ガンダムビルドダイバーズRe:RISE Re:Story (神の爪牙にして不忠者)
しおりを挟む

機体、キャラ解説
オリキャラ設定(ネタバレ込み)


今作のオリジナルキャラクター達の設定集となります。ネタバレ込みなので、注意してください。


ネタバレ暴発防止のため、空白

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイバーネーム/リアン

リアルネーム/ツキザト アンズ(月里 杏子)

年齢/17歳

性別/女

ダイバールック時性別/一部、男 二部、女  

使用ガンプラ/ガンダムアイン

/レギンレイズ・ルナリアンゼ

/ガンダムアイン・ルナリアンゼ

/塗装、改修を施したガンダムフレーム機とヴァルキュリアフレーム機

/鉄血のオルフェンズに出る量産機の素組

 

/???

 

 

 

本作の主人公。安価でダイブという安価スレのスレ主で、GBNのプレイヤー。鉄血のオルフェンズのフレーム剥き出しの無骨な機体が好きで、自身が使う機体は全てオルフェンズ系の機体としている。なお、HGシリーズは全て集めている

 

性格は若干チンピラ気質で、付き合いの長い奴にはそれなりに普通に接するが、初対面や気に入らない奴とはオラついた態度で当たってしまう。特に最初の頃のカザミとは何度か噛みつく事がある

 

過去に、学校の工作の授業でガンプラを持っていった事で、周りから軽蔑の視線を向けられ、さらにそれを壊された事があり、女なのにガンプラを作る事を、それを使った遊びであるGBNをすることを隠し続ける事にしていた

 

本来の彼女の性格は明るく勝ち気な印象を受ける子であり、ノリやお約束といったモノを理解しているなど、ちょいとオタクな知識を持つ子である

 

ダイバーネームのリアンというのは、リアルネームである月里杏子の中を取ったモノである

(里=リ 杏=アン)

 

 

 

 

 

ダイバーネーム/オウカ

リアルネーム/サクラギ タイアン(桜木 泰安)

スレ内コテハン/安価ダイバー応援団長

年齢/61

性別/男

使用ガンプラ/ガンダムバルバトス・マスター

 

 

 

リアンのリアルでの知人で、父親の仕事先の上司……というより社長。ガンプラの師とも言える人物で、ポケットマネーの大半をガンプラに注いでいるほど、ガンプラが好きな人である。リアンからはおじさんと呼ばれている

 

リアルの見た目は三日月・オーガスが60代まで老成したかのような姿で、ダイバールックもそれよりも20ぐらい若くした感じのものになっている。着ている服は、何時も和服

 

性格は豪快で大雑把、だがガンプラの制作をする際には普段とは考えられないほどの繊細さをみせたりするなど、ガンプラに関しては本気で取り組む人柄である

 

リアンのトラウマである事件のある意味元凶とも言える人物で、そのことに関して深い後悔と慙愧の念にかられており、それ以来、自身の家族ぐらいにリアンの事を案じるようになる。彼女のガンプラ作りを復帰させたり、GPDやGBNへ誘ったり、GBNをプレイする際にどんな事をしていけばいいのか迷った時にスレを立てればいいと言っていたりと、彼女を全面的にフォローしたりしている

 

スレ内では安価ダイバー応援団長として、彼女のプレイを盛り上げたり、彼女のトラウマや性別によるゴタゴタを未然に防ぐために話題の誘導をしたりと、多岐に渡って彼女の為と称して動いている。が、その全てにおいて、彼女のトラウマの根本的解決には至れなかったりするので、かなり不器用な人物である

 

使用するガンプラは、バルバトスをベースとし、マスターガンダムのパーツを組み込んで近接肉弾戦仕様に改造したガンダムバルバトス・マスター

 

モチーフは、鉄血のオルフェンズのマクマード・バリストン

 

 

 

 

 

 

ダイバーネーム/アダチ

リアルネーム/スガ アキト(須賀 彰人)

年齢/38

性別/男

使用ガンプラ/ガンダムアストレイ・ブラックフレーム禍津(マガツ)

 

 

 

リアンの安価スレのスレ民の一人。気だるく剽軽な性格のAランクダイバーで、GBNでは傭兵プレイで楽しんでいる一人。メンヘラで中二病な彼女がいる

 

GBNでは割と古参に当たる人物で、サービス開始当初から遊んでいるというほど長く遊んでいる。彼女とはこのGBNが馴れ初めの場である

 

ダイバールックはヨレヨレのスーツ姿に白髪のキャベツみたいな髪型という、なんとも現実味が溢れるルックをしている。なおリアルの姿もこんな感じらしい。本当はもっと良い感じな服装にしたいのに彼女からこんな風にさせられている

 

傭兵プレイという渡り鳥的なプレイスタイルをしているのは、数多くのダイバーとガンプラバトルがしたいからという理由でやっている。彼女とタッグを組むとSランクダイバーすら屠るほど息のあったプレイを見せる

 

使用するガンプラは、ガンダムアストレイの改造機で、赤い装甲に黒いフレームというカラーに、髪の毛のような黒いワイヤーブレードを八本持ち、手には薙刀のような直刀を装備している。彼女のガンプラは青い装甲に白いフレームで四枚の白翼を取り付けたガンダムアストレイ・ホワイトフレーム天津(アマツ)

 

モチーフとしているのは、『ペルソナ4』の足立刑事に、『ビルドファイターズトライ』のスガ・アキラのガンプラへの熱意をインストールしたような感じ。ガンプラも、同様にペルソナ4のマガツイザナギをモチーフとしている

 

 

 

 

 

 

ダイバーネーム/S.R.T.er(本人呼び、スーパーライダータイム、エリコ ランドウ。他人呼び、ショタロリタッチャー)

リアルネーム/ランドウ エリコ(蘭堂 恵理子)

年齢/27

性別/女

使用ガンプラ/ガンダムライダー・フェネクス

 

 

 

リアンの安価スレのスレ民の一人。一人称が俺で、男口調のパル推しのショタロリコンな変態

 

子供が好きで、その姿を見るとついそっちに目を向けてしまう変態。ガンダムやガンプラには全く興味は無く、GBNをやっている理由は子供が大勢いるからという事だけで続けている変態。そういう事で、フォースに所属したり特定のチームを組んでいる事はしていない変態。ダイバールックは宝塚歌劇団の男役の女性のような見た目な変態

 

リアルは女優をしており、主に刑事や上司、主役のお姉さんと言った歳上の出来る女性という役柄を演じているが、本人は特撮の変身ヒーロー役をやりたがっている。理由は子供達の羨望の眼差しを向けられたいからというモノで、その願望は使用するガンプラに現れている

 

使用するガンプラは、RGのGフェネクスに水色と桃色の2体のプチッガイを背合わせ、両腕にアームドアーマーDEを取り付けたガンダムライダー・フェネクス。塗装も可動域拡大改修もしていないし、ライダーの要素が何も無い

 

モチーフは無いが、ガンプラの名称モチーフは、仮面ライダーのそれ

 

 

 

 

 

 

ダイバーネーム/成田空港

リアルネーム/イガラシ ゲンキチ(五十嵐 源吉)

年齢/43

性別/男

使用ガンプラ/トールギスヴァルキューン・シグルド

 

 

リアンの安価スレのスレ民の一人。スレ内では割と砕けた感じではあるが、GBNでは生真面目な言葉使いと仕草をする為、スレ内とGBN内とでは雰囲気が異なっている

 

フォース、ジャパニーズエアポートに所属しており、名前の通り、日本の空港の名前をしたダイバー達が集い、飛行機型に変形出来る可変機のみで構成された独特のフォースである。他のメンバーは、羽田空港や那覇空港、函館空港、関西空港といった面々がいる

 

ダイバールックは飛行機の機長のような見た目をしており、フォースメンバー全員がその様に統一している

 

リアルは元航空自衛隊のジェット機乗りであった頃があり、その時の経験から、堅実かつ実戦的で、多種多様な戦術技術を持つ。その為幅広い応用力を有している。彼がまだ空自に居た頃は戦闘行為なんて無かった為、知識と経験を遺憾無く発揮出来るGBNに居場所を見出している。因みにそれが原因で奥さんと離婚する羽目となり、娘と共に逃げられた過去を持つ

 

使用するガンプラは、可変機構を組み込み、ジェット機型とMS型、そして戦闘機に手足が生えたかのような形態の三段変形を可能としたトールギスⅢの改造機、トールギスヴァルキューン・シグルド。因みに、フォースメンバー全員が同じガンプラの装備違いとなっている

 

モチーフは特に無い。ガンプラのモチーフは、マクロスのヴァルキリー

 

 

 

 

 

ダイバーネーム/むちゃ丸

リアルネーム/ホソノ エイジ(細野 栄治)

年齢/17

性別/男

使用ガンプラ/鳳凰似帝大将軍・駒炉須知流謁斗版(トリニティダイショグン・クロスシルエットバージョン)

 

 

リアンの安価スレのスレ民の一人。特にこれといった特徴も無く、特にこれと言って秀でた面も無いCランクのダイバー。安価スレ内では立ち上げから今に至るまで居続けている最古参だったりする

 

フォースに所属してはいるが、特に有名所というわけでもなく、ただそこら辺にありそうなランクのフォースである

 

他のスレ民と比べて特にコレといった所が無いと思っている所がある。が、ガンプラ製作技術に関しては他のスレ民よりも高く、特に旧キットを現在の仕様に改修し直すという点に置いては一級品の腕前を持つ。今彼が使っている鳳凰似帝大将軍も、今風のフォーマットでありながら、かつてのギミック全てに対応する事が出来、また新たなギミックも追加されていたりする

 

ダイバールックは、デフォルトで存在している地球連邦の軍人スタイル

 

リアルは、リアンと同じ学生である

 

モチーフは無い




同時に、機体設定の方も更新しましたので、そちらも是非宜しくお願いします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

オリジナル機体解説(11/5 追加)

オリジナル機体解説文です

機体を本編に出した後に逐次追加をしていきます

9/28 レギンレイズ・ルナリアンゼ追加

10/15 ガンダムアイン、設定追加

11/5 ガンダムアイン・ルナリアンゼ、エルドラグレイズ、追加


機体名/ガンダムアイン

型式番号/ASW-G-23

全高/22.2

重量/39.2

武装/大型専用アックス

  パイルバンカー

  肩部格納式40mm機関銃

  スクリューパンチ

  バーナーキック

  末那識システム

 

 

リアンがプレイ開始当初から使っている機体。ガンプラのHGグレイズアインの胸部にあるエイハブリアクターの部分をバルバトスのモノに変え、胸部装甲はグレイズアインのモノに貼り替えて、頭部もバルバトスのモノにアインの装甲を張り付けたモノにしている。手足はアインの物そのまま使用している。と言っても、装甲を肉厚にする為プラ板を貼って増強させたり、可動部も一部拡大させることで機動性を上げるなどの、ガンプラバトルをする上での改修が随所に施されている。あと足裏には機動力底上げや飛行性能を付与させる為、バーニアが取り付けられている。因みにバックパックにもバーニアを取り付けてある。使うアックスもそれなりに手を加えて、塗装もフレーム部はメタリックに仕上げ、装甲もナノラミネート装甲再現の為のコーティングで塗装されている

 

ガンダムフレーム特有のツインエイハブリアクターを搭載させる事で、通常のグレイズアインよりも出力が高く、ガンダムフレーム機並みの出力を引き出す事が出来る

 

足裏にバーニアを取り付けた事でグレイズアインにあったドリルキックを失っているが、変わりに相手をその四本の爪で捉え、高出力でバーニアを吹かせる事で火炙りにするバーナーキックを使用出来るようになっている。コレは相手の装甲を融解させ、そこにスクリューパンチやパイルバンカーを打ち込んで、確実に一撃で仕留めるようにする為の武装である

 

基本的には、機関銃で敵の動きを牽制しつつ接近し、アックスを使って敵の武装や起動性を奪い、バーナーキックで防御を削り、パイルバンカーやスクリューパンチで止めを刺すというのがメインの戦法

 

名前に関しては、ガンダムフレーム特有のツインエイハブリアクターと頭部がガンダムタイプを使用してる事から、オルフェンズ系ガンダムの特徴としてソロモン72柱の名前に由来している。アインは23番目の悪魔、アイムの別称である繋がりから、この名にしている。型式番号もそれに準拠したモノになっている

 

 

なお、グレイズアインを選んだ理由は、大きい方が強そうというのが主な理由。あと、メンテナンスもしやすく、部品もグレイズ系のモノを流用出来る為か、数多く生産されてお手頃価格で買えるというのも理由である

 

【10/15 追加】

 

末那識システム

 

鉄血のオルフェンズに於ける阿頼耶識システムに該当するシステムにして、阿頼耶識を用いた高難易度ミッション達成報酬の一つ。正式名称は阿頼耶識システムtypeEで、末那識というのは、その名称を変更したモノ

 

GBNに於いて、阿頼耶識システムは導入されており、その性能は原作同様、基本的な操作の他に、脳内で操作補助、管制を行い、コンピュータによる機械的な動きに依らない柔軟かつ機敏な動きをする事が出来る。が、これが一癖も二癖もある機能の為、数回使用しての慣れや、一種の才能が無ければ使いこなす事が出来ない、上級者向けのスキルとなっている

 

一方、この末那識システムは原作にあるグレイズアインに搭載されているような、全ての操縦作業を脳内思考制御で完結させるというものを再現しており、発動すればアバターと機体を同期させ、アバターを動かすように機体を動かす事が出来るようになる。そしてGBN内では、アバターは超人的な動きをする事が可能であり、それを機体でも行えるようにもなるため、破格の性能を持っている

 

だが、これを使用するにあたりデメリットが存在し、まずこのスキルを習得すると通常の阿頼耶識が使えなくなる(上書きされる為)。使用時間が限られている。時間制限を過ぎたら行動不能になる。この三点があるため、なかなか使用される事がない。特に三つ目が致命的で、もし止めをさせなかった場合は確実に落とされるので、使用を控えている

 

名称は、このスキルを入手した時に、名称を変えられるから安価をして、この名になった

 

由来となる末那識とは、阿頼耶識と深い関わりを持つ概念で、無意識(阿頼耶識)と対となる有意識の事

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機体名/レギンレイズ・ルナリアンゼ

型式番号/EB-08atc

全高/29.8m

重量/47.5t

武装/メイス(バルバトスのモノ)

  グングニール(キマリスのランス)

  ビームマグナム×2

  シールドファンネル×2

  ビームサーベル×6

  ビームジャベリン×2

  90mmガトリング砲

  ビームガトリング砲

 

 

リアンが使う二機目のガンプラ。プレイ開始して大分経った後……ブレイクデカールというチートツールが横行し始めた辺りに作成したモノで、自分がスレ主をやっている安価スレで作成の安価を取って作られた機体である。ベースを今あるオルフェンズのHGシリーズの中から一つ選び、次に改造の方向性となるコンセプトを、そして武装をいくつかに、最後に名前を取る形で行われた

 

その時決まった内容というのが、ベースにレギンレイズ・ジュリア。コンセプトが高機動、空中戦型。武装がバルバトスのメイス、キマリスのランス、ビームマグナム、ビームジャベリン、ビームガトリングの5つ。それらが安価で決定された。そこにリアンが肩のシールドをファンネルに、ビームガトリングの他に実弾のガトリングを追加、どうせならとビームサーベルも何本か追加させた、鉄血の世界観にそぐわない光学兵器ガン積みの機体に出来上がった

 

しかし、あまりにも武装の積載量が多かった為、レギンレイズ・ジュリアのエイハブリアクターの出力とスラスター、バーニアの推進力では到底機動力が低く、空中飛行も出来なくなってしまった。一応脚部に大幅なスラスター、バーニアの追加を行ったがそれでも上手くいかず、コンセプトが死亡する事態になり、当時は(リアンだけが)荒れに荒れた。この問題を解決すべく、スレ内で色々と議論を交わした所、ミノフスキーフライトを使ってはどうかという意見が出て、動力周りをエイハブリアクターの代わりに宇宙世紀の仕様に変更。クスィーガンダムやVガンダムにあるMSサイズのミノフスキークラフトを搭載させる事によって、浮力による重量の軽減に成功。それによって重武装ながら高機動、空中戦闘可能という機体が出来上がった

 

代わりに、改造後に設定変更を施した為、ナノラミネート装甲が実装出来ず、防御面が犠牲となっている。フレーム周りが剥き出しであるから、そこを狙われれば落ちかねないので、この辺りの事も、(リアンのみ)荒れる事態になった。だがそこはガンダムアインと差別化が出来るから良いやと、開き直っている

 

 

名称安価を取ったのは安価ダイバー応援団長で、とくに理由はなく、語呂的に良くは無いかという事で付けたようだが……因みに型式番号も団長が付けた

 

 

 

 

 

 

機体名/ガンダムアイン・ルナリアンゼ

型式番号/ASW-G-23atc

全高/29.9

重量/45.8

武装/大型専用アックス

  パイルバンカー

  肩部格納式40mm機関銃

  スクリューパンチ

  90mmガトリング砲

  ビームガトリング砲

  

 

 

リアンのガチ機であるガンダムアインと、レギンレイズ・ルナリアンゼの2体の特性を上手く組み合わせてミキシングしたガンプラ。アインの持つツインエイハブリアクターによる高出力による近接戦闘性能と、ルナリアンゼの多数あるブースターやバーニアによる高機動、それらを余す事なく使用する事が出来る機体。主に宇宙戦等に用いている

 

機体の動力がエイハブリアクターとなっている為、ナノラミネート装甲が適用されており、それによる光学兵器無効という高い防御性能を発揮しており、並の攻撃では落ちる事が無い上、起動性と運動性の高いルナリアンゼの回避性能も併せ持つ為、持久力に秀でている

 

反面、決め手となる大火力武器が無く、ルナリアンゼの持つビームマグナムは搭載出来ない仕様の為、攻撃面に於いてはルナリアンゼよりも劣っている。更にルナリアンゼの足は地上戦を想定した作りでは無いので、アインのような地上での機動性はほぼ皆無と言って良い

 

以上の事から、リアンは地上戦ではアインを。空中、電撃戦、奇襲戦ではルナリアンゼを。宇宙、持久戦時にはアイン・ルナリアンゼを使用すると言った使い分を想定している(が、基本安価プレイでやってる為、その想定はなんの意味も為していなかったりする……)

 

アインの上半身に、ルナリアンゼの下半身を取り付け、背中にアックス懸架用のバックパックの代わりにルナリアンゼの大型ブースターを取り付けた見た目をしている。よって全高がルナリアンゼのそれに近しいものとなっている

 

因みに、ルナリアンゼという名称は、リアンのリアルネーム、月里杏子をもじったモノである

(月=ルナ 里杏=リアン 子=ゼ)

また、型式番号のatcというのも、アンズ・ツキザト・カスタムの略である

 

 

 

 

 

 

 

機体名/エルドラグレイズ

型式番号/EB-06EL

全高/30.2t

重量/17.8m

武装/バトルアックス×2

/ショートバレルマシンガン

/ロングバレルビームライフル

 

 

アルスがグレイズをベースに改造した近接戦仕様の機体。エルドラドートレスが遠距離戦仕様なのに対した機体設計の為、併用して運用する事を目的として開発したモノだと思われる

 

元のグレイズ同様、光学兵器の類を無効化し、強い衝撃でなければ突破する事が困難であるナノラミネート装甲が施されており、それにより高い防御性能と、微弱ではあるがエイハブ粒子による通信妨害機能も持つ

 

エルドラアーミーと同様の近接格闘型の機体であり、上位互換と思われるが、その数は少ない。おそらく、ナノラミネート装甲の再現が難しいのだと思われる

 

武装も元のグレイズ同様にシンプルでまとめられており、近接用のバトルアックスを2振り備えており、バレルを交換する事でマシンガンとビームガンに切り替えられるライフルを1つ装備している

 

見た目はグレイズの肩アーマーがエルドラドートレスのモノに酷似したアーマーで、足の装甲が刃のようにエッジがかかったものとなっている。頭部も、グレイズアインの装甲に似たモノとなっている

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第一部
【安価でダイブ】42スレ目


1:以下無名のダイバーがお送りします

ここはGBNプレイヤー、ダイバー名“リアン”ことイッチが安価をしながらGBNをプレイしていく様子を見守るスレです

用法・用量・ネチケットを守って優しく見守りましょう

 

前スレ:【安価でダイブ】41スレ目

 

 

 

2:以下無名のダイバーがお送りします

【イッチのスペック】

ダイバー名/リアン

性別/男

所属フォース/無所属

プレイ歴/サービス開始して1年後からスタート

好きなガンダム作品/鉄血のオルフェンズ

使用ガンプラ/ガンダムアイン

(グレイズ・アインの改造機。フレームをガンダムフレームに取り替えた汎用型。プレイ開始から使っている1号機)

/レギンレイズ・ルナリアンゼ

(レギンレイズ・ジュリアの改造機。鉄血メイスとキマリスランスを使い、ミノフスキーフライトシステムを装備した全身ブースターお化けの超近接戦闘型。安価で作成した機体)

/ガンダムアイン・ルナリアンゼ

(上記の二体を組み合わせた機体。ガンダムアインをベースに、脚をルナリアンゼに変え、バックパックにルナリアンゼの腕を取り付けたミキシング機。イッチのガチ機)

/塗装、改修を施したガンダムフレーム機とヴァルキュリアフレーム機

(HGで発売されているモノはほぼ全部揃ってます)

/鉄血のオルフェンズに出る量産機の素組

(HGで発売されているモノ全て。主に縛りプレイなどの際に使ってます)

 

 

 

………………………

 

………………

 

………

 

 

258:1

おーっす

明日一日中インすっから、機体と行動の安価とっぞー

 

 

259:以下無名のダイバーがお送りします

お、イッチおっつー

 

 

260:以下無名のダイバーがお送りします

イッチ明日インすんのか。俺出来ねーんだけど

 

 

261:以下無名のダイバーがお送りします

イッチおっつ。明日かよ、タイミング悪りぃなー

 

 

262:安価ダイバー応援団長

よりによって明日かぁ

 

 

263:1

なんで明日インするのが悪みたいに言われなきゃならんのだ?

 

 

264:以下無名のダイバーがお送りします

明日土曜日。人によっては仕事がある。休みじゃない人間にとって、土曜休みは羨ま妬ましいからに決まってるだろ

 

 

265:以下無名のダイバーがお送りします

俺は普通にデートだから

 

 

266:以下無名のダイバーがお送りします

氏ね

 

 

267:以下無名のダイバーがお送りします

氏ね

 

 

268:以下無名のダイバーがお送りします

爆ぜろ

 

 

269:安価ダイバー応援団長

失態して別れろ

 

 

270:以下無名のダイバーがお送りします

あぁ、今日も愚衆共の悲鳴が心地よいわ!

ってか団長ひでぇ

 

 

271:1

おーい、そろそろ安価したんだが

 

 

272:以下無名のダイバーがお送りします

そうだった

 

 

273:以下無名のダイバーがお送りします

>>270のせいで変な事になったじゃなぇか。罰として彼女と別れてきなさい

 

 

274:以下無名のダイバーがお送りします

は?

 

 

275:以下無名のダイバーがお送りします

イッチー、早く安価安価ー

 

 

276:1

おう。とりあえず何人いるか、挙手

 

 

277:以下無名のダイバーがお送りします

 

 

278:以下無名のダイバーがお送りします

 

 

279::以下無名のダイバーがお送りします

 

 

280:安価ダイバー応援団長

 

 

281:以下無名のダイバーがお送りします

 

 

282:1

んー、こんなモンか

 

 

283:以下無名のダイバーがお送りします

減ったなー、だいぶ

 

 

284:以下無名のダイバーがお送りします

一時期は30人ぐらい挙手してたのにな

 

 

285:以下無名のダイバーがお送りします

まぁもう4年も同じ事やってるだけだしな。かわり映えしなくて飽きた奴は多いだろうよ

 

 

286:安価ダイバー応援団長

大会イベに参加とかしてた頃が一番多かったな。また参加すれば戻ってくるかもな

 

 

287:以下無名のダイバーがお送りします

その為には、安価で狙い撃つぜ!しないと

 

 

288:以下無名のダイバーがお送りします

でも少ない方が治安よくて居心地は良いからこのままでも良い気がする

 

 

289:以下無名のダイバーがお送りします

それな

 

 

290:以下無名のダイバーがお送りします

前にG Tuberが安価スレを建てるよなんて企画の時は酷かったからな。アンチや荒らしに安価スナイプされて、リアル住所晒せとか顔出ししろとか半裸になれとか

 

 

291:以下無名のダイバーがお送りします

そんで案の定アンチと荒らしとファンによるレスバに発展して、スレ内が地獄になったと

 

 

292:以下無名のダイバーがお送りします

終いには気を病んでそのG Tuber、引退までいっちゃってなぁ……ほんと可哀想だわ

 

 

293:以下無名のダイバーがお送りします

G Tuber安価で引退事件。ネットの悪意が際立った事件やったな

 

 

294:以下無名のダイバーがお送りします

それな

 

 

295:安価ダイバー応援団長

忘れようぜあんなの

という訳でイッチ、早く安価してくれ

 

 

296:1

この流れで安価するの? なんか嫌なのが当たりそうなんだが……

機体安価>>301

 

 

297:以下無名のダイバーがお送りします

よし、安価だ!

 

 

298:以下無名のダイバーがお送りします

フリかな? やって良いのかな?

 

 

299:安価ダイバー応援団長

ガンダムアイン

 

 

300:以下無名のダイバーがお送りします

ルナリアンゼ

 

 

301:以下無名のダイバーがお送りします

素組グレイズ

 

 

302:以下無名のダイバーがお送りします

レギンレイズ

 

 

303:以下無名のダイバーがお送りします

バエル

 

 

304:以下無名のダイバーがお送りします

素組www 酷い目待ったなし

 

 

305:以下無名のダイバーがお送りします

しかもグレイズwww これ行動次第だと地獄なのではwww

 

 

306:1

はあああああああああああああああっ!?

 

 

307:安価ダイバー応援団長

案の定発狂してる

 

 

308:以下無名のダイバーがお送りします

よし、イッチを地獄に落とそう

 

 

309:以下無名のダイバーがお送りします

さっきの話題は、地獄へのフラグだった…?

 

 

310:1

く……仕方ない。行動でマシなのが当たるのを期待する……

行動安価>>317

 

 

311:以下無名のダイバーがお送りします

イッチ渾身のお祈りタイム

 

 

312:以下無名のダイバーがお送りします

だが現実は非情である

 

 

313:以下無名のダイバーがお送りします

狂い哭け、お前の末路は砂袋だ

 

 

314:以下無名のダイバーがお送りします

ハードディメンションで上級者相手に辻斬り

 

 

315:以下無名のダイバーがお送りします

ペシリアエリアでガンプラ展示

 

 

316:安価ダイバー応援団長

虎武龍に道場破りで殴り込み

 

 

317:以下無名のダイバーがお送りします

シークレットミッションと呼ばれる奴の調査

 

 

318:以下無名のダイバーがお送りします

ストリートダイバーズ主催の路上ガンプラファイトに飛び入り参戦

 

 

319:以下無名のダイバーがお送りします

お?

 

 

320:以下無名のダイバーがお送りします

決まったか。ってなにこれ?

 

 

321:以下無名のダイバーがお送りします

シークレットミッションの調査?

 

 

322:以下無名のダイバーがお送りします

おいおいおい、なんかつまんないのが当たったぞ

 

 

323:安価ダイバー応援団長

>>317、詳細説明

 

 

324:1

良かった。すっごく平和な安価だ……!

 

 

325:以下無名のダイバーがお送りします

チッ、つまんねぇの

 

 

326:>>317

いやー、なんか申し訳ない

とりあえず説明するが、最近噂の奴でどっかに隠しコンテンツがGBN内にあるらしく、それがホントかどうか調べて欲しいってわけ

 

 

327:以下無名のダイバーがお送りします

あー、なんか聞いたことあるような

確かアレだろ、ヤスっていう情報屋ロールやってる奴から聞いたことあるわ

 

 

328:以下無名のダイバーがお送りします

知っているのか雷電!?

 

 

329:>>317

そそ、それ。今個人的に調べてんだけど、なかなか進展無くてさ。んで、今日用事でイン出来ねえから、イッチに代わりに調べて欲しいってわけで安価した

 

 

330:以下無名のダイバーがお送りします

おいwww

 

 

331:安価ダイバー応援団長

イッチを手駒のように使うなwww

 

 

332:1

ただの手足かよw まぁその話聞いて興味沸いたし、オケ。とりあえず明日はそれで行く。ちょうど機体もただの無改造グレイズだしな! 平和な安価ありがとう!

 

 

333:以下無名のダイバーがお送りします

んー、このなんだかなぁ感

 

 

334:以下無名のダイバーがお送りします

ちょっとつまんないかなぁって

 

 

335:以下無名のダイバーがお送りします

イッチの発狂が見れなくてガッカリだよ

 

 

336:安価ダイバー応援団長

相変わらずイッチに対して鬼畜過ぎないかお前ら

 

 

337:以下無名のダイバーがお送りします

いやだって、ねぇ

 

 

338:以下無名のダイバーがお送りします

安価で発狂させないと、なんかしっくり来ないというか

 

 

339:以下無名のダイバーがお送りします

うんうん

 

 

340:1

お前らああああああ!!!

 

 

341:>>317

あ、イッチ。とりあえず情報共有しとくけど、噂の場所はシーサイドベースのダウンタウンの路地裏らしい。そこでミッションの受注が出来るみたい

 

 

342:以下無名のダイバーがお送りします

? そこまで分かってるのか?

 

 

343:以下無名のダイバーがお送りします

ならもう楽勝じゃん。調査なんて必要ないやんけ

 

 

344:安価ダイバー応援団長

あー、アレか。行ってみたけどなにも無くて、もしかしたら何かしらの条件があって〜みたいな?

 

 

345:>>317

流石団長、話が早い。その条件を色々と総当たりで探って欲しいってわけ

 

 

346::以下無名のダイバーがお送りします

流石団長、略してさすだん

 

 

347:以下無名のダイバーがお送りします

さすだん

 

 

348:安価ダイバー応援団長

(〃ω〃)

 

 

349:以下無名のダイバーがお送りします

団長可愛い

 

 

350:1

うし。そんじゃぁ明日は機体が素組グレイズで、行動がシークレットミッションとやらの調査。ってことで

ヒマな奴いるなら、協力して欲しいが

 

 

351:以下無名のダイバーがお送りします

悪りぃ、明日バイトだ

 

 

352:安価ダイバー応援団長

だから明日仕事だっつってるだろ

 

 

353:>>317

だから用事あるっつってるだろ。任せたぜイッチ

 

 

354:以下無名のダイバーがお送りします

オレも明日インは無理そうだわ

 

 

355:以下無名のダイバーがお送りします

だからデートだっつってるだろ

 

 

356:以下無名のダイバーがお送りします

だから氏ねっつってるだろ

 

 

357:以下無名のダイバーがお送りします

だから氏ねっつってるだろ

 

 

358:以下無名のダイバーがお送りします

仲良いな

 

 

359:1

え、誰もいないの?

 

 

360:安価ダイバー応援団長

みたいだな。結果楽しみにしてるぜ

 

 

361:>>317

何かしら見つけてくれよなー

 

 

362:以下無名のダイバーがお送りします

がんばえー

 

 

363:以下無名のダイバーがお送りします

がんばえー(棒

 

 

364:1

……うん、がんばる

 

 

365:以下無名のダイバーがお送りします

にしてもただの調査とか、見どころねぇな

 

 

366:以下無名のダイバーがお送りします

ここは敢えて見つけて隠しミッションに参加し、それが高難易度野ミッションでズタボロになって帰ってくる事に期待しよう

 

 

367:以下無名のダイバーがお送りします

それだ!

 

 

368:以下無名のダイバーがお送りします

それだ!

 

 

369:1

それだ! じゃねぇぇぇぇぇ!!!

 

 

………

 

 

………………

 

 

………………………

 

 




リライズが良すぎた。ホントに完璧な物語だった。だからそこに、自分の色を添えたいと思ってしまったら書いていた

色々と初めての事なので、いたらない事があるかと思いますが、何卒宜しくお願いします



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

DIVE in to the GBN...?

タイトルのRiseが大文字だったので、軽く修正しました。

あとビルド杯の注意事項に抵触していたので、タグを消しました。
申し訳ありません


GBN

 

通称、“ガンプラ・バトル・ネクサスオンライン”。かつてあったガンプラというプラスチックモデルの模型を使った対戦アクションゲームのオンライン版であり、今現在、世界中で遊ばれているVRMMORPGである

 

その内容は、あまりにも広大なフィールド、ディメンションにて繰り広げられる対戦であり、その幅も一対一の対戦からチーム戦、数十機によるバトルロワイアル、更に大型のボスキャラを討伐するレイド戦など、幅広いバトル形式をプレイする事がメインに据えられているロボットアクションゲームである

 

それだけならば、普通のMMORPGとなんら変わりないが、GBNはそれだけではない。コレが他のMMORPGと異なる所は、現実のガンプラを使うという点だ

 

そう。現実で自作したガンダムのプラモデルを使ってゲームをするのだ。つまり、そのガンプラの改造や作り込み次第で、自分の使う機体の性能が飛躍的に向上したり、使用出来る装備や手数を増やしたりする事が出来る。これにより、アクションが苦手でも作る事に自信がある人ならば、その性能差で対戦に勝つ事も出来るという事だ。その逆も然りで、ただの素組で改造機相手に戦果を出す技術的なプレイヤーもいる

 

つまり、作る事が得意で、プレイ技術も上手い人が上位に食い込むゲームというわけだ

 

ただし、それだけだと戦闘が苦手だったり、ただ自作したガンプラを操作したいだけでGBNをやる人、或いは展示したいだけの人といった、所謂ライト層という人にとって、居心地が悪いものになってしまう。そうならないように、広大なディメンションを捜索してアイテムを入手するミッションや、バトル形式以外の競技、レースや水泳、そしてシュールさが溢れるダンスコンテストなどのミッションが用意されている。もちろん、ガンプラを使って行うモノだ

 

そういった多種多様の膨大なミッションがあるため、様々なゲーマーやモデラーが集まりやすく、文字通り、世界規模で遊ばれているゲームなのである。そのアクティブユーザー数は、なんと先日1億人を突破。バケモノ、終わりなきコンテンツと称されているのが、このGBNなのである。因みに、この前大型アップデートがあったことで、より新規が入ってきたようだ……アプデで新規が入ってくるとかどういうことなんだろうか……

 

 

 

 

シーサイドベース、メインロビー

 

翌日

 

昨日のスレの安価の結果、今日は噂のシークレットミッションとやらの調査をする事になった“オレ”だが……

 

ロビーは相変わらず人が多い。いや、ホント。また何人かご新規さんが出てきたんじゃないかと思うくらい増えている気がする

 

「なぁ、今日このミッション付き合ってくれない? 報酬が欲しくてさ」

「おう、いいぜ」

 

「ったく、何やってんだよお前」

「仕方ねぇだろ。三徹目なんだから、少しミスしたっていいじゃねぇか」

 

「ねぇ君。このスペシャルで、2000回で、模擬戦な俺と、今日一日過ごさないかい?」

「は……はい♡」

 

「ご、ごめんなさい! 遅刻しちゃいました!」

「い、いいっていいって!」

「僕達が早く来ただけだから!」

「姫は悪くないよ!」

 

「チィッ。アイツ、あんましログインしねぇのかなぁ」

 

「今日こそは、あのインレ狂い共をぶっ飛ばすぞー!」

「「「「おぉーっ!!!」」」」

 

本当に人が多い。多種多様なプレイヤーがロビーに集まっている。しかもその姿もバラバラだ。ガンダム作品の軍服やパイロットスーツ、そして登場キャラの私服から、和装や騎士の甲冑、ゴスロリちっくな服からぴっちりとしたスーツ、そして猫耳犬尻尾を付けた獣人みたいなの、民族衣装っぽい変わった服に、アメコミヒーロー風なのからポンチョを着た旅人風といったとこまで。それぞれが思い思いの服装をしている

 

自分も割とカスタマイズしている。某第三帝国の黒い軍服を思いっきり着崩す中性的な赤髪のチンピラルックというオラついたオタク感が滲み出るモノだ。無論、自分の趣味では無いし、服装安価の結果によるものだ。もう他の服装に変えたくなってきたし、また服装安価するか

 

しかしインレ狂いって……あぁ、ご注文はインレですか?の事か。確か、ついにフルスクラッチ1/144ガンダムTR-6インレを完成させたから、フォース主催のレイドイベントをやり始めたとかなんとか。いずれ安価で来そうだなぁ、やれって……その時は絶対アイツらを巻き込んでやる。あと三徹野郎はログアウトして寝ろ。絶対コイツリアル捨ててるわ

 

 

「っと」

「あ、ごごご、ごめんなさい!」

 

 

などと色々考えてたら、キツネ耳と尻尾の少年アバターとぶつかってしまった。なんか、妙にビクビクしてたけど……初心者か? 

 

まぁどうでも良いかと思いながら……ひとまず、例のチャイナタウンの路地裏へと向かった

 

 

 

 

 

ダウンタウン、路地裏

 

さて、着いたは着いたものの、結局どうすれば良いのか検討つかないんだよなぁ。なんの準備も無しに来たせいで、何をどうする事も出来ないんだし……まぁ、安価の結果なんだから、何かしらの成果はないと

 

いや、巨人ネタが出来るから、それはそれで良いか。話の前フリは出来るし。でも、それだと負けた感が強いから、少しは何か見つけておこう

 

「お、おい!」

「良いから良いから!」

 

ん? 誰か来る。こんな所にいったいなんの用事が……まさか、オレと同じくシークレットミッションを探してんのか?

 

「ここで謎のミッションの勧誘があるんだって、情報屋のヤスって奴から聞いたんだよ。早くしねえと、他の奴に先こされちまう」

 

うわ。マジでシークレットミッション探しかよアイツら。ヤベ、ただ調べるだけなのに、もしアイツらに先越されたら、317に申し訳ないような……とにかく、出会わないよう動いて、アイツらよりも先にミッションを探らな

 

 

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」

 

 

「!?」

 

 

と思ったら、すぐ近くから子供の悲鳴が木霊した。何があったのかと思い、すぐさまその場所へと急行した、ら……

 

『た、助けてくださぁーい!! そ、創造主様ぁー!!』

 

何やら、変な少年…いや、犬っぽい、人間? が、SOSを発していた

 

 

 

 

 

 

ひとまず、現状の確認をする。直感ではあるが、今目の前のディスプレイに映るこの犬人間、これが話にあったシークレットミッションの受付である事は想像出来る。そして問題となるのが、ここにオレ以外に四人。アメコミヒーロー風の熱苦しいヤツと旅人風のポンチョを羽織った男。キツネ耳尻尾の少年と、黒髪ロングのピッチリスーツにジャケットを着た女という、なんとも一貫性の無い奴らが集まっている。

 

いや、ホントまずい。オレ一人が見つけたならまだしも、他にもいるとなるとどうしようかなもない。ここで受ける事になったら、今まで探してた317に申し訳ないし。ってか、このアメコミヒーロー風のヤツ、さっきコレを探してたヤツか。あー、これはもう受ける事確定したな……

 

って、そうこう考えているウチに話がだいぶ進んでいた。どうやらこの犬人間は今敵の襲撃に遭い、それから身を守って欲しいとの事だ。場所は遺跡の付近で、数は30から40、制限時間無し。と……割と難易度高くない? 時間無制限なのが救いかもしれ……あ、今オレの機体、素組のグレイズだ……終わったわ

 

 

「よぉ、お前達もこのミッション、受けるよな?」

「は?」

「あ、は、はい!!」

 

 

え、何、やるの? こんな難易度バグってそうなミッションを? ってか、オレを巻き込もうとしてないか!?

 

 

「ちょ、待っ「細けぇこたぁいいんだよ!!」オイ!!?」

 

 

そして、コイツはあろう事かそのミッションの受注をOKしてしまい、オレを含めた5人は光に包まれ、何処かへと転送される

 

 

 

 

 

……これが、それぞれの過去に決着を付け、誰も経験した事のない、未曾有の戦いの、始まりだった……

 

 

 

 

 

 




ある作業と並行して書いているので、更新は亀かと思います。
ちょっとずつやっていくので、末長く見守ってくださると幸いです


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

【安価でダイブ】42スレ目 その2

戦闘シーンはほとんど原作と変わりない内容だったので、掲示板にて説明する程度にする事にしました。多分、一期の戦闘はそんな感じで終わりそう


………………………

 

………………

 

………

 

 

395:以下無名のダイバーがお送りします

昨日の行動安価見直したけど、317以外どれもえぐいのばっかりなんだが

 

 

396:以下無名のダイバーがお送りします

素組グレイズをペシリアに展示するとか、笑いものにしてくれと言ってるようなもんじゃん

 

 

397:以下無名のダイバーがお送りします

団長も鬼畜すぎないかお前らって言ってる割には、地獄に叩き落とそうとしているの草

 

 

398:以下無名のダイバーがお送りします

虎武龍殴り込みは死んでこいって意味だからな

 

 

399:以下無名のダイバーがお送りします

ストリートダイバーズって、格ゲーマーが集まってるフォースだろ。素組とか一発KOされそうやん

 

 

400:以下無名のダイバーがお送りします

ハードコアディメンションで辻斬りも、下手すりゃ迷惑行為でキャプテンに修正されかねない案件

 

 

401:以下無名のダイバーがお送りします

その前に死なね? 一人も斬れそうにないし

 

 

402:以下無名のダイバーがお送りします

なんたって素組だしな

 

 

403:以下無名のダイバーがお送りします

それな

 

 

404:以下無名のダイバーがお送りします

ってか、そろそろイッチ帰ってくるんじゃね? もう夕方だし

 

 

405:以下無名のダイバーがお送りします

果たして、成果はあったのだろうか

 

 

406:以下無名のダイバーがお送りします

無かったに一票

 

 

407:以下無名のダイバーがお送りします

ワイも一票

 

 

408:以下無名のダイバーがお送りします

ここは敢えてあったに一票!

 

 

409:1

ただいまー。賭け事してんじゃねぇよ

 

 

410:以下無名のダイバーがお送りします

イッチ!

 

 

411:以下無名のダイバーがお送りします

噂をすればなんとやら。おかー

 

 

412:以下無名のダイバーがお送りします

おかえり~。さぁ、なんの成果もありませんでしたと叫びなさい

 

 

413:以下無名のダイバーがお送りします

まだ聞いてないのになかったこと前提にするんじゃねぇ

 

 

414:>>317

一応コテハン付けとくか。んでイッチ、なんかあった?

 

 

415:以下無名のダイバーがお送りします

どうせ何も無かったんだろ

 

 

416:1

あったよ、シークレットミッション

 

 

417:以下無名のダイバーがお送りします

は?

 

 

418:以下無名のダイバーがお送りします

え?

 

 

419:以下無名のダイバーがお送りします

マ?

 

 

420:>>317

イッチdおういうことか説明してくれはやkう

 

 

421:以下無名のダイバーがお送りします

おちつkうぇ

 

 

422:以下無名のダイバーがお送りします

お前も落ち着け

 

 

423:安価ダイバー応援団長

一旦手をとめて深呼吸しろ

 

 

424:以下無名のダイバーがお送りします

スゥー

 

 

425:以下無名のダイバーがお送りします

ハァー

 

 

426:安価ダイバー応援団長

止めろって言ってるだろ……!

 

 

427:1

あぁ……えっと、言っていいか?

 

 

428:>>317

よし落ち着いた。頼むイッチ。何があったか教えてくれ

 

 

429:1

おう、一通り説明するが

長文覚悟しとけよ

 

 

430:以下無名のダイバーがお送りします

オケ

 

 

431:以下無名のダイバーがお送りします

全裸待機完了

 

 

432:安価ダイバー応援団長

服を着ろ

 

 

433:1

まずは場所だな。そこは317の言うとおりシーサイドベースのダウンタウンの路地裏。そのわりと奥の方の行き止まりにてミッション受注のイベントが発生した

その時の俺はいつもどおりの状態だった。インしてから、これといって特別なことはしていないし、ロビーからすぐにチャイナタウンに向かった。多分前もってなにかするって事はないのかもしれん

 

そして厄介なことに他にもシークレットミッションを探していた二人組がいて、そいつらに会わないようにしようとしたら誰かの悲鳴がして、そこに向かったらイベントが発生してた。そこにはその二人組と悲鳴を上げたヤツ、どこから現れたのか分からないのが一人、そして俺合わせて5人がいた

 

会話を犬人間のようなNPDと交わしたあと、二人組の片割れが強引にミッションを受諾して、5人全員が別の場所に飛ばされた

 

とりま最初はここまでかな

 

 

434:以下無名のダイバーがお送りします

全部書けよ

 

 

435:以下無名のダイバーがお送りします

五人……人数が関係してたということか?

 

 

436:以下無名のダイバーがお送りします

複数人で参加しなきゃならない、と?

 

 

437:>>317

いや。それも考慮して野良で人集めてやってみたぞ。それでもそんなのなかったし

そのあとが大変だったけどな

 

 

438:以下無名のダイバーがお送りします

犬人間ってなんぞ?

 

 

439:以下無名のダイバーがお送りします

ってか、5人揃う前にその悲鳴上げた奴が最初にイベント進めてたんだろ? なら人数は関係なくね?

 

 

440:以下無名のダイバーがお送りします

人数がフラグではない。なら一体何がフラグだ? その時いたやつのランクとか?

 

 

441:以下無名のダイバーがお送りします

イッチー、その時のメンツのじょーほー

 

 

442:1

その前に、飛ばされた後の話を先にしていいか?

 

 

443:安価ダイバー応援団長

おけ

 

 

444:以下無名のダイバーがお送りします

りょ

 

 

445:1

んじゃ

 

飛ばされた先は全部岩で出来た遺跡のような所の中。外はストーンヘンジみたいな感じで、過去のガンダム作品内でもそうそう無いような荒野っていう感じだった。まぁ、ガンプラの台座っぽいのはあったけどな。見るからにスタートエリア的な場所。で、そこには犬人間のNPDがいて、今敵の襲撃を受けているから助けてくれっていう感じの話があった。その後、三機のデスアーミーのカスタマイズ機が襲ってきて、それを五人で迎撃することになったんだけど……

 

もうてんで歯が立たないのよ。敵の強さもだけど、他の連中が話にならないくらいどうしようもないのばかり。一人は初心者丸出しの動きで、一人はなんかカッコつけるだけの足手纏い、一人はまぁ出来る感じのやつだけどチームワークなんて欠片もない戦い方で正直邪魔くさく、そして俺は素組グレイズ。打った弾は弾かれるわ、アックスも一撃で折れるわ、ビーム一発で腕一本が消し飛ぶわで何も出来ずじまい。詰んだかと思ったら最後の一人が敵を的確に処理してクリアした。多分オレらがやり合ってるのを観察して分析したんだと思う

 

難易度はおそらくハードモード。素組とはいえグレイズのアックス折れる装甲と腕壊せるビーム撃つのはそれぐらいの難易度じゃないとあり得ないし

 

んで、戦闘が終了したら、犬人間からなぜかビルドダイバーズって呼ばれて、その4人と強制的にフォース、BUILD DiVERSを組まされる事になり、強制ログアウトされて終わった

 

以上

 

 

446:以下無名のダイバーがお送りします

やだ、ツッコミどころ満載

 

 

447:以下無名のダイバーがお送りします

初心者、足手纏い、ソロ専、縛りプレイに独り善がり。なにこの闇鍋パーティ

 

 

448:以下無名のダイバーがお送りします

縛りプレイは俺らのせいだけどな

 

 

449:以下無名のダイバーがお送りします

そのメンツでハードとか、よくクリア出来たな

 

 

450:以下無名のダイバーがお送りします

ってか、おかしくないか? 強制的にフォースを組まされた?

 

 

451:>>317

そこ引っかかったわ。そんなことある?

 

 

452:安価ダイバー応援団長

いまのところそんな事例はないはず。シークレットミッション限定の仕様?

 

 

453:以下無名のダイバーがお送りします

どゆことなのイッチー

 

 

454:1

俺も知らん。ステータス確認したら、フォースに入ってる状態になってたし。ってかフォース名がビルドダイバーズって、なんで?

 

 

455:以下無名のダイバーがお送りします

ビルドダイバーズって、あのビルドダイバーズ?

 

 

456:以下無名のダイバーがお送りします

だろうな。なんでだ?

 

 

457:以下無名のダイバーがお送りします

さっぱりわかんねぇなこれ。ミッションをするフラグもだし、内容もなんか変な感じだし

 

 

458:安価ダイバー応援団長

犬人間っていうNPDも、なんでなんだ?

 

 

459:以下無名のダイバーがお送りします

ガンダムでそんなのいないよな。GBNでそういうのがあるのは、キャラクリの幅を広げるために付いてる仕様だし

 

 

460:以下無名のダイバーがお送りします

だから獣人NPDを採用してる? わけないよな

 

 

461:以下無名のダイバーがお送りします

そういやイッチ。そのミッションの成功報酬はなんだった?

 

 

462:1

無い

 

 

463:以下無名のダイバーがお送りします

無し?

 

 

464:以下無名のダイバーがお送りします

無wwwいwww

 

 

465:>>317

報酬無しって、そんなことあるぅ?

 

 

466:以下無名のダイバーがお送りします

バグか?

 

 

467:安価ダイバー応援団長

なんか、怪しすぎるなこれ。ちょっと俺らも一緒に調べるか? 明日はインできそうだし

 

 

468:以下無名のダイバーがお送りします

うん、これは気になるわ。俺も行けるし

 

 

469:以下無名のダイバーがお送りします

ちょうど日曜で仕事休みやから行けるわ

 

 

470:>>317

俺も行ける

 

 

471:1

俺もインするから、全員で行くか?

 

 

472安価ダイバー応援団長

うし。なら明日の10時ごろにシーサイドベースのロビーに集合な。遅れたやつは直接現地に向かうってことで

 

 

473:以下無名のダイバーがお送りします

おけ

 

 

474:以下無名のダイバーがお送りします

おけ

 

 

475:>>317

了解

 

 

476:1

そんじゃ他にも聞きたい事あったら明日会った時に聞いてくれ。流石にちょっと疲れたわ

 

 

477:以下無名のダイバーがお送りします

お疲れ〜

 

 

478:以下無名のダイバーがお送りします

おつおつ〜

 

 

479:以下無名のダイバーがお送りします

また明日な〜

 

 

480:1

おう。あ、一応明日の機体の安価取っとくわ

機体安価>>486

 

 

481:以下無名のダイバーがお送りします

おいw

 

 

482:以下無名のダイバーがお送りします

いきなり安価すなw

 

 

 

 

………

 

 

………………

 

 

………………………

 




このスレ内はほぼほぼ身内しかいないっていう事で書いてるけど、実際のスレはこんな感じではないんだろうなぁ

コテハンキャラ
安価ダイバー応援団長
イッチがスレを初めて建てたころからいるスレ内での最古参。イッチが大会や大型イベントに参加した時に色々とサポートをしてくれたことから、コテハンを付けることになった。主にまとめ役を行うことが多い



以下、遺跡に転送された後の出来事の抜粋

カザミ「なんだよ! ミニサイズとかウォドムとか恐竜とか! まともな奴はいないのか!? んで、お前の機体は……おぉ、グレイズか。渋いなぁ。やっとまともな奴がいてくれて……って、よく見ると合わせ目やらパーティングラインとか見えるし。色もなんだか成型色に近い気が……ってこれ素組じゃねぇか!? やる気あんのかお前!」
リアン「あるわ! ってか素組馬鹿にしてんじゃねぇ! やりようによってはハードモードだろうとクリアできるんだぞ! やる気なら十分にあるっつうの! お前こそ、こんな派手な改造して、どうぞ狙って下さいって言ってるようなもんじゃねぇか!! お前こそやる気あんのかよ!!」
カザミ「んだとぉ!?」
リアン「やるかぁ!?」
フレディ「あ、あの! 喧嘩はダメです!!」
パル「あわ、あわわわわわっ」
ヒロト&メイ「……」(我関せず)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Looking for a secret mission

何気に毎日投稿してる……いつまで持つかな……

リライズ見直したらあの街の名前がダウンタウンだって事が分かったので、一部修正をしました


謎のミッションがあった日から、一週間後

 

今日も、スレ内のメンバー何人かでシーサイドベースのダウンタウンの路地裏へと趣いていた。無論、あのシークレットミッションに関しての検証のためであった

 

シークレットミッション。GBNのVer.1.78のPVにて発表された新要素の一つであり、文字通り隠されたミッションである。今のところ何個か発見の報告があり、その最初の発見、ファーストクリア者には特別称号が与えられ、他にも高レアリティのアイテムやビルドパーツが手に入るなど、それを目的に上位ランカーを始め数万人ものダイバーが躍起になって探しているミッションである

 

だが、それもこの広大なGBN内に於いては見つけるのも一苦労であり、一つは宇宙エリアに複数存在するコロニーの中にあったり、一緒に導入された木星ディメンションの中にあったり、その場所は様々。しかもただ行くだけでは受注することができないらしく、なんらかのフラグを踏まないと出来ないという。だからこその特別な報酬であるから、探索好きなダイバーや、報酬目的で探すファイターが後を絶たない

 

あの317……ダイバーネーム成田空港も、そのうちの一人であり、見つけたら自分が所属するフォースのメンバーと一緒にやる予定だったようだ。まぁ、俺のスレ内で言うために探していたわけではないみたいだ……ま、普通はそうだよな

 

そして、今は俺のスレにいつも集まるメンツで、この前見つけたあのミッションを受注するための条件を探っているのだが……

 

 

「だんちょー、次の検証内容はー?」

「えっと、次は最初の一人がキョロキョロしながら周りを見渡す。そして周囲に四人がバラバラでいる。だな」

「ほーい」「うーい」

「なんか、前も似たようなパターンじゃなかったか?」

「その前の時は2人組と、1人1人っていうパターンだ。まぁ、それが空振りしたからこれも変わんなそうだけどさ」

 

 

その成果というのは、全くなかった。あの時のメンバー、そして時間、状況、そして男女比と、それらをできる限り再現してやっているのだが、あのミッションのイベントが発生することはなかった

 

 

「何も起きない……また失敗か?」

「これで73パターン目。他にも条件付け足すか?」

「付け足すって、何をだよ。もう考えうることは全部やったと思うんだけどなぁ」

「結構最初の方で言われてた曜日が関係してるんじゃねってのも、そういうわけでもないみたいだしなぁ」

「下手すりゃ月1のミッションではっていう可能性が」

「あぁ~……なぁイッチー、なにか思い出せることなーいー?」

 

 

思い出すこと……といっても、その思い出せることは最初の時にもう説明仕切ってるからなぁ。スレにもいくつか書いたし

 

 

「これといって特にないんだよなぁ。あの時のメンバーの使用機体の特徴とか、ダイバールックの特徴とか、他にも考えられることは全部試したはずなんだが……」

「それでも出来ないとかどういうこと?」

「しらねぇよ」

「ってかこんだけパターン試してやったのに何も起きないとか。どんだけ条件厳しいの? 運営頭おかしいんじゃねぇの?」

 

 

確かにそう考えるのも無理もない。かれこれ一週間はこの検証に費やしているのに、全く成果がない。愚痴の一つや二つは出る。まぁ出来たとしてもバトルの難易度がハード。おまけに報酬も無し。ハッキリ言ってしまえば、ハズレもいいとこだ。もうここまで来るとバグの可能性も疑い初めなきゃならなくなってくる

 

あの時、なんで入れたんだろうか……? 何か、決定的な見落としがあるのか? 

 

ん、待てよ? もしかして、アレはどこかのフォースが作ったクリエイトミッションの一つで、あの時ここにいた奴だけを招いたモノだとしたら……いや、そんな訳は無い。フォースネストにしても、アレだけのフィールドを用意するのなんて不可能……なのか? そういや、確かあのビルドダイバーズのフォースネストは、島丸ごと一つがそうなってたはずだし。もしかしたら、可能なのか……

 

 

「あぁー、頭がグチャグチャになってきたぁ。一旦休憩しない?」

「だな」「さんせー」

「なんかやる気なくなってきたなぁ。気晴らしに無双ミッションでもやる?」

「やるやる。ちょっと憂さ晴らししたい気分だし。イッチもやる?」

「あ……俺はいいわ、ログアウトして寝たいし」

「オレもパス。今回の検証のまとめ作って、次の検証の用意するわ」

「やだ、団長イケメン」

「出来る男過ぎて惚れる」

 

 

相変わらずの有能ぶりを発揮する団長の姿に場が和んだが、あまりの成果の無さに各々が鬱屈としてきている。俺自身も、もういい加減にして次を探した方が遥かに建設的なのではと思い始めるほどに。なのでもう今日は解散の流れになってきた

 

 

[ピロン]

「「「「「?」」」」」

 

 

ふと、俺の目の前で唐突にホロディスプレイが浮かび上がった。なんかのお知らせかと思い後回しにしようとディスプレイを消そうとしたら、そこに書かれていたものは全く別で……

 

“転送を開始します。”という、意味不明の内容だった

 

 

「は?」

 

 

そのまま光に包まれて、体が少し浮遊する感覚、転送される時の感覚に似た感じを受けた後、その光が収まった時には……

 

 

「お、お助け下さーい!! 創造主さまぁー!!」

「「「「「……」」」」」

 

例の遺跡に立っていて、あの犬人間NPDとあのミッションを受けた時のメンバーが、目の前にいた

 

 

 

 

 

急に呼び出されてから、俺達はこの犬人間……フレディの案内で、彼が住む村に行く事になった。なんで前の時の続きみたいな感じの事が起きたのかと思ったが、一緒にいた少年の言葉でその疑問は少し納得がいった

 

このミッションはストーリーミッション、現在開発が進められている物語性のある連戦ミッションではないのかと

 

確かに、それなら報酬が無い事が納得出来る。連戦ミッションは、クリアするか、ダメージアウトしてゲームオーバーにならなければリザルトフェイズに移る事はない。だから、ファーストステージをクリアしただけでは報酬はないというわけだ

 

それに強制的にフォースを組まされたのも、おそらくエントリーした時のメンバーで今後も進める為に行われた処理なのだろう。ビルドダイバーズっていうのも、デフォルトでそうなっているだけなのだと

 

 

いや、待てよ。ひょっとしてこのミッションの受注条件は、“フォースに所属していない”って事なのか? 確かにこいつら、見るからにフォースに入っているようには見えない

 

一人はあの独りよがりなスタイルからして、孤高プレイをしているのかもしれんし。あの女はチームプレイのイロハを理解してない節があるから、ソロ専でやってるのだろう。エセアメコミヒーロー野郎は、その言動や性格からして人が寄り付くようには見えない。少年に至っては初心者の疑いがある。そして俺は、“人と長く付き合いたくない”から、フォースには入っていない……

 

確かに、その可能性は十分にある……成田空港には悪いが、このミッションはフォース単位でのエントリーは不可能って事を伝えないと。まぁ、実際に未所属の状態でエントリー出来るのか検証してみない事にはなんとも言えないが、とにかく何かは見えた気がするから、とりあえず解決って事で……

 

このメンバーで連戦ミッション? しかもハード? それに何ステージあるのかも分からないのをか? 

 

………………抜けたいんだけど、俺

 

 

 




スレ民紹介

317こと、成田空港
フォース、ジャパニーズエアポートに所属する男性ダイバーで、飛行機の機長のようなダイバールックをしている。使用機体は高速飛行形態とMS形態、そしてその中間みたいな形態の三段変形を可能としたトールギスⅢ。つまりマク○スのヴァル○リー


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

stop or continue?

な、なんとか今日中に出来た……

今回もストーリー回です。

一部誤字やら見つけたので、修正しました。


遺跡からフレディの村まではそれなりに遠かったので、フライトユニットを持つ男のガンプラに乗っていった。その道中、空から見渡す景色は壮観の一言だった。見渡す限りの荒野かと思えば、渓谷に草原や森林地帯、遥か彼方には海も見えている。こんなディメンションは初めて見たし、自分が知る限りではこんな場所があるなんて情報は無かったはずである

 

そういや、さっきの話がもし本当なのだとしたら、ここは開発中のストーリーミッション限定のディメンションってことになる。今後のアプデで目玉にでもするのか、えらく気合入れて作りこまれたディメンションだ。空も、大地も、今まで見たどれよりもリアルさを感じさせる。あえてテストプレイをシークレットミッションの一つにして、プレイヤーにやらせるってことかこれ? なら同じミッションを別の奴が受けさせないようにしているのかもしれない

 

そしてここまでの道のりで、さっき自分が考えたこのミッションはどこかのフォースのクリエイトミッションなのでは? という疑問はありえないことになった。さすがにこんなフォースネスト、あのアヴァロンですら作ることなど出来ないだろうし。あそこが作れないとなると、もうどのフォースでも不可能と言える

 

だんだんこの謎のミッションについて解ってきたところだが、やはり難点はこのメンバー。強制的に組まされたチームで、今後もハードモード相当のミッションをクリアしていくという事だが、正直言ってクリア出来る自信は無い。前回の戦い、ハードでカスタム機であったとはいえデスアーミー三機相手にあのざまでは、今後も苦戦を強いられるだろうし……まぁ、俺の場合は安価機体次第で、前回みたいな木偶の棒になることにはならないだろうし。今回はガチ機のアイン・ルナリアンゼだし、問題はないだろうけどね

 

 

 

 

 

「なんにしても、ガンダムっぽくねぇ設定だよなぁ」

 

 

そしてフレディの村にて、次のミッションの内容を聞かされた俺たちは今、一度スタートエリアである遺跡へと戻っていた。その次のミッションというのは、三日後に謎のMS……現地では“ヒトツメ”と呼ばれる奴が現れ村を襲う、その防衛をしてくれという奴だった。数は約20機。ハードでこれはかなり難度の高いミッションだと思う。このメンバーでいく、となる話だったら

 

スレ内のメンバーで行ければ、パーフェクトクリアなんて余裕のレベルだろう。なお、俺の機体は素組以外であること前提であるけどさ

 

 

「それでどうする? 続けるのか?」

「「「?」」」

 

 

本当にどうしたものかと思ったとき、女の方から声がかかった。このミッション、続けるのか否か、という事を

 

今現在、ステータスではこのミッションを受けている状態で固定されており、パーティもこのメンツで固定されている。ログインしたときはこうでも無かったのだから、おそらくこのディメンションに入っている限り、そうなんだろうと思う

 

だからこそ、現状での人の入れ替えやメンバーの増減が出来ない状態になっている。最初は単発のミッションと思ってたが、連戦で、しかも物語性があるからなのか、先の展開の予想をされないようにするためなのか、ステージ数を開示されていない。いつまで掛かるのか、そこも謎であるあたり、続けるのかどうかを聞いてきたのだろう

 

ま、俺はこのメンバー自体が地雷すぎて勘弁願いたいから、抜けたいんだがな

 

 

「おいおいおい! ちょっと待てよ、オレは続けるぜ! GBN初導入のストーリーミッションだ。クリアすれば超レアな称号報酬が手に入る! 誰かに持ってかれるのはゴメンだぜ!」

 

 

あ、コイツはやっぱそういう事言うのか。まぁ、ある程度予想は出来ていたけど……ただカッコつけるためだけが目的の自己中害悪プレイヤー。ったく、こういうのとあんまし関わりたくないんだけどなぁ。チーム戦で一緒になった際に足手纏いになる筆頭という奴

 

そう考えると、あのスレの奴らは割とマトモな部類なんだよな。身内で罵り合うことがよくあるけど

 

 

「そうか。私もこのまま続けることに依存はない」

「え」

 

 

しかし意外にも、ソロ専だと思っていた女がこのミッションに積極的だった。何を考えているのか分からない表情をしているし、一体何を思っているんだこいつ……

 

 

「あの、僕ちょっと自信が……」

「えぇ!?」

 

 

そして少年の方は、逆に消極的だった。全部で何ステージあるのかわからず、しかも自分は足手纏いになってしまうからという理由で。言動や雰囲気からすれば、おそらく中身は相応の子供なんだろうけど、その年で身の程を弁えるとかなかなか好感触な少年だった。多分あと数ヶ月もすれば、良いダイバーになれるだろう

 

そしたら女のほうが手のひらを返して解散だなと言い出した。個別で抜けることができないのなら、もうそれしかないという。ほんと、何考えているんだろうか……?

 

 

「んじゃ、俺も抜けるわ」

「おい! いいのかよ、特別称号が待っているんだぜ!? ファーストステージがもったいねぇだろ!?」

「別に称号とか、特に集めているわけでもないし。それにこんな地雷みたいなパーティで、見ず知らずのメンバーで連戦? 個人的に勘弁願いたい。特に、お前みたいな自己中と一緒だとな」

「なんだとぉ!?」

「あ、あの!? け、喧嘩は……」

 

 

案の定噛み付いてくるが、まぁ柳に風。こういうのは無視に限る。ま、やるとしても、まずは安価で決めたいと思うしな。このまま地雷パーティでハードモード連戦ミッションを続けるかどうかって……足手纏い二人を介護しながら、ソロ専に注意して、独り善がりを利用しつつ立ち回る事を考えないといけないとか。なにそれ、ハードモード以上なんですけど……やりたくねぇ

 

 

「なぁ! お前は続けるよな!? な!?」

「え。あぁ……やるよ。このディメンションに興味がある」

「な……!?」

 

 

今までの会話をなにも聞いて無かったのか、そのまま言われた事に素で反応を返していた

 

ってか驚いた。まさかこの独り善がりは、あろう事かやると言い出した。かなり予想外だった。おそらくだが、こいつは結構出来るやつだ。経験者であれば、このメンバーで普通続けるなんてことは言わないはず。ったく、こいつも何考えているんだか。ディメンションに興味があるって……探索勢か? コイツ

 

って、俺が驚いている間に自己中が初心者を口説き落としていた。おい、ありかよそれ。しかもなんかやる気に満ちた顔になっているし……意外と、口は達者なようだな、こいつ

 

 

「これで四対一だ。多数決で、続行ってことでいいよな?」

「いつ多数決になった。なに勝手なことを言ってるんだよお前は……!」

「私は別にどちらでもいいのだがな」

「どっちでもいいのなら、続けることにしとけよ。最初はやるつもりだったんだろう、なら変わんねぇって」

 

 

変わるわ。まったく違う意味だよこのボケなす。女もなんか言ってやれよ、何言われてみればそうだなみたいな顔してんだよ……!?

 

 

「んで、やりたいやつのほうが多いんだが、お前一人のせいで出来なくなるとか、なんとも思わねぇのかよ……?」

「ぐっ……」

 

 

そう言われると、ちょっと揺らいでしまう。が、お前が押し切って進めたのがほとんどじゃねぇか。あの男のせいでそれが助長されたし……くそう。決めるにしても、安価で決めたいとこなんだが……

 

 

「あ、あの……僕、足を引っ張ってしまうかと思いますが……頑張りますから、その、一緒にやりませんか?」

「っ、ぐぅぅ……」

 

 

や、やめてくれ少年。そんな真摯な眼差しを向けられたら、まるで自分が悪者みたいな感じになっちまうじゃねぇか……! オイ、誰か何とか……

 

 

「……」

「ぐっ、うう……」

 

 

女の方はなにか試すような視線を向けているし、あの男はずっと空を見上げてばかりだし……味方が、どこにもいなかった

 

おい、助けてくれスレのみんな。この状況をどうやって切り抜ければいい? どうすれば逃げられる? なんて、現実逃避に近い思考をしていたら、ふと頭にあいつらの言葉が顔つきで再生された。サムズアップで

 

 

((((逝ってこい……!))))

「ーーーーー」

 

 

という、断崖の果てから突き落とすかのような言葉が………………

 

 

 

 

ッ………………あああああああああ!! もう!!!

 

 

 

 

「わかったよ! やるよ! やればいいんでしょ!? 続けますよえぇ!!」

 

 

もう、ヤケになってしまった。色々とイライラが積もっていたのもあるし、一週間もの検証による疲れも引っ張って、続けると言ってしまった。多分、あとでこれ後悔するハメになるんだろうなぁ……

 

すまん、スレのみんな。安価の機会を無くしてしまって……文句があるなら、俺の頭の中のお前らに言ってくれ……

 

 

「いようし! 決まったな!」

「あ。その、まだ皆さんの名前を」

 

 

そういえば、まだ自己紹介をしてなかったな。すぐ解散するだろうと思って名乗ることはしてなかったけど

 

 

「オレはカザミ! 人呼んでジャスティスナイト! 自慢の愛機は、ガンダムジャスティスナイトだ!!」

「私はメイ。機体はウォドムポッドだ」

「ぼ、僕はパルヴィーズ。機体は、ヴァルキランダーです」

 

 

それぞれが、各々名と使用しているガンプラの紹介をしていく。ってか、ヴァルキ“ランダー”? なに、ひょっとしてあれ、ガンドランダー系がモチーフなの? 子供のくせに、なかなかマイナーなこと知ってるなキミ……あと自己中、えっとカザミか。お前のことは誰もそんな名で呼んではいない

 

 

「あ……俺はリアン。色んなガンプラを使っているが、ガチの機体はこのガンダムアイン・ルナリアンゼだ」

「へぇ、いい感じの機体持ってるじゃねぇかよ。最初からこれ使っていれば良くなかったか?」

「色々あるんだよ、色々とな」

 

 

安価の結果だしな。安価の決定は絶対だ。どんな高難易度ミッションに挑むことになろうとも、その日は決まった機体で望むのが、安価スレ主の義務であり定めだ。そればかりは、矜持とも言える

 

まぁ、ただ自分一人じゃ、なにも決められないからこそ、あそこにいるんだしな……

 

 

「ふーん。んで、相棒のおまえが」

「相棒じゃない、ヒロトだ。機体は……」

 

 

と、一瞬何かを思い、なにか悔いるような、恥じるようなような表情をし、すこし間をあけて、その機体の名を呼んだ

 

 

「コアガンダム」

 

 

その、小さなガンダムの名を




カザミの最初期のウザさって、こんなモンだろうか? 原作キャラに自分が考えた言葉を言わせるのは難しい……どこまでしていいのだろうかと

次回は掲示板回です


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

【安価でダイブ】42スレ目 その3

少し見直すと、誤字とかよく見つけてしまう。書いてる時はなんとも思わないのに、何故だろうか

タイトルがおかしかったので、修正しました。


………………………

 

………………

 

………

 

 

640:以下無名のダイバーがお送りします

イッチ戻ってきてるー?

 

 

641:以下無名のダイバーがお送りします

あれ、まだ戻ってきてないのか

 

 

642:以下無名のダイバーがお送りします

いつの間にか帰ってやがったしなぁ……まぁ、まだ寝てるんかねぇ

 

 

643:以下無名のダイバーがお送りします

でも、そろそろ明日の安価の時間だぜ。こないってなると、ログインする気ねぇのかなぁ

 

 

644:以下無名のダイバーがお送りします

一週間もシクミの検証に費やしてたからな。嫌になって疲れたんだろう。俺もだし

 

 

645:以下無名のダイバーがお送りします

ホント条件が謎すぎるんだけど。一週間も検証して成果0とか。しかも6人がかりで

 

 

646:以下無名のダイバーがお送りします

これは運営に直談判するしかねぇな。んで、侘びパーツでも貰わないと

 

 

647:以下無名のダイバーがお送りします

因みに、二番目の木星ディメンションにあったシークレットミッションの捜索日数は半月です

 

 

648:以下無名のダイバーがお送りします

半分も行ってないんだよなぁ……

 

 

649:以下無名のダイバーがお送りします

でもそれって、ただ木星を飛び回ってたら見つけたもんなんだろ。こっちは一週間路地裏であーでもないこーでもないってしてたんだぞ。モチベの保ちようが違うわ

 

 

650:以下無名のダイバーがお送りします

ってか、マジでイッチ来ないのかな。となると明日は休み?

 

 

651:以下無名のダイバーがお送りします

こうして噂してれば来るでしょ?

 

 

652:1

【悲報】役立たず二人を介護しつつ、ソロ専の驚異に震え、独りよがりと共に、連戦ミッションをする羽目になった

 

 

653:以下無名のダイバーがお送りします

いや、そんな迷信如きでくるようなことないだろw

 

 

654:以下無名のダイバーがお送りします

ってきたしwwww

 

 

655:以下無名のダイバーがお送りします

だが内容、いったいどうした?

 

 

656:以下無名のダイバーがお送りします

何があったイッチ。寝てたんじゃなかったの?

 

 

657:1

んー、まぁ、色々とねー

 

 

658:安価ダイバー応援団長

これはアカン時のイッチだ

 

 

659:以下無名のダイバーがお送りします

とりあえず、説明キボンヌ

 

 

660:以下無名のダイバーがお送りします

疲れているのに説明させるとか鬼畜か?

とりあえず、まずは深呼吸だ。そして全てを吐け

 

 

661:以下無名のダイバーがお送りします

オメェもだよ

 

 

662:1

とりあえず、あのシクミについてわかったこともあるし、その説明も込みで、なにがあった書いてくけど

 

 

663:以下無名のダイバーがお送りします

オケ

 

 

664:安価ダイバー応援団長

お前ら、全裸待機だ

 

 

665:以下無名のダイバーがお送りします

ウスッ![ヌギ]

 

 

666:以下無名のダイバーがお送りします

団長、この前それ言ったら服を着ろって言ってませんでした?

 

 

667:1

とりあえず、長文注意

 

あの後、急に路地裏からあの謎のミッションのスタートエリアに転送されて、そしたらあの時のメンバーと犬人間、フレディが居たのよ。まるで前回の続きのように

 

ステータス上では、まだミッションは継続している状態で、アレが連戦ミッションだと判明。ついでに物語性のあるモノで、パルヴィーズの言葉から開発中のストーリーミッションではないかって言われた

 

そしたら、確かにストーリーが進むような展開が起きて、フレディの住む村に行く事になった。途中、そのディメンションを見渡したけど、かなり広大で見た事のない場所だったから多分このミッション限定エリアじゃないかと思われる

 

んで、村に着いたらその村の村長NPDと、村人NPDに会って、寸劇のような事が起きた後に、次のミッションの説明があった。村にヒトツメ……MSの事をNPD達がそう呼んでた。そいつらが襲ってくるから、それから守って欲しいと言う事になった。んで、3日後にそのミッションがある

 

以上のことから、おそらくあれだけやってもシクミが発生しなかったのは、このミッションは開発中のミッションで、それを運営がテストということでシークレットの一つとして導入した。テストなんだから、他にも受ける奴が出ないようにしているのかもしれない

 

或いは、あの時のメンバーがあの段階で全員フォース未所属だったから、それが条件になっているのかもしれないけど

 

んで村からひとまずスタートエリアに戻ったら、今後も続けるかどうかをメイが言って来て、それに対してカザミとヒロトが続けると答えた。パルヴィーズは最初やめるって言いだしたのを、カザミに唆されて続ける側に。メイはどちらでもいいって言って、俺は抜けたいって言ったんだが、周りの圧や溜まっていたストレスも相まって、最後にはやるって言ってしまった

 

因みに、このミッション中はメンバー変更と増減がNG、個別リタイヤも出来なくて、辞めるならメンバー全員で辞めなければならないというメンドくさい仕様だった

 

まぁ……これで以上かな。質問ありゅ?

 

 

668:以下無名のダイバーがお送りします

なぁにこれぇ?

 

 

669:以下無名のダイバーがお送りします

これどこから突っ込めばいいの?

 

 

670:以下無名のダイバーがお送りします

山のようにあってどうしようもないんだけど。でも困ったときは団長に頼るのが一番なので、おせーてだんちょー

 

 

671:安価ダイバー応援団長

少しは自分の頭を使えよ、俺も少し困惑しているんだが

 

 

672:以下無名のダイバーがお送りします

団長でも困るレベルて、マ?

 

 

673:安価ダイバー応援団長

とにかく、そのストーリーミッションからだな。俺は聞いたことないが、誰か知ってる奴はいないか?

 

 

674:以下無名のダイバーがお送りします

さすが団長、立て直しちゃった。あ、俺は知らないっす

 

 

675:以下無名のダイバーがお送りします

同じく

 

 

676:以下無名のダイバーがお送りします

聞いたことねぇな。開発中ってのは、普通極秘にしとくもんだろ?

 

 

677:以下無名のダイバーがお送りします

あったとしても、公式の生放送で何かしらの告知があるはず。今のところそういうの全部見てる俺からすると、ストーリーミッションなんてものの情報は無い

 

 

678:以下無名のダイバーがお送りします

となると、そのパルヴィーズって奴の妄言か?

 

 

679:以下無名のダイバーがお送りします

ってか名前が一杯出すぎてどれが誰なのかさっぱりなんだが。フレディは前に犬人間NPDだと聞いたけど

 

 

680:1

パルヴィーズ 初心者。ショタ

メイ ソロ専。ぴっちりスーツ女

カザミ 足手纏い。エセアメコミヒーロー

ヒロト 独り善がり。旅人ポンチョ

 

 

681:以下無名のダイバーがお送りします

足手纏い、エセアメコミヒーローのカザミ……あいつかあああああ

 

 

682:以下無名のダイバーがお送りします

ショタが妄言なんてするはずない(断言 ならば開発中なのは確かなんだろう

 

 

683:以下無名のダイバーがお送りします

ん? >>681、そいつと知り合い?

 

 

684:以下無名のダイバーがお送りします

>>682。ショタロリタッチャーは動くな

 

 

685:以下無名のダイバーがお送りします

前に傭兵で出向いたフォースにいた奴。クリア寸前でボーナスに目がくらんで突撃した挙句、メンバー全員に被害が及んで大惨事を引き起こした。結局そのミッションはクリアできなかった

 

 

686:以下無名のダイバーがお送りします

地雷かな?

 

 

687:以下無名のダイバーがお送りします

かなじゃねぇ、地雷じゃんそんなの

 

 

688:以下無名のダイバーがお送りします

そんでそいつ、どうやら他のフォースでも似たような事をやらかしているらしく、地雷ダイバー晒しスレに名前が出るほどダメな奴。はっきり言って害悪。キャプテンに修正されねぇかなアイツ

 

 

689:以下無名のダイバーがお送りします

キャプテン、そういうのには修正しに行かないからなぁ。なんというか、前のガザ三兄弟みたいなルール上禁止になっている事をやるマナー違反者ぐらいにしか

 

 

670:以下無名のダイバーがお送りします

因みにそいつ、キャプテン同様G tubarやってるぞ。再生数は一桁のミジンコチャンネルだがな

 

 

671:以下無名のダイバーがお送りします

再生数一桁www まぁ地雷プレイなんて誰も見たくねぇからなw

 

 

672:1

あー、やっぱそんな地雷だったかぁ。そんなのと今後もやってくとか……

 

 

673:以下無名のダイバーがお送りします

元気出せよイッチ

 

 

674:以下無名のダイバーがお送りします

ファイトだぜイッチ

 

 

675:以下無名のダイバーがお送りします

ってかイッチ。なんでそんな事を安価も無しに決めたん?

 

 

676:以下無名のダイバーがお送りします

 

 

677:以下無名のダイバーがお送りします

そういや

 

 

678:以下無名のダイバーがお送りします

そうだよ。安価得じゃん

 

 

679:以下無名のダイバーがお送りします

やるか否かの安価ぐらい、してもよかったのでは?

 

 

680:以下無名のダイバーがお送りします

安価スレ主にとって、これは大失態では?

 

 

681:1

それは、ごもっともで。あの時は、もう空気的に答えないとっていう感じだったから、その

 

すまんかった

 

 

682:以下無名のダイバーがお送りします

おいイッチー

 

 

683:以下無名のダイバーがお送りします

はぁ~、つっかえ。スレ抜けます(フリ)

 

 

684:安価ダイバー応援団長

んで、お前は今後どうするか考えているのか、イッチ

 

 

685:以下無名のダイバーがお送りします

お?

 

 

686:以下無名のダイバーがお送りします

団長?

 

 

687:1

やるって言ってしまった以上、今後はあいつらに付き合ってやってくつもり。おそらく、行動全般があいつらとのストーリーミッションに集中する羽目になるだろうから、行動安価はできないと思う。あと、あのメンバーのスペックとミッションの難易度的に、素組や塗装改修程度の機体ではこっちが木偶の棒になりかねないから、必然的にアインかルナか、アイルナを使っていかなきゃダメかと。だから、機体安価もしばらくは出来なくなる、かな

 

とにかくこのミッション、不本意ではあるけど、やり続けるって決めた

 

 

688:安価ダイバー応援団長

そっか、わかった。お前がそう決めたのなら、どうこういうつもりは無い。やってくるといい

 

 

689:以下無名のダイバーがお送りします

団長!?

 

 

690:以下無名のダイバーがお送りします

えぇ!?

 

 

691:1

団長?

 

 

692:安価ダイバー応援団長

元はといや、俺らの安価の結果が巡り巡ってこうなったんだ。だったら、これはその延長として考えるべきだろうよ。なぁ、お前ら

 

 

693:以下無名のダイバーがお送りします

そ、そりゃぁ、そうかもしれないっすけど

 

 

694:以下無名のダイバーがお送りします

ま、まぁ、俺の安価の結果だし、俺はどうこういうことはねぇっすけど。ここ最近、ずっと検証に付き合ってくれたこともあるし

 

 

695:以下無名のダイバーがお送りします

んー、まぁ団長がそういうのなら、俺らはなんにも言えないっすけど……安価が~

 

 

696:以下無名のダイバーがお送りします

色々と世話になってるからなぁ、逆らいにくいというか、なんというか……でも安価スレなのに安価しないとか、なぁ

 

 

700:安価ダイバー応援団長

確かに、しばらく安価が無くなるから退屈な日々になるかもしれねぇな

 

なぁ、イッチー?

 

 

701:1

は、はい……?

 

 

702:以下無名のダイバーがお送りします

おや?

 

 

703:以下無名のダイバーがお送りします

流れが変わったぞ?

 

 

704:以下無名のダイバーがお送りします

さっきまで良いBGMが流れてたけど、今ストップしてる状態。的な感じになったな

 

 

705:以下無名のダイバーがお送りします

具体的すぎて草

 

 

706:安価ダイバー応援団長

察しのいい奴らだな

とにかく、しばらく安価を休むなら、それ相応の事をやってもらわないと

 

 

707:1

え……え?

 

 

708:以下無名のダイバーがお送りします

これは

 

 

709:以下無名のダイバーがお送りします

来るか

 

 

710:以下無名のダイバーがお送りします

久々の

 

 

711:以下無名のダイバーがお送りします

団長の

 

 

712:以下無名のダイバーがお送りします

ツルの

 

 

713:以下無名のダイバーがお送りします

ヒトコエ……!

 

 

714:安価ダイバー応援団長

そのストーリーミッションのことについて、それにまつわる事、洗いざらいここに書け。無論、おもしろおかしくしてな

 

 

715:1

ええええええええええええええええええええええ!?

 

 

716:以下無名のダイバーがお送りします

ですよねぇ

 

 

717:以下無名のダイバーがお送りします

当たり前だよなぁ

 

 

718:以下無名のダイバーがお送りします

スレ主として、俺たちに娯楽を与えるのは当然の義務だからな

 

 

719:以下無名のダイバーがお送りします

頑張れイッチー

 

 

720:1

いや、その、確かにそりゃ、安価しないから、そういうことはすべきだと思ったけど

 

おもしろおかしく?

 

 

721:安価ダイバー応援団長

あぁ。おもしろおかしく。な。楽しみにしてるぞ、イッチ

 

 

722:1

あ……はい……

 

 

723:以下無名のダイバーがお送りします

なるほど。ここは今からイッチと愉快な地雷パーティで行くストミ攻略近況報告スレになるわけか

 

 

724:以下無名のダイバーがお送りします

いやぁ、安価無しになるといった時は、しばらく寄らないでいるかと思ったけど、まだまだイッチの発狂を見れるとなると、胸が躍るな

 

 

725:以下無名のダイバーがお送りします

イッチ、俺らのオモチャ継続決定。色々と期待してるぜ!

 

 

726:以下無名のダイバーがお送りします

地雷と初心者介護しつつ、独り善がり二人に挟まれながらのハードモード。これは難易度高いっすわ

 

 

727:以下無名のダイバーがお送りします

イッチー、今の心境を一言

 

 

728:1

がんばりまーす

 

 

729:以下無名のダイバーがお送りします

覇気がねぇw

 

 

730:以下無名のダイバーがお送りします

今後の地獄を想像して吐きそうな勢いだな

 

 

731:1

ホントに吐きそう……とりあえず、そういう事で。なんか明日、ミッション攻略ミーテするみたいだから、それについて、時間あった時に書いとくね

 

 

732:以下無名のダイバーがお送りします

あいよー

 

 

733:以下無名のダイバーがお送りします

楽しみにしてるぜ! ぜ!!(威圧)

 

 

734:以下無名のダイバーがお送りします

変なプレッシャー掛けんなよ

 

 

735:以下無名のダイバーがお送りします

……なぁ、今ふと思ったことが一つあって、言っていいかな?

 

 

736:以下無名のダイバーがお送りします

 

 

737:1

なんだ?

 

 

738:以下無名のダイバーがお送りします

それ決める時さ、一旦保留にして、ここでその話して安価すればよかったんじゃね?

 

 

739:以下無名のダイバーがお送りします

 

 

740:安価ダイバー応援団長

確かにな

 

 

741:1

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ




イッチ(リアン)の発狂は、まだまだ続く……!

スレ民紹介
682こと、S.R.T.er(ショタロリタッチャー)
名の通り、イエスショタロリイエスタッチを地で行くヤバいダイバー。かれこれ捕まってもおかしくない行動をしているが、何故か捕まらずにいる。ショタロリが絡まなければかなりマトモでいてくれる
使用機体は、ピンクと水色の二体のプチッガイを背中に背負ったGフェネクス。アームドアーマーDEは腕に取り付けている


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

【安価でダイブ】42スレ目 その4

早めに完成したので、投稿します


………………………

 

………………

 

………

 

 

847:1

えっと、とりあえず今日のミーテで決まった事は、明日ヒロトが見てきた地形を再現してクリエイトミッションを仕込んでリハをすることになった

 

内容としては、円形状の山があって、その真ん中に拠点がある。そして二箇所そこへ入る谷があって、そこを二手に分かれて防衛する。初心者がいるってことで、そこは三人組にして対応。敵はハードモードのリーオーNPD20機。時間は無制限。拠点を防衛して殲滅することでクリアとする

 

ってことで、地獄を見てくるよお前ら……!

 

 

848:以下無名のダイバーがお送りします

やけくそになってるな

 

 

849:以下無名のダイバーがお送りします

これは誰だってやけくそになりますわ。俺もそうなる

 

 

850:以下無名のダイバーがお送りします

にしても、まぁまぁな難易度だな

 

 

851:以下無名のダイバーがお送りします

上位の連中にとってはあくびでる難易度だけどな

 

 

852:以下無名のダイバーがお送りします

上位と比べるな。あいつらは全員バケモノだからな。タイガーウルフとか、シャフリとか、チャンプとか

 

 

853:以下無名のダイバーがお送りします

あと団長だな。あの人のバルバトスの動きはガチでやばい

 

 

854:1

多分タイガーウルフとはいい勝負しそうだよね。団長

 

 

855:安価ダイバー応援団長

(/ω\*)

 

 

856:以下無名のダイバーがお送りします

あ、団長いたんだ

 

 

857:以下無名のダイバーがお送りします

恥ずかしい時はよく顔文字使うよね、団長

 

 

858:以下無名のダイバーがお送りします

可愛い

 

 

859:1

んじゃ、明日のこともあるし、俺はそろそろ落ちるわ。ほんじゃ

 

 

860:以下無名のダイバーがお送りします

おつー

 

 

861:以下無名のダイバーがお送りします

おつつー

 

 

862:以下無名のダイバーがお送りします

んじゃ、俺も落ちるわ。

 

 

863:以下無名のダイバーがお送りします

おう。またなー

んじゃ、残ってる連中で攻略方でも考える?

 

 

864:以下無名のダイバーがお送りします

おけ、付き合う

 

 

865:以下無名のダイバーがお送りします

突き♂ 合う♂

 

 

866:以下無名のダイバーがお送りします

ホモは帰れ

 

 

 

………

 

………………

 

………………………

 

………………

 

………

 

 

928:1

もうやだあんなパーティでミッションしたくないいいいい!! もうぬけたいいいいいいいいいい!!!

 

 

929:以下無名のダイバーがお送りします

発狂しだしてて草

 

 

930:以下無名のダイバーがお送りします

時間的に、例のクリエイトリハが終わった頃だろうけど

 

 

931:以下無名のダイバーがお送りします

いったいどんな酷い事があったんだイッチ

 

 

932:1

えっと、まずミッション開幕からカザミの突撃があって、それを俺がフォローしようとしたら、初心者が情緒不安定となって後ろからFFくらって落ちた

 

 

933:以下無名のダイバーがお送りします

初っ端から酷いwww

 

 

934:以下無名のダイバーがお送りします

こwれwはwアwカwンw

 

 

935:以下無名のダイバーがお送りします

そのあと、もちろん敵に侵入されて拠点が落ちたんだろ

 

 

936:1

おう。んで次は組み合わせを変えることになって、俺とヒロトの二人になった。ポジションからあまり離れずに、敵が接近してきたところを一機ずつ片付けていって順調だったんだが、片方が落ちて終了

 

その次は俺とメイとパルの二人でやったんだが、FFを避けてやってたら敵の侵入を許してアウト。因みに片方はカザミが開幕即落ちだったけど、ヒロトが一人で防ぎきってたわ

 

その次は、ヒロトとメイとパル。俺とカザミの組み合わせで……突撃して盾装備のやつに引っかかっていないも同然に。9体のハードリーオーにタコ殴りにあって落ちた

 

 

937:以下無名のダイバーがお送りします

開幕即落ちwww 盾に引っかかっるwww さすが地雷www

 

 

938:以下無名のダイバーがお送りします

ってかヒロトってやつすごくね? ハードとはいえ一人で攻撃を防ぎきるとか

 

 

939:以下無名のダイバーがお送りします

クリアのためなら連携もちゃんと出来る奴っぽいな、意外なことに。メイって奴はどうなの

 

 

940:1

メイもそれなりに動けるかな。まだチーム戦のイロハを掴みきれてない感じだけど、多分数こなせば出来るやつになってくれるかもしれん。本人は割と意欲的な感じだしな

 

 

941:以下無名のダイバーがお送りします

ほほう。その二人がある意味救いになってるな。なお他の二人……

 

 

942:以下無名のダイバーがお送りします

やべぇ、見たいんだがその地獄絵図。映像ログ残ってない?

 

 

943:1

残してねぇよあんなの……その後、何回か組み合わせを変えつつ、戦略も変えながらやって……試行回数約27回目にして、拠点HPを1%残してやっとクリアした

 

 

944:以下無名のダイバーがお送りします

27回……大丈夫かそれ?

 

 

945:以下無名のダイバーがお送りします

リハでそれだろ? 終わってね?

 

 

946:以下無名のダイバーがお送りします

多分、失敗に終わるだろうよこれ

 

 

947:1

俺もそう思う。だからもう抜けたい。誰が好んで負けが見えてる戦いをしたいってんだよ……

 

 

948:以下無名のダイバーがお送りします

これは発狂寸前ですね

 

 

949:以下無名のダイバーがお送りします

もうリアルでは何度か叫んでるだろ

 

 

950:1

まだそこまでやってない。喉元まで出かかっているけどさ

 

 

951:以下無名のダイバーがお送りします

やはり寸前か

 

 

952:以下無名のダイバーがお送りします

もうダメだな……運営はテスター選びに失敗してるわ、これ

 

 

953:以下無名のダイバーがお送りします

ほんと、酷すぎて大草原なんだが

 

 

954:以下無名のダイバーがお送りします

そういや、他のメンツの機体について、きいてないんだけど……どんなガンプラ使ってるんだ?

 

 

957:以下無名のダイバーがお送りします

カザミはもう知ってるからいいけど。ジャスティスのナイト風改造機なのは

 

 

958:1

そういや、まだ言ってなかったな。まずメイから言うが、あいつはウォドムの改造機使ってる。あのでかい足での近接格闘に、ミサイルやビームといった装備を備えてるから、意外と汎用的に動ける機体だな

 

 

959:以下無名のダイバーがお送りします

女でウォドムか。まぁありがちな感じかな

 

 

960:以下無名のダイバーがお送りします

しかも汎用的に動けるとか、さすがソロ専。オールラウンダーに動ける感じに収まれば、意外な活躍をしそうだな

 

 

961:1

んでパルはガンドランダー系を模したガンプラを使ってる。見るからに、色々とSD系のガンプラのパーツを使ってるように見えるから、色んな奴のミキシングに、足りない奴をスクラッチで作っているんだろうと思う

 

性能としては、後方支援タイプかな。口から出す火炎弾の火力は高いから、そこに収まってくれればベストかな

 

 

962:以下無名のダイバーがお送りします

ガンド、ランダー……だと?

 

 

963:以下無名のダイバーがお送りします

うっそだろオイ。ショタのくせになんつうモチーフだよ

 

 

964:以下無名のダイバーがお送りします

よく知ってるなぁ。もしかして、中身はおっさんだったりする?

 

 

965:以下無名のダイバーがお送りします

やめろぉ!! 俺のパル君の中身がおっさんな訳がないいいい!!!

 

 

966:以下無名のダイバーがお送りします

お前黙れよ

 

 

967:以下無名のダイバーがお送りします

いつお前のものになったんだよ……

 

 

968:以下無名のダイバーがお送りします

イッチじゃないやつの発狂なんてつまんねぇから

 

 

969:1

俺の発狂は面白いみたいに書くな

 

んで最後にヒロトの機体だが、小型のガンダムにフライトユニットの二つだけど、フライトユニットをアーマーパーツに分解して取り付ける事でHG相当の機体になる変わり種。個人的にだけど、ストライクやインパルス、AGE系のやつと同様で、パーツの換装で様々なスタイルに変更できるタイプなんじゃないかと見てる

 

 

970:以下無名のダイバーがお送りします

まるで主人公機だな

 

 

971:以下無名のダイバーがお送りします

換装が出来る機体か。ならどんな状況にも対応できる万能機な感じだな。どこまで用意してあるのかによるけど

 

 

972:以下無名のダイバーがお送りします

やっぱこいつが頭一つ抜きん出てるな……多分一番仲良くしといた方がいいかも

 

 

973:1

いやぁ、それはキツいかもな。なんか何考えているのかわからないし、ストミをやる理由も、ディメンションをただ探索したいだけって言うし。できる奴筆頭だけど、よくわからない奴筆頭でもあるからな

 

 

974:以下無名のダイバーがお送りします

ほんと地獄のようなパーティだな。改めて見ると

 

 

975:以下無名のダイバーがお送りします

真にマトモなの、イッチだけなんじゃね?

 

 

976:以下無名のダイバーがお送りします

確かにな。もうガチ機で挑むことになっちゃったしな

 

 

977:1

さて……色々と盛り上がってるとこ悪いけど、そろそろ1000行きそうだわ

 

 

978:以下無名のダイバーがお送りします

あ、ホントだ

 

 

979:以下無名のダイバーがお送りします

今回は割とはやく終わったな

 

 

980:以下無名のダイバーがお送りします

シクミのことがあったからな。あとはこのストミのこともだし

 

 

981:以下無名のダイバーがお送りします

確かにな。ってか、次のスレ名はどうするの? 同じで行くんか?

 

 

982:1

わかりやすく同じタイトル名でやるわ。テンプレに、しばらく安価はお休みしていますっていう事を追記しとくけど

 

 

983:以下無名のダイバーがお送りします

オケ

 

 

984:以下無名のダイバーがお送りします

了解

 

 

985:1

ほい、次の立てたんで、埋めよろしく~。そんでついでに落ちるわ……疲れたし

 

次スレ:【安価でダイブ】43スレ目

 

 

986:以下無名のダイバーがお送りします

おつ~

 

 

987:以下無名のダイバーがお送りします

おつつ~

 

 

988:以下無名のダイバーがお送りします

明日の本番、頑張ってねぇ~

 

 

989:以下無名のダイバーがお送りします

笑える結末を期待してるぜ!

 

 

990:1

やめてくれ……!

 

 

991:以下無名のダイバーがお送りします

んじゃ、埋めるか

 

 

992:以下無名のダイバーがお送りします

埋め

 

 

993:以下無名のダイバーがお送りします

うめめ~

 

 

994:以下無名のダイバーがお送りします

キムチ

 

 

995:以下無名のダイバーがお送りします

うめぼし

 

 

996:以下無名のダイバーがお送りします

サンド

 

 

997:以下無名のダイバーがお送りします

この辺かな>>1000ならストミ失敗

 

 

998:以下無名のダイバーがお送りします

>>1000ならストミ継続

 

 

999:以下無名のダイバーがお送りします

>>1000ならイッチ脱退

 

 

1000:以下無名のダイバーがお送りします

>>1000ならカザミが活躍する

 

 

1001:END

このスレッドは上限レス数に達しました。

 

次のスレッドに移動してください

 




次回は初の戦闘回になるかも


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Village defensive battle

初の戦闘回


リハーサルの翌日、つまり次のミッションの日。フレディの村の二つある入口の一つ

 

 

『やめておけ! 本気でケンカしたら、お前らが俺にかなうわけないだろう! やるってのか……それでも、オレには守る世界があるんだぁぁぁぁぁッ!!!』

 

目の前でなんかよくわからないカッコをつけている男がいるが、あまり意識しないようにした。今回の俺の役目は、多分こいつのお守りというか、仕損じのフォローになるだろうけど

 

そして事前に用意しておいた落とし穴のトラップが作動するが、引っかからなかった奴が上から跳び上がり、俺たちの上を越えようとしてくる敵が一体

 

 

『いかせねぇ、よっと!』

 

 

跳び上がってアインの専用大型アックスを叩き込んでそれを後ろへ押し返す。今回はグレイズアインの改造機、ツインエイハブリアクターを搭載させ、ビームを無効化するナノラミネート装甲の再現に成功した俺の愛機の一つ、防衛戦にも向いている“ガンダムアイン”を持ってきていた。前回の素組とは違い、アックスも塗装と面出し、エッジ処理にプラ板によって厚みを増した大型のアックスの為、敵の装甲で砕けることもなく押し返せるほどの強度を見せてくれた

 

押し返した直後に、後方より火炎弾とビームが追撃として飛んでくる。前もって教えておいたタイミングで打ってくれているので、いい感じに敵の足止めが成功している

 

 

『あぶねぇぞお前ら!!』

『す、すみません!』

『射線上に立つな。前に出すぎだ』

 

 

カザミが射撃の余波に巻き込まれているが、あの機体の硬さなら、多少の被弾はあったところで問題はない。何げにスペックだけは高いんだよな、あいつのガンプラ

 

そして敵が何体か押し寄せてくるが、ここはMSが二機並ぶのがやっとの狭い道。故に一体ずつ並んで村の方へと侵攻せざるを得ない、そんな状況が作り出された

 

 

『んじゃぁ、一機目行くぜぇ!』

 

 

それこそ、こちらの想定通りで……敵の一体を“あえて村の方へと侵入”させる。そのままなんのトラップも無く、村への入口に差し掛かったとき

 

後方で、敵の爆発音が鳴り響いた

 

 

『ここから先は通さない』

 

 

その入口に陣取っていたのは、ヒロトのアースリィガンダム。射撃体勢をとり、ライフルとシールドを連結させたフルパワーモードで敵を待ち構え、フルチャージによる一撃で落としていた

 

 

『やるじゃねぇか。なら、次行くぜ!!』

 

 

そのままカザミが抑えていた敵を、先ほどと同じように後ろへと流していく。が、そこにもう一機が滑り込んで侵入を許してしまった

 

 

『ったくもう!』

 

 

それをさせまいと、アックスで抑えている敵を弾き返し、後ろの方へバク転するかのように一気に跳躍。取りこぼした敵の真上をとり、二本あるアックスのうちの一本を投げつけて侵攻を妨害。そのまま前の方へと着地して押さえ込むことに成功した

 

 

『オイカザミィ! なに逃したんだよ!』

『想定通りだ! お前なら防いでくれるって、信じてたぜ!』

『嘘つけ!!』

 

 

いつもの調子のいいカザミの言葉に辟易としながらも、こちらを跳ね除けようとする敵の動きを抑え込む。ヒロトのチャージに時間がかかるため、ある程度は時間を稼がなければならない。そしてチャージが終わる頃合を見計らい、後ろの方へと送ってそれを打ち落としてもらう

 

リハーサルの時と違って、堅実で、華やかさも欠片もない地味な作戦を、遂行していた

 

 

 

 

 

このような戦いをしているのは、ミッション直前、GBNに集まった時にヒロトが言いだした事から始まった

 

 

「俺に考えがある」

 

 

そう言って切り出したのは、防衛作戦の内容変更だった。今まで二つある道を二手に分かれて敵を撃墜していき守っていくやり方だったが、片方の道を塞ぎ、敵の侵入経路を限定させ、一つの道を5人で守っていくというやり方に変えるという。しかも、そのうち4人は足止めに専念し、一番一撃の火力が出るヒロトのアースリィによるフルチャージショットで、一機ずつ確実に撃破していくという手堅い作戦だった

 

地形を利用した局地戦。確かに、防衛ミッションでなら、この作戦は大いに有効だ。それに前もってトラップも仕掛けられるので、塞ぐのを落石などで行えばそれで敵を落とすことも可能かもしれない

 

普通に良いと思った。それにその作戦は昨日、スレでも上がっていた作戦の一つだし、このメンバーを考えれば一番成功率の高いものだといえる。俺達は寄せ集めのパーティ、連携のれの字もない為、乱戦はできる限り避けたほうがいいのは確かだ

 

でも、クリアを目的とするならもっと過激なことをすれば良い。それこそ、カザミの奴が言ったように、爆薬を大量に仕込んで集まったところを一網打尽にするという手がある。それに比べてこれはなんというか、回りくどいというか、まるで“防衛拠点の被害を最小限に抑えるため”の作戦というか……まさかコイツ、村を本気で守るつもりか?

