私はただガチャの景品です (もやしモン)
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私はただガチャの景品です

 終わりというのは物語のように劇的ということはないようだ。

 

 一面清潔なタイルで張り巡らされた集中治療室。清潔感はある。しかし、病院特有の息苦しく、生きにくい。けれど仕方のないことだ。

 この世界はとても生きにくく、不適合者が生き残れない環境で、ひ弱な私が生き残れなかっただけのこと。

 

 必死に生き残ろうと金を注ぎ込んだが、いやはやなんとも見苦しい入院生活であった。死んでいるのと変わらない。未練というにはあまりに小さい。

 

 自由が欲しい。一度だけでいい。大地を自由に駆け抜けたい。大空を飛んでみたい。これは我儘だろうか? 良いではないか、人間は欲がなければ生き残れない生き物なのだから。

 

 間もなく日付が変わる。

 

 残り1分……意識が遠のく………20……あぁ…これが死か…なんとも心地よいようで…なんとも悲しいものだ、

 

 

 

 

 

 

 嗚呼…死にたくない…な…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真っ白な世界が広がっていた。

 

 身体が動かないのに不自由さを感じない。

 

 夢の中のようでありながら消えたはずの意識がちゃんとあった。

 

 落ちていると感じたのは下にある黒いモヤが徐々に広がっているから。

 

 白いモヤから黒いモヤに変わる。

 

 不快感は感じない。

 

 それに支配されていく、一体化していく、私はただされるがまま自身の身をゆだねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 遥かな昔からその名が語り継がれる『伝説の黒龍』。

 太古に栄えた古代文明の時代よりその存在は伝承され、各地に残る壁画や竜人族に伝わる口伝等から自然をも超越する存在と推測されていた。

 だが、高度な文明を誇った古代人をしてもこの龍の正体を見定めることは叶わず、その実体を確認した者は誰一人いなかったという。

 しかし、人間が繁栄を極めた頃、伝説であった黒龍は、一夜にしてとある王国を滅ぼし、その城に棲み付いた。

 王国の崩壊をもって伝説は現実となり、黒龍の存在は実証された。

 そして王国に赴いた調査者はその悉くが帰還せず、遂にその場所は侵入禁止区域となる。それから千年余り、人々から忌避され続けた黒龍は再び伝説の存在となり、いつしか御伽噺や童歌に登場する空想上の怪物として語られるようになった

 

 ────説明文を一通り読むと、そこ画面を前にとあるプレイヤーが目を輝かせていた。

 

「ほ、ほしい……」

 

 ギルド、アインズ・ウール・ゴウンのギルド長モモンガがつぶやく。廃課金の亡者モモンガはコレクター魂にかられ新しく登場したガチャの景品を前におもむろに課金画面に進んでいた。

 

「どうですかモモンガさん」

 

「……爆死です」

 

「あちゃー…そもそも当たり枠3%の中の0.0001%で、上限無し。やってられないですよ」

 

「しかし、コレクターとしてこれは譲れない!!」

 

 何度も課金画面に進み、そして、ひと段落つきました。結果は変わらずハズレくじ。地面に膝をつき無言のモモンガと、その隣で気まずそうにしているギルドの仲間、ペロロンチーノ。そこへやってきたのはピンク色の謎の塊だった。

 

「あれ~、モモンガお兄ちゃん、どうしたんですか~?」

 

「姉ちゃん……今、ちょっとそっとしておいて」

 

「……ぶくぶく茶釜さん、今、期間限定イベントガチャ爆死しました」

 

「あ~……」

 

 ゲームの中で雰囲気のくそもないのだが、モモンガのことだ、かなりの額を突っ込んだのだろうと予測し、反応に困るぶくぶく茶釜。

 

「なら、私もちょっと引いてみようかな」

 

「「え?」」

 

「なに?」

 

「いえ、ぶくぶく茶釜さん、すでにドラゴン持ってるじゃないですか」

 

 冷や汗とも違う何処か後ろめたそうにしているモモンガ達に小首を傾げるぶくぶく茶釜。首と呼べる部分というより、身体全体を傾かせているという方が正しいが。

 

「けど、無料十連はあるのでしょう? 引かなきゃ損じゃない」

 

「ま、まぁ」

 

「あ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナザリックの一角。

 

 第六階層「大森林」

 温度・湿度ともに過ごしやすい空気で、緑の香りと酸素濃度を濃く感じる場所。ナザリック最大の敷地面積を誇り、大半を鬱蒼と茂る木々が支配している樹海ともいうべき場所。

 侵入者を迎撃する闘技場や蠱毒の大穴、歪みの木々、塩の樹林、木々にのまれた村跡、底なし沼地帯、移住者の為に造られた村などが存在する。村の北には湖もある。墳墓を徘徊しているアンデッドのようなモンスターはおらず、通常ではPOPしない魔獣たちによって守られている。

 空はあるが上空200m地点まで続く不可視の壁があり、それ以上先にいけないようになっている。時間と共に太陽が上り昼夜すらある。夜空の作り込みはブルー・プラネットが最も気合を入れて作った理想の世界の具現である。

 第五階層から第六階層への転移門、第七階層から第六階層への転移門はどちらとも闘技場の中にある。

 

 その一角に不釣り合いな建造物が存在した。

 

 完全な廃墟と化した常に怪しげな霧と暗雲に満ち、異常なまでに空気が重苦しく好奇心から探索する者も皆無であろう。生物の気配は一切無く、不気味なほど静まり返っている。

 印象としては、廃墟となった西洋の城塞といったところだろうか。フィールドを見渡せば、城門や水道橋のようなデザインの橋といった城内設備が見えるほか、

 遠方には城と共に放置された城下の家々なども確認でき、また、色味こそ違うものの、相変わらず禍々しい空は健在。

 西方の空には稲光が迸るブラックホールのような正体不明の空間が発生しており、より一層禍々しさが増している。

 

 

 そこには"シュレイド城跡地"と呼ばれていた。

 

 

 確保したぶくぶく茶釜と、設定を忠実に再現したいアインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーたちにより、暇を持て余した城復興計画がなされた。

 

 黒龍 ミラボレアス。

 

