男性Vがコラボするってよ (TrueLight)
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【今日も一人で】マ〇クラG・I【宝くじ】①

「こんヒビキー。VSの(あかつき)ヒビキでーすよろしくー」

 

 配信画面にアニメチックな学生服を着た茶髪イケメンキャラが映し出されたことを確認して、俺はいつものように生配信を開始した。

 

コメント

    :雑で草

    :やる気あるんですかぁ?

    :早く同期コラボしろ

    :ひどいコメを見た

    :今日何するん?

 

 SNSで告知してたこともあり、待機してたファンがすぐに暖かいコメントをくれる。暖かすぎて血管が沸騰しそうになることもあるが。

 

「コラボ? 同期? 知らない言葉だなぁ……がいこくごかな?」

 

コメント

    :脳内から削除するな

    :ヴァーチャルシップでコラボしてないのお前だけやぞ

    :一期生の先輩に凸して♡

    :もう一期生って言い張っちゃえよ

 

「うるせーい! 俺だってしてーですよそんなもん!」

 

コメント

    :言ってしまいましたね

    :はい言質

    :他のライバーと繋がりたいって言いました?

    :拡散不可避

 

「はい知ってたー! すーぐ俺のこと直結野郎にしようとするよね! 良いもんね、一人でもゲームは出来るもんね!!」

 

コメント

    :泣かないで;;

    :ゲームって本来一人でやるもんだしな!

    :同類いて草

    :男性Vは直結野郎ってはっきり分かんだね

    :先輩はお引き取りください

 

 ヴァーチャルシップ、通称VS。俺が所属している複数のVtuberを擁する事務所だ。現在四期生の募集をかけていて、組織的には順調と言えると思う。俺の存在を除いて……。

 

「なんで男性V増えないの……? 楽しいよ……? 一緒にヴァーチャルの世界で遊ぼうよ……」

 

コメント

    :草

    :崖っぷちで手招きするのやめてください

    :なんでそこで勇気を出してしまったのか

    :企業が募集する野郎ライバーとか地雷もいいとこなんだよなぁ

 

 そうなのである。この界隈、どこを見渡しても女の子ばかり。いわゆる個人勢には男性も居ないことはないが、その辺とコラボというのは企業としても慎重にならざるを得ないのね。

 

 他の企業がやってないことを率先してやってこそ大成功を得られると考えたらしいVSは、上手く軌道に乗った一期生に続いてVtuberを募集したのだ。それが二期生……つまり俺です。

 

 募集枠は男性限定(・・・・)で三人だったのだが、俺以外は一件も応募が無かったらしい。選考で落としたとかじゃなく、マジで俺以外来なかった(・・・・・)のだ。ぶっちゃけ男性Vグループ作ろうとして失敗したのである。

 

 まぁ……募集がかかったのと同時期に別企業でデビュー予定だった男性Vの卵がやらかして、男性Vって存在自体にネガティブなフィルターがかかってたのは間違いない。当時の俺はそんなこと知らなかったんだけどね……VS一期生のファンだから応募したんだし。

 

 つまり現在、俺は企業Vtuber界隈唯一の男性Vであり、かつ同期が一人も存在しない孤高の存在であり、他ライバーとのコラボとはつまり男女コラボなので先方ガチ恋勢に叩かれることを意味するのである!

 

 燃えたくない!

 SNSで叩かれたくない!

 でもコラボしてみんなみたいにキャッキャしながらゲームしたい!

 でもでも俺が炎上して相手に迷惑かけらんないから誘うことすらできない!

 

 詰んどる。コラボしようと言えば、してくれる女性Vは間違いなくいる。むしろ持ち掛けられたこともある。でもね、気軽に受ける訳にはいかんのや……事務所(おかみ)にも慎重に行動してね、って言われてるし。

 

「寂しいよう……」

 

コメント

    :強く生きろ

    :俺らで我慢しろ

    :ホモォ……

    :なんでや女の子リスナーかも知れんやろ!

 

 確かにリスナーの存在はありがたい。一切コラボが発生しない(できない)状態の俺にとって、リスナーとは唯一の話し相手なのだ。でも君ら、マルチで募集かけると僕のこと真っ先にボコすじゃん。つらいお?

 

「もういい、うじうじしてても始まらん。ゲームするぞー!」

 

コメント

    :始まった

    :空元気系Vtuberええぞー

    :ゲームってまたマ〇クラ?

    :MODのせいで別ゲーだけどな

    :G・Iちゅき♡

 

    :もうあきらめたほうが良いと思うよww

    :実際ヒビキのシード値きつ過ぎる

    :一人だし

    :宝くじ配信はここですか?

 

「キツいのは俺が一番知ってんのよね……って誰が空元気系じゃい!」

 

 コメントに適当に返しつつ、起動したゲームはみんな大好きマ〇クラ。多くのVtuberが愛用しているゲームでもある。そうだよね、マルチしやすいもんね……。新しいメンツとならバニラ(MODという追加要素を入れない基本仕様)でもいくらでも遊べるし……。

 

「今日こそ"一坪の海岸線"ゲットしてやるからな! 見てろよ!」

 

コメント

    :マジで応援してるw

    :というかいい加減終われ

    :あと一枚で終わるって言ってから二週間が経ちました

 

「しゃーないでしょー! ドッジボールイベント発生しないんだよぉ!!」

 

 ここまでのコメントで、初見さんやROMってる人にも分かったんでなかろうか? 俺がやってるのはマ〇クラの神MOD、その名も"マ〇クラG・I"。某有名週刊誌で休載しまくってる超有名コミックに出てくる架空のゲームソフト、「グ〇ード・アイランド」をモチーフに作られたMODだ。

 

 ワールドはマ〇クラ規格の最大拡張マップ16枚分に固定され、ランダムに大陸が生成される。その中にはマンガ中のゲーム内で描かれた多数の街や村、イベントが発生するが、これもシード値(マ〇クラの世界を作る時に入力する文字・あるいは数字)によってタイミング、場所はランダムだ。

 

 ゲームの目的は"指定ポケットカード"の収集。原作では全100種ものカードを集める必要があるけど、このMODにおいては一人9種類で良い。マ〇クラにはインベントリが9×4で36枠あるんだが、その最上段一列が指定ポケット扱い。その下二列がフリーポケット。残りの一枠は普通に荷物を入れるとこだ。G・I風に言うとゲイン(カードをアイテムとして実体化すること)したブツがそのまま使える枠だね。あぁそうだ、呪文(スペル)カードを使うときも一時的にここに入れることになるけど。一定時間入れたまま使わないと消えちゃうんだよね。

 

 まとめると、インベントリの最上段一列を埋めたらクリアってことね。ちなみに、そこに指定されたナンバーのカード以外を入れると消滅しやがる。これは地味にひどい仕様だ、なにせクリックミスでレアカード入れちゃうと消えるんだからな! さらに補足すると、ワールドにプレイヤーが入った時点で指定される9種類のカードナンバーは重複なしのランダムだ。

 

コメント

    :いつの間にか金貯まっとるがな

    :じゃあすぐマサドラか

    :ソロで指定ポケットの番号にNo2が見えた瞬間ワールド削除なんじゃがなぁ

    :よう続けとるわ

 

「金は裏作業中に貯めました。お察し通りマサドラ行くよー。一坪の海岸線(No2の指定カード)はホラ、原作ファン的にはどうにかして取りたいじゃん? ってわけで……同行(アカンパニー)オン! マサドラへ!!」

 

コメント

    :同行www

    :あかんwwアカンパニーはあかんwww

    :毎回ここで草生える

    :同行の意味知ってますか?

 

「これしかないんだからしゃーねーだしょ!!」

 

 複数人を指定した街へ同時に移動させる呪文(スペル)カードを発動し、俺は目的の街マサドラへ。ここは唯一呪文カードを購入できる街で、ここを早めに見つけられないと詰むことも多い。アバターが光に包まれ、ビューンと一直線に空を飛んでいく様はなかなか爽快だ。この間は無敵で呪文攻撃も受けない。一人でも大丈夫! アバターの周りをキラキラ舞う輝きが涙でないことを願いたいね。

 

 今回の目的は魔法都市マサドラで呪文カードを購入すること。TCGプレイヤーなら馴染み深いかな、一パックランダム三枚入りで10000J(ジェニー:ゲーム内通貨)。ここで宝籤(ロトリー)という呪文を入手したいのだ。こいつは使用するとランダムで別のカードに変わる。ランダムなので、なんと指定ポケットカードに化けることもあるってワケよ! 仕様により俺の残る指定ポケットカード、"一坪の海岸線"はソロだとこの方法でしか手に入らない。泣ける。

 

「よーし到着わよー」

 

コメント

    :到着わよー

    :このMODってバニラのアイテムあんのかな

    :あるぞ。しかもカード化できるぞ。エリトラがゴミと化すぞ

    :せやろなぁスペル使ったほうが早いし

    :他のアイテムもそんなもんやろw

 

 リスナーと戯れているうちにバシュゥッと着地音。目の前に広がるはマサドラの入り口……うん?

 

コメント

    :あっw

    :まぁ湧くよね

    :飛んでるうちに夜になったか

    :ゾンビ3体はヤバいぞ

 

 視聴者がコメントしてる通り、俺がマサドラに入るのを妨げるように見慣れたマ〇クラのゾンビが三体。

 ただのゾンビと侮るなかれ、MODの恩恵をしっかり受けているこいつらはなんと……。

 

投石(ストーンスロー)使ってきたーー!!」

 

 スペルを撃ってきやがるのだ! お買い物を前に、三体のゾンビとの戦闘が始まった!!

 




別作品の息抜き程度に更新する予定。
作者は全然Vについて詳しくないです。他作家様方のVtuberモノ見て書いてみたくなりました。

言うまでもないことですが作中のG・IMODは作者の妄想です。存在しません。


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【今日も一人で】マ〇クラG・I【宝くじ】②

「しゃらくせぇっ! アッ、ちょっ! やめてぇ!!」

 

コメント

    :即 落 ち 2 コ マ

    :弾くのうめぇと思ったけどそら無理よね

    :防御系使ってないのか

 

    :聖騎士の首飾りあるけど指定だから使えない

    :防御系はレアだしソロじゃ使うだけ損

    :かわいそうww

 

 三体のゾンビから同時に放たれた呪文(スペル)投石(ストーンスロー)。これは相手のフリーポケットのカードをランダムに一枚破壊する呪文だ。指定ポケットのカードが破壊される心配は無いけど……この世界において、通貨であるJ(ジェニー)ももちろんカードだ。そしてそれはフリーポケットに入ってる。なので……これはカツアゲに遭ってるも同然! 宝籤(ロトリー)が買えなくなっちゃう!!

 

 原作では呪文攻撃は防御系呪文使ったり、その効果が付与されてるアイテムを持ってないと防げない。でも、このMODではピンポイントに剣で切り裂けば無効化が可能だ。それで一撃は防いだが、残り二発はモロに食らった!

 

「うぉおおおおおっ!!」

 

 しかしポケットのカードを確認してるヒマは無い! その間にも敵は攻撃してくるんだから……! 俺は急いで三体のゾンビに駆け寄り、円を描くようにしてちまちま剣で切りつける。マ〇クラのゾンビは中距離攻撃手段を持たないから、距離が開いてると呪文を撃ってくるけど。近づきさえすればバニラのように殴ってくるだけのザコだ。

 

 何発か攻撃を受けながらも、俺は三体のゾンビを倒すことに成功した。

 

「はぁ、はぁ、やってくれるぜ……」

 

コメント

    :必死で草

    :これってゾンビが呪文カードドロップしたりしないの?

    :しないぞ

 

    :敵MOBはスペルカードを使ってるんじゃなくて、スペルと同じ効果の攻撃をしてくるって仕様だからドロはバニラと一緒

    :何その鬼畜仕様ww

    :だから残弾切れるの待っても意味ないぞ。距離開いてる限りずっと石投げてくるぞ

 

 チラッとコメントに見えた通り、ゾンビが落としたのは腐肉だけだった。ドロンと音を立ててカード化したそれを無視して、俺はインベントリ(フリーポケット)を急いで確認する。

 

「頼むぞぉ……」

 

コメント

    :何割られた?

    :食料系ならマシ

    :金と呪文消えてたら痛いよな

 

    :ちょっとレア割れてて欲しい自分がいるw

    :最初はみんな思ってたぞ、もう見飽きたから応援してるだけだぞ

    :草ァ

 

「金は……よし、大丈夫。何が破壊された……?」

 

 カードが入っていたハズの空欄に何を入れていたのか思い出せない。マ〇クラの手持ち常に把握するのって無理くない?

 

「…………一つは焼き豚だな、オーケー。あと一つ……あっ」

 

コメント

    :飯ならまぁ

    :レアカード割られた?

    :言うてフリーにそんな痛いのあったか?

 

「"孤独なサファイヤ"だ、Bランク指定ポケットカードの……」

 

 俺に指定された9種のカードには入ってないけど、全100種の指定される候補カードの一枚だ。ランクは高くないが、基本的に指定ポケットカードは高く売れる。ちょっともったいないな……。と思っていたら

 

コメント

    :孤独なサファイヤwww

    :ええやん割れてww

    :そうなの?どんな効果?

 

    :ざっくり言うと、これ持ってるやつは富豪になれる代わりに一生一人で過ごすってアイテム。

    :草

    :だからコラボ出来なかったんだな!

    :良かったやんw

 

「そんな理由でボッチしててたまるか!! もしそうならこのMOD呪いのゲームやんけ!!」

 

 俺が嘆けば嘆くほどコメント欄には草が生え散らかしていく。ちくしょー、これで全額投げて宝くじした後、一坪の海岸線出なかったら手のひら返すんだぞこいつら。サファイヤ売った金で出たかもしれないのになぁって具合に。

 

「もういい、ちゃっちゃかショップ行こう。サファイヤが割れたってことは俺は孤独じゃなくなる。つまりゲームクリアしたお祝いにコラボのお誘いが来るってワケよ!!」

 

コメント

    :空元気いいぞ~

    :スーパーポジティブで草

    :ポジティブってか現実逃避

 

 視聴者がうるさいがどんな煽りも華麗にスルーし、俺は目的地のカードショップにたどり着いた。一直線に店員の元へ向かって、まずは1パック購入する。さぁガチャの時間だぜ……!

 

「よっしゃいくぞぉ!! お(めぇ)らの運を全部オラに分けてくれ!!」

 

コメント

    :殺す気ですか?w

    :ちょっと悪いこと起きたら全部お前のせいにするからな

    :次の枠から視聴者減ってたら察しろ

    :みんなちゃんと分けてて草

    :や さ い せ い か つ

 

「1パック目、ドロー! キタァアア宝籤(ロトリー)一枚! さっそく使うぜ、宝籤(ロトリー)オン!!」

 

コメント

    :展開が速い

    :そんなポンポンでんのかw

    :ロトリー自体はランクGの低レアだから

    :まとめて買ったほうが効率良くない?

    :良くない。カード化限度枚数の関係で1パックずつ買って1枚ずつ使ったほうが当たる確率高い

    :めんどくさそうやね

 

「……んー、ゴミ!!」

 

コメント

    :お口悪いですよ!

    :実際ゴミ

    :他の呪文は悪くないけど。移動系は重要

 

 ロトリーで当たったカードは使い道のないアイテムだった。換金するのも面倒なレベルなのでその辺に放っておく。しばらくしたら勝手にアイテム化(マ〇クラのドロップアイテムと同じオブジェクト(エンティティ)になる)して消えるだろう。

 

「まぁまぁまぁ。まだ一回目だからね、金はたんまりある! どんどんいくぞぉ!!」

 

コメント

    :サファイヤパイセン仕事してたんやな

    :がんばえー

    :今回こそ出て欲しい

    :もう爆死芸見飽きました

 

 その後、俺は金にものを言わせてパックを購入し、宝籤(ロトリー)が当たるたびに即使用するという配信を続けた。

 

「ドロー! よし来た、宝籤(ロトリー)オン!! ……ハズレ! 次! ドロー!」

 

 30分、1時間……2時間…………。大量購入して一気に使用するという時短が出来ないので、時間だけがどんどん過ぎていく。完全に爆死動画の様相を呈していた。

 

宝籤(ロトリー)オン!! くそっ、またハズレや……」

 

コメント

    :これはひどい

    :知ってたけどねww

    :最初からこうなると思ってました

    :意外でも何でもない

    :だからあれほどリスタートしろと

 

 こういう配信は何回かやってるので、リスナーも慣れたものだが……やはりここまで応援してもらった以上、クリアするところを見て欲しいのだ。諦められねぇ……!

 

「最後の金だ、ドロー……!」

 

コメント

    :ラスト1パックかぁ

    :そろそろ配信も終了ですかね

    :今日も良い空元気だった

    :誰も期待してなくて草生えますわ

 

    :お?

    :二枚あるやんw

    :ロトリー出ないまであったのにこれはラッキー

 

 最後の1パックから宝籤(ロトリー)が二枚出た! これはキてるんじゃないか……!?

 

「よ……よし行くぜ。お前ら、出がらしになるまで運を寄こせ!!」

 

コメント

    :声震えてるww

    :しょうがないにゃあ

    :持ってけ つ運

    :はい つウン

    :ウンを押し付けてやるなよw

 

宝籤(ロトリー)……オン!! …………え?」

 

 二枚のうち一枚目を発動すると、それは……。

 

コメント

    :ん?

    :来たか?

    :いやハズレだな

    :えっ、ちょっとw

    :まてまてまてww

    :これはwww

 

 チャット欄がざわめき出す。俺が宝籤(ロトリー)によって獲得したカードは、残念ながら一坪の海岸線ではなかった。だが。

 

「り、リスキーダイス……!!」

 

コメント

    :やるしかないww

    :これは持ってる間違いない

    :なにこれ?

 

    :20面ダイス。一面が大凶で他は大吉。大吉が出るとめっちゃ良いことが起こる。大凶出すと高確率で死ぬ。

    :草草の草

    :つまりどういうことだってばよ

 

    :リスキーダイスで大吉出す→ロトリー使う→一坪の海岸線が当たる

    :そういうことかww

    :厳密に言うとそうはならんけど、願掛けにはならぁねw

    :確かにアツいな

 

「いや分かるけど! 俺もワンチャンあると思ったけどさぁ!!」

 

 原作だとこのコンボじゃランクAが上限なんだが、最後の一回、ゲン担ぎに投げるのはありかも……? とは思わんでもないけど!

 

 このゲーム、原作リスペクトでハードコアだ。つまり、プレイヤーに復活要素(リスポーン)が無い。マルチではまた別なんだが、死んだら基本的に蘇生できず、強制で観戦(スペクテイター)モードにされる……! せっかく集めた8種も全部パァになるのだ……。

 

 ニ十回に十九回大当たりが出ると言えば聞こえはいいが、ニ十回に一回は死ぬ可能性がある、まさに危険なサイコロ(リスキーダイス)……!

 

 だが俺の葛藤も露知らず、コメントは大いに盛り上がっていた。

 

コメント

    :ハイハイハイハイ!

    :ヒビキくんの!ちょっといいとこ見てみたい!

    :あったなぁそんなネタ

    :もう一回!もう一回!

    :ハイハイハイハイもう一回!

 

「うわぁああああああっ!!」

 

コメント

    :ノリノリで草

    :これもう振るやんww

    :これは流行る

    :切り抜き確定

    :ついにコラボしたい切り抜き以外の切り抜きが……?

 

 ノリのいいリスナーのおかげで原作再現でき、興が乗ってしまった俺は決心した。これで決めたるでぇ……!

 

「っしゃいくぞオラァ! リスキーダイスをゲイン! てぇいっ、コロコロコロ! ……よぉし大吉ィ!!」

 

コメント

    :セルフSEは草

    :まぁここはね

    :言うて19/20で当たるから

    :さぁこっからですよ

 

 ごくりと喉を鳴らし、最後の宝籤(ロトリー)をアバターの手に持つ。頼むぞ……!!

 

宝籤(ロトリー)……オン!!」

 

コメント

    :どうだ?

    :ハズレだったら連番1ズレであって欲しい

    :分かるww

    :そこまで行ったら逆に愛されてるww

 

 思わず閉じていた目を恐る恐る開き、俺はそのカードを凝視した。変身したカードは……?

 

コメント

    :おぉ

    :マジか

    :ファー↑w

    :U C

 

「……でっ。でっででで出たァアアアアア!!」

 

コメント

    :うっさ

    :うっさ

    :鼓膜返して

    :あれ、急に音聞こえなくなった

    :イヤホンなのにリビングの家族全員に凝視されてんだが

 

 チャットがうるさいが知らん! キタ! 一坪の海岸線!! 指定ポケットカード9種類揃ったぞぉおお!!

