手にした竜騎士と破滅が気難しい (アマゾンズ)
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1話

引退した身なのにやり直しとか辛い。


一人の青年がショップからホクホク顔で出てくる。その手にはビニール袋がありカードゲームのストラクチャーデッキと呼ばれる物がその中に三箱あった。

 

「まさか好きなカテゴリーが引退してから強化されるなんてなぁ」

 

彼は遊戯王が好きで漫画作品やアニメなども観れるときに観ていた。OCGと呼ばれるカードゲームもプレイしていた。だが、ある日を境にプレイヤーとしては引退してしまった。

 

その理由は「ついて行けない」というものであった。今現在、彼を取り巻く環境はあらゆる召喚方法が出ている。

 

チューナーと呼ばれるモンスターのレベルとその他の素材モンスターのレベルの合計と同じレベルを持つシンクロモンスターを特殊召喚するシンクロ召喚。

 

レベルが同じモンスターをオーバーレイ(重ねる)して、レベルの数値と同じランクを持つエクシーズモンスターを召喚するエクシーズ召喚。

 

ペンデュラムモンスターと呼ばれる、スケールの数値を持つモンスターをペンデュラムスケールという専用のエリアに魔法カードとして2枚セッティングすることにより、2枚のスケールの数値の間のレベルを持つモンスターを同時に特殊召喚出来るペンデュラム召喚。

 

そして最新の召喚方法として出てきたのが、モンスター複数体を素材にし、素材にした数と同じリンク数を持つモンスターをエクストラデッキから特殊召喚する事が出来るリンク召喚である。

 

彼自身、シンクロ召喚やエクシーズ召喚までは適応出来たが、展開の速さ、カードパワー、そして新たな召喚方法への適応など様々な要素が積み重なり、疲れてしまったのだ。

 

だが、僅かながらに種族や好きなカードへの情熱を捨て去る事が出来ずこうして度々カード買っては一人でデッキを作り、一人回しなどをしている。

 

帰宅と同時に箱からストラクチャーデッキを取り出し、自分の形になるように組み替えていく。

 

ストラクチャーデッキはそのままでも十分に遊べるが、三箱(約3000円以上)買う事で主軸となるカードを必要枚数分手に入れる事が出来るのだ。

 

そして、彼が今組み替えているのがストラクチャーデッキR-ドラグニティ・ドライブと呼ばれるものである。

 

『ストラクチャーデッキR-ドラグニティ・ドライブ!現在、好評発売中です!ドラグニティ好きなら買おう!(ステマ)』

 

「これは、こうで・・・こんな感じかな?すごい展開力だな・・・一人回ししてもこれだけの押し込みようだ。あ、儀式ルインも見なきゃ」

 

出来上がったドラグニティデッキをストレージボックスにしまうと儀式をメインにしたルインデッキと呼んだデッキを取り出した。

 

「ドラグニティが頼れる仲間なら、ルイン達は相棒だよな」

 

そう言いつつ、新しくなったルインとデミスのカードを見る。破滅の天使ルイン、破滅の美神ルイン。終焉の悪魔デミス、終焉の覇王デミスのカード。

 

元々、この二体が好きで使っていた事もあったがある時期に終焉の王デミスの方が世間的には強く評価されていた。後にオネストなどのカードにより光属性が見直され、ルインも戦えるようにはなったが、やはり強さは見受けられなかった。

 

「それが今ではこんなに強力になったんだ。儀式系だから扱いが難しいけど」

 

EXデッキも二つ作り、デッキもスリーブ等に入れてそれぞれに収納する。それと同時にカードが僅かに光った気がした。

 

「ん?」

 

レア度を示すホロ加工が光ったのだと思ったが、同時に光が眩しくなっていき意識を失っていった。

 

 

 

 

 

 

「い・・・ーーーい!きろって・・・・!遊来!起きろって!」

 

目覚めを促す声に目を開けるとそこには、ようやく起きたのかと言わんばかりの様子だが笑顔の青年がいた。年齢は15~16歳位だろうか?陽気で前向きな性格をしていそうな印象を受ける。

 

「今日は明後日の受験の為に調整を手伝ってくれる約束だろ?」

 

「へ?」

 

「だから、デュエルアカデミアを一緒に受験しようぜ!って言ってたじゃん!」

 

「え・・あ・・ああ、そうだっけ」

 

デュエルアカデミアと聞いて、彼はある事を思い出す。ここは恐らく遊戯王GXの世界だろう。何かの拍子に転生したか、次元を超えるといった漫画やアニメ、SF作品のような事が現実に起こってしまったのだ。

 

「(状況を整理したい・・・今、どんな状況なんだ?)」

 

『今、貴方の名は龍谷遊来。この世界では両親同士が仲の良い関係で此処、遊城十代の家に泊まり込みに来ている所だ。そして、共にデュエルアカデミアの受験の為にデッキを調整し合おうという話の流れのようだ。マスターは乗り気ではないようだが・・・』

 

「ああ、そうなんだ・・・え?」

 

『ん?』

 

「・・・・・・」

 

『・・・・・・』

 

誰かが現状を教えてくれて納得するが、その相手と目が合う。巨大な戦斧に似た槍を手にし、美しい銀髪の髪を持ち、その青い目は見る者全てを威圧しかねない、オーラを持っている。

 

「うわあああああああああああああ!!!??」

 

「ど、どうしたんだよ!?急に叫んで!」

 

「あ、あ・・・あれ!あれ!」

 

「?幽霊でも見てるのか?何も無いじゃないかよ」

 

「へ?」

 

十代の言葉に目を丸くする。自分が指を指している方向には何もない、だが確かに今そこに「破滅の美神ルイン」が薄い姿でこちらを見ているのだ。

 

『む・・・失念していた、マスターを驚かせてしまったか。先ずは我々が見える事を説明すべきだった!』

 

『しっかりしてくれよ?ルインの姐さんの方が説明上手なんだから』

 

揃って現れたのが「破滅の美神ルイン」と「ドラグニティアームズ・レヴァティン」の二体だった。彼、遊来は「なぁにこれぇ」と言いたげな様子で全員を見ている。コホンと咳払いをしたルインが美神から「破滅の女神ルイン」の姿となって遊来に話しかけた。

 

『会話するのは初めてですね。我がマスター、私はルイン・・・既に姿はご存知かと思いますが』

 

「え・・・あ、ああ」

 

『ドラグニティアームズの一人、レヴァティンだ。よろしく頼むよ!』

 

カードのイメージイラストのキャラクターから話しかけられ混乱してしまっていたが、GXの世界では有り得る事だというのを僅かに思い出す。

 

『カードの精霊の事を僅かに思い出したようですね。そう、私達は貴方が持っているカードの精霊です』

 

『こうして会話出来るのは嬉しいけど複雑だね。マスターはデュエルをやらないんだろ?』

 

「!!・・・ああ」

 

この世界ではデュエルは物事を決めるのに重要な役割を果たしている。プロリーグまであるとわずかに覚えている記憶にあった。デュエルをやらないという事は何も物事に対して意見すら言う資格もないのだ。

 

寧ろ遊来は自分の世界でのデュエルに疲れ切ってしまっていた。自分の世界では無限ループ、ワンターンキル、ソリティアと言われるものが流行る程たった1ターンの動きで勝利をもぎ取れてしまう環境であったからだ。新たな召喚方法も要因ではあるが一つの出来事でしかない。

 

特殊勝利に代表されるエクゾディアを1ターンで揃えられてしまう環境。そんなものをこの世界で披露したらどうなるか見てみたい気持ちもあるがそれを抑えた。今は精霊達の話を聞くことが先だからだ。

 

『マスター、私達を使ってデュエルに復帰して下さいませんか?』

 

「けど、俺のデッキはこの世界には無い召喚方法があるから・・・」

 

『それに関しては心配は無用ですよ』

 

「へ?」

 

すると突然、家の電話が鳴り響いた。十代が電話に気づいて扉に視線を向ける。

 

「あ、電話だ。俺ちょっと出てくる」

 

「わかったよ」

 

十代が電話をとると電話の相手が龍谷遊来は居るかと聞いてくる。電話の相手はインダストリアル・イリュージョン社の社員であり、十代は非常に驚いた様子で遊来を呼んだ。

 

「インダストリアル・イリュージョン社からだって・・さ」

 

「マジか・・・もしもし?」

 

「君が龍谷遊来くんかな?」

 

「はい」

 

「我が社の会長が君に会いたいそうだ。明日、時間を取れないかな?学校の方には会社から連絡しておこう。迎えもこちらで用意するとの事だ」

 

「分かりました」

 

要件だけを伝えられると電話が切れた。十代はニコニコしながらこちらに話しかけてくる。

 

「一体何だったんだ?」

 

「ん、明日会社の方に来てくれってさ」

 

「ええ~良いなぁ」

 

「遊びに行く訳じゃないからな?」

 

「分かってるって!」

 

そう言いながら、遊来は十代のデッキと自分のデッキを見ながら受験に備えての調整を行う事にした。

 

「やっぱりこのカードを入れるべきだろ?十代はHeroメインなんだし」

 

「えー、これを入れたら回転悪くならないか?」

 

「鬼ドローしまくる癖に何を言ってんだよ」

 

ある程度の調整を済ませると夕食とお風呂を頂き、就寝した。泊まり込みはお互いの両親が快諾しているようなので大丈夫だったらしい。

 

翌日、朝の8時半位に高級車が迎えに来てインダストリアル・イリュージョン社へと向かう事になった。そこで、名誉会長であるペガサス会長と出会った。

 

この人はこの世界の大企業である海馬コーポレーションを買収しようとしていた。だが、それは若くして亡くなられた恋人の姿をもう一度見たいという思いからだった。そんな人が俺にコンタクトを取ってくるのが非常に珍しい。

 

「OH、ユーが遊来ボーイデスね?」

 

「はい、そうです」

 

今この場は二人きりだ。ペガサスさんも砕けた様子で話してはいるが目は真剣そのものだ。

 

「ユーは今の姿の変化に気づいていまセンね?」

 

「え?」

 

そう言ってペガサスさんは俺に全身を写す鏡を見せた。そこには20代を超えていた姿ではなく、10代半ば、つまりは十代と同じ年齢の自分が立っていた。

 

「(俺、若返ってる!?)」

 

「そしてユーが持つカード、それが引き金となってこの世界に来てしまったのかもしれまセン」

 

「・・・もしかしてこれですか?」

 

白い枠があるカードをペガサスさんに見せる。それはシンクロ召喚によって呼ばれるカード達だ。

 

「未知のカードを持つユーに関しての知識はワタシは持っていマース!恐らくはワタシの過去の出来事に関連しているのデショウ!ユーは転生、もしくは次元を超えてやって来た・・・違いマスか?」

 

「!ええ・・・その通りです。それで、俺に何をさせようと?シンクロ召喚に関してですか?」

 

「イエス!ユーの持つシンクロモンスターカードを一枚、研究用に預からせて欲しいのデース!先ほど聞いたシンクロ召喚、この召喚方法を是非とも広めたいのデース!」

 

「それは構いませんけど・・・」

 

「それとユーに特別仕様のデュエルディスクを提供しマース。シンクロ召喚のデータを組み入れて渡しマスので明日までには間に合わせまマース!」

 

俺はデッキから「ドラグニティナイト―トライデント」のカードをペガサスさんに渡した。

 

「お願いします」

 

「忘れる所デシタ、遊来ボーイ。ユーにも手伝ってもらいたい事がありマース!」

 

「俺に出来る事であれば」

 

そう言って今日一日、シンクロ召喚に対応する為のデータ作りを手伝う事になった。海馬コーポレーションへの協力要請も忘れずに連絡し、シンクロ召喚のモーション、モンスター画像などなど、あらゆる物をテストと運用、バグの修正、実演テストを数十回以上こなした結果、シンクロ召喚のβ版のデータが出来上がったのだった。




気まぐれの遊戯王の物語です。

主人公はデュエル熱がまだまだ低い状態です。

ドラグニティと儀式ルインですのでGXでは未知となりますがリンクが無いので騒ぐほどではありません。


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2話

受験当日。


デュエルアカデミアの受験当日。十代と遊来は電車の事故によって走って会場へ向かっていた。

 

「なんでこんな時に電車の事故なんだよー!」

 

「文句言っても仕方ないだろ!とにかく連絡はしておいたから、急ごう」

 

あれからインダストリアル・イリュージョン社から遊来の自宅にデュエルディスクが届き、それをカバンに入れてアカデミア受験会場に向かっている。

 

手紙も添えられており、シンクロ召喚の宣伝及びテストプレイヤーとしてシンクロ召喚をアピールして欲しいとの事が綴られていた。シンクロ召喚に関するデータは海馬コーポレーションも注目しているようで、その為にも使用している時の実戦データも欲しいそうだ。手紙の下には遊来がある一定のデュエリストレベルに達したら呼び出すとも書かれていた。

 

「うおおお、待っていろよ!デュエルアカデミア!」

 

「あ、十代!前!!」

 

「え?うわっ!?」

 

注意するのが遅かったのか、十代は歩行者とぶつかってしまった。相手は大したことがなさそうだったが、十代は尻餅をついてしまい、デュエルディスクとデッキが散らばってしまった。

 

「あ、ゴメン!」

 

「大丈夫か?十代、俺も手伝うよ」

 

「あ、ありがとうな。遊来」

 

「君達、デュエルをやるのかい?」

 

「ああ、デュエルアカデミアを受験するんだ!」

 

「え?・・・あ、貴方は!?」

 

十代がぶつかってしまった相手に対して遊来は顔を見ようと頭を上げた瞬間、声を上げようとしたが、相手は人差し指を立てて口元に当てるような仕草をした。それは黙っていて欲しいという合図にほかならない。仕草を止めると同時にデッキホルダーに手をかけ、微笑みながら一枚のカードを十代に差し出した。

 

「ラッキーカードだ。コイツがキミの元へ行きたがっている」

 

「あ、ありがとう」

 

「頑張れよ・・・」

 

「は、はい!あの・・・ありがとうございました!」

 

十代がお礼を言いながら頭を下げると、相手は微笑んでサムスアップをした後に遊来に一言だけ伝えた。

 

「彼と一緒に頑張れよ・・」

 

「!はい・・!」

 

十代は手にしたカード「ハネクリボー」を見ていると何処からか声が聞こえてきて周りをキョロキョロしていた。

 

「どうしたんだよ?」

 

「い、いや!」

 

遊来はその正体に気づいていながらも気付いていないフリをした。十代の肩の近くに薄い姿で「ハネクリボー」が浮遊しているのが見えていたからだ。「ハネクリボー」もそんな遊来の視線に気付いているが、遊来は先ほどの相手のように人差し指を立てて口元に当てていた。

 

「クリクリ~」と声が聞こえてきたがそれを笑顔で返すと十代に現実を突きつけるように声を発した。

 

「十代、急がないと受験に間に合わなくなるぞ!ただでさえ、遅刻状態なんだから!」

 

「あ、そうだった!ヤッバ~イ!」

 

二人は同時に駆け出し、アカデミアの受験会場の中に入った。遊来が事情を説明し、教員に確認を取ってもらうと電車の事故の件と遅れてしまう連絡をしてあった為に受験する事が出来る事になった。

 

特別に案内された教室で、筆記試験を十代と二人きりで受ける。カンニング対策の為に監視員として二人の教員、机もかなり長い距離を離されている。通常の科目からデュエルモンスターズに関する問題まであったが勉強はしており、会社のお手伝いをしていた時はペガサスさんが臨時教師を雇って勉強を教えてくれた。

 

「それまで!次は実技試験があるので移動してください」

 

「はーい」

 

 

 

 

「受験番号24番!試験場へ!」

 

「あ、呼ばれた。行ってくる」

 

「おう!頑張れよ!」

 

十代と軽く拳をぶつけ合うと俺は試験場であるフィールドに立つ。今回はシンクロ召喚の宣伝を受験でして欲しいとペガサスさんから頼まれているためドラグニティデッキを使う。この世界でのドラグニティ・・・強すぎると思うけど。

 

「それでは試験を開始する。リラックスして普段通りの力を発揮しなさい」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「よし!それではデュエル!!」

 

 

 

試験官:LP4000

 

龍谷遊来:LP4000

 

 

 

「先攻は私だ。ドロー!」

 

「?」

 

遊来は不思議そうな顔をするが、GX時代のルールを思い出して納得した。この時代ではまだ先攻ドローが生きていた時代だ。それ故に手札一枚の増強は大きい。

 

「私はブラッド・ヴォルスを召喚!さらにカードを二枚伏せてターンエンドだ」

 

「ブラッド・ヴォルス?ウイルスコンボでも仕掛けてくるのかな?俺のターン、ドロー」

 

そして手札を見る。手札の枚数は今現在、六枚だ。展開出来るかは手札によって決まる。

 

[手札・現在6枚]

 

※調和の宝札

※ドラグニティ-クーゼ

※ドラグニティ-ファランクス

※ドラグニティ-レガトゥス

※テラ・フォーミング

※ドラグニティ-ファランクス

 

なるほど、これならギリギリで展開できそうだ。俺は手札にある一枚の魔法カードに手をかけた。

 

「手札から魔法カード、調和の宝札を発動」

 

「調和の宝札?ドロー系のカードか?」

 

「手札から攻撃力1000以下のドラゴン族チューナーモンスターを一体捨てて発動出来ます。手札のドラグニティ-クーゼを捨てて、カードを二枚ドロー」

 

「チューナーモンスターだって?」

 

[ドローカード]

 

※ドラグニティ-レムス

※ドラグニティ-ドゥクス

 

なかなか良いカードを引いた、このまま一気に展開しよう。恐れていたら負けちゃうからね。

 

「手札のドラグニティ-レムスの効果を発動。このカードを手札から捨てる事により、フィールド魔法『竜の渓谷』を一枚、デッキから手札に加えます」

 

「フィールド魔法のサーチ、なかなかに強力だな・・・それに、手札が全く減っていないとは!」

 

試験官は遊来が実力があることを見抜いていた。1ターンでカードを自分と同じ枚数を消費しているはずなのに手札が一向に減っていないのだ。

 

「フィールド魔法、『竜の渓谷』を発動」

 

デュエルディスクの先端にあるフィールド魔法ゾーンにカードをセットする。効果が発動され、黄昏を表す太陽と竜達が飛び交う渓谷が姿を現す。

 

「竜の渓谷の効果発動!1ターンに一度だけメインフェイズ時に手札を一枚捨てる事で二つのうち、一つの効果を選択して発動します。一つ目はデッキから『ドラグニティ』と名の付いたレベル4以下のモンスターを手札に加える効果。もう一つはドラゴン族モンスター1体を墓地へ送る効果です。俺はドラグニティモンスターを加える効果を選択!手札の『テラ・フォーミング』を捨てて、デッキからドラグニティ-レガトゥスを手札に加えます」

 

[現在の手札・5枚]

 

※ドラグニティ-ドゥクス

※ドラグニティ-ファランクス

※ドラグニティ-ファランクス

※ドラグニティ-レガトゥス

※ドラグニティ-レガトゥス

 

ものの見事にダブリ祭りである。でも、これであの召喚が可能になった事は事実だ。

 

そして今現在、遊来は通常召喚を行っていないのだ。

 

試験官もこの事には驚きを隠せない。ドロー、サーチ、フィールド魔法発動とモンスター効果だけでかなりの準備をしている。だが、一向に通常召喚まで行かない事が逆に不気味であった。

 

「手札からドラグニティ-レガトゥスを特殊召喚」

 

『ドラグニティ-レガトゥス』星4攻撃力/1800 守備力/1200 鳥獣族/効果

 

「特殊召喚だって!?」

 

「レガトゥスは二つの効果が有ります。一つは1ターンに一度だけ、自分の場に『ドラグニティ』のモンスターか『竜の渓谷』が存在する場合、特殊召喚する事が出来ます。もう一つは魔法・罠ゾーンに『ドラグニティ』モンスターが存在する場合、フィールドの魔法・罠カードを一枚対象とし発動して、そのカードを破壊できます」

 

「カテゴリーの縛りが有る特殊召喚と魔法・罠破壊効果か・・・興味深い」

 

「更に墓地にあるドラグニティ-レムスの効果発動。自分フィールドに『ドラグニティ』モンスターが存在する時、このカードを墓地から特殊召喚します」

 

『ドラグニティ-レムス』星2攻撃力/800 守備力/800 ドラゴン族/チューナー/効果

 

「なんだって!?」

 

「ただし、この効果で特殊召喚されフィールドから離れた場合、ゲームから除外されます。そしてこのターン、俺は融合デッキからドラゴン族モンスターしか召喚出来ません」

 

「一体何を?」

 

「レベル4のドラグニティ-レガトゥスにレベル2のドラグニティ-レムスをチューニング」

 

「チューニング!?」

 

「二つの種族の結束が、新たな竜騎士を生み出す。今こそ駆け抜けろ・・・!シンクロ召喚・・・!」

 

「飛び上がれ、ドラグニティナイト-ガジャルグ・・!」

 

『ドラグニティナイト-ガジャルグ』星6攻撃力/2400 守備力/800ドラゴン族/シンクロ/効果

 

「し、シンクロ召喚だって!?その召喚方法はまだ発表されたばかりのはず!」

 

「はい、そうです。俺は宣伝兼実演テスターとして使っています。質問に関しては公式ホームページやカードショップなどでも受け付けてますので大丈夫ですよ。後々、アカデミアの方にも詳細が来ると思います」

 

「そ、そうか」

 

やはりシンクロ召喚は未知の召喚に映るようだ。だが、まだまだ終わらないのがこのデッキの特徴でもある。

 

「ガジャルグの効果発動。デッキからレベル4以下のドラゴン族か鳥獣族モンスターを一体手札に加えます。その後、手札からドラゴン族または鳥獣族のモンスターを一体手札から捨てます。デッキから『ドラグニティ-セナート』を手札に加え、ドラグニティ-ファランクスを墓地に捨てます」

 

これでもかという怒涛の流れに周りの受験生達も引き気味である。未知の召喚に加えて、これが1ターンの動きなのかと戦慄しているのだ。

 

「『ドラグニティ-ドゥクス』を通常召喚」

 

『ドラグニティ-ドゥクス』星4攻撃力/1500 守備力/1000鳥獣族/効果

 

[現在の手札・3枚]

 

※ドラグニティ-ファランクス

※ドラグニティ-レガトゥス

※ドラグニティ-セナート

 

ここでようやく遊来は通常召喚権を使った。だが、既に上級クラスに迫る攻撃力を持つモンスターが居る状態で何をしてくるのだろうか?と試験官は冷や汗が出てきている。

 

「ドゥクスの効果を発動。このカードが召喚に成功した時、自分の墓地に存在するレベル3以下の『ドラグニティ』と名の付いたモンスターを1体選択し、装備カード扱いでこのカードに装備します。俺は墓地に居るドラグニティ-クーゼをドゥクスに装備」

 

「そしてクーゼの効果を発動、このカードが装備カード扱いとして装備されている場合に発動出来ます。装備カード扱いのこのカードを特殊召喚します」

 

『ドラグニティ-クーゼ』星2攻撃力/1000 守備力/200ドラゴン族/チューナー/効果

 

「このカードは『ドラグニティ』モンスターのシンクロ召喚にしかシンクロ召喚の素材にする事は出来ません。また、このカードをシンクロ召喚の素材にする場合レベル4として扱う事ができます」

 

「なんと!?」

 

「レベル6のドラグニティナイト-ガジャルグにレベル4となったドラグニティ-クーゼをチューニング・・!」

 

「天の龍と鳥獣の王が手を結ぶ時、天空を駆ける竜騎士の王が現る・・!今こそ駆け抜けろ・・!シンクロ召喚・・・!王の道を行け・・!ドラグニティナイト-アスカロン・・!」

 

『ドラグニティナイト-アスカロン』星10攻撃力/3300 守備力/3200ドラゴン族/シンクロ/効果

 

「こ、攻撃力3300!?」

 

「『ドラグニティナイト-アスカロン』の効果発動。自分の墓地にある『ドラグニティ』モンスター1体をゲームから除外し、相手モンスターを1体対象にして発動します。そのカードをゲームから除外します」

 

「除外!?」

 

「はい、墓地には行きませんのでカードを使って戻す事をしないと蘇生も出来ません。よって、貴方の場のブラッド・ヴォルスをゲームから除外」

 

「しまった!(ウイルスコンボの要が!相手の展開の長さに夢中で見落としていた!)」

 

「バトルフェイズ。アスカロンとドゥクスで攻撃・・・!この時ドゥクスはドラグニティと名のつくカードが自分フィールド上に表側表示で存在している時、そのカードの数×200ポイントアップします」

 

「な、という事は!?合計5000ポイントの戦闘ダメージ!?うわああああ!」

 

遊来の攻撃によって後攻ワンターンキルを達成してしまった。ドラグニティというカテゴリーに加え、シンクロ召喚という未知の召喚方法まで使い流れるような展開をした遊来のタクティクスに他の受験生達は呆然としていた。

 

「シンクロ召喚という新しいシステムにドラグニティというカテゴリー、新しい物を見せてもらい、嬉しかったよ。合格発表は追って通知する」

 

「はい、ありがとうございました」

 

そんなこんなで俺の試験は終了した。十代の様子を見に行くと丁度、フィニッシュのようだ。相手は実技担当最高責任者のクロノス教諭で攻撃力3000の古代の機械巨人を十代のフェイバリットであるE・HEROフレイム・ウィングマンがフィールド魔法、摩天楼-スカイスクレイパーの恩恵を受けて攻撃力3100となり撃破した。

 

「あれには俺のドラグニティもやられたんだよなぁ・・・」

 

なんてボヤきながら、十代の勝利に拍手を送りつつ、遊来は携帯電話が鳴っているのを確認し電話に出るとペガサス会長からで試験が終わった後、会って欲しい人物が居ると言われ了承していた。




デュエル描写って難しいですね。ほとんどルールなんて忘れているに等しいです。

一応、当時のアニメに近い状態でやっています。未来のカードも使っていますが、強力なのは使っていないつもりです。

この作品でのドラグニティはシンクロがメインなのでリンク召喚のドラグニティは出ません。


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3話

ある人物との邂逅。


受験後、遊来はペガサスに呼ばれインダストリアル・イリュージョン社に居た。ペガサス曰く電話では話せない大事な話があるとの事だ。

 

「遊来ボーイ、単刀直入に言いマス。ユーはこのままでは生活する事が難しくなってしまいマシタ。最悪の場合、母国からの説明を求められてしまいマース」

 

「え?」

 

「今までは我が社だけで情報を隠遁していマシタが、シンクロ召喚のテスターとして名が知れ渡ってしまいマシタ。当たり前の事なのデスが調査などもあって、考えが後手になってしまい申し訳アリマセーン。入念に調べた結果、戸籍などの問題も有りマース!」

 

それは失念していた事であった。いきなりこの世界に来た時には名前もあり両親もいたがその両親も本当の両親ではないらしく、この世界での産みの母が妊娠した後に離婚し、出産した後に育ての親に預けて失踪してしまい、養子縁組も出生届も出されていなかったそうだ。あらゆる調査の為に後手に回ってしまった事をペガサスさんは謝ってきた。

 

国の制度により離婚後300日以内においては、遺伝上の父の子として登録できず、そのまま出生届を出すと前夫の子と推定されてしまうため、遺伝上の父親の子として認定されるためには、前夫から家庭裁判所へ親子関係不存在確認調停或いは嫡出否認の申し立てが必要となるが、心情的に協力を求めたくない場合が多く母親が出生届を提出していない状況が散見される。という内容が調べると出てきた。

 

俺はそれ以上に最も気になる事をペガサスさんに聞いた。

 

「あの、ペガサスさんは俺が転生、もしくは次元を超えてきた人間だって知ってると言っていましたよね?それは何故ですか?」

 

この世界に来る前の知識はまだまだあるが考えないようにしていた。もしそれが本当なら認めなくてはならない恐怖があったからだ。平静を装っていても現実だと認めたくない、全てを失ってこの世界に来てしまった。帰郷の思いを押し殺していたのだから。

 

「知っているのではないデスか?私がかつてある物の所持者であった事を・・・」

 

遊来は知っている。目の前のこの人はかつて闇のアイテムと言われる千年アイテムの一つ、千年眼の所持者であった事を。

 

「もしかして?」

 

「イエス、今の私にソレはありません。ですが、所持していた当時ソレからあるヴィジョンが流れてきたのデス。転生、次元を超えるなどのキーワードと共にそして遊来ボーイ、ユーにソックリな人物の映像も・・・」

 

その話を聞いて遊来は驚きを隠せない状態になった。自分が来る事を予期されていたのだとペガサスは口にしたのだから。

 

「それで俺の事を知っていたと・・・・」

 

「その通りデス・・・心苦しいデスが元の世界に戻れる可能性は無いに等しい」

 

「っ・・・・」

 

遊来は耐えられなくなり、その場で大泣きし始めた。もう二度と自分の世界には帰れないと心と頭が認めてしまった瞬間、無意識に泣いてしまい止まる事はなかった。それはまるで家に帰りたいと泣き叫ぶ幼子のようであった。しばらくして泣き止み、ペガサスは遊来を洗面台に案内して顔を洗うように言い、洗った後はタオルを差し出した。

 

「もう平気デスか?」

 

「はい・・・ごめんなさい。見苦しい姿を見せてしまって・・」

 

「ノー、それがユーの本当の気持ちだったのデスから気にしていまセーン。それから、ユーには戸籍に関するチャンスが二つありマース」

 

「二つ?」

 

「イエス、一つはワタシの養子となってアメリカ人としての戸籍を取る事、もう一つはワタシのちょっとしたコネでで日本の戸籍を取る事デース。個人的にはアメリカの戸籍を取って欲しいのデスが」

 

「アメリカ国籍となると心情的には・・・」

 

「仕方アリマセン・・・では、少し待っていて下サーイ」

 

そう言ってペガサスは部屋を出ていってしまった。数分後、会社の弁護士に連絡がついたそうで、戸籍の他に更には調査網も使い遊来を引き取っていた育ての親の両親に出会い、親権を譲ってくれとお願いしたところ、渋られていたがある程度の金額を日本円で渡したらすんなり親権を譲ってくれたそうだ。一体、幾ら出したんだろう・・・と遊来は思わずにはいられない。

 

そして正式にペガサスの養子となった遊来は、お願いとして育ての親が使っていた家をそのまま使わせて欲しいと言った。何よりも遊城十代のお隣さんに実家がある方が良いと最初で最後のワガママを言わせてもらったのだ。

 

育ての親達はペガサスに貰ったお金で引越しを済ませており、その土地と家屋をそのまま購入しリフォームの手続きも済ませてくれたのだ。

 

「本当にそれだけ良いのデスか?」

 

「はい、これ以上甘えてしまったら抜けられなくなりそうなので」

 

「フフ、もうファミリーなのデスから気にする必要はアリマセンよ?」

 

「それでも、です!」

 

そう言うとペガサスは笑顔になり、遊来もようやく笑う事が出来た。もう自分の世界には帰れない、それでもこの世界には自分に愛情を注いでくれる人が居るというだけでも感動してしまった程だ。

 

「そうでシタ!今日は遊来ボーイにある人物に出会わせる約束をしていたのを思い出しまシタ!」

 

「え?」

 

「そろそろ到着する頃デース、一度会ってくれませんセンか?」

 

「分かりました」

 

ペガサスについてくとそこには白のコートを身に纏い、プライドが高そうに見えて誇り高い性格である事を伺える人物が応接室にいた。知っている・・・この人は海馬瀬人、海馬コーポレーションの総帥であり最強のデュエリストの一人であの武藤遊戯の宿命のライバルとも言うべき人だ。

 

「ふぅん、この俺を待たせるとはな?」

 

「それに関して謝りマース、どうしても外せない別件があったのデース」

 

「その別件がソイツという訳か」

 

瀬人の鋭い眼光に遊来は視線を逸らしそうになるが、なんとかそれを堪える。すると瀬人は意外な話を持ちかけてきた。

 

「貴様の使うシンクロ召喚、その完成形に至るまで共同開発を進めているがまだまだβ版が完成したに過ぎん。よって貴様を海馬コーポレーションの開発スタッフの一人にしてやろう」

 

「へ?」

 

「なるほど、デュエルディスクに関しては海馬コーポレーションの方が我が社よりも先を行っていマース、その為にも彼の力が必要という訳デスね?」

 

「そうだ。だが、貴様はデュエルアカデミアに通う予定だったな?長期休暇の時期に海馬コーポレーションへ来い。無論、タダでとは言わん。働いた分の対価は出す」

 

「分かりました。俺の力が役立つのなら」

 

「ふん、当然だ。それにペガサスがしていた貴様に関する調査結果にも目を通している。待たされている間、理由として書類を見せられていたからな」

 

「事情が事情デス・・・」

 

「ふぅん・・・ソイツが転生か次元を超えてきたなどと信じられん事だが、ある程度の理解は出来る」

 

「え?」

 

「戸籍の件に関してペガサスを通じて協力した、後は自分の力で切り開いて見せろ!」

 

「それって本当なんですか?ペガサスさん」

 

「本当デース。我が社の顧問弁護士を通じて身辺調査の他に海馬ボーイに協力をお願いしていたのデース。日本の事は日本人、現地の人間に任せるのが一番デシタ」

 

「あくまで貴様の戸籍を用意しペガサスの養子になれるよう手配しただけだ。これ以上を望むなら対価として先に話した開発スタッフの仕事をする事だ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

どうやらペガサスさんは瀬人さんに頭を下げていたようだ。地位のある人、それもライバル会社の相手に頭を下げるなんて事はなかなか出来る事ではない。それを感じた遊来はまた泣きそうになったが必死に堪えた。

 

「それに貴様の扱うドラグニティというカテゴリー、是非とも戦いたいものだな」

 

「瀬人さんはお忙しい身でしょう?」

 

「ふん、デモンストレーションなどいくらでも戦う機会はある」

 

「確かに・・・」

 

「俺は行くぞ。この後、重要会議があるのでな」

 

そう言って瀬人さんは帰ってしまった。海馬コーポレーションは世界的な大企業だ。それゆえに多忙なのだろう、その合間の時間で来てくれたのだから更に感謝しかない。

 

「さて、遊来ボーイ。アカデミアへの入学準備もあるでショウ。これから準備しに買い物へ行きませんカ?」

 

「はい、是非とも!」

 

 

 

 

その後、入学準備を終わらせアカデミア本校へ行く船の中でペガサスさんからメールが来た。ペガサスさんも多忙な身だ。その合間で入学準備の手伝いと養子縁組の手続きをしてくれた事には感謝しかない。メールには見送りに行けない事に対しての謝罪とアカデミアでしっかり学資生活を楽しみながら勉学に勤しむようにとの事が書かれていた。それを見て少しだけ笑みが浮かぶ。

 

もう、元の世界には帰れない。それを考えると少しだけ暗い気持ちになるが仕方ない事なのだと割り切るしかないと言い聞かせる。帰郷願望が無い訳ではない、出来る事なら帰りたかった・・・だが、それは叶わない、それならばこの世界でしっかり生きていこうと思う、それが一番だ。

 

「どうしたんだ?遊来」

 

「ああ、十代・・・ペガサスさんからのメールを見てただけさ」

 

「えぇ?マジ!?すっげえ!!」

 

「ふふ、これから学校生活だな」

 

「ああ、デュエルアカデミア・・楽しみだなぁ!!」

 

こうして自分を気にかけてくれる友人と恩人がいる。そして何よりこの世界で一番の大きい出来事はドラグニティのレヴァティンやルインと出会え、会話が出来る事だ。アカデミアに向かう前、こちらの世界の実家にカードが沢山あった。俺が飛ばされた際に一緒に持ち込まれていたモノだったのだ。そのカードの中から俺は必要枚数以上に持っているカードの内、HERO関連のカードを二枚取り出して十代に渡した。

 

「十代、このカードを受け取ってくれないか?」

 

「え?・・こんなカード受け取れねえよ!レアカードじゃんか!」

 

「俺はもう三枚以上持ってるから、中学から一緒に居てくれたお礼って事で」

 

「うーん、分かった!サンキュー!後で俺も何か渡すからさ!」

 

「ああ!」

 

受け取る事を渋りつつも、十代は遊来からカードを受け取り笑顔になった。十代にはHERO関連のデッキに関して自分の世界で使われていたやり方を暈しながら、そんなルートも有ると船の中で会話し続けた。

 

その途中、遊来は十代からHEROデッキを組まないかと聞かれたが、組むパーツが揃えばとだけ返事をした。

 

実際、遊来にはHEROデッキのプロトタイプに近い40枚の束にしかなっていない物がある。使うとすればE-HERO(イービルヒーロー)の方になってしまい、使う事はできない。かと言ってE・HEROを使えば十代と被るデッキになってしまう事になる。もし使えるとしたらM・HERO(マスクドヒーロー)の方になってしまい、寧ろそちらの方が強力になってしまう故に組もうとしないのだ。

 

自分の元居た世界、それも未来のカードでデッキを組んでいるのだから強力なのは当たり前なのだが、この世界では強力なコンボがまだまだ息づいている時代だ。パーツさえ揃ってしまえば安易にワンキルやソリティアなどのデッキも出来上がってしまう。

 

この世界でのワンターンキルは許容範囲に僅かに入るが、特殊勝利などは認められていないに等しい。

 

「お、そろそろ着くみたいだぜ」

 

「そっか」

 

デュエルアカデミアがある孤島に目を向ける。新しく、そして一からの高校生活が始まるのだと思うと自分の世界での記憶が僅かにある遊来は少し複雑かつ、嬉しさもある不思議な感情出てくるのだった。




ここまでで、次回は所属場所です。


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4話

寮生活開始


デュエルアカデミアの入学式を終えて、寮生活の為の寮に区分けされた事を伝える紙が手渡された。

 

此処、デュエルアカデミアでは三幻神に因んでオシリスレッド、ラーイエロー、オベリスクブルーと区分けされている。

 

女性は基本的にオベリスクブルーに区分けされ、男性の場合は受験結果によって区分けされるらしい。大富豪や大企業の御曹司やデュエルに関する実績があればオベリスクブルーに配属されるそうだが、基本的に受験の成績が上位でも編入となればラーイエローからスタートするそうだ。

 

十代はオシリスレッドに所属となり、遊来はラーイエローへと向かっている。ペントハウス風のおしゃれな建物を見つけると此処がラーイエローの寮らしい。

 

「これもこれで味があると思うけどなぁ・・・」

 

そう呟きながら遊来は寮内へと入り、割り当てられた一人部屋に入ると荷物を置き、その中から自分の世界から一緒に飛ばされてしまったカード達を見る。

 

中でも青眼の白龍のカードは名称だけが残っているが、イメージイラストの部分が真っ白になっていた。この世界での青眼の白龍は海馬瀬人だけが所持しているためだろう。その他のサポートカードなどは何も変化はないが使用することは難しそうだ。

 

「ドラグニティとデミスルインだけじゃ、流石にキツいかな。シンクロ召喚用のデッキと・・・後はこれを組んでみよう」

 

そう思いながらデッキを組んでいると不意に覗き込まれている感覚に陥る。そう、ルインがデッキ作りを覗いているのだ。

 

「精霊化してないで堂々と見ればイイじゃないか」

 

『いえ、実体化には大量のエネルギーを必要としますので・・・しかし、マスターと共に来たカードは強力なのが多いですね?』

 

「確かに強力だけど、この世界でのコンボの方が強力だよ。特殊勝利なんて簡単にできるカードがまだまだ生きてるんだから」

 

「以前、仰っていた宝札エクゾディアなどですか?」

 

「そう、無限ループデッキが此処では現役なんだ。そのデッキは組んであるけどまだ実戦では試した事は無いんだ。余程の事がないと使う気はないしね」

 

『そうなのですか?』

 

「デュエルが始まって、無限ループデッキが先攻取って勝利の為のパーツが揃ってたらどうなる?」

 

『あ・・・』

 

「そういう事だよ。だから、余程の事がないと使わないんだ」

 

ルインの疑問に答えつつ、遊来はデッキを完成させていく。新しいデッキは十代と同じカテゴリーであるHEROデッキではあるが、コンセプトが違っている。このデッキも何か役立つ時があるだろうと丁寧にデッキケースにしまい込む。

 

 

 

 

 

その翌日、歓迎会などが開かれラーイエローでは普通の日本色の食事やカレーなどが出ていた。

 

「やあ、君があのドラグニティと呼ばれるカテゴリーのデッキを使っている龍谷遊来かな?」

 

「そうだけど、君は確か・・・三沢大地・・だっけ?筆記試験一位の」

 

「はは、そう言われるとなんだか擽ったいな。それにシンクロ召喚という新しい召喚を使っているのも見てたよ」

 

「ああ・・・俺はシンクロ召喚の宣伝兼実用テスターだからね」

 

「発表されてからまだまだカードが出ていない事もあって未知だったが、色々と聞かせて欲しい」

 

「構わないよ」

 

それから食事をしつつ三沢と遊来はデュエルモンスターズの戦略に関して話し合った。

 

特にシンクロ召喚に関してはデメリットとメリット、弱点や運用方法などを聞いてきたのでそれを説明する。最も、見物のカードを持っているのはこの学校では遊来一人の為、デュエルでの実践をすることはする事はなかった。

 

「勉強になったよ。融合とはまた違うカード、今度はデュエルで見せて欲しい」

 

「うん、機会があれば」

 

歓迎会も終わりになり、部屋へ戻る前に外の空気でも吸おうとデュエルディスクの入ったバッグと共に外へと出る。

 

「高校生か・・・ここに来る前は後悔だらけだったな」

 

ふと、自分の世界でのことを思い返す。流されるままで何もかも自分の力で手に入れられる事はなかった。言われるがままにただただこなすだけの日々、いつしか楽しむ事も自分で考える事も放棄してしまった。

 

全く誰も知る人間がいないこの世界に来た事は一種のチャンスなのかもしれない。それが例え、どんな形であっても。

 

そんな事を考えながら歩いていると無意識に声のする方向へと歩いていたようだ。そこでは誰かがデュエルをしている様子だ。

 

「こんなところで巻き込まれたらたまらないな・・・」

 

「待て」

 

「ん?」

 

「お前、龍谷遊来だな!?デュエルしろ!」

 

「なんだ、いきなり?」

 

「俺が勝ったらお前の持つカードをすべて渡せ!」

 

「逆に負けたら?」

 

「俺が負けるはずないだろうが!俺はオベリスクブルーだ!」

 

「ああ・・・」

 

思い出した。この世界のデュエルアカデミアは階級による差別があったんだ。オベリスクブルーの生徒は変なエリート意識でラーイエロー、オシリスレッドの生徒を馬鹿にしているんだ。

 

「・・・分かった。負けたらカードは渡そう・・・だが、俺が勝ったら俺に近づくなよ」

 

「ふん、ラーイエローごときが俺に勝てる訳がないだろうが!」

 

「・・・・」

 

今回は俺が組んだHEROデッキで行こう。実戦での試運転が欲しかったところだし。

 

「「デュエル!!」」

 

時間は午後16時半、日は落ちてるけどなんとかなるだろう。

 

 

オベリスクブルー男子生徒LP:4000

 

龍谷遊来LP:4000

 

「俺が先攻か、ドロー」

 

手札[現在6枚]

 

※E・HERO シャドー・ミスト

※マスク・チェンジ

※増援

※リロード

※ダメージダイエット

※E・HERO ブレイズマン

 

「まずまずか・・・防御に偏ってるけど。先ずは魔法カード『増援』を発動!デッキからレベル4の戦士族モンスターを手札に加える。『E・HERO エアーマン』を手札に加えそのまま召喚。エアーマンの効果発動!このカードが通常召喚または特殊召喚に成功した時、次の二つの効果から1つを選択して発動する事ができる」

 

「一つは自分フィールド上に存在するこのカード以外の「HERO」と名のついたモンスターの数まで、フィールド上に存在する魔法または罠カードを破壊する事ができる効果」

 

「もう一つは自分のデッキから「HERO」と名のついたモンスター1体を手札に加える効果。俺は二つ目のサーチ効果を発動。その効果により、『E・HERO ソリッドマン』を手札に加える。更にカードを3枚伏せて・・・!ターンエンド」

 

 

『E・HERO エアーマン』星4/風属性/戦士族・効果/攻撃力1800/守備力300

 

 

「E・HEROだと?あのオシリスレッドの遊城十代の真似か?ハハハハ!俺のターン、ドロー!」

 

相手は遊来を見てニヤリと笑う。自分は必ず勝てるといった感じの笑みだ。

 

「俺に渡す準備をしておけよ!俺は不屈闘士レイレイを召喚!」

 

『不屈闘士レイレイ』星4/地属性/獣戦士族/攻撃力2300/守備力0

 

「下級アタッカーとして高レベルのラインに入るカード・・・」

 

「覚悟しろ!バトルだ!!レイレイでザコHEROにアタック!」

 

「っ・・・!」

 

レイレイが咆哮を上げつつ、エアーマンに殴りかかってくる。遊来は一瞬だけ、思考したが切り替えてリバースカードを発動させるボタンを押した。

 

「速攻魔法発動・・・!マスク・チェンジ」

 

「マスク・チェンジだと!?」

 

「マスク・チェンジは自分フィールドの「HERO」モンスター1体を対象として発動する事ができる。そのモンスターを墓地へ送り、そのモンスターと同じ属性の「M・HERO」モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する・・・!エアーマン、変身!!」

 

「変身?」

 

ソリッドヴィジョンの演出なのか、新たなマスクとベルトが現れそれがエアーマンの腰に巻き付き、光り始める。その光に包まれたエアーマンはバイザーの上に新しい仮面が装着され姿を変えていき、黄緑色のアーマーに赤い複眼のマスク、更には白いマントを羽織った新しいヒーローの姿へと変身した。宛ら其れは特撮作品の演出と似ていた。

 

咆哮と気合の入った声と共に新しいヒーローが遊来の目の前に腕組みをしながら立った。

 

「『M・HERO カミカゼ』変身召喚!!」

 

『M・HERO カミカゼ』星8/風属性/戦士族・融合/効果 攻撃力2700/守備力1900

 

「こ、攻撃力2700だとぉ!?」

 

「更にこのカードは戦闘では破壊されず、このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手はバトルフェイズにモンスター1体でしか攻撃できない。更にこのカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時に発動できる。俺はデッキからカードを1枚ドローする事ができる」

 

「戦闘破壊耐性に攻撃制限、更にはモンスターを戦闘破壊をした時にドロー効果だと!?インチキもいい加減にしろ!!」

 

「・・・・・れ」

 

「ん?」

 

「黙れよ・・・ザコとか言ってるその口を」

 

遊来は静かに怒っていた。自分が使っているカードを馬鹿にされるのはいい。だが、友人が信じてやまないカテゴリーを馬鹿にしているのは我慢が出来なかった。確かにザコや使えないと言われて、使われなくなったカードは前の世界でも多数ある。どうしても使いたいと知恵を絞って使えるようにしたデュエリストもいた。デッキに入る可能性が低いというだけで、捨てられる訳ではなかった。無論、完全に未練をなくして捨ててしまった者も中にいるだろう。それでも、この世界で最初に仲良くしてくれた友人を馬鹿にされているようにしか聞こえなかった。前世が大人だったとしても遊来自身、そこまで聞き分けられる性格ではなかったのだ。

 

「なんだと!?ふん、ラーイエローの分際で!戦闘を中断・・カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

「もういい・・・完全に倒す。ドロー」

 

 

[ドローカード]

 

※マスク・チャージ

 

 

[現在の手札・四枚]

 

※E・HERO シャドー・ミスト

※E・HERO ブレイズマン

※E・HERO ソリッドマン

※マスク・チャージ

 

 

「先ずは手札から魔法カード『マスク・チャージ』を発動。このカードは墓地にある『HERO』モンスター1体と『チェンジ』の速攻魔法1枚を対象として発動でき、そのカードを手札に加える。よって『E・HERO エアーマン』と『マスク・チェンジ』を手札に加える」

 

「更に『E・HERO ソリッドマン』を召喚。このカードには二つの効果が有り、二番目の効果は1ターンに1度しか使用できない。一つ目はこのカードが召喚に成功した時、手札からレベル4以下の「HERO」モンスター1体を特殊召喚する事が出来る」

 

「二つ目はこのカードが魔法カードの効果でモンスターゾーンから墓地へ送られた場合、「E・HEROソリッドマン」以外の自分の墓地の「HERO」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する効果だ」

 

「俺は一つ目の効果で手札から『E・HERO ブレイズマン』を特殊召喚。このカードの効果も1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。一つ目はこのカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから『融合』1枚を手札に加える」

 

「二つ目は自分メインフェイズに発動できる。デッキから『E・HEROブレイズマン』以外の『E・HERO』モンスター1体を墓地へ送る。このカードはターン終了時まで、この効果で墓地へ送ったモンスターと同じ属性・攻撃力・守備力になる。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は融合モンスターしか特殊召喚できない」

 

ここまでの展開、更には『マスク・チャージ』によって墓地にあった『マスク・チェンジ』が再び遊来の手札に戻ってしまった事にブルー男子生徒は歯ぎしりする。

 

「E・HERO ブレイズマン』の効果で『融合』をデッキから手札に加え、俺は再び『マスク・チェンジ』を『E・HERO ソリッドマン』に対して発動。ソリッドマン、変身!」

 

再び変身の過程が行われるが、エアーマンとは違い風ではなく大地を象徴する岩がソリッドマンに張り付いていく。中から光が溢れその手には槍を持ち、青いマントをなびかせ兜を被った西洋騎士のような姿をしたヒーローが張り付いた岩の中から飛び出してきた。

 

「『M・HERO ダイアン』変身召喚!」

 

『M・HERO ダイアン』星8/地属性/戦士族・融合/効果 攻撃力2800/守備力3000

 

「な、上級モンスターが二体!?」

 

「バトルフェイズ!カミカゼでレイレイに攻撃!神風波!」

 

「ふん、罠カード。『和睦の使者』を発動!このターン、モンスターは破壊されず戦闘ダメージはゼロだ」

 

レイレイが使者の作り出す防壁に守られ相手は全くの無傷であり、モンスターも健在だ。

 

「防がれたか・・・」

 

[現在の手札・2枚]

 

※E・HERO シャドー・ミスト

※融合

 

「ターンエンド・・・」

 

「俺のターン、ちっ!モンスターをセット、カードを一枚セットして・・・ターンエンドだ!」

 

どうやら引いたカードが良くなかったようだ。苦虫を潰すような顔をしている。

 

「俺の・・・ターン、ドロー」

 

[ドローカード]

※E・HERO リキッドマン

 

[現在の手札・3枚]

 

※E・HERO シャドー・ミスト

※融合

※E・HERO リキッドマン

 

「・・・・俺はE・HERO リキッドマンを召喚・・!このカードの効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。一つ目はこのカードが召喚に成功した時、『E・HEROリキッドマン』以外の自分の墓地のレベル4以下の「HERO」モンスター1体を対象として発動でき、そのモンスターを特殊召喚する事が出来る」

 

「二つ目はこのカードが『HERO』融合モンスターの融合召喚の素材になり、墓地へ送られた場合または除外された場合に発動できる。自分はデッキから2枚ドローし、その後手札を1枚選んで捨てる効果だ」

 

「俺は手札から『融合』を発動!場のリキッドマンとブレイズマンを融合する」

 

「融合だと!?」

 

「全てを凍てつかせる極寒のヒーロー!『E・HERO アブソルートZero』融合召喚!」

 

『E・HERO アブソルートZero』星8/水属性/戦士族・融合/効果 攻撃力2500/守備力2000

 

「なっ!?」

 

「そしてリキッドマンの二番目の効果を発動『HERO』融合モンスターの融合召喚の素材になり、墓地へ送られた場合または除外された場合に発動。自分はデッキから2枚ドローし、その後手札を1枚選んで捨てる」

 

[ドローカード]

※E・HERO ボルテック

※フォーム・チェンジ

 

[現在の手札・3枚]

※E・HERO シャドー・ミスト

※E・HERO ボルテック

※フォーム・チェンジ

 

「その後、手札一枚を捨てる」

 

[現在の手札・2枚]

※E・HERO ボルテック

※フォーム・チェンジ

 

手札は二枚となるが、これが融合を多用するデッキの最大の弱点である。展開の為に大量に手札を消費するのだ。運良く上級モンスターを出せてはいるが、決める時に決めなければガス欠を起こしてしまうのだ。

 

「バトルフェイズ、カミカゼでセットモンスターを攻撃!神風波!」

 

「く、モンスターは『ジェネティック・ワーウルフ』だ!」

 

「カミカゼの効果でカードを一枚ドロー」

 

[ドローカード]

※E・HERO オーシャン

 

「Zeroでレイレイに、ダイアンでダイレクトアタック!」

 

「うああああ!」

 

オベリスクブルー男子生徒LP:1200

 

「く、くそ!俺のターン、ドロー!くっ、また!」

 

ドローしたカードを手札に加え、何度も見直している。逆転の一枚か、モンスターカードを引けずに勝てる要素が無いのだろう。

 

「ち、ちくしょう。ターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー」

 

[ドローカード]

※E・HERO フォレストマン

 

[現在の手札・4枚]

※E・HERO ボルテック

※フォーム・チェンジ

※E・HERO オーシャン

※E・HERO フォレストマン

 

「モンスター3体でダイレクトアタック」

 

「ぐわああああ!」

 

オベリスクブルー男子生徒LP:0

 

デュエル終了と同時に相手はひざをから崩れ落ちた。ブツブツと何かをつぶやいている。

 

「オベリスクブルーの俺が負けた?ラーイエロー相手に・・・」

 

「約束だ。もう、俺に近づかないでくれよ」

 

別の場所も静かになっている所を見るとデュエルが終わったか、中断して帰ってしまったのだろう。遊来も急いで寮に帰宅することにした。

 

「やっぱりHEROデッキ・・・難しいかも」

 

そう思いながら、明日はオシリスレッドに足を運ぼう。そう考えながら部屋の扉を開けて入っていった。




長くなってしまった。カードの説明を入れるとどうしても長くなってしまうんですよね。

次回はヒロイン(作品的な意味)との邂逅。


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5話

ヒロインとの邂逅


一方的なアンティルールのデュエルを挑まれて以降、陰口などはあるがほんのり平和な状態が続いていた。

 

十代には授業の後にそちらの部屋にお邪魔するという旨を伝えたらぜひ来てくれと返事を貰ったのでそのまま授業に専念し、放課後を迎える。

 

オシリスレッド寮の到着し部屋の扉をノックすると十代からの返事が返ってくる。ドアノブを捻ってドアを開けるとそこには十代の他に二人の生徒がいた。

 

「待ってたぜ!遊来!!」

 

「ああ、ところでその二人は?」

 

恐らくは三人で一つの部屋を使っておりルームメイトなのだろう。二人はこちらに振り返ると近づいてきて自己紹介を始めた。

 

「丸藤翔っす!十代のアニキから話は聞いてるっす!」

 

「前田隼人なんだな、よろしくなんだな」

 

「龍谷遊来だ。よろしく」

 

「遊来くんは珍しいカテゴリーを使うって」

 

「ああ、ドラグニティの事か?」

 

「興味深いんだな、そのデッキを見てみたいんだな」

 

「別に構わないさ」

 

そういって遊来は部屋の中に入り、三人が話し合いで使っているテーブルの上にドラグニティのデッキを広げた。

 

コアラのような体格の隼人はドラグニティのカードを一枚一枚、丁寧に見ている。翔の方は使い方が難しく感じているようで頭をひねっている。

 

「鳥獣族とドラゴン族の混合なんだよな。ドラグニティは」

 

「ああ、展開力はあるけどまだ押しが足りないんだよ」

 

「あれ?アニキはこのデッキを知っているの?」

 

「知ってるもなにもアカデミアに入る前から対戦してるぜ!」

 

十代の自慢げな笑顔に遊来は苦笑する。このドラグニティデッキで十代のHEROデッキに完敗した事もあるのだ。

 

「十代のHEROは爆発力がすごいからな」

 

「アニキ羨ましいっす。けど、こんな難しそうなデッキを使う遊来くんもすごいっす」

 

「まぁ、属性は統一されてるけど種族が混合してるから難しく感じるよな。ん?どうした隼人?」

 

「いやぁ・・・このドラグニティってカードを見てたら色々なアイディアが浮かんでくるんだな」

 

「へぇ・・・」

 

と、会話をしつつデュエルばかりじゃなく勉強面でも話をした。勉強の話になると三人は聞きたくないと言いたげだったが軽くやるだけでも違うとだけ話した。

 

しばらくして、遊来は自分の寮に戻ると言ってドラグニティデッキを回収して、部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

 

「やっぱり、デミスルインデッキにシンクロを入れるのは難しいかぁ・・・」

 

『無理もありません、儀式特化にしてしまうとEXデッキとの併用は難しいですから』

 

「そうだよなぁ・・・せめてコイツを使えば良いんだろうけど・・・そうなると不味いからなぁ」

 

そうルインと会話しつつ遊来は一枚のカードを見る。まるで宇宙を背景にしているような黒いカード。それはこの世界では使う事を極力避けているカードである。すぐに決着をつけてしまうデッキと同じで使わずにデッキケースの中で封印している。

 

このカードをペガサスに見せたが、ペガサスからも使用する事を禁じられている。使用する時には余程の事がなければならないと。別の黒いカードも研究用に渡している為、使用する事はできない。

 

「無い物ねだりをしても仕方ないな、とにかくデッキを仕上げよう」

 

そう呟いてデッキを調整しているとデュエルディスクから着信音が鳴った。この機能はIDを交換した相手同士なら携帯電話のように通信出来る機能である。相手は十代だった。

 

「遊来!翔が攫われた!すぐに湖の方に来てくれ!」

 

「分かった、すぐ行くよ」

 

僅かに記憶にある事によればこのイベントは恐らく、あの人物との邂逅になるだろう。今回はデミスルインデッキを手に十代が指定した場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「遊来!来てくれたか!!」

 

「今日な呼び出しだったから驚いたけどね」

 

向かい側に視線を向けると少し大きめなボートの上に翔が縄で縛られて乗せられており、その他にオベリスクブルーの女子生徒三人が乗っている。一人は見覚えが有る、この世界・・・つまり遊戯王GXのヒロイン、天上院明日香だ。元の世界でも遊戯王ヒロインの中でトップクラスの人気を誇っていた。

 

実在の人物としてみれば本当に同年代か?と疑問に思ってしまう。女性としてモデルと言っても通用しそうな高身長、手入れを欠かしていない事を伺わせる長く美しい金髪、そして女性の特徴とも言える豊満なバスト、これらの要素をしっかりとクリアしているのだ。だが、彼女は普段、強気な性格を表に出している様子が分かる。優しくはあっても気品に満ちている雰囲気を態度に出しているからだろう。

 

その隣にいる取り巻きの二人にも見覚えが有る。一人は枕田ジュンコ。ミーハーな性格でゲームではハーピィレディ系のデッキを使っていたはずだ。もう一人は浜口ももえ、お嬢様キャラが使うような口調をしている事からお嬢様育ちなのだとわかる。イケメンに目がなく、カードもイケメンを使うがゲームだとトンでもない物を使ってきてびっくりした覚えがある。

 

明日香を除けばこの二人も人気はある方だった。ジュンコはギャル系っぽいし・・・ももえも計算タイプの天然系って感じだけど態度が柔らかくなってからは凄かったもの。

 

「アニキ~、遊来くん!やっぱり来てくれたんだね~」

 

「翔、本当に女子への覗きをしたのか?」

 

「冤罪だってば~!」

 

「そもそも、いきなり呼び出しがあったり手紙が来たりしても好意の可能性は低いって考えなかったのか?」

 

「だ、だって~」

 

「はぁ・・・とにかく、女性の誘いっぽい呼び出しでも少しは疑ってかかれよ」

 

『マスターは厳しいんですね?』

 

「実体験だからな・・・真面目に」

 

『ええ・・・・』

 

そんなルインと遊来の会話を尻目に十代は明日香に声をかけていた。どうやら翔を解放する条件を話し合っているようだ。

 

どうやらオシリスレッドの中でも、オベリスクブルーに匹敵する実力者である十代とのデュエルを望んでいたようだ。

 

「それじゃ、行くぜ?俺が勝ったら翔を返してもらうぜ」

 

「ええ、良いわ」

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

 

 

結果は十代の勝利だ。明日香は『サイバー・ブレイダー』をエースとしたデッキを組んでいたけど、十代の融合戦術に徐々に追い込まれ、最後はクレイマンとスパークマンを融合させた『サンダー・ジャイアント』がフィニッシャーとなって決着がついた。

 

翔を約束通り返してもらい、こちらのボートに乗せる。

 

「ありがとう、アニキ」

 

「へへ、別に構わないぜ」

 

「俺、何のために呼ばれたんだよ?」

 

遊来の気持ちも最もだが、気にされてはいない。目的を果たした事で帰宅しようとした時だった。

 

「待って、嬉しい誤算だわ。龍谷遊来、私とデュエルしてくれないかしら?」

 

遊来は明日香からの言葉にキョトンとするが、遊来は口を開く。

 

「もしかして、シンクロ召喚を見たいのか?今持って来てるデッキはドラグニティでもシンクロ召喚をメインにしたデッキでもないから、シンクロ召喚を見せる事は出来ないよ?」

 

「構わないわ、シンクロ召喚はまた別の機会に見せてもらうから。私は貴方とデュエルしてみたいの」

 

「明日香さんがお願いしてるんだから!」

 

「女性の誘いを断るなど、殿方としてよくありませんわよ?」

 

「うーん、分かった。そのデュエル・・・受けて立つよ」

 

「ありがとう」

 

明日香にお礼を言われた後、十代と翔に視線を向ける。どうやら二人もデュエルを見たい様子だ。

 

「悪いけど、時間を貰うからな。十代、翔」

 

「おう、構わないぜ!」

 

「遊来くんのデュエル、楽しみッス!」

 

「それじゃ、行くぜ」

 

「ええ、いつでも良いわ!」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

龍谷遊来:LP4000

 

天上院明日香:LP4000

 

 

 

手元を見るとまたもや遊来の先攻からだ。最近先攻が多くないかと、心の中で愚痴りながらデッキに手をかける。

 

「先攻は俺だな、ドロー」

 

[ドローカード]

 

※エンドレス・オブ・ザ・ワールド

 

[現在の手札・6枚]

 

※魔神儀[デビリチャル]-タリスマンドラ

※ブレイク・オブ・ザ・ワールド

※魔神儀[デビリチャル]-キャンドール

※終焉の覇王デミス

※攻撃の無力化

※エンドレス・オブ・ザ・ワールド

 

うーん、これは重いぞ。儀式デッキの宿命だけど、展開は出来るから大丈夫だと思いたい。そう考えながら俺は手札に手をかける。

 

「俺は最初にフィールド魔法『ブレイク・オブ・ザ・ワールド』を発動。このフィールド魔法は1ターンに1度、自分フィールドの儀式モンスター1体を対象として発動でき、手札の儀式モンスター1体をターン終了時まで公開する事で一つ目の効果を発動できる。その公開した儀式モンスターのレベルはターン終了時まで、対象のモンスターのレベルと同じになる」

 

「二つ目は1ターンに1度、自分フィールドに「破滅の女神ルイン」または「終焉の王デミス」が儀式召喚された場合、2つのうちの効果から1つを選択して発動できる。一つは自分はデッキから1枚ドローする効果。もう一つはフィールドのカード1枚を選んで破壊する効果だ」

 

雷が落ち、大地に走っていく。そんなフィールド魔法の背景に遊来以外の全員が震える。ソリッドヴィジョンと分かっていても天災は怖いのだ。発動した本人はすまし顔のままである。

 

「更に手札にある魔神儀[デビリチャル]-キャンドールの効果を発動する」

 

『魔神儀[デビリチャル]-キャンドール』星4/光属性/炎族/効果/攻撃力0/守備力0

 

「このカードには3つの効果がある。だが、この効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。一つ目は手札の儀式魔法カードを1枚を相手に見せて発動できる。『魔神儀[デビリチャル]-キャンドール』以外のデッキにある「魔神儀」モンスター1体と手札のこのカードを特殊召喚する効果」

 

「二つ目はこのカードがデッキからの特殊召喚に成功した場合に発動できる効果。デッキから儀式魔法カード1枚を手札に加える事が出来る。最後に三つ目はこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分は融合デッキからモンスターを特殊召喚できないデメリット効果だ」

 

「儀式召喚デッキ、かなり珍しい系統のデッキもあるのね?」

 

「このデッキは俺の相棒の為に組んだデッキだからな」

 

「儀式召喚も使うんすね、遊来くん」

 

「ああ、あのデッキもかなり強いぜ。ドラグニティと違ってあまり闘わなかったけどな」

 

明日香と遊来、十代と翔の会話がそれぞれ聞こえてくる。ジュンコとももえは儀式という扱いの難しいデッキを使う遊来にまだ懐疑的な感情を持っている様子だ。

 

「俺は手札にある『エンドレス・オブ・ザ・ワールド』を見せて、『魔神儀[デビリチャル]-キャンドール』とデッキから『魔神儀[デビリチャル]-タリスマンドラ』をそれぞれ特殊召喚!」

 

『魔神儀[デビリチャル]-タリスマンドラ』星6/闇属性/植物族/効果/攻撃力0/守備力0

 

マンドラゴラに似たモンスターとキャンドルに点った炎がモンスターとなった二種類のモンスター達に驚く。

 

「レベル6のモンスターを生贄無しで召喚!?それに、モンスターもデッキから特殊召喚するなんて!」

 

「で、でも両方とも攻撃力と守備力が0ッス!!」

 

「壁モンスターじゃないの?」

 

「違和感がありますわね?」

 

「いや、遊来の奴、狙ってるぜ!」

 

遊来はそれぞれの会話を聞きつつ、さらにモンスター効果の発動を宣言する。

 

「『魔神儀[デビリチャル]-タリスマンドラ』の効果、このカードがデッキから特殊召喚された事で儀式モンスターを一体手札に加える。俺は『破滅の美神ルイン』を手札に加える。そして手札から儀式魔法『エンドレス・オブ・ザ・ワールド』を発動する!」

 

「儀式魔法、先程加えたモンスターを出してくるの?」

 

「『魔神儀[デビリチャル]-タリスマンドラ』と魔神儀[デビリチャル]-キャンドール』を儀式の生贄とする。そのレベルは・・・10だ!」

 

「レベル10の儀式召喚!?」

 

「破滅という名の破壊、終焉という名の終わり・・・今こそ新たに世界を作り出す柱となれ!儀式召喚・・・!終焉の覇王デミス!!」

 

重厚な鎧に戦斧、更には悪魔とも覇者とも呼ぶにふさわしい強大なオーラが見えている。何も言葉は発さないが、見るもの全てに与える重圧は限りなく強い。

 

『終焉の覇王デミス』儀式/効果/星10/闇属性/悪魔族/攻撃力3000/守備力3000『エンドレス・オブ・ザ・ワールド』により降臨。

 

「このカードは4つの効果がある。一つは目はこのカードのカード名は手札・フィールドに存在する限り『終焉の王デミス』として扱う効果。二つ目の効果は儀式召喚したこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分の儀式モンスターは戦闘では破壊されない効果。三つ目は儀式モンスターのみを使用して儀式召喚したこのカードの効果を発動するために払うLPは必要なくなる。四つ目は1ターンに1度、2000LPを払って発動できる。フィールドの他のカードを全て破壊し、破壊した相手フィールドのカードの数×200ダメージを相手に与える効果だ。今現在は戦闘破壊耐性と名称のみが永続だけどな」

 

「攻撃力、守備力共に3000・・・!」

 

この世界での攻撃力、守備力3000は驚異的に映るだろう。何しろ攻守共に3000以下のビートダウン型のデッキがこの世界の主流なのだから。最もその常識に当てはまらないデッキを使う人間もいるのだが。

 

[現在の手札・3枚]

 

※魔神儀[デビリチャル]-タリスマンドラ

※攻撃の無力化

※破滅の美神ルイン

 

 

「『ブレイク・オブ・ザ・ワールド』の効果を発動。『終焉の覇王デミス』はフィールドでは『終焉の王デミス』として扱うため、カードを一枚ドロー」

 

[ドローカード]

※破滅の女神ルイン

 

おいおい、此処で女神の方のルインか。デミスは簡単にはやられないだろうけど・・・雲行きが怪しくなってきたぞ。

 

『マスター?何か、ご不満が?』

 

ルインが睨んでくるが、デュエルの戦略としての考えは今の状況で必要ではない。だが、遊来は次のターンであのカードを引ければと強く思う。

 

「俺はカードを一枚セットして、ターンエンド」

 

[現在の手札・3枚]

※魔神儀[デビリチャル]-タリスマンドラ

※破滅の美神ルイン

※破滅の女神ルイン

 

「私のターン、ドロー!」

 

「私は手札から融合を発動!手札の『エトワール・サイバー』と『ブレード・スケーター』を融合!プリマの舞台に立つ、氷上の踊り手!『サイバー・ブレイダー』!召喚!!」

 

まるでフィギュアスケートの選手のように優雅で力強く、そして美しく現れた女性の戦士。これこそが明日香のエースであるサイバー・ブレイダーだ。

 

「サイバー・ブレイダー・・・相手フィールドのモンスターの数によって、カードの効果が変わるカード。1体なら、そのカードは戦闘では破壊されない。2体ならカードの攻撃力は倍になる。3体ならば相手が発動したカードの効果は無効化される効果・・・だったかな?」

 

「ご明察、よく知っているわね。先ずは一番目の効果『パ・ド・ドゥ!』」

 

「戦闘破壊耐性が付いたか、それでもまだデミスの数値には届いて居ない」

 

ものすごくフラグっぽいことを口走ってしまった。それを聞いた明日香は薄く笑みを口元に浮かべて答えた。

 

「これで終わりではないわ。速攻魔法『スター・チェンジャー』を発動!」

 

「ええっ!?」

 

遊来は此処で驚愕する。『スター・チェンジャー』はこの世界では未来のカードだ。それを此処で使ってきたという事は本来のGXの世界とは似て異なる世界なのだろう。もしくは自分というイレギュラーが現れた事で僅かながらに世界の軌道がズレたのかもしれない。

 

「速攻魔法『スター・チェンジャー』はフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、二つの効果から1つを選択して発動できる。一つ目はモンスターのレベルを1つ上げる。二つ目はモンスターのレベルを1つ下げる。私は二つ目の効果で『サイバー・ブレイダー』のレベルを7から6に下げるわ」

 

「更に装備魔法『フュージョン・ウェポン』を装備!『サイバー・ブレイダー』の攻撃力と守備力を1500ポイントアップ!」

 

「今の『サイバー・ブレイダー』は攻撃力が3600、守備力が2300。デミスを上回った!?」

 

「お互いに戦闘破壊はされないけど、ダメージは受けてもらうわ!『サイバー・ブレイダー』!グリッサード・スラッシュ!!」

 

フュギュアスケートのスピンを披露しつつ、デミスに向けて遠心力を加えたキックが炸裂した。デミスは自身の効果で戦闘破壊されないがその余波が遊来を襲う。

 

「ぐっ・・うううう!」

 

龍谷遊来:LP3400

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンドよ」

 

「手札を使い切ったか・・・」

 

「ええ、そうしないと貴方を攻める事が出来なかったから」

 

「なるほどね」

 

遊来の中で僅かに変化があった。この学校に来て十代以外に初めてライフポイントを削られたのだ。それに対して僅かに嬉しさがこみ上げてきていた。忘れていたデュエルへの情熱、それが僅かに戻ったのだ。

 

「俺のターン、ドロー」

 

[ドローカード]

※トレード・イン

 

[現在の手札・4枚]

※魔神儀[デビリチャル]-タリスマンドラ

※破滅の美神ルイン

※破滅の女神ルイン

※トレード・イン

 

ここでドローカードが来てくれた。だが、このターンで決める事はできない。一応、伏せカードはあるが守り切れるとなると怪しい、ならば此処は。

 

「俺は手札から魔法カード『トレード・イン』を発動!手札の『破滅の女神ルイン』を墓地に送り、二枚ドロー!」

 

[ドローカード]

※エネミーコントローラー

※儀式の準備

 

此処で念の為と入れていたカードが来てくれたのだが、相手は『サイバー・ブレイダー』二体目のモンスターを出してしまえば、攻撃力がさらに上昇し手に負えなくなってしまう。

 

「仕方ない・・・俺はカードを一枚伏せて魔法カード『儀式の準備』を発動。デッキからレベル7以下の儀式モンスター1体を手札に加え、その後に自分の墓地の儀式魔法カード1枚を選んで手札に加える事ができる。俺はレベル7の儀式モンスター『古聖戴サウラヴィス』をデッキから手札に加え、墓地にある『エンドレス・オブ・ザ・ワールド』を手札に加える。更にデミスを守備表示に変更。ターンエンド」

 

[現在の手札・4枚]

※魔神儀[デビリチャル]-タリスマンドラ

※破滅の美神ルイン

※古聖戴サウラヴィス

※エンドレス・オブ・ザ・ワールド

 

「私のターン、ドロー!手札から『強欲な壷』を発動!デッキからカードを二枚ドロー!」

 

「ここでドローカードか」

 

似て異なる世界とは言えど、この世界はGXの世界。当時のルールだからまだ『強欲な壷』が現役で生きているのか。

 

「更に『天使の施し』を発動。カードを3枚引いて、2枚を捨てるわ」

 

「手札を回復させたか・・・」

 

明日香は手札をゼロの状態から回復させた。これはまさしく賞賛すべき事だろう。遊来自身も油断はしていないが、明日香の粘り強さに感服せざるを得ない。まさしくデッキが勝たせようとしているのではないかと思ってしまう。

 

「私は『サイバー・チュチュ』を召喚!」

 

「『サイバー・チュチュ』だって!?この状況でそのカードはヤバイ!」

 

『サイバー・チュチュ』効果/星3/地属性/戦士族/攻撃力1000/守備力800

 

「貴方は本当に知識が豊富ね?ならば、この子の効果も知っているでしょう?」

 

「相手フィールド上に存在する全てのモンスターの攻撃力が、そのカードの攻撃力よりも高い場合、相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる・・・・」

 

「ご名答よ。『サイバー・チュチュ』!ダイレクトアタック!」

 

「流石にさせない!リバースカード、オープン!『攻撃の無力化』」

 

「っ、流石に防いできたわね。ターンエンドよ」

 

「俺のターン、ドロー」

 

[ドローカード]

※マンジュ・ゴッド

 

[現在の手札・5枚]

※魔神儀[デビリチャル]-タリスマンドラ

※破滅の美神ルイン

※古聖戴サウラヴィス

※エンドレス・オブ・ザ・ワールド

※マンジュ・ゴッド

 

ルインの加護かモンスターの数の調整に役立つものが来てくれた。これでやれる事が出来るのだが、美神の方のルインを召喚出来れば勝てると予想する。だが、ルインの効果は儀式モンスターを使って儀式召喚しなければ効果を得られない。ならば・・・。

 

「俺は手札から儀式魔法『エンドレス・オブ・ザ・ワールド』を発動!」

 

「また、儀式召喚。次は何が!?」

 

「終焉の覇王と対を成す、破滅の美神よ。世界の柱となれ!儀式召喚!『破滅の美神ルイン』」

 

「デミスを儀式召喚の生贄に!?」

 

明日香はデミスを犠牲にしてきた遊来の考えに驚愕する。攻撃力及び守備力3000のデミスを生贄にするなど自分の常識では考えられなかったからだ。

 

『破滅の美神ルイン』儀式・効果/星10/光属性/天使族/攻撃力2900/守備力3000「エンドレス・オブ・ザ・ワールド」により降臨。

 

「このルインも4つの効果がある。一つ目はこのカードが手札・フィールドに存在する限り『破滅の女神ルイン』として扱う効果。二つ目は儀式召喚したこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの儀式モンスターは効果では破壊されない効果。三つ目は儀式モンスターのみを使用して儀式召喚したこのカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる効果。四つ目はこのカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合に発動できる。そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える効果だ」

 

「更にフィールド魔法『ブレイク・オブ・ザ・ワールド』の効果を発動。『破滅の美神ルイン』はフィールドでは『破滅の女神ルイン』として扱うため、カードを一枚ドロー」

 

[ドローカード]

※奈落の落とし穴

 

[現在の手札・4枚]

※魔神儀[デビリチャル]-タリスマンドラ

※古聖戴サウラヴィス

※マンジュ・ゴッド

※奈落の落とし穴

 

『マスター、貴方に勝利を・・・』

 

「ああ、頼む」

 

「召喚したは良いけど、私の『サイバー・ブレイダー』の攻撃力は3600。更には戦闘破壊も出来ないわ!」

 

「ああ、そして俺はマンジュ・ゴッドを通常召喚」

 

「?どういうつもり!?これで『サイバー・ブレイダー』の攻撃力は倍になるわ『パ・ド・トロワ!』」

 

『サイバー・ブレイダー』の攻撃力が倍となり、7200というとんでもない数値となった。だが、遊来の狙いはそこではなかった。

 

「マンジュ・ゴッドを召喚・反転召喚に成功した時デッキから儀式モンスター1体または儀式魔法カード1枚を手札に加える。俺は『終焉の王デミス』を手札に加える。さらに速攻魔法『エネミー・コントローラー』を発動」

 

「エ、『エネミー・コントローラー』!?」

 

「このカードの効果は二つの効果から1つを選択して発動できる。一つは相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。その相手の表側表示モンスターの表示形式を変更する。二つ目は自分フィールドのモンスター1体をリリースし、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。その表側表示モンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る効果」

 

「俺は一番目の効果を選択し『サイバー・ブレイダー』を守備表示に変更!」

 

「そんな、しまった!?」

 

「そして、美神ルインはデミスを使って召喚された為に三つ目の効果で1度のバトルフェイズ中に2回攻撃が可能。四つ目の効果でこのカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合に発動できる。そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える効果を持つ」

 

「!じゃ、じゃあ!」

 

「ああ、ルインで『サイバー・ブレイダー』に攻撃!破滅の閃光!」

 

「ああああっ!」

 

『サイバー・ブレイダー』は守備表示であった為に戦闘ダメージはない。だが、ルインのバーンダメージ効果は適応されている。

 

天上院明日香:LP1900

 

「ま、まだ!」

 

「いや、このターンで終わりだよ。そっちの場には[攻撃表示]になっている『サイバー・チュチュ』が残っているんだからな」

 

「あ・・・」

 

それに気づいた明日香はあっけにとられたような声を出していた。遊来は容赦なく攻撃宣言する。

 

「ルイン、『サイバー・チュチュ』に攻撃!」

 

「きゃああああ!」

 

天上院明日香:LP0

 

デュエルが終了し、明日香が伏せていたカードを聞くと『誤作動[マルファンクション]』だったそうだ。あの時『攻撃の無力化』を無効にしていても戻っちゃうから、使わせる意味で使わなかったのかと考えた。

 

「ありがとう。良いデュエルだったわ」

 

「こちらこそ」

 

「次はシンクロ召喚を見せてくれると嬉しいわ」

 

「機会があればね。それじゃあ・・・えっと」

 

「天上院明日香、明日香と呼んでくれれば良いわ」

 

そう言って遊来は十代と翔と共に戻っていった。敗北はしたが明日香は遊来に対する違和感があったのを感じていた。確かに強いのだが彼からはデュエルに対する熱意が僅かしかないと。




次回は試験と昇格

デュエル描写・・・難しいです。はい


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6話

試験と昇格


来週に迫る筆記試験と実技試験に備えて遊来が十代、翔、隼人の三人を巻き込んで勉強とデッキの調整をしていた。

 

自分と一緒に飛ばされてきたカードも後で数えたら魔法と罠カード更にはモンスターカードなども、かなりの枚数があったので、自分のデッキ分を抜くと十代達のデッキに組み込めないかと調整している。勉強を終えて今は十代のデッキを広げて新しいHEROや魔法、罠カードを組み込めないかと模索している。

 

「『フェザーマン』や『バーストレディ』達をデッキから抜かすのは嫌だなぁ・・・」

 

「『フレイムウイングマン』を出す事ができなくなるからな。だが、融合が主流だし、新しいカード入れてもいいと思うぞ(バブルマンなんてアニメ効果かもしれないし・・)」

 

心の中で遊来は自分の世界のカードと違う事を思いながらカードを見せる。それはM・HEROデッキを組んだ際に使ったカードの中の2枚だ。

 

「例えば・・・俺が組んだHEROデッキで使ってるコイツ等とか」

 

「遊来もHEROデッキを組んだのか!?後で見せてくれよ!」

 

「今の調整が終わったらな?ほら」

 

「どれどれ?『E・HERO リキッドマン』と『E・HERO ブレイズマン』・・・?なんだよこれ!どっちもスッゲー強力じゃん!」

 

「ブレイズマンはデッキからモンスター1体を墓地へ送る効果を使えばターン終了時まで、この効果で墓地へ送ったモンスターと同じ属性・攻撃力・守備力になるが・・・この効果の発動後、ターン終了時まで自分は融合モンスターしか特殊召喚できないというデメリットもある。もう一つは召喚・特殊召喚が成功した時『融合』がデッキからサーチできる。どちらも1ターンにどちらか一つしか発動できないけど」

 

カードの解説をしていると十代もなるほど、といった顔をしながらカードの効果をしっかり見ている。

 

「リキッドマンの方もカードの効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できないぞ。一つ目はこのカードが召喚に成功した時、『E・HEROリキッドマン』以外の自分の墓地のレベル4以下の「HERO」モンスター1体を対象として発動でき、そのモンスターを特殊召喚する事が出来る。二つ目はこのカードが『HERO』融合モンスターの融合召喚の素材になり、墓地へ送られた場合または除外された場合に発動できる。自分はデッキから2枚ドローし、その後手札を1枚選んで捨てる効果だ」

 

「墓地からの特殊召喚?という事は!?」

 

「そう、一つ目の効果を使えば融合に必要な素材モンスターを最低でもフィールドに2体確保できるってことさ」

 

「すっげえ・・・!けど、俺は水属性はマッドボールマンくらいしか・・・」

 

「俺が初めてアカデミアに向かう船の中で渡しただろ?あのカードを」

 

「え・・・あ!もしかして、あの時に貰ったカードか!?」

 

「そうさ。リキッドマンはそのまま融合素材になるがドロー効果は出来ない。ドロー効果を使いたいなら手札融合すればいい。墓地にあるなら『ミラクル・フュージョン』素材が除外されてるなら『平行世界融合』とかを利用すればいい。『平行世界融合』の方はデメリットが強いけど」

 

「そっかぁ・・・!他にも『E・HERO ガイア』とか遊来に貰ってばかりだな。俺」

 

「気にしなくて良いさ。枚数だけあっても使えるのは限られてるし」

 

「うーん、何だか申し訳なく感じるぜ」

 

「だから気にするなって」

 

 

 

 

 

 

そう話していると翔が会話に入ってきた。その手には自分の愛用デッキがある。

 

「遊来くん、僕のデッキも見てもらいたいんだけど良いかな?」

 

「ああ、構わないぜ」

 

翔のデッキを広げてみる。ビークロイドという機械族・地属性をメインとしたデッキだ。

 

「ん?『パワー・ボンド』か・・・良いカードが入っているな」

 

「あ、それは・・・」

 

翔の表情が曇りだす、まるでこのカードは使ってはいけないと戒めている様子だ。

 

「?それと・・・翔はどの軸で行きたいんだ?」

 

「え?」

 

話題を変えてきた遊来の顔を見るが『パワー・ボンド』に対しては追求してこない。それは遊来自身の気遣いだった。

 

「ビークロイドは最終系が融合だけど、その為に素材が多いのがデメリットなんだ。だから軸を絞ってデッキを調整した方がいい」

 

「軸・・」

 

「素材が多い融合モンスターを見て決めるといいさ」

 

「うーん・・・」

 

翔は『スーパービークロイド-ジャンボドリル』と『スーパービークロイド-ステルス・ユニオン』を見ながら悩み始めてしまった。扱いやすさと場を荒らす効果、どちらを主軸にするか迷うのは当然だろう。

 

「翔、融合で悩んでるなら、それ以外でも戦えるようにしておきたいだろ・・・えっと、あった!これを受け取ってくれ」

 

遊来は部屋から持ってきていたカードの入ったボックスから、カードを抜き出して翔に手渡した。

 

「え?『アーマロイドガイデンゴー』と『極戦機王ヴァルバロイド』!?こ、こんな強力なカードを!?」

 

「ああ、俺は持っていても使わないしな(逆に有り過ぎて困ってるくらいだし)」

 

「あ、ありがとう!遊来くん!」

 

「でも、強力なカードでも使いこなさなきゃ意味はないぞ?」

 

「う・・・」

 

「俺からの課題だ。このカードを使いこなしてみな」

 

「?『メガロイド都市』?フィールド魔法みたいだけど・・・」

 

「それを使いこなせるようになったら、ロイド使いとして右に出るものは居なくなるぞ?それと軸は決まったか?」

 

「う、うん・・・『スーパービークロイド-ジャンボドリル』でしばらく頑張ってみる」

 

翔は何かを抱えている様子だが、遊来はそれを聞く事はしなかった。本人の問題は本人しか解決できない。アドバイスをする事は出来ても解決するのは自分自身だからだ。

 

「そっか、隼人はどうする?」

 

「俺は別に・・・」

 

「そう言わずに見てもらえよ隼人!遊来のアドバイスは的確なんだぜ!」

 

十代の屈託のない言葉に顔を上げるが、隼人は乗り気ではない様子だ。理由は自分のデッキに問題がある事を指摘されたくないのだろう。

 

「俺のアドバイスが的確かどうかは分からないさ(ただ、前に居た自分の世界でデッキレシピとかゲームでやってただけだし)」

 

「うーん、そこまで言うならお願いするんだな」

 

「分かった・・・どれどれ?なるほど、獣族がメインのデッキか」

 

「俺、オーストラリアに行った事があって、そこで感銘を受けてデッキを組んだんだな」

 

「なるほど・・・獣族でありコアラメインか・・・サポート系のカードが欲しいな。となると、これなんか良いかもな」

 

そう言うと遊来は翔に下用に一枚の罠カードを隼人に手渡した。それを受け取った隼人は目を見開く。

 

「『幻獣の角』?罠カードだけどモンスターに装備させ攻撃力を800上げることが出来るカード・・・え、それに戦闘破壊した際にドロー効果もついているんだな!?」

 

「ああ、最大値は融合モンスターの『マスター・オブ・OZ』みたいだからな。『ビッグ・コアラ』や下級モンスターでも戦えるようにはしておくべきだろう?デッキ傾向を見ると耐えるべきに耐えて反撃する・・・って感じだしな。後は『森の番人グリーン・バブーン』も良さそうだ」

 

「お、俺はそんなにデッキを強化する気はないんだな!」

 

「いざという時には戦えるようにはしておくべきだろ?」

 

「それを言われると痛いんだな・・・」

 

隼人の意見を尊重しつつ、遊来は隼人に獣族のモンスターやサポートカードなどを見せる。オーストラリアの雰囲気を壊さない程度の強化をし終えると、今度は十代が遊来に話しかけてきた。

 

「なぁ、遊来。お前のHEROデッキを見せてくれよ~!」

 

「ああ、約束だったものな?ほら」

 

そう言って遊来は十代にM・HEROデッキを手渡して見せる。十代は目をキラキラさせながらカードを見ている。

 

「すっげえ・・・!遊来のHEROデッキはワクワクしてくる感じがすごく出てきてるぜ!」

 

「十代、十代は特撮作品とか見てたか?ヒーローものの」

 

「え?ああ・・・!小さい時に観てたぜ!ラスト三分間の逆転とかさ!」

 

「(ウルトラマン系だな・・・俺の記憶だと)俺も好きでさ、特に巨大化じゃなくて敵の技術で改造されて戦う変身ヒーローが!」

 

「遊来はそっち派なのか!?」

 

「ああ、十代が好きな方も嫌いじゃないけどな!」

 

二人してヒーロー談義が始まってしまい、遊来と十代の会話は止まらない様子だ。そんな二人を翔は呆れ顔で見ており、隼人は軽く笑っていた。

 

「アニキと遊来くん、すごい盛り上がってる・・・」

 

「共通の話題が出たから止まらないみたいなんだな・・・」

 

それから、二人の談義は遊来がルインから帰宅を促されるまで続いていた。

 

 

 

 

 

そして試験当日、十代と遊来は同時に呼ばれそれぞれの相手と対峙する。十代は万丈目準と呼ばれるオベリスクブルーの生徒。遊来は同じラーイエローの三沢大地であった。

 

「まさか、こんな形でデュエルする事になるなんてね」

 

「そうだな。だが、手加減はしない!」

 

「そのセリフ、ソックリそのまま返すよ。三沢」

 

「お前のドラグニティを封じるデッキ、試させてもらう!」

 

「ドラグニティを封じる・・・アレが入ってるのかな?」

 

二人はデッキをデュエルディスクにセットし、お互いに声を上げた。

 

「「デュエル!!」」

 

 

三沢大地 LP:4000

 

龍谷遊来 LP:4000

 

 

「先攻は俺だな」

 

「う・・・マジか」

 

三沢の先攻からデュエルがスタートした。遊来としては非常に運が無いと言える。相手はメタデッキを使いこなしてくる三沢大地だ。先攻となるとこちらの動きを封じてくる可能性が高い。

 

「俺はカードを一枚伏せ、モンスターを一体セットする。ターンエンドだ」

 

「?出だしが静かで不気味だな。俺のターン、ドロー」

 

「ドローと同時に永続罠発動!『群雄割拠』!!」

 

「げえっ!?」

 

遊来は初めてマズイ!と言わんばかりの声を出してしまった。それもその筈、ドラグニティデッキは2種類の種族の混合型のデッキであり、三沢が発動させてきた罠カード『群雄割拠』はフィールド上のモンスターを1種類しか出せなくなってしまうのだ。お互いとは言えど、遊来にとって厳しすぎる状態になったのは言うまでもない。

 

[ドローカード]

※竜の渓谷

 

[現在の手札・6枚]

※竜の渓谷

※ドラグニティ-レガトゥス

※攻撃の無力化

※ドラグニティアームズ-ミスティル

※ドラグニティ-クーゼ

※ドラグニティ-レムス

 

手札としては悪くないのだが『群雄割拠』の影響でシンクロ展開をほとんどを封じられているに等しい。ドラグニティのシンクロ召喚にはドラゴン族と鳥獣族モンスターがフィールド上に必要不可欠だからだ。遊来は手札を見ながら何とか突破口はないかと思考するが、どんなに思考しても鍵となるモンスターは一体だけであった。

 

「なら、俺は手札から『ドラグニティ-レムス』の効果を発動する。フィールド魔法『竜の渓谷』をサーチしてレムスを墓地に送り『竜の渓谷』をそのまま発動!」

 

「お得意のフィールドが来たか」

 

黄昏の太陽が現れ、あらゆる竜たちが飛び交う渓谷が出現する。だが、三沢は慌てた様子もなく、口元に笑みを浮かべている。

 

