FAIRY TAIL〜龍を背負いし男〜 (鷹山アルファ)
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桐生一馬

皆さん、はじめまして。
今回、初投稿させて頂きます。鷹山アルファです。
投稿頻度は決めてませんが、皆さんの暇つぶし程度になればいいなと思っています。
どうぞ、楽しんでいってください。




〜フィオーレ王国 とある書店〜

 

カララン

 

らっしゃい!

ん?…お前さん見ねぇ顔だな、ここには旅行か何かかい?

小説を探してる?小説か……おっ!それならいいのがあるよ!

 

ガサガサ…

 

最近賞を取ったルーシィだっけか?その作家の小説でよ、読んでみたら中々に痺れる話でねぇ。

«妖精の尻尾»ってギルド知ってるだろ?そこに居たドラゴンの話なんだけどよこれがまた…火竜《サラマンダー》?違う違う!竜《ドラゴン》はドラゴンでもこっちは龍《ドラゴン》の話しさ。

そんなの知らない?まぁ、マイナーではあるかもな。けど、これを見りゃあんたも気に入ること間違いなしさ。

 

…その本のタイトル?

 

 

それはなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――龍が如く―――――――――

 

 

 

 

 

「…うっ…んん」

 

心地良いそよ風に撫でられ桐生は目を覚ました。

まだ虚ろな意識を頭を横に振ることで無理矢理意識を覚醒させる。

 

「何処だ、ここは…」

 

横たわっていた体を起こし辺りを見回す。周りは木々が生い茂る森である事が分かる。

しかし、自分が何故ここに居るかが分からない。

 

「俺は確か撃たれて…」

 

菅井に撃たれそうになった遥達を守る為に、自らを盾として庇った。

しかし、撃たれた箇所を触れて確認してみるがそこに傷はなく、まるで何事も無かったかのように五体満足な体がそこにはある。しかも、脱いだはずのいつもの灰色のスーツまで着ている。

 

「どう見ても広島ではない…な。まさか此処があの世なんて事はないだろ」

 

腕を組み、瞼を閉じて考えるが何が何だかさっぱりだ。

 

「とにかく、このままこうしていても仕方がない。少し周りを歩いてみるか。そうすれば何かしら分かるかもしれないからな」

 

取り敢えず行動に移り森の中を宛もなく歩き出す。そこで何かを思い出しその場に止まるとズボンのポッケに手を入れた。そこから取り出したのはスマホだ。歩き回るよりもGPSで自分の居場所を確認すればここが何処かすぐ分かるはず。こういう所にすぐ気づかないのはスマホにまだ慣れてないのか、それともおなじみの天然なのか。

 

「…だめか。圏外になっちまってる」

 

ロック画面で確認した電波状況を見て小さく溜息を吐く。その時、誤って画面を左にスワイプしてしまいカメラ機能が起動する。カメラが桐生を画面に映し出し、ふとその画面の中の自分と目が合うとその姿に驚き目を見開き驚く。

 

「なっ…!どういう事だこれは…!?」

 

その画面に映っているのは確かに自分だ。しかしその姿は40代から20代へと若がっていたのだ。訳も分からない所に居た自分が更に若がっているなど誰に理解出来るものか。流石の桐生もこれには固まってしまう。

 

 

 

 

 

もうこの際考えても仕方がないと割り切り、森を歩き続ける。

暫く歩いていると森の出口が見え、そこを抜けると小さな村が目の前に現れた。

やっと人の居そうな所に出られ安堵した桐生は2度目の小さな溜息を吐いた。

 

(ここなら誰かに話を聞けそうだな)

 

そう思い村へと足を踏み入れた。…がしかし、おかしな事に誰ともすれ違わなければ見当たりもしない。まだ日が差しているのに誰も居ないはずは無い。

 

「「「…ーっ!」」」

 

「ん?あれは…」

 

不安になりながらも歩みを進めると、少し離れた小さな家の前に村人が集まっているのが見えた。だが、その光景は異様なものだった。

群がる村人達はその手に槍や斧、松明など見るからに穏やかな雰囲気ではないく、家の中の者に向け罵声を浴びせていた。

 

「村から出ていけー!」

 

「悪魔憑きめ!」

 

「いつまで村にいる気だ!呪われた家族め!おまえたちがいるかぎり村の厄災は終わらねえ!」

 

「…おい」

 

「あ?」

 

村人たちに不信感を抱きながらも近付いた桐生は、1人の村人に話しかけた。

 

「あんたらは何をやってるんだ?」

 

「あんた、旅のもんかい?悪魔だよ悪魔。この家の中には悪魔の家族が住んでんだ」

 

「悪魔…?」

 

「そうさ、奴らがいちゃこの村も終いだ。だからこうやって追い払ってるんだよ」

 