 

「クリアだぁああああ!!」

 

 震える手でマウスを操作し、俺は手元の"一坪の海岸線"を最後の指定ポケットに収めた。その瞬間画面が暗転し、クリアムービーが流れ出す。お、終わった……!! G・IMODのソロ動画は割と動画サイトに上がってるけど、No2含めてのクリアは多分俺が初だ、これは嬉しい……!!

 

コメント

    :おめでとう

    :素直に称えよう

    :よくやったよマジでww

    :全枠見届けた俺たちも称えられるべき

    :ひびきが必死こいてドローロトリーするの眺めるだけの配信だからw

    :こんな変わり映えしない枠も終わると思えば寂しいもんだ

 

「やぁありがとう、ホントに。お付き合いいただき感謝! ライバーのみんなのおかげで何とかここまで来れました!」

 

コメント

    :思い出したようにファンネーム使うな

    :そういやそんなんでしたね

    :なんでライバー?

 

    :リスナーをライバー扱いして一人でもコラボをしていると言い張っていた時代があってだな

    :草

    :泣ける;;

 

 はっはっは、今は何と言われようが気にならない。清々しい気分だ……。まぁこのMODはマルチで呪文バトルするのが醍醐味であって、クリアしたところで特にめぼしい特典は無い。そのワールドで唯一クリエイティブ(何でもアリ)モードの権限が与えられ、全カード自由に使用できるくらいだ。MODの専門知識が無いとこのゲームでクリア以外にクリエ使う手段無いから、ファンは一回くらいクリアしたいところだけど。

 

「長かったねぇ……。やぁでもイケるもんだな!」

 

コメント

    :条件だけなら二週間前から同じだったぞ

    :褒めてやらんこともない

    :金貯めるのも楽じゃないからなぁ……

    :ゾンビスポーンぶち当たった時の絶望感ねw

    :投石のエフェクトで画面埋まるからな

 

 原作に登場するキャラをスキンで再現したキャラが登場し、ちょっと喋っては消えていくエンディングを眺めながら、俺はリスナーとこのゲームの思い出を語り合った。感慨深いような寂しいような。そして次はなんのゲームやろうかなぁという、久しぶりの切実な悩みも。

 

 ぐっと背伸びをして、いよいよムービーも終わるそんな折。

 突如としてそれは訪れた。

 

コメント

夕張ユラ:ヒビキ先輩クリアおめでとうございます! ずっと応援してました!

    :えっ

    :!?

    :ユラちゃん来とるw

    :ずっと見てたのかw

    :これは燃える(予言)

 

夕張(ゆうばり)ユラって……えぇっ!?」

 

 夕張ユラちゃん。VSの四人いる三期生のうち一人だ。彼女がコメントした通り、一応は俺の後輩ということになるけど、もちろん形だけ。事務所に入った時は共通のグループチャットで挨拶を交わしたが、その程度で特に親交は無い。なんで急に……? というか、ずっと見られてた!?

 

「えっと……あ、ありがとう。なんとかクリア出来たよ、うん」

 

コメント

    :さすがに動揺が隠せない様子

    :なんならリスナーも困惑してるからw

    :これは歴史的瞬間ですよ

 

 俺も、何故か同調して視聴者も困惑する中、ユラちゃんはこうコメントするのだ。

 

コメント

夕張ユラ:ヒビキ先輩がクリアしたら、勇気を出してお願いしようと思ってたんです!

夕張ユラ:私と、コラボしてくださいっ!!

    :コラボ依頼キターー!!

    :体育館裏で頭を下げて告白する夕張後輩見えました

    :ぐぅわかる

 

    :おい固まってないでなんか言えw

    :気持ちは分かるけどねww

    :さっきのスーパーポジティブフラグだったじゃんw

    :ユラちゃん待ちぼうけやぞ

 

夕張ユラ:どきどき……

    :意外に図太いなこの娘

    :それが良い

 

 思わぬ展開に頭が真っ白になった俺は、僅かに残った思考回路をフル活動させてなんとか一言答えた。

 

「……か、考えさせてくだしゃい」

 

 直後、大量の罵倒コメントが流れたのは言うまでもないね! 傷ついた様子もなく、ユラちゃんが「良いお返事期待してますっ」と返してくれたのが救いだった。

 



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Vの裏で:コラボしても良いですか?

『三期生の夕張さんとコラボですか、初耳ですが』

「はい……昨日の生配信を見てたらしくて、コメント欄にそんなことを」

 

『……コメントで、ということは。ある程度視聴者にも伝わってしまったと?』

「そうです。一応その場では了承せず、考えさせてほしいと返したんですが……」

 

『そうですか、助かります。……申し訳ありません、すぐにでも頷きたかったでしょうに』

「いやそんなことっ……は、あるんですけど。僕としても、出来る限り事務所に迷惑はかけたくないので……」

 

 G・IMODのソロクリア配信を成し遂げた翌日、俺は事務所のマネージャーに夕張ユラちゃんからコラボの打診があった旨の報告をしていた。使ってるのは通話用のPCフリーソフト。これならメモしながら話せて便利だ。

 

 一期生、三期生ともに専属のマネージャーがついてるVSだけど、俺にはそれが居ない。二期生の担当を予定していた人が三期生についてるんだよね。では相手がどういう立場なのかと言えば、VSプロジェクトの統括マネージャー様だ。つまりVSのボス。

 

 例えば所属のVが何らかの企画を希望した場合、まず相談を受けた担当マネージャーが吟味し、さらに上の統括マネージャーが可否を判断する。でも俺にはそのエスカレーションが無いので、こうして直接お伺いを立てにゃならんのだ。

 

 やり取りの上では向こうの腰が低い気がするけど、それは俺がセルフマネジメントせざるを得ない状況を詫びてのことであり、本来なら直接連絡を取り合えるような間柄じゃない。ぶっちゃけ緊張しますハイ。

 

『そうですね……ヒビキ君は、まだ収益化こそしていませんがその申請自体は通っています。収益化記念配信のタイミングでコラボしましょうか』

「えっ……いいんですか?」

 

『はい。貴方はこちらが求める以上に慎重な言動を心がけてくれていますから。それに報いたいという気持ちは我々にもあるのですよ』

「あ、ありがとうございます」

 

 なんかそういうことになった。燃えるのが怖かったからそうしていただけとは言え、清く正しく活動するもんだね!

 

『打ち合わせや配信日の調整はこちらで行います。さしあたって気になることはありますか?』

「えぇと、そうですね……すでにアーカイブとしてチャンネルに上がってる動画なんですが、権利関係に問題が無いかとか改めて確認をお願いすることは可能でしょうか……?」

 

『問題ありませんよ、専門のスタッフに話を通しておきます。……事務所への配慮には感謝しますが、もう少し気軽に活動しても良いんですよ?』

 

 差し出がましいとは思ったが収益化にあたっての懸念を話すと、ボスはどこか揶揄うように言ってきた。やべ、生意気言い過ぎただろうか。

 

「はは……今、事務所に所属している男性Vと言えば僕だけですし。僕の行動が、今後生まれるかもしれない他の男性Vの活動に影響すると思うと、やっぱり色々考えてしまいますね」

 

『お察しします。ですが、アレ(・・)は悪い出来事が偶然重なった結果ですので、気にし過ぎるのも良くありません。……まぁ、デビュー当時は少々大袈裟に忠言したかも知れませんが。今の私個人としましては、あなたの言動にある程度の信頼を置いていますからね。もう少し伸び伸びと活動しても良いかと思いますよ』

 

「きょっ、恐縮です!」

 

 お偉いさんに認められているのは素直に嬉しいが、それはそれで別のプレッシャーがあるぞ……。そんな思いが出てしまったか、裏返った俺の声にボスは電話の向こうでクスクス笑っていた。

 

『とりあえず、コラボの件は了解しました。諸々スケジュールを組み次第改めて連絡します。そう時間はかからないかと思いますので、その間は生配信はしないようお願いします。コメントでコラボについて言及をされると返しに困るでしょう?』

「ですね、ご連絡いただくまで大人しくしておきます。お気遣い痛み入ります」

 

 多くはないボキャブラリーから小難しい言葉を弄した俺を、やはり可笑しそうに笑ってから、ボスは通話を切る。こうして、なし崩し的にではあったけど、俺の初コラボが決定したのであった。

 

 …………燃えないといいなぁ……。

 



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Vの裏で:コラボしても良いですか? ー夕張ユラー

「……お疲れ様です、夕張ユラです」

『お疲れ様です。今、お時間構いませんか?』

「は、はいっ。大丈夫です」

 

 マネージャーさんから聞かされていた通りの時間に、私はVSプロジェクトの実質トップだという統括マネージャーさんからの電話を取った。用件は間違いなく、私が言い出したヒビキ先輩とのコラボについて。失礼のないようにしなきゃ!

 

 マネージャーさんの話だと、とっても厳しい人みたいだし……。裏では"元帥"なんて呼ばれているみたい。

 

『では早速本題に移りますが。暁さんとコラボがしたいそうですね』

「そ、そうです」

 

『理由を伺っても?』

「え、えと……ヒビキ先輩のことは、その。事務所に入る前から知っていたんです。それでその、尊敬、してます。最近ヒビキ先輩、とっても難しいゲームを配信中にクリアしてたんですけど、私、その動画全部見てて。お祝いに、そのゲームの雑談なんか出来ないかなぁって……その。思ったんですけど……先輩、よくコラボしたいって言ってましたしっ」

 

 電話の向こうから、私が話している間なにも音はしなくて。自分がきちんと喋れているか不安なまま、私は焦りつつもなんとか理由、のようなものを説明し終えた。

 

 すると、ふぅっ、と短く息を吐く音が聞こえて、元帥さんはゆっくりと口を開いた。

 

『……お気持ちは分かりました。たしか夕張さんは、応募の際にも暁さんの配信に言及されていましたね。暁さんの生配信をきっかけにVtuberに興味を持ったと』

 

「そうなんですっ! その、なんていうか、可愛いけどカッコイイと言いますか……ゲームが凄く上手いけど、負けたら子供みたいに悔しがって。最初はただのゲーム好きな人だと思ってたんですけど、視聴者のコメントに真剣に向き合ってくれる、大人っぽいところもあるんですよね! よくプロレスみたいな言い合いしてるんですけど、本当に他人を傷つけるような言葉は使いませんし。知れば知るほど素敵な人でっ」

 

『分かりました、夕張さん。落ち着いてください』

「はっ! すっ、すみません!!」

 

 勢いで語ってしまってから、相手が誰なのかを思い出して私は顔を青褪めさせた。へ、変なコだと思われてないかな……!? うぅ、やっちゃったかも……。

 

『まずはハッキリさせておきますが、コラボの件。これに関しては前向きに計画を進めるつもりです。夕張さんはゲームのクリア記念にと言いましたが、建前としては収益化記念と言うことでコラボする予定です』

「ふぇ?」

 

 思わず変な声を漏らしたけど、元帥さんは気にした様子もなく続ける。

 

『先に暁さんへの認識にズレが無いか確認しておきましょう。夕張さんは、何故暁さんが事あるごとに配信で「コラボがしたい」と言っているか分かりますか?』

「えっ? その……こ、言葉通りの意味じゃないんでしょうか……?」

 

『無いとは言いませんが。理由は主に二つです。一つは自衛のため。ずっとコラボがしたいと言いつつしないライバーが居れば、普通はその理由を考えますよね? 何かしら出来ない理由があるんだろうな、と。 敢えて自分から口にすることによって、暁さんは他のライバーに「コラボNGの相手」として印象付けているんです。それにより、炎上に繋がる火種……女性ライバーからコラボの誘いがそもそも来ないように。それでもコラボを提案してくる人は、はっきり言って想像力に欠けるので、その時点で断りますし』

 

 言外に私が「想像力に欠けてる」って言われてるみたいで心が折れそうになったけど、なんとか疑問を口にする。

 

「な、なんでそこまで……?」

『それが、理由の二つ目にもなるのですが。……夕張さんは、そもそも世間の男性Vに対する印象がどういうものか認識していますか?』

 

「それは……その。良い目で見られてないってことは知ってるんですけど……」

『詳細はご存知ないようですね。では説明しておきましょうか……直結厨、という単語に聞き覚えは? 主にネットゲームで使われたスラングです』

 

「す、すみません……」

『構いませんよ。これは主に、異性へ過剰に接近する行為の総称です。例えばゲームとは、基本的に男女の出会いの場ではありませんよね? にも関わらずチャットなどで住所を聞きだして実際に会おうと言ってきたりだとか。端的に言えば性的な繋がりが目的の迷惑行為です。あくまで極端な例になりますが』

 

「な、なるほど?」

 

 難しい言い回しでちょっと混乱してきたけど、何となくは分かった、ような気がする。うん。

 

『話を戻しますと、とある事務所でデビュー予定だった男性Vが、いわゆる直結厨だったのです。以後"男"と呼びますが……男が女性ライバーの配信で高額なスーパーチャットを投げる行為が散見され、そのコメントが総じてオフコラボを思わせるような内容でした。その件については当然、いたる所で炎上騒ぎになります。稼働を開始したばかりの当人のSNSには批判が殺到し、また当人が不用意に反論したことで加速。まさに火に油を注ぐ言動を取り続けたのです』

 

「う、うわぁ……」

『また、男に言い寄られていた女性ライバーも被害を受けました。その男がどういうコメントをして、ライバーがどう返したのか、という切り抜き動画が多数投稿サイトにアップされ、悪い意味で注目を集めたのです。生配信では常にファンではない、興味本位のユーザーが迷惑コメントを寄せるようになりました』

 

「そんなことが……」

『今では沈静化を見せていますが、未だにVtuberファンの間では男性Vに対するヘイトが燻っています。そして、それは常に暁さんの動向を窺っているのです。暁さんは自身が炎上の原因にならないよう、引いてはコラボ相手の女性ライバーに被害が及ばないよう、そもそも"コラボをしない"というスタンスを貫いてきたのです』

 

「…………」

 なんて言えばいいのか、分からなかった。いつもコラボがしたいと。一人でプレイするマルチ用ゲームは寂しいと言っていたヒビキ先輩。その気持ちは絶対に嘘じゃないし、それをよくコメントでイジられているのも見てきた。私が先輩に憧れたように……先輩もきっと、誰かに憧れて。ワイワイ集まって動画配信をするVtuberって存在を、素敵なものだと思って応募したハズなんだ。なのに……事務所と、周りのことを常に意識して。その上でリスナーを楽しませるような配信を、たった一人で続けてきた。そんなの、あんまりだよ……。

 

『……あまり気落ちしないことです。冷たく聞こえるかも知れませんが、これはヒビ……ん、んん! 暁さんが自ら決めたことですから。話をまとめますが、暁さんは自身の立場を守るため。同時に、他の女性ライバーの立場を守るために、いわゆるボッチ芸を続けているのです』

「そう、なんですね……」

 

 知らなかったことが、悲しく思えた。でも……そんなヒビキ先輩が、やっぱり素敵な人なんだとより実感できて、同時に嬉しさと……そんな先輩に憧れてこの世界に足を踏み入れたことが、心底誇らしく思えてくる。

 

 もっと言うなら、元帥さんがなんで私に、この話をしてくれたのかも。なんとなく、分かったような気がした。

 

「……それで、私は……ヒビキ先輩とコラボするために。何をすれば良いですか?」

 

 私が望んだような、ただヒビキ先輩の配信にお邪魔して。ゲーム配信の思い出を語り合いながら、クリアをお祝いする。それをそのまま通せば、ヒビキ先輩が築いてきたものを踏みにじることになる。きっと。

 

『……察しが良くて助かります。夕張さんには――』

 

 私ができるだけ真剣な声で問いかけると、電話の向こうで元帥さんは笑ったような気がした。そして――。

 

『暁さんの、ガチ恋勢になっていただきます』

「――ふぇ?」

 

 そんな、突飛なことを言ってきたのだった。

 



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【収益化記念配信】念願のマ〇クラ雑談!【~後輩を添えて~】①

「こんヒビキ! VS二期生、ヴァーチャルシップ唯一の男性Vこと暁ヒビキです! 今日は初コラボ記念生配信に来てくれてありがとうございます!!」

 

コメント

    :始まった!

    :収益化おめー ¥120

    :ちゃんと挨拶するな ¥370

 

    :動画タイトルと内容が違うんだが? ¥1000

    :コラボ記念ww

    :他のVが配信に来るだけでこのはしゃぎっぷりよ

    :泣ける;;

 

「スパチャあざます! でも早いですよー、なんせまだ主役が来てないんだからね!!」

 

コメント

    :チャンネル名改めろ ¥250

    :ここはユラちゃんねるだったのか(困惑)

    :コラボは嘘で見栄張ったって正直に言いなさい ¥2000

    :相手のライバーって俺らのことでしょ?

 

「いまだに信じてもらえてないことにある意味信頼を感じるね! しかし事実だ、君らもとっとと現実を受け入れることだなぁ!!」

 

コメント

    :草ァ ¥610

    :なぜコラボってだけでイキれるのかと

    :当たり前なことが幸せってこと、あるよね……

 

 告知通りの時間に配信を始めると、見慣れた名前の人からそうで無い人まで、配信画面で待機してくれていたらしい視聴者たちがコメントをくれる。なかには今回から俺のチャンネルでも可能になった投げ銭機能を使ってくれている人もいて、そのユーザーはよく話し相手になってくれた人たちだ。ありがたいねぇ……。

 

「それじゃあ早速お呼びしましょー。夕張ユラちゃんどうぞ!」

「みなさんこんばんは~! ヴァーチャルシップ三期生の夕張ユラと申しますっ。今日は尊敬するヒビキ先輩とのコラボと言うことで緊張していますがっ。なにとぞ、よろしくお願いします~!」

 

コメント

    :声かわいい

    :礼儀正しい娘や

    :三期生の常識枠とポンコツ枠と頑固枠を兼ね揃えたスーパーハイブリッド(?)だぞ

    :こんばんわー

 

 俺が配信画面にユラちゃんの立ち絵を表示すると同時に、通話を繋いでいる彼女が溌溂と挨拶してくれた。Live2Dで動く俺のモデル、アニメチックな学生服を着た茶髪イケメンキャラの隣には、意匠が似通った制服の美少女が並んでいる。エメラルドブルーの髪はポニーテールで、どことなく神秘的な印象を持たせるが。タレ目で柔和に微笑む表情が親近感を抱かせてくれている。控えめに言ってカワイイね!

 

 す、すげぇ……俺の配信に別のライバーがいるぜ!

 

「す、すげぇ……俺の配信に別のライバーがいるぜ!」

 

コメント

    :めっちゃ嬉しそうに悲しいこと言ってんな

    :ヒビキの配信に違う立ち絵がある時点で偽チャンネル感やべぇ

    :だってここユラちゃんねるですしおすし

 

 おっと、思わず口に出してしまったらしい。ユラちゃんとそのマネさん、さらにボスを交えた四人での事前打ち合わせでは、二人して割とはっちゃけて良いとのお言葉を賜ったが。さすがにチャンネル主の俺がテンションのまま進行を放棄するわけにゃ行かんね!

 

「ユラちゃん、今日は来てくれてホンットにありがとう! 俺、こんな風にライバーさんとコラボ配信するの、夢だったんだ……」

「そっ、そんな! 私こそ、ヒビキ先輩は憧れで! 初コラボに呼んでいただけるなんてすっごく嬉しいです……!」

 

「ユラちゃん……へへっ」

「えへへ……」

 

コメント

    :なんやこいつら

    :男女カプ厨ワイ大歓喜 ¥3000

    :このチャンネル燃やそう(名案)

    :ユラちゃんがVになったきっかけってやっぱこの人なのか

    :憧れのライバー居るって言ってたけど、女性とは言ってなかったもんね

 

 あかんあかん、さっき反省したはずなんだが。テンション任せに喋ってリスナー置いてけぼりである。……しっかし、ユラちゃんもノリがいいなぁ。ボスの話によると、ユラちゃんはゲームが大好き(・・・・・・・)らしく、俺のPS(プレイヤースキル)に憧れて配信をよく見てくれてたそうなのだ。

 

 俺はV活動とは別の仕事もあって、ユラちゃんの配信を見れたりはしてないんだけども。そこでも俺のことはちょいちょい話題にしてくれているらしく、向こうのリスナーも俺に対してそこまで悪感情は無いだろうってことで、今回のコラボと相成ったのだ。あったけぇよやっぱ、Vtuberの輪ってヤツはよぉ……俺とユラちゃんが両手繋いでる程度の小さい輪だけどね!

