#李徴のてぇてぇ (天音 遊一)
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ミルクココアとナイトメア

小説ってやっぱり難しい

毎日更新できる作者様には頭が下がる思いです

一人称視点の小説は、ほぼ初めてなので上手く表現できているのか、ちょっと不安です


夢を見た……。

 

 

幼い時のあたしが一人で泣いている夢……。

 

 

周りは暗くて、何も見えなくて、誰もいなくて……。

 

 

どれだけ泣いても、何も変わらなくて、それが悲しくて、また泣いて……。

 

 

泣き続けていると、黒いナニカが目の前に現れて、あたしを包み込んだ。

 

 

夢は包み込まれた瞬間に終わってしまう……。

 

 

 

 

 

 

 

「眠れない……」

 

 

レオとの夕食の後、定期的にしている音ゲー配信を終え、眠りについたのは良いものの、さっき見た夢で突然目が覚めてしまった。

 

 

「こういう時は、エゴサして眠たくなるのを待てばいいんだけど、明日は打ち合わせだから、しっかりと寝ないといけない……」

 

 

眠ろうと気持ちを落ち着けようとするも、さっきの夢で眠りにつくことができなくなっていた。

 

 

「ん~、こういう時は何か温かいもの飲むとぐっすり眠れるんだけど、あたしの部屋にそんなものは……。って、冷蔵庫にはエナジードリンクと飲みかけのジュースとかお菓子ぐらいしかなかった。牛乳とか飲みきれなくて腐らせちゃうって、レオに言われたっけ……。あっ、そうだ。レオの部屋なら何かあるかも。牛乳は有ると思うから、ホットミルクは作れるかな……」

 

 

ゆっくりベットから出て、レオの部屋の鍵を暗闇から探し出し、あたしの部屋の戸締りをしてから、隣のレオの部屋へと向かった。

 

 

レオの部屋に入ったあたしは、家主を起こさないように、こっそりと冷蔵庫から目的のものを探していた。

 

 

「有った有った……。あとは、コップを取り出して……」

「はえ……? 夢美、何してるの?」

「ヒッ! 起きてたのか、驚かすなよ……」

 

 

電気が落ちた部屋から、静かにレオが出てきた時は、心臓が止まるかと思った。

 

 

「驚いているのは、こっちだって。泥棒かと思ったよ」

「起こさないようにしてたんだけど、起こしちゃって、ごめん」

「気にしないでくれ。夢美は喉乾いたの?」

「ちょっと眠れなくてね……。それで寝つきがよくなるようにホットミルクを飲もうかなってね」

「そういうことなら、ホットミルクよりも寝つきが良くなるもの作るから、座って待ってて。俺も変に目が覚めたから、2人分作ろうっと……」

「ありがとう……」

 

 

レオに促されて、いつも食事に使っているクッションに座って、レオが来るの待った。

 

 

レオがとっておきのものを作っているまでの時間は、真夜中のせいなのかいつもと違うように思え、とっておきを作ってくれる嬉しさであたしの心がこそばゆくなっていた。

 

 

「夢美、お待たせ。はい、特製ミルクココア」

「美味しそう。ありがとう」

 

 

レオから手渡されたカップには、温かいミルクココアが注がれていた。心なしかカップから伝わる温かさは、いつもと違った温もりを感じた。

 

 

「眠れない時はいつもこれを飲んでる。ホットミルクでも良いんだけど、なんかこっちの方が体に合っててさ」

「そうなんだ。それじゃ、いただきます」

「いただきます」

 

 

レオが作ったミルクココアがやっぱり甘く、牛乳も多く入っているのもあってか、ココア特有のほろ苦さが上手く包み込まれて、優しい味がした。

 

 

「久しぶりに作ったけど、おいしい」

「うん、おいしい。ホッとする……」

「それにしても、珍しいな。こっそり部屋に入って、夢美が何か作ろうとするなんて」

「うん、今夜が初めて。ちょっと怖い夢を見ちゃってね。それが変に頭に残って、眠れなくって……」

「そうか……。俺も怖い夢で眠れなくなることって、アイドル辞めた時とか結構あったから、他人事とは思えないな」

「色々あったって言ってたもんね。詳しくは聞かないけど」

「ありがとう」

 

 

レオのどこか浮かない顔をあえて見ないように、ミルクココアを飲み進めていた。

 

 

「飲んだからもう寝るけど、カップは明日洗うから流しに置いておいて。それに明日は打ち合わせなんだから、早く寝ろよ」

「は~い」

 

 

レオはベッドに入り、しばらくするとレオの寝息が静かに聞こえるようになった。

 

 

「は~、おいしかった……。それに、温かかった」

 

 

ココアの余韻に浸った後、あたしは眠っているレオに視線を移した。

 

 

「レオ、いつも、あたしを助けてくれてありがとう……。二日酔いが酷かった時に看病してくれたし、食あたりにあった時は危険なベランダから部屋に入って助けてくれたり……」

 

 

レオが眠っているという気の緩みなのか、ココアのお陰で少し眠気が来たことによる心のリミッターが外れたのか、今までのレオへの気持ちを思わずこぼしていた。

 

 

「レオはあたしが背中を押してくれたって感謝してるって言ってたけど、感謝してるのは、こっちの方だよ。ったく、人の気持ちも知らないで、呑気に寝ちゃって……。そんなライオンには、お仕置きが必要だな、そうに違いない」

 

 

あたしはベッドの空いている所に上がり、レオの顔を覗き込み、彼の頬を指で軽くくすぐった。

 

 

「ほ~ら、起きないと、くすぐっちゃうぞ~」

「んっ……」

「ふふっ……。可愛い……」

 

 

くすぐった後の反応を楽しんでいたりして、しばらくレオの顔を眺めながら楽しんでいた。

 

 

「これなら、どうだ……。こしょこしょ……」

 

 

頬以外にも、鼻や耳を指先でくすぐって、レオの反応を楽しんでいた。

 

 

そして、ひとしきりくすぐり終えると、あたしはレオの寝顔を覗き込んでいた。

 

 

「本当に可愛いな……。可愛い……。可愛い……」

 

 

レオの寝顔を見ていると、あたしの心は温かくなっていき、次第に意識が遠くなっていき、あたしはレオのベッドの上で眠りに落ちてしまった

 

 

「Zzzzz……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……。なんか、身体が重いな……。!?」

 

 

レオは目覚めた時に感じた身体の違和感の正体に目をやると、そこには自分に寄り添うように穏やかな表情で眠る一人の眠り姫がいた。

 

 

「俺が眠っている間にベッドに上がって、そのまま眠ったのか。特に何もされてないから、ちょっと遊んでやろうって思ったんだろうな。さて、そろそろ朝食を作ろうかな」

 

 

夢美を起こさないようにゆっくり体を起こし、朝食をつくるべくキッチンへと向かった。

 

 

「ん……。レオ……」

 

 

眠り姫の穏やかな寝言は、部屋に小さく響いたが、誰にも届くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見た……。

 

 

あの時見た悪夢と同じ……。

 

 

真っ暗な場所で幼い時のあたしが1人で泣いている……。

 

 

黒いナニカがあたしの前に現れて、あたしを包み込んだ……。

 

 

 

 

 

 

でも、今回は違った……。

 

 

周囲に獣の咆哮が響きわたり、暗闇と黒いナニカは霧のように消え、周囲は光に溢れ、目の前には雄ライオンが1匹、あたしを見守る様に立っていた。

 

 

その姿を見て、あたしはどうしようもなく安心して、さっきまでの悲しみの涙は嘘のように消えて、自然を笑みを浮かべていた。




「ナイトメア」=「悪夢」:Nightmareと「騎士の馬」:KnightMareのダブルミーニング。

夢美の「レオがいなくなることへの恐怖」とレオの「夢美を守る思い」を同時に示す言葉となっています。(騎士の馬から守る思いへとつなげるのは、こじつけっぽいですけど)

私の解釈の話になりますが、感情のベクトルは「夢美←→レオ」ではなく、「夢美→←レオ」となっていて、「お互いがお互いを特別な存在と認識している」が、あくまで同期としての仲間としての感情が先に出ている一種の「共依存」に近いものと解釈しています。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。


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曼珠沙華とフキノトウ

てぇてぇ話ではないけど、林檎の気持ちを思い、投稿します

感想のガイドラインでは、キャラが喋るような小説形式の投稿はしないようにと定められているので、こういう形で投稿します。






バラレオの2人と一緒に行った池袋は楽しかった……。

 

 

 

一人の人間として私を見てくれているから……。

 

 

 

“有名芸能人の娘”じゃない、“お金持ちの子供”じゃない、“手越優菜というただ一人の私”として……。

 

 

 

バラレオの2人は私にとって陽だまりみたいで、2人といると私は私でいられた……。

 

 

 

2人のてぇてぇが見られるだけで、心が温まった。

 

 

 

レオの優しい笑顔が大好きだ。

 

 

 

夢美の細かい心づかいがたまらなく大好きだ。

 

 

 

2人の優しい空気が大好きだ。

 

 

 

でも、それは私にとって罪から目を背けていただけだった。

 

 

 

高校生の私がした許されない罪から目を背けていただけだった。

 

 

 

ステージ上で歌って踊っている狩生さんを見つけて、私は“思い出した”。

 

 

 

私の居る場所はバラレオのポカポカとした穏やかな陽だまりなんかじゃなかった。

 

 

 

灼熱の炎が燃え上がった処刑場だったことに気が付いた。

 

 

 

捻くれて、世の中舐め腐ったツケがとうとう回ってきたんだ……。

 

 

 

ああ、やっと、裁かれる……。

 

 

 

ああ、やっと、裁いてもらえる……。

 

 

 

煽って、焚きつけて、炎上させた私が、地獄のような炎に焼かれて裁かれるなんて、私にはお似合いよね。

 

 

 

私が地獄に落してしまった狩生さんが裁いてくれるんだから、これ以上相応しい処刑人はいないよね。

 

 

 

今すぐこの地獄のような炎に身を投げてこまれて、焼き尽くされて、消えてしまいたい。

 

 

 

地獄の炎で私の体を、私の罪を全て焼き払って!

 

 

 

焼き払われる姿を見て、狩生さんがあの時の罪を許ししてくれるなら、本望。

 

 

 

ああ、やっと、楽になれる……。

 

 

 

さぁ、あと一歩踏み出せば、私は裁かれる。

 

 

 

真っ赤に燃え盛る地獄のような炎に飛び込めば、私の罪は裁かれて、全てが終わる。

 

 

 

さぁ、一歩踏み出せ、私。

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

………

 

 

 

…………

 

 

 

……………

 

 

 

嫌だ……。消えたくない……。バラレオの陽だまりをいっぱい浴びたい……。

 

 

 

また一緒にショッピングしたい。また一緒に外出して遊びたい。また一緒に食事したい。

 

 

 

またコラボ配信したい。一緒にゲームをしたい。3人でゆったりと雑談配信をしたい。

 

 

 

バラレオのてぇてぇを感じたい。バラレオが幸せになっていく様子を見ていたい。

 

 

 

ゆなっしー時代のファンのレオのお姉さんに会いたい。

 

 

 

今から裁かれようとしているのに……。

 

 

 

あと一歩踏み出すば、全てが終わるはずなのに……。

 

 

 

この気持ちは何……?

 

 

 

私の体は、どうして動かないの……?

 

 

 

ああ、私は生きていたいんだ……。

 

 

 

でも、こんな私が生きていてもいいのかな……?

 

 

 

屑で世の中舐め腐って、狩生さんを地獄に落した私が……。

 

 

 

ねぇ、レオ、夢美……。一人のライバーとして認めてくれているんだったら、私の過去の罪を裁いてくれるんだったら、こんな屑な私をもう一度愛してくれるのなら、私の全てを捧げても良い……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私を助けて……。

 




罪悪感と自罰感情と助けてほしい気持ちの間で揺れている林檎を見ているのが辛い。

〇曼珠沙華(ヒガンバナ):
花言葉:「悲しき思い出」「あきらめ」「独立」「情熱」

〇フキノトウ:
花言葉:「待望」「仲間」「愛嬌」「処罰は行わなければならない」

ヒガンバナもフキノトウもどちらも有毒植物です。(フキノトウは根のみで、加熱処理等をすれば簡単に毒が抜けるので、適切な処理をすれば美味しい山菜の一つです)


悲しいけど、林檎にピッタリな花言葉を持った花をタイトルにしました。


感想待ってます。


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ヒヤシンスと罰ゲーム配信

前話が割と重たいお話だったので、今回はイチャイチャしているバラレオを目指して執筆しました。

本編のイチャイチャには負けますが、私の文章力の全力を楽しんでください。

解釈不一致が多分に含まれている可能性が有りますが、温かい目で見てもらえると嬉しいです。


最近、色々なゲームや歌枠で配信をしていたが、これほど気の進まない配信は初めてだ……。

 

いつもは夢美とのコラボ配信は何度もしているから特に気苦労とかはしないが、今回は配信開始前から精神的に疲れる……。

 

 

レオは、いつものように配信用の椅子に座り、配信ボタンを押し、いつものように配信を始めていた。

 

 

ただ、いつも用意されている夢見のための椅子は今回は用意されず、夢美は恥ずかしそうに“レオの膝の上に座り”、身体が落ちないようにレオの首に腕をかけていた。レオは、そんな夢美を落とさないように、やさしく腰に手を回していた。

 

 

「袁傪のみなさん、こんばん山月~! バーチャル隴西の李徴の獅子島レオです」

「み、みんな、こんゆみ~! 茨木夢美でぇす」

 

 

[こんばん山月]

[こんゆみ~]

[初手、バラレオてぇてぇ]

 

 

「はい、と言うことで、今日はつきいちにじライブで決まった罰ゲーム配信で、夢美との幼馴染コラボ配信で、夢美は今膝の上に座ってます。かなり恥ずかしいです」

「正直メチャクチャ恥ずかしいんだけど、まひる先輩に言われてしまったので、素直に罰ゲーム配信をしたいと思います」

 

 

[てぇてぇ]

[てぇてぇ]

[てぇてぇ]

[最初からてぇてぇとか期待できる]

[もう座っているとか、刺激が強い]

 

 

何故、レオと夢美がこんな配信をすることになったのは、一週間前のかぐや先輩とまひる先輩とのコラボ配信の月一にじライブまで遡る……。

 

 

 

(1週間前……)

 

「あなた達2人は、「てぇてぇを過剰供給しているのにもかかわらず、お互いの関係が一向に進まない」罪で有罪です」

「なんですか(なんで)、かぐや先輩!(まひる先輩!)」

「いや~、流石にこの罪は妥当ですね」

「そうですね」

 

 

[バラレオの息ピッタリでてぇてぇ]

「残当]

[えっ、この2人付き合ってなかったの?]

[逃げられんぞぉ~]

 

 

「そして、罰ゲームは「夢美を膝の上に載せて、二人でイチャイチャコラボ配信」です」

「なんですか(なんで)、かぐや先輩!(まひる先輩!)」

 

 

[イチャイチャコラボ配信助かる]

[てぇてぇが高まりすぎて、タカになったわ]

 

 

「本当になんでなんだよ……」

 

 

 

(時は現在に戻り……)

 

「今回はコラボ配信なんですが、この罰ゲームの監視人としてもう一人この配信に参加していますので、それじゃ挨拶どうぞ」

「おはっぽー、どうもにじライブの焼き林檎こと白雪林檎でーす。今回はバラレオのてぇてぇをこの目で見るために来ました。すまねぇな、みんな。このてぇてぇは、私が独り占めだ!」

 

 

[おはっぽー!]

[後で詳しく教えて!]

[三期生のオフコラボ楽しみ ¥10,000]

[助かる!]