「(シンクロじゃなく・・・アイツ等を使うしかないかな?)」

 

『呼んだ?グラムも出番があるかも、って待ちくたびれてんぞ?』

 

そう話しかけてきたのはドラグニティの精霊の代表であるレヴァティンだ。ドラグニティアームズ-グラムとレヴァティンは採用率こそ高い訳ではないが、ドラグニティのドラゴン族の中でも高い攻撃力を持つ。だが、召喚条件が若干厳しく場に出す前にシンクロモンスターなどで決着をつけてしまう場合がある為、あまり場に出てくることはない。

 

「(三沢の場にある永続罠のせいで、どちらかの種族で展開しなきゃならないんだ)」

 

『なーるほどね。なら、渓谷を歩いてミスティルに力を借りるしかないでしょ』

 

「!」

 

レヴァティンの言葉に手札を改めて見直すと『ドラグニティアームズ-ミスティル』があり、さらに場には発動させた『竜の渓谷』がある。渓谷を歩けというのは効果を使えということ、力を借りるとは召喚しろという意味だ。だが、今の状態ではそれが出来ない。

 

「よし、俺は『竜の渓谷』の効果を発動。モンスターを1体セットしカードを1枚伏せてターンエンド」

 

[現在の手札・2枚]

※ドラグニティ-レガトゥス

※ドラグニティアームズ-ミスティル

 

本来ならば、これほどまでに手札を消費する事はない。種族統一がされてなければ『ドラグニティ-レムス』と『ドラグニティ-レガトゥス』の二枚でシンクロ召喚による攻め込みが出来ていた。だが、今はそれが出来ない。種族統一によって要となるシンクロモンスターを封じられているためだ。

 

「展開速度はニュートラルなようだが、戦略の幅が狭まっているな?」

 

「その通りだよ」

 

 

 

 

観客席から見ている隼人、翔、明日香も十代と遊来の戦いに注目している。その中で遊来の手札消費が激しい事を翔が口に出した。

 

「遊来くん、いつもなら素早く強力な展開をしているはずなのに今回は出来てないッスね?」

 

「翔、それは『群雄割拠』のせいなんだな。ドラグニティは以前、十代が言ってたように二つの種族で成り立って展開するのがメインだから『群雄割拠』によってフィールド上で種族を1種類しか場に出せない今の状態はモロに影響を受けていて、遊来とって厳しい状態にあるんだな。更に見せてもらったけど、ドラグニティのシンクロモンスターは鳥獣族とドラゴン族を揃えなきゃ召喚できない物が多いから今は展開も封じられているんだな」

 

「ええ~!?たった1枚のカードであんな強力なデッキが封じられてるの!?」

 

「隼人くんの言う通りね。それにどんなに強力なデッキでも弱点は絶対にあるわ」

 

「遊来くん大ピンチじゃないっすか~」

 

観客席からはドラグニティの展開を封じられ、苦戦する遊来に対して良い気味だとヤジを飛ばしている者も居れば、明日香達のように応援している者もいる。デュエルはそんな事をお構い無しに続く。

 

「うっ!?」

 

遊来は此処であらゆる可能性の中で最も当たって欲しくないデッキであると確信してしまった。光属性でしかも種族が天使、そう特殊召喚やカウンターに強いパーミッション天使デッキである事を。

 

「俺のターンは終了・・だ」

 

「俺のターン、ドロー!俺はセットモンスターを生贄に・・・『光神テテュス』を召喚!」

 

「ううっ!」

 

『光神テテュス』効果/星5/光属性/天使族/攻2400/守1800

 

「テテュスでセットモンスターに攻撃!光の裁き!」

 

「うあああ!?」

 

『ドラグニティ-クーゼ』が破壊され、墓地へと送られる。

 

「カードを一枚セット、更に強欲な壷を発動。カードを二枚ドロー。一枚が天使族の『シャインエンジェル』それを見せて『光神テテュス』の効果でドロー、・・・ターンエンドだ」

 

「俺の・・・ターン、ドロー」

 

[ドローカード]

※サイクロン

 

[現在の手札・3枚]

※サイクロン

※ドラグニティ-レガトゥス

※ドラグニティアームズ-ミスティル

 

『マスター、結構マズイ状況じゃね?相手は完全にこっちのマウントを取ってきてるし』

 

「(わかってるよ、ここから逆転するには・・・)」

 

『ミスティルに力を借りるしかないね・・・一か八かの賭けになるけど』

 

そう、相手はエンジェル・パーミッション。召喚を妨害してくる可能性が高い、それを使わせようにも今の手札には僅かな可能性だけしかない。

 

「(一か八か・・・やってやる!)俺は手札から速攻魔法発動!『サイクロン』発動!これで、三沢!お前の場にある『群雄割拠』を破壊する!」

 

「何!?このタイミングで除去カードを引き当てたのか!?」

 

「『ドラグニティ-レガトゥス』を!特殊召喚!更に『ドラグニティ-レガトゥス』を墓地へ送り『ドラグニティアームズ-ミスティル』を特殊召喚する!このカードは自分フィールドの表側表示の「ドラグニティ」モンスター1体を墓地へ送り、手札から特殊召喚できる!」

 

『ドラグニティ-アームズ-ミスティル』効果/星6/風属性/ドラゴン族/攻撃力2100/守備力1500

 

「!まさか、特殊召喚できるモンスターが手札にあったのか!?それも連続召喚。だが、お前の手札は!」

 

 

大胆な連続召喚をしてきた遊来に三沢は驚きと同時に興奮を感じていた。それと同時に遊来にも僅かな変化があった。負けたくない、勝ちたいというデュエルへの熱が明日香と戦っていた時以上に燃え上がっている。

 

「更に『ドラグニティ-アームズ-ミスティル』の効果を発動!このカードが手札からの召喚・特殊召喚に成功した時、自分の墓地のドラゴン族の「ドラグニティ」モンスター1体を対象として発動できる。そのドラゴン族モンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する!」

 

「なに!?装備効果だと!?」

 

三沢に驚愕の表情が現れ、汗が一筋流れる。セットモンスターは『ドラグニティ-クーゼ』であった。つまり、それを装備してくる事が確定的だ。分かっていても止めることは出来ない。

 

「『ドラグニティ-アームズ-ミスティル』に『ドラグニティ-クーゼ』を装備!更にクーゼを特殊召喚!」

 

遊来は初めて体験する不思議な感覚を味わっていた。そう、まるで高速で動く乗り物に乗ってハイスピード状態でまっすぐ走っているのを共有している感じだ。

 

頭の中に浮かぶヴィジョンは自分が『ドラグニティナイト―アスカロン』になっているようだ。それを信じて展開する。

 

「はっ!?しまった!2種類のドラグニティが揃ったということは・・・!」

 

「そうだ、レベル6の『ドラグニティ-アームズ-ミスティル』にレベル4の『ドラグニティ-クーゼ』をチューニング!地の龍と鳥獣の騎士が手を結ぶ時、大地から空へと駆け上がる竜騎士の王が現る!今こそ羽ばたけ!」

 

『ドラグニティ-アームズ-ミスティル』に自らの身を光の輪としたクーゼの中を通り抜け、星となった二体のモンスターが一筋の光を放つ。

 

「シンクロ召喚!!駆け登れ・・!『ドラグニティナイト-アラドヴァル』!」

 

「レ、レベル10のシンクロ召喚!?たった1ターンで攻撃力3000オーバーを!?」

 

「アラドヴァルで『光神テテュス』を攻撃!ドラグナイト・ファング!」

 

「ぐうう!!」

 

三沢大地:LP3100

 

三沢の場のモンスターすべてが破壊されてしまった。遊来は天使族である事を警戒していたが、後続が出ることはなかった。

 

「(『テュアラティン』はまだ、来てなかったか・・・)更にアラドヴァルの効果!このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したダメージ計算後に発動!その相手モンスターをゲームより除外する!!」

 

「除外だと!?ドローエンジンを潰されたか!俺のターン、ドロー!」

 

「俺はモンスターを1体セット、カードを伏せてターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

[ドローカード]

※ドラグニティ-アームズ-グラム

 

[現在の手札・1枚]

※ドラグニティ-アームズ-グラム

 

 

「俺は手札の『ドラグニティ-アームズ-グラム』の効果を発動、墓地に眠る『ドラグニティ-レガトゥス』と『ドラグニティ-レムス』を除外し、特殊召喚!そのままバトルフェイズ!グラムでセットモンスターにアタック!」

 

「セットモンスターは『シャインエンジェル』よって「光属性の攻撃力1500以下」のモンスターを攻撃表示で、特殊召喚!『シャインエンジェル』だ!」

 

「アラドヴァルで『シャインエンジェル』にアタック!」

 

「うあああ!もう一度、だ!『シャインエンジェル』」

 

三沢大地 LP:1200

 

リクルーターを出されてしまい、ライフは削ったが相手も手札が多い。使ってこなかったリバースカードも気になる。

 

「『シャインエンジェル』の表示を守備にし、カードを伏せてターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー」

 

[ドローカード]

※ドラグニティ・グロー

 

「俺は手札から『ドラグニティ・グロー』を発動!このカードには二つの効果があり、このカード名の(1)と(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。1つ目は自分のデッキ・墓地からレベル5以上の『ドラグニティ』モンスター1体を選んで手札に加える。2つ目の効果は墓地のこのカードを除外し、『ドラグニティ』モンスターが装備している自分の魔法&罠ゾーンのモンスターカード1枚を対象として発動できる。

そのカードを守備表示で特殊召喚する!俺は1つ目の効果を選択!!俺は墓地に眠っている『ドラグニティアームズ-ミスティル』を手札に戻す!そして、手札に戻した『ドラグニティアームズ-ミスティル』の効果を発動!』

 

「!?『ドラグニティアームズ-ミスティル』は自分フィールドの表側表示の「ドラグニティ」モンスター1体を墓地へ送り、手札から特殊召喚できるカード!・・・まさか!?」

 

「そう!『グラム』を墓地へ送り『ドラグニティアームズ-ミスティル』を手札から特殊召喚する!!」

 

「レベルも攻撃力も勝る『グラム』をコストに!?」

 

「更に『ドラグニティ-アームズ-ミスティル』の効果を発動!このカードが手札からの召喚・特殊召喚に成功した時、自分の墓地のドラゴン族の「ドラグニティ」モンスター1体を対象として発動できる。そのドラゴン族モンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する!俺は再び『ドラグニティ-クーゼ』を装備させ、更に『ドラグニティ-クーゼ』特殊召喚!」

 

「こ、このコンボは!?また、来るのか!?」

 

「そうだ!レベル6の『ドラグニティ-アームズ-ミスティル』のレベル4扱いの『ドラグニティ-クーゼ』をチューニング!!」

 

「天の龍と鳥獣の王が手を結ぶ時、天空を駆ける竜騎士の王が現る!!今こそ駆け抜けろ!シンクロ召喚!!!王の道を行け・・!『ドラグニティナイト-アスカロン』!」

 

「こ、攻撃力3300のシンクロモンスターが2体!?」

 

「此処でフィニッシュにさせてもらう!行け!2体で攻撃!」

 

「ここは通さん!!リバースカード、オープン!『聖なるバリア・ミラーフォース』これにより、攻撃モンスターをすべて破壊だ!』

 

「ぐっ!だが、アスカロンの効果発動!この効果は1ターンに一度、シンクロ召喚によって召喚したこのカードが相手によって破壊された場合に発動でき、融合デッキから攻撃力3000以下の『ドラグニティ』シンクロモンスターをシンクロ召喚扱いで、特殊召喚する!」

 

「な、なんだって!?」

 

「アラドヴァルもシンクロ召喚したこのカードが相手によって破壊された場合に発動できる効果がある。それは相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する効果、最も今は何もないから機能しないけど。行くぞ!二つの種族の決意が、新たな竜騎士を生み出す。今こそ迎え討て!シンクロ召喚!走り抜けろ『ドラグニティナイト-バルーチャ』!!」

 

『ドラグニティナイト-バルーチャ』星8/風属性/ドラゴン族/シンクロ/効果/星8/風属性/攻撃力2000/守備力1200

 

「『ドラグニティナイト-バルーチャ』の効果発動、このカードがシンクロ召喚に成功した時、自分の墓地にあるドラゴン族の『ドラグニティ』モンスターを任意の数だけ対象として発動可能!そのドラゴン族モンスターを装備カードとしてこのカードに装備できる!俺は墓地にあるアスカロン、クーゼ、グラム、ガジャルグ、ミスティルを装備!更に『バルーチャ』はこのカードに装備された『ドラグニティ』カードの数×300ポイント、攻撃力がアップする!5枚のカードにより、攻撃力が1500ポイントアップし3500!更にバトルフェイズ中の召喚により、追撃が可能!」

 

「俺の・・・負けか。まさか、破壊されても追撃してくるとは、見誤ったな」

 

「いや、俺は感謝しているよ。三沢のおかげで情熱と初心を取り戻すことができたから」

 

「遊来?それは一体?」

 

バルーチャは容赦なく、三沢のライフポイントを奪いゼロにした。瞬間、どちらの健闘を称える拍手が沸き起こった。

 

「龍谷遊来くん、ドラグニティというカテゴリー、更にはシンクロ召喚という新しいシステムを使いこなす技量、最後まで諦めない姿勢、お見事でした。よって君をオベリスクブルーへの昇格を認めます。おめでとう!」

 

この学園の校長である鮫島校長が放送室から、賞賛と昇格を認める放送をしてきた。遊来としては嬉しいのだが、それ以上に自分が竜騎士だったような感覚の方が印象深かった。

 

「三沢、ありがとう。勝ったけど、逆に教えられたのは俺の方だった」

 

「こちらこそ、ありがとう。悔しいが俺もまだまだ調整が足りなかったようだ。次こそ、お前のドラグニティを打ち負かしてみせる!」

 

「ああ、俺も負けるつもりはないよ!」

 

遊来と三沢はお互いを称え、ガッチリと握手をした。メタデッキだからといって遊来は否定しない。好きなカードで勝つ事も醍醐味だが、計算を信じて相手を封じながら戦うのも戦略の一つだ。実際にはロックデッキなんて大量にあるのだから。

 

十代の方も勝利したが、昇格を言い渡されたのだがラーイエローには行かず「燃える赤」との事で、オシリスレッドに留まるらしい。

 

その後、遊来は新しく用意されたオベリスクブルーの寮へと向かう事になったが、これが後にオベリスクブルーの一般生徒達に対し、遊来がトラウマを植え付ける事になる出来事の第一歩だという事を誰も知らないのだった。




デュエルの棋譜、難しいですね。負けさせる訳にはいかない戦いだと余計です。


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7話

温厚な遊来、初めてガチでキレて口が悪くなる。おい、デュエルしろよ状態。


オベリスクブルーに移ってからというものの、陰口や露骨な舌打ちなどまるで差別主義をこり固めたような空間でため息をついていた。

 

『マスター・・・』

 

「・・・大丈夫だよ」

 

ルインも心配気味で、念の為と今現在、手にしているのは先攻でも後攻でもワンターンキルが可能で、自分がいた世界では禁止カードだらけになっているワンキルデッキだ。

 

遊来は今、表情に出していないが怒り心頭になっている。先程も絡んできたオベリスクブルーの生徒を一人、ワンキルしてきたのだ。

 

遊来はワンキルデッキを滅多な事では使わない。だが、この寮では相手は負ければ悪態をついてくるし、露骨なアンティルールを勝手に強いてくるので負ければカードを奪われる状況だ。

 

因みに今、オベリスクブルー内で遊来が使っているのは前の世界でも、その悪名を轟かせていた『宝札エクゾディア』である。

 

無論『蝶の短剣エルマ』と『鉄の騎士ギア・フリード』、『王立魔法図書館』の3枚を軸に使う『図書館エクゾ』を使おうとしたのだが、遊来はあえて『暗黒のマンティコア』と『生還の宝札』、『おろかな埋葬』を取り入れた『宝札エクゾディア』を使っている。

 

理由は簡単でモンスターの墓地利用が出来るためだ。この世界では墓地利用が「傲慢」とされている。それ以上の傲慢さを持っているのはお前達もそうだろうと言う為であった。

 

「いい加減に目を覚ましてくれないかなぁ・・・」

 

遊来は怒り心頭であると同時に虚しさも感じていた。ワンキルばかりしていると自分が自己防衛ばかりしている錯覚に陥る。エリート意識が変な方向に向いているオベリスクブルーの男子生徒は無謀なタイプほど遊来に挑んできていた。当然、アンティルールを決めて、だ。女子生徒は何故か、ほとんど挑んでこなかった。挑んでくるのは純粋にデュエルして欲しい、ドラグニティで対戦して欲しいと言ったものばかりだった。

 

だが、男子生徒のほとんどの狙いは遊来の扱う『ドラグニティ』シリーズのカードだ。ソリッドヴィジョンで映るヴィジュアルなどもあるが、自分こそドラグニティに相応しい!と信じて疑わない相手ばかりが挑んでくるのだ。確かにドラグニティは遊来しか持っていない為、希少価値も高いと言えるだろう。

 

そんな相手に『ドラグニティ』を渡すつもりは毛頭ない。とはいえ、対策もされやすいためこうしてワンキルデッキを使用している。

 

今はまだ穏やかだが、導火線に火がつく寸前の所で、ルインはそれを懸念している。もしも、言葉のトリガーを誰かが引いてしまえば間違いなく感情に任せて怒ってしまうだろう。

 

 

 

 

 

 

遊来は翌日の放課後、なるべくオベリスクブルーの生徒に出会わないようにしていたのだが、運悪く出会ってしまった。

 

「おい、貴様!ドラグニティのカードを賭けて俺とデュエルしろ!」

 

「またか・・・いい加減にして欲しいよ。全く」

 

「お前のようにただの成り上がりが希少なカードを使うなんざ、生意気なんだよ!」

 

「やれやれ・・・」

 

「インダストリアル・イリュージョン社も馬鹿だよな。こんな奴よりも、実績のある俺に任せてくれれば・・・」

 

「おい」

 

「今頃、俺は有名になって」

 

「おい!」

 

「ん?なんだ?」

 

「デュエルしろよ・・・!さっきから聞いてれば下らねえ妄想ばかり並べやがって!」

 

「妄想だと?言葉に気をつけろ!俺はオベリスクブルーのエリートだ!!」

 

「るせえ!!エリートだが知らねえが、お前を俺の1ターンで倒してやる!」

 

「!やれるものなら、やってみやがれ!」

 

遊来はとうとう怒りに任せたデュエルを始めてしまった。ルインも等々といった様子で遊来の様子を見ている。

 

 

 

 

 

 

 

「「デュエル!」」

 

 

オベリスクブルー男子生徒J:4000

 

龍谷遊来:4000

 

「先攻は俺だ!ドロー!俺は『切り込み隊長』を召喚!更に効果で『切り込み隊長』を召喚する!」

 

『切り込み隊長』効果/星3/地属性/戦士族/攻撃力1200/守備力400

 

 

 

「切り込み隊長が2体・・・切り込みロックか?」

 

「よく知っているな?そうだ、お前はこの2体を同時に倒さなきゃ勝てねえ!カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー」

 

[現在の手札・6枚]

※成金ゴブリン

※成金ゴブリン

※暗黒のマンティコア

※魔法石の採掘

※おろかな埋葬

※無謀な欲張り

 

なるほど、と遊来は口にしたが喜びはしなかった。寧ろこのターンで来て欲しいカードは2枚だけである。

 

「俺は手札から魔法カード『成金ゴブリン』を発動する。相手が1000ポイントライフを得る代わりに俺はカードを一枚ドロー出来る」

 

オベリスクブルー男子生徒J:5000

 

「はっ、バカか?相手にライフを1000も与えるなんてな。命乞いか?」

 

「・・・・ドロー」

 

[ドローカード]

※生還の宝札

 

[現在の手札・6枚]

※成金ゴブリン

※暗黒のマンティコア

※魔法石の採掘

※おろかな埋葬

※無謀な欲張り

※生還の宝札

 

此処で、エンジンとなるカードを引き込んだ。まるで早く勝ってしまえとデッキから後押しされているかのように。

 

「もう一枚『成金ゴブリン』を発動し、ドロー」

 

オベリスクブルー男子生徒J:6000

 

[ドローカード]

※手札断殺

 

[現在の手札・7枚]

※暗黒のマンティコア

※魔法石の採掘

※おろかな埋葬

※無謀な欲張り

※生還の宝札

※手札断殺

 

「更に手札から『生還の宝札』を発動。続けて『おろかな埋葬』を発動する。このカードの効果でデッキから『暗黒のマンティコア』を墓地に送る」

 

「デッキから自らモンスターを落とすだと?ハッ、バカな事をしやがる」

 

「俺はメインフェイズからバトルフェイズに移り、そのままエンドフェイズに入る」

 

「モンスターを引けなかったようだな!?なら、このまま倒してやる!俺の」

 

「待ちな、まだ俺のカードは生きているんだよ」

 

「なんだと!?」

 

「俺が墓地に送った『暗黒のマンティコア』は・・・このカードが墓地へ送られたターンのエンドフェイズ時に自分の手札・フィールド上から獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター1体を墓地へ送る事で効果を発動できる。俺は手札にある『獣戦士族』の『暗黒のマンティコア』を捨てて、墓地にある『マンティコア』を墓地から特殊召喚する」

 

 

『暗黒のマンティコア』星6/炎属性/獣戦士族/攻撃力2300/守備力1000

 

キメラモンスターに代表されるモンスターの暗黒のマンティコアが墓地より蘇生し、咆哮を上げる。

 

「星6のモンスターを生贄なしで!?」

 

「更に発動してある『生還の宝札』の効果を発動。マンティコアが墓地から蘇生したことによりカードを1枚ドロー。更に墓地へ行ったマンティコアの効果を発動。フィールドに居るマンティコアを墓地に送る事で、墓地にあるマンティコアを特殊召喚。更に『生還の宝札』が再び発動、カードを1枚ドロー。また墓地へ行ったマンティコアの効果を発動。フィールドに居るマンティコアを再び墓地に送る事で、墓地にあるマンティコアを特殊召喚。更に『生還の宝札』が再び発動し、カードを1枚ドロー」

 

遊来の行動にオベリスクブルー男子生徒Jは、気付いてはいけない事に気付いてしまった。いや、気付くのが遅すぎたのだった。

 

「ま、待て!お前、そのループはまさか!?」

 

「そうさ、無限ループそのもの。デッキを最後の一枚になるよう引き切るまで続けるよ」

 

遊来は宣言通り、デッキを最後の1枚でドローを止めるとその中から五枚のカードを抜き出してデュエルディスクへとセットした。

 

そこに現れたのは魔法陣で両腕両足を鎖で縛られた魔神が現れ、その鎖を引き千切り、四肢を強引に自由にした。

 

そう、完全復活のエクゾディアそのものである。

 

「エ、エクゾディアだとおおおおお!?」

 

「怒りの業火、エクゾード・フレイム!」

 

デュエルモンスターズ界の中でレアカードに位置し、更には手札に揃うと同時に勝利条件を達成してしまうというエクゾディアのカードを遊来は揃えてしまったのだ。

 

完全復活のエクゾディアの前ではロックもライフポイントも無意味に等しい。オベリスクブルー男子生徒Jはその場で膝をつき、信じられないといった様子になっている。

 

遊来自身、本来はこのデッキを使いたくはない。だが『ドラグニティ』のカードを狙う輩が居るからには守らなければならない。一緒に飛ばされてきたカードの中に1枚ずつ『エクゾディア』のパーツカードがあったのだ。

 

ワンキルデッキとして組んだ後は研究用として十代達に解説するために使ってはいたが、防衛しなければならないこの寮では戦闘を解禁している。

 

「本当にいい加減、ウンザリなんだよ。頼むから目を覚ましてくれ」

 

それだけ言うと遊来は自分の部屋に入ってしまった。負けるのが怖いからだとか、度胸もない奴だとか言われるが叩きのめしても、次から次へとしつこいので次第に相手にしなくなっていった。




今回はここまでで、ワンキルデッキはこの回だけです。

次回はカイザーとデュエルですが、不満があるドラグニティの面子が黒のアイツ等と徒党を組みます。

アキュリスとブランディストックとパルチザンが、です!


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8話

カイザーとデュエル。

カイザーが狼狽える案件。

※演出上、エラッタ前のカードを使用しています。


授業も終わり、ワンキルばかりしているせいか最近では絡まれることが少なくなってきている。

 

友人関係を築けないのは辛いが、それでもカードを守るためと自分に言い聞かせている。

 

そんな中、放課後になって珍しい相手に声をかけられた。

 

「龍谷遊来か?」

 

「え?ええ・・貴方はカイザー・・丸藤亮先輩でしたっけ?」

 

「ああ、そうだ」

 

オベリスクブルーの三年生でデュエルアカデミアのトップに君臨し、カイザーと呼ばれるほどのデュエリスト、丸藤亮が声をかけてきたのだ。

 

「俺に何か用ですか?」

 

「ああ、急で申し訳ないが、この後時間があるのならデュエルをして欲しい」

 

「俺と・・ですか?」

 

「そうだ」

 

遊来は迷ったが、特に断る理由もない。何よりも僅かな前の世界の記憶にあるサイバードラゴンを扱うカイザーと戦ってみたいというのもあった。

 

「じゃあ、少しだけ時間をくれませんか?デッキとデュエルディスクを取ってくるので、それとなるべく人が来ない場所でお願いします」

 

「分かった、申し出を受けてくれて感謝する」

 

そう言ってカイザーと別れた後、遊来は部屋に戻り一つのデッキを手にした。手にしたデッキは主に『ドラグニティ』で使われていないカードを活かす事は出来ないかと思考した末に作り上げたデッキである。

 

「・・・・本来なら早すぎるけど、仕方ないよね。ドラグニティを他に活かすデッキって言ったらコレだもの。ん?」

 

手にしたデッキの他にEXデッキとしてしまってあるデッキケースから1枚のシンクロモンスターを取り出した。何故か呼ばれたような気がしてならなかったのだ。

 

「・・・カイザーと戦うなら連れて行けって事かな?出番は無いと思うよ」

 

そのEXデッキを手にしてカイザーの待つ場所へと向かう。その場所へと向かうと亮は腕を組んで堂々としていた。まるで挑戦者を待つ王者のように。

 

「待たせてすみません」

 

「いや、大して時間は経っていない。それに・・僅かな観客もいるようだ」

 

「?」

 

「あ、バレてたか!遊来とカイザーが歩いているのを見かけて、コッソリ着いて来たんだよ!」

 

「十代!?それに翔、隼人!明日香にジュンコ、ももえまで!?」

 

十代を始めとした仲良くなったメンバーがゾロゾロと出てきた。どうやら此処に来るのを目撃されてしまっていたらしい。

 

「僕は、アニキに着いてきたら偶然に」

 

「俺はそのまま着いて来たんだな」

 

「私は一緒にどこへ向かっているのか気になって」

 

「私は明日香さんを見かけて」

 

「ジュンコさんと同じですわ」

 

仲良くなったメンバーなら仕方ないと遊来は苦笑する。そんな中、カイザーは遊来のデッキケースから自分のデッキに向けられている何かを感じ取っていた。

 

「(?なんだ・・・?あのデッキから俺のサイバー流デッキに何かを向けられている?)」

 

「こら、カイザーのデッキが気になるのは分かるけど向けるんじゃない」

 

「(?あのデッキから発せられていたのは一体?)」

 

デッキに話しかけるなんて変な奴だとジュンコとももえは思ったが、十代や明日香は遊来の性格を多少なりとも理解しているため、そんな事は思わなかった。

 

「それでは始めましょうか?」

 

「ああ、行くぞ」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

 

龍谷遊来:LP4000

 

丸藤亮:LP4000

 

「俺の先攻です。ドロー!」

 

[ドローカード]

※手札抹殺

 

 

[現在の手札・6枚]

※ブラック・ガーデン

※比翼レンリン

※ドラグニティ-パルチザン

※サイバー・ダーク・クロー

※サイバー・ダーク・カノン

※手札抹殺

 

「俺は手札からフィールド魔法『ブラック・ガーデン』を発動!」

 

「『ブラック・ガーデン』だと?」

 

フィールド魔法の発動と同時に太く傷つける事を厭わないバラのツルが木々に巻き付き、建物にも巻き付き、黒い薔薇を僅かに咲かせた。陰鬱としているが植物の生命力に溢れている。まるで、人の踏み込めない異郷の庭のようだ。

 

「このカードは二つの効果があります。1つ目は『ブラック・ガーデン』の効果以外でモンスターが表側表示で召喚・特殊召喚される度に発動。そのモンスターの攻撃力を半分にする。その後、そのコントローラーは、相手のフィールドに「ローズ・トークン」(植物族・闇・星2・攻/守800)1体を攻撃表示で特殊召喚します」

 

「2つ目の効果はフィールドの全ての植物族モンスターの攻撃力の合計と同じ攻撃力を持つ、自分の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。このカード及びフィールドの植物族モンスターを全て破壊する。全て破壊した場合、対象のモンスターを特殊召喚する事が出来ます」

 

「何!?なるほど・・・弱体化とトークン生成を併せ持つのか」

 

「更に手札から魔法カード『手札抹殺』を発動!」

 

「!?」

 

手札抹殺によって亮の手札にあった『サイバードラゴン』と『パワーボンド」のカードが墓地に落ちてしまう。これには流石のカイザー亮とはいえども歯ぎしりしてしまう。お互いの手札交換が終わり、再びカードを手にする。

 

[現在の手札・4枚]

※和睦の使者

※死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)

※サイバー・ダーク・ホーン

※サイバー・ダーク・キール

 

「俺はカードを2枚伏せ、モンスターを1体セット。ターンを終了します」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

亮へとターンが移るが、瞬間に遊来は伏せカードを発動させるボタンを押した。

 

「罠カード、オープン!『死のデッキ破壊ウイルス』!!」

 

「『死のデッキ破壊ウイルス』だと!?」

 

「そう、このカードは自分フィールド上の攻撃力1000以下の闇属性モンスター1体を生贄にして発動できるカード。相手フィールド上のモンスター、相手の手札、相手のターンで数えて3ターンの間に相手がドローしたカードを全て確認し、攻撃力1500以上のモンスターを破壊する!」

 

「セットしていたモンスター『サイバー・ダーク・ホーン』を墓地に送り、効果を発動」

 

「!?『サイバー・ダーク』!?」

 

「相手ターンで数えて3ターンの間、あなたのドローカードを確認させてもらいますよ」

 

「くっ・・・」

 

亮は手札にあった攻撃力1500以上のモンスターカードを墓地に送る。手札の枚数は遊来より2枚優っているくらいだが、問題はそこではない。これから3ターンの間、ドローカードをピーピングされ、情報アドバンテージを失うだけではなく攻撃力1500以上のモンスターは墓地に送られる。それはつまり『サイバードラゴン』を手札から出す事はできない事を意味している。

 

「俺は魔法カード『二重召喚』を発動!このターン、俺は通常召喚を二回行う事が出来る!『プロト・サイバードラゴン』を召喚し、更に『融合呪印生物-光』を召喚!」

 

「この瞬間、『ブラック・ガーデン』の効果を発動!召喚、特殊召喚されたモンスターの攻撃力を半分にする!」

 

「っ!」

 

『プロト・サイバードラゴン』

 

効果/星3/光属性/機械族/攻撃力1100/守備力600

 

攻撃力1100→攻撃力550

 

『融合呪印生物-光』

 

星3/光属性/岩石族/攻撃力1000/守備力1600

 

攻撃力1000→攻撃力500

 

「そして、その後にそのコントローラーは、相手のフィールドに「ローズ・トークン」(植物族・闇・星2・攻/守800)1体を攻撃表示で特殊召喚。今回は俺の場に2体です」

 

「『融合呪印生物-光』の効果発動!このカードとプロト・サイバーを生贄に!『サイバー・ツインドラゴン』を召喚!」

 

『サイバー・ツインドラゴン』

融合・効果/星8/光属性/機械族/攻撃力2800/守備力2100

 

「この瞬間『サイバー・ツインドラゴン』に『ブラック・ガーデン』の効果が発動する」

 

『サイバー・ツインドラゴン』

 

攻撃力2800→攻撃力1400

 

「そして俺の場にもう1体「ローズ・トークン」(植物族・闇・星2・攻/守800)攻撃表示で特殊召喚されます」

 

3体の「ローズ・トークン」を標的にし、攻撃を仕掛ける前にある懸念を亮は遊来にぶつけた。

 

「一つ聞きたい、その『サイバー・ダーク』のカードをどうやって手に入れた?」

 

「本土に居た際にパックから当てました。嘘は吐いていませんよ」

 

「そうか・・・まさか、裏を見る事になるとは思わなくてな」

 

「サイバー・ダークが裏・・・?」

 

「俺も噂に聞くだけだった。俺が門を叩いたサイバー流には、裏のデッキが存在すると」

 

「サイバー流、裏デッキ・・・という事ですか?」

 

「ああ、サイバー流の理念から反した暴虐のデッキと呼ばれているそうだ。実際に見たことはないが」

 

ピクリと一瞬だけ、遊来のこめかみが動く。この『サイバー・ダーク』達が暴虐という点に疑問を持ったからだ。

 

「カイザー・・と呼ばせてもらっても?」

 

「それで構わない」

 

「ありがとうございます。それと1つ、貴方は『サイバー・ダーク』に関して勘違いしていますよ」

 

「勘違いだと?」

 

「勘違い?お兄さんが?」

 

「どういう事なのかしら?サイバー流に関する事みたいだけど」

 

「なんだ、なんだ?」

 

ギャラリー側のメンバーはデュエルしているふたりの会話に耳を傾けている。遊来はなんということはなく、平然と答えた。

 

「確かに『サイバー・ダーク』の戦いは先程も使ったウイルス系カードなどによる妨害、墓地利用などキレイとは言い難いです。ですがこの動きは『ドラグニティ』と同じ部分もあるんですよ。特に墓地利用という点と後1つの効果が」

 

「もう1つの効果・・・」

 

「デュエルを再開した時にお見せしますよ。それに『サイバー・ダーク』達は『サイバー』に対して羨望を持っているだけです」

 

「羨望・・・(あの時感じたのはそれか)」

 

「ひょっとしたらサイバー流に保管されている『サイバーダーク』達は表に出て戦いたいのかもしれません。そして嘆いているのではないかと・・・『何故、自分達を戦わせてくれない』と、ね」

 

「・・・・」

 

「さぁ、まだカイザーのターンですよ」

 

「・・・っ、『サイバー・ツイン・ドラゴン』でローズ・トークンを攻撃!エヴォリューション・ツイン・バースト!第一打!」

 

瞬間、機械の双龍から放たれた二つの光がローズトークンを飲み込み、破壊してしまう。その余波が遊来へ襲いかかる。

 

「ぐううう!」

 

龍谷遊来:LP3400

 

「『サイバー・ツイン・ドラゴン』は二回攻撃が可能!エヴォリューション・ツイン・バースト、第二打!」

 

「一体目は許しますが二体目は譲りません!罠カード、オープン!『和睦の使者』このカードにより、戦闘で発生するダメージはゼロになり、モンスターは破壊されずライフポイントも変動しない」

 

「・・・ターンエンドだ(『ブラック・ガーデン』が発動している限り、決定打を与えられはしないか)」

 

亮は今の状況が有利なのは遊来であると理解していた。こちらが高い攻撃力のモンスターを出した所でその数値を半分にされてしまう。ましてや『パワー・ボンド』を使っていれば、完全に此方が何も出来ずに負けていた。そう考えれば『手札抹殺』のカードを使われたのはありがたい事だ。

 

「俺のターン、ドロー」

 

[ドローカード]

※終末の騎士

 

[現在の手札・2枚]

※サイバー・ダーク・キール

※終末の騎士

 

「此処から、サイバー・ダークの恐ろしさを見せてあげます。『サイバー・ダーク・キール』を召喚!」

 

『サイバー・ダーク・キール』

星4/闇属性/機械族・効果/攻撃力800/守備力800

 

甲高い機械音声のような鳴き声と共に小さな龍を模した機械竜が現れる。だが、その姿に合わないステータスの低さに対しギャラリーのメンバー達は首をかしげた。

 

「攻撃力が800?」

 

「恐ろしさを見せると言った割には大した事ないじゃない」

 

「本当ですわ」

 

「攻撃力が低い、幾ら『サイバー・ツイン・ドラゴン』が弱体化してるといっても無理だよ」

 

「いや、遊来は意味の無い召喚はしないんだな。きっと何かあるはずなんだな」

 

「ああ、きっとそうだぜ!」

 

ギャラリーの疑問を解決すべく、遊来は更に宣言を口にする。

 

「『サイバー・ダーク・キール』を召喚した事で『ブラック・ガーデン』の効果が発動、カイザーの場に「ローズ・トークン」(植物族・闇・星2・攻/守800)1体を出現させ、更に『ブラック・ガーデン』の効果で攻撃力が半減」

 

 

『サイバー・ダーク・キール』

攻撃力800 → 攻撃力400

 

 

「・・・・」

 

 

「更に『サイバー・ダーク・キール』の効果を発動。このカードが召喚に成功した時、自分の墓地に眠るレベル3以下のドラゴン族モンスター1体をこのカードに装備させる。俺は『比翼レンリン』を選択!」

 

『比翼レンリン』が『サイバー・ダーク・キール』の下へと潜り込み本体から伸びているコードが『比翼レンリン』に装着されていく。『サイバー・ダーク・キール』は甲高く鳴いているが、『レンリン』はまるで受け入れているかのように大人しく、穏やかなままだ。

 

「更にその攻撃力を吸収し、攻撃力をアップ」

 

 

『サイバー・ダーク・キール』

攻撃力400 → 攻撃力2500

 

 

「この状況下で攻撃力2500!?」

 

「おかしいわ『サイバー・ダーク・キール』も『ブラック・ガーデン』の影響を受けているはずなのに!」

 

明日香の疑問に対し、遊来は一瞬だけ視線を向けたが説明しようと亮へと向き直る。

 

「どうしてこうなったか、説明しますよ。まず最初に『ブラック・ガーデン』の効果によって『サイバー・ダーク・キール』の攻撃力は800から400に半減します。そしてそこへ『比翼レンリン』を装備しました。更にそこで『比翼レンリン』の効果。このカードを装備しているモンスターの攻撃力は元々の攻撃力が1000になり、2回攻撃が可能になっています。最後に『サイバー・ダーク・キール』自身の効果によって『比翼レンリン』の攻撃力1500を吸収している事により、攻撃力が2500となる訳です」

 

「なるほどな・・・よく噛み合っている。噛み合いすぎてまるで『サイバー・ダーク』を助ける為のようなカードだな」

 

「・・・ローズトークンで、カイザーの場のトークンを破壊!そして『サイバー・ダーク・キール』で『サイバー・ツイン・ドラゴン』を攻撃!ダーク・ウィップ!!」

 

トークンは互いに消滅し『サイバー・ツイン・ドラゴン』を『サイバー・ダーク・キール』が尻尾を鞭のように叩きつけ、『サイバー・ツイン・ドラゴン』を爆発させ破壊した。その余波が襲いかかる。

 

「うっ!」

 

丸藤亮:LP2900

 

「更に『サイバー・ダーク・キール』の効果!このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、300ポイントのダメージを与える」

 

「何!?」

 

丸藤亮:LP2600

 

カイザーと称される亮から圧倒的に優位に立った遊来に対して、明日香、ジュンコ、ももえ、翔、隼人は驚愕の表情を浮かべており、十代は興奮を抑えきれない様子だ。

 

「亮から圧倒的優勢を奪っているなんて・・・信じられない」

 

「今まで実力を隠していたわけじゃないのね」

 

「次元が違いすぎますわ」

 

「お兄さんが追い込まれるなんて・・・」

 

「凄すぎて理解が追いつかないんだな・・・」

 

「すっげえ・・・!まるで『ドラグニティ』みたいな動きをするんだな!遊来!」

 

十代の言葉に亮はハッとした。そうだ、この動きはまるで『ドラグニティ』そのもの。『サイバー・ダーク』という形をとっているが、モンスターがモンスターを装備する効果、更には墓地をも利用する展開力、これらは全て遊来がデュエルしている際に『ドラグニティ』で見てきた動きばかりだったのだ。

 

「相変わらずデュエルの見抜きや洞察力はすごいな、十代」

 

「確かに十代の言う通り『ドラグニティ』の動きと酷似しているな『サイバー・ダーク』は」

 

「似ているからこそ、使っているというのもあります。メインフェイズ2」

 

「!?(二回攻撃をして来なかった?)」

 

「『ブラック・ガーデン』と場にいるローズトークンを破壊して『サイバー・ダーク・ホーン』を守備表示で特殊召喚。ターンエンド(このまま終わったら、やりたい事ができない)」

 

遊来が攻撃しなかったのはこの場面で倒してしまえば意味はないと考えたからだ。決して相手を侮っている訳ではない。寧ろ『ブラック・ガーデン』の恩恵を受けたままでは決着がアッサリついてしまう。それでは意味がないのだ。

 

「俺のターン、ドロー」

 

「『死のデッキ破壊ウイルス』の効果、1ターン目。手札を見せてください」

 

「・・・」

 

亮が見せてきたのは『タイムカプセル』であった。魔法カードのためウイルスの影響は受けない。

 

「『タイムカプセル』を発動。デッキからカードを1枚選択し、裏側表示でゲームから除外する。発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを破壊し、そのカードを手札に加える」

 

「・・・何をサーチしたんだろうか」

 

「更に『サイバー・ラーバァ』を守備表示で召喚。ターンエンドだ」

 

『サイバー・ラーバァ』

星1/光属性/機械族・効果/攻撃力400/守備力600

 

「俺のターン、ドロー」

 

[ドローカード]

※竜の渓谷

 

[現在の手札・2枚]

※竜の渓谷

※終末の騎士

 

「『サイバー・ダーク・キール』で『サイバー・ラーバァ』を攻撃、ダーク・ウイップ!」

 

「くっ!『サイバー・ラーバァ』の効果、戦闘で破壊された時、戦闘ダメージをゼロにし同名カードを特殊召喚」

 

「ですが、『サイバー・ダーク・キール』のバーンダメージは受けてもらいます。ターンエンド」

 

丸藤亮:LP2300

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「『死のデッキ破壊ウイルス』の効果、2ターン目。手札を見せてください」

 

「ああ」

 

見せてきたのは『サイバネティック・フュージョン・サポート』魔法カードであった。だが、遊来はその時点で恐ろしい引きだと痛感する。

 

 

「このターン、俺は『サイバー・ヴァリー』を召喚。このままターンを終了する」

 

『サイバー・ヴァリー』

星1/光属性/機械族・効果/攻撃力0/守備力0

 

此処で『サイバー・ヴァリー』とは手札に温存していたのだと遊来は思考する。攻めようにも『サイバー・ヴァリー』には三つの効果があり、どれも強力なものばかりだ。

 

一つはこのカードが相手モンスターの攻撃対象に選択された時、このカードを除外して発動できる。デッキからカードを1枚ドローし、バトルフェイズを終了する効果。

 

二つ目は自分のメインフェイズ時に発動しこのカードと自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して除外し、その後デッキからカードを2枚ドローする効果。

 

三つ目は自分のメインフェイズ時に、自分の墓地のカード1枚を選択して発動でき、このカードと手札1枚を除外し、その後選択したカードをデッキの一番上に戻す効果だ。

 

『サイバー・ラーバァ』を攻撃すれば最後の1枚が場に召喚され、ドローを加速させてしまう。

 

『サイバー・ヴァリー』を攻撃すれば攻撃対象に選択した事になってしまう為、除外されバトルフェイズを終了させられ、1枚ドローされてしまう。

 

攻撃を放棄すれば、結局はドロー加速なのは変わらない。1枚か2枚のドローは確定的になっている状況だ。

 

「俺のターン、ドロー」

 

[ドローカード]

※戦線復帰

 

 

[現在の手札・3枚]

※戦線復帰

※竜の渓谷

※終末の騎士

 

 

「俺はカードを一枚伏せて、バトルフェイズ!『サイバー・ダーク・キール』で『サイバー・ヴァリー』を攻撃!」

 

「この瞬間、『サイバー・ヴァリー』の効果を発動!このカードが相手モンスターの攻撃対象に選択された時、このカードを除外して発動。デッキからカードを1枚ドローし、バトルフェイズを終了する!」

 

「戦闘前にバトルフェイズ終了させられた為、モンスターを破壊していません。よってバーンダメージもありません。ターンエンド」

 

「俺のターン、ドロー」

 

「『死のデッキ破壊ウイルス』の効果、最後のターン。手札を見せてください」

 

「・・・・」

 

見せてきたのは『融合』であった。『死のデッキ破壊ウイルス』のピーピングを全て躱しきり、更には『サイバネティック・フュージョン・サポート』と融合が揃ってしまっている。この後、何が起こるかは遊来自身も簡単に想像できてしまう。

 

「そして、二回目のスタンバイフェイズ『タイムカプセル』を破壊し、除外していたカードを手札に加える。戻したのは『異次元からの宝札』このカードの効果により、お互いにカードを2枚ドローする」

 

「・・・」

 

[ドローカード]

※調和の宝札

※ドラグニティ-ファランクス

 

「そして、『サイバネティック・フュージョン・サポート』を発動!ライフポイントを半分支払い、俺は墓地に眠る3体の『サイバー・ドラゴン』を除外し『融合』を発動!『サイバー・エンド・ドラゴン』を攻撃表示で召喚!」

 

丸藤亮:LP1150

 

 

『サイバー・エンド・ドラゴン』

星10/光属性/機械族・効果/攻撃力4000/守備力2800

 

「サイバーエンド・・・」

 

遊来はその圧倒的な三つ首の機械の究極竜を見ている。重圧はあるがそれ以上に自分の中で何かが燻っている感覚を味わい、『サイバー・エンド・ドラゴン』が何かを炊きつけようとしているような、そんな予感がある。

 

「とうとう出たわ『サイバー・エンド・ドラゴン』」

 

「カイザーの代名詞なんだな・・・」

 

「おおっ!あれがカイザーのフェイバリットカードかぁ!」

 

ギャラリーも盛り上がっている中、亮は容赦のない攻撃を仕掛ける。

 

「『サイバー・エンド・ドラゴン』で『サイバー・ダーク・ホーン』を攻撃!エターナル・エヴォリューション・バースト!」

 

「うあああああ!!!」

 

龍谷遊来:LP200

 

守備表示の『サイバー・ダーク・ホーン』を破壊され、貫通効果によって1ターンでライフポイントの差を逆転されてしまった。一撃を受ければ終わってしまう。その状況で遊来は心の中で楽しいという感情が出てきていた。ほとんどデュエルから身を引いている心境であり、挑まれたら作業のようにしていたデュエルとは何かが違う。

 

「カードを一枚伏せ、ターンエンド」

 

「お、俺のターン、ドロー」

 

[ドローカード]

※闇の誘惑

 

[現在の手札・5枚]

※竜の渓谷

※終末の騎士

※調和の宝札

※ドラグニティ-ファランクス

※闇の誘惑

 

「手札から魔法カード『闇の誘惑』を発動。カードを2枚ドローし手札にある『終末の騎士』を除外する」

 

[ドローカード]

※サイバー・ダーク・クロー

※サイバー・ダーク・カノン

 

「更に『調和の宝札』を発動。手札にある攻撃力1000以下のドラゴン族チューナーモンスター『ドラグニティ-ファランクス』を捨て、カードを2枚ドロー」

 

[ドローカード]

※ガード・ブロック

※ラビードラゴン

 

[現在の手札・5枚]

※竜の渓谷

※サイバー・ダーク・クロー

※サイバー・ダーク・カノン

※ガード・ブロック

※ラビードラゴン

 

「手札の『サイバー・ダーク・クロー』を手札から捨てて効果発動。『サイバーダーク』と名の付く魔法か罠カードを手札に加える。『サイバーダーク・インパクト!』を手札に。更に『サイバー・ダーク・カノン』を手札から捨てて効果発動。デッキから機械族の『サイバーダーク』モンスターを手札に加える。デッキから『サイバー・ダーク・エッジ』を手札に加えます」

 

「手札交換か?」

 

「サイバーエンドが・・・カイザー、貴方の言うサイバー流の光なら・・・。俺はその裏、サイバー流で言う闇を見せましょう」

 

「闇だと?」

 

「そうです。更にフィールド魔法『竜の渓谷』を発動!」

 

黄昏の空と竜達が飛び交う渓谷、このフィールド魔法は遊来の代名詞になっていると言っても過言ではない。

 

「出た!遊来くんの代名詞のカード!!」

 

「これが・・・!」

 

「遊来さんの代名詞・・・」

 

「やっぱり『ドラグニティ』関連のカードはすげえぜ」

 

ギャラリーは騒いでいるが亮は口元に笑みを浮かべながら、遊来に声をかけた。その目は純粋にデュエルを楽しんでいる目だ。

 

「お前の全力、見せてみろ!」

 

「『竜の渓谷』の効果を発動!手札を一枚捨てて、更にデッキからドラゴン族のモンスター『ドラグニティーパルチザン』を墓地へ!更に『サイバーダーク・インパクト!』を発動!墓地の『サイバー・ダーク・ホーン』手札の『サイバー・ダーク・エッジ』フィールドの『サイバー・ダーク・キール』をデッキに戻し、融合デッキから融合召喚扱いで『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』を攻撃表示で召喚!!」

 

 

『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』

星8/闇属性/機械族・効果・融合/攻撃力1000/守備力1000

 

「レベル8で攻撃力が1000?」

 

「『サイバー・ダーク・ドラゴン』の効果。このカードは墓地に眠るドラゴン族をレベル制限無しで装備可能!俺は『竜の渓谷』で墓地に送った『ラビードラゴン』を『サイバー・ダーク・ドラゴン』に装備!」

 

『ラビードラゴン』に『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』が自身の身体へと装着するかのようにのしかかり、コードを繋いでいく。嫌がる素振りを見せる『ラビードラゴン』を無視し、攻撃力を吸収した『サイバー・ダーク・ドラゴン』はより一層高くともくぐもった鳴き声を上げる。

 

『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』

攻撃力1000 → 攻撃力3950

 

「攻撃力3950!?」

 

「でも、サイバーエンドには僅かに届いてない!」

 

「まだ、効果は続く!俺の墓地に眠るモンスター1体につき攻撃力が100ポイントアップ!俺の墓地には7体、よって700ポイント更に攻撃力アップ。よって攻撃力は」

 

『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』

攻撃力1000 → 攻撃力3950 → 攻撃力4650

 

「これがサイバーダークの力の形・・・!サイバーエンドを陽とし、それと対となる陰のサイバーエンド・・それが『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』」

 

「『サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃力を上回った!この攻撃が通れば!」

 

「亮をここまで追い込むなんて・・・」

 

「カイザーが・・・本当に信じられない・・・」

 

「まさか・・・としか言えませんわ」

 

「お兄さん・・・」

 

「遊来がまた圧倒的優位に立つんだな・・・」

 

ギャラリー達はこの学園のトップであるカイザーが黒星を刻まれるかもしれない、そんな予感が走る。それも入学してきたばかりの新入生に、である。

 

「龍谷遊来、礼を言う。俺もまだまだ道半ばだという事を知る事が出来た。そして、サイバー流の二面性をも。否定するのではない、忌避するものでもない。弱さは誰もが持っているもの・・・それを持って前へと進む事が必要なのだと」

 

「弱さを・・・否定せず受け入れる」

 

翔は兄の言葉に何か思うことがあったのだろう。何度も口にし続けている。

 

「ええ、ですが勝利をもぎ取らせてもらいますよ。『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』の攻撃!」

 

「だが、俺も唯では負けられん!最後まで足掻かせてもらう!罠カード、オープン!『決戦融合-ファイナル・フュージョン』!」

 

「!?そのカードは!」

 

「そう、このカードは自分フィールドの融合モンスターが相手フィールドの融合モンスターと戦闘を行うバトルステップに、その融合モンスター2体を対象として発動する事が出来る。その攻撃を無効にし、お互いのプレイヤーはその融合モンスター2体の攻撃力の合計分のダメージを受ける。だが、迎撃はさせてもらうぞ、『サイバー・エンド・ドラゴン』!!エターナル・エヴォリューション・バースト!」

 

「『サイバー・ダーク・ドラゴン』!!フル・ダークネス・バースト!」

 

陽と陰、異なるようで対極の位置に居る2体の機械竜は性質の違うエネルギー波を発射し拮抗している。その余波が亮と遊来を襲い、『決戦融合-ファイナル・フュージョン』の効果によってお互いのライフポイントに合計8650のダメージを受けた。

 

「うおおお!」

 

「うあああ!」

 

丸藤亮:LP0

 

龍谷遊来:LP0

 

「ひ、引き分け!?」

 

「意外な結果なんだな・・!」

 

翔と隼人が驚きを隠せない中、亮は遊来に近づき、手を差し出した。その手を遊来は掴むと立ち上がった。

 

「ありがとう、良いデュエルだった」

 

「こちらこそ、けど・・・あんな自爆のような力押しをしてくるとは思わなかったですよ」

 

「ふっ、負けたくはないからな」

 

「そうですね」

 

笑みを浮かべて一通り会話すると十代が遊来の肩に腕を回してきた。興奮した様子で笑っている。

 

「すごいデュエルだったな!まさか、カイザーと互角に戦うなんて!くぅーーー!俺もカイザーとデュエルしてえ!!」

 

「いやいや、俺が押されてたんだから」

 

「それでも圧倒的に優位はとってたじゃんか!」

 

「アハハ、まあね」

 

「本当に貴方の強さはどうなっているのかしらね。知識も豊富なのは認めてるけど」

 

「そこまで強くないさ、勝ってもいないし」

 

「亮とデュエルをしてそんなことが言えるのは貴方くらいよ」

 

ジュンコとももえを伴って明日香も遊来に声をかけてきた。だが、遊来の発言に少々呆れているが嬉しそうな目で見ている。作業ではなく、少しでもデュエルを楽しみたい心が遊来にあると分かったからだろう。

 

「龍谷遊来」

 

「?」

 

「これからもデュエルの相手をしてくれないか?それに『サイバー・ダーク』に関しても学びたいからな」

 

「俺でよければ、構いませんよ。ああ、そうだ!それと相談が」

 

遊来はオベリスクブルーになってから、アンティデュエルや陰口などで居心地が悪いという旨を正直に話した。

 

それを聞いたジュンコとももえは罰が悪そうな顔をし、明日香からは謝罪、十代はそんな事になっていたのかと驚かれ、翔と隼人も十代と同様に驚いていた。

 

「なるほど、お前がワンキルデッキでオベリスクブルーの生徒を相手にしていた噂の背景にはそんな事があったのか」

 

「『ドラグニティ』を守るためでしたからね」

 

「それならば今回の件が役立つかもしれないな。俺に任せてもらえるか?」

 

「?」

 

それからというもの、翌日から遊来に対して挑んでくる者は居なくなっていた。デュエルは挑まれるが大半は『ドラグニティ』を見せて欲しいというものや対戦して欲しいという感じでアンティルールを強いて来る生徒はほとんど皆無であった。だが、それと同時に。

 

「竜騎士様が来たわ!」

 

「竜騎士様~!」

 

「竜騎士だ!竜騎士が来た!」

 

「なんでさ・・・?」

 

そう、遊来はオベリスクブルーの生徒達から「竜騎士」と呼ばれるようになってしまったのだ。本人としては恥ずかしい事この上ないのだが、生徒達はその呼び方を止めようとはしない。

 

カイザー亮とデュエルした日からすぐに亮は遊来は自分と同等以上の実力を持っているデュエリストである事を肯定する旨を生徒達に話したのだ。

 

また、カイザーと互角に戦えるデュエリストであり『ドラグニティ』という竜の背に乗って戦う戦士達を扱う姿から呼び名を名付けた生徒が居たそうで、一度だけ恥ずかしいから止めてくれと頼んだのだが、皇帝と並び立つ竜の騎士が居るという意味を込めているので止めるつもりはないと念を押されてしまった。

 

「今度は別の意味で気苦労だよ・・・」

 

嬉しいやら恥ずかしいやら、そんな複雑な思いを抱きながら遊来は軽くため息をついていた。




引き分けの方法を思いついたのがこれでした。これ以上、浮かばなかったのも事実です。

カイザーが狼狽える案件というのは『サイバー・ダーク』の事です。

では、次回。


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9話

怪談話の延長

十代がデュエル


オベリスクブルーが気恥ずかしさと一緒に住みやすくなって数日、遊来はオシリスレッドの十代の部屋にお邪魔していた。

 

初夏に近い時期ではあるが、少し汗ばむ。差し入れに購買で買ったジュースを三人に渡し、自分もジンジャーエールを飲む。

 

「大徳寺先生が言っていた廃寮に行ってみようぜ!」

 

「十代、話を聞いた瞬間にそれかよ」

 

「アニキらしいっす」

 

「なんだな・・・」

 

それぞれが好みのジュースを飲みながらハイテンションの十代を見ている。遊来は苦笑しつつ、新しいデッキの構想をしていた。

 

「(最近、ドラグニティを基盤にしたあのカードのデッキが浮かぶんだよな)」

 

遊来が思い描いているあのカードとはカイザー亮とのデュエルで使用しなかった、とあるシンクロモンスターである。

 

ドラグニティではなく派生した姿が多いカード郡だ。なぜ浮かぶのか?そう疑問に思うと亮とのデュエルが切っ掛けなのだと考える。あの時から自分の中で何かが燻っているような感じを受けるのだ。

 

「遊来も行こうぜ!」

 

「え?ああ・・・出かけられるチャンスがあればな」

 

そう、遊来は今現在、エリートとされるオベリスクブルーの所属だ。単位や学生としての問題行動を起こせばペナルティを受けてしまう。

 

だが、やはり学生。好奇心を抑えられない十代に影響を受けているのか、自分もコッソリ行こうという考えが出てきていた。

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、復習も明日の予定も大丈夫という状態で遊来は外で夜の空気を吸っていた。単なる気分転換だが、相棒であるルインと共に散歩も楽しんでいる。

 

デュエルアカデミアは孤島にある為、その全てを探索したいという気持ちは入学当初からあったのだ。

 

『マスター』

 

「どした?ルイン」

 

『あれ、天上院さんじゃありませんか?』

 

ルインの向けている視線の先には明日香が確かにいた。何処かへと向かっている様子で遊来は気になり、距離を開けつつ、後を付いていく事にした。

 

『あ、見失ってしまいました!』

 

「大丈夫、此処までくれば向かった先はこの中だろう」

 

そこは十代達と話題にしていた廃寮であった。物陰に隠れながら様子を伺っていると十代、翔、隼人達もコッソリと立ち入り禁止の札をかけているワイヤーをくぐり抜け、中へと入っていってしまった。

 

「俺達も行こう、ルイン」

 

『はい、ですが気を付けてください。中から何かしらの気配が感じられます』

 

ルインの忠告を受けつつ、遊来も廃寮の中へと入っていく。中は暗いが常に小さな懐中電灯はキーホルダーのようにして持っていた為に役立った。自分の警戒心が強い事にこの時ばかりは感謝だ。

 

「此処では一体、何が行われていたんだろう?特待生専用だって聞いているけど」

 

夜の廃墟というのは雰囲気もあってとてつもなく不気味だ。廃病院が心霊スポットに代表されるように人が何かしらの形で関わっていれば、それだけでも違うのだから。

 

遊来自身も宗教とはほとんど縁は無いが、言霊や思いは残るといった話は好きな方だ。少々ロマンチスト的な所もある。だからこそ、デュエルモンスターズの精霊の話も信じていた。

 

『マスター、この先でデュエルが行われているようです』

 

「なんだって?」

 

直ぐに先へ向かうと、そこでは何かが行われていた形跡があり、その広場らしき場所で十代とロングコートを着込んだ男がデュエルしていた。

 

「おい、どんな様子だ!?」

 

「うわああああ!?って・・・遊来くん!びっくりさせないでよ!」

 

「心臓に悪いんだな・・・!本当に」

 

「ああ、悪い。って・・十代がデュエルしてるのか?」

 

「そうなんだな、今の状況は十代のターンが終わって、相手が『万魔殿-悪魔の巣窟』を発動して『インフェルノクインデーモン』を召喚した所なんだな」

 

「あの闇のデュエリストとか言ってる男、明日香さんを人質にしてるんだよ!」

 

「なんだって!?」

 

驚きつつ、軽くデュエルの状況を見ると隼人の言っていた通りの盤面のままだ。遊来の姿に気付いた十代がこちらに視線を向けてきた。

 

「お、遊来!やっぱり来てたのか!」

 

「気になった事があったから来ただけだ、それよりもデュエル中だろ?」

 

「おっと、そうだった!」

 

「ふむ・・・お友達が来たようだなぁ。私はカードを一枚伏せ、ターンエンドだぁ」

 

十代は再び視線を対戦相手へと向ける。対戦相手のコートの男、タイタンは独特の口調でデュエルの続きを始めターンを終えた。

 

「俺のターン、ドロー!遊来、お前から貰ったカードのうち一枚を今、此処で使わせてもらうぜ!」

 

「!ああ、ヒーローは強くなるからな。存分にやってやれ」

 

「俺は『E・HERO エアーマン』を攻撃表示で召喚!このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、2つの効果から1つを選択して発動できる。1つはこのカード以外の自分フィールドの「HERO」モンスターの数まで、フィールドの魔法・罠カードを選んで破壊する。二つ目はデッキから「HERO」モンスター1体を手札に加える効果だ。俺は二番目の『HERO』を手札に加える効果を使うぜ!この効果により『E・HERO リキッドマン』を手札に加える!」

 

『十代さんのドロー力にエアーマンのサーチ効果、まさに鬼に金棒ですね。リキッドマンも遊来が差し上げたカードでは?』

 

「おかげで負け続きだよ。属性系も渡したのは塩送りだったかな?」

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ」

 

「私のタァン、ドローォ!」

 

遊来は隼人から聞いたカードの名称から、ある程度のデッキの中身を把握していた。恐らくはデーモンデッキの一つ『チェスデーモン』だろう。オベリスクブルーの女生徒の一人とデーモンメインのデッキを話題にしていた時があったのを思い出した。

 

「このスタンバイフェイズ時に『インフェルノクインデーモン』の効果発動ぉするぅ!『デーモン』と名のつくモンスターの攻撃力をエンドフェイズまで1000ポイントアップさせるぅ!『インフェルノクインデーモン』で『エアーマン』へ攻撃ぃ!!」

 

「罠発動!『ヒーロー・バリア』!このカードは自分フィールド上に『E・HERO』と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする!」

 

「ならばぁ、カードを一枚伏せ、ターンエンドだぁ」

 

状況的に有利なのはタイタンのようだが、今の十代のデッキはキーカードさえ揃ってしまえば爆発的に攻めて来るデッキになっている。それでも、デュエルというものはなにが起こるか分からないと言えるのがこの世界だ。ルインも俺の隣で興味深そうにデュエルを見ている。

 

だが、『チェスデーモン』には厄介な効果がある。それを重要な場面で出されなければいいけど。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

十代が力強くドローし、手札にカードを補填し笑みを見せた。何故か十代は此方に笑みを浮かべている。どうやら俺に視線を向けている様子だ。

 

「遊来!お前がくれた力を今ここで出すぜ!!」

 

「俺が与えた力?」

 

「ああ!俺は手札から『融合』を発動!!手札の『E・HEROバーストレディ』と『E・HEROリキッドマン』を融合!!」

 

「バーストレディとリキッドマンを融合!?」

 

「そんな組み合わせで出でくるE・HEROなんて知らないんだな!」

 

「なるほど、アイツを呼ぶ気か!十代!!」

 

遊来の言葉に十代は頷いて答える。炎の女戦士と自らを液体にする戦士の融合、赤と青の光が一つとなって現れたのは炎を体現したような赤と黄色のアーマーとマントを身に付けた戦士であった。

 

「友情の炎を体現したヒーロー!来い!!『E・HEROノヴァマスター』!!」

 

 

『E・HEROノヴァマスター』融合・効果モンスター/星8/炎属性/戦士族/攻撃力2600/守備力2100

 

 

「え、E・HEROノヴァマスターだとぉ!?そんなカードは知らんぞぉ!?」

 

「これは、俺に遊来が与えてくれた力!そして、友情を誓い合った証でもあるんだ!」

 

「恥ずかしすぎるから止めてくれよ・・・」

 

十代の恥ずかしくなるセリフを聞きつつも、デュエルの場面に視線を戻す。ノヴァマスターが出た事でタイタンは一気に追い込まれている。ノヴァマスターには相手モンスターを戦闘破壊した時、デッキからカードを一枚ドロー出来るドロー加速の効果を持ち、更には上級クラスの攻撃力も兼ね備えている。

 

「そして、素材に使った『E・HEROリキッドマン』の効果を発動!このカードが「HERO」融合モンスターの融合召喚の素材になり、墓地へ送られた場合または除外された場合に発動できる。自分はデッキから2枚ドローし、その後手札を1枚選んで捨てる!カードを2枚ドロー!そして、1枚を墓地へ送るぜ」

 

手札交換にも等しいが、ノヴァマスターで戦闘破壊が出来ればそのデメリットはプラスマイナスゼロとなる。

 

「すごい、一枚墓地に送らなきゃいけないけど、アニキは手札の消費を最低限に抑えてる」

 

「融合の弱点を出来るだけ抑えているんだな・・・これも遊来のアドバイスのおかげなのか?」

 

「まぁ・・・十代はドロー力が凄いけど、デッキ消費が激しいからな。ドロー系のカードがない場合を想定して戦うっていうのをアカデミアに来る前に散々やってたからさ」

 

「そうだったのかぁ」

 

十代は手札を確認した後、眼付きを鋭くし攻撃態勢に入った。だが、そこでタイタンが宣言をする。

 

「『インフェルノクインデーモン』の効果発動ぉ・・!スタンバイフェイズに攻撃力を1000ポイント上昇させるぅ!」

 

「それでも行くぜ!ノヴァマスター!インフェルノクインデーモンを攻撃!!『ブレイズ・ノヴァ!!』」

 

ノヴァマスターが掌に炎のエネルギーを集中させ、それをインフェルノクインデーモンへ向けて発射し、インフェルノクインデーモンは焼き尽くされるようにして砕け散った。

 

「ぬううううう!!」

 

タイタン:LP 3300

 

「戦闘でモンスターを破壊した事により、ノヴァマスターの効果発動!カードを一枚ドローするぜ!」

 

「ぬぅわぃ!?ドロー加速の効果があったのかぁ!だが、ここで私はリバースカードオープン!『デーモンの雄叫び』ライフポイントを500支払い、先程倒されたインフェルノクインデーモンを守備表示で蘇生させるぅ!!」

 

「それでも攻撃は続行するぜ!!エアーマンで攻撃!『エア・ブラスト』!」

 

「んぐうう!!」

 

タイタン:LP 2800

 

インフェルノクインデーモンはスタンバイフェイズの時に攻撃力上昇効果が適応される。よって、インフェルノクインデーモンは僅か攻撃力900のモンスターでしかない。そのため守備表示で召喚したのだろう。

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ」

 

「私のタァン、ドローォ!」

 

タイタンがドローすると同時に翔と隼人がうろたえ始めている。どうやら、十代の右腕や左足が消えていると騒いでおり、遊来には別の場所が消えているように見えていた。

 

「(俺には右足だな・・・催眠術かなにかか?)」

 

『恐らくは』

 

遊来が平気でいられた理由はルインがそばに居た為である。ルインは曲がりなりにも女神の名を持つモンスターであり、上位の精霊でもあるため単純な催眠術は通用しない。また、前世で死にかけた経験も一役買っていたのだろう。タイタンが千年パズルに似た物を取り出し、それによって暗示を生じさせ催眠術をかけていたのだ。

 

「(ルイン、あのパズル繋ぎ目ある?見てくれないか)」

 

『少し待ってください、うーん・・・ありませんね』

 

「(偽物確定だな。前世で漫画は読んでたから知ってるけど本物は、エジプトの地で眠ってるから)」

 

遊来自身も架空の存在と認識していたとはいえ、この世界に来てから一度だけ出会った千年パズルの所持者だったデュエルキング武藤遊戯。その闇の人格とされたもう一つの魂、名も無きファラオと呼ばれた、古代エジプトの王子アテム。それが正体であった。それも今や伝説となっており自分も一度は戦いたいと思ったことは何度もあった。

 

「私はぁ、手札から『強欲な壷』を発動し、二枚カードをドローぉ!!更に魔法カード『二重召喚』を発動ぉ!、これにより私はぁ、このターン中に通常召喚を二回行えるぅ!!更に『早すぎた埋葬』を発動ぉ!ライフポイントを800支払う事で、このカードを墓地に眠るモンスター1体に装備し特殊召喚できるぅ」

 

「私はライフポイントを800支払い、再び『インフェルノクインデーモン』を攻撃表示で特殊召喚ん!!」

 

 

タイタン:LP 2000

 

 

「更に装備魔法『堕落(フォーリン・ダウン)』を発動ぉ!このカードを貴様の場のノヴァマスターに装備するぅ!!」

 

「なんだって!?」

 

「!『堕落(フォーリン・ダウン)』!?デーモンデッキが使ってきたのならマズイぞ!!」

 

遊来の声に隼人もマズイと言った表情をしており、翔は何がマズイのか分からず首を傾げていたが、紫色のオーラに包まれてしまったノヴァマスターがタイタンの場に向かった事によって状況を理解したようだ。

 

「ああっ!?アニキのノヴァマスターが相手のフィールドに!?」

 

「更に『ジェノサイドキングデーモン』を一回目の通常召喚で召喚ん!」

 

タイタンの手札は1枚、ここで攻める気だ。遊来がそう予測するとタイタンは迷いなくバトルフェイズへと移行した。

 

「ノヴァマスターで貴様の場のエアーマンを攻撃ぃ!『インフェルノ・ノヴァ!』」

 

「うあああ!?」

 

遊城十代:LP 3200

 

「ノヴァマスターの効果ぁ発動ぉ!カードを一枚ドローぉ!んふっふふ!!更に『ジェノサイドキングデーモン』のダイレクトアタックゥ!!『炸裂!五臓六腑ぅ!!』」

 

『ジェノサイドキングデーモン』が自分の内臓を蟲に変えて十代へ襲わせる。その手に持っている剣は飾りなのか?と遊来は思うがあんな攻撃、ソリッドヴィジョンとはいえ受けたくはない。

 

「へへ!そうはいかないぜ!!罠カード発動!『ドレインシールド』!!このカードは相手モンスターの攻撃宣言時、攻撃モンスター1体を対象として発動できる。その攻撃モンスターの攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力分だけ自分はLPを回復する!」

 

十代の罠の宣言と同時に『ジェノサイドキングデーモン』が杖にしていた剣を掲げ、蟲達の攻撃を停止した。

 

「?なんだ?」

 

「ふふっ『ジェノサイドキングデーモン』の効果発動ぉ!このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、その処理を行う時にサイコロを1回振り、2か5が出た場合、その効果を無効にし破壊することができるのだぁ!」

 

そう言ってタイタンは懐からサイコロを取り出し、十代に向けて受け取りやすいように投げつけ十代はそれを難なくキャッチする。

 

「なんのつもりだよ?」

 

「サイコロの確認だぁ・・・デュエルにおいてだけはイカサマはしないと決めているのでなぁ?確認を終えたらこちらへ返せぃ」

 

「ん、分かった!」

 

いや、だったらなんで・・・。ああ、商売だからねと遊来が一人で納得する。前世は社会人であった為にお金の必要性を理解しており、タイタンも雇われてインチキデュエリストにならなければ生活できなかったのだろう。

 

「世知辛い世の中だなぁ・・・」

 

「どうしたんだな?遊来」

 

「なんだか、疲れた顔しているよ?」

 

「ああ、大丈夫だって・・・」

 

十代はサイコロを一通り確認し終えるとキャッチしやすいようにタイタンへサイコロを投げ返した。それを受け取ったタイタンは、イカサマはしていないと見せつけるようにサイコロを見せた後、地面に落下させた。

 

サイコロが転がり、目が止まる。出た目は5だ。よって『ジェノサイドキングデーモン』の効果は成功となってしまった。

 

「出た目は5だぁ、よって貴様のドレインシールドは無効化され、破壊されるぅ!」

 

「何!?うわっ!」

 

十代を守っていた光の盾が砕け散ってしまい、蟲達が一斉に飛びかかっていく。

 

「『ジェノサイドキングデーモン』の追撃ぃ!」

 

「うあああああ!」

 

遊城十代:LP 1200

 

「ああ!アニキのライフが残り僅かに!?」

 

「十代、気張れ!!」

 

「バトルフェイズ終了、メインフェイズ2においてノヴァマスターを生贄にし『迅雷の魔王-スカル・デーモン』を攻撃表示で二回目の通常召喚の権利で召喚するゥ! 」

 

 

『迅雷の魔王-スカル・デーモン』効果/星6/闇属性/悪魔族/攻撃力2500/守備力1200

 

 

「上手い!『ノヴァマスター』のドロー効果を利用した上で、上級モンスター引き当て更に『堕落(フォーリン・ダウン)』を処理してを出すとは!攻撃力は若干下がるがそれでも盤面は完全に逆転した!(けど、プレミしてるな)」

 

タイタンの戦法に遊来は素直に称賛したがミスも見つけ出していた。これだけの実力があるのにこの後、良い様に利用される。遊来はルインにある頼みをしようとしていた。

 

「(ルイン、タイタンを助けられないか?)」

 

『あの者を狙っている闇の欠片がありますから、それを消滅させない限りは』

 

会話している中で、タイタンの様子がおかしくなってきていた。声がくぐもって来ておりデュエルを中断しようとはしない。更には不気味な雰囲気を拡散させている。だが、乗っ取られる前にもタイタンは致命的なミスをした。

 

「た・・・ターン、エンドォ・・・!」

 

『いけない!あの者が闇の欠片に取り込まれて、このデュエルが闇のゲームになってしまっています!』

 

「(マジかよ!?ど、どうすればいいんだ?)」

 

『遊城十代にデュエルで勝利して貰うしかありません!そうすれば欠片を引き剥がす事が出来ます。それと同時に私が消滅させますので、彼に伝えてください!闇のゲームは勝利しなければ命を落とすと!』

 

「(分かった!)十代!今、タイタンがとんでもなくヤバイ事になってる!今、このデュエルはルイン曰く闇のゲームらしい!必ず勝て!勝たなきゃ死ぬぞ!!」

 

「闇のゲームってなんだ?」

 

「とにかく勝て!あとで説明するから!!」

 

「わ、分かった!俺のターン、ドロー!」

 

十代がドローを終えると手札を眺めている。今現在の手札は5枚、ここから逆転の手を引いてくるのが十代の強さだ。手札に手をかけるとカードをデュエルディスクに装填する。

 

「俺も強欲な壷を発動!カードを二枚ドロー!更に『E・HERO バブルマン』を召喚!このカードが召喚された時、自分の場に他のカードが無い時、デッキからカードを二枚ドローできる!」

 

「・・・ぬ・・・ぅ」

 

「はぁ!?四枚もドローしたのかよ!?(おいおい、アニメ効果の方のバブルマンなのか!?OCGだけかと思ってた!)」

 

「よし!手札から融合回収(フュージョン・リカバリー)を発動!墓地にある『融合』と『E・HEROリキッドマン』を手札に戻し、そのまま『融合』を発動!手札の『E・HEROクレイマン』と『E・HEROリキッドマン』を融合!」

 

「クレイマンの融合となると、マッドボールマンを召喚するつもりなのか?それだと、防御重視になって勝てないんだな!」

 

「いや、隼人。マッドボールマンは素材が決められてるから今だと無理だ。だけどE・HEROはエレメント・・・すなわち元素をモチーフにされていて、デュエルモンスターズでは五つの属性を担っている。ノヴァマスターが炎属性の上位なら、その他の属性だって上位クラスはいる」

 

「え?それってどういう意味なんだな?」

 

「見ていれば分かるさ」

 

「大地の名を持ち、今その力を見せてくれ!『E・HEROガイア』を融合召喚!!」

 

『E・HERO ガイア』 融合・効果/星6/地属性/戦士族/攻撃力2200/守備力2600

 

『E・HEROクレイマン』と『E・HEROリキッドマン』が融合の渦に飲まれていき、二体が合体しその光の中から無骨で力強く、何者をも寄せ付けない漆黒の鎧を身に纏った巨人のような戦士が姿を現した。十代の手札は六枚、まだまだ攻められる状態だ。

 

「そして『E・HERO ガイア』の効果発動!このカードが融合召喚に成功した場合、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動する。ターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力を半分にし、このカードの攻撃力はその数値分アップする!俺は『迅雷の魔王-スカル・デーモン』を選択し、その攻撃力の半分をガイアに吸収させる!!」

 

「なっ・・・!?だが『迅雷の魔王-スカル・デーモン』の効果発動ぉ!このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、その処理を行う時にサイコロを1回振り1・3・6の目が出た場合、その効果を無効にし破壊するぅ!」

 

再びサイコロを振り、目が出る。出た数字は4だ。これにより『迅雷の魔王-スカル・デーモン』の効果が不発となり『E・HERO ガイア』が両腕で地面に拳を撃ち込み、隆起した地面へ『迅雷の魔王-スカル・デーモン』の下半身が大地へと飲み込まれていく、それによって攻撃力の変動が起こった。

 

 

『迅雷の魔王-スカル・デーモン』攻撃力2500→攻撃力1250

 

『E・HERO ガイア』攻撃力2200→攻撃力3450

 

 

「攻撃力の半分を吸収する効果!?おまけに攻撃力3450になったよ!」

 

「ノヴァマスターと同じ属性融合のヒーロー、あのガイアってカードも強力なんだな!」

 

「更にこのターン、素材に使った『E・HEROリキッドマン』の効果により、カードを二枚ドローして一枚を捨てる!」

 

「おいおい、まだドローする気か!?やっぱり、十代に属性HEROを渡したのは塩だった」

 

「俺の融合はまだ終わらないぜ!更にもう一枚『融合』を発動!場に居る『E・HERO バブルマン』と手札の『E・HERO ワイルドマン』を融合!」

 

「更に融合召喚!?」

 

「ま、まだ何か別のHEROが?」

 

「水属性とHEROの融合・・・アイツか!十代はこのターンで決める気だな」

 

場に居たバブルマンと野性的な風貌を持つワイルドマンの二体が再び融合の渦に飲まれていき、その姿を変える。

 

十代は嬉しそうにそのカードを手にする。アカデミアに初めて向かった船の中で遊来から渡された大切なカード、それを親友の前で披露する。遊来自身もHEROカードの中でお気に入りの一体であるあのカードを。

 

「来い!極寒の力を持つ氷のヒーロー!『E・HERO アブソルートZero』融合召喚!」

 

光の中から雪の結晶が舞い落ち、十代の目の前に『E・HERO ノヴァマスター』と酷似した純白のアーマーとマントを靡かせながら着地してきたヒーローが立ち上がる。

 

『E・HERO アブソルートZero』融合・効果/星8/水属性/戦士族/攻撃力2500/守備力2000

 

「な、なななな・・・!!」

 

十代の場には攻撃力の増加した『E・HEROガイア』、新たに召喚された『E・HEROアブソルートZero』属性融合HEROのうちの二体がおり、タイタンの場には攻撃力を半減させられた『迅雷の魔王-スカル・デーモン』そして『ジェノサイドキングデーモン』『インフェルノクインデーモン』の三体がいるが、2体の属性融合のHEROを呼ばれる前に『迅雷の魔王-スカル・デーモン』の召喚を優先的に考えてしまった為に勝利を逃してしまい、更には攻撃力が足らず、このターンでの決着は火を見るよりも明らかであった。

 

「行け!ガイア!迅雷の魔王-スカル・デーモン!攻撃!『コンチネンタルハンマー!』Zeroも続け!ジェノサイドキングデーモンへ攻撃!『瞬間氷結(Freezing at moment)!』」

 

「ぬわああああああああああ!!!」

 

タイタン:LP0

 

「ガッチャ!!楽しいデュエルだったぜ!」

 

ライフポイントがゼロになった瞬間、タイタンの内側から闇が吹き出し、彼を飲み込もうとしている。

 

「な、なんだこれはぁ!?嫌だ、嫌だァああ!!」

 

「(ルイン!!)」

 

『お任せ下さい!破滅の最光!』

 

ルインの光がタイタンを貫き、闇の欠片を彼から引き剥がし、消滅させたが突然現れた彼女にタイタンが目を丸くして驚いている。

 

「は、破滅の女神ルインだとぉ!?なぜこんな所にぃ!?」

 

「あー、それはおいおい話すから!それと仮面のオッサン!!アンタにも手伝ってもらう!そんだけガタイが良いんだから明日香を運んでくれよ!それから、なんでインチキ紛いな事をやっていたのかも話してもらうからな!?それが助けた交換条件!」

 

「わ、分かったぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

遊来は脱出する前に気になった物があり、それを回収すると同時に古くなっていたのか周りが崩れ始めていた。急いで走って外へ脱出するとタイタンは改めて彼らに名を名乗り、話によれば明日香は眠らせただけとの事でじきに目を覚ますと言っている。

 

「十代、翔、隼人、悪いけど明日香とこの写真を頼む。俺、タイタンと話があるから」

 

「おう、任せておけよ!」

 

「遊来君・・・後でちゃんと話を聞かせてよ?特にルインさんの事」

 

「任されたんだな」

 

三人からの返事を聞き、タイタンと共に少し離れた場所で話をする事にした。距離もあるので会話を聞かれる事もない。

 

「それじゃ、お互いに聞きたい事を交換しながら話そうか。先ずは俺からで、どうしてアカデミアに居たんだ?」

 

「依頼を受けたのだぁ・・・遊城十代を二度とデュエルが出来んようにしてくれとなぁ」

 

「依頼相手がなんとなく想像つくけど・・・。はい、そちらの番」

 

「うむぅ、これから私をどうするつもりだぁ?それに破滅の女神ルインが居た事も気になるのだぁ」

 

「とりあえず、依頼主に連絡して契約破棄してアカデミアを去ってくれ。それと破滅の女神ルインに関してはデュエルモンスターズの精霊を信じるか信じないかの話になる」

 

「デュエルモンスターズの精霊だとぉ!?噂だけが独り歩きして胡散臭いとばかり思っていたが」

 

お前が言うなというツッコミをグッと堪えて、遊来は自分のデッキケースからカードを取り出して見せた。今のタイタンならばインチキ商売などしなくともこれらを活用して立ち直ってくれると信じて。

 

「精霊の話は一旦切って・・・タイタン、連絡先との交換でこのカードをアンタに渡すよ」

 

「む?こ、これはぁ!?『伏魔殿(デーモンパレス)-悪魔の迷宮』と『トリック・デーモン』のカードではないかぁ!私にとっては探し求めていたカードだぁ!」

 

タイタンにとってこのカード達はかなりの戦力になるカードである事に違いはない。特に『トリック・デーモン』はデーモンと名の付く魔法、罠までもがサーチ可能な為、彼からすれば喉から手が出るほど欲しいカードだ。

 

「だから、渡す条件はアンタの連絡先、ちゃんとしたやつのね?教えてくれればちゃんと渡すよ」

 

「連絡先だけで良いのかぁ?対価としてはそちらの方が不利な気もするのだがぁ?」

 

「だったら買い取りにする?依頼主は検討が付いてるから、仕事を依頼された時に支払われた依頼料で売るよ」

 

「むぅ・・・なら、連絡先と依頼料の三分の一を支払うとしよう」

 

タイタンの条件も学生にしては破格だが、遊来は首を横に振った。タイタンの手に『伏魔殿(デーモンパレス)-悪魔の迷宮』と『トリック・デーモン』のカードを渡すと立ち上がった。

 

「今回のお金は振り込むなりして返した方がいいと思うよ」

 

「む・・ぅ、依頼料は振込で返すとしよう。貴様ぁ・・・名前は?」

 

「俺の名前?俺は龍谷遊来、遊来と呼んでくれればいいさ」

 

「龍谷遊来・・・私は本土に帰り、真っ当な道を進むとしよう。もし、機会があれば私とデュエルしてくれるか?今の私ではない、生まれ変わった私とだ。それと、これが私の連絡先だぁ・・・お前からの連絡なら如何なる時でも受け付けよう」

 

「ああ、もちろん。内緒にしとくから早く帰ったほうがいいよ」

 

「恩に切る。それと眠らせた少女や他の者達にも伝えといてくれるかぁ?済まなかったと・・・」

 

「分かった、必ず伝えておくよ」

 

「では、さらばだぁ・・・龍谷遊来」

 

タイタンは連絡先を教えてくれた後、背を向けて去っていった。遊来は十代達と合流し、明日香も目を覚ました様子だ。

 

「あ、遊来!あれ?タイタンは?」

 

「本土へ帰ったよ、自首するって。それとみんなへ伝言、済まなかったってさ」

 

「そっか、いつかまたデュエルしてえなぁ!」

 

十代は相変わらずだなと遊来は苦笑したが、翔はジト目で睨んでおり隼人は笑っていた。そんな中、明日香だけがその場で何かを見続けている。

 

「なぁ、十代?明日香の奴どうしたんだ?」

 

「ああ、なんだかお兄さんの写真を見つけたとかで」

 

「?明日香のお兄さん?」

 

遊来は明日香に声をかけると明日香が気づいたように振り返り、手にした写真を見せてくれた。かなりのイケメンな男性が歯を光らせているように見える爽やかでイケメンなスマイルをサムスアップをししている姿を撮影されたもののようだ。

 

「10・・・JOIN?じゅう?それともテン?」

 

「10JOINと書いて天上院と読むのよ、こうしたおふざけは兄さんの十八番だったの」

 

「ああ、そういうことか」

 

10JOINで天上院と読むのだと聞いて納得し、これが明日香のお兄さんである吹雪さんだと聞かされた。その後、夜明けが近くなってきたのを確認し、全員がそれぞれの部屋に戻った。

 

 

 

 

 

夜が開ける数時間前、一つの星が小さく形を成し遊来の部屋のデッキケース向かって来た後、その上に輝いていた。

 

『やはり、お前は違った次元に転生していたのか・・・通りでいくら探しても見つからないはずだ』

 

小さな星は人の形を成し、顔はまるで仮面に覆われた姿をしていた。声からして男性とわかるが遊来のデッキケースを開き、その中から宇宙を体現したような黒色のカードを一枚抜き出して手にし、それが光に包まれていく。

 

『この力はお前にとっては悪であり、闇となるだろう。それと対となす力をお前は得られるか?』

 

光に包まれたカードに名称とイメージイラストが浮かび上がってくる。そのイメージイラストはドラゴンでありながら鋭角的かつ機械的なフォルムをしており、カラーは黒紫色と赤を基調として、胸の宝石や翼など体の各所が輝いているように見える。

 

『対となる力を得なければお前は、闇に飲まれる。人とは光と影を持って生きているのだから』

 

光が収まり、カードをデッキケースに戻すと彼が使用している机に向かって言葉を発した。

 

『アルタイス・・・我が唯一の友であった竜騎士。かつて私はお前との友の誓いを裏切ってしまった・・・。そしてお前はそんな私を許し海へ恋をし・・・その想いを抱き、破滅への道と知りながら自らの恋に殉じた。■■■を守るために。いつか、再会できれば良いと思ってしまうのは我侭か?お前の想い人はこの世界には居ないだろう・・・だがその半身は姿を変えてお前の傍に居る。それを忘れるな・・・そしてこのカードは私からの絆の証だ』

 

その人物は今は居ない部屋の主に向けて語られたものであった。再び星に姿を変えると銀河へと帰っていった。

 

たった一枚のカードに力を残して・・・。




最後の現れたのは一体誰なのか?エクシーズに関連している人物である事は間違いありません。

ドラゴンであり、鋭角的かつ機械的なフォルムを持っていてカラーは黒紫色と赤を基調にしていて胸の宝石や翼など体の各所が輝いているエクシーズモンスター。察しが良い人かOCGを現役でプレイしている人は使っているかもしれませんね。答えが分かっても名前は伏字でお願いします。

エクシーズに関しては遊来くんの闇の力の代わりになり、しばらく制御できません。

闇と対になる『ある境地』に達すれば制御できます。その『ある境地』はなんでしょうか?