 

「ま今回はね! 俺も不慣れなコラボってことで、いつものノリでお届けできるよう、慣れ親しんだゲームをしながら! 雑談して行こうと思いますよー。ってことで、ユラちゃん準備は?」

「オーケーですっ。入れてますー!」

 

「そんじゃあゲーム画面出してっ、と……大丈夫そうかな?」

 

コメント

    :マ〇クラか、いいね

    :放送タイトルにあるしな

    :G・Iか?

    :スペルエフェクトの表示欄無いしバニラでしょ

    :夢がかなってよかったねぇ…… ¥2525

 

「ありがとな、ばぁちゃん……いやじーちゃんかも知れんけども。そう! 俺の夢だと散々言ってきましたマ〇クラ雑談コラボ! 運営が用意してくれたサーバーでテキトーに、ゆるーく遊びながらね、お互いのことを知れたらなーと思いますよ。先輩後輩言うても、僕ユラちゃんのことあんまり知らないからさ」

 

「うーん、私は嬉しいんですけど……収益化記念がこんな感じで大丈夫ですか? もっとリスナーさんと絡んだりとか」

「いーのいーの! ほら、お祝いってことらしいし、俺がやりたいようにさせてもらおうかなって! それに視聴者諸君とはもう嫌って程コラボしたから!! スパチャは拾うけどね!!」

 

コメント

    :ユラちゃんそこのボッチと遊んであげて? ¥2000

    :俺たちをライバー扱いする残念なパイセンで申し訳ないけど

    :保護者多くて草

    :はいコラボ代 ¥5000

    :これでダイヤピッケル作るといい ¥10000

 

「え、あっちょっと! 嬉しいけどお財布とちゃんと相談しろよ! 赤スパありがと!! ……実在するんやなぁ」

 

コメント

    :ボソッと赤スパを都市伝説扱いするな

    :お前の後輩はとっくにもらってるぞ

    :ホラひざまずけ ¥20000

 

「ハッハッハァ! 嬉しいし感謝しきりだが、赤スパでダイヤは掘れんので跪きなんぞしねぇぞ! ただまぁ、何となくの目標はダイヤを掘るまで、って感じにしようかな? ……あれ?」

 

 リスナーと戯れる自分の音声で気づかなかったけど、ちょっと口を閉じたらユラちゃんがくつくつ笑ってるのが聞こえてきた。どないしたんやろか。

 

「す、すみません……ふふっ。……やー、ヒビキ先輩とリスナーさんたちのやりとり、私とっても大好きで! いつも配信見ながら笑わせてもらってましたっ」

 

コメント

    :かわいいかよ

    :照れる///

    :媚びてんじゃねぇぞ ¥5000

    :ツンデレニキ!?

    :ツンデレニキで草

 

 思わずユラちゃんの言葉に照れたが、リスナーもやられてしまったらしい。うん……マジ可愛いね! こんな後輩欲しかったね! 事前打ち合わせの時はもうちょい口調が硬かった気がするけど、めっちゃリラックスしてるのが窺えるのも嬉しい。本人曰く、ライバーとして喋ってるって時は吹っ切れて自然に話せるらしい。俺はちょっと緊張するタチだから、珍しく感じるね。

 

「今日はね、俺と親交を深めてもらえると嬉しいけど。良かったらこっちのリスナーともね、絡むというか罵倒してやってもらえると僕の笑みが深まるのでね、どうぞよろしく」

 

コメント

    :まぁヒビキにマウント取られるよりは

    :我々の業界ではご褒美ですから

    :罵倒してください ¥514

 

「あっ、やっぱやんなくて良いやユラちゃん。意外に紳士(ヘンタイ)が多かったらしい」

「あははっ、ハーイ!」

「そんじゃあ配信も温まってきたのでね、マ〇クラ雑談! やっていきやしょー!」

「おーっ!」

 

コメント

    :雑談枠ってもっとヌルっと始まるもんでは

    :慣れてないからしゃーない

    :もっと温めてやるよ(炎上)

    :俺らとしかシたことないコラボ素人童貞に多くを期待するな

    :喋れてるだけマシw

 

「君らうるさいよー!!」

 

 チャットで俺をおちょくる連中に苦情を入れつつ、始まったマ〇クラ雑談枠の中、俺はとりあえず木を伐りに林へ突っ込んだ。

 



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【収益化記念配信】念願のマ〇クラ雑談!【~後輩を添えて~】②

「お、洞窟出たぞ。今が……Y(高さ)20か。もうちょい下れるとこ探したいねー」

「ですね~。あ、チェストの骨もらいます! これでパンが食べられますよっ」

「ありがてーってばよ!」

 

 放送から30分ほどが経ち、俺とユラちゃんは地下に(もぐ)っていた。開始10分くらいはユラちゃんがどれくらいマ〇クラに慣れてるのか分かんなかったから探り探りだったけど、思いのほか上手くてびっくり。

 

 俺が過去に配信したマ〇クラ動画も全部見てくれたというユラちゃんは的確に俺の行動アシストをしてくれて、一人で効率プレイするのとさほど変わらないサクサク具合でダイヤ探しは進んでいる。

 

 今は直下掘り(地上から地下へ真っ直ぐ掘り下ること)して地中の中層に拠点を作り、そこから横に掘り進めて辿り着いた洞窟を探検するところだ。俺が一人でこういうことすると途中で空腹問題にぶち当たるんだけど、それを見越してかユラちゃんはいつの間にやら集めた小麦の種を小さな地下農場で栽培している。

 

 そしてこのゲーム、骨を砕いて骨粉にすれば肥料になる。小麦は一瞬でパンに化けることだろうね。ユラちゃんの言葉はそういう意図だ。ちなみに骨はスケルトンっつーガイコツ弓兵を倒したら落ちる。

 

 実際のとこ30分でこの進捗はあまり速いとは言えないんだけど、ライバーとして雑談したり、リスナーに返事したりもしてるからね! それを考えるとユラちゃんのサポート能力はすさまじい。まったり雑談企画だからそこまで急ぐこともないんだけども。

 

 ところで、チャットコメントの内容はお馴染みのモノである。

 

コメント

    :後輩にパン焼いてもらえるとか絶許

    :そこ代われボッチにゃまだ早いぞ

    :リア充は匠の爆発で死ね

    :死ねはあかんぞ死ねはw

    :そうだな、悪かったよヒビキ くたばれ

 

    :大して変わってなくて草

    :ゲームなのにリア充とはこれいかにw

    :大事なのはそこじゃないぞ

    :ヒビキがライバーとイチャついてるのが腹立つ

    :ほんそれ

    :俺たちのボッチを返せ;;

 

「お? 悔しいのかなぁ? ほら、これがユラちゃんが焼いてくれたパンだぞ。食いたい人ー?」

 

コメント

    :寄越せ

    :くだちい……くだちい……

    :いくら払えば良いですか?

    :言い値で買うぞ。いや買わせてください

 

「バリむしゃバリむしゃバリむしゃァ!! う、うめぇ……! あれれ? 無くなっちゃったなぁ」

 

コメント

    :殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す

    :なんでそんなひどいことができるの?

    :バリムシャてww

 

    :てめぇの血は何色だーー!!

    :お前は俺たちを怒らせた誰か住所特定しろ

    :憎悪にまみれた切り抜き作ってやるからな震えて眠れ

 

「ちょっと待って! 冗談じゃん!! ごめんて!!」

「うふっ。あはははははははっ!」

 

 そらもう民度もクソもないコメントの嵐だが、ユラちゃんのウケが良いのでだーれも自重しない。いや俺もめっちゃ煽ってるけど、こう笑ってくれるとやめられない止まらない。そもそもユラちゃんもリスナーだったんだからお察しか……。

 

「ったく、ユラちゃんが笑ってくれるから許されてんだぞ! 他のライバーに死ねだの殺すだの言ってみろ、モデレーター大活躍やぞ!」

 

コメント

    :どの口が言ってんだ?

    :安心しろ、お前にしか言ってないから

    :ヒビキにだけだよ♡

    :気休めになってないw

    :他のライバーにそんな酷いこと言うわけないやろがい!

 

「君ら外面(そとヅラ)は良いタイプなの? ほんとぉ? どう思うよユラちゃん」

「ヒビキ先輩のリスナーの皆さん、とっても楽しい方たちですからっ。問題になるようなコメントはしないと思います! きっとここが一番リラックスできるんですね!!」

 

コメント

    :これがピュアか ¥490

    :ヤメテ……ヤメテ……

    :おい浄化されちゃうだろw

 

    :違うそうじゃないww

    :ここは俺らを罵倒する流れだろ舐めてんのか ¥10000

    :ツンデレドMニキ!?

 

 うん……そりゃ暴言の応酬はプロレスなんだけどさ! そんな屈託ない声で言われるとムズムズするだろ!! まぁユラちゃんの純粋さにやられてか、ちょっとコメントが落ち着いてきたので。そこからはユラちゃんと本格的に雑談しつつダイヤを探し続ける。

 

 くっちゃべりながらも洞窟内に松明(たいまつ)を設置していき、敵を片付けては下へ下へ。

 

「悪いねユラちゃん、何度も拠点と往復させて」

 つい癖で見かけたレア鉱石を掘ってると、定期的にユラちゃんが回収して拠点に持って行ってくれる。なんとも献身的な彼女にお礼を言おうとしたら。

 

「いえいえっ。配信はヒビキ先輩視点ですし、気にせず探してください! それに私、大好きな(・・・・)先輩のお力になれるのがとっても嬉しいんです!!」

 

 お、おぉ……。ここまでストレートに先手を打たれるとさすがに照れるぜ! 腐らずに配信やってきてよかったで、ホンマ……!

 

「ありがとな、ユラちゃん。俺、ユラちゃんの先輩って立場に恥じないライバーになるよ! 良かったらこれからも仲良くしてくれよな!!」

「そんな……! わ、私だって、後輩としてヒビキ先輩に恥をかかせないよう頑張りますのでっ。何卒よろしくお願いしますっ」

 

コメント

    :なに聞かされてんだ俺らは

    :はぁ~ヒビユラてぇてぇ

    :男女カプ厨ニキちっすちっすw

 

    :ネキだ二度と間違えるな殺すぞ

    :ヒェッ

    :これは厄介カプ厨

 

    :飢えてるのは分かるけどカプの話題はマナーを弁えてな

    :興奮しすぎた。正直すまんかった

    :ネキ素直だなww

 

 おっと……初絡みなのに飛ばし過ぎたせいで、視聴者間でもちょっと揉めてるな。いや他のコメントで収まるレベルだから大人しいもんだけどね。ま、この反応は概ね打ち合わせ通り(・・・・・・・)だから良しとしよう。

 

「うっし! 気を取り直して探索探索ゥ! ユラちゃんは、マ〇クラで最初に見つけたダイヤは何に使うタイプ?」

「ヒビキ先輩はいつもツルハシですよねっ? 私は……クワです!!」

「マジかよ!?」

 

 そんなこんな無駄話に興じつつ、どんどん未踏破ゾーンを開拓していく。あぁ、これが雑談マ〇クラコラボ……! 同じライバー同士、同じゲームを楽しんで、同じ思い出話(俺の配信の内容)に花を咲かせる。それのなんと心地よいことか!

 

 しかし……どんな楽しい時間にも終わりは訪れるもので。

 

「おっ、発見! ダイヤありましたー! 拍手!!」

「わーっ」

 

 地下のマグマ溜まり、その縁に燦然と輝いている(ように見える)水色のドットが散りばめられたブロック。間違いなくダイヤ鉱石である。

 

 俺の声にユラちゃんも応じ、ペチペチペチとあまり音が響かないタイプの拍手を聞かせてくれる。手を合わせて指の先だけで音出してるんだろうなぁ、可愛い後輩やで……。

 

コメント

    :サクサクだったなぁ

    :ヒビキはともかくユラちゃんお上手ね

    :そら同期コラボでは苦労人枠だからな

    :マ〇クラコラボで苦労人とは

 

    :木こる。家建てる。物資集める。同期に配る。同期が死ぬ

    :草

    :もう十分わかったww

    :いくら仲間が全ロスしても笑顔で鉄装備わたすぐう聖やぞ

 

    :体感5分配信やったな

    :もう1時間も経ってたんやなぁ

    :二人とも初コラボとは思えんほど話合ってたし、暇はせんかったね

    :とりあえずユラちゃんがヒビキのファンガチ勢なのは理解した

 

    :ボッチにも可愛くて健気な後輩が出来ると分かって勇気が出ました

    :ひどくて草

    :ユラちゃんのおかげで楽しかったよ!

    :次回のユラちゃんねるも期待してます

 

「いやー最高だった! コラボっていいもんだね……! ほらユラちゃん、視聴者のみんなも楽しかったって……ねぇ、君らは素直に俺の配信を褒められんのかね?」

 

コメント

    :は?

    :は?

    :は?

    :自惚れんなカス

    :ちょっと静かにしててください ¥20000

    :黙らせるために赤スパで草

 

「…………」

 

コメント

    :黙るんかいw

    :所詮ヒビキも札で殴られればこんなもんよ ¥100

    :ワンコインつか最低額じゃないすかww

 

「あははっ、えひっ。ふ、ふふふふふ……!」

 

コメント

    :ユラちゃんが楽しそうで何より

    :ほっこり

    :だらしない笑い方いいゾー

    :ほんと誰の枠か分からんコメント欄よ

 

「はい終わるから! みんな来場、及びスパチャ感謝! ユラちゃん、感想告知なんかあればどうぞ!」

 

「あ、はいっ。ヒビキちゃんねるの皆さん、今日はありがとうございました! えと、しつこいようですが、大好きなヒビキ先輩とコラボできて、とっても幸せでしたっ! また機会があればお邪魔したいと思うので、その時はよろしくお願いします! あとあと、明後日(あさって)にヴァーチャルシップ三期生全員でのコラボ配信があるのでっ。よろしければ、配信にお越しくださいー! …………その、い、以上れすっ」

 

コメント

    :ふぁー

    :かわー

    :マナーを弁えた結果ボキャ貧になるネキw

    :三期生四人でか、覗いてみるかね

 

「俺もこの機会にね、後輩たちのことをもっと知れたらと思いますよ。お前らも絶対見に行けよな!! それでは! 初コラボ記念生配信、マ〇クラ雑談でしたー!! ばいばーい!!」

 

「ば、ばいばーいっ!!」

 

コメント

    :おつヒビキって言えや

    :まともなの最初だけだったな

    :タイトル間違えてんだってw

    :絶対またやれ ¥10000

 

 マイクをミュートにしつつ、打ち合わせで決めていた通り、ユラちゃんへ個人チャットで通話から抜けるようメッセージを飛ばし。憎まれ口を叩く視聴者に頬を緩めながら、俺は配信を切り、椅子に深く背中を預けた。

 

 

 はー…………コラボって最高だな!!

 

 



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Vの裏で:コラボはどうでしたか?

 

『昨日のコラボ配信お疲れさまでした。本日はどのようなご用件でしょうか』

 

 ユラちゃんとの配信を終えた翌日、俺は例のごとくボスへ連絡していた。PCのフリーソフトで通話を繋ぎつつ、先に相談内容をまとめておいたメモ帳をチラ見。中身はだいたい、俺とユラちゃんのコラボに対するファンその他の反応である。

 

「その配信の件なんですけど……やっぱり、反感を買いましたよね? 自分のアンチから、というのとはまた違うと思うんですが」

 

『そうですね。おっしゃる通り、コラボの件はVtuberファンの間でそれなりに話題になっています。よくも悪くも。ヒビキ君と夕張さんのファンには好印象でしたので、企画としては特に問題ありませんが』

 

「そうなんですか?」

 

 炎上騒ぎとはいかないまでも、俺個人としてはSNSなんかで「ついにヤツも直結か!?」とかコラボを叩くような内容を目にしてるんで気が気じゃないんだが。ファンの間では、"自分の推しとはコラボしないで欲しい"というようなコメントもよく見かける。

 

『まず、コラボ企画において何を成功とし、何を失敗とするか、の話をしましょうか。成功とは、お互いの視聴者がコラボ先のVtuberを気に入り、相互ファンが増えることです。既存ファンに配信内容そのものを楽しんでもらうことは大前提ですが』

 

 ボスが言うには、今回のコラボでユラちゃんとこのファンはその多くが俺のチャンネルも登録してくれたらしい。理由としては配信を面白がってくれたこともあるが、彼女が今までの配信で仄めかしていた"憧れのVtuber"ということが判明したからだそうで。俺の配信アーカイブを見てからユラちゃんの動画を見直せば、新しい楽しみ方も出来るんだろう。配信でのユラちゃんのあの発言は、俺の配信のこの部分を言ってたのか! みたいな。

 

 また、ヒビキちゃんねるのリスナーも同様にユラちゃんのチャンネルを登録してる。今までコラボNGだった企業勢男性V(暁ヒビキ)初のコラボ相手であり、同時に彼女自身も俺のチャンネルのリスナーだったのだ。シンパシーを感じた人もいれば、単純に彼女に魅力を感じた人もいたんだろう。

 

『失敗とは当然、双方の視聴者が配信内容に不快感を覚えることです。コラボ相手のみならず、もともとファンだった視聴者が離れるような事態になるのが最悪ですね。そしてコラボの失敗は、長期的に見てそれ以降のコラボ企画に必ず支障をきたします。今説明したような状況はほとんど見られませんので、昨日の配信は概ね成功したと言えるでしょう』

 

 つまるところ、目的は達しているのだから外野がいくら騒いでも気にすんな、ということらしい。

 

『コラボ配信の切り抜き動画の中には悪意ある編集がされているものも確認しましたが、炎上を煽る目的が透けて見えますし、ヒビキ君の発言を穿って捉えすぎて滑稽なほどです。むしろその動画をきっかけに興味を持った人がアーカイブを視聴し、結果的にはファンが増えるのではないかと』

 

 そもそも俺とユラちゃんのコラボ配信って終始和気あいあいとしてたし、どう頑張っても初見の人に悪感情を持たせるのは無理だと思うんだが。……いや、ユラちゃんが俺のこと"大好き"発言してたから、その辺に絞れば他所のガチ恋勢や男性Vアンチ勢は釣れるのかも。まぁそれも俺の発言じゃないから限度があるだろうけど。

 

「そうですか、問題ないようなら良かったです。せっかくコラボできたのに、関係ないところで炎上したら台無しですし」

『夕張さんとのコラボは楽しめましたか?』

 

「もちろんです! 機会があればまたお願いしたいですね!」

 ちょっとした要望を口にすれば、ボスは電話の奥で笑ったようだった。

 

『昨日の配信は良いきっかけになったでしょうから、今後はコラボについてもう少し積極的に動けると思います。実は、すでに何件かコラボの打診は来ているのですよ。とはいえ先方の状況次第では難しいライバーも居らっしゃいますので、都度打ち合わせを重ねていくことになるでしょうが。おおよそ期待通りです』

 

 マジか、もうコラボの誘い来てるのか……事前打ち合わせ(・・・・・・・)で説明された、ボスの狙い通りになったわけだ。

 

 実は今回のコラボには、つい今しがたボスが説明してくれた成否とは関係なく、いくつかの目的があった。

 

 一つは事務所に所属する男性Vのコラボという前例を作ること。一回やっちゃえば二回も三回も変わらんだろ理論ね。なんで少なくとも、ユラちゃんとのコラボは今後容易に回数を重ねていけるだろう。

 

 一つは俺が掲げてきた"コラボNGの男性V"という看板を取り下げることだ。これは俺が事務所に迷惑をかけないよう自主的に視聴者や他所のライバーに印象付けてきたことだが、事務所OKが出たことで撤回する必要があった。すでに他のライバーから誘いが来ていることから、これも狙い通りに事が運んだのが分かる。

 

 一つは、新規客層の開拓。ボスの話では今現在、Vtuberファンが唯一信用できる男性Vとは俺だけらしい。いや今までのやりとりが全部ひっくり返るじゃないすか! と思わなくもないけど、ここは現代日本人の価値基準の話になる。

 

 前提として、個人勢と言われるVtuberより、企業勢の方が信頼できる。当たり前っちゃ当たり前だよね、言うなればアマチュアかプロかの違いみたいなもんだもの。例の事件のせいで男性Vに対する信頼は地に落ちたが、その炎上も企業という存在への信頼の裏返しなのだ。

 

 つまり、バッシングを恐れて新たな男性Vが現れない中、俺だけがその立場で印象を回復し続けたってことで。これがどういうことかと言えば、女性ライバーにつく男性ファンのように、男性Vを応援したい女性ファンは俺の動画しか選択肢がないってこと。