 全身は禍々しい紫黒の鱗と甲殻に覆われ、忌わしく黒光りする四本の角の生えた頭部、長い首と尾を持ち、

 背中にはその巨体を包み込めるほどの巨大な一対の翼を有するとされる。

 その姿は「ドラゴン」という言葉から連想される存在を、そのまま具現化したかのようであるという。この世界の全土をわずか数日で焦土へ変える力を持ち、世に災いをもたらし、すべての命を脅かす生ける災厄そのものである。

 その存在の前では山の如き巨龍でさえも恐怖に駆られ、その領地を前にすれば古の龍たちすらも踵を返し逃げ去ってゆく。

 灼熱の劫火を吐くとされるが、それは巨大な火球であるとも、熾烈な粉塵爆発であるとも、あるいは螺旋状の火炎放射であるとも言われ、どれが真に正しい特徴なのかは全く分かっていない。

 それらについて共通する点は唯一つ、一撃であらゆる生命を塵も残さず消し飛ばす、極悪にして無慈悲な破壊力を秘めているとされることのみである。

 

 この龍が現れたとき、必ず「終幕」「絶望」「始まりの刻」など大層な言い回しを多用し、常に笑みを浮かべ市民に不安を煽る黒衣を着た預言者が現れるという。

 

 そこで息をひそめじっと待つ。

 

 そこへ足を踏み入れたプレイヤーの気配を感じその黄色の瞳をあらわにする。

 

「懐かしい……よくみんなでわいわいやってたっけ」

 

「Gruuuu……」

 

 上空からさっそうと登場する黒い龍。

 

「こんにちわ、ミラボレアス。私を覚えているかしら?」

 

 目の前のプレイヤーを前に体を変化させ、巨躯がみるみる小さくなり幼い少女へと変化した。頭部には長い二本の角、体には人の皮膚と黒い鱗が混在し、服は黒の和服をはだけさせ胸部がこぞれ落ちそうだ。身体とは不釣り合いに大きな龍の腕そのもの。ふとももまで龍の模様を残し柔らかそうなふとももが見えていた。

 

「お帰りなさいませぶくぶく茶釜様、お帰りを心待ちにしておりました」

 

 着物をうまく汚すことなく傅く様と容姿に、目の前のピンク色のモンスターは心の中でこう思っていた。

 

 

 ────ぐふっ!! 可愛い!!!

 

 

 

 

 

 

 篭城戦用NPC ミラボレアス

 第六階層 領域守護者

 シュレイド城から出ることはない。

 




簡易版設定資料

「私の領域を侵す者は誰であろうと殺す」

 名前;ミラボレアス
 種族;禁忌の龍
 役職;ナザリック地下大墳墓 第六階層 領域守護者
 住居;シュレイド城跡地
 属性;極悪(領域への侵入者は殺す。誰であろうと殺す。それが至高なら御方であろうと殺す)
 種族レベル;不明

 サブデータ
 所有者;ぶくぶく茶釜
 性別;不明
 趣味;睡眠、観察

 概要
 期間限定キャラとして生まれたミラボレアス。その中に転生したオリ主。領域守護者として、ナザリックの中でも圧倒的な力を保有しており、レイドボス級の強さ。一対一で勝てるものはいない。
 モモンガ達が転移した以降も領域から出ることはなく、睡眠をとっていた。

 設定

 遥かな昔からその名が語り継がれる『伝説の黒龍』。
 太古に栄えた古代文明の時代よりその存在は伝承され、各地に残る壁画や竜人族に伝わる口伝等から自然をも超越する存在と推測されていた。
 だが、高度な文明を誇った古代人をしてもこの龍の正体を見定めることは叶わず、その実体を確認した者は誰一人いなかったという。
 しかし、人間が繁栄を極めた頃、伝説であった黒龍は、一夜にしてとある王国を滅ぼし、その城に棲み付いた。
 王国の崩壊をもって伝説は現実となり、黒龍の存在は実証された。
 そして王国に赴いた調査者はその悉くが帰還せず、遂にその場所は侵入禁止区域となる。それから千年余り、人々から忌避され続けた黒龍は再び伝説の存在となり、いつしか御伽噺や童歌に登場する空想上の怪物として語られるようになった。
 あらゆる生態系を踏みつけにするべく舞い降りる『最大の脅威』にして、『あらゆる生の天敵』
 生物の枠組みにすら入らない“ミラボレアス”と言う名の世に仇なす「現象」そのもの。それを謳われるのみならず、見る者全て自然と心に刻みつける程の超常的な生命体。
 太古に栄えた古代文明の時代よりその存在は伝承され、各地に残る壁画や竜人族に伝わる口伝等から自然をも超越する存在と推測されていた。
 領域に侵入してきたものは誰であろうと攻撃する。設定に忠実にあろうといつか真面目さ…融通の効かなさが傷。



 のじゃロリ花魁美少女に変身する。





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設定には従います

 ────なんだここは? 私は一体……。

 

 明確に自分の状況を理解したのはほんとうに偶々だった。人が瞬きをした瞬間、別の世界に転移していたと同じような感覚だ。復帰したのは生まれた時だった。

 

 身体は動かないけど、状況────いや、()()が頭の中に流れてきて、それが生きる意味だと即座に理解できた。

 

 どうやら私は課金ガチャの当たりキャラ。そして、ご主人様とその仲間達により城の番人としてここに存在する。

 

 私の主人とその仲間たちによってこの城は作られ、内装まで廃墟として完璧な仕上がりだ。初めは何度もここに来てくれていた我が主人と仲間たちであったが、我が主たちが一人、また一人と私の元へと来なくなった。

 

 やはり所詮私はただのガチャの商品。特に深い思い入れもないのだ。捨てられても仕方がない。

 

 所有者である我が主人、ぶくぶく茶釜さまがここに来なくなった頃、一度その弟君(おとうとぎみ)であるペロロンチーノさまが現れたが、すぐにいなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、時が経ち────今、あなたがいる。

 

 

 

 

 

 

 何故なのか、何故現れたのか全くわからない。嬉しさというものも感じている。

 

 

 

 

 

 

 

 だが、私はそう設定されたのだからその通りに動くとしよう。それが私の存在意義である。

 

 

 