[独り占めはよくないなぁ~]

 

 

「バラレオの2人が、今の体勢を崩そうとしたら、すぐ警告するからね。かぐや先輩やまひる先輩に監視するようにって言われているからね、しっかりやってくよ」

「何してくれてるんですか、かぐや先輩」

「まひる先輩もですよ……」

「あはは! 2人して同じリアクションwww」

 

 

オープニングトークが終わり、コメントの質問を答えたりしていたが、2人はどこか緊張した感じが続いたが、しばらくたったら慣れたのか、緊張は次第に解けていた。

 

 

「二人の緊張が解けたから、このゲームを2人にやってもらいましょう」

「ん、ゲーム配信の準備はしていないけど、今から準備するのか?」

「準備するんだったら、この体勢を崩さないといけないけど?」

「いやいや、このゲームはゲームハードとかを使わないゲームだよ。そのゲームは、“愛してるゲーム”!」

「はぇ?」

「何よ、そのゲーム!」

 

 

[あのゲームをするのか!]

[知っているのか、雷電!?]

[てぇてぇ間違いなしだな ¥10,000]

 

 

「ルールは簡単だよ。お互いが“愛してる”って、交互に言いあって、先に照れた方が負けっていう“簡単”なゲームだよ」

「なんだよ、そのゲーム!!」

「それって、合コンとかでするゲームだよね」

「うん、そうだよ」

「それを素面でやらせるの?」

「そうだよ。素面がヤダっていうなら、お酒を飲んでたら、できるってこと?」

「いや、酔っててもやらないよ」

「あたしもやらないよ」

「えぇ~。私見たかったな~。レオの演技力を見たかったな~。まさか、できないって訳じゃないよね~」

 

 

[見たい]

[レオの演技とか見たいな~]

[見たいな~]

[この林檎、煽りよるwww]

 

 

「それに打ち上げ用のお酒を用意しているから、それを飲んでからでも良いよ」

「えっ、お酒用意してくれてるの!?」

「うん。お高いお酒を何本か持ってきたよ」

 

 

林檎は自分の大きなカバンからワインの瓶を1本取り出して、2人に見せつけた。

 

ラベルには綺麗な外国語が記載されていて、明らかに高級感を出していた。

 

 

「酔わしてゲームをさせるために高級な酒を飲ませるのか……」

「もったいないと思うなら、素面のままゲームをするしかないよね。ねぇ、レオ?」

「白雪ィィイ!」

「林檎ちゃん……。許さないけど、そのお酒、絶対飲ませてもらうからね」

「へへっ、勿論」

 

 

[高い酒を餌に恥ずかしいゲームをさせようとする林檎www]

[打ち上げも楽しそう]

[素面のまま、続行!]

[三期生はなかよくて、てぇてぇ]

[ちゃっかり、高い酒を飲もうとするバラギwww]

 

 

「美味しいお酒のためにやるか、レオ」

「夢美、お酒に釣られたか……」

「それじゃ、先攻は夢美からね。きちんと私に聞こえるように言ってね。ジャッチは私がするから、“私がOK出さなかったら、もう一回”だからね。手抜きはダメだよ」

「はーい。もうこうなったら、何でもやってやる!」

 

 

[ん?]

[今、何でもするって……]

[磯野、ゲームの開始の宣言をしろ!]

 

 

夢美は、ゆっくり深呼吸をし、ちょっと真剣な顔をして、レオの耳元に囁くように呟いた。

 

 

「あ、愛してる」

 

 

[可愛い]

[可愛い]

[緊張している声もまたちょうどいい ¥10,000]

 

 

「夢美、ちょっと緊張したね。声が引きつってるよ」

「あー、全然ダメか。それじゃ、次、レオの番だよ」

「ハイハイ、それじゃちょっと待てよ」

 

 

レオは、かつてのアイドル時代の演技を思い出し、真剣な表情で夢美を見ながら、甘く囁いた。

 

 

「愛してるよ」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 

 

[夢美 OUT!]

[やだ……男なのにときめいちゃった]

[これがにじライブのイケライオンの全力か]

 

 

「これで、俺の勝ちだな。これでこのゲームは終わりだな」

「何勘違いしてる?」

「はぇ?」

「まだこのゲームは終了してないぜ! 速攻魔法バーサーカーソウル! このゲームは、私が満足するまで永遠に続く!」

「ちょ、待てよ!」

「言ったじゃん。“私がOKするまで、もう一回”だって」

「あとで覚えてろよ、白雪ィ……」

 

 

[理不尽すぎるwwww]

[いいぞ、もっとやれ! ¥30,000]

[ドロー!モンスターカード!]

 

 

「それじゃ、もう一回。それじゃ、夢美から」

「はい……。スゥ~、ハァ~……。レオ、愛してるよ」

「俺も愛してるよ、夢美」

「ハゥ!」

 

 

夢美の渾身の告白も、レオのノータイムのカウンター告白をしながら、頭を優しく撫でた。

 

 

[夢美 OUT!]

[即カウンターで負けて草]

[※お互い密着した状態です]

[てぇてぇ]

[てぇてぇ]

[ときめいちゃった]

 

 

「ちょっと、レオ。告白しながら、頭撫でるとか汚いぞ!」

「ん? 何のことかな?」

「レオ、しらばっくれやがって」

「夢美の反応で、このゲームの攻略法が見えたよ。林檎が満足しなくても、“夢美を満足させれば”良いだけの話だろ?」

「ぐぬぬ」

「えっ、あたしは何回このゲームを続けないといけないの?」

「夢美が限界を迎えるまでだな」

「えっ……」

 

 

[まさかの耐久戦wwww]

[夢美対レオじゃなくて、林檎対レオだったwwww]

[夢美はとばっちりwwww]

[やだ、これは夢美の恥ずかしいだけのゲームwwww]

[いや、これはただのカップルのイチャイチャでは?]

[えっ、もっとてぇてぇくれるんですか!]

 

 

「よし、その勝負受けて立つよ、レオ」

「白雪、後悔するなよ」

「えっ、あたしの事は?」

「「知らない」」

「ひどい」

 

 

その後、ゲームは続行され、5回程した段階で、夢美が限界に達し、レオの勝利でゲームは終わり、配信はレオと林檎が締めて終了となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、2人ともあたしのことを無視するのは、どうかしてる」

「それは、白雪が勝手なルールを押し付けた訳で」

「いや~。そのルールを納得した2人にも落ち度があるよ」

「確かにそうだけど……」

「騙されるな、夢美。今回は、白雪が俺たちの反応を楽しみたいだけだぞ」

「バレちゃったか、テヘ」

「可愛いジェスチャーしてもダメだぞ」

「ですよねー。私からの謝罪の気持ちとして、お酒飲んじゃおう!」

「「待ってました!」」

 

 

レオの告白でヘロヘロになった夢美を優しく2人は介抱し、少し元気になったところで、コラボ放送の打ち上げが始まり、罰ゲーム配信の夜は過ぎていくのであった……。

 

 

なお、この罰ゲーム配信は、色々な所の切り抜き動画が作られ、バラレオてぇてぇは世界中に拡散され、レオと夢美のマネージャーの飯田と四谷からは感謝され、お礼を言われたりしていた。

 

同時接続数も3人の同期生のコラボ配信の中ではブッチギリで多く、送られたスパチャも7桁に達し、SNSでトレンド入りし3人のチャンネル登録数がさらに増え、後に伝説の罰ゲーム配信となった。

 

 

そして、バラレオのその後はと言うと……。

 

 

「ねぇ、レオ……」

「何?」

「もうちょっとこのままでも良い?」

「夢美が満足するまででもいいよ」

「ありがとう……。それじゃ、もう一話分くらい座ってようかな」

「どうぞ」

 

 

時々、2人とも配信をしない休日に夢美がレオの膝に座り、一緒にアニメを見たり、この体勢のままお昼寝をすることが増えたらしい……。




〇ヒヤシンス(全般):
花言葉:「スポーツ」「ゲーム」「遊び」「悲しみを超えた愛」

花言葉は、花の色によって意味が変わるものが多くあります。
ヒヤシンスも多くの花言葉を持つ花の一つです。

黄:「あなたとなら幸せ」「勝負」
白:「控えめな愛らしさ」「心静かな愛」
青:「変わらぬ愛」
ピンク:「スポーツ」「ゲーム」「しとやかなかわいらしさ」

赤:「嫉妬」
紫:「悲しみ」「悲哀」「初恋のひたむきさ」


1話の「ミルクココアとナイトメア」と比べると、二人の関係は共依存じゃなくて、本当の恋愛関係に近いけど、いまいち踏ん切りがついていない感じという一歩進めた関係性を前提にしております。

感想お待ちしています。


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壁一枚の距離感

今回は、イケライオンと眠り姫の間の距離について考えるお話。

お互いの距離が近いが故に起きる苦悩と、離れたが故の苦悩を少しでも表現できたらと思います。


「夢美、これ見てみろよ」

「ん、何~?」

 

 

2人ともレオの部屋でくつろぎながら、レオはポケモンをして、夢美はその画面をレオの肩から少し顔をのぞかせながら覗いていた。

 

 

「この相手、凄い戦術を使ってくるんだよ」

「えっ、どんなの?」

「これされると、ほんと厄介なんだけど、うまくいかないことも有るんだけど、こんなにうまくされるとは思わわなかったよ」

「ふーん」

「確か夢美、このポケモン育ててたっけ?」

「確かに持ってたかな」

「この戦法も面白いから、採用してみるのもいいかもな」

「レオがそういうなら、考えようかな」

「やってみようよ、な」

「わかった」

 

 

レオは夢美の顔を見ようと顔を向けた瞬間、何かに触れたのを感じた。

 

夢美はレオが自分の方に向いていた瞬間、何かに触れたのを感じた。

 

 

「「!?」」

 

 

お互いの「唇」が触れてしまったのを、お互いが理解してしまった……。

 

 

「い、い、今……!」

「落ち着け、夢美!」

「ヒッ!」

「落ち着け、あれはただの事故だ。ただ、ちょっと当たり所が悪かっただけだ」

「そ、そうよね!」

「だから、あんまり深く考えなくても良いよ。俺も気にしてないから。アイドル時代でも、キスシーンは何回かあったから気にしてないよ」

「で、でもさ。確かにちょっとレオに寄りかかってたあたしも悪かったって」

「そんなことないって。ちょっと気が緩んでただけだって。次から気を付ければいいだけだって」

「そ、そうよね」

「そうだって。とりあえず、今回はどっちも悪かったってことで。今日は、デザートにプリンを用意しておくよ」

「やった!」

 

 

2人の間で解決させ、レオは再びswitchに視線を移した。

 

 

「(でも……。ちょっと、近すぎたのかもしれないよね……。Vの上では『幼馴染』だけど、ただ学校が同じなだけで、ただの同期なだけなんだよね……。最近ちょっと調子乗ってたかな……。ちょっと、距離感を考えようかな……)」

 

 

 

 

 

「ごちそうさま」

「ごちそうさま。プリンもおいしかった~」

「それじゃ、食器洗ってくる」

「それじゃ、あたし、部屋に戻るね……」

「そう?。いつもはこれから寛いでいたりするけど」

 

 

いつもは夕食後は部屋でくつろぐことの多かった夢美が、今日は夕食後そのまま自分の部屋に戻ることに、レオは少し驚いた。

 

 

「うん。ちょっと明日の配信の準備とか有るから」

「わかった。頑張ってな」

「うん……」

「明日も朝食作るから、徹夜はあまりするなよ」

「わかった」

 

 

足早に部屋に戻った夢美は、自分のベッドで横になり、自分のスマートフォンを操作し始めた。

 

彼女の顔は、無表情で何かを考えているようであった。

 

 

翌日から、夢美はレオと一緒に食事を取ったり、食後は自室に引きこもる様になり、どこかすれ違いの生活をするのであった……。

 

 

 

(数日後……)

 

 

レオと夢美は、毎月の三期生のミーティングで事務所に集合となったが、この日はいつもとは少し違った集合となった。

 

 

「あれ、獅子島さん?。茨木さんと一緒じゃないんですか?」

「四谷さん、おはようございます。夢美は、「ちょっと用事を思い出したから、先に行って」って、少し遅れてくるみたいです。「ミーティングには間に合う」って言っていたんで、すぐ来るとは思うんですけどね」

「わかりました。それじゃ、会議室で待っていてくださいね」

 

 

四谷に促されて会議室に向かい、用意されている三期生用の右端の席に座り、会議までの時間をつぶしていた。

 

 

「失礼します!」

「夢美、用事大丈夫だった?」

「うん、まぁね……。ちょっと、買い忘れてたものがあってね。コンビニで買ってきたんだけど」

「よかった。用事を思い出したからって言ってたから、心配した」

「心配してくれてありがとう。ミーティングはまだみたいだね」

「良かった、遅刻しなくて」

 

 

夢美は左端の席に座り、レオと同じく会議までの時間をつぶし始めた。

 

その数分後に、再び扉が開き、林檎が入ってきて、レオと夢美に挨拶を交わしていた。

 

 

「失礼します。レオ、夢美、おはよう!」

「おはよう、林檎」

「おはよう、白雪」

「間に合った~。ちょっと、早めに行こうと思ったら、思いのほか時間を食っちゃってさ。まぁ、何とか間に合ったから、まぁ良いか」

「間に合ってるけど、次から気をつけろよ」

「はーい、わかりました。それにしても……」

「ん?何かあった?」

「いや、何も」

 

 

林檎は、レオと夢美が席を離していることに違和感を感じた。

 

 

「いつもなら隣に座って、仲良く談笑して、てぇてぇを振りまいているはずなのに……」

 

 

違和感を拭えないまま、林檎は真ん中の席に座った。

 

 

「では、今日のミーティングはこれで終了になります。また、何かありましたら、連絡お願いします」

「「「お疲れさまでした」」」

「それじゃ、あたしはお先に失礼します」

「お疲れさまです」

 

 

会議はつつがなく終了し、解散の時間となり、夢美は足早に会議室を退室した。

 

 

「(ライバーとしての「茨木夢美」と、あたしとしての「中居由美子」はきっちり分けないといけないんだけど、うまく整理できない……。今まではそんなこと考えることなんて無かったのに……。でも、何だろう?。この胸の苦しさは……)」

 

 

夢美は、事務所の入り口を出て、やや曇った表情のまま帰路へと付いた。

 

 

一方、事務所では……。

 

 

「レオ、夢美と喧嘩した?」

「別に夢美とは喧嘩してないけど?」

「いやだって、いつも会議の席が隣同士だし、仲良さそうに話してるのに、今日に限って席は離れているし、全く話さなかったし、どこかよそよそしいというかなんというか」

「確かにどこかよそよそしいかったな……。確か、あの時からかな……。でも、あれはあの時お互い気にしないってことにしたのに」

「何?何が有ったの!?」

 

 

レオは数日前に起きたことに対して、林檎に簡単に説明をした。

 

 

「いや~。てぇてぇですな~。偶然とはいえ、キスしちゃうとはね~。ねぇ、本当に付き合ってないの?。日常的にベタベタしてるのって、もう幼馴染じゃなくてただのカップルじゃん」

「カップルじゃないからな」

「まぁ、それは置いといて。今回は、たぶん「お互いの距離感」を夢美が過剰に意識したからなんじゃない?」

「距離感か……」

「レオも夢美も友達にはとことん甘いからね~。たぶん、お互いどこか甘えてたのが、今回のことでちょっと悪い方向に転がっただけで、距離感が近いのは別に悪いことじゃないとは思うけどな~」

 

 

「あたしにとってはね~。てぇてぇ~、てぇてぇ~」と小さく呟いた林檎を尻目に、レオは自分と夢美の距離感について深く考えていた。

 

 