 

 今のとこ配信のコメントやSNSの反応を拾う限り、俺にガチ恋してるという女性ファンは皆無と言っていい。悲しいことにね……。しかし、これは逆にチャンスとも言えるのだ。俺が女性ライバーとコラボすると、カップリングと認識して推してくれる可能性が出てくる。ボスがターゲットにしている潜在的女性ファンには"男性Vにガチ恋したいタイプ"と、"カップリングを楽しみたいタイプ"がおり。後者のファンを増やそうって狙いだったのね。

 

 ぶっちゃけユラちゃんは、他の三期生と違って登録者数が比較的少ない。これは性別不明の憧れのVtuberを匂わせていた事実が関係していて、鼻の利く男性ファンはそもそもユラちゃんを仮想恋愛の対象にしていないことが分かる。だが他より少ないとは言っても、比べてみれば程度の差であり、それはユラちゃんが女性層から絶大な支持を受けていることの表れでもあった。

 

 俺のファンにもユラちゃんのファンにも、俺たちがコラボすることで叩くガチ恋勢はおらず。どころかカップリングとして推したいファンのニーズに応えられるだろうってこったね。もちろんこれは"ファンが自主的にカップリングとして受け取る"ことが大事なので、こちらからそういう関係にあるとは口が裂けても言わないけど。そういう事実もないしね! もともと俺に憧れてくれていたというユラちゃんの好意を利用した形になるんだろうな。

 

 そして最後は、もうちょい規模が大きな話になる。それは、"企業勢男性Vの増加"だ。女性ファン云々のくだり通り、推せる男性Vが俺しかいない以上は必ず不満が出てくる。俺ではなく、もっと自分好みの男性Vを推したい、という不満が。この需要が大きくなれば、それは尻込みしてる男性V志望の背中を押すことになるハズなのだ。求められているという事実が、足を踏み出すきっかけになることもあるだろう。

 

 打ち合わせで聞かされた時はピンとこない部分もあったけど、コラボ後の反応を見ていると頷ける部分が多かった。すべてはボスの掌の上ってワケだ。

 

「企画として上手くいったのなら良かったです、他に用件はありません。忙しいところすみませんでした。……色々、ありがとうございます。これからもご迷惑かけると思いますが、配信頑張りますので! 改めて、今後ともよろしくお願いします」

 

 俺なんかじゃ考えが至らない先のことまで、考えてくれてることに。こうしてVtuber界隈の俺に対する視線が緩和するまで、見限らず待ってくれたことに。コラボを実現させてくれたことに。万感の思いを込めてPCに頭を下げると、しかし呆れた声が聞こえてきた。

 

『ヒビキ君、私たちの関係というのは決して一方的なものではありません。貴方が事務所(こちら)に恩を感じてくれているように、私たちも貴方に対しそうあるのです。私たちは同じ船に乗っているということをお忘れなく』

 

「はっ、ハイ! 肝に銘じておきます……!」

 

 PCに向かってぺこぺこ頭を下げながら、それならなおさら頑張らないとなと思った。心から尊敬できる人が先頭で舵とってくれてるのに、乗組員が下手こいて船を沈めるなんて。そんなこと、絶対許されないもんな!

 



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Vの裏で:戦おう ―大島キリ―

 アタシは動画サイトでとある配信のアーカイブを見返しながら、マネージャーからの連絡をそわそわして待っていた。

 

『しゃらくせぇっ! アッ、ちょっ! やめてぇ!!』

「あははっ」

 

 PCに映し出されているのは、アタシもお世話になってるLive2Dで動かされるキャラクター。そしてその中の人が遊んでいるゲーム画面。一斉に敵から攻撃されてるのに凄い速度で反応してて驚く反面、あたふたしたリアクションがちぐはぐで。心が浮ついていても、何度だって笑ってしまう。

 

 マ〇クラG・I。アタシがいっちばん好きなMOD。原作コミックだって全巻持ってるし、このゲームをどのVtuberや配信者よりもやり込んできた自信がある。……あったの。

 

 二週間くらい前に、このゲームをソロでクリアしたっていうVtuberの配信アーカイブが動画サイトにあがった。別にそれだけなら珍しくもなかったけど、アタシがその動画を開いたのは同期の何気ない一言が理由だった。

 

『キリちゃんが好きなゲームの、ジーアイ、だっけ? あれの、なんか凄く難しい難易度クリアした人がいるらしいよ。Vの人なんだってー』

 

 このMODに難易度なんて存在しない。ハードコア一択だもん。だったら縛りプレイでもしてたのかな? と思いつつ、G・Iにカケラも興味が無い同期の女の子が知ってたくらいだし、話題になってるのかなとその動画を探した。それにVと言えば基本的に女性ライバーのことを言うんだし。コラボ出来たりしないかなーなんて考えもあった。

 

 だけどその動画は、アタシのG・Iに対する愛情を。このMODを誰より遊んできたという誇りをへし折るものだった。

 

『っしゃいくぞオラァ! リスキーダイスをゲイン! てぇいっ、コロコロコロ! ……よぉし大吉ィ!!』

 

 その人は何かとVtuber界隈で話題になりがちな、男性のライバーだった。そこには特別興味はなかったけど、指定ポケットカードNo2、"一坪の海岸線"をクリア条件に抱えたままゲームを進めていることに仰天した。

 

 このゲームにはいくつか入手難度が飛びぬけているカードがあって、筆頭がSSランクカード五種類。No2はその中の一つになる。MODには有志が攻略情報をまとめたサイトがあるんだけど、そこのテンプレで最も有力とされる文句は『SSランクカードが指定されたらワールド削除』。

 

 つまり、それくらい手に入れるのが難しいのだ。

 

『……でっ。でっででで出たァアアアアア!!』

 嘘つけぇぇぇぇぇええええええええええっ!?

 

 初めてアーカイブ動画を視聴した時は思わず奇声を上げた。指定ポケットカードにNo2がある時点で、そしてリスキーダイスなんて博打に手を出した時点で釣り動画だと決めつけていたから。クリアってつまり死んだってことでしょ? おつww

 

 と、思いながら見ていたのに……!

 

『一坪の海岸線はホラ、原作ファン的にはどうにかして取りたいじゃん?』

 

 この動画の中で、このVが言いやがった言葉。アタシはそれを聞いてしまったからこそ、暁ヒビキというらしいそのVが死ぬのを見届けようと思っていたんだ。

 

 ファン的にはどうにかして取りたい? うん、気持ちはわかる。アタシだって取れるなら取りたい! でも、普通に考えて無理だもん。それを諦めた時点でファンじゃないってこと? アタシがどれだけこのゲームやったと思ってんの?

 

 その発言を後悔する瞬間を見届けてやる……! そう、思っていたのに。

 

『クリアだぁああああ!!』

 

 ゆ"る"さ"な"い"ぃぃ……!! 絶対いつか思い知らせてやる! 何をどうするとか具体的なことはまったく考えてないけど、いつかコイツにアタシが一番G・Iを愛してるって分からせてやるんだぁああ!!

 

 でも、現実は非情だった。マネージャーにコラボしたいって相談して、相手が暁ヒビキだって言った瞬間、問答無用で却下された。ほんの一秒考える素振りすらなかった! 理由は単純で、暁ヒビキが男だから。

 

 自分で言うのもなんだけど、アタシは結構男の人に人気がある。チャンネル登録者は男性ファンがほとんどで、いわゆるガチ恋勢も多い。俗にいうアイドル路線のVtuberなのだ。

 

 相手はそういう層からのバッシングを回避するために、一切コラボをしないということで業界では有名なのだそう。その辺はマネージャーとかの管理側での話だけどね。アタシたちVtuberにはその暁ヒビキについての話なんて回ってこないし。

 

 アタシはコラボの提案を蹴られた日の夜、枕を濡らした。勝ち逃げされた気分だった。アタシは暁ヒビキに挑戦すらさせてもらえないことがムカついた。

 

 けれどそのモヤモヤした気持ちが晴れたのは、皮肉にも暁ヒビキの配信アーカイブのおかげだった。

 

 途切れることが無いトーク、一見仲悪そうだけどすぐに分かるリスナーとの楽しいコメント芸。何気ないゲーム操作が凄いテクニックであることも少なくなくて、見ているだけで自分のプレイヤースキルが上がるような錯覚さえ覚えた。

 

 知らず知らず、アタシはその人がアーカイブに残したG・IMOD配信動画の虜になっていた。コラボが実現した時ボコボコに出来るよう予習しているつもりだったけど。何度も何度も繰り返し再生して、そのたびにPCの前でアタシは笑っていたんだ。

 

 ……一緒に遊びたい。初めて動画を見たときは分からなかった、暁ヒビキのことが今ではほんの少し分かる。この人も、G・Iが大好きなんだ。そんな人と、本気で遊びたい。アタシのその想いは日を重ねれば重ねるほど強くなっていった。

 

 そして――ついに、暁ヒビキはコラボした。コラボNGという看板を掲げ続けた彼が、同じ事務所のライバーとは言えついに女性ライバーとコラボした……!

 

 このチャンスを逃すわけにはいかない! すぐにアタシは、勝手に向こうの事務所、公式サイトのお問い合わせからコラボの依頼を出した。マネージャーには悪いと思ったけど、どうしても衝動を抑えきれなかった。しょうがないよね?

 

 向こうのマネージャーさんからアタシのマネージャーに確認の連絡がきたらしくて、すぐにアタシは説教されたけど。一度しっかりコラボが可能か打ち合わせをして、OKかどうかの連絡はこれから入る予定。

 

 何時ごろまでにはーとかハッキリとしたことは言われてないけど、それだけ慎重にコラボの企画をするってことだと思う。ってことは、割と可能性あるよね! 無理だったら打ち合わせも一瞬で、とっくに連絡来てるはずだもん。

 

 どんどん時間が過ぎていくけど、ドキドキはしても不安にはならなかった。アタシはずっと、暁ヒビキの動画を見ながらコラボの内容に思いを馳せた。

 

 どうやって話そうか? G・IでPVP(対人戦)がしたいと言ったら受けてくれるかな? ……本気で、アタシと戦ってくれるかな?

 

 勝つのはきっと難しいと思う。初めて動画を見た時に考えたような、怒りのまま一方的な勝利を収めるのは無理だ。それをここ数日の動画視聴で思い知った。

 

 でも、負ける気だってサラサラない。一番上手いプレイヤーではないかも知れないけど、大好きだって気持ちでは絶対に勝ってる自信がある!

 

 何度も何度も、同じことを考えて。いつもなら同じ事務所のライバーとコラボ配信なんかして、それが終わるような夜遅い時間になって。ようやく、アタシは待ち望んだ着信音を耳にした。

 

「いつになったのっ!?」

『うるさい……なんでコラボ出来るって確信してんの……』

 

 長時間の打ち合わせお疲れ様って気持ちはあるんだけど。それを口にするより先に感情が唇を動かした。

 

『まぁOKだったんだけどさ……こっちにも悪い話にはならなそうだったし。明後日だよ、明日は一日かけてじっくり打ち合わせ。私とあんたでね。じゃ、私、もう寝るから……。とんだサビ残だよこのとんま』

「ありがとっ! おやすみっ!!」

『だからうるさいっての……じゃね』

 

 通話の切れたスマホを見下ろしながら、アタシはニマニマするのを抑えきれなかった。あの暁ヒビキと! コラボ出来る……!! 最初はなんて言おうか? 第一印象は大事だもんね。今は最初ほど怒ってもないし、仲良くなれるよう優しい言葉が良いかも。

 

 ……うん、そうだね。マネージャーにも相談するけど、こんな感じなら問題ないんじゃないかな?

 

「――戦おう」

 

 彼ならきっと分かってくれると信じて。アタシの、この燃えるような気持ちを……!!

 



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【絶対勝つ!】マ〇クラG・I【争奪戦!】①

『……戦おう。暁ヒビキ……!』

 

コメント

    :おはきりー

    :あれ、始まった?

    :始まってるっぽい

 

    :急にどうしたのw

    :コラボ相手男ってマジだったのか

    :やる気キリちゃんもかわいい!

 

 お呼ばれした他企業Vtuberさんのコラボ枠。チャットを繋いで向こうが配信を開始したと同時に、そんなことを言われてしまった。俺も向こうの配信画面見てるからコメント欄の困惑具合が伝わってくるんだけど、俺が一番困惑してると思うよ?

 

 ボスから告げられた、マ〇クラG・Iのコラボ配信。先方の強い要望でPVP企画となったらしい。俺もこのゲーム大好きだし否やは無いんだけど……このコラボには、不可解な点があった。

 

 それは、向こうの人と俺は一切打ち合わせをしていないということ。コラボ相手の大島キリさんとだってこれが初会話になるくらいだ。どころかボスともまともにミーティングはしておらず、たった一言『相手に合わせて楽しむように』とだけ言われてるのだ。異常だってばよ……。

 

 俺なりの推論になるけど、今回のコラボはいわば試金石と言ったところじゃないかな? ボスも忙しいだろうし、他事務所のVと問題なくコラボ配信を終えることが出来れば、今後は俺が能動的にコラボしてもいいよ、みたいな。一言くらい報告する必要はあるだろうけど。

 

 念のため下調べさせてもらったが、どうやら大島さんはアイドル路線のライバーっぽいし。ここを切り抜ければボスを安心させられるんじゃないだろうか? 俺一人に(かかずら)ってられるほど、統括マネージャーさんが暇な訳ないしな!

 

 ってことでワケ分からんままだが乗らせてもらうぜ! それにアーカイブを覗いた限り、大島さんも相当のG・Iファンらしいからな……!

 

「ふ……見せてやる大島キリ。ボッチライバーの戦い方をな……!」

 

 原作コミックにこのようなやり取りは無いが、どちらもとあるキャラクターがG・I内で用いたセリフだ。大島さんのキャラクターがにんまりと笑みを浮かべ、どうやら期待に添えたらしいことに安心した。

 

 ところで大島キリさんの動かすキャラクターは、一言でいえばツンデレ系だ。ちょっと吊り上がり気味の大きな瞳、薄桃色のツインテール。声もアニメを連想させるかわいらしい声……というか、ぶっちゃけ某ツンデレの女王みたいだ。

 

 小柄な身体には華々しい袴をしっかりと纏っていて、良いとこのお嬢さん的な設定がありそう。これはガチ恋勢がたくさん居るのも頷けるね!

 

コメント

    :この人も何言ってんのw

    :原作コミックのネタだなどっちも

    :MODの元ネタのやつね

    :そこ繋がりのコラボなのかな?

    :所属違うしそらそうでしょ

 

『はいっ! ということでおはキリー! 今回はマ〇クラG・Iコラボってことで、この方を呼んだよ! どうぞ!!』

「えー、おはキリ! ヴァーチャルシップ所属、二期生の暁ヒビキですー! あ、二期生って言っても僕しかいませーん。よろしく!!」

 

コメント

    :コラボ解禁したんだっけ

    :正直来ないでほしかった

    :なんで今更コラボやねん結局直結か?

    :野郎は一人でゲーム配信しててどうぞ

 

『あ、えっと……』

 

 おや、あからさまに煙たがられてるな。俺的には予想通りというか、ちょっと反応が柔らかいまであるんでホッとしたんだけど。大島さんは、ここまでブーイングが起こるとは思ってなかったらしいな、ちょっとアワアワしてる。……ちっちゃいツンデレ風ツインテ娘が困ってるの、なんか良いですね!

 

 というアホな考えは置いといて、この辺は俺がフォローしたほうが良さそうだ。何せ散々想定してきたシチュエーションだしな! むしろイメトレがやっとこ実践できそうでオラわくわくすっぞ! ……なんか思考がドM染みてる気がするね。

 

「はーっはっはっはぁ!! 大島キリよ、ホームグラウンドでいくら味方を得ようが、本人の力量は変わらないぞ? 俺はその程度のチンケな煽りコメントで動揺したりはしない……こっちのホームで散々叩かれてるからなぁ!!」

 

コメント

    :なんやコイツ

    :草

    :キリちゃんやっちまえー ¥370

    :男は消毒よー! ¥1000

    :負けたら泣いて謝れよおめー ¥4949

 

 お、これはナイスアシスト! 煽りに見せかけて流れをネタに変えていってるコメントは、その多くが見慣れた名前だ。俺のチャンネルのリスナーもこれを予想してくれてたんだろうな、感謝やで……そのスパチャはぜーんぶ大島さんに行くけどね! 今回俺は完全にゲストで、配信してるのは向こうだけだ。

 

「どうした、戦うんだろう? 俺も! お前も!!。まだ一度たりとも呪文(スペル)を使っていないぞ? まさか怖じ気付いたかぁ……?」

『……! ふっ、言うじゃない暁ヒビキ……! 今日アタシは! アンタに勝って証明するっ! アタシがいっちばん、このゲームを愛してるんだって!!』

 

「よくぞ(のたま)ったァ!! では聞かせてもらおうか! お前が俺に叩きつける挑戦状っ! どうやって勝敗を決するのか! 俺はその一切を知らずにコラボを受けた……なぜならっ! どのようなルールであろうとも、勝つのはこの俺! 暁ヒビキ様だからだぁっ!!」

 

『いいわっ、聞きなさい! 戦いの場はマ〇クラG・I! アタシとアンタ、一対一のPVP! とは言っても、直接攻撃は禁止! 呪文(スペル)でのみ交戦すること! 勝敗は、それぞれクリア条件の指定ポケットカードを三種類先に集めること! どちらも未達成なら、配信終了の一時間半時点でより多くの指定ポケットカードを所持していた方の勝ち! どう!?』

 

コメント

    :そういう趣旨ね

    :暑苦しいww

    :豹変しすぎじゃない?

 

    :マ〇クラコラボっても完全に対戦形式なのか

    :男性Vってこんなんだったんか

    :きりちゃん頑張って!!!!

 

    :スペル合戦期待

    :ヒビキの告知から来ました。ヒビキを消し炭にしてやってください ¥10000

    :野郎がMOBにやられてショボ死するの期待してる ¥7676

 

 思惑通り、完全に正義VS悪役の図が出来上がり。チャットからただ企画を叩くだけの迷惑コメントが鳴りを潜めたのを確認して、俺は意気揚々と告げるのだった。

 

「よかろう!! コメントで俺様に呪詛がかけられているが、お前こそ雑魚に殺されたりするなよ? いかに慈悲深い俺様といえど、敵に"大天使の息吹(蘇生アイテム)"は使ってやらんからなぁ?」

 

 原作では不可能だが、このMODにおいての唯一の蘇生手段が"大天使の息吹"である。マルチで他のプレイヤーに死亡地点で使ってもらう必要があるので、ソロだと死んだらそれまで。まぁSSランクカードだから手に入るはずもないけどな!

 

『ふんっ! まぁアタシは? 情けなーくやられちゃったアンタが居たら使ってあげるけどね? そんなの痛くないくらい、大差をつけて勝ってやるんだから!』

「フゥーハハハァ!! どうやら手加減は不要なようだ……では!! いざ尋常にぃっ!!」

 

「『勝負!!』」

 

 こうして俺と大島キリさん、一対一の勝負が始まった!

 



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【絶対勝つ!】マ〇クラG・I【争奪戦!】②

「さぁてやりますか! あぁそうだ、チャットに反応できるようコメント欄は見させてもらってるけど、ゲーム画面は見てないんでそこんとこよろしくでーす。こっちは配信してないけどゲーム画面含めモニターの映像自体は録画しててアーカイブに残すんで! 不正が心配な人は後から僕のチャンネル見てみてねー」

 

 大島さんから通話ソフトのチャットで送られてきたアドレスを入力してマ〇クラのマルチワールドに入る傍ら、念のため不正が無いことをリスナーに言っておく。コメント無視して配信画面閉じればええやん、って思う視聴者も居るかもだけど。お互い燃えないようフォローはさせてもらいたいしね。難しいとこだ。

 

コメント

    :急に素に戻るな

    :キャラブレブレですが大丈夫ですか?