「呪われた家族め!」

 

「お前達がいる限り村の厄災は終わらねぇ!」

 

そう言い放つと石が窓を割り家の中へと投げ込まれた。

 

 

 

 

 

家の中にいる黒いローブに身を包んだ少女、ミラの頭にその石が当たりコンっと音を上げる。

「ミラ姉大丈夫?」

 

ミラに寄り添う形で隣に座る妹のリサーナは、心配そうにミラを見詰める。

 

「ごめん……私のせいで…」

 

「姉ちゃんのせいじゃないよ!」

 

「私があんな教会なんかに近付かなかったら……」

 

弟のエルフマンがそういうも、ミラは俯いたまま自身の右腕の包帯を取る。

 

「こんなことには……」

 

顕になったその右腕は禍々しく、それはまさに悪魔の腕と言えるものであった。

 

 

 

 

「出ていけ悪魔ーっ!」

 

「この村から出ていけー!」

 

悪魔…そういうのもには疎い桐生。昔テレビで悪魔とは人を誘惑し貶める者というのを聞いたことがあるが、本当にそんなのが存在しているとは…。

 

「リサーナよせ!」

 

「…なに?」

 

家の中から人の声がした時、窓を開けて顔を出したのは幼い1人の少女であった。

悪魔と言うから頭に角を生やしているのかと思っていたが、どう見てもただの子供だ。

 

「教会で悪さしてる悪魔を退治したのはミラ姉なんだっ!!この村の為に悪魔をやっつけたのに……こんなのヒドイよ!!」

 

「悪魔をやっつけたせいで悪魔に取り憑かれちゃったんだ!ミラ姉は悪くない…悪くないもん!」

 

「おい、これはどういう事だ?普通の子供じゃないか」

 

「騙されるな、ありゃ人の皮を被ってるだけさ。悪魔め…すぐ分かるような嘘を」

 

目に涙を溜めながら、強く村人達に言い放った言葉。その言葉に桐生は微塵も嘘を感じられなかった。

 

「もういいリサーナ」

 

「うっぐ…うっぐ…」

 

「エルフマンも泣くな」

 

「良くないよ!ほんとだもん…」

 

ミラの言葉で悲しみが込み上げるリサーナとエルフマン。

どうして…?私たちがみんなに何をしたっていうの?村の為に…人の為にやった事なのに……どうして誰も理解してくれないの?

虚しさの余り俯く顔、瞳に溜めていた涙が頬を伝う。

だがその時……

 

「リサーナ!」

 

「えっ?」

 

エルフマンの叫びを聞き咄嗟に顔を上げるリサーナ。目の前には誰かが投げたのであろう石がリサーナ目掛けて飛んで来ていた。余りに突然の事で身動きが取れないず、リサーナは迫り来るであろう痛みに怯え目を瞑った。

 

 

 

 

 

バシッ!

 

音が鳴った。だが痛みはない。…外れた?そう思いそっと目を開けるとその石はリサーナの目の前で止まった。…いや、受け止められたのだ。

 

1人の男の大きな手によって。

 

「ふぇ…?」

 

「子供相手に大人が束になって…気に入らねぇな」

 

「お、おい!あんたなんのつもりだ!そいつらは悪魔なんだぞ!」

 

突然の桐生の横槍に村人達も驚きが隠せずにいた。

 

「悪魔か何だが知らねぇが、あんたらのやり方は気に食わねぇ」

 

「なっ…なにぃ!?」

 

「誰だよあいつ…」

 

「村の人間じゃないよな?」

 

「分かったぞ!そいつも悪魔の仲間だ!だから奴らを庇うんだ!」

 

「こいつめ!もうやっちまえ!悪魔を退治するんだ!」

 

「「「おおぉぉっ!!」」」

 

「何を言ってもダメみたいだな」

 

村人達の反応を見て呆れる桐生。すっと後ろを向くと窓から顔を出してるリサーナと目が合う。

 

「中に入ってろ。俺がドアをノックするまで出てくるなよ、いいな?」

 

「…う、うん」

 

桐生の言葉に頷いたリサーナは家の中に戻り窓を閉めた。それを確認した桐生はこちらに向かって構える村人達と対峙する。

 

「こっちは何も分からずで少しイラついてんだ。あんたらには悪いが、少し憂さ晴らしさせてもらうぜ」

 

そう言葉を吐くと拳を固く握り構える。

 

「来い!」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

「…静かになった」

 

先程まで騒がしかった外は嘘のように静まり返っていた。

 

コンコン

 

「!?」

 

 

静寂の中、突然家のドアがノックされる。

急な物音に一瞬驚いた3人だが、リサーナがそっとドアに近付きドアノブに手を置いた。

 

「リサーナ開けるな!」

 

