Doll meets Human? (敵前逃亡兵士)
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act.1 First Contact


まずはこんな駄文を読みに来てくださりありがとうございます

小説の出来は保証しかねますが楽しんで頂ければ幸いです


それでは本編をどうぞ











本作を書いたきっかけ

「E.L.I.Dってフ○ッドと似てるよね?」


 

 

「この状況は些か不味いですね・・・」

 

薄暗い通路を走るコンテンダーはそう電脳内で呟きつつ背後を確認する

 

その視線の先に居るのは三体の異形・・・この世界において鉄血と同等、いやそれ以上の驚異であるE.L.I.Dが彼女を追っていた

 

なぜコンテンダーがこのような状況に陥っているのかと言うと、12時間程遡る必要がある

 

 

 

ー12時間前 G&K本社第四作戦指揮室ー

 

 

「遺跡調査・・ですか?」

 

「そうだ、本来なら正規軍の管轄だが、向こうは近々大規模掃討作戦を開始するらしくてな。遺跡調査に回す余力がないらしい」

 

コンテンダーの質問に対しヘリアントスは答え、そのまま続ける

 

「場所はJ11地区に近い軽度汚染エリア。そこは一週間前に小規模の地殻変動が認められ、民間の地質調査団が向かったところ手付かずの遺跡が見つかったという訳だ」

 

「軽度とは言え汚染エリアって事は感染者もいるよね。数はどれくらい居るんだろう・・・」

 

「それよりJ11地区の該当基地はなんで動かないの!?確かあそこは比較的大規模だし人員は居るでしょ!?」

 

M950AキャリコとワルサーWA2000がそれぞれ不安と不満を漏らす中、沈黙を貫いていたAK-12が一言

 

「・・・・・・人権団体ね?」

 

「そうだ。J11地区は我々が管轄する地区の中で最も人権団体が活発な地区だ。その人員も戦力も過激派、つまり対テロ戦闘に特化されている。その為今回の調査に参加することは出来ないんだ」

 

 

 

・J11地区

 

複数の人権団体の本拠地が存在する異質な地区

全てが過激派と言う訳では無いものの、人形に対する風当たりは他の地区よりも強く人形排斥デモは日常茶飯事。またこの地区に在籍する人員は人間7割に対し人形3割(ダミー含め)、しかもE.L.I.Dは勿論鉄血との戦闘経験も皆無となっている

 

 

 

「出発は一時間後。J11地区の該当基地で補給と整備を行い明朝09:00に調査開始となる。小隊はコンテンダーを隊長にキャリコ、WA、AK-12、AN-94の5名だ。場所が場所だからな、各自ダミーはフルで当たってくれ。以上」

 

「「「「「了解」」」」」

 

 

 

その後小隊は基地を経由して遺跡に到着。調査を開始するもE.L.I.Dと接触し、コンテンダーは4人への被害を抑える為に囮となり冒頭へと至る

 

「ダミーは全滅。自ら囮を買って出たとは言えこのままでは・・・あれは?」

 

焦り始めたコンテンダーの目に入ったのは中途半端に降りた隔壁と、隣で火花を上げるコンソール。それを見た彼女はある種の賭けに出た

 

「距離は凡そ50m。後ろのE.L.I.Dとの距離、隔壁が降りきるまでの予測時間、射線確認、誤差修正・・・今です!」

 

コンテンダーは自身の半身である銃でコンソールを撃ち抜くと小さな爆発を生んだ。すると中途半端に降りていた隔壁が徐々に降り始めたが・・・

 

「隔壁が降りるスピードが予想よりも早い!?いえ、諦めません!」

 

このままでは間に合わないと判断したコンテンダーは限定的に脚部のリミッターを解除、全力疾走ののちスライディングでギリギリ隔壁が降りきる前に入る事が出来たその刹那、隔壁にE.L.I.Dが衝突し大きく歪む。そこから何度か隔壁を叩くも突破出来ないと判断したしたのか、奴等は呻き声を上げたのち遠ざかっていた

 

「はぁ・・・はぁ・・・。危なかったですね・・・痛っ」

 

脚部に痛みが走ると同時にコンテンダーの電脳にエラーメッセージが走った。限定的とは言えリミッターを解除した結果、人工筋肉の一部断裂、要は筋肉痛と僅かだが脚部のフレームが歪んでしまっていた

 

「これも想定内・・・とは言えませんが、仕方ありませんね。それよりも皆さんと早く合流しないと。現在地は・・・」

 

銃に弾丸を装填し、周辺を調べるも正確な現在地は分からず、また来た道は隔壁が降りてる為コンテンダーは先に進むしかなかった。彼女は警戒しつつ通路を進んでいくと突き当たりに比較的綺麗な状態のドアを見つける

 

「ロックはされていないようですね。中は・・・研究室・・・でしょうか?かなり保存状態が良いですね。それに中央のあれは・・・」

 

そこは比較的大きな部屋で、辺りに見たこともない機械が並ぶ中、部屋の中央にあるのは大きな円筒状の物体。大きさは成人男性が余裕で入る大きさで、そこには何かが入っていた。

 

「人・・・?いえ、正規軍の軍用人形にも似ていますね。これは一体・・・」

 

興味深く観察するコンテンダー。ふと横を見るとコントロールパネルがあり、画面には円筒状の物体に入った存在の情報が載っていた

 

「1・・1・・7・・・?」

 

 

 

これがコンテンダーと彼とのFirst Contactだった

 








NGシーンその1


「隔壁が降りるスピードが予想よりも早い!?いえ、諦めません!」

このままでは間に合わないと判断したコンテンダーは限定的に脚部のリミッターを解除、全力疾走ののちスライディングするが・・・

「ふぎゃ!!??」

スライディングも虚しく隔壁がコンテンダーのお腹辺りで降りた。つまり挟まってしまったのだ。そして上下反転したコンテンダーの視界には困惑しおろおろする三体のE.L.I.Dが映っていた。

「カットカットォ!!コンテンダーちゃん大丈夫!?」

「は、はい。大丈夫です。それよりもすいません、計算を間違えました・・・」

「気にしなくて良いよ。念のためにと設置した安全装置が役に立った」

「あの・・・もしその安全装置がなかったら・・・」

「そのときはコン/テンダーになってたね」

「ヒエッ」

↑コンテンダーと監督との会話







Q:なにこれ?

A:ほら、映画のエンドロールでNGシーン流すやつあるでしょ?あれだよアレ(某香港映画スターの作品並感)


一応今後もNGシーンは載せる予定です


誤字脱字、コメント宜しくお願いします


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act.2 Awakening

みんな大好き緑の悪魔の登場(某アイドルゲームの事務員ではない)

転生タグがないって?騙して悪いが転生ものじゃないんでな

つまりはそうゆう事さ


「117・・・これの名前でしょうか?えぇと何々、コールドスリープ?解凍シーケンス?一体何の事でしょうか」

 

コントロールパネルに表示されている文面を一つ一つ読んでいくコンテンダー。表示されていた情報は少なかったが幾つか分かったことがあった

 

①「これ」は人間である

 

②冬眠と言う形で今も生きている

 

③このコントロールパネルで冬眠状態を解除出来る

 

「これは私の一存でどうこう出来る問題ではありませんね・・・本社、最低でもヘリアンさんに確認を・・!」

 

そう呟きつつふと彼女が入ってきたドアを見ると、その向こう側、一部ガラス張りとなっている部分から異形の影が見え咄嗟に物陰に隠れる

 

「さっきのE.L.I.D!?あの隔壁を突破したと言うことか。数は見たところ一体のみ・・・殺れるか?」

 

コンテンダーは電脳内で自身の勝率を計算する

 

「E.L.I.Dとは言え極初期症状型。皮膚の硬化はそこまでではないはず。加えてこちらの弾丸は徹甲榴弾、頭に当てれば勝機はある。なら・・・!」

 

呼吸を整え集中するコンテンダー。ゆっくりとした歩みで研究室に入ってくるE.L.I.Dに対し意を決して前に飛び出し自らの半身を構え、そして銃爪を引いた。

半身から放たれた徹甲榴弾はまっすぐE.L.I.Dの頭を貫く・・・はずだった。実際には頭ではなく右肩を貫かれ大きく仰け反るだけに留まり驚愕するコンテンダー。

 

「射線がズレた!?しまっ・・きゃぁ!!」

 

一瞬、思考が止まり気がついた時にはE.L.I.Dにタックルされていた。体を襲う激しい衝撃、意識が飛びそうになるのを抑え弾丸を装填しようとしたが肝心の半身がなかった。先程のタックルで何処かに投げ出したのだと理解した時にはE.L.I.Dは目の前までに迫り、コンテンダーの首を絞め始めた

 

「がぁっ・・・!!」

 

コンテンダーの抵抗も虚しく絞まっていく首。幸か不幸か、極初期症状型故にその握力は成人男性に毛が生えた程度だが、彼女の命を刈り取るには十分だった

 

「このままではコイツに・・何か手は!?」

 

薄れていく意識の中、視線を左右に降ると、先程のコントロールパネルがあった。

 

「一か八か・・・。仲間を残して、こんなところで死ぬわけにはいかない!!」

 

そう決意したコンテンダーは手を伸ばし、コントロールパネル、その解凍シーケンスを起動させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男は夢を見ていた

 

ある場面は宇宙に浮かぶリング状の巨大構造物が

 

またある場面では地球に襲来したエイリアンとの戦場が

 

次々と場面が早送りで流れていく中、とある場面で流れが正常になった

 

そこに居たのは一人の女性

 

かつて共に戦い、共に地球を救い、そして人類の敵となり、最後はその男の手で死んだかつての愛者

 

「目を覚まして、ジョン。貴方の力が必要な時が来たわ」

 

目の前の女性はそう言うと再び場面が早送りになる。そして早送りが終わり真っ白になった時、彼女は続けて言った

 

「女の子に約束しちゃだめよ?出来ない約束はね」

 

そう彼女は言うと青い粒子となって消え、彼の意識が急速に目覚めていく

 

「○○○○・・・!」

 

その言葉は声にならなかったが、確かにかつて愛した女の名を呼んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解凍と同時に興奮剤が投与され、急速に意識が覚醒していく男

 

その男の目の前には、怪物に首を絞められ、今正にその命を散らそうとしている少女の姿があった

 

男は状況を理解し、カプセル内にある開閉レバーを引くとそこから先は早かった。カプセルの蓋が開いたと同時に飛び出し、アーマーに装備されたコンバットナイフを怪物の脳天に突き刺した

 

「グァッ・・・」

 

断末魔にも似た声を上げ倒れる怪物。それと同時に

 

「ゴホッ!ゴホゴホッ・・・ハァ・・ハァ・・」

 

首への圧迫がなくなった事で咳き込み、荒い呼吸をするコンテンダーに対し、男はこう言った

 

「大丈夫か?」

 

その声は何処か悲しく、それでいて優しさを含んだものだった




NGシーン

さっきのE.L.I.D!?あの隔壁を突破したと言うことか。数は見たところ一体のみ・・・殺れるか?」

コンテンダーは電脳内で自身の勝率を計算する

「E.L.I.Dとは言え極初期症状型。皮膚の硬化はそこまでではないはず。加えてこちらの弾丸は徹甲榴弾、頭に当てれば勝機はある。なら・・・!」

呼吸を整え集中するコンテンダー。ゆっくりとした歩みで研究室に入ってくるE.L.I.Dに対し意を決して前に飛び出し自らの半身を構え、そして銃爪を引いた。
半身から放たれた徹甲榴弾はまっすぐE.L.I.Dの頭を貫き、衝撃に耐えられずその頭は石榴のように弾けた。

「・・・・・・へ?」

気の抜けたコンテンダーの声の後現場は騒然とする


「カットォォォォ!!メディーック!!崩壊液持ってこいメディーック!!」

荒ぶる監督と急ぎ希釈された低濃度の崩壊液を片手に走る医療スタッフ。漸く事態を理解したコンテンダーは自らが撃ち抜いたE.L.I.Dに対し

「ご、ごごごごごめんなさい!!あ、あの、えーと、大丈夫・・・じゃないですよね・・・?(泣)」

半泣きになるコンテンダーに対し、床に倒れたE.L.I.Dは静かに腕を上げ

「(サムズアップの動作)」

とりあえずその日の撮影は中止となった

ちなみに吹っ飛んだ頭は治療の甲斐があり翌日には再生したのだった



とりあえず続きは書けたとは言え見切り発車だからどうしたものか・・・

上手く出来てる・・・のかなぁ・・・


誤字脱字、コメント宜しくお願いします


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act.3 Escape

ここで登場する「彼」はリクレイマーサーガが終わり人類がマントルを継承、銀河の統率者となった後の状態になります

アーマーはmarkⅥ、基本装備はコンバットナイフ、グラップルショット、アーマーアビリティはなし(予定)

何をいっているか分からない?

Haloシリーズやって?どうぞ


コンテンダーが「彼」に助けられたのとほぼ同時刻

 

 

 

 

「あーもう!次から次へとキリがないわね!」

 

10体目のE.L.I.Dを仕留め、空になった弾倉を交換しつつWAが悪態を吐く

 

「これじゃあコンテンダーを探すどころか私たちが全滅しちゃうよ!まだロックは開かないの!?」

 

「もう少し待ってください。今AK-12が深度演算モードで対応してますが・・・」

 

キャリコの悲鳴にも似た問い掛けに対しAN-94が冷静に答える

 

E.L.I.Dによる最初の襲撃の後、囮になったコンテンダーの捜索を開始していた4人だったが、別のE.L.I.Dの集団と遭遇。迎撃するもその数の多さに撤退を余儀なくされていた

 

「ダミーも殆ど殺られた!もう持たないよ!?」

 

「しっかりしなさいキャリコ!」

 

泣き言を言うキャリコに喝を入れるWAだっだが、内心ではかなり焦っていた。彼女たちはこれまでにもE.L.I.Dとの戦闘経験は何度か有ったものの、一度に相手をしていたのは精々数体であり、今回の様に数十体を相手にするのは初めてであった

 

先ほどキャリコが言っていた全滅という最悪の二文字が彼女の電脳に過る。だが彼女たち人形にとって死=終わりという訳ではない。仮にここで斃れたとしてもメンタルモデルのバックアップがあるのでそこから再生産される。が、そんな事はエリート人形としての彼女のプライドが許さなかった

 

「・・・・・・ロック解除を確認。撤退開始」

 

短い電子音と同時に開く扉。クリアリングを済ませたAK-12が無機的なトーンで報告し、僅かに残ったダミーを残し撤退する4人。最後の一人が扉の奥に入りAK-12が再ロックするのと同時に残されたダミーが扉に叩きつけられ何かが握り潰される鈍い音が聞こえた

 

「間一髪、と言ったところね。悪いけど暫くは戦力になれそうもないわ。AN-94、ちょっと肩を貸してくれる?」

 

「AK-12、何処か問題でもあるのですか?」

 

肩を貸しつつ不安そうに尋ねるAN-94に対し、彼女は大丈夫よと答える

 

彼女曰く、初めて見るタイプのネットワークであり攻勢防壁の類いが隠されている可能性が有った為時間が掛かったとのこと。その為深度演算モードの稼働時間が長くなり、結果としてAIに負荷が出てしまったという

 

4人は近くの空き部屋に入り今後について話し合う。弾薬は消費していたものの、小規模な戦闘ならこなせる位にはまだ残っていた。しかし・・・

 

「私達が遺跡に入って約2時間、後1時間で迎えのヘリが来るわ。幸い道中のマッピングはしてあるから何もなければ十分間に合う。問題はコンテンダーの捜索ね。彼女の捜索も並行してとなると、正直厳しいわね」

 

「それってつまり見捨てろって事!?」

 

WAがAK-12に食って掛かるが彼女は冷静に

 

「簡単な事よWA。1人を犠牲にして4人助かるか、1人を助けようとして全滅するか。私達人形は死んでもバックアップがあればそこから復活出来る。貴女のそのちっぽけなプライドなんてどうだって良いわ」

 

「なんですって!?もう一度言ってみなさいよ!!」

 

「やめなよ2人とも!こんなことしてる場合じゃないでしょ!?」

 

一触即発の2人を何とか抑えるキャリコ。しかし両者の間にあった険悪なムードは収まらず暫しの沈黙が流れる。そんな中、彼女たちが撤退してきたのとは別の方向から扉が開く音が聞こえ全員が近くの物陰に隠れる

 

徐々に近付いてくる足音。各々の半身を構え、その銃口を部屋の入り口に向け待ち構える4人。人影が見え銃爪に掛かる指に力が入る。が、その影には見覚えがあった

 

「コン・・テンダー・・・?」

 

誰かが小さく呟く。その影の正体は、E.L.I.Dから4人を守るため自ら囮となり行方が分からなくなっていたコンテンダーその人だった

 

「コンテンダー!?良かった!無事だったんだね!?」

 

「ご心配お掛けしました。皆さんもご無事で良かったです。」

 

キャリコに抱き付かれ少しバランスを崩しながらもコンテンダーは答える

 

「よく私達の場所が分かったわね?」

 

「先ほど激しい銃撃戦が聞こえたのでもしや、と思いまして」

 

先程までの険悪なムードは消え、和やかな空気になる一同。気が緩んでいた。と言われても仕方ない状況の中で、WAはコンテンダーの背後にある影に気付き叫ぶ

 

「キャリコ!コンテンダー!後ろ!!」

 

WAの警告を聞き振り向いたキャリコが見たのは、自身の背を越える大きな影であり、それを視認した瞬間彼女はコンテンダーを押し倒し、WAの射線を確保する

 

「ま、待ってください!彼は」

 

コンテンダーの制止を無視し射撃体勢を取るWAは、軽く息を吐きブレを修正し銃爪を引く。銃口から放たれた弾丸は影の頭に命中するも、当たった場所に光る波紋が浮かぶだけでダメージを与えられた様子は無かった

 

「シールド!?一体何なのよコイツは!?」

 

驚愕するWAを余所に部屋の中に入ってくる影。その姿は、全身が濃い緑色の装甲に覆われた軍用人形にも似たものだった。AK-12とAN-94も側面からの攻撃を開始しようとした時

 

「そこまでです!皆さん銃を下ろしてください!!」

 

コンテンダーが軍用人形擬きの前に立ち3人に警告する。動揺するも渋々従う一同に対し、彼女は背後の人形擬きを気遣う

 

「大丈夫ですか、チーフ?」

 

「問題ない」

 

「(喋れるんだ・・・)」

 

2人の会話を聞きそう思った4人だった

 

その後、事情を説明される4人ではあったが、どれもにわかには信じがたいものばかりであった。中身はれっきとした人間で、さっきまでコールドスリープと呼ばれる物で冬眠していた等々。とは言え、彼女たちにとって彼が味方という事が分かれば十分であった

 

 

 

 

「それで肝心の脱出プランだけど、私がもう一度深度演算モードでルート上の扉のロックを解除するわ。その後遺跡の入口まで強行突破する。えぇとチーフ?先頭を頼めるという話だけど、本当に良いのかしら?」

 

「問題ない。ああいった化物の相手には慣れている」

 

じゃあ宜しくね。とチーフの返事を聞きハッキングを開始するAK-12は数分もしないうちにルート上のロックを解除し、後方に下がる

 

チーフは持っているM6Dマグナムの安全装置を解除し、「行くぞ」と短く合図し進む。道中現れるE.L.I.Dに対し正確に頭を撃ち抜き処理していく。程なくして遺跡入口に到着。迎えのヘリは既に到着しており、コンテンダーたちは順に乗り込んでいく

 

 

「あと少し、あと少しで帰れる・・・!?」

 

そう安堵していたキャリコを横から衝撃が襲う。一瞬何が起きたのか分からなかったが、自分がE.L.I.Dに襲われたと理解するのにさほど時間は掛からなかった

 

「い、いや、離して!誰か・・・誰か!?」

 

キャリコの異常に気付いたのはチーフだった。彼は左腕のグラップルショットを起動、キャリコを引き寄せる事に成功する。そのまま彼女を左腕に抱えつつ向かってくるE.L.I.Dに銃撃するも弾が切れる。すると「借りるぞ」とキャリコに言い彼女が持っていたM950Aで残りを仕留めていく

 

そのままキャリコを抱いた状態でヘリに乗り込んだチーフを確認したコンテンダーはパイロットに合図し、機体を上昇させる

 

 

彼女たちの濃密な3時間が幕を降ろした




いやー難産でした(笑)

正直分割した方が良いかと思いましたが次に進めたかったので今回の様になりました(本文約3000文字)

チーフが使った銃はHALOシリーズお馴染みのハンドガンですね。捨てちゃったからもう出番ないけど

だって使おうにも弾薬規格合わないし。12.7×40㎜って冗談やろ!?

他の武器も使う予定はありません。だって弾薬規格が(ry


あっ、今回はNGシーンは無しです。あんまり上手いシーンが浮かばなかったので(そもそも需要ある?)


誤字脱字、コメント宜しくお願いします


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act.4 Master chief



一応今回のお話までがプロローグになります

今後は原作ルートを踏まえつつオリジナル展開・・・出来ればいいなぁ(遠い目)


遺跡調査から2日後

 

 

ーG&K本社 社長室ー

 

「さて、どうしたものかな・・・」

 

ベレゾヴィッチ・クルーガーは独り言を呟きつつ、手元の書類を読み返す。それは先日行われた遺跡調査の報告書であり、遺跡の内部構造や遭遇したE.L.I.Dとの戦闘、被害が記載されている。その中で特にクルーガーの興味を引いたのは・・・当然と言うべきか、「彼」だった。

 

国連宇宙軍(U N S C)、SPARTAN Operations所属。サービスタグはS(シエラ)-117、階級は海軍最先任上級兵曹長(Master Chief Petty Officer of the Navy)・・・生粋の軍人という訳か」

 

元軍人であるクルーガーはその階級の真の価値を知っており、「彼」がどれ程優秀な存在なのかすぐに理解出来た。それだけならば然して問題にならなかったのだが、その後が問題だった

 

「現行の技術力では製造・解析不可能なバトルスーツに加え、常時展開するシールドを装備。報告書ではフォースシールドとは異なる物だそうだが・・・。それに、こちらも気になる」

 

それは「彼」の経歴だ

 

「2517年に幼少期に徴発(誘拐)され軍の超兵士計画に参加、訓練と強化手術による身体強化を施される。その後地球外の知的生命体による軍事同盟(コヴナント)との戦争に従軍し2553年の終結まで活動。その後様々な正規・非正規作戦に2560年代まで参加。端から見れば荒唐無稽な話だな。」

 

それに今は2062年、500年も先の話じゃないか。タイムスリップでもしてきたのか?と内心思いつつも、クルーガーにはこれが作り話と一蹴出来なかった

 

「判断するにしても情報が足りない・・・か。いずれにせよこのままと言う訳にはいかんな。正規軍への報告もある。」

 

暫く悩んでいたクルーガーだったが、妙案を思い付いたのか通信端末を手に取るのだった。

 

 

 

 

 

少し時間は遡り

 

 

ーI.O.P技術開発部門(1 6 L A B) ペルシカリアの個人研究室ー

 

「来てもらって早々に悪いんだけど、ここに立ってくれる?大丈夫よ、貴方のことを少し調べたいだけだから」

 

この部屋の主である女性、ペルシカは客人である男、チーフにそう告げる

 

「うーん、やっぱりスキャンは無理か・・・。材質も未知の合金だし、そもそもこのスーツの動力源って何なのかしら?」

 

端末を操作しつつ独り言を呟くペルシカに対し、チーフが答える

 

「小型の核融合炉だ」

 

「・・・・・・は?」

 

今この男は何と言った?核融合炉と言ったのか?今私の研究室にそんな物騒な代物が来てるとか聞いてないんですけど!?と内心こちらに送ってきたクルーガーを恨むペルシカだった

 

 

 

「結局分かったのは身長と体重だけ。ブラックボックスもいいところね」

 

しかし全く収穫が無かった訳ではない。このアーマーに使用されている動力が核融合炉であり、人間サイズ以下にまで小型化出来ている。その技術力の高さを伺い知るには十分だった

 

 

程なくして検査が終わり、G&K本社に帰るチーフ。そんな彼を後ろから見送りつつ、彼女は呼び出し音が鳴る通信端末を手に取る

 

「はいはいどちらさま・・・って、貴方ね。彼?今しがた帰ったところよ。何よ改まって・・・へ?何でまたそんな・・・・・・あぁ、そうゆう事ね。私は問題無いけど、現時点で出来ることは余りないわよ?ならいいわ。ハーヴェル?こっちで上手いこと言っとくわ。それとAR小隊の件は・・・えぇ、それで大丈夫よ。くれぐれも宜しく頼むわね?じゃあ」

 

 

 

 

 

後日、チーフに対する正式な処遇が発表された。

 

①マスターチーフを16LABが開発した次世代型の軍用戦術人形のプロトタイプとして登録、試験評価を行う

 

②登録名はS(シエラ)-117とし、コンテンダー小隊に小隊長として編入、以降小隊名をブルーチームとする

 

 




未公開シーン


「ところで、そのヘルメットって外せるの?」

「一応外せるが、気になるのか?」

検査を終えたペルシカが尋ね、チーフは少し意外に思いつつ答える

「興味が無いと言えば嘘になるわね。まぁこれも検査の一環と言う事で(イケメンだったらヘリアンに紹介してあげようかしら)」

「分かった」

チーフは短く答え、両手を首の上辺りを押さえる。プシューと空気が抜ける音がし、ヘルメットが持ち上がる

「へぇー、意外と・・・ふむふむ。なるほどねぇ」

近くで観察するペルシカだったが、「もう良いだろう」とチーフがヘルメットを被ったことで途中で中断される

「あぁこれは失礼。でも良い参考になったよ、ありがとう」

ペルシカのお礼を聞きチーフは「そうか」と答えその場を後にする

「意外と言えば意外な顔立ちだったわねぇ。まぁイケメンそうだし一応教えとくか」

チーフに気付かれないように撮影した写真を端末経由でヘリアンに送るペルシカ。後日彼女からお礼参りを受けたのはここだけの話である







今回もNGシーンが浮かびませんでした。と言うかクルーガー、ペルシカ、チーフがNG出すとか想像出来ない・・・なので少し形を変えてみました(言い訳)

次は武器の選定と模擬戦を考えてます

あっ、正規軍へは何もなかったと報告してます。そのまま引き渡すとリバースエンジニアリング(意味深)されて終了になってしまうので


誤字・脱字報告、感想宜しくお願いします


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act.5 Mock combat


戦闘シーン難しい・・・難しくない?