「夢美なら良いかなって思うところはあったかもしれないな……」

「だから、ちゃんと話し合えば、解決すると思うよ。お互い、子供じゃないんだしさ。かつてのあたしと違ってさ。夢美もきちんと話は聞いてくれると思うよ」

「でも、ここ数日ご飯も一緒に食べてないからな。なんか避けられてるみたいでさ」

「う~ん。なんか、昔のあたしみたいなことになってるよね~」

「無理矢理にでも、夢美の部屋に入るか?」

「いや、別にそこまでする必要ないんじゃないかな~。「距離感」を意識しているだけで、レオとは離れるつもりはないと思うから……。そうだ!。これなんかどう?。……………」

 

 

林檎はレオの耳元でひそひそと作戦の内容を教えた。

 

 

「…………。なるほど、それなら問題ないな。それじゃ、今夜してみるよ。ありがとうな林檎」

「バラレオがてぇてぇじゃなかったら、こっちが調子悪くなっちゃうからね。それに、これも雑談のネタになると思えば、儲けものだよ~」

「少しはぼかせよ。また炎上するぞ」

「大丈夫、大丈夫~。バラレオが事故チューしたところで、「てぇてぇ」か「結婚いつですか?」とかのコメントが増えて、ちょっと多めのスパチャが貰えるだけだって。炎上なんてありえないよ」

「いやいや、結婚って飛躍しすぎだろ……」

「ふふっ、そうかな~。私から見たら、もう結婚間近にしか見えないけどな~」

「冗談はいい加減にしろよ」

「は~い」

 

 

その後、林檎と軽く作戦の確認をして、レオは帰路についた。

 

 

 

 

獅子島レオ:ベランダでちょっと話そう お酒用意してるから こっちに行きたくなかったら、自分の部屋のベランダで良いから

 

 

数時間後、レオは夢美にメッセージを送った……。

 

夢美を呼び出すために、夢美の曇り空を晴らすために……。

 

 

「夢美、来たか?。お酒はそっちのベランダに引っ掛けてるから取って」

「レオ、どうしたの?。お酒なんか用意しちゃって」

 

 

自室のベランダに出てきた夢美とレオはパーテーションを挟んで、お酒を飲みながら会話を始めた。

 

 

「「どうしたの?」って、聞きたいのはこっちだよ。あの時から、ちょっと距離を置かれてるみたいでさ」

「……」

「距離を置かれてることについては別に良いんだ。一人になりたい時も有るだろ。そういう思いも汲み取るよ、「幼馴染」なんだからさ」

「ッ。でも、あたし達の関係は、作られた関係……。「本物」じゃない。あたし達は本当の「幼馴染」じゃない。偶然、同じ学校にいただけのただの「同級生」なだけ!。なのに、ちょっとした事故でキスみたいなことしちゃって!。それで、ちょっと嬉しいとか恥ずかしいって思った自分が嫌で!。レオだって、あたしとああいう事しても全然嬉しくなんて……!」

 

 

夢美の声が少しずつ強くなっていく。

 

 

「それは違う。何も思わない訳ないだろ?。そりゃ、ドラマでもキスシーンはあったけど、それとこれとは別問題。俺だってそりゃ、少しは驚いたよ」

「!?」

「夢美は俺がライバーをしている時から、ずっと傍にいてくれた。ライバーで燻っていた時は引っ張ってくれたし、林檎の引退騒動の時は一緒に動いてくれた。夢美には感謝の気持ちしかないんだ。そんな恩を毎日の食事程度じゃ返しきれないさ」

「えっ……。でも、あの時……」

「夢美に罪悪感を抱かせないってのも有るけど、照れ隠しに決まってるだろ。特別な感情を抱いている相手とキスとかしたら、俺だって動揺はするよ」

 

 

レオは静かに言葉を紡ぐ。

 

 

「それに、『茨木夢美』は、俺にとって世界に二人しかいない「同期」だ。そして、俺にとって「大切な人」だ。「設定」だとかなんとかは関係ない」

「レオ……」

「それに、今の俺らの壁はこのパーテーションぐらいしかないだろ?。それに夢美が辛そうな時は、こんな壁なんて簡単に越えてみせるよ。夢美が食あたりで倒れた時と同じようにさ」

 

 

パーテーションを軽く小突きながら、夢美に自分たちの壁の薄さを暗に示した。

 

 

「…………」

「あれ……?。夢美、大丈夫か?。夢美~?」

 

 

身体を少し身を乗り出して、夢美の部屋を覗き込んだが、ベランダに夢美の姿は見えなかった。

 

 

「レオ!」

「ゆ、夢美!?」

 

 

レオの背後からの声に振り替えると、目の前には赤ら顔でやや涙目の夢美が立っていた。

 

 

「レオ、ごめん……。本当にごめんなさい!」

「大丈夫だよ、夢美」

 

 

感情が昂りレオに抱き着いた夢美を、レオは優しく慰めるように頭を撫で、夢美を落ち着かせようとした。

 

レオの優しさに、夢美は静かに涙を流した。

 

 

「レオ……。ごめんね……。ありがとう……」

「良いってことよ。落ち着いたか?」

「うん」

「よし、それじゃ、今夜は飲むぞ。飲み物いっぱい買ってあるし、おつまみも用意できるぞ」

「やった!」

 

 

そうして、バラレオの仲直り?のための飲み会が始まるのであった……。

 

 

 

 

 

「やっぱり、このポケモンとこの技の組み合わせを気に入っているんだけど」

「う~ん、ここのバランスが大切なんだけどな~」

 

 

「やっぱり、バラレオはこうじゃないとね!。てぇてぇ」

 

 

数日後、二人の様子を覗き見しようとレオの部屋に上がり込んだ林檎は、身を寄せ合いながらゲームに勤しみ、無自覚にイチャイチャしているようにしか見えないバラレオの姿を見て、てぇてぇを強く感じるのであった。

 




話を進めていくことに、どんどん終着点がずれていく気がする。

もっと、てぇてぇを高めなければ……。


感想待っています。


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Ephemera of Paris daisy

今回は、私が某ライバーとのカップリング小説を考えていた時の設定を使った小説です。

今回の主役は、獅子島レオでも茨木夢美でも白雪林檎でもなく、にじライブの第一期生「竹取かぐや」であり、彼らの所属会社の統括部長の「諸星香澄」です。

彼女の過去の約束と、謎のプレゼントが紡ぎだす一つのお話を楽しんでもらえたらと思います。


「うわっ。これが竹取かぐや宛に送られるファンからのプレゼントか。流石、にじライブを引っ張ってきたVだけはある……。あたしもプレゼントは貰ったことあるけど、これだけの量は見たことないや」

「いっつも、こんだけ仰山貰っても困るんやけどな」

「でも、流石です」

「それにしても……。ちょっと恥ずかしい所を見られちゃったかな。自慢してるみたいでさ」

 

 

事務所での打ち合わせがたまたま済んだ諸星、レオと夢美の3人は、事務所の机の一角を牛耳る様に高く積まれた“竹取かぐや”宛のプレゼントを見て、感嘆の声を上げていた。

 

 

「本当はもっと有るんだけど、電子機器とか食料品に関しては、申し訳ないんだけど捨ててるんや。規則できっちり決まっているからな」

「わかります、諸星さん。俺もアイドル時代にそういったプレゼントは、処分しているって話はありましたよ」

「おっ、流石経験者」

「え~勿体ないな~。電子機器とか高そうなのに~」

「夢美、電子機器こそ今の時代怖いんだぞ。盗聴器や隠しカメラが仕込まれている可能性だってあるんだから。そこから、身バレすることだってある。食料品なんかは、誰がどうしたかわからないものを食べるんだぞ。もし、それに毒とか仕込まれていたら……」

「確かにそうだよね……。勿体ないって気持ちはあるけど、それが毒だったらと思うとね。盗聴も怖いし」

 

 

「だから、気をつけろよ」とレオは優しく釘を刺しながら、プレゼントの一つ一つを見ていた。

 

 

「ん?あれ?これは……。栞?」

 

 

レオは、詰まれたプレゼントの山の麓にさりげなく置かれている一枚の栞に気が付いた。

 

その栞は、マーガレットの花が描かれ、ラミネートされた如何にもお手製のものであった。

 

 

「栞のプレゼントってのは、見たことが無いな……。なんじゃこりゃ?。30-2-11、45-12-3……?」

 

 

レオがその栞に手を伸ばし、栞の裏を確認したが、その裏には、数字の羅列が書かれているだけであった。

 

 

「諸星さん、この栞は何ですか?」

「あ~、それは貰っておくわ……。もうこんな時期か……

「そ、そうですか、どうぞ」

「ありがとな。それじゃ、私はこれから仕事に戻るわ。配信頑張りや」

「わかりました。頑張ってください」

「頑張ってください~」

 

 

諸星は、レオから受け取った栞をスーツの裏のポケットにしまい、仕事に戻っていった。

 

 

「何だったんだろうな、あの栞……」

「ん?栞が何だって?」

「いや、大したことじゃないんだけどさ。あの栞はなんか普通のプレゼントとは違うんだよね。裏に変な数字が書かれてたし、諸星さんが何も確認もせずに、スーツの裏側のポケットにしまったんだぞ」

「確かにちょっとおかしいよね。内容は確認するくらいはするよね。特に竹取かぐやレベルの人となると、そういうのって人一倍気にしないといけないよね」

「謎の栞の事なら、あれは約3年ぐらい前から、定期的に事務所にファンレターと一緒に送られてきたプレゼントなんだよね」

 

 

「そうなんだよ」と言うレオの後ろで、かぐやのマネージャーの飯田が2人に声をかけてきた。

 

 

「飯田さん、お疲れ様です。その話って本当ですか?」

「獅子島さん、本当だよ。毎回同じ人から送られてきてて、印象的なんだよ。ファンレターの内容は普通で、栞も市販の機材でラミネートされたもので、変な数字の羅列以外は変な所は無いから、そのまま渡しているんだけどね」

「へぇ~、変わったプレゼントですね」

「そうだよな。別にバンチョーが本を読むなんてこと、あんまり配信でも言っていないし、わざわざ“栞”を贈るってのはおかしい。しかも“定期的”なのが、もっとおかしい」

「本当にそうなんだよね。勿論、諸星部長も読書はするから、栞は使うだろうけど、定期的に送ってくるのも不思議で、会社内では「送り主は、諸星部長の恋人」だなんて、噂が流れたくらいですよ」

 

 

「まぁ、その噂も部長の圧力で、誰も話さなくなったから、有耶無耶になったんだけどね」と、飯田は軽く鼻で笑いながら、最後に添えた。

 

 

「諸星さんは、ライバーとしても社会人としてもきっちり分別の付けられる方ですし、立派な社会人ですし、もしその噂が本当だとしても、別に良いんじゃないんですか?」

「レオからそんな言葉が出るなんで意外」

「そりゃ、推しに恋人がいるんだったらショックだけど、諸星さんなら恋人がいても全然不思議じゃない年齢ですし……」

 

「おっ、誰に恋人がいるって~」

「!?」

「ヒッ!」

「あっ……」

 

 

レオの背後から諸星が静かにやってきて、レオの左肩に手を載せていた。

 

その顔は笑顔ではあるが、そこから明らかな怒気がにじみ出ていた。

 

 

「獅子島レオさん~。女性のプライバシーに踏み入るなんて、躾がなっていないんとちゃうんか?」

「いえいえ……」

「それに、飯田ァ?。まだ、仕事が残っとるんと違うんか?。こんな所で油売ってる時間なんてないやろ?」

「すみません!!」

 

 

諸星の濃厚な怒気を含んだ優しい声は、レオを黙らせ、飯田は足早に仕事場へと返した。

 

 

「はぁ~。また、変な噂流しよって」

「諸星さん、すみません。変な噂にのってしまって」

「別に構わんよ。確かに“竹取かぐや”のイメージとしては、“栞”のイメージは付きづらいから、変に勘違いされるのは分かってたんやけどな」

「そ、そんなことないですよ。それにマーガレットのイラストなんて、送った人は可愛らしい人ですね」

「そやな。嫌味ばっかりだけどな……

 

 

その後、事務所を後にしたレオと夢美は、自宅に帰るついでに、事務所の最寄り駅の駅の近くの大型書店へと足を運んだ。

 

 

「何、この行列は?」

「凄い人だな……。ん、何々?。『赤鮫シエル』サイン会が開催されているんだって」

「赤鮫シエルって、あの「迷探偵ヤンキーガール」の?」

 

 

目的の書店に到着した2人は、目の前の大きな列に驚きの顔を露わにした。

 

 

「そうそう、あの作品だね。一度バイト先の人から借りて読んだことが有るんだけど、不良少女と迷探偵のコンビがまた絶妙に噛み合ってて、お互いの足りない所を支えあいながら、事件に立ち向かっていく姿は、笑いあり涙ありでかなり読み応えのある作品だったよ」

「推理小説か……。私には難しそうだな」

「そうでもないよ。文章やトリックに関しては、奇をてらいながらも、きちんとわかりやすい説明をしていたから、なるほどっと思わせてくれたよ。それが受けて、アニメ化が決定したみたいだし、新刊の宣伝も兼ねてのサイン会だね。なんか懐かしいな」

「レオもやっぱりそういう事してたの?」

「ああ、サイン会が終わった後に、裏で結構ボロクソに言ってたよ。客の態度が悪いとか色々とね。痛い思い出だよ」

 

 

若干、苦虫を嚙み潰したような表情をしながら、過去の行動を反省するレオであった。

 

 

「うわぁ……」

「だからこそ、今があるってことだから、前向きにね」

「そうだね、人生前向きにね」

「それじゃ、買い物を済ませたら、早めに帰るぞ。今日の夜は、配信有るんだから、準備を済ませないといけないだろ?」

「は~い!」

「今日は夢美の好物を作るから、楽しみにしろよ」

「やった~!」

 

 

バラレオの2人は、通常運転でてぇてぇを振りまきながら、目的の本を探しに向かった。

 

 

 

 

一方、その頃……

 

 

「もうこんな時期か……。やっぱり、あいつはキザすぎるんだよな……」

 

 

仕事を一通り片づけ、休憩している諸星は、プレゼントの栞を見つめながら、過去を思い出していた。

 

 

 

 

これは、10年前の遠き日の思い出……

 

 

「なんか複雑に奇をてらい過ぎて、全くわからないし、文章が分からりずらい」

「中学時代からあなたの事は知っていますが、やっぱりあなたのセンスは狂ってるんすね」

「なんやと!」

「痛い、痛い!殴らないで!」

「うっさいわ、ボケ!」

 

 

薄汚れた部屋で男性の執筆した作品を女性が読んで、品評していた。

 

また、男性側の煽りに腹を立てた女性、彼の腹部にパンチを入れていた。

 

 

「あなたがこういう文章を読み慣れていない知ってたからこそ読んでもらいたかった。色んな人に読んでもらうためにね」

「ま、そんなとこやろうな」

「それは半分で、もう半分はこの文章を読んで、頭を抱えるあなたの姿を見たかったんですけどね、ハハハ!」

「あ゛っ!」

「痛い痛い!」

「お前みたいな性悪が書いた本なんか、一生売れないぞ」

「言いましたね……。じゃ、私が売れたら、どう落とし前つけてるんですかね?」

「そうだな……。それじゃ、土下座でもしてやるよ。『私の見当違いでした』ってね」

「わかりました。それじゃ、私が売れたら土下座してもらいましょう。それじゃ、ゴールラインはどうしましょう?。あなたのことだから、ゴールラインを後ろにずらされて、結局土下座しないっていう事にはされたくないですからね。さて、どうしましょうかな……」

 

 

男性は思案にくれながら、この勝負のゴール地点を考えていた。

 

 

「上等ッ!」

「それでは、新刊が出る度にあなたに栞を送り付けましょうか」

「はぁ?なんで、栞?」

「そこは考えてください。そして、栞が10枚溜まったらってのは、どうでしょう?」

「つまり、新刊を10冊出したら、そっちの勝ちってことか。まぁ、ええやろ」

「それでは、首を洗って待っててくださいね。土下座が楽しみだ~。ハハハ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで6枚目か……。これで、折り返し地点は過ぎたんやな。あいつも頑張ってるんだな」