ミラが止めるがリサーナの手は既にドアノブを回し扉を開いていた。見上げるリサーナ、その目の前に立っていたのは村人から投げられた石から自分を守ってくれた男の姿であった。

 

「リサーナに近付くな!」

 

「っ!?」

 

リサーナと桐生の間に割って入るミラ。桐生に向けて悪魔の右腕を突き出す。人ならざる腕を見た桐生は目を見開き驚く……が、すぐに表情を戻しミラの右腕に触れ、そっとその腕を下ろさせる。

 

「っ!何を!」

 

「もう大丈夫だ」

 

「えっ……?」

 

そういうと桐生は自身の後ろに目を向ける。それに釣られる様に3人はドアの外を覗き込んだ。そこには数十人は居たであろう村人たちが、1人残らずその場に倒れ込んでいた。

 

「少し耳障りだったからな。寝てもらっただけだ」

 

「す、すごい…」

 

目の前の光景が信じられないとばかり声を漏らすエルフマン。

 

「…けど、どちらにしろもうこの村にはいられない」

 

「ミラ姉…」

 

「お前たち、親はどうした?」

 

「もういないよ。俺達が幼い頃に…」

 

「…そうか」

 

エルフマンの言葉を聞き、自分の幼き頃を思い出す。俺も幼い頃に親を亡くし孤児院ひまわりに入った。だが俺は寂しくはなかった、錦や由美、風間のおやっさんが居てくれたから。だけど、目の前の3人は違う。親を失い、挙げ句の果てに村人達から迫害されていた。まだ大人の支えが必要な歳だろうに…。

 

「行くぞリサーナ、エルフマン」

 

「う、うん」

 

「おじさん…ありがとう。私たち行くね。ばいばい」

 

「……待て」

 

ミラに呼ばれる村を出る為にその場を去ろうとする3人。しかし、桐生の制止の声を聞き振り向く。

 

「俺も一緒に行こう。子供だけじゃ何かと危険だろ。それに、俺も宛がなくて困っていてな」

 

「…リサーナを守ってくれた事には感謝してるが、宛がないならこの村に居ればいいじゃねぇか」

 

桐生を睨みつけながらそう言い放つミラ。桐生はその言葉に肩を竦めてフッと小さく鼻で笑う。

 

「悪魔の仲間だって疑いをかけられ、その村人達に手を挙げたんだ。お前らと同様、俺もここには居れないだろう」

 

「姉ちゃん、どうする?」

 

ミラは桐生の事をじっと睨み続けていたが、次第にこの男には何を言ってもダメだと感じ取るとはぁ…っと溜息を漏らし目線を前に戻した。

 

「……勝手にしろ」

 

「そうか」

 

そんな短い言葉を互いに交わし、歩き出した3人の後ろを着いていくように桐生も歩く。すると、前に居たリサーナが桐生の横に着き見上げてくる。

 

「おじさん、さっきはありがとう」

 

「俺はただ、あいつらが気に食わなかっただけだ。お前らも大変だったな」

 

リサーナを見下げながら、その大きな手のひらでリサーナの頭を撫でる桐生。それを嬉しそうに目を細めながら撫で受けるリサーナ。そこで、何かを思い出したかのようにあっ!と声を上げる。今度はなんだとミラとエルフマンがリサーナの方を振り向いた。

 

「そうだ!名前!おじさんの名前聞いてない!」

 

「何かと思ったらそんな事かよ…」

 

「ミラ姉!これは大切な事だよ!」

 

そういうと万遍の笑みで桐生を見上げるリサーナ。

 

「私、リサーナ!リサーナ・ストラウス!それでこっちが兄の…」

 

「あっ…え、エルフマン・ストラウス」

 

「で、長女の…」

 

「……」

 

「もう、ミラ姉ぇ〜?」

 

「……ミラジェーン・ストラウス」

 

エルフマンは少し照れ笑いを浮かべ、始めは目を逸らしていたミラも、リサーナの言葉で渋々桐生の方を見て名乗った。

 

「それで?おじさんの名前は?」

 

「あぁ…俺は……」

 

3人を真っ直ぐに見て、小さく頬を釣り上げ口を開いた。

 

「桐生一馬だ」

 

 

 

 

こうして、伝説の極道の新たな伝説(ものがたり)が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「フィオーレ?……聞いた事ない国だ」

「ミラ姉…カズマおじちゃんはいい人だよ?」

「そんなの…まだ、わかんないだろ…」

「お前らはもっと大人に甘えていいんだ」

[ウッホ!ここは俺らの縄張りだぞガキ共]

「うわぁぁ!?モリバルカンだぁ!」

「ミラ姉ぇぇ!」

「リサーナ!エルフマン!くそぉっ!」

「言ったろ…ガキは大人に甘えてろと」

「その背中は…っ!?」

次回 〜龍の背中〜


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