    :露骨な宣伝乙

    :ちゃんとRPしろ

    :最後まで俺様ムーブ貫け。そして負けろ

 

「よかろう! コラボで片方がコレだと視聴者も面倒だろうかと気遣ってやったつもりだったが……俺様(このノリ)について来れると言うなら貫いてやろうではないか! 無論負けてなぞやらんがなぁ!!」

 

『こっちこそ、今日はせっかく実現した対決なんだからっ! 手加減なし、最後まで全力で勝負よ!!』

 

 言ってる間に二人ともログインが成功し、草原の上でにらみ合う。大島さんの言葉に合わせてキャラクターがブンブン腕を振っている様子を見るに、配信コメントとの遅延もほぼ無さそうだ。

 

「では早速始めるとするか? 段取りがあるなら付き合ってやるが」

 

『まずは指定ポケットの確認よ! カード名は言わなくていいけど、指定されたランクは開示するわ! 指定ポケットのランクに偏りがあると不利になる場合もあるしねっ! 内容によってはリセットするからちゃんと教えなさいよ?』

 

「よかろう、ではしばしインベントリ(バインダー)と相談と行こうか」

 

 その言葉を皮切りに、俺も大島さんもキャラクターの動きを停止する。こちらもそうだがインベントリを確認してるんだろう。さて、俺の方はっと……。

 

 98(S)、94(S)、66(S)、64(B)、46(A)、40(B)、31(S)、22(A)、8(S)の9種類だな。ちょいとSランクが多いけど、運よくSSランクは指定されていない。このMODだとS~Bはそこまで入手難度に差はなかったりするんだが、SSだけはマジで地獄を見るからな……。

 

「こちらは確認し終えたぞ。そちらはどうだ?」

『OKよ。内訳を聞いてもいい?』

 

「Sが5、Aが2、Bが2だ。まぁ悪くはない」

『アタシは……Sが2、Aが4、Bが3だった。どうする? ランクだけ見ればアタシが有利っぽいけど……』

 

「なぁに構うまい。モノによってはBの方が面倒なこともある。そちらに問題なければ俺様はいつでも始められるぞ?」

『ふんっ。ソレ、負けた時に後悔しないでよねっ? それじゃ、ここからは正真正銘の一騎打ちよ。よーい……スタートッ!』

 

 大島さんが宣言すると、俺と彼女は同時に駆けだした。向こうがどういう動きをするのかは不明だが、マ〇クラにおいて最初にやることなんてどのMODも大差ない。木こり……! 圧倒的木こり……!

 

コメント

    :勢いのわりに地味ね

    :このMOD最初にすべきことが全然分かんない

    :テンプレは村探しだな。街なんてそうないし

 

 ポコポコ素手で樹を殴り、原木を獲得していく。ちなみに全部カードになってるよ! しかも一枚ずつな! バニラのアイテムもMODの影響でカード化しての入手になるが、一応クラフト画面でスタックすることが可能。原木カード2枚をクラフトした場合、原木(2)ってカード一枚になる訳だ。逆にバラすこともできる。

 

 ちなみに(ジェニー)以外のMOD由来のアイテムはクラフト不可だ。一枚ごとに必ずインベントリ(カードポケット)を一枠使いスタックできない。マジつらい。

 

 手早く作業台、木のツルハシを作り。丸石を獲得。それを使って石斧を作ってちょっと余分に原木を集めてから本格的に始動だ。ちらりと大島さんが駆けて行った林を見ると、彼女は南に走り去っていくところだった。

 

「そっちは南か。なら俺様は北に向かわせてもらおうか……マサドラを先に見つけるのはどちらかなぁ?」

『もちろん全力を尽くしたほうよ! べらべら喋ってたら勝利の女神さまは微笑んでなんてくれないもの!』

 

「ちょっとー? これ配信ですよー? 大島さんも喋ってくださいねー?」

『わっ、分かってるわよ!』

 

コメント

    :これは素に戻っても仕方ないw

    :全力過ぎて配信ってこと忘れちゃうキリちゃん

    :なれなれしくすんなや

    :これ馴れ馴れしいかな?w

 

 俺の言葉に大島さんが返すと同時にコメント欄をチラ見。うーん……ロールプレイとヒビキちゃんねる民のアシストもあり、大島さんとこの視聴者もそこそここのコラボを受け入れてくれてるように見える。

 

 まだ刺々しい人もいるけど、逆にそれを諫める人も居るようだ。うん、いい流れだぞ! コメント欄を荒らす人というのは、必ずしもそれが目的な訳じゃない。むしろ逆で、自分の場所が変わってしまう(荒らされる)のが嫌だから、ある種自衛のために強い言葉を使ってしまう人も多いんだそうだ。ただ荒らしたいだけの人も居るけどね……。

 

 コラボという点において、まず男性V()は先方のチャンネルを、その視聴者の心を乱しに行っているという点は常に意識しなきゃならない。まぁこっちのチャンネルまで来られて荒らすようなら対応は変わってくるが、基本的に相手のチャンネルに。そこの視聴者に寄り添う姿勢が大事なのだ、きっと。

 

 閑話休題。それも大事だが今はコラボだ。視聴者より誰より、その主である大島さんのご期待に添えなきゃ話にならん。全力で勝ちにいかせてもらいますぜぇ……!

 

 今俺が居るのは草原地帯(バイオーム)だ。近場に指定ポケットカードに繋がりそうな要素はないから、言った通り北へ向かう。ここで重要なのは出来るだけ跳んだり走ったりしないことだ。食料が確保できてない状況でスタミナ使うとすーぐ死に繋がるからね! 大島さんが走ってったのは樹からリンゴでも出たと見るべきだろう。初動を重視するのはこの対戦形式じゃ悪くなさそうだ。

 

「さてさて、まずは村を見つけたいところだが……。そちらは方針なぞ決まっているのかな?」

『当然ね! アタシの指定されたカードの中には、見つけさえすればOKなものがいくつかある! それさえ見つかればこの勝負、すぐに決着がつくんだからっ!』

 

 おっとマジか……意外にマズイかも? 指定ポケットカードには、大島さんが言った通り"そのアイテムが手に入りさえすれば"カードとして入手出来るものと、"ある条件を満たすことで"初めて出現するカードがある。俺が指定されているのは後者がほとんどだから、ブラフじゃないなら結構厳しい戦いだぞ。

 

「なななるほど? ぁぁ相手にとって不足はないらしし」

『声震えてますけど?』

 

コメント

    :わかりやすくて草

    :キリちゃん頑張って―!

    :早く終わらせちゃえ!!

 

    :キリちゃんの方が有利ってこと?

    :ランクだけ見てもそうだし、内容を見ても多分そう。向こうの指定分かんないけど

    :チャット見られてるんだから指定の内容コメントするなよ

 

 ふむ、向こうの視聴者さんもこのMOD詳しい人多そうだな……そりゃそうか、大島さんも配信してたんだろうし。

 

「まぁいいさ。俺様も状況的にはそう悪くないからなぁ。なかなか楽しめそうだ!」

『それは何より。……あっ! あー、あー、……っ! ……あーいい天気ねー』

「誤魔化すの下手すぎだろ貴様ァッ!! 先を越されたか……やるじゃあないかッ!!」

『ちっ、鋭いわね。えぇその通り! 早速一種類手に入れたわ! ふふ、何を手に入れたか分かるかしらー?』

 

 ほっほっほと高らかに笑う大島さん。楽しそうで何より! だがその程度で俺にマウント取ろうなんざお笑い(ぐさ)なんだよなぁ。

 

「舐めてもらっては困るな……No54、ランクA指定ポケットカードの"千年アゲハ"だ。違うか?」

 

コメント

    :えっ

    :マジ?

    :チートか?

    :ゴースティングしてんだろコレ

    :遡ったけど誰もコメントしてないぞ

 

『なっ、なんでっ!?』

 

「オイオイ、お前も同じ状況なら簡単に予想できるハズだぞ? スタート地点、お前が向かった方向には森林が見えていた。(さき)の"見つけてしまえば"発言、さらに発見したであろう瞬間のリアクション……。あのスピードで獲得できるのは状況的に"千年アゲハ"くらいなものだ」

 

『ぐっ、ぐぅぅ……その通りよ』

 

コメント

    :さすがに詳しいな

    :これはG・Iオタク

    :SSランクガチャ成功しただけのことはある

    :運じゃんw

    :言うてソロはコイツだけだからなぁ

 

 ふっふっふ、状況的には負けてるが精神的優位に立ってやったぜ! こんなこと言ってる場合じゃないんだけどね!! ……お? おぉ、これは俺も一枚目のチャンス到来だぞ? これどっちもマサドラ発見する前に終わるかもなー。とりあえず石シャベルで土を集めつつ前へ前へ進んでいくぜ!

 

「では俺もしばし集中させてもらおうか。それなりに危険な賭けになりそうなのでな」

『っ! アンタも一枚目の目処が付いたわけね……!』

 

「その通りッ! 内容までは教えてやらんがなぁ! お前もそう離れたところまでは行っていないんだろう? 予想してみるがいいさ!」

『くぅぅっ! なんなの……? 草原……危険な賭け? 多分戦闘が絡むわよね……』

 

コメント

    :キリちゃん勝負の趣旨ズレてるよ!

    :ほっといて指定探したほうがよくない?

    :割と向こうもガチだから出来れば動いたほうが良い

 

『そっ、そうよね、うん。……うぅ、悔しいけど勝負を優先しなくっちゃ……!』

「ちっ、そこで小一時間考えていれば良いものを」

『馬鹿にし過ぎじゃない!? 言っておくけど、リードしてるのアタシなんだからねっ!!』

 

 はっはっは、だからこそこっちも焦ってるんだけどね! とにかく、駄弁りながらも準備は整ったぞ。土ブロックを3スタック(64個で1スタック)ほど集め、木材を梯子にクラフトする。

 

 余談だけど、バニラのアイテムをスタック化するのは死ぬほど面倒です。何せちょっと集まるたびにクラフト画面でカードを重ねる必要があるから。アイテム化(ゲイン)したときは普通にお馴染みのスタックアイテムになるんだが。

 

 じゃあなんでわざわざカードとして持っておくんだと言われりゃ、ゾンビの投石対策である! インベントリがブロックカードで埋まるのは邪魔だが、かといって全部アイテムとして持つとレアカードを割られかねない。なかなか立ち回りが難しいゲームなのだ。

 

 とにかく準備が整った俺は、草原の向こうに見える建築物……略奪者の前線基地に忍び寄った。バニラにもある要素だが、ちょっと変わってる部分もあり。

 

 まず、旗持ちのボスが必ず最上階で待ち構えてる。子分共も一定距離ごとに地上に配置されていて、まぁ攻めづらいのだ。その代わり、ボスはほぼ確定でとある指定ポケットカードを落とす。No94、ランクS指定ポケットカード"盗賊の剣"! 俺のクリア条件に指定されている1枚! これは幸先いいですよー。

 

 正直ゲインしてそのまま武器として使ったほうが強いアイテムなんだが、贅沢は言うまい。あくまで目的は先に三種類集めることだし。

 

「よぉし行くぜぇ……オラオラオラオラオラオラオラオラっ!」

『えっ、なっ、なに? なにしてるの?』

「さぁてなんだろうなぁ……? 気になった人は後日アーカイブに上がる動画をよろー」

 

コメント

    :姑息な宣伝しやがって

    :マジで何してんだよw

    :動画見てても何してるか分からん事あるのに声だけで分かる訳がない

    :どうせ変態プレイしてる

 

 コメント欄でも全く予想は立っていなかった。俺の配信では見せたことあるんだけど、まぁリスナーのみんな黙ってくれてるね。言ったら指定バレるし。

 

 基地に近づいた俺は、子分の略奪者(ピリジャー)共の索敵に引っかかった瞬間にゲインした土ブロックを直上積み(ジャンプしつつ足元にブロックを設置し続けること)し、雑魚を引きつけつつ上昇していく。奴らはクロスボウを持っているので呪文(スペル)攻撃はしてこない。足元から矢が飛んでくるのは中々スリルがあるが、F5キーによって三人称視点で操作してるから避けるのなんて楽勝だ。視聴者には変態操作だと言われたけど。

 

 そこそこの高さに至り、眼下の略奪者が俺を見失ったことを確認すると、今度は横にブロックを伸ばして基地の反対側に向かう。連中は初期位置がイヤらしいだけで一度釣っちまえばそこからあまり動かんのである。落下したら即死な状況だが難なく足場を伸ばし終え、マウススクロールでアイテムを梯子に持ち替える。

 

「よぉし、襲撃だ……!」

『ねぇなんか遠くに土の塔が見えるんだけど! ホントに何してんのっ!? ……あっ! 基地ねっ!?』

 

「ご明察!!」

 

 その言葉と共に、俺は塔から飛び降りた!

 

コメント

    :死んだじゃんw

    :キリちゃん大勝利!

    :勝てないからって自殺とかマ?

    :これで死ぬわけないんだよなぁ……

 

 俺んとこのリスナー以外の視聴者は分かんない様子だったが、アーカイブを漁ったらしい大島さんは俺のやってることに思い至ったみたいだ。そう、これは俺が前線基地を見つけたら毎度やってるお馴染みの手法なのだ!

 

 マ〇クラの梯子ってのはそれは優秀なアイテムで、落下の途中に足元のブロックに設置、その横に掴まれば落下ダメージゼロで生還できる! 梯子の真上に降りちゃうと死ぬがな! これにより雑魚と戦わず最上階のボスをとっちめるのである。帰りも直上積みで釣った場所とは逆に遁走すれば楽勝!

 

「よっ、っと。よぉ、元気か大将!」

『ホントに成功させたのっ!? 見たかったのに!!』

 

コメント

    :何が起こってるの?

    :説明しづらいから素直に動画見に行ったほうが良い

    :キリちゃん大興奮じゃん

    :とりあえず頭悪いことしてるのは間違いない

 

 思惑通り最上階にお邪魔した俺は、下の階に繋がる昇降口を土ブロックで封鎖。二、三発ボスを殴って壁際に追い込み、またも土ブロックを使って隅に封じ込める。これで足元だけ開ければ一方的に攻撃可能! そこ行くまでに多少ダメージ受けたけど。

 

斬撃(ほい)っ、斬撃(ほい)っ、斬撃(ほい)っ……よーしゲットォ。俺が何を手に入れたか、さすがに分かったかな?」

『……No94。ランクS指定ポケットカードの"盗賊の剣"ね。やるじゃない……!』

 

「その通りだッ! 博識じゃあないか?」

『当然っ! 面白くなってきたわ……!』

 

コメント

    :キリちゃん楽しそうね

    :分からん

    :こういうMODって攻略サイト見ながらやるもんちゃうの?

    :この二人がおかしいだけだと思うよw

    :キリちゃん負けないで!!応援してる!!

 

「これでまずは一対一! まだまだこれからだッ!!」

『望むところよ!! ぜーったい負けないんだから!!』

 

 

 俺たちの戦いはまだまだこれからだ――!!

 

 

 

 打ちきりじゃないよ?

 



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【絶対勝つ!】マ〇クラG・I【争奪戦!】③

「……大島キリよ、調子はどうだね……?」

『進捗ダメです』

 

コメント

    :二人とも疲れ切ってて草

    :そらそうなるw

    :このMODミニゲームに向いてないよ絶対

 

    :三種類っても厳しいのねぇ

    :最初順調だっただけにキツイな

    :キリちゃんファイト!!

 

 配信開始からすでに一時間、勝負がどうなってるかはご覧のあり様である。無ぇ……! 村も! 街も!! クリア条件の指定ポケットカードに繋がりそうなイベントマップも!! なーんもありゃしねぇ!!

 

 まぁね、見通しが甘かったことは認めよう。そもそもマ〇クラってのは何もかもがランダムで生成されるゲームなのだ。しかもハードコア。死なないよう慎重に動いてればどうしたってこうな(ぐだ)る。

 

 その上お互いバトルモノみたいなテンションでぶっ続け一時間だ。さすがに疲労も溜まろうもん。見つかった指定カードもどうやらそれぞれ一枚ずつっぽいし。

 

 食料やらカード獲得に使えそうなアイテムはそこそこ集まったが、成果と言えばそんだけである。

 

「これはクリア条件外の指定ポケットカード収集に切り替えるべきか……?」

『とっくにアタシはそうしてるわよ……ん?』

 

 俺が三種類クリアに(こだわ)らず方針転換しようとすると、大島さんは既にそうしていたらしい。(したた)かやな……と思っていたら、何やら発見したご様子だ。

 

『っ! ……ふ、ふふ……! どうやら勝利の女神さまはアタシにウインクしてるみたいね……!』

「んだとォ……? なんだ、何見つけやがった……!?」

 

『ふふん、さすがにアタシの反応だけじゃもう予想できないでしょ! さーて、どう攻めようかしらー♪』

「戦闘系か……」

 

『ハッ!?』

「いやわざとじゃないんかーい!!」

 

 あんまりにもコテコテなボケだと思ったら素で情報を漏らしたらしい。大島さん、テンション上がると前後不覚になるタイプか。こらリスナー人気も出ますわなぁ。

 

コメント

    :ww

    :誘導尋問とはさすがヒビキ汚い ¥2525

    :急に漫才始めるじゃん

    :ポンコツ助かる

 

「どう考えても俺のせいじゃない……ん? おやおや、どうやら勝負の行方はまだ分からんようだなぁ?」

『なんですってっ?』

 

 視聴者が俺に冤罪かぶせようとしやがるので回避しようとしていたら、目の前には湿地帯が広がっていた。これはナイス!! ここには俺のクリア条件に指定されている、No64とNo66、魔女シリーズ獲得のチャンスが転がっているのだ!!

 

 湿地帯にはバニラ同様に"魔女の家"が生成されることがあるんだが、そこには当然魔女(ウィッチ)が湧く。ソイツを倒せばワンチャンどっちか落としてくれるだろ! 確率ドロップだけど!!

 

 ……と、思っていたら。

 

『えっ!?』

「なにぃっ!?」

 

 俺が駆けてきた草原から少し外れた森の中。大島さんのキャラが飛び出してきたのだ! っつーことは、つまり……!

 

「貴様、魔女シリーズが指定されたか……!」

『どうやらそっちもみたいね……!』

 

 まさかの事態である。そら指定カードは完全にランダムだから他のプレイヤーと狙いが被ることはあるだろうけど、別々の方角に向かった二人が同じとこで衝突するかね?

 

 個人的には好都合だけどな! 主に動画の取れ高的に!!

 

「ふむ……どうだ、大島キリよ。一つ、ここは共同戦線と行かないか?」

『……話を聞こうじゃない』

 

 俺の提案には、どうやら向こうも意図を察したらしい。というのも、指定ポケットカードの魔女シリーズには三種類あるのだ。ここが重なっていれば敵対関係だが、そうでなければ共に戦い、ドロップアイテムが自分の指定じゃなきゃ相手に譲ろうぜ、ということである。ちなみに魔女の家自体は遠くに確認できたので、それを探す必要はない。

 

「まずはこちらの指定カードを開示しよう。64と66なんだが……そちらは?」

『65。共闘成立かしら?』

 

「うむ! 魔女の家には宝箱(ボーナスチェスト)もある。もし64か66が出たら俺がいただき。65と宝箱はそちらが持っていくというのはどうだ?」

『オーケーよ! あっ、戦闘前にどっちか分かっても協力するのは前提だからね?』

 

「無論だとも!!」

 

 大島さんの言い分的には、魔女がどんな姿でもとりあえず一緒に討伐しましょうね、ってことだね。実は指定カードのどれを落とすのか、ぶっちゃけ魔女の外見で分かるのだ。

 

 ハート形の杖を持っていたらNo64、"魔女の媚薬"。バニラには存在しない、子供サイズの魔女ならNo65、"魔女の若返り薬"。そして、魔女の帽子をかぶったノッポ野郎(エンダーマン)ならNo66、"魔女の痩せ薬"である。子供以外なら俺の大勝利って訳だね! 確率は三分の二! 勝ったなガハハ!!

 

「では行こう! 魔女の家へ!!」

『ええ!!』

 

 そして魔女の家到着。

 

「なんでだぁあああああっ!!」

『やったぁああああああっ!!』

 

コメント

    :うるさいww

    :キリちゃんだけなら助かった

    :天 国 と 地 獄

 

    :なんでこんなに絶望してるのこの人w

    :そらキリちゃんの指定ドロで宝箱も持ってかれるからよ

    :ざまぁ

 

 索敵範囲のギリギリ外、入口からチラリと見えた魔女はちっちゃい……どうやら俺は天に見放されたようだ。ちきしょー、しかし約束は約束だ。素直に共闘しようか……。

 

「ちっ、嘆いていても始まらん。どうだ、魔女相手は得意か?」

『……正直、ちょっと苦手。だから話に乗ったトコあるし……』

 

「よかろう、まずは俺が凸ってヤツを水中に落とす。標的(タゲ)は移らんハズだ、俺が釣ってる間に後ろから倒せ。魔女の攻撃(ポーション)が不安なら弓を渡すぞ?」

『そこまで甘える気はないわよっ! 引き付けてさえくれればどうとでもなる!』

 

「よし、では行くぞ!!」

 

 そう言い残して俺は魔女の家に泳いで近づき、建物の柱になっている原木に足場を設置。そこに上がるとバックステップしつつブロックで階段を作る。

 

『あれって上手くいったとこだけアーカイブに残したんじゃないんだ……』

 

コメント

    :動ききっも

    :なんでシフト押さずに階段作れるのw

    :こいつアスレ勢か?

