

総一「機動要塞デストロイヤー!?」

アクア「逃げるしかないわよ!」

和真「作戦はある。」

ダクネス「踏ん張れぇええええ!」

逆襲のスーパーライブロボ!

総一「ゴーカイオーは不死身だ!」


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逆襲のスーパーライブロボ!

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


ライブマン専用のライブクーガーに乗った和真、アクア、リアは急いでギルドを目指した。

そこに行くともう既に結構な数の冒険者が集まっている。

どうやら戦闘に気を取られて聞いていなかっただけで、もう既に招集がかかっているようだ。

 

「いた!総一さん!ルカさんも!」

 

「お前ら来たか。ジョーとダクネスは?」

 

「ソウイチ!皆!」

 

「すまん。遅くなった。」

 

だいたい人の出入りがやんだところで、食堂のテーブルが集められて即席の作戦本部が作られる。

 

「お集りの皆さん!本日は、緊急の呼び出しに応えてくださり大変ありがとうございます!

只今より、対機動要塞デストロイヤー討伐の、緊急クエストを行います!」

 

「機動要塞デストロイヤー!?」

 

「みんな早く荷物をまとめに戻りましょう!

逃げるしかないわよ!」

 

「おいアホ女神。暴れるより先に説明しろよ。」

 

「なんだその『ぼくのかんがえたさいきょうのようさい』みたいなソレ?」

 

「逆にアンタ達知らないの?」

 

「リア、お前は知ってたか?」

 

「全く…」

 

総一、和真、リアはじめ何人かの冒険者は司会役の女性職員に説明を求める。

すると彼女は神妙な顔で頷き、

 

「機動要塞デストロイヤーは元々は対魔王軍用に技術大国ノイズが作り上げた超大型ゴーレムです。

国家予算を投じて造られたこのゴーレムは蜘蛛のような外観を持ち、

小さな城ぐらいの大きさを誇ります。

魔法金属がふんだんに使われており、非常に軽量で八本足で馬も超えるスピードを出せます。」

 

「ならうちのゴーカイオーの出番だ!

まっすぐ突っ込んでくるだけなら十分対応できる。

真正面から受け止めてやる!」

 

総一がそう叫ぶと会場内でどよめきが起こった。

 

「あの酒場に魔法兵器打ち込んだ巨大ゴーレムのことか!」

 

「ああ!そのあと壁の修理とかやってた…」

 

「確かにあれならいい勝負になるんじゃないか!?」

 

これから立ち向かう強大な敵に劣らない味方の存在に期待する一同。

そこでダクネスが手を上げ

 

「なら操縦は私に任せてくれ!

操縦桿は齧り付いてでも離さん。」

 

「ダクネス…お前いくらドМだからってこの非常時に…」

 

「カズマ!私にはこの街を守る使命がある。

いつか話すかもしれんが今じゃない。

それにこれは前にも言ったが私は民の盾、聖騎士にしてイエローレンジャーだ!」

 

「……わかった。

けどお前が死にそうになったら殺してでも引っ張り出す。

いいな?総一さんもいいですよね?」

 

「ああ。俺らの砦、お前に預ける!」

 

そう言って総一はダクネスにゴーカイレッドのキーを渡す。

 

「しかし大丈夫ですか?

機動要塞デストロイヤーの特筆すべき機能に強力な魔法結界があります。

一国の技術の粋が集められた物で常時展開型。

ゴーレム同士の格闘戦なら人型のゴーカイオー?

が有利かもしれませんが、消耗戦に持ち込まれるとこちらからの援護は全くできないまま戦うことになりますが…。」

 

「つまり一瞬でもいいから奴に隙を作らないといけない、と。」

 

総一がそういうとリアが手を挙げて

 

「シンプルですけど落とし穴とかはどうですか?

結構大きいの掘らないとだめですけど、

一瞬でもバランスを崩せれば…」

 

「かつてその作戦がとられたことがあるのですが、

なんと八本足でジャンプしてよけられてしまいました。」

 

「じゃあ下手したらゴーカイオーも飛び越えられるってこと!?」

 

「ゴーカイオーは45メートルだ。

飛び越えられはしないだろうけど、

思い切り上半身にのしかかられたらきつくないか?」

 

ルカとジョーの掛け合いに微妙に表情の暗くなる一同。

 

「ならあの爆裂バカの爆裂魔法は?

あれならどうにか足の一本ぐらいは取れそうな気がするぞ?」

 

「あのレベルの魔法も弾けるほどデストロイヤーの魔法結界は強力です。」

 

皆の顔色が悪くなってくる。

どれだけ強力な敵を相手にしてるかわかってきたからだ。

 

「じゃあ直接乗り込んで内側から結界をどうにかできないのか?」

 

「空からの攻撃に対処するための自立型ゴーレムと備え付けの小型バリスタが多数配備されています。

胴体にも戦闘用ゴーレムが。

今も中から開発者である科学者が指示を下している、とされています。」

 

そこまで言い切られたところで会議はストップしてしまう。

あーでもないこーでもないとゴーカイオーという最強の切り札(エース)を有効に使うための役がそろわない。

 

「なあアクア。プリーストの技に確かスペルブレイクってあったよな?

あれでデストロイヤーの魔法結界を破れたりしないか?」

 

「魔王軍本拠地の結界でも結界維持してる幹部が三人以下まで減らせれば何とかなるけど、私デストロイヤーを実際に見たことないから何とも言えないわ?」

 

「……なら、作戦はある。」

 

和真は椅子の上に乗ると

 

「みんな聞いてくれぇえええ!

アクアならもしかしたら結界を破れるかもしれないそうだ!

そこに爆裂魔法をどうにか打ち込めればゴーカイオーで抑えてる間に俺たちで中に入って内側から機能停止させれば何とかならないか!?」

 

「なんだって!?」

 

「芸人の姉ちゃん!出来るのか!?」

 

「か、確約はできないわよ!?」

 

「よしダクネス!さっさとガレオンに戻ってめぐみんと来い。

奴さん歓迎会はこっちで準備しとく。」

 

「わかった。すぐ戻る!」

 

飛び出していくダクネス。

彼女だけに任せると変な操縦をされかねないのでアクアもついていった。

 

「あと必要なのはもう一人爆裂魔法が使えるやつか。」

 

そう和真がつぶやくと見計らったようにギルドの扉が開かれ

 

「遅くなりました………っ!ウィズ魔道具店の店主です。

一応アークウィザードとして冒険者登録してるのでお手伝いに…。

あれ?どうしたんですか皆さん私のほうを見て…」

 

「貧乏店主さん!ナイスタイミングすぎるぜ!」

 

ギルド中が歓声に包まれる。

カードはそろった。あとはそれを場に出して相手の出方をうかがうだけだ。

 

 

 

クリエイター職の冒険者から土木会社の人たちまで集まって街の前、今回の決戦場に突貫でバリケードが作られている前で仁王立ちするゴーカイオーを見上げながら俺、七海総一は若干雲行きの怪しさを感じていた。

 

どうやらそれを感じているのは俺だけらしく、

爆裂魔法で壊し損ねた足を破壊する部隊に配属されたジョーはこの前の戦利品のギガゾメタルの剣を自慢しており、

リアは若い連中に頼まれて何か歌っていて、

アクアは何やらウィズにちょっかい出してあの魔剣の…キサラギ君だかミゾロギ君だかに窘められている。

普段あのくそ女神の首輪の手綱を握ってる和真は緊張でガッチガチになっためぐみんを励ましている。

 

「どったのソーイチ。浮かない顔じゃん。」

 

同じ部隊、デストロイヤーの本丸に突入する部隊に選ばれたのは俺とルカだ。

 

「ああ。ゴーカイオーにアクア。めぐみんにウィズ。

手札がそろい過ぎてる。まるで用意されたみたいにな。

ちょっと出来過ぎな気がしなくないか?」

 

「まあそうだけど、その幸運を喜ばない?

うまくやればデストロイヤーの討伐報酬で借金ちゃらよ?」

 

まあそうなんだがどうにも嫌な予感がぬぐえない。

 

「おそらくこの街にデストロイヤーを呼んだのは魔王軍、もっと言えばメレだ。

敵は多分ギルドスの件で自分の真実を知ったブッチーを暴走させてそれを囮にこの作戦を隠し通した。

……本当にそれだけか?

デストロイヤーは感知できたうえにこうして万端の準備まで出来てる。

奴らにしちゃあ詰めが甘い。」

 

それを言われて考え込むルカだったがアーチャー職の仲間に弓矢のことで話しかけられると注意だけはしとくと言って離れていった。

 

「……参謀に知恵を借りるか」

 

俺はモバイレーツを取り出すと和真の奴に電話を掛けた。

数コールの後に和真が出る。

 

『和真です。どちら様でしょうか?』

 

「総一だ。ちょっと聞きたいことがあってな。

もし、もし魔王軍がこの局面を利用して邪魔してくるとしたらどのタイミングだと思う?」

 

しばらくどちらの声もしなくなる。

和真のほうを見ると、こちらの真意をうかがうようにじっとこっちを見ている。

 

『そうですね…間違いなくデストロイヤーが来てから…それもこっちが切り札を切った後。

ゴーカイオーとデストロイヤーが取っ組み合ってて、なおかつ爆裂魔法が使われた後、あるいは使う瞬間、ですかね?』

 

「わかった。ありがとな。」

 

俺はそう言って通話を切ると近くにいたアーチャー職の奴に声をかける。

もし俺の見込みが外れてくれるならそれに越したことはないが…もしそうなら必要だからな。

 

 

 

刻一刻とその時が近付く中俺、佐藤和真はどうにも落ち着かない感触を覚えていた。

さっきの総一さんの電話、あれは何だったんのか?

確かにこの局面で最悪を想定して動けるようにしておくのは悪い事じゃないが…考えすぎても仕方ないんじゃないのか?

もしかして何か根拠が?

 

「カズマ?急に黙ってどうしたんですか?」

 

「いや、なんでもそれより…来たぞ。」

 

「な!なんですかあれ!予想よりもでかいですね…」

 

多分ダイナマンのキーを上乗せしてめぐみんが命を削るレベルで力を振り絞っても倒せるかどうか。

それぐらいのでかさの怪物が猛スピードで突っ込んでくる。

 

「オイ!これ無理じゃないのか!?ゴーカイオーは耐えれるのか!?」

 

誰かが慌てたように言うが、こうなったらもうやるしかない。

 

「『クリエイト・アースゴーレム』!」

 

クリエイター職の皆さんが地面の土でゴーレムを生み出す。

駆け出しばっかのこの街のクリエイターたちではできるだけ強いゴーレムを出そうと思ったら活動時間を削るしかないようだ。

生成されたゴーレムたちはゴーカイオーに先んじて果敢にもデストロイヤーに向かっていく。

 

「デケェ!そして早ぇ!予想外にこえぇ!」

 

パニックになりかける冒険者たち。

しかし祖入れを鼓舞するようにゴーカイオーがわざとらしく地面を踏み鳴らし注目を集めるとデストロイヤーと真正面からぶつかる!

 

一番前の二本の脚を両手でつかみ、空手で言うところの前屈立ちで踏ん張る。

メリメリとかかとで地面をえぐりながらもゴーカイオーはデストロイヤーを押さえることに成功した。

 

「おおお!」

 

「やったぞ!」

 

俺は右手を上げてウィズとアクアのほうに合図を送った。

 

「黒より黒く闇より暗き漆黒に……」

 

詠唱が始まると太陽のような色の魔法陣が二つ。

デストロイヤーと浮かび上がる。

 

「我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒の時きたれり!

無謬(むびゅう)の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて、現出せよ!」」

 

エネルギーが最高まで高まり、めぐみんはデストロイヤーに杖を向ける!

 

「「『エクスプロージョン』ッ!」」

 

紅蓮の炸裂がデストロイヤーの脚を消し飛ばす!

……右側だけ。

もう一撃目の爆裂魔法はなんとゴーカイオーの右肩に炸裂した!

 

「え?……な、なにが!?」

 

「い、今貧乏店主さんのほうの魔法陣が…ずれた?」

 

ただし、ゴーカイオーの胴体の方から急に。

ゴーカイオーは一瞬バランスを崩したが、デストロイヤーも同様だったので何とか持ち直した。

 

「ソーイチ、あんた…」

 

ウィズの魔法陣をずらしたのは総一だった。

彼の手に握られたゴーカイガンの銃口から煙が立っている。

 

「お前だろ?魔王軍のメレは。」

 

「なぜ、私だと?」

 

「正直ギリギリまでどうかな?と思ったけど…この作戦で最も重要なポジションは三人。

ダクネス、とアンタにめぐみん。

ダクネスはあの時の言葉が嘘じゃないと和真が判断したんなら間違いない。

めぐみんも同様。いくら上がりきってても俺らより付き合い長い和真なら気づくだろうとあいつの眼を信頼してな。」

 

ぶっちゃけ、消去法だよ。

そう言い切るとウィズは肩を震わせ…

 

「あっは!ははははははははははははははははははは!

格下でもマグレはあるのね!ええそうよ!私こそが!」

 

<ゲーーッキレンジャー!>

 

取り出したダークモバイレーツにキーを差し込みウィズはメレに変身するとデストロイヤーに飛び乗り、黒いエネルギーを打ち込んだ。

するとどうだろう?デストロイヤーは失った右側の脚をエネルギーで補うと復活し、ゴーカイオーを轢き潰さんと猛進し始める!

 

「ッッッ!こんのおおおおおお!」

 

ダクネスは絶叫とともに操縦桿を握りしめゴーカイオーを踏ん張らせる。

だがバチバチと火花を散らす右腕は限界が近い。

 

「踏ん張れぇええええ!」

 

ここだけは通すわけにはいかない。

ダクネスの使命であり願いであり意地だった。

 

(突破させない!私の育った街を!

お母さまが愛した街を突破させやしない!)

 

「絶対に行かせない!絶対に!この先にある命を踏み荒らさせはしない!」

 

ダクネスがそう叫んだ時、彼女の懐にあったレンジャーキーが輝き始めた!

 

「これは!力を貸してくれるのか?」

 

ダクネスはそれをすかさず変形させて操縦桿の真ん中のスロットに突き刺す!

 

「レンジャーキーセット!レッツゴー!」

 

どうにか一度デストロイヤーを押し返し、すべてのハッチを開く!

中から五つの動物のマークが飛び出し、頭に赤いファルコン、胴体に黄色いライオン、下半身に青いイルカ、右手に緑色のサイ、左手に黒いバイソンのエネルギーが与えられる。

 

「おい見ろ!傷が治ってく!」

 

「それだけじゃない姿まで変わった!」

 

「ば、ばかな!これが、スーパー戦隊の大いなる力!?」

 

「ああ。ゴーカイオーは不死身だ!

いや、今だけはこう呼ぶべきだな。スーパーライブロボ!」

 

「こ、これは…いったい何が……」

 

ただ一人コックピットのダクネスは何が起こっているかわからなかった。

何しいきなりコックピットの中まで様変わりして他の四つの操縦席にはさっきまでいなかったブルードルフィン、イエローライオン、グリーンサイ、ブラックバイソンが乗っているのだ。

 

「行くぞ!スーパービックバーストだ!」

 

「「「おー!」」」

 

「お、おー!」

 

イエローライオンの号令にダクネスはだいぶ様変わりした操縦桿を前に倒す。

スーパーライブロボはズンズンと早足気味に進みだした。

 

「それじゃない!」

 

「え?こ、こうか?」

 

ブレーキを探してスイッチを押すがそれはパンチのボタンだった。

至近距離で放たれた鉄拳はデストロイヤー貫く!

 

「何やってんだよ抜けないじゃん!」

 

「す、すまん!えっと、どうすれば…」

 

「もうお前触んな!」

 

大慌てのコックピット内の事情なんて知らない地上のほうはと言うと

 

「おお!やったぞー!」

 

「いいぞがんばれ!」

 

「俺たちも負けてられないぞ!」

 

デストロイヤーの物理材質で構成されている足に攻撃を始める。

ミツルギの魔剣やジョーのギガゾメタルの剣が足を破壊しデストロイヤーはバランスを崩して沈む。

スーパーライブロボも同時に倒れこんだ。

 

「うぎゃああああ!」

 

真上に乗ったメレをつぶすように。

起き上がってみると完全に伸びたウィズが目を回して気絶している。

スーパーライブロボは器用につまむ和真たちのほうに放り投げた。

 

「よし!あとはこいつをぉおお!」

 

スーパーライブロボは思い切りデストロイヤーを担ぎ上げるとその場で回転し、ジャイアントスイングの要領で天高く投げ飛ばす!

 

「今度こそ行くぞ!」

 

「「「「「スーパービックバースト!」」」」」

 

胸部のライオンの胸から放たれたエネルギーがデストロイヤーを粉々に打ち砕く!

爆風とがれきを遺してこの世界を恐怖にさらし続けた機動要塞は空に消えた!

 

「やった!」

 

「やったぞぉおお!」

 

疲労感にダクネスは椅子に座り込む。

ふいにその肩をイエローライオンが叩いた。

 

「お疲れさん。これからも俺たちライブマンの力、正しく使ってくれよ?」

 

そう言ってレンジャーキーに戻るとダクネスの手に収まる。

それを見て小さくありがとうとつぶやくダクネスだった。




次ーーッ回!第九話!

検事「サトウカズマ!あなたを国家転覆罪で逮捕します!」

和真「俺は無実だぁーー!」

めぐみん「脱獄させましょう!」

総一「それで余罪重ねてどうする?」

ジョー「じゃあどうするんだ?」

冤罪!?犯罪者サトウカズマ!

総一「考えんのさ、こうゆう時、あいつならどうする?」


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冤罪!?犯罪者サトウカズマ!

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


1

「サトウカズマ!あなたを国家転覆罪で逮捕します!」

 

「俺は無実だぁーー!」

 

たった二行。たった二言。

機動要塞デストロイヤーの討伐報酬を受け取りに行った和真が受けた仕打ちの全てだ。

 

「……ついにか。」

 

「前から風呂上がりのリアを下品な目で見てると思ったのよね…。」

 

「和真さん…総一さん、刑務所への慰安訪問で歌のお仕事ってありましたっけ?」

 

「お前らちょっとは奴の無実を信じてやれよ?」

 

想像以上に塩対応で使った塩をそのまま傷口に塗り込むような冷淡さのジョー達に俺、七海総一は一抹の不安を覚えていた。

 

「で、和真は今どこに?」

 

「拘置所ですよ。牢屋の位置ぐらいは分かってるので今夜脱獄させましょう!」

 

「それで余罪重ねてどうする?

もし失敗して裁判までも連れ込んだらますます有罪に傾くだろ?」

 

「ソウイチ、アンタは日本生まれだから分かんないだろうけどこの世界の裁判はね、原告の身分が高かったら証拠とか諸々すっ飛ばして死刑よ?

検察は職として有るけど弁護人は基本被告人の知人から選ばれるしでかなり被告人不利なの。」

 

身元不明の冒険者なんて特に。

と、付け足した馬鹿女神の珍しくマトモな説明になるほど、と半分納得する自分と、まずいな、と少し焦る自分が生まれる。

 

「因みに罪状は?

確かに和真は出来心で万引きや痴漢ぐらいならするだろいが、そこまでの事は …。」

 

「3つあって、1つは酒屋のツケに文句言って巨大ゴーレムを暴れさせた。

2つ目は魔王軍と通じてる疑いがある。

3つ目は、コロナタイトをランダムテレポートで領主の屋敷にテレポートさせて更地にした、です。」

 

ツラツラと言い切っためぐみんに俺たちは思わず『あ……』とつぶやいた。

このシリーズをずっと読んでくれている愛すべき読者の紳士並びに淑女諸君は1つ目は何かお分かりだろうが、残る2つについては説明不足だろう。

それを説明するには時間を少しばかり、デストロイヤー撃破直後まで遡る必要がある。

 

 

 

2

「おい駄犬女神。本当にウィズはこの辺に落ちたんだろうな?」

 

「誰が駄犬女神よ湯たんぽヒキニート!

少しは女神の邪悪に対する嗅覚を信用なさい!

間違いなくあのアンデッド女はこの辺りにいるわ!」

 

デストロイヤーごとスーパービックバーストでお星様に変えたはずのウィズの死体とレンジャーキーを回収しに来ていた。

が、アクアが言うにはウィズはアンデッドで、恐らく高位のリッチーだとか。

 

「めぐみん、ヒキニートはは分かりますけど湯たんぽって何ですか?」

 

「最近アクアは朝寒いとカズマの布団に潜り込んで温まってるんですよ。」

 

「駄犬ってか雌猫だな。」

 

「リア!めぐみん!ジョー!全部聞こえてるわよ!」

 

なんて言いながら獣道を進んでいると

 

「だれかー!助けてくださいー!瓦礫に挟まって動けないんですー!

どなたかいらっしゃいませんかー!」

 

本当にいた。高位のリッチーが瓦礫に挟まって動けなくなっていた。

そのやや手前に煙を上げたレンジャーキーとダークモバイレーツの残骸が残っている。

リアはそれを拾い上げると思い切りウィズを睨みつけ

 

「あ、あの…」

 

「ふん!」

 

思い切り頭を踏みつけた。

 

「これはギルドスの分!これはブッチーの分!これはゴーカイオーの分!それからこれとこれとこれともう一つこれは私の怒りだこの死体人間がぁあああ!」

 

「痛い痛いやめて!やめてください!」

 

「いいわよリア!そのジメジメしたナメクジ女に身の程を分からせてあげなさい!」

 

「……ジョー、アクアを少し殴れ。」

 

剣の柄で頭頂部を容赦なくぶん殴られたアクアが悶絶してる間にルカとめぐみんが二人掛かりで興奮しきったリアを離す。

 

「さーて、それじゃあ怪物のお嬢さん(モンストレス)

アンタに残された選択肢は三つ。

一つはそこの脳みそは足りないが浄化のパワーは有り余ってる阿保女神に浄化される。」

 

思わずウィズが涙目のままごくりと唾をのむ。

 

「二つ。生け捕りにした魔王軍の手先ってことでギルドに突き出す。

きっとリッチーなんて貴重なサンプル腑分けにされて原型が分からなくなるまで実験と研究を繰り返されるんだろうな?

いつの時代も愚かな為政者ってのは不老の力を欲しがるもんだ。

確かリッチーってそうなった瞬間から姿固定だろ?」

 

さらに目に涙を浮かべて震えだすウィズ。

よし、この怯え様なら間違いなく三番に飛びつく。

 

「三つめは…このままお前は討伐されたことにして魔王軍とのつながりも店も手放し俺たちに飼われる。」

 

「はぁ!?ソウイチあんた本気で言ってるの!?

私は絶対こんなのと共同生活なんて嫌だからね!」

 

「でも俺たち以上のことを知ってる。

ならしゃべらすしかないだろ?

下手に王国に知られてレンジャーキーを独占されたらたまったもんじゃないからな。」

 

そう言ってウィズに無抵抗を約束させて引っ張り出そうとしたが

 

「ま、待ってください!実は、さっきのデストロイヤーを破壊した攻撃で、核になっていた魔石、コロナタイトが暴走してて、このままだと爆発するんです!」

 

コロナタイト!?と総一、和真以外の全員が顔を青ざめさせる。

どうやら爆発したらとんでもないことになる代物らしい。

 

「今から走って逃げれるか?」

 

「無理よ今からなんて!ここら辺一体更地になるわよ!」

 

アクアがわめく。とりあえず落ち着かせようと和真はブリンガーソードの柄でアクアを殴る。

 

「なあウィズ、テレポートとかできるか?」

 

「で、できますけど行先ランダムになっちゃいます…。」

 

もし人のいるところに出ようものなら大惨事だ。

さてどうするか。その時和真は言ったのだ。

 

「とにかくやろう!大丈夫だこの世界は広いんだ!

人の居ないところの方がきっと大きい!大丈夫だ!

俺は運だけは良いらしい!俺を信じろ!」

 

 

てなわけでそのあとコロナタイトは今ガレオンの物置を改装した部屋で飼って(・・・)いるウィズがランダムテレポートさせたんだが…。

 

「つまり『魔王軍とつながりがあるか?』とか『コロナタイトを送り付けたのはお前か?』とか質問をされた場合、いいえと答えたら嘘発見器が反応する可能性があると?」

 

「じゃ、じゃあ私のせいでカズマさんが…」

 

隷属の魔道具である首輪をつけられたウィズが本当に申し訳なさそうに言う。

 

「こうなったらかなりまずいんじゃないの?

ガレオンもガサいれされてまずい物だらけだし。」

 

「住所不定なんて冒険者にはよくあることだし、

最悪風雷丸に忍術かけてもらって雲隠れって方法もある。

それに一応和真たちは屋敷に住んでることになってるんだろ?

ならたぶんこっちにまでは来ない。」

 

だがそれでも証拠隠滅とかいろいろ裁判所で言われるのは確定だから、

このままでは恐らく有罪が確定してしまう。

 

「じゃあどうするんだ?」

 

「考えんのさ、こうゆう時、あいつならどうする?」

 

 

 

どうも皆さんこんにちわ。リアです。

いま私春香さんと一緒に拘置所に来ています。

恐らく取り調べに来てるであろう検事さんを捕まえて話を聞くためです。

 

「あ、いたわよリア!あいつ!」

 

「分かりました!リア!いっきまーす!

あのー!すいませんそこの眼鏡の美人さん!」

 

「なんでしょう?」

 

「私、佐藤和真さんの冒険者仲間で、裁判の弁護人になるつもりなんです。

それで、和真さんの罪状やその根拠を教えてほしくて…」

 

それを聞いて検事さんは少し驚きましたがちょっと小さい声で

 

「一応弁償は済んだとは聞いていますが、

街の門を破壊したり巨大ゴーレムで暴れたりとしていますからね。

そのゴーレムがどこの記録にもないものですから魔王軍のものなのではないかという疑いがかけられているんです。」

 

「それで魔王軍関係者の容疑が?」

 

「はい。それから……色々と悪いうわさも聞きますし。」

 

ああ、確かに。と、思わずリアは苦笑してしまった。

礼を言ってすぐにその場を後にする。

 

「どうだった?」

 

「多分ソウイチさんとルカさんならこの材料でもうまくやれると思います。」

 

「そっか。じゃあ、私も腕によりをかけちゃおうかしら?」

 

と、ルカはちょっと悪い笑みを浮かべて腕を鳴らした。




次ーーッ回!第十話!

アクア「異議あり!」

総一「よってわれら弁護側は無罪を主張する!」

裁判長「静粛に!」

ルカ「まさかこの切り札まで切る羽目になるとはね。」

ダクネス「いや、ルカ。ここは私が!」

開廷!異世界裁判!

和真(頼むぞ皆……)


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開廷!異世界裁判!

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


「静粛に!静粛に!これより、

国家転覆罪に問われている被告人サトウカズマの裁判を始める!」

 

やあ皆。1週間ぶり。総一だ。

ついに和真の裁判が始まった。

真ん中の奥、一番偉そうな席には街の裁判長。

検察側にはリアが前に話しかけてた担当検事の眼鏡の女、セナと彼女が集めた証人たち。

 

そして被告のアレクセイ・バーネル・アルダープ。

調べたところに世pると黒いうわさの絶えない人物らしい。

実際に会ってみた感想で真っ先に脂ぎった豚男という感想が来る。

弁護側のこっち…面だけは一級品の女性メンバーをいやらしい目で見ている。

なぜかダクネスだけ驚いた顔で見ていたが。

 

「ねえソーイチ。うまくレンジャーの力使ってあのセクハラ親父殺れないかしら?」

 

「奇遇ねルカ。私もあいつの両目と腐った脳を叩き割りたかったところなの。」

 

「ちょ!二人とも落ち着て!」

 

「纏まる話も纏まんないから黙ってろ。」

 

「そうです!ここは高度な知能を持つ紅魔族に…」

 

「いや、お前すぐ切れるから駄目だ。」

 

そう言い合う俺たちの方を見て和真は不安げな表情をより不安げにさせた。

俺はジョーとリアに視線をやる。

2人は頷いて和真にサムズアップする。

目で『俺たちに任せろ』と言っているのだ。

 

(頼むぞ皆……)

 

和真も頷いた。多分、あいつが思う皆に阿保共(アクアたち)は入ってないんじゃないかな?

 

「静粛に!裁判中は私語を慎むように。

では検察側、前へ!ここで嘘を述べても魔道具ですぐにわかる。

それを肝に命じて発言するように!」

 

まず起訴状が読まれる。

内容は嚙み砕いて言えば『デストロイヤーを倒したどさくさにわざと豚親父の屋敷に爆発寸前のコロナタイトを送り付けたのと、ゴーカイオーの所持』だ。

なんd目御ランダムテレポートを使ってこういう劇物を送るのは法に触れるんだと。

 

「よって検察側は被告人に国家転覆罪を…」

 

「異議あり!」

 

何と起訴状も読み切らないうちにアホ女神が手を上げて立ち上がった。

そして一同の視線が集まると、だくだくと汗をかき始め

 

「じょ、ジョー!なんかあるんでしょ!?」

 

「え!?」

 

急に振られたジョーは一瞬どうしていいかわからなかったがアクアの脳天に拳骨を叩きこんで立ち上がり

 

「あー、彼はこの女にこの国に連れてこられたせいでこの街での生活を、

まあ、今は色々面白おかしくやってますが、望んで始めた生活ではなく、

その日暮らしでいろいろ精一杯。

そんな法律の確認まで頭が回っていなかったはずです。

どうか寛大な処罰を!」

 

そう言い切ったジョーはもう一発アクアの頭を殴りつけた。

俺は素直にジョーに拍手を送る。

即興でよくまああそこまで喋れたもんだ。

 

「あー、弁護側。主張は分かったが、

せめて弁護側の答弁の時に発言しなさい。いいですね?」

 

「おいアクア、お前さっき『異議あり』って言いたかっただけだろ。

空気読め。カズマの首がかかってるんだぞ?」

 

アクアはそう、よね…と珍しく落ち込んだ様子で言った。

本当に分かってるんだろうな?

 

「おほん!では次に被告人と弁護側の発言を許可する。

さっき言った長髪の君は、もういいな?では陳述を!」

 

まずは当然和真から。

流石はズルと卑怯で堂々勝負することにかけては我が海賊団随一の参謀。

まずゴーカイオー…ゴーカイガレオンやその他マシンは乗り物であり、

この国に冒険者に乗り物を所有することを禁じる法律はあるのか?

という事や、自分やゴーカイオーの活躍。

更には魔王に直接とらわれたことさえ嘘でない程度に話しを盛って喋る喋る。

 

しかも嘘発見の魔道具は全く反応しないんだから検察も被告も悔しそうにしている。

俺たちは笑いをこらえるので必死だ。

 

「あー、裁判長、私からもいいでしょうか?」

 

ここで恐らくこちら側で一番街からの信頼のあるであろうリアが手を上げる。

 

「弁護人リア、発言を許可する。」

 

「被告人、佐藤和真さんは、正直善人じゃありません。

けど彼は一見利己的に見えて誰かの為に戦える人です。

そりゃあ敵対してるわけですから魔王軍幹部とも無関係とはいえませんからその魔道具が反応したんでしょうが、それって本気で魔王に挑もうとしてる冒険者なら大なり小なりそうなんじゃないですか?

私たち弁護側は本件は魔王軍と無関係であると主張します!」

 

この日のために寝る時間削って練習したかいがあったなリア。

ステージに立った時と同じ堂々とした良く通る凛とした声は弁護側に鋭く突き刺さる。

 

「で、では次。検察官。被告人に国家転覆罪が適応されるべきであるという証拠を!」

 

検察側の最初の証人は盗賊のクリスだった。

 

「クリス証人、被告に公衆の面前でスティールで下着を向かれたとは本当ですか?」

 

「まあ、そうですけど…あれは「異議あり!」え?ソウイチ?」

 

ここでいろいろ質疑をうやむやにされる前に俺は手を上げる。

 

「俺はその時その場にいた!

そもそも和真がスティールでお前の下着を剥くことになったのはお前がスティールした財布を奪い返そうとしたからじゃないか!

そうだろう?俺は覚えてるぞ!

お前が和真に今自分にスティールしてとったものをどんな物でもくれてやる!って言ったのを!」

 

魔道具のベルは鳴らない。

検察のセラをそのまま睨みつけてやるとビクッ!と大げさに震えた。

現代日本で言うところの6ちゃんねる程度のとこがソースの情報だったからイマイチ信ぴょう性なかったが、こいつビビりだ。

大方このまま和真の心証をだんだん悪くしていきたかったんだろうがそうはいくか。

 

「つ、次の証人!前へ!」

 

次に前に出てきたのはミゾロギ…じゃなかったミツルギ君んとその両手に花だった。

彼らは俺は知らなかったが魔剣をパクられて勝手に売り払らわれたことを話したのだが

 

「異議あり!それはあなたがその魔剣とアクアをかけて勝負とか言い出したからでしょう!」

 

めぐみんが勢い良く立ち上がる。

傍聴人席からも『ふざけんな色男!』『要は女取り合った逆恨みか!』とかやじが飛ぶ。

 

「静粛に!弁護人、その時の様子を詳しく。」

 

「ダクネスもともに発言していいでしょうか?」

 

「許可する。」

 

「そもそもそのミサラギとか言うのがアクアを横から取ろうとして勝手に勝負とか言い始めたのが発端です!

カズマはただその決闘に応じただけです!」

 

「エリス様に誓ってその通りだ。

まあ、やや不意打ち気味の勝ち方だったが…」

 

魔道具はまたならない。

和真の心証も良くはないだろうが、まあ検察ほどじゃない。

むしろ相対的によく見えるほどだ。

 

「よってわれら弁護側は無罪を主張する!」

 

そこまで言い切ると和真も

 

「最後に一言、よろしいでしょうか?」

 

証言台に立ち声を張り上げ

 

「俺は魔王の手先なんかじゃない!誰があんなチビガキの手下なもんか!

そして悪意を持ってコロナタイトを送り付けたりしてない!

もっかい言うからその魔道具をよく見てろ!俺は!魔王軍の手下なんかじゃない!」

 

静寂。魔道具の音はならない。

裁判長はそれを聞き届け

 

「それでは判決を言い渡す。

被告人サトウカズマ、『有罪だ。』有罪!死刑が妥当…え?」

 

裁判長の発言を豚領主が遮った。

そして裁判長が自分の発言に驚くようなしぐさをする。

なんだ?俺は後ろの仲間の方を振り返る。

 

「ちっ!」

 

なぜかアクアが思い切り舌打ちをした。

真横にいたジョーは信じられないものを見る目でアクアを見ている。

しかしその驚きも周囲の罵声に遮られてしまいう。

 

「ふざけんこの公僕!」

 

「なんで今の流れで死刑なんだ!」

 

「てめえ今絶対何かしやがったな!そうだろ!」

 

傍聴人席は暴動寸前の様相を呈した。

こっちでもめぐみんが暴れようとしてリアに取り押さえられている。

 

「静粛に!静粛に!静粛にってんだろうが!」

 

イラついて何度も木槌を振り下ろす裁判長だが、

騒ぎの間接的最大要因がそんなことを言っても収まるはずもない。

 

「まさかこの切り札まで切る羽目になるとはね。」

 

ルカが前に出ようとするがダクネスがその前に立つ。

 

「いや、ルカ。ここは私が!」

 

ダクネスは策を飛び越えると

 

「裁判長!これを!」

 

胸元から金色のペンダントを取り出して見せた。

エリス教のお守りとかではない。

昔映画で見た王族の印みたいのに似ていたそれは

 

「この裁判、ダスティネス・フォード・ララティーナに預けていただけますでしょうか?」

 

「だ、ダスティネスって…」

 

「たしか王家波に発言力も家格も有るっていうあの…」

 

「アルダープ。あなたには借りを作ることになるな。

もし何かあれば、あなたの頼みを何でも聞くと約束しよう。」

 

なんでも。その言葉に豚親父は下品に笑うと裁判長に合図した。

 

「いいでしょう。あなたに免じてその男に猶予を与えましょう。」

 

衝撃の事実と共に裁判の幕はひかれた。

どうにも嫌な感じがぬぐえないまま俺たちはがレオンに戻った。




次ーーッ回!第十一話!

和真「何としても無罪を証明する!」

アクア「絶対あの親父には邪悪な何かがあるわ!」

総一「海賊のやり方でやる。そんだけだ!」

セナ「しっかりと、監視させていただきます。」

ぼっち魔導士(ウィザード)、現る!