チーフの処遇が発表された翌日

 

 

ーG&K本社 地下2階 武器庫及び射撃訓練場ー

 

 

 

「ハロー!私はここの責任者のAm-RFBだよ!君が噂のチーフだよね?これから宜しくね!」

 

「あぁ、宜しく頼む」

 

RFBは笑顔で握手をしつつ、ここへ来た理由を確認する

 

「任務で使う銃を探しに来たんだよね?ヘリアンさんから話は聞いてるよ。こっちの端末で(私達)の名前を入力するか、銃種や条件を入力すればそれに合った銃がピックアップされるよ。試し撃ちしたい時は同じように端末に入力すればマガジンが出てくるよ。じゃあ私は控え室に居るから何かあったら呼んでね~」

 

一通り説明し終わりそそくさと部屋に戻っていく彼女を後にチーフは銃を検索する。漸くして何丁か選び試し撃ちを行い、決まったのかRFBの居る控え室に向かい声をかける。

 

「へ?もう決まったの!?ちょっ、ちょっと待って!今良いとこなの!」

 

中から慌てる声が聞こえ、程なくしてRFBが出てくる。

 

「ごめんごめん、ちょっと立て込んでてさ。で?銃は決まったのかな?」

 

彼女の質問に対しチーフがリストを提出し、読み上げていく

 

「えーと、SVU-Aにデザートイーグルの50AE版でしょ、おっ!KSGじゃんお目が高いねぇ。後は・・・IWS2000!?えーと、マジで?」

 

「問題ない。以前似たような銃を使ったこともある」

 

流石の彼女もIWS2000は予想外だったらしく、チーフに再確認するも彼は大丈夫だと答える。それでも半信半疑だった為、RFB立ち会いの元もう一度試し撃ちをしてもらう事となった。

 

「ちょっ、チーフ!伏射場はあっちだよ!?」

 

慌てて場所を教えるRFBだったが、チーフは問題ないと答え 立った状態で(・・・・・・)銃を構える。一呼吸の後、彼は銃爪を引く。マガジンにあった5発の弾丸は瞬く間に吐き出され、出力される射撃データ。それを確認した彼女は驚愕した

 

「全弾命中・・・。しかも全部ヘッドショットで誤差殆ど無しとかチートってレベルじゃないよ!?」

 

本職の人形(I W S 2 0 0 0)ですらここまでの精密射撃は出来ない。それも伏撃でだ。それを彼は立った状態で、しかもASST無しで成功させた。これをチートと呼ばずに何と呼ぶのさ!とRFBは電脳内で叫ぶ

 

「これで良いか?」

 

「へ?あぁうん、大丈夫だよ。銃の申請とヘリアンさんへの報告は私の方でやっとくよ、お疲れ様」

 

問題が解消された事を確認したチートは射撃場を後にする。それを見送るRFBは彼が視界から消えた後ポツリと呟く

 

「MDRに渡すネタが出来た・・・かな?」

 

 

 

 

 

 

 

3時間後

 

 

 

 

ーG&K本社 地下3階 キルハウスー

 

 

「じゃあ今からチーフとAR小隊による模擬戦を始めるよ!」

 

 

何故こんな事になったかと言うと、RFBからネタを貰ったMDRがタレコミ掲示板に投稿。それを読んだ人形から話を聞いたM16A1が興味を持ちヘリアンとペルシカに相談、両者の許可を得て今に至るのだった

 

「ルールは簡単!チーフがオフェンスでAR小隊がディフェンスね。使用する弾薬は勿論ペイント弾で、頭と胸は1発、それ以外は3発被弾でアウトね。それじゃあ各自配置についてね~♪」

 

RFBによるルール説明が終わり各々が配置につく中、それをモニター越しに観るヘリアンとペルシカ。そして噂を聞きつけた多くの人形が居り、その中にはコンテンダーとAK-12の姿もあった

 

「なにやら面白い事になったわね?事前予想だと1:9でAR小隊が圧倒的優勢。オッズも大体同じようね」

 

「賭けてるんですか!?」

 

コンテンダーが驚きAK-12はさも当然のように答える

 

「本社所属だと娯楽が少ないんだから良いじゃない?それに文句があるなら賭けの元締め(スコーピオン)に言うのね」

 

AK-12が指差す方を見ると、スコーピオンが群がる人形達を相手にオッズの説明をしていた。ヘリアンが近くに居る為、流石に大々的にはやっていないものの、繁盛?している様子だった。

 

「皆準備は良いかな?それじゃあゲームスタート!!」

 

RFBの号令と共に行動を開始する両チーム。チーフがSVU-Aを構え慎重に進むのに対し、AR小隊は2手に分かれる

 

「AR小隊は挟撃を選択したか。まぁ数の有利を利用しない手はないからな」

 

「攻撃は最大の防御とは良く言った物ね。さて、チーフがどう動くか楽しみね」

 

モニターへ視線を向けたままヘリアンとペルシカはそう言葉を交わす。その直後ゲームは動いた。キルハウス中央の通路にてチーフとM16&M4ペアが接触、数度の牽制射撃の後小康状態となる。

 

「こちらM4、目標と接触。手筈通り挟撃するので回り込んでください」

 

「ST AR-15了解。目標の銃の種類は分かる?」

 

「牽制射撃からして恐らくARだな。現時点でサブアームを所持しているか不明だが一応注意するんだぞ」

 

「わかっt「よーし蜂の巣にするぞー!!」SOPⅡ静かに!」

 

 

 

「・・・・・・挟撃か」

 

一方チーフは相手の策を既に見破っていた。と言うのも彼のスーツに搭載されているモーショントラッカーが側面から後方にかけて動く影を捉えていたのだ。だが彼は敢えてそれを見逃し、背後を取られるまで待った。相手が位置に着いたのを確認し、自身が用意したもう1つの銃を左手で構えた

 

 

「こちらST AR-15、位置に着いたわ。」

 

「了解です。カウントダウン用意。3・・2・・1今です!」

 

M4A1の合図と共に動き出すAR小隊。チーフの背後を取っていたST AR-15とSOPⅡが死角から飛び出し銃口を向ける。だが2人を待っていたのはチーフが構えたショットガン(K S G)の銃口だった

 

 

気が付いた時には既に遅く、2人が飛び出した瞬間に放たれたペイント弾は見事彼女たちの上半身に命中、アウトの判定が下りその場で両手を挙げる。それを見届ける事もなくチーフは左腕のグラップルショットを展開、通路にいたM16A1を引き寄せる。

 

「じょ、冗談じゃ」

 

引き寄せられたM16は一度宙を舞い、ゴロゴロと転がりつつ壁に激突する。あまりの事態に動きが鈍ったM4を彼は見逃さず、SVU-Aで彼女の胸をペイントで彩った

 

「あー参った。私達の負けだよ」

 

M16が胡座をかきつつ両手を挙げゲームは終わった

 

 

なおスコーピオンは賭けが発覚しヘリアンに大目玉を食らった模様




NGシーン


一通り説明し終わりそそくさと部屋に戻っていく彼女を後にチーフは銃を検索する。漸くして何丁か選び試し撃ちを行い、決まったのかRFBの居る控え室に向かい声をかける。しかし返事がなく不審に思い静かにドアを開ける。するとテレビの前にかじりつく彼女が居た

「あーまたやられたぁ。こうなったら、コンティニューしてでもクリアするよ!!」

撮影中なのをすっかり忘れてゲームに熱中するRFB、痺れを切らしたチーフは徐に電源コードを引っこ抜く。

「え?なんで電源が・・・。あー、何時からそこに?」

「約10分前からだ。あまり感心しないなRFB」

「ごめんごめん。ちょーっと熱中し過ぎたみたいだね。」

軽く注意を受け撮影が再開される、のだがここで悲劇は起きた

「さてさてさっきの続きを・・・!?データ消去!?記憶媒体破損!?そんなー!!(泣)」

RFBの慟哭が撮影所に響くのだった










いつも読んで頂きありがとうございます。


チーフの武器はぶっちゃけ作者の趣味です。ただIWSだけは違います。HALO上で使用されるスナイパーライフル(対物)なんですが、あれ弾薬がAPFSDSなんですよ。ネットの情報だと外観はダネルが参考にされてるとあったんですが、弾薬の方を優先しました。それとそんな代物を振り回し楽々と扱う軍曹以下UNSC海兵隊とは一体・・・


あと模擬戦ですけど、非対称戦でチーフが負ける要素ってまずないですよね(作中殆ど単独で殺りあってるし)

誤字・脱字報告、コメント宜しくお願いします


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act.6 Extremists


まず始めに、コメント及び評価をして頂きありがとうございます

正直こんなに早く頂けるとは思っておらず少し恐怖しております

今回はシリアス、というか残虐表現が多いのでご注意下さい

あとUMP9好きの指揮官!ごめんね!!(予防線)


ーJ11地区 G&K基地指令部ー

 

「まずは支援要請を受諾して頂き感謝致します」

 

この基地を預かる壮年の男性が左手を伸ばしながらそう言い、ブルーチーム副官のコンテンダーが笑顔で握手に応じつつ答える

 

「お気になさらないで下さい。私たちは命令を受けただけです」

 

「そう言って頂けると助かります。それと、彼が・・・」

 

「はい。私たちブルーチームの隊長で16LABが開発した次世代型の軍用戦術人形のプロトタイプです。名前は」

 

S(シエラ)-117だ。宜しく頼む」

 

「こちらこそ。噂は予々聞いています。着いて早々で申し訳ありませんが、状況を説明しますのでこちらへ」

 

指揮官の言葉に一同が頷き、ブリーフィングが始まる

 

「この地区には複数の人権団体の拠点がありました。どれも中規模で穏健派が多数だった為、さして問題にはなっていませんでした。ですが先日、その人権団体が全て合流し地区内の人形排除を宣言しました」

 

指揮官はそう言うと地区のマップが表示され、十数ヶ所が赤く点滅する

 

「この赤い表示は?」

 

「襲撃があった場所です」

 

AK-12の問いに対し指揮官が答え、そのまま続ける

 

「被害の殆どはIOP等の企業が所有する事務所ですが、個人宅への襲撃も確認されています。事態を重く見た我々は人権団体の鎮圧を開始、ダミーを含む人形15人に正規軍からの訓練を受けた隊員30人が拠点に向かいました。ですが・・・」

 

「誰も戻らなかった、か」

 

チーフは小さく呟き指揮官は悲痛な表情で頷き、更に続ける

 

「作戦失敗から2時間後、人権団体からG&Kを含む全ての人形を雇用する企業及び個人のJ11地区からの退去並びに人形の即時廃棄、更に自治権の委譲を要求してきました。12時間以内に要求が受け入れられない場合は捕虜の命は保証しないと。あと・・・、これも送られてきました」

 

そう指揮官が1枚の写真を出した瞬間、ブルーチームの全員が息を呑んだ。そこに写っていたのは夥しい量の人工血液に濡れた1本の腕だった(・・・・・・)。誰もがその内容に顔をしかめる中、その腕の薬指に光る物をコンテンダーが見つける。

 

「失礼ですが、もしかしてこの人形と・・・」

 

「えぇ、誓約しています。私の副官(UMP9)です。鎮圧部隊の指揮を執っていました。こんな私を家族として、1人の男として愛してくれました」

 

指揮官は左手で右腕を擦りながらそう言うと、チーフは何か気づいたのか「義手か?」と尋ねる

 

「よく気付きましたね。えぇ、それと右足もです。実は正規軍の出身でね。E.L.I.Dとの戦闘で負傷し退役した後、上司の伝手でここに来て・・・。彼女とはその時からの仲なんです。勝手と承知でお願いします。彼女を、ナインを助けて下さい。」

 

ブルーチームの面々に頭を下げて懇願する指揮官に対し、コンテンダーとキャリコが頭を上げる様に言う。

 

「ブルーチーム、1時間後に出撃する。指揮官、ヘリの準備を頼む」

 

「・・・・・・ありがとうございます」

 

 

チーフの言葉を聞き再度頭を下げる指揮官だった

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後

 

 

ーJ11地区 人権団体拠点正面ー

 

「S-117からコンテンダー、こちらは位置に着いた。そっちはどうだ?」

 

「こちらコンテンダー、同じく位置に着きました。チーフ、本当に単独で大丈夫ですか?」

 

「問題ない。そちらもGSHのサポートに注意しろ」

 

「了解しました。ご武運を」

 

 

 

 

 

 

 

ー基地指令部 出撃直前ー

 

 

「作戦内容だが、まず拠点正面から117が突入、囮として派手に暴れる。奴等の注意が向いた隙にコンテンダー、AK-12、AN-94、M950Aの別動隊が拠点内部に侵入、人質を捜索及び解放する。なお別動隊にはGSH-18も同行する。彼女にはUMP9及び負傷者の応急措置をしてもらう予定だ」

 

「よ、よろしくおねがいします!」

 

「117、指定された武器は用意してある。それとヘリアントス上級代行官から本作戦における全ての禁止事項は無効と通達が来た。存分に暴れてくれ」

 

 

 

場面は戻り

 

 

 

 

ー人権団体拠点正面ー

 

 

「こちらS-117、作戦を開始する」

 

チーフは無線でそう報告すると、用意して貰った武器「BGM-71対戦車ミサイル」を構え、入口を周辺に敷設されたバリケードごと吹き飛ばした。

辺りに散らばる金属片やコンクリートの塊を余所にチーフは用意して貰ったもう1つの武器「LWMMG」を両手に構え中に入る。中では既に体勢を整えた数人が武器を構えていたが、彼等が銃爪を引く前にチーフのLWMMGが火を吹き撃ち殺していった

 

 

 

「こちらWA、S-117の拠点侵入を確認。そちらの侵入経路に敵は居ないわ」

 

「分かりました。こちらも作戦を開始します。周辺の警戒はお願いしますねWA」

 

 

後方から作戦エリア全体を監視していたWAの報告を受け、内部に侵入する別動隊。こちらは隠密作戦のため全員ダミーなしであり、最小限の戦力となっていた

 

 

 

 

「何なんだよコイツは!?」

 

「ぐ、軍用人形!?まさか正規軍が攻めてきたのか!?」

 

「た、助けてくれ!死にたくn」

 

突然の襲撃に慌てふためく人権団体の構成員たち。数は多いものの統率はされておらず、迎撃に出る者や逃げ惑う者がごちゃまぜになっていた。だがチーフはそんな彼等に一切の慈悲無く銃爪を引いていく。胴体を撃ち抜かれた者や頭が爆ぜた者、腕が千切れ悶える者で溢れかえる中、脚を撃たれ這いずる男を捕らえる

 

「人質はどこに居る?」

 

男は既に戦意を喪失しており、チーフの質問に震えながら答える

 

「S-117からコンテンダー。人質は地下だ」

 

「了解です。すぐに向かいます」

 

おかしな気を起こすなよ?と男に警告しチーフは先へ進む。それを見た男は助かったと安堵したが、またすぐに別の感情が生まれた。「あの人形は俺に命令したのか?この世で最も唾棄すべき人形が、この俺に・・・?」

その事実を認識した男は無意識に側にあった銃を拾い、チーフの背中目掛けて銃爪を引いた。吐き出された弾丸は全て命中したが、シールドに阻まれ彼を傷付ける事は出来なかった。そしてゆっくりとこちらを向くチーフはマシンガンの銃口を向け・・・そこで男の意識は途絶えた

 

 

 

一方コンテンダー率いる別動隊はチーフの情報で地下へと向かっていた。

 

 

「誰も居ないね」

 

「囮作戦が上手く行ってる証拠ね。人質の場所は・・・あそこね」

 

暗く静かな通路を渡りキャリコとAK-12が言葉を交わす。程なくして別動隊は目的の部屋へと辿り着く。扉に付けられた小窓を覗くと多数の人影が居り、鍵を壊し中へと入る

 

 

「だ、誰だ!?」

 

「落ち着いてください。私たちは貴殿方の救出に来ました。怪我はありませんか?」

 

「俺達の事は後で良い。彼女(UMP9)を早く助けてやってくれ」

 

救出された隊員たちの視線の先には別の扉があり、AK-12がその中を確認する。そこには左腕を切り落とされ、右腕を壁に拘束されるUMP9の姿があった

 

「GSH!」

 

「は、はい!今行きます!」

 

慌てて駆け付けるGSHが彼女の容態を確認する。失血と暴行でかなり弱っていたものの、機能停止はしておらずその場で応急措置を行う。

 

「他の人形は?」

 

「彼女を庇って・・・。ここに居るのが全員だ」

 

「分かりました。コンテンダーからS-117。人質の解放に成功しました」

 

「こちらS-117。了解した。WA、外の様子はどうだ」

 

「今のところ変化なしね・・・待って。複数の車両が拠点に向かってるわ、恐らく増援ね。到着まで約10分よ」

 

「分かった。ブルーチーム、撤退だ」

 

 

WAの報告にチーフは迷い無く撤退を宣言。程なくしてチーフと別動隊は合流し作戦エリアを離脱していった。

 

 

10分後、増援部隊が到着し見たのは体の至るところが欠損し血の海に倒れるかつての同胞達であった




これかぞ!!(右手グーパンで殴られる作者の図)


今回チーフが相手にした人権団体の戦闘員の数ですが、大体70~80人位だとお考え下さい。殆どあの世行きになりましたが

敵地攻略はチーフの十八番ですからね。仕方無いね(無慈悲)

NGシーン?無いよ(電池切れ)


誤字脱字報告、コメント宜しくお願いします


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act.7 Non-existent platoon


投稿する度にお気に入り&評価が増えて戦々恐々な作者です

いや、めちゃくちゃ嬉しいですし、今後もして頂ければ作者の創作意欲も刺激されるので是非とも宜しくお願いします




 

人質救出作戦から1週間後

 

 

 

ーJ11地区 G&K基地内の食堂ー

 

 

 

「コンテンダーおっはよー!!」

 

「おはようございますナイン。もう体の方は大丈夫なんですか?」

 

「もうバッチリだよ!今なら1人で過激派の残党をボッコボコに出来る位に調子が良いよ!」

 

 

シャドーボクシングよろしく両手を前後に動かしアピールするのは、先日の作戦で救出されたUMP9だった。メインフレームは新調、精神的な後遺症もなく副官としての業務に復帰していた

 

 

「そう言えばチーフだっけ?今何処に居るか知ってる?まだちゃんとお礼言ってないんだよねー」

 

「チーフでしたら指揮官に頼まれて隊員達の訓練に教官として参加してますね。」

 

 

朝食を食べつつ話を進める2人。ブルーチームはあの救出作戦の後、過激派残党掃討の為基地に駐留していた。過激派の大部分はあの作戦の折に「処理」されたものの、小規模ながら各地で活動が認められており対応に当たっていた。もっとも、その残党達も既に「処理」されており、今は束の間の休暇を楽しんでいた

 

 

仕事熱心だなぁと内心思いつつ、朝食のパンをかじるナイン。そこへ噂をしていたチーフが顔を出す

 

 

「任務だコンテンダー。30分後に指令部に集合だ」

 

「了解しました。すぐに向かいます」

 

「あっ、チーフ!この前は助けてくれてありがとね!」

 

 

ナインの感謝に「任務だ、気にすることはない」とチーフは答えその場を後にし、ナインは「また後でねー!」と手を振る

 

 

 

 

30分後

 

 

 

ー基地指令部ー

 

 

指令部にはブルーチームの他、基地指揮官と副官のUMP9、そしてスクリーンに映るヘリアントス上級代行官の姿があった

 

 

「休暇中済まないなブルーチーム。だが事態は急を要していてな。準備が整い次第、S06地区に向かってほしい」

 

 

ヘリアンから概要が説明される。内容としてはS06地区における鉄血の動向を探っていた小隊との通信が途絶えた為、その捜索及び救助。そして可能であればその小隊の協力をして欲しいと言うものだった

 

 

「S06地区所属の部隊じゃなくて態々私たちに回ってきたって事は、何か裏があるんでしょ?」

 

 

WAの指摘に対しヘリアンは頷く。

 

 

「詳しくは言えないが、その小隊には鉄血が開発した兵器の回収を命じていた。また該当エリアには複数の鉄血ハイエンド、しかもうち1体は新型という情報もあり、お前達に白羽の矢が立ったと言う訳だ」

 

 

なるほどね、と一同が頷く中ヘリアンは続ける

 

 

「S06地区までの移動手段については既にJ11地区指揮官に頼んでいる。作戦エリアに入る頃には夜になっているはずだ。夜間装備を用意した方が良いだろう。私からは以上だ」

 

「と言う訳で目的地までは私たちが責任持って送るよ。家族を助けるのは当然だしね!」

 

 

ヘリアンの後にUMP9が意気込む。それに対しチーフは「宜しく頼む」と答え一同は解散、出撃準備に入るのだった

 

 

 

 

 

 

 

ーS06地区 鉄血紛争地区の廃墟ー

 

 

「で、これからどうするのよ?」

 

「正直手詰まりね。ハンターだけならまだしも、処刑人も一緒に相手となると流石に私達だけじゃ手に余るわ」

 

 

冗談でしょ?と最初に聞いた少女は困惑し、その原因を作ったもう1人の少女が続ける

 

 

「今9を偵察に出してるわ。戻るまでは何も出来ないからそこの寝坊助と一緒に寝てたら?」

 

「遠慮しておくわ。抱き枕にされるのがオチよ」

 

「Zzz・・・むにゃむにゃ。もう食べられないよ・・・」

 

 

横を見ると寝袋に入りアイマスクをした別の少女が寝言を言っていた。そんな中、また別の少女が廃墟の中に入ってくる

 

 

「おかえり9」

 

「ただいま45姉!鉄血の包囲網だけど、予想以上に厳重だったよ。あと、雇い主(ヘリアントス)からの暗号通信も何とかキャッチ出来たよ」

 

 

(UMP9)から端末を受け取り内容を確認するUMP45。確認が終わると徐に立ち上がり、隣の少女に指示を出す

 

 

「仕事の時間よ416。そこの寝坊助を起こしてちょうだい」

 

 

それを聞いたHK416は寝坊助こと、G11を寝袋ごと蹴り上げる。

 

 

「ぎゃっ!?痛いよ416・・・。もうちょっと優しく起こしてよ・・・」

 

「アンタはこうでもしないと起きないでしょ?とっとと寝袋から出なさい」

 

 

背後でぎゃーぎゃー騒ぐ2人を他所に、UMP45は不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「今から会うのが楽しみね。ブルーチーム、そしてS-117さん?」









NGシーン


「今9を偵察に出してるわ。戻るまでは何も出来ないからそこの寝坊助と一緒に寝てたら?」

「遠慮しておくわ。抱き枕にされるのがオチよ」

「Zzz・・・むにゃむにゃ。416はふかふかで柔らかい・・・。45はまな板で固い・・ぐぅ・・。」


その瞬間、撮影現場の温度が急速に下がり、危険を察知した416はその場を離れた。


「かんとくー。ちょっとお時間貰っても大丈夫ですかー?」


UMP45が笑いながら質問するもその目は全く笑っていなかった。監督が了承すると彼女はG11を寝袋ごと引きずり現場を後にする


「ただいま45姉!ってあれ?45姉は?G11も居ないし」

「知らない方が身のためよ」


そう忠告する416。その後G11の悲鳴が鳴り響きその日の撮影は中止となった











G11は犠牲となったのだ。作者のネタの為。その犠牲にな




てな訳でドルフロ影の主役、404小隊の登場ですね。察しの良い方だとタイトルで気が付かれたかと思われますが

と言う事で次回からはキューブ作戦になります。勿論原作と比べて多少の改編を予定していますが・・・




誤字脱字報告、コメント宜しくお願いします



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act.8 Operation Cube #1


待たせたな!(待ってない?そっかぁ・・・)

今回は戦闘シーンは少なめです



ーS06地区 鉄血紛争エリアー

 

 

「こちらブルーチーム、作戦エリアに到着した」

 

「こちらでも確認した。先程、例の小隊との通信が一時的に回復し合流ポイントを指示してきた。先ずはそこに向かってくれ」

 

「了解した」

 

 

暗闇の中、輸送ヘリから降りヘリアンとの通信を終えたチーフは合流ポイントを確認する。そこは現在地からそう遠くない場所であるものの、完全に鉄血の勢力圏内であった

 

「行くぞ」とチーフは短く指示を出す。静寂の中、雲の隙間から漏れる月明かりに照らされた6つの影が廃墟を進んで行く

 

 

 

 

ー合流ポイント 森林地帯ー

 

 

「それで?一体何処の誰が援軍として来てるわけ?」

 

「うんうん。私も気になる!」

 

「あたしはどうでも良いよ・・早く寝たい・・」

 

 

一足先に合流ポイントに到着していた404小隊。周囲に敵が居ない事を確認し、隊長であるUMP45にここに来るであろう増援について訪ねていた

 

 

「G&K本社所属の小隊よ。メンバーはコンテンダー、M950A、WA2000、AK-12、AN-94、そして隊長はあの16Labが開発した次世代型の軍用戦術人形、そのプロトタイプという話よ」

 

「軍用人形?何者なのよそいつ」

 

「詳細は不明よ。けど、この前J11地区で起きた人権団体過激派の事件に絡んでるのは確かよ。何でもそいつ1人で拠点にいた約80人の構成員を殺っちゃったとか」

 

「・・・・・・」

 

 

UMP45の言葉に驚愕するHK416。16Labの名前が出た時点でろくでもないと考えていたが、予想の斜め上の答えに開いた口が塞がらない彼女だった。そんな中、彼女達が持っていた無線機から声が聞こえ状況が一変する

 

 

「獲物の分際で雑談とは良いご身分だな」

 

「「「!?」」」

 

「ぐぅ・・・ぎゃっ!?」

 

 

周囲を警戒する3人と416に蹴られるG11。すると何処からともなくこちらに近付く足音が幾つも聞こえてくる。

 

 

「遊びは終わりだ。そろそろ本気で狩らせて貰う」

 

「その割には貴女の姿がみえないんだけど?出てきたらどうなのハンター(狩人)?」

 

 

無線機からの声の主であるハンターに対し挑発するUMP45。しかし相手は挑発に乗ることなく冷静に答える

 

 

「それでは意味がない。狩りとは獲物をゆっくりと追い詰め、弱ったところを仕留めるのが醍醐味だからな」

 

「悪趣味ね」

 

「褒め言葉と受け取っておこう。では」

 

 

ハンターの言葉を最後に無線機は沈黙する。代わりに鉄血の部隊が展開する音が辺りに響き、少女達は迫り来る敵に対し銃を構え迎え撃とうとしていた

 

 

 

 

ーS06地区 鉄血前哨基地ー

 

 

「なぁ、俺達が出なくて本当に良いのか?」

 

「あぁ、奴等はあくまで餌に過ぎん。我々が出るのは本命(救助部隊)が来てからだ」

 

 

基地を預かるハイエンド人形達、処刑人とハンターはそう話しつつモニターを見る。そこには彼女達の部隊に包囲され、蹂躙されようとする(404)の姿があった

 

 

「けどよ、本当に来んのか?見捨てられる可能性だってあんだろ?」

 

「来るさ。ウロボロス(尾を飲み込む蛇)の情報は確かだからな」

 

「俺、アイツが苦手だ。なに考えてるか全然分かんねぇよ。」

 

「そう言うな。それに・・・。本命のご登場だ」

 

 

再びモニターを見る2人。そこには包囲部隊が突如現れた部隊に攻撃を受け、斃れる姿があった。そしてその部隊の先頭には見慣れない人形の姿があり、狩人は口角を上げる

 

 

「狩りの時間だ処刑人。久しぶりに全力といこうじゃないか」

 

「おうよ!」

 

 

前哨基地を後にするハイエンドの2人はそう言うと暗闇へと溶け込んでいくのだった

 

 

 

ー合流ポイント 森林地帯ー

 

 

「数が多すぎるよ!?45姉!このままじゃ私達磨り潰されちゃうよ!?」

 

「同感ね。ほらG11!サボってないでとっとと攻撃する!」

 

「もぅ人形使いが荒いんだから416は・・・「何か言った?」はいはい何でもございませんよー」

 

「みんなもう少しだけ耐えて。そうすれば援軍が来るわ」

 

 

迫り来る鉄血部隊。木々の間から現れるScoutの群れに対し416が榴弾を装填、発射する

 

 

「これでも食らいなさい!」

 

 

放たれた榴弾はScoutの真下に着弾、爆風によりScoutの群れは鉄屑へと変わる。その時、G11の悲鳴が聞こえる

 

 

「416!後ろ!」

 

「え?」

 

 

G11の声に振り向く416。そこには大型シールドと銃剣付きハンドガンを持ったGuardが居り、今まさにその銃剣を416へと突き立てようとしていた。

 

 

咄嗟に銃を向けようとするも間に合わないと悟り瞼を閉じる416。遠くから聞こえる銃声を耳にしつつ、自身に襲いかかるであろう衝撃を待つ。しかし待ってもその時は訪れず、416は恐る恐る瞼を開ける。そこには胸をシールドごと撃ち抜かれ、機能停止したGuardが横たわっていた

 

 

困惑する416に対し誰がが背後から声を掛ける。だがその声は彼女が慣れ親しんだ仲間のものではなく、低い男の声。振り返りつつ銃を構える416、そこに居たのは対物ライフル(I W S 2 0 0 0)を持った大きな影(チーフ)だった

 

 

「・・・・・・は?」

 

 

あまりの状況に変な声がでる416に対し、チーフは「下がっていろ」と警告するとIWS2000を構え銃爪を引く。轟音と共に吐き出された4発のAPFSDSは狙撃体勢を取っていた4体のJaguarを仕留めていた

 

 

「こちらS-117、1名確保した。そちらはどうだ?」

 

「こちらAN-94、3名確保しました。これで全員です」

 

「了解した。一度態勢を整える。ブルーチーム、撤退する」

 

「なら近くに鉄血に見つかってないセーフハウスがあるわ。そこに行きましょう」

 

 

UMP45の提案でセーフハウスへ向かうブルーチームと404小隊。任務はまだ始まったばかりであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー?????ー

 

 

 

「ウロボロス。状況を報告しなさい」

 

(404)本命(ブルーチーム)が掛かった。処刑人とハンターが今向かっておる」

 

 

薄暗い部屋の中で交わされる会話。1人はその場に居り、ツインテールとセーラー服が特徴の少女。もう1人はモニター越しに、メイド姿の女性が映っていた

 

 

「相手はあの404に加え、あの16Labが開発した軍用人形が率いる小隊です。分かっているとは思いますが油断しないように」

 

「私を誰だと思っておる。あの蠱毒を勝ち抜いた私に勝てるものなど居るわけなかろう」

 

「その傲慢が命取りにならないことを祈っていますよ、ウロボロス」

 

 

モニターに写ったメイド姿の女性、代理人はそう言うと通信を切る。残されたウロボロスは誰もいない部屋で独り言を呟く

 

 

「ふん、貴様に言われる迄もないわ。さて、楽しい楽しい夜の始まりといこうではないか。なぁ?404、そして117とやら?」

 

 

笑みを浮かべ右手の人差し指を唇に当てつつ、その場を後にするウロボロスの姿があった・・・

 

 

 

 

 

 




NGシーン


迫り来る鉄血部隊。木々の間から現れるScoutの群れに対し416が榴弾を装填、発射する


「これでも食らいなさい!」

放たれた榴弾はScoutの真下に着弾、しかし爆発は起きずScout達は困惑し周囲を旋回する。


「不発弾!?クソッ!私は完璧なのに。どうして・・・!」


異変に気付いた416は榴弾を回収するべく歩き出す。しかしそこで彼女を不運が襲う。榴弾まであと1mという位置で彼女は小石を蹴飛ばしてしまい、見事榴弾に命中、起爆してしまう


「416!?」


近くで見ていたG11が驚きの声を上げる。爆風が収まると416は倒れており、その頭上に心配するScout達が浮いていた


「だ、大丈夫?」


心配して近付くG11。それに対し416は一言、「私は完璧・・・完ぺき・・・カンペキ・・・ガクッ」

「416が死んだ!この人でなし!!」


G11の絶叫が響き撮影は中止となるのであった







チーフに対する期待値がうなぎ登り・・・まぁ大丈夫でしょ!だってチーフだし(他人事)

次回は対鉄血ハイエンド戦が主軸になります



誤字脱字報告、コメント宜しくお願いします





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act.9 Operation Cube #2


遅れて申し訳ありませんでしたぁ!!(焼き土下座)


いやね?私生活何かと忙しいし、何より頭の中で構想がどんどん出てくるんだけどそれを上手く文章化出来なくてね・・・(言い訳)


あと前回ハイエンド戦って予告しましたけど無理でした(力尽きる音)


また評価とお気に入りが増えてる・・・ご期待に答えられるようにこれからも精進致しますので、今後とも宜しくお願いします




ーセーフハウス地下ー

 

 

「まずは助けてくれて感謝するわ。早速だけど今回の作戦について、雇い主(ヘリアン)から何処まで聞いてるのかな?」

 

「雇い主?貴女達はグリフィンの正規部隊ではないのですか?」

 

 

