50年後のグラ・バルカス帝国召喚 (日本一の司会者)
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第1話 レイフォル陥落まで

 正直原作と大差ないです


 史実通りの国家移転が起こらず、グラ・バルカス帝国は予定通りケイン神王国への上陸作戦を決行した。激戦の末にケイン神王国は無条件降伏し、グラ・バルカス帝国は見事勝利を収めた。

 

 しかし、平和は訪れなかった。

 十数年後、社会主義国家『ニヴルヘイム連邦』が急成長を遂げ、グラ・バルカス帝国と対立、いわゆる"冷戦"状態となった。

 両国は様々な技術分野で競い合い、ジェットエンジンやミサイル、人工衛星までも開発した。現在では核分裂を利用した大量破壊兵器の理論が打ち立てられており、着々と研究が進められている。

 

 

──そんな中、それは突然起こった。

 

 

 グラ・バルカス帝国は、突如として国ごと異世界へ移転してしまったのだ。他国との通信も途絶え、人工衛星の信号も探知不能になり、当初は混乱の極みであった。

 しかしながら、水平線が長くなったり観測された天体が全く異なっていたりと不可解な現象が起きていたため、最終的には国ごと別の惑星へ移転したと結論付けられた。

 そして、政府は各方面に『アルニタク哨戒機』を飛ばし交易の場を求めるのだった。

 

 しかし、最初に文明に接触してから数週間で悲劇は起きた。

 グラ・バルカス帝国の皇族が、パガンダ王国によって処刑されたのだ。これに帝国は当然激怒し、パガンダの保護国である列強レイフォルとその関係国に宣戦布告、全ての元凶であるパガンダ王国を強襲制圧した。そして今、レイフォルとの戦いが始まろうとしている。

 

 

 

 第二文明圏 列強レイフォル沖 ムー大陸西方海域

 

 

 レイフォル艦隊の43隻が、西へと進む。パガンダ沖に展開するグラ・バルカス帝国艦隊を撃滅するためだ。

 

「将軍!偵察中の竜騎士から敵艦発見の報告が来ました!敵は3隻だけですが、.....うち2隻は100m以上!もう1隻は250mを超えているとのことです!!」

 

 将軍バルの眉間にしわが寄る。

 

「なっ!偵察騎との魔信が途絶しました!」

 

「なんだと!?艦隊進路を敵艦にとれ!艦隊の3騎を残し、残りの竜騎士を敵艦攻撃に向かわせろ!」

 

「はっ!」

 

 竜母から攻撃隊のワイバーンが青空へと発艦していく。編隊を綺麗に組み、竜騎士たちは敵軍艦がいるという西へ向かった。

 

 

 

 超大型戦艦『グレードアトラスター』戦闘指揮所

 

 

「レイフォル機40、本艦隊に接近」

 

「全艦、対空戦闘用意!」

 

 各艦の乗組員たちは速やかに戦闘配置へ移行する。

 

「もうそろそろで駆逐艦の対空ミサイルの射程だが、全部それで落とすのはさすがに勿体ないな・・・よって敵の一部は本艦の主砲で撃墜する。」

 艦長オルクスタルが呟きながら指示する。そもそも、今回の戦闘の目的の半分は耐用年数ギリギリの弾薬消費と訓練なので、46cm砲による迎撃を試みるに至った。

 

「了解、主砲第1、第2砲塔射撃準備。弾種通常」

 

「一斉射用意!.....ッ撃てェェェェ!」

 

 海上に巨大な爆炎が出現し、爆音と共に艦を揺らす。グレードアトラスターが放った砲弾6発は、レイフォルのワイバーン攻撃隊へ向かっていった。

 

 

 

 レイフォル沖 上空 ワイバーン攻撃隊

 

 

 敵艦隊を攻撃するべく、レイフォルのワイバーン40騎が20騎ずつの密集隊形をとって飛行している。

 不意に、空に黒い点が6つほど見えた。

(何だあれ?)

 数人の竜騎士がそう思った瞬間、前方を飛行していた20騎が信じられないほど巨大な爆炎に巻き込まれ、消滅した。

 

 『散開しろ!散開だよ散開!』

 

 これほど大きな爆裂魔法を使用する相手に、密集は危険と判断した小隊長が叫ぶ。

 間もなく前方に巨大な船が目視範囲に入る。

 

(デカイ!しかも帆がない!?)

 

と、思っていた矢先__

 

「!?」

 

 何かが高速で友軍のワイバーンに突っ込み、爆発した。爆発に巻き込まれたワイバーンは、ぐちゃぐちゃになりながら墜落する。しかも、"それ"は1発も外れずに味方を次々と墜としてゆく。

 

「まさか...誘導魔光弾!?」

 

 御伽話でしかあり得ないような現実が、彼らの前で起きていた。

 それでも彼らは勇敢だった。次々と墜とされてゆく仲間のため、何より母国レイフォルを守るために、果敢に敵艦隊へと向かっていった。しかし、数分後には小隊長も含め、全てのワイバーンが撃墜されていた。

 

 

 

「通信途絶!攻撃隊全て撃墜されました!!」

 

「こうなったら戦列艦の餌食にしてくれるわぁ!」

 

 将軍バルは、敵艦の撃滅を決意する。

 

 

 

「対空目標、全て撃墜。敵艦隊は依然こちらへ進行中」

 

「撤退はしないか・・・対水上戦闘用意!」

艦長が落胆しつつ号令をかける。

 

「距離15で駆逐艦の単装砲による攻撃を開始。こっちの主砲弾は艦砲射撃のためにとっておきたい」

 

「わかりました」

 

 

 

(それにしても、凄まじい大きさだな...)

 

 将軍バルは、敵艦隊に近づくにつれ不安が大きくなる。

 そして、敵艦隊との距離15kmを切ろうとしていたその時、巨大戦艦の横に居る大型艦2隻が火を吹く。

 

「敵艦発砲!」

 

 まだ15kmも離れているにも関わらず、1、2秒おきに敵艦が発砲している。

 

「何かの儀式か...?」

 バルがそう呟いた数十秒後

 

「戦列艦『ガオフォース』に被弾!」

 

「なにっ!?」

 

 少し遅れて爆発音が響く。そして2秒も経たないうちにまた爆発音が響く。

 

「『トラント』轟沈!『レイフォル』轟沈!』」

 

「うそだろ...こんなことがあってたまるかぁぁぁ!!!」

 

 数秒後、将軍バルが乗っている戦列艦『ホーリー』も轟沈し、程なくしてレイフォル艦隊43隻は、グラ・バルカス帝国海軍の駆逐艦『ギルタブ』と『シャウラ』の2隻により消滅した。

 

 

 

「対水上戦闘用具収め。これより、本艦隊はレイフォルの首都への艦砲射撃を実施する」

 

「勧告用のビラとかはどうするんですか?ヘリでも使うんですか?」

 やや不安げな声で副艦長が尋ねる。

 

「そんなもん必要ない。自国の主力艦隊を殲滅した艦隊が迫ってるんだぞ?それを知ったら、どんな野蛮人であろうと一目散に逃げるだろ」

 

「それもそうですね。ヘリが撃墜される心配がなくて安心しましたよ」

 

 

 翌日の夕方、レイフォル国首都レイフォリアは、戦艦『グレードアトラスター』の全力砲撃により、多くの死傷者を出した。また、皇帝が死亡したため軍部が無条件降伏、それに伴いレイフォル関係国も降伏した。

 