ゆんゆん「我が名はゆんゆん!
紅魔族が長の娘にしてやがてその座を継ぐもの!」


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ぼっち魔導士(ウィザード)、現る!

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


「何としても無罪を証明する!」

 

裁判が終わった数日後。

ガレオンにもどった和真は憤懣やるかたないと言った様子で机をたたいて立ち上がった。

その理由は今日の朝、ダクネスがあの豚領主に呼び出されて出て行ってしまった事にある。

 

「ああそうです!あのスケベ親父ダクネスさんにきっと……きっと……」

 

和真に同調してリアも立ち上がる。

しかしなぜか段々とテンションが下がっていき、下を向いて頭を抱えた。

 

「リア?どうしたの?具合悪い?」

 

「いや、ルカさん。私は平気なんですよ。

ただダクネスさんがあのスケベ親父に色々されて顔では嫌がっても心では、その…」

 

その言葉を聞いて船内にいる全員、普段はアクアが頑として譲らなかった条件として結界で幽閉しているウィズを除き全員が同じ想像をしただろう。

ダクネスはあの豚の泊まる宿に連れ込まれあのたわわに実った乳房をさらけ出されそして…

 

「……ああああああああああああーっ!

こうしちゃいられねえ!

一刻も早くあの脂ぎった変体親父の化けの皮を剥ぎ散らかさねえと!」

 

「でも大丈夫なのか?

屋敷消し飛ばされたといっても相手は領主だぞ?

それなりの財産や切り札がある。」

 

冷静に言うジョーに珍しくアクアがそうね、と冷静に返した。

 

「絶対あの親父には邪悪な何かがあるわ!

裁判長が判決を言う直前に邪悪な何かを行使したのよ!

私が言うんだから間違いないわ!」

 

裁判所であの時思い切り舌打ちしたのはそうだったからか。

総一が納得しながらジョーを見ると、彼はどこかおびえた様子でアクアを視界から外した。

まあ、普段との差でそう感じるのも無理ない。

 

「じゃあなんであの時言わなかったんですか?

あの場で言ってやったらよかったじゃないですか!」

 

「だって…私が発言したところでジョーとのあれをみんなが見てたわけでしょ?

もしあの邪悪な力が魔道具にまで作用してたら意味ないし…カズマの心証を余計悪くしちゃうじゃない…。」

 

めぐみんからのもっともな指摘にアクアはしおらしく答えた。

それを聞いて和真は目を丸くし

 

「アクア…」

 

「カズマ…」

 

「お前今日は本当に血の巡りがいいな?

どうした?調子悪いのか?」

 

「アンタ相手が女神じゃなくても言っていい事と悪い事があるわよ!?」

 

そう言ってアクアは和真にヘッドロックをかました。

 

「はいはい。落ち着けバカケンカップル。」

 

総一とルカに引きはがされて和真は不機嫌そうに。

アクアは若干頬を赤くして一歩下がった。

 

「とにかく一回街に出て情報を集めよう。

食い気と色気にしか興味のねえ冒険者野郎の集まりにでもなんかしらは収穫あるさ。」

 

「情報に収穫って言ってもどうするつもり?」

 

「決まってるだろ?海賊のやり方でやる。そんだけだ!」

 

 

 

「やっと見つけましたよ!サトウカズマ!」

 

昼前。結局あの豚領主がろくでもない人間だという証拠しか上がらなかった和真、アクア、めぐみん、ジョーは途中クエストがあって別れた総一、ルカ、リアとは別で昼食を取っていた。

そこにこの前の検事、セラが駆け込んできた。

条件反射で抜刀したジョーがギガゾメタルの切っ先を喉に突き付ける。

 

「ひっ!あ、ああ…」

 

「おっと失礼。てっきり人の悪いところだけを異様に誇張してあたかも人を極悪人かのように見せて有罪にさせようとした血も涙もない卑劣なメス豚が来たのかと思った。」

 

店内から青い顔をしたセナをゲラゲラと笑う声が響く。

彼女はますますすぉまるめておびえ始めた。

 

「はぁ…それで?今度は何の用ですか?

まだ次の審議まで時間ありますよね?」

 

そう和真が言うとセナははっ!として咳ばらいをすると

 

「今朝ギルドの調査員からジャイアントトードの群れが何かにおびえるように出てきたとの報告がありました!

それからここ数日決まった時間にカエルが出てきたあたりに何の意味もなく爆裂魔法が放たれていたという報告も!」

 

そこまで聞いアクアとめぐみんは我先にと入口の方に向かって走り出した。

当然和真とジョーは二人の首根っこを掴んで止める。

 

「待ってください、話を聞いてください、

私はアクアに命令されてやっただけなんです!

実行犯は確かに私ですが主犯はアクアです!」

 

「ずるいわめぐみん!話を持ち掛けた時はノリノリだったじゃない!

我が力を見るがいい!とかいってノリノリだったじゃないの!」

 

「知るかよどっちがどうとか!

さっさと屋敷に戻って装備を整えるぞ!

アンタ、セナさんだっけ?先に門の方で待っててくれるか?」

 

「いえ、あなた達のことはしっかりと、監視させていただきます。」

 

 

 

一面降り積もった雪の作る銀世界。

 

「なんで私!私監視に来ただけなのに!

いやあああああ!来ないでぇええええええ!」

 

何故アクアではなく彼女が追いかけられているのか。

それは数十分前、まず16匹いた群れをめぐみんのレンジャーキーでブーストかけた爆裂魔法で半分を木っ端微塵にしたはいいのだが、背後から来た別の一匹に食われたところまでさかのぼる。

 

「カズマどうする!?」

 

「ジョーさん頼んます!」

 

「いえ、アクアを追っている方を先にお願いします。

外は寒いですし、カエルは温いですから。」

 

こいつは爆裂魔法への異常なまでのこだわり以外は多少、多少?切れやすい事以外は結構まともなのかと思っていたが意外とたいそうな奴なのかもしれない。

 

「まあ、お前がそう言うんなら。」

 

「ええぇ?あ、あなたたち冷静すぎませんか?

仲間が食べられてるんですよ?」

 

「何他人事みたいに言ってるんだ?

お前だって場合によってはカエルの餌になるぞ?」

 

「ここにいる誰もセナさんの事真剣には守らねえからな?」

 

そう言われてセナは一瞬キョトンとしてからサーッと顔を青くした。

そしてすがるようにジョーを見る。

 

「覚えておけ。バーナード国の人間は結構根に持つんだ。」

 

「日本人もな。」

 

そう言ってジョーは別の元気に動き回ってるカエルに、和真は助けを求めて走って来たアクアが連れてきたカエルに矢を向ける。

最近覚えたスキルを使うためだ。

『弓』と『狙撃』だ。

和真にはダクネス、総一にはリアという優秀な盾役がいるのに派手な遠距離攻撃しか出来ないのはもったいない。

そう考えた二人はルカ経由で知り合ったアーチャー職の冒険者にこれらのスキルを教わったのだ。

 

『弓』は覚えればどんな人間でも一端の弓使いになれるスキル。

そして『狙撃』は弓以外に拳銃などの武器でもデストロイヤー戦で総一がウィズの魔法操作をずらすために使っていたのと同じように有効なスキルで、飛距離アップ、使用者の運によって命中精度もアップするという和真には打って付けのスキルなのだ。

 

「カズマー!早くしてー!早くしてーー!」

 

「よーし……『狙撃』!」

 

矢が真っ直ぐにカエルの眉間に吸い込まれるように命中!

大当たり(ジャックポット)だ!

 

「ちょっと!いま私の頭のチャームポイントをかすめていったんですけ…」

 

眉間に矢が刺さったままのカエルはパクっとアクアに頭からかぶりついた。

……まあ、冷静に考えてみれば攻撃力が足りなすぎるな。

 

「おーいジョーさーん!?そっちはーー!?」

 

「一人で五匹は少しきつい!

あと向こうからもう二匹やってくるぞ!」

 

最悪の知らせに和真はすぐに状況を分析する。

ジョーはちょっとやそっとではカエルごと気に後れを取らないし、

アクアはまだ飲み込まれかけるまで時間がある。

今動き回ってる敵は二匹。

こっちには囮が一人。

 

「ひっ!ちょ、ちょっと待ってくださいまさか…。」

 

「すいませんセナさん。何とかさっさと一匹倒すんでお願いします。」

 

「ほ、本気じゃないですよね?

け、検事をそんな風に使うなんて国家反逆…」

 

「そうゆうのいいんで!」

 

そう言うと和真は問答無用で彼女の手を取って走り出す。

当然カエルはついてきた。そして和真は途中で手を離し別方向に走り出す。

 

「なんで私!私監視に来ただけなのに!

いやあああああ!来ないでぇええええええ!」

 

そして冒頭のシーンに戻る。

 

「すいません。私も少しずつ飲まれ始めたのでそろそろ救助を…」

 

「あーもー分かったちょとまて!

スキルポイントあんだけかかったんだから頼むぞ!

コンドルフィニッシュ!生!」

 

和真は弓矢をしまうと腰からブリンガーソードを引き抜き文字通り生身でコンドルフィニッシュを発動。

どうにかカエルを一体討伐する。

 

「よしジョーさんは…」

 

「一匹!……二匹っ!三匹ぃいいい!」

 

持ち前の技術と恐らくはこの世界で一、二位を競う切れ味のギガゾメタルの剣でもう半分以下に数を減らしている。

これならどうにかなる!

そう思って和真がまだ鬼ごっこの途中のセナよりめぐみんを助けに行こうとした時、

 

「『ライト・オブ・セイバー』っっっ!」

 

光の斬撃がめぐみんを食いかけていたカエルを切り裂いた。

誰か見かねた冒険者が助けてくれたのか!

そう思って和真は他のカエルに向かおうとするが

 

「『エナジー・イグニッション』!」

 

セナを追いかけていたのとジョーと戦っていたカエルが急に爆発、炎上する。

混乱しながらも和真はアクアを食べていたカエルの口をブリンガーソードでこじ開けアクアを引っ張り出しもう一発コンドルフィニッシュを浴びせて倒す。

 

「ふー。どうにかなったな。」

 

「う、うわぁあああ!カズマぁあああ!

もっと早く助けてよぉお!怖かったぁあああ!」

 

泣きじゃくるヌルヌルのアクアの背中をさすってやってると剣を収めながら戻って来たジョーと憔悴しきったセナが戻って来た。

 

「しかし…さっきの上級魔法、誰が?」

 

「え、ええ……こんな、駆け出しの街に…」

 

どうやらさっきの使い手はめぐみんの方に向かってるらしいので四人も移動する。

そこにいたのは背も高く、グラマラスなスタイルの高校生ぐらいの少女だった。

 

「さっきの魔法は君が?ありがとう。助かったよ。」

 

和真がそう言ってアクアに引っ付かれてヌルヌルになっていない方の手を差し出す。

すると彼女は面映ゆそうにうつむいて

 

「た、助けたわけじゃなうです。

ただ、ライバルがカエルなんかに倒されたら私の立場が…」

 

「という事はその目といい、紅魔族か。」

 

「めぐみん、あなた知り合いなの?」

 

アクアとジョーが尋ねるとめぐみんは少女の方を向き、数秒見つめていたが

 

「どちら様でしょうか?」

 

「「「「「え!?」」」」」

 

めぐみん以外の全員が驚いた声を上げた。

とうのめぐみんは演技なのか知らないが本気で不思議そうな顔をしている。

 

「わ。私よ私!ほら!紅魔の里の学園で一緒だった!

めぐみんが一番で私が二番で!

あれから修行してようやく上級魔法を使えるようになって!それで!」

 

あたふたしながら彼女がそう言ったところで和真が驚いてめぐみんの方に振り返る。

 

「ちょっと待って!?今お前が学園で一番だったとか聞き捨てならないセリフが聞こえたけど?」

 

「今更何を?

出会ったときに紅魔族随一の魔法の使い手と名乗ったはずですよ?

信じなかった和真が愚かなのです!

ですが長い付き合いの今ならわかるでしょう?」

 

「粘液だらけの格好で言われてもなぁ…」

 

「なにおう!」

 

喧嘩を始めそうになった二人に紅魔族の彼女が割って入る。

 

「ちょ、ちょっと本当に忘れちゃったの!?

ほら!良くテストで私が勝負を挑んだら

『勝負に対価はつきもの、弁当をかけるなら受けて立つ!』とか言って私の弁当を巻き上げてたじゃない!」

 

「お前そんなことしてたのか…」

 

「そういえば初めて会った時も空腹で倒れてたっけ?」

 

めぐみんはぷい、と目を逸らすと

 

「そんなことはどうでもいいんですよ。

それより本当に誰ですか?いい加減な乗ったらどうですか?」

 

めぐみんが意地悪そうな笑みを浮かべてそう言うと少女は恥ずかしそうに身もだえしたがやがて

 

「我が名はゆんゆん!

紅魔族が長の娘にしてやがてその座を継ぐもの!」

 

と、顔を真っ赤にしてポーズを決めた。




次ーーッ回!第十二話!

総一「ダクネスの奴、まだ戻らないのか?」

めぐみん「や、やはりもう既にアルダープの手籠めに…」

セナ「サトウカズマ!またお前の仕業だろ!」

ジョー(?)「兄ちゃんたち誰?」

ルカ(?)「ここは、一体?」

アクア「み、皆が…」

和真「子供になってる!?」

ダクネス父「頼む!娘を元に戻してくれ!」

襲来!暴魔怪人!

ダクネス(ロリ)「お兄さま!早く早く!」

和真「まてー!」




※先週はこちら側の手違いにより更新ができておりませんでした。
本日7時40分より第十二話を続けて投稿いたします。
今後はこのようなことのないように努めてまいります。
今後ともスーパー戦隊このすばメガフォースをよろしくお願いいたします。


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襲来!暴魔怪人!

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


ゆんゆんと名乗った少女を和真たちはとりあえず積もる話もあるだろうから。

と、カエルの肉を換金したのちにガレオンに招待した。

 

「お帰り。ありゃ?

見慣れない美人がいるけどそちらは?」

 

戻ると荷物運びの仕事を終えた総一が戻ってきていた。

どうやら他の二人はまだ戻っていないらしい。

 

「こいつは紅魔の里にいた頃からやたらと私に絡んでくる変わり者のゆんゆんです。」

 

「ちょ、ちょっとめぐみん!

初対面の人に変な紹介しないでよ!」

 

「はは。愉快な人だな。

そっちの馬鹿二人の様子を見るに助けられた感じか?」

 

あんまりな紹介に苦笑する総一。

しかし恐らくはいつもの光景なのだろう。

ゆんゆんはいじられて抗議こそしているが怒っている様子はない

総一は咳払いして注目を集めてから腰の剣を引き抜き

 

「自己紹介が遅れたな。我が名は七海総一!

宇宙海賊船ゴーカイガレオン船長にして、

いずれ魔王軍を滅ぼすレッドレンジャー!」

 

ピン!といつもの名乗りの時と同じ上着の襟を指で弾くポーズを取るとめぐみんは感心したように頷き

 

「ほら、里の外の人でも私を見習えばあんな風に堂々自己紹介できるんですよ?

少しは見習ったらどうですか?」

 

「え、ええぇ?そ、その、恥ずかしくないんですか?」

 

「そりゃあんまり大勢の前でやろうとは思わんけど仲間内だし、紅魔族相手だしね。」

 

本来なら彼女が普通の感性が普通なのだが、

紅魔族という集団においては彼女の方がマイノリティだ。

大変な苦労があったんだろう。と総一は心で彼女をいたわった。

 

「それよりダクネスの奴、まだ戻らないのか?」

 

ジョーが尋ねると総一は首を振った。

一同の顔が暗くなる。

唯一置いてけぼりのゆんゆんは首をかしげたが

 

「や、やはりもう既にアルダープの手籠めに…」

 

すぐ隣で青い顔で震えるめぐみんを見て明らかな異常を感知した。

 

「正直、不安しかないが…」

 

どうしようもない。

言いたくなかったが非情な事実を悔しそうにジョーが言いかけたところでけたたましい着信音が鳴った。

総一は自分のモバイレーツを開く。

 

「リアから?いったいなんだ?」

 

「まさか、魔王軍とかじゃない!?」

 

カエルの粘液まみれのアクアが言う。

 

「もしもしリア?どうした?なんかあったのか?」

 

『ああ!やっと出てくれた!早く来てください!

街の孤児院の前です!いま、結構大変な事態になってて!』

 

「よし来た!もうちょっと持ちこたえててくれよ!

めぐみん!いつでもガレオン出せるようにしとけ!

ジョー、和真、ゆんゆん!馬鹿女神!行くぞ!」

 

「ああ!」

 

「うっす!」

 

「え!?わ、私も!?」

 

「ちょっと!馬鹿女神って何よ!」

 

 

 

「サトウカズマ!またお前の仕業だろ!」

 

現場は騒然としていた。

戦闘の跡があったり力を使い果たしたリアが倒れていたりとかそうゆうのも勿論有ったのだが

 

「おいリア、大丈夫か?」

 

「そ、総一さん…なんとか。」

 

「これは、一体?」

 

ルカの妹、と言われたら通じるぐらいにルカそっくりの7歳ぐらいの女の子が彼らの前でおろおろしていた。

それ以外にもちらほらギルドや街で見たことある冒険者をそのまま小さくしたような連中が怖がった様子でこちらの様子を窺っている。

 

「み、皆が…」

 

「子供になってる!?」

 

「おい公僕、俺たちに昼間ずっと一緒にいたお前が一番こいつのせいじゃないってわかってるだろ。

何があったんだ?」

 

ジョーがそう聞くとセナは

 

「魔王軍行動隊長を名乗る怪人が現れたんです!

奴の攻撃を受けた冒険者や民間人が…」

 

「若返ったと?」

 

無茶苦茶なと思いつつもそれが魔王軍だったな。

と、思い直し三人は周囲を警戒する。

 

「どうしたんですか?まさか他にも…」

 

「ああ。奴らは毎度毎度ぞろぞろと雑兵ども引き連れてくるからな。」

 

「正解だ!」

 

いつの間にか包囲されていた。

ここ最近見ていなかった気がするゴーミン共に、首のない、頭を同に埋め込んだ土偶のような怪人が現れる。

 

「この事態はてめえの仕業か!」

 

「ああ!このドロロボーマ様の仕業だ!

お前たちの年齢も食い尽くして何もできない赤ん坊にして奴隷として売りさばいてやる!

やれ!」

 

「「「ゴー!」」」

 

武器を持って迫って来たゴーミンたち。

四人はそれぞれ武器を引き抜きリア、セナとゆんゆんに子供たちを任せると走り出す。

 

「そりゃあ!この!」

 

まず総一。

向かってくるゴーミンを躱して振り向きざまに峰打ちや鞘での殴打で倒していき、

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

<ゴーーッカイジャー!>

 

「ゴーカイレッドォ!」

 

続いてジョー。

自慢の剣技で武器ごとゴーミンを真っ二つにしていき、

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

<ゴーーッカイジャー!>

 

「ゴーカイブルー!」

 

そして和真。

スライディングからの足払いで転ばし、倒した敵を踏みつけながらジャンプ。

大上段から切りかかり、その時に出来た隙は真っ先に来た敵の武器をスティールで奪って対応。

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

<ゴーーッカイジャー!>

 

「ゴーカイグリーン!」

 

最後にアクア。真正面からゴーミンを殴り伏せ、

ボディーブローやラリアットワンツーパンチで殴り飛ばす!

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

<ゴーーッカイジャー!>

 

「ゴーカイピンク!」

 

「海賊戦隊!」

 

「「「「ゴーカイジャー!」」」」

 

「派手に行くぜ!」

 

「お望み通り派手に散らしてやる!」

 

武器を走りながら交換し、二刀流のレッド、ブルーが前に出て光線を防ぐ。

そしてその二人の肩を台に飛び上がったグリーン、ピンクが銃弾を浴びせる。

 

「うぐぅう!この程度!いけ!スゴーミン!」

 

ドロロボーマの掛け声とともに四体のスゴーミンが現れ、向かってくる。

 

「結局他人任せじゃない!」

 

「ここは速攻で片付けましょう!」

 

そう言ったグリーンが一本のキーを取り出し、モバイレーツにセット!

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

カーーッレンジャー!

 

レッドレーサーにチェンジしフェンダーソードを構え先陣を切る和真

 

「俺らも続くぞ!」

 

「「「ゴーカイチェンジ!」」」

 

<ハーーッリケンジャー!>

 

ゴーーッオンジャー!

 

デーーッカレンジャー!

 

「よし!」

 

「行くぞ!」

 

「瞬瞬必生!」

 

まずはデカレッドの射撃で怯ませ、

 

「超忍法!空駆!」

 

ハリケンレッドはゴーミンを空に連れ去ってからゼロ距離でドライガンを押し当て地面に叩き落とし、

 

「マンタンガン!ロードサーベル!」

 

ゴーオンレッドは二刀流で息吐く間もない連続攻撃を

 

「スゴー!」

 

「ほれ、やるよ。」

 

「スゴ?」

 

「なーんてな!」

 

レッドレーサーは何と殴り掛かってきたスゴーミンに武器を渡して混乱した所をオートブラスターで撃つ!

 

「お、お前らそれでも正義の味方か!?」

 

「悪党に言われたくねえよ!」

 

「それに俺ら海賊だしな!」

 

そう言ってハリケンレッドはどこからか縄を取り出し

 

「超忍法!自在縄!」

 

スゴーミンを纏めるように拘束し、そこで三人が前に出る。

 

「カンカンマンタンガン!」

 

「シフトアップ!オートパニッシャー!」

 

「ハイブリットマグナム!」

 

「「「シュート!」」」

 

「「「スゴー!」」」

 

必殺ビームの連撃を受けたスゴーミン達は爆裂四散した!

ゴーカイジャーの姿に戻り四人がドロロボーマを取り囲む。

 

「あとはお前だけだ!」

 

「そ、それは…どうかな!?」

 

ドロロボーマがそう言うといつの間にかいなくなっていた四体目のスゴーミンがブルーを捕まえる!

 

「しまった!」

 

「もらった!」

 

そう言うとドロロボーマは右手を掲げてブルーから何かを吸い取った!

 

「ジョー!」

 

「しっかり!?」

 

変身解除されてうずくまったジョーに駆け寄る三人。

その隙にドロロボーマとスゴーミンは逃げ出した。

 

「この隙にさいならー!」

 

「あ、しまった!」

 

三人は今度こそいなくなったと確信して変身を解除した。

 

「ん?おいジョー?お前なんかおかしくないか?」

 

ふと振り返ると総一はジョーに違和感を感じた。

なんだかさっきより小さくなっているような…

 

「ここは……兄ちゃんたち誰?」

 

「マジかよ。」

 

見た目どころか記憶や持ち物まで若返ってしまったジョーに一同はそろって頭を抱えた。

 

 

 

やあみんな。総一だ。

とりあえずその場は和真の機転でセナとゆんゆんに押し付…ゲフンゲフン!任せてぱっと見12歳ぐらいになってしまったジョーと7歳ぐらいになってしまったルカを連れて和真の屋敷に向かうことにした。

 

「なあ。俺をどこに連れてくんだよ?

いい加減話してよ。兄ちゃんたちなんで俺の名前知ってんの?」

 

「ジョー少年、ちょっと俺たちもどこまで現状を把握できてるか分かんねえんだ。

ゼッタイ後でちゃんと説明するから今はとにかくついてきてくれ。

事が全部終われば国元まで送るから。」

 

総一にそう言われるとジョー少年は黙ってついてきた。

魔王軍のせいだと説明は受けているので一応は信じてくれたようだ。

問題は…

 

「リアお姉さま、本当に、本当にお父様とお母さまには内緒にしてくださいね?

ルカとの約束ですよ?エリス様に誓って破らないでくださいまし。

お兄さまたちもお願いいたしますね?」

 

「大丈夫。絶対秘密にしてあげるから。」

 

ルカだ。

誰この滅茶苦茶いい子ちゃんのお嬢様。

何このかわいい生き物。

なんでこんないい子が十年であんなサバサバした金にがめつい盗賊になるの?

この世界残酷すぎない?

 

「あれ?」

 

「どうした和真?」

 

「いや、門の前に変な人が…」

 

言われてみると門の前に誰か立っているようだ。

若くはない金髪の男だ。

服装は派手ではないが一目で上等とわかる良い布を使っていて、

顔だちも整っていて髭もきれいに整えられている。

中肉中背で戦いに向いてるようには見えないが背筋はピンとしていてしゃきっとしている。

 

「!? 君たち!君たちがこの屋敷に住んでるという冒険者たちか!?」

 

「あ、はい。俺がそうですけど…」

 

「頼む!娘を元に戻してくれ!」

 

娘?と一同がそろって首を傾げていると、

深々と頭を下げた男の背中から

 

「皆様お初にお目にかかります。

ダスティネス・フォード・ララティーナと申します。

以後お見知りおきを。」

 

「「「…………」」」

 

歳は、9歳ぐらいか?

ものすごくお行儀よくきちんとしたご挨拶をしてくれたお嬢ちゃんの10年後ぐらいがひどいアへ顔で敵に突っ込んでいくの知ってる身としては目の前の光景が信じられないんだけど…

 

「とりあえず、中、どうぞ。」

 

絞り出すように言った和真に続いて俺らも屋敷に上がった。




次ーーッ回!第十三話!

和真「嘘だろ!おーい!どこ行ったー!?」

リア「囮どころかはぐれちゃったんです!」

総一「こっちもだ!」

ドロロボーマ「勾玉を返せー!」

ジョー少年「誰が返すか!」

ルカ(ロリ)「これがあれば、あいつをやっつけられるの?」

ダクネス(ロリ)「…協力してくれる?」

僕たち少年海賊団!

三人「「「俺(私)たちがやるしかない!」」」


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僕たち少年海賊団!

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


「嘘だろ!おーい!どこ行ったー!?」

 

何時もより子供の姿を多く見るアクセルの街で和真は息を切らして走っていた。

 

「あ、和真さーん!」

 

そんな彼に気づいたリアがかけてくる。

彼女も息が上がっていて、汗をかいている。

 

「ま、まさかリアお前も…」

 

「囮どころかはぐれちゃったんです!」

 

2人して頭を抱える。

予想以上に腕白だったダクネスはともかく予想以上に大人しかったルカまでいなくなるとは思わなかったのだ。

ため息を吐く二人。そこにモバイレーツの着信音が響く。

この流れ、非常に嫌な予感を感じながらリアは電話に出る。

 

「はいもしもし?」

 

『もしもし?その、、ジョーを見なかったか?

実はさっきはぐれちまって…』

 

「そっちもですか!?あ、あの実は私たちも…

スゴーミンがいきなり出てきたと思ったら…」

 

『こっちもだ!やつら、味な真似を…』

 

「とにかく探しましょう!

子供の脚だしそんなに遠くには!」

 

どうしてこうなってしまったのか?

話は昨晩までさかのぼる。

 

 

 

ダクネス親子をとりあえず今晩は屋敷に泊める事にした一同はとりあえず事情を聴くことにした。

 

「ようやく見合いが決まったというのに魔王軍め!

まさかララティーナを奴隷にするためにこのような奇怪な術を!」

 

「ダスティネス卿落ち着いてください。ほら、水でも飲んで。」

 

和真が出した水を一杯飲み終えるとダスティネス卿は一息ついて。

 

「町の者たちから聞いたよ。

君たち、魔王軍と戦っているそうだね?」

 

「まあ、そこらの奴らよりはよくやり合いますね。」

 

「なら頼む!この地を収めるダスティネス卿として君たちに正式にあの土人形の討伐を依頼したい!

報酬なら弾む!このとうりだ!」

 

「ちょ!頭上げてくださいよ領主ともあろう方が!」

 

「だからこそだ。私の何より大事な娘の未来がかかっているのだから。」

 

そう言って暖炉の前でアクアの手品にルカやジョーと共に目を輝かせているダクネスを見る彼の目は穏やかだ。

これが、父親という物なのだろう。

彼の様子を見て総一はほんの少しだが、

郷愁、なんだろうか?というような物を感じた。

和真は、それとはちょっと違う複雑そうな顔をしている。

2人は他のメンバーを交互に見回す。

リアもめぐみんも頷いた。

 

「分かりました。」

 

総一はダスティネス卿の前にひざまずき

 

「赤き海賊団団長七海総一、謹んで信頼にお答えいたします。

必ず奴の屍を晒してごらんに入れましょう。」

 

「おお!そうか!では頼むぞ。

実はララティーナに見合いの話があってな。

なるべく早めに倒してくれると助かる。

彼の人格に問題はないのだが、流石に9歳の娘を出すわけにも…」

 

確かに。影武者にしたってもっとマシなのはなかったのか?

って話になれば家名に傷がつくだけでも大問題なのに下手すればもっとでかい問題になる。

 

「ちなみにお見合いの日程は?」

 

「一週間後だ。」

 

ふむ、と顎に手を当てる和真。

時間はそんなに残されていない。

 

「奴らは明確に子供にした奴らを奴隷にすると言っていた。

なら狙いは…」

 

うとうとし始めたダクネスとリアをアクアとジョー少年が手を引いて寝室の方に連れて行くのを見る。

 

「おい和真。まさかと思うけど…」

 

「そのまさかだよ。ダスティネス卿、

しばらく娘さんをお借りしても構いませんか?」

 

 

 

「お兄さま!早く早く!」

 

「まってくれ!ちょ!まてー!待てこのお転婆娘!」

 

今日一日君のお父さんから頼まれて街で遊ぶ君を護衛することになった。

そう言った名目でララティーナらを連れ出した和真。

真の目的はドロロボーマをおびき出す囮にするためである。

 

「早くしないと日が暮れちゃいますわ!

こんな機会、まだまだ先だと思っていたんですもの!」

 

何も伝えてないとは言え裏も表もなく『おでかけうれしいな』とこうも体全身で言われてしまっては流石の和真も罪悪感を覚える。

 

「ちょ、ちょっと!ほんとに待ってぶ!」

 

石にでも躓いたのか和真が顔面から地面に突っ込んだ。

ララティーナも驚いて立ち止まる。

 

「お兄さま?大丈夫ですか?」

 

「あ、ああ。大丈夫。」

 

「……申し訳ありません。わたくしが急いだばかりに。」

 

「いいよ。うれしかったんだろ?」

 

「はい…ここはお父様が、そしてお母様が愛した街なんです。

だから、こうしてまたこの街のいいところを知れるのが楽しいんです。」

 

「そっか……。」

 

それを聞いて和真は少し考えた。

思えば赤き海賊団でこの街にしっかりとした所縁があるのはダクネスだけだ。

総一と自分は日本。めぐみんは紅魔族の里、

アクアは言っても誰も信じないだろうが天界。

ジョーにルカは魔王軍に滅ぼされた亡国の民で、

リアに至っては一切素性不明だ。

 

(いつもはあいつが敵陣ど真ん中に突っ込んでいくのはただ性癖だろうと思ったけど、やっぱりこうゆう所もあるんだろうな。)

 

ベルディア戦の後あれだけ自分を追い詰めたのもそれ故なのだろう。

和真はララティーナの頭をなでた。

 

「きゃ!お兄さま?

レディの髪を急に触るなんてはしたないですよ?」

 

「ごめんごめん。つい、な。

ララティーナはいい子だな…。

大事な物をちゃんと大事って言えるとこ、変わんないでくれよ?」

 

「は、はい!」

 

なんては何していると一台の馬車がまあまあのスピードでこっちに走ってくる。

どうゆう訳か真っ直ぐ走っておらず、斜めに、より正確に言えば和真たちの方に…

 

「な!?ゴーカイチェンジ!」

 

「え!?きゃああ!?」

 

<ゴーーッカイジャー!>

 

ゴーカイグリーンに変身した和真はすぐさまララティーナを抱きかかえ飛び上がって馬車の突進を避ける。

着地すると荷台から農民や冒険者に化けていたゴーミンが出て来た。

 

「あ、あう……」

 

「ララティーナちゃん!急いで屋敷まで逃げて!」

 

「お、お兄さま?」

 

「俺が食い止める!早く!」

 

普段の和真なら何とかトンズラこく算段考えてさっさと実行しただろうが、生憎今はあらぬ疑いをかけられている身。

少しでも自分がやったことと勘違いされる不安分子を消すことを優先してしまった。

 

「は、はい!エリス様の加護があらんことを!」

 

そう言ってララティーナが走って行ったのを見送ってグリーンは戦闘を開始した。

何時もよりは断然少ない数のゴーミンにサーベルとガン、それに初級魔法と狙撃スキルや窃盗スキル。

 

「ほらいっちょ!『バインド』ッ!からの!『ドレイン』!」

 

バインドで操ったサーベルに内蔵されてるワイヤーとリッチーであるウィズに頼んで教えてもらった魔力吸収のスキルも併用し十分にゴーミンを弱らせる。

 

「こいつでトドメだ!」

 

<ゴーーッオンジャー!>

 

「ゴーングリーン!アックスツーリング!」

 

橋梁の意匠の斧、ブリッジアックスの豪快な回転斬りで蹴散らす。

 

「さて、と。さっさと合流するか。

おーい!ララティーナちゃん!」

 

 

 

「どうしよう…お屋敷って、どっちだっけ?」

 

何故ものの見事にはぐれたしまったか。

それはもちろん魔王軍のせいでもあるだろうが、

ララティーナがこの街の道などろくに知らないのも遠因であろう。

 

「えっと、まず大きな通りに…」

 

そう思って焦って飛び出すと、

同じように飛び出してきた誰かとぶつかりそうになるん。

なんとかお互いに泊まれたので胸をなでおろす。

そして一言謝ろうと顔を上げると

 

「ララティーナ!」

 

「ルカ!もしかしてあなたも道が分からなくなっちゃったの?」

 

「そうなの…。」

 

そう言って不安そうにうつむく二つ年下の彼女の手をララティーナは迷わず取った。

驚いて顔を上げた彼女の頭をさっき和真にやってもらったように撫でる。

 

「な、なに?」

 

「大丈夫!いっしょにさがそ?」

 

そう言われたルカは一瞬驚いたが、すぐに嬉しそうに頷きララティーナの手を握り返した。

そして二人で街を歩きだす。

しかし

 

「ねえ。」

 

「なに?」

 

「段々人の居ない方に行ってない?」

 

「……うん。」

 

より深く迷ってしまった。

ただでさえ多くの冒険者が子供にされてしまい治安が悪化している今のアクセルでこういったところに来るのはあまり宜しくない。

 

「どうしよう…」

 

とにかくここではない場所に行こうという事でまた歩いてみる。

またどんどん一通りの無い場所にに行ってしまった。

 

「ラ、ララティーナ。ここ、絶対来たことないよ…」

 

「ごめん。本当にごめんなさい。」

 

2人そろって泣きそうになりながら歩いていると、ようやく見たことなある背中を見つけた。

長い髪を後ろで束ねた青いシャツの少年だ。

 

「ジョー!」

 

「おーい!ジョーさーん!」

 

2人を見たジョーは一瞬驚いた顔をしたがすぐに唇に人差し指を当てる。

2人は頭の上に?マークを浮かべながら首を傾げる。

ジョーは黙って自分が覗いていた路地を指さした。

そこでは

 

「よせ!やめてくれ!せめて妻と息子だけは!」

 

「うるさい黙れ!三人まとめてだよ!」

 

ドロロボーマが親子から年齢を奪い、赤ん坊にしているところだった。

 

「ふっふっふ!馬鹿な海賊どもが!

態々赤ん坊にして拉致るんなら一回中途半端に子供にするなんて面倒なことするするわけないだろ!

戦力の半分をどうしても守らないといけない存在に変えてやって守りの薄くなった庶民を赤ん坊にして、最後に生産性も防御力も失った丸裸のこの街を責め落とす!

ふっふっふ!相変わらず完璧な計画だ!」

 

「野郎……ッ!」

 

思わず拳を震わせ腰に差した木剣に手をかける。

しかしドロロボーマが路地に出てくるのを見てすぐにそこにあったゴミ箱に隠れた。

ザッ、ザッ、とゴーミンが行進する足音と赤ん坊の泣き声が遠ざかるとジョーはふたを開けて、ララティーナとルカはゴミ箱の陰から出て来た。

 

「……行ったな。」

 

「どうしよう…早く伝えないと!」

 

「どうやって?多分さっきあいつが言っていたように足止めさで敵を向かわされてるはずだからそれほっておくのも問題だぞ?」

 

「じゃあどうしたら…」

 

「やる。」

 

そう言ったのはララティーナだった。

2人の目をまっすぐ見据えて彼女は

 

「私たちで、あいつをやっつける!」

 

「出来るのか?相手は上級剣士でも勝てない相手だぞ?」

 

「でもこの街をほおっておけない!

