河童に紛れた磯女 (銀ちゃんというもの)
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本編
噂の妖怪は岩の上


鯖癌を自分がやりたい欲が爆発して書いたお話の一つ目。
続く気はしないけど、四話目くらいのまでは考えてあるのです。
ノリと勢いで書いただけなので短いですゆるちて。

性転換タグはサンラクくんが十割です。この二次創作の主人公ちゃんは真っ当な女の子よ。


 一人の男が岩肌が見える海岸を歩いている。

 装備に拳銃を持っているあたり、まともな人間には見えないが、ここがゲームの内ということを含めれば別段おかしなことは無い……かと思われる。しかし、男が今歩く土地はκ(カッパ)鯖。より正確に表せば、サバイバル・ガンマンというフルダイブVRのゲームのギリシャ文字サーバーが一つ、κ鯖である。つまり、ここにいるのは疑いようもない異常者だけだ。

 

 ただ、彼はκ鯖の河童(じゅうみん)ではない、『β民』と呼ばれるプレイヤーで、彼らは基本流浪の民だ。

 

 今朝、早朝とも呼べぬ日が登る寸前よりここにログインして、筏に乗ってサーバー間移動をしてきたそのわけとはこのκ鯖の海岸にあった。

 

 誰が言ったか、『κ鯖は河童のサーバーである』という言葉通り、水泳ガチ勢が揃った異色の仮想空間では、ある噂がある。

 それは、κ鯖のヨコヅナ程有名なわけでなく、それどころか風の噂とも呼べぬものから伝えられるあるプレイヤーの話。

 

 曰く、彼の者は岩の上で海を眺めている。

 曰く、呼びかけると振り返って、その血の引いた面を向けてくる。

 曰く、………………。

 

 そこまで思考をしたところで即座に男は携えた拳銃を構えた。

 

 眼前の岩の上、静かに佇む黒髪の女の影。

 

(……間違えねぇな。異様に長い黒髪に、被りもんだけ取った海女の装束……『磯女』だ……)

 

 どれ、磯女の逸話通り、(こえ)撃って(かけて)やろうかと照準を向けた……途端。

 

 磯女がぐるんっと男の方を振り向いた。

 些か、体調が悪そうな青白い顔に浮かぶ二つの瞳で男を凝視する。

 

 幾ら、異常者と名高いギリシャ文字サーバーの住人でも、これには一瞬怯えてしまう。

 だが、すぐに寒気を振り払って引き金を引こうと……気付けば、ぱららら、と軽快な音が海岸に響いた。

 いつの間にか磯女から無数の影が伸び、岩肌で跳ねるように男へ向かってくる。

 

 曰く、吸血の髪で襲ってくる。

 その意味を、吸血の髪が、乱列された岩を利用した跳弾の結果、即ち無数の銃弾だと気付いたのは、全身をその弾丸の先で刺されてからのことである。

 

 ……男が最後にその目で見たものは……蜂の巣にされた男を見て嗤う、正しく妖怪、磯女そのものだった。

 

 

 

 

 

 今日も今日とて、『毎朝数殺』のルーティーンをこなした私は岩肌から飛び降りる。

 ちなみに磯女の名前で呼ばれたから岩場にいる訳ではなく、私が元から岸と海の境界の岩場を狩場にしていたからこう呼ばれるようになったわけである。

 

 ふぅ……と伸びを済ませて、頬を叩いて気合いを入れる。既に朝日が登って時間が経過しているため、ログアウトまでに済ませる用事を素早くこなさなければならないのだ。

 

 即ち、死体漁り。

 

 これを一日数度しないと算数の時間に身が入らない不具合が体に起こる禁断症状を抱えてしまっている私は仕方なくしているのだ。

 私は何も悪くない。

 

 それにしても今のβ民さんはまだまだである、このギリシャ文字サーバーにおいて、いや、サバイバル・ガンマンというゲームにおいてプレイヤーを見たら既に撃っている、そういう状態でなければ上位勢には抵抗すらさせて貰えないのだ。私が彼がこちらに気付く前から気付いていたことにすら気付かずのんびりと照準を構える遅さ、伸び代はあると思うが、これからβ民として各地を巡るうちに相当な苦難に会うだろというのは、火を見るより明らか。

 ギリシャ文字の括りに入れられた奴らは私を除いて変人だらけ、さすがにその程度の苦難で折れることはないだろうが、是非ともこのゲームを辞めずに頑張っていただきたい。過疎るのは獲物が減って勘弁である。

 

 前にとっても愛らしい可愛い少女……そうだ、μ鯖のサンラクと言ったか。あの子に奇襲を仕掛けた時は、海辺が遠かったとはいえ、向こうの体力を恐らく半分も削れぬままにこっちが殺されてしまった。

 可愛らしくて強いとは、あの時は本当に興奮したものだ。彼女の頬に弾をぶち込んで肉をちぎった時は快楽すら怯えた。

 あれ以来、日にここの潜る時間を増やし、彼女の部位を壊す日を夢見ているのだ。

 勿論、学校を休むようなことはしていない。

 

 跳弾の制度が上がってきたとはいえ、創作のように跳ねて跳ねてという代物ではなく、平らな壁に斜めから入れて弾丸を壁沿いに滑らせるような、そんなことを繰り返して逃げ場を無くすための技術。

 まだまだヨコヅナさんに勝てない私も、ヨコヅナさんやサンラクちゃん……各サーバーの有名人からしたら私とさっきのβ民さんは同じように見えることだろう。

 もっともっと戦って学ばなければ。

 

 ああ、もう時間も時間だ。

 早く朝を食べなければ、小学校に遅れてしまう。

 

 そうして、ログアウトに必要な諸々を終えた私は孤島から消えたのだった。




河童に紛れた磯女……いや、作者が鯖癌に小学六年生サディズム少女を書いただけのお話。
一話目でありました。
続くとは言っていない。


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水陸両用ド畜生狩人

良く考えれば原作主人公様、つまりサンラクくんがいるから性転換タグが必要だったことを思い出す私。


 学校とは私にとってとても楽しい世界である。

 何より、簡単なのだ。

 

 連射したマシンガンの弾丸を全て跳弾で敵に当てる頭脳を持つ私には勉強など、同年代にマウント取る道具でしかない。

 常に敵に脳天をぶち抜かんとする弾丸を警戒する必要は微塵も存在しない。

 

 何より、周囲より大人びた私は同年代の少女によくかっこいいと褒められる。つまり彼女らは私へと寄ってくる。

 つまり天国の幕開けである。

 

 しかし、ロリコンとは言わせない。

 だって、小学生が小学生を好きになっても別にロリコンとは呼ばれないだろう。そういうことだ。

 そもそも、私が心から好くのは、あのサンラクという幼女アバターだけだ。

 この(へき)に目覚めさせた元凶でもあるあの子へ、いつかは沢山の銃弾でぶち抜く(愛を捧げる)のが目標である。だからここは天国であって、しかし至高天(エンピレオ)ではない。

 そう、地獄門の考える人も納得の非ロリコンの証明だろうと我ながら自負する。

 