 

 

帰宅し家で寛いでいる諸星は、仕事用鞄から栞を取り出し、小さく呟いた。

 

その左手には、通販サイトの梱包用封筒が握られていた。

 

 

「さて、あいつがどんな作品を書いたか、見てやらんとな」

 

 

封筒から「迷探偵ヤンキーガール」の新刊を取り出し、ソファーに座り、その本を読み始めた。

 

 

「あいつ、私が新刊を買うことを見越して、必ず必要になる栞を送り付けたんやろうけど、何故、竹取かぐや宛に送りつけたんや?。それに、あいつに竹取かぐやの事なんて、言っていないんやけどな……。もしかして、私のことを調べてた?。まぁ、あいつのことだから、声で見抜かれちゃったんだろうな。それに今の職場にいることも、あいつに言ってたからな」

 

 

黙々と読み進めながら、ふと、それを止めて、メモ帳とペンを取り出し、栞と小説を交互に見ながら、再び読み始めた。

 

そして、メモ帳に文字を記入し、一しきり終えると、その文字列に目をやった。

 

 

「さて、あの性悪野郎の残した暗号は、なんやろな……。えっと……」

 

 

ゆふぐれは

雲のはたてに

ものぞ思ふ

天つ空なる

人を恋ふとて

 

 

「…………。なんや、今回は和歌かいな……。自分は平安貴族にでもなったつもりか。調子に乗りやがってな。それにそんな和歌送られたって、気持ち悪いだけやん」

 

 

呆れた表情をしながらも、その頬はどこか赤らめていた。

 

 

「それにしても、栞の裏の謎の数字は、ページ数と行数、上からの文字数を表しているなんて、ちゃんと本を買わないと分からんやろが……。性悪なあいつらしいわ……。中学時代からの腐れ縁やけど、本当に性悪やな」

 

 

彼女の瞳は、どこか遠くの何かに想いを馳せていた。

 

 

「また、こっちもファンレターで返してやるかな。それに私は知ってるんやぞ。「迷探偵ヤンキーガール」の主人公の不良少女のモデルが私だってことも。なんや、あいつただのツンデレか。それにやり方が回りくどいし、言葉が一々面倒くさい。言葉選びもクサい」

 

 

呆れた表情で、ダメだしの言葉を並べ立てた。

 

 

「でも、女としては、売れっ子作家に言い寄られるなんて、嫌な思いはせぇへんかな。ゲームや漫画の世界みたいやしな。もっと直接的な言葉で言い寄られたら、コロッといってしまいそうやけどな~」

 

 

諸星は、思いを寄せられている殿方が作った栞を見ながら、物思いに更けていた。

 

その後、本はベッドの下の布製のブックケースに収納されるのであった。誰かのお手製の栞を挟んだ他の5冊と一緒に……。




「Ephemera」=栞(の用途として用いられた不要なパンフレット等)


「Paris daisy」=マーガレット

マーガレットの花言葉:「恋占い」「真実の愛」「信頼」


原作者曰く、竹取かぐやのモチーフが、某か〇みとハイブリットとのことなので、「赤鮫シエル」のモチーフは、某パワポ以外は完璧な探偵をモチーフとしています。

お互い煽ったり、煽られたりの関係だけど、そこにはお互いのラインをきっちり守ってくれるからこその信頼関係がきっちりできているからこその関係だと思っています。

私としては、お互い好き同士だけど、臆病な自尊心と尊大な羞恥心が邪魔をしてお互い素直になれないみたいな関係をイメージして書かせていただきました。

あと、作中の和歌は古今和歌集に載っている和歌で、ざっくりとした意味としては「高嶺の花となってしまったあなたを愛している」という、売れたとは言っても、まだ売れ始めた小説家から、会社の統括部長でV業界を牽引している諸星さんに対しての愛の言葉という意味合いで使いました。



拙い文章ではありますが、原作者様、筋は通させていただきました……。

感想待ってます。


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今夜のレオ飯 ~はじめての一皿~

バラレオのてぇてぇと、自分の好きな「料理」ものを組み合わせてみました。


「今日から夢美の分も作るんだが……。何を作ろうかな……」

 

 

レオは、冷蔵庫の食材をにらめっこしながら、夢美に振舞う初めての夕食について、思案していた。

 

 

「食あたりから治ったばかりだから、そんなに重たいものを食べさせるわけにはいかないけど、夢美のことだからしっかり食べたいとは言うだろうし……」

 

 

いつもレシピを参考にしているアプリを立ち上げ、夕食の献立の参考になるレシピを流し読みしていた。

 

その中で、一つのレシピが目に留まり、そのレシピをじっくりと見始めた。

 

 

「………。厚揚げか……。ただの厚揚げなら、味が一辺倒だけど、それに野菜あんかけをかければ良いな」

 

 

頭の中で、必要な材料と足りない食材を考え、夢美を連れて、スーパーへと足を運んだ。

 

 

「拓哉~。今日のご飯は、何?」

「ん、厚揚げの野菜あんかけ。なんか食べられないものはあるか」

「特に無いけど」

「良かった。今日の料理は、野菜と量は多めだから、あんなことが有って、重たいものを食べさせられないからね」

「ありがとう」

「まぁ、食事の面倒を見るってことは、健康に思い切り関わるってことだから」

 

 

2人は、淡々と食材を購入し、帰路についた。

 

 

「スーパーの道順は覚えておいてよ。今後、おつかいを頼むかもしれないからね」

「は~い」

「あっ、あそこに可愛い雑貨屋がある~」

「ん?」

 

 

夢美は帰り道の途中に、小さな雑貨店を見つけ、その店先に向かっていった。

 

 

「ここはお茶碗とかお皿とかも売ってるのか。ここで買っておこうっと」

「そうだな。予備のお茶碗を使うつもりだったけど、自分で選んだ食器で食べた方が良いもんな」

「選んでくるから、待ってて」

「俺もちょっと見てる」

 

「拓哉~。こっちの茶碗とこっちの茶碗、どっちがいいと思う?」

「う~ん。右かな」

「わかった。じゃ、こっちで」

 

「由美子。どっちの箸置きが良い?」

「う~ん。猫の箸置きかな」

「それじゃ、買ってくる」

 

 

雑貨店の中で、夢美は自分の食器を何点か、レオも2人分の箸置きを購入し、再び帰宅の途へとついた。

 

 

 

「さて、そろそろご飯が炊けるから、メイン料理を作ろうっと。材料は、ひき肉、シメジ、野菜、厚揚げ。味噌汁は、玉ねぎで良いかな」

 

 

フライパンでひき肉を炒め、野菜とシメジを入れ、ひき肉入り野菜炒めを作り始めた。

 

そして、そこに少量の鶏がらスープを入れて、一煮立ちさせ、その後水溶き片栗粉を入れ、とろみの付いた餡を完成させた。

 

 

「味噌汁もそろそろ完成かな……。あと、きざみネギを入れてっと……」

 

 

玉ねぎと出汁が入ったもう一つの鍋に味噌を入れて、味噌汁を完成させ、火を止めた。

 

 

「厚揚げもそのままフライパンで焼き目をつけてっと……。さて、そろそろ夢美を呼ぶか」

 

 

夢美に連絡を入れた後、直ぐにレオの部屋に入って、食事の準備をしてもらった。

 

 

「レオ、お箸は並べたよ」

「ありがとう。もうすぐ完成するから」

「は~い」

 

 

厚揚げの焼き目を確認した後、皿に盛りつけて、その上に野菜あんをかけて、メイン料理を完成させた。

 

そして、二つのお椀にそれぞれ味噌汁、二つの茶碗にご飯をよそい、メイン料理と味噌汁、ご飯を食卓に置いた。

 

 

本日のレオ飯:「厚揚げの野菜あんかけ」

 

 

「それじゃ、いただきますをするぞ」

「うん」

 

「「いただきます」」

 

 

 

 

 

「「おいしい」」

「あんかけがちょうどいい濃さで、厚揚げ外はパリパリで、中はふわっとしてる。うん、良い出来だ」

「流石、元アイドル。食レポも完璧だね」

「まぁね。それよりも、夢美がおいしいって言ってくれて、嬉しいよ」

「うん、ずっとコンビニ弁当で、こういう料理をあんまり食べなかったからさ。すごくおいしく感じる。ズズッ……。お味噌汁もおいしい」

「一人暮らししている時に、本当に料理しなかったんだな……」

 

 

レオが唖然としている中、「うん、そうだね」と厚揚げに食べながら、答えを返した。

 

 

「(そういえば、アイドル時代の料理企画で、教えてくれた講師の人が言ってたな……。『料理は技術だけじゃなく、食べてくれる人のことを想うことも必要だ』って。あの時は、そんなこと全く考えてなかったけど、今の夢美の顔を見ていると、ちょっとだけわかる気がしてきた)」

 

「(毎日、こんなおいしい料理が食べられるのか……。本当にあたしはツイてる。事務所からのサポートで面倒見てもらうなんて、本当ライバーになって良かった)」

 

 

 

 

 

 

 

 

各々の想いが渦巻く中、2人の“はじめて”の夜は、静かに過ぎていく……。




作中に出てくる料理は、実際自分で手作りしたものを利用しています。

まぁ、作中みたいに綺麗にアンができず、ひき肉が無駄に多く、結果的にひき肉入り野菜炒めと厚揚げみたいな感じになってしまいましたが……。

何事も経験と言うことでね。

今夜のレオ飯は、予定としては、最低でもあと1~2作品投稿予定です。


感想待ってます


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今夜のレオ飯 ~2人で挑むやり直しの味~

今回は、夢美が再びあの料理に挑戦するお話

構想しながら、限界化を迎えながら作りました。

最後の展開は、ちょっと無理があるかもしれませんが、てぇてぇと言うことで許してください


「レオ。あたしに料理を教えてほしい」

 

 

夢美が昼食の後にくつろいでいるレオにお願いした。

 

 

「良いけど、何かまずかった?」

「レオの作るご飯はいつもおいしいよ。おいしすぎて、いつも食べ過ぎちゃうくらいにね。でも、それに甘えるだけじゃなくて、少しでもレオの負担を軽くできたらなって」

「そう思ってくれてありがとう」

 

 

レオは夢美と料理をするのに最適な料理を考えていた。

 

 

「なら、“カレーライス”を作ろう。前に作ってくれた時のカレーがそこそこ酷かったからね。だから、そのリベンジでカレーライスを作ろうよ。カレーが作れたら、他の料理にも使えるからね。クリームシチューとか、肉じゃがとかにね」

「それ、良いね」

「それじゃ、材料を買いに行こう」

「はーい!」

 

 

2人はいつものスーパーへ向かい、材料を買い始めた。

 

「拓哉、男爵イモとメークインの違いって何?」

 

 

夢美が二種類のジャガイモをそれぞれの手に持って、レオに首をかしげながら訪ねた。

 

 

「簡単に言うと、男爵イモは丸くて少しごつごつしたモノで、煮崩れしやすいからポテトサラダとかにおすすめな品種で、メークインは少し縦長でツルっとしているモノで、煮崩れしにくく煮物とかにおすすめな品種な」

「へぇ~。じゃあ、今回はメークインを買えばいいんだね」

「そうだね」

 

 

メークインの入った袋をレオの買い物カゴに入れて、買い物を続行した。

 

 

「拓哉、とろけるチーズって冷蔵庫に有った?」

「少しだけなら有るけど?」

「なら、買わなくていいね」

「カレーにかけるの?」

「うん、チーズカレーもおいしいからね」

「それじゃ、俺は何入れようかな……。生卵が良いかな」

 

 

材料に加えて、カレーに追加する食材を各々買い込み、帰宅した。

 

 

「それじゃ、まずカレーに必要なものは、何でしょう?」

「それはルーかな?」

「違います。答えはご飯」

「あっ、そうか」

「で、ご飯の炊き方というか、炊飯器の使い方は分かる?」

「う~ん。わからない」

 

 

夢美は、少し考えた後、堂々と答えた。

 

 

「やっぱりか……。それじゃ、とりあえず、ご飯の炊き方を教えるぞ。簡単だから、すぐわかるよ」

 

 

レオが、簡単に炊飯器の使い方と米のとぎ方を説明し、それに沿って夢美が実践していった。

 

工程が簡単なのか、レオの教え方が良いのかわからないが、夢美は拙いながらも着実に進めていった。

 

 

「思ったよりも簡単だね」

「その意気だ。それじゃ、炊飯器のスイッチを入れたから、カレーの調理にかかろう」

「は~い!」

 

 

ジャガイモや玉ねぎ、ニンジンを調理台に出して、ピーラー、包丁やまな板もご丁寧に用意されていた。

 

 

「前に夢美が失敗したところだな、ここは」

「あの時は、本当にすみませんでした」

「皮むきはできるみたいだから、さっさと皮をむいてしまおう」

「おっし、やろう!」

 

 

2人は、ピーラーや包丁を駆使しつつ、皮をむいていった。

 

 

「それじゃ、皮むきが終わったから野菜を切るぞ。まずは基本から。包丁を持たない左手は、猫の手にして、食材を押さえてから切ります。はい、猫の手をして、はい、ニャン!」

「ニャン!。って、何させてるのよ」

「(可愛い……///)それじゃ、野菜を切っていくんだけど、いきなり材料を切らすのは危険だから、俺が手伝うぞ」

「はーい。って!!」

 

 

レオは夢美の背後に回り、優しく夢美のそれぞれの手首と掴み、レオが夢美の腕を動かせるようにした。

 

 

「レ、レオ……。ちょっと、これは……。恥ずかしい……」

「だったら、さっさと野菜を切るぞ」

「う、うん……」

「ジャガイモとニンジンは硬いから、基本的には小さめに切ること。まずは縦に切っていきます」

 

 

レオにより、夢美の手が動き、食材に包丁を入れていった。

 

 

「包丁は、上から落とすんじゃなくて、斜めに力を入れるんだよ。刃を滑らせて、切るんだよ。そうすれば、無駄な力を入れずに、すっと切れるから」

「わかった……。やってみる」

 

 

その後も拙いながらも、夢美は食材に包丁を入れていき、野菜の下ごしらえは完了した。

 

 

「(これ、あたしの両手を掴んでいるってことは、私の背中にはレオがピッタリくっついているってことだよね……。やだ、恥ずかしい。それに、レオの吐息が耳にかかって……///)」

「よし、野菜が切れたから、今度はカレーを作っていくぞ」

「うん、わかった」

「それじゃ、鍋に火をかけて、オリーブオイルを少し入れて」

 

 

鍋に火をかけ、オリーブオイルを少量鍋に回しいれた

 

 

「十分に温まったら、肉を入れる」

「は~い」

 

 

鍋にお肉を入れて、鍋で炒めるように火を通していった。

 

 

「レオ、煮込むんだったら、水を入れてから、煮込んだから火が通るじゃん?」

「それは、こうやって焼かないと、お肉の臭みが抜けなくて、お肉の嫌な臭いが付いちゃうからね。カレーの臭いで誤魔化せるけど、変な臭いは無い方が良いだろ?」

「そうだね。今はまだそこまでこだわる必要は無いけど、そういう細かい所に気を配れると、料理はもっとおいしくなるから。そういう事はおいおいやっていこう」

 

 

その後、野菜を鍋の中に入れ、ある程度火を通し、水を加えて、野菜に火が通る様に煮込み始めた。

 

 

「とりあえず、しばらくは休憩。お疲れ様」

「うわ~。疲れた~」

「それじゃ、飲み物用意するから待ってて」

「ありがとう」

 

 

レオが入れた緑茶を夢美にも渡し、お互い今までの苦労をねぎらった。

 