 

まぁ、案の定カザミの奴はこれに食ってかかり、ヒロトとにらみ合うことになったが、パルがボーナスという言葉を使ったことで、作戦変更に依存は無いということになった。こいつホントどうしようもねぇな……いや、ゲーマーとしては普通か?

 

そして村に作戦の説明をした時も、村の連中が難色を示していたが、カザミの押切で話が進んだのはまぁ良かった。リーダーを名乗ったのは、俺としてはかなり不服だけど……俺も含め、他のやつでそれをやれるようなのがいないので、別にいいと思うことにした

 

 

 

 

 

そんなことがあって、この作戦を決行し今に至る。既に片方の道は落石によって封鎖し、それに巻き込まれて何体かはそれに押しつぶされて機能停止していた。残っていたやつも、進路をもう片方の道に変更し、こちら側へとなだれ込んでいるが、上手く侵攻できないでいる

 

状況は順調、今のところ、カザミが抑え零しを出しているが、それを俺がフォローする形でやっている。後ろのパルとメイも、上手く支援砲火を繰り出している。ヒロトの方も、問題なく処理をしている。このまま行けば、割と平穏に終わりそうだなと思う

 

あれ、そうするとスレに報告する際にあまりにも見所というか、面白みに欠ける内容にならない? いや、だからといって今それを求めて動き出したら確実に戦線が崩れて戦犯モノのことになりかねないし……そう思ってしまったのが、呼び水となったのか

 

 

「あ、いたいたー!」

「わーい!」

「やっほーパルー!」

『!? みんな!?』

 

 

パルになついている子供たちが、ここに来た。来てしまった……

 

 

『ちょ、まじ!?』

[ガキンッ!!]

『ッ……!?』

 

 

ついそれに気が向いてしまい、押さえ込んでいた敵を零してしまい、侵入を許してしまった。そして、後ろではパルが陣取っていた崖の上より転落、おそらく子供たちを守るために身を持って守ったのだろうが、それで足場に何発か打ち込まれて崩れ落ちてしまったのかもしれない

 

 

『クッ、待ってろ! 今……ッ!』

 

 

 

そのフォローに向かおうとすると、背後から敵が襲い掛かってくる。それに対応をしてしまい、パルの救援に向かうことができなかった

 

パルの方は、今まさに敵に撃ち殺される寸前という状況だった。しかもガレキに埋もれていて、身動きが取れないでいる。振り払えば動けるかもしれんが、微動だにしていないあたり、おそらく銃口を向けられて気が動転しているのかもしれない。これは初心者の中ではよくあることで、俺も経験がある。だからこそそれが致命的な状態へと向いていた

 

マズイ。非常にマズイ。今ここでこちらが一機落とされてしまえば、穴となって戦線が崩壊する。そうなれば、一気に敵が村へと向かって流れ込んでくる

 

なんとかしなければと思い、スキル欄に指を伸ばしかけた時

 

 

 

[バチンッ!!!]

 

 

 

ビームがシールドに弾かれる音が響いた

 

 

『大丈夫か!? あんまりリーダーの手を焼かせるんじゃねぇよ!』

『カ、カザミさん…!』

 

 

どうやら、カザミのやつが射線上に滑り込んでこれを防いだのだ。先程まで俺の近くで敵を押さえ込んでいたはずなのに……敵を弾いてジャスティスナイトの高い機動性を駆使してブロックに急行したのだろう。おそらくパルが落ちた時に既に動いていたのか、そうでもしなければ間に合わない距離だ

 

やるじゃん、アイツ

 

と思っていたらシールドを剥がされて一気に窮地に陥っていた。オイオイって思ったのも束の間、メイがフォローに回り蹴り殺していた

 

こいつもこいつでやるなと思いながらも、状況を見渡すと最悪だった

 

今まで押さえ込んでた奴らが揃い始め、一斉に攻撃を仕掛けて来た。後ろの方にも二機零してしまい、戦況が一気に崩れ落ちた

 

 

『くっ……お前ら、はやく立て直せ!』

『分ぁってるよ!』

『は、はい!』

 

 

なんとか立て直すことは出来そうだが、戦線は大分後退してしまった。オマケに今まで上からあった支援砲火がなくなり、敵の後続の動きが加わって抑えが効かなくなってきた。このままでは、戦線の維持すら困難になってしまう。出来れば、あと四機ほど数が少なければ、撃墜込みでなんとか出来るというのに……

 

 

『まとめてこっちに送れ! 俺がなんとかする』

『『はぁ!?』』

 

 

後ろの敵を粗方片付けたヒロトが、何機か送るように行ってきた。確かに今の状態からすくなくなれば、こっちでも処理は可能だ。でも、それだとあいつの負担が尋常ではない

 

 

『お前一人でどうしようってんだ!?』

『大丈夫なのかヒロト!?』

『いいから早くしろ!!』

 

 

俺とカザミの二人は不安そうに言うが、それでもヒロトはやるようで……

 

 

『……カザミ! 四機、ヒロトに任せるぞ!』

『ぐっ……どうなっても知らねぇぞ!!』

 

 

こっちで対処しきれない四機を後ろに流し、残った三機を相手にする

 

 

『これ以上は行かせないっ!』

 

 

四機に続くように向かう五機目の動きに割り込み、その動きを封じる。続く六機目はカザミが抑えることに成功し、残った奴はメイが接近し、一対一の状況へと持ってこれ、パルがフリーになった

 

こうなれば、こっちに勝機がある。敵がもっている棍棒型の武器を上へと弾き上げ、アックスを腕に食い込ませる。装甲が厚く、そのまま両断とまではいかなかったが、敵の隙は作り出せることには成功した

 

 

『これで、トドメッ!』

 

 

武器を手放し、腕を握ってスクリューのように回転させて、顔面へと一発殴った。一気に顔面は抉れて、その特徴的な一つ目の頭部を消し飛ばす。そして敵は爆発を起こし、撃墜することができた

 

 

『っ……はぁはぁ』

 

 

一機撃破、それだけの事なのに、大分体力が消耗したような気がする。戦線崩壊の危機、それは何とか脱する事が出来たが、消耗が酷かった。一方、前の方ではカザミが抑えていた敵をパルが撃墜し、メイも抑えこんでいた奴を近距離からのビームで撃ち抜いて撃破していた

 

その後ろには、もう敵の姿は見えておらず、残る敵はヒロトに送った四機のみとなった

 

そして、そのヒロトの方はというと……送った四機を相手に上手く立ち回ったのか、四機とも撃墜を成功させていた

 

 

『……スゴい……』

 

 

純粋に、ただそう言うしか無かった。おそらく俺だったらそんな状況になった場合、2機落としたところでダメージアウトになって落ちていただろう。だからこそ、あの酷い状況を生き抜いたヒロトの実力に感嘆した

 

コイツがいれば、今後も上手くいけるのではという期待が膨らむ。地獄かと思っていた自体に光が差し込んだよう

 

 

 

[ビー!! ビー!!]

 

 

 

激しい警報が突如として鳴り響き、何事かと思ってディスプレイを覗き込んだら、塞いだはずの道の方から、敵の反応が一機存在していた。まさか、生き残りがいるとは思いもしなかった

 

 

『嘘だろオイ!?』

『クソッ、間に合わないぞコレ!』

 

 

どう考えても時間的にも難しく、今の損耗状態でブースターを吹かしたところで最高速度なんて出せるわけもない。くっ、こんなことなら、ルナリアンゼも取り付けてくるべきだったか?

 

これは、詰んだか……? そう思ったその時

 

 

 

赤いフライトユニットが、敵を押し倒した

 

 

 

『コアチェンジ、アーストゥマーズ……!』

 

 

 

それと同時に、ヒロトのアースリィの青いパーツが外れ、その赤いフライトユニットの赤いパーツがその身に纏われ、背中には大型の剣が三本背負われ……刺々しい見た目の機体へと姿が変わった

 

 

『換装した!?』

『なんだありゃぁ!?』

『マジかよっ!?』

『っ!?』

 

 

俺ら全員が目を剥いてその姿とギミックに驚いている中、ヒロトはさっきまで見せていた正確な射撃戦とは打って変わって、相手に肉薄して打撃戦を繰り広げていた。相手を完全に押さえ込むそのパワーは、前の状態では考えられないほどの力で発揮しており、完全に別物といっていいほど機体の性能が変化していた

 

あれが……ヒロトのガンプラなのか……

 

そして、相手を圧倒してなにもさせることなく敵を吹き飛ばし、その動きを鈍くさせる。最後に一際巨大な剣を振りおろし、その一機を爆発させることなく切り落とした

 

レーダーにこれ以上反応はなく、敵の殲滅を確認し、村の防衛は成功したと言える。つまり……セカンドミッションは、無事クリアしたという事だ

 

 

 

それと同時に、確信する。ヒロトがいれば、最後までやれる。と




機体の説明とかは、次回にでも載せます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

【安価でダイブ】43スレ目

新スレ突入です


1:1

ここはGBNプレイヤー、ダイバー名“リアン”ことイッチが安価をしながらGBNをプレイしていく様子を見守るスレです

用法・用量・ネチケットを守って優しく見守りましょう

 

前スレ:【安価でダイブ】42スレ目

 

 

2:1

【イッチのスペック】

ダイバー名/リアン

性別/男

所属フォース/無所属→BUIRD DiVERS

プレイ歴/サービス開始して1年後からスタート

好きなガンダム作品/鉄血のオルフェンズ

使用ガンプラ/ガンダムアイン

(グレイズ・アインの改造機。フレームをガンダムフレームに取り替えた汎用型。プレイ開始から使っている1号機)

/レギンレイズ・ルナリアンゼ

(レギンレイズ・ジュリアの改造機。鉄血メイスとキマリスランスを使い、ミノフスキーフライトシステムを装備した全身ブースターお化けの超近接戦闘型。安価で作成した機体)

/ガンダムアイン・ルナリアンゼ

(上記の二体を組み合わせた機体。ガンダムアインをベースに、脚をルナリアンゼに変え、バックパックにルナリアンゼの腕を取り付けたミキシング機。イッチのガチ機)

/塗装、改修を施したガンダムフレーム機とヴァルキュリアフレーム機

(HGで発売されているモノはほぼ全部揃ってます)

/鉄血のオルフェンズに出る量産機の素組

(HGで発売されているモノ全て。主に縛りプレイなどの際に使ってます)

 

 

3:1

※注意※

今現在、諸事情にて安価をお休みしております。ご了承ください

 

 

4:以下無名のダイバーがお送りします

新鮮なスレだァ!

 

 

5:以下無名のダイバーがお送りします

3週間で1000か。最近にしては、早い方やな

 

 

6:以下無名のダイバーがお送りします

ほぼ毎日イッチがレスしてるからな。ここ最近、ほとんど毎日インしてるし

 

 

7:以下無名のダイバーがお送りします

確かにな。長くて1週間はインしない事もあったし

 

 

8:以下無名のダイバーがお送りします

ストミしてるのもあるし、こっちとしては毎日の楽しみが継続してて嬉しい限りだわ

 

 

9:以下無名のダイバーがお送りします

それな

 

 

10:以下無名のダイバーがお送りします

さて、明日の夕方が楽しみだわ

 

 

 

………

 

………………

 

………

 

 

19:1

ただいまー。誰かいる?

 

 

20:以下無名のダイバーがお送りします

お、おかえり~

 

 

21:以下無名のダイバーがお送りします

イッチだ!

 

 

22:以下無名のダイバーがお送りします

イッチー!

 

 

23:以下無名のダイバーがお送りします

さぁ、俺たちに楽しみを寄越せ! イッチー!

 

 

24:1

飢えすぎじゃねぇかな……?

 

とりあえず、かなり長文になるから、いつもどおり注意な

 

 

25:以下無名のダイバーがお送りします

オケ!

 

 

26:以下無名のダイバーがお送りします

さぁ、どんな失態があるのかな?

 

 

………

 

………………

 

………

 

 

30:1

まぁ、こんな感じかな。これで満足したかお前ら

 

 

31:以下無名のダイバーがお送りします

うん。その……すっげーまとめて来たな

 

 

32:以下無名のダイバーがお送りします

なんか、普通に良い戦闘してるようでビビってる

 

 

33:以下無名のダイバーがお送りします

なんというか、カザミがやらかすかと思ったけど……なんか、意外な活躍をしてて、その……

 

 

34:以下無名のダイバーがお送りします

なんか、もにょる

 

 

35:以下無名のダイバーがお送りします

マジで前スレ>>1000の通りになってて草なんだが

 

 

36:以下無名のダイバーがお送りします

なんなんだろうな、この不気味な感じ

 

 

37:1

不気味って言うなよ……俺としては少し見直したいところなんだけど

 

 

38:安価ダイバー応援団長

まぁ基本イッチのフォローで事なきを得ているって感じだな。意外と相性いいんじゃないのか?

 

 

39:1

やめてくれ団長、怖気が走ったんだが

 

 

40:以下無名のダイバーがお送りします

 

 

41:以下無名のダイバーがお送りします

でもイッチがいなかったらヒロト君の負担が酷いことになってそう

 

 

42:以下無名のダイバーがお送りします

確かに

 

 

43:以下無名のダイバーがお送りします

それは言えてる

 

 

44:1

まぁ、そう思うよな……彼がいないとおそらく今後も進んでいくことなんて出来ないだろうから、抜けるなんて言わないように気分よくいて欲しい所だわ

 

 

45:以下無名のダイバーがお送りします

だな

 

 

46:以下無名のダイバーがお送りします

ってか、ヒロトは続行する派じゃなかったっけ? そう簡単に抜けることはないだろうよ

 

 

47:以下無名のダイバーがお送りします

そう言えばな

 

 

48:1

そうだった。それでもまぁ気分良くいて欲しいのは間違いないから

 

 

49:以下無名のダイバーがお送りします

メンバーのやる気は重要だからなぁ。何かしら抱え込んでやってくと、ちょっとした事でマイナスに転んでメンバー抜けます。みたいなことになりかねないからな

 

 

50:以下無名のダイバーがお送りします

そうそう。自分は役立たずでーとか、足を引っ張ってしまうのでーとか言ってな。チームの軍師ポジの人にとっては、勘弁願いたいことなんだよなぁ。欠員が出るのはさ

 

 

51:以下無名のダイバーがお送りします

分かる

 

 

52:以下無名のダイバーがお送りします

そういうやつがいるから、俺みたいな傭兵プレイしてる奴の需要があるんだけどね

 

 

53:以下無名のダイバーがお送りします

時期によってはめっちゃ稼げるからな、傭兵プレイ

 

 

54:以下無名のダイバーがお送りします

稼ぎが高いときくと、フォース入ってる身としては羨ましいんだけど

 

 

55:以下無名のダイバーがお送りします

その代わり、フォース特典やらが手に入らないけどな。安定を望むならそっちのほうがいいだろ

 

 

56:以下無名のダイバーがお送りします

どっちもどっちだよな。まぁ、気質次第なとこだろうよその点は

 

 

57:安価ダイバー応援団長

さて、話が少し脱線しかかっているが、次のミッションはあるのか?

 

 

58:1

おう。ある

 

 

59:以下無名のダイバーがお送りします

 

 

60:以下無名のダイバーがお送りします

どんなだ?

 

 

61:1

えっと……さっきの話の続きだが、セカンドミッションが終わったあとに、フレディの兄のジェドっていうやつが来て、そいつは今ヒトツメに対抗しているレジスタンスをやっているらしい。そんで、そのレジスタンスの次の作戦に協力して欲しいっていう感じの話になった

 

 

62:以下無名のダイバーがお送りします

ほうほう

 

 

63:以下無名のダイバーがお送りします

08小隊っぽい話になってきたな

 

 

64:以下無名のダイバーがお送りします

添える程度のガンダム要素

 

 

65:以下無名のダイバーがお送りします

ストーリー考えている奴、絶対ガンダム知識にわか程度しか知らんだろう

 

 

66:1

俺も鉄血とOOと宇宙世紀の一部くらいしか詳しくないけどさ

 

そんでその協力して欲しい作戦ってのが、ヒトツメの生産基地らしき建物に侵入して爆破活動を行う。それをやってる間、基地の守備隊を相手に陽動をお願いしたいという。まぁ囮になれって感じのミッションだな

 

 

67:以下無名のダイバーがお送りします

なるほどなぁ。防衛戦の次は破壊活動の援護か

 

 

68:以下無名のダイバーがお送りします

イッチにとって一番楽な感じのミッションだな。破壊活動系は

 

 

69:以下無名のダイバーがお送りします

陽動だけどな

 

 

70:1

それがあるのが三日後らしく、とりあえず一旦ログアウトして整備と準備をしてからミッションに望むって事になった。以上

 

 

71:以下無名のダイバーがお送りします

準備って、何するの?

 

 

72:以下無名のダイバーがお送りします

まぁ、リハなりなんなりじゃね?

 

 

73:以下無名のダイバーがお送りします

敵の戦力が不明なのにか?

 

 

74:以下無名のダイバーがお送りします

生産基地ってことは、おそらく高性能機が守備に回っている可能性があるよな

 

 

75:以下無名のダイバーがお送りします

かもな

 

 

76:1

まぁ明日集まってミーテして、次にリハして、本番に入る。みたいな感じになりそうかな

 

 

77:以下無名のダイバーがお送りします

なーる

 

 

78:以下無名のダイバーがお送りします

パターンが作られてきたな

 

 

79:以下無名のダイバーがお送りします

多分三日っていう期日も、おそらくそういうのを想定されて設けられたモノなんだろうな

 

 

80:以下無名のダイバーがお送りします

あ、なるほど。そこら辺は考えてあるのか

 

 

81:1

それならありがたいっちゃありがたいわ、ホントに

 

とりあえず、今日はこんなところで。また進捗あったら報告するな

 

 

82:以下無名のダイバーがお送りします

おう。おつかれ~

 

 

83:以下無名のダイバーがお送りします

おつかれ~。今日も楽しめたぜ

 

 

84:以下無名のダイバーがお送りします

あ、丁度いいや。明日暇な奴おりゅ? 新しいシクミの情報入ったんだが

 

 

85:以下無名のダイバーがお送りします

行くわ

 

 

86:以下無名のダイバーがお送りします

やりゅ

 

 

87:1

羨ましい……

 

 

88:以下無名のダイバーがお送りします

いや、イッチの方が羨ましいからな。導入予定のミッションのテストとかさ

 

 

89:以下無名のダイバーがお送りします

地雷パだけどね

 

 

90:以下無名のダイバーがお送りします

そこさえなければ羨ましいだけですんだんだけどなぁ……




戦闘内容は前回いっぱい書いたから省略

パル君回突入


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

【安価でダイブ】43スレ目 その2

早いし、短めですが、次話投稿です

レス番がおかしかったので修正しました。


………………………

 

………………

 

………

 

 

 

138:以下無名のダイバーがお送りします

おつかれ~。イッチいる~?

 

 

139:以下無名のダイバーがお送りします

おつつ~。あれ、イッチいない?

 

 

140:以下無名のダイバーがお送りします

この感じ、まだ来てないっぽいな

 

 

141:以下無名のダイバーがお送りします

にしても今回は大漁だったわ。称号とパーツゲットでホクホクですわ

 

 

142:以下無名のダイバーがお送りします

シクミ解放に初クリアボーナス、オマケに多額の金。しばらくは豪遊できそうだわ

 

 

143:以下無名のダイバーがお送りします

普通のシクミでこれだと、ストミの報酬はどうなんだろうな?

 

 

144:以下無名のダイバーがお送りします

テストプレイに報酬って出るん?

 

 

145:以下無名のダイバーがお送りします

まぁ、ご協力ありがとうございました的な感じでもらえるんじゃね?

 

 

146:以下無名のダイバーがお送りします

めっちゃ貰えそう

 

 

147:以下無名のダイバーがお送りします

だな

 

 

148:1

クソおおおっ!! 羨ましいいいいいい!!!

 

 

149:以下無名のダイバーがお送りします

お、イッチだ

 

 

150:以下無名のダイバーがお送りします

また開幕から発狂してるよ

 

 

151:以下無名のダイバーがお送りします

さて、今回はなにがあった?

 

 

152:以下無名のダイバーがお送りします

今日ってリハの日だったんだろ? 通常ミッションで

 

 

153:以下無名のダイバーがお送りします

確か、キリマンジャロの大嵐だっけ、ミッション。要塞攻略系の

 

 

154:以下無名のダイバーがお送りします

敵がランダムで毎回変わるやつな。無論高難易度ミッション

 

 

155:1

そうそれ。もう開幕からリハの意味ないやんって感じのことになった

 

 

156:以下無名のダイバーがお送りします

カザミェ……

 

 

157:以下無名のダイバーがお送りします

一発で誰のことか分かってしまうw

 

 

158:以下無名のダイバーがお送りします

安定した役立たずっぷりですわ

 

 

159:1

ほんそれ。一人で突貫した挙句、俺らが到着した時にはすでに捕まって身動き取れてない感じになってた

 

頭掴まれて

 

 

160:以下無名のダイバーがお送りします

草ァッ!!

 

 

161:以下無名のダイバーがお送りします

片腹大激痛

 

 

162:以下無名のダイバーがお送りします

即落ち2コマかよ

 

 

163:以下無名のダイバーがお送りします

敵はなんだった?

 

 

164:1

バウンドドック。結構硬かったかな

 

 

165:以下無名のダイバーがお送りします

高難易度バウンドドックか。変形多用してトリッキーな動きすることで割とキツいやつやな

 

 

166:以下無名のダイバーがお送りします

空も飛ぶしな。中堅入る登竜門ぐらいの強さ

 

 

167:1

俺らも戦闘入ったら、カザミを投げ捨てて盾にしてたし。AIもそれなりに高めだったな。まぁ、それ以降は特に何も起きることなく、俺とヒロトとメイの三人で追い回して仕留めたわ

 

 

168:以下無名のダイバーがお送りします

投げ捨てて盾w もう扱いがギャグすぎてw

 

 

169:以下無名のダイバーがお送りします

オイマテや。俺のパル君の活躍はどうした。あぁん!?

 

 

170:以下無名のダイバーがお送りします

お前はほんと黙れよ

 

 

171:以下無名のダイバーがお送りします

メンツにショタがいるからか、ハッスルモードになってんな

 

 

172:以下無名のダイバーがお送りします

匿名が意味を成してない件について

 

 

173:1

あとお前のモノでもないからな

 

パルはなんかコケて終わってた。そういや、なにもしてなかったなアイツ。空中戦できる機体じゃないみたいだし、完全に空気だった

 

 

174:以下無名のダイバーがお送りします

コケた……だと……可愛い

 

 

175:以下無名のダイバーがお送りします

こいつはホントに

 

 

176:以下無名のダイバーがお送りします

まぁ今になって狂いだしたわけじゃないしなぁ……とにかく気持ち悪いレスさえしなけりゃイイや

 

 

177:以下無名のダイバーがお送りします

現実では絶対にパル君で自家発電してんだろな

 

 

178:以下無名のダイバーがお送りします

やめろ

 

 

179:1

やめろ

 

 

180:以下無名のダイバーがお送りします

やめろ

 

 

181:安価ダイバー応援団長

そこまでにしておけ。これ以上は無駄な消費になるし、コイツもつけ上がるだけだ

 

 

182:以下無名のダイバーがお送りします

団長ちぃーっす

 

 

183:以下無名のダイバーがお送りします

こういう悪い流れをぶった切ってくれる団長マジ団長

 

 

184:1

えっと……まぁとりあえずクリアはしたって事で。んで、報酬に大口径ビームキャノンをゲットして、ヒロトが使うことになった。次のミッションに持ってくるようだし、やっぱ有能すぎるわ

 

 

185:以下無名のダイバーがお送りします

ヒロト君マジ有能

 

 

186:以下無名のダイバーがお送りします

イッチの癒しになってるなぁ、ヒロト君

 

 

187:以下無名のダイバーがお送りします

最初は独り善がりとか言ってたのに、いざ一緒にやり始めるとチームの主軸になってるという

 

 

188:以下無名のダイバーがお送りします

でもそこまで有能なやつが、なんでこんなミッションをやってんだ?

 

 

189:以下無名のダイバーがお送りします

知らね

 

 

190:以下無名のダイバーがお送りします

そこは本人に聞いてみなきゃ

 

 

191:1

聞いたところで、答えてくれそうにないんだけど

 

 

192:以下無名のダイバーがお送りします

そっかー。まぁそこまで気になってるわけじゃないしな

 

 

193:1

んじゃ、時間も時間だし、そろそろ落ちるわ。また明日、ミッション終わったらここに来るから

 

 

194:以下無名のダイバーがお送りします

おう。おっつー。カザミの失態は見逃すなよ

 

 

195:以下無名のダイバーがお送りします

今度こそミッション失敗を期待してるわ

 

 

196:安価ダイバー応援団長

ほんと酷いなお前らは

 

 

………

 

 

………………

 

 

………………………

 

 

 

 

 

スレでそんなやり取りをした翌日

 

この前のレスの49と50のやり取りがフラグとなってしまったのか……

 

 

「僕……このパーティを……抜けたいんです……」

 

 

パルのやつが、唐突にこんな事を言いだした




執筆にあたりリライズを何度も見返しているけど、改めて見ると色んな所に伏線が散りばめられていて感嘆してる


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Fortress capture battle

フラグが足りていないと思い、一部加筆を行いました


パルヴィーズの唐突な脱退の宣言

 

理由としては、まさにこの前のレスのやり取りであったように、役に立ってないことを気に病み、これ以上足手纏いになりたくないからっていう……まさに言ってた通りの事態になってしまった。いやほんと、なんか予言かと思うくらいその通りのことだったので、マジでビビってる。昨日のリハでなんにも出来なかったのが響いたのか、それとも他になにかあったのか……

 

とにかく、パルは抜けたがっている。確かに最初はそうだったから、別に俺はどうこう言うつもりはない。だが、これは個別で抜けることが出来ない仕様となっている。そのため、抜けるとなるとメンバー全員のミッション実績をゼロにし、解散する必要がある

 

あ、ならこれ俺にとっちゃ望んでた事じゃねぇか……! よし、なら全力で解散する方向に話を持っていけば……って、カザミがいるから難しいか

 

因みに、そのカザミは相変わらずパルを引きとめようと必死になっている。強い敵がどうこうと言ってるけど、お前じゃどうこうすることも出来ないけどな

 

 

「もしミッションに失敗すれば、どの道パーティは解散だがな」

「おい、縁起でもねぇこと言うなって!」

「抜けたいなら抜けたいでいいだろう。やる気のない奴がいると、迷惑かかるのは事実だし」

「てめぇは黙ってろ! ヒロト! お前もなんか言えよ!」

「っ!?」

「?」

 

 

ヒロトに話を持っていこうとしたら、パルがあからさまに反応をしめした。もしや、抜けたいっていう気になったのに、関わっているのか?

 

 

「……パルがしたくないなら、フレディ達の村で待機するという手もあると思うけど」

 

 

と言って来た。つまり、ミッションは継続したいってことか? したくないのなら、戦いに参加しなくてもいいって、そりゃまぁそうだけど……でも、パルの場合はそういう類じゃない気が

 

 

[ピロン]

「「「「「!」」」」」

 

 

また唐突に五人の前にホロディスプレイが現れ、いつものようにストーリーミッションのディメンションに転送される処理が始まり、全員が光に包まれた

 

あの、まだ話が終わってないんですが?

 

 

 

 

 

 

転送後、待っていたフレディが妙な空気を察知し、そこでもまたひと悶着あった。フレディもパルに残って欲しい……というより、見捨てないで欲しいという事だったのか、パルにしがみついて懇願していた。そこにカザミも乗っかり、結局脱退の話がうやむやのまま流れていった。いいのかな……?

 

妙な空気を引っ張ったまま、村長の家にてジェドから再度作戦の概要を聞き、レジスタンス側の戦力というのも教えてもらった。どうやら、古代の遺跡で発見した武器を使っているとの事だったが、見た目がガンダムらしからぬ形状のビームガンで、とてもじゃないけど、MSを倒せるとは思えない威力の銃だった

 

あ、でも古代の遺跡から出土した兵器を使って戦うってのは、∀っぽい気がする。つまり、敵は月に本拠を構えているとか? 最後に宇宙に行きそうだなこれ

 

 

 

 

 

作戦決行の時間となり……結局、パルは参加することになった。どうやら、ヒロトがフォローを入れたようで、敵の基地内部に突入するレジスタンス達の護衛をすることになった。確かに地上専用機なら、車で移動する彼らの守りに就くのは適役だろう。残る俺たちはというと、二手に別れ、二方から基地に襲撃を仕掛け、敵を混乱させ守備を手薄にさせる。という事になった。そして、レジスタンスが撤退をするまで時間を稼ぎ、完了後撤退する。という流れだ。チーム分けとしては、俺とヒロト、カザミとメイの組み合わせだ

 

そして周りの地形を再度見てみれば、作戦会議でも言われていたようにいくつもの穴があり、そこからは炎が吹き出る、つまりマグマが流れているという情報がある。そして基地周囲も、マグマの川で囲われているため、安易に侵入することは困難。空から行こうとしても、見えない壁、バリアに阻まれて不可能という話だ

 

そんな基地にどうやって侵入するかというと、物資搬入用の出入り口があるらしく、そこから入るわけだ

 

割と悪くない作戦だと思うし、わざわざ敵を撃墜する必要もないから、カザミでもやってくれるだろうと思う……が、多分あいつの事だ。おそらくボーナス目当てで撃墜してやるとか言いそう……メイ。カザミの手綱、しっかりと握っていてくれよ

 

 

『ビルドダイバーズ、準備は良いですか?』

『おうよ!』

『いつでもいい』

『俺も行けるぜ』

『こっちも位置に付いてる』

 

 

ジェドからの連絡で、そろそろ作戦が開始される……が、先ほどからパルの声が聞こえてこない。やはり、よほど不安に思っているのだろうか

 

 

『あれ? パルさん?』

『あ、うん。僕も、大丈夫』

 

 

いや、ホントに大丈夫なんかね、キミ……最悪、こっちは俺一人でやって、向こうにヒロトを送り出したほうがいいような気もするが……

 

 

『……よし、作戦開始だ!』

 

 

そんな不安を抱えたまま、ジェドの掛け声より、作戦が開始された

 

 

『行くぞ』

『オーケー』

 

 

ヒロトと共に隠れていた岩場より身を乗り出し、敵の基地へと向かっていく。近づくにつれ、その基地の大きさに少し驚くが、直後にアラート音が鳴り響く

 

穴の中から、大型のMSが姿を現した

 

 

『四脚型、デスビーストのカスタム機か』

『かなり大型にして来やがったな』

 

 

今まで見たことない形状の機体、となると新型ということなのだろうか。所持している武器は槍が一つに、背面に大型のバックパックが見えるので、他にも何かしらの武装が仕込まれているだろう

 

デスアーミーといい、デスビーストといい、Gガン系の敵機体ばかり使うってどういうことだ? まぁ、ヒトツメという名称からして、大きなモノアイをもっている機体だからだろうか……開発者は何を考えているんだろうかコレ

 

 

『接近戦は不利だろう。中距離から動きを牽制して止めるぞ』

『了解っ』

 

 

俺は肩に格納されている40mm機関銃を連発し、ヒロトは機体の各部位に備え付けてあるミサイルポッドからミサイルを機関銃の隙間に差し込むように発射していく

 

ヒロトの機体は深緑色の装甲に重火器を大量に搭載したアーマー……ヴィートルーガンダムを使用していた。おそらく、前回の赤いマーズフォーガンダムとは対を成す砲撃戦を主眼においたアーマーなのだろう。手足にミサイルポッドが備え付けられており、スプレーガンには大型のビームバズーカとなるアタッチメントが備え付けられている。頭部には照準補助のための強化センサーが付いており、バックパックにはホバーユニットにミサイルポッド、そして昨日の報酬パーツである大口径ビームキャノンが付けられている

 

合わせ目もしっかり消し、重厚な色合いをしている事から、しっかりと塗装までして仕上げてきている。この短時間でよくあそこまでの作り込みをしたものだ。ビルダーとしても相当な腕前だと見る……

 

そこまで完成度の高い機体による攻撃、弾幕の隙間を埋める完璧な射撃技術により、相手は身動きを取れないでいた。このまま行けば、完封して敵を落とすことも可能だろう。そう、思ってたら

 

 

 

『ぐわああぁぁぁぁぁっ!!?』

 

 

 

向こうの方で戦っているカザミが、マグマの穴から吹き出た炎によって大ダメージを受けていた

 

あんの野郎……なにが強い敵は俺が何とかしてやっからだ! ステージギミックで大ダメージとか、バカのすることだろう!?

 

しかも、あいつの機体にはフレディが一緒に乗ってるし、あっち側はレジスタンスメンバーが突入している搬入口がある方面だ。あっちが一機落とされると、撤退の際にレジスタンス達の身が危ない……クッ、こうなりゃ

 

 

『おいヒロト、お前はあっち側に向かってくれ。お前のほうが早いだろうし……こっち側は、俺だけで何とかする』

『っ。大丈夫なのか』

『あぁ、大丈夫だ』

 

 

一対一の状況なら、問題ない。そっちの方が“慣れてる”からな

 

 

『行け! ミッション失敗にはなりたくねぇからよ!』

『……わかった……気を付けろよ』

 

 

その言葉と共に、一緒に持ってきたであろう青い装甲のフライトユニット、アースアーマーにぶら下がり、向こう側へと急行した

 

そして、片方がいなくなった事で弾幕に隙ができ、敵が身動きを取りやすくなりこちらへと向かってくる

 

 

『っ!』

 

 

こちらの機関銃の弾幕をものともせずに向かってきた敵をアックスで迎撃し、鍔迫り合いの状態へと持っていった。そのまま押し切ってしまおうと出力を上げようとすると、相手も負けじと出力を上げ押し込めようとする

 

力と力の勝負。こっちとしては近接における出力の高さには自信があったが、向こうも同じぐらいの出力を引き出せるとは思わなかった。確かに近接戦闘では最強格であるGガン系の機体ならば、これぐらいの出力は出せるだろう。例えやられ役の量産機であろうとも、こと接近戦では他のガンダムの主役級機体であろうとも倒してしまうのだから

 

だからこそ、Gガン系には遠距離戦が有利というセオリーがある。まぁ、改造してそれすら跳ね返すほどの性能を出すやつもいるにはいるが……まぁ今はどうでもいい話だ。それに

 

 

『近接戦なら、オルフェンズ系だって負けてないんだからよ!』

 

 

片足で相手の胸部目掛けて膝蹴りを繰り出し、鍔迫り合いを解き、相手との距離を取る。そのまま突進し、アックスによる連撃を繰り出していく

 

敵もその連撃に対し槍で応戦をしていくが、防戦一方という状態。そのまま押し切り、武器を手放すまで繰り出すか、或いはマグマの穴にでも叩き落としてやろうかと考えた。が、そういうのもおそらく相手にとっては予測出来ることだろう

 

故に反撃に出るのは当然の事で、背中のバックパックに光が集中するのが見えた。おそらく、高出力のビーム攻撃を繰り出すのだろう

 

 

『おい、舐めてんのそれ?』

 

 

その光が溢れ、アインの全身を焼き焦がすように照らしていく。地面の方にこぼれた分は、そのまま大地を抉っていくが、己のアインにはなんのダメージも与えていない

 

ナノラミネート装甲。オルフェンズのMSに使われている銃撃やビーム攻撃を無効化する装甲で、GBNではチートだろと言われているスキルの一つである。無論、高性能スキルなため、習得するにはゲーム的にもビルド的にも相当の苦労を要する。そんな装甲を有している為、このビーム攻撃を完全に無効化した

 

 

『オラァッ!!』

 

 

そのままビームを打ち続けている敵の胴に、アックスの一撃を叩き込んで行く。それにより敵の動きが止まり、ビームも止まった。そして、敵も反撃に出て槍を振り払う事でこちらとの距離を開け身構える。あちらも、相当強固な装甲を有しているようである

 

接近しアックスを振り回しながら攻撃を続け、相手はそれを受け流すかのように槍を振るうばかりだった。ビーム、というより遠距離系の攻撃が通用しないと分かったからなのか、敵の攻撃が近接一辺倒になってきて、こちらの攻撃を逸らすことしかしなくなった。かなり学習能力が高いAIだな

 

しかし、それならこちらとしては好都合だ。このままステージの穴に気をつけつつ、敵を完封していればこちらの勝利だ。向こう側も、ヒロトが行ったので問題なく押さえ込めるはず

 

 

『二機目だとぉ!?』

 

『はぁ!?』

 

 

っと思った矢先に、向こうにはもう一機敵が現れたようだ。そうなると、話はまったく変わってくる。今現在、俺がコイツに対しかなりメタれているから完封しているが、こいつのスペックはそれなりに高い。あっちの機体では攻撃を防ぎきることもままならないはずだろう。カザミはもうダメージレベルがイエローになってるし、下手したら落ちかねない

 

あのー、ここでボスクラス二機目投入とか難易度おかしくないですかね? やっぱりあれか、コレ撃破考えずにどこまで持たせるかという系のヤツ? 倒せない敵キャラってやつか? しかもあちら側に二機目が現れたとなると、こちら側にも現れる可能性がある。今のところ、そのような気配はないが……早くしろよレジスタンスぅぅぅ!!!

 

クソッ。こうなったら、あの奥の手でも使うしか……でも、反動が大きいから、あまり使いたくないし……どうすれば!

 

 

 

[ドォーン!]

『お』

 

 

 

祈りが通じたのか、基地の方から爆発が起きて、周りを覆っていたバリアが解除されていく。さらに、その爆発の衝撃で敵に隙が生まれた

 

 

『っ、そこぉ!!』

 

 

すかさず出来た隙を利用し、足を持ち上げヤクザキックの要領で相手に足裏を向けての蹴り放ち、四本ある爪を装甲に食い込ませる。そのまま足裏に備え付けてあるバーニアを最大噴射で吹かし、装甲を赤く熱していく

 

 

『吹き飛べぇ!!』

 

 

足を引き剥がし、その体勢のままもう一度敵に足を伸ばすように蹴りを入れ突き飛ばす。体制が大きく崩れた相手は身動きを取ることもできず……

 

赤熱化して柔らかくなっている装甲目掛けて、拳を叩き込んで喰い込ませ、腕に取り付けてあるパイルバンカーを作動させて打ち込むことで機能が停止し、爆発した

 

 

『ッ……ふぅ』

 

 

なんとか、倒すことができた。かなり苦しい戦いだったし、消耗が激しい。熱が足りてなかったのか、殴った方の拳が損壊していた。これでは、もうアックスも握ることができないし、スクリューパンチも使えない。まぁ、もうクリアしたんだし、あとは逃げるだけ

 

 

『すまない! 新型を止められなかった!!』

『は?』

 

 

ジェドからの通信のあと、空を見上げれば空を飛んでいる敵が新たに現れた。基地の爆発を逃れて、起動したのだろう

 

ってか見た目……またデスアーミーかよ。開発どんだけデスアーミー好きなんだよ……しかも翼つけてるとか、デスバーディかよ! もう色々とツッコミどころがあるが、また状況が悪転していた。空を飛び回っている奴はこちらに空爆を仕掛け、完全に身動きを封じてきている

 

 

『頼む! 何とかしてくれ! もしあれが1機でも飛んでいけば、村はひとたまりもない!』

『そう、言われても……!』

 

 

迎撃に出ようにも、こちらは一機撃破にほぼ全力を使ってしまったせいで余力がない。スラスターの推進剤も底を付いているし、空に飛んで撃破を狙うことなんて出来ない

 

見上げるとヒロトがアースリィに換装し迎撃をしている。が、フライトユニットにぶら下がっているせいか、照準が合わせにくいようで何度もビームを外しているし、敵も機動力が高いようで余裕で回避しているようである……

 

あ、とうとう終わったか。おい、俺のこの疲れはどうしてくれんだよ。ってか難易度高すぎるだろこれ……まぁ、よく頑張ったほうか。セカンドまでクリアしたんだし、少なくてもいいから何か報酬あるといいなぁ……

 

と、俺はもう、諦めモードに入っていた……

 

 

 

 

 

『お願いだッ!! 僕と一緒に飛んで!! モルジアーナァァァァーーッ!!!』

 

 

 

 

 

『!?』

 

 

突如、パルが声を上げて叫ぶ。それと同時に、龍の雄叫びのような咆哮も聞こえてきた。何事かと思って向こう側の方へと目を向ければ、向こう側から炎の柱が立ち登り……

 

中から、白い翼を広げた赤い龍が飛び出し、空を舞った

 

 

『あれって、パルの機体……』

 

 

飛行性能、着いていたのか、あいつの機体。しかも、かなり速度出てるんじゃねぇかあれ。それに旋回力もかなりあるように見える……

 

あまりの機動性、飛行性能を見せてくるパルの機体に呆気を取られていると、瞬く間に一機撃破していく、もう1機も反撃をしていくが、それすら全て回避していく。更には機体を回転させて竜巻を発生させ身動きを封じ、また一機と飛行型を撃破していった。最後の奴にも、一気に加速をして突撃をしていき、その突進力を以て一撃で撃破していった

 

あの、キミ……初心者じゃなかったっけ? なにその動き。中堅……いや上位入りたてくらいの動きしてませんかね? ね? なに、その……ガンダムの主人公みたいな覚醒をしているんだいキミぃ……!? そういや、さっき抜けたいとか言ってたような……あの時の暗く沈んでた気持ちはどこへ行ったのよ!?

 

撃破の隙を着いて地上から攻撃が飛んでくるが、それすらも悠々と躱していき……

 

 

『今こそ! キミの本当の力を! 竜合身(ドラゴン・フュージョン)ッ!!!』

 

 

その身が分解して、ガンダムアストレアをモチーフとしたようなSDガンダムへと変形した

 

 

『は……はいいい?』

 

 

SD系のパーツを使っているように見えたが、まさかSDガンダム体に変形するギミックを有していたのかよアレ……ちょっとまって、本当にすごくないかい? そこまでのギミックを仕込むには、そうとうなビルド力を要求されるはずだし……いや、まさかここまですごい少年だったとは……

 

 

『行っけぇぇぇ! ヴァルキランダァーーッ!!!』

 

 

そして、地上にいた大型機を、俺ですら手こずった相手を、手にしたブレードで一刀両断した

 

 

『……はは、なんだこれ……』

 

 

もはや乾いた笑いしか出なかった。最初にメンバー脱退宣言をして、もう参加することはないと思ってたら参加してきて、ミッション失敗のピンチに陥ったと思ったら戦況を覆す活躍をするとか……彼の性分から見れば、狙ってやったわけではないだろうけど……まるで主人公みたいな活躍を、パルのやつはしてしまった

 

これは……スレに書く内容が濃いものに出来るわ。その点はパル君グッジョブとい合わざるを得ない。少し気分が良くなった。いつか何かしら奢ってやろうと思い、向こう側に向かっていった

 

 

 

……あ。これ、アイツが超ハッスルしちゃうんじゃ……




パル君覚醒回と称したリアンの初タイマン戦闘回

次回、変態注意


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

【安価でダイブ】43スレ目 その3

前回のミッションの翌日。今日もストーリーミッションの為に、GBNにログインをしていた。ここ最近は毎日ログインをしているあたり、あのミッションに気合を入れているんだなと思い始めていた。半月前までは、多くて週に二回はログインしない日があったというのに、今はこれである

 

意外と、このミッションにハマっているのかもしれない。最初は地雷すぎてうんざりしていたが、いざ共にやり始めるとそこまで酷いものでは無かった。ヒロトとメイは最初からそれなりに出来るやつだったし、パルは昨日の一件で殻を破った感じだ。あの機体性能は驚いたし、本人も実際はかなりの実力を持ったファイターであった。初心者なのに……だがこれでチーム内の憂いが一つ、完全に拭い去った感じだ

 

だからこそ、最後の一点……アイツの存在が非常にネックになっている

 

ただ前に出てカッコつけたいだけの足手纏い。突撃したと思ったらなんの成果も出さずに落ちかけて……昨日だって、ステージギミックで大ダメージという恥ずかしい失態をしているにも関わらず、なんの反省もしていない。セカンドミッションの時に、パルの防御に回ったあの動きは本当に良かったと思ったのに、もう台無しである。周りを強引にでも引っ張る力は、まぁ好意的に捉えてもいいかなって思っているけど……今のところ、ただウザいだけなんだよなぁ

 

アイツも、パルみたいにひと皮剥けてくれないかなぁ……なんて考えていたら、集合場所の近くに差し掛かっ

 

 

「ぴっちりスーツの女に、エセアメコミヒーロー風の男……つまり、そいつらと一緒にいるあの狐耳の少年が、パルきゅん……!!」

 

 

物陰に隠れて、パルの様子を凝視する女という、見たくもない光景が、そこにあった

 

 

「あぁ、なんて可愛らしい姿なんだい? 例えあれが作られたアバターといえども、その陰に隠れたリアルの姿が目に浮かぶ。きっと、あのアバターと同じく愛らしい笑みを浮かべる元気な少年に決まっている。あぁ、なんて尊いのだろうか。アバター姿であっても、その尊さが溢れんばかりの後光となって光り輝いている……! あぁ、今まで見たどの少年少女よりも素晴らしい! あ、耳がピコピコ動いた……か、わ、い、い、よぉぉぉぉぉっ……! あぁ、ディスプレイを眺めて、いったい何を見ているのだろうか……? なになに、“こうすればテンションを逃がして、保持力を上げられるんだ。”だって? あぁ、なんて勤勉な子なんだ。チームの為に、もっともっと頑張ろうって考えているなんて、ほんとうに優しい子なんだね……あぁ、我慢なんて出来ない。このままあの子を、お持ち帰りい゛い゛い゛い゛い゛ッ!!?」

「何をしているこの変態……ッ!」

 

 

先程から危ない思考を興奮のあまり口から垂れ流している、見た目が宝塚の男役を演じる女性っぽいダイバー……うちのスレ民の一人であるS.R.T.er(ショタロリタッチャー)の首を捕まえ、そのまま握り締めていく。こうでもしなければコイツは止まらないので、酷いことをしているという気はない

 

 

「や、やぁリアン。今日もストーリーミッションかい? 俺たちの楽しみの為に頑張ってくれるなんて、本当に君は人がいいねぇ。感心するよ」

「それはどうもありがとう。とにかく、邪魔だからどっか行って欲しいんだけど?」

「それは無理な相談だ。俺は今からあの子と秘密のランデブーに旅立つんだ。だから君の方こそ、邪魔だからさっさと消えて欲しいんだが」

「ランデブーじゃねぇだろ、拉致監禁だろうがお前の場合はよ……!」

 

 

S.R.T.er(ショタロリタッチャー)。このGBNに於いて奇行が目立つという理由で名が知られているダイバーで、ここには少年と少女が発するエナジーを感じるから、という理由でGBNをやっているマジの変質者。気に入った子を見つけたらランデブーと称して自身が所有するフィールドに連れて行き、しばらくそこに留まらせるというなんとも奇妙キテレツな事をやっている

 

因みに、何をしているのかと聞いてみたら、“そりゃぁ、ナニしてるよ”っていう回答があったのでマジで引いた。キャプテンこの人です、早く修正してください

 

女であり、リアルも女性であると言っているが、一人称は俺で、口調も男のそれ。どうやらリアルでもそんな感じらしいのだが、実際は定かではない

 

そんな変態が、どうしてあのスレに来たのかというと、理由は単純に面白そうだったから、という。まぁ、ショタロリが絡まなければ、なんの変態性もない男口調の女というだけの普通な奴なのだ。そう、ショタロリが絡まらなければの話である

 

 

「とにかく、この手を放すんだ。俺は早く、パルきゅんの尻尾に顔を埋めたいんだ」

「させるかこの変態がぁッ!!!」

 

 

首を掴んだまま、全力を以て集合場所とは真逆の方向に変態を投げ飛ばした。パルには、厳重注意をしてもらわなければな……

 

ほんと、昨日あんな事書くんじゃなかった……

 

 

 

 

 

………………………

 

………………

 

………

 

 

 

210:以下無名のダイバーがお送りします

まさかのパル君覚醒回……!?

 

 

211:以下無名のダイバーがお送りします

そんな、アニメじゃあるめぇし……え、マジ?

 

 

212:1

マジ。ちょーマジの話

 

 

213:安価ダイバー応援団長

なんというか……あるんだな、現実は小説より奇なりという言葉は

 

 

214:以下無名のダイバーがお送りします

いやいやいや、こんなん予想出来るわけないw 

 

 

215:1

ほんそれ。まさかこんな事になるとは思ってもみなかった

 

 

216:以下無名のダイバーがお送りします

完全にガンダムの主人公ですわ。操縦未経験者が戦争を終わりに導く英雄になるという

 

 

217:以下無名のダイバーがお送りします

ストーリー上のNPDがそうじゃなくて、ダイバーがそれをやるって……どういうことなのぉ?

 

 

218:以下無名のダイバーがお送りします

さぁ……?

 

 

219:以下無名のダイバーがお送りします

なぁ、ここまであいつのIDが見当たらねぇんだけど。パルの話題が上がってるっていうのに

 

 

220:以下無名のダイバーがお送りします

 

 

221:1

アイツって……あ

 

 

222:以下無名のダイバーがお送りします

しまった!

 

 

223:以下無名のダイバーがお送りします

変態が暴走する!

 

 

224:安価ダイバー応援団長

お前ら変なフラグを立てるな

 

 

225:以下無名のダイバーがお送りします

もう遅い気がする

 

 

226:以下無名のダイバーがお送りします

パルきゅん……しゅごいにょ……

 

 

227:以下無名のダイバーがお送りします

ヒェ……

 

 

228:以下無名のダイバーがお送りします

たった1コメでなんという破壊力……背筋が凍ったわ

 

 

229:1

変なコメ書くなよ。フリじゃねぇからな。頼むからな

 

 

230:以下無名のダイバーがお送りします

安心しろ、賢者モード入ってるから

 

 

231:以下無名のダイバーがお送りします

ダメじゃねぇか!

 

 

232:以下無名のダイバーがお送りします

安心できねぇ……

 

 

233:1

今日はもうこの辺で落ちるわ。何か書き込むと爆弾に引火しかねないし

 

 

234:以下無名のダイバーがお送りします

お、おう。お疲れ~

 

 

235:以下無名のダイバーがお送りします

おつか~

 

 

236:以下無名のダイバーがお送りします

懸命な判断だよ……

 

 

………

 

………………

 

………

 

 

245:1

オイ変態!! もうこっちに関わってくんなよ!! いいな!!?

 

 

246:以下無名のダイバーがお送りします

なにがあったか一発で理解してしまった

 

 

247:以下無名のダイバーがお送りします

奇遇だな、俺もだ

 

 

248:以下無名のダイバーがお送りします

いやもうここにいる以上、変態と言えばアイツだし、最近の事を考えればすぐに答えに辿り着くという

 

 

249:以下無名のダイバーがお送りします

失礼な。変態などと、俺がそんな低俗なモノだというのか

 

 

250:以下無名のダイバーがお送りします

はい

 

 

251:以下無名のダイバーがお送りします

自覚してくれ

 

 

252:1

とにかく変態行為に走ってる時のお前は目障りだから、頼むから来ないでくれ

 

 

253:以下無名のダイバーがお送りします

むぅ、仕方ない。パルきゅんの姿はスクショに納めたから、しばらくはそれで我慢しよう

 

 

254:以下無名のダイバーがお送りします

コイツはもうホントに、もう……

 

 

255:安価ダイバー応援団長

そんな奴は置いておけ。さてイッチ、今日のストーリーミッションはどうだった

 

 

256:以下無名のダイバーがお送りします

団長……!

 

 

257:以下無名のダイバーがお送りします

ほんと、いつもありがとうございます

 

 

258:1

助かります……!

 

今日は例によって作戦概要説明回だったな。レジスタンスの本部に行って、その組織の次の作戦に協力してくれっていう感じの話

 

次のミッションは護衛系で、レジスタンス達が今いる拠点から新しい拠点に移動するから、それを守って欲しいってのが内容。敵の襲撃が予想されるので、先頭の準備をしておいてくれって感じ。まぁ割と楽そうだわ

 

中ボスフラグっぽいのが建ったけどな

 

 

259:以下無名のダイバーがお送りします

お、中ボスか

 

 

260:以下無名のダイバーがお送りします

やっと半分いったって感じか

 

 

261:以下無名のダイバーがお送りします

4ミッションで中ボスっていうと、全部で8ステージってとこか?

 

 

262:1

どうだろな。もしかしたら中ボスが二体いる可能性もあるかもしれんが……とにかく、なんか折り返し地点な所には差し掛かった感じかな

 

 

263:以下無名のダイバーがお送りします

中ボスかぁ。デスアーミー系しか出てないから、マスターガンダムとかか?

 

 

264:以下無名のダイバーがお送りします

それならラスボスはデビルガンダムか。でもそれだと完全にGガンばっかりになるし、なんかなぁ

 

 

265:以下無名のダイバーがお送りします

ここで変化球出してきてほしいよな……例えば、ドートレスとか

 

 

266:以下無名のダイバーがお送りします

それはそれで変化球すぎん?

 

 

267:以下無名のダイバーがお送りします

ウィンダム辺りとかどうよ?

 

 

268:以下無名のダイバーがお送りします

それもどうかと……

 

 

269:以下無名のダイバーがお送りします

んで、またリハするのか?

 

 

270:以下無名のダイバーがお送りします

まぁな。でも今回はちょっと変わり種で、対人戦でやる事になった。襲撃がどのタイミング、どのパターンで来るかわからないから、そういう奴の訓練の為にな

 

もうすでに相手も決まってて、明日やる予定

 

 

271:以下無名のダイバーがお送りします

へぇ。もうそこまで決まってるんだ。相手は?

 

 

272:以下無名のダイバーがお送りします

確かMU DISHだっけ、相手

 

 

273:1

そうそこ

 

 

274:以下無名のダイバーがお送りします

ちょっと待て。よく見るとイッチじゃねぇ

 

 

275:以下無名のダイバーがお送りします

あ、ほんまや

 

 

276:1

まて変態。なぜ貴様知っている

 

 

277:以下無名のダイバーがお送りします

何故って、パルきゅんとイッチらのやり取り見てたから

 

 

278:以下無名のダイバーがお送りします

キャプテンジオン早く来てぇ!!!

 

 

279:1

ストーカーもやめろ!

 

 

280:以下無名のダイバーがお送りします

こいつはもう、ほんとうにもう

 

 

281:以下無名のダイバーがお送りします

MU DISHって、リーダーがゴジョウっていうダイバーのとこか?

 

 

282:1

あぁ、そうだが。知ってるのか?

 

 

283:以下無名のダイバーがお送りします

前にカザミがいたフォースに傭兵で行ったことあるって言ったことあるだろ。その時のフォースが、そのMU DISHなんだよ

 

 

284:以下無名のダイバーがお送りします

へぇ。変なつながりだな

 

 

285:1

なんかすっごい迷惑かけてた感があったし、そうとう苦労したんだろうな

 

 

286:以下無名のダイバーがお送りします

まぁねぇ。ほんと色々迷惑ばかりでさ。でもそこのリーダーのゴジョウさん、そんなカザミでもすごく気にかけててさ

 

 

287:1

すげぇ良い人っていう印象しかないんだけど、あの人

 

 

288:以下無名のダイバーがお送りします

そうそう。本当にいい人過ぎてさぁ。だから色々と世話になっちゃってるのよね、あの人に

 

 

289:以下無名のダイバーがお送りします

それなんて聖人?

 

 

290:安価ダイバー応援団長

そんな奴がいるとは。世の中まだまだ捨てたもんじゃないな

 

 

291:1

まぁ、そんな人の元にいたにも関わらずあんなんって、ほんとどうしようもないんだけど、カザミ

 

 

292:以下無名のダイバーがお送りします

またなんかやらかしたのか?

 

 

293:1

いや、そういうわけじゃないんだけどさ。勝手にリーダー名乗ったり、撃墜スコア欲しさにレジスタンス相手に色々と失言したり、リハしようって声に対してもぶっつけ本番でいいだろとか言い出すし……妄言がすぎるというか、ほんと相変わらず、なんであそこまでカッコつけようとするんだろうか、と

 

まぁ、普段のアイツって感じ

 

 

294:以下無名のダイバーがお送りします

あのダイバールックからして、ヒーロー願望があるんだろう。子供かよ

 

 

295:以下無名のダイバーがお送りします

子供なんじゃねぇの? 中身は

 

 

296:以下無名のダイバーがお送りします

クソガキのお守りは大変だねぇ、イッチ

 

 

297:以下無名のダイバーがお送りします

言ってやるなよ、今一番の悩みの種だろうし

 

 

298:以下無名のダイバーがお送りします

にしても、MU DISHとチーム戦、ねぇ

 

 

299:以下無名のダイバーがお送りします

それがどうした?

 

 

300:以下無名のダイバーがお送りします

いや、なんでもないよ~

 

 

………

 

 

………………

 

 

………………………

 

 

後日。お馴染みのシーサイドベースのメインロビーに集まった俺たちは、MU DISHのメンバー達と合流した。見慣れない……いや、俺にとっては見慣れた奴と共に

 

 

「すまない。昨日は三人で挑むと言ってたんだが、急遽一人入ることになったんだが、よろしいかな?」

 

 

よれよれにくたびれたスーツに、キャベツみたいな形をした白髪まじりの黒髪の、なんとも冴えないサラリーマンみたいな現実味が強いダイバールックをしたダイバー……あのスレにいる、傭兵プレイを主に活動する奴が

 

 

「やぁ、初めまして。傭兵のアダチです。いきなりで申し訳ないんだけど、よろしくね。ビルドダイバーズ」

 




スレ民も続々介入開始。24話のアレの難易度が上がりそうです

スレ民紹介
アダチ
傭兵プレイでGBNを満喫しているダイバー。剽軽な性格と、そのダイバールックが相まって、いつも気怠い感じを醸し出しているが、バトルに対する熱意は高い。名前の由来は東京足立区に住んでいるから。因みに彼女持ち
使用機体は、赤い装甲に黒いフレームのアストレイに、バルバトスルプスレクスのワイヤーブレードを8本背中に取り付けたガンダムアストレイ・ブラックフレーム禍津


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Train defensive mission

「ちょっと失礼。おいお前、こっち来い」

「ちょ、なんだいいきなり?」

「「「?」」」

 

 

皆の前に突然現れた男を引っ張り、皆のいるところから少し離れた場所に行く。当然何事かと後ろの方では色々と囁かれているが、そんなこと気にしている余裕は無かった。なんでコイツが、ここにいるんだよと、それで頭がいっぱいだった

 

 

「なんのつもりだ、何を考えているんだお前は」

「いいじゃないかいイッチぃ。俺としては、今君とチーム組んでるやつらの実力が、どんなもんなのかが知りたかっただけなんだからさ。あの謎めいた少女といい、前回見事な覚醒を果たしたパル君といい、そしてよく知るカザミの現在といい、そして君が今注目しているヒロト君といい、さ」

 

 

見た目通りに飄々な態度で、まるで人を小馬鹿にしているような口調でそう言ってくる。その態度のとおり、フォースに所属することなく、かと言って固定のパーティを組んでいるわけでもなく、転々と様々なダイバーの元を練り歩くスタイルをしている

 

理由は単純に、色んなやつとガンプラバトルがしたいから。らしい。上級者から中堅クラス、果ては初心者に至るまで、ありとあらゆるダイバーと戦いたいために、傭兵という形でGBNを楽しんでいる奴なのだ

 

 

「5対3でやるとか、リハにしては味気ないだろうと思うし。それに、久しぶりにイッチとも戦いたいと思っていたからね。そういうわけで、お手柔らかに頼むよ?」

「~っ……」

 

 

少々納得のいかない事になったが、とにかく言い分としては正しいところもあるので、そこは飲み込むことにした

 

そして、再び皆のもとへと戻り、ミッションを開始することにした

 

 

 

 

 

 

クリエイトミッション、列車の護送

 

バトルエリアは夜で、見通しの良い電車道が走る荒野というフィールドにて行われる、今回のリハの為に作成したミッション。俺たちが護衛する列車を相手が撃破することでクリアという内容の、次のストーリーミッションの内容を想定したものである

 

無論、俺たちはディフェンス側、相手のMU DISHがオフェンス側に回っている

 

 

『よし、配置についたな』

『ミッション開始まで、あと一分。奇襲を仕掛けてくる可能性もある』

『要注意、ですね……』

 

 

それぞれが事前に打合せした通りの配置についた。どの位置からでも攻撃を防げるように互いの距離をつかず離れずの位置に立ち、お互いがどこからでもフォローをしあえるようにした布陣だ。これなら、戦略的に慣れていないパルでも問題なく動けるだろうし、こちらとしても状況に応じて動くことができる

 

それに、全員が適度な緊張感を持っている。いい感じの戦いになりそうだ

 

 

『そこまで身構える必要ねぇだろ。リハーサルなんだし、気楽に行こうぜ』

 

 

と思ったら、相変わらずこの男は軽薄な事を言いだした。それで前回のリハで即落ち2コマな事をやらかしたのは誰だよ。と言いたくなるが、今それを言ってチーム内の空気を崩したくないので、軽く返すぐらいの事を言い返す

 

 

『そう言って、この前落ちかけたのは誰だっつの』

『あぁ?』

 

 

そう言って返してくるカザミに対し、俺は普通になに食わぬ顔で聞き流していると、ミッション開始の合図が出た

 

それと同時に、ミサイルが飛んでくるアラート音が発令した

 

 

『『『『『!』』』』』

 

 

いきなり先手必勝と言わんばかりの弾幕が、こちら側に向かって流れ込んできた。まさか、短期決戦でも仕掛けるのかと思い、ミサイルを打ち落とそうと迎撃するために空へ飛んだ

 

 

 

今回、俺が乗ってきた機体は、ガンダムアインに次ぐもう一つのガチ機にして改造機、レギンレイズ・ルナリアンゼにしてきた。レギンレイズ・ジュリアの改造機にして、スラスターとバーニアを増設し、背中にはガンダムキマリスの大型ブースターを追加し、空中戦、高速飛行、機動力と運動性向上を主眼に置かれた機体だ

 

が、それとは真逆に重武装とも言えるほどの武装を積載している。肩のシールドの裏側には持ち手が外されたユニコーンのビームマグナムが装備されていて、外れてファンネルのような遠隔操作できる無線式のビットになることができる。増設された背中のブースターの先端には、ガトリングガンが付いている。腕はレギンレイズの手首に代わり、固定装備であったジュリアンソードが外されているが、代わりにキマリスのランスと、バルバトスのメイスを装備。延長された脚部には増設されたバーニアの他に、ビームサーベルを形成させる機構が施されていて、オマケに大型のスラスターにはシナンジュのビームジャベリンを展開できる装備が施されている。ビーム兵器を用いた鉄血らしからぬ機体であり、高速型にして重武装というなんともチグハグな機体になっている

 

そのあまりにも重量過多な装備を持っては高速戦闘なんて出来ない。その点をカバーするために、MSサイズのミノフスキー・クラフトを装備して浮力を得ることで、コンセプトを殺すことなく戦闘を可能としている。が、その重武装の全てを扱いきれるわけもなく、基本はランスとメイスで殴り、ガトリングで牽制。遠距離に敵がいる場合はビームマグナムを用いて狙撃ぐらいしかマトモにうまく使えない

 

ここまで矛盾だらけの機体なのは、これは唯一スレでベースと機体コンセプト、そして武装の類を安価で決めて作った機体だからだ。あの時集まっていた十数人の好き勝手なコメントの中から引き当てられた機体であり、あのスレがあったからこそ生まれた機体である

 

あの時の好き勝手感を恐れて、それ以降機体を作る事は無かった。作った時になんで安価しなかった!? と言われたくなかったので……

 

 

 

『オラァァァッ!!』

 

 

そして、なだれ込んでくるミサイルを手にしたランスとメイスを振り回し、その全てを潰していく。何発か取りこぼしてしまったが、列車に直撃するものは全て落としきった。が

 

撃破、そして着弾して爆発していったミサイルの中から、濃い煙が巻き上がった

 

 

『ッ!?』

『スモッグか……!』

 

 

ミサイルに仕込まれていたのか、辺り一帯に充満してしまった煙によって、自分たちの視界を封じられた。すぐ近くの味方すら見えにくくなった。これでは、フォローに回ることが困難だ。更に

 

 

『パ…、持…場を…れる…』

 

 

通信障害。ミノフスキー粒子すらも仕込まれていたのか、味方との通信が遮断されてしまった。それにレーダーが機能停止で死んでいる。どうやら、ジャミングすら発生している

 

一応、対ジャミング、対通信障害用の備えはしてあったが、それを上回るレベルのモノが使われている。となると、相手側にも影響があるはずのものだが……レドーム付きの索敵、サポート用の機体を使ってるってことか? なかなかの準備してきているし、戦法がガチ過ぎる……!

 

 

『…ッ! こ…ぉ!』

 

 

パルの配置から衝突音と火炎弾が放つ光が見えた。どうやら襲撃を受けたようで、それに応戦をしたようだ。接近せずに遠距離攻撃で対応したあたり、おそらく持ち場からは動いていない。作戦通りの指示に従っているので、一安心した

 

そして、メイの位置から銃撃の音が聞こえてくる。そこで確信する。確実に相手はこちらの位置を把握している。予想通り、索敵機が存在している……

 

 

『ッ!』

 

 

死角から、ワイヤーで繋がれた実体剣が飛んできた。見慣れたその形状から、相手が誰なのか理解する。アダチだ

 

 

『今の奴を躱すなんて、さっすがだねぇ』

 

 

通信、いや直接声を機体の外に流してこちらに投げつける。相変わらずひょうひょうとした口調なため、やる気あるのかと思うが、これがこいつの常なので苛立つことはない

 

そうしている間にも、周りで射撃音が鳴り響いているし、ヒロトが仕掛けたトラップが作動している……おそらくあいつの事だろう。何かしらの対応をしているはず。それに、あいつなら今の状況を推察し、切り返しの一手を打ち込むはず……なら、それまでここを動かず死守していれば

 

 

『…せ! 持…場…離れ…な!』

『後…は…せた!』

 

『は?』

 

 

ヒロトとカザミの声が聞き取りにくい感じで聞こえてきたが、ある程度予想できる内容が飛んでいた

 

よせ! 持ち場を離れるな!

後ろは任せた!

 

カザミの奴が、また突撃をしたようだ……アイツ、こんな中で突撃とか、罠に決まってるだろう! すぐにヒロトの元へと向かい、カザミが消えた穴を埋めないと

 

 

『いやぁ、足手纏いがいるってのは、なかなか辛いもんだねぇ』

『ッ!?』

 

 

今度は、通信回線でアダチのやつの声が聞こえてきた。直後に手足にワイヤーが絡まり始め、身動きがとれなくなった

 

 

『アイツ、なんも変わってないんだなぁ。そんなやつと一緒にいなきゃならないなんて、イッチも大変だ』

『アダチ……ッ!』

 

 

そのまま背後に現れたこいつは、通信障害が起きているのをいいことに、自分の事をレス内での呼び名で呼んでくる。なんとか動こうと思い、全身のフレームの出力を上げて振りほどこうとしたら、更に四本、全身を縛り付けるようにワイヤーが取り付いてくる。もう、こうなってしまっては何もすることはできない

 

こいつの奇襲に嵌ってしまった。こうなってはもう何もできなくなってしまう。このチームと相性抜群じゃねぇか? お前

 

そうこうしているうちに、カザミの奴が撃墜されていた。案の定、敵の策にハマって落ちたようだ

 

 

『このまま空いた穴を突いて、列車を撃破して、こっちの勝利は決まったも同然かな。一人ちょっとヤバい奴がいたけど、まぁ結果オーライかな。ほんと、敵に役立たずがいるだけで、こんなに楽になるなんてねぇ』

 

 

確かに、あいつは本当に役立たずだ。いまのところ、戦闘でアイツがやった功績というのがほとんどない。いい動きをした時はあったにはあったが、それは味方の危機に対するフォローで、それが勝利に導く一手になり得たことはない。今だに、アイツがストーリーミッション中に撃破していった敵の数はゼロ。ほとんどがヒロトが取り、次にメイ、そして俺と並び、パルも少なからず撃破している。なのに、あいつは一切落とすことをしていない……

 

それなのに、全くあいつは反省している風には見えなくて……本当に、もう……!

 

 

『んじゃ、撃墜スコアの為に……ばいばーい、リアン』

 

そのまま、手にしている直刀のような形状の薙刀を構えて、それをルナリアンゼの動力部に突き刺す

 

俺も撃破されて、このミッションは完敗に終わった

 

 

 

 

 

「完敗だったな」

「す、すみません……」

 

ミッションが終わったあと、リザルトフェイズに入ってメインロビーに参加者が全員が集まった。ヒロトとメイはミッションの結果を咀嚼するかのように何かを考えているあたり、おそらく明日の事について考えているのだろう。パルは自分が至らなかったのではと思い悩み、少し落ち込んでいるようである。いや、パルはなんにも悪くはない。むしろきちんと持ち場を理解して行動していたので、良かったと言える。問題は、本当にこいつで……

 

 

「わ、わりぃ。飛び出しちまった……」

 

 

少しは思う所があるのだろうが、それでも大戦犯となったはずなのにあまりにも反省している様子が無かった

 

 

「ヒロト君は分かってたんだな。俺たちがどう攻めるかを予測して、サポートメカを用意した」

 

 

と、向こうのリーダーであるゴジョウがヒロトの事を言って来た。確かに、ヒロトは基本二つのアーマーを交互に使って戦う。セカンドの時のアースとマーズ、サードの時のアースとヴィーナスと。片方を使う場合、もう片方はフライトユニットとして扱い、それもサポートメカとして扱うこともできる。今回も、上空からヴィーナスアーマーのカメラで敵の位置をある程度把握しつつ、それを狙ってきた相手を射角から特定するなどをしていたようだった

 

見通しの良いフィールド故に、通信障害に視界を塞ぐなどの手を使ってくるだろうと予測していた。やはりその点はやり慣れているのか、見事な戦術眼だと思う。が、一言いってくれても良かったんじゃないかな

 

だが、だからこそ、それに対し気に食わないと思ったからなのか

 

 

「だったらお前! なんで先に言わねぇんだよ!!」

 

 

カザミの奴が、ヒロトに食ってかかった。確かに言って欲しかった気もするが、そこは考えれば思いつく部分だ。だから俺は深く言うことはしない。が、それをカザミのやつが言うのは非常に気に食わない……

 

 

「それを言うなら、お前もだろうが」

「あぁ!?」

「? イッチ?」

 

 

つい、抑えが効かなくなって、声を出してしまった

 

 

「お前はこのチームにいたことがあるんだろう。だったら、なんで相手の事を教えてくれなかった? どれくらい前に所属していたのかは知らないけど、少なくとも相手の機体の特徴、戦術の方向性、それぐらいは教えてくれても良かったんじゃないのか?」

「ッ……」

「リ、リアンさん……」

「それに、そんな見知った奴らとの戦いで、一番先に落とされたのはお前って、どんだけ迷惑をかければ気が済むんだよ!」

「ッ! んだとぉ!? てめぇこそ、今回は落とされたじゃねぇか! しかも毎度毎度、上から目線でモノを言いやがって!」

「落ちたことに関しては反省するべき点だから聞き流すけど、上から目線になるのは当然だろう! 今まで、お前が勝利に貢献するような動きを何もしてこなかったからな! ストーリーミッション中でも、そのリハでも! ただ突撃して吹き飛ばされて終わり。撃墜数もゼロ! どう見ても足手纏いの役立たず! 下に見るのは当たり前だろう!」

 

 

言葉が、次々と溢れてしまう。今の今まで抑えていた不満が、ここに来て一気に爆発してしまった……

 

どうせこのストーリーミッション中だけの関係、クリアするか、失敗するかのどちらかになって解散して、それで終わりの寄せ集め。メンバーに対する不満は、スレで愚痴って吐き出せばいいし、個人の事情なんて知ったことではない。だから、不用意に相手の事に首を突っ込まないようにしていた。誰かに深入りしてしまうと、それが自分にも返ってくるし、“隠し通したいことに、触れられてしまう”かもしれないから

 

 

「カッコつけたいんだったら、それなりの実力を持ってからやれ! 今のお前は、何をやってもカッコ悪いだけなんだよッ!!」

「ッ!! このヤロウッ!!!」

 

 

 

「よせカザミ!!」

「そこまでだよリアン」

 

 

 

掴みかかり、今にも殴りかかってきそうなカザミを、ゴジョウが拳を止めることで抑え、アダチも俺の肩を掴み、後ろへ引っ張るようにしてカザミから引き剥がした

 

 

「ごめんねぇ、俺たちは先に帰るから。ゴジョウさん、また今度、ご挨拶に伺いますんで」

「あぁ……すまない」

「いいってことですよ。んじゃ、帰るよ。リアン」

 

 

待て! まだ話が終わっていない! と言う前に、俺はアダチに連れられて、ロビーを後にした。ゴジョウに抑えられたカザミと、慌てふためきながらどうすればいいか戸惑っているパルと他MU DISHのメンバー、冷静に状況を見ていたメイに、さっきのやりとりになんの感慨も抱く様子のないヒロトを残して……

 

 

 

あと、ついでに物陰でパルを凝視していた変態も一緒連れて行った

 

 

 

 

 

 

「なんのつもりだアダチ! どうして邪魔をした!?」

 

 

ロビーを出て、シーサイドベースを一望できる展望室に連れてこられた俺は、すぐにアダチに対して噛み付いた。S.R.T.erは、その様子をただ見ているだけで、俺に加勢することも、アダチのフォローをする事もなかった。いや、もうどこ吹く風といった感じだ

 

 

「つもりもなんにも、あんなに人がいっぱいいるところで、あんな怒鳴り声をするとか、迷惑になるだろう? それに、誰かが怒っているというのは、周りの他の人にとっても嫌なことなんだよ? ここはGBN。みんなが楽しさと喜び、幸せを味わうために集まる場所だ。そんなところに来て不愉快な思いはしたくない。だろう?」

「っ……そりゃぁ、そうだけどよ」

 

 

確かに、一理ある言葉だ。ここはゲームの中。ここに来る奴は、楽しいことをするために来ている奴らだ。ここに来てまで、不快な気持ちは味わいたくはないのは当然だ

 

 

「そうそう。誰かを怒鳴るなんてことはせずに、嫌なことには目を瞑り、声に出さず、楽しいことだけを感じていればいいんだ。これはゲームなんだからさ。なぁ、変態」

「変態と言うなキャベツ頭。確かに、お前の言い分は分かる。それに愚痴なら、いつもどおりスレに書き込めばいいだけの話だ。そういうのも含めて、俺たちは楽しみにしているのだからな」

 

 

それは、そうかもしれないが……何故かは分からないけど、あの場はついそういうことを言いたくなってしまったんだ。だから、その……

 

 

「まぁ、どうでもいいさ。たまにはそういうこともあるってことで。俺たちだって、そんなメンドくさいことには関わりたくないからね」

「だね。俺たちはただ、嫌なことを忘れて、楽しいことに集中したいだけだからね。こういう趣味が関わることには、特に」

「っ」

「あのスレだってそう。匿名っていう事で勝手に入って、好き勝手にして、居づらくなったり、気に入らないやつがいたらそこから離れる。そして次に面白そうな場所へ行く。居心地がよかったら、そこに定住するだけで、つまらなくなったら次に行くだけ……深入りせず、自分を隠し通して好き勝手できる場所。多少のネチケットは必要だけどさ」

 

 

その通りだ。自分があのスレにいる理由は、ただ“浅い付き合い程度で、このGBNを遊ぶために安価をしている”のだ。匿名だから誰かはわからない。そしてわからないからこそ、誰も彼も自分が本当に隠したいことを隠すことが容易だ。だから、あのスレに自分は何年も居続けているのだ

 

だが今となってはスレのメンツの殆どと、GBNに於いては顔見知りで、かれこれ何度もチームを組んでやっている。けど、ただ一緒にやるだけで、フォースを組んだり、リアルで会おうということはしていない。そこら辺、もうあのスレ民には周知のことなので、今更誰も言う事はない。自分は、浅い付き合いで遊びたいだけの人間であると

 

だからこそ、さっき自分がしたことに対して、考えてしまう。どうしてあんな、誰かの抱えている問題に踏み込もうとする行為に走ったのか……まさか、あいつらに対して、心が開きかけている、っていうのか……?

 

 

「さて、イッチの頭も冷えたことだし。今日はもうログアウトしますかね」

「俺も、パルきゅんの姿を何枚かスクショできたことだし、もう満足さ」

「じゃぁイッチ、今夜……は書き込むのは無理そうか。偶には代わりに書いてやるよ、今日は面白いバトルに参加させてくれたお礼にね。明日のミッション、頑張ってくれよぉ」

 

 

そう言って、二人はGBNからログアウトをした。今日の事は、スレで言ってくれるから、今日はもうログアウトしたらそのまま寝てしまおう。なんだか、スレにいく気にならないから……

 

 

「……なんで、あんなこと……」

 

 

つい心のままに叫んでしまったこと。らしくもない、今までしたこともなかったことをどうしてしてしまったのか

 

GBNの夜空を眺めながら、ずっとそれを、考えていた




カザミ回と並行して、リアンについてもそろそろ掘り下げ開始

水中戦の前辺りに、オリジナル展開するかも


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Resistance escort battle part1

今回は初の前後編として投稿。なんとか毎日投稿は継続したい。少なくとも、一部終了までは

一部修正しました




昨日のカザミとのやり取りで、非常にログインしづらい気持ちを抑えつつ、集合場所としている所に向かっていった

 

実際、ここまで来るのにすごく戸惑った。いったいどんな顔で会えばいいのか、どういう言葉をかければいいのか、と。ログアウトしてから、色々と悩みに悩んでいた。が、結局答えは出ることはなく、時間となったのでなし崩し的な感じでログインをした

 

 

「あ、リアンさん」

「来たか」

 

 

集合場所には、パルとメイ、そしてカザミの三人がすでに来ていた

 

 

「ッ……」

「う……」

 

 

俺とカザミ、その間に気まずい空気が流れる……こういうのが嫌だから、あんまり怒鳴ったりとか、空気が悪くなる事はしたくなかったのに

 

 

「フンッ!」「ケッ!」

 

 

互いに、嫌味のような態度をとることしか、出来なかった

 

 

 

 

 

その後、ヒロトが少し遅れて集合場所に到着し、ストーリーミッションの専用ディメンションに転送される。着いた時にフレディを不安にさせてしまったが、とりあえず問題はないと言い張ってレジスタンスの本部へと向かっていった。そこで再び作戦の概要を確認し、開始までの間が出来てしまった

 

正直なところ、早く作戦が始まってほしいところだったが、今はこちらの準備のための時間として用意してくれた部分のはずだ。そこら辺は理解できるが、今回はそれが煩わしく感じてしまう

 

作戦概要を聞いた直後に、ヒロトが外に出て機体に乗ってどこかに行ったが、おそらく周辺の警戒に出たんだろう。カザミの近くにいるのも気が重くなるので、俺も警戒に行くということにして、その場を離れることにした

 

 

 

 

 

作戦区域となる森の上空、今回持ってきたレギンレイズ・ルナリアンゼに乗って辺りを見渡していた。しかし今のところ、敵影はまったく見当たらなかった。どこかで隠れて近づくまで待ち伏せをしているのか、或いはミッション開始になるまではポップしないようになっているのか。とりあえず、現状の安全は確認できた

 

 

『おいどこに行ってんだヒロト! リアン! またどこかで油を売って』

『敵機が接近してないか単独で警戒中だ。異常はない』

「同じくだ。ヒロトとは別方向だが、今のとこ問題はない」

 

 

カザミのやつから、通信が飛んできた。どうやらやっぱり、ヒロトの方も警戒に行っていたようだ

 

 

『っ……ならいいけどよ、しっかり頼むぜ。お前らがちゃんとしてくれねぇと、恥書くのはリーダーの』

「はいはい、分かりました」

 

 

ったく、また調子のいいことを言っていたので、イヤミのように返して通信を切った。ヒロトの方も、似たようなタイミングで切っていたのが少し笑えたが……ほんとうに、あいつはどうしようもないやつだなって思ってしまう

 

ほんと、なんであんなに、良いカッコをしようとしているのか……

 

 

「ッ」

 

 

そんな、他人のことに深入りをしそうになる思考を振り払う。こんなのは、ただの寄せ集めなんだ。クリアして終わりの、そんなパーティ。そこに深入りなんて、したところで徒労に終わる……

 

なにより、より親密に、より近づいてしまったら、もう、俺は……

 

 

「はぁ……早く、終わってくれないかなぁ」

 

 

あと何ステージあるのか、終わりの見えないこの戦いに、辟易していた

 

 

 

 

 

そして、周囲の哨戒をひとまず切り上げ、本部のある所へと戻った。いまだに物資をトラックに運んでいる最中だったので、開始はまだ先になりそうだなと思い、とりあえずパルかフレディの所にでも行こうかとしたら

 

 

「そんなんじゃ、ミッションクリアの称号、手に入んねぇぞ」

「……」

「っ、なんだよ……」

「……なんでもない」

「グッ、ッゥ……チッ!」

 

 

ヒロトとカザミの二人が、何やら睨み合ってそのまま互いに別々の方向へと向かって行った。またカザミのやつが、なにかやらかしたのか……その二人を心配して、どちらに行くべきか戸惑うパルとフレディの二人の姿を見て、少し気分が安らいだ。見ていて、ほんと可愛らしい二人だなと思う。あの変態の気持ちが少しわか……いや、あいつの場合はこの感情とは別だと思うから、おそらく一生わからないだろう

 

 

「なにやってんだか……」

「何をしている」

 

 

ふと、俺に話しかける奴がいた。メイだ。だが、その手にはレジスタンスの物資が入った木箱を二つ持ち上げて運んでいた……まぁ、アバターでなら、これぐらいの事はできるよな。やろうと思えば、巨大な岩ですら持ち上げられるみたいだし。それよりも……

 

 

「お前のほうこそ、何してんだよ」

「何をって、物資運搬の手伝いだ。待っている間、手が空いていたのでな。なら手伝うのが普通ではないのか?」

「いや、まぁ、普通はそうだろうけどよ……」

 

 

ゲームの中で、ストーリー上起きている背景のことに関わるのは、ちょっと変じゃないかなぁ……

 

そういえば、メイとこうして面と向かって会話をしたことはあまりなかったな。まぁ、あまり会話をしたいとは思わないやつだから、他の三人以上に距離を置いていたところはある。なんか、こちらを見透かすような、相手の芯の部分を探ろうとするような、そんな目をしているやつだから……

 

正直、苦手なタイプであった。ミッションの作戦会議の時以外は会話したくない手合いなので、できる限りこういう状況にならないようにしていた

 

 

「気になるのか」

「っ、何を?」

「カザミのことだ。昨日、アイツに対して怒鳴っていたではないか」

 

 

嫌なことを、聞いてきた。個人的にはあまり触れて欲しくない内容なので、早めに話題を切り上げて、コイツから離れようとする。が、多分そう簡単に離してはくれないだろうな……

 

 

「別に、ただ思っていただけのことを言ったまでだよ。気にしているって言うほどでもないし、気にしたところで無駄だしさ」

「そうか。だが、お前の言葉でカザミも怒鳴り返した。あいつにとって、触れて欲しくない部分に触れたのだろう。特に、カッコ悪いという言葉にな」

「……なにが言いたいんだよ」

「カザミが求めているモノ、だ」

「は?」

 

 

カザミが、求めているモノ……? なんだそれ? カッコ悪いってことに激昂したってことなら、アイツが求めているモノって……

 

 

「あいつは、カッコつけたいってことなのか」

「だろうな。カッコつけるというのは、自分自身が思い描く理想の姿となることなのだろう」

 

 

そこはどうなん……と思うが、まぁそういう解釈もできるかもしれない。けどどうなんだそこは。なんか、妙にずれた認識をしているよな、コイツ

 

だからなのか、メイがいう言葉に、俺は度肝を抜かされることになる

 

 

「だから、今のアイツに対し、求めているモノとは真逆なモノになっていることを指摘されて、腹を立てているのだろう。おそらく、自分自身に対して」

「え?」

「アイツは、どこかもがいている様に見えているからな。自分が求めているものに対して、こうありたいと思っているのに、現実ではそうではないから。どうすればいいのか、と……私は、そう感じている」

 

 

腹を立てている。自分自身に対して……カッコつけたいのに、どこを見てもカッコ悪い自分に対して、もがいている……

 

あいつもあいつで、悩みがあるってことなのか……

 

 

「……って、なんでそんなことを俺に言うんだよ」

「言っておいたほうがいいと思ったからだ、気にしているようだったし。それに、嫌な空気は好まないのだろう。だったら、早く仲直りというものをしろ」

「ぐっ……」

 

 

余計なお世話だっつの。ってか、仲直りしろって……子供じゃあるまいし。いやまぁ、リアルの年齢的には、まだ未成年だから子供だって言われてもわからなくはないけどよ

 

 

「さて……もうすぐミッション開始だ。準備を急ごう」

「……リョーカイ」

 

 

本当に、こいつとはあまり会話したくない。まるで心を見透かすような……思考を読んでいるかのように話すから、本当に苦手だ。もしかしたら、俺のことも、もう見抜いているか……?

 

 

「つかなんで、そんな人の考えていることが分かるんだよ。エスパーか」

「ガンプラが、そう言っているからだ」

「は……はい?」

 

 

更に不思議ちゃんという属性まで付与された。もう、何なんだよコイツは……!




前回のやり取りの後のことを書こうとしたら、色々と詰まりかけてしまった……ちょっと、難産だった


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Resistance escort battle part2

機体説明にルナリアンゼを追加しましたので、そちらもよろしくお願いします。


ミッション開始……と思われた時間帯より少し前。その出現は、唐突だった

 

 

「敵襲だぁッ!!」

「出発だ! 早く出せ!」

 

 

物資の搬入が最後に差し掛かったあたり、その段階でヒトツメ達の襲撃が始まったのだ。あまりにもいきなり過ぎて、こちらとしては完全に意表をつかれてしまった形での奇襲であり、初動が大いに遅れてしまう事態に陥った

 

 

『パル!』

『は、はい!』

 

『俺達が後衛に回るしかない』

『っ、分かってる!』

 

 

そのせいで、当初予定していたポジションが狂ってしまった。元々前衛にはヒロトとカザミの二人が行って、先行する部隊の前方に展開する敵を殲滅し、パルとメイが後衛で本隊の護衛、殿を務める予定だったが、見事に真逆の状況へと至ってしまった

 

 

『クソ、とにかく俺は予定通りに行く! 後ろは頼むぞ!』

『分かった』

 

 

そして俺はというと、移動する部隊の中央の上空を飛行し、迫り来る攻撃や流れ弾といったモノを切り払うのが主、要するに中衛という立場だ。状況次第では前や後ろに移動して逐次対応していく、そのために高機動型の機体でやって来たのだ。故ににそのまま上空に飛び出し、向かってくるミサイルとビームの迎撃をしていく

 

 

『ッ……よし、そこまで威力はない。迎撃は容易、ならこのまま……ん?』

 

 

移動する車の最後尾、その最後の車が、予定していたはずの道から外れてしまった。乗っているのは、レジスタンスのトップ陣の一人であるムランであり、そんな人が道を間違えていた

 

 

『ムランのやつ、偉そうなこと言って、道間違えやがったか!?』

『どうする?』

『ほっとけ! あんな奴、俺の知ったこっちゃねぇよ!』

 

 

いや、逆にレジスタンスのトップである奴がそんなことをするか? しかもワザとルートを変えたような気がするし。もしかして、何かあるのか? そう思ってそっちの方へと行こうかと思い、後ろのヒロトに伝えようとするが……

 

 

『行け、ヒロト』

『え?』

 

 

なんとカザミの方から、ヒロトに行けという言葉が出てきた。カザミにとって、気に食わない相手ではあったけど、移動するレジスタンス全員の命を守るのが今回のミッションだ。だから、その選択は間違ってはいないが……

 

カザミが一人で後衛を勤められるのか? 俺のルナリアンゼは空中戦闘を主軸としている為に、地上戦の備えが全くない。出来ない事はないが、かなり動きが制限される。だからこそ、ムランの方へは俺が行ったほうがいいと思ったが……まぁ、もしあっちの方でも敵がいれば、ムランを守りながら戦えるかと言われれば、正直厳しい。確かにヒロトに行ってもらったほうが安心で確実だ

 

でも……大丈夫なのか? カザミだけを残して……ヒロトも、それに対し少し躊躇っているし、もうこうなりゃぁ俺が

 

 

『俺一人残して行けないってか……お前が俺のことを信用してないのは知ってるよ……』

『っ……』

『だが今はゴチャゴチャ言ってる暇はねぇ!! とにかくここは俺に任せろ! 本隊は俺が絶対に守ってやるッ!!!』

『『!?』』

 

 

アイツ……マジでやる気か? ヤケになって、無謀なことをやろうとしてるんじゃ

 

 

 

 

《アイツは、どこかもがいている様に見えているからな。自分が求めているものに対して、こうありたいと思っているのに、現実ではそうではないから。どうすればいいのか、と……》

 

 

 

 

っ……もがいている、か……ったく、これだから……

 

 

『リーダーの俺が命令する! あっちはお前に任せた!!』

 

 

そう言って、カザミは敵に向かって行った。いつもの突撃かと思ったが、よく見れば相手の突撃を食い止めたような動きだ。本当に、敵から味方を守るような動きで……それは、セカンドミッションでのパルのフォローに入った時の気概に、よく似ていて……

 

いや、それでも一人であの量の敵を相手取るのは無理無謀だ。やっぱり、ヒロトの代わりに俺が

 

 

『リアン』

『っ。なんだ』

『後ろはカザミに任せよう。リアンは作戦通り、迎撃と上空からの攻撃に警戒していてくれ』

『っ……良いのかよ』

『あぁ。今は、カザミに任せよう』

 

 

向かおうとする俺を止めるかのように、ヒロトはそれを伝え、ムランの元へと急行していく。どういうつもりなのか、全く意図は読めないけど、ヒロトがアイツに任せると言ったのだ。何を考えているのかはよくわからないけど、任せるというのなら、まぁ任せよう……

 

そして俺は、そのままヒロトの言うとおり、移動するレジスタンス達の上を取り、ミサイルを打ち落とし、前を先行するメイとパルの二人が塞ぎ漏らしたビームを高速で移動し防いでいく

 

 

『すまない!』

『あ、ありがとうございます!』

『大丈夫だ! 二人は敵の殲滅に集中してくれ!』

『はい!』『了解した』

 

 

……カザミ……やられるんじゃねぇぞ……

 

後ろに残したカザミのことを心配しつつ、迎撃を続けていく。今のところ、いつもいるデスアーミー型のみだが、それ以外は特に来ていない。前回いた飛行型は向かってきている様子もなく、このまま二人が撃ち漏らしたモノをフォローし、中継地点まで移動しきれば

 

 

『ッ!!?』

 

 

突如、側面より高出力のビームが飛んできた

 

 

『ファンネル!!』

 

 

即座に両肩のスラスターを切り離し、シールドファンネルとして展開。レジスタンスへと向けられていたその光線を、寸でのところで防ぐことが出来た

 

だが、今の攻撃は相当火力の高いモノだった。そのシールドの表面が少し融解しかかっているのが、その威力の高さを物語っている。いくらナノラミネート装甲を採用していないからといって、最低限のビームコーティングはしてあるはずなのに、これである

 

 

『ちょっと、またゲームバランス崩壊してない?……ッ!』

 

 

あまりのパワーに震えている中、その側面から新型と思われる敵機が飛び出してきた。そこから現れたのは……あろう事か、ドートレスのカスタム機だった

 

 

 

《ここで変化球出してきてほしいよな……例えば、ドートレスとか》

 

 

 

誰だあのレスした奴はぁ!? マジの変化球が飛んできたぞ!? なんでここでいきなりXの量産機を出してきた!? デスアーミーにデスビースト、そしてデスバーディときて、なんでドートレス!? 開発は一体何を考えているんだよ!! ってかリアルでフラグ回収とか、ありえるの!?

 

そういえば、前にもレスに言われたことが本当のことになったことあったなぁ。なんか、予言というか、そういうのがあのスレにはあるのか? まさか、次は本当にウィンダムでも出るんじゃ……

 

……というか、こんな奴が出てきて、カザミは大丈夫なのか? 本当に、一人で後ろを任せたままでいいのか……

 

 

『ッ!』

 

 

などと考えている途中でも、敵の攻撃は止むことはない。ドートレスのカスタム機が持つ巨大なビーム砲の砲身が四つに枝分かれになるよう展開したかと思えば、そこからマシンガンの如くビームが飛んできた

 

流石に低出力だからなのか、威力はそこまではない。だが、低出力であろうとも連射可能というのなら、その驚異は変わらない。もし一発でもレジスタンス側に漏れれば悲惨な事になるのは明白だ。それだけは、なんとしても死守しなければ

 

 

『こんのぉ!!』

 

 

シールドファンネルを駆使して、一発でも流れ弾を通さないよう攻撃を防いでいく。そして低出力状態からまた砲身を重ね合わせて巨大なビーム砲にしているのが見えた。どうやら状況に合わせて使い分けることが可能なのだろう。だがそこに活路があると見た

 

 

『ッ! 隙ありぃ!』

 

 

チャージに時間がかかるはずだと踏んで、シールドを一枚肩に戻し、そのまま裏側に搭載してあるビームマグナムをドートレス目掛けて打ち込んだ。流石にシールドファンネル状態で使うには照準が合わせにくく、反動でファンネルが壊れてしまうので、一旦戻して固定させなくてはならなかったが、それでも発射速度はこちらの方が上だった。相手のチャージが終わる前に、砲身ごとドートレスを打ち抜き撃破した

 

 

『よし、流石はマグナム。相変わらず頭おかしい威力してるよ、ほんと』

 

 

宇宙世紀の中で威力と発射速度がおかしくないかと言われているほどの威力を持つものだ。強固なフレームと反動を緩和できる機構がなければ、ユニコーン以外じゃロクに使えない代物ではあるけど、無論そこは使えるように調整してある。だが弾数に限りがあるし、使うにはシールドをしまう必要があるため、扱いが非常に困難だ。できる限り、使わない方向で行きたい

 

 

『このままじゃやられちゃいますよ!』

『ッ!』

 

 

通信からパルとメイが苦戦しているような声をだし、状況を確認する。どうやら、前に先行する二人が二体のドートレスの相手をしているようだった。見るからに、防戦一方というような感じで、パルの小型の盾やメイの重厚な装甲で防ぎきれるには防ぎきれている状況だが、何度もあの高出力ビームを受けられるはずもない

 

だがちょうど、こちらとしては背後をとっている状況……

 

 

『パル! メイ!』

 

 

それをいいことに、高速で移動し敵の後ろを取ってメイスとランスを同時に相手の頭上から叩き潰すように振り下ろす。当然敵としては不意打ちを食らったのでロクに防ぐことはできず、無抵抗のまま撃破されていった

 

 

『リアンさん!』

『助かった』

『礼は後で。もうすぐ中継地点だ。そのまま行くぞ!』

『はい!』『分かった』

 

 

地図を確認すれば、もうすぐで中継地点にたどり着く。そうなれば、道中の敵は粗方掃討していったことになる。あとは、後ろから来る敵を倒して行き、後方にいる二人と合流すれば、ミッションクリアだ

 

そう思い、メンバーの様子をステータス画面で確認すると……カザミの耐久値がレッドゾーンに差し掛かっていた

 

 

『ッ、あんの馬鹿がッ!』

 

 

一気にスラスターを吹かし上空へ出ると、バーニアを噴射させてカザミの元へと向かう。このままでは、撃墜されて落とされる。妙な焦燥感に駆られるまま、最高速度で後ろへと向かう

 

そして、後ろにある広い場にいるカザミのガンプラの姿が見えた。その姿は、見るも無残で……肩の装甲は剥がれ落ち、バックパックのウィングマントは破壊され、剣と盾は砕け落ち、装甲も欠けている。もはや満身創痍といった姿だった

 

あと一撃、重いものを喰らえばダメージアウトとなる。そんな状況で、近づいているデスアーミーが、手にしているメイスを振り下ろし、止めを差さんとしていた

 

 

『ッ! カザミィッ!!!』

 

 

もう間に合わない。そう思いかけた……

 

 

 

 

[ガシッ!!]

 

 

 

 

『なッ!?』

 

 

今までピクリとも動いてなかったジャスティスナイトの腕が、デスアーミーのメイスを受け止めた

 

 

 

 

 

『グゥゥッ、ヌウゥゥッ……こんなところで終われねぇッ……終わってたまるかぁッ!……今度こそ、今度こそッ! 本当のヒーローにぃ、本当の俺にッ!! なるんだァァァァァッ!!!!!』

 

 

 

 

 

受け止めた攻撃を押しのけて、そのまま敵を突き飛ばした。あまりにも泥臭く、あまりにも見苦しく……そして、あまりにも力強く、ただ敵を突き飛ばした。でも、何よりもその姿が、今まで見せたアイツのどの姿よりも

 

 

『っ、カッコ、いいじゃん……』

 

 

そう、感じた

 

しかし、状況はただ敵を突き飛ばしただけで、何も変化はしていない。周囲を見ると、ドートレスが高出力モードの砲身をカザミに向けていたので、そのまま惚けているわけにはいかず、救援に向かう

 

だが、そのドートレス目掛けて何発ものビームが飛んでくる。ヒロトのアースリィのライフルだった

 

そのままカザミのところに着地しようとしていたので、自分もその近くへと向かう

 

 

『遅くなった』

『ヘッ。誰も待っちゃいねぇよ。いや、ちょっとはアテにしてたか』

『そうか……』

『ったく、無茶しやがって。アテにしてたなら、救援ぐらい言えっての』

『ヘッ、うるせぇよ。でもまぁ、来てくれてありがとよ……』

『お、おう……』

 

 

妙に柔らかくなっている態度に少し戸惑ったが……何か吹っ切ったような、何かを掴んだかのような、そんな感じを受けた。もしかしたら、こいつも何かしら掴んだのだろうか……?

 

 

『ったく。ほらよ』

『お?』

『使え。流石に丸腰だときついだろ』

『っ。おう、ありがとよ!』

 

 

手に持っているランスをカザミに渡す。何かしら武器は持っていないと心もとないし……いや、違うかな。こういうときは、こうするのが一番だろうと、そう思ったから

 

 

『行くぞ!』

『あぁ!』『おう!』

 

 

カザミの掛け声で、目の前に残った敵の掃討を始める。こうやって見ると、なんだかカザミがリーダーのように見えてきて……なんだか、少し燃えてくるような気分になった。色々と思うところはあるけど、やっぱこの中でリーダーに向いているのは、やっぱコイツなんだろうな。と

 

そう思いながらも、次々と敵の殲滅をしていく。といっても、撃破しているのは俺とヒロトの二人だけだが、カザミのやつも、奮闘をしている。撃破とまではいかなくても、それでも、手にした槍を振り回し、少なからずダメージを与えていっている

 

その戦い方も、今までのカッコつけようとしていたあの動きよりも、見るからにカッコ悪そうだなと思う動きであったが、懸命に、必死になっていると感じられるもので、正直こっちの方がいいと思う

 

 

『お待たせしました!』

 

 

進行方面に展開していた敵をあらかた掃討し、輸送部隊の第一陣が中継地点に到着したようで、前にいたパルとメイの二人がこちらに合流してきた。あとは、ここを凌げば、ミッションは終了となる。ならば、あともう少しで

 

 

『あぶねぇ!!』

 

 

不意に、カザミが叫び出して飛び出した。見ると、デスアーミーに気を取られているヒロトをドートレスが狙い打とうとしていた。それを防がんと、カザミの奴は特攻をかました

 

 

『ウオォォォリャァァァァァッ!!!!』

 

 

ランスを盾にして投げ捨て、突貫した勢いのまま、敵の腹部に拳をねじ込んだ。それによりドートレスは爆発。満身創痍のジャスティスナイトでは踏ん張ることもできず、そのまま倒れた

 

ヒロトの方は、何事もなく撃破をしていて……それが最後の一体だったのか、敵の反応が無くなった

 

これで、やっとこのミッションが、終わった……

 

 

『撃墜……俺が……へへっ、うおおおおっはっはっはーーーッ!!』

 

 

最後に、初の撃墜をした事で、喜びの雄叫びをあげるカザミを……少し、羨むような目で、俺は見ていた




カザミ回はホント熱いので好き。めっちゃ長くなってしまった……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

【安価でダイブ】43スレ目 その4

418:以下無名のダイバーがお送りします

イッチおっせぇなぁ

 

 

419:以下無名のダイバーがお送りします

今日のいつからミッション行ってんだろうな

 

 

420:以下無名のダイバーがお送りします

知らねぇよ、昨日イッチ来なかったんだから。そこらへん、誰かなんも聞いてねぇの?

 

 

421:以下無名のダイバーがお送りします

変態がストーカーしてんだろ? なんか知らねぇの?

 

 

422:以下無名のダイバーがお送りします

してたけど、集合場所を変えてたらしく、探し当てることができなかった。途中でイッチに会ったけど、問答無用で殴り飛ばされた

 

 

423:以下無名のダイバーがお送りします

それを知りたかったんだよ。それいつだ

 

 

424:以下無名のダイバーがお送りします

呪え! 変態がストーカーしているのが役に立った瞬間である!