……協力してくれる?」」

 

どこか不安げに言った彼女にルカは

 

「分かった!」

 

ララティーナの手を今度は自分から取った。

それを見てジョーも

 

「ここで動かねば剣士の名折れ、だな。」

 

と、木剣を抜いた。

 

「それじゃあみんな用意はいい?」

 

「うん!」

 

「ああ!」

 

三人は時折隠れながらゴーミン軍の後を追った。

 

 

 

「おーい!和真!リア!」

 

ジョー少年やララティーナ達を探しながらどうにか総一は二人と合流することに成功した。

 

「総一さん!ルカちゃんたちは…」

 

「見なかった。お前らは?」

 

「いいえ。もう人通りのある所は粗方調べつくしましたよ?」

 

「となると調べてないのは城壁よりのあんま日の当たらない方か。」

 

最近あんまり治安の宜しくない方に行ったのならかなりまずい。

俺たちはあまりいい事ではないが一刻も早く見つけてやるためにジュウレンジャーのバイク、ロードザウラーを召喚。

空いてる道を選んで一気に壁のほうまで行く。

 

「ん?和真さん!ちょっととめて!」

 

サイドカーに乗っていたリアが不意に運転する和真の脇を引っ張った。

 

「うひぃ!変なとこ触んな!」

 

「どうした!?」

 

2人の様子がおかしい事に気づいた総一はブレーキをかける。

続いて二人のロードザウラーも停車した。

 

「なんか、叫び声が聞こえた気がして…」

 

「叫び声?」

 

そう言われて二人も耳を澄ましてみる。

しばらくは風の音しか聞こえなかったが、次第に声のような物が聞こえてくる。

 

「ーーえせー!ーーをかーーーー!」

 

「聞こえた!」

 

「ほんとか?俺は聞こえなかったけど…」

 

「よく聴いてください!あっちの方です!」

 

そう言われて総一はレッドホークにチェンジして屋根に上ると千里眼スキルを発動させる。

 

「あれぇ!?」

 

壁際の横道、そのはるか向こうにジープに乗ったドロロボーマと

 

「勾玉を返せー!」

 

「誰が返すか!」

 

上部にバルカン砲の付いた一人乗り自動車、ターボアタッカーに無理やり二人乗りしたララティーナにルカと、青いターボブルーのバイク、マッハターボに乗るジョーの姿を捉えた。

 

 

「あ、あいつらどこであんなもんを!

和真!リア!ついて来い!」

 

総一たちは屋根の上をジャンプしながら三人の方に向かう。

見るとマシンの操縦なんかに全く不慣れな様子の参院はみるみる距離を縮められていく。

 

「いまだ!やれ!」

 

ドロロボーマの号令でゴーミンが携行砲を三人い向ける。

発射された真っ直ぐに二台のマシンに

 

「ホーンブレイカー!」

 

「サイカッター!」

 

向かったがそれを阻むようにビームとブーメランが攻撃を相殺する。

総一とリアがチェンジしたカブトライジャーとグリーンサイだ。

 

「や、やった!」

 

「ちょ!ララティーナ運転して!?」

 

「え?きゃあああああ!」

 

思わずよそ見をしてしまったララティーナがハンドルを誤り思い切り壁に激突する。

ジョーは何とか止まれたが二人は投げ出され

 

「間に合ええええ!」

 

ブラックコンドルにチェンジした和真に間一髪キャッチされた。

 

「たく、わき見運転にシートベルトまでしてないとは。

免許没収もんだぞ?」

 

「お兄さま!来てくれた!」

 

ララティーナは固い仮面越しにも拘らず和真の顔を抱き上げた。

 

「おい色男!さっさとこっち済ませるぞ!」

 

「と!そうだった。ジョー君、頼んだ。」

 

2人を預けて先に戦っている二人の加勢に向かうブラックコンドル。

しかし不意に目の前に飛んで来た光に邪魔された。

 

「うわ!なんだこれ!?」

 

『あなたも、この子供たちと同じレンジャーの力を受け継ぐものなのね!』

 

「……この声、この光から?」

 

『ええ。私はシーロン。ターボレンジャーの大いなる力よ。』

 

「ええ!?じゃあ、このマシンは…」

 

『今の私の力じゃ、これが精いっぱい。

お願い!ドロロボーマの中から洋平の、ブルーターボのキーを取り戻して!』

 

「よし分かった!」

 

任せろ!と頼もしく胸を叩いて今度こそ走り出す。

和真をララティーナの熱い視線が見送った。」

 

「? ララティーナ?もしかしてお熱あるの?」

 

「え、ええ!?そ、そんなことは…」

 

『ふふ、ララティーナのおませちゃん。』

 

「し、シーロンまで!」

 

「とにかく下がろう。お前のナイト様の戦いの邪魔になる。」

 

ララティーナは一瞬だけ三人の武運をエリス神に祈り、その場を後にした。

 

 

 

「イカヅチマル!十字の型!」

 

「ライブラスター!」

 

カブトライジャーの広範囲技で大方の敵を。

撃ち漏らしのグリーンサイの銃撃が敵飼うに埋めていく。

 

「ええい!しつこい!

あの餓鬼どもに奪われた勾玉を取り戻さねばならんのに!」

 

「勾玉だと?」

 

「あれが壊されるとせっかく子供にした街の冒険者どもが元に戻ってしまうのだ!」

 

「ほう?いい事聞いたな!だったら頑張ったちび共の分も!」

 

「ええ!派手に行きましょう!」

 

ジェーーットマン!

 

ハーーッリケンジャー!

 

マーーッジレンジャー!

 

「ブルースワロー!」

 

「ハリケンイエロー!」

 

「マジレッド!」

 

「こしゃくな!スゴーミン!」

 

三人の行く手を阻む三体のスゴーミンが現れる。

 

「超忍法!分身の術!」

 

リアが変身したハリケンイエローがそれぞれクエイクハンマー、ハヤテマル、徒手でゴーミンに立ち向かう。

それを飛行能力を有する二人は軽々飛び越え

 

「ウイングガントレッド!」

 

「マジパンチ!」

 

強烈な急降下パンチを食らわす。

慌ててドロロボーマは怪光線を放つが二人は軽々避けると

 

「バードブラスター!」

 

「ジル・マジーロ!」

 

地面の土をノリに変質させ、動かなくしたところでバードブラスターの追撃が入る。

 

「決めるぞ和真!」

 

「はい!マジ・マジ・マジカ!

レッドファイヤーフェニックス!」

 

「クロスチョップ!」

 

火の鳥となったマジレッドの突進に大ダメージを受けたドロロボーマは続くブルースワローの必殺チョップに首を叩きおられ大爆発した。

 

「やったぁ!見て見て!勝った!勝ったよ!」

 

「うん!やった!やった!」

 

「これが、戦士…俺もいつか……」

 

「あ、レンジャーキー!洋平!」

 

シーロンが爆風にあおられて飛んできたブルーターボキーに入る。

それは急に宙に浮くと丁度スゴーミンを倒し終えたリアの手にすっぽりと収まった。

 

「おお!」

 

「これで後は、勾玉を壊せば一件落着か。」

 

少し名残惜しい気もしたが和真はララティーナから受け取った勾玉を天に投げてブリンガーソードで切り裂いた。

三人の体が光り、元の年齢、服装に戻った。

 

「あ、あれぇ!?」

 

「ここは、街の壁沿いか?どうしてこんなとこに?」

 

「?……?」

 

三者三葉突然の事態に混乱しているようだが、

それはつまり子供にされる瞬間、記憶の接合点から問題なく再スタートしているようで和真たちは安心した。

 

「まあ、いいか!それよりみんな聞いてくれ!」

 

「え?ダクネス!?」

 

「お前、いつの間に帰ってたんだ?」

 

「いつでもいいだろ!それより助けてくれ!

このままでは私はお見合いに行かなければいけなくなってしまう!」

 

「お見合い?」

 

「ひどい慌てようだな。初恋の相手でも待たせているのか?」

 

なんてジョーが茶化して言うとダクネスは急にはっ!として顔を赤くして

 

「ま、待たせてなどない!

想いはちゃんと伝えてないし…あれは、私が9歳の時の…って!

そんな話じゃない!とにかく手伝って…ん?どうしたカズマ?

まるでジャイアントトードの交尾の現場を目撃したような顔をして。」

 

「いや、なんでも…」

 

目を逸らす和真に横に居たリアはポン、と肩を叩く。

 

「和真さん。」

 

「なに?」

 

「ロリコン。」

 

「え!?ちょっと!」

 

慌ててリアを追おうとする和真に今度は反対側の横に居た総一が肩を叩く。

 

「和真…」

 

「な、なんですか?」

 

「逆玉の輿おめでとう。」

 

「ちょ!ちょっと総一さんまで!ちょっとおおお!」

 

「三人共何があったんだろ?」

 

「さあ?」

 

全く案の説明もなくひたすら困惑する三人はひたすら騒ぎ倒す三人を追って屋敷に戻った。




次ーーッ回!第十四話!

アルターブ「なんとしてもみ合いを成功させねば。」

???「ではいい方法があるぞ?」

総一「レンジャーが暴れただぁ!?」

セナ「今度という今度は言い逃れなんてきゃあ!」

ルカ「ちょっと!私たちじゃないじゃない!」

めぐみん「全然違うじゃないですか!」

ネジレッド「邪電戦隊!」

五人「「「「「ネジレンジャー!」」」」」

狂気!悪の戦隊!

総一「その名をかたったことを後悔させてやる!」


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狂気!悪の戦隊!

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


「なんとしておみ合いを成功させねば。」

 

あのどこの馬の骨とも分からない冒険者を利用してダクネスと息子とのお見合いにまでこぎつけたアルターブはご機嫌だった。

これが上手くいけばあの時手に入らなかったものが手に入る。

 

「だが、あの者ども、レンジャーなる力で魔王軍を何度も撃退していると聞く。

もしまた何かおかしなからめ手を使われればお見合いが無かったことにされる可能性も…」

 

「ではいい方法があるぞ?」

 

「誰だ!?」

 

人払いの結界まで這った室内に響く自分以外の誰かの声に彼は恐怖した。

 

「何を驚く?悪魔と会うのがこれが初めてではないだろうに。」

 

「お前は…」

 

現れたのは黒い獅子だった。

金色のタテガミを持つ人型の獅子の怪人、リオ。

かつてウィズが変身したメレと同じ臨獣拳の戦士だ。

 

「吾輩は悪魔。そうとしか言いようがない。

未だに死んだ人妻に横恋慕して昨晩も握っていたものよ。

お前に力を貸そう。」

 

「……対価は何だ?」

 

「お前の悪感情!もう報酬過多なほど貰っている!」

 

そう言ってリオは四本のメガレンジャーのレンジャーキーと、タイムレッドのレンジャーキーを取り出す。

そしてラッパ型のアイテム、以前魔王バスコが総一たちの前で使ったラッパラッターのコピー、ダミーラッパラッターに五本のキーをセットし、吹く。

 

怪しく暗い重低音と共にレンジャーキーが変化した薄紫の光球が五人の悪のレンジャーに代わって出て来た。

 

「こ、こいつらは…」

 

「こいつらを暴れさせれば奴らは出撃せざるを得ない。

お前の心配する邪魔者も来ないだろう?」

 

そう聞いてアルターブは異様に白い歯をニィイ!とゆがめるように見せながら笑った。

 

 

 

「レンジャーが暴れただぁ!?」

 

「あくまで噂程度なんですけど…。

注意といて損はないと思います。」

 

やあ皆!総一だ。

ドロロボーマの子供化事件の2日後。

ダクネスのお見合いを阻止するべく、和真とアクアは今日限りの執事、メイドとしてダクネスについていくことになった。

まあ、アクアに首輪つけられるのも土壇場で奇策を思いつけるのもこいつだけだし、名目上和真はダクネスの監視下になきゃいけないのでこれ以上に適任はない。

 

「カズマ、留守は任せますから、どうかダクネスを頼みます。

絶対に、うまくやってくださいね?」

 

「お前はダクネスの母ちゃんかよ、って言いたいとこだが任された。

やっぱいてくれないと困るし、あの悪徳領主にゃもったいねえしな。」

 

「めぐみんも心配性ね。このアクア様にかかれば縁談の一つや二つ…」

 

「カズマ。本当に頼みました。」

 

「ちょ!ちょっとめぐみん?」

 

「頼まれた。」

 

「ちょっとぉ!もう少し私を信頼してくれても良くない!?」

 

なんていつものやりとりを終えた和真たちは出発していった。

現在丁度五人、俺、ジョー、ルカ、リア、めぐみんが残る形になる。

 

「さ、俺らもガレオンに…戻る前に飯にしよう。

うん。今から作っても遅くなるし、例の偽レンジャーの情報もあるかもだし。」

 

俺たち5人は取り敢えずギルドによって朝飯を食べてから掲示板に向かった。

やはりデストロイヤー戦の後、その戦いの後を一眼見ようと集まる観光客や、そいつら相手に商売しようとやって来た奴ら関連のトラブルにまつわる依頼が目立つ。

 

「無難なのは馬車の護衛とかだな。」

 

「……これなにかしら?

工場襲撃事件の捜査手伝い?」

 

そう言ってルカが依頼の紙を一枚取る。

危険度を示すマークは、まあ、普通ぐらいで、依頼主は案の定、セナ、あのメガネの女検事だ。

 

「どうしましょう?様子見がてら行ってみます?」

 

他の仕事はイマイチぱっとしなかったし、カエルは当然めぐみんが嫌がったので引き受ける事にした。

工場と聞くとデカイ機械がウィーンガシャン!してるイメージをするかと思うが、この世界で工場とはまだ機織り機がズラーって並んでガタンゴトン踏みながらやってる感じだ。

 

「あなた達でしたか…」

 

「よう公僕。来てやったぜ。」

 

「……まあ、腕は立ちますし、この前ドロロボーマなる魔王軍を倒していますし…サトウカズマは兎も角、あなた達は信用する事にします。」

 

そう言ってセナに促されて乗せられ馬車に揺られること1時間。

俺たちは襲撃のあった工場にたどり着いた。

 

「ぱっと見荒れてる感じじゃないけど…。」

 

「やられたのは中だろうな。」

 

「セナさん、ここは普段何をしていた工場なんですか?」

 

「簡単に言えばダスティネス卿から借りてる土地に建てた物で、布の工場です。」

 

セナに続いて中に入ると確かにかなりの荒れ用だった。

織り機はあらかた壊され、乾いた血の跡もチラホラ。

 

「犯人の面見た奴はいないわけ?」

 

「奇妙な兜をかぶって、奇妙なスーツを着ていて分からなかったそうです。」

 

と、セナは5人を睨んだ。

確かに変な(ヘルメット)をかぶって奇妙なスーツを着てはいるが、何でもかんでも疑われては敵わない。

 

「まあ、いっか。ルカ、めぐみん。

外の見張り行こう。ジョー、リア。公僕の護衛まかした。」

 

「安心しろ。証拠を偽造しようものなら即叩き斬る。」

 

「ちょっとジョーさん本人の前で!」

 

3人が奥に入って行くのを見送り俺たちは外に出る。

にしても奇妙な兜にスーツ、か。

 

「さっきの話、お前らはどうおもう?」

 

「その兜やスーツが紅魔族の琴線に触れるかは見てみないと…。」

 

「いやそこじゃねぇよ。

なんか変身能力持った怪人かもって話!」

 

「まあそうなんじゃない?

そうじゃなきゃアンタがゴーカイオーで暴れたのを恨んでる連中の差し金とか?」

 

「あー、あれもあったか。

そう言えば未だにあのあたり通るとビビられるし。」

 

なんて言いながら雲だか空だかを見上げてみる。

相変わらず地球より青く澄んでいてなんだか捻れて…捻れて?

 

「見ろ!なんか空が変だぞ!」

 

俺の声にすかさずルカとめぐみんは臨戦態勢になる。

俺も剣を抜いた。

捻れの中から飛び出た何か…いや、奴らは二手に分かれて半分は中へ、もう半分は俺たちの前に現れる。

 

「レンジャー…なのか?」

 

黒にそれぞれのイメージカーラーのレンジャー。

俺たちに合わせてなのかレッド、イエロー、ピンクの三人だ。

だがなんだろう。うまく言えないが…

 

「なんだかよくわかりませんが中々紅魔族のに触れるデザインですね。」

 

そう、なんかちょっと悪なデザインだ。

 

「またあのチビ魔王の仕業かしら?

何でもいいけどぶっ飛ばして…」

 

そう言ったところで背後の建物から爆音が聞こえた。

セナを抱えたジョーとリアが飛び出てくる。

その後を追って、ブルーとグリーンも出て来た。

 

「やはりサトウカズマの仕業!

今度という今度は言い逃れなんてきゃあ!」

 

ジョーがセナを乱暴に下ろしてモバイレーツとキーを構える。

 

「ちょっと!全然私たちに似てないじゃないじゃない!」

 

同じようにモバイレーツとキーを構えるルカ。

 

「全然違うじゃないですか!

主にかっこよさの系統が!」

 

「いやそこかよ。」

 

総一が突っ込みながらキーをモバイレーツにセットし捻る。

他の四人も同時におこない

 

「「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」」

 

<<<<<ゴーーッカイジャー!>>>>>

 

「海賊戦隊!」

 

「「「「「ゴーカイジャー!」」」」」

 

セナを中心に守るように並んで名乗ると、悪人面のレンジャーたちも名乗り始める。

 

「ネジレッド!」

 

「ネジブルー!」

 

「ネジイエロー!」

 

「ネジグリーン!」

 

「ネジピンク!」

 

「邪電戦隊!」

 

「「「「「ネジレンジャー!」」」」」

 

「貴様らを倒し、我らこそが船体を名乗るにふさわしいと証明する!」

 

「その名をかたったことを後悔させてやる!」

 

ネジレンジャーはそれぞれ得意の武器を持って襲い掛かった。




次ーーッ回!第十五話!

ネジレッド「死ね!レッドレンジャー!」

総一「お前らなんなんだ!?」

バニル「吾輩の部下であーる!」

セナ「まさか…ダンジョンの異変も!」

和真「お前ってやつはぁああ!」

アクア「なんで私!?」

仮面の通す大悪魔

バニル「かかって来いゴーカイジャー!」


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仮面の通す大悪魔

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


「死ね!レッドレンジャー!」

 

五人はそれぞれ自分と同じ色の敵と対峙した。

レッド二人は最初は無手で戦っていたが、

ネジレッドが懐に飛び込みながら愛刀ネジセイバーを引き抜く。

 

「うお!お前らなんなんだ!?」

 

「我らの存在を証明するために邪魔な貴様らを倒す!

ただそれだけの事よ!」

 

「そうかよ!ゴーカイチェンジ!」

 

<オーーッレンジャー!>

 

「スターライザー!」

 

2本の赤い剣が火花を散らす。

同じころブルーは

 

「ネジトマホーク!はぁあ!」

 

青い斧型武器とスピードを生かして連続攻撃を仕掛けるネジブルー!

 

「速さならこれだ!」

 

<ターーッボレンジャー!>

 

手に入れたばかりのブルーターボに変身し、専用武器のJガンでネジブルーを狙う。

 

「ほう!剣士と聞いていたが中々見事な銃裁き。」

 

「武器が変わった程度で折れるようでは我が流派の名折れ。

どんな時でも俺は戦える!」

 

イエローの方も銃撃戦へともつれこんでいた。

パチンコ型のネジスリングで休みなく光弾を浴びせるネジイエロー。

 

「だったらこっちは一撃のパワー!

ゴーカイチェンジ!」

 

<ラーーッイブマン!>

 

「ライオンバツーカ!はぁ!」

 

強力な一撃に足場を壊され転ぶネジイエロー。

そこにイエローライオンは銃剣の様にライオンバツーカを使って近接戦を仕掛ける。

グリーン二人は互いの武器を搔い潜りながらカウンターの応酬を続ける。

 

「ネジロッド!はぁあ!」

 

「色どころか槍までかぶりますか…だったらこれです!」

 

<ゴーーッゴーファイブ!>

 

「エクステンド!ブイランサー!」

 

ブイブーメランを取り外し牽制で投げつけ、一気に飛び込み連撃につなげる。

 

「この!卑怯な!」

 

「そのセリフ!和真さんと戦うまで取っといた方がいいですよ?」

 

そして最後にピンク二人は遠距離武器での近距離戦。

 

「くらえネジアロー!」

 

「誰が食らいますか!ゴーカイチェンジ!」

 

<ゴーーッセイジャー!>

 

「スカイックショット!」

 

2人の武器での打撃とゼロ距離銃撃の応酬が続く。

 

「秘剣・超力ライザー!」

 

「Jガン乱れ撃ち!」

 

「ライオンバツーカ!ファイヤー!」

 

「ブイスラッシュ!」

 

「ピンクダイナミック!」

 

やがてそれぞれ相手に隙を作ると必殺技を放つ。

五人のネジレンジャーはそれぞれ吹っ飛ばされるが、五人集まり

 

「クソ!やはり強い!」

 

「おのれレンジャー!」

 

「焦るなネジイエロー、ネジグリーン。

勝負の機会はまだある。」

 

「はっ!余裕こいてくれるじゃねえか!

逃がすわけねえだろ!」

 

五人が走り出すとネジレンジャーは両手にパワーを溜めるポーズを取り

 

「「「「「邪電エネルギーアタック!はぁああ!」」」」」

 

「ッ!ゴーカイチェンジ!」

 

<アーーッバレンジャー!>

 

スピード重視の戦士故、一歩先に出ていたジョーがさらにアバレブルーにチェンジし、トリケラバンカーでどうにか受けたが逃走は許してしまった。

 

「しまった!」

 

「ジョー!アンタ大丈夫!?」

 

「ああ。向こうも目くらまし以上のつもりはなかったようだな。ん?」

 

膝をついていたジョーは足元に落ちていた紙を拾い上げる。

 

「これは…果たし状か。」

 

ジョーは紙をセナ含めた五人に見せるた。

 

『街はずれのダンジョンにて。

我らが主人と共にいつでも待っているぞ。』

 

そう書かれている。

 

「街はずれのですって!?

まさか…ダンジョンの異変も!?」

 

「何か知っているのか?」

 

「はい!もしここに書かれているダンジョンが報告のあったダンジョンだとしたら…大変なことが起きています!」

 

 

 

「お前ってやつはぁああ!」

 

「なんで私!?」

 

話を聞く限りどうにかお見合いを断れたらしい三人に事情を説明すると和真はアクアの胸倉を思いきり掴み上げてがくがくとゆすった。

 

「な、なんでよ!今回私ホントに何もしてない!」

 

「本当だろうな!?本当に住み着いた魔王軍の正なんだろうな!?

セナが言ってた奇妙なモンスターの大量発生は本当にお前のせいじゃないんだな!?

街はずれのダンジョンってこの前ゴセイジャーのキーをあのリッチーからもらったとこだよな!?

本当に何もしてない!?何か残したりしてない!?」

 

「残したと言えばもうアンデッドが湧かないように魔法陣を…」

 

「このボケナスぅううう!

もしその魔法陣がお前が仕掛けたのだってわかったらただでさえ印象最悪のうちのパーティーは犯人扱いじゃねえか!」

 

少しでもお前をあの時見直した俺がバカだった!

そう吐き捨てると和真は武器を整え出ていこうとする。

 

「ちょ、ちょっと!そんな言い方ないじゃない!」

 

アクアもその後を追う。

俺はそんな二人を見送った後残るメンバーを見渡した。

 

「どうする?俺たちも行く?」

 

「無論だ。ネジレンジャーには借りがある!」

 

「ダンジョン探索に盗賊は必須よ。」

 

ジョーとルカは二人を追って出ていった。

 

「私も行きたいところですが実はこの後ゆんゆんと約束があるので。

本当はドタキャンしてもいいのですが拗ねると面倒なので。

ダンジョンですし爆裂魔法の出番もないでしょうし。」

 

「よし分かった。リア!

いつでもガレオン動かせるようにしといてくれ。」

 

「了解です!ネジレンジャーにたっぷりお灸をすえてやってくださいね!」

 

俺たちは急ぎギルドに向かって捜査に協力する旨をセナに伝えた。

 

「あなた達をまだ疑ってはいますが、強力には素直に感謝します。」

 

「普通言うかそれ?」

 

「職業柄ってやつじゃない?

そんなんじゃ男は寄り付かないわよ?」

 

そう言ってルカがからかうとセナは意外と気にしてたのか少ししょぼくれた。

 

「んんっ!それではダンジョンまで案内します。

ある程度近付いてくると例のモンスターも見かけるようになるので注意してくださいね?」

 

そういうセナについていくと、確かに変わったモンスターとしか言いようのない変な、仮面をつけた人形みたいなのがダンジョンから湧き出てきていた。

 

「今からでもめぐみん呼んで爆裂魔法で入口ふさぐとかじゃダメなの?」

 

「お!ルカさんナイス!それでいいじゃないですか。」

 

「ダメですよ!明らかにこれは自然発生してるものじゃないんですから何か原因が悪意ある第三者なら討伐しないと!」

 

「それにネジレンジャーが潜伏してるなら転移魔法とかで逃げられるかもだしな。」

 

「いい作戦だと思ったんだけどなー。」

 

「確かにネジレンジャーはいますが、

一番濃厚なのが魔法陣でどこから召喚している可能性です。

ネジレンジャーも変な空間から出てきていましたし、

このお札で魔法陣を封印してください。」

 

そう言って俺たちは三枚のお札を渡された。

俺と和真が一枚ずつ。

そもそもディスペルとか覚えてるアクアには渡さずルカたちには『解』のモヂカラでの無効化を想定してシンケンジャーのキーを渡した。

 

「おいアクア行くぞ…ってなに石投げてんだろ寄ってくるだろ。」

 

「何って生理的に受け付けないのよ!

具体的にはあのチビ魔王に洗脳されてデストロイヤーに融合してバカやったあのリッチーぐらいに受け付けないわ!…ってあら?」

 

石を投げつけられた仮面モンスターは真っ直ぐアクアのもとに寄ってくるとその膝にくっついた。

 

「何かしら。甘えてるのかしら?

なんだか見てると無条件にムカムカしてくる仮面だけど、

こうして甘えられると段々かわいく見えて…。

ね、ねえカズマ。

なんだかこの人形ジリジリ熱くなってきたんですけど?

ていうか、ヤな予感がするんですけど!」

 

俺たちは和真に倣ってアホ女神から距離を取って耳をふさいだ。

しばらくすると熱風と耳をふさいでも聞こえるほどの爆発音が響いた。

 

「……このモンスターは見ての通り動くものに引っ付いて自爆する習性をもってて、冒険者ギルドでも対処に困っているんですよ。」

 

「なるほど確かにこれは厄介だな。」

 

「ああ。捨て石はそう何人もいないしな。」

 

「ちょっと!なんで皆そんなに冷静なの!?

いたわってよ!もっと私を心配してよ!?」

 

「別に?お前のことだし年貢の納め時が来たんだなーぐらいにしか思わん。」

 

「うわぁああああん!ダクネスー!」

 

「よ、よしよし…ソウイチ!

いくらアクアが相手でも言って良い事と悪い事があるぞ!」

 

「ダクネス、今お前が一番ひどいこと言わなかったか?」

 

「しっかしあの爆発、アクアの装備じゃなきゃ死んでた感じだろ?

流石に爆裂魔法には遠く及ばないが人一人吹き飛ばすぐらいは余裕そうだしなぁ…。」

 

「そうなんです。

ちょっとでもダメージを受ければ自爆。

遠隔でちまちま倒すしかなくて…。」

 

なんて話しているとダクネスが背中の剣を抜いて近付いてきていた仮面人形に剣を振り下ろした。

当然、白熱したかと思うと轟音を立てて爆発する!

 

「お、おいダクネス!?」

 

「お前何やってんだ!?」

 

思わず声を上げた俺たちだったが、

煙の向こうからピンピンしたダクネスが現れる。

 

「……うむ。これならいける。問題ない。」

 

これには若干、セナふくめ周りの連中全員引いている。

だが、泣きわめきもぐずりもしない優秀な肉壁はこの作戦で一番必要なものだ。

 

「私が露払いに前に出よう。

カズマ、ソウイチ。後をついてきてくれるか?

カズマだけだとどうも、な。」

 

「あー。確かに。」

 

「ちょっと総一さん!?

てかなんで俺なんだよ?別にジョーさんでも…」

 

「俺は剣士だ。

ダクネスほど頑丈じゃないし、夜目もお前らほど利かん。」

 

「ルカさん…」

 

「潜伏スキルもち二人いるならバラバラの方がいいでしょ?

それにソーイチいるならカズマもダクネスにセクハラしたりしないでしょそ?」

 

「そうでなくてもしませんよ!アクア!お前はどうす…」

 

「いやよアンタと一緒にダンジョンなんて!

また私を置き去りにする気でしょ!

モンスターやアンデッドに追い掛けられるのはもうごめんなのぉ!

支援魔法ならかけてあげるからやめて本当にお願いだからぁあああああああああああ!」

 

「………ちっ!仕方ねえ。ジョー、ルカ。

そこの馬鹿女神と不本意だろうが陰湿なモテねえ女のお守りは任せた。」

 

「も!モテないのは関係内でしょ!」

 

何やらギャーギャー言ってるセナを背後に和真、ダクネスと共に俺たちはダンジョンに潜った。

俺や和真含めた数人がランタン片手に後ろに控えて、前方に武器だけを持ったダクネスや盾持ち壁になってもらう布陣で進む。

 

「なあ。俺はダンジョンにちゃんと潜るの実はまだ二回目なんだけど、静かすぎないか?」

 

俺がそう尋ねると横に居た冒険者が

 

「いやうるせえだろ。

主にお前らが連れて来たあいつが…」

 

「フフフフ!ハハハハハハハハハハッ!

見ろ二人とも!当たる!当たるぞ!

こいつは私の剣でもちゃんと当たる!」

 

攻撃を一切避けない敵を相手にダクネスは嬉々として剣を振り回していた。

反撃の自爆を喰らうが、防御に極振りしたステータスの彼女には煤汚れにしかなっていない。

 

「どうにかなんねえの?」

 

「あんな喜ぶなら『大剣』スキルでも取ったらいいのに」

 

「まあ、そっとしといてやってくれよ。

多分アイツの人生に一回あるかないかだし。」

 

なんて言っているとダクネスはどんどん奥に進んでいく。

 

「おいダクネス!ちょっと早すぎないか!?

おーいちょっとー!?」

 

俺は声をかけるがあいつは目の前の敵を斬るのに夢中なのと爆発音で聞こえていないらしい。

 

「うわぁあああ!引っ付かれた!誰か剥がしてくれぇ!」

 

「おいバカこっちくんな!」

 

後ろの惨劇にも気づいていないようだ。

まあ、鎧もしっかり来てるし死ぬことないだろうけど。

 

「よしダクネス!その調子で真っ直ぐガンガン進め!」

 

「え?」

 

「よし任せろ!ああ、何だろうこの高揚感は!

今私は久しぶりにまともなクルセイダーやってる気がする!」

 

「ええ!?ちょっと待てよ2人とも!」

 

俺は心で他にいた奴らに謝りながら二人追って走った。

 

 

 

曰く、主は自らをかたどり土をこねてアダムとイヴを作ったらしい。

それと関係があるかどうかは不明だが、ダンジョンの奥よりやや手前。

胡坐をかいて自分をかたどり人形を作る仮面の男がいた。

 

「どうしたもんかな。あれ絶対今回の主犯だよ。」

 

「ああ。あれこそ我らを召喚した主。

魔王軍幹部の見通す悪魔、地獄の公爵、バニル様だ。」

 

「ああ。解説ありが…てめえネジレンジャー!?」

 

思わず総一は剣を抜いて飛び上がる。

いつの間にか真後ろにネジピンクとネジグリーンがいたのだ。

そして飛び上がった三人を囲むように他の三人も現れる。

 

「ふふ。うれしいぞ。

自分から飛び込んできてくれるとはな。」

 

「ブルーとピンクがいないな。まあいい。

お前たちは八人。

ここでお前らを潰しておけば次ぎ合うときは確実に5対5だ。」

 

そう言って武器を構えるネジレンジャーたち。

 

「ほう?これはこれはよく来たなゴーカイジャー!

ようこそ吾輩のダンジョンへ!」

 

そう言って立ち上がった悪魔、バニルは作っていた人形を土に返すと、ウィズが使っていたのと同じダークモバイレーツ、そしてキーを構える。

 

「臨気外装!」

 

<ゲーーッキレンジャー!>

 

バニルは黒獅子リオに変身した。

 

「かかって来いゴーカイジャー!」




次ーーッ回!第十六話!

ネジレッド「今こそ決着だ!」

バニル「まだまだ!お代わりであーる!」

ダクネス「モモレンジャーにデカブルー!?」

和真「黒騎士にオーグリーンまで!」

このムカつく仮面に鉄拳を!

総一「おいおい!ゴーカイすぎるだろ!」


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このムカつく仮面に鉄拳を!

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


「今こそ決着だ!」

 

ダブりのいない色であるレッドが勇んで愛刀片手に斬りかかってくる。

ダクネスにもイエローとピンクが。

和真にグリーンとブルーがそれぞれ得意の獲物を片手ににじり寄ってくる。

 

「待て!」

 

黒獅子、ネジレンジャーを制した。

 

「何故です!?目の前に仇敵がいるのに!」

 

「ついでだ。魔王に頼まれた調査もある。

一応本人の口からきいておこう。

ベルディアやウィズを倒し、元人間とあの身長の分際で偉そうにしているチビ魔王に一杯食わせた赤き海賊団とかいうのはお前らだな?」

 

「それがどうした?」

 

「何、情報が正しかったのなら偽物でも暴れさせて評判を落し、街から排除させたところで『残念!じつはやってたのは魔王軍でした!』と、やる仕事も済ませて実は恩知らずにも英雄を追い出してた事実に絶望と責任転換で沈む衆愚共の悪感情をたらふく食らう一石二鳥の計画を早めるべきだったな、と思っただけだ。」

 

「発想が悪魔過ぎねこいつ?

俺らだけで勝てるか微妙だけどこの場でとっちめた方が絶対いいよな?」

 

「え?総一さんマジですか!?

相手、ネジレンジャーもいるんですよ?」

 

「何を言うカズマ。我らは冒険者で、海賊だろう?

それに私は敬虔なるエリス教徒。

悪魔、それも魔王軍幹部を前に引き下がれるはずもない!

刺し違えてでも倒す!」

 

「全く物騒だな。

この前そこの小賢しい男と風呂で鉢合わせた時割れてる腹筋が見られてないか気にしてる子娘。」

 

「ふ、腹っき…私の腹筋はそんなに割れてない!

2人とも悪魔の甘言なんかに耳を貸すな!

そんな生易しい顔をするな!全部嘘!嘘っぱちだ!」

 

慌ててこちらを向いて何やら言い訳じみた説得をする彼女をスルーし、バニルに尋ねる。

 

「なんでその計画を実行しなかったんだ?

今からでもその計画結構効果的だと思うけど…」

 

「それはだな、そこの小男と馬鹿女神と罵ってはいるはいるが最近はそこまで怒りを感じなくもなっている相手に昔描いたラブレターを見られて死にたくなった男よ。」

 

「その前情報要るか!?」

 

「それより早くそこの仲間のクルセイダーや黒髪の歌い手の湯上り姿を嘗め回すような目で見ていた男が捕まったので普通に暴れさせただけの事。」

 

今度は総一とダクネスが和真に視線を向ける番だった。

ただし、ダクネスに二人が向けたのとはだいぶ違う。

 

「そんな目で見てない!

2人とも本当だよ!そんな生ごみを見る目をするなよ!」

 

「カズマ…お前と言う男は…」

 

「ララティーナちゃんの次のはリア?