 

「それにしてもお疲れ様」

「指を切らないように、緊張しながら野菜を切るのは、本当に疲れたよ……。レオは、いつもあんなことしているの?」

「いつもじゃないけど、時々はするかな。いつもは、ある程度作り置きを作ってから冷凍して、時々使っていくって所かな。ハンバーグとかは、色々と使いやすいから、結構重宝しているかな」

「へぇ~」

「勿論、大変だけど、夢美はきちんと食べてくれるから、作り甲斐はあるよ」

「……///」

「まぁ、作り置きはしているから、手を抜いていい時は抜いているけどね」

 

 

レオの優しい笑顔に、夢美は少し頬を赤らめた。

 

そして、他愛のない話をしていく中で、野菜に火が通る時間となった。

 

 

「野菜に火が通ったかは、一番硬いジャガイモに箸を刺して、すっと刺さったら大丈夫。それじゃ、刺してみて」

「……。すっと入った」

「それじゃ、あとはカレールーを入れて、完全に溶けたら完成。ルーの量は、ルーの箱の裏に書いているから、それを見て入れような」

 

 

火を消してからカレールーを入れて、溶けるようにかき混ぜた。

 

 

「しっかり溶けたら、あとは少し煮たら完成だけど、ここで家庭によって、色んな隠し味を入れるんだけど、ここはシンプルに中濃ソースで良いかな。はい、お玉1杯程度で良いから、入れてみて」

 

 

お玉に中濃ソースを入れて、その後しっかり混ざる様に再びかき混ぜた。

 

 

「後は、ご飯が炊ければ完成。お疲れ様」

「お疲れ様」

「ちょっと、くすぐったい……」

 

 

レオはカレーを完成させた労をねぎらうために夢美の頭を優しく撫で、どこかまんざらでもないでもない夢美であった。

 

 

「それじゃ、盛り付けるぞ」

「とけるチーズを入れて、チーズカレーにしよう」

「俺は、普通に食べようかな」

 

 

2人はそれぞれのカレーを盛り付けて、鼻腔をくすぐるカレーの匂いにしばしば我慢しながら、食卓に着いた。

 

 

 

今夜のレオ飯:「夢美と作ったカレーライス」

 

 

 

「それじゃ、手を合わせて」

「はい」

 

「「いただきます」」

 

 

 

 

 

 

「「おいしい!」」

「本当にカレーは万能だな。いつ食べてもおいしい」

「これが、私が作ったカレー……。いつもよりおいしい」

「だろ~?。これが自分で作った苦労の味だよ」

「うん。緊張しちゃって、ちょっと疲れたから、本当においしい!」

 

 

2人は、2人で作ったカレーに舌鼓を打った。

 

 

「カレーのトッピングは、カツカレーとかぐらいしかしないから、チーズカレーって、そこまで食べた思い出が無いんだよね」

「ん?。おいしいよ、チーズが辛さを包むからそんなに辛くならないからね」

 

 

レオの目の前に、夢美がスプーンですくったチーズ入りカレーが突き出された。

 

 

「はい、あ~ん」

「ちょ、夢美……///。恥ずかしい」

「さっき、私の頭思い切り撫でたお返しだ」

「それなら、仕方ないな。はい、あ~ん」

 

 

照れながらも夢美のカレーを食べ、「おいしい」と笑顔で返した。

 

 

「おいしいでしょ。生卵とか、色々トッピングできるのが、本当においしいよね」

「また、ネットで色んな食べ方見てみようかな」

「そん時は、レオのカレーでよろしくね」

「わかったよ。本格的なカレーを作るよ」

「やった~!!」

 

 

そのまま、2人はカレーを食べ進め、気が付けばお互いの皿は空になっていた。

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

 

 

 

 

 

「じゃ、洗い物してくね」

「お願いするね」

 

 

2人の皿を流しに持っていき、慣れた手つきで洗い物を始めた。

 

 

「(なんか良いな、この雰囲気……)」

 

 

洗い物をする夢美の姿を見ているからか、夢美と作ったカレーで満腹になったのか、レオは少し意識が薄らいでいて、理性が少し緩んでいった。

 

 

「洗い物だけだけど、家事にも慣れてきたね、あたし。本当にレオに感謝しないとね」

「夢美~」

「!?。レ、レオ!」

「ふふふ、夢美は偉い子だよ」

 

 

突然、レオは夢美を後ろから優しく左腕で抱きしめて、右手であやす様に頭を優しく撫でた。

 

 

「ちょ、ちょっとレオ……。どうしたの!?」

「いや~、別に~。夢美はいつも頑張ってて、偉いな~って。だから、しっかり褒めないとね~」

「くすぐったいよ……」

「ふふっ、夢美は偉いよ。料理を頑張りたいって言ってくれるなんて、本当に夢美が頑張ってるよ」

 

 

夢美は身じろぎながらも、レオの優しさを少しずつ受け入れてきた。

 

そして、しばらくしたら夢美はレオに優しく抱きしめられた。

 

 

「夢美~。あったかい……」

「レオも暖かいよ……」

「ふふっ……」

 

 

レオの意識が元に戻るまで、お互いの温もりを優しく感じあっていた。

 

 

「ねぇ~、夢美?」

「何、レオ?」

「今日はちょっと寒いから、もうちょっとこのままにさせて」

「仕方ないわね。それじゃ、明日のご飯はとびきり豪華にしてよ」

「ん~。わかった」

 

 

その後、立っているのが辛くなったレオは、夢美を抱きしめたままレオのベッドに腰かけて、頭を優しく撫でたり、耳元でやさしく囁いたりとレオの一方的な愛を夢美は受け続けていた。

 

 

その後、意識が元に戻ったレオが自分のしでかしたことに驚き、夢美に綺麗な土下座を決めたというのは、2人だけの秘密としてお互いの胸の中にしまうことにした。

 

なお、意識が元に戻ったのは、翌日の朝であり、レオのベッドで一夜を過ごした2人の顔は、穏やかで幼子のようであったことをここに記す。




「やり直し」は、再びカレーライスに挑む夢美と、幼い時からの関係をやり直すという意味合いを少しかけています。


料理工程だけで、2,800文字は流石に書きすぎた……


あと、後ろから抱き着くのは、通称「あすなろ抱き」。元ネタが元ネタなので、ちょっとやってみたかった。


感想待ってます。


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リワード フォー ユー

今回は、年末に近づく2人に訪れる「ご褒美」のお話

私の趣味を詰め込んだり、暗に描写しなかったりしていますが、少しでも楽しんでいただけたらと思います。


「ただいま~。あ~、疲れた~」

「お帰り、レオ。ご飯できてるよ。また、カレーだけど……」

「全然いいって。夢美の作るカレーは美味しいから」

 

 

年の暮れが近づくある日、とある企業案件でスタジオでの収録を終えたレオは、夢美が待っている自宅へ帰ってきた。

 

夢美との結婚を目指し、誰もが納得する立ち位置を得るために、精力的に案件を受け続けたのもあるが、この頃になると、レオを含めたにじライブ三期生の3人は、それぞれの得意分野で企業案件を受けることが多くなり、食事は夢美が作ることもしばしばあった。

 

ただし、夢美の料理の腕はレオや静香等の指導により、上達しているものの、作るのはレオに教えてもらったカレーやシチューといった煮込み料理が中心であった。

 

 

「それじゃ、座って待ってて~」

「は~い」

 

 

レオの分と自分の分のカレーを夢美が用意して、食事の時間となった。

 

 

「それじゃ、いただきます」

「いただきます」

 

 

その後、食事を終えた夢美は、案件で疲れたレオを労っていた。

 

 

「今日もお疲れ様」

「本当だよ。最近案件続きだったからな。案件が有るのは嬉しい限りだけどね」

「そうだね。あたしもレオ程じゃないけど、私を指名してくれる企業案件が出始めて、嬉しい限りだよ。たまにビックリ系やリアクションを要求される案件が有るのはちょっと気になるけど」

「でも、先月歌の案件もあったじゃん」

「それはそうだけど……」

 

 

しょげている夢美をハハッと笑いながら、優しく頭を撫でた。

 

 

「ん、でさ……。最近、案件で結構忙しかったじゃん?」

「うん、そうだね。それで、夢美には迷惑かけてると思ってる」

「しっかりとした企業案件だから、私も何も言うことは無いんだけどね。最近、案件とか配信とか、裏でも色々頑張ってるからさ……」

 

 

夢美の声は、次第に真剣な声になっていた。

 

 

「ん、夏に私への気持ちを伝えてくれたけど、“きちんと周囲に納得してもらえるまで”って言って、幼馴染のままでいてほしいって言ったじゃない」

「うん、そうだな」

「でもさ……。最近、頑張っているからね。本当に頑張ってるからね」

 

 

夢美は溜めに溜めて、やっと言葉を吐き出した。

 

 

「ご褒美にさ……。明日まで、そう明日まで……。『恋人』になっても良いかなぁ~って」

 

 

夢美は真っ赤になりながらも笑顔で一日限りの関係を承諾した。

 

 

「はえ?」

「いや、だってさ、レオが毎日頑張って、ダンスレッスンしたりボイスレッスンしてる時でも、私のご飯とか作ってくれたり、私の部屋の掃除とか手伝ってくれたりしてさ。レオがメチャクチャ頑張ってるから、何かお礼というか、ご褒美をあげないとさ~って思ったんだよね」

「…………」

「今日は帰りが遅くなるからって、あたしがご飯作ったけど、まだカレーとかしか作れないし、前とかはレトルトだったり冷凍食品だったりしたし、まだまともなご飯は作れてないから。未だにレオに頼りっきりだし……。っ!?」

 

 

お礼の言葉を緊張のあまり早口になっていたところに、レオは横に回り込んで、夢美を優しく抱きしめた。

 

 

「ありがとう、夢美」

「う、うん……。で、でも、『恋人』っていう事だけど、まだ“そういう事”はしないからね。そういうのは、まだ早いし、無理矢理ってのも嫌だからね」

「わかった。夢美の嫌がることはしないよ」

「だからって、ちょっとは良いよ。だって…。『恋人』なんだからね」

「うん、わかった……」

 

 

レオは、抱きしめる強さをちょっとだけ強めた。

 

夢美は、レオの温もりにそっと身を寄せ、優しく抱きしめ返した。

 

 

「夢美……」

「……………」

 

 

しばらく抱きしめあった後、二人は明日の予定を立てることにした。

 

 

「明日のデートは、お互いの服を買いに行こうよ。ちょっと、遠目のショッピングモールとかでね」

「いいね。たまには、遠出するのも悪くないな」

「あと、ここだったら観覧車が有るから、買い物が終わったら、一緒に乗ろうよ。こういうリア充イベントってのも、ちょっとはね」

「デートの最後に観覧車か……」

 

 

ちょっと遠くのショッピングモールでのデートの予定を立て終えた2人は、それぞれの部屋でそれぞれの夜を過ごすのであった。

 

ただお互いに、次に顔を合わせた時、時間制限付きではあるが、いつもと違う関係であることに覚悟と期待が混ざり合った不思議な雰囲気を醸し出していた。

 

 

 

 

 

(次の日……)

 

 

「(夢美、起きているかな?。さっきアプリで既読が付いていたから、起きているとは思うんだけど……)」

 

 

身支度を整えたレオは、夢美を迎えに行くために、隣の部屋の入り口でチャイムを押した。

 

 

「………ッ!?」

「ご、ごめん。待った!?」

 

 

その後、おずおずと出てきた夢美は、化粧も薄いながらもしっかりとされていて、服もいつもの夢美とは考えられない程の気合の入ったものであった。

 

 

「ちょっと、準備に手間取って……」

「いいよ、そんなに待ってないから。でもちょっと、待ち遠しかった」

「うっ……。ありがとう……」

「それじゃ……。行こうか」

「う、うん……」

 

 

差し出されたレオの手をそっと握り、2人は目的地のショッピングモールへと向かった。

 

どこか慣れないのか、2人の間にはちょっと緊張した空気が流れ、電車の中では時々お互いが無言になっていた。

 

 

目的地のショッピングモールに到着した2人は、それぞれの服見繕い始めた。

 

 

「う~ん、レオには黄色とかブラウンとかの色が良いよな……」

 

「夢美はいつもピンクだったり、清楚な服が多いから、たまには路線の違った服を着させたいな……」

 

 

レオには黄色のラインが入ったパーカー等を数種、夢美には薔薇の刺繍がワンポイントに入った薄手のセーター等を数種購入した。

 

 

この頃には、お互いの緊張が解けて、いつもの2人の雰囲気に戻っていて、柔らかい雰囲気に戻っていった。

 

 

「ハッハハ!。いや、も~。本当にすごい昔話だよね」

「笑うなよ、由美子……。結構傷ついているんだけど……」

「ごめんごめん」

 

 

レストラン街で、半個室のレストランで夕食を食べながら、談笑を続けていた。

 

 

「よし、次に料理を教えるのは、ハンバーグにしようかな。材料を混ぜて、焼くだけだし、餃子とかミートボールとかの応用に使えるからな」

「お~し、頑張るぞ」

「俺も頑張って、教えるぞ」

「わ~い!」

 

 

食事を終えた2人は、最後の目的地である観覧車へと歩を進めた。

 

2人は腕を組んで並んで歩いていたが、その手のひらは冬にも関わらず、緊張のために手汗がうっすらと浮かんでいた。

 

 

「なんか、いつも二人っきりなのに、なんか緊張するね」

「ああ、そうだな」

「『恋人』と一緒に観覧車に乗るなんて、ライバーを始める前には考えられなかった」

「俺も、最初は大きなステージ歌を歌いたいって思ったから、ライバーを始めたのに、今ではこうやって『恋人』とデートできる」

 

 

2人は、上昇し続けている観覧車の中で、隣同士で座り、優しく微笑みあった。

 

今は仮初の恋人であっても、二人の絆はもう既に恋人以上とも言える深い絆で結ばれていた。

 

 

「夢美、あの時の言葉をもう一度言うぞ」

「うん」

「俺は諦めない!。夢も夢美も由美子も、全部だ!。案件が少ない?。ならバンバン取ってきてやるよ!。メジャーデビューだってすぐにしてやる!。夢美、当然お前もだ!。周りの迷惑なんて気にならないほどの利益を出してやればいいんだよ!。傲慢な考えかもしれない。強欲な考えかもしれない。それでも俺は全部手に入れる覚悟を決めたんだ!」

 

 

レオは、あの時のベランダでの誓いの言葉を、再び告げた。

 

 

「うん、わかった。じゃ、私もあの時の言葉を言うよ」

「ああ」

「まだ時期じゃないってだけの話だよ。一年くらい経てば公式の仕事ももっと増えてあたし達も安定すると思う。だからさ、まだ幼馴染でいてよ、拓哉」

 

 

夢美は、あの時の条件付きの了承の言葉を、再び告げた。

 

 

「わかってる。だから、案件を着実にこなしてる。チャンネル登録数も着実に増やしていて、周囲に夢美との関係を認知してもらいつつあって、にじライブの企画でも、夢美とセットで呼んでもらったりしている」

「うん。感覚的だけど、もう目の前になってると思う。だから、レオの願いはもうすぐ叶うと思う。だから、今日はちょっとだけ、レオの想いに報いようと思ったんだよね」

「ありがとう、夢美」

 

 

上昇し始めていた観覧車もそろそろ頂上へと向かいつつあった……。

 

 

「でね、レオ。こうやって、買い物行ったり食事に行ったりって、いつもしてたりするじゃない?」

「ああそうだな」

「それって、あたしたちの日常じゃない?。でも、それじゃ、『恋人』っていう事って感じはしないよね……。だからね、これもご褒美。どう取るかは、レオが選んで……」

 

 

夢美は、レオの方を向き、静かに目を閉じた。

 

これが、何を指し示すか、わからないレオではなかった。

 