 たったの3隻で列強を降伏させたこの件は、のちに伝説となる。




いろいろ解説

・ニヴルヘイム連邦
社会主義国家であり、資本主義を掲げるグラ・バルカス帝国と対峙していた。多分もう二度と出てこない。

・アルニタク哨戒機
P2-Jの後継になるはずだったPX-Lに酷似。前のコメント欄で助言をいただき、そのまま採用させていただきました。ありがとうございます。

・グレートアトラスター
原作でも出てきた大和型擬き戦艦。ハリネズミのような対空砲は撤去され、最新の20mm機関砲4基が設置されている。対艦ミサイルや巡航ミサイルの搭載計画もあったが、移転騒動により一時凍結。

・艦長オルクスタル
オリジナル人物。原作に出てきた艦長ラクスタルの孫で、祖父の意思を受け継ぎグレートアトラスターの艦長を務めている。

・駆逐艦『ギルタブ』『シャウラ』
たちかぜ型護衛艦に酷似。海上自衛隊では既に退役しているが、帝国海軍の中ではかなり新しいほう。


次回は、日本も名前だけは出てきます。続けばの話ですが
てか、原作よりレイフォル陥落の凄さが減ってるんですが大丈夫ですかね...?


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第2話 極東と極西

 2話にしてもう時を遡ります
 今回はお話しだけです


 

──時間は少し遡り、レイフォル沖海戦前まで戻る。

 

 

 

 グラ・バルカス帝国 情報局

 

 

 並べられた電気式受信機に、モールス信号のような電子音が連続して鳴り響く。衛星電話などの高度な通信手段はまだ使用出来ないため、このような原始的な通信手段をとっている。

 

「閣下、ロデニウス大陸の情報について、現地から報告が届きました」

 

「概要は?」

 閣下と呼ばれた男が尋ねる。

 

「ロウリア王国によるクワ・トイネ公国並びにクイラ王国への侵攻は、日本国の介入により失敗に終わった模様。王家も失脚し、ロウリアは民主主義に移行しつつあるとのことです!」

 

「何だって!?普通に考えたらロウリアの圧勝だろ...日本という国は聞いたことがないな...」

 

「介入というよりは全面参戦です。日本の軍艦8隻が、ロウリアの4400隻を一方的に撃破し、地上戦でも日本がロウリアを圧倒しています」

 

「日本の武装は?」

 

「詳細は不明ですが、目撃情報を分析すると軍艦の全長は150m前後で、80mmから130mm程度の砲が1門付いているとのことです!」

 

「なんと!」

 その特徴を聞き、彼は真っ先に帝国海軍の最新の駆逐艦を思い浮かべる。先ほどの情報が全て事実ならば、日本の砲撃技術は帝国と同水準に達すると考えられる。

 それだけではない。

 

(ミサイルを搭載している可能性もあるな...)

彼は砲以外の武器の可能性を即座に判断した。さらに、帝国の駆逐艦は主砲を2門以上積んでいるものが大半だが、日本の主砲はさらに少ない。ミサイルの信頼性が高いのか、搭載数が多いのか、はたまたその両方か。

 

「日本について徹底的に調べろ!我々と同等以上の技術を持っている可能性があるぞ!」

 

「はっ!」

 

 グラ・バルカス帝国は、早くも最大の壁にぶち当たろうとしていた。

 

 

 そして現在──

 

 

 

 日本国 防衛装備庁 旧技術研究本部

 

 

 日パ戦争が終わり、国民が緊張と不安から解き放たれた今日この頃。

 研究本部の小野と岡本は、この世界の兵器について考察していた。

 

「さて本題だが、グラ・バルカス帝国についてはどう考える?」

 岡本がそう切り出すと、小野は待っていましたとばかりに資料を取り出す。

 

「これを見てください!」

 

 それは一枚の写真だった。

 

「これは...戦艦大和!?しかし高角砲がほとんどないぞ...?」

 

「ここを見てください」

 小野が戦艦の艦橋の辺りを指差す。

 

「ファッ、ファランクス!?」

 岡本が思わず声をあげた。

 混乱する岡本に、小野がさらに追い討ちをかける。

 

「これらも見てください!」

 

 そう言って小野は3枚の写真を取り出した。

 1枚の写真には護衛艦が写っており、船体に『168』と書かれている。護衛艦『たちかぜ』だ。

 そしてもう2枚には、『たちかぜ』と同じ角度で撮られた船が1隻ずつ写っていた。

 

「まさか...これ!」

 

「そうなんです!たちかぜ型護衛艦そっくりの船が、レイフォルでこの戦艦と一緒に撮影されたんです!」

 

 呆気にとられている岡本に、小野がすかさず説明を入れる。

 

「この3隻は、艦砲射撃の直前にレイフォルの首都付近で魔写──まぁ写真みたいなもので撮られました。この直後に、首都レイフォリアはこの3隻の艦砲射撃により壊滅。レイフォルは降伏し、現在はグラ・バルカス帝国の植民地と化しています。」

 

「たちかぜ型にそっくりということは、対空ミサイルもあるのか?」

 

「はい。生き残った竜騎士が、『光の矢が進路を変えながらこちらへ近づき爆発した』と証言したそうで、本物のたちかぜ同様、対空ミサイルを搭載していると思われます。」

 

「SM-1MR相当の性能だとしても、射程40km以上はあるな...対艦ミサイルは?」

 

「今のところ確認されていませんが、単に使用されていないだけの可能性が高いです。最低でも初期のハープーン、もしかしたら旧ソ連のような超音速対艦ミサイルを所持しているかもしれません」

 

「そうか...。それ以外にも核兵器や弾道ミサイル所持の可能性、戦闘機や潜水艦の性能も調べないとな...」

 

「平和にはまだ程遠いですね...」

 

 その後も2人の会話は続いた。

 




解説

・日パ戦争
日本対パーパルディア皇国の戦争のことを本作ではそう呼んでいる。


魔写の画質がよくないと戦艦のファランクスなんてよく見えませんよね。
時系列的に次はイルネティア戦ですが、神竜に第三世代ジェットなんて落とせるんですかね...?


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第3話 美しき王国の滅亡 前編

皆さん、ご無沙汰しております
次の日出すとか言っておきながら1ヶ月近く経っていましたね...
受験近いからねしょうがないね

正直ある程度イルネティア戦知ってる方なら最後の方見るだけでいいかも


 

 中央暦1641年3月14日

 イルネティア王国 王都キルクルス ランパール城

 

 

 今ここで、1000年の歴史を誇るイルネティア王国の運命が決まろうとしていた。それもこれも全てグラ・バルカス帝国のせいである。

 奴らはパガンダ王国を制圧し、列強レイフォルをも降ろした後、このイルネティア王国へ乗り込み、植民地になれという"提案"もとい"命令"を出してきた。イルネティア王国は回答までに1ヶ月の猶予を与えられ、その後のらりくらりと放置していたが、とうとうグラ・バルカス帝国が艦隊を引き連れてやってきた。

 そして今、イルネティアとグラ・バルカスとの最後の交渉が始まった___。

 

「前回、1ヶ月以内にレイフォル地区へ全権大使を寄越せと言っただろう?なぜ来なかった...?」

 外交官ベガスが気怠そうに話す。

 

「ビーリー侯が所用で席を外しておりましてな。それ故に国内の意見がまとまらず・・・その件については失礼した」

 国王イルティス13世がプライドを無にして謝罪する。実は、ビーリーはこの件について他国の協力を得るために外交の旅に出ている。そのため少しでも時間を稼がなければならない。

 