「よくぞお戻りになられた我が主人。ですが、この城に踏み込んだ者は誰であろうと容赦はしません。そのつもりでここに来たのですよね?」

 

 

 

「……え、えぇ」

 

 

 

 せいぜい楽しませてください、我が主人よ。

 

 

 *****

 

 

 

 

 なぜこうなったのか、時を少し巻き戻そう。ミラボレアスをガチャで手に入れたところまで……。

 

 

 

 

 

 

 まさか一発で出るとは想定してなかったぶくぶく茶釜。モモンガがその隣で発狂したのは想像に難くない。だが、譲渡する方法がなく、困り果てていると、ギルドメンバーの一人がこう提案してきた。

 

【なら領域守護者としてナザリックの所有物にしないか?】と、

 

 申し訳なさと、別にそれくらいならとぶくぶく茶釜はその提案をのみ、第六階層の一角をミラボレアスに与えることにした。初めは雑に置いておこうかと思われたが、流石は超高レアのドラゴン。しっかりと書かれた設定に、暇を持て余していたナザリック勢達は奮起する。

 

【城の跡地って言うくらいだからボロい奴作るのか?】

【いやいや、普通にシュレイド城作ろうよ】

【待て待て、それなら城作って壊したほうが早くないか?】

【それ城が綺麗に消えるだけだろ】

 

 設定を忠実に再現した城と、

 

【城の跡地ならなんか怨霊とかいるんじゃないか?】

【普通にポップする奴置くか?】

【生物がいないのがこの城の良さだろ!!】

【BGMつけようぜ!!】

【パイレーツ・○ブ・ふふんふん!!】

【何故それ?】

 

 登場シーンから演出まで、

 

【このブロックがいい色合いだな、もっと取ってこよう】

【ひゃっはー! 冒険だぜ!!】

【ちゃんと晩ごはんには戻ってくるのよ〜?】

【はーい、ママ!】

【蟲顔のママとか誰得!? そこは金髪のじゃろり巨乳にしようぜ!】

【俺は胸がない方が好きだ】

 

 その為に足りなかった高レア度のアイテムを取りに出かけたりと、久しぶりに皆で協力して楽しむという行為が出来、いつのまにか皆に愛着が湧いていた。

 

 

 そして、完成したのがシュレイド城跡地だ。

 

 

 

 

 領域守護者として存在する私は、設定に従い現在、ぶくぶく茶釜様に攻撃を仕掛ける。

 

 

 少女の姿から再び黒龍へと変身し、ご主人様も身構えていた。

 レイドボスクラスの私に対し、一人で挑む様子、流石はご主人様。一度その場を離れご主人様に見えぬように配置につく。すると偉大なる御方の作成されたBGMが鳴り出した。何もないはずなのだが、どこから出ているのだろう。曲名は”舞い降りる伝説”しっかりと私に設定されている。

 アーチ状になった橋を破壊し、ご主人のもとへと登場する。

 

「GYASASSAAAAA!!!!」

 

 黒龍の姿では喋れないので咆哮を上げます。では設定にならい、御方への攻撃を開始します。

 

 実際、私の強さは他のLevel.100よりも強く、集団で戦うことを想定された篭城戦用NPCだ。完成した直後、初めは複数で戦いなんとか倒せる程度。倒した後はアイテムがドロップするのではなく、紫の称号が手に入った。

 そして、ソロで倒した時のみに手に入る称号を求め、多くのギルドメンバーが戦いを挑んだが、攻略方法も分からず初見で突貫し、敗北を重ねたメンバーも多いい。上位のプレイヤーであれば討伐は可能であるが、何度か敗北もしている。

 

 そして、我が主人はこの称号を持っていない。というよりソロで挑んでいないのだ。彼女のスキルビルドはガチガチのタンク型である。

 

 両手に持った盾で敵をぺちぺちと叩いたり、ヘイトを引き寄せるスキルを使いながらヘイトを集め、場をコントロール。また、敵の攻撃を受けきり、毒や麻痺などの状態異常も一切通じない。

 

 だが、私には盾での攻撃がほとんど当たらない。武器が対龍族であればまだ戦えるが、ただ耐えるだけ。私の攻撃力は非常に高く、第一段階でも相応だ。そして、ある程度削ると攻撃力をさらに上げどんな装備でも数回被弾するとほぼ体力を持ってかれる。よくモーションを見て対応した立ち回りをしなければならない。

 

 タンク系の天敵と言えるだろう。

 

火炎(ボロ)ブレス Level.8 』

 

 大きく口を開け、上空から放つ火球を3連打。我が主人はやはり避けるそぶりを見せず盾で防いでいた。しかし、私は上空にいる、ここからどう攻略していくのか……見せてもらいますよ、我が主人。

 

「ぶくぶく茶釜さま!!」

 

「はわわ!! あれは…ミラボレアス!?」

 

 あれは……ここの階層守護者 アウラ・ベラ・フィオーラ様とマーレ・ベラ・フィオーレ様か。どうやらご主人様を探しに来た様子。

 

「テメェ…私たちの至高なる御方に何してくれてんだ!!」

 

 アウラ様がご立腹だ。口調が変わるくらいには…だが、設定は守らなくてはならない。

 

「ここに来るものは誰であろうと消し去る。例外はない。貴様らと踏み込んで来るのであれば葬る。そう設定されているのだから」

 

「この……そうあるべくしてそう生まれたからといって……至高なる御方を…せっかく帰って来てくれた方を傷つけていい理由にはならないんだよ!!」

 

 だが、アウラ様には私に対抗する手段がほぼない。ビーストテイマーであるアウラ様に対し、私はパッシブスキルを発動させている。”恐怖をもたらすもの”絶望のオーラと似たようなものだが、ミラボレアスの固有スキルとなっている。

 効果は自身より低いレベルまたは生物に対し狂乱状態を付与すること。ゆえに、ここシュレイド城跡地にはモンスターが存在しない。モンスターたちの方から離れてしまうからだ。

 

「……アウラ、マーレ、手伝ってちょうだい。とりあえずミラボレアスを地に落とすわ」

 

「「は、はい!!」」

 

 我が主人は2人の階層守護者と協力することを選んだらしい。さて、どうなるか……設定は絶対なので、処理します。

 