コンテンダーの問いに対し45は「そこからかぁ・・・」と少し嘆きつつ話を始める

 

 

「私達はグリフィンに雇われた非正規人形部隊(404 Not Found)、まぁ傭兵みたいなものね。雇い主は貴方達の上司であるヘリアントス上級代行官。依頼内容は鉄血が所有するジャミング装置の回収。それとこの地区に居る鉄血ハイエンド人形の排除よ。まぁこっちは出来たらだけどね」

 

 

45はブルーチームの面々、特にS-117に視線を向け話を続ける

 

 

「ハイエンド人形は分かっているだけで3人。処刑人とハンター、そしてそいつらを統率するより上級の人形が居るわ。ちなみにだけど現時点でジャミング装置の場所は不明、よってその3人のうち誰かから場所を聞き出す必要があるわ。それと処刑人とハンターだけど、強化処置を受けてるみたいでかなり手強いわ。どちらも一筋縄ではいかないはずよ」

 

 

 

状況説明が終わり、最後に「貴方ならどうする?S-117さん?」と問いかける45。それに対しチーフは「ジャミング装置を回収して、全員で帰還する」と答える。それを聞いた45は笑みを浮かべ右手を差し出す。チーフもそれに応じ右手を差し出そうとするが、爆発音と同時に衝撃が部屋を襲い遮られる

 

 

 

「もう少し隠れられると思ったんだけど・・・、まぁ良いわ。みんな、仕事の時間よ。ブルーチームはそこの緊急脱出路から先に脱出してちょうだい。私達は敵を迎撃しつつ脱出するわ。外で合流しましょう」

 

「いや、戦力は多い方がいい。コンテンダー、チームを率いて先に脱出しろ。俺は404と行く」

 

「・・・分かりました、皆さん行きましょう。チーフ、お気を付けて」

 

 

チーフの命令で先に脱出するコンテンダー達。対して45は「優しいのね」と言うも当の本人はその言葉を無視して大型拳銃(デザートイーグル)を両手で構え、一言「行くぞ」と言い先陣を切る。その後を45、9、416、そしてG11の順で追っていく

 

 

非常灯が灯る通路を進むチーフ達。既に爆発音や振動は無く、彼らの歩く足音のみが響いていく。そんな中、チーフのモーショントラッカーが複数の動く反応を感知する

 

 

「来るぞ」

 

 

短い言葉と共に近くの物陰に隠れ迎撃態勢を取る404小隊とチーフ。それとほぼ同時に鉄血の人形Guardが複数現れ、45の「立ったまま死ね!」という言葉が合図となり攻撃が始まる

 

 

先頭に居たGuardは自慢の盾を構える暇もなく5人からの集中砲火を受け機能を停止する。後続のGuard達は仲間の作った時間で盾を構えジリジリと距離を狭める。その背後にはVespidとRipperの部隊が控えており、既に劣勢となっていた

 

 

「416、俺の合図で榴弾を撃て」

 

「了解!」

 

 

チーフは大型拳銃(デザートイーグル)から対物ライフル(I W S 2 0 0 0)に銃を切り替え銃爪を引く。射線上に居た人形達はなす術もなく放たれたAPFSDS弾の餌食となり斃れていく。Guardの列に穴が空いた事を確認したチーフが「今だ!」と416に指示する

 

 

「私は完璧よ!」

 

 

そう416は呟くと榴弾を発射、鉄血部隊の中央付近に着弾し爆発を引き起こす。爆発により音と視界が利かない中、爆煙から人影が飛び出してくる

 

 

チーフはその人影に対し咄嗟に大型拳銃(デザートイーグル)を向けると、何かが高速で動く音がする。その瞬間、銃身が半ばから斜めにズレ落ち使い物にならなくなる

 

 

「Bruteよ!9、援護して!」

 

「了解!」

 

 

45と9が牽制射撃するもBruteは即座に反応。壁や天井を使い素早く弾幕を回避、態勢を立て直し再びチーフ達に迫るも9が閃光手榴弾を投擲、Bruteの動きが一瞬止まりそこをG11が仕留める

 

 

「これでいい?」

 

「上出来よG11、良くやったわ」

 

 

416の言葉を聞いたG11は「じゃあおやすみー」と瞬く間に用意したアイマスクと寝袋で寝ようとするが、416に阻止される。そんな中チーフは鉄血部隊の残骸からRipperが使うサブマシンガンを2丁、それとBruteが使っていた大型ナイフを回収、先へと急ぐ。

 

 

 

その後地上にたどり着いた5人。彼らを待ち構えていたのは鉄血の装甲部隊、そしてそれを率いるハンターの姿だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー同時刻 緊急脱出路道中ー

 

 

 

「これ、何処まで続いてるんだろう・・・」

 

「大分時間が経ちましたがまだ出口が見えませんね」

 

 

オレンジ色の非常灯が灯る通路を進むブルーチーム。その先頭を歩くキャリコとコンテンダーが少し不安を漏らす。幸い鉄血の部隊には遭遇しておらず、消耗は最小限に済んでいた

 

 

「ねぇAK-12、この先に鉄血が待ち受けてると思う?」

 

「可能性はゼロじゃないけど・・・。半々と言ったところかしら?」

 

「その時は私たちだけで何とかするしかありませんね。あっ、皆さん。出口が見えました!」

 

 

ぼんやりと明かりが見え、駆け足になるコンテンダー達。外に出るとそこは完全な森の中であり、鉄血の部隊の姿は無かった

 

 

「拍子抜けね。てっきり鉄血の大部隊が待ち受けてるかと思ったわ」

 

「それならそれで好都合よ。早くチーフ達と合流しましょう」

 

 

WAの言葉にAK-12が答え、方角を確認する。その時、木の枝部分から何かが飛び出し、背後からAK-12へと襲い掛かる

 

 

「っ!?AK-12!伏せて!!」

 

 

AN-94の警告に素早く反応し伏せるAK-12。その刹那彼女の上半身があった場所を大型の剣が振り抜かれる。AK-12は襲撃者に対し回し蹴りを放つも相手はバク転で回避、そこを狙うようにAN-94が銃撃するも手に持った大型の剣で弾かれてしまう

 

 

「はっ!今のを避けるとかやるじゃねーか!」

 

 

黒髪を靡かせながら襲撃者(処刑人)は笑いながら言い放つ

 

 

「奇襲を仕掛けるとは良い趣味してるじゃない、処刑人」

 

「戦いに卑怯もクソもないからな。今度は確実にその首撥ねてやるよ」

 

 

少しイラつくAK-12に対し挑発する処刑人。

 

 

「纏めて相手してやるよ!お前らグリフィンのガラクタなんざ俺1人で十分だからな!!」

 

 

得物を肩に載せブルーチームに対し大声で処刑人は言い放つのだった

 

 

 





次回こそ対ハイエンド戦になります。たぶんそれだけで1話使う予定になると思います


今回はNGシーンも無しです



誤字脱字報告、コメント宜しくお願いします


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act.10 Operation Cube #3


早いものでもう10話目となりました

こんな駄文に評価やお気に入り登録して頂きありがとうございます


これからもDoll meets Human?を宜しくお願い致します


それでは本編をどうぞ


 

ーブルーチーム 森林地帯にてー

 

 

 

「オラオラどうした!?逃げてないで少しは反撃したらどうだ!?」

 

「言われなくても・・・。そうするわよ!!」

 

 

背後から迫る処刑人に対し振り向き射撃態勢を取るWA。呼吸を整え射線を確保し電脳内で「アイツ(チーフ)が出来るんだから私だって・・・!」と 呟き銃爪を引く。吐き出された3発の弾丸は真っ直ぐ処刑人へと向かうも全て切り払われる

 

 

「狙いが甘いんだよ!」

 

攻撃を全て防がれ軽く動揺するWAに一気に近付き袈裟斬りする処刑人。WAはそれを何とか躱すも追撃として繰り出された蹴りは回避できず蹴り飛ばされる

 

 

「随分と呆気ないねぇが、まずは1人目・・・っとぉ!?」

 

転がるWAに近付き仕留めようとする処刑人だったが、側面から気配を感じ後ろへ飛び退く。ワンテンポ遅れて彼女が居た場所を弾丸が通り過ぎる

 

 

「AK-12とAN-94はそのまま援護射撃を!キャリコは2人のカバーをお願いします!WA、大丈夫ですか?」

 

 

「えぇ、何とか。強化されてるって話だったけど予想以上よ。まさかライフル弾を切り払うとは思わなかったわ」

 

 

コンテンダーの肩を借りつつ立ち上がるWA。眼前ではAK-12達3人に対し数の不利を物ともしない処刑人が大立ち回りを演じていた

 

 

「こんなもんかよグリフィンのガラクタ共!もっと俺を愉しませてみろよ!!」

 

 

向かってくる弾丸を躱して左手のハンドガンで牽制しつつ剣を逆袈裟斬りの要領で振り抜く処刑人。放たれた斬撃がAN-94を襲うも彼女はそれを回避する。斬撃はそのまま彼女の後ろにあった木に命中し、断面がズレそのま音を立てて倒れていく

 

 

「・・・バカみたいな威力ね」

 

「はい、いくら強化されてると言っても限度があります。恐らくですが、リミッターが解除されてる可能性が・・・」

 

「そんなことして体が持つの?」

 

「本来なら無理ね。多分だけど痛覚も遮断してるはずよ。じゃなきゃあそこまで動けるはずないもの。どう攻略するコンテンダー?」

 

木々の影に隠れるAK-12達。それに対しコンテンダーは無線機越しに指示を行う

 

 

「そうなると一撃でコアを破壊して機能を停止させるしかありませんね。3人はそのまま処刑人への撹乱をお願いします。私とWAで対応します」

 

「何か良い案があるのかしら?」

 

「正直リスクは高いですが・・・、大丈夫です。私も運は持ってる方なので。WA、サポートをお願いしますね」

 

「本当にやる気?まぁ良いわ。頼まれた以上はキッチリ果たさせて貰うわ」

 

 

コンテンダーの合図と共に行動を開始するAK-12達3人。処刑人に対し牽制射撃を行いつつ指定されたポイントへと誘導していく

 

 

「なに企んでるかわかんねぇが、来んならとっとと来やがれ!纏めて叩き斬ってやるからよ!!」

 

「生憎そう簡単に切られるつもりは無いわ」

 

 

イラつく処刑人に対しさらっと流すAK-12。空になったマガジンを交換し銃爪を引くも吐き出された弾丸は全て切り払われるか剣の腹で防がれる。暫くそのような攻防戦が続き3人は指定されたポイントに到着する。そこには彼女たちブルーチームの副官であるコンテンダーが1人立っていた

 

 

「あぁ?追いかけっこが終わったと思ったら今度はサシで勝負ってか?上等じゃねぇか、一瞬で真っ二つにしてやるよ!!」

 

 

コンテンダーを見つけた処刑人は勢い良く近付き斬りかかる。それをバックステップで躱したコンテンダーはそのままハイキックからの回し蹴りを行う。ハイキックは身体を逸らし、回し蹴りは剣の腹で受け流した処刑人はその衝撃を利用しそのまま後ろへ下がる

 

 

「ハッ!他のガラクタ共よりは出来るみてぇだな。良いぜ、相手してやるよ!!」

 

 

弾切れになったハンドガンを捨てた処刑人は連続で斬撃を飛ばしつつ間合いを詰める。それに対しコンテンダーはその場から一切身動きせず処刑人を見つめる。斬撃が彼女をあと少しで襲う所まで近付いた時ぼそりと何かを呟いた

 

 

「・・・コア及び義体のリミッター解除。電脳による反応速度の制限解除を確認。脚部及び腕部の制限解除を確認。限界時間は60秒・・・カウント開始!」

 

 

そこからコンテンダーの動きは異常の一言だった。複数の斬撃をまるで間を縫うように回避し近付く処刑人に対し銃を片手で構え銃爪を引く。弾丸は剣の腹で防がれるもそこをミドルキックで更に追撃する

 

 

「なんだコイツ!?さっきまでの連中とは動きが違いすぎる!!だが・・・おもしれぇじゃねぇか!!」

 

 

蹴られた事で後ろに吹き飛ばされる処刑人は空中で1回転したのち着地し、低い姿勢で勢い良く飛び出すと剣を左から横へ一閃する。コンテンダーはそれをバク転で難なく回避しそれと同時に弾丸を再装填、空中で弾丸を吐き出す

 

 

「良いぜ!お前みたいな奴は初めてだ!最っ高にハイってやつだぜ!!」

 

 

襲い掛かる弾丸を剣で縦に一閃する処刑人。その目は大きく見開かれコンテンダーを見据えており、その表情は戦いを楽しんでいた。一進一退の攻防が2人の間で繰り広げられる中、コンテンダーが次の弾丸を再装填し終えた辺りで動きが急激に鈍くなる

 

 

「・・・時間・・・・・・ですか・・・」

 

 

彼女の電脳内でありとあらゆるエラーメッセージが流れる。コアの過負荷や人工筋肉の損傷、フレームの歪みなどハード・ソフト問わずその体は悲鳴をあげていた。ゆっくりと後ろに倒れるコンテンダーを見た処刑人はその隙を見逃すはずもなく、袈裟斬りをするべく剣を振り上げる

 

 

「貰った!!・・・・・・なっ!?」

 

 

剣を振り上げた瞬間、彼女の右手首の辺りを何かが貫く。人工筋肉が裂けフレームが砕ける音が聞こえ剣を握った状態の右手が千切れ宙に浮かぶ

 

 

「これで、終わり・・・、です・・・!!」

 

 

最後の力を振り絞り銃口を向けるコンテンダー。それは処刑人の胸へと向けられており、彼女は倒れる寸前に銃爪に指を掛け、ゆっくりと引いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わりぃハンター。そっちに行けそうにねぇや」

 

 

仰向けに倒れる処刑人。その胸には銃撃による大穴が開けられており、彼女のコアを完全に撃ち抜いていた。

徐々に意識を失いつつある中、彼女は戦友であるハンターを案じていた

 

 

「あんまり無茶すんじゃねぇぞハンター。お前は俺が居ないとすぐに無茶すっからな。俺が殺られたの知って変な事しなきゃいいが・・。まぁ、今さら言っても無駄か。ハンター・・・、お前と組めて・・・楽しかったぜ・・・。」

 

 

そう言い終えゆっくりと瞼を閉じその機能を停止する処刑人。その近くには彼女の愛用していた剣が刺さっており、墓標の様に佇んでいた

 

 

 

 

 

 

 

「まだ生きてる?コンテンダー?」

 

「えぇ、何とか。ですがペルシカ主任に怒られますねこれは」

 

 

戦闘が終わり木々の間から出てくるAK-12たちに彼女は苦笑いしつつ答える

 

 

「ありがとうございましたWA。良い狙撃でしたよ」

 

「全く・・・。見てるこっちがハラハラしたわよ。でも言ったでしょ?頼まれた以上はキッチリ果たすって」

 

「そうでしたね。それはそうとすいません、誰か手を貸してくれませんか?先ほどからエラーが酷くて起きれそうにないので・・・」

 

 

コンテンダーの言葉にキャリコが反応しその身体を起こしつつ「無茶しすぎ」と叱責し、彼女は「ご心配をおかけしました」と謝罪する

 

 

「どう?歩けそう?」

 

「肩を借りれば何とか。AK-12、チーフ達の方角は分かりますか?」

 

「大体ならね。行くの?」

 

「勿論です。たとえ戦力にならないとしても」

 

「そう・・・。なら仕方ないわね。行きましょうか」

 

 

コンテンダーの決意を感じたAK-12は渋々了承し、案内を始める。その後ろをキャリコに支えられつつコンテンダーはついていくも1度振り向き、仰向けに眠る処刑人へと視線を向ける。それもすぐに戻し、チーフ達の元へと進むコンテンダーだった




NGシーン












蹴られた事で後ろに吹き飛ばされる処刑人は空中で1回転したのち着地し、低い姿勢で勢い良く飛び出すと剣を左から横へ一閃する。コンテンダーはそれをバク転で難なく回避しそれと同時に弾丸を再装填、しようとしたがタイミングが合わず弾丸がこぼれ落ちる


「あっ・・・すいません!」

「気にすんなコンテンダー。気楽にいこうぜ」


謝罪するコンテンダーに対し気にする様子のない処刑人はそう答え彼女を励ます。監督の指示で配置に戻り撮影が再開される




take2


「本当にごめんなさい!」

「気にしない気にしない」




take10

「こ、今度こそ・・・」

「なぁ監督、ちょっと休憩しないか?ダメ?」



take50


「・・・・・・・・・グスッ」

「あぁもうこれ考えた奴誰だ!?今すぐ出てきやがれ!!」





結局このシーンだけで丸一日費やし、take数は100を過ぎてから数えるのを止めたとのこと








1話で終わると言ったな、あれは嘘だ(ソンナー)


いやね?書いてたら思いの外膨らんでしまってね?ハンター戦が書ききれませんでした(土下座)


あと処刑人好きの方々に刺されないかなこれ・・・







コンテンダーについてですが、ここで軽くご説明をさせて頂きます



・コンテンダー

IOPの正規製造人形にしてペルシカ主任による改造処置を施された特殊人形

M4A1の人形指揮システムを限定ながらも搭載し、人間の指揮官なしでも少人数の人形を指揮することが可能

・リミッター解除について

本来なら人形はリミッターの解除は出来ない(負荷が掛かり自身が傷つく=自傷行為となる為)のだが、指揮システム導入の際にこちらも組み込まれた。それに伴いコアやフレーム、人工筋肉の強化措置も行われ短時間ながらも全力稼働が可能となった。しかしその後は過負荷により性能は極端に低下、オーバーホール必須な状態になる



リミッター解除からの全力稼働は某魔術師殺しさんの対麻婆戦をイメージしてもらえれば良いと思います


次はハンター戦です。1話で終わるかなぁ・・・



誤字脱字、コメント宜しくお願いします


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act.11 Operation Cube #4



皆様ご無沙汰しております、作者です

約半月振りの投稿を持って生存報告とさせて頂きます

仕事が忙しかったり腰痛めたりしてモチベーションが急降下した結果、進捗が遅れに遅れて牛歩どころかカタツムリレベルになってました

あと気付いたんですけど、評価のバーが赤くなってません!?驚きを通り越して恐怖を感じております(感謝の焼き土下座)


これからもDoll meets Human?を宜しくお願い致します


ブルーチームと処刑人の戦闘とほぼ同時刻

 

 

 

ーチーフ&404 セーフハウス正面入口ー

 

 

 

 

 

「・・・7!・・きて!起きて・・17!目を覚ましなさい117!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霞む視界、鳴り響く耳鳴りの中で誰かの声に呼ばれ僅かに動くチーフ。徐々に意識が鮮明となりバイザーに表示されたHUDの情報を確認する。そこにはシールドの約8割の消失、耐衝撃措置として一時的にアーマーのロックが掛かっていた。

 

 

「117聞こえてるの!?聞こえてるなら返事しなさい!!」

 

「っ!?すまない、状況はどうなってる?」

 

「ハンターよ。アイツ私達を確認したと同時に配下の装甲機械兵(N e m e u m)に砲撃を命じたのよ。おかげでこっちは大混乱、しかも1発が貴方に直撃したんだから正直冷や汗が止まらなかったわ。今9達が応戦してるけど制圧されるのも時間の問題ね」

 

 

爆発音越しに会話をする45とチーフ。シールドのリチャージにアーマーロックの解除を確認した彼は軽く体を動かしつつ装備を確認する。幸い紛失や破損はなくIWS2000を背に、RipperのSMGを両手に持ちながら辺りを見回す。視線の先には10数体の装甲機械兵(N e m e u m)とその護衛の装甲人形達(A e g i s)を相手にするもその装甲に苦戦する9、416、G11の姿があった

 

 

「悲しいけど、私達の武器じゃあの装甲の相手は荷が重いわ。出来れば変わって欲しいのだけれど」

 

「それは構わん。だがお前達はどうするんだ?」

 

「私達は何処かで高みの見物を決め込んでる鉄血のクズ(ハンター)を探しだしてスクラップにするわ」

 

「いいだろう。タイミングは任せる」

 

「よろしくね。9・416・G11、聞こえた通りよ。今から発煙手榴弾(スモーク)を投げるからそれを合図に1度後退して。私と合流したらそのままハンターの捜索よ」

 

 

3人に指示を出すと45はそのまま手榴弾のピンを抜き、3カウント数えると同時に前方に投げる。手榴弾は装甲部隊の手前に落下すると勢い良く煙を吐き出し視界を塞いでいく。それを確認したチーフは煙の中へ突入、両手のSMGで弾をバラ撒きつつ護衛のAegisに近付く。対するAegisは弾丸の雨を左手のシールドで防ぎながらゆっくりと歩いてくる

 

 

「正面からは無理か。なら・・・!」

 

 

そう呟くとチーフは大きく跳躍、Aegisの背後に着地すると同時に右手のSMGを捨て回収していたBruteの大型ナイフを装甲の薄い背中へと深く突き刺す

 

 

「ギギギ・・・ガガ・・・・・・」

 

 

背中から胸部へとナイフが貫通、直後小さく体を震わせた後Aegisはその機能を停止させた。オイルが纏わり付くナイフを引き抜くと別のAegisが横から迫り右手に持った鈍器を振り落とす。それをバックステップで回避しつつ左手で受け流す。そこから右腕の関節を狙ってナイフを一閃し切断、そのままナイフを逆手に持ち勢い良くうなじに突き刺し2体目を仕留める

 

 

「次は・・・っ!?」

 

 

ナイフを引き抜くと同時に視線に入ったのは砲撃態勢を取るNemeum、チーフは咄嗟に左手に持っていたSMGを捨てAegisが持っていたシールドを奪い身を隠す。次の瞬間鈍い音が響き着弾点が一瞬赤熱し、青白い火花の様な物が飛び散った

 

 

「エネルギー弾か。厄介だが・・・これなら問題ないな」

 

 

チーフは大型ナイフを仕舞い、代わりにAegisが握っていた鈍器を拾う。その姿はさながら色違いの装甲人形である彼は1人、装甲部隊へと向かっていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、UMP45の指示で合流した404小隊。彼女達は暗闇の中ハンターの捜索を開始するが、逆に待ち伏せを受け苦戦を強いられていた

 

 

 

「チッ!ちょこまかと動き回って・・・。これじゃ狙いがつけられない!」

 

「わぁーめーがーまーわーるー」

 

 

翻弄される416とG11。彼女達の頭上には木々の間を自由自在に、それも高速で動き回るハンターが支配しており、一帯はさしずめ彼女の狩場と化していた

 

 

「どうした?逃げ回ってないで少しは反撃したらどうだ?」

 

「ならこっちに降りてきたらどう?そしたらさっきのお礼も兼ねて蜂の巣にしてあげるわよ?」

 

「悪いが遠慮しておこう。みすみす地の利を放棄するほど馬鹿じゃないんでな」

 

 

空中から弾丸のシャワーを降らせるハンター。45はそれを回避しつつ反撃するも木々の間を縦横無尽に飛び交うハンターに届くことはなく、それを嘲笑うかのように今度は死角から弾丸のシャワーを45へと浴びせに掛かる

 

 

「45姉はやらせないよ!」

 

 

9は弾幕を張りつつ、閃光手榴弾をピンが付いた(・・・・・・)状態で空中に投げる。ハイエンド人形とは言え高速で、しかも数センチ程度のピンの有無を一瞬で判断する事は難しかったのか、ハンターは空中で身を翻し一旦後退する

 

 

「ありがと9。助かったわ」

 

「どういたしまして。でもこれからどうするの45姉?このままだと私達やられちゃうよ?」

 

「大丈夫よ9、ちゃんと手は考えてあるから。416、まだ生きてるなら私達と合流して。G11は今から指定するポイントに向かってちょうだい」

 

「全く。人形使いが荒いわね。了解よ」

 

「えぇーやだよー。疲れたしお家に帰りたい」

 

「ラムレーズンアイス1ダース」

 

「すぐに向かうよ」

 

「「「ちょろいなぁ・・・」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきの手榴弾はブラフだったか。チッ、小賢しい奴等だ。ウロボロス、そちらの準備はどうだ?それと頼んでいた処刑人への援護はどうなった?ウロボロス?返事をしろ」

 

 

木の枝に立ち周囲を見回しつつ、ハンターはウロボロスに通信を試みる。しかしウロボロスからの応答は無く、静寂がハンターを苛立たせる

 

 

「通信状況に問題はない。と言う事は意図的に無視している?一体何を考えているんだウロボロスの奴は。処刑人の事も気になる。こちらもそろそろ仕留めに掛かるか・・・っ!?」

 

 

ハンターが動き出そうとした時、足下の枝が爆発音と共に砕け散った。爆風で大きく体勢を崩すも最小限の動きで修正、地面に着地するがそこを木の影から現れた2つの人影に突かれる。

 

 

「いくよ9!」

 

「オッケー45姉!」

 

 

左右から襲い掛かるUMP姉妹。その手にはSMGではなくコンバットナイフが握られており、ハンターに対し白兵戦を仕掛ける。近接格闘(C Q C)という想定外の戦術に加え、UMP姉妹のコンビネーションに翻弄されるハンター。既に狩る側と狩られる側は入れ替わっており、ナイフによる斬撃や刺突を回避するだけで精一杯だった

 

 

「ほらほら、避けてるだけじゃ私達は倒せないよ?」

 

「チッ!調子に乗るnガッ!?」

 

 

ナイフに注意を逸らされた所を側頭部に回し蹴りの直撃を受け体がよろけるハンター。電脳を揺さぶられ意識を失いそうになるのを堪えつつ、追撃をバックステップで回避する。距離を稼げた事で射線が通り両手のハンドガンを乱射、弾幕を張ることでUMP姉妹が近付けないようにする

 

 

「このまま一気に・・・。いや、既に形勢は不利か。1度撤退してウロ・・・処刑人と合流した方が賢明か」

 

 

口の中の人工血液を吐き出しつつ両腰の機動装置からワイヤーを射出、近くの木の幹に撃ち込まれるのと同時に大きく跳躍する。重力から解放されたハンターはそのままワイヤーに引っ張られ森の奥へ消えようとする。が、突然ワイヤーが緩み力が感じられなくなる。唖然とするハンターが見たのは半ばから切られたワイヤーと、自分に対し榴弾を撃ち込もうとするHK416の姿だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ジャミング装置の場所を教えて貰いましょうか?」

 

 

榴弾が直撃し体のあちこちからフレームが露出、片眼が潰れるも何とか生きていたハンターに45は優しく尋ねる

 

「私が・・・教えると思うか・・・?」

 

「教えてくれればここで見逃してあげる。嫌って言うならそうね・・・。貴女の残骸をグリフィンにでも売り渡すってのはどう?結構良い値段がすると思うんだけど」

 

「脅しか?そんなもの「流石は404小隊。噂に違わぬ実力のようだな?」」

 

 

ハンターとの会話に突如入り込む第三者の声。周囲を警戒する45達を余所に第三者は話を続ける

 

 

「下級とは言えハイエンド、しかも強化措置を受けたハンターをこうまで追い詰めるとは・・・。グリフィンにも骨のある人形が居て安心したぞ?雑魚ばかりではつまらんからの」

 

「貴女が3人目のハイエンドって所かしら?名前も名乗らないのはどうかと思うんだけど?」

 

「あぁ、これは失礼した。我が名はウロボロス。電子の海で行われた蠱毒の勝利者にして、鉄血工造の上級AIである」

 

「自己紹介ありがとう。それで?その上級AIが一体何のようかしら?」

 

「なに、簡単な事よ。ちょっと役立たずの駒を始末するだけさ」

 

 

ウロボロスがそう言い終えるのと同時にどこからともなくミサイルの群れが飛来し、ハンターもろとも404小隊へと襲い掛かっていった







自分で作っておいて言うのも何なんですが、ちょっと今回は駆け足過ぎでしたね・・・反省してます


一応補足になりますが、ハンターのアレは某進撃の立体機動装置を元にしています。最初は二丁拳銃だからガン=カタにしようかと思ったんですが、難易度高過ぎました・・・。


ちなみにワイヤーを撃ち抜いたのは単独行動取らせてたG11になります。


さて、次はいよいよ大詰め、ウロボロス戦になります


が、多分普通には終わらないんだろうなぁ・・・


誤字・脱字報告、コメント宜しくお願いします


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act.12 Operation Cube #5

どうも、お久し振りです。人生(社会)という強敵を前に逃げ出していた作者です。

このまま埋もれさせても良かったんですが、一度書いたら最後まで書き通せってどっかの偉い人が言ってたと思うので続けることにしました。

更新は不定期の予定ですが、調子が乗れば連投するかも?