 あの子との闘争が今の最たる楽しみだ。それを邪魔する者へはまさに、「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」を体現してやろう。この私を邪魔するものは一切の希望を捨てさせるのだ。地獄篇も真っ青な鯖癌クオリティで震え上がらせやる。

 

 だからこそ私は学校を終えると一番に帰宅する。

 友人を侍らす……もとい、友人と共に帰宅する中でも、彼女らには私が微妙に早歩きになっているのを悟らせず、微妙にペースをあげていくことで無意識下で早歩きを強制する技能は習得済みなのだ。これくらい朝飯前という訳だ。

 

 ねぇお嬢ちゃん達……と誘ってきた不審者は避けて、無理やり捕まえようとしてきた不審者は腕をひねって転がす。

 警察に通報する暇すら存在しやしない。

 

 友人らは驚愕を浮かべているが、すぐ沙綾ちゃんすごいと褒めてくれる。

 にやけ顔を誤魔化すために満面のドヤ顔を浮かべた私は決して悪くないだろう。

 何せ私を攫おうとしてきたそこに転がる不審者が悪いのだ。鯖癌経験者は恐らくそのほとんどが体の壊れやすい所、痛い所を熟知しているし、痛みを対象に齎す方法も知っている。さすがに筋力や速度はどうしようもないが、小手先の技術なら力をあまり必要としない我流護身術で十分である。

 

 そういえば、あの子……サンラクちゃんの中身はどんな人間だろうか。恐らく若い男性だと言うのは理解しているが女装が似合う外見はしているのだろうか。

 そんなことを考えながらも、話しかけてくる友人の声もきちんと理解して相槌を返す。

 

 不審者以外はいつも通りの帰り道。

 ただ、対面から歩いてきた男性がすれ違った瞬間、同族の香りがして思わず振り返る。

 すると向こうも同じようで、驚愕を浮かべたあと、一瞬だけにっと獰猛な笑みを浮かべた。きっと私も同じ表情をしたのだろう。「今は見逃してやる。孤島であったら殺してやるよ」と視線で会話した私は、宣戦布告が思った以上に嬉しく、何をしているのかと問うてくる友人に笑みを浮かべて振り返り、なんでもないと返し、また道を進み始めたのだ。

 

 自宅へと帰宅して、宿題は……問題集の分はほぼ最後までやっている。つまり、実質無いと同義だ。ノープロブレム。

 さあログインをしよう。

 

 

 

 水中を駆ける。

 敵を目で追う。

 殴り取っ組み合う。

 蹴り殺し合う。

 

 寄ってきた傷付いてなお巨大なピラニアを蹴って川の岸へ。

 相手も追順して来る中、水中では向こうのが早いため陸上は同時。

 

「やぁ、相も変わらず人の獲物を横取りするのが上手だなぁ……! 鯖癌初心者の頃は純粋だったのに成長したね! 本当、惚れ惚れするくらいクソみてぇな手腕だおめぇ!」

 

「るっせぇよ、そもそも私のこれは漁夫の利というものであって立派な頭脳戦だぁ! 勝負にくそもへったくれも何もねぇ! てか私が君の散った血液経口摂取する度に毎度ライオットブラッドの香りがするんだけど飲みすぎて(どたま)はっぴーになったんじゃないの? 思考が、短絡的だねぇ!」

 

 ただ獲物を横取りしようとしただけだと言うのに、まったく小さい男である。ムカついたので煽り返しつつ、発砲。

 

 両者、完全同時に撃鉄に弾かれた弾丸が空気を裂く。

 

 私の右腕が散弾で吹き飛び相手の太腿の肉がマシンガンで弾け飛ぶ。

 

「っぁ! はぁー? 何言ってんのこのリアル幼女磯女サマは?? ライオットブラッドは、カフェインはVR技能を向上させるんだよっ!! つーかおめぇこそ現実で飲んだはずのライオットブラッドの味を仮想空間の血液から知覚するとか合法落ちしてるんじゃねーの!?」

 

「はぁい機動力失ったハッピースウィミング野郎なんて敵じゃないんだよ、もうその足じゃ動けないよねぇあはははははっざまぁみろ、小学生をカフェイン中毒かのように言いおった天罰だよ、つか、『シュンケル〜ライオットブラッドを添えて〜』の何が悪いんじゃあ!! ついでに幼女磯女って文字で起こすと女の字が多すぎんだよ!! …………あっちょっと負けを認めて介錯されろ! このふぁっきんくそエロガッパっ!!」

 

「シュークリーム×ライオットブラッドとかそれ相当ヘビ……あべしっ!!」

 

 足が動かなくなっても執念で腕を使ってこちらに迫ってくる敵を、向こうの銃口の先に移動しないように口撃を加える。そしてのしかかってその首元を私の歯で掻っ切ってやった。胴の捻りと、腕の動きで迫ってくる中々にホラーな肉塊だった。

 ちなみにシュンケル〜ライオットブラッドを添えて〜とはシュンケルのユ〇ケルをライオットブラッドに置き換える秘儀のことである。

 

 ふぅ……と争いの余韻に浸って、懐から取り出した回復アイテム(煙草)を吸う。

 仕事を終えたあとの一服は最高である。なお私は小学生。

 

 すると、継続ダメージで力尽きた巨大ピラニアが川に浮き上がってくる。

 おお、今回はあのプレイヤー……プレイヤーネームはビックリマークと言ったか、彼が意外と手強かった為に重症のまま逃げられたかと思っていたのだ。無事討伐できていたようで満足である。

 

「漁夫の利成功っ!」

 

 そう言って、今度は視線を感じていた森の方へ単発発射、こちらが気付いていないと思っている大型生物の眼球を貫通させて脳へ届かせ即死させる。

 久々の大量だ。本日は大収穫である。

 

 生憎私には水中戦で巨大ピラニアにも、巨大ピラニアに勝つようなやつに勝てる水泳能力持っちゃいない。

κ()()()()()()泳ぐ能力が底辺の方である私は、巨大ピラニアを狩る時は態々巨大ピラニア狩りをしている河童どもをハッピーセットの玩具の如く、疲弊した巨大ピラニアごと漁夫の利をしなければならないのだ。そのための今回の狩であったりする。

 

 κ鯖で水中では勝てない私、そこで思いついたのは地上戦と水中戦の両立である。

 元々私は、よくいえば水陸両用、悪くいえば器用貧乏の水陸対応方。

 どちらかの戦場で戦えば、どちらかに特化したプレイヤーには負けてしまう私である。

 しかし、いや、だからこそ、地と水の境界線において私のこれは真価を発揮する。

 水の抵抗に慣れない地上戦特化共に対して浅い河原は敵方の移動速度低下を強制し。

 逆に手の隙に水掻きの膜を張りそうなほど泳ぎ続けるクレイジーでマッドなスイマー共は泳ぎ過ぎて地上戦の立ち回りを私以上に理解していない。

 故にこそ、地と水の境界線、岩石はびこる土地の地に足つけた水上が私の狩場なのだ。

 

「だから、私の餌場となり得る、付近にバランスの取りにくい陸地がある川の中でふやけてたのが悪いのだ!」

 

 自己正当化完了である。

 