「蛮族が...まぁいい。我々がわざわざ艦隊を引き連れてやってきた理由はわかるよな?さぁ、答えを聞かせてもらおう」

 相手が国王でも容赦なく威圧するベガス。

 

「そこをなんとか......」

 

「ダメだ!今この場で決断してもらう」

 

「そう......ですか......」

 

 王はこれ以上の引き延ばしは無理だと悟り、心の中で神々や先祖に祈りを捧げた。どうかこの国を護ってください、と。

 そして意を決し、彼はカッと目を見開いた。

 

「では──はっきりとお伝えしよう。貴様らのような無礼者と交渉する余地はない!即刻立ち去れ!!!」

 

「フッ・・・後悔すんなよお前」

 

 そう言い残し、グラ・バルカス帝国の役人たちはすぐさまランパール城を後にした。

 

「奴らの小舟が本船に移ったらすぐに攻撃せよ!」

 

「既に準備は整っております!」

 

「エズエル将軍、各諸侯も厳しい戦いになるだろう。どうか、頼んだぞ」

 そして王は再び祈った。

 

 

 

 イルネティア王国 王軍司令本部 作戦会議室

 

 

「待たせたな」

 

 ランパール城を出たエズエルが作戦会議室に到着し、待っていた軍の幹部たちが一斉に立ち上がって迎えた。そしてすぐさま会議が始まった。

 

 海軍最高司令オシアが報告する。

「まず、ドイバ沖7kmにある巨大戦艦には、付近の群島基地の10隻とドイバ防衛隊の8隻の計18隻で攻撃を行います。次に、ドイバ沖120kmに展開している敵艦隊、巨大機械竜母2、巨大戦艦1、小型戦艦16の計19隻に対しては、南部方面隊の12隻を差し向け、同時に竜騎士団による攻撃を仕掛けます。巨大戦艦撃破後の18隻もそちらへ差し向ける予定です」

 

 もちろんこんな戦力がレイフォルを倒した相手に通用するはずもない。そんなことは皆わかっていたが、それでも戦わなければならない理由があった。

 

「わかった。強敵だが頼む」

 その後陸軍の状況について聞き始め、会議は続いた。

 

「報告!間もなく帝国のボートが出航します!」

 

「ドイバ防衛隊!出撃!!!ボートが収容され次第、直ちに敵戦艦への攻撃を開始せよ!」

 

 将軍の命令が下り、運命が動き始める。

 

 

 

 イルネティア王国 北西 ドイバ沖 ドイバ防衛隊 旗艦『レプシロン』

 

 

 ドイバ防衛隊の戦列艦8隻が直ちに出航し、グラ・バルカス帝国のボートの後ろに単縦陣で付いていく。

 

「ルバイト司令、大きいですなー!」

 副長イトルが、ひょうきんに声をかけた。

 

「これほどの化け物、討ち取ったら末代まで自慢できるわい・・・・・ん?」

 敵艦を眺めていると、巨大な砲塔がこちらを向いていくのが見えた。外交官が乗ったボートがすぐ近くにあるから、まだ敵は撃てないはず。そう考え、耐えがたい死の恐怖を紛らわした。

 

「各艦、いつでも射撃できるな?」

 

「はい!準備万端です!!」

 

 ドイバ防衛隊は着々と敵戦艦へ近づいていった。

 

 

 

 戦艦『グレードアトラスター』 戦闘指揮所

 

 

「ボートとの距離が近いな......」

 艦長オルクスタルはそう呟く。既に戦闘準備は完了し、全砲門がイルネティア艦隊に向けられているが、ベガスらが乗っているボートが邪魔で攻撃出来ずにいた。

 

 その時無線が鳴った。

 

「ベガス様からの通信です!」

 

「出ろ」

 

「はいっ!」

 

 

『こちらベガス。我々には遠慮せずに奴らに攻撃していただきたい』

 

『ですが、ベガス殿に何かあっては・・・』

 

『いや、大丈夫だ。私は帝国海軍の技術を信じている。新しく搭載された単装砲なら、こちらに流れ弾が当たることも無いだろう。我々外交官を盾にするなど腹立たしい。それにいつ攻撃してくるかもわからない。どうかお願いしたい』

 

『わかりました。細心の注意を払って射撃します』

 

 

「距離3kmで単装砲による攻撃を開始!1発たりとも外すな」

 

「了解!左舷単装砲、射撃用意!」

 

「目標、左舷敵艦隊18隻!」

 

「撃ちぃ方始め〜!」

 

 ドンッ  ドンッ  ドンッ  ドンッ──

 

 複数の詠唱を経て、左舷にある1基の単装砲がおよそ1.5秒おきに火を噴く。

 そして──

 

 

 

「なんと!撃ってきたぞ!!」

 予想を裏切られたルバイトが叫ぶ。

 しかし巨大な砲は使わず、船の側面にある1門しかない砲が連続で火を噴くのみだ。

 

「各艦回避しろ!」

 敵の行動の理解に苦しみながらも、指示を出す。

 と、次の瞬間──

 

 前方を航行していた戦列艦『イトヌーシェ』が爆発、そのまま沈んだ。

 

「『イトヌーシェ』轟沈!」

 

「あっ、『コウム』も轟沈!!」

 

「なっ」

 

 考える暇もなく、およそ2秒おきに戦列艦が沈む。

 

「『ハルケン』轟沈、『ムルシク』轟沈!!』

 

 このペースだと、あと20秒ほどで『レプシロン』を含めた全ての戦列艦が撃沈されるだろう。

 

「総員退避!海に飛び込めぇぇぇ!!!」

 ルバイトはとっさに魔信で指示を出す。

 

 次の瞬間、彼が乗っていた『レプシロン』も爆散し、彼はこの世を去った。

 十数秒後、最後の戦列艦が轟沈しドイバ防衛艦隊は消滅した。

 

 

 

 イルネティア王国 王軍司令本部 作戦会議室

 

 

『敵は百発百中の砲を持っている!残すは本艦のみで──』

 魔信が途絶えた。

 

「バカな!百発百中の砲だと!?ありえん!」

 

「や...奴らは魔法帝国だ!!そうに違いない!」

 

「攻撃することすら出来なかったからこそレイフォル艦隊は敗北したのか......」

 作戦会議室には絶望感が漂う。

 

「焦るな。軍部が狼狽しても、士気が下がるだけだ。海では負けたが、艦は陸へは上がれん。市街地は存在そのものが要塞となり──」

 ニズエルの言葉を遮り、さらに絶望的な一報が、作戦会議室の魔信に届く。

 

『敵戦艦、ドイバ市街地へ向け発砲!──うわぁぁッ!!!なんて威力の爆裂魔法......あっ──』

 耳を塞ぎたくなるような騒音が響き、魔信が途切れた。

 

「現地指揮本部応答なし!ドイバのどの通信基地も応答しません!」

 

「呼び続けろ!!!」

 

「やはりダメです!竜騎士に偵察に向かうよう伝えます」

 

 30分後

 

『司令部!司令部!こちらドイバ市街地上空!ドイバには瓦礫しか残っていない!!市街地は跡形もなく消滅している!!!』

 竜騎士は何度も同じような報告をする。

 被害状況が克明になるほど、作戦会議室の士気が下がり続ける一方だった。

 

「海軍は南方部隊も含め全滅、陸も一瞬で第1次防衛ラインが突破されてしまったか......」

 

「すぐに第2次防衛ラインを構築!揚陸部隊が来るぞ!」

 それでも、彼らは希望を捨てなかった。

 

 

 