アルタイスとは星座にあるりゅう座の恒星で3等星の星の名前であり、遊来くんの出来事に関わってくる名前です。

このアルタイスが恋した相手は女性で遊戯王に登場しており、GXの世界よりも先の時代に生きている女の子です。ヒントは出ていますから簡単かと思います。


※追伸

更新遅れてすみませんでした。


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10話

夢から始まる

制裁デュエル

遊来も制裁対象かつ少しずつ闇に飲まれ、闇の力(エクシーズ)を欠片ほど開放。


これは太古の昔とも言える風景。まだまだ未知とも言われているミッシングリンクに当たる時代の風景。

 

その中で空を舞う竜と共に戦う一人の竜騎士が居た。大地ではなく海へと向かい神に匹敵する相手と対峙している。

 

『■■■様を離せ!!たとえ神であろうと私は刃を向ける事に戸惑いはない!!』

 

『やめろ!幾らお前でも我らが神には敵わない!!』

 

『■■■様を護る!!それが私の・・・竜騎士としての誓い!うおおおおお!』

 

『よせぇえええええ!!』

 

『ドラグニティナイトーアラドヴァル』に酷似した竜騎士は『No.73 激瀧神アビス・スプラッシュ』の姿と似た神へと特攻し、大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

「ん?・・・なんだ?」

 

遊来は外からドンドンと響く扉のノックの音で目が覚めた。頭がボーッとしたままだが夢の事に思考が行ってしまう。

 

「リアルな夢だったな・・・っといけない」

 

軽く着替えを済ませ、ドアのロックを開けると一人の女性が立っていた。倫理委員会と呼ばれる人達でアカデミアの秩序を守っているという。

 

「龍谷遊来、至急校長室へ向かえ」

 

「はぁ・・・分かりました」

 

要件は済ませたと言わんばかりに倫理委員会の女性は去っていった。キチンと着替えを済ませ校長室に向かうとそこにはクロノス先生が険しい表情で待ち構えており、校長である鮫島も困り顔でこちらを見ている。

 

「シニョール遊来、アナタには退学の通達をしなければならナイーノ!」

 

「は!?退学!?俺、何か悪い事をしましたか?」

 

「アナタは栄えあるオベリスクブルーの生徒でありナガーラ、立ち入り禁止とされている場所に無断で入り込んでいたと報告を受けているノーネ!」

 

「ああ、あれは入り込んでいた人間がいたので注意しようと・・・」

 

「言い訳無用ナノーネ!ですが、ワタクシもそこまで鬼ではないノーネ、後日こちらで制裁デュエルを行うノーネ。ただし、条件が一つあるノーネ」

 

「条件ですか?」

 

「制裁デュエルにおいて『ドラグニティ』の使用を禁止するノーネ!『ドラグニティ』以外のデッキで戦ってもらうノーネ」

 

「え”!?そんな殺生な!」

 

クロノス先生は問答無用と言わんばかりだ。鮫島校長は同情するような表情で遊来に声をかける。

 

「制裁デュエルはシングルになるよう私から進言しておきました。これはもう決定事項なので申し訳ない」

 

「分かりました」

 

遊来は仕方ないなと思いながら校長室から出て行った。通路を歩きながら『ドラグニティ』を禁止された理由を考える。恐らくはシンクロ召喚封じだろう。『ドラグニティ』は『竜の渓谷』を始めとするキーカードが揃ってしまえば圧倒的な展開力を見せるのだ。そのことを知っている為に『ドラグニティ』を封じてきたのだろう。

 

「うーん、ルインで行こうかな。それともM・HEROで行こうかな」

 

出来る事ならルインで行きたい、M・HEROはあくまでも趣味で作ったデッキだ。趣味とはいえ全力で組んではあるけど披露するのはまだ早いような気がする。

 

「ルイン・・・」

 

『はい』

 

「全力で組み直す、手伝って欲しい」

 

『分かりました』

 

部屋に戻る前にオシリスレッドの寮へと趣いた。三人の部屋をノックすると中から「どうぞなんだな」と隼人の声が聞こえる。

 

扉を開けると十代と翔が手札を公開しながら、仮想デュエルをしていた。これは敵と対戦するのではなくカード効果やコンボを発見する時に遊来が使っていた方法を真似たものだ。遊来がワンキルデッキである『宝札エクゾディア』や『ドラグニティ』の回し方を三人に解説した時の方法を十代が覚えていたのだ。

 

「やっぱり俺のHEROと翔のビークロイドは、なかなか合わないな」

 

「アニキと僕のデッキだと種族の問題が大きいッスね。けれど属性ならなんとかなるよ」

 

「ん?ああ、そっか!遊来から融合属性HEROを貰ったもんな、俺!って遊来!?」

 

「よう、二人共」

 

「遊来くん!?」

 

二人の盤面を見ていると十代が融合召喚で呼び出すHEROを出した所で中断しているようだ。出しているモンスターは・・・フレイム・ウイングマン。翔の手札には『パワー・ボンド』と『ユーフォロイド』がある。それを本番で気付くかどうかだ。

 

遊来もしばらく、融合HEROを出すタイミング。翔には強力なスーパー系の『ビークロイド』を出すべき場面を教えた後、すぐに自分の部屋へと戻った。ルインのデッキを組み直さなければならない為だ。

 

「時械神を使えればすぐだけど・・・流石に5D'sのラスボスのカードだから使えないな。元々持っていないし」

 

遊来は何度も何度もカードを見直しつつ、デッキを組み直し一人回しをする。このデッキを初めて使った明日香との戦いにおいて手加減はしていない。このデッキを知っているのは明日香、ジュンコ、ももえ、十代、翔の五人だけだ。正確に言えば隼人も知っているが実戦を見ていないので動きは知らない。

 

「よし、出来た・・・」

 

『そのような組み合わせをするとは・・・マスターは発想力がすごいですね』

 

「うまく出来るかは分からないけどね、対策してくるならその上を行くまでさ」

 

準備を終えた遊来は明日の制裁デュエルに備え、夕飯を取り風呂に入ると就寝した。

 

 

 

 

 

そして、制裁デュエルの日。十代と翔がデュエル場に立ち、タッグデュエルでの戦いをする事になった。相手は迷宮兄弟、タッグデュエルに関してはかなりの強敵とも言える相手で十代が翔をフォローしつつ立ち回っていた。

 

途中でミスなどもあったが翔が遊来の視線に気付き、視線を向けた。遊来は腕組みをして「そこで立ち止まってしまうのか?」と視線で訴えかけ、視線による言葉を受け取った翔は一度、手札を伏せて地面に置くと自分の両頬をバチンと叩いた。その痛みが自分の目を覚まさせ、手札を再び手に持つと自分の今持っている手札をよく見つつ、何が出来るかを模索すした。

 

「(手札には『パワー・ボンド』と『ユーフォロイド』・・・だけど融合出来るモンスターは・・・)」

 

翔は落ち着いて周りを見渡す、手札だけではなく相手の場も自分の場もよく見渡した。十代は何も言わず翔の行動を待っている。軽く深呼吸した翔は遊来に言われていた事を思い返していたのだ。

 

「(遊来くんは言ってた・・・!手札だけじゃなく場の全てを見てみろって・・。アニキの場には『E・HERO テンペスター』が居る!そして手札には『ユーフォロイド』それに相手のモンスター『闇の守護神-ダーク・ガーディアン』は破壊されなくても『攻撃表示』のまま・・そうか!!)」

 

「僕は手札から『パワー・ボンド』を発動!このカードは機械族専用の融合カード、僕は手札の『ユーフォロイド』と『テンペスター』を融合!『ユーフォロイド・ファイター』を攻撃表示で召喚!!更に『ユーフォロイド・ファイター』の攻撃力・守備力は融合素材にしたモンスター2体の元々の攻撃力を合計した数値になる!よって攻撃力は4000!!更に『パワー・ボンド』の効果により、攻撃力が倍になる!!」

 

「「攻撃力8000だとぉ!?」」

 

「気付いたようだな、翔」

 

翔はモンスターの戦闘破壊耐性に関して臆病になっていた。モンスターを破壊しなければ勝てないという考えに凝り固まったままだったのだ。そこで遊来は休日や昼休み等にテーブルデュエルを挑み、破壊耐性を持つカードで翔に解説したのだ。『ミスト・ボディ』をメインに戦闘耐性デッキをわざわざ組んで来たのは彼らしいとも言える。

 

「何度も模擬戦をしてくれた遊来くんのアドバイスと十代のアニキが身を削って教えてくれた事で思い出したんだ!例えモンスターを『破壊』出来なくても、ダメージは通る!『ユーフォロイド・ファイター』の攻撃!『フォーチュン・テンペスト』!」

 

「「ぬおおおおおおお!!」」

 

『闇の守護神-ダーク・ガーディアン』は破壊されないが、発生した戦闘ダメージによって迷宮兄弟のライフポイントはゼロになった。

 

「やったな!翔!!」

 

「十代のアニキのおかげだよ!それに・・・」

 

翔は遊来の居る観客席に視線を向けていた。今度は挑戦者として君の前に立つという決意を彼に視線で訴えかける。

 

遊来は翔からの視線を受け止めた後、笑みを浮かべ観客席から去っていった。今度は自分のシングルデュエル、相手は誰なのかはわからないが、デュエルディスクを装着しデュエル場へと上がる。

 

「続いて、シニョール遊来の制裁デュエルを始めるノーネ!」

 

遊来の名前が出た瞬間に会場がざわめく。オベリスクブルーにおいて「竜騎士」の異名を持つ彼が問題行動を起こしたのかと騒いでいるのだ。そんな事をするはずがないと訴える者、良い気味だと嘲笑う者、彼のデュエルが見れるのかと多種多様だ。

 

「・・・・」

 

遊来はただ相手がくるのを待つだけだ。彼は正直、こんなデュエルは早く終わらせたいと考えている。侮っている訳ではなく、作業のようなデュエルになってしまうのが嫌なのだ。明日香や十代、亮といった最上級の実力者から少しずつでも腕を上げてくる翔や隼人、何度も対策を講じて挑んでくる三沢、ジュンコ、ももえなど楽しくて高め合える相手との楽しさを知ってしまったが故、彼の中でデュエルに対する熱意が冷めていた気持ちが燻り始めているのに、こんなデュエルは気持ちが自分の中で再び冷めてしまう。

 

同時にワンキルデッキを使えば不正したと言われ、絶対に周りは認めようとしないだろう。

 

「グヒヒ、お前が俺の相手か」

 

「!?」

 

その男はずんぐりむっくりな体型にマントを身に付けデュエルディスクを腕に装着した姿で歩いてくる。デュエル場に上がると生徒達からブーイングの嵐だったが目の前の男はひと呼吸置くと。

 

「静まれ!この凡骨共が!!」

 

海馬瀬人の声帯模写を完璧に行い、黙らせてしまった。無論、この場に海馬瀬人は居ない。目の前の男が行ったことだ。

 

「自己紹介が遅れたな、俺は死の物真似師だ。お前のデュエルの相手になる」

 

「そうか、すぐにでも始めてくれ」

 

「せっかちな奴だ」

 

「それデーワ!デュエル開始ナノーネ!!」

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

死の物真似師、少し記憶が薄れているがデュエリストキングダムの話で盗んだ瀬人さんのデッキを使っていたはずだ。今回は一体どんなデッキで来るんだ?

 

「俺の先攻、ドロー!」

 

 

[手札・現在6枚]

 

※攻撃の無力化

※儀式の下準備

※リバース・オブ・ザ・ワールド

※マスク・チェンジ

※テラ・フォーミング

※終焉の覇王デミス

 

 

早速と言える手札だ。儀式デッキの弊害もあるが1枚、不釣合いなカードが手札にある。このルインデッキは噛み合うことのない要素の一つであるHERO関連を組み合わせてあるのだ。だが、目の前の相手から異様に嫌な予感がするのを遊来は感じ取っていた。此処であのカードを出した瞬間に終わってしまう、そんな予感があるのだ。

 

「俺は手札から魔法カード『テラ・フォーミング』を発動!このカードの効果により、デッキからフィールド魔法を1枚手札に加える」

 

『テラ・フォーミング』を発動した瞬間、デュエル場が湧き上がる。遊来の『テラ・フォーミング』は『ドラグニティ』によって何度も見せられている為、展開の基盤となっているだけに関心が高いのだ。

 

※攻撃の無力化

※儀式の下準備

※リバース・オブ・ザ・ワールド

※マスク・チェンジ

※ブレイク・オブ・ザ・ワールド

※終焉の覇王デミス

 

「『ブレイク・オブ・ザ・ワールド』をデッキから手札に加え、更に『儀式の下準備』を発動!!このカードは1ターンに1枚しか発動できない。デッキから儀式魔法カード1枚を選び、さらにその儀式魔法カードにカード名が記された儀式モンスター1体を自分のデッキ・墓地から選ぶ。そのカード2枚を手札に加える!!俺は『エンドレス・オブ・ザ・ワールド』と『破滅の女神ルイン』を手札に加える!!」

 

『ドラグニティ』ではないデッキに観客席にいる生徒達は驚いているが、その中で最も驚いているのが最初の対戦相手であった明日香だ。

 

「あれは・・・わたしとのデュエルで使っていた儀式召喚デッキ!?」

 

「みたいだな、正確には『デミスルイン』って名前らしいぜ?」

 

「十代!?ああ・・・デュエルが終わったものね」

 

「その通りだぜ、にしても遊来まで制裁デュエルの対象になっていたなんてな」

 

「恐らくは廃寮に入っていたのがバレちゃったんでしょうね・・・」

 

明日香は申し訳なさそうにしているが、十代の隣に翔が現れそれに続く形で三沢と亮も近くに現れ、三沢が十代に質問する。

 

「十代、遊来が扱うあのデッキを知っているのか?」

 

「ああ、あのデッキも遊来が組んだ一つだぜ!」

 

「儀式召喚デッキ、興味深いな。儀式召喚はモンスター自身も強力だが、コストも大きい」

 

三沢は冷静に儀式召喚のメリット、デメリットを口にして解説する。だが、あくまでも儀式召喚をメインに据えたデッキであるという事だけしか情報はまだ出ていない。

 

「相手の出方がわからない以上、そのような展開をするのか見物だ」

 

 

 

 

 

 

「更に俺は手札からフィールド魔法『ブレイク・オブ・ザ・ワールド』を発動!!このフィールド魔法は1ターンに1度、自分フィールドの儀式モンスター1体を対象として発動でき、手札の儀式モンスター1体をターン終了時まで公開する事で一つ目の効果を発動できる。その公開した儀式モンスターのレベルはターン終了時まで、対象のモンスターのレベルと同じになる。二つ目の効果は1ターンに1度、自分フィールドに「破滅の女神ルイン」または「終焉の王デミス」が儀式召喚された場合、2つのうちの効果から1つを選択して発動できる。一つは自分はデッキから1枚ドローする効果。もう一つはフィールドのカード1枚を選んで破壊する効果」

 

発動された瞬間、雷が遊来の目の前に落ち、破壊された街などの廃墟や荒野などをイメージさせる場所が現れた。やはりというか、ほとんどの生徒は怯えている。

 

 

[現在の手札6枚]

 

※攻撃の無力化

※リバース・オブ・ザ・ワールド

※マスク・チェンジ

※終焉の覇王デミス

※破滅の女神ルイン

※エンドレス・オブ・ザ・ワールド

 

「手札から速攻魔法『リバース・オブ・ザ・ワールド』を発動!このカードは1ターンに1枚しか発動できない。

レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になるように、手札の儀式モンスターをリリースし、手札・デッキから「破滅の女神ルイン」または「終焉の王デミス」を儀式召喚する事ができる!俺は手札にある『破滅の女神ルイン』を儀式の生贄とし、デッキから『終焉の王デミス』を儀式召喚!」

 

『終焉の王デミス』儀式・効果/星8/闇属性/悪魔族/攻撃力2400/守備力2000「エンド・オブ・ザ・ワールド」により降臨。

 

デミスが場に出た事で会場はザワつき始める。『ドラグニティ』だけを使っていると思い込んでいたのだから当然の反応だろう。

 

「更にデミスが儀式召喚されたことにより、『ブレイク・オブ・ザ・ワールド』の効果を使用し、俺はカードを一枚ドローする」

 

[ドローカード]

 

終焉の王デミス

 

[現在の手札6枚]

 

※終焉の王デミス

※破滅の美神ルイン

※攻撃の無力化

※マスク・チェンジ

※終焉の覇王デミス

※エンドレス・オブ・ザ・ワールド

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

[現在の手札 5枚]

 

※終焉の王デミス

※破滅の美神ルイン

※マスク・チェンジ

※終焉の覇王デミス

※エンドレス・オブ・ザ・ワールド

 

相手へとターンが移る。遊来の場には『終焉の王デミス』と伏せカードが一枚。初手からすればかなり動いているだろう。だが、死の物真似師にとっては関係がなかった。

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

物真似師は手札を見比べるとすぐに動き出した。だが、それは観客の生徒達が驚く内容であった。

 

「俺はモンスターを裏側表示でセット、更にカードを二枚伏せてターンエンド」

 

ターンが移り、遊来は相手の出方に不気味さを感じていた。必ず何かがあるはずだと。

 

「俺のターン、ドロー!(セットモンスター、それに伏せカードが二枚?後攻の動きにしては消極的すぎる・・・誘われているのか?)」

 

[ドローカード]

 

魔神儀[デビリチャル]-キャンドール

 

[現在の手札 6枚]

 

※魔神儀[デビリチャル]-キャンドール

※終焉の王デミス

※破滅の美神ルイン

※マスク・チェンジ

※終焉の覇王デミス

※エンドレス・オブ・ザ・ワールド

 

良いタイミングで来てくれたと遊来は心の内でで笑みを浮かべる。ライフを失う効果の軽減は出来ないがレベル10の儀式モンスターを呼ぶ布石が来たのだ。

 

「俺は手札から『魔神儀[デビリチャル]-キャンドール』の効果を発動!三つある効果から手札の儀式魔法カードを1枚を相手に見せて発動できる。『魔神儀[デビリチャル]-キャンドール』以外のデッキにある「魔神儀」モンスター1体と手札のこのカードを特殊召喚する効果を使う!手札の『エンドレス・オブ・ザ・ワールド』を公開し、手札から『魔神儀[デビリチャル]-キャンドール』とデッキから『魔神儀[デビリチャル]-タリスマンドラ』をそれぞれ特殊召喚!」

 

ロウソクとマンドラゴラに似たモンスターが召喚され、観客の中で明日香が少し興奮気味に口を開く。

 

「あの二体が揃ったのなら来るわ、彼の最大の儀式召喚が!」

 

「遊来の最大の儀式召喚!?」

 

明日香の言葉に三沢、亮が目を見開くが彼女は微笑んだまま答えようとはしない。そんな中、遊来が再び儀式召喚をしようと動く。

 

「『魔神儀[デビリチャル]-タリスマンドラ』がデッキから特殊召喚された事により効果発動!儀式モンスターである『破滅の美神ルイン』を手札に加え、更に俺は手札から儀式魔法『エンドレス・オブ・ザ・ワールド』を発動!『魔神儀[デビリチャル]-タリスマンドラ』と『魔神儀[デビリチャル]-キャンドール』を儀式の生贄とし、レベル10の儀式モンスターを召喚!!」

 

「創造と破壊、破壊の創造!終焉という名の終わり・・・今こそ古き世界を破壊し新たな世界の礎を築き上げよ!儀式召喚!終焉の覇王デミス!」

 

「このカードは4つの効果があるんだ。一つは目はこのカードのカード名は手札・フィールドに存在する限り『終焉の王デミス』として扱う効果」

 

「二つ目の効果は儀式召喚したこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分の儀式モンスターは戦闘では破壊されない効果」

 

「三つ目は儀式モンスターのみを使用して儀式召喚したこのカードの効果を発動するために払うLPは必要なくなる効果」

 

「四つ目は1ターンに1度、2000LPを払って発動できる。フィールドの他のカードを全て破壊し、破壊した相手フィールドのカードの数×200ダメージを相手に与える効果、今現在は戦闘破壊耐性と名称のみが永続だがな」

 

終焉の覇王という名は伊達ではなく、その威圧感と風貌は相手を畏怖させる。そんな中で三沢が冷静に覇王デミスを分析していた。

 

「儀式モンスターを戦闘から守る効果、更にはデミスの破壊効果に相手へのライフダメージを付与されているのか、儀式モンスターを使わなくてはならないがライフコストまで消滅するなんて、おまけに攻撃力、守備力共に3000・・・なんて強力な儀式モンスターなんだ」

 

効果付きの儀式モンスターかつ攻守共に上級クラスの力を持っている事に驚き続けている三沢だが、明日香に十代、翔、後から合流した隼人は何処吹く風だ。

 

「覇王デミスが降臨した事により『ブレイク・オブ・ザ・ワールド』の効果でカードを一枚ドロー!』

 

[ドローカード]

 

※バトル・フェーダー

 

王のデミスを守備表示に変更し、覇王のデミスでセットモンスターに攻撃『終焉の戦斧』!」

 

覇王のデミスがセットモンスターに攻撃し、その瞬間、セットモンスターの正体が顕になった。

 

「!電池メン-ボタン型!?」

 

「その通り!!リバース効果を発動!俺様はデッキから『電池メン-ボタン型』以外のレベル4以下の「電池メン」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事ができ、更にリバースしたこのカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、デッキからカードを1枚ドローする事が出来る!」

 

遊来は冷や汗が出てくるのを感じていた。電池メンのカード達は個々では弱いが、同種族が集まればその名の通り強力な力を見せてくる。そのポテンシャルは1ターンキルすらも出来るほどに強力なのだ。

 

「俺様は『電池メン-単三型』を守備表示で特殊召喚し、更にカードを一枚ドロー!」

 

「っ・・・ターンエンド」

 

[現在の手札 4枚]

 

※破滅の美神ルイン

※マスク・チェンジ

※終焉の王デミス

※バトル・フェーダー

 

[伏せカード]

 

※攻撃の無力化

 

「俺様のターン、ドロー!此処で伏せておいたカードを一枚発動、永続魔法『進撃の帝王』を発動する!」

 

「『進撃の帝王』だって!?」

 

遊来は更に驚愕する。発動されたカードに関しての知識があるためだ。物真似師は下卑た笑いをしながらターン内の行動を続ける。

 

「そう、このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、俺様のフィールドの生贄召喚したモンスターは効果の対象にならず、効果では破壊されない。そして俺様はこのカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、俺様は融合デッキからモンスターを特殊召喚できないデメリットもあるが関係ない」

 

「そして『電池メン-単三型』を生贄にし『超電磁稼動ボルテック・ドラゴン』を召喚!!」

 

『超電磁稼動ボルテック・ドラゴン』効果/星5/光属性/雷族/攻撃力2400/守備力1000

 

「なっ!?」

 

アドバンス召喚され、おもちゃの恐竜のような身体を持つ『超電磁稼動ボルテック・ドラゴン』が現れ、更に笑い声を上げている。そして、その理由を説明し始めた。

 

「『超電磁稼動ボルテック・ドラゴン』は生贄にされた『電池メン』によって永続的に効果が付与される!『電池メン-単一型』ならばこのカード1枚を対象にする魔法・罠カードの効果を無効にする効果。『電池メン-単二型』ならばこのカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える貫通効果、『電池メン-単三型』このカードの攻撃力は1000ポイントアップする効果!俺様は『電池メン-単三型』を生贄にした事で攻撃力上昇の効果を得るのさ!!」

 

『超電磁稼動ボルテック・ドラゴン』攻撃力2400→攻撃力3400

 

「攻撃力が3400!?」

 

「一気に盤面が逆転したか」

 

明日香と亮がそれぞれ、言葉にする。物真似師は意外な行動を取ってきた。それは何故と考えそうな事である。

 

「『超電磁稼動ボルテック・ドラゴン』で『終焉の覇王デミス』の攻撃ー!『ボルテック・バイト!』」

 

攻撃表示のデミスが噛み付かれ、その余波の風圧を受ける遊来。その影響でライフポイントが減ってしまう。

 

龍谷遊来:LP 3600

 

「ライフを僅かとはいえ削られた!」

 

「だが次の儀式の警戒か、あのデッキに入っているか分からないが『アドバンスドロー』を使えなくするための対策はあるだろう」

 

「そうか、デミス達はレベル8以上。『アドバンスドロー』の対象に入る。この状況での手札補強は強い」

 

「それに、覇王のデミスによって戦闘破壊耐性を持っているが、相手は他の方法でいくらでも対処できるのだろう。もし遊来のデッキに『アドバンスドロー』が入っているとしても、この状況でモンスター戦闘はあまり意味がない。『電池メン』が相手なら伏せカードセットしていてもなんの慰めにもならないからな」

 

翔が叫びをあげ、三沢が疑問点を口にし、亮も予想を立てながらデュエルを見ていた。それと同時に三沢の予想は当たっていた。『漏電(ショート・サーキット)』『地獄の暴走召喚』更にこの状態で『急速充電器(クイック・チャージャー)』を揃えられた瞬間、遊来は簡単に敗北してしまう。

 

「っ・・・」

 

「俺様は更に速攻魔法『急速充電器(クイック・チャージャー)』を発動!墓地にある『電池メン-ボタン型』と『電池メン-単三型』を対象にし、この二枚を手札に戻す」

 

「!!」

 

あって欲しくなかったカードの一枚目が発動されてしまった。これで墓地にあった『電池メン-単三型』が回収されてしまった事により、遊来は更に追い込まれている。だが、攻撃力3400を備えた『超電磁稼動ボルテック・ドラゴン』が場に居ると同時に覇王デミスが守備表示になれば拮抗するだろう。

 

「これで俺様はターンを終了する」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※トレード・イン

 

[現在の手札 5枚]

 

※破滅の美神ルイン

※マスク・チェンジ

※終焉の王デミス

※トレード・イン

※バトル・フェーダー

 

[伏せカード]

 

※攻撃の無力化

 

「俺は墓地にある『エンドレス・オブ・ザ・ワールド』の効果!このカードをデッキに戻し、効果を発動!デッキから『エンド・オブ・ザ・ワールド』を一枚手札に加え、その後、自分の墓地から『破滅の女神ルイン』または『終焉の王デミス』を選び、手札に加える。俺は『破滅の女神ルイン』を手札に加える」

 

効果処理を終え、手札に加えた後、遊来はデッキをシャッフルし、デュエルディスクに装填し直した。

 

[現在の手札 7枚]

 

※破滅の美神ルイン

※マスク・チェンジ

※終焉の王デミス

※トレード・イン

※エンド・オブ・ザ・ワールド

※破滅の女神ルイン

※バトル・フェーダー

 

「更に手札から『トレード・イン』を発動!手札にある『破滅の女神ルイン』を墓地へ送り、カードを二枚ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※契約の履行

※エネミー・コントローラー

 

[現在の手札7枚]

 

※破滅の美神ルイン

※マスク・チェンジ

※終焉の王デミス

※エンド・オブ・ザ・ワールド

※バトル・フェーダー

※契約の履行

※エネミー・コントローラー

 

「『ブレイク・オブ・ザ・ワールド』の効果!1ターンに1度、自分フィールドの儀式モンスター1体を対象として発動できる。手札の儀式モンスター1体をターン終了時まで公開し、その公開した儀式モンスターのレベルはターン終了時まで、対象のモンスターのレベルと同じになる。俺は場の『終焉の覇王デミス』を対象に効果発動!!手札の『終焉の王デミス』のレベルを10にする!」

 

「同時に手札から儀式魔法『エンド・オブ・ザ・ワールド』を発動!このカードは『破滅の女神ルイン』『終焉の王デミス』の降臨に使用する事ができる。フィールドか手札から、儀式召喚するモンスターと同じレベルになるように生贄を捧げなければならない。俺は手札にあるレベル10となった『終焉の王デミス』を儀式の生贄に捧げる!!」

 

煌く光ではなく、今度は全てを包み込むような破壊の意志を示す蒼い光が中心から現れた。その光景に全員が息を呑む。

 

「終焉の覇王と対を成す、破滅の美神。世界を創造し、創造による破壊!世界の柱となれ!『破滅の美神ルイン』を儀式召喚!!」

 

『破滅の美神ルイン』儀式・効果/星10/光属性/天使族/攻撃力2900/守備力3000『エンドレス・オブ・ザ・ワールド』により降臨。

 

「このルインもデミスのように4つの効果がある。一つ目はこのカードが手札・フィールドに存在する限り『破滅の女神ルイン』として扱う効果』

 

「二つ目は儀式召喚したこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの儀式モンスターは効果では破壊されない効果」

 

「三つ目は儀式モンスターのみを使用して儀式召喚したこのカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる効果」

 

四つ目はこのカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合に発動できる。そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える効果だ。そしてルインが降臨した事で『ブレイク・オブ・ザ・ワールド』の効果、カードを一枚ドロー」

 

[ドローカード]

 

神秘の中華なべ

 

「おいおい、こんなのありかよ!」

 

「さらに手札から『エネミー・コントローラー』を発動!このカードの効果で『超電磁稼動ボルテック・ドラゴン』を守備表示に変更!バトルだ!ルインで『超電磁稼動ボルテック・ドラゴン』を攻撃!『破滅の閃光』!」

 

「な~んてね、伏せカードオープン!『攻撃の無力化』!」

 

「くっ!」

 

『すまない、マスター!』

 

罠カードによってルインの攻撃は防がれてしまった。二回攻撃を持っているがバトルフェイズを終了されてしまっては意味がない。

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

[現在の手札6枚]

 

※破滅の美神ルイン

※マスク・チェンジ

※終焉の王デミス

※エンド・オブ・ザ・ワールド

※バトル・フェーダー

※契約の履行

 

「俺様のターン、ドロー!んん?『強欲な壷』を発動。カード二枚ドロー!」

 

「それに合わせて速攻魔法!『神秘の中華なべ』を発動!このカードの効果で『終焉の王デミス』を生贄に攻撃力分のライフを回復する」

 

龍谷遊来:LP3600→6000

 

「更に『ハリケーン』を発動!魔法と罠カードは全て手札に戻る!!」

 

「此処で『ハリケーン』?」

 

遊来が伏せておいたカードと相手の『進撃の帝王』が手札に戻る。だが、遊来はここで嫌な予感がしていた。

 

「『超電磁稼動ボルテック・ドラゴン』に『流星の弓・シール』と『デーモンの斧』を装備!上昇効果はお互いに打ち消されるがダイレクトアタックが可能だぜ?」

 

「!!」

 

「『超電磁稼動ボルテック・ドラゴン』ダイレクトアタック!」

 

「うああああああ!?」

 

龍谷遊来:LP2600

 

攻撃力3400のダイレクトアタックが遊来を襲い、彼も流石に声を上げてしまう。それでもライフポイントが残った。

 

「俺様はこれでターンエンド、さぁ?どうするかな?」

 

「くっ・・・俺のターン、ドロー!」

 

※E・HERO シャドー・ミスト

 

[現在の手札7枚]

 

※破滅の美神ルイン

※マスク・チェンジ

※終焉の王デミス

※エンド・オブ・ザ・ワールド

※バトル・フェーダー

※契約の履行

※E・HERO シャドー・ミスト

 

『マスター、デミスが我が力を使えと言っている』

 

「(デミスが?)」

 

『我が守護によって互いに守られている今が使うチャンスだと』

 

「(分かった!)俺は『終焉の覇王デミス』の効果を発動!ライフポイントを2000支払い、フィールドの他のカードを全て破壊し、破壊した相手フィールドのカードの数×200ダメージを相手に与える!」

 

龍谷遊来:LP600

 

「何!?だが、お前の場も全て!」

 

「いや、俺の場は儀式モンスターのみ!そして儀式モンスターは美神ルインの加護によって守られている!!」

 

「なんだってえええ!?」

 

「『超電磁稼動ボルテック・ドラゴン』を破壊!そして200のダメージだ!」

 

死の物真似師:LP3800

 

「あわわ!だが、この程度のダメージは」

 

「バト・・・っ!?」

 

バトルフェイズに移行しようとした瞬間、自分の中で激しく何かが鼓動した。自分のようで自分ではない何かが現れようとしている。

 

『(このような温さでは意味がない・・・本当の力というものを教えてやろう)』

 

「(や、やめ!)」

 

瞬間、遊来自身の意識は飲み込まれ口元を覆う仮面なようなものが遊来の口元に薄らと見えていた。同時に先程までとは彼の雰囲気が全く違う。

 

「『私は・・・レベル10の儀式モンスター二体を使い、オーバーレイ!』」

 

「な、なんだぁ!?」

 

オーバーレイと遊来が宣言した瞬間、ルインとデミスが黒い渦の中へと飲み込まれていき、爆発する。

 

「『2体のモンスターでオーバレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!鉄路の彼方より望みを乗せて、灯せ勝利の青信号!定刻通りにただ今到着!『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』!」

 

『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』エクシーズ/ランク10/地属性/機械族/攻撃力3000/守備力3000

 

それは巨大な列車砲であった。だが、それ以上に未知の召喚方法をしてきた遊来に皆が驚きを隠せない。

 

「『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』の効果発動!1ターンに1度、このカードに重なっているエクシーズ素材を1つ取り除く事で発動できる。相手に2000ダメージを与える」

 

「なにーーー!?」

 

『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』の周りを動いている光の球が1つ消えると同時に砲身を物真似師に向けて始める。

 

「『ファイア!!』」

 

「うげえええ!?」

 

死の物真似師:LP1800

 

「『そして、バトル!!『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』でダイレクトアタック!!』」

 

「あぎゃああああああ!!」

 

死の物真似師:LP0

 

今度は連射して砲弾を物真似師に打ち込んでいく。その火力によって完全にライフポイントをゼロにしてしまった。

 

「しょ、勝者!龍谷遊来!!」

 

「『ふ・・・まだ欠片くらいの力だけよ』」

 

瞬間、遊来はふらつき頭を軽く押さえて持ち直す。周りがものすごい歓声を上げているが自分としては覚えがない。

 

「か、勝ったのか?俺・・・え?」

 

デュエルディスクのモンスターゾーンに装填されたままの『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』を取り外し、手の中で見る。

 

「俺はエクシーズのEXデッキなんて持ってきてないぞ・・・?それにエクシーズ召喚は出来ないはずなのに・・・あ!」

 

『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』のカードは消失してしまった。現物はあるはずだが、使っていないカードがどうしてという疑問と同時に恐怖していた。

 

「俺に一体何があったんだよ・・・・」

 

 

 

 

 

それと並行して、観客席にいた明日香達も驚いていた。特にエクシーズ召喚という名の未知の召喚方法を見せつけられたのだから無理もないだろう。

 

「エクシーズ召喚、シンクロ召喚は彼がやっているから知っているけどあんな召喚方法、見たことも聞いたこともないわ」

 

「すげえ、あんな召喚方法があるなんてさ!」

 

「ああ、興味深いが未知の召喚とはな」

 

「アニキ・・・ってばもう・・・!」

 

「未知の召喚方法・・・本人も何が起こったか分かっていないようだな」

 

こうして制裁デュエルは終了したのだが、遊来に対する疑念と恐怖が僅かに芽生えてしまったのを誰も知る由も無かった。




ここでのエクシーズは遊来くんの負の部分であり魂の記憶が起こした行動です。

本人に自覚はありませんがこれで歯止めが利かなくなりました。隙があれば表立って出てきます。

彼が守ろうとした愛しい女の人は誰でしょうね?ヒントは『ゼアル』です。

何故に電池メン?1キルを匂わせたかったのです。

グスタフの口上は電車をモチーフにした勇者です。

では次回


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11話

悩んで歩いている中、導かれる。

遊来と隼人が全力という名の調整デュエル。


制裁デュエルから翌日、俺はペガサスさんに連絡してエクシーズ召喚を自分の意識がない時に行われていたと話をした。

 

流石にものすごい剣幕で怒られてしまったが、自分の意識がなかった時だったというのを入念に説明し、カードも消えてしまったと言ったら落ち着いてくれた。

 

「遊来ボーイ、YOUは自分で思っている以上に何かを持っているのかもしれまセン」

 

「・・・それとペガサスさん。エクシーズが出る前に俺、闇に飲まれたんです」

 

「What!?」

 

「必死に抵抗しても飲まれていくような・・・そんな感じでした。だけど、炎が俺を引きずり出してくれたんです」

 

「炎・・・デスか?」

 

「はい、モンスターのようでしたけど姿までは流石に」

 

「なるほど。それと遊来ボーイ、エクシーズのデータは海馬ボーイと海馬コーポレーションにも送りマース。それと同時にシンクロ召喚も積極的に使うべきデショウ。これはあくまでも私の予想なのデスが、シンクロモンスターがエクシーズモンスターからの闇を抑える封印の役目をしているように思えマス。今回は事故として大目に見マスが、自分からエクシーズを使おうなどとは思わないで下サーイ!」

 

「・・・・分かりました」

 

ペガサスとの会話を終えると、気分転換に外へ出る事にした。隣にはルインが居てくれているが会話できるような心境ではなかった。あの時、自分ではない自分がエクシーズ召喚の素材にルインを使い、勝利を収めたのだから。結果的に勝利しているが、自分としては勝負の感覚がなかった。

 

 

 

 

 

森の中に入り、森林浴をしながら自分の心を癒し始める。すると何処からか声が聞こえてきた。

 

『こっち来て』

 

「!?」

 

『そう、そのまま』

 

敵意はない様子だが、森林の奥にポツンと立っている一つの石があった。精霊らしき少女はその石の前で止まっており、声をかけてきた。

 

『此処、掘り返して』

 

「?ルイン手伝って」

 

『?はい』

 

ルインと協力して石の下を掘り返すと其処にはカードが入るくらい小さな箱が埋められていたそれを見つけると少女は微笑んで消えてしまった。

 

「これは一体?」

 

中身を確認にしようと蓋を開けた。其処には何枚かのカードが裏向きで入っており、それを取り出して確認すると遊来は吹き出した。

 

「はああああ!?なんつーカードをこんな所に埋めてんだよ!前の卒業生か!?いや、チューナーだしありえ・・なくもないか。攻撃力しか見てないのかよ!?」

 

それは俗に言う『妖怪少女』達のカードであった。前の世界でのOCG出身の遊来からすれば『バカジャネーノ!!』と叫びたくなる事案である。

 

 

『妖怪少女』とはレベル3・攻撃力0・守備力1800の共通ステータスと手札誘発効果を持つチューナーのモンスター群であり、一枚を除いては全てアンデッド族で構成されているカード達だ。

 

 

『幽鬼うさぎ』効果を発動したフィールドのモンスターか表側表示の魔法・罠カードを破壊しフィールドからでも発動可能。

 

『浮幽さくら』自分エクストラデッキから選んだカードの同名カードを相手エクストラデッキから全て除外フィールドのモンスター数が自分より相手の方が多い場合にのみ発動可能。

 

『灰流うらら』デッキからカードを手札に加える・特殊召喚する・墓地へ送る効果のいずれかの効果を無効化する。

 

『屋敷わらし』墓地からカードを加える・特殊召喚する・除外する効果のいずれかの発動を無効化

 

『儚無みずき』相手が効果モンスターを特殊召喚する度にライフ回復 回復できなかった場合はエンドフェイズに自分ライフが半減する。

 

『朔夜しぐれ』1体のモンスター効果の無効化とフィールドを離れた際元々の攻撃力分のダメージをコントローラーへのバーンダメージを与える効果、そのモンスターの特殊召喚時にのみ発動可能。

 

とこんな感じで効果がかなり強力なメンバー達が勢揃いなのである。中でも『灰流うらら』はあらゆるデッキに対してメタ的な動きが出来るので人気が高かった。

 

『私達、使って』

 

「頑張ってみる」

 

出てきては居ないが、どうやら『妖怪少女』の全員が精霊のようだ。その中で代表として出てきているのが『幽鬼うさぎ』のようでとりあえずカードを回収して部屋に戻った。

 

 

 

 

 

「はぁ・・・参ったなぁ」

 

『妖怪少女』達がルインとレヴァティン相手に遊んでいた。やはり、妖怪と言われていても見た目と性格が少女なのだから仕方ないと思っているのだが・・・。

 

『おねーちゃん、遊んでー』

 

『仕方ないですねぇ』

 

『ドラゴンさん・・・・遊んでくださる?』

 

『遊んでください・・・!』

 

『俺でよければ構わないよ!』

 

特に『灰流うらら』『屋敷わらし』『朔夜しぐれ』は二人に懐いており、某教育番組のようなお姉さんとお兄さんみたくなっている。

 

『マスター、大変』

 

『本当ね』

 

『無理しないで・・・ください』

 

『幽鬼うさぎ』『浮幽さくら』『儚無みずき』の三人は遊来を気遣ってくれていた。その中で『幽鬼うさぎ』が鋭い事を遊来にぶつけてきた。

 

『マスター、貴方の中、闇が蠢いてる』

 

「!?」

 

『けれど、拮抗するものがある。だけど、燻っていて闇に拮抗できていない』

 

「どういう事だ?」

 

『人間の心の境地、それしか分からない』

 

「???」

 

『幽鬼うさぎ』の意味ありげな言葉に遊来は益々、首を傾げる事になってしまった。だが、彼女はヒントになる言葉をくれた。

 

『ある周期で戦いを始める竜、同調によって呼ばれる竜こそがマスターの中の闇に拮抗するもの』

 

「同調・・・シンクロ召喚の事か?」

 

『うん』

 

「ありがとう、そこまで教えてくれれば十分だ」

 

『私は自分が分かった事を教えただけだから・・・』

 

ほんのり顔を赤くした『幽鬼うさぎ』はそっぽを向いてしまった。今までお礼を言われたことなどなかったのだろう。

 

そんな彼女を見て頭を撫でたくなったが、精霊状態でそれはできないので我慢した。

 

 

 

 

皆が寝静まった夜、遊来は亮との戦い以降で場に出せていない数枚のシンクロモンスターのカードをデッキケースから机の上に出して眺めている。

 

『スターダスト・ドラゴン』

 

『レッド・デーモンズ・ドラゴン』

 

『ブラック・ローズ・ドラゴン』

 

『ブラックフェザー・ドラゴン』

 

この四枚だけが遊来の知識の中で関連性のあるドラゴン達だ。他にも『エンシェント・フェアリー・ドラゴン』『パワー・ツール・ドラゴン』もあるのだが交換や手に入れる事の出来なかったカードゆえに手元にはない。

 

この中で強く惹かれる一枚を手にする。このカードだけ派生したカードを多く手に入れていた。自分でも分からない前の世界において自分が好きだからという理由と何故か心の直感でこれを手に入れておきたいという気持ちが強かった。

 

「・・・しばらくの間、ドラグニティとの混合型で使ってみよう」

 

ドラグニティを選びつつ、四体のうちの一体に対してシンクロ召喚が出来るように調整する。そんな中、デュエルディスクから通信の着信音が聞こえた。

 

「はい」

 

「遊来、遅くに済まないんだな」

 

「隼人?どうしたんだい?」

 

相手は隼人であった。早めに就寝してしまう彼からの連絡は非常に珍しい。話を聴こうと通信用画面にデュエルディスクを接続する。

 

「実は遊来に折り入って頼みがあるんだな」

 

「俺に?」

 

「そうなんだな、明日は学校が休みだから俺のデュエルの相手をして欲しいんだな!」

 

「それは構わないが、いきなりどうしたんだ?」

 

隼人が真剣な目をして頼み込んできているのを見て、思わず遊来は訪ねてしまった。

 

「明後日に俺の父ちゃんが来るんだな・・・」

 

詳しく話を聞くと、隼人の親父さんがこの島に来るらしい。本当にデュエルの実力や知識があるのかどうかを試すため、デュエルを挑んでくるそうだ。勝てば残留、負ければ実家に連れ戻されるという。

 

「俺、デュエルモンスターズに関わっていきたいという夢が出来たんだな。父ちゃんとのデュエルで俺が本気だって所を見せたいんだな!」

 

夢が見つかった。この言葉は遊来にとって羨ましい気持ちと嫉妬する気持ちが同時に出てきていた。前の世界において遊来は十代を始めとする皆よりも年上で、社会人として働いていた。

 

前の世界において幼い頃の夢は潰され、実力を示せば出る杭は打たれてしまい、社会人になってからは理不尽な仕打ち、見合わない対価、あらゆる負の側面を受けて生きてきた経験がある遊来にとって今の隼人は非常に眩しく写っていた。

 

「そっか、分かったじゃあ明日、そっちに行くよ」

 

「ありがとうなんだな、遅くにゴメンな。お休みなんだな」

 

「ああ、お休み」

 

通信を切ると静かに溜息を吐いた。羨ましいと思う気持ちが溢れ出て止まらないのだ。ただ言われた通りに、真面目にやっていればいつか報われると言われて頑張ってきたがそんな事はなかったという思い出がよみがえる。

 

『マスター・・・』

 

「ルイン、あの時の事・・・謝ってなかったな。ゴメン」

 

『いいえ、あれはマスターではありませんでしから』

 

ルインは今『破滅の女神ルイン』の姿をとっている。天使、美神ともなれるのだが遊来自身、女神の姿が一番好みだと本人に伝えており、それを聞いたルインは顔を真っ赤にしながら満更でもない表情をしつつ、女神の姿をしてくれている。

 

『それに、あの子達も心配していますよ』

 

「あの子達?」

 

ルインが指差した先には『妖怪少女』達がウンウンと頷きながらこちらを見ていた。こんな幼い子達まで心配させてしまったのかと自分を恥じる。

 

「すまない、みんな」

 

『マスター、抱え込みやすい、心配になる』

 

『幽鬼うさぎ』の一言は『妖怪少女』全員の総意だったようで、再び頷いた。まるで妹達に心配されるダメな兄のようになっている遊来であった。

 

 

 

 

そして翌日。つまり、休日の日だ。隼人の親父さんが来る前日であり遊来と隼人は、オシリスレッドの部屋でテーブルデュエルを行っていた。

 

「『マスター・オブ・OZ』で攻撃なんだな!」

 

「伏せカードを警戒しない癖がまだ残ってるぞ?『収縮』発動!これによって『マスター・オブ・OZ』の攻撃力は半分になる!『氷帝メビウス』で返り討ちだ」

 

残りライフ200だった隼人のライフポイントがゼロと計算機に表示され、隼人に敗北の表示が出る。

 

「やっぱり、遊来には叶わないんだな。シンクロ召喚を使っていない遊来に勝てないんじゃ父ちゃんにも・・・」

 

「何言ってんだよ、隼人。自分の力で獣族のコンボを見つけてるじゃないか。少し休憩したら、さっきの勝負の感想戦をしながらもう一戦やろう」

 

「分かったんだな」

 

飲み物を飲みながら、二人はデュエルのおさらいをする。翔と十代はカードパックを見に行くと言って留守にしている。

 

「ふむふむ・・・なるほどな、ターン開始のドローフェイズで『デスカンガルー』をドローする前のターン、ここで『砂塵の大竜巻』を伏せなかったのが、さっきの敗北の原因だな」

 

「けれど、他にも伏せる罠カードが無かったんだな」

 

「罠じゃなくても、手札にある魔法が使うことのできない状態なら、ブラフとして魔法を伏せるのも有りさ。それと切り札を出す時は伏せカードは一掃出来るのが理想だな。例えば『ハリケーン』を使ってバウンス、つまり手札に戻す事も効果的さ」

 

「一掃・・・だけど手札に戻してしまうとまた伏せられてしまうんだな」

 

「バウンスは確かに相手にすぐ元に戻されてしまう・・・それが弱点だな。けれど、裏を返せばカウンターされない限り、1ターン攻撃のチャンスが必ず生まれるって事になる。一掃した後にライフが減った状態でこれを『マスター・オブ・OZ』に装備させて攻撃すれば殆ど勝てるぞ」

 

「!『巨大化』のカード、使い方が分からなくて入れてなかったんだな・・・」

 

「それに、『マスター・オブ・OZ』を速攻で出すならこのモンスターも使えるぞ」

 

「『融合呪印生物-地』!?カイザーが遊来のデュエルで使っていたモンスターの地属性になったやつなんだな!」

 

「そう、『デスカンガルー』と『ビッグ・コアラ』は手札に持ってきやすいけどどちらかが来れば正規融合召喚ができる。『マスター・オブ・OZ』は召喚制限が無いから」

 

「遊来、俺・・・前に本気でデッキは強化しないって言ったけど撤回するんだな!俺のデッキを強くするのに協力して欲しいんだな!」

 

「分かった!じゃあ、明日の仕上げはデッキを強化した後にデュエルディスクでやろう」

 

「おう!」

 

それから隼人のデッキを広げ、獣族をメインにしつつ強化に必要な魔法、自己防衛用の罠、隼人が使いたいカードなどを意見を取り入れて完成する事になった。

 

「出来た、俺だけのオリジナルのデッキが出来たんだな!」

 

「じゃあ、先ずはテーブルで回し方を説明しようか」

 

新しくなった隼人のデッキは『種族統一』タイプのデッキだ。遊来が何度も解説し、隼人が大丈夫といったタイミングで外へ出た。

 

「じゃあ、やろうか?今回は『ドラグニティ』を使うぞ」

 

「頼むんだな、一度は対戦したかったデッキだから」

 

オシリスレッド寮の近くにある校庭のようなデュエル場で遊来は紫色のデッキケースを取り出し、その中にあるデッキをデュエルディスクにセットした。ドラグニティを使うという事は隼人からすれば一切、容赦なく全力で倒すという遊来の意思表示にほかならない。

 

「俺も全力でこのデッキを使いこなしてみせるんだな!勝ってみせる!!」

 

「ああ、デュエリスト以外の夢をのせてかかってこい!!」

 

「「デュエル!」」

 

前田隼人:LP4000

 

龍谷遊来:LP4000

 

 

「先攻は俺だ、ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※ドラグニティーレムス

 

[手札・現在6枚]

 

※竜の霊廟

※ドラグニティーレガトゥス

※ドラグニティークーゼ

※ドラグニティードゥクス

※調和の宝札

※ドラグニティーレムス

 

この手札なら隼人はどうやって攻略してくるか、見物だ。遊来は容赦なくドラグニティ特有の展開をする。

 

「俺は手札の『ドラグニティーレムス』を捨てて効果発動!このカードを手札から墓地に送る事で『竜の渓谷』を手札に加える!!」

 

「いきなり『竜の渓谷』のサーチ。やっぱり遊来は皆から「竜騎士」と呼ばれているだけあって『ドラグニティ』との絆がすごいんだな!」

 

「そしてそのまま、手札からフィールド魔法『竜の渓谷』を発動!」

 

デッキからのサーチを終えてシャッフルが終わり、デュエルディスクにデッキをセットすると遊来はフィールド魔法ゾーンを展開し、代名詞のカードを発動させた。黄昏の渓谷に竜達が飛び交うフィールド魔法、今までは観客として見ていたが、自分がいざ対戦者の立場に立ってみるとプレッシャーがすごかった。

 

「そして俺は『調和の宝札』を発動!手札にある攻撃力1000以下のドラゴン族のチューナーモンスターを一枚捨て、デッキからカードを二枚ドロー!俺が捨てるのは『ドラグニティークーゼ』だ!」

 

[手札・現在5枚]

 

※竜の霊廟

※ドラグニティーレガトゥス

※ドラグニティードゥクス

※ドラグニティ・グロー

※BF-精鋭のゼピュロス

 

「手札がほとんど減っていないんだな・・・」

 

対戦者の立場に立って初めて遊来の恐ろしさに隼人は気付いた。あれだけの動きをしながら使った手札は事実一枚のみ、それも準備段階のままだ。

 

「行くぞ、隼人!俺は『竜の渓谷』の効果を発動!『竜の霊廟』を墓地に送り、デッキからレベル4以下の『ドラグニティ』と名の付いたカードを手札に加える。俺が加えるのは・・・『ドラグニティーレガトゥス』!」

 

[現在の手札・5枚]

 

※ドラグニティーレガトゥス

※ドラグニティードゥクス

※ドラグニティ・グロー

※BF-精鋭のゼピュロス

※ドラグニティーレガトゥス

 

「更に先程、手札に加えたレガトゥスを特殊召喚!」

 

「通常召喚じゃ、ない!?」

 

「『ドラグニティーレガトゥス』は1ターンに一度、二つの効果から一つを選んで発動できる。俺は『ドラグニティ』と名の付くモンスターか『竜の渓谷』が存在する時、手札から特殊召喚できる効果を選択して、特殊召喚したのさ。更に墓地に眠る『ドラグニティーレムス』を墓地から特殊召喚!」

 

「なんで!?レムスはサーチだけじゃなかったのか・・・!?」

 

「そうだ、『ドラグニティーレムス』は自分の場に『ドラグニティ』と名の付くモンスターがいる時に特殊召喚できる。ただし、この効果を使用した場合、このカードがフィールドから離れた時ゲームから取り除かれ、更に俺はこのターンドラゴン族モンスターしか融合デッキから召喚できない!!」

 

「『竜騎士』の所以、今ここに見せる!俺はレベル4の『ドラグニティ-レガトゥス』にレベル2の『ドラグニティ-レムス』をチューニング・・・!」

 

「ま、まさか!?」

 

「二つの種族の結束が、新たな竜騎士を生み出す。今こそ駆け抜けろ・・・!シンクロ召喚!飛び上がれ、『ドラグニティナイト-ガジャルグ』!!」

 

「シンクロ召喚・・・・!いきなり飛ばしてきたんだな!しかも、攻撃力2400!」

 

「『ドラグニティナイト-ガジャルグ』の効果発動!デッキからレベル4以下のドラゴン族または鳥獣族のモンスターを手札に加え、その後手札からドラゴン族か鳥獣族のカードを捨てる!」

 

遊来は『ドラグニティークーゼ』を手札に加え、『BF-精鋭のゼピュロス』を手札から墓地へと送りデッキをシャッフルしデュエルディスクに戻した。

 

「ターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー!(先攻を取りたかったし、それに悔しいけど・・・この手札じゃまだ動けないんだな)」

 

隼人は遊来に言われた通り、ドローした後にカードに書かれた効果を確認している。闇雲に出すのではなく、効果を読んで今必要なカードを出すべきだというアドバイスを実践する。

 

「俺はモンスターを一体裏側守備表示セットし、手札から『迷える仔羊』を発動!このターン、自分はこのカードの効果以外ではモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚できないんだな。その代わり『仔羊トークン』(獣族・地・星1・攻/守0)を二体表側守備表示で特殊召喚するんだな!!カードを一枚セットして、ターンエンド!」

 

裏側守備表示はこの世界では挑発の意味とされる。だが、こうしなければ効果を発動できないモンスターもいると遊来が教えてくれた。何を言われようともモンスターの効果を使う為にセット状態にしたのだ。

 

「さぁ、どう出る?」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※戦線復帰

 

[現在の手札・5枚]

 

※ドラグニティードゥクス

※ドラグニティ・グロー

※ドラグニティークーゼ

※ドラグニティーレガトゥス

※戦線復帰

 

「俺はカードを1枚伏せて、『ドラグニティーレガトゥス』を特殊召喚!更に『竜の渓谷』の効果発動!!手札にある『ドラグニティ・グロー』を捨てて、デッキからドラゴン族モンスターを一体墓地へ置く。更に『ドラグニティードゥクス』を通常召喚!」

 

[現在の手札]

※ドラグニティークーゼ

 

「ドゥクスの効果を発動!このカード召喚に成功した時、墓地からレベル3以下の『ドラグニティ』のドラゴン族モンスターを装備する事が出来る!俺は墓地にいる『ドラグニティークーゼ』をドゥクスに装備!さらにクーゼの効果発動、このカードは装備カード扱いでモンスターに装備されている時、このカードを特殊召喚する!来い!クーゼ!!」

 

「クーゼを特殊召喚?シンクロ召喚してくるとしたら、厄介なんだな!」

 

 

「隼人!これが俺の全力全開だ!『ドラグニティークーゼ』は『ドラグニティ』モンスターのシンクロ召喚にしかシンクロ召喚の素材にする事は出来ない!また、このカードをシンクロ召喚の素材にする場合レベル4として扱う事ができる!!」

 

「なんだって!?」

 

「レベル6の『ドラグニティナイト-ガジャルグ』にレベル4となった『ドラグニティ-クーゼ』をチューニング!天の龍と鳥獣の王が手を結ぶ時、天空を駆ける竜騎士の王が現る・・!今こそ駆け抜けろ!シンクロ召喚!王の道を行け!『ドラグニティナイト-アスカロン』・・!!」

 

「こ、攻撃力3300!それも僅か2ターン目で・・・!」

 

隼人は戦慄していた。たった2ターンの間で最上級を含む自分の場のモンスターと同じ数を揃えてしまったのだから無理もない。

 

「更にドゥクスの効果発動!このカードは自分のフィールドに表側表示で存在する『ドラグニティ』と名の付いたモンスターの数×200ポイント、攻撃力がアップする!よって攻撃力は600ポイントアップ!」

 

「レベル4で攻撃力2100!!?」

 

「行くぞ隼人!アスカロンでセットモンスターに攻撃!」

 

「う・・ぐうう!セットモンスターは『デス・コアラ』!リバース効果で遊来の手札一枚につき、400ポイントのダメージを与えるんだな!遊来の手札は一枚だけ、それでもダメージはあるんだな!!」

 

「うわ!?」

 

龍谷遊来:LP3600

 

「だが、レガトゥスとドゥクスの追撃!仔羊トークンに攻撃!」 

 

「うわああ!」

 

仔羊トークンが破壊され、隼人の場には伏せカードが一枚だけが残った。遊来はそのまま呼吸を整えて宣言する。

 

「ターンエンドだ」

 

「俺のターンドロー、俺は『強欲な壷』を発動なんだな!カードを二枚ドロー!!更に『天使の施し』カードを更に三枚引いて、二枚を捨てるんだな。そしてカードを一枚セットして、手札から『思い出のブランコ』を発動!通常モンスター『ビッグ・コアラ』を攻撃表示で特殊召喚!更に『野生開放』を発動!このカードの対象となった獣族モンスターの攻撃力に守備力分をプラスするんだな!」

 

『ビッグ・コアラ』攻撃力2700→4700

 

「攻撃力4700!」

 

「『ビッグ・コアラ』で『ドラグニティナイト-アスカロン』を攻撃!ユーカリ・ボム!」

 

「うああああ!?」

 

龍谷遊来:LP2200

 

「だが、シンクロ召喚されたアスカロンが破壊された事で俺は融合デッキから攻撃力3000以下の『ドラグニティ』シンクロモンスターを召喚する!来い!バルーチャ!」

 

「バルーチャの効果発動!墓地に居るガジャルグ、アスカロンを装備させる!これにより攻撃力600ポイントアップ!!」

 

「メインフェイズ2!そして俺は手札の『デス・カンガルー』と場の『ビッグ・コアラ』を融合!『マスター・オブ・OZ』を融合召喚!」

 

凶暴になったコアラは融合素材となり、森の最強王者を呼び覚ました。

 

「これで俺はターンエンド、なんだな!」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

[現在の手札]

※ドラグニティークーゼ

※ドラグニティーファランクス

 

「隼人、この感じを忘れるなよ?」

 

「それってどういう・・・」

 

「俺は墓地にある『ドラグニティー・グロー』を除外して効果を発動!『ドラグニティ』モンスターが装備している魔法・罠ゾーンのモンスターカードを一体、守備表示で特殊召喚できる!アスカロンを守備表示で復活させる!更に墓地にいる『ドラグニティアームズーグラム』の効果発動!自分の墓地からドラゴン族・鳥獣族のモンスターを2体、ゲームから取り除く事でこのカードを手札か墓地から特殊召喚できる!」

 

「攻撃力2900のモンスター!?どうして墓地にあるんだな!?」

 

「あったのさ、俺がデッキからグラムを捨てられるタイミングが!」

 

『「(更に『竜の渓谷』の効果発動!!手札にある『ドラグニティ・グロー』を捨てて、デッキからドラゴン族モンスターを一体墓地へ置く)」』

 

「そうか・・・!『ドラグニティ・グロー』を捨てて、『竜の渓谷』の効果によってデッキからドラゴン族を墓地へ置いた時、その時しか考えられないんだな!」

 

「ご明察」

 

「けど、俺の場には『マスター・オブ・OZ』が居る!この攻撃力はやすやすと超えられないんだな!」

 

「どうかな?更に俺は『ドラグニティナイト-アスカロン』の効果を発動!墓地のクーゼを除外し、相手のモンスター1体を対象にする!そのモンスターをゲームから取り除く!」

 

「なんだって!?」

 

『マスター・オブ・OZ』がアスカロンから放たれた黄金の煌めきの炎によってフィールドから除外されていく。

 

「・・・・俺の負けなんだな」

 

「『ドラグニティ』達よ、行け!」

 

ドラグニティの部隊による隼人への一斉攻撃によって勝敗が決まった。結果的に遊来の勝利となったが、彼もギリギリの位置だったのだ。バルーチャの装備枚数を間違えていれば間違いなく敗北であった。

 

「遊来、ありがとうなんだな!自信が少し付いたんだな!」

 

「いい線、行ってたからな。後は自分一人の力でやれるようならないとな」

 

「そのとおりなんだな、けれど、やっぱり遊来の『ドラグニティ』は強かったんだな・・・」

 

「俺も展開がギリギリだったよ」

 

そう言って二人は寮の中へと戻り、隼人の為に再び回し方を説明し、十代や翔達と共に隼人は己のデッキを使って学んでいったのだった。




原作よりイベントが前後しています。

デュエル描写は間違いがあればお願いします。真面目に今のルールとかについて行けていないので、GX放送当時のルール基準です。

遊来くんは『強欲な壷』と『天使の施し』は使いません、というか使えません。使ったら持っているデッキがやばいくらい回ってしまうので。持ってはいますが灰色になっていてデュエルディスクも読み込みません。


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12話

隼人がデュエル

遊来、羨望と嫉妬をする。


隼人の親父さんが来訪する当日、隼人は最後までデッキの回し方を自らやっていた。教えられていても自分で理解したいと初めて思ったからだ。十代、翔も起きており、わざわざオベリスクブルーから遊来も来てくれている。

 

「皆が協力してくれたこのデッキ、俺の一生の宝物なんだな」

 

「すげえよ、隼人のデッキ。俺のE・HEROも負かしたデッキだもんな!」

 

「うん、本当に強いよ!」

 

十代と翔も今の隼人の『コアラの仲間達デッキ』と名付けられた隼人のデッキと対戦して黒星を刻まれていた。隼人自身のプレイングも遊来からのアドバイスで少しずつ改善されており、ラーイエローの生徒ならば互角以上に戦えるレベルになっていた。

 

このデッキは種族統一デッキとなっており、隼人がどうしても抜きたくないと言った『デス・コアラ』のカードに対して遊来が一言。

 

『「それならいっそ、種族を統一させればいいんじゃないか?少し待っててくれ!」』

 

そう言って、自分の自室へ戻り自分が持っているカードの中から獣族だけを厳選して持ってきたのだ。魔法カードや罠カードなどは基本に忠実にバランスよく配置し、奇襲もかけられるようにしてある。

 

「このカード、使い方がやっぱり難しんだな・・・」

 

「ああ『森の番人グリーン・バブーン』のカードか」

 

これは、隼人がデッキに入れるのを渋っていたのを、遊来が奇襲戦法の一つとして入れるのを説得したものだった。隼人としてはこんな凶暴そうな奴は嫌だと言っていたが遊来がこのカードは名前の通り、森の番人であり森に生きる動植物達を傷つけられたら許さない奴なんだと説得した。コアラが倒されれば一気に出てくる。頼もしい味方なんだと。

 

「そのカードの使い方のアドバイスだ。ライフポイントが減るのを恐れちゃダメだぞ?削られるのと支払うのじゃ全然違うからな」

 

「ああ、わかったんだな!」

 

そして、隼人の親父さんが校長室にいると聞いて全員で向かった、本来なら仲の良い十代と翔だけが来れるのだがオベリスクブルー所属の遊来がきたことに校長である鮫島は驚いていたのだが、遊来は友達だからという理由を最もらしく伝えて納得してもらった。

 

オベリスクブルーの生徒がオシリスレッドの生徒と仲良くするのを許さなかったのがクロノス教頭先生だったのだが、遊来はタイタンの事をチラつかせて黙らせた。

 

 

 

 

 

その後、隼人の親父さん、見届け人の大徳寺先生、友達の十代、翔、遊来が簡易な道場で隼人のデュエルを見ようと来ている。

 

「行くぞ!隼人!」

 

「デュエル!!」

 

「いざ、デュエル!!」

 

前田熊蔵:4000

 

前田隼人:4000

 

「先行は俺なんだな!!ドロー!俺は・・・モンスターを1体セット状態で出して、更に魔法カード!『迷える仔羊』を発動!!」

 

「む!?」

 

「え?」

 

「お?」

 

「ふふ、俺が教えた基本の使い方をいきなり披露か」

 

父親の熊蔵、二人の友人である翔と十代の三人だけは隼人のプレイングに驚き、遊来だけは口元に薄く笑みを浮かべていた。

 

「『迷える仔羊』の効果で、俺は「仔羊トークン」(獣族・地・星1・攻/守0)を2体、守備表示で場に特殊召喚するんだな!!」

 

先攻で手札消費は二枚、それに加えていきなり三体のモンスター展開、コレには大徳寺先生も花丸をあげたいですニャと言わせてしまうほどであった。

 

「カードを一枚セットして、ターンエンド」

 

隼人の頭の中に遊来のデュエルに関するアドバイスが蘇ってくる。先程見せた効果的なカードの使い方を教えてくれた会話、手札を公開した状態で行う仮想デュエルでの事を。

 

「俺は『デス・コアラ』を攻撃表示で召喚なんだな!」

 

「ストーーーーップ!隼人、『デス・コアラ』はリバース効果モンスターだぞ!?セット状態で出さなきゃせっかくのバーンダメージが与えられないじゃないか!」

 

「う・・・」

 

「姿を見たい気持ちもわかるけど、そこはグッと堪えて・・・!ん?この手札で先攻なら『デス・コアラ』をセットして『迷える仔羊』を使えば理想的な展開だよ」

 

「?なんでなんだな?」

 

「こうするとリバース効果モンスターだって事は十中八九バレる。だけどモンスターを三体、展開出来るから展開が得意なデッキじゃない限り必ず壁は残る。同時に2体残れば上級モンスターを呼ぶ事も出来る。それとこうやって使える速攻魔法や罠カードが1枚でもあれば必ずセットする事、分かったかい?」 

 

「分かった、覚えるまでもう一回頼むんだな!」

 

「よしきた!」

 

 

 

 

 

「父ちゃんのターンなんだな」

 

「分かっておる!ドロー!」

 

熊蔵はほんの少し、息子に対して舐めていた事を恥じた。先攻での理想的な防御展開、更には誘い込みも上手くなっている。これは後の先を取らんばかりと言える状況だ。

 

「『酔いどれタイガー』を攻撃表示で召喚!そして、仔羊トークンへ攻撃!『泥酔パンチ!』」

 

酔っ払った親父のような虎が仔羊トークンを猫パンチで破壊する。だが、守備表示の為、ライフポイントに影響はない。

 

「うううっ!」

 

「落ち着いていけ、隼人」

 

「う、うん!わかってるんだな」

 

「!(あの少年が隼人を成長させた張本人に間違いなさそうだな)メインフェイズ2『治療の神 ディアン・ケト』を2枚発動し、おいはこれでターンエンド」

 

前田熊蔵:LP6000

 

熊蔵は遊来に視線を向け、真剣な表情でこちらを見ているがその表情は息子を成長させてくれた事に感謝する父親の顔でもあった。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「俺は『デス・コアラ』を反転召喚!リバース効果によって相手の手札1枚につき400ポイント、ダメージを相手ライフに与えるんだな!父ちゃんの手札は3枚、よって1200ポイントのダメージを受けてもらうんだな!」

 

「ぬううううう!!?」

 

前田熊蔵:LP4800

 

「出た!隼人君のコアラバーンだ!」

 

「ああ、あれは厄介だぜ!」

 

「父ちゃん、しっかり聞いて欲しいんだな。俺・・・夢が出来たんだな!」

 

「夢?」

 

「そうだ、でっかい夢だ。同時に俺は思い知った、デュエリストにはなれないんだな。そもそも、十代や遊来と違って俺には合ってないんだな。それなら別の道でデュエルモンスターズに関わっていきたい!俺はカードデザイナーになりたいんだな!!!!」

 

「!!」

 

「父ちゃん、俺を笑うか?何を馬鹿な事を・・!って。お前には無謀すぎるって!」

 

「む・・ぅ」

 

隼人の真剣な剣幕に熊蔵は言葉を詰まらせる。息子の成長は嬉しいが親としては安定した道に進ませてやりたいという思いもある。カードデザイナーという職業に対しての偏見は多少なりともある。華やか仕事の裏には後ろめたいことになる出来事もある。それをして欲しくないという思いからだ。

 

「だけど俺はまだ、この学園に居たい。だから、このデュエルで俺の夢を父ちゃんにぶつけるんだな!俺は『デス・コアラ』と仔羊トークンを生贄にして『ビッグ・コアラ』を召喚!!」

 

『ビッグ・コアラ』通常/星7/地属性/獣族/攻撃力2700/守備力2000{とても巨大なデス・コアラの一種。おとなしい性格だが、非常に強力なパワーを持っているため恐れられている]

 

「更に手札から永続魔法『一族の結束』を発動!」

 

「なんとぉ!?」

 

「ほほぅ・・・?」

 

「『一族の結束』!?隼人の奴、そんなカードをデッキに入れてたのか!!」

 

「どういう事ッスか!?アニキ」

 

「翔、俺が十代の代わりに説明しよう。『一族の結束』は自分の墓地の全てのモンスターの元々の種族が同じ場合、自分のフィールドのその種族のモンスターの攻撃力は800アップするカードだ。種族を統一させたあのデッキには必須になったって訳さ」

 

「入れるように勧めたの遊来だろ?」

 

「さぁ、て・・・ね」

 

「俺の墓地には獣族の『デス・コアラ』だけがいる。そして、俺のモンスターは全て獣族で構成されているんだな!よって『一族の結束』の効果により俺の場の獣族『ビッグ・コアラ』の攻撃力は800ポイントアップするんだな!!」

 

『ビッグ・コアラ』攻撃力2700→攻撃力3500

 

「攻撃力3500!?」

 

「うーん、素晴らしい動き方ですニャ!」

 

「これが、俺に新しいデッキの扱い方を教えてくれた遊来への恩返しなんだな!『ビッグ・コアラ』で『酔いどれタイガー』を攻撃!必殺!!『ハイパワー・ユーカリ・ボム』!!」

 

『ビッグ・コアラ』に掴まれ、地面に叩きつけられた『酔いどれタイガー』が砕け散り、その余波が熊蔵へと襲いかかってくる。

 

「ぬおおお!?」

 

前田熊蔵:3100

 

「俺はこれで、ターン終了なんだな!」

 

「まだまだぁ!おいのターン!『酔いどれエンジェル』を召喚!」

 

今度は酔っ払っている天使の男がフラフラになりながら現れた。隼人は何か『酔いどれエンジェル』に対して感じているものがあった。

 

「(隼人、もしかして精霊の声が聞こえてるのか?)」

 

「さらに永続魔法『お銚子一本』!更に永続魔法『ちゃぶ台返し』!そして『ちゃぶ台返し』の効果発動!!」

 

巨大なちゃぶ台が現れ、『酔いどれエンジェル』はお銚子に気を取られたままだ。熊蔵はちゃぶ台に手をかけるとかつての頑固親父ののように巨大なちゃぶ台を思いっきりひっくり返してしまい、お銚子と『ビッグ・コアラ』が破壊されてしまった。

 

「どぅおりやああやああああああ!!」

 

「うああああ!」

 

熊蔵の場に残っているのは『酔いどれエンジェル』と『ちゃぶ台返し』隼人の場には『一族の結束』と伏せカードが一枚だ。

 

「うはははは!見たか!?永続魔法ちゃぶ台返し』は自分のフィールド上に「酔いどれ」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、自分フィールド上に存在するこのカード以外のカードを全て破壊する事ができるのだ。この効果によって破壊し墓地へ送ったカードの枚数分だけ、相手フィールド上のカードを選択して破壊する。この効果を使用する場合、このターン自分は通常召喚をする事ができないがな。今回は『ビッグ・コアラ』を破壊したが次はその厄介な『一族の結束』を頂くでごわす!」

 

「父ちゃんは都合が悪くなるといつもそうなんだな!」

 

「うははは!家長の思い通りにならない事など何もないのだ!」

 

場には『酔いどれエンジェル』がお銚子を探して愚痴っている。

 

「あれ?なんで『酔いどれエンジェル』が場に残ってるの!?『ちゃぶ台返し』で破壊されたんじゃあ!?」

 

「ふっ、甘いぞ!隼人!!『酔いどれエンジェル』のモンスター効果を教えてやろう。それは[『ちゃぶ台返し』の効果では破壊されない]だ!」

 

「な、何ィ!?」

 

「更に永続魔法『お銚子一本』が破壊され、墓地に送られた事により魔法効果が発動!お前は500ポイントのダメージを受ける!」

 

酒気のような煙が隼人へ襲い掛かり、隼人は思わず鼻を押さえる。

 

「うううっ!酒臭い!!」

 

前田隼人:LP3500

 

「隼人!落ち着いて自分を見つめ直せ!」

 

「っ!?遊来・・・?すぅ・・・ふぅ・・・!むんっ!」

 

遊来の言葉に隼人は深呼吸し手札を見た。自分は今『ちゃぶ台返し』の効果によってモンスターを破壊され失った。改めて手札を見ると其処には今朝、説明されたカードがあった。

 

「父ちゃん、薩摩示現流は一撃必殺こそが至高だよね・・・?」

 

「無論だ。何が言いたい?」

 

「ならば俺は[隙を生じぬ二段構え]を見せるんだな!俺のフィールドに表側表示で召喚されていた『ビッグ・コアラ』が相手のカードの効果によって破壊された事により、ライフポイントを1000ポイント支払ってコイツを特殊召喚するんだな!!現れろ!森を守護する獣人!『森の番人グリーン・バブーン』を特殊召喚!!」

 

前田隼人:LP2500

 

『森の番人グリーン・バブーン』効果/星7/地属性/獣族/攻撃力2600/守備力1800

 

唸り声と共に巨大な棍棒を持った二足歩行する獣人が隼人の場に現れた。

 

「なぁ・・・何ィィィ!?」

 

「隼人君の場に・・・レベル7のモンスターが生贄無しで現れた!?」

 

「それも、ライフコストだけで召喚するなんてすっげえ!」

 

「とうとう使いこなしたのか、すごいぜ隼人!」

 

「おおっ!?例え一太刀目を外されても、すぐに二太刀目へと移る。正に[隙を生じぬ二段構え]だニャー!!」

 

隼人の追撃とも言える『森の番人グリーン・バブーン』の召喚に全員が驚愕した。コレには教師をしている大徳寺先生も思わず拍手してしまい、十代達三人も驚き続けている。

 

「ば、バカな!?二段構えだと!」

 

「父ちゃん、忘れてないよな?俺の場には『一族の結束』がある!これにより『森の番人グリーン・バブーン』の攻撃力は800ポイントアップしているんだな!」

 

『森の番人グリーン・バブーン』攻撃力2600→3400

 

「む・・・むむむ!『酔いどれエンジェル』を守備表示に変更してターンエンド!」

 

「エンドフェイズ時に速攻魔法!『サイクロン』を発動!!このカードは相手の場にある魔法・罠ゾーンのカードを一枚破壊できる!俺は『ちゃぶ台返し』を破壊するんだな!」

 

「なぁっ!?」

 

「おおおっ!?」

 

「上手いぜ隼人!」

 

「エンドサイクか!この状況だと強い!それに狙いも上手い!」

 

「エンドサイク?」

 

「[エンドフェイズに《サイクロン》を発動する事]を略した言葉さ。本来なら[速攻魔法・罠カードを相手ターンに発動するためにはセットした次のターンまで待つ必要がある]ってルールだけど、隼人は最初の1ターン目に伏せておいたカードが速攻魔法である『サイクロン』だった訳だ。だから相手のターンで発動可能だったのさ」

 

翔の疑問に遊来が答えるが翔は思い出したようにポンと手を叩き、仮想デュエルを思い出した様子だった。

 

「改めて俺のターン、ドロー!」

 

油断はしない。勝てると思った時こそが相手に隙を与えてしまうと、デュエルの中で友人達に教えてもらったのだから。

 

「俺は『吸血コアラ』を召喚するんだな!」

 

『吸血コアラ』効果/星4/地属性/獣族/攻撃力1800/守備力1500

 

「『一族の結束』の効果により『吸血コアラ』も攻撃力が800ポイントアップするんだな!」

 

『吸血コアラ』攻撃力1800→攻撃力2600

 

「ぬ・・・ううう!」

 

「『吸血コアラ』で『酔いどれエンジェル』を攻撃!」

 

額にコウモリのマークを刻んだコアラは『酔いどれエンジェル』に飛びかかるとその爪で引っかき、倒してしまった。

 

「これが俺の、夢への想いだーーーー!『森の番人グリーン・バブーン』でダイレクトアタック!『ハンマークラブ・デス』!チェストォォーーー!!」

 

「ぬおおおおお!?」

 

前田熊蔵:LP0

 

 

「か、勝った・・・?父ちゃんにデュエルで勝ったんだんだな・・・」

 

緊張が途切れたように隼人はその場で脱力して座り込んでしまった。父親に勝利した、男に生まれた身としてこれ程までの達成感はなかっただろう。

 

「隼人・・・」

 

「父ちゃん」

 

隼人は立ち上がって真っ直ぐに父である熊蔵の目を見つめる。その目は以前とは違って決意に満ちた「男」の目であった。それを見届け、熊蔵は背を向けて道場を出て行こうとする。

 

「父ちゃん!」

 

「隼人、友達を大切にするべし。忘れるんじゃなか」

 

「うん!」

 

「それと、辛くなったらいつでも帰って来い。なるべくならお前が酒を飲める年齢になった時が良か」

 

「ありがとう、俺頑張るんだな!」

 

「ん、精進せい!」

 

 

 

 

 

その後、熊蔵は帰る船に乗ろうとする前に遊来を呼び出していた。どうやら隼人の件で話があるような様子だ。

 

「君が隼人に火をつけてくれた少年か?」

 

「火を付けたかは分かりませんけど、新しくした隼人のデッキの調整や回し方を教えたのは確かに俺です」

 

「あいがともさげもす、これで隼人も立派な男になった。あれほどごっだましくなるとは思わんかった!」

 

いきなり頭を下げられ、遊来は戸惑ってしまう。だが、不器用なだけで良いお父さんなんだと思う。

 

「これからも、隼人の友達でいてやってくれ」

 

「はい」

 

そう言い残し熊蔵は船に乗って帰っていった。それを見届けた遊来は羨ましくあり、隼人に嫉妬していた。

 

「がむしゃらに夢を追いかけられる決意・・・か。隼人、俺はお前が羨ましいよ・・・」

 

そして、その羨望の思いが自分の中に渦巻く「闇」が増幅している事に遊来は気づくことなく、精霊達だけがその予感を感じているのであった。




ここまで引っ張ってんだから十代と遊来、戦うんだろ?と思いの皆さん・・・・。

当たりです。二人は戦います。遊びではなく異世界編に近いデュエルです。

ですが、まだ戦う場面にはなりません。遊来の闇が暴走した時、戦います。

セブンスターズとの戦いで光の境地の欠片(とあるシンクロモンスター)が手に入ります。


隼人を勝たせた理由は「親父を超えた時どうなるのか?」と思ったためです。

それに、隼人のデッキは獣族統一型にしたら絶対強いと思ったので。

コアラバーン・・・うっ・・・・頭が・・・


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13話

遊来の心の試練。

別世界の王が試練の相手。

※緒方恵美さんボイスのキャラが出てきます

※この話のオープニング曲は[渇いた叫び]でエンディングが[明日もし君が壊れても]です。


隼人が残留して三日経ち、遊来は十代、翔、隼人の三人から誘いを受けていたが断ってデッキ作りをしていた。

 

「・・・・」

 

エクシーズのモンスターが闇だと言われ、シンクロモンスターが光だと。その言葉を引きずっていた遊来は改めてシンクロ召喚用のデッキを組む事にしたのだ。

 

「これは違う・・・こうだ」

 

それと同時に十代達との絆も考えていた。確かに今の自分は十代達と同い年だ。だが、前の世界で生きていた記憶が自分を彼らと一歩引かせていた。

 

楽しい事は変わらない、それでも心だけが空虚だった。絆を信じていても何処かで輪の中には入れないという思いが強かった。

 

「・・・・」

 

そんな中で、一体のシンクロモンスターのカードを手にする。派生したカードはイメージイラストの部分が真っ白であり、名称も塗りつぶされているかのように黒いままだ。特に高レベルの星10以上のカードが顕著だ。

 

「絆・・・俺には難しい。けれど俺は孤独じゃない。この世界の未来においてある人が『王は常に一人』と言っていた。だが、俺は踏みにじる王にはなれない・・・例え孤高であっても。ならば、俺は背中を見せる者になろう。時に助け、時に頼る・・・そんな当たり前の感情を持って」

 

ブツブツと呟きながら、デッキを仕上げていく。今の彼は孤独、寂しさ、嫉妬、羨望などといった負の感情が渦巻いている。

 

異なる世界から自分は来たという考えが周りと打ち解けるのを拒んでいた。それだけが拭うことができないのだ。

 

『マスター』

 

「ルイン?」

 

『何かが迫っています。敵意は無いようですが』

 

「?」

 

瞬間、組み終わったデッキがオーラを出し、遊来とルインを何処かへと飛ばそうと二人を飲み込んでしまった。

 

「うわああああああ!?」

 

『きゃああああああ!?』

 

 

 

 

 

 

遊来が目を覚ますとまるで遺跡のような場所であった。見るからにテレビなどで観たエジプトのピラミッドの内部のような場所だ。周りを見渡すとルインが倒れていた。精霊のはずなのに実体化しており、遊来は声をかけた。

 

「ルイン、起きてくれ!ルイン!!」

 

「う・・・マスター?此処は?」

 

「分からない、ただ・・・案内のように歩くと松明に火が灯るみたいなんだ」

 

遊来が一歩足を踏み出すと松明が1つ灯る。ルインは遊来の後ろを歩きながら先を進んでいく。すると一つの遺跡には似合わない鉄の扉があった。その扉にはウジャト眼が描かれており、遊来は前の世界にあった僅かな記憶からこれはある人物の部屋の扉だと確信する。

 

「開けるよ?」

 

「はい」

 

意を決して扉の取っ手に手を掛けようとした瞬間、ひとりでに扉が開いた。その中には記憶の中で見覚えのある人物がいた。

 

「待っていたぜ。フフ・・・大丈夫、この部屋は罠なんかじゃない」

 

「遊戯・・・さん?」

 

「名乗った覚えは無いが、お前とは何処かで出会ってもいない。だが、そちらでは俺は有名人のようだな」

 

そう、目の前の人物は確かにあの『武藤遊戯』だ。それも、もう一つの魂、名も無きファラオであるアテムの人格である。

 

同時に遊来は直感していた。「この遊戯さんに本当の名前を教えてはいけない」と・・・。更に言えば、自分が知っているアテムよりも声が冷たく、鋭く、そして静かでありながら圧倒的な威圧感と自信を出し続けている。

 

「それは、デュエルモンスターズのカードか?」

 

「ええ、貴方が知っている。カードではないと思いますが」

 

遊来の腕に装着したままのデュエルディスクに装填されているデッキを見て遊戯は話しかける。

 

「君のデッキが俺を此処に呼んだようだな・・・それが、未来で使うデュエルモンスターズの機械か?」

 

「その通りです」

 

「そうか・・・『さぁ、ゲームの時間だ』」

 

「!!」

 

そう遊戯が宣言した瞬間、彼の腕にも初代型のデュエルディスクが腕に装着される。それと同時にほんの一瞬、額に光で出来たウジャト眼が浮かび上がっていたが直ぐに消える。遊来の記憶の中で自分の知っているアテムにある不器用ながらの『優しさ』を感じられない。あくまでも冷徹に相手を裁く『番人』の印象を受ける。

 

「遊戯さん、貴方・・・『番人』ですか?」

 

「何故、そう思う?」

 

「貴方からは『優しさ』を感じ取る事が出来ないんです。あくまで、俺の印象ですけどね」

 

「そうか・・・君の推察は当たっているかな。逆に君の印象を俺から伝えると君からは『悪』でありながら『善』を感じる。『どう、俺とゲームをしようぜ?』」

 

「え・・・・ゲーム?」

 

「そう、デュエルモンスターズで・・・だ」

 

遊戯からの言葉に遊来は呆気にとられる。自分が『悪』であると言われながら『善』でもあると矛盾した言葉をかけられゲームを持ちかけられたからだ。

 

「・・・敢えて言うなら君はダークヒーローって感じだな」

 

「っ・・・」

 

「俺のデッキは、君のよりも圧倒的に弱い・・・だから、君の中にある記憶からデッキを強化させてもらう。それと君の名前を聞かせてもらおうか」

 

遊戯の言葉と同時に再び額に光るウジャト眼が遊来の身体をすり抜ける。光が消えると彼のデュエルディスクに装填されていなかったデッキが装填される。一体どのようなデッキなのだろうか?自分が知る『武藤遊戯』のデッキは『ブラック・マジシャン』を主軸にしたデッキだ。

 

「俺の名前、ですか?龍谷遊来です・・・遊来と呼んで下さい。それと俺達の世界のデュエルモンスターズのルールは分かりますか?」

 

「心配は無用だ、先程の記憶のスキャンから把握してる。それとこのデュエルモンスターズは『闇のゲーム』だ。だが、安心していいぜ。命は奪わないが、負ければ君の中にある本当の心を暴き出すぜ?それとルールを少し変更だ。ライフポイントを8000、フィールドのパワーアップは無し、カードの消滅も無しだ」

 

「!っ・・・構いません、行きますよ!」

 

「ああ、いつでもいい・・・!」

 

「「デュエル!!」」

 

武藤遊戯?:LP8000

 

龍谷遊来:LP8000

 

 

「俺の先攻だ、ドロー」

 

圧倒的な威圧感、対峙しているだけで遊来は冷や汗が出てくる。相手は武藤遊戯でありながら武藤遊戯ではない感じがしてくる。

 

「俺は『暗黒の竜王』を攻撃表示で場に出す」

 

星4/闇属性/ドラゴン族/攻撃力1500/守備力800[暗闇の奥深くに生息するドラゴン。目はあまり良くない]

 

「『暗黒の竜王』!?」

 

「カードを1枚、場に伏せてターンエンドだ。未来の技術はすごいな、闇の力のレベルを上げなくても本物のモンスターが立体映像で現れるなんてね」

 

目の前の遊戯から感じ取れる静かな闘志、向けてくる威圧感ははまるで大津波が来る前兆の海辺のようだ。それと同時に出だしが『暗黒の竜王』というのも不気味だ。

 

「っ・・俺のターン!ドロー!!」

 

[現在の手札 6枚]

 

※竜の渓谷

※ガード・ブロック

※サイバー・ダーク・カノン

※サイバー・ダーク・ホーン

※ドラグニティーファランクス

※調和の宝札

 

セットされていたデッキは[サイバー・ダーク]であり、新しく作ったデッキはこの空間の鍵となっているのだろう。シンクロ召喚をメインに据えたデッキの一つである事に変わりは無いのだが、相手のデッキがまだ把握できない。強力なデッキである事に変わりはないようだが、未知数である以上警戒する。

 

「俺は手札から『調和の宝札』を発動!手札にある攻撃力1000以下の『ドラグニティーファランクス』を墓地へ送り、カードを2枚ドロー!」

 

[ドローカード]

※比翼レンリン

※リビングデッドの呼び声

 

「(何故『暗黒の竜王』が入っているんだ?単なるドラゴンデッキなのか?)俺は手札からフィールド魔法『竜の渓谷』を発動!」

 

黄昏の空の下に広がる渓谷、先程まで遺跡だった風景が竜達が飛び交っている渓谷に変わる。相手はドラゴンデッキという予想を遊来はしているが、このカードを使わなければ展開は不可能だ。このデュエルでのルールはGXの前半期のルールだろう。デュエルのルールを破る気は全くない、それでも負ければ嫌な予感がするのだ。

 

「『竜の渓谷』の効果発動!手札から『比翼レンリン』を墓地に送り、更にデッキから『ドラグニティーパルチザン』を墓地に送る!」

 

「なるほど・・・今は使えず、仮に使い終わっていてもそのカードをも利用する。なかなかの戦術だ」

 

「更に『サイバー・ダーク・カノン』を手札から捨てて『サイバー・ダーク』の機械族モンスターを手札に加える。デッキから『サイバー・ダーク・キール』を手札へ加える!そして、先程手札に加えた『サイバー・ダーク・キール』を召喚!」

 

「攻撃力800?その程度じゃ勝てないぜ?」

 

「慌てないで下さい『サイバー・ダーク・キール』の効果発動!俺の墓地に眠るレベル3以下のドラゴン族モンスターを装備し、その攻撃力を得る!」

 

『サイバー・ダーク・キール』が召喚と同時に『比翼レンリン』へ己に繋がれたコードを接続し、攻撃力を吸収する。『比翼レンリン』からすれば『サイバー・ダーク』は長年連れ添った友人みたいなものなのだ。

 

 

『サイバー・ダーク・キール』攻撃力800→攻撃力2500

 

「攻撃力2500、やるな!」

 

「『サイバー・ダーク・キール』で『暗黒の竜王』を攻撃!!ダーク・ウィップ!!」

 

 

『サイバー・ダーク・キール』が鋼鉄の尻尾で『暗黒の竜王』を滅多打ちにし、撃破した。その余波が遊戯に襲いかかる。

 

「うっ・・・!」

 

武藤遊戯?LP:7000

 

「『サイバー・ダーク・キール』のもう一つの効果!相手モンスターを先頭で破壊した時、相手に300ポイントのダメージを与える!」

 

「何!?」

 

武藤遊戯?LP:6700

 

「まだだ!『比翼レンリン』を装備している事により『サイバー・ダーク・キール』はもう一度攻撃が可能!『サイバー・ダーク・キール』!!ダーク・ウィップ!」

 

「二回攻撃!?ならば罠カード発動!『ドレイン・シールド』!」

 

「なっ!?」

 

「このカードの効果は知っているな?『サイバー・ダーク・キール』の攻撃を無効化し、その攻撃力2500ポイントの数値分のライフを回復する」

 

武藤遊戯?:LP6700→9200

 

「っ・・カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

 

「俺のターンだ、ドロー」

 

「次の俺のカードは『伝説の黒石』、これを場に召喚」

 

「!?」

 

『伝説の黒石』効果/星1/闇属性/ドラゴン族/攻撃力0/守備力0

 

「更に、このカードをリリース。デッキから『真紅眼の凶雷皇-レッドアイズ・ライトニングロード・エビル・デーモン』を特殊召喚!カードを1枚セットしターンエンド」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

※破壊剣ードラゴンバスターブレード

 

 

[現在の手札 3枚]

 

※サイバー・ダーク・ホーン

※リビングデッドの呼び声

※破壊剣ードラゴンバスターブレード

 

今この場でモンスターを増やし、攻め入る時だろう。レンリンよりも劣るが、攻撃力を2000超えのモンスターを出すことが可能だ。

 

「俺は『サイバー・ダーク・ホーン』を召喚!墓地にある『サイバー・ダーク・カノン』を装備させる!」

 

『サイバー・ダーク・ホーン』攻撃力800→攻撃力2400

 

「二体で攻撃!」

 

「伏せカード、オープン!『攻撃の無力化』!」

 

「なっ!?」

 

「惜しかったな、お前のバトルフェイズは終了だ」

 

「くっ・・・カードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

「俺のターン、ドロー。手札からこのカードを使う『真紅眼融合』」

 

「まさか・・・デッキの正体は進化した方の『レッドアイズ』デッキ!?」

 

「ああ、俺はレッドアイズに縁があってね?強力なデッキをチョイスさせてもらった」

 

遊戯が『真紅眼融合』を掲げ、赤い光の渦がその頭上に現れる。

 

「俺はデッキに眠る『真紅眼の黒炎竜』と『ネオ・カイザー・グライダー』を融合させる!宇宙の彼方より来訪したドラゴンが今、このフィールドに現れる!いでよ!『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』!」

 

『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』融合・効果/星8/闇属性/ドラゴン族/攻撃力3500/守備力2000

 

「っ・・・!!」

 

『メテオ・ブラック・ドラゴン』と姿が酷似したドラゴンが現れ、遊来は戦慄する。目の前の相手はあのアテムじゃない、王の墓を守る『闇の番人』としての力を持った『闇遊戯』と呼ばれていた人物だ。

 

「更に『ネオ・カイザー・グライダー』の効果を使う。このカードの力、すなわち効果能力は1ターンに一度のみ、更に二つの中から1つを選ぶ。俺は二つ目の効果を使うぜ。このカードが墓地へ送られた場合に発動でき、相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力はターン終了時まで500ダウンさせる」

 

「しまった!?」

 

「『真紅眼の凶雷皇-レッドアイズ・ライトニングロード・エビル・デーモン』で『サイバー・ダーク・ホーン』を攻撃!魔降雷・紅!」

 

赤い稲妻が『サイバー・ダーク・ホーン』へと襲い掛かり、その差し引きのライフポイントが削られる。

 

龍谷遊来:LP7400

 

「ぐうう・・!『サイバー・ダーク・ホーン』は装備しているドラゴン族を身代わりにする事で破壊を免れる!」

 

『サイバー・ダーク・ホーン』攻撃力2400→攻撃力1900→攻撃力800

 

「ならば『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』で『サイバー・ダーク・キール』を攻撃!メテオ・ダイブ!!」

 

「伏せカード、発動!『ガード・ブロック』!このカードは戦闘によって発生する戦闘ダメージをゼロにし、カードを一枚ドローできる!」

 

「だが、『サイバー・ダーク・キール』は破壊される」

 

「うわっ!?」

 

『サイバー・ダーク・キール』は『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』の流星のような突進の一撃で破壊されてしまいそうになるが、身代わり効果で無事だ。

 

「『比翼レンリン』を身代わりにしてキール本体の破壊は無効!『ガード・ブロック』により戦闘ダメージはゼロ、更にカードを一枚ドロー」

 

[ドローカード]

 

※サイバー・ダーク・インパクト!