お前年下相手に節操なしか。真正のロリコンじゃねえか。」

 

「いやそんなことねえから!」

 

「はっはっは!蔑視の悪感情大変美味である!」

 

そう言って高笑いするバニルを睨み和真は元々お前のせいだろ!と叫び、そして続いて糾弾する。

 

「けどそれってダンジョンに潜む理由にはならねえだろ!

あのへんな人形に人襲わせる理由にも!

仕事終わったならさっさと帰れよ!」

 

「人を、襲う?

という事はもうダンジョン内のモンスターは駆逐したのか。

ならもうバニル君人形の製造は中止して計画を第二段階に移行させるか。」

 

「第二段階?」

 

「あんた、一体何企んでるんな?」

 

「教えてほしいか?

そこの鎧娘が数日帰ってこなかっただけで心配して船内を隈の様にうろうろしていた男よ。

吾輩には悪魔として大きな夢があるのだ。

偶々必要な空きダンジョンがここにあった。それだけの話よ。」

 

「本当に何でもかんでも見てきたように言うんじゃねえ!

お前もモジモジするなダクネス!

総一さんもその含みを持った笑顔辞めてくださいよ!

そいつの大好きな悪感情造ってますよ!」

 

咳払いをして和真は話題をすり替えるべくバニルに尋ねた。

 

「で?自分のダンジョンなんかもって何がしたいんだよ?」

 

「もう限りなく永遠を生きた吾輩にはな……。

昔から、とびっきりの破滅願望があるのだ。

それは思考の悪感情を食した後、華々しく散りたいというもの。」

 

そこまで聞いて総一はモバイレーツとキーを構えた。

ネジレンジャーも武器を構え直す。

 

「まあ聞け。

しかし一口に悪感情と言ってもどうせ最期に食すなら吾輩好みの味がいい。

ではどうしたらいいかと、悠久ともいえるときの中考え続け、

遂に吾輩は答えにたどり着いた!」

 

二ヤリ、と笑うバニルに聴きに徹して来た和真も変身アイテムを構える。

 

「まずダンジョンを手に入れ、

ネジレンジャーをはじめとする吾輩自慢の配下を配置!

それに挑むは貴様らのような力を持った冒険者たち!

きっと吾輩が魔王軍幹部と大々的に知らせればいつか必ず最奥にたどり着くものが現れるだろう!」

 

そう言ってバニルは大きく手を振るって三人に熱弁し出した。

黒獅子の姿のままだと違和感を感じる。

 

「そしてダンジョンの最奥で待ち受けるはもちろん吾輩!

そこで言うのだ。

『よくぞここまでたどり着いたな冒険者よ!

吾輩を倒し、莫大な富をその手にせよ!』と!

そして戦いは苛烈を極め、ついに土をつけられる吾輩!

そして冒険者は厳重に封印された宝箱の前にたどり着く。

意識が薄れゆく吾輩が最期に見るのは!」

 

「見るのは?」

 

「……『スカ』と書かれた紙だけが入ってるのを見て泣き崩れる冒険者!

勿論髪はしっかり防腐性だ!」

 

「「「ゴーカイチェンジ!」」」

 

<<<ゴーーッカイジャー!>>>

 

<<<ファ~~ッイナルウェイ~ブ!>>>

 

チェンジした三人はエネルギーの銃撃に斬撃を重ねた一撃をバニルめがけて叩き込んだ。

流石にこの一本道の通路ではダクネスも外しようがなくバニルにもろに当てる。

 

「くたばれカスが。」

 

「死に方選べるなんて思うな!」

 

「ぶっ殺してやる!」

 

こいつは邪悪だ。

ひとかけらも生かしておく理由がない。

 

「いくぞ!」

 

「おう!」

 

イエローにはイエローとピンクが。

グリーンにはブルーとグリーンが。

レッドにはレッドと黒獅子が相対する。

 

「和真!サーベル!」

 

「はい!」

 

レッドとグリーンは武器を交換しそれぞれ二刀流と二丁流スタイルを取る。

レッドは徒手空拳とネジセイバーをそれぞれの剣で、

グリーンはネジトマホークとネジロッドを牽制射撃と裏拳や肘中心の打撃で対抗。

イエローは自慢の防御で遠距離攻撃を強引に突破し近接に持ち込む。

 

「はぁああ!おら!どうしたどうした?

不意打ちとは言え名に喰らってんだ!幹部だろ!」

 

「ふっ!当然!剛勇吼波!」

 

バニルはゼロ距離でレッドにリンライオンを模した黒いエネルギーを叩きこむ。

吹っ飛ばされたレッドは奥の部屋まで吹っ飛ばされ、ドアを壊しながら転がる。

 

「痛~~~!あ?この魔法陣…和真が言ってたやつか。」

 

立ち上がって札を張って解除するとレッドはすぐさま外に、出ようとしたが足を止めた。

何故かバニルにネジレッドが斬りかかっているのだ。

 

「なんのつもりだ!?」

 

「俺が倒すべき宿敵はレッドレンジャーただ一人!

ブルーやグリーンの様に二人いないからとかそんな理由ではない!

あまねくレッドレンジャーは、俺の敵だ!」

 

「全く…嫉妬の悪感情を入れ過ぎたか。

ならば死んでもらう!」

 

そう言うとバニルは太刀取りでネジセイバーを奪い、

連撃を加えると剣を放り投げ再び徒手になり、

 

「烈蹴拳!はぁ!はぁ!はぁああああ!」

 

顔面に一撃。足払いで一撃。

そして仰向けに倒れた腹を踏み潰すように一撃!

合計三撃の強烈なキックがネジレッドを倒してしまった。

 

「嘘だろあんな簡単に…」

 

「元々お前らは吾輩が作った意志のある傀儡。

対策ぐらいしてないと思ったか?不意打ちでも勝てると思ったか!?」

 

「き、貴様ァアアアアア!」

 

「はっはっは!憤怒の悪感情大変美味である!

まだまだ役立ってもらうぞ?全臨伝授!」

 

バニルはネジレッドの首を掴んでそのエネルギー、いや、レンジャーキーのパワーで体が作られている彼からすれば直接肉体を吸い取られ、消滅させられた。

そしてパワーを吸い取ったバニルは背後で戦う残り六人にも目を向ける。

 

「和真!ダクネス!伏せろ!」

 

レッドが叫び終えるより早くバニルは六人の間を駆け抜け、その背後に移動していた。

 

「ウ、ウギギギ…」

 

「ま、待ってやめ…」

 

そしてすれ違いざまに捕まえたネジグリーンとネジピンクも吸い上げる。

 

「ふぅう…ふっふっふ!素晴らしいぞこの絶命への恐怖の感情…。

もう吾輩では自分で味わえない感情!ああ…ああ良い!良すぎる!」

 

幻気外装!そう叫ぶとバニルはさらに金色の外装を纏い、パワーアップする。

 

「おいおいまじかよ…」

 

「マジであーる!マジレンジャーではないがな。

吾輩は幻獣王理央!」

 

「幻獣王って…」

 

「どうする?」

 

「分が悪すぎる!引くぞ!」

 

そう言って残るネジブルーとネジイエローは去って行った。

 

「あ。おい!」

 

「ふむ。数が減って少々さみしいな。

では四幻将とは少々大向きが異なるが…」

 

そう言ってリオはダミーラッパラッターに四本のキーをセットし、吹く。

 

「まだまだ!お代わりであーる!」

 

金色のエネルギーが実体化し、四体のレンジャーが現れる。

 

「モモレンジャーにデカブルー!?」

 

「黒騎士にオーグリーンまで!」

 

「最近やけに魔王の奴羽振りがよくてな。

さあ!行け!」

 

モモレンジャーのモモビーズが投げつけられ、爆発。

視界がふさがれた瞬間に黒騎士の炎のたてがみで押し出される。

 

「おいおい!ゴーカイすぎるだろ!」

 

なんとか立ちあがり、武器を構える。

だが、じりじりと距離を詰めるレンジャーたちを前に強い不安を感じる三人だった。




次ーーッ回!第十七話!

バニル「さあかかってこい!万が一ということもあるぞ!」

アクア「この匂い…ダクネスまさか!」

バニル「さあ、仲間の体を攻撃できるかな!?」

和真「スーパービーストオン!」

ルカ「あれって…大いなる力!?」

ギリギリ!奪還作戦!

和真「過激にゴーカイ!いっちょ行くぜ!」


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ギリギリ!奪還作戦!

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


「暇ねー。ルカー!あなたもどう?」

 

「遠慮しとく…ていうかアクア!それにジョーも和み過ぎよ!

何ピクニックシート敷いてお茶飲んでるわけ!?」

 

大分バニル人形が減り出してるとはいえ、

二人はあんまりにものんびりし過ぎに見えた。

 

「いいじゃない!私たちが行っても回復ぐらいしか役に立たないし!」

 

「俺も打撲と切傷ぐらいしか手当てできんしな。

2人とも、クッキー焼いて来たんだが食うか?」

 

「あら気が利くわね!もぐもぐ…それになかなかおいしいじゃない!」

 

「なんて緊張感のない…いつもこんなんなんですか?」

 

セナが信じられないものを見る目二人を見ながらルカに尋ねた。

ルカは苦笑いしながらまあ、時々、と返した。

 

「セナ!ホラあなたも!」

 

そう言ってアクアは箱から一枚クッキーを取り出して勧めた。

セナは戸惑いがちにではあったが、そのサクッと焼けたクッキーに手を伸ばす。

 

「「「うわぁああああ!」」」

 

そのクッキーは悲鳴と爆風、

そして変身した三人と共に飛んできた破片に当たって砕け散った!

 

「あれは…ソーイチ!ダクネス!カズマ!」

 

ルカは三人の下に駆け寄った。

倒れた三人い続いて、四体のレンジャーと幻獣王理央が出てくる。

理央は一度変身を解除すると

 

「おやおや!随分と集まっているではないか!

まずは自己紹介と行こうかな?我が名はバニル!

地獄の公爵にして魔王軍幹部の大悪魔!

さあかかってこい!万が一ということもあるぞ!」

 

そう言い切ると集まっていた全員が

 

「『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』!」

 

訂正、一人だけいきなり不意打ちで浄化魔法をぶっ放す馬鹿がいた。

五人の敵は煙の奥に消える。

 

「アクアお前何してんの!?」

 

「何って、神の理に反するゴミ以下を掃除しただけよ!

褒めて褒め殺して甘やかしてもらえる言われは有っても責められるいわれはないと思うけど!?」

 

そう言って最後にドヤ!と胸を張るアクア。

しかしそれをあざ笑いながら煙の中から再び幻獣王は現れた。

 

「流石は悪名高い嫌われ者のアクシズ教の女神と同じ名前のプリースト。

骨の髄まで無礼と無粋でできてるようだな…やれ!」

 

四人のレンジャーはそれぞれ武器を構えて前に立つ。

 

「いいぜ…第二ラウンド行くぞ!」

 

もう既に変身している三人とジョーにルカはモバイレーツと新しいキーを構える。

 

「「「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」」」

 

<ゴーーッゴーファイブ!>

 

<シーーッンケンジャー!>

 

<デーーッカレンジャー!>

 

<ゲーーッキレンジャー!>

 

<ジェッーートマン!>

 

「ゴーピンク!」

 

「シンケンブルー!」

 

「デカイエロー!」

 

「ラブウォーリアーメレ!」

 

「ブラックコンドル!」

 

総一が変身したゴーピンクはモモレンジャーと。

ジョーが変身したシンケンブルーはデカブルーと。

ルカが変身したメレはオーグリーンと。

和真が変身したブラックコンドルは黒騎士と。

ダクネスが変身したデカイエローは幻獣王理央と対峙する。

 

「ファイブレイザー!」

 

ゴーピンクは次々投げられる爆弾を撃ち落とし、時に耐火性の高いスーツでゴリ押しモモレンジャーと距離を詰める。

それを嫌がるモモレンジャーは爆弾を巻きながら距離を取る。

 

「つれないねえ…もっといい相手いるとか!?」

 

「こんな時にも軽口か…全くアイツらしい!」

 

シンケンブルーはバックルから取り出した『双』の秘伝ディスクを使い、

シンケンマルを二刀に増やしてデカブルーに切りかかる。

デカブルーはディーロッドで対抗する。

 

「棒術相手は初めてだな…面白い!」

 

「男子ってすぐ熱くなるのよね。

ホント、なんでかしら!」

 

メレは2本の(サイ)でオーグリーンの2本の斧、

スクエアクラッシャーに対抗する。

 

「よ!は!これはどうかしら?」

 

メレは透明化し、四方からオーグリーンを攻撃する。

 

「みんな余裕だな!?こいつぅうう!」

 

ブラックコンドルは黒騎士相手に苦しい戦いを強いられていた。

パワーで圧倒的にまさる黒騎士に何とかブリンガーソードで対抗するがすぐに押し切られ斬撃を喰らう。

 

「やあ!はああ!このおおお!」

 

「ふっはっはっは!どうしたその程度か?」

 

軽く、非常に軽く…まるでダンスでも踊るようにデカイエローのディーナックルをよけながら嘲笑う幻獣王。

 

「このぉおおお!馬鹿にしおってぇええ!」

 

「馬鹿にしているとも!こうすればいいだけなのだからな!」

 

そう言うと幻獣王はダクネスの腕を掴み、

捻り上げてディーナックルを落させると、変身を解除して自分の仮面をダクネスに付けさせた。

するとバニルの体は元の土になって崩れ落ち、仮面を付けさせられたダクネスは身震いを始める。

 

「この匂い…ダクネスまさか!」

 

「フハハハハハハハ!フハハハハハハハハハハハハ!

聞くが良い!この子娘の体は私がもらった!

さあ、仲間の体を攻撃できるかな!?」

 

 

 

「うぎゃああああ!」

 

黒騎士の『黒の一撃』にふっとばされたブラックコンドル。

しかし空中でバードブラスターとビークスマッシャーを引き抜く。

 

「うおおおおお!」

 

銃弾をもろに受け、怯んだ黒騎士に飛行しながら接近し、ギリギリで再び武器をブリンガーソードに切り替える!

 

「コンドルフィニッシュ!」

 

左わき腹から一閃。

肩まで真っ二つに斬られた黒騎士はレンジャーキーに戻った。

 

「か、勝てた…さて、向こうは…ええぇ?」

 

ヘルメット脱いで汗をぬぐいながらダクネスが戦っていた方を見ると、

そこにはなぜかバニルの仮面をつけたダクネスが他の冒険者たちと戦っていた。

 

「な、なんだぁ!?あいつは何をしてるんだ!?」

 

「サ、サトウカズマ!やっと手が空きましたね!」

 

そう言ってなぜかモバイレーツとダークモバイレーツを持ったセナがやって来た。

 

「これは一体…」

 

「あの大悪魔がダスティネス卿に憑依したんです!

なんとかこの神器は投げ捨ててくれたんですけど…」

 

「く、くそう!ダクネスがこんなに強いなんて!」

 

「ハハハハハ!なんて具合のいい体だ!

筋力も耐久力も申し分ない!

それに聖騎士(クルセイダー)ゆえか忌まわしい光魔法にも耐性がある!

返信を妨害されたのは驚きだが十分だな!

レンジャーキーさえあれば魔力切れも体力切れもない!」

 

そう言ってダクネスに憑いたバニルは高らかに笑って向かってきた剣士を裏拳一発で吹っ飛ばし気絶させる。

 

「お、おおおおお!すごい!すごいぞ!

これが、夢想ならぬ無双と言う奴か!」

 

そしてさっき癇に障る男の声がしてたのと同じ口から本来のダクネスの声がする。

どうやら無双ゲーの快感を知ってしまったようだ。

 

「あの通りまだ決定打こそ使っていませんが、

心が力の快楽に乗っ取られかけています!

このままでは全滅です!」

 

「アクアの奴はどうしたんですか?」

 

「それなんですけど…」

 

セナが反対側を指さすとそこには

 

「オイふざけんな糞女神!

またゾロゾロトアンデッドを引き連れてきやがってお前ぇええええ!」

 

デカブルー、モモレンジャー、オーグリーンを先頭に迫りくるリンシーの群れに追い掛けられる三人だった。

 

「私のせいじゃないもん!

あのダクネスにとりついた仮面悪魔が呼んだだけだもん!

私は絶対悪くないでしょこのピンク!」

 

「ピンクで悪いか!今どき男だってプリキュアやれるんだよ!

男がピンクで何が悪い!」

 

「お前らこんな時ぐらいいい加減にしろ!」

 

そう言ってシンケンブルーが剣のエンドグリップで二人の頭を叩く。

三人はそのまま口論しながら走り続ける。

 

「あちゃー。ありゃしばらく無理ね。」

 

「そうっすねルカさん…ってルカさんいつの間に?」

 

「気配遮断で逃げて来た。流石にあの数はね?」

 

そう言ってるかは変身解除する。

一人、また一人と死んではいないようだが戦闘不能されていく冒険者たち。

 

「お願いです!彼女をどうにかしてください!

このままでは被害が…」

 

確かに下手に全滅されて奴の思惑通りここにダンジョンを造られても大迷惑だ。

奴に死を与える、というのやや癪だが、やるしかない。

やらなければ、ダクネスは帰ってこない。

ダークモバイレーツがないとは言え、強敵には変わりないのだ。

 

「ルカさん、まだいけます?」

 

「ええ。ちょっと余裕なぐらいよ!」

 

2人はレンジャーキーとモバイレーツを再びに構え、キーをセット。

 

「「ゴーカイチェンジ!」」

 

<<ゴーーッカイジャー!>>

 

変居sんした二人はダクネスに斬りかかる。

ダクネスは元々持っていた大剣と、

足元に落ちていた他の冒険者のグラディウスを拾い上げて対抗する。

 

「ふふふ!果たして倒せるかな?

下弦の利かない変身した姿でまともに戦えるかな!?」

 

痛い所を突いてくる。

2人は繰り出される連撃に防御に徹するしかない。

 

「それでも戦い様はあるんだよ!『バインド』!」

 

和真は取り出したアンカーに魔法をかけて一瞬ダクネスを縛り上げる。

それは本当に一瞬のスキしか与えられなかったが、その隙に和真は仮面にセナからもらった封印の札を張ることに成功した。

 

「これは?」

 

「セナからもらった封印の札だ!

お前じゃ剥がせないし、ダクネスの体から逃げられない!」

 

「ほう!考えたな?

しかし無理に動かし続けさせられる方はどうなるかな?」

 

そう言って口をゆがめるバニル。

実際その通りなのだ。

バニルがちょっと無理に扱うだけでダクネスは壊れてしまう。

 

「もらった!」

 

「ッ!?しまーー」

 

バニルはまず剣を投げつけ櫃ませたイエローにボディーブローを当てて吹っ飛ばすと、次いで和真にネックブリーカードロップを仕掛け、叩きつけた。

 

「ふむ。やはり戦闘面に関してはスキル頼りの素人だな。

さて、そろそろ…。」

 

そう言ってバニルが見た方からアクアが一人で三人のレンジャーに追われて来てしまった。

 

「嘘だろ…」

 

「さーて。吾輩、人間は殺さん主義だが、

だからってが!殺されはしないだろうと思われるのも…悪魔の沽券にかかわるのでね。」

 

「え、えっと…ちょっと待って嘘よね?

ダクネス?聞こえてるでしょ?私、信じてるわよ?

悪魔なんかに負けないわよね?ねえ!返事してよ!」

 

「まずい!」

 

なんとか立ち上がる和真だが、この局面で打開策はそうない。

 

(ど、どうする?下手に攻撃したらダクネスが…

でもダクネスなら今はレンジャーキーも強化も有るし、

まあまあ耐えられないか?だがそれはいいとして流石に2対4では…)

 

正直あまり使いたい手ではないが、

もう、和真には一つしか思いつかなかった。

 

「おいダクネス!

今お前は悪魔に憑かれるとかいう聖騎士としての沽券にかかわる状態なわけだ!

これ以上の侮辱はそうない!

けど、それ以上の辱め、俺ならできるって言ったら!?」

 

ダクネスの体が、ビクン!とはねた。

 

「お見合いの時、約束したよな?

戻ったらお前に『もっとすんごいことしてやる』って!」

 

それを初めて聞いたルカは和真にまさにゴミを見る目を向けていた。

セナも完全にドン引きしているし、アクアもそれ今言う事!?と、状況がつかめず喚き散らしている。

 

「さあどうするダクネス!?そのままクルセイダーなら多分100人に一人ぐらいはあるんだろう程度の苦痛で満足するか!?

それとも俺からダスティネス・フォード・ララティーナ史上最低の辱めを受けるか!?

さあ選べ!お前は、どうする!?」

 

「わ、私は、、私はぁあああああ!」

 

恐らくこの先味わえない無双の心地よさとか、

気になり過ぎる『すんごいこと』とか、ぐるぐる頭をかけ巡る。

 

「今だぜ!ゴーカイチェンジ!」

 

<ゲーーッキレンジャー!>

 

和真はゲキレッドに変身。

更にパワーアップアイテムであるスーパーゲキクローを装備!

 

「スーパービーストオン!」

 

「あれって…大いなる力!?」

 

スーツの黒と赤が反転し、黒だった部分が白くなり、

ブースターが追加。マスクにも白いラインが入り

 

「過激気のアンブレイカブルボディ!スーパーゲキレッド!」

 

見事ポーズを決め見栄を切った。

 

「まずは前哨戦だ…今からこのスーパーゲキクローと激気技の数々でお間の体をボコボコになぶりつくし、弱ったところをアクアの浄化魔法で引きはがす!

そりゃあもうとんでもない痛さだろうさ!」

 

「ま、まずいこの娘…すっかりその気じゃあないか!

よ、よせ!いいのか?この先あんな風に無双出来るなんてないんだぞ!」

 

しかしダクネスは震えたまま動かない。

和真は仮面の下で二ヤリ、と笑う

 

「過激にゴーカイ!いっちょ行くぜ!」

 

そしてそのままダクネスに渾身の飛び蹴りを食らわした。

そしてゲキクローで仮面を引っ掻き傷を与え、動揺した所ブースターを余すことなく使った多段攻撃を仕掛ける!

その間三体のレンジャーたちは動かない!

 

「ば、馬鹿な!この子娘がアイツらに手出しさせないようにしてるとでもいうのか!

何という鋼の精神!今までこんなにも支配できなかった者はいない!

しかもそれだけの理由を引き出す貴様は、いったい何者だ!?」

 

「ただの冒険者だよ!こいつでトドメだ!」

 

「来てくれカズマ!それはもう!すっごいのを頼む!」

 

ついにはバニルから発言権まで奪い返したダクネスがヨロヨロと立ち上がりながら両手を大きく広げる。

 

「いくぜぇええ!スーパータイガー撃ぃいい!」

 

ゲキタイガー型になった過激気がダクネスに突進し、最後に大爆発を引き起こす。

瞬間、アクアの背後をふさいでいたレンジャーたちもキーに戻る。

 

「ナイスよ和真!あとは私に任せなさい!」

 

三本のキーを拾い上げ、アクアは再び詠唱を唱えだす。

 

「『セイクリッド・ターンアンデッド』!」

 

聖なる光が柱の様に吹き出す。

それが収まった後には、

これ以上ない高校つとした表情と大怪我のまま気絶したダクネスと、彼女についていたバニルが取り込んでいたレンジャーキーだけが残っていた。

 

「そ、そんな馬鹿な…」

 

「ま、カズマだからな。」

 

「そーそー。あいつにルール無用で戦いを挑む奴はああなる。」

 

よかったな。アンタは検事で。

セナは何とかリンシーを巻いて戻って来た総一にそう言われて肩を叩かれる。

生きた心地がしなかった。




次ーーッ回!第十八話!

ダクネス「すっかりグータラになって…」

ルカ「ま、カズマだしね。」

ジョー「コタツも有るしなぁ…。」

ダクネス「いい加減にしろ!」

めぐみん「どうにかしないと不味いですよ?」

アクア「だったら!温泉なんてどう!?」

この温泉街に呪いと惨劇を!

総一「だ、だまされたぁ…」


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この温泉街に呪いと惨劇を!

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
そのn「『エクスプロージョン』ッ!」
ぶべらぁあああ!

(爆音、黒こげの作者が倒れる音)

和真「いやなに平然とナレーションしてんすかアンタ。」

総一「お前、散々待たせといて謝罪の一つもなしか。」

リア「て言うかこれって毎話毎話あなたがやってたんですね。」

い、いやだって…学期末でレポートとか沢山あったし…

めぐみん「全く。これからまた週一投稿でお願いしますよ?
あと、なんの予告もなしに間隔開けるのも。」

はい…。

総一「と、そんなわけでどうにか再開したスーパー戦隊このすばメガフォースをどうぞよろしく!」

和真「それでは本編どうぞ!」


1

「ん…ここは、ガレオンの部屋か?」

 

窓から差し込む暖かな朝日に顔を照らされダクネスは目を覚ました。

確か昨日、バニルに取りつかれたまま攻撃されて…

 

「カズマ?」

 

見るとベッドに突っ伏して和真が寝息を立てていた。

脇には水の入った桶とタオルが置いてあり、カズマの指はふやけて血がにじんでいる。

 

「カズマ…お前、すっごい事してやるとか言っときながら…」

 

「それとこれとは話が別なんだとよ。」

 

「ソウイチ。」

 

恐らく偶々だろうが、タイミングよく総一が御粥を作って持って来た。

そして彼女にトレーを渡すと和真をゆすって起こす。

 

「う…あれ?総一さん?」

 

「おはよう和真!お前のお姫様はお目覚めだぜ?」

 

「?……ダクネス!大丈夫かお前?

昨日けっこう思い切りやっちまったけど…」

 

「なーに、あれくらいすんごい事の一環にも入らないくらいだ。

お前こそ、その手…」

 

「気にすんなよ。やりたくてやっただけだ。」

 

そう言って和真は手を後ろに隠した。

総一はそんな和真の肩を叩いた。

 

「さ。俺らは俺らで飯にしようぜ。

皿は後で取りくるから。今日ぐらい安静にしてろよ?」

 

「え?ちょっと総一さん!俺は最後まで看病するって…」

 

「その指じゃ『あーん』もしてやれねえだろ。

ほらけが人は大人しくあの水芸女神に診てもらえ。」

 

「ちょ!誰があんな筋肉女に『あーん』なんか!」

 

「誰が筋肉女だ!」

 

もうすっかり調子戻ってんじゃないか?

なんて思いながら和真の背を押しリビングに戻る総一。

そこでは神妙な顔をした一同が待ち構えていた。

なんせ

 

「ふむ、このニホン茶なる飲み物中々旨いではないか。

褒めて遣わすぞなぜか全く過去を見通せん槍使い。」

 

「は、はぁ…」

 

この一回倒してやったはずの悪趣味極まる仮面悪魔、バニルが平然とガレオンに現れたことである。

 

「お前、何人様の船で自分家みたいに寛いでんだよ…」

 

「何ってお前たちに礼をしに来たのだよ。

あの身長の事を言及すると尋常じゃないほどキレる元人間の魔王の悪質な洗脳を解いてくれたことのな。

ほら、遠慮なく受け取るといい。」

 

そう言ってバニルは一番近くにいたルカにガオイエローのキーを投げ渡した。

 

「アンタまだキー持ってたの?」

 

「吾輩の唯一残ったへそくりである。精々うまく使え。」

 

「これでガオレンジャーはあと半分か。

にしてもあんだけ苦労して倒したのに本人がコンにぴんぴんしてるとちょっと落ち込むな。」

 

ジョーが苦々しく言うとバニルはちっちっちっ、と指を振り

 

「この仮面をよく見るが良い。特にこの額に輝く『Ⅱ』の字を。

お前たちは確かにこの大悪魔バニルの残機を減らしたのだ。

つまり厳密に言えばここにいるのは二代目バニルさんだ。」

 

「舐めんな。」

 

即答して痛む指で無茶して変身しようとする和真をなだめて

総一は前に出る。

 

「本当にそれだけの為に来たのか?」

 

「まあしいて言えばお前らが飼いならした無様な同胞に用がなくもないが…ふーむ。そうだな。

ここはひとつお前らの未来を少し見通してやろう。

そこな水の女神と同じ名前のプリーストの様にあまりに後光が目障りだと見通せない場合も有るが…」

 

そう言ってバニルは一人一人に左右の人差し指と親指で作った四角越しに観る。

 

「ふ、ふふふ!あーっはっはっはっは!」

 

「急にどうしたのアンタ?」

 

「見通す悪魔が断言しよう!

貴様ら近い将来筆舌に尽くしがたい事態に見舞われるだろう!

精々ひきこもっているんだな!ではさらば!」

 

そう言ってバニルは近くの窓を開けるとそこから飛び降りていった。

 

「あ!待ちなさいこの害獣!」

 

「落ち着きなさいアクア。

態々戦い挑む理由なんてもうないでしょ?

ウィズと同じで洗脳されてただけなんだから。」

 

「だってあいつは悪魔なのよ!?

生かしておけるわけ…」

 

なおも噛みつくアクアの頭を和真が軽く叩く。

血がにじむ指先を握り締めてやったため鈍い痛みが走る。

 

「いっつーーー!……っと。

アクア落ち着け。この通りこっちにはけが人もいるんだ。

勘弁してくれよ。」

 

「…手、見せて。『回復魔法』かけてあげる。」

 

和真の指が治るのを待っていると、もう動けるのか食器を持ったダクネスが来たので一同は今後の指針について話し合う事にした。

 

「これからどうする?とりあえず嫌疑とか借金とか気にしなくていいし、なんか息抜きになることしないか?」

 

「そりゃいいっすね。

ここんところ苦労続きでしたし。

こっち着てからろくな休みなんてほとんどなかったですし。」

 

そう言って和真はソファーに横になって脱力した。

まあ確かに前回バニルを倒した一番の功労者ではあるのだが、この変わり身には皆苦笑する。

 

「すっかりグータラになって…」

 

「ま、カズマだしね。」

 

とは言えずっとそのままって訳にもいかないだろう。

もし仮に力を蓄えてる訳の分からん連中とか難癖付けられたらたまらない。

何もしてないことのアピールぐらいは欲しい。

 

「けどそう言って毎回毎回きつい事ばっかじゃん。

もうしばらくは大人しくしたいって言うか…」

 

「いい加減にしろ!全く。

ちょっといいとこ見せたと思えばすぐこれだ…。」

 

「どうにかしないと不味いですよ?」

 

「だったら!温泉なんてどう!?」

 

アクアが珍しく元気よくまともなアイデアを提示した。

 

「温泉、温泉かぁ。いいじゃんか。

この指の痛みも薬湯とかでならすぐ収まるだろうしな。」

 

日本人としてはやはりそう言った物が好きで、ちょっと恋しくも思っていた和真も賛同の声を上げる。

 

「温泉と言うと、水の街アルカンレティアか?

俺はそうでもなかったが、会わない奴はとことん合わないと思うが…」

 

「ま、とりあえず行ってみればいいんじゃない?

アレだったらガレオンの方で寝泊まりすればいいんだし。」

 

「……それもそうだな。

リア、ガレオンのオート操縦いれてきてくれ。」

 

「え?今から行くんですか?」

 

「善は急げだ。」

 

そう言って総一はリアに促した。

 

「で、ところでめぐみん。

水の街アルカンレティアってどんな町なんんだ」

 

「……一言で言えばアクシズ教の総本山です。」

 

ピシっ!と、総一と和真がフリーズしたように固まった。

そして頬を引きつらせて頭を抱える。

 

「だ、だまされたぁ…」

 

「いや、勝手に自爆しただけでしょ。」

 

めぐみんの容赦のないツッコミに総一はがっくりと肩を落とした。

 

(畜生…滅べ。水の街アルカンレティア…。

ガレオンがつく前に。頼むから。)

 

その祈りが最悪な形で届くとは露ほども思ってない総一だった。




次ーーッ回!第十九話!

総一(?)「うそだろ…」

ダクネス(?)「まさか俺たち…」

2人「入れ替わってるー!?」

和真(?)「大変よ!私とカズマが!」

ルカ(?)「俺とルカさんが!」

ウィズ「え、ええぇ?いや、ええぇ…?」

リア「ま、街のあちこちで大混乱が…」

ジョー「いったい何体いるんだ!?」

いつもよりゴーカイなチェンジ!

ダクネス(総一)「超特別仕様で!」

五人「「「「「派手に行くぜ!」」」」」


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いつもよりゴーカイなチェンジ!前編

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


1

「ようこそ!水の都アルカンレティアへ!」

 

ガレオンを風雷丸の力で透明にした赤き海賊団一同とウィズは降り立った。

 

「思って便り奇麗な街ね。」

 

「そりゃどんな山賊だろうと裸足で逃げだすアクシズ教徒でも自分で住んでるとことぐらいは奇麗にするだろ。

仮にも癒しの女神祭ってるわけだし。」

 

「へー、そんなもんですか。

ところでソウイチはなんで変身してるんですか?」

 

何故か総一はゴーカイレッドに変身したままだった。

 

「顔覚えられたらたまんねえからな。」

 

一周回って覚えられない?というツッコミは誰もしなかった。

するのがめんどくさかったのだ。

 

「アルカンレティアへようこそ!

温泉ですか?観光ですか?入信ですか?洗礼ですか?入会ですか?

それとも仕事を探しに?

でしたらアクシズ教のすばらしさを解くだけでお金をもらえる仕事が有りますよ!

今ならオマケでアクシズ教徒を名乗れる権利もついてきます!どうですか?」

 

こんなのはまだいい。

 

 

「ああ!怖い暴漢に襲われてしまったわ!

たすけてー!かっこいいアクシズ教徒!」

 

「ガはははは!なまっちょろいエリス教徒なんかこわくないぞ!

でもアクシズ教徒がいたら逃げちゃうかなー!」

 

ゴーカイレッドは無言で暴漢を演じるアクシズ教徒に鉛玉を恵んであげた。

襲われていた女性役の人は「あなたー!誰かプリーストを―!」と、叫んでいる。

 

「ちょ!ちょっと総一さん!あれ良いんですか?」

 

「あの馬鹿プリーストが行ったし問題ないだろ?」

 

一同は金だけは有るので一番デカい温泉旅館を選んで中に入った。

台帳と偽って入信用の書類にサインされそうにこそなったが、それ以外は特に問題なく通された。

 

「四人部屋と五人部屋を取ったから、

ウィズは俺のパーティーと総一さんのパーティーとどっちの部屋に行く?」

 

「ソウイチさんたちの方でお願いします。

アクア様と一緒にいると浄化されかねないので…」

 

「だったら一緒にお風呂行きましょうよ!

ここの温泉結構評判だし!」

 

「え?あ、あの…」

 

「いいですね!あ、和真さん!

言っときますけど壁越しに聴き耳とか立てないでくださいね?」

 

「ちょ!なんでそれ俺だけに!?」

 

「そりゃ一番やりそうだからだろ?」

 

荷物を置いて降りていった三人を見送り残ったメンバーは顔を見合わせる。

 

「お前らはどうする?」

 

「俺は風呂行ってきます。」

 

そう言うと和真はダクネスに荷物を預けて三人の後を追って行った。

 

「まったく、カズマは本当に仕方ないわね。

私は教団の本部の方に行ってくるわ!他のみんなもついてくる?」

 

「絶対行かない。」

 

「じゃあ私がついていきます。

アクアがまたなにかやらかさないか不安なので。」

 

そう言ってスキップしながら去って行くアクアについていくめぐみん。

 

「ジョー、お前は?」

 

「温泉に。今なら男湯は貸切だろうしな?」

 

「てことはここには混浴風呂が?」

 

「ああ。」

 

ジョーは剣だけ置くと鍵をかけて湯船に向かって行った。

 

「私は少し町を見て回ろうと思う。ソウイチは?」

 

「お前についていくかな。

あのくそ女神とは別ベクトルで問題を起こしそうだ。」

 

「むっ…なんだそのまるで私がいつでも不真面目みたいな物言いは?」

 

 

別に―、と間違いなく仮面の下で含みを持った笑みで言った彼にダクネスは横に並んで肘でこずいた。

 

 

 

ジョーの見立て通り迷わず混浴風呂に入った和真は腰にタオルを巻いて脱衣所を出た。

 

三等分にされているはずだがそれでも十分に広い湯船には先客が二人ほどいた。

一人はやや肥満体の男で、裸が一切濡れていない。

 

(何しに温泉来たんだよ。まさか落書きでもしてたのか?

あんないい年下おっさんが?)