 

 

425:以下無名のダイバーがお送りします

祝い事じゃねぇだろと思ったらよく見たら呪えだった

 

 

426:1

なんか知らんけどめっちゃレス進んでる……ちょっとお前ら、この画像見て欲しいんだけど、なんか見たことないか?

 

【画像】

 

 

427:以下無名のダイバーがお送りします

イッチだ!

 

 

428:以下無名のダイバーがお送りします

イッチだーーーーっ! って来てそうそう何これ?

 

 

429:以下無名のダイバーがお送りします

結局変態は役立たず

 

 

430:以下無名のダイバーがお送りします

ってかほんと何これ? ゼータ?

 

 

431:以下無名のダイバーがお送りします

いや、これmk3じゃね? 色がティターンズっぽいけど

 

 

432:以下無名のダイバーがお送りします

にしても、なんかスッゲー禍々しいんだけど、右腕とか、右腕とか、右腕とか

 

 

 

433:安価ダイバー応援団長

確かに、色とこの右腕は違うけど、どこかで見覚えが有るような。イッチ、コイツはなんだ?

 

 

434:1

実は、今日のストミの最後の最後で……

 

 

………

 

………………

 

………………………

 

 

 

 

 

敵の一掃が完了し、あとは此方もレジスタンス達と合流しようかと思ったその時、その襲来は突然だった

 

 

『『『『『!?』』』』』

 

 

上空から何かが接近してくる気配に、俺たち全員が感づいた。何かヤバイのが来る。それも今まで感じたこともないような、デスビーストでもドートレスとも違う、明らかにそれらとは次元が異なる、そんな驚異が来ると

 

それを感じ取った次の瞬間には、レジスタンスの基地の中心に極太の光の柱が穿たれる。その威力は、戦艦の主砲並の威力であると推測出来る程のモノで、俺のビームマグナムでも、そしてヒロトのヴィートルーのビッグビームバズーカをも上回るほどの……

 

そして、レジスタンスの基地だった遺跡は、跡形もなく爆破された

 

 

『ッ……あれは!?』

 

 

爆煙が立ち昇る中、上空より一機のMSが降りてくる。それは、紫色の装甲をしており、大型に改造された脚部、バックパックにはシールドバインダーと思われる装備が施されており、近接武器として備わっているのか大型のランスを持っている、ガンダムMk-3の改造機であった

 

だが、それら全てを差し置いて目に付くのは、そのあまりにも異形と言える右腕だった。まるでAGEのヴェイガン系か、オルフェンズの機体特有のむき出しのフレーム感を連想させるほどの見た目をしていて、宇宙世紀のMSらしからぬ装備をした機体

 

おそらく、あれがレジスタンスのリーダー、ゴルスが言っていた、“ゼルトザーム”という、ガンプラなのだろう

 

 

だが、そんな歪な姿をしている機体であるにも関わらず、それを見たとき……

 

 

『“テル、ティウム”……?』

 

 

ふと、その名前が、口から零れ出た。なんでそんな名前が出たのか、よくわからなかったけど、もしかしたら、俺はコイツを知っているかも知れない……

 

 

『ッ!!』

『ッ、ヒロト!?』

 

 

脅威と認識したからなのか、ヒロトが謎のMS、ゼルトザームと呼ばれるモノへと突撃する。が、異形の右腕が持つ大型ランスのひと振りによる圧で、吹き飛ばされた

 

 

『グゥゥゥッ!!?』

 

 

なんという出力なのだろうか。いくらバランス型のアースリィであろうとも、その出力は相当なものだ。それを腕のひと振りで……しかも風圧で吹き飛ばすとは

 

あまりにも、デタラメな威力だった。これが、中ボス……?

 

 

『テメェ! なにしやがる!!』

『お前は一体……!』

 

 

続くようにカザミとメイの二人も向かっていくが、二人共またひと振りで吹き飛ばされる。ほんと、頭おかしいんじゃねぇのかと思うぐらい、圧倒的な強さだった。

 

勝てない。絶対倒せない。そう思うしか無かった

 

 

『だったらこれで!』

『リミテッドチェンジ、アーストゥヴィーナス!』

 

 

接近は不可能と判断したのか、パルは二つの銃を連結させたGNメガフレアーデバイスを、ヒロトはヴィーナスアーマーからバックパックとコアスプレーガンのアタッチメントバレルのみを換装する形態へと変わった。今出せる最大火力を叩き込めればと考えたのだろうか

 

 

『こうなりゃぁッ!!』

『いっけぇぇぇっ!!!』

 

 

俺も、両肩のビームマグナムを前方に向け、二人に並んでその主砲を最大出力で撃つ。それに応じるように、相手はバックパックから伸びるバインダーに収納されているキャノン砲を展開する

 

そのままチャージタイム無しで放たれたそのビームは、あまりにも凄まじく、俺たち三人が撃った最大火力を遥かに上回るほどの威力を持って叩きつけられた

 

 

『嘘ッ!!?』

『ちぃッ……!』

 

 

飲み込まれる。そう思った時に、ヒロトはヴィーナスアーマーを突貫させ、アースアーマーも外し切って、相手のビームの中へと送り込んでいた。一体何を?

 

 

『逃げるぞ!!』

 

 

メイの一言で、ヒロトの意図を理解し、アーマーの無くなったコアガンダムと、損壊が激しいジャスティスナイトを回収して、その場を離脱した

 

アーマーの誘爆によってビームは力を失い、周囲に爆炎が舞う。その隙に逃げるしか出来なかった

 

あれは勝てない。今は絶対に不可能だと、そう確信した

 

 

 

 

 

………………………

 

………………

 

………

 

 

441:以下無名のダイバーがお送りします

ラスボス降臨かな?

 

 

442:以下無名のダイバーがお送りします

そいつが、この画像の奴と。でもなんでそんなの見せるんだ?

 

 

443:以下無名のダイバーがお送りします

いや言ってただろ、見覚えないかって。でも、俺は見覚えないんだよなぁ

 

 

444:以下無名のダイバーがお送りします

団長は、なんか知ってるっぽかったけど、分かります?

 

 

445:安価ダイバー応援団長

いや、まったくだ。でもなんか見覚えある機体なのは間違いない。だが何処で見たのかがよく思い出せないんだ

 

 

446:1

えっと……テルティウム、って言えば分かる?

 

 

447:以下無名のダイバーがお送りします

てるてぃうむ? 3?

 

 

448:以下無名のダイバーがお送りします

テルテル?

 

 

449:以下無名のダイバーがお送りします

坊主

 

 

450:以下無名のダイバーがお送りします

言うと思った

 

 

451:以下無名のダイバーがお送りします

変なコンボすな。でもその名前は、なんか聞いた事あるような

 

 

452:安価ダイバー応援団長

思いだした。確か半年以上前ぐらいに、安価で野良パーティ組んで高難易度掃討ミッションをやれ、っていうのがあっただろ。その時に組んでた奴だ

 

 

453:以下無名のダイバーがお送りします

? あったっけそんなの

 

 

454:以下無名のダイバーがお送りします

そういや、そんなのあったような。でも団長が言うんだから、間違いはないはず

 

 

456:以下無名のダイバーがお送りします

安定の安心と信頼の団長

 

 

457:以下無名のダイバーがお送りします

あぁ、俺も思い出してきた。確かあの時、イッチが人集めようと必死になってるのを笑ってたんだよな。んで、結局捕まったのがあの人だけで、二人でミッション行ったんだっけ

 

 

458:以下無名のダイバーがお送りします

そうだそうだ、アレか。そいつが異様に強すぎて、推奨人数10人だったはずのミッションをほぼ一人でクリアしたような感じでやってくれやがった奴だ。おかげでイッチの発狂が見れなかったヤツ

 

 

459:1

そうそう、その人。その人の機体に、コイツ似てない? って思ったんだけど

 

 

460:以下無名のダイバーがお送りします

えっと、その人の機体が、そのテルテル坊主なんだっけ?

 

 

461:以下無名のダイバーがお送りします

テルティウムな

 

 

462:以下無名のダイバーがお送りします

ラテン語で3

 

 

463:以下無名のダイバーがお送りします

中二病患者御用達言語その2

 

 

464:以下無名のダイバーがお送りします

その1は?

 

 

465:以下無名のダイバーがお送りします

ドイツ語だろ。あの謎のカッコよさは何なんだろうな

 

 

466:以下無名のダイバーがお送りします

どうでもいい話は切れ。その3の画像あったわ。比較対象として貼っとく。ついでに元と思われるmk3も貼っとく

 

【画像】

【画像】

 

 

467:以下無名のダイバーがお送りします

有能

 

 

468:以下無名のダイバーがお送りします

色とアンテナとバイザー、あと右腕以外、似てるな

 

 

469:以下無名のダイバーがお送りします

足の改造具合見るに、ほぼ同一機っぽい気が

 

 

470:以下無名のダイバーがお送りします

だな

 

 

471:安価ダイバー応援団長

んで、何が言いたいイッチ

 

 

472:1

いや、特に言いたいことはないんだけど、なんでコイツがストミにいるんだろうなって

 

 

473:以下無名のダイバーがお送りします

確かに

 

 

474:以下無名のダイバーがお送りします

NPDMS……にしては似すぎてるし。もしかしてご本人?

 

 

475:以下無名のダイバーがお送りします

なんか、通信はあったのか?

 

 

476:1

無し。無言。ただヒトツメと同じように襲ってきただけ。クソ強いということ以外は今までの敵と変わらずだわ

 

 

477:以下無名のダイバーがお送りします

なんだろう、すっげー不気味なんだけど

 

 

478:以下無名のダイバーがお送りします

ゼルトザーム(ドイツ語で奇妙)だけどな

 

 

479:以下無名のダイバーがお送りします

中二病……!

 

 

480:以下無名のダイバーがお送りします

なぁ、そういやこの人の活躍、最近聞かなくないか?

 

 

481:以下無名のダイバーがお送りします

え、この人そんな有名なの?

 

 

482:以下無名のダイバーがお送りします

上位の界隈では名が知れ渡ってたね。確か、無双のシドっていう異名が付いていたほどにはすごい。因みにSランクダイバー

 

 

483:以下無名のダイバーがお送りします

なんだその異名

 

 

484:以下無名のダイバーがお送りします

1000機のデスアーミー単騎狩り、500機のリーオーを素手で生還するなど、最難関ミッションとされていたモノを片っ端からソロでクリアしていくという離れ業をした変態

 

 

485:以下無名のダイバーがお送りします

頭おかしい

 

 

486:以下無名のダイバーがお送りします

変態だ(褒め言葉)

 

 

487:以下無名のダイバーがお送りします

ここの変態にも見習って欲しいくらいの変態さだ

 

 

488:以下無名のダイバーがお送りします

どういう意味だよ?

 

 

489:1

確かに、それぐらいのことはやってのけるぐらいには強かったよね……ってか、そんなすごい人なら、もうチャンプに挑むぐらいのことはしてそうだけど

 

 

490:以下無名のダイバーがお送りします

言ったろ。ここ最近この人の話を聞かないって。なんでか知らないけど、数ヶ月前からぱったり姿を見せてなくなったんだと

 

 

491:以下無名のダイバーがお送りします

噂によると、フレンド登録してた人が、いきなり登録が削除されてたみたいでさ。もしかしたら引退したんじゃねって話が濃厚らしいけど

 

 

492:以下無名のダイバーがお送りします

リアルの知人とかいないのか?

 

 

493:以下無名のダイバーがお送りします

その辺の話は聞かねぇなぁ。ほんと、謎に満ちている

 

 

494:安価ダイバー応援団長

で、そいつの機体が、このストミに現れた。と……もしや、運営に買われたか?

 

 

495:以下無名のダイバーがお送りします

 

 

496:以下無名のダイバーがお送りします

 

 

497:1

 

 

498:以下無名のダイバーがお送りします

強すぎたから運営直々にヘッドハンティング?

 

 

499:以下無名のダイバーがお送りします

導入予定のストミのボスとして最上位ダイバーが組み込まれる。と?

 

 

500:以下無名のダイバーがお送りします

えぇ~、そんなんあり得るのか?

 

 

501:以下無名のダイバーがお送りします

どうだろう? 普通なら考えられないけど

 

 

502:以下無名のダイバーがお送りします

でもなぁ、あのチャンプが、GBNの運営に関わっているのではっていう噂もあるし

 

 

503:1

下手すると、ありえる可能性がある?

 

 

504:以下無名のダイバーがお送りします

かもなぁ

 

 

505:以下無名のダイバーがお送りします

うわぁ、強いAI組めないからって、生身の人間使うのかよ

 

 

506:以下無名のダイバーがお送りします

しかもSランク。クリアさせるつもり皆無だろ

 

 

507:以下無名のダイバーがお送りします

ひでぇ難易度だ

 

 

508:1

マジでゲームバランス考えてねぇのかよ。前回といい今回といい、マジでバランス崩壊と言ってもおかしいくらい敵が強すぎたんだけど

 

 

509:以下無名のダイバーがお送りします

あ、そういや今回のミッションどうだった?

 

 

510:1

あぁ、最後のインパクトがでかくてあんまし覚えてねぇんだけど。とりあえず、変化球でドートレスが敵として出てきて、すごい威力のビーム撃ってきたことと、カザミが活躍した。なんかアイツ、ひと皮剥けたって感じ。以上

 

 

511:以下無名のダイバーがお送りします

短ッ!?

 

 

512:以下無名のダイバーがお送りします

え? カザミが、活躍……? 嘘でしょ?

 

 

513:1

嘘言ってどうするんだよ

 

 

513:以下無名のダイバーがお送りします

えぇ~……信じられねぇ……




掲示板形式って、めっちゃ書きやすい……!

次回、オリジナル展開開始


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Floating city Segri

一部おかしな点があったので修正しました


GBN。そのメインエリアとなるシーサイドベース、俺達あのストーリーミッションに参加しているメンバーが今集合場所としている展望デッキ。そこではすでに、カザミとパル、そして俺の三人が既に集まっていた

 

 

「~♪ ~♪」

 

 

上機嫌に鼻歌を鳴らしながら、ディスプレイを眺めるバカが一人いた。いや、まぁ嬉しいのは分かるけどさ。その……ハッキリ言って、ウザい

 

しかも微妙に鼻歌のクオリティが高くてイヤミを言うに言えないのが、余計に腹立たしい……なんでそんな綺麗に鼻歌できるんだよコイツは! 全身が震えだしたのを見て、隣にいるパルが声をかけてきた

 

 

「? どうしたんですか? リアンさん」

「ん、なんでもない。ただ行き場のない拳をどこにむければいいのか、と……」

 

 

ふと、目の端に何か見えた。よく見ると、なんだか見覚えがあるモノで……

 

 

「ちょっと失礼……なにしてやがるこの変質者ァァァァァッ!!!」

「アボォッ!!?」

 

 

ルナリアンゼのように、高速でそこから跳んでその場を離れる。そして目に入ってしまった変態をその勢いのまま蹴り飛ばして退場させた。拳の矛先になってくれたことには感謝するが、マジでストーカーは止めろ

 

また集合場所変えてもらおうかなぁと思ったが、そう何度も変えてもおそらくあいつは追ってくるんだろうなと思い、諦めることにした。あれは何度やっても立ち上がってくるゴキブリみたいなやつだから……

 

その後、ヒロトとメイが合流するまでの間、何とも言えない疲労感に苛まれながら、カザミの鼻歌を聞いていた

 

 

 

 

 

ストーリーミッションのディメンションへと移動し、今回の目的をフレディから聞いた。レジスタンスの重鎮たちが集合しているセグリという水上都市へと来て欲しいとの事だ。おそらく、いつもの作戦説明フェイズなのだろう。今回は急かされているようだが、正式導入の際には、こういう時に寄り道できるようなことがあっても良いかもと思う。こう、サブイベント的な奴だ。綺麗なディメンションなんだし、自由に探索できるようにはして欲しい。終わった時には、開発に意見を言えるだろうし、こういうのは言っておこう

 

そして、その水上都市セグリへと到着した。石造りの街並みで、まるで欧州のリゾート地のような街だった。人……というより、獣人というべきか、このストミ専用のNPDもあの村よりもかなりいるようだ。フレディが言うには、文化、文明の中心地とのことだが、確かにこの規模の街なら、そういう場所になるだろう

 

 

「「「うわぁ~……!」」」

「うわぁ、都会に来て浮かれている田舎人丸出しだぁ……」

 

 

だからなのか、よくわからないけど……なぜか村の子供たち。アシャ、トワナ、フルンの三人組に、フレディの姉のマイア、そしてレジスタンスに入りたがっているストラの5人も一緒に来ていた

 

 

「なんでこんな大人数なんだよ!?」

「空渡しの準備」

「「そらわたし?」」

「年に一度のお祭りよ。買い物するなら、セグリが一番だもん」

 

 

どうやら、お祭りの買い物の為に来たようだが……ってか、なんでこんな事態にお祭りなんて悠長なことを

 

って、よく考えればまぁありえない話ではないか。ゲームの中なんだし。でもここのNPDと話していると、まるで本当に生きている人と話しているような気分になるから、少し可笑しくなってしまう

 

ここまで没入するほど、このミッションにハマっているみたいだなぁ……

 

しかし、買い物かぁ……荷物持ちしなきゃならん流れか? これ?

 

 

 

 

 

 

 

マイヤ達の買い物に付き合っている途中、レジスタンスのジェド達が迎えに来てくれて、このセグリにおける本部へと向かった。そこで次の作戦の概要が説明された

 

次の作戦目標は、このセグリから海へ向かって奥の方。流氷が流れる海域のところにある遺跡、空へと伸びる創造主とやらの遺跡で、現地の人達は白銀の塔と呼んでいる所の調査をしたいとの事だ。ここには多くのヒトツメによって守護されているところで、おそらくヒトツメの重要拠点ではないのかという見解があるようだ。何人かが偵察に向かったところ、敵の襲撃を受けて、情報を得る前に撤退をせざるを得ない状況になってしまった……

 

すぐにでも、この塔の調査をしたいので、この道中にいる敵を何とかして欲しい。というのがミッションだ

 

それだけならば余裕ではないかと思ったが、問題はその敵の潜伏先で、それが今、大いに問題になっている事だ

 

 

「今度の敵は、水の中。か」

 

 

水中。つまり今度は水中戦をしろというのが、次のミッションとなった。その作戦説明を聞いた後、俺たちはセグリにある海の見えるテラスへと移動していた。とりあえず、ミッションの内容を聞いたので、それに対するミーティングというわけだ。が……

 

 

「あの、ヒロトさんは、水中戦ってやったことありますか?」

「あぁ、何度か」

「僕、初めてなんです」

「私もあまりない」

「俺も。っていうか、機体的に相性が最悪なんだけど」

「嫌いなんだよ、海」

 

 

なんということか、ここにいるメンバーの大半が水中戦が苦手、或いは未経験という事態になっていた

 

オルフェンズ本編でも、水中戦の描写はされていない。水中から出撃するのはあるにはあるが、そこで戦闘を行うことはなかった。だから、アインもルナも、それ用の仕様にはしていなかった。せめてアインが出来るぐらいかなぁというところだが、実際は非常に怪しい。ルナは完全に空中、宇宙空間特化だ。水に濡れたらバーニア周りがイカレる

 

もしかしたら、完全なお荷物になりかねなくないか、俺……?

 

ヒロトが言うには、感覚は宇宙空間に近しいが、水圧と抵抗は経験が必要らしい。その辺りをこうして詳しく言えるあたり、本当にどれだけ経験を積んでいるのだろうと思う。凄くないか? ヒロト

 

 

「あの! このクリエイトミッションで練習するというのはどうでしょう?」

 

 

そこにパルからの提案で、あるフォースが開催しているミッションに水中戦があるので、それで練習しようという事になった

 

 

ミッション名、“Grand Dive Challenge”、グラナダブルーというフォースがやっているクリエイトミッションで、水中戦をメインとしたミッションのようだ。概要には、「さぁ、君も一緒に始めよう! 海のロマンを!」という一文しか無かった。ちゃんと書けよそこはさぁ

 

とりあえず、練習にはちょうどいいにはちょうどいい。やる価値はあると思う

 

にしても、パルのブクマ欄、全てチーム戦ばっかりだった

 

 

「おわ、これはっ、いつか、チームでって思ってて……」

 

 

なるほど。そういうことね……あ、その照れ顔は可愛らしいなぁ……って、何変態と同じような思考に……! あの野郎の影響に汚染されてんのか? 今度会ったらとりあえずぶん殴ろう

 

 

「ま、ちょうどいいんじゃねぇ? 俺たちは今、チームとしてノってきてるからな! チームビルドダイバーズ! 初めての水中戦! バシっと決めてやろうぜ!!」

「「おぉー!!」」「へーい」「「……」」

「ノリわりぃなぁ……!」

 

 

この二人にノリを求めるのは、間違いだと思うぞ、カザミ……まぁ、俺も力なくだが、つい応えたけどさ

 

……つい、応えちまった……

 

 

 

 

夕方、空が少し赤みがかった頃……

 

 

「これで全部みたいですね」

「うん、ありがとう」

 

 

買い物を全て終えたらしく、ガンプラを待機させている場所にマイヤ達が集まっており、最後に買ったもののチェックをしたら帰るようだ。彼らを連れて帰ったら、今回のストミは終了。という事だろう

 

 

「先に帰っててくれ、すぐ戻る」

 

 

そう言うと、ヒロトはどこかへと向かっていった。いつもヒロトは戦闘のない時の帰る前に、どこかへと行っている。そういえば、一番最初に言ってたな、このディメンションに興味があるって。つまり、ディメンションの探索をしているのだろうか……でも、さっきまでこの街を回りまくっていたので、もう見ていないようなところはないはずだが……

 

気が付くと、メイもいなくなっている。一緒に行動、ってわけでもないようだが……

 

なぜだか、少し気になってしまった

 

 

「わり、俺もちょっと行くわ。帰るんだったら、お先にどーぞー」

「あ、リアンさん」

 

 

そのまま二人を置き去りにして、ヒロトの後をついて行くことにした

 

 

「……ん、あれ?」

 

 

行く前にマイヤが一言発していたのに、気づかないまま

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

 

ヒロトの後をついて行く。特に何をするわけでもなく、ただ街を歩いているだけだった。後ろを向いているので、アイツが今どんな表情をしているのか分からないが、それがなんだか、気になっている自分がいる

 

 

 

ヒロト。俺の中では、よくわからないヤツ……

 

あの卓越した戦闘能力、幅広い内容に応じた作戦を構築する戦術眼、そして状況を瞬時に分析してその対応をしていく応用力、更には地形の利用や罠の使い方、その作動タイミングに関する深い知識。どれをとっても、並みのダイバーでは到底会得することができない代物ばかり

 

使用する機体すら、ありとあらゆる状況に対応できるよう換装を主軸とした機体で、その幅は様々。バランス型のアースリィに、近接戦闘用のマーズフォー、重武装遠距離型のヴィートルー。知るだけでも三つで、水中戦も経験あるということなら、おそらく水中戦特化もあるのだろう。なら、あとは宇宙空間専用か、狙撃型があっても不思議ではない。そこまでの幅を作り上げるのも、また使いこなせるのも、相当の熟練度がなければ不可能だ

 

俺が知る中でも、ここまでオールラウンダーにこなせる奴はまずいない。誰かが何かに特化したというぐらいだろう。戦闘能力では団長が、戦術眼はアダチ、応用力は成田空港、地形の利用法やトラップの使い方は変態が詳しい。そして様々な状況に対応して機体特性を変えるというのは、むちゃ丸が得意としている

 

たった一人で、ここまでのことを人並み以上にこなせるやつは、本当にいない。だからこそ、気になるのだ。なんでこんな凄腕ダイバーが、ただディメンションを渡り歩きたいだけで、このストーリーミッションをやっているのか……それをずっと、ずっと考えている

 

 

 

そんなことを考えながら、ヒロトの後をついていくと、行き止まりのところに差し掛かったようだ。海を一望できる場所で、ちょうど夕日が見え初めていた。男女二人っきりになったら、いい感じの空気になるんじゃねぇのかと思うような場所だ

 

 

「……なにか探し物か、ヒロト」

 

 

そこには、先着がいた……メイだ

 

 

 

メイ。こいつもまた、あのパーティに於いて良くわからないヤツだ。戦い方はソロ専門……というより、今の今までチーム戦をやったことのなかったのだろう。一人で戦うことしかしてこなかった奴の動きだ。そのあたりは、俺も経験があるからよく分かる。使う機体も、ウォドムがベースの改造機。装備群から見て、元ネタに忠実にしているかと思えば、それらを付け替えられるよう頭部周りを改造し、どんな状況にも対応可能にしているというほどだ。空中飛行能力もあり、近接格闘も得意ときている。これまでの戦いを見て、それなりの実力者だというのが分かる

 

 

「賑やかだな。フレディ達の村もそうだが、彼らの営みには、思いが溢れている。喜びや楽しみ、怒りや、悲しみも……」

 

 

だが、なによりもその言動。あいつの言葉は、何を言っているのかよく分からないことが多い。この前も、ガンプラがそう言っているなどと、まるでガンプラの意思を感じ取っているかのような物言いをしている。今も何を言っているのか、さっぱりわからない。たかがゲームの背景に過ぎないものなのに、それに思いがあるとか……製作者の熱意を感じる、というわけでもなさそうだ

 

 

「だがヒロト。お前からは、それをあまり感じない」

 

 

そしてこれだ。まるで相手の中をのぞき見るような……相手のことを見透かし、その中に秘めている何かを探ろうとしている。そんな目をしている

 

だからこそ、そんなモノを見て、一体何を得ようというのか……それが、俺にはわか

 

 

「ミッションという言葉には、使命という意味もあるそうだ。私は、私のミッションを探している」

 

 

……私の、ミッション? なんだ、こいつはゲームをする上で、やる理由でも探しているっていうのか? そんなの、ただ遊んで、楽しいと思ったらそれでいいんじゃねぇのかよ

 

 

「手に入れたいもの、なりたい自分、目指すべき場所……ダイバー達にはそれぞれ自分のミッションがある。パルは飛べるようになったし、カザミはカッコ良さを手に入れた、らしい……」

 

 

 

「そしてリアン。あいつは、己にあるミッションを課している。だが、そのミッションに対し苦しんでいるようにも、感じている」

 

 

 

「ッ!?」

 

 

俺の……ミッション? なんだ、それは。そして、それに対し苦しんでいるだと? 一体何を……何を言って

 

 

 

 

 

《■■■■■、■■■■■■■■■■■■■■■!》

 

 

 

 

 

「ウッ!!?」

 

 

忘れろ。忘れるんだ。そんな記憶思い出したって、なんの意味もないんだ。ただ苦しいだけ。苦しいだけなんだ。今はゲームをしているんだ、楽しい楽しいGBNを。自分が好きなガンプラを使って遊ぶゲームをしているんだ

 

だから、そんな苦しいだけの記憶なんて、忘れてしまえ。忘れるんだ。今までどおりに隠して、何もかも隠し通すようにして、今はただ、この楽しい遊びの世界に、集中するんだ……

 

 

「…………ふう」

 

 

落ち着いた。頭の中には何かしらしこりが残っているが、とにかく今は落ち着くことができた。帰って寝れば、おそらく綺麗さっぱりなくなるだろう。あ、その前にスレに報告しねぇとな

 

 

「ヒロト、お前のミッションはなんだ。お前は何を探している?」

「……見つからないモノを探し続ける。それが、俺のミッションだ」

 

 

二人の会話が聞こえる。どうやら、ヒロトのやつは何かを探しているようだ。見つからないという奴を……いや、なんだよそれと思うが……多分、重要なところはぼかしているんだろう。言ったところで、分かるわけがない、と……

 

 

「見つかるといいな、君の探し物……帰ろう」

 

 

そういって、ヒロトは踵を返す。それに見つからないよう、俺も音を立てず、気配を殺しながら後ろへと振り返り、二人よりも一足先に、ガンプラの元へと走った

 

 

 

 

 

そして、戻ったところで、まだカザミとパルの二人が残っていて、更にフレディとマイヤ達もいた。なにやら、困っているような空気を感じたが……どうしたんだ?

 

 

「あ、リアンさん」

「どこ行ってたんだよ、街の中にいなかったし」

「あぁ、わりぃ。ってか、何があったんだ?」

 

 

横を向くと、何やら困った顔をしているマイヤに、ショックを受けて項垂れているフレディにアシャ、トワナ、フルンの三人組。ストラも、なんだか残念そうにしている。一体なにがあった?

 

 

「どうした」

「お、お前らもやっと戻ってきたか」

 

 

俺に遅れて、ヒロトとメイの二人もこっちに来た。二人も、何やら様子のおかしい面々に対し疑問に思う所があるのだろう。まぁ、当然といえば当然だ

 

 

「なにがあった」

「それがよぉ、買ったものチェックしてたら、量が足りないものがあったんだとよ」

「足りないもの?」

「ンガの実です」

 

 

続くように、フレディがその足りないものの名前を言って来た。ってか、なにそれ? ンガの実? しりとりで切れたら次に繋げることができそうな名前だなおい……

 

 

「お祭りの時にね、それを唐揚げにしてみんなに出すの。あと、お湯で煮込んで作るンガ汁っていうのにも使うんだけど……」

「姉さんのンガの実の唐揚げはすっごく美味しいんです! 空渡しの時には、いっぱい作ってみんなで食べるんです! でも……」

「ヒトツメの影響で、今年は不作みたいでね……一応、この街のお店は全部回ったんだけど、もうどこも品切れみたいで」

 

 

どうやら、その実が足りないようだ、例年に比べると。まぁ、無いよりかはマシなんだろうけど、やっぱり量はある方がいいのは分かる。戦いは数だよって、それジオンのお偉いさんも言った言葉だしね

 

 

「仕方ないわ……やっぱり、今年は少し量を減らす事にしようかしら」

「「「「えぇーーーッ!!!?」」」」

 

 

少なくしてやろうというマイヤの言葉、それに対し子供たちがごねているようだった。なるほど、確かにこれは困ったことになってるなぁ。こうなると、子供ってなかなか引いてくれないんだよな

 

 

「で、帰ろうにも帰れない、と」

「そういうこった」

「なんとか、出来ないでしょうか……?」

「「……」」

 

 

なんとかって言われても、そう簡単に答えが出るわけないだろ。ヒロトとメイも、口元に手を当てたり、目を閉じて思案したりと、代替案を考えているようだが……

 

 

「ってか、この街にないなら、別の街に行けばいいだけの話だろ?」

「「「「「「あ」」」」」」

 

 

あ。って……お前ら、それぐらいのことは考えろよ……あれか? この街の全ての店に無ければ、もうどこにも無いって考えてしまうタイプか? 

 

案の定、マイヤはそう思っていたようだ。そしてカザミは何やら自分もそう思ったところだぜと言いはる……それ、クソダサいぞ、お前

 

 

「他にも大きな街はあるのか?」

「えっと……村からそんなに離れていない場所だと……西の滝の街か、北の森の街があるかしら。でも、村から離れてないって言っても、かなりの距離があるし」

 

 

なるほど。そういうことなら納得だ。遠いから、普段は街から街への移動はしていないということか。だが距離があるのなら、ガンプラに乗って飛んでいけばすぐだ。このセグリにだって、村からそんな時間をかけて来たわけでは無いしな。少なくとも、十数分ぐらいだったはず

 

なら、その二つの街に行って帰っても、すぐに済む。なんなら、二手に分かれて行けばそれだけ短時間で終わる

 

 

「……そうね……」

「お願い! マイヤねえちゃん!」

「ほかの街に行こう!」

「行こう!」

 

 

子供たちのごねる声が一際大きくなる。一度は諦めろと言っていたものが、諦めなくても済むというのなら、気合というのも入るだろう。そんな子供たちの押しに負けたのか

 

 

「分かったわ。お願いだけど、もう少しだけ付き合ってくれる?」

「はい、勿論です」

「めんどくせぇけど、頼まれたんじゃぁやるしかねぇなぁ」

「「「わーい!」」」

 

 

マイヤがそれでいこうと決め、パルとカザミがやると言い出した。というわけで、まだまだお使いは続くようである

 

 

「んじゃ、行ってらっしゃい。俺達は先に遺跡で待ってるわ」

「おい、お前は何サボろうとしてんだよ。お前が言い出したことなんだから、お前は絶対に参加しろよ」

「ぐ……わかったよ……」

 

 

流石に逃げることは出来なかった。まぁ俺が言いだしたことなんだから、当然といえば当然か

 

 

「勿論お前らもな! リーダー命令だ、もう少し付き合ってやれ」

「あぁ、分かった」

 

 

ヒロトもそれに同意し、メイも頷くことで、メンバー全員が参加することになった。まぁ、ただのお使いの延長みたいなもんだし、ぱっと行ってぱっと帰ればいいだけだ

 

 

 

ふと、何かしら嫌な予感を振り払うように、楽観的な言葉を出し続けた……




という訳で、オリジナルとしてンガの実の調達イベントが入りました。ゲームに於いて、本筋とは関わらないサブイベントってありますしね(スッ惚け


スレ民紹介
むちゃ丸
スレにいる一人のダイバー。普通にプレイしてて、普通にフォースに入ってて、普通にスレでレスを書いている、至って普通のダイバー。特筆すべき点は、ガンプラ製作におけるスキルはスレ内随一という点のみ。ダイバールックは、青の地球連邦軍の軍服。使用するガンプラは、クロスシルエットSDガンダム規格に改造した鳳凰似帝(トリニティ)大将軍


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Ruined forest Filten

本作オリジナル要素を追加したので、タグにオリジナル要素ありを追加しました。あと、描写的にR15になるのでは? と思ったので、そちらも追加しました

誤字がありましたので修正しました。ご報告、ありがとうございます


『すっかり暗くなっちまったなぁ……フレディ、本当にこっちで大丈夫なんだろうな?』

『はい! 星の位置で方角はわかりますので、問題ありません!』

『ならいいけど』

『……』

 

 

あの後、セグリにて簡単にチーム分けをした俺たちは、それぞれ大きな街がある場所へと向かっていった。一方は、北の森の中にある街、フィルテン。一方は西の滝の近くにあるゼブルという街へと

 

因みに、どのようなチーム分けになったかというと、ゼブルにはカザミとパルとメイの三人。フィルテンには、ヒロトと俺の二人で向かうことになり、こっちのナビゲーターとしてフレディが一緒に着いてきた。なぜか今は、俺のアインの方に乗っている

 

そのチーム分けを決めたのは、古来より伝わる簡潔に、そして最速で分ける伝統技、グッとッパ(カザミはグーパーグーパー、ヒロトはグーとパーと呼んでいるらしい。地域の違いだろうな)で決めた。それに対し、パルとメイの二人は首をかしげてなにそれ? ということになってしまい、その説明に時間を取られてしまった。海外勢なのか、あの二人

 

マイヤとストラと三人組はあっち側にいった。マイヤはよくカザミと一緒にいるし、三人組はパルに非常に懐いているからか、そっちのガンプラに乗って行った。ストラは……まぁ、適当に決まって、メイが連れて行っている

 

 

『にしても、こう明かりが何も無いと、星がすげー見えるんだな』

『え? リアンさんの所は違うんですか?』

『いや、まぁ俺の近くはだいたい似たようなモンだけどよ。俺たちが住んでる所だと、夜に明かりが付いて、場所によっては昼間かよって思うぐらい明るい場所があるだよ。そうなると、星なんてなかなか見れないからな』

 

 

と、気が付けばふと雑談を始めていた。セグリまでの道中は、子供達が色々話してたから賑やかではあったけど、ここには口数少ないヒロトと、空を飛んでいる事に目を輝かせているフレディしかいない。だからか、何気に俺が話題を振っていた

 

ってか、俺はヒロトに振ったはずなのに、なぜかフレディが応えていた。ここまでの話の応対が出来るものかのか? NPDって……まさか、これもストミ仕様?

 

 

『へぇ〜。創造主様達の世界かぁ〜』

『ヒロトのとこはどうなんだ?』

『あんまり見えないかな、都心の近くだし』

『ふーん』

 

 

ヒロトは東京、というより関東暮らしか。いいよなぁ、あっちだと、ガンダムベースが近いし。俺のとこは俗に言う田舎だから、行くのも一苦労なんだよなぁ……そこはホント羨ましいわ

 

ま、俺の場合はおじさんに頼めば、代わりに買いに行ってもらえるからいいけど

 

 

『どんなとこなんだろうなぁ、創造主様達の世界は。あの窓で見たときは、みんな楽しそうに暮らしている世界で、すごく素敵なところだったなぁ……』

『は。そうそういいもんでもないぜ、俺達の世界はよ……ん? 窓?』

『?』

 

 

何やら妙な単語をフレディが言い、それにヒロトも引っかかったのか、反応を返してきた。とりあえず、それについて聞いてみようと思い

 

 

[ビー!! ビー!!]

 

 

その直後、突然警告音が鳴り響いた。その次の瞬間には、俺の機体にビームが着弾する振動が走った

 

   

『!?』

『敵か……!』

 

 

すぐさまレーダーを確認すると、下を三機のデスアーミーが移動しているのが見えた。見たところ、哨戒みたいな感じで隊を組んでいたみたいな、そんな風に見える

 

なんだか、RPGでフィールドを移動中にザコ敵にランダムエンカウントしたかのような、そんな気分だった

 

 

『なんだ、あの程度か。ヒロト、お前は手を出すなよ。祭りの荷物抱えてるんだし……あれぐらい、俺一人で十分だ!』

『え? うひゃぁ!!?』

『な、おい!』

 

 

そう言って一気に高度を落とし、相手の真上を取る。俺めがけてビームを連発してきたが、ナノラミネート装甲をしているアインに対して、そんなのは水鉄砲ぐらいにしかならない。せめてあのドートレスぐらいのモノを持って来ないと、火傷すらしないだろう

 

空中からそのままアックスを振り下ろし、敵の頭から一気に切断する。まずは、一機

 

 

『ソラァッ!』

 

 

そのまま、いまだに効いていないのを理解していないのか、ビームを連発してくる奴に突進をしかけ、頭部を掴み、パイルバンカーを起動させて一撃で機能停止にする。これで、二機目

 

 

『あらよっトォ!!』

 

 

最後のやつは流石に理解したのか、手に持つメイスを振りかざして近接戦を仕掛けてくる。だが、そんなものは想定通りだし、見え見えの振り下ろしなので、アックスを一つ間に割り込ませて防御する

 

そのまま力押しでふり下ろそうとする相手に対し、いつぞやのデスビースト相手にしたようなヤクザキックをお見舞いし、体制を崩したところを追撃のアックスで脳天から叩き切る。敵は爆発四散して、最後の三機目を撃破した

 

 

『は、余裕』

 

 

最初のミッション……あのスタート地点付近の戦いの焼き直しのような戦いだったが、こっちは素組グレイズではなく改造機のガンダムアイン。ガチでやれば、この程度は朝飯前

 

 

『素組を強制されてなきゃ、あの時カカシには成らなかったんだなぁ』

『じゃぁ、なんであの時はあのガンプラを使ってたんですか?』

 

 

それは、あれだ……安価は絶対だからだ

 

 

 

 

 

 

そんな軽いトラブルがあって数分後、俺たちはとうとう目的地の北の森の街、フィルテンの近くへとたどり着いた

 

 

『なんだ、あの大木。世界樹か?』

『あれは、フィルテンを守る大樹で、神樹と呼ばれています。ここはセグリと違って創造主様が遺したモノはありませんが、深く密接に生い茂った木々が、ヒトツメの侵攻を防いで、長いあいだずっと安全だと言われている街なんです』

『なるほど、天然の要塞というわけか』

『はい! 街もすごい活気があって、それはもうセグリみたいに、夜も賑やかなんですよ!』

『へぇ、そうなんだ』

 

 

セグリには、確かサードミッションの時の敵の生産基地を守っていたあのバリアと同じようなものがあった。あれらがもし同じ技術で作られたものであるというのなら、このストーリーの世界観は、その創造主というのが遺した機械が暴走してしまった世界というものなんだろうか……ガンダムっぽくないなぁ、ホント。暴走した機械ってのが、特にそうなんだよなぁ

 

 

『あの大樹の麓に街があるので、そこまでお願いします』

 

 

フレディの指示により、森の中央にそびえ立つ大樹の元まで飛んでいく。特になんの障害もなく飛んでいくが……なんだか、妙な違和感を感じた

 

 

『……なぁ、ヒロト。気づいたか?』

『あぁ……妙だ』

『はい?』

 

 

どうやら、その妙な違和感をヒロトも感じられたんだろう……そう、なんだか

 

 

『まだ日が落ちて浅いというのに、灯りが全くないのはおかしい』

『あ……』

『……嫌な予感がしてきたぞ』

 

 

 

 

 

そして、そのフィルテンの街の上空へと着いた時、俺たち三人は絶句した

 

そこにあったのは……廃墟となっていた、街だった

 

 

 

 

 

 

「ひでぇ有様だな」

「襲撃されて、だいぶ時間が経ったんだろう。焦げた跡があるのに、火の手が全くない」

 

 

街の中心だったと思われる広場に機体を降ろし、崩れ落ちた街を歩く。所々に焼け焦げた跡があるので、おそらくビーム痕だろう。建物もひどく損壊しているし、瓦礫に埋もれた屋台のようなものもある

 

それに……瓦礫の下に、赤黒いものが広がっているのが見える。多分、あれって……

 

 

「……どうして……」

 

 

フレディは、この様子に呆然としている。おそらく、前来た時のことを思い出しているんだろう。その時と今の落差に、ひどく混乱しているようにも見える……

 

ってか、なんだこれ。あれか? こっちは外れでーす。正解は向こうなので、引き返して。どーぞ……ってか? それでグロいもん見せるって、開発の趣味悪くないか? パルやあの三人組があっち側で良かったわ

 

 

「……これじゃぁ、ンガの実どころじゃねぇな」

「どうする?」

「どうするって……んー……とりあえず、無意味だと思うけど、生き残りでも探してみるか?」

 

 

なにか見つかるかも知れない。俺がゲームの製作者なら、こういう所になにかしらのアイテムを配置するだろうからな。そういうのを探すっていうのも含めた意味で、ここの探索をしようと提案した。ヒロトもそれに合意し、とりあえず、この周辺を探索することにした

 

しかし、決めたとなるとすぐ行ってしまうのはどうかと思うぞ。せめて、どっちに行くかぐらいは決めようぜ……

 

 

「そだ。フレディ、お前はここに残ってろ。多分、色々とショッキングなもん、いっぱいあるだろうからな」

「あ……はい……」

 

 

声を聴くに、ひどく憔悴しているフレディに、あまりこの廃墟を見せるのは良くないと思う。例えNPDだとしても、さっきまであんなにも明るくここの素晴らしさを語っていた奴にこの仕打ちは、流石にかわいそうに感じるから

 

とりあえず、フレディを待機させ、俺もこの廃墟の探索をしようと足を進めた時

 

 

[コツン]

「?」

 

 

なにか、軽いものが足に触れた。なんだと思って足元を見たら……翼が根元から折れ、首がもげて外れていた、鳥のオモチャのようなモノだった

 

それに、軽い既視感を覚えた。はて、一体なんだったかと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《■の■■■、こ■■の作■て■■■くる■よ■!》

 

 

「―――――あ」

 

 

忘れろ。忘れるんだ。そんな記憶思い出したって、なんの意味もないんだ。ただ苦しいだけ。苦しいだけなんだ。今はゲームをしているんだ、楽しい楽しいGBNを。自分が好きなガンプラを使って遊ぶゲームをして

 

 

 

 

 

《こ■■お■き■■■持って■て、■■だ■自慢■■!》

 

 

「あ……ああ……」

 

 

だから、そんな苦しいだけの記憶なんて、忘れてしまえ。忘れるんだ。今までどおりに隠して、何もかも隠し通すようにして、今はただ、この楽しい遊びの世

 

 

 

 

 

《な■! ガンプラバトル■■■ぜ! 僕■■イツの■れ■使う!》

 

 

「ッ!!!!!!」

 

 

 

 

《いっけー! 僕の■■■■■ー!!》

       

  

「ああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

「リアンさん!?」

 

 

急に、向こうに行こうとしたリアンが、叫び声を上げた

 




割と深いと思うリアンの過去。絶叫するぐらいにはトラウマになってる


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Broken angel

《――――に、こんなの作って持ってくるなんてよ!》

 

 

どうして……どうしてなの? ただ、みんなにすごいものをみせたいとおもっただけなのに……

 

 

《こんなおっきいのを持ってきて、なんだよ自慢かよ!》

 

 

ちがうもん。それはただ、つくりたいからそれにしただけ。おとうさんもそれがいいっていって、かってくれたんだもん……

 

 

《なぁ! ガンプラバトルしようぜ! 僕はアイツのこれを使う!》

 

 

やめて! それはおじさんにおしえてもらいながらつくったものなの! やすりがけとめんだし、あわせめしょりっていうのをしてつくったの! えあぶらしっていうどうぐで、きれいないろにしたの! あぁ! そんなふうにうごかしたら、こわれちゃう!

 

 

《いっけー! 僕のハシュマルー!!》

 

 

やめてえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!!!!!???」

 

 

短い人生の中で、一番最悪な記憶の夢を見て、跳ね起きた。二度と思い出すことないように、頭の中のずっとずっと深いところに押し込んでいた記憶

 

メイの言葉で、少しだけ切れ端を思い出しかけて……あの鳥のオモチャを見たときに、アレと重なって見えたんだろう……それで、完全に記憶の底から這い上がってきて……全てを、思い出してしまった

 

 

「……はぁ、ほんと、サイアク……ん?」

 

 

ふと、声の調子がおかしいことに気づく。なんでだろうと思って周囲を見渡すと、そこは自室ではなかった。土壁に、木造の家具、それにロウソク。完全に時代がおかしくないかと思うその中に、鏡があった

 

そこに映っていたのは、赤髪の中性的顔の、軍服を着崩したチンピラな風貌の男の姿……あぁ、俺は今、GBNにいるのか

 

 

「……っていうことは、ここはストミの……あの廃墟の街、ってわけか……」

 

 

周りを見ると、とこどころ振動で崩れたかのような箇所がある。なるほど。つまりアレを見て、気を失ったのか……そして、ヒロトとフレディの二人が、ここに運んでくれた、と

 

 

「……迷惑、かけちまったか……ん?」

 

 

近くから、足音が聞こえてくる。音的にブーツのような靴音なので、おそらくヒロトかと思ったら……そのとおりで、ヒロトだった

 

 

「……目が覚めたのか」

「……あぁ。わりぃ、迷惑、かけた」

「別に。迷惑だとか、思ってない」

「……そっか」

 

 

正直、ここにカザミやパル、そしてメイがいないことが、今は良かったと思う。カザミとパルはおそらく騒いで気が逆立ちそうになっただろうし、メイは何があったとか聞いてきて余計に苛立ちそうになってたはずだ……何も聞かず、何もしようとしない。ただこういうことはしてくれるこいつで、よかったと思う

 

 

「……なぁ、フレディは?」

「水を汲みに行っている。近くに小さな川があったはずだって言って。結構、心配してたぞ。なんか、かなりうなされていたし」

「う……」

 

 

うなされていたって……おい、俺、なにか変なこと、口走ってなかったか……?

 

 

「……なぁ、なにか、聞いたか?」

「っ……別に……」

 

 

コイツのこの反応……たぶん、聞いたんだろうな……おそらく、色々と。あの夢の通りなら、俺はきっと、こう言ってたんだろうなぁ

 

 

「やめてって、何度も言ってなかったか?」

「……あぁ」

 

 

ほら、やっぱり聞いてやがった。あぁ、となると、もうほとんど聞いていたってことになるな、ヒロトは

 

 

「聞かないんだな、何があったんだって」

「……聞いたところで、俺がなにか出来る問題でもないだろう」

「は、確かに、そうかもな」

 

 

その通りだ。あれは、完全に俺だけの問題だ。どうにかして、俺の中で決着をつけなくてはならない問題だ……今まで俺はそれを隠してきた、完全に忘却の彼方に送り飛ばしていた。それを、完璧に、忠実に思い出してしまった。多分もう、忘れることは、出来ないだろう……

 

 

「……なぁ、悪いけど、聞いてもらっててもいいかな? 色々と、吐き出したい気分なんだ……つまんねぇ話だろうけどよ」

 

 

だからか、なんだか無性に、誰かに話したくなってしまった。さっきは聞かれるのが億劫だなって思っていたのに、途端にこれとは……だいぶ自分が憔悴しているのだというのが、分かってしまった

 

おそらく、ヒロトにとっても、面倒な事に巻き込まれたなとでも思っているのだろう。別に嫌なら嫌と断ってくれても構わない。そのときは、そうだな……スレ。いや、あいつらに話すのはやめておこう。多分嫌がるだろうから、他人の傷口なんて見たくねぇとか言って。なら、おじさんにでもすればいいだろう、と

 

 

「……あぁ……聞くだけ聞こう」

 

 

だが、ヒロトは聞いてやると、言ってくれた。多分、聞いて欲しいんだろうなと、感じ取ってくれたのだろうか……こいつはほんと、よくわからないからな……

 

ありがとう。と小さく感謝の言葉をこぼして……俺は、俺の過去を、語ることにした

 

 

 

 

 

あれは、小学校四年生の秋。その時は奇しくも祝日が続き、なんと五連休という事になった。そんな長い、俗にシルバーウィークとも言うべきときに、担任の先生から、ある宿題が出された

 

“この五連休の間に、何か一つ工作で作って、それを学校に持ってきて、みんなに見せること”だった

 

まぁ、割とよくある夏休みの宿題の自由工作みたいな奴だ。それをこの五連休の間に作るという宿題で……時間足りなくないか? とも思ったが、それ以外の教科、国語に算数、理科に社会の宿題というのは、一切なかった。それはそれでその時は喜んだけど、今になって思い出すと、それでいいのか教師? と思うが……まぁ今は別に関わりのない話なので、省略する

 

そして、何を作ろうかと考えていた時に、クラスの誰かが先生に質問をした

 

 

“せんせー! ガンプラを作って持ってくるのはアリですかー!?”

 

 

普通に考えれば、おもちゃなんてモノはダメです! というだろう。俺のいた地域では、まだガンプラバトルの事がメジャーになってなかったし、GPDの筐体すら置かれていなかった。かなり遠くの街まで行かなきゃ、ガンプラが競技用の道具として扱えない……つまりガンプラ、イコール、ただのおもちゃという認識が、ウチの地域の認識だったのだ

 

言い出した奴も、おそらく冗談交じりだったのかもしれない。だから、そのクラスメイトの言葉なんて、却下されるだろうと、そう思っていた……が

 

 

“色を塗ったり、形を変えたり、あと細かいところまでしっかり作ったモノならオッケーよ”

 

 

と言った。塗装を施せば、ミキシングをすれば、ディティールアップをしたのなら、それを持って来ても良いことになったのだ

 

なら、自分はガンプラを作って持ってこようと、そう思い、夕飯の時に父に対しおねだりをした。気前の良い父だったので、すぐにオッケーを貰えた。ちょうど次の日の午前中は仕事が無いっていう事なので、その時に買い行くこととなった

 

 

 

「その時に、父親に買ってもらったっていうのが……」

「あぁ……“モビルアーマー・ハシュマル”」

 

 

 

鉄血のオルフェンズ、二期中盤のボス的存在で、作中唯一のモビルアーマー。そして、オルフェンズのHGの中で、高額キットとも言える奴だ

 

選んだ理由は、単純に一目惚れだった。大きな翼のような装甲に、大きな手、大きなビームエフェクトパーツ。そういうのが、当時から俺は好きだったのだ。大きなモノという存在に……父親も、どうせ買うならデカイのがいいなと言って、値段に拘らず買ってくれた

 

そういやアインも、同じような理由で選んでたっけな……

 

そして、それを買って帰り、いざ作ろうとした時に、家の玄関にあの人がいた。父親の仕事の上司にして、俺がおじさんと呼んでいる人だった。その人は、俺が持ってたハシュマルを見て

 

 

“どうだ? 俺の所で作ってみないか?”

 

 

と……どうやらそのおじさん、趣味でガンプラ作りをしているようで、父親はそういうのてんで分からない人だったから、お願いをしていた。無論、俺も一手間加える事に関してはよく分からなかったから、それに関しては渡りに船だった

 

そして、しばらくそのおじさんの家に泊まり込んでまでして、ハシュマルを徹底的に作りだした。あの人は、特に手を出すことはせず、自身が持ってるあらゆる道具を貸し、その使い方を細かく教えてくれて、更に練習と称して色んなキットを使わせてくれた

 

今まで素組しかしてこなかったし、手捥ぎでパーツを外していたから、そういう道具を使うのは新鮮な気持ちだった

 

ニッパーで二回に分けて切って、ゲート跡もヤスリで綺麗に消したり、更に表面上にある細かい傷も、面だしで拭き取るようにして無くしたり……肉抜きの部分はパテを使って埋めたり、細かい部分も、プラ板を使った手法を使ってディテールアップをしていったし、後のスミ入れに備えて、筋彫りもしていった。全体的に安全のために丸みがある形状なので、それをシャープにするためのやり方も教わった

 

色に関しても、高級品であるはずのエアブラシの機材を用意してくれて、下地塗りの為のサーフェイサーから、本格的に色を付ける塗料まで使わせてくれた。マスキングテープで細かい部分の色分けまでして、更に機械的な見た目にしてくれるスミ入れもしていった

 

やっと仕上がったパーツをひとつひとつ慎重に組み立てて……ハシュマルは、完成した

 

すごかった。その時の感情は、その一言に尽きた。今まで作ってきたガンプラよりも、何よりも凄いモノになった……ずっとパーツは手捥ぎで、そして素組しかしてこなかったし、色分けもシールぐらいしかしてこなかった身からすると、そのハシュマルの完成度は高過ぎた

 

初めて、本格的に作ったガンプラ。多分それは、一生の宝となるんじゃないかと、子供ながらに思った

 

もちろん、おじさんもそれを見たときは感嘆してた。触れる時も、わざわざ布の手袋までしてして、まるで美術品でも扱うかのようにしていた。多分、本人はこれ以上のものが出来るはずなのに、おかしな話だった

 

 

“素晴らしい。お前は才能が有る、ガンプラ作りのな。こんなものを持っていけば、一躍スターになるんじゃねぇのか?”

 

 

などと煽てられたりもした。言い過ぎじゃないかと思うけど、その時の俺は、いい気になっていた

 

 

 

「だから、だろうな。あんなことになっちまったのはさ」

「……もしかして」

「は、察しがいいなぁ……その通りだよ」

 

 

 

結論から言うと、周りの反応は最悪だった。ガンプラというおもちゃを持ってきたこと。そして他にも持ってきていた奴らの元と比較すると、明らかに大きなもの。更には色もただのマジックで塗ったようなモノばかりで、手を加えるといってもほかのガンプラの手足を変えてきたようなモノの中、あまりにも完成度が高すぎるものが一つ……そりゃぁ、やっかみや嫉妬の対象になるってもんだよ

 

周囲から聞こえる声は、キモいの一言。先生もそれを見たときは驚いたけど、最後には奇怪なモノを見る目に変わってた。でも、それだけならまだ良かった。しばらく奇異な目線で見られるだけで済んだはずだし、三日か一週間もすれば、元に戻るだろうと……

 

本当に最悪な事件になったのは、お昼休みのこと。教室に居づらかった俺は、ふと席を立って図書室か、あるいは外に出ようとした。その後に、教室から声がした

 

 

“なぁ! ガンプラバトルしようぜ! 僕はアイツのこれを使う!”

 

 

それが聞こえた瞬間、急いで教室に戻った。そこには、俺のハシュマルを掲げて、何やらいい気になっていた男子がいて、周りには自分が持ってきたガンプラを持っている奴が集まっていた

 

GPDの筐体もないのに、どうやってガンプラバトルをするのか……決まっている。そういう名の、ごっこ遊びをするということしか、考えられなかった……!

 

完全に取り乱した俺は、取り返そうと必死になってその男子をとっ捕まえようとするが、そいつはまぁ悪ガキらしく、クラス一のヤンチャ者。自分よりも強い力で逆に俺を突き飛ばし、そのごっこ遊びに興じようと、ほかの奴らを扇動していた

 

ほかの奴らも奴らで、そのハシュマルを見て妬んだ連中だったのか、嫌な目つきで俺を睨んで……そのごっこ遊びに参加していた

 

助けを求めようとも、周りはキモいと言っていたクラスメイトしかいなくて、誰も手を差し出してはくれなかった

 

だから、自分が動くしかなかった。何度も何度も組み付いて、何度も何度も返してと叫んで、だけど何度も何度も突き飛ばされる。そうしている間にも、ハシュマルとほかのガンプラが何度もぶつかって、細かい傷から、目に見えるほどの大きな傷までついて、ガンプラ同士のぶつかり合いでなんどか手元から床に落として、形状が歪んだりした

 

細くて繊細なところはすでに折れてて、無理やり動かした事で一部にヒビが入ったり、塗装もかなりの箇所が剥げかかってた

 

 

 

「そして、その時が来た。翼が根元からばっきり折れた。首がジョイント部分のところで折れて、もう元に戻す事ができなくなった」




リアンの過去を書いてたら、すごく長くなってしまった……まだ続きます。

詰め込み過ぎたような気がしますが、二部の下準備やら、今後の事を考えると
必要かと思ったので……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

After the angel (改稿版)

色々と苦しかったですが、改稿が完了しました。

あと、前話の後ろ部分をここに繋ぎ、一部フラグが足りない部分があると思い、Fortress capture battleに一部加筆を行いました


その時、俺は泣き崩れた。残骸となったハシュマルを見て……壊れた時に、悪ガキの奴がなんか言ってたような気がするけど、それすら聞こえず……ずっと、ずっと泣き続けた

 

あんなに一生懸命作ったのに、あんなに楽しく作っていたのに、あんなに完成したときに喜んだのに……なんで、どうして? わけが分からなかった

 

誰かが言ったのか、いつの間にか先生がやってきた。俺を慰めようとしたり、悪ガキを叱ったりしていたような気がするが、その時の俺はずっと、泣き叫ぶばかりだったから、詳しいことは覚えてない

 

次の授業が始まるチャイムが鳴っても、まだ泣き叫ぶ俺で、全然授業が出来る様子じゃなかった。だから、先生は仕方なしと思ったのか、親を呼んで、迎えにこさせた

 

 

 

 

 

「それで、その後先生に呼ばれて、お父さんが来たんだ。なぜか知らないけど、そのおじさんも一緒に。仕事どうしたって思うけど、本人達にとっては、どうでも良かったらしい。子供の一大事の方が、大切だったんだってさ」

 

 

 

 

 

自分の子供が泣いている。それに対して無碍に扱う親では無かったし、誰に対しても情の熱い父だった。そしてそのおじさんも、人一倍情が深い人物だった。その人と柄だからか、二人は気の合う者同士で仲が良く、家族絡みで付き合っていた

 

そんな二人が、教室に入って来た時、お父さんは俺に駆け寄ってくれたみたいで……おじさんは、ハシュマルの残骸を見て、怒鳴りちらしたようだった。それだけしか、覚えていない

 

その時は泣き叫んでたし、周りの事なんて、何一つ見えてなかった。二人が来て何があったのか、さっぱり記憶に無いし、どんな事があったのか、全然覚えていないし、聞いたこともない。いつの間にか、家の自室にいた

 

色々あった末に、引き連れて帰ったんだと思う。残骸となったハシュマルと一緒に。細かいパーツも、一つ一つ拾ってくれたみたいで、箱の中に全て入っていた

 

でも、そのショックはあまりにも大きく、長い間部屋で塞ぎ込んでいた。ハシュマルの残骸は箱の中にしまい、押し入れの奥の方へと押し込んで、もう一生目にはしたくないよう、厳重に包んで……捨てたほうがよかったのかもしれないが、それだけは、出来なかった

 

 

 

 

 

「その事件の翌日には、その子供とその親が謝りに来たみたいだけど……まぁ、顔もみたく無いほど会いたく無かったし、何より力も入らず、塞ぎ込んでて部屋から一歩も出たくもなかった」

 

 

 

 

 

そんな大事があった後だから、もう学校には行きづらくなり、不登校になった。学校に行って、あいつらの顔を見るのも嫌だったし、おそらくまた泣き出していたかもだし……何かしでかしていたのかも、しれない

 

何日間かして、ずっと部屋にこもっていた俺だったが、そこへおじさんがやってきたんだ。何かのガンプラの箱を持って

 

 

“あんな事は忘れろ。嫌な事は全部忘れて、好きな事だけを覚えていけばいい”

 

 

だから、一緒にガンプラを作ろうと、そう言ってきたんだ。そのときは何を持ってきたのか、全然覚えていないが……最初はあの時の事を思い出したりして、見たくもないとか言って突っ返してたりしてた。だけど根気よく、何度も何度も訪れて来て……最終的には少しだけとか言って、触ったりし始めた。最初は色々と辛かったけど、何体か作っていくうちに、ガンプラを作る楽しみっていうのか、そういうのを思い出せた。どうやら、根っからのビルダーだったのだろうな

 

まぁ、どちらかというと、そのおじさんの熱意に当てられて、コッチが折れたみたいな感じだったかな。もうめんどくさいな、みたいな、そんな思いだったかもしれん。今となっては、どっちだったのかわからないけど

 

精神が安定して来たのは、その事件から一年と半年。その頃には、もうハシュマルのことはほとんど忘れかけて、画像とか見ても、問題なくなっていた。あの残骸を見れば、思い出してしまったかもしれないけど。実際、似たおもちゃを見たときに、思い出したわけだし

 

その頃には、GPDにも触れる事が出来ていた。しかもそのおじさん、中古で使い古されたものとはいえ、筐体を自分の家に設置してたし……ほんと、ガンプラに関しては金に糸目をつけない人だ。二年前に、今までどんだけ使ってんだと思って聞いたときは、金額に唖然とした。億越えてるってどういうこと?

 

なお、そのGPDで使っていた愛機が、今もなお使っているガンダムアインだ。安く買えるバルバトスとグレイズで修復とメンテナンスが出来るから、あれは完全復帰作ってわけだ

 

 

 

 

 

 

「……いいおじさん、なんだな」

「どうだろうな。あの人、歳が歳だし。それに、ウチの地域だと、大人がガンプラ作りを趣味にしているっていうのは、子供の遊びをいつまでしてるんだって思われているから、周りにいなかったみたいなんだよ、同じ趣味の人間がさ」

 

 

つまり、そういうことなんだろう。自分にガンプラを続けさせたかった理由、それは同じ趣味の人間を欲していたから。周りは子供の遊びだからやらないと言って、誰一人としていない環境の中、親しい人の子供が、同じ趣味を持っていた。だから、自分に対してあそこまで親切にしたんだろう。今後も、同じ趣味で語り合える友人として……そして、その子が趣味に対してトラウマをもってしまいそうになっているのなら、全力でどうにかしようとするだろうし、実際そういう事をした

 

 

 

 

 

おじさんの尽力によって、一年半かけてようやく以前のような生活に戻ることができた。学校には行く事は出来なかったけど、そこはおじさんが負担して、通信教育なり、家庭教師なりでなんとかしてもらう事が出来た。ずっとその間も、おじさんと一緒にガンプラを作っていたし、GPDも何度もやっていた……

 

そして中学にあがる時。自分は母親の実家の近くにある中高一貫の学校へと通い始めた。場所はその町から遠く、その母親の実家から通わせて貰える事になり、小学校の頃のクラスメイトとの関わりを完全に断ち切った。しばらくおじさんとは離れ離れになることになったが……入学祝いとして、GBNの端末と家庭用のログイン機器一式をくれたから、ガンプラから離れるということは無かった

 

 

 

 

 

「それから五年間……特に何も起きることもなかった。ずっとGBNをプレイし続けたり、ガンプラ作ったり、たまに実家に帰ったときにおじさんとGPDをプレイしたりして……あの時の記憶を、今の今まで思い出すことなく、過ごしてたって訳。以上、ただトラウマになるような出来事があって、それを忘れる事で押さえ込んで、気楽に生きていた子供の……見苦しい過去のお話だ。ご清聴頂き、ありがとうございました。ってね」

「……そうか」

 

 

そして、己の過去のほぼすべてを出し切った。一部重要な所はぼかしてはいるし、あのスレのことは言わなかったけど、ほぼ全部ゲロった……そのおかげか知らないけど、だいぶ、気が楽になった……

 

 

《そしてリアン。あいつは、己にあるミッションを課している。だが、そのミッションに対し苦しんでいるようにも、感じている》

 

 

メイの奴が言った、俺が俺に課したミッション。それは、あの時のトラウマを忘れ続けるということ。おじさんによって施された、深い傷を隠すように覆った絆創膏、心の痛みを消し続ける痛み止め、それを守り続けること。それが自分のミッションだと、あいつは見抜いていた

 

確かに、その通りだった。自分は、ずっと苦しんでいたんだ……なんのための絆創膏なのか、何のために服用し続けている痛み止めなのか……わからないまま、それを放置し続けた

 

あの安価スレも、その薬の一つだ。GBNをプレイし始めるにあたって、何をすればいいのか分からなかった自分に対し、おじさんが誘導して始めた事だ

 

あそこは、誰も彼も他人の事情に首を突っ込む事をしたがらない。アダチの奴も言ってたように、深入りせず、自分を隠し通して好き勝手出来る場所。それが、あそこだったわけだ。安価という形態をとっているのは、始めた当時に、安価でいろいろ決めてみたらどうだ? というレスがあったからだ。そこから、いろんなやつの意見を取り入れて、今のような状態になっていった。まぁ、初めて良かったっていう気持ちはある……ってか

 

 

「ここまで聞いて、感想がそうかの一言だけかよ」

「他に、何か言って欲しいことがあるのか?」

「いや、そういうわけじゃねぇけどよ……」

 

 

こいつは……ヒロトはただ、ずっと話を聞いてくれていた。たまに相槌をうったり、分からなかったところを聞き返したりした程度だ。まぁ、変なリアクションしたり、驚いて大きな声を出すことをしなかったから、かなり話しやすかった

 

本当に、聞いてくれていただけだった。でも、それがなによりも……ありがたかった。多分、他の三人だったら、色々と話しにくかったろう。ヒロトだけがいてくれて、本当に助かった……けど、そんなヒロトの口が開いた

 

 

「ただ……壊れたままにしておくのは、その……ハシュマルが、可哀想だと思う。多分、今でもお前のこと、待ってるんじゃないかな」

「え……?」

 

 

ただ、それだけ、コイツは言って来た。しかも、ハシュマル……ガンプラが、可哀想だと、言って来た

 

 

「なんだよ、それ。まるでガンプラに意思があるみたいな言葉だな。お前、もしかしてそういうの、信じてるタイプか?」

「俺も、昔はそういうのを信じてはいなかったよ。でも、教えてくれた人がいて……それを聞いてからは、信じてるんだ。ガンプラには、心があるって」

「……」

 

 

正直、意外だった……ガンプラ好きのおじさんですら、そんな事は言わなかった。しかも、それを言ったのが、このヒロトだということに……

 

普段は何を考えているのか分からず、何かを探す為にこのストーリーミッションを続けている。戦い方は上位のそれで、ガンプラの完成度もズバ抜けて高い。そんな奴が……ガンプラには心があるとか……なによ、それ……

 

 

「例え元の形に戻らなくても、最初に作った時より不格好になってしまうかもしれないけど……作り直してやったらどうだ。お前が、初めて本気で作ったガンプラを」

「っ――――」

 

 

直す。作り直す、か……そんなこと、おじさんすら言わなかったな……あそこまで壊れて、傷だらけで、もう元に戻せないほど壊されて……だからだろうか、壊されたトラウマを刺激しないようにした為なのだろう。作り直したものを見て、トラウマが蘇るのではないのか、とか……だから、あの残骸から、遠ざけるようにしたのだろう

 

でも……今のヒロトの言葉は……それよりも、なによりも……俺の心に、深く響いた

 

 

「は、ははは……ははは……そっか……まぁ、そう、だね……壊れたままなのって、ガンプラに対して、失礼、だよ、ね……」

「……リアン……」

 

 

涙が出た……でも、あの時流した涙とは違う。痛みも、苦しみもない。そして、押さえつける閉塞感もない……鎖が壊れて、開放的になったかのような……暗闇に閉ざされた中、再び昇る太陽を見たような、喜びの涙が

 

 

 

心の中の何かが、変わったような気がした




直している時に、言われた事が脳裏に響いてすごく苦しかったですが、なんとか出来ました……

色々とお騒がせしてしまい、大変申し訳ございませんでした。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Forest raid battle

初の、オリジナル戦闘シーンです……ちょっと疲れた


「ヒロトさーん! お水、汲んできました! って、リアンさん!?」

 

 

話が終わり、やっと精神的に落ち着いた頃に、フレディが戻ってきた。だいぶ話してた気がするけど、かかった時間は五分ぐらいだった。意外と短い時間だったんだな、自分の過去の全てって

 

 

「目が覚めたんですね! 良かったです! 倒れた時は、どうしようかと!」

「お、おう。わりぃな、心配かけて」

 

 

その手に水の入った木桶を持ってきたフレディであったが、相変わらずその仕草というか、行動には驚かされる。NPDがダイバーのために水を汲んでくるとか……それって、プレイヤーがゲームをプレイ中に意識不明になった事を想定しているということにならないか? 自分の場合はかなり特殊だったから気を失うことになっちゃったけど、他のプレイヤーはこうはならないような……それとも、もしかしてNPDじゃなくて、中に人がいたりする? ……そんなわけないか

 

そんなことを思いながらいると、通信が入ってきた。カザミからだ

 

 

『いよう! そっちはどうだ? こっちは問題なく買えたぜ。例年以上になりそうとか言って、ガキ共が騒いでいるんだけどよ』

 

 

どうやら、向こうは問題なく、普通にそのンガの実とやらを手に入れられたようだ。やっぱり、これどっちかが当たりで、もう片方が外れという選択性のイベントだったようだな。いや、分類的には、サブイベ的なやつか。ならもうちょっと周りのグロさを低くしてもいいと思うんだがな……

 

こちらに連絡してきたカザミの対応をヒロトが行い、こちらがヒトツメによって壊滅したあとだということを伝えていた。それに対してカザミも、貧乏くじを引いたもんだなと返してきたあたり、そう思うよねって感じる。その後ろではマイヤやストラがその事実に驚いているのが見えたが、何を話しているかは、聞こえなかった

 

 

『とりあえず、こっちはもう村に戻るぜ。そっちは?』

「こっちも戻る。村で合流しよう」

『おう! 遅くなるなよ!』

 

 

そう、軽く言ってウィンドウを閉じて通信が切れた。なら、もうここにいるのも無駄になったか

 

とりあえず、ベッドから降りて、立ち上がり、軽く背伸びして体を整える

 

 

「よし。んじゃぁ、俺らも戻るか」

「え? もう、大丈夫なんですか?」

「あぁ、問題ない。こんな所、さっさと出ようぜ。な」

「あぁ」

 

 

そう言いながら、その建物の外へと出た

 

 

 

 

 

「すっかり暗くなっちまったな……森の中だからか、月明かりすら入らないし」

 

 

まさに暗闇と言ってもいい具合に、外の景色は真っ暗だった。フレディが持っている松明がなければ、全く何も見えなかっただろうな

 

 

「しかし、よくそんなモノが残っていたな。ろうそくといいさ……普通ここまで崩れた所でなら、探すのも一苦労だろ」

「いえ、これはヒロトさんが持ってきていたんですよ。あのろうそくも、ヒロトさんが出したモノなんです」

「え?」

 

 

松明とろうそくを、ヒロトが? なんでそんなモノ持ってんだ? 確かに、ビルドコインで松明やらなんやら……キャンプ道具とも言うべきモノの一式は買えるけど、それって軍隊ロールとかで使う道具類じゃ無かったっけ? 実用性皆無の

 

 

「なんで、そんなモノ持ってんだ?」

「……別に、ただ買ってみただけだ」

 

 

買ってみただけって……んー、第七機甲師団、だっけか? あそこみたいな軍隊ロールフォースに入っていた、ようには見えないな。となると、GBNのディメンションでキャンプしてたって事か? わざわざゲーム空間で?

 

いや、まぁディメンション探索勢とかだと、割とあるか。こっちでなんちゃってキャンプしたりする事をメインに据えてるダイバー、広大でリアルに近しいフィールドを持つフルダイブ式のVRMMOだし、そういった層もプレイしているのがGBNだからな

 

あ。そういえば、ヒロトってディメンション探索勢っていう疑いがあるか……でもそんな道具まで用意してるとか……前に誰かと一緒にやってたのか?

 

 

「なぁ、リアン」

「ほえ?」

 

 

ふと、珍しくヒロトの方から声がかけられた。あまりにも珍しかったので、つい変な返事をしたが……一体なんだろうか?

 

 

「なんだ?」

「……お前は……いや、君は」

 

 

何かを言いかけるヒロトで、しかも自分に対しなにか含みがあるかのように何かを言いかけた

 

 

直後

 

 

「「「!?」」」

 

 

木々が粉砕されるほどの、大きな物音がした。その場へと振り向いて見ると……

 

 

手にしたアックスで森の木々を切り開きながら、自分にとって見慣れたものが、姿を現した

 

 

「ひ、ヒトツメ!?」

「新型か……ッ!」

「しかもアレ、グレイズじゃねぇかよ!」

 

 

量産型とも、火星支部とも、地球外縁軌道統制統合艦隊とも、アリアンロッドのカラーでもない、全く見たことないカラーリング。今まで戦ってきたデスアーミー系と似た、あの鈍色に光る銀色がベースに、所々黒っぽいような別の配色を持っていて、肩の装甲や、足の装甲といったものがどこかトゲトゲしい感じになっている。勿論、頭部のセンサーも、いつものヒトツメのように紫色に発光するモノに変わっている……つまり、グレイズのカスタム機という感じの奴だ

 

そして、頭部のセンサーが、俺らを捉えた

 

 

「「!?」」「のわっ!?」

「逃げるぞ!」

 

 

そのまま、コアガンダムとガンダムアインのある広場へと向かって走りだす。背後からは、ライフルの発射音が聞こえ、フレディを抱えて反復横跳びの要領で避ける

 

 

「マジかよ!? ダイバー相手にマジで打つとか、正気か!?」

「ダメージアウトしたら、ペナルティが付く。とにかく走るぞ!」

「フレディ! しっかり捕まってろよ!」

「は、はいいっ!」

 

 

とにかく、機体の所まで全力で走る。後ろから敵グレイズが追いかける事は無かったが、手に持つロングバレルのライフルからビームを放ってくるので、それを銃口の向きから射線を予測し、避けていく。ヒロトも経験した事があるのか、問題無く避けていた

 

ってか、こんなの有り? 外れを引いたかと思ったらグロいの見せられて、トラウマ抉られて、挙げ句には襲撃してきてダイバーを直接攻撃してくるとか……開発の趣味悪いどころの話じゃねぇぞ!? クリアというか、テストさせる気ある!? サブイベの難易度じゃないだろこれ!?

 

いや、トラウマは個人的な事だわ……とりあえず、終わったら絶対抗議してやる……!

 

 

 

 

 

『っと、なんとか無事乗り込めたな』

『敵の位置と数を把握する、今は動くな』

『了解!』

 

 

生きた心地がしなかったが、無事にそれぞれの機体に乗り込めた。そのまま反撃に出ようとしたが、ヒロトが現状分析に入るとの事で、その指示に従う。こういう戦略、戦術に関しては自分よりもヒロトの方が数段も勝るので、出来るやつに全部放り投げる。下手に手を出すと計算が狂いかねないので、こちらからは口を出す事はしない

 

他人任せな気はするが、そっちの方が効率が良い事もある。今の場合はその方が良いと思い、お任せする事にする

 

ともかく、ヒロトの分析が終了し、敵数と配置を把握。数は新型のグレイズが3機、タンク型デスアーミー系が4機の合計7機。先程の奴は俺らが機体に乗り込んだ時に森の中へと入り合流したようだ

 

それに対し、此方はコアガンダムとガンダムアイン。しかもコアガンダムはアーマーを一つしか持ってきておらず、そのアーマーは今、祭りの準備などで買ったモノが積み込まれていて使用不能。ってかこれ、この荷物守りながら戦えって事?

 

状況は最悪。戦わなくても良く、逃げるだけなら問題無さそうだが、それすら叶わない。上に行こうとすればライフルやら砲撃やらを食らって悲惨な事になりそうだし、森を突っ切ろうにも、木々が邪魔で逃げきれない……つまり、ここに完全に閉じ込められたようなモノだ

 

先程から、ヒロトが苦虫を潰したような声を上げている。おそらく、相当悩んでいるのだろう。どうすれば無事に乗り超えられるのか、それに対する此方の被害は、荷物を捨てるべきか否か……様々な思考を繰り返しているようだ

 

 

『き、来ましたよリアンさん!』

『!』

 

 

そうこう悩んでいる内に、向こう側から攻撃を仕掛けてきた

 

向かってきた機体はアックスを横から叩きつけるように放ってくるのを、腕のパイルバンカーを盾にするように防ぐ。が、バンカーが空き缶を潰したかのような感じにひしゃげた

 

 

『ッ!? なんつう出力……!?』

 

 

いつもやり合っているデスアーミー系の装甲を貫くほどの頑強さを持つはずのバンカーが一発で曲がったあたり、そうとうのものだ。おそらく、後ろのコアガンダムやパルのヴァルキランダーとかだったら一撃でダメージアウトになりかねないんじゃないかこれ……!?

 

 

『クッ!』

 

 

後ろからヒロトがスプレーガンのみをアースアーマーのアタッチメントバレルを取り付けたビームライフルで援護してくる。そこだけは取り付けることが出来たようで、普通のコアスプレーガンよりも出力があるビームを撃っていく。が

 

 

『ッ!?』

『やっぱりかよ……』

 

 

案の定というか、やはりというべきか、ビームを無効化するナノラミネート装甲を完備していた。その強度は、俺のアインと同じくらいの精度を持つレベルの奴のようで、ヒロトのライフルすら完全に無効化していた

 

ここまで再現度の高いNPDMSとか、ありえないでしょ!? 完全に対人戦クラスの連中が使うガンプラとやりあってる感覚があるぞ!? 毎度毎度思うけど、難易度おかしくないですかね!? しかもメインじゃなくて、サブでコレ!? 勘弁して欲しいんですけど……

 

だからか、俺を壁にしつつ、ライフルで牽制をしていくぐらいしか、ヒロトは出来ていなかった。おそらくマーズアーマーがあれば、余裕でこのグレイズすら処理できたことだろうけど……ないことが悔やまれる

 

 

『この、野郎!』

 

 

アックスを大きく振りかぶって下ろしたことで、相手に隙が出来たのを見つけた。そこをつこうと、こちらも振りかぶろうとアックスを上げたら

 

 

[ガサッ!]

『うげッ!?』

 

 

上に生い茂ってる木の枝に、アックスに絡まってしまった。それにより、逆にこっちにも隙が生まれてしまい、相手のライフル……しかもショートバレルのマシンガンのような実弾を連射してきた

 

 

『うひゃあぁあぁぁぁぁッ!!?』

『ッ……!』

 

 

少しづつではあるけど、装甲にダメージが蓄積していく。まだイエローラインまでは行ってないけど、おそらくこのまま喰らい続けていれば、いづれ落ちかねないぐらいには強い……!

 

 

[ビー!! ビー!!]

『!?』

『ま、待ってた奴らが一気にきましたよ!?』

『クソが……ッ』

 

 

遠くから様子を伺っていた連中が、問題なしと判断したのか、一気に行動を開始した。どうやら脅威判定がそこまでないと判断されたのか、全員で掛かって潰そうということなのだろうか……あぁ、舐められたもんだなぁ、もう……!

 

どうする? このままでは、流石にダメージアウトで落ちかねない。メインでならいいが、このサブっぽい状況で落ちるのは流石に恥ずかしい。カザミからはしばらく弄られかねないし、スレに報告したらどうなることやら……アダチやむちゃ丸辺りは格好のネタとして、一ヶ月は煽りのネタとして使いそう

 

クッ、なにか、なにかないか……? ステータスを片手操作で開いてスキルスロットを確認していく。ルナだったら結構な数のスキルがずらっと並んでいるところだ。が、アインには特にこれといって使えるスキルが……

 

 

『ッ、これだッ』

 

 

あった、1個ある。しかもこの状況を確実に打開できそうなスキルが。デメリットがあるが、状況さえ終わればどうとでもなりそうだ……!

 

 

『やるしかねぇ……フレディ、かなり動き回るから、しっかり捕まってくれよ!』

『うえ? は、はい!』

 

 

フレディに注意をしておき、ステータス画面からスキル発動するための操作をしていく。そこにある、あるスキル欄にあるものを選択する

 

GBNにて実装されている、オルフェンズ系ガンプラにのみ許されている専用スキル。それの、高難易度ミッションを達成した時に会得したスキル

 

 

『“末那式システム”、起動!』

 

 

オルフェンズにて登場するシステム、自身の体のように機体を操作する阿頼耶識システム。その上位スキルとして、GBNのある高難易度ミッションの達成報酬として存在するスキルである

 

 

 

GBNに於いて、阿頼耶識システムは実装されている。その内容というのは、原作にあるような、機体を自身の体の如く操ることが出来るようになるスキルとしてある

 

そういうとまるで使い勝手がいいスキルに聞こえるが、実際に使ってみると少し事情が異なってくる。これについては使ってみないとよく分からないが、わかりやすく説明すると、頭の中にコントローラーがあり、それを頭の中で操作するかのような感覚という、癖の強いスキルとして存在している。ようは、使いにくいということなのだ

 

それと違って、この末那式システムは完全に原作のそれ……というより、どちらかというと、グレイズアインにあるような、全ての操縦作業を脳内思考制御で完結させるということに近い事ができるようになるシステムだ。ようは、まるで自身のアバターを動かすように、機体を動かすことが出来るのだ。それによって、まさに原作のあのグレイズアインと同じような……あの有機的な動きになれるシステムなのだ

 

 

 

体がガンダムアインと同化したような感覚、まるで完全に一体化したかのような感触を感じた直後、すぐにその感覚は自身に馴染んだ。何度かやったことあるから、問題なく感じるが、最初の頃はかなり違和感があった。だが、慣れた今ならすぐに行動に移すぐらいは出来る

 

 

『行くぞ!』

 

 

アインの目が、ルプスがハシュマルとやりあった時のような赤い目へと光輝き、線を引いていく。そのまま近くにいるグレイズのマシンガンを少ない動作で避けていき、回し蹴りの要領で頭を吹き飛ばして一撃で落とす。ナノラミネート装甲はビームには強いし、物理的な射撃にも強いが、こういった直接的な攻撃には弱く、フレームむき出しの部分が弱点となるし、装甲を貫くほどの出力でやれば問題なく行ける

 

 

『ッ!』

 

 

そして、こちらに向かってくる敵が何体かいるが、そいつらを肩の機関砲で牽制して誘導し、森の中へと誘い込む。末那式を発動している状態ならば、森の中の方が圧倒的に強く動ける。センサーでは、全ての敵が森へと向かって移動するのを確認する

 

 

『さぁって、こっから反撃だ!』

 

 

邪魔な木々をなぎ倒しながら進む敵に対し、こっちは木々の間をすり抜けるように移動し、敵の死角へと移動してそのまま頭をアックスで兜割りの要領でたたきつぶす。他のグレイズもアックスを横薙ぎに振り回してくるが、それを後ろにステップして回避するように動く

 

そのまま回避した先にある木を握ってそこを支点にして回転し、勢いをつけたままこちらもアックスを横薙ぎにしてこれを叩きつける。これで一気に三体のグレイズを処理できた

 

 

『す、すごい……ですぅ……!』

 

 

アインに一緒に乗っているフレディが、まるで目が回ったかのような声をしているが、おそらく中がそうとうきついことになってそうである

 

が、その程度では止まることはなく、最後に残ったグレイズに向かって走っていく。マシンガンを連射してくるが、地面を左右に飛び跳ねるように蹴って移動をしていくことで回避し、時々木を盾にすることでも防いでいき、一気に近づいて後バック転からの踵落としで頭を潰す。これで、ビーム無効とかいう厄介はいなくなり、残りはタンク型のデスアーミーのみ。そいつらは、ヒロトの方へと向かっていたようであったが

 

遠くで、高出力のビームが発射された光が見えた。それで一気に敵の反応がレーダーから消えた。つまり、向かってくるやつをライフルで一撃で落としたんだろう。一撃で三体も巻き込んで落とすとか、相変わらずヤバい集中力と精密さが必要となることを平然とやっていく奴だ

 

 

『ふぅ……そっちはどうだ』

『なんとか落としきった……切り札切ったけどな』

『阿頼耶識か。その上位スキルを持っていたとはな……苦労したんじゃないのか』

『まぁね。何人かで手伝ってもらって、ようやく入手できたわ』

 

 

さすが、そこも知っていたようだ。つまり、コイツのデメリットも知っているのだろう……すると

 

 

『っと?』

 

 

感覚がいつもの感覚へと戻った途端、アインが機能停止したかのように動かなくなった。いきなり耐久値がレッドゾーンへとなり、ほぼほぼ瀕死のような状態となった

 

これが、末那式のデメリット。使用するのに時間制限が有り、それが切れたらこのように身動き一つ取れなくなるし、機体の耐久値が一気にレッドまで落ち込み、一種のオーバーフロー状態となってしまう。つまり、必殺技のようなものだ。ただのスキルではあるけど

 

 

『う……う~ん……』

『ありゃりゃ』

 

 

中にいたフレディは、目を回して気を失っていた。多分、ジェットコースターのようなものに乗った感覚と同じだったんだろう。慣れてないと、あぁいうのはすぐ目を回しかねないしな……

 

 

『さて……なぁ、ヒロト。アインを吊るして、帰ることって、できるか?』

『……無理だな』

 

 

というわけで仕方なく、村に先に戻っていた全員をここまで呼んで、パルのヴァルキランダーとアースアーマーに吊るされて、村まで戻ったのであった……なんとも、締まらない感じだなぁ……

 

 

 

 

 

………………………

 

………………

 

………

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

 

あのあと、村へとなんとか戻れて、遺跡へと帰りログアウト処理をして、意識が現実へと帰ってきた。ヘッドギアを外し、上を見上げると自室の天井が見える

 

頭の中をGBNにログインしている状態から、リアルの認識へと切り替える。こういう技能は、この五年間にも及ぶプレイで培ってこれたスキルだ。多分、一生付き合っていく感覚なんだろうなぁとも思う……

 

けど、仕方ない。こうでもしなきゃ、GBNをプレイ出来ないのだから……自分の正体は、いつまでも、隠し通さなきゃならないから

 

 

「……」

 

 

ふと、後ろを振り返る。そこには、今回使わなかったルナリアンゼに、塗装改修したガンダムフレーム機にヴァルキュリアフレームの二体、そして素組しただけの奴らがずらりと、棚に並んでいる。そして、その横に押し入れの戸がある

 

その戸を開き、一番奥の方にある箱を探し当てる。そこには、ガムテープやビニールテープで何重にも巻き付かれている、明らかに異質な箱があった。その巻き方も、きれいにしてあるわけでもなく、グチャグチャにして巻きつけてある……

 

今まで、なんだっけこれって思いながらも、触れてはいけないと頭に響く声で触ることがなかった箱だ。グチャグチャなのも、おそらく泣きながら、もう半ば狂乱した感じで巻きつけたからだろう……

 

 

 

それを、普段ガンプラを作る時に使うデザインナイフを使って、その箱を、開けた

 

 

「ッ!!」

 

 

そこにあったのは……紛れもなく、あの時に作ったハシュマルで、見るも無残な、あの時に壊れた、そのままの姿で、そこにあった。よく見ると、細かいパーツはあるが、一部なかったりしている……さすがに、全ては拾いきってなかったようだ

 

おそらく、ヒロトの言葉を聞かなければ、一生開けることが無かっただろうし、向き合うことすら出来なかったものだ。多分、今までの自分だったら、これを見た瞬間に発狂していたことだろう

 

 

「……ごめんね、今まで、こんな所に閉じ込め続けていて……ごめんね、本当に、ごめんね……」

 

 

だが、今はなんとも無かった……あの時、ヒロトに言われた言葉が胸にあるからか……発狂することなく、むしろ心は平静なままだった

 

 

「直すから。あなたのこと、必ず直してみせるから……」

 

 

涙が再び出た。でも、これは悔しさからでも、辛さからでも無かった。やっと、やっと……自分の中にあったしこりが、きれいになくなっていくような……ヒロトの言葉を聞いた時と、同じような、そんな気持ちの、涙だった……

 

 

「……ありがとう、ヒロト……」

 

 

本当に、彼には感謝しかない。まさか、またこのハシュマルに触れることが、出来るようになれるなんて……思いも、しなかった

 

 

 

 

 

もしかしたら、彼になら……自分が隠している最後のものを晒しても、大丈夫かな……? 彼は……あたしを見ても、変わらずにいてくれるかな……?




さて、多分気付いていらっしゃったかもしれませんが……こういう事です。

そりゃぁ、昔ながらの習慣根付く田舎で、可愛い子があんなゴツいの持って、しかも高価な上、完成度が高すぎるモノを持ってくれば……男子は妬むよねっていうし、女子も引く


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

【安価でダイブ】43スレ目 その5

久しぶりの掲示板形式。今回より、原作の流れに戻ります


翌日……

 

フォース、グラナダブルーのフォースネスト。そこで、次のストーリーミッションの水中戦に備えて、水中で動くという事に慣れる為に、Grand Dive Challengeというフォースミッションに挑戦していた。内容は、水深500メートルのプールの底にあるハロのボールを拾い、また帰ってくる事が出来ればクリアというモノだ。無論、相手からの妨害があるので、それを掻い潜って行がなければならない。だが、割とシンプルで、クリアは容易ではと思われた

 

 

「では始めようか、海のロマンを!」

 

 

 

 

 

けど……

 

 

『嫌いなんだよ、海……』

 

 

開幕早々、ヤスリがけや面だし、合わせ目処理を怠たった故に装甲が悲鳴を上げ、更に水中が苦手なカザミが不意打ちで落ち

 

 

『やられちゃいました……』

 

 

水気を吸った翼で機動力が落ちた所を狙われたパルも落ち

 

 

『だから、相性が悪いんだって……』

 

 

誰よりも早めになんとか底まで辿り着いたが、水圧や対抗、出力の問題で、アインの推進力では水上に上がる事が出来ずに沈んだまま、相手リーダーのタコ殴りに遭って、自分も落ちた

 

 

 

結果、ヒロトがメイを囮にする事で底へと到達しハロボールを回収。相手リーダーをいなして水上へと一気に上昇し、ミッションはクリアできた

 

が、水中には俺一人で入ると言われ、その場は解散となった

 

 

 

 

 

………………………

 

………………

 

………

 

 

571:以下無名のダイバーがお送りします

m9(^Д^) プギャー

 

 

572:以下無名のダイバーがお送りします

4人揃ってヒロトくんから役立たず判定食らってやんの草

 

 

573:以下無名のダイバーがお送りします

水中はなぁ……ホント特殊なんだよなぁ……

 

 

574:以下無名のダイバーがお送りします

宇宙空間と似てるっちゃぁ似てるけど、専用のビルドや装備じゃないと、まともに動く事も出来ないのがなぁ……スキルでなんとでもなるけどさ

 

 

575:以下無名のダイバーがお送りします

ビルド力ない人向けに設けられてるもんだしな、スキルって。修得するのはかなり時間かかるし、それなりに技術必要だし

 

 

576:以下無名のダイバーがお送りします

そんなんやるくらいだったら、動画とか雑誌見て改修や改造の仕方覚えてやった方が早いという

 

 

577:以下無名のダイバーがお送りします

5人中3人が水の中舐めてて、2人が水中特化装備に換装の上、1人は自力で底まで行ってから浮上するという戦果

 

 

578:1

一応底まで行ったんだから、舐めてるわけじゃないぞ!

 

 

579:以下無名のダイバーがお送りします

浮上出来ない時点でダメじゃん

 

 

580:安価ダイバー応援団長

これを機に、ちゃんと水中用の装備作ったらどうだ?

 

 

581:1

そうする。次のミッションには間に合わないけど

 

 

582:以下無名のダイバーがお送りします

その時は是非とも安価でやってくれよな! お休みしてた分はやってもらうぞ

 

 

583:以下無名のダイバーがお送りします

そうだそうだ! 安価スレなのに安価休みとかありえないからな。俺らの懐の広さに、感謝の気持ちとして安価しろよ

 

 

584:1

う……か、考えとく

 

 

585:以下無名のダイバーがお送りします

よし、言質とったからな

 

 

586:以下無名のダイバーがお送りします

期待してるよ

 

 

587:以下無名のダイバーがお送りします

楽しみだなぁ

 

 

588:1

貴様らぁぁぁぁぁっ!!

 

 

589:以下無名のダイバーがお送りします

にしても、ヒロトくんの用意の良さはなんなんだろうな。まさか水中用とかも用意してくるなんて

 

 

590:以下無名のダイバーがお送りします

それな

 

 

591:以下無名のダイバーがお送りします

各種換装用アーマーを付ける事で、期待性能を自由自在に変える。ある意味ここまで手の込んだの作るの、そうとう時間かかるぞ?

 

 

592:以下無名のダイバーがお送りします

画像見るに、所々似た部分はあるようだけど……パッと見だとまるで違う機体に見えるよな

 

 

593:以下無名のダイバーがお送りします

さすヒロ

 

 

594:以下無名のダイバーがお送りします

何げにこのスレ内でヒーロー扱いされてるヒロトくん

 

 

595:以下無名のダイバーがお送りします

だってこのストミ攻略パーティ内で一番実力あるし。聞いた話だけで判断するとな

 

 

596:以下無名のダイバーがお送りします

続いては……イッチか紅一点の子か。どっちだろう

 

 

597:1

紅一点? あ、メイか

 

 

598:以下無名のダイバーがお送りします

何言ってんだよイッチ

 

 

599:以下無名のダイバーがお送りします

女って言ったらそいつしかいないだろ

 

 

600:以下無名のダイバーがお送りします

まさか……リアルは男だった? 

 

 

601:以下無名のダイバーがお送りします

あるいは、パルくんのリアルは女の子だったり?

 

 

602:以下無名のダイバーがお送りします

いや、彼のリアルは間違いなく男の子だ

 

 

603:以下無名のダイバーがお送りします

黙れ変態

 

 

604:以下無名のダイバーがお送りします

なんで分かるんですかねぇ……

 

 

605:安価ダイバー応援団長

変態と二人のリアルの性別論議は置いといて……実際どっちだろう。イッチか、そのメイってやつか

 

 

606:以下無名のダイバーがお送りします

イッチ的にはどう見てる?

 

 

607:1

う~ん、多分、メイの方が上、かも

 

 

608:以下無名のダイバーがお送りします

 

 

609:以下無名のダイバーがお送りします

ほほう。して、その心は?

 

 

610:1

ガンプラ、ウォドムの完成度もそうだけど、それに対する理解力も高い。あと、場慣れしている感もあるから、その扱いも見事なものだ。特にあの大型の脚部での格闘戦は見惚れるほど。強いのは間違いない。タイマンでも、一対多の状況でも、ちゃんと対応できているし

俺の場合はタイマン以外はそこまで強くないからな。一対多の場合は、地形とか相手の性能次第ではサンドバックになるし

 

 

611:以下無名のダイバーがお送りします

へぇ。意外だわ

 

 

612:以下無名のダイバーがお送りします

イッチはGPD出身だからな、タイマンだと勝てる気せんわ

 

 

613:以下無名のダイバーがお送りします

女性のソロダイバーでそこまで戦えるのは、正直珍しいよな

 

 

614:以下無名のダイバーがお送りします

な。ってか、初めて聞いたわ

 

 

615:以下無名のダイバーがお送りします

女性ダイバーって、集まってワイワイやってるイメージ。使ってる機体も、素組とか、ベアッガイ系やSD系、水中専用機をデフォルメ改造して可愛らしくしてるのが多いよな

 

 

616:以下無名のダイバーがお送りします

最近はELダイバー……だっけ? が使ってるモビルドールを使用してる人が増え始めたな。自分のダイバールックをモチーフにしたやつ

 

 

617:以下無名のダイバーがお送りします

アレな。MS少女かと思うようなの使ってる人いるよな。見た目可愛いに特化してるやつ

 

 

618:以下無名のダイバーがお送りします

あとインレ狂いの連中、試しにフォースメンバー全員で挑んでみたら返り討ちにあったわ。やっぱ強いわ、インレ

 

 

619:以下無名のダイバーがお送りします

それらに比べて、ウォドムとかいう異端を使うメイさん。デフォルメ改造すらしてないし、原型すら変えてガチ指向のヤツで来てるみたいだしな

 

 

620:以下無名のダイバーがお送りします

よほど背後に腕の立つビルダーいるんだろうな

 

 

621:以下無名のダイバーがお送りします

だろうな。女性でガチ機作るようなビルダーはいないやろ? ここにいる変態すら、あれ素組のGフェネクスにプチッガイつけただけだし

 

 

622:以下無名のダイバーがお送りします

流石に拘って作る気はないよ。俺がアレ使っているのは、変身みたいなことができる二つの背負いものをしているってことで選んだんだしね。ガンプラ製作とかやってる女なんて、聞いたことないぞ。少なくとも、俺の知る限りではね

 

 

623:以下無名のダイバーがお送りします

せやな

 

 

624:以下無名のダイバーがお送りします

だな

 

 

625:以下無名のダイバーがお送りします

女性でガンプラ改造してるのは、ちょっと想像つきにくいよな……

 

 

626:安価ダイバー応援団長

メイの方が強くて、その次にイッチか……あとのふたりは?

 

 

627:1

あ、あとの二人は……どうだろう。パルの成長は凄まじいし、カザミも本当にひと皮剥けたって感があるから、実力差は縮みつつある。多分俺と同等までは行きそう

 

 

628:以下無名のダイバーがお送りします

ほんと考えられないんだけど、カザミがかぁ……

 

 

629:以下無名のダイバーがお送りします

さすが、パルきゅん……今日はしょぼんとした時の表情がよかった

 

 

630:以下無名のダイバーがお送りします

なんで知ってるんですかねぇ……

 

 

631:1

まさか、貴様……見てたの?