    :キリちゃん絶句しとるやん

 

「魔女さんこんにちはァ! ……っ!?」

 

 跳躍して中に侵入すると、見えていた通り小さな魔女と、奥には宝箱が。そしてもう一つ、見逃せない存在がいた。ヤマネコ(・・・・)……!!

 

 この要素を大島さんが知っているかは不明だが、個人的にあのネコに死なれると困る。共闘とか関係なく、とりあえず魔女をやっちまわないと!

 

 敵が俺をタゲったことを確認し、すぐさま床の高さに合わせた階段の上へ戻る(ジャンプ)。そこでわざと家の床と足場を繋げてやり、魔女を誘導する。一歩でも進んできたらこっちのモンだ、右前方に跳びつつ左を向いて斬りつける! 俺と、俺の攻撃が直撃した魔女は当然ノックバックで揃って池ポチャし。向こうは後退するこちらを追跡し始めた。

 

「出番だぞッ!!」

『言われなくても!!』

 

 俺の侵入と同時にスタンバっていたらしい大島さんが即座に駆け付け、後ろからバシバシ剣でシバきだす。……アレ? それダイヤ剣じゃない? なんでそんな良い装備持ってんだ!!

 

 と、己の弱小装備と比較して妬みつつも作戦は功を奏し、後頭部をザシュザシュ斬りつけられた魔女は煙となって消えた。

 

『っ! 落ちた、"魔女の若返り薬"! これで二種類ゲットよ!!』

「ちっ、確率にも勝ったか。称えてやろうじゃないか……くぅっ!」

 

コメント

    :めちゃくちゃ悔しそうで草 ¥610

    :ナイスドロップ!!

    :キリちゃんナイスー!! ¥120

    :残り時間的にも勝ったかな?

    :キリちゃんしか勝たん ¥10000

 

『赤スパありがとうっ! ふふんっ、どうやらアタシの勝ちかしらね?』

「ハッ、勝負は最後まで分からんさ……とりあえず、宝箱を確認したらどうだ?」

 

『魔女戦はほとんど任せちゃったし、カードも貰っちゃったし? それくらいは譲ってあげるわよっ♪ まっ、宝箱(アレ)からはバニラのアイテムしか出ないけどー!』

「ぐぬぅ……後悔しても知らんぞ貴様ァ……!!」

 

『むしろさせて欲しいわね! ほーっほっほっほ♪』

 

コメント

    :高飛車ムーブカワイイ ¥500

    :これに懲りたらコラボとかすんなよ

    :そーだそーだ!リベンジしたいなら土下寝しろよ! ¥5000

    :そして三回まわってリスキーダイス振れ。大凶出したら許してやる ¥8932

    :ひどいww

    :スパチャが爆殺で草

 

 チャットの不穏な気配にヒヤリとするも、お馴染みのイジりに胸をなでおろし。悠々と泳ぎ去る大島さんの背中を見送った。

 

『さーて、残り時間も少ないし! 間違っても死なないようにしないとね! また地下に潜ろうかなー♪』

「今まで動きを悟られないよう喋ってたのに、とうとう開き直りやがったな……」

 

 言いつつ、俺は譲ってもらった宝箱(チェスト)を確認するため再び魔女の家へ。……まぁ、本命は別にあるんだけど。

 

 中に入ると、相変わらずヤマネコが鎮座している。さて、マ〇クラに詳しい人ならもう分かるかな? この状況がおかしいってことに……!

 

 バニラにおいて、魔女の家には確かに猫がスポーンすることがある。しかし、それは黒猫(・・)であるはずなのだ。ではなぜヤマネコが居るのか? もちろんG・IMODの影響である!!

 

 本来ジャングルにしか生息しないヤマネコだが、このMODではとある指定ポケットカードを入手するためのトリガーになっている。しかし、ジャングルはバニラでもレアな地域(バイオーム)で、ワールドによっては生成されない可能性もある。なので、救済措置として一定確率で魔女の家に湧く黒猫はトラネコになる場合があるのだ!

 

 G・IMODは常にアプデを繰り返しているが、製作者は海外の原作ファンだ。なもんで、最新情報は基本的に海外の攻略サイトか掲示板。黒猫がトラネコになるってのは二つくらい前の新しめのアプデであり、日本版の攻略サイトだけじゃ多分載ってない。おそらく大島さんは知らなかったのだ、ここには指定ポケットカードチャンスがまだ転がっていることを……!

 

「さーて、中身は何かな……?」

『まーバニラのアイテムとは言ってもレア多めだし? ダイヤとか強化済み(エンチャント)装備くらいはあるんじゃなーい? うらやましーなーっ』

 

コメント

    :キリちゃんニッコニコやん!

    :そらあんな変態プレイヤーに勝てたらなぁ

    :めっちゃ煽るww

 

 ふっ、調子こいてられるもの今のうちだぜ……。宝箱を開くと、中にはガラクタに混じって確かにレア装備なんかが入ってる。だがそんなモンはどうでもいい! いや装備するけど。目的のブツがあったぜぇ……!

 

「そーらチッチッチッチ……」

『え、急になに……?』

 

コメント

    :悔しすぎて壊れちゃったか

    :諦めてニワトリに種でもやってんじゃないの?

    :繁殖させるのww

    :キリちゃん、左下にコウノトリの贈り物って出るでww

    :進捗達成ww

 

 おやおや、リスナー諸君も甘いのぉ……。鋭いっちゃ鋭いがな、俺は実際トラネコに餌付けしている。宝箱に入っていたバニラの宝石(ラピスラズリ)でな……!

 

 一つ、二つ、三つ……どんどん消えていくが、手持ちが尽きる前にソレは起こってくれた。ブルブル震えたトラネコは、徐々にその体積を増して……某有名ネコ型ロボットのような風体になった! あとはコイツを左クリックして(撫でて)やれば……ドロンとォ!! カード化しましたよ奥さん!!

 

 こいつの正体はNo22、指定ポケットカードの"トラエモン"! ジャングルにスポーンしたトラネコの中に一定確率で潜んでいるモブである!! 製作者の恩情により、魔女の家の黒猫がトラネコ化した場合は確定!! こいつは固有のインベントリを持っており、レア鉱石や宝石でその中身を満たしてやればカード化するのだ! やったぜ!!

 

「ふふふ……まぁ塩を送ってもらったワケだしなぁ。教えてやるか……」

『? な、なによ……?』

 

「クリア条件の指定ポケットカード、俺様も二種類目をゲットだァ!!」

『…………な。なんですってェーーーーっ!?』

 

コメント

    :ハァ!?

    :はいチート

    :いやブラフでしょ

    :後で動画みりゃ分かる……けどさすがに信じがたいww

    :どういうことなのww

 

 はっはっはァ! コメントも大盛り上がりだな!! まだまだ勝負は続くぜ!!

 



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【絶対勝つ!】マ〇クラG・I【争奪戦!】④

「どこだぁあああ犬ッコロォオオオオオ! 出てこいやァアアアア!!」

『お願い……! 何か出て……!! 出して……!!』

 

コメント

    :えっちだ……

    :野郎がうるさ過ぎて使えないw

    :使 う な

    :借金取り893VS祈る聖女VSダークライ

 

 タイムアップが迫る中、勝負が拮抗してる俺と大島さんはなりふり構わず指定ポケットカードを探していた。ダイヤ剣なんて持ってたから予想していたが、大島さんのクリア条件には宝石系のカードが含まれているんだろう。配信開始直後の、見つけたらOK発言にも当てはまるしな! なもんで絶賛地下採掘(ブランチマイニング)中ってワケだ。

 

 俺はと言えば、叫んでいる通り犬ッコロ(オオカミ)を探して草原を駆けている。狙いはNo98、ランクSの"シルバードッグ"! こいつも入手方法は"トラエモン"とほぼ一緒だ。草原に湧いたオオカミの群れに金インゴットを放って、それに反応したら確定。鉄じゃないの? と思われがちだが、コイツは「少量の金を食って大量の鉄糞を出す」って生態(テキスト)なのね。だから与えるのは金インゴット。

 

「ちぃっ、牛羊豚は居やがるのにオオカミだけ見つかんねぇ……!」

『っ、やったエメラルド! お願い……あぁ出ないよぉ~~っ!!』

 

 ヤベェ、大島さんがそれっぽい反応するたびにドキッとするぜ……! 今のは"美を呼ぶエメラルド"チャンスだったのかな? バニラのエメラルド鉱石から確率で出る指定ポケットカードだ。運悪く外したらしいね。

 

コメント

    :五分切ったぞ

    :キリちゃんがんばって!!

    :めっちゃ熱いなぁw

 

    :なんやかんやギリギリまで競ってるのいいわ

    :どっちが勝つにせよ決着は付いてほしいねぇ

    :宝石系出やすいイメージあるけど、普段は時間かけてるからそう感じるだけなんだろうな

 

 と、俺と大島さんの接戦に盛り上がるチャット欄。よーしよし、このコラボ自体は大成功だったなぁ! あとはどうオチをつけるかだな……思考が芸人のソレですねぇ!

 

 そうして間もなく迫る終了時間にハラハラしていると、どうやら運は俺に味方したらしかった。この状況にピッタリの要素が二つ! 地上を走り回って新しく読み込んだ領域(チャンク)にオオカミの群れを発見した! あと一個は放っておこう。動画として残すときに、俺が気づいた素振りを見せると面倒なことになるだろうし。 

 

「くっくっく、さぁ運命の時だ! 大島キリよ、この群れに犬ッコロが居ないことを祈るんだなぁ……!!」

『なっ、オオカミの群れ!? 出ないでお願いお願いお願いお願い……!!』

 

コメント

    :本気で祈ってるww

    :決まるか?

    :やだーキリちゃん勝ってー!!

    :キリちゃんにどうせぇとww

 

 大島さんが早口に唱え、コメントが決着の気配に加速する中。俺は手元の金インゴットをオオカミの群れの中心に放り投げた。すると……?

 

「おやおや、めんこいねぇ。ほらもっとお食べぇ? そうさな……名前は"シルバー"なんて付けちゃおっかなぁ!?」

『きぃゃああああああっっ!?』

 

コメント

    :やべぇ声出てるぞww

    :キリちゃん負けちゃったかー……

    :これで終わりなの?

 

    :まだちょっと時間あるけど、向こうのテンション的にクリア条件の三種だろうから終わりやね

    :ブラフワンチャンあるから!

    :確かに、一応お互いのカード確認するまではなんとも

 

「ふっはっは!! まぁリスナー諸兄の言う通り? 俺が嘘をついているかも知れんしなぁ? どうだ、落ち合って確認するか? ん?」

『ぐぅぅ……っ! そうねぇ……! 配信的にもその方がみんなに伝わりやすいでしょうしねぇ……!!』

 

コメント

    :おいたわしや……

    :死ぬほど悔しそう

    :キリちゃんこのゲームガチ勢自称してるからなぁ

    :向こうが変態過ぎたんや

 

 うーむ……OK! 俺が勝つとなっても、コメント欄は荒れてないな。……しかし、それだけじゃあダメなのである。今までそういうコメしてた人たちは黙ってるだけなのかも知れないからね。そういうリスナーにも、少なくともこのコラボは『悪くなかった』と思ってもらいたい。これからの流れ自体は、それはそれで言い争いの種になるかもだけど……男女コラボの燻りに比べりゃあなんてことないだろ!

 

「ではスタート地点で合流だ! 共闘前に掘ってたくらいだ、そちらは近場だろう? 俺が到着するまでは採掘してて構わんぞぉ? ぬぁーっはっはっはぁ!!」

『ギリギリギリギリ……!!』

 

 大島さんが歯ぎしりするのを聞きながら、俺はゲーム内で空を仰ぎつつスキップする。

 

「ふんふんふーん♪ 見てくれ画面の前のリスナーたちよ! 空はこんなにも美しい!! まるで俺様の勝利を讃えているかのような……あっ。あっ、アッ! あぁああっ!!」

『……? え、なに?』

 

コメント

    :腹立つなぁw

    :ふんふんちゃうぞフン野郎

    :糞野郎で草

 

    :ん?

    :なんだ?

    :うっさw

 

 ばしっ、ばしっ、ばしっ。特有の弾けるような音が一定間隔で鳴り響き、それに合わせて俺は声を上げる。演技臭くはなってないと思うぜ、なんてったって数えきれないほど同じ目に遭ってきたからなぁっ!!

 

 そして数秒後、俺のゲーム画面左下。大島さんの画面にも同じメッセージが届くのであった。

 

"vshibiki は溶岩遊泳を試みた"

 

『はっ?』

 

コメント

    :えっ

    :はぁ?

    :wwwwwww

    :何しとん

    :全ロス?

    :こ れ は ひ ど い

 

 俺のキャラは上を向いて走っていたので、足元の溶岩溜まりに気づかなかった(・・・・・・・)のである。

 

「……はい。というわけでね、皆さん今回のPVPコラボいかがでしたか? いやぁ熱戦でしたが、勝者はこの暁ヒビキということでね!」

『いや、ちょ……はぁっ!? 何してんの!? 何してんのアンタ!? えっ……マグマダイブしたってことっ? アイテムは!?』

 

コメント

    :はいやったー

    :さすがヒビキ!マヌケ野郎だぜ! ¥2828

    :どうせ調子こいて地上のマグマ落ちたんやぞ

    :アーカイブ残しますよね?w

 

「あ~……あれ、これちゃんと録画出来てない系? あぁいやアイテム? うん無事っすよ? 何となくチェスト作って入れてたんで? 無事っすよ? うん」

『嘘つきなさいよ! 合流するのにアイテム置く意味無いじゃない!!』

 

コメント

    :最初にアーカイブ残すって言ってましたよね!

    :はいこれ録画代 ¥10000

    :ヒビキの活躍見に行くね♡ ¥20000

 

「ちくしょぉおおおっ!! なんでマグマ池あんだよっ!? 周りの木とか燃えてなかったんだがっ!?」

 

コメント

    :化けの皮はがれて草 ¥250

    :オオカミ湧かせるためにチャンク読んだばっかだからでしょw

    :空がどうの言ってるからやぞマヌケ

    :ヒビキの勝利を讃えた空はどんな色なんやろなぁ? ¥8888

    :そりゃ真っ赤でしょうよww ¥763

 

『えっ、これどうするの? 勝負はっ?』

「……まー、判定的には俺様の勝利なのでは? 先に三種集めた方の勝利ぞ?」

 

コメント

    :結果無くしてんだから負けに決まってんだろw ¥490

    :コンプチェックのための合流段階で死んだしなぁ

    :アーカイブの確認は今出来ないし、ヒビキの負けっしょ

 

    :やぁ良い勝負だった ¥888

    :キリちゃんおめでとー!!

    :大方の予想通り炎上しましたね! ¥2000

 

「はい僕の負けでーす! やぁ大島さんさすがだなぁ! リスナーさんも言ってますよ! 燃えるようなアツいバトルだったって!!」

『ざけんじゃないわよーっ!! んぁあ~~もぅ……! なに? なんなのっ? なに大事なとこで死んでんのっ?』

「いや、その……ハイ! すんませんっ!!」

 

コメント

    :ガチ謝りで草 ¥370

    :キリちゃん的にはなぁ

    :試合に勝って勝負に負けた感

 

    :まぁキリちゃんの勝ちでしょ!向こうも言ってるし!!

    :せやな!キリちゃんおめ!ヒビキはなんで負けたか明日までに考えといてください ¥10000

    :じゃんけんパイセン!?

 

『くぅ……アイテムは、無いのよね?』

「ウッス。全ロスしましたッス。ウッス」

 

『……はぁ~~……。はいじゃあ決着! マ〇クラG・I対決、アタシが勝ちました! やったー!』

 

コメント

    :全然嬉しそうじゃないww

    :ヤケクソ感w

    :ぜーんぶヒビキが悪い ¥5353

    :間違いないww ¥250

 

『でもっ!! アタシはぜんっぜん納得してないからっ!! いい!? 絶対また勝負しなさいよっ!? 勝負の途中ならともかく、終わってから死ぬなんて冗談じゃないんだからねっ!?』

「ウッス! 自分、また挑戦させてもらいたいッス! ウッス!!」

 

『みんな、今日は応援ありがとう! 今回はこんな感じで勝ちを拾ったけど、アタシは不本意だからねっ? もっと腕を磨いて、今度は実力で勝って見せるから! また、応援してね?』

 

コメント

    :もちろん!

    :キリちゃんは気高いねぇ ¥5000

    :それに比べてヒビキとかいう輩はよぉ

 

    :おいヒビキ逃げんなよテメー ¥10000

    :普段見れないキリちゃん見れて楽しかったよ!

    :それはあるw

 

    :コラボの時は大体キャリーしてるからなぁ

    :ガチキリちゃんまた見たい

    :はい再戦代 ¥20000

 

「そのスパチャ一切俺に入らないんだけど……あっ、嘘ッス。謹んでまたお相手致すッス。ウッス!!」

 

『はいっ! ということで、今回お呼びしたのはヴァーチャルシップより! 暁ヒビキさんでしたーっ!!』

「改めて、お招きありがとうございました!! リスナーの皆さんね、申し上げました通りアーカイブ残しますんで! 良かったら見ないでくださいねっ!!」

 

コメント

    :良かったら見ないでは草

    :良くないから見ます^^ ¥2525

    :コメント欄で煽り散らかすからな ¥1000

 

「君らに人の心はないんかね?」

『ではでは時間も押してるのでっ。おつキリーっ!』

「あっ、お、おつキリー!」

 

コメント

    :おつキリー

    :おつキリー

    :早くアーカイブ上げてね♡ ¥2000

    :ヒビキ視点楽しみだなぁ ¥5000

    :おつキリー

 

「ふぅーっ……」

 

 無事に大島さんの配信枠が終わったことを確認して、俺はいつもの癖で伸びをした。すると。

 

『ねぇ、ちょっといい?』

「あっ、はい。なんですか?」

 

 通話がつながったままの大島さんから声がかかった。そらそうや、こっちはこっちで解散せんとね。

 

『……その。最後なんだけど……』

 

 最後? 配信の終わり際、何かあったっけな……再戦のことかな?

「またPVPってことなら是非! 今日は凄い楽しかったです!」

 

『そうじゃなくて……まぁ、良いか。そうね、次また戦えばいいだけよねっ!』

 

 ? 何やら分からんが、大島さんの中ではケリがついたらしい。それもマジでまた呼んでもらえるのか。嬉しいねぇ……。

 

「はい! 楽しみに待ってますね! 俺も腕落ちないよう練習しとくんで!」

『……ねぇ、その口調なんなの? 配信中はもっと、なんていうか……フランク? だったのに』

 

「いや、そりゃあ大島さんがすぐに"戦おう"なんて言うから、そのノリで……。事務所が違うって言っても、俺からすりゃあ大先輩ですし」

『いやそういうの良いから! アタシとアンタはライバルなのっ! アタシがそう決めたの! いいっ!? 今度は変な遠慮(・・・・)なんてしないでよねっ!?』

 

「そういうつもりは無かったんですけ……だけど。分かった、俺もコラボでずっと敬語とか緊張するし。これでいいんだよな?」

『ええ! いい? ぜっっっっったいまた誘うからねっ。首洗って待っててよね?』

 

 その言葉に、思わず俺は笑みを浮かべた。あぁ、いいなぁ……。こんな風にガチバトルできる相手なんて、そうそう居ないよなぁ。それも同じV、3D化もしてる大先輩だ。最終的なリスナーの反応も悪くなかったし……SNSとか配信後のエゴサも必要になるだろうけど。

 

 俺もようやく、Vtuberの輪ってのに本格的に加われたような。そんな感覚に包まれていた。

 

「もちろん! 次は正真正銘、俺も大島さんも視聴者も! 全員が納得する勝者を決めよう! 約束だ!!」

『ええっ、約束よ!! ……ところで、大島じゃなくて、キリでもいいのよ?』

 

「それは……ほら、まだいろいろ怖いから」

『怖い? 何が?』

「いや分かるでしょ? ボク男、アナタ女。オーケー?」

『ふーん……ヘタレ』

 

 そこまで言うと大島さんは、一方的に通話を切りやがった。……なんやこの女ァ!! ……ま、いいさね。大先輩とはいえ、大島さんは例の事件の被害者じゃないからな。直接コラボ依頼してきたこともあって、この辺のリスクは実感できないのかも。

 

 これからも、その辺は俺が考えればいいことだろう。そうやってフォローするのが全く苦にならないくらい、楽しいコラボに誘ってもらえたんだから。

 

 今から待ちきれないくらい、大島さんとの再戦が楽しみだ。

 




タイトル変えました

「唯一の企業勢男性Vは今日もボッチ」

「男性Vがコラボするってよ」

Twitterやらでエゴサしてたら『コラボするの速くない?』『ボッチ脱してない?』という反応を見て、確かに! と思ったので。あと言いづらいなって思ってたので。

以下二人の指定カード。9D100でそれぞれ決めました。

98(S)シルバードッグ
94(S)盗賊の剣
66(S)魔女の痩せ薬
64(B)魔女の媚薬
46(A)金粉少女
40(B)超一流ミュージシャンの卵
31(S)死者への往復葉書
22(A)トラエモン
8(S)不思議ケ池

89(A)税務長の籠手
79(A)レインボーダイヤ
78(B)孤独なサファイヤ
73(A)闇のヒスイ
65(S)魔女の若返り薬
54(A)千年アゲハ
43(B)大ギャンブラーの卵
25(B)リスキーダイス
8(S)不思議ケ池

被ってる不思議ケ池も触れたかった……


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【Vtuber】企業男性Vを語るスレ【というか暁ヒビキ】①

お試し掲示板回。需要があったら増やすかも?