 戦艦『グレードアトラスター』 艦橋

 

 

「先程は私のわがままに応えていただきありがとうございます」

 

「いえいえ、軍人は戦いが仕事ですから」

 

「しっかし、外交官を盾にするとは卑劣な奴らだな。そんな蛮族には死がふさわしい」

 ベガスが吐き捨てるように言い、その場を去った。

 

「そう...ですね...」

 オルクスタルはそう一言だけ呟いた。

 

 艦砲射撃により、美しかった街は焼け野原と化している。恐らく今回も多数の死傷者が出ただろう。

 それに、イルネティア王国があのベガスに手出しをしなかったことは、文明水準に関わらず高潔だ。このような国を自らの手で滅ぼすのは胸が痛む。

 そして通信士に命令する。

「全部隊に『民間人と捕虜は丁重に扱え』と伝えておけ」

 

 様々な思惑が渦巻き、戦場は動き続ける。

 

 戦いはまだ始まったばかりだ。

 




解説

・ベガス
グラ・バルカス帝国の外交官で、原作のダラスのようなポジション。

・グレートアトラスター
1話から3話の間に更なる改修が行われ、127mm単装砲が両舷1基ずつの計2基が設置された。そのほかにも新たに兵器が搭載されたが、それらが登場するのはまだ先の話。


割と簡略化したり文を変えたりしたのですが、やはり内容は原作と同じになってしまいますね...
見れなくなっていたら察してください

予定通り進めば次にイルクスが出てきます


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第4話 美しき王国の滅亡 後編

ここからがイルネティア戦本番です


 中央暦1641年3月22日 王都キルクルス付近 上空

 

 

 異世界の空にジェット戦闘機が飛んでいる。空母から発艦した計36機の編隊は時速900km以上で飛び、イルネティア王国の飛竜をミサイルで淡々と撃墜していた。

 そしておよそ100km後方には2基のプロペラエンジンを奏でながら、遥か遠くの空を監視している早期警戒機が飛んでおり、随時指示を出している。

 

『敵目標全て撃墜を確認、周辺空域に敵目標ナシ。全機、作戦第2フェーズへ移行せよ』

 

『了解』

 

「しかしこんなんじゃ訓練にもなりゃしないな。腕が鈍っちまう」

 そう独り言のように呟いたのは、『フェニックス』戦闘機のパイロットのアーレオだ。この戦闘機を地球の者が見たならば、F-4戦闘機に酷似していると誰もが思うだろう。

 

「同感だ。だがまぁ、敵からミサイルが翔んでくることもないし、前世界(ユグド)よりはよっぽどマシだろ」

 後部座席のゲラルが応える。彼らは海軍で初めて出会い、今では10年来の友人だ。

 

「それもそうだな。あとは爆弾落として終わりだな、頼んだぞゲラル」

 

「任せろ、って......ん?」

 ふとレーダーを見たゲラルが、十数km前方に不明機を発見する。

 

『こちら警戒機。新たな敵目標1機出現、アーレオ機が撃墜せよ』

 発見した数秒後、敵機との距離が1番近いアーレオ達に撃墜命令が入る。

 

『了解』

 

「アーレオ、こいつ他のワイバーンよりやけに早いぞ」

 

「まぁ撃墜する事には変わらんさ。ターゲットロック......ファイア!」

 右主翼から短距離空対空ミサイルが発射された。その数秒後、

 

「ん?ミサイルが自爆したぞ、不具合か?」

 

「了解、ならもう1発だ。ファイア!」

 左主翼からもう1発ミサイルが発射された。もしこれも当たらなかったら機銃で墜とすつもりだった。が──

 次の瞬間、光の筋が真っ直ぐこちらへ向かってきた。彼が操縦桿を動かす前に、その光は左主翼を一瞬で真っ二つに割った。

 

「くっ、操縦不能!脱出するぞ!」

 そして、それぞれ前後に分けられたキャノピーから2人は座席ごと脱出し、パラシュートで降下した。

 

(なんだったんだあのバケモノは...)

 そう思いながらアーレオとゲラルは、なんとか森へ着地した。

 

 

 グラ・バルカス帝国海軍 空母『ギャラクシー』戦闘指揮所

 

 

 全長320mを超え、アングルドデッキを構えた巨大な空母。その中の戦闘指揮所が、突然慌ただしくなる。

 

「アーレオ機ロスト!」

 

「なんだと!?」

 ありえない報告に艦長が思わず声を上げる。帝国の戦闘機がたかが文明圏外のトカゲに墜とされるなど考えられない事態だった。

 

「報告によると、1機だけ400ノット(時速740km)近く出ており、レーザーのようなもので攻撃しているとのことです!」

 

「おっ、敵機撃墜したようです!」

 別の報告員が声を上げた。

 

「しかしまだ居るとしたらかなりまずいぞ......発艦可能な機体は全て上げろっ!何か飛んでいたら対空ミサイルの飽和攻撃で墜とせ!そのあとは建物があるところにありったけ爆弾を落とせ!いいな!」

 

「了解!」

 

 

 この日、イルネティア王国はグラ・バルカス帝国の航空攻撃により、王都及び周辺都市に壊滅的な被害を受け、陸上戦力と交戦する前に降伏した。

 神竜イルクスは、『フェニックス』戦闘機が放った20mm機銃弾数発を受け重症を負い、ライカに介抱されるのだった。




解説

・フェニックス戦闘機
アメリカのF-4戦闘機に酷似。カルスライン社が開発し、20mm機銃1門が固定武装となっている。現在海空軍では主力だが、もうそろそろで交代になる見込みが高い。

・空母ギャラクシー
アメリカのキティホーク級航空母艦と酷似。デカい

・アーレオとゲラル
オリ人物

・早期警戒機『ホルス』
E2と酷似
___________________________

自衛隊兵器擬きとか言いつつ、ガッツリ米空母出してしまいましたお許しください。けどキティホークくんは横須賀に居たし、多少はね?
もう初期設定に苦しめられるとか、笑っちゃうんすよね

あとイルクスの速度は適当です。ライカ乗せずに頑張ったらこれくらい出そうなので

-追加-
早期警戒機の描写に誤りがあった為修正し、解説に早期警戒機を追加しました

-さらに追記-
王都空爆の日付を修正


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第5話 情報収集

時系列で致命的なミスがあったので再投稿です
と言っても、先進11ヵ国会議が1年早かっただけなので、既に見た方はパスで大丈夫です。
(編集するだけで済んだのに削除してしまいました...すみません...)