それでは本編をどうぞ








ー森林地帯 ミサイルによる爆心地付近ー

 

 

「404の連中は逃げたか・・・・・・」

 

 

地面が抉れ、倒れた木から小さな火が燻る中ウロボロスは 1人呟く。無論彼女はあの一撃で全員仕留められるとは思っておらず、ハンター(役立たず)の処分さえ出来れば良いと考えていた。事実、目の前には両手を失い、胸が裂けコアを露出し機能停止寸前になったハンターだけが残されていた

 

 

「ウ・・・ロ・・・きさ・・・ま・・・」

 

「お役目ご苦労だったなハンター。出来れば1人くらいは狩って欲しかったが、まぁ初めから期待などしていなかったから安心して死ね」

 

 

ウロボロスはそう言い終えると両腰の複合兵装から機銃を展開、ハンターのコアを撃ち抜く。

 

 

「・・・さて、まだ夜は始まったばかり。鬼ごっこに興じるのも悪くはなかろう。どこまで逃げられるか見物だな?」

 

 

指を鳴らすウロボロス。その背後には2つの大きな影が聳え立っており、獲物を求めゆっくりと動き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ウロボロスのミサイル攻撃を辛くも逃げ延びた404小隊。爆風による傷の手当てをしつつ、117やブルーチームと合流するべく行動しようとしていた

 

 

「痛っ、もう少し優しく出来ないの?」

 

「だったら自分で巻きなよー。結構難しいんだよこれ?」

 

「アンタは普段サボってばかりなんだから、このくらいやって当然でしょ?ほら、さっさと巻く」

 

「はいはい、仰せの通りにしますよー」

 

「2人とも急いで。あの蛇女(ウロボロス)に見つかる前に117達と合流出来ないと私達が危ないのよ?」

 

「45姉!前方に敵影は確認出来ないから移動するなら今だよ!」

 

「了解よ9。ほら416にG11、いつまで時間掛かって・・・伏せて!!!」

 

 

痺れを切らして後ろを振り向くUMP45。視界には包帯を巻くG11とそれに文句を言う416。そしてその奥、暗闇の中を月明かりに照らされ一瞬何かが光る。それを見た45は叫びながら2人を押し倒し、近くにいた9も驚きつつ指示に従いその場に伏せる。直後、1本の木の幹が半分ほど吹き飛び、重力に引っ張られゆっくりと倒れた

 

 

「一体何だっていうの!?」

 

「敵さんのご登場よ!ほら立って!」

 

「もうお家帰りたいよぉ・・・」

 

「不味いよ45姉!あれ多脚戦車(M a n t i c o r e)だよ!?しかも2体居る!!」

 

 

よりによって一番相手にしたくない奴が出てきたか!と45は内心悪態を吐く。半泣き状態のG11を引き起こし、416に渡しながら指示を出す。

 

 

「撤退よ!あんなの正面から相手してたら(コア)が幾ら有っても足りないわ!9!閃光手榴弾を!少しでも時間を稼ぐ!」

 

「了解!カウント3・・・2・・・1・・・投擲開始!」

 

 

投擲と同時に撤退を開始する404小隊。その姿を認識したManticoreは攻撃を開始しようとするが、足元に落ちた閃光手榴弾が起爆、辺りが一瞬真っ白になる。急激な光量の増加により一時的にセンサーがマヒし、行動不能になる敵を尻目に全力で走る少女たち。対するManticoreもセンサーの異常から短時間で復帰、砲撃しつつジリジリと距離を詰める

 

 

「こうなったら私の榴弾で・・・」

 

「そんなの1発2発撃ち込んだところでどうにかなる相手じゃないわ!それに立ち止まった瞬間に木っ端微塵にされるのがオチよ!」

 

「じゃあどうするの!?このまま追い詰められて踏み潰されるまで走るつもり!?」

 

「2人とも走りながら喧嘩しないでよぉ・・・」

 

 

走りながら言い争う45と416に半ば呆れるG11だったが背後に砲弾が着弾、衝撃で顔面から地面に叩き付けられる

 

 

「へぶぅ!?うぅ、もぅやだよぉ・・・。」

 

 

再び半泣き状態になりながらも立ち上がろうとするG11。しかし背後に圧を感じゆっくりと振り向く。そこには片方の前脚を上げ今まさに彼女を踏み潰そうとするManticoreの姿があった。

 

 

「(あっ、死んだこれ)」

 

 

電脳内でそう呟くG11。416が逃げろと叫ぶも体は動かず、ただ自身を踏み潰さんとする前脚をじっと見ている事しか彼女は出来なかった。呆気ない最後だったなぁと思いつつ、その時を静かにG11は待った・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーほぼ同時刻 セーフハウス近辺ー

 

 

 

「こちらS-117、404応答せよ。繰り返す、404応答せよ」

 

 

AegisやNemeumの残骸が散らばる中、チーフは無線機に呼び掛ける。しかし返ってくるのはノイズ音だけであり、誰かが応じる気配はなかった。

 

 

「ジャミング装置も気になるが、彼女達と合流するのが先だな」

 

 

そうチーフは呟くと背中にAegisのハンマーを、両手にIWS2000を持ち暗い森の中を歩き出そうとする。その時、遠くで爆発音が聞こえ夜空が紅く染まった

 

 

「・・・・・・あそこか」

 

 

404はあの爆発に関わっている、そう直感的に感じた彼は迷うことなく爆発のあった方向へと走り出す。しばらく走っていると今度は砲撃音が聞こえ、銃を構えスコープを覗く。そこには装甲を纏った4脚の大型兵器2体と、それに追われる404の姿が映っていた。攻撃のタイミングを窺っていると着弾時の衝撃で1人が吹き飛ばされ、それを仕留めようと1体の動きが止まる。それを見逃さず銃爪を引き、放たれた4発のAPFSDS弾が大型兵器の装甲を次々と食い破り火花を散らす。とどめに頭と思われる部分に1発撃ち込むと小規模な爆発を伴いつつ崩れ落ち動かなくなった

 

 

「こちらS-117。遅くなってすまない」

 

「ナイスタイミングよ117。416、G11を回収して」

 

「言われなくてもそのつもりよ」

 

 

僚機が倒された事で攻撃対象を404からチーフに変更するManticore。注意がそちらに向いた隙に416がG11を回収、更にこれまでのお礼とばかりに榴弾をお見舞いする。爆発の衝撃と煙で動きが鈍ったところをチーフは先ほど同様、頭と思われる部分に1発撃ち込み大きな鉄屑へと姿を変える

 

 

「助かったわ117。1つ借りが出来たわね」

 

「気にしなくて良い、任務を果たしただけだ。それよりハンターは?」

 

「その事なんだけど、実は少し厄介な事に・・・」

 

「ほぅ、2機だけとは言えManticoreを倒したか。褒めてやるぞ?」

 

 

チーフと45の会話を遮るようにパチパチと拍手が入り、暗闇からセーラー服の少女、ウロボロスが姿を現す。その表情は笑みを浮かべており、この状況に満足している様に見えた

 

 

「その声・・・貴女が蛇女ね?」

 

「誰だ?」

 

「ここ一帯を支配してる3人目のハイエンド人形よ。暗闇から私達を爆殺しようとする位には性格の良い奴よ」

 

「褒め言葉として受け取ろう。さて、私としてはもう少し遊びたかったのだが、余り時間を掛けすぎるとあのメイドからまた小言を言われかねんのでな。楽しい楽しい遊びの時間は終わりだ。」

 

 

ウロボロスはそう言い終えると両腰の複合兵装を展開、ミサイルと機銃による一斉射撃を行う。

 

 

「散開!!」

 

 

45の合図と共に四方に散らばり木の陰に隠れる404とチーフ。お返しとばかりに各自反撃を開始するもウロボロスの装甲は予想以上に堅く、有効なダメージを与えられずにいた。

 

 

「なんてふざけた火力と装甲よ!117!対物ライフルの残弾は?」

 

「悪いが弾切れだ。さっきの多脚戦車で残りを使い切った。」

 

 

チーフはそう言ってIWS2000を地面に置く。残った武装と言えば、AegisのハンマーとBruteの大型ナイフのみだった。416も既に榴弾を使い切ったと報告し、状況は最悪だった。

 

 

「じゃあ打つ手なしってこと?」

 

「冗談じゃないわ!あの蛇女に一泡吹かせないとこっちの気が収まらないわよ!」

 

 

少し弱気になる9に喝を入れつつ、襲い掛かるミサイルを撃ち落とす45。せめてあの複合兵装さえなんとか出来れば・・・と考えていた矢先、117からある作戦を提案される。それを聞いた9と416は「自殺行為だよ!」「正気?」と驚愕したが、45は他に打つ手はなしと判断し117の提案を了承した。

 

 

「やるからには必ず成功させてよね?」

 

「問題ない。そちらも手筈通りに頼む」

 

 

404とチーフによる打倒ウロボロスに向けた作戦が動きだそうとしていた。

 










約一年半振りの投稿になりました。

次回で対ウロボロス戦、そしてOperation Cubeは終了になります。

え?まだ出てきてない人形が居る?ウン、ワカッテマス・・・

忘れてる訳ではないのでご安心下さい



誤字脱字その他ありましたらご報告宜しくお願いします。


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act.13 Operation Cube #6


不定期投稿と言ったな?あれは嘘だ(崖から落とされる音)

すいません調子乗りました

いやね?元々大まかな構想自体は組んであったのでそれを元に肉付けしてたら興が乗りまして・・・はい

気がついたら出来てました。すんません



それでは本編をどうぞ











 

 

ー森林地帯 対ウロボロス戦ー

 

 

「ほらほらどうした?隠れているだけではこの私は倒せんぞ?」

 

 

そう言いながら404小隊と117が隠れているであろう場所を機銃で、あるいは小型ミサイルで攻撃していくウロボロス。地面はえぐれ、木々は爆風で折れるか穴だらけになるのもお構いなしにだ。その様子を観察しつつ、45、9、416はG11が配置に付くのを待っていた。

 

 

「G11急いで!あんたがこの作戦の鍵なんだからね!」

 

「だからって・・・うんしょ、木に登ってるんだよぉ?疲れるし眠いし、これが精一杯だよぉ416・・・」

 

「後30秒で配置に付けたら追加で業務用のラムレーズンアイスを上乗せしてあげるわよ?」

 

「・・・頑張る」

 

 

45の発言を聞いたG11はそれまでの気だるさを払拭させ、20秒で配置に付き狙撃体勢に入る。

 

 

「「「本当にちょろいなぁ・・・」」」

 

 

電脳内でそう思う45達3人であった。

 

 

「117、全員配置に付いたわ。」

 

「了解した。タイミングはそちらに任せる」

 

「オッケーよ。じゃあ・・・始めましょうか!!9!」

 

 

合図を受けた9はウロボロスに向けて閃光手榴弾を投擲、空中で炸裂し一帯が光に包まれる。

 

 

「くっ!?」

 

「今よ!各自一斉射撃開始!」

 

 

突然の閃光に動きが止まったウロボロス。そこへ45達が集中攻撃を仕掛ける。装甲によって殆どダメージは入らないものの、その場に釘付けにする位は出来る。それにこの弾幕なら誘爆を恐れてミサイルも撃てないと45は判断していた。

 

 

「ふざけた真似を・・・!今すぐ蜂の巣にしてやる!」

 

「各自散開!117、成功を祈ってるわ」

 

 

ウロボロスの複合兵装から機銃が展開するのを確認した45はすぐさま散開を命じ、同時にスモークグレネードを投擲、ウロボロスの周囲を煙幕で満たしていった。

 

 

「今度は煙幕だと!?どこまで私をコケに・・・ぶっ殺す!!」

 

 

怒りに身を任せ404が居るであろう場所目掛け、小型ミサイルや機銃で攻撃するウロボロス。この時、普段の彼女であれば恐らく気がつけたかもしれない。背後から急速に近づく、黒い影に対して・・・

 

 

「出てこい!貴様ら全員スクラップに・・・はっ!?」

 

「・・・遅い!」

 

 

ウロボロスが見た光景。それは背後からグラップルワイヤーで急速に近づき、Aegisのハンマーで左側の複合兵装を破壊する117の姿だった。

 

 

「なっ・・・!?」

 

 

驚愕するウロボロスを尻目に、チーフはハンマーからBruteの大型ナイフへ獲物を持ち替え白兵戦を仕掛ける。

 

 

「舐めるなぁ!!」

 

 

チーフの攻撃を何度か躱し、軽く距離を取ったウロボロスは回し蹴りで彼を吹っ飛ばし小型ミサイルの射程圏まで押し出した。

 

 

「これで!終わりよ!!」

 

 

すかさず残った右側の複合兵装を起動し、小型ミサイルを発射しようとしたウロボロス。しかし一発の弾頭が発射される前に突如暴発、装填されていた他の小型ミサイルにも誘爆を引き起こした結果、ウロボロスの右足ごと複合兵装は爆発、破壊された。

 

 

「S-117からG11、良い狙撃だった」

 

「あれで良いの?んじゃおやすみぃ〜・・・ぐぅ」

 

 

自分の仕事が終わったことを確認したG11は狙撃体勢のまま眠ってしまった。もちろんアイマスクをして。

 

 

「終わった・・・の?」

 

「すごいよ117!」

 

「作戦を聞いたときは正直馬鹿げてると思ったけど、まさか本当にやりきるとはね、恐れ入ったわ117」

 

 

木々の間から416、9、45が出てきながらチーフを称賛する。

 

 

「運が良かっただけだ。それにまだ終わってない」

 

 

45の言葉にそう返したチーフは前方を、武装を失い、片足を失いながらも立ち上がろうとするウロボロスを見やった。

 

 

「まだ・・よ。まだ・・・終わって・・・・ない!」

 

「止めときなさい。その状態ではもう無理よ。」

 

 

ウロボロスに対し銃口を向けつつ45は言い放った。416と9も同じく銃口を向ける。幾ら装甲が硬いはいえ、ここまでダメージを受けていれば関係ない。ここで殺そうと思えば簡単に出来る。尤も、ジャミング装置の場所を教えてもらうまではその気はないけど。と電脳内で45は考えていた。

 

 

「まだ・・私の部隊が残ってる・・・。それを使えば・・!」

 

「申し訳ありませんがそれは不可能です」

 

 

ウロボロスの言葉を遮る別の声。それを聞いた4人はすぐに周囲を警戒する。

 

 

代理人(エージェント)か。何の・・用だ。」

 

「御主人様の命で来た迄です。」

 

(代理人・・・鉄血のNo.2がなんでこんな所に!?)

 

 

驚愕する45を無視するかのように会話を続ける鉄血の2人。

 

 

「助けに・・来たとでも・・・言うのか・・!?」

 

「残念ながら違います。貴方を・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「処分するために参りました。」

 

 

次の瞬間、青白い閃光がウロボロスの胸を貫いた。

 

 

「「「「!?」」」」

 

「貴方の行動は全て監視させて頂きました。同族殺しとは・・・やはり貴方の様な存在は作るべきではありませんでしたね」

 

「ふざけっ・・ゴフッ!?」

 

「おや、確かにコアを撃ち抜いたと思ったんですが・・・。ですがせめてもの情けです。今楽にして差し上げます。」

 

 

代理人が2発目を発射する瞬間、チーフはグラップルワイヤーでウロボロスの前まで移動し、2射目を自らの背中で受け止めた。シールド残量がゼロになり警告音がヘルメット内で鳴り響く。

 

 

「117!!」

 

 

45が叫び彼を守るように陣形を組む。

 

 

「邪魔しないで頂けますか?貴方は御主人様のお気に入り、ここで死なせたくは余りないのですが・・・」

 

 

そう言いつつ3射目の銃爪を引く代理人、しかし先程の様な青白い閃光が出ることはなく、その銃身は沈黙を貫いていた。

 

 

「エネルギー切れ・・・ですか。」

 

 

やはり遺跡(・・・)の武器は信用なりませんね・・・、と内心思う代理人。しかし最低限のノルマは果たしていた為、彼女は撤収することにした。

 

 

「大変申し訳ありませんがこれにて失礼させて頂きます。あぁ例のジャミング装置ですが、既にこちらで回収しておりますのであしからず。それでは404の皆様方、そしてS-117。またいつか、お会いできる日を楽しみにしております。では」

 

「なんだったの一体・・・」

 

「さぁ・・・」

 

「ちょっとウロボロス!しっかりしなさい!まだあんたに死なれちゃこっちが困るのよ!!」

 

 

45の怒鳴り声で振り向く416と9。そこにはコアが損傷し、今にも機能停止寸前のウロボロスがいた。

 

 

「直せないのか?」

 

「コアが損傷してるのよ!?人間で言えば心臓と脳を1つにしたような物なの!それこそ16labみたいな設備の整った所じゃなきゃ無理よ!」

 

「何故・・・私を庇った・・?」

 

「ジャミング装置の場所を聞くまで死なれては困るんでな」

 

「はっ・・・。それは・・残念だっ・・・たな。」

 

「不味い!このままだと本当に・・・!せめて記憶媒体か何かがあれば・・・」

 

 

それを聞いたチーフは1つの可能性を思いついた。だが成功する確率は限りなくゼロに近いだろう。それでも、試してみる価値はあると彼は思い、ヘルメットからチップを抜き取った。

 

 

「こいつを使え」

 

「何・・・これ?」

 

「お探しの記憶媒体だ。規格が合うかは分からんが、試す価値はあるだろう?」

 

「本当に!?でもこんな記憶媒体見たことないけど・・・。いいわ、やってみる!」

 

 

ウロボロスを45に託し立ち上がるチーフ。その時、ノイズ混じりで無線が入った。

 

 

「こち・・ブルー・・・テンダー。チー・・・応答」

 

「こちらブルーチーム、S-117だ。コンテンダーか?」

 

「チーフ!ご無事だったんですね!そちらの状況は?」

 

「404小隊と一緒だ。全員な。」

 

「こちらも全員揃ってます。道中、2名の戦術人形を発見したので保護しました。」

 

「了解した。今座標を送る。来れるか?」

 

「待ってください・・座標受信・・・距離は・・・大丈夫です。15分程で合流出来るかと」

 

「分かった。周囲の警戒は怠るなよ?」

 

「もちろんです。コンテンダーアウト」

 

「15分でブルーチームが合流する。迎えの用意は?」

 

「今ビーコンを出したところよ。問題がなければ1時間位でヘリが来るはずよ」

 

 

木の上で寝ていたG11を引きずり下ろしてきた416が答える。当のG11は泥と葉っぱだらけになりながらもまだ寝ている様子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間後、416の言うとおり迎えのヘリが到着。ブルーチーム、404小隊、そして保護された2名の戦術人形を回収しG&K本社へと帰還した。

 

 

 

なお、鉄血ハイエンドであるウロボロスは救命措置が行われたものの、その甲斐なく機能停止が確認された為、研究材料として16Labに送られる事となった。

 

 

 








これで一応キューブ作戦のお話は終わりになります。

後日談?は書けたらいいなーって思ってるんですあんまり期待しないで下さいね。


代理人さんが使ってた武器は・・・ご想像にお任せします。


誤字、脱字その他ありましたらご報告宜しくお願いします


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act.14 Operation Cube Epilogue #1







 

 

ー16Lab ペルシカ博士の研究フロアー

 

 

 

「フレームは全身ガタガダ、人工筋肉は四肢を中心に断裂や一部が切断、神経回路も同じく。コアは問題ないけど周辺部品は一部ショートして黒焦げ。ここまでくると新しく作り直したほうが早いかなぁ」

 

 

愛用のマグカップでコーヒーの飲みつつ、自らカスタマイズを手掛けた人形(コンテンダー)に対し破損状況を観察していく。

 

 

「申し訳ありませんペルシカ博士。貴重な義体をここまで破損させてしまって」

 

「戦闘データは見たよ。ハイエンド、しかも強化措置が施された相手じゃ仕方ないさ。こうして戻ってきてくれただけで十分よ」

 

「ありがとうございます。」

 

「今I.O.Pに頼んで仮の義体・・・じゃなかった。正規品(・・・)」を発注してるから、暫くはそのままで我慢してね。

 

「分かりました。因みにどのくらいで届くのでしょうか?」

 

「うーん、ハンドガンタイプとはいえ高級モデルだからねぇ、およそ1週間位かな」

 

「い、1週間!?あ、あの、もう少し早くなりませんか?」

 

「早く動きたいって話なら、出来ない事もないよ?ちょうど鹵獲したダイナーゲートが・・・」

 

「ダイナーゲート!?けっ、けけけ結構です!!」

 

「冗談よ冗談。さて、悪いけどちょっと出かけてくるから、留守番よろしくね」

 

「は、はい。差し支えなければどちらまで・・・」

 

「んー、君の部隊の隊長さんの所さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーG&K本社 社長室ー

 

 

 

「以上が、今回行われたキューブ作戦の内容になります。」

 

 

赤い制服を身に纏い、モノクルを掛けた女性(ヘリアントス)が静かに報告した。

 

 

「内容は把握した。ジャミング装置の件は残念だったが、損傷しているとはいえ鉄血のハイエンド、それも新型を鹵獲出来たのは僥倖だったと言えるか」

 

 

椅子に座る男性、G&K社の創設者にして最高責任者であるベレゾヴィッチ・クルーガーは読み終えた報告書を置き呟く。

 

 

「はい、それについては既に16Labのペルシカ博士に解析依頼を出しています。ただ、S-117、マスターチーフから気になる報告が・・・」

 

「かつてエイリアンが運用していた兵器か。」

 

 

置かれた報告書の一部、代理人がウロボロスを狙撃した際に使用したと思われる兵器について、マスターチーフからの意見書が添えられていた。

 

 

「コヴナントが運用していた狙撃用の粒子ビームライフル。装弾数は10発、高精度スコープ搭載で対歩兵用火器としては優秀なものの、連射するとオーバーヒートを起こし一時的に使用不能になる他、車両に対しては有用性が著しく低下する・・・か。」

 

「社長はどう思われますか?正直なところ私の理解の範疇を超えているとしか・・・」

 

「本来なら私も同意見だが、彼という存在がある以上、一応警戒はした方が良いだろうな。とりあえず彼から武器の種類と性能を纏めたリストを作成してもらった方が早いだろう。」

 

「分かりました。至急手配致します。それでは失礼します。」

 

 

そう言って部屋を後にする彼女を見つつ、クルーガーは書類を機密案件として金庫に仕舞うのだった。

 

 

後日、依頼を受けたチーフよりコヴナントが当時運用していた軽火器並びに重火器に関する書類を山のように出されるのはまた別のお話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーG&K本社地下 極秘エリアー

 

 

 

「それじゃあチーフ、アーマーを外すからね。何か異常があったらすぐに報告して。」

 

「了解した。」

 

 

ここはG&K本社地下20階に建造されたマスターチーフ専用のメンテナンススペース。書類上、彼は次世代型の軍用人形という設定のため、人目につくのは色々と不味いのである。因みに彼が人間だと知っているのはクルーガーさんとヘリアン、ブルーチーム、そしてメンテナンス要員である私ことペルシカ博士である。

 

 

「どう?大丈夫そう?」

 

「問題ない。続けてくれ。」

 

 

腕部を始め、肩、胴体、腰部、脚部、そして最後にヘルメットを外していき、順番通りに並べていく。

 

 

「それじゃあこのカプセルに入って頂戴。これでチーフの骨格や筋肉、血管、神経、臓器等など、異常が無いか確認するから。要は健康診断ね。」

 

「了解した。」

 

 

指示通りカプセルに入るチーフを確認し、検査を開始していく。そんな中、予想外の訪問者がここを訪れてきた。

 

 

「ペルシカ博士ーいるー?」

 

「ちょっと!勝手に入るのは流石に不味いでしょ!」

 

「しょうがないでしょ?こっちだって仕事で来てるんだから。」

 

 

だからってハッキング仕掛けてドア開けるのはどうかと思うわよ?と内心思う416であった。

 

 

「あれ?404の45に9と416?何のようで来たの?」

 

「何のようって・・・以前頼まれてたパーツよ。ブラックマーケットで見つけたら買っといてって頼んだのは貴女でしょ?」

 

 

いかん、すっかり忘れてた。お金足りるかなーっと頭の中で考えていると9が大声をだして現実に呼び戻される。

 

 

「わあー!これってもしかして117の外装パーツ?」

 

「結構細かいところまで作り込んでるわね。流石次世代型の軍用人形といったところかしら。」

 

 

9と45が興味津々な中、416はカプセルについて尋ねる。

 

 

「ねぇペルシカ、カプセルに誰か入ってるの?」

 

「えっ!?いやいや、中には誰も居ませんよぉ?(汗)」

 

「そう?でも気配が・・・」

 

『ピーピーピー。登録名S-117マスターチーフの検査が終了しました。カプセルを開放します。』

 

(あっ、終わった・・・ヘリアンに怒られるやつだこれ)

 

 

内心そう思ったらペルシカをよそに、カプセルから出てきた人物に驚く404の3人。身長は約2m、全身は黒の特殊インナーで覆われているが、その上からでも分かるほどに発達した筋肉を持っている。顔はよく見えないが、短髪で皮膚は少し白いと感じた。そして先程の登録名、3人は「まさか」と思っていたが、大男が117のヘルメットを被り

 

 

「ペルシカ博士、アーマーの装着を頼む。」

 

 

この一言で全てが確信に変わり、45が恐る恐る尋ねる。

 

 

「ね、ねぇ117。貴方もしかして・・・人間?」

 

「ん?ヘリアントスから聞いてなかったのか?」

 

「「「えぇぇぇぇぇー!!!!!」」」

 

「もうだめだぁ、おしまいだぁ。」

 

衝撃の事実に悲鳴にも似た声を上げる中、ペルシカ博士は1人頭を抱えているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー1時間後 同極秘エリアー

 

 

そこには点検を終え、ミョルニルスーツGen3を身にまとった117ことマスターチーフと未だに衝撃の事実を受け入れられていない404の3人、そして部屋の片隅で頭を抱えるペルシカ博士がいた。

 

 

「本当に、ほんとーに117って人間だったの?」

 

「あぁ。」

 

 

9から既に同じような質問を何度も聞かれていた為、少しウンザリした口調で答えるチーフをよそに、今度は416が口を開く。

 

 

「そう言われて、はいそうですかって納得できると思う?実は本当に戦術人形でしたって言われたほうがまだ現実味があるわよ。」

 

 

 

先のキューブ作戦のおり、彼女たちは117の戦闘能力を目の前で見ていた。身体能力や射撃能力は勿論、判断力、冷静さ、どれをとっても人間のそれを圧倒的に凌駕していた。もしかしたら私達(戦術人形)よりも優秀なのでは?と思うほどだ。

 

 

 

「まぁこの件に関しては後でヘリアンに確認しましょう。どうせ機密事項って事で117も詳細は話せないだろうし。」

 

「・・・悪いな。」

 

「慣れてるから平気よ。それより、蛇女(ウロボロス)は?ここに居るって聞いてたんだけど・・・」

 

「あぁ、彼女なら・・・」

 

 

そういってチーフはヘルメットからチップを取り出し近くのテーブルに置く。すると紫色の発光と共にウロボロスの立体映像が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二頭身で。

 

 

束の間の静寂の後、室内は大きな笑い声で包まれた。

 

 

 

「なにこれなにこれ!ホントにウロボロスなの?すっごく可愛いぃ!!」

 

「プッ・・・以外と似合ってるわよ・・・駄目・・・笑いすぎてお腹痛い・・・」

 

「随分とちっちゃくなっちゃったわねぇ蛇女。まぁ良いんじゃない?これはこれで。」

 

「何という屈辱・・・殺せ!今すぐ私を殺せ!!」

 

 

二頭身、しかも相当デフォルメされたであろうウロボロスが泣きながら吠える。が、404の3人からしたら子犬が虚勢を張って吠えているようにしか見えなかった。

 

 

「ペルシカ博士。いつまでも隅っこで頭抱えてないで、なんでこうなったのか説明してくれる?」

 

「恐らくだけど、コアの損傷でデータの一部が破損、その状態でチップに転送した結果だと思う。それに自我の維持にリソースを使い果たしたってのもある。因みに今の彼女の脅威レベルは武装がないダイナーゲートとほぼ同じよ。」

 

 

45の声で我に返り、ウロボロスの現状について説明するペルシカ博士。安全性を考え16Labの電子牢に入れようとも思ったが、下手をすると今度こそ彼女が消滅する可能性があった為、止む無くチーフが預かる事となったのである。

 

 

「なるほどね。そういう事なら任せるわ。じゃあ荷物も渡したし、私達は退散するわ。じゃあね117、また会いましょう?」

 

 

そう言って45達は退出する。その10分後、鬼の形相をしたヘリアンが現れペルシカに説教を始め、巻き添えは御免だとチーフも部屋を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

「全く!バレたのが彼女達(404小隊)だからよかったものの、

もう少し危機管理意識を持ってくれ!うちの最重要機密なんだぞ!?」

 

「だからこうやって正座までして謝ってるじゃないか。

今度合コンのセッティングするからそれで機嫌直してくれよ。」

 

「うっ・・・。まぁ良い。今後は気を付けてくれ。

それと!合コンの件・・・・・・宜しく頼むぞ。」

 

「はいはい分かってますよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、ペルシカ主催の合コンがセッティングされヘリアンも出席したが、結果は≪警告 本文章はG&K社機密事項に抵触したため検閲されました 同様の違反が確認された場合 社内規定の則り処罰の対象になります 御注意下さい≫










書けると思ってので後日談書いちゃいました。後悔はそのへんに捨ててきました。


さて、ウロボロス(ウロちゃん、チビ蛇女)ですが、かなり弱体化してます。一応鉄血無線の傍受位は出来ますが暗号解析、ましてハッキングは現時点では不可能です。

まぁそのへんは考えているので問題はないでしょう。


もうちょっとだけエピローグ続きます


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act.15 Operation Cube Epilogue #2



どうもお久し振りですです、作者です。


ちょっと今回は短め、もとい幾つか伏線を入れさせて頂きました。

うまいこと回収されるまで投稿出来る様努力しますので宜しくお願いします。

それでは本編をどうぞ






キューブ作戦から数日後

 

 

 

ーG&K本社 Cafe&Bar Springfield ー

 

 

 

本社所属の職員や戦術人形達の憩いの場であるここは昼夜を問わず多くの人間で賑わっている。特にSpringfield特製のコーヒーとチーズケーキは大人気であり、それ目当てに近所の住民が通うほどだ。もちろん、厳重なセキュリティをパスしてからの話ではあるが。

 

そんな中、一人の人物がカウンターの隅で電子端末を開きカタカタと何かを入力している。指揮官特有の赤い制服と帽子、そしてサングラスを掛けた大柄な男・・・マスターチーフは先日依頼された、当時コヴナントが運用していた兵器の性能と威力等のリストアップを行っていた。なぜ彼がグリフィン指揮官の制服を着ているのかについては、少々時間を遡る必要がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー18時間前 G&K本社地下極秘エリアー