 

 

 

 

 




予想以上のお気に入り登録にめちゃ驚きです。ありがとうございます。
思いついたものを書いていくスタイルですので、気長にお待ちください。

設定

名前;ミラボレアス

種族;禁忌

役職;ナザリック地下大墳墓 第六階層 領域守護者

住居;シュレイド城跡地

属性;極悪

種族レベル;龍

 

サブデータ

所有者;ぶくぶく茶釜

性別;女にされた

趣味;睡眠

 

概要

期間限定キャラとして生まれたミラボレアス。その中に転生したオリ主。領域守護者として、ナザリックの中でも圧倒的な力を保有しており、レイドボス級の強さ。一対一で勝てるものはいない。

遥かな昔からその名が語り継がれる『伝説の黒龍』。
あらゆる生態系を踏みつけにするべく舞い降りる『最大の脅威』にして、『あらゆる生の天敵』
生物の枠組みにすら入らない“ミラボレアス”と言う名の世に仇なす「現象」そのもの。それを謳われるのみならず、見る者全て自然と心に刻みつける程の超常的な生命体。
太古に栄えた古代文明の時代よりその存在は伝承され、各地に残る壁画や竜人族に伝わる口伝等から自然をも超越する存在と推測されていた。
領域に侵入してきたものは誰であろうと攻撃する。設定に忠実にあろうといつか真面目さ…融通の効かなさが傷。








のじゃロリ花魁美少女に変身する。



外見

龍の姿はミラボレアスそのもの。





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レイドボス












 あなたは私を育ててくれた。弱い私を根気強く。

 

【おいおい、めっちゃカッケェな!!】

【まさに悪の龍と呼ぶべき存在だ】

【けど、これから育てないと行けないんだろ?】

【そこはまぁ…茶釜さんに任せるって感じで】

【Level.1だもんね、けど、ここから出せる?】

【あくまで設定だし、動かすのに支障はないだろ】

【それもそうか、ちゃんと私が育ててあげるからね】

 

 あなたは優しかった。愛想をつかさずいてくれた。

 

【NPC育てるのとか久々だなぁ…おっと、危ないぞ】

 

 守ってくれた。身体だけ立派な癖に中身はミジンコ並みの私を捨てずにいてくれた。

 

【あー!! こら! ミラボレアス!! 勝手にプレイヤーのとこ……ミラぁぁぁ!??」

 

 プレイヤーにポップするモンスターと間違われ、倒されたこともあった。それで倒された時は怒ってくれたな…。

 

【はぁ…もう、世話のやける子ね。さっきの人間たちはとりあえず●●●●して●●●の●●●●●●にしといたから】

 

 時折怖いことも言っていたけど……愛されているように感じた。言葉を交わしていないし、温もりも感じない。血のつながりなんてあるわけない。けれど……本当の親みたいに。

 

【じゃじゃーん!! どーよ!!】

【へぇ、かなりガチの構成だな】

【というか、初期ステータスの貧弱具合どこ行ったってくらいの化け物ステータスだろこれ!!】

【竜人ではないドラゴンというのも中々いいな】

 

 あなた方はいつも楽しそうにしていた。

 

【うっし、今日こそ目指せソロクリア!!】

【パターンを読んでもなおキツいって鬼だよな】

【そこが面白い!!】

 

 動かない私に対し、嬉しそうに話をしていた。目を輝かせているように見えた。ずっと、一緒にいてくれると思った。

 

 

 

 

 

 どうして……どうしていなくなってしまったのですか?

 

 

 

 

 

 

火炎(ボロ)ブレス Level.8』

 

『レインアロー"天河の一射"影縫の矢』

 

 身体の動きが一瞬鈍くなったが、問題はない。連続のブレスで牽制しながら機会をうかがうとしよう。

 

炎球(ボロス)プレス』

 

 火球よりも更に巨大な炎の球を生み出す。範囲攻撃で動きを止め、踏みつける。3人ががかりで私の体を抑え、潰されないように耐えている。アウラ様とマーレ様は避けれたはずだが…至高なる御方を前に先に避けるなどあり得ないというわけか。

 

「ぐぬぬぬ!」

 

「うぅ…」

 

 マーレ様は流石だ。階層守護者の中でも強さで言えば序列は上から2番目だったか、その見た目から想像できない強さ。だが、その程度で私をどうにか出来るとでも?

 

GYARUAAAA!!!

 

 咆哮。範囲スキル。一時的にスタン状態に陥らせる。

 

黒龍の息吹(ミラノ・ブラスト)

 

 城全域に及ぶ強力なブレス攻撃。今までのブレスの比じゃない威力だ。これで立っていられる奴などそういないのだが……。

 

「ふぅ……やっぱとんでもないわね、ミラボレアス」

 

 燃え盛る炎が消え、地面が赤く熱を帯びる。ジリジリと体力を減らしていっているが未だに倒れないとは、流石至高なる御方。更に守護者二人を守るとは、防御力の高さを裏付ける。

 

「ぶくぶく茶釜様!! 御身のお手を煩わせしまうなんて!」

 

「平気よ、平気。さて、()()、あんた私がガチタンクだからってあなたに勝てないと思ってるでしょ?」

 

 実際その通りではないか。その攻撃力では私にダメージをほとんど与えられず、あと数回のブレス攻撃で倒れるだろう。

 

「ふふ〜ん、そんなお馬鹿なミラちゃんに見せてあげちゃうから、とっておきのものを!!」

 

 声がだいぶ幼くなった。何をする気だ?

 

「行くわよ、それ!」

 

 アウラ様、マーレ様を置いて一人で特攻? いや、タンクが前に出るのは分かるには分かるが、今更何を? ご主人様は移動スピードは早く無い。的だ、最高火力で消し炭だ。

 

火炎(ボロ)ブレス Level.10』

 

 ご主人様の炎で包まれた…いや、まだ向かってくる。スピードが変わっていないだと? 私の攻撃に怯みがないのか? いや、囮か。本命は……そっちだろ。

 

「トリプレットマキシマイズマジッ……」

 

 マーレ様の魔法での攻撃であればダメージを与えられるだろう。だが、基本的にパーティのバランスとしては前衛(アウラ)後衛(マーレ)後衛を守る盾(ぶくぶく茶釜)だが、前衛としての役割不足が見える。本来、アウラ様は使役した魔獣を使う、前衛は不向き。マーレ様の攻撃を受けても私を倒れることはない。ならば、警戒すべきはマーレ様の援護先であろうアウラ様。

 未だに単身でこちらに向かってくるご主人様の意図は分からないが、ここ一体を焼き尽くせばいいだろう。

 

『ウッドランドストライド!!』

 

 なに?