 

そう一瞬だけ思ったが、目の前にタオル越しにある女体を凝視する作業に移った。

女性は恥ずかしそうに 身をよじる。

水面の下にある太ももが、そして水面よりやや上にある柔らかな乳房がむちっ、と、存在を強調される。

湯船のお陰でドライアイにはならないだろ、と、全く医学的根拠のない理由をつけて瞬きさえせずに見続ける。

 

「……あなたも湯治に?」

 

「……ええ、まあ、そんなとこです。

血流良くなったおかげですかね?もう指痛くないですけど。」

 

「そう、それはよかったわね。

全部台無しになる前に治って。」

 

「……あんた、さっきの男とグルって訳か。」

 

和真の女性を見る目が鋭くなった。

彼の中で彼女を凝視する理由が、その豊満で張りのある体以外に増えた。

女性は胸元でタオルを押さえたまま湯船を上がる。

 

「忠告だけど、さっさとこの街を出た方がいいわ。

死にたくないなら、ね。」

 

「アンタこそ、気を付けろよ。どっかの水の女神に。」

 

女性は不敵に笑うと胸の谷間に手を入れ、レンジャーキー用のシリンダーの付いた笛のようなアイテムと黄色いレンジャーキーを取り出した。

 

「アンタまさか!」

 

ぴぃいいいいい!と、甲高い音が鳴り、笛からレンジャーキーを核には黒い怪人が実体化する。

 

(マジかよ!モバイレーツ…脱衣所だ!)

 

「じゃあ、あとは宜しくね。」

 

ぽん!と、怪人の肩を叩いて出ていく女性。

和真はなんとか後を追おうとするが、怪人は針付きの触手を和真に伸ばし、

思い切り壁に叩きつける!

 

「わぁあああああ!」

 

「きゃあああああああああああ!なに!?」

 

「ちょ!カズマあんた!この!変態!」

 

「ッ!タンマタンマ!敵!敵が来てる!」

 

なんとか振り下ろされる桶を受け止め自分が出てきた方を指さす。

破壊された仕切りのむこうから二本の触手が伸びていた。

 

それは和真とルカに刺さると、一瞬金色に光り、二人の気を失わせて引っ込んでいった。

 

「な!? ウィズさん二人をお願いします!」

 

「は、はい!」

 

リアがそれを追いかけている間にウィズは二人を湯船から引っ張り上げ介抱する。

幸い二人とも変な場所を打ったりはしていなさそうだ。

 

「二人ともしっかり!大丈夫ですか?」

 

「う、うーん…いったい何が…」

 

「痛たた…やってくれたわねあの魔王軍!」

 

頭を抱えながらつぶやく二人。

和真は素早く立ち上がりパン!と拳を打ち鳴らす。

 

「ちょっとカズマさん無理しないでください!」

 

「は?ウィズあんた何ってるの?」

 

和真は心底不思議そうに首を傾げた。

それに賛同するようにルカも起き上がりながら言う。

 

「そうだぜウィズ。カズマはこっち……え?」

 

そう言いながら起き上がったルカが和真の方を見て固まった。

そしてゆっくりと視線を下におろし、自らの胸に手を這わす。

 

「や、やわらかい…。

うそだろ、こっちが出っ張った分こっちは引っ込んでる!」

 

「へ、変なとこ触ってるんじゃないわよ!

嘘でしょ…こんな、こんなバカなことが…」

 

「嘘だろ。まさか俺たち…」

 

「「入れ替わってるー!?」」

 




次ーーッ回!第二十話!

ルカ(和真)「総一さんたちもっすか。」

ダクネス(総一)「ああ。参ったよ。」

アクア「本当よ!魔王軍が来てるのよ!」

信徒A「偽物が!」

信徒B「街から追い出せ!」

いつもよりゴーカイなチェンジ!中編

ルカ(和真)「全くしょうがねえなぁ!」


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いつもよりゴーカイなチェンジ!中編

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


「大変よ!私とカズマが!」

 

「俺とルカさんが!」

 

一風呂浴びてさっぱりとした気持ちで売店で買った酒瓶(以外にも適正価格だった)を持って帰って来たジョーを和真のマントを羽織ったルカと、ルカのジャケットを着た和真に迎えられた。

 

「お前らこれでも飲んで頭冷やせ。

リア、ウィズ、なんでのぼせる前に出してやらなかったんだ?」

 

「「違うっ!」」

 

「いやこれはですねジョーさん…」

 

「かくかくしかじかこれこれしかじか…」

 

「あの時のデカい音はカズマが覗きをしようとしたわけじゃないのか!?」

 

「なんでそんない驚く必要が有るんですか!?

俺だってついていい嘘と悪いう嘘の区別ぐらいつきますよ!」

 

見事にはもった二人を横目に残る二人の説明を聞き一応納得するジョー。

しかしそれでもどこか疑わしい目で二人を見ている。

 

「いや、ジョー。多分二人の言ってることは本当だぜ。」

 

「その声はダクネ…誰だお前?」

 

現れた彼女を見てジョーは思わずわずかにフリーズしたのも無理ない。

そこにいたダクネスらしき彼女は凛とした表情こそしていたが、

何時もの動きやすさ重視のポニーテールに常在戦場の鎧姿などではなく…

ヘアスタイルは幼気なツインテール。

服装は黒いリボン付きの可愛らしい白ブラウスに真っ赤なスカート姿だったのだから。

 

「七海総一、ツインテールになりました!」

 

タン!と、黒タイツに包まれた脚で赤いハイヒールを踏み鳴らす。

 

「頼むから…頼むからやめてくれ…」

 

その後ろから上着を脱いだ総一が彼女が脱いだらしい鎧やらなんやらをもってついて来た。

 

「総一さんノリノリじゃないっすか。」

 

「前からダクネスにはこーゆーの似合うと思ってたんだよ。

お前にだけ分かるように言うと、

俺はアカメが斬る!ならマイン、シャニマスなら黛冬優子、

フェイトだったら遠坂凛が一番なんだよ。」

 

「うわぁ…」

 

流石の和真もあまりの順応っぷりに若干引いていた。

他の面子はもちろん全員ドン引きである。

 

「お前ら…いったいなんでそんなことに?」

 

 

「まあそんなに長くなんねえから話すとだな…」

 

 

 

総一とダクネスはいくら天下の害悪アクシズ教とは言え、流石に観光地化している本拠地くらいはまともにしている…かと思いきやそんなことは全くなかった。

ちょっと通りを外れればどう考えても腹部は腹部でも下腹部の欲求を満たす方向の接待がメインの店であふれ、通りは通りでただ当時に来ただけで普段は全くアクシズ教に関わりないはずの連中を悪の道に引きずり込まんとする巧妙な罠であふれかえっていた。

来た時に見た三文芝居なんかはまだかわいい方だ。

 

「いた!」

 

「おっと!ごめんよお嬢ちゃん。怪我無いかい?」

 

「うん、仮面の…お兄ちゃん?お名前はなんて言うの?」

 

「七海総一ってんだ。東の果てから来た。」

 

「変わったお名前ね字はなんて書くの?」

 

そう言って少女は紙とペンを差し出してきた。

総一は最初受け取ってなんの躊躇もなく字を書こうとした。

しかしその紙の上部に『入信書』と書かれたを見て即座に破き捨てた。

幼いころからの刷り込みとは恐ろしい物で、

少女はまるで自分が被害者とでも言いたげに泣きわめいて去って行ってしまった。

 

「ここは!この街に脳の構造が正常な人間はいないのかっ!」

 

「レッドレンジャーの格好で子供泣かせたお前が言うか?

だが確かにここまで勧誘がしつこいと流石に目立つようにこのエリス教のお守りを持っておくべきか…」

 

そう言ったダクネスの頭に思い切りゴミの絡まった箒が叩きつけられた。

振り向くと広場の掃除をしていた老婆が下手人だった。

 

「すいません。エリス教のお守りが見えたのでゴミの塊でもあるのかと思ってしまいましたよ。」

 

そう言ってダクネスの足元につばを吐き捨てて老婆は去って行った。

総一はダクネスの表情を窺う。

若干頬が赤くなり、肩を振るわせている。

 

「お前…いくらなんでもドМ過ぎだろ…」

 

「なあ、ソウイチ。この街の滞在期間を延ばさな「次起きたまま寝言ほざいてみろ!その穢れ切った脳みそ地面にぶち晒すぞこのエリス教徒がぁああああ!」

 

そう言ってダクネスの胸倉をつかんだ総一はこめかみにゴーカイガンの銃口を押し当てる。

だれも止めない。

何故ならこの場では圧倒的に総一の行いを正しいと思っている連中が大多数だからだ。

 

「ぷくくくく!なんか手配書で見た顔がいると思ったら、

なーに仲間割れしてるんだか!」

 

ふり返ると、そこには逆さにしたピエロの面のような顔を持つ青とオレンジの怪人がいた。

 

「魔王軍!?」

 

「なんでこんなところに!?」

 

人々はたちまちパニックになり去って行く。

総一はすぐさまダクネスのこめかみに突き付けていた銃を怪人に向けて発砲する!

 

「俺の名前はって痛い!痛い痛い!

お前喋べってる途中で撃つな!」

 

「うるせえ!いまイライラしてんだよ!ゴーカイチェンジ!」

 

<ガーーッオレンジャー!>

 

ガオレッドにチェンジしたレッドは装備した籠手状の武器、ライオンファングで殴り掛かる。

うっぷんを晴らすようにしつこく顔面の真ん中を狙い、時折混ぜる足技も的確に拗ねを狙う。

 

「総一の奴なんて戦い方を!うらやまけしかっんん!

正義の味方の自覚を持て!ゴーカイチェンジ!」

 

ガオイエローに変身したダクネスも加勢する。

本来はガオイエローにはイーグルソードと言う武器があるのだが、

不器用極まるダクネスは無理に使おうとせず両手の爪で戦う。

 

「ファルコンサモナー!」

 

近接をイエローに任せたレッドは武器を弓型のファルコンサモナーに切り替え、怪人の関節を狙い撃つ。

しかし怪人は関節を有り得ない方向に動かして攻撃をよけ、

動揺したダクネスにキックを叩きこみ、レッドの近くまで後退させる。

 

「ダクネス!平気か!?」

 

「ああ!このくらい!」

 

「げんきだねえ!じゃあこれでもくらえ!」

 

そう言って怪人は両手を絡ませるようにねじり、雷撃を放った。

それに捕まった二人は何度も大げさに振り回され、

地面に叩きつけられ変身解除させられる。

 

「いててて…おいダクネス大丈夫か?」

 

そう言って自分とは別の落下音がした方を見て総一は固まった。

見慣れた赤い上着に短い黒髪の男が倒れているのだ。

じゃあ今、その男を見てる自分は?

両手を見ると、剣を握ってる割には奇麗な白く細い指があった。

ここまでの白さは東洋人にはない。

 

「うそだろ…」

 

そう言う声も、男性と言うには高すぎる。

向こうも異常に気付いたらしく、こちらを呆然と見ている。

 

「まさか俺たち…」

 

 

「「入れ替わってるー!?」」

 

 

 

「総一さんたちもっすか。」

 

「ああ。参ったよ。」

 

なんてセリフと話裏腹に総一はどこか満足げな表情で部屋備え付けの道具で入れたお茶を飲んでいる。

 

「え、ええぇ?いや、ええぇ…?

ナナミさんどうしてそんなに落ち着いてるんですか・

私、自分がリッチーになった時それなりに動揺しましたよ?」

 

「なーに住めば都みたいなもんですよ。

それにあのピエロぶちのめせば大体もとに戻るでしょうし。」

 

「なんて身もふたもない…」

 

もしかしてこの九人の中でさえ一番まともなのは自分なのでは?

と、疑い始める和真だった。

 

「しかし触手の怪人にピエロの怪人か。

いったい何人いるんだ?」

 

「分かってる限り私たちの前に現れたのと、

総一さんとダクネスさんを攻撃したのと合わせて2体。

幹部、そうでないとしてもレンジャーキーを持ち出せる権限を持っているメンバーも和真さんが視姦した人と、茶髪の人とで恐らく二人、ですか。」

 

ちょっとリアが余分な情報を付け足していたが、

まあおおむね間違いではない。

 

「とりあえずアクアとめぐみんと合流しよう。

何かあった時にバラバラだと不味い。」

 

「よし。ジョー、ウィズ!入れ違いにならないように残っといてくれ。

ダクネス、和真、ルカ、リアで行こう。」

 

宿を後にしてアクアが向かったアクシズ教会本部に向かう。

背筋を走る怖気に思わず二の足踏んだ総一の背を無理やり押して中に入った。

 

「そこの身なりのよさそうなお嬢さん!

アクシズ教に入信する気はありませんか!?

今ならあなたの財産をアクシズ教のすばらしさを伝えることに使える権利がついてきますよ!」

 

総一は華麗なスカイハイフランケンシュタイナーで駆け寄ってきたシスターを沈めると足早に奥を目指した。

 

「わ、私はあんな風に声かけられなかったのに!

本来男のソウイチはスカートでの歩き方に不慣れなはずなのに!」

 

「お前の喜ぶツボはほんと分かりにくいな…」

 

落ち込むダクネスを慰めながら歩いていると、死んだ顔のめぐみんが虚空を見つめて立っていた。

 

「め、めぐみん?アンタ大丈夫?」

 

「か、かずま…あなたはアクシズ教ではありませんね?」

 

「いや何当たり前の事聞いてんの?」

 

一瞬で生き返っためぐみんは安心した笑みを浮かべて和真、の体をしているルカにもたれかかった。

 

「な、なにこれ?」

 

「恐らく、手ひどい洗礼を受けたんだろう。

そっとしといてやれ。」

 

何が有ったかを大体察してげんなりする一同だが、

アクアの居場所だけは聞き出し、代表して和真が懺悔室に入る。

 

「ようこそ迷える子羊よ…。

あなたのその胸の罪を打ち明けなさい。

さすればきっと神は赦しをあたえてくれるでしょう…。

さあ、言って御覧なさい。

あの気に食わない赤い上着の冒険者の財布をちょろまかしたとかですか?

それともあの長髪の剣士のお古の剣を売っぱらおうと画策したことですか?

はたまた年下の槍使いのお気に入りのシャンプーを勝手に使っていることですか?

さあ、言ってごらんなさい!」

 

体を半分乗り出し、外に引かえり一同を見る。

何時もは鏡越しにしか見ない自分の顔がいい笑顔で青筋を立てて勢いよくサムズダウンした。

和真は頷き席に戻ると、恐らく壁一枚隔てたむこうにいる女神を半目で睨みながら口を開いた。

 

「ある知り合いの冒険者の少年の悪事を黙っていました。」

 

「その悪事とは?」

 

厳かな雰囲気の中に若干好奇心が入ったのを見て和真はためらいなく切り出した。

 

「仲間のプリーストが大事にしていた宴会芸用のコップをうっかり割ってしまってけど、

ご飯粒でくっつけてこっそり戻しておいたとか…」

 

「!?」

 

「あとさっき言ったの同じプリーストがめったに手に入らない品だと自慢していた高級シャワシャワをちょっと味見するつもりで一口飲んだら想像以上の旨さで全部飲んでしまって…味なんか分からないだろうと思って安酒詰め込んで誤魔化しておいたとか…」

 

「嘘でしょルカ?冗談よね?何本当に見て来たかのように言うのよ?

まさかあなたも飲んだのあれ?まさか、そんな…」

 

「そのプリーストがあんまりにもトラブルばかり起こすのでもうエリス教徒である以外の条件はいらないから新しいプリースト募集の張り紙を…」

 

「この背教者共がああああーーーー!

天罰!天罰食らわせてやるぅううううう!」

 

その声は教会中に響いたとか、響かなかったとか…。

 




次ーーッ回!第二十一話!

アクア「本当に新しいプyリースと募集の件は嘘なんでしょうね?」

ルカ(和真)「冗談だってば」

リア「奴らの目的って…」

めぐみん「おとりでしょうね。」

アクア「街を守らないと!」

いつもよりゴーカイなチェンジ!後編

和真(ルカ)「両方やる簿が欲張りな海賊っぽくない?」


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いつもよりゴーカイなチェンジ!後編

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


1

「悪かったってばアクア。いい加減機嫌直せよ。」

 

机に突っ伏して一しきり泣きわめいたアクアはジト目で睨みながら言う。

 

「……本当に新しいプリースト募集の件は嘘なんでしょうね?」

 

「冗談だってば」

 

「…その、ルカと体が入れ替わったっていうのも…」

 

「「それはマジ(ホント)。」」

 

しばらくは疑わしそうな目線を向けていたアクアだったが、

やがてその内側にある魂を除いて驚いたが、まあ魔王相手なら大体何でもありよね。

と、もう慣れた様子だ。

 

「他にやられた仲間はいるの?」

 

「俺とダクネスが。ジョーとウィズは無事だ。

今は宿に残って連絡要員やってもらってる。」

 

「あんたソウイチ?随分とノリノリじゃない。」

 

「いやぁ、こんな超常現象も貴重な体験でしょ?

だったら楽しめるうちに楽しんどこうと思って。」

 

やっぱりアクアも若干引いた眼で総一を見る。

普段欲の赴くままに行動した挙句に大体厄ネタ持ち込むこいつにだけはそんな目で見られたくない思う総一だった。

 

「それでどうします?闇雲に探すわけにもいきませんし…」

 

リアがそう言いかけたところで衛兵がドタバタと一同の横を通り過ぎていく。

 

「魔王軍だ!魔王軍が出たぞ!」

 

一同は急いでその後を追った。

 

 

 

「きゃー!なにこれ!?」

 

「こ、これがオッパイを触られる感触っ!」

 

そこらじゅうで人が人と、物と入れ替わり大パニックが起こっていた。

駆け付けた兵隊や冒険者もことごとく入れ替えられ慣れない装備に四苦八苦してるうちに倒されてしまう。

 

「随分派手に暴れてくれてますね!」

 

「許せないわ私の可愛い信者たちに向かって!

ゴーカイ…」

 

「まった!」

 

ルカの姿のままの和真アクアを制した。

そして自分のキーとモバイレーツを取り出す。

 

「何よ!」

 

「あからさますぎる。

奴らがとるべき作戦は本来入れ替わって大混乱になったここをもっと大群で攻める事だろ?」

 

「てことは奴らの目的って…」

 

「おとりでしょうね。」

 

リアの疑問をめぐみんが補足する。

総一も納得したように頷くと前に出る。

 

「なるほど。和真が混浴風呂で見た茶髪の男を探すべきって訳か。

ジョーとウィズも連れていけ。こっちは俺たちがどうにかする!」

 

ダクネスのモバイレーツとキーを構える総一。

ルカ、リア、ダクネスも前に出る。

 

「待てよお前ら。その狙いが分かってて態々戦力を二分するのは…」

 

「両方やる方が欲張りな海賊っぽくない?」

 

自分の顔のままいたずらっぽく笑ってウインクするルカに和真は苦笑いしながら頭を抱える。

 

「全くしょうがねえなぁ!任せましたよ!」

 

「ええ!ちょうど鬱憤溜まってたとこだし!」

 

「いい加減元に戻りたいしな!」

 

「よし。リア!お前も準備良いな!」

 

「はい!めぐみん!キー借りるよ!」

 

「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」

 

<<<ゴーーッカイジャー!>>>

 

「ゴーカイレ…じゃなくてイエロー!」

 

「え?あ、ああ!ゴーカイレッド!」

 

「…ゴーカイグリーン!」

 

「ゴーカイピンク!」

 

「「海賊戦隊!」」

 

「「「「ゴーカイジャー!」」」」

 

「違和感どころじゃないが…派手に行くぜ!」

 

 

 

「俺らは一回戻るぞ!

もしあいつが幹部級に強いならこの装備じゃきつい!」

 

「待って!私本当に温泉が汚染されてるか調べたいんだけど…」

 

「宿の方調べといてくれ。めぐみん!

こいつが余計なことしないか見張ってろよ!」

 

余計なことって何よ!と抗議するアクアを無視して和真は階段を駆けあがり二人を呼んだ。

 

「なるほどな。ウィズ、行けるか?」

 

「はい!こっち着てからずっと寛いでたんで準備万端です!」

 

三人は装備を整え下の階に降りる。

 

「ふざけるな!アクア様対中身色してるからって調子に乗りやがって!

よくも温泉を駄目にしてくれたな!」

 

「しょうがないじゃない!

あのまま浄化しないままだったら毒でもっと駄目になってたんだから!」

 

……ほんの少し。時間にして約二分足らずの間に馬鹿(アクア)はトラブルを起こしていた。

最早お家芸なのか?と聞きたくなる。と、和真は思った。

 

「ちょ、ちょっとアクア!これ以上はまずいですよ!」

 

「まずかったのは毒の方でしょ!?

感謝しなさい!この本物の水の女神アクア様に!」

 

なだめようとしためぐみんを押しのけバーン!と効果音がつくほどキレイに胸を張って見せたアクアだったが、じわじわと館の店主と客、とくにアクシズ教徒たちのボルテージは上がって行き

 

「ふざけやがってこのクソガキがぁああ!」

 

「この偽物が!」

 

「街から追い出せ!」

 

「嘘つきが!俺らがなんでも魔王軍の仕業だって言えば信じるとでも!?」

 

「本当よ!魔王軍が来てるのよ!」

 

今にもリンチされそうな空気だというのにアクアは信じて!

と繰り返し訴え続ける。

 

「ちょ!カズマ―!ジョー!見てないで助けてください!」

 

「もう無視していっても…」

 

「良い訳ないだろ。さっさと回収していくぞ。」

 

ジョーはライブマンキーからモトファルコンとライブクルーガーを召喚。

アクアとめぐみんを人混みから救出するとライブクルーガーに乗り込みハンドルを握る。

和真もウィズを後ろに乗せてバイクで続いた。

 

「ちょっと何するのよ!

あとちょっとで私の信者たちを説得出来た所なのに!」

 

「お前のじゃなくてお前と同じ名前の女神のだ。

と言うか、それ以前にリンチにされかけてただろ?

お前が一方的に悪いとはいえ、

そこまでされた相手をなんで助けようとする?」

 

「決まってるじゃない!神ってのは信仰あってこそなのよ!

だから私は、なんとしても私を必要としてくれる街を、信者たち守らないとなの!」

 

ここまでくると演技も筋金入りだな。と、肩をすくめて呆れるしかないジョーだった。

 

 

 

「さーて、この山が源泉なのか。」

 

街の水源そのものでもあるそこは周囲を鉄柵で覆われ、

唯一の出入り口である門の前にも二人の屈強な衛兵が控えるなかなか強固な守りだった。

もっとも

 

<<<<ジェーーットマン!>>>>

 

空を飛んで行ける一同には何の関係もない話だった。

無事山に入った一同は変身を解除して武器を片手に山を登っていく。

 

「この太いパイプがそうなのか?」

 

「人がつけたものだし、辿って行けば泉源に行けると思いますね。」

 

山路は急だが、パイプの整備、点検のために一応整備はされているので覚悟した物ほど疲労は強いられない。

 

「はぁ…はぁ…みんな早くないっすか?」

 

「? まあっ前衛食の俺や元ベテラン冒険者のウィズはそうでもないが、お前にはきついか?」

 

「まったくだらしないわね!

本来肉体労働なんかまったく似合わない私でさえぴんぴんしてるのよ?

ルカの肉体だとしてもこんなに運動できないなんて…」

 

「うるせえな!元ひきこもり舐めんな!

大体街の土方にまじって工事してる姿が全く違和感なかった奴に言われたくないわ!」

 

「意外に元気そうですね。」

 

「だな。」

 

そろそろ出発するか。そう思った時、アクアは背後でこんこんと湧き出る温泉を見つけた。

 

「不用意に触るなよ?中身は熱湯…てなんだ?色が黒い?」

 

その中にアクアは迷わず中に手を突っ込む。

 

「あっつ!あつい!これ思いっきり毒だし熱いんですけど!」

 

「汚染された温泉なんだから当たり前だろ!

『フリーズ』!『フリーズ』!『フリーズ』!」

 

三回かけてようやく熱くはなくなったアクアが手をさすりながらつぶやく。

 

「こんなオマケみたいなのが真っ黒になってるってことは…」

 

「どうやら当たりみたいですね。」

 

その後は休憩を挟まず進んでいく。

開けた場所が見えて来たところで和真は千里眼スキルを使って人影を探した。

 

「いた!あの時混浴風呂にいた茶髪の男だ!」

 

「よし。カズマ、めぐみん。

攻撃の用意しておけ。アクア、ウィズ。囮になるぞ。」

 

そう言うとジョーは一気に坂道を駆けていく。

四人は慌ててそれに続いた。

 

「おいお前!そんなところで何してる!」

 

「な!あ、あなたこそなんですか?

ここは管理者以外立ち入り禁止ですよ?」

 

「俺は正進怒涛流の剣士。

この街の温泉に毒を垂れ流す不届き者を斬りに来た。」

 

「温泉を台無しに?私が?この温泉を管理している私が?

なんのことだかさっぱりわかりませんね…。」

 

剣を突きつけられてなお、男はひょうひょうとした態度を崩さない。

 

「とぼけるな。俺らの泊まってる宿は日帰り温泉がないのにお前はこの前和真が入った時にいた魔王軍の幹部の女と混浴風呂に入っていただろ?」

 

「本当になんの話をしてるんですか?

なんにせよ、あなたが私を疑ってるって話でしたらどれだけ私を調べてくれても構いませんよ?

どんなに調べても毒なんてでて、こな…」

 

さっきまで余裕だった口調が急に尻すぼみする。

その視線の先には、元冒険者のリッチーがいた。

 

「あ!ハンスさん!おひさしぶりですね!」

 

「は、ハンス?誰の事ですか?私は温泉管理人の…」

何回か魔王城で会ったじゃないですか!

私です!リッチーのウィズです!覚えてませんか?」

 

「り、リッチー?リッチーってあの危険なアンデッドモンスターのリッチーですか?

とにかく!私は毒なんてどこにももって…」

 

「毒と言えば!ハンスさんはデッドリーポイズンスライムの変異種でしたね!

前見見たのと同じ姿という事は、この件は結構前から準備して計画してた事なんですね!」

 

そこまで聞いたところでもうジョーは斬りかかっていた。

袈裟斬りに斬られた胴に紫のゼラチンのような断面が一瞬だけ見える。

 

「やはりか!アクア!」

 

「ええ!『ピュリフィケーション』!」

 

アクアの放った浄化の波動に吹っ飛ばされたハンスは三本のレンジャーキーを落しながら後ろに転がる。

和真も援護で木の上から矢を放った。

 

「痛っ!痛い!こんの人間どもが!

ウィズ貴様魔王に洗脳されてどっかの街に潜伏してるんじゃなかったのか!?

それがなんで首輪つけられて海賊共の仲間になってる!」

 

「そ、それにはいろいろ事情がありまして…。

ううっ!人間だった頃みたいになってた話を思い出させないでください!」

 

「ふん。まあいい。ふぬけにゃようはない。

そうなってるようなら殺していいともいわれてるしな!」

 

そう言ってハンスは落とさなかったもう三本のレンジャーキーを取り出すと、それを一気に呑み込んだ。

 

「お前ら随分レンジャーキーをため込んでるそうじゃないか!

これで味は覚えた!」

 

「味?一体何を…」

 

「スライムの変異種ってことはまさか!

逃げるぞ!早く!」

 

ジョーが納刀してアクアとウィズを抱えると元来た道を駆け下り始めた。

一瞬ぽかんとしたカズマだったが、横に居ためぐみんに引っ張られて我に返る。

 

「は、早く私たちも逃げましょう!相手はスライムです!」

 

「スライムだからなんだってんだよ?」

 

「ああなるに決まってるじゃないですか!」

 

そう言ってめぐみんが指さす先には

 

『あああアあ嗚呼ああ阿吾あああああ啞あああああああああああああああああああああ!!!!!!』

 

「…は?」

 

周囲の木や物を質量と言う質量で押しつぶしながら巨大化するスライムの姿が有った。

 




次ーーッ回!第二十二話!

ダクネス(総一)「なんだあのでっかいスライム!?」

めぐみん「どうするんですかあんなの!」

ウィズ「私にも無理ですあんなの!」

信者の祈りは女神の糧!

アクア「博打上等!アンタにかけるわ!」


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信者の祈りは女神の糧!

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


「はぁ!」

 

「そらぁ!」

 

アベコンベには総一とダクネスが。

レガエルにはルカとリアがそれぞれ相手取る。

炎攻撃と触手により打撃が武器のアベコンべに、

やわらかい体を利用して剣戟も銃撃も一切通じないレガエル。

 

「全くやりずらいな!」

 

「こーゆーのが、いいんじゃないの?」

 

そう言って総一は二本のキーを後ろに投げ渡す。

 

「アンタらには多分これね!」

 

ルカも二人にキーを投げる。

それぞれ敵本体ではなく足元に銃弾を撃ち込み、

隙を作るとフォームチェンジする。

 

「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」

 

<アーーッバレンジャー!>

 

<ジェーーットマン!>

 

<シューーッリケンジャー!>

 

<ゴーーッレンジャー!>

 

「アバレブラック!」

 

「レッドホーク!」

 

「シュリケンジャー!」

 

「モモレンジャー!」

 

「姿を変えようと同じ事!くらえ!」

 

アベコンべは胸から火球を放つ。

総一扮するアバレブラックが前に出て、剣を構える。

 

「スプラッシュインフェルノ!」

 

炎が相殺され、周囲を水蒸気が覆った。

 

「ダクネス!」

 

「ああ!ウイングパンチ!」

 

2人を飛び越え背後を取ったダクネスの右ストレートがアベコンべの後頭部を陥没させながら吹っ飛ばした。

その先には、当然アバレブラックが!

 

「とどめ!クレセントムーン!」

 

至近距離で放たれた半月状のエネルギーがアベコンべを真っ二つに切り裂いた。

中から排出されたシンケンイエローキーをキャッチする。

瞬間、ダクネスと総一の体が…

 

「オイ戻んねえぞ!なんで!?

いつもは大抵敵倒すと元に戻るのに!」

 

「な、なんだと!?このままじゃ…

このままじゃ私は一生ツインテール地雷系私服のお嬢様でいる羽目に!」

 

「心配するのそこかい!

てか人の女の趣味を好き放題こき下ろすんじゃねえ!

こうなったら!」

 

総一はダクネスの腕を掴むとモモレンジャーの爆弾攻撃と、シュリケンジャーの剛速球にひるんでやけくそで触手を伸ばしてきたレガエルの前に飛び出した。

 

「ちょ!ちょっと二人とも何を!?」

 

触手から解放され変身が解除された二人が起き上がる。

 

「やった!戻れたぜ!」

 

「よし!こうなればこっちのものだ!」

 

ポニーテールを結い直しながらダクネスはゴーカイサーベルを構える。

 

「はいはいあんまり二人ばっか活躍しないでください!」

 

「…はっ!戻ってる!?リアちょっと待って!」

 

ハート爆弾が再びレガエルを襲う。

その勢いのまま懐に飛び込み

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

<デーーッカレンジャー!>

 

「デカブライト!インパルスフィスト!」

 

火のついたレガエルに高圧水流を見舞う。

ブスブスと、黒煙を上げるレガエル。もう動けはしないだろう。

 

「トドメ行きましょう!ゴセイジャー!」

 

「よ、よし来た!」

 

「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」

 

<<<<ゴーーッセイジャー!>>>>

 

「フェニックスヘッダーカード!

スカイックブラザーズカード!天装!」

 

召喚した四個のヘッダーをそれぞれの銃に取りつけ、

レガエルに標準を合わせる。

 

「スカイックバレット!」

 

フェニックス、タカ、カラス、プテラノドンを模したエネルギーがレガエルを粉々に撃ち砕く。

今回はレンジャーキーが排出されず終わった。

するとすぐさまゴセイブラック、和真は変身を解除して通話を始めた。

 

「もしもしルカさん!やっぱ戻ってますよね!?」

 

『カズマ!?なんなのよ一体!?なんで変異種スライムなんているのよ!?』

 

「「「変異種スライム!?」」」

 

通話を聞いていた三人は一斉に驚愕の声を上げて別動隊が向かった山の方を見た。

上の方の木々が倒れて、内側から茶色いぶよぶよした塊が盛り上がってくる。

 

「なんだあのでっかいスライム!?」

 

「変異しすぎでしょ…」

 

スライム、ハンスは完全に理性を失った雄叫びを上げながら山を下り始めた。

 

 

 

「もしもしカズマ!?カズマ聞いてる!?」

 

急に人格が元に戻り、困惑しながらもルカは全力でスライムから逃げていた。

勿論、それ以外のメンバーも全員。

 

「どうするんですかあんなの!

あんなサイズ私の爆裂魔法でも吹き飛ばせません!?」

 

「ポイズンスライムなんて吹き飛ばしたら二次災害で街一個滅ぶわよ!

リッチー!アンタはどうにかできないの!?

あの化け物にお似合いのお友達でしょ!?」

 

「私にも無理ですあんなの!

せめてあれの半分くらいのサイズなら凍らせることも出来ますけど!」

 

「ゴーカイオーで斬るか、スーパーライブロボのビックバーストは!?」

 

「合体ロボなんて隙間だらけの物ぶつけてどうするのよ!?

内側から溶かされて終わりよ!」

 

『珍しく頭使ったじゃねえかアクア。

つまり、ほぼ詰みなんだな?』

 

電話越しに和真の沈痛な声がする。

だが重々しい口調のまま続けた。

 

『誰でもいいけど、さっきあのスライムが落としたキーあったよな?

あれ何かわかるか?』

 

「ゴーゴーファイブ!

奇しくもこれで5本コンプリートだ!」

 

ジョーの声を聞き、しばらく黙っていた和真。

 

『めちゃめちゃ分の悪い賭けを思いついた。お前ら乗るか?』

 

「乗る!乗るからどうすればいい!?」

 

「お願いします!」

 

「あるんですね!?策が!」

 

「早く話せ!」

 

「博打上等!アンタにかけるわ!」

 

言葉は違えど全く同じ意味の返答が帰って来た。

和真はすぐに指示を飛ばす。

 

『ジョーさんとルカさんは最速でゴーゴーファイブキー持ってこっち戻ってください!

残りは待機!こっちが合図したら全員最強技をぶちかましてもらう!

残りはガレオンで出撃!総一さん直ぐ呼べますか!?』

 

『いつでも彼女はご機嫌さ!信じるぞ我らが参謀!』

 

 

 

本能のままに山を喰らいながら進んでくるハンス凶暴態。

迎え撃つはゴーカイオー。

だがさっきアクアがいた通り、下手に肉弾戦を仕掛ければ隙間から中に入られ腐食させられ終わりだ。

 

コックピットに乗り込む総一、ジョー、ルカ、ダクネス、リアの五人は操縦桿を強く握りしめ、迫りくる敵を睨み続けている。

 

『まだ引き付けて…』

 

唯一ブラックコンドルにチェンジして距離を測る和真が通信でタイミングを知らせる。

仮面やスーツの下の皮膚に汗が伝う。

 

『まだ…まだ………今だ!』

 

「レンジャーキー!」

 

「「「「「セット!レッツゴー!」」」」」

 

スロットに刺さったキーを一斉に回す。

ゴーカイオーの武装が介抱され、胸と両手足から赤いホースが飛び出た。

 

「「「「「ゴーカイ!ビクトリースプラッシュ!」」」」」

 

発射される高圧水流に洗い流され、徐々に小さくなり始めるハンス。

 

『今だめぐみん!とっておきをくれてやれ!』

 

「刮目せよ!今立ち上がる勇者の放つ陽をも超す魂の爆発!

叫べ風!唸れ雷!悪しき祈りを折る極光!『エクスプロージョン』っ!」

 

ビクトリースプラッシュを受けるのとは反対側に巨大な業火が炸裂する。

恐らくダイナマンキーもすべて使って行ったんだろう。

山の一部諸共ハンスの背中を持って行った。

 

『よし!ゴーカイオーは下がって!ウィズ!頼むぞ!』

 

「はい!カースドクリスタルプリズン!」

 

ウィズの発した強烈な冷気がビクトリースプラッシュ、すなわち消火用の水をたっぷり浴びて吸ったハンスをがちがちに凍らせていく。

 

『とどめだアクア!女神の底力!本気も本気で魅せてくれ!』

 

「ええ!最高の演出よカズマ!