 早速と、川に流されないうちに巨大ピラニアの回収に行こうとして……。

 

「あぐっ!?」

 

 頭に走る激痛と共に視界がフェードアウトした。つまり、何者かに気付かぬうちにキルされたのだ。

 

 やはりこの世界は難しい。

 これだからこそ、この孤島は愉快なのだ。

 簡単で楽しい現実も、複雑で難しい仮想現実も、現と夢の境界を取り払って私は二つの世界が大好きなのだ。




鯖癌に頭を侵された小学生なのか、鯖癌のギリシャ文字サーバーに入れられるほど元から異質だった小学生なのか。


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暗殺者と河童による両者の磔祭開催

面白い文章はどうやって書くものなのだろうか……。

元々お話を考えていたのは次の話かその次くらいまでなので、そこら辺をきちっとかけたらお話を締めて完結にして、その後たまに番外編を出すような形になると思います。


「あーあ……気配すら気付けなかった」

 

 完璧に勝利後の油断である。

 恐らく私の頭をぶち抜いた弾丸の持ち主は隙を狙ってきていた。

 何はともあれコロコロされちゃった訳である。

 これは勿論向こうもコロコロされてもいい覚悟ができているということであり、久しぶりの大漁で気分有頂天から地球投げさせられた私の恨みは深い。

 

 ふぁっきんアホカッパ、生かしてはおけぬ。

 ならばやつが逃げたとてどうせ追いついて見せようぞ、どうせ追いつくのだから準備は素早くなくてもいいが、気分が早く殺しに行こうぜと喚いているので素早く準備をこなさなければならないのだ。本能に躊躇いなく身を任せることが出来るのがこのギリシャ文字サーバーで生き残る最低条件である。

 

 ちなみに、いつか追いつくというのは、正確に言えば、手当り次第殺したらいつか殺せるよねということだ、あったりめえだ、暗殺者の顔なんざ見てはいないから元々探しようがない。

 無実のκ島の皆には申し訳ないが、これはヤツが私の前に現れず、顔を出さなかったが故の結果なので銃口を私に向けるのはよして欲しい。

 

「マシンガンよーし……拳銃よーし……残弾よーし……銃身よーし……酒and煙草よーし……」

 

 持ち物の指差し確認は何よりも重要なことである。

 ハジキに回復アイテム、おっと、ナイフを忘れるところだった。危ない危ない。

 それにしてもこのナイフもだいぶ古くなってきた、いっちょ今度ι(イオタ)鯖からワスプナイフでも強だ……頂きに参ってくるべきだろうか。

 

 まあ、今はいい。

 

「役者は私と河童共、舞台は孤島κ鯖、さてこれより作戦名『恨みはらさでおくべきか』を開始する!!」

 

 景気づけに大声で叫びながら川沿いにプレイヤーを探し始めた。

 待ってろ直ぐに心臓ぶち抜いてやる。

 

 

 

 

 

 おかしい……さっきから陸地からの奇襲が多発している。

 水泳ガチ勢のマッドスイマー共は水中をこよなく愛するはずだと言うのに、である。

 

 巧妙に隠れた暗殺者が迫ってくるのに気付いた私は、そのタイミングでナイフを振り抜き、激突。ナイフの小競り合いが起こる。

 

 即座に左で持った銃の照準を構えて相手の胴体に風穴を空ける。

 苦し紛れに敵が発砲した弾が私の胸部を掠めていく。

 このような瞬間ほど、キャラクタクリエイト時に見栄を張って胸を盛らなくて良かったと安堵することは無い。

 まぁ、そもそも脂肪ぶら下げてたら、接近戦、遠距離戦どちらで考えても邪魔でしたかないのだ。後悔は微塵も……微塵も……。

 

「シィッ」

 

「だーっくっそ人が邪念振り払おうとしてるってのに!!」

 

 胴の傷など知ったことではないと地を蹴って拳をあてに来る敵に、腕をクロスして防ぐ。

 そこから即座に銃を手放しながら半歩下がって相手に構えた拳を……。

 

「っ!? ……くぁっ!!」

 

 川に向けて跳躍、拳をフェイクに銃を放とうとしたその姿が見えたからこそのギリギリで間に合った緊急回避。

 銃弾が体を掠めて一部抉っていくが、そんなことは大した問題にはならない。

 

 潜る、潜る。

 

 こちとら底辺であろうとκ鯖の住民である。水中にさえ逃げ込めば、水中では敵わないことを理解している他鯖の連中は追って来れないのだ。

 そう、他鯖の連中。

 拳を叩き込もうとして見えた顔、おかしいと思ったんだ。見覚えが無さすぎる。

 あれは他鯖の奴だ。……いつの間にサーバー侵攻を受けていたのか、推測であのプレイヤーの所属であろうサーバー候補をあげていく。

 

 γ(ガンマ)φ(ファイ)、……奴らは先程の戦闘から有り得ない。

 χ(カイ)鯖……の住人なんて見た事がないので即除外。

 ε(イプシロン)υ(ユプシロン)……あいつらはガチ戦争の真っ最中なので無関係……あーもう鯖特定が面倒になって来てしまった。

 もう予定通りこの島にいる奴ら皆殺しで万事解決だ。

 

 そう水から出ようとして……金の髪を揺らす幼女を、見た。

 

 ……。

 ………………。

 ………………………………。

 

「……? …………!!」

 

 脳が理解するのに三十秒もかかってしまうほど、私の頭に驚愕と歓喜の二単語が叩き付けられたのだ。

 

 おーけーおーけーおーけー……うん、対象推測、過去に出会ったプレイヤーサンラクの後ろ姿と極めて類似……あの生粋の暗殺者は姿を消したが確定だーね。つまり我が敵はμ(ミュー)鯖、さっきのはサンラクちゃん。

 

 歓喜に染った私の頭にあるのは、好機に対する喜びである。

 復讐対象の特定が終わった? そんなこったどうでもいい。

 祭りだ。リベンジマッチである。

 

 μの襲撃が意味することとはサンラクとの再戦であり我が望む、最高の楽しみの到来だ。

 ああ、待ちに待った私の季節。祭囃子に誘われるままに、戦い(まつり)に参加しようではないか。

 なあに、銃弾(こづかい)は懐に大量に入っている。

 

 さてさて初めは何をしようか、そうだ、そうである。

 初めはたくさんの木々(やたい)に隠されたサンラク(しゃてき)を探しに行こう。

 

 コルク銃が当たったごときで泣き顔晒すんじゃない、射的のおっちゃん。

 

 

 

 

 

「あはははははっ!! サンラクちゃんどこだい出ておいで、でないと目玉をほじくるぞ! 出てきたら腕を噛みちぎってあげるよ、さあおいで! come(かむ)come here(かむ、ひあー)!!come(噛む)だけにねぇあははっ!!」

 

 鯖癌に住まう奴らはだいたいが戦闘狂……戦闘民族である。

 なので大声をあげて自分の位置を知らしめることで他を呼び、さらに名指しすることで挑発された人間を呼ぶ。

 そしてここはκ鯖、サーバー間の戦争において一時的に共同戦線を組んだ彼らは水中の民、そろそろカッパじゃなくて深き者共にでもなれそうなほど水に生きている。あいつら、水出たら乾燥して死ぬんじゃないかなと心配してしまう程にヘビーなスイマーな奴らだ。