 グラ・バルカス帝国 情報局

 

 

 イルネティア戦を早々に終え、1年後には先進11ヵ国会議という国際会議を控えている中、情報局で2人の男が話していた。

 

「まさか1機とはいえ、フェニックスが墜とされるなんて想定外だったな」

 

「ですねぇ、こんな世界にレーザー兵器(?)があったなんて。やはり魔法というものは我々には測れません」

 

「魔法はもう基礎知識がな...政府は研究材料として欲しているが、仮に手に入ったところで解明する前に寿命が来るのがオチだろう。そもそも20mm弾が直撃したならもう死んでるだろうに」

 当然ながら、神龍がまだ生きている事や寿命がとてつもなく長いことを彼らは知らない。

 

「とにかく誰もお咎めナシということで良かったですね。パイロット2人も無事だったらしいですし」

 イルネティアとは国交が無く、列強レイフォルでもレーザーを放つ龍など確認されなかった為、情報局が把握していなかったのも仕方ないということで誰も処罰を受ける事は無かった。

 しかし、今後もこのような事態が発生するかもしれないので、情報収集は今まで以上に進められていた。

 

「あぁ、一時はどうなることかと思ったよ。まぁそれはそれとして・・・」

 

「やはり"あの国"ですか」

 

「察しがいいな、そうだ"日本"だ」

 そう、2人の共通認識の"あの国"とは紛れもなく日本のことである。自分達と同じ移転国家であり、少なくともこの世界とは隔絶した技術を有していることは、帝国民で知らない者はいない。

 

「今日は新しい情報は入ってきてないか?」

 

「目新しいものはないですが、技術力の高さは窺えます。研究所が、ムーで販売されている日本製品を分析していますが、解析しきれない部品も多々あるようで...」

 話は続く。

 

「特に電話機に関しては、『民間用とは思えないほど小型化されており、これと同じものを帝国が普及させるには数十年掛かる』とのことです」

 

「やはり日本の技術は我々の上を行ってるな。あとの判断は上の自由だが、日本が平和主義を掲げている以上は事を構えるのはやめて欲しい」

 

「全く同感です」

 

 その後も会話は続き、話を終えた後も彼らは自分の仕事を続け、帝国の為に尽力するのだった。

 

 

 中央暦1641年4月3日昼頃 ムー国 エヌビア基地

 

 

 ゴォーーーーーという音が聞こえ空を見上げると、例の如く2機の航空機が飛んでいる。

 

「またグラ・バルカスか...」

 歩いていた2人の航空兵のうち1人が、ため息をつくように呟いた。

 

「ここんとこよく来るよなぁ。こんなに偵察して何の意味があるんかねぇ...」

 隣の男が返した。

 

「なんかイルネティアが降伏してからペース上がったよな。次はお前らの番だ!と言わんばかりに」

 

「そうだなぁ...最近じゃスクランブル発進も無いし、力の差はお互いわかりきってるはずだ。向こうが講和でも持ちかけてくれりゃ、俺たちゃ死なずに済むんだけどねぇ...」

 スクランブルの指令が出ないのは、単純にグ帝機とムー機に性能差がありすぎて要撃が成立しなかったからだ。最新鋭のマリンでも絶望的に速度が足りず、そもそも相手の位置が高すぎて何もできなかった。

 最近は相手も高度を落としてきてはいるが、出撃しても追い付けないのは目に見えている。

 

「まぁ、そっちの方が国民のためにはなるかもな。空がこのザマだと、陸も海も戦ったところでどうせボロ負けだろう」

 

「戦艦もラ・カサミを凌駕しているらしいしなぁ...この国はどうなっちまうんだろうな...」

 

 その後2人は特別何かするわけでもなく、話しながら基地の中を散策し、兵舎へと戻っていった。

 

 

 

 グラ・バルカス帝国がムーに度々領空侵犯するのは、それなりの理由があった。まず、なんと言っても神龍の存在が大きい。文明圏外国として括られていたイルネティアにすら1機ではあるが戦闘機が墜とされたため、「列強であるムーにも何か隠し球があるのでは」と踏んだのだ。尤もムーにはそんなものは無いが。

 その他の理由としては、基地や地形の偵察、威嚇、人工衛星の基数が少なすぎるなど挙げられるが、いずれにせよムー侵攻の兆候である事には変わりなかった。

 




イルネティア陥落から会議まで一年あるので、ムーに何かあってもおかしくはないですね


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第6話 危機感

次くらいに会議始めたいです


 神聖ミリシアル帝国 帝都ルーンポリス 情報局

 

 

「局長、2週間前にイルネティアがグラ・バルカス帝国に降伏していたそうです」

 情報官のザマスが報告する。彼は2か月程前に旧レイフォルに派遣され、グラ・バルカス帝国と接触した。

 

「もう落ちたのか...戦況については何かわかっているか?」

 局長のアルネウスが尋ねる。

 

「いえ、島国ということもあり情報が全然入ってきません。ただ、1機だけ帝国の飛行機械を撃墜したという情報がありますが、アレをイルネティアが墜としたとはとても...」

 彼はグラ・バルカス帝国との接触の際に、レイフォル上空をとてつもない速さで飛び回っている戦闘機を目の当たりにしていた。もちろん彼はそのことを報告したのだが、天の浮舟を凌駕するなど信じられず、真に受ける者はごく一部だった。なにより目にした本人たちですら半信半疑なのだ。

 しかし文明圏外の新興国が列強を倒したのは事実なので、グラ・バルカス帝国には細心の注意を払っている。

 

「うーん、何とも言えんな。仮にすべて事実だとしたらどうやって墜としたのか知りたいが...まだ情報はあるか?」

 

「申し訳ございません。あとはイルネティアの王子が戦力支援を求めてここルーンポリスに来ていることくらいです」

 

「わかった、この件は上に伝えておく。まあ、王子に関しては多分そのまま放っておくだろう。存在しない国の王子など、どうすることもできないしな。今後も何かあったらすぐに伝えてくれ」

 

「はいっ」

 

 

 日本国 首都 東京 首相官邸

 

 

 この日、首相官邸では臨時閣議が行われていた。

 なぜなら、ムー政府からとある要請を受けたからだ。

 

「つまり、グラ・バルカス帝国に対する抑止力として、来年4月の先進11ヵ国会議に護衛艦を派遣してほしいということですか?」

 防衛大臣が確認する。

 

「簡潔にまとめるとそういうことです。ムーの立場を考えると、我々外務省としては是非とも派遣していただきたいです」

 と、すかさず外務大臣が返す。

 

「当初はミリシアルを慮って海保の巡視船を派遣すべきと仰っていましたが、その点はどうなったのですか?」

 

「その件についてムーに確認したところ、ただの国際会議なのにどの国も最新鋭の艦隊を送り込むようで...ムーも空母機動部隊を派遣するとのことです。つまるところ、国際協調の場でこんな砲艦外交のようなものがまかり通っている世界のようです」

 

 外務大臣の言葉に、その場に居たほとんどの者が言葉を失う。自分たちの常識からあまりにもかけ離れているのだ。

 すると環境大臣が訊く。

 

「ですが、いくら他国もやっているとはいえ、国際会議に自衛隊派遣というは国内の反発を招きかねないと思うのですが...」

 

 彼女の言うことはもっともだ。確かに2度の戦争により、世論は自衛隊派遣に関して以前よりも寛容になってはいる。

 しかし、今回の件は国民の命が危ないわけでもなく、ただの会議だ。平和主義を唱えている以上、本来は日本がリードしてこのような砲艦外交をなくすべきなのだ。

 

「それも重々承知しています。ただ、みなさんご存じのようにグラ・バルカス帝国はムーなどの周辺国に軍事的圧力をかけています。それに今年の一月には、イルネティアの王子が非公式ながら日本の調査団と接触し支援を求めてきました。そのイルネティアも、既にグラ・バルカス帝国の手によって滅ぼされました。

 かの国に対抗できる国家は現状我々しかいないのです。自称世界最強のミリシアルも大して役に立ちません。それは防衛大臣も十分お分かりかと思います。なのでどうか、ムーの要請を受け入れる方針でお願いします」

 

「......わかりました。では今回の派遣については、会議を兼ねた国際観艦式という解釈でなんとかしましょう。実際、この世界の現状を見る限りでは会議よりもそちらがメインのようですし」

 外務大臣の懇願により防衛大臣が渋々承諾する。

 