 

 

632:以下無名のダイバーがお送りします

勿論、見学させてもらったよ。やはりパルきゅんは素敵な子だよ

 

 

633:以下無名のダイバーがお送りします

だから、ストーカーはやめろよな変態

 

 

634:以下無名のダイバーがお送りします

ブレねぇなぁ、コイツは……




前回登場したアインの機能と敵グレイズ系機体の設定に関しては、完成次第載せようかと思います


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Underwater battle

いつも通り頭の中のスイッチを切り替え、男としてGBNにログインし、メインロビーを横切ろうとしたら、聞き知った声に呼び止められた

 

 

「あれ? イッチじゃん」

「おや、リアンさんですか?」

「? あ、むちゃ丸に成田か」

 

 

見知った姿、あのスレ常連のダイバー……青い地球連邦軍の制服を着たむちゃ丸と、飛行機の機長のような服装をした成田空港の2人がいた。むちゃ丸は普通に手を上げて挨拶する隣で、帽子を取って深々と頭を下げる成田空港の姿は、妙にミスマッチな印象を受ける

 

一般ダイバーなむちゃ丸は、自然体のままプレイしているのに対し、成田空港は相変わらずGBN内だと機長ロールで真面目な性格のダイバーとしてプレイしている。2人とも、今日もここを満喫しているようだ

 

 

「なんだ、2人で一緒にいて。どっかミッションでも行くのか?」

「いや、今日はフォース戦でね。バトランダムで、所属してるフォース同士が当たっちまったんだよ。な」

「えぇ。ですがお互い、早くきてしまったので、ここで雑談をして暇潰しという訳です。リアンさんは、これからストーリーミッションでしたか?」

「あぁ、これから行くところ。ってか、バトランダムか。もうそんな時期だったのか……」

 

 

バトランダムミッション。月に一度開催される、参加登録したフォースがランダムでマッチングされてバトルを行うチーム戦ミッションの一つ。その戦闘シチュエーションもランダムで選出され、オフェンスとディフェンスで別れる攻防戦、敵の拠点や特定機を倒して勝利するフラッグ戦や、単純な殲滅戦など、様々な形式が存在する

 

いつもだったら、安価で参加するか否かを選び、やるのなら傭兵を募集しているフォースに臨時で入ったりしていた所だった。割と報酬が良いんだよな、これ

 

でも、今月の奴はストミ攻略中で不参加だし、そっちに気を取られてて、存在自体すっかり忘れていた。多分、今まで無かったんじゃないかな、これに参加するかしないかを、安価も無しに決めていたのって

 

 

「今日は作戦決行日だしな……合間のイベントとか、リハとかあっても一緒だったらろうけど、参加出来そうにないのが痛いかなぁ。ま、お互い頑張ってくれよ」

「軽いなぁ、相変わらず」

「そういう方ですから、この人は。リアンさんも、ストーリーミッション、頑張って下さい。今日は、見学でしかないそうですが」

「そこは言うなよ……」

 

 

実際そうなのだから、言い返す事も出来ないが……まぁもしもという事もありそうだし、気合を入れるのは当然だろう。何しろ今の所、ダメージアウト無しでここまで来ているんだ。どうせなら、このまま貫き通したい所

 

と、この2人と会話してたら、向こうにヒロトの姿が見えた

 

 

「あ、ヒロトだ。んじゃまたな、2人とも。そっちの事も、後で教えてくれよなぁー」

「お、おう……」

「わかりました。では、行ってらっしゃいませ」

 

 

軽い別れを済ませ、2人に見送られながら、向こうを歩くヒロトと合流するため、駆け足で進んだ。その足取りは、側からみれば普通だが、自分にとってはかなり、軽いモノだった

 

 

「……なぁ、成田」

「なんでしょうか? むちゃ丸さん」

「イッチってさ、あんな笑い方、出来たんだな……」

「はい?」

 

 

後ろの、まるで初めて見たモノに困惑する声は、聞こえなかった

 

 

 

 

 

全員が集合したあと、いつもの遺跡に転送され、そのままセグリへと向かう。一度レジスタンス達のトップがいる所へと向かい、再度ミッションの概要の説明を受け、そのあとは一昨日にミーティングの場として使ったテラスに移動して、作戦開始の時を待っていた

 

 

「で、どうなんだよ、お祭りとやらの準備とやらは」

 

 

そこでカザミからフレディに対し話題を振ってきた。聞きたいのは、例の空渡しというお祭りのことだろう。どうやら順調らしく、問題なく開催できるらしかった。にしても、お祭りかぁ……今住んでるとこの地域だと、よさこい踊りをするとこで、これが結構盛り上がるんだよなぁ。何回か数合わせとして参加させられて出たっけな。鳴子でも作って持ってこようかな、その祭りに

 

 

「あの、ヒロトさん。ほんとに、一人で……?」

 

 

その話をしている途中で、パルが心配そうにヒロトに向かって話しかけていたが、一度は考え事をしていたらしく、聞こえていなかったようだった。二度目の問いかけには応えていたが、そのあと一言残して、どこかへと行ってしまった

 

今更思うのはなんだが、本当に大丈夫なんだろうか、ヒロト一人に任せて。パルもそこは同じ思いらしく、なにか無いかと考えているようだった。だが、メイは水中専用装備をしている者が水中戦をやるのは自然なことだと言って、カザミも水中は本当に苦手らしく、一人で良いと言ってるのなら脇に回ってやるとまで言っていた

 

俺としても、昨日のスレ報告後に水中専用の装備を作ろうとしたが、結局作れずじまいで、今回は本当に役に立てそうにない。そういや、ヒロトはすぐにあのビームキャノンを作って装備までしていたな……ほんとすごいな、彼は

 

 

「そんなに似ているか?」

 

 

ふいに、メイがそのようなことを言って来た。どうやらこの前、カザミとパルの二人が、ヒロトとメイは、どことなく似てないかという事を話し合っていたようだ。それに対し、カザミは似ていると答えていた。無愛想なところとか、チームで動こうとしても、すぐ一人でやっちまうところとか。そういう点で似ていると

 

まぁ、確かにそれはそうなんだが……この二人の場合は、確かにそうなんだが、なにか根本的に違う気がする。それはなんだろうかと言いかけた時、フレディが先に答えていた

 

 

「トワナとストラも、ジリクじーさんの畑の手伝い、よくサボってますよね。でも、二人は全然違うじゃないですか」

「え? え?」

「いや知らねぇし……」

「なんのことだ……?」

 

 

フレディの良くわからない話に、俺たちは頭に疑問符を浮かべる。そこから更に話は続いて、トワナはまだ幼いから畑仕事の大切さを理解してないのに、ストラは大きくてその大切さを理解しているのにサボる。そしてメイはトワナっぽくて、ヒロトはストラっぽいという

 

全くわからない話に、更に頭に疑問符を浮かべるが、どうやらメイは理解できたらしい

 

 

「私はこれまでチームバトルを知らなかった。ヒロトは知っているが、それを拒んでいる」

 

 

と。それを聞いて、納得した。確かに、メイは元ソロ専だったし、知らなかったのは無理もない。でもヒロトは知っているのにそれをしようとせずに、一人で戦おうとする。自己を犠牲にしてでも、勝ちにいくかのような戦い方を

 

だから、ヒロトとメイは違う。か……まぁ、それはそうだろう。仕方を知らないと知っているのにしないというのは……

 

 

「でも、ヒロトさん、どうしてそうなんでしょう……?」

 

 

だからこそ、ヒロトはあんな戦い方をするのだろうか……あたしの話を聞いてくれた彼は、なぜ自分の身を削るような、戦い方をするのか……本当に、不思議だ

 

 

 

 

 

そして、作戦開始の時。機体のあるところに全員が集まり、少ししてヒロトも合流してきた

 

 

『よっしゃ! いっちょやるか!』

『僕たち、やりませんけど、今回……』

『気分なんだろ? ま、そういうの、分かるけどさ』

 

 

軽くカザミとパルのやりとりに反応し、こちらも一旦気を引き締めるために深呼吸をしておく。やはり、何事も備えというのは必要だろうしな

 

それに……もしかしたら、あのMK-3のカスタム機……ゼルトザームの襲撃があるかもしれないしな……そういや、おとついの時に、アイツ出てこなかったな。やはりあれは、サブイベってことなんかな

 

ヒロトも機体に乗り込み……ついでにフレディも一緒に乗り込み、全員の出撃準備が整った

 

 

『ジャスティスナイト! 出るぜ!』

『マーズフォーガンダム、マーキュリーアーマー、出る!』

 

 

それぞれが目標地点である白銀の塔と呼ばれる所へと出撃し、空を飛ぶ。しばらく飛行していくと、海面には流氷が現れるようになり……その先に、天まで貫く巨大な塔が見える。あれが、白銀の塔……ってか、あれって

 

 

『うおぉ! やっぱりアレ、軌道エレベーターだよな!? ってことは、この次のステージは宇宙ってことだよな! ようやくガンダムっぽくなってきたなぁ!』

 

 

やはりカザミもそう思ったのか、あれを見て軌道エレベーターを連想したようだ。確かに、宇宙まで届いていそうなほど高い鉄で出来た塔ならば、そう思うのも無理もない。他のみんなも、そう思ったのだろうか、その塔の真上を見上げているようだった

 

 

[ビー!! ビー!!]

 

 

突如、敵が接近してきたことを知らすアラートが発令された。レーダーを確認すると、高速でこちらへと向かってくるのが分かる。もうこちらを補足したのだろう。にしても……反応が、大きい気がするんですけど?

 

海上へと目を向けると、水面の上からでもわかるくらい大きな影と、そしてその上に突き出たヒレのようなモノが確認出来た

 

 

『『サメ!?』』

『あれなら! 上からでも攻撃できそうじゃねぇか!』

 

 

水中型の機体だからか、そういう魚類関係のモチーフの敵だろうか……マーメイドガンダムってこと? それって確か、あのロータス卿のそれを連想するが……それのカスタム機なのだろうか。しかし、あれほどの巨体なら、海上からの攻撃でも問題なく狙えそうだ。ならば、このアインでも問題なくいけ

 

 

『え……?』

 

 

その巨体が、水中から一気に跳ねて飛びかかってきた

 

 

『で、でけぇ……』

 

 

その見た目は……デスアーミーの水中型、デスネービーのカスタム機……にしては形状がまるで違う。まるでエイのような見た目の、しかもかなり大型化された……そんな形に改造された、デスアーミーだった

 

またデスアーミーかよ! ドートレスとグレイズはどこいった!? せっかくいろんな作品の機体が出始めて、これからかな? って時に、なんでまたもどったの!?

 

しかし、あんなものを、ヒロト一人でやれるのか? 本当に一人で行かせて大丈夫なのか?

 

 

『こういう戦いは、前にも経験している』

 

 

いや、そうは言ったところで、本当に俺たちはいなくてもいいだろうか……? 色々と言いたいことを言う前に、ヒロトは1人、水中専用のメルクワンガンダムへと換装し、水中の中へと潜っていった

 

本気で心配だと思っている俺とパルと、不安そうな表情が声から伝わるカザミと、ただそれを見つめていたメイを、置き去りにして……

 




本編がヒロト君メインなので、そこまで介入する事はないかな

次回、メイの真の姿降臨


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

EL Diver MAY

海上……ヒロトが水中に潜ってから、しばらくが経った。海面を見ても、時折大きく揺れたりしているところから、かなり激しい攻防が繰り広げられていると判断できるが、実際の戦況はどうなのだろうか……防戦一方なのか、それともヒロトが有利に動いているのか……

 

 

『やっぱり、通信出来ません……』

『あの水中型が、妨害でもしてんのか?』

『メンバーのステータス画面も、ヒロトのとこだけ非表示になってる……よほど強いジャミングがしてあるっていうこと?』

『そういう特性を持った機体なのかもしれないな』

 

 

だとすると、そうとう厄介な状況だ。もし場所やステータスが判明すれば、どのような状況なのかが分かるところなのだが……そういうのがわからないとなると、現状把握が出来ない……ジャミング特性を考慮して、探査用装備でもして、戦況の確認ぐらいできるようにしていれば良かったんじゃないだろうか……

 

 

『とにかく、こちらは出来ることをやるしかない』

『だな。ゼルトザームとかいうのが、また出てくるかもしれねぇ』

『……要警戒、ってわけか』

 

 

ならば、全周囲をレーダーで再度確認すると、敵の様子は全くない。それに、センサーカメラ越しに周囲を見渡しても、敵影は全くない。向こうに見える白銀の塔と呼ばれる所にも、それらしい機体も全くない。今のところ、敵として確認したのは、ヒロトが今相手にしている水中型のみだ。それさえ倒せば、ミッションクリアだ

 

なら、やはり警戒すべきはあのゼルトザームだ。おそらくだが、アイツは前回顔出しということで乱入してきたのだろう。クリア条件に、アイツを倒すということは言われてなかったし。それに、もしあれが乱入ボスというのなら、別に倒さなくても問題はない。今回来たところでも、相手取る必要はないはずだ

 

だが問題となるのは、もしあれが水中にも対応できて、今ヒロトと戦っているところに乱入されたらという点だ。ただでさえMAレベルの巨体に、あのオーバースペックのゼルトザームが合流されたら、誰だってひとたまりもない。そんな状況、チャンプか百鬼のオーガ、あるいは団長みたいなハイランカーでもなければ突破は不可能だ

 

そんなクリア不可なミッション、運営が導入を認めるわけはないと思うので、ありえないだろうけど……果たして、どうなのだろうか

 

いろいろな思考を巡らせながら、周囲を警戒してると、海面が大きく波打った

 

 

『!?』

『なんだ!?』

 

 

爆発……というわけではないようだ。おそらく、なにか大きな衝撃があって海面まで達してそれで波打ったのだろう。だが、その波打った時の海面近くに……白い銛のようなものが一瞬だけ見えた

 

 

『おい、あれって……!』

『まさか、ヒロトさんの!?』

 

 

それは、ヒロトのメルクワンガンダムの、ウォーターニードルガンの銛だった

 

 

『ッ!』

『あ、メイ!?』

 

 

それがなんなのか判明した直後、一番早く動きだしたのはメイだった。おそらくヒロトがしくじったのかと判断したのか、海中の中へと潜っていった。おそらく、ヒロトの救出に行った、のだろうか。残った俺とカザミ、パルの三人は出遅れて、一緒に潜るべきかどうかを悩んでいたところで……

 

ヒロトのメルクワンが、海の中から飛び出てきた

 

 

『! ヒロト!』

 

 

すぐさま空を舞うヒロの機体を、抱くように受け止める。その姿は、見るからにボロボロで、装備のほとんどを使い切っているように見え……海中での戦いの激しさを物語っていた。やはり、一人でどうこうするには、無理な相手だったようだ。メイが咄嗟に救出に向かっていなければ、今頃どうなっていたことか

 

そのまま、一際大きな流氷の上に、ヒロトの機体を降ろす。カザミとパルの二人も近づき、そのまま着氷する

 

 

『どんな感じだって、聞くまでもねぇか、その様子じゃ……』

 

 

カザミも、かなり心配していたのだろう、労わるようにヒロトに声をかける。その機体の有様を見て、カザミも今回の敵の脅威を再認識したことだろう……アイツ、かなり強い。ならば、チーム全員で挑まなければ、おそらく勝てないだろう

 

しかし、水中専用装備のヒロトがここまで手こずるような相手を、一体どうすれば対処可能なのだろうか……それを相談して対応を決めようと声を出そうとしたら、パルの方から提案があった

 

 

『あ、あの! アイツを、この上に引き上げて倒せませんか!?』

『え?』

『あ、なるほど』

 

 

確かに、そうすればここにいる全員でも戦える。陸の上ならば、俺もカザミもパルも問題なく動けるし、それにあいつの見た目からしても、海の上で行動できるような感じでは無かった……なるほど、そこは盲点だった

 

ヒロト1人に任せて大丈夫なのか。それをずっと気にしていたパルだったから、出撃してからもずっと考えていたのだろう、自分たちも出来ることがあるはずだと……そこはパルらしいな

 

 

『いいんじゃねぇか、丘の上なら怖くないぜ!』

『俺も賛成だ。そのほうがやりやすい』

『私も賛成だ。チームとは、同じ目的のためにリソースを集中する。そういうことだろう?』

 

 

カザミも俺も、そしてメイも、パルの案に賛成する。ヒロトは一度渋るような雰囲気を出したが、他三人の賛成を聞き、考えを改めたようだ

 

ならば、あとは行動あるのみだ……!

 

 

 

 

 

 

竜合身(ドラゴン・フュージョン)!!』

 

 

そうして、敵をこの流氷の上に引きずり込む作戦を開始した。作戦の指示は、水中レーダーを持ち、相手のどの部位にダメージがあるかを知っているヒロトがすることになった

 

そして、その一段階目として、パルがSD形態へと変形し、海中へと潜った

 

 

『大丈夫か、パルのヤツ……』

『パルと、パルのヴァルキランダーなら、やれる……!』

 

 

その指示の内容は、まずパルが海中へと潜り、敵を海中深くまで誘導する。これは敵の装甲を水圧で脆くさせるために行うことで、この中で水中でも身軽に動け、更に水圧に対する処理を施してあるヴァルキランダーがその役を担う。しかしヴァルキランダーだけでは、水中での機動性で負けているところがあるので、そこはヒロトのウォータービットを使うことで底上げを行うことでカバーする算段だ

 

 

『! 上がってくる! メイ! 銛のスタンバイを!』

 

 

パルが海中へと潜ってしばらくした後、どうやら成功させたようで、パルと敵が浮上してくるのをヒロトのレーダーが観測した。そして、次の指示が飛ぶ

 

 

『カザミ、後ろを頼む!』

『任せろ!』

 

 

次に、メイのウォドムに取り付けたワイヤー付きの銛を相手に突き刺し、相手を釣り上げる。そしてこの上に叩きつけて、みんなでボコる。全体的にいうと、そういう作戦だ

 

ヒロトが観測して計算をした結果、パルの0.28秒後に水中から上がってくると予測したので、その通りに狂いもなく、メイは銛を射出した。すると、相手はヒロトの予測通りに海の中から飛び出してきて、銛は相手の装甲の隙間を確実に捉えて直撃した

 

 

『やった!』

『いや……』

 

 

が、貫通するほどまだ装甲は硬かったようで、銛は弾かれてしまった

 

 

『『ッ!』』

 

 

それをカバーするために、ヒロトが弾かれた銛を拾い、海の中へと逃げる相手の後を追う。それに続くように、俺も海の中へと潜っていく

 

海の中で反転し、向かってくるこちら二体に対し、肩の水中用の高出力のプラズマ魚雷と、尾による物理攻撃で迎撃をしてくる。それを難なく避けて、ヒロトは敵へと急接近し、銛を突き刺す。だが、それでも深くまでは刺さらず……

 

 

『この……野郎!』

 

 

水中用に調整をしたバーニアを一気に吹かし、敵の真後ろを取った。そのまま敵を抱き抱えるように掴み、敵の動きを押さえ込む。念の為に、そこぐらいはやっといて良かった……!

 

 

『ヒロト!』

『ウオォォォォォォッ!!!』

 

 

そのままブーストをかけて、最後のひと押しをしていく。深く、深く突き刺さるように願い……

 

脆くなった装甲の上から、銛が刺さった

 

 

『よっしゃぁ!』

『メイ! カザミ! 上げろ!!』

 

 

ジャミングが効いているが、ワイヤー越しに接触回線での通信の為、問題なくその声は届き

 

 

『カザミ!』

『おう!』

 

 

二人による釣り上げが始まる。俺も後ろに取り付いているため、バーニアでその補助を試み、すぐに敵は再び海上へと浮上されていき……

 

 

『海の漢をォ……舐めんなァァァァァァッ!!』

 

 

カザミが、ウォドムを釣りのルアーのように引っ張りながら持ち上げ、メイもワイヤーを出力が許す限り全力で巻き上げて

 

一本釣りの要領で、相手の水中用デスアーミーは、陸上に打ち上げられた

 

 

『よっしゃァ! あとは捌くだけだ!! メイ! 胴体を押さえろ!』

『了解ッ』

 

 

もうここまでくれば怖くはなく、あとはボコるだけだ。一応、逃げられないようにするためなのか、カザミの指示で相手を真上から押しつぶすようにメイが取り押さえる

 

 

『リアン! 尻尾を根元で切れ!』

『ハッ、命令すんなよっと!』

 

 

そのままカザミが指示を続け、尻尾を根元で切るように命令してきた。多少軽口を飛ばしはしたが、その指示通りに根元をアックスで寸断する。そうして動いたことに関しては、特に悪い感情は浮かばず……むしろ、楽しいとさえ、思った

 

 

『次はヒレ! パル! そっち頼む!』

『はい!!』

 

 

続けてカザミの指示が飛ぶ。今度は左右についているヒレのパーツを、カザミとパルの二人で両断し、これで完全に水中に戻ったところで、以前までの機動性は無くなり、逆に海底深くまで沈んでいくことになる。ならば、あとはもう

 

 

『よし! 最後は!!』

『ウオオォォォォォォォォォォッ!!!』

 

 

ヒロトがマーズフォーに換装し、ハードヒートレヴソードでVの字切りに胴体を切りつけたことで……相手に止めを刺し、爆散させた

 

 

 

 

 

 

『ふふ、僕、こういうのがずっとやりたかったんです!』

『俺の的確な指示のおかげだな。ま、最後はヒロトに持ってかれたけど』

『そういや、お前、エイの捌き方なんて、よく知ってたな』

『あ、そうですね。海の男がどうとかとも……』

『あッ、いや、そりゃあ……あれだよ。ゾックンマイオールリスペクト~』

『あぁ』

『ほんとかぁ?』

 

 

パルの嬉しそうな声に、カザミの得意げな声が聞こえる。パル的には、チームで連携して敵を倒すというシチュエーションに憧れを持っていたようで、それが叶ってご満悦の様子だ。俺もそういうのは好きだし、気持ちはすごく分かる。だけど、まさかこのパーティであんな事をすることができるとは、最初の頃は思いもしなかったがな

 

ってか、カザミはなんであんな知識持ってんだ? もしかしてリアルは漁師なんだろうか……釣りの動きもしてたし、なんかそれっぽいな

 

 

『パル、カザミ、リアン』

『『『?』』』

『三人には、もっと早く助けてもらうべきだった……と思ってる』

『え?』『ほえ……!?』

『へ、今更かよ……』

 

 

ふと、ヒロトの方から感謝の声がかけられた。あまりにも不意打ちすぎたので、ちょっと素がでてしまった。周りには……どうやら、バレていない、ようだ……

 

なんだろう、少しだけ、なんか……嬉しいというか、なんというか……うん、まぁ、嬉しいんだろう、な……そんな、ほんの少しの興奮を感じている中……

 

 

 

 

 

それは、やってきた

 

 

 

 

 

[ビー!! ビー!!]

『『『『『『!?』』』』』』

 

 

けたましい警報音が鳴り響く。頭上を見上げると、紫色の稲妻が幾重も走っている。その一筋が、地表へと落ち、爆煙を登らせ……

 

その地点に、あの機体が佇立していた

 

 

『ゼルト、ザーム……!』

『ッ、来たのかよ……!』

 

 

 

前々回の戦いの最後に現れた、あの強力無比の敵が、姿を現した

 

 

 

姿を現したそいつは、佇立したまま足の肥大化している装甲のすね部分を展開し、ビームを連射してきた。威力的には一般的なビームライフル相当の火力ぐらいだろうが、それを連射するとなると、その総合火力は桁違いだ……多分、ナノラミネート装甲でも、くらい続ければやられる

 

 

『これじゃ出るに出られねぇ……!』

 

 

そのまま散開し、近くの氷山を壁にしてやり過ごす。だがその連射は止まることをしらず、打ち続けている。これでは、この壁すら削り壊して、障害物がなくなってしまう。そうなれば、前回の二の舞になりかねない

 

それを早急に察知し、すぐさま行動に移したのは、やはりヒロトだった

 

連射の合間に隙が出来ると、ハードヒートレヴソードをブーメランのように投げつける。そこで強引に更なる隙を生み出させて、連結したスラッシュブレイドを冗談から勢いをつけて斬りかかる

 

 

 

だが、それを奴は右腕の異形の腕部で掴むことで防いだ

 

硬すぎる……! オマケにその反応速度も恐ろしいまでに早い。俺のアインは、こういう格上な奴と相手する機体ではあるが、おそらく何もできず終わってしまう……あまりにも可笑しいと思えるレベルだ

 

そうこう考えているうちに、連結したスラッシュブレイドが先に悲鳴を上げ……粉々に砕け散った

 

 

『! ヒロトォ!!』

 

 

そのまま、敵の追撃をくらってしまったヒロトは、氷山の壁へと叩きつけられる。その反動で、左足が欠損。ダメージレベルも、レッドゾーンへと入っていた

 

敵は先に手負いのやつから仕留めるのが上策だと判断したのか、そのままシールドバインダーに格納されているキャノン砲を展開……あれは、以前ヴィートルーのバズーカと、パルの連結銃、あと俺のビームマグナムの同時射撃を無効化させるほどの高出力のビーム……

 

落ちる。確実に……そう思った直後、動き出したのは……メイだった

 

 

『『!?』』

 

 

敵のキャノン砲が放たれると同時に、ヒロトの前に立ち、ウォドムの頭部を盾にして防ぐ。だが、やはりそう安々と防げるわけがなく……ウォドムは、爆発した

 

 

『メイ!!?』

『メイさん!!?』

 

 

やられた……あんな中で、生きているわけがない……とうとう初となるダメージアウト者が出たと、そう思い込んだ

 

 

[ガゴンッ!]

『『『『『!!?』』』』』

 

 

でも……そうは、成らなかった。その爆炎から、バク転をするように、ヒロトの前に降り立った機体があったのだ

 

その姿は、まるで……メイをそのまま、MSのような機械的な風貌へと変えたかのような見た目で……

 

 

『『……EL、ダイバー……!』』

 

 

俺とヒロトが、揃って同じことを、呟いた




そろそろ、一部も終わりそうです……でもまだまだ先が長くなりそう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

【安価でダイブ】43スレ目 その6

昨日は仕事の疲れで帰宅したら爆睡してしまった……

あと仕事が繁忙期に入って執筆の暇が取りにくくなったので、少しペースが落ちます。ご了承下さい。


その姿は、ガンダムという作品内では、考えられないくらい細身で、女性的なシルエットをしていた。類似するものとしては、Gガンダムのノーベルガンダムがそうだろう

 

そしてなにより目を引くのは、その姿の元というべきところ。そのガンプラは、まるでメイを機械的にアレンジしたMSというべき形状をしており、メイの特徴であるあの長い髪は、二つの大型スラスターのようなモノとして、頭部の後ろに装備されている。腕も、足も、その装甲の彩色も、頭部のメインカメラの色も……全てが、メイを彷彿とさせるものだった

 

そんなガンプラを……自身のダイバールックに酷似したガンプラを使うのなんて、よほど自身のダイバールックに自身のある女性ダイバーか、あるいは、その最初の存在となった人と同じ存在であるダイバーしかおらず……メイは前者では絶対無いと言い切れるから、彼女は間違いなく……

 

 

『メイさんって、まさか……』

『……EL、ダイバー……?』

 

 

ELダイバー。GBNが生み出した奇跡で、電子生命体と呼ばれる、新たな命。その1人なのだと

 

 

『……ッ!』

 

 

メイのMS……いや、モビルドールが駆け出す。大型のウォドムポッドとは全く異なるその体型の駆け出しは、軽量機特有の速さで、ゼルとザームへと向かっていく

 

ゼルトザームも反撃をするが、その全てを躱していき、攻撃を叩き込んでいく

 

接近してからの蹴りに、攻撃を回避しながら後退し、そこからのハンドガンによる銃撃。小型のビームシールド発生器を投げつけ、それを壁にしながらの再接近。その際には、ヒロトのヒートアックスを拾い、それを投げつけて隙を作り出す

 

翻弄されていくゼルトザーム。だが、その攻撃の一つ一つには決定打となり得るほどの火力は無いのか、翻弄されるだけで、撃破とまではいかない……一体何をするつもりなのだと思いながら、その様子を見続けていると

 

ゼルトザームの大ぶりの攻撃を宙返りで避け、背後から羽交い締めにし、首に腕部から出るビームサーベルを当てた

 

 

『……すごい……』

 

 

あまりにも、流れるような動きでそこまでの事を成し遂げた。それは、見るものを感嘆させるほど、綺麗な動きで、戦闘なのかと疑ってしまうくらいのものだった……

 

そんな、見惚れるほどの動きをしたメイ。そのメイが、ゼルトザームに向かって口を開く

 

 

『貴様、シドー・マサキか……?』

『え……シドー……?』

 

 

その名を聞いたとき……最初にゼルトザームを見たときに浮かんだ名と、それについてスレで語っていた内容が、頭に浮かんだ

 

確か、あのゼルトザームに酷似しているガンプラ、テルティウム。それのダイバー名は……シド。そして、今メイがいった名は、シドー・マサキ。ひょっとして、シドの、リアルネーム……!?

 

おそらく、接触回線で会話をしているのかもしれない。そう思い、自分もゼルトザームに触れようと接近しようとしたところで

 

 

『うわあぁーーーッ!!?』

『ぐうゥゥーーーッ!!?』

 

 

メイを振り払い、地面にビームキャノンを叩きつけ、その光熱と衝撃による水煙に紛れ、姿を消した

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………

 

………………

 

………

 

 

 

 

 

703:以下無名のダイバーがお送りします

むちゃ丸さんおつでした~

 

 

704:以下無名のダイバーがお送りします

おつつ~。可変機相手に防衛戦は不利だっての……

 

 

705:以下無名のダイバーがお送りします

んお? なんだフォース戦でもしてたん?

 

 

706:以下無名のダイバーがお送りします

バトランダムで当たったんや。見事ボロ負けしましたわ

 

 

707:安価ダイバー応援団長

もうその時期だったか、すっかり忘れてたわ

 

 

708:以下無名のダイバーがお送りします

イッチが参戦しなかったからな、すっかり存在を忘れてたわ

 

 

709:以下無名のダイバーがお送りします

ストミの方集中してるからなぁ、何げに毎回楽しみにしてるから、他のこと忘れてたわ

 

 

710:以下無名のダイバーがお送りします

分かる。何げに小説かなんかを見てるような気分だわ

 

 

711:以下無名のダイバーがお送りします

それな

 

 

712:以下無名のダイバーがお送りします

さて……まだイッチ来てないみたいだけど?

 

 

713:以下無名のダイバーがお送りします

今日、バトランダム始まる前に会ったから、時間的にそろそろ来ても遅く無いんだけど

 

 

714:以下無名のダイバーがお送りします

こねぇな

 

 

715:以下無名のダイバーがお送りします

713から三十分ぐらい待ったのに……まだ来ないのか

 

 

716:以下無名のダイバーがお送りします

一体何に手間取ってるんだ?

 

 

717:1

ごめん、遅くなった

 

 

718:以下無名のダイバーがお送りします

イッチ!

 

 

719:以下無名のダイバーがお送りします

やっときたか!

 

 

720:以下無名のダイバーがお送りします

おせぇよ!

 

 

721:1

いろいろとまとめてたから、遅くなったんだよ……とにかく、今日の報告始めるから、目ん玉見開いてよく見ろよ

 

 

722:以下無名のダイバーがお送りします

よし来い!

 

 

723:以下無名のダイバーがお送りします

さて、今日は一体何があったのやら

 

 

724:1

いつもどおり、長文注意だぜ

 

 

 

………

 

………………

 

………………………

 

………………

 

………

 

 

 

740:以下無名のダイバーがお送りします

なんなん? その息のあった連携……?

 

 

741:以下無名のダイバーがお送りします

ここで前スレの最後あたりの事を思い出そう。めっちゃ成長してるんですけど

 

 

742:以下無名のダイバーがお送りします

全員主人公かよ……覚醒したパル、何かを見出したカザミ、チームのイロハを知ったメイ、他人を頼り出したヒロトに、このメンツを信頼するイッチ

 

 

743:以下無名のダイバーがお送りします

アニメかな?

 

 

744:以下無名のダイバーがお送りします

なんかそんなレベルのことやってるなぁ、おい

 

 

745:1

そういうのやめてくれ……ほんと恥ずかしい

 

 

746:以下無名のダイバーがお送りします

んー……なんか、想像してた展開と違う

 

 

747:以下無名のダイバーがお送りします

最初はヒロトとメイが独断で動き回って、そこをカザミとパルが足出纏いのように邪魔して、イッチがその惨状に発狂しながら立ち回るというのを連想してたのに……

 

 

748:以下無名のダイバーがお送りします

一つのチームとして完成されつつある……え、なに? このストミは適当なメンバー選出して、そのメンバーをチームとして作り上げていく養成ギブス的なミッションなの?

 

 

749:以下無名のダイバーがお送りします

そんな馬鹿なこと……ありえてるんだよなぁ、今

 

 

750:1

俺もまとめててびっくりしてる。ほんと、よくここまでこれたもんだと思う。ミッション的にも、チーム的にもさ

 

 

751:以下無名のダイバーがお送りします

なんだろう……この、熱い展開というか……

 

 

752:安価ダイバー応援団長

そういうの、嫌いじゃねぇからいいけどよ。んで、そのあとに次のミッションについて説明が入ったってとこか?

 

 

753:1

いや、まだ続きがある

 

 

754:以下無名のダイバーがお送りします

続き?

 

 

755:以下無名のダイバーがお送りします

まだなんかあったのか?

 

 

756:1

最後の最後に、あのゼルトザーム、前に議題にしてたやつが現れたんだ。疲弊したこっちを、まるで狙ってたかのように。無論、こっちは一応覚悟はしていたけど、やはり奇襲のようにやってきた奴に対して対応が遅れて防戦状態

 

ヒロトが向かっていったけど、また一撃であしらわれて撃墜寸前に……最後の止めとしてキャノン砲を向けて放ったあと……メイがそれを防いだ。ウォドムポッドをまるごと盾にして

 

その後……大破したウォドムから、一機のMS、じゃなくて、モビルドールが現れたんだ。メイの姿そっくりのヤツが

 

 

757:以下無名のダイバーがお送りします

ほほう?

 

 

758:以下無名のダイバーがお送りします

テルティウム似のやつがきたかぁ……ってか、ウォドムの中からMSって、え?

 

 

759:以下無名のダイバーがお送りします

メイそっくりのモビルドール……あ

 

 

760:以下無名のダイバーがお送りします

意外と自分のダイバールックに自信有り、と?

 

 

761:1

んなわけないだろ

 

多分759は感づいたかもしれんけど、メイはELダイバーだった

 

 

762:以下無名のダイバーがお送りします

は? ま?

 

 

763:以下無名のダイバーがお送りします

ELダイバー、だと……!?

 

 

764:以下無名のダイバーがお送りします

ELダイバーって、あの?

 

 

765:以下無名のダイバーがお送りします

いや、それしかないやろ

 

 

766:安価ダイバー応援団長

ELダイバー……二年前のあの第二次有志連合戦の中心にいた子、の事だったか?

 

 

767:以下無名のダイバーがお送りします

そうそう、それっす。今GBNをプレイしているやつなら、ほぼほぼ常識になりつつありますけど……実際会ったことは無いんすよね

 

 

768:以下無名のダイバーがお送りします

ダイバーとしてGBNにログインすると、もう俺らと見分け付かねぇからなぁ……

 

 

769:以下無名のダイバーがお送りします

実際にイッチが一緒にいた時に会ったけど、全く分からなかったわ

 

 

770:1

だろ。後で聞いてみたら、その通りだと言われて驚いたわ。人間じゃねぇのかともおもったけど、あとでメイが、お前たちとは違う有り様をしているが、自らの存在や意志を知覚し、生命活動をしている。とか言うし、実際にリアルからログインをしているとも言ってたから、まぁ俺らとは変わらないんだろうと思う

 

 

771:以下無名のダイバーがお送りします

でもレアな存在なのは変わらないわ。一億人の中から、87人……だっけ? と出会うのは

 

 

772:以下無名のダイバーがお送りします

でもなんかよく会わなくないか? ビルドダイバーズのサラちゃんには

 

 

773:以下無名のダイバーがお送りします

シーサイドベースをメインにしてるやつなら、多分一度は姿を見かけるだろうな。ロビーでミッション受注してるとことか、よく見かける

 

 

774:以下無名のダイバーがお送りします

ビルドダイバーズ、サラ、リク……口の中が、甘い……!

 

 

775:以下無名のダイバーがお送りします

あれは忘れられない……フリーフライトエリアで空中飛行性能を試してた時に見かけた、空を飛ぶリクくんとサラちゃん。サラちゃんが上昇したかと思ったら空中で機体を消して自由落下。それをリクくんが下で機体を消して受け止めてそのまま機体を出してまた飛行……しかも受け止め方がお姫様だっこという

 

 

776:以下無名のダイバーがお送りします

甘い……口の中が甘くなってきた……コーヒー淹れてくる

 

 

777:以下無名のダイバーがお送りします

話題を出すたびに砂糖を生み出す存在、リクサラ。あのふたりのイチャイチャは誰にも止められない

 

 

778:以下無名のダイバーがお送りします

止めちゃダメだろ、あの二人に関しては

 

 

779:以下無名のダイバーがお送りします

分かる

 

 

780:以下無名のダイバーがお送りします

リクサラ……いいよね

 

 

781:以下無名のダイバーがお送りします

甘ったるすぎるのがなんとも言えないんだけどな……

 

 

782:1

あの~……いいかなぁ? 続き話しても?

 

 

783:以下無名のダイバーがお送りします

あ、すまん

 

 

784:以下無名のダイバーがお送りします

リクサラの話題を出すと、つい語りたくなっちゃうんだ

 

 

785:安価ダイバー応援団長

今はイッチの報告が優先だ。んで、ゼルトザームが現れて、メイがELダイバーだったと判明した。そのあとはどうなった?

 

 

786:1

そのあと、メイがゼルトザームと交戦して、そいつに羽交い締めするとこまで行けたんだ。そして、ゼルトザームのパイロットに対して、お前はシドーマサキか? って言ってたな

 

 

787:以下無名のダイバーがお送りします

シドーマサキ? だれそれ

 

 

788:以下無名のダイバーがお送りします

シドー……まさか、無双のシド?

 

 

789:以下無名のダイバーがお送りします

え? あのテルテル坊主のダイバー?

 

 

790:1

なのかは、わからない。向こうは何も答えることはなかったし。俺も相手のダイバールックを確認しようと思って、接触しようとしたら逃げられたし

 

 

791:以下無名のダイバーがお送りします

でも、マサキってなんなん……? もしかして、シドのリアルネーム?

 

 

792:以下無名のダイバーがお送りします

かもしれん。けどなんでそれをメイが知ってるんだ? ELダイバーだから?

 

 

793:以下無名のダイバーがお送りします

ちょいと謎いな、それ……なんか他にも言ってたことあった?

 

 

794:1

いや、特には何も。聞こうと思ったけど、なんか言いづらそうな感じだったから、あえて深く聞かなかったわ

 

 

795:以下無名のダイバーがお送りします

言いづらそうって……なんなんだそれ?

 

 

796:以下無名のダイバーがお送りします

またなんかきな臭いことになってないか? このストミ

 

 

797:安価ダイバー応援団長

お前ら、この件、ほかに口外すんなよ

 

 

798:以下無名のダイバーがお送りします

え?

 

 

799:以下無名のダイバーがお送りします

団長?

 

 

800:安価ダイバー応援団長

とにかく、俺が良いというまではここ以外で話すことを禁ずる。いいな、いないかもしれんが、ROM専の連中もだ。わかったな

 

 

801:以下無名のダイバーがお送りします

う、うす

 

 

802:以下無名のダイバーがお送りします

団長がそこまでいうのなら、まぁ従います

 

 

803:以下無名のダイバーがお送りします

言った瞬間、団長がブチギレる未来が見えたから言いません。決して、固く誓います

 

 

804:1

団長?

 

 

805:安価ダイバー応援団長

とにかく、今日はお疲れだったな。また次のミッションとかもあるだろうと思うが、それについては明日にでもいいだろう。もう時間的にも遅いしな

 

 

806:1

あ、はい。もう結構な時間だわ……んじゃ、また明日なぁ~

 

 

807:以下無名のダイバーがお送りします

うぃ~っす。おつつ~

 

 

808:以下無名のダイバーがお送りします

しかし、なんか思い当たる節があるんすか? 団長?

 

 

809:安価ダイバー応援団長

いや、無い。ただ796と同様に、きな臭いと感じただけだ

 

 

810:以下無名のダイバーがお送りします

はぁ……まぁ、別にいいっすけど

 

 

811:以下無名のダイバーがお送りします

団長、何を感じたんだろうか……気になるわ~

 

 




リクサラは糖分。26話のあのお姫様抱っこにはやり慣れてる感が出てて変な笑いが出た


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Festival of SORAWATASHI

このお祭り回、何気に好きなので、ちょっと長めに作りました




今日はミッションではなく、完全に遊びという雰囲気だった。以前、セグリまで行って買い出しをし、準備が進められていた空渡しというお祭りに参加していた

 

フレディ達の村の一大行事らしく、村では大勢の人がそれの準備を進めていて、高い櫓や露店が縁日みたいな感じに並び、まさにお祭りと言った様相に彩られている。このお祭りの為に、わざわざ遠い所に出稼ぎに行っている村人や、レジスタンスに参加している人も一時的に戻ってくるそうなので、なんだかお盆のそれのようなモノなのだろう

 

ヒトツメとかいう奴らがいるのに、大丈夫なの? という疑問はあるが、どうやら自分達が今まで倒してきたし、その生産工場も爆破した事から、この周辺にヒトツメがいなくなったようだ。一応レーダーで索敵をしたが、反応は無かったから、そうなのだろう

 

っていうか、イベントパートなんだから、敵がいないのは当たり前か。なんだか最近、このストーリーミッションの事がリアルでやってる感じを受けているからか、妙にのめり込んだ考えをしてしまう……ここまでどっぷりハマるとは、思いもしなかったなぁ

 

そして、その祭りに俺たちも参加して欲しいという事で、今こうしてログインしてフレディの村にいる。来た時には、セカンドミッションの時に塞いだ道の岩をどかして欲しいとの事で、土木作業をする羽目になったが、ガンプラを使ってやって直ぐに終わらせた

 

そういや、なんであの道、塞いだままだったんだ? 連戦の合間にはフィールドの状況は全てリセットされるはずなんだが……あの時ヒロトが投げ捨てたアースリィの盾すら残っているし……バグかな? 開発しっかりしてくれよ……

 

岩の撤去が終わったあとは、そのまま村の飾りつけも手伝うことになり……なぜか、ヒロトのコアガンダムでブランコを、パルのヴァルキランダーに滑り台をつけて、メイのウォドムと俺のアインに、飾り付けがされる事になった。ブランコと滑り台はまぁいいけど、アインとウォドムが花飾りで彩られていくのには、ちょっと笑ってしまう

 

まぁ、そんなこんなで……いよいよその祭りが始まった

 

 

 

 

 

『ヘヘッ、祭りといやぁ、花火だろ!!』

 

 

カザミのプチッガイ……いや、ジャスティッガイ、だったか。それが持つビームライフルに八つのビーム砲が取り付けられた銃から、複数の花火が打ち上げられる。武器としての威力はなく、完全に遊びで作られたエフェクト重視の装備だ。色々とあるGBNのミッションの中には、こういった芸術点で競い合うモノもあるから、それ用の機体なのだろう。プチッガイベースだし

 

ってか、銃の見た目がクロスボーンのピーコックスマッシャーのそれじゃん……

 

 

「ったく、なんやかんや言いつつも、一番アイツがノリノリでやってるじゃん」

「そういうお前も、ダイバールックを変えてきているじゃないか」

「う……」

 

 

そう、メイに言われたとおり、今の俺はいつもの軍服の上着の代わりに赤の法被という、祭り男感のある出で立ちのダイバールックとなっている。因みに、後ろには祭と文字がでかでかとついているやつである。こういう着せ替え用のアイテムはそれなりに持っているから、祭りと聞いてついこれを持ち出していた

 

 

「ま、まぁ、アレだ。TPOに基づいた衣装に着替えるのは、当然の事でしょう、よ。でも、周りが変わらないから、逆に目立っちまってるけどな」

「ははは……でも、素敵な服ですよね、それ」

「おう。俺も気に入ってるんだ、こういうのさ」

 

 

お祭りというどことなく高揚感が高まる場でしか着ることのない服だからか、袖を通しているだけでも、ちょっと気分が良くなるっていうのはある。本来なら、女のモノを着たいとこだけど、ね……しかし、さっきのニュアンスからして、やっぱりパルは海外勢か。にしては、日本語上手いな

 

 

「ねぇねぇ、その腰にさしてるの、なに?」

「?」

 

 

ふと、アシャが近くに寄ってきて、俺の腰にさしてあるあるものについて訪ねてきた。近くにはトワナとフルンと、いつもの三人組がきた感じだ

 

 

「これか? これはな、鳴子って言うんだ」

「「「「「なるこ?」」」」」

 

 

三人組と、ついでにパルとメイの二人も、頭の上にクエッションマークを出しているかのような顔で首をかしげる。まぁ、そうだよな。三人組は言わずもがな、パルは海外だし、メイは生後間もないということだしな……ガンプラ知識だけデフォルトで備えて生まれてくるらしいけど。偏ってるなぁ

 

 

「楽器だよ。祭の踊りの時に、これをこうやって振って音を鳴らしながら踊るんだよ。けっこう面白いだろ」

「「「「うわぁ~~~!」」」」

 

 

一度実践して音を鳴らして見ると、子供たちが目を輝かせて見てくる。何げにパルも、三人組と一緒になって見てるあたり、興味津々である

 

 

「お、なんか景気いい音がしたと思ったら、鳴子じゃねぇか」

「お、やっぱお前は知ってたか。祭りといや、ウチの近くじゃこれが主流だからさ」

「へぇ。だいぶ賑やかにやってんだな」

「まぁな。持ってて鳴らすだけでも、気分上がるし」

「わかるぜそれ。こう、盛り上がってくるぜ~! っていうのがあるんだよなぁ」

「そうそう」

 

 

何回か数合わせで、前に適当に合わせる形でいいから参加させられたことがあって、まぁすこし覚えてしまったところもある。動きとか、そういうの。やってるとこれがそれなりに面白い。ガンプラ作りやガンプラバトルには劣るけど

 

 

「ねぇねぇリアン! 踊ってみて踊ってみて!」

「「踊って踊って~!」」

 

 

と、なぜか子供たちからそんな催促が飛んできた。まぁ、踊りの道具って聞いて、どんなもんなのか気になったんだろう。別に恥ずかしいわけでもないし、なにより持ってきたんだから、少しは踊って見せないわけにはいかないしな

 

そういうわけで……アインに仕込んでおいた巨大スピーカーから曲を流し、我流のよさこい踊りを披露することになった。村の連中も、意味も理解してないだろうけど、笑って見ていてくれたり、一緒になって見よう見まねで踊ったりもして、喜んでくれたようだ。その光景を見て、自分もすこし、嬉しかった……

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、色々と祭りを堪能していた。ビルドコインを使ってそれなりに多めに作って持ってきた鳴子をみんなに配ったりして、適当に鳴らしたり踊ったりしながら過ごしていた

 

その途中で、村の長のトノイとジリクのおじいちゃんから、俺たちに感謝の言葉と、そのお礼の気持ちとして、ささやかな品が送られるというイベントがあった。それぞれの愛機のガンプラの、木彫りの人形であった

 

もらった時は、なにか特殊な効果を持つアイテムかなんかかなと思ったけど、特にそんな効果はなく、一度は落胆したけど……見るからに頑張って作ったものというのが分かり、すぐに考えを改めた。どうやら、村の子供たちがみんなで集まって作ったものということらしい。にしても、うまく特徴を捉えている人形であり、アインの他のと比べて長い手足を、よくここまで再現したもんだと感嘆した……それに

 

 

「……意外と、愛嬌あって可愛いじゃん」

 

 

そんな風にポロリと、声をこぼしてしまうくらいには、心動かされた

 

 

 

 

 

そして、最後に……村のみんなが、同じ形の灯篭を持って村のはずれの方へと移動を開始した。どうやら、これからこの祭りの名前である空渡しという行事を執り行うためであるようだ。ヒロトが見当たらないけど、移動する灯りを見れば、こっちに来るだろう

 

 

「聖獣と祖先の霊、そして大切な魂たちへの手向け。今生かされていること、時を越えて、私たちの命を見守ってくれる存在に、感謝を捧げるの」

 

 

マイヤから説明を聞き、この空渡しというのは、一種の鎮魂のための行事なのだと理解した。そのために、今持っている灯篭を、村の外れにある池に流すようだ。それは現実にある灯篭流しのそれに似ているし、実際その光景をみると、まさしくそれに似ている

 

そんな様子を見守る中、レジスタンスに入りたがっているストラが、ジェドに懇願する場面があったが……やけに現実味が強い様子に、困惑する。本当にリアルすぎて、一瞬ここがGBNの中だとは思えないように思えてしまう

 

本当に、ここはGBNのイベントの一つなのだろうか、と……そんな馬鹿げた事を考えていたとき

 

 

「あ……」「んお?」

 

 

池に流されていた灯篭が、一つ一つ膨らんで、空へと浮かんでいった

 

澄み渡るほど綺麗な夜空ということもあいまって、まるで星が地上から浮かび上がって空を照らし出していくように見えて……

 

 

「わぁ……きれい……」

 

 

あまりにも綺麗だったから、口からそんな言葉が溢れ出た……

 

言った瞬間、周りを見渡したが、特に誰も気づいた様子はなかったので、一安心する。なんだか、ここ最近ボロをよく出しているように思える。おそらく、あのときヒロトに過去を打ち明けたのが影響してるのだろうか……ハシュマルと向き合うことができてきたから、すこし心に余裕というか、弛んでしまったのではないだろうか……

 

自分が女であること。これだけは、絶対に周りに悟られてはならない。もし、自分が女だと知ったら、周りの態度はどれだけ急変してしまうだろうか……

 

多分だけど、メイは知られても大丈夫だろう。なんだか、生まれてそんなに月日が経っていないっぽいから、色々と疎いところがあるはず。でも、カザミは? パルは? パルはすこし考えにくいけど、カザミは引くだろう。あの時の、クラスメイトのように……ヒロトも、もしかしたら、そう思ってしまうのかも……

 

 

《女のくせに、こんなの作って持ってくるなんてよ!》

 

 

過去にあった事……ハシュマルが壊されたことと、その前後の記憶は、前まですっかり忘れていた。でも、女なのにガンプラ作りを好む性格は、周りからは異端とされ、気味が悪いと思われたあの時の気持ちは、消えずに残った。それがずっと心に響いて、今のあたしのGBNでの異性プレイに繋がっていた

 

掲示板の連中は、軽蔑するだろう。前にそういう話題があった時には、女のくせにっていう感じで言っていたから。だから、自分の性別を晒すのが怖い。今はまだバレてないし、ずっとこのまま、そういうのを隠しながらやっていく。もう五年もやり通してきたんだから、これからだって、やっていける

 

そして、このビルドダイバーズのメンバーも、もしかしたら、そう思うのかも、しれない

 

それをなによりも怖がっているから、あたしは未だに、この男の姿をしたまま、みんなと一緒にいる。自分が女だと誰にも言えないまま……おそらく、そんな機会は一生ないだろうなと思いながら……みんなと距離を取りつつ、空へと昇る灯篭を、眺めていた……




よさこい踊りをするぐらいには、リアンのリアル事情は明るいです。ガンプラの事は徹底的に隠してますけど


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

【安価でダイブ】43スレ目 その7

本日2話連続更新しています。ご注意ください。

あと、ガンダムアインに設定追加を行いましたので、そちらも是非どうぞ宜しくです


誤字脱字を確認したので、修正しました


926:1

そして……ついにこの時が来た

 

白銀の塔と呼ばれる軌道エレベーターの内部へと入った俺たちは、その中央へと到達する。そこには、何やら鍵穴のようなものがあり、その形は、4thミッションの最後にレジスタンス幹部のムランから託された謎のアイテムの形状に酷似していた

 

こえれは逆転の鍵だと、ムランはそう言ってフレディに渡したとおり、まさに文字通り鍵として機能することが判明した

 

そのまま乗り込んでいざ決戦……とも思ったが、ここでヒロトからの提案もあって、一度戻り、機体の調整と、リハーサルをしようということになった。軌道エレベーターの中にいるということは、次のステージは宇宙なのであると予測できる。よって、それぞれ宇宙用に改造してくるよう調整をするために、ログアウトしていくのであった

 

そして明日、最後のリハーサルを行い、そのまま宇宙のミッションへと挑むことになり……最後の舞台への幕が、今開く……!

 

 

927:以下無名のダイバーがお送りします

だいぶ物語調に書くのが上手くなったな、イッチ……

 

 

928:以下無名のダイバーがお送りします

感激だよ、ここまでの成長をみせるなんてさ……

 

 

929:以下無名のダイバーがお送りします

今回限りのモノだろうけどねぇ

 

 

930:1

やかましいわ

 

 

931:以下無名のダイバーがお送りします

しかし、いよいよ最終決戦っぽい感じに行ったかぁ……まさかそこまで行っちゃうなんてな

 

 

932:以下無名のダイバーがお送りします

始まった当初は、地雷満載パーティですぐにゲームオーバーかと思ったのにね

 

 

933:以下無名のダイバーがお送りします

それな。なんかもうみんな成長著しくて、おじさん感激だよ。特にカザミとパルくんの二人

 

 

934:以下無名のダイバーがお送りします

ほんとパルくんヤバイでしょ。初心者のはずなのに、ハードモードに付いていけるどころか、ちゃんと戦えるようになるとか

 

 

935:以下無名のダイバーがお送りします

さすがはパルきゅんね

 

 

936:以下無名のダイバーがお送りします

変態は無視して。ガンプラの出来は他のメンツ以上みたいだしな。そこらへんでカバー出来ているって感じか

 

 

937:1

空飛べるようになった辺りから、動きが全く変わっていったんだよなぁ。不思議なことに

 

 

938:以下無名のダイバーがお送りします

まるで飛行技術を持っていたかのようなニュアンスだな

 

 

939:以下無名のダイバーがお送りします

もしそこで劇的に変わったってんなら、実際持ってるんじゃねぇか? リアルだと飛行機のパイロットとか?

 

 

940:以下無名のダイバーがお送りします

子供がかぁ? んならパルのリアルはおっさんということか

 

 

941:以下無名のダイバーがお送りします

パルきゅんはまごうことなく男の子だ!!! 間違いない!!

 

 

942:以下無名のダイバーがお送りします

黙れ変態

 

 

943:以下無名のダイバーがお送りします

パルは初心者なのにハードでもみくちゃにされちゃったから急に凄腕ダイバーとなったが、カザミは当初がなぁ……今のアイツの事を聞くと、ほんと疑うわ

 

 

944:1

アイツに関しては、もうなんか吹っ切れたって感じだわ。なんというか、自分のスタイルを見つけたというか、なんかそんな感じ

 

 

945:以下無名のダイバーがお送りします

元のガンプラの完成度も高いには高いんだよなぁ、アイツ

 

 

946:1

ちょっと詰めが甘い部分はあるけど、それなりにビルド力はあるようだし。戦い方も、キャプテンジオンの真似してカッコつけただけで、自分なりのカッコ良さを見つけてからは、意外と立ち回りが良くなったな

 

 

947:以下無名のダイバーがお送りします

ほほう

 

 

948:以下無名のダイバーがお送りします

なんだよイッチ、カザミに対してはけっこう褒めるやん

 

 

949:以下無名のダイバーがお送りします

確かに

 

 

950:1

いいじゃねぇかよ! 役立たずかと思ってたやつが意外な成長を見せて感激したからそれなりに褒めただけだ!

 

 

951:以下無名のダイバーがお送りします

はいはいわかったから、そういうことにしといてやるよ

 

 

952:以下無名のダイバーがお送りします

どういうことなんですかねぇ……?

 

 

953:以下無名のダイバーがお送りします

あまり触れてやるなよ……

 

 

954:以下無名のダイバーがお送りします

この二人の成長がかなり目立つけど、ほかの二人も変わってったよな

 

 

955:以下無名のダイバーがお送りします

な。ヒロトくんはまぁ最初から実力、経験、ともに文句なしだったけど、周りが酷かったから当初は独善プレイをやってただけだし

 

 

956:以下無名のダイバーがお送りします

周りが強くなれば、それなりに頼ることもするあたり、やっぱ一番このメンツで実力あるわ。ビルド力も、その換装システムがすごいし。一回ガチでやりあってみたい

 

 

957:以下無名のダイバーがお送りします

すぐやられそうな気がするんだよなぁ……個人的にそう言う奴は対策がしにくいから苦手だわ

 

 

958:以下無名のダイバーがお送りします

使いこなすやつはほんと強いからなぁ、換装タイプ。玄人向けだけど

 

 

959:以下無名のダイバーがお送りします

メイちゃんはチーム戦のやり方とか、結構覚えて行ったんだろ?

 

 

960:1

だな。元から意欲的だったし、吸収力も凄まじいものがあったから、実践経験を経て自分のモノに出来た感がある

 

 

961:以下無名のダイバーがお送りします

ELダイバーだしなぁ。バトル嗜好のやつはかなり強くなりやすいって聞く。メイちゃん同様、吸収力がすごいらしく、すぐに技術を自分のモノにしてしまうらしい

 

 

962:以下無名のダイバーがお送りします

最近でいうと、アイツだな。ほら、前にミスターMSの心形さんで出てた

 

 

963:以下無名のダイバーがお送りします

あぁ、リゼって言う奴だったか。あいつも結構やると聞くわ

 

 

964:以下無名のダイバーがお送りします

最近だと、メガ粒子杯のバトルカイの予選、あれは結構面白い戦い方したよな

 

 

965:1

なにそれ初耳なんだけど

 

 

967:以下無名のダイバーがお送りします

あ、イッチはもうストミの事しか頭になかったから、今のGBNのトピック知らんのか

 

 

968:以下無名のダイバーがお送りします

完全に田舎者のそれやん……

 

 

969:1

やかましいわ! ストミが終わったら、色々と情報収集する予定だから、そこは後回しにする

 

 

970:以下無名のダイバーがお送りします

まぁ、目の前の難関が重要だもんな

 

 

971:以下無名のダイバーがお送りします

だな。あと一戦で完全クリアみたいだし

 

 

972:以下無名のダイバーがお送りします

何回も言うけど、ほんとよくここまで来たもんだなぁ、このチーム

 

 

973:以下無名のダイバーがお送りします

なんというか、いろいろと振り返ると、本当にチーム全員が成長していった感があるわ

 

 

974:以下無名のダイバーがお送りします

そうそう

 

 

975:以下無名のダイバーがお送りします

失敗してくれた方が面白かったんだけどなぁ

 

 

976:以下無名のダイバーがお送りします

うんうん。カザミの地雷とか、カザミの地雷とか、カザミの地雷とか

 

 

975:1

精神破綻してねぇかお前ら

 

 

976:以下無名のダイバーがお送りします

イッチも、何げにこのチームの事、信頼しつつあるみたいだし

 

 

977:以下無名のダイバーがお送りします

今思い出しても笑えるよなぁ。あの発狂してた頃のイッチ

 

 

978:以下無名のダイバーがお送りします

とくにこれとか秀逸だわ。前スレの928

 

 

979:以下無名のダイバーがお送りします

あの発狂は良かったよ

 

 

980:以下無名のダイバーがお送りします

もう地雷でなくなったから、発狂することがなくなっちゃったのがなぁ

 

 

981:1

お前らほんとに容赦ねぇな!?

 

 

982:以下無名のダイバーがお送りします

なぁ、イッチ。このままあいつらとフォース組んでやってく、とか言わねぇよな?

 

 

983:以下無名のダイバーがお送りします

ん?

 

 

984:以下無名のダイバーがお送りします

なんだよ、急に

 

 

985:以下無名のダイバーがお送りします

いやさ、この前俺と成田さんと一緒にイッチと会った時さ、なんかイッチ、楽しそうだったからさ……ここで安価してやるよりも、あいつらとやってったほうがいいのかなって思って

 

 

986:以下無名のダイバーがお送りします

え? そうなん?

 

 

 

987:以下無名のダイバーがお送りします

そうなのか、イッチ

 

 

988:1

んなわけねぇじゃん。だって、俺はフォース組みたくないし、ここで安価しながらやってったほうが性にあってるんだからさ。変なこと聞くなよな

 

 

989:以下無名のダイバーがお送りします

あぁ、わりぃ

 

 

990:以下無名のダイバーがお送りします

ったく、変な空気になっちまったじゃねぇかよ。もうすぐ1000行くってのにさ

 

 

991:以下無名のダイバーがお送りします

お、ホンマや。前に俺と一緒にっていったから、お前むちゃ丸だな。バツとして次のスレ、立てとくように

 

 

992:以下無名のダイバーがお送りします

おけ。空気悪くしてすまなんだ。ほい

 

次スレ:【安価でダイブ】44スレ目

 

 

993:以下無名のダイバーがお送りします

仕事早いな

 

 

994:以下無名のダイバーがお送りします

よし、ならもう埋めるか

 

 

995:以下無名のダイバーがお送りします

いうて、もうあと5レスしかできないやんけw

 

 

996:以下無名のダイバーがお送りします

>>1000ならストミ無事完クリ

 

 

997:以下無名のダイバーがお送りします

>>1000ならここにイッチのビルドダイバーズを呼ぶ

 

 

998:以下無名のダイバーがお送りします

>>1000なら次の行動はシークレット探し

 

 

999:以下無名のダイバーがお送りします

>>1000ならストミ失敗

 

 

1000:以下無名のダイバーがお送りします

>>1000ならストミが続行される

 

 

1001:END

このスレッドは上限レス数に達しました。

 

次のスレッドに移動してください

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

………………

 

 

………………………

 

 

 

 

 

そして、決戦の日、軌道エレベーターのその奥へと向かう日。全員がそれぞれ、決戦の予感を感じ取っていたためか、あちらへと転送される直前までリハーサルをしようということになっていた

 

一応、宇宙に行くことは多分間違いないだろうということで、宇宙戦のミッションである“めぐりあい宇宙”という初代ガンダムの最終決戦を再現した高難易度のミッションを、ハードモードでやることにした。結果としては順調そのもので、一応数回は周回して執り行い、最高評価SSS+、撃破数441、撃墜率86,5、時間も約39分でクリア。最大参加人数が50人、それを五人でその評価をもらえるというのなら、文句のない結果だった

 

だが、各ダイバーごとの撃墜数を見ると、ヒロトが抜きん出てトップなのに対し、メイが次点、そしてパルが65、カザミが64で一機差ということに。そして自分の撃破数は、二人を下回る57だった。個人的にはいい感じでやれていたが、2人よりもすくないという事実に唖然とした。そりゃぁ、大型機の足止めやらなんやらで稼ぐことができなかったところもある。それに近接戦闘型だから、それなりに撃破数は稼ぎにくい部分はあるが、似たスタイルのカザミに抜かれたのは、ちょっと意外だった。こんなことなら、もう少し無双系ミッションをやっていれば良かっただろうか……まぁ、大型相手にタイマン張って足止めか撃破を狙うのが俺のやり方だし、まぁいっか

 

 

「やれることはやりましたね。まだ、ちょっと不安ですけど」

「フィールドの下見は出来そうにない、出来る備えはこれくらいだろう」

「お前が一番準備万端って感じじゃねぇか。この短期間で、よくあんなパーツ仕込めたな」

 

 

それに、パルとヒロトのふたりの備えも凄まじかった。パルは、ヴァルキランダーに宇宙戦闘用の装備を追加し、ヒロトも宇宙用のアーマー、ジュピターアーマーを持ってきていた。にしても、二人共ほんとすごいビルド力だよな。パル、あれをここ数日で作り上げるとは……ヒロトは、前々から作っていたようだけど、多分完成はしていて、細かい調整がまだって感じだったのかな

 

 

「リアンもアレ、アインにルナリアンゼのパーツ取り付けただけだけど、かなり機動性出せるんだな」

「あぁ。ルナを作ってる最中に、アインの強化パーツとしても使えるようにビルドしたからな。使い勝手の良い機体だからな、アレ」

 

 

自分も、今回は防御方面もあるべきだと考え、かなり硬いアインに機動性と運動性を付与させるべく前々から付けてあったものだ。ルナリアンゼの下半身とまるごと交換し、バックパックもルナのブースターに変えた高機動型近接格闘仕様のモノ、ガンダムアイン・ルナリアンゼで挑むことにした。ルナは脆いところがあるので、アインを使いたかったが、宇宙空間での機動性が難があるので、それを補う形でのビルドである

 

簡単ミキシングで変えることができるため、こういう時には割と重宝するのだ、これが

 

そんな感じで、皆と機体について話していると、いつものウィンドウが展開され、あちらへの転送が開始される

 

 

「時間のようだ」

「いよいよ、ですね……」

「あぁ」

 

 

いつもの転送の光に包まれる。そうして周りの景色が見えなくなっていく最中

 

 

「ん? あれは……団長?」

 

 

スレ内で唯一コテハンを付けている人、安価ダイバー応援団長の姿が、一瞬だけ見え……転送された

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

遠目から、彼らの転送の姿を見送る一人の男がいた。その男は、それを見届けると踵を返し転送を行うと、ある一室へと到着した

 

そこは、フォースを組んだ直後に与えられるフォースネストに似ている空間で、一種のプライベートルームのような場所だった。それもそのはず、ここはこの男のフォースネスト……といっても、構成員1人だけという特殊極まりないもので、運営からこの男に許された空間でもあった

 

 

「クローズドモードに切り替え、ゲートオープン」

 

 

その声とともに、男の姿が赤一色に染まり、周りの風景も、反転したかと思えば宇宙コロニーの外壁の上という、本来であればダイバールックでは降り立つことが出来ない空間へと姿が変わった

 

その空間に、もうひとりの姿が現れる……SDガンダムの一つ、ガンダイバーと呼ばれるSDガンダムの一体。青一色で染まっているが、それはこの空間用に適応した姿ということなのだろう

 

その青いガンダイバーが現れると、赤い男は、深々と頭を下げて言葉を放つ

 

 

「この度はお忙しいところ、急な呼びかけに応じていただき、感謝致します。ゲームマスター、カツラギ殿」

「いや、こちらこそ、いつもGBNの運営に対し莫大な資金提供をしていただけている方の呼びかけとあらば、迅速に対応するまでのことです。サクラギリゾートグループ会長、サクラギ・タイアン様」

 

 

片や、GBNの運営。片や、GBNのスポンサーの1人……状況から見て、これは密会、ということだろうか

 

 

「して、今回の呼び出しのご要件はなんでしょうか? 先日、株主総会の時にお会いしたばかりだというのですが」

「では……色々と野暮なことは抜きにして、単刀直入に伺わせてもらいます。シドー・マサキ。ダイバーネーム、シド。ガンダムテルティウムというガンプラを使うプレイヤーの事を、教えていただきたい」

「ッ……!」

 

 

運営の人間が、見えにくいはずの表情を曇らせた

 

 

「なぜ、そのプレイヤーの事を」

「先ほどの反応から見て、おそらく何かありますね」

「っ」

「実は、私の知り合いがGBNをプレイ中に、妙なミッションを受けましてね。本人曰く、ストーリーを加味した連戦ミッションだと言っていました。そこで、シドの機体、テルティウムに酷似したガンプラと遭遇したと言っていましてね。最初はよくわからなかったが、次に会った時にメンバーの1人のELダイバーが、その機体のダイバーに名を訪ねたようでしてね……シドー・マサキなのか、と」

「……」

「カツラギ殿、何か知っていますか? 個人的にその知り合いは、リアルの知人でもあるのです。しかも、俺のせいで、人生をめちゃくちゃにしてしまった子で……そんな子が、もしかしたらなにかとんでもないことに巻き込まれてしまったんじゃないかと、心配になりまして……どうなのですか、カツラギ殿」

 

 

お互いに神妙な表情をしたまま、互いの目をにらみ合っていく。ひと時の沈黙が流れたあと、青いガンダイバーが声を発した

 

 

「分かりました。では、お伝えしましょう。彼、シドー・マサキさんの現在を」

「ん、えらく簡単に教えてもいいのですか?」

「構いません。むしろおそらく、あなたのその知人にも、同じ危険性があるかもしれませんので」

「? 危険、性……?」

 

 

赤の男が、怪訝な表情をする。一体なんの話だと。このGBNをプレイしている最中に、危険なことなど何一つありはしない。全てのセキュリティは国家クラスのものを採用し、ハッキング対策も、情報漏洩対策すら万全、専属の司法機関すら有するGBNの運営から、危険性の言葉が出ることなど、ありえないことで……

 

 

 

 

 

「シドー・マサキさんは、GBNをプレイ中、突如原因不明の昏睡状態に陥りました。ダイバーギアを外し、ガンプラも端末から外されているにも関わらず、今だにログイン状態を維持したままで。現在、都内の病院にて、意識不明のまま入院しています」

 

 

その言葉を聞き、赤の男は、絶句した




次回、元凶登場


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Mysterious artificial intelligence ALUS part1

2日開けての更新です。
あと仕事が少し落ち着いたので、明日から通常通り1日1更新に戻れそうです。


ストミの専用ディメンションへと転送されて来た俺たちは、一度フレディの村でジェドと合流することにした。そこで出発前に、ジェドがフレディの姉と三人組に対し決戦前の定番ともいうべきやり取りの挨拶を見ていた……と思ったら、毎回やっていることらしく、ちょっとこけそうになった。パルとメイの二人はよく分からずに首をかしげていたので、こういうことを話せるのがカザミだけなのがちょっと寂しい。ヒロトは無関心なのでこのことに関しては論外だ

 

出発の準備を終えると、そのまま一度セグリへと向かい、他レジスタンス達と合流し、一旦ジェドたちとは別れて、一部のレジスタンス達と共に軌道エレベーター、白銀の塔へと向かった

 

 

[ガゴンッ!]

「「「「「おおぉー……!」」」」」

 

 

例の、ムランから渡された鍵を使ったら、塔の中心部へと入る扉が開き、そこにはまさに、軌道エレベーターのトレインともいうべきものが備えられていた。ちょうど俺たちのガンプラも搭載出来るぐらい大きなコンテナもあり、まさに乗ってくれと言わんばかりの用意の良さだった

 

宇宙で待ち構えている。ヒロトがこの前予想したとおりのことになった。

 

 

 

 

 

『これで、終わらせる!!』

 

 

そして、機体を持ち込み、コンテナへと俺たちが乗り込んでいく。そしたらコンテナの扉が閉じていき、軌道エレベーターが振動し、上へと上がっていく感覚になる

 

周囲の風景も、徐々に上から下へと移り、その速度も次第に早く変わっていく

 

 

『なんか、すごいな……』

『確かに、っぽいよな』

『クライマックスの空気って感じだな』

 

 

軌道エレベーターに乗るというのは、OOの世界の再現ディメンションで一度経験したことがあるが、これはそれ以上に臨場感があるものだった。自分の体に伝わる感覚、振動など、それらがその時よりもはるかにリアルに感じられる。現実には存在しないモノを、よくここまで表現したなと思う

 

 

『ん? なんだ? どうした?』

『酔ったのか?』

『あ。あぁいえ……』

 

 

ふと、パルの様子がすこしおかしかったのを、カザミとヒロトが指摘した。酔ったのかと思ったら、どうやら違うようで……何やら、物思いにふけていたようだ

 

 

『こんなところまで来られるなんて、思っていなかったので……知らないもの同士で、一緒にガンプラバトルをやろう、ミッションに挑戦しようって言って、集まったわけでもなかったし』

 

 

パルの言葉は、確かにその通りだ。ここにいる連中は、なんの因果がわからないけど、あの時ただあそこにいただけの連中だ。俺は成田空港の安価であそこにいただけだし。それにカザミはシクミ探しのためにいて、ヒロトはその巻き添え、パルはそんな二人を追いかけて、メイはなにやらただ通りすがっただけらしいし……なんの関係も無かった五人が、ただあそこでイベントを迎えて受けることになったミッション

 

難易度もバグってるのかと思うようなレベルだし、最初から全滅の危機があったり、それも何度もあったり……そんなミッションを、連携も糞もない野良パーティで挑むなんて愚の骨頂だし、そのうち数人は戦い方に難があってバトルどころではなかったし、性格もうざい奴や弱気なやつ、何を考えているのかわからないようなやつばかりだった

 

 

『でも、すこしずつ、チームのように、フォースみたいな戦い方が出来るようになってきた気がして……』

 

 

しかし、そんなメンバーでも、ここまでくれば変わるものがあった。バトル初心者だったパルは、空へ飛ぶことができてからはみるみるうちにその才覚を発揮して成長し、ウザくて突撃思考のカッコ付けだったカザミも、本当の自分の戦い方を見出してからは激変するほどの戦績を叩き出すことができるようになった。メイは最初から色々と足りなかった生まれて間もないELダイバーということを知ってからは、最初の頃の理解できない雰囲気も納得出来た。ヒロトも、孤高ロールでやってるのかと思ったら、根は人を思いやれるやつなのだと、この連戦を通して理解出来た

 

メンバーの事を知っていったから、自分もこのメンバーの事を信頼しつつある。少なくとも、あのスレの連中と同じくらいには、このメンバーの事を思っている節がある。とくに、ヒロトには誰にも明かしたことのない過去の筝を、語ってしまうぐらいだから、多分スレ民以上に信じているところがある……彼にはほんと、感謝している

 

 

『最終決戦、頑張りましょう!』

 

 

そんな、最後の決戦前に言うようなパルの言葉に、なんだか照れくさい気持ちを抱いた

 

 

『そういうのいいって。なんかむず痒いぜ……まぁ、嫌いじゃねぇけど』

『いきなり何を言うんだか……けど、俺もそういうのは好きだから、悪い気はしねぇな』

 

 

確かに、よくここまで来れたもんだ。セカンド辺りでミッション失敗になるかと思ってたのに……だけど、そんなメンバーでも、ここまで来れた……正直、驚いてるし、このメンバーの筝を侮っていた所もあった。そこは、悪かったかなって思う

 

むちゃ丸が言ったように、確かにこのメンバーとなら、フォースを組んでもいいかもと、少しは思える。だがしかし、あたしの……いや、俺の居場所は、あのスレだ。それだけは、間違いなく言えることだから

 

そう考えていると……外の風景が一気に変わった

 

 

『これって……』

『宇宙だぜ!』

 

 

軌道エレベーターは、ついに宇宙へとたどり着いた。目の前にあるのは、暗い真空の空間の中に浮かぶ、ほんのすこし緑がかった惑星だった……

 

あれ? 緑? GBNの地球って、こんな感じだったっけ?

 

 

『これが“エルドラ”かぁ……ほんとに丸いんだ』

『え? える……?』

『地球って設定じゃなかったのかよ?』

 

 

目を凝らして見ると、確かに地形が異なるように見える。地球から見える五大陸の形状のどれにも該当している様子もなく、それに大気もすこし違うからなのか、なにやら青よりも緑色に近い色合いをしている……

 

まさか、独自の惑星のディメンションを作り上げたというのか? まぁELSの母星というディメンションが追加されたんだし、それぐらいのことはできるだろうととは思うけど……開発費かけすぎじゃね? 惑星レベルのディメンション作り上げるのには、相応の時間と費用がかかるって、前に聞いたことがあるけど……それもその、えるどら? っていうオリジナルの惑星、デザインとかも相応にかかるはずだし……なんだか良くわからないことにまたなってない?

 

 

『みんなにも見せたいなぁ……アシャ達驚くだろうなぁ!』

 

 

フレディの言葉からは、何度も思う、NPDっぽくない言葉と抑揚で……本当に、NPDなのかと疑うぐらい、楽しげな感じだった

 

 

 

 

 

エレベーターが止まり、その頭頂部のような所へとたどり着いたかと思えば、小型の手持ちロケットが5機あった。どうやら次はこれを使えということなのだろう。普通、シャトルとかじゃないかな、こういう時は

 

それを持って宇宙空間へと出ると……その場から、地表から大きく見えていた月へとガイドラインが点灯された。おそらく、このラインに沿って来い、ということなのか……ってか、これって確実に罠だよね? 途中で襲ってくる系の

 

しかし、進むしか道はなさそうなので、そのガイドに従って、月の表面に見えるゲートへと向かう

 

最大限の注意を払いつつ、確実に来るであろう敵の襲来に備える。カザミもそれを看過したのか、あいつも最大限の警戒をして月へと向かい……

 

 

「「って何もねぇのかよ!!?」」

 

 

俺とカザミの声が被った。いや、思うところは一緒だったのだから、当然といえば当然だろう。だって、かなり気を貼っていたのに何もなかったのだから、大声で叫びたいのは当然だろう。普通途中で敵の襲撃とかあるだろう? 集中力返せ

 

しかも、その月内部の施設に入ったら、なぜか空気がある空間だったので、外に出ることができた。一応、GBN内では宇宙空間にアバターのまま出るとゲームオーバーとなってペナルティが付く。そこら辺はちゃんと作りこまれているのが流石と言えよう

 

だけど、なんでそんな設定になっているんだ? まさか、最終決戦はアバター状態での戦闘とか? いやいや、そんなことあるぅ? っというか、なんでか知らないけど、この内部に入っても敵らしき敵がいないし……どゆこと?

 

 

「うあぁ!? なな、何なんですかこれ!? たた、助けてくださ~い!!?」

 

 

初めての無重力体験に困惑しているのか、フレディがあたふたするというアクシデントが起きた……まぁ、わからんでもないな。俺だって、最初は結構なれなかったし

 

 

 

 

近くで開いた扉があったので、その先へと進む。何もない通路に沿って、そのまま次に開いた扉の先へと進む。その通路にはとくに何もない平坦な壁で

 

 

「違うんだよなぁ……こういうとこの移動は、こうだろう! わかってねぇ」

 

 

ガンダムの戦艦内でよく見る、移動用のレバーというか、そういったガンダム要素が皆無な感じの内装だった。いや、自分の知識に無いだけで、こういったのがあるのかもしれないけど……にしても、なにから何までガンダムっぽくないなと思う

 

そうして進んでいくと、次々と扉が空いていく。まるで、こちらだと言わんばかりの誘導で……すこし、不気味な感じになる

 

 

「なんか、誰かに迎えられてるみたいですね……」

 

 

フレディも、なにやら怯えた様子で声が震えていた。演出の一環なのか……いや、もうそんな風には捉えられないぐらい真に迫った物言いに、なんだか蹴落とされそうになる

 

 

「だとすれば……」

 

 

終着点なのか、今までよりも大きな扉の前に差し掛かった。その扉も開いていき、その部屋へと入る

 

 

「……?」

 

 

その部屋は、四方に大型のディスプレイが浮かぶ暗い部屋で、床にもなにやらモニターが大きくある、異質な部屋だった。そのディスプレイには、様々な風景が映し出されており、よく見ると、今まで行ったことのある光景も、そこに映し出されていた

 

これって……監視映像?

 

 

「誰もいねぇじゃねぇか」

 

 

確かに、来たときには人影もなく、人の気配が感じられ無かった……更に、周囲や床に映し出されたモニターの映像も見てみると……モニターには、ガンダムの戦闘シーンの様子が映し出されていた。なんのシリーズだと思って目を凝らすと……

 

 

「あれ、この機体って……」

 

 

スレ民の2人、むちゃ丸と成田空港の機体、鳳凰似帝大将軍とトールギス・ヴァルキリーの2機が写っていた。しかも状況的にはまるで戦闘状態であるように見えるし、大将軍の周りにはトールギスと同じ飛行機に手足が生えたような機体が複数あることから、おそらくこの前言っていたフォース戦の映像なのだろう

 

いや、なんでそんな映像があるんだ? と思ったとき

 

 

〔お帰りなさい〕

「「「「「「!?」」」」」」

 

 

背後に、紫色に光る……裸体のハゲ男が浮いていた

 

 

 

……ごめんなさい、空気や雰囲気的に多分これふざけちゃいけないんだろうけど……無性にツッコミたい気持ちが湧き上がってくる。なんで裸なの!? なんでハゲなの!? 変質者かな? かな!? ドン引きしちゃうわ、マジで

 

こんなキャラいきなり出すとか、開発は狂っているの……?

 

 

「あぁ……ただいま~。って、知り合いか?」

 

 

んなわけないでしょ、このバカザミ



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Mysterious artificial intelligence ALUS part2

前回と引き続き対話変ということで、前と合わせて前後編という形にし、前回のタイトルを修正しました


〔探していました。求めて、待っていた……〕

「「「?」」」

 

 

突如現れたその男は、訳のわからない事を言い始めた。声から感じるのは、全く感情の感じられない、無機質で淡々としたもので……人間とは思えないものだった

 

いや、NPDなのだから当然といえば当然なのだが、このストミで出会ったNPDは誰も彼も感情溢れ、いかにも今を生きているというような雰囲気の人たちばかりだった。だからこそ、この突然現れた男のものに、非常に違和感を感じることがある

 

それに、風貌も風貌だ。今までの奴らは皆獣人というか、獣が二足歩行して歩き、手が人のそれに近い形のものになったようなものだった。だからこそ、今現れたコイツは、そのパターンから逸脱して、自分たちと同じような人間という形になっている

 

なんというか……今更ながら思うが、一体このストーリーの世界観はどうなっているのだろうか……スレ内では何も言っていなかったし、全て攻略後にでもまとめればいいと言って、後回しにしていたところがあるけど……

 

 

〔私に命じ、名付けた……〕

 

 

“アルス”、と……こいつはそう名乗った。その時に、姿が一瞬消え去り、また背後に現れた。なに、コイツ。ホログラム? そういえば、なんだか透けているようにも見えるし、光の粒子が周りを包んでいるようにも見える。つまり、人工知能、っていう設定? いったいなんなの? これ……?

 

そのままコイツは語る。守っていました、と。そして、帰ってこられたのではないのか? とも、違うのか? とも、いつかとはいつなのか? とも……

 

 

「言ってる意味、わかるか?」

「わかるわけないだろ。意味不明すぎて、ちんぷんかんぷんなんだけど」

「僕も、全然です……」

「なんか違うんだよなぁ、演出の方向性、っての? こうじゃねぇっつうか」

 

 

カザミの言うとおり、こういうのはいくつか最初の段階でフラグというか、そういうのを貼っておいて、この世界はこうこうこういう理由で攻められているというか、なんというか……そう、唐突にいくつか言われても、さっぱり理解ができないものだ。だからこそ、何かしらあってもいいような気がするのだが……開発段階だから、そこらへんが甘いってこと?

 

しかも、ヒロトとメイの二人が、こいつからは戦う気配というか、そういう戦意というべきものか、そういったのを感じられないという。え? ならこいつはラスボスじゃない……?

 

 

〔目覚めた時にはもう、悠久の時が、私を……忘れていたのは……〕

「貴様、さっきから何を言っている?」

〔似た者がもう1人……でも違っていた〕

 

 

こいつの良くわからない独白は続く。今度は自分達のアバターの姿を模して自分たちの近くまで近づいてきた。俺たちも違うのか? 帰ってきたのか? 俺たちは、コイツのなんなのか、と……なんだろう、俺たちの事を誰かと勘違いしている? いや、何かを探っているかのような、何かを確かめているかのような……

 

あぁもう! わけがわからないよ! 誰か頭いいやつ! アダチか成田か、こいつの言葉を翻訳してよぉっ! あた……俺の知能じゃ、まったく理解できねぇよぉぉーーーっ!!!

 

 

〔まだ、1人で守り続けなければならないのでしょうか……〕

 

 

メイも珍しく困惑してるし……って、いや、なんだろう、なにかを見つけたかのような、なにか腑に落ちない部分があったとも言うべき顔をしている……? え、何か分かったの?

 

 

〔貴方方は、貴方方も、また……〕

「誰を待っている? 私たちとは別の1人とは、誰のことだ!?」

「メ、メイ……?」

 

 

メイが珍しく声を荒らげて問いかける。しかし、それにこいつは無言を貫く。何かはいうのかと思ったけど、結局メイの問いかけの答えを言わず……視線が、フレディに向いた

 

 

〔なぜソレと? なぜ貴方方がソレと……?〕

「っ? ソレって、僕……?」

 

 

今まで怖がってヒロトのそばにいたフレディだったが、ここでいきなりフレディに対しこいつはアクションを仕掛けてきた。しかもソレ扱いで、なんだかこいつにとってはなんだか異物というか……敵対しているかのようなニュアンスに取れた

 

そして、フレディは意を決したかのように、こいつの前に進む

 

 

「どうしてですか? あなた、ヒトツメの親玉なんですよね? どうして僕たちを襲うんです!?」

「おいフレディ、気をつけろって」

「僕たちがあなたに何をしたっていうんですか!?」

 

 

フレディは問い詰める。どうしてなのかと。自分たちはただ、静かに暮らしていただけだと。村同士争うことなく、皆で仲良く、助け合って、創造主様から受け継いだものを大切にして、穏やかに生きてきただけなのだと。なのに、それなのに、あなたは守ると言っていた。それは一体なんなのか? 守るどころか、僕たちが守りたいものを、壊してばかりだと! そう、声を荒らげて言い放つ

 

自分たちは、争いなんて知らないし、したくもない。だから……

 

 

「だからもう、やめて……やめてください!! お願い、ですからぁッ!!!」 

 

 

涙を流しながらのフレディの懇願。その姿を見て、またなにか違和感……というか、本当にこれはNPDなのかと思ってしまう。今出てきたこいつには、NPDっぽさがあるけど……

 

っていうか、よく見るとすごいリアルな体型というか、造形になっている。ガンダム作品登場キャラのNPDも、それなりにリアル寄りの造形にはなっているけど、どちらかといえばアニメよりだ。それよりもすごくリアルに近い……いや、リアルそのもので……

 

これじゃぁ、現実ではないのかと、思ってしまって……そんな思考へとたどり着きかけた時

 

 

[ヴゥーッ!! ヴゥーッ!! ヴゥーッ!!]

「「「「「「!!?」」」」」」

 

 

けたましい警報音がなり、周囲の光が緊急事態を表す赤へと変貌した

 

 

「な、なんなんだ……?」

「ヒロトさん……!?」

「ッ……」

「なぁ、俺ら、間違ったルートへ分岐しちまったんじゃねぇか?」

 

 

確かに、なにかしら間違ってしまったのかと思う。でも、そんなことがあり得るのか? もしかして、なにか重要なアイテムを撮り逃したとか、こいつが言う待っている者ってのを連れてくるとか、そういうのがなければならなかったんじゃぁ……

 

と思いかけたが、それらは全てメイによって一刀両断させる。全ては、一本道であると。なんでそんな事が分かるかと言いたいところだけど、とりあえず、余計にわけがわからない状況になってしまった。こんな感じじゃぁ話もしてくれそうにないし、一旦仕切り直しにしようとして、レジスタンスの元へと戻ろうと言うカザミだった

 

 

〔他に誰かいるのですか?〕

 

 

が、こいつは何故かそこに反応した。他の誰かって……まさか、フレディの他、ということなのだろうか? それとも、俺達の他の仲間って事なのだろうか……? そういうのなら、確かに地上のセグリにいるレジスタンスがそうだけど……でもこの状況、フレディに対してこういうアクションを起こしたというのなら……もしかして、こいつはフレディたちの事を、敵だと認識している?

 

 

〔セグリ……〕

「お前が送り込んでいるヒトツメ共と戦ってきた奴らだよ。ガンプラこそ持ってねぇけど、なかなか骨のある連中だ。設定くらい理解しとけっ!」

 

 

だとしたら、今集まっているレジスタンスのことも、当然敵だと認識している訳で……ちょっと待って、なにか嫌な予感がする

 

 

〔レジスタンス……セグリ……〕

「だから! こいつの仲間が集まって、お前の魔の手から!「カザミ!」っ!?」

「それ以上答えるな……!」

「え……?」

 

 

カザミの言葉を、メイが遮る。多分メイは、いやメイも感じたんだろう。この、嫌な予感に……

 

そして、その予感は的中するかのように、あいつのアクションが激しくなっていく。周りも、なんだか騒々しく明滅を繰り返し、モニターにセグリの衛生写真のような映像が映った

 

 

〔対象を確認。ポイントTY0。保護カテゴリーレベルCアンダーの保護対象設定を解除要請。緊急時の解除要請アクセス権を認証中……保護対象設定を解除、戦闘区域へと変更を確認〕

 

 

なんって言った、今? なにやら、今まで聞いた事のない……いや、自分たちの文明レベルでなら聞いたことのあるし、すこし馴染みがある単語の羅列が並んだ

 

保護対象? 解除? 戦闘区域へと変更? もしかして……こいつの守るって、管理するってこと? それなら、この周りの監視映像っぽいのも納得がいく。けど、なんのために……? 一体、誰から守ろうっていうの?

 

 

[ヴオンッ、ヴオンッ]

「「ッ!?」」

 

 

色々となにか繋がりそうになりかけたその時、空中浮遊ユニットが二つ浮かび上がり、その中心にある紫色のカメラレンズっぽいものが、自分たちに向けられた

 

まさか、あれって……!?

 

 

[ダンダンダンダンッ!!]

 

 

メイの手元から、何発かの銃声がなり響き、浮遊ユニットを破壊した。ってか、あんなモノ持ち歩いていたのかよアイツ……!? 確かあれ、GBNのなりきりアイテムの一つだろ!? 銃弾も、打てるけど威力はそんなに大したものじゃなく、見た目だけのもののはずなのに……ってか、それでなんで破壊されるんだ? 威力なんて無かったはずだけど……?

 

 

「戻るぞ!!」

 

 

そう言って、更にメイは手元から小型のキューブ状のモノを投げつけた。あれって、手榴弾か? 

 

爆発する……かと思いきや、周りからレーザーが打たれ、爆発することなく地面へと転がる。だが、時間稼ぎとしては十分働いたのか、そのまま通路へと飛び出し、急いでその部屋から出ていった

 

 

 

その後、通路であの空中浮遊ユニットに追いかけられる事態へと転がり、そいつらからビームが飛んでくる。まさか、本当にアバターにアタックを仕掛けてくるとか、正気かよ!?

 

だが、照準が甘いせいなのか、当たることなく、なんとか全員回避しながらガンプラが格納してある場所へと向かう。周りも、先ほどと同じ緊急事態を表すような赤い光に包まれ、更に警報音もけたましく鳴り響く

 

とにかく、格納庫へと向かっていく最中に、突如地鳴りのような音がなった

 

 

「!?」

「え、なに? 今度はなに!?」

「何をするつもりだ……?」

 

 

何もわからないまま……なんとかビームを避けきって、ガンプラのある格納庫へとたどり着き、全員が無事乗り込む事ができた

 

そのまま外へ……と思ったら隔壁が降りて、出るに出れない状況となった

 

 

『おい! これじゃ出るに……って?』

『はぁ!?』

『道をあけろ!!』

 

 

強行突破あるのみと言わんばかりに、メイが隔壁を強引にぶち破った。射線にカザミがいたのでそれをどかし、かなり高火力のビーム砲で一気に数十枚の隔壁を突破する。そこからメイが先行し、全員がそれに続くように後を追う

 

にしても、さっきのやつは一体何だったんだ? ラスボスといえば、ラスボスっぽいようなきもするけど……まさかこのストミ、まだまだ続くっていうの? 宇宙に出てからが本番っていうタイプか? もしそうだとしたら、色々と恥ずかしいんだが……前回の1000レスが言ったことが本当になってるとか? 誰だよあんなの書いたやつは……!

 

そうこう考えてるうちに、最後の隔壁を突破し、ようやく宇宙へと飛び出せた

 

 

『『!!?』』

『……なに、これ……?』

『こ……これって……』

 

 

外に出た俺たちの前にあったのは、巨大な塔のような建造物だった。しかも、その周りは、まるでえぐれているかのような形だった……

 

 

『月じゃ、ない……!?』

 

 

まるで、月を大きくえぐり、その中央にこのような建造物を建てて置いてあるかのような見た目だった……まさかここ、月じゃなくて、静止衛生ってこと? さっきから、衝撃の展開が続いている……一体どんだけ俺たちを驚かせば気が済んだ? 

 

 

[ビー!! ビー!!]

 

 

その巨大な建造物の威容に圧倒されている中、激しい警報が鳴る。近くに敵の接近を感知した時の音で、レーダーに目を向けると

 

 

『……は? ちょっと、なにこれ……』

 

 

まるでバグったかのような数の反応がそこに映しだされており、ディスプレイに表示限界が来たという、今まで見たことのないエラーが吐き出された。リーオー1000体無双の時すら全て捉えたレーダーが、その数倍以上の反応を捉えて、許容量をオーバーしたのだ

 

 

『おいおい……数多すぎだろう……』

 

 

カメラで捉えた外の光景は、まさに異様だった。ヒトツメのMSのメインカメラの眼光が無数の星のように光輝き、画面いっぱいに覆っていた。その数、目視で見ても一万以上はあるはずだ

 

ありえない。正直言って、こんなのGBNの仕様上、絶対におかしい。第一、エラーが吐き出されるほどの数のMSを一つのフィールド上に配置すること自体できないし、そこまでの事をやってのけるサーバーも、現状存在しない。1000体無双のあれが限界ではないかというのが、プレイヤー全員の見解であるし、クリエイトのNPDMSの限界配置数が、確かそれぐらいだったはずだ。それをはるかに超える数なんて、絶対におかしい

 

 

 

これ……本当にGBN?

 

 

 

そんな、ありえない敵の中に……まるでそいつらを従えているかのように、あの機体が……ゼルトザームが、佇んでいた



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Satellite cannon firing obstruction battle

月と思っていた場所……静止衛星上。そこでの戦いは、まさに混戦極まる大乱戦状態へとなっていた

 

無数のヒトツメ、もはやレーダーではその反応の全てを捉えることはできずに意味を成さないため、メインカメラでの情報と、攻撃の接近音を聞いての対応に集中するだけで精一杯だった。おまけに敵の強さはハード級……こんなの、あのアヴァロンですら苦戦必須の難易度ではないかと思う

 

しかも、ステータスを確認すると勝利条件が記載されていなかった。そういうミッションはあるにはあるけど、そういうのはキチンとミッションを受ける前やミッション途中にヒントとなる部分があるため、わかりやすいにはわかりやすい形で置かれている。だが、この状況ではヒント所ではないし、オマケに確実にこちらを殺しに来ている物量の中、ヒントを探すのなんて不可能の話だ

 

さらにあの中央の建造物……それが僅かに動き始めているとパルの言葉があった。そこにメイが言葉を続け、これは兵器ではないのかという考察をしていた。確かに、見た目的にもあれは砲塔のようにも見えるが……ならかなり高出力の衛星砲ということになる。それが動いているって……どこかに向けて撃とうとしてる……?

 

 

『ッ! クソォッ!! 何をどうすればいいんだよッ!!?』

 

 

馬鹿みたいにでかい砲台に、この無限とも言える敵の数、更にはあの強敵のゼルトザーム。おそらくそのどれかがクリアの鍵になるのだろうと思うけど、今だにどれも今ひとつ納得に欠けている。雑魚の殲滅をすればいいのか、あの砲台を破壊すればいいのか、それともゼルトザームを撃破すればいいのか……或いは、全てなのか

 

 

『っ。何はともあれ、やることは一つか……ッ!』

 

 

接近してくるグレイズ系のアックスを交わして、カウンター気味に此方のアックスで両断する。敵の柔らかさはいつもの感じと同じなので問題なく処理できるが、それが一気に襲いかかってくるのでは話が変わってくる

 

そうしている間にも、前後左右、上下と六方向からデスアーミー系がメイスを振り回して迫ってくる。こちらへの直撃コースをしていると判断したので、激突する寸前に回避をし、六体をまとめて衝突させる。そこで固まっている奴らにバックパックのブースターに付けてあるガトリングを浴びせることで撃破し、連鎖的に爆破させることで一気に撃墜していく

 

とにかく、今自分にやれることは、この雑魚の掃討ぐらいしか無かった。あの建造物が巨大な砲台だとしても、アイン・ルナリアンゼにはあれを破壊できるほどの火力が無い。せいぜい誰かの援護に回って雑魚を駆逐していくか、或いはゼルトザームの足止めぐらいしか出来そうなことが無い……こんなことなら、一点集中のロマン砲というか、そういうのを作っておくべきだっただろうか

 

 

 

もし、今あたしが乗っているのがハシュマルだったら、敵の攻撃を防ぎつつ、極太レーザー攻撃であの砲台に僅かでもダメージを与えられたのではないのかと思う……ないものねだりだし、そこについてはあまり深く考えないでおこう

 

 

 

そのまま雑魚の殲滅を続けていると、メイのウォドムポッドの右肩のビーム砲から、高出力のビームが放たれる。おそらく、リミッター解除というか、そういう類のものなのだろう。だが、そんなことをしても、敵をある程度蹴散らすだけだし、砲台にも僅かなダメージを与える程度でしかないというのに

 

 

『アレ…止め…ぞ!!』

『メイ…ん!? …イさ…!?』

 

 

メイからの通信が聞こえるが、なぜか通信を妨害され始めた。なんでだ? 今まで通信は普通に使えていたのに、なぜ急に今になって妨害を始めたんだ……? メイがあの高出力のビームをなぎ払うように撃ち、それで敵が多く撃破されたことと、砲台に少しのダメージを与えただけで……ん? 砲台にダメージ? それに、メイの通信……あれってまさか

 

アレを止めるぞ!!

 

つまり、砲台を破壊することしたのか。それに、今まっすぐ砲台へと一直線に向かっている。さらに、それを妨害するかのように敵の攻撃がメイへと集中している……!

 

 

『勝利条件は、砲台の破壊か!』

 

 

こっちにそんな火力は無い。だが、メイのあの高出力ビームなら問題なく行けるはず……!!

 

そんなメイの援護に向かうべく、一気にバーニアを吹かしてメイの後を追う。後ろでは、ヒロトがゼルトザームと交戦を開始し、カザミがなぜか衛星内部へと向かって入っていった。何やってんだよアイツは……!

 

とにかく、後ろの事は後回しとして、自分はメイの元へと一気に近づく

 

 

『メイ! 援護するぞ!』

『リ…ンか! 頼…!』

 

 

近くだからか、妨害されててもある程度は会話は出来た。そのままメイへと殺到してくる敵をなぎ払い、叩き落としていく。機動性はウォドムポッドの高速飛行形態よりもこちらの方が早いため、すぐに追いつき近くを並走する

 

 

『この砲台を破壊するのか!?』

『あ…。今のま…動き続…れば、砲身…星の方…と向く。お…らく、先……の会話か…推察す…ば、…の砲身…向…先は……!』

『ま、まさか!?』

 

 

セグリへと、向けている……!? しかも、こんな馬鹿デカい奴の砲撃って……どれくらいの規模だ? SEEDのジェネシス? OOのソレスタルビーイング? AGEのフォトンブラスターキャノン? 宇宙世紀の、コロニーレーザー……? どれをとってもやばいし、そんなモノを打たれたら、流石にバリアで守られているセグリだろうとも、一撃で消滅してしまうのでは……?

 

 

[ビー!! ビー!!]

『『!?』』

 

 

そんな不安をよそに、突然の警報音が鳴った直後、後ろでヒロトが戦っていたはずのゼルトザームが、メイのすぐ目の前まで迫っていた

 

 

『ぐあっ!?』

『メイ!』

 

 

ウォドムに対し異形の右腕によるアッパーを繰り出し、こちらの進撃を阻んだ。さらに追撃と言わんばかりに、比較的脆い脚部に向けて蹴りを放つ

 

 

『させるか!』

 

 

だが、その前にメイを突き飛ばし、代わりに自分がその攻撃を食らう。幸い硬いところに当たったおかげか、こちらのダメージは少なかった

 

 

『リア…!!』

『ッ、行け! メイ!』

 

 

妨害はまだ続いているが、まだこちらの声は通じているはず。それに通じてくれたのか、メイは砲台へと向かって飛び去っていった。それを追うように、こいつも動き出そうとして

 

 

『行かせるかッ!』

 

 

背後からアックスで叩き割ろうと突撃し、確実に当たる距離で振り下ろす。だが、それを後ろに目がついているのかと思える反応で対処され、巨大なランスで防がれる。恐ろしい程の反応速度で、今までのヒトツメとは思えないほどの動きに動揺するが……

 

 

『ッ……なんつう……なッ!?』

『……』

 

 

コクピットのディスプレイに、ゼルトザームのパイロットの姿が写りこんだ。接触回線によるモノで、こうなると否応にも相手の映像が出せるようになってしまう。だが、その姿を見て……色は違うし、変な仮面を被ってはいるけど、確信した

 

 

『あんた……やっぱりシドさんなのか!?』

『……』

 

 

一度会っただけだけど、あの時の活躍は記憶に残っていたし、スレでのやり取りをへてその姿をきちんと思い出すことができたその姿と……酷似していた。間違いなく、こいつはあの、無双のシドだ

 

 

『おい! なんでこんなところにいるんだ!? どうして俺たちと戦う!? このミッションは一体何なんだ!? 知っていることがあるのなら教えてくれ!! シドさん!!』

『……』

『ッ!? なにか答えてよッ!! ねぇどうしたのよッ!? ねぇッ!!』

 

 

鍔迫り合いで膠着したまま、シドに何度も問いかける。だが、彼は無言を貫くままで、一切こちらの問いかけに反応しない。まるで、こちらの言葉が聞こえていないかのような態度に、こちらの言葉を聞いて口元すら微塵も動かない姿に、一種の恐怖を感じた。何よ、一体何なんなのよこれ……!?

 

そのままつばぜり合いから相手が一気に力を上げて振り払い、こちらへと振り向き様にランスの横薙ぎを繰り出す

 

 

『ッ!?』

 

 

その横薙ぎは、ランスの巨大さもあって躱すことができないと判断し、アックスを肘に当てて盾にするようにして防御する

 

 

『ぐあぁッ!!』

 

 

だが、流石に耐え切れなかったようで、そのまま吹き飛ばされる。更に盾にした腕がイカれて、アックスも吹き飛び、もう使い物にならなくなった。肩の機関銃はまだ生きているし問題なく使えるのでいいが、片手分のアックスとパイルバンカー、それにスクリューパンチがまるごと使えなくなったのは痛い

 

こちらのダメージを直ぐに確認し終え、ゼルトザームの方へと向き合うが、こちらに追いついたヒロトが相手していた。メイの元へと行こうとしたのを、どうやら防いでくれたようだ。その様子に、一安心をする

 

そのまま砲台の方へと向くと、その動きが止まっていた。トラブルかと思ったが、背後を見ると、惑星へと砲身が向いていた。すでに、照準が定まったと言わんばかりの様相である……

 

 

『衛星の砲台が……の方…、セグリ…狙って…ますッ!』

『ッ……ヤバい!』

 

 

パルもその状況を確認したのか、聞こえる範囲内で声高に通信を発する。妨害で聞き取りにくい部分はあったが、それでもある程度は察することができた。ゼルトザームの相手をしようとしたが、このままではこれが発射してしまう可能性があるし、それに今ヒロトが相手をしている。援護すべきか迷ったが、今はあの砲台を止めることが先決と判断し、ヒロトに任せることにする

 

個人的には、他にも問いかけたい事はいくらでもあったが、あの様子では何も答えてくれそうにないと思った。気さくな人で、軽い冗談も言うし、親しみやすい人だったから、そんな人があのような無機質な機械のような姿になっていることに、更なる疑問が沸いてくる

 

運営に買われてミッションのボス役になるのなら、おそらく悪役ロール的な事をするだろうし、いくら演技指定されようとも、あんなことを言えばなにかしら反応を示すだろうと思う。そういったこともなく、あんなアンドロイドのような態度に変わってしまったのが、すごく怖かった

 

そんな恐怖感を感じつつも、今やるべきは砲台の破壊か、もしくはその発射阻止。破壊は今のメンバーの誰の火力を見ても不可能なので、せめて何かしらで発射を阻止しなければならない。先行するメイの元へと向かい、その援護を行う

 

 

『メイ!!』

 

 

デスアーミーとドートレスの弾幕を飛び交い、砲台の内部へと向かおうとするメイを確認した。何を狙っているのかはわからないけど、メイを狙おうとするヤツを排除するためにブースターを最大出力で噴射させ、その全てを片方しか無くなったアックスで加速の勢いを含めた突進で両断していく

 

そのまま砲台の正面へとたどり着いたメイは、ウォドムポッドの中からモビルドールとなって外へと躍り出る。そのままウォドムポッドは砲身の中を進んでいくのを見て、メイの狙いを確信する。アイツ、どうやらウォドムをまるごと爆弾として砲身内部で爆破するつもりのようだった

 

 

『だったらぁ!!』

 

 

自分も、メイに倣うようにバックパックのブースターと、足の追加スラスターを切り離し、そのままウォドムと並べるところまで飛翔させる。それを二人で並んで手に持つビームピストルと肩の機関銃で誘爆させる

 

 

『ッ!』

『よしッ!』

 

 

大きく爆発したウォドムとブースターにスラスター。それらの爆発が砲身内部で起きた。これならば、流石に破壊は無理でも、発射するための部分はダメージを負って使えなくなるはずだと……そう確信し、爆煙が晴れていった先には……

 

 

『くっ!』

『嘘だろ……!?』

 

 

あろう事か、全くの無傷……いや、一部部分的には歪んでいるようには見えるが、それでも発射には支障をきたしそうにない感じだった。これって、俺とメイがやったことは無駄だったのか? それに、もうこっちはブースターとスラスターを無くし、機動性が完全に死んでいる。今この状況で襲われでもしたら、もう落ちかねない。今度こそ終わったかと、そう思った時

 

 

『退いてください!!』

 

 

背後で、巨大な砲台……確か、ヴァルキランダーの宇宙空間用追加装甲であるアヴァランチユニットを一つのキャノン砲として合体させて構える、パルの姿があった

 

 

『『パル!?』』

『僕がやりますッ!!』

 

 

やるって……まさか、アレに対して打つってのか、アレを!? まさかここに来て、とんでもない隠し球を見せるパルに度肝を抜かれたが……でもあれほどの粒子を充填させ、しかもそれが三つの砲口全てに集中している所から、おそらくその威力は凄まじいモノのはず。おそらく、OOのセラヴィーのGNビッグバズーカレベルか、それ以上はありそうだ

 

これなら、もしかしたら行けるかも……!!