205:名無しのコラボ相手

そういうのは無視するに限る

 

206:名無しのコラボ相手

荒らしに反応するヤツも荒らし定期

 

207:名無しのコラボ相手

にしても、ヒビキもコラボ解禁で嬉しいねぇ

 

208:名無しのコラボ相手

全然安心はできないけどな。いつ燃えても、というか燃やされてもおかしくないし

 

209:名無しのコラボ相手

それな

 

210:名無しのコラボ相手

どのリスナーより事務所より本人が警戒しまくってるし大丈夫な気もするけど

 

211:名無しのコラボ相手

ヒビキのリスクヘッジが的確過ぎて俺たちが心配してもそれこそ杞憂だろ

 

212:名無しのコラボ相手

そうか? ヒビキだって人間だぞ、気が緩むこともある。そんな時アンチコメを受け流せてこそのライバー(リスナー)よ

 

213:名無しのコラボ相手

意識高いなぁ

 

214:名無しのコラボ相手

前の大島キリちゃんとコラボした時とかそうだったしね。ヒビキ枠の調教の賜物なんだろうけどw

 

215:名無しのコラボ相手

キリちゃんのコラボでヒビキの動画見始めた勢なんだけど、過去配信でそういう話あったの? コラボの時は助けてーみたいな

 

216:名無しのコラボ相手

そんなんないよ

 

217:名無しのコラボ相手

雑談枠でヒビキが『こういうコメントされたらどうする?』に対して答えたことをリスナーが勝手に実践してるだけやぞ

 

218:名無しのコラボ相手

信者じゃんww

 

219:名無しのコラボ相手

そういうのとはまた違うんだよなぁ……。いや信者なのか? どうなんだ?w

 

220:名無しのコラボ相手

調子乗るから本人には絶対言えんけど、尊敬してる人間の言動は真似たくなるやん? そういう対象の在り方に倣うって意味なら確かに信者かもしれんね

 

221:名無しのコラボ相手

俺たちはヒビキの信者だったのか(困惑)

 

222:名無しのコラボ相手

本来の意味で八方美人だし、立ち回りは理想的だよな。誰の反感も買わないよう意識してる

 

223:名無しのコラボ相手

傍目から見たらまだアンチ多いように見えるけど、声でかいのが多少蔓延ってるだけで実際はそうでもないからな

 

224:名無しのコラボ相手

そもそもヒビキが叩かれる謂れはないんだから、本人がちゃんとしてりゃ収まるわな

 

225:名無しのコラボ相手

思った以上に信者が多くて困惑してるwww

 

226:名無しのコラボ相手

ヒビキ敵を味方に変えるラノベ主人公属性あるからなw

 

227:名無しのコラボ相手

チャンネル登録者の8割以上が最初はアンチだったろうからなww俺もそうだしww

 

228:名無しのコラボ相手

僕も初配信の時とかすごい勢いでアンチコメしました(懺悔)

 

229:名無しのコラボ相手

みんなそうよ……それを当たり前みたいな顔で受け止め続けた漢が俺らのヒビキよ……

 

230:名無しのコラボ相手

自分がやった訳じゃないから関係ない、的なこと一度も言ってないからなぁ。俺ならキレるわ

 

231:名無しのコラボ相手

それで罪悪感でファンになったとか?

 

232:名無しのコラボ相手

いやネタにされた挙句バチバチに煽ってきやがるからヒートアップしたよねww

 

233:名無しのコラボ相手

マジで被害受けた女性ライバーのファンとかのお気持ち表明には真面目に答えてたけど、俺らみたいなただ燃やしたかっただけの連中は死ぬほどネタにされたからなw

 

234:名無しのコラボ相手

俺ら「はやくやめろや」

ヒビキ「まだ費用回収できてないんだもん」

俺ら「金のためにやってんのかよクズが」

ヒビキ「君wwお仕事wwしたことある?ww」

 

235:名無しのコラボ相手

返しがイチイチ腹立って、言ってる人間はムキになるけど、他の視聴者はだいたい笑っちゃうというか。一回他のアンチがおちょくられてんの見ると、客観的に、あー俺もあんな感じでピエロになってんのかー……ってなる

 

236:名無しのコラボ相手

むしろ面白い方向に持って行きたくなって、結構なアンチが自主的にピエロ化したからww

 

237:名無しのコラボ相手

一時期はこのスレで『今日の敗者(おちょくられたアンチ)』と『今日の勝者(ヒビキと漫才したやつ)』でIDまとめ流行ったくらいだし

 

238:名無しのコラボ相手

ここのスレ民おかしない?ww

 

239:名無しのコラボ相手

他スレに比べりゃおかしいのかも知れんが誉め言葉だゾ

 

240:名無しのコラボ相手

むしろ匿名で他人叩くことの不毛さとか、無様さをヒビキに矯正されたからな。おかしいどころかまともになってるんだぞ

 

241:名無しのコラボ相手

男性Vってだけで敬遠しちゃってたんですけど、コラボも面白かったし、なんか勿体ないですね

 

242:名無しのコラボ相手

見るべきはレッテルじゃなくて本質だからな。君もヒビキのアンチになろうな!!

 

243:名無しのコラボ相手

台無しで草

 

244:名無しのコラボ相手

本人がネタにしてたからなw

 

245:名無しのコラボ相手

アンチの情熱ってのは凄く……凄い。君らがアンチで居る限り俺の同接人数は減らないのだ! みたいなことほざいてたな

 

246:名無しのコラボ相手

凄く凄いで笑ったわw

 

247:名無しのコラボ相手

勿体ないと思ってくれる視聴者が大島キリちゃんの枠から出たってのは大きいな。少なくとも向こうにとって不快になる配信内容じゃなかったってことだし

 

248:名無しのコラボ相手

受け取り方は人によるだろうけど、俺はめっちゃ楽しかったよw

 

249:名無しのコラボ相手

アンチコメが若干うざかったけど

 

250:名無しのコラボ相手

おいアンチ呼ばわりすんなや! コラボ相手の枠にいる限りは熱心なファン様やぞ! ヒビキ枠に来て初めてアンチ名乗れるんやぞ!

 

251:名無しのコラボ相手

(アンチって資格制だったんやな……)

 

252:名無しのコラボ相手

ヒビキに煽られてネタにされてコントやって初めてアンチよ

 

253:名無しのコラボ相手

ナニソレイミワカンナイ

 

254:名無しのコラボ相手

アンチの 法則が 乱れる!

 

 



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Vの裏で:狙いは何だったんですか?

『お疲れ様です。どうかなさいましたか?』

「あ、お疲れ様です……あの。大島さんとのコラボについてなんですけど」

 

 例のごとく、俺はPVPコラボの翌日にボスへ連絡していた。配信の反応を調べたりもしてたんで、時計はおやつの時間を少し回ったくらい。この辺りの時間帯は、割とボスの都合がつきやすいってのが経験則だ。

 

『ああ、私も視聴していましたよ。楽しそうで何よりでした』

「えっ、配信中に見てたんですか?」

『もちろんです』

 

 マジかよ……いや、考えてみりゃ不思議でもないか? ボスが今回のコラボを受けたのが俺の想像通りの理由なら、俺がヘマしないようチェックするのはある意味当然ですらあるしな。

 

「……色々聞きたいことはあるんですが、どうして大島さんとのコラボを受けたんですか? それも、事前打ち合わせもなしに」

 

『ヒビキくんもある程度は予想していると思いますが……あれは一種のテストでした。相手の情報を運営側から伝えず、当日の段取りについてもすべてアドリブ。この条件下で問題なくコラボ出来るのかどうか』

 

 今のところ、ボスの言う通り俺の予想の範疇だな。その意図も想像通りなら一安心なんだけど……。

 

「それで、テストの結果は……?」

『……満点、と言っていいでしょう。配信中の運びから、ヒビキくんが大島さんのことを個人的に下調べしていたことは窺えました。先方の熱心なファン(・・・・・・)を刺激することもなく。お互いのチャンネル登録者も目に見えて増えていますし、大成功と言える結果でした』

 

「……そ、そうですか……安心しました」

 

 予想していようが、あくまで予想だ。思いのほか合否判定に緊張していた俺は、ボスからのお言葉に胸をなでおろした。

 

『すみません、こちらの都合で振り回してしまって。本来であれば、タレントを雇っている側としてこんな暴挙は許されません。お詫びと言ってはなんですが、もし事務所側に要望等あれば出来る限り対応しますので。何か考えておいてください』

 

「いえ、とんでもないです。ただ……どういう狙いがあって今回のテストを?」

 

『そうですね……一つは、ヒビキくんの今後の活動について、どこまで干渉すべきかを判断するためでした。これにつきましては私共(わたくしども)で話し合い、基本的に不干渉で問題ないという結論に至りました。つまり、ヒビキ君は今後の配信・動画投稿・コラボを行うにあたって、私に都度連絡を入れる必要はないということです。他事務所と関わる場合も簡単に事前連絡・事後報告さえいただければ構いませんよ』

 

 これにもホッとした。いや信頼が重すぎるんだが? って気もするけど、俺が責任を負える範囲内で自由が利くというのは魅力的だ。企業としてあまりにもリスキーな判断に思えるが、俺の積み重ねてきた活動をもとに相談した結果だと言われれば誇らしくもなろうもん。……ボスの言う、私共(・・)ってのがどの範囲の人間を指すのかとかは考えたくないけど。

 

「ありがとうございます! 信頼を裏切らないよう頑張ります!」

『はい、今後の活躍も楽しみにしています。……それで、もう一つの狙いなのですが……ヒビキ君には、四期生のサポートを兼任して欲しいのです』

 

「……はい? サポート?」

 

 理解が及ばずに聞き返すと、ボスは声色を変えずに答えてくる。

 

『その通りです。ただいまヴァーチャルシップでは、四期生を募集しているというのはご存じですよね?』

「それはもちろんですけど……」

『実は、その四期生に……男性の応募があったのです』

「えっ!? ホントですか!?」

 

 マジかよ……いや、早くね? 確かに以前から、ボスが……というか事務所側が、男性Vを推していく方針なのは知ってる。でなきゃデビュー当時、まともに収益が望める状況じゃなかった俺を置いとく訳が無い。ユラちゃんとのコラボに始まり男性Vの需要を高めることで、男性V志望が大手を振って応募が出来るようにしたい、ってのも聞かされてる。

 

 しかし、ユラちゃんとコラボしたのなんて二週間チョイ前の話で、それ以来まだ絡みはない。他のコラボと言えば先日の大島さんとPVPしたくらいだ。まだまだ男性V志望を釣るには積み重ねが足らんと思うんだが……。

 

「ユラちゃんか、大島さんとのコラボがきっかけなんですかね……? 正直、それはないと思うんですけど……」

 

『こちらとしても、男性Vのニーズを刺激するという狙いに対してであれば反応が早すぎると思ったのですが。募集要項には性別の指定がありませんでしたから、通常通り選考を行いました。……その結果、当事務所二人目の男性Vとしてデビューが決まりました』

 

「…………お、おぉ……えぇ……?」

 

 驚きでなんて言ったらいいのか分かんねぇよ……。え、俺に男の後輩が出来るの? っつーか俺がそのサポートするの? いやいやいや!

 

「あの、一応自分、別で仕事もあるんですけど……」

『はい、それが先ほどのテストの件にも繋がるのですが。つまり……本格的に、社員として私共の事務所で雇いたい、という話なのです』

 

「…………えーと」

 

『困惑するのも無理はありませんが、今後はオフコラボ等も見据えて活動して欲しいと考えています。そうなりますと、ヒビキくんの現状では少々スケジュール管理が厳しくなると予想されます。収益化したばかりなので明細をお見せするのは先になりますが、既にヒビキくんのお給金にはスーパーチャットの金額も含まれています。これだけでは今のお仕事を辞めても赤字と思われますが、正社員となればもちろん待遇は変わります。二足の草鞋を履くよりも、時間・賃金共に悪くない話だと考えますが。いかがですか?』

 

 …………確かに、単純計算してもおいしい話だった。今の俺はバイトを掛け持ちしてるような状況で、日中はVと関係ない仕事をしている。なもんで配信は夜だけだし、俺がVを目指すきっかけとなった人以外のVはほとんど見れていない。後輩のユラちゃん、コラボのために調べる必要があった大島さんくらいなもんだ、多少追えているのは。あと推しとコラボした人をちょっとだけ。

 

 なんでそんな生活してんだと言われれば、デビュー当初はそれこそいつ切られてもおかしくないと思っていたから。Vとして活動しつつ、クビになった時生活に困らないようにするために、他のバイトは必須だった。それでも、Vを目指すと決めて辞めた前職に比べれば苦じゃなかったけど。

 

 それが、ほぼすべての時間をVtuber活動に費やせるようになるのだ。まだまだ界隈ファンの厳しい目はあるけど、リスナーと騒ぎながらの活動は楽しい時間だった。そこにリソースを全振り出来るのなら願ったり叶ったりだ。

 

「……すぐに今の仕事を辞める、って訳には行かないと思うんですけど。出来れば僕も、そうさせてもらえると嬉しいです」

『ありがとうございます。退職までにどれくらい時間がかかるか分かりますか? 大まかにで構いませんので』

 

「最長でふた月……相談次第では今月末にも」

『そうですか。四期生はまだ募集期間中ですし、急ぎではありませんので安心してください。ただ、予定より早く退職の運びとなるのであればいつでも受け入れる準備は出来ていますので。気軽に連絡してくださいね』

 

「助かります」

 

 バイトつーてもすぐ辞めるとはいかんからね……。そこを配慮してくれたボスに礼を言うと、いつかのようにくすりと笑う気配が。

 

『助かったのはこちらですよ。Vtuber活動のサポートを任せられる人材はそう居ませんし、ましてや業界でも難しい立場の男性V担当ですから。ヒビキくんほどの適任はそう居ませんよ』

「はは……頑張ります」

 

『文字通り、簡単な補助になりますので。男性Vにのみ、ヒビキくんが活動するにあたって気を付けてきたことを指導する程度で構わないのです。四期生全体のマネージャーはまた別に用意しますからご心配なく』

 

 間違っても俺がマネージャーも兼任する、みたいなことにはならんってことね。

 

「分かりました! とりあえず、退職の日取りが決まったらまた連絡しますね」

『はい、お待ちしています』

 

 ……なんかそういうことになった。やったねヒビキ! 男性V(なかま)が増えるよ!! ……マジで、どうなるんだろうか……。

 

『……ところでヒビキくん。あなたは生配信後によく視聴者の反応をSNSなどで確認するそうですね?』

「えっ? そうですけど……」

 

 まだ見ぬ後輩に思いを馳せていると、ボスがそんなことを聞いてきた。

 

『ネットの掲示板等も確認されていますか?』

「いえ、そこまでは見てないですね……。デビュー直後は覗いたりもしたんですが、精神衛生上あまりよくないかなと思いまして。SNSはリアルタイムで視聴した人の、ほとんど生の感想が見えますから、主にそっちを確認してます」

 

 今でこそ中傷コメントにも慣れているが、当時はさすがに落ち込んだりもしたしなぁ。掲示板めっちゃ荒れてたし。事故らないよう反射的に面白おかしくコメント返ししてた生配信と違い、掲示板とかだと下手に考える時間がある分ネガティブになりがちだった。嫌なら見ない。インターネットにおける最も重要な自衛手段の一つだろう。

 

『そうですか……。少々もったいない気もしますが』

「えと……すみません、最後のほう、ちょっと聞き取れませんでした。もう一度お願いできますか?」

 

『あぁいえ、ただの独り言です。……そうですね。そういった、自身がどのように視聴者から見られているか、というのを探る方法も、新人の方に助言いただけるとありがたいですね』

「覚えておきます」

 

 こうして俺は、ある程度自由に活動して良いことになり。本格的にヴァーチャルシップの下で働かせてもらうことに。そして……男性Vの、後輩が出来ることになったでござる!

 



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【ヒビキとユラの】後輩が来るっぽい【VS放送局】①

「こんヒビキー。ヴァーチャルシップ二期生、今んとこただ一人のVS男性Vこと暁ヒビキでぇーす。そして!」

「みなさんこんばんは~! ヴァーチャルシップ三期生の夕張ユラと申しますっ。よろしくお願いします~」

 

コメント

    :こーん

    :きちゃー!

    :定期コラボ枠おめ ¥10000

    :こんヒビキ―

 

    :そんな告知あったんか

    :なかったと思うけどw

    :赤スパによる圧力

    :こんユラちゃーん

 

「えぇ……いやこれから告知予定だったんだけど……。はいっ、じゃあ赤スパのお礼ってことにしようかな! ユラちゃんとの定期コラボ枠、『VS放送局』! 今回が第一回になりますーどんどんパフー」

「いえーいっ!」

 

コメント

    :マジかよ

    :いいですねぇ! ¥2000

    :タイトルの後輩って文字必要か?

    :ユラちゃん言っちゃってますがな

 

 うむ、コメント欄からは困惑具合が窺えますな! でも男女コラボの定期枠が出来ることについては尖った発言も見当たらない。お互いのファンしかいないってこともあるだろうけど、好感触で何よりだ。

 

 ボスの要請からすでにひと月と少し経っており、俺は本格的にヴァーチャルシップの一員となった。このコラボ枠は俺に与えられた、最初の大きな仕事になる。

 

「まぁ基本的には雑談枠になるんだけど、VSからのイベント告知とか、僕ら二人のチャンネルの宣伝とか。諸々発信してく予定なのでよろすく!」

「ヴァーチャルシップ所属の、他のライバーをゲストに呼ぶこともあると思いますのでっ。楽しみにお待ちくださいね~!」

 

コメント

    :二人がメインってだけでVS全体の番組ってことかね

    :他の後輩はどうした

    :三期生の他三人は?

 

「いやぶっちゃけユラちゃんとしか絡み無いし……あんま後輩って感覚が……」

「あ、あはは……」

 

 

コメント

    :内部事情をぶっちゃけるなw

    :これだからボッチはよぉ

    :お前だけ別の組織に居ない?大丈夫?

    :ヒビキVSに存在しない説

 

「居るから! ちゃんと公式ページに載ってるから! 一人で二期生専用ページ丸々使うくらい大々的に取り上げられてるから! 俺が一番ビッグまであるだろ!?」

 

コメント

    :ねぇよww

    :草。いやくっさ。小物臭漂ってる

    :一番ビッグは盛ったなw

    :一期生にチクるからな震えて眠れ

    :せめて後輩のチャンネル登録者数抜いてからほざけ

 

「ねぇやめて? 絡みのない後輩って意味じゃ一期生から見た俺もそうなんだよ? んなやつが調子こいてたってチクっても反応に困るだけやろ? あとあんまり現実を突きつけるなよ、俺はメンタルが豆腐なんだ」

 

コメント

    :お前みたいな豆腐が居てたまるかボケ

    :心臓に剣山生えてんだろお前

    :ライバーで一番図太いって自覚して?