「では、今回の自衛隊派遣に異議のある方は挙手をお願いします。」

 進行係の内閣官房長官が取りまとめる。

 外務大臣の説得の甲斐あって反対意見は特になく、先進11ヵ国会議の開催地であるカルトアルパスへの自衛隊派遣の閣議決定がなされた。




閣議の描写とか当然書いたことないのでわから、ないです。
てかミリシアル出す必要ないね、原作と何にも変わらん(そこがミ帝のいいとこだと思っている)


あと誤字報告ありがとうございます(誤字多くて申し訳ないです。。。)


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第7話 皇帝陛下の御意思

ごめんなさい会議は次回からです


 グラ・バルカス帝国 帝都 ラグナ

 

 

 今、グラ・バルカス帝国では国の今後を決定づける重大な会議が行われている。

 しかし、その会議はどうも難航しているようだ。

 

「陛下、どうかご再考を...。今、日本と事を構えるのは非常にまずいかと...」

 軍本部長ミストが恐る恐る進言する。

 

「だからこそ!その先進なんちゃら会議で日本艦隊を叩くべきだと言うておるのだ!この機を逃せば、日本はどんどん軍備を増強し、我が国はちっぽけな島国相手に苦戦を強いられる事となるのだぞ!」

 そう怒鳴りながら力説するのは、紛れもなくグラ・バルカス帝国の皇帝グラ・カバルだ。もうすぐで80歳となるが、その大柄な体格と鋭い目付きは見た者を震え上がらせる。

 しかし、教えられたことやメディアの情報を鵜呑みにするのは皇太子時代から変わっておらず、度々周囲を振り回してきた。そのため、反対意見が出ることにも慣れており、特に根に持つようなことはない。

 

「仰る通りでございます。ただ、移転時に損失した戦力を取り戻すのは相当時間がかかります。日本との技術格差や物理的な距離、なにより現地人の参戦も想定すると現状ではかなり厳しいですので...」

 彼が危惧しているのは何と言っても数の差だ。

 移転時には属領や植民地、それに併せて膨大な戦力も失った。国土に対して軍事力が過剰だったので、地球のアメリカ以上に戦力を分散させていたのだが、国家移転という誰も予想していなかった形で裏目に出た。

 

「蛮族どもに怯えているのか?軍部がそんな腰抜けでは世界平和など永遠に成せぬぞ!」

 

 本来ならこのような最終意思決定の場では事前に根回しがされているはずなのだが、軍本部の反発が強かったためにうまくいかなかったのだ。

 

 そして皇帝と軍本部が対立を深める中、一人の男が手を挙げてこう述べた。

 

「では先に、神聖ミリシアル帝国に宣戦布告するのはどうでしょう?」

 そう言い放ったのは、帝国海軍東方艦隊司令長官ユリウスだ。

 

「...なぜだ?」

 皇帝グラ・カバルがユリウスを睨みつける。

 

「日本が憲法で平和主義を唱えており、こちらから直接手を出さない限り奴らはまともに動けないからです。今までの情報が正しければ、ミリシアルは今の我々でも問題なく攻略できます。ミリシアル=世界最強という考えが世界中に根付いているようなので、降ろせれば戦略的に有利に働くでしょう。

 あとは第一・第二文明圏を続々と降ろし、決戦の日が来たら日本を叩きのめします。ただし、ムーに手を出すと日本が参戦しかねないので、それは避けるべきかと思います。

 また、対日戦に現地人も投入すれば帝国軍人の被害も抑えられます」

 

「なるほど、蛮族の有効活用か。確かに帝国のためにもなる素晴らしい案だ。多少時間は掛かるが、その案で行こう」

 

 その言葉を聴き、ユリウスをはじめ軍関係者は胸を撫で下ろす。しかし具体的な内容は全く決まっていないため、世界会議までの短い時間で何度も議論を重ねる必要がある。これから忙しくなるのは明白だ。

 また、日本が本当に宣戦布告してこないかどうか裏取りをして作戦を確実なものにしなければならないし、技術格差が縮まらなければ最終決戦で勝てるかどうかもわからない。

 しかし、それでも彼らは戦う。

 

 全ては世界平和のために、皇帝陛下のために。




解説

・皇帝グラ・カバル
原作では皇太子として登場。父であるグラルースがケイン戦で勝利を収めたため、自分も生きているうちに何か成し遂げなければと内心焦っている。

・ミスト
オリ人物。軍で一番偉い。

・ユリウス
オリ人物。


 一話一話が非常に短いのは承知しております。ごめんなさい
 ちなみに軍本部は戦後国家らしく国防省に改称させようと思いましたが、グ帝に国防なんて言葉は似合わないのでボツにしました


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第8話 先進11ヵ国会議

更新頻度上げるか一話一話をもう少し長く書けるようになりたい


 神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス

 

 

 2年に一度開催される先進11ヵ国会議では、各国が大使護衛の名目で多数の軍艦を引き連れて来るため、すべての艦艇を収容できるよう、ここカルトアルパスが開催地として選ばれた。

 

「第1文明圏 トルキア王国軍、到着しました!戦列艦7、使節船1計8隻」

 

「了解、第1文明圏エリアへ誘導せよ」

 

「第1文明圏 アガルタ法国、到着!魔法船団6、民間船2」

 

「了解」

 

 軍事が大好きな港湾管理責任者ブロントは、この時が大好きだ。

 世界中のあらゆる軍艦を一度に見れる機会など滅多にない。

 

「ここに第零式魔導艦隊があれば、各国の軍も貧相に見えるのだろうがな」

 

 例の如く、第零式魔導艦隊は西にある群島で訓練をおこなっている。

 

「まあそんなことより、彼らがどんな船が来るのか楽しみだ」

 港湾管理者ブロントは、ワクワクしながら待つ。

 なぜなら、あの日本国とグラ・バルカス帝国が会議に参加するからだ。どちらも新興国であるにも関わらず、それぞれ列強であったパーパルディア、レイフォルを倒し、多くの者が衝撃を受けると同時にそれら2つの新興国に関心を寄せた。

 無論、彼もその一人であり、期待に胸を膨らませていると、ついにその時がやってきた。

 

「文明圏外 日本国、到着!巡洋艦7、空母1」

 

「あれがパーパルディアを倒した日本の船!大きさはシルバー級くらいか。しかし、砲は一門しか見当たらないぞ...。機械文明特有の兵器でも積んでいるのか?」

 

 

 

 日本国海上自衛隊 第4護衛隊群 護衛艦『かが』 艦橋

 

 

 政府の意向により、グラ・バルカス帝国への抑止力として先進11ヵ国会議に派遣された第4護衛隊群。その中核を担う人物である群司令の三浦とその部下が、カルトアルパスの風景を眺めながら話していた。

 

「本当に軍艦ばかりだ。地球の常識はやっぱり通用しないんだなぁ」

 

「同感です。正直、国際協調の場でこのような風習が根付いているのは快く思いません。こういったことを日本が積極的にやめさせなければ、この世界はいつまでも未熟なままです」

 

「星が広いうえに文明レベルの差も著しいし、パーパルディアみたいな輩もまだ残っているだろうしね。けどその前に、グラ・バルカス帝国を何とかしなきゃ」

 

「今回我々が派遣された一番の目的ですね」

 

「そうだよ。性能ではこちらが優位だけど、数だと向こうが圧倒的に多いから、たった8隻で抑止力になるか少し不安もある

 おっと、噂をすれば。大帝国様のお出ましだ。」

 