なんたってこの私がトリなんだからね!」

 

かつてアクセルの街で、ベルディアと対峙した際に見せた水球と同じように神々しい光がアクアのもとに集まって行く。

 

「『セイクリッド・エクソシズム』っ!」

 

街全てを塗りつぶさんばかりの光が、浄化のパワーが町中を包んだ。

 

 

 

「なんでよぉおおおおおお!

どうして信者の子たちから石を投げられて街から押し出されなきゃいけないのよぉおおお!」

 

結果、一行は街から追い出された。

あんまりにもアクアが本気で浄化したもんだから、

街の温泉の水質を完全にただの水にしてしまったため、

魔王軍幹部とその手下の討伐と相殺してやるから金輪際街に近づくな。と、いう事にされてしまったのだ。

 

「レンジャーキー七本に釣り合わない大博打だったな。」

 

剣の手入れをしながらジョーがつぶやく。

 

「ほんっと散々なめにあった!しばらく面倒は勘弁ね。」

 

ソファーに寝っ転がったルカも同調する。

総一も自分の椅子から立ち上がると窓の外から小さくなっていく街を見る。

 

(帰り際に教主が行ってた『もしや本物の…』ってつぶやきがどうか聞き間違いでありますように。)

 

少なくともアクアではない何かに祈ると総一は操縦席に戻った。




次ーーッ回!第二十三話!

総一「気分はどうだい?ララティーナちゃん?」

ダクネス「やめろぉ!」

ゆんゆん「カズマさんの子供が欲しい!」

和真「ぶっ―!」

アクア「……!?!?!?!?!??」

ルカ「アンタ気は確か!?」

めぐみん「行かなければならないようですね。紅魔の里に!」

魔法使いの里

ジョー「派手過ぎてついていけん…」


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魔法使いの里

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


温泉街から帰った翌日。

一同は屋敷の掃除に精を出していた。

普段ガレオンでいることの方が多いのだが、

それでも現代日本で言うところの固定資産税はかかっているし、

馬のドンやアクアが言うところには幽霊の少女も居るらしいので定期的に掃除しているのだ。

 

「ただいまー!」

 

「おかえりなさーい!洗剤買ってきてくれました?」

 

「ああ。可愛いこいつにまけてくれたよ。

気分はどうだい?ララティーナちゃん?」

 

「やめろぉ!頼むからやめてくれ…ううぅ…私はこうゆうのは駄目なのに…」

 

和真の言っていたダクネスに対するすっごいこと、長らく実行できていなかったそれの正体は、彼女の本名を広めるという物だった。

冒険者連中は見た目や普段の行いに反して可愛らしい名前を面白がりすっかり浸透してしまった。

 

「和真、お前もわるぞよのぉ…」

 

「いえいえ!総一さん程ではございませんよ!」

 

と、まるで小判をいれた菓子の箱でも渡すような手つきで洗剤を渡す和真。

総一もそれを悪い笑顔で受け取る。

 

「こらこらあんまりララティーナいじめないの。ほら仕事仕事!」

 

「ルカァ!お前までわかって言ってるだろ!」

 

「喧しいぞララティーナ。」

 

「年上がみっともないですララティーナ。」

 

「ジョー!めぐみん!特にめぐみん!

普段年上とか年下とか全く言わないくせになんで今だけ!」

 

今にも地団太を踏み出しそうなほど悔しそうにうつむくララティーナ。

 

「おい地の文!天の声!貴様らまで!」

 

「ララティーナさん誰と話してるんですかね?

まさか前にアクアさんがいると主張して憚らなかった幽霊とか?」

 

「ちょっとリア!あなたまだ信じてないの!?」

 

掃除してる一方で局所的に埃が舞ってる気がしながらも、つつがなく作業を進めていくと、誰かが乱暴にドアを叩く。

何事かと言ってみると、めぐみんと同郷のゆんゆんが血相を変えてやってきていた。

 

「おいおいどうしてんだそんない急いで?」

 

「か、カズマさんは!カズマさんはいますか!?」

 

「いるけど…」

 

失礼します!と叫んでジョーを押しのけ屋敷に上がるとゆんゆんは大声で告げた。

 

「私!カズマさんの子供が欲しい!」

 

ぶっ―!、と思わず和真が噴き出す。

残る全員も完全にフリーズし、無音が屋敷を支配

 

「ねえリア!私あなたはいい子だから信じてくれるって信じてるの!

本当に居るのよ!いるから私のお酒をかってに飲むの!

私が飲んでるわけじゃないの!」

 

しなかった。アクアだけはマイペースにリアを揺さぶっている。

 

「いやアクアさん話聞いてました?」

 

「話?話って何よ?」

 

「ゆんゆん、ワンモア。」

 

「カ、『カズマさんの子供が欲しい』」

 

「……!?!?!?!?!??」

 

「そうよ!アンタ気は確か!?

こいつよりもいい男なんて星の数いるわよ!?」

 

「ゆんゆん考え直してください!

このオークと人間のハーフと言われても信じる様な鬼畜外道の子供なんて無理して生む必要ありません!」

 

「ルカさん?めぐみん?

俺も普通に傷つくんですよ?」

 

「た、確かにある意味カズマさんでなくてもいいんですけど!

でもそれじゃあ間に合わないんです!

今すぐにでもしなきゃダメなんです!じゃないと、じゃないと紅魔の里がなくなっちゃう!」

 

 

 

『この手紙が届くころにはきっと私はこの世にいないだろう。』

 

紅魔族の族長、つまりゆんゆんの父親からそんな一文から始まる手紙が届いた。

急展開に若干キャパオーバーだっためぐみんにアクアも真剣なまなざしで手紙を読みあげるゆんゆんの声に耳を傾けた。

 

「前線基地の破壊も出来てなくて、

倒さなきゃいけない魔王軍幹部様は耐魔EX持ち、か。

なかなかきついみたいだな。

ジョー、元軍属として噂程度でも心当たりは?」

 

「さあな。尖兵みたいな風に扱われてたベルディア以外は実はそんない知られてないぞ?

戦ったやつらは大抵死んでるか、

何が起こってるか分からないままやられてるからな。」

 

ジョーのつぶやきにさっきまで取り乱しきっていたゆんゆんはもう半泣きだ。

 

「ゆんゆん手紙読めますか?

つらいなら私が変わりますが…」

 

「ううん。大丈夫。続き、読むよ?」

 

何でも里の占い師は魔王軍の総攻撃の日と紅魔族壊滅の日、

そして最終的に唯一の生き残りとなったゆんゆんと、

駆け出しの街で出会ったある凡庸な冒険者の少年が結ばれ、その子供が旅の末に魔王を倒す未来を。

 

「じゃあめぐみんが死ぬってことは二人の子は女の子じゃなきゃおかしくないか?

ピンクの席がなくなるわけだし。」

 

「しれっと殺さないでくださいよ!

そうなるとは限らないでしょ!手紙には男の子ってっ書いてありますし!」

 

「つ、続けるよ?『【紅魔族英雄伝 第一章】著者:あるえ』ってえ?」

 

「「「「「「「「は?」」」」」」」」

 

再び屋敷を静寂と沈黙が支配した。

そんな中次第にゆんゆんの顔が羞恥で真っ赤に染まっていき

 

「あるえのばかーっ!」

 

と、叫んで二枚目の手紙をビリビリに破き捨てた。

 

「展開が派手過ぎてついていけん…」

 

こめかみを押さえながらジョーがつぶやく。

ルカはゆんゆんが破った手紙の切れ端の裏にも文字が書いてあるのを見つけた。

 

「『追伸、郵便代が思ったより高かったので族長に頼んで同封させてもらいました。二章が出来たら送ります』だって。よかったじゃない。」

 

「なんも良くないっすよ。なんすかこれ?

俺はもう部屋に戻って寝ていいってこと?」

 

「そうもいかないんじゃないですか?

このあるえの追伸を信じるなら一枚目は正真正銘族長さんからの手紙なんでしょ?」

 

そのセリフにかつて故郷を魔王軍に滅ぼされたジョーとルカの表情が決意を秘めてるようなものに変わった。

そして掃除道具や頭のタオルを外して戦闘装備を身に着け始める。

 

「お、お前ら急にどうした?」

 

「ゆんゆん、出発はいつだ?俺たちも手を貸す!」

 

「じょ、ジョーさん?」

 

「故郷がピンチなんでしょ。それに来てるのは幹部…

報酬としてレンジャーキーは全部いただくわ。」

 

「ルカさんまで!」

 

ジーン!と感動で涙ぐむゆんゆん。

2人は当然お前らもついてくるよな?みたいな目でこっちを見てくる。

 

「行かなければならないようですね。

紅魔の里に!」

 

めぐみんがカッコつけたポーズでまだ乗り気じゃない面子の方を振り返る。

 

 

「分かったよ。分かった。けどゆんゆん。

帰ってきたらお前にも屋敷やガレオンの掃除、手伝ってもらうからな?」

 

「しょうがねーな。ララティーナ。

紅魔の里ではダクネスで浸透すると良いな?」

 

「だ、誰のせいだと思っている!」

 

からかいもそこそこに一同は装備を整えると屋敷を立った。




次ーーッ回!第二十四話!

総一「あれがモンスターだって?」

リア「わ、私には無理です!」

オーク「男よ!男が三人もいるわぁあああ!」

和真「なんだこの数!なんでこんなにいるんだ!?」

ジョー「だから言っただろさっさと逃げようって!」

壮観アバレオーク!

総一「ちょっと嘘でしょー!」


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壮観アバレオーク!

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


「一刻も早くいきたいところですけど、

ガレオン最近機嫌悪いですよ?」

 

リアの発言に一同肩を落とす。

だが思い返せば前回のハンス戦の時は一番きつい囮をやらせていたわけだ。

それに思い切ったメンテナンスの機会も手に入れてから一度もなかったので痛んできてるはずである。

 

「仕方ないか。

めぐみんとゆんゆんだけでも先に送れないか?」

 

「そういえば、ウィズこの前確かアルカンレンティアにテレポート用のマーキングしてなかった?」

 

「ならそこまでショートカット出来るな。」

 

「んー、じゃあテレポートで行くメンバーは…」

 

リアは一同を見回す。

一番の当事者であるめぐみん、ゆんゆんは除くとして…。

和真。器用。

アクア。器用。だがそれ以上にトラブルを起こす。

ダクネス。不器用。

総一。普通。

ジョー。不器用。だが力はある。

ルカ。器用。ただし希少金属のパーツを盗む可能性あり。

 

「……。」

 

何という事だろう。

こんなにも精密機械を相手にするのに適さないパーティーもそう無い。

 

「……ジョーさんだけ残ってくれればいいです。

皆さん先に行っててください。途中で追いついて絶対に拾うんで。」

 

リアは努めて穏やかな笑顔で言った。

全てを察した和真はリアの肩に手を置き言った。

 

「気持ちはわかる。けどもう一人ぐらい貰ってくれない?」

 

「いやです。」

 

攻防虚しく和真はいつもの面子+ゆんゆんを率いてアルカンレンティアから歩いて紅魔の里に向かった。

 

 

 

「あー、懐かしい。ガレオン手に入れるまであちこち駆けまわってアクセル目指してた頃思い出すぜ。」

 

アルカンレンティアの外。

一同は仔馬の里に向かって徒歩で進んでいた。

なんでも厄介極まるモンスターの出るエリアがあるそうで、

紅魔の里に向かって走る馬車がないからだ。

 

「懐かしいわねー。ドンも確かどっかの誰かが道端でひっくり返って両手足を振り回しながら駄々こねたから買ったんだっけ?」

 

「ぷぷー!なにそれアンタまるで子供じゃない。」

 

「いやアクア…散歩のたびに宝物とか言って変な石とか拾い集めてくるお前が言えた事じゃねえからな?」

 

「それで、結局どれくらいかかるんだ?」

 

「歩きだけなら二日ってところですかね?

途中でガレオンが拾ってくれれば半日かかるかかかんないかぐらいですけど。」

 

「あれってそんなに早いの?」

 

なんて話しながら進んでいるとルカが急に立ち止まった。

 

「みんなちょっと待って。敵感知に一体引っかかった。」

 

すぐさま全員が武器を構える。

そしてルカと和真を先頭に進んでいくと…

 

「敵って…あそこに座ってる怪我した女の子か?」

 

「みたいっすね。あれ、擬態したモンスターですよ。」

 

和真とルカ以外の全員が驚きの声を上げる。

無理もない。その擬態モンスターと言われた者はどう見ても簡素なワンピースを着た傷だらけの少女にしか見えない。

 

「おいルカ、なんかめっちゃすがるような目で俺たちを見てくる女の子がいるけど、

あれがモンスターだって?」

 

「ええ。こいつは安楽少女っていって植物型のモンスターよ。」

 

そう言われてよく見ると、服や包帯は全て植物のような模様が見えた。

 

「筋力や速力は見てくれ通りだし、

特に攻撃してくるような敵ではないんだけど、

こいつが厄介なのがこうやって通りかかる連中に庇護欲を抱かせる仕草をすることなのよ。」

 

安楽少女と呼ばれたその子は今にも泣きそうな顔をしている。

総一は罪悪アkんを感じながらもヒールをかけようとするアクアを和真と二人がかりで止める。

 

「ちょ!なんでよ!薄情者ね!

この子が可愛そうに見えないの!?」

 

「思わない訳ないだろ!せめてルカさんの説明を全部聞け!

それで?こいつはその通りすがりの誰かに何をするんですか?」

 

「一説には高度な知能を有してると言われるほど演技上手よ。

離れようとすると泣くし、近付いてくれば安心したように笑うわ。」

 

「あ、ホントだ。ておいダクネス!モンスターだっつってんだろ!

近付いていこうとするんじゃない!」

 

「だって!だってお前も見ただろあの『もしかしてそばにいてくれるの!?』

みたいな安心した笑顔を!聖騎士としてけが人をほおっておくわけにも…」

 

「だから擬態だって言ってんだろ!」

 

「それで?あいつは人を侍らせて何がしたいんだ?」

 

「自分に生える神経性の毒を含んだ実を食わせて名の通り安楽死させるわ。

そして残った死体を苗床にして育つの。

その身の毒は本当に何の苦痛も感じなくなるから老いて死に場所探してる冒険者に人気の終の棲家って訳。」

 

「なるほどよくわかった。さっさと通り過ぎよう。

ほら行くぞ。あれは食虫ならぬ食人植物だ。ほら行くぞ!」

 

「な、何を言うんですか!

あの子が泣きそうな顔で手を振ってるのが見えないんですか!?

めぐみんあなたもなにか…あれ?もういない。」

 

「あ!あの馬鹿ども…何やってんだ!」

 

アクア、めぐみん、ダクネスは安楽少女を囲んでいた。

 

「痛いわよね?今傷を治して…あれ?これ全部模様だわ。

包帯も傷もそれっぽい形してるだけね…」

 

「よく見ると、岩に腰かけてるように見えるのも根だな。

先に実ってるのがさっき言ってた果実か。」

 

比較的冷静に事態を分析していたアクアとダクネスだが、

めぐみんが差し出した手を『触ってもいいのかな?』と、不安そうに顔を窺いながら握ったのを見て完全にやられてしまった。

 

「和真。」

 

「そうっすね。」

 

総一は両刃剣を、和真はブリンガーソードを引き抜き少女の後ろに立つ。

2人でせーのに振り下ろして頭を落す。

それで少なくともしばらく他の旅人が惑わされることは…

 

「ちょ!アンタたち何やってるのよ!

まさかこの子を経験値の足しにするつもり!?」

 

アクアが安楽少女の頭を抱きながら前に出る。

総一は隠そうともせず思い切り舌打ちをしてアクアの額に刃を向ける。

 

「退け。そいつはモンスターだ。」

 

「それも人が確実に死ぬタイプの。

倒したいんじゃなくて倒さないとダメなんだ。」

 

「た、確かに安楽少女の存在自体は私も知ってましたよ?

でもまさかこんな女の子のモンスターを傷付けませんよね?

アクセルの少年たちの憧れレッドレンジャーにブラックレンジャーがそんなことしません、よね?

そう…ですよね?」

 

まるで拾った子猫を保健所に行かせたくない子供の様に安楽少女の手を握ったまま訴えるめぐみん。

 

「アンタたちはそいつに苗床にされた人間を見たことないから言えるのよ。」

 

「いや、そうですけど…」

 

「いや、私はカズマたちに賛成だ。

こんなに高度な擬態をする狡猾なモンスター、ほおっておくわけにはいくまい。

死人が出る前に駆除しなくては。」

 

そう言ってダクネスは自分のゴーカイサーベルを取り出した。

そしてそれを大上段から振り下ろそうとした時

 

「コロ……スノ?」

 

小さく、したったらずな高い声で案吾r苦笑所はつぶやいた。

その声は目に真仁田を浮かべ、ものすごく不安そうな表情でダクネスを見上げる安楽少女からだった。

一瞬の硬直の後、汗をダラダラ流しながらダクネスは和真と総一の方を見る。

 

「お前までそんなんでどうするっ!」

 

と、苦々しく言う総一だが、彼も彼で罪悪感を感じるのか、

剣を持つ手にあまり力が入っていない。

仕方なく和真が剣を振り上げるとアクアが彼女の頭を抱きかかえて威嚇するように和真をねめつける。

いつかのベガベビー騒動と真逆の様相をていしていた。

 

「………。」

 

痛いような沈黙が場を支配する。

全員が苦渋の決断を迫られていた。

 

「ミンナ、クルシソウ…。ゴメンネ。

ワタシガ、イキテルカラ…ダネ。」

 

「行くぞ。」

 

総一の決断は早かった。

喚き散らすアクアとめぐみんを変身して引きずりその場を後にする。

残るメンツもそれに続いた。

 

「あー、参ったな。

危険なモンスターって言われても流石にあんなのは予想しないぜ。」

 

「だな。もうさっさと行こう。

あれの事は一刻も早く忘れて…あれ?」

 

「どうしたのソーイチ。まさか忘れ物でもした?」

 

「いや、俺じゃなくてめぐみん。

お前、いつもダイナマンのキーつけてる紐、切れてるぞ。」

 

「え?嘘!テレポートした時にはつけてたのに…」

 

「しょうがねえな。

俺、さっきの安楽少女のところまで戻ってみます。」

 

そう言って戻っていった和真は30分後ぐらいにレンジャーキー片手にホクホク顔で戻ってきた。

 

「みんなー!さっきの奴倒したらレベル3つも上がったぜー!」

 

全員に冷気が走る。

そして…

 

「カズマの鬼畜!鬼!外道の中の外道!

魔王が可愛く見える悪魔ー!」

 

「何が!何があればその判断に至るんですか!

非武装の敵を斬るとかあなたそれでもレンジャーですか!?」

 

「辛かっただろう…。

お前は、お前は冒険者としての義務を果たしたんだ…。

すまない、すまないお前だけに押し付けて…。」

 

その後彼の口から語られた安楽少女の狡猾な本性に若干センチな気分になる総一だった。

 

 

 

3

「はー、そんなことが。」

 

一夜明けた今日。

ガレオンで追いついたリア達と平原で合流する事が出来た。

 

「しかし残念だな。

お前たちの情けない様を見れなくて。」

 

「言ってろ。お前もあの場にいたら同じ目に遭う。」

 

アクア以外の女性メンバーが全員甲板に上がる。

自分たちも、と上がろうとすると、総一は和真の様子がおかしいのに気付いた。

 

「どうした?」

 

「囲まれてます。」

 

「…数は?」

 

「ちょっと数え切れないです。」

 

和真がそう言うと、どこに潜んでいたのか大群、いや大軍と呼んでも差し支えない数の醜悪な容姿のモンスターが現れた。

多少はRPGを嗜んだことのある総一はそれがオークだとあたりをつけた。

何故か、メスしかいないように見えるが。

 

「なんだこの数!なんでこんなにいるんだ!?」

 

「まさか、近くに集落が?」

 

「逃げるぞ。」

 

ジョーの判断にうなづく代わりに素早く抜いたゴーカイガンを一番前にいたやつの眉間に放った。

血の放物線を描いてそいつは真後ろに倒れる。

 

「バカ何やってんだお前!」

 

ジョーが総一の胸ぐらを掴み上げた。

何故か分からず困惑する間に、オーク達のボルテージが上がっていく。

 

「あの赤いの強いわね…」

 

「あっちの青いのはもっと…」

 

「緑が案外性欲強かったりするかしら!?」

 

「…なあアクア。この世界のオークってまさか…」

 

「オスの出生率が低すぎて多種族のオスを拉致して死ぬまで絞る男性の天敵よ。」

 

アクアの手を引いて3人は走り出した。

ガレオンに上げるわけにはいかない。

中に入られるなんて考えたくもない。

それ程までに見てくれも根性も悍ましい怪物達が追いかけて来た。

 

「男よ!男が三人もいるわぁあああ!」

 

「ちょっと嘘でしょー!」

 

「だから言っただろさっさと逃げようって!」

 

ジョーの叫びに総一はポケットからなんとかキーを取り出して2人にパスする。

 

「もうこれしかない!

あんな醜女どもで卒業しない為にもやるぞ!」

 

「「「ゴーカイチェンジ!」」」

 

<<<ラー《color:##221177》ーッイブ《/color》マン!>>>

 

変身した3人はそれぞれ専用バイクを駆り、オークの大軍とどうにか距離を作る。

 

「え!?ちょっと私も連れてっt」

 

大軍に踏み潰される仲間に感謝の敬礼を送り3人はマシンを呼び出す!

 

(BGM ライブロボの歌)

 

「ジェットファルコン!発進!」

 

「ランドライオン!発進!」

 

「アクアドルフィン!発進!」

 

出現した3台のマシンが変形合体。

地鳴りの如き着地音と共に屹立する。

 

「「「完成!ライブロボ!」」」

 

「では、今まで搾り取られた罪なき男性達に代わって!

ライブロボビーム!」

 

ライブロボの拳銃型武装から灼熱のレーザーが放たれる。

それはさっきまで追い立てる側だった大軍を次々クレーターと共に消し炭に変えていく。

 

「あは、ははは!はーっはっはっはっは!」

 

悪役じみた高笑いを上げながらビームを撃ち続ける総一。

悪ノリした和真ももう一つの腕で同じようにビームを撃ち始める。

 

(あれアクア生きてるかなぁ…)

 

いくらダクネス並みにしぶといアクアでも弱化を不安になるジョーだった。




次ーーッ回!第二十五話!

めぐみん、ゆんゆん「ようこそ紅魔の里へ!」

こめっこ「お姉ちゃんが男作って帰ってきた!」

あるえ「是非取材を!」

???「あら、あの子はあの時の…」

紅魔族と魔王軍

めぐみん「私がレッドで!派手に行きます!」


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紅魔族と魔王軍

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


「酷い!酷いわ!悪魔!本物の悪魔!

外道!アンタらレンジャーどころか人間として終わってるわ!」

 

「分かった分かった!今日一日この船長のみに許される革張りの良い椅子にどれだけでも座ってていいから機嫌直せ!」

 

「ちょ!カズマァ!それ俺が自腹で買い直した奴!」

 

ほくほく顔で総一の椅子にふんぞり返ったアクアに全力のひっだりフックをかまそうとする総一をどうにか押さえてどうにか話を区切った。

 

「さて、まさかオークを巨大ゴーレムで踏みつぶしてるとは思いませんでしたけど幸い三人共童貞のまま帰還したようですし、武器の用意とかしておいてください。」

 

と、そっけなく言うめぐみん。

 

「そんなこと言って顔真っ青にして『カズマ…』とか呟いてたくせに。」

 

「ちょ!何言ってるんですかルカ!でたらめ言わないでください!」

 

「ゆんゆんとは別ベクトルで大慌てだったじゃない。」

 

「リアまで!ダクネス!

私全然そんなことなかったですよね!?」

 

「私からは何も言えん。」

 

「ちょっとぉ!」

 

「ありゃ本当っぽいな。

アクア、でどうなん…アクア?お前何拗ねてんだ?」

 

「べっつに―。」

 

ジョーの問いかけにアクアは不機嫌そうに頬を膨らませた。

 

 

 

「すごい…本当に半日かからずついちゃった。」

 

甲板から集落の真上にやって来た一同はまだメンテがあると言って残ったリア、ジョー、を除いて地上に降りた。

 

 

「「ようこそ紅魔の里へ!」」

 

入口の門の前。二人が言うとゆっくりと門が空き

 

「かかった!ようやくだ!」

 

四方から多数の鎧を着た準人型の魔物たちが出て来た。

全員それなりに武装しているが…

 

「なにこいつら!全員下級の悪魔擬きじゃないの!」

 

「雑魚か?」

 

「ええ。けど鬼程度だと一周回って破魔の魔法が効きにくいからちゃんとした悪魔になるまで見逃してあげるのよね。」

 

「つまりお前役に立たないって訳か。」

 

そう言ってアクアの方を見もせず和真はブリンガーソードを抜いた。

仲間からの蹴りが痛い。抗議の声もうるさい。

 

「はいはい。じゃあいつも通りいきますよ。ほら!」

 

そう言って総一はめぐみんにモバイレーツとゴーカイレッドキーを投げ渡した。

 

「え!?いいんですか!?」

 

「せっかくの帰郷だ。思い切りカッコつけろ!」

 

「ええ!行きますよ!ほらゆんゆんも!」

 

「え、ええ!?」

 

「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」

 

「ご、ゴーカイチェンジ!?」

 

<<<<<ゴーーッカイジャー!>>>>>

 

「ゴーカイレッド!」

 

「ゴーカイブルー!」

 

「ゴーカイイエロー!」

 

「ゴーカイグリーン!」

 

「ご、ゴーカイピンク!」

 

「海賊戦隊!」

 

「「「「「ゴーカイジャー!」」」」」

 

「私がレッドで!派手に行きます!」

 

めぐみんの宣言と共に一斉に走り出す。

ピンク以外は。

おっかなびっくりにサーベルを振り回しながら逃げるように戦う。

 

「あちゃー。まあそうなるわよね。」

 

「ゆんゆん!バックルのスイッチを押せ!そしたらお前におあつらえのレンジャーキーが出てくるはずだ!」

 

生身のまま雑魚をいなしている二人からのアドバイスにゆんゆんは困惑しながらもスーツを確認する。

 

「バックル?スイッチ?あ、あった!」

 

ゆんゆんは何とか木に登って距離を作るとバックルからキーを取り出し、飛び降りなが変身する。

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

<マーーッジレンジャー!>

 

「マージ・マジーロ!」

 

マジステッキを構えて呪文を唱える。

マントが妖精の羽のような物に変化し、桃色の竜巻を巻き起こした!

 

「おいずるいぞ!それ前俺が試したときは扇風機になったぞ!

なんでゆんゆんはしっかり魔法っぽいんだよ!」

 

「アンタの魔力がへぼいからじゃない?」

 

「そうなのぉ!?」

 

落ち込みつつもしっかりたたっている総一。

横目で見ながらまあこれがうちのテンションだよな!と和真はジャンプで開けた場所に行くと自身も変身する。

 

<ギーーッンガマン!>

 

「黒の一撃!黒の衝撃!」

 

一閃、二閃。

黒い斬撃が鬼たちを切り裂く。

前方の敵が粗方いなくなると、武器を銃形態に変形。

高い防御を利用して銃剣技で近接を始める。

 

「カズマったらおもったよりやるじゃない!私も!」

 

アクアもこの前ハンスから奪ったキーを使う。

 

<ゲーーッキレンジャー!>

 

「技が彩る大輪の花!ゲキブルー!」

 

チェンジと同時に取り出した鉄扇、ゲキファンを構え…

 

「いくわよぉー!花鳥風月!」

 

くるん!と、その場で一回転し扇の先から水を小さな噴水の様に出す。

 

「ふ、ふざけてんのか!」

 

「かーらーのー!舞舞跳!」

 

敵が怒りで一瞬動かなかったところを飛び込み、

頭を足場に飛び回りながら斬りつけていく。

 

「私も行くか!」

 

<ラーーッイブマン!>

 

「ライオンパンチ!アタァック!」

 

最大の売りの豪快なパワーをこれ以上なく生かして敵を蹴とばした空き缶の様に飛ばしていくダクネス。

 

「さーて!やっぱり締めはレッド!つまりこの私!行きます!」

 

<シーーッンケンジャー!>

 

「烈火大斬刀!大筒モード!」

 

身の丈ほどもあるバツーカを構えためぐみんは残る悪魔擬きに向かって火炎弾をひたすら撃つ!

 

「『エクスプロージョン』ッ!」

 

更にその上にダメ押しの爆裂魔法が放たれる!

断末魔すらも爆風にかき消されて敵はほぼ一網打尽にされた。

 

「う…っ」

 

魔力切れで変身解除されためぐみんは前のめりに倒れる。

ギリギリ間に合った和真がそれを受け止めその背に背負った。

 

「たく、大筒だけにしときゃ良かったのに。」

 

「仕方ねえだろ。カッコつけたかったんだろうし。」

 

自分のモバイレーツとキーを回収しながら総一が言った。

それに変身解除した和真もそうっすね、と返す。

 

こうして和真たちはようやく紅魔の里に足を踏み入れた。




次ーーッ回!第二十六話!

和真(どうしてこうなった!?)

めぐみん「本当に何もしないんですか?」

アクア「いったい何の問題があるの?」

ジョー「……え?」

????「そいつを返せ!」

総一「そいつって、まさかこいつ!?」

ちょむすけ「なー!」

猫の手どころか全部寄越せ!

和真「俺、魔王軍に寝返る…」

一同「「「「はぁ!?」」」」


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猫の手どころか全部寄越せ!

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


「すいません族長殿、今なんて?」

 

「だからただの近状報告の手紙ですって!

書いてる途中でつい紅魔族の血が騒いでしまって普通の手紙にならなくてね!」

 

魔王軍を手早く片して里の周囲をうろついてた自称遊撃部隊(と、いう名のニートども)んみ連れられてやって来た族長の館にて。

はっはっはっ!と、ゴーカイに笑う族長を前に全く会話を聞いてないでうつらうつらしてるアクア以外の全員がぽかん…と、口を開けた。

 

「ゆんゆん、手紙にはこの手紙が届くころにはもう死んでるかもとか書いてなかったっけ?」

 

「う、うん。まさかあれも…」

 

「紅魔族特有の挨拶だよ。学校で習わなかったか?

あ、お前とめぐみんは成績が良すぎて早く卒業したんだったな!」

 

「そんな常識レベルの事一年の一番初めに教えなさいよ…」

 

「いやルカ。そこも突っ込むとこだがそもそも書き方がおかしい事に突っ込め。」

 

もう紅魔族はそうゆう物だとあきらめてるルカは肩をすくめてやれやれと首を振るだけだった。

他の面子もどこか遠い目でゆんゆんに関節技を駆けられ悲鳴を上げる族長を見ている。

 

「もういい。めぐみん、

この里どっか宿屋みたいな場所…無いか。」

 

「どうする?この大人数で行くわけにも…」

 

「誰か一人私を家までおぶって行ってくれるだけでいいですよ。

どうせ家に帰ってもシャバシャバの水で嵩増ししまくった雑炊しかありませんし。

皆さんにお出しするだけあるはずが…」

 

「「「「「……。」」」」」

 

「えっと…理由聞いても?」

 

「うちの父は魔道具職人なんですが、

腕は確かなのに毎度毎度お菓子なアイデアの浪漫武器しか作らないせいで毎月家計は火の車で…」

 

「さっさとガレオン戻るわよ!昨日ジョーが上げたドーナツまだ残ってたわよね!?」

 

「食料も買い込んでたはずだ!

行くぞお前ら!今日はめぐみん家で満漢全席だ!」

 

 

 

「母さん一番高いお茶!きっちっと人数分!」

 

「やだわあなた!家にお茶なんて一種類しかないじゃないの!」

 

三時間後、めぐみんと食材とお菓子を背負ってやって来た和真たちをめぐみんの一家は歓迎してくれた。

ちなみにそれぞれ和真、アクア、ダクネスが運んできた。

総一たちは『そんなに大勢で行っても迷惑だし、お前らの食う分減っちまうだろ?』と、断った。

 

「果たして正しかったのか…」

 

総一たちを連れてこなかったこと?

態々食材を大量に持参したこと?

それともアクアとダクネスを連れてこなかったこと?

 

「母さん、肉はワシに任せろ。白菜は美容に良いと聞く。

これたらふく食べていつまでも美しくいてくれ。」

 

「あらやだあなたこそ。最近頭が寂しくなってきてないかしら?

付け合わせの海藻サラダでも食べていたら?」

 

「ほんとうにぜんぶいいの?こんなうちのお父さんが三日三晩どころか三か月三十晩ぶっ続けで働かないと出てこないようなご飯たべていいの?」

 

「ええ!たんと食べなさい!

全部そこのカズマさんのおごりだから!」

 

「か、カズマ?私はその、恥ずかしながらちゃぶ台で鍋を囲むのが初めてなんだ。

その、これで合ってるか?何か間違えてないか?」

 

全部だ。

極限状態で生活をつづけた人間は久方ぶりの疲れ切った娘をほっておいて飯にしか目が行かなくなるようにさせるとか知りたくなかった。

アクアはめぐみんの妹(こめっこというらしい)に内を吹き込むか気が気じゃないしダクネスへの対応はハッキリ言ってめんどくさい。

 

(あー…けど、畳にちゃぶ台。

つついてるのは鍋。なんか、久しぶりに日本にいるみたいだ。)

 

若干郷愁に浸りながら和真はダクネスに箸を同時に二つ以上入れなければそんなに気にしなくていいとだけ言って純粋に食事を楽しむことにした。

 

 

 

一方その頃ガレオンでは。

 

「風呂お先っしたー。」

 

先に入浴を済ませた総一が着替えて出て来た。

唯一入っていなかったジョーが最後に入る。

 

「和真さんたち今頃何してるんでしょうか?」

 

「うまいもん食ってんだろ?

なんせこっちの食料大体あの怪力女神と筋肉乙女に積んだからな。」

 

「流石のアクアも生野菜をつまみ食いしないでしょうしね。

にしても里帰りかぁ…私らは出来ないからねー。」

 

「あー、物理的に不可能だもんな。」

 

総一は日本出身で、ルカとジョーは魔王軍に滅ぼされた亡国の民だ。

リアに至っては失われた記憶の彼方。

必然的に里帰りと呼べるレベルで古郷から離れてはいる人間はめぐみんだけになる。

 

「なあ、あのちび魔王をぶっ倒したらお前らの国に連れてってくれよ。

それが終わったら俺の故郷も案内してやるよ。」

 

「へー、いいじゃん。金目の物とか有んの?」

 

「まず金か!美味いもんとか景色良い場所とかもっとあるだろ。

とことん色気も食気もねえ奴だな!」

 

「まあそれがルカさんですしね。」

 

「それに!リアの故郷に行くまでの旅費ならいくらあってもいいじゃない。」

 

「……そーだな。」

 

「和真さんたち、付き合ってくれますかね?」

 

「付き合ってくれたらくれたで、

面倒だらけだと思うけどな。」

 

そう言って三人は笑いあった。

 

 

 

(どうしてこうなった!?)

 

場所を戻しめぐみんの実家にて。

和真が風呂に入ってる間に和真が屋敷に住んでる事とか結構な財産が有る事とか目を付けためぐみんの母、ゆいゆいの策略により酔いつぶれたアクアとなぜか急に糸が切れた人形のように眠りについたダクネスは居間に寝かされ、和真はめぐみんと彼女が昔使っていた部屋で寝ていた!

 

(マジでどうしよう…俺マジでどうしたらいいの?

そうだ!変身すればいいじゃねえか!

そしたら無理して一個しかない布団を使う事も…ん?

1つしかない布団?)

 

外はまだ寒く、意外と小さな風も馬鹿にならないこの異世界。

そして部屋には布団が一つ。

そして小柄な自分とめぐみんなら少し無理をすれば入れる。

 

(そう!これはお互いの命を守る為の好意でありやましい事は何もない!

そう何もないんだ!一切何にも!問題ない!)