 

「夢美……」

 

 

頂上へとたどり着いた観覧車の中で、二つの影が静かに重なった……。

 

その後、2人の間には静寂が包み、二人きりの時間は終わりとなった。

 

 

「夢美、最高のご褒美ありがとう」

「ど、どういたしまして……///」

 

 

その後、レオの部屋に戻った2人は、言葉もなく優しく抱きしめあった……。

 

この温もりを忘れないように……。

 

再び、この温もりを味わうと心に誓いながら……。

 




「リワード」=「reward」(褒美)と「Re:word」(再び言葉にする)のダブルミーニング

暗に描写されていない部分は、読み手の想像力にお任せします。


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アディショナルタイム

今回は、前回の「リワード フォー ユー」からの続きの話となっています。

デートが終わり、素敵なキスをしたバラレオ。

しかし、二人にかけられた恋の魔法は、まだ消えていません。

夜、男女が2人きり……。たった一言から始まる最後の魔法を見てください。


『恋人』同士としての観覧車デートが終わり、優しい抱きしめあった後、部屋着に着替えなおした二人は、身を寄せ合いながら、ミルクココアを一緒に飲んでいた。

 

 

「今日は、楽しかったよ」

「そう思ってくれたら、計画した甲斐があるよ」

「ありがとう」

「恋人になれば、こういうデートは何回もできるようになるよ」

 

 

レオは優しく夢美の頭を優しく撫で、それをくすぐったいと感じながらも、夢美は受け入れていた。

 

 

「とはいっても、ちゃんと『恋人』になっても、あたし達の生活ってあんまり変わらなさそうだよね」

「ん? そうか? こういう触れ合いが増えるから、変わるんじゃないのか?」

「でも、今でもご飯作ってもらっているし、ほとんど養ってもらっているからね」

「ご飯の一人分も二人分も変わらないからね。きちんと食費は貰っているからね。それに、こうやって一人の食事って、寂しいからね」

「それもそうね」

 

 

お互い心安らかな時間を過ごし、そろそろお互い眠る時間となっていた。

 

 

「ふぁ~……。もうそろそろ寝るか……。明日も配信だから、準備しないといけないからな……。あっ……」

「な、何? いきなり」

 

 

レオは、夢美の言葉をふと思い出して、何かに気が付いた。

 

 

「な、なぁ、夢美?」

「何よ、いきなり」

「この関係は、『明日まで』って言ったけど、どこまでって決めてないよな」

「そうだっけ?」

「だからさ。今日の夜は、まだ『恋人』同士だよな」

「うん、そうだね」

「じゃ、じゃあさ……。『一緒に寝ない?』」

「!?」

「ごめん、欲張った。忘れて」

 

 

レオの欲張った願いを出したが、すぐ撤回した。

 

 

「レ、レオ……」

「ごめん、ちょっと下心が漏れた。本当にごめん」

「ん~。ちょっと恥ずかしいかな……」

「そうだよな。本当にごめん」

「でも、レオの理屈も間違っていないからな……。わかった……。良いよ、一緒に寝てもいいよ」

「はえ?」

 

 

夢美からの答えは、「了承」であった。

 

 

「だから、良いよ」

「ほ、本当に?」

「うん。でも、昨日言った通り、“そういう事”はダメだからね」

「わかった。可能な限り頑張ってみる」

「可能な限りじゃダメ。絶対ダメ。そうじゃないと、今後も一緒に寝てあげないから」

「わ、わかった」

「それじゃ、戸締りしてくるから、先に布団に入ってて」

 

 

レオは、布団に入り夢美が入るためのスペースを確保していった。

 

数分後、戸締りを終えた夢美が再びレオの部屋に戻ってきた。

 

 

「それじゃ、入るね……」

「うん……」

「お、お邪魔します~」

 

 

お互いの声がどこか緊張していった。

 

一人用のベッドに入るために、二人は優しく抱きしめあい、夢美はレオの腕の中にすっぽり収まっていた。

 

 

「やっぱり、布団は冷たいね」

「そうだな。そのうち温かくなるよ」

「そうだね。でも、レオが温かいから。ちょっとましかな」

「俺もだよ」

「でも、ちょっとなんかむずかゆい。はじめてだから」

「俺もちょっと恥ずかしい。でも、あたたかい」

「うん、私もあたたかい」

 

 

2人はお互いの温もりを分け合いながら、睦みあっていた。

 

 

「フフッ……。温かい……」

「俺も温かい……」

「心地いいのに、ドキドキする」

「俺も断れると思って、言ったのに。言ってみるもんだな」

「まぁ、そこはレオだからって所もあるかな。信頼しているからね」

「うん、わかった」

「まだ寒いから、もうちょっとくっつくね」

 

 

更なる温かさを求め、2人はほぼ密着した状態までくっついていた。

 

 

「(夢美のゆったりとした息遣い……。シャンプーのいい匂い……)」

「(レオの匂いと温もり……)」

 

「「(このままだと、頭がおかしくなる……)」」

 

 

電気が落ちた部屋で視覚が働かない2人は、お互いの嗅覚と触覚、聴覚によりお互いの存在を確かめ合っていた。

 

特に嗅覚からの刺激が強く、お互いの匂いで強烈な多幸感の中、2人とも頭の中がドロドロになりつつあり、思考能力が鈍り始めてきた。

 

 

「今日は抱きしめられることが多かったけど、今の方がレオを強く感じる……。見えないのにそこにいるって強く感じられる」

「俺もこの手の中にある温もりが、夢美だって見えないのに、それが夢美だってわかる」

「うん……。もう、そろそろ寝ようか……」

「そうだな……。それじゃ……」

「ん?」

 

 

レオは、身体を少しずらし、そのまま優しく夢美の頬に唇を落とし、元通りの体勢に戻った。

 

 

「な、何するの?」

「何って、おやすみなさいのキス」

「なるほどね。ちょっと驚いた」

「ごめん、ごめん」

「許さない」

「そんな~」

「許してほしかったら、今夜はこのまま優しくして」

「わかった」

「それじゃ、おやすみなさい」

「ああ、おやすみなさい」

 

 

バラレオの2人は、緊張した気持ちと穏やかな気持ちの狭間に揺れながらも、夢の世界へと落ちていった。

 

 

 

 

 

その後、2人は何事もなく、穏やかな目覚めをした後は、今まで通りの「幼馴染」としての関係に戻ったが、1日だけの魔法は今後も2人の心のどこかに残り続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

<今夜のレオ飯特別編:義姉妹のお料理教室>

 

 

「まさか、由美ちゃんから連絡が来たと思ったら、料理を教えてほしいって聞いて、驚いちゃった」

「ありがとうございます、先輩」

「いやいや、構わないよ。教えるって言っても、そんなに難しい料理教えるつもりも無いからね。拓哉から、惚気話と一緒に由美ちゃんの作れる料理は聞いてるからね」

 

 

静香の自宅のキッチンで、夢美と静香の楽しいお料理教室が始まっていた。

 

 

「由美ちゃんが、料理を教えてほしいなんて、愚弟が羨ましいね~。こんなに良い女捕まえたんだから、その責任取ってもらわないとね」

「先輩、レオとは『幼馴染』ですから。料理もいつも作ってもらってるから、少しはお礼をしないとなって思っただけですよ」

「ふ~ん」

 

 

夢美の慌てた答弁に、訝しい目線を向ける静香であった。

 

 

「まぁ、でも、ゆくゆくは私の義妹になってくれるんだから、お姉さん頑張るわよ!」

「まだ、そんなんじゃないですよ」

「ふ~ん。『まだ』なんだ~。それじゃ、期待しちゃおうかな」

「あっ……」

 

 

夢美の心の中で、「この人には勝てないな」と思いながらも、料理教室へと話を進めた。

 

その後、2人で作ったハンバーグと少し甘めに仕上げたニンジンのグラッセ等の添え物をタッパーに入れて持ち帰り、今夜の夕飯に出されることとなった。

 

 

本日のレオ飯:「義姉妹で作ったハンバーグ」

 




今回も私のてぇてぇを自給自足のつもりで書きました。

同衾は、ロマン感じます。

書いてて、てぇてぇで手が止まりませんでした。

実にてぇてぇ……


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ヤドリギとパイとチョコレート

みなさん、この作品を見ていただき誠にありがとうございます。

この小説も、細々と続けさせていただきまして、10,000UAに到達いたしました。

本当にありがとうございます。

今回は、2日ばかりずれたバレンタインのお話で、旬を過ぎてしまいましたが、楽しんでもらえたらと思います。


「あ~。どうしようかな~」

 

 

時は2月前半……。

 

きたるべきバレンタインデーに備えて、一人配信をする場所で一人の女性‐茨木 夢美/中居 由美子‐は、頭を抱えていた。

 

いつもの夢美なら、百貨店や大型スーパー等で発売されている既製品の高いチョコレートを購入して渡すという行動をするのだけど、今年の彼女は、そういう選択肢を取ることはできない状況に追い込まれていた。

 

 

「はぁ……。なんで、この前の風紀委員会で、私だけ罰ゲームになっちゃったのかな……」

 

 

夢美は、先月の風紀委員会で「メジャーデビューして、アイドル活動をしているにもかかわらず、ゲーム配信で汚い言葉を叫んでしまった」罪として、「愛しの彼に手作りチョコレートをプレゼント」の刑に処せられてしまったため、先輩からの命令でもあるため、断るに断れないのであった。

 

 

「確かに、叫んじゃったのはわかるけど、このタイミングでなんでなんだよ……。しかも、なんだよ。“愛しの彼に”って……。仕組んだの、絶対林檎じゃん……。あの厄介カプ厨め~。あぁ~。嘆いても仕方ない。カグヤ先輩やまひる先輩からの命令なら逃げられないから、作るか……。とりあえず、作り方を探さないと……」

 

 

レオとの血のにじむような特訓で、「レシピはしっかり確認すること」を徹底的に教え込まれた夢美は、ネットで作り方の詳細な方法を探すことに、まずは着手した。

 

 

「ふ~ん……。融かして、型に入れて終わりなんだけど、色々難しいよな……。型を買ってくるのも、面倒だし……。クッキーで出来た器にチョコを流し込むってのも、有りだな……。う~ん……。今までの経験から、そこまで凝ったものは、きっとできないんだよな……。何々、クッキーとかパイに溶かしたチョコを付けて、そのまま冷やすってのもあるのか。それなら、型とかいらないし、融かして、ちょっと付けるだけで良いな。よし、これで行こう!」

 

 

両案を見つけた夢美は、財布を取り出し、いつも利用しているスーパーへと足を運んだ。

 

 

「最近は、ポテチにチョコを付けたお菓子もあるよね。あまじょっぱいのが癖になるけど、今回はシンプルにいこう。ん、これは……」

 

 

お菓子コーナーにあるクッキーの棚にで色々と見ていると、一つの商品に目が付いた。

 

その商品は、昔からずっと販売されていて、夢美も食べたことがある商品で、ハート型のパイであった。

 

 

「なるほど、これなら良いね。バレンタインなら、これで映えるでしょ。チョコは、この時期に売ってる融かして固める用のお徳用チョコレートで良いか」

 

 

目当ての商品と、愛飲しているエナジードリンク等を購入して、自室へと戻り、財布などを置いた後、すぐさま隣のレオの部屋に入っていった。

 

 

「さて、事務所で打ち合わせ中のレオが帰ってくる前に作っちゃおう。まずは、チョコレートを融かさないと……。最初は、お湯を沸かして……。えっと……。包丁で細かく砕くんだけど……。難しいな……」

 

 

チョコレートの塊に恐る恐る包丁を入れて、粗みじんではあるが、細かく砕いていき、ボウルの底を埋めていった。

 

 

「次は、えっと……。湯煎だっけな……」

 

 

そして、湧いたお湯にチョコの入ったボウルを入れてお湯の熱でゆっくりとチョコレートを融かしていった。

 

 

「おお……。とけるとける。きちんと混ぜ合わせて、後は付けるだけっと……」

 

 

完全に融かしきったチョコレートにパイを沈めて、手早く、クッキングシートの敷いたお皿に載せた。

 

パイにチョコレートを全部つけ終えて、残りのチョコは、スプーンですくって食べ終えたりして、片付けを終えた。

 

 

「証拠写真を撮ってから、ラップにかけて、その上にフリーペーパーをかけてっと……。タッパーとかで隠しておけば、大丈夫でしょ。あ~、慣れないことして、疲れた……。寝よ……」

 

 

自室に戻り、ベッドでひと眠りついた。

 

時を同じくして、入れ替わる様に、打ち合わせを終え、スーパーで夕ご飯の買い物をしてきたレオが帰宅してきた。もう一つの手には、事務所で貰ったであろうチョコレートの入った紙袋が握られていた。

 

 

「ん、あれ、乾かし台に洗い終えた食器がある。夢美が使ったのかな? ボウルとか鍋とか、何に使ったんだ……」

 

 

小さな疑問を残しながら、レオは冷蔵庫を開けて、買ってきたものを冷蔵庫に入れようとした。

 

 

「ん? なんか変だな……。タッパーの位置が変わってる。いくら夢美でもタッパーに入れている常備菜を昼飯として食べたとしても、ここまで散らかることは無いだろうし……。それに、常備菜の量も減ってないからな……。それに、このフリーペーパーは……。いかにも、“何か隠してます”って言ってるもんじゃん……。!?」

 

 

冷蔵庫内のフリーペーパーを捲り、隠しているチョコレートパイをレオは見つけ出した。洗い終えた食器と見つけ出したチョコレートパイから、夢美が作ったものだという結論に至るのは、そこまで難しくはなかった。

 

 

「……。なんだよ、夢美……。あの風紀委員会の罰ゲームはしっかりしたんだな。エライ子だな。さて、夕食を作るとしますかね」

 

 

約2時間後に目を覚ました夢美と、夕ご飯の調理を終えたレオは、いつもの様に一緒に食事を取り始めた。

 

 

「「いただきます」」

「今日もおいしい食事ありがとう」

「良いってことよ」

 

 

バラレオは、今日の夕飯に舌鼓を打ち、2人での食事を楽しんでいった。

 

 

「あれ、レオ? そこの紙袋は、何?」

「ん、これはバレンタインのチョコレート。今日、会社の人達から貰ったんだよ」

「ふ~ん。そういえば、事務所に袁傪たちからのチョコレート来たんでしょ?」

「うん。箱一杯のチョコは何度見ても壮観だった。でも、そういうのって、申し訳ないけど、事務所の人達に処分を任せたよ。メチャクチャ嬉しいんだけど、色々有るからね」

「もったいないけど、色々有ったって言ってたもんね」

「そうそう」

 

 

食事を終えた2人は、いつもの様にまったりしていった。

 

 

「食後のお茶もおいしい」

「はは、淹れた甲斐があるよ」

 

 

2人は、他愛もない話を続け、暫しまったりとした空気を味わっていた。

 

 

「んでさ、今日はバレンタインってことじゃん?」

「ん、そうだけど?」

「それに、私が風紀委員会の罰ゲームを指示されたって知っているよね」

 

 

夢美は唐突に話題を切り出した。

 

その顔は、緊張でちょっと紅に染まっていた。

 

 

「そうだけど?」

「私、作ったんだ……」

「何を?」

「わ、わかるでしょ! チョ、チョコレート!」

「は、はえ?」

 

 

全てを理解していたレオは、演技で驚いた表情を見せた。

 

 

「本当は百貨店とかのお高いチョコの方が喜んでくれると思ったんだけど、風紀委員会とかの罰ゲームも有るからさ。初めて、一人で頑張ってみた。お菓子にチョコを付けただけなんだけどさ。生チョコとかいきなり難しいし……。!?」

 

 

おずおずと話し続けている夢美の頭をを、レオは優しく撫でた。

 

 