 そのため、それと争うμ鯖の暗殺者共は自然と水辺付近を探索する。

 だからこそ水辺を爆走して大声を出せば自然と集まってくるという訳だ。

 

 迫ってきた気配に急停止すると鼻先を弾が掠めて飛んでいく。

 どうやら右に誰かいるらしいと判断した私は、敵の位置に当たりを付けて木々を盾に迫っていく。

 暗殺者の顔が覗ける。

 黒髪の男、ちっハズレである。

 

「はっはーっ! なんの罪もねぇが死んでくれぇ!」

 

「そっちこそっ!」

 

 お互い爽やかな挨拶を交わして即戦闘、危うく咥えた煙草を落としそうになるが、対処している隙は作れない。

 

 左足を下げて当たり判定を細くして弾を避けつつ、癖のある拳銃を発砲、そして先を見越して後退、回避。

 どうやら私は強いのと当たってしまったようだ。

 

 しゃがんで踏み込み一直線に男へ迫る。

 勿論格好の餌食なので左へ僅かにズレる。すると予想通り放たれた弾丸が右頬を掠めて背後へ消える。

 

「しゃぁらぁっ!!」

 

 顔面へ向けたナイフの投擲、本能的に目を瞑った奴の隙を縫うように拳銃を撃つ、撃つ。

 一瞬の隙の影響で左腕を完全に破壊された男は、さすが鯖癌と言うべきか、痛みなど楽しみの一つとして直ぐに私の対処をしようと腕を動かす。が、私のが上手であった。

 

「じゃぁねぇー」

 

 一足早く喉元にナイフを突き付けた私はそれを裂いて勝利をもぎ取る。

 そう、何も所持したナイフは投げたものだけでは無いのだ。予備に二、三個持っている。不意打ちにも対応してくるデタラメな強さを持った上位陣なら余裕で対応してくるけどこの程度ならまだ有効な手段だ。

 要約すると私の作戦勝ちだ。伊達に実年齢以上の頭脳を持っちゃいない。

 私の十二歳ブレインはすごいのだ。

 

 兎にも角にも、こんなところで止まっている暇はない、落とした物を拾って即、捜索再開だ。

 

 

 

 

 

「かはっ……ぁ……サンラクさん、この弾丸でぶち抜かれてくれないかなぁ……!」

 

 暗殺者共殺し殺され時間を数えるのすらやめた。

 だが、だが、そんなことはどうでもいい。

「やっとの思いでサンラクに会えた」という一文のやっとの思いで……などどうだっていいのだ。

 ただ、目の前に、彼女が、サンラクが立っている。この事実さえあれば過程など、なんだっていい、どうでもいい。

 私とサンラクがこの場にいる、それ以外に何が必要というのだ。

 

「そんなことより、マグロの解体ショー開催されんだけど……今から付き合ってくんね? 会場はこの場所、解体人は俺、マグロはお前だ……っ!」

 

「解体ショーより踊りが好みかな、楽しまさせてね……!」

 

 にっと獣のような相手を見定める笑みを浮かべる私達。

 きっとサンラクちゃんも、楽しみで楽しくて、これからの殺し合いが一秒一瞬待ち遠しいのだろう。

 

 そして、互いに歓喜に包まれて、戦いの火蓋が切って落とされた。




何だこの十二歳口悪すぎやしないか。


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愛しい少女と共に

 何分経ったか、私はもう横っ腹に大きな切り口が開いているし、足の指の数も数本減っている。……いや、今ちょうど左腕を飛ばされたから左腕欠損も追加か。

 

 指という、無ければそれだけで歩行が困難になるものに、普段はあるはずの左腕も消えてバランスが悪すぎる。結果、普段無意識にバランスをとるものを、意識的にしなければ今にも倒れてしまいそうだ。

 

 対してサンラクちゃんはさっき胸を殴られただけ。ほぼ無傷である。

 

 このゲームの上位陣というものはこういうものだ。

 そもそも、私以外変人揃いのギリシャ文字サーバー民の中でもダントツにわけがわからない存在が彼ら。

 このゲームにかける熱が違いすぎる。

 

 彼女は依然として余裕を持って行動をしており、煽りもしっかりと飛ばしてくる。きっといつでも私を仕留められるのだろう、煽りを混じえてナイフと拳銃で少しずつ嬲ってくる。そういう趣味なのか、なにか目的があるのかは甚だ疑問ではあるが、なんかこう、愛しい相手にそういう扱いを受けるとゾクゾク来るものがある。痛めつけられる度、つま先から脳天へ駆け抜ける何かが……いや、まてまて、待て、ウェイトプリーズ。妙な扉を開けゴマ(オープン・セサミー)しそうになった危ない危ない本当に危なかった。

 四十人の盗賊の財宝達が被虐趣味とはアリババも困惑案件である。

 

 兎にも角にも彼女は余裕を持っているのに対して、私の勝ち筋はあまりにも少ない。

 水も、武器も、地形も、何もかもがこの森林では私の味方をしていない。

 土地が味方していないのなら如何にすればよろしいか、簡単だ、別の土地へ移動すればいい。

 だからこそ私は彼女を誘導しなければならないのだ、バレないように、気付かれぬように、気取られぬように。

 

 接近戦が不利になるというのに彼女に近付いて、自分が少し後退していると錯覚させながら、ナイフと銃身で打ち合って撃ち合って殴りあって。

 さながら仲良く踊る男女の様に、いやこの場合は女同士での踊りだろうか、いや、サンラクちゃんのリアル性別は恐らく男だ。じゃあ、男女で合っているか。そしてついでに、リアルのサンラクちゃんを認めるならば、私は百合では無いという免罪符になろう、例え惚れたのが目の前の幼女(アバター)であったとしても。違うのである。故に決して私は変人ではない。

 以上自己正当化完了。

 

「ほらもっと、もっと踊り狂おうよ……銃なんか捨ててさぁ! いっぱいいーっぱい、あつくあつーく朝まで激しく、踊ろうぜ!」

 

「朝までって現在時刻まだ午後七時にもなってないことに気付いた方がいいんじゃないか九州の妖怪(いそおんな)さんよ……血の吸いすぎで酔ってるんじゃないか? 酔ってるついでに俺が踊るとは言っていないことも忘れるとは相当だな、明日は二日酔いだぞリアル幼女っ……!!」

 

「ああ、そっかまだ踊りを受けてくれてなかったのか!! その割には楽しく踊り合っててくれてたけどねぇ……会えてここは外見年齢が年上として、相応の態度をとってあげるよ……」

 

 そう言って私は一歩下がり、そっと、さながらエスコートするように手を差し出す。

 

私と一緒に殺し踊り合いませんか(Shall we dance)?」

 

いいとも(of course)……だけど、知ってるか?」

 

「……?」

 

 私の手に手を重ねた彼女は、銃を構えることも無く聞いてくる。

 一体私は何を忘れているのだろうかと、少し首を傾げた。

 