 

 

 

「これは?」

 

「チーフが待機中に着用する制服だ。1日中あのアーマーを着けている訳にもいかんだろう?それに、ペルシカ博士もここに常駐出来るほど暇人ではないからな」

 

「なんか棘のある言い方だけど・・・まぁ概ねヘリアンが言った通りさ。アーマーの着脱に関しては今専用の装置を準備してるから安心してー」

 

 

目の下に大きなクマを作ったペルシカ博士がレンチ片手に返事をする。

 

 

「それとチーフ、これは社長からの依頼だ。例のエイリアンが運用していた兵器に関する資料を至急作成してくれ。内容は全て機密扱いになるからそのつもりで」

 

「了解した」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は戻り

 

 

 

ーG&K本社 Cafe&Bar Springfield ー

 

 

「お疲れ様です。コーヒーのおかわりはいかがでしょうか?」

 

「あぁ、貰うとしよう」

 

 

 

この場を取り仕切る戦術人形(Springfield)がチーフに声を掛け、空になったカップにコーヒーを満たしていく。

 

 

「そういえばお見かけしないお顔ですが、最近こちらに配属されたのですか?新人さん・・・と言うには貫禄がありますし、もしかして元正規軍の方だったりして?」

 

「まぁ、そんな所だ」

 

「そうでしたか。あっ、自己紹介がまだでしたね。私は戦術人形のSpringfieldです。一応、ここの責任者を任されています。」

 

「レオス・クラインだ」

 

「クラインさんですね。何かありましたら何時でもお呼びください。それでは失礼します」

 

 

軽くお辞儀をしてSpringfieldはその場を後にし仕事へと戻っていく。そんな彼女に対し、電子端末の横に置いてあったチップから二頭身化したウロボロスが出てきて愚痴る。

 

 

「戦術人形がCafeのマスターとは、人間の考える事は理解出来んな」

 

「出てきて良いとは言ってないぞ」

 

「貴様の指図は受けん。というか、何故(チップ)を持ち歩いてるんだ!私は1人が良いんだが!?」

 

 

チーフの言葉を意に介すどころか威嚇するウロボロス。対するチーフは資料を作成しつつ答える。

 

 

「ヘリアントスとペルシカ博士からお前の監視を任されている。それに・・・」

 

「それに?」

 

「話し相手位は必要だろ?」

 

 

 

予想外の返答に暫しフリーズするウロボロス。その後ひとしきり笑ったあと口を開く。

 

 

 

「よもや人間にこの私が心配されるとは思ってもみなかったぞ?やはり貴様は面白いやつだな117?そうだな、その仕事が終わったらお望み通り話し相手になってやろう」

 

 

何故か満足げにチップの中に戻っていくウロボロスとは対象的に、少し疲れたチーフはコーヒーを一口飲み、資料の続きを作成するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーG&K本社 深夜 戦術人形用宿舎ー

 

 

暗い宿舎の一角、とある戦術人形が見慣れぬ機材を組み立て始める。5分程で組み上がったそれは通信装置のようなものであり、電源を入れチャンネルを合わせると小型の画面から女性が現れる。

 

「久しぶりねルシア。元気そうで何よりよ」

 

「まぁ、何度か死にそうな目に合うくらいには元気かな」

 

 

画面越しの女性に対し皮肉交じりに少女は答える。

 

 

「例の戦闘データは見させてもらったわ。彼、本当に人間なの?貴女達みたいに戦術人形って言われたほうがまだ信じられるんどけど」

 

「残念ながら事実よ」

 

 

溜息をつく女性に現実であると言い放つ少女。

 

 

「そう・・・。でも、これで『将軍』が例の計画に熱心な理由が分かったわ。あれが完成すれば軍事バランスが一気にひっくり返るもの」

 

「上は何と?」

 

「現状維持よ。もう少し情報を集めたいって」

 

「て事はもう暫くはこっちで観察しろってことね」

 

「悪いわね」

 

「別に。退屈はしてないし。それに、彼に対して個人的にも興味が出てきたところよ」

 

「そう?なら良いけど。でも余り情が移ると・・・」

 

「心配ご無用。時間だから切るよ?次の連絡は予定通りに。ルシアアウト」

 

 

まだ何か言いたそうだった女性を無視し通信を切る少女。機材を分解し元あった場所に隠す。全く、私達の上司(・・・・・)は心配性が過ぎるところがある。まぁそこが可愛いところでもあるんどけど。

 

そう思いつつ、近くにあった椅子に腰掛け窓越しに夜空を見上げる少女。空からは月明かりが降り注ぎ、彼女の長い銀髪を優しく照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー鉄血支配領域 中枢 研究ブロックー

 

 

 

 

 

 

夢想家(ドリーマー)。どこですか?いるのでしょう?」

 

「あら代理人(エージェント)、お帰りなさい。その様子だと用事は済んだみたいねぇ」

 

「本当にそうお思いですか夢想家?」

 

 

若干苛立ちながら代理人は使えなくなった武器を床に放り出した。

 

 

「貴女が渡したこの武器ですが、2発目を撃ったところでエネルギーが切れました。おかげであの裏切り者(ウロボロス)を仕留め損ないました」

 

「あらそう。保存状態が良かったから半分くらい残ってると思ったんだけど・・・。まぁいいわ、後で解体に回すからそこに置いといて頂戴。あたしは今こうみえて忙しいのよ」

 

 

代理人の不満をまるで興味が無いがの如く軽く聞き流し、自らの作業に戻る夢想家。

 

 

「今度は一体何を企んでいるのですか夢想家?」

 

「あたしは何も。ただエリザ様にお願いされたからそれに従ってるだけよ」

 

 

そう言いつつ夢想家は作業内容を大型スクリーンに映す。

 

 

「これは・・・新しいエリート人形の設計図ですか。これを御主人様が?」

 

「えぇ、しかも基礎設計と武装まで細かく指定してね。あたしはそれに修整を少し加えてるだけよ」

 

「名前は?」

 

「えぇと・・・。確か、調停者(アービター)よ」

 

「調停者・・・ですか。とりあえず完成したら私に報告してください。それと、『遺跡』の兵器研究はほどぼどに」

 

「はいはい」

 

 

 

代理人の忠告に対し生返事で返す夢想家。そんな彼女にため息を漏らしつつ、その場を後にする彼女であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー鉄血最深部 ?????ー

 

 

 

 

「私達は無限に響くコーラス。さぁ、貴方達も一緒に加わりましょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








チーフって24時間ずっとアーマー装着してんのかなぁって考えてたらなんか出来てました。まぁ食事の時はヘルメット外せば良いけどトイレは・・・ねぇ?


ペルシカ博士が準備してる自動装着はアイアン○ン(初期)の装着シーンをイメージしてもらえれば良いと思います。

名前はもちろん偽名です。(中の人繋がり)作者が唯一プレイしてない作品です(2.AA)


次回は久しぶりにAR小隊と絡ませる予定(たぶん)なのでお楽しみに

誤字、脱字その他ありましたらご報告宜しくお願いします。


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act.16 Rebel army




どうも、作者です。メンタルが死んでたり役所で手続きしながらちまちま書いた結果約一年ぶりの投稿となりました。



そしたら何か1万文字近くにまで増えてしまいました(笑)


とりあえず今後は不定期で更新する予定(出来たら良いなぁ)なので長い目で見ていただけると幸いです。

それでは本編をどうぞ






 

 

 

 

 

ーG&K本社 作戦会議室ー

 

 

 

「支援要請・・・ですか?」

 

「そうだ。先刻、D22地区の指揮官から基地周辺を鉄血部隊に包囲され身動きが取れないと連絡があった。当該基地は僻地、しかも小規模な施設であり所属する人員では対処が困難だ。現在は両者睨み合いの状況だが、いつ戦闘が始まるか分からん。早急に現地に向かい、鉄血部隊を排除してくれ」

 

 

AR小隊の隊長であるM4A1に対しヘリアントス上級代行官は淡々と任務内容を説明する。

 

 

「鉄血部隊の規模は?」

 

M16A1がヘリアンに尋ねる。

 

 

「ハイエンドクラスは現時点では確認出来ていないが、人形兵と機械兵の混成部隊が6〜7つと言ったところだ」

 

「そんなに!?幾ら私達でも手に余る数じゃない!」

 

「もちろん、鉄血の包囲が緩んだ時点で基地所属の部隊も迎撃に出る。それに・・・」

 

 

ST AR-15の抗議を声を抑えつつ、ヘリアントスは更に続ける。

 

 

「本作戦にはもう1人、参加する人形がいる。入ってきてくれ」

 

 

ヘリアントスの呼びかけに応じ会議室に入る人物。それを見たSOPⅡ以外のAR小隊のメンバーは苦笑いにも似た表情と、電脳内にて思い思いの愚痴をこぼしていた。

 

 

(嘘でしょ・・・)

 

(ははは、マジかぁ・・・)

 

(・・・最悪ね)

 

(誰だっけ?)

 

 

上から順にM4、M16、AR-15、SOPⅡである。

 

 

 

「面識はキルハウスでの模擬戦であると思うが、一応紹介しよう。彼はS-(シエラ)117、16Labが開発した次世代型の軍用人形だ」

 

「宜しく頼む」

 

 

全身を緑色の特殊なアーマーに身を包んだ巨体、チーフはそう言ってM4に対し右手を差し出す

 

 

「こ、こちらこそ宜しくお願いします」

 

 

やや緊張気味にM4は返しチーフと握手をする。

 

 

「さて、挨拶も済んだ様だしお前達にはすぐにでも現地へ飛んでもらう。既にヘリの準備は終わっている、各員の健闘を祈る」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー3時間後 D22地区上空 輸送ヘリ内ー

 

 

「案外呆気なかったな・・・」

 

 

帰還中のヘリの中でM16A1は小声でそう言うと隠し持っていたスキットルの中身を一口飲む。もちろん中身は水・・・ではなく、彼女が愛飲している蒸留酒(ジャックダニエル)だ。窓越しに広がる荒野を見つつ、彼女はもう一口飲みつつ先程行われた戦闘について思い返す。

 

 

私達が到着した時点ではまだ鉄血部隊は基地に攻め入っておらず、基地全体を覆う様に部隊を展開していた。そこでM4は少し離れた場所にヘリを着陸させ、気付かれないように接近し背後を奇襲する方法を提案、私とSOPⅡ、AR-15は了承しようとした。だが(S-117)は「俺が囮になる。その隙に基地近くに着陸しろ」と言った。すかさずM4が「貴方が囮に?一体・・・」どうやって?と言おうとした時にはヘリのドアが開かれ、彼は地上へと飛び降りていた。

 

 

「「「「・・・は?」」」」

 

 

(M16A1)を含めたAR小隊全員が同時に気の抜けた声を発すると同じく、ヘリを操縦していたパイロットが「ドアの開閉ランプが点灯したんだが、着陸にはまだ速いぞ?」と声をかけてきた。それに対し現状を未だに理解しきれていないM4が若干狼狽えながら説明すると、「冗談だろ!?今高度2000フィートだぞ!?人間はおろか、人形だってこの高さから落ちたら潰れたトマトになっちまうぞ!!」そう声を荒げるパイロットに同感しつつ、(M16A1)は持ってきていた双眼鏡で(S-117)の行方を追っていた。余談ではあるが、この時(S-117)の無線から女の悲鳴が聞こえていたが全員それを無視せざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーD22地区基地 上空約2000フィートー

 

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!死ぬぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「少し静かにしろ、大丈夫だ」

 

「何が大丈夫よ!?この高さから落ちて無事な訳ないでしょ!こんな所でアンタと心中なんて聞いてないわよ!?」

 

 

M4達の心配を他所に落下しながら絶賛口論中のウロボロスと、体を大の字にし空気抵抗を上げつつ、着地(落下)ポイントを探すチーフ。みるみるうちに基地と周囲を囲む鉄血兵との距離が近づく中、上空から接近するチーフを発見した部隊が攻撃を開始する。

 

 

「ちょ、ちょっと!撃ってきたわよ!早く反撃しなさいよ!」

 

「まだだ」

 

 

焦るウロボロスに対し冷静なチーフ。もう少しで敵の有効射程圏内という所で左腕のグラップルワイヤーを起動、基地の壁面に撃ち込み落下軌道を修整し、敵部隊の頭上を飛び越える。

 

 

「いくぞ」

 

「へ?」

 

 

チーフの合図と共にワイヤーのロックを解除、前方にいる『Vespid』に対し突撃体勢を取る。次の瞬間、背後からチーフのタックルの直撃を受けたVespidは文字通り粉々に砕け散った。チーフはそのまま更に勢いを殺すべく一度前転、近くにいたStriker二体をKSGですぐさまスクラップにする。ここでようやく異変に気が付いた鉄血兵達が動きだすもチーフにとってはそれも想定内、銃をKSGからSVU−Aに持ち替え、的確に鉄血兵を排除していく。

SMGを持ったRipperは近付かれる前にHS(ヘッドショット)、盾持ちのGuardは膝関節に数発撃ち込みバランスを崩した所にHS(ヘッドショット)を決めていく。

 

 

「ん?あれは・・・」

 

「あぁ、ダイナーゲートか。単体では大した脅威ではないが、ああやって大群で敵を喰らい尽くす奴よ。どうする?貴様の持ってる銃じゃ厳しいんじゃない?」

 

 

チーフの視線の先、そこには4−50体程の小型犬サイズの4足ロボット兵が我先へと群がって来ていた。確かにウロボロスの言う通り、手持ちの銃では少し厳しいかと思ったその時、ある銃を見つけ、それを手に取る。

 

 

「問題ない」

 

 

チーフはそう言ってある銃、Strikerが持っていたマシンガンを構え、ダイナーゲートの群れに掃射を開始する。吐き出される弾丸の嵐に為すすべもなく引き裂かれるダイナーゲート達。その全てがスクラップになった所でマシンガンの残弾が尽き、無造作に投げ捨てたところであちこちで複数の銃声が聞こえ始めた。

 

 

「やっと来たか」

 

「こちらM4A1、S−117応答してください。無事ですか!」

 

「こちらS−117、問題ない。そっちはどうだ?」

 

「私達は基地所属の部隊と南側で合流、左右に展開して背後から鉄血部隊を攻撃中です」

 

「了解した。北側の敵はこちらで片付けた。今から援護に向かう」

 

「分かりました。それと、作戦終了後に話がありますので覚悟していて下さい!」

 

「クックック。どうやらあの小隊長殿はお怒りらしいぞ?どうするんだ?」

 

「どうもしない」

 

 

内容を聞いていたウロボロスが茶化すもチーフは冷静に答える。

 

 

「任務を遂行するだけだ」

 

 

この後、基地周辺の鉄血部隊は完全に排除され、基地の拡大及び部隊の増設案が申請され、受理される事になる。余談であるが、チーフはM4A1から有り難いお説教(独断専行の件や自分を大事にしろ等)を受けていたが、当の本人は涼しい顔?をしていたとの事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は戻り・・・

 

 

ーD22地区上空 輸送ヘリ内ー

 

 

 

一通り回想が終わったM16A1は再度スキットルの中身を一口飲み辺りを見回す。M4とAR15、そして彼は休憩中。SOPⅡは・・・戦利品(・・・)の確認に勤しんでいる。実に平和な物だ。毎回このくらいの戦闘だったら楽なんだが、と思いつつもう一口飲もうとした時、ヘリの通信機から男の声が聞こえた。

 

 

 

「こち・・正規軍第二・・・・所属・・・・・・中隊。誰・・・聞こ・・・返事・・・」

 

「なんだ?オープンチャンネル・・・、いや救助チャンネルか?」

 

「どうしました?」

 

 

異変に気付いたM4がパイロットに尋ねる。

 

 

「えぇと、多分ですが正規軍のどっかの部隊が救助チャンネルで救援要請出してるみたいでして・・・。周波数は・・・これか?」

 

 

パイロットが通信機の周波数を調整すると、それまでノイズ混じりだった男の声が鮮明に聞こえてきた。

 

 

「こちら、正規軍第二駐屯基地所属の偵察中隊。現在、反乱軍の奇襲を受け被害が拡大している!誰か!聞こえていたら返事をしてくれ!繰り返す・・・」

 

「・・・どうしますか?」

 

「私達には関係無いわ。このまま本部へ帰還よ」

 

 

パイロットの困惑混じりの質問にAR15が冷たく答える。

 

 

「ま、わざわざ正規軍のいざこざに首を突っ込むのもなぁ」

 

「そうですね。私達の任務は既に完了しています。残念ですが、余計なリスクを取る事は出来ません。」

 

 

M16に続いて部隊長であるM4が答える。それを聞いたパイロットは通信機の電源を落とそうとした時、誰かが肩を掴んだ。

 

 

「応答用のマイクを貸してくれ。彼と話をする」

 

「ちょっ、S-117!勝手なことはしないで下さい!」

 

「彼らを見殺しにするのか?」

 

「彼らは正規軍です!民間企業である私達が関わるべきではありません!」

 

「軍人と言っても人には変わり無い。それでもか?」

 

 

「それはっ・・・!」

 

 

「ここで言い争っている時間はない。パイロット、応答用のマイクを」

 

 

「っ!まだ話は終わって・・・姉さん!?」

 

「はいはい、今回はお前の負けだよ。M4」

 

 

反論しようとするM4の頭を軽く叩き、諫めるM16A1。

 

 

「確かにお前が言ってる事は正しい。隊長として隊員を無事に連れて帰るのは重要な事だ。でもそれだけじゃない。私達には擬似的とはいえ心がある。鉄血みたいな血も涙もない連中とは違う。誰かが助けを求めてるんなら、それに答えるのが私達の役目ってやつなんじゃないか?」

 

「姉さん・・・」

 

「それに、SOPⅡは既にヤル気充分みたいたぜ?」

 

 

M16が親指で指す先には、既に戦闘準備を終えたSOPⅡが『全員蜂の巣にしてやるー!』と大声で叫んでいた。

 

 

「はぁ、仕方ないですね。AR15、貴方も良いですね?」

 

「貴女の判断に従うわ、M4」

 

「分かりました。S-117、交信を許可します」

 

「分かった。こちらG&K所属のAR小隊、S-117だ。貴官の現在地と敵戦力を教えてくれ、救援に向かう」

 

「G&K!?あのI.O.P製の戦術人形を使ったPMCか?伍長、どうしますか・・・。分かりました。先ずは救援要請に答えてくれたことに感謝する。現在地はD22地区のポイント13、マーク7だ。敵戦力は旧式の戦車が6両に歩兵の数は正直わからん。だが、あんた達とは別のPMCを雇ったのか戦術人形も確認している。」

 

「状況は分かった。我々が到着するまで持ち堪えてくれ」

 

「あぁ!頼んだぞ!」

 

「目的地の特定できました。ここからなら15分程で着きます。皆さんはそれまでに準備をお願いします」

 

「しっかし旧式とはいえ戦車が相手か。この面子だとちーと厳しくないか?」

 

「戦車は俺が相手をする。M4たちは歩兵の対応を頼む」

 

「何か策があるんですね?分かりました。とりあえず現地に到着してからの行動について決めましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー15分後 D22地区指定座標3000フィート上空ー

 

 

 

「こりゃ酷いな。完全に包囲されてるぜ」

 

 

双眼鏡で戦場を確認しながらM16A1が独りごちる。破壊されたCyclopsやAegis、大破して機能停止したHydraに混じって正規軍の軍人の死体も見られる。一部は五体満足で残ってるものの、大半は四肢が欠損しているか、上半身もしくは下半身が綺麗に無くなっていた。生き残った部隊は岩の陰や地殻変動によって生まれた天然の塹壕に身を潜めつつ抵抗しているものの、制圧されるのは時間の問題だった。

 

 

「戦車は右翼、中央、左翼に2両づつ。その周囲を随伴歩兵がガチガチに固めてる。こりゃ確かに、正攻法じゃあ無理だわな」

 

「なら予定通り一番近い左翼の戦車から潰しに行く」

 

 

M16の報告に(S-117)はそう言い、ヘリのドアを開け降下の体勢に入る。

 

 

「な、なぁ。やっぱり私は必要ないんじゃ・・・」

 

「行ってくる」

 

「ま、まて!まだ心の準備g嫌ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

ウロボロスの懇願も虚しく、ヘリから地上へ落下していくチーフ。前回は空気抵抗を上げるため大の字だったが、今回はスピードを稼ぐために垂直に、目標へと落下していく。

 

 

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁ!!まだ死にたくなぃぃぃぃ!!」

 

「いい加減慣れろ」

 

「慣れるわけ無いだろこの馬鹿ぁぁ!!」

 

「そろそろ目標に接触する。準備しろ」

 

「衝突の間違いだろぉ!!あぁもう!こうなったらヤケクソだぁ!カウント開始!3・・2・・1・・今!!」

 

 

ウロボロスの合図で体を180°回転させ、戦車の真上に着地(という名の衝突)するチーフ。その衝撃で車体は大きく歪み、周囲に砂埃を撒き散らす。

 

 

「おい!大丈夫か!?」

 

「シールドが6割程削れたが問題ない。このまま作戦を続行する」

 

 

チーフはそう言うと大きく歪んだハッチをこじ開け、用意していた破砕手榴弾を2つ車内に投げ込み即座に離脱する。その直後、周囲に居た兵士たちを巻き込み戦車が大爆発し、砲塔部が大きく吹き飛んでいった。

 

 

「もう一両の戦車は何処だ?」

 

「右後方約200m。周辺に敵兵士がわんさか居るぞ」

 

「問題ない。撃ちまくって強行突破する」

 

 

砂埃から脱出したチーフはウロボロスの指示通りの方向へ移動する。途中接敵した兵士はKSG、もしくはSVU−Aで対処しつつ、目標へと近付いていく。敵兵士をあらかた排除し終えると今度は戦車目掛けて閃光手榴弾を投げ視界を潰し、その隙にグラップルワイヤーで戦車上部に取り付く。後はハッチをこじ開け車内に焼夷手榴弾を投げ込み離脱。数千度の熱により中にいた兵士は勿論、戦車が耐え切れる訳もなく、砲弾や燃料に引火し爆発、炎上した。

 

 

「左翼の戦車2両の破壊を確認!降りるならいまだぜ!」

 

「分かりました。皆さんしっかり掴まってて下さい!急降下します!」

 

 

M16の合図で急降下を開始する輸送ヘリ。幸い、S-117の奇襲兼陽動のお陰で被害もなく正規軍の残存部隊近くまで降下する事ができた。

 

 

「それでは皆さん、私は一旦後方に退避します。ご武運を」

 

 

M4達AR小隊を降ろしたパイロットはそう言い、戦闘エリアを離脱していく。それを見送る事はせず、M4達は残存部隊との合流を目指すべく走り出す。そして数分後、無事残存部隊と合流を果たすことが出来た。

 

 

「G&K所属、AR小隊隊長のM4A1です」

 

「正規軍第二駐屯基地所属の偵察中隊、伍長のジェンキンスだ。救援要請に応えてくれて感謝するよ」

 

「左翼に展開していた戦車部隊は既に排除が完了しています」

 

「あぁ、こちらでも確認した。まるで隕石みたいだったよ。お陰で左翼に振っていた戦力を手薄だった右翼に回すことが出来た。彼には感謝してもしきれないよ」

 

「?失礼ですが、今指揮を執っているのはジェンキンスさんなんですか?」

 

「あぁ、そうだよ。恥ずかしい話、最初の奇襲で指揮官を始め、私より階級が上の人間は皆戦車の餌食にされてしまってね。だから今は臨時で部隊の指揮を執ってる訳さ」

 

「そうでしたか。ところで、私達は右翼と中央、どちらに対応すれば宜しいですか?」

 

「出来れば中央の敵部隊を相手にしてほしい。正直どちらも厳しいが、中央の部隊はPMC所属の戦術人形が中心となっている。精度で言えば、こっちがより脅威になる」

 

「分かりました。ではそれでいきましょう」

 

「助かるよ。私は右翼の指揮に戻るが、何かあればすぐ呼んでくれ。可能な限り対応するよ」

 

 

そう言ってジェンキンスは軽く敬礼した後、右翼の指揮に戻っていった。同時にM4達も中央の敵部隊に対応すべく、岩陰や天然の塹壕に身を潜めつつ、攻撃を開始していく。

 

 

「見知った顔を撃つってのも、何か妙な気分だな」

 

「仕方無いでしょ。所属は違えど製造は同じI.O.P産、気にするだけ無駄よ。それに、SOPⅡは全く気にしてないみたいよ?」

 

 

M16の愚痴に反応したAR15は隣に居る仲間を指差す。そこには笑い叫びながら敵戦術人形を銃撃するSOPⅡが居た。孤立した人形は蜂の巣に、集団で固まっている場所にはグレネード弾を撃ち込み次々と屠っていく。

 

 

「・・・みたいだな。全く、SOPⅡの能天気さが羨ましく思える日が来るとはねぇ」

 

「・・・同感ね」

 

 

M16の言葉に少々呆れつつも同意し、不用意に頭を出した敵戦術人形をHS(ヘッドショット)で仕留めるAR15。そんな中、S-117からM4へ無線が入る。

 

 

「こちらS-117。そちらの状況は?」

 

「こちらM4。予定通り正規軍の指揮官と接触、現在中央の敵部隊と交戦中です」

 

「了解した。こちらも中央の戦車を1両破壊した所だ。このまま残りを・・・」

 

 

破壊でき次第合流する、とS-117が言いかけたその時、青白い光線が右翼に展開していた正規軍のHydraを貫き爆散、周囲に居たCyclopsやAegisが巻き込まれる。

 

 

「今のは一体・・・」

 

「おいおい!ありゃ正規軍のTyphonだぞ!?いくらなんでもあれはナシだろ!」

 

 

岩陰から双眼鏡で光線が放たれた場所を確認して驚愕するM16。そこには本来、正規軍が運用している筈の主力戦車であり、E.L.I.Dの殲滅を目的とする強力な兵器が鎮座していた。

 

 

「S-117!作戦変更です!至急右翼に急行し、新たに出現した戦車を排除してください!あれは本来、正規軍が運用している物で、このまま放置するのは危険です!中央の戦車は私達で対処します!」

 

 

M4の指示に『マジかよ・・・』といった表情を浮かべるM16とAR15。確かに大戦前の旧式戦車と最新の軍用戦車とでは驚異度は天と地程の差があるが、腐っても戦車。厄介な相手なのには変わらない。それを私達だけで対処するのは荷が重すぎるだろう、と2人は電脳内で抗議した。

 

 

「姉さん!SOPⅡ!今から私と3人であの戦車を無力化します。AR15はここで私達のカバーをお願いします」

 

「了解」

 

「マジかー。ま、仕方ないか。行くぞSOPⅡ!」

 

「わーい!突撃だぁぁぁ!!」

 

 

3人は意を決して岩陰から飛び出し、弾幕を張りつつ敵戦車へと向かっていった。

 

 

 

一方、M4との通信を終えたチーフは指示どおり右翼へと走り出していた。

 

 

「おい!もう1両の戦車は良いのか?」

 

「状況が変わった。右翼に新手の戦車が現れたらしい」

 

 

ウロボロスの疑問に敵兵士を撃ち殺しながらチーフは答える。

 

 

「新手の戦車?今更1両2両増えても大して変わらないだろう?」

 

「そうでもない。M4は正規軍の戦車だと言っていた」

 

「正規軍の戦車・・・。あぁ、Typhonか。確かに厄介だなそれは」

 

「知ってるのか?」

 

「鉄血にいた頃データベースで見たことがある。夢想家(ドリーマー)がコピー品を作ろうとしてたがコスパが悪すぎて止めたとか言ってたな」

 

「操縦の仕方は分かるか?」

 

「そりゃ一通り資料には目を通したからな。まて。お前、何をする気だ?」

 

「今に分かるさ。場所は分かるか?」

 

「右前方約500m先だ。周囲に護衛の兵士は居ないようだな」

 

「好都合だ」

 

 

暫く走っていると、これまで破壊してきた戦車とは明らかに形状が異る、迷彩処理が施された戦車らしき兵器が見えてきた。気付かれる前にチーフは閃光手榴弾を投擲、戦車の正面手前で炸裂する。

 

 

「ハッチの場所は?」

 

「砲身が付いてる車体の先端上部だ。お前まさか・・・」

 

「そのまさかだ」

 

 

チーフはウロボロスにそう言うとTyphonの砲身、側面の真ん中にグラップルワイヤーを撃ち込み車体へ取り付く事に成功する。そして右腕を大きく振り上げ、思いっきりハッチを殴りつけた。そのまま5発程殴りつけるとハッチと装甲の間に隙間が生じ、そこへ手を差し込み強引にハッチをこじ開け、中にいた兵士の服を掴み『降りろ』と言って強引に引きずり出した。

 

 

 

「まさか本当にやるとはな。で?次は何をするんだ?」

 

「コイツで敵戦車を破壊する」

 

「アッハッハッハ!!そいつは愉快だな!ここからなら2両とも狙い撃てるぞ?なに、最新式と言っても操作はそう変わらん。ただエネルギーチャージに10秒程掛かるがな」

 

「なら問題ない。手前から破壊する」

 

「了解だ♪」

 

 

それから程なくして、Typhonが主砲のレールガンを発射。右翼に展開していた戦車の装甲を、熱したナイフでバターを切るように容易く貫き破壊する。異変に気付いたもう1両の戦車が回避行動を取ろうとするも既に遅く、側面を貫かれあえなく爆散していった。それとほぼ同時に赤い信号弾が空高く撃ち出され、PMC所属の戦術人形を含めた敵部隊は撤退していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー20分後 正規軍残存部隊臨時指揮所ー

 

 

 

「Typhonが出てきたときは流石に駄目かと思いましたが、貴方達のお陰で生き残ることが出来ました。部隊を代表して、お礼を言います。有難うございました」

 