 

「俺のターンは終了だ」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※サイバー・ダーク・エッジ

 

 

[現在の手札 2枚]

※サイバー・ダーク・エッジ

※サイバー・ダーク・インパクト!

 

遊来は正直な心境を漏らせば追い詰められていた。相手よりも圧倒的にパワーと柔軟性が負けているのだ。サイバーダークの集大成を出す事はできるが、このカードすらも攻略してくるだろう。

 

「やるしかない!俺は『竜の渓谷』の効果を発動!手札を1枚捨て、ドラゴン族をデッキから1枚墓地へ送る!そして!『サイバーダーク・インパクト!』を発動!!手札にある『サイバー・ダーク・ホーン』『サイバー・ダーク・エッジ』さらに墓地へ行った『サイバー・ダーク・キール』をデッキへ戻し、融合召喚扱いで『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』を攻撃表示で召喚!!」

 

『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』融合・効果/星8/闇属性/機械族/攻撃力1000/守備力1000

 

「(高レベルでありながら攻撃力が1000ポイント?何かあるな)」

 

「サイバーダークの共通効果、更にこのカードにはレベルの制限が無い!墓地に眠る『ラビードラゴン』を装備させ、その攻撃力を吸収する!」

 

『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』が『ラビードラゴン』の上にのし掛かり、鉤爪状のパーツで抱え込み、コードを頭部と体に突き刺すと同時に高くも曇った鳴き声を上げる。

 

『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』攻撃力1000→攻撃力3950

 

「攻撃力がメテオブラックを超えただと!?」

 

「まだ効果は続く!俺の墓地に眠るモンスター1体につき攻撃力を100ポイントアップ!俺の墓地に眠るモンスターは4体!よって更に攻撃力が400ポイントアップ!」

 

『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』攻撃力3950→攻撃力4350

 

「やるな・・!」

 

「『サイバー・ダーク・ドラゴン』で『真紅眼の凶雷皇-レッドアイズ・ライトニングロード・エビル・デーモン』を攻撃!フル・ダークネス・バースト!!」

 

「ぬうっ!?」

 

『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』から放たれた衝撃波が『真紅眼の凶雷皇-レッドアイズ・ライトニングロード・エビル・デーモン』の全身を破壊し、砕け散らせた。

 

闇遊戯LP7450

 

「俺のターンだ、ドロー」

 

闇遊戯の手札は3枚。だが、これで終わるとは思えないと遊来はピリピリした様子で身構える。

 

「楽しいな。俺が『ゲーム』で楽しいと思えたのはこれで2度目だ」

 

「え?」

 

「手札から魔法カード『強欲な壷』更にカードを二枚引く、そして『天使の施し』カードを3枚引いて二枚を捨てる。そして手札の『真紅眼の鉄騎士-ギア・フリード』をリリースして『真紅眼の亜黒竜』を召喚!」

 

『真紅眼の亜黒竜』特殊召喚・効果/星7/闇属性/ドラゴン族/攻撃力2400/守備力2000

 

「誘われているのか?」

 

「俺はこれでターンを終了する」

 

「俺のターン、ドロー」

 

[現在の手札1枚]

※闇の誘惑

 

「進化したレッドアイズデッキは凶悪なほど強い。けれど・・行くしかない!『サイバー・ダーク・ドラゴン』で『真紅眼の亜黒竜』を攻撃!」

 

『真紅眼の亜黒竜』が『サイバー・ダーク・ドラゴン』の衝撃波によって撃破され、大きな衝撃が闇遊戯へと襲いかかる。

 

「うああっ!」

 

闇遊戯:LP6600

 

「『真紅眼の亜黒竜』の効果発動。このカードが戦闘または相手の効果で破壊された場合、『真紅眼の亜黒竜』以外の自分の墓地のレベル7以下の「レッドアイズ」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚し、この効果で特殊召喚したモンスターが『真紅眼の黒竜』の場合、その元々の攻撃力は倍になる。俺は通常モンスターの『真紅眼の黒竜』を墓地から復活させ、更にその攻撃力を倍にする」

 

『真紅眼の黒竜』攻撃力2400→攻撃力4800

 

「ターンエンド・・・(『天使の施し』の時に通常の『真紅眼の黒竜』を墓地に送っていたのか)」

 

遊来は直感した。次の相手のターン、そのターンで自分は確実に負けてしまうと。

 

「俺のターン・・・分かってしまったようだな?」

 

「ええ、俺はこのターンで負けます」

 

「なら、手札から2枚の魔法カード『黒炎弾』を発動!場に居る『真紅眼の黒竜』を1体対象とし、その攻撃を放棄する代わりにその元々の攻撃力のダメージを相手のライフに与える。この『真紅眼の黒竜』は元々の攻撃力が倍となっているため4800のダメージ、それが2枚だ」

 

「合計9600のダメージ・・・・」

 

「行くぜ、『黒炎弾』!!」

 

「うあああああああああ!!!」

 

龍谷遊来:LP0

 

「負けた・・・・」

 

「ああ、そうだ」

 

「どうぞ『闇のゲーム』で負けた者には罰ゲーム・・・ですよね?」

 

遊来は両手を広げて潔く罰を受けようとしたが、闇遊戯の前にルインが立ちはだかる。その目にはマスターである遊来を守ろうとする意志が見て取れる。

 

「マスターはやらせません!!」

 

「確かに『闇のゲーム』はしたが罰を与える訳じゃない。彼は『闇のゲーム』の中でルールに則って敗北した。その場合は罰ではなく『試練』を与える事になっている」

 

「試練?」

 

「君の中にある根本に打ち勝て・・・!『闇の扉が・・・開かれた!』」

 

闇遊戯の額にウジャト眼が輝き扉が現れ、その中に再び吸い込まれていく遊来とルイン。闇遊戯は吸い込まれていった2人に対して言葉を紡いだ。

 

「もう二度、会うことはないだろう。けれど強敵の中で三本の指に入る程お前は強かったぜ、遊来」

 

 

 

 

 

 

二人が目を覚ますとそこはオベリスクブルー寮にある遊来の部屋の中だった。遊来は机に突っ伏す形でルインはベッドの上で眠っていたようだった。

 

「ルイン・・・あの遊戯さん」

 

『ええ、貴方の知る『武藤遊戯』とはだいぶ違ってましたね。それにエクシーズのカード達が目覚めてしまっているようです』

 

「なんだって!?」

 

『これから、貴方はその闇に飲まれないようにしなければなりません』

 

「分かっているさ」

 

『遊来・・・マスター』

 

そんなルインの様子を『妖怪少女』の『幽鬼うさぎ』と『ドラグニティーアームズーレヴァティン』は何かを感じ取っていた。

 

『二人、このままでいられない・・・マスターの試練・・・』

 

『ルインの姐さんとマスター・・・嫌な予感がするんだよな』

 

新しく組んだデッキはデッキケースの中で紅く輝いていた。その輝きが遊来の光の呼び水になることを知らずに。




『』のセリフで気付いた方はいらっしゃいますか?

解った方はコメントにて。


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14話

再び夢から始まる

ガチガチにキレた遊来、闇深くカード狩りの臨時教師にブラックラ○ーン並みの口の悪さを出してしまう。


遊来はまた、夢の中にいた。自分には覚えがないのに毎回夢を見させられる。まるで、何かを思い出せと言わんばかりだ。

 

以前の戦っている場面ではなく、どこかの城に居るようで蒼い髪を靡かせながら、こちらへ近づいて来る人物がいた。その人物に関して自分には全く分からない。胸元が膨らんでいる事から女性である事は間違いない。

 

『アルタイス、遠路遥々来てくれた事に感謝するわ。こうして二人きりで会っていると私の兄がうるさいでしょうけど』

 

『いえ、私は貴女を護る盾であり剣でもあります故・・・貴女様に呼ばれたのなら地の果て、天の果てであっても馳せ参じましょう』

 

アルタイスと呼びかけられ、自分ではない自分が騎士の礼節を取った。その姿にクスクスと微笑みながら声をかけてくれる。

 

『ウフフ、本当に生真面目ね。私の前では素の貴方を出しても構わないわよ?』

 

『っ・・・それでも誓いは破れませぬ』

 

分かる・・・。この気持ちだけは理解ができる。これは片想いだ、目の前の女性に対して恋慕を抱きながらもその気持ちを伝えずに胸の中だけに閉まっている。

 

『今日は貴方に渡したい物があって呼んだのよ』

 

『渡したい物・・ですか?』

 

『そうよ、貴方にこれを贈るわ。それを使いこなせた時、貴方を近衛騎士として迎えたいの』

 

何かを手渡されたようだが夢の中ではよく見る事が出来ないもので、確認する事が出来ない。

 

『!ありがとうございます。■■■様』

 

風景が霞んでいく、どうやら肉体が目覚めるらしい。その覚醒に身を任せていき、起きる事にした。

 

 

 

 

 

「ん・・・またあの夢か。あれ?」

 

遊来は自分の手に何かを握っている感触があった。思わず右手を近づけるとその中にはデッキがあったのだ。デッキを握ったまま寝るなんて馬鹿な事をしたものだと苦笑する。

 

「俺、何のデッキを握って寝てたんだ?」

 

青色のスリーブにカードは収められており何かと見てみるとそのカード名に遊来は驚きの声を上げた。

 

「これ『氷結界』じゃないか!俺『氷結界』なんて組んだ覚えはないぞ!?」

 

そう、そのデッキは『氷結界』のデッキであった。『氷結界』は相手の行動を妨害するタイプのデッキであり、遊来の愛用するデッキとは真逆のタイプのデッキである。

 

「水属性・・・氷・・・ううっ!?頭が痛い!」

 

原因不明の頭痛が起こる。体調が悪いなんてことはない、風邪は引かないように注意しているし、休むべき時は休んでいる。なのに何だ?この頭痛は?意味が分からない。

 

『マスター!?』

 

『おい、マスター!?』

 

『大丈夫!?』

 

「あ、ああ・・・大丈夫。おっかしいなぁ・・・風邪なんて引いた覚えはないんだけど」

 

ルイン、レヴァティン、妖怪少女達に心配されてしまう。だが、頭痛はすぐに収まった為に身支度を整える。あれから数日経って、このデュエルアカデミアに臨時教師が来るらしい。授業を受けた後、購買に寄って飲み物でも買おうした時、気弱そうな一人のオベリスクブルーの女子生徒が販売機の部屋で泣いていた。

 

「うう・・・ううう!」

 

「?どうしたんだ?何故こんな所で泣いてるんだ?」

 

「あ、竜騎士様!うわーん!」

 

いきなり胸元に飛び込まれ、しどろもどろになり慌ててしまう遊来。とにかく彼女を落ち着かせようと話を聞きつつ、紅茶を自販機で購入し彼女に渡した。彼女の名前は宇佐美彰子、前の世界でタッグフォースにおける恐竜デッキの使い手だ。大人しそうに見えてパワフルな戦法を得意とするのは驚きだった。

 

「それで、一体何があったんだ?」

 

「はい、実は・・・」

 

話を聞くと臨時教師として来た龍牙という教師にデュエルを挑まれたらしい。実施授業という形だったのだが負けてしまい個人授業の報酬という形で『暗黒恐獣』のカードを取り上げられてしまったそうだ。

 

「君からレアカードを取り上げた!?」

 

「はい、それにデュエルディスクもおかしかったんです」

 

「デュエルディスクがおかしかった?」

 

「魔法を発動させようとしたら出来なかったんです・・・出来ていたら負ける事はなかったのですが」

 

遊来はおかしいと感じた。デュエルディスクの開発元は海馬コーポレーション、ゲームに関して一切妥協を許さない。同時にあの海馬瀬人の設計であり、ほんの僅かなバグさえも許さない人だ。その人が設計したデュエルディスクにバグは無いはずだ。僅かな期間とはいえシンクロ召喚の為のモーション開発を手伝っていた遊来だからこそ分かるのだ。

 

「宇佐美さん、その龍牙っていう先生に何か特徴はなかったかな?些細な事でも構わないから」

 

「うーん・・・あっ!そういえば、あの人は左手に変な指輪をしていました。アクセサリーにしては変な形をしていて」

 

「(指輪か・・・何かありそうだな)それじゃ、俺は行くよ。もし戦う事になったら必ずカードは取り返すから」

 

「はい、お願いします」

 

そういって遊来は購買を出て行った。寮へ戻ると同時に男子生徒のグループでも落ち込んでいる者がかなりいた。話を聞こうと話しかけてみると、やはり龍牙に自分の主軸でもあり主力でもあるレアカードを取り上げられたという話だった。強力なレアカードばかり狙われており、特にラーイエローとオベリスクブルーの生徒が中心に狙われているそうだ。

 

「なぁ・・・その龍牙っていう人が使っていたデッキって分かるか?」

 

「あの野郎が使っていたデッキか?確か、『恐竜族』だったはずだぜ?オマケにカイザーとは戦わないでいやがんだ!!」

 

「なるほど・・・・それにデッキは恐竜族か」

 

「遊来!!」

 

「ん?」

 

同級生に当たる一人の男子生徒が遊来の両肩を掴んできた。その目には涙が滲んでおり、悔しさが感じ取れる。

 

「癪だけど、あの野郎に勝てるのはお前か遊城十代だけだ!頼む、あの野郎から俺のカードを取り返してくれ!!」

 

「俺からも頼む!」

 

「竜騎士!頼むよ!」

 

「竜騎士様、お願いします!」

 

オベリスクブルーの男子と女子生徒に頼み込まれてしまう遊来だが、考えさせてくれとお願いした。臆病風に吹かれた訳ではなく、証拠となる事やデッキの内容なども把握しておきたいと情報に関する優位性を正直に話したのだ。

 

オベリスクブルーから去ると遊来はオシリスレッドへと向かう事にした。やはり話題はカードを取り上げられたという事らしい。オシリスレッドであってもカードの内容をよく理解すれば強力になる事が間違いなしのカードを狙われ、強引にデュエルで取り上げられたそうだ。そんな話を聞いていると十代、翔、隼人の三人がやってきた。

 

「遊来!」

 

「十代!それに翔と隼人も!」

 

「遊来くんはまだデュエルを挑まれてないみたいッスね?」

 

「みんな、龍牙っていう先生にカードを取り上げられているって聞いているんだな!特に強力なものばかりだって」

 

「ああ、俺もオベリスクブルーの同級生達から聞いたよ。恐らく次の狙いは俺か十代・・・だけど俺の可能性が最も高いな」

 

「なんでだよ?」

 

「アニキ、忘れたんッスか?遊来くんはシンクロ召喚の宣伝とテスター役でもあって更には『ドラグニティ』を持っているんッスよ?」

 

「あ、そういえばそうだった」

 

「それにシンクロ召喚で出せるモンスターは今の所、希少価値が高いんだな。それに『ドラグニティ』も格好の標的なんだな」

 

「許せねえよな、生徒からカードを取り上げるなんて!」

 

十代も十代なりに怒りを表に出している。だが、遊来だけは竜牙のデッキの考察をしていた。恐竜族という情報だけでは完全に中身を把握しきれない。それに彼がカードを奪っているという証拠となる発言も必要だ。それと同時に、彼がデュエル中にしているという指輪も気になる。

 

「(・・・・次の授業で標的になりそうな奴に録音装置を持たせておこう)ごめん、三人とも!用事が出来たからオベリスクブルーに戻るよ!」

 

「あ、おい!遊来!?」

 

「行っちゃった・・・」

 

遊来は次のターゲットになりうるオベリスクブルーの生徒達を説得し録音装置を渡した。無論、この記録装置は学園の備品庫から無断借用したものだ。生徒のカードが取り上げられているという証拠を記録したともなれば多少は目を瞑ってくれるだろう。

 

そして翌日、予想通り一人のオベリスクブルーの女子生徒が標的にされた。その女子生徒は目を赤くしていて録音装置を受け取り、自室にあるノートパソコンに接続し、ヘッドフォンを付けて音声を聞く。

 

「『装備魔法『おろかな埋葬』を発動!あれ?なんで!?どうして発動できないの!?』」

 

「『おやおや、整備不良ですか?それではターン終了で構いませんね?』」

 

「『ぐっ・・・ターンエンド、です』」

 

「『私のターン!2体のモンスターを生贄に、現れろ!『暗黒恐獣』!』」

 

「『『暗黒恐獣』!?それはウサミンが持っていたカードよ!どうしてそれを貴方が持っているのよ!?』」

 

「『個人授業の報酬として頂いたのですよ、私のような教師から学べたことを光栄に思いなさい!『暗黒恐獣』でダイレクトアタック!』」

 

「『きゃあああああああ!!!!!』」

 

ライフポイントがゼロになった事を知らせる音を聞いた後、こちらへ近づいて来る靴音が聞こえる。それと同時にとんでもない事を口に出した。

 

「『さぁ、個人授業の報酬として貴女のレアカードである『暗黒界の龍神 グラファ』は頂きますよ』」

 

「『あ・・!か、返して!私のお父さんからアカデミアの入学祝いに貰った大切なカードなのよ!』」

 

「『うるさい、黙れ!敗者は黙って勝者の言うこと聞け!』」

 

パチンという音も拾えた。恐らくは竜牙がこの女子生徒に平手打ちをして暴行を働いたという事だろう。更には勝手に彼女のデッキをデュエルディスクから取り出し、デッキを見た後に目の前へ投げ捨てた音まで拾えている。

 

「『これでまた1つ、強いカードが手に入りましたね』」

 

「『あ・・・あああっ!私のデッキ!』」

 

「『授業は終了です。せいぜい、この経験を活かし精進しなさい。アーッハハハハ!』」

 

 

 

 

 

 

「ぜってえ、許さねぇ・・・!」

 

遊来はヘッドフォンを外し、怒りに燃えていた。遊来はカードを奪っている事に怒りを向けているのは当たり前だが、それ以上に親子間で大切な思い出のあるカードを奪った事が許せなかったのだ。

 

「必ず潰す!!泣いて喚こうが恨み言を言われようが!再起不能にしてやるッ!」

 

その目には怒りしかなかった。遊来は本来なら圧倒的に倒すべきデッキを使おうとしたがそれ以上に相手に取っていやらしいデッキがある事を思い出した。

 

「『氷結界』・・・・力を貸してくれ。思い出すら貪る『食屍鬼』は焼くだけじゃダメだからな。氷像にして欠片も残さず、憎悪を込めて砕いてやる!!」

 

『やっべえ・・・マスター、マジギレしてるよ・・・!しちゃいけない笑顔してるよ!』

 

『黒も黒、真っ黒で極悪な笑みですね。『妖怪少女』の子達には見せられません・・』

 

遊来は狂ってはいない。だが、その顔は楽しそうに歪んでいた。こんなに怒り心頭かつ愉快になるのは久々だと身体の中にある神経が踊り踊っている。

 

あの時、アテムではない「闇遊戯」に言われた事を思い返す。君はダークヒーローのようだと、元々そんな考えはあった。目的のためなら手段は選ばず、賞賛される事もない、光に憧れる影の存在。そんな事を考えるだけで笑いがこみ上げる。

 

「レヴァティン、ルイン・・・悪いけど今回、俺は悪党全開で行くから・・・引かないでくれよ?」

 

そんな遊来の言葉を聞いた二人は無言で彼を見ていた。もう悪党全振り状態じゃないかという事を必死に飲み込んでいる。

 

それ以上にあの優しい遊来が『悪党』としての顔を持っていた事に驚いていた。今、遊来は音声データのバックアップを作り、奪われても良いようにダミーの制作もしている。

 

「教師の立場だけじゃない・・・デュエルにおいても、社会的においても抹殺してやらぁ・・・!」

 

 

 

 

 

そして、自分も龍牙の授業を受ける日が来た。生徒達の表情は仇を見るような表情をしており、雰囲気が微弱だが殺気にまみれている。

 

「(おーおー、みんな殺気立ってるねぇ。殺気立ってるって事はカードを奪われたって事だもんな)」

 

授業終了後、遊来はすぐに帰ろうとしていた。その矢先、龍牙に呼び止められる。

 

「待ちなさい、君・・・!君は授業態度が悪い、私の個人授業を受けなさい!」

 

「はぁ?」

 

「良いから受けなさい!(コイツはシンクロ召喚のテスターだと情報にあった、ならかなりのレアカードを持っているはずだ!)」

 

「待ってくださいよ、個人授業じゃ物足りない・・・放課後が空いているのですからデュエル場でデュエルしましょう。もちろん、全校生徒と教員の前で」

 

「何?」

 

「自分の実力を示せるチャンスじゃないですか。教師の方々には優秀さを、俺を倒せば生徒からは尊敬を受けられますよ」

 

相手が気持ちよくなるようなイメージを持たせて誘導する。これは心理学においても単純でありながら効き目が良い。自分が相手よりも上手だと印象づけさせる事でこちらの条件を受け入れやすくさせるのだ。

 

「む、いいでしょう」

 

「条件はそれだけです。先生の条件はデュエル場でお聞きします。では、また後で」

 

遊来は去りながら、十代達に連絡を取り全ての生徒達に呼びかけるよう連絡し、オベリスクブルーに関しては明日香に頼んで来てもらえるよう連絡した。

 

 

 

 

 

そして、放課後。デュエル場には生徒達が所狭しと座っており、教師スペースには珍しく鮫島校長とクロノス教頭が座っている。そんな中、クロノスは遊来から竜牙に関して悪い噂という話を聞いていた。だが、あくまでも生徒の噂という域を出ていない。

 

「(シニョール遊来の話によれば、シニョール龍牙は生徒からレアカードを奪い取っているというノーネ・・・もし、それが本当なら彼を教師にする訳にはいかないノーネ)」

 

「さて、龍牙先生?貴方の条件を聞きましょうか?」

 

「ふむ、そうだね・・・君が負けたのなら君の持つシンクロモンスターと『ドラグニティ』を私に渡してもらおうか」

 

「なっ!?そんな事はこの私が認められません!」

 

「俺は構いませんよ」

 

「遊来くん!?」

 

鮫島の静止を聞かず、承諾してしまった遊来に対して龍牙は内心、ほくそ笑んでいた。

 

「(バカめ、私にデュエルを挑んできた事を後悔させてやる!)」

 

「じゃあ、始めましょうか?」

 

「結構、構いませんよ」

 

「「デュエル!!」」

 

龍谷遊来:LP4000

 

龍牙:LP4000

 

「先攻は譲りますよ」

 

「なら、俺のターン、ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※氷結界の照魔師

 

[現在の手札 6枚]

 

※トリシューラの鼓動

※氷結界の虎将 ウェイン

※氷結界の封魔団

※氷結界の術者

※氷結界の霜精

※氷結界の照魔師

 

「俺はカードを1枚伏せて、モンスターを1体セットしてターンエンド」

 

「随分と弱気ですね?私のターン、ドロー!」

 

遊来は龍牙の左手に注目していた。随分と機械的な指輪が目に入り、あれが魔法を使えなくする細工の元凶なのだろうと予測を付け、定番の予測である[自分は使えて、相手は使えない]という考えを前に出しておく。

 

「私は『瞬足のギラザウルス』を召喚する!」

 

『瞬足のギラザウルス』効果/星3/地属性/恐竜族/攻撃力1400/守備力400

 

「通常召喚扱いではなく、特殊召喚扱いですか?」

 

「無論だ。更に私は『ガガギゴ』を召喚!!」

 

『ガガギゴ』星4/水属性/爬虫類族/攻撃力1850/守備力1000『かつては邪悪な心を持っていたが、

ある人物に出会う事で正義の心に目覚めた悪魔の若者』

 

「(手札にギラザウルスが無かったのか・・コイツは幸運だ)」

 

「『ガガギゴ』でセットモンスターを攻撃!」

 

巨大な恐竜がセットモンスターへと襲い掛かり、破壊しようとしたがセットモンスターが結界のようなもので自らの身を守っている。

 

「残念でした。俺のセットモンスターは『氷結界の封魔団』守備力は2000だ!」

 

「何!?」

 

龍牙:3850

 

反射ダメージによって龍牙のライフポイントが減ってしまった。ライフが減ると生徒達はよくやったと言わんばかりの歓声を上げる。

 

そんな歓声の中で十代、翔、隼人、三沢、明日香、ジュンコ、ももえなどの遊来との交流が多いメンバーは新しいデッキに驚いていた。

 

「『氷結界』だって!?遊来の奴、また新しいデッキを組んでたのか!」

 

「あれって、女性のモンスターッスよね?美人だなぁ・・・」

 

「一体、あのデッキはどんなタイプなのか分からないんだな」

 

「『氷結界』、水属性をメインとした物とは聞いているが、扱いが難しいとも言われている」

 

「何故かしら、私・・・遊来が使う儀式デッキもそうだけど、あの『氷結界』にも強く心を動かされるものがあるわ」

 

「『ドラグニティ』の印象が強いだけに、アイツが他のデッキを使うと新鮮ね」

 

「まるで、色々とデッキを変えるなんてRPGゲームの主役の殿方みたいですわ」

 

 

 

 

「(カードを巻き上げてるコイツに敬語使うのも馬鹿らしくなってきたわ)おい、まだターンは続けるのか?」

 

「っ・・!私はカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※氷結界の舞姫

 

[現在の手札 5枚]

 

※氷結界の術者

※氷結界の霜精

※氷結界の照魔師

※氷結界の舞姫

 

「相手の場にモンスターが存在し、俺の場に『氷結界』と名の付くモンスターが居る事により俺はこのカードを特殊召喚する!来い!『氷結界の虎将 ウェイン』」

 

『氷結界の虎将 ウェイン』効果/星5/水属性/戦士族/攻撃力2100/守備力400

 

「馬鹿な!?生贄無しで星5モンスターを場に出しただと!?」

 

「あのカード『サイバー・ドラゴン』と似たような効果を持っているのね」

 

遊来の展開はまだまだ終わらない。しかし、龍牙はある事に気づいた。遊来の展開を見ていると魔法カードを一切使ってこないのだ。

 

「(まさか、この私の指輪の事を知っているのか?いや、コイツとは戦うのは初めてだ。知るはずもない!)」

 

「俺にはまだ、通常召喚の権利が残っているんだよぉ!『氷結界の照魔師』を召喚!」

 

『氷結界の照魔師』効果/星4/水属性/魔法使い族/攻撃力1700/守備力1000

 

「更にバトルフェイズ!『氷結界の虎将 ウェイン』で『瞬足のギラザウルス』を攻撃!氷結の刺突!!」

 

ウェインの持った短刀に貫かれ『瞬足のギラザウルス』が断末魔の咆哮を上げながら破壊される。

 

「ぐうう!?」

 

龍牙:LP3150

 

「メインフェイズ2『氷結界の照魔師』の効果発動。1ターンに一度、2つの効果の中から一つを選択し、それを使用する!手札を1枚捨てて、効果発動。デッキから『氷結界』のチューナーモンスターを1体を特殊召喚する!来い!『氷結界の術者』!」

 

「チューナーモンスター!?あのデッキもシンクロ召喚を可能にしているのか!?」

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

遊来は仮面を被るのが嫌になってきており、懐からココアシガレットを取り出してまるでタバコを吸うかのような仕草をした。その顔は『悪党』がする狡猾な笑みを浮かべていた。

 

「私のターン!ドロー!デュエル中になんだ!その態度は!?教師に対して失礼極まりない!!」

 

「そうナノーネ!それに生徒が喫煙なんて言語道・・・!」

 

「クロノス先生、これはココアシガレット。ただのお菓子ですよ」

 

遊来は空箱になったココアシガレットをクロノスへ投げ渡すと確かに駄菓子と書かれており、タバコを隠しているような細工も一切なく、匂いを嗅げばお菓子特有の甘い香りがしている。

 

「紛らわしい事をするんじゃないノーネ!それと口に含んだ物以降、お菓子は禁止ナノーネ!」

 

クロノスからの注意を素直に聞き、ココアシガレットを地面に置いてもう持っていない事をアピールする。

 

「それと、龍牙センセよ?いい加減に取り繕ってんの止めな。最もらしい理想的な教師のフリをしてえんだったら、ちょっとは色をつけて話せ。そんな正常位じゃ誰もイけねえよ?」

 

カリッと口元に咥えていたココアシガレットを僅かに噛み砕き、また喫煙者のような仕草をする。言葉は悪いが遊来は龍牙の真意を見抜いており、こんな男に学問を教わりたくはないという雰囲気を出し続けている。

 

「貴様ぁ・・・!」

 

「それとな、このデュエルは王侯貴族様のような優雅な決闘じゃねえ、穢れた犬同士の共食いなんだよ。どうだ言い当て妙だろ?ククク・・・」

 

「ぐっ・・・・!」

 

顔芸とも言える遊来の凶悪な笑みに龍牙はもとより、デュエル場に居る生徒全員が恐怖を抱いていた。ライトノベルやゲーム、アニメの主人公のような崇高な「竜騎士」のイメージから一転、今の遊来はヒロインを喪ったり、力を求め続けた事に代表される「闇堕ちした竜騎士」のイメージにほかならない。

 

「どうした?笑えよ、笑うところだろ?此処は」

 

「ならば私は魔法カード『超進化薬』を発動!『ガガギゴ』を生贄に『暗黒恐獣』を召喚!」

 

「(『氷結界の封魔団』の効果を使う訳には行かないか。それに、この野郎・・・奪ったカードを堂々と使っていやがる!)」

 

「『暗黒恐獣』は相手フィールド上に守備表示モンスターしか存在しない場合、相手プレイヤーに直接攻撃できる!だが、今はそのモンスターを攻撃する『暗黒恐獣』!『氷結界の虎将 ウェイン』へ攻撃!」

 

だが、突進してくる前に『暗黒恐獣』の足が凍りついてき、攻撃ができない状態になっていた。

 

「な、なぜだ!?何故、攻撃出来ない!?」

 

「はーい、二回目の残念でしたーーー!『氷結界の術者』の効果。自分のフィールドに他の『氷結界』モンスターが存在している限り、レベル4以上のモンスターは攻撃宣言できない!俺も出来ないけどなぁ?」

 

「ぐぐ・・・・ターンエンドだ!」

 

「俺のタァン、ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※氷結界の紋章

 

[現在の手札 4枚]

 

※氷結界の術者

※氷結界の霜精

※氷結界の舞姫

※氷結界の紋章

 

「さぁて、魔法カード『氷結界の紋章』を発動ぉ!あれぇ?おっかしいなぁ?魔法カードが使えないなぁ?」

 

「(こ、コイツ!わざとらしく・・・!いや、知っているのか!?)おや?整備不良ですか?」

 

ポーカーフェイスを保ちながら辿たどしく言葉を紡ぐ龍牙だが、下品とも言える顔芸の笑みを浮かべたまま遊来は発動できなかった魔法カードを手札に収めたままデュエルを続行する。

 

「ククク!魔法が発動できない程度で俺が止まるとでも思ってやがるのか?だったらこの状況でどう動くのかを見せてやるよぉ!!俺はレベル5の『氷結界の虎将 ウェイン』とレベル4の『氷結界の封魔団』にレベル2の『氷結界の術者』をチューニング!!」

 

 

5+4+2=11

 

 

『氷結界の虎将 ウェイン』と『氷結界の封魔団』が『氷結界の術者』が開いた光の輪を潜り抜け、その2体も一本の星の柱となり輝きが溢れ出す。

 

 

[推奨BGM 遊戯王GXより『カミューラのテーマ』]

 

 

「氷壁へと封印されし古の槍よ、その力を持って善悪すらも貫け!シンクロ召喚!!顕現せよ!『氷結界の還零龍 トリシューラ』!! 」

 

『氷結界の還零龍 トリシューラ』シンクロ・効果/星11/水属性/ドラゴン族/攻撃力2700/守備力2000

 

細かな氷の粒をまき散らしながら遊来の傍に降り立つ三つ首の氷龍。その氷柱を思わせる鋭角なフォルムと見開かれた赤い目は全てを破壊しようとする意思が溢れていた。この氷結の名を冠する三つ首の龍は暴走状態であるとされ、今の遊来の心を表しているかのようだ。

 

「な、なんだ!?このモンスターは!?レベル11だと!」

 

「『氷結界の還零龍 トリシューラ』の効果発動!このカードがシンクロ召喚に成功した時、相手フィールドのカードを三枚選んで『除外』する!!」

 

「『除外』だと!?」

 

「そうだ、アンタの場にある伏せカード二枚と『暗黒恐獣』の3枚をすべて『除外』する!ゲームから取り除くから蘇生は出来ねぇぜぇ?」

 

伏せていたのは『生存本能』と『リビングデッドの呼び声』であった。最早、壁モンスターも無くなり伏せカードもない、龍牙は目の前の現実が信じられなかった。

 

「ば、馬鹿な!こんなイカサマにも程がある!!」

 

「くっ、ククク・・・アーッハハハ!イカサマだってよ!それじゃあまるで自分がイカサマをしているような言い草じゃねえかよ、なぁ!おい!?」

 

龍牙はそれが失言だった事に気づいていなかった。遊来はイカサマなどしていない、彼はシンクロ召喚という名の先を行く召喚方法が現実にあるのだとアピールするのと同時にその力を教える先駆者だ。

 

「俺がなんでこんなクソと言われるような『悪党』の真似をしてるか分かるか?それ以上のクソが目の前に居るからだよ。覚悟は出来てんだろう?教師のアンタには馬の耳に念仏だろうが、この言葉を覚えておけよ『因果応報』ってな!トリシューラの攻撃!氷結の暴風怒濤!!『氷結界の照魔師』も続け!!」

 

「ぐわああああああああ!!!」

 

龍牙:LP0

 

合計4400のダメージを受け、デュエルが終了した。遊来は膝から崩れ落ちた龍牙の胸元を乱暴に掴むと冷たい目をしたまま詰め寄った。

 

「おい、生徒の皆から奪い取ったレアカードを全て返しな・・!」

 

「な、なんの事だ!言いがかりはよせ!」

 

「ああ、そう・・・んじゃ、これでもシラを切るのか?」

 

遊来は龍牙から手を離すと放送用のマイクがある教員用の観客席へと近づいていく。一体何用かと声を掛けようとする前に遊来が許可を貰いたいと話しかけた。

 

「クロノス先生、マイクをお借りして構いませんか?それと音量を最大にしてもらいたいのですが」

 

「?何をするノーネ?」

 

「『証拠』を流そうと思いまして」

 

マイクを借り移動した影響でマイクがハウリングするが、構わず遊来は懐から音声を流せる機器を取り出し、それの再生ボタンを押してスピーカーにマイクを近づけた。

 

 

 

「『装備魔法『おろかな埋葬』を発動!あれ?なんで!?どうして発動できないの!?』」

 

「『おやおや、整備不良ですか?それではターン終了で構いませんね?』」

 

「『ぐっ・・・ターンエンド、です』」

 

「『私のターン!2体のモンスターを生贄に、現れろ!『暗黒恐獣』!』」

 

「『『暗黒恐獣』!?それはウサミンが持っていたカードよ!どうしてそれを貴方が持っているのよ!?』」

 

「『個人授業の報酬として頂いたのですよ、私のような教師から学べたことを光栄に思いなさい!『暗黒恐獣』でダイレクトアタック!』」

 

「『きゃあああああああ!!!!!』」

 

「『さぁ、個人授業の報酬として貴女のレアカードである『暗黒界の龍神 グラファ』は頂きますよ』」

 

「『あ・・!か、返して!私のお父さんからアカデミアの入学祝いに貰った大切なカードなのよ!』」

 

「『うるさい、黙れ!敗者は黙って勝者の言うこと聞け!』」

 

「『これでまた1つ、強いカードが手に入りましたね』」

 

「『あ・・・あああっ!私のデッキ!』」

 

「『授業は終了です。せいぜい、この経験を活かし精進しなさい。アーッハハハハ!』」

 

 

 

デュエル場全体に響く龍牙と一人の女子生徒の音声。それを流された龍牙は顔を真っ青にして青ざめていった。

 

「ち、違う!!これは私じゃない!!」

 

「こ、これはどういう事ですか!?」

 

「シニョール遊来、詳しく聞かせて欲しいノーネ」

 

クロノスからの催促に遊来はこの音声の詳しい経緯を事細かく話した。龍牙のデッキに入っている『暗黒恐獣』も一人の生徒から奪い取ったカードであり、大勢の生徒が被害に受けていた事も。

 

「お、俺も奪われたんです!『カイザー・グライダー』のカードを!」

 

「わ、私は『カオス・マジシャン』のカードを盗られました!!」

 

次々に観客席にいた生徒達が被害を訴える。龍牙は逃げ出そうとしていたが、いつのまにか観客席から降りていた遊来との交流が深い十代達全員が出口を塞いでいた。その顔は怒り心頭になっており、いつもは能天気な十代も流石に堪忍袋の緒が切れている様子だ。

 

「アンタ、最低だな!生徒達からレアカードを奪っていたなんて!」

 

「そうッス!!」

 

「許せないんだな!!」

 

「龍牙先生、大人しく生徒にカードを返してあげて下さい」

 

「その通りです!」

 

「う・・・うううう!」

 

デュエルモンスターズが生活の一部とも言える程に浸透しているこの世界で、レアカードを他人から奪うのは重罪だ。最も、普通に考えれば窃盗罪で問われるくらいなら安いのだが龍牙はこの学園の殆どの生徒達からレアカードを奪っている。間違いなく悪質だと判断されるだろう。

 

「シニョール龍牙、貴方を招き入れた事は大間違いだったみたいナノーネ」

 

「ま、待ってください!私とデュエルしたアイツが捏造したという可能性も!」

 

遊来と共にクロノスもやって来て、龍牙に詰め寄る。そんな中、遊来は龍牙に近づくと左手から指輪を外した。

 

「こんな機械的な指輪、趣味ですか?」

 

「あっ!か、返せ!」

 

三沢が龍牙を羽交い締めにしてくれている間、遊来はジュンコに近づき気になっていた事を全校生徒の前で明かそうと協力を仰いだ。

 

「ジュンコ、デュエルディスクを起動してくれるか?」

 

「え?いきなりなによ」

 

「タネ明かしをするんだ、何故・・魔法カードを使えなくなったのか?というな」

 

訳が分からないといった表情のジュンコにデッキから魔法カードを発動するよう頼み、遊来はある程度指輪を弄ると仕掛けを理解した。

 

「これを左に回すと・・・ジュンコ、魔法カードを使って」

 

「分かったわ。・・・あれ?使えないわよ?」

 

「で、逆に右に回すと・・・もう一回、使ってくれ」

 

「あ!使えたわ!」

 

するとデータが読み込まれ『大嵐』が使用された事を示す表示が出ている。どうやら、指輪の正体は特殊な電波か何かでデュエルディスクの機能を阻害するための装置だったようだ。

 

「あ・・・あああ・・・・っ」

 

「言い逃れは出来なくなりましたな・・・龍牙先生」

 

鮫島校長の一言でその場で泣きそうになる龍牙に対し、遊来はデュエル中に見せていた『悪党』の笑みを浮かべて視界に入るよう顔を近づける。

 

「幼い時にさ。怖ーーいおじさんにこんな事を言われたことがある。『役立たずが手前の低能さを棚上げして、愉快に生きようと思ったら、あっという間にマーチ好きのバカが一匹出来上がる。どこに行っても変わらねぇ法則だ』ってな・・・今はそれがよーーーく理解できたよ」

 

「っ・・・う」

 

何だ、この生徒は?ただの男子生徒じゃない。まるで、人生の中で裏も表も覗き込んできたような人間だ。そんな、龍牙に遊来は畳み掛けるように言葉を紡ぐ。

 

「それにな?正義なんてもんはなくても、地球は回るんだぜ?この場でアンタに出来る事は何一つねぇよ・・・・祈れ、生きてる間にアンタが出来る事は唯一それだけだ。もっとも、アンタの信仰してる神は休暇取ってベガスに行ってるかもしれねえけどな・・・?」

 

『悪党』に成りきっている遊来の顔を見た十代達は引き気味になっていた。それ以上に普段は怒ったとしても多少、口が悪くなるだけだった。だが、今の遊来は完全に怒りを通り越して『悪党』そのものだ。そうでもしなければ自分を保っていられない程に怒り心頭なのだろうと三沢が冷静に分析する。

 

「ごめん、みんな・・・怖かったよな。俺許せなかったんだ・・・家族から貰ったカードを奪う奴が。クロノス先生、鮫島校長・・・好きに処分してください」

 

素に戻った遊来は自分と交流が深いメンバーに頭を下げた後、教師の二人にも頭を下げた。

 

「シニョール遊来、確かにアナタは生徒としては許されない事をしていたノーネ」

 

「しかし、このような事態が起きていた事を知らないまま放置していたのは我々、教師の落ち度です」

 

「よって、貴方には一週間の自宅謹慎、つまり寮から出ないようにするノーネ!」

 

「クロノス先生・・・」

 

「生徒達の大切なカードを取り戻そうとした事を考慮に入れての処分ナノーネ」

 

「そうだぜ!なぁ、みんな!遊来が悪い事をしたか!?」

 

「アニキ・・・」

 

「十代」

 

十代が観客席に居る生徒達に大声で呼びかけると、そうじゃない!と言った声や助けてくれたんだ!取り返してくれてありがとう!と言った声が飛び交っている。

 

「みんな・・・」

 

「必要とあれば署名だって集めるわ。アナタは皆の大切なものを取り返そうとしてくれたのよ」

 

「明日香・・・」

 

「そうよ、アンタが居なかったら解決できなかったんだから!」

 

「騎士のように真面目な遊来さんの荒々しい一面が見れた気がしましたわ」

 

 

 

 

 

 

それから龍牙は教師を辞めさせられ、本土へと強制的に戻されたそうだ。生徒から奪っていたレアカードは持ち主全員に返す事になり、先生や十代達が中心に返して歩いているらしい。

 

「『氷結界』・・・どうして今回はこんなに上手く回ったんだろう?」

 

そんな疑問と共に遊来は現在、部屋の中で過ごしている。時折、クロノス先生からレポートや反省文を書くように指示が来るが、それは課題みたいなもので謹んで受けている。

 

「けれど・・・『悪党』やるのって疲れるんだな」

 

そんな呟きと共に遊来はペンを走らせ、レポート書く事に集中するのだった。




今回は『氷結界』を使用しました。

『悪党』の遊来君の煽りに関しては参考にしてるキャラクターがいます。

前世の遊来君が片想いしていた相手は青い髪と『氷結界』と言った時点で気づいている方もいらっしゃるのかな?


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15話

ドローパン合戦

M・HEROを正式にお披露目かつ十代とのタッグ用に昇格。


遊来は購買の住人と言って良い程、購買へ来る頻度が高い。オベリスクブルーに居る今では高級なディナーなどが食べられるが、彼に取ってのご馳走は筑前煮などの田舎料理や家庭料理であり、特に炊きたての白米こそが至高だと考えている。自炊も出来るが、今現在ハマっているのがドローパンと呼ばれるものだ。

 

ドローを鍛えるという名の名目で中身が分からないようになっており、食べてみないと具材も分からない。そんな中で彼が目当てなのが。

 

「今日も俺が黄金のタマゴパンを引くからな!」

 

「いいや、俺が貰うぞ!十代!」

 

そう此処、デュエルアカデミアではニワトリが飼われており、その中の1匹が黄金のニワトリと呼ばれている種類がいて、そのニワトリが1日1個しか産まないという黄金の卵を使ったタマゴパン、これこそが狙いなのだ。

 

「二人共、交互に引いているのがすごいッスよ・・・」

 

翔がつぶやいた通り、この二人は交互に黄金のタマゴパンをゲットし続けており両者共に同じ記録回数を持っているが今現在は十代の方が1回多くゲットしている。

 

「ドロー!」

 

「じゃあ、俺はこれだな」

 

開封して二人は同時にパンに食いつく。十代は『ウッ』と言いたげな表情をしており、遊来は唸っている。

 

「うえぇ・・・甘栗パンだ」

 

「俺はカルビパンだ・・・不味くはないけど、同じ肉系ならステーキかホットドッグが良かったな」

 

基本的に好き嫌いのない十代からすれば、甘い物じゃない方が良かった様子で気分の問題だったのだろう。

 

遊来は普通にハンバーガーを食べているような感覚でムシャムシャとパンを食べ続けている。

 

すると、誰かが声をかけてきた。

 

「二人共10回連続で外すなんて珍しい事もあるもんッスね~」

 

「十代と遊来まで外しちゃうとはねぇ」

 

「ん?明日香さん」

 

「明日香、お前もタマゴパン好きだったのか?」

 

「バ、バカ言わないでよ!私はドローの練習を」

 

明日香は十代に図星を見抜かれたのか、顔を真っ赤にしている。

 

「へぇ、どうだか」

 

「ほ、本当よ!」

 

「まぁまぁ、黄金のタマゴパンが美味いのは事実なんだから」

 

遊来はなんとなくだが明日香が十代に対し、特別な感情を持ち始めているのを見抜いていた。遊来自身も前の世界に居た時も十代と明日香はお似合いだと思っていた。

 

自分も明日香は美人だと思うし、異性として意識はしたが恋人にしたいかと言われると、それはまた別の話である。

 

「ごめんなさいねぇ、みんな。実はね、タマゴパン。この中には無いのよ」

 

「ええっ!?」

 

「マジかよ!?」

 

トメさんが十代達に話しかけると同時にその隣でカートを押してきた若い女性が現れた。

 

「はい、1週間前から黄金のタマゴパンだけが盗まれているんです」

 

「トメさん、この人は?」

 

「ああ、この子はセイコちゃん。今日からこの購買で働く事になったんだよ」

 

「よろしくお願いしますね」

 

「よろしく、しかし・・・黄金のタマゴパンだけを狙った犯行か」

 

「恐ろしく引きが強い犯人ッスね」

 

翔の言葉に十代が睨むが、遊来は犯人に関して思考していた。何故、黄金のタマゴパンだけを狙うのかと。

 

「どうしたの?遊来。難しい顔をして」

 

「へ?ああ、なんで黄金のタマゴパンばかり狙うのかなって、思ってさ」

 

「それもそうね」

 

遊来の言葉に明日香は納得して、言葉を返した。そんなを尻目に十代は犯人探しに燃え始めていた。

 

「みんな、楽しみにしてくれてるのにねぇ・・・本当に申し訳ない」

 

「トメさんが謝る事ないぜ!悪いのはその泥棒野郎だ!こうなりゃ、俺が捕まえてやる!」

 

トメさんが謝ると十代が諌める。どうやら、本当に許せないらしく捕まることに躍起になっている様子だ。

 

「翔!今日から張り込みだ!」

 

「うん!えっ・・・!?」

 

「もちろん、遊来も手伝ってくれるよな?!」

 

「は?俺もかよ!?」

 

「あったりまえだろ?このままじゃドロー勝負の決着も付けられないんだぜ?」

 

こうなると十代は頑固だ。テコでも動かないのは分かりきっている。遊来はため息を一つ吐くと協力する事にした。

 

「分かったよ」

 

「そう、こうなくっちゃ!」

 

「全く、強引なんだからよ」

 

 

 

 

 

 

その夜、犯人を捕まえるため、自動販売機がある別室で待機しつつトランプで時間を潰していた。

 

「うーん・・・ダウト!」

 

「げっ!?」

 

「はい、翔の全回収。俺は上がりね」

 

「うう・・・アニキも遊来くんも強すぎるッス・・・」

 

「翔は表情に出やすいんだよ。有利な時と不利な時ですぐ出てるから分かり易すぎるんだ」

 

トランプゲームの『ダウト』を終わらせるとトランプをケースにしまい、雑談に興じる。その中で一人、この場にふさわしくない人物が一人居た。

 

「で、明日香・・・なんで此処にいるんだ?」

 

「暇だから・・・!」

 

「それに隼人までいるし」

 

「俺は十代に呼ばれてきたんだな」

 

「人手は多い方が良いだろ?」

 

「まぁ、そうだけどさ」

 

遊来は疑問を口にしていると、それを十代が答えた。仕方ないなという雰囲気を出しながら遊来は本を読んでいる明日香へ近づいていく、小声で聞こえる程度の内緒話を始めた。

 

「(明日香、本当はお兄さんに関連してる情報が欲しいんだろ?)」

 

「(!なんでそれを!?)」

 

「(タイタンの時の出来事から少し考えれば分かるさ。邪魔はしないから安心してくれ)」

 

「(そう、分かったわ)」

 

内緒話を終えると遊来は椅子に戻り座り直した。それと同時にトメさんが大きめなお皿におにぎりを乗せて持ってきてくれた。

 

「みんな、ご苦労様。夜食だよ」

 

「美味そう!」

 

「中の具はなんなのかな~?」

 

「うめ、おかか、シャケの三種類だよ。精をつけて頑張って!今夜は私も一緒に泊まるから!」

 

「ありがとう、トメさん!」

 

「シャケはどれかな~?」

 

おにぎりで人気の具といえば鮭が一番候補に挙がるだろう。隼人が何処に有るかどうか聞くとトメさんが指をさして答えようとした。

 

「そこの・・・」

 

「待った!利きおにぎりだ。俺もシャケが好きだぜ!順番で引こう」

 

「え~、みんなで分ければ良いんだな」

 

「でも、面白そう」

 

「くだらなそう」

 

「俺は構わないけどさ(好き嫌いは特に無いし)」

 

「俺のターン、ドロー」

 

十代がおにぎりを一つ選んでほうばり、モグモグと食べ始める。その顔はすぐに笑顔になっておにぎりの中身を見せてくる。

 

「ムグムグ・・・シャケ召喚」

 

「じゃあ、俺はおかか狙いで行こう。多分、これ・・・挑戦したと同時に解っちゃう奴みたいだし」

 

「おや、遊来君すごいねえ」

 

「ただの予想です。しゃけは後にして・・・えーっと、此処だな」

 

十代に続いて遊来もおにぎりを一つ手に取ってほうばる。醤油特有のしょっぱさが口一杯に広がり、遊来は笑みを浮かべ、十代と同じように中身を見せる。

 

「ムグムグ・・・・ほい、おかかを引いた」

 

「ホント、二人の引きはすごいなぁ」

 

「腕は鈍っちゃいないぜ?タマゴパンが盗まれてなきゃ、遊来を追い越せたのによ」

 

「何を言ってんだ、俺が引いて記録が並ぶはずだったんだぞ?」

 

そんな和やかな会話と共に時間は過ぎていき、明りを消して黄金のタマゴパンを盗みに来る犯人を待った。

 

 

 

 

 

全員が息を潜めていると、シャッターを素手でこじ開けてドローパンが入っているカートに近づいていく人影があった。

 

「なんて怪力・・・!」

 

「シッ!」

 

犯人が目的の物を手にした瞬間、全員で静かに別室から出て、トメさんが電気のスイッチを入れた。それと同時に十代、隼人、翔、明日香、遊来のメンバー達が詰め寄る。

 

「コラー!泥棒!!」

 

「もう逃げられないぞ!」

 

捕まえようとした瞬間、犯人はまるでターザンのような咆哮を上げるとドローパンの入ったカートを押して全力疾走し、シャッターを破壊して逃走した。

 

「逃げやがって、追うぞ!」

 

「カートを使っていたとは言えど、シャッターをぶち抜いてたぞ・・・?それにカートも鉄製のはず、どんだけ力強いんだよ。あの犯人」

 

先に犯人を追った十代達に続きながら、遊来は冷静にツッコミをしていた。犯人はターザンのように森へと逃走し、十代達は先回りしようと急いだ。

 

先回りが成功し、今度は犯人が滝を登って逃走しようとした瞬間、大声が響いた。

 

「大山くーん!!」

 

「トメさん?」

 

「て、トメさん。足速い」

 

「もう、何が何だか」

 

どうやらトメさんはタマゴパンを盗んでいる犯人、大山と呼んでいた事から顔見知りのようだ。すると滝登りをしていた大山は滝に飲まれて滝壺へ落ちてしまったがすぐに顔を出してきた。

 

「大山君なんでしょ?やっぱり、大山君」

 

「やっぱり、ターザン・・・!」

 

「いや、大山だから」

 

「お久しぶりです、トメさん」

 

「ちゃんと喋ってる」

 

「そりゃ、喋るだろう」

 

隼人に遊来が次々とツッコミを入れながら、大山と呼ばれた野生児のような男に対して十代がトメさんへ質問する。

 

「トメさん、誰なんだ?コイツ」

 

「大山 平くん・・・。オベリスクブルーの生徒だった子よ」

 

トメさんの言葉に全員が驚く。何故なら野生児も同然の大山が元はオベリスクブルーの生徒で、成績優秀な生徒だったのだと聞かされたからだ。

 

「とっても優秀な子だったんだけど・・・1年前に突然行方不明になって、まさかこんな所に居たなんて」

 

「(やっぱり、行方不明者・・・)」

 

「でも、大山君。よくタマゴパンを引き当てられたわね?1年前は貴方、何度やっても」

 

「あわああああ!」

 

大山の慌てた様子を見るに、どうやら過去に引きが弱かったのだろう。そしてトメさん曰く、彼も黄金のタマゴパンを目的にドローパンを買っていたそうだ。

 

「でも、コイツの引きはすごいぜ?別人じゃないのか?」

 

「フフフ・・・ハハハハッ!そう、そうだよ!僕は生まれ変わったんだ!この一年、山に篭り引きの修行をして!」

 

大山の話を聞くと筆記試験は常にトップであったが、実技ではここ一番という所で引きの弱さが露骨であったらしい。

 

それからというもの、引きが欲しくなり海で叫んだ。それと同時に[引きの真髄は自然の中にこそある]と思い立って、山に篭って修行し続けたらしい。

 

「(それって・・・ドロー強化カードをデッキに入れてなかっただけじゃ)」

 

遊来だけは1人、大山の弱点を見抜いていたが修行した本人の成果を無駄にしそうなので口を閉じている。そして修行の成果で黄金のタマゴパンを一週間連続的中をさせたそうだ。

 

「待てよ、俺も・・そこに居る遊来って奴もお前が盗んでいくまで外した事なかったぜ?」

 

「何!?」

 

「そうだろ?遊来」

 

十代の言葉に何でもない事のように近づいていき、十代の隣で言葉を紡ぐ。

 

「そうだな。俺達が二人で交互に引いてたもんな」

 

「な、なんだと!?」

 

大山からすれば十代と遊来、お互いに引きで勝負していた事に驚愕する。そんな中、遊来が大山へ話しかけた。

 

「此処に組んで調整したばかりの俺のデッキがある。大山、デュエルしないか?勝負して勝ったら修行から卒業、俺が負けたらドローパンを奢る。どうだ?」

 

「良いだろう。修行の成果をデュエルで試したかったところだ!」

 

「あ、ズルいぞ!遊来!!」

 

「こういうのは早い者勝ちだ」

 

勝ち誇った様にフフンといった表情をする遊来に、十代は少しだけ悔しそうに拳を握るが仕方ないといった様子でその場から離れる。大山はその間に岩陰に隠してあったデュエルディスクを腕に装着していた。

 

遊来もデッキをデュエルディスクに装填してディスクを起動させる。

 

「「デュエル!!」」

 

大山 平:LP4000

 

龍谷遊来:LP4000

 

「俺の先行だ、ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※E・HERO ブレイズマン

 

[現在の手札 6枚]

 

※E・HERO エアーマン

※E・HERO クレイマン

※E・HERO リキッドマン

※E・HERO ブレイズマン

※マスク・チャージ

※マスク・チェンジ

 

「(ちょっとキツイな)俺は『E・HERO ブレイズマン』を攻撃表示で召喚!そしてブレイズマンの効果を発動!このカードの効果は1ターンに1度しか使えず、2つの効果のうち1つを選んで発揮する。俺は1つ目の効果、このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「融合」1枚を手札に加える効果を使用し、デッキから『融合』を加える!」

 

「E・HEROですって!?」

 

「あれは、もしかして?」

 

「間違いない、遊来が組んだって言っていたHEROデッキなんだな!」

 

「うおお!遊来のHEROデッキがデュエルで登場かぁ!ワクワクしてきたぜ!!」

 

ギャラリーは騒いでいるが、遊来もこのデッキの為に専用モードをデュエルディスクに登録している。演出だけだが自分も楽しみにしている。

 

「更に俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

「俺のターン、ドロー!一年間の集大成を見せてやる!先ずはカードを一枚伏せ、俺はこのカードを召喚!『ドローラー』!オオオオーっ!」

 

モアイ像のような頭部に岩のロードローラーのような下半身を持ったモンスターが大山の前に召喚された。

 

「『ドローラー』の攻撃力と守備力は手札からデッキに戻した枚数×500の数値になる!俺は手札を4枚戻す!!」

 

「カードを全部!?」

 

「ええ~手札無くなっちゃうよ!」

 

『ドローラー』攻撃力?→攻撃力2000

 

「『ドローラー』でブレイズマンを攻撃!ローラープレス!」

 

『ドローラー』のローラーに轢かれたブレイズマンは破壊されたが、デッキの一番下に入っていった。

 

龍谷遊来:LP3200

 

「何!?破壊されたモンスターがデッキの中に!」

 

「『ドローラー』に破壊された攻撃表示モンスターは墓地へは行かず、デッキの一番下へ行く。墓地から引き上げる事はできないぜ。これで、ターンエンド」

 

「なるほど、俺のターン・・・ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※E・HERO レディ・オブ・ファイア

 

[現在の手札5枚]

 

※E・HERO エアーマン

※E・HERO クレイマン

※E・HERO リキッドマン

※マスク・チャージ

※E・HERO レディ・オブ・ファイア

 

「俺は『E・HERO エアーマン』を攻撃表示で召喚!この瞬間、エアーマンの効果発動!このカードはこのカードが召喚・特殊召喚に成功した時、2つの効果から1つを選択して発動できる。このカード以外の自分フィールドの「HERO」モンスターの数まで、フィールドの魔法・罠カードを選んで破壊する。もしくはデッキから「HERO」モンスター1体を手札に加える。俺はデッキから『E・HERO シャドー・ミスト』を手札に加える。ターンエンドだ」

 

「遊来『融合』を使わないのか?」

 

「フフ、俺のターン。場から永続罠「奇跡のドロー!」を発動!自分のドローフェイズ毎に、通常のドローを行う前にカード名を1つ宣言し通常のドローを行った時、そのカードを互いに確認する。ドローしたカードが宣言したカードだった場合、相手プレイヤーに1000ポイントのダメージを与える。宣言したカード出なかった場合、自分は1000ポイントのダメージを受ける!」

 

「博打要素が高いけど、引きに自信があるってことか!」

 

大山は精神を集中すべく、目を閉じた。鯉の滝登りのイメージでカードが登っていく中でその中の一枚が思い浮かぶ。

 

「ドローカードは『カードローン』!」

 

「当たった!?」

 

「そんな」

 

「また、ドローのつくカード」

 

「1000ポイントのダメージを受けてもらうぜ」

 

「うぐうああ!」

 

龍谷遊来:LP2200

 

「そして、この『カードローン』を発動する。相手は1000ポイントのライフを回復し、俺は1000ポイントのダメージを受ける。そして自分のデッキからカードを1枚ドローする。この効果でドローしたカードはエンドフェイズにデッキに戻しシャッフルする」

 

龍谷遊来:LP3200

 

大山 平:LP3000

 

「来た!この引きを見よ!手札から魔法カード『ドローボウ』を発動!カード名を1つ宣言して発動する。相手はデッキからカードを1枚ドローする。宣言したカード名と同じカードをドローした場合、相手は手札と自分フィールド上のカードを全てデッキに戻しシャッフルする!」

 

「マズイ、カードを当てられたら遊来の場はガラ空きだぜ!?」

 

「・・・ドローカードはズバリ『増援』だ!」

 

「すごいな。当てられちゃったよ」

 

魔法効果により、遊来は伏せカードと場に出ていたエアーマンと手札をデッキに戻し、シャッフルして再び手札を5枚引いた。

 

[現在の手札5枚]

 

※E・HERO エアーマン

※E・HERO オーシャン

※E・HERO ブレイズマン

※マスク・チェンジ

※融合

 

「『ドローラー』でプレイヤーへダイレクトアタック!ローラープレス!」

 

「うああああ!」

 

龍谷遊来:LP1200

 

「ターンエンドだ」

 

「俺のターン!ドロー!

 

[ドローカード]

※E・HERO クレイマン

 

[現在の手札6枚]

 

※E・HERO エアーマン

※E・HERO オーシャン

※E・HERO ブレイズマン

※マスク・チェンジ

※融合

※E・HERO クレイマン

 

「大山、楽しかったよ。悪いけど、このターンで終わらせる!」

 

「なんだと!?」

 

「それにさ、大山のドロー力はもう十分に力が付いてるじゃないか」

 

「な、・・んだ・・って?」

 

「ドローは一枚だけに拘る必要はないんだよ?ドロー補強カードを使っても望んだカードを引けるとは限らない。けれど・・・その引けるか引けないかの緊張感すら大山は楽しんでるじゃないか」

 

「俺が・・・楽しんでる?」

 

「ドローパンは別だけど、デュエルに関してはドローのつくカードに拘り過ぎないよう柔軟に行こうぜ?デュエルは楽しんでも良いんだ。真剣勝負も良いけどさ」

 

「・・・・っ」

 

「それじゃ、行くぜ?俺は手札から『E・HERO クレイマン』を攻撃表示で召喚!」

 

「クレイマンを攻撃表示!?」

 

「遊来くん、ヤケになっちゃったッスかぁ?『ドローラー』の攻撃力に及んでない」

 

ギャラリーは遊来の行動い関して理解不能だった。だが、遊来の表情はコレでいいと言わんばかりの済まし顔のままだ。

 

「十代、お前が大好きなヒーローが『光の巨人』なら俺は『改造人間』だ!!これが!それを体現するカード!手札から速攻魔法発動!!『マスク・チェンジ』!!」

 

「『マスク・チェンジ』!?」

 

「一体、どんなカードなの!?」

 

「E・HERO クレイマン!『変身!!』」

 

クレイマンの腰部分にベルトが巻き付き、さらに光が溢れその中で身体中の粘土が削ぎ落とされていく。細身の男性のような姿になったクレイマンは青いマントを靡かせ、その手には剣を持っていた。

 

「『M・HERO ダイアン』!!変身召喚!!」

 

「うおおおお!すっげえええ!E・HEROが別のHEROに変身した!!」

 

「かっこいい!!」

 

「あれが、遊来のヒーローなのか・・・確かにカッコイイんだな!」

 

「変身召喚・・・初めて聞いたわ」

 

ヒーローの変身シーンを観たかのように十代達は興奮しており、明日香は冷静に新しいHEROの力を見ようとしている。

 

「だが、そのモンスターだけでは俺を倒す事は出来ない!」

 

「まだ、終わらない!ラ○ダーは助け合いでしょ?手札から『融合』を発動!手札のエアーマンとオーシャンを融合!!嵐を巻き起こせ!『E・HERO Great TORNADO』を融合召喚!!」

 

『E・HERO Great TORNADO』融合・効果/星8/風属性/戦士族/攻撃力2800/守備力2200

 

「『E・HERO Great TORNADO』だと!?」

 

「アニキが使ってる属性HEROと同じカテゴリーの風属性HERO!?」

 

「あれが・・・風属性HERO!!」

 

「『E・HERO Great TORNADO』の効果発動!このカードが融合召喚に成功した時に発動!相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力・守備力は半分になる!!」

 

「何!?」

 

『ドローラー』攻撃力2000→攻撃力1000

 

「行け!ダイアン!Great TORNADO!2体の連携攻撃!ダイア・トルネード!」

 

「うあああああ!!!」

 

『M・HEROダイアン』が攻撃力が半分となった『ドローラー』を剣で切り裂いて倒し、その差し引き1800ポイント、『E・HERO Great TORNADO』のダイレクトアタックによって合計4600のダメージを与えた。

 

大山 平:LP0

 

「良いデュエルだったぜ!(M・HERO・・・十代とのタッグ用に使おう」

 

「うう・・・修行が足りなかったか」

 

デュエル後、大山は黄金のタマゴパンが食べたくて山を降りてきたという正直な気持ちを話してくれた。その後、大山もアカデミアに復学し、十代、遊来、大山の三人で購買へ向かっていた。

 

「これから幕明けだな!」

 

「ああ、黄金のタマゴパン争奪戦」

 

「負けないからな!」

 

戦場へ趣き、トメさんとセイコさんにひと声かけてからドローパンの入ったカートへ近づく。

 

「トメさーん」

 

「セイコさーん」

 

「黄金のタマゴパン、まだ出てないよね?(ですよね?)」

 

「ああ、出てないよ」

 

「頑張ってくださいね」

 

そして三人でカートを漁っている時であった。向かい側から明日香が飛び跳ねるかのように喜んでいた。

 

「当たったーー!!黄金のタマゴパン!嬉しい!!」

 

「ええーー!」

 

「ああーーーっ!」

 

「マジかよーー!今日の分は明日香が当てちゃったのか!?」

 

明日香は飛び切りの笑顔で、既に飛び跳ねており、嬉しさを身体で表している。

 

「ウフフフ!!やったぁーーーー!!」

 

そんなこんなで、購買での黄金のタマゴパン窃盗事件は解決したのであった。




タッグフォースでのルーレットで散々当ててました。黄金のタマゴパン。

遊来くんのHEROデッキもちゃんとドラゴン要素があります。

では次回


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16話

デュエル無し。

M・HEROのモデルになったヒーロー作品を鑑賞。




本日は土曜日、授業は休みであり生徒達はデュエル場でデュエルをしたり、森に入ったり休日を満喫している。

 

そんな中、遊来がオシリスレッドの三人組を自室に招待していた。それは連休を使って彼がデッキを組む時にインスピレーションを受けた特撮作品を観ようという話をしたためだ。

 

「よし、大きなモニターとDVDの準備が出来た」

 

「早く観ようぜ!遊来が好きでオススメして来たヒーロー楽しみだぜ!」

 

「なんで僕達まで・・・」

 

「でも、遊来が招待してくれたんだから、無下には出来ないんだな」

 

「それじゃ、スタート!」

 

そう言いながら俺はDVDをスタートさせる。俺が居た前の世界ではかなり先まで作品があったが、この世界もそこまで進んでいるらしくびっくりした。

 

ク○ガからジ○ウ、そしてゼ○ワン、セ○バーの作品までだったが、入りやすいので大丈夫だろう。特にク○ガ以前のラ○ダーは渋いので入りにくいだろうから、平成ラ○ダーを鑑賞することにしたのだ。昭和ラ○ダーは歴戦の戦士だし、俺も好きだけど入りにくいかも知れないからね。

 

ク○ガから始まり、最初の変身シーンになった瞬間、三人が食入いるようにモニターを凝視する。

 

『やられる!このままじゃ・・死ぬ!うわああ!』

 

『はぁ・・・はぁ・・・変わった!』

 

一番最初の変身シーン、最も弱いフォームであり何度も何度もキックを打ち込んで敵を倒すシーンで少し不満が出てくる。

 

「何度もキックしないと倒せないの?」

 

「本当の変身はもう少し先だよ」

 

話数が進んでいき『本当』の変身シーンの話になり、十代達が真剣な目つきになる。作品の主人公が火の手が上がっている教会へバイクで突撃し、転倒して乗り捨てると急いで刑事の衣服に点いた火を自分の上着を使い、火を叩いて消火する。

 

『刑事さん!』

 

『何しに来た!?』

 

『戦います!俺!』

 

『まだそんな事を!!』

 

『こんな奴らの為に!』

 

『これ以上誰かの涙は見たくない!皆に笑顔でいて欲しいんです!!』

 

映像の中の作品の主人公は怪人に向かっていき、何度も何度も立ち上がっていく。

 

『だから見てて下さい!俺の・・・変身!!』

 

変身アイテムであるベルトが体幹部に出現し、主人公が心音と共に炎の中で構えを取ると腰の辺りで何かを押し込んだ後、敵である怪物に殴りかかっていく。

 

『おおりゃあ!うああ!はっ!!』

 

怪人を殴っていく度に変化していく主人公の姿に十代達は「おおっ・・・!」と驚きの声を上げる。

 

『でやっ!うおあああああああ!!!おりゃあ!!』

 

怪物が殴り飛ばされ、吹っ飛んでいく。怪人は起き上がると同時に変身したヒーローへ話しかける。

 

『ビガラグ バスビ ク○ガ!(何故、貴様がク○ガに!)』

 

『ク○ガ?そうか、ク○ガか!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すっかり、十代達は世界に入り込んでおり、無言で夢中なって観ている。やっぱりク○ガは名作だから仕方ないよな。

 

最後まで観終えると全員が口を揃って言葉を発した。

 

「「「カッコイイ!(ぜ!)(んだな!)」」」

 

「だろだろ?」

 

「これが遊来の勧めてきたヒーロー作品、面白すぎるぜ!早く次のヒーローを観せてくれよ!!」

 

「ピンチになっても復活して、葛藤しながら力を使いつつ、姿を変えて対応していくのに痺れたよ~!」

 

「矛盾を抱えてでも戦う、その心意気に感動したんだな!」

 

そして、平成ラ○ダー上半期の作品だけで一日を潰してしまった。だが、ラッキーな事に連休の初日である為、時間はまだまだある。十代はラ○ダーがたくさん出てくる『願いを構える為に戦いながらも、自らの命を捨ててまで争いを止めようとした戦士』が気に入り、翔は乗り物やメカが多めに出てくる『夢を守るために戦った戦士』が気に入り、隼人は『音を響かせる戦士』が気に入ったそうだ。

 

少しの休憩の後、平成の下半期のラ○ダーを鑑賞する。『二人で一人の戦士となる探偵物語』の決め台詞が十代はお気に入りなってしまったらしい。

 

「こうやって、こうだよな?このセリフ、タッグデュエルする時とかに使うぜ!」

 

「ガッチャは?」

 

「もちろん、デュエルが終わった後に使うぜ!」

 

「アニキってば影響、受けやすいんッスね?」

 

「でも、分からなくもないんだな」

 

十代は左手の手首のスナップなどを研究して、仮面ラ○ダーダ○ルの『街を泣かせる悪党に永遠に投げかけ続ける、あの言葉』を真似している。

 

「そんな事、言って・・翔は仮面ラ○ダードラ○ブを食い入るように観てたじゃないかよ」

 

「う・・・だって、オーバードライブとかセリフがカッコ良くて・・・それにビークロイドは乗り物だから仮面ラ○ダードラ○ブはイメージしやすいんだもの」

 

「俺は下半期だと仮面ラ○ダー○ォーゼが好きになったんだな、友達を大切にしながら強くなっていくのに憧れるんだなぁ」

 

「○ォーゼは学園モノでもあるしなぁ、三沢とかは『勝利の法則は決まった!』とか気に入りそうだな」

 

そう俺が呟くと三人とも同じタイミングで、ウンウンと納得したように首を上下に振っている。

 

「ありえそうッスね」

 

「仮面ラ○ダービ○ドの主人公は科学者だから、わかり易いんだなぁ」

 

「ところで、遊来はどれが好きなんだ?」

 

「俺?下半期だとエグ○イドと鎧○かな。セリフ回しは仮面ラ○ダーのウィ○ードだけど」

 

「お医者さんとゲーム、フルーツと鎧武者の組み合わせの発想から生まれたラ○ダーが好きなのかぁ」

 

「おお、どっちも格好いいよな!けれど、やっぱり全部がカッコ良くて選べねえよ~!」

 

「本当ッスよ~!ただの特撮だと思って舐めてたッスよ~」

 

「その通りなんだなぁ」

 

ジ○ウまでは行かないが、休憩も兼ねて映像を流しながらラ○ダー談義を始めていた。観終えたのラ○ダーの中で作品を選び、それに関して語り合っている。

 

「平成ラ○ダー上半期は内容は重いけど、深く考えさせられるよな。俺が気に入った龍○も『誰かを犠牲にしてまで叶えたい事』はあるのか?ってなるし」

 

「そうッスね。僕のお気に入りのファ○ズそう思えるッス・・・人間じゃ無くなったり、見知った人達から離れられるのは辛いことだと思うよ・・・」

 

「十代の言う通り、内容は重いけど考えさせられるものがあるんだなぁ。俺の気に入った○鬼も『失った物ばかりじゃない』って言葉が響いたんだなぁ」

 

 

それぞれのお気に入りに関して感銘を受けた事を述べていく。観終えたDVDを入れ替えつつ、遊来も話題に入るがデュエルの話題になっていく。

 

「なぁ、遊来」

 

「ん?」

 

「『マスク・チェンジ』のカードって余ってないか?俺も変身召喚やりたいんだ!」

 

「少し待っててな。えーっと・・・あったあった」

 

ストレージボックスに似た箱から遊来は『マスク・チェンジ』のカード3枚とM・HEROのカードを各1枚ずつ取り出し、十代に差し出した。

 

「ほら、十代」

 

「サンキュー!って・・・!すんなり渡すなよ!!」

 

「そうッスよ!相変わらず遊来くん何考えてるんッスか!それにHEROの融合モンスターはレアカードなんだよ!?」

 

「すぐに渡さないでトレードとかも考えて渡すんだな、遊来!!」

 

「あ、そっか・・・(どうも前の世界のOCGと同じ感覚で、渡しちゃうな。あっちだと本当のレアは一番最初に発売された時の完全未使用の美品とか、全国大会の上位入賞商品とか、ゲーム購入特典とかの限定品とかだったし。再販もかなりしてたから、同じ名称のカードは価値下がりまくりだったし)」

 

「あ、そっか・・・。じゃねえよ!遊来!ただでさえ属性の融合HEROを風属性以外全て貰ってんだぞ?俺が申し訳なくなるって!」

 

「少し待ってな・・・あったあった。これで全部の属性揃うだろ?」

 

差し出したカードは『E・HERO Great TORNADO』だった。それを見た十代は更に一歩退いてしまう。

 

「揃うけど受け取れねえよ!幾ら枚数持ってるからってポンポン渡しすぎだって!!」

 

「じゃあ、十代の持ってるカードを見せてくれよ」

 

「え、じゃあ・・・少し待っててくれ!」

 

自分の部屋へ大急ぎで戻った十代はカードを片手に、遊来の部屋に戻ってきた。遊来は十代が持ってきたカードの中でピンとくるものがあり、それを手に取った。

 

「これをトレードしてもらうよ」

 

「それで良いのか?釣り合ってない気がするぜ」

 

「良いんだよ。俺が必要だから」

 

そう言いながら俺は一枚のカードを十代の持っているカードから抜き出してストレージボックスにしまう。

 

「ありがとうな、遊来」

 

「ちゃんと大切にしてくれよ?」

 

「当たり前だろ!」

 

それから、俺達は平成ラ○ダーの下半期の作品を観終わり、ゼ○ワンの途中でお開きとなった。デッキを新たに組み直したいと十代が提案した為である。オシリスレッドへと移り、十代のデッキを全員で見ながら組み直していく。

 

「やっぱり、フェザーマン達は外せないんだよな」

 

「属性は揃ってるし、過剰に調整する程でもないだろ?ブレイズマンとリキッドマンは入ってるし、シャドーミストを2枚、後はちょいと防御系の罠カードを入れるくらいか」

 

「これで俺のヒーロー達も変身できるぜ!」

 

「十代のヒーローと俺のヒーローは『別物』だからな、エッセンスになってるくらいの認識でいいと思うぞ」

 

「そっか、ありがとな」

 

「だけど、俺の『ドラグニティ』そのデッキに黒星を刻まれてるの多くなって来てるんだぞ」

 

「それでも、俺の方がまだ負けてるぜ?」

 

「俺だって負けたくないからな」

 

「その言葉、そっくり返すぜ」

 

俺と十代は笑いながらもデュエリストとしてのプライドをぶつけ合っている。十代は「楽しむ」事を信条に俺は「倒す」事を信条にしている。

 

十代と違って俺は楽しむことが少ない。なぜなら俺は「相手を倒す」という感情が表立って出やすいからだ。

 

「やっぱり似た者同士ッス・・・」

 

「同感なんだな・・・」

 

翔と隼人は二人を見て同じタイミングでため息を吐いていた。ラ○ダーの鑑賞会から戻り、興奮が収まらない十代はデッキを一通り回したり、してから就寝したのだった。




短いですが此処まで。

遊来くんのデッキに関してですが、四つにしました。

一つ目は自分の象徴である『ドラグニティ』

※『サイバーダーク』は『ドラグニティ』と同じカテゴリーになります。

二つ目は相棒の『ルイン(デミス)』

三つ目は友情の『仮面HERO』

四つ目は心の内の『シンクロ&エクシーズ』

となります。

四つ目に関しては遊戯王に出てくるライバルでありボスキャラタイプをイメージしています。

『シンクロ&エクシーズ』という名前は仮の名前です。正式名称は決まっていますが圧倒的にシンクロの象徴がバレバレになるので、しばらくはこの名前になります。


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17話

サルとのデュエル。

ヒロインフラグ1が成立?



授業を終えて、する事もないので大山のデッキを診断している。最もドローと名の付いたカードをなるべく省いて動きやすくしているだけだが。

 

「こ、こんなに無駄があったのか・・・?」

 

「無駄というよりもコンセプトがなかっただけだろ?デッキの傾向を見ると属性統一っぽいな」

 

「確かに僕のデッキは地属性が多い」

 

「それだとパワー型になるからな、だけど一直線すぎる。何か思い入れの深いカードとかある?」

 

「これ・・・なんだ」

 

「見せてくれ・・・っ!?『ナチュル・フライトフライ』!?」

 

「初めて心を動かされたカードなんだ。ナチュルは自然という意味を持つナチュラムをもじっているというのも」

 

「大山、修行していただけあってお前は先見の明があるよ!」

 

「そ、そうかな?」

 

俺は思わず大山を褒めてしまった。まだまだシンクロは俺しか使っていない状況であり、少しずつ認知されてはいるがやはり低レベル、低攻撃力という点が受け入れがたく、レベル調整という点も難しいのだ。

 

「けれど・・・ナチュルはシンクロ主体のデッキだ。俺もあまり持ってないし、カードを手に入れることも難しいから、とりあえずチューナーだけ渡しておくよ。それと同時にこのデッキはパーミッション、つまりは相手を妨害しつつ優位性を奪っていくデッキになる」

 

「なるほど、僕には良いかもしれない」

 

「種族は今の所、昆虫族主体に組んだほうがいい。植物族は効果モンスターにしてね」

 

「ふむふむ、ならデッキ作りを協力してくれ!」

 

「わかった、それと以前のドロー修行デッキはレシピにしておいたから気にしなくて大丈夫」

 

「何からなにまで、ありがとう遊来!」

 

「さ、デッキを作ろう。ナチュルの方はプロキシが入るからしばらくの間、友人間限定のデッキになるしもう一個、実戦用のデッキを作っておいた方がいいな。流石に修行で使っていたあのドローデッキで勝つのは正直難しいだろうから」

 

「そうか、出来る事ならこのカードを使いたいんだ」

 

見せてきたのは『剣闘獣ガイザレス』のカードだった。やはり、ずっと修行を重ねオベリスクブルー所属だけあって大山は強力なカードを見抜く力がすごい。

 

「よし、早速始めるか」

 

大山の実戦用デッキの制作で時間を潰しているとデュエルディスクの方に連絡が入った。どうやらジュンコが攫われたらしく助力を頼みたいと十代からの連絡だった。

 

「大山、悪い。十代から手助けして欲しいって」

 

「構わないさ、デッキは形になってるし調整を他の人に頼んでみるよ」

 

「分かった。それじゃ俺行くから」

 

遊来は一度自室に戻り、デュエルディスクとデッキを手に十代達がいる森へと急ぐ。するとそこにはジュンコを抱えているサルが居た。全身を機械で覆われており、なにかの実験体にされていたのだろう。

 

 

 

 

 

 

その姿を追うと崖にある人一人が耐えられそうな太い木の枝の上にジュンコが乗せられていた。ちょうど、十代がデュエルを申し込もうとした時だったようで俺に気が付いた十代達が駆け寄ってきた。

 

「遊来!」

 

「来てくれたのね」

 

「ああ、予定はなかったし大山と話してただけだったから」

 

「ねえねえ、アニキ、遊来くん。あのサル、デュエルディスクを付けてるよ」

 

「本当だ」

 

そこへ研究職員のような格好をした男性三人が現れた。どうやらあのサルを捕獲しようとしている様子だ。

 

「一体、あのサルは何だ?」

 

「あれは我々が訓練を重ねて育て上げだデュエリストザルだ」

 

「「「デュエリストザル!?」」」

 

「ああ、その名も『Super』『Animal』『Lerning』!略して『SAL』だ!!」

 

「まんまじゃん・・・!」

 

「(ツッコミを取られた・・・!?)」

 

俺の役割を翔に取られ、博士らしき人物のドヤ顔が半端ない。機械を付けられたサルは十代と俺を交互に見ている。

 

「おーい、サル!お前もデュエリストなら、ここはデュエルで決着つけようじゃねーか!!」

 

「十代!?」

 

「すげえアニキ、サルと会話してる」

 

「それだけサルに近いって事かしら?」

 

「きっと、人間の言葉が解るように教育されたのよ。デュエルが出来るくらいですもの」

 

「だろうな、サルに限らず筆談するゴリラとかも居るそうだから」

 

明日香の意見に遊来も賛同する。だが、ジュンコは本気で怯えておりその場で固まったままだ。するとサルがジュンコを木の上に降ろし、こちらへ向かってくると丁度よく台座のような石の上に乗り、明日香の推察通り知能が高かったらしく、遊来を指差している。

 

「ん?何だ?」

 

「遊来を指差しているわ」

 

「へ?まさか、サル・・・俺を指名しているのか?」

 

俺が声を出すとそうだと言わんばかりにウキーウキー!と声を出している。まさか、サルのご指名を受けるとは思わなかったな。

 

「遊来さん、人気ですわね」

 

「『異議あり!』だぜ!なんで遊来ばっかりなんだよ~!」

 

「仕方ないだろ、サルのご指名なんだし。おい!サル!俺が勝ったらジュンコを解放しろ」

 

「ま、負けたら?」

 

「俺が負けたら、サル!お前を森の中に離してやる!」

 

「なによそれ、意味わかんない!」

 

ジュンコは本気で怯えている為、腰が抜けている状態だ。本人だってまさかサルに拉致されるとは思ってもみなかったのだから。サルはデュエルディスクを起動して、遊来を手招きしている。

 

「仕方ない、やるしかないな!今持ってるデッキはシンクロメインの調整用デッキだけど文句言うなよ?」

 

「ウキー!」

 

遊来もデッキを取り出し、シャッフルするとデッキをデュエルディスクへ装填し展開した。

 

「「デュエル!」」

 

「って、今喋らなかったか!?」

 

「フフフ、デュエルに関する言葉は全てプログラムされているのだ」

 

 

SAL:LP 4000

 

龍谷遊来:LP 4000

 

 

博士らしき人物の言葉に俺は納得する。人工音声機能でもあるのだろう、名称などを言ってくれるのならそれはそれでありがたい。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※ボルト・ヘッジホッグ

 

[現在の手札 6枚]

 

※クイック・シンクロン

※チューニング・サポーター

※ガード・ブロック

※ゾンビキャリア

※ワン・フォー・ワン

※ボルト・ヘッジホッグ

 

「俺はカードを1枚伏せて、モンスターをセットしてターンエンド」

 

さぁ、どう出る?様子見って訳じゃないけど最初に出してくるカードでサルのデッキを見極める。

 

『私のターン、ドロー!』

 

『「怒れる類人猿」を召喚!』

 

「やっぱり、獣族か!しかも『怒れる類人猿』とはかなり攻撃的なデッキになってやがる!良いセンスだ」

 

「相手を褒めてないで早く助けてよー」

 

『「怒れる類人猿」でセットモンスターへこうげキーー!!』

 

ジュンコの悲痛な叫びと「怒れる類人猿」の攻撃が守備表示の『ゾンビキャリア』を簡単に殴り倒してしまった。その余波が遊来へ襲いかかり腕で目を覆った。

 

「うわっ!」

 

『カードを一枚伏せてターンエンド』

 

「やるな。俺のターン、ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※成金ゴブリン

 

[現在の手札 5枚]

 

※クイック・シンクロン

※チューニング・サポーター

※ワン・フォー・ワン

※ボルト・ヘッジホッグ

※成金ゴブリン

 

「俺は手札にあるモンスターカードを一枚墓地へ送り、『クイック・シンクロン』を特殊召喚!更にチューナーモンスターが自分のフィールドに居る場合、墓地にある『ボルト・ヘッジホッグ』を召喚!(このパターン、アイツを呼ぶしかないけど・・まだ勝つためのカードが足りない!)レベル2の『ボルト・ヘッジホッグ』にレベル5の『クイック・シンクロン』をチューニング!」

 

『クイック・シンクロン』チューナー・効果/星5/風属性/機械族/攻撃力700/守備力1400

 

『ボルト・ヘッジホッグ』効果/星2/地属性/機械族/攻撃力800/守備力800

 

ボルトを背中に背負ったハリネズミのようなモンスターが、ガンマンのような姿をしたモンスターが発生させた光の輪を潜り、一筋の星列となった。

 

「(遊星の召喚口上、使わせてもらおう)集いし思いがここに新たな力となる。光射す道となれ!シンクロ召喚!燃え上がれ、『ニトロ・ウォリアー』!」

 

★2+★5=★7

 

『ニトロ・ウォリアー』シンクロ・効果/星7/炎属性/戦士族/攻撃力2800/守備力1800

 

「攻撃力2800!?」

 

「それも通常召喚を使わずに!?」

 

翔とももえが驚きの声を上げたが、明日香は遊来ならこのくらいの事は簡単にやって来るだろうという表情で、観ている。

 

「更に『ゾンビキャリア』が墓地に存在する場合、手札を1枚デッキの一番上に戻して効果を発動!このカードを墓地から特殊召喚出来る。ただし、この効果で特殊召喚したこのカードはフィールドから離れた場合に除外される。来い!『ゾンビキャリア』!!そして『チューニング・サポーター』を通常召喚!」

 

『ゾンビキャリア』チューナー・効果/星2/闇属性/アンデット族/攻撃力400/守備力200

 

『チューニング・サポーター』効果/星1/光属性/機械族/攻撃力100/守備力300

 

「『チューニング・サポーター』は本来レベルは1だが、自分フィールド上のこのカードをシンクロ召喚の素材とする場合、このカードはレベル2のモンスターとして扱う事ができる。そして、このカードがシンクロ召喚の素材として墓地へ送られた場合、自分はデッキから1枚ドローする事が出来る」

 

『ウキッ!?』

 

ゾンビのペンキ職人のようなモンスターと小型の中華鍋を被ったような人型のロボットのモンスターが現れ、遊来の場を埋めている。

 

「レベルが低くても、モンスター同士が力を合わせる事で強力なモンスターに変化する事が出来る・・・!これがシンクロ召喚の真髄!!」

 

「今までは『ドラグニティ』でしか見た事がなかったから知識が浅かったけど、こんなにも応用が効くのね。これほどのものを見てしまったら、低レベルモンスターをバカには出来なくなるわ。モンスターのレベルが低ければ召喚も可能で調整も効くし、チューナーモンスターで補えてしまう」

 

「ただ、一度フィールドに出さないといけないのがデメリットさ。それに必ずチューナーモンスターとチューナーじゃないモンスターが必要で最低でも2体居ないといけない。融合と少し似てる部分でもあり、違う部分でもあるな」

 

十代と明日香の言葉に俺はデメリットを口にして説明した。なるほどといった表情の二人だが俺はすぐにデュエルに集中する。

 

「レベル2の『チューニング・サポーター』にレベル2の『ゾンビキャリア』をチューニング!2つの意志が、敵を砕く武器となる!形を成せ!!シンクロ召喚!鋼鉄の拳!『アームズ・エイド』!!」

 

★2+★2=★4

 

『アームズ・エイド』シンクロ・効果/星4/光属性/機械族/攻撃力1800/守備力1200

 

「『チューニング・サポーター』の効果でカードを一枚ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※ワン・フォー・ワン

 

「更に俺は魔法カード『成金ゴブリン』を発動!相手がライフポイントを1000ポイント回復する代わりに俺はカードをデッキから一枚ドローできる!ドロー!』」

 

『ウキキー!!』

 

SAL:LP5000

 

[ドローカード]

 

※ジャンク・アタック

 

俺はドローしたカードを見る。あ、これ・・・ワンキル達成だ。前の世界のアニメで見てた時に遊星が『ワンターンスリーキルゥ…』をした時のコンボが完成してしまった。サルには悪いが、このデュエルは此処で終わりだ。恐らくサルは森に帰りたかったのかもしれない。だが、俺は情けをかけるつもりはないし、休日に十代達とラ○ダーを観てたせいか頭の中で『FINAL VENT』って音が響いた。

 

「更に『ニトロ・ウォリアー』の効果発動!『ニトロ・ウォリアー』は魔法カードを発動した時、ダメージ計算時のみ1度だけ攻撃力が1000ポイントアップする」

 

『ニトロ・ウォリアー』攻撃力2800→3800

 

「攻撃力3800ですって!?」

 

「同時に『アームズ・エイド』は1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に装備カード扱いとしてモンスターに装備、または装備を解除して表側攻撃表示で特殊召喚できる。この効果で装備カード扱いになっている場合のみ、装備モンスターの攻撃力は1000ポイントアップする!俺は『アームズ・エイド』を『ニトロ・ウォリアー』に装備し、攻撃力を1000ポイントアップさせる!」

 

『ニトロ・ウォリアー』攻撃力2800→4800

 

「攻撃力4800!更に上がったぜ!?」

 

『キキーーッ!?』

 

「更に手札から装備魔法『ジャンク・アタック』を『ニトロ・ウォリアー』に装備!サル、悪いけど・・・このデュエルは此処で終了だ!『ニトロ・ウォリアー』で「怒れる類人猿」を攻撃!ダイナマイト・ナックル!!」

 

「え、どういう事?」

 

翔は訳が分からないといった声を出すが『ニトロ・ウォリアー』が『アームズ・エイド』を装備した右腕で「怒れる類人猿」を思い切り殴り飛ばし、破壊した。

 

「ウッキーー!?」

 

SAL:LP2200

 

「この瞬間『アームズ・エイド』の効果と装備魔法『ジャンク・アタック』の効果発動!『アームズ・エイド』を装備したモンスターが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える!」

 

「フレイム・ウイングマンと同じ効果!?」

 

「そして、装備魔法『ジャンク・アタック』はこのカードを装備したモンスターが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える!」

 

『ウキーーー!?』

 

「よって「怒れる類人猿」の攻撃力分とその半分の数値・・・合計3000ポイントの追加ダメージを受けてもらう!」

 

「ウキャアアアア!?」

 

SAL:LP0

 