 

「ふふん、捕まえた…」

 

 詠唱破棄? なぜ攻撃ではなく、ご主人様に支援魔法を。近づいたところで何をするというのだ。

 

「ふぅ……」

 

 何だ今の気配は? 煩らわしい…硬直も一瞬だ、こんなものすぐにとける。

 

「GYARU!!」

 

 気が逸れた隙に置かれたと思われる起爆榴弾が爆発し、よろめく。更に、城に備え付けられた砲台の前に立たれたアウラ様がご主人様の合図で5連続で砲撃を繰り出す。

 

「全弾命中!」

 

 爆弾からのたたみかけるように攻撃の連打、だが喜んでいられるのも今のうちだ。近づいたのは早計ではないかご主人様。

 

扇状放射(せんじょうほうしゃ)

 

「やばっ!」

 

 意外と削られていたか。このスキルまで使うことになろうとは。辺り一体焼け野原。二人の階層守護者のダメージを受けてうずくまっている。一撃で死ななかったのは驚いだが、マーレ様がアウラ様を回復させているが、そんな隙は与えない。

 ご主人様は私の腕の中、上空を颯爽と飛びこのまま叩きつけるもよし、炎で削るのもよし。

 

「あなたに初見で勝てる奴なんてこの世にいないわ。けどね、生物って学ぶのよ、失敗はすればするほどいい、その失敗をいかに減らすかってね。そもそもなんでソロとマルチの体力と攻撃力の設定がほぼ同じなのよ、普通ソロはもっと簡単にするでしょうが、クソ運営め。お陰でソロでクリア出来るやつなんて皆無で、奇跡で、英雄扱いよ、ならマルチしかないけど、マルチもマルチで火力化け物だし……」

 

『火炎ブレ───『レインアロー"天河の一射"』─』

 

 とどめの一撃を放とうと口に炎を溜めた瞬間、回復が済んだようで、アウラ様の向かってくる矢を上空で躱し、躱し、躱す。だが、様子がおかしい。

 

 ────これは……マーレ様のバフが乗っかった攻撃? いや、そんな隙を与えたはずはない。まて、そもそも回復が早すぎないか? 一体何が?

 

 追尾機能が向上した矢が頭部に命中体制が崩れてしまう。だが、まだご主人様は手放さない。これは私のものだ。

 

「よっと!」

 

 いきなり目の前に瓶が現れ私の顔で割れた。なんだ、ぶくぶく茶釜様の仕業か? 急に睡魔が……そのまま地面へと落下した。

 

「撃龍槍…うてぇ!!」

 

「GYARUAAAA!!!!」

 

「よし、当たった!!」

 

「やるじゃない、マーレ!」

 

 スリープ状態から撃龍槍によりダメージが上がり、体力ゲージがだいぶ持っていかれた。体制を立てなさなくては、

 

『全方位回転火炎ブレス』

 

 嗚呼、階層守護者2人に至高なる御方、なんだ私は過去にでも来てしまったのか? これではまるで……あの頃のような、昔に戻ったように……これはなんとも甘美なものだ。

 

 嗚呼、血沸き、血沸く、肉躍る。

 

「みんな!!第三形態まで来てる!! もう攻撃は受けないで!!」

 

「ぶくぶく茶釜さま、ここはあたしにお任せを!!」

 

 足りぬ、足りぬ、満たされぬ。我は黒龍 ミラボレアス。禁忌の存在、プレイヤーごときが我を倒せると思っているとは、さぁ絶望を知れ。

 

『ブレス超強化 即死ブレス』

 

 

 

 

 

 

 

 

 広範囲のブレス。全員倒れている。少女の姿になるか……これで良かったんだ、私は設定に従った。そうあれと生み出されたのだから……私怨がなかったといえば嘘になる、だが……。

 

 

 

 

 

「……これでいい。また巣に戻るとし──!?」

 

「やっと捕まえた…」

 

「ご主人様!? な、何故…たしかにあそこに倒れて…」

 

 倒れていたはずのご主人様たちの身体が消え、そこに残っていたのは人形……いや、カカシだ。カカシがご主人様に化けていた? そんな馬鹿な。

 

「私がやられるわけないでしょ?」

 

「ぐっ!! まさか近寄ってきたのも偽物と本体を隠すのと、私に油断させるために!!」

 

「ふふ〜ん、当然でしょ、ちょっと私が耐えられるかが微妙なところだったけどね」

 

 少女の姿である私に対し、我が主人はそのピンク色の触手で私の身体を捕らえ自身の身体へと抱き寄せてきた。

 まさか、龍になる私ではなく、人型である時を狙うとは……油断…いや、流石はナザリック地下大墳墓の一角、勝利に対しての貪欲さは凄まじい。なるほど、これが至高なら御方という存在なのだと再確認してしまう。

 このまま絞め殺す気であろうが、私にはどうすることもできない。人間形態ではせいぜいLevel.60にもみたない戦闘力で、Level.100であるご主人様には絶対に勝てない。死を受け入れる覚悟はある……けれど、死ぬ前にこれだけは言いたい、言わせてほしい。

 

 けれど、このまま私の言葉を伝えればきっと────

 

「何故…何故ですか……何故戻ってきたのですか?」

 

「ミラ?」

 

 ご主人様は何も言ってくれなかった。急に、ほんとうに何の前触れなくいなくなった。飽きたのだとすればそれまでだけれど、一瞬でも、あなたは私に愛情を注いでくれていたと信じていた私に対してそれは裏切りと捉えても良いのではないか? 初めはただのガチャの景品だった、けれど一緒にいた時間は確かじゃないか。それを今更なぜ帰ってくるのだ。どうせ気まぐれに決まっている。