 

自分のかえの服で二人分のモバイレーツとキーをくるんで部屋の端に放置厳重に保管し、布団にもぐる。

枕は一個しかないが、何にも問題ない。

 

(そう、大事なのは暖を取ること。

だからこうして手を握るのは何にも悪い事じゃない。)

 

後はゆっくりと眠りにつくだけだ。

そう思って和真はゆっくりと目を閉じて心を落ち着け…

 

「本当に何もしないんですか?」

 

「え?」

 

思わず横を見る。そこには目を閉じ動かないめぐみんの横顔しかない。

耳を澄ませてみても、規則的な呼吸の音しか聞こえない。

和真はもう一度目を閉じ心を落ち着けた。

 

「……鈍感。」

 

「聞こえてるぞ。」

 

生憎難聴ではない和真は普通の音量でそう返した。

 

 

 

「ふあー……寝よ」

 

欠伸を一つして総一はいつも通りベッドに剣を立てかけて布団にもぐった。

日本にいたころから丸まって寝る癖のある総一だが、ここ最近はそんなこともない。

 

「なー!」

 

「ネコもどき…お前また来たのか?」

 

いつも総一の腹の上で眠るこの魔物のような何かを総一は特に何もしていなかった。

朝起きた時にはいないし食料が荒らされてるわけでもない。

毎日とは言わないが掃除をしてても糞尿の跡が見つかったりもしないので、

この変な生き物に寝床を渡すぐらい問題ないか、と思っているのだ。

 

「それより早く寝よ。明日は観光がてら里を巡りたいし…」

 

と、つぶやき今度こそ寝入ろうとすると、派手にガラスを割る音が響く。

飛び起きた総一は枕もとの剣を引き抜き割れた窓にひっ掛かっていた縄を切り落とした。

野太い男の悲鳴が聞こえる。

 

(和真じゃねえ!間違いなく魔王軍!)

 

総一は何とかブーツだけ履くと部屋を出た。

 

「なんだお前も来るのか?」

 

「なー!」

 

「いいけど攻撃ぐらい自力で避けろよ?」

 

背中に乗ってきたネコもどきにそう言うと総一は居間に急いだ。

見るともう武装を整えた残り三人が集まっており、

一人の妙齢の女性の形をした魔物と対峙していた。

 

「赤き海賊団…まさかお前たちが持っているとは思わなかったわ。

本当はレンジャーキーだけ頂いて帰るつもりだったけど、予定変更ね。」

 

 

鞭を構えながらそう言う女魔物。

一同首を傾げた。レンジャーキーと自分たちの命以外狙われるようなものなどない。

 

「お前一体なんこと言ってんだ?」

 

「そいつのことよ!そいつを返せ!

お前の肩に乗っているこの私の半身を!

そうすれば私は完璧になる!湯治の必要なんて二ぐらいに!」

 

びしっ!と指さす先にいるのは、今しがたガレオンに入って来た総一のみ。

そしてその肩に乗っているのは…

 

「なー!」

 

「そいつって、まさかこいつ!?

このネコもどきが!?うそぉ!それに湯治って…てめえあのキチガイ温泉にスライム野郎と混浴してたやつか!」

 

何と魔王軍幹部の半身だった。

こんなサイズのこんな愛らしい見た目で。




次ーーッ回!第二十七話!

アクア「いったい何の問題があるの?」

ジョー「……え?」

和真「俺、魔王軍に寝返る…」

一同「「「「はぁ!?」」」

シルビア「これが私の真の姿!」

ウォルバグ「わ、私の半身…」

めぐみん「いやこれ今回消化しきれなかったとこ全部じゃないですか!」

和真「まー、新学期とワクチン副作用の中書いたんだしこんなもんです。はい。」


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逃走劇とダブルショック

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


1

じりじりと、魔王軍幹部の女、ウォルバグとその後ろからやって来た配下の魔物やゴーミンたちは四人の包囲を狭めながら近づいてくる。

なんとかレンジャーキーの箱の前に集まれた四人だったが、

この船を捨てるという選択肢もこの場で派手にドンパチやるという選択肢もとりたくはない。

 

「リア、一瞬で良いからバリアで方位に穴をあけろ。」

 

「総一さん何か策があるんですか?」

 

「ああ。かつて俺が一番好きなジャンプ主人公が教えてくれたとっておきが!」

 

リアはすぐさま槍を離すと神器の鍵盤に指を這わせた。

奏でられた聖なるメロディがウォルバグの真横にドーム状のバリアが貼られすぐに解除される。

一瞬だけゴーミンが押しのけられ道が出来た。

そこに総一はウォルバクの半身を抱えて滑り込み

 

「逃ーげるんだよぉおおおおお!」

 

「ええぇ!?な、なんて奴!半分はついてきなさい!」

 

ウォルバクはやむを得ず部下を先導し総一を追って行った。

 

「段々カズマと考えることが似て来たな。」

 

「ははは…ま、おかげでこっちの仕事は楽ですけど!」

 

「さーて無賃乗車の罰金は命で払わせますか!」

 

「「「ゴーカイチェンジ!」」」

 

 

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

<ジェーーットマン!>

 

レッドホークに変身した総一は追ってくるウォルバクの魔法をよけながら追撃してくる魔物やスゴーミンを撃ち落としながら紅魔の里を目指していた。

あそこは何度も魔王軍を退けているとあって腕利きぞろいだし迎撃装備も整っている。

上手く立ち回れば労力は半分で済む。

 

『警報!警報!上空より魔王軍襲来!

手の空いてるものはすぐにグリフォン像前に集合!』

 

流石は何度も戦ってるとあって対応が早い。

 

「調子に乗るなよ!『ライト・オブ・セイバー』!」

 

放たれた三日月形の魔法斬を引き抜いたブリンガーソードで弾く。

衝撃で一瞬姿勢が崩れるがすぐに体制を整え…

 

「かかったな!間抜けめ!」

 

背中、それも翼のギミックのある脇の近くに激痛が走る。

見るとブーメランのように戻ってきていた魔法斬が通り抜けていく

 

「うぉおおおおおお!」

 

「なぁあああああー!」

 

なんとか残った翼で近くの木の上に落下することには成功したが、それでも勢いが殺しきれず近くの建物の壁をぶち破ってその先に転がり込む。

 

「だぁあああああ!なんだ!?ってレッドホーク?」

 

「もしかしてソウイチですか?こんな遅くに何を?」

 

「お前らこそなんでこんな馬小屋で寝てんだよ…」

 

「う、うちの母屋です!」

 

顔を赤くしながらめぐみんが抗議する。

その間にウォルバグは残ったスゴーミンと共に降りて来た。

 

「ちょっとカズマ!こんな夜遅くに何をやってるの?

同居人の迷惑もかん、がえて…え?」

 

「これは敵襲!アクア!皆を起こしてこい!」

 

しかしアクアはなぜか呆然としたまま動かない。

何やらレンジャーの聴力でも聞き取りにくいぐらいの声でもごもごと何やら呟いてるばかりだ。

 

「あ、アクア?どうした?」

 

「なんでカズンとめぐみんが寝てるのよ?

布団が足りない?

そんなん変身すれば別に寒くなんかないわよね?

なんで?ねえなんで?

なんでどう考えてもその布団で密着してたのよ?」

 

「おい壊れたラジオみたいになってる場合か!

魔王軍幹部来てるんだぞ!これ持ってさっさと行け!」

 

なー!と悲鳴を上げるウォルバクの半身を受け取ったアクアはようやく我に返り奥に引っ込んでいった。

 

「お話は済んだかしら?」

 

「ああ!おかげさまでな。

って、あんたアルカンレンティアの混浴風呂にいた…」

 

「ウォルバグよ。よろしく。

ま、その案を呼ぶ余裕があるか知らないけどね!」

 

<<<<シーーッンケンジャー!>>>>

 

「あら、生きてるってことは持ってたのね。」

 

ウォルバグのつぶやきを無視して四人はポーズを取る。

 

「シンケンレッド!めぐみん!」

 

「同じくゴールド!七海総一!」

 

「同じくイエロー!ダクネス!」

 

「同じくグリーン!佐藤和真!」

 

「天下御免の侍戦隊!」

 

「「「「シンケンジャー!」」」」

 

「参る!」

 

 

 

「こっちこっち!走って!

眠くてつらいかもだけどみんな集まってるはずだから!」

 

まだ眠い目をこすりながらもウォルバクの半身を食べようとしているこめっこを背負ってアクアはめぐみんの両親と共に里の人が集まる方に向かっていた。

その上を風を切りながら大きな何かが飛んでいる。

 

「ガレオン!ジョー達も来てくれたのね!」

 

「んー…おお!おねえちゃん!

あれが寝る前に言ってた宇宙海賊船!?」

 

「ええ!頼もしい仲間が乗ってるの!」

 

船が止まると中から三本の鎖が伸びてジョー達が降りてきた。

 

「アクア!無事だったか。」

 

「めぐみんのご家族も大丈夫そうですね。」

 

ルカにこめっこを預けるとなんとかね、と言ってアクアは伸びをした。

 

「それよりジョーついてきて!

四人の加勢に行きたいわ!」

 

ジョーは無言で頷くとアクアの方に引き返す。

 

「ところでお前らはどうやって奴らの接近に気付けたんだ?」

 

「ああ。なんか撃ち落とされたソウイチがカズマとめぐみんが寝てた部屋に落下して来てそれでね。」

 

「……ん?ちょっと待て。

なんでカズマとめぐみんが同じ部屋で寝てるんだ?」

 

「さあ?同じ布団に入ってたしソーユー事なんじゃない?」

 

「お前…それ、いいのか?」

 

総一からソウジキジゲンの顛末を最近聞いていたジョーは不安げにアクアの顔を覗き込んだ。

 

「いったい何の問題があるの?」

 

「……え?」

 

その目は深淵より濁っていた。

そして口元は糸で縫い付けたみたいに吊り上がっていた。

端的に言って不気味なピエロの営業スマイルの方がまだ温かみを感じるような笑みだった。

 

「だって和真の血が後世に残れば本人以外にその血に連なる全員も私のエインヘリヤルに出来るじゃないの!

一体ごっほぉ!なんのぉごっほごほ門…だいが……」

 

アクアは中途半端に腰を折るその場に胃の中身をすべてぶちまけた。

水分は浄化されるが噛んだだけで消化されていない身はそうもいかず水気の多いおぞましい塊がはきだされる。

 

「…先に行ってるぞ。」

 

見なかったことにしよう。

なるべく視界を削ぎ落すよう走るスピードを上げながらジョーは戦う事だけを考えた。

 

 

 

「火炎の舞い!」

 

「木枯らしの舞い!」

 

「ダイゴヨウ十手打ち!」

 

イエローが魔法攻撃をすべてその肉体と剣で受けきり、攻撃の合間に残る三人が属性攻撃をいれていく。

 

「ふふふ!出来るようになったわねめぐみん!師匠として鼻が高いわ!」

 

「ッ!ウォルバグ…その名を聞いた時にもしやと思いましたが、そうでしたか。

師匠の対決とか紅魔族の琴線に触れまくるシチュエーションを自分から作ったことを後悔してもらいます!」

 

武装を烈火大斬刀に切り替え斬りかかるめぐみんしかしウォルバグは軽快な身のこなしで大降りの乱撃を避けきるとカウンターで腹部に攻撃魔法を至近距離で打ち込む!

 

「全く!しょうがねえなあ!」

 

めぐみんの腰にどこからか伸びた蔓が巻き付く。

和真がモヂカラで作ったが蔦だった。

それが一気に手繰り寄せられるとゴールドとイエローがフォローに入る!

 

「一人で暴れんな!」

 

「そうだ!もっと私が巻き込まれるように暴れろ!」

 

イエローが思い切りゴールドに足を踏まれているがまあ、時間は稼いでくれてるので良しとしよう。

 

「めぐみん、あいつが師匠だとかどうとか今は聞かない。

とりあえず落ち着け。勝てるもんも勝てねえ。」

 

「……ええ。すいません。

師匠があの地ビ魔王に操られてると思うと、つい…。」

 

「そうか…。だったら無理すんな!お前は下がってていい!」

 

そう言って和真は武器をウッドスピアに持ち変え突っ込んでいく。

めぐみんは歯を食いしばった。

ここでもし、自分が爆裂魔法を以外を使えたら。

そう思ってしまう。

 

「めぐみん!」

 

ゴーカイブルーに変身したジョーがやって来た。

手にはあらかじめ受け取っていたのかサーベルを二刀構えている。

 

「ジョー!他のみんなは…」

 

「避難先だ。あの女が敵で良いんだな?」

 

めぐみんはすぐに答えれなかった。

一瞬ジョーがいぶかしんでる間に轟音が響く。

 

見ると里の人間が非難した方向に煙が上がっている。

 

「あはははははははは!良い!良いっ!あんまりにも良すぎるわ!

これが私の真の姿!これが私の真の力ぁああああ!」

 

下半身が鋼の魚のようになった怪人が宙に浮いていた。

それは段々と大きくなり、声が野太くなっていく。

 

「ま、まさかあれって任務できてるって言ってたシルビア?

もしかして下半身以外に取り込んでるのって、わ、私の半身…うそ、でしょ?」

 

「……ちょっと待て。

アンタが魔王軍が送り込んだ幹部じゃないのか!?」

 

「私は半身がこの辺にいるって占いで出たから来ただけよ!

アンタらの船を襲ったのも単独行動をとがめられないだけの手柄が欲しかっただけ!」

 

「じゃあ、あれが手紙で言ってた幹部なのか?」

 

どうすんだアレ。

炎をまき散らし里を破壊しながら野太い笑い声をあげるキメラを呆然と見上げながら一同は固まるしかなかった。




次ーーッ回!第二十八話!

あるえ「里が、燃えてる…」

ウォルバグ「今だけ手を貸すわ。」

総一「足止めは俺らが!」

浪漫砲を発射せよ!

めぐみん「私なんかじゃ…」

和真「お前を信じる!」


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浪漫砲を発射せよ!

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


「里が、燃えてる…」

 

「私が、私はいくらルカさんにこめっこちゃんを人質に取られたからって小並コマンドなんて撃ち込まなければ―っ!」

 

紅魔族の人々が避難している方に戻ると、もう惨状は起こってしまっていた。

里のあちこちに火を付けられ、ぐったりしたルカとこめっこの前にリアが膝をついて叫んでいる。

 

「リア、ちょっとどう反応していいか分からないそれやめて。

それで何がどうなってああなったんだ?あいつの下半身についてるのなんだ?」

 

総一がリアを立たせてそう聞くと、

リアは若干てんぱりながらも顛末を話してくれた。

なんでも紅魔族の里の学校の裏にある謎の工場と呼ばれる遺跡にはかつて、魔王を倒すべく作ったあらゆる魔法を無効化する兵器が眠っており、それを乗っ取ったの事だ。

 

「それは分かったけどなんで小並コマンドなんてもんが出てくるんだよ…。」

 

「ドアのゲートを開くための魔道具とか言って完全にスーファミのコントローラーで…ゲーマーの血がつい!」

 

悔し涙を流して地面を殴るリア。

ノリと勢いで色々やらかしちゃう紅魔族的に同情できるのかそんなリアを里の人々は励ましている。

 

「総一さん、ずっと前から思ってましたけどリアって…」

 

「ああ。けど今はそんなことは重要じゃない。

k重要なのはそこのゲロの女神が「下手なチート持たせて送り出した誰かの置き土産が魔王軍の理になってしまってるって事実だテメエこの屑女神!」

 

「な!なんで私が悪いって決めつけるのよ!

それにゲロ女神ってなによ!私が触れた水は私自身が邪念を感じてない限りは浄化されるって言ったじゃない!

ゲロなんて酔ってないと吐かないわよ!」

 

「じゃあ残飯女神!

一つ聞くけどあのキメラ野郎をディスペルとかでどうにかできないのか?」

 

「無理よ!物理的に引っぺがさないと!」

 

「本気で言ってんのか?

言いたかないけど魔法使いの皆さん今ほとんど役に立たないぞ?」

 

「したがってスピリチュアルなパワーが由来のキーも効果は望めない。」

 

「そんな…」

 

「じゃあ俺たちは、里を捨てるしかないのか?」

 

燃え盛る里を見ながら誰かがつぶやいた。

その沈んだ声に感化されてか、次第に人々はうつむき、

お通夜のようなムードが伝播していく。

 

「今だけ手を貸すわ。」

 

その静寂を破ったのはなんと、敵であるはずのウォルバグだった。

総一と和真の前に立つと一本ずつキーを投げ渡す。

 

「ゲキイエローにゲキバイオレッド…。

前回の三本のうち二本とあわせてゲキレンジャーはコンプリート!」

 

「温泉の姉ちゃん…あんたどうゆうつもりだよ?」

 

「それで雇われなさい海賊。

私の半身を取り戻すまでは味方でいてあげるわ。

取り戻したらさっさとこんな里も出てってやる。」

 

「信じろって?魔王軍のアンタを?」

 

復活したルカが若干馬鹿にしたように言う。

まさか信じるとでも?と、態度で言っているようだ。

ウォルバグは無言で頷いた。

 

「オーケー。上等じゃない!」

 

そう言ってルカはモバイレーツを取り出した。

それに総一、ジョー、リア、ダクネス、アクアと続く。

 

「カズマ、策はあるか?」

 

「足止めだけなら皆さんに温泉の姉ちゃんとあと紅魔族の人たちがいれば十分だと思います。」

 

「ならさらに死ぬ気で働いてあの下半身もげればめぐみんの出番という訳か。」

 

拳を鳴らし気合を入れるダクネス。

 

「でも結局決め手に欠けますよね?」

 

「……かけですが、この里のどこかにあのキメラの下半身を作ったのと同じ物が作った超兵器があると聞きました。

それならもしかしたら…」

 

「決まりだな。足止めは俺らが!いくぞ!」

 

「「「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」」」

 

「行くよアンタら!

魔法使いの恐ろしさをあの盗人キメラに見せてやろうじゃないか!」

 

シルビアに向かって飛び出して行く総一たち。

めぐみんに案内されるまま和真は真反対の方向に走り出した。

 

 

 

「全員私に続いてください!」

 

<ドーーッラゴンレンジャー!>

 

ドラゴンアーマーで放たれる攻撃を弾きながら進むリア。

そこを残るメンバーが縦列になって進んでいく。

 

「く、くぅうう!羨ましいぞリアの奴!

魔王軍幹部の攻撃を正面から受けるなど武者震いが…」

 

「バカやってないでさっさと準備しろ!」

 

「全く、お前ぇは本当にぶれねえな!」

 

<<ゴーーッゴーファイブ>>

 

<シーーッンケンジャー!>

 

<ガーーッオレンジャー!>

 

<ターーッイムレンジャー!>

 

リアの型を踏み台にの折るメンバーは次々とジャンプしていく。

 

「ブイランサー!」

 

「ウォーターアロー!」

 

「イーグルクロー!」

 

「ベクターエンド!」

 

「ゴッドブロォオオオオオーーーーー!」

 

五人が一斉に技を放つ。

しかしシルビアはそれを鼻で笑うと軽く払うように腕から衝撃波を放って五人を払いのけた。

踏ん張ってイタリア以外の全員が背後に飛んで行く。

 

「く、くそ!明鏡止水!」

 

ジョーはなんとか空中で身を捻って強引に体制を整えるとアローから分裂する水の矢を放つ。

それは周囲に雨の様に降り注ぎシルビアの付けた日を次々消していく。

 

「行け!今よ!」

 

そこに遠巻きに見ていた紅魔族の人々が次々に上級魔法を叩きこんでいく。

爆炎や土埃が巻き起こるばかりでシルビアには大したダメージがあるように思えない。

 

「ねえ!これこのまま続けるの!?

この行為に意味はあるの!?これ絶対みんなの魔力が尽きる方が早いわよね!?」

 

「口より体を動かせ体を!」

 

<オーーッレンジャー!>

 

「ちょ!待ちなさいよソウイチ!」

 

<ラーーッイブマン!>

 

「はぁ…ルカ!ダクネス!まだいけるな!」

 

<アーーッバレンジャー!>

 

「誰に向かって行ってんのよ!」

 

<ハーーッリケンジャー!>

 

「カズマたちが来るまで耐える!」

 

<デーーッカレンジャー!>

 

魔法の炎を、氷を、雷を掻い潜りシルビアに肉薄する。

全く体力のそこも魔力のそこも見えない敵を前に総一たちはまるで山を崩そうとしているような気分になった。

 

 

 

「ここが謎の工場…本当にスーファミのコントローラーじゃねえか。」

 

謎の工場にたどり着いた和真はリアが嘆いていた通りにコマンドを撃ち込む。

 

「上上下下左右左右ほほーいほいほい。」

 

扉が開き、中に入れた。

おそらくシルビアが破壊しながら出ていったであろう大穴から月明かりが差し込み、十分探し物を探せそうだ。

 

「中は…これスーファミのカセット!?

それにゲームガールにワンダフルスワンまであるじゃねえか!」

 

「カズマはこれらの魔道具の使い方が分かるんですか?」

 

「分かるし使えるっつうか使いたいけど今はそれどころじゃない!

後で里すくったお礼ってことでもらって行きたいけどまずは手がかり探しだ!

なにか、なにかそれっぽい書置きとか有れと対になってそうな道具とか…」

 

そう思って涙をのみながらカセットや本体を払いのけ

 

「くそ!かき分けてもかき分けてもお宝しか出てこねえ!

めぐみん!そっちになんかなかったか!?」

 

「カズマカズマ!見てください!

なんか如何にもな古代文字で書かれた書物が!」

 

「こんな時でもぶれな…ってそれ日本語!ちょっと読ませて!」

 

そのノートは、一言で言えばこの工場の主だった男の日記だった。

転生特典のお陰で研究者の職を得られたはいいが、

国の金使ってせっせとゲーム作ってたのがバレかけてやばいといった旨のことが書かれている。

 

「へー、これ魔道具じゃなくて玩具んですね。

いくつかこめっこに持って行ってあげましょうかね…」

 

「お前こんな時に言ってる場合かよ…。

えーと?『俺の研究に予算付けてやるとか言ってきた。

流石世界を壊す兵器と偽ったゲーム機の軌道オンにビビりまくりだった人たち。

けどどうしよう。魔王に対抗できる兵器とか何作りゃいいの?』」

 

「で、作った簿外真シルビアが合体してるあれと?」

 

「本人の絵心が無かったせいで蛇っぽく見えたけど本人犬のつもりだったらしいぞ…。

しかもバッテリーが合わない欠陥使用。」

 

「浪漫兵器ですか!いいですね!」

 

(この男を雇ってた国はこんなんばっかだったから進んで改造人間になったんだろうな。)

 

このノートの書いてあることを信じるなら、紅魔族のルーツはエピソード記憶をなくす代わりに魔法適性を上げる改造を受けた人々だったらしい。

眼が赤かったりするのは完全にただのカッコつけの注文だったらしい。

 

「えー、なになに?

『なんか我々の天敵である魔術師殺しに対抗するための兵器が欲しいとか言ってきやがった。

ありあわせの部品で適当に作ろ。』」

 

「なんですって!ありあわせでもあるんなら使いましょう!

何かヒントみたいなもの書かれてませんか?」

 

「『やべえ、この兵器やべえ。

ただ魔法濃縮して打ち出すだけのライフルなのにめっちゃすげえ威力。

之こそ世界滅ぼすんじゃねえの?

まあありあわせのそれだから数発撃ったらぶっ壊れるだろうけど。

荷電粒子要素皆無だけどレールガン(仮)と名付けた。

ぱっとみ物干しざおくらいのサイズのライフルなのになんでこうなったんだろ?』」

 

そこまで読んだところでカズマは日記の一番後ろのページを捲り、そこに適当に絵をかく。

 

「なあめぐみん!こんな感じの物里の中で見たこと無いか?」

 

「これは…似たようなののもっと長い奴なら街の服屋が物干しざおにしてました!」

 

「ジャックポット!行くぞめぐみん!悪いが全速力だ!」

 

 

 

「秘剣!超力ライザー!」

 

「トリケラバンカー!」

 

シルビアは二人を纏めて尾の一振りではたき落とし、

魔法使いたちと一緒になってドルフィンアローで援護していたアクアの方に光弾を放って止める。

そして獣奏剣とディーナックルを持って突っ込んで来たリアとダクネスを、そして二人の作ったスキを突いて土の中から現れたルカも簡単にカウンターで吹っ飛ばし、大規模な攻撃魔法で変身解除まで追い込む。

 

「な、なんて奴!」

 

「あの図体で何て小回りだ!」

 

一同、なんとか武器を杖に起き上がる。

それを見てシルビアは嗜虐的な笑みを浮かべる。

このまま鬱憤を晴らすようにいたぶってやるつもりだろう。

 

「カズマからの合図なり連絡は?」

 

「まだだ。だが、それまでんなんとしても!」

 

当たりもしない剣を構え口を一文字に結ぶダクネス。

 

「……皆さん。どうやらこれしかなさそうです!」

 

リアは槍を捨ててしゃがんだまま神器を奏でる。

本来見方を守る為に展開されるバリアがシルビアの周りに張られる。

 

「これは!」

 

「皆さん今です!なんとしてもこいつは逃がさない!だから最大火力をぶち込んでください!」

 

「はぁ!?通じる保証なんかないぞ!」

 

「構わない!私の気力が持つうちに!」

 

そう言うリアは軽やかな指さばきでリズムを奏でるが、内側でシルビアが暴れるたびに苦悶の表情を浮かべ汗をにじませる。

 

「……お前ら、やるぞ!」

 

総一はそう叫ぶとモバイレーツとキーを構える。

残るメンバーもそれぞれ選んだキーを…

 

「ちょーっと待った!」

 

そこに肩で息をしながらレールガン(仮)とめぐみんを背負った和真が走り込んで来た。

 

「二人ともいいとこに来た!お前も加勢を…「ゲキレンジャー!」…なんて?」

 

「激気注入って技あっただろ!?

それをこのレールガン(仮)に爆裂魔法と一緒に込めて打ち出す!

めぐみんがアクアの分の魔力とダイナマンキーのパワーまで上乗せすれば実質二大戦隊のパワー+α!」

 

そう言って和真は問答無用でアクアからドレインタッチで魔力を抜き取るとめぐみんに移し始める。

 

「聞いたなお前ら!ウチの参謀の勘を信じる馬鹿はいくぞ!

おらアホ女神!お前も和真の頭を殴ってないでやるんだよ!」

 

「「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」」

 

<<<<<ゲーーッキレンジャー!>>>>>

 

「体に漲る無限の力!アンブレイカブルボディ!ゲキレッド!」

 

「日々これ精進!心を磨く!オネストハート!ゲキイエロー!」

 

「技が彩る大輪の花!ファンタスティックテクニック!ゲキブルー!」

 

「紫激気!俺流!我が意を尽くす!アイアンウィル!ゲキバイオレッド!」

 

「才を磨いて、己の未来を切り開く!アメイジングアビリティ!ゲキチョッパー!」

 

「「「「「燃え立つ激気は、正義の証!」」」」」

 

「獣拳戦隊!」

 

「「「「「ゲキレンジャー」」」」」

 

名乗り終えると和真にレールガン(仮)を渡されためぐみんの後ろにつく。

和真はレールガンを敷いたから支えるように位置どった。

 

「あの!かっこよくポーズまで決めて名乗ってましたけど私けっこう余裕ないんですけど!」

 

リアの叫ぶ。

それを聞いてゲキレンジャーは左右に分かれてめぐみんの肩に手を置き準備する。

あとはめぐみんが呪文を唱えて引き金を引けばいい。

だが、

 

「…おいめぐみんどうした?」

 

めぐみんはいつまでも引き金を引かない。

いい加減リアが死にそうな顔になっていてもなお渋っている。

 

「私なんかじゃ…。爆裂魔法何てネタ魔法じゃ…」

 

「めぐみお前!何こんな時に弱気になってんだよ!」

 

「里が!故郷が滅びようって時に!

学校で初級魔法に並んでスキルポイントの無駄とか言われた爆裂魔法が切り札ですよ!?

どう考えったって!もし、この一発が駄目なら…」

 

「…おいめぐみん、お前こんな道具使うパチモンの爆裂魔法すらびびってできねえのか?」

 

「カズマ?」

 

「爆裂道を究めるとか大口叩いてた割にそれか!

がっかりだぜ!こんなところでしり込みする腰抜けだったとはな!」

 

和真はあえて全員に聞こえるように声を張って叫んだ。

何やらひそひそと話し始める里の人間たち。

 

「は、ははは。言うじゃないですかカズマ!

いいでしょう!魅せてあげましょう!

本物には及びませんが威力は最高のこの一撃を!」

 

「ああ、お前を信じる!皆さん!」

 

「「「「「激気注入!」」」」」

 

詠唱が唱えられ、空に出現した激気を帯びた魔法陣がレールガン(仮)の後部に吸い込まれる。

 

<FULL!>

 

とメーターに赤い表示が現れた。

だが本来想定されていない激気をいれたせいか砲身が嫌な火花を立ててきしみ始める。

 

「も、もう無理…」

 

リアが力尽き倒れ伏すのとバリアが消えるのは同時だった。

毀れゆくレールガン(仮)から放たれたサンライトイエローの業火は断末魔すら飲み込みシルビアをこの世から完全に消し飛ばして消滅させた。

 

「これにて一件落着。」

 

「くらしのなかにしゅぎょうあり!」

 

チーン!と、こめっこがどこからか取り出したトライアングルを鳴らした。




次ーーッ回!第二十九話!

???「この私を誰の娘だと思っている!」

総一「ま、魔王の娘だぁ!?」

和真「あのチンチクリンの!?」

魔王の娘「違ぁう!」

デラツエイガー「お迎えに上がりましたよ。姫殿下!」

魔王城からの家出娘

めぐみん「魔王の娘も反抗期?」

ダクネス「なの、だろうか?」


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魔王城からの家出娘

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


「ふっ!やぁあああ!」

 

朝の冷たい空気に汗が飛び、刃が舞う。

激戦の翌日にも拘らずジョーは今日も鍛錬をかかさなかった。

 

「おや、ジョー。もう起きていたんですか?」

 

「めぐみんか。お前こそもう動けるのか?」

 

「爆裂魔法を撃てるほどではありませんが、一晩寝ればこんなもんですよ。

私は一回実家の方に戻るので、その旨伝えておいてくれますか?」

 

「ああ。あんなことが有った後だからな。

気を付けろよ。」

 

ジョーと分かれためぐみんはそのまま復興がもう始まっている里を通って実家に向かった。

え?いくら何でも早すぎやしないかって?

そんなことはない。

今回ぐらいの騒動なら紅魔族の技術力をもってすれば5日で直るだろう。

 

「だから!さっさとアクセルに連れて行けと言っているのだ!

貴様らの力ももってすれば簡単なことだろう!?」

 

「いや、それはそうだけどちょっと落ち着いて…」

 

「敬語を使わぬか!

この私を誰の娘だと思っている!」

 

そんな町の一角で何やら騒ぎが起きている。

見ると自称遊撃部隊のニートどもがのされており、

その下手人と思しき茶髪の少女が見覚えのある少女に詰め寄っていた。

 

「あるえじゃないですか。いったいこれはどんな状況なんです?」

 

「あ、めぐみん!久しぶり!いいとこに来てくれたわ!」

 

里の学校での同期のあるえはめぐみんを見ると茶髪の少女を振り払い、

彼女の手を取り茶髪少女の前に差し出す。

 

「あなた近いうちにアクセルの街に戻るのよね?

この子、アクセルに行きたいらしいから連れてって上げてくれない?」

 

「それは構いませんが…えっと、お名前は?」

 

「貴様こそな何者だ?

見た所このアホどもと同じくらいには頭の悪そうな格好をしてるが…」

 

「おい、このアホがそこで伸びてるニートどもの事を言ってるならちょっと紅魔族の本当の頭の良さを見せてやろうか?」

 

「ふん!質問に答えてない時点で阿呆だろうに。

この私は最初に貴様は誰かと聞いたんだ!」

 

「我が名はめぐみん!

紅魔族随一の魔法の使い手にして魔王軍幹部シルビアを屠りし者!」

 

ポーズを決め、高らかに名乗っためぐみん。

茶髪少女は一瞬呆けたが、すぐにその整った顔を憎々しげにゆがめてめぐみんを睨む。

 

「めぐみん?貴様めぐみんと言ったか?あの赤き海賊団の?」

 

「いかにも!少しは私の凄さが…」

 

「なら試してやろう!」

 

そう言って茶髪少女は思い切りめぐみんの横っ腹に蹴りを放つ。

咄嗟に持っていた杖で受けるが、あっさり当たった部分から折れて脇腹につま先が突き刺さる。

 

「ぐぅううっ!お゛!」

 

「め、めぐみん!?」

 

「『クリエイト・ウォーター』!」

 

騒ごうとしたあるえの眉間に詠唱とは裏腹に弾丸と見まごう速度で放たれた水の塊が直撃する。

受け身もとらずに真後ろに倒れて動かなくなる。

 

「ば、馬鹿な!紅魔族でもそんな事が出来る者は…」

 

「当然ね。この私を誰の娘だと思っている!」

 

「知りませんよ!あなたこそどこのどいつですか!」

 

「ふん!これだから浅学菲才の身という奴は…。

いいだろう!聞いて驚け!私の名前は…」

 

「お迎えに上がりましたよ。姫殿下!」

 

茶髪少女のセリフが遮られる。

見るといつの間にか周囲はゴーミンに包囲されていた。

ゴーミン達をかき分けて現れた青い渦を巻くような形の角の怪人が前に出る。

 

「デラツエイガー…貴様ずっとつけてきていたのか?」

 

「滅相もございません。たまたま見つけただけですよ。

さ、オイタはこの辺にして私共と城に…」

 

「帰りましょうとでもいうつもりか?

ほざけ!あそこに帰るなどという言葉を使う物か!」

 

そう言って茶髪少女は腰の剣を引き抜く。

 

「仕方ありませんねぇ。

少々手荒な手段を使うしかなさそうだ…。」

 

そう言ってデラツエイガーも大剣を引き抜き、茶髪の少女に斬りかかる!

 

「カズマ!」

 

「おう!」

 

茶髪少女を飛び越えデラツエイガーの前にアクアと和真が降り立った。

その横からダクネスとリアもやってくる。

 

「みんなどうして!」

 

「俺らも顔出しとこうと思って追いかけたら案の定、って訳だ。

お前らホント暇なんだな。ちょっとは俺らを休ませてくれるとかない訳?」

 

「そうよ!今日は和真に昨日いきなり魔力を吸ってくれちゃった責任としてこき使う予定だったんだから!

それを絶妙なタイミングで邪魔してくれて痛い!なんでぶつのよダクネス!」

 

「まあまあ。さっさと終わらせちゃいましょよ!」

 

めぐみん以外の四人はキーとモバイレーツを構えてポーズを取る。

 

「いただき♪」

 

「へぇ!?な、なんだって!?」

 

瞬きする間に和真たちの前通りめぐみんのそばに戻った茶髪少女の手にはゴーカイジャーのレンジャーキーが握られている。

 

「お前!いきなり何すんだ!」

 

「ふん!お前たちじゃどうせデラツエイガーにはかなわないから有効活用するのさ!」

 

茶髪少女はかつてバスコが使っていたラッパ型アイテム、ラッパラッターを取り出すと奪ったキーをセットして吹き鳴らす!

飛び出した五つの光はゴーカイジャーの姿を取って表れた。

 

「全く。オイタが過ぎますよ姫殿下。」

 

「姫殿下?え、ちょっと待ってください魔王軍にとっての姫ってことは…」

 

「まさか、あいつ娘ってこと!?」

 

「あのチンチクリンの!?」

 

「違ぁう!誰があんな童貞陰キャチビの娘だ!

童貞に娘なんているはずないだろうが!」

 

「た、確かに!」

 

「いやアクアさん、確認したわけじゃないでしょ?」

 

「魔王の娘も反抗期?」

 

「なの、だろうか?」

 

とにかく!と怒鳴ると魔王の娘はデラツエイガーを指さし

 

「そいつらを蹴散らせ!」

 

召喚されたゴーカイジャーたちはオリジナルと同じように武器を交換するとゴーミンの群れに向かって行った。

 

「私たちも行くぞ!」

 

「でもダクネスさん!魔王の娘逃げちゃいますよ!」

 

「リア!めぐみん!追え!ここは俺らでどうにかする!」

 

「どけ。俺の任務は姫様を連れ戻すことだけだ。

邪魔しなければ見逃してやる。」

 

「そうはいくかよ!