 

臨時で指揮を執っていたジェンキンス伍長が軍帽を取り深々と頭を下げる。全身砂まみれで所々血とも油とも判らぬシミが付いており、戦闘の激しさを物語っていた。

 

 

「いえ、私達は義務を果たしただけです。それに間に合って良かったです、ジェンキンスさん」

 

 

全身砂まみれのM4が答える。こちらも旧式の戦車相手に大立ち回りを演じ、破壊こそ出来なかったもののキャタピラと砲身に損傷を与え無力化する事に成功していた。

 

 

「それはそうと、彼等は一体何者何ですか?救助要請の時は確か反乱軍と言っていましたが・・・」

 

「文字通りですよ。現政権や軍のやり方が気に入らない者が中心の民兵組織ですよ。私達がここに来たのも、元々は連中の出没情報があったので、その確認のために派遣されたんです。まぁ、結果はご覧の有様ですが」

 

「ただの民兵組織にしては装備や兵の練度が高いのが気になるな」

 

 

鹵獲したTyphonを運び終えたチーフが2人の会話に入ってきた。

 

 

「貴方は・・・」

 

「彼は16Labで開発された次世代型の軍用戦術人形です」

 

S-(シエラ)117だ。宜しく頼む」

 

「そうでしたか。私は正規軍第二駐屯基地、偵察中隊所属のウォレス・ジェンキンス伍長です。今回は救援要請に応えてくれて有難うございました」

 

「気にするな。それより民兵組織と言ったが、あの動きは明らかに軍事訓練を受けた動きだった。何か裏があるのでは?」

 

「・・・はい。確かに表向きは素人の民兵集団という事になってますが、実際は周辺の国々から軍事支援を受けた準軍事組織です。もちろん各国は否定していますが」

 

「!何故そんな・・・」

 

「政治的な問題もあるのでしょうが、一番の要因は我々正規軍の軍事力、と言った所でしょうか。ご存知の通り、我々はE.L.I.Dの対策として強大な軍事力を有しています。しかし周辺の国々、特に崩壊液(コーラップス)汚染が少ない国からはその軍事力を危険視する声があり、力を削ぐ目的で反乱軍を支援している。というのが我々の認識です」

 

「厄介だな」

 

 

苦い表情をしつつジェンキンスは話を続ける。

 

 

「全くです。ただでさえE.L.I.Dの対応で手が回らないというのに・・・。それに最近は軍施設に侵入して物資を強奪される事件も発生しています。大方、あのTyphonもそれで手に入れたのでしょう。おっと、失礼。つい愚痴になってしまいましたね。もうじき基地から救助部隊が到着するので、後は我々だけで大丈夫です。我々を救ってくれて、本当に有難うございました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー30分後 輸送ヘリ内ー

 

 

「あ〜一時はどうなるかと思ったが、無事終わったな」

 

 

M16がスキットルの中身を呑みながら呟く。

 

 

「そうね。良い経験にはなったけど、二度とやりたくはないわね」

 

 

AR15の言葉に『違いない』とM16が相づちをうつ。そんな中、SOPⅡが2人の間にやって来る。

 

 

「ねぇねぇ!これどう?似合う?」

 

 

フカフカの白い帽子を被り、片目に眼帯をしたSOPⅡがはしゃぎながら聞いてくる。

 

 

「おぉー似合ってるぞSOPⅡ・・・まて、それ何処で手に入れた?」

 

「まさかさっきの戦場でじゃないでしょうね?」

 

「そうだよー♪実はこれ前から欲しかったんだぁ」

 

 

SOPⅡの返事に青ざめるM16とAR15。恐らく前の持ち主は先の戦闘にいたPMC所属のI.O.P製戦術人形だろう。そしてG&Kにも同型の戦術人形は存在する。もしSOPⅡが『うっかり』入手方法を話したら・・・。そう考えた2人は心?を鬼にしてそれらを外へ投げ捨てたのだった。

 

 

「あたしの戦利品がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

帰路につくヘリの中でSOPⅡの嘆きが響くのであった。

 

 

 

 

 

 

 







SOPⅡの戦利品は犠牲になったのだ。AR小隊の評判、その犠牲にな・・・



今回はHALOシリーズ伝統の落下を組み込んでみました。チーフと言えば落下、落下といえばチーフですから(暴論)


偵察中隊のジェンキンス伍長は無印で登場したキャラになります。何気に好きなキャラなんです(すぐ死んだけど)


そんな彼がゲームよりも活躍する小説版HALO ザ フラッドという作品がありますので興味がある方は是非読みましょう。


次は久しぶりにブルーチームの登場になります。ついでにチーフと因縁のある「アイツ」が出てきます(予定)


誤字、脱字、その他が有りましたらご報告宜しくお願いします。


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act.17 a deadly enemy





皆さんお久しぶりです。作者です。夏至が過ぎ毎日暑い日が続いておりますがいかがお過ごしでしょうか?作者は無事死んでます。

最近やっと処方されたお薬が効いてきたのか元気な日が増えてきた(当社比)のでこうして次話を投稿することが出来ました(まだまだ序盤なんですがね・・・)

まぁそんな事は気にせず読んで下されば私としては幸いです(出来れば高評価も欲しいです)

それでは本編をどうぞ




 

 

 

 

 

ー16Lab ペルシカリアの専用研究スペースー

 

 

「聞いたわよ?この前の作戦で高度3000フィート上空から戦車に衝突したんですって?」

 

 

ボサボサになった髪の毛にヨレヨレの白衣を身に纏いつつ、愛用のマグカップでコーヒーを飲みながらペルシカはチーフに尋ねる。

 

 

「大した事じゃない。似たようなことは何度も経験している」

 

「だとしても、よ。そんな事続けてたら、そのうち全身バラバラになっちゃうわよ?後始末する娘たちの事も少しは考えなさい?」

 

「・・・・・・」

 

 

モニターに測定データを入力しつつ、ペルシカは彼を諫める。彼からの返事が無い事を疑問に思った彼女は『どうかした?』と尋ねる。

 

 

「いや・・・。昔、戦友から似たような事を言われたな、と思っただけだ」

 

「そう・・・。とりあえずアーマーの方は特に問題なさそうね。次は身体の方を確認するからこっちにきて頂戴」

 

「分かった」

 

 

少しだけ湿っぽくなった空気を払拭するように動く2人。ペルシカは慣れた手付きでチーフのアーマーを解除していく。

 

 

「そうそう、以前君から依頼された武器の製造だけど、試作品が完成したから後で試してもらえるかしら?」

 

「意外と早く出来たな。もう少し時間が掛かると思っていたが・・・」

 

 

ペルシカの話にアーマーを全て外し終え、専用のカプセルに

入りつつチーフは意外そうに答える。

 

 

「まぁ原理自体は単純だからね。君が提供した武器データを元に設計したからそう時間は掛からなかったよ。にしても、良く戦場であんな物を使ってたね?」

 

 

身体データを取りつつペルシカが若干呆れつつ尋ねる。

 

 

「敵陣の中で使う分には問題無いからな。敵を素早く殲滅出来る」

 

「そ、そうなのね・・・。よし、身体データも問題なし。そこで少し待ってて。今持ってくるから」

 

 

そう言ってペルシカが席を外し別室に入ると同時に、ブルーチームの面々が研究スペースに入ってきた。

 

 

「ペルシカ博士、ただ今戻りました。頼まれた物資の回収任務の件なんですが・・・」

 

「コンテンダーか?博士なら今別室に居る。そのうち戻ってくると思うが」

 

「ち、チーフ!?ここで一体何を!?」

 

「・・・・・・まぁ、健康診断といった所だ」

 

「そ、そうだったんですね。私達はペルシカ博士のお使い・・・というか、私用で旧市街に行ってたんです。勿論、会社の任務としてですが」

 

「そうか、ご苦労だったな。物資の回収任務と言っていたが、何を回収したんだ?」

 

「えーと、それなんですが・・・。その物資に問題が発生したというか、ある意味では問題ないというか・・・」

 

 

言葉を濁すコンテンダー。その背後から他のメンバーが出てくる中、鼻歌に混じりに声の高い男の声が聞こえ始めた。

 

 

「いやぁ、それにしてもこの時代の人類(リクレイマー)は大変ユニークですね!AIに人間の器を用意して、民間利用だけでなく兵器としても運用するとは。私の居た時代では考えられませんでしたよ。実に素晴らしい!」

 

 

声の主はブルーチームの背後から現れた黒い長方形のドローンらしき物体だった。そして中央に立体映像装置が組み込まれているらしく球状の、まるで金属で出来た目玉のような物が投影されていた。

 

 

「!!!」

 

 

それを見たチーフは思考よりも先に体が動いていた。コンテンダーから銃を奪い、実弾が装填されている事を確認するとドローンを手近な台に抑え銃を突きつける。

 

 

「ち、チーフ!?」

 

「えっ!?な、なに!?」

 

「ちょっと、何やってんのよ!?」

 

 

コンテンダー、キャリコ、WAが困惑する中、ドローンは至って冷静だった。

 

 

「何故お前がここに居る?」

 

「生体反応を確認、該当データを参照・・・1件あり。おや!リクレイマーではありませんか!?お久しぶりです!また貴方に会えるとは想定外でしたよ!お元気でしたか?」

 

「もう一度聞く、何故お前がここに居る?」

 

 

チーフが実銃(コンテンダー)の撃鉄を起こし静かに、そして怒りを含めて尋ねる。

 

 

「その質問に答えたいのは山々なのですが、私もつい先程起動したばかりでして・・・。それより銃を降ろしませんか?彼女達が驚いてしまっていますよ?」

 

 

周囲を見回すチーフ。ライフルをこちらに向けるWA、銃を手に持ちながらも動揺するキャリコ、何時でも白兵戦が出来るように構えるコンテンダー、終始傍観に徹するAK12とAN94。チーフは一度大きく深呼吸し、ドローンを抑えた手を離し、銃の撃鉄を解除して持ち主に返す。

 

 

「驚かせて悪かったな」

 

「言いたいことは山ほどありますが今は止めときます。あのドローンとお知り合いで?」

 

「正確には『中身』だがな。離せば長くなるが・・・」

 

「?」

 

「奴には二度、殺されかけた事がある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー30分後 同研究スペースー

 

 

 

 

機密保持のためコンテンダー達は先に本社に帰らせ、研究スペースにはペルシカ、チーフ、そして問題のドローンが残っていた。

 

 

 

「で?君のことは何て呼べば良いのかな?」

 

「私の名前は343ギルティ・スパーク、04のモニターです。他にもオラクル、ティンカーベルなどありますが、どうぞお好きにお呼びください」

 

「じゃあモニター。1つ質問するが、君はここに居るチーフ同様、未来・・・あぁ、違うな。過去の存在という認識で良いのかな?」

 

「概ねその認識で問題ありません。強いて言えば、私はリクレイマーよりも大昔の存在となります」

 

「大昔というと?」

 

「数百万年、若しくはそれ以上ですね。残念ですが、その辺りは私も忘れてしまいました」

 

 

気の遠くなるような長い年月にペルシカは頭を抱える。それほどの大昔に現行のAIを大きく超える性能を持つ存在がおり、かつそれを製造した種族がいたという事実に。彼女もこの世界ではAI分野の第一人者、天才などと呼ばれているが、上には上が居たという事を思い知らされ悔しさ半分、恥ずかしさ半分といった状態であった。

 

 

「次は俺の番だ。何故お前は生きている?あの時、確実に破壊したはずだ」

 

 

頭を抱えるペルシカの隣りでアーマーを装着したチーフが尋ねる。

 

 

「確かにそうですね。『あの時の私は』完全に破壊されました。データも含めて。ですがあの場には再建造されたリングがありました。それを考えれば自ずと答えは出ると思いますよ?」

 

「・・・アークか」

 

「はい。これは私の予想ですが、『当時の私が』破壊された際、バックアップデータがアークの何処かに保存されたのでしょう。後は器を再建しデータをアップロードすれば良いだけ。ですが、貴方が不完全な状態のリングを起動した為アークが崩壊してしまった。結果、今になってこんな姿で再起動する事になりました」

 

 

モニターはそう言うとドローンを浮かび上がらせ部屋の中を移動し始める。

 

 

「内部リソースやスペックは最低、強度も銃火器で簡単に破壊できる程度、幾つか面白い機能もありますが・・・、これを製造した人類(リクレイマー)に文句の1つでも言いたい所ですよ。まぁ、この時代のレベルにしては良く出来た方だとは思いますがね?」

 

「申し訳ないがそれが現代の技術力の限界なんだよ。改善点があるなら製造者である私が責任持って対応しよう」

 

 

ようやくダメージから復帰したペルシカがコーヒーの飲みながら申し訳無さそうに言う。

 

 

「ありがとうございます。所で1つ提案なのですが、私をリクレイマーの部隊に加えて貰えないでしょうか?」

 

「・・・どういうつもりだ?」

 

「どうせ貴方の事です。色々と理由を付けて私を隔離するか、破壊処分するつもりなのでしょう?でしたら身近に置き、不穏な動きをしないか監視しては如何です?私としても、この時代の世界にはとても興味がありますしね」

 

「・・・俺の一存では決められん。上に判断を仰ぐ必要がある」

 

「ならそれは私がクルーガーとヘリアンに聞いとくよ。ちょっとまってて(試作ドローンのデータ収集のチャンス!)」

 

 

 

 

 

 

その後、試作ドローン(個体名:モニター)は稼働データ収集を目的として正式にブルーチームに編入されることになる。三度目のこの邂逅が吉と出るか凶と出るか、それは当人たちにも分からなかった・・・。

 

 

 

 

 

 






出したかったキャラその2です(笑)

小説版でも生存は確定しているそうなんですが、その後の足取りが不透明なのでオリジナル展開させて頂きました。(日本語訳出ないかなー)

次回は久しぶりにブルーチームの出番です!

かなり血生臭くなる展開(予定)なので苦手な方は飛ばしたほうが良いかも?(おい)


それでは最後まで読んで下さりありがとうございます。


誤字・脱字報告、評価宜しくお願い致します


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act.18 slaughterhouse

 

 

 

ーG&K本社 第2作戦会議室ー

 

 

「人形の連続失踪事件の捜査・・・ですか?」

 

 

キャリコがなんで私達が?といった表情をしつつヘリアンに尋ねる。

 

 

「そうだ。当該エリアはC05地区。鉄血に襲撃される可能性も低く、人権団体の過激派等の存在も確認出来ない、比較的平和な地区だ。」

 

 

ヘリアンは淡々と概要を説明していく。

 

 

「始まりは今から約一ヶ月程前、最初は交通整理を担当していた人形2体。次いで地区の幼稚園に所属していた人形1体。個人所有の人形が計6体。その後、危機感を覚えた民間の有志により発足した自警団に所属する人形5体が次々に消えていった。そこでG&Kからも治安維持の名目でパトロール部隊の編成、巡回をしたところ、2日前に1部隊が丸々失踪した」

 

 

「民間の人形ならまだしも、訓練を受けた戦術人形が簡単に失踪するとは考えにくい・・・。何か裏がある、ということね?」

 

 

AK12の発言に『その通りよ』とヘリアンの隣りにいたペルシカが説明に入る。

 

 

「以前、貴女達に依頼した試作ドローンの回収の件と今回の失踪が繋がってる事が分かったの」

 

「どういう事?さっぱり分からないわ」

 

 

一体何がどう繋がっているのか皆目検討も付かないWAが眉を潜めつつ軽く愚痴る。

 

 

「実はあのドローンは保管中に職員に盗まれた物でね。余罪が無いか徹底的に調査したところ、I.O.P本社倉庫から『無線式緊急停止装置』一式が紛失している事が判明したの。で、その事を下手人に突き付けたら、金に困ってブラックマーケットに流したって白状したわ。恐らくそこからC05地区に渡ったんでしょうね」

 

 

因みに下手人は上級ID剥奪の上、崩壊液研究所へ強制異動になったとの事。

 

 

「ブルーチームには今からC05地区に向かってもらい、現地のパトロール部隊と合流。合同で周辺の警戒をしてもらう。なお、現地で既に追跡装置を搭載したダミー人形を囮として数体用意している。食いついた相手の場所が分かるようにな。質問がなければすぐにでも移動してもらう、いいな?」

 

 

「「「「「「了解」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー2時間後 C05地区上空ー

 

 

 

「もうすぐ基地に到着します。皆さん、準備をお願いします。」

 

 

ヘリパイロットの大声にそれぞれが武器や装備の再確認をする中、本部より緊急連絡が入る。

 

 

「本部より緊急連絡!先行してパトロールを行っていた現地部隊が信号Lost!ブルーチームは失踪ポイントに急行し、現地パトロール部隊の捜索を第1優先とせよとのことです!」

 

「信号がLostしたポイントは何処ですか?」

 

「住宅街から離れた工場地帯とのことです。また、当該基地より治安部隊が出動、周辺一帯を封鎖するとの事です」

 

「パトロール隊は追跡装置を持ってるの?」

 

「不明です」

 

「全く、功を焦って墓穴を掘ったって訳ね」

 

 

コンテンダー、キャリコ、WAが思い思いの言葉を出す中、チーフは静かに語る。

 

 

「どんな内容でも任務を遂行するだけだ。モニター、お前にも働いてもらうぞ?」

 

「リクレイマーの要望なら喜んで」

 

 

ドローンから投影された球状の物体は左右に小刻みに揺れつつ答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー10分後 失踪ポイント周辺ー

 

 

指定ポイントに到着したブルーチームはすぐさま周囲を捜索、失踪したパトロール隊の手がかりを探していた。

 

 

「やはり争った形跡は無いですね。ペルシカ博士が言っていた緊急停止装置を使われたんでしょうか?」

 

「恐らくな」

 

 

辺りを見回すコンテンダーにチーフが答える。

 

 

「いくら無抵抗と言っても人形5体を運ぶのは容易じゃないわ。車で移動したか、アジトが近くにあると考えるのが普通ね」

 

「そう考えるのが妥当ね」

 

 

ハンドライトで地面を照らし痕跡がないか探しながらWAとAK12が会話する。それから10分程、周囲を捜索するも手がかりに繋がるような物は見付けられなかった。

 

 

「不味いよ。何にも見つからないよ!」

 

「このままですとパトロール隊の生存率が低下します。AK12、どうしますか?」

 

 

次第に焦りの色がブルーチームを覆う中、上空から観察していたモニターが戻って来るなりチーフに質問してきた。

 

 

「リクレイマー。確認なのですが、周辺に人が住んでいるか、もしくは稼働中の工場があったりするでしょうか?」

 

「いや、事前の確認でこの辺り一帯は無人地帯と聞いている。それがどうした?」

 

「いえ、ここから約500m西の建物に熱反応と照明の漏れを確認しましたので。もしかしたら例の部隊はそこに居るかも知れません。確証はありませんが・・・」

 

「確かに怪しいですね・・・」

 

「他に手がかりもないし、そこに行く価値はあるんじゃない?」

 

話を聞いていたコンテンダーとWAが揃って発言する。

 

「・・・よし。モニター、その建物に案内してくれ。ブルーチーム、移動するぞ」

 

「「「「「了解」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー数分後 建物前ー

 

 

「どうだ、モニター?」

 

「少々お待ちを。スキャン開始・・・・・・スキャン終了。生体反応及び稼働状態の人形の反応を複数確認しました。リクレイマー、恐らくここで間違いないかと」

 

「分かった。WAは近くの建物の屋根から見張りを、残りは俺と裏口から内部に侵入する。準備は良いな?」

 

 

各々が無言で頷く。

 

 

「よし。ブルーチーム、行動を開始する」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「こちらWA、配置に付いたわ」

 

「了解した。こちらも今から内部に侵入する。『表』に動きは?」

 

「今の所ないわ」

 

「分かった。何か動きがあればすぐに報告を」

 

「分かってるわよ。WAアウト」

 

 

WAとの通信を終えたチーフはモニターに搭載された小型ドローン(鹵獲したスケアクロウのビット)のレーザーで『解錠』したドアからKSGを構えつつ侵入する。一通り安全を確認したチーフはハンドサインを出し、コンテンダー達が一斉に内部に侵入していく。

 

 

「モニター、捕まった人形達と犯人の場所は分かるか?」

 

「大体の場所でしたら。それと恐らくですが、両者は同じく空間に居るかと・・・。こちらです」

 

 

モニターの案内の下、暗い通路や小部屋を通るチーフ達。その時、先頭を行くモニターが止まり困惑気味にチーフに話す。

 

 

「リクレイマー。対象物はこの部屋の先になります。ですが少し遠回りになりますが迂回することを提案します。宜しいでしょうか?」

 

「何故だ?その部屋に何か問題があるのか?」

 

「言葉では何とも・・・。実際に見てもらったほうが納得して頂けるかと。今から私の視界をリクレイマーとリンクさせますので、(ドローン本体)に触れて下さい」

 

 

モニターに促されるままにドローン本体に触るチーフ。次の瞬間、モニターが見ている光景(厳密には各種センサーで補正された映像)がバイザーに映る。それを見たチーフは一瞬顔を顰め、今まで黙っていたウロボロスが喜々とした声で語りかける。

 

 

「アッハッハッハッ!人間の中にも趣味の悪い連中が居るようだな。私達でもここまでは・・・いや、錬金術師(アルケミスト)夢想家(ドリーマー)ならやりかねんか。それにしても酷い有り様だな。これでは屠殺場と何ら変わらないじゃないか」

 

 

そこは頭と四肢を切り落とされ、首から下腹部まで切り開かれ、中の電子機器や金属パーツを全て取り除かれ、人工血液とオイルに塗れた十数体の人形だった物が天井から吊るされた部屋だった。大型の金属カゴの中には同じく中身を抜かれた四肢が無造作に投げ捨てられ、壁には犠牲になった人形の服や装飾品がまるでトロフィーの様に飾られていた。

 

 

「ちょっとチーフ?急に止まってどうしたの?モニターも止まっちゃって。接触回線で何か見てるの?私にも見せてよ」

 

「!?よせキャリコ!」

 

 

チーフの静止も虚しくモニターに触れるキャリコ。次の瞬間、体がビクッ大きく動いたかと思うと、顔面蒼白に呼吸が荒くなり、そして胃の内容物を床にぶち撒けた。

 

 

「おやおや、お子様には少々刺激が強すぎたかなぁ?」

 

「冗談を言ってる場合か!モニター、回線を切れ!コンテンダー!キャリコの介抱を頼む」

 

「わ、分かりました!キャリコ!大丈夫ですか!?」

 

「ゲホッ、ごめ・・・ちょっ・・無理か・・・ウップッ」

 

 

コンテンダーに背中を擦られながら未だに胃の内容物を戻すキャリコを見て作戦継続は無理と判断したチーフは命令を下す。

 

 

「コンテンダー。キャリコを連れてWAの所まで退避しろ。モニター。迂回路があるといったな?ならAK12とAN94を連れてそっちに回れ。俺はこのまま進む。2方向から突入するぞ」

 

「分かりました。チーフ、ご武運を」

 

「リクレイマーが仰るなら。ではお二方、こちらです」

 

「チーフからWAへ。キャリコとコンテンダーが作戦区域を離脱、そちらに合流する。準備しておけ」

 

「了解。何か問題でもあったの?」

 

「後で話す。余り良い話題ではないがな」

 

「分かったわ。ん、二人が見えたわ。一旦切るわね、WAアウト」

 

 

通信を終え1人問題の部屋の中に入るチーフ。歩くたびにピチャピチャと音を立てるそれが水なのか、それとも人工血液とオイルのものなのかも分からない暗闇をゆっくり進んでいく。そしてちょうどドアに着いたとき、AK12から配置に着いたと通信が入る。

 

 

「タイミングは任せるわ」

 

「パトロール隊の正確な位置は分かるか?」

 

「お友達の話だとどうやら別室に居るみたいね。どうする?」

 

「なら2人はパトロール隊の確保を頼む。俺は・・・」

 

 

チーフはそう言うとドアを思い切り蹴破り、近くに居た男に向ってKSGに装填したスラグ弾を放つ。

 

 

「奴等を制圧(殲滅)する」

 

 

最初の1人を仕留めるとそのまま部屋の奥に進みつつ、更に2人の男を作業台越しに仕留めるチーフ。

 

 

「な、なんだ一体!?」

 

「て、敵だ!撃ち殺せ!」

 

 

ようやく状況を理解した男達がチーフに向って拳銃やアサルトライフルで応戦する。が、素人なのか、それとも突然の出来事に動揺しているのか狙いが定まっておらず、弾丸はチーフに当たることはなく、逆に1人、また1人とチーフにより撃ち倒されて行く。

 

 

「軍の戦術人形か!?なんでこんなところに居るんだよ!?」

 

「知るか!おい!停止装置は使えないのか!?」

 

「駄目だ!これはI.O.Pの戦術人形にしか使えない!軍用人形は対応外だ!」

 

「クソがっ!これじゃあ全滅だ!とっととずらかるぞ!」

 

「ま、まってくれ!俺もいっギャァァァ」

 

「クソッタレがぁぁぁぁ!!これでも喰らいやがれぇ!!」

 

 

両手にサブマシンガンを持った男がチーフの背後から乱射する。しかしシールドに阻まれ、バトルスーツには傷1つ付けることは出来なかった。

 

 

「ば、化物め・・・」

 

 

それが男の最後の言葉となった。

 

 

「クリア」

 

 

チーフは短く告げる。先程までの銃銃声が嘘のように辺りを静寂が包む。

 

 

「こちらAN94、パトロール隊の安全を確保。全員無事です」

 

「了解した。こちらも今しがた制圧(殲滅)し終わった所だ」

 

「WAからチーフへ。表から逃げようとした男が居たから両足撃ち抜いたわ。もう一発要る?」

 

「上出来だWA。恐らくそいつがリーダー格だろう。こちらで拘束しておく。」

 

「了解よ。それとキャリコだけど、鎮静剤を打ったから暫くは大丈夫だと思う。まぁラボ行きは確定だろうけど」

 

「そうか・・・。パトロール隊は確保した、撤収する。迎えのヘリを頼む」

 

「分かったわ。WAアウト」

 

 

 

 

 

 

 

その後、例の施設から失踪した全人形の遺留品が発見され、関係各所に返却されることとなる。また、ブルーチーム所属のキャリコは任務中に受けたストレスが酷く、暫くペルシカ預かりとなるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー鉄血中枢部 人形製造局ー

 

 

「やぁっと完成したわぁ。あとは起動ボタンを押すだけねぇ。」

 

 

長い髪をなびかせユラユラと浮きながら夢想家(ドリーマー)は製造された真新しい人形に近づいていく。鉄血ハイエンド特有の白い肌に全身を覆う黒のインナー。身長は180cm、髪は黒の短髪、胸は大きすぎず小さすぎず、所謂モデル体型というやつだ。

 

 

「さぁ起きなさぁい調停者(アービター)

 

 

そう言ってドリーマーは起動ボタンを押す。部屋全体が機械音に包まれる中、アービターと呼ばれたハイエンド人形がゆっくりと瞼を開ける。黄色い瞳で周囲を確認し、ゆっくりと起き上がる。

 

 

「おはよう、アービター。気分はどうかしらぁ?」

 

「問題ない。それが私の名前か?」

 

「そうよぉ。貴女は調停者の名を冠する人形。エリザ様自らが設計を指揮した特別な人形。貴女のために専用の武具まで用意したのよぉ?」

 

 

パチンッとドリーマーが指を鳴らすと床から2メートルほどの箱が現れ、開いていく。中には西洋の甲冑をモチーフにしたような鎧、メリケンサックの様な近接武器が収められており、アービターはおもむろにそれを手にした。

 

 

「扱い方はインストールしてるから分かるはずよぉ」

 

 

指を入れ軽く力を込めるとプラズマで形成された赤い刀身が現れ、軽く振る度に独特な音を奏でる。

 

 

「悪くない」

 

「そう、喜んでもらえて何よりよぉ。暫くは私の指示のもとで動いてもらうからそのつもりで宜しくねぇ」

 

「分かりました。ではドリーマー、このアービターにご命令を」

 

 

箱から取り出した兜を被り、ゆっくり振り向きつつアービターは言うのであった。

 

 

 

 

 

 









祝!お気に入り登録100件!