 水平線の向こうから、城のような艦が徐々にその姿を現す。紛れもなくグラ・バルカス帝国の戦艦『グレードアトラスター』だ。

 さらにその後方からは、2隻の駆逐艦が現れる。レイフォリアに艦砲射撃を加えた『ギルタブ』と『シャウラ』だ。

 

「なんか港が急に慌ただしくなりましたね」

 

「さすがにインパクトでアイツには勝てないか。それにしても、戦艦のほうも対空装備とレーダー以外は大和型に似てるけど、後ろの駆逐艦は船首の数字以外ほんとにたちかぜ型みたいだ。

 確か、戦車や戦闘機も見た目は自衛隊のとほぼ同じものがあるんだよね?前の世界では覇権争いをしてたという話を聞いたけど、どこをどう設計したら、専守防衛の自衛隊の装備とこれほどまでそっくりになれるんだ?」

 

「設計図が時空を超えて流出した、くらいしか思いつかないです。彼らなりの事情もあったんでしょう」

 

 

 そう、この時の彼らは数日後に訪れる出来事を、まだ夢にも思っていなかった。

 

 

 

 グラ・バルカス帝国海軍 戦艦『グレードアトラスター』 艦橋

 

 

「ユリウス司令、あの灰色のが日本海軍であってますよね?」

 グレードアトラスター艦長のオルクスタルが、双眼鏡を覗きながら尋ねる。

 

「ああ、間違いない。色も大きさも兵装も情報通りだ」

 司令長官の彼もまた、双眼鏡を覗きながら答える。

 

「手前側のなんてサルガス級にかなり似てませんか?」

 

「見た目だけは、な。同じミサイル艦でも、性能は向こうが上であることを忘れてはならん」

 

「心得ております。ただ、日本は正規空母を持ち合わせていないが故、攻撃力ではこちらに分があります。もっとも今回の派遣部隊は対ミリシアル用ですが」

 

「その通りだ。日本進攻は現状だと厳しいが、もし彼らが戦場(カルトアルパス)にとどまっていても、8隻程度ならなんとかなる。どちらに転んでもいいように、外務省との調整もしてきた。あとは実行するのみだ」

 

「ご期待に添えるよう全力を尽くして戦います」

 

「頼んだぞ」

 

 その後、彼らはそれぞれの持ち場につき、作戦の成功を祈るのだった。




三浦さんに私たちの意見を代弁してもらいました
すずつきの衣川艦長とちょうかいの千月艦長も(覚えていたら)出したいです

解説

・サルガス級
ギルタブとシャウラの一番艦。同型艦は他にもまだある


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第9話 宣戦布告

(普段と比べて)少し長めです
会話が噛み合ってなかったり話が逸れたり矛盾してる部分もあるかもしれないので、何か気が付いたらご指摘ください。


 神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス 帝国文化館

 

 

「これより、先進11ヵ国会議を開催します」

 

 帝国文化会館国際会議場で、会議の開始を告げるアナウンスが流れる。力のある国のみが集められており、会場の空気が張り詰める。

 早速、エモール王国の使者であるモーリアウルが手を挙げ、議長が指名し、発言権を得る。

 

「今回は皆に非常に重要なことを伝えに来た。心して聞くがよい」

 

 場が静まる。

 

「先日、空間の占いを実施したところ、古の魔法帝国、ラヴァーナル帝国が近いうちに復活するとの結果が出た」

 

 !!!!!

 空気が凍り付く。

 

「な、なんてことだ!!!」

 

「もし復活したら、我らは為す術なく滅びるぞ!」

 

 会場がざわつき、ほとんどの者が打ちひしがれる。

 そんな中、20代後半と思わしき女性が1人、会場中に声を響かせ笑い始める。

 

「くっくっくっ……ハーっはっはっは!!!」

 

 場内の参加者たちが、彼女に冷たい視線を送る。

 

「おっと、失礼。私はグラ・バルカス帝国のイリスという。占いの結果を国際会議で発表するなど、あまりにも滑稽でうっかり口元が緩んでしまったのだよ。

 レイフォルもそうだったが、仮にも列強であるはずのエモールですらこの程度とは恐れ入った。この世界のレベルの低さがよくわかるな」

 

「黙れ痴れ者!礼儀を弁えろ!」

 

 エモールとの同盟国、トルキア王国の使者が割って入りイリスを罵る。

 さらに、モーリアウルがゆっくりと口を開く。

 

「新参者のグラ・バルカス帝国か。大丈夫だ、魔法も使えぬ上に礼儀も知らぬ貴様らには、最初から戦力として期待していない。

 この世界で生き残りたければ、もう少し賢くなることをおすすめする」

 

「フフッ、お前らは力の差も理解できないのか。最後の言葉、そっくりそのまま返してやろう。もし仮にその魔法帝国とやらが居れば、お前らは自称世界最強のミリシアルを含めあっさりと滅ぶ。

 勝てるとしたら我が国か日本くらいだろう。誘導弾の概念が遥か昔からあるにもかかわらず、未だに開発できていないお前らとは技術水準が違う」

 

 ラヴァーナル帝国に関して、グラ・バルカス帝国は、この世界の住人の発言やそれっぽい遺跡の発見により、少なからず把握はしていた。

 しかし、それはあくまでもただの有名な神話として捉えられており、伝承通りの国が存在していたなどと考えていないし、ましてや再びこの世界に現れるなど全くもって信じていない。

 

「その言い方だと、貴様らが誘導魔光弾を持っているかのようだな。はったりもほどほどにしろ」

 

「我々や日本のものは魔法ではなく全て科学式だ。まぁ、そんなお伽話や占いを本気で信じているうちは誘導弾なんて絶対に創れないよ」

 

「蛮族が...舐めてると潰すぞ」

 

 2人の口論が続き、更にはさりげなくバカにされたミリシアル帝国の代表が割り込んだので、議長が止めに入る。

 他の者たちは状況についていけてないようだ。

 

 

「なんかすごい会議だな。特にあのグラ・バルカスの使節、口が悪いなんてもんじゃない」

 近藤が、部下の井上に小声で話しかける。

 

「えぇ、こんなの地球にいた頃では考えられません。それに彼女、こちらの情報もちゃっかり話してますし、やはりあの国は要注意ですね」

 

 日本大使の2人は唖然とする一方で、グラ・バルカス帝国への警戒心を高める。

 場が静まり、ムーが発言権を得る。

 

「我が国ムーは、グラ・バルカス帝国への非難声明を発し、同国に対する経済制裁を求めます。

 近頃の彼らはやりすぎだ。このまま放っておけば、世界秩序を乱しかねません」

 

 神聖ミリシアル帝国も手を挙げる。

 

「我が国もムーと同意見だ。このまま彼らが侵攻を続ければ、我が神聖ミリシアル帝国も介入せざるを得ない。

 我々はグラ・バルカス帝国に対し、第二文明圏からの即時撤退を求める」

 

 世界最強の国家の介入。それを聞いて震え上がらない者は居ないはずだった。

 しかし、グラ・バルカス帝国の外交官イリスは怯える様子も無く、むしろ微かに笑みを浮かべながら話し始めた。

 

「フッ、まさかそちらから来るとはな。だがその方が話は早い」

 

 彼女の言葉を聞いた一同は、一瞬だけ困惑する。が、彼女が次の言葉を発する前には、ほとんどの者がその意味を理解していた。

 

「我々グラ・バルカス帝国は、神聖ミリシアル帝国に対し、正式に宣戦布告する!