 

 

『やっちゃえッ!! パルぅーーッ!!!』

『いっけぇぇーーーッ!!! アヴァランチッ!! レックスバスタァァーーーッ!!!!!』

 

 

 

パルの渾身の叫びと共に、三つの光が放たれる。それは一つ一つが凄まじいほどの熱量と光量を持っていて、更にそれが一つとなって更なる巨大な光の柱となって進んでゆく。その威力、もはや戦艦の主砲クラスかと思うほど強大なもので、射線上にいた敵を全て飲み込んでも減衰することなく、砲身の内部へと殺到していく

 

そして確信する。この威力なら、発射機構を破壊することも可能だと。そうすれば、このミッションはクリアになるはず……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔発射〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砲身の奥、その中央に光が集まり、レーザーが放たれる。それはパルの渾身の一撃すら超えるほどの光の奔流で、それと一度ぶつかったアヴァランチレックスバスターは拮抗することもなく呑まれてしまい、今までの俺たちの努力はなんだったのかとあざ笑うかのように……砲身から、コロニーレーザーを思わせるほどの巨大なレーザーが放たれた

 

 

『『『!!?』』』

 

 

その衝撃で、敵が何体か爆破される。そして、カメラで捉えている視界が真っ白に染まり……強い衝撃と共に、その場から吹き飛ばされた

 

最後にカメラが捕らえたのは……僅かに、ほんの数センチ程度ではあるが、衛星砲が放ったレーザーが、僅かにズレた映像だった…



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Devastated star

激しい光の奔流。今まで経験した事のない程の熱量に当てられて、自身の機体が酷く損壊した。比較的脆い部分であるルナリアンゼのブースターやスラスター周りのモノは、あの砲台に突っ込ませたし、それらに比べて頑丈なアインの部分と固めに作ったルナリアンゼの下半身が残り、完全大破ということには成らなかった。ダメージレベルは赤になっているけど

 

 

『やばいってこれ……!』

 

 

だが、問題となっているのは今の状況だ。衛星砲の発射の衝撃で、あの静止衛星からかなり吹き飛ばされてしまい、星の近くまで接近してしまった。そのせいで、星の引力に捕まってしまい、こうして大気圏突入をせざるを得ない事態になってしまった

 

 

『ッ、アインもルナも、どっちも大気圏突入仕様にはなって無いって言うのに……!』

 

 

これじゃぁ、突入の熱で完全に壊れかねない……そんな絶体絶命のピンチという状況だった

 

まさか、こんな感じの事になるのなら、キチンとそういう仕様になるようしてくれば良かった。水中といい大気圏突入といい、なんでこうピンポイントで特殊な仕様で無いとならない状況になるんだよ……!

 

そう悔やんでいる時、正面に比較的無傷のヒトツメのグレイズが共に落ちて行くのを見つけた

 

 

『あ、アレだ……!』

 

 

心許ない推力を使い、そのグレイズの近くまで近づき、ルナリアンゼの足の鉤爪を使って捕まえ、そのままサーフボードのように機体の盾にするようしっかり足に固定させた。だがかなりバランスが悪く、少しでも気を抜いたら外れかねないぐらい安定感に欠けている。これ、割と難しいぞ……!? 

 

まさか、こんな所で鉄血サーフィンをする羽目になるとは……しかもちょうどいい感じにグレイズだし、これ

 

そうして、なんとか突入の空力加熱の影響を最小限に抑える事に成功する。それでようやく安心でき、他の皆んながどうなったのかが、やっと気にするようになれた

 

周囲を見渡すと、ガンドランダー形態になっているパルのヴァルキランダーと、その上に乗るメイのモビルドールが見えた。どうやら隕石の影まで誘導しているようで、ある程度は大気圏突入時の空力加熱に耐えられるように出来てあるみたいなので、一安心し、その近くまで近づく

 

 

『パル! メイ!』

『! リアンさん!』

『お前も無事だったようだな』

『あぁ。なんとかな……だけど、どうなったんだ?』

『わかりません。でも、ほんの少しだけ、ズレたように見えましたけど』

『セグリに直撃、は避けられていて欲しいが……』

 

 

確かに、吹き飛ばされる直前に、少しだけビームが曲がったようにも見えた。おそらく、俺とメイによって与えた砲身内部のダメージが原因だろうか、まっすぐ直線に行くことはなかった。セグリに対し向けられていたというのなら、ほんの僅かでもズレていてくれると、直撃は避けられているはず。だが、あの威力のビームが宇宙から地表めがけて放たれたんだ。ズレたとしても、被害は一体どれほどのものか……

 

 

『って、そういや、ヒロトとカザミは『うおおおああぁぁぁぁぁーーーッ!!?』!?』

『カ、カザミさん!?』

 

 

上から、盾を構えて落ちていくカザミが横を通り過ぎた。無理と叫んで、突入仕様にはなっていない事を叫んでいる。いや、盾ぐらいはそうしろよと思ったら、盾が砕けてそのまま空力加熱で焼けそうになった

 

だが、それをアースアーマーが下に滑り込む事で難を逃れる事が出来ていた。なんともない様子を見るに、大気圏突入仕様にはなっているようだ、あのフライトユニット

 

 

『って、ヒロトは!?』

 

 

それなら、一体ヒロトはどうやって大気圏突入を? と思い更に周囲を確認すると、上の方で薄い布を身に包むコアガンダムの姿が見えた。まさか、アレって耐熱フィルムか? 初代の奴にあった。そんなモノまで用意してくるとか、用意周到どころの話じゃない気がするんだが……まさかヒロトって、そうとうな初代推し勢? 所々で初代のオマージュをしてる気がする……

 

だが、これで全員、なんとか無事大気圏突入が出来そうだ。後は、機体が加熱されないようにバランスを整えて降下していくだけですみ……

 

 

 

一際厚い雲を抜けて、突入に成功した

 

 

『助かった……?』

『みたい、だな……』

 

 

とにかく、邪魔になっている焼け焦げたグレイズを放り捨て、軽くなったところを、最後のエネルギーを使って皆と降下する軌道を合わせる。もうこれで、あとは不時着するしか無くなるが……

 

 

『おい、なんだありゃぁ……?』

 

 

通信から、カザミの震える声が聞こえる。その声に従うように、外の様子を見る。そこには……

 

 

『アレって、まさか……』

『あぁ……おそらく、衛星砲の着弾地点だろう』

 

 

地表に、大きなクレーターが出来上がっていた。そしてその周囲には、辺り一帯が衝撃によって大地が隆起し、爆弾の爆心地さながらの様相をしていた。今だにビームの熱量のせいか、遠くの森林が大火事のように燃え盛っている

 

 

『……! 皆さん! アレ!』

『『『『『!!?』』』』』

 

 

そして、そのクレーターから、数kmぐらい離れた場所、そこには大きな川が流れておりり、海へと繋がるところには大きな中洲があって……その上に、完全に崩壊した街のようなものがあった。建物は全て薙ぎ倒され倒壊し、通路と思しき石畳は全てめくり取られて、壁という壁が、全て吹き飛ばされて……真っ平らと表現したほうがいいぐらいに、全てが吹き飛ばされている街があった

 

間違いない。あの地形からして、あの場所は、おそらく……

 

 

『セグリだ』

 

 

メイの言葉が、それだと断言する。地形が全て合致しているし、僅かに残る建物の跡が、空中から撮影したセグリの建物の位置と同じだった

 

 

『そん、な……』

『っ……ひどい……』

 

 

状況から見て、あのアルスとか言う奴の狙いは間違いなくセグリだった。だが、俺たちによってビームの機動はズレて、直撃は避けられたのだろう。だが、着弾の衝撃によって壊滅的被害を受けて……多分だが、生存者なんてゼロだろ……

 

望遠カメラで拡大し、詳しくその様子を見ると、瓦礫のようなものの下に、赤黒いものが広がっていくのが確認できた……あれじゃぁ、もう……

 

 

 

……守り、きれなかったの、あたしたち……?

 

 

 

言葉にはしなかったけど、あまりにも残酷な結果に打ちのめされて……不時着するまで、そのまま空を漂った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま空を漂うこと数時間、なんとかフレディの村の近くに不時着する事が出来た“あたし”たちは、そのままフレディの村まで歩いて向かった

 

そして、村の入口からは急いで中へと入っていくと……そこも、セグリほどでは無いにせよ、ほとんどの建物が崩れていて、荒れ果てていた。一部では焼けたのか、黒煙が立ち上っていた。ここも、あの衛星砲の被害が及んでいた

 

さらに、布を地面に敷いて、そこに大勢の人が横たわっている。見るからに、大怪我をしてしまったのだろう、包帯を撒いて、苦しそうにしている。中には、全身布に包まれている人のようなモノがあった。まさかアレって……死体……?

 

村の中を歩くと、ほぼ全員が、体のどこかに包帯を巻いている。その痛々しい姿と、今の自分たちの姿と見比べ、なんとも言えない苦しみを覚える……どうして、こんな……

 

 

「フレディか?」

「フレディ?」

「!? 父さん! 姉さん!」

 

 

歩いている途中、テントの下に村長でフレディの父であるトノイさんと、その近くに比較的軽傷でいマイアとジリクさんの二人がいた。トノイさんは大怪我を負ったようだが、寝込むほどのものではなかったようだ。無事で良かった……

 

 

「みなさんも、ご無事で……」

「お、おう……」

「突然強い衝撃に襲われて、一体何が……?」

「「「「「ッ……」」」」」

 

 

トノイの疑問に、全員が言いよどむ。いったい、どうやって説明すればいいのか、どこまで説明すればいいのか……下手に隠すのも、この状況では難しいし……

 

 

「セグリの方で、なにかあったのですか?」

「……セグリは、壊滅した」

「!? メイ……!?」

 

 

村長の問いかけに、メイが答えた。完結に、わかりやすく……それを聞いて、周りから動揺が聞こえる。そしてそのまま、これもわかりやすく、言葉を紡いでいく

 

 

「壊滅って、どういう……」

「ヒトツメの本拠地にある衛星兵器を止められなかった。その攻撃で、セグリは……」

「……うそ……」

 

 

メイの言葉を聞いて、マイアが理解を拒絶する。無理もない、だってセグリには、彼女とフレディの兄であるジェドが行っている。しかも、なぜかストラもそこに行っていたようで……もしそうなら、彼は、もう……

 

 

「申し訳ありま「大丈夫って言って!」ッ!」

 

 

ヒロトが謝罪の言葉を言いかけるが、マイアによってかき消された

 

 

「兄さんたちは無事だって!!」

 

 

その悲痛の叫び声に、痛々しさを感じる。その現実を直視できない、拒絶の叫びを。その声音からは、あたしがハシュマルを壊されたあの時の叫びよりも、より大きく、より深い、悲哀の感情を感じられる

 

とっさにカザミが大丈夫だと言うけど、その言葉には説得性が全くなく、逆にそれが真実であると、言っているようなものだった……

 

そして、その悲痛は周りにも伝播した。同じくレジスタンスに参加していた村人の家族が、泣き崩れ始める。お湯を持ってきけど、転んでこぼしてしまったアシャも、その空気に当てられたのか、泣き始めてしまい、マイアが慰めるも、彼女も涙が出てしまったのか……トワナとフルンも、一緒に泣き始めてしまった……

 

 

 

そんな彼らの涙に呼応するかのように……雨が降り始めた

 

 

 

「なんだよ……なんなんだよ……! わかったよ、ミッション失敗なんだろ!? なら終われよ! 終わったらいいだろッ!!」

 

 

カザミが苦虫を潰したような声で言い放つ。この状況に、いたたまれなくなってしまったのだろう。あたしだって、こんなとこ、いたくないし、立ち会いたくもない……例えゲームだろうと、こんなイベント、胸糞悪くなるだけじゃん……

 

 

「これ……本当に、ゲームなんでしょうか……?」

「ッ! はぁ?」

「パ、パル……?」

 

 

そしてパルが、ついにあたしも頭によぎりだした言葉を、口にした。これ、本当に、GBNなのだろうか、と……

 

 

「だって……セグリも村も、こんなになって……僕たち負けたのに、バトルアウトにもならないし……!」

「はぁ!? 何言ってんだよパル! アレだろ! バグかなんかだろ!? これがゲームじゃなきゃ……」

 

 

カザミがパルの言葉を否定する。確かにその通りで、あたしたちは皆、GBNをプレイしているんだ。だって、あたしの姿が男なんだし。だから、GBNをプレイしているのは間違いなく……そう、男になっているんだ。だから、間違いなく、ここはGBNの中なのだ

 

でも……この状況はなに? ここにいるNPD達のリアルさは、周りから感じられるこの悲痛の感情は、泣き叫ぶ子供たちを見て感じる、この胸の痛みは……NPDとは、到底、思えなくて……

 

 

 

 

 

「まさか……リアルだってのかよ……?」

 

 

 

 

 

ついに、その言葉が、出てしまった……ゲーム内の、シークレットミッションの一つでも、開発途中のストーリーミッションでもなく……実際に起きている、このエルドラという星の、現実なのである。と……

 

確かに、そう言われたら、何個か疑問に思っていた事に説明がついてしまう。でも、一番それがありえないという大前提が……あたしたちは間違いなく、GBNにログインし、GBNのミッションとして、ここに来ている。それがあるから、そのまさかに、納得が出来ないでいる。ガンプラだって、ここにあるわけだし……

 

ありえない。ゲームをしていたら、異世界に飛ばされていたってこと……?

 

 

「なによそれ……ありえないでしょ……」

「? リアンさん……?」

 

 

つい、小さく言葉に出てしまった。だがそれを聞き取ったパルが、なにか違和感を感じたように呟く。けど、そんなことにすら気づかないほど、頭の中がぐちゃぐちゃにかき乱されて……自分の中のスイッチが、壊されていた

 

 

「エルドラといったか。この世界が現実であると証明する手段は無い。だが」

[ヴンッ]

「「「「「!」」」」」

 

 

メイが何かを言いかけたとき、あたし達の前にGBNのシステムウィンドウが表示される。その表示を見て、やっぱりここはGBNだと感じて、すこし安堵をする。が、書かれていた事が、今まで見たことのない文字だった

 

 

 

“接続障害”、と

 

 

 

そして、自分達の姿が、まるでジャミングが掛かったかのようにブレて……急に視界が途切れた

 

 

 

 

 

気づいた時には、シーサイドベースのメインロビーにいた。周りを見渡すと、誰も彼もがここに転送されてきているのが見える

 

一体どういうことかとロビーの壁にあるディスプレイを見ると、エラーコードが吐き出されているのが見える。更に見ると、GBNのサービスに障害が発生し、ログイン制限をかける旨が書かれていた

 

 

「お~い、どういうことだよこれぇ~」

「せっかくいいところだったのによぉ~」

「説明してくれよ運営~!」

 

 

周りのプレイヤーたちが、口々に文句を言っている。その言葉を聞き、妙な安心感を覚えてしまったが……その直後、急にログアウト処理が実行された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………

 

………………

 

………

 

 

 

「ッ!!?」

 

 

そして、急に意識が現実に引き戻される。周りを見ると、すでに外は暗く、夜だと分かった

 

 

「……いったい、なによ……なんなのよ、これ……」

 

 

あまりにも……あまりにも、現実的とは思えない異常事態に、心の底から、震えていた……




次回、リアンの真のリライズ回、開始


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

初めての邂逅

昨日、一話分を書き終えようとした時に書いたものを見返してたら納得が行かず、5000文字分まるまる没にして、昨日は投稿できず、申し訳ございません

リアンリライズ回も含めた現実編、開始です


ヒロト、カザミ、パル、メイ、そしてリアン達5人がシークレットミッションだと思い込んでいたそのラストミッションの翌日……世間は、とある話題で持ちきりになった

 

大規模通信障害。昨日の夜に起きた謎の異常現象で、世界中のあらゆる電子機器からの通信が途絶された事件で、原因は不明とされている。彼らがGBNから強制的にログアウトされたのも、これが原因らしい

 

謎の放電やら、サージ現象やら、あまり聞きなれない単語を出して説明しているニュースが飛び交うが、まぁ簡単にまとめると、謎の電波によって通信機器やコンピューターが正常に作動することが出来なくなったっていうことだ。一般人にとっては、それだけで十分な認識である

 

だが、なぜそんな事が起きたのだろうか……その電波の発生源は、遥か先の宇宙の彼方に存在する遠い惑星がそうではないかという予想があるようだが、実際それが本当に正しいのかどうかは、誰も分かることではなかった

 

 

 

 

 

「あの……」

「……」

「あ、ちょっと」

 

 

そんな中……彼、ストーリーミッションに参加していたヒロトは、電波が回復した直後に、同じメンバーであるメイからの電話を受けて、港にあるショッピングモールへと来ていた

 

中では黒いサングラスにスーツ姿の女性が待っていて、その女性に案内されるまま、カフェの中へと入っていく

 

 

「あの……」

「久しぶりだな、ヒロト」

「!? メ、メイ……なのか?」

 

 

そして案内された先の、テーブルの上で待っていたのは、小さな人形……ガンプラの基本的な1/144スケール分の高さのサイズのモビルドールで……リアルでのメイであった

 

ヒロトは、初めて見るリアルでのELダイバーの姿に驚きつつ、そのガンプラのボディを見つめる。なぜか緑色の、ドーベン・ウルフを連想しそうな色合いのドレスみたいな服を着ているが、それはどうも彼女の後見人、ようは保護者の人から貰ったモノらしい

 

 

「でけぇ! でかすぎだろ! あの船!」

「?」

 

 

そんな彼女の事を見ていたら、後ろでまた一人、先ほどの女性にここへ案内されている人が来た

 

やけに騒々しく現れたのは、ヒロトに比べて背が低い男だった。見た目からして、年齢はヒロトと同じぐらいだろう。茶髪にバンダナを着けて、赤色のジャケットを着た少年で、港に滞泊している大きな船を見て興奮している。そんな彼が、ヒロトの姿を見るなり、近づいて来る

 

 

「お? もしかしてお前ヒロトか?」

「あ、あぁ、クガ・ヒロトだ」

「カザミだ、トリマチ・カザミ!」

 

 

カザミ。あのストーリーミッションに参加しているダイバーの一人で、リーダーを自称する男だ。だが、そのリアルの姿はダイバールックのあの筋肉質で高身長のものとは程遠く、どこにでもいそうな、至って普通の少年だった

 

カザミが本名だったのかというヒロトであったが、それはお前もだろうと言い返すカザミだった。が、ヒロトはどことなく適当に決めた感じに対し、カザミは気に入っている名前だから、変えずにいたようである。風を読み、未来を見据えるから、風!見! であると……

 

そしてカザミは、ヒロトの姿をまじまじと見る……その姿、身長、顔、全てがGBNのダイバールックとソックリなことを指摘する

 

 

「そういうお前はちっさいのな」

「あぁ? なんだ? こんなちっちゃい奴にちっちゃいって言われたくねぇ……って、ワォッ!?」

「お前も初めてか」

 

 

それに対しメイがダイバールックとの差を指摘したら、カザミが初めてメイのことを認識し、そのガンプラサイズの体に驚いていた。そして着ているドレスのことを可愛いという辺り、どことなく見た目相応の年齢の少年であるということが伺える

 

 

「お待たせして、申し訳ありません」

 

 

そうしてもう惸、そこにやってくる者がいた。その人は電動式の車椅子に乗った少年で、褐色色の肌に、金色の髪、着ている衣服も中東アジアの貴族が着ているかのようなモノを纏い、数々の金色に輝く装飾品を身につけていた。その後ろには、違和感なく燕尾服を着こなす老成した男性を従えているため、まさに見た通りに大富豪の御曹司とでも言わんばかりの気迫を見せる少年だった

 

 

「リアルでは、初めてですね。パトリック・アレクサンドル・レオナール・アルジェです」

「……だれ?」

 

 

その長い名前を名乗った少年に対し、カザミは誰だか分からないといった様子で、困惑していた。実際、彼の知り合いには、こんな豪奢なモノを着こなす少年なんていないし、ヒロトもそんな知り合いはいない

 

 

「……! パル?」

「うえっ!? お前パルか!?」

「はい、パルヴィーズです。ヒロトさんとカザミさんですよね。すぐに分かりましたよ」

 

 

だが、ヒロトはそんな彼が今まで一緒にミッションを続けていた少年、パルヴィーズだと見抜き、本人もそうであると答える。パルヴィーズ……パトリックは、既に来ていたヒロトとカザミのことはそうであるとすぐに見抜いたようであった

 

そんなパルも、リアルのELダイバーの姿を見てすごいと素直な感想を告げた。そしてその姿をとても綺麗だと賛辞を述べ、ドレスのことも、素敵なお召し物と言って褒めるなど、流暢に言葉を出す今の姿と、GBNでのパルのあたふたした姿とのギャップに、困惑するヒロトとカザミであった

 

 

「あとは、アイツを待つだけか」

「アイツって、リアンのことか?」

 

 

そうして、集まった3人のことを見て、メイはあと1人だという。それはもちろん、もう1人の男であるリアンのことだった

 

 

「リアンさんも、呼んでるんですか?」

「あぁ、あのミッションに関わった全員を集めている。そろそろ到着する頃だろうが……」

 

 

つまり、あのミッションに参加しているチーム、BILUD DiVERS全員を招集しているということを語るメイであり、そろそろここに着くだろうと言った、その直後

 

 

「ちょっと! 待ちなさいよ! こんなとこまで連れてきて、そろそろなんのために連れてこられたのか、説明しなさいよ!」

「「「?」」」

 

 

女性の怒鳴り声がしたあと、またあの黒いサングラススーツの女性が、そこにもう1人連れてきた

 

 

「何か言ってよ! ったく、なんなのよもう……ん?」

 

 

そこに来たのは、白いセーラー服をきた赤髪の少女だった。身長はそこにいるカザミよりも少し低いぐらいで、髪は腰まである長い髪を首元から後ろで纏めて、まるで尻尾のようにしており、顔立ちはクラスで三番目に良いのではと思う程度の整った容姿をした子であった。手に持つカバンを見るに、今日は学校に行っていたような感じの様子だった

 

 

「な……なん、ですか。あんた達……」

「いや、それはこっちのセリフなんだけどよ……どちらさまで?」

 

 

自分のことを見る三人の男子に対し、強い警戒を見せる少女であった。実際にそういう状況になったら、女としては警戒するのは当然の流れだろう。だが、一人は電動車椅子に座る少年で、もう二人はどこにでもいそうな少年達だ。普通だったら、そこまで強い警戒なんていらないだろう

 

だが、彼女はどうやら割と強引に連れてこられた感じであり、周りに対し少し攻撃的な態度を取っていた

 

 

「突然連れ出すようなことをして悪かったな、ツキザト・アンズ。いや、リアン」

「!!?」

「「「え?」」」

 

 

そんな彼女に対し、メイはリアルネームと、そして同時に、男のダイバーネームを言った

 

彼女が、待っていた最後の1人……リアンであると。

 

言われた当人は酷く狼狽し、ほかの三人はその事に揃って素っ頓狂な、あまりにも間抜けな声を漏らしてしまった

 

 

「ちょっと、なんで……なんで、あたしのダイバーネームを知って……ていうか、今の声、どこから……って、うえぇ!!?」

 

 

どうやら、彼女がリアン……あの着崩した軍服を纏い、中性的な顔立ちをする、赤髪のチンピラみたいな男のアバターの、その本人であったのは間違いないようだった。そんな彼女は、自分の正体のことを、自身の周りでは知り合いでありガンプラの師である父の上司のおじさん以外知らないハズのことをカミングアウトした人物を探した。そして、彼ら三人が集まっているテーブルの上にいる、ガンプラサイズの存在を指さした

 

 

「ま、まさかそれって……メ、メイ!?」

「あぁ、そうだ」

「な、なな……あ。ってことは、ここにいる三人って……」

 

 

ガンプラが、自分が今GBNでチームを組んでいるメンバーの1人、メイであると認識した。そして、なら周りいる三人の男子は……もしかして、同じチームのメンバーなのか? そう思った彼女の顔が、みるみるうちに蒼白していき、車椅子の少年へと指を差す

 

 

「パル?」

「あ、はい。そうです。パルヴィーズです。まさか、リアンさんって……」

 

 

続いてバンダナの、ダイバールックとは全く異なる体型の少年を指差し……

 

 

「……バカザミ?」

「おい! バカザミってなんだよ! 人の名前にバカって加えてんじゃねぇ!!」

 

 

最後に、ダイバールックと全く同じ容姿をしていた少年を指差し……

 

 

「……ヒロ、ト?」

「あ、あぁ。クガ・ヒロトだ……リアンって、やっぱり……」

「あ、あ、ああ、あ……」

 

 

確認をし終え、予想していた通りの人たちであったことを認識した少女は、体と声を同時に震わせながら、蒼白していた顔色が、更に青白くなっていき……

 

 

「ってかお前、女だったのかよ!?」

「あ、ああ……あああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!??」

 

 

カザミの最後の言葉のあと、少女の叫びが、辺りを覆った



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

受け入れられる思い

バレた……バレた……バレた、バレた……

 

バレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレた

 

性別が……あたしのホントの性別が、あたしが女である事が、バレてしまった……

 

ずっと隠していた、誰にも知られないように、ずっと、ずっと隠し通してきたことが、ついに暴かれてしまった……こんな、こんな形で……

 

 

「お、おい……」

「あの、リアンさん、大丈夫ですか?」

「大丈夫くない全然何も大丈夫くない。バレた、バレた、バレたバレた、バレたバレたバレた……」

「なんか、やべぇことになってないか、コイツ……?」

「えっと……クロード、お水もらって来て」

「かしこまりました」

 

 

ひとしきり叫んだあと、疲れたのかその場にへたり込んでしまったあたしを、パルの執事、なのかな? その人に支えられながら、椅子へと座らされた。落ち着かせようと思って、みんなが周りで心配そうに見つめる中、あたしは俯いてぶつぶつとバレたと連呼しながら呟き、完全に頭の中はショートして、真っ白になっていた

 

まさか……まさかこうなるとは、多少は考慮すべきだったと今更ながらに思った

 

 

 

 

 

時は遡ること今日の朝。世間が電波障害に陥っている中でも、うちの学校は変わらず登校することになった。まぁ、昨日の今日では、流石に対応ができないようだったし、それにただ電波が使えなくなっただけで、学校としては何も問題なんてないから、通常通りの日になった

 

住まわして貰っているお母さんの実家から、いつも通りに家を出てそのまま学校へと向かっていく途中、一台の車が私の前で止まった。その車は、なぜか東京のナンバープレートで、しかも車体にガンダムベースのロゴが貼ってあった車だった

 

その車から、二人の男性……一人は赤髪のチンピラみたいな人で、もうひとりは黒縁メガネのダウナーな感じの人だった。二人はGBNの運営に関わる人だと言って、名前も名乗ってたような気がするけど、もはや思い出せない

 

二人はあたしのリアルネームとダイバーネームを言って、着いてきてほしいと言ってきた。運営の人だし、一瞬なにか規約違反的なことやった? とも思ったけど、どうやらそんなことでもなかった。だからよく分からないから拒んでいたけど、何故かおじさんのことを持ち出して……おじさんも君を連れて行くことを認めている。って言ってきたから、まぁ、大丈夫だろうと思って着いていくことにした

 

学校は? とおもったけど、そこは今住んでいる所の人に直接会って話をしたみたいで、学校にもその家の人が連絡してくれることになっていた……妙にすごい周到に事が進んでいたのには、ちょっと怖かった

 

まぁ、その時に聞くべきだったかもしれない。どこへ行くのかを……

 

そのまま車で移動すること、約4時間。まさか関東に、しかも神奈川の横浜まで連れてこられるとは思いもしなかった。高速道路に入ったあたりで、妙な気がしていたけど……チンピラの人は寝てたし、メガネの人は運転に集中してて会話どころじゃないということで話してくれず、何も聞けないままだった……

 

長い時間のあと、ようやく車から下ろされたあたしは、建物の外で待っていた黒いサングラスにスーツの女性についていくように言われたあと、男二人はどこかへと行った。こんな所まで連れてこられたあたしは、どうすることもできず、言われるがまま、ついていくしかなかった……

 

 

 

 

 

そして今、まさか今自分が入っているチームの面々と、リアルで会うことになってしまった……そりゃぁ、考えてみればあたしが運営に睨まれる原因なんて、それこそあのストーリーミッションのことじゃん。だったら、同じメンバーであるみんなも一緒に連れてこれられるのは当然のこと……なんでその可能性を考えつかなかったの? あたし……

 

 

「どうぞ、お水です」

「あ……どう、も」

 

 

執事さんから、水の入ったコップをもらい、それを一気に飲み干した。キンキンに冷えているわけでもなく、少しぬるめの水だったためなのか、心がだいぶ落ち着いたように思えた。まだ頭の中では、バレたことに対するショックから立ち直っていないけど

 

 

「大丈夫か、リアン」

「あ、うん……ちょっとは、落ち着いた。わりぃ、いきなり叫び出したりなんかして……あ、ごめんなさい、ちょっと口調が悪かった」

「いや、そっちの方が、聴き慣れてるからいいけどよ……でも、その格好で言われるのは、ちょっと違和感があるな」

「それ、どういう意味よ……」

 

 

ヒロトが心配そうにあたしに気を使ってくれていたけど、それに対しいつものGBNでの態度を取ってしまった。そこはやっぱりそうなってしまうのは、ヒロトの見た目だろうか。まったくGBNでのダイバールックと同じなので、つい男として接してしまいそうになる。いや、まぁ別にそこはもう気にしなくてもいいのか

 

あとカザミ、違和感があるのはあたしの方もだからね。どんだけ身長盛ってたのよ、あんた。しかも声も若干高いし、そこも弄ってるのね……

 

 

「しかし、どうして性別が男ではなく女だったというのを知られたところで、あそこまで大声を出したのだ?」

「う……そ、それは……」

 

 

メイから、そのように追求された。確かに、生まれたての、しかも一般的な常識に疎いメイなら、そこに疑問は抱くはずだよね……どうして性別がバレたところで、と……一般的な男女観を持ってないからこそ、言える言葉だよね、それ……

 

 

「……女なのに、ガンプラを作ってGBNをプレイしていることを、隠していたのが知られてしまったから、だろ」

「っ」

「「え?」」

 

 

そこを、ヒロトが追求し、答えを言ってきた。まさにその通りで……それに対し、あたしは今まで思っていたことを……今まで心の中で燻っていた思いを、爆発させてしまった

 

 

「ふふっ、そうよ。女のくせに、ガンプラっていう男の趣味なんてモノを作って、おまけにそれを使ったゲームすらやってるのよ。それも、かなりやりこんでまでね。そのために、いろんなのガンプラの制作技術すら進んで学ぶほど、のめり込んじゃってるのよ、女のくせに……」

「リアン?」「リアンさん?」

 

 

ガンプラなんて、普通男の玩具でしょ? 工作とか、そういう系統のやつは、決まって男が好きなものだし、女がそんなことに手を出すわけないもんね。パテを使えば手は荒れるし、塗料がついたら人によっては肌荒れになりかねないし、なにより作るものがロボットって……それは男の好きなもので、女が好きになるようなもんじゃないでしょ?

 

 

「女だったら普通、ガンダムの登場キャラに対して好感を持ったり、ストーリーに対して興味を抱いたりするものでしょ? MSとか、他の兵器には目もくれず。なのにあたしは、逆にそれらが眼中に無くて、ガンダムが……ロボットの方が良いって思うのよ。それも可愛いとか、そういう系統じゃなくて、鉄の塊のような無骨で、ひと目で見て機械だってわかるような……そんな、女が好き好まないようなものが好きなのよ、あたしは」

 

 

見ている限りではあるけど、中で一番好きなのは鉄血のオルフェンズだったりする。ほかのシリーズとは異なる、あの姿が。フレーム丸出しに、貼り付けるようにある装甲。丸見えのシリンダーに、メイスやアックスにパイルバンカーといった武器が主流の、あの無骨さが、あたしはどうしてかたまらなく好きになった

 

だから、あたしが使うガンプラは、全てオルフェンズ系の機体しかない。そのフォルムが好きだから、という理由で……ハシュマルは、そういった無骨さはないけど、あれはその大きさに魅了されたし、所々から見えるフレームに、むき出しの動力部に独特な装甲なんかも、すごくあたしの中に刺さった。しかもそれを、多分最高だと思う制作空間で作って、あそこまでの完成度にしたから……壊された時に、あそこまで泣いてしまい、記憶のそこに封じてしまうほど、愛着が沸いていた

 

 

「どう? おかしいでしょ? キモいでしょ? 変わってるでしょ? 女らしくなくて、気味が悪いでしょ!? そう思われる事が……そう見れれる事が嫌だったから、性別を隠し通して来たのよ。なのに、なのに……それが今、バラされて……」

「リアンさん……」

「「……」」

 

 

なのに、こんなことで、バラされた。最悪だ……ほぼ無理矢理な形で連れてこられて、ついた先で隠してたことが明かされてしまうなんて……そりゃぁ、運営が一プレイヤーのプレイスタイルの理由なんて、いちいち把握してるわけないだろうし。おじさんの名前が出たのも、もしかしたら連れて行く為の理由として持ってこられたんじゃないかと思う。あの人は、あたしの性別バレが起きないように、色々と手を回してくれている。色々と忙しいはずなのに、実の娘でもなんでもない、赤の他人なはずなのに、あの人は……

 

そして、今まで誰にも言わなかったことを、ほぼほぼ初対面な……会ってまだ一ヶ月程度の付き合いでしかない人たちに、話した……もう、前までのようには、行かないくなったかな、と……せっかくこのメンバーとなら、今後もやっていってもいいかなと思ったぐらいには、信頼し始めたはずなのに……

 

幻滅、しただろうな……失望すらしたでしょう、ね……

 

自分の気持ちを吐き出しきって、そのあまりにも陰湿な内容に、誰もが口を塞ぎ、空気が沈んでしまった……

 

 

「別に……そんなことねぇよ」

「え……?」

 

 

そんな一瞬の静寂を破ったのは……カザミだった

 

 

「女だからガンプラが好きなのはおかしいとか、女だからGBNをプレイするのがキモイとか……んなこたねぇと俺は思うぞ。俺の周りには、女でプレイしているやつはいねぇけどよ……とにかく! 俺はそんな、女でガンプラ作ってることはキモいとか、そうは思わねぇよ」

「……カザ、ミ……」

 

 

正直、意外だった。この中で、多分そう思うはずだとおもってた相手から、予想とは全く真逆の言葉が出てきた……

 

 

「でも……あんたさっきあたしが女だと知って驚いてたじゃない」

「いや、男だと思ってたやつが、実は女だったって知ったら、普通は驚くだろ!? ヒロトとパルの方がリアクション薄いんだよ!」

「え? そうなんですか?」

「さぁ……?」

 

 

カザミの言葉にヒロトとパルが疑問を抱くが、個人的には、確かに普通は驚くよねって思っってしまった……でも、パルはともかく、ヒロトが大きく反応するところは、想像できないかな

 

 

「確かに、カザミさんの言うとおりです。好きなことがどんなことでも、そして好きなことに関して一生懸命になることに、性別なんて関係ないですよ」

「パル……」

「リアンさんのガンプラは、どれも素敵なモノばかりです。アインとルナはもちろんですし、最初に持ってきていたあの素組のグレイズだって、あなたの愛が詰まっているように見えました。綺麗にゲート処理をしてありましたし、シールだって、寸分の狂いも無く貼らなきゃ、あそこまで綺麗にいは出来ませんよ」

「っ……あ、ありがとう」

「ですから、そう卑下になる事はないと思いますよ、リアンさん」

「っ……!」

 

 

そのカザミに続くかのように、パルも、女でガンプラ作りが趣味であるということに対し、受け入れてくれた……まぁ、パルはそういう、キモいとか、そういう風に感じくことはないだろうと、思ってはいたけど……でも、こうして面と向かって言われて、自分がこの子にすごく失礼なことをしてしまっていたと、強く痛感した

 

 

「……君がそう思うのは、昔のハシュマルの事で、そう思うようになったんだろう」

「っ……う、うん」

「確かに、君がさっき言ったように感じる人はいるだろうし、実際君はそういう人たちにひどいことをされた。だから、そう考えるようになってしまうのは、仕方ないと思う」

 

 

そして、ヒロトが前に語ったことを持ち出して、あたしと向き合った。カザミとパルの二人は、昔のことについて頭に疑問符を浮かべているようすだったけど、そんなことに気を取られることなく、ヒロトは言葉を続けた

 

 

「でも、例えそう言われたとしても、自分を偽り続けるのは違うと思う。そうやっているのは、すごく苦しいことだろうし、実際、君はずっと隠し続けることに対し、苦しんできたんだろ」

「っ……」

 

 

ヒロトの言葉が、胸に刺さる。確かに、自分の性別を隠しながらプレイするのは、ずっと苦しい思いをしてきたし、そしてリアルでは自分の趣味を隠し通してきた……どうして、こんな苦しい思いをしなきゃならないのだろうって、それも何回かは思ったことだ。でも、それでも……自分の中にあるこの気持ちだけは、ガンプラ作りに対する思いだけは、どうしても、捨てることができなかったから……

 

 

「異性プレイをしているのは、そういうことじゃないかと思ってたけど……そんなに苦しいことなら、もうそういうのは辞めた方が良いんじゃないか、リアン」

「ヒロト……ん?」

 

 

ちょっとまって。今のヒロトの言葉……なんだか妙な言葉が……

 

 

「え、ヒロト、まさかあんた……知ってたの? あたしが女だって」

「あ、あぁ。あの話のあと、変な喋り方をしていたから、もしかしてとは、思っただけだけど」

「ッ!!」

 

 

まさか……え、あの時、あたしどんな感じで言ってた? あ、全く記憶にない……もしかしたら、割とかなり素が出ていたってこと……?

 

でも、その時に勘付いていたってことは、もうその時には……そしてあのあとから、ヒロトは何も態度を変えることがなかった……つまり、ヒロトはあたしが女だと知ってても、変わらずにいてくれたってこと……? 女のくせにとか、そんなこと、一切思うことなく……

 

 

「まぁ、その……カザミやパルが言ったように、女だからってガンプラ作りをすることは、おかしな事じゃないよ、リアン」

「……ヒロト……」

「そうですよ。別に、変だとは思いませんよ、僕も」

「そうそう、ネガティブに考えすぎなんだよお前」

「パル、カザミ……」

 

 

ヒロトの言葉に続くように、二人も、女のくせにとか言わず、それはおかしなことではないと、言ってくれてた……

 

 

「……あ、ありが、とう……」

 

 

そんな三人の言葉に……あたしは小さく、感謝の言葉を、漏らしたのだった

 

そっか……この三人は、おじさんと同じように……変だとは思わない人たち、だったんだ……はは、変な心配して、損した、かな……

 

 

「別に女であることを隠す必要はないと思うのだがな。実際、GBNのプレイヤーの男女比は、そう変わらないらしいしな」

「へ?」

 

 

三人の思いを聞けて、すこし安堵をしていたところに、メイがとんでもない爆弾発言を投下して……出そうになった涙が引っ込んだ

 

 

「そ、そうなの?」

「あぁ。お前のように異性でプレイするというダイバーも少なくはない。それに、お前は女性が本気でガンプラ作りをするのが変だと言っていたが、本気でガンプラ作りをする女性も、結構見かけるぞ」

「は……はい!?」

 

 

ガンプラ作りをする女性を……結構、見かける……!? いや、それ、どういうこと!? あたしと同じ人が、他にも、いる……!?

 

 

「私の姉であるELダイバーがアルバイトをしているところだと、制作スペースに来る客の男女比は変わらないし、むしろ多い時すらある。店員も、女性の方が多いし、私の知人の女性ダイバーは、割と行き易いとも言っていたな」

「な、なななな……なによそれ!? え、嘘でしょ!?」

「嘘を言ってどうする。場所はお台場のガンダムベース本店だ。気になるのなら、行ってみればいいだろう」

「………………」

 

 

お台場の、ガンダムベース本店……そこに、あたしと同じ人が、いる、の……?

 

そういえば、考えたことすらなかった……他にも、あたしと同じような人がいるということを……だって、あの掲示板の、スレの連中は、女でGBNをプレイするような人はたいてい、ゲーム部分を楽しむような人ばかりだっていってたし、ガンプラも制作依頼出したり、レンタルだったりがほとんどだって言ってた。仮につくるとしても、そこまでガチじゃなくて、市販品を簡単ミキシングで作るような、そんな程度だとも言ってた……

 

でも……そうじゃなくて……あたしと同じくらいに、ガンプラを作る女性がいる……それって、本当に、本当なの……?

 

 

「……さて、そろそろ本題に入りたいのだが……いいか、リアン」

「え、あ……うん。ごめんね、なんか、迷惑、掛けちゃって」

 

 

そういえば、あたしたちは皆、メイに呼び出されたんだった。あたしの場合は、男2人だったけど……あの2人はメイの使いとして、あたしを迎えに行かせたのか。それにカザミとパルの二人も、気づいた。なんか、いろいろと申し訳ない……

 

 

「そうだ、リアンのことですっぽり頭から抜けたけど、なんで俺たちを集めたんだよ、メイ」

「そうでした。メイさん、この招集は、いったいなんでですか?」

「そうだな。とにかく、場所を移動したい。悪いが、外へと移動するぞ」

 

 

そういうメイに言われるがまま、あたしたちは外へと出た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タクシー」

 

 

ごめん、メイ。そのサイズだと絶対にタクシーの運転手からは気づかれないから、無理だと思うよ。あと、唐突にポンコツ感出すの、やめてちょうだい……



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

虚構と繋がっていた現実

結局……あの後、タクシーなんて捕まる事はできず、メイが少しおかしくなったり、カザミがズブ濡れになったりということがあったけど……パルの計らいで、移動用の車は確保する事が出来た。出来たん、だけどさ……

 

 

「さぁ、どうぞ」

「す、すげぇ……!」

「「………………」」

 

 

カザミが思わず子供のように目を輝かせながら興奮し、あたしとヒロトは揃って口をぽかんとしながら、パルが用意してくれた車を見た

 

リムジンバスじゃん、これ……

 

 

「なぁ……パルって、いいとこのおぼっちゃんなのか?」

「これを僕の車と言ってるんなら、まぁ、そうなんじゃない?」

 

 

カザミの言葉には全面的に同意する。まさか、こんな車を用意してくるなんて、思いもしなかった……ってかすごい、なにこの高級感……小市民なあたしたちでは、一生お目にかかることも、乗ることもできない類の奴じゃん。しかも、パルが乗っている比較的大きな車椅子でもそのまま乗れるとか……確実にパル専用じゃない? これ

 

 

「あれ? どうかしましたか?」

「早く乗れ」

「え、あ、はい……」

 

 

メイに催促されるまま、パルが呼び出したリムジンバスに乗り込んだ。中もかなり豪華な感じで圧倒されてしまい、自分があまりにも場違いな所にいる気がしてしまう。そんな緊張感を抱いたまま、メイが言う場所へと向かう事になった

 

途中、カザミが中の写真を撮りまくっていたのには、なんて図太さなんだろうと思いながら眺めていた。あたしには、そんなことするほど落ち着く事が出来なかったのに……

 

 

 

 

 

 

メイが行きたかった場所、そこはその街の中央総合病院であった。どうしてこんな所に? と思うまもなく、メイに言われるまま病院内へと入り、入院者が入っている病棟まで進んでいった

 

そして、ある病室の前まで連れられたところで、花瓶を抱えた女性と出くわすことになった

 

 

「あら? マサキのお友達?」

「え?」

「マサキ……?」

 

 

なんだろう。どこかで聞いたことあるような……しかも、割と最近で……あれ、どこで聞いたんだっけ?

 

 

「は、はい。そうです。リアルでお会いするのは、初めてなんですけど」

「あ、じゃぁGBNでのお友達ね」

「は、はい」

 

 

メイが小声でパルに対し応えてくれと促し、パルもそれを受け応えていく。でもその受け答えを淀みなく、そして違和感を待たせることなくこなしているパルの姿を見て、GBNとのギャップがあって困った。もしかして、GBNでのパルって割とこの子の素の姿なんだろうか……?

 

 

「そう、わざわざありがとう。マサキの姉の、シドー・ミズキです。さ、どうぞ」

「あっ、シドのお姉さん?」

 

 

その女性が自己紹介をしたことで、ようやくマサキというのが、ミッション中にメイがゼルトザームへ問いかけた時に出した名前で、自分がやりあったあの無双のシドへと繋がった。そして、そこからある疑問が発生した

 

なんで、その人のお姉さんがいるところに、しかも病院に、連れてこられたのか……

 

そのまま病室へと迎えられたあたしたちが中で見たのは、ベッドに横たわり、点滴を打たれながら眠っている1人の男性と……

 

 

「ッ? テルティウム……?」

 

 

見たことのあるものが……Mk-3ベースの改造機にして、あのゼルトザームに酷似した、紫と白の装甲を持つガンプラが、置かれていた

 

 

 

 

 

マサキのお姉さんは語る。半年前に、GBNにログインしたまま、意識が戻れず、寝たきりになってしまったという。それを聞いて、あたしたち4人は息を飲んだ。GBNをプレイしていて、意識が戻らなくなったということは、聞いたことがなかったからだ。一応、プレイ中に意識が途切れてしまうということはあるにはあるけど、それは基本VRに酔ってしまったり、ログインし続けて栄養失調になって倒れるといった肉体に影響があった場合でしか起きないはずだった

 

なのに、このマサキさんは体にはどこも異常はない。なのに意識が戻っていないという……どういうこと?

 

さらに、お姉さんはパルからの質問に答える。マサキさんとは、どういう人なのかを。愛想はイマイチだけど、困っている人をほっておけない、お人好しな人で、ガンプラが好きな弟だと言っていた。すごく仲のいい姉弟なんだなと、思った……

 

そして、お姉さんは続けて、ある写真を見せてきた。マサキさんがGBNで撮った写真らしく、なんだかすごいことをやるんだって言ってたらしく、このメンバーであるミッションを攻略すれば、本当に誰かを救えるんだって言いながら見せた写真のようだ

 

その写真には、あたしが知っているダイバールックのシドがいて、その隣には……あのミッションで会った、レジスタンスのムランが、写っていた

 

 

 

 

 

「さっきの写真に、あの人が……」

「なんで、アイツがいたんだ……?」

「……ムラン……」

 

 

場所は変わり……マサキさんの病室から出たあたしたちは、一度人気のない場所へと移動したいと言ってきたメイに言われるまま、とりあえず近くの公園へと行くことになり、パルのリムジンを使って移動し、その公園のベンチに座っていた

 

 

「あれは、エルドラってことですか? メイさん、さっきの方は?」

「彼はシドー・マサキ。ゼルトザームのパイロットだ」

「「!?」」「なに!?」

 

 

パルが、彼のことについてメイへと問いかける。そしてメイは、みんなに衝撃を与える事実を述べる。彼が、あのミッションで戦ったヒトツメの一機、ゼルトザームのパイロットである、と……

 

 

「やっぱり、そうだったのね」

 

 

でもあたしは、その事実を聞いても、そこまで驚くことはなかった。むしろ、こうやってほかの人もそう断言したことで、自分の思っていた事が本当であったと、再認識する事が出来た

 

 

「知っていたのか、リアン」

「うん。一度、野良でパーティ組んで、高難易度ミッションをクリアするっていうことをした時に、唯一誘いに答えてくれたダイバーがいたの。それが、さっきの人……シドさんだったの」

 

 

あたしは、その時のミッションの様子を語った。そのミッションは、0083の最終決戦、デンドロビウムとノイエ・ジールの戦いの再現で、連邦に着いてジオン残党の部隊を殲滅せよという内容だった。そのハードモードでは、自軍の強力なNPDMSであるデンドロビウムがすぐに落とされて行動不能となり、自分たち参加したダイバーのみで、ノイエ・ジールとそれに追随する敵MSを殲滅する、というものになる。ノーマル以下なら、デンドロビウムが善戦してくれるから楽だけど、ハードだとそれがすぐ落とされていなくなるから、いきなり難易度が跳ね上がり、クリア率は相当低かった

 

最大参加人数は20人で、推奨人数は8人。それぐらいすぐに埋まるだろうと思ってたけど、誰ひとりとして参加してくれず……唯一来てくれることになったのが、あのシドさんだけだった。結局他に来てくれる人はおらず、時間もなかったので、二人で挑むことになった。確実にミッションクリアなんてできないだろうと、そう思っていた

 

でも、あろう事か彼はたった1人で全てを駆逐し尽くした。一切の乱れもなく、疲れる様子もなく、あのノイエ・ジールをたった1機で撃破したのだ……すごいと思うよりも、強すぎて逆に引いてしまうほどだった

 

 

「この前、スレで見た話だと、他にも数多くの高戦績を残していった人みたいでね。デスアーミー1000機討伐に、リーオー500機相手に武器制限マッチ、それを全てソロでクリアしたとかなんとか……そんな感じだったから、上位界隈では名が知れ渡ってたみたいで、無双のシドって異名がつくほど、有名なSランクダイバーだったんだって」

「バケモンかよ、そいつ……」

 

 

カザミが声を震わせながら言うが、まさにそうとしか言えない。あれほどの強さを目の当たりにしたら、そういう感想しかでないでしょうね。ほかの感想を言えるとしたら、上位陣ぐらいじゃないかな

 

 

「でも、数ヶ月前からログインしなくなったっていう噂があって、フレンド登録していたのに、なぜかそれが解除されちゃって……引退したのかと思ってたんだけど……そんな彼の機体が、あのミッションに現れたときは、どうしてと思ってたんだけどね」

 

 

そして、昨日の戦い、そこでも彼と鍔迫り合いになった時に会った、雰囲気が変わっていた彼の姿。それを見て、ゼルトザームはテルティウムの改造機で、パイロットはシドさんであると確信できた。でも、謎はまだあるし、さっきの病院で眠るリアルのシドさんの現在を見て、更なる謎が生まれた

 

どうして、テルティウムがあそこにいて、シドさんのアバターも、あのミッションに参加していたのだろうか

 

 

「リアンの言うとおり、彼は数ヶ月前に突然、いなくなった。それも、ログアウトの記録もないままにな」

「「「え?」」」

「ログアウトしていない?」

 

 

メイから告げられた事実が、更なる混乱を招いた。彼がまだ、ログアウトをしていないのだという。それはつまり、GBNのどこかにいる、ということになるのだが……

 

いや、確かにいたではないか、ゼルトザームとして、あの黒騎士のようなダイバールックとなっていたけど。でも、おかしいことがある。ログアウトしていないのなら、本人は今だにダイバーギアをつけていないとならないし、ガンプラも端末にセットされていなければならない。なのに、その二つはもうすでに取り外されているし、そうなったら自動的にログアウト処理がされるはずなのに……

 

 

「私はELダイバーとして、彼の捜索を依頼された。広大なGBNのディメンションに、ログアウトしていない彼のダイバーと、ガンプラのデータが漂っていないかを、な」

 

 

そして、あのストーリーミッションへとたどり着いて、ゼルトザームに組み付いた時に、彼のダイバーを見つけたという……更に続けて、こうも言い放つ。彼の意識はまだ、あの場所に……エルドラにある。と……

 

 

「意識だけが?」

「んなこと、あり得んのかよ……?」

 

 

確かにありえない。意識だけが肉体から切り離されて、GBN内に残っているなんて……そんなこと、可能なの……?

 

メイはそこで、昨日のミッションの最中に起きた、セグリを壊滅させたあの衛星砲のことを持ち出してきた。いきなりなんでそんなことを持ち出してきたのかと、そう思ったとき……

 

 

「今起きている大規模電波障害。この現象が、あの攻撃によって引き起こされたものだとしたら……」

「は……はぁ?」

 

 

今、現実で起きている電波障害が、あのエルドラで起きたことが起因していると、そういうメイの言葉に、つい素っ頓狂な言葉がもれてしまった

 

 

「いや、だからあれはゲームのイベントだろう!?」

「通信障害の原因は、遠い星で、30年以上前におきた現象だって……」

 

 

カザミの言うとおり、確かにあれはゲーム内で起きたことだ。それが現実に干渉するなんて、ありえない。それにこの電波障害の原因は、30光年離れた惑星でおきた出来事であると、ニュースで言っていた、らしい……あたしはそこらへんの情報を仕入れていないので、よくわかっていない

 

でもメイは、あれは光の速さを超えた現象だという節もあると言っていた。だから、あのゲーム内でおきた事が、すぐさま現実に引き起こされたという……

 

更に、メイは続けて、こう、伝えてきた……

 

 

「エルドラというディメンションと、我々がエントリーしたストーリーミッションについて、先日、運営から正式な回答があった……」

 

 

GBNには、実装されていない。と……

 

 

「え……?」

「実装されていないって……?」

「どういう……?」

 

 

なら……あたしたちがやってきたことって……いったい、なんなの? あのミッションが全て、GBNの仕様上ありえないもので、しかもGBN上に存在していないって……

 

そして、昨晩の電波障害がエルドラの衛星砲による影響で……シドさんのリアルが原因不明の意識不明で、なぜかログインしたままになってて、そのアバターとガンプラがエルドラにいて、あんなことになってる……

 

そしてなにより、あたしが感じ始めていた、あのエルドラにいるNPDの感情のリアルさ

 

それらが合わさって、導き出される結論は……

 

 

「リアル、ということか」

 

 

ヒロトが、あたしと同じ答えに、たどり着いていた

 

確かに、そうであるというのなら、色々と説明がつく部分がある。まずフレディやマイヤ、あの三人組を始めとしたあのエリア……いや、星の住人たちの豊かな感情に、個々人で異なる個性。それらをNPDとして処理しようものなら、莫大な演算処理能力を持つコンピューターがなければならない。そんなもの、GBNで実装されたという話は聞いたことがない。でもあれがリアルだというのなら、納得できてしまう

 

そしてあの星の広大さ。感情や個性を有した上で、それをGBN上で再現しようものなら、それもまたスパコンを何台必要なのか……そしてそれを作り上げるグラフィッカーの人数だ。ここ最近木星エリアを作り上げたばかりで、新しいエリアを一から作るなんて時間的に無理な話だ。だけど、あの星自体がリアルだとしたら、それこそそんな時間も人も当然必要ない

 

でも、わからないのが、一つ。あれがリアルだとしたら、どうして、GBNから行くことができたのだろうか。GBNのアバターの姿のままで、そしてガンプラも、リアルに現れることができるのだろうか……まぁ、仮説として、データを現実に実体化させることができるとか、そういうのがあそこにあるというのなら、納得がいくけど……あまりにも、ファンタジーな考えじゃない? これ

 

パルもエルドラが現実であるということに納得できていないみたく、カザミも、そこについて突っ込んだ。GBNにログインしているだけなのに、なんでリアルの……しかも遠い惑星へと行けるのかを……

 

 

「証明する方法はない。あるのは状況だけだ」

 

 

でも、メイはそう答える。いや、答えるしかないんだろう。だって、今ここにいるだけじゃ、何も知ることができないんだし。それを知るためには……もう一度、エルドラに行かなきゃ、わからないままだ

 

でも、それって……つまり……

 

 

「だから会わせたのか、シドー・マサキと」

「え?」

「どういうことだ、ヒロト?」

「エルドラに行くということは、彼のようになる可能性があるということだ」

 

 

そう。ヒロトの言うとおり、下手したら、意識不明となってしまい、こちらであのように、寝たきりの状態へとなってしまうということだ……

 

もし……もしあたしが、そんなことになったら……お父さんとお母さん、それにお姉ちゃんが心配するだろうし。なによりGBNでそうなったと知ったら、おじさんが一番、深く傷つくことになるかも知れない。また、俺のせいでこの子がこんな事になってしまった。って……

 

 

「リスクは伝えておくべきだと考えた」

「そのために、あたし達を呼んだの? あのストーリーミッションとエルドラが現実で起きていたことで、そして、もしかしたらシドさんのようになっていた可能性があったってことを、伝えるために」

「あぁ。直接見てもらったほうが、信憑性も、危機感も持ってくれると思ってな」

 

 

確かに、これはリアルで直接会って聞いて、そして見てみないと納得が行かないことだ。電話越しや、ただ口頭で説明されるだけじゃ、実感なんて沸かないはず……あたしだったら、確実に嘘だと言っているだろうね…

 

 

「それで、どうする?」

「「「ッ」」」

「どう、するって……まさか、行くのか行かないのか、ってこと?」

「あぁ」

 

 

メイは、強い眼差しであたしたちを見た。多分、メイがこのメンバーをリアルで集めたかった真の理由は、これなんだろう。直接会って、直接見て、直接真実を伝えて……直接、今後どうするのかを、聞くために……

 

カザミとパルは、帰って来れるか分からない。そんなありえないことは、もうゲームではないと言う。しかし、今までそのリスクはあったのだというメイだったけど、カザミはそんな事実を知っていたのなら行っていなかったと言う……

 

 

「ッ……俺は、ガンプラで、GBNでヒーローごっこがやりたかっただけなんだよ……リアルとか、人の命とか、そんなの背負い込めねェよ……!」

「カザミ……」

「カザミさん……」

 

 

カザミの言葉に、あたしは同意する。そして、コイツのことを、改めて認識する。やっぱり、等身大の少年なんだな、と……でも、だからこそ今この状況でこういうことを言えるっていうことに、すごく安心を覚える。無駄にカッコつけようとせずに、怖いから、死ぬかもしれないから、行きたくはないっていう言葉に……

 

そしてメイは、パルの方へと無垢が、パルもなにかを言おうとしたけど、すぐに言葉を引っ込め、そのまま口を結んでしまった……色々と考えがよぎっていたのだろうけど、結局答えを出せなかったみたいだった……

 

 

「……」

「ッ……あ、あたし、は……」

 

 

続けて、メイはあたしの方へと向いてきた。確かに、色々と気になることはあるし、それを知るためにはエルドラに行く必要がある。でも、それは命と天秤にかけてでもすることなのだろうか……そんな事実を知ったところで、どうするというのだ……

 

でも……あの星のことを……深く関わってしまった人たちを、あのまま放置していいのだろうか……

 

結局、答えは出せないまま、あたしはメイの視線から、目を逸らしてしまった……

 

最後に、ヒロトにも同じく問いかけようとしたみたいだけど、ヒロトも、何も答えることもなく……

 

 

「では、ここまでだな……」

 

 

そう言って、メイは走り出し、黒スーツの女性の所へといき、その場を去っていった。残されたあたし達は、しばらくその場で立ち尽くしたまま、誰がいい出したのかわからないけど……解散した……



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

好きなことなら 前編

少し長くなりそうなので、2話構成でいきます

最近、一話ごとの文字数が多くなってきているような気がする


みんなと別れてから、あたしは一先ずおじさんに連絡をすることにした。もう電波は回復したらしく、電話が使用できるようになっていた

 

そして、おじさんに今あった出来事を、全て話した。それと、こうなることを全て知っていたのか、とも……そしたらおじさんは、ある程度のことは知っていたようで、運営の偉い人から聞いたようだった。でも、あのエルドラが現実であることを、あの電波障害の事件に、あたしが関わっていたことにも、かなり動揺しているようだった。あと、その説明の為に、全員をリアルに集めた事は、失念していたらしく、辛い思いをさせてすまなかった。とも言っていた

 

ほかにも詳しく聞きたいことも、話したいこともあったけど、それは明日直接会ってからということになり……とりあえず、さっきまで話してたことは、今は考えずにいようと思う

 

あと、帰りの事は、おじさんが東京に住むあたしの姉に連絡してやると言ってくれて、今日は姉のとこに泊まり、明日2人で帰ってきなさいという事となり……少しの間、時間が出来てしまった

 

 

 

 

 

「……これが、等身大、ユニコーンガンダムの立像、かぁ……おっきいなぁ……」

 

 

だから、あたしはここにやって来た。お台場にある、ガンダムベース本店の前……あの時、メイが言っていた場所である

 

 

「……ほ、ホントに、女の人がここに、いるのかな……」

 

 

電波障害もあったし、それに今日は雨が降っているからなのか、周りには人があまりいない。けど、やはり都会だからか、自分にとっては多いという印象だ。あと、私服の人がほとんどで、制服を着てるあたしが少し浮いているようにも感じてしまう……

 

 

「う……やっぱ、やめよっかな……」

 

 

ここまで来ておいて、急に怖くなってしまった……もしも、もし男しかいなかったら……あたしが入った瞬間に、周りから嫌な目で見られたりしたら……そんな事を考えてしまい、足がその場から動かなくなってしまう

 

やはり、入るのは止めるべきか、どうしようかと……思い悩んでしまう

 

 

「……でも、メイの言葉を、信じてみる……?」

 

 

仲間であるメイの事を、信用していないわけではない。だから、彼女が言った事は、間違いではないはずだ……

 

 

「っ……メイ、信じてるから、ね……!」

 

 

だから、仲間の事を信じて、あたしは、その中へと足を踏みこんだ

 

 

 

 

 

「……うわぁ……すごー……」

 

 

店の中へと入った途端、ほぼ全ての作品のガンプラがあるのではないかと言わんばかりの品揃えに、最近発売された新作ガンプラが山のように積み上げられていたり、そして展示されているプロビルダーによる作品の数々に、近日発売予定のガンプラがショーケースの中に展示されていたりと……その全てに、圧倒されてしまった……

 

って、今のあたし、すっごい田舎者感丸出しじゃないかな……まぁ、田舎者だけど……

 

 

「あ、これ……ガンダムベース限定、HGユニコーンガンダム、ペルフェクティビリティ……! それに光の結晶体も……!」

 

 

限定商品コーナーには、前々から欲しいと思っていたモノが置いてあって、つい目を輝かせてしまった……何気にユニコーンのフルアーマーは好きだし、プランBから設定が派生したアームドアーマー全部載せのこれも嫌いじゃない。光の結晶体も、この特別な仕様ということで、凄く気になっていたモノだ。素組だけでも、どれだけのものなのだろうか……気になる

 

欲しいなぁとは思うけど、サイフの中を見ると、そこまでの余裕が無かった。ここまで来るのに交通費でそれなりに使ってしまったし、それにここからお姉ちゃんの所まで行く分が、今ここで使うと足りなくなる……買えるとしたら、2000円以下のモノぐらいで……それぐらいの値段で限定品で欲しいものといえば、BB戦士のユニコーンのペルフェクティビリティぐらいかなぁ……うーん……

 

 

「って、何を興奮してんだか、あたし……」

 

 

一瞬、目的を見失いそうになった。ここに来たのは、限定品のためではなく、ここに女性がいるのかいないのかを確かめるためではなかったのか。目的を再認識し、辺りを見渡す……

 

 

「お、この色のプチッガイ、再入荷したのか、買いっと」

「今度のベアッガイフェス用か?」

「おう、この前参加条件満たせてなくて、参加できなかったんだよなぁ」

 

 

男二人。ベアッガイフェス用のガンプラ探し、か

 

 

「……っと、これだこれだっと」

 

 

男一人。カスタマイズウェポンパーツ目当て、バトル専門でやってるプレイヤーかな

 

 

「えっと……どのガンプラが、強いものなの?」

「こ、このOOクアンタってのが強いよ!」

「そ、それに、このパーツをつけたら、すごく強くなるし!」

「あ、あとあと! この塗料を塗ったら、装甲が硬くなるし、そ、それに、君によく似合うと思うよ!」

「えぇっと……よくわからないから、作ってくれない?」

「「「よろこんで!」」」

 

 

女一人に男三人。オタサーの姫っていうんだっけ、あぁいうの……よく、GBNでも見かけたりする

 

 

「ねぇ、このガンプラなら、あなたみたいに……スペシャルで、2000回で、模擬戦な感じになれるかな?」

「もちろん、なれるさ。このスペシャルで、2000回で、模擬戦な俺のように……」

 

 

女一人に、男一人。雰囲気的にカップルかな? っていうかリアルでコーラサワーコスしてるよあの人……それでデートしてるとか、すごい神経してるなぁ……都会ってヤバい

 

 

 

 

他にも、辺りを見渡しても男ばかりだし、女の人はいるにはいるけど、子連れだったり、付き添いだったり……なんかそんな人ばかり

 

やっぱり、ガンプラ作りをするような女性なんて、そうそういないんじゃない……

 

 

「……なによ、男ばっかだし、女の人も、ガンプラ作りなんて知らない人ばかりじゃない……」

 

 

あぁ、結局、あたしと同じような人は……いないんじゃ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あった? バウンドドッグ」

「あったあった。パチ組観賞分と、ダンタリオンの改造パーツ分、バッチリ入手成功! 大出費で財布が軽くなっちゃったや、あはは」

「こっちもラスイチのケルベロスバクゥゲット! いやぁ、これでウチのウヴァルの改造が捗るわぁ」

「私のアスタロトに似合うビルドパーツも出たことだし、あとはGBNの復旧を待つだけだね~」

「ねぇ、どうせなら上の制作スペースでもう作ってく? 時間あるし」

「「さんせ~い!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……」

 

 

少し遠くから、女の子の声が聞こえた。その方向を見ると、同じような服……多分、学校の制服をきた女子三人が、上の方へと向かっていくのが見えた。しかも、会話の内容からは、GBNプレイヤーなのが分かり……ダンタリオンにウヴァルにアスタロトって……鉄血の外伝機……あたしとおなじ、鉄血好きの女子ってこと? それも、改造とか言ってたし……それをやるって、言ってたよね……?

 

 

「……いた、んだ……あたしと同じような子が……しかも、三人も……」

 

 

仲が良さそうだし、同好の士というやつだろうか。そんな風に見えた……メイの言うことは、正しかった、のかな……

 

 

「いらっしゃいませ。なにかお探しでしょうか?」

「え?」

 

 

色々と考えていた私に、声をかけてきた女の人がいた。その人は、黒い髪のあたしより少し歳上な感じがする女性で……ガンダムベースの店員のエプロンをつけているから、ここの店員さんか

 

 

「え、あ、いや、その……えっと……」

「? どうしたの?」

 

 

いきなりだったから、つい言葉がどもってしまった。なにか言わないと、変に思われちゃうよね……! えっと……

 

 

「い、いえ! 何でもありません! ただ、その……ハイグレードの、バルバトスルプスレクスが見当たらないなぁって、思っただけです。あ、あははは」

「あぁ、ルプレクね。店頭に並んでなかったかしら……在庫調べてあげるから、ちょっと待ってて」

「え、あ、はい! ありがとうございます……!」

 

 

って、いったい私は何を言ってるんだ……ルプレクなんて、もうすでに持ってるし、軽い塗装に改造までやって作ってるんだよ? もう必要ないっていうのに

 

っていうか、このお姉さん、ルプレクっていう略称をちゃんと知ってたんだ……ファンの間でだけ通じるモノだと思ってたんだけど……そこらへんも、きちんと教えられているのかな……それとも、好きだから、そういうのは知ってたの、かな……

 

とりあえず、断ろうと思って声をかけようとしたら、端末を手早く動かしながら操作してて、そしてすぐ見つかったのか、あたしが声を出す前に、話かけてきた

 

 

「ちょうど在庫に一個残っていたわ。今とってくるから、レジの所で待っててもらえるかな」

「あ、はい……」 

 

 

そう言って、店員のお姉さんは早足でバックヤードへと入っていってしまった。こうなったら、もう買うしかないかなぁと思って……そのままレジへと向かって待っていた

 

 

 

 

 

待つこと数分。待ってる間、レジにくるお客さんを眺めていたら、確かにメイの言うとおり、女性もそれなりにいた。あたしが見渡した時には、そんなにいなかったはずなのに……そして、買うものの、GBNで有用なビルドパーツだったり、改造目的なのか同じものを二、三個買っている人もいたし……とくに、MGEXのユニコーンを買っていったOLみたいな女の人がいたのは、かなり驚いた。あれ作るんだ、すごい……変な声、出してなかったかな、その時のあたし……

 

 

「お待たせ。さ、こちらにどうぞ」

「あ、どうも……」

 

 

さっきの店員さんがレジまでHGのルプレクを持ってきてくれた。せっかくここまで持ってきてくれたものを、しかも相手は純粋な善意で探してくれたものだろうし、それを結構ですと言う事が出来ず……つい購入してしまった。割と押しに弱いのかなぁ、あたし……

 

 

「ありがとうございます。もしかして、GBNで使ってるガンプラの改造用?」

「え? あ、いえ……ここに初めて来たので、なにか一つ買って帰ろうかなぁって思ったんです……なんでも良かったんですけど、ルプレクだけ、見当たらなかったので」

「あぁ、なるほど。ルプレクって、結構改造用のパーツ取りのために、よく買いに来る人が多くてね。ワイヤーブレードとか、大型メイスとか。それで割と在庫切れになりやすいの」

「へぇ……そうなんですか……」

 

 

あたしは基本、ネット通販やおじさんにお願いして買ってもらうのがほとんどだったから、そういう話を聞くのは新鮮な気持ちだった。というか、こうしてガンプラを店頭で見て買いに来たのも、かなり久しぶりな気がする……

 

 

「初めて来たのなら、限定品とかの方が良かったんじゃない? ペルフェクティビリティとか」

「そっちのほうが良かったんですけど、その、予算的に……」

「あぁ、なるほど。それは失礼したわ」

 

 

なんだろう、こうしてこの人とこんな会話するだけでも、すごく嬉しい。ガンプラに関する事の会話なんて、GBNで男の姿でやったり、掲示板で男のふりをしてやるぐらいしかなかったから……なんだろう、すごく、開放的な感じ……

 

 

「あ、アヤメさ~ん! お疲れさまで~す!」

「あ、モモ。それにカナリにステア、いらっしゃい」

「こんにちは~」

「お疲れさまです、アヤメちゃん」

 

 

色々と会話をしていると、後ろからこの店員さんに声をかける人たちがやってきた。三人いて、一人は学生服で、もう二人は私服で、三人とも少し大きめのバッグを持ってきていた。そんなおっきな荷物を持って、一体何が入ってるんだろう?

 

 

「上の制作スペースをお借りしたいんですけど、空いてます?」

「結構上がっていく人がいるけど、一応空いてるわよ。はい、これ許可証ね」

「ありがとうございます」

 

 

あぁ、上で制作するためだけにきてる人もいるんだ。しかも、女性で……じゃぁ、その大きなバッグは、制作するためのツールとか、そういうのが入ったバッグってこと? にしても、相当入ってるような気がするんだけど……ステアさん? って人、それ旅行用のキャリーケースだよね? いったい何が入ってるんだろう……?

 

 

「フジサキさん、もう時間だから、上がっていいよ」

「あ、ありがとうございます。それじゃぁ、私も後で上に行くから」

「はーい、早く来てきてくださいね、アヤメさん」

 

 

そう言うと、三人は上へと上がって……行く前に、桃色の髪をした学生が、あたしのとこまでやってきた

 

 

「あ、もしかしてそれ、今買ったガンプラ?」

「え、あ、はい。そうです」

「ねぇ、もし時間があるのなら、上で一緒に作っていかない?」

「え……?」

 

 

唐突に、なぜか一緒に作ろうという誘いを受けてしまった……いやいや、あの、あたし達、初対面ですよね? なんなんだろう、この子のこの人懐っこい猫みたいな感じの馴れ馴れしさは……これが、都会の女子……!?

 

 

「いいんじゃない。せっかくここに初めて来たんだから、思い出作りに作って行ったらどうかな?」

「あ、初めて来たんだ! なら尚更だよ! ほらほら、一緒に作ろうよ~!」

「え? あ、あの、ちょっと……!?」

 

 

まさかの、本日二度目の強制連行を喰らい、あたしはこの人達と、2階の制作スペースへと向かって行った



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

好きなことなら 後編

「……うわぁ、ホントだったんだ……」

 

 

メイの言葉通り、そこには、女性の人が結構いた。そしてそのほとんどの人が、自らの手でガンプラを作っていた。ニッパーだけでなく、デザインナイフに、ヤスリ、そしてセメント接着剤にエポキシ樹脂のパテも、机の上に並んでいる。しかも、ただのパチ組だけじゃない。あとハメ加工をして、塗装のためにパーツ一つ一つを色毎に分けてタッパーの中に分けてたり……アレって、プラ板? それを細かく切ってるって、まさかディテールアップもしたりしてる……?

 

割と、高度なことをやっている人が、結構いた。ただの素組をしている人もいるけど……

 

確かに、あたしと同じような女の人は……存在、していたんだ……しかも、それを隠すことなく、こんなオープンなところでやるほど、ガンプラ作りをすることに、躊躇いなんてすることなく……

 

 

「すごいでしょ、ここの制作スペース」

「エアブラシとかも、塗料込で格安で貸してくれるから、割と重宝するんだよねぇ」

「流石にブラシは家で使うと、匂いで家族に迷惑かけちゃうからね」

 

 

確かに、塗料の匂いは慣れないときついものだ。あたしだって、最初の頃は結構強烈できつかったけど、慣れてしまえばどうとでもないし……っていうか、それも使わせてくれるんだ、ここ。割と、ビルダーとしては、相当いい環境じゃん

 

 

「さて、と……ふぅ、重たかった~」

「ところでステアさん、その大きな荷物は、一体何ですか? さっき聞いたのに、はぐらかしてましたし、そろそろ教えてくださいよぉ」

 

 

確かに、ちょっと気になってしまう……あそこまで大きな荷物。しかもローラーの音を聞くに、中には相当色々と詰まっているようにも思った……

 

 

「えっとねぇ……最近、思ったんだけど、私って、やっぱりフォースのお荷物になってるんじゃないかなぁって……」

 

 

唐突に、このステアさんという人が、自分語りを始めた……っていうか、内容がなんだか重い気がする……

 

 

「あれ? なんだか聞いたことあるようなセリフ……」

「え、そうなんですか……?」

「悪いけど、ちょっとだけ、付き合ってくれないかな?」

 

 

モモさん? の言葉に、引っかかるようなものがあった。それに対し、カナリさん? っていう人が、申し訳なさそうにしている。なんだろう、このカナリさんっていう人が、なんだか妙に疲れた様子を見せていた……あれ、この状況的に、そこまで重くない?

 

 

「この間のフォース戦、私がすぐに落とされちゃって、それで、そこを着いた相手の攻撃で、すぐに負けちゃって……もし、私はまだ落とされてなかったら、あんなふうになることなんてなかったんじゃないかって……」

「は、はぁ……」

 

 

まぁ、フォース戦だと、一機落とされるだけで戦況は大きく変わると聞くし、それは上位であればあるほど顕著になる。ん? つまりこの人たち、上位フォースのメンバーだったりするの?

 

 

「そんなことないよ! ステアさんはすっごく強い人だし、それはステアさんのフォースの人は皆よく知ってるよ!」

「うん、私も、そして他のメンバーも、そう言ったんだけどね……」

 

 

二人がフォローを入れてくる。その言葉を聞くに、こんなことを言ってるけど、実力はかなり持っているダイバーなのか、この人……

 

 

 

あのスレだと、そういう女は基本いないとか、いたとしてもゲーマーの類で、ガンプラはどこかに制作依頼を出して作ってもらったりしているのが大半だと言っていて……ビルダーとしても、ダイバーとしても、どちらとも優れた女はいないとか、そういうことを言っていたことがあった

 

あれって、いつの話だろう……確か、二年ぐらい前、かな。今のあいつらの他にも、まだ人がいっぱいいた頃の話だった気がする……

 

 

 

「どうしたらって、思ったんだ。どうしたら、みんなのためになれるんだろうって……そんなとき、キャプテン・ジオンの動画を見たの」

「ん? なんでそこでキャプテン・ジオン?」

 

 

話を聞いていると、なんだか変な方向へ話が行っていた。モモさんは首をかしげてるし、カナリさんはに至っては、片手で頭を抑えはじめた

 

 

「もしかして、その、キャプテン・ジオンの言葉に、勇気づけられた、ってことですか?」

「それもあるよ。自分の中のガンプラ魂がある限り、何度だって立ち上がる……そのキャプテンの言葉は、私の中に響いたんだ」

 

 

つまり、この人もカザミと同じで、キャプテンの言葉に勇気づけられた人、っていうことかな

 

ん? 待って。それ、も?

 

 

「それよりも……私が目を奪われたのは、その時に戦っていた、相手のあのデストロイガンダムだったの……!」

「「はい?」」

 

 

なんだか、話が変な方向へといってしまった。それに対し、あたしとこのモモっていう人の言葉が、重なってしまった

 

 

「キャプテンのあのνジオンガンダムをあそこまで追い込んだ機体スペック、それにいかなる攻撃だろうと跳ね返し、傷一つつかない装甲、そして高出力の兵器の数々、それらを全て使いこなすことができれば、私だって皆の役に立てるかも知れない……そう思って、今これを作ってるの」

 

 

ドン、と……机の上に、すごく巨大なガンプラを置いてきた。サイズ的に、1/60と1/100の間ぐらいで、黒い装甲に巨大な手足、胸に三つ並んだビームの発射口、今だにパーツは色分けされておらず、多分武装を追加するために作ったんだと思う部分には、パテのままだったりするそれは……確か、かなり高額商品であるはずの……

 

 

「HGの、デストロイガンダム……?」

「うん! SEED DESTINYに出てくる大型機。私の好きなステラも乗ってた機体だし、ちょうどいいかなぁって。ほら、私、ステラコスしてるし」

「これ、ある意味死亡フラグなんじゃないかなぁ」

 

 

確かに、カナリさんの言うとおり、すぐにフリーダム相手に落とされそうな気がする……まぁ、そんなことはそうそう起きないだろうし。それに大型MSはGBNでもある程度は有用な手だし。フォースに一人いると、割といい仕事ができることもあるし……なにより

 

 

「大きければ出力が上がるし、その分耐久も上がるから落ちにくくなるし、エネルギーも通常サイズのものよりも増えるし」

「わかります。それに肉弾戦もそれなりに強いんですよねぇ。当てるのはちょっと難しいけど、一撃でも当てれば普通のガンプラならすぐに落とせますし。当てるのも、そもそも体自体が大きいので、ちょっと可動域を広くすれば、意外と当たりやすいんですよ」

「あ、やっぱりそうなんだ!」

「はい。大型機の特徴は、なんと言ってもその火力ですから。力任せで一撃必殺! これがなかなか、決まると最高なんですよねぇ」

 

 

まぁ、GPD準拠で考えた場合、なんだけどね。GPDで何度か1/100のガンプラを使ってたことがあるから、使ってる時の感覚はそれとなく分かる。GPDもGBNも、操作感覚は似たようなもんだし、一緒な感覚だろうとは思う

 

 

「詳しいんですね。もしかして、あなたもGBNをやってたり?」

「え、あ……はい……」

 

 

と、つい熱く語ってしまったからか、モモさんがずいっと、顔を近づけて来た。あまりにも熱弁をやってしまったからか、ちょっと気恥ずかしくなってしまう……

 

 

「そうなんだぁ……ねぇ、いつもはどこからインしてるの? もしかしたら、どこかであってるかも! あ、後でフレンド登録しない? 端末持ってきてる?」

「あ、その……端末は、持ってきてないので……」

「なんだぁ……じゃぁ、ダイバーネーム教えてよ。インできるようになったら、名前から辿ってフレンド登録できるし」

「は、はい……えっと、ダイバーネームは、リアン、って言います」

「リアンね! インできるようになったら、すぐ探すから、申請許可、お願いね!」

「あ……はい。分かりました」

 

 

まるでマシンガンか、ガトリングの如くの言葉を浴びて、つい蹴落とされてしまった。それのせいか、うっかりダイバーネームまで教えてしまった……やってしまった、と思った……

 

これじゃぁ、女であることを隠して、男でプレイするのが……逆に、恥ずかしくなってしまう……

 

 

 

いや、もう別に、男でプレイする必要、あるのかな?

 

 

 

だって、こんなにもあたしと同じように、真剣にガンプラを、それもガンプラバトルを前提として作っているような人がいるんだ。メイ曰く、異性プレイでやってる人は割と少ないみたいだし、この人たちが男の姿でやっているとは、あんまし思えない……きっと、女性アバターでやってるんだろう。さっき、ステラコスでやってるって言ってたし

 

それに、もうみんなには……ヒロトだけじゃなく、カザミやパルにも、性別は知られちゃったわけだし……いまさら、隠し続ける必要、ないんじゃないかな……?

 

 

「ねぇステア、ほんとにこれでやるつもりなの?」

「もちろん! ここまで作ったんだし、完成させて上げたいじゃない。それに……さっきは敵を倒すことを言ってたけど、逆の方面でも活躍できそうじゃない? 大きければ皆を守る盾になれたりできるかもだし、MA形態とか、移動要塞みたいにできるかもしれない。そうやって、みんなのサポートができるようにビルドしてもいいかなって」

「ステア……確かに、それだとチームとしては、ありがたいかな。でも、どうやってうちのフォースネストのアークエンジェルに積み込むか、考えてやってる?」

「え? あ、あぁ……えっと……は、ほら! ネオジオングみたいに、下に吊るすとか!」

「考えてなかったかぁ……懸架用のワイヤーは、ちゃんと自費で用意すること。いいわね」

「は、は~い……」

 

 

隣では、ステアさんとカナリさんの二人が、会話しながらでも手際よくデストロイを組み立てていっている。しかもちゃんとヤスリがけでパーティングラインを消したりしてるし、それに塗装のことも考えて、後ハメ加工もばっちりしてる……やってることが、本気のガンプラ作りのそれだった

 

見た目的に、ガンプラ作りが趣味な感じがしない二人なのに、そんな人が、こうしてガンプラを作っている姿に……あたしは、堪えようのない感情が、沸き上がってくるのを感じる

 

 

 

 

 

あぁ、なんだ……今までのあたしは、たんに世間知らずの大馬鹿娘ってことだっただけなのか……周りだけで、世界の全てを決めつけてしまっていた、愚か者だった……ただ、それだけだったんだ

 

掲示板の連中も、こういうことは言って欲しかったよ……いや、あそこにいた人も、あたしと似た様な人ばかりなのかもしれない。この景色を、知らないだけなのかもしれない。類は友を呼ぶってやつ、かな……

 

 

 

最初は、ここに連れてこられて、みんなに性別がバレて、最悪な日だと思っていた。けど、みんなはあたしが女だと知っても、なにも嫌悪なんてしなかったし、受け入れてくれた。そしてメイから、思いもよらないことを聞いて、そしてその言葉を信じて行った先で、あたしと同じ人は、いっぱいいるんだと、知ることができた

 

最悪なんかじゃない……ここに来て、本当に良かった……

 

 

 

 

 

「あ、そうだ。リアンさん、道具とか持ってきてます? なんでしたら、私のを貸してあげますよ!」

「え、いいんですか?」

「もっちろん! じゃぁ、さっそくそれ、作っちゃおうよ!」

「あ……はい!」

 

 

そんな二人のガンプラ作りを眺めていたら、モモさんから道具を借りることになり、途中から店員だったアヤメさんも交えて、買ったばかりのルプレクを一緒に作る事になった。まさか、おじさん以外の誰かと、こうして一緒にガンプラ作りをするなんて、思ってもいなかった……

 

ルプレクが出来たあとは、ステアさんとカナリさんのデストロイ作りに協力したり、モモさんのカプルに触らせてもらったり、アヤメさんのSDガンダムのギミックに驚いたりと……そんな、初めて女子が集まってやるガンプラ作りは……初めていろんな器具を使って作ったハシュマルの時ぐらい、久しぶりに、ガンプラ作りが楽しいと感じた時間だった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

赴く決意

翌日。昨日のガンダムベースでの出来事……モモさん曰く、ガンプラ女子会……は、閉店時間ギリギリまで続いた

 

女性だけということもあって、会話はかなり盛り上がった。中にはあたしの知らない情報もあったりしたし、かなり為になった部分もある。ステアさんとカナリさんの所属するフォース、アークエンジェルズが、リアルも女性で構成されている200位以上ランクのフォースだと知った時は驚いた。そんな2人と会った事もあり、あの時作ったルプレクは、何気にSEEDの戦艦であるアークエンジェル風のカラーリングで仕上げる事になったりする

 

しかし、中でも一番驚いたのは、モモさんとアヤメさんの2人が、まさかあのビルドダイバーズの一員だと知った時だった。リクとサラの話題になった時に言っていた事で、此れにはびっくりした

 

やっぱり、周りからはあの2人の事は砂糖発生器だと思われているみたいなのは、共通認識だった。でもあのモモさんとアヤメさんの2人はその辺の認識が無い。どうやら毎回一緒にいるからか、完全に慣れてしまっている様子だった……慣れって怖い

 

因みに、あたしが今入っているBUILD DiVERSの事は、ちょっと隠しておいた。例のあのエルドラの件もあるし、これについて関わる事は、出来る限り今日おじさんと話すまでは伏せておいた方が良いと思ったから……

 

 

 

そんな女子会に名残惜しさを感じながら、その日の夜は姉の住むマンションに泊まり、そして今日、おじさんの所へと姉の運転する車に乗っていた

 

 

「……」

 

 

そんな帰り道、あたしはずっと昨日の事を思い返していた。ガンダムベースの事。リアルでのヒロト、カザミ、パル、メイの事。シドさんの今の状態の事。そして、ゲームのイベントだと思っていた事が、実は全てリアルであったかもしれないという事を

 

特に、エルドラの事……昨日、言われた後はあまりの情報量と、理解出来ない部分、そしてその内容の衝撃で、あまり考える事はせず、棚上げにしていた

 

でも、一晩明けて、少しは余裕が出来たから、やっと言われた内容を整理出来た。理解出来ない部分はあるし、納得してないとこだってある

 

 

「どうする。か……」

 

 

メイの言葉が浮かぶ。今後の事を、自分達の次は、どうするのかを……正直な所、あたしは迷ってる

 

エルドラがリアルなら、あそこに住う人たちは皆、今もなお生きている人達だ。フレディやトワナ、アシャ、フラン、マイヤ……その人達は、今もなおヒトツメの脅威にさらされている。それを見捨てる事なんて、出来る訳がない

 

あと、エルドラが本当にリアルなのか。どうしてGBNを介して行く事が出来たのか。あそこであたし達はなぜ、ガンプラと共に現実に実体化出来たのか。あのヒトツメは、なぜデスアーミーにドートレス、そしてグレイズを模したものなのか。なぜシドさんが、あそこであのような事になっているのか……なぜ、エルドラにビルドダイバーズの名が知られているのか

 

それら、幾つかの謎がある。知らない事を、知らないままにしておくのは嫌だし、気になっている。だから、ソコをまず解明したい……

 

そして、ほかの皆。多分だけど……皆、行くと思う。メイはシドさんの救出の為に行くだろう。そういう感じの雰囲気してたし。パルも、あの三人組とも仲が良いし、それにあの村の人達と最も深く接していたので、ほっとけないと思ってそうだし。カザミは……あんなこと言ってたけど、あそこの人達のために行くと思う。アイツ、意外と気にしてるっぽいし

 

ヒロトは……うん、行くだろう。誰かの為に、何かをしてくれる人だから、ね……

 

だから、あたしも行くべきなんだろう……

 

 

 

 

でも……行ったところで、無事に帰ってくる保証はあるの……? だって、あのシドさんが、あんなことになってるんだよ? リアルでは病院で意識不明で眠っていて、意識は、エルドラでヒトツメになっている。もしかしたら、洗脳ってやつ? をされているのかもしれない……

 

あの人の強さを知っている。今のあたしたちでも、束になって掛かっても、勝てるかどうか怪しい……そんな人が負けて、あんな事になって……もし、あたしが同じ目にあったら……

 

 

「……どう、しよう……」

 

 

決められない。行きたいけど、不安が立ちはだかって、一歩が足りない……どうしたら……

 

 

「はぁ、さっきからブツブツと……アンズ、少しは静かにしてて欲しいんだけど」

「ん、あ、ごめん」

 

 

色々と考えていたことを、つい口から漏れていたみたいだった。車を運転しているお姉ちゃんから突っ込まれた

 

ツキザト・イチゴ。東京の大学を今年の春に卒業して、そのまま東京で地元の名産品を販売しているアンテナショップを、大学で同じ地元の同級生達で経営している人だった。今回はお姉ちゃんが東京に住んでて助かった……ちなみに、ガンプラに関しては全くの興味なくて、あたしがガンプラ好きなのをあんまし快く思ってくれってない

 

 

「全く、なんで制服着たまんま東京まで来たんだか。サクラギのおじさんからは、理由は聞くなって言われてるし……」

「……まぁ、ちょっとね……」

「ふ~ん。まぁ、別にどうでもいいけど」

 

 

だからか、あたしに対しては少し口悪い感じに接してくれるけど、いきなり東京にきたあたしを理由を聞かずに泊めてくれたり、こうして車に乗せてくれたりするので、まぁ仲はそこまで悪くはない

 

そんな姉と共に……あたし達の実家まで、車を走らせていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車で走ること、約四時間。一度着替えと荷物をとりにいく為に、今あたしが住まわせてもらっているお母さんの実家に寄って、昼過ぎに、あたし達はようやく実家のある街へと入った。そして実家……ではなく、おじさんの家へと向かった

 

最初からお互いに目的地はそこだし、もうお父さんもお母さんもおじさんの家に行ってるみたいだった

 

そして、おじさんの家に……この町の中でとりわけ一番広く、大きな家へと到着した

 

 

「よぉ、わざわざ悪かったな、イチゴ。そしておかえり、アンズ。」

「おひさしぶりです、サクラギさん」

「こんにちは、おじさん」

 

 

玄関へと入っていったら、おじさんが……サクラギ・タイアンさんが待っていた

 

サクラギ・タイアン。お父さんの会社の上司であり、あたしにとってガンプラの師であり……あたしの安価スレの中で唯一のコテハンでやっている、安価ダイバー応援団長、その人だ

 

この辺りの土地の所有者という大地主であり、今はサクラギリゾートグループというグループの会長を勤めている人だ

 

 

「長旅で疲れただろ。どうだイチゴ、ひとっ風呂入っていくか?」

「あ、じゃぁお言葉に甘えて、いただきます」

 

 

あたしが中学に上がる前までは、サクラギ採石所という自分の持っている山を削って墓石や石畳用の石を採ってそれを売ってた会社の社長をやっていた。だけど、あたしが中学に上がる頃、採石所の地下に温泉の源泉があることが判明し、それを自社で掘り当てたことで、その経営方針を採石から一転して温泉街の経営へと変え、この辺り一帯をリゾート地へと変えたなかなかに大胆な人だ。おかげでこの町は今や温泉街として名を馳せており、大勢の温泉客を迎えることで発展を遂げるに至った

 

その温泉街の全てを取り仕切ったり、温泉の権利なんてものを持っているから、その収入でそうとう稼いでいるらしく……かなりの富豪な人物になっている。だからか、GBNのスポンサーをやってたり、運営会社の株もそれなりに持ってたりする

 

姉がやってるアンテナショップに色々と手伝ったりしてたようで、姉的には大恩人ということらしい……だからか、おじさんには頭が上がらない、らしい

 

ちなみに……見た目がなぜか、老成した三日月・オーガスに似ているのが、なんとなく気になっているところだ……でも服とか雰囲気とかが、テイワズのマクマードの方に似てるので、なんだか妙なミスマッチ感を感じてしまう

 

 

「さて……立ち話もなんだ。親に挨拶したら、何時も通り、庭の蔵に来い」

「……はい」

 

 

そうして、おじさんとの挨拶がすんだら、おじさんの奥さんと一緒に料理を作っていたお母さんと、今だに仕事をしていたお父さんのところに行って、そのあと、庭にある土蔵のような建物へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

おじさんの家の土蔵、そこはおじさん専用のガンプラ用の建物であった。高価な機材や工具、塗装ブースと、あのガンダムベースの制作スペースばりの環境があったり、おじさんが制作した多数のガンプラが並んでたり、お店の在庫かとおもうレベルの積みプラの数があったりもする。そしてなにより一番目を引くのは、GPDの筐体だ。これがあるので、すぐに制作したガンプラの動作テストができると言っているので、定期的にメンテナンスしているようだった

 

 

「すまなかった」

 

 

この部屋に入ってそうそう、おじさんはあたしに対して頭を深く下げて謝罪してきた。理由は当然、いきなり東京まで連れていかされ、そこで性別バレまでされるということを招いたことに対して、だ

 

まぁ、確かに急だったし、しかも学校の登校中だったし、おまけに首都圏まで行くことになったし……みんなと、リアルで対面することになったのは、正直怒ってもいいと思う。けど、みんなと出会って受け入れられて、そしてガンダムベースに行って、あたしと同じ人が大勢いるという事実を知ることができた。だから、逆にあたしの方が感謝してるぐらいだ

 

 

「謝らなくていいですよ。東京に行って……みんなと出会えたことは、決して悪いことではなかったですから。その……あたしが女だと知っても、みんなはそれを受け入れて、くれましたから」

「っ……そう、なのか……?」

「はい。ですから、どうか頭をあげてください」

「……そうか、そうか……良かった……彼らが、受け入れてくれる者達で、良かった……」

 

 

受け入れてくれた。その言葉を聞いて、おじさんは安堵していた。おそらく、リアルで出会って、どんな仕打ちをされたのかを気になっていたようだ。でも、それが予想してたことの真逆だったことに、すごく安心したようだった

 

 

「……っていうかおじさん、運営からいろいろ聞いていたって言ってましたけど……いったいどこからどこまで何ですか?」

「あ、あぁ……運営から聞いたのは、シドー・マサキの現在と、それについてメイというELダイバーに捜査協力を依頼したということだ。あとは、まぁお前さんがスレcで報告していたことだけだ」

「なるほど。つまり、エルドラとか、そういうのは聞いていないということなんですね」

「あぁ。昨日の電話で、初めてその単語を聞いた……それで、どうなったんだ? 一昨日のストーリーミッションは。なんかそれの影響で、あの大規模電波障害を起こさせてしまったなんて言ってたが……」

「そう、ですね……とりあえず、その前に出てきたあの軌道エレベーターの所から、かな……」

 

 

 

 

 

しばらく、あのラストミッションのことについての説明と、衛星兵器のこと、そこで会ったアルスとかいうやつのこと、実際に戦ったシドさんのこと、そして衛星砲を打たれた後のこと……エルドラのことを、記憶しているところを余すところなく、説明した

 

そこから、昨日直接会った現在のシドさんのリアルの現状と、衛星砲が打たれた後に電波障害が起きたことなど、色んな事を全てを加味した結果、エルドラがリアルではないかという仮設が出たこと

 

そして……今後、どうするのかを……行くのか、行かないのか、ということを……

 

 

 

 

 

「……なんか、ファンタジーを通り越したことになってんだな、今」

「そうですよ……まともに考えようとすると、頭がおかしくなりそうですよ……」

 

 

聞いた感想は、やはりファンタジーなことになっているということだけだった。まぁ確かにその通りなので、他に言いようが無い

 

色々とありえないことを言われて、少し険しい表情をするおじさんだったが、すぐに考えを振り払い、あたしの目を見つめてきた

 

 

「ところで……お前は行くつもりなのか、その……エルドラ、というところに」

 

 

やはり、問うてくることはそれで……間違いなく、一番気にしている部分であるのだろう。ヘタをすると、命の危険性が孕んでいるのだから……そんな所へ、人の子を……ましてや自分の唯一の弟子とも言える大切な子を、そんな死地に赴くことなど……本人としては、止めたいと思っているんだろう

 

 

「……正直言いますと、行きたいという気持ちはあります」

「っ」

 

 

でも、それでも、あたしは今の気持ちを直接伝えた。あの星のことを、放っておけなかったから。皆が行くと思っているから、あたしだけビビって隠れるようなことはしたくないし……

 

 

「みんなと……みんなの為に、あたしは行きたいと……そう、思っています。けど……」

「けど……なんだ?」

「……シドさんが負けたほどに強い奴らと戦って、勝てるのかどうか……下手したら、二の舞になってしまうんじゃないか、とか……そう、考えているところもあるので、あと一歩が踏み出せない。そんな感じ、です……」

 

 

やはり、考えてしまうのはシドさんのこと。あの人の強さを知っているがゆえに、そのせいで一歩が踏み指すことができないでいる……多分、行きたい気持ちが一番だんだろうけど……でも、もしもということが引っかかってしまう

 

 

「……なるほど。そういうことか……」

 

 

それを見かねたおじさんは……ある一つの方法を提案する

 

 

「なら、あいつらを使えばいいだろう」

「あいつら……あ」

 

 

その一言で……おじさんが言わんとしていることが理解出来た

 

つまり……あのスレを使えと、そういうことなんだと思う

 

そういえば、電波復旧してから、あのスレを見てなかった……関東行ったり、みんなと会ったり、色々と考えてたりで、見に行く余裕無かったな……

 

 

「今晩でも聞いてみろ。あいつら、復旧してから、ずっと掲示板に張り付いているみたいだしな」

「そう、ですね、行ってみます」

 

 

あいつら……まだ掲示板にいるかな……



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

DIVE in to the ELDORA

誤字報告、ありがとうございます。


1:以下無名のダイバーがお送りします

ここはGBNプレイヤー、ダイバー名“リアン”ことイッチが安価をしながらGBNをプレイしていく様子を見守るスレです

用法・用量・ネチケットを守って優しく見守りましょう

 

前スレ:【安価でダイブ】43スレ目

 

 

2:以下無名のダイバーがお送りします

【イッチのスペック】

ダイバー名/リアン

性別/男

所属フォース/無所属→BUIRD DiVERS

プレイ歴/サービス開始して1年後からスタート

好きなガンダム作品/鉄血のオルフェンズ

使用ガンプラ/ガンダムアイン

(グレイズ・アインの改造機。フレームをガンダムフレームに取り替えた汎用型。プレイ開始から使っている1号機)

/レギンレイズ・ルナリアンゼ

(レギンレイズ・ジュリアの改造機。鉄血メイスとキマリスランスを使い、ミノフスキーフライトシステムを装備した全身ブースターお化けの超近接戦闘型。安価で作成した機体)

/ガンダムアイン・ルナリアンゼ

(上記の二体を組み合わせた機体。ガンダムアインをベースに、脚をルナリアンゼに変え、バックパックにルナリアンゼの腕を取り付けたミキシング機。イッチのガチ機)

/塗装、改修を施したガンダムフレーム機とヴァルキュリアフレーム機

(HGで発売されているモノはほぼ全部揃ってます)

/鉄血のオルフェンズに出る量産機の素組

(HGで発売されているモノ全て。主に縛りプレイなどの際に使ってます)

 

 

3:以下無名のダイバーがお送りします

そろそろストミ終わりそうやし、安価おやすみは書かなくていいよな

 

 

4:以下無名のダイバーがお送りします

せやな

 

 

5:以下無名のダイバーがお送りします

前スレの1000、これええんか?

 

 

6:以下無名のダイバーがお送りします

いや、展開的に最終決戦やん。ちょうど基本的な連戦ミッションの数になるし

 

 

7:以下無名のダイバーがお送りします

まぁ、続くか続かねぇかは、イッチが来れば分かるやろ

 

 

8:以下無名のダイバーがお送りします

それ。まぁ、待つとするか

 

 

 

………

 

………………

 

………………

 

………

 

 

 

 

43:以下無名のダイバーがお送りします

遅くね、イッチ

 

 

44:以下無名のダイバーがお送りします

復旧してから、もう一日たったぞ?

 

 

45:以下無名のダイバーがお送りします

まさか、昨日言ってたように、途中で接続障害が起きてクリア出来ず、マジで落ち込んでんのか?

 

 

46:以下無名のダイバーがお送りします

イッチの事だから、それはありえないと思うんだけどなぁ

 

 

47:以下無名のダイバーがお送りします

発狂はしてそうだけど

 

 

48:1

言いたい放題書いてんじゃねぇよ。まぁそうなったら確かに発狂しそうだけどさ

 

 

49:以下無名のダイバーがお送りします

 

 

50:以下無名のダイバーがお送りします

イッチーーーーーー!!!

 

 

51:以下無名のダイバーがお送りします

遅いぞお前!

 

 

52:1

ごめん。いろいろあって、ここのことうっかり忘れてた

 

 

53:以下無名のダイバーがお送りします

ひでぇ

 

 

54:以下無名のダイバーがお送りします

ここを忘れるって、どんないろいろな事なんだよ

 

 

55:1

まぁ……ちょっとね

 

 

56:以下無名のダイバーがお送りします

まぁ戻ってきたからいいけどよ。んで、どうなったんだ、ストミは。最終決戦だったんだろ

 

 

57:以下無名のダイバーがお送りします

どうなった? 今度こそ失敗したか?

 

 

58:以下無名のダイバーがお送りします

相変わらずの失敗して欲しい願望

 

 

59:1

それについてなんだけど……えっと……どう説明すればいいんだろう

 

 

60:以下無名のダイバーがお送りします

 

 

61:以下無名のダイバーがお送りします

何があった?