 

「なぜ…なぜ……何故なのですか!! 私はアウラ様とマーレ様のようにあなたに想像された存在ではない。けれど、この愛は本物です!! あなたが愛情を注いでくれていたと思った、一方的な優しさなんていらない!! 一度捨てられた私をあなたの気まぐれで拾って…また捨てられたらと考えたら私は存在できない!! なら、初めから会いたくなんてなかった!! あなたと出会わなければ……こんな思いをせずに………」

 

「そんなの…あんただけが思ってることじゃないのよ!!」

 

「アウラ…」

 

「ぶくぶく茶釜様がいなければ私たちは存在してないの!! だから、このお方に使える喜びをなんであんたは分からないのよ!!」

 

「……私はあなた達とは違う。自分で想像すればそれは愛情があるだろう。だけれど、私はタダのガチャの景品、そこが私とあなた達守護者との違い。不安で不安でたまらない。けれど、私は思ってしまった……今のこの瞬間に感じた喜びを!!

 

「っ!? あんた何を…」

 

「私は戦いの中でしか愉悦を得られない。多対一、有利なはずの相手に皆が私を必死に挑む。だから、殺して殺して殺して殺して、誰であろうとここに入ることは許さない。そう設定されたのだから、そうせざるおえない。それが私が私である由縁。禁忌に敗北などありえない。この身体がイカれようと、復活を遂げてみせる。我は黒龍、絶望そのもの。そのためであれば、私は喜んであなた方の敵になろうではないか!! あなた方は私を育てた、それに相応しい存在になれた!!! では、私は私であるために、全てを消し去ろうではないか!!

 それが禁忌の存在として生まれた、黒龍 ミラボレアスという存在なのだから!!!!

 

 

 甲高く笑い、他者を見下す。私以外の存在が許せない私は他者を嘲笑うのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 ────そういう未来もあるかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 設定に従い、人間であることを忘れた私は暴走して全てを破壊する。それが黒龍 ミラボレアスだ。けれど、この中にはミラボレアスだけでなく、私がいる。人間であった私の良心のカケラ。

 

「どうぞ、私の命を奪ってください…私はそれほどのことをしました…」

 

 今、考えたことは全て本音で、今思ったことは全て私だ。けれど私は……人間であることを忘れたくない。死にたくない、けど…ここで拒んだらもう…私はミラボレアスとして生きてしまう。なら、愛するあなたに私は殺して欲しい。お願いします。

 

「ごめんなさ「嗚呼ぁぁぁぁぁ!!!!! 姉ちゃんが幼女を捕食してるぅぅぅぅぅ!!!!」………黙れ弟」

 

「ちょっと! いつまでぶくぶく茶釜様の抱きついてるのよ!!」

「ば、僕もして欲しい!!」

 

 感動的なところへ、何処から現れたのか、ペロロンチーノ様と階層守護者達の声が聞こえてくる。

 

 なんだろう、これは…この後どうなるのか……分からない。

 

 

 けれど、ようやく私はあなたの温もりを感じられた。

 

 

 今はそれで満足しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







余談

「あなたが人型になるなんて知らなかったわ」

「初めの設定にはございません。そこにいらっしゃる弟君、ペロロンチーノ様が設定を1文追加しまして"人型に変身出来、変身後はのじゃろり美少女が花魁風衣装で登場す「この愚弟がぁぁぁ!!!」…ると」

「だって、敵だと思ってた奴が実は戦いたくなくて、暴れていた龍が実は人型の美少女っていう展開がめっちゃみぎゃあぁぁぁぁぁあ!!!!」

「ぺ、ペロロンチーノさまぁ!? な、ななんて淫らな姿に!!」

 ものすごく早口で弁明をするペロロンチーノ様だが、我が主人がこう、性的に表現しずらい方法で見ると無惨なお姿になり、その姿にシャルティア様が興奮して濡れたりしたそうだ。


ーーーー

設定追加

のじゃろり花魁巨乳美少女へと変身する。

(ペロロンチーノによって後付けされた設定。これによりバグのような状態へと変化するきっかけとなった可能性があり)
 
 外見
 龍の姿はミラボレアスそのもの。人型はペロロンチーノが設定していなかった為、ペロロンチーノのふわふわとした妄想で設定された。
 忠誠心が限界突破しているほかのNPCとは違い、稀薄であった忠誠心がだったが己の過ちを認め、慈悲をかけられたその心に胸を撃たれ忠誠を誓うことになる。忠誠心はぶくぶく茶釜>ぺロロンチーノ>モモンガとなっており、ぶくぶく茶釜第一となる。
 気弱であり、精神的にも成長していないため、なにより死にたくなくリスクは犯さない小心者。
 
 他の階層守護者は上司にあたる



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√善







 私は今、王の目の前にいる。

 嗚呼、怖い。恐怖の象徴、死が具現化したような佇まい。

 黒龍としての設定なんかよりもよっぽど絶望を呼び込むのにふさわしいいで立ちではないか。

 一人傅き、その後ろでは第四、第八を除く守護者たちが私を見ている。それはそれはゴミを見るような目で……視線だけで人間であれば殺せるだろうその眼力。見事な忠誠心だ。

 

「第六階層 領域守護者 ミラボレアス。御身の前に」

 

「ミラボレアス……お前の行動はぶくぶく茶釜さんから聞いている」

 

 顔が上げられない。しっかりと見られない……けれど、これでいい。私は私の想いを通し、願ったのだ。ミラボレアスに呑まれないために…、

 

「…この度は至高なら御方の1人であるぶくぶく茶釜様に対し「ミラボレアス、謝罪をするのであれば面を上げなさい」…重ねて失礼しました」

 

「ミラボレアスお前に問う。お前は何故ぶくぶく茶釜さんを攻撃したのだ?」

 

 どう答えるべきか。そうあるべきだからと答えるのが普通であるが、それだけで許されるものなのだろうか? いや、許しをこうという考え自体が浅はか。初めは呑まれていた…それは事実で、心変わりをした……次こそはあなた方に認めてもらうよう努力します。などと言えようか?