    :心臓にww剣山はヤバイww

 

「生えてねぇよ! 他の臓器ズタズタじゃねぇか!! あとユラちゃん? 爆笑してないで喋って? こいつらずっと俺のことイジる気だぞ」

「ふ……ふっ! ンふっ、……す、すみません……ふ、ふふっ……!」

 

コメント

    :ユラちゃんが楽しそうで私もニッコリ ¥5000

    :ヒビキに憧れてるとか言ってユラちゃん庇ったりせぇへんからな

    :元からリスナーなんだからそらそうよ

    :むしろユラちゃんもイジりコメントしてたまである

 

「え……ユラちゃんホント……? ユラちゃんも俺のこといじめるの……?」

「えっ!? いやそんなコメントしたこと……な、ない、なかっ、なかったんじゃないかなーって」

 

コメント

    :すごい葛藤しているように見えるが自白も同然である

    :嘘はつけないが誤魔化しはしたいという必死さ

    :ヒビキは媚びた声出すな

 

    :女性ファン的にはなかなか耳によろしくってよ ¥5000

    :ボイス販売ワンチャンあるってよww

    :俺からすると腹立つが、おにゃのこ的にはイケボなのかも知れない。俺からすると腹立つけど

 

    :大切なことなので()

    :キリちゃんコラボのRPとか声は悪くなかった

 

 アカン、第一回のお試し配信ってことで30分くらいに収めるつもりだったのに、どんどん時間が溶けてくんじゃが! ……まぁいいか、ユラちゃんも楽しそうだし、コメント欄も賑わっとる。ユラちゃんほとんど笑ってるだけだがな! それもボスの狙い通りかね……。

 

「ハイ! んじゃあそろそろ告知! 君たちもちついて! じゃねぇや落ち着いて!!」

 

コメント

    :餅ついて?

    :ぺったんぺったん

    :サッ。サッ

    :ぺったんぺったん!

    :こねこねこねこねこ猫

 

「いやもういいからそういう揚げ足取り。配信にも段取りってもんがあるんですわ。君ら自由人には無縁かも知れませんけど」

 

コメント

    :傷ついた;;

    :訴訟

    :ネタ振ったから乗ってやってんのになんだァ? てめェ……

    :はいキレた。一万人の視聴者がお前ん家向かったからな

 

「勝手に俺ん家を月見パーティ会場にしないでくれる? あい! ユラちゃん告知! ……ユラちゃん?」

「もち……ぶふっ! くっくっく……一万人で、つっ! 月見……んふっ、ふふ……っ!!」

 

コメント

    :ダメみたいですね

    :ユラちゃん……他ではまともなのに……

    :ヒビキが全部悪い

    :確かにそれですべてが片付く

 

「はーい体調がすぐれないユラちゃんに代わってお知らせ! えー僕らが所属するヴァーチャルシップですね! 四期生のデビューが決まりましたー!」

 

コメント

    :募集期間長かったね

    :三人だっけ?

    :またヒビキに虚無後輩が増えるのか

    :めでたい……めでたい? うん、ヒビキおめでとう! ¥5000

    :後輩おめー ¥2000

 

「スパチャどうもー。でも自分の中で消化しきってから投げて? とりあえず祝っとけ精神で投げられても受け取りづらいんだわ」

 

コメント

    :じゃあどうしろってんだよ!? ¥10000

    :スパチャに直接文句言うやつ初めて見たわw

    :キレながら赤スパ投げないでww

    :まぁまぁみんな餅つけよ

    :まだ月見画策してるヤツいて草

 

「せめて最後まで聞いてから投げろっつってんだよ!! 話は最後まで聞きなさいって習ったろ! アンダスタンッ!?」

「ぶふぅっ!! んぐっ……くふっ。ひ、ひーっ……!」

 

コメント

    :はぁい…… ¥4949

    :意地を感じるww

    :赤スパとケンカするライバーが居るらしいな

    :ユラたそはもうダメみたいですね

    :惜しい人を亡くした ¥2525

 

「んで! ご存知の通り三人の募集でしたが! 一人はなんと……男性です! 二人目の男性Vがヴァーチャルシップに加入しますー! これがタイトルの真相さァ! ヤッター!! オラ今だぞ。祝えや」

 

コメント

    :マジ!?

    :ワースゴーイ ¥10000

    :ヒビキについに実体のある後輩が……? ¥2000

    :めでたい……めでたい? うん、ヒビキおめでとう! ¥5000

    :勇気のあるやつが居たもんだ ¥8888

 

 んー……ヨシ! 少なくとも種まき(・・・)は問題なさげ!! あとは俺がまだ見ぬ後輩君と密に相談できれば大丈夫そうかな……。ちょいちょい心配そうなコメントも見えるが、スパチャで怒涛の肯定的イジりが発生してるからあまり目立っていない。

 

「ハイ皆さん、聞いてくれてありがとう。スパチャも……ねぇ、なんでこの期に及んで消化できてないヤツいんの? いいんだよ? もっと手放しに祝ってくれても」

 

コメント

    :多分お前のこと祝うってことに身体が拒否反応示してるんだわ ¥1000

    :G・Iクリアした時で何とかって感じだったよね ¥100

    :ヒビキくんのチャンネルリスナーさん暖かいっすね()

 

「っつーワケでね! 今回の『VS放送局』はここまでにします! お相手は暁ヒビキとォ!!」

「ひーっ、ひっひっひ……。す、すみまっ! んふっふっふ……」

「ひっひっひすみまんふっふっふさんでしたぁ! ではまた次回! ばーいばーーいっ!!」

 

コメント

    :リスナーにキレて配信閉じるとか許されざるぞ ¥5000

    :ユラちゃんwww

    :ヤケクソ挨拶やめろや!

 

    :ひっひっひすみまんふっふっふとかいうライバーが居るらしい

    :マ? チャンネル登録しなきゃ ¥10000

    :これはwwひどいwww

 

 こうして笑いに包まれたまま、第一回定期コラボ枠は終了した。これは動画編集がはかどるなぁ……。とりあえずこの配信の録画を字幕やらSEで面白おかしくし、チャンネルに投稿すればOKだ。

 

 おそらく事務所所属の男性Vが増えるという情報だけが独り歩きするだろうが、ソースが欲しい人はこの動画を見に来るはずだ。そこで俺とユラちゃんが情報を小出しにしつつ面白いトークをお届けできれば、界隈の目も柔らかくなっていくだろう、と、思われる。

 

 今回の放送をトークと言っていいのかは、甚だ疑問ではあるが。

 

「……ユラちゃん、配信終わったけど。大丈夫?」

「……………………しゅみましぇん……」

 

 うん、まぁカワイイし面白いからヨシ!

 



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【ヒビキとユラの】また戦うっぽい【VS放送局】②

「はいこんヒビキー、ということでね。二回目となりましたVS放送局、お送りするのは暁ヒビキとー?」

「……みなさんこんばんは。ヴァーチャルシップ所属のひっひっひすみまんふっふっふと申します……」

 

コメント

    :こんひっひっひ!

    :こんひっひっひー

    :マジでこれでやるのかw

 

    :事務所に説教されたんだっけ?

    :ユラちゃん全然喋ってなかったからねw

    :ひっひっひすみまんふっふっふさんだ間違えるな

 

「えーご存知の方もいらっしゃるみたいですけども。まぁ前回放送でお呼びしたユラちゃんの体調が引き続きよろしくないっつーことで、代打でひっひっひすみまんふっふっふさんに来ていただきました」

「こ、今回はしっかりお送りできるよう……」

 

「ひっひっひさん?」

「ぴぃっ!? い、いえしょの、ゆ、ユラさんの代わりを務められるよう頑張ります……!」

 

コメント

    :謎RP

    :ヒビひっひっひてぇてぇ ¥20000

    :どういうことなのw

    :マネージャーさんから説教食らって、反省のためにこの枠はひっひっひすみまんふっふっふとして活動するんだぞ

 

    :SNSの名前変わってたのそういうことかw

    :一瞬知らないアカかと思ってリムりそうになった

    :わかるマン

 

「前回も言ったと思いますが、この放送は基本雑談枠なんでね。今回は僕が好きなゲームについて話しつつね、ひっひっひさんと絡んでいこうと思いますよー」

 

コメント

    :なんでヒビキはよそ行きの話し方なの?

    :常識人RPですか? 破綻してますよ?

    :好きなゲームってどうせG・IMODだろ

 

「ロールプレイじゃねんだよ。常識人だっつの。それに、よそ行きも何もねぇ? 僕もひっひっひさんとは初コラボですから、探り探りな部分もありまして。あ、ところで皆さん知ってます? ひっひっひさんは、実は二期生なんですよ。僕の同期! いやー知らなかったなー、公式の紹介ページ見て初めて知りましたよー」

「あぃ……VS二期生のひっひっひすみまんふっふっふです……」

 

コメント

    :ヒビキに同期がいた!?

    :イマジナリ同期じゃなくついにホンモノが

    :つまり今まで避けられてたってことか……

 

    :公式見に行ったらマジで枠あったww

    :ユラたそのビジュアルまんまやんけ!!

    :よく見ろ、ちゃんと名札に名前書いてあるぞ

    :雑コラァ……

 

「はい、まぁそんな訳でして。今日は僕の大好きなG・IMODについてお話していきますよー! どうですかひっひっひさん、知ってます? G・IMOD」

「はいっ! ヒビキ先輩と言えばG・IMODみたいなとこありますから!」

 

「え? なんですか? 先輩?」

「あ……いぇ、えっと…………ひ、ヒビキくん……」

 

コメント

    :これはロールプレイ初心者

    :一瞬で化けの皮剥がれてリスナーに成り下がるww

    :後輩にくん付けを強要する男

    :ひっひっひすみまんふっふっふさんは同期のひっひっひすみまんふっふっふさんだからくん呼びは合法

    :他のライバーは違法みたいなww

 

「ひっひっひさんもゲーム自体は知ってるようですね! 実はあのMOD、ついにリスポーンが出来るようになるらしいんですよー。結構大規模にアプデするらしくて、僕みたいなファンは待ち遠しいんですよねー」

「わ、私もちらっと見ました! 最初に指定されるカードも、ワールドごと消さなくてもシャッフル出来るようになるんですよね?」

 

コメント

    :マジかよ

    :結構敷居さがるなぁ

    :ひっひっひさん呼びで腹筋鍛えられてるの僕だけ?ww

    :良い塩梅の指定が来るまでリセマラする必要がなくなるんですか!?

 

    :SSランクから逃げるな ¥10000

    :大天使の息吹とか扱いどうなるんだろね

    :話題にするってことはまた実況するんですよね!?

    :配信のタイトルでお察しよw

 

「そうなんですよ! まぁどっちもマルチ限定らしいんですけどね。今の仕様じゃPVPのハードルが高くて誰もやってくんないし、改善の要望も多かったからってことでして。作者さんもせっかく作ったのにソロ動画しか上がんないんじゃ寂しいでしょうからねー」

 

「ヒビキせ……ヒビキくんの配信見てると、死なないように行動するのが凄く大変そうに感じましたよ。時間もかかっちゃいますし……カードを集めるのに、ちょっと無茶できるようになったのは嬉しいですよねっ」

 

コメント

    :さすがよう見とる

    :ハードコアでも十分無茶なプレイしてませんか? 大丈夫ですか?

    :死ぬのが怖くて基地上空から飛び降りませんわな

 

「ハードコアはそもそもマルチ誘いづらかったからね、これから後輩が来るって時にこのアプデはマジで嬉しいんすよ……! ぜひとも一緒に遊んで欲しい」

「デビューまでもうすぐですからねっ。視聴者の皆さんも、良ければ四期生のみんなを応援してくださいね~」

 

コメント

    :どんな人なんやろね

    :ヒビキの言ってる後輩って一人だけだよなw

    :そらそうよ

    :後輩しかマルチ誘える相手がいないライバー

 

「とまぁこの辺で、告知させてもらいましょい! えー、僕が以前PVPコラボしましたサクラフィ所属の大島キリさんから、また勝負を挑まれまして! 再戦することになりましたー」

「楽しみですねっ!!」

 

コメント

    :ひっひっひさん完全にリスナー代表ですねw

    :おめー ¥10000

    :これはマジで楽しみだわ ¥5000

 

    :楽しみですね!!(迫真)

    :大胆に動けるようになるキリちゃんが有利なのか、変態プレイに拍車がかかる変態が有利になるのか

 

    :キリちゃんと変態のPVPコラボですかw?

    :ひらめいた

    :通報した

 

「てことで、ぶっちゃけもう告知はありません! 残りの時間は大島さんとバトるにあたってどう動くかとかをね、ひっひっひさんを交えて考えていこうかなと。ひっひっひさんはどう立ち回るのが良いと思いますか?」

 

「次のPVPがどういうルールになるのかによると思うんですけど……。やっぱり、最初に魔法都市マサドラに行けるかどうかで大きく変わりますよね? 相手のカードを呪文で奪ったりだとか……」

 

 そんな感じでひっひっひさんと喋りつつ、ちょこちょこ四期生の男性Vに触れ。んでもって、大島さんとのPVPコラボを企画として紹介していく。

 

 無事に配信を終えると、SNSでもコラボ楽しみーみたいなコメントが多くて一安心だ。今度も全力で勝ちに行きたいね!

 

 ちなみにこの配信後、VS公式ページの二期生からひっひっひさんの項目が消えました。んでもって、結局イマジナリ同期やんけと俺がイジられました。ユラちゃんの罰ゲームじゃなかったっけ……?

 



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Vの裏で:ちゃんと予習しましたか?

 

『待ってたわよこの時を……!』

「え、なんスか開口一番」

 

 G・IMODのPVPコラボが決まり、その打ち合わせってことで大島さんと通話を繋げると、急にそんなことを言われた。やる気満々っすね先輩……。

 

『分かってるわよねぇ!? 今度こそ! 間違いなく呪文(スペル)カードを使った勝負になるわ!! テンション上がりまくりよ!!』

「耳が早いなぁ」

 

 いろいろと追加要素やら既存のイベントが改変される大規模アプデ予定のG・IMODなのだが、作者さんがSNSで先行公開した情報によれば、呪文カードを唯一購入できる場所、魔法都市マサドラが必ずプレイヤーの初期スポーン(誕生)地点から最大拡張マップ一枚以内の土地に生成されるようになるらしいのだ。

 

 前のPVPじゃ時間との勝負かつ、もろもろの要素が完全にランダム生成だったこともあり、ただの先に取ったモン勝ちの対戦になったが。次こそ原作漫画のように、互いに熱いカードバトルが出来るようになるハズ! ってこってすね。

 

『フフン、この前のアーカイブ見させてもらったわ! まさか魔女の家にトラエモン獲得フラグがあるなんてね……。でも、その情報は攻略サイトなんかには無かったからどういうことなのか調べたの。そしたら海外サイトの情報らしいじゃない? アンタはそれを知ってて、アタシは知らなった……その差を埋めないわけないでしょ!?』

「つまり、今んとこ日本では出回ってない情報もしっかり拾ってると」

 

『そういうことっ! 翻訳サイトって神よね!!』

「たまに変なこと言い出すとこ除けばそうね」

 

 なるへそ、前回の勝負の反省として、より鮮度の高い情報も拾いに行ってたと。意識高いなぁ……。MODの作者さんは海外にお住まいの外国人なので、当然SNSの言語やらブログも外国語だ。そこもしっかり網羅してると。

 

『ちょっと何よ、テンション低くない? やる気あんの?』

「いや、こっちからしたら、なんでそんなに元気なの? って感じなんだけど。こちとら徹夜で予習してるのに」

『へっ? どういうことよ』

「どういうも何も、昨日先行パッチが公開されたばっかじゃないすか。通話繋げる前までずっとプレイしてたんで、正直眠いんすけど……」

 

 もしや、大島さんは長時間ゲームするとハイになってくるタイプか? 俺も多人数プレイとかだとそうだけど、一人だと普通に眠気がヤバイタイプだ。

 

と、思ったが。どうやら事情が違うらしい。

 

『はぁ!? えっ、ちょ……知らない! そんなのどこに書いてたのよ!?』

「え、いや。MOD配布ページの最新情報リンク先にあったけど……。あーそっか、ページの文章丸ごと翻訳にかけたのか。だったらリンクかどうかなんて分かんないよな……」

 

 サイトに入る前にリンク先ごと訳せば分かったんだろうが、翻訳サイト云々言ってるしページの文章全部コピーして、わざわざ翻訳サイトで和訳したんだろう。リンク文も"先行公開中"みたいに、URLまんまじゃなくてわざわざ文章に置き換えられてたし。分かりやすいページ作りをした作者さんとユーザーの切ないすれ違いである。

 

『じゃあなに、アンタもうアプデ版でプレイしてるの!?』

「全部の要素があるわけじゃないけど、まぁそっすね。だから、テンションは滅茶苦茶高いよ、その結果眠いだけで」

『はぁーーっ!? ずるいずるいずるい!!』

「子供か」

 

 マジで普段の配信とG・IMOD絡みの時とじゃ全然人が違うな大島さん……。アイドル路線ってのはブランディングでこっちが素なんだろうけどね、そう考えりゃあ嬉しい。向こうのファンもこういう姿が見たくて楽しみにしてくれてる人も居るっぽいし。

 

『くぅううう……。ね、ねぇ……パッチってどうやって使うの? アタシ、あんまりそういうの分からないのよ……。MOD入れる時だって、解説動画何回も見ながらやっと出来たくらいで……』

「えぇ? アプデ完了するのが明日の朝で、コラボは夜よ? 今からじゃ入れるのにも、それをプレイするのにも時間かかるし、あんま意味ないよ」

 

 今までMODの作者さんが告知した時間を超過したことは無いから、アプデ自体は間違いなく明日の朝に完了する。それまでにパッチ入れてソロプレイするってのはあまり現実的じゃない。そういう行為に慣れてないならなおさらだ。

 

『そんなぁ……。ど、どうすれば……』

 

 弱々しく漏らす大島さん。……まぁ、心情としては俺が卑怯だと言いたいが、情報戦と言ってしまえばそれまでだから強く出れんのだろう。ワカル。が、こうなってくると罪悪感が芽生えるのはこっちだ。ここは譲歩しようか……。

 

「んじゃあ、俺がパッチ触って得た情報は共有するよ。んで、コラボまで先行プレイはしないようにするってことで」

『えっ? いや悪いわよそんな……。それに、なんかハンデっぽいし』

「ずるいずるい言ってたのになんやねん? ま、その方が正々堂々のバトル感あるし、視聴者も盛り上がるでしょ」

『うー……分かった、じゃあ、それで。……ねぇ、何かお礼できることあったら言いなさいよ? こういうの、引きずりたくないのよ』

 

「好い人かよ。そうだなぁ……あっ。うちの事務所から男性Vがデビュー予定なの、知ってる?」

『ん? そうなの?』

 

「そうなの。それでさ、コラボ配信中にちょこっとそういう話振ったりするから、良さげな反応が欲しいんだよね。俺の立場的に、楽しみだねーとか。応援してるーとか、その程度で良いからさ」

『それくらい、別に言われなくてもするけど……。立場的にって、前言ってた男性がどうとかってこと?』

 

「そうそう。前のコラボもあって俺は割と受け入れてもらえて来てるからさ、後輩も無事にデビューできれば、きっといい流れになると思うんだよね、男性Vtuberって立ち位置がさ」

『ふーん……。アタシには、そういうのよく分からないけど。マネージャーも最初はアンタとのコラボは警戒してたし、そういうモンなのね……。分かった、できるだけ良い印象になるように頑張ってみる』

 

「ありがとう! 助かるよ……でも、あんま意識しなくても良いからね? その時だけ気をつけてくれれば」

『そうする。立ち絵はどうする? 前みたいにギャグっぽくするの?』

「一応、そうしてくれると有り難い」

『おっけ、マネージャーに相談しとく』

 

 ちなみに立ち絵だのギャグっぽいってのは、前のコラボでのサムネ画像、及び配信画面での俺と大島さんの絵面だ。ガチ恋勢の心情を察するに、そもそも大島さんと俺の2Dキャラが並んでるって絵面が嫌だろうからな。なもんで、以前の配信では画面左上に小さな丸枠を取り、学校の卒業写真で休んじゃった子、みたいな感じでポツンとヒビキの顔を載せてもらっていたのだ。

 

 PVP配信ということもあったが、大島さんのファンからの反応が良かったのはそういう配慮が実を結んでのことだと信じている。謙虚に行かんとね、謙虚に。

 

 っつーことで配信の段取りやらを話し合ったあと、先行パッチの体感を大島さんに共有。SNSで互いに告知してから通話を切り、念の為ボスにコラボの件をメールで報告した。

 

 そんで次にやることは一つ! もぅマジ無理……おやすみ!!

 




前話でちらっと出した大島キリの所属事務所の名前変えました。
雑につけた挙げ句作者が覚えられないという…


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