 

 

62:1

まぁ、とんでもないというか、ありえないというか……詳しいことはあまり言えないけど、今から言うことは全部本当の事だと思って、聞いてちょうだい

 

 

63:以下無名のダイバーがお送りします

お……おう

 

 

64:以下無名のダイバーがお送りします

な、なにがあった?

 

 

65:以下無名のダイバーがお送りします

ちょうだい?

 

 

66:1

そこは……うん、まぁそこは今回は突っ込まないで欲しいかな。話が長くなりそうだし。とりあえず、長文注意

 

 

67:以下無名のダイバーがお送りします

は? はい?

 

 

68:以下無名のダイバーがお送りします

なんか、雰囲気が違うな

 

 

69:以下無名のダイバーがお送りします

まぁ、いいけどよ。さて、今回のストミは~?

 

 

70:以下無名のダイバーがお送りします

日曜の大御所アニメ風にすな

 

 

 

………

 

………………

 

………

 

 

 

75:以下無名のダイバーがお送りします

は? は? は?

 

 

76:以下無名のダイバーがお送りします

すまん。かなり理解不能なんだが

 

 

77:1

まぁ、そうなるよね……

 

 

78:以下無名のダイバーがお送りします

いやいや、イッチ、頭打ったか?

 

 

79:以下無名のダイバーがお送りします

今までのストミがゲームのイベントじゃなくて、ガチで起きていた現実の戦いだったと……? 

 

 

80:以下無名のダイバーがお送りします

ありえんだろんなもん。失敗して発狂しすぎて頭おかしくなったか?

 

 

81:安価ダイバー応援団長

すまんが、本当のことだ。信じられんだろうけどな

 

 

82:以下無名のダイバーがお送りします

団長おっす。ってか、団長知ってるの?

 

 

83:安価ダイバー応援団長

あぁ。直接本人と、あとある筋から聞いた情報だ。間違いない

 

 

84:以下無名のダイバーがお送りします

え、マジなん……?

 

 

85:以下無名のダイバーがお送りします

団長が言うのなら……え、マジなんすか!?

 

 

86:1

なんであたしよりもおじさんの言葉の方を信用するんだよお前ら

 

 

87:以下無名のダイバーがお送りします

あたし? おじさん?

 

 

88:以下無名のダイバーがお送りします

ちょっと待ってくれ。色々と情報が多くて頭がおかしくなる

 

 

89:安価ダイバー応援団長

おいリアン

 

 

90:1

ごめんなさい。やっちゃいました……今はこのことについては頭から抜いといて。いつか必ず説明するから

 

 

91:以下無名のダイバーがお送りします

あ、はい

 

 

92:以下無名のダイバーがお送りします

絶対しろよ。なんか気になり出したからな

 

 

93:1

分かった

 

 

94:以下無名のダイバーがお送りします

とにかく、イッチのことを信じるとして。今までのストミがリアルで起きてたことで、あの電波障害が、宇宙での戦いの最中におきた事の影響であったことで……それ、ここで言っていいのか?

 

 

95:以下無名のダイバーがお送りします

せやな

 

 

96:以下無名のダイバーがお送りします

普通は言わないよな。こんな誰が見てるかわからないとこで

 

 

97:1

まぁ、確かにそうよね。でも、あんた達と話す場所なんて、ここかGBNだけだし。それに、ちょうどいい感じにできそうだから

 

 

98:以下無名のダイバーがお送りします

はい?

 

 

99:以下無名のダイバーがお送りします

ちょうどいい感じって?

 

 

100:1

渋る理由もないから言うね

 

今から安価するから。内容は、行くか行かないかで

 

 

101:以下無名のダイバーがお送りします

安価?

 

 

102:以下無名のダイバーがお送りします

あんか……?

 

 

103:以下無名のダイバーがお送りします

いや、なんでここで安価なんだよ!? わけがわからないぞ!?

 

 

104:以下無名のダイバーがお送りします

マジで頭打ったかイッチ?

 

 

105:安価ダイバー応援団長

おい、こんなことをしろとは言ってないぞ

 

 

106:1

いや、安価なら、ちょうどいいかなっと思ったので

 

 

107:以下無名のダイバーがお送りします

ってか、行くか行かないかって……なんでそれ聞くの?

 

 

108:以下無名のダイバーがお送りします

えっと……今までの戦いが現実っていうのなら……ガチの戦場に行くか行かないか、ってこと?

 

 

109:以下無名のダイバーがお送りします

馬鹿かお前は!? んな危ねぇことを安価で決めんじゃねぇ!!

 

 

110:以下無名のダイバーがお送りします

え、マジ? そんなこと安価で決めようっていうの……?

 

 

111:以下無名のダイバーがお送りします

マジでそれならもう一択なんだけど

 

 

112:以下無名のダイバーがお送りします

だよな。危険なことをさせるわけにはいかねぇわな

 

 

113:以下無名のダイバーがお送りします

んなわかりきった安価する必要あるんかよ

 

 

114:1

それでもやる。とにかく、いくよ

安価>>120

 

 

115:以下無名のダイバーがお送りします

行かせられるか。やめとけ

 

 

116:以下無名のダイバーがお送りします

流石に悪ふざけ言える空気じゃないよな、行くな

 

 

117:安価ダイバー応援団長

本音を言うぞ。行くな

 

 

118:以下無名のダイバーがお送りします

もう一回言っとく、行くな

 

 

119:以下無名のダイバーがお送りします

もうこんなのわかりきってるよな。行くな

 

 

120:1

行く

 

 

121:以下無名のダイバーがお送りします

ここだな、行くな

 

 

122:以下無名のダイバーがお送りします

行かせられるかよ、んな危険なとこに

 

 

123:以下無名のダイバーがお送りします

!?

 

 

124:以下無名のダイバーがお送りします

イッチ!?

 

 

125:以下無名のダイバーがお送りします

はぁ!?

 

 

126:安価ダイバー応援団長

やはり、か。これを狙ってたのか、お前は

 

 

127:以下無名のダイバーがお送りします

え……え?

 

 

128:1

ごめん、みんな。あたしの茶番に付き合わせて

 

 

129:以下無名のダイバーがお送りします

どういうつもりだイッチ

 

 

130:以下無名のダイバーがお送りします

頭マジでおかしくなったのかお前

 

 

131:1

まぁ、そういうよね。うん、言われることも、覚悟はしてたから

 

 

132:安価ダイバー応援団長

安価スナイプをする。その程度出来ないぐらいなら、行かない方がいいということか

 

 

133:以下無名のダイバーがお送りします

なるほど。つまりまんまと俺らはイッチに利用されたわけだ。覚悟完了するために

 

 

134:以下無名のダイバーがお送りします

スレ主が安価に参加するとか、初耳だぞ?

 

 

135:以下無名のダイバーがお送りします

おいおいおい、命かかってんならマジでやめとけよイッチ!?

 

 

136:以下無名のダイバーがお送りします

マジで何考えてんだお前は

 

 

137:1

だからマジでごめん、ほんとにごめん

 

 

138:安価ダイバー応援団長

分かった。俺はもうこれ以上なにも言わん

 

 

139:以下無名のダイバーがお送りします

団長!?

 

 

140:以下無名のダイバーがお送りします

団長!?

 

 

141:安価ダイバー応援団長

安価は絶対だ。安価で決まったことなんだ、もうとやかく言うことはない

 

 

142:以下無名のダイバーがお送りします

マジですか団長

 

 

143:以下無名のダイバーがお送りします

団長まで……

 

 

144:安価ダイバー応援団長

行ってこい、リアン。そして、無事に帰ってこい。いいな

 

 

145:1

ありがとうございます、おじさん。それじゃぁ、いろいろ準備することあるから、もう落ちるね

 

それじゃ、ちょっくら行ってきます

 

 

146:以下無名のダイバーがお送りします

お、おう……

 

 

147:以下無名のダイバーがお送りします

しゃくぜんとしねぇけど……まぁ、無事に帰ってこいよな

 

 

148:以下無名のダイバーがお送りします

いや止めろよ!? 団長も! 上も! 何言い出してんだよ馬鹿か!?

 

 

149:以下無名のダイバーがお送りします

とりあえず団長。色々と知ってるみたいだし、ちゃんと説明してくれませんかね

 

 

150:安価ダイバー応援団長

分かっている。GBNが再開した時に、あっちで話す。流石に長いから、ここで書ききれんからな

 

 

151:以下無名のダイバーがお送りします

絶対ですからね、マジで説明して下さいよね

 

 

 

 

 

 

………

 

 

………………

 

 

………………………

 

 

 

 

 

電波障害の影響から完全復旧し、GBNが再開した日。シーサイドベースのダウンタウンの路地裏

 

彼らが……BUILD DiVERSが、初めてフレディと出会ったあの場所へと、向かう人影があった……ヒロトだ

 

あの場所へと向かった彼だったが、そこにはもうすでに先客が……メイがすでにそこに居た

 

 

「何故来た」

「聞いていなかったからな」

 

 

視線でのみでしか、彼女はヒロトにどうするのかを問いかけてなかったから、行かないとは言ってないので……という理屈なんだろうが、彼の中にあるのは、それとはまた別の感情で……エルドラの為に、赴く決意をしたから、ここに来たのだろう

 

ヒロトは問いかける。メイに対し、なぜ危険を冒してまで行くのかと……それに対し、彼女は答える。GBNで生まれた自分にとって、ヒロト達にとってのリアルと向こうのエルドラは、等しく同じ世界であると

 

 

「その世界を大切に思う者がいる限り、その助けになりたいと思う。それが私の使命だと感じるからだ」

「……そうか」

 

 

かつて聞いた、己の使命を探していると言ってた。そんな彼女が、自分の使命を見いだせた。そんなメイの言葉に対し、納得がいった表情をするヒロトだった

 

 

「っと。なんだ、まだパルとカザミは来てないの?」

「「?」」

 

 

そこへもう一人、新たな人影が現れる。その姿は、軍服を着た赤髪で……しかし黒ではなく白色に塗り替えられ、下もズボンでは無くプリーツスカートにサイドスカートを重ねるように履いて、上着は着崩すことなくしっかりと着ている。そして腰よりも長い髪を、白いリボンで後ろで束ねて尻尾のように伸ばした背の少し低い女性のダイバーだった

 

 

「君は、リアンか」

「うん。そうだよ、ヒロト」

 

 

リアン。前までは男のアバターを使っていた彼女だったが、今は女のアバターで、しかもリアルの姿にかなり酷似したアバターを使って、ここに来たのだった

 

 

「性別を同じにしたのか」

「うん。もうバレちゃってるのに、男のアバターを使うのも変かなって思ってね……思い切って、設定変更してきた」

 

 

性別バレしたし、それにもう女であることを隠す必要が無くなったから……だから、ちゃんと同じ性別の姿で、自分の本当の姿で、このGBNにいようと、ガンプラを楽しもうと……そう決めて、そして自分の過去と向き合わせてくれた人と、自分を受け入れてくれた人たちへと、なにも隠すことなく接していこうと。その決意の現れだった

 

 

「だから、心機一転っていうことで……改めてよろしくね、ヒロト、メイ」

 

 

二人に対し、改めて挨拶をする。その表情からは、最初の頃にあったメンバーへの不信感は無く……このメンバーに対する、信頼に満ちた笑顔だった

 

 

「はぁ! はぁ!」

 

 

そこへ更にもうひとり……パルが、ここまで全力で走ってきたからか、肩で呼吸をしながら、ここへとやってきた

 

 

「約束が……もう、飛べないのは、嫌だから……!」

 

 

あのエルドラに生きる人たちと交わした約束がある。それに、もしここで逃げたら、もう二度と飛べなくなるような……そんな思いがあったから、彼もまた、ここへと来た。エルドラへと、行くために

 

 

「なんだよ、俺が一番最後かよ」

 

 

そして、最後の一人……ここにかつて集まった中で、最もリーダーには向いていなく、そして最もリーダーに向いている男、カザミが来た

 

 

「ま、リーダーだからな!」

 

 

泣かせちまったままじゃな、と……そう小さく呟く彼の表情は、その軽薄な態度でここへと来たときとは裏腹に、決意に満ちた表情をしていた。彼もまた、覚悟を決めて、エルドラへと赴くのだった

 

 

 

これで、このチーム……BUILD DiVERSの全員が、ここに集合した。あの星へ……エルドラに、行くために

 

 

「ってお前……リアンか? お前もリアルのまんまかよ」

「性別、変えてきたんですか?」

「あぁ、まぁね。バレたのにまだ男の姿でやるのって、変でしょ? それにそういうの、趣味じゃないし」

「だろうな……ま、いいんじゃねぇか。そのダイバールック」

「ふふっ、ありがと……改めて二人にも、今後もよろしくね」

「はい! よろしくお願いします! リアンさん」

 

 

改めて、後に来た二人にも、リアンは言葉を交わす。二人もまた、その様子を変に思うことはなく……ごく自然と、受け入れていた

 

 

「それで、どうする」

 

 

そのやり取りの後に、ヒロトがどうするかを問うてくる。俺たちだけでは、エルドラには行けない。フレディの助けがなければ、どうることもできないのだ。だが、ここで止まるわけには行かない。なんとかして、あちらへと行く方法を探さないとと……

 

 

『皆…ん! ビ…ドダ…バ…ズの皆さ…!!』

「「「「「!?」」」」」

 

 

その時、あの時と同じように、紫色のウィンドウが、路地裏の奥に開いた

 

画面にはジャミングがされているかのような感じで見えにくく、いったい何が写っているのか、はっきりしなかった

 

だが、彼らはこれがいったいなんなのか、これが誰なのかがはっきりと分かった。そう、これは、フレディであると……

 

 

「……応えちまったら……」

「帰って、これないかも……」

「……っ……」

 

 

目の前に現れた。本物の戦場への道。それを前にして、カザミとパルは震えるような声をあげ、リアンは固唾をのむばかりだった

 

 

「これはゲームではない。本当にいいんだな」

 

 

そんな彼らに、メイが最後の通達のように言葉を投げる。真の戦場へと赴く。その覚悟は、もうできたのかと……

 

 

「もう、繰り返さない」

「「「?」」」

「ヒロト?」

 

 

そこに、ヒロトは答える。最後の後押しのように、迷う皆に向けて、己の覚悟を

 

 

「失くしたんだ。大切なものを……だから、繰り返さない。この胸の痛みは、本物だから……」

 

 

彼らの、あの悲しみは、本物だから……それをもう、繰り返させないために。だから、行くのだと。そう、覚悟したという、彼の言葉を……

 

 

『…うか、お助…くださ…! ヒロトさん! カザミさん! メイさん! パルさん! リアンさん! ビルドダイバーズの皆さんっ!!!』

 

 

そして、エルドラへの扉が、開いた

 




第一部、これにて完結……!

まさか一ヶ月以上かかるとは思いもしなかった……そしてようやくいくつかやりたいことがある二部へと突入出来る……!

その前に、各オリキャラの紹介やら、エルドラグレイズの設定やらを作って投稿したり、二部のプロット見直しやら、一部内容の修正やら、あと他にやりたいこともあるので、しばらく本編は休止とします。申し訳ございませんが、今しばらく待って頂きたく思います


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二部
エルドラ、再訪



第二部、投稿開始致します


『…うか、お助…くださ…! ヒロトさん! カザミさん! メイさん! パルさん! リアンさん! ビルドダイバーズの皆さんっ!!!』

 

 

シーサイドベースのダウンタウンの路地裏。GBNが再開してから直ぐに向かった場所で、あたし達はフレディからのSOSを受け取った。この状況はあの時の、ここにこの5人がはじめて訪れた時の状況に似ていて……その時とは違って、全員が決意を胸にここへと立っている

 

 

[ウォン]

「「「っ!」」」

 

 

フレディからの通信ディスプレイに、ミッションにエントリーするか否かの表示が展開された。それも数ヶ月前、ここでの出会いの時と同じ形式で……まさに、あの時と、似たような状況となった

 

 

「っ……」

 

 

コレが、最後の選択。これから本当の戦場へと向かう、最後の確認通知。コレを押せば、もう後には引けなくなる……

 

実際、こんな事で引き返すようなら、最初からここへは来ていない。そんな生半可な覚悟で、命を賭した戦いに身を投じるような事はするつもりは無い。でも、やはりこうしてそれを前にすれば、やはり立ちすくんでしまう……正直に言うと、恐怖が増してきてしまう

 

 

「ッ……細けぇこたぁ、いいんだよッ!!」

 

 

だが、その恐怖から己を奮い立たせ、前へと歩んだカザミが表示されているボタンを押した。一歩踏み出せないでいるあたし達を、まるで引っ張るような……最後の一歩を踏み出せずにいる皆に、着いてこいと言わんばかりの力強さを持って……

 

そして、いつものあちらへと……エルドラへと転送される光に包まれ、視界が白く染まった

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――ッ……!?」

「うわぁ……」

「ここも、こんなに……」

 

 

いつもの転送の後、目の前に広がったのは、いつもの遺跡の中だった。が、その中は地震でも起きたかのように、所々崩れていたりしていた

 

 

「皆さぁぁぁーんッ!!」

 

 

そして、そこにはフレディが待っていた。でも、その身は泥だらけで、煤塗れだった。この倒壊具合を見て、おそらく此処に入る為に苦労したのだろう

 

 

「またお会いできましたッ! ありがとう……ありがとうございますッ! 本当に、本当に嬉しいですッ!!」

「フレディ……」

 

 

そのフレディと、こうして出会えた。それでようやく、あたし達が、このエルドラへと来たのだと、強く実感した

 

 

「あれ? リアンさん、なんだか見た目が変わってません?」

「あ。あぁ……」

 

 

これ、色々と説明が大変なやつかなぁ……

 

 

 

 

 

 

その後、フレディにあたしの本当の性別について説明した後、外に出ようということで、何とか瓦礫を押し退けて遺跡の外へと出た。そこであたし達が見たのは、不思議な光を放つ粒子によって構築されていっていく自分達のガンプラだった

 

フレディ曰く、あれは不思議に光る砂で、あたし達がここに来ると、砂が宙を舞って集まり、ガンプラの形を取って固まるようになると言う。あたし達もまた同じように、その砂が集まって形成されているようだった

 

つまりコレって、ようは3Dプリンターのようなモノなのかな。データがあって、それを立体物として出力していく、みたいな

 

でもこれはそれを遥かに超えている。様々な素材で作られているっていう設定のMSという大きな機動兵器を、砂とデータと出力するシステムが有れば何処にでも生み出せるし。素材となるのが砂という無機物なのに、あたし達のような有機物すら形成させる事が出来るとか。行儀が悪いし汚いけど、口に唾を溜めて手に吐いてみると、そこにあるのは紛れもなく水分だ。これが砂によって構成されているなんて、考えられないんだけど……

 

あれ? これトンデモ技術なのでは? まぁ、30光年離れた惑星と、ラグ無しで通信する事が可能な訳だし、それだけでも充分にオーバーテクノロジーじゃん……地球にこんなのが知れ渡ったら、確実にガンダムみたいな戦争に発展しかねないよね、これ……

 

まぁ、そんなの解析出来る訳ないし、ここにいるメンバーでそれが出来そうなのっていないよね……誰かに教えたところで、妄言だとして切り捨てられるのがオチだ

 

その点、あのスレ民は割と受け入れていたけど。そこはおじさんの威厳なのかも

 

 

「?」

 

 

そんな考えをしていく中、形成していくガンプラの様子がおかしくなっていく。いつもより時間がかかっているみたいだけど……

 

 

「あれ? あれぇ?」

 

 

そして、形成途中であったヒロトのアースアーマーが崩れ、メイのウォドムポッドも崩れて中に格納されているモビルドールが露わとなり……

 

ジャスティスナイトとヴァルキランダー、さらにあたしのガンダムアインが姿を形成することなく、それぞれの武装……ジャスティスナイトの盾、ヴァルキランダーの剣と盾、そしてアインのアックスだけが、その場に残った

 

 

「お、俺のジャスティスナイトがァーーーッ!?」

「モルジアーナァーっ!!」

「ア……アイーーーンッ!?」

「砂が足りてないようだな」

 

 

砂が足りないって……あ、そうか。あの時の衝撃で、吹き飛ばされたのか。それで、ガンプラを形成するほどの量が無かったってことか。それで、比較的少ない量でも機体として形成できるコアガンダムとモビルドールが残って、あたし達三人のは武装のみが残ったってわけなのか……ガンダムのゲームのコストみたいな感じになってない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とにかく、このままではどうしようもないということで、一度フレディの村へと行こうということになり、残ったガンプラに残された武装を持たせて向かうことにした

 

でも、飛行能力の無い機体が残されて少々時間がかかるんじゃと言った時に、ヒロトは問題ないと言って……コアガンダムを飛行形態へと変形させた。どうやら今後の戦いに備えて、コアガンダムを強化、改修を施したようだった。まさかコアガンダムをコアフライヤーにするようにしてくるなんて……やっぱりヒロトはすごいな

 

 

『……ひどい有様だな』

「そうですね……」

 

 

そして村へと向かう途中、メイがヒロトのコアフライヤーにぶら下がるように捕まり、その片腕にカザミとパルが乗り込み、フレディはコアガンダムに、あたしはメイのモビルドールに同乗する形で、向かうことにした

 

その途中、空からエルドラの様子を知ることができた。その光景は、以前のモノとは違っていて、森があったところは衝撃で木々がなぎ倒されて平地に近しい状態となり、草原があった場所は、飛んできた砂や瓦礫によって荒れた原っぱのような印象の場所へとなっていた

 

これが、あの衛星砲の……あたし達が止められなかった攻撃の影響だと思うと、やるせなくなってくる……

 

 

『そういえば、ちょっと気になることがあるんだけど』

『? なんだ』

『どうして、この星に、“ビルドダイバーズ”なんて名前があるのかなって』

『ッ……』

 

 

その道中、あたしは気になっていることを聞いてみる事にした。色々とあるだろうけど、まずこの中で、とくにフレディが知ってそうなことである、ビルドダイバーズの事だ

 

ここに初めて来た時に、強制的に組まされたフォースの名前、それがどうして、ビルドダイバーズなのか……他にも、色々とあるはずなのに

 

 

「そういえばな」

「そうですね。どうして、エルドラに、ビルドダイバーズという名前があるのでしょうか……?」

 

 

それに関して、カザミとパルも疑問を投げかけていた。確かに変であると。フォースの名前なんて、それこそ他にも有名どころの名前があるはずだ。アヴァロンや第七機甲師団、それにシームルグに虎武龍、百鬼と……ビルドダイバーズも有名といえば有名だけど、他にもそれと同等、或いはそれ以上の名前なんてあるはずなのに……

 

 

『ビルドダイバーズは、窓の向こうで誰かが言っていた名前なんです。だから、僕はみなさんの事は、ビルドダイバーズという名前の人たちだと思ったんです』

『『『「?」』』』

「まどのむこうだぁ?」

 

 

それに対し、フレディから意外な返答があった。初めてあたしたちの世界の事、GBNの事を知った時にあった窓、その向こう側で自分たちの事をビルドダイバーズだと言った少年がいた。だから、この人たちのことは、ビルドダイバーズなのだと、そう理解したという

 

つまり、その時に他のフォースの名前が出たら、そのフォース名になっていたのかな……まぁ、そこは別に今はどうでもいいか

 

でも、どうしてそこでGBNに繋がったんだろう……そこについては、なんだかよくわからないニュアンスで言っているし。あの遺跡について触っているうちにできたことで、よく分からないみたいだし……どうにかして、調べてみたいところかな

 

 

『村が見えてきた』

 

 

そうした会話をしている内に、とうとうフレディの村へと、到着した



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

自分たちのこれから

前話が短めだったので、今回はその分長めです。おそらく、分割できそうなら、いづれ分割して前の話に分けるかもしれません


遺跡からヒロトのコアフライヤーでフレディの村へとたどり着き、高台のある場所の近くへと機体を置いておき、高台の上から村を一望した

 

その風景は前回の戦いのあとのまま、衝撃によって吹き飛ばされた家屋と、そして仮住まいの為のテントが残っていた。けど、所々は修理や新しく建て始めている家もあったりするので、復興の兆しは見て取れる

 

そして、今だにヒトツメ達の襲撃に会ってない状況が、なによりも安心できた。もしかしたら、あたし達がここに来れる前に、すでに壊滅なんて事にもなってたかもしれないし……

 

 

「「「いたー!! ビルドダイバーズー!!」」」

「「「「「?」」」」」

 

 

そう安心に思った時、あたし達のことを呼ぶ声が聞こえ、その方を向くと……アシャ、トワナ、フルンの三人組が、こちらへと駆け寄ってきていた

 

 

「おぉ! お前ら!」

「みんな、元気だった?」

「「うん! 元気!!」」

 

 

そう言って、トワナとフルンはカザミとパルにじゃれついていく。途中、聖獣……ヴァルキランダーはどうしたの?って聞いて来たけど、まぁ、そこは答え辛いので、ちょっと言葉を濁す事でスルーしていた

 

 

「ヒロト! メイ!」

「「?」」

 

 

アシャも、ヒロトとメイの間に入り、二人の手を握り、満面の笑みを浮かべた

 

あの時の泣きじゃくっていた状態から、こんな笑顔を見せるようになれていた事に、凄くホッとした……

 

 

「あれ? お姉ちゃん……もしかして、リアン?」

「え? そ、そうだけど……なんでわかったの?」

 

 

二人と並んでいるアシャが、あたしの方を向いて、リアンなの? と言ってきた。まさか、フレディと同じように、一瞬で見抜かれたことに対し、つい疑問の声を投げた

 

 

「んー、なんとなく、リアンかなって思ったの」

「そ、そうなんだ……あはは」

 

 

勘、ということなのか、それとも子供特有のシンパシーとでも言うべきか……そういう感じで分かったんだろう。すごいな

 

 

「「「……」」」

「ん? な、なに?」

 

 

アシャに、カザミとパルにじゃれついていた二人も、揃って自分の方を向いていた。すごい見られていて、なんだか気恥ずかしくなってくる

 

 

「なんだか、前のお兄ちゃんの時よりも、今のお姉ちゃんの時のほうが良いかな」

「うんうん」

「なんだか、すっきりしてる感じがする」

「っ……そ、そう?」

「「「うん!」」」

「うぅ……あ、ありがとね。アシャ、トワナ、フルン」

 

 

そんな三人から、今の方が良いと言われた。まさか、そんなことを言われるとは思ってもいなかったから、つい恥ずかしくて赤面してしまった。男でいた時のあたしは、ちょっと無理をしていた。ってことなのかな……

 

 

 

 

 

 

アシャ達三人組とマイヤとも再開し、みんなで村長の家……フレディの家へと向かい、トノイさんも、そしてジリクさんも無事でいてくれた。この村で、特に親しくしてた人たちの無事に、ひとまず安堵した

 

 

「はて……そちらのお嬢さんは、どなたでしょうか?」

 

 

あ、流石に大人では、わからなかったようで……本当は女で、今までビルダーの力で性別を偽っていたということで説明し、納得してくれた。なんというか、ビルダーというのが、この人たちにとって万能の存在ではないかと誤解してそうな気がする……

 

 

 

「改めまして……戻ってきて下さったこと、心より感謝しています」

「お、おう……」

「ご覧の通り、我々はまだ“月の雷”から立ち直れておりません」

 

 

月の雷。あの衛星砲のことを、この人たちはそう呼んでいるようだった。確かに、月から放たれた雷のようなものだ。そういうふうに言われてもなにもおかしくない

 

 

「あなた方は、我々の唯一の希望だ」

「「え?」」

 

 

希望? いったい、なんで……? だって、あたし達は、その衛星砲が撃たれることを阻止できる立場にあったにも関わらず、それを失敗して……そして、こんなことになっているというのに……?

 

そう考えていると、ジリクさんからこんなことを言われた。御神体が、我々を守ってくださったのだと……どうやら、セカンドミッションの時に投げ捨て、今だに形を保っているアースリィの盾が、飛んできた砂煙や土石からこの村を守ったそうだ。衝撃が飛んでくる方向に向けて、盾が向いていたから、村への被害が軽減されたようだった……

 

そう言われて……少し、複雑ではあるけど、あたし達が残したモノがこの村を守ってくれたということに、わずかながら、良かったと思った……

 

 

「入っちゃダメぇ!!」

「「「「「?」」」」」

 

 

その時、外がなんだか騒がしくなっていた。アシャ達が、なにやら叫んでいるようにも聞こえ……

 

扉が開け放たれ、そこに転がり込んできたのは……三人組に噛み付かれて痛がっている、レジスタンスのムランだった

 

 

 

なぜここにムランさんがと思ったら、どうやらこの近くを走っていた時に、空を飛ぶガンプラを見かけ、まさかと思って来たようだった。無理に押し入ろうとしたから、子供たちから怪しまれてしまったようで……噛み付かれてしまったようだった

 

しかし、なんで無理矢理押し入ろうなんて……と思ったら、どうやらあたし達が裏切ったんじゃないかと思ったようだった。あの、シドさんのように……それでもしかしたら、ここに直接乗り込んで、村人を襲っているのではないかと、不安になったようだった……まぁ、確かにわからなくはないけど

 

そして、ムランさんは話を続ける。元々、あたし達に託したあの鍵はシドさんと共に使う予定だったものらしく、それを託す前に、シドさんがあちら側へと寝返ってしまったから、使うタイミングを逃してしまったようだった

 

 

「あの鍵を託されたのに、こんな結果になってしまって……」

「敵がソラにそんな恐ろしい兵器を持っていたなら、誰が使っても結果は同じだった……悔やんでも詮無いことだ……」

 

 

ヒロトの言葉に対し、ムランさんは仕方がなかったと、こちらの発射阻止失敗のことに関しては触れないでいてくれた……誰が行っても結果は同じだった、確かにそうかもしれない。シドさんですらあんなことになってるんだし……

 

ムランさんから今のエルドラの現状についても聞くことができた。どうやら以前よりもヒトツメの攻撃が激しくなってきているようで、さらにレジスタンスの規模も、前回の作戦の時に、ほとんどがセグリに集結していて、残っているのはムランさんのように負傷して戦線を離れていた者以外しか残っていない為に、ほぼ壊滅に近しい状態らしい……

 

 

「ビルドダイバーズ。本当にまた我々に力を貸してくれるのか?」

「「「っ」」」

 

 

このままでは、そう遠くないうちに、ヒトツメによって滅ぼされる。だから今は、どんな存在でもすがりたいのだろうか、ムランさんの目には、懇願の意思が宿っていた

 

 

「皆さんは、僕たちと一緒に闘ってくれます! そうですよね!?」

「もちろんよ。裏切るなんてことはしないわ」

「そのつもりで来た。こちらもお前たちを宛にしている」

 

 

戦うべきは、この村の……ひいてはこの星に住む人たちの為。知ってしまった悲劇を、このまま黙って見過ごすことなんて、後味が悪すぎるから……それに対し、命をかけられるかと言えば、正直、まだ怖いけど……

 

でも、ここにいるみんなとなら……立ち向かえると、そうあたしは感じている

 

 

「エルドラについて、もっと知っておきたい」

「我々に出来ることはなんでもやる。知りたいことはなんでも聞いてくれ」

 

 

そして、ヒロトが情報収集の為に、ムランさんにその協力を要請し、彼もまた、それを快く引き受けてくれた

 

ヒロトはまず、今後の最大の目的として、もう一度空にあるあの衛星へと向かおうということにした。あの場所にいる、アルスとかいう奴を止めない限り、ヒトツメの侵攻は止まらないと。しかし、現状機体が……あたしたちの武器たるガンプラが不完全のままになっている今、宇宙に上がったとしても無意味だし、なにより今ここでヒトツメの侵攻があったとしても、それを食い止めることすら出来ない

 

そこで必要になってくるのは、あの光る砂。この世界に於けるガンプラの材料となるものだ。それさえあれば、ガンプラを呼び出して応戦することができる。しかし、それは衝撃で大半が吹き飛ばされた。それを探してかき集めるなんてのは非効率だし現実的ではない……

 

 

「どこかに、その砂が大量にある場所があればいいんだけど……」

「ならば、他の遺跡を使ってはどうだ?」

「「「え?」」」

「他にも、遺跡が?」

 

 

そこに、ムランさんが渡りに船な情報を教えてくれた。どうやら、あの遺跡は他にもいくつか存在しており、レジスタンス側で把握しているだけでも他に3つあるという。使えるのかどうかはわからないけど、行ってみる価値はあるだろう

 

これで、自分たちが今何をするべきか……行動が決まった

 

 

 

 

 

一つ目の場所は、最近ヒトツメの目撃があった場所の近く……そこは、現在ガンプラが使えるヒロトとメイの2人が行くことになった

 

二つ目の場所は、ヒトツメの目撃は今のところない場所で、まだ比較的安全な場所だという……そこへは、ガンプラを持たないカザミと、そしてあたしの2人が行くことになり、遠い場所にあるため、車を借りて行くことになった

 

 

「んん? なんだこれ、動かねぇぞ? どうなってんだ?」

「退いて。こういうのは、アクセルとか、そういうのがあるはずで……あれ、どれがアクセル?」

 

 

けど……どっちも運転することができなかった為、村人の中で車の運転に長けた人に運転してもらうことになった

 

最後の場所は……パルとフレディが向かうことになり、そこにはムランさんと一緒に行くことになった。どうやら、今はそこへ向かっている最中だったみたいだった

 

しかもそこは、聖獣の……くあどるん? がいるみらーぐ?の山という所らしい。というか、聖獣って言っているけど、本当に存在するんだ……ストーリーの設定だと思ってたから、実在するとは、想像もしてなかった

 

 

 

そして、各々が準備を始め、それぞれの移動手段となるモノに乗り込んでいく。ヒロトとメイは己の愛機に、パルとフレディはムランさんが運転する車に。あたしとカザミは……マイアが運転席に座る車に乗り込んだ

 

マイアが乗り込んだ時、マイアが? ってなり、少し不安になった……カザミも同じ気持ちだったのか、マイアに対し言葉をかける

 

 

「なぁ、お前本当に運転出来」「黙って無いと舌噛むわよ」

「「え”?」」

 

 

それと同時に、一気にアクセルを踏んだのか……急発進をして、その慣性で後ろのめりになってしまった

 

 

「ハンドル握ると性格変わるタイプかよぉー!!?」

「マイア! 安全運転! 安全運転でおねがぁーい!!」

 

 

そんなあたしとカザミの叫びに応える事無く、マイアは爆走していった……いや、本当に、怖いんだけど……!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、GBN……シーサイドベースのダウンタウンの路地裏

 

 

「―――本当に……本当に、すまなかった」

 

 

そこには、奇しくも、彼らBILUD DiVERSと同様に、五人のダイバーが集っていて、そのうちの一人が、残る四人に対して頭を下げていた

 

頭を下げたのは、和服を着た40代の男性で……その見た目は、どこか鉄血のオルフェンズの主人公、三日月・オーガスが成人し、少し年老いたような姿をしていた

 

他にいる四人のダイバーたちは、それぞれ全く異なる姿をしていた。一人はくたびれたサラリーマン、一人は逆にきっちりとし肩が尖ったスーツ、一人は飛行機の機長、一人は地球連邦軍の青の軍服である。そのうち三人は男性で、残る一人は男のような見た目であるが、その線の細さから、女性のような印象を受けるダイバーだった

 

 

「ふ~ん……イッチは男ではなく女の子で、昔ガンプラ絡みでひどい目にあって、それ以来、GBNでは女であることを隠していた。と……」

「逆に、リアルではガンプラビルダーであり、GBNプレイヤーであることを隠して生きていた……なんとも、辛いことを経験したのですね、リアンさんは」

「女で、昔ガンプラ絡みで酷い目って……まさか、な」

 

 

彼らは、ある繋がりを持つモノ同士……リアンがスレ主を務める、あの掲示板のスレ民……その中でも、今だにあのスレに残り、リアンのことを見ていた連中だった

 

 

「つまり、今まで俺たちのことを利用してたってわけだ。その茶番に」

「っ……本当に、すまなかった……」

 

 

頭を下げる男……リアンのおじさんで、安価ダイバー応援団長である男……オウカは、S.R.T.erの言葉に対し、さらに謝罪を重ねることしか出来なかった

 

確かに、彼女の言うとおりだ。今まで、己の立場を騙して、周りに嘘をつきながら、彼らのことを利用していたのだ。そう思って過ごしていたので、その罪悪感は相当なものだろう……

 

 

「まぁ、別に、性別を隠していたこととか、イッチと団長がリアルの知り合いだっていうことも、別にどうでもいいかな」

「な……アダチ?」

「だってそうしないと、ガンプラを楽しむことができなかったってことでしょ? ならそれは致し方ないことだ……そう思うけどね、僕は」

 

 

ガンプラを楽しむ。そのことに関しては一家言持つこの男は、リアンとオウカのやったことを、逆に肯定した。楽しむ為にすることは、なにも悪いことではない。それで誰かが不幸になっていなければいいのだと……言葉の裏にその意味を載せて、彼はその謝罪を赦すことにした

 

 

「そうですね。私としても、あなた方の過去やリアルのことなど、些細なことですし。それに、その茶番を楽しんでいたところも、私にはありますので……おあいこのようなものです」

「成田……」

「利用っていうのは、なんか気に食わないけど……まぁ、アダチや成田さんの言うのも分かるし。一応、もうお咎めは無しってことにしてあげる」

「……変態」

「その辛気臭いニュアンスで暴言吐いてんじゃねぇよ団長」

 

 

2人も、アダチに倣うように、その謝罪に対しては赦すことにした。成田空港とS.R.T.erにとっては色々と思うことはあるのだろうけど、リアンとオウカのスレを楽しんでいたことには変わりはなく……むしろ謝られることに、居心地の悪さを感じたくらいだった

 

 

「……」

 

 

最後の一人、むちゃ丸は、なにも答えることなく……ただ俯いて、下を向いているばかりだった

 

 

「っていうか、今はそんな事を謝ってる状況じゃないんじゃない?」

「ですね。確か……エルドラ、でしたか。そこへ趣いているリアンさん達の事、ですね」

 

 

その謝罪よりも、なによりも今問題にすべきは別で……今まさに命の駆け引きをしているのではないかと思っている自分達のスレ主……リアンのことについて、なにか話すべきではないかということだった

 

 

「そうだよ。止めなきゃならなかったのに……なんで命がけの場所になんて行かせたんだよッ!!?」

 

 

その話題になった時に、真っ先に声を荒らげたのは、先程まで黙っていたむちゃ丸だった。彼は、インできるようになるや、。すぐにリアンを止めようと動いた。が、結局リアンを見つけることはできず――男のアバターでしか知らない彼だったから、女のアバターに変えた彼女を見つけることができなかったのである――この路地裏のことを思い出した時にはすでに時遅く、転送の光が途切れた跡を、ただ見ることしか出来なかったのである

 

ちなみに、彼はあのスレ内で、最後まで荒い言葉を投げて、彼女のエルドラ行きを止めようとしたのだ。命が掛かった戦いに自ら行くなんて、馬鹿げていると思っているから……

 

 

「まぁ、イッチが行きたがってたんでしょ? なら、もう止めることなんて出来なかったんじゃないかなぁ。あの時の安価をとっちゃって、もう完全に覚悟完了、みたいな感じだったし」

「でも!!」

「むちゃ丸。もう済んだことを、今更掘り返すのはカッコ悪いぞ。女の俺から見たら、失望もんだぜ」

「っ……変態に言われたくねぇよ」

「お前も変態言うな」

「ショタロリタッチャーさんの言うとおりですよ。もう彼女は、あちらへと趣いたのでしょう。メールの返事が来てない辺り、色々と大変なことになっているのではいでしょうか」

「成田さん、ショタロリタッチャーじゃなくて、スーパーライダータイム、エリコランドウと言ってちょうだい」

「長い。変態で十分でしょ?」

「良くない!」

 

 

いくつか軽口が混じった会話で、妙な空気となっているが……実際に話している内容に雰囲気が引っ張られているせいか、すぐに空気が重いものへと変わる……流石に、空気を軽くしようと茶化しても、自分の知り合いの命をかけて今戦っているという事実が、彼らの空気をさらに重くしてしまう

 

 

「っていうか、個人的に思ったことがあるんだけどさ……イッチ達さ、勝てるの? 敵にさ」

「「「「?」」」」

「どういうことだ、アダチ」

「だってさ、相手はトンデモ技術の持ち主で、今無双のシドを洗脳……って言えばいいの? そんなヤバイ事できる奴で、リアルでMSなんてモノを量産出来るんでしょ? そんな奴相手に、果たして五人だけで勝てるのかどうか……」

「何が言いたいんだ、アンタ」

 

 

色々と言葉を投げるアダチに対し、むちゃ丸が怪訝の声を投げる。なんだか、今リアンが立ち向かっている相手に対して、警戒をしているような……そんな空気を漂わせる男に対して、その場にいるメンバーが同じように怪訝の視線を見せる

 

 

「まさか、増援として俺たちも行こうなんて言わないよな!?」

「「「!?」」」

 

 

更なるむちゃ丸の言葉に対し、アダチ以外の全員が驚愕する。確かに、命がけの戦いに、相手は未知の戦力を持つ。そこに5人だけで挑むなんて自殺行為だ。だったら、少しでも戦力を増やすのが定石だと……そう言う事を、この男は言ったのかと、そう思った。が、彼はソレを否定した

 

 

「そんなのやだよ。なんでわざわざ命を捨てるようなことをしなきゃならないんだよ。僕はイッチと違って、そんな覚悟ないよ」

 

 

と、軽薄に、それも当然のような正論に、周囲は納得した。確かにそんな大それた覚悟なんて、そうそう待てるはずがない

 

それに、メンバー変更とか、増減が出来ないんだから、行くことなんて無理じゃないか。と、そう言い続けて、全員が納得する。あちらに行けるのはリアン達5人のみ。最初はゲームシステムの都合上の仕様かと思っていた事だが、もしかしたら彼方側の条件というか、制約の為にその制限が存在していた。その可能性が浮かび上がった

 

 

「なら、何が言いたいんだ、アンタ」

「そうです。話しの趣旨が見えないのですが、アダチさん」

「いやね……デスアーミーやドートレス、それにグレイズなんて知ってるって言うんでしょ。なら、敵は……ヒトツメは、このGBNのことを、知ってるんじゃないのかなって、思っちゃってさ」

「あ……確かに」

「ならさ……これは仮説なんだけどさ、そんなオーバーテクノロジー的なモノを持ってるのなら、ここへのハッキングが出来ないわけないわけで……もし、サーバーアタックなんてやらかされたら、ここはどうなるの? って思うんだよね、僕」

「「「「ッ!?」」」」

 

 

アダチの言葉に、今いる全員が驚愕した。確かに、こちら側の人間が、GBNを介して星を渡ることが出来るのなら、その逆もしかりで……あちら側が膨大なデータを送り込ませ、このGBNへと侵攻なんてしてきたら……

 

 

「下手すると……GBNが、崩壊する?」

「多分ね……あくまで、仮説に過ぎないけどさ」

 

 

むちゃ丸の震えた言葉に、アダチは変わらず軽薄とも言えるような口調で言葉を零す。その態度からして、GBNなんて壊れてもいいみたいな感じだと受け取れてしまうが、実際はそうではない

 

 

「困っちゃうなぁ、僕たちの大切な遊び場が壊されるなんて……二年前のクソマス共といい、サラちゃんといいさぁ……ほんと、勘弁して欲しいよねぇ」

 

 

口調はそのままに、でも次第に怒気が孕んだ表情を、アダチは浮かべた

 

彼にとってGBNは、彼が一番好きな遊びであるガンプラバトルが出来る場所だ。それも遠くの、数多くのプレイヤーでそれが出来る為、昔あったGPDよりもはるかに楽しいところである。だからこそ、それがなくなる事は……壊されることは、彼にとって許せないのだ

 

楽しいことを、なによりも大切にする彼だからこそ、その事実に対し、苛立ちを覚えているのだ。かつて、第二次有志連合戦に於いて、連合軍側のフォースに傭兵として出向き、かのビルドダイバーズと戦うくらい……イチャイチャの尊み溢れるカップルの片割れだろうと、己の世界を壊そうとする原因ならば容赦なく消すぐらい、彼はこの世界のことを、守りたいのだった

 

 

「んで、思ったのよ。僕たちになにかできることはないかなぁって、さ。今のところ、な~んにも浮かばないから、どうしようと思ってるんだけど」

「なるほど……つまり我々で、リアンさん達、ビルドダイバーズの援護をしようと。それをどうするか考えようと、そういうわけですね」

「そそ。さすが成田さん、物分りがいいですねぇ」

「それなら、俺も協力するぜ。知っちまった今、ここでさよならするのなんて、ヒーローにあるまじき行いだ。それに、そうすればパルきゅんも無事にいてくれるだろうし……っていうかパルきゅんも今命がけの戦場に行ってるってことじゃないかッ!!? パルきゅん!! 今すぐ戻ってきてェェェーーーーっ!!!」

「お前、いまさらかよ……協力するっていうのなら、俺も手伝う。本当はまだ納得も、認めてもいねぇけどさ……」

「青いねぇ、むちゃ丸は」

「茶化すなアダチ!」

 

 

アダチの言いたいことに、成田空港が同意し、それに続いて残りの二人も賛同する。むちゃ丸は今だにあちらに行くことを反対しているが、協力するのなら、積極的に行うという意思を示した

 

 

「さ、団長……何時も通り、僕たちをまとめてくれませんか?」

「ですね。我々はほぼ烏合の衆に近い。そんなモノ、取りまとめてもらわないと、収集がつきませんからね」

「パルきゅんの為に! パルきゅんのために!!」

「うるさいぞ変態!」

「……お前ら……っ、ありがとう」

 

 

再度、彼は頭を深く下げた。己のやったこと……それ自体の許しをもらい、なおかつ、彼女のことを心配し、なにかしてやろうと……その為に動いてくれる彼らに対し、己もできる限りの、いやそれ以上に何かできることはないか探そうと、そう決意したのであった

 

そして、彼らもまた、動き出そうとしていた



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

己の愛機を求めて

マイアの中々に豪快なドライブテクニックで揺られながら、遺跡への道を駆けてゆく。川の上を走ったかと思ったら、森の中を突っ切るように走るし、そしたらまた川の上を走ってゆく……正直、ジェットコースターよりも怖い……さすが、異星の乗り物

 

でも、流石に20分も乗り続けると、ある程度は慣れるもので、最初は結構怖がっていたカザミも、今は扉に肘を乗せるほどだ

 

途中、マイアがカザミに対し声を投げてたり、何か会話をしていたような感じだったけど、エンジン音と下の川が走行の影響で飛沫を上げることによる轟音で、ふたりの会話が掻き消えていて、あたしはところどころしか聞き取れなかった

 

でも、どんな事を言おうとしていたのかは、漠然とだけど理解出来た

 

あの月の雷が打たれたのは、俺たちのせいである、と……そう言おうとしてた。でも、そのあとの会話から、その言葉は周りの音に掻き消えていて、マイアには聞こえなかったようだった

 

 

「……何をやってるんだか……」

 

 

ふと、そんなふうな言葉が漏れ出てしまった。あまりにも小さな声だったため、二人には聞こえていなかったようだったけど

 

その後は、なんの意味もないような雑談……と言っても、車の運転はジェドさんに教わったっていう話になってバツの悪い表情をするカザミのことを見ていながら……目的地である、遺跡へとたどり着いた

 

 

 

 

 

 

 

 

「光る砂どころか、根こそぎやらちまってる……」

「これじゃぁ、使い物にならない感じかなぁ……」

 

 

車から降りて、遺跡の召喚台と呼ばれている場所を覗いたら、予想以上に崩壊しているようだった。様子を見る限りじゃぁ、ガンプラなんてとても具現化できそうにないかもしれない

 

 

「……とりあえず、何もないだろうけど、中の方も見てくる。あたし一人で大丈夫だから、ちょっと待ってて」

「そうか? なんだったら、俺も……っ?」

 

 

着いてきそうになったカザミを、手を伸ばして制止して、あたしは小さな声で言葉をぶつけた

 

 

「言いたいこと、あるんでしょ? マイアに……二人だけにしとくから、思いっきり吐き出してきたら?」

「っ……わりぃ」

 

 

そう言い残して、あたしは2人のそばから離れて、遺跡の中へと入っていった

 

 

 

 

 

「とはいったものの……代わり映えはしない、か」

 

 

遺跡の中に入ったものの、その内部はフレディの村の近くにあった遺跡となにも変わらなかった。変わってることといえば、中にある光る砂すらごく僅かしかないということ……もし中に光る砂が潤沢にあれば、それをあっちの遺跡に持って行って使えるかもしれないと僅かに思っていたのだけど……どうやら、完全に外れのようだった

 

何もなくても、砂の手がかりでもあれば……って思ったけど、ここの文字読めないし、結局のところ、無駄骨だったのかもしれない。とりあえず外に出ようと考えた。もうカザミもいいころあいかもしれないし

 

 

「……ん、ん?」

 

 

そう思って踵を返すと、自分が入ってきた入口に、なにやら壁画のようなものがあった

 

 

「なに、これ……?」

 

 

それをみると、まるでボールに触手が生えたかのようなものが、何かよくわからないモジャモジャしたものと顔を合わせているような……いや、これは多分、対峙、争っている様子かな。そんなのが描かれていた

 

さらに見ると、ボールのところには、なにやら翼の生えたドラゴンのようなものがいたり、戦闘機みたいなものもあり……そして、それらの上に一際大きく、丸い物体に塔のようなものが着いたものがあった

 

 

「これって……もしかして」

 

 

丸い物体に塔……もしかしたらこれは、あの衛星砲なのでは? ってことは、これはあの衛星砲が、このなんだかよくわからないモジャモジャに向けて打とうとしている様子を描いたもの、なのかな……?

 

 

「……ダメだ。全然理解できない……」

 

 

流石にあたしの頭では理解できないことなので、とりあえず画像だけ撮って、あとでみんなと見てなんなのか考えようと思い、何枚か撮り、外へと出た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外に出たら、近くにコアガンダムとモビルドールが……ヒロトとメイが合流していた。どうやら、あっちが向かった遺跡の確認をし終えて、こっちの様子を見に来たのだろう

 

 

「あ、二人共、こっちに来たんだ」

「ここも使えそうにないのか」

「うん。もってことは、そっちの方もダメだったの?」

「あぁ。まだフレディの村の遺跡の方がマシだと思うぐらいだった」

「そっか……」

 

 

あっち側もアウトだったようだ。となると、残るはパルとフレディが向かった遺跡となる。もしそこがアウトとなれば、今度はまだ見ぬ遺跡を求めてエルドラを彷徨うことになる……それはそれで問題だ。時間が経てば、それだけ被害が増す。だから、早いとこガンプラを呼び出せるようにしないといけない

 

そう思い、どうするかを考えようとしたとき……誰かがこっちへと近づいてきた

 

 

「だ、誰だお前らは!?」

「ひ、ヒトツメか!?」

 

 

来たのは、鍬を持った二人の獣人で、もしかしたら、この近くの集落の人だろうか。少し年老いた、中年の人のような感じの人達で……とても、戦えそうにない感じの人たちだった

 

 

「ここは聖域だ。勝手に入る奴は、許さないぞ!」

「俺たちは……」

「ビルドダイバーズ!?」

「「「「「え?」」」」」

 

 

その二人の後ろから、あたしたちのフォース名を呼ぶ声が聞こえた。しかも、それは聞いたことがある声で……

 

 

「やっぱり! この人たちは敵じゃない。俺たちの味方だよ!」

「「ストラ!?」」

 

 

ジェドさんと共にセグリへと行き、死んだと思っていた子……ストラが、二人の間からわって入ってきた。その体には、目立った傷という傷はなく、無事にいてくれたようだった……

 

 

「おぉ、おいマイア!」

「―――」

 

 

カザミが嬉しそうにマイアに呼びかける。マイアも、生きていてくれたストラに対し、目を潤ませて、ストラの元へと駆けて行く

 

 

「ん? マイア姉ちゃん? うあぁ!?」

「ストラ……ストラぁ! 良かった……生きてて……」

「マイア、姉ちゃん……」

 

 

その場でマイアがストラに飛びついた姿を見て……救われた人がいて良かったと、静かに安堵した

 

 

 

 

 

 

 

ストラの案内で、この付近にある小さな集落へと向かった。そこには、ジェドさんの部下であるレジスタンスのカリコさんとザブンさんがいた。二人も無事なようで、マイアと、そしてあたしたちの無事を見て、お互いに喜んでいた

 

どうやら、ストラがセグリに紛れ込んでいたのを、ジェドさんが送り返し、二人に村へと引き戻させたようとする途中だったようだ。そこにあの衛星砲が打たれて、その衝撃に吹き飛ばされて大怪我をしたところを、この村の人たちに助けてもらったのだった。それで、今は三人で恩返しということで、この村の復興を手伝っている最中だという

 

ジェドさんが送り返すような事をしたおかげで、この三人は難を逃れて、こうして無事にいてくれた……なんとも言えない偶然ではあるけど、三人が無事なら、もうそれで文句はない。生きててくれて、本当に良かった……

 

そこで、あたし達は復興の手伝いをしようと思い、二人にその旨を伝えると、ガンプラで瓦礫をどかして欲しいと言う事になり、機体の所へと戻ろうとした……

 

 

「キャァァァァーーーーーッ!!?」

 

 

その時、遠くから女の人の悲鳴が轟いた

 

 

「ヒトツメが出たぞ!!」

「「!?」」

「ヒトツメ!?」

「チィッ、ここにもきやがった!!」

 

 

何事かと思いきや、敵が……ヒトツメが現れたと叫ぶ男性がいて、周りがその事態にパニックとなった。でもレジスタンスのふたりは武器を持って走っていった

 

あたし達も、ヒトツメに立ち向かうその二人についていく事にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは!?」

 

 

レジスタンスの人たちに追いついたあたし達が見たのは、紫色の球体に、四本の触手のような見た目の、一つ目のボールのような奴だった

 

 

「なんだよありゃぁ!?」

「ぼ、ボール……?」

 

 

あれ? でもあれ、見たことあるような……あ、そうだ。さっきの遺跡の壁画にあったやつ。あれにどこか似ているような気がする。そういえば、あの塔も書いてあったし、もしかしたら、あれはヒトツメのことが描かれた壁画ってこと?

 

 

「ヒトツメの中に入っている奴だ」

「な、なかに……?」

「あれが敵の機体を動かしている。生物ではないようだが」

「マジか!?」

 

 

どうやらメイとヒロトは先ほど交戦したらしく、そのうちの一体を完全破壊することなく残し、どうやって動いているかを確かめたらしい。そしてあれが、ヒトツメの心臓部……いや、頭脳というやつか。AIが別ユニットとして存在しているというタイプの兵器であると判明したようだった

 

 

「元々は、あれをヒトツメと呼んでいたんだ。以前は、あいつらが村や町を襲ってた」

「今はでっかいヒトツメが来る前に現れる。襲う場所の下見をしてやがるんだろう」

 

 

カリコさんとザブンさんの言葉から、あの形状をしていたことから、ヒトツメという名称がついたという。確かに、見た目が巨大な目玉だし、わかりやすいし伝わりやすい

 

っていうか、以前はあれが襲ってきたって……最初からMSを使っていたわけではなかったの? そういえば、あの壁画にも、MSみたいなものは無かった気がする。いたのは、戦闘機っぽいのと、あとドラゴンっぽいやつだったし

 

 

「あれがまた来たってことは……」

 

 

三日もすれば、この町にヒトツメたちがやってくる。そう、ストラは告げる

 

どうやら、避難してきた人たちがそう言っていたようだった。なら、早く逃げなきゃとマイアが言うが、どうやらこの町はヒトツメの襲撃にあった人たちが逃げてきたことで出来た集落らしく、ここから先の逃げ場というのが無いようだった

 

それに、若い人たちは皆レジスタンスへと趣いてしまった人ばかりだといい、残っているのは、年老いた人や、子供だけだと……

 

そんな状況だから、この規模の村の人全員を避難させるのは至難の技で……どうしようもない状況だった

 

 

「でも……なんとかして、町の人たちを守らなくちゃ」

 

 

それでも、ストラはなんとかしなきゃと言い、皆を守るために動こうと言う……

 

その目は、かつてレジスタンスに入れてくれと言っていた頃の時よりも明確に違う……なんだか芯の通った物言いで……あたし達と同じ、何かを覚悟したかのような思いを抱かせた

 

 

「待っていてくれ」

 

 

そのストラの言葉に、ヒロトが答えた

 

「今の俺たちには、不完全なガンプラしかない。一刻も早く新しい召喚場所を見つけて、必ず戻ってくる」

 

 

だから、少しだけ待っていてくれ。と……あたし達は、その為にやってきたのだ。彼らを守るために……知ってしまった、防ぐことができなかった悲劇を、もう繰り返させないために……

 

 

 

そしてあたし達は、己の愛機のために、パルとフレディの向かったミラーグの山へと、急行した



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ヒトツメのコアガンダム 前編

急な仕事が入ったため、更新が滞てしまい、申し訳ありません

区切りが悪いと感じたので、二つに分けて投稿します


『だが、残る遺跡は一つか……』

『そこがダメだったら、宛てもなく遺跡探しをするハメになりそうだね……』

 

 

ストラ達がいた村から出たあたし達は、パルとフレディが向かったミラーグの山という遺跡へと向かっていった。ムランさんの言葉からすると、確か聖獣というのがいるらしく、少し謎めいた感じの場所となっている

 

そんなのがいるところなんだから、光る砂があって欲しいところだけど……果たして、どうなのだろうか? 今のところ、あたしが懸念してるところは砂が無いという状況になった場合だ。そうなると、本当にどうしようもなくなってしまう……

 

 

『仮にパルたちが向かった遺跡が使えたとして、あの街を守ったあとも、延々と局地戦を繰り返すわけには行かない』

 

 

だが、メイが懸念しているのは、あたしの考えのその先。あったとして、あたし達のガンプラが使えるようになったとしても、村を一つ一つずつ守っていくわけには行かない。そんな戦いを続けていけば、いつまたあの衛星砲が放たれるか分からないし、更なる被害を出しかねない……

 

 

「だからって放っておけねぇだろ」

 

 

そのメイの言葉に対し、それでもという言葉があった

 

 

「その為に俺たちは、エルドラに戻ってきたんだからな」

『あぁ』

『っ、うん』

 

 

カザミの言葉は、まさにその通りだ。ここで苦しんでいる人たちを助けたい。ここで起きている悲劇を食い止めたい。その為に、あたし達は来たのだ。例え非効率なことであろうとも、手がそれしかないのならば、それをするしかない……

 

まさか、カザミがこんなことを言うなんてね。正直、カザミのこと、誤解してたかな……最初あった頃はクソ野郎かと思ってたけど、根はほんとにいいやつなんだな……

 

 

『っていうかカザミ、あんたヒロトのに乗せてもらったら? 外にいると、危ないわよ』

「いや、流石に男二人だと、蒸さ暑苦しいだろ」

 

 

今、ヒロトのコアフライヤーにモビルドールが片手でぶら下がる形で移動している。あたしはメイのところに一緒に乗っているけど、カザミはなぜか外に、モビルドールのもう片方の手のひらにいる……もし狙われたりでもしたらどうするのよ

 

 

『今のところ、ヒトツメが狙撃をしてくるということはしてきていない。だが、安全面を考慮するなら、ガンプラに乗っていたほうが良いかもしれん……これは、現実なんだ。落ちたらどうなるか、わからないからな』

「っ、そ、そうだな……なら、そうするか?」

 

 

[ビー!! ビー!!]

 

 

 

などと、そんな会話をしていたら、突如ビームが接近して来ているアラートが鳴り響く

 

その直後、かなり高い出力のビームが飛んできた。その衝撃に煽られて、メイがコアフライヤーから手を離してしまい……カザミが、宙に放り出されてしまった

 

 

「うおおわぁぁぁぁぁーーーーーーッ!!!?」

『カザミぃッ!!?』

 

 

落下していくカザミ。それに対し、メイは動くことができなかった。自分も宙に放り投げだされ、出力の低いスラスターで姿勢制御をするのがやっと。この状態でカザミを救出することなんて無理があった

 

だが、それにいち早く動いたのはヒロトで、フライヤー形態からMS形態へと変形し、カザミを落下する速度に合わせるようにキャッチする。その後スラスターを利用して落下速度を落とし、地上に着地するとカザミを掴んだ手を地面に当てる事で、カザミにかかる衝撃を緩和させて、無事に地上に着地させることに成功した

 

まさか、そんなことまで出来るなんて……ほんとうに何ものなの? ヒロト

 

 

『大丈夫か?』

『あぁ』

「お、おう……」

『もう! ほら見たことか!』

「う、うるせぇ!」

 

 

あたし達も、無事にヒロト達のそばに着地する。しかし、さっき言ったことが本当に起きるとか、なんて間の悪い……!

 

 

『『ッ!?』』

 

 

そのすぐあとに、もう一発、高出力のビームが飛んでくる。周りが隆起している岩が多い荒野だった為、すぐさま近くの岩の物陰に隠れてやり過ごす

 

近くに敵の反応はなく、レーダーには、特になにも反応はない……つまり、これって……

 

 

『狙撃……? ヒトツメが、こんな戦い方を?』

 

 

今までやってきたことのない敵の動きに、ヒロトも動揺した。確かに、今までの敵は、高出力であろうとも比較的見える位置から打っていた。けど、今回は違う。完全に相手は物陰に隠れており、こちらから視認することも、ましてやレーダーにも反応しない距離にいる。ジャミングの類も反応がないので、これは間違いなく、超遠距離からの狙撃だ……

 

第二射が放たれ、物陰に隠れているあたし達をおびき出そうとしている。流石に狙いは外れていたけど、その出力からして、下手に動き出したら一撃で吹き飛びかねない威力だ……

 

 

『敵の狙撃ポイントは?』

『今のじゃ、まだ……』

 

 

しかし、こっちとしても2射だけでは敵の位置が割り出せなかった。打って来たところの射角から割り出すことはできるが、でもこれだけでは無理があった。せめて、あと一発、相手の狙撃を誘発すれば……

 

 

『私が囮になろう。それで敵の位置を割り出してくれ』

『な!?』

『うえっ!?』

 

 

ならば、その一発を誘う。その為にメイは的になると言ってきた。確かに、それなら一発は誘発できるし、それで位置の算出もできそうだけど

 

でも、今はジャスティスナイトとヴァルキランダーの盾があり、モビルドール自身にもビームシールドがある。おまけにあたしのアインのアックスも、それなりに大きさのあるものだ。盾ぐらいには使える

 

 

『行くぞ! リアン!』

『ッ、任せるからね! メイ!』

 

 

そして、外へと飛び出し、開けた場所へと出る。するとすぐさま第三射が飛んできた。しかも、威力はさっきの二発よりも出力が高めで、確実にこちらを落とそうとする一撃だった

 

それに対して、メイはビームシールドを二つに、ヴァルキランダーの盾を前に投げつけて防ごうとする

 

 

『!?』

『うそ!?』

 

 

だが、その三つの盾は、いとも容易く弾かれてしまう。それで威力は落ちたかというとそうでもなく、そのまま放たれた勢いのまま、あたし達の元へと向かってくる

 

すぐさま防御するために、腰に抱えていたジャスティスナイトの盾を構え、防御をする。なんとか防ぐことは出来たが、ビームは分散して周りに降り注いでいく

 

外にいるカザミにあたってしまうかもしれないと思い、後ろの方へと向いたが、奇跡的に真後ろの方にいたため、無事なようだった。それに安堵し

 

 

『ぐぅッ!!』

『きゃッ!?』

 

 

が、あまりにも出力が高く、防いだにも関わらず盾が弾け飛び、そのまま後ろへと吹き飛ばされてしまった。地面に激突し、えぐるように転がされてしまう

 

 

『ッ……大丈夫か、リアン』

『な、なんとか……ッ、ヒロトは!?』

 

 

すぐさまヒロトの行動を見ると、もうすでに位置を特定したのか、コアフライヤーとなってまっすぐ空を突き進んでいた

 

 

『ダメージは少ない。すぐに後を追うぞ』

『オッケー!』

 

 

ヒロトの向かった先へと、外にいるカザミを回収し、すぐさま駆けつけた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ッ……!』

〔邪魔をする……なぜですか?〕

『っ、ヒロト!』

 

 

駆けつけた先、そこには、今まで見たことのないヒトツメの機体と、ビームサーベルで鍔競り合いをしていた。その機体の見た目的には、なんだかコアガンダムと同じサイズで……小ぶりのMSだった

 

そして、その機体から発せられる声。それは……

 

 

『アルスか!?』

 

 

あの衛星で出会った、あの半透明の人間……アルスだった

 

 

〔エルドラの大地の保全。最優先されるべきもの。なのに……なぜ?〕

 

 

アルスは、再びその言葉を紡ぐ。エルドラの保全。まるでここを守っているのは自分であると言っているような……そしてそれに対し、邪魔をしているあたし達に対し、明確な敵意をもっているということに……

 

 

「ふざけんなッ!!」

 

 

だが、アルスに対し、カザミが吠えた。それと同時に、ヒロトの援護をするべく、メイもビームハンドガンで加勢に入る。低威力ではあるが、それでも牽制と動きの抑制はできるし、そこにヒロトが一撃たたき込めれば、撃破も可能だ

 

だが、その攻撃を受けて、敵はヒロトから離れる。さすがに、喰らい続けるのは危険と判断したのだろうか

 

 

「なぜって、そんなの決まってんだろ!! エルドラの連中を守るためだ! 二度とあんな真似はさせねぇッ!!」

『ちょっとカザミ! 前出てると危ないわよ!』

〔……守る?〕

 

 

メイの前に立つカザミが、アルスに対しさらに声を荒らげてアルスに対し言葉を吐き出す。これ以上、俺たちが守りたいものを傷つけさせないと……そしてそれはアルスに対してでもなく、自分を含めたあたし達の信念を誓言するかのような、そんな風にも、あたしは聞こえた

 

でも、流石に前に立つカザミに対し危ないとは言ったが、カザミは気にすることなく前に立つ。危なかろうとも、前に立って己を奮い立たせるためなんだろう

 

 

「いけメイ! アイツをぶっ倒せ!!」

 

 

そして、カザミは奮起の言葉を放ち、リーダーとしての態度を示す。こちらとしても、アイツを倒すことには変わらないので、そのまま攻撃を続ける……

 

 

 

 

[ビー!! ビー!!]

『『!?』』

 

 

だけど、何か後ろから飛んでくるものがあった。新手の攻撃かと思い、すぐさまその場に伏せるメイだったが、その飛来物はあたし達の上を通り過ぎ、ヒロトのところも素通りし、そのままヒトツメの元へと向かう

 

それらは、敵の機体には見えなく、なんだかまるで、装甲というか、そんな形状をしたパーツのようなモノで……なんだか、見覚えがあるものだった

 

しかし、見覚えが有るのに、あんなものは今初めてみたはずなのだ。飛来するパーツなんて、本当に……なんで?

 

だが、その答えは、すぐにわかることになった

 

 

 

 

 

〔コアチェンジ。ドッキング、ゴー……ッ!〕

 

 

 

 

 

 

アルスのその言葉と共に、飛来したパーツが敵の小型のMSにはめ込まれていき……それはまるで、ヒロトのコアガンダムが、アーマー換装をするかのような形で、その機体が、今までのヒトツメの機体と同等の大きさへと変わった

 

そう、見覚えがあるのは当然だ。なにせそれは、今まで仲間がやってきたことで、仲間の機体の一部であって……そしてここ最近、あたしが動画で何回か見返しているモノそのものだったから

 

 

『コアチェンジ……っ!?』

「アイツ、ヒロトのコピーじゃねぇか……っ!?」

 

 

その見た目は、まさしくアースリィガンダム。コアガンダムをベースとし、青い装甲を纏い、手にしたビームスプレーガンも、アタッチメントバレルを装備して肥大なビームガンとなる構造も……まごう事なき、ヒロトのアースリィガンダム、そしてプラネッツシステムのそれに近いものであった

 

 

〔ガンプラは脅威……いつも邪魔をする。貴方を、排除するために、この機体を……〕

 

 

ガンプラは脅威だと……そう言い放ち、こちらに対しビームライフルを向けてきた



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ヒトツメのコアガンダム 後編

戦いは、防戦一方だった。相手の高い出力と、機動性に翻弄され、確実な一撃と言うのが打てない状況だった。おまけに装甲も固く、こちらの攻撃がまるで通用していない

 

 

『ッ……この威力』

 

 

それに比べて、こちら側の武装は逆に心もとないと言えるものだ。アーマーを持たない、基本スペックが通常のHGクラスのガンプラよりも低めになっているコアガンダムと、ウォドムポットという高火力の武装を持つ外装の機体に普段は格納されているため、機動性に重きを置いたモビルドールという2機。これでは打てる手も限られてくるし、おまけに火力も足りない

 

 

『っ、早い……』

 

 

まさに窮地。二対一という数的に有利であるはずなのに、これでは全く歯が立たない……

 

 

「チクショウッ! 俺のジャスティスナイトがあればッ……!」

『……アインだったら、こんなの大したことないのに……!』

 

 

あたしとカザミが同じことを思う。二人共、お互いの機体がないから、この戦いに参加できずにいる。それにあたしとカザミの機体は防御方面において高い性能を持つ。特にあたしのはビームを軽減どころか、無効化出来るレベルにまで作りこんで再現させたナノラミネート装甲を有している。そして相手は、今のところビーム兵器以外の武器を使ってきていない。だから尚更、己の機体を求めてしまう

 

だが、現状はそうはいかず……なんて、なんて間の悪いタイミングでの強襲に、苛立ちが募った

 

 

『『グゥゥッ!』』

 

 

二人の口から、苦悶の声が溢れる。敵のアースリィもどきによる拡散ビームによる面制圧攻撃による攻撃にさらされ、ところどころ被弾している。このままじゃぁ、やられちゃう……! 何か、何か打つ手は……っ、そうだ! 

 

 

『メイ! あたしの言うタイミングで、アインのアックスをぶん投げて!』

『何をするつもりだ!?』

『いいから! お願い!』

『っ、分かった!』

 

 

あとは、ヒロトにも通信を入れる。おそらくヒロトなら、少しの情報だけでも、ある程度はわかってくれると思い、声を飛ばす

 

 

『ヒロト! タイミング見てアックスを投げるから! お願い!』

『ッ! あぁ!』

 

 

さすがヒロト、わかってくれた! とにかく、イチかバチか、やってみるしかない!

 

敵の攻撃をかいくぐり、ヒロトと敵の位置を観察しつつ、そのタイミングを見図る……

 

そして、ちょうど敵を挟むように、メイとヒロトの位置が置かれた

 

 

『今よ! メイ!』

『! 了っ、解!』

 

 

そして、メイがあたしの意図を察知してくれて、背中に背負ったアインのアックスを、全力で振りかぶり、ブーメランのように回転させて投げ飛ばした

 

 

〔……〕

 

 

ゆっくりと回転しつつ、モビルドールの少ない出力で投げ飛ばしたアックスは、無論、簡単によけられる。おおきく振りかぶって投げたため、体制を崩したこちらに敵の照準が向けられる

 

 

『ウオォォォォーーッ!!』

 

 

だが、敵のその背後。回転するアックスを上手くキャッチしたヒロトが、そのまま回転を加えた状態のアックスを振り回し、こちらに気を取られている敵に対し一撃を叩きこもうとする

 

これなら上手く決まる! 回避もそうそう出来ない距離だし、直撃は避けられない。少なくとも、腕の一本ぐらいは持っていける! そう思った

 

 

〔無駄です〕

『!?』

 

 

だが、アースリィもどき振り回したアックスの刃を、足を瞬時に曲げてアックスを受け止めた。それにより、足の走行はひしゃげて、破壊寸前まで行った。が、相手の武装に関しては、どこも削れていない。スラスターも、背中周りに集約されているようで……せいぜい姿勢制御が乱れる程度のダメージしか、与えられなかった……

 

まさか、足を盾替わりに使うなんて……しかも何あの足の動き、あれはまるで、生物特有の、有機的な動きじゃない……まさかあれ、阿頼耶式でも積んでるって言うの!?

 

 

『避けて! ヒロト!』

 

 

そのまま、アックスを当てた事で動きを止めてしまったヒロトに対し、腕から発っしているビームサーベルを横薙ぎに振り回す。それを回避すべく少し後ろに後退するも、アックスがマニピュレーターから離れ、地面に落としてしまう。そして振り回すと同時に大型のビームライフルをヒロトへと向け、ビームを打とうとする

 

メイは先ほどのアックスを投げた事で、かなり体制を崩してしまい、まだ身動きが取れない。このままじゃぁ、ヒロトが打たれる……

 

 

『!?』

 

 

だが、そこへ豆鉄砲程度のビームガンの弾が当てられる。手に持つレベルのモノであろうそれが放たれた場所を向くと……

 

 

「ビルドダイバーズッ!!」

『ムランさん!?』

 

 

そこには、パルとフレディの二人と一緒に行ったはずのムランさんが、このエルドラで使われているビームガンをもって対抗していた。でも、そんなものなんの威力もなく、現に傷一つ付けることすら無かった

 

 

『! やめろォ!』

 

 

なのに、アースリィもどきは、照準をヒロトからムランさんへと向けた

 

 

『な、なんで!?』

 

 

わからない。目の前の強大な脅威のはずのヒロトではなく、まさかムランさんに向けるなんて……優先順位とでもいうの? まさかそんなモノがあるって言うの?

 

 

『ぐあぁぁッ!!』

『『「ヒロトッ!!」』』

 

 

アースリィもどきからビームが放たれ、ヒロトが盾を構えて防ぐ。だが、その衝撃は緩和出来るものではなく、盾は破壊され、ヒロトは大きく吹き飛ばされた

 

そのまま岩場に叩きつけられたヒロト。なんとか体制を整えようと立ち上がろうとするけど、すぐそばにアースリィもどきが立ちふさがり……ビームライフルを向ける

 

 

『ッ……!!』

『ヒロトぉー!!』

 

 

打たれる。そう誰もが思った……

 

 

 

 

 

 

[ズガァァァーーンッ!!!]

『え……?』

 

 

 

 

 

 

その時、まるで狙いを済ましたかのように、アースリィもどきへと落雷が起きた

 

 

 

〔クアドルン……ッ〕

 

 

 

そのまま、何度も何度も、アースリィもどきへと雷が落ちる。こんなの、自然では絶対に起きない現象だし、一体どういうことなの……?

 

降り注ぐ雷に対し、対処不能と判断したのか、アースリィもどきは、撤退していくように飛んでいった……

 

 

『大丈夫か?』

『大丈夫!? ヒロト!』

「あ、あぁ。いったい何が……」

 

 

確かに、不思議な現象だった。雷が、まるで意思を持つかのように、敵めがけて何度も落ちるなんて……誰かが、作為的に起こしたような、そんな気がするものだった

 

でも、いったい誰が……?

 

 

「なんだ、ありゃぁ……」

『『『?』』』

 

 

カザミが、空を見上げて何かを見ていた。それに習い、あたしたちも空を見上げる

 

 

 

そこには、厚い雲に覆われていた何かが雲を振り払うように現れていた。それは、宙に浮かぶ岩塊で、その上には、岩山をくり抜いて作られた遺跡のようなものが建っていた……

 

見た目はまさに、天空の遺跡とでも言うのだろうか……ん? 遺跡? まさか、アレって……

 

 

「ミラーグの山だ! 結界が晴れた、これで私たちも行けるぞ!」

 

 

その答えは、ムランさんが答えてくれた。あれが、パルとフレディが向かった、三つ目の遺跡だった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エルドラを見守る者

毎日更新が難しくなってしまった

なんとか毎日更新に戻りたい所存


「すっげーな……」

「うわぁ、なにここ……」

 

 

ミラーグの山へと上がったあたし達は、ムランさんに案内されるまま、遺跡の中へと入っていった。他の二つの遺跡と比べ、損耗しているような箇所はない。なによりも、フレディの村の近くの遺跡よりも幾分かは綺麗な見た目をしている。遺跡、というより、神殿というような、そんな雰囲気だ

 

確か、聖獣っていうのがいるんだっけ? だからなのだろうか、ここがこんなにも綺麗なのは……そりゃぁ、家は誰かが住まないと朽ちていくだけっていうけど……

 

 

「着いたぞ」

 

 

ムランさんの案内で、一際大きな扉の前に立った。どうやら、この先に、その聖獣っていうのがいるようだった。少し開いているのは、多分パルとフレディが先に入ったからだろう

 

 

「……これは」

「砂だよね、これ。こんなにたくさん……!」

 

 

そして、その扉をくぐった先……そこには大量の砂があった。しかもそれが辺り一帯に敷き詰められているかのようで、しかも踏んだ感じ、かなり深いところにもある感じなので、おそらく、村近くの遺跡のものよりも多いのではないだろうか

 

こんなにあれば、問題なくガンプラを呼び出せる量はある。これなら、イケるかも!

 

 

「みなさぁ~ん!!」

 

 

部屋の奥には、パルとフレディがいた。ムランさんが言うには、あの二人のおかげでここに入ることが出来たようだ。原理がいまいちよくわからないけど……

 

っていうか、その先にある黒い物体がなんなの、か……

 

 

「おう! フレディ、パル。二人共よくや……ッたぁぁぁぁぁーーー!!?」

「ひいぃぃぃっ!!?」

 

 

二人の後ろにあるものの先を見上げたら、そこには黒い首長のなにかが……ドラゴンのようなものがいた。いやいやいや、なにこの……中世ファンタジーにいそうな感じのドラゴンさん……え、いきなり世界観が突拍子のない方向に飛んだ気が……あれ? なんでだろう、このドラゴン、どこかで見たことあるような……?

 

 

〔騒々しい日だ……〕

「しゃ、しゃべっ、た……!?」

 

 

しかも喋れるんだ……一気にファンタジー感が増したなぁ。っていうか、まさかこのドラゴンが……

 

 

「こ、こちらが聖獣の、クアドルンさん、です」

「これが……」

 

 

パルが明言してくれたことで、あたしが思ったことが当たっていた。このドラゴンが、この遺跡の主の聖獣、クアドルンであるらしい

 

 

「ファンタジー、かよ……」

 

 

カザミが言うが、確かにその通りだ。本当にもう、ファンタジーというか、空想というか……まさか、現実にこんな生命体が存在しているなんて……宇宙は広いんだなぁ

 

 

「久しぶりだな、クアドルン」

〔ムラン。お前の差金か……こんな年端のいかぬ子らを、使いによこすとは〕

「ガンプラの民と、その召喚者だ」

〔ふむ……〕

「が、ガンプラの、民……?」

 

 

いや、なんですかそれ……まるであたしらが、ガンプラを主とているかのような物言いは……いや、間違ってはいないんだけど、その……すごく、シュールな響きだなぁ、ガンプラの民って……

 

 

「クアドルン、さん。さっきの雷は、あなたが?」

〔ガンプラの民には借りがある〕

 

 

ヒロトが、さきほどの敵のみを狙って落ちていた雷について聞いていた。そしてどうやらそのとうりのようで、あれはこの人……いや、聖獣がやったことだそうだ。さすが、聖獣と呼ばれるだけはあるのね。天候操作なんて出来るんだ

 

でも、そんな聖獣からガンプラなんて単語が出てくることに、ちょっとした戸惑いを感じる。どう反応したらいいのか、困ってしま

 

 

「ん? 借り?」

 

 

でも、そこでふと引っかかる言葉が出た。この聖獣が、あたし達に借りがあるって……この聖獣に対し、あたし達は何かしたっけ……?

 

 

〔事情はすでに、そこの二人に聞いた〕

 

 

と、借りとはなんなのかを考えている時に、聖獣がパルとフレディからあたし達の現状と目的、そして今求めている事を聞いたようだった

 

それなら、色々と話は早いだろうと思い、こちらからも、この砂を分けて欲しいと頼もうとした……

 

 

 

 

 

〔今すぐ、帰れ〕

 

 

が、その願いは言う前に、断られた

 

 

 

 

 

聖獣は言う。これはこのエルドラに生きる者たちの問題だ、と……滅びることになるなら受け入れるしかない、とも……

 

あたし達は、揃って衝撃を受けた。まさか、そんな後ろ向きな回答が来るなんて、思いもしなかったから……

 

 

「時間がありません。いつまたあの静止衛星から、二度目の攻撃がくるかわからないんです」

〔あの月のことを知っているのか?〕

 

 

ヒロトが、あの静止衛星のことを出して、協力を頼もうとした。だが、聖獣はあの衛星のことは知っているような口ぶりで返してきた

 

 

「俺たちが打たせてしまいました」

〔打たせた?〕

「っ、止められなかったんだよ……なにもわかってなくてさ……」

 

 

カザミが苦悶の声で吐き捨てる。あの衛星砲が発射してしまったのは自分達のせいであると……確かに、やりようによっては阻止できたかもしれない。けど、あんな状況で、そこまでのことができたかというと、正直怪しい……しかも、まさかあそこまでの事態にまで発展するなんて、思いもしなかったから……

 

それを思い出し、悔やむあたし達に対し、聖獣が答えた。あの衛星砲は、そう短時間に連発出来るものではないと。次弾のチャージには相当な時間が必要らしく、少なくとも500時間はかかるという

 

だけど、なんでそんなことを、この聖獣は知っているの? 明らかに、あの衛星に関して知っているような口ぶり……まさか

 

 

「彼を、知っているのか」

〔っ〕

「月の元凶。白銀の塔の上にいる、俺たちの理解を超えた存在……そう言っていたな」

 

 

メイの言葉に、聖獣が反応を示した。その様子からして、アイツに関して、何か知っている。それを確信した

 

そこにムランさんが言葉を続ける。どうやら以前に、この聖獣から話を聞いていたような内容で……それからも、この聖獣はあの衛星のことを知っていたということが伺えた

 

 

〔アルス〕

「「「「「「!」」」」」」

 

 

その名が出たことで、確定した。あれについて、何か知っていると

 

 

〔あれは古き民によって作られた……この星を、守るために〕

 

 

そして、さらに続く言葉で……あたし達は、困惑した

 

 

 

 

 

あたし達は、聖獣に対して質問をしていく。この星を守る為に作られたのに、やっていることは虐殺という正反対なことをしているのはなぜか? もしかしたら、暴走しているのではないか? と……

 

だけど、この聖獣は細かいところはなにも言ってくれず、ただ使命だからとしか言ってくれない。新しき民っていうのが滅びるまで、止まることはない。とだけしか言わなかった。おまけにこれ以上知る必要はないから帰れと言ってくる始末……取り付く島が無かった

 

でも、ここまできて帰れと言われ、帰るわけがない。なんとかして、説得しなきゃと思い……フレディが前に出て聖獣に対して質問をする

 

新しき民とは、自分たちのことを言っていて、なぜ、自分たちが滅亡すれば止まるのか、と……

 

確かに、疑問だ。フレディたちがいなくなると、あいつは止まるって……そういえば、あいつはフレディを見るや、態度を変えた。そしてその後の行動が攻撃で、そしてフレディ達が滅びるまで、この虐殺は続く……つまりそれって、フレディたちを敵視しているってこと?

 

 

「遥か祖先が古き民より託されたこの大地を、お前は俺たちと共に守ると言ってくれた。彼らは、フレディや、死んでいった者たちが命運を託した相手だ。我々エルドラの新しき民が、彼らの力を必要としている。それは即ち」

〔信じた結果、多くのものが犠牲になったのだろう?〕

「っ……」

 

 

ムランさんがあたし達の擁護をしようとしてくれたけど、それを聖獣は痛い言葉で切り返してきた。確かに、そのとおりだし、そう思われても仕方ない……

 

みんなの表情が曇る……まさかの手痛い言葉に対し、なにも言い返せなくなったから……

 

 

 

でも、その問いに対し、聖獣は詳しく語ってくれた……

 

かつて、この星に別の星から敵対勢力が侵略してきた。それに対抗するために、古き民……かつてこの星にいた人々の持てる全てを以て作り出されたのが、あのアルスだった

 

膨大な知識と計算能力を与えれ、あらゆる状況に対応できるよう設計された人工知能で、その性能を遺憾無く発揮し……この聖獣と、そしてその古き民たちの力と共に、数々の苦難の果てに、敵対勢力を葬ったようだった。その後、戦いが終えて役目を果たした後に、全ての機能を停止させ、眠りについた

 

そして、侵略者との戦いで荒廃した大地が再生され、新しい命……つまりフレディ達のような獣人が生まれ、この星の新たな住人として栄えた頃に、突然、再起動を果たし、眠りから覚めた

 

その後、この星の確認をした時に、その獣人達のことを知り、それがこの星に新たに訪れた侵略者だと思い込んでしまって……その虐殺を開始した。本来は古き民によって生み出された命であるはずのモノたちなのに、それを知らないから、攻撃対象として排除しようとしている。それが今、あのアルスに課せられた使命であると……

 

それが、あのアルス……衛星で出会ったあのAIの正体であり、今の行動の原因となった話だった

 

つまりそれって……勘違いなんじゃないの? ようは、フレディ達は敵じゃないっていうのを知ってもらえれば、もう攻撃はしないんじゃ……? カザミも同じことを考えたようで、それを聖獣に対し言い放つ

 

でも、そう簡単には出来ないようで……アルスのことを制御出来るのは生み出した古き民のみができることらしく……つまり、アイツを言葉で止めることは不可能だと、そう伝えてきた……

 

なんて融通が効かないAIなんだろう……せめて緊急非常停止措置ぐらいは取り付けても良かったんじゃないかな、暴走とか、そういう時のためにさ……

 

 

〔この傷が癒えたら、宇宙へ上がってあの衛星を破壊する。新しき民が根絶やしにされる前に〕

 

 

この傷と聞き、聖獣の視線の先を見ると、肩から生えている翼のような箇所があり、よく見るとそれが左右で非対称になっている。本来は左右対称、で一対の翼だった、ということなのか……それがないってことは、まさかアルスにやられたからなくなったっていうことなんだろう

 

そして聖獣はこうも語る。アルスを破壊することは私の使命であると。古の王達と共に、このエルドラの大地と海、そして民達を栄えさせてきた己の義務である、と……

 

だからだろうか……この聖獣の言葉から感じるアルスへ向ける感情は、どこか必死さが出ているのは。かつて共に戦った仲間が、今罪なき人々を虐殺している事に対し、負い目を感じているのは……でも、かつての仲間なら、アイツと会話ぐらいできるんじゃないの?

 

ヒロトもそれを思ったのか、あたしと同じようなことを質問した。けどすぐさま帰れと言ってきて、答える気はない感じだ

 

そこから察するに、多分一度会ったんだろう。アイツと。でも止めることができなった。そして翼をやられ、なんとかここに戻ってきて、傷が癒えるまで待っているんだろう……虐殺の様子を、無力に眺めながら……

 

だったら、あたし達がそれをなんとかしてみせると。そう言いかけようとした時に、聖獣からもうガンプラの民の力は借りないと先手を打たれた……だから、なんであたし達のことをそんなに信用してないの!?

 

 

「マサキのことを気に病んでいるのか」

「「え?」」

「マサキ……ッ!?」

「もしかして?」

「シドさんのこと?」

「シドーマサキを、あなたが?」

 

 

まさか……シドさんをこのエルドラに呼んだのは、この聖獣だった?

 

 

〔応えてくれたのはマサキだけだった……〕

 

 

聖獣は続けてこうも話してくれた。アルスを止めるのは今はもういない古き民のみ。だから彼らの足跡を辿り、彼らを呼び戻そうとしたらしい

 

その大半は、荒廃した星の再生を願い、その再生の邪魔にならないように、宇宙へと旅立っていったようで、足取りは掴めなかった。でも、一部は蘇った星の光景をその目で見たいと望んだ者達もいたようだった。その人たちは、肉体を電装することで大いなる時空へと旅立ち、いつか帰ってくることを計画した。そしてその人たちを探し求めたようだった

 

つまり、自分を電子世界に肉体ごと移動する事で、己の保存をした、ということなのかな……コールドスリープってやつの、そのデジタル版とでも言えばいいのかな? 確かに、コールドスリープは維持がかなり大変らしいから、そっちの方が低コストなのかもしれない……いや、SFすぎて、流石にどっちがいいのかも分かんないや……

 

そして、聖獣はその電装した人たちの足取りを追ったが、その殆どが途絶えてしまって行方不明となっていたようだ。でも、ひとつだけ、その痕跡があった場所があった……

 

 

 

そこが、GBN。あたし達の星の、電子の世界に存在する、遊び場だった

 

 

 

そこでは巨大な兵器が互いに戦いあう世界であり、その全てが、この聖獣にとっては未知の力だと思っていたようだった。そこで聖獣は思いついた。古き民がいなくとも、この兵器の力があれば、アルスを止める事が出来るのではないかと

 

聖獣はその世界に住む者に対し、コンタクトを取ろうとしたが、そのどれもが戦いに適した人はおらず……でも一人だけ、突出した戦士の才覚を有した人を、呼び出すことにしたようだった

 

それが……シドさんだった

 

シドさんは、このエルドラの為、この聖獣共にいくつもの戦場を駆け抜けてくれたようだった……なんだろう、すごくシドさんらしいな……

 

時期的には、あたしと一緒にミッションをしてくれた時と合致する。もしかしたら、あれってこの星で戦う為の訓練……あたし達で言うところの、リハーサルということだったのかな……確かに、この星の戦いを生き抜くには、あれぐらいは当然出来なきゃならない。っていうことなのかな……

 

そして、ある戦いの後、シドさんは疲弊したところをヒトツメ達に攫われてしまった。その後に会った時にはもう、洗脳されてしまっていて、アルスの手先にされてしまった……これが、あの人がこのエルドラにいる理由、だったんだ

 

 

「っ……」

 

 

そんな……まさか洗脳とかされていたなんて……そんな非現実的なことが、本当にあったなんて……死ぬよりも、なによりも怖いかもしれない……

 

洗脳されているその間、いったいどれ程の人たちを、傷つける事になるのか……想像するだけでも、おぞましい

 

 

 

もし、仮に、あたし達がそんな事になってしまったら……フレディ達を、この手で……

 

 

 

「ッ!」

 

 

やめよう、そう考えることは。そうならない為にも、力を……今まで以上の力を手に入れないといけない。正直、砂というコストがかかることを知ってしまったから、今あたしが考えている設計が狂う事になりかけたけど、これだけ潤沢な砂があればなんとかなりそうだ。ある程度武装を外して、一部をオミットする事で、対応が可能だ……急いで作業に取り掛からないと

 

嫌な思考を振り払いながら、聖獣の言葉に耳を向ける。どうやらあたし達がガンプラの召喚台と思っていたのは、実は古き民がこの地に戻ってくる時の為のもので、GBNのような他の電子世界の住人を、ましてやガンプラの召喚も、本来の用途とは異なる使い道だったようだ

 

シドさんの事は、聖獣が使い方を誤ったから起きた報いだと……ゆえにこれ以上、ガンプラの民の力は借りない。と

 

つまり、聖獣は恐れているということなのか、またシドさんみたいな人が増えてしまうことを。だからさっきから帰れって、何度も言っているんだ……同じ目に、あって欲しくないから……

 

 

「……ッ」

 

 

なんだろう。なんだか無性に腹が立ってきたような気がする……確かに被害を抑えたいっていう気持ちは分かるけど……でも、あたし達だって……!

 

 

「確かに、これはこのエルドラで起きている問題です。貴方のような存在が、自分一人で決着を着けようとされることも分かる気がします。でも、新しき民が滅びさえしなければいいというのは……」

〔なぜそこまで……縁も所縁もないエルドラの為に……〕

「そんなこと、ありません」

〔む?〕

 

 

ヒロトの言葉に対し、聖獣は問いかける。どうしてお前たちは、この星の為に戦おうというのか……お前たちも、シドさんと同じような目に遭うかも知れないというのに、なぜと……

 

それに対し、当然のように、パルが……そして、あたし達が答える

 

 

「聖獣様のその傷、何時治るんです? 例えいつかエルドラを救えても、その時にフレディがいなかったら? アシャや、トワナや、フルン達がいなくなっていたら!?」

「そうだよ! トノイやジリクのじいさん達、祭りで木彫りをほってくれたガキども……マイアを、もう泣かせたくねぇ!!」

「ここにいるムランや、カリコ、ザブン、そしてストラ……私たちの知る彼らに、いい顔をしていて欲しいと思う。エルドラを守るということは、その種さえ存続されれば良いということではないはずだ」

「それに、帰れと言われて帰るほど、生半可な覚悟で、あたし達はここに来ていないわよ! あの森の中にあったフィルテンって街や、崩壊してしまったセグリ……そこで起きた悲劇を知って、さらにそれが広がろうとしているのを、黙って見過ごせないから!」

「ジェドさんやレジスタンス、エルドラの為に戦った人たちの思いを、無駄に出来ないから……」

 

 

ここで出会った全て。ここで巡った場所、そこで息づく人々と、交流を交わしたあたし達……確かに、最初はゲームの登場人物だとおもって接していた。けど、一人一人にちゃんとした意思が、思いがあった。それらに触れて、そう感じなくなっていたところもある。でもそれは当然で、この地に住まう人々は、紛れもなく現実だった。それを知ったからこそ、その全てに対し、あたし達は大切な繋がりを感じている……

 

そして、そこに住まう人々が今、脅威に曝されている。それに対し、何かをしたいと思うのは当然で……それにあたし達には、ガンプラという力がある。その力を以て、その脅威を晴らしたいと……その為に、あたし達は来たのだ

 

命の危険性もある。おまけに敵は熟練の手練をも倒すほど強大だ。それで一度は一歩を踏み出すことができなかったけど、今はもう躊躇いはない

 

それに……シドさんと違って、あたしは一人じゃない。ここには、みんながいる。カザミに、パルに、メイに、ヒロトが……だから、倒れることなど、ありはしないから!

 

 

 

それぞれに秘める思いを、あたし達は聖獣に向ける。聖獣はそれに対し、訝しい表情で見つめ返す

 

ほんの一瞬の視線の交錯。その時に、フレディが聖獣の近くにあった石版へと駆け寄り、それに触れた。その後、ホロウィンドウのようなものがいくつも現れ、さらにフレディの姿が映し出されたものが大きく写る

 

 

「大丈夫です! 僕これ動かせます! お願いです聖獣様! 僕たちに召喚台を使わせてください! 戦わせてくださいッ!!」

 

 

フレディも、聖獣に対し頼み込む。どうかここを使わせてくださいと。自分たちに、戦うための力を使わせてくださいと

 

それを見る聖獣の目は、どこかまぶしげなモノを見るような目で……そして、あたし達のことをもう一度見つめ……何かを考えた後に、聖獣はフレディの言葉に対し、答える

 

 

〔好きにするがいい〕

 

 

聖獣はフレディと、そしてあたし達の願いを許した……これでようやくあたし達は、自分たちのガンプラ()を、取り戻した



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

己の本分

聖獣クアドルンとの出会いと、その竜が存在する遺跡を、今後のエルドラへの転送先として使うことを許してくれた後……あたし達は一度、GBNへと帰る事にした

 

帰る前に、アルスが遺跡を攻撃する事が出来ないのでは? とヒロトが仮説を聖獣に聞いていた。そしてそれは聖獣によって肯定され、そこを一時的な避難所として使い、あの衛星砲が打たれる前に宇宙へと上がり、アレを止める。という話となり、それが今後の活動の流れとなった

 

でも先ずはその前に、あの村に押し寄せてくるであろうヒトツメの対処だ。その為の準備として、一度此方に戻って体制を整えようというわけだ

 

作戦決行は二日後。それまでなら、アレの仕上げが出来そうだ……でも

 

 

「戻ってきた途端、どっと来やがったな……」

「異様に疲れましたね……」

「これ、PTSDっていうやつ……だっけ? 戦場で感じるストレスっていうアレ……」

「気が張っていた、という奴だろう。いろいろあったからな」

「しかも、最後にあんな話……」

「だが今は、このやり方を進めるしかない」

 

 

GBNに戻った途端、一気に疲れが来てしまい、その場で座りこんでしまった。あたしの他にも、カザミとパルも、階段に座りこんで疲れた様子を見せる

 

てか、なんでヒロトとメイは平気そうなの? ガンプラに乗ってバトったっていうのに……

 

 

「ってかよ。元々エルドラの連中を襲ってたのは、あのちっちゃいヒトツメで、それがMSサイズのヒトツメになっちまったのは……あの聖獣さんが、シドーマサキを呼んじまったから。って事なのか?」

「おそらく、な」

「……だろうね」

 

 

カザミの推論に、肯定する。聖獣がこちらにアクセスし、シドさんと行動を共にし始めた事で、アルスはシドさんの正体を探り、そこでGBNを見つけた。そして、アイツもまたこちらにアクセスし、ガンプラ……というより、元のガンダムの知識を獲得するに至り、MSを製造した。それでシドさんと渡り合い、最終的に洗脳して手駒にした

 

 

「だから聖獣は我々を拒もうとしたのだろう。新たなガンプラの民を巻き込んで失敗すれば、それはまた聖獣の責めになる」

「失敗すれば、か……」

 

 

やはり、メイも同じように思っていた。あの聖獣は、恐れている。また己のせいで関わりのない人を巻き込んで、非道な目にあって欲しくないから、と……確かに、その可能性はある。なにせ、無双という異名を与えられたシドさんが負けたのだ。その戦いぶりを、あの聖獣も知っている。だからこそ、基準が跳ね上がり、あたし達のことを下に見て、危険だから帰れと言ってきた……けど

 

 

「大丈夫だろうよ、“俺”たちなら、なんとか出来るって」

 

 

そう言って、場を和ませようとした。今はそんな失敗なんて考えず、無事に戦い抜くことを考えていこう。と

 

だが、そう言ったあたしのことを、みんなが変な目で見てきた。え? なんで?