「ありがとう。その気持ちだけで、お腹一杯だよ」

「うん……」

「例え、どんな高級なチョコよりも、夢美から貰ったチョコの方が嬉しい」

「ありがとう……」

 

 

2人は優しく笑いあい、二人だけの空間を存分に味わっていた。

 

 

「じゃ、チョコレート持ってくるね」

 

 

ちょっと名残惜しそうに離れた夢美は、冷蔵庫から自分のチョコレートを取り出した。

 

 

「はい、どうぞ」

「じゃ、いただきます」

 

 

レオは、パイの一つを取り出し、口に運んだ。

 

ゆっくりと咀嚼して、その味と込められた気持ちを丹念に味わった。

 

 

「おいしい。メチャクチャおいしい」

「ま、まぁ、チョコを融かして、パイに絡めただけだからね」

「それだけじゃないよ。今日貰ったチョコにはない気持ちがこもっているから」

「ふふ~。でしょ?」

 

 

誇らしげに胸を張る夢美をみて、レオは優しく微笑んだ。

 

 

「じゃ、次は食べさせてほしい」

「えっ」

「ほら、あ~んして」

「う、うん……。あ、あ~ん……」

 

 

ハート型のチョコレートパイを一つ手に取り、レオの顔の前に差し出し、それをレオはそのまま口に含んだ。

 

 

「うん、おいしい」

 

 

その後、レオも夢美に食べさせたりして、全てのチョコレートパイを食べ終えた。

 

 

「まださ、料理とか全然上手じゃないから、あんまりおいしいご飯作れないけど、きちんと付き合うことになったら、もうちょっと頑張るから、待っててよ」

「わかった。しっかりと教えるし、夢美が納得できるくらいまで有名になって、みんなを納得させてみせるよ。ん?」

 

 

ふと、夢美の口元に融けきっていないチョコレートが付いていることに、気が付いた。

 

 

「ん、レオ、どうした?」

「いや、大したことじゃないよ」

「ふ~ん……」

「口元にチョコがついてるよ」

「へ!? どこ!?」

「ここ」

「へ!?」

 

 

チョコが付いていることを指摘して、夢美が口を拭おうとする前に、レオが顔を近づけて、キスと共にすぐさま優しく舐め取った。

 

 

「も~!」

「怒った顔も可愛いし、チョコもおいしかったよ」

「いきなりは、怒るよ!」

「夢美になら、怒られても良いかな」

「李徴、いい加減にしろよ」

「ハハハ」

 

 

突然のレオの行動に怒った夢美だったが、その表情は満更でもなかったみたいだった。

 

 

「今年は“幼馴染”として迎えるバレンタインだけどさ、来年は“恋人”としてのバレンタインを迎えたいかな」

「私も“茨木 夢美”として、もっと案件を取って、レオにも負けないように頑張ります」

「そうだな」

 

 

幼馴染以上恋人未満のバラレオのバレンタインの夜は、この後も静かに、でも少し情熱的に過ぎていくのであった。

 

 

なお、この後、このバレンタインのことは、まひるやバンチョー経由でしっかり妖精たちに暴露されて、林檎たちカプ厨は、てぇてぇで胸を抑え、ツウィッターのトレンドに乗ったりと、祝福とてぇてぇへの感謝の声で埋め尽くされたのであった。

 




チョコレートに関しては、大学生時代に「自演チョコ」としてチョコムースを自分で作って、ネットに上げていたり、融かしたチョコを転写させて、アニメのキャラを書く痛チョコを作っている時期がありました。

こういうお菓子作りもなかなか面白いものですよ。ぜひ、皆さんもどうぞ。

ヤドリギの花言葉:
・「私にキスして」
・「私は困難に打ち勝つ」

レオ視点、夢美視点どちらも意味も解釈できるのは、てぇてぇですな~


感想お待ちしています。


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The Last Day of……

今回は、今までとは違い、完全なパラレル世界で「私の考える○○」となっています。

彼女の卒業から着想を得たとなっています。

自分の心に建てた墓標です。


※注意事項※

今回の作品は、過激な描写を想起させる表現と捉えられる可能性がございます。

そういう表現に不快感を示される方は、この場にて謝罪いたします。


「ふわぁ……。よく寝た……」

 

 

夢美は、いつもの通りの朝が来て、いつも通りの目覚めをしていた。

 

しかし、その部屋の光景はいつも通りではなかった……。

 

空き缶等が散らかっているいつもの部屋ではなく、一人分にしては少し大きいベッドが置いてある小綺麗な部屋であった。

 

 

「流石、高級品だわ。今までのベッドとは、寝心地が段違いだわ。新生活の為に、ちょっと奮発して良かった」

 

 

ベッドの柔らかさに感謝しながら、ベッドから抜け出す様に起きた夢美は、ちょっと遅めの朝食を食べ始めた。

 

大きいテレビで情報番組で、最新のニュースを見ながら、穏やかな朝食を食べ、食後には、備え付けの食器洗い乾燥機に使用した食器を入れ、起動のスイッチを押した。

 

 

「えっと……。昼から書類を出しに行って、夜は事務所のスタジオで3D配信か……。久しぶりの配信だけど……。緊張するな……。何度もしていたのに、今日は本当に特別……」

 

 

夢美は、スマートフォンにのカレンダーアプリで、自分の予定を確認していた。

 

 

「はぁ~。今日で最後か……。今日まで色んな事が有った……。ここに引っ越しして、新生活が始まって、慣れないことに四苦八苦して、でも楽しい生活……。自分がライバーであることを忘れてしまうほどに……」

 

 

食後の余韻を楽しみながら、今までのことを振り返っていた。

 

 

「さて、行こうか。昨日、さんざん覚悟したはずだよ。今日で終わりだって」

 

 

身支度を整えて、部屋のまだ綺麗な鍵を取り出し、目的地へと向かうために、玄関へと向かった。

 

 

「書類は大丈夫。じゃ、“いってきます”」

 

 

その部屋には、夢美しかいないのに、あまり言わない“いってきます”の言葉を発していた。

 

それは、新たな自分を見送る“もう一人の私”への言葉なのかもしれない。

 

 

 

 

 

「お疲れ、拓哉」

「おう。書類は持ってきたか?」

「うん、大丈夫。出る時にきちんと確認したから」

 

 

打ち合わせを終えたレオとの待ち合わせて、鞄の中に入れている書類を取り出して見せた。

 

 

「それじゃ、行こうか。書類を提出しに」

「そ、そうだね」

 

 

その後、二人はとある場所へ向かい、そこの窓口へと向かった。

 

 

「よし、それじゃ、出しに行こうか」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って!!! 気持ちを落ち着かせてるから」

「後は書類を出すだけだからな」

「でも、私にとっては、一大事なの!」

「わかったから、ちょっと飲み物買ってこようか?」

「いや、いらない。もうちょっとだから」

 

 

胸に手を当てて、ゆっくりと息を整えた。

 

 

「もう、大丈夫?」

「うん。昨日、きちんと覚悟したのにね」

「そうだな」

「これで、二度目なのにね。でも、大丈夫。行くよ」

 

 

その後、窓口で書類を提出し終えると、その後、配信をするために、事務所へと向かった。

 

 

 

 

 

事務所では、今日の配信の為に多くのスタッフが準備をしていた。その中を、二人は挨拶回りをして、最後にスタジオの中央で指示を出している諸星さんの所へと向かった。

 

 

レオと夢美を見つけた諸星は、二人に駆け寄り、壁際で何やら少しひそひそと話し始めた。

 

 

「おっ、来たな。ご両人!」

「お疲れ様です、バンチョ―、いや、諸星さん」

「お疲れ様です。今日は、スタジオでの配信を用意してもらって、ありがとうございます」

「かまへんよ。なんせ、“重大発表”ってことで枠を取って、大々的に宣伝をしたから、注目度ウナギのぼりや」

「ネット上でも、いろんな噂が飛び交ってますもんね」

「せやな。社内でも緘口令を出し、三期生が全員揃って3D配信をする以外の情報は私とかっちゃんとマネージャーぐらいしか言ってないしな。でも、何かを嗅ぎつけたか、“伝説”のにじライブ三期生の3D配信の風景を見たいって、多くのライバーが来てな。スタッフ達の邪魔にならないようにとは釘を刺したんだけどね」

 

 

諸星が軽く親指でスタジオの端を指すと、そこには二人の後輩であるライバーが複数人、スタジオ配信の見学をしていた。

 

 

「ほう……。3Dお披露目配信するライバーもちらほら……」

「何回もした3D配信なのに、今日は本当に緊張します」

「そうか。それにご両人。書類は出したんか?」

「はい。ここに来る前に」

「そうかいな。それじゃ、今日の配信は盛大にしなくちゃな」

 

 

諸星は、自然と笑みを浮かべ、自分に気合を入れた。

 

 

「「ありがとうございます」」

「後輩の晴れ舞台や。しっかりしないと、にじライブの第1期生としての名が廃るやろ? それに、ウチができるのは舞台を作るだけや。その舞台で踊るのは、二人やでな」

 

 

スタジオの設営に戻った諸星の背中に深々と頭を下げる二人であった。

 

 

「おはっぽ~。お疲れ~」

「今回は遅刻しなかったな、林檎」

 

 

続いて、今回の主役の一人である林檎が二人に声をかけてきた。

 

 

「ちょっと酷くない~。うわ~ん、夢美~。レオが虐めるよ~」

「いや、遅刻については、擁護できない」

「酷い~」

「それにしても、良く間に合ったね。世界中をまたにかけるピアニストなのに」

「いや~。私レベルになっちゃうと、世界中から引っ張りだこなんだけどさ~。そんなオファーよりも、この配信の方が大事に決まってんじゃん。だってs……」

「林檎、ここから先は、ダメだ」

 

 

思わず何かを漏らそうとする林檎をレオは諫めた。

 

 

「あっ、ゴメン。よし、それじゃ頑張りますか~」

 

 

軽く伸びをした林檎は、自分の指定された席に座った。

 

その後、マネージャーたちとの詰めの打ち合わせを終えて、配信開始の時間となった……。

 

 

 

 

 

(配信準備をしています……)

 

 

[重大発表って何だろうな……]

[3期生が全員揃うっていうから、ライブの告知かな?]

[でも、レオが武道館ライブしたばかりだぞ?]

 

 

 

「おっし、それじゃ、ここからが本番やぞ。ここから先は、お笑いは一切なしや。レオと夢美の行動が全てやぞ」

「「はい!」」

 

 

バンチョーの声に、みんなの気を引き締めて、3人は真剣な表情になった。

 

 

「配信入ります。3。2。1。始めます!」

 

 

三脚の椅子と、一卓の机が用意され、椅子には三期生が座り、机の後ろには、諸星こと竹取かぐやが立ち、配信のスタンバイに入った。

 

 

スタッフの緊張混じりの声で、配信が再び始まった。

 

 

 

(配信が始まります)

 

 

[きちゃぁ~]

[待ってた]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

配信画面には、金屏風をあしらえたどこかのホテルの会見会場を思わせる背景と席の前に立つ三期生と、司会者の場所にかぐやが立っていた。

 

音声は、シャッター音が所々聞こえており、どこぞの記者会見のようであった。

 

 

[記者会見wwww]

[誰がここまで完璧にしろとwwww]

[三期生とバンチョーとか豪華だなwww]

[さっきの茶番とは打って変わって、完全にマジモード]

 

 

「はいはーい、みなさんこんバンチョー! 司会の竹取かぐやです。これから、前々よりみんなに案内していた重大発表の時間や。みんな、良く聞ぃときや!」

「みなさん、おはっぽー、白雪林檎でーす!」

「みなさん、こんばん山月! 獅子島レオです!」

「こんゆみー! 茨木夢美です!」

「今回は、重大発表ということで、みなさんにはこの配信にお集まりいただきありがとうございます。今回は、三期生というよりも、ほとんど私と夢美に関係することになります」

 

 

[ざわ…… ざわ……]

[(;゚д゚)ゴクリ…]

[これは、マジモード……]

[レオとバラギの個人のこと……?]

[にじライブ、卒業?]

[バラギの結婚に、花京院の魂を賭けるぜ!]

[花京院wwww]

 

 

夢美と林檎が席に座り、ただ一人立ったままで話し始めた真剣なレオの態度に、視聴者も緊張した雰囲気になっていた。

 

 

「今回、皆さんにお伝えしたいのは、私、獅子島レオは、この度以前よりお付き合いをさせていただいている同期ライバーの茨木夢美さんと入籍をいたしました」

 

 

レオが真剣な言葉を告げると、配信ではカメラのシャッター音が連続で鳴らされて、更に記者会見の雰囲気を更に増していた。

 

 

[!?]

[マジか!!]

[ついにか!]

[V同士の結婚とか初だぞ!]

[ええ!]

[ガチの入籍会見じゃん]

 

 

配信画面のチャット欄では、レオの発表に驚きと戸惑いが現れていた。

 

 

「“企業に所属するライバー同士の入籍”という業界初のことで、混乱されているのは重々承知です。ですが、私がにじライブ所属のライバーとして活動していく中で、“茨木夢美”と言う女性が今現在の“獅子島レオ”という一人のライバーが、夢を取り戻し、その夢を叶えるまでに至るために必要不可欠な存在であり、彼女の存在が日を追うごとに大きくなっている自分がいて、そんな彼女を幸せにしたいという思いで、“婚約”という一つの明確な形として、自分の覚悟を形として表したかった次第です」

 

 

レオの真剣な姿は、周囲を圧倒するような強い意志を秘めていた。

 

 

[それでも、こうやって発表するって、スゲーわ]

[流石、男性企業Vの頂点だわ 潔い]

[ブレイクスルーする切欠も、バラギの無茶ぶりだもんな]

[ああ、懐かしいな]

 

 

話し終えたレオは着席して、その次に夢美が立ち上がり、話し始めた。

 

 

「先程、ご説明があった通り、あたし“茨木夢美”は、同期ライバーである獅子島レオさんと入籍いたしました。レオはライバーといて活動していく中で、だらしない私の生活をずっと支えてくれて、気が付いたら、彼の横にいることが当たり前で、心地よい場所になっていて、彼の隣でライバー活動している中で、彼に惹かれる自分がいて、そんな場所にずっといられたら……と思い、彼の申し出を受け入れました」

 

 

[本当にだらしなかったもんな……]

[レオに料理とかも教えてもらったりとかあったもんな]

[イケメンで、自分に優しくて、愛してくれてって、惚れるわな]

[自分を救ってくれた幼馴染だしな]

[これ以上、惚れない要素ないでしょ?]

 

 

夢美の言葉にコメントが流れながらも、みんな真剣に聞いていた。

 

 

「企業に所属するライバーとして、色恋沙汰と言うのは多くの問題が発生しうるリスクがあり、一般的には御法度という考えがあり、あたし達の関係には抵抗を感じる妖精や袁傪の方々、あたし達以外のライバーを推している方々が、自分達の推しがあたし達と同様なことになることを危惧されておられる方もいると思います。あたしもそうです。最初、レオに想いを伝えられた時は、そういう事を考慮して、自分の気持ちを抑えて、一度は断りました」

 

 

[確かにそこら辺、怖い話だよな]

[確かに確かに]

[もっと前に告白されていたのか!]

[レオ、フラれてたのか!]