「ウッソー!?」

 

「返しのターンでワンターンキルだなんて・・・滅多にありえない事が目の前で」

 

「容赦ないわね・・・」

 

デュエルが終わり、俺はサルに近づいていく。サルにはルインが見えているのか、空を見上げているような様子で見ている。

 

『この子、私が見えているのでしょうか?』

 

「(たぶんな)サル、デュエルは俺の勝ちだ。ジュンコを返してもらうぞ」

 

「ウキー・・・」

 

サルは大人しくジュンコを開放してくれた。よほど怖かったのだろう俺が支えるとジュンコは飛びついてきた。

 

 

 

 

 

 

「うわああ、怖かったよぉ!」

 

「わかった、分かったから!」

 

「あ、ゴメン!(あ、あれ?なんで私、こんなにも遊来を相手にドキドキしてるのよ!?)」

 

ジュンコが離れてくれたのを見計らって、俺はサルに取り付けられていた機械を外しにかかる。

 

「ウキ?」

 

「おい、貴様!何をしている!?」

 

「何って、サルを逃がしてやるんだ」

 

「ぶざけるな!それは大切な実験体なのだぞ!」

 

実験体と聞いて遊来の怒りのボルテージが一気に上がった。その後ろから炎の柱が登り、その柱が形を変えてドラゴンの姿へと変わる。これは幻影であり、ソリッドヴィジョンではない。

 

「ウキッ!?」

 

「な、なんだ!?」

 

「ド、ドラゴン!?」

 

「炎の中から赤いドラゴンが!」

 

「ふざけるなよ・・・ふざけんな!!確かに科学の進歩には動物による実験は必要だろうさ。けどな、コイツは仲間のもとへ帰りたがっているんだよ!あれを見ろ!」

 

遊来が指さした先にはサルの群れが集まっており、仲間を迎えに来た様子だ。だからこそ、遊来の怒りは凄まじい。彼は一方の利益の為に、一方を犠牲にしようとする事や理不尽が大嫌いなのだ。無論、今の姿では子供の駄々だと考えられてしまう。

 

「子供の駄々を聞いてる暇は無い!実験体は多いにこした事は無い!全て捕えろ!!」

 

「させ・・・っ!?」

 

遊来の後ろに待機していた幻影であるはずの赤いドラゴンが拳を握り込み、博士たちの目の前の地面を殴りつけ、まるで小型のミサイルが命中し爆撃のような跡がクッキリと出来上がっていた。

 

「な・・なななっ!」

 

「まだ、捕まえようとするなら・・・!」

 

「それには及ばないのですにゃ」

 

「「「「「大徳寺先生!!」」」」」

 

「事が公になれば、困るのは貴方の方ではないのかニャ?動物虐待で訴えられちゃいますよ?」

 

「う・・・ぐううう」

 

博士はこれ以上、反論できずサルを開放することになってしまった。遊来はサルに近づいてデュエルディスクを外そうとしたがサルに嫌がられた。

 

「キキッ!」

 

「え?デュエルディスクは外さなくていいのか?」

 

「ウキ」

 

「そっか、気に入ってる訳か。またな!」

 

「ウキー!ウキキ!!」

 

サルはルインに何かをジェスチャーで伝えると、仲間たちの元へと行き去っていった。

 

『あのサルがジェスチャーで伝えていたのはドラゴン。それに炎を示していた・・・どういう事でしょうか?先程の幻影と関係があるのかもしれませんが』

 

「それにしてもサルにデュエルを挑まれるとは思わなかった・・・」

 

「珍しい事で俺は羨ましいぜ」

 

「それにしても、貴方・・・返しのターンからのワンターンキルだなんて、熱意がないのに容赦ないわね?」

 

「ああ、パーツが揃っちゃったから」

 

「なるほど、そうだったのね」

 

明日香は自分とデュエルしたあの日よりも遊来の熱意が増していた事が、今回のデュエルで感じ取る事ができた。だが、彼の戦い方は徹底的に相手を倒すやり方だ。自分でも気が付かないうちにそれが身体に染み付いているようで、オベリスクブルーにおいてのワンキルデッキの件も含め、逆に明日香はどんな環境でデュエルすればワンターンキルを狙う戦略を身体に染み付くまでになったのかという疑問も浮かんで来ていた。

 

「それにしても、あのドラゴンは一体何だったッスか?」

 

「そういえば此処に、火薬を使ったような爆発の跡がありますわね?」

 

「あの赤いドラゴンが地面殴ったらそうなったんだよー」

 

「ふーむ、不思議な事もありますニャ」

 

その日は解散となったが、夜に大山に新しいデッキが完成したと報告を受け俺のおかげだと言われ、恥ずかしかったがお礼を言っておいた。

 

『マスター』

 

「ルイン?どうした?」

 

『マスターがデュエルをしたあのサル・・・遊来の背後に炎のように赤いドラゴンが居たと教えていてくれました。身振り手振りでしたけど』

 

「赤い、ドラゴン?」

 

『はい、詳細まではわかりませんが、地面を拳で殴りつけたのはその赤いドラゴンだと』

 

「赤いドラゴン・・・か」

 

俺はまさかと思う事が一つだけある。赤いドラゴン、それは前の世界でアニメとして観ていた同じ遊戯王でこの世界よりも遥かに未来の話である5Dsの話に出てくる赤き竜、ケツァルコアトルの事だ。だが、ケツァルコアトルはあくまでも力を引き出すきっかけが形となって現れているに過ぎない。そもそも、ケツァルコアトルに腕はあっても殴る事をしているのを見た事はない。

 

「もしかして・・・でも、考えても仕方ないか、寝よ」

 

『そうですね、休んだほうが良いかと』

 

精霊を含めた全員が就寝した後、遊来のシンクロモンスターのカードが赤く光っていた。その横では一枚のエクシーズモンスターのカードが黒く輝いており、互いのオーラがお互いに牽制しあっている。

 

これこそが、次なる戦いへの幕開けとなり、狼煙となる物であることを誰も知らない。




赤いドラゴン、遊来くんの怒りの象徴です。拳で殴るドラゴンはたくさん居ますからね。

次回は万丈目に触れていきます。

???「万丈目さんだ!」


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第18話

万丈目とデュエル

遊来の心の光の一角を担うシンクロモンスターを披露。


その日は何の変哲もなく過ごすはずだった。だが、あのSAL事件の時に万丈目がデュエルアカデミアから去って、その分校であるノース校で自らを鍛え直してくると宣言したそうだ。それを見届けたのは大徳寺先生であったらしく、本人の口からは鍛え直してくるとしか聞かされていないらしい。

 

「なぁ、遊来・・・万丈目の奴、大丈夫か?」

 

「さぁ?俺も同じ寮に居たけど交流が深かった訳じゃないし、デュエルもそこそこだったし」

 

「案外、遊来くんが原因かも知れないッス」

 

「ありえるんだな・・・」

 

「確かに」

 

「三人揃って酷いな!?」

 

思わず俺は言い返してしまったが、思い当たる節が一つだけあった。それは万丈目とフリーで戦った時だ、『ドラグニティ』での戦いを望まれ、戦ったが結果は圧倒的な展開力で簡単に終わってしまった。フリーである為、戦績には加算されず、カイザー亮の二代目は俺だと再戦を挑まれつつ、低攻撃力のデッキで戦えとハンディキャップを受けて、SALとのデュエルで使用したシンクロ召喚宣伝用の『シンクロン』デッキを使用して戦った。SALと時に使用したのは軽く調整し遊星のデッキに寄せたタイプだった。

 

[遊来のフィールド]

 

ライトロード・ハンター ライコウ ★2

 

ボルト・ヘッジホッグ ★2

 

ガントレット・ウォリアー ★3

 

アンノウン・シンクロン★1

 

「レベル2の『ライトロード・ハンター ライコウ』とレベル2の『ボルト・ヘッジホッグ』レベル3の『ガントレット・ウォリアー』にレベル1の『アンノウン・シンクロン』をチューニング!」

 

★2+★2+★3+★1=★8

 

ライトロード・ハンター ライコウ、ボルト・ヘッジホッグ、ガントレット・ウォリアーの三体がアンノウン・シンクロンが作り出した光の輪をくぐり抜け、8つの星の姿となり1つの光を作り出すと、そこから現れたのはボロボロの屑鉄や廃品などを利用して作り出された動くジャンク品。だが、魂は本物と遜色のない屑鉄のドラゴンだ。

 

 

「鋼鉄は砕けようと、その意志は滾らす熱となる!シンクロ召喚!起動せよ!『スクラップ・ドラゴン』」

 

「バカな!?あんな低レベルのザコ共がこんな姿に!?」

 

「レベルと攻撃力だけがモンスターの全てだと思うなよ?例え低レベルであろうと、チューナーと共にレベルという力を合わせる事でシンクロ召喚という大きな力になるんだ。更に『スクラップ・ドラゴン』は1ターンに1度、自分及び相手フィールドのカードを1枚ずつ対象として効果を発動し、そのカードを破壊する。俺の場にある伏せカードと万丈目!お前の場にある『火炎魔人 ヘル・バーナー』を選択して破壊する!ジャンク・ディストラクション!そして、『スクラップ・ドラゴン』の攻撃!!」

 

遊来が指を鳴らすと伏せカードへコードらしき物を接続し破壊した後、口の中にある電撃砲が輝きだし、万丈目のモンスターを電撃で破壊した。

 

「うあああっ!何故だ!『ドラグニティ』ならいざ知らず!何故、あんなザコを寄せ集めただけのデッキに俺様が負けるんだ!?」

 

「そんな一方的な考えをしているうちは『ドラグニティ』はおろか、俺の『シンクロン』デッキに届く事もないぞ?」

 

「何!?」

 

「攻撃力にこだわるなら、最低でも『一万』は叩き出してからにしてくれ。それと、例えどんなに弱くてもよーくカードを見てあげて欲しい」

 

「っ!!?」

 

この世界ではかなりの無茶振りに万丈目は驚愕した。攻撃力1万という数値は簡単に出せるものではない。だが、遊来自身は何度も経験していることだ。前の世界において攻撃力が5万、10万は当たり前でターンを渡したら負けるという環境にいた事もあった経験がある。だからこそ、相手をワンターンキルしてしまうデッキを構築することに戸惑いがない。このデッキにワンターンキルの要素があるのもそういった経験があった為であった。

 

「カードの数値だけを見ているのは俺のようなワンターンキルを狙うような奴だけでいい。そうじゃないなら自分が使って楽しいデッキを作るべきさ」

 

「・・・楽しいデッキ、あの十代のような真似をしろというのか!?」

 

「違う。万丈目が十代と同じ事をしても楽しくなる訳がない。万丈目には万丈目だけが楽しいと思えるデッキタイプが必ずあるはずだ。そもそも、どうしてVWXYZシリーズを使おうと思ったんだ?」

 

「それは、相手の場を圧倒的に破壊できるからだ!」

 

「ほら、それが好きなんだろ?圧倒的に相手へダメージを与えたい、相手の有利になるカードを除去したい、すぐに強力なモンスターを出したい、そんな気持ちが形になったデッキじゃないのかい?」

 

「っ・・・お前に何がわかる!お前には一歩先へ行く召喚方法があるだろう!!」

 

確かに万丈目の言うとおり、俺はシンクロ召喚という一歩先へゆく召喚方法を使っている。それは卑怯とも取られるかもしれないだろうな。

 

「一歩先へ行く召喚方法使っていたとしても、負けるときは負けるさ。俺は『ドラグニティ』で十代や隼人、翔にだって負けた事がある」

 

「何!?」

 

「『ドラグニティ』は無敵じゃないんだよ。たった一枚のカードに封じ込まれてしまう時もあるし、フィールド魔法の恩恵を受けなきゃ展開を立て直すことだって難しい」

 

「それは・・・」

 

万丈目も頭では理解していた。遊来の代名詞である『ドラグニティ』は『竜の渓谷』というフィールド魔法の起点が無ければ圧倒的な展開をしてこない。更にはシンクロ召喚の弱点も遊来は自ら晒しており、そこを突かれても逆転できる手段を考えて突破する事もデュエルモンスターズの醍醐味だ。

 

「上を見るばかりじゃなく、自分の基盤や信念を見つめ直すのも良いんじゃないかな?」

 

「自分の・・・基盤と・・信念」

 

「それを見つめ直した万丈目と俺は全力でデュエルしたいな。その舞台にふさわしいモンスターを使って」

 

「っ・・・」

 

その後、『スクラップドラゴン』の攻撃によってフリー対戦は終わった。万丈目は悔しそうにしていたが思うところがあったらしく、取り巻きを見向きもせず戻って行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

「確かに俺が原因だったのかも・・・・」

 

回想していた中で自分が原因だった事を思い返して、遊来は居た堪れない気持ちになったのだった。

 

そして、代表試合当日。遊来はデッキを大山との戦いで使った『M・HERO』デッキをデュエルディスクに装着している。本当なら『ドラグニティ』や『ルイン』などを使うべきなのだが、十代と代表を決める戦いにおいて勝利した後に放送を終えたラ○ダーが主役を次のラ○ダーへ任せるようなハイタッチをしてきたのだ。

 

「遊来、俺の分も戦ってきてくれよな!」

 

こんな事をされたんじゃHEROを使わざるを得ない。十代のヒーローから俺のヒーローへとデュエルの舞台を任せられたのだから。本来なら十代とのタッグ用に組んだデッキだったのだが、シングルへの出張が多くなってしまった。無論、シンクロ召喚の要素はしっかり組み込んでいる。

 

「それデーワ!デュエルアカデミア!本校とノース校の対抗試合を開始するノーネ!」

 

「ふん、やはり貴様か!」

 

「まぁ、皆でデュエルして代表を決めた訳だから」

 

「そうか、それで貴様は『ドラグニティ』で来るのか?」

 

「いや、『ドラグニティ』は今、調整中でね。それでも『ドラグニティ』に匹敵するデッキにしてあるさ。俺は『ドラグニティ』の頻度が高いだけで他のデッキを疎かにはしない」

 

「何!?貴様、俺との勝負でシンクロ召喚を使わないという事か!?」

 

「いや、このデッキにはシンクロ召喚のギミックは組み入れてある。心配しなくていい」

 

シンクロ召喚のギミックを組み入れていると聞いて、万丈目はそれで良いといった感じの笑みを顔に出している。

 

「万丈目、この戦いはフリーじゃない。戦績に加算される。それに周りのこの騒ぎようはなんだ?」

 

「兄さん達がテレビ局を呼んだんだ・・・全国放送のな」

 

周りを見ると万丈目に声をかけている2人の男性がいた。あれが万丈目の兄達なのだろう、決して負けるなと言っているようで万丈目はプレッシャーを感じているように見える。

 

「この戦い、負ける訳にはいかん!」

 

「それは俺も同じ、戦うからには勝利をもぎ取る!」

 

二人はデュエルディスクを構えて起動する。瞬間、自然と周りが一瞬だけ静まり返った。

 

 

「「デュエル!」」

 

 

万丈目準:LP4000

 

龍谷遊来:LP4000

 

 

「俺の先攻だ!ドロー!」

 

遊来の先攻でデュエルが始まった。ノース校の生徒達は「サンダー!サンダー!!」と喝采を上げている。

 

[通常ドローカード]

 

※E・HERO レディ・オブ・ファイア

 

[現在の手札6枚]

 

※融合

※デルタフライ

※E・HERO エアーマン

※E・HERO リキッドマン

※ヒーロー・シグナル

※E・HERO レディ・オブ・ファイア

 

「俺はモンスターを1体セット、カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

「俺様のターン、ドロー!貴様、愚弄しているのか!?」

 

「違う、この方法でしか動けないんだよ。今のところな」

 

「ふん!俺様は『仮面竜 (マスクド・ドラゴン) 』を攻撃表示で召喚!」

 

『仮面竜 (マスクド・ドラゴン) 』効果モンスター/星3/炎属性/ドラゴン族/攻攻撃力1400/守備力1100

 

「!?ドラゴン族リクルーター!?」

 

「ほう?知識はあるようだな?『仮面竜 (マスクド・ドラゴン) 』でセットモンスターを攻撃!」

 

攻撃の瞬間、遊来のセットモンスターが反転し、その姿を見せる。そのモンスターに万丈目は驚きの顔と声を上げた。

 

「俺がセットしたモンスターは『E・HERO レディ・オブ・ファイア』!攻撃によって破壊され、墓地へ送られる!この瞬間、罠カード発動!『ヒーロー・シグナル』!!このカードの効果で俺はデッキから『E・HERO シャドー・ミスト』を守備表示で特殊召喚!更に『シャドー・ミスト』の効果!このカードが特殊召喚に成功した時、デッキから『チェンジ』速攻魔法を手札に加える!俺は『マスク・チェンジ』を手札に加える!」

 

「え、『E・HERO』だと!?」

 

「そうだ。この代表戦の前に十代と俺が選ばれて、非公式で二人だけの代表者を決める戦いをしたんだ。結果は見ての通り俺が勝った。同時に十代は自分の分も戦ってきてくれと言ってきた。その思いを受け継いだのが俺の『E・HERO』なんだ」

 

「・・・・」

 

「だから、このデッキを使っているのさ。だが正直、今の万丈目は初めて出会った時以上に強く感じる」

 

「当たり前だ。俺は地に堕ちつつも己を見つめ直したのだからな!俺はカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

[通常ドローカード]

 

※マスク・チャージ

 

[現在の手札6枚]

 

※融合

※デルタフライ

※E・HERO エアーマン

※E・HERO リキッドマン

※マスク・チャージ

※マスク・チェンジ

 

「俺はさらにカードを1枚伏せて『E・HERO エアーマン』を召喚!」

 

「エアーマンだと!?」

 

「エアーマンの効果!このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、以下の効果から1つを選択して発動できる。このカード以外の自分フィールドの「HERO」モンスターの数まで、フィールドの魔法・罠カードを選んで破壊するか、デッキから「HERO」モンスター1体を手札に加える。俺はデッキから「HERO」モンスター『E・HERO ブレイズマン』を手札に加える!そして、エアーマンで仮面竜 (マスクド・ドラゴン)を攻撃!」

 

エアーマンが突進し、仮面竜 (マスクド・ドラゴン)が殴り飛ばされ破壊されるが、遊来は渋い顔をしている。

 

万丈目準:LP3600

 

「ぐううう!だが、狙い通り!と言いたい所だが、貴様はこのカードの知識があるのだろう?」

 

「仮面竜 (マスクド・ドラゴン)は戦闘で破壊され、墓地へ送られた時に効果を発動できデッキから攻撃力1500以下のドラゴン族モンスター1体を特殊召喚する・・・だろ?」

 

「その通り!俺はデッキから『アームド・ドラゴンLV3』を特殊召喚!現れろ!レベル3!!」

 

『アームド・ドラゴンLV3』効果/星3/風属性/ドラゴン族/攻撃力1200/守備力900

 

「くっ・・・!」

 

考える限り最悪の状況だと、遊来は苦虫を潰したような顔をする。『アームド・ドラゴンLV3』の効果は自分のフィールド上にある『アームド・ドラゴンLV3』を自分のスタンバイフェイズ時に墓地へ送る事で『アームド・ドラゴンLV5』を特殊召喚出来るのだ。今は自分のターン。万丈目からすれば相手モンスターが1体しかおらず、バトルフェイズは既に終了も同然の状態、更には相手のターンで召喚出来ており、レベルアップの条件も達成出来ている事を鑑みれば圧倒的なボードアドバンテージだ。

 

「俺に出来る事はない、ターンエンド・・・」

 

「俺のターン、ドロー!どうやら状況が解りきっているようだな?」

 

「分かってて言ってるだろ?それ」

 

「当然だ、このスタンバイフェイズ時に俺はフィールドの『アームド・ドラゴンLV3』を墓地へ送り、『アームド・ドラゴンLV5』を特殊召喚!」

 

遊来は余りにも理想的すぎる『アームド・ドラゴンLV5』の呼び出しに万丈目へ尊敬の念を持った。自分の前の世界では扱いにくさから敬遠される事が多く、愛用している人間は少なかった。自分が今使用しているシンクロ召喚が出てきた頃には、見向きもされなくなっていった。

 

こんなにもイキイキとしている『アームド・ドラゴン』を見た事はなかった。後にパワーアップし別の名称となっていたのは知っているが今明かすべきじゃない。

 

「『アームド・ドラゴンLV5』の特殊効果発動!手札からモンスター1体を墓地へ送り、そのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。この効果を発動するために墓地へ送ったモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ、その相手モンスターを破壊する!『Z-メタル・キャタピラー』を手札から墓地へ送り、キサマの場に居る『E・HERO シャドー・ミスト』を破壊する!『デストロイド・パイル』!!」

 

『アームド・ドラゴンLV5』の背中から無数のトゲのようなミサイルが発射され、雨のように無数のトゲミサイルを受けた『E・HERO シャドー・ミスト』は声を上げながら破壊されてしまう。

 

「この瞬間『E・HERO シャドー・ミスト』の効果発動!このカードが墓地へ送られた時に発動!デッキから『E・HERO シャドー・ミスト』以外の『HERO』モンスター1体を手札に加える!俺は『E・HERO オーシャン』をデッキから手札に加える!」

 

「タダではやられんという訳か、そのしぶとさは十代並だな!だが!俺にはまだ『アームド・ドラゴンLV5』の攻撃が残っている!『アームド・ドラゴンLV5』!『E・HERO エアーマン』を攻撃!「アームド・バスター」!!」

 

『アームド・ドラゴンLV5』が腕を準備運動のようにグルグルと回した後、『アームド・ドラゴンLV5』はその太い腕で『E・HERO エアーマン』を殴り飛ばし、破壊してしまった。

 

「うああああ!」

 

龍谷遊来:LP3400

 

吹き飛ばされた遊来は立ち上がると、その顔には笑みが浮かんでいる。蔑みでも侮っているのでもない純粋にデュエルが楽しい、そんな笑みだ。こんな高揚は初めて十代やカイザーとデュエルして以来だと。他のデュエリストとのデュエルでも確かに高揚していた。侮ってはいなかったが流れ作業のようになっていて興奮は高まらなかったのだ。

 

「遊来くんが・・・笑ってる?」

 

「遊来、楽しそうにデュエルしてるみたいだ!くぅ~!羨ましいぜ!」

 

「あの遊来が・・・デュエル中に笑うなんて亮とのデュエル以来じゃないかしら?」

 

「確かに、その通りだな」

 

「うん、遊来は真剣な表情をしていても何処か作業しているようなデュエルばかりだったんだな」

 

「確かに、硬い印象が強かったな」

 

上から翔、十代、明日香、亮、隼人、三沢、それぞれが遊来の変化に気付いた。最も気付きに早かったのは作業的な印象を初めに持った明日香であったが、女性に多い感受性の柔軟さが彼の心境を知らせてくれたのだろう。

 

「更に『アームド・ドラゴンLV5』が戦闘でモンスターを破壊した事によって更なるレベルが上がる!いでよ!『アームド・ドラゴンLV7』!!」

 

『アームド・ドラゴンLV7』特殊召喚・効果/星7/風属性/ドラゴン族/攻撃力2800/守備力1000

 

「すごい・・・!」

 

ゾクゾクとした感覚が俺の中に走っている。『アームド・ドラゴンLV7』召喚条件を満たし正規召喚してきた万丈目のタクティクスのスキル、そしてイキイキとフィールドに立つその姿。圧倒されつつも興奮を抑えきれない、十代じゃないがこんなにもワクワクする気持ちをデュエル中に抱いたのはいつ以来だったろうか?十代やカイザーとの戦いとはまた別の感覚だ。プレッシャーに負けず己に自信を持って場にカードを出してくる万丈目に尊敬の念がますます強まる。また、ノース校の生徒達は象徴である『アームド・ドラゴンLV7』が召喚された事で激しくサンダーコールを行っている。

 

「感心している場合か?お前の場はガラ空き、次のターンで確実に崖っぷちなんだぞ!」

 

「分かってる!分かってるけど抑えられないんだ・・・!」

 

「何!?」

 

遊来は己の左腕を掴むと震えだす、恐れではない武者震いというやつだ。余りにも興奮しすぎて気持ちが抑えきれていないのだろう。

 

「十代の楽しさを追求したデュエル、カイザーの圧倒的なパワーデュエル、明日香の堅実なデュエル、隼人のお気に入りのカードで戦うデュエル、翔の戦いで成長するデュエル、三沢の計算に基づくデュエル、そして万丈目のあらゆるカードを使いこなすデュエル。この学園にあるたくさんのデュエル!こんなにも興奮するデュエルが他にあるかよ!楽しくて楽しくて!興奮が抑えられないんだよー!!!」

 

それは相手への最大の賛辞だった。今まで互いにライフを削るという鎬を削った戦いがなかったのだ。だからこそ、興奮が収まらない。

 

「万丈目、俺の最大の賛辞をシンクロ召喚で見せる!」

 

「良いだろう、見せてみろ!ターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

[通常ドローカード]

 

※取捨蘇生

 

[現在の手札7枚]

 

※融合

※デルタフライ

※E・HERO ブレイズマン

※E・HERO リキッドマン

※マスク・チャージ

※E・HERO オーシャン

※取捨蘇生

 

「俺は手札から魔法カード!『取捨蘇生』を発動!」

 

「『取捨蘇生』?『死者蘇生』ではないのか!?」

 

「ああ、似ているが全く別のカードさ。『取捨蘇生』のカードは1ターンに1枚しか発動できない。そして、自分の墓地のモンスター3体を対象として発動できる。相手は対象のモンスターの中から1体を選ぶ。そのモンスター1体を自分フィールドに特殊召喚し、残りのモンスターは全て除外する。俺が選ぶのはこの3人の『HERO』達だ!!」

 

表示されたのは『E・HERO エアーマン』『E・HERO レディ・オブ・ファイア』『E・HERO シャドー・ミスト』の3体だ。

 

「む、俺が破壊したモンスターどもか」

 

「さぁ、どれを選ぶ!?」

 

遊来の表情に迷いはない。どれを選ぼうとレベルが全て4という事が遊来にとって最も重要だからだ。万丈目も自分の中で思考する。『E・HERO シャドー・ミスト』は論外だ。特殊召喚された瞬間に魔法をサーチされ、更に破壊すれば『HERO』をサーチされてしまう。同じ理由でサーチ能力を持つ『E・HERO エアーマン』も無い。万丈目はあるカードを指差しで指定する。

 

「俺は『E・HERO レディ・オブ・ファイア』を指定する!!」

 

「『取捨蘇生』の効果で『E・HERO レディ・オブ・ファイア』を特殊召喚!他の2体はゲームから除外される」

 

万丈目は遊来の自信のある目を警戒していた。サーチ能力を持つ2体を失ったというのにまるで応えていない。一体、この状況でシンクロ召喚をして来ると宣言していたが、どうやってするというのかと考える。

 

「更に俺は『デルタフライ』を通常召喚!」

 

「『デルタフライ』だと!?」

 

「シンクロ召喚が実用化されれば、きっと万丈目は喉から手が出るほど欲しくなるカードさ。『デルタフライ』の特殊効果発動!このカードは1ターンに1度、このカード以外の自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターを一体選択し、そのモンスターのレベルを1つ上げる事ができる!更にこのモンスターはチューナーモンスターだ!俺は『E・HERO レディ・オブ・ファイア』のレベルを1つ上げる!」

 

「なんだと!?レベルを変更させる効果を持つチューナーモンスターだと!?」

 

『E・HERO レディ・オブ・ファイア』★4→★5

 

「レベル5となった『E・HERO レディ・オブ・ファイア』にレベル3の『デルタフライ』をチューニング!!」

 

『デルタフライ』が3つの光の輪となり、その中を『E・HERO レディ・オブ・ファイア』が通り抜ける。その光の星が指し示す数字は8だ。遊来は目を閉じて彼の背中をイメージする。自分の前の世界ではアニメの登場人物、この世界では遥かな未来の人間であり、最も絆を重んじた彼の姿を。そして遊来の心の中に僅かな暖かさが宿った。

 

★5+★3=★8

 

「(また口上、使わせてもらうよ。遊星!)集いし願いが新たに輝く星となる。光射す道となれ!シンクロ召喚!飛翔せよ!!『スターダスト・ドラゴン』!!」

 

『スターダスト・ドラゴン』シンクロ・効果/星8/風属性/ドラゴン族/攻撃力2500/守備力2000

 

その気高き鳴き声と星の輝きのような光に誰もが目を奪われ、誰もが無言となった。遊来にとっては自分の前の世界から持ち込んだカードに過ぎないがこの世界からすれば驚愕の1枚にほかならない。

 

「なんだ・・・このドラゴンは!?」

 

「これがシンクロ召喚で呼ばれるドラゴンの中で守りに特化した竜『スターダスト・ドラゴン』だ!」

 

「星屑の竜か・・・!だが、俺の『アームド・ドラゴンLV7』には及んでいないぞ!」

 

「ああ、攻撃は出来ない。ターンエンドだ」

 

仮に融合を使ったとしても『アームド・ドラゴンLV7』に勝てるカードはない。このターンエンド宣言によって本校側はもうダメかといった雰囲気だ。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

先程は及んでいないと啖呵を切ったが、万丈目は強く警戒していた。かつての遊来とのフリーデュエルでの言葉が頭をよぎっている為であった。カードをよく見ろ、攻撃力・守備力だけが全てではないと。

 

「だが、俺は迷わん!カードを1枚伏せ『アームド・ドラゴンLV7』の特殊効果を発動!手札の『闇よりいでし絶望』を手札から墓地へ送り『スターダスト・ドラゴン』を破壊する!『ジェノサイド・カッター』!!」

 

「この瞬間を待っていた!『スターダスト・ドラゴン』の効果発動!フィールドのカードを破壊する魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、このカードを生贄にして発動できる!その発動を無効にし破壊する!!『ヴィクテム・サンクチュアリ』!!」

 

「な、何ぃ!?」

 

『スターダスト・ドラゴン』が自らを輝かせ光となり、『アームド・ドラゴンLV7』の爪のような衝撃波が、かき消され共に対消滅するかのように消えていった。お互いの場がガラ空きとなったが、遊来は警戒を解かない。あの1枚の伏せカードが気になるからだ。

 

「くうう!俺はモンスターをセットし、ターンエンドだ」

 

「墓地に眠っている『スターダスト・ドラゴン』の効果を発動!最初の効果を適用したターンのエンドフェイズに発動できる。その効果を発動するために生贄にしたこのカードを墓地から特殊召喚する!墓地より再び飛翔せよ!!『スターダスト・ドラゴン』!!』」

 

「なっ、なんだと!?」

 

『スターダスト・ドラゴン』が再びフィールドに舞い戻った事で学園側が再び歓声を上げた。そんな中、遊来と交流の深い6人は驚きを隠せずにいた。

 

「相手の破壊効果を無効にし破壊した上に、その効果を発動したエンドフェイズに自身を特殊召喚してくるシンクロモンスター・・・」

 

「フィールド上の破壊効果に対する限定のようだが、それでも強力な効果だ」

 

「あれが遊来の『ドラグニティ』以外でのシンクロ召喚の主力なのか?すっげえぜ・・・」

 

「あのカードが場に出ている限り、相手はフィールド上のカードを迂闊に破壊できないのね・・・ガラ空きだとしても自分を守ってしまえば再び蘇ってくる」

 

「更に攻撃力2500、並みのモンスターじゃ太刀打ちできないんだな・・・」

 

「あの効果を使う限り場に戻ってくるなんて・・・強すぎるッス」

 

それぞれが『スターダスト・ドラゴン』の強さを口にしているが、このカードはなんの力もないただのカード(・・・・・・)に過ぎないのだ。精霊の力を持つ十代が見れば分かるのだが、そんな余裕が無くなっているのだろう。

 

「(あの伏せカードは蘇生系のカードじゃなかったか)俺のターン、ドロー!」

 

[通常ドローカード]

 

※E・HERO ボルテック

 

[現在の手札6枚]

 

※融合

※E・HERO ブレイズマン

※E・HERO リキッドマン

※マスク・チャージ

※E・HERO オーシャン

※E・HERO ボルテック

 

「俺は手札から『融合』を発動!『E・HERO ブレイズマン』と『E・HERO リキッドマン』を融合させる!!」

 

融合の渦によって赤い仮面の戦士と青い仮面の戦士が1つとなって、姿を変えていく。肩のアーマーは炎を体現するような鋭角的で赤く、その後ろにはマントを靡かせている。

 

「来い!炎の力を持つヒーロー!『E・HERO ノヴァマスター』!!更にリキッドマンの効果によってカードを2枚ドローし、1枚を墓地へ送る」

 

[カード効果でのドロー]

 

※リビングデッドの呼び声

※E・HERO シャドー・ミスト

 

「ノヴァマスターだと!?」

 

『E・HERO ノヴァマスター』がフィールドに現れ、興奮の最高潮に達したのが十代だった。

 

「うおおおお!あれは俺も使ったヒーローだ!」

 

「あのカードの攻撃力は2600、上級クラスの攻撃力なんだな」

 

「手札のカードを一枚捨て、バトルフェイズ!ノヴァマスター!セットモンスターに攻撃!!」

 

「くっ!セットモンスターは『Xーヘッド・キャノン』だ!」

 

「ノヴァマスターの効果、相手モンスターを戦闘で破壊した時カードを1枚ドロー出来る!」

 

[カード効果でのドロー]

 

※V・HERO ヴァイオン

 

「更に『スターダスト・ドラゴン』のダイレクトアタック!『シューティング・ソニック』!!」

 

「うあああああ!」

 

万丈目準:LP1100

 

「モンスターを1体、セットしてターンエンド」

 

「おのれ、俺のターン、ドロー!」

 

追い詰められた万丈目は焦りを見せ始めていた。遊来の場には破壊効果を無効化しそのカードを破壊すると同時にエンドフェイズに蘇ってくる『スターダスト・ドラゴン』その『スターダスト・ドラゴン』の攻撃力を僅かに上回る『ノヴァマスター』の2体がいる。だが、遊来に手加減する様子はない。これはエンターテインメントではなく学園同士の代表戦、相手を倒さなければ意味がないのだ。尊敬しているからこそ手加減は最大の侮辱、そういう考えを遊来は持っている。

 

「ぐ、ううう!」

 

「・・・」

 

遊来は会場を見渡し、万丈目に厳しい視線を送っている人間を見つけた。あれが万丈目の兄達だろう、優しさは微塵もない、まるで見下すかのような視線を向けている。

 

「万丈目・・・悪いが俺は勝利を譲るほど優しくはない。けれど、お前を縛っているモノを壊すことは出来る!」

 

「何を言っている?」

 

「このデュエル、次の俺のターンで決着をつける」

 

「何!?」

 

遊来の雰囲気が変わった事を万丈目は肌で感じとった。この雰囲気はあの時と似ていた、そう彼の制裁デュエルで未知の召喚方法を使ってきたあの時と。

 

「俺はカードもう1枚伏せ、モンスターをセットしターンエンド!」

 

「俺のターン、ドロー」

 

[通常ドローカード]

 

※ナイト・ショット

 

[現在の手札6枚]

 

※マスク・チャージ

※E・HERO オーシャン

※リビングデッドの呼び声

※E・HERO シャドー・ミスト

※V・HERO ヴァイオン

※ナイト・ショット

 

「俺は手札から魔法カード『ナイト・ショット』を発動!このカードは相手フィールドにセットされた魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。セットされたそのカードを破壊する。そして、このカードの発動に対して相手は対象のカードを発動できない!!先程、万丈目が伏せたカードを破壊する!」

 

「っ・・・俺の、負けか」

 

「伏せていたのは『次元幽閉』か。確かにそのカードなら攻撃した『スターダスト・ドラゴン』を除去できたな」

 

「所詮、過程に過ぎん・・・さぁ、来い!」

 

「万丈目、お前の鎖を打ち砕く!ノヴァマスター、セットモンスターへ!スターダスト!プレイヤーへダイレクトアタックだ!プロミネンス・ソニック!!」

 

万丈目準:LP0

 

全国放送であったため、万丈目が負けた瞬間映像が切り替わってしまったがテレビを通じて通行人達は2人のデュエルに対して拍手を贈っていた。その賞賛が2人へ届く事を願って。

 

 

 

 

負けた万丈目のもとへ彼の兄である二人が近づいてくる。長作と正司だ。負けた事が恥であり、見下し蔑むような目で万丈目を見ている。遊来は嫌な予感を感じ、コッソリ記録装置にもなるデュエルディスクの録音をオンにした。これは彼が本土で頼んだ機能だ。

 

「準!!キサマ、何をやっているんだ!?自分のやった事が分かっているのか!?」

 

「万丈目一族に泥を塗りおって!!」

 

「すまない、兄さん達・・・」

 

次々に万丈目へ与えられる暴言、殴りはしないまでも暴力を行っている現場に遊来は我慢の限界を迎え近づいていった。その顔は冷静なまま怒っているのが見て取れる。

 

「その辺にしておいたらどうです?エリートのお二人」

 

「なんだ、お前は!?」

 

「部外者は引っ込んでいてもらおうか!これは万丈目一族の問題だ!」

 

「そうはいきませんよ、この戦いの舞台で戦ったのは俺とそこにいる貴方達の弟さんだ。例え敗者になったとしても応援するならまだしも、彼が罵倒され暴力を受ける筋合いはない!!それが仮に家族であったとしてもだ!!」

 

「我々は途中過程などに興味はない・・・結果を問題にしているのだ!」

 

「そうネ、そうネ・・・結果は大事ナノーネ。でも、なんか癪に障るノーネ」

 

「我々兄弟にとって、重要なのは結果だ。結果こそ全て、勝利こそが全てなのだ!!大体、このデュエルの為にどれだけの金を注ぎ込んだと思っているのだ!」

 

「コイツは我々の顔に泥を塗ったのだ!!」

 

その言葉を聞いた瞬間、遊来の琴線に触れてしまった。彼は権力や金に物を言わせる輩が前の世界にいた時から大嫌いだった。無論、そのような立場に居る人間すべてが悪い訳ではないがそれでも自分の中だけでは大嫌いだという事が拭えなかった。

 

「あーあ、権力を持っている人間が一番言ったらいけない言葉を言ってるなぁ・・・」

 

「なんだと!?」

 

「貴方達、デュエルモンスターズの勝率って知ってますか?」

 

「何!?」

 

「答えてください」

 

「知らん!勝率など!」

 

「一般的なデュエル・・・つまりプロリーグを抜いたデュエルでは、どんなに頑張っても『6割』なんですよ。最高の勝率はね」

 

「な・・・に?」

 

「手札事故、デッキが回らない、望んだ逆転のカードが引けない、相手が好調、時の運、ゲームの流れ、その全てを考慮に入れても『6割』なんです。常勝無敗なんて絶対的に無理なんですよ、神様なら別かもしれませんがね。それに結果は確かに大切なのは理解できます」

 

遊来は3人に近づくと更に質問を重ねる。顔を見て何かを思い出そうとしているようで、次の瞬間には思い出したようにヒゲが特徴的な方の長作を見る。

 

「貴方、確か政治家でしたよね?選挙で選ばれるには人望が必要なの分かっていますよね?」

 

「当然だ!」

 

「なら、ノース校の応援席を見てみてください」

 

「何!?」

 

長作が視線を向けるとノース校の生徒達が涙を流しながらサンダーこと、万丈目準へ賞賛と激励を贈っていた。

 

「「「万丈目サンダー!!よくやったぞ!!流石はサンダーだ!!」」」

 

「「「万丈目サンダー!!サンダー!!サンダー!!サンダー!!」」」

 

「な、なんだこれは!?」

 

「これが貴方達が落ちこぼれと馬鹿にしている弟さんの人望です。挫折で一度は誰もが底辺と呼ばれる場所に落ちる。それを這い上がってまで上を目指す心構えがあったからこそ、此処までの人望を集めた。これだけの人数の人望を貴方に集められますか?もしこれが仮に選挙だったりしたら、敗北するのは確実に貴方ですよ?」

 

「ぐっ・・・」

 

「あ、兄者・・・」

 

「そちらのエリート社員っぽい方、貴方もですよ」

 

「なっ・・・!」

 

「優秀だと認められたから役職に付いたんでしょう?初めはただの平社員から始まってエリートになった、違いますか?誰もが最初からエリートの道を用意されている訳がない!」

 

「うっ・・・」

 

「だから・・・っ!?」

 

言いかけたところで肩を掴まれて阻まれたがそれを受け入れる。遊来の言葉を止めたのは万丈目本人だった為だ。

 

「もういい・・・これ以上、俺を惨めにさせないでくれ・・・」

 

「万丈目・・・」

 

遊来はその言葉を聞いて出しゃばってしまった自分を恥じた。確かに万丈目からすれば兄弟として、更には家族としての問題だ。それを他人である遊来が出しゃばってしまったことで自分では解決できなかったと思ってしまうだろう。

 

その心境を理解して引くべき時に引かなかった遊来は、万丈目のプライドをひどく傷つけていたのだ。

 

「準」

 

「兄さん達・・・帰ってくれ!」

 

「「「そうだ!帰れ!帰れ!!」」」

 

遊来と万丈目のデュエルを見ていた本校の生徒達が騒ぎ始め、万丈目の兄達である長作と正司は圧倒され居心地が悪くなったのか、退散していった。

 

「見損なったぞ準!行くぞ正司!!」

 

その後、港ではノース校の見送りと表彰式が行われていたが、遊来は嫌な予感して一足先にオベリスクブルーの自室に避難していた。

 

「なんだろう・・・万丈目とのデュエルで殻を破ったような気がする」

 

『マスター、いえ・・・遊来も成長したという事でしょうね』

 

「ルイン・・・」

 

『マスターは相手に対して遠慮がちな所と楽しもうとする姿勢がなかったからねぇ・・・』

 

「レヴァティン・・・」

 

『マスター・・・これから・・変わっていく』

 

「幽鬼・・・」

 

『幽鬼ちゃんだけじゃないです』

 

『私達も・・・』

 

『成長していきますのよ』

 

『そーそー』

 

『だから、歩んで行きましょうね』

 

『幽鬼うさぎ』を筆頭に妖怪少女達も遊来の上で浮かびながら声をかけてくる。礼を言おうとした瞬間、ドアがノックされ思わず返事をする。

 

「誰だ?」

 

「俺だ、お邪魔するぞ」

 

「入っていいと言ってないのに入るか?普通」

 

「ふん、別にかまわんだろう?」

 

そう言って部屋に来たのは万丈目であった。許可する前に入ってきたのでやれやれと言いたげだったが遊来はその前に万丈目に謝った。

 

「ごめん、万丈目。お兄さん達に出しゃばった事を言って」

 

「その事ならもういい、それよりも俺のデッキを診断してくれ」

 

「はい?」

 

意外すぎる言葉に遊来はキョトンとしてしまった。なぜ自分にデッキ診断を?という疑問が浮かんできてしまう。

 

「あの前田隼人のデッキを強化したのはお前だろう?あのデッキは並みのデッキを食ってしまうレベルだったぞ!?」

 

「あー、対戦したんだ。それで?なぜ俺にデッキ診断を?」

 

「前田隼人に聞いたからだ。さぁ、診断しろ!」

 

「分かった分かった」

 

『ふふ、面白い方ですね』

 

「え?」

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「一言聞いておく、お前このザコが見えるか?」

 

『ザコだなんてヒドイじゃないのよ~』

 

「お『おジャマ・イエロー』!?」

 

遊来の反応に万丈目と『おジャマ・イエロー』が反応を示す。それと同時に『おジャマ・イエロー』が遊来の後ろに居る2人に驚愕の反応を示した。

 

『いやあああ!破滅の女神であるルイン様!それに伝説の竜の騎士『ドラグニティ』のレヴァティン様までいるじゃないのよォォ!?』

 

「何!?やはり『破滅の女神ルイン』とドラゴンの戦士は見間違いではなかったのか!」

 

『あれ?この男、精霊付きか。しかも俺達の事が見えてる』

 

『仮にも私達は上位の精霊ですからね、見える人には簡単に見えてしまうでしょう』

 

「あー、精霊の事は見える人同士の秘密って事で」

 

「な・・・・」

 

「ん?」

 

万丈目がうがーと言いたげに両腕を上に上げると大声で叫びだした。

 

「納得がいかーん!何故、お前がそんな上等な精霊なんだー!」

 

『ひどいじゃないのよ~』

 

「こればっかりは縁なんだから仕方ないだろー!それよりも、デッキ診断じゃないのか!?」

 

「む・・・そうだったな」

 

万丈目の愛用のデッキを渡され、広げてみるが遊来はその構築に驚愕する。なぜなら三つのパターンが組み込まれていたからだ。

 

「アームド・ドラゴン、おジャマ、VWXYZの混合って・・・しかも、おジャマのパーツが全然揃ってないし」

 

「何か問題あるか?」

 

「いや・・・別に(逆にコレを回せる技量が凄すぎるっての!十代とは別の意味で引くわ!)」

 

「俺からの提案だけど、おジャマの妨害を活かしつつアームド・ドラゴンかVWXYZ、どちらかに絞って2種類の混合の方が良いと思うよ?」

 

「それだとあらゆる手段に対抗できないだろう!?」

 

「いやいや、逆にもっと回るようにした方が強いって!!」

 

OCG出身の遊来からすれば万丈目も十代とは違った非常識の塊だ。本来、三種混合型のデッキは回るどころか事故を起こす可能性の方が最も高く、それを平気で回せるのが驚きしかない。

 

デッキ診断は深夜まで続き、おジャマが揃うまでアームド・ドラゴンとVWXYZの混合型で使うそうだ。おジャマは要が揃って居ないので仕方がないだろう。俺も持っていない事はないが精霊付きではないために意味がない。

 

ガード・ブロックや奈落などのカードも渡したりしたが、アームド・ドラゴン・サンダーはまだ早いと考え、渡すのは止めておいた。

 

その後は礼を言われたが、後のデュエルでまたカードをよこせと言われるのを遊来は思いもしなかった。




三種混合型って理想的ですが現実で回せる事ってほとんど無いですよね。高確率で事故りますから。

次回から1話だけ本土での話を挟んだ後、セブンスターズの序章へ入ります。


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間話 子供達の憧れ

エンターテインメント用の装置の開発。



校長経由で本土の海馬コーポレーションに来るよう言われた遊来。オーナー権限というやつで彼自身もお世話になっている為、断る事はできなかった。

 

久々に本土にへ戻ると同時に黒塗りの高級リムジンのような車に乗せられ、海馬コーポレーション本社へと直ぐに向かう事になる手筈が整えられていた。

 

「ふぅん・・・久々の顔だと言っておこうか」

 

「お久しぶりです、瀬人さん。それで俺が呼ばれた理由は?」

 

「その資料を見ろ」

 

「?」

 

手渡された資料に目を通すとデュエルディスクの拡張機能を開発する計画書のようだ。特にデュエルディスクに手が届かない子供達に対する物とエンターテインメントに関するものだ。

 

「拡張機能・・・ですか?それに簡易なデュエルディスクを開発するとも」

 

「そうだ。モクバがわざわざ一般家庭のリサーチまで行ってくれたおかげで普及率のデータが取れたのだ。その結果、数字が芳しくない」

 

「確かにデュエルディスクは高級品で、一般には広まりにくいですよね。親御さんがお金持ちか、大きな大会で入賞するか、デュエルアカデミアに進学でもしない限り手には入りません」

 

「そこで、幼年の子供達にも扱いやすい簡易デュエルディスクを開発するプロジェクトを立ち上げた。更にはソリッドヴィジョンを使ったエンターテインメント用の趣向も開発するつもりだ」

 

「趣向?」

 

「ソリッドヴィジョンを利用した変身だ」

 

「瀬人さん、そういったものは嫌っていたんじゃ・・・?」

 

そんなことを口にすると同時に扉が開き、そこから一人の少年が入ってきた。海馬瀬人の唯一の肉親であり弟で海馬コーポレーション副社長である海馬モクバである。

 

「兄サマ!デュエルディスクの一般普及率の正確なデータと子供達からの要望のまとめが終わった・・・遊来?来てたのか!」

 

「開発協力にね」

 

「モクバ、子供からの要望データを見せろ」

 

「はい」

 

データを素早く見終えるとやはりなという表情を見せ、遊来にもそのデータを見せる。子供達の要望はやはりデュエルモンスターズにおける人型モンスターになりたいというものであった。

 

「これは・・・」

 

「見ての通りだ。デュエルモンスターズだけではない、特撮作品のキャラクターなどの要望があるようだ。特撮に関しては制作会社との使用権限について既に話し合いを済ませている」

 

「それはわかりましたが、簡易デュエルディスクの方は?」

 

「デュエルのみに使用できる物を開発するつもりだ。簡易版とはいえ手は抜かん」

 

「じゃあ、開発はすぐにですか?」

 

「当然だ。アカデミアに関しては俺から証明書を出しておく」

 

それからというもの、海馬コーポレーションに部屋を用意され泊まり込みで開発協力をする事になった。特にソリッドヴィジョンを利用してでの変身モーションは子供達からの要望が強くメイン開発になった。

 

「瀬人さん、準備できました」

 

「よし、モーションテスト開始!!」

 

変身モーションを何度も繰り返したり、種類が豊富でマントなどのエフェクトモーションなどの開発をしつつ、簡易版デュエルディスクのテストも同時進行で行っていく。

 

無論、徹夜作業も度々有り仮眠を取ってから作業を再開するなど2ヶ月以上かかってようやくOKのサインが瀬人さんの口から出された。

 

「遊来、開発協力ご苦労だった。給与は口座に振り込んである」

 

「ありがとうございます」

 

「それと同時に特別報酬として、今回開発した変身モーション・・・特に特撮作品関連全てのデータを貴様のデュエルディスクの容量を拡張しインプットしておいた」

 

「え!?良いんですか!?」

 

「それくらいの働きはしていたという事だ。お前がホームとなれば他の奴も変身モーションを共有できるようにもしておいた」

 

「ありがとうございます!」

 

特撮関連の大ファンである遊来からしてみればお金以上に価値のある報酬だ。小躍りしたくなるのをグッと堪えて平静を装う。

 

「磯野!ヘリを手配してやれ!」

 

「はっ!」

 

「あの、瀬人さん。簡易版のデュエルディスクと変身モーションは一般公開はいつになります?」

 

「デュエルディスクに関しては、貴様がアカデミアの二年生になる頃には発売を開始するつもりだ。変身モーションはデータ販売になる」

 

「仕方ないですよね」

 

変身モーションがデータ販売になるのは無理はない。何故なら、ソフトタイプなどにしてしまうと高額化する可能性が大だ、無論それだけではないのだが。

 

「それと、だ」

 

「?」

 

瀬人さんは素早くペンを取り出すと、何かの書類に自分の名前をサインし封筒のような物に入れ、手渡してきた。

 

「磯野に連絡はさせたが、デュエルアカデミアに戻ったと同時に、念の為それを出せば教師どもは納得するだろう」

 

「!」

 

恐らくは遅延証明書か何かだろう。開発の協力をしていたとは言えど、遊来自身は学生だ。学生の本分は学校に通うこと、2ヶ月以上も欠席していれば不審に思われてしまう。

 

「何から何まで、ありがとうございます」

 

「ふん、さっさと戻るがいい」

 

遊来は一礼すると手配されたヘリに乗り込み、アカデミアへと戻る事になった。瀬人さんの指示で付き人の磯野さんが開発初日に連絡していてくれたのと直筆サイン入りの遅延証明書の効力は抜群で事情を説明し、学校に復帰となった。

 

二ヶ月分のノートや学習課題の内容は三沢が貸してくれ、いつものメンバーで授業後の復習と遊来が出遅れている部分の学習を進めている。

 

「この公式は、そこをyに代入するんだ」

 

「なるほど、xからかけ算しても解けるようだけど」

 

「む?そんな解き方もあったのか!解説してくれないか?」

 

「良いよ、教えてもらってるし」

 

「数学は苦手だ・・・・」

 

「僕も・・・ッス」

 

「だな・・・」

 

ちなみに今は数学の勉強だ。お互いに教えてもらい、教え合ってもしている。遊来は数学はそこそこで得意としているのは古文などだ。三沢は国語も得意としているが古文・漢文はあまりといった感じだった。

 

「しかし、こうしてみんなで勉強する時間が出来るなんてな」

 

「俺は昇格して単位が重要視される場所にいるし、三沢もそうだろ?」

 

「まぁな」

 

「けど、もっと意外なのは」

 

「ふふ、あの三人だろ?」

 

二人が視線を向けた先には悪戦苦闘しながらも勉強している十代、翔、隼人、そして教師役の明日香であった。無論、それを補助するジュンコとももえも参加している。ジュンコとももえも成績は良い方なので明日香の補助役として三沢が頼んだようだ。

 

「だ~か~ら、此処の和訳が間違ってるわよ!」

 

「ええっ!?」

 

「隼人さん、此処は銅板を差し込むという解答が正解ですわよ」

 

「やっぱり、理数系は難しいんだなぁ・・・」

 

「あら、十代・・・今回は良く出来てるじゃない」

 

「へへっ、明日香の教え方も上手いし遊来からも勉強を教えてもらってるからさ!」

 

「そ、そう」

 

担当部署で各々の声が上がっているが、楽しそうに勉強している。遊来は十代に勉強を教えている時に言った言葉があった。

 

『デュエルを楽しんでやれるなら、勉強も楽しんじゃえばイイじゃないか』

 

その結果、十代は勉強に対して身構えていたが三沢、明日香、遊来の三人で楽しめる勉強を教える事にしたのだ。

 

厳しさの明日香、正確さの三沢、楽しさの遊来という形でだ。まさにアメとムチという形で勉強を教えた結果、上位とまではいかないが中間の勉強成績を取れるようになってきたのだ。これには教師達も「一体、どんなマジックを使ったんだ?」とこぼすほどであった。

 

「しかし、あの十代がな」

 

「十代はキッカケさえ掴めば後は吸収が早いんだよ。勉強ってさ身構えちゃうじゃん?だから、ゲームみたいに楽しめるように教えたらって思った訳」

 

「なるほどな、楽しむ勉強か・・・」

 

「三沢も固く考えないで、たまには柔軟にしてもいいんじゃないか?デュエルもさ」

 

「!」

 

「理を詰めるのは悪くない、けれど・・・自分が楽しいって思える事を捨てちゃダメだろ?俺はそれを十代から教わったよ」

 

シャープペンシルを走らせ、問題を解きながら遊来は三沢が心に引っかかっていた事を見抜いたように言葉を口にする。

 

「自分が楽しいと思える事・・・か」

 

「相手に合わせるだけじゃない、自分のオリジナルを出してもいいんじゃないかな?俺のオリジナルはバレバレだけどさ」

 

「オリジナル・・か」

 

「俺がネットで覗いてる掲示板があるから見てみたら?みんなすごい発想の持ち主ばかりだから」

 

遊来はアドレスを三沢に送り、三沢は「後で見てみるよ」と言った後、遊来の講師役に戻った。

 

 

 

 

 

勉強の夜、遊来は自分のデュエルディスクを見ていた。特別報酬としてもらったエンターテインメント用のデータの中には変身モーションの他に隣に立たせ動かす事もできるという。ただし、あらかじめ入力しておいたモーションしかできないと聞いていた。

 

「うーん・・・もしかしたら、アレの真似が出来るかな?」

 

特撮以外で大好きなある作品の漫画文庫本がベッドに転がっている。デュエルディスクを眺めながら、遊来はいたずらを思いついた子供のような笑みをするのだった。




短いですがここまでです。

次回はセブンスターズ戦の初戦です。この時に遊来の心の炎とも言うべきモンスターが現れます。


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第19話

セブンスターズ、第一戦


勉強の遅れを取り戻し、授業を終えて自室にいる遊来。彼は自分と共に飛ばされたカードの中で三枚のカードを机の上に並べて見ていた。

 

『神炎皇ウリア』

 

『降雷皇ハモン』

 

『幻魔皇ラビエル』

 

これらのカードである。イメージイラストが白黒になってしまっており、デュエルディスクをフリーモードにしても反応しない。恐らくはこの世界にあるオリジナルの三幻魔が封印されているためだろう。このカードは遊来と共に飛ばされてきたカードであり、なんの変哲もない、ただのカードだ。だが、三幻の名を関している為に何かしらの影響を受けている様子だ。

 

「ルイン」

 

『はい?』

 

「このカードのオリジナルが目覚めそうだって、言ってたよな?」

 

『はい、予兆といいますか・・・そんな感じがあるのです』

 

「三幻魔・・・か」

 

こうして飛ばされたーカードを見ているのには理由がある。この出来事が起こる1時間前のことだ。

 

 

 

 

 

「あれ?遊来?」

 

「十代?もしかしてお前もか?」

 

「ああ、他にもカイザー、明日香、万丈目、三沢、大徳寺先生にクロノス先生も呼ばれてるみたいだぜ」

 

「なんだか・・・バランスの悪い呼ばれ方だな」

 

そんな会話をしながら校長室に入ると、いつもはおどけている感じの鮫島校長が真剣な顔をしている。

 

「三幻魔のカード?」

 

「そうです。この島に封印されている古より伝わる三枚のカード」

 

「へ?この学園ってそんな昔からあったのか?」

 

「んなわけ無いだろ、最後まで話を聞いてみよう」

 

十代の疑問に遊来が、答えるが万丈目は自分のツッコミを取られたと不満げになった。

 

「そもそも、この学園はそのカードが封印された場所の上に立っているのです」

 

その言葉に全員が驚嘆の声を上げる。遊来は自分の中で持っているカードが反応しないのとオリジナルがまさかすぐ近くにあった事に驚いていた。

 

「学園の地下深くにその三幻魔のカードは眠っています。島の伝説によるとそのカードが地上に放たれる時、世界は魔に包まれ、混沌が全てを覆い、人々に巣食う闇が解放され、やがて世界は破滅し無へと帰する。それほどの力を秘めたカードだと伝えれています」

 

「・・・・っ」

 

「破滅・・・・」

 

明日香と三沢が息を呑み、万丈目もそんな事があるのかと言いたげな顔をしているが十代は明るく言葉を返す。

 

「よく分かんないけど、なんか凄そうなカードだな」

 

「黙って聞いているノーネ!」

 

「(三幻魔・・・か。前の世界だと専用ストラクチャーが発売されて、サポートカードが充実して一気に強くなったんだよな。それまではOCGだと召喚条件の関係で使いにくくて愛用してる人は少なかったし)」

 

「そのカードの封印を解こうと、挑戦してきた者達が現れたのです」

 

「一体誰が?」

 

「七星皇・・・・セブンスターズと呼ばれる七人のデュエリストです。全くの謎に包まれた七人ですが、もう既にその一人がこの島に」

 

「なんですって!?」

 

「でも、どうやって封印を解こうと?」

 

「三幻魔のカードはこの学園の地下の遺跡に封印され、七星門と呼ばれる七つの巨大な石柱がそのカードを守っています。その七つの石柱は七つの鍵によって開かれる。これがその七つの鍵です」

 

鮫島校長が小さな箱を取り出し、この場にあることを証明してきた。

 

「そこまで重要な物なら、どうしてセキュリティを強化しないんです?」

 

遊来からの質問を兼ねた疑問点は全くの正論に近い。それほどまでに重要かつ大切ならばセキュリティを厳重にした金庫などに納めるべきだろう。

 

「それは予算の事もありますが、遺跡の封印は古来から伝わる方法でなければならず、鍵を狙うものがあれば戦わなければならないのです。この鍵はそういった性質を持っている」

 

「つまり、戦いの結果を示さなければ鍵は戦いを放棄している側から去ってしまうと?」

 

「その通りです。そこで貴方達に、この七つの鍵を守っていただきたい」

 

「守るといっても・・・一体どうやって?」

 

「もちろん、デュエルです」

 

「デュエル!?」

 

「七星門の鍵を奪うにはデュエルによって勝たねばならない、これも古よりこの島に伝わる約束事、だからこそ学園内でも屈指のデュエリストである貴方がたに集まってもらったのです。んんっ、まぁ・・・二名ほど数合わせに呼んだ者もおりますが・・・」

 

教員二人に視線を向けているところから、数合わせで呼ばれたのは教員なのだろう。

 

「この七つの鍵を持つデュエリストに彼らは挑んできます。貴方がたにセブンスターズと戦う覚悟を持っていただけるなら、どうか・・・この鍵を受け取って欲しい」

 

そういって、鍵が入った箱の蓋を開ける鮫島校長。遊来自身も少し思考していたが、最初に机へと歩み寄った。

 

「遊来!?」

 

「刺客って事はそれなりに強い相手がいるって事だろう?俺はやる・・・!」

 

そう言って遊来は鍵を手にし、自分の首にペンダントのようにかけた。

 

「へへっ、先を越されたけど面白そうだ。やってやるぜ」

 

「フッ」

 

十代と亮も鍵を受け取り、次々と生徒は鍵を受け取っていく。そうして、新たに学園側の戦士が選出されたのだ。

 

 

 

 

 

「さて、『ドラグニティ』はしばらくお休みになっちゃうかな・・・それにしても七星か・・・まるで北斗七星・・・うっ!?」

 

『マスター!?』

 

七星、北斗七星という単語を口にした瞬間、頭に強烈な痛みが走った。一瞬の出来事だったが、頭痛には変わりない。

 

「だ、大丈夫・・・収まったから」

 

『体調悪いのかい?』

 

「いや、何かしらの要因にぶつかったみたい・・・あ、そうだ!十代と約束してたんだ!」

 

遊来は急いで着替え、デュエルディスクとデッキとEXデッキを持って急いで寮を出てオシリスレッドへと向かうとそこには走っている明日香の姿が見えた。周りをよく見ると十代達の部屋から光が出ている。それも電気以上に眩しい光だ。

 

「「十代!」」

 

「明日香、遊来!」

 

光に包まれた瞬間、目を開くとそこは火山の噴火口の上だった。無論、噴火はしないだろうがそれでもマグマの上なのだから少しだけ足がすくんでしまう。

 

「此処は・・・?」

 

「火山の・・・上・・だよな?」

 

「うわっ!?」

 

マグマの中からドラゴンの姿をしたマグマがステージに向かって飛び込み、その奥から誰かが歩いてくる。

 

「誰だ!?」

 

「我が名はダークネス、セブンスターズの一人」

 

ダークネスと名乗った仮面の男はなにかのペンダントをしている。それが光り、手のひらに乗せた。

 

「何故かは分からんが、このペンダントの光に導かれた。私の相手は既に決まっている」

 

「十代か?」

 

「いや、私の相手は貴様だ。龍谷遊来!」

 

「!俺が!?」

 

「お前の持つ未だ浸透していない未知の召喚、シンクロ召喚とやらの力を私に見せてみろ」

 

「遊来・・・!」

 

「遊来、このデュエルは危険よ!」

 

「分かってる・・・だけど指定されたんじゃ受けるしかない」

 

遊来は持ってきたデッキをデュエルディスクにセットする。闇のデュエルの危険性はルインから耳にタコができる程、タイタンの件で聞かされている。だが、逃げる訳にはいかない。

 

「怖いのは当たり前・・・だけど、その恐怖を我が物とすれば焦りは消え、普段通りの戦いができ、それが勇気となる!」

 

「その言葉って、あの漫画の?」

 

「作品の名前は後で、な?それに試したい事もあるし」

 

「試したい事?」

 

「ダークネス、一つ聞きたい!姿を変えることは許されているのか?例えば、服を着替えるなどだ」

 

「そのくらいの事は許容している」

 

「そうか」

 

そう呟くと遊来はデュエルディスクにあったエンターテインメント用モーションを起動するボタン押した。セレクトしたのは常に進化し続ける光の象徴たる仮面の戦士が身に付けている証がソリッドヴィジョンで出現する。

 

「あれは・・・!」

 

ソリッドヴィジョンで現れたベルトの左側で腕をクロスさせ素早く右手の構えを取る、ソリッドヴィジョンによって光が回転し出現とそれに応じてベルトまで再現されており、遊来はゆっくりと構えた右手を前へと突き出す。

 

「変身!!」

 

まるでバイクのフルスロットルのエンジン音のような音とともに光が溢れ、黄金の輝きを持つ赤い複眼の戦士の姿がソリッドヴィジョンで遊来自身に重なり、本当に変身したように見えていた。

 

「何ッ!?」

 

「安心していい、これはただのソリッドヴィジョン。俺の姿に重なってるだけさ」

 

「○ギトだ・・・仮面ラ○ダー○ギト。龍をモチーフに「光」の力を覚醒させた人間だって設定を持つラ○ダー。それに最終形態とされている姿でさえ、進化の途中経過に過ぎないとも。常に進化し続けるラ○ダーだ」

 

「ダークネスという闇の決闘者に対して、○ギトという光の戦士の姿を出してくるなんて、皮肉が効いているわね」

 

「あれ?明日香も仮面ラ○ダー観てたのか?」

 

「ジュンコとももえがイケメン俳優目的でね?遊来からDVDを借りて視てたのを付き合わされたのよ」

 

「そうだったのか」

 

十代と明日香の会話をよそにダークネスは歯ぎしりを僅かにした後、変身した遊来を見据える。

 

「っ・・・意趣返しとでも言うつもりか?」

 

「さぁね・・・さぁ、やろうか」

 

お互いにデュエルディスクを構える。それと同時にルインが声をかけてきた。

 

『マスター、これは間違いなく闇のデュエルです。気を付けて』

 

「ああ、分かってるさ」

 

「行くぞ!」

 

「来い!」

 

「「デュエル!!」」

 

ダークネス:LP4000

 

龍谷遊来(○ギト):LP4000

 

「私の先攻!ドロー!私は軍隊竜を守備表示で召喚!!カードを一枚伏せターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

[通常ドローカード]

 

※混源龍レヴィオニア

 

[現在の手札6枚]

 

※輝光竜 セイファート

※暗黒竜 コラプサーペント

※輝光竜 セイファート

※強化蘇生

※神竜 アポカリプス

※混源龍レヴィオニア

 

「俺は手札から『輝光竜 セイファート』を攻撃表示で召喚!」

 

『輝光竜 セイファート』効果/星4/光属性/ドラゴン族/攻撃力1800/守備力0

 

「『ドラグニティ』じゃない!?」

 

「『輝光竜 セイファート』の効果!二つとも1ターンに1度しか使用できない。(1)は手札及び自分フィールドの表側表示モンスターの中から、ドラゴン族モンスターを任意の数だけ墓地へ送って発動できる。墓地へ送ったモンスターの元々のレベルの合計と同じレベルを持つドラゴン族モンスター1体をデッキから手札に加える。(2)は墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の光・闇属性のドラゴン族・レベル8モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える効果だ!」

 

「俺は(1)の効果を使い、手札にある2枚目の『輝光竜 セイファート』と『神竜アポカリプス』を墓地へ送り、この2枚のレベルの合計と同じレベルを持つドラゴン族モンスターを手札に加える!俺は『銀河眼の光子竜』を手札に加える!」

 

「レベル8・・・!」

 

「銀河眼?」

 

「聞いた事もないカードだわ・・・」

 

「セイファートで『軍隊竜』を攻撃!セイファーブレス!!」

 

眩い光の息吹に飲まれた軍隊竜はその姿をかき消され、フィールドから居なくなった。同時に銀河眼という名のカードが気になる様子の三人である。

 

「この瞬間、『軍隊竜』の効果発動!」

 

「知ってる。破壊されたカードと同名のカードをデッキから特殊召喚できる・・・だろ?」

 

「ほう?知識は深いようだな?ならば、私は特殊効果を使いデッキから『軍隊竜』を守備表示で特殊召喚!」

 

「リクルーター効果を持っていたのかよ!?それに遊来のデッキが今までと全く違う!」

 

「そうね。今まで見たことのないタイプのデッキだわ。それも重要だけどダークネスの場にモンスターが残ってしまってる」

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

遊来の手札は少ないがダークネスは少しだけ唸る。何故なら遊来の手札には最上級モンスターが居るのだ。だが、それも杞憂に終わる。遊来の場には『輝光竜 セイファート』のみしかおらず、上級モンスターの召喚には生贄が必要となり、その生贄要因もいない。

 

「私のターン、ドロー!リバースカード、オープン!『リビングデッドの呼び声』!このカードの効果により、私の墓地からモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。私は墓地に眠るもう1体の『軍隊竜』を特殊召喚!更にこの2体を生贄に・・・『真紅眼の黒竜』を攻撃表示で召喚!」

 

「真紅眼・・!?」

 

「黒竜!!」

 

「・・・・」

 

マグマの底から現れた黒竜。その姿の雄々しさ、力強さは遊来も知っている。『真紅眼の黒竜』前に居た世界おいても知名度、人気度は圧倒的に高かったカードである。後にサポートカードも大量に出て一気にカテゴリー入りを果たしていた。それだけ人気の高さが伺える。

 

「『真紅眼の黒竜』で『輝光竜 セイファート』を攻撃!黒炎弾!!」

 

真紅眼から放たれた炎弾がセイファートへ直撃し、その差のライフを失ってしまうと同時に遊来は胸元を掴んで苦しんだ。

 

「うっ!ぐうううう!!この痛みが・・・」

 

「そうだ、文字通り命をかけた戦い。これこそが私の闇のデュエルだ!」

 

龍谷遊来:LP3400

 

「まだ、だ!俺のターン!ドロー!」

 

[通常ドローカード]

 

※ライトパルサー・ドラゴン

 

[現在の手札4枚]

 

※暗黒竜 コラプサーペント

※混源龍レヴィオニア

※銀河眼の光子竜

※ライトパルサー・ドラゴン

 

「(足りない、呼ぶにはまだ・・・足りない!だが、ここは攻めるしかない!)俺は墓地に眠る『輝光竜 セイファート』と『神竜アポカリプス』をゲームから除外!手札の『ライトパルサー・ドラゴン』を特殊召喚する!」

 

『ライトパルサー・ドラゴン』星6/光属性/ドラゴン族/攻撃力2500/守備力1500

 

「何!?」

 

「レベル6で攻撃力2500!?」

 

「しかも特殊召喚!」

 

「更にもう1体の『輝光竜 セイファート』を除外し『暗黒竜 コラプサーペント』特殊召喚!」

 

「こ、これは!」

 

「行け!『ライトパルサー・ドラゴン』!!『真紅眼の黒竜』に攻撃!パルス・プレッシャー!!」

 

ライトパルサー・ドラゴンが放った光によって『真紅眼の黒竜』がまるで重しを乗せられたかのように身体が沈んでいき、最後には砕け散った。パルサーは別名、中性子星とも言われ、中性子星とは大質量の恒星が寿命を迎えて超新星爆発を起こした時、その中心核が圧縮され形成されるものだ。この存在が質量の限界を迎えた時、暗黒孔・・・すなわちブラックホールになるのだ。つまり真紅眼は超新星爆発時において発生する圧力で攻撃されたという事になる。

 

ダークネス:LP3900

 

「まだだ!続け!コラプサーペント!プレイヤーへダイレクトアタックだ!コラプサー・ブレス!」

 

「うおおおおお!?」

 

ダークネス:LP2100

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

「やるな・・・だが、まだだ!私のターン!ドロー!私は手札から魔法カード『黙する死者』を発動!『真紅眼』を墓地より呼び戻す!更に『アタッチメントドラゴン』を召喚!この瞬間、相手モンスターの装備カードとなり、その攻守を入れ替えることが出来る!『ライトパルサー・ドラゴン』を守備表示に変更!そして、攻守変更は不可能!」

 

「なっ!」

 

「だけど、頼みの綱である『真紅眼』は守備表示だ。一体どうやって」

 

「更に魔法カード『黒炎弾』を発動!」

 

「!!マズイ!」

 

レッドアイズを相手にする上で最も警戒していたカードが来てしまったが、対抗手段はない。『真紅眼の黒竜』の口から黒い炎の塊が放たれ、遊来へ襲いかかる。

 

「ぐあああああああああ!!!!!!」

 

龍谷遊来:LP1000

 

「更にメインフェイズ2、真紅眼よ!更に進化せよ!守備表示の『真紅眼の黒竜』を生贄に・・・いでよ!『真紅眼の闇竜』!!」

 

『真紅眼の闇竜』効果/星9/闇属性/ドラゴン族/攻撃力2400/守備力2000

 

「更に『真紅眼の闇竜』は自分の墓地にあるドラゴン族1体につき、300ポイント攻撃力がアップする!」

 

『真紅眼の闇竜』攻撃力2400→攻撃力3300

 

「くっ!」

 

「ターン終了だ」

 

「っ・・・」

 

相手は強く、次のターンに『黒炎弾』を引かれたら・・・。負けるのか?そんな言葉が頭をよぎる。デッキからドローしようとする手が震える。此処で引けずに負けたら親友達は・・・仲間の明日香は・・・という不安が出てくる。信じようとするも信じきる事が出来ずにいる迷いの中、自分の中に熱が篭る。迷いを振り切った先にある熱き境地、自分の中に燻り続けている何かが燃え上がり、遊来はカードをドローした。

 

「俺の・・・・タァァァァン!!ドロォォォ!!」

 

[通常ドローカード]

 

※デルタフライ

 

「!!」

 

[現在の手札3枚]

 

※混源龍レヴィオニア

※銀河眼の光子竜

※デルタフライ

 

「・・・・・・俺の炎が、燻っていた炎が燃え上がった!」

 

「なんだと?それになんだ・・・その姿は!?」

 

ソリッドヴィジョンで投影されているオルタリングに強化状態を示すドラゴンズネイルが現れ、○ギトの姿が変化していく。胸部や腕、角などが赤くなり複眼は黄色に変わり罅割れた胸部からはプロミネンスのような炎が吹き出しているように見えている。

 

「あれは○ギトの強化形態の1つ、バー○ングフォーム・・・・!」

 

「俺は・・・『デルタフライ』を召喚!!」

 

「チューナーモンスターだ!!」

 

「という事は!?」

 

「俺の心の光・・・!心の炎・・!その姿を今ここに顕現させる!今はまだ弱いけどな!『デルタフライ』の効果発動!このカードは1ターンに1度、このカード以外の自分フィールド上に存在するモンスターを選択し、そのレベルを一つ上げる事ができる!!レベル4の『暗黒竜 コラプサーペント』のレベルを1つ上げレベル5に変更!」

 

「あれは万丈目くんとのデュエルで使ってた・・・!」

 

「行くぞ!レベル5となった『暗黒竜 コラプサーペント』にレベル3『デルタフライ』をチューニング!!」

 

デルタフライが自らを三つの光の輪に姿を変え、その中を『暗黒竜 コラプサーペント』が潜り、1つの光となった。

 

「漆黒の闇を裂き、天地を焼き尽くし眠りについた孤高の絶対なる竜の王者よ!!眠りより目覚め、万物を睥睨(へいげい)し、その猛威を再び振るうがいい!!」

 

 

シンクロ召喚!

 

 

燃え盛れ!!『琰魔竜レッド・デーモン』!!

 

『琰魔竜レッド・デーモン』シンクロ・効果/星8/闇属性/ドラゴン族/攻撃力3000/守備力2000[チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上]

 

 

赤と黒の体色にデーモンという悪魔の力を持つ事を示す3つの角、場を圧倒する王者の風格、そのどれをとっても驚きだけがこの場を支配していた。

 

「『琰魔竜レッド・デーモン』!?」

 

「カッコイイけど、なんて威圧感なんだ・・・」

 

『クリクリー・・・!』

 

「ハネクリボー?どうした?」

 

ハネクリボーが『琰魔竜レッド・デーモン』に対して反応を示していた。敵対してはいないが、なにか別のものを見ている様子だ。

 

『クリー・・・!』

 

「『琰魔竜レッド・デーモン』がどうかしたのか?」

 

十代が視線を向けると『琰魔竜レッド・デーモン』が遊来に視線を向けている事に気づいた。まるで、自分を扱う事が出来る器なのかと。

 

「くくく、召喚したは良いが私の『真紅眼の闇竜』の攻撃力には及ばないようだな!」

 

「そうだわ、『真紅眼の闇竜』の攻撃力は3300!『琰魔竜レッド・デーモン』の攻撃力は3000!僅かに届かない!」

 

「じゃあ、遊来の・・・負けなのか?」

 

瞬間、遊来の全身から炎のように揺らめく光が彼を包む。自分に重ねられていた仮面ラ○ダー○ギト・バー○ングフォームのソリッドヴィジョンが遊来から離れ、隣に立っている。

 

「『琰魔竜レッド・デーモン』の効果発動!1ターンに1度、自分のメインフェイズ1でのみ発動できる。このカード以外のフィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスターを全て破壊する。この効果を発動するターン、このカード以外のモンスターは攻撃できない!」

 

 

「強者は常に一人!闇の竜よ・・・王の凱旋だ!道を開けろ!真紅の地獄炎(クリムゾン・ヘル・バーン)!!

 

 

 

『琰魔竜レッド・デーモン』がマグマを殴りつけ、そのエネルギーが波となって全てがマグマによって破壊され、『真紅眼の闇竜』すらも飲み込み焼き尽くしてしまった。

 

「うおおおお!?バ・・・馬鹿な!私のモンスターが破壊されただと!?」

 

「1ターンに1度、自分のメインフェイズ1でのみで発動できる効果・・・」

 

「表側攻撃表示になってるモンスターを敵味方問わず全て破壊かよ・・・強いけど使い方が難しそうだ」

 

「だが、全てを破壊するというのなら貴様の場にいる『ライトパルサー・ドラゴン』も無事では・・・!何ッ!?」

 

『ライトパルサー・ドラゴン』はその場に残り続けていた。まるで王に忠誠を誓う騎士の如く、片膝を付けている。

 

「残念だったな、『ライトパルサー・ドラゴン』はお前が装備カードとして使ってくれた『アタッチメント・ドラゴン』の効果によって守備表示になっていた。よって王の裁きは受けない!!行くぞ、ダークネス!『琰魔竜レッド・デーモン』でダイレクトアタック!○ギトも続け!」

 

極獄の絶対独断(アブソリュート・ヘル・ドグマ)

 

 

拳に炎を纏わせた『琰魔竜レッド・デーモン』とフィニッシュエフェクトによる灼熱の仮面の戦士のダブルナックルが、ダークネスの仮面を殴りつけて破壊すると同時にダークネスは炎に飲み込まれていき膝をついた。

 

「うおあああああああああああ!!!」

 

ダークネス:LP0

 

「う・・・勝った・・・!みん・・な」

 

そういって遊来は倒れてしまう。精神的にタフとはいえ肉体にかかっていたダメージは相当なもので気力だけでデュエルしていたのだ。

 

「遊来!!うあああ!?」

 

「遊来!きゃああああ!!」

 

 

 

 

 

翔、隼人は海岸に近い岩場の安全地域に飛ばされた後、目を覚ました。それは明日香と十代も同様だった。

 

「う・・あれ?ここは?」

 

「遊来くんは?」

 

「翔くん、隼人くん!」

 

「三人とも無事か?」

 

「アニキ!」

 

「明日香さん」

 

四人は無事を確認すると重要な事を思い出して口にする。それは最後まで必死に闘ってくれた友人の事だ。

 

「そうだ、遊来は!?」

 

「あそこだ!」

 

そこには気を失っている遊来が仰向けで倒れていた。傷はあるが精霊達がひどい傷にならないよう加護してくれたのだろう。

 

「遊来!しっかりしろよ!!遊来!」

 

『大丈夫、気を失っているだけです」

 

『無茶したからなぁ・・・マスターは』

 

「あ・・・!ああ・・・」

 

十代の精霊を見る力と操る力は群を抜いてずば抜けている。ルインとレヴァティンの言葉に安心と驚きが混ざって曖昧な返事しか返せなかった。皆にそれを伝えようと向き直る。

 

「遊来は大丈夫みたいだぜ」

 

「本当!?」

 

「ええ、怪我はしているけど命に別状はないようだわ」

 

「遊来・・・俺達の為にこんなに」

 

翔と隼人が遊来を心配している中、彼の隣に一枚のカードが落ちていた。それを十代が拾うと明日香に手渡した。

 

「明日香、そのカードって」

 

「・・・」

 

明日香が手にした瞬間、カードの絵柄が浮かび上がり、其処には何本もの鎖の中にダークネスが身に付けていた仮面が封印されているのが出てきている。

 

「これが・・・ダークネスの魂」

 

その隣には先程まで遊来と戦っていたダークネスが気絶していた。様子を見に行こうと彼に近づく明日香はさらに驚く。

 

「う・・・・あ、明日・・・香」

 

「!!!そんな・・・!」

 

それと同時に三沢、万丈目、亮の三人が走って向かって来ていた。七星門の鍵の共鳴を感じて来たのだろう。

 

「遊来!十代!翔!隼人!!」

 

「生きてるのか?」

 

「ああ、遊来は無事さ!」

 

「やはり、闇のデュエルか・・・」

 

「そうなんだな・・・でも、遊来は勝ったんだな!すごい戦いだったんだな!」

 

皆が心配している中、亮が明日香が居る事に気づき、そちらへ向かう。明日香はダークネスの肉体を抱きしめており、それを亮が不思議がる。だが、明日香は泣いている様子だ

 

「明日香?」

 

「魂が・・・別の魂が入っていたの・・・!だから、それが封印されて・・・元の魂が残って・・・」

 

「何を言っているんだ?明日香」

 

「分からないの!?吹雪兄さんよ!!」

 

「え!?」

 

そう、セブンスターズの尖兵であったダークネスの正体は、長らく行方不明になっていた亮の同期であり明日香の兄である天上院吹雪であったのだ。

 

「吹雪・・・!」

 

デュエルで倒れた二人を夜明けの光が眩しく照らしている。そんな中、遊来のEXデッキに眠る『レッドデーモン』のカード達が数枚を除いて完全に眠りから覚めた。未だ燻っている炎ではあるが、この炎が遊来の心であり、あらゆるものを焼き尽くし、道を示す味方になると同時に、最大の敵になるという事を今この場にいる全員は知る由もなかった。




はい、ここで終了です。

ダークネス(吹雪さん)が『アタッチメント・ドラゴン』を使用していましたがアニメオリジナルのカードは原作アニメキャラしか使用しません、アニメ効果のバブルマンなどと同様です。

遊来は基本的にOCGに準じていますが作者である私の知識不足などもあり、指摘が多くなっているのも反省しております。

仮面ラ○ダーの変身はソリッドヴィジョンによる演出なので今はただのエンターテインメント要素に過ぎません、異世界編で変わるかもしれませんが。

この話で遊来くんの心の光の象徴を明かしました。そう『レッドデーモン』シリーズです。

『シンクロ&エクシーズ』デッキの正体は宇宙をイメージした闇と光の混合デッキである『カオス』のドラゴン軸デッキになっています。

このデッキは今現在、十代達の味方ではありますが敵になる要素もございます。使えば使うほど前世の記憶が欠片ではありますが少しずつ掘り返されていきます。

前世の記憶がほとんど戻った場合、エクシーズ召喚が解禁されます。

それと同時にヒロインを誰にするか後々、アンケートを出しますのでよろしくお願いします。


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IFストーリー『ドラグニティの展開力はリスペクトに反している』

交響魔人様の作品『猫シンクロ使いが行く遊戯王GX!』とのコラボになります。

『もしも』良心的な鮫島校長が追放されていて、別の校長が学園を牛耳っていたら?という話なります。

こちらでのサイバー流は本来、鮫島校長の指導の下「カードを信用するのは優しさだけではなく厳しさも必要」という理念でしたが追放され、アンチリスペクトのサイバー流になります。

サイバードラゴン系のカードや妨害カードに罪はないので悪しからず。

遊来が特撮作品好きの設定を大いに使っていますが、ただの演出で扱いはソリッドヴィジョンみたいなものです。


日も傾きかけている午後、一人の女生徒がデュエルをしていた。その隣にはもう一人の女生徒がおり、強気そうな方の女生徒がデュエルをしているようだ。その相手の場には『サイバー・ドラゴン』が出されている。

 

「『ハーピィズ・ペット竜』でダイレクトアタック!『セイント・ファイア・ギガ』!!」

 

「うああああ!」

 

「ジュンコさん!」

 

「ももえ、走るわよ!オシリスレッド寮へ急ぐのよ!」

 

「はい!」

 

この二人は枕田ジュンコと浜口ももえ、今現在はオベリスクブルーの女子寮から逃げ出し、オシリスレッド寮へと向かっている最中だった。

 

そして二人はオシリスレッド寮へたどり着き、食堂内部で息を切らしたまま座り込んでしまった。そんな二人に声をかけてきた一人の男子生徒がいた。

 

「大丈夫?今、水を持ってくるから」

 

「はぁ、はぁ・・・ありが、と」

 

「はぁ、はぁ・・・助かり・・ますわ」

 

水の入ったコップを持ってきて二人に渡す男子生徒、彼の名前は龍谷遊来。かつてはラーイエローからオベリスクブルーに昇格し『ドラグニティ』というカテゴリーを愛用する事から『竜騎士』と呼ばれていた生徒だ。

 

そして、この食堂には彼を含めた遊城十代、丸藤翔と丸藤亮の丸藤兄弟、天上院明日香、前田隼人の数名が集合している。

 

これが、先程までデュエルをしていた枕田ジュンコがこの食堂を目指した理由であり、彼らの拠点となっているのだ。

 

何故、このような事態になっているのか?それは数週間前に遡る。

 

 

 

 

 

デュエル・アカデミア校長兼サイバー流道場師範であった鮫島教諭が突然、解雇となりその後釜としてやってきたのが才災勝作と呼ばれる人物だ。

 

元はサイバー流の過激派らしく穏健派に位置する鮫島教諭を追放、更にはサイバー流の門下生のほとんどが彼に着いていったらしく、道場も追放という名の破門に処されたそうだ。

 

それからというもの、サイバー流がオベリスクブルーから入門生が続出し始め、デュエルに対するリスペクトが感じられないとの事で、ビートダウン以外のあらゆる戦術を校長権限で制限して来た。

 

これには大半の生徒も不満を出したが、単位や落第など生徒の学生生活の要を人質に取り、更にはサイバー流に入門すればそれらを不問にするというとんでもない提案を出してきたのだ。

 

これによって単位が重視されるオベリスクブルーの生徒の大半がサイバー流へ、ラーイエローも同じでオシリスレッドに至っては排斥の提案も出ている。

 

そんな中で、反逆行動をしたのが彼、龍谷遊来であった。単位やデュエルを自分の都合の良い様に使うなど、それが教師のやる事かと。

 

だが、そんな彼の行動は才災勝作の機嫌を損ね。その結果、遊来はオベリスクブルーから追放、オシリスレッドへの降格。更には2ヶ月の停学を言い渡された。

 

同時にサイバー流に逆らった事により『竜騎士』から『邪道に堕ちた愚者』という不栄誉な烙印にも等しい噂話を流され、かつての栄光の姿は何処にも無くなっていた。ジュンコとももえは水を飲んで身体が落ち着いた様子だ。

 

「はぁ・・・生き返ったわ」

 

「ふぅ・・・落ち着きましたわ」

 

今のアカデミアはサイバー流による生徒狩りが起こっている。僅かに残っているオベリスクブルーの生徒を狩ったならばサイバー流の極地『サイバー・エンド・ドラゴン』を召喚するためのカード群、ラーイエローなら『サイバー・ドラゴン』オシリスレッドなら『サイバー流』に関するカードという報酬付きだ。

 

それにより、サイバー流に入門した者達はここぞとばかりに、サイバー流に入門していない生徒を狩り始めた。

 

オベリスクブルーの生徒は狙われる頻度が高く、ラーイエローも似たり寄ったりでオシリスレッドに関しては数を減らしておくか、程度にしか思われていない。

 

だが、何故オシリスレッドの寮へ逃げ込む生徒が多いのか疑問が残る。理由はオシリスレッドに一度踏み込んだらサイバー流を落第にするという噂が流れているためだ。

 

実際にはそんな事はない。たかがオシリスレッドに集まった所で何ができる位の程度のものなのだが、尾ひれがついた噂によって、サイバー流の人間はオシリスレッドに近づかないため、一種の避難所のような形になっているのだ。

 

「しかし、鮫島校長が辞任させられ、才災校長に変わってからこれほどの事態になってしまうとはな」

 

「お兄さん・・・」

 

「私達は校長に最重要かつ、最大の脅威として認知されてしまっているでしょうね」

 

「明日香さん・・・」

 

「明日香様・・・・」

 

「アイツ等もアイツ等だ!形振り構わずデュエルを挑んできて、負けたらこっちが悪いように言われて、いい気分にならないぜ」

 

「十代・・・」

 

亮がサイバー流の現状に憂いているのは、自身の心身を鍛えてくれたサイバー流が180度変わってしまったためだろう。心境的には複雑だが、今のサイバー流を信じられないのも事実だからだ。

 

明日香はに至っては、自分達の置かれている立場を再確認している。ここにいるメンバーは曲がりなりにもサイバー流に勝ち星を挙げ続けている実力者達ばかりだ。校長はこのメンバーに勝ち星を挙げたならサイバー流の極地『サイバー・エンド・ドラゴン』及びそれを召喚するためのカード群っを渡すとしている。

 

その報酬を手に入れようと所構わずデュエルを挑まれるのだ。もはや休息が取れるのはオシリスレッドの寮だけである。

 

十代に至ってはサイバー流の門下生とのデュエルに対して愚痴っている。勝利を収めれば卑怯な事をした、リスペクトに反するなどの言いがかりをつけられ、相手は高攻撃力でねじ伏せようとし、それを上回ればそれすらも卑怯だと罵ってくる。要は『自分は良くて相手はダメ』だという自己中心的な意見を喚いている。

 

「楽しいデュエル」をモットーにしている十代にとって、サイバー流の門下生はもう楽しいデュエルができる相手ではなくなりつつあったのだ。

 

「僕もオシリスレッドだからって、強引にデュエルを挑まれたし」

 

「俺もなんだな・・・遊来と特訓していなかったらやられてたんだな」

 

翔と隼人はオシリスレッドの落ちこぼれと見做されて戦いを挑まれたが、翔は遊来から渡された『アーマロイドガイデンゴー』と『極戦機王ヴァルバロイド』更には扱いの難しい『スーパービークロイド-ステルス・ユニオン』を使いながら撃退し、隼人に至ってはコアラバーンを多少入れ、親友達と共に作り上げた獣族の統一デッキによって撃退している。

 

二人共、怒りのあまりとんでもなく凄い顔や悪い顔をしていたが、翔はまるで勇者シリーズや進化を促すロボットアニメの主人公並みに叫び、隼人もとある日本の剣術ばりに叫んでいた。

 

「けれど、ここで一度狩りの流れを断ち切らないとアカデミアがサイバー流の狩場になってしまうな」

 

遊来の言葉と同時に食堂にあるパソコンに連絡が入る。それは現校長である才災からであった。

 

「反抗的な生徒の皆さん。いえ、この場合はレジスタンスの皆さんとでも言うべきですか」

 

「・・・!才災、校長!」

 

「お互いに硬直状態、これは良くないと思いましてね。開放デュエルをしませんか?」

 

「開放デュエルだと?」

 

「ええ、レジスタンスの皆さんが勝てば、強引にサイバー流へ介入させた生徒を開放し生徒狩りをやめましょう。無論食事などの向上も約束します」

 

「逆に負けたら?」

 

才災は分かりやすく口元を釣り上げると、喜々として饒舌に話し始めた。まるで、遊来達が負ける事が当たり前であるかのようだ。

 

「そうですね。皆さん全員サイバー流の役に立ってもらいましょう!特に龍谷遊来くん、君の持っているカードを全て没収、更にオシリスレッドへ逃げ込んだ全員は退学とします」

 

それは向こう側が圧倒的好条件な内容だった。だが、逆にこの条件で負かす事が出来れば失脚までとはいかないが、かなりの権威を削ぎ落す事が出来るだろう。

 

「こちらも代表者を出しますので、そちらも決めておいてください。無論、誰でも構いませんがね?では」

 

一方的に通話を切られてしまったが、全員が表情に出さずとも怒りが燃え上がっている。

 

「・・・・っ!!」

 

「遊来?」

 

「大丈夫さ、十代」

 

ポンと十代の肩に軽く手を置くとすぐに外へ出てしまう。手には『ドラグニティ』のデッキが握られていた。

 

「あの野郎・・・・」

 

遊来は怒り心頭だった。オベリスクブルーを降格させられたから?違う。2ヶ月の停学を言い渡されたから?違う。

 

かつての同級生達から貰った『竜騎士』の称号を奪われたから?違う。己の身勝手なさじ加減で好き勝手しているのが許せないのだ。

 

『マスター・・・』

 

「ルイン・・・他の精霊たちは?」

 

『みんな疑心暗鬼になっています・・・マスターと十代さんは大丈夫ですが』

 

「そっか・・・」

 

ルインと話していると夜の空に『サイバー・エンド・ドラゴン』が浮遊しているのが見えた。恐らく、カイザーのカードに宿った精霊だろう。その咆哮をオベリスクブルーのある方角へ向けられていた。

 

『ここからでも感じる「サイバー・エンド・ドラゴン」が泣いています・・・・』

 

「『サイバー・エンド・ドラゴン』が?」

 

『「我が半身はあのような者達に利用される為にあるのではない・・・」と』

 

「サイバー・エンド・・・お前の思いも俺と『ドラグニティ』が背負ってやる」

 

 

 

 

頭の冷えた遊来は食堂に戻り、代表は自分がすると宣言した。無論、反論があったのは当然だが、意外にもその反論者はカイザーであった。

 

「龍谷、俺にも譲れないものがある!代表は俺にやらせてくれ・・・!」

 

「カイザー、俺もきっとカイザーと同じ考えですよ。だけど・・・譲る訳にいかないんです!それに」

 

「それに?」

 

「手の内を全て把握されていて、おまけにミラーマッチ・・・相手も自分も切り札は『サイバー・エンド』どうやって対処するんですか?俺の『サイバー・ダーク』をかしてくれは無しですよ」

 

「む・・・」

 

「防御カードを封じられているし、更には後攻を取られた瞬間に終わりますよ?」

 

「・・・・」

 

これに関しては亮は反論出来なかった。こちらは言いがかりによってモンスター破壊に関するカードを封じられており『サイバー・ドラゴン』デッキのミラーマッチともなればデッキは完全に相手に把握されているはずだ。

 

特にアカデミアのカイザー、それに加えて旧・サイバー流の継承者である亮ともなれば対策をされていてもおかしくはない。

 

「だから、俺が行きます・・・『サイバー・エンド・ドラゴン』の思いも受け継いで」

 

「『サイバー・エンド』の思い?」

 

「カイザー、貴方の持っている『サイバー・エンド・ドラゴン』には精霊が宿っています。最も見る事は叶わないでしょうが、それが泣いていたんです」

 

「精霊・・・それに泣いていたのか『サイバー・エンド』が」

 

「カイザーのカードにも精霊が宿っていたのかよ!」

 

「十代?ああ、そうだよ。信じるか信じないかはカイザー次第です。でも、それを理由に使いません」

 

「龍谷・・・」

 

「本当ならデュエルで決めたい所ですが・・・仲間割れしていると向こうに思われたら意味がない。ですから後腐れなくカード引きで決めましょう」

 

「?どういう事だ?」

 

「レベル1からレベル8のカードを裏向きでテーブルに置いて、そのレベルの数値が高い方を勝ちとし、代表になるんです。一発勝負のゲームですよ」

 

「良いだろう」

 

「明日香、シャッフルをしてテーブルにカードを並べてくれ」

 

「分かったわ」

 

カードの束を受け取った明日香は入念にシャッフルし、テーブルにカードを並べていく。並べ終わると同時に二人が向かい合ってカードを見ていた。

 

「俺はこれだ」

 

「じゃあ、俺はこれです」

 

お互いに手に触れたカードをそのまま自分の手元に引き寄せ、手札にする。お互いに視線を交わすとカードを置く。

 

「「せーの!」」

 

亮のカード『サイコ・ショッカー』★6

 

遊来のカード『ダイヤモンド・ドラゴン』★7

 

「俺の負けか・・・」

 

「これも勝負です・・・ここにいるみんなの思いと共に戦いますから」

 

「ああ・・・頼んだぞ」

 

 

 

 

そして試合当日、デュエル場にはサイバー流へ流れた生徒と対サイバー流のレジスタンスの生徒が会場の観客席に座っており、レジスタンスの主力メンバー7人は入口付近で立っている。

 

通路からカツンカツンと靴音を鳴らし、腕にはデュエルディスクを付け腰には特撮作品のベルトのような物が巻きつけられている。手には剣が握られているがベルトと連動している付属品だ。

 

「俺はこのデュエル・・・反逆者として戦う」

 

階段を登り、対戦相手と対峙する。相手は女性のようで顔立ちもよく美人の部類に入るだろう。

 

「おや?貴方が私の対戦相手?お子様のまんまのようね?そんな物を身につけて。あ、そうそう一応名乗っておくわ、私の名前は高先 才念(たかさきさいねん)よ。それよりも」

 

才念と名乗った女性は遊来に目も呉れず、亮を指差し声を荒らげた。

 

「カイザー亮!どうして貴方が反逆者側にいるのかしら!?今ならまだ間に合うわ、サイバー流に戻ってきなさい!」

 

「お前は変わってしまったな・・・才念。鮫島師範の下で腕を磨いていたお前は気高く、女性でありながらサイバー流の免許皆伝を成し遂げた一人であったというのに」

 

「そんな過去はどうでもいいわ!私は貴方に戻って来いと言っているのよ!」

 

「悪いがその誘いは断る。俺は「今』のサイバー流に賛同できない。俺は俺の中に生きるサイバー流を信じてデュエルする!」

 

「ならいいわ!レジスタンス達を全て倒して、貴方を再びサイバー流の帝王にするわ!」

 

「やれるものなら、な」

 

才念は遊来に向き直り、デュエルディスクを起動した。遊来は本の形をした玩具を取り出し、起動させた。音声は玩具にありがちな曇った音ではなくクリアでテレビ音声のように聞き取りやすくなっており、その音声が非常に渋く、蛇の名を持った傭兵に似ていると生徒の誰かが言っている。末恐ろしい音楽と共に遊来の雰囲気が変わる。

 

『ジャオウドラゴン』

 

「俺の竜達は全て暗黒へ堕ちたとお前達、サイバー流に言われた・・・ならば俺はサイバー流という名の光を押し殺す闇の道を進み、反逆者となって戦う事にしよう」

 

『邪道を極めた暗闇を纏い、数多の竜が秘めた力を解放する』

 

『ジャオウリード』

 

遊来は手にした剣の玩具に本の玩具を近づけ、その後、腰に巻いたベルトに本を装填し剣の柄を使って本の上部分を押し込み、本を開いた。

 

闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)

 

「変身・・・」

 

『Jump out the book, open it and burst.』

 

『The fear of the darkness』

 

『You make right a just, no matter dark joke. Fury in the dark.』

 

これは才災勝作が来る以前、シンクロ召喚のデータをある程度まで収めた褒美として、オーナーである海馬コーポレーションの社長から、遊来自身が頼み込みデュエルディスクに演出用の装置を組み込んでもらえたのだ。ソリッドヴィジョンによる特撮作品の変身シーンの演出。変身後の姿もソリッドヴィジョンによって再現されているだけでデュエルになんの影響もない。

 

『ジャオウドラゴン』

 

『誰も逃れられない・・・』

 

ドラグニティナイトであるアスカロン、アラドヴァル、ガジャルグ、バルーチャ、ヴァジュランダの五体が紫と金をあしらった遊来の鎧となった。だが、あくまでも演出でありデュエルに関しては何の影響もなく、威圧してるのではないかと疑問に思うが特撮作品の演出と似ているためそのような事はない。

 

「ふん、そんな姿に成らなければ戦えないほどの臆病者じゃない」

 

「何とでも言え・・・俺は徹底的に叩き潰す」

 

「「デュエル!!」」 

 

高先才念 LP:4000

 

龍谷遊来(仮面ラ○ダーカ○バー) LP:4000

 

 

遊来の姿を見てもっと早く反応したのが十代だった。特撮作品好きとして普段はカッコイイと思えるのだが、今回は違っていた。

 

「仮面ラ○ダーカ○バーの姿・・・本気だ。遊来は本気でサイバー流に反逆する気だ」

 

「どういう事なの?十代」

 

「あの仮面ラ○ダーは『真実に近づくために自分の組織を裏切った』という設定を持つラ○ダーなんだ」

 

「つまり、あの姿は反逆の覚悟の証って事なの!?」

 

「そういう事ッス」

 

「通りで禍々しい姿をしているのですね。最も姿を変えてるのは演出みたいですが」

 

「自分が反逆のシンボルになって、遊来は戦おうとしているんだな」

 

 

 

 

「先攻は譲ってあげるわ」

 

「ふん・・・ドロー!(サイバードラゴンデッキは後攻が圧倒的に有利だろうに)」

 

[ドローカード]

 

※ガード・ブロック

 

[現在の手札・6枚]

 

※ドラグニティ-セナート

※ドラグニティーファランクス

※ドラグニティ-レガトゥス

※ドラグニティ-ドゥクス

※ドラグニティの神槍

※ガード・ブロック

 

闇に堕ちたと言われたショックで『ドラグニティ』達が意気消沈しているのが分かる。だからなんだ?闇だろうと光だろうと『ドラグニティ』という部族の誇りは失っていないだろうと心の中で叱咤激励する。

 

「俺はカードを2枚伏せて、モンスターを1体セットしターンエンドだ」

 

「反逆の騎士が逃げ腰?まぁ、良いけど、私のターン、ドロー!このターンで終わりにしてあげる!!」

 

才念は見下すような言動と笑みで仮面の戦士となっている遊来を見据える。サイバー流が自信満々な表情をしているという事はそういう事なのだ。

 

「私は『パワー・ボンド』を発動!このカードの効果により三体の『サイバー・ドラゴン』を融合!!現れなさい!我がサイバー流の象徴!『サイバー・エンド・ドラゴン』!!」

 

「・・・・」

 

「アハハハ!声も出ないみたいね!でも、安心なさい。この一撃で貴方の負けなのだから。『パワー・ボンド』の効果によって攻撃力が倍になるわ!」

 

『サイバー・エンド・ドラゴン』攻撃力4000→攻撃力8000

 

「行きなさい!『サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃!!エターナル・エヴォリューション・バースト!」

 

「リバースカード、オープン!『ガード・ブロック』このカードによって戦闘ダメージはゼロになるが、モンスターは破壊される」

 

瞬間、サイバー流側の観客席から野次が飛んできた。「卑怯者」「攻撃を無効化するな!」などなどだ。

 

「卑怯かつ忌々しい事するをするじゃないの!私は『サイバー・ジラフ』を召喚、生贄にして『パワー・ボンド』のリスクを回避するわ」

 

「(アニメ効果の方かな・・・?)『ガード・ブロック』の効果によりカードを一枚ドロー」

 

[ドローカード]

 

※調和の宝札

 

「くっ、私がワンターンキルが出来なかったなんて!ターンエンドよ」

 

「俺のターン、ドロー」

 

[ドローカード]

 

※ドラグニティ-レムス

 

[現在の手札・6枚]

 

※ドラグニティ-レムス

※ドラグニティーファランクス

※ドラグニティ-レガトゥス

※ドラグニティ-ドゥクス

※調和の宝札

 

「手札から魔法カード『調和の宝札』を発動!手札の『ドラグニティーファランクス』を捨ててカードを二枚ドローする」

 

「自らカードを墓地に送るなんて、貴方はリスペクト精神がないの!?」

 

「少なくてもアンタ以上にカードはリスペクトしてるよ・・・」

 

[ドローカード]

※ドラグニティーレムス

※ドラグニティークーゼ

 

 

[現在の手札・5枚]

※ドラグニティ-レムス

※ドラグニティ-レムス

※ドラグニティークーゼ

※ドラグニティ-レガトゥス

※ドラグニティ-ドゥクス

 

『ドラグニティ』の名称を聞いて才念は内心、舌打ちしていた。もしも、展開に必要なパーツが揃っていたらアッという間に負けるからだ。だが、自分の場には攻撃力8000の『サイバー・エンド・ドラゴン』がいる為、負ける訳はないだろうと確信している。

 

「手札の『ドラグニティ-レムス』を墓地に送り、デッキから『竜の渓谷』を手札に加える」

 

「また、モンスターを手札から墓地に!」

 

「うっせえわ、そのままフィールド魔法『竜の渓谷』発動!」

 

黄昏に染まり、竜たちが飛び交う渓谷が現れるが竜が禍々しそうに見えるのは気のせいなのだろうか?