 

「ミラボレアス、あなた、モモンガ様の質問ひとつまともに答えられないのかしら? 」

 

 守護者統括であるアルベド様の言葉が刺さる。言うしかない。それしかないのだ。

 

「……私は私の城を守るべく行動しました。そうあるべくして生まれ、そうあるべくして今まで存在しております。"シュレイド城跡地に侵入したものを誰だろうと攻撃する"それが私です。今回もぶくぶく茶釜様が城に侵入したので、攻撃、処理を実行しようと考えました」

 

「……そうか。では、ぶくぶく茶釜さんからお前に話がある。心して聞け」

 

「ミラボレアス、あなたにいくつか質問があります。嘘偽りなく答えるように」

 

「はい」

 

「あなたは領域守護者としてあそこに拘束されている筈です。ですが、今、あなたはここにいる。その理由を尋ねても?」

 

「人型に変身すれば私は行動が出来ます。この身体は、ペロロンチーノ様の望まれた姿でありますが、ミラボレアスではありません」

 

 そう答えると、背後から1人殺気が増した。そして、目の前の御方3名の雰囲気が何故か少し収まった気がする。それでもなお恐ろしいが。

 

「そう。あなたは運営によってそうあれと生まれた存在という認識で良いのかしら?」

 

「はい。領域守護者として存在するのは至高なる御方々の慈悲でありますが、根底は運営と呼ばれる組織によって構成されております」

 

「では、最後の質問です。あなたは私たちがもう一度シュレイド城跡地へと赴く場合、再び敵意を待って攻撃を行いますか?」

 

「いいえ」

 

「それはなぜ?」

 

「初めは確かにそうあれと創造された運営の命に従い行動していました。あらゆる種の頂点に立つ存在として生み出された筈なのですが、御身と戦い私は敗北しました。そうあるべきはずなのに…わた…わたしは……私は既に私はミラボレアスという存在として…私はふさわしくなく、至高なる御方に従うべきと判断いたしました」

 

 疑いのまなざしが刺さるが噓偽りの事実で、私の本心である。ミラボレアスとしての私は死んだ。結局、ミラボレアスの皮をかぶった人間であることを選んだ。

 けど───怖い、死ぬことが怖い。設定を受け入れていた時は簡単で、死んでも良いとさえ思った。前世、この体になる前も醜くあがいたのだ。その本質が戻っただけのはず……自分を受け止めることがこんなに怖い何て思いもしなかった。

 

「……そう、分かったわ」

 

 静かにご主人様の声が聞こえた。来る。死の音が聞こえてくる。

 

「この度の私並びに守護者2人への攻撃を不問と致します」

 

「……今、なんと?」

 

「今回のミラボレアスの行動は不問とします」

 

「お、お待ちください!! 領域守護者如きが階層守護者並びに至高なる御方に危害を加えたものを不問とするなど!!」

 

 つい口から出てしまった。嬉しさと苦しさのはざまで揺れている。けど、けど…どうして?

 

「ミラボレアス。あなたはあの城を守るべくし、そうあれと生まれた存在。であれば、あなたを責めるべきではなく、責められるべきは私です。それに、次はもう攻撃をしないのでしょう?」

 

「はい、いえ、ですが…」

 

「はい、これでこの話はおしまい。私たちはこれから大事な話をするので、この後のことはアルベドに任せます。いいですね?」

 

「……お、御身の御心のままに」

 

 転移で消えた3人と残された守護者たち。この後のことをどうするのかとアルベド様に尋ねようとしたところ、1人の守護者に声をかけられた。

 

「……ミラボレアス、ちょっと私の部屋にくるでありんす!!」

 

 

 

 

 

 

 ******

 

 

「「「はぁぁぁぁ………」」」

 

 3人の支配者たちは円卓の前で深くため息をはいていた。

 

「ほんとごめんなさい!!!」

 

「メッセージを聞いた時はほんと驚きましたよ、まさかミラボレアスの領域に入っているなんて」

 

「あそこの領域は4人までという制約があるから、助けに行くにも迂闊に入れないしな」

 

 ミラボレアスの領域。シュレイド城跡地に入る手段は入り口からしか無い。そした、そこへ入れる人数は最大で4人までという制約があり、相手を倒すまで転移が出来ないという誓約。それを破ると無数の魔法と罠が作動してしまう。

 これを決めたのはギルドアインズ・ウール・ゴウンの問題児 るし★ふぁーなのだが、まぁ、いつの間に行っていたのか、知らずに入ったメンバーがミラボレアスに襲われ、その後一悶着あったのはまた別の話。

 

「……ほんと、危なかったです。持ってる課金アイテム使いまくって、ミラの油断もありましたから。普通に戦って勝てる相手じゃないですからね」

 

「そういう意味じゃ俺の設定追加はナイスアシストだったんじゃない!? そうだよ!!」

 

「まぁ、愚弟にしてはね。けど、まさか文字だけであそこまで変わるとはね」

 

 その言葉にぐさっと2人の背後にエフェクトのようなものが見えたような錯覚を起こすほど、目に見える通りに落ち込んでいた。

 

「いや…ほんと……なんかもう罪悪感で一杯で。本当に生きているんだなと改めて実感しました。目に見えるように落ち込んでて心が…」

 

「分かりますペロロンチーノさん。俺もアルベドの設定変えてしまった手前、ペロロンチーノさんを責められません」

 

「……けど、ほんと可愛いよなぁ…あれで貧乳だったらなぁ、そう言うふうに書いとけばよ「黙れ弟」すみません」

 

「御二方はナザリック内の探検はひとまず出来ましたか?」

 

「バッチリです。ちゃんと自分の武器も装備して来たし」

 

「私も平気」

 

「それでこの後の方針ですが、ひとまずはこの世界のことをするという事で」

 

「オッケーです」

 

「私、ちょっとあの子たちの様子見に行こうかな…丸投げしちゃったし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 初めはなんとなくだった。

 

 仕事が空いて、偶々弟がいて、モモンガさんからメールが来てたのを見てユグドラシルにログインした。それで気がついたらログアウトができなくなって、至高なる御方とか讃えられるようになってしまった。

 ありえないことだと思ったけど、自分が作ったNPCが動いているなんて現実を認めないわけにはいかないでしょ。

 

「ごめんなさいってちゃんと言えなかった」

 