 

 

「口調が男に戻ってるぞ」

「え? あ……しまった。GBNに戻ってきたから、つい……」

「別にいいんじゃねぇの? 女でそういう奴ぐらい、世の中にはいるんだしよ。ほら、女優の、ランドウだっけ? あの人も自分のことを俺って言うだろ」

「確かにそうだし、知り合いにもいるけどさ……その知り合いと同じ口調とか、虫唾が走るし……」

「? そうか?」

 

 

しかも、その知り合いが、そのランドウなんだけどなぁ……とは、流石に言えるわけがなかった。あの変態の事を知ったら、どういう反応するのだろうか……

 

そんな他愛ない会話で、少し気を紛らわせた後。二日後の戦いに備えて、それぞれが準備のために、ログアウトをした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………

 

………………

 

………

 

 

 

ログアウト後。その日の内に、あたしはサクラギのおじさんに連絡し、急いで荷物を纏めて家を出た。終電の一本前の電車に乗り、あたしの実家がある町の近くにある駅へと着き、タクシーに乗っておじさんの家に到着した

 

玄関に行くと、おじさんが険しい形相で仁王立ちしていた。多分、すこし怒ってる

 

 

「よう、アンズ。こんな夜分に押し入ろうなんて、行儀がなってねぇなぁ」

「ご、ごめんなさい……」

 

 

まぁ、そりゃそうか。女子高生が、こんな夜に急に伺います。なんて言ったら、そりゃこうなるよね……流石に、無礼が過ぎた

 

 

「……よく帰ってきてくれたな……」

「え?」

「なんでもない。蔵に行くぞ」

 

 

何か、おじさんが言ってきたけど、それを聞き取ることが出来ず……あたしは、おじさんのガンプラ専用の蔵へと、趣いた

 

 

 

 

 

 

「で、何の用だ。あのエルドラで、なにかあったのか?」

「その前に……GPDの筐体、もう起動してますか?」

「あぁ。お前がそう言ってきたからな、いつでも始められるぞ」

 

 

蔵に入るなり、おじさんはこちらの急な訪問の意図を訪ねてきた。でもその前に、あたしはお願いした事が受理されてるか確認した。それはやってくれたようで、部屋の中心には、GPDの筐体が稼働して、淡い緑色の光が部屋を照らしていた

 

 

「とりあえず、色々と言いたいことや、急に来た理由も、あとで必ず話します。その前に……あたしと、本気でバトルしてください」

 

 

GPDの筐体を起動して、本気のバトルの申し込み。それは、今までのおじさんと繰り返しコレでやっていた、ガンプラを壊さないような戦いではなく……戦闘不能になるまで叩き潰す、本気のガンプラデュエルを、あたしはお願いした

 

 

「ッ……」

 

 

おじさんは最初、少し眉間に皺を寄せた。一体何でそんなことを言い始めたのかと。だが、その目はすぐに掻き消えて、あたしの言葉の真意を読み取ったかのように、深く目を閉じた。伊達に社長という役に着いてはおらず、その洞察力はあたしでは計り知れない。長年の経験からくるこの人の人を見る目は、間違いなく本物であるから

 

 

「いいんだな? お前の傑作、壊しても」

「ッ……望むところです!」

 

 

そう言って、あたしはこの人と……サクラギ・タイアンと、バトルをすることになった

 

 

 

 

 

………

 

………………

 

………

 

 

 

 

 

『BATTLE ENDED. Winner PLAYER1.』

「これで満足か?」

「ッ……はい、ありがとうございました」

 

 

結果は、惨敗だった……GPD用にカスタマイズして作られているアインを使ったのだが、全く歯が立たず、もはや勝負にすらならならず、一瞬で決着は着いた

 

あたしのアックスの攻撃を全て躱し、横薙ぎの攻撃に合わせてアックスの上へと乗っかり、そのまま頭を一蹴。倒れたところを胴と片足を踏みつけられて身動きを取れなくし、そのままマウントを取って殴りまくられた

 

そして、踏まれた箇所は粉微塵に破壊され、殴った場所も相当ダメージを蓄積して破損し……無事なのは、意図して庇っていた腕と肩ぐらいだ

 

アインは……その部位だけを残し、無残な姿へと成り果てた

 

 

「……今までありがとう、アイン……」

 

 

破壊されたアインへと言葉を贈り……そして、おじさんの方へと向き直る

 

 

「おじさん。一つ聞いてもいいですか」

「なんだ」

「あたし……バトルのセンスって、ありますか?」

「……そういうことか」

 

 

あたしの言葉を聞き、おじさんはすぐ意図を察してくれたようだった。こういう察しの良さは、本当にすごいというか、さすが一大グループの長をしているだけはあるなと、すごく感心する

 

 

「正直に言おう。お前のバトルに関する才能はほぼ皆無だ」

 

 

そして、その口から言われた言葉は、まさに思ったとおりだった。そう、きっぱりと下手くそだと、言われてしまった

 

 

「今までバトルをなんとかしてこれたのは、ここやGBNで長年、俺と戦ってきた経験や、掲示板で連中を通して知り得た深い知識があったからこそと言える。そして、お前のガンプラの出来の良さ。それら三つがあって、バトルの腕というのはカバーしてこれた」

 

 

おじさんは、あたしの戦いについて、説いてくれる。今までのあたしのバトルの腕前は、おじさんとの戦いの経験や、知り得た知識が元になっていると……そしてバトルは基本、このGPDでの戦いだ。だからあたしは、タイマンでやるほうが得意なのだ

 

そして、GBNで一対多の戦いやチーム戦なども経験しているし、どんなものなのかも知っている

 

 

「そして、既にもう経験や知識で出来うることは全て会得していると言える……これ以上、お前が強くなるには、更なる強いガンプラを作るしかない、ということになる。だが、アインやルナのスペックは破格だ。これ以上のガンプラなど、もはやこの世の誰にも作り出せんだろう……」

 

 

だからこそ、あたしにはこの先がない。前に立って、敵を倒すということに関しては、もう成長限界を迎えていた

 

あの宇宙での戦いの前にあったリハーサル、あれでカザミとパルに、撃墜数を抜かれていた。言い訳にしかならないけど、あたしはボスの足止めやらをやってたから、それほど稼ぐことはできなかった……でも、それ言ったらカザミだって、仲間のフォローに回っていたし、戦場を仲間の援護を優先しながら駆け回っていた。パルは数ヶ月前まで初心者だったのに、それがガンプラバトル歴六年のあたしを追い抜いて、撃墜数を稼いだのだ。このまま行けば、上位ランカーも夢ではないだろう……そう思うと、自信を無くす

 

 

「やっぱり、そうだったんだ……」

「なんだ、分かっていたのか?」

「なんとなく、そうじゃないかなぁって思ってたんです。でも、こうハッキリ言われちゃうと、事実なんだと受け入れられそうです」

 

 

あたしは、戦いの才能が無い。今までなんとか戦ってこれたのは、ビルダーとしての腕が良くて、バトルに関しての才能が高いおじさんという師がいて、あの掲示板のスレ主をする事で集まった人達から知識を教えてもらって……ここまで来れた

 

けど、今後の戦いは、ガンプラバトルという遊びではない。その延長線上にありながら、やる事は命懸けのモノへと変異する。それに対し、バトルの才が無い奴が、敵を倒す為に前に出るのは危険だ

 

敵を倒すよりも、優先したほうがいいことがある。幸い、周りには戦いの才が溢れる奴らがいる。だから、前に立つのは、彼らに任せた方が良いかもしれない

 

あたし自身が戦うのでは無く、“誰かが戦うのを、その後ろから助けられる事にすれば”……

 

 

「……改造コンセプトは、間違って無かった」

 

 

あたしは、納得する。自身の今後のあり方を……誰かの前に立つのでは無い。誰かの後ろにいて、それを助ける為に動く。それを、自分の本分とするのだと

 

 

「ありがとうございます、おじさん」

「構わんよ……お前がする事を手助けしてやるのが、俺の……サクラギ・タイアンの意地、だからな」

 

 

そう言って、おじさんは目を伏せる。この人は、あたしに対し今でも負い目を感じている。もう別に気にしなくても良いというのに、この人は意地でそれを貫いてくる。年上の男だからだとも言っていたけど……だけどそこは、あえて甘えることにする。そうする事でこの人の負い目が少しでも和らぐのなら、そうするのが、正しいのだろう

 

 

「あの、ガンプラ製作スペース、お借りしていいですか?」

「おう、構わんぞ……アインの修復か? ガンダムフレーム機なら、幾つか積んであるし、グレイズアインもある。好きに使いなさい」

「それは、いいです。もう材料は持ってきてますから……あ、多分プラ棒だけは、貰うかも、です」

「?」

 

 

疑問符を浮かべるおじさんをよそに、あたしは持ってきた荷物の中から、普段から愛用している工具、使う部品を机に並べ、先程大破したアインも、その隣に並べる

 

そして最後に、今改造を施しているガンプラを、机の上に置いた

 

 

「ッ!!!? アン、ズ……ソイツ、は………!?」

 

 

おじさんは、それを見て絶句した。当たり前だ。これはおじさんにとって……輝きと、そして忌まわしさを併せ持つ、最高で最悪のガンプラだったから

 

 

「はい。あたしが初めて改造をして作った、あのハシュマルです」

 

 

あたしは、臆することなく、その名を口にした。そういえば、おじさんにはまだ教えてなかったっけな。もう、この子のことに関しては、乗り越えられた、と

 

 

「一応、なんとかここまで直す事は出来ましたけど、やっぱり可動域を追加したところはダメになってましたね。頭や肩の装甲、あと腕がほぼ完全に直しきれたので、形としてはなんとかなりそうですけど」

「……もう、平気、なのか?」

「はい……もう、大丈夫です」

 

 

彼の、ヒロトのおかげで、この子と向き合うことは出来た。それは口にしなかったけど……おじさんはそれさえも察した

 

 

「そうか……そうか……はは。何もかも、彼らがやってくれたのか……ほんと、ふがいねぇなぁ、俺は」

 

 

そうつぶやくおじさんは、悔やんでいるような口ぶりだけど……でも、安堵していた。あたしのトラウマが解消されていることが……

 

 

「……必要なものがあるなら言え。できる限り応援はする」

「はい、ありがとうございます。あ、でしたら、乾燥機、つけっぱなしにしておいてもいいですか? パーツ洗浄と塗装をなるべく早く終わらせたいので」

「分かった、いいだろう……なるほど、その為にここに来た。というわけか」

 

 

そう。おじさんの言うとおり、あたしがここに来た最大の目的は、この制作スペースだ。あたしが今住んでいるところでは、二日後の戦いまでにこ、の子の完成が間に合わない。だから、知りうる限り近場で最高峰の制作スペースというと、ここしか無い。ここなら、時間がかかる作業を短時間で行うことが出来るから

 

そのスペースを借りながら、あたしは作業を始めた。頭に描いてある図面の通りに、ハシュマルのパーツを仕上げていく。その作業を少し見届けたあと、おじさんはなにかつまめるモノを持ってくると言って、蔵からでようとしてた

 

 

「あ、そうだ。少し手が空いたときにでも、掲示板を覗いてくれ。あいつらが、お前に話したいことがあるそうだからな」

「え? あいつらが?」

 

 

いったいなんだろう? と、そう思い、あたしは黙々と、作業を続けた

 

 

 

 

 

待っててね、ハシュマル




そろそろ、アレのお披露目となりそう……



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Re:Birth of angel

ついに、こいつを出すことができた……!

近々、活動報告を出すと思うので、そちらも確認してもらえるとありがたいです


169:1

呼ばれて来たけど、誰かいる?

 

 

170:以下無名のダイバーがお送りします

イッチ!

 

 

171:以下無名のダイバーがお送りします

来たか貴様!

 

 

172:以下無名のダイバーがお送りします

良かった。無事だったんだな

 

 

173:以下無名のダイバーがお送りします

心配しましたよ

 

 

174:1

うお、皆いる。色々ごめん、心配かけて

 

んで、何? 団長から言われて来てみたんだけど

 

 

175:以下無名のダイバーがお送りします

おじさん、じゃねぇの?

 

 

176:1

いや、流石にその呼び方は、ちょっと…

 

 

177:以下無名のダイバーがお送りします

そんな事はどうでもいいです。とりあえず、まずは俺達の話を聞いてください

 

 

178:1

お、おう…?

 

 

179:以下無名のダイバーがお送りします

んじゃ、先ずは

 

団長から、どんだけ聞いた?

 

 

180:1

いや、特に何も…ただ、お前らがあたしの身の上と過去を知って、今現在の事情も教えた。としか

 

 

181:以下無名のダイバーがお送りします

なるほど…では、ここから話しましょう

 

我々がイッチの事を聞いた後、エルドラのアルスという存在に関して、一つの懸念が生じました。それは、アルスはGBNに対して何かしらの行動をとる事が可能なのでは無いか? と

 

 

182:以下無名のダイバーがお送りします

もしそうだとしたら、サーバーアタックなんかやらかして、こちらの行動を阻害してくるかもしれないでしょ? おまけに俺達にとって大切な遊び場が荒らされちゃうかもしれない

 

 

183:以下無名のダイバーがお送りします

そんで、俺らで話し合って決めたんだよ。出来る限り、お前らを助けてやろうって

 

 

184:以下無名のダイバーがお送りします

知っていて、何もやらないよりかは、幾らかマシでしょうからね

 

 

185:1

お前ら…

 

 

186:以下無名のダイバーがお送りします

んで、とりあえずまず考えたのが、俺達もそっちに行けたらって事なんだけど、人数制限かかってるんだろ?

だから、これは無理だと

 

 

187:以下無名のダイバーがお送りします

それから、幾つか案を考えましたが…まずは状況を見てみない事には何も出来ません。そこで、お願いがあるんです

 

次の戦い、生配信で我々にも見せて貰えませんか?

 

 

188:1

配信? なんで?

 

 

189:以下無名のダイバーがお送りします

いや、状況分析だよ。敵がどんな奴らなのか、味方側は今どれだけ出来るのかとか、とかさ

 

 

199:以下無名のダイバーがお送りします

イッチの今までの話の他に、カザミの動画を見てるけど、どれも内容が偏ってるから、正しく分析出来ないのよ。だから、生配信で見せて貰えれば、その分偏向的にはならないでしょう? まぁ、イッチだけだと視点が足りないから、カザミにもお願いしたいんだけどね

 

 

191:以下無名のダイバーがお送りします

それらをこちらで取りまとめて、レポートとして此方で使い、そしてそちらにも提供する。そうすれば、今後の作戦の手助けになるかと思うので

 

 

192:以下無名のダイバーがお送りします

元空自という本職ならではの戦況レポートだ。かなり使えるだろ?

 

 

193:以下無名のダイバーがお送りします

俺らもガンプラ知識でカバーしたり、アダチのゲーム的戦術を組み込めば、わかりやすいだろうしな

 

 

194:1

確かに、すごく使えそう

 

 

195:以下無名のダイバーがお送りします

だろ?

 

 

196:1

うん。でも、配信なんて、やり方わかんないんだけど? 今まで、そんなのやった事なかったし…

 

 

197:以下無名のダイバーがお送りします

その配信ですが、企業のリモート会議用に作られた秘匿性の高い動画配信サイトでお願いします。内容が終了後、自動的に削除され、アーカイブといった後から見直すことが出来ない仕様のサイトです。アカウントは、すでに団長が持っていますので、あとで教わっておいてください

 

 

198:1

なる、ほど…うん。分かった

 

とりあえず、みんなに聞いてから、するかどうか決めようと思うんだけど、いい?

 

 

199:以下無名のダイバーがお送りします

オッケー

 

 

200:以下無名のダイバーがお送りします

問題ねぇよ。内容が内容だしな。慎重に検討してくれや

 

 

201:以下無名のダイバーがお送りします

もし無理そうでしたら、またなにかできることを考えておきますので

 

 

202:1

分かった

 

その、ありがとね

 

 

203:以下無名のダイバーがお送りします

いいってことよ

 

 

204:以下無名のダイバーがお送りします

今まで散々楽しませてきてもらってたんだし、報酬って事で

 

 

205:以下無名のダイバーがお送りします

命が掛かっている以上、下手に干渉すべきではないかと思うのですが

 

やはり、知ってしまった以上は、なにかしてあげたいので

 

 

206:1

そっか

 

やっぱり、知っちゃうとなにかしたいって思うのは、割と当たり前なのかな

 

 

207:以下無名のダイバーがお送りします

あぁ?

 

 

208:以下無名のダイバーがお送りします

どゆこと?

 

 

209:1

なんでもない。とりあえず、作業の最中だから、一旦落ちるな。返答に関しては、また明日にでも

 

 

210:以下無名のダイバーがお送りします

おう、頼むぜ

 

 

211:以下無名のダイバーがお送りします

では、我々もこれで

 

 

212:以下無名のダイバーがお送りします

じゃぁなぁ

 

 

213:以下無名のダイバーがお送りします

頼んだぜ、イッチ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

………………

 

 

………………………

 

 

 

 

 

それから、二日後……作戦決行の日

 

SNSを通して、皆にスレであった話をしたら、みんな快く承諾してくれた。カザミも協力してくれることになり、普通のゲーム配信という体でやるって言ってくれた

 

おじさんから配信サイトの使い方とアカウントを教えてもらい、すでにテストも済んだ。あとは、戦いの時にやるだけとなった

 

そして、なんとか完成が間に合い、仕上がったガンプラを、ログイン端末の上に乗せて、GBNへとログインし……そのまま、エルドラへと転送された

 

 

「うわぁ! 皆さん!」

 

 

転送後、フレディの嬉しそうな声を聞き、周りを見渡す。そこには、それぞれのガンプラ……ジャスティスナイトにヴァルキランダー、ウォドムポッド、アースリィガンダムに初めて見るアーマーがあった

 

ならば、あたしの機体はどうなのか? と。そのまま振り返り、自分の機体を眺める

 

 

「……うん、大丈夫そうだね」

 

 

その背後には、自分が新しく作り直した機体……あのハシュマルを改修し、足りない部分をある二体のガンプラを用いて作った、まさに融合体とも言えるガンプラが、そこにあった

 

 

 

鋭く尖った嘴をもつ鳥のような頭部に、鳥の足のような鉤爪を持つ腕。そして胸部と腰は使用したガンプラのモノをそのまま流用し、肩はあるガンプラのモノを使っている

 

その肩からは、ハシュマルにとって最も目立つ翼が如き装甲が、そのまま羽のように取り付けてある。本来は両肩で一つの装甲だが、パーツの破損もあって、あえて四枚のウィングバインダーのような形状に変えている

 

背面のバックパックには、ハシュマルの動力部をそのまま一つのバックパックとして使い、太いワイヤーがまるで尻尾のように取り付けられていて、先端には大型のテイルブレードが備え付けてある

 

機体は、装甲の部分が紅で彩られている。所々見えるフレーム部とテイルブレードは鋼の如き黒、頭部のセンサーは緑で光り、肩の羽は白で塗られ、各所の差し色としては、黄色と銀が施されている

 

それが、あたしの新たな……いや、かつて作ったガンプラが蘇ったもの……ハシュマルの、新たな姿だった

 

 

 

そこに欠損がないかを確認する。自分が作ったものなのだ、細部の細かいところまで把握している為に、それが完璧に呼び出されたことに安堵する。周りの砂も問題なくあるために、コスト面に関してはクリアと言えよう。多分、最初に想定していた通りに作ってたら、砂がかなり減ったんじゃないかと思う。それほどまでに、大型のモノを作ろうとしてたし……

 

 

「うおぉ、でけぇ……お前、機体変えてきたのかよ」

「これって、もしかしてMAですか?」

「うん。モビルアーマー・ハシュマルの改修機。あたしの、新しいガンプラよ」

 

 

後ろから、カザミとパルの二人が寄ってきた。流石に肩の装甲や、腕やらが他の機体よりも大きいため、割と目立つ。まぁ、それ以前に、今まで見たことのない機体を持って来たんだ。見に来るのは、当然といえば当然か

 

 

「こ、これも、ガンプラなんですか?」

「そうだよ。歴とした、ガンダムのプラモデルの一つ。まぁ、ガンダムらしさは、皆無なんだけどさ……」

 

 

フレディも、人型からかけ離れた異形の姿に、思わず困惑したようだ。確かに、これがガンダムに出てくる機体かと言われたら、ちょっと怪しいところはある

 

そうしていると、隣にヒロトがやってきて、一緒にハシュマルを見上げる

 

 

「これは……まさか、このハシュマルは」

「うん……そのハシュマルだよ」

 

 

今のところ、ヒロトにだけ話してあるあたしの過去。あたしにとって、全ての始まりとも言える機体……それを見て、なにか思う所があるのだろうか、それを眺めながら、あたしに声をかける

 

 

「……直したんだな」

「うん……ヒロトのおかげだよ。この子のことを、ちゃんと見られるようになったの……ありがとう、ヒロト」

「いや、俺は別に……ただ話を聞いただけだよ」

「それでも、だよ。あの時に話を聞いてもらえて、そしてそこで教えてくれたことがあったから、こうしてこの子が今、ここに在れるんだから」

「……そうか」

 

 

そういって、ヒロトは再び、視線をハシュマルへと向き直し、あたしはそのヒロトの横顔を少し眺めていた

 

その目には、直ったハシュマルに対して……どこか羨むような、そして悔いるような印象を受けて……少し何か、引っかかった

 

その疑問をつい聞いてみようとしたら、いつの間にか隣に来ていたメイに、声をかけられた

 

 

「この機体、アインとルナリアンゼのパーツを使っているのか?」

「あ、分かった?」

「アインと、ルナのパーツをか?」

「確かに、よく見ると、胴体はルナリアンゼのものですし、肩はアインのもの、ですよね?」

「うん。色々と訳ありのハシュマルをベースにしたから、胴体とかがダメになっててね。手頃なパーツも無かったから、そのままアインとルナをバラして使ったの」

 

 

この機体は、おじさんとのGPDでの戦いで大破したアインと、そしてルナリアンゼのパーツを使いまわしている。ヒロト曰く、ガンプラには心が宿る。ならあの2体にも、心はあるはず。なのに、パーツとして使ったせいで、もう完全に元に戻れなくしてしまい……そこに、罪悪感を感じている所もある。

 

 

「アインとルナには、申し訳ない事、しちゃったかな……」

「いや、そんな事はないぞ。アインとルナは、お前がこのハシュマルと向き合う事を望んでいた。そして、さのハシュマルの修復の為に使われた事に、何も憂いも無いそうだ」

「え?」

「寧ろ、これからもまた、お前と共に在れる事を、喜んでいる。だから、罪悪感など抱かなくても良いと……そう言っているように感じるぞ」

「……そっか。良かった……」

 

 

ELダイバーには、ガンプラの気持ちというか、ガンプラの声を聞く事が出来るっていう話を思い出した。だからメイは、このハシュマルの中にある、アインとルナの思いを、感じる事が出来たようだった

 

……アインとルナは、この子の中にいてくれるんだ……これからも、ずっと……

 

 

「改めて、またよろしくね、アイン、ルナ」

 

 

改修したハシュマルの中にいる二体が答えてくれたのか、頭部にあしらえたセンサーが、すこし光ったような気がした

 

 

 

 

 

 

「よっし! それじゃぁ行くか!」

「はい!」

「うん」

 

 

そして、その場で作戦会議をした後、それぞれの機体に乗り込んでいった。フレディはカザミのジャスティスナイトに乗っていった

 

 

『カザミ! ジャスティスナイト、出るぜ!』

『パルヴィーズ。ヴァルキランダー……行きます!』

『メイ。ウォドムポッド、行くぞ』

『ヒロト。アースリィガンダム、ウラヌスアーマー、出る!』

 

 

みんなが空へと飛び上がり、天井に空いている穴から飛び出していく。あたしも、己の機体に乗り込み、ステータス画面を開いて武装の状態やスキル欄などを確認していく。今初めて乗り込んだので、色々と確認する必要があるのだけど、どれも問題ないし、削りカスが挟まっているなどの異常も無い。問題なく稼働出来る状態であった

 

 

『各ステータス異常なし、登録スキルに不備なし、武装の設定、問題なし……よし、行ける!』

 

 

機体を変えた時の確認を全て終え、操縦桿を握る。MAは初めて動かすし、今までの操縦感覚とは異なるだろうけど……今まで数多くの機体を動かしてきたんだ。その経験もあるし、やれるはず!

 

 

 

 

 

『リアン。“モビルアーマー・アリアンロッド”ッ! 行くよ、アリア!』

 

 

数年前、無残な姿にされたガンプラ。それが今蘇り、GBNを介して、このエルドラにその産声が響き渡る。まるで雄叫びを吠えるがごとく鳴動し、四枚となった翼の装甲を広げ、空へと飛び上がる

 

 

 

 

 

『ッ、すご……これが、MAの出力……!?』

 

 

MSとは全く異なる出力の出方に戸惑いを覚える。まさかここまで違いがあるとは、思いもしなかった。それに操作感覚も、MSと比べて一癖も二癖もある感じで、制御が難しい

 

あまりMA使いがいない理由、なんとなく分かった。これは操作が難しすぎて匙を投げそうになる。出力やエネルギーの総量はMSなんかよりも高いけど、逆にそれがかえって操作性に大きく出ているから、あまり意味をなしてない。人気が出ないのも頷けるし、更にMA殺しのガンダムフレームっていうのがあるから、それで余計に使われないのだろう

 

でも、だからといって泣き言はいうわけ無い。むしろそれが、今はなによりも心地よく感じる。この子は今まで使ってきたどのガンプラとも違う、特別な子なのだと……強く伝わるから

 

 

 

MAの高い出力も相まって、先に出たはずのみんなにすぐに追いつき、更に先頭へと躍り出る

 

 

『みんな! あたしの後ろのワイヤーを掴んで!』

『え?』

『なんでだ?』

『あたしがみんなを牽引する。少しでもエネルギーを消耗するのは避けたほうがいいでしょ?』

『え、でも』

『それだと、お前のエネルギーが大幅に消耗するだろ』

『大丈夫。MAのエネルギー量は、MSよりも大量にあるのよ』

 

 

あたしの言葉に、パルとカザミが疑問に思ってきて、それに対して返事をする。メイがあたしの方のことを心配してきたが、問題ない。エネルギーに関しては、MAはかなり高めに設定されている。だからガンプラ4機にサブフライト機1機程度、引っ張っていっても問題ない

 

 

『それに時間もあまりないし……急いで行くよ』

 

 

みんなが捕まり、ヒロトのウラヌスアーマーも、後ろに回したアリアの腕に固定されたのを確認し、コンソールを呼び出す。それと同時に、ウィングバインダーを全面に出すように展開し、貼り付けてあるカバーを展開し、内部に内蔵してあるバリア発振機構を露わにする

 

 

『エイハブ・リアクター、並びにミノフスキー・クラフト、同時稼動開始。エイハブ粒子、ミノフスキー粒子、散布完了。大気干渉軽減ビームバリア、展開完了……飛ばすから、しっかり捕まっててね!』

『『え?』』『はい?』『『!』』

 

 

パルとカザミ、そしてフレディはなんのことかわからない感じだったが、ヒロトとメイはあたしが言った言葉で何をするのかを理解し、その身を力んだ

 

そして、そのまま一気に音速に近い速度を叩き出し、目的地である村へと飛んだ



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

狙撃戦

一部追記いたしました


アリアの超高速飛行による移動で、ものの数分で目的地の集落へとたどり着いた

 

そこではすでに遺跡への避難が始まっていて、もうほとんどの人が移動を終えていた。今のところ、問題なく行えているようだが、遺跡に対する信仰心を強く抱く人たちが行きたがらないという事で、その説得に時間がかかるようだった

 

あと、ストラとも再会できたフレディは、そのままレジスタンスの彼らと一緒に住民の避難活動に協力するようで、一旦あたし達と別行動となった

 

そして、敵の襲来が起きるその時まで、罠を設置したり、あたしとカザミは配信の準備をしたり、避難誘導を手伝っている中……敵の反応を察知する

 

すでに集落には人の反応はなく、避難が完了したのを見届けたあと、いよいよ作戦が始まり……アリアンロッドの初陣が、開戦した

 

 

 

 

 

『リアン。空中に飛行型デスアーミー5機、ウィンダム型が3機接近』

『了解。一気に叩くよ!』

 

 

あたしは集落の空中に陣取り、空からくる敵の迎撃をしている。空中型デスアーミーや、ヒロトとメイが前回やりあったっていうウィンダム型のヒトツメとやり合っている。地上はカザミ、メイ、パルの三人が陣取り地上からくるデスアーミーやドートレス、グレイズといった敵の迎撃、ヒロトはセンサービットを持っているアーマーに換装した狙撃特化型のユーラヴェンガンダムで、あたし達への指示出しと援護、というポジショニングだ

 

作戦としては、いたってシンプルだ。遺跡方面を背にし、向かってくる敵を逐次撃破するというものだ。中身としては、フレディの村を守ったあの戦いに似たものだ。でも、違う点としては、相手に空中型が存在しているということ。それゆえに、空から来る敵もカバーしなければならないということだ

 

そこを、あたしが担当する。アリアはどちらかというと空中戦に向いた機体だ。胴体と腰スカートがルナのモノを使っているので、そっち方面に適正を持つ。地上戦も出来ないことはないが、空中の方が強いし動きやすい

 

 

『いっけぇ! アリアッ!』

 

 

接近するヒトツメ共に対し、アリアの主砲である頭部にある高出力ビーム砲を放つ。予備動作やチャージにすこし時間を取らせるため、機動力が高いやつにはよけられやすい。これで落ちたのは、飛行型デスアーミー2機で、それ以外にはよけられた。まぁ、この一撃で全部落とせるとは思ってなかったし、2機だけでも落とせたのはむしろよくやったと思う

 

回避してきた連中のうち、飛行型がアリアへ向かって殺到してくる

 

 

『それぐらい、対処できるわよ!』

 

 

背中のバックパックから伸びるワイヤーブレードが脈動し、先に突撃してきたデスアーミー型を貫く。そのままもう2機目の敵にもブレードを伸ばし、まとめてブレードに突き刺す

 

 

『ッ、例え才が無くとも……!』

 

 

ワイヤーを動かし、そのまま鈍器として振るって最後のデスアーミーにぶつける。その衝撃で串刺しにした2機と纏めて爆発を起こし撃破する。残りはウィンダム型の3機

 

 

[ビー!! ビー!!]

『ッ!?』

 

 

残る敵が、挟み撃ちをする形で左右から迫ってくる。その手にはアックス型の武装が握られており、それをこちらに向かってふり下ろす

 

 

『それ、ぐらい!』

 

 

腕を稼働させ、本来ならば運動エネルギー弾を発射する部分である鉤爪の中心から通常の倍近い長さのビーム刃を発生させる。それを振りかざし、2体の攻撃を防ぐ

 

 

『ッ……! どう、だ……!』

[ビー!! ビー!!]

『!?』

 

 

だが、2体の攻撃に対応していたその隙に、もう一体がこちらへと急接近していた。その手に持っているアックスを振り下ろし、アリアの頭部へと叩きつけようとしている。かなり接近されてしまったせいか、もうワイヤーブレードでは対応できる感じではなく……その攻撃に対し、あたしは何も出来なかった

 

 

『ッ!?』

 

 

やられる……まさかこうもあっさりと追い抜けられるとは思ってもみなかった

 

センスがない……つまりはこういうことなんだろう。敵の攻撃に対し、数のことを考慮しておくべきだった。ここ最近のヒトツメの行動は、かなり戦略的になっている。だから、こうしたことが、命取りに繋がってしまう……

 

敵の振り下ろしが、すぐ間近まで迫る……

 

 

[バシュンッ!]

『!』

 

 

だが、その前に下からビームが放たれ、ヒトツメのウィンダムが穿たれる。それに続くように、あたしが抑えている二体にも、ビームが放たれ、撃破されていく

 

 

『大丈夫か、リアン』

『う、うん! ありがと、ヒロト!』

 

 

先ほどの攻撃……それはヒロトからの援護だった。狙撃特化のアタッチメントバレル、ビームシュートライフルU7から放たれたモノで、一撃で敵の急所を撃ち貫いていた

 

狙撃も一級品とか……相変わらずヒロトはすごいな……

 

そして、チラッと配信してる画面を見てみると、コメント欄が酷いことになっていた

 

 

 

無茶『油断してんじゃねぇよバカ!』

 

空自『もう近接特化ではないのですから、敵に近づかれないように立ち回るように。これは書いておくべきですかね』

 

桜木『ヒロト君に助けられたな』

 

足立『機体変えた後で撃墜とか、カッコワルw』

 

ER『パルきゅんを映せ! パルきゅんを! あああああ! パルきゅうううううん!!』

 

無茶『お前黙れよ』

 

空自『お前黙れよ』

 

桜木『お前黙れよ』

 

足立『お前黙れよ』

 

 

 

相変わらず変態が発狂しているようで、あいつらは平常運転であると認識する……こっち命かかってることを、こいつら理解してんのかな……

 

でも、おかげで少し落ち着けたし、戦い方もわかってきた。アインという近接特化と同じ感覚というわけには行かないのはなんとなくわかってたけど、やっぱり少し癖が出てるかもしれない。どちらかというと、ルナを操縦しているときの感覚でやればいい感じかな……MA特有の癖のある感触もあるし、下手に接近戦を仕掛けるべきじゃないか

 

 

『とにかく……ヒロト、次の敵は?』

『距離はあるが、四時の方向に高々度から……ッ!?』

『え、ヒロト!?』

 

 

通信の先で、ヒロトが息を飲んだのが伝わった。何が起きたのかと思い、周囲の状況を確認する。特に変わったところはないように思えたが……

 

いや、一点だけあった。本来なら3基あるはずのユーラヴェンガンダムのセンサービットが、1基足りなかった

 

 

『まさか!?』

 

 

それに気づいた直後、また1基、また1基と、その姿がビームに飲まれていき、破壊されて行くのが確認できた

 

間違いない。この狙撃は……あいつだ!

 

 

[ビー!! ビー!!]

『!?』

 

 

それらが撃墜されていった直後、あたしのアリアに向かって同様の狙撃が飛んできた。目測で確認できる限りで威力を推察し、まともに食らったら大ダメージを負うレベルのものだと把握する

 

すぐさまウィングバインダーを動かし、それを盾として機能させる。ビームバリアの展開が間に合わず、そのままウィングに直撃を食らう。ナノラミネート装甲にはなっているが、これはあたしの装甲でも軽く貫きかけるほどの高出力を有しており……内側が熱で赤くなっていくのが見えた

 

 

『ッ! ごめん! アリア!』

 

 

盾としているウィングを接続部から切り離し、それを捨てる。片翼の半分が失ったことで体勢が崩れるが、それを利用し地上へと落ちるように降りる。そして周りよりも一際大きな建物の影へと滑り込み、一時的な壁とした

 

 

『カザミ避けろッ! ヤツだ!』

 

 

通信でヒロトがカザミに対し声を投げる。カザミ側の配信画面を確認し、状況を見ると、接近してきたヒトツメウィンダムがカザミに特攻、そのまま壁に押し付けた所を、ウィンダムを通して狙撃されていた

 

 

『カザミぃ!』

『クソォッ!』

 

 

それに対し、カザミはあたしと同様、盾を捨てて攻撃をいなす事で、なんとか回避していた。その間に、ヒロトはパルとメイに隠れるよう指示を出していた

 

 

『みんな無事か』

『な、なんとか……』

 

 

他の皆も、建物の影に隠れられたようで、辺り一帯が急に静かになった

 

ヒロトのセンサービットが破壊されたようで、先ほどの攻撃でも位置の割り出しが出来なかったようだ

 

 

『もしかして、皆さんが言ってた……ど、どこから撃って……!?』

『チィッ、この間のやつか……!』

『私が出る。撃たせて発射源を』

『ダメだメイ。前回はシールドを重ねて、何とか持ちこたえられたが……』

『アリアのナノラミネート装甲すら貫くのよ。ウォドムの装甲じゃぁ、中のモビルドールに影響が出るかもしれない……それに、ビームバリアを貼ったとしても、多分耐えられないかも』

 

 

苦い言葉が出るしかなかった。それだけ、敵の一撃が想定を遥かに超えるほどの一撃であったから……一体どれほどの出力で撃ってきてんのよ、アイツ!

 

 

『このままじっとしてたら……』

 

 

パルの言葉に、震えが混じる。確かに、このまま隠れていたら、敵がこちらを素通りし、避難している人たちのところへと殺到してしまう

 

今のところは、第一陣が殲滅完了としているので、すぐに敵が横へと通るわけではないだろうけど……でも、少しすれば第二陣が近づいてきてすぐさま抜かれてしまう

 

 

『どうする……?』

 

 

メイの言葉に、全員が息を飲んだ。狙撃を恐れて、あたしたちは今の岩影から一歩も出れない状況……はっきり言って、絶体絶命という状況だった

 

そんな中……突如通信から声が聞こえた

 

 

〔これは、貴方……〕

『……アルス?』

『え?』

 

 

アルスの声と、そしてヒロトの呟きを聞いたあたしは、コアガンダムがある方角へと、視線を向けた



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

彼の傷口

前回の話に足りない描写があったので、追加しました

あと、感想にて内容の指摘があったので、その点を修正しました


〔広大なデータの海。遡り、たどり着き……そして、垣間見た〕

『は、はぁ?』

 

 

アルスのアースリィガンダムからの狙撃を受け、建物の影へと隠れて身を潜める。その間、アイツからよくわからない事を音声のみで聞こえてきて、なんの事だかさっぱり分からなかった

 

一応、コメント欄を見てみるけど、あいつらも疑問符を浮かべている様子で、アルスの意図が掴めなかった……

 

けど、なんとなくだけど……なんだろうか。これは、誰かに向けて話している。それはきっと、その相手じゃないと理解できない類のヤツで……それはあたしでは無いということだ

 

 

〔経験、修練、洗練され、より高次な存在へと昇華していった、貴方の〕

『アルス……』

『なんだ……?』

 

 

メイとカザミは、アルスの言葉に対し理解ができていない感じらしい。なら、残るはヒロトかパルのどちらか……話の内容から、そのどちらなのかを推察しようと試みようとした時……震える声が聞こえた

 

 

『やめろッ』

 

 

その声の主は、ヒロトだった。彼はいつもの、普段の彼からは考えられないほど、ありとあらゆる感情が詰まったように聞こえる声で、アルスの言葉を遮ろうとした

 

 

『なぜこんな物を……ッ!』

 

 

ヒロトのことばからして、何かをアルスに見せられてあるのが分かった。多分、ヒロトの方には、何かしらの画像なりが映し出されているのだろう。それがなんなのかわからないけど、でもそれは、彼の深い所をえぐっている。確証は何もないけど、彼の声から感じたモノで、あたしはそうではないかと感じた

 

 

〔ですが、理解できません〕

 

 

ヒロトの静止の声は当然、届くはずもなく、アルスはヒロトに対し言葉をかけ続けた

 

 

〔大きな戦い、劣勢を覆せる好機に……不可解です〕

 

 

アルスの話は、本当になんのことを言っているのかが全くわからなかった。ヒロトが見ているモノがどういうものなのかを知れば、ある程度は理解できそうかも知れないけど……

 

大きな戦い。劣勢を覆す……GBNでやった大型イベントの事? でも、そんなのあったっけ? そしてそれが、一体ヒロトにどう関係してる? しかもそれで、どうしてヒロトはここまで震えて……苦しそうにしてるの?

 

 

〔これは、貴方を基にした、失敗を犯さない理想の姿……〕

『失敗……?』

 

 

先程の話と、そして今出た失敗という単語。そこから連想するのは、大型イベントで劣勢に立たされたけど、そこをヒロトはなんとか出来る状況だった。けど、何故かヒロトはそんな好機というべき状況でありながら、それをやらなかった

 

ヒロトの事を考えれば、それはおかしな話だ。戦いにおいて、そんな失態をするような人ではない。むしろその好機を捉えたら、確実に狙い、確実に遂行する人だから

 

つまり……それはヒロトが、そうしたのだろう。そんな状況であろうとも、己はその覆す行動を、敢えて取らなかったのだと……理由は分からないけど、多分ヒロトは、そうした方が良いと判断したから、好機を逃す選択をしたのだと

 

 

〔“完璧な貴方”〕

『ッ!!』

 

 

ヒロトの口から、悲痛の音なき声が上がる。そこに秘められた気持ちは、全く理解出来ないけど……ハッキリと、分かる事がある

 

ヒロトは、アルスの言葉に苦しんでいる

 

それを理解した瞬間……一気に頭の中が沸騰するぐらい、熱くなり……アルスに対して、苛立ちを覚え

 

 

 

 

“ヒロトを苦しめるな”という、そんな想いが、頭の中で埋め尽くされた

 

 

 

 

『ッ!!』

 

 

その感情のままに、あたしは隠れていた建物の影から飛び出し、周りに遮蔽物のない広い場に躍り出て、外にも響くように、叫んだ

 

 

『アルスぅぅーーッ!! イモってないで、出てこぉぉぉーいッ!!』

 

 

 

『!!?』

『リアン!?』

『リアンさん!?』

『お前馬鹿か!?』

 

 

急に飛び出した事で、みんなから驚きの声が届く。更に配信画面のコメント欄も、アイツらの罵倒が書き殴られている。それを煩わしく思い、配信画面をミュートにして見えないようにした

 

今はとにかく、アルスの声を妨げたかった。もうアイツの言葉を、ヒロトに聞かせたくなかった

 

 

『ヒロト。あと何発撃たれれば、アイツの居場所が分かる?』

『ッ!』

『まさか、お前! 囮になるつもりか!?』

『危ないですよ!』

 

 

そして、あたしはヒロトに対し通信を繋ぎ、聞きたい事を聞く。そこにカザミが割り込んでくるし、パルも大声で心配してくれている。でも、今はその事を気にする事なんて出来なかった……それだけ、頭に来ていた

 

 

『お前の装甲も貫く威力だぞ。耐えきれるのか!?』

『大丈夫! まだアイツに見せてない手があるし、それを使えば、耐えきれる!』

『ッ、ビームバリアか……』

 

 

メイからも、珍しく叫ぶように声をかけてくる。たしかに、さっきナノラミネート装甲のはずのウィングバインダーが貫かれた。下手すると、撃墜されかねないかもしれない

 

だが、此方には耐えきれる自信がある。ヒロトが言ってくれたように、アリアにはビームバリアがある。クスィーガンダムやペーネロペーに搭載されているアレだ。それがあるから、やれない事はない

 

それに、もう既にアイツにはあたしの姿は補足されているはずだ。すでに照準は合わさり、発射段階になっているだろう……賽は投げられたようなものだ

 

 

『……リアン。一発だ、一発だけ耐えてくれ』

『ッ、了解!』

 

 

一発。ヒロトからそれで相手の場所がわかるという言葉が来た。ならば、その一発を全力で耐えればいい

 

 

『“末那式システム”、起動!』

 

 

アインより継承させたスキル、阿頼耶式と類似するシステムを作動させる。宇宙世紀のミノフスキー・クラフトというエイハブ・リアクター以外の動力を有しているからか、センサーの色が以前までの赤ではなく、その色が淡い青へと変わっていく。周囲に青白い粒子が舞い、今までとは全く異なる姿となる

 

これを起動させたのは、相手の発射を見たあとからでも動けるようにするためだ。通常の状態では、ビームの光を見てから動くことなんて出来ないし、さらに言うと、それを通常操作でやるには、アリアの運動性では難しい

 

だからこそ、このシステムを使い、機体の操作を肉体と同じようにすることで、反応と同時に動けるようにするのだ。うまくいくかは、わからないけど

 

 

『ッ、感覚が、いつもよりもかなり変……ッ!』

 

 

それ以前に、肉体が機体と同調する感覚がおかしい。アリアは完全に人型ではない形だから、それが体となる感覚がかなり気持ち悪い。腕が長く、足がなくて浮いているという感覚は、実際に体感することなんてできないだろうから、違和感がすごかった

 

だが、それで動かせないというわけではなく、いつものとおりの末那式機動状態と同様の動きが可能だった。頭で考えたことが、瞬時に動作に伝わっている感触は同じなので、問題なく動ける。違和感や気持ち悪さは、気合でごまかすことにする

 

 

『どこ……どこからくる……!』

 

 

周囲を見渡し、ビームの発射光を探す。一応、防ぐ目的を相手に分からせるために、防御をした状態を保つ。そうすれば、最高出力で相手は撃ってくれるだろう。すでにアルスには、ライフルでこちらの防御を落とせるということは知っている。だから撃ってくるのは間違いない

 

だが、まだビームバリアは展開しない。それをして、誘いこむ魂胆がバレないようにする為だ。一機だけでも落とすという判断を相手にさせるために、敢えて今防御を薄くする

 

それを警戒して撃たない選択をされたらカッコ悪いことこの上ないけど……だが、アイツは撃つと、それは確信していた

 

 

[ビー!! ビー!!]

『ッ!!?』

 

 

そして、センサーが高熱……ビーム攻撃が飛んできたことを知らせてきた。その方角を見ると、すでにこちらへと向かって高出力で向かってくる光があった

 

 

『ビームバリア! 展開ッ!』

 

 

すぐさま、向かってくる方向へと向き直り、残った三枚のウィングバインダーを前面に重ねるように移動させ、その三枚全てにビームバリアを展開させた

 

そこまでを、なんとかビームが着弾する寸前で終わらせられた。着弾までの時間を考慮したら、回避なんて末那式を発動していたとしても無理だっただろう……防御に気を張っていて、正解だったかもしれない

 

 

『ッ!! グウウウゥゥゥゥゥーーーーッ!!!』

 

 

そして、出力を増し、先程よりも威力が跳ね上がっているビームを受ける。ビームバリアによる軽減もあり、先ほどよりもウィングバインダーが耐えているように見える

 

だが、その衝撃はかなりなモノで、押し倒されそうになる。ここで倒れて体勢を崩されたら、防御を捲られてしまう。それを二本の巨大な腕で支えて体勢を維持し、その場に留まる

 

 

『ッ……アリアをぉ、舐めんなぁぁぁぁぁーーーーーッ!!!』

 

 

気合いを入れるべく、咆哮の如き怒声を上げる。そして、これで確信する。アイツが一発撃ち、それをこうして防げた事で……状況が動く

 

 

『! ヒロトぉぉぉッ!!』

 

 

ヒロトに対し叫ぶ。相手の位置は特定できたのかと……それに答えるように、彼からも言葉が飛ぶ

 

 

『そこかぁぁぁーーーッ!!!』

 

 

彼の叫びと同時に、後方から高出力のビームが飛んでいく。向かう先は、先ほどあたしが向いている方角で……その先で、爆発が起きた

 

 

『ッ! コアチェンジ! ウラヌストゥアース!!』

 

 

だが、すぐさまユーラヴェンガンダムからアースリィガンダムへと換装し、向こう側へと飛んでいった。もしかして、今ので仕留めきれなかったの……!?

 

 

『ヒロト!』

 

 

すぐさま、あたしも行こうとして、腰スカートのバーニアを吹かせようとした。が

 

 

[ビー!! ビー!!]

『ッ!』

 

 

敵の接近する反応を捉え、レーダーを確認すると、何機かのヒトツメが押し寄せてきていている。このまま飛んで行っても、アレらに邪魔されてしまうと判断し、その迎撃の為に身構える

 

 

『やァァァーーッ!!』

 

 

そのすぐに、パルが敵集団へと突撃していき、その何体かが撃破された

 

 

『大丈夫ですか!? リアンさん!』

『パル! うん! 大丈夫!』

 

 

心配してくれたパルが、あたしの近くに駆け寄ってくれた。仲間が近くに来てくれたおかげで、少しは落ち着けるようになり、そこでようやくアリアの状態を確認する

 

ウィングバインダーが1枚、ほぼ半壊に近い状態で、残る2枚は問題無かった。半壊したウィングはビームバリア展開が出来なくなっていた為、デッドウェイトになると思い、切り離す。そして本体はまだ健在。末那式も、MAとなった事で稼働時間が増えているので、まだ戦える状態だった

 

 

『無事か! リアン!』

『ったくよぉ、無茶しやがって!』

 

 

メイとカザミも、あたしのところへと合流した。カザミはキツく言ってきたけど、それでも無事そうな様子に、安堵している感じもあった

 

 

『何機かすでに遺跡の方へと向かっているし、空中型が何機か突破していやがる。メイとリアンはここから下がりつつ地上の敵を食い止めてくれ! 俺らで空のやつを落とす!』

『ヒロトは!?』

『アイツなら、必ずやってくれるだろうよ。だから、俺たちも必ずやり遂げるんだ! 行くぞ! パル!』

『はい!』

 

 

アルスのアースリィを追っていったヒロトにアイツのことを任せ、あたし達は攻めてくるヒトツメの雑兵の相手をする。カザミからの指示で、あたしとメイ、カザミとパルの二組に分かれ、それぞれ行動を開始する

 

 

『動けるか、リアン』

『なんとかね。動けるには動けるけど、機体が全体的に悲鳴をあげてるから、接近戦は無理っぽい』

『ならば、射撃戦で全部叩くしかない……私が牽制する。お前は主砲をチャージして、一気に敵を薙ぎ払ってくれ』

『分かった!』

 

 

軽い作戦を立て、メイが牽制し、あたしが砲台として動くことに決まり……地上からくる敵の殲滅を開始する。その向こう……ヒロトの向かった方角をみると、すでに補足ができなくなっていた

 

 

『……ヒロト、無事でいてよね……ッ!』

 

 

メイが牽制し、何機か固まっているヒトツメの集団に対し……アリアの主砲を叩き込んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、向かってくるヒトツメを粗方一掃した直後……周囲に敵の反応が消え、遺跡へと飛んでいった奴らも、カザミとパルの2人が全て破壊したという連絡が入った

 

あたしとメイも、遺跡へと続く道がある森の手前まで後退をしたが、それまでになんとか押し留める事に成功した。既にエネルギーは底を尽きかけ、末那識も時間制限ギリギリという状況だ。あと少し長引いていたら、行動不能で動けなくなっていたところだった

 

損壊状況はかなりのモノで、ウィングが2枚全損、腕部の鉤爪も片腕が動作不能、主砲の内部もかなり焼けていて、下手すると頭部の装甲が吹っ飛んでいたかもしれないという……この子の初陣は、満身創痍の辛勝だった。これは、色々と改修と再調整が必要かも……接近された時の手札を増やすか、それとも完全にポジションを後衛に固定させるか。の二択かな

 

ヒロトの様子も見てみると、既に戦闘状態を解いているようで……彼が勝てた事を確認できた

 

そのことに安堵したあたし達は、遺跡の外で最後まで避難民の誘導をしていたフレディと共に、ヒロトの元へと向かった

 

 

 

 

 

「あ、ヒロトさん!」

「よぉ、お疲れ……」

 

 

そこは、小高い丘の上だった。周りには攻撃の痕がそこらかしこに残り、戦いの激しさを物語っていた

 

なによりも、アースリィの損壊状況だ。左の腕が肩からまるごと外れていて、アタッチメントバレルの銃口が、かなり歪んでいる。装甲にも傷がいたるところに有り、アンテナも片方欠けている……

 

そして、その前にはアイツのアースリィ擬きが頭部を吹き飛ばされて倒れている。どうやってここまでやったのかはわからないけど……確実に弱点を着いた一撃で終わらせたというところだろう

 

そんな激しい戦いをした直後だからなのか……ヒロトは疲れた様子で、岩場に腰掛けていた

 

 

「街の人たち、全員遺跡に避難できました」

「聖獣様の言うとおり、ヒトツメは本当に遺跡に攻撃出来なかったんです!」

「……あぁ、良かった……」

「「?」」

「ヒロト?」

 

 

だが、疲れだけではないようだった。戦いの後にくる気疲れ以上に、彼は疲弊していた

 

それが一体何なのか……今のヒロトを見ているだけでは、理解できなかった。おそらく、アルスとやり合っているときにも、何か言われたのだろうか……?

 

もしそうだとしたら……そう言われたヒロトは、一体何を思ったのだろうか。あたし達も聞いていた時でさえ、いつものヒロトとは思えないほど狼狽していたのに……

 

 

「約束、果たせたんだろうか……」

「? 約束?」

 

 

そう思っていると、ヒロトがつぶやいていた。約束、と。いったいそれは何なのか、全く検討がつかず、カザミが聞き返した。あたしも何のことだかわからず、首をかしげた

 

聞こうかなと思っていると、メイが前へと出て、ヒロトのそばへと並ぶ

 

 

「見つかったのか、探し物が」

「あ……」

 

 

メイの言葉で、ある出来事を思い出す

 

探し物。それは、あの時……セグリで、ヒロトとメイが会話していた時に言っていたいたことだった

 

 

〈……見つからないモノを探し続ける。それが、俺のミッションだ〉

 

 

確か、彼はそう言っていたような気がする。それを、今回の戦いで見つけた。ということ?

 

それは何なのか。ここは一度聞いてみようと思い、声を出す……よりも前に、ヒロトの方が、口を開いた

 

 

「二度と使うことはないとは無いと思っていた。あの日から、ずっと……」

 

 

アースリィガンダムに装備された、ユーラヴェンガンダムの狙撃銃。それを見つめながら……彼は、それを語りだした

 

 

 

 

 

彼の傷口とも言える……その過去を




次回、いよいよヒロト過去回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

彼の始まり

「二度と使うことは無いと思っていた。あの日から、ずっと……」

 

 

そう言いながら、彼は己の愛機の姿を見つめる。そこにあるのは、狙撃銃を装備したアースリィガンダムの姿で、たしかに、今まで見たことの無かった形態だった

 

使うことなんて無いって言ったけど、まさかこの形態……いや、この狙撃銃の事を言っているのかな? 今まで使って来なかったのは、ひょっとして封印していた、とか? こんな高威力で、凄く強い武装を、どうして使うことなんて無いなんて言ったの?

 

それにもう一つ、気になる言葉があった……

 

 

「あの日?」

 

 

あの日、とは……一体なんの事なのか。その日に、一体何があって、ヒロトはこの狙撃銃を封印する事にしたのか

 

気にはなる。でも……おいそれと聞いて良いモノなのか、躊躇いがある。だって、これはヒロトにとって、かなり辛いモノだと感じたから……聞くのを憚れる

 

そう思った時に一瞬、ヒロトがあたしの方を見た気がした。視線を感じてその方向を向いたら、もう彼は視線をアースリィの方へと戻していた

 

 

「……俺は、大切な人と交わした、大切な約束を、破ろうとしたんだ……怒りと、憎しみのままに……」

「ッ……」

 

 

ズキンと、胸が痛んだ。ヒロトの口から、感情的になって、ある約束を破ろうとしたということが出るなんて……

 

いや、それ以前に……大切な人、という言葉に、あたしはなぜか、胸が苦しくなった

 

 

「どういう、事なんですか?」

 

 

パルが、その真意を問うてきた。この形態を封印するに至ったあの日とは……そして今の、大切な人というのは、約束を破ろうとしたというのは、それらは一体どう言う事なのか、と……

 

 

「……最初は彼女との出会いが、多分、始まりなんだと思う……」

「彼、女……」

 

 

そうしてヒロトは、語り始めた。今の自分に至る、彼の……そして、このコアガンダムというガンプラの、その原初を

 

 

 

 

 

全ての始まりは、GPDが下火になりかけ、GBNが爆発的にシェアを伸ばしていた時。ちょうどあたしがGBNを始めた、そんな頃。彼もまた、GPDからGBNへ移行していた

 

そのGPDで最後の大会……彼は急遽助っ人という形で参戦し、機体はその時キャンペーンで貰ったスピードグレードの初代ガンダムをその場で組み上げたモノを使ったようだった。それで、パーフェクトグレードのストライクガンダムに挑んだというのは、正直無謀と思った

 

でも、ヒロトはそれに勝った。周りに落ちていた、今までの参戦者達が遺したガンプラのパーツを使い、見事勝利したという。この頃から、戦闘センスが図抜けて高かった、という事なのだろう……ヒロトは、昔から凄かった

 

そして、その時使ったSGのガンダムからインスピレーションを受け……GBNで使う機体が、あの小さなガンダム。彼の愛機、コアガンダムだった

 

コアガンダムはその頃から使っていたガンプラで、彼のGBNの始まりからずっと共にいる相棒でもあったという

 

しかし、GPDと勝手が違う事で、初ログインしたその日に、背中のバーニアが異常を起こし、墜落するという……初心者によくある失敗をしていた

 

GPDではそこまで大した問題では無い削りカスなどの付着に、隙間への混入は、GBNでは機体の性能に大きく関わる。現にあたしも似た経験をしているし、つい怠ってしまう事も稀にある……割とそこは、繊細な部分だったりする

 

バーニアの異常により、飛行不可能となり……ヒロトは、地面へと墜落したのだった。当初はなぜそうなったのかがわからなかったらしく、GPDとは異なる環境に戸惑う中……彼は出会ったのだった

 

 

「そこで、初めて出会ったんだ。彼女と……“イヴ”と」

 

 

イヴ

 

それが、ヒロトにとって、大切な人の、名前……いや、ダイバーネーム? だった

 

 

 

 

 

 

〈素敵なガンプラね〉

 

 

そう言って、彼女はヒロトのいるところに現れた。急に現れた少女に対し、素っ気無い態度で返したそうだった。それでも、彼女は嫌な顔一つせず、更に言葉を続けた

 

 

〈アナタと冒険したがってる。作ってくれて、ありがとうって〉

 

 

 

 

 

「え? それって……」

「ひょっとして、前にヒロトさんが言っていた、ガンプラにも心があるっていうのを教えてくれた人って、まさか……」

「あぁ、そのイヴだったんだ」

 

 

以前、ヒロトがあたしに……そしてパルにもした話。ガンプラには、意思が宿る。その言葉は、そのイヴという子から、ヒロトへと受け継がれた言葉だった

 

そこで、あたしは疑問に思う。その子の言葉を……まるで、ガンプラの言葉を解すような、ガンプラの言葉を、言葉として聞こえているかのような物言い。いったいなぜ、そのようなことがわかるというのか、と……

 

いや、待って……それって、確か……アレと一緒なような……?

 

 

 

 

 

 

ヒロトの話は続く。彼女との邂逅、その時に、彼女から機体の名前を聞かれた時に、咄嗟に答えたそれが、コアガンダムだったという。まさか、命名の仕方が、そんな土壇場の発想とは、思いもしなかった

 

その後、あまりにも居心地が悪いと思った彼は、ログアウトしようとした。その時に、彼女から言われたようだった。コアガンダムが、背中が痛いって言ってる。と……初めは何のことか分からなかったけど、自宅に帰って部屋に入り、背中のパーツを外したら、ポロポロと削りカスが出てきたという

 

なにそれ。その子は、中に混入したゴミを、ガンプラの声を聞いて把握したっていうの? そこまで分かるなんて、いったいその子は何者なの……?いや、待って……それって、確か……アレと一緒なような……?

 

 

 

その翌日。ヒロトは再びGBNへとログインした。コアガンダムの調子は順調そのもので、空中を自在に飛び回れたという

 

そして、昨日少女と会った場所で、またその少女、イヴと会えたようだった

 

色々な会話をしていくうちに、彼女はコアガンダムを、ヒロトがどういう思いで作ったのかを見抜いていた

 

 

〈小さいガンプラの可能性。ちっちゃなガンプラでもやれることがあるかもしれない。いろいろ試してみたい……そう思いながら、この子を作ったんじゃないの?〉

 

 

それが、コアガンダムの設計思想……ヒロトのガンプラは、戦うためだけに作られたのではなかった。ありとあらゆる状況を想定して、各種換装パーツを駆使し、そこに一番有効な手段を取っていくという……戦術を考えての思想、ではなかった

 

何が出来るのか……GBNという世界は、いったいどんな世界なのか。それを、自分のガンプラと一緒に探していこう。という……まるで、冒険者のような考えで作られたものだったのだ

 

 

〈まだ生まれたばかりだけど、GBNには無限の可能性がある。自分の手で作ったガンプラが、本物のガンダムとして、大地に立つ世界。そのパイロットになれる世界。この世界だからこそできること、見つけられること、きっといっぱいある。楽しみ方も、付き合い方も、絆の結び方も……それは、人の想いが、夢が、全てを形作っていく、特別な世界……〉

 

 

彼女は、GBNをそのように語っていた。ありとあらゆる物が、者が、詰まっている世界だと。その言葉を聞き、ヒロトはコアガンダムのその先を……あるシステムを形成する発想を得たという

 

 

 

そこで作られたのが、プラネッツシステム。そしてその一号機、今のアースアーマーだった

 

 

 

 

 

「それから、俺はイヴと二人で、いろんな所に行った。こいつと一緒に……コアガンダムの、ガンプラの可能性の先を、もっと見てみたかったから……」

 

 

今ある全てのアーマー……マーズに、ヴィーナス、マーキュリー、ジュピター、そしてこのウラヌスに、今だにあたし達に見せたことのないもう一つのアーマー、サターン……それらは全て、そのイヴと共に生み出し、GBNを楽しむために作られたものだった

 

まさか、そのような背景で作られたものだったとは、正直思いもしなかった……てっきり、換装型の使い手によくある、いろんな武器を使ってみたいとか、そういうふうな事で作ったものだとばかり……

 

 

「それらを作り終えたころ、だったな。アーマーの名前を決めたのは……イヴが、GBNの空は、どこまで続いているのかなって言い出したんだ。太陽系の遥か果て、銀河も宇宙も超えた、GBNの果てまで言ってみたいって……その時に決めたんだ。アーマーの名前は、太陽系の惑星の名前と、その番号を組み合わせたものにしようって」

「あ……そっか」

 

 

確かに、アーマーを換装したコアガンダムは、独特な響きを持つ名前になる。アースリィや、シュピターヴ、ユーラヴェンなど……これらは、太陽系に属する惑星の名前と、それに割り振られた番号を組み合わせたものだったのだ

 

地球は三番目の惑星、だから、アースにスリィと、それらを合わせて、アースリィと……ジュピターにファイヴで、ジュピターヴ。ウラヌスにセヴンでユーラヴェン。と……そういう組み合わせで付けられた名前だったんだ……

 

 

 

 

 

 

「そのころから、だった……イヴの様子がおかしくなっていったのは」

 

 

彼女の体が、時々ノイズが走ったかのようにぶれるようになっていった。その姿は、夢にも現れるようになり……その夢の中の彼女は、とても苦しそうにうずくまっていた。それを見たヒロトは、次の日にログインした時に、彼女を喜ばせたくて……無茶な戦いを挑んだという

 

その結果は、酷いもので……彼女が大切そうに見ていた花を、戦闘の余波で吹き飛ばしてしまい、彼女が気に入っていたあるディメンションを、崩壊させてしまったという

 

それに対し、彼は謝ったが、彼女はそれを許してくれた。ヒロトはいつも、私を、みんなを、喜ばせてくれているから……と

 

そのあとに、イヴはこうも言った、という

 

 

〈フォースに入ってみない? また違う世界が見えてくると思うの〉

 

 

 

 

 

 

「そこで俺は、あるフォースに入ることにしたんだ。ちょうど新隊員の募集もしていたし、ダメ元で応募したんだ。フォースリーダーやサブリーダーの人たちとの面接や、己の機体を使っての試験をやって……合格して、しばらくの間入隊してたんだ」

「ヒロトさんが、フォースに?」

「それって、どこのフォースだ? そんな入隊に面接や試験なんてやるとか、そうとう上位のフォースがやることだぞ」

 

 

確かにそうだ。フォースランクトップ100まで行くと、そのフォースに加入するには、面接や試験をやっているところが増えてくる。合格ラインは相当に高いが、入隊できれば、一気に実力やダイバーランクを跳ね上げられる。割と魅力的といえば、魅力的だった

 

しかし、いったいどこに入ってたんだろう。ヒロトの実力から言うと、トップ50ぐらいはあるかもしれない。デスペラードとか、フレスベルグ、DASK辺りが有力かもしれない……大穴で、アイン・ソフ・オウル、とか?

 

 

「みんなもよく知ってるところだよ……あのチャンピオンが率いているフォース、“AVALON”だ」

「はぁ!?」「ふえぇ!?」

「あ、アヴァロン!?」

「あヴぁろん? ちゃんぴょん?」

 

 

ここで、予想外な単語が飛び出してきた。まさかあろうことか、ヒロトはあの最上位中の最上位……というか、不動のランキング1位のフォース、AVALONに所属していたのだった

 

それで、全てに納得がいった。彼の高すぎる戦闘技術に、応用力、そして戦術に関する多方面に渡る知識……それらは全て、ランキング1位という最高位のフォースに入っていたから身につけたものであり……そしてそれらを身につけられる才能を有していて、それをチャンプが見抜き、フォースに入隊を許されたからだったのだ、と……

 

にしても、当時は大した実績のないヒロトだったのに、そんな彼が入隊できたなんて……あまりにも、驚愕な事実だった

 

 

「ま、マジで元AVALON、なのか?」

「あぁ」

「ッ……そ、そう、なのか……」

 

 

カザミが歯切れが良くない、バツの悪い顔をする。いったいなんのことかわかんないけど……多分、昔なんかやらかしたのではないかと、そう勝手に思う事にする

 

しかし……AVALONか……確かあそこ、制服着用が義務付けられていたような……

 

 

「AVALONの制服を着たヒロト……ちょっと、見てみたい、かも……」

「何を小声で言っている、リアン」

「え? いや、なんでもないよ! なんでもないからね!」

 

 

メイが横から話しかけてきたが、それを逸らす。流石に今のを聞かれるのは、ちょっと恥ずかしい……

 

 

 

 

 

「AVALONに入った俺は、そこでいろいろなことを教わった……チームとしての戦い方や、仲間と共に戦うやりかたも……そうやって、フォースとしての楽しさっていうのを、知っていったんだ……そして、二年前の、あの事件があった」

 

 

ヒロトのいうあの事件……それは、あるモノがGBN内に横行しはじめたあの時におきたもの……

 

 

 

 

 

第一次、有志連合戦だった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

彼女の最後

書いている時、初視聴の時の想いが膨らんで、色々と辛かった……

イヴ救済、したくなるけど……理由付けが全く浮かばないので、諦めるしかないのが……辛い


第一次有志連合戦……ブレイクデカールと呼ばれるチートツールを使うプレイヤー、マスダイバーと、そのツールの製作者を見つけ、拿捕するために起きた戦い

 

ブレイクデカールが、GBNに多大な影響を及ぼすバグを発生させる元であるとしてかなり危険視されたことから、AVALONのリーダー、チャンピオンのキョウヤに、第七機甲師団のロンメルといった上位陣の人たちが中心となって、有志連合が結成された。そしてその連合軍と、マスダイバーの戦いが……後に第一次有志連合戦と呼ばれるようになった

 

その戦いは、それまでのGBNのPvPの中で最も大規模なものとなり、これが不正者の取り締りでなければかなり盛り上がったんじゃないかと言われる戦いだった

 

ブレイクデカールの製作者による巨大化したビグザムが現れ、あわや連合軍の敗北になりかけた……

 

だが、そうはならなかった。その敗北の危機を救ったのは……まだ始めて間もないにも関わらず、この戦いに参加したフォース……BUILD DIVERSのリクだった

 

彼の機体から発生した不思議な光の翼が、巨大ビグザムを包むと、ブレイクデカールの効果を打ち消し、その影響で発生したバグを消去していったのだった

 

 

 

 

 

「その戦いが終わったあと、イヴと話してたんだ。あの翼はなんだったんだろうって……別に答えを知りたくて聞いたわけじゃないんだけど、イヴはそれが何なのか、わかってたみたいだったんだ」

 

 

 

 

 

あれは、みんなの思いにガンプラが応えて、GBNが起こした奇跡……GBNを守りたい。そう心から望んだ伝えたから、ガンプラが応えたんだ、と

 

そのあと、彼女は言った。この世界が好きだと。作った人の想いが込められて作られたこの世界に感じる鼓動が、息吹が……それがとても暖かいものだから、いろんな光に包まれているんだと

 

 

〈ヒロトは好き? この世界〉

 

 

それに彼は、自分も好きだと、そう伝えたようだった

 

 

 

 

 

「多分……それがあったから、だったんじゃないかと……今なら、そんな気がする」

「? それが、何になったの?」

「そのあと……その第一次有志連合戦からしばらくした後に、イヴに呼び出されたんだ。話したいことがあるって……」

 

 

そして、その時に言われた言葉に……あたし達は皆、愕然とした

 

 

 

 

〈ヒロト。私を……消して欲しいの〉

 

 

 

 

「け、消す?」

「どういうことだよ、それ……?」

「消すって、まさか」

「その消す、だろうな……消滅、消失、消去……つまり」

「こ、殺してっていう、意味ですか?」

 

 

あたし達は、想像の範疇を超えた言葉に……すぐには理解が出来なかった。果たして、あたしたちが言ったことは、本当にその通りなのか……ヒロトはただ、うなづくことしかしなかった

 

 

「最初はなんのことか、理解できなかった。でも、彼女のその後の様子から、その言葉の意味が、分かったんだ……」

 

 

 

 

 

彼女曰く……ブレイクデカールの以前から、小規模のバグは発生していた。最初はそこまで脅威ではなかったけど、それがブレイクデカールによってGBNのサーバー自体に影響を及ぼすようになっていった。彼女はそれを押さえつけるために……自らのアバターに、そのバグで起きるはずのシステムへの負荷を、取り込んでいったのだった

 

更に……第一次有志連合戦の最後に起きたあの光の翼。それがGBNのバグを取り除いたが……別のバグを振りまいてしまっていたようだった。それも取り込み続けて、押さえつけようとしていたようだった

 

そんなことが、イチプレイヤーに出来ることなのかと思うけど……彼女は、それが出来た

 

 

〈私はヒロトの住む世界には存在しないの。私はここで生まれた。ここで生きている。星の導きはきっかけに過ぎない。私を創ったのは、ヒロト達、みんなの想い……このGBNは、私にとって大切な世界の全て〉

 

 

 

 

 

「現実に存在しないって……それって、まさか!?」

 

 

あたしは、ヒロトの目の前にいるメイのことを見る。メイも、そのことに対し、あたしと同じ考えに至ったようだった

 

 

 

そのイヴという少女は、ELダイバーなのではないのか、と

 

 

 

ヒロトは、わからないと答える。なにせ、ELダイバーという単語自体、そのことの後で知ったことだったから、彼女がそうなのかは、今だに不明だという

 

でも、あまりにも類似点が多い。ガンプラの声を聞くことができる。GBNで起きた出来事に対し、誰もが知らないはずの知識を有する。そして、現実の世界には居ない……これらは全て、ELダイバーの要素と被る。ならば、彼女がELダイバーなのは、もう確定なのではないかと

 

 

 

 

 

彼女は、GBNで発生したバグを己に取り込み続けた。だが、バグは発生し続けているし、彼女が取りこぼしたバグが、更なるバグを生み出していた。それらもなんとかしようと、彼女は奔走していたが……流石に、特異な存在であっても、限りというものがあって……限界を迎えてしまった

 

 

〈いつか、ううん、もうすぐそれに飲まれて、私が巨大なバグになってしまう。そうしたら、GBNは……みんなの、ヒロトと私のGBNが……そんなの……だからッ!〉

 

 

彼女の内から溢れるバグの奔流。それは瞬く間にヒロト達がいるフィールドを侵し、冒し、犯し……空に亀裂を走らせ、不可解な竜巻を発生させ、大地を砕きながら、GBNを、世界を壊していった

 

 

〈私はもう、この世界に定着できない体になってしまった……でも、あの子は……妹には……〉

〈妹?〉

〈黙っていて、ごめんなさい……〉

 

 

ヒロトは、イヴに問う。俺に、君を殺せというのか、と。だが、彼女はそれに反論する。自分はバグごと、データの海に還るだけ、始まりの形に戻るだけなのだ。と

 

 

〈消したくない……ヒロトと過ごしたこのGBNを消したくないの!〉

 

 

そう言うイヴに対し、ヒロトは彼女をその手にすることを拒む。当然といえば当然だ。なにせ、そんなことを、急に頼まれたりすれば、誰だってそうする。それがとくに、大切に思っている人のことなら、なおさらに……

 

でも、彼女はそれでもと……ヒロトと、そしてヒロトと共に作り上げたコアガンダムにお願いする。世界を、GBNを守るために、どうか、と……

 

 

 

 

 

 

「イヴの願いに、その時の俺は応えることなんて、出来なかった……」

 

 

だから、イヴはコアガンダムを動かし、自らの手で、命を絶とうとした

 

けど、引き金までは引くことはできず……結局最後は、ヒロトに託されることになり……

 

 

 

 

 

「……ねぇ、まさか……ヒロト……」

「……俺は……イヴを……射った」

「ッ!!!」

 

 

彼は、彼女の望むままに……己の深意を内に秘めたまま……その引き金を、引いたのだった……

 

 

 

 

 

 

〈ありがとう、ヒロト……これで、GBNは……〉

 

 

守られた。確かに、この時に静かに起きていたGBN崩壊の危機は、防ぐことができた。一人の犠牲と、一人の心に深い傷を負うことを、代償に……

 

 

〈私はこの世界のどこにでもいる。いつかまた、私のような子にあったら、助けてあげて〉

 

 

そして彼女は、今まで共にいてくれた人に対し、言葉を贈る。私はどこにでもいるから……だから、いつでもまた、会えるから、と

 

 

〈これからも、誰かの為に頑張れるヒロトでいてね……〉

 

 

彼の胸に、深く、深く、そう言い残し……何も残さないまま……彼が彼女に贈ったというイヤリングすらも遺さず……彼女は、その姿を、消したのだった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

彼の再起

今回、いつもよりも少し独自解釈感が強いです。違和感無く書いたつもりですが、ご注意下さい


イヴが消失したその翌日、ヒロトは彼女と最後にいたその場に、再び訪れたという。あれは全て悪い夢で、本当は彼女はまだここにいるのでは、と。あの時、彼女はただログアウトしただけで、またここに来ているのかもしれない。という、淡い期待を胸に……

 

だが、そこに訪れても、そこには誰もおらず、バグの影響も何もなく……まるで、イヴという少女はいなかったかのように、痕跡が何一つ残されていなかった

 

途方にくれていた時、隊長……チャンピオンが、運営の協力を得て、臨時放送を行った

 

 

「それって、確かELダイバーという存在が、GBNの脅威になっている。その脅威を排除するために、運営の協力の元、AVALONと第七機甲師団、ロンメル隊を中心に、有志連合を再結成するっていう……それ、でしたよね?」

「あぁ。あれは俺も覚えているぜ。あの時は、なんのことかさっぱり分かんなくて、スルーしちまったけどよ……そうとう派手な戦いだったってのは知ってるぜ。第二次有志連合戦、って言われてんだよな、アレ」

 

 

第二次有志連合戦……GBNを代表する上位ランカーや上位フォース、それらGBN最高最大戦力と呼ばれた連合軍を相手に、結成間もないフォースと、そのフォースメンバーと友好のあった数人の高ランクダイバー、そしてアライアンスを組んだ二つのフォースという……まさに象と蟻の戦いと言わんばかりに開かれた戦力差を、あろうことか後者が勝利したという……今では伝説と呼ばれている戦いだ

 

その発端となったのは、ELダイバーと呼ばれる存在。その者の存在によって、GBNに多大な負荷がかかり、ブレイクデカールによるモノとは異なるバグが発生し、GBNが崩壊する可能性が示唆された

 

そして、運営はすでに、ある一人のELダイバーの拘束を果たしていた

 

 

 

それは、サラと呼ばれるダイバー……BUILD DIVERSに所属し、あの光の翼を生み出した少女にして……イヴが、妹と呼んでいたと思われる少女だった

 

 

 

有志連合は、そんな彼女の排除の為に動いた。その主な活動としては、他にもELダイバーがいるのではないかという事でその捜索をしたり、すでに拘束したELダイバーが逃げ出さないようにするための監視と……そのELダイバーを救出すべく動くであろう者達に対する迎撃の為に。それぞれが、チャンピオンと知将と名高きロンメルの指示によって動いていた

 

当時、まだAVALONに所属していたヒロトは、もちろんその連合に参加していた。そして、あの戦い……第二次有志連合戦にも、BUILD DIVERS達を迎え撃つために、戦場へと身を置いていた

 

 

 

その時には、あたしもそこにいたりする。行動安価で、有志連合が発足された時からずっと、その動向を逐次報告するというのに当たり、その日からAVALONのフォースネストに訪れていたからだ。どちらにもつかず、ただ戦場リポーターみたいなノリだった

 

だからこそ、あの戦いの激しさは十二分に知っている。あたしも、ただの見物ではあったけど、あの場に居合わせていたから……

 

 

 

イヴ消失のショックがまだ抜けきっておらず、周りから心配されながらも、ヒロトはその戦いに身を投じた

 

敵の増援、開戦直前にBUILD DIVERSとアライアンスを組んだフォース、百鬼が押し寄せてきて、救援に応じ出撃するヒロト。彼は向かってくる敵をなぎ倒しつつ……

 

チャンピオンと対峙する、BUILD DIVERSのリクと百鬼のオーガの戦いの近くに居合わせた

 

 

 

 

 

「その流れ弾を受けて、アースリィのライフルが破壊され、その時に持ってきていたウラヌスのライフルに換装して、隊長の援護をしようとしたんだ」

 

 

結局、そんな隙はどこにもなく、副隊長の人からも、援護不要の指示が来て、結局はその場でなにも出来ず、ただその戦いを眺めていた

 

戦いは、百鬼のオーガ参戦により、一時はBUILD DIVERS側に優勢が傾いたが、チャンピオンの強さはその優勢を覆すほどのものであった為、1対2であるにも関わらず、相手2機を地に叩き落とした

 

まだ立ち上がるのかと、そういうチャンピオンに対し、リクとオーガは諦めの悪く立ち上がる

 

そこで、彼は……リクは、チャンピオンに言った。己の思いを……仲間を救いたいという、その願いを

 

 

 

 

 

〈俺、ガンプラが……ガンプラバトルが大好きです。ガンプラが、ガンプラバトルが大好きだという気持ちで、たくさんの人と繋がりあえる、そんなGBNが大好きで……そこで出会ったのがサラなんです〉

 

 

彼女と一緒に、いろいろなことを経験した。いろいろなところへ行った。彼女に、様々なことを教えてもらったと。皆との絆や、ガンプラとの繋がり、楽しむ気持ち

、諦めないこと、前を向いて進むこと……

 

 

〈ガンプラを大好きだってこと!〉

 

 

そんな気持ちが……その思いによって生まれたのがELダイバーだというのなら、それは消してはならない。それは、自分たちの思いを、自分たちで否定することだから……だから……

 

 

〈俺たちは……俺たちの好きを、諦めないッ!!〉

 

 

 

 

 

 

「ふざけるなって……思ったよ……ッ!」

「「「っ!?」」」

「っ……」

「え……?」

 

 

その言葉に、あたし達は全員、凍りついた。かつて、BUILD DIVERSのリクが語った言葉は、あの時あの場にいた全ての人の心に、暖かく、そしてなによりもかけがえのない、尊きものとして、胸に宿った

 

だが、そうではなかった人がいた……今、ここに……あの想いを聞いて、心に黒い感情を抱いた人が、いたのだ

 

 

「俺は……俺だって! イヴの事、諦めたくなかったんだッ! 助けたかったんだ! でも、どうしようもなかった。仕方なかったんだ、あの時は……どうすればイヴを救えるのか、どうすれば、イヴを消さずにいられたのか……あんな、急に言われて……なにも……なにも出来なかった……ッ!」

 

 

なのに、それを叶えようと、諦めずにつかもうとすることが、羨ましくて、悔しくて、妬ましくて……激しく、憎んだという

 

 

 

 

 

チャンピオンを突破し、AVALONの本拠地たる城へ……ELダイバー、サラの元へと飛ぶリクのガンプラ、ダブルオースカイ。それを、彼は撃ち落とそうとしたのだ

 

そのときの装備は、狙撃に特化したビームシュートライフルU7。そして装備しているアーマーは、全ての能力が平均的に振り分けられている汎用型のアースアーマー

 

ヒロトの狙撃の腕は、かなりのもの……特化装備でなくとも、深手を負った機体ならば、十分に撃ち落とせる。やろうと思えば、やれたのだった

 

そして……チャンピオンを突破した彼に対し、照準を定め、チャージを終え、あとはトリガーを引くだけという段階となり……その引き金を、引きかけた

 

 

 

 

 

 

だが

 

 

〈これからも、誰かの為に頑張れるヒロトでいてね……〉

 

 

 

 

 

 

イヴの言葉を、寸での所で思い出したヒロトは、引き金を引いた直後、ライフルを地面に向けた

 

高出力で射った事によって大地は抉れ、そして吹き飛ばされた土砂は、アースリィに降り注いだ。まるで、先ほど自分がやろうとしていたことに対する、罰のように……

 

自分が何をしようとしていたのか、自分が何をしたのか……その全てが、ヒロトの心を蝕み、アースリィのコクピットの中で、崩れ落ちた

 

BUILD DIVERSの勝利を伝えるアナウンスが、彼の心に、虚しく響いた

 

 

 

 

 

 

「まさか……アルスが言っていた、大規模な戦いや、劣勢を覆す好機とか、完璧な貴方って……」

 

 

大規模な戦いとは、第二次有志連合戦のことを言っていて、劣勢を覆すというのは、まさにチャンピオンが突破され、こちら側の敗北が目前に迫った時に、それを撃ち落とすチャンスが、逆転の一手が打てたことを、言ってたんだ

 

完璧な貴方とは……今のアースリィの姿を見る。長身のライフルを持つアースリィ。それは、あのアルスのアースリィ擬きと、同じ特徴だ。つまり、アルスはヒロトのその戦いを元に、確実に相手を仕留める狙撃手という姿を模倣したのだろう

 

確かに、敵を倒すという単純な観点で言えば、その時銃口を逸らしたヒロトの行動は、不可解なものだ。だが、その狙撃手、ヒロトの思いは、全くの別物だった。その時は、様々な思いに板挟になり、そこでとった行動が、狙いを逸らして撃つというものだった

 

そのはずだったのに、アルスからそれは完璧な貴方ではなく、自分の今の姿が完璧な貴方なのだと言われれば……誰だって、絶対に違うと否定するし、そう言い切る奴に対し、怒りもする。お前に、俺の何がわかるのかって

 

さっきの戦いの時、ヒロトの画面に映っていたのは……おそらく、その戦いの画面だったんだろう。だから、その時のことを思い出させる行為に、ヒロトはやめろと、言ってたんだ……

 

 

「なぜ、俺には救えなかったんだろう……」

 

 

その後、彼はしばらくGBNをログインしなかった。再開したのは、割と最近の事だった。そして、ログインした彼がやり始めたことは……彼女を探すこと

 

もしかしたらと、仄かに淡い期待を胸に……だが、心のどこかでは、すでに諦めていた。もう彼女は、どこにもいないのだと……だが、それでもと、彼はGBNを彷徨った。宛てもなく、そして意味もなく、ただひたすらに……

 

そして今、カザミに強引に連れられたとは言え、ここエルドラにて、BUILD DiVERSとして、戦ってきた……かつて、己の勝手な憎悪を押し付けてしまった相手と同じ名前のフォース名を言われるのは、あまりにも酷なことだと、そう思った

 

いったい、今までその名で呼ばれて、どれだけ辛い思いをしていたのだろうか……

 

 

「……彼女を救えず、その上、果たそうとしなかった」

 

 

約束を、守らなかった……あんなに大切に想い、特別な人だと思っていた人が遺した最後の願い。それを忘れて、黒く醜い感情をぶつけて、消し去ってしまおうとしてしまった

 

あの時、彼がやろうとしたことは、人の想いも、願いも踏みにじる、あまりにも下劣で、最低な行為であると……彼は、己を許せなくなった

 

 

「俺が、俺なんかが、人のためになれるかなんて……う、うううッ……!」

「ヒロ、ト」

 

 

彼は、泣きそうになっていた。大切な人との約束を忘れてしまう、あまりにも愚かで醜い己の不甲斐なさに……そして、大切な人を、救えなかった己の無力に……なによりも、大切な人を失ったことを……その辛さを思い出し、今、泣き出しそうになっていた

 

その背中は、あまりにも儚く、そして弱々しかった。かつて、あたしのことを助けてくれた時の彼とは思えないくらい、小さいと感じてしまった

 

 

「……っ」

 

 

そんな彼のことが、見ていられなくて、なんとかしてあげたいと思って……

 

 

「!?」

「っ……」

 

 

あたしの体は勝手に動いて……ヒロトを、その背中から、寄り添うように、抱きしめた

 

 

「リ、アン?」

「っ……泣いて、いいんだよ」

「っ!?」

「泣きたいんなら、泣けばいいじゃん。辛かったんでしょ? 苦しかったんでしょ? だったらさ、泣いて、全部吐き出しちゃえばいいんだよ……」

 

 

そう言って、あたしはヒロトを抱きしめる。強くもなく、弱く、まるで覆うように……ひどく弱々しくなっている彼に、なにかしてあげたいと思ったら、自然とこうしていた

 

かつて……ハシュマルを壊された時、あたしはいっぱい泣いた。そうすることで、幾分か気持ち的に落ち着けそうだったから。いっぱい泣いた……

 

だから、泣いてしまえばいいんだと……苦しい時は、そうするのがいいから、あたしはそれを伝える

 

 

「でも、俺は……っ!?」

 

 

すると、メイがヒロトの涙を口で吸い……あたしと同じように、彼の頭を抱きしめた

 

 

「がまんするな……リアンの言うとおり、好きなだけ泣けばいい」

 

 

そして、メイもまた、ヒロトに優しく語りかける。多分メイも、あたしと同じような気持ちになったんだろうと……同じ女として、こうしたいと願う気持ちは、同じだったんだろう

 

 

「……っ、う、うあぁ……うわあぁぁぁーーっ!」

 

 

あたしとメイの二人に優しく抱かれ、溢れる想いを堪えきれなくなったヒロトは、泣き叫んだ。彼女が消えた時と、そして約束を破ろうとした時に流せなかった分まで、泣き叫んだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が落ちた頃、ヒロトは落ち着きを取り戻すことができた。そして、立ち上がった彼は、フレディへと向けて、話しかけた

 

 

「俺たちはビルドダイバーズじゃない。それどころか、俺は本当はこんな人間で、仲間を作って、ビルドダイバーズと名乗ることすらおこがましいやつなんだ……」

 

 

そういって、ヒロトは己を卑下した物言いで、フレディに謝る。俺は、君が憧れたビルドダイバーズのような人間ではないのだと……

 

だが、フレディは言う。そんなことはないと

 

 

「僕にとってのビルドダイバーズは、ここにいる皆さんです!」

 

 

僕だけではなく、マイヤも、トノイも……ストラ、ムラン、カリコ、ザブン、アシャ、トワナ、フルン、ジリク、村のみんな……そして、ジェド。このエルドラで出会った全ての人たちにとって、今ここにいるあたし達が……カザミにパル、メイ、あたし、そしてヒロト。この5人が、彼らにとってのビルドダイバーズなのだと、強く言った

 

 

「それにヒロトさん、さっき約束を果たしていないって言ってたけど、そんなことないです」

 

 

フレディの言葉に、ヒロトは困惑する。そんなことはないとは、いったいどういうことなのかを……

 

それは、自分たちはヒロトにいっぱい助けてもらっているから。危険も顧みず、僕たちの。いや、誰かの為に戦ってくれるヒロトがこうしていてくれたから、こうやって今、自分たちは生きていられるのだ、と……

 

 

「それはきっと、そのイヴさんって人の願いが届いているから……」

 

 

そのイヴの願いは、ちゃんと、今のヒロトに、宿っているから。ちゃんとその願いは、果たされているのだと……フレディは、ヒロトに伝える

 

 

「そうだぜ、ヒロト」

 

 

そして、カザミもまた、ヒロトに対して言葉を贈る

 

 

「フレディ達だけじゃない。俺も、俺たちだって、お前がいたから、変われたんだ」

「そうよ。あたしだって、ヒロトに助けられたんだし。あなたのおかげで、アリアと……あのハシュマルと、向き合える事ができたんだから」

「僕もです。イヴさんの言葉が、ちゃんとヒロトさんに届いているから……ヒロトさんのおかげで、モルジアーナと、一緒に飛べるようになれましたので」

 

 

カザミも、パルも、あたしも……ヒロトのおかげで、再起することができたのだ。ヒロトと出会えなければ、あたしは一生、己を隠したまま、あの子と向き合うことなんて、出来なかったと、そう思うから

 

 

「ELダイバーとして私が生まれることができたのは、お前のその選択があったからだ」

 

 

そしてメイも、ヒロトに感謝をする。ヒロトとイヴが繋いだ思いが、メイを生み、エルドラの為に戦いたいという私の願いを叶えてくれているのだと……

 

あたしたちの言葉を聞き……ヒロトの表情が、柔らかくなった

 

 

「そうか……繋がっているんだ、人の思いも、願いも、命も全て……だから君はいるんだ。俺の……みんなの近くに……っ!」

 

 

一瞬、ヒロトが何かを見て、驚いたようだった。けど、それはすぐに柔らかな笑みへと戻り、その光景を覚えておこうという風に、目を閉じるのだった

 

多分、そのイヴさんって人の姿が、見えたんだと思う……近くにいるというのだから、いつでもヒロトの近くに、寄り添っていてくれるのだと……きっと、そう考えているのだろうと、あたしは思った

 

 

 

 

 

 

「あ、あのー……ところで、リアンさん。さっきのは、どういう?」

「え?」

 

 

と、不意にパルから、そんな言葉が飛んできた

 

 

「いや、その……ヒロトさんを抱きしめていたので、その……どうしてなのかなぁって」

「?……ほえ!?」

 

 

そうだ……今になって気づいた。あたし、なんてことをしでかしちゃったの!? とんだ羞恥プレイをかましてるじゃないのよ、あたしったら!

 

 

「あ、いや、あれは、その、えっと、その……う、うう……」

「なんだよ、そんなに言いにくい事なのか?」

「う、うっさい! バカザミは黙ってて!」

「だからその! バカザミって言うな!」

 

 

ニヤニヤと含みのある笑いを浮かべるカザミを黙らせる。流石に素直にあの時の思いは言えず、歯切れ悪く、なんとか言い逃れようとした

 

ってか、ヒロトもなんか照れてるし……あ、その照れ顔、ちょっと可愛いかも……じゃなくて!

 

 

「そ、それだったら! メイの方はどうなのよ! メイだって、その、一緒になって、ヒロトを抱きしめてたじゃない!」

 

 

なんとか矛先を変えようと、一緒になって抱いていたメイへと、話を持っていく。割と強引だったけど、なんとかみんなの目線は、メイへと移った

 

というより、あたしも今になって驚いた。まさか、メイがあんなことをするなんて……しかも、あたしより、その……涙を口で吸うとかいう、すっごいことをしてるし……流石に、あれを真似しろと言われたら、できる気がしない……かなり、恥ずかしいし

 

 

「……私は涙を知らない。他のELダイバーと比べて、私は感情の起伏が薄いらしい。だが、泣いているものがいたなら、そうしてやるのがいいとママに教わった。そっとそばに付き添ってやるか、涙をぬぐい、抱きしめてやるか……リアンがやっていたから、それをするのは今なのだろうと思って、私もやってみたのだが」

 

 

淡々とした口調で、そう言っていた。つまり、そうやって教わったから、そうしただけ。他の人もやったから、そうしてやるのが普通なのだろうと……単純に、そういう考えでやったらしい

 

いや、その……羞恥心っていうの、ないの? ま、まぁ、そこに便乗して、なんとか言い逃れるかもしれない

 

っていうか、ママ?