 

「更に『ドラグニティ-レガトゥス』を特殊召喚!」

 

「特殊召喚ですって!?」

 

「ああ、自分のフィールドに『ドラグニティ』のモンスターが居るか『竜の渓谷』があればコイツは特殊召喚出来る!そして墓地にあるレムスを特殊召喚!」

 

「なんですって!?」

 

「自分のフィールドに『ドラグニティ』のモンスターが居れば、レムスは墓地から特殊召喚が可能だ。ただし、この効果で召喚したレムスはフィールドから離れたらゲームから除外されるがな。それと同時に俺はドラゴン族モンスターしか融合デッキから召喚できない」

 

「だからこそ、呼び出す!レベル4の『ドラグニティ-レガトゥス』にレベル2の『ドラグニティ-レムス』をチューニング!二つの種族の決意が、暗黒より竜騎士を生み出す。今こそ駆け抜けろ!シンクロ召喚!飛び上がれ『ドラグニティナイト-ガジャルグ』!」

 

「シ・・・シンクロ召喚!」

 

「ガジャルグの効果発動。デッキからレベル4以下のドラゴン族か鳥獣族モンスターを一体手札に加え。その後、手札からドラゴン族または鳥獣族のモンスターを一体手札から捨てる。デッキから『ドラグニティ-レガトゥス』を手札に加え『ドラグニティ-クーゼ』を墓地に捨て、更に『ドラグニティ-ドゥクス』を通常召喚、その効果によって墓地にいるレベル3以下の『ドラグニティ』モンスターを装備させる!俺はクーゼを装備させる!クーゼの効果発動!装備カード扱いであるこのカードをフィールドに特殊召喚!!更にリバースカード『ドラグニティの神槍』をドゥクスに装備させる!」

 

「な・・・ぁ」

 

「『ドラグニティの神槍』は装備したモンスターのレベルの数×100ポイントアップ!ドゥクスのレベルは4、よって400ポイント攻撃力がアップ。更にドゥクスは自分の場にある『ドラグニティ』カードの数×200ポイントアップする!俺の場には現在4枚の『ドラグニティ』がある!よって更に800ポイントアップ!」

 

『ドラグニティ-ドゥクス』攻撃力1500→1900→2700

 

「ふ、ふん!それでも攻撃力8000の『サイバー・エンド・ドラゴン』には遠く及ばないわ!」

 

「お前には本当の『ワンターンキル』を教えてやる・・・」

 

ソリッドヴィジョンの鎧の奥で遊来は、圧倒的に冷たい目そしていた。それを見なかったのは幸いだろう。

 

「『ドラグニティの神槍』の第二の効果を発動!このカードの効果により、デッキから『ドラグニティ』チューナー『ドラグニティ-クーゼ』をドゥクスに装備させる!よって攻撃力はさらに上昇!」

 

『ドラグニティ-ドゥクス』攻撃力1500→1900→2700→2900

 

「更に『ドラグニティ-クーゼ』は『ドラグニティ』モンスターのシンクロ召喚にしかシンクロ召喚の素材にする事は出来ない!また、このカードをシンクロ召喚の素材にする場合レベル4として扱う事が可能だ!」

 

「なんですって!?」

 

「レベル6の『ドラグニティナイト-ガジャルグ』にレベル4となった『ドラグニティ-クーゼ』をチューニング!天の龍と鳥獣の王が光を背けた時、天空を駆ける竜騎士の邪王が現る・・!今こそ駆け抜けろ!シンクロ召喚!邪の道を行け・・!『ドラグニティナイト-アスカロン』!更に『ドラグニティ-ドゥクス』の攻撃力が変動」

 

『ドラグニティ-ドゥクス』攻撃力1500→1900→2700

 

「確かに強いのだろうけど、そんな雑魚は私の『サイバー・エンド・ドラゴン』には及ばない!」

 

「なら、その『サイバー・エンド・ドラゴン』を封印してやる!アスカロンの効果!墓地に居る『ドラグニティ』モンスターを一体除外し、相手モンスター1体を対象にして効果を発動!そのカードを除外する!」

 

「バカね、墓地に居ても正規召喚された『サイバー・エンド・ドラゴン』は!」

 

「いや、墓地には行かず・・・ゲームから除外だ!よって蘇生は不可能!!」

 

「なっ!?なななな!」

 

「『サイバー・エンド・ドラゴン』・・・お前の無念と嘆き、俺が形にしてお前を悪用する輩にぶつけてやる!だから今は次元の狭間で眠れ!」

 

『サイバー・エンド・ドラゴン』という名の盾が無くなり、才念は恐怖に震えていた。本来ならば黄金に輝いているアスカロンもどこか黒く見えている。

 

「さぁ・・・覚悟はいいな」

 

「ゆ、許し・・・・」

 

「許してくれと言ってきた相手に対し、お前は何と言った?許す訳がないと言っていたはずだよなぁ?」

 

「あ・・・あ・・・・・あああ」

 

「バトルフェイズ!!アスカロン!ドゥクスの二体で攻撃!!ドラゴニック・フォーメーションアタック!!」

 

「きゃあああああああああああああ!!!」

 

高先才念 LP:0

 

合計6000のワンターンオーバーキルを受けた才念はその場で座り込んでしまった。決着が着いた瞬間、遊来の鎧も消えていき、更に巨大モニターが映し出され、才災の姿が写っている。その姿を見た才念は怯えて震えている。

 

「龍谷遊来くん、君は長時間の使用、大きな展開、相手の場をガラ空きにしてからのオーバーキル、更には自分から墓地へカードを捨てる暴挙、返しのワンターンキル。相変わらず君のデュエルはリスペクト精神に反しています」

 

「・・・・」

 

「よって君の『ドラグニティ』デッキは一切の使用を禁止します、良いですね」

 

「・・・・」

 

「話を聞いているのですか?」

 

「リスペクトリスペクトって・・・・うっせえわ!」

 

「なんです?その口の利き方は!?」

 

「だから、うっせえよ!こちらの要求は全て無しにして、お前の要求を通すって訳か?」

 

「む・・・・」

 

「それは交渉じゃねえだろうが・・・!ただの命令だ」

 

サイバー流の生徒達は「卑怯者!」「相手のモンスターを除外だなんて論外だ!」などと遊来に野次を飛ばし続けている。

 

「良いでしょう、生徒狩りと食事の件は了承します。ですが『ドラグニティ』デッキは封印してもらいます。良いですね?それと才念さん」

 

「・・・・」

 

「ひっ・・・・」

 

「貴女には心底失望しました。この学園から出て行きなさい」

 

「で、ですが!私は!!」

 

「出て行きなさい、次はありません」

 

「は・・・・い」

 

才念はフラフラになりながら、デュエル場を降りると亮へと近づいていった。その目には羨望が映っており、話しかける。

 

「私も・・・旧・サイバー流を留めておいたらなにか違っていたのかな・・・」

 

「・・・・・分からん。だが・・・これだけは言える『カードを捨てる事はない』才念」

 

「!ありがとう・・・・」

 

その日の雨が降る夜、才念は退学勧告を通知され島を追い出された。その知らせを聞いた遊来は歯を食いしばる程に悔しがっていた。交渉する前に交渉する相手を処分されたのだ。

 

もしかしたら、レジスタンス側へ迎え入れる事が出来たかもしれないという可能性を摘み取られたのだ。

 

「才災・・・・勝作―――――ッ!!!俺は、俺は必ずお前を校長の座から引き摺り下ろしてやる!!必ず、社会復帰も出来ない程の地獄に叩き落としてやるからなぁあああああ!!」

 

遊来の叫びは雨空の中へと消えて行き、その雨が目元を濡らし遊来がまるで泣いているかのように見えていた。

 

そして、彼らがデュエルアカデミア三年生時、才災勝作という男を追い出し、学園に蔓延っていたサイバー流の過激派から自由な学園生活とデッキ構築を取り戻したという生徒達が後輩達の間で伝説として語り継がれていく事になるが、それはまた別の話である。




これにて私の話は終わりです。

この話での遊来に対するアンチリスペクトからの非難は。

1ターンの時間が長い→展開しすぎ→フィールドをガラ空きにするな→自分から墓地にカードを置くな→お前が返しでワンターンキルをするな→こちらの言う事を全て聞けという感じになります。

ワンターンキルだけは皆様も非難しても納得出来るでしょうが、相手がサイバー流の過激派であるアンチリスペクトですから難しいと思います。

快くコラボさせて下さった交響魔人様へ最大の感謝を。

それと同時に『猫シンクロ使いが行く遊戯王GX!』の方もよろしくお願いします!


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IFストーリー2『煽り少女と陰陽の機械竜と原初の竜騎士』

『サイバー流系メスガキinデュエルアカデミア』とのコラボのお話になります。

前回のコラボ『猫シンクロ使いが行く遊戯王GX!』との時間軸が繋がっています。

遊来が暴走状態(見た目)になります。




停学を言い渡され、俺は本土にある自宅へと帰宅命令を出されてしまい本土へと戻ってきた。無論、悪い事はしていないのでペガサスさんとパソコンを使ってズ○ム会議状態で話している。

 

「酷い言い掛かりデスね・・・『ドラグニティ』はシンクロ召喚のテスター用デッキとして書類も提出していたはずデスが」

 

「無理もありませんよ。アカデミア内部では校長権限が絶対ですし」

 

さすがのペガサスさんも自分の手を額に置いて、呆れてしまっている。アカデミアでの出来事に対してそこまでひどいとは思ってもみなかった様子だ。

 

「意見しただけで停学とは、これでは学園としての意味を成しまセーン!早急に海馬ボーイと相談をせねば」

 

「ペガサスさん、無理だけはしないでくださいね」

 

「私は問題ありまセーン。それよりも遊来ボーイ、自分を追い込むような事をするのは許しまセンよ?」

 

「わかってます、では」

 

通信を切り、遊来は1つの玩具を手にしている。その表紙になっているシールには『Primitive Dragon』と書かれている。

 

「アカデミアから持ち出せたのは、ベルトとこれだけか・・・・」

 

するとまた、パソコンに通信を知らせる着信メロディが鳴った。ブルーアイズのアイコンからして瀬人さんだ。俺はすぐに通信を開いた。

 

「お久しぶりです、瀬人さん」

 

「ふぅん、停学という報告を受けてビデオ通信したが普段通りのようだな」

 

「ええ、まぁ」

 

「あの校長に嵌められたようだが、やることは変わらん。迎えをよこした直ぐに来い!」

 

「え、ちょ!」

 

要件だけ言われて、一方的に切られてしまった。仕方なく準備して自宅を出るとリムジンが自宅前に止まっており、黒服の方が扉を開けてくれた。

 

そのまま海馬コーポレーションに到着するとすぐにデュエルディスクを装着して待機しろとだけ言われてしまった。

 

色々と装置を付けられ、持っていた聖剣ソードライバーの玩具とワンダーライドブックの玩具も取り上げられて解析に回されている。

 

「あの~、瀬人さん?これは一体」

 

「最近は堕落したサイバー流の影響もあってか、デュエルに飽き足らず己の夢を持たなくなった幼い子供達が多くなってきているとモクバから聞かされた。よって、特撮作品の制作会社を買収し、技術や作品権利を収めた上で新しい開発をする事になった。これはその開発の一歩だ」

 

「新しい開発・・・ですか?」

 

「そうだ。貴様のシンクロ召喚に関するデータの謝礼とも言っておく、デュエルディスクに己自身を変身させる機構を組み込み、ソリッドヴィジョンで再現するのだ」

 

「でも、それってデュエルモンスターズに関係が・・・」

 

「そんな事は既に解りきっている。デュエルモンスターズのモンスター、特撮作品の戦士などバージョンアップによって変身を変えられるようにしていく予定だ。無論、戦いはデュエルのみ。だがフィニッシュ時にはエフェクトも発生させる予定だ」

 

「え、エンターテインメント要素が強いですね」

 

「・・・・・開発を開始しろ!」

 

瀬人さんの合図によって開発が始まる。仮面ラ○ダーにしたのは子供達が憧れるヒーロー像に相応しいというものからだったそうだ。俺も大好きだし、結構嬉しい。無論、戦隊物も取り入れるそうだが今は難しいらしい。聖剣ソードライバーの解析が終わったようで返却と同時に身につけさせられ、コードを何本も付けられたが、指示通りに変身モーションをしてみる。

 

ブレイブドラゴン

 

『かつて全てを滅ぼすほどの偉大な力を手にした神獣がいた』

 

「変身!」

 

烈火抜刀

 

「おおっ!?音声がすっごいクリアだ!テレビ放映レベルだよこれ!」

 

ブレイブドラゴン

 

『烈火一冊!勇気の竜と火炎剣烈火が交わる時、真紅の剣が悪を貫く』

 

「音声は問題はないようだが、ソリッドヴィジョンのエフェクトモーションがイマイチだ。続けて改良しろ!」

 

それからというもの、一日かけてエンターテインメント用の変身エフェクト開発に勤しんだ。変身モーションは俺が覚えていたのでそれに合わせる形でソリッドヴィジョンのラ○ダーの姿を合わせていく形となっていったが、瀬人さんは徹底的な拘りを見せ、テレビ放映と同様じゃなければ意味がないと言い出し、三日後にようやくβ版が完成し、改良を重ねてプロトタイプが出来上がった。

 

容量の関係でセ○バー、エグ○イド、ダ○ルしか入れられなかったが容量のバージョンアップも後に行い、俺のデュエルディスクを開発者権限で真っ先に容量強化を行ってくれるそうで、一般販売は俺がアカデミアで二年生に進級するかしないかの月日になるらしい。

 

「堕落したサイバー流を倒せ!それだけだ。今回の開発に関する給与は振り込んである、磯野!車を手配してやれ!!」

 

「はいっ!」

 

その後、自宅へと帰宅したが特にやる事が無くなってしまった。大会の予定を調べると大きくもなければ小さくもない、そこそこの規模の大会が開催されるとあったので出場する事にした。大会ルールは決勝戦時のみデッキの交換が許される事以外は普段と変わらないルールだ。

 

 

 

 

 

案の定、大会に出場していたのはサイバー流の入門者がほとんどだった。そこで俺は序盤において『サイバー・ダーク』を使い、徹底的にサイバー流の相手を倒していった。無論、ギャラリーは俺を責めるような言い方をして来ていたが、いちいち構っていられない。

 

「な、なんでお前が裏サイバーのカードを持っているんだ!?」

 

「言う必要はない、フル・ダークネス・バァァスト!!」

 

「ぎゃああああ!?」

 

勝ち進んでいく中で、一人の少女がデュエルを見物していると同時に笑みを浮かべていた。その笑みは何処か楽しそうな印象を受ける。

 

「へぇ・・・あの人、私と同じ裏サイバーを使うんだぁ・・・?けど、裏サイバーは私が継承したから二つと無いはずなのに。もしかして自力で引き当てたのかな?だとしたら対戦が楽しみ」

 

その場から少女は去り、自分のブロックにおける準決勝への準備をする。無論、裏サイバーを使っている彼と似た状況になり、追い込んでいたが少女はこの時には気づいていなかった。ミラーマッチは既にありえなくなっている事を。

 

「お、お前!裏サイバーで制圧するような事して!恥ずかしくないのか!?それでもサイバー流の出身か!?」

 

「ん~?確かに私はサイバー流出身だけど~、裏を継承してるもの。憧れはしてもこの子達だって、れっきとしたサイバーの一員だし、闇で裏という点だけが違うかな?それじゃバイバイ、フル・ダークネス・バァスト♥」

 

「うわああああああ!!」

 

 

 

 

 

 

そして迎えた決勝戦、ギャラリーはミラーマッチになるだろうと予想している。なぜなら、決勝戦のカードは先程の少女と搦手と圧倒的なパワーによって勝ち上がってきた遊来だったからだ。

 

「私、柳里彩葉です。よろしくお願いしますね」

 

「ああ、俺は龍谷遊来。こちらこそよろしく。それと、テスト運用を頼まれている事があるからそれをやるよ」

 

「テスト運用?」

 

そう言って遊来は特撮作品に出てくる変身ベルトのような物を取り出し、それを腰に装着する。この玩具は海馬コーポレーションが特撮関連のおもちゃ開発を担当している会社を買収し、その会社の技術と海馬コーポレーションの世界の最先端を行く技術によって作られた物だ。

 

「??それって・・・変身ベルト?」

 

「ああ、夢を持って欲しいという思いの篭った、な」

 

遊来はベルトと連動している本の形をした玩具にある表紙部分を開いた。それは赤い物で、その読み上げる声に誰もが驚いている。

 

「(メ○ルギアの主人公の声と同じ?)」

 

ブレイブドラゴン

 

『かつて全てを滅ぼすほどの偉大な力を手にした神獣がいた』

 

「変身!」

 

烈火抜刀

 

ブレイブドラゴン

 

『烈火一冊!勇気の竜と火炎剣烈火が交わる時、真紅の剣が悪を貫く』

 

付属品の剣を引き抜き、変身が完了すると小さい子供達やその作品のファン達からは「おおっ!」といった驚嘆の声が上がり、特撮ファンの大人達も子供に交じって興奮している。

 

「すごいすごーい!本当に変身した!」

 

「これが現在、開発しようとしているもの。モーションデータとソリッドヴィジョンの組み合わせでデュエル中にだけ変身できるエフェクトさ。これなら引っ込み思案の子も己を変えるきっかけにもなるし、デュエルも違った角度から楽しめる」

 

「でも、表情が隠れちゃうから読みが出来なくならないかなぁ?」

 

「顔を見られたくないっていう決闘者もいるだろ?」

 

「あ、そっかぁ・・・」

 

「さて、お喋りは此処まで。そろそろ始めようか?ギャラリーも待ちくたびれてるみたいだし」

 

「アハハ、本当だ」

 

周りでは早くデュエルが見たい!仮面ラ○ダーがデュエルだー!という子供達の声。決勝戦を早く始めてくれー!もう待ちきれないぞー!という一般ギャラリーの声が高らかに上がっている。その中でサイバー流の門下生は不満げだ。

 

「さて、勇気の竜がお相手しよう」

 

「ふふ、裏の本当の切れ味を見せてあげるね?★」

 

 

「「デュエル!!」

 

 

 

龍谷遊来:LP4000

 

柳里彩葉:LP4000

 

 

「先攻は俺だ、ドロー」

 

[ドローカード]

 

※ドラグニティ・ヴォイド

 

[現在の手札 6枚]

 

※ドラグニティ・ヴォイド

※竜の渓谷

※ドラグニティーレムス

※ドラグニティーレガトゥス

※BFー精鋭のゼピュロス

※ドラグニティアームズーミスティル

 

 

「俺は手札からフィールド魔法『竜の渓谷』を発動!更に『竜の渓谷』の効果を発動!手札にある『BFー精鋭のゼピュロス』を墓地へ送り、レベル4以下のドラグニティモンスターを1体デッキから手札に加える!俺は『ドラグニティークーゼ』を手札に加え、更に『ドラグニティーレガトゥス』を特殊召喚!次は『ドラグニティーレムス』を手札から墓地へ送り、二枚目の『竜の渓谷』をデッキから手札に加え、レムスを墓地から特殊召喚!だが、レムスはこの方法で特殊召喚された時、フィールドから離れた場合ゲームから除外される。同時にこのターン、俺は融合デッキからドラゴン族モンスターしか召喚できないけどな」

 

「ふーん、だけどお兄さん。まだ何か隠してるよね?それと、これはデュエルに関係ないけどお兄さん予選で『サイバー・ダーク』を使ってたよね?なんで持ってるの?それにお兄さんはサイバー流出身じゃないよね?」

 

「ああ・・・あの『サイバー・ダーク』は純粋にパックから当てたんだよ(流石に別世界のとは言えないしな)」

 

「そうなんだぁ、すごい強運だね」

 

「運・・・か。逆に引き合わせっていうのもあるのかもしれないしな」

 

「?どういう事?お兄さん」

 

「サイバー流の奴ら曰く『サイバー・ダーク』は忌避すべき裏サイバーのカード、それを使う奴はサイバー流の精神がないとまで言っている。だが、俺は違うと考えているんだ、陰と陽・・・光と影、難しい話になるが光が輝けば輝くほど、闇は深く濃くなっていく・・・この二つは切り離そうとしても切り離せない。人はどうしても闇を嫌う、けれど闇があるからこそ人は眠ることができ、星や月は輝くんだ。ただ一方的に忌避するだけでは本当の力は出ない」

 

「難しすぎてよくわからないけど・・・どちらも必要ってことだよね?」

 

「そうだ、二つが一つとなってより大きなものとなる。それがこれだ!レベル4の『ドラグニティーレガトゥス』にレベル2の『ドラグニティーレムス』をチューニング!」

 

「チューニング?あれ・・・?待って・・!まさか、お兄さんが!?」

 

「二つの種族の結束が、新たな竜騎士を生み出す。今こそ駆け抜けろ!シンクロ召喚・・・!」

 

レムスが光の輪となり、その中を飛翔したレガトゥスがくぐり抜け、光が覆っていく。そして六つの星が一つとなって強く輝きだした。

 

「飛び上がれ、『ドラグニティナイト-ガジャルグ』!」

 

竜の咆哮と共に鳥獣族の戦士がその背に乗った竜騎士が姿を現す。竜の力を持った仮面ラ○ダーの姿をした人物がデュエルモンスターズにおいて竜騎士を召喚した瞬間、一般のギャラリーと子供達は大興奮の声を上げている。

 

「やっぱり・・・ドラグニティを召喚、同時にチューニングしてきた瞬間に気づいたんだ。お兄さんがあの『竜騎士』だったんだね?」

 

「大会に出てるから名前は広まってるか、仕方ないけど。アカデミアから広まりすぎだろ」

 

『竜騎士』と彩葉が口にした瞬間、予選で敗退した決闘者達が驚きの声を上げる。『ドラグニティ』というカテゴリーを使いこなし、シンクロ召喚の実演兼テスターというのは肩書きだけは広まっていたが名前だけは知られていなかった。

 

竜と鳥獣の戦士が一つなり竜騎士の姿となって竜の荒々しい力、鳥獣の戦士の繊細で冷静な力を見せつける姿が『竜騎士』という異名がアカデミアでも本土でも広まったのだ。特に今回は自身も変身しているため、更なる広まりを見せるだろう。

 

「デュエルの続きだ。ガジャルグの効果!デッキからレベル4以下のドラゴン族・鳥獣族のモンスターを1体を手札に加える!俺は『ドラグニティ-ドゥクス』を手札に加え『ドラグニティ-クーゼ』を手札から墓地へと送る。そして、ドゥクスを通常召喚!」

 

「先攻で此処まで展開しちゃって大丈夫なの~?」

 

「心配無用、これが『ドラグニティ』の基本展開だ。更にドゥクスの効果!このカードが召喚に成功した時、自分の墓地にあるレベル3以下の『ドラグニティ』モンスター1体をこのカードに装備カード扱いとしてこのカードに装備する!俺は墓地にあるクーゼを装備!更にドゥクスは自分のフィールドにあるドラグニティのカード1枚につき、攻撃力が200ポイントアップする!」

 

「ええ~!?」

 

「まだだ!ドゥクスに装備されたクーゼの効果発動!このカードが装備カード扱いになっている時、このカードを特殊召喚する!」

 

「え・・えええ?」

 

「クーゼはチューナーモンスター。だが、このカードを使ってシンクロ召喚する場合『ドラグニティ』モンスターしか呼び出せない!そして、クーゼはシンクロ召喚の素材となる時、レベル4として扱う事が出来る!!」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

「レベル6の『ドラグニティナイト-ガジャルグ』にレベル4となった『ドラグニティ-クーゼ』をチューニング!天の龍と鳥獣の王が手を結ぶ時、大地を焼き尽くす槍を持つ竜騎士の王が現る!今こそ地を切り開け!シンクロ召喚・・・!対極の王!『ドラグニティナイト-アラドヴァル』!更にカードを一枚伏せて、ターンエンドだ」

 

竜騎士であるガジャルグがクーゼの開いた光の円をくぐり抜け、十の光の星が一列となり、その中から力強い咆哮と共に白銀の竜騎士が現れ、ソリッドヴィジョンでありながら空を悠然と舞った後、遊来の前へと降り立つ。

 

「すっごおおい!だ・け・ど、私も負けないよ?私のターン、ドロー!えーっと、『サイバー・ダーク・クロー』を捨てて効果を発動♪ このカードを手札から捨てて発動でき、デッキからサイバーダーク魔法・罠カード一枚を手札に加える。私はこの効果で・・・『サイバネティック・ホライゾン』を手札に加えるよ☆」

 

「!!その動き・・・『サイバー・ダーク』か!?」

 

「アハッ☆やっぱり解っちゃう?」

 

『サイバー・ダーク』と聞いてサイバー流の門下生達がブーイングを撒き散らしてきた。それをアラドヴァルが視線を向け、唸り声を上げ咆哮を上げた。ソリッドヴィジョンとは思えない迫力に門下生達は怯えてしまう。

 

「デュエル中への横槍は言葉だけとはいえ、アラドヴァルが許さないようだぞ?」

 

「ふふ、気高いんだね?その子達」

 

「世辞はいらない、まだ・・・お前のターンだろう?」

 

「つれないなぁ。手札に加えた『サイバネティック・ホライゾン』を発動。手札及びデッキからそれぞれ一体ずつ、ドラゴン族・機械族のサイバーモンスターを墓地へ送って発動でき、デッキからドラゴン族・機械族のサイバーモンスター1体を手札に加え、融合デッキから機械族のサイバー融合モンスター1体を墓地へ送るよ。ただし、このカード名の カードは一ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、私は機械族モンスターしか融合デッキから特殊召喚できない。私は手札から機械族の『サイバー・ドラゴン』を、デッキからドラゴン族の[サイバー・ダーク・カノン]を墓地に送り、デッキから『サイバー・ダーク・エッジ』を手札に加え、融合デッキから『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』を墓地に送るよ☆」

 

「そうだ・・・これこそが『サイバー・ダーク』、墓地という名の闇からドラゴンを引き摺り出し、戦いを強要させられると言われているが実際は違う!ドラゴンの力を最大限に吸収、例え力を吸収したドラゴンを身代わりにしてでも勝利への飢えを持ち続ける漆黒の機械竜、それが『サイバー・ダーク』なんだ!表のサイバーがパワーなら、裏サイバーはテクニカルというまさに対極!!」

 

ラ○ダーの姿の遊来が『サイバー・ダーク』の本質と特長を口にした瞬間、サイバー流以外のギャラリーが騒ぎ出す。

 

「ふふ、お兄さんってば褒め上手♥けれど~、容赦はしないよ?続いて魔法カード『竜の霊廟』を発動。デッキからドラゴン族モンスター一体を墓地へ送り、この効果で墓地へ送られたモンスターがドラゴン族の通常モンスターだった場合、さらにデッキからドラゴン族モンスター一体を墓地へ送る事ができる。ただし、このカード名のカードは一ターンに一枚しか発動できない。私はドラゴン族の通常モンスター『ラビー・ドラゴン』を墓地に送り、さらに『比翼レンリン』を墓地に送るよ」

 

「なるほど、『竜の霊廟』を生かす為に通常モンスターを組み入れデッキ圧縮がより多く可能にしている。『サイバー・ダーク』は墓地にドラゴン族があってこそ真価を発揮する」

 

「ふふ、そ・れ・はぁ・・・今までの『サイバー・ダーク』でのハ・ナ・シ。私は更に永続魔法『サイバー・ダーク・ワールド』を発動するね?」

 

「!!それは通せない!伏せカード、オープン!カウンター罠!『ドラグニティ・ヴォイド』!このカード名のカードは一ターンに1枚しか発動出来ない!自分フィールドに『ドラグニティ』シンクロモンスターが存在し、相手が魔法・罠カードを発動した時に発動できる。その発動を無効にし除外する。自分フィールドにレベル10の「ドラグニティ」モンスターが存在する場合、さらに自分フィールドの「ドラグニティ」モンスター1体を選び、その攻撃力を表側表示で除外されているカードの数×100アップできる!」

 

「あれ?このカードの危険性に気付いちゃったの?」

 

「何となく、勘でな。更に『ドラグニティ・ヴォイド』の効果によりドゥクスの攻撃力を100ポイントアップし2000となる」

 

「へぇ・・・それなら私は『サイバー・ダーク・エッジ』を召喚!更にその効果で『比翼レンリン』を装備させるね」

 

『サイバー・ダーク・エッジ』攻撃力800→攻撃力2500

 

「更にカードを2枚伏せて、『サイバー・ダーク・エッジ』で攻撃!この時、『サイバー・ダーク・エッジ』の攻撃力は半分になって直接攻撃が可能だよ☆カウンター・バーン♥」

 

『サイバー・ダーク・エッジ』攻撃力2500→攻撃力1250

 

「うぐううう!?」

 

龍谷遊来 LP:2750

 

「まだまだ、『サイバー・ダーク・エッジ』は『比翼レンリン』の効果で二回攻撃の権利を得てるよ、アハッ☆」

 

「だよ、な!」

 

「『サイバー・ダーク・エッジ』の二回攻撃!カウンター・バーン、二連打♥」

 

「ぐああああ!」

 

龍谷遊来 LP:1500

 

彩葉の『サイバー・ダーク』による攻撃によって遊来のライフポイントを多く奪われ、遊来は片膝を付いた。攻撃の反動だろうが仮面ラ○ダーが片膝を付いた瞬間、小さな子供達が声援を送り、彩葉のファンも彼女に声援を送っており、声援で会場が揺れている。

 

『ふむ・・・あの玩具に少し余興を加えるか』

 

何者かが人差し指から一筋の光を放ち、遊来の持っている本型の玩具を覆った。その瞬間、意志を持ったように変身した姿の遊来の目の前に現れ、オーラのようなものが彼を覆っていく。

 

「う・・ぐうあ・・・あああ!」

 

「お兄さん?」

 

「あ・・・はぁ・・・」

 

力が抜けたようにグッタリと首を垂れ、脇に差し込んでおいた。本型の玩具を手にするとゆっくりと立ち上がった。

 

「あ・・ァァ・・・」

 

首をゆっくりと回すと付属品の剣をベルトの鞘に戻し、その本の玩具の表紙を開き待機状態にし閉じると装填していた赤い本を大きい本へ装填する。

 

『PRIMITIVE DRAGON』

 

BRAVE DRAGON

 

『GET』

 

再び首を回すと逆手、座頭市のような構え方で付属品の剣に手をかけ、引き抜いた。

 

烈火抜刀

 

『バキッ!ボキッ!ボーン!!ガキッ!ゴキッ!ボーン!!』

 

『P!RI!MI!TIVE!!』

 

「ヴゥアアアアアアアアア!!!」

 

『DRAGON!!!!』

 

叫び声を上げ青白い竜が抱きしめるように遊来を包み、新た姿へと変化させた。その抱きしめる姿はまるで心を病んだ何かが逃がさないと言いたげなようだ。

 

「別の姿になっちゃった?けれどそんな姿にならないと勝てないのかなぁ~?☆ターンエンドだよ、フフ」

 

「グ・・・ァァ!」

 

カードをドローし、デュエルを続ける遊来。デュエルモンスターズの決闘者であり特撮ファンからは暴走フォームじゃないか?などの言葉が飛び交っている。

 

「ガアアア!!!」

 

フィールドに居るドゥクスを墓地へと送り、手札にある『ドラグニティアームズーミスティル』を特殊召喚し、その効果によって再びクーゼを装備カードにし更に装備カード状態のクーゼを特殊召喚。レベル6の『ドラグニティアームズーミスティル』とレベル4となった『ドラグニティ-クーゼ』をチューニングさせた。

 

「またシンクロ召喚?」

 

「ヴァアア・・・!!」

 

フィールドに現れたのはレベル10のシンクロモンスター、『ドラグニティナイト-アスカロン』。天の竜騎士と地の竜騎士の二匹が揃ったのだ。その光景は滅多に見られない。今この会場に居る観客達は興奮が最高潮だ。

 

「確かにすごいけど、お兄さん戦術が単調だよ?クスクス」

 

『ドラグニティナイト-アラドヴァル』と『ドラグニティナイト-アスカロン』の同時攻撃が彩葉へと迫る。だが、彩葉は笑っているままだ。

 

『サイバー・ダーク・エッジ』を狙っているのは『ドラグニティナイト-アスカロン』だ。『サイバー・ダーク・エッジ』は身代わり効果で場に残った。

 

柳里彩葉:LP3200

 

「やるぅ!この瞬間!罠カード発動!『サイバーダーク・インヴェイジョン』次のターンから見せてあげる」

 

「ヴァアア!!」

 

『ドラグニティナイト-アラドヴァル』が追撃してくるが、彩葉は更にもう一枚のカードを開いた。

 

「罠カード『和睦の使者』このカードで戦闘で破壊は不可能でライフにもダメージはないよ」

 

「グ・・・ウウウ」

 

「私のターン、ドロー!」

 

「お兄さん、すごいけど弱いね☆魔法カード『闇の誘惑』を使うね♥カードを2枚ドロー、更にさっき引いた『終末の騎士』を除外するね。それから誘惑されて来た『サイバー・ダーク・カノン』の効果を発動。『サイバー・ダーク・キール』を手札に加えて、2枚目の『サイバネティック・ホライゾン』を発動。説明は省くね?私は手札からドラゴン族の『サイバー・ダーク・クロー』をデッキから、機械族の『サイバー・ダーク・キメラ』を墓地に送り、デッキから『サイバー・ダーク・ホーン』を手札に加え、融合デッキから『サイバー・エンド・ドラゴン』を墓地に送るよ。それからぁ『サイバー・ダーク・キメラ』の効果発動、このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。同名カードが自分の墓地に存在しない「サイバー・ダーク」モンスター1体をデッキから墓地へ送るよ♥私は『サイバー・ダーク・ホーン』をデッキから墓地へ送るね」

 

「なんでお前が『サイバー・エンド・ドラゴン』を持っているんだ!?」

 

『サイバー・エンド・ドラゴン』の名を口にしていたのを聞き逃さなかった観客の中でサイバー流の門下生達がざわめき始める。

 

「ん~?以前の師範の免許皆伝のお弟子さんの人が来て、私に渡してくれたの♥」

 

「な、なんだって・・・!」

 

「グウウ・・・」

 

「あ、ごめんね?お兄さん。デュエルを続けるね☆」

 

この状況で彩葉の手札にあるカードが来ていれば、遊来の敗北は確定的な状況である。

 

「そ・し・て、このカードを使うよ?魔法カード『オーバーロード・フュージョン』発動☆このカードの効果で自分フィールド、または墓地から機械族・闇属性の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外する事で、その融合モンスターを1体、融合デッキから融合召喚するね?」

 

「!???」

 

「陰と陽が交わる時、対極の力が今、此処に☆現れて!『鎧皇竜-サイバー・ダーク・エンド・ドラゴン』!!」

 

『鎧皇竜-サイバー・ダーク・エンド・ドラゴン』融合・効果モンスター/星12/闇属性/機械族/攻撃力5000/守備力3800/「鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン」+「サイバー・エンド・ドラゴン」

 

サイバー流の門下生達はやはりという言葉を騒いでいるが、それ以外の観客達は機械竜の陰陽和合である『鎧皇竜-サイバー・ダーク・エンド・ドラゴン』と天と地を表す2体の竜騎士王とも言える『アスカロン』と『アラドヴァル』が並び立っている事に興奮を抑えられない。

 

「『サイバーダーク・インヴェイジョン』の効果を発動♥このカードの効果によってお兄さんの墓地に眠る『竜騎士』の切り込み隊長である『ドラグニティナイト-ガジャルグ』をお兄さんの墓地から引きずり出して『サイバー・ダーク・エンド・ドラゴン』に装備させるよ☆このカードの効果で装備したモンスターは攻撃力を1000ポイントアップさせる装備カード扱いになるからね?♥」

 

『鎧皇竜-サイバー・ダーク・エンド・ドラゴン』攻撃力5000→攻撃力6000

 

「!ハァァァ・・・・」

 

「これがダメ押しだよ、アハッ♥『アタッチメント・サイバーン』の効果を発動!このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できないけど使わないよ。1つ目の効果は自分フィールドのドラゴン族・機械族の「サイバー」モンスター1体を対象として発動できる。自分の手札・フィールドからこのカードを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する効果。2つ目の効果はこのカードを装備したモンスターの攻撃力は600アップする。3つ目はモンスターに装備されているこのカードが墓地へ送られた場合、このカード以外の自分の墓地のドラゴン族・機械族の「サイバー」モンスター1体を対象として発動でき、そのモンスターを特殊召喚する。これを『鎧皇竜-サイバー・ダーク・エンド・ドラゴン』に装備させて攻撃力を更に600ポイントアップさせるね」

 

『鎧皇竜-サイバー・ダーク・エンド・ドラゴン』攻撃力6000→攻撃力6600

 

「!!」

 

「それじゃバトルフェイズ♥『鎧皇竜-サイバー・ダーク・エンド・ドラゴン』は装備カードの数まで1度のバトルフェイズで攻撃できるよ☆よって、2回攻撃だね?お兄さんの悲しみ、砕いてア・ゲ・ル。『サイバー・ダーク・エンド・ドラゴン』の攻撃、エヴォリューション・ダークネス・エターナル・バーストォ!二連打ぁ!」

 

『アスカロン』と『アラドヴァル』は『鎧皇竜-サイバー・ダーク・エンド・ドラゴン』の『『サイバー・ダーク・ドラゴン』の口から発射された青と紫の螺旋の光に飲み込まれ、消滅した。ライフポイントのダメージは3300×2で6600。完全なオーバーキルであり、その余波で吹き飛ばされた遊来は転がりつつ変身が解除され、自意識を取り戻した。

 

龍谷遊来 LP:0

 

「う・・・ううう?俺は・・何を?」

 

決着が着いた瞬間、観客達は大きな声援を出し盛り上がっている。特撮作品のファンからは「攻撃を受けての変身解除は暴走フォームの醍醐味だよな!結果は残念だけど」小さな子供達も怖がっていたが「次は負けるなー!」と叫んでおり、サイバー流の門下生は相変わらず「相手のカードを利用するな!」「卑怯者!」などのヤジを飛ばしている。

 

「ありがとうございました。それとお兄さん、何かあった?演出とは言っても感情まで暴走してた様子だったし?」

 

「デュエルアカデミアって言えばわかるか?」

 

「あ・・・もしかして、そういう事?」

 

「ああ・・・」

 

「表彰前に少し話そ?♥」

 

遊来は彩葉に手を引かれ、別の場所で休息を取りながら会話する。其処にはまるで兄貴分と妹分が話しているようにしか見えない。

 

「そっかぁ・・・あの校長先生に・・・それにアカデミアも荒れてるんだぁ」

 

「ああ・・・俺は今、アカデミアから追い出されている身だ」

 

「あの校長先生、自分に歯向かう人に対して容赦ないもんねぇ・・・それと、ごめんね?お兄さん」

 

「ん?」

 

「今の『サイバー・ダーク』は『ドラグニティ』に刺さるカードばかりだったから」

 

「気にしちゃいないさ。逆に参考になる事が多いだろうし」

 

「そーいえば、お兄さんも『サイバー・ダーク』を使ってたね?このカード、3枚以上余ってるからあげる」

 

「!『鎧皇竜-サイバー・ダーク・エンド・ドラゴン』のカード!?こんなもん受け取れるかよ!」

 

「ううん、お兄さんの『サイバー・ダーク』達が呼んでるように見えるから受け取って?」

 

強引に彩葉から『鎧皇竜-サイバー・ダーク・エンド・ドラゴン』のカードを渡されてしまい、遊来は苦笑しながら受け取った。

 

『ありがとう・・マスターの悲しみを砕いて下さって・・・』

 

「ふえっ!?だ、誰!?お兄さん!今さっき声がしなかった!?」

 

「気のせいじゃないのか?(ルイン、不意打ちはダメだって)」

 

『(彼女が可愛くて、つい・・・お礼も言いたかったですから)』

 

その後、表彰式では決勝戦を戦った二人の栄誉が讃えられ、彩葉には優勝商品が手渡され遊来にも準優勝商品が手渡された。

 

「お兄さん、またデュエルしようね?バイバーイ!」

 

「ああ、またな」

 

『(煽り癖があるみたいですけど、元気な娘でしたね)』

 

「だな、それに俺の『サイバー・ダーク』も喜んでる。あの子が使っていた『サイバー・ダーク』の力に触れたからだろうな」

 

『(彼女の『サイバー・ダーク』は純正。マスターの『サイバー・ダーク』は『シンクロ』と『ドラグニティ』の要素を入れた『亜種』ですものね)』

 

「それに、あの子は俺の中の悲しみを見抜いていた・・・本来は計算高く、思慮深いのかもしれないな」

 

『(あの暴走した姿・・・どうしてでしょうね?演出なはずなのに)』

 

「分からないな・・・とにかく帰るか」

 

「(ですね・・・帰りましょう)」

 

この1ヶ月後、アカデミアへと復帰し『鎧皇竜-サイバー・ダーク・エンド・ドラゴン』を手に入れた遊来がカイザー亮とのタッグによって、サイバー流の過激派達を沈黙させ、レジスタンスの象徴となるのはまた別の話である。




コラボ第二弾『サイバー流系メスガキinデュエルアカデミア』との話でした。

実はメスガキ系キャラを書くのは初めてで、煽り文句とか浮かばずに悪戦苦闘してました。

今回、遊来くんがコラボ先のキャラクターである柳里彩葉ちゃんに敗北しましたが、デッキの相性、展開の持ち直しなどを考慮した結果です。

『ドラグニティ』と新しくなった『サイバー・ダーク』ではいくら『ドラグニティ』が強化されていても相性が最悪で長引けば不利になり、遊来くんは短期決戦を仕掛けなければ勝てず、それをさせないのが彩葉ちゃんの戦略だと思いましたので。

デュエルモンスターズ的な理由が上記ですが、キャラ的には仮面ラ○ダーセ○バーの『プリミティブドラゴン』という暴走フォームに変身(演出だけ)しているので、倒されないと変身解除不可という考えでもあった為です。

※『ストラクチャーデッキ-サイバー流の後継者-』は買って損はないストラクチャーデッキです!裏サイバーを極めたいなら買おう!(ステマ)

『サイバー流系メスガキinデュエルアカデミア』の作者であるカイナ様、本当にありがとうございました!

『サイバー流系メスガキinデュエルアカデミア』の方も大変面白く、メスガキ系の女性の決闘者を読みたい方にはオススメです!そちらもよろしくお願いします!(宣伝)


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IFストーリー3 安価に鍛えられた裏の槍

睦月江介さま作の【安価】安価で作ったデッキでデュエルアカデミア生活【安価】とのコラボです。

安価ネタは初めてですが頑張ってみました。

※『サイバー・ダーク』に関してですが、アニメ版のイラストが裏サイバーとして封印されている物、OCGがレアカードとして一般流通しているものとしています。


1:アカデミア決闘者@オベリスク・ブルー

 

おーっす、新しく立てたこのスレにゲスト来るぞ

 

2:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

おっすおっすイッチ!ってゲスト!?

 

3:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

ゲストって?前の女流決闘者さんみたいな?

 

4:アカデミア決闘者@オベリスク・ブルー

 

そう、みんな驚く事、間違いなし

 

5:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

マジか! で、誰が来るんだ?

 

6:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

ここは楽しいデュエルトークの場だから気楽にやってもらおう

 

 

7:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

楽しいデュエルトークの場(蟲毒)

 

8:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

>>7が的確過ぎて草

 

とりあえずゲストを待つか 

 

 

9:試作決闘者@同調の竜騎士

 

どうも、初めまして。このスレの存在を教えてもらったので来ました。

 

 

10:アカデミア決闘者@ラー・イエロー

 

おー、イッチの言ってたゲストの新入りさんだー!ん?

 

 

11:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

ファッ!?

 

 

12:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

ちょ、待て待て!コテハンに同調の竜騎士って書いてあんぞ!?

 

 

13:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

絶対ウソやん、なりすましじゃね?

 

 

14:試作決闘者@同調の竜騎士

 

なりすましじゃなく、本人だけど?

 

 

15:アカデミア決闘者@オベリスク・ブルー

 

竜騎士、さぁ!お前の罪を数えろ!

 

 

16:試作決闘者@同調の竜騎士

 

今更数え切れるか!って、何言わせんだ!イッチ!!

 

 

17:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

おー、映画版の二人で一人の探偵と蘇った傭兵の掛け合いだ。

 

 

18:アカデアミ決闘者@オベリスク・ブルー

 

ノリノリだった。本人確認したいけど、デッキが読み込めないんじゃなぁ。

 

 

19:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

デッキが読み込めない?

 

 

20:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

あー、そういえばドラグニティって竜騎士だけが持ってるカテゴリーだって噂があったな。恐らく対戦データかI2社からカードデータが送られてないか、もしくは少ないから把握しきれてないのかも。

 

 

21:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

じゃあ、やっぱなりすまし?デッキ見れないんじゃなぁ

 

 

22:試作決闘者@同調の竜騎士

 

それなら別の方法でイッチと戦ったデッキを撮影して貼ってみる。

 

 

23:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

その手があったか!よろよろー!

 

 

 

24:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

早く見たい

 

 

25:試作決闘者@同調の竜騎士

 

なんとか出来たと思う。これでどうだい?[画像]

 

 

26:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

 

おけおけ、これがドラグニティか!って撮影してきたってことはガチガチの本人じゃん!

 

 

27:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

マジで本人登場かよぉ!?本当にシンクロ召喚っていう召喚方法で出てくるモンスターが主力なのな?マジで枠白いし、こんなのがすぐに出てくるのか

 

 

28:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

てか、このデッキ展開力高すぎじゃね?一押し足りない感じあるけど、イッチが負けたのも納得だわ

 

 

29:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

パッと見だけど、ドラグニティ-レムスがガチでやばすぎだろ!竜の渓谷ってフィールド魔法カードのサーチ付きでドラグニティモンスターいるだけで墓地から特殊召喚とかぶっ壊れすぎ!

 

 

30:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

しかもチューナーっていうのが更に拍車を掛けてる。オオワシみたいな鎧を付けてる鳥獣族のドラグニティーレガトゥスがいるだけで上級シンクロ飛んでくるし

 

 

31:アカデミア決闘者@オベリスク・ブルー

 

本人に驚くのとアッという間に主力かつ強力なカードを見抜くの早いな、おまいら。

 

 

32:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

シュミレーターにないのが惜しすぎる!是非とも動かしてみたい!これ、展開すんのさぞ、気持ちいいだろうな。

 

 

33:試作決闘者@同調の竜騎士

 

俺としては何かしらの改良点とか、派生させたくて力を借りに来たんだ。

 

 

34:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

このデッキ、弄る部分がほとんど無いように見えるな。

 

 

35:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

それだけ竜騎士の構築力も高いって事じゃね?

 

 

36:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

確かに。より改良するっていってもこのままで十分殺意が高いし俺らでも竜騎士と同じ構築にするな。

 

 

37:試作決闘者@同調の竜騎士

 

じゃあ、この画像はドラグニティの余りの奴らなんだけど、これで何か出来ないか?同じドラグニティなのに不憫で。

 

[画像][画像][画像][画像][画像][画像]

 

 

 

38:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

あー、これらは能力が貧弱な奴らか。確かに不憫だな、>>37の発言で竜騎士がどれだけドラグニティを大切にしてるか分かるわ。

 

 

39:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

・・・ん?待った!コイツら『サイバー・ダーク』に使えるんじゃね?

 

40:試作決闘者@同調の竜騎士

 

『サイバー・ダーク』?

 

41:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

>>39の発言した本人より。俺もシュミレーターで偶然に対戦出来ただけなんだけど、ドラゴン族を装備して戦う闇属性の機械族だったはず。ちと記憶があやふやなんだ、スマン。

 

 

42:試作決闘者@同調の竜騎士

 

いや、そういった情報があるだけでもありがたい。

 

 

43:アカデアミ決闘者@オベリスク・ブルー

 

けど、『サイバー・ダーク』って名前だけにサイバー流にありそうなカードだな。手に入れるとしたら難しいと思う。

 

 

44:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

 

イッチの言う通りだな。パックから当てようものなら強運の持ち主じゃないと

 

 

45:試作決闘者@同調の竜騎士

 

もしかしてこれか?

 

[画像][画像][画像](絵柄はOCG)

 

 

46:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

ファッ!?

 

 

47:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

なんで持ってんだよ!『サイバー・ダーク』を!?

 

 

48:試作決闘者@同調の竜騎士

 

給料で買ったパックで当てた。知ってる人に聞いたらかなりレアカードらしい、必要枚数当てて、驚かれた。

 

 

49:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

竜騎士、すごい強運・・いや凶運だな、3枚確保とか。てか、竜騎士は働いてたのね。

 

 

50:アカデミア決闘者@オベリスク・ブルー

 

テスターだから雇われてるんだろうな、これで材料がある事は分かったけど・・・戦略は?

 

 

51:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

ドラグニティのドラゴン族ってチューナーモンスターみたいだし、竜騎士のシンクロ召喚が生きるんじゃね?

 

52:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

レベル6から7あたりが基本として・・・上手くやれば8から10くらいはいけるか。

 

 

53:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

うっすら見えた竜操術ってカードも亜種だと使えそうだな。装備カードから特殊召喚できるドラグニティのチューナーモンスターを使えばアッという間に盤面制圧できるし。

 

 

55:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

ドラグニティのドラゴン族は装備したモンスターに効果付与させるみたいだし、かなり『サイバー・ダーク』と相性いいな。二回攻撃やら、場のカード破壊とか。後はウイルス系カードを入れて手札も荒らせればなお良し!

 

 

55:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

ドラグニティの亜種としては良いんじゃないか?純正ドラグニティは美しい程の殺意の塊だった。速攻型としては上位に君臨するぞ。

 

 

55:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

うむ、良い物を見せてもらった。早くシュミレーターにデータ来てくれー!

 

 

56:試作決闘者@同調の竜騎士

 

また、力を借りる時があるかもしれないからブクマしとくよ。シュミレーターの方も意見として会社に言ってみる。仕事だから落ちるね。

 

 

57:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

はーい、いつでもおいでー

 

 

58:名無しの決闘者@デッキ構築中

 

おつー

 

 

 

 

 

 

 

掲示板から離れた後の遊来はゾクゾクしながら笑顔になっていた。この掲示板は自分と同じだ。ワンキルデッキを肯定し、相手を徹底的に倒す事を念頭に置いている。

 

「ネットの中に同士がいたとは・・・分からないものって事かな」

 

それと同時に掲示板で推奨された『ドラグニティ』の亜種を組む事にする。純正に選ばれなかったドラグニティ達を使ってやりたいという気持ちがあった為だ。

 

「よし、これでOK。チューナーモンスターもドラグニティだけじゃないようにしたしシンクロ召喚も出来るだろう」

 

デッキが完成すると同時にパソコンからアラームが鳴る。『ハロー、遊来クン!ハロー、遊来クン!』とウサギのファニーなキャラクターが挨拶している。これはペガサスさんからのビデオ通信のアラームだ。

 

キャラクターをクリックするとペガサスさんの顔が表示される。忙しさの合間にこうして話してくれるのだから、これほど嬉しいことはない。

 

「ハロー、遊来ボーイ。今は海馬コーポレーション近くのホテルに居るのデスか?」

 

「はい、泊りがけで新しいエンターテインメント用のシステムアップデートをしているので」

 

「OH!それは忙しい事デショウ。本当に頑張っていますネ」

 

「やりがいは感じていますよ」

 

「楽しそうでなによりデース。そうそう、大切な要件を忘れてイマシタ!」

 

「大切な要件?」

 

「以前、シンクロ召喚のテストでデュエルアカデミアへ趣いた事があったデショウ?アカデミアの交流試合を再び行いたいと校長からのメッセージを海馬ボーイを通じて伝えられたのデース」

 

「ああ、あの時の!」

 

「遊来ボーイが注目している決闘者は誰か居ましたカ?私としては遊城十代や丸藤亮の二人だと思うのデスが・・・」

 

「確かにその二人も注目していますが、俺が最も注目しているのは城戸遊一郎という決闘者です」

 

「??彼は確かに優秀デスが、どんな所に注目しているのデスか?」

 

「彼は強力なカードも持っていますが、中でもカードショップで最安値で売られているカードを巧みに使って勝利をもぎ取ろうとしている姿勢があり、攻撃力などのステータスだけが全てではないという点をシンクロ召喚以外で示しています」

 

「それは注目すべき所デスね」

 

「だからこそ、彼ともう一度戦いたい・・・俺のシンクロ召喚デッキを貸してでも」

 

「ふぅむ・・・ならば、カードを貸出してでのデュエルを許可しましょう!条件を付ければ譲渡しても構いまセーン!」

 

「条件ですか?」

 

「シンクロ召喚が実用化されるまで、シンクロ用のカードを封印してもらう事デース」

 

「なるほど、確かにそれは当然の事ですね」

 

「それでは海馬ボーイにも打診しておきマース、一週間後あたりにアカデミアへ趣いて下サーイ!」

 

「分かりました、新しいデッキ組んでおきます」

 

 

 

 

 

 

そして一週間となる前日、遊一郎は三沢によって再び遊来がこのデュエルアカデミアに来ることを聞かされていた。

 

「え、また彼が来るのか!?」

 

「ああ、どうやら彼の指名した相手が彼と同じ条件で戦えるとの事だ」

 

「それってつまり・・・」

 

「そう、シンクロ召喚を一足先に触れられるという事だ!」

 

数式研究者としての血が騒ぐのだろう、三沢は珍しく饒舌に喋っている。遊一郎は遊来と戦った時を思い出していた。

 

『レベル6のドラグニティナイト-ガジャルグにレベル4扱いのドラグニティ-クーゼをチューニング! 天の龍と鳥獣の王が手を結び、神の槍たる最強の竜騎士が舞い降りる! シンクロ召喚! レベル10! ドラグニティナイト-アラドヴァル!!』

 

『俺がコピーするのは大革命! フィールドに弾圧される民、逃げまどう民、団結するレジスタンスが存在する場合、相手の手札を全て墓地に送り、相手がコントロールするカードを全て破壊する!!』

 

あの緊張感、高揚感、そして十代が口癖のように言っているワクワクする気持ち、ライフポイントがギリギリの状態でお互いに逆転を狙う勝利への渇望。あのデュエルは滅多に味わえない極上料理と同じであり、遊一郎自身も無意識に笑みが浮かんでいた。

 

「だが、俺が選ばれる事はないだろうな・・・」

 

「なんでさ?」

 

「俺は彼と戦ってもいなければ、直接の面識もない。十代のように大胆かつ大きな実績もなければ、カイザーのように学園最強でもないからな。選ばれる可能性は低い」

 

「そういう事か」

 

「だが、2人に次いで選ばれる可能性があるのは遊一郎、君もだ」

 

「え?」

 

「君はあのテスターの彼と直接戦ったからさ、きっと選ばれる可能性は高い」

 

「あ、そうか」

 

「もし、選ばれたらシンクロ召喚を使った感想を聞かせてくれ!」

 

「分かった、分かったから迫らないでくれ!」

 

その日の夜、遊一郎は自分の精霊である『ハーピィ・ガール』と話していた。シンクロ召喚によって自分が使われる可能性もあるからだ。

 

『ねぇねぇ、シンクロ召喚を使えるようになったら私も使ってくれるの?』

 

「使うかもな、レベル2ならかなり調整がきくし場にも出しやすいからさ」

 

『やったー!』

 

「けれど、一般実装はまだまだ先かもしれないし採用されるかも分からないからな?」

 

『あぅ・・・』

 

『ハーピィ・ガール』は落ち込むがまだ完全に可能性がない訳ではない。シンクロ召喚が実装され使えるようになれば、再び共に戦えるという考えがあるのだ。

 

彼女にとって、遊一郎は自分を大切してくれた持ち主だ。彼と共に戦い彼の勝利に貢献したい、低ステータスでも自分を使ってくれる恩返しをしたいというのが本音だ。

 

「とりあえず、明日にならないとな」

 

『そうね、お休みさない』

 

 

 

 

 

そして試合当日。アカデミアの校舎にあるデュエル場には所狭しと観客である生徒達が観客席に押し寄せている。そして、通路から歩く音が響き、シンクロ召喚の実演兼テスターであり『竜騎士』の異名を持つ龍谷遊来が会場に現れると会場中の生徒が沸いた。

 

「シニョール遊来、挨拶をお願いするノーネ」

 

「分かりました」

 

マイクを受け取り、スイッチをオンにしてマイクテストをすると周りを見渡した。

 

「お久しぶりです。龍谷遊来です!この度、また交流という形でこのアカデミアに来ました。今から自分が指名した相手とデュエルしてもらいます!」

 

皆がゴクリと唾を飲み込む。特に成績が優秀な相手ほど顕著だ。

 

「俺が指名するのは・・・・城戸遊一郎くん!君だ!」

 

「!!」

 

「ステージに降りてきてくれ!」

 

「あ、ああ!」

 

指名された遊一郎はステージに来て遊来と対面する。あの時と変わらずテスターである事を鼻にかけず、楽しむ姿勢を忘れない目は十代のようだ。

 

「今回はこのカード達を君のデッキに組み入れて戦って欲しい」

 

「え?俺のデッキに?」

 

「ああ、今回は大規模なデータ収集と対戦データが欲しいと言われてるんだ。無論、俺のデッキも別物さ」

 

「分かったよ」

 

「それと、なにか変身したい好きなラ○ダー系列は見つかった?」

 

「え!?あー、まだ決まってない」

 

「ふむふむ、それならアレだな」

 

「ん・・・?」

 

「少し待ってくれ」

 

手にしていたアタッシュケースから取り出したのは変身アイテムを模した玩具そのものだったが、子どもが使うものよりも材質もカラーリングも全てが根本から違っている。

 

「それって、もしかして・・・!諭吉さんが数人吹っ飛ぶって噂がある大人用の変身ベルト!?」

 

「そう、それをテスターで雇われている会社でブラッシュアップしてエンターテインメント用に開発・改造されたものだよ」

 

そう言いながら手渡された変身ベルトを受け取ると重みを感じた。玩具とされているがこれは確かに別物だ。

 

「デッキを組み替える時間も必要だろうから、デュエルは一時間後に。その際にはちゃんとベルトを身に付けてきてくれよ?デュエルディスクに装置を付ければ起動するから」

 

そう言って遊来はアタッシュケースの蓋を閉じて、振り返り歩いてきた通路を戻っていってしまった。

 

そして待機部屋で受け取ったカードを見ていると遊一郎は驚愕していた。其処には効果のないモンスター、通称バニラモンスターのチューナーモンスターと効果付きのチューナーモンスターやシンクロモンスター、シンクロ召喚に関連する罠や魔法カードがそれぞれ三枚ずつあったのだ。

 

「これ、全部シンクロ召喚に関連するカードばっかりだ!これを組み入れてデッキを作れって・・・うーん」

 

『ねえねえ、私を組み入れてよね!』

 

「ああ、うーん・・・ん?これだ!!」

 

1枚のカードを見て、遊一郎は思いついたようにデッキを組み直していく。無論、貸し出されたチューナーモンスターや魔法カードなどもしっかりと入れている。

 

「時間まで残り10分か、トイレも行ったし飲み物も飲んだし・・・後は」

 

遊来から渡されていたベルトを体幹に身につけて、準備を終えた。デュエル場に続く通路を歩いていき、到着すると皆が待っていたように声を上げている。

 

『わ、すごい歓声』

 

「これがプロだと当たり前になるからな?」

 

「相変わらず、すごい関心だな」

 

『それは当然だと思いますよ』

 

『え?あれって・・・!』

 

「どうした?え!?」

 

「それデーハ!第二回、交流デュエルを開始するノーネ!」

 

クロノス教頭の声と共にお互いにデュエルディスクに装置を取り付け、ベルトの機能を起動させる。それと同時に遊来は変身アイテムであるカードデッキを投げて渡した。

 

「これって・・・!」

 

「そちらの名前に因んでみた。変身プロセスは単純だけど。強化フォームでデュエルしよう」

 

「分かった!」

 

お互いに龍と蝙蝠の紋章が入ったカードデッキを鏡合わせのように翳すとベルトに組み込まれたセンサーが反応し、装着音が重なるように鳴った。

 

 

遊来は拳を握って曲げた右腕を内側に向けて振りかぶるポーズを決め、遊一郎の方は右手を左斜め上に伸ばしたポーズを決めた。

 

「「変身!!」」

 

バックルにデッキを装填すると鏡の虚像が重なるように二人の姿を変えた。

 

「龍○のダブル主人公だー!」

 

「すげええ!」

 

と観客は騒いでいる中、遊一郎は自分が変身している事に呆気に取られていた。ノリノリでやってしまったが、映像作品として楽しんでいた出来事が自分が行ってしまったのだから驚きは隠せないだろう。

 

「えええっ!?俺がラ○ダーに変身した!?」

 

「これが今、この学園のオーナーが開発しようとしているエンターテインメント用のソリッドヴィジョンさ。容量は解決できたけど、まだまだモーションが出来上がってないのが多いんだよ。これは容量の方を解決した改良型の一つに過ぎないんだ。ちなみにソリッドヴィジョンだから重くもないし、デュエルに影響もない」

 

「本当だ。それにこれが改良型の一つ!?」

 

「最終的には世界中の子供達に普及させて、夢を持って欲しいというのが理想らしいから。特撮作品以外にもデュエルモンスターズの人型モンスターに変身できるようにするそうだ」

 

「なるほど、壮大な夢だなぁ」

 

「そう思うよな。さ、二段回目の変身といこうか。それとセリフもね」

 

遊来がバックルのカードデッキからカードを引き抜くがこれはソリッドヴィジョンで再現されており、実際は何も手にしていない。それでも質感が本物のように見えるのは技術録が高い事の証明だ。それに倣って、遊一郎もバックルからカードを引き抜く。

 

二人が引き抜いたのは二枚の黄金の羽根のカードだった。一枚は青の宝玉が有り、もう一枚は赤の宝玉が有る。青からは激しい突風が、赤からは激しい炎が立ち昇ってぶつかり合っている。

 

遊来が持つのレイピア状の武装とガントレット状の装身具がそれぞれ、青い盾状と赤いハンドガン状に変化し、遊来は青い盾にある上部のカードスロットに羽根のカードを装填し、遊一郎はの方は展開した口部分に羽根のカードを装填した。

 

『SURVIVE』

 

『SURVIVE』

 

「俺は絶対に負けられない!1つでも(カード)を奪ったら、お前はもう・・・後戻り出来なくなる!!」

 

「・・・・俺はそれを望んでる」

 

炎のソリッドヴィジョンの演出を利用し、挿入歌が流れアンティールールの言葉をパロディ風のセリフを言う2人だったが、原作にある2人の主人公が戦い合う前の名シーンが想起され、観客達は興奮と感動が同時に出てきていた。特撮作品にハマらせた遊来の差金もあってか、名シーンのセリフを覚えてしまっていたのだ。

 

「それからさ、さっきからこっちを見てるのって『ハーピィ・ガール』かな?」

 

「え!?」

 

『あ、あの人!私が見えてるの!?』

 

エンターテインメントの変身もそうだが、それ以上に遊一郎が驚いたのは精霊である『ハーピィ・ガール』を遊来が認知してきた事だった。

 

「可愛い精霊だな。じゃあ、こっちの精霊も紹介しないとな『ルイン』『レヴァティン』!」

 

『はい』

 

『呼んだかいー?』

 

「ファッ!?え・・・は、『破滅の女神ルイン』!?それに『ドラグニティアームズーレヴァティン』!?」

 

「そ、これが俺の相棒と友人だ」

 

『あ・・あああ、嘘・・・!『破滅の女神ルイン』様に伝説とも言われてる『ドラグニティ』の竜戦士『レヴァティン』が目の前に!?』

 

 

『そうそう、一応上級の精霊だけど見える人には見えるし』

 

「そ、そうなんだ・・・」

 

精霊が見えるようになっていても遊一郎自身、驚きの連続で言葉が見つからない。彼の相棒の『ハーピィ・ガール』は背中に隠れて見ている状態だ。

 

『おーい、ハーピィ族のお嬢ちゃん!そんなに畏まらず怖がらなくても大丈夫だってばー!』

 

『レヴァティン』が声をかけると『ハーピィ・ガール』は緊張しつつも、遊一郎の隣に立つ。

 

「さ、紹介も終わったし本番と行こうか」

 

「ああ、闘ろうか」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

龍谷遊来:LP4000

 

城戸遊一郎:LP4000

 

「先攻は俺だ!ドロー!」

 

遊一郎の先攻からスタートし、ドローからスタートする。遊来から貸し出されたカードが早速あるが今は使う事ができない。

 

「なら、モンスターを1体セット!さらにカードを1枚伏せて、ターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー!俺は手札から『竜の渓谷』を発動!そのまま、効果を使用し手札を一枚捨て、デッキからドラゴン族モンスターを墓地へ送る」

 

 

[現在の手札4枚]

※竜操術

※ブラック・ボンバー

※サイバー・ダーク・ホーン

※和睦の使者

 

「『サイバー・ダーク・ホーン』を攻撃表示で召喚!!墓地に送った『ドラグニティ-ブランディストック』を装備させる!」

 

『サイバー・ダーク・ホーン』攻撃力800→攻撃力1400

 

「バトルだ!セットモンスターに攻撃!ダーク・スピア!」

 

「セットモンスターは『島亀』だ!残念だったな!」

 

「くっ、反射されたか」

 

龍谷遊来:LP3400

 

「俺もカードを1枚伏せて、ターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー!借りたカードを使わせてもらうぜ?俺は『ギャラクシーサーペント』を召喚!」

 

『ギャラクシーサーペント』チューナー・通常モンスター/星2/光属性/ドラゴン族/攻撃力1000/守備力0

 

『宵闇に紛れて姿を現わすと言われるドラゴン。星の海を泳ぐように飛ぶ神秘的な姿からその名が付けられた。その姿を見た者は数えるほどしかないと伝えられるが、見た者は新たな力を得られるという。』

 

「!早速来るか、良いぜ!来い!」

 

「ああ!行くぞ!レベル4の『島亀』にレベル2の『ギャラクシーサーペント』をチューニング!騎士の志が、大地との絆を結ぶ!シンクロ召喚!来い!!レベル6!『大地の騎士ガイアナイト』!!」

 

『大地の騎士ガイアナイト』シンクロモンスター/星6/地属性/戦士族/攻撃力2600/守備力800/チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

 

荒馬にも似た名馬と一体化している騎士が光の輪の中から現れ、遊一郎のを守るかのように前に立っている。

 

「ガイアナイト、シンクロ召喚されるモンスターの中で効果を持たないシンクロモンスター。だが効果が無いからこそサポートが豊富だ」

 

「このシンクロモンスターは今の俺にはピッタリすぎる。行くぜ!ガイアナイトで『サイバー・ダーク・ホーン』を攻撃!!大地槍殺(グランド・シェイバー)!!」

 

「うあああ!」

 

龍谷遊来:LP2200

 

「だが『サイバー・ダーク・ホーン』は装備されたドラゴン族を身代わりにする事で破壊を免れる。そして、アキュリスの効果発動!モンスターに装備されているこのカードが墓地へ送られた場合、フィールドのカード1枚を対象として発動する。そのカードを破壊する!俺はガイアナイトを選択し破壊する!!」

 

「させるか!速攻魔法発動!『禁じられた聖衣』!!このカードはフィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる!その効果によってガイアナイトはターン終了時まで攻撃力が600ダウンし、効果の対象にならず、効果では破壊されない!」

 

禁忌とも言われる白い衣から発せられた光がガイアナイトに降り注ぎ、その瞬間ガイアナイトを貫こうとしたアキュリスが霧散してしまう。

 

「やるなぁ・・・!」

 

「こちらのセリフさ、まさか『サイバー・ダーク』を組み入れた『ドラグニティ』とは」

 

「ネタバレは、無しの方向で」

 

「わかってるさ、メインフェイズ2でカードを1枚伏せてターンエンド!この瞬間、ガイアナイトの攻撃力が元に戻る!」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※ラビー・ドラゴン

 

[現在の手札3枚]

※竜操術

※ブラック・ボンバー

※ラビー・ドラゴン

 

「俺は再び『竜の渓谷』の効果を使い、手札を一枚捨ててデッキからレベル4以下のドラグニティと名のついたモンスターを手札に加える!俺は『ドラグニティ-ギザーム』を手札に加える!」

 

「一体、どんなタクティクスを見せてくれるんだ?」

 

「更に永続魔法『竜操術』を発動!!」

 

「『竜操術』だって!?」

 

「そうだ。このカードには2つの効果がある!1つ目は「ドラグニティ」モンスターカードを装備した、自分フィールドのモンスターの攻撃力は500アップする。2つ目は1ターンに1度、自分フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。手札からドラゴン族の「ドラグニティ」モンスター1体を装備カード扱いとして対象の自分のモンスターに装備する」

 

「まさかドラグニティ!?」

 

「そうだ!俺はこのカードで『ドラグニティ』のドラゴンを進化させる!『ドラグニティ-ギザーム』を召喚!このカードが召喚された時に効果発動!このカードが召喚に成功した時、自分の墓地の風属性・レベル4以下のドラゴン族または鳥獣族のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する!俺は墓地に眠る『ドラグニティ-ブランディストック』を墓地より特殊召喚!!」

 

「先ずはレベル4の『サイバー・ダーク・ホーン』にレベル3の『ドラグニティ-ギザーム』をチューニング!王者の叫びが木霊する!勝利の鉄槌よ、大地を砕け!シンクロ召喚!レベル7!羽ばたけ『エクスプロード・ウィング・ドラゴン』!」

 

「『エクスプロード・ウィング・ドラゴン』!?」

 

『エクスプロード・ウィング・ドラゴン』シンクロ・効果モンスター/星7/闇属性/ドラゴン族/攻撃力2400/守備力1600/チューナー+チューナー以外のドラゴン族モンスター1体以上

 

[このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ、フィールド上に表側表示で存在するモンスターとこのカードが戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを相手ライフに与える事ができる]

 

「まだだ!レベル7の『エクスプロード・ウィング・ドラゴン』にレベル1の『ドラグニティ-ブランディストック』をチューニング!」

 

「れ、連続シンクロ!?」

 

「漆黒の中に生きる狩人が、新たな牙を磨き上がる!シンクロ召喚!全てを噛み砕け!!レベル8『ダークエンド・ドラゴン』!!」

 

『ダークエンド・ドラゴン』シンクロ・効果モンスター/星8/闇属性/ドラゴン族/攻撃力2600/守備力2100

 

チューナー+チューナー以外の闇属性モンスター1体以上

 

 

「行くぞ、このカードでガイアナイトを倒す!」

 

「そんな事!」

 

観客の生徒達も無理だそんな事!どうやって倒すと言うんだ!?などの言葉が飛び交っており、懐疑的だ。

 

「確かに攻撃力は互角だ!だが、『ダークエンド・ドラゴン』の効果発動!1ターンに1度、このカードの攻撃力・守備力を500ポイントダウンさせ、相手フィールド上に存在するモンスター1体を墓地へ送る事ができる」

 

「なんだって!?」

 

「大地の騎士を墓地へと引きずり込め!『ダーク・イヴァポレイション』!」

 

自らを傷つけ腹部にある顔のような部分から闇が吐き出され、その闇がガイアナイトにまとわり付く。

 

『ダークエンド・ドラゴン』攻撃力2600→攻撃力2100

 

「ガイアナイトが!」

 

「そのままダイレクトアタック!!『ダーク・フォッグ』!」

 

「うああああ!!」

 

城戸遊一郎:LP1900

 

龍○サバ○ブの姿になっている遊一郎が吹き飛ばされてしまい、倒れるが直ぐに起き上がってデュエルディスクを構える。

 

「このデュエル・・・まるで、仮面ラ○ダー龍○の鏡の中での戦いみたいだ・・・!」

 

「俺のターンは終了。なら、こう言うべきかな?『戦え・・・戦え・・・!!』」

 

ナ○トサバ○ブの姿になっている遊来は殆どノリノリの状態だ。青いマントのエフェクトが空調の空気の流れを感知し、揺らめいている。

 

「俺のターン、ドロー!俺は手札から『沼地の魔神王』を召喚!」

 

「融合素材の代わりになるカード?そういえば俺が渡したな」

 

「さらに手札から魔法カード『ミラクルシンクロフュージョン』を発動!」

 

「!!ま、まさか!?」

 

「そう、そのまさかだ!俺は『沼地の魔神王』と墓地にある『大地の騎士ガイアナイト』を融合させる!!大地から天空へと駆け上がり、更なる上を目指せ!融合召喚!!『地天の騎士ガイアドレイク』!」

 

「ここで、『ガイアドレイク』だとぉ!?」

 

 

『地天の騎士ガイアドレイク』融合・効果モンスター/星10/地属性/獣戦士族/攻撃力3500/守備力2800

 

「大地の騎士ガイアナイト」+効果モンスター以外のシンクロモンスター

 

このカードは効果モンスターの効果の対象にならず、効果モンスターの効果では破壊されない。

 

 

「行くぞ、『地天の騎士ガイアドレイク』で『ダークエンド・ドラゴン』を攻撃!天地槍殺!」

 

「くっ!罠カード『和睦の使者』を発動!このターン、自分のモンスターは戦闘破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージを0にする!」

 

『ガイアドレイク』が槍を『ダークエンド・ドラゴン』へ突き刺そうとした瞬間、ローブを纏った女性三人が『ダークエンド・ドラゴン』の前に立ち、法具を取り出し詠唱を行い防壁を作り出し守った。

 

「『ダークエンド・ドラゴン』を守った!?」

 

「コイツをやられるのは困るからな!」

 

「俺はターンを終了する」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

[現在の手札2枚]

※ブラック・ボンバー

※闇の誘惑

 

「俺は『闇の誘惑』を発動!!デッキからカードを2枚ドロー!」

 

[魔法によるドローカード]

 

※攻撃の無力化

※調和の宝札

 

「『ブラック・ボンバー』を除外してデメリットを消す!カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

「俺のターン!ドロー!このままバトルだ!行けぇ!ガイアドレイク!!」

 

「まだだ!罠カード!攻撃の無力化!!」

 

「くそう、決め手が引けない!ターンエンド!!」

 

「俺のターン!!ドロー!」

 

[通常ドローカード]

※ドラグニティーファランクス

 

「引けるか・・・?『調和の宝札』発動!ファランクスを捨てて、カードを2枚ドロー!」

 

[魔法によるドローカード]

 

※チューン・ウォリアー

※和睦の使者

 

「くっ!まだダメか!また、カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

「俺のターン、ドロー!バトルは・・・しない!ターンエンド!!」

 

お互いにドロー合戦となり、決め手を引く事が出来ない。どちらが先に決め手を引き込むかが勝負を決める。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

[通常ドローカード]

 

※ミラクルシンクロフュージョン

 

「(来た!!けどあと一枚!)」

 

「ターン、エンド・・・」

 

遊来はキーカードを一枚引くことができたが、決め手ではなかった。遊一郎のターンとなり、彼もカードを引く。

 

「俺のターン、ドロー!(違う、このカードじゃない!)バトルだ!ガイアドレイクで『ダークエンド・ドラゴン』を攻撃!」

 

「罠カード、発動!二枚目の『和睦の使者』!」

 

「くっ!攻めきれない!ターンエンド!」

 

「(このドローで、勝負!)俺のターン!ドローー!!」

 

[通常ドローカード]

※決戦融合-ファイナル・フュージョン

 

「(来た!)先ずは『チューン・ウォリアー』を召喚!」

 

「チューナーモンスター?シンクロ召喚か!?」

 

「いや、コイツは戦士族(・・・)だから召喚したのさ!このターン、俺も使わせてもらう!魔法カード『ミラクルシンクロフュージョン』発動!」

 

「なっ!?」

 

「場の2体『ダークエンド・ドラゴン』と『チューン・ウォリアー』を除外し、現れろ!『波動竜騎士ドラゴエクィテス』!!」

 

『波動竜騎士ドラゴエクィテス』融合・効果モンスター/星10/風属性/ドラゴン族/攻撃力3200/守備力2000

 

ドラゴン族シンクロモンスター+戦士族モンスター

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー!(何か罠か?だけど、攻めなきゃ勝てるものは勝てない!)バトルだ!行け!!ガイアドレイク!!」

 

「それを待っていた!!罠カード発動!『決戦融合-ファイナル・フュージョン』!!」

 

「『決戦融合-ファイナル・フュージョン』だって!?」

 

「そう、このカードは自分フィールドの融合モンスターが相手フィールドの融合モンスターと戦闘を行うバトルステップに、その融合モンスター2体を対象として発動する事が出来る。その攻撃を無効にし、お互いのプレイヤーはその融合モンスター2体の攻撃力の合計分のダメージを受ける!よって『ガイアドレイク』と『ドラゴエクィテス』の攻撃力の合計、6700のダメージをお互いに受ける!!」

 

「なんつーカードを使ってくるんだ!」

 

「龍○なら共倒れはあって当然だ!」

 

「そこまで忠実に原作再現しなくても良いだろー!」

 

 

『ガイアドレイク』と『ドラゴエクィテス』の2体の槍が、互いにぶつかりあって発生した衝撃が双方に襲い掛かり、龍○サバ○ブとナ○トサバ○ブの二人はお互いに真後ろへ吹き飛び、変身が解除されてしまった。

 

龍谷遊来:LP0

 

城戸遊一郎:LP0

 

デュエルが終了と共に座り込んでしまった遊一郎に遊来は手を差し延べ、その手を掴んで立ち上がると笑みを浮かべた。

 

「引き分けか・・・けど、それ以上に仮面ラ○ダーに変身してデュエルするのが良い意味でヤバかった!」

 

「楽しんでもらえたのなら良かったよ。それと、貸出したガイアナイトやチューナー、シンクロモンスター達は君に託したい」

 

「え!?こんな貴重な物、受け取れないって!」

 

「いや、受け取って欲しい。シンクロ召喚が実装されないと使えないからその間は封印してもらうけどね」

 

「うーん、分かった受け取るよ!シンクロ召喚、実装の日が楽しみだな!」

 

その後、遊来は本土へ帰り、海馬コーポレーションにデータとデュエル時のエンターテインメントモーションのデータを提出した。

 

「負けてられないな」

 

今回は引き分けという形になってしまったが、また対戦の機会があれば強力なデッキをぶつけなきゃ負けると思うのだった。

 

掲示板ではラ○ダーのデュエルや遊一郎がシンクロ召喚を使ったという話題で大いに盛り上がっていたのを遊来は知る由もない。




睦月江介さまの作品。【安価】安価で作ったデッキでデュエルアカデミア生活【安価】とのコラボでした。

遊一郎へシンクロ召喚に必要なものをプレゼントしましたが実装まで封印ですので使えう事は難しいです。

コラボの件を了承して頂いてありがとうございました!