「華々しいダンスパーティーに参加する暗殺者には、必ず標的がいるものだろ? そして贈り物(サプライズ)もセットだ」

 

 その言葉と共にあわせた手の平に小さな痛みとそこを起点に痺れが回る。

 

「……っ!」

 

 思わず一気に身を引いて手を覗くとそこには、奥深くに刺さった一本の針があった。痛みは大して感じない所を見るに。

 

「……ははっ麻痺毒か! 物騒で素敵なサプライズプレゼントをありがとう、お返しに私も麻痺をプレゼントしてあげる、よっ!」

 

 私の血液が付着した毒針を引き抜いて投擲、しかし麻痺で鈍った体で避けられて、かすりもせずに、彼女の後ろへ消えていくだけだ。

 

「……もー女の子からのプレゼントを受け取らないとかいけず、でもまあ、小夜曲をBGMに踊ってくれてるからいいよ!!」

 

「どちらかってっと、これは激しいポップスじゃねぇかな!」

 

 本当によく言う、手加減してると言うのに激しいポップスと表現するとはなんともこちらの決死さを理解していらっしゃる。愛しい人のそんなところも好きではあるが、切り刻む前にこちらが料理されてしまいそうだ。

 

 しかしまた、ハンデが増えてしまった。明らかに相手のが強いのに、弱い方がハンデを背負うとはこれ如何に。

 

 仕方ない、バレることを覚悟で一気に後退するしかないかと、足に力を入れて一気に後退しつつ拳銃を乱射。

 カチンカチンと引き金が虚しい音を響かせるまで放って、回転式の薬室事交換、再度放つ。

 

 彼女は一瞬今までとは違った稚拙な動きに一瞬戸惑いを見せて、納得したように私の策略に乗ってきた。

 深い笑みを浮かべて、その策で殺せるものなら殺してみろ、誘導しきれるならして見せろと。

 その挑戦、受けて立つ。

 

「ははっ……!」

 

 幸い彼女は私の目標の場所が水辺の岩場かそれに準ずる所だと思ってることだろう。

 だが、違う、違うのだ。

 実はもう目前の森の中だ。

 

 脚に力を入れて脚力のままに弾けて勢いよく後退。

 背後の少し窪んだ土地に、予想する所定の位置に私は立てた。

 

 彼女が銃を構えるが意に返さず私は適当な場所にナイフを投げる。

 すると、ツタにカモフラージュされていた縄が切れて彼女の上から石の礫が降り注ぐ。

 

「なっ……チィ!!」

 

 少し驚きはしたが、直ぐに銃を下ろして前進したあたり見事である。勘が冴え渡っていると言うべきか、なにも石礫だけがトラップではないことに、ここが目的の場所だということに素早く気付いてからの反応が素晴らしい。

 彼女が前後左右どこへ逃れても罠は仕掛けられている。だからこそ見えていない方に行くのは悪手だ。故に前に来る。もっと危険な罠があると勘が叫んでいても。

 ……もしかしたら、前に来たのは、策で殺して見せろといった手前、それを前に下がるのはという矜持もあるのかもしれない。

 

 何はともあれ、発火寸前の焚き火に虫が飛び込んできてくれたのだ。嬉しい限りである。

 そうして私はある一つの紐を切った。

 

 鳴り響く破裂音。

 

 それはサンラクちゃんのちょうど真下から発生したもので、仕掛けられた石と共に土砂が飛ぶ。

 つまり、罠の起動先は爆弾である。

 

 即座に下がってに後退した彼女は一体どんな反射神経をしているのか理解できないが、やっとこさで傷を付けられたのだ。しかも足に。この程度で彼女が止まるとは微塵も思わないが、少しは行動が阻害されるはずである。

 

「ん? これだけか? いやもっとあんだろ、顔が喜色よりも、まだ楽しみを待つ子供の顔をしてるぜ?」

 

「ははっ分かっちゃう? 分かっちゃうかぁ……ねーえ、これ、どうやって逃げる?」

 

 どのように逃げるのか、私は彼女がこれから()()攻撃を避けることを微塵も疑わない発言をする。

 どどどど、と轟音を立てて傾斜が上の方、山の方から轟音が迫ってきた。

 

「…………は?」

 

 さすがの彼女も動きが止まる。

 そうだ、そりゃそうだ。

 

 まさかこの地面の窪み凹みが人工的にできたもので、しかもそれが濁流を、決壊した湖の鉄砲水に指揮性を持たせるものだなんて、さっきの爆発が、湖の壁を壊す爆弾の音を誤魔化すためのものだなんてさすがに思いもよらなかっただろう。

 

「はははっ!」

 

 予定される川幅は広い、だが、彼女は、やっぱりいつも予想外の楽しいことをしてくれる。

 

 彼女も同じく取り出したのは爆弾だ。何の変哲もない、ただ爆風を巻き起こすことを目的としたような。

 

「てやぁぁあああああ……っ!!」

 

 勢いよく投擲されたそれが私との間で破裂する。

 強力な強さのそれに思わず目を閉じる。そして私は指揮性を持たない全方位へ広がる爆風に吹き飛ばされて幸いにも川の岸となる予定の……いや、もう濁流が流れているから、ここは正しく岸だ、に吹き飛ばされる。

 

「うっせやろ?」

 

 爆風に乗って逃げる。

 それを正しくそのままの意味で実行する人間なんてそうそういやしないだろう。かくいう私も、こんなことは流石の彼女もしやしないだろうという予想の上に立てた作戦が無数に存在する。

 それが一気に瓦解した……だと言うのに嬉しいのは、何故かはわかりきっている。

 だが、まあ、こんな回避手段、彼女も一生でもう使う機会など滅多にないだろう。何故なら、あれは、前、どっかのサーバーの有名人と彼女が戦っていた時に見た異常な判断能力。一回しか見た事がないが、恐らく、アクション映画とかのゾーンとかいうやつである。思考の超加速とでも言おうか。そこから最適解を瞬間的に導き出して意図的に行動している絶技。

 

 私の総被害の確認だ。

 爆風で吹き飛ばされて、残っていた右腕には確実にヒビが入った。傷もまた増えている今度は深いものも沢山だ。だが、それだけだ。それだけである。

 損壊は異様に少ないが、受け身と運が味方してくれたのか。

 まあいいか、関係無い。

 決着を、彼岸にいる彼女へ決着を付けに行かねば。

 

 爆破したのは小さな湖、もう鉄砲水も収まって勢いを弱めてきている。これくらいなら、私でも、κ(カッパ)鯖の民なら渡れるレベルだ。

 ほぼ両腕使い物にならないレベルだが行けるという確信を持って川を渡る。膝まで届く強めの流れに逆らわず、斜め移動で、ゆっくりゆっくり向こうの攻撃を警戒しながら。

 

 何も無く無事に渡り切ってしまった。

 彼女が自分の回避で死んだなどとは考えられないが何かあったのだろうか。

 とにかく早く事実を確認せねば。

 

 ブレる重心を制御して前へ前へ、彼女が降り立ったであろうで、それを見た。

 

「……百舌の早贄……?」

 

「うん」

 