 貴国は、列強やら文明圏外やらの固定観念を生み出した全ての元凶である。そのような国は見せしめに滅ぼすのが1番だ」

 

 一瞬の沈黙。

 

「あの女正気か?」

 

「お前らが見せしめに滅ぼされるの間違いだろ」

 

「蛮族もここまで野蛮だと哀れだな」

 

 宣戦布告という言葉に会場がざわめく。彼らからしてみれば、ミリシアルへの宣戦布告など自殺行為そのものだからだ。

 

「まずは!ここカルトアルパスに攻撃を行い、湾内にある船舶は全て沈める。攻撃は3日後の4月25日だ。それほどの時間があれば十分足りるだろう。

 もっとも貴様らの頭が足りていればの話だがな」

 

 大胆にも作戦の内容を公表し、各参加国を貶した後も彼女は話を続ける。

 

「しかし!25日以前でも、湾外のミリシアル艦は撃沈する場合がある。もちろん、ミリシアルの船舶と断定できない限り手出しはしない。そこは安心したまえ」

 

 宣戦布告直後に作戦の詳細を伝えるなど普通はありえないことだが、彼女が赤裸々に語っているため、会場の者たちはみんな呆れた顔で、とりあえず黙って聞いていた。

 そんな会場の雰囲気を横目に、彼女は"ある国"に焦点を当てる。

 

「最後に一つ、日本国へ伝えることがある」

 

 各国の使節が日本大使に目を向ける。

 

「貴国は我々に対抗できる唯一の存在だが、憲法の都合上、自らは手を出せないそうだな。このまま交戦しては非常にまずいだろう。

 だから、こんな自称世界最強など見捨てて、さっさとここから離れることをおすすめする。法に背いて戦い、挙げ句の果てに負けるなど目も当てられぬからな。

 では、伝えたかったことは以上だ。最後まで聞いてくれてありがとう」

 

 彼女がそう言うと、グラ・バルカス帝国使節団の一行は会場から出ていき、カルトアルパス港からも去っていった。

 

 

「これはとてもまずいぞ......」

 

 日本大使の近藤が嘆く。グラ・バルカス帝国が神聖ミリシアル帝国に宣戦布告し、あろうことか3日後、ここカルトアルパスに攻撃を仕掛けるというのだ。

 しかし、当のミリシアルを含め、ムーと日本以外の参加国は全く危機感を抱いているようには思えなかった。

 少し時間を置いて、議長であるリアージュが場をまとめ、今後の方針を話し始める。

 

「先程の通り、我が神聖ミリシアル帝国は、グラ・バルカス帝国より宣戦布告を受けました。彼ら曰く、ここカルトアルパスに強襲攻撃を仕掛けるとのことですが、もし仮に奴らが攻め込んできても、マグドラ沖の第零式魔導艦隊や地方警備隊、天の浮舟によるエアカバーもあるので負けることはないでしょう。

 ですが、皆さんの安全のために、明日以降の開催場所を内陸部の都市に変更することが決定致しました。申し訳ないですが、皆さんには明日の朝に鉄道に乗ってもらい、開催地への移動をお願いしたい」

 

 議長の言葉に多くの者は頷くが、日本使節団の一同は絶句した。

 

 このような言い方は良くないが、彼らは本当に力の差を理解していない。グラ・バルカス帝国が攻撃を仕掛けてくること以外、彼女の言葉を真に受ける者がほとんどいなかったのだ。

 そこで近藤が手を挙げ、発言権を得る。

 

「我々日本国としましては、全参加国の艦隊のカルトアルパス引き上げを提案します」

 

 近藤の発言に、すかさずミリシアルの代表が反発する。

 

「何故だ。我々の警備体制に不満でもあるのか?まさか、あの女外交官がぬかしておったことを、全て信じるとでも言うのか?」

 

 予想通りの反応に近藤をはじめとする日本の代表は落胆する。しかし、どうにか説得しなければ第4護衛隊群も被害を受けるかもしれないので、近藤はめげずに説得を続ける。

 

「いえ、彼女の言ったことを鵜呑みにするつもりはありません。しかし彼女の言う通り、我々は誘導弾を保有していますし、かの国が誘導弾を実用化していることも把握済みです」

 

「パーパルディアを降した貴国は確かに強い。だが、機械文明国が誘導魔光弾を使うなどありえん話だ。冗談はよしてくれ」

 

 近藤は、やはりダメかという顔をしながら、自分たちだけでも抜け出そうかと考えていた。日本政府には既にありのままを報告してあるが、まともな返答が来るのは果たして何日後だろうか。

 それに、イリスが最後に残した言葉のせいで、脱出しようがしまいが各国に与える印象は決して良いものではない。もし敵の規模もわからないまま戦い、護衛艦が撃沈でもされたら日本国内からの批判も吹き荒れる。

 

 そんな中、ムーの代表が手を挙げる。

 

「我が国は日本の提案に賛成です。日本は我が国ムーの技術力を遥かに上回り、グラ・バルカス帝国に対抗できる数少ない存在だと認識しています。

 その彼らが、我々の安全を考えて引き上げを提案するならば、それを受け入れる他ないと考えます」

 

 列強2位の賛成には、流石のミリシアルも強気ではいられない。

 そこに近藤が畳み掛ける。

 

「現段階では、かの国の侵攻規模すら不明です。もし彼らが想定以上の"数"で攻めて来たら、他の参加国の艦艇も戦闘に巻き込まれかねません。より安全に事を運ぶには、各国艦隊のカルトアルパス引き上げがよろしいかと思います」

 

 近藤は、技術の差よりも物量の差で被害が及ぶ可能性を示唆した。

 実際、第零式魔導艦隊の艦艇数は他の艦隊と比べてかなり少ない。近藤たちはそんなこと知る由もなかったが、ミリシアルの方針を変えさせるのには十分な主張だった。

 それを踏まえて議長が切り出す。

 

「わかりました。本件は早急に取り纏め、明日の夕方までには結論を出しましょう。開催場所の変更は結論次第ということで、少なくとも明日の昼までは、このままカルトアルパスにとどまっていただきます」

 

 近藤はホッとした顔を浮かべた。

 

 もしかしたら『一丸となってグラ・バルカス帝国と戦おう!』などというふざけた国が出てくるかもと思っていたが、今回の宣戦布告は、あくまでもグラ・バルカス帝国と神聖ミリシアル帝国との間の話なので、今すぐにでも介入しようという国は現れなかった。

 

 とりあえずは1日目の会議が終了した。だが、問題はまだ何も解決していない。

 明日発表されるミリシアルの方針次第では、戦闘に巻き込まれる可能性もあるし、イリスが嘘の情報を流した可能性も考慮しなければならない。

 ただ、神聖ミリシアル帝国への宣戦布告は紛れもない事実であり、ミリシアルは現状どう頑張ってもグラ・バルカス帝国には勝てない。

 

「とりあえず政府の指示を待つか......」

 

 近藤はひとまず考えるのをやめた。




解説
・イリス・・・オリ人物。グラ・バルカス帝国の外交官で、原作のシエリアのポジション

〜流れ〜
グ帝がミ帝に宣戦布告し、カルトアルパス強襲を各国に事前通告

危機感ゼロのミ帝はろくな対応をしない

近藤が各国艦隊のカルトアルパス引き上げを提案

ムーのサポートもあり、ミ帝の今後の方針を再審議させることに成功。
現在結果待ち

という感じで原作とは違った流れですが、いろいろ端折って雑な感じになっちゃいました...。すいません許してくださいなんでも(殴
あと自分で書いてて思ったんですが、宣戦布告の理由テキトーすぎない?

-追記-
イリスの発言をわかりやすいように微修正


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