【安価】安価で作ったデッキでデュエルアカデミア生活【安価】の掲示板の住人達によるガッチガチのガチデッキを原作キャラへ使わせたら?などの設定もあるようで徹底的な勝利への姿勢が見れます。

是非オススメですので、読んでみてください!

次回から本編を進めます。


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IFストーリー、並行世界バトル!鏡合わせの二人

ドラ○ブと別世界の丸藤翔がデュエル

※今回のお話は交響魔人さまの作品『猫シンクロ使いが行く遊戯王GX!』の世界と私の作品である『手にした竜騎士と破滅が気難しい』の本来の世界が繋がった設定となっています。

交響魔人さまの作品『猫シンクロ使いが行く遊戯王GX!』からお借りした『丸藤翔』が出て来ます。

アカデミアを退学した翔と仮面の英雄の仮面を被った彼と戦います。

※決着は1キル返しです。


ネットカフェの利用時間を終え早朝に店を出る丸藤翔。彼はアカデミアを自ら退学し、才災勝作の理念に心酔しその思想のを広めようとしていたが、才災勝作はアカデミアを追放され、新体制になったアカデミアは誰も才災勝作の思想に付いて来なくなった。

 

それに嫌気をさし、唯一の友人で兄貴分だった遊城十代と袂を別ち、本土へ戻ってきてからの生活は荒れていた。

 

才災勝作の思想を語るだけで目の敵にされその日、その日の日銭を何とか稼ぐ毎日だった。

 

「どうして、僕ばっかりがこんな目に合うんッスかぁ!」

 

嘆くと同時に翔の身体は光に包まれ、あまりの眩しさに腕で目を覆い守る。光が収まり、目を開けるとそこは自分が知っている場所であった。

 

「デュエル・・・アカデミア?」

 

そう、デュエルアカデミア本校のある島であった。だが、人影が無くまるで東武ワールド○クウェアのミニチュアを彷彿とさせるくらいに静かだ。

 

「ここがアカデミアなら・・・」

 

何を思ったかオベリスクブルーの食堂へ無断侵入し、そこにあった食材を勝手に調理して食事を始めたのだ。

 

「美味い・・・美味いっす!三日もまともに食べてなかったから染み渡るッス!」

 

食事を終えた翔は満足したのか、今度はオシリスレッドのかつて自分が生活していた部屋に潜り込み、ベッドに寝転んだ。

 

「今日は此処で寝るッス・・・!誰も居ないから構わないッスよね」

 

 

 

 

そして翌日の8時、ラー・イエローでシャワーを浴び服も洗濯し身なりを綺麗にして満足していた。

 

「誰もいないから此処は天国ッスね」

 

そんな呑気に過ごしている時だった。誰かが歩いてくる足音が聞こえ咄嗟に身を隠す。

 

人数は五人、誰もが全身を覆い隠すようにマントのようなもので顔すらも隠しており、正体はわからない。

 

「誰なんッスか・・・あれは」

 

五人はオベリスクブルーへ向かっていき、姿を消した。翔は長いため息を吐くがいずれは見つかってしまうだろう。

 

「帰る手段がわからないのに・・・どうすればいいんだろう?」

 

それと同時刻、新たに島に上陸してきた4人はオベリスクブルーの食堂で誰かが食事をした痕跡を見つけ出していた。

 

「これ、誰かが食事を作って食った跡だよな?」

 

「変ね・・・アカデミアの生徒は今、全員本土へ帰宅しているはずよ」

 

「無断で誰かが入り込んだのかもしれないな」

 

「しかも、肉やご飯ばかりが集中して食べられてるッス・・・腹持ちが良い物って言えばいいのかな?」

 

「みんな、正体を隠すために俺のデュエルディスクと連動させて変身機能を使えるようにするから、近くに来てくれ」

 

一人の青年がデュエルディスクのボタンを押すと同時に他の四人のディスクのライフポイント表示部分に点滅が起こり、認証した合図が入る。

 

「侵入者を見つけたらデュエルで捕まえよう」

 

「ああ」

 

「分かったッス」

 

「そうしましょう」

 

「デュエルで捕まえるなんて面白そうだぜ!」

 

 

 

 

そして、侵入者である翔はアカデミアにある森の中に隠れていた。まさか、誰かが来るとは思わず、急いで詰められるだけの荷物を詰め込み、金銭になりそうな物も入れてある。

 

「逃げなきゃ・・・ここから逃げなきゃ」

 

「見つけたよ、侵入者」

 

「!?」

 

振り返るとそこには自分と似た背丈の人物が出口付近に立っていた。逃亡防止用のチェーンによって捕獲され、逃げることができない。

 

「くっ」

 

「逃げたかったら勝つしかないよ?僕にデュエルでね・・・」

 

「デュエル?はははっ!サイバー流の僕に挑むつもりッスか!?いい度胸ッス!受けてやるッス!」

 

デッキをセットしてデュエルディスクを構える翔、すると目の前の少年のような青年は身体を覆っているマントのような物の中から腰に巻かれたベルトを顕にする。

 

「ん?今時、子供の玩具を身に付けてるんッスかぁ?お子様ッスねえ」

 

「ベルトさん、行くッスよ!」

 

『OK!START YOUR ENGINE!!』

 

ベルトにある車のキーのような部分を半回転させると同時に、車のエンジンを噴かす音と似た待機音が流れ続ける。

 

青年の手にある車の形をした『シ○トカー』をレバーに変形させると腕につけた車のギア状のブレスレットに装填した。

 

「僕は・・・僕自身を乗りこなしてみせるッス!!変身!!」

 

同時に腕を大きく振りかぶるように回した後、両腕を広げると同時に赤いアーマーと銀色の複眼が装着されていき、最後に車のタイヤがタスキ掛けのように装着される。

 

 

DRIVE

 

TYPE SPEED

 

 

「か・・・仮面ラ○ダードラ○ブ!?」

 

「さぁ、ひとっ走り付き合ってもらうッス!でも、今回は基本形態じゃなく僕のお気に入りで戦わせてもらうッス!!」

 

新しい『シ○トカー』が現れ、それを手にするドラ○ブ。その形は世界最速を決める車のレースF1で使用される車と同じ形をしている。

 

推奨BGM[T-SQUARE TRUTH 『F1テーマ曲』]

 

 

DRIVE

 

TYPE FORMULA

 

 

フォーミュラの名の通り、青くF1の車体をイメージしたアーマーが装着され、複眼は遮光グラスのように黒くなっていて、タイヤは小型の物が両腕に装着されている。だが、ソリッドヴィジョンである為、デュエルディスクにはなんの影響もない。

 

「さぁ、デュエルだ」

 

「ふん、姿が仮面ラ○ダーだとしても見せかけッス!」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

???(仮面ラ○ダードラ○ブ・タイプ・フォーミュラ):LP4000

 

丸藤翔:4000

 

 

「僕の先攻、モンスターを1体セット。カードを1枚伏せてターンエンド」

 

「臆病な展開の仕方ッスね。僕のターン、僕は『サイバー・ドラゴン』を特殊召喚!更に『ドリルロイド』を攻撃表示で召喚!!バトル!!『ドリルロイド』でセットモンスターを攻撃!!」

 

「『ドリルロイド』の効果によってセットモンスターはダメージ計算を行わず、そのまま破壊される」

 

「うあああ!(ロイドを使う事ぐらい分かりきっている事、そこへサイバー・ドラゴンを足したのは機械族メインとしては使う身としては称賛できる)」

 

「『サイバー・ドラゴン』でプレイヤーへダイレクトアタック!エヴォリューション・バースト!」

 

「ぐぅああああ!」

 

ドラ○ブ:LP1900

 

「フフン!ターンエンドッス!!」

 

「僕のターン、ドロー!僕は魔法カード『ヒーローアライブ』を発動!!自分フィールドに表側表示モンスターが存在しない場合、LPを半分払って発動できる。デッキからレベル4以下の「E・HERO」モンスター1体を特殊召喚する事が出来る!!僕はライフポイントを半分支払って、デッキから『E・HEROリキッドマン』を特殊召喚!更に伏せカードオープン!『リビングデッドの呼び声』!このカードでさっき墓地に送られた『E・HEROクレイマン』を攻撃表示で復活!!」

 

ドラ○ブ:LP950

 

「自らライフポイントを削るなんて、自殺行為ッスね~!」

 

「更に!」

 

「!?」

 

「『融合』を発動!場の『E・HEROクレイマン』と『E・HEROリキッドマン』を融合!!大地のHEROの力を借りる!『E・HEROガイア』を融合召喚!!」

 

「こ、この戦術は!?」

 

「『E・HEROガイア』の効果!このカードが融合召喚に成功した場合、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動する。ターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力を半分にし、このカードの攻撃力はその数値分アップする。僕は『サイバー・ドラゴン』を対象に選ぶッス!!」

 

「なっ!?攻撃力を下げるなんて卑怯ッス!!」

 

「バフやデバフなんて、どんなゲームでも当たり前の事。それを卑怯呼ばわりするなんて思考が単純すぎるッス。此処で『シ○トカー』をチェンジッス!!」

 

TIRE KOUKAN!

 

FORMULA ZERO ONE!

 

車のキーのようなレバーを変身プロセスと同じように捻り、交換したのはピットクルーと呼ばれるメンテナンスに長けた『シ○トカー』。その中の一つ、ガソリンの補給口のようなパーツを持つ『マンターン』だ。それを装着したのは戦意高揚のためだろう。

 

「ぐっ・・・うううう!!」

 

『サイバー・ドラゴン』攻撃力2100→1050

 

『E・HEROガイア』攻撃力2200→3250

 

「リキッドマンはHEROの融合素材にした時、デッキからカードを2枚引いて1枚を捨てる事が出来る!カードを2枚ドロー!そして、手札のカードを1枚墓地へ。バトルだ!『E・HEROガイア』で『サイバー・ドラゴン』へ攻撃!コンチネンタルハンマー!」

 

『サイバー・ドラゴン』がガイアの拳によって破壊され、その差のライフポイントがマイナスされる。

 

「わあああ!?」

 

丸藤翔:LP1800

 

「カードを1枚伏せてターンエンド、次のターンでファイナルラップになるッス。チェッカーフラッグはすぐそこだ!」

 

F1特有の加速音がアーマーから聞こえてくる。デュエルで言い換えるなら次で決着を付けるという事にほかならない。

 

「ぼ、僕のターンドロー!」

 

翔はドローカードを見る前に焦りを覚える。このデュエルは時間稼ぎにされているはず、相手のライフポイントをギリギリの数字にしたとはいえ、こんな『リスペクト』に反する事を平気でやりながら仮面の英雄の姿をしているなんて許せない、正義は自分の側にあるのだから。同時にドローカード見て翔は笑いを堪えきれなくなった。

 

「!ふ・・・アハハハ!僕の勝ちッス!僕は魔法カード『パワー・ボンド』を発動!このカードで場の『ドリルロイド』手札の『サブマリンロイド』、『スチームロイド』を融合!」

 

「その融合方法は・・・!(恐らく、スーパービークロイド-ジャンボドリル!)」

 

「いでよ!『スーパービークロイド-ジャンボドリル』!!」

 

「攻撃力3000・・・ビークロイドの中で最強クラス!」

 

「更に『パワー・ボンド』で呼び出された機械族の融合モンスターは攻撃力が倍となる!!」

 

『スーパービークロイド-ジャンボドリル』攻撃力3000→攻撃力6000

 

だが、相手の表情はわからない。声を出さない事を恐れと考え翔は挑発するかのように声を出す。

 

「怖くて声も出せないッスか?でも、これで終わりッス!!バトル!『スーパービークロイド-ジャンボドリル』で攻撃!!」

 

「伏せカード、オープン!『攻撃の無力化』このカードによって攻撃は無効、バトルフェイズも強制終了!」

 

「なっ・・・!?カウンター罠を使うだなんて君に『リスペクト』精神は無いッスか!!?」

 

「うるさい!!」

 

「っ!?」

 

ドラ○ブから初めて発せられた咎めの声、彼は恐れていたのではなく、怒りを堪える為に無言を貫いていたのだ。

 

「相手が防御すればそれを一々非難する。リスペクトと言ってるけどそんなのリスペクトでも何でもない!ただの非難だ!自分の思う通りにならないなら否定する子供のワガママと同じだ!」

 

「ぐっ!な、何を!相手を妨害するカードを使わないのが本当の『リスペクト』ッス!!」

 

「・・・・バトルフェイズは終了してるッス、メインフェイズ2は?」

 

「『サイバー・ジラフ』を召喚して、このカードを生贄にしてダメージを0にするッスよ」

 

これで、翔の手札はゼロ。ドラ○ブのデッキはE・HERO一色だと予想を付けており、『スーパービークロイド-ジャンボドリル』この攻撃力は超えられないだろうとタカを括っている。

 

「これでターンエンド」

 

「僕のターン、ドロー!(来た!)」

 

ドラ○ブはたった一枚のカードに手をかける。それは、自らを映す鏡の意味を込めて。

 

「僕は『E・HEROプリズマー』を召喚!更に特殊効果を発動!1ターンに1度、エクストラデッキの融合モンスター1体を相手に見せ、そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスター1体をデッキから墓地へ送って発動できる。エンドフェイズまで、このカードはこの効果を発動するために墓地へ送ったモンスターと同名カードとして扱う事が出来る!僕は融合デッキから『ユーフォロイド・ファイター』を見せ、その融合素材である『ユーフォロイド』をデッキから墓地へ送る!『E・HEROプリズマー』!リフレクトチェンジ!!」

 

『E・HEROプリズマー』の姿がクリスタルで出来た『ユーフォロイド』の姿となる。更にドラ○ブはもう1枚のカードを発動させた。

 

「更に魔法カード『パワー・ボンド』を発動!効果は知っての通り!」

 

「『ユーフォロイド』、そして戦士族と『パワー・ボンド』!まさか!?」

 

「場の『E・HEROガイア』と『ユーフォロイド』扱いになっている『E・HEROプリズマー』を融合!『ユーフォロイド・ファイター』を融合召喚!!」

 

「しまった!ユーフォロイド・ファイターの元々の攻撃力・守備力は、融合素材にしたモンスター2体の元々の攻撃力を合計した数値になる!そして『パワー・ボンド』という事は・・・!」

 

「そう!!『ユーフォロイド・ファイター』の元々の攻撃力は『パワー・ボンド』によって更に攻撃力が倍になる!」

 

『ユーフォロイド・ファイター』攻撃力?→攻撃力2200+1700=3900

 

『ユーフォロイド・ファイター』攻撃力?→攻撃力2200+1700=3900×2=7800

 

「こ、攻撃力7800!!」

 

「アニキの『E・HERO』と僕の『ロイド』!そして、このデッキを教えてくれた遊来くんの『知識』の3つが揃ったこのデッキに、敗北はほとんどありえない!!」

 

「あ・・・ああ・・・『スーパービークロイド-ジャンボドリル』の攻撃力は6000、『ユーフォロイド・ファイター』の攻撃力は7800・・・僕のライフは1800・・・そ、そんなぁ」

 

「バトル!!『ユーフォロイド・ファイター』で『スーパービークロイド-ジャンボドリル』を攻撃!!フォーチュン・ハンマー!!」

 

大型のUFO状の乗り物に乗ったガイアが高速で『スーパービークロイド-ジャンボドリル』に近づき、その巨大な拳で思い切り殴りつける。殴られた『スーパービークロイド-ジャンボドリル』は苦悶の表情を浮かべて爆散した。

 

「うわああああああ!!」

 

丸藤翔:LP0

 

「僕の・・・勝ちだ。チェッカーフラッグは僕が受けた」

 

 

『NICE DRIVE』

 

 

「・・・だ」

 

「?」

 

「こんなの無効だ!カウンタートラップにモンスターの弱体化!こんなデュエル『リスペクト』の欠片も無い!!」

 

翔の言葉にドラ○ブは拳を強く握って、肩を震わせた。自分の思い通りのデュエルをさせてくれなかったのだから、デュエルは無効だと喚いているのだ。怒りが出てきているが呆れの方が強くなってしまう。騒ぎを聞きつけたのか他の4人も集まってきている。当然、全員変身した姿で、だ。

 

「ドラ○ブ、見つけたのか!?侵入者を!」

 

「う、うん!」

 

「えっ・・・!仮面ラ○ダー○月!?」

 

「!まさかとは思うけど、彼が侵入者だったなんて」

 

「女性ラ○ダーの仮面ラ○ダーフ○ム!?」

 

「まさか、侵入者がコイツだったなんて」

 

「そんな・・・仮面ラ○ダーフ○ーゼまで!」

 

「ま、侵入者である事は変わらないな。連絡して本土に戻そう」

 

「ひっ・・・!仮面ラ○ダーアマ○ンオ○ガまで居る!」

 

別世界の翔は5人の仮面ラ○ダー(外見上)に捕縛され、本土へと戻される事になった。だが、この世界には二人の『丸藤翔』が居たのだ。この事に全員が驚きを隠し込んでいた。

 

「翔、あの侵入者は・・・」

 

「紛れもない『僕自身』だったよ、お兄さん・・・」

 

「別世界・・・並行世界とでもいうのかしらね?」

 

「けど、本土へ戻された翔はアカデミアを退学していたみたいだぜ?」

 

「言いたくないけど、まるで自分の悪い部分を見ているようだったッス・・・」

 

兄である亮、同級生でもある明日香との話題に翔が俯いているのを見て、十代が明るく慰める。そんな中、遊来はルインに今回の出来事の原因を聞いていた。

 

「(ルイン、別世界の人間が現れるなんてあり得るのか?)」

 

『有り得ない話ではないです。なにかのキッカケで偶然、世界線が繋がってしまう事はあります。繋がった拍子に、こちらのアカデミアに放り出されたのでしょう』

 

「(なるほどな・・・。しかし、別世界の翔・・・あれは)」

 

『何かの思想に心酔しきってしまったのでしょう・・・残念ながら私達が出来る事はありません』

 

「(何もかも手放してしまったみたいだしな・・・)」

 

遊来は更生出来るのではと望みをかけたが、ルインからの否定にほんの少し悲しい気持ちになる。やり直すキッカケは幾らでもあったはず、それを自ら手放していた様子だ。デュエルモンスターズの精霊とはいえ『女神』からの否定は人間以上に説得力がありすぎた。

 

「(こっちの翔は前を向いて、別世界の翔は自ら堕ちた・・か)」

 

遊来は友情に熱いタイプだ。厳しく接する事もあるが優しさが強く『這い上がって来い』という感じの叱咤激励をする事も多い。

 

それゆえに相手の気持ちを考えてしまうのだ。デュエルで非情になれても本来は非情になりきれない。だからこそ、更生出来るか賭けたのだが無理な話であった。

 

その後、別世界の翔が消えてしまったという話を聞く事になった。ルイン曰く、世界からの修正らしく異物を捨てるような物だそうで、本来の世界に戻されたのだろうという事だった。

 

 

 

 

自分の世界に戻った『別世界の丸藤翔』は自分の原点である融合素材となる『ロイド』以外のカードを捨ててしまった事を激しく後悔し、夜の雨の中で慟哭し続けていた。

 

「なんで・・・なんで僕がこんな目に、負け続ける事になるんッスかぁぁぁ!!!」

 

自分の行動によって今の結果が出ている事に彼は気づかない、そんな彼の声は雨音にかき消され、どんなものにも届く事はなかった。




はい、ここで終了です。

ドラ○ブ(竜騎士世界の丸藤翔)のデッキは『E・HERO』に『ロイド』を組み合わせた『ユーフォロイド・ファイター』特化型のデッキです。

『E・HEROプリズマー』と『パワー・ボンド』が揃えば後は融合『E・HERO』を出せばいいと言う単純思考のデッキにしました。

『猫シンクロ使いが行く遊戯王GX!』の世界の『丸藤翔』はサイバー流の思想に染まっていてアカデミアを退学しているそうなので、退学してから偶然起こった出来事のように書いてみました。

翔を『ドラ○ブ』にしたのは彼が乗り物好きで『ベルトさん』のような存在が翔の成長に背中を押してくれるのでは?と思ったためです。今はまだ受け答えはできませんが。

※この投稿を持ってアンケートを締め切ります。

最後に使用許可を下さった交響魔人さまに最大の感謝を!

『猫シンクロ使いが行く遊戯王GX!』の方もよろしくお願いします!!


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第20話

セブンスターズ、2戦目

十代がラ○ダーに変身。


万丈目グループによるアカデミア乗っ取りを万丈目サンダーが阻止した(その際におジャマシリーズが揃ったらしい、しかも精霊付きで)数日後の今、その日は十代が珍しく荒れていた。何故なら新しく現れたセブンスターズの一人、カミューラによってクロノス教頭と丸藤亮がデュエルに敗北し人形にされ、人質となってしまったからだ。

 

「なんでだよ、なんでこんな事になるんだよ!」

 

「十代・・・」

 

荒れた十代をこのままにはしておけないと遊来は鮫島校長に特別に許可をもらい、十代を自分の自室でしばらくの間、寝泊まりさせる事にしたのだ。翔に関しては隼人に任せている。

 

「十代・・・」

 

「デュエルって楽しいもののはずだろ!?なんで翔や明日香が泣かなきゃならないんだ!?」

 

『それが闇のデュエルの恐ろしい部分なのです・・・』

 

「!そうなのか・・・けれど、なんでカイザーがあんな目に遭わなきゃいけないんだよ!!」

 

『デュエルとは決闘と読むでしょう?文字通り、闇のデュエルは本物の「決闘」なのです・・・』

 

「っ・・・」

 

「今まで通りの遊びじゃなく・・・本物の決闘、俺達にとっては精神的に来る出来事だな(けど、なんだ?闇のデュエルが時折、懐かしく感じるのは?)」

 

「俺はこんなデュエルをさせた奴らを許さない!!」

 

『!』

 

「(ルイン、どうしたんだ?)」

 

『敵の使い魔が監視しているようです、恐らくはデッキを把握しようとしているのでしょう』

 

「(何とかできるか?)」

 

『お任せ下さい』

 

ルインは元々『破滅の天使』から『破滅の女神』となり『破滅の美神』となったモンスターである。上級クラスの力を持っており、現実に干渉できるエネルギーは充分蓄えられており、その力によって敵の使い魔となっているコウモリを文字通り僅かな光で『破滅』させた。

 

デッキを作成している中、ルインから使い魔を『破滅』させ、不可視の光の防壁を作ったと言われデッキを見られることはないと言われた。

 

「必ず・・俺はアイツを・・・カミューラを倒す!」

 

「・・・十代」

 

「ん?」

 

「コレを貸してやる・・・今回のデュエルに持っていけ」

 

「!!『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!?遊来の主力のシンクロモンスターじゃねえか!」

 

そう、遊来が十代に渡してきたのは正式に目覚めた『レッドデーモン』シリーズの中で赤き竜の下僕であり、その力を象徴する存在である『レッド・デーモンズ・ドラゴン』だった。

 

5D′sの世界において赤き竜の下僕は6体おり、その中で『心』が『スターダスト・ドラゴン』、『力』が『レッド・デーモンズ・ドラゴン』、『意志』が『ブラック・ローズ・ドラゴン』、『慈愛』が『エンシェント・フェアリー・ドラゴン』、『進化・向上』が『パワー・ツール・ドラゴン/ライフ・ストリーム・ドラゴン』そして『決意』が『ブラックフェザー・ドラゴン』それぞれを象徴している。

 

「こんなの俺が扱える訳がないだろ!」

 

「いいから持って行けって、きっと力になってくれるはずだ。ただし、貸すだけだからな」

 

「わ、わかったよ」

 

遊来から強引に押し切られ、十代はチューナーモンスターと一緒に『レッド・デーモンズ・ドラゴン』を貸し出され、自分のEXデッキに組み込んだ。無論、HEROの爆発力を損なわないようデッキの調整も行って。

 

 

 

 

その夜、約束の刻限に突如アカデミア内部にある湖に現れた城へと向かう。内部に入ると既に準備が整っているようで、デュエル場になっているとも言えるお互いに向き合える場所で十代とカミューラが向き合う。

 

「来たぜ、カミューラ!!」

 

「ボウヤ、よく来たわね。その勇気を湛えて可愛い人形にしてあげるわ!」

 

「御託はいい!!お前は俺が倒す!来い!キ○ット!!」

 

『よっしゃあ!キバッて行くぜ!ガブッ!』

 

十代はコウモリの姿をした何かを手で掴むと、その口を開かせ自分の手に噛み付かせる。それと同時に十代の全身にステンドグラスのような模様が頬にまで浮かび上がった。

 

「な、なんだそれは!?」

 

「変身!!」

 

コウモリを自分の前に突き出し鎖が巻き付くようなエフェクトから出現したベルトに、コウモリを装着すると同時に十代の姿が変化していき姿が変わった。

 

[推奨挿入歌[Break the Chain]仮面ライダーキバより]

 

 

「へ、変身だと!?」

 

「(おおっ・・・!遊来が言ってた通りだ)コウモリにはコウモリってな!」

 

カミューラの驚きもさる事ながら、ギャラリーにいる明日香以外のメンバー達も驚きを隠せない。

 

「か、仮面ラ○ダー○バだ!!アニキが○バに変身した!!」

 

「ば、馬鹿な!あれはただの作品上の演出の話だろう!?」

 

「いえ、あれは本当に変身しているのよ」

 

「どういう事なんだな?明日香さん」

 

「それは俺も見せた方が早いだろう。コウモリもどき!」

 

『ありがたく思え、絶滅タイムだ!ガブリッ!!』

 

十代と同じエフェクトだが、コウモリの色が違っており赤と黒のコウモリを遊来は軽く前に突き出す。

 

「変身・・・」

 

遊来自身も変身を完了させ、皆の見ている間で変身を完了させた。赤と黒の色合いによる王としての威厳を持つラ○ダーになった。

 

「ゆ、遊来くんが・・・か、仮面ラ○ダーダーク○バになっちゃったッス!?」

 

「ど、どういう事だ!?」

 

「これは海馬コーポレーションが開発したソリッドヴィジョンによる変身機能さ。ただのエンターテインメント要素に過ぎないけどな。子供達がよりデュエルを楽しんで貰うために開発した物なんだ」

 

「な、なるほど」

 

「確かにヒーローがデュエルするとなれば、盛り上がることは間違い無いな」

 

「今、十代が変身出来ているのは俺のデュエルディスクと連動しているからなんだ。俺がホームとなって変身機能を使えるようにしてあるって訳」

 

「そうだったのかぁ・・・びっくりしたんだな」

 

「(その変身機能、私も少し手を加えさせてもらおうかにゃ・・・)」

 

変身のタネが分かった所で、カミューラは怒りに満ちた表情で○バとダーク○バを交互に睨みつけていた。

 

「貴様等・・・私を侮辱しているのかぁ!!」

 

この怒りは無理もない。このラ○ダーのモチーフはヴァンパイアであり、特にダーク○バは王の鎧という設定を持つために拍車が掛かっている。十代の変身した○バも王の鎧ではあるのだが、鎖で封印されており一族を虚仮にされているように感じるのだろう。

 

「さぁ、行くぜ」

 

「みんな纏めて人形にしてやるわ!!」

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

遊城十代(仮面ラ○ダー○バ):LP4000

 

カミューラ:LP4000

 

 

「俺の先攻、ドロー!闇をデュエルを操り、仲間の命を弄ぶ!俺はお前を許さない!!」

 

「どう許さないのかしら?楽しみね」

 

「行くぜ!俺は『E・HEROバブルマン』を召喚!!バブルマンが召喚された時、自分の場に他のカードがない時、デッキからカードを2枚ドロー出来る!!更に魔法カード、融合を発動!場のバブルマン、手札のフェザーマン、スパークマンを融合して『E・HEROテンペスター』を召喚!!」

 

「ドローした上での融合か」

 

「手札融合すれば一気に四枚もの手札が失われる。それを回避したか」

 

「後は引いたカードの中にドロー加速があるかどうか・・・だな」

 

「一枚カードを伏せ、ターンエンド」

 

「ふうん、イイわ。元気があるのね。私のターン、カードドロー!」

 

表情からして変化がない所を見れば、あのカードを引けなかったのだろう。だが、十代の場には攻撃力2800のテンペスターが居るのだ。どうやってそれを捌くのか。

 

「私は永続魔法『ヴァンパイアの領域』を発動!!このカードは二つの効果があるわ、その一つ目は1ターンに1度、ライフポイントを500払って発動できる。このターン自分は通常召喚に加えて1度だけ、自分メインフェイズに「ヴァンパイア」モンスター1体を召喚できる。二つ目はこのカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、自分の「ヴァンパイア」モンスターが相手に戦闘ダメージを与えた場合に発動し、その数値分だけ自分のLPを回復する事ができるわ」

 

「なんだって!?」

 

「(おいおい、あのカードが出てきたって事はカテゴリー化してる方の『ヴァンパイア』デッキか!?)」

 

遊来が変身している姿の下で驚きの顔をする。彼の元居た世界では『ヴァンパイア』はカテゴリー化しており、それなりに強力なデッキであった。だが、上級モンスターが大半を占めるデッキとなっており、ロックやパーミッションなどが多くなっていた時期でもあった為、『ヴァンパイア』というカテゴリーが好きというデュエリストくらいしか使っていなかった。

 

「更にフィールド魔法『ヴァンパイア帝国』を発動!!このカードはフィールド上のアンデット族モンスターの攻撃力をダメージ計算時のみ500ポイントアップさせる。また、1ターンに1度、相手のデッキからカードが墓地へ送られた時、自分の手札・デッキから「ヴァンパイア」と名のついた闇属性モンスター1体を墓地へ送りフィールド上のカード1枚を選択して破壊する。私の故郷であり、かつて栄えた我らが種族の帝国の姿を見ると良いわ!!」

 

夜のヨーロッパの家々と城がフィールドに現れている。城の姿はカミューラが出現させた自分の城と非常に酷似していた。恐らく彼女はヴァンパイア一族の中でも貴族に位置する者だったのだろう。

 

「更に私は『墓穴の道連れ』を発動!このカードはお互いのプレイヤーが、それぞれ相手の手札を確認し、その中からカードを1枚選んで捨てる。その後、お互いのプレイヤーは、それぞれデッキから1枚ドローする」

 

「何!?」

 

「さぁ、ボウヤ。手札を見せなさい」

 

「くっ!」

 

十代の手札は4枚、『マスク・チェンジ』『E・HEROブレイズマン』『E・HEROリキッドマン』『E・HEROエアーマン』の4枚だ。

 

「そうね・・・『マスク・チェンジ』を捨ててもらうわ。それじゃ・・・これが私の手札よ」

 

「なっ!」

 

カミューラの手札は3枚。『ヴァンパイアの使い魔』『ヴァンパイアの眷属』『ヴァンパイア・ロード』の3枚であり、十代は苦しい決断を迫られる。使い魔と眷属は墓地で真価を発揮するカードであり、『ヴァンパイア・ロード』は復活しては来ないが次のドローで蘇生系のカードを引かれる可能性がある。

 

「俺が選ぶのは『ヴァンパイア・ロード』だ・・・」

 

「そう。さ、お互いに選んだカードを墓地へ送り、カードを1枚ドローしましょう」

 

お互いにピーピングしたが十代の方が圧倒的情報面で不利になってしまった。カードをドローし合い、互いデッキからのカードを確認するとカミューラが動き出した。

 

「私はドローした魔法カード『手札断殺』を発動!!お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送る。その後、それぞれデッキから2枚ドローする」

 

「うっ!?」

 

「ふふ、さぁ・・・二枚の手札交換の時間よ」

 

十代とカミューラは、お互いに2枚のカードを墓地に送り、更に2枚ドローする。今、デュエルの流れがあるのはカミューラだと十代は確信してしまう。同時にピーピング出来たカードが墓地に送られた事をも確信する。

 

「私は墓地に送った『ヴァンパイアの使い魔』の効果を発動!このカードが墓地に存在する場合、手札及び自分フィールドの表側表示のカードの中から、「ヴァンパイア」カード1枚を墓地へ送って発動できる。このカードを特殊召喚する事ができる。新たな2枚のドローで引いた、手札にあるもう1枚の『ヴァンパイアの眷属』を墓地へ送り、『ヴァンパイアの使い魔』を特殊召喚!更に特殊召喚に成功した時、500のライフを支払って効果発動!デッキから「ヴァンパイアの使い魔」以外の「ヴァンパイア」モンスター1体を手札に加える。私は『ヴァンパイアジェネシス』を手札に加えるわ」

 

カミューラ:LP3500

 

「な、なんだこの展開力は!?」

 

「アンデッド族の種族だけじゃない、強力なヴァンパイア関連のカードであのデッキは構築されているんだ!」

 

万丈目と三沢はデュエリストとしての視点から驚きを隠せずにいた。クロノスとのデュエルでカミューラはこのような展開力を見せて来なかったためだ。

 

「更に魔法カード『生者の書-禁断の呪術-』を発動!自分の墓地のアンデット族モンスター1体と相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。その自分のアンデット族モンスターを特殊召喚し相手のモンスターを除外する。私は『ヴァンパイア・ロード』を選択し、ボウヤの墓地にある『バブルマン』を選択する!『バブルマン』を糧とし、目覚めなさい!『ヴァンパイア・ロード』!更に『ヴァンパイア・ロード』を除外して『ヴァンパイアジェネシス』を特殊召喚!」

 

『ヴァンパイアジェネシス』星8/闇属性/アンデット族/攻撃力3000/守備力2100

 

「バトルよ。行きなさい!『ヴァンパイアジェネシス』!テンペスターへ攻撃!!『ヘルビシャス・ブラッド』忘れていないわよね?『ヴァンパイア帝国』の効果でフィールド上のアンデット族モンスターの攻撃力をダメージ計算時のみ500ポイントアップよ!使い魔も続きなさい!ダイレクトアタック!」

 

『ヴァンパイアジェネシス』/攻撃力3000→3500

 

『ヴァンパイアの使い魔』攻撃力500→攻撃力1000

 

「うああああ!」

 

遊城十代:LP2300

 

「更に『ヴァンパイアの領域』の効果により「ヴァンパイア」モンスターが相手に戦闘ダメージを与えた場合、その数値分だけ自分のLPを回復する事ができるわ。私はライフを1700回復する」

 

カミューラ:LP5200

 

「ああっ!『ヴァンパイアの使い魔』の時に支払ったライフコストが!!」

 

「完全回復させた上に多めにライフを回復して、デメリットを打ち消してしまったんだな!」

 

「ターンエンドよ」

 

この展開力とデュエルの強さに遊来がダーク○バの姿のまま声を無意識にカミューラへかけてしまった。それは本当に無意識だった。

 

「アンタ・・・なんでそんなに強いのに『幻魔の扉』なんか使ったんだ?それに相手のデッキを把握しなくても充分、渡り合えてるじゃないかよ」

 

「!うるさいわね・・・!戦いは始まる前から既に始まっているのよ!!」

 

「それもわかるけどよ・・・勿体無いな」

 

「なんですって!?」

 

「長年眠りすぎてか、それとも人間の醜い部分を見すぎて頭が固くなったか?人間ってのは知らない事、1度恐れた事を潰す為に相手を滅ぼすんだ。だが、アンタ達ヴァンパイアも誇り高き種族だとか言ってたが、人間を見下してたんじゃないのか!?」

 

「な、何!?」

 

「価値観の違いだろうけどよ。ヴァンパイアに出来て人間に出来ない事で卑下してたんじゃないのか?人間同士でも同じことは多々あるしな!」

 

「黙れええ!!」

 

「黙らねえよ!理想論かもしれないが、種族を超えて愛し合う事だってある!それをヴァンパイアの誇りだ、なんだとか言って新しい事を潰してきたんだろうが!!俺達、人間もヴァンパイアも似た者同士だ」

 

「う・・・・」

 

「アンタ、復讐が目的なんだろう?復讐は何も生み出さないなんて綺麗事を言うつもりはない!けれど、その憎しみの全てを吐き出しちまえよ!このデュエルでな!」

 

「っ!!」

 

遊来の言葉に一瞬だけカミューラがたじろぐ。ダーク○バの姿で遊来の表情は隠されている。だが、このデュエルで全てを吐き出してしまえという言葉に対して反論出来なかった。

 

「デュエル続行よ!」

 

「ああ、俺のターンドロー!俺は手札から魔法カード『強欲な壷』を発動!このカードの効果により俺はカードを2枚ドロー!更に『E-エマージェンシーコール』を発動!!このカードの効果により、『E・HEROブレイズマン』を手札に加え、そのまま召喚!ブレイズマンの効果でデッキから『融合』を手札に加える!!更に『融合』を発動!手札のもう1枚のフェザーマンとリキッドマンを融合!来い、疾風のHERO!『E・HERO GreatTORNADO』!!更にこのターン、素材に使った『E・HEROリキッドマン』の効果により、カードを二枚ドローして一枚を捨てる!そして『E・HERO GreatTORNADO』の効果発動!!このカードが融合召喚に成功した時、相手フィールド上に存在する全てのモンスターの攻撃力・守備力は半分になる!ダウンバースト!」

 

『ヴァンパイアジェネシス』攻撃力3000→攻撃力1500

 

『ヴァンパイアの使い魔』攻撃力500→攻撃力250

 

「なぁんですって!?」

 

「そうか!攻撃力が半分ということは!!」

 

「『ヴァンパイア帝国』の効果で500ポイントアップさせても2000止まり」

 

「いけえ!『GreatTORNADO』!!『ヴァンパイアジェネシス』に攻撃!スーパーセル!ブレイズマン、ブレイズナックル!!」

 

継続して回転する上昇気流を伴った雷雲群が『ヴァンパイアジェネシス』に襲い掛かり、破壊した。その余波がカミューラへ襲いかかり、ブレイズマンの拳が使い魔を焼き尽くす。

 

「あああああ!く・・・特殊召喚された『使い魔』はフィールドから離れた場合に除外される」

 

カミューラ:LP3950

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

『十代の手札3枚』伏せ2

 

「おのれ・・・私のターン!ちっ・・・『ヴァンパイア・ソーサラー』を召喚!バトルよ!ブレイズマンへ攻撃!」

 

(ヴァンパイア・ソーサラー攻撃力1500→2000

 

「うああああ!」

 

遊城十代:LP1500

 

「ライフを800回復してターンエンドよ」

 

カミューラ:LP4850

 

「俺のターン、ドロー!(このターンで決着を・・・っ!?これは)」

 

「(引いたか?十代)」

 

「俺は手札から『ハイパー・シンクロン』を召喚するぜ!」

 

『ハイパー・シンクロン』チューナー/効果/星4/光属性/機械族/攻撃力1600/守備力800

 

「チューナーモンスターだと!?」

 

「兄貴がチューナーモンスターを召喚したッス!?」

 

「バトルだ!!『GreatTORNADO』で『ヴァンパイア・ソーサラー』を攻撃!!更に『ハイパー・シンクロン』でダイレクトアタック!!」

 

「きゃああああ!?」

 

カミューラ:LP2650

 

「更に罠カード『リビングデッドの呼び声』を発動!このカードの効果で墓地の『E・HEROスパークマン』を攻撃表示で召喚!更に追撃だ!!スパークフラッシュ!!」

 

「ああああっ!」

 

カミューラ:LP1050

 

「ダメにゃ、僅かにライフポイントが残ってしまったのにゃ!」

 

大徳寺先生の言葉に周りのギャラリーも焦るような声を出すが、実際に後一撃足りない状況だ。

 

「だが、攻撃できるモンスターはもう居ない!」

 

「此処までなの!?」

 

そんな周りの心配をよそに遊来だけは黙って見守っている。気になるのは十代が2枚目に伏せたカードだった。

 

「どうやら、攻撃は打ち止めのようね!?次のターンで終わりよ!」

 

「いや、このターンで俺が勝つ!!」

 

「何を言ってる!!お前のモンスターの攻撃は既に!」

 

「まだ、俺にはカードが残っているぜ!!伏せカードオープン!!『緊急同調』!!」

 

それは遊来が十代に貸したカードの内の一枚であった。それがこの『緊急同調』である。

 

「『緊急同調』ですって!?」

 

「このカードは自分または相手のバトルフェイズに発動する事ができる。シンクロモンスター1体をこのバトルフェイズ中にシンクロ召喚する事ができるんだ!!」

 

「何!?」

 

「十代・・・!受け取れ!俺の炎を!!」

 

「おう!!レベル4の『E・HERO スパークマン』にレベル4の『ハイパー・シンクロン』をチューニング!!」

 

スパークマンが高く飛び上がると同時に『ハイパー・シンクロン』が自らを四つの緑色の光の輪となり、その中をスパークマンが潜り抜け、スパークマン自身も四つの星となって光り輝く。

 

「王者の鼓動!」

 

「「今ここに烈を成す!天地鳴動の力を見るがいい!!」」

 

「「シンクロ召喚!」」

 

魂の炎!!『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!!

 

2人の召喚口上が重なり合い、場に現れたドラゴン。『琰魔竜レッド・デーモン』とは違った威圧感を持ち、自分について来いと言わんばかりの王の風格を見せる『レッド・デーモンズ・ドラゴン』。カミューラを睨みつけているが、彼女ではなく彼女の手にあるデッキを睨んでいるのだ。

 

「じゅ・・・十代が!」

 

「シンクロ召喚した!?」

 

「『レッド・デーモンズ・ドラゴン』?『琰魔竜レッド・デーモン』と似てるけど・・・何が違うのかしら?カード効果はもちろんとしてフォルムも『琰魔竜レッド・デーモン』よりも明るさが強いみたい・・・」

 

「なんだか『レッド・デーモンズ・ドラゴン』は高みを目指す王様のようなの印象を俺は持ったんだな・・・常に挑戦し続ける、そんな印象だ」

 

「凄すぎて言葉が出ないッス・・・!」

 

遊来以外のギャラリーは驚きを隠せずにいたが、遊来はダーク○バの複眼から十代と『レッド・デーモンズ・ドラゴン』を見続けている。

 

「『緊急同調』でバトルフェイズに呼び出された『レッド・デーモンズ・ドラゴン』は追撃が可能。更に『ハイパー・シンクロン』がドラゴン族モンスターのシンクロ召喚に使用され墓地へ送られた場合、『ハイパー・シンクロン』をシンクロ素材としたシンクロモンスターは攻撃力が800ポイントアップし、エンドフェイズ時にゲームから除外される。だが、このバトルフェイズで決着だから関係ないな」

 

遊来の解説に周りがハッとする。カミューラは信じられないといった表情をしながら『レッド・デーモンズ・ドラゴン』から放たれる王者の風格に震えていた。

 

「こ、こんな・・・こんなドラゴンが実在するなんて・・・!」

 

「行くぜ!カミューラ!この攻撃でお前の憎しみを砕く!!ダークネスムーンブレイク!『灼熱のクリムゾン・ヘルフレア』!!」

 

『レッド・デーモンズ・ドラゴン』攻撃力3000→3800

 

「ぎゃあああああああああ!!!」

 

カミューラ:LP0

 

『レッド・デーモンズ・ドラゴン』の炎の息吹と同時に勝利エフェクトによって、仮面ラ○ダー○バの封印された鎖が解かれ、ラ○ダーキックをカミューラへ打ち込んだ。エフェクトが十代に戻ると同時にデュエルの勝敗が付き、膝をついたカミューラの前にデッキから一枚のカードが落ちてくる。それは『幻魔の扉』であった。禍々しい扉が現れ、カミューラに敗者に対する『罰ゲーム』が施行されようとしたその瞬間だった。

 

『アブソリュート・パワーフォース』!!

 

『レッド・デーモンズ・ドラゴン』が獄炎を纏った拳によって『幻魔の扉』を砕き散らしてしまい、魂を奪おうとする意思までもを焼き尽くしてしまった。

 

「何故・・・なぜ私は生きてるの?」

 

「誰の魂も『幻魔の扉』のコストにされていない、だから『レッド・デーモンズ・ドラゴン』が『幻魔の扉』を焼き尽くしてアンタを助ける事が出来たんだ」

 

「く・・・生き恥だわ」

 

「生き延びて自分の種族を復興させるか、生き恥としてプライドを捨てずにいるか。道は色々あるさ」

 

「・・・・・」

 

「しばらくは一人で考えてみたらどうだい?」

 

「貴方・・・本当にボウヤ?年齢を誤魔化してないかしら?」

 

「(ドキッ!?)んな訳あるかよ!」

 

「良いわ・・・私の完全な敗北。人形にしてしまった二人は戻してあげる」

 

遊来の言葉にカミューラは仕方ないといった感じで人形の呪いを解き、亮とクロノスが下の人間の姿に戻っていく。

 

そうして、セブンスターズのカミューラとのデュエルは十代の勝利に終わった。十代の変身も解除され元の姿に戻った。

 

「本当にデュエルが終わると変身解除されるんだな」

 

城が崩壊するがカミューラも脱出しており、校長と話をつけると言って去っていった。十代は自分のデッキから遊来に借りたカードを抜くと遊来へ返却した。

 

「ありがとうな、遊来。けどまたシンクロ召喚やってみたいぜ~!!」

 

「実装されたらいくらでも出来るって」

 

その後、アカデミアに一人の美人職員がやってきたという話を聞き、授業を受けることになったが、その教師というのが。

 

「カミューラ・バートリーです。今日から世界史の担当になりました、よろしくお願いします」

 

セブンスターズと戦っているメンバー達は、全員がその授業において机に頭をぶつけてお笑いのようにズッコケつつも講師を歓迎したという。




カミューラ戦、終了です。

今回は特別として十代にシンクロ召喚させました。口上は二人で交互に行っています。それと『強欲な壷』ですがアニメ放送当時に準じているので原作キャラ限定で使っています。

遊来は使えません(当然ながら)

カミューラは生き残りましたが、これ以降、人間不信を残しつつも馴染もうとする吸血鬼キャラとなります。(どこのエロゲだ)

『琰魔竜レッド・デーモン』と『レッド・デーモンズ・ドラゴン』は光と闇の関係になっています。力を求めて破壊する『琰魔竜レッド・デーモン』と守る為に破壊する『レッド・デーモンズ・ドラゴン』という形で破壊は根源です。

それと赤き竜の下僕のドラゴンの象徴に関する事は私の独自設定です。


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第21話

セブンスターズ、誇り高きアマゾネスのデュエルという名の婿探し。

カイザーのプレイスタイル変更のきっかけ。

遊来がカードの意志に飲まれる。


カミューラが教師となってから男子学生の成績が向上したという話を聞かされている遊来。

 

ヴァンパイアとはいえどカミューラは昔の貴族でしかも顔立ちがいい。現代で言うところの美人セレブ系といった感じだ。

 

彼女に告白した猛者も居たそうだが、怒った時の顔を見せたら逃げ出した者や、その姿を見てでも彼女と一緒に居たいという生徒までいた。

 

「まぁ、カミューラは客観的に見てもかなりの美人だしな。仕方ない」

 

「戦った身としては複雑だがな」

 

今話している相手はカイザーこと丸藤亮だ。年齢的には年上なのだが、この戦いの最中、敬語でなくても良いと本人から言われ、こうしてタメ口に近い感じで話している。

 

今現在はオベリスクブルーの食堂で軽食をとりつつ、カミューラの話題と同時に『サイバー・ダーク』に関しての話題にも触れている。

 

「所で『サイバー・ダーク』に関してだが・・・」

 

「どうだった?実際に回してみて」

 

「純正にしてもらい試してみたが、やはり勝手が違うな。ドラゴン族と機械族の混合型・・・混合型の使い手は目の前に居たおかげで動きは分かったが、俺は機械族のみのデッキを使っていた影響で扱いにくかった」

 

「使い手という点は褒め言葉として受け取っておくよ。一種と混合は動きが根本から違うから、どちらかをメインに考えるなら片方はサポートにする方が良いのさ、『サイバー・ダーク』ならドラゴン族をサポートにする方が良い」

 

「ふむ、だからこそ『ドラグニティ』のチューナーモンスターか」

 

「アイツ等は装備モンスターに自分の持つ効果を付与させる効果があるからな、もっともシンクロ召喚が使えれば幅が広がるけど、それは俺限定だし(それに『サイバー・ダーク・エンド・ドラゴン』のカードを出す訳にはいかなかったしな)」

 

「シンクロ召喚が使えずとも『サイバー・ダーク』の本質は掴めた。だが・・・」

 

「?」

 

「俺は今、分からなくなっている・・・自分の考えとサイバー流に教えられた間で」

 

「(ああ、勝ちたい気持ちと相手を敬うリスペクト精神は相反しているからな。どちらかの考えを固く持たないと半端なままだ)」

 

「俺はどうすれば・・・」

 

「固く考えなくても良いんじゃないか?」

 

「何?」

 

「カイザーは考えすぎなんだよ。完璧だなんて言われてもデュエルに完璧なんてないだろ?自分を第三者目線で考えつつ、何を目指すのか、何がやりたいのか、それを明確にすればいいのさ」

 

「第三者の視点から何を目指し・・・何を明確にするか・・か。フッ、まるでお前は長い人生経験をしてきたような物言いをするんだな」

 

「(ギクッ)はは、さっきの言葉は読んだ事のある本の引用だよ。けど、これは俺の言葉、『サイバー』の表を知り裏の真実を知った今なら、カイザーはどちらも使いこなせると俺は思うよ」

 

「・・・背中を押してくれた礼に本音を言おう。俺は本当は勝利だけを目指したい・・・リスペクト精神を捨ててでも勝ち続けたい・・!」

 

「だったら、徹底的に叩き潰すスタイルにしても良いんじゃないか?俺が言ったからじゃなくて、カイザー自身の考えでさ。冷酷だ、血も泪もないのか、カイザーらしくない!なんて言われても気にしなくていい。これが俺のスタイルだ!って考えを貫けばいい。例えば俺自身なんて殆ど『ワンキル』ばかりしてるけど、それが俺のスタイルだもの」

 

「なるほどな・・・!」

 

「人目を気にしすぎたらやっていけないからね」

 

そんな会話をしている中で亮は、自分自身の本当の考えを遊来に引き出された事に内心驚いていた。

 

明らかに年下であるはずなのに、年上のような考えを持つこの後輩に改めて親しみを感じてしまう。

 

いずれは、迷いを振り切った心で目の前の相手と全力で戦いたい、そんな気持ちが芽生え始めていた。

 

 

 

 

 

その後、突如として生徒が行方不明になるという事件が発生した。それと同時にコロッセウムに似た建物が建築されていた。その中にはクロノス先生までいたという。

 

そして、その建造に関わっていたのはセブンスターズの一人、アマゾネスの戦士であるタニヤであった。

 

彼女の対戦相手は三沢が受けて立つ事となった。彼は六つのデッキのうち動かざること『地』の如しと銘打った『地のデッキ』を取り出し戦うことになったのだが・・・。

 

「私は『アマゾネスの吹き矢兵』を召喚!」

 

「伏せカード、オープン!『マグネット・フォース・マイナス』!このカードは発動後、モンスター1体に対する装備カードとなる!そして、このカードを装備したモンスターはマイナスの磁気を帯び、マイナスモンスターとなる!!磁気モンスターは同じ磁気の場合、バトルは無効となり終了する!だが、違う磁気モンスターの場合、強制的に戦闘しなければならない!」

 

「『アマゾネスの吹き矢兵』はマイナスモンスター・・・!」

 

「『磁石の戦士Σ+』はプラスモンスター!」

 

「プラスとマイナスの引き合う力により、バトルが発生する!」

 

「いや~ん♥三沢っちとタニヤが引き合う~ん!♥」

 

「真面目にやれ!!」

 

真面目一本な三沢に対し、正々堂々としているのだが所々で女性らしい仕草や声を出してくるタニヤに対して三沢は怒鳴るが内心タジタジである。

 

「あちゃあ、三沢ってば完全に手のひらで転がされちゃってるよ・・・」

 

「?どういう事だ?遊来」

 

「俺も含めだけど、アカデミア内部で女性とは友人関係で接する事はあっても、愛情を真正面から向けてくる女性とは接した事はないだろ?」

 

「そうか?」

 

「アニキってば・・・けど」

 

「遊来の言う事も分かるんだな」

 

「・・・・」

 

「アマゾネスはさ、女性だけの部族ってゲームや本の物語でよく書かれてるだろ?誇り高く、卑怯な振る舞いを嫌うが部族を虚仮にした相手を決して許さない。だけど言い換えれば、それだけ恋愛に関しても情熱的な女性が多いって事なんだよ」

 

「へぇ・・・」

 

「つまり、三沢は」

 

「万丈目の予想通りだよ。みんなはもう分かってるだろうけど、三沢は理論的計算志向が強い分、生真面目な相手に対しては冷静になれば返せる。けれど相手は異性、しかも自分へ恋心を情熱的にぶつけてくるなんて初めての経験だし、自分の頭の中で妄想が爆発しそうになってる」

 

「男って、みんなそうなのかしら?」

 

「明日香、男がみんなそういう訳じゃないからな?」

 

「分かってるわよ」

 

女性として明日香も思う事があったのだろう。デュエルの途中経過を見ると三沢が圧倒的に追い詰めいられていた。

 

「手札から魔法カード『アマゾネスの呪詛師』を発動!アマゾネスモンスター1体と相手の表側表示のモンスターの元々の攻撃力を入れ替える!!」

 

「『知恵』のデッキはアマゾネスのサポートがすごいな。弱体化を活用してカウンターしてくるのか」

 

『アマゾネスの吹き矢兵』と『磁石の戦士Σ+』の攻撃力が逆転したことにより、『磁石の戦士Σ+』は『アマゾネスの吹き矢兵』に吹き矢によって破壊されてしまう。

 

三沢:LP2700

 

「更に『アマゾネスの剣士』でプレイヤーへダイレクトアタック!!『首狩りの剣』!!」

 

「うぐううううう!!」

 

三沢:LP1200

 

「ターンエンド!」

 

「バカな・・・二度までも俺の戦略の上を行くとは・・・」

 

「恋の駆け引きはね・・・女のほうが上手なのよ」

 

「ふざけるなーー!」

 

冷静になりかけていた三沢の精神をタニヤは簡単に揺さぶってしまう。このやりとりにギャラリーは呆れ気味だ。

 

「何が婿だ!嫁だ!!俺とお前は敵同士なんだぞ!?俺達は世界の破滅を賭けて戦っているんじゃないのか!?」

 

「世界の破滅が何よ!恋は不滅よ!!七星門も鍵でも開かない、貴方のハートを私の鍵で開けてみせるわ!!」

 

「訳が分からん・・・!お前、本当に俺に惚れたのか!?」

 

「惚れたわよん!♥」

 

「何処に惚れたんだ!?」

 

「決まってるじゃない、その凛々しい顔に♥」

 

「ぐう・・・!(顔に惚れただと!?外見しか見ない軽薄女め!それじゃ、翔や隼人のアイドルカードと変わらんじゃないか!!)」

 

三沢の思考の中に『白魔道士ピケル』が思い浮かんでしまい、彼は頭を抱えて否定する。

 

「違う!あれは違うんだああああ!!」

 

「どうしたんだ?三沢っち」

 

「悩んでるみたいッスね、三沢っち」

 

「そんな呼び方、止めろー!!」

 

「ありゃあ、もうダメだな・・・完璧に」

 

遊来も頬杖を付いてしまっている。自分もあんな風に真っ直ぐな恋心をぶつけられては、慌てる事は間違い無い。

 

もっとも、そんな機会があるとは思えないと否定する。

 

 

 

 

 

結果として三沢は敗北し、コロセウムに囚われてしまった。今の自分達にはもう何も出来ない事を遊来が伝えて解散になり、一人になった時、遊来は1枚のカードを取り出し見ていた。

 

「力・・・もっとだ・・・もっと力を、デュエルがしたい・・・」

 

『マスター?』

 

ルインが心配そうに見ているが、その心配すらも意に介していない。シンクロ召喚という光の中にある僅かな影、それが『琰魔竜レッド・デーモン』のカードだ。闘争本能を刺激し、デュエルのみを求め続ける一面を持ったカード。しかし、このような状態に何故陥っているのか?それは『琰魔竜レッド・デーモン』が自らを進化させようとしているからだ。

 

『琰魔竜レッド・デーモン』と『レッド・デーモンズ・ドラゴン』互いに進化しようとする意思は同じだが、進化の仕方が根本的に違う。

 

『琰魔竜レッド・デーモン』は自らを悪魔と化し、進化するのに対して『レッド・デーモンズ・ドラゴン』は悪魔であろうと神であろうとその力を自らに取り込み、炎の化身となって進化する。

 

だが、遊来は今『琰魔竜レッド・デーモン』によって己の中にある闘争本能と勝利しなければならないという自責感に目をつけられ心の中にある負の感情を増幅させられている。

 

それが表立って出てこなかったのは『レッド・デーモンズ・ドラゴン』が拮抗していたおかげだったのだ。だが、その拮抗が破られ、『琰魔竜レッド・デーモン』が主導権を握ってしまった。その影響か部屋に戻ってすぐに遊来は出て行ってしまい、精霊だけが部屋に残されている。

 

『セブンスターズとの戦いがあるこの状況下で、マスターがカードの意志に飲み込まれてしまうなんて!』

 

『姐さん!かなり不味いだろ!『琰魔竜レッド・デーモン』はかなり凶悪なんだからさ!』

 

『分かってます。ですが今のマスターを倒せる相手は・・・遊城十代か丸藤亮のみ・・・』

 

『・・・だよな』

 

『けれども、心に迷いのある丸藤亮では、はっきり言ってマスターを倒す事は不可能です』

 

ルインは強く拳を握って悔しさを表に出していた。普段は陽気なノリを出しているレヴァティンもこの時ばかりは戦士の顔になっている。彼はルインの気持ちにいち早く気づいており、彼女の身にとある『因縁』がある事も。

 

『今回ばかりは俺も軽いノリを封印しようかね・・・』

 

『え?』

 

『破滅を司る神、ルイン様。この時より『ドラグニティ』の戦士『ドラグニティアームズ・レヴァティン』我が主を救う為に貴女様の剣となり盾となりましょう』

 

『!レヴァティン・・・』

 

それは初めて見るレヴァティンの戦士としての礼節だった。普段は不真面目で悪ノリばかりしていた彼が本当に戦士であった事をルインは改めて見る事になった。

 

『頼む。伝説の戦士たる『ドラグニティ』の部隊長レヴァティンよ。私に力を貸して欲しい』

 

『御意』

 

ルインも『女神』から『美神』の姿となり、手にした槍で人間の騎士達が行っていた王の礼節のように儀礼を行った。

 

お互いに仲が良くとも種族の違いなどで何処か距離を取っていた二人、その二人が遊来を救うという共通の目的のために初めて手を結んだのだ。

 

『『ドラグニティ』・・・すなわち竜騎士・・・うっ!?』

 

『ルイン様!?』

 

『うううううっ!?』

 

それは過去の、否、魂に刻まれた記憶。一人の竜騎士が海の神と対峙し戦う姿。海の神を崇める巫女が強大な闇の眼に見つめられる姿。そして、その際に自らの魂の一部を精霊界へと送り込まれルインへと入り込む瞬間が映し出される。

 

『っ・・・(私の中に別世界の魂が?)』

 

『ルイン様、大丈夫ですか!?』

 

『問題ない・・・無様を晒したな』

 

自らの魂の中に封じられていた僅かな記憶を取り戻したルイン。自分もマスターである遊来も、そしてレヴァティンも別世界における遥か昔から繋がりを持っていた。

 

今、マスターである遊来は『琰魔竜レッド・デーモン』の闇の意志に飲まれつつある。そこから救い出す事が最優先。だが、今の状況では現実に干渉することができない。干渉するためにはマスターである遊来の干渉許可を得なければならない。それが精霊としての縛りの一つだ。

 

この縛りがあるからこそ、ルインは強く拳を握って悔しがっていたのだ。

 

『このセブンスターズとの戦い、恐らく最終決戦の前に現れるのは』

 

『分かっている。その時こそ、敵と戦う対戦者に私達の力を貸そう』

 

竜の戦士の剣と破滅の槍を互いに合わせ、決意を新たにした二人。自分を友と呼んでくれた主人、初めて異性として意識し始めた相手、その相手を救う機会を待つのであった。




遊来くんは歴代主人公のように精神的に強くありません。

光の中の闇、『琰魔竜レッド・デーモン』がその象徴であり、その意志に飲まれています。

光がどんなに強くてもその中に必ず影が出来ます。『琰魔竜レッド・デーモン』は倒された時、その闇の意志が消滅し改めて迎え入れられます。

次回は味方同士の戦いになります。


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第22話

己を取り戻すことが出来ず、錬金術師との戦い。


ダークネスを遊来が、カミューラ、タニヤ、アビドス3世を十代が、首領・ザルーグ率いる黒蠍盗掘団を万丈目が退け、残るセブンスターズはあと二人となった。遊来は自室で残る2人のうち1人に関して考え事をしていた。

 

「恐らく、あの人・・・だな・・っ!?」

 

嫌な気配を感じ、外へ飛び出す遊来。其処には変わった服を身に纏い、マントのような布を身に付け、仮面で素顔を隠している白髪の男性が広場に佇んていた。

 

「・・・アンタは!」

 

「・・・」

 

男性は無言で専用のデュエルディスクを構えている。デュエルしろという事なのだろう、遊来は自分のデュエルディスクへ『カオスドラゴン』のデッキを装填した。彼にとっては無意識の行動だったが、それが目の前に居る相手のせいだという事に気づいていない。

 

「・・・っ!く・・・行くぞ!デュエル!!」

 

「・・・・」

 

 

龍谷遊来:LP4000

 

???:LP4000

 

『カオスドラゴン』デッキからの干渉が遊来を苦しめる。思い出せそうで思い出せず、知る由もない記憶。それの記憶の扉が僅かに開く。以前、夢で見た『ドラグニティナイトーアラドヴァル』と酷似し自分と似た姿の竜騎士。海の民の巫女を守り、闇の眼に魅入られ落下していく。

 

「(一体、何なんだ!?このヴィジョンは!?)俺のターン、ドロー!」

 

[現在の手札6枚]

 

※輝光竜 セイファート

※暗黒竜 コラプサーペント

※輝白竜 ワイバースター

※ライトパルサー・ドラゴン

※竜の渓谷

※戦線復帰

 

「俺は『竜の渓谷』を発動!その効果により、デッキからドラゴン族モンスターを1体、墓地へ送る!」

 

デッキからドラゴン族のモンスターを一体墓地へ送り、墓地肥やしを行う、だが、仮面の男の隠した素顔の唇が薄笑いに変わっていた。

 

「墓地の『輝光竜 セイファート』を除外し『暗黒竜 コラプサーペント』を特殊召喚!!カードを一枚伏せてターンエンド!!」

 

「私のターン、ドロー!永続魔法『錬金釜-カオス・ディスティル』を発動!このカードの効果は、自分の墓地に送られるカードは墓地へは行かずゲームから除外される!」

 

「っう!?(あのカードは除外デッキの要のカード!この人、まさか!)」

 

「更に魔法カード、『鉄のランプ』を発動!このカードは『錬金釜-カオス・ディスティル』が場にある時、『錬金獣・鉄のサラマンドラ』を手札かデッキから特殊召喚する事ができる!」

 

『錬金獣・鉄のサラマンドラ』星3/炎属性/ドラゴン族/攻撃力500/守備力500

 

「れ、錬金獣・・・!!」

 

「ふむ、その様子だと錬金獣の効果を知っているようだな?」

 

「っ・・・錬金獣は通常召喚できず、攻撃力・守備力が低い代わりに相手へのダイレクトアタックが可能なモンスター・・・!」

 

「その通り。更に私は『銅の天秤』『鉛のコンパス』を発動!!このカードも『鉄のランプ』と同じ効果を持ち、『錬金獣・銅のウロボロス』『錬金獣・鉛のレオーン』を特殊召喚する!」

 

『錬金獣・銅のウロボロス』星3/光属性/爬虫類族/攻撃力500/守備力500

 

『錬金獣・鉛のレオーン』星3/地属性/獣族/攻撃力500/守備力500

 

「ぐっ!!」

 

遊来は苦虫を潰したような表情をし続けているのには理由がある。今使っている『カオスドラゴン』デッキを始め、彼の持つデッキのほとんどが『除外』に対して圧倒的に弱いのだ。墓地すらも利用して展開する事を得意としている遊来にとって『除外』デッキは天敵とも言えるメタが張られてしまう。

 

「行け、錬金獣達よ!!『鉄のサラマンドラ』アームド・フロウ!『銅のウロボロス』ウロボロス・ロア!『鉛のレオーン』レオーン・バルカン!!」

 

「うあああああああ!!」

 

龍谷遊来:LP2500

 

炎、光線、弾幕、三つの波状攻撃を受けた遊来は軽く後退りしてしまう。この戦術は遊来にとって前の世界で見た事のあるものであり、その使い手の正体も知っている。だが、それを口にする事はしない、それを口にしてしまえば自分は戦意を失いかねない。

 

「どうした?龍谷遊来、お前の力はそんなものか?カードを1枚伏せ、ターンエンド(お前の中には二つの力が眠っている。荒ぶる炎と銀河の眼を持つ闇の竜の力。だが今はお前自身が未熟なゆえ、荒ぶる炎を抑えきれず闇の竜にも呑まれかけているみたいだがな)」

 

「ぐ・・・俺のターン、ドロー」

 

[通常ドローカード]

 

※デルタフライ

 

[現在の手札4枚]

 

※輝光竜 セイファート

※輝白竜 ワイバースター

※ライトパルサー・ドラゴン

※デルタフライ

 

「俺は・・・『デルタフライ』を召喚!!」

 

「それがチューナーモンスターか・・・ふふっ、見せてみろ!融合とは違うお前の力、同調の力を!!」

 

「『デルタフライ』の効果を発動!『暗黒竜 コラプサーペント』のレベルを一つ上げる!」

 

『暗黒竜 コラプサーペント』★4→★5

 

「レベル5となった『暗黒竜 コラプサーペント』にレベル3『デルタフライ』をチューニング!!」

 

「漆黒の闇を裂き、天地を焼き尽くし眠りについた孤高の絶対なる竜の王者よ!眠りより目覚め、万物を睥睨(へいげい)し、その猛威を再び振るうがいい!!」

 

シンクロ召喚!

 

燃え盛れ!!『琰魔竜レッド・デーモン』!!

 

「これが、シンクロ召喚。そして、別世界の竜の神の化身!だが・・・!」

 

「ぐ・・うううう!戦え、もっと・・・俺と戦え!!」

 

「やはり・・・呑まれていたか。その竜の化身は際限なく戦いを求め続け、力を増長させているようだな」

 

「御託はいい、戦え!!『琰魔竜レッド・デーモン』の効果!1ターンに1度、自分のメインフェイズ1でのみ発動できる。このカード以外のフィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスターを全て破壊する。だが、この効果を発動するターン、このカード以外のモンスターは攻撃できない!!邪魔だ!錬金獣ども!!道を開けろ!!真紅の地獄炎(クリムゾン・ヘル・バーン)!!

 

『琰魔竜レッド・デーモン』の拳が全ての錬金獣を破壊しつくし、攻撃態勢に入る。

 

「行け!『琰魔竜レッド・デーモン』でダイレクトアタック!極獄の絶対独断(アブソリュート・ヘル・ドグマ)

 

「単純すぎるぞ!罠カード発動!!『次元幽閉』!相手モンスターの攻撃宣言時、攻撃モンスター1体を選択して発動できる!!選択した攻撃モンスターをゲームから除外する!私は『琰魔竜レッド・デーモン』を選択!」

 

「なっ!!」

 

『琰魔竜レッド・デーモン』の拳が次元の裂け目に飲み込まれ、その姿が次元の狭間へと消えていった。

 

「っ!ターンエンド」

 

「私のターン、ドロー。私は手札より魔法カード『カオス・グリード』を発動!自分のカードが4枚以上ゲームから除外されており、自分の墓地にカードが存在しない場合に発動する事ができる。私はカードを2枚ドローする!」

 

「『錬金釜-カオス・ディスティル』の効果でカードは全て除外されているから、条件は満たされているのか!」

 

「その通り、ふむ・・・『カオス・グリード』をもう一枚発動する」

 

「!あのカードはターン制限が無いんだった」

 

「カードを一枚伏せ、『錫の魔法陣』『水銀の砂時計』『銀の鍵』を発動!!」

 

「!!錬金獣の要!!」

 

「現れよ!錬金獣達!!『錫のアエトス』!『水銀のエケネイス』!『銀のムーンフェイス』!」

 

 

『錬金獣・錫のアエトス』星3/風属性/鳥獣族/攻撃力500/守備力500

 

『錬金獣・水銀のエケネイス』星3/水属性/魚族/攻撃力500/守備力500

 

『錬金獣・銀のムーンフェイス』星3/闇属性/岩石族/攻撃力500/守備力500

 

 

「っ!」

 

「バトル!行け、錬金獣達よ!『錫のアエトス』ソニック・ブラスト!『水銀のエケネイス』スクアート・ガン!『銀のムーンフェイス』シルバー・カッター!」

 

「うああああああああ!!!!」

 

龍谷遊来:LP1000

 

再び錬金獣達の波状攻撃によってライフポイントを減らされてしまう。デッキからの干渉の影響もあるだろうが、遊来自身デュエルに集中できていないのだ。

 

「メインフェイズ2、私はカードを一枚伏せ、更に魔法カード『黒の過程 二グレド』を発動!このカードは『錬金釜-カオス・ディスティル』が自分の場に存在し、手札がゼロの時、自分フィールド上に存在する錬金獣を全て除外し、錬金獣一体につきカードを二枚ドロー出来る!私は『錫のアエトス』!『水銀のエケネイス』!『銀のムーンフェイス』を除外し、デッキより六枚ドロー!」

 

「そして魔法カード『白の過程 アルベド』を発動。このカードも「錬金釜-カオス・ディスティル」が場に存在する時、発動できる。デッキ及び手札の『黄金のホムンクルス』を特殊召喚する事ができる!」

 

「『黄金のホムンクルス』だって!?」

 

『黄金のホムンクルス』星6/光属性/戦士族/攻撃力1500/守備力1500

 

このカードの攻撃力・守備力は、ゲームから除外されている自分のカードの数×300ポイントアップする。

 

「除外された私のカードは17枚、よって『黄金のホムンクルス』の攻撃力は」

 

『黄金のホムンクルス』攻撃力1500→6100

 

「6100!?」

 

「龍谷遊来、君には欠けているセブンスターズのメンバーに一時的になってもらおう」

 

「何!?」

 

「それと同時に君のデュエルディスクも預からせてもらう」

 

「く・・・ごめん、十代」

 

遊来の敗北は確定してしまった。ドロー強化カードを引けず、チューナーモンスターも引く事が出来ず『黄金のホムンクルス』の攻撃を受けて敗北し、意識を失った。仮面の男は遊来のデッキから『琰魔竜レッド・デーモン』のカードを手にし、そのイメージイラストを見ている。

 

「これが、未知のシンクロ召喚によって呼び出される・・・神の化身の竜。このカードの意思を利用すれば、一時的に彼をセブンスターズの一員にする事が出来るようだな。それと」

 

男は『琰魔竜レッド・デーモン』のカードを遊来のデッキに戻すと、彼の専用デュエルディスクを腕から外し、回収する。

 

「このデュエルディスクに有る変身機能・・・これを私の手で改良させてもらおう」

 

意識を失っている遊来の身体を肩に担ぎ、デュエルディスクと共に夜の闇へと男は消えていった。




次回は十代VS遊来[琰魔竜レッド・デーモンの意思]です。

遊来自身ではありません。


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第23話

友情のために戦う。

二つの種族から力を借りる十代。


翌日、遊来が学園内で行方不明になってしまい、その話題は十代達を震撼させていた。

 

それは彼と交流のあった生徒達も同様である。特に彼からデッキのアドバイスや戦術を一緒に考えてもらっていた生徒が顕著だった。

 

「竜騎士様が行方不明に!?」

 

「嘘だろ!?アイツのおかげで俺のデッキの短所が解ったのに!」

 

「でも、アカデミア内で行方不明って・・・一体何が?」

 

それと同時にレッド寮内で十代、翔、隼人の三人が机を囲んで話し合っていた。それは恩師である大徳寺ことアムナエルから伝えられた事だ。

 

「大徳寺先生は、この学園に大いなる災いが来るって言ってたよな?」

 

「うん、だけどセブンスターズはまだ居るって」

 

「相手は一体誰なんだな・・・」

 

「分からない、遊来も居なくなっちまったし・・・」

 

三人が暗い雰囲気の中、光と共に、部屋の中へと倒れてくる人物がいた。それは実体化した『破滅の女神ルイン』であった。身体中に汚れがあり、此処まで来ただけでも辛かった様子が見て取れる。

 

「ひえっ!?だ、誰ッスか!?この超絶的な美人は!?」

 

「この人は・・・!」

 

「間違いない!『破滅の女神ルイン』だ!!」

 

『遊・・城・・・十・・・代・・・みな・・さん・・・うううっ!』

 

「一体どうしたんだ!?遊来と一緒じゃなかったのかよ!?」

 

十代は自分が使っているベッドへルインを横にさせると、落ち着くのを待って話を聞く事にした。

 

「落ち着いたか?」

 

「すみません、皆さん・・・」

 

「それよりも、ルイン・・さん?どうして、そんなにボロボロになってたんッスか?」

 

「そうなんだな・・・」

 

「マスターが行方不明になっているのは知っていますね?」

 

「ああ、アカデミア内で居なくなったって持ちきりだから」

 

「マスターは今、闇に囚われ闇の竜騎士として、セブンスターズのメンバーにされています」

 

「なんだって!?」

 

「遊来くんが!?」

 

「セブンスターズに!?」

 

ルインから伝えられた事実は、大徳寺が謎のように残した言葉の回答であった。その事実に三人はショックを受けていたが、持ち直すのに時間はかからなかった。

 

「私が此処に来れたのはレヴァティンのおかげなのです。彼ら『ドラグニティ』が私をギリギリの所で逃がしてくれたのです」

 

 

 

 

 

『マスター!マスター!!』

 

「・・・・」

 

「彼の身柄とデュエルディスクは私が預からせてもらう」

 

『させると思いますか?』

 

『ルイン姐さん、此処は俺の出番だ』

 

『レヴァティン!?』

 

『不肖・・・ドラグニティアームズ-レヴァティン、我が主の槍の為に殿とならん!姐さん、逃げろ!』

 

遊来を守ろうと槍を構えるルインの前へと立ったのがレヴァティンだ。仮面の男の前に彼はルインに対しドンッ!と背中を押し、ルインは遊来とレヴァティンから引き離されてしまう。だが、引き離した瞬間、相手を中心に闇が覆っていくのを目撃してしまう。

 

『マスター!レヴァティン!!』

 

『姐さん!必ず、必ずだ!きっとマスターを救いに・・!』

 

『レヴァティン!!』

 

仮面の男と共に遊来とレヴァティンは闇に飲み込まれ、其処にはルインだけが残された。自分の手を見ると実体化しているのを感じる。レヴァティンに背中を押された際、彼のエナジーが実体化させたのだろう。だが、ここはデュエルアカデミア、下手に生徒に出くわしてしまうと問題になってしまう。

 

「行かなくては・・・」

 

 

 

 

「それで、身を隠しながら此処へ来たって訳か・・・」

 

「それなら理由になるんだな・・・」

 

「その仮面の男が使ってたデッキって、なんだったッスか?」

 

「『除外』をメインに据えたデッキでした・・・錬金という言葉も」

 

錬金という言葉を聞いて三人は確信を持った。遊来を倒したのは間違いなく大徳寺先生だと、それと同時に遊来のデッキの弱点を徹底的に付いたのだろう。大徳寺先生と実際に戦った十代やその戦いを見ていた翔と隼人も自分の中で納得がいった。

 

「それにあの男はマスターのデュエルディスクに、大変興味を持っていたようです」

 

「遊来のデュエルディスクに?」

 

「もしかして・・・変身機能ッスかね?」

 

「有り得るんだな。遊来のデュエルディスクだけにある機能だから」

 

「恐らくは・・・ん?」

 

「どうした?」

 

ドアの方へ視線を向けていたルインの様子を見て、三人はドアへ視線を向ける。人の気配がレッド寮の直ぐ傍にあるデュエル場から出ているのだ。

 

三人、いや・・・四人は急いで外に出ると其処には遊来が立っていた。だが、いつもの明るい雰囲気は無くまるで闇堕ちしたキャラクターのように冷たい雰囲気を漂わせている。

 

「マスター!?」

 

「遊来!?」

 

「遊来くん!?」

 

「遊来・・・!?けれど、いつもと雰囲気が違うんだな」

 

「・・・・出てきたか、俺と戦え」

 

遊来は問答無用といった様子でデュエルディスクを構えている。そのデッキは恐らくは『ドラグニティ』だろうという予測が立つ。

 

「良いぜ、俺が戦う!」

 

「アニキ!?」

 

「十代!?」

 

「遊来がセブンスターズの補充要員なら、今のアイツを倒せば戻ってくるはずだ!」

 

「・・・・そうだ、なら・・・コレはどうだ?」

 

デュエルディスクの変身機能をONにし、十代のデュエルディスクのライフポイント部分が点滅し共有状態になった事を示していた。

 

それと同時に遊来の腰に禍々しい紫色をしている剣が収められたベルトが姿を現した。その手には小さな本のような物が握られている。彼はその表紙を開き、起動させた。

 

ジャアクドラゴン

 

『かつて、世界を包み込んだ暗闇を生んだのはたった一体の神獣だった』

 

小さな本の内容を僅かに朗読された音声が流れると、禍々しい紫の剣を刀身が収められている部分から、引く抜くと本を剣に読み込ませる。

 

『ジャアクリード!』

 

恐ろしく聞こえる音楽と共に本をベルトの中心へと収め、遊来は禍々しい紫の剣を構える。

 

「変身・・・!」

 

闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)

 

「はぁっ!!」

 

闇黒剣月闇と呼ばれた剣を振り下ろすと同時に斬撃が発生し、それが再び遊来の元へと戻り変身していく。

 

『Get go《月光》』

 

『Under conquer《暗黒》』

 

『Than get keen《斬撃!》』

 

 

ジャアクドラゴン

 

『月闇翻訳!光を奪いし漆黒の剣が、冷酷無情に暗黒竜を支配する!』

 

全身を覆うような装甲が覆い、闇の剣士カ○バーの姿となった遊来。その姿に十代は驚愕を口にする。

 

「ルインの言った通り、本当に闇の剣士・・・その象徴である仮面ラ○ダーカ○バーになっちまうなんて。セブンスターズになってたのを心のどこかで信じられなかったけど、今はもう迷わない!俺も同じタイプで戦う!」

 

『聖剣ソードライバー』

 

「遊来十代、このカードを!」

 

「これは?」

 

それはルイン自身とそれを呼び出す魔法カード、それと『ドラグニティーミリトゥム』のカードだった。ルインの方は組み入れることをなんとか出来るが、『ドラグニティーミリトゥム』の方は組入れることができない。『ドラグニティーミリトゥム』は『ドラグニティ』のデッキでなければ真価を発揮する事ができない。

 

『お願いします。デッキに組み入れて貰えずとも、共に戦わせてください!』

 

「ミリテゥムの声か?今の」

 

『そうです、彼女を共に居させてあげてください。彼女はマスターと『ドラグニティ』を繋ぐ架け橋となってくれた者なんです』

 

「わかったぜ!遊来、俺も同じ作品の姿で戦うぜ!!」

 

十代は遊来の前に立ちはだかり、その腰には『聖剣ソードライバー』が装着されており、紅い剣が収められている。その手には遊来が持っていたものと同じ小さな本のような物が握られている。十代もその表紙を開き、起動させた。

 

ブレイブドラゴン

 

『かつて全てを滅ぼすほどの偉大な力を手にした神獣がいた』

 

それをドライバーに装填し、本の中に封じられた力を発揮させ、収められた剣の柄に手をかける。

 

「変身!うおおお!!はあっ!」

 

十代は『聖剣ソードライバー』から紅い剣、火炎剣烈火を引き抜き、炎のエフェクトが彼の周りに発生し、左右へ袈裟斬りを二回行い、その斬撃が戻ってくると十代も姿が変わっていく。

 

烈火抜刀

 

ブレイブドラゴン

 

『烈火一冊!勇気の竜と火炎剣烈火が交わる時、真紅の剣が悪を貫く』

 

「おおおっ!?これがセ○バーかぁ!燃える赤のラ○ダー!最高だぜ!!」

 

「行くぞ・・・」

 

「来い!遊来!!」

 

「「デュエル!!」」

 

龍谷遊来(仮面ラ○ダーカ○バー)LP:4000

 

遊城十代(仮面ラ○ダーセ○バー)LP:4000

 

「先攻は俺だ!ドロー!!」

 

「とうとう始まったんだな・・・!」

 

「アニキ・・・遊来くん・・・」

 

「俺は手札から『E・HERO エアーマン』を攻撃表示で召喚!このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、2つの効果から1つを選択して発動できる。1つはこのカード以外の自分フィールドの「HERO」モンスターの数まで、フィールドの魔法・罠カードを選んで破壊する。二つ目はデッキから「HERO」モンスター1体を手札に加える効果だ。俺は『HERO』を手札に加える効果を使うぜ!この効果により『E・HERO リキッドマン』を手札に加える!!」

 

「お得意の展開方法か・・・」

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

[ドローカード]

 

※調和の宝札

 

[現在の手札6枚]

 

※調和の宝札

 

※ドラグニティ-クーゼ

 

※ドラグニティ-グラム

 

※ドラグニティ-レガトゥス

 

※テラ・フォーミング

 

※ドラグニティ-ファランクス

 

「俺は手札から『調和の宝札』を発動!手札の『ドラグニティ-ファランクス』を墓地へ送り、二枚ドロー」

 

[追加ドローカード]

 

※ドラグニティ-ドゥクス

 

※ドラグニティ-アームズ-ミスティル

 

「更に魔法カード『テラ・フォーミング』を発動。このカードの効果により、フィールド魔法を手札に加える!当然、加えるカードは『竜の渓谷』!!そのまま、フィールド魔法『竜の渓谷』を発動!!」

 

『竜の渓谷』が発動した事によって、周りの景色が竜が飛び交う黄昏のはずが日が落ち切った夜の渓谷となっている。

 

「闇の竜騎士が戦う場所に相応しいだろう?今のこの渓谷は」

 

「遊来・・・!」

 

「更に『ドラグニティ-レガトゥス』を特殊召喚!このカードの効果は何度も見ているだろう?」

 

「ああ、1ターンに1度だけ『竜の渓谷』がフィールドにある時、特殊召喚出来るんだったよな?」

 

「その通りだ」

 

だが、『ドラグニティ-レガトゥス』の姿が黒と黄金の鎧を見に付けた姿となっている。黒いオーラが纏わり付いているのが十代の目には見えている。

 

「『ドラグニティ』達が闇に・・・!」

 

「更に『竜の渓谷』の効果を発動、『ドラグニティ-ドゥクス』を墓地へ送りデッキから『ドラグニティ-レムス』を墓地へ送る!」

 

「『ドラグニティ-レムス』が墓地に落とされた!?ヤベェ!!」

 

「気づいたようだな?俺のパターンに。『ドラグニティ-レガトゥス』がフィールドに居る事により墓地の『ドラグニティ-レムス』の効果を発動!墓地に有るこのカードを特殊召喚する!!ただし、この効果で特殊召喚されフィールドから離れた場合、ゲームから除外される!そしてこのターン、俺は融合デッキからドラゴン族モンスターしか召喚出来ない!!」

 

「来る!遊来の切り込み隊長が!」

 

「レベル4の『ドラグニティ-ドゥクス』にレベル2の『ドラグニティ-レムス』をチューニング!!」

 

★4+★2=★6

 

『ドラグニティ-レムス』が自らを光の輪に変化させ『ドラグニティ-ドゥクス』の輪を潜り、自らを星となる。

 

「二つの種族の決意が、暗黒より竜騎士を生み出す。今こそ駆け抜けろ!シンクロ召喚!!」

 

「飛び上がれ、『ドラグニティナイト-ガジャルグ』!!」

 

「やっぱり、そのシンクロモンスターを出してきたか!」

 

「『ドラグニティナイト-ガジャルグ』の効果発動!1ターンに一度、デッキからレベル4以下のドラゴン族か鳥獣族モンスターを一体手札に加える。その後、手札からドラゴン族または鳥獣族のモンスターを一体手札から捨てる!デッキから『BF-精鋭のゼピュロス』を手札に加え、そのまま墓地へ送る。更に『ドラグニティ-クーゼ』を通常召喚!」

 

「うっ!そのカードが出てきたって事は・・・遊来の最強モンスターの一角が出て来る!そのカードはレベル4のチューナーとして扱える効果を持ってる!」

 

「レベル6の『ドラグニティナイト-ガジャルグ』にレベル4扱いとなった『ドラグニティ-クーゼ』をチューニング!」

 

★6+★4=★10

 

「天の龍と鳥獣の王が光を背けた時、闇を駆ける竜騎士の邪王が現る・・!今こそ駆け抜けろ!シンクロ召喚!闇の道を行け・・!『ドラグニティナイト-アスカロン』」

 

「攻撃力3300!」

 

「遊来くん、手加減無しッス!!」

 

「セブンスターズになっても、遊来は流儀を捨てていないんだな!」

 

「行け、アスカロン!エアーマンへ攻撃!!ダークネスドラゴストーム!」

 

「っうあああああ!!」

 

遊城十代(仮面ラ○ダーセ○バー)LP:2500

 

エアーマンはアスカロンの攻撃を受け、破壊されてしまい。その余波が十代へ襲い掛かりライフポイントが削られてしまう。

 

「まだだ!罠カード、『ヒーローシグナル』自分フィールド上のモンスターが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時に発動する事ができる。自分の手札またはデッキから『E・HERO』という名のついたレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する!来い!『E・HERO シャドー・ミスト』シャドー・ミストの効果発動!このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「チェンジ」速攻魔法カード1枚を手札に加える!『マスク・チェンジ』をデッキから手札に加えるぜ!」

 

「(伏せカードが無いのが痛手だな)ターンエンド」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「俺は手札から『融合』を発動!手札のクレイマンとリキッドマンを融合し、現れろ!大地を揺るがすヒーロー!『E・HEROガイア』!!」

 

「(天の邪竜に対し、大地の力を持つ英雄か!なかなか洒落てるじゃないかよ)」

 

「リキッドマンが融合素材になった時、カードを二枚ドローし一枚を捨てる!更に『E・HEROガイア』の効果発動!このカードが融合召喚に成功した時、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。このターンのエンドフェイズ時まで、選択したモンスター1体の攻撃力を半分にし、このカードの攻撃力はその数値分アップする!俺は『ドラグニティナイト-アスカロン』を選択するぜ!」

 

『E・HEROガイア』が大地を殴りつけ、地表を隆起させ『ドラグニティナイト-アスカロン』を大地へと墜落させた。

 

『ドラグニティナイト-アスカロン』攻撃力3300→攻撃力1650

 

『E・HEROガイア』攻撃力2200→攻撃力3850

 

「行け!ガイア!!『ドラグニティナイト-アスカロン』に攻撃!コンチネンタルハンマー!」

 

ガイアの巨大な腕で殴りつけられた『ドラグニティナイト-アスカロン』は破壊され、その余波が遊来に襲いかかる。

 

「うおおおおお!?」

 

龍谷遊来(仮面ラ○ダーカ○バー)LP:1800

 

「流石だな、十代・・・1ターンで逆転された。ならば、俺も更に上の力を出そう!」

 

闇黒剣月闇という名の剣をホルダーから引き抜き、更にある物を取り出した。それは大きな物だったが、変身に使った本と似ている。その大きな本の表紙が開かれる。

 

ジャオウドラゴン

 

『邪道を極めた暗闇を纏い、数多の竜が秘めた力を解放する』

 

その本を剣に読み込ませ、更に禍々しく黄金と黒い竜が変身している遊来の周りを飛び交う。

 

『ジャオウリード』

 

闇黒剣月闇(あんこくけんくらやみ)

 

『Jump out the book, open it and burst.』

 

『The fear of the darkness』

 

『You make right a just, no matter dark joke. Fury in the dark.』

 

ジャオウドラゴン

 

『誰も逃れられない・・・』

 

黄金の竜がアーマーとなり、頭部が覆われた装甲が解放され、マントも新たに追加された姿になっている。

 

「ジャオウドラゴン・・・!強化形態かよ、遊来!」

 

「その通りだ、十代」

 

「追撃だ!シャドー・ミストで攻撃!!」

 

「させるか!破壊されたアスカロンの効果!シンクロ召喚したこのカードが相手によって破壊された場合に発動できる。融合デッキから攻撃力3000以下の「ドラグニティ」シンクロモンスター1体をシンクロ召喚扱いで特殊召喚する!二つの種族の怒りが、新たな闇の竜騎士を生み出す!今こそ迎え討て!シンクロ召喚!走り抜けろ『ドラグニティナイト-バルーチャ』」

 

「!!攻撃を中止して巻き戻す!」

 

「バルーチャの効果!墓地にあるクーゼ、ファランクス、ガジャルグ、アスカロンをバルーチャに装備!一枚につき、300ポイントの攻撃力アップ!4枚装備して1200ポイントアップ!よって攻撃力は3200!!」

 

「ぐ・・・俺は攻撃をせずカードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー」

 

 

[ドローカード]

 

※ドラグニティの神槍

 

[現在の手札4枚]

 

※ドラグニティ-グラム

 

※ドラグニティ-ドゥクス

 

※ドラグニティ-アームズ-ミスティル

 

※ドラグニティの神槍

 

「俺はバルーチャに装備されたクーゼとファランクスの二体をフィールドに特殊召喚!これにより、バルーチャの攻撃力は600ダウンするが、チューナーを出す事は出来た」

 

 

『ドラグニティナイト-バルーチャ』攻撃力3200→攻撃力2600

 

 

「更に墓地に有る『BF-精鋭のゼピュロス』の効果を発動!このカードの効果はデュエル中に一度だけ使う事が出来る!このカードが墓地に存在する場合、自分フィールドの表側表示のカード1枚を持ち主の手札に戻して発動できる。このカードを墓地から特殊召喚し、自分は400ダメージを受ける!俺は『竜の渓谷』を手札に戻し、『BF-精鋭のゼピュロス』特殊召喚!この際、400ポイントのライフダメージを受ける」

 

龍谷遊来(仮面ラ○ダーカ○バー)LP:1400

 

「先程、手札に戻した『竜の渓谷』を再び発動。レベル4の『BF-精鋭のゼピュロス』に特殊召喚したレベル2の『ドラグニティ-ファランクス』をチューニング!再び来い!『ドラグニティナイト-ガジャルグ』!」

 

「また、ガジャルグを!?」

 

「ガジャルグの効果!デッキから『霧の谷の幼怪鳥』を手札に加え、そのまま墓地へ送る!『霧の谷の幼怪鳥』の効果!このカードが手札から墓地へ送られた時、自分フィールド上に特殊召喚する事ができる!レベル6の『ドラグニティナイト-ガジャルグ』にレベル4の扱いとなった『ドラグニティ-クーゼ』をチューニング!!」

 

★6+★4=★10

 

「大地から目覚めし邪竜の王が鳥獣の王の呼びかけに応える時、光を引き裂く闇の竜騎士が駆け抜ける!シンクロ召喚!!ゆるがせ!『ドラグニティナイト-アラドヴァル』!!」

 

「アスカロンと同等のスペックを持つドラグニティナイト!?」

 

「レベル8の『ドラグニティナイト-バルーチャ』にレベル2『霧の谷の幼怪鳥』をチューニング!!再び飛び上がれ!『ドラグニティナイト-アスカロン』!!」

 

「こ、これが遊来の全力全開!!」

 

「そう、これが・・・『ドラグニティ』の天と地を表す2体の竜騎士だ!!」

 

「・・・皮肉なもんだな。俺達は遊来の全力は目にしても、全開を見た事はなかった・・・。セブンスターズになってから見る事が出来るだなんて」

 

「行くぞ、十代!2体の攻撃!天地竜撃穿!!」

 

「罠カード!『攻撃の無力化』!!このカードの効果によりバトルフェイズは終了だ!!」

 

「ぐ・・・ターンエンド」

 

「俺のターン!ドロー!!俺は『強欲な壷』を発動!カードを更にドロー!さらに『天使の施し』!カードを更に三枚引いて二枚を捨てる!これは・・・」

 

十代の手に来たのは始まる前に手渡された二枚のカードだった。召喚するのは容易い、だが・・それだけでは親友を救う事は出来ないと、自分の中で何かが訴えかけている。

 

『我ら『ドラグニティ』の力の一部を遊城十代、貴方にお貸しします』

 

「え?」

 

『PRIMITIVE DRAGON』

 

「この本・・・禁忌の設定があるっていう・・・!」

 

『ドラグニティ』の力の一部がソリッドヴィジョンの本に宿ったのだ。だが、このままでは使用する事が出来無い。十代も遊来に影響され、この本が出て来る仮面ラ○ダーを観ており、その危険性の設定を知っていたからだ。

 

「(俺のデッキに宿るヒーローのみんな!俺に遊来を救い出す力を貸してくれ!)」

 

元素の属性を持つE・HEROの上位融合体と融合素材として活躍するE・HERO達が、十代の背後で各々頷き合うと十代の目の前に一冊の本の姿となって現れた。

 

ELEMENTAL DRAGON

 

「!?これって・・・!力を貸してくれるのか!?『ドラグニティ』と『E・HERO』二つの力を借りて、遊来!お前を助ける!!一緒に戦ってくれ!」

 

十代が本の表紙を開くと、僅かに本の内容が読み上げられる。

 

『そして太古の力と手を結び、全てを救う神獣となる!』

 

『PRIMITIVE DRAGON』

 

ELEMENTAL DRAGON

 

十代は作品で見ていた通り、『E・HERO』の力が宿る本を『ドラグニティ』の力が宿った本へと装填する。

 

『GET!』

 

ドライバーへ力強く装填し、ロック調の音楽と共に剣を収めなおすと同時にすぐに引き抜いた。

 

「うおおおお!変身!!」

 

烈火抜刀

 

『バキッ!ボキッ!ボーン!』

 

メラ!メラ!バーン!