 見つけた、見つけてしまったのは、浮き飛ばされた(回避した)先で左腕を木の枝で貫かれ、ぶら下がる愛しい少女の姿である。

 

 比較的低い、私が手を伸ばせば銃口を額に当てられそうな高さだ。

 私は勝ち誇った笑みを浮かべる。彼女は悔しそうに顔を歪めている。

 

 これは、もしや。

 

「これは……もしかして? どうだった? 私の踊りは……」

 

「踊りの相手のミスを狙って足技してくるのを評価しろというのは酷だと思わない? ……まあ、それでも評価しろって言うなら……そうだな」

 

 すっと先程までの悔しそうな表情を、飛びっきりの笑みに変えて彼女は、サンラクちゃんは言った。

 

今後に期待(まだまだ)ってところだな」

 

 その言葉と共に本日三度目の大きな破裂音。

 背後からの爆風と激痛。

 ああ、ああ、なるほどなるほど。

 そうだ、確かにそうだ。なぜ私は、あの場面、あの時、回避に爆風を使った彼女が、まだ爆弾を所持しているという可能性を考えなかったのか。

 

 金属片を含んだ、殺生性の高いものを所持している可能性を考えなかったのか。

 

「盾役ありがとう!」

 

 にっこり笑顔で彼女は笑う。

 皮肉にも、彼女を仕留めるため、相当近くまで迫っていた私は、私の背後の爆弾の盾となり、おかげで彼女には一切被害が及んでいない。

 

 枝に刺された状態の彼女は爆弾を投げる仕草をしていなかったから恐らく遅延を含んだ爆弾だろうか、いやいつ設置したのか、そんな推測も最早意味を成さない。

 例の爆発で足も腕もやられた。生えていても動かせやしない。つまりただの無用の産物である。

 

 対して彼女はわざと枝に刺さっていたのか、もちろん左腕は使い物にならないが、枝からはいとも容易く抜け出て見せる。

 

 これはもう、なんというべきか。

 

「あーあ、完敗だなぁ……」

 

 欲をいえばもっと踊りたかったが、もう無理だ。この戦いは諦めるしかないだろう。

 

 だが、これはゲームである。リスポーンすればまた何度でも争える。その時を楽しみに、また腕を磨こう。今度こそ、殺せるように。

 手加減なしの彼女との闘争ができるように。

 

「楽しい踊りももう終わりかぁ……うー殺せー……」

 

「ん? いや、踊りは終わったけどまだ用事が残ってるだろ?」

 

「え?」

 

 どういうことだろうか。一個一個思考を巡らせて過去を振り返る。

 なにか、なにかあっただろうか。

 

「初めにさ……マグロ解体ショーって言ったじゃん」

 

「あっ……え?」

 

 そっと、正座をした彼女が私の頭を膝に載せる。

 うん……これって。

 

「膝、膝まく……ら!?」

 

 そんな私の同様も無視して、彼女はゆるりと口を開いた。

 どういうことなのか。わけがわからないよという白い生物が目に浮かぶ。

 子守唄を、眠れ、眠れと、男性特有の変声期の高い声で、なんとも言えない可愛らしい声で、幼い少女が歌う。唄う。

 

 これはこれはこれはバイノーラルというやつであるのでは。しかも、生声である。ではなぜ。

 答えは簡単。

 彼女が取り出したナイフにある。

 同時に彼女が私に手加減を加えていた理由も理解した。

 全てはこれのためだけであった。

 

 うーん……なんだろうか。

 生で子守唄を聞きながら解体されるこの状況はどう形容すべきか。

 各所が激痛に叫びながらも、しかし幸せボイスに癒される。

 どうしてくれようぞ。

 まあ、心から彼女が楽しそうであるから良いか。

 これはなんとも、なんか……変な扉を開いて……。

 

 

 

 

 

 しばらくして、やっと体力を全損した私がリスポーン後、目覚めた感情と性癖に困惑する。

 

 あっれぇ……私はマゾではなかったと思うんだけどなぁ……と。




一応この話はこれで完結です。
四話で完結です。だってこれ以上、本編を思いつかないんだもん。
多分番外編は書きます。

最後の最後でマゾ属性付与されたサディストリアル幼女主人公ェ……。


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番外編
あの日の踊りをもう一度


シャンフロ編である。
それにしてもディプスロさんの口調くそ難くないですかねぇ!?


 サンラクはある目的地へ向けて歩いていた。

 

 もちろん、そこはゲームの中であり、ここは孤島(鯖癌)とは遠く、しかしかつての仲間もいる、そんなシャングリラ・フロンティアというタイトルを掲げる一大ゲームである。

 

 かつての孤島ではプレイヤーの良心の呵責を利用するために愛らしい幼女のアバターを用いていたが、この五世紀は先を行くゲームクオリティを誇るゲームでは鳥面を被り、上半身全裸に刺青のような傷を刻み、リアル寄りの可愛らしい喋る兎を連れた男という特徴的すぎる変態、もとい奇人のアバターを操る。

 

 そんな彼の歩く土地は旧大陸。

 数日前のこと、何故か変態(ディープスローター)から呼び出し状(手紙)を貰ったために、本来なら無視したくてたまらないが無視したらしたであとが面倒だと勘が叫ぶので、少し前にたまたま会いそのまま同行する流れとなったサイガ-0(ゼロ)を連れて向かっているのだ。

 

 正直、あの変態の元へサイガ-0(レイ氏)を連れていくのは忍びないという感情が浮かんでくるのも仕方ないことである。

 

 呼び出しの先は、新大陸へ行く前のこと、レイ氏のリアルの実の姉サイガ-100らと闘った闘技場だ。もうこの時点で嫌な予感しかしないと今すぐ回れ右を決めたくなったサンラクだが、それを考えている間に辿り着いてしまった。

 

 ひょこっと闘技場を覗き込めば、サンラクも貪る大赤依の時に嫌という程に記憶させられたこのゲームにおける変態(ディープスローター)の姿。今一瞬、彼女とサンラクの目が合った気もしたが、そんなことは無かったと頭を誤魔化す。

 

 誤魔化し、少し正常になった頭で認識したディープスローターの隣に佇む少女……いや、幼女の姿を見て一瞬動きが止まる。

 

「……どうかしたんですか?」

 

「ああ、いや、なんでもないよ」

 

 突然動きを止めたサンラクは心配そうなサイガ-0の言葉に再び動きを取り戻した。

 

 その幼女は、髪先にかけて黄色く変色していく長い緑髪を揺らして興奮したようにディープスローターへ話しかけている。

 声を聞く限り、ディープスローターのようなリアル技能で声色を変えていない限り、本当に(リアルでも)女性、それもまだサンラクより年下のようで、その子供がディープスローターと共にいるということに不安を怯える。

 主に、奴のせいで妙な影響を受けていないかと、さすがにそこまでしないと信じたくはあるが、ディープスローターは下ネタで一個のゲーム(スペル・クリエイション・オンライン)を滅ぼした元凶である。ディープスローターという人物を知った上で、ミリ単位でも不安を覚えないのは相当な変態か、スペクリのディープスローター側の人間(変態)か、どちらにせよ変態である。

 