 

 

「そして、みんながあたし達のことを認められるように、ライバーとしての知名度を上げて、みんなから認めれるようになって初めて、その想いに応えようと約束しました」

 

 

そこからのアイドル時代の確執の解消等のレオの快進撃で、知名度を上げ、恋人関係に至り、最終的には武道館でのライブの後、正式なプロポーズを受けたことを明らかにした。

 

 

[漫画みたいな恋だな]

[そもそもの話が既に物語なんだよな~]

[てぇてぇ……]

 

 

チャット欄では、一部ネガティブな発言があるものの、ポジティブな発言が占めていた。

 

夢美が話し終え、席に座り終えると、司会のかぐやが三期生達よりも前に立ち、話し始めた。

 

 

「にじライブを引っ張る立場として、この二人のデビューからずっと見てきました。彼らは、問題行動や壁にぶつかることがしばしば有ったが、それらをお互い支えあうことで乗り越えてきました。そして、二人が結婚したいって話を聞いた時、「遂にこの時が来たんやな」って……。本人たちの意志も強く、下手に二人の意志を抑えてしまうと、二人のライバーしての良さを潰してしまう可能性もありますし、会社の意向に沿わずに勝手に行動し、多くの皆様に多大なご迷惑をかけることも考えられました。勿論、にじライブ株式会社としても本人や社長を交えた会議や面談を何度もした結果、こうして皆さんに発表する結論に至りました」

 

 

かぐやの言葉に、その場にいる人は、圧倒されていた。

 

 

「皆さん、思うところは色々あると思います。先程、夢美が言ったように、他のライバーも同様の事態が起こりうるのではないかと思うことでしょう。今回につきましては、二人のライバー活動の中で積み上げてきた信頼があってこその結果です。他のライバーで同様の事態が起きた際にも、にじライブ株式会社は同様の会議や面談を行うことをお約束します。ですので、今後ともにじライブの活動をぜひともよろしくお願いします」

 

 

かぐやは深々と頭を下げ、視聴者の方々への理解を求めた。

 

 

[バンチョ―がそこまで言うなら……]

[きちんとしてくれたら、大丈夫!]

 

 

「最後に……。二人とも、幸せになれよ。そして、これからもライバー活動をしっかりしてな。そして、レオ、浮気とかしたら舎弟が雁首揃えて燃やしに行くから、覚悟しぃや。夢美、これからは色々と忙しくなるけど、困ったらウチや他のライバー達に頼りなよ。絶対、力になるから。ということで、話を締めたいと思います。視聴者のみんな、長い間、ウチ等の話を聞いてくれて、ありがとうな」

 

 

その後、バラレオのバーチャル披露宴を行う発表をした後、視聴者の質問コーナーになり、色々と惚気混じり、そこでもてぇてぇの材料になったり、小さな火種になったりしていたが、その会見に出演していた4名が各々の立場から、視聴者からの質問には誠意を持って答えたりするなどして、ネガティブな発言は全くないわけではないが、少し鳴りを潜めていた。

 

そして、レオと夢美の3Dモデルに改修が加えられて、左手の薬指に輝く指輪が追加され、バラレオの左手の甲を見せる入籍会見によくある光景とかも行われた。

 

SNS上でも、賛否両論ありながらも、バンチョーの発言や今までのバラレオの活動を見続けていた袁傪や妖精たちは、概ね好意的に受け止められた。

 

それ以外の人は、一部炎上目的な人もいて、混乱はしたものの、公式アカウントにて、「両者対し、浮気等のスキャンダルが発生した際は、起こした方をライバーとして強制卒業させ、業界から全力で締め出す」旨の誓約書を作成し、他ライバーも同様の件が発生した場合は同様の誓約書を作成させると発表することで、一先ずの鎮静化の方向へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、今後の二人の幸せを祈念して、乾杯!!!」

「「「「「「乾杯!!」」」」」」

 

 

生放送終了後は、いつもの居酒屋に集まり、バラレオの入籍を祝うための宴会が始まり、そこにはバラレオのマネージャーや、二人の先輩・後輩ライバー、かつて“四天王”と言われた現在でもライバー界のトップを走るライバー達が集まっていた。

 

 

「おめでとうございます。いや~、まさかライバー同士の結婚に踏み切るとは、流石だね」

「イルカさん、ありがとうございます」

「いやいや、私もそろそろ良い人がいれば結婚とかするけど、まだ相手がいないから……」

「イルカさん程なら、選り取り見取りでしょ」

「いや~。これがまた上手くいかないんだ~」

 

「まひる、知ってるよ~。3週間くらい前に、司とまひると林檎ちゃんとでオフコラボを私の家でした後、司が林檎ちゃんを家まで送るって言っt……」

「まひる先輩、それはっ!!」

「おい、誰か、まひるを止めろ!!!」

「えっ、なんで~」

「これ以上は、まずい!!」

「ほう……。それは、良いこと聞いたな……。ちょっと、教えてもらおうか?」

「ヒェッ……」

 

 

各々が、二人の結婚祝ったり、結婚する秘訣とか、色々と聞いたりするライバーもいれば、爆弾発言を繰り返すまひるの姿も有ったり、それを止めた林檎がかぐやに首根っこ掴まれて、強制尋問になったりと、かなりカオスな状況であった。

 

 

そして、宴会が終わり、バラレオの二人は、二人の新居として選んだマンションの部屋に戻り、入浴などを済ませると、精神的に疲労で二人ともすぐに“同じベッド”で横になった。

 

 

「あぁぁぁあ゛あ゛、疲れた」

「お疲れ様。でも、これからもっと忙しくなるよ。明日から実家巡りとか、結婚式の式場選びとか」

「あとは、ヴァーチャル披露宴もやるって、バンチョーが言ってたよな」

「こういうのは、やれることは全部試しにやっちゃおうってのが、会社の考え方みたいだし、特にこういうお祝い事は、する機会ってのは無いからね」

「そういうノリの良さが、にじライブなんだろうな」

「本当にそうだよね~」

「それに、明日の夜は短時間だけど、きちんともう一度配信で報告しないとね」

「“新婚夫婦初配信”なんて、SNSで盛り上がっちゃってるよね」

 

 

夢美は、明日が来るのが待ち遠しいかのような表情で楽し気に語っていた。

 

そんな夢美を見ていたレオの表情も優し気な顔であった。

 

 

「“司馬”由美子さん、これから色々と苦労や壁にぶつかったりすると思う。だかr……」

「大丈夫。あたしと拓哉なら、きっと大丈夫。だって、“我ら、にじライブぞ?”」

 

 

二人は軽く笑いあい、不安を笑い飛ばした。

 

 

「でさ……。今夜って夫婦になって、初めての夜なんだからさ……。ね」

 

 

夢美は、レオににじり寄り、レオの耳元で甘い声で囁いた。

 

 

「疲れたって言ったのは、そっちだよ?」

「そうなんだけどさ……。今まで我慢してて、これでようやく、レオに思い切り甘えられる」

「付き合っている時も、盛大に甘えてたのに、まだ足りなかったのか」

「当り前じゃない。もう、絶対離さないからね」

「まったく……。じゃ、今夜は寝かさないぞ、なんてな」

 

 

夫婦となった二人は優しく抱き締め合い、お互いの温もりを求めあった。

 

 

その後、眠りについた二人の表情は、未来への不安なんてまるでない穏やかなものであった。

 

 

新たな環境であっても、二人の今後は明るいだろう……。

 

 

何故なら、この二人には支えてくれたり、応援してくれたりする人が多くいるのだから……。




お読みいただき、ありがとうございます

彼女の卒業から得た着想が、「バラレオの新生活」という結果……。

「終わり」も有れば「始まり」も有る。

「終わり」と「始まり」は表裏一体だと思います。

彼女の卒業は辛いことですが、彼女はこの空のどこかで、バーチャル世界のどこかで、みんなの記憶のどこかで笑顔でいると思います。

だから、私としては、この作品を投稿することが私の未練の墓標にしたいと思います。


なんか、ポエムしている気がするけど、これで締めにさせていただけたらと思います。


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エーデルワイスをもう一度

原作、最終回お疲れさまでした。

ちょっと前に書いて、放置していた作品を加筆した作品を一年ぶりに投稿。

本当にこういう二人がてぇてぇしているのが見たかったというか、実際見た(妄想)的な思いの丈をぶつけました。

稚拙なところが有りましたら、ご容赦ください。


「拓也、今日は久しぶりに配信を休んで、『ピクニックしよう』って言いだしたけど、どこに連れていくの?」

「まぁまぁ、それはついてからのお楽しみだから」

「拓也のことだから、変なところには連れて行かないとは思うけど、そこまで秘密にされるとね」

 

 

 バラレオの二人は、動きやすい服装と二人分のお弁当やレジャーシート等を詰めたリュックサックを背負い、

 

 

 

 

「今日は、由美子とここに来たかったんだ」

「ここって……。『動物園』……?」

 

 

 拓也が指さした場所は、都内にある動物園であった。

 

 

「そう。配信ばかりで、ストレスも溜まっちゃうから、たまにはこういうのもいいと思ってね。平日の昼だったら、人もあまりいないだろうから、人混みが嫌いな由美子にも大丈夫かなってさ」

「ん~。確かに、案件とかも多かったし、たまにはってことだったら、良いかもね。あれ、でも……」

 

 

 由美子は、拓也の誘った理由に納得しながらも、どこか釈然としない気持ちに包まれた。

 

 

「それだったら、もっと近い動物園とかにすればよかったんじゃない? わざわざ、ここまですることってないんじゃない?」

「まぁ……。それについては、後々教えるから、ひと先ずは動物園見学をしようぜ」

「なんかはぐらかされてるけど、拓也なりに考えたことだから、久しぶりのデートを楽しみますか」

 

 

 その後、二人は動物園の展示スペースを見て回り、二人でお弁当を食べた後、少し低い柵が立てられているやや広めの広場に到着した。

 

 

「ここが、今日、由美子と来たかった場所なんだ」

「ここが?」

「うん。あの看板を見て」

「何々……。『動物ふれあい広場』……」

 

 

 レオがどうしても連れてきたかった場所は、小動物と直接触れ合えるコーナーであった。

 

 

「でも、どうして?」

「俺たちさ、今でこそ、こういう関係になって、幸せを築いているんだけどさ。小学校時代は、なんだかんだで喧嘩別れしちゃったみたいなものじゃん」

「喧嘩別れって、あれはあたしが勝手に拓也のことを一方的に……」

「でも、それでもあの時のことが有ったから、今の俺達が有る。それがさ、どうしても心のコリみたいになっちゃってな」

 

 

 レオは、小学生時代のことを思い出しながら、静かに言葉を進めた。

 

 

「過去は変えることはできないし、やり直すことはできないけど、『思い出』だけはやり直すことはできるかなって……。あの時の由美子が、どれだけ辛かったことだってのは分ってる。でも、あの時出会わなかったら、由美子とここまでの関係にならなかった」

 

 

 レオは、昔を思い出しながら、ゆっくりと続けた。

 

 

「だからこそ、もう一度、俺たちが出会ったあの時をやり直したかった。これは完全に俺のエゴ。だから、傷ついたら……」

「今日は楽しかったよ」

 

 

 拓也の謝罪の言葉じみてきた言葉を、由美子は柔らかな言葉で遮った。

 

 

「確かにちょっとモヤっとしたけど、ウサギ撫でてたら、めちゃちゃ癒された。それに拓也が私のことを大切に思ってくれてるのは、ちゃんとわかってるから」

 

 

 少し悲しげな顔をする拓也をなだめるように、由美子は言葉を続けた。

 

 

「あの時はめちゃくちゃ辛かった。全てが憎かったし、絶望してた」

 

 

 少し苦々しくも、思い出したくない過去を思い出しながらも語った。

 

 

「それに、あの時の拓也は鬱陶しかった。私は、一人になりたかったのに、しつこく絡んできて、鬱陶しかった」

「そ、それは……」

「でも、そんな過去が無かったら、拓也はアイドルになろうとしなかったし、私たちは結婚することはなかったと思う。だから……」

 

 

 由美子は、少し照れながらも拓也に抱き着いた。

 

 

「世界一幸せにしてよ……」

 

 

 抱き着く力はどこか強く、もう離さないという彼女なりの想いでもあった。

 

 

「当たり前だよ」

 

 

 拓也は優しい声色で答え、由美子の頭を優しく撫でた。

 

 

「フフッ……。くすぐったい」

 

 

 その後、帰りに某激安量販店に寄り、お互いの私物を購入して帰路に就いた。

 

 

 帰りの二人は、荷物を持っていない空いた手は、お互いの手の指の間に指を絡めあっていた。

 

 

 

 

 

 自宅に帰った二人は、拓也お手製の食事を取り、お酒も少々入り始めていた。

 

 

「はぁ~。おいしかった」

「うん、今日の味付けも上手くいったな」

「本当に、拓也の料理が上手くなってて、嬉しいな~」

「また、一緒に料理しような」

「へ~い」

 

 

 少し酔いの回った二人は、歓談しながら、楽しい時間は過ぎていった。

 

 

「そろそろ、良いかな~?」

「ん、何が?」

 

 

 楽しい時間が少し経った後に、由美子は、先ほど購入した激安量販店の袋から、カチューシャを取り出し、手早くタグ等を取り外して装着した。

 

 そのカチューシャには、フワフワな毛で覆われたウサギの耳の装飾が付いており、由美子の寝間着とも相まって、昼に触れあったウサギのようであった。

 

 

「ん? どうした?」

「拓也、今、あたしはウサギよ」

「ほうほう、それで?」

 

 

 拓也はわざとらしく聞くも、内心ワクワクした表情であった。

 

 

「ウサギは、寂しいと死んじゃうくらい繊細な動物なんだよ。だから、私は今寂しいよ」

 

 

 由美子は酔いが回ったせいか、いつもとは考えられない程の誘い文句を拓也に投げかけ、拓也の胸に顔をうずめた。

 

 そんな由美子を優しく抱きしめ、ゆっくりと優しく頭を撫でた。

 

 

「それじゃ、今日は精一杯ウサギを可愛がるとするか」

「私が満足するまで可愛がりなさいよ、フフッ」

「勿論、絶対に幸せするよ」

 

 

 二人はしばらくそのまま抱きしめ合い、お互いの温もりを感じ合っていた。

 

 

「ねぇ、もっと愛してよ、拓也。まだまだ足りない……。もっと、ちょうだい」

「……」

 

 

 拓也は、由美子を少し強く抱き寄せて、彼女の唇に優しく唇を落とした。

 

 

「んッ……」

 

 

 夜の帳は落ちたが、二人だけの世界はこれから開幕のようであった……。

 

 

 その後、何をしていたかは、当人にしかわからないが、由美子はどこか肌ツヤが良くて、拓也はどこかヤツれた顔になっていたということだけは、登校前にたまたま二人を見つけた隣人のケイトには、しっかりバレており、あまりのてぇてぇにより、彼女はその場で膝をつき、過呼吸になりそうであった。

 

 

(二人だけの世界が開幕した同じ時間。一方、その頃……)

 

 

「( ゚д゚)ハッ! 今、どこかでバラレオの二人がてぇてぇなことしてる!! しかも、これはかなりのてぇてぇだ!」

 

 

 コラボ配信の準備をしようとしていた林檎は、どこぞのニュー○イプよろしく、どこかで発生したてぇてぇを感じ取って身悶えていた。

 

 

 なお、その発言を通話で聞いた司が「何やってるんですか?」と冷静にツッコミを入れていたのは、その場にいた二人しか知らぬことであった。

 




ウサギが寂しいと死んじゃうのは都市伝説で、実際のウサギは縄張り意識が強いので、多頭飼いするとストレスを感じちゃうそうです。

また、ウサギは自身の弱さを表に出さないということが有るので、飼い主の留守の間に亡くなってしまうことがあるので、「寂しい」=「死亡」という流れが生まれたみたいです。(有名なドラマのセリフにも有ったらしいので、有名な話(迷信)なんだと思います)

○エーデルワイス
花言葉:「大切な思い出」「勇気」「忍耐」「高潔な勇気」「大胆不敵」

小学校のウサギ小屋から始まった物語は、悲しいこと、辛いことがたくさんあったけど、それ以上の楽しいこと、嬉しいことに繋がって、愛の結晶という一つのカタチになって、それが未来に続く。

そんな二人がとても大好き。


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