どっちにしろテメエが知らせたら益々来るようになるだろうが!」

 

「「「ゴーカイチェンジ!」」」

 

<<<ゴーーッセイジャー!>>>

 

「早く行け!」

 

「はい!めぐみんさん立って!」

 

まず和真が正面切ってスカイックソードで斬りかかる。

その肩を蹴ってランディッククローを装備したダクネスとシーイックボーガンを構えたアクアが飛び上がる。

 

「無駄なことを!」

 

デラツエイガーはボーガンのビームを弾いてダクネスを撃ち落とす、

とスカイックソードを素手で掴んで和真をアクアに放り投げる。

 

「カズマどいて!さっさと次行くわよ!」

 

<ターーッボレンジャー!>

 

Jガンを装備して高速移動からの銃撃を浴びせるアクアだが、

それ以上のスピードで振るわれる剣にビームをすべて返され地に伏せる。

 

「ならばパワーはどうだ!」

 

<ゴーーッゴーファイブ!>

 

ダブルベクターを構えて突っ込んでいくダクネス。

デラツエイガーは鼻で笑うと大股日葡踏み出しダクネスの頭を左手で掴むと軽々持ち上げ右の拳を叩きこんで吹っ飛ばす!

 

「な!?あんな重いダクネスがペットボトルみてぇに!」

 

「だ、誰がっ!重い女だぁ…装備が、重いと言い、なおせ……。」

 

なんとか着地したが、メットの顎部分にデカい亀裂が入る程の一撃を受けたダクネスは脳震盪を起こしたようでその場に尻もちをついてしまう。

 

「仕方ねえ!ここは逃げる!」

 

<ハーーッリケンジャー!>

 

ハリケンジャーにチェンジした和真は残る二人も連れてその場から空駆で撤退した。

追おうとするデラツエイガーだったが、背後の爆発音に振り返る。

みるとゴーカイジャーたちがゴー民共を全滅させていた。

 

「ふん!ゴーミンには荷重だったか。

だが、その程度でいきがるなよ人形!」

 

向かってきた五人をすれ違いながら斬り抜き、納刀。

火花を散らして崩れ落ちた五人は元のレンジャーキーに戻った。

 

「まあいい。姫様もまだそう遠くに入っていないはず…。」

 

キーを回収するとデラツエイガーは姫の後を追った。




次ーーッ回!第三十話!

ルカ「ゴーカイジャーのキーを奪われた!?」

魔王の娘「今日から私が船長よ!」

総一「はぁ!?」

ジョー「なんなんだこのガキ!」

ダクネス「なあ、魔王の娘っていつからいたんだ?」

デラツエイガー「黙って部屋にひきこもっていればよかったものを!」

和真「海賊への依頼、高くつくぞ?」

リア「その代わり、絶対成功させます!」

安らぎの為に

総一「紅魔の里最後の祭りだ!派手に、真っ赤で行くぜ!」


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安らぎの為に

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


「ゴーカイジャーのキーを奪われた!?」

 

『はい!なんでも魔王の娘だとかいう茶髪の子です!

今ガレオンの方に逃げてるんで挟み撃ちに!』

 

リアから連絡を受けたルカはまだ寝ぼけ眼の総一を叩き起こし準備を始める。

 

「魔王の娘ぇ?嘘つけ。あんな100パー童貞の上に絶対ムスコの長さ身長と正比例してそうなあいつに居るわけねえだろ。」

 

「そこは重要じゃないのよ!

あの手癖の悪さだけはいっちょ前のカズマから物パクってるのよ?

それもリアが神器で防壁をはることすら出来ずに!

能書きの真偽はともかく強敵には違いないんだから!」

 

「少しはものをまともに考えれる奴らがいるみたいね!」

 

如何にも高飛車で勝気な、それでいて凛とした声が響く。

見るといつの間にか総一がいつも座っている椅子に人形のようにきれいな茶髪の少女が座っていた。

 

「お前か!」

 

総一はすぐさま抜刀すると少女に斬りかかるが、簡単にスティールで剣を奪われた上に背後に回られ足払いで倒され頭をふんず蹴られる。

 

「ふん!決断の速さは買うけど喧嘩売る相手は選ぶことね!」

 

そう言っていつの間にか奪ったゴーオンレッドキーを見せつけるように左手でもてあそぶ。

 

「いつのまに!」

 

「ま、いいわ。どうせデラツエイガーに殺されてる三人よりは強そうね!

特別に下働きとして残してあげるわ!」

 

「何、勝手に言ってやがる…船長にでもなったつもりか!」

 

「ええ!今日から私が船長よ!」

 

茶髪少女はまた総一の椅子にふんぞり返るとレンジャーキーの箱の中からキーを適当にひっつかむとゴーオンレッドキーと合わせてラッパラッターにセットして吹き鳴らす。

ゴーオンレッド、ボウケンシルバー、ゴーグリーンが実体化。

少女は続いて自分の懐から二本のキーを取り出し、それも実体化させる。

ゴーオンイエローとイエローレーサーだ。

 

「はぁ!?なんでお前がそれを…」

 

「盗んで来たのよ!私なんかより低レベルな癖に王座にふんぞり返ってるあのチビからね!」

 

そう言って胸を張る少女に総一とルカは開いた口がふさがらなかった。

 

「さ!そこの二人以外はいらないわ!

デラツエイガーに殺されてなさそうな他のが戻ってきたらやっつけなさい!」

 

命令を受けた五人は倒れたままの総一を踏みつけながら部屋を出ていった。

 

 

 

「来ないな…」

 

朝練を終えたジョーはガレオンに戻ろうとその真下まで来ていたがいつまでも上る為の鎖が下りずに立ち往生していた。

 

「掃除でもしてるのか?あのソウイチとルカが?」

 

自発的にそんな殊勝なことをしている姿を全く想像できないジョーだったが、もう鎖は降りてこない物と考えたジョーはブルースワローに変身して甲板に戻った。

 

「ふう!久しぶりだと結構気持ちいな。」

 

変身を解除しながら入口のドアノブを回す。

触れた瞬間、ジョーの体に衝撃が駆け抜けた。

鋭い痛みが腕から体全体に回り、一瞬の硬直の後、火花と共に大きく後ろに吹っ飛ぶ!

 

「な、何とか逃げ切れうぎゃあああ!」

 

「痛ぁい!ちょ!ちょっと!なんで逃げた先からジョーがふっ飛んでくるのよ!」

 

「う、ううぅ…流石にこうも連続でキツイのが来ると、む、武者震いが!」

 

「股濡らしてんなこの淫乱!ジョーさん立てます?」

 

「なんとか…」

 

四人が立ち上がると、タイミングを見計らったように放送が入った。

 

『いい様ね!ま、デラツエイガーから逃げ切った生き汚さだけは誉めてあげるわ!』

 

「この声に物言い…まさかさっきの魔王の娘!」

 

『その悪運を見込んでアンタたちを私の手下にふさわしいかどうか試してあげるわ!

レンジャーキーを使わずに見事私の元まで来たらソウイチとルカより下…雑用の雑用としてこき使ってあげるわ!せいぜい頑張りなさい!』

 

一方的な宣言と共に放送が切られる。

アクアは顔を真っ赤にして飛び上がると腕まくりしながらドアに向かって行った。

 

「なんなのあの小娘!なんて傲慢で一方的なの!

自分が一番偉いとでも思ってるのかしら!ねえカズマ!」

 

「エエソウデスネホントウニヒドイヤツダナー…」

 

「カズマお前…」

 

「言いたいことぐらい言って良いんだぞ?」

 

「いいっすよ。ここでアクアにへそ曲げられてもめんどくさいですし…」

 

ジョーと同じ轍を踏んで吹っ飛ばされるアクアを遠い目で見つめながら和真は呟くように力なく言った。

 

 

 

「はぁ…はぁ…めぐみん走れる?」

 

「え、ええ。どうにか。」

 

リアはまだ脇腹のダメージの残るめぐみんを少しずつ休ませながら進んでいた。

 

「にしても…あの少女何者なんでしょう?

魔王の娘…とはだいぶ姿が違うようですが…。」

 

「…え?めぐみん魔王の娘の姿知ってるの!?」

 

「ええ。里の一番高い丘についてる望遠鏡から魔王城まで見渡せるんですよ。

丁度魔王の娘の部屋も見えてたんですけど、ある時からずっとカーテンが下りたまま開かなくなって…」

 

「そうなんだ…。じゃああの子は、どこの子なんだろう?」

 

『違ぁう!誰があんな童貞陰キャチビの娘だ!』という発言から察するに血縁は無いorあってもそう認めたくないレベルで険悪な仲、ということになる。

 

「誰?ではなくどこの子?ですか。

変わった気にし方をしますね。」

 

「私、昔のこととか思い出せなくて。

それで時々思うんだ。私はどこで何してたんだろう?って。

だからあの子も、そんな風に考えちゃう。」

 

「どこの子…ですか。

そう言えば、あの子は魔王城は帰る場所じゃないみたいなことを言ってましたね。」

 

「念のため総一さんたちに知らせましょう。

もしかしたら何か役に立つかもしれませんし。」

 

 

 

「ソウイチ!どこに言ってたのよ!」

 

「トイレだよ新船長。生理現象なんだから仕方ないだろ?」

 

「そう、まあいいわ!

それよりみなさい!あいつら結構頑張ってるわよ。」

 

モニター越しに見える和真たちはボロボロだ。

氷バケツや爆発に大量の毒虫など度を越えたいたずらレベルのトラップの数々にダメージも勿論だが、かなりの怒りを覚えているようだ。

魔王の娘はルカから奪ったモバイレーツを取ると放送をかける。

 

「いいわ!あとちょっとね!

そこを抜ければ私のいるとこまで来れるわよ!

けどそこまでね!」

 

スピーカー越しに指を鳴らすと四人を取り囲むように実体化させたレンジャーたちが現れる。

 

「そいつらに勝てたら約束通り下働きの下働きにしてあげるわ。

ま、死なないように頑張りなさいねー。」

 

『なんなんだこのガキ!』

 

ジョーのいらだった声を聞き終わるか終わらないかぐらいで魔王の娘は画面を落してレンジャーキーの箱を抱えるとルカの手を取った。

 

「ついてきなさい!あの紅魔族の頭悪そうなのと黒髪の子も試しに行くわ!

ソウイチ!留守番してなさい!」

 

「え?ちょ、ちょっと!」

 

有無を言わさずルカを連れて行った魔王の娘を見送りながら総一はため息を吐いた。

 

「ほっとけねえなチクショー。」

 

 

 

「あ!いたわ!ほらルカ急いで!」

 

「まちな!まちなさいって!急ぎ過ぎても仕方無いでしょ!」

 

めぐみんを負ぶったリアを見つけると魔王の娘はおもちゃ屋に走って行く子供のようにルカの手を引いて二人の下に急ぐ。

 

「その箱は…レンジャーキーの!」

 

「ええ!私がガレオンの船長になったからね!

お前らが私の船の乗組員にふさわしいか試させてもらうわ!」

 

ぴしっ!と二人を指さすのと、四人の周りに光弾が炸裂するのは同時だった。

 

「探しましたぞ。姫殿下。」

 

「デラツエイガー!貴様、もう追いついたか!」

 

「伊達に親衛隊隊長じゃありませんからね。

しかしそんな私をもってしてもあなたを探すのは一苦労だ。

黙って部屋にひきこもっていればよかったものを!

本当にお姉さまに似ずにお転婆ですな!」

 

「黙れ怪物!お前らなんかがお姉さまを語るな!」

 

ラッパラッターにキーを刺そうとする魔王の娘。

だが再びデラツエイガーが放った光弾に破壊されてしまう。

 

「さあ!海賊の首とあなたを連れて帰るとする!」

 

愛刀を構えて突っ込んでくるデラツエイガーだったが、それより早い何かがその前を通り過ぎていった。

 

「!?今のは…ッ!」

 

「サガスラッシュ!」

 

「ブイスラッシュ!」

 

サガスナイパーとVランサーの斬撃が降り注ぐ。

デラツエイガーは体を捻って避けると後ろに飛んで視界の悪い中から脱出する。

 

「もっとちゃんと狙いなさいよ!よけられてるじゃない!」

 

「お前も外してるだろくそ女神!

終わったこと気にするより切り替えて次行くぞ!」

 

ボウケンシルバーとゴーグリーンの正体は総一とアクアだった。

残る高速移動していた三人は和真たちだ。

どうやら今の攻撃はデラツエイガーからレンジャーキーを奪い返すためだけの物だったらしく、和真の手には五本のレンジャーキーが握られている。

 

「お前ら…ソウイチ!まさかお前レンジャーキーを隠し持ってたのか!?」

 

「いいや全く!力だけの張りぼてに負けっかよ。

俺らは海賊だぜ。弱っちいお前の家族と違ってな。」

 

「!!?貴様取り消せ!

お姉さまはっ!お姉さまは弱くない!

強くって、奇麗で!血縁の無い私にも優しくしてくれた!

お父様は私より弱かったし小者だったけど私を受け入れてくれた!

急に来たあいつらが奪った!全部!全部!」

 

「だから、魔王城に帰るなんて思わない、ですか。」

 

「そうだ!誰が強盗が土足で入ってきた家に住みがる!」

 

「そんで自分だけ逃げてきたのは、自分だけじゃ敵わないからか。

だからガレオンとキーを奪いに来た。」

 

魔王の、否、ただ家族を愛する少女は小さく頷いた。

 

「お前たち…私に力を貸せ。

あいつを、お父様の椅子にふんぞり返ってるあの屑を殺したい!」

 

「海賊への依頼、高くつくぞ?」

 

「その代わり、絶対成功させます!」

 

「命以外いくらでも積んでやる!だから、だからたのんだぞ!」

 

「オーケー!契約成立だ!お前ら!行くぞ!」

 

「「「「「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」」」」」

 

総一はアームドティラノレンジャーに。

ジョーはハイパーシンケンレッドに。

ルカはスーパーゲキレッドに。

リアはスーパーゴセイレッドに。

和真はデカレッドスワットモードに。

アクアは仮面ライダーオーズタジャドルコンボに。

ダクネスはゴーレッドバトライザーに。

めぐみんはレジェンドマジレッドに。

それぞれ強化変身を果たした。

 

「紅魔の里最後の祭りだ!派手に、真っ赤で行くぜ!」




次ーーッ回!第三十一話!

デラツエイガー「何人こようと結果は変わらん!」

総一「そいつはどうかな!」

魔王の娘「お姉様とお父様の仇!」

アクア「いい加減倒れなさい!」

復讐の狼煙

????「あれが海賊…」

和真「高貴な娘ってみんなあんなんなのか?」

ダクネス「そんなわけあるか!」


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復讐の狼煙

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


「何人こようと結果は変わらん!」

 

勢ぞろいした一同にデラツエイガーは拡散型の光弾を放った。

彼から見ればデカい的も同然に見えただろう。

まず真っ先にアームドティラノレンジャーが前に出る。

アーマーから菱形のバリアを展開して光弾を背後に逸らす。

 

「いけ!」

 

「ええ!」

 

「はい!」

 

反動を殺し切れず膝をついた総一以外の全員が飛び出る。

まずはレジェンドマジレッドとスーパーゴセイレッドが前に出た。

 

「ジー・ゴル・マジボルト!」

 

「カエントルネードカード!天装!」

 

二つの業火がデラツエイガーを襲う。

強靭な筋肉に興梠ックな防御スキルを持つ奴には足止めにしかならないが、それで十分。

 

「はぁああ!」

 

『双』のディスクでキョウリュウマルを二刀構えたハイパーシンケンレッドが炎をかき分け切り込む。

大パワーによる圧倒を得意とするデラツエイガーの手首に伸ばした刀身を絡める鞭術のような動きも交えながら翻弄する。

 

「この!小癪な!」

 

「小癪?その程度でか!」

 

ハイパーシンケンレッドの肩を蹴って真上からデカレッドスワットモードがディーリボルバーを乱射する。

顔面を集中的に狙われた上に顔の周りの角で跳ね返り、ますます視界を悪くしたところに

 

「うぉおおおお!」

 

いくら不器用でもブースターの加速で真っ直ぐ突撃するくらいならゴーレッドバトライザーでもできる。

デラツエイガーの腰に渾身のバックタックルを決めてしがみつく。

 

「この!離せ!離さんか!」

 

「くぅうう!離さん絶対離さんぞ!

ああ!今兜からひび割れのような音がした!

このまま脳天部分を壊され破片を頭皮に食い込ませるように執拗に何発も何発も打撃を喰らい続けるかと思うと武者震いが…っ!」

 

「そんなことになる前に行くわよ!」

 

「ええ!」

 

最後にスーパーゲキレッドとオーズタジャドルコンボの番だ。

それぞれ上下からトップスピードで迫る。

 

<スキャニングチャージ!>

 

「激気技!スーパータイガー撃!」

 

「セイヤーッ!」

 

 

ゴーレッドのタックルと真反対から迫る二人。

デラツエイガーはまず空から迫るオーズに剣を投げつけ叩き落とし、

スーパーゲキレッドの腕を掴むとアッパーカットを叩きこむ。

そして渾身の力でクラッチを切りゴーレッドも振り払うと、まだ体のしびれの抜けきっていないアームドティラノレンジャーに向き直る。

 

「やっぱり、敵わないのか?

デラツエイガーは、強すぎるのか?」

 

「舐めたマネをしてくれおって!

いや、侮ってないからこそこの連続攻撃で仕留めたかったのだろうが惜しかったな!」

 

「そいつはどうかな!ゴーカイチェンジ!」

 

<ボーーッウケンジャー!>

 

総一はテクターボウケンレッドに変身してデュアルクラッシャーを構える。

 

「ふん!そんな体でその武器を使うか!

己の状況も分析できんとは愚かな!」

 

「ドリルヘッド!シュートォ!」

 

乱戦上のビームを放つレッドだが、どうしても反動で狙いがぶれ、直接デラツエイガーを捉えるには至らない。

 

「くっそ!おい姫様!アンタのパワーなら反動気にせず打てるだろ!」

 

「わ、私が!?馬鹿言うな!相手はデラツエイガーだぞ!

お姉さまも叶わなかったような相手だぞ!?

当たったところで勝てるわけ…」

 

「勝てるとか勝てないとかじゃあねえんだよ!

気に食わねえかそうじゃねえかだ。

アイツの表情筋あるかない分かんねえ面ゆがめてやろうって思わねえのか?」

 

「それは…」

 

「何をぐちゃごちゃと…末期の祈りは大声で言う事だな!」

 

接近したデラツエイガーの左ストレートが放たれる。

咄嗟にデュアルクラッシャーを盾に受けるが、一撃でデカいヒビが入り、使い物にならなくなる。

 

「くっそ!」

 

素早くサバイブレードを引き抜くレッドだったが、すぐさま太刀取りで奪われ逆に斬撃を受ける。

 

(なんて切れ味!テクター無きゃなます斬りにされてる!)

 

「いい鎧だ…だが何合持つかな!?」

 

「させるかぁ!」

 

追いついてきたメンバーたちが援護するが七対一にも関わらずデラツエイガーは防戦にこそ徹するものの、全く疲れる様子も、不利な様子も見せない。

 

「ソウイチ!しっかり!言ったでしょう!?

勝てないって!逃げよう!あの船なら逃げるだけなら…」

 

「確かに、束になって漸く勝算有るか無いかだな…」

 

「だったら!」

 

「敵はレンジャーキーを蓄えたら蓄えただけ強くなる。

あのボディならキャパもかなりあるだろう…。

今のうちに倒さねえと倒せなくなる!」

 

「本気で言ってるのか!?

奴は今の魔王軍の中でも屈指の実力者だぞ!

それを変身してても10人足らずで倒すなんて…」

 

「お前が強いてる無茶だ!

お前が諦めてどうする!」

 

ズバーンを構えた総一は仲間たちと共に突っ込む。

しばし呆然とその様を見ていた魔王の娘だったが、やがて大きく息を吸うと震える腕を一度だけ強く殴って壊れかけのデュアルクラッシャーを拾い上げて叫ぶ。

 

「私は、私は偉大なる魔王の娘にして!

次期魔王ヴラックの妹、ワルズ!お姉様とお父様の仇!」

 

「下手に出てればつけあがりよって小娘がぁあああ!」

 

デラツエイガーは分かりやすく叫んで突っ込んで来たワルズに剣先を向けるが、横から飛びついて来た海賊たちに阻まれる。

 

「食らえ!」

 

灰色のエネルギー弾が放たれる。

それはデラツエイガーの顔面を捉えると高質化して五感の半分を一気に奪う。

 

「チャンスだ!一気に決めるぞ!ジョー、ルカ、リア!」

 

「ああ。」

 

「オッケー!」

 

「行きます!」

 

<<<<オーーッレンジャー!>>>>

 

 

「秘剣・超力ライザー!」

 

「電光・超力クラッシャー!」

 

「疾風・超力ディフェンサー」

 

「キングトルネード!」

 

斬撃と突進を二回ずつくらい完全にバランスを崩すデラツエイガー。

そこに和真たちが畳みかける!

 

「アクア!ダクネス!行くぞ!

めぐみん!フィニッシュはお前が!」

 

「ええ!」

 

「おう!」

 

「お任せを!」

 

<<<ラーーッイブマン!>>>

 

「「「トリプルバツーカ!」」」

 

「ファイア!」

 

超硬度を誇る改造された肉体にひびが入り、血が噴き出る。

かすかに取り戻された視界でデラツエイガーが最期に見たのは

 

「紅き黒炎、万界の王。天地の法を敷衍すれど、我は万象昇温の理…」

 

「崩壊破壊の別名なり。永劫の鉄槌は我がもとに下れ!」

 

「!…ふっ、我が深紅の流出を以て、白き世界を覆さん!」

 

「無謬の漆黒!今、我が怨敵を穿て!」

 

「「『エクスプロージョン』ッ!」」

 

2人の少女の放ったあまりにも暴力的な爆焔だった。

 

 

 

「我が怨敵を倒すため良くぞ命を懸けて働いてくれた!

褒めて遣わす!これはせめてもの礼だ!受け取るが良い!」

 

そう言ってワルズは総一たちに一本づつキーを渡した。

 

「ピンクターボ、シグナルマン、ギンガレッド、タイムブルー、

ガオブラック、アバレイエロー、デカグリーン、マジマザー…こんだけ最初からありゃ結構楽に勝てた気がするけど?」

 

「まあそう言うな。褒美なのだからありがたく受け取っておけ。」

 

「まあ、アンタが言うならそうするけど…これからどうするんだ?

言っておくけどガレオンはもう満員だぞ?」

 

「分かっている!これからはお前らに負けない戦隊を作るために各地を旅するつもりだ。

それまで倒されてくれるなよ?」

 

「そっちこそ!てか、その場合変身アイテムとかどうすんだ?」

 

「ま、とりあえず一個あればいいな、『窃盗』。」

 

ワルズは和真の方に手を向けてかれの得意技を放つ。

和真のホルスターから重みが消えて、彼女の手に見慣れた携帯電話が現れた。

 

「な!?お前それ?」

 

「スキル、『潜伏』」

 

「な、なぁ!嘘だろおいマジで言ってんのか!

どこだー!どこに行った!返せ!返せ俺のモバイレーツ!」

 

「最後まで人騒がせな姫様だったわね…。

ん?ソーイチあんたどうしたの?」

 

「やられた!ニンジャホワイトのキーもない!持ってかれた!」

 

いたずらっぽく笑うワルズの顔を想像して一同がっくりと肩を落とした。




次ーーッ回!第三十二話!

和真「あれは…」

三人「「「恐竜!?」」」

アクア「いやどう見てもメガゾードでしょ!?」

ジョー「どうしたダクネス?顔色が悪いが…」

ダクネス「まさか、あそこにいるのは…」

????「ララティーナ!手を貸して!」

カスモシールドン「頼む!俺の相棒を元に戻すのを助けてくれ!」

ガルヴィディ「無駄だ!この世界は氷におおわれる!」

氷のアバレ竜

総一「氷の恐竜!ドリルで大暴れ!」


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氷のアバレ竜

冒険とロマンを求めこの世界を往く若者たちがいた。
悪の帝国魔王軍に敢然と反旗を翻し、
海賊の汚名を誇りとして名乗るゴーカイな奴ら!
その名は!


時間をかなりさかのぼり、赤き海賊団がようやく形になった頃、この世界に神やその周囲の者が正式に送り出していない者がこの世界に流れ着いた。

 

「う、うぅっ!おのれ…おのれ憎きアバレンジャー!

ゆるさん、ゆるさんぞぉおおお!」

 

その者は細身の怪人だった。

腕から延ばしたカギ爪を「振り回して一しきり八つ当たりを済ませ、

クールダウンすると足元に落ちる何かに気付いた。

それを拾い上げると、何かに気付いたのか怪人、ガルヴィディは身を震わせて

 

「これは…はは!はははは!

いいじゃないか…待って居ろ!必ずや他のも集めて必ず目にもの見せてやるぞ!

アバレンジャー!そして今度こそ!世界を氷に閉ざしてやる!」

 

そう言ってガルヴィディは去って行った。

 

 

 

久しく帰っていなかった、その上掃除も途中で放り出してきたゆえに埃っぽい我が屋敷の応接間で佐藤和真は頭を抱えていた。

その反対側に座る七海総一の顔も渋い。

 

「ソウイチさん、その話マジっすか?」

 

「マジだ。全部、凍り付いてた。」

 

魔王の娘、ワルズに変身アイテムを奪われた和真に予備のモバイレーツを渡そうとしたのだが、案の定、恐らく魔王軍の手によって預けていた知り合いのプリーストごと溶けない氷で凍らされてしまっていたのだ。

 

「どうだったんすかそれ?」

 

「常温だったけど触った感触は間違いなく氷だった。

けど溶ける様子は全くない。

うちのスペック以外ロクにあてにならないアークプリーストが言うには生きてるし呪文破りも通じなくはないだろうけどレンジャー由来の力だからこっちのルールを強引に当てはめるとどうなるか分かんないってさ。」

 

ため息を吐いて肩を落とす和真。

 

「俺、しばらく変身できないんすね…。」

 

「一回怪人を妊娠してて戦えなかったとき有っただろ?

それに比べりゃずっとましな状況じゃないか。

休めるチャンスだとでも思っとけ。」

 

「いやベガベビーの時と比べないでくださいよ!

あれとはどう考えても別ベクトルの問題でしょ!

その氷の敵だってどお考えてもデラツエイガーの件で報復に来た連中だろうし!」

 

「そうは言うけどお前そんな真正面か突っ切るタイプでもねえだろ。

潜伏しながら援護射撃してくれるだけでもいいから。」

 

「いやでも…」

 

なお食い下がろうとする和真だったが、青い顔をして飛び込んできたダクネスにかき消された。

 

「どうしたダクネス?顔色悪いぞ。

新たな快感を求めて毒草でも拾い食いしたか?」

 

「いくら私でもそんなことするか!

王女様から…王女様から……」

 

「なんだって!?」

 

和真は勢い良く立ち上がるとダクネスに駆け寄り

 

「お前まさか王女様にすら自分のドM性癖を隠してなかったのか!?

それはおとりつぶしにされても仕方ないぞ!」

 

「お前らさっきから私をなんだと思ってる!?

苦手だが社交界のマナーぐらいわきまえてるわ!

晩さん会の招待が来ただけだ!」

 

「じゃあ何が問題なんだよ?普通に行きゃいいじゃねえか。

下手に断って相手の印象悪くしたらそれこそ王に翻意有りだろ?」

 

「それは正しくソウイチの言う通りなのだが…」

 

片頭痛を覚えたように右側頭部を押さえながらダクネスは苦しそうに言った。

 

「ぜひ、赤き海賊団全員で来て欲しいと…」

 

この時、和真と総一は揃って全く同じ想像をしていた。

変なカッコつけを作法とか色々無視してやらかして連行されるめぐみん。

急に手品とか魔法を使い始めて衛兵にその場で斬り殺されるアクア、

金品をちょろまかしてさっさと質屋に売りに行こうとするルカ。

そして当然それを連れて来た他の五人もたちまち取り押さえられ…

 

「「やばいな。」」

 

「ああ。やばい。どれぐらいやばいって前にあの身長の無い魔王に皆が捕まった時ぐらいやばい。」

 

「けどそれってあいつら連れて行かなければいいだけの話だろ?

このまま黙ってれば…」

 

「無理だ。もうみんな知ってる。」

 

「それってルカもか?」

 

「ああ。」

 

「他の連中、特にアクアやめぐみんはなんて?」

 

「ドレスなんて持ってないから仕立てようとか、自慢の宴会芸が水を噴くとか、紅魔族流の派手な登場がどうとかもう大はしゃぎだ…。」

 

恐らく置いていこうものなら拗ねて暴れて挙句勝手についてきて目の届く範囲にいる時よりもひどい事をやらかすに違いない。

具体的に言えば近衛兵に女神を自称して大げんかになるとか敷地内で爆裂魔法をぶっ放すとか平気でやらかす。

 

「どうする?」

 

「あの馬鹿ども普段は左斜めの方向に頭良すぎて基本馬鹿のくせに物覚えは良い。

何か別の、とんでもない事態では起きない限りは…」

 

『緊急事態発生!緊急事態発生!大型の龍型魔物出現!

冒険者の皆さんは至急ギルドに集まってください!繰り返します…』

 

「渡りに船とは喜べないっすね。」

 

「だな。」

 

 

 

ギルドに行くともう既に大体の面子は集まっており、三人が席に着くとほどなく係員から説明が始まった。

 

 

「お集りの皆さん!本日は、

緊急の呼び出しに応えてくださり大変ありがうございます!

只今より、ドラゴン型モンスター討伐の、緊急クエストを行います!」

 

曰く、王国の騎士が追い立ててる手ごわいモンスターがこっちに来てるとか何とかでその足止めが今回の任務との事だった。

 

「サイズはガレオンより小さいぐらいで、

武器はデカい顎に長い尻尾。

特徴は足に対して小さすぎる前脚に襟巻、か。」

 

「んー…どっかで聞いた特徴っすね。」

 

「和真さんも思います?

私もなんですよ。どこでしたかねぇ…」

 

「俺はそんな魔物聞いたことないが、

ニッポンにいる魔物なのか?」

 

「なーに。敵の正体なんてどうでもいいじゃない。

アンタたちにはこのアクア様がついてるのよ?

大船に乗ったつもりでいなさい。」

 

「泥でできてそうだなその大船。」

 

「違いない。」

 

「ちょっと!ソウイチはともかくダクネスまで!」

 

斥候に任命された総一、ジョー、リア、和真、アクア、ダクネスの五人は龍が隠れるかもしれない森の中を探索していた。

 

 

「ッ!ストップ!敵感知に引っ掛かった!

全員脇に避けろ!すごいスピードで来る!」

 

全員武器を取り出しながら転がる。

耳を澄ますと、段々と振動のような物が聞こえだす。

それは次第に地鳴りのような物に変わっていき、気が千切れる音や岩が文壊される音までも聞こえてくる。

そしてついにそれは五人の前に姿を現した。

 

『ギャオオオオオオオオ!』

 

「あれは…」

 

「「「恐竜!?」」」

 

その姿はまさに多くの現代人がイメージする典型的なティラノサウルスに襟巻を付けたような外観をしている。

ただし体全体が白や青系統の寒色をしていて、

色も質感も生物的でない皮膚で覆われている。。

 

「いやどう見てもメガゾードでしょ!?」

 

「和真下がっろ!残り全員変身だ!」

 

総一の司令に全員モバイレーツを取り出そうとした時、また別の地鳴りが響く。

和真を見ると敵感知に引っ掛かってないのか首を横に振った。

先に現れた青い目がゾードに続いて現れたのは白いメガゾードだった。

トリケラトプスの角を短くした分、襟のところを大きくしたような奴だ。

その上に、人が乗っている。

日光に輝く長い金髪を三つ編みにまとめたあどけなく可愛らしい少女だ。

 

「やっと!追いついた!カルノリュータス!」

 

そう言って少女はアバレンジャーの共通武器、アバレイザーに似た剣を抜刀する。

 

「まさか、あそこにいるのは…」

 

「どうしたダクネス?顔色が悪いが…」

 

「ダクネス?…ッ!ララティーナ!手を貸して!」

 

ダクネスを本名で読んだ彼女は乗って来たメガゾードを降りると青いアバレイザーを片手にカルノーリュータスと呼ばれたメガゾードに向かって行く。

ダクネス、アクアにジョーが変身しながらそれに続く。

ワンアクション遅れた総一たちの元に

 

「頼む!俺の相棒を元に戻すのを助けてくれ!」

 

「喋った!このトリケラトプスの親戚みたいなの喋りましたよ!」

 

「ああ、喋ったな…」

 

「なあ、あっちの青いのは喋れないのか?」

 

「無理だ…あいつは、吹雪石に心を凍らせられちまった。」

 

悲しげにつぶやく白いメガゾード、カスモシールドンに和真を頼むと総一とリアもカルノリュータスに向かって行った。




次ーーッ回!第三十二話!

和真「なんでアイリスはあの子たちを助けたいと思ったんだ?」

アイリス「寒いのは、怖いし嫌ですね。」

総一「つまり、そうゆう訳か。」

アクア「けど相手が悪かったわね!」

ガルヴィディ「な、なに!?」

和真「ゴーカイチェンジ!」

凄い銀色の変身!

和真「ギンギンで行くぜ!」


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【予告】スーパー戦隊このすばフォースIF 魔王再臨

テン・ゴーカイジャー、最光でしたね…。
キャストどころかスーツアクターまで全員当時と同じとか…。
欲を言えば大いなる力も使ってほしかったなぁ。


????「ヨホホーイ♫」

 

????「兄貴早く!」

 

総一「まてぇこの金ぴかぁ!」

 

アクア「返せー!」

 

レンジャーキーを盗んだ界賊を追って並行世界にやって来た赤き海賊団。

たどり着いた先で待って居たのは…

 

リア「私たち、指名手配されてますよ!!」

 

黒衣のジョー「ナナミ・ソウイチら赤き海賊団を確認。生死度外視で排除する!」

 

赤き海賊団を魔王軍の残党として追う並行世界の仲間たちだった!

 

総一「一体この世界で何があったんだ?」

 

眼帯の総一「俺たちがあのチビ魔王とその取り巻き共を滅ぼしてから10年…どいつもこいつもすっかり変っちまったよ。」

 

膝から崩れ落ちる回想の眼帯総一。

燃え盛るゴーカイガレオンを呆然と眺めている。

 

近衛兵「赤き海賊団は世を脅かす悪だ!」

 

子供「本当に悪い奴なの?」

 

黒衣の総一「さあな。」

 

黒衣のルカ「悪いわね。商売敵には死んでもらうわ。」

 

黒衣のリア「関わらないでください!

もう私には関係ないんです!忘れさせて!」

 

喪服のダクネス「か、ずま?馬鹿な。

だってお前は、お前は皆をかばって…」

 

和真「なんだよその言い方…。

こっちの俺はまさかもう!?」

 

アクア「『サトウ・カズマ、ここに眠る』…ですって?」

 

アイリス「すべてのレンジャーキーは国が管理する!

もう何者にもこの地を蹂躙させはしない!

もう二度と誰もあんな理不尽な力に立ち向かわせない!」

 

ダクネス「その為に他国をレンジャーの力であらすのですか!?」

 

魔王めぐみん「今日こそ、今日こそ和真を殺したこの国の最期だ!」

 

ゆんゆんら配下たち「「「うおおおおおーーー!」」」

 

めぐみん「嘘でしょ…」

 

ジョー「全く、あの戦いの結果がこれだって?」

 

ルカ「笑えない冗談ね…どうする?」

 

総一「決まってんだろ。全部ぶっ潰す!」

 

魔王軍本陣にて。

 

魔王めぐみん「私の相手は、あなたですか…」

 

和真「ああ。当然だろ?」

 

王宮、謁見の間。

 

アイリス「あなたは、もう一人の…」

 

ダクネス「本当はこっちの私がやるべきなんですがね。」

 

夜の岩山、整列する変身者のないレンジャーたち。

対峙する総一、ジョー、ルカ、リア、アクア、めぐみん。

 

「「「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」」」

 

<<<<<<ゴーーッカイジャー!>>>>>>

 

「海賊戦隊!」

 

「「「「「「ゴーカイジャー!」」」」」」

 

この世界に、守る価値はあるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作者「いや、やんねえよ?

ただでさえ外伝や並行連載有る上にpixivでリレー規格の運営までやってるし。」

 

赤き海賊団「「「「ずこーっ!!」」」」

 

 





























































気が向いたら書きます。


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