こんな小説を読んでくださり誠に有難う御座います。

これからも読んでいただけると幸いです。

誤字・脱字・コメント宜しくお願い致します


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act.19 surprise attack

今年最後の投稿(多分)になると思います。

感想やミス等ありましたらぜひお知らせください。

それでは本編をどうぞ


 

 

 

 

 

 

 

 

ーG&K本社 地下射撃場ー

 

 

貸切状態の射撃場にドンッ、ドンッと銃声が響く。指揮官を示す赤い服装の大男が手に持つ銃ーデザートイーグル50EAーから放たれる弾丸は寸分の狂いもなくターゲットの中心を撃ち抜き、手元の端末に情報が表示される。それに満足したのか男は銃の安全装置をロックし、受付へと歩いていく。

 

 

「お疲れ様クラインさん。銃の調子はどうだった?」

 

「問題ない。流石は本社1のガンスミスだな」

 

「もう、煽てても何も・・・って、あたしが言ったんだっけ?あはははは・・・」

 

 

射撃場の管理者であるRFBが苦笑いする。

 

 

「にしても、ここ数日良く来るけど、任務の方は大丈夫なの?」

 

「暫くは非番だとヘリアントスから通達があってな。特にすることもないからこうして訓練してるだけだ」

 

「はぁ、スコーピオン達にクラインさんの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいよ。あいつらが来るときは大体ストレス発散目的だからね」

 

 

机に肘を置き頬杖を付きながらRFBが愚痴る。

 

 

「ま、あたしは銃の整備(コレ)しか出来ないからどうでも良いんだけどねぇ」

 

「ん?RFBは戦術人形じゃないのか?」

 

「あー、まぁ隠すことでもないし、クラインさんなら話してもいっか。烙印システムは知ってるよね?」

 

「あぁ、銃と人形をリンクさせる技術だろ?」

 

「あたしね、実はAm-RFB(自分)との烙印調整に失敗してるの。勿論他の銃もね。原因不明、しかも同一ロットの他の私は問題なく烙印調整出来てるときた。本来なら民生用として再調整されるはずだったんだけど、ここでガンスミスの募集をしてるからどうだ?ってお誘いがあって・・・今ここに居るんだよね。だからあたしは厳密には戦術人形じゃないんだ」

 

「そうか・・・悪いことを聞いたな」

 

「良いの良いの!別によくある話だし、クラインさんが謝る必要なんて無いよ!それにガンスミス(この仕事)も楽しいし、会社にとって重要だって分かってるし。さ!こんな湿っぽい話は終わりにして、メンテナンスの続きをしようしよう!」

 

 

湿っぽくなった身の上話を強引に終わらせた彼女は次に調整する銃を手に取ろうとしたその時、施設内に配置された赤い警告灯と共に警報が一斉に鳴り響くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー10分前 1階エントランスホールー

 

 

 

「はぁ、各施設の監査の次は本社に報告・・・。いくら人手不足とはいえ、私のキャパを超えていますわ。これが終わったら絶対スプリングフィールドさんのお店でケーキバイキングを楽しみますわ!」

 

そう一人愚痴を言いつつホール内を歩く赤いコートを纏った10代の少女、カリーナ。その才能から本社の後方幕僚に任命され、毎日膨大な業務に追われるもそれらを期日内に終わらせるエリートである。そのまま社員用ゲートを通ろうとした時、周囲にいた大人達や警備として配備されていた人形たちが一斉にざわめき出す。

 

 

「何ですの一体、まさか鉄血の襲・・げ・・・き・・・」

 

 

周囲の視線の先が気になり振り返るカリーナ。その瞳に映ったのは空中に浮かぶ、紫色をした流線型の大きな物体であった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ー鉄血鹵獲武装兵員輸送機「ファントム」内ー

 

 

「目標上空に到達。光学迷彩、過負荷のため解除されました」

 

「構わん。ハッチ開放、兵員降下と同時にStrikerに斉射をさせろ。私も出る。斉射後、現区域を離脱しろ」

 

「了解です、調停者(アービター)ご武運を」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「何なんですの・・・アレ。まさかUFOとか?」

 

 

カリーナを含め多くの人々がソレに目を奪われ、中には写真を撮る者までいた。警備担当の人形も含めて・・・。そんな中、浮遊する物体はゆっくりと側面を向け、ハッチを開放し中身を次々と吐き出していく。

 

 

「あれは鉄血の人形?じゃああのUFOも・・・!皆さん!伏せて!!」

 

 

カリーナが叫んだ次の瞬間、台座に固定されたStrikerのマシンガンから猛烈な弾丸の雨がエントランスホールへ降り注ぐ。瞬く間に窓ガラスが砕け散り、壁面に弾痕が次々と穿たれていく。

 

 

「斉射止め!Guard隊は前進、敵の出方を見る。Guard隊に被害が出たらRipper隊も前進させろ」

 

「了解しました、調停者」

 

「よし。ファントム、現区域を離脱だ、急げよ」

 

「けが人を奥に運べ!奴等は待っちゃくれないぞ!あと中央管理室に警報の発令と、エントランスホールに増員を要請しろ!」

 

 

耳がキーンとする中、カリーナはとある人形に声をかけられた。

 

 

「おいアンタ!大丈夫か?怪我はしてないか?」

 

「え、えぇ。大丈夫ですわ。ありがとうございます、えーっと」

 

「俺はここの警備責任者のトンプソンさ。と言っても今日は非番でこれから出かけようとしてたんだが・・・。そうもいかなくなっちまった」

 

 

割れた窓ガラスの先からは横一列に並んだGuardがジリジリと迫っていていた。一方戦術人形達もテーブルやソファ等で簡易的なバリケードを構築し既に臨戦態勢に入っていた。

 

 

「アンタ指揮官か?出来ればここの指揮を取ってほしいんだが・・・」

 

「ごめんなさい。私後方幕僚で実践経験は・・・」

 

「なら暫くは俺達でやるしかないか。アンタは奥でけが人を診ててくれるか?」

 

「わかりましたわ」

 

「オーケー決まりだ。向こうは頼んだぜ」

 

 

トンプソンはそう言うとコートの中からトンプソン(愛銃)を取り出しバリケードの方へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー現在 G&K本社 地下射撃場ー

 

 

「な、何!?何の騒ぎ!?抜き打ちの避難訓練とかじゃないよね!?はっ!もしかして鉄血が攻めてきたとか!?」

 

「落ち着けRFB。先ずは情報収集だ」

 

 

そう言うとクラインはポケットからインカムを取り出し通信を始める。

 

 

「モニター、聞こえるか?何が起きているか教えてくれて」

 

「おぉ、リクレイマー!ご無事で何よりです。現在一階のエントランスホールで戦闘が行われています。」

 

「敵の勢力は?人間か?」

 

「いいえ、恐らく人形かと。かなり統率された動きを取っていますね。リクレイマー、今どちらに?」

 

「地下の射撃場だ。非常口もエレベーターもロックが掛かっている。解除出来るか?」

 

「可能です。少々お待ちを、リクレイマー」

 

 

数分後、エレベーターのロックが解除され、中に入るクラインとRFB。行き先を指定し下へ降下するエレベーター。到着先にある電子ロック式の扉を解除し中に入る。

 

 

「状況は?」

 

「遅いぞ117!敵は特徴からしてGuardとRipper、数は20体程だな。だが統率が取れているからハイエンドクラスも居る可能性がある」

 

「それだけ分かれば十分だ」

 

クラインはそう言うと服を脱ぎ、黒インナーの状態でとある装置の上に立つ。

 

 

「RFB、済まないがそこのコンソールのボタンを押してくれないか?」

 

「もう何がなんだか・・・コレを押せばいいのね?」

 

 

ボタンを押したと同時に装置が起動し、クラインの四肢や胴体に特殊なアーマーが装着されていく。そしてRFBにはその姿に見覚えがあった。

 

 

「クラインさん・・・貴方もしかして・・・」

 

「説明は後だ。緊急事態だ、手を貸してほしい」

 

 

最後にヘルメットを被りウロボロスの入ったチップを挿入したクライン・・・マスターチーフはRFBに対し言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー1階エントランスホールー

 

 

「なんかこっちの攻撃効いて無くない?」

 

「弾丸は当たってるはずなのにまるで手応えがない。まさか強化型?トンプソン!不味いよ!」

 

「とにかく弾幕を張るんだ!増援のライフル隊が来るまで持ちこたえろ!」

 

「スコーピオンが被弾!」

 

「大丈夫スコーピオン!?動ける!?」

 

「アチチチ!あ、アレ?弾が当たったところが動かないや」

 

「MP40が頭部に被弾!行動不能!」

 

「無闇に体を出すな!当たりどころが悪けりゃ一発で殺られるぞ!」

 

 

警備隊はGuardのシールド(物理盾とエネルギーシールドによる二重構造)に対し有効打を与えることができず、徐々に負傷者が増えていった。そんな時、エントランスホール2階に人影が複数現れ、銃口をGuardに向ける。

 

 

「遅くなりましたトンプソン!ライフル隊、これより攻撃を開始します!」

 

「来たかスプリングフィールド!奴等の盾はこっちの攻撃を無力化してる!頭を狙え!」

 

「心得ました。総員!徹甲弾装填!目標Guard頭部!」

 

「地の利はこっちにあるってね!」

 

「撃てぇ!」

 

 

号令と同時にライフル隊による一斉射撃がGuardを襲う。大半は防御態勢を取り難を逃れるも、反応が遅れた数体は頭部を見事に撃ち抜かれ機能を停止させていた。

 

 

「後方よりRipper接近!数10!」

 

「SVDの隊はRipperを!私の隊はこのままGuardを抑えます!」

 

「りょーかい!総員、徹甲弾装填そのまま、目標接近する敵Ripper部隊!狙いは各自任せる!撃てぇ!」

 

 

狙い澄まされたSVD達の弾丸はRipper達を容易く貫く・・・筈だったが、命中したにも関わらず精々が体勢を崩す位で有効なダメージを与えることは叶わなかった。

 

 

「いやいや冗談でしょ!?全然効いてないじゃん!反則っしょあんなの!」

 

 

SVDの抗議の声も虚しくホールに侵入するRipper達。そして2階にいるライフル隊に向け緑色のプラズマ弾を次々に撃ち込んでいく。ライフル隊の援護が弱まったことでGuardが防御態勢を解除、ジリジリと再度侵攻を始めようとしたその時、側面から徹甲弾の掃射によって阻まれる。

 

 

「今だよチーフ!」

 

 

M2重機関銃のトリガーを引きながらRFBが大声で叫ぶ。その影からチーフは素早く動きRipperの群れに突撃していく。

 

 

「そこのお前!無茶だ!一旦こっちに合流しろ!」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

 

トンプソンの心配を他所にチーフは近くに居たRipperに対し至近距離でKSGのバックショット弾を一発、二発、三発撃ち込み倒す。そのまま隣りにいた2体のRipperを殴り倒し、ヘッドショットで仕留める。そしてRipperが持っていた銃ープラズマガンーを両手に持ちRipperのシールドを次々と剥がしていく。

 

 

「ライフル隊、今だ。攻撃しろ」

 

「誰だか知らないけど、サンキューってね!撃てぇ!」

 

 

チーフの合図で2階にいたライフル隊がシールドの無くなったRipperを狙撃、次々と撃破していく。

 

 

「アイツ何者?トンプソン知ってる?」

 

「知らん。一応味方の様だが・・・」

 

 

そのままチーフは鉄血の残存部隊をプラズマガンを使って掃討しようとした時、背後から何かを感じ取りその場を退く。その刹那、赤い閃光が弧を描きチーフがいた場所を両断する。

 

 

「ウロボロスが言っていたハイエンドクラスか」

 

 

外見は西洋の甲冑の様なプレートを身に着け、右手には見覚えのある刀身ー赤いエナジーソードーを持った人形がそこにはいた。

 

 

「ほぅ、今のを避けるか。」

 

「目的は何だ、鉄血の人形?」

 

「私の名前は調停者(アービター)、何、ちょっとした挨拶みたいなものさ」

 

「アービター・・・、だと?」

 

「そこまでだ鉄血!アンタが連れてきた部下は皆スクラップにしてやったぞ!次はアンタの番だ!」

 

 

アービターとチーフを中心に円を描くように警備隊の人形たちが取り囲みつつ叫ぶ。2階からもライフル隊が狙撃体制を整え何時でも斉射できる状態だった。

 

 

「だが挨拶はここまで。この辺でお暇させてもらうとしよう」

 

「見逃すと思ってんのか?」

 

「それは違うな。お前たちが見逃すんじゃない。私がお前たちを見逃すのさ。また会おう、マスターチーフ。いや、悪魔よ」

 

 

アービターはそう言うと光学迷彩を起動、一瞬の隙をついて包囲網を突破し逃げていった。

 

 

「全く、休暇が台無しだぜ。アンタ、奴と知り合いか?」

 

 

煙草を吸いつつ、チーフに近づきながらトンプソンが尋ねる。

 

 

「いや、初対面だ。だが昔、共に戦った男に少し似ていたな」

 

 

 

 

こうして、G&K本社襲撃事件は幕を閉じるのであった・・・

 

 

 

 

 

 

 



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act.20 post process and・・・

前回が今年最後といったな、あれは嘘だ(作者が崖に落ちる音)


今回は少々短めとなっております。年明けは低体温症で始められたらなぁと一応考えております。


感想、誤字脱字報告などありましたらよろしくお願いします。




 

 

 

 

 

 

ーG&K本社 社長室ー

 

 

「まさか鉄血があの様な手段で襲撃に来るとは・・・。正直予想外だったな」

 

 

薄暗い部屋の中、プロジェクターに映る紫色をした流線型の大型の物体を見つつ、ベレゾヴィッチ・クルーガーが低い声で喋る。

 

 

「エントランスホールは大破、一般社員と警備隊に負傷者が多数出ましたが、死者が出なかったのが不幸中の幸い、といった所でしょうか」

 

 

報告書を見つつヘリアントスが事務的に話す。

 

 

「それでチーフ、君はあれが何なのか分かるかね?」

 

「コヴナントが当時運用していた兵員輸送機の一つだ。名称はファントム。輸送数は約20人ほどで、特定の武装車両の輸送にも使われる。本来は光学迷彩機能は搭載してなかった筈だ。恐らく後付けだろう」

 

「破壊は可能かね?」

 

「可能だが、高性能爆薬を使用したロケットランチャーで4.5発といった所だ。後はそれこそ、戦車でも用意しないと無理だな」

 

 

それを聞いたクルーガーは大きく唸る。

 

 

「私個人としてはファントムよりも此方のほうが脅威だと思います」

 

 

チーフはそう言うとプロジェクターを操作しとある画像にたどり着く。

 

 

「以前チーフが提出した資料にあった宇宙人の武器か」

 

「あぁ、今回確認できたのはプラズマガン、エネルギーシールド、エナジーソードの3つだが、一番危険なのはプラズマガンだ。威力や射程は短いがコヴナントで最も普及している武器の一つであり、大量に生産されている武器だ。先の戦闘でエネルギーシールドを含め回収しなかったという事は、既に向こうに十分な量の武器があるという事になる」

 

 

「ペルシカ博士によるとこのプラズマガンですが、着弾時に強い電子機器の破壊作用があるとのことです。また、戦術人形に対しても効果は絶大で、命中箇所の回路が焼き切れ、頭や胸部のコアに命中すれば行動不能になると報告が出ています」

 

 

「問題はそれらの出どころ・・・か」

 

「やはり遺跡・・・でしょうか?」

 

「恐らくな。対策についてペルシカ博士は何か言っていたか?」

 

「『専門外だから時間が掛かる。とりあえず解析から始める』とのことです」

 

「そうか。とりあえず前線の基地には警告を、万が一遭遇した場合は無理に交戦せず本社の指示に従うよう通達を出しておいてくれ」

 

「分かりました」

 

 

2人を下がらせたクルーガーは徐ろに受話器を取り、とある人物へと連絡を取るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー鉄血支配領域 夢想家のラボー

 

 

 

「あーもう、なんで私がドリーマーのお使いなんてやんなきゃならないのよ!」

 

 

そう苛立ちを隠さず大声で愚痴をこぼすのは鉄血ハイエンドのデストロイヤー。ここ最近暇だという理由で夢想家の仕事のパシリ・・・雑務・・・手伝いをしていた。

 

 

「にしたってあんな数の人間、一体何に使うのやら・・・」

 

 

そう、夢想家の手伝いとは実験に使うモルモット(人間)の確保であった。わざわざ崩壊液汚染のある荒野を中心にである。大半は流浪の避難民や捨てられ行く宛のない子供であり、中には追い剥ぎで生計を立てる連中も居た。その数ざっと200弱の人間をデストロイヤーは部下と共にせっせと集めたのだった。無論、表向きは保護の名目で、である。

 

 

「あらぁ、そんなに気になるのかしらぁ?」

 

「うひゃあ!!き、急に後ろから声かけないでよドリーマー!び、ビックリするじゃない!」

 

「あらぁ、それは悪い事したわねぇ。で、気になるんでしょ?」

 

「そ、そりゃあ・・・まあね」

 

「なら丁度いいわぁ。これからテストするからアンタも来なさい」

 

「え!?良いの!?」

 

「勿論よぉ。テストが出来るのはアンタのお陰なんだし。こっちよぉ」

 

薄暗いラボの奥深くへと進む夢想家とデストロイヤー。途中、山積みになった緑色の蛍光色の液体の入ったケースの横を通り、暫くすると目的地に着いた。

 

 

「ここよぉ。準備はどうかしらぁ」

 

「予定通りです、ドリーマー様」

 

「そう。デストロイヤー、アンタは特別ゲストだからここに座ってなさい。今からとぉーっても面白いことが始まるから」

 

 

それを聞いてデストロイヤーは少し後悔した。ドリーマーの面白いことは大抵ろくでもない事ー具体的には彼女の加虐心を満たす物ーだからだ。そんなデストロイヤーの心情を知ってか知らずか、ドリーマーの部下が最終チェックを始める。

 

 

「ライト点灯。サンプルはグループAから30人。崩壊液濃度は50%。ケース、散布装置に固定完了。換気システム停止を確認。最終安全装置解除。」

 

 

ライトが点灯しガラス越しに内部が見えるようになる。中に居る人間達にはデストロイヤーは見覚えがあった。ここ数日、ドリーマーの手伝いで集めた人間達だ。部屋の中央には大型の散布装置が設置してあり、金属製のケースが既にセットされていた。ここで漸く何のテストなのかデストロイヤーは理解した。

 

 

「さぁデストロイヤー。特別にテスト開始のボタンを押させてあげるわぁ。眼の前の赤いボタンを押しなさぁい」

 

「わ、私が押さなきゃダメ?ドリーマーが責任者なんだから、アンタが押せば良いじゃない!」

 

「あら優しいのねぇ。じゃあ一緒に押しましょう?」

 

 

そう言いつつデストロイヤーの背後に回る夢想家。そしてあっという間に片腕を取られ一緒にボタンを押してしまう。

 

 

「あっ」

 

 

『最終シークエンスが承認されました。崩壊液の散布を開始します。』そう機械的な音声と共に噴霧される崩壊液。中にいる人間たちは突然の出来事にパニックになる。

 

 

「ここから出してくれぇ!!」

 

「ドアを開けろぉ!!」

 

「助けてくれぇ!!」

 

 

実験室内部はさながら阿鼻叫喚の図であった。怒鳴る者、泣き散らす者、ガスを吸いまいと衣服で防ごうとする者。そんな内部も2.3分すると様子が変わっていった。

 

 

「か、体中が痛い!!」

 

「痛ぇ!痛ぇよぉ!!」

 

「・・・・・・」

 

 

10分程経つと叫び声は聞こえなくなり、『何か』が闊歩する音のみが聞こえるようになった。

 

 

「そろそろ時間ねぇ。中の様子も確認したいし、換気システムを再起動しなさい」

 

「了解しました」

 

 

夢想家の指示で実験室内部の空気が換気され、中の様子が次第に鮮明になる。そこに居たのは人類共通の敵である十数体のE.L.I.Dであった。

 

 

「実験終了。ドリーマー様、崩壊液濃度50%の場合では散布直後に約半数が変異に耐えきれず死亡、残りはE.L.I.Dへと変異に成功しました。」

 

「やっぱり濃度が高すぎるのが原因かしらねぇ。今後は濃度を5%づつ下げてテストするわよぉ。」

 

「了解しました、ドリーマー様」

 

「さぁてデストロイヤー、実験の感想は・・・あら、居ないわねぇ」

 

「デストロイヤー様でしたら先程急いで出ていかれました」

 

「あらそう。まぁ、お子様には刺激が強すぎたみたいねぇ。あとの処理は任せるわぁ」

 

「承知しました」

 

ドリーマーはそう言うと部屋を後にする。残った夢想家の部下は操作パネルの『焼却』のボタンを押し、実験室を火の海にする。E.L.I.Dがその動きを止めるまで・・・。

 

 

 



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act.21 Operation hypothermia #1

どうも作者です

思いの外筆が乗ったので投稿することにしました

感想・評価・誤字脱字等有りましたらお知らせ下さい

それでは本編をどうぞ









 

 

 

 

 

ーG&K本社 第一作戦室ー

 

 

「全員、揃っているな。これよりブリーフィングを行う」

 

 

緊迫した空気の中、ヘリアンが声を出すと同時にプロジェクターからとある大型兵器が映し出される。

 

 

「コードネーム『ジュピター』、これが今回の破壊目標だ。事前情報によると稼働しているのは2基、1基が建造途中らしい。諸君らにはこれの破壊、及び存在するであろう防衛戦力の排除が任務となる。なお大型兵器は山岳地帯に建造されており、ある種の要塞と化している。更に現地では積雪も確認されている。出撃は深夜、夜影に乗じて行う予定だ。それまでに準備を済ませるように」

 

 

そう言い残しヘリアンは作戦室を後にする。残ったのはこの作戦のために集められた精鋭人形で構成された5チームだった。

 

 

「なんかヘリアン急いでなかった?」

 

「どうせまた何時もの合コンでしょ?さて、初顔合わせの人形も多いから自己紹介といきましょ?私はFAL、FN小隊の隊長よ。隣に居るのは副官のFive-seveNよ」

 

「よろしくね♪」

 

「AR小隊、隊長のM4A1です」

 

「アタシはM16A1だ。よろしくな!」

 

「ネゲヴ小隊、隊長のネゲヴよ」

 

「副官のジェリコだ。宜しく」

 

「ブルーチーム隊長、S-117だ」

 

「副官のコンテンダーです。皆さん宜しくお願いします」

 

「404小隊、隊長のUMP45よ。よろしくねぇ〜」

 

「それじゃあ挨拶も済んだことだし、どの小隊が大物(ジュピター)を担当するか決めない?先ずは挙手で、せーの、はい!」

 

 

手を挙げたのはネゲヴ小隊のネゲヴ、FN小隊のFAL、そして404小隊のUMP45だった。

 

 

「ありゃ、一回で決まっちゃったわね。117とM4A1の小隊はバックアップになっちゃうけどそれで良いの?」

 

「問題ない」

 

「わ、私も問題ありません」

 

「ふーん。まぁ隊長さん達がそれで良いって言うなら大物は私達が頂くわね」

 

 

そして午前0時になり、5機のヘリコプターが目的地へ向け旅立っていった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー鉄血支配領域 『ジュピター』司令部ー

 

 

 

「アイムシンカーふんふんふんふふーん、アイムシューターふんふんふーん」

 

 

陽気に鼻歌を歌いながらおやつのポテチを食べるサイドテールの黒髪の少女。指揮用の端末の上にはポテチ以外にも各種スナック菓子、煎餅、キャンディ、極めつけに瓶コーラ(既に数本空)がズラリと並んでいる。何処ぞのメイドが見たら即座に説教されるがここには居ない。彼女は存分に自由を謳歌していた。

 

 

「おい!」

 

「ふぎゃぁ!?」

 

 

しかしその自由は長くは続かなかった。背後から放たれた手刀が彼女の脳天に直撃したからだ。

 

 

「痛っだーい!!自由を謳歌する少女になんてことするのさゲーちゃん!!」

 

「何が『自由を謳歌する少女になんてことするのさゲーちゃん!!』だ!だらけてる暇があったら3号機の最終調整を早く済ませろ!」

 

「あっちならもう処理済みだよぉ。でなきゃこんなところでだらけてないって」

 

「そ、そうか。なら良い・・・って良くない!いつグリフィンの連中が攻めてくるかわからないんだぞ!?もう少し緊張感を持て!!」

 

「大丈夫だよゲーちゃん。こーんな真夜中に来るわけ・・・って言ってるそばから広域レーダーに反応アリ、もぅゲーちゃんが余計な事言うからホントに来ちゃったじゃん!」

 

「私のせいにするな!数と距離は?」

 

「数は5、距離は射程ギリってとこだね。オートじゃ無理」

 

「手動か。手伝いは必要か?」

 

「ノンノン、私一人で十分だよ。ゲーちゃんは守備隊の指揮があるでしょ?」

 

「ふっ、そうだったな。全部落とすなよ?楽しみが減る」

 

「りょーかい♪」

 

 

相棒と別れた少女ー建築家(アーキテクト)ーは天井からライフルのようなものを引っ張り出しスコープを覗く。

 

「次の曲は・・・いいねぇ、テンション上がってきた!さぁ!私が撃ち落として(f a l l )あげる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー鉄血支配領域付近 ヘリ内部ー

 

 

「もうじき鉄血支配領域に入ります。このまま侵入しますか?」

 

「あぁ、このまま低空飛行で頼む」

 

 

パイロットの問いかけに対しチーフは静かに答え、通信機を手にする。

 

 

「そろそろ鉄血の警戒網に引っ掛かる頃合いだが、このまま低空で侵入する。各機問題ないな?」

 

「OKよ」

 

「了解しました」

 

「チキンレースって訳ね、面白そうじゃない」

 

「了解よ」

 

 

各ヘリに乗り込んでいる隊長たちから応答があった瞬間、轟音と共に何かがヘリの間を通り抜け、地面で大爆発が発生する。

 

 

「各機散開!回避運動!!」

 

 

密集していたヘリ群が瞬く間に散開し敵からの砲撃を受けないよう動く。その間にも砲撃は続きジリジリと精度を上げていく。そして遂に砲撃がヘリの尾翼とテールローターを捉える。

 

 

「こちらM4!ヘリの尾翼部分に被弾しました!私達の事は気にせず任務を続行してください!」

 

「不時着します!しっかり捕まってて下さい!!」

 

 

それを最後に山林に消えるAR小隊が乗ったヘリ。暫くして木々をなぎ倒す音が聞こえたが、それもすぐに聞こえなくなってしまった。

 

 

「FALから各機へ!このままじゃ全機撃ち落とされるのも時間の問題よ!何か良い案ない!」

 

「このまま弾切れまで待つとか?」

 

「冗談言ってる場合!?」

 

「でも砲撃止んでるみたいよ?」

 

「嘘!?」

 

 

UMP45の言う通り、先程までヘリを追い詰めていた砲撃は鳴りを潜め、ヘリのローター音のみが聞こえるだけだった。

 

 

「なら今がチャンスよ!各機着陸できるポイントを探して!ここからは徒歩で目的地まで向かうわよ!」

 

 

FALの号令で各機が自然のランディングパッドを確保、各小隊は徒歩で目的地であるジュピターを目指すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー鉄血支配領域 『ジュピター』司令部ー

 

 

「あちゃー弾切れかぁ。ごめんゲーちゃん!1機しか落とせなかったぁ!」

 

「あの距離で1機仕留めれば上出来だ。で、ここの管轄は私達のはずだが、何故お前達がここに居るんだ?夢想家、錬金術師(アルケミスト)

 

「ぇ゙!何で居るのぉ!?」

 

「何でって、援軍に決まってるじゃないか。味方は多いに越したことはないだろ?」

 

「アルケミストの言う通りよぉ。大丈夫、貴女達の指揮に口を挟むつもりはないからぁ」

 

 

ドリーマーはそう言うと辺りを散策し始め、アルケミストは何やらブツブツと独り言を言っている。

 

 

「あぁ、漸く君に会えるよ、愛しのネゲヴ。そして今度こそ確実に息の根を止めてあげよう。それが私の唯一の役割なのだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー鉄血支配領域 ヘリの墜落現場ー

 

 

「痛たたた。皆さん、ご無事ですか?」

 

「は、はい何とか・・・」

 

「世界が逆さまに見える以外は大丈夫だぜ」

 

「わぁい雪だぁー!」

 

「はしゃがないで、SOPⅡ」

 

 

ヘリ自体は大破したものの、パイロットを含め奇跡的に無事だったAR小隊。安全ベルトを外し、逆さの世界から生還した彼女達は次の行動について話し合う。

 

 

「私はここに残ります。幸い救助信号の発信装置は無事でしたので。それにここなら寒さをある程度防げますので」

 

「分かりました。私達は予定通りで『ジュピター』に向かいます。」

 

「ご武運を祈ります」

 

「貴女も気を付けて」

 

 

深い雪道を歩くAR小隊の一行。時々雪に足を取られつつも前進していく。

 

 

「一体今どの辺りなんだ?」

 

「分かりません。今はただ前に進みましょう。他の小隊と合流できればなにか分かるかもしれませんし」

 

「だな。あー無線が使えれば多少は楽なんだがなぁ」

 

「使ったら最後、逆探知されて包囲されるのがオチよ」

 

「だよなぁ・・・」

 

 

雪道を歩いて30分程した頃、暗闇からパンッパンッと手を叩く音が聞こえ小隊全員に緊張が走る。音が聞こえた方へ銃口を向け銃爪を引こうとしたとき、今度は声が聞こえた。

 

 

「待って待って、撃たないでちょうだい。私よ私。」

 

 

そう言って暗闇から出てきたのは両手を上げた404小隊のUMP45だった。

 

 

「私達を待っていたんですか?」

 

「半分正解ね。今9と416が偵察中で、帰ってくる前に貴女達と合流できたらなぁーって考えてたの。取り敢えずこっちに来て、今後について話し合いましょ」

 

 

 

何の因果か合流することとなった2つの部隊(表と裏)、雪が降りしきる夜はまだ始まったばかりだった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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act.22 Operation hypothermia #2

皆様こんばんわ、作者です

年の瀬ではありますが次話が完成したので投稿させていただきました。

いつも読んでくださる方、誠にありがとうございます。

初めての方、この小説を選んでいただきありがとうございます。


毎度のことではありますが、感想、評価、誤字脱字等有りましたらご報告宜しくお願いします。

それでは本編をどうぞ







錬金術師好きの方、ごめんね!(予防線)


 

 

 

 

 

ー雪山 ブルーチームー

 

 

「スキャン終了。現在地から半径100m以内に鉄血人形の反応は確認で来ませんでした」

 

「ウロボロス、敵無線の状況はどうだ?」

 

「今の所大きな動きはないな。小隊が見つかったという報告も上がってない」

 

「よし、なら行くぞ」

 

 

チーフの合図で雪の中を歩くブルーチームの一行、全員がカムフラージュ用のマントを羽織り雪に溶け込む。

 

 

「目的地は決まってるの?」

 

「中央の砲台だ。恐らくそこが一番防御が厚い筈だからな」

 

「なるほど、私達はあくまで陽動に徹するって訳ね」

 