 私が作ったアウラとマーレ、2人にはちゃんと謝った。彼女たちは泣きながら私を出迎えてくれた。

 

 私も泣いてしまった。

 

 ここに少し慣れて来たと思って第六階層を探索してると、シュレイド城跡地に来た。

 

 懐かしいと思って入ったら、まさかいきなり戦闘になるなんて。

 

 黒龍 ミラボレアス。

 

 タダでゲットしたあの龍…あの子って言った方がいいのかな? 仕事が段々忙しくなって来て、ユグドラシルにあまりインしなくなっていた時にゲットしたそれは、他のメンバーたちと再び熱が入るための要因になったちょっと前の思い出だ。

 そのことにはやっぱり感謝というものが必要だ。

 

「嗚呼、アイテムの補給しないと」

 

 正直、ミラボレアスとの戦闘はほぼ課金アイテムによるもので、戦略もクソもないゴリ押し。アウラやマーレに持たせたリジェクトタイムを短くするアイテムだったり、スリープ状態だと効果が上がる撃龍槍用の強制的にスリープ状態にするアイテム、体力を1残すアイテムに、熱耐性ポーションだったり、ミラボレアスの対策の為に運営が用意した課金アイテムの数々、これはチートもいいところだ。それぐらいの相手なわけで、何度も戦ったから出来たことだ。

 

「……あの子のこと、もっと真剣に考えないと。あとでアルベドからの報告を聞くとして…ひとまず落ち着いて話をしましょう」

 

 

 

 

 一方その頃、ミラボレアスは、

 

 

 

 

 

「ペロロンチーノさまのご寵愛は私だけのものでありんす!!」

 

「それでもペロロンチーノさまがお決めになったことに逆らうのですか? いくら階層守護者様といえどそれは許されるべきものではありません」

 

「そそそ、そうは言ってないでしょ!! ただ私のペロロンチーノ様なのに卑怯でありんすよ!!」

 

「私は領域守護者であり、部外者。至高なる御方に創造されたあなた方とは確かに違います。ですが、今回の件で、慈悲深き御三方の御心に私は心底心酔してしまいました。いくらシャルティア様でもこの身体は既にペロロンチーノさまのものであり、ぶくぶく茶釜さまのものです」

 

「きぃぃぃ!! 一回ぶちのめさないと分からないようでありんすね!!」

 

「望む所です。()種の頂点としてお相手しよう」

 

 ちょっ!? 何やってんのぉぉぉぉ!!!

 

「ちょちょ!! ちょっとまった!!」

 

「ペロロンチーノ様! あぶないでありんす! この龍はまた御身の命を狙うかもしれんせん!」

 

「そ! その件は大変申し訳ないと…申し訳ございません」

 

 う、心が。

 

「そ、そうだ、聞きたかったんだけど、その人型って自由自在なの?」

 

「いえ、この姿は力を入れている状態でして、龍型の方がリラックスしている状態です。腹筋に力を入れているといえば分かりやすいでしょうか?」

 

 あー、プールで腹筋に力入れて『俺、割れてるぜ?』っていうアピールする奴か。けど、こう…落ち込んでいる姿には興奮するのだが、やっぱり自分がやったことの手前心が痛過ぎる。何かいいものが俺のコレクションの中にぃ……あ。

 

「それじゃあ、これあげるよ」

 

「これは…首と両手首につける枷でしょうか?」

 

「そ! ユグドラシルにも形態変化する奴がいたからそれをさせない用のアイテムなんだ。良かったら使ってよ」

 

「そのような貴重なものを頂くなんて!」

 

「へーきへーき」

 

 束縛用アイテム "変体阻止"捕縛用のアイテムなんだけど、結構使うのが難しいんだよなぁ。相手を気絶状態にしてから相手に装備させるから一対一の時とかでしか使えないし、ガチャのはずれ枠なんだよなぁ。ただ見た目の造形から結構一部のマニアには人気だったんだよなぁ……ん?

 

「ぺ、ぺろろんちーのさま…な、なぜその女ばっかりぃ…」

 

「しゃ、シャルティア?」

 

 シャルティアが泣いてる?なぜ?

 

「うぅ…やっぱりぺろろんちーのさまは私なんて嫌いなんだぁ」

 

「え?」え?

 

 考えたことがそのまま出た。俺がシャルティアが嫌い? こんな俺の性癖全部そのままぶっ込んだ擬人化といっても良いシャルティアのことが嫌い?

 

「な、なんで?」

 

 とりあえず聞いてみる。

 

「ぐすっ…だって、そんな何処の馬の骨とも知らない女にばっかりかまって…わたしには何もくれないじゃありんせんか…」

 

「そんなことないよ、シャルティアはそこにいてくれるだけで俺は嬉しいんだから」

 

「ぐすっでもぉ」

 

「大丈夫だって。お前は大事な娘なんだから」

 

「ペロロンチーノ様ぁぁぁぁ!!」

 

「うぉ!?」

 

 涙を流し俺の胸に飛び込んできたシャルティアを優しくキャッチ。ああ、こんなにも愛をささやいてくれる女が今までいたか? いや、いない!!

 

「………弟君様」

 

「あ」

 

 背後から冷たい視線が刺さる。枷を首、両手足にはめた和服を着崩したミラの姿は属性盛りすぎだろといいたいが、全然ありだな!!

 

「酷いです。あんまりです。私の身体をこんな風にしておいて、大切なアイテムまでいただいたのに…私のことは結局遊びだったんですね?」

 

「あ、いや、その…」

 

「ぐすっ…もういいです。弟君様はそうやって他者を踏みつけにして娘とイチャイチャするべきです」

 

「はぅ!?」

 

 なんだろう。こう、自分より小さい娘のような子供、実年齢は相当いってる二人がかがむ俺の目の前で俺を取り合っている。なんともまぁ、心地が良い。これが夢にまで見たハーレムのルートの宿命というやつか!?

 

「ペロロンチーノ様!」

 

「弟君様」

 

「「どちらにするのでしょうか!? でありんす!! 」」

 

 

 

 

 

 ────拝啓 姉ちゃんへ。俺のしたことは大罪でしたわ。敬具。

 

 

 

 

 



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