 何はともあれ、あの二人の元へと行かなければことは始まらないと思考を切り上げた。

 

 

 

「遅いぜサンラクくぅん。焦らしプレイもいいけどおねーさんは、もっと求め合うのがいいかなぁ?」

 

 サンラクは理性を総動員で、文句を垂れようとする口を抑える。

 こいつに言葉を返していては切りがない、一体この下ネタ知識はどこから湧いて溢れ出てくるのかなどという疑問はもうスペクリ(閉鎖されたサーバー)に置いてきている。

 

「……で、なんの用だ?」

 

「まぁ待ち給えよサンラクくぅん、久しぶりの再会だろぅ? いきなりじゃなくて前座から始めようぜぇ?」

 

「……帰る」

 

「ちょいと待ってくれよ、今回君に用があるのは私じゃないんだぜ?」

 

 怒涛の下ネタによるサイガ-0への申し訳ないさと、サンラクの気分により、割と本気で帰還を宣言し、振り返ろうとしたサンラクが止まる。

 

「さぁ、ハギちゃん……感動の再会だろう? きっと飛びついたって許してくれるさ」

 

「いやいや、ディプスロさん……もう数年前だよ? 私は一片たりとも忘れちゃないが、覚えてくれてるかどうかが問題でしょう?」

 

 すると、ハギと呼ばれたその幼女はくるっと緑の髪を揺らしてサンラクを凝視した。

 

「覚えてるかなぁ……なぁ、サンラク()()()? 昔、あの場所で激しく踊りあった私を。どうかなぁ、ねぇねぇ、どう? 思い出せるかな? 

 

 ……ねぇ、μ-sky?」

 

「はっ激しく!?」

 

 妙な勘違いをしたのだろう声が裏返ったサイガ-0の誤解は後でとかねばならないと、彼がμ-sky(サイレント・キル・幼女)と呼ばれたことよりもそちらの思考を優先したのは、あまりに衝撃が大きすぎたため。

 

 ハギ、そう名の付いたプレイヤーは、記憶に強く刻み着いている。孤島で幾度も衝突してその全てで打ち勝った(サンラク)が、いや彼女(サンラク)がその少女に抱いた感想は二つ、一つ目は『跳弾の化け物』。ファンタジーかのような性格無比な跳弾による狩りを、物理的になんの矛盾もなくこなす、何故γ(ガンマ)鯖にいなかったのかが分からない彼女。κ(カッパ)鯖の水陸の境界を自分の居場所として、その場所に限定して、各鯖の実力で有名になった有名人にすら打ち勝てる技能を持っていた人物。

 

『磯女』ハギ。

 

 磯女の名が使われすぎて、最終的にハギ本人さえ、自分のことをプレイヤーネームを忘れて磯女と名乗ったというお話はさておき、彼女の存在にサンラクが驚いた理由はもうひとつにある。

 

「……お前、今まででよく捕まらなかったな……いやほんとなんで」

 

「はははっ久しぶりだと言うのに初めがそれったーなんとも、酷くないかいサンラクちゃん! 私は擬態する技能もピカイチなのだよ!」

 

 磯女は、感情をロールプレイ(誤魔化している)しているだけで、その実、内心は()()にテンション有頂天なのだ。恒常的に、いつなんどきも。

 如何様な場面であろうとノリに乗ったサンラク並のテンションを内心維持し続けている。

 腕が吹き飛ぼうと眼球ぶち抜かれようとなんだろうと笑顔で楽しむのは鯖癌プレイヤー、とくにギリシャ文字鯖の民全員に共通することだが、こいつは、このプレイヤーは、器用にも閉鎖される鯖癌すらテンション最高潮で嘆いて見せた。それはもう心底楽しそうに心底嘆くという矛盾を体現したそのあり方にはさすがの鯖癌プレイヤーも理解が出来なかった。

 それこそ、常に頭がハイになる物でも飲んでいるのではないだろうか、多くが割とそのように考えてしまった故に、まじで合法のままあのテンション素で構築し続けていたのかという驚愕。

 

「いやはや、ひっどいなぁ……鯖癌プレイヤーはほぼ同じだろう? ゲームで日常化してるからね! 現実でなにかするのもなぁって」

 

 違う、そうじゃない。

 そんな心の言葉は届くはずもなく、磯女の言葉はヒートアップをしていく。

 

「一応聞くけど、そのテンションは高低しねえの?」

 

「絵描きソフトのレイヤーと一緒さ! より上のレイヤーで誤魔化せるし不可視にもできる! レイヤーの可視不可視はVR装置のon/offで切り替わる素敵仕様という! すごいだろう? 羨ましかろう? 

 ねぇ、ねぇねぇ、そんなことより早くっ早く私の要件を始めたいなぁって」

 

 すっ、と構えられた歪な短刀を見て、闘技場(この場所)といいこいつといい、何が目的かは確定した。

 

「この戦い、勝ったら私自己流のライオットブラッドの即効性と増幅効果がある飲み方……複数伝授してあげるよ! こちとら、顔隠し(かおかくし)くんの幼女式強制間隙生成術を見てから、あれにログインしてもスイッチがオンのままなんだ! ゲームでpkに走るのは好きだが、現実のpkは戴けねぇからなぁ……っ! 

 だからさ、久しぶり踊ろうぜ! あの頃みたく、血も肉も骨も出やしねぇけどよ!!」

 

 あのころの弾丸のように放たれたマシンガントーク。それは最後に響いたダッ、と鳴る強く地面を蹴る音(銃声)と共に戦いの火蓋が落とされる合図でもあった。

 

 

 

 

 

「右方の血肉は其を阻む」

 

 駆け出した私は、短刀、いや、()()()()()()を振るって魔法を発動、MPとHPが削れると共に、狭い闘技場に数枚の石の壁が乱立する。

 相変わらずこの魔法はコストが見合わない、しかも新大陸では『右方』を『左方』に、『血肉』を『血羽』に変えないといけないのが非常に面倒臭い。

 

「さぁさぁ! 今ステージに立ってていいのは二人だけだ、師匠もそこの子も下がっときなぁ!」

 

「え? 師匠??」と本気の疑問を漏らした彼女(サンラク)……いや(サンラク)か、は私の技能を覚えているからこそ、とっとと叩き潰さんと、壁を避けてやってきた。

 そして、剣を投げてくる。

 軌道予測の上で、一歩下がることで当たり判定から逃れる。続けてリヴァイアサンで手に入れた実弾を発砲。

 

 放たれた三発の鉛玉は床、壁を跳ねて跳躍したサンラクちゃんに追尾するように迫る。

 しかしそのたまの全てを避けた反射のまま彼は右手を左胸に叩き付けて黒い稲妻を纏う。

 

「ちょっ早……っ!!」

 

 存在は知ってはいたが、体験すると驚くほどの速さでとんでも挙動を繰り返す彼。

 私の短杖は、斬ることで斬撃ダメージを発生させる代わりに耐久が紙だからとてもあの加速度から繰り出される思い一撃など受けられやしない。そもそもステータスが足りない。こちとら純魔である。

 そう判断して自己バフ起動、多重に重ねまくる。

 そうして瞬間的にあげた俊敏で回避に専念する。

 だが、二刀流を避け切るステータスも技能もありはしないので、持てる手札で補うとしよう。

 乱立した壁の位置角度は全て把握している。なので死角へ銃を撃って、サンラクの剣が私に当たりそうになったタイミングで弾丸が剣を弾く。

 

「ああもうっ、楽しいなぁ……!!」

 

 最近はこんな戦いが足りてなかったんだ。

 やはり、現実味はなくても鯖癌プレイヤーとの踊りは、とりわけサンラクちゃんとの踊りは心が踊る。

 

 しかし、このままでは押し切られてしまうので私は切り札を一つ切る。

 今構えている短刀型短杖を投擲、カスダメも避けたいのか後ろに下がった彼を追撃するようにもう一つ、短刀型短杖を投げる。

 

「二本目……!?」

 

 サンラクの連れの子が叫んでいる通り、何もメイン武器の一つ、短刀型の短杖……『吸血牙の短杖』は複数存在する。

 何故か? 