「AR小隊大丈夫かな・・・」

 

「彼女達は強い、大丈夫だ」

 

「そういえばチーフは彼女達と任務を共にしたことがあるそうね?どんな小隊なのか教えてくれない?」

 

「そうだな・・・一言でいうと・・!全員伏せろ!」

 

 

チーフの号令で一斉に伏せるブルーチーム。静寂が辺りを包み込む。

 

 

「どうしたの?敵?」

 

「あぁ、ドラグーン4体、恐らくパトロール中なんだろう、周囲を警戒している」

 

「どうしますチーフ、迂回しますか?」

 

「いや、他の小隊を見つけられても厄介だ。ここで始末する。WA、狙撃ポイントを探せ。俺とお前で殺るぞ。残りはここに待機だ」

 

「了解よ」

 

「分かりました。2人共気を付けて」

 

 

狙撃ポイントを探すべく動き出すチーフとWA、暫くして狙撃ポイントを見つけることに成功した2人はそのまま狙撃態勢に入る。

 

 

「こちらWA、いつでも良いわよ」

 

「3カウントでいくぞ。3・・・2・・・1・・・撃て!」

 

 

息の合った狙撃で見事4体のドラグーンを仕留めるチーフとWA。サイレンサーによる消音効果により狙撃音は雪混じりの風の中に消えていった。念の為、モニターに再度周囲のスキャンをさせ残敵が居ないか確認する。

 

 

「ブルーチーム、集合だ」

 

 

その号令に反応し集まるブルーチームの面々。

 

 

「お見事でしたチーフ。WAも」

 

「これくらい朝飯前よ。で、どうするのコレ?」

 

「ウロボロス、この乗り物をハッキングして俺達でも使えるように出来るか?」

 

「出来るが・・・まさか乗るつもりか?」

 

「あぁ、これがあれば雪道も多少は進みやすくなるはずだからな」

 

「少し待て・・・・・・。出来たぞ。ついでに信号も偽装しておいた。連中の目にはまだこの乗り主は活動してることになってる」

 

「よくやった。よし、ブルーチーム、前進するぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー雪山 FN小隊ー

 

 

 

「これで何度目かしら?」

 

「3度目の会敵ね。いよいよ敵の防衛網に入ったって感じね」

 

 

撃破した鉄血の残骸を足蹴にしつつ、FALが尋ね、Five-seveNが答える。

 

 

「モグモグ」

 

「使えるものは回収するわよ。物資も無限に有るわけじゃないんだから」

 

「モグモグモグ」

 

「方向はこのまままっすぐで良いのよね?Ballista?」

 

「はい、このまま行けば中央の砲台に行けると思います」

 

「ゴクン。バリッ、モグモグモグ」

 

「ちょっとFNC、何時まで食べてるつもり?」

 

「だって動いたあとはモグモグ、お腹空くんだもんモグモグ、しょうがないじゃんモグモグモグ」

 

 

不満を漏らしつつもお菓子を食べ続けるFNC、4つ目のお菓子に手を出そうとした時、流石に食べ過ぎだと仲間のF2000から言われ没収されてしまう。

 

 

「あー!私のチョコバー返してよー!」

 

「だ、駄目ですよFNC。食べ過ぎるとお腹壊しちゃいますよ?」

 

 

同じく仲間のFN49がFNCを宥める。

 

 

「さぁ皆!そろそろ出発するわよ!」

 

 

FALの号令で一斉に雪山を歩き出すFN小隊。後に残ったのは鉄血の残骸とチョコバーの包み紙だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー雪山 ネゲヴ小隊ー

 

 

「はっ・・・はっくしょん!!うぅ~なんでこんなに寒いのよ!」

 

「そらそやろ。そんな薄着で雪ん中歩いてるんやから」

 

 

Uziの愚痴にガリルが反応する。

 

 

「ね、ねぇジェリコ・・・」

 

「断る」

 

「まだ何も言ってないじゃない!」

 

「大方、このコートを貸してほしいという願いだろうと思ったからな。準備不足のお前が悪い」

 

「うぅ~・・・」

 

「正論すぎてぐうの音も出ませんね」

 

 

ネゲヴの横を歩くタボールが独り言の様に呟く。

 

 

「五月蝿いわよ!少しは任務に集中しなさい!」

 

「まぁまぁ、少しは気ぃ楽にしてもえぇんやない?今んとこ鉄血の連中にも会ってないし」

 

「それが可怪しいのよ。もう奴等の防衛網に入ってるはずなのに一度も接敵しないなんて・・・。なんだか嫌な予感がするわ」

 

「またいつもの口癖かいな。砂漠ん時も同じ事言っとったでネゲヴ」

 

「砂漠の話は止めて。あのムカつく顔を思い出すから」

 

「誰の顔を思いだすだってぇ?」

 

 

その場にいない者の声が聞こえ小隊に緊張が走る。

 

 

「漸く・・・漸く君に会うことができたよ。君に右眼を撃ち抜かれてから君のことだけを考えてきた・・・。この場を用意してくれた夢想家に感謝しないとなぁ」

 

「隠れてないで出て来なさい!今度は全身穴だらけにしてあげるわ!」

 

「今夜は存分に二人で語り合おうじゃないか。私が抱く感情について。殺意?憎しみ?増悪?どれも違う・・・。愛。そうだ、この感情、正しく愛だ!」

 

「とうとうぶっ壊れたって訳ね。誰がアンタなんかと愛について語り合うか!

 

 

 

「愛してるんだぁぁぁぁぁぁ君だけをぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

ぶっ壊れた人形ー錬金術師ーが大声で叫ぶと辺りから鉄血の下級人形や機械兵が音もなく姿を現す。

 

 

「こっちは先を急いでんのよ!アンタなんかに構ってる暇なんてないのよこの変態が!」

 

 

ネゲヴはそういうと両手に持ったマシンガンの銃口を向かってくる鉄血兵の大群へと向け、銃爪を引くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー雪山 404&AR小隊ー

 

 

「現在地点はおよそこの辺り、ここから北北東へ進めば2つ目のジュピターに当たるはずよ」

 

 

地図を広げペンと小型のライトを使って説明する45。

 

 

「偵察に出た9達によると巡回してる鉄血兵は予想よりも少ないみたいね。罠の可能性もあるけど、上手く行けば会敵せずに目的地に辿り着けるはずよ」

 

「問題はジュピターを防衛しているハイエンド、ですね」

 

「それは貴女達(AR小隊)に任せるわ。最低でも1体は確実に居るだろうから覚悟しといて」

 

「分かりました」

 

「それじゃあそろそろ行きましょう?敵の巡回にもよるけど1-2時間で目的地に着くはずだから」

 

「ほら、とっとと起きなさい寝坊助」

 

「すぴーすぴーふぎゃ!?」

 

 

お気に入りの寝袋で寝ていたG11を蹴り起こす416。

 

 

「そっちのおチビちゃんは相変わらずの様だな」

 

「欲しいならあげるわよ?要らなくなったら弾除け代わりに使ってもいいわ」

 

「そんなぁ」

 

「有り難い話だが遠慮しとくよ。子守りは1人で十分だからな」

 

「なになに!何の話してるの!?」

 

 

スキットルの中身(ジャックダニエル)を飲みつつ、416と話をしていると大型犬の如く急に間に入り込むSOPⅡを見て苦笑するM16A1。

 

 

「なぁ?」

 

「ふっ、そうみたいね」

 

「ほらそこ!モタモタしてると置いてくわよ!」

 

「はいはい、今行きますよ」

 

 

G11を引きずりながら雪道を歩く416と後を追うM16A1達だった。

 

 

 

 

 

 



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act.23 Operation hypothermia# 3




あけましておめでとうございます(大遅刻)

今年も当小説を宜しくお願い致します

出来れば評価して頂けると作者が喜びますので是非お願いします。

また、誤字脱字等有りましたらそちらも併せて宜しくお願い致します。

それでは本編をどうぞ





 

 

 

 

ー雪山 FN小隊&ブルーチームー

 

 

 

 

慣れない雪山を歩きつつ、巡廻する鉄血の人形達を蹴散らし、目標である『ジュピター』にいち早く到着したのは、FAL率いるFN小隊の面々であった。

 

 

「やっと目的地に着いたわね」

 

「周辺に敵影無しよFAL。さっさと入口を探しましょ?」

 

 

早速『ジュピター』の周辺を探索するFN小隊。程なくして入口を見つけるもロックが掛かっていて入ることは叶わなかった。また、解除方法が網膜スキャンー恐らく事前登録されたハイエンドクラスの人形の物しか反応しないー方式の為、一行は思わぬ形で足止めを食らうのだった。

 

 

「で、どうする?」

 

「どうするもこうするも、入口が開かないんじゃ話にならないわ。他の小隊と合流するか、私達だけで何とかするしかないでしょ」

 

 

Five-seveNの問いかけに対しFALが頭を抱えながら答える。

 

 

「いっそのことモグモグ・・・ハイエンド人形にモグモグ・・・来てもらうっていうのはモグモグ・・・どうかな?」

 

「一体どうやって呼ぶのよ。第一、そんなことしたら連中が大勢で攻めてくるにきまってるでしょ?それに、仮にハイエンド人形が来たとして、そいつの網膜が登録されてるか分からないのよ?博打にも程があるわ」

 

「でもモグモグ・・・そこに監視カメラモグモグ・・・あるよ?モグモグ・・・ゴクン」

 

「「は?」」

 

「ほら、あそこ。バリッモグモグ・・・」

 

 

FALとFive-seveNの気の抜けた声を尻目に、FNCが監視カメラの場所を指差す。

 

 

「このお馬鹿!何でもっと早く教えないのよ!?」

 

「えぇー、だってさっき偶然見つけたんだもんモグモグ」

 

「はぁ、もういいわ。これで敵が大挙として押し寄せて来るのが確定したわね。だったら全部ぶっ倒してついでにハイエンドの首を頂きましょう」

 

 

半ばヤケっぱちに言うFAL。そんな中Ballistaが背後から迫る影を見つける。

 

 

「後方より接近する影を確認!数4!」

 

「言ってる側から来たわね!各員迎撃用意!」

 

 

FALの号令で一斉に攻撃態勢を取るFN小隊。誰もが銃爪を引こうとしたその瞬間、FN49が何かを発見する。

 

 

「ままま、待ってください!」

 

「何よ49!敵はすぐそこまで来てるのよ!?」

 

「そそ、その敵の居る方向から、灯りが付いたり消えたりしてるんです!これってもしかして、モールス信号じゃないですか?」

 

「モールス信号?49、貴女分かるの?」

 

「は、はい。以前講習を受けたことがあるので・・・」

 

「ならなんて言ってるか解読してみて」

 

「はい!えーと、こちら・・・ブルーチーム・・・合流する・・・撃つな・・・です!」

 

「ブルーチーム!無事だったのね!各員迎撃用意を解除。49、彼等にゆっくり出てくるように伝えてくれる?」

 

「わ、分かりました」

 

 

FALの指示でモールス信号を送る49。数分後、木の影からS-117を先頭にブルーチームが現れ、無事FN小隊と合流することができた。

 

 

「久しぶりの再会ね、S-117」

 

「あぁ、そちらも無事で何よりだ」

 

 

お互いそう言いつつ握手をするFALとS-117。

 

 

「皆さんご無事で何よりです」

 

「まぁ何度か鉄血とドンパチやったけどね。それより貴女達が乗ってるそれって、ドラグーンの機動歩行装置?よく鹵獲出来たわね?」

 

「はい。乗り心地はイマイチでしたが、これのお陰で鉄血に遭遇することなく此処まで来れました。」

 

コンテンダーとFive-seveNも副官として互いの状況を報告し合う。そこへWAが『ジュピター』に関して質問する。

 

 

「FN小隊が先に到着したってことはもう周辺の探索は終わってるのよね?入口は見つかった?」

 

「見つかったは見つかったけど、セキュリティにロックが掛かってて入れなかったわ。しかも解除方式が網膜スキャンだからハイエンド人形の眼球が必要よ」

 

「それは厄介ね。チーフ、どうにか出来そう?」

 

「確認してみる。ウロボロス、話は聞いていたな?」

 

 

チーフがそう言うと掌から二頭身のウロボロスが現れ説明する。

 

 

「残念だが今の私ではロックの解除は不可能だな。まぁ、厳密に言えば出来ないこともないが、侵入した瞬間連中にバレてハイエンド人形が部下を従えてすっ飛んで来るぞ?」

 

「それなんだけど・・・。実は私達、ジュピターの監視カメラにバッチリ映っちゃったみたいで・・・」

 

「ふむ・・・それはどのくらい前だ?」

 

 

ウロボロスが腕を組みながらFALに質問する。

 

 

「貴女達と合流する前だから・・・5分〜10分前位かしら?」

 

「それならいつ連中が来てもおかしくないな。最悪複数のハイエンド人形を相手にする羽目になるからな」

 

「ジュピターの上は確認したか?」

 

「それって砲身部分ってこと?生憎そこまで調べる時間は無かったわ。」

 

「なら俺が確認してこよう。FAL、君に一時的に部隊を預ける。コンテンダー、何かあれば彼女の指示に従うんだ」

 

「分かりました」

 

「それは良いけど・・・。一体どうやって登るつもり?」

 

「なに、手はあるさ。モニター、彼女達のサポートを頼む」

 

「リクレイマーの頼みとあれば喜んで」

 

 

チーフはそう言うと左腕のグラップルワイヤーを起動し、器用に『ジュピター』の壁を登っていく。

 

 

「貴女達の隊長っていつもあんな感じなの?」

 

「まぁ・・・大体そうですね」

 

 

FALの問いかけに対しコンテンダーは苦笑混じりで答える。

 

 

「そう言えば、J11地区の噂は本当なの?1人で人権団体過激派のアジトに殴り込んで殲滅したって話」

 

「何故ご存知何ですか?その件は確か極秘作戦として一般には知られていないはずですが・・・」

 

「長い事隊長なんてやってると色々と情報が入ってくるもんなのよ。で、どうなの?」

 

「はい、事実ですよ。当時、作戦立案を含め全てチーフが仕切っていましたから」

 

「やっぱり噂は本当だったのね。・・・DMRとの賭けに負けたかぁ(ボソッ)」

 

「賭けがどうしたんですか?」

 

「あぁ、コッチの話よ、気にしないで頂戴」

 

 

FALとコンテンダーが談笑する中、モニターが飛んできたことで空気が一変する。

 

 

「お取り込み中申し訳ありません。先程広域センサーを起動した所、接近する多数の熱源を確認しました。現在こちらに接近中です」

 

「来たわね!数は?」

 

「大小合わせて約100ほどです。また高エネルギー反応を確認、あぁいけない、皆さんその場から動かないでください」

 

 

モニターはそう言うと6機の小型ドローン(センチネル)を展開し、フォースシールドを発生させる。次の瞬間、凄まじい熱線が飛来しシールドと衝突する。熱線により周囲の雪は溶けて岩肌が覗き、木々は一部が炭化していた。その後、オープンチャンネルにて熱線の主から通信が入る。

 

 

「今のを防ぐとかグリフィンの虫ケラにしては中々やるじゃない?」

 

「この粘着質な声・・・アンタドリーマーね!?」

 

「正解よぉ。フフッ、賞品は貴女達の首でいいかしらぁ?」

 

「良いわけ無いでしょこの陰険女!」

 

「熱源さらに接近、距離100を切りました」

 

「こちらAK12、敵影を視認したわ。攻撃許可を」

 

「蜂の巣にしてやりなさい!」

 

Понятно(了解よ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー『ジュピター』上部 S-117ー

 

 

「始まったようだな」

 

 

バイザーに映る二頭身のウロボロスが呟く。

 

 

「援護に行かなくて良いのか?」

 

コイツ(ジュピター)の破壊が最優先だ。それに、彼女達は強い。簡単には殺られたりしないさ」

 

「信頼してるんだな」

 

「事実を言ったまでだ。・・・あったぞ、非常用のバックドアだ」

 

「セキュリティロックは掛かってるが、この程度なら問題ない。開けるぞ?」

 

「あぁ、頼む」

 

 

ロックを解除し、クリアリングしつつ中へと入るS-117。警戒しつつ暫く歩いていると制御室らしき広い空間へと出る。

 

 

「どれに繋げれば良い?」

 

「その中央の端末だ」

 

 

ウロボロスの指示に従い、チップを中央の端末に挿入するS-117。程なくして『ジュピター』を掌握したと報告が入り、自爆シーケンスを起動しようとする。すると突然、大型モニターに明かりが付き、画面越しに黒髪の少女が怒声を上げる。

 

 

「ちょーーーっとまったぁぁぁぁぁ!!!私のジュピターになにしようとしてるのさぁぁぁぁぁ!!!」

 

「何だ?」

 

「気にするな。ただの馬鹿の叫び声だ」

 

「そうか」

 

「無視するなしーーー!!!ってかその声ウロちゃんじゃんおひさー!!代理人に殺されたって聞いてたけど元気そうじゃん!!」

 

「はっ!代理人の射撃の腕がボロクソだったからこうして今は肉体を失い、またデータ上の存在として身をやつしているがな。あとウロちゃん言うな!!」

 

「ウロボロス、自爆シーケンスの準備はどうだ?」

 

「今やってる!」

 

「ちょいちょいまったまった!!そんなことしたら折角建てた私のジュピターが壊れちゃうじゃん!!いくらウロちゃんでも怒るぞー!?」

 

「好きにしろ。こっちは仕事でやってるんでな。・・・出来たぞ!タイマーは10分にセットしておいたぞ。」

 

「了解した。脱出するぞ」

 

「あっこーらー!!帰ってこーい!!!」

 

 

画面越しに叫び散らす少女を尻目に制御室を後にするチーフとウロボロス。バックドアまで戻り下の状況を確認するべくコンテンダーに通信を繋ぐ。

 

 

「S-117よりコンテンダー、ジュピターの破壊準備は完了した。そちらの状況は?」

 

「チーフ!御無事でしたか!私達は現在、夢想家の部隊と交戦中です!それに加え、夢想家がこちらの射程外から攻撃してきて苦戦しています!」

 

「大まかでいい、そいつの場所は分かるか?」

 

「でしたらモニターさんと切り替えます!・・・おぉ、リクレイマー!無事で何よりです。何の御用でしょうか?」

 

「コンテンダー達を射程外から攻撃してる奴の場所を知りたい」

 

「少々お待ちを・・・。暫定ですが攻撃ポイントを算出しました。62%の確率でポイントA3-6に陣取っています。」

 

「分かった。モニター、お前は引き続きコンテンダー達の援護を頼む」

 

「リクレイマーの頼みであれば喜んで」

 

 

通信を切ったチーフはマップを開き、ポイントを確認するとグラップルワイヤーを『ジュピター』の砲身部に向け射出する。

 

 

「で、一体どうやって夢想家を仕留めるつもりだ?」

 

「『上から』奇襲を掛ける」

 

「待て、まさか貴様、ジュピターの砲身部から飛び降りるつもりじゃないだろうな!?」

 

「・・・・・・」

 

「何とか言え!!」

 

飛ぶぞ(・・・)

 

「いや、待て!まだ心の準備がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

振り子の要領で空高く上がるチーフ。数秒の滞空の後、指定されたポイントへ向け落下(・・)していく。

 

 

「・・・居たぞ」

 

 

落下するチーフの眼下、そこには大口径のビーム砲を撃ち終えクールダウン中の夢想家が居た。

 

 

「さぁて、そろそろ飽きてきたし次は出力最大にして撃とうかしら?・・・あ?」

 

 

これが雪山における夢想家の最期の言葉となった。彼女が最期に見たのは熊程ある巨体と、オレンジ色に光るバイザーであった。

 

 

「全く・・・。どうして貴様はそうどっからでも飛び降りたがるんだ!あれか?自殺願望でもあるのか!?」

 

「そんなものはない」

 

「だったら・・・はぁ。まぁいい、夢想家の間抜け面が拝めただけでも良しとするさ」

 

「そうか」

 

 

そうチーフは言いつつ夢想家の頭に刺さったコンバットナイフを引き抜く。そしてその傍らにあったビーム砲を回収する。

 

 

「S-117よりコンテンダー、目標の排除に成功した。そっちはどうだ?」

 

「こちらコンテンダー、こちらも敵部隊の排除が完了したところです」

 

「了解した。後5分でジュピターが自爆する。退避ついでにこちらに合流出来るか?」

 

「分かりました。」

 

 

無事チーフと合流するFN小隊&ブルーチーム。ちょうどその時、1つ目の『ジュピター』が大きな音を立てて崩れていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 



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act.24 Operation hypothermia# 4

こんばんわ作者です


先日話題の種映画観てきたんですが、まぁ序盤から頭CEな連中ばっかりで安心しました(?)

まだ観てない方は是非映画館へ行くことをオススメします

予定ではありますが、低体温症編が終わったら各勢力の登場キャラの解説みたいなものを出したいと考えています(あくまで予定です、期待はしないでください・・・)

毎度のことではありますが感想、誤字脱字報告等有りましたらご報告宜しくお願いします(出来れば評価も欲しいです・・)

それでは本編をどうぞ







 

 

 

 

 

 

ー雪山 ネゲヴ小隊ー

 

 

 

 

 

 

「ほらほらどうした?君の『愛』はその程度じゃないだろう?もっと情熱的に、もっと扇情的に『愛』をぶつけてくれよ?」

 

「うっさいわねこの変態!だったら動き回ってないでさっさと殺られなさい!」

 

 

ネゲヴが大声で叫びながらマシンガンを連射する。が、アルケミストはそれを難なく躱し、口撃を続ける。

 

 

「あぁ愛しのネゲヴ。君のその瞳、髪の毛、服のセンス、どれをとっても最高だよ。さぁ今からでも遅くない、私と1つになって永遠に愛し合おうじゃないか!」

 

「なに気色悪い事言ってんのよ!その減らず口、今すぐ叩けなくしてやる!!」

 

「うわぁ、ネゲヴの奴完全にブチ切れとるなぁ。」

 

「まぁ、あれだけ熱いラブコールを受ければ誰だってああなりますよ」

 

 

ネゲヴとアルケミストの戦闘?を見て見ぬふりをしつつ、迫りくる鉄血兵を撃ち倒すガリルとタボール。現在小隊はアルケミストと鉄血兵に挟まれる形で防御陣地を形成しており、お互い軽口を言い合いつつも戦局は苦戦を強いられていた。

 

 

「リロード!」

 

「ほいほいカバー入るで!」

 

 

弾切れになったネゲブの代わりに弾幕を張るガリル。しかしその弾幕はアルケミストを捉えることは叶わず、お返しとばかりにアルケミストの弾幕がガリルを襲う。

 

 

「今私はネゲブと『愛』について語り合っているんだ。邪魔をするな!」

 

「ひぃーっ。何やアイツ。頭イかれてるのちゃうんか!?」

 

「腐ってもハイエンド人形だ、気を抜けばあっという間に殺られるぞ」

 

 

ハンドガンで敵を撃ち倒しつつガリルを注意する副官のジェリコ。この状況を打開するにはどうすれば良いか思案するも、押し寄せる敵の波状攻撃に中々思考が纏まらないでいた。

 

 

「前方よりゴリアテ!」

 

 

誰かが大声で叫ぶ。あの黒い特攻兵器に近寄られたらひとたまりもない為、4人掛かりで総攻撃を行う。数秒後、攻撃に耐えきれなくなったゴリアテが周囲にいた仲間を道連れに大爆発を起こす。しかしその後ろからまたゾロゾロと鉄血兵がやってくる。

 

 

「嘘でしょ・・・まだ来るの!?」

 

「キリがないですね・・・」

 

「こんなん無理ゲーやん・・・」

 

「泣き言は後にしろ!」

 

 

ジェリコが仲間を奮い立たせようとする。しかしこれまでの疲弊に加え、敵の波状攻撃という先の見えない状況、そして何より弾薬の残りが少なくなってきた事もあり部隊の士気が下がっていた。その時、遠くで何かが爆発し崩れ落ちる音が聞こえた。

 

 

「な、なんや今の音!?」

 

「恐らく他の小隊がジュピターを落したのかもしれませんね」

 

「なら近くに仲間がいるかも知れん。ガリル、確か信号弾を持っていたな?あれを使え」

 

「えぇけど、そんなん使ったら敵が増えるんとちゃうん?」

 

「このままでは弾切れになって敵に磨り潰されるだけだ。色は赤を使え。間違えるなよ。」

 

「えぇい、ままよってか!?ほな撃つで!」

 

 

ガリルはそう言うと信号弾を真上に撃ち出す。暫くして赤色の光が周囲を染め上げる。

 

 

「これで誰も来なかったら泣くで」

 

「その時は一緒に泣いてやる」

 

「敵影接近!」

 

「攻撃、再開します!」

 

 

4人は信号弾が誰かの目に入ることを願いつつ、迫りくる鉄血兵に向かって銃爪を引くのだった。一方ネゲブはというと、アルケミストへの対処で精一杯だった。

 

 

「どうしたネゲブ?君の『愛』はこんなもんじゃないだろう?あの日・・・そう、砂漠で私に愛を教えてくれた様にもっと激しく、迸るような愛を私に見せてくれ!!」

 

「さっきから愛、愛って、一体いつあんたに愛をぶつけたって言うのよ!!」

 

「そんなことすら忘れてしまったのかい?なら思い出させてあげよう。私の熱い愛で二度と忘れないように!!」

 

 

アルケミストはそう言うと大きくジャンプし両手のマシンガンを乱射し始める。空から降り注ぐ弾丸の雨に堪らず木の影に隠れるネゲブだったが、殺気を感じ取り素早くその場を離れる。次の瞬間、ネゲブが隠れていた木が真っ二つに割け、その間から狂気を滲ませたアルケミストの笑みが覗いた。

 

 

「どうだいネゲブ、少しは思い出してくれたかな?」

 

「御生憎様。悪いけどこれっぽっちも思い出せないわね」

 

 

お返しとばかりにマシンガンをアルケミストに向け連射するもネゲブ。

 

 

「そうかぁ・・・。何がいけないんだろうなぁ・・・。あれか?後ろに居る連中が気になって思い出せないのかな?きっとそうだ。それなら君の憂いを断ち切ってあげよう!!」

 

 

ネゲブの攻撃を難なく躱しつつ、アルケミストは指を鳴らす。するとガリル達を攻撃していた鉄血兵が一斉に退却し始める。

 

 

「な、なんや!?敵が撤退してくで!?」

 

「気を緩めるな!何か裏があるぞ」

 

「その通りだ。ネゲブとの愛を邪魔する者は誰であろうと許さない。お前達には死をもってその罪を贖ってもらう!」

 

 

アルケミストがもう一度指を鳴らす。すると暗闇から2体のManticoreが現れ状況が最悪へと傾く。

 

 

「ちょ、ちょっと!幾らなんでもこれは無理よ!」

 

「あかん・・・Manticoreは卑怯やろ・・・」

 

「こちらの攻撃が全くと言って良いほど効いていませんね・・・。ジェリコ、どうします?」

 

「どうするも、援軍が来るまで持ちこたえるしかないだろう・・・!伏せろ!」

 

 

ジェリコの合図で全員がその場で伏せる。その刹那、頭上を

Manticoreのバルカン砲が通り過ぎていく。

 

 

「ジェリコ!ガリル!」

 

「よそ見は良くないなぁネゲブ」

 

 

一瞬の隙をついてネゲブを拘束するアルケミスト。首元にブレードを当てられ身動きができないネゲブ。その場の全員が全滅を覚悟したその時、夜空が緑色に染まった。

 

 

「何だ・・・!?チッ!」

 

 

ガキンと金属同士がぶつかる音が聞こえたかと思うとアルケミストはネゲブの拘束を解き大きく後退する。

 

 

「こちらFN小隊とブルーチーム、これより貴官等を援護する」

 

「こちらWA、Manticore(大物)を確認したわ。これより排除を開始するわ」

 

「りょ、了解!」

 

「了解、タイミングは任せます」

 

「先ずは足を止める。目標右前足、撃てぇ!」

 

 

WAの号令で斉射された徹甲弾が装甲の薄い脚部を食い破り行動不能にする。更に続けて胴体、頭部と重要部分を攻撃され、2体のManticoreのうち一体がスクラップになる。そしてもう一体はというと・・・

 

 

「エネルギーチャージ完了、出力40%でホールド、安全装置解除。チーフ、いつでも撃てるぞ?」

 

「了解した」

 

 

チーフが先の戦闘でドリーマーから鹵獲したビーム砲でもう一体のManticoreの胴体を狙い撃つ。放たれた熱線にManticoreの装甲は耐えられず、大穴を空けた状態で機能停止する。

 

 

「今のはドリーマーの・・・!チッ、向こうはしくじったって訳か」

 

「どうするアルケミスト!これでもまだ続ける!」

 

「いいやネゲブ、流石に邪魔者が多過ぎるから今夜の所は止めておこう。けど、今度会った時はまた愛について盛大に語り合おうじゃないか」

 

これ(マシンガン)で良いならいつでも相手になってやるわよ」

 

「フフッ、言質は取ったからな?ではグリフィンの諸君、君達がまた邪魔しに来ないことを祈っているよ」

 

 

潔く撤退するアルケミスト。その表情に絶望の色はなく、まるで恋する乙女の様な色をしていた。

 

 

「大丈夫か?」

 

「えぇ、何とか。援護に感謝するわ」

 

「それならFNCに言ったほうが良い。赤色の信号弾を見つけたのは彼女だからな」

 

「そう・・・。そういえば、ジュピターを落としたのは貴方達?」

 

 

そうだ、とチーフが答えようとしたとき、背後で大きな爆発音が数回聞こえ、何かが大きく崩れる音が聞こえた。奇しくもそれは、2基目の『ジュピター』のある方角からだった・・・

 



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