 

 

「私の後見人だ。そう呼ばれている」

 

 

あ、保護者さんのことか……ママって呼ばれる人って、もしかしてバーとか、そういう類のお店の人なのかな、メイの保護者さん

 

 

「その……ありがとう、リアン、メイ」

「あ……ど、どういたし、まして……」

「お前の助けになったのなら、幸いだ」

 

 

と、ヒロトがあたし達に感謝をしてきた。それにあたしは照れながらも返事をし、メイは普段見たことのない柔らかな笑みで、そう答えるのだった

 

もう日は落ちて……空には、星がまたたき始めていた



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

【エルドラ配信】 前編

今回は動画コメント風という事で、台本形式で書きました

内容としては、あの時のスレ民共は、という感じです




桜木『よし、始まったな』

 

足立『わこつ~』

 

空自『わこつ』

 

ER『わこわこ~』

 

無茶『お前ら、これただの配信じゃねぇんだぞ』

 

足立『わかってるよそんなことさぁ』

 

ER『相変わらず堅物だな、アンタ』

 

空自『これがエルドラですか。空の色が緑なのですね。大気が地球とは違うのでしょうか?』

 

桜木『どうなんだろうな、流石に採取、なんて出来んから、調べようがないからな』

 

足立『道具をGBNで製作して持ってくってことすれば、なんかできそうっすね。ま、やれる奴がいないんすけどね』

 

ER『イッチって、科学とか強い?』

 

桜木『いや、あいつは学校での成績は普通だからな。国語と体育と音楽以外は60ぐらいしか取れんとか言ってたな』

 

足立『ダメやんけ……』

 

空自『割とリアルでは活発なのでしょうか?』

 

桜木『まぁな。昔は底抜けに明るい子だったからな』

 

ER『ようするに、おバカさんであった、と』

 

桜木『そう、いうことになるか?』

 

空自『いや、こちらに言われましても』

 

無茶『おい、何雑談で盛り上がってんだよ。始まりそうだぞ』

 

足立『あいあいっと』

 

空自『カザミ君の方も始まりましたね。問題なく、モニタリング出来そうです』

 

桜木『よし、やるぞ。お前ら、しっかりと見て、あいつらの為になるようなもんを作るぞ』

 

足立『あいよ~』

 

空自『了解です、団長』

 

無茶『はい』

 

ER『パルきゅん!! パルきゅんだあああああああああ!!!!!』

 

桜木『お前は黙れ』

 

空自『おや?』

 

足立『ありゃま、イッチのヤツ、機体変えてきたのかよ』

 

無茶『あれって、ハシュマル?』

 

足立『だな。もしかして、例のイッチの過去のヤツ?』

 

空自『でしょうかね。団長、何か知ってますか?』

 

桜木『足立の言うとおり、そのハシュマルだ。アイツ、いつの間にかアレと向き合えるようになってやがってよ。それを改修までしてたんだ』

 

空自『改修。なるほど、ルナとアインのパーツを使ってるようですし、あれは損傷が激しかったから取り替えた、というところでしょうかね』

 

足立『あ、ホントだ。ルナとアインの使ってやがる。ってことはアイツ、あの2機崩したのかよ、もったいねぇ』

 

桜木『すぐ実戦投入できるレベルに仕上げたかったみたいだからな。ある程度仕上がっているパーツを使うのは当然だろう』

 

足立『ま、機体を変えたい時によくやることですからね』

 

ER『そのハシュマルと向き合うって、多分このビルドダイバーズのお陰かもしれねぇな』

 

桜木『だろうな……』

 

無茶『なんの為に、俺は』

 

足立『? どしたむちゃ丸』

 

空自『どういう意味ですか? それは』

 

無茶『忘れてくれ。ついうっかり打ち込んじまっただけで、なんの意味もない』

 

ER『ふーん』

 

足立『ふーん』

 

無茶『うるせぇなお前らは!』

 

空自『ポジションは空中、ですか。それも一人。そして見るからに近接装備はテイルブレードのみ。これはまずいですね』

 

桜木『そうなのか?』

 

空自『はい、機体をMAに変えてきたので、今までどおりにはいかないでしょう。一部操作性がMSとは異なる部分がありますし、慣れていないと、痛い目を見ることになります』

 

足立『性能面で言えば、確かにMAはMSよりも強いっすよ。でも基本的な立ち回りって、個体砲台か移動要塞ぐらいっていう感じですし』

 

無茶『それに、ハシュマルってMAの中でもかなり特異個体のやつなんだ』

 

無茶『アダチのいうMAのセオリーを無視した近接戦の装備を持ってるし、持ってる遠距離武器は頭部のメガ粒子砲クラスのヤツと、腕の運動エネルギー弾射出装置』

 

無茶『それにプルーマっていう随伴機とセットで運用を前提としたスペックだから、本体はそんなに強力とは言えないんだよな』

 

無茶『まぁ、原作だとプルーマから引き剥がして、リミッター外したバルバトスじゃねぇと倒せないぐらいには強いけどな。それでもMAの中じゃ、外れ機って評判なんすよね。GBNでも癖が強い機体だし、使われることが稀なんだ』

 

ER『長文乙。ってかダメじゃんソレ』

 

足立『ま、それをビルドでどうにかするってのが、GBNの醍醐味だよねー。流石にイッチも、それぐらいは知ってるはずだろうし』

 

桜木『まぁ、そこら辺はアイツの領分だ。今回で問題点がわかればいいのだがな』

 

足立『お、カザミやるじゃん。アイツ、いつの間にかここまで強くなってたんだなぁ……アイツが、なぁ』

 

桜木『えらく見ているのだな、あいつのことを』

 

足立『まぁ、アイツの過去を知っている人間ですからね。様変わりしてて、ほんと同一人物なのか疑わしくなるわ』

 

無茶『バトルスタイル見てると、受け型のタンクって感じするよな』

 

空自『えぇ。敵の攻撃を受けて、そして倒す戦い方をしていますね』

 

無茶『装甲的には防御よりのビルドだよな。それに装備は聞いてたランスの他に、ロングソードタイプの実体剣も持ってんのか。全体的に見ると、乗り手の腕がそのまま反映される感じのビルドだな』

 

足立『まじまじと見ると、ビルド力はあるんだな。アイツ』

 

空自『ですね。ならば、応用的なタンク型の立ち回り方をいくつか書いておきましょう。あとむちゃ丸さん、今後の改修案もいくつかお願いできますか?』

 

無茶『うす』

 

桜木『パル君に関しては……言わなくていいか』

 

ER『なんでだ!? パルきゅんの勇姿と愛らしさを兼ね備えた活躍を、じっくり語り合おうではないか!!』

 

無茶『お前のせいだよ!』

 

足立『なぁ、こいついる? 蹴りませんか?』

 

桜木『まぁ、いないよりかはマシだろう。後でレポート作成のためにも、見てもらわないとな』

 

空自『何を言っても発狂しそうですからね。まぁしかし、見る限り問題なく立ち回れているので、今後の改修案などを書く程度で問題ないかと思いますが』

 

足立『だな。まぁあとは連携の仕方の応用とか、SDタイプを使うダイバーの立ち回り方集でも載っけとけばいいか』

 

空自『ですね』

 

ER『あぁ、パルきゅん、パルきゅんいい……しゅきぃ』

 

無茶『ホントお前黙れよ!』

 

足立『変態は置いといて……えっと、メイちゃんは』

 

空自『彼女こそ、何も必要はないでしょう。見ていてほんと安心感のある戦い方をしています』

 

無茶『ガンプラのカスタム的にも文句ないわ。あれ、ぜってぇ一人で組めるもんじゃねぇ、知り合いにプロがいるとしか思えん』

 

足立『プロビルダーが知り合いとか、めちゃめちゃ羨ましいんだけど』

 

空自『ならば、我々の所感を書く程度に留めておきましょう。下手に助言をしてしまうと、却って逆効果になりそうですし』

 

桜木『さて、リアンはどうだ?』

 

空自『敵が接近してますね。デスアーミーの飛行型に、ウィンダムに似た新型、でしょうか』

 

桜木『前者が5に、後者が3、か』

 

足立『ウィンダムかぁ。今度もまた妙なチョイスしてきやがったなぁ』

 

空自『ですが、量産機の中ではハイスペックに属しますし、改造しがいのあるものです。悪くないと思いますがね』

 

無茶『アイツ、やれるのか?』 

 

空自『いえ、おそらく無理かと』

 

足立『あ』

 

空自『あ』

 

無茶『イッチ! 上!』

 

桜木『アンズ!!』

 

足立『お?』

 

空自『ビーム……ヒロト君、でしょうかね』

 

桜木『おそらく、な……』

 

無茶『油断してんじゃねぇよバカ!』

 

空自『もう近接特化ではないのですから、敵に近づかれないように立ち回るように。これは書いておくべきですかね』

 

桜木『ヒロト君に助けられたな』

 

足立『機体変えた後で撃墜とか、カッコワルw』

 

ER『パルきゅんを映せ! パルきゅんを! あああああ! パルきゅうううううん!!』

 

無茶『お前黙れよ』

 

空自『お前黙れよ』

 

桜木『お前黙れよ』

 

足立『お前黙れよ』

 

無茶『にしても、すげーな、ヒロトのヤツ』

 

足立『寸分の狂いもなく撃ち抜きやがったな。アーマー、あれ狙撃特化か?』

 

空自『センサービットですね、あれは。なるほど。大量のビットを用いて捕捉し、狙撃するスタイルというやつですか。実に合理的だ』

 

桜木『やはりこの中では群を抜いてるな』

 

空自『はい。書くことといえば、作戦の立案の仕方でしょうかね。こちらで分析する敵の特徴と、今後の敵の行動予測を載せようかと思います』

 

桜木『頼む』

 

空自『お任せを』

 

足立『ん? なんだ?』

 

無茶『こいつは……狙撃か?』

 

空自『センサーを破壊している。目をつぶしに来てるのですね』

 

桜木『!?』

 

無茶『ナノラミネートを貫通した!?』

 

足立『やばくね? 出力どんだけよあれ』

 

桜木『傷を消すのに、だいぶヤスリを当ててたからな。その分、薄くなってしまったのか』

 

無茶『だったら裏面にパテなりなんなりで補強しとけよアイツ』

 

足立『それ、重くならね?』

 

無茶『ミノフスキーを搭載してるんなら、ある程度重量あっても問題ねぇよ。あれの改修案、俺が一任してもいいか』

 

桜木『頼む。ビルドに関してはお前のほうが詳しいからな』

 

無茶『はい』

 

足立『なんとか全員、物陰に隠れられたようだな』

 

空自『ですが、ここから戦況は膠着します。早めに対処できなければ、防御が手薄の所を突破されかねません』

 

空自『かなりまずいです。これ』

 

桜木『GBNでなら、誰か一人が囮となって誘い出すのが定石だが』

 

足立『無理っすよ。なんせこれガチの命懸けなんすから、危険過ぎますって』

 

桜木『だな』

 

無茶『? なんだこれ』

 

足立『だれこの声』

 

桜木『もしや……この声の主が、敵の親玉か?』

 

ER『ってか、何言ってんのこいつ? 意味不明なんだけど』

 

足立『俺らもわからん』

 

桜木『聞く限り、誰かのことを言ってると思うのだが』

 

空自『誰のことを、指しているのでしょうか?』

 

ER『う~ん……すくなくとも、イッチじゃねぇな』

 

無茶『だな』

 

ER『?』

 

足立『イッチ?』

 

桜木『!!?』

 

空自『!!?』

 

足立『は!!?』

 

ER『え!?』

 

無茶『また何やってんだよあのバカは!!?』

 

桜木『囮になるつもりか!?』

 

足立『何やってんだよこのおバカ!!』

 

空自『危険です! すぐに隠れてください!』

 

ER『あぁもうお前というやつはぁ!!』

 

無茶『おい! 俺らのコメント見てんだろな!?』

 

足立『コメント気にしてる様子がねぇ。アイツ、配信画面をミュートにしてやがるな!?』

 

空自『まさか、ここまで無鉄砲なことをしでかす人だったとは……』

 

ER『ってか、こんなことあったっけ? 今までアイツが囮をすることなんて』

 

無茶『いや、そういうのは全部嫌がってたし、やったとしても安価の内容が関わってるから、自発的にやろうなんてことはなかった』

 

桜木『保身的なところがあったはずなのに、なぜいきなり?』

 

ER『そんだけ、このメンバーの事が大切ってことかな、今のイッチにとって』

 

足立『かもな』

 

空自『基本的なチャージタイムなら、もう終わるはず、きますよ』

 

ER『来た!』

 

桜木『耐えてる?』

 

空自『ですが、この一発程度しか無理そうですが……はたして?』

 

足立『!?』

 

桜木『ヒロト君!?』

 

足立『まさか、今の一発で位置特定したってのかアイツ?』

 

空自『かと、思います』

 

無茶『バケモンかアイツ。あの一発でわかるもんなん?』

 

足立『いや、センサー破壊やイッチが撃たれた時に、ある程度絞ってたと思う。そこからさっきの一発で完璧に把握できた。ってとこだろう』

 

空自『センサーが1基破壊された段階で、既に捕捉の為の動きは始めていたのでしょう。しかし、なんという切り替えの速さ。こんなの、AVALONに所属できるクラスの実力ですよ』

 

桜木『どれほどの経験をすれば、ここまで』

 

足立『雑魚がわらわら湧いてきたな』

 

無茶『大分損耗してるけど、あの程度なら問題なさそうだな』

 

ER『あ! パルきゅううううううんっ!!!』

 

桜木『黙れ貴様! 後で灸を据えてやろうか!?』

 

ER『ごめんなさいかんべんしてくださいもうしません』

 

足立『最初からこれすれば良かったんじゃね定期』

 

空自『まぁ、いつもの流れですし』

 

無茶『だったら余計に早くするべきだったろ! 遊んでんじゃねぇっての!』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

【エルドラ配信】 後編

無茶『終わったか……』

 

空自『えぇ』

 

足立『敵の反応、もうなくなったみたいだな』

 

ER『みたいね』

 

桜木『とにかく、無事に済んだ。よかった』

 

足立『これが遥か先の星で起きてる出来事とか、実感ないなぁ』

 

空自『ただこうして動画として見ていただけ、ですからね。自分たちは』

 

無茶『なんか、やな感じだな。むこうは命懸けだってのにさ』

 

ER『元々それは予想してたことだろ。それでも、俺たちはこうしようって決めたんじゃねぇのかよ。今更うだうだ言ってんじゃねぇっての』

 

桜木『あぁ。俺達は最低なことをしてんだ。だからこそ、あいつらのためにやれることをするために、できる限りのことをするぞ』

 

空自『はい。必ずや、彼らのためになるようなモノを作り上げてみせましょう』

 

足立『だねぇ』

 

足立『お、カザミの方は切ったか』

 

無茶『イッチのヤツ、まだ配信続けてるよ。完全にこっちの事忘れてるだろ』

 

桜木『これ、このままログアウトしたらどうなるんだ?』

 

空自『まぁ、止まるだけですね。あるいは、最初に設定した時間になれば同様です。あとは、しばらくコメントができるといった感じです』

 

桜木『なら別に放置でも問題ないのか』

 

無茶『ん? なんだあれ』

 

空自『ヒロト君の機体と……敵の機体、でしょうか』

 

足立『狙撃して来た奴か、こいつが』

 

ER『なんか、似てない? この二体』

 

桜木『そうだな。確かに、細部は異なるが、なんだか似通ってるような』

 

無茶『いや、多分この敵機、ヒロトの使う奴のコピーだ』

 

桜木『コピ-?』

 

足立『え? マジ?』

 

空自『なんと』

 

ER『敵の汎用機すらコピったってこと?』

 

無茶『多分だからな。断定はしてないけど』

 

空自『ですが、これは厄介ですよ』

 

足立『だな』

 

桜木『どういうことだ?』

 

空自『ヒロト君の機体は、様々なアーマーに換装することで、様々な状況に対応できる汎用機です。それがコピーされたとなると、少々厄介です』

 

足立『まぁ運用法にもよるかもな。敵は基本コピーをしてくるから、高性能機のコピーアーマーとか作ってそれに換装とか』

 

空自『量産もされると厄介度が上がります。これも、いくつか敵情報の予測の欄に記載しておきます』

 

桜木『頼む』

 

ER『んー……なんか、彼の様子、おかしくない?』

 

空自『はい?』

 

無茶『様子?』

 

足立『なんか……語り始めてません? 彼』

 

桜木『だな。なんなんだ?』

 

無茶『彼女って、言ってないか?』

 

ER『そう、だな』

 

空自『GPDの話をしてますね。まさか、その頃からビルダーだったとは』

 

足立『SGの配布? あぁ、あのキャンペーンの時か。懐かしいなぁ』

 

ER『知ってんの?』

 

足立『あぁ。あの時は再販されて、世に大量に出回ったんだよ。その時に新商品のSGも発売されて、一時期盛り上がってたんだよな。小さいながら細かいディテールで、しかも塗装済みキットだし、SGは密かに人気高いのよ』

 

ER『へぇ~、そうなんだ……っていうか、SGってなに?』

 

無茶『スピードグレードの略だよ、1/200のミニサイズのガンプラ。詳しくは調べてくれ』

 

ER『ふーん』

 

桜木『む? SGのガンダムでPGストライクに勝ったのか?』

 

空自『1/200が、1/60を?』

 

足立『なんだよそれ……普通できないぞ?』

 

桜木『前まで戦っていた人たちが残したパーツを使って勝った、か。なるほど……それは盲点だった』

 

足立『その当時からバケモンだったのかよコイツ』

 

空自『まさにセンスの塊と言えましょう』

 

ER『良すぎて引くわ』

 

足立『んー、イヴ?』

 

無茶『知ってんのか』

 

足立『いんや、あの当時にそんなダイバーいたかなぁって。女の子ダイバーなら、当時の僕ならナンパの一つぐらいはしてたはずだし、名前ぐらいならフレンド一覧に残ってるはずなんだけど』

 

ER『彼女にチクるぞ』

 

足立『大丈夫ダイジョーブ、今の僕は彼女一筋だからさ』

 

空自『惚気乙』

 

無茶『にしても……ガンプラの意思?』

 

桜木『そんなオカルトじみた話、あり得るのか?』

 

空自『どうでしょうか、付喪神の一種でしょうか?』

 

無茶『なにそれ?』

 

空自『物体に宿る神、という概念を指す言葉です。モノにも命は宿るという、宗教的な観点のことをそう言います。読み方は、つくもがみです』

 

足立『付喪神。あ、変換できる』

 

ER『造語ってわけじゃないのね』

 

桜木『それがガンプラにも宿るというのか……だが、それをなぜそのイヴという子は感じられるんだ?』

 

足立『さぁ?』

 

空自『ELダイバーにまつわる、ある噂を連想しますね』

 

桜木『うわさ?』

 

無茶『まさか、ガンプラの声を聞ける、とか言う奴か?』

 

空自『はい。事実かどうかは定かではありませんし、自分は信じてはいないので』

 

桜木『オカルトの類いか。俺は信じられんな』

 

無茶『今のイッチ達の現状もかなりオカルトですけどね。けどイッチのヤツ、その話聞いて、なんか反応してるな』

 

桜木『まさか……アイツは信じているのか? その話を』

 

無茶『どう、なんすかね』

 

足立『ってかさ……なに? こののろけ話』

 

空自『まさに青春というやつで、眩しいものです』

 

ER『懐かしいなぁ、青春。クラスの男子に交じって特撮談義で盛り上がったなぁ』

 

無茶『特撮サーの姫?』

 

足立『ってか女扱いされてねぇだろな、こいつの場合』

 

桜木『なぁ、お前ら。ヒロト君のコアガンダムのことだが……どう思う?』

 

空自『え?』

 

ER『急にどうしたんすか?』

 

桜木『いや、珍しいなと思ってな。元GPDプレイヤーだというのに、改造の方向性が、バトルでは無くGBNを冒険することに向けていることがな』

 

足立『あぁー、確かに』

 

無茶『え? どゆこと?』

 

足立『いやさ、GPDプレイヤーがGBNに移行した場合、大抵はバトル専門で活動するか、あるいはやめるかっていう極端な感じなんだよ』

 

桜木『前者だと、GPD出身は大抵上位ランカーになっている。まぁ、長年ガンプラバトルやってるんだから、当然といえば当然だ』

 

空自『後者がよく分かりませんね。なぜ辞めるのですか?』

 

足立『GPDはガンプラそのものを戦わせるものなんだ。だから壊れる事が前提にある遊びだったんだよ。んで、その壊れる様が好きで、そこから更なる改良をしようというのを楽しむ連中がいるんだよ』

 

無茶『もしかしてそれ、GBNはガンプラが壊れないからつまらんとか、そういうオチ?』

 

桜木『足立の言い方はともかく、向こうに言わせれば『真剣勝負なんだから、お互いそれくらいのリスクはあるのが当たり前』ってことらしい。ま、そういった連中はとっくの昔にGBNから引退して、姿を見せなくなったがな』

 

足立『でもさ、最新バージョンで痛覚オンとかあったろ? あれのおかげで、ガンプラの痛みを自分も受けられる! って事で、戻ってきた連中がいるのよねぇ』

 

足立『ま、だからさ、最初は意外だったんだよな、イッチのこと。GPD出身だというのに、安価スレなんてやってるのをさ。実態聞いて、納得しましたけど』

 

桜木『すまん……』

 

空自『なるほど。だから珍しいのですね。ヒロト君がこんな風にGBNを楽しんでいるということを』

 

桜木『あぁ。まぁ、十中八九このイヴって子に惚れているからだろうとは、思うがな』

 

足立『それな』

 

空自『しかしヒロト君とイヴ君、仲睦まじいですねぇ。まるでリク君とサラ君のことを連想しますよ』

 

無茶『あのGBNベストカップルか。確かにそれを思い出しますね』

 

ER『あの二人は確かに尊い。俺すら胸がときめくほどだし』

 

足立『この二人も、聞いてるだけで尊みが溢れてきたんだが』

 

空自『ほんと、微笑ましいですねぇ、良い青春を送っているようで』

 

ER『え?』

 

空自『なぬ!?』

 

足立『アヴァロン!?』

 

桜木『とんでもねぇ名前が出たぞ?』

 

無茶『元アヴァロン所属とか、そら強いわけだわ』

 

空自『ですね……まさか、あの不動のトップに在籍経験があったとは』

 

足立『こいつやっぱやべぇわ。冒険勢でそこまで実績ないってのに、トップに認められるって。しかもこのイヴに勧められてフォースに入るってのに、アヴァロンを選ぶってのも……』

 

無茶『なんとなくで選んだにしては、ハードルたけぇよ。それで入団を認められるってのもヤバすぎる』

 

ER『どういう選考基準なのよ、これ』

 

空自『さぁ……ヒロト君の機体がユニークなモノだから、とか?』

 

足立『ってか、アヴァロンにいたってことは……あの時もそこにいた、って事なんかね』

 

無茶『あの時?』

 

足立『有志連合』

 

桜木『あ』

 

ER『確かに』

 

空自『いても不思議ではありませんね』

 

無茶『ヒロトが始めたのが、GBNが盛んになった時期らしいから、約4年ぐらい前で、だとすると……居たんじゃねぇか?』

 

足立『居たっけ? こんな換装ガンダムの使い手』

 

桜木『いや、アヴァロンにならその手のダイバーは大勢いるから、紛れてもおかしくない。なによりチャンピオンがAGE系の使い手だしな』

 

無茶『換装してるとこ見たコトないっすけどね。あ、でも最近変えたっていう話は聞きましたけど』

 

足立『あ、やっぱいたんだ、有志連合に』

 

空自『やはりですか。第一次と第二次、両方ともで見かけなかったのは、最前線にいたか、重要ポジションにいたからでしょうかね』

 

ER『じゃねぇの? ま、俺はどっちも参加してなかったから知らないけど』

 

無茶『イッチは第一次の時はルナ制作で不参加だったし。第二次の時に有志連合戦レポっていう安価引いて、ひどい目にあってたな』

 

ER『そうなの? 俺が来たのは一年ぐらい前だったから、そのへんのことは知らねぇな』

 

足立『あぁ、あの頃があのスレの絶頂期だったしな。お前が来た頃からか? ちょっとずつ人がいなくなったの』

 

空自『そう聞くと、まるでこの変態のせいで人がいなくなったみたいな言い方ですね……』

 

桜木『あ』

 

無茶『あ』

 

ER『いやいや、そんなことねぇだろ? なぁ?』

 

足立『知るかんなもん』

 

無茶『ん? なんか、ヒロトの様子がおかしくなってねぇか?』

 

空自『はい?』

 

桜木『なんだ?』

 

桜木『は?』

 

足立『え?』

 

無茶『は?』

 

空自『はい?』

 

ER『消してくれ?』

 

足立『いや、どういうこと?』

 

桜木『……うそだろ?』

 

足立『完全にしばらくコメント出来んかったわ。なに、この悲劇』

 

無茶『なんか、無性にコメントしたくなった。変態、この空気何とかしてくれ。きつい』

 

ER『無理言わないで、私だってめっちゃ辛い』

 

足立『お前が女性口調』

 

桜木『ネタのつもりか?』

 

ER『んなわけ無いだろ。辛いからつい演技忘れてたんだよ』

 

空自『今までの男口調、あれ演技だったんですか』

 

足立『まぁ、ある程度は気が紛れたけどよ……』

 

無茶『なんだよこれ。こんなのリアルで有り得ていいのかよ』

 

桜木『良くは、ないだろう』

 

空自『色々と、ヒロト君の話からいくつか想像できますが……おそらく、これは不可避の出来事だったかと思います』

 

足立『?』

 

ER『説明してくんない?』

 

空自『想像の範疇ですが……もし、仮にバグの吸収を、イブ君が行っていなかったとしたら、今頃GBNはバグまみれとなって終わっていたことでしょう』

 

空自『さらに、そのことを外部に教えたとしても、いったいどうやってバグを押さえ込めばいいのかなんて、分かるはずもありません。ならば運営にと思いますが、それが一番の悪手となります』

 

空自『当時のGBNの運営は、ELダイバーといった不確定要素は排除する傾向にありました。ですから、バグを吸収出来るイヴ君の特異性を知れば、逆に彼女を消しにかかったやもしれません』

 

無茶『はぁ!? んなわけねぇだろ。ちゃんと彼女の事も、考えてやってくれだろ?』

 

桜木『いや、成田の言うとおりだ。あの当時の運営の対応は、そういうものだ』

 

足立『むしろ当然の対応でしょそんなの。異変が起きたら消す。それで不具合なんか出たら消すのは当然でしょう。サラちゃんの時も助けること自体がハイリスクっぽかったし』

 

ER『まぁ、この場合はそうなるんだろうな』

 

桜木『最近は、第二次有志連合戦での結果により、ELダイバーの存在を認め、GBNが発生させる多様性を受け入れる方針へとなった。そのおかげで、新バージョンが好評なことに繋がっているんだがな』

 

無茶『なんだよそれ……』

 

空自『ですから、初めから詰んでいたと言えましょう。この悲劇の最大の原因は、ヒロト君がイヴ君と出会ってしまった事。お互いに会うことさえなければ、こんなことには』

 

桜木『まぁ……そういうのも、人生にはある。出会いが最大の不幸、なんてのはな』

 

ER『でも、中3ぐらいの少年に、惚れた女殺せなんて、今時ドラマでもないぞ、そんなの』

 

足立『僕はいやだねぇ、そんなの……まぁ、誰だって嫌だろうけどさ』

 

無茶『当たり前だろ……こんなの、辛いだけじゃんか』

 

足立『にしても、よくヒロト君、女を撃ち殺した機体に乗り続けているよな。僕だったら、もう姿も見たくないってことで、スクラップにして捨てるよ?』

 

ER『想い出のほうが勝ってたんじゃないか? 俺がヒロト君の立場だったら、捨てようとすけど捨てられず、そのまま使い続けると思う』

 

無茶『スクラップはやりすぎだろ』

 

足立『いや、そうしそうだよ。無力感に苛まれて、己への怒りのままに、さ』

 

足立『っていうか、個人的には胸糞悪いよ。まるで今の僕たちがGBNで楽しんでいるのは、このヒロトくんの悲劇の上で成り立っていると思うとさ……』

 

足立『なんか、どう思ってプレイすればいいんだろうなぁ、今後。と思うわけよ』

 

空自『アダチさん』

 

ER『あんたの美学に反してるからな、それは』

 

足立『ま、折り合いを付けるさ、色々と。さて、今どんな話してんだ?』

 

無茶『お、おう。えっと……第二次有志連合戦時のか、この話』

 

空自『やはり、いたのですね、彼も』

 

ER『チャンプと、ビルドダイバーズのリクと百鬼のオーガの近くにいた?』

 

足立『これまたとんでもねぇポジションにいたなぁ』

 

空自『この時のイッチは、果たして何処に?』

 

無茶『確か、アヴァロンのフォースネスト内にあるいくつもの浮遊岩盤のどれかに潜んでた、とか言ってたな』

 

桜木『おい、そのポジションなら、あの時出来るんじゃないか? ビルドダイバーズのリクを撃ち落とすことが』

 

足立『あ』

 

空自『あ』

 

無茶『確かに、そうっすね』

 

ER『え? なに、なんの話?』

 

空自『第二次有志連合戦の最後です。詳しくは、前スレの中にイッチのレポートがあるはずなので、そちらを参考に』

 

足立『そうじゃん、確かにそこにいるのなら、チャンプ突破後に狙えたじゃん』

 

空自『えぇ。ですが、それをしなかった……それは、やはり……』

 

無茶『まぁ、そりゃ撃てるわけないか』

 

ER『こいつの言うことは、正直すっごい共感出来る。なんでお前が、とか。自分だって、そうしたかったのにっていうの』

 

無茶『そりゃぁ、激しく憎みたくもなるよ。ヒロトは、よく押さえ込んだな』

 

空自『それほどまでに彼の中では、イヴ君との思い出を汚したくないという気持ちが強かったのでしょう』

 

無茶『つーか、この時のリクの言葉、オレめっちゃ感動したんだ。でもこの時に、あんな事があった奴がいて、そしてこの言葉を聞かされるって……なんか、複雑だわ』

 

ER『もう拷問だろコレ。誰だって発狂しかねないし』

 

足立『……GBNであそんでいるってのに、なんでそんな苦しいことをしなきゃならねぇんだよ、ふざけんな……』

 

桜木『ヒロト君……』

 

桜木『アンズ?』

 

無茶『イッチ?』

 

ER『急に前に出て、何を?』

 

桜木『あ』

 

無茶『あ』

 

足立『tmt?』

 

無茶『いや、ここで止まるのかよ』

 

空自『ちょうど二時間……指定の時間を過ぎてしまったようですね』

 

ER『イッチ、ヒロトに向かって何する気だったのよ』

 

無茶『いや、知るかよ』

 

空自『気合のビンタ、とか?』

 

足立『そっと抱きしめるに一票』

 

無茶『ありえねぇだろ一番それ』

 

ER『確かに』

 

桜木『お前ら……ヒロトくんの過去に関してだが、絶対に他言無用だぞ。リアンにもな』

 

足立『いや、わかってますってそんなん』

 

空自『個人情報ですからね。墓まで持っていきますよ』

 

ER『了解ですよ。ってか、忘れたいわ、こんな悲恋の物語なんてさ』

 

無茶『うす……』

 

空自『では、早速レポの制作にかかります。アダチさんは敵戦力の分析部分を。むちゃ丸さんは、ガンプラの改修案のたたき台をお願いします』

 

空自『あと、皆さんには明日のこの時間にでもインしてもらい、シーサイドベースのダウンタウンのカフェ、AoZにて確認とすり合わせを行いましょう』

 

足立『インレ狂いの連中が経営するカフェか、了解』

 

桜木『分かった』

 

ER『大丈夫むちゃ丸?』

 

無茶『問題ねぇよ。作ろうと思えば、すぐに書けるからな』

 

桜木『よし。では本日は解散とする。明日、遅れるなよ』

 

空自『はい』

 

足立『おつかれちゃんっと』

 

ER『おつつ~』

 

無茶『お疲れ様っした』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

オフラインミーティング

ストラとカリコさん、サブンさんがいた集落での戦いに、その後語られたヒロトの過去、そういった出来事があったあの日から三日後。あたしは再び、関東、横浜へとやってきた

 

理由は、カザミがリアルで会おうと言い出したから。場所はこの前あたしたちがリアルで初めて会ったカフェになったんだけど、アイツもそれなりに遠いところに住んでいるし、あたしだってカザミほどじゃないけど、関東より遠いところに住んでるから、どうなんだっていう感じだった

 

でも、電車に乗れば片道三時間で行けるし、会うことだけにすれば、十分日帰りで行ける距離だ。この間のガンダムベース本店で買えなかったペルフェクティビリティを店頭で買いたかったし、行きたいといえば、行きたいところだった

 

それに、おじさんやスレの連中が作ってくれたっていうレポートというのを渡すのにも、ちょうどいいと思って、集まることに賛成した。少し交通費はかかるけどね……あの時、これを渡して来たおじさんの目のクマが酷かったのには、正直ビビった

 

そんなことで、あたしはこの横浜へとやってきてた。流石にあの時みたく制服じゃなくて、私服だけどね。白いスカートに、紺色のジャケットを着てきた

 

にしても、横浜も横浜で、人や建物がいっぱいだなぁ……と、田舎者丸出しな感想を抱きつつ、スマホの地図アプリを頼りに、この前行ったカフェへと歩いていく

 

 

「……? あ、ヒロトだ」

 

 

今あたしが歩いている道に繋がる並木道の向こうから、見覚えが有る姿を見つけた。GBNでのダイバー姿と同じなので、一発で誰なのかが分かった。かなり遠目だし、あっちはあたしのことに気づいて居ないみたいだった

 

じゃぁどうせなら、って言うことで、ヒロトに見つけてもらえるように、手を振ろうと思った

 

 

「ヒロ「ヒナタ」っ」

 

 

ふと、ヒロトとあたしの間にいた女の子に対し、ヒロトが声をかけていた。相手の反応を見たら、彼女の方もヒロトを知っているかのような感じで……なんだか、親しげに会話をしていた

 

その光景を見て……なんだか、心がムッとするような……そんなよく分からない想いで、胸が苦しくなった

 

 

「……って、何やってんのよ、あたし」

 

 

それを見た直後、あたしはヒロトに姿を見られないような感じで、並木の裏に隠れていた。一応、周りにほかの人はいない感じだったので、怪しい目で見られることはない感じだったけど

 

っていうか、これじゃぁまるで、あたしが見たくないものから目を背けているっていうか……その……まるで、ヒロトが女の子と話してるのに、嫉妬してるみたいな……

 

 

「……まるで、あたしがヒロトのこと、意識してるみたいじゃない……」

 

 

ふと、口に出して言ったことに対し、急に恥ずかしくなった。なんだか顔が熱くなってきたし、心臓が、オルフェンズ系ガンプラが出るという情報を知った時以上に、ドキドキしてきた

 

そういえば、あたし、この前にヒロトのこと、抱きしめたような……え、あれって、そういうことなの?

 

いやいやいや、ないないない。絶対そういうのじゃないから。あたしにとってヒロトは、恩人なだけなんだから。ハシュマルのことや、アリアのこととか、あたし自身のこととか、決して……

 

 

「その……好きとか、そういうんじゃなくて……」

「リアン? 何してんだ、そんなとこで」

「ほえぇっ!!?」

 

 

変な独り言を言ってたそばに、ヒロトがやってきていた。どうやら、木の裏側で声がした方を見たら、あたしがいて、それで話しかけたらしい

 

 

「あ、えと、その……なんでもないよ! なんでもないからね!?」

「? そうか?」

 

 

ただ、そんな言い訳がましい感じで返すしか出来なかった

 

 

「もう来てたんだな」

「あ、まぁね。これでも、ちょっと遅かったかなって思ったんだけど」

「電車で三時間だろ、結構早い電車に乗ったんじゃないのか?」

「そうだね、始発の次の電車。眠たかったけど、電車の中でゆっくり寝てきたから、眠気は大丈夫だよ」

「そっか」

 

 

と、少し他愛ない会話をして、待ち合わせ場所のカフェへと歩き出した

 

少し、ヒロトの隣を歩いていると、ふと口からこんな声が漏れた

 

 

「それよりも……その、さっきの子」

「さっきの? あぁ、ヒナタのことか」

「っ……その子って、その、ヒロトの、彼女だったりする?」

 

 

と、別にどうでもいいと思っていることを、なぜかあたしは、ヒロトに聞いていた

 

 

「あぁ違うよ。ヒナタは子供の頃からの幼馴染で、俺が住んでるマンションの隣に住んでいるんだ。だから、兄妹、みたいな感じかな」

「あ……そっか。そう、なんだ」

 

 

と、まるでヒロトは彼女のことを、好きとか、そういう意識をしていないということを知って、どこかふと、安堵したかのような気持ちになった

 

いや、だからあたし、ヒロトのこと、そういう風に思ってるわけじゃないから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒロト、リアン、こっち」

「あ」

「お、カザミ」

 

 

待ち合わせ場所のカフェに到着すると、カザミの他に、すでにパルとメイも来ていたようだった。あと、なぜか黒のサングラスにスーツを着た女の人も一緒だった。あれかな、メイのボディーガード、みたいな感じなのかな。ELダイバーって、こっちではガンプラの体なんだし、何かあったら大変なんだろうけど……

 

 

「それで話って、エルドラのことですよね」

 

 

みんなが集まったところで、パルが話を切り出してきた。まぁ、あたし達がリアルで集まって話をするってことは、あの星、エルドラのことぐらいしかないだろう

 

 

「あぁ。聖獣さんが言ってたろ、次の衛星砲が撃たれるまで500時間って。つまり、だいたい三週間ってことだ。もうあまり時間がねぇ……だから、ちゃんと作戦をだな」

「「「「……」」」」

 

 

と、カザミのあまりにも意外な言葉に、みんなが一斉に口をぽかんと開けた

 

 

「? なんだよ」

「いや、リーダーみたいだな、と」

「ばっ!? 俺は最初からリーダーだっての!」

 

 

メイの言葉に、あたしとヒロト、パルの三人が首を縦に振る。まぁ、最初の頃は自称(笑)みたいな感じのリーダーだったけど、でもエルドラでの日々を見てると、カザミもカザミで、リーダーが向いてきた感じがするし、もうあたしの中でも、この中のリーダーとして見てるところはある。おそらく、それはみんなも同じだろう

 

 

 

それから、あたし達は今後の目的について話し合った。まず最終目的としては、あの衛星砲が放たれる前に、宇宙へと上がって衛星を破壊するということ

 

そのためには、宇宙へ上がる手段が必要となる。前回の軌道エレベーターを使えればと思ったけど、前回はあのアルスがあたし達を招き入れた形だったから、すんなり使わせてくれたのだと思う

 

でも、次はそうはいかないだろう。アルスにとって、もうあたし達は敵と認識されている。なら、あれは使えないと考えたほうがいいかもしれない

 

無理に使おうとすると、下手したらその軌道エレベーターを破壊しかねない。多分、アイツならそれぐらいのことはやりそうだ

 

そして、もし宇宙へ行く手段を用意できたとしても、次にある問題は、あの衛星砲をどうやって破壊するか。それも考えなければならない。護衛の為に、数多くのヒトツメが出てくることだろうし……

 

なにより、ヒトツメが出てくるということは……もちろん、あの人も現れるということ

 

 

「それと、ゼルトザームだ」

「「っ」」

「シドさん……」

「……」

 

 

ヒロトの言葉で、あたし達は固唾を飲んだ

 

あの聖獣が言っていたことがある。シドさんの乗るゼルトザームは、アルスが生成したものではないし、アルスが直接操縦しているわけではない。あれは、アルスの指示で、シドさんが動かしているというものらしい

 

だから、ゼルトザームは、遺跡の中へと侵入することが可能となっている。今、エルドラに住む人たちはアルスが現状手出し出来ない遺跡へと避難をしている。そこへもしゼルトザームが攻めてきたら……

 

あの宇宙での戦い以降、姿を見せることがないゼルトザームだけど、もしこのまま放置していたら、宇宙へ上がる為の準備をしている間や、宇宙へ上がっていた時に、もしかしたらゼルトザームが遺跡や遺構へと攻撃するかもしれない

 

それに、リアルのシドさん……シドー・マサキさんのこともある。家族が心配しているし、一刻も早く、なんとかしてあげたい

 

 

「エルドラのために戦った彼を、放ってはおけない」

「うん。ムランさんも話してたしね。シドさんのおかげで、守りきれた命があったって」

 

 

だから、彼のことは、必ず救わなければならない。だけど、機体のスペックが高すぎるし、なによりダイバーとしてのあの人の実力も、そのまま反映されている。だからそう簡単に出来ることではないから、すごく悩ましいところではある

 

いくつか対策をする必要がある。そうヒロトが言って、色々と考えているところに、カザミが割って入った

 

 

「それなんだけどよ……」

 

 

 

 

 

 

「これって……」

「新機体ですか!?」

 

 

カザミが自身のカバンの中から、二つのタッパーを取り出してきた。中にはぎっしりとガンプラのパーツが入っていた

 

 

「お前らに意見聞けたらなって……」

 

 

なるほど。カザミはそれが聞きたかったから、みんなをリアルで集めたのか。自身のガンプラの出来栄えと、更なる改良の為の意見のために

 

確かに、これは実際見てみないと分からないところだ。写真で見ても、意見なんて言えるようなものではないからね

 

 

「手間のかかった丁寧な仕上げだ」

「守りがかなり硬くできてる。それに可変機……」

「見る限り、装甲を厚くしつつ、ギミックというか、手数を増やすコンセプトかな。強度バランスが難しくない?」

「あぁ、そこらへんが上手くいかなくてな。それでよヒロト、シールドと武器を合体させるギミック、あとで教えてくれねぇか? それと、コアガンダムの構造も。参考にしたいんだ」

「分かった」

「ヒロト、あたしもそれ、教えてもらってもいいかな。ちょっと気になる部分があるから」

「あぁ、いいぞ」

 

 

カザミも、自分なりに考えた結果、このような形になったという。無い知恵絞って考えたって言ってるけど、それでもこれは良いガンプラを作ったなって思う

 

ついでに、あたしもコアガンダムと、そしてアーマーの構造について教えてもらうことにした。本来ならアリアが完成する前に見てみたかったけど、まぁ今からでも間に合うので、見せてもらうことに

 

そう言った時に、あたしはあることを思い出した

 

 

「あ、そだ。皆に、渡したいものがあるんだけど」

「「「?」」」

「渡したいもの?」

 

 

そう言って、あたしは皆に、スレの連中が作ってくれたレポートを渡す。共通の内容に、それぞれに向けた意見などのレポートで構成されたもので、それなりにぶ厚いものだった

 

ちなみに、ヒロトやメイは割と薄め、次にパル、そしてカザミと続いて、あたしのが一番ぶ厚い。容赦ないなぁって思ったけど、多分アリアのことについてが大半だろうと考え直した。初めて乗ったガンプラだったし、MSからMAという転身だ。そりゃあいつらにとっちゃ、突っ込みまくれる点だなと思う

 

 

「例の奴か」

「すごい。敵の行動パターンや、それらの対応策の一覧、それに敵の今後の出方の予測なんかも書いてあります」

「うぉ、けっこう辛口で書いてあるな、これ……つか、今後の改修案なんかも書いてあるし。これも参考にしてみるか」

「作戦の立て方や、指揮のタイミングなどの参考例まで載ってある。かなり凝ってあるな」

 

 

みんなの言うとおり、このレポートは相当踏み込んで書いていてくれている。あたしの分を読んでいると、大半がMAの運用法と、あたしが気がつかなかったアリアの欠点なんかも書いていてくれているし、対応策もばっちりだ。多分、そうとう苦労して作ったんだと伺える。目の下にでかいクマ作ってたしね

 

 

「……ねぇ、ちょっと思ったんだけどさ」

「なんだ?」

「こうして、あたし達以外の人の協力で、こんな意見書みたいなのを作ってくれたじゃん。まぁ、色々と事情を知ってくれている奴らだけど」

 

 

それなら、他の人たちの意見はどうなんだろうかと。あの戦いを見せたことで、あいつらはこれだけの意見を出してくれた。なら、それ以外の……他の人たちにも、見てもらったらどうなんだろうって

 

 

「だからさ、カザミの動画を、もっといろんな人に見てもらえたら、どうなんだろうって、考えたんだけど……どう、かな?」

「なるほど。確かにいいかもしれないな」

「でしょ」

「でもよ、どうやって見てもらうんだよ。俺が言うのもあれだけど、全然見てくれてないんだぜ」

 

 

あ……確か、カザミの動画、全然伸びてないんだよね。ここ最近、二桁が安定してきたみたいで、もう少しで100超えそうとも言ってたっけ? まぁ、その……うん

 

 

「お前、なんか今失礼なこと考えなかったか?」

「気のせいじゃない?」

 

 

カザミのことは置いておいて……うーん、どうしたらいいんだろう。いいかなとは、思ったんだけど

 

 

「……誰かに紹介してもらえれば、少しは伸びるかもしれない」

「そうですね。でも、誰にお願いすればいいのでしょうか。出来れば、顔の広い方にお願いしたいところですけど」

 

 

ヒロトが誰かに拡散してもらえたらっていう提案をしてきたけど、パルの言う通り、誰にそれをお願いするか……スレの連中は、まぁ、そこまで広いわけじゃないし、おじさんもGBNではそこまで顔が広いわけじゃないしなぁ

 

他のみんなも、これと言って特に知ってるわけではない感じか……

 

 

「それなら私に心当たりがある」

 

 

と思ったら、メイがそんなことを言い出してきた

 

 

「誰か、宛があるのか?」

「私の後見人が、それなりに人脈がある人だ。私から頼んでみる」

「うん、お願いするね」

 

 

無理かなと思ったけど、とりあえず、あたしの提案はメイのおかげでなんとかなりそうだった。それに一安心し……カザミの持ってきた新機体のパーツを見ていると……ふいに、パルが話し出した

 

 

「あの……クアドルンさんにも、力を貸してもらえないでしょうか?」

「「「「?」」」」

 

 

あの聖獣に? でも、聖獣さん、今は怪我をして身動きが取れないって言ってたけど……

 

それはカザミも思っているようで……どうやって? って思ったら、意外なことを言ってきた

 

 

「実は、僕……あの翼を治せないかと思ってるんです。ガンプラを使って」

「ガンプラ、で?」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

鋼鉄の翼と、2つの希望

「お待ちしてました!」

「ようフレディ!」

 

 

オフラインミーティングの翌日。GBNへとログインして、そのままエルドラへと向かった。転送先は、ミラーグの山、聖獣クアドルンが住む空に浮かぶ遺跡だ

 

 

「クアドルン、調子はどうだ」

〔変わりない〕

 

 

そこには、あたし達を召喚するためにフレディが居ついているみたいだけど……ごはんとか、ちゃんとあるんだろうか? まぁ、こうして元気でやってるんだから、なんとかしてるんだと思う

 

そのフレディが、ムランさんからミラーグの山へと向かいたいから、迎えに来てくれくれという連絡を受けたようだった。それはカザミが行くことになって、改修中の機体の代わりに持ってきたジャスティッガイで行ってくれる事になった

 

っていうか、それ飛べるようにしてあるんだ。でも、マントがあるから飛べるって、スーパーマンオマージュ?

キャプテンジオンが好きなんだし、やっぱそういうのが好みなんだね……

 

 

「……? あれ? 今日は、ヒロトさんとパルさんは?」

 

 

そう言って、辺りをきょろきょろと見渡すフレディだったが、無理もない。だって、今回のヒロトとパルは……

 

 

『ここにいるけど?』

「うえ?」

『僕だよ、フレディ』

 

 

ハロの姿で、ログインしてきたからだった

 

 

 

 

 

昨日、パルが言い出したこと……聖獣さんの翼を、ガンプラを使って治すこと。つまり、義翼を取り付けるということだ。それに対し、あたし達は満場一致で賛成した

 

やり方としてはこうだ。パルが用意した義翼の部品をダイバーギアにセットし、自身が使うガンプラとして登録し、作業のための作業用ハロを用意してその姿でログイン。そしてそのままエルドラへと行き、そこで実体化した義翼の部品をその場で聖獣さんに取り付けるというものだった

 

これに関してあたしは疑問に思ったことがあり、ガンプラの部品を使うのはいいけど、でもそれだったらエルドラから出たときに、一緒になって消えない? と考えたんだけど、どうやらそこはすでに検証済みで、問題なく行えるようだった

 

フレディの村の防衛戦の後、なぜかアースリィの盾が残っていたことがあった。おそらく、こちらの制御を離れた部品は、その実体を持ったまま保たれるようになっているみたい。初めてミラーグの山を訪れ、帰った時にヴァルキランダーの剣を置いて行ったのは、この検証のためだった

 

そして、パルは聖獣の怪我の具合を写真に収め、義翼の設計に取り掛かっていたようだった。そこで丁度いいパーツを見つけ、こうして義翼取り付けの段取りを整えていた。さすがに一人では無理だし、ヒロトも作業用のハロ姿でログインし、あたしも作業に特化させた作業用獅電ともいうべきガンプラに変えてきた

 

でもまぁ、その義翼の部品に、HGのペーネロペーを使うとは……あれ、ハシュマル以上の高額キットなんだけど……

 

 

 

 

 

その旨を、パルが聖獣さんに説明をしている。聖獣はそれを聞いて、少し考えるかのように目を閉じ……

 

 

〔……飛べるようになるのだな〕

『多分! あ、いえ、きっと!』

〔ならばマサキを……〕

『そうです! 僕たちも、それを思って!』

〔……分かった〕

『ありがとうございます! ヒロトさん!』

『あぁ。すでに準備は出来ている』

 

 

聖獣さんからの許可が下りて、さっそくその作業に入った

 

 

 

 

 

 

『リアン、あと2度ほど右に傾けてくれ。あぁ、その位置で固定を頼む』

『オッケー』

『メイさん、次のボルトの位置までお願いできますか?』

『分かった』

 

 

義翼の取り付けは、順調に進んだ。ヒロトとパルがあたしとメイのガンプラを作業台として利用し、ハロ組が細かい作業を、MSMD組で一部パーツを固定のために支えたりしながら、作業は続いた

 

 

「おーい! 帰ったぜぇ!」

「ここがミラーグの山かぁ……」

 

 

義翼取り付けが進む中、ムランさんを迎えに行ったカザミが帰ってきた。なぜかマイアも一緒に来て、なんだかピクニックで使うみたいなバケットを持ってきていた

 

それでコクピットがマイアが乗ることになり、ムランさんは外で気球の籠みたいなのに乗ってきてて……かなり揺れたのだろうか、激しく酔い、しばらくその中でうずくまっていた。大丈夫、なのかなぁ?

 

 

「みなさん! 差し入れをお持ちしたので、一度休憩にしませんか!?」

『あ、ありがとうフレディ、マイアさん』

『丁度一区切りついたところだ』

 

 

どうやら、持ってきたバケットの中に、いろいろと持ってきてくれたようだった。ちょうどおなか減ってきてたし、助かった~

 

 

「「……だれ?」」

 

 

マイアとムランさんが、ハロの姿のヒロトとパルを見て、同じ言葉をつぶやいた。まぁ、そりゃそうだよね……

 

 

 

 

 

 

「さぁ! 召し上がれ!」

 

 

マイアが持ってきてくれたのは、パンや茹でたトウモロコシみたいなものから、トマトやポテサラっぽいもの、あとンガの実のから揚げもあった。結構いろいろと持ってきてくれたので、一息つくには十分すぎる量だった。なんか、ほんとにピクニックしてるような感じだった

 

にしても、かなり気合入れて作ってあるような感じがする。っと思ったら、聖獣さんに会えるのがうれしかったみたいで、ゴキゲンだったようだ。聖獣さんって、この星ではスター、というかアイドルなのかな?

 

 

「パル、口を開けろ」

『あーん』

「ヒロト、はい、あーんして」

『あーん。んぐんぐ』

『あ、ちゃんと味がする。ハロなのに』

『ホントだな、うん、美味しい』

 

 

ハロすがたの二人は自力で食べれないから、あたしとメイが口に運んで食べさせたりしてる。どうやら味覚は機能しているらしく、味がわかるようだ。GBNだと、アイテムとしての食べ物はあるけど、確かハロ姿じゃ味覚が機能しないんだっけ? ここだと、機械的な体でも、そういうのが分かるようになるってことかな。砂なのに

 

そのあと、聖獣さんの食事事情――どうやら、大地のエネルギーを吸収したりしてるらしい――を知ったり、どうせなら食べてみろということになって、マイアが食べさせることがあったりと……なんだかまったりした雰囲気になった

 

そうやって少し気を休めた後に、ヒロトがムランさんに、避難状況を聞いていた

 

避難に関してもひとまずは順調なようで、いくつかの集落は、避難を完了しているところもあるようだった。だけど、セグリという守りが完璧だったはずのところが崩壊したことで、どこに行っても無駄だ。という悲観的意見を出す人もいるらしく、そういった人の説得がうまくいっていないようだった

 

 

「そうだ。ある村で、ゴルスと再会した」

『ゴルスさんと?』

『レジスタンスの! お元気なんですか!?』

 

 

ゴルスさん。パルの言う通り、レジスタンスのリーダーをしている人で、あの戦いのときには、軌道エレベーターのところまで来てくれていた人だ。どうやら、エレベーターの直下にいたことで、難を逃れたようだった。さすがに、無傷とはいかず、満身創痍とのことだが……

 

今は、各地を巡って、武器と人員をかき集めているみたい。あんなことになっても、まだ立ち上がって戦おうという意思で、活動を続けているようだ。あたし達、ビルドダイバーズの再訪を、喜んでいたそうで……あたしたちは、この星にとって希望になっているのだと、ちょっと照れ臭い気分になった

 

でも、あの衛星砲の被害を受けて、生きていてくれて、本当によかった……

 

 

「そのゴルスに聞いたのだが、マサキ……ゼルトザームがまた現れたらしい」

「シドさんが!?」

 

 

宇宙での戦いのあと、なんの音沙汰もなかったシドさんだったけど、やっぱり地上にいたようだった。そのゴルスさんから聞いた情報によると、ドリバオという村を襲っていたようだった

 

でも、そのあとに奇妙な行動を取ったらしく……なにやら村人を襲ったあと、他のヒトツメが村人に危害を加えようとしたのを、防いだという。どういうことかと思った中、シドさんにかけられた洗脳が不安定になっているのでは? という話が上がった。けど、それにしてもなんで?

 

 

〔マサキのガンプラに取り付けられた、異形の角と腕。おそらくは、あれがマサキの意識を、こちらの世界に繋ぎとめている楔〕

『……! そういえば、あの時』

 

 

その疑問の答えともいうべきことを、聖獣さんが教えてくれた。あのゼルトザームとテルティウムで、形状的に違っている部分、あの不気味な腕と左右非対称の歪んだ角。あれらのせいで、シドさんがリアル……地球側に帰ってこれなくなっている原因ではないかと

 

そして、宇宙での戦いの時に、ヒロトはゼルトザームと交戦した。その際に、角にダメージを与えたようで、それが原因で、洗脳が不安定となっているのかもしれないと……

 

 

〔マサキの肉体と精神を引き離し続ける楔を、取り除くことが出来れば……〕

『マサキさんを、元に戻せるかもしれない!』

「!?」

 

 

すっごい朗報だと、そう素直に喜んだ。どうやったらシドさんを助けることが出来るのか、なんの考えも浮かばなかったから、これはすごくありがたい情報だった。次にゼルトザームとたたった時には、必ず助けられると、そう喜んだのもつかの間

 

 

〔だが……マサキ自身の限界も、近づいているはずだ〕

 

 

聖獣の言葉で、再び緊張感が走った。確かに、そういうことになっているはずだと

 

なにせ、半年近く寝た切りなのだ。聖獣さんの言う通り、意識も体も、引き剥がされている状態が続くのは、あまりよくないかもしれない……もしかしたら、肉体のほうに影響が出るのかもしれない

 

はやく、なんとかしようと……そう、思ったのだった

 

 

 

 

 

「そうだ。それと、ゴルスからもう一つ、朗報があった」

 

 

シドさんについて、今後のことについて話し合った後……ムランさんがまだ話があったようだった

 

 

「朗報?」

『何かあったんですか?』

「崩壊したセグリ。あそこに、生存者がいたと言っていた」

「え……?」

 

 

ムランさんの言葉に、あたし達は……フレディも、マイアも、驚いた。あの衛星砲の余波を間近で受け、完全に崩壊したはずのセグリに……生存者がいたのか、と

 

 

「生きてた人がいたの!?」

「あぁ。瓦礫の隙間に運よく入り込んだ人たちが数名ほどいたようだ。セグリに無事な武器が残っていないか、瓦礫の撤去をしたレジスタンスが発見したと言っていた。全員、かなりの重傷で、意識不明が続いているようだが……命に別状はないようだ」

 

 

数名……つまりは、少ないながらも、生きてた……生きていてくれた人たちがいたんだ……

 

 

「あの月の雷が落ちた時、遠くで見た者たちの証言によると、雷が途中で曲がっていくように見えたといっていた。本来なら、まっすぐ落ちるはずのものが、そんな動きをしたということは、君たちが何かしたということなのだろう?」

『それって、砲台にダメージが入ったから、本来の着弾点からズレた、ということか』

「……あたしたちのあの戦いは、完全に無駄じゃ、なかったんだ」

「だが、救えたのはほんの僅かだ。だが、それでも……」

「あぁ……ありがてぇ、本当に……」

 

 

カザミも、こぶしを強く握って、喜びを噛みしめていた。まさか、あの状況になっていたセグリに……あたし達が防ぎきれずに撃たれてしまった砲撃の余波を受け、悲惨なことになっていたセグリに……

 

本当に……本当に、良かった……

 

 

「あの……その生きてた人たちの中に、兄さんは……」

「ジェド兄さんは……兄さんはいるんですか!?」

『『「「「!?」」」』』

 

 

 

その報せを聞いて、フレディとマイアはムランに詰め寄った

 

そうだ。あそこにはあの時、ジェドさんがいたはずだ……もしかしたら、生きていてくれたのかもしれない!

 

 

「今のところ、まだ全員の身元が判明していない。傷が深く、声を出すのもままならないという人が大勢いる。その中に、ジェドがいるかどうかは……」

 

 

だが、傷がひどく、誰が誰なのかがまだわからないらしく、ジェドさんがいるかどうかは、わからないようだった……

 

 

「大丈夫だって。あいつならきっとその中にいるって、な!」

「……うん、そうよね。いてくれる、よね」

 

 

ムランさんに詰め寄り、気が高ぶっていたマイアを、カザミがなだめていた

 

でも、マイアの気持ちはすごくわかる。だって、居なくなったはずの家族が生きているかもしれないのだと。そんなの知ったら、誰だって、嬉しくなるよ……

 

だから、私たちは、その中にジェドさんがいてく入れることを、願ったのだった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アリアの想い

全然書けず、スランプになりかけた……


ゼルトザーム……シドさんをどうやって助けるかの話し合いのあと、あたし達は自分自身のガンプラの調整の為に、一日だけ時間を取り、明日に聖獣さんの義翼取り付け組と、シドさん捜索組に分かれて行動しようということになった

 

あたしはもうすでに、あのレポートを参考にした改修が終わったし、それに前々からアリアに組み込んでいたギミックも、ようやく完成できた。あとは、実際に試すだけ

 

そして、その翌日……つまりエルドラに行く日。今日は学校も休みで、朝から暇だったりする(ヒロトが今日学校だから、行くのは放課後の夕方になる)。だから、あのレポにも書いてあった、自身の立ち回り方の見直しと、MAという機体に慣れておくように。という言葉を受け、GBNで練習しようという事にした

 

そういう訳で……

 

 

『行っけぇー! ハイパーおなかビーム!』

『アヤメ流忍法、肆の型、颶風(さばえ)ッ!』

『ステア! フォーメーションSで行くよ!』

『うん! 任せて、カナリ!』

『みんな! がんばってー!』

『『もるもる~!』』

 

 

色々あって今、あの時ガンダムベース本店で会った4人と他に1人、そしてあたしの6人で、バトル系のミッションに挑んでいた

 

……アヤメさん、意外とノリノリだなぁ

 

 

 

 

 

いきなりこんなことになっているのは、その練習をしようとした時に、できれば誰かとやりたいなぁと思ったからだった。特にチームとしての動きを重視しなきゃならないから、5人一組……最低でも、タッグは組んでやりたかった

 

最初はフォースの誰かとでも思ったけど、ヒロトは学校だし、カザミはギリギリまでチェックすると言って、パルも翼の最終調整と、機体のメンテナンスで難しいって言ってた。メイも、予定の時間まで用事があるらしくダメだった。メイはなんの用事だろうと思ったけど、ELダイバーには色々あるって言ってたから、まぁ、無理をいうのはやめよう

 

なら、スレの誰か……声かければ、誰かは出てくれるだろうと思って、スレに書き込みをしようとしようとしたとき、ダイバーギアにフレンドメールが届いた

 

差出人は、モモさん……いや、モモちゃんからで、今時間空いてるんでしたら、一緒にミッション行きません? っていう旨のメールで、ようはミッションのお誘いだった

 

そのミッションっていうのは、バトル系のミッションで、施設の防衛網を突破し、中央へたどり着けというモノ。難易度もちょっと高めのミッションだし、内容的にも、宇宙に上がっての戦いに近い……これ、渡りに船かな? と思い、時間的にも十分出来る感じだったから、すぐにやるって返事をした

 

 

 

その後、GBNでモモちゃんの他に、あの時会ったステアさんとカナリさんの二人に加え、BUILD DIVERSの人……アヤメさんと、そしてもう一人。最初に発見されたELダイバー、サラちゃんと合流し、6人でミッションへと挑んだ

 

サラちゃんとは今回初めて会うし、こうして話すことも初めてだから、なんだか緊張した。メイと同じELダイバーっていうのは知ってはいたけど、メイと違ってすごくよく笑う子で、ちょっと驚いた。そういえば、メイってELダイバーの中では感情が希薄だって言ってたっけ?

 

そんな感じで、あたしとサラちゃんとの顔合わせを終え、そのままミッションへと向かうことになった

 

ミッション自体は、特にトラブルを起こすこと無く、楽勝でクリア出来た。さすがあの有名なBUILD DIVERSのメンバー……アヤメさんは目にも止まらぬ速さで敵を倒していくし、モモちゃんもネタちっくな見た目のカプルだけどハードクラスのNPDMSを難なく倒していくし、サラちゃんも何げに月光蝶だしてどんな攻撃にも耐えてるし……

 

ステアさんはまだあのデストロイが完成してないから、今も使ってるガイアガンダムを使ってたけど、カナリさんのM1アストレイと息のあった連携で撃破数を稼いでいくし……あたしの周りって、結構実力者がいる気がする。ヒロト達みんなもだし、おじさんやアダチ、成田とかさ

 

つい呆気に取られてたけど、それじゃ練習にならないじゃんってハッとなり、あたしも慌てて戦線に入った

 

レポには後衛ポジションに就くのがベストと書いてあって、皆さんが結構前に行く人達だったから、ちょうどいい後衛の練習になった。アシスト射撃とか、前が固めてくれた敵の集まりを主砲でぶっ飛ばすなど、そういった動きをしつつ、後衛の基本的な動きに慣れる事が出来た

 

今までのアインや他オルフェンズ系機体って、射撃型が少なく、基本前にいくことが主流になる傾向が多い。ルナはマグナムがあるから後ろで射撃とかもしてたけど、まぁ経験不足はあるし、すごくいい練習になった

 

ミッションが終わったあとは、ロビーで今回の報酬の確認をしたりして、ガンプラ見ながら会話しようって事で、モモちゃん一押しのエリア――けっこう綺麗な湖で、広い草原もある綺麗なエリアだった――に移動して、ガンプラに関する話で盛り上がった

 

 

「にしても、リアンさんって珍しいですね」

「うんうん」

「MA使いだったのね、あなた」

 

 

と、こんな感じで会話が弾んだ。一番の話題になったのは、あたしのアリアンロッドに関することだった。やっぱりMAというのは、GBN内では珍しい部類らしく、とくにハシュマルベースというのも、尚更レアなモノらしい。確かに、あたしも長いことGBNやってるけど、ハシュマル使ってる人、見たことないかなぁ。パーツとして使ってるのは、まぁある、かな?

 

 

「いやぁ、実はMAに変えたの、ここ最近なんだけどね」

「そうなの?」

「うん。色々あって、昔壊れたハシュマルを直そうって気になって、それでここ最近、やっと修理が完了したから、乗り始めたの」

「へぇー」

 

 

流石に昔の事話すのは長いし、胸糞悪くなるから言わないけど……

 

 

「でもハシュマルかぁ……プルーマとか大量に用意して、物量で押し通る! みたいな動きするのかなぁって思うけど」

「うんうん。ハシュマルを単騎で使うって、意外かもね」

「つまり、レア中のレア、みたいな?」

 

 

モモちゃん、人をネタキャラみたい言わないでよ……

 

 

「見たところ、構造が違ってるし、所々に見た事の無いパーツ使ってあるから、結構凝ったギミック仕込んでるでしょ」

「あ、分かります?」

「えぇ。でも、一見じゃ流石に見抜けないけど」

 

 

確かに、この子にはある機構を仕込んである。まぁ、上手く行くかどうかは分からないから、なんとも言えないけど……それを検証する為にも、みんなの協力が必要だったんだけどなぁ……シドさんの件が終わったら、頼まなきゃ

 

 

「……」

「? どうしたの、サラちゃん」

 

 

モモちゃんが、今まで会話に参加せずにいたサラちゃんに対し声をかけてた。ふと気になって、サラちゃんの方を見ると、ずっとアリアを眺めていた。そういえば、ELダイバーなんだよね。もしかして、アリアの声でも聴いてる、とか?

 

 

「……変」

「え?」

 

 

すると、サラちゃんがアリアに対し、そう言った。かなりストレートに変って言われて、ちょっと凹みそうになる……

 

 

「変って、リアンさんのガンプラが?」

「うん。みんなのガンプラと、なんだか違ってる」

「え? ど、どういうこと?」

 

 

違ってるって……なんか、おかしな所でもあるのかな? でも、レポでダメだしされたところはある程度改修はしたつもりなんだけどなぁ。ウィングのパテとか、機能の変更とか……

 

 

「どういうこと? サラ」

「えっと……みんなのガンプラは、バトルに勝ちたい、ミッションをクリアしたい、作るのが面白い、GBNを楽しみたい。そういう気持ちが、一番強く感じるの」

 

 

ガンプラが、楽しい。ガンプラから伝わる気持ちの中で、それが一番強く感じるのだと、サラちゃんは言っていた

 

 

「でも、この子は違う。この子は、それとは別の想い……他のガンプラには無い、どこか違った想いが、強く感じる。そんな気がするの」

「別の、想い?」

 

 

別って……まぁ、確かに、あたしとしては、アリアをこの形に作り直した時は、今まで放っておいてごめんなさいっていう想いで作っていたところはある。だから、そういう気持ちが強く出た、ということかな? 楽しんで造った、とは言えないかな

 

あたしやモモちゃん達が全員首を捻って考えてると、サラちゃんが何かを言ってきた

 

 

「それと、この子が言ってる。“早く、自分の生まれた意義を果たしたい”って」

「自分の」

「生まれた」

「「意義?」」

「果たし、たい……」

 

 

サラちゃんが言った言葉に、みんなが首を捻った。アリアの言葉……それの意味が全く分からなかった。造ったあたしも、なんのことか分からなかった

 

いや、でも……ひょっとして、あのシステムのことを言ってるのかな……あれが、そうなのかもしれない。だって、それはこの子を直すうえで、最も強く、激しく、あたしの中で渦巻いた感情と結びついて出来たモノだから……

 

それを使うことを、アリアは望んでる。アリアの言葉は、そういうことなのかな?

 

 

 

……そのうち、出来るかもしれないから、待ってて欲しい、かな

 

 

 

「……あ、時間だ」

 

 

そうこうしていると、ちょうど集合の時間になった。いい感じに練習できたし、ほんと時間があってよかった

 

 

「え? あー、そういえば、これからフォースのみんなでミッションなんだっけ?」

「うん。ごめんね、あたしはここで」

「うん! 今日はありがと!」

「急で来てくれて、ありがとね」

「助かったよー。またお願いね」

「じゃぁね、変なガンプラの人」

 

 

最後のサラちゃんの言葉に、ちょっと苦笑いを浮かべつつ、みんなと別れ、シーサイドベースのロビーへと行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、待ち合わせの時間の前……ヒロトから、シドさんの容態が悪化したとの、連絡がきた



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エルドラの騎士 前編

設定でミスがあった部分があったので、加筆、修正しました。


ヒロトからの連絡……シドさんの容態が悪化したということを聞き、パルはハロのダイバールックを変えるために再ログインし、ヒロトと合流後、すぐさまエルドラへ転送された

 

転送されたら、すぐにフレディと聖獣さんにシドさんの現状を伝えた。フレディはひどく慌ててたし、聖獣さんはやっぱり、みたいなことを言ってて、ある程度は想定していた様子だった。すぐに飛んで行きそうになった聖獣さんだったけど、まだ義翼の仕上げが終わってないから、出ることは出来なかった

 

そこで、義翼の仕上げのためにパルが残って急ピッチで作業を進めることになり、残ったメンバーでシドさんの捜索、そして救出をしようということになった

 

 

「完成したんだな」

「あぁ! おかげさまでな。“イージスナイト”って名付けた!」

 

 

その出発のまえに、カザミの機体がジャスティスナイトでも、ジャスティッガイでもなく……前にリアルで会った時に未完成だった新機体を引っさげてきた

 

 

「イージス……盾か」

「へぇー、いいじゃん」

 

 

その見た目は、SEEDのライバル、アスランが最初に乗ったMS、イージスガンダムを模した機体だった。頭部や足、盾にその意匠が施されていたり、パッと見でイージスらしい部分があるなか、よく見るとそのパーツ構成には、全くイージスの物を使用している様子はなかった(あるとするなら、盾と一部装飾ぐらいだろうか)

 

合わせ目やパーティングラインの無さ、面出しとヤスリがけをとことんやり、尚且つ装甲の厚みを増す為に何重にも塗膜を丁寧に張ってるのが見て分かる。見る限り、防御に特化した機体だと分かる。ナノラミネート装甲並みの強度持ってるんじゃない?

 

 

「お前が守りを優先するとはな。もう撃墜数はいいのか?」

「いいわけねぇだろ? けど、こいつで出来るだけ敵を引きつける。そういう機体に仕上げた。だから頼りにしてるぜ。メイ、リアン、ヒロト」

「心得た」

「りょーかい、リーダー」

「あぁ」

 

 

しかし、ジャスティスからイージスか……まぁ、本来の性能では弱体化してるような感じだけど、GBNに於いて性能はガンプラの作り込みで変わる。ここまで作ってある機体なら、以前のジャスティスナイト以上の性能を持っているだろう。よくここまで作ったわね、カザミ

 

 

「にしてもお前の新型アーマー、重機みてぇだな」

 

 

そして視線はイージスナイトからヒロトの機体……ヴィートルーガンダムの随伴機として持ってきたモノへと向けられた

 

オレンジ色という非常に珍しい色に、全体的に他アーマーよりも強固だと分かるほど厚い装甲。そしてなにより目を引くのは、その上に搭載されている……大型のドリル

 

間違いなく、重武装で近接格闘戦をする機体であると分かるアーマーだった

 

 

「対ガンダムフレーム用のアーマーだ。宇宙世紀系相手に使うことになるとは思わなかったけど」

「へっ。悪魔狩りならちょうどいいじゃねぇか」

「だな」

 

 

なるほど。ナノラミネート装甲に対応したモノといおうことか。確かに、これならあの装甲でも一撃でもっていける気がする。にしても……

 

 

「ドリル……素敵……」

「え?」

「あ。な、なんでもないよ!」

 

 

いかんいかん、ついうっかり見蕩れてしまい、声に出してしまった……

 

 

 

そして、出撃の準備を整えた後、パルとフレディ、聖獣さんを残し……あたし達は、シドさんを目撃したという集落の人たちの元へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリアでみんなの機体を牽引しつつ、一旦避難活動を続けているムランさんの元へと向かい、ゼルトザームを目撃したという人たちの集団と出会った。その人たちによると、ゼルトザームはその村の西の方へと向かっていったという。その情報を元に、再びアリアを飛ばして向かっていた

 

 

『とりあえず確認だけど……どうやって戦う? ポジションは?』

『ポジションは、カザミが前衛、俺とメイが中距離、リアンが後ろだ。俺とメイで牽制しつつ、隙ができたらリアンが主砲を撃ってくれ。ゼルトザームが止まったら、俺が一気に詰めて腕を破壊する』

『分かった』

『オッケー。援護射撃出来そうな時は、あたしも撃ってもいいよね?』

『あぁ……カザミ、悪いが攻撃を受け続けて欲しいんだが、行けるか?』

『問題ねぇよ。むしろ、そういうのを考えて作ってんだ。やってやるよ!』

『頼む』

『任せろ!』

 

 

その移動の最中に、作戦会議を済ませておく。まぁ、内容としては、みんなで囲んでフルボッコにしよう。というモノだけど……あの人の実力を考えると、それぐらいでなければ勝てる気がしない。むしろ、そこまでしないと、勝てそうにはない

 

 

『あとは……他のヒトツメがどう動くか、だな』

『村の人の話だと、ヒトツメと交戦した、と言ってたな』

『できることなら、シドさんがすでに一掃してくれた後ってのがベストかもしれないけど……交戦中だったら、どうする?』

『そのときは、ゼルトザームを利用しつつヒトツメをまず一掃する。その後、全員で抑えつけよう』

 

 

つまり、必ずあたし達対ゼルトザームの状態を作る。それが第一、かな

 

 

『かなり危険な状態になっているようだ……早く助けないと、まずいことになる』

 

 

悠長にしていられない。ということか……時間が限られている中、シドさんを止める必要がある。だったら、速攻で行くしかない

 

 

『……? なんだ?』

 

 

その途中、カザミが何かを見つけたようだった。レーダーを確認すると、そこには、ヒトツメの部隊が移動しているのが分かった。数はそれなりに多く、大部隊と言ってもいい

 

でも、動きが妙だった。こちらを仕掛けていくわけでもなく……なにやら、別の目的があって行動しているようにも見えた

 

 

『もしかして……後を追ってみよう。リアン』

『りょーかい!』

 

 

ヒロトの指示で、ヒトツメに気づかれないよう、そのあとを追うのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

その部隊を追っていき、敵が停止したかと思ったら、地面に向かってビームを撃ち始めた。その着弾点をみると、そこには……

 

 

『ゼルトザーム!』

『いやがったか! って、仲間割れか?』

 

 

そこには、ヒトツメの大軍を相手に戦っているゼルトザームの姿があった。今までだったら、仲間割れ? と疑問に思うところだけど、先ほどの村人の話から推察していた、洗脳が解けかかっているという話が本当なら、納得出来る

 

 

『交戦中だったか』

『んじゃぁ、まずはヒトツメ共を追っ払うとこからだな』

『あぁ。皆、やるぞ!』

『『『おう!』』』

 

 

ヒロトの掛け声と共に、アリアの飛行形態を解除し、みんなが一斉に地上へと降下する。何発か牽制でビームを撃ち、不意をつけたヤツは破壊されていく

 

 

『みんな! エネルギーが減りそうになったら言ってね!』

『例の機構か! なら、遠慮なく全力でいくぜぇ!』

 

 

そう言って、カザミはランスから一斉にビームを連発していく。弾切れなど考えてもいない連射っぷりで、すぐに敵を撃破していく

 

ヒロトとメイも、同じように初手から全力でヒトツメのMSを仕留めていく。次のゼルトザームとの戦いで余力を残すべきだろうけど、それを一切考えていないかの如く、ゼルトザームと距離を置いているヒトツメを倒していった

 

 

『って、みんなやりすぎでしょ。流石にこっちも無尽蔵っていうわけじゃ……』

 

 

あたしも、みんなと距離が離れているヒトツメと、こちらを認識し、攻撃を向けようとしていくゼルトザームに対し、腕を向ける

 

 

『ないのよ!』

 

 

腕の中央、本来のハシュマルの時は運動エネルギー弾……射出式の杭を撃つ発射口を改造し、ビームガンとした部分から、何発ものビームを連発する。主砲よりも威力は低いし、ライフル並の出力ではあるけど、あのデスアーミーやドートレスなら倒せるし、強敵相手になら牽制に使える

 

あのレポにあった改修案の一つを採用したけど、これにしいて正解だったかも。実弾なら弾倉が必要で、重さで照準がブレてたかもしれない

 

そのビームを受け、ヒトツメの何体かは撃破、ゼルトザームも動きを一旦止めることができた

 

遠距離からゼルトザームの動きを押さえつけていくと、そこにヒロトとメイが向かっていき、あたしに代わって動きを押さえつけて行く。あたりを見ると、もうすでにここにいたヒトツメは全て倒しきったようだった

 

 

『カザミ! 今のうちにリアンから!』

『おう! 頼むぜ、リアン!』

『オッケー!』

 

 

敵の一掃を終え、カザミの元へと急行する。ダメージを受けたようだけど、その頑強さで傷など一つもないイージスナイトを見て、これならすぐに済むと判断する

 

 

『ちょっとだけ動かないでよ』

『わかってるって』

 

 

イージスナイトの背後にアリアを移動させ、ウィングバインダーのカバーを展開する。そこからマイクロウェーブ波を発生させ、“イージスナイトにエネルギーを供給する”

 

 

 

本来、ハシュマルはプルーマとセットで運用するものだ。だが、あたしのアリアは単体……つまりプルーマに該当するものを用意していないのだ。故に、このマイクロウェーブ発生機構がまるごと余剰となっていた。おまけに、プルーマ製造機構も

 

そこであたしが考えたのが、このマイクロウェーブ波による供給を、プルーマではなく、味方の機体へと変えれば……修復も、味方機のリペアに運用可能なのでは? と

 

その考えはまさにドンピシャ、エネルギー供給は見事成功出来た。リペアの方は、専用のユニットが必要なんだけど、砂をバカみたいに消費しちゃうかもと思って、今はオミットしている。一応、そのユニットはできてるし、持ってこようと思えば持ってこれるんだけど……そっちの方は分からないけど、供給の方がうまくいったんだから、多分、うまくいくと思う

 

移動式のエネルギー供給と簡易修復、そういった支援を行えるのは、MA由来の大容量のエネルギーと、エイハブリアクターとミノフスキー由来の熱核反応炉を有するが故に行えるシステムだった

 

 

 

ここに来る前に試して、問題なく機能することができた。まぁ、やってる間は隙だらけになっちゃうけど……こうして状況を整えれば、問題なく行える

 

 

『よし、チャージ完了!』

『サンキュー。そんじゃぁ、行ってくるぜ!』

 

 

そして、イージスナイトがチャージを終え、ゼルトザームへと向かって行く。それと入れ替わるようにヒロトが後ろに下がって行くのが見え、その近くへと向かう

 

 

『頼む』

『任された!』

 

 

ヒロトのヴィートルーにも、イージスナイト同様にマイクロウェーブ波を当て、エネルギーを供給していく。カザミほど消耗してる感じじゃないから、すぐに供給は終わりそうだった

 

 

『メイは問題ないようだ。俺のが済んだら、リアンも攻撃に回ってくれ』

『了解!』

 

 

あれだけ動いていたけど、それでも余裕を残していたのね……さすがね、メイ

 

そして、ヒロトからの指示を受け、ヴィートルーのバックパックがモニターに写る中、次の行動の為の準備を進める

 

 

 

 

 

《それと、この子が言ってる。“早く、自分の生まれた意義を果たしたい”って》

 

 

そのさなかに、一瞬、なぜか頭にさっきのサラちゃんの言葉が過ぎった

 

 

 

 

 

『どうした?』

『え? あ、なんでもないよ』

 

 

まだあのシステムは試したことがない。今あれをやろうとするのは、流石に大きな隙になるし、失敗した時のリスクの方が高い気がする……

 

 

 

ごめん、アリア。アレを使うのは、もう少しだけ待って

 

 

 

『よし。行くぞ』

『うん!』

 

 

エネルギーの補給が完了し、ゼルトザームと交戦している二人に合流をしようと試みる……直後

 

 

 

[ビー!! ビー!!]

『『!?』』

 

 

ビームが接近して来ているアラートが鳴り響き、自身の近くにビームが何発か打たれていた

 

 

『ッ! 新手のヒトツメか!』

『そんな……ッ!』

『それに、この攻撃……!』

 

 

そのビームが飛んできた方角……そこを見ると、ヒトツメの大軍が押し寄せてきていた

 

 

〔彼は奪わせません〕

 

 

その先頭には、アースリィ擬きの他に……片翼だけの機体に、紫の粒子を出す機体、大型の大剣を担いだ機体が並んでいた



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エルドラの騎士 中編

スランプになりかけてる。なかなか文章が思いつかない……
でも、次回でやっとやりたいことの一つが出来る……!

一部修正を行いました。


アースリィ擬きに率いられるように現れたヒトツメの大軍と、そして新たに見る3機のMS……その乱入によって、戦場はあたし達とゼルトザーム、そしてヒトツメという三つ巴の乱戦へと入っていた

 

ヒトツメの陣営は、今まで出てきたデスアーミー、ドートレス、グレイズ、ウィンダム。それら量産機の大軍の他に、アースリィ擬きのような、明らかに上位機体だと分かる3機の新型が現れていた

 

片翼のガンダムっぽいやつの翼が、六つの羽のようなものへと分離し、それが自立してビームを乱射していく。その姿、そしてその行動……それは紛れもなく、あの有名な機体

 

 

『νガンダムのアーマーか!』

 

 

宇宙世紀……いや、全てのガンダムの始まりとも言える作品の主役の最後の機体。アクシズ落としから地球(ほし)を守ったガンダム、それを模したアーマーを纏ったアルスのコアガンダムだった

 

 

 

そして、もう一体。紫の粒子をバックパックのユニットから噴出させながら、空中を滑るように動き回る機体であり、両の腰のバインダーから、牙のような形状のモノを射出し、それが執拗にあたし達を狙っていく……

 

 

『こっちはアルケーかよ! こいつらに手こずってる場合じゃねぇのに!』

 

 

アルケーガンダム。OOガンダムの敵として現れ、一つの国を滅ぼしたガンダム。乗り手の残虐性も相まって、人の情を知らぬ冷酷非道な殺戮マシンに映ったモノのアーマーを装備したヒトツメのコアガンダム……

 

 

 

そして、最後の一体……手足の長い白き装甲に、悪魔の爪を思わせる腕、そして陸地での動きに強い踵の高い脚部……そしてなによりも目を見張るのは、手にした大型の剣……

 

 

『これって、まさかバルバトス!? しかもルプスで、ヘルムヴィーゲの大剣持ちとか……あたしのアリアに対するメタって言いたいわけ!?』

 

 

鉄血のオルフェンズの遥か過去にて、厄災(天使)終わらせ(殺し)た72柱の悪魔の一体。しかも原作再現と言わんばかりに、その装備が対ハシュマル戦時のモノを模したアーマーを武装している敵のコアガンダム……

 

 

 

アルスが操るコアガンダムが、それらのガンダムタイプのアーマーを着けた状態で、新たに加えられていた。それら新型機に対し、あたし達は翻弄されていく

 

 

『ッ! こっちくるな!』

 

 

複数のヒトツメを引き連れ、バルバトス擬きが突進してきた。1対多の戦いは不利なので、なんとかして距離をおこうとする。だが、相手の速度はかなり早く、こちらを捉えていく

 

しかも、本来のバルバトスには無い飛行能力を持っているために、空へ飛んでも追いかけてくる……そんなのアリ!?

 

一応、距離はまだ詰められていないけど、推力がかなり高く、徐々に追い詰められていった

 

 

『ウオリャアァァァーーッ!!』

 

 

だが、そこへカザミがバルバトス擬きに突撃を仕掛け、その動きを抑えてくれた。反撃のために腕を振り上げ、そのままチョップを繰り出すバルバトスだったが、その頑強さで、なんなく受け止めていた

 

 

『こいつは俺が抑える! お前は周りを頼む!』

『っ、サンキュー、カザミ!』

 

 

カザミがバルバトスを抑えてくれている間に、敵との距離を取る。そこからカザミに向かっていくデスアーミーやドートレスをビームで撃破していき、グレイズには接近してテイルブレードで串刺しにし、同じグレイズにぶつけて倒していく

 

だが、倒した所で、次から次へとヒトツメが現れてくる。宇宙戦の時よりも少ないけど、今までよりも遥かに多く、確実にアルスが本気出してると分かる。その証拠に、新型を3機も……

 

 

[ビー!! ビー!!]

『ッ!』

 

 

攻撃の接近警報がなり、すぐにウィングバインダーのカバーを展開し、ビームバリアを発生させる。そこへ牙状の遠隔攻撃端末……ファングが飛んできた

 

 

『ッ、アルケーなら……まだ!』

 

 

ビームバリアを貼った状態で、アルケーの姿を補足する。まだ遠くにいたアルケーに対し、ビームガンを連発する。でも、GNドライブを持つ機体特有の動きであっさりと避けられていく。あの動きがなかなか厄介なところがあるから、GNドライブ持ちは苦手だ

 

しかもピンポイントで戦闘能力が遠近共に高水準のアルケーを選んでる辺り、アイツも理解してる……本当に腹立つなぁ!

 

 

『メイ!』

 

 

少し離れたところで、ヒロトの声がした。目を向けると、メイがアースリィ擬きの攻撃をバリアで防いでいるところだった。状況から見るに、ヒロトが不意打ちを受けそうな所をブロックした、ってとこか

 

 

〔なぜ邪魔をするのです〕

『お前こそ、なぜシドー・マサキに固執する!?』

〔私の使命はこの星を守ること。妨げる力は奪い、利用する〕

 

 

な、なによそれ……確かに、それは戦いにおいて有効な手だけど、それで洗脳して意のままに操るとか、外道過ぎない!?

 

 

〔取り戻したい。あなた方には奪わせない〕

『彼には、本来いるべき場所がある! その帰りを待つ者がいる!』

 

 

メイはアルスに問いかける。シドさん、シドー・マサキには、帰るべき場所があるのだと。彼を縛り付けて、そして挙句に虐殺の道具にしているこの状況……それは果たして、アルスに与えられた使命なのか、と

 

 

『お前の使命とはこんなことではない! お前を生み出した者の願いから乖離している!』

〔私の使命はこの星を守ること〕

『思い出せアルス! 古き民がお前に託した願いとはなんだ! 本当は何を望んだ!』

 

 

今のアルスの行動は、アルスが生まれた理由と合致しているのか……守るべき星に戦火を振りまくのは、その為に人の意思を消し、操って殺戮の機械とするのが、果たして、アルスにその使命を与えた人の本心なのか、と……

 

 

〔……私の使命はこの星を〕

『なぜ分からない!!』

 

 

それに対し、アルスは頑なに、この星を守るということを言うばかりだった。もはや、取り付く島もない

 

 

『ッ……腹立つやつだなぁ、相変わらず!』

 

 

あれじゃぁ、まるで壊れたラジオっていうか、なんかそういうモンではないかと思ってしまう。こうなったら、もうぶっ叩くしかしょうがないんじゃない!?

 

 

『ッ……あぁもうしつこい!』

 

 

先ほどから、アルケーの攻撃を何度も受け続けている。幸いアリアの防御力で無傷に済んでいるが、多方向からの攻撃で身動きが取れない状況……これじゃぁ、何も出来ないじゃない!

 

 

『もう、どうすれば……って、あれ?』

 

 

いきなり、アルケーからの攻撃が止まった。一体何がと思ったら、ゼルトザームがアルケーに対し攻撃を仕掛けていた

 

その動きは目に追うことしか出来ないレベルで、一気に接近したかと思ったら紙一重ですれ違い、相手にファングを“差し向けるように誘導してた”。そのファングがゼルトザームに殺到していくところを、バックパックのバインダーに折りたたまれた主砲を展開し、すぐさま発射して一掃した

 

 

『さ、さすがシドさん……って、感心してる場合じゃない!』

 

 

シドさんを救出するのがあたし達の目的だ。その為に、まずはヒトツメの連中、アルスをなんとか撃退しなければ

 

ゼルトザームの方を見ると、νガンダムのファンネルで主砲が破壊されていた。そのままファンネルからの攻撃を浴び、身動きが取れなくなっていた

 

 

『ッ! 今!』

 

 

周囲の状況をレーダーで確認し、νガンダムの方を捉える。ファンネル操作に集中しているのか、隙が見えたνガンダムに対し主砲を放つ。直撃コースを行き、このままいけば撃破出来ると踏んだ

 

 

『よし!……って、うまくいかないかッ』

 

 

直撃の寸前、ファンネルを周囲に呼び戻し、ファンネルからピラミッド状のバリアを展開した。主砲はそのままバリアに阻まれ、撃墜までは至れなかった

 

 

『でも、道は出来たッ!』

 

 

ゼルトザームに、ヒロトが接近していた。アルケーが阻んでいたが、それを突破し、ここまで来ていたのだ。すでにレーダーでヒロトの位置は把握していたので、ファンネルに邪魔されないよう、それをどうにかする必要があった。その目論見はうまくいき、こうしてヒロトがゼルトザームへと掴みかかった

 

対してゼルトザームは大型ランスをヴィートルーのビッグビームバズーカを貫き、そのまま右腕のアーマーを壊していくが、そこを逆手に取り、至近距離で脚部のミサイルポッドから何発ものミサイルを撃ち、ランスを破壊する

 

 

『やった! このまま腕と角を壊せば!』

[ビー!! ビー!!]

『ッ、もう! 鬱陶しい!』

 

 

攻撃接近の警報のあと、アルケーとνガンダムがこちらを攻撃してきた。すでにファングは新たな物を出してきて、ファングとファンネル、そしてアルケーとνガンダム本体からの攻撃が押し寄せてくる。

 

が、その全てがビームか、低威力の突進のみ。だから、アリアのナノラミネート装甲で余裕で耐えれるし、ファングの攻撃もアリアの装甲ではびくともしなかった

 

ヒロトがゼルトザームを何とかしてくれると信じ、あたしはこの2体の惹きつける。シドさんさえ助け出せれば、アルスも撤退するだろうと思うから

 

 

『リミテッドチェンジ!』

 

 

そしてヒロトの方は、壊された右腕のアーマーを、持ってきていたサターンアーマーの一部から装備し、大型のドリルがヴィートルーの腕に取り付けられた

 

大きく唸りを上げ回転するドリルを、、ゼルトザームに向けて放つ。ゼルトザームも、それを腕で押し止めようとし、ドリルに掴みかかった

 

 

『グウッ、グ……ギ、ギアァッ……ッ!』

『ッ! シドー・マサキ!』

 

 

通信回線から、シドさんの声がヒロトを通じて流れてきた。その声は、頭の痛みを耐えているかのような、そんな苦しい状況であることが察せられた

 

 

『目を覚ませ! お姉さんが、ミズキさんが待っている!』

『ッ……!』

 

 

一瞬、苦悶の呻き声を止めて……そして、次に思わぬ言葉を、シドさんは漏らした

 

 

 

 

 

『殺せ……』

 

 

 

 

 

『『!?』』

 

 

その言葉に、ヒロトとあたしは絶句した

 

 

『殺して、くれ……! 俺は、この手で、もう……ッ! 取り返しの、つかないッ!』

『君に守られた人達もたくさんいるはずだ! 本当の君に!』

『そうよ! あなたはただ、操られてるだけ! そんなこと、気にする必要はないわ!』

 

 

ヒロトと同じように、あたしもシドさんに呼びかける。洗脳が解かれつつあり、こうして会話をすることができるが……もうすでに、彼の心は、絶望していた

 

聖獣さんによってエルドラに召喚されて、そこで人々を守るために戦うことを決めた人。でもその最中に破れ、敵に捕まったすえ、洗脳を施され、逆に守ると誓った人々を殺めることになってしまった……確かに、その後悔、慙愧の念はそうとうのものなのだろう……

 

でも、だからって死ぬ必要はない! だってそれは、アルスのせいでそうなっただけで、決してあなたがそれを望んでやったわけじゃないから!

 

 

『戻れない……戻せ、ない……!』

『そんなことはない! やり直すんだ!』

『シドさん!!』

 

 

懸命に、ヒロトとあたしはシドさんに言葉を贈る。だが、シドさんはそれに応えることはなく……

 

 

『ッ……もう……ッ!』

 

 

一際鈍い……鉄が歪んで軋むような音がゼルトザームから鳴った直後、その変貌は起きた

 

 

『『!?』』

 

 

ゼルトザームの形が歪みだし、その体から、触手のようなケーブルが蠢くように溢れてきた。まるで、ゼルトザーム……いや、ガンダムテルティウムに蝕むように入り込んでいた寄生虫が、姿を現したかのような……そんな印象だった

 

 

『ぐあぁッ!?』

『ヒロト!?』

 

 

その衝撃で、ヒロトが吹き飛ばされる。幸い、大したダメージにはなっていないようだった

 

そして、吹き飛ばしたゼルトザームは、もはやMSとしての見た目はしておらず……何かの生体兵器というか、無機質ながらも、有機的な形相を帯びていいた

 

 

『グゥッ、ギウッ……グアアァァァァァーーーッ!!!』

 

 

一際苦しそうな悲鳴を上げ、ゼルトザームもまるで慟哭するが如く装甲を期しませ、異形さが増した右腕を振るう。音の壁が破裂し、目に見えるほどの衝撃波を巻き起こし、周囲一体をなぎ払う

 

 

『飛べ!』

『『!?』』

 

 

アースリィ擬きと対峙していたメイ、バルバトス擬きとやりあっていたカザミの二人が、ヒロトの号令ですぐさま大地を蹴って跳躍する。その直後に、周囲一帯を覆っていたヒトツメの大軍の、その大半を破壊しつくした

 

 

『なによ、これ……』

 

 

空中にいたあたしは、その様を眺めた。一度にあれほどの大軍を、たった腕のひとふりで壊滅寸前まで倒し尽くすなんて……その攻撃力に、恐怖した

 

 

[ビー!! ビー!!]

『ッ! しまった!』

 

 

こちらに急接近してくる機体を感知した。その向かってくる方向を見ると、バルバトスがこちらにめがけて突進してきていた。衝撃波を回避するために、カザミが押さえ込むのを解いたために、自由になった、ということなのだろう

 

っていうか、アイツ、まさか本当にあたしの対策、というか、仕留めるために用意したやつなの!? さっきも執拗にあたしのことを追いかけていたような気がするし、ほんとにメタとして造ったの!?

 

 

『だから、来るなって言ってるでしょ!』

 

 

せめてもの抵抗で、肩に内蔵していた機関銃を展開し、バルバトスめがけて打ち込む。が、そんなもの豆鉄砲とでも言わんばかりに、気にする様子もなく踏み込んでくる

 

とにかく距離をおかなければやられる。周りにヒトツメの雑兵がいる中で、戦われたら勝目なんてない。1対1のタイマンであれば、勝機は十分にあるというのに……逃げ回ろうにも、他のヒトツメに道を阻まれ、バルバトスに追いつかれそうになる。そんな、追われる恐怖にかられた

 

 

 

 

 

その時、だった

 

 

『上から攻撃が来ます!』

『うぇ!?』

 

 

パルからの通信があり、その後、獣の咆哮が鳴り響いた直後。青い稲妻が、全てのヒトツメの元へと降り注ぎ……ウィンダムやグレイズ、ドートレス、そしてデスアーミーの全てを破壊した

 

そしてアースリィ擬き、アルケー、バルバトス、νガンダム、それらガンダムタイプの機体も、その稲妻を防御するために動きを止めていた

 

 

『これって……』

 

 

これは、見たことある。確か、アルスのアースリィ擬きと初めて戦った時にあったやつと……っていうことは!

 

 

『クアドルン……!』

『やったな! パル!』

『はい!』

 

 

聖獣、クアドルン。その漆黒の体躯と異なる白い翼と、その対になるように鋼鉄で作られた義翼を広げ、パルと共に、この戦場の空に姿を現した

 

 

〔思った以上に快適だ……〕

 

 

頼もしい、援軍だった

 

 

『よし、これなら!』

 

 

周囲を見渡すと、敵の反応は残るガンダムタイプの4機のみ。こちらはパル含めて5機と聖獣さん。戦力差では、こちらが圧倒的に有利になった

 

つまり……反撃、開始ということだった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エルドラの騎士 後編

完全にスランプだった。文字が浮かばなくなって難産だった……



次回、原作とほんの少し乖離していきます


〔マサキは、私がやる!〕

『頼んだぜ! 聖獣さん!』

 

 

聖獣さんが、ゼルトザームへと向かっていく。残るあたし達は、ヒトツメのガンダム達と相対する

 

ヒロトはパルと一緒にアルケーへ、カザミはνガンダムへ、メイはアースリィ擬きへ。そしてあたしは、バルバトスへと突撃した

 

 

『末那式システム、発動!』

 

 

一気に決着をつけるべく、末那式システムを起動する。頭部センサーが緑色から青へと発光し、稲妻ではなく流線的な線を描く。それと同時に、アリアと自分が一体となっていく感覚となり、思考がダイレクトに機体へと反映されるようになった

 

 

『今までよくも怖がらせてくれたわね! タイマンでなら、アリアでも十分戦えるのよ!』

 

 

バルバトスの大剣の横薙ぎを、機体を少し浮かせる程度で回避をし、その横っ面めがけて腕をなぎ払う。すると攻撃は見事ヒットして、大きく吹き飛ばす

 

さっきまでの弱気がまるで嘘のようになくなり、バルバトスに対し攻め気になって動き始める。大剣を振り回し続けるバルバトスの動きに合わせ、必要最低限の行動で回避し、防御し、そして隙を見て腕をぶつけたり、テイルブレードで切り込んでいく

 

今までこの動きができなかったのは、単純に周りにも敵がいたから。あたしは戦っている時、どうしても対峙する相手に気を取られすぎてしまって、周りが見えなくなってしまう所がある。そうなると、横合いからの攻撃とか、死角からの攻撃に対応できなくなってやられてしまう。かと言って、周りにも気を配ろうとすると、途端に攻撃の手が緩んでしまう。だから相手に対し攻め気になれず、ジリ貧となる

 

こんな感じになっているのは、あたしがガンプラバトルで最も時間を使っているのが、おじさんとGPDでやっていることの方が長く、経験が豊富であるからだ。だから、一対一の戦いなら、AIごときに負ける気はない

 

 

『おりゃぁッ!』

 

 

テイルブレードで、大剣を持つ手に攻撃を加えていく。なんとか武器を手放すように、その一点を主に狙っているが、そう上手くはいかない。流石にあの大剣の攻撃を受ければ、アリアの装甲でもひとたまりもない

 

攻撃を喰らう気はないが、もしもの為というのもある。そこは一番になんとかしたいとーーー

 

 

『リアン! 危ない!』

『え? きゃあぁッ!?』

 

 

横合いから、何かにタックルを食らった。かなり早い速度でこちらに攻撃を仕掛けてこられたから、対応が出来なかったし、警報もならなかった

 

一体何がきたのかと思ったら、真っ赤に染まったアルケーが、独特の機動音を鳴らしながら動き回っていた。それに、さっきまでよりもかなり早くなって行動している……

 

 

『ッ、トランザム……!?』

 

 

OO系機体……太陽炉を持っている機体の奥義とも言うべき形態。機体のスペックを三倍にするシステム。まさか、そんなものまで搭載してたなんて……!

 

っていうか待って。そういえばアイツ、太陽炉とか、GN粒子とかを現実で再現したっていうの? いや、それ考えたらミノフスキー粒子とか、エイハブ粒子とかも、これ、現実で再現してるってことだよね……え、架空の粒子を再現してるとか、やばくない?

 

 

『って、余計なこと考えてる暇ないっての!』

 

 

アルケーのタックルをくらって出来た隙に、バルバトスが猛攻を仕掛けてきた。それに対し回避に集中せざる得ず、いきなりピンチに陥ってしまった

 

こうなったら、隙ができたタイミングで突き飛ばして、主導権を握り返さないと……!

 

 

『グゥアアアァァァァァーーーッ!!!』

『! シドさん!?』

 

 

聖獣さんとゼルトザームが戦っている所から、こちらにも聞こえるほどの悲鳴が轟いた。バルバトスとの距離を一気に離し、その方を見ると、ゼルトザームの機体から、さらに触手が生えてきて、右腕がさらに膨張して機体と同等かと思える程に巨大化していた

 

 

〔ッ……フンッ!〕

 

 

だが、そこへ聖獣さんが体から稲妻を発生させ、それを全てゼルトザームへとぶつける。それだけで、ゼルトザームの動きを止め……地面に倒れさせた

 

 

『やった! これであとは腕と角を!……え?』

『『『『『?』』』』』

 

 

でも、聖獣さんは攻撃の手をやめず……全面に魔法陣っぽいものを発生させ……

 

 

『ちょっと待って……まさか!?』

〔ッ!!〕

 

 

 

 

 

そこから、ゼルトザームへ向けて……まるで、“シドさんを確実に殺す”かのように、極大の光を放った

 

 

 

 

 

『ッ!!』

『メイさん!?』

 

 

その光がゼルトザームへ直撃する寸前、メイがゼルトザームを庇うように間に割って入り、防御した。その威力は凄まじく、ウォドムポッドでは耐え切れなく……機体は爆破し、そこからMDが飛び出してきた

 

なんとか抜けられたメイが、聖獣さんへ向けて怒りを含んだ声で怒鳴った

 

 

『マサキを殺すつもりか!』

『『『『『!?』』』』』

 

 

やっぱり、そうだったのね。今、聖獣さんは、確実にシドさんを殺そうとした。今の光で、跡形もなく……

 

 

『なんで……どうしてッ!?』

〔邪魔をするな! マサキも望んでいる〕

『はぁ!?』

 

 

望んでるって……まさか、さっきシドさんが言ってたこと、あれをまさか、そのまま鵜呑みにして!? 

 

 

〔マサキは咎を負った。彼のような若者が背負おうには残酷過ぎる咎だ〕

『ッ……アルスのせいだろ! シドー・マサキは悪くねぇ!』

 

 

カザミの言うとおり、シドさんは洗脳されてて、それでまったく望んでもいないことをやらされていただけなのに。それでそんな、咎なんて……彼にそんなものなんて、まったく無いのに

 

それでも、聖獣さんは聞く耳をもってくれず、全ての責任は、シドさんをここに呼び寄せた自分にあるからと言って、シドさんへ向けて再び攻撃を放とうと、魔法陣を展開した

 

 

『クアドルンさん! 言ってくれたじゃないですか! 何度でも立ち上がる! 人っていうのは、そういうものだって!』

 

 

ファンネルを切り払いつつ、パルが聖獣さんへと話しかける。かつて、飛ぶことを恐れていた。けど、自分はまた飛べた。恐れを乗り越えることができたのだと。だから、聖獣さんも、シドさんだって、きっと乗り越えられるのだ、と

 

しかし、それでも聖獣さんはパルの言葉を否定する。それは茨の道、いつか苦しみに押しつぶされ、心を病んでしまうのだ、と……

 

 

『そんな事ない! シドさんは、強い人よ! たった少ししか会った事は無いけど…でも分かる! あの人なら、きっと立ち直ってくれるって!』

〔その強さが、逆に脆さともなる。その責を強く抱き過ぎて、いつか心が砕かれる。そうなるならば、ここで一思いに……ッ!〕

 

 

あぁもう! なんで分かってくれないのよ! シドさんを助ける為に、今こうしているって言うのに!

 

 

『じゃぁあなたはどうなる!?』

 

 

ヒロトも、聖獣さんの前へと立ち塞がり、声を上げる

 

 

『彼を撃てば、今度があなたが苦しみ、押しつぶされるんじゃないのか!?』

『ッ……』

 

 

そのヒロトの言葉は、彼の過去が……かつて味わった深い悲哀を感じられた

 

大切だった人を、為す術もなく撃ってしまった記憶。それが、今のこの状況と重なって見えてしまうのだろう……だからこそ、彼の言葉から伝わる思いが、強く、何よりも強く、響いてくる

 

そして、今は違うのだと、彼は叫ぶ。ここには……聖獣さんには、それ以外の選択肢がある。あたし達がいるし、それに救う手立てだってある……2人がどんな事をやってきたのか、詳しくは分からないけど、でも2人が育んだ絆を、こんな形で終わらせたくないと……

 

 

『俺と同じ後悔を、あなたにはさせないッ!!』

 

 

だから止める。シドさんは救う。それを、ヒロトは叫んだ

 

 

〔……〕

 

 

ヒロトの言葉に、聖獣さんは目を細め、彼を見抜くような視線を送る。いったい何を考えているのか、分からない感じだけど……

 

そして、目をつむり、力を込めるように体を逸らし……

 

 

 

先ほどと同じように、あの魔法陣から極大の光を放った

 

 

 

『ヒロトぉっ!』

 

 

 

その光は、ヒロトのヴィートルーを飲み込む……ことはなく

 

 

『『『『『!?』』』』』

 

 

聖獣さんの攻撃は、アルスのガンダム達に向けて放たれていた。それを防ぐために、νガンダムのファンネルがバリアを貼ったが、防ぎ切れるものでは無かったのか、ファンネルが限界を迎え、自壊していた

 

 

〔マサキは、任せる!〕

『あぁ!』

 

 

そう言って、聖獣さんがアルスのガンダムへと向かっていく。あたし達がシドさんを助けるのに、邪魔にならないように押さえつけてくれるようだった

 

 

『っしゃぁ! 行くぜぇ!』

『あぁ、クアドルンを援護しつつ』

『マサキさんを救いましょう!』

『ついでに、一体ぐらいはぶっ倒そう!』

 

 

そういって、あたしはずっと押さえ込んでいたバルバトスから少し距離を置き、バルバトスと睨み合う。ナノラミネート装甲を有するコイツには、それに関して詳しいあたしが相手するのがちょうどいいからね……!

 

 

『キングモード!』

 

 

再び立ち上がるゼルトザームの前に、カザミが立ち塞がる

 

イージスナイトの盾に、ランスと腰のサイドスカートのパーツが合体され、巨大なビームソードを形成する。それは、アイツが推しているG-tuver、キャプテン・ジオンの武装に、少し似てるように見えた

 

そこはリスペクト精神というのか、アイツなりのヒーロー像の象徴として、取り入れたモノなんだろう。あと、頭部に王冠のようなものが立ったけど、あれなんでそういう風にしてるんだろう?

 

それに対し、ゼルトザームは破壊されているバインダーの砲身を触手のようなケーブルで作りだし、それを溜め無しで撃ってきた

 

 

『オォォリャァァーッ!!!』

 

 

それを防がんと、カザミが巨大ビームソードを振り下ろす。そして、ゼルトザームの主砲とぶつかり……それが相殺されて、爆発を起こした

 

 

『ヒロトぉ!!』

『コアチェンジ……ヴィーナストゥサターンッ!』

 

 

カザミがヒロトに声を投げる。主砲を放った隙に、一気に接近して仕掛けようというのだろう

 

さらに接近するために、地上での機動力が高いアーマーをサターンアーマーに換装し、ヴィートルーから地上格闘戦特化のサタニクスガンダムへと姿を変えた

 

っ~くぅ、やっぱドリルで突貫は滾るよねぇ! あの巨大さに、反対側についているクローも、ほんと良い!

 

 

『っ!?』

 

 

そっちの方に気を取られていたから隙ができ、こっちで戦っているバルバトスの方が大きく武器を振り上げていた。おそらく、そのまま勢いよく振り下ろし、こちらを両断するつもりなのだろう

 

でも、これが狙いだった

 

 

『ッ……今ッ!!』

 

 

振り下ろされるバルバトスの大剣。それが振り下ろされる。アリアに直撃しそうになる寸前に、横に避けて、当たりそうになるウィングバインダーは後ろへと逃がしながら動かし、攻撃を躱す。そうして、何にも当たらなかった大剣が、地面へと振り下ろされた

 

 

『ここだァッ!!』

 

 

振り下ろし、その反動で動かなくなったバルバトスの両腕を掴んだ。それをそのまま人形の腕を広げるように伸ばし、もぎ取るかのように引っ張る。すでに、大剣はバルバトスの腕から離れていた

 

バルバトスもそれから逃れようと足を動かし、こちらを蹴ってこようとする。が、その前に両足をワイヤーで縛り、身動きを完全に封じることで、反撃を阻止する

 

 

『おぉぉぉりゃァァァァァーーーッ!!!』

 

 

逃れようとするバルバトスの胸部に、嘴のような頭部を突っ込む。そこで、主砲を覆うカバーを展開し……

 

 

 

そのまま、ゼロ距離で主砲を放った

 

 

 

威力は流石に抑えたが、それでも至近距離で、しかもナノラミネート装甲の仕様にされていないであろうコアガンダムの部分に直接ぶつけたのだ。確実に仕留めたと、確信した

 

すると、バルバトスの力が抜けたような感触があり、手放すとその場に崩れ落ちた

 

 

『はぁ、はぁ……うしっ!』

 

 

MA(ハシュマル)MS(ガンダムフレーム機)を倒せた。モドキではあったけど、それを成し遂げたことに、変な達成感を覚えた

 

 

 

 

 

 

 

[ビキリ、ビキ……バキーン……]

 

 

そして、ゼルトザームの方を見ると、異形の腕はもぎ取られており、その角とバイザーのようなものが割れ、砕け散り……ゼルトザームは、砂へと変わっていき、中からシドさんが現れた

 

 

 

これで、シドさんを助け出すことが出来た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔撤退を選た……ん?〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふぅ。とりあえず、作戦成功、かな……あ、あれ?』

 

 

マサキさんの救出を見届けたら、末那式が制限時間で解除された状態へとなった。感覚が元に戻り、いきなり機体ダメージがレッドまで行き、機体が機能停止状態、身動きがとれなくなってしまった

 

まぁ、もう戦いは終わったんだし、別にどうでもいいか。問題は、このアリアを皆で持って行けるかどうか。かな……

 

 

『さて、とにかく、外に出て……あれ?』

 

 

なぜか、機体の外に出られなかった。おかしいな、末那式が終わった後だろうとも、普通に機体の外に出れるはずなんだけど……

 

なんでだろうと、外に何かあるのかと思って、様子を見ると……敵のバルバトスの頭部が、中から何かが這い出たかのように、内側から壊れていた

 

 

〔!? いかん!!〕

 

 

外で、聖獣さんの声が聞こえた。一体何があったのかと思ったら、こっちに向かって来ている

 

え? なんで? と疑問に思っている中、聖獣さんの行く手を阻むように、アルスのガンダムが攻撃を仕掛けている。まるで、“あたしを守るかのように”

 

 

『え? なんで……どういうこと?』

 

 

まったく訳が分からなかった。聖獣さんが向かってきていることも、アルスがそれを阻んだのも……みんなも、一体何があったのかと戸惑っているみたいだし、一体なにが?

 

 

『……? あ、あれ? なに、これ……?』

 

 

コクピットの中が、危険状態を表す赤から、薄い紫色へと変わっていく……それはまるで、“シドさんとの通信で見た、ゼルトザームのコクピット内の色合いと、似ているようで”……

 

 

〔あのガンプラの頭に張り付いているヒトツメを壊せ! マサキの二の舞になるッ!!〕

『!?』『なにぃ!?』『なんだと!?』『えぇ!?』

 

 

聖獣さんが、怒声を上げてみんなに対し叫んでいた。しかも、その内容が、マサキの二の舞に……?

 

その意味を理解する前に、コクピットに、声が響く

 

 

 

 

 

〔システムへの侵食、完了を確認。機能不全となっている障害の排除成功。制御掌握レベルと侵食度の確認のため、こちらでの操縦を執行する〕

 

 

 

 

 

あたしのコクピットの中にアルスの声が響く。そこになぜ? という反応はなく、その内容を聞き、あたしは青ざめた……

 

今、こいつ……アリアを、乗っ取ったって、言わなかった……?

 

 

『うそ……まさか……ッ!? アリア!?』

 

 

突如、アリアが動き出した。主砲を展開し、腕部のビームガンも最大出力までチャージを始め……それをみんなへ向けて放とうとしていた

 

 

『!? みんな避けてーーーッ!!!』

 

 

アリアの三つのビーム砲が放たれる。あたしの叫びは届いたのか、みんなは着弾する寸前に回避、または防御を成功させていた

 

 

『何やってんだ!? リアン!』

『まさか、アルスに操られているのか!?』

 

 

メイの言うとおりだった。もうすでに、アリアはあたしの操縦を受け付けてはくれず、勝手に動いているような状態だった

 

 

『逃げてください! リアンさん!』

『ログアウトするんだ!』

 

 

パルとヒロトが逃げろと言ってきて、それをすぐに試す。でも、機体からも降りれず、ログアウトしようにもなんらかの妨害がはいって、ログアウトできませんと表示されている……逃げようにも、逃げられなかった

 

 

〔敵機体の制御の完全掌握を確認、拿捕の成功。操縦者の処理の為、帰還する〕

 

 

コクピットに、無機質なアルスの声が響く。その内容に……あたしは発狂した

 

 

 

シドさんのようにされてしまう、ということに

 

 

 

『やだ……やだ、やだやだ、やだぁッ!! お願い! 言うこと聞いて! アリアぁぁぁッ!!!』

 

 

操縦桿を一心不乱に動かすが、アリアはそれに応えてくれず……高速飛行形態へと変形し、アルスのガンダムにワイヤーを握らせていく

 

 

『『『リアンッ!!!』』』『『リアンさんッ!!!』』

 

 

皆が、行かせまいとしてこっちに攻撃を放っていく。だが、それをアリアのビームバリアが防いでしまう。あの聖獣さんの攻撃すら、アリアの防御ではびくともしなかった

 

まさか、こんなことになるなんて……思いもしなかった。みんなを守るために作ったものが、逆にみんなとの間に、壁を作ってしまうなんて……

 

 

『いや……いやぁぁぁッ!! 止めてッ!! いやぁッ!! 助けてッ、助けてッ!! カザミ! パル! メイ! フレディ! ヒロトぉぉぉぉぉッ!!!』 

 

 

音速を超える速度で、アリアとアルスのガンダム達は、その戦場となった場所を、過ぎ去った……

 

 

 

 

 

『ッ……リアァァァァァンッ!!!』

 

 

見ているだけしか出来なかったヒロトの叫びが、その戦場にこだました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………

 

………………

 

………

 

 

 

 

 

リアル、ツキザト・アンズの部屋

 

 

「アンズちゃん、ご飯出来たわよ。あら、まだゲームをやってるのかしら……」

 

 

そこに、おばさんと言えるぐらいの年齢の女性が入ってきた。彼女の母方の祖母であり、アンズが今お世話になっている家の家主でもあった

 

 

「えっと、この場合は、頭に被っている機械の赤色のボタンを押して、外せば良かったんだったかしら……集中しているところ、ごめんなさいだけどね」

 

 

申し訳なさそうに、祖母は彼女の頭のヘッドギアの赤いボタンを押して、ヘッドギアを外した

 

 

「アンズちゃん、ご飯が出来たわよ……あら? アンズちゃん?」

 

 

普段なら、外した瞬間に声をあげるものだが、今回はなぜか大人しいままだった。そのいつもと違う様子に、祖母はおかしいと感じ……

 

 

[ドサッ]

「ッ!? アンズちゃん!? アンズちゃん! アンズちゃんっ!!」

 

 

彼女が、椅子から床に意識なく倒れこむという、異変が起きたのだった




25話の唯一の不満点。ヒロトに因縁の相手的な奴がいないこと

というわけで、リアン救出も兼ねたエルドララストバトル、始まります


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。