 簡単な事だ、素材になったユニークシナリオ限定の吸血蝙蝠が巨大だったのだ。

 巨躯の持つ牙もこれまた大きく、投擲武器にできるほどに大量生産ができてしまった。

 

 そして、思わぬ一撃、二本目の短杖で少し回避体制がおかしくなったサンラクへ魔法をぶち込む。

 

 使うのは私だが、この魔法を保有しているのはこの吸血牙の短杖。

 左に構えた杖を右腕に突き刺して、腕の上を鞘のように走らせながら切り裂いて刃が腕の先から抜けた(抜刀した)タイミングで赤い刃が前へ飛翔する。

 

「チィッ!」

 

 だが届かない、彼はその状態ですら掠っただけで済んで見せる。

 相変わらずの回避性能だ。本当に楽しくて仕方ない。

 

 だがせっかくの機会だ、存分に活用させてもらう。

 避けてダメージエフェクトの発生する腕の指先を地面へ叩き付けて叫ぶ。

 

「血潮は炸裂する!」

 

 破裂、同時に魔法の効果で地面に付けられてダメージエフェクトが周囲に飛び、赤いポリゴン片をまばらに落とす。

 即席の地雷原完成である。

 

「へいへーい!! いらっしゃいませ近づいてこいよう!! ダンスはもーっと近くでするものだろう?」

 

 飛び散ったポリゴンが消えないことに警戒したのか私の近くに来れないサンラクちゃん。近付かれたら私が圧倒的不利になるので避けるべきだから致し方ないのだが、もっと近寄って踊りたかった。

 

 どんどん私に有利な舞台は出来上がりつつあるのだ。さぁ無様に踊ってくれるなよサンラクちゃ……っ!? 

 

「ぶべら……っ!?」

 

 視界が勢いよく移り変わる。

 

 あまりにも油断しすぎてぶん殴られたのだ。つか、地雷原を飛び越えられたのだ。

 

「糞なんだその跳躍、仮面の通り鳥人ってか……。琵琶湖も易々と飛び越えられそうな性能してんなぁ!!」

 

 ブラインドタッチのユーザーインターフェース操作を使った多数の武器の乱舞を短剣数本でしのぎながら一気に後退する。

 

 あーれれー? さっきまで私に有利な舞台が云々と語ってたのはどこのどいつだろうか。ふぁっきゅー過去の私。

 

 もはや、鳥仮面の奥から聞こえる彼の煽りすら気にする暇のない極度の集中を必須とする状態。

 

 ……切り札を切るか……早すぎるか? いや、切らずして負けたら格好がつかなすぎる。

 

「あぁぁあああっ!! おお……っ!? サンラクちゃん勝っちゃうのか!! あー楽しみだなーバイノーラル解体(あの時の解体ショー)!!」

 

 わざと作ったニチャァとした笑みで高らかに叫ぶ、これになんの意味があるのか、簡単だ。

 

「ぬ゜っ」

 

 サンラクちゃんが奇妙な声を上げて停止する。そう、あの解体は、あの後バイノーラル解体を求めて他鯖からも人が押寄せるような状態になった彼の黒歴史だ。

 黒歴史を刺激されて生まれた一瞬の隙間、これが狙いで、ここで一気に準備を整えなければならない。

 

 純魔の私は接近戦はバフ頼りである。

 だからこそ、この一瞬の隙に大量のバフをかけていく。

 サンラクちゃんの硬直が抜けたあとも、斬り結びながら、畳み掛けるのに足りていなかったバフをかける、かけるかける。

 

 視界にこのままでは衝突は避けられない刃を映した時、最後のバフをかけ終えた。

 

「っ……ぁあ!! ……波は荒波、沼は津を孕んで……」

 

 ようやっと、剣戟の中で詠唱できる程のバフをかけ終え、刃を避けて別種の杖を取り出しながら詠唱開始する。

 この魔法が私の数少ない勝ち筋なので、準備が整って安心……う゛ぇ!? 

 

「晴天流……」

 

「あ、いや待ってその明らかな大わ……」

 

「轟風っ!」

 

「にぃぎゃぁぁああああっ!!」

 

 抜刀術とか羨までしかないそれを解き放ったサンラクちゃん、こっちは詠唱は捨てて全力防御and回避である。一気に地面を蹴って後退、自分の杖を腕に刺して刃を飛ばそうとしたところで……。

 

「杖持ち替えたの忘れてたぁぁああああ!!」

 

 杖の尖った先っぽを突っ指すガバをした私は再走したくてたまらない。タイムマシンはどこだろうか。

 

「らぁっ!」

 

 彼の身に付ける水晶の篭手が迫る。持っていた杖で……ダメだ折れる。咄嗟にはねて回避した私は完璧に無防備な空中にある訳で、要するに絶体絶命の大ピンチだ。

 

 飛びかかってきたサンラクちゃんの剣を身を捻って躱す。正直無理な体制すぎて切っ先が掠った。

 ひねった勢いで杖を振り抜いてぶん殴ろうとすると空中を足場に跳ねて避けられる。もちろん私は空中ジャンプできるスキルなぞ持っておらず、対応できやしないのだ。

 

 振り向いた勢いで仰向けになったまま、背から地面に落下した私は上空から投げられた剣を腕でバネように転がることで避けて………………聴覚が着地の音を捉え、触覚が私の首に剣が添えられた事実を伝えてくる。

 

「あー……うん、ステータス的にも無理があったわ……楽しかったよ」

 

「ライオットブラットの件忘れなんなよー」

 

 一気に体力を削られ……私は、砕けた。

 やはり届かないものは届かないらしい、少し悔しいがまた鍛え直しだ。

 

 リスポーン後、僅かに見えたサンラクへ話しかける前にフレンド申請を送る。

 

「次は例のTSを見せてね、色々教えてあげるよ!」と言うメッセージを添えて。

 

 二回くらい却下された。違うんです、ディープスローター(師匠)の下ネタに感化されただけで私は何も悪くは……。




尚、1分後に主人公ちゃんは「辻斬り・狂想曲:オンライン」という和気藹々としたゲームをおすすめされる模様。

文字書き力の不足で書きたかった部分をかけないという盛大なやらかし。


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