 

『シェイクハーンズ!』

 

『E・L・E・MEN・TAL!』

 

DRAGON!!

 

エレメントマシマシ!キズナ、カタメ!

 

「エレメンタルプリミティブドラゴン!?何故、その姿に!?」

 

「お前を救いたい一心でこの姿になったんだ!俺は魔法カード『ミラクル・フュージョン』を発動!墓地のエアーマンとリキッドマンを除外して、『E・HERO アブソルートZero』を召喚!更に速攻魔法『マスク・チェンジ』を発動!」

 

「そ、そのカードは!!」

 

「シャドー・ミストを対象に変身!」

 

シャドー・ミストが黒い霧に覆われ、その中で変身していく。その仮面はまるで鬼のようで厳しさを内に秘めたような姿だ。

 

「『M・HERO 闇鬼』を変身召喚!!だが、トドメを刺すのは闇鬼じゃない!儀式魔法『エンドレス・オブ・ザ・ワールド』を発動!『E・HERO アブソルートZero』を儀式のコストにして!」

 

「あの儀式魔法は!?」

 

「遊来が使ってたカードなんだな!」

 

「来い!『破滅の女神ルイン』!!」

 

「ル、ルイン!」

 

『マスター、貴方に取りつく悪しき闇を消し去ります!』

 

「『E・HERO アブソルートZero』の効果!このカードがフィールド上から離れた時、相手フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する!」

 

「!しまった、対抗するタイミングが!!」

 

『ドラグニティナイト-アスカロン』と『ドラグニティナイト-アラドヴァル』が凍りつき、破壊されてしまう。

 

「もう、戦う気力が・・・」

 

「ルイン、プレイヤーへダイレクトアタック!エンドレス・カタストロフィ!!」

 

「はあああ!」

 

力が集約され投擲された槍が遊来の中心に突き刺さり、中から闇は溢れ出し、変身も解除され遊来は地面に膝を着いた。

 

龍谷遊来(仮面ラ○ダーカ○バー)LP:0

 

十代の変身した姿も解除され、貸し出されていた力も元の場所へと戻っていき十代は遊来に近づき声をかける。

 

「遊来、遊来!大丈夫か!?」

 

「十・・代・・?俺は何を?」

 

「何も覚えてないのか!?」

 

「悪い・・・なんだか、すごい・・・眠い」

 

そう言って遊来はその場で倒れて眠ってしまった。十代も疲労が来たのか座り込んでしまう。

 

「すごい戦いだったんだな・・・」

 

「うん、『ドラグニティ』の全力全開を見れたのは嬉しかったけど、戦いが凄まじすぎて・・・」

 

翌日、遊来を発見した事を十代が伝えたが疲労が激しいとも伝えてあった為、二人揃って保健室に検査入院のような形で過ごす事になるのだった。




次回は文化祭。コスプレデュエル回です。

正式にルインが実体化、登場します。

竜騎士に因んだカードが出てきます。もちろん例の彼女。

『決闘者達の初恋』とも言われる彼女も登場し、遊来が彼女を驚かせます。

そして、後にペガサスに叱られます。


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第24話

楽しいデュエル(決着時に有る有るな出来事)

あるカードを使ってペガサスに叱られる。


セブンスターズが全員、倒されたがそれ以降なんの動きもなく。アカデミアの文化祭が開催された。

 

この日だけは外来も船でやって来るため、それぞれの寮が張り切っている。

 

オベリスクブルーの男子は女子と協力して、メイド&執事喫茶を開いていた。だが、其処に遊来だけが参加していない、その理由は現在進行形で動いている。

 

「遊来くん!お願いだよ!協力して欲しいッス!!」

 

「オベリスクブルーにまで頼みに来たのは、それかよ!?」

 

遊来はセブンスターズの一員としてデュエルした後、疲労困憊などで保健室で入院患者同然の状態であったが『食う』『寝る』『体を動かす』を続けた結果、驚異的な回復を見せ、二日前に完全復活していたのだ。

 

「オベリスクブルーの皆に聞いたら構わないと言われてるし、協力するさ」

 

「ありがとう!遊来くん!!」

 

オベリスクブルーまで趣いた翔が遊来に協力を仰いだのは、変身機能を使わせて欲しいというものだった。仮面ラ○ダーに変身するデュエリストが居るとなれば、盛り上がる事が間違い無しと思ったからだ。

 

オシリスレッドの出し物はコスプレデュエルというものだそうだ。デュエルモンスターズだけじゃなく、好きなコスプレをしてデュエルをするという。

 

「じゃあ、準備が出来たら行くから」

 

「うん、待ってるよ!」

 

翔はそのままオシリスレッドへと戻り、遊来は『ドラグニティ』以外のデッキを準備し、オシリスレッドへと向かう。

 

「(俺が負けたせいで・・・皆に迷惑かけちゃったな・・・)」

 

『ドラグニティ』を闇に染めてしまった事、ルインをボロボロにしてしまった事に責任を感じている遊来。その影響もあり『レッドデーモン』からの干渉も強く出ている。

 

「さて、行くかな」

 

 

 

 

オシリスレッドにはいつものメンバーが集まっており、デュエルモンスターズのコスプレをしている。遊来が来た事でコスプレを楽しんでいる人達が集まる。

 

「なぁ、噂で聞いたんだけど遊来は仮面ラ○ダーになれるって本当か?」

 

「え?ああ・・・デュエルでのエンターテインメント用だけどなれるよ」

 

「マジか!?」

 

「変身を見せてくれないか!?」

 

「良いけど、何か要望ある?」

 

「うーん・・・・」

 

要望と聞かれて全員が唸ってしまった。仮面ラ○ダーと一言で言っても、種類が豊富なのだ。だからこそ、リクエストを悩んでしまう。

 

「決まらないなら、俺が決めていい?」

 

「俺達だと決まらなそうだから、そうしてくれ」

 

「分かった、じゃあ分かりやすいやつで」

 

デュエルディスクの変身機能をONにし『覇剣ブレードライバー』と呼ばれる『聖剣ソードライバー』と似て異なるベルトを出現させ、手にはオレンジ色の表紙を持つ小さな本が現れた。その表紙を開き、起動と同時にタイトルが読まれ、わずかに内容が朗読される。

 

エターナルフェニックス

 

『かつてから伝わる不死鳥の伝説が今、現実となる』

 

「え?あれってまさか・・・映画専門チャンネルで見たことあるぞ!?」

 

ドライバーに、たった一箇所だけ有る装填部分に本を差し込むと、何かが迫ってくるような音楽が流れ出す。タイミングを見測って遊来は収められている黒い剣、『無銘剣虚無』を引き抜いた。

 

『抜刀・・・!』

 

「!シーッ・・・!変身・・・!!はあっ!!」

 

ドライバーから抜いた黒い剣をひと振りすると同時に、炎のエフェクトが鳥の姿となって遊来へ向かう。

 

ETERNAL PHOENIX

 

『虚無!漆黒の剣が、無に帰す・・・!』

 

「「おお~!」」

 

「仮面ラ○ダーファル○オンだ!遊来、マジで変身しちゃったよ!!」

 

「けれど、デュエルディスクが無いと変身出来ないからな?」

 

「え?」

 

「当たり前だろ?デュエル中のエンタメ要素なんだから」

 

そう言いながら、遊来は変身を解除する。あくまでも変身が出来る事を見せる為だけにやった事だからだ。

 

「そ、そうなのか」

 

「デュエルディスクを身に付けるのが合わないなら、普通にコスプレをした方が良い思うぞ」

 

『あの・・・マスター?私も参加してよろしいでしょうか?』

 

「(ルイン?実体化が可能なら良いんじゃないか?)」

 

『では、着替えてきますね』

 

「(外来で来た転入予定の人間、という形で紹介するから)」

 

『はい』

 

ルインは着替えるために何処かへ行ってしまい、遊来もコスプレをどうするか考えている。変身機能を使えば楽だが、それは自分だけの限定になってしまうのだ。

 

いつものメンバーが集まり、明日香は『ハーピィレディ』のウイッグだけをつけており、オシリスレッドの三人組は自分のデュエルディスクを持ってきており、遊来に変身機能の共有状態を懇願している。

 

万丈目はコスプレデュエル実行委員長であり解説役を務めるそうだ。遊来は考えに考えた結果、普段通りの姿でいることにした。

 

そんな中、ルインが着替えを済ませ実体化している。しかも『美神』の姿でコスプレしているのだ。

 

「ルイン!?そのコスプレ・・・もしかして?」

 

「ああ、FGOのモル○ンですよ」

 

「しかも、第三再臨の姿かよ」

 

「似合いませんか?」

 

「いや、似合ってるんだけど・・・良い意味で刺激が強くて」

 

そう、FGOモル○ンの第三再臨の姿は肌の露出やスリット、胸元など女性のラインがクッキリと出る衣装なのだ。

 

一緒に会場向かうと一斉に男子生徒達がルインの姿に釘付けになる。その隣に遊来に詰め寄る。

 

「あの美人、誰だよ遊来!?」

 

「そうだよ!教えろよ!!」

 

「あ、ああ・・・彼女はルイと言ってアカデミアに転入予定の人さ」

 

「え、マジ!?」

 

「はい、あくまでも予定です。それと好意は嬉しいですが私には心に想う方がいますので、お付き合いは出来ません。ごめんなさい」

 

「「うわあああああ!!告白する前に振られたぁぁぁぁ!!!」」

 

「ハハハ・・・・」

 

遊来は苦笑しながらルインのモテモテ振りに驚いていた。そもそもデュエルモンスターズの上級クラスの存在であり、天使族。それもクールな雰囲気と生真面目さが合わさっているのだからモテないはずがない。

 

「それでは、オシリスレッド主催!コスプレデュエルを開催する!!記念すべき最初に対戦したい者は誰だ!?」

 

「はいはーい!私がやりたいでーす!!」

 

元気の良い声が聞こえてくる。その声の正体は『ブラックマジシャンガール』であった。その姿をルインが見た瞬間、彼女は遊来にこっそり耳打ちする。

 

「(彼女、精霊みたいです。どうやら楽しい雰囲気に魅せられて実体化しているようですね)」

 

「(そっか、でも良いじゃないか。せっかくのお祭りだしさ)」

 

「(ええ)」

 

そんな風に話していると『ブラックマジシャンガール』が遊来に近づいてくる。興味は有るようだがその隣にいるルインに視線を向けている。2人は念話で何かを話し始めた。

 

「(美神ルイン様かな?此処でお会いできるなんて、今はお祭りですからね。楽しみましょう!)」

 

「(ええ、そうですね。それと、今はルイとお呼び下さい)」

 

「(はーい)じゃあ、ルイさんの隣に居る・・・えっと」

 

「遊来、龍谷遊来だよ。よろしく」

 

「うん、早速で悪いけど私のデュエルの相手をしてくれるかな?」

 

「分かった。俺でよければ」

 

「じゃあ、行こう!」

 

2人はデュエル場にそれぞれ、スタンバイしデュエルディスクを起動し構える。それと同時に遊来が『ブラックマジシャンガール』に声をかける。

 

「あ、そうだ!デュエルの前にエンターテインメントプログラムを起動していいか?」

 

「?不正しないなら良いよー!」

 

「分かった!相手が魔法使いなら・・・これだな!」

 

デュエルディスクの変身機能を起動し、ベルトに手の形をしたベルトが重なり遊来の指に指輪が出現する。手の形をした装飾の指輪をベルトに近づける。

 

「?指輪?」

 

DRIVER ON!PLEASE!

 

同時に起動させたかのようにベルトの方の手の形を変え、赤い指輪についているフィルターのような部分を下ろし、構える。

 

『SHSBADOOBIE TOUCH HENSIN!』

 

『SHSBADOOBIE TOUCH HENSIN!』

 

「あのベルト、結構うるさいな・・・!」

 

「そこ!俺もそう思ってるんだから言わないの!」

 

「アッハイ」

 

ギャラリーからのツッコミに対応しつつ、遊来は改めて赤い指輪をドライバーにかざす。

 

「変身・・!!」

 

FLAME PLEASE!

 

HI HI HI HI HI!!

 

赤と黒を基調とした魔法使いの名を冠する仮面の戦士に遊来は再び変身した。デュエルディスクがあるのがシュールだが、それでもスタイリッシュなカッコ良さは失っていない。寧ろ、アクセサリーとなっている。

 

「さぁ、ショータイムだ!」

 

「な、なんと遊来選手!ブラック・マジシャンガールに合わせて、仮面ラ○ダーの中でも魔法使いとされる仮面ラ○ダーウィ○ードに変身したー!!」

 

いつの間にか翔が解説役になっており、熱く語っている。

 

「わぁ、すごーい!ホントに変身しちゃうなんて!!」

 

「デュエル中に楽しませる要素だと思ってくれ、それじゃ改めて」

 

「うん!」

 

「「デュエル!!」」

 

龍谷遊来(仮面ラ○ダーウィ○ード):LP4000

 

ブラック・マジシャンガール:4000

 

「私の先攻ね?ドロー!」

 

「(一体、何を使ってくるんだろうか?)」

 

「私はモンスターをセットして、更にカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

「(基本に忠実だな)俺のターン、ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※竜の渓谷

 

[現在の手札6枚]

 

※ライトパルサー・ドラゴン

※根源龍レヴィオニア

※輝白竜 ワイバースター

※竜の渓谷

※戦線復帰

※輝光竜 セイファート

 

「とにかく行くしかないか!ドラゴン!力を貸せ!フィールド魔法『竜の渓谷』を発動!」

 

黄昏になっていないが、竜達が飛び交う渓谷が現れ、『ブラック・マジシャンガール』は思わず口にする。

 

「竜の渓谷かぁ・・・変身できるなら、君が呼ばれてる通り名の姿になって欲しいな」

 

「通り名って・・・あれ?仮面ラ○ダー知ってんのか?」

 

「知ってるよ、少しだけね。魔法使いとか聖騎士とか」

 

「遊来ー!ブラマジガールが姿を変えろって言ってるんだぞー!」

 

「そうだそうだ!」

 

「変身する姿を変えろよー!!」

 

「おまいら・・・」

 

遊来も思わず溜息を吐いてしまう。仕方ないなといった様子で遊来はウィ○ードの姿を解除し、聖騎士の鞘とも言えるドライバーを設定し出現させる。

 

「最近、セ○バー続きじゃね?変身しやすいけどさ・・・」

 

その手には分厚く大きな本が握られており、遊来はその表紙を開けて内容を聞かせる。その後、ドライバーにその本を装填した。

 

ドラゴニックナイト

 

『ドでかい竜をド派手に乗りこなす、ド級の騎士のドラマチックバトル!』

 

「今の自分の通り名のラ○ダーって、これしか無いものな・・・行くぞ、変身!!」

 

烈火抜刀

 

Don`t miss it!

 

The knight appears.When you side

 

「ドメタリックアーマー!」

 

You have no grief and the flame is bright

 

「ドハデニックブースター!」

 

Ride on the dragon, Fight

 

「ドハクリョックライダー!」

 

DRAGNIC KNIGHT

 

「ドラゴニックナイト!」

 

『すなわち、ド強い!!』

 

壮大な音楽と共に炎のエフェクトが遊来を包み込み、白銀と真紅の鎧を纏った騎士の姿となった。その姿は正に『竜騎士』そのものである。

 

「わぁぁぁぁ!」

 

「な、何という事だァァァ!!これは『竜騎士』!!龍谷遊来選手、通り名そのものである『竜騎士』に変身したぞー!」

 

「リクエストに応えただけだろうに、さて・・・続きだ。『竜の渓谷』の効果を使い『輝白竜 ワイバースター』を墓地に送り、『暗黒竜 コラプサーペント』を墓地へ送る。『輝光竜 セイファート』を召喚!バトル!セットモンスターへ攻撃!!」

 

『輝光竜 セイファート』がセットモンスターへ襲いかかると、現れたのは金髪の魔法使いの男性だった。それが破壊され、ブラック・マジシャンガールが宣言する。

 

「セットモンスターは『見習い魔術師』!戦闘で破壊された事により、効果発動!デッキからレベル2以下の魔法使い族モンスターを召喚!『見習い魔術師』をもう一体召喚!」

 

「俺はこの先、何も出来ないからターンエンドだ」

 

「私のターン、ドロー!先ず、魔法カード!『二重召喚』!これにより通常召喚が2回可能だよ!一回目の通常召喚!来て!『ベリー・マジシャン・ガール』!」

 

「は?」

 

遊来は思わず間の抜けた声を出してしまった。『見習い魔術師』を見て魔力カウンタータイプだと思い込んでいたが、予想を遥かに外れてしまったカードが出てきたからだ。

 

「べ、『ベリー・マジシャン・ガール』!?ま、まさか・・・!!そのデッキは!?」

 

「あ、分かっちゃった?そうだよ、このデッキは『マジシャン・ガールズ』だよ!!」

 

「ですよねーー!!」

 

マジシャン・ガールとは果物に関する名前を持つ、ブラック・マジシャンガールと酷似した魔法使い族のモンスター達だ。

 

その効果が非常に厄介であり、テクニカルな動きでアドバンテージを取っていくタイプのデッキでパワータイプには天敵になりうるデッキでもある。

 

「『ベリー・マジシャン・ガール』が召喚に成功した時、効果発動!デッキから「マジシャン・ガール」モンスター1体を手札に加えるよ!」

 

「これは・・・ギアを全開にしなきゃ負けるかも」

 

「『見習い魔術師』をリリース!私自身『ブラック・マジシャンガール』を召喚!」

 

「うおおおおおおおおーーーー!!」

 

ソリッドヴィジョンでのブラック・マジシャンガールの登場に会場は大盛り上がりだ。ブラック・マジシャンガールが『ブラック・マジシャンガール』を召喚するなんて最高のシチュエーションだろう。

 

「ブラマジガールで『輝光竜 セイファート』を攻撃!ブラック・バーニング!!『ベリー・マジシャン・ガール』も行って!」」

 

「ぐっ!!」

 

龍谷遊来(仮面ラ○ダーセ○バー ドラゴニックナイト):LP4000→3800→3400

 

「ターンエンドだよ!」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※トレード・イン

 

[現在の手札3枚]

 

※ライトパルサー・ドラゴン

※根源龍レヴィオニア

※トレード・イン

 

「俺は手札から魔法カード『トレード・イン』を発動!レベル8の『根源龍レヴィオニア』を手札から捨てて、二枚ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※ティマイオスの眼(OCG版)

※精神汚染

 

「っぶ!」

 

「!?どうしたの?」

 

「え、ああ・・・いや、何でもない」

 

遊来はドローカードを見て吹き出してしまった。先日カオスドラゴンの組み替えを行っていたのだが、デッキをまとめた時に紛れてしまったのだろう。

 

「(なんで此処でコレなんだよ!?)でも、此処でこうしないと勝てないし・・やるしかないか!俺は手札から魔法カード『精神汚染』を発動!」

 

「『精神汚染』!?」

 

「このカードは手札からモンスター1体を捨てて発動できる。そのモンスターと同じレベルを持つ相手フィールド上のモンスター1体を選択し、エンドフェイズ時までコントロールを得る事ができる!俺はレベル6の『ライトパルサー・ドラゴン』を手札から捨てて、同じレベルの『ブラック・マジシャンガール』のコントロールを得る!!」

 

指定した瞬間、『ブラック・マジシャンガール』の瞳からハイライトが消えていき遊来のフィールドに立つ。その様子を見ていた翔を始めとする男子生徒達が一斉に騒ぐ。

 

「ああっ!『ブラック・マジシャンガール』が!」

 

「「うわあああ!!俺達の『ブラック・マジシャンガール』がぁああ!!」」

 

「「「遊来に、竜騎士にNTR(寝取ら)れたああああああ!!」」」

 

「誤解を招くような、言い方すんのやめろぉーーー!!!!」

 

NTR(寝取られ)と聞いて、コレには流石の遊来も言い返した。デュエルでコントロール奪取をしただけで誤解されるような言い方は流石に否定したかったのだ。

 

「アハハ・・・」

 

コントロールを奪われた本人も苦笑してしまっている。遊来はうなだれながら大きなため息を吐くと改めて、もう一枚のカードに手をかける。

 

「俺は伏せカード、発動!『戦線復帰』!このカードは自分の墓地に眠るモンスター1体を守備表示で特殊召喚できる!戻ってこい、セイファート!更に魔法カード『ティマイオスの眼(OCG版)』を発動!!」

 

「え!ええええええええええっ!?何でそのカードを!?」

 

今度はブラック・マジシャンガール自身が驚きを隠せない。片目を傷つけられた竜が現れ、その傷つけられた眼を開きフィールドの『ブラック・マジシャン・ガール』を見据える。

 

「このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。自分フィールドの「ブラック・マジシャン」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを融合素材として墓地へ送り、そのカード名が融合素材として記されている融合モンスター1体を融合デッキから融合召喚する!!俺は自分フィールド上の『ブラック・マジシャンガール』と『ティマイオスの眼(OCG版)』を墓地へ送り、現れろ!『竜騎士ブラック・マジシャン・ガール』!!」

 

『竜騎士ブラック・マジシャン・ガール』融合・効果モンスター/星7/闇属性/ドラゴン族/攻撃力2600/守備力1700/「ブラック・マジシャン・ガール」+ドラゴン族モンスター

 

片目を傷つけられた竜の姿が、遊来が使用する『ドラグニティナイト-アラドヴァル』のドラゴンと同じ姿になり、その上に盾と剣を持ち、鎧を身に纏い、魔術師から騎士の姿となった『ブラック・マジシャン・ガール』が乗り込んだ。正に『竜騎士』となった『ブラック・マジシャン・ガール』そのものである。

 

「こ、これは!何という事だ!『ブラック・マジシャン・ガール』が女性騎士の姿となってドラゴンに乗っているぞーー!!」

 

「『ブラック・マジシャン・ガール』が可愛くも凛々しい竜騎士に!?」

 

「待て!竜騎士になったという事は・・・」

 

「遊来が自分のものにしたって事か!?」

 

「「「うわあああああああああ!!結局NTR(寝取り)じゃないかあああああ!!!」」」

 

「だから、その言い方やめろおおおおお!!!」

 

「ああ、もう!『ベリー・マジシャン・ガール』へ攻撃!!」

 

「『ベリー・マジシャン・ガール』効果を発動!このカードの表示形式を変更し、デッキから「ベリー・マジシャン・ガール」以外の「マジシャン・ガール」モンスター1体を特殊召喚するよ!もう1枚『ブラック・マジシャン・ガール』を召喚!」

 

「ターンエンド・・・」

 

「私のターン、伏せカード『リビングデッドの呼び声』で『ブラック・マジシャン・ガール』を蘇生!さらにカードを1枚伏せて『マジシャンズ・ヴァルキリア』を召喚!ターンエンド」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※限界竜シュヴァルツシルト

 

「手札はこれ一枚か・・・行くしかない!『限界竜シュヴァルツシルト』を手札から特殊召喚!」

 

「レベル8のモンスターをリリース無しで!?」

 

「コイツは相手フィールドに攻撃力2000以上のモンスターが居れば、手札から特殊召喚できるんだよ!」

 

「ううっ!」

 

「『限界竜シュヴァルツシルト』で『マジシャンズ・ヴァルキリア』を攻撃!『竜騎士ブラック・マジシャン・ガール』で『ブラック・マジシャン・ガール』を攻撃!ブラック・ドラゴン・バースト!!』

 

剣と竜の口から放たれた閃光が螺旋を描きながら、『ブラック・マジシャン・ガール』を飲み込み破壊した。

 

「ううっ!」

 

ブラック・マジシャン・ガール:LP3000

 

「ターンエンド」

 

「私のターン、ドロー!(ううっ、この人ブラフが通用しないよぉ・・・)」

 

「(どうやらエンジンが引けてないようだな。次のカードでどうなるかだ)」

 

「『ブラック・マジシャン・ガール』を守備表示に変更、ターンエンド・・・だよ」

 

「(嘘ぉ!?)お、俺のターン、ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※限界竜シュヴァルツシルト

 

「(あ・・・マジ?)もう一体『限界竜シュヴァルツシルト』を特殊召喚!」

 

「えええっ!」

 

「悪いね、シュヴァルツシルト2体で攻撃!トドメは『竜騎士ブラック・マジシャン・ガール』でダイレクトアタック!!ブラック・ドラゴン・バースト!!」

 

「ああああっ!」

 

ブラック・マジシャン・ガール:LP3000→1000→0

 

「あーん、負けちゃった」

 

「伏せカード、なんだったんだ?それに手札もまだまだあったのに」

 

「伏せカードは『強化蘇生』手札にはお師匠様とか、上級クラスがたくさん来ちゃって・・・」

 

「ああ・・・事故っちゃったのな」

 

「うん・・・」

 

「じゃあ、勝敗に関してはノーカンだな。デュエルありがとう」

 

「うん、私の方こそありがとう!みんなもコスプレデュエル楽しんでねー!」

 

「「「うおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」

 

 

 

 

一回目のデュエルは終了し、皆もそれぞれデュエルを始めた。遊来がコスプレデュエルの特別ルールとしてコスプレをしたデュエルモンスターズのモンスターがデッキに入っている場合、そのモンスターの攻守が500ポイントアップというルールも儲けた。無論、仮面ラ○ダー希望者にルールは適応されない。あくまでもデュエルモンスターズのコスプレをした者達だけのルールだ。

 

「あ、あの・・・遊来?」

 

「ん?明日香?どうした?ハーピィレディ三姉妹の写真は終わったのか?」

 

「ええ、それとお願いがあるの」

 

「私も・・・ラ○ダーに変身してみたいの!お願い!!」

 

「え?ああ・・構わないけど。女性ラ○ダーも結構いるし」

 

「ありがとう!」

 

「ああっ!明日香さんズルいです!私もお願い!」

 

「わたくしもお願いしますわ!遊来さん!」

 

「分かったから順番な!?」

 

ジュンコとももえも現れ、変身機能を起動し、三人のデュエルディスクを共有状態にして順番に変身アイテムを出現させる。

 

「先ずは明日香からだな、はい」

 

「これって・・・剣?」

 

明日香が遊来から手渡されたのは、サーベルのような形状をした一本の剣だった。

 

煙叡剣狼煙(えんえいけんのろし)

 

「で、手を見てみな?」

 

「手?あ、本が!これって・・・遊来が変身に使っていた物と似てるわね」

 

「それを横に向けて、表紙に息を吹きかけるような仕草をしてみてくれ」

 

「え!?こ、こうかしら?ふぅ・・・」

 

明日香が息を吹きかけると本の表紙が開き、タイトルが読み込まれる。

 

昆虫大百科

 

『この薄命の群が舞う、幻想の一節』

 

「え、こ・・・昆虫!?」

 

「タイトルは気にしない気にしない。それから、表紙を閉じて剣にある窪みにその本をセットするんだ」

 

「え、ええ・・・此処にセットするのね」

 

本を装填すると幻想的な音楽が流れ始め、待機状態となった。明日香は驚くが期待も膨らんでいる様子だ。

 

「変身、って言って柄にあるトリガーを引くんだ」

 

「分かったわ、変身!」

 

狼煙開戦!

 

FLYING!

 

SMOG!

 

STING!

 

STEAM!

 

昆虫CHU大百科!

 

『揺蕩う、切っ先!』

 

女性ラ○ダーかつ、最も剣士として活躍した仮面ラ○ダーサー○ラに明日香は変身したのだ。デュエルディスクが腕にある為、少しシュールではある。

 

「こ、これで変身したの?」

 

「そうだ、どうだい?変身してみて」

 

「実感がわかないけど・・・・クセになりそうね。それに表情を隠せるから便利だわ」

 

その後、ジュンコは仮面ラ○ダーバ○キリーに、ももえは仮面ラ○ダーマ○カに変身させたのだが、女性ラ○ダーが三人もいるという事で、ハーピィレディ三姉妹以上に人が集まってしまっていた。

 

翔の頬に『ブラック・マジシャン・ガール』が精霊状態でキスしていたのを目撃し、ルインが妖精騎士のコスプレをしてきた女生徒達と写真を楽しそうに撮っているのも見ている。

 

「みんな・・・楽しそうだな」

 

遊来は一人、どこか自分だけが疎外されているような気持ちを拭うことができなかった。皆が楽しくしているのを羨望の思いで見渡しながら・・・。

 

 

 

 

 

後夜祭もおわり、部屋に戻り一息ついているとパソコンから呼び出し音が鳴っている。

 

『ハロー!遊来クン!ハロー!遊来クン!』

 

この着信はペガサスさんからだ。こんな時間に珍しいと思いながら、着信に出た瞬間だった。

 

「遊来ボーイ!!ユーはなんてカードを使っているのデスカーーー!!」

 

「ぎゃああああ!?」

 

着信を取った瞬間、興奮している様子のペガサスから大声で怒鳴られてしまい耳がキーンとなってしまう遊来。

 

ペガサスは非常に興奮しており、遊来の状態には目もくれていない。

 

「遊来ボーイ!明日、アメリカへ来なサーイ!あのカード『ティマイオスの眼』に関して話がありマース!!」

 

「ええっ!?いきなり過ぎませんか!?」

 

「Shut up!!ユーに拒否権はありまセーン!!『ティマイオスの眼』に関連するカードもすべて持参してくるように良いデスね!!?」

 

「は、はい」

 

「迎えは早朝に寄越しマース、それでは」

 

言うだけ言ってペガサスからの連絡は切れた。耳がまだキンキンしており、しばらくして収まると飛ばされてきたストレージボックスから関連カードを取り出す。

 

『ティマイオスの眼(OCG)』

 

『クリティウスの牙(OCG)』

 

『ヘルモスの爪(OCG)』

 

『レジェンド・オブ・ハート(OCG)』

 

『伝説の騎士ティマイオス(OCG)』

 

『伝説の騎士クリティウス(OCG)』

 

『伝説の騎士ヘルモス(OCG)』

 

『合神竜ティマイオス(OCG)』

 

「使ったの・・・不味かったかぁ。勝つのを目指したとは言えど。怒られるなぁ・・・きっと」

 

覚悟を決めつつ、明日に備えて遊来は就寝するのだった。




今回は此処までです。遊来と一緒にいる女子が変身の虜になりました。

遊来はペガサスに怒られることが確定しています。シンクロやエクシーズだけでも問題なのにOCGの効果になっているとは言え『ティマイオスの眼』なんて使いましたからね。

明日香とルインが遊来の恋人候補アンケートにおいて僅差で小競り合いしているのは何故なのか。

少しだけ特徴を書きますと。

ルイン→(天使・女神・美神で口調が変わる)好意を隠し、基本はクールに見えて清楚系、ある人物の魂の一部が宿っている。

明日香→好意を口に出せないが、強気系に見えて一途かつ尊重系。成長などを見守る母性の塊。

みたいな感じでございますです。

これはもう、遊来の前世の想い人を出すしか無いのか。


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第25話

遊来、アメリカへ日帰りとんぼ帰り。

ルインの中に眠る魂が判明。


翌日。早朝に遊来はアメリカ、インダストリアル・イリュージョン社の本社に来ていた。あのカードに関してなので早急だったのだ。

 

正直な話、早朝5時に迎えが来た為に眠いというのが遊来の本音だった。

 

「遊来ボーイ、例の物は持ってきましたカ?」

 

「はい、此処にあります」

 

遊来はデッキケースから『ティマイオスの眼』『クリティウスの牙』『ヘルモスの爪』『レジェンド・オブ・ハート』『伝説の騎士ティマイオス』『伝説の騎士クリティウス』『伝説の騎士ヘルモス』『合神竜ティマイオス』のOCGカードを取り出しペガサスに渡した。

 

「ビューティフォー・・・まさか『名も無きドラゴン』の姿と真の姿が拝めるとは・・・!遊来ボーイ、ユーが居た世界ではカード化していたのデスね」

 

「カード化していても・・・ただのカードですし、本来のカードとは比べ物にならない程に弱体化していますよ?」

 

「そんな事は些細な事デス!私にとってはイメージイラストこそが最も重要なのデース!」

 

「(カードデザイナーにして、この世界じゃ生みの親だもの当然だよな)」

 

「遊来ボーイ・・・このカード達を隠していた事はこの際、責める気はありまセーン。ですが、使用した事に関しては許される事ではありまセーン!」

 

ペガサスは本気で怒っている様子だ。無理もない彼の知識からすれば『名も無き竜』のカード達は、伝説のデュエリストだけが使用していた幻のカードだったのだから。

 

「はい、ごめんなさい・・・」

 

「・・・このカード達は一時、私が預かりマース。よろしいデスネ?」

 

「はい・・・」

 

「デスが『竜騎士ブラック・マジシャン・ガール』のカードだけは使用を許可しマス、ティマイオスのカードが無くとも、通常の融合で召喚できるようデスから」

 

「ありがとうございます(『ブラック・マジシャン・ガール』のカード、あったかな?後で探してみよう)」

 

「それと、遊来ボーイに頼みたい事があるのデース」

 

「俺に頼みたい事、ですか?」

 

「そうデス。今のデュエルモンスターズでは、女性モンスターは弱いという考えがあるようなのデス、そこでこのカード達を使って強い事を証明して欲しいのデス」

 

ペガサスから手渡されたデッキを確認すると、そのデッキは『ワルキューレ』のデッキであった。速攻型のテクニカルデッキであり、知る限りではジークという人物が使っていたはずだ。

 

「あの、俺が構築し直しても構いませんか?(女性モンスターなら、ハーピィ・レディとか強いはずなんだけどなぁ)」

 

「もちろんデース、ユーのカード達を使って強化してあげてくだサーイ!」

 

「分かりました。それとこのカード達も預かって貰えませんか?」

 

遊来はペガサスへとあるカードを手渡し、そのカードをペガサスが見た瞬間、彼は驚愕の表情を浮かべた。

 

「?こ、これは!?何故、ユーがこのカード達を!?」

 

「一緒に飛ばされてきた俺自身が居た世界のカードです。今はただのカードですが・・・今の俺じゃ扱いきれない、然るべき時が来たら取りに来ます。その時までペガサスさんが預かっていてください」

 

「分かりマシタ、これらも預かっておきマス。その代わりに、このカードをユーに渡しマス」

 

「こ、これは・・・!『究極竜騎士(マスター・オブ・ドラゴンナイト)』と『カオスの儀式』!?それに儀式召喚タイプの『カオス・ソルジャー』のカードまで!?」

 

「召喚の条件は厳しいでしょうが、ワタシからの課題デース。この二枚を見事に活躍させてくだサーイ」

 

「はい、ペガサスさん。あれ?もしかして、ペガサスさん・・・俺が『竜騎士』って呼ばれてるの知ってて渡したんじゃ・・・」

 

「さぁ、何の事デショウ?」

 

「深くは追求しませんけど・・・・ふぁぁ、眠い」

 

「朝早くにアメリカへ呼びましたから、当然デショウ。遊来ボーイ、アカデミアへ帰宅して下サーイ。教員にはワタシが連絡しておきマース」

 

「はい、預けたカード達をお願いします」

 

「オーケー、それと遊来ボーイ。ユーはエジプトに興味はありませんカ?」

 

「エジプト・・・ですか?(あの人は、冥界に帰っているはずだよな?)」

 

「新しいカードを作る為にエジプト考古局に連絡を取り、ユーと共にとある石版を見せて欲しいとお願いした所、ワタシと同行するなら見せてくれるそうデース」

 

「本当ですか!?それなら二年生の夏休みの時にお願いします」

 

「オーケー、予定が決まり次第、連絡しマス。ん?OH・・・」

 

会社用の端末にコールが鳴り響く。その相手の名前を見てペガサスは額に手を軽く当てた。何故ならそこには『Seto Kaiba』とローマ字で表示されていたからだ。

 

「遊来ボーイ・・・」

 

「(あ、多分・・瀬人さんからだな)はい、大丈夫です」

 

「では、ハロー」

 

『ペガサス!直ぐに遊来を出せ!其処に居るのだろう!?』

 

電話越しからでも聴こえてくる声、間違いなく瀬人さんだった。間違いなくあの件だろう。

 

「今、代わりマス」

 

「その必要はない!モニター通信に切り替えろ!こちらも今切り替える!!」

 

モニター通信に切り替えると同時に憤怒の形相をした瀬人が、ペガサスに目もくれず遊来へギロリと視線を向けると同時に叫ぶように怒鳴り声を上げた。

 

「遊来!貴様!!何故、あのカードを持っていた!?」

 

「あのカードって・・・『ティマイオスの眼』の事ですか?」

 

「それ以外に何がある!!」

 

「(滅茶苦茶、怒ってる・・・当たり前か)分かりました、持っていた理由を話します」

 

遊来は自分が何故『名も無き竜』のカードを持っていたかを事細かに話し始めた。自分と共に飛ばされて来たカードを入れるストレージボックスの中に、そのカード達が入っていた事を嘘偽りなく話す。

 

「ふぅん・・・なるほどな。貴様が元々居た世界のカードならば説明が付く・・・」

 

「それと、瀬人さん・・・」

 

「なんだ?」

 

「『ブルーアイズ』のサポートカード、お渡ししましょうか?」

 

「何!?貴様、青眼すらも持っているというのか!?」

 

「持ってはいます・・・ですが・・」

 

画面越しに念のため持ってきていた『青眼の白龍』のカードを見せると瀬人は驚く。本来描かれているはずのイメージイラストの部分が、真っ白になっているからだ。

 

「どういう事だ?」

 

「一緒に飛ばされてきたカードでも、使えない物があるみたいなんです。特に『ブルーアイズ』が顕著でして」

 

「・・・扱う事を許されていない訳か。当然だな」

 

「(キサラさんの魂の事があるけど、伏せておこう。キサラさんの事は詳しく知っていない訳だし)」

 

「海馬ボーイ『名も無き竜』に関するカードは、ワタシが彼から預かりまシタ。このカードに関する機密会議を後程、開きマショウ」

 

「うむ、それと遊来!」

 

「は、はい!」

 

「『名も無き竜』のカードの提供、それとブルーアイズのサポートカードの提供、その見返りとして特別に貴様の世界の「ブルーアイズ」の使用を許可する!」

 

「え?」

 

それは意外すぎるものであった。ブルーアイズに対する愛情が人一倍強い海馬瀬人が別世界の『ブルーアイズ』の使用を許可したのだから。

 

「良いのですか?」

 

「本来ならば認めんが、その『ブルーアイズ』は別世界のカード。俺が手に入れた所で意味はない!その代わり、貴様の世界のブルーアイズの力を見せろ!」

 

それは自分が元居た世界の「ブルーアイズ」デッキの動きを見せろという事だろう。彼にとって「ブルーアイズ」は頂点であり、進化し続ける誇り高き下僕であるのだから。

 

「ありがとうございます・・・!あっ!?」

 

「ワッツ!?」

 

瀬人からの「ブルーアイズ」の使用許可を認める言葉を聞いた瞬間、『青眼の白龍』のイメージイラストが浮かび上がっていきペガサスも驚いていた。だが、遊来はあまり嬉しい心境ではなかった。自分の世界のカードとはいえ『青眼の白龍』は海馬瀬人が持つべきカードであり、何よりも前の自分の世界での知識にある元の宿主、キサラに申し訳ないと思っているのだ。

 

「・・・ブルーアイズが貴様に使われるのを認めたようだな」

 

「・・・申し訳なくなりますね。けど、俺は『ブルーアイズ』のデッキは極力使わないようにします」

 

「何!?」

 

「勘違いしないで下さい。デッキが使えと言ってきたら使いますし、デュエルのデータはちゃんと送りますよ」

 

「そうか、ならばいい」

 

その後、『名も無き竜』に関するカードの会議をすると言って追い出されてしまった。遊来はペガサスが手配してくれたヘリでアカデミアへと帰っていった。

 

 

 

 

 

その頃、ルインは全く知らない宇宙空間のような場所に居た。精霊が夢を見るというのはほとんどない、魂の記憶すらも古すぎる故に己自身でも覚えてはいないからだ。

 

ルインはしばらく周りを見ながら歩いていると、人の形をした光が姿を具体化させ向き合う形でこちらを見ていた。その光は女性の姿となっていき、青い髪と白いドレスのような外装を持ち、仮面を被ったまま口を開く。

 

「此処は・・・?一体・・・?」

 

『ようやく、話せるわね・・・私の半身、いえ・・・『私自身』である精霊よ』

 

「貴女は、誰です!?」

 

『私の名はメラグ。かつて遠い過去、海の巫女となっていた者』

 

「メラグ・・・うっ!?」

 

ルインは胸元を押さえ、一瞬だけ苦しみだした。外してしまった肩を入れ直す時と似たような痛みが胸に現れたのだ。

 

『(アルタイス・・・私はあの時に答えを出せなかった。けれど)』

 

「何かが・・・私の中に」

 

『貴女は私の魂の半分を持っている。だから貴女は私、私は貴女・・・恐らく、私の記憶が移ったのでしょうね』

 

「ひとつ聞かせて下さい・・・なぜ今になって私の所に?」

 

『彼に答えを聞かせるためよ』

 

「答え?」

 

『それは、此処で明かす事は出来ないわ。それと彼を、アルタイスを支えてあげて』

 

「アルタイス?それは誰なのですか!?」

 

『貴女のすぐ傍に居るわ・・・』

 

そう言って仮面の女性、メラグは消えてしまった。この場に残ったのはルイン唯一人、そのルインも光に包まれていく。

 

『姐さん、姐さんってば!』

 

『はっ!?』

 

『どうしたんだよ?姐さん?ボーッとして』

 

『いえ・・・平気です』

 

レヴァティンが話しかけ、ルインの意識は現実に引き戻された。レヴァティンも遊来と同じように闇に飲まれていたが、ルインがタイタンから闇を引き剥がした方法を使う事で、レヴァティンを助け出し『ドラグニティ』達も邪悪な闇から戻ってこれたのだ。

 

『[妖怪少女]のお嬢ちゃん達は寝たし、マスターは今、別の国に行ってる。それに・・・』

 

『!・・・っ』

 

『あっ・・・』

 

レヴァティンが視線を向けるとその先には鎧を身に付け、兜を取った少女達がいた。今この時間にはアメリカに居る遊来がペガサスから与えられた『ワルキューレ』の主軸である『ヴリュンヒルデ』と『アルテスト』の二人だ。同じ種族、同じ属性の上位精霊であるルインの影響を受け、彼女達も現れてしまったのだ。

 

『そう、固くならなくても良いですよ』

 

『はっ、ですが・・』

 

『私達[ワルキューレ]はこのような話し方しか出来ませんので・・・』

 

『[ワルキューレ]達よ。私と共に戦ってくれますか?』

 

『『はい、ルイン様』』

 

[ワルキューレ]達は忠誠の姿勢を示し、二人は顔を上げる。そこへ『ヴリュンヒルデ』が口を開く。

 

『ルイン様、恐れ多くも発言をお許しください』

 

『なんでしょうか?』

 

『ルイン様の主殿ですが・・・闇の炎の竜の意志に飲まれかけています』

 

『!!』

 

『光の炎の竜は進化するため、必要な力を得る為に弱っている状態です。ですが・・・闇の炎の竜もまた、進化しようとしています』

 

『それで?マスターは一度、七星の闇に飲まれていました』

 

『この島に封じられているモノとの戦いの後、闇の炎の竜の意志が顕現するでしょう・・・』

 

それはもう一方の『レッドデーモン』の意志が現れる事を予言していた。シンクロは光とされているが、光の中に影があるようにもう一方の『レッドデーモン』の意志が遊来を飲み込み、戦いを続けようとしているのだ。

 

ヴリュンヒルデの言葉を聞いて、ルインは口惜しそうに唇を噛み締める。あのマスターは『レッドデーモン』の演技だとしたら?

 

光の炎が闇の炎を飲み込む事が出来れば、自分のマスターは本来のマスターに戻るはずだ。だが、どうすればいいのだろうか?

 

以前、マスターが見ており欠片として現れた宇宙を体現している黒のカード。だが、それはシンクロに対する闇のカードである。それ故に遊来自身も扱う事が出来無い。

 

『マスター・・・』

 

『(ルイン様・・・もしかして・・・主殿を?)』

 

『私からも進言を』

 

『?』

 

『ルイン様・・・貴女様は主殿と戦う運命にあります』

 

『!?』

 

『[ワルキューレ]は神託を受ける事があります。貴女様の戦いの未来は覆す事は不可能・・・』

 

『っ・・・・』

 

『主殿はそこで絶望するでしょう・・・しかし、そこで銀河からの洗礼を受け、光と闇・・・時を越え双璧を成す炎の竜を遥かに進化させ、時の竜を手にします。あの方は絶望の淵から光を掴み復活する・・ですが』

 

『アルテスト』の予言とも言える言葉。だが、『アルテスト』の表情が曇ってきていた。

 

『主殿とルイン様の因縁もそこで明かされます・・・・』

 

『私とマスターの・・・因縁』

 

メラグから言われた言葉、自分の中にメラグの魂の半分があるという事。そして、アルタイスが誰なのかを知る事、それがルインの目的になっていた。例え、自分のマスターと戦う事になろうとも。

 

 

 

 

 

遊来の帰宅途中の時刻、ペガサスと瀬人だけの重要会議がモニターにて行われたいた。無論『名も無き竜』のカードに関する事だ。

 

「データを見せてもらったが、本来の能力には遠く及ばん・・・だが、一般流通させるわけにもいかんな」

 

「もちろんデース。そこで、正しく使えるデュエリストに譲渡しようと思いマース」

 

「ふん、それこそプロデュエリストクラスになるだろう」

 

「世界大会の開催に合わせてこのカード達を出しマース。遊来ボーイから預かったカードは返却しますが」

 

「(だが・・・アイツの世界のカードとはいえ、なぜアイツは扱えた?あの遊来も選ばれし決闘者だと言うのか?)」

 

「どうしマシタ?海馬ボーイ」

 

「・・・いや」

 

「あの不思議な出来事デスか?ブルーアイズのイメージイラストが浮かび上がってきた時は、驚きマシタ」

 

「ふぅん・・・オカルトチックな話はこの際、関係ない。俺は使う事を認めただけで所有者とは認めてはいない」

 

「遊来ボーイは、自らがブルーアイズを使う事を良しとしていませんデシタ・・・ユーに遠慮しているのではありませんカ?」

 

「くだらん・・・!使う気がないなら接収させるまでだ」

 

「・・・遊来ボーイはブルーアイズの気持ちを汲んでいるのデショウ。海馬ボーイ、ユーこそが真のブルーアイズの所有者だと彼は考えていマス」

 

「当然の事を口にするな!」

 

「(遊来ボーイが話していたブルーアイズと海馬ボーイの因縁・・・それを知ってしまえば、この世界でブルーアイズを使う事を戸惑うのは当然デース・・・)」

 

ペガサスはかつて遊来からカードに関する連絡が来た時に、聞かされたブルーアイズを宿した古代エジプトの女性、キサラ。その話を思い返していた。

 

 

 

 

「ペガサスさん、ブルーアイズは瀬人さんを守る存在なんです」

 

「海馬ボーイを守る?だから遊来ボーイの持つブルーアイズのイメージイラストが真っ白なのデスネ?」

 

「はい、それには一人の女性が関係しています。その魂が守り続けているんです。最も既に転生しているかもしれませんが」

 

「女性・・・デスか?」

 

「はい、キサラさん・・・そのイメージカードがこれです」

 

パソコンのビデオカメラに撮されたカード『青き眼の乙女』が映し出され、その姿に見惚れてしまう。

 

「なんと神秘的なカードなのデショウ・・・それにカード効果もブルーアイズを召喚する事に特化している・・・つまり、コレは彼女自身なのデスか?」

 

「そうですね・・・俺がブルーアイズを使うとなれば、瀬人さんとキサラさんの魂に許可を貰わなければ無理でしょうね」

 

『そんな事はありませんよ?私は貴方になら、力をお貸しします』

 

「え?」

 

「どうしまシタ?」

 

「あ・・いえ・・(もしかして、今のキサラさんの声?まさかな)」

 

遊来は優しくも凛とした声を聞いたような気がしていた。元の世界での知識があるとはいえ、キサラに出会えることはないのだから声が聞こえるはずがない、そう考え、ペガサスとの相談に戻った。

 

 

 

 

 

 

「はっ!?」

 

遊来は送り迎えのヘリコプターの中で目を覚ました。どうやら眠っていたようで、背伸びする。デッキケースから自分の世界から飛ばされて来たブルーアイズを取り出して手に取る。

 

そのイメージイラストは自分の世界で昔(1999年)に発売されたEXスターターとして販売されていた物の姿だ。瀬人のブルーアイズとは違う事を示しているのだろう。

 

「青眼の白龍・・・俺のデッキに力を貸して欲しい」

 

『貴方が光と闇の炎、正しき闇の銀河を手にしたその時こそ、本当の力をお貸ししましょう』

 

「!?あの時の声・・・!?」

 

周りを見渡すが何も見えない、遊来はヘリコプターの窓から青空を見つめる。現代と三千年前、更には別世界でも青空は変わらない。出来る事なら名前を知らない自分の思いが、遥か昔の時代のキサラへと届いて欲しい。貴女の魂そのものである『青眼の白龍』を使う事を許して欲しいと祈りながら。




遊来くんの世界のブルーアイズが目覚めましたが、使うのはまだ先です。

キサラさんの声は聞こえましたが、遊来くんの方はキサラさんだとは分かっていません。

ルイン自身の中にメラグの魂の半分が入っていましたが、これが因縁です。

次回は三幻魔戦です。

三幻魔の後に裏ボス戦があります。その後に日常回を一本挟みます。


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第26話

三幻魔戦の開始。

十代と遊来、二人で一人の仮面の戦士の名言を言えた。

裏ボス戦有り(スタートのみ)



※以下、作者からのコメント

この度、マスターデュエルを始めました。

遊来くんの愛用する『ドラグニティ』『ルイン』を使っております。

『レッドデーモン』はお察し下さい・・・。

遊来くんの『ブルーアイズ』は仮想ですが組んで使ってます。


何も起きない日常、そんなのどかな学園生活を脅かすようにアカデミアの有る島が大きな地震に襲われた。

 

「な、なんだ!?」

 

「地震!?」

 

「ちょっと待った!なんだよ、あの柱!?」

 

「おい、アレって校長が言ってた三幻魔が封印されてる場所じゃないか!?」

 

外に出ると七つの柱のような建造物が一箇所を囲むように現れていた。いつものメンバー達は急いで三幻魔が封印されている場所へと向かう。

 

全員が到着と同時に上空にヘリが飛来し、何かを落下させ機械が着地を手助けし、なにかのカプセルが立たされた。

 

『フフフ・・・』

 

機械を通した声から音声が流れてきた。それは恐らく目の前のロボットが支えているカプセルの中に入っている人物からだろう。

 

『久しいな、鮫島校長』

 

「その声は!影丸理事長!?」

 

校長の言葉に誰もが驚く。校長以外の誰も姿を知らないアカデミアの理事長が今、目の前にいるのだから。

 

『時は満ちた!今此処に『三幻魔』復活の儀式を行う!!』

 

ロボットは一歩一歩、『三幻魔』のカードがある方へと近づいていく。

 

「影丸理事長、一つ聞きたい!」

 

『なんだ?』

 

遊来が声をかけ、ロボットが視線を向けるように遊来の方へ向き直る。

 

「何故、セブンスターズと戦わせるような事をしたんだ?そんな事をしなくてもカードを手に入れるだけなら簡単だったはず・・・!(聞いておかないと始まらないしな)」

 

『フフフ・・・ならば教えてやろう。『三幻魔』に眠る力を復活させるにはデュエリストの闘志が満ちた空間が必要であった。そこで私はこの学園を作り上げ、三幻魔の復活に見合うデュエリストを育てていたという訳だ』

 

「なるほど、俺達はアンタに利用されていた・・・という訳か!」

 

「ふざけないで!」

 

「自分達の道は自分の力で、切り開いてみせるんだな!」

 

影丸理事長の言葉に遊来と十代以外が怒りの感情を顕にしていた。自分達がたった一人の野望の道具にされていたとなれば怒るのは当たり前の事だろう。

 

「ならば、その野望を打ち砕くために俺が相手をしよう!オベリスクブルーのカイザー、丸藤亮が!」

 

「いや、このデュエルだけは!一!十!百!千!万丈目サンダーが受けて立つ!」

 

戦いに自信のある全員が名乗りを上げるが、影丸は全員の申し出を拒否した。

 

「駄目だ!私の相手は遊城十代、そして龍谷遊来!お前達だ!!」

 

「俺と十代!?」

 

「そう、精霊の力を最も強く持つ遊城十代!そして、精霊と混沌の力を併せ持つ龍谷遊来、お前達でなければ意味がない!」

 

「・・・!(混沌って・・・何のことだ!?それに恐らく『三幻魔』はアニメ効果。デッキもストラクチャーのカードで強化されているだろうな)」

 

『マスター・・・!(あの影丸という男、マスターの因縁を知っている?)』

 

「(分かってるさ)十代、やるぞ!」

 

「ああ、遊来と一緒のデュエルだなんて物凄くワクワクしてくるぜ!」

 

『ならば、このデュエルは変則ルールに則って行う。お前達二人はタッグデュエル方式としライフポイントをお互いに8000ずつ、お前達はライフポイント、フィールド、墓地、伏せカード、モンスターは共有、手札交換は無しだ。なにか異論はあるか?』

 

「無いぜ」

 

「俺も無いが、少しエンタメをさせてもらう」

 

「ん?」

 

「安心しなよ。デュエルにはなんの影響もないし、不正行為もしない」

 

十代が自分のデュエルディスクを起動し、遊来も自分のデュエルディスクを起動させエンターテインメント用のボタンを押すと十代のディスクのライフポイント表示部分が点滅する。

 

「お?コレはアレを共有状態にしてくれたのか!?遊来」

 

「今回のはお前が気に入った言葉を持ってる奴だぜ?十代!」

 

起動させると同時に二人の腰にとあるベルトが出現する。それは二人で一人の探偵と言われた二人が使用していたベルトで、未熟なハードボイルドと言われようとも街を守る為に戦った探偵と地球の最深部に落下し、地球の申し子となった探偵の相棒が使っていたものであった。

 

「十代。悪魔と相乗りする勇気(・・・・・・・・・・)、あるかな?」

 

「ッ!?・・・はっ!へへっ!当然だぜ!」

 

返事を聞いた遊来が十代に投げ渡したのはUSBメモリーに酷似した何かだった。その色合いは黒く表面には大きく『J』の文字が描かれている。遊来も似た物を取り出すが、色合いが違っておりクリアグリーンの色で表面には『C』の文字が刻まれている。

 

二人は交互にボタンを押し、起動音声が流れた。

 

CYCLONE

 

JOKER

 

「な、何だあれ?」

 

「エンタメ要素だと言っていたが」

 

「あ、もしかして・・・アレは!」

 

遊来は左に十代は右に位置を取っている。二人がWの形を取るように構えた。

 

「「変身!!」」

 

遊来が最初にベルトへ緑色のメモリーを装填し、十代もそれに倣うように黒いメモリーをもう一方の装填口にメモリーを装填した。

 

十代がドライバーに2本のメモリーを装填と同時に展開し、両腕を広げる形を取ると姿が変わっていく。

 

CYCLONE

 

JOKER

 

其処には二人で一人の仮面の戦士が立っている。その姿を見て翔と隼人が反応した。

 

「あ、あれは!」

 

「か、仮面ラ○ダーダ○ル・・・なんだな!」

 

ダ○ルの姿になった二人は合わせるように黒いボディ、左手首をスナップさせると影丸に向き直った。

 

「十代、この姿の決め台詞・・・知ってるよな?」

 

「ああ、此処で言うぜ。あの言葉を!」

 

 

「「さぁ、お前の罪を数えろ!!」」

 

 

「何ぃ!?」

 

声を重ねるようにダ○ルの決め台詞を言い、人差し指を向けると同時に、ベルトがダブルからロストへと変わり仮面ラ○ダーサイ○ロンとジ○ーカーに別れてしまう。

 

「む?」

 

「ダ○ルのままじゃ、意味がないだろ?」

 

「これで、二対一の状態には変わらない。デュエルを始めようぜ!」

 

「良いだろう!」

 

「「「デュエル!!」」」

 

遊城十代(仮面ラ○ダージ○ーカー)&龍谷遊来(仮面ラ○ダーサイ○ロン):LP8000(共有)

 

影丸理事長:LP8000

 

 

「俺の先攻!ドロー!!」

 

十代の先攻から始まったデュエル。十代はカードを確認し、手札に加える。

 

「俺はモンスターをセット、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

「次は俺だな、ドロー」

 

[ドローカード]

 

※戦線復帰

 

[建材の手札6枚]

 

※E・HERO クレイマン

※E・HERO リキッドマン

※E・HERO エアーマン

※E・HERO オーシャン

※マスクチェンジ

※戦線復帰

 

「俺はE・HERO エアーマンを召喚!」

 

「このタイミングで、エアーマン!?」

 

「遊来のヒーローデッキ・・・十代と同じなのか?」

 

「違うよ、お兄さん。アレはアニキとは違うタイプのヒーローデッキなんだ」

 

「あれは、黄金のたまごパンだけが盗まれた事件を追ってた時のデッキかしら?」

 

「きっと、そうなんだな」

 

遊来のヒーローデッキは万丈目とのデュエルで認知されている。だが、あの時はシンクロを主体としており、このデッキはそれに少しの改良を加えたものだ。

 

「俺はエアーマンの効果発動!デッキからヒーローと名の付いたカードを一枚手札に加える!俺は『E・HERO シャドー・ミスト』を手札に加える。カードを2枚伏せてターンエンド。このルールではお互いに先攻は攻撃できないからな」

 

[現在の手札4]

 

※E・HERO クレイマン

※E・HERO リキッドマン

※E・HERO オーシャン

※E・HERO シャドー・ミスト

 

『私のターン、ドロー。私は永続魔法『七精の開門』を発動!!』

 

「『七精の開門』だって!?」

 

「何!?(やっぱり、強化タイプの三幻魔だったか!)」

 

『説明してやろう。このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。そしてこの永続魔法には三つの効果がある』

 

『(1):このカードの発動時の効果処理として、「神炎皇ウリア」「降雷皇ハモン」「幻魔皇ラビエル」のいずれか1体、またはそのいずれかのカード名が記されたモンスター1体をデッキから手札に加える。

 

(2):1ターンに1度、手札を1枚捨てて発動できる。自分の墓地から攻撃力と守備力が0の悪魔族モンスター1体を選んで特殊召喚する。

 

(3):1ターンに1度、自分フィールドにレベル10モンスターが存在する場合に発動できる。自分の墓地から永続魔法カード1枚を選んで手札に加える。の三つだ』

 

「三幻魔のいずれかをサーチする能力を持っているのか!?それに墓地からの限定の特殊召喚!永続魔法をまで回収できるとは」

 

三沢の解説もさる事ながら、周りが驚きを隠せない中で遊来はソリッドヴィジョンの内側で唇を噛み締めていた。

 

「(やばいぞ、強化型の三幻魔デッキは三幻魔を速攻召喚する事に長けている!おまけにアニメ効果かつ、更にはあらゆる効果耐性まで持たせられたら、手がつけられない!)」

 

『私は『七精の開門』の第一の効果を発動!この効果により『降雷皇ハモン』をデッキから手札に加える!!』

 

「何!?」

 

『フフフ・・・更に私は『混沌の召喚神』を通常召喚!』

 

混沌の召喚神 星1/闇/悪魔族/効果/攻撃力0守備力0

 

「攻撃力と守備力が0?」

 

「なっ!?あれは!!十代、構えろ!!三幻魔のうちの一角が出てくるぞ!!」

 

「遊来!?」

 

『ファーッハハハハ!!龍谷遊来は気付いたようだが、もう遅い!!私は『混沌の召喚神』を生贄とし、来い!!三幻魔の一角『神炎皇ウリア』を守備表示で特殊召喚!!』

 

『神炎皇ウリア』効果/星10/炎/炎族/ 攻撃力0/守備力0

 

「これが、幻魔!!」

 

「っく、すごい威圧感だ!」

 

「フフ・・・本来なら『神炎皇ウリア』は自分フィールド上の罠カード3枚を墓地に送ることが条件だが『混沌の召喚神』を使う事でその条件を無視して特殊召喚する事ができる。攻撃と行きたい所だが、攻撃力もなくルールにより攻撃は不可能・・・だが、念には念を入れさせてもらう!ウリアの特殊効果!『トラップ・ディストラクション』遊城十代の伏せカードを破壊!ターンエンドだ」

 

「うわっ!?」

 

『神炎皇ウリア』の威圧感、更には特殊効果による破壊によって十代の場はセットモンスターのみになってしまった。

 

「俺のターン!ドロー!俺はバーストレディを反転召喚!!更に手札から『融合』を発動!!手札のE・HERO リキッドマンと場のバーストレディを融合!!来い、E・HERO ノヴァマスター!!リキッドマンの効果により俺はカードを二枚ドローし、一枚を墓地へ送る!俺が手札から墓地へ送ったのはE・HERO シャドー・ミスト! シャドー・ミストの効果により俺はデッキから『E・HERO エアーマン』を手札に加える」

 

「此処でノヴァマスターか、相手にとっては嫌な相手だ」

 

「ノヴァマスターで『神炎皇ウリア』に攻撃!!ブレイズ・ノヴァ!」

 

「ぬおおおお!?」

 

ノヴァマスターから発せられた炎が『神炎皇ウリア』を焼き払い、破壊した。が、影丸は破壊に怯んだだけでどこ吹く風だ。

 

「ノヴァマスターの効果により、モンスターを戦闘破壊した事でカードを一枚ドローする!」

 

「リキッドマンのデメリット効果を打ち消したわ!それに手札も五枚、最初とほとんど変わっていない!」

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド。頼んだぜ遊来!」

 

「ああ!俺のターン、ドロー」

 

[ドローカード]

 

※デルタフライ

 

[現在の手札5]

 

※E・HERO クレイマン

※E・HERO リキッドマン

※E・HERO オーシャン

※E・HERO シャドー・ミスト

※デルタフライ

 

「(!此処は防御重視で行くしかないか)伏せカードオープン!『戦線復帰』!このカードは自分の墓地のモンスターを守備表示で特殊召喚する!十代、借りるぜ!E・HERO シャドー・ミストを守備表示で特殊召喚!更に『デルタフライ』を通常召喚!」

 

「!チューナーモンスター!?」

 

『むぅ!?』

 

「『デルタフライ』の特殊効果!シャドー・ミストのレベルを5にする!」

 

E・HERO シャドー・ミスト ★4→★5

 

「更にシャドー・ミストの特殊効果!このカードが特殊召喚に成功した時!デッキから『チェンジ』速攻魔法を手札に加える!俺は二枚目の『マスク・チェンジ』を選択!そのまま場に伏せる!」

 

『来るか!?シンクロ召喚!』

 

「ああ、俺はレベル5となったE・HERO シャドー・ミストにレベル3のデルタフライをチューニング!!」

 

黒き鎧を纏ったヒーローが機械の小竜の作り出した光の輪を潜り抜け、自らを星としその羅列が光りだす。

 

★5+★3=★8

 

「何が来る?『レッド・デーモンズ・ドラゴン』か?」

 

「『琰魔竜レッド・デーモン』かもしれないわ!」

 

「『スターダスト・ドラゴン』という事もある!」

 

それぞれがシンクロモンスターを予想する中、遊来は更なる未知のシンクロモンスターを召喚する。

 

「黒き疾風よ!秘めたる思いをその翼に現出せよ!」

 

「シンクロ召喚!」

 

「舞い上がれ『ブラックフェザー・ドラゴン』!」

 

 

『ブラックフェザー・ドラゴン』シンクロ・効果/星8/闇属性/ドラゴン族/攻撃力2800/守備力1600

 

『「ブラックフェザー・ドラゴン」!?そんなシンクロモンスターはデータに無かったぞ!』

 

それは、まるで烏のようにも見えるドラゴンであった。だが、このドラゴンからは十代と遊来を守るという意志が感じられるようだ。

 

「『ブラックフェザー・ドラゴン』の攻撃力は2800!!」

 

「今なら大ダメージを与えられるッス!!」

 

「E・HERO エアーマンとブラックフェザー・ドラゴンでダイレクトアタック!」

 

『ぬわあああああ!?』

 

8000-2800ー1800=3400

 

影丸理事長:LP3400

 

「ライフポイントを十代達が、圧倒的に上回った!!」

 

「これなら行けるか!?」

 

「ターンエンド・・・(バカ言うなって・・・相手は三幻魔の速攻召喚のデッキだぞ!俺達を遊んでるに過ぎないんだ!)」

 

『私のターン、ドロー!フフフ・・・私は手札のトラップカードを墓地へ送り、甦れウリア!』

 

「何!?」

 

「(やっぱり、アニメ効果のメリット効果は健在か!)」

 

炎の柱が昇り、その中から『神炎皇ウリア』が姿を現す。だが、守備表示でいるのがより不気味に見えてしまう。

 

『神炎皇ウリア』守備力1000

 

『更に『七精の開門』の第一の効果!1ターンに1度、この効果により『幻魔皇ラビエル』を手札に加える!更に墓地にある『混沌の召喚神』の第二の効果!墓地のこのカードを墓地より除外して発動できる。デッキから「失楽園」1枚を手札に加える!』

 

「なんだって!?」

 

『そのままフィールド魔法!『失楽園』を発動!』

 

「不味い!!」

 

『このカードの効果を説明しよう。(1):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、自分のモンスターゾーンの「神炎皇ウリア」「降雷皇ハモン」「幻魔皇ラビエル」「混沌幻魔アーミタイル」は相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない』

 

『更に(2):自分のモンスターゾーンに「神炎皇ウリア」「降雷皇ハモン」「幻魔皇ラビエル」「混沌幻魔アーミタイル」のいずれかが存在する場合に発動できる。自分はデッキから2枚ドローする事ができる!』

 

「ドロー強化に効果耐性に破壊効果耐性だって!?」

 

『私は第二の効果を発動!『神炎皇ウリア』がモンスターゾーンに存在する為、カードを二枚ドロー!』

 

『更に!二枚目の『混沌の召喚神』を召喚!このカードを生贄に!』

 

「っく!前のターンに手札へ加えていた三幻魔の一角が来る!!」

 

『いでよ!!第二の幻魔!!『降雷皇ハモン』!』

 

『降雷皇ハモン』効果/星10/光属性/雷族/攻撃力4000/守備力4000

 

『行け、『降雷皇ハモン』!ノヴァマスターへ攻撃!失楽の霹靂』

 

ハモンの雷がノヴァマスターを貫き、破壊されてしまう。その風圧に耐える十代と遊来。

 

「うああああ!」

 

ATK4000-2600=1400

 

LP8000-1400=6600

 

『更に『降雷皇ハモン』の効果発動!このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、相手ライフに1000ポイントダメージを与える!受けろ!地獄の贖罪!!』

 

更なる雷が十代へ襲いかかろうとした瞬間、遊来が声を上げた。

 

「させるか!!ブラックフェザー・ドラゴン!十代を守れ!!!」

 

ブラックフェザー・ドラゴンが十代をその黒い翼で包み込み、己の身を呈して十代を雷から守ったのだ。ブラックフェザー・ドラゴンは攻撃の衝撃に叫びを上げるが、その翼を赤く光らせ、その場に残った。

 

『何!?一体何が!?』

 

「ブラックフェザー・ドラゴンの特殊効果さ・・・。自分が効果ダメージを受ける場合、代わりにこのカードに黒羽カウンターを1つ置く。更にこのカードの攻撃力は、このカードの黒羽カウンターの数×700ダウンする。そして、1ターンに1度、このカードの黒羽カウンターを全て取り除き、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの攻撃力は取り除いた黒羽カウンターの数×700ダウンし、ダウンした数値分のダメージを相手に与える事が出来る」

 

「遊来、助かったぜ!ありがとう、ブラックフェザー・ドラゴン」

 

『ブラックフェザー・ドラゴン』攻撃力2800→2100

 

『マスター!』

 

『やばいぜ!今の状態は』

 

「(レヴァティン!?ルイン!?)」

 

「おジャマイエロー!?」

 

万丈目を始め、全員がデッキを確認するとモンスターカードの絵柄が消え始めていた。光の粒子が二体の幻魔に吸い取られている。

 

『ぬおおおおおお!漲る、漲るぞ!力がああああ!!』

 

影丸理事長の肉体が若返っていく。カプセルを自ら割って出てくると其処には鍛え上げられた若者が立っていた。

 

若返った影丸理事長はデュエルの補助をしていた機械からデュエルディスクを外すと機械に向き直った。そして、そのまま、機械を力強く持ち上げてしまう。

 

「こんな物はもう要らん!ぬうううううう!でやあああ!!」

 

自分を補助していた機械を、まるでゴミでも捨てるかのように別方向へと投げ飛ばしてしまった。

 

「(一体どういう筋力してんだよ!?大山といい、目の前の若返った理事長といい、この世界のマッチョマンは腕力ありすぎだろ!?)」

 

「俺はついに取り戻した!この若さを、この肉体を!!来い、十代!遊来!!お前達の魂ごと、俺の身体に吸い取ってやる!!」

 

「っ!」

 

「どうした?遊来!?」

 

「いや・・・十代、次のターンでなんとかしないと三体目が来るぞ!」

 

「フン、カードを一枚伏せターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

今の十代の手札に幻魔を倒せるカードはない。遊来が効果ダメージを防いでくれたが、ウリアを倒したところで復活させられるのは目に見えている。

 

「十代、よく手札を見なよ」

 

「手札・・・はっ!俺は手札から『融合回収』を発動!墓地から融合と融合に使用したE・HERO リキッドマンを手札へ戻す!!!」

 

「ちっ、厄介なものを!」

 

「更に俺は融合を使いリキッドマンとスパークマンを融合!『E・HERO アブソルートZero』を召喚し、カードを1枚伏せてターン終了だ。遊来!」

 

「ああ、俺のターンドロー!」

 

[ドローカード]

 

※ガード・ブロック

 

[現在の手札5]

 

※E・HERO クレイマン

※E・HERO リキッドマン

※E・HERO オーシャン

※E・HERO シャドー・ミスト

※ガード・ブロック

 

「(どうする?効果耐性、効果破壊耐性は付けられてるし、なんとかしないといけない。フィールド魔法を除去するカードが来ればなんとかなるけど・・・今の手札にはない!復活されても仕方ないが・・・ドローにかける!)俺は、場の伏せカード『マスク・チェンジ』を発動!エアーマン、変身!!」

 

「その効果にチェーン発動!永続トラップ『ハイパーブレイズ』!!このトラップにも三つの効果がある!」

 

「①:「神炎皇ウリア」を自身の方法で特殊召喚する場合、自分フィールドの裏側表示の罠カードを墓地へ送る事もできる。

 

②:自分の「神炎皇ウリア」が戦闘を行う攻撃宣言時に1度、手札・デッキから罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。このターン、そのモンスターの攻撃力・守備力はお互いのフィールド・墓地の罠カードの数×1000になる。

 

③:1ターンに1度、手札を1枚捨てて発動できる。「神炎皇ウリア」「降雷皇ハモン」「幻魔皇ラビエル」のいずれか1体を自分の墓地から選び、手札に加えるか召喚条件を無視して特殊召喚する。この三つだ!」

 

「っ!ウリアを強化されたか!だが、俺の行動は変わらない!」

 

エアーマンが特撮作品のようにベルトを腰に装着し、変身ポーズを取ると同時に風のエフェクトがエアーマンを包み込み変身させていく。

 

「『M・HERO カミカゼ』!変身召喚!!」

 

緑色のボディに白いマントを靡かせ、腕組みをした姿で『E・HERO アブソルートZero』の隣へ降り立つ、『M・HERO カミカゼ』の姿。

 

それはまるで、二人が変身した姿のヒーローのように並び立っていた。そう、異なる世界線のヒーロー同士が手を組み、助け合うかのように。

 

「氷と風、別の属性・・・十代と遊来、二人のデッキという異世界からヒーローが並び立っているんだな!」

 

「それに、カミカゼには強力な特殊効果がある」

 

「行け!カミカゼ!!『神炎皇ウリア』へ攻撃!神風烈風斬!!」

 

カミカゼが掌で作り出した竜巻がウリアを飲み込み、破壊する。それを見た若返った影丸は表情に怒りを見せる。

 

「おのれぇ・・・!幻魔をコケにしよって!!」

 

「カミカゼの効果により、モンスターを戦闘破壊した事でデッキからカードを1枚ドロー!(頼む、来てくれ!)」

 

[ドローカード]

 

※サイクロン

 

「!!俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

「俺のターン、ドロー!失楽園の効果により更にカードを二枚ドロー!永続魔法『七精の開門』の第二の効果発動!1ターンに1度、手札を1枚捨てて発動できる。自分の墓地から攻撃力と守備力が0の悪魔族モンスター1体を選んで特殊召喚する効果!俺は手札を1枚捨て、墓地にある『混沌の召喚神』を復活!更に手札のトラップカードを墓地へ送り、ウリアを復活!そして『混沌の召喚神』を生贄に最後の幻魔を呼び出す!」

 

「とうとう、三体目!最後の幻魔か!!」

 

「いでよ!そして最強の姿を現せ!最強の幻魔!『幻魔皇ラビエル』!!」

 

『幻魔皇ラビエル』/効果/星10/闇/悪魔族/攻撃力4000/守備力4000

 

最後の幻魔にして最強たる幻魔の皇、ラビエルがフィールドに姿を現した。『神炎皇ウリア』『降雷皇ハモン』『幻魔皇ラビエル』三幻神とは違う性質を持つ『三幻魔』のすべてが揃ったのだ。

 

「うう・・・(なんつう圧倒的な重圧だ・・・アニメで見てたのと現実で体験するのじゃまるで違いすぎる!)」

 

『マスター!悠長なことを言っている場合じゃないぞ!!』

 

「(レヴァティン!?)」

 

レヴァティンが注意喚起をすると、それは現実で起こっていた。『三幻魔』が三体全て揃ってしまった事でデュエルモンスターズの精気が吸い取られていく速度が上がっている。

 

それにより、ギャラリーがデッキの確認をすると生身の身体を持つモンスターは白骨化してしまい、機械のモンスターはスクラップになってしまった。

 

其れは即ち、十代と遊来の敗北はデュエルモンスターズの完全な消滅を意味していた。

 

「さぁ、覚悟はいいな!『降雷皇ハモン』でブラックフェザー・ドラゴンを攻撃!失楽の霹靂!!」

 

「!トラップカード、オープン!!『ガード・ブロック』!」このカードの効果で戦闘ダメージをゼロにし、カードを一枚ドローする!」

 

「だが、キサマらを守る盾は居なくなった!受けろ!!地獄の贖罪!!」

 

『降雷皇ハモン』からの雷が今度は遊来へと襲い掛かってきた。

 

「うああああああああ!!!!!」

 

LP:5600

 

「遊来!!」

 

「う・・ぐ・・・倒れ・・・るか!」

 

「流石にしぶといな」

 

「更に『サイクロン』を発・・動!失楽園を・・・破壊!」

 

「むう!?だが、攻撃を続行!『幻魔皇ラビエル』!天界蹂躙拳!!ん!?な、なぜだ!?何故、攻撃しない!?」

 

「ふふ・・・場を・・・よく見てみな」

 

「何ぃ!?」

 

無風だったはずの場所に風が吹いており、その風は影丸の『三幻魔』の動きを封じていた。その風をカミカゼ自身が起こしている。

 

「風が・・・風都の風が俺と十代を守ってくれている・・・そう、カミカゼが風都の風を呼んでくれたんだ!カミカゼはフィールドに存在する限り、相手はバトルフェイズ中にモンスター1体でしか攻撃出来ない!!」

 

「おのれ・・・味な真似を。ターンエンドだ!」

 

「遊来!流石だぜ!!俺のターン、ドロー!」

 

「(十代・・・頼む!)」

 

「!俺は『E・HERO エアーマン』を召喚!もう一つの効果を発動!このカード以外の自分フィールドの「HERO」モンスターの数まで、フィールドの魔法・罠カードを選んで破壊する!カミカゼの力を借りて、『ハイパーブレイズ』を破壊!」

 

「ぐ!」

 

「更に融合回収で回収していた『融合』を発動!場の『E・HERO エアーマン』と手札のクレイマンを融合!カミカゼが呼んだ風都の風を受けて、今この場に現れろ!『E・HERO Great TORNADO』!!」

 

「なんだと!?」

 

同じ属性でありながら、全く異なる名を持つヒーロー達。そのヒーロー達が幻魔を見え据えている。

 

「このターンで、俺達が勝つ!」

 

「ふん、そんなことが出来るはずがない!」

 

「・・・(こんな茶番・・・さっさと終わらせねばな)」

 

「いや、俺達には風都の風が吹いている!『E・HERO Great TORNADO』の効果発動!このカードが融合召喚に成功した時、発動する。相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力・守備力は半分になる」

 

「なんだと!?」

 

「俺達の想いが、俺と遊来のヒーロー達との結束を生む!行けぇ!Great TORNADO!カミカゼ!!『幻魔皇ラビエル』と『降雷皇ハモン』へ攻撃!ツイン・エアロバスター!!」

 

「ぬおおおおお!?ば、馬鹿なああああああ・・・!?」

 

幻魔が倒された事で若返っていた影丸理事長は元の老体に戻っていき、十代達の変身も解除される。その後、ヘリコプターで影丸理事長は運ばれていき、三幻魔は再び封印された。

 

 

 

 

「これで、終わったのか?」

 

「ああ、終わったんだ」

 

「『そう・・・そして我の復活の時である!』」

 

「遊来!?」

 

遊来の様子がおかしいと気付いた十代は驚きつつも声をかけるが、そんな事は遊来自身が全く気にも止めていない。

 

「『三幻魔とかいう余興は楽しめたわ、此処から我が進化する為の糧となってもらおう』」

 

その漂わせているオーラは人間が出せるものではない。そんな中、いつもなら遊来と寄り添っている『ルイン』と『レヴァティン』が彼から離れている。

 

「一体どうしたというのだ、龍谷遊来は!?」

 

『マスターは今、「琰魔竜 レッド・デーモン」の意志に乗っ取られています!』

 

「!?なんだって!」

 

『ルイン』の言葉に反応した十代にギャラリーに徹していた全員が、視線を向ける。

 

「どうしたの?十代!」

 

「あ・・いや・・・今の遊来は「琰魔竜 レッド・デーモン」の意志に乗っ取られているそうなんだ!」

 

「そんな馬鹿な!」

 

「『ククク・・・我を知る者がいるか。ふん』」

 

その雰囲気は普段の遊来とは全く違い過ぎていた。相手を必ず倒そうとし、自分以外は全て見下しているようだ。

 

「琰魔竜 レッド・デーモン」の意志は十代に向かってとあるカードを投げつけてきた。

 

「!こ、このカードは!」

 

それは『レッド・デーモンズ・ドラゴン』のカードとチューナーモンスター達であった。

 

「『それを使って我と戦え!』」

 

遊来の目は白目が黒く染まりきっており、デュエルディスクを構えている。十代はカードを拾い上げると「琰魔竜 レッド・デーモン」の意志に向けて怒りの目を向ける。

 

「お前・・・!親友の身体とカードを!!え?」

 

『レッド・デーモンズ・ドラゴン』のカードに十代が視線を向けるとその姿が変化している。その姿は全身を傷つけながらも闘志を失わなず、戦い続け勝利を目指し続ける誇り高さを表している。そのカードの名は・・・・。

 

「『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』?」

 

「『ふ、光のが進化しようと足掻いている様だが・・・所詮は悪あがきよ。その間、我が進化するのだからな!』」

 

「っ!そうはさせないぜ!お前を封じて遊来を取り戻す!!」

 

「『やれるものなら、やってみよ!』」

 

「十代!」

 

「アニキ!?」

 

十代は連戦になるにも関わらず、デュエルディスクを構えようとする。だが、周りがそれを止めようとした。

 

「十代!連戦になるぞ!?大丈夫なのか!?」

 

「へへ、まだ大丈・・・うっ!」

 

一瞬だけフラつく十代。三幻魔という驚異の中の驚異と戦ってすぐの連戦となれば、疲労がない訳が無い。

 

「疲れが出るじゃない!」

 

「けど、戦わないと・・・遊来が」

 

『マスターを助けるなら、姐さんの力と俺の力が必要だよ?』

 

「!遊来の精霊達!?」

 

『遊城十代、私に力を貸してくれる者達の力で貴方の疲労を一時的に抑える事が出来ます。ですが、倒れるかもしれません。それでも、よろしいですか?』

 

「(ああ、やってくれ!)」

 

『分かりました』

 

十代の中の疲労という名の闇がルインの力によって、祓われる。元気になったと感じるがそれは、身体の認識を誤魔化されているに過ぎない。

 

『「戦え、戦え!我を進化させるために!」』

 

「お前に乗っ取られた遊来を俺が必ず取り戻す!!」

 

十代はチューナーモンスター達をデッキに組み入れ、『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』を融合デッキに組み入れる。

 

「いくぜ、デュエル!!」

 

『デュエル!』

 

「琰魔竜 レッド・デーモン」と十代の戦いが始まろうとしていた。それは、光と闇が進化する戦いであり、遊来が時を超え遥か昔の記憶を僅かに取り戻す事にもなるのと同時にとある境地を体現した始祖に出会う事になるのを遊来自身も知る由もなかった。




次回は闇の炎の化身、琰魔竜 レッド・デーモンとの戦いが始まります。この戦いの後に遊来は過去へ向かいます。

『レッド・デーモンズ・ドラゴン』を進化させる為の境地の始祖と出会い、自分の魂の記憶を垣間見ることになります。

ですが、その前に日常回です。


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間話 機械天使と破滅の天使

ドラグニティ強すぎ問題(当たり前)

社長へ贈り物。

明日香とカードをトレード。

ゆきのん登場。


三幻魔との戦いの前の時刻、海馬コーポレーション社長室。其処には総帥である海馬瀬人が忙しくパソコンのキーボードを叩き、株などの情勢を見ている。

 

「兄サマ!!」

 

「ん?モクバ、どうした?」

 

「会社宛へ荷物が届いたんだ。差出人は遊来だよ」

 

「アイツから?封を開けてみろ」

 

「うん!」

 

モクバが荷物の封を開けると其処には、小さなストレージボックスと手紙が入っていた。

 

「カード入れるボックスと手紙?『約束した物を送ります』だって?え!に、兄サマ!これ!」

 

「どうした!?モクバ!なっ・・・!」

 

モクバが手にして見せに来たのは『青眼の亜白龍』のカードであった。その他にも『青眼の双爆裂龍』や『太古の白石』など『青眼』に関連したカードがスリーブなどで保護された状態で所狭しとストレージボックスの中に入っていたのだ。

 

「これは・・・前に奴が言っていた『青眼』の関連カードか!?サポートだけではない、戦力としてのカードもあるのか!モクバ、そのボックスをよこせ!」

 

「う、うん!」

 

瀬人は遊来から送られてきたストレージボックスの中身を全て確認した。自分のデッキを最大限に強化できるカードばかりが入っており、瀬人自身も驚きを表情に出している。

 

「!!(一体、アイツの前にいた世界とはなんだ!?これだけの『青眼』強化サポート、戦力となるカードなど見たことはない!)」

 

「兄サマ?」

 

「ふぅん・・・モクバ、遊来に伝えておけ。『青眼』を使うからには敗北は許さんとな」

 

「う、うん!分かったよ!」

 

モクバは兄が遊来を認め始めている事を感じていた。『青眼』のカードを渡されたからではなく、彼がシンクロ召喚の実演用である『ドラグニティ』を使い、戦う姿を衛星通信からの映像を見た時からだった。

 

『ドラグニティ』の圧倒的な制圧力を目撃してから、兄は遊来とのデュエルを望んでいる。だが、世界的大企業とも言える海馬コーポレーションの総帥である身としては、時間が取れないことも事実。

 

「・・・・貴様との決闘。楽しみにしておくぞ」

 

 

 

 

 

 

この時と同時刻。遊来はオベリスクブルーのとある女生徒とデュエルしていた。相手の条件は『ドラグニティ』の本気で戦うことだった。

 

「ウフフ・・・竜騎士のボウヤの手札は残り一枚、頼みの『竜の渓谷』は破壊されてフィールドはガラ空きになってしまったわね?私の場には『終焉の王デミス』のみ、ライフポイントはお互いに800。流石の竜騎士も膝を着くかしら?」

 

「そうだな、普通なら・・・もう手詰まりだ」

 

十代をはじめとした遊来と友好の深いメンバー達、全ての所属の生徒達もこのデュエルを見学している。だが、遊来は淡々としている中で変化が現れていた。

 

「(俺の手札は『ドラグニティ・ファランクス』のみ)俺のターン、ドロー」

 

「!俺は『調和の宝札』を発動!手札の攻撃力1000以下のドラゴン族のチューナーモンスターを墓地へ送り、カードを2枚ドローする!」

 

「本来であれば、この状況での『調和の宝札』はただの手札交換に過ぎない、だが」

 

「そう、遊来にとって『ドラグニティ』のカードを墓地に置く事がアドバンテージを得られる条件!」

 

「手札の『ドラグニティ・ファランクス』を墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※疾風のドラグニティ

※ドラグニティ-クーゼ

 

「・・・!藤原、渓谷は無くても『風』は吹いてくれるようだぞ」

 

「?」

 

「手札から速攻魔法!『疾風のドラグニティ』を発動!このカードは1ターンに1枚しか発動できず、相手フィールドにのみモンスターが存在する場合に発動できる。デッキから「ドラグニティ」チューナーと鳥獣族の「ドラグニティ」モンスターを1体ずつ効果を無効にして特殊召喚する。EXデッキから特殊召喚されたモンスターが相手フィールドに存在する場合、さらに自分フィールドの「ドラグニティ」モンスターのみを素材としてドラゴン族Sモンスター1体をS召喚できる。このカードの発動後、ターン終了時まで自分はドラゴン族モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない」

 

「え!?」

 

「俺はデッキから『ドラグニティ-セナート』『ドラグニティ-クーゼ』を特殊召喚!この2体の特殊効果は無効化されているけどな」

 

「それじゃ、最上級のモンスターを出せないよ!?」

 

「本気になった『ドラグニティ』の絆を舐めるなよ?翔。レベル4の『ドラグニティ-セナート』にレベル2の『ドラグニティ-クーゼ』をチューニング!」

 

★4+★2=★6

 

鳥人の魔道士がクーゼが己の身を光の輪に変え、その中を潜り星の羅列が完成する。

 

「二つの種族の結束が、新たな竜騎士を生み出す。今こそ駆け抜けろ!!シンクロ召喚!飛び上がれ!『ドラグニティナイト-ガジャルグ』!!」

 

「そんな・・・そのモンスターは!」

 

「『ドラグニティナイト』の一番槍だ!だが、まだ止まらない!俺は手札の『ドラグニティ-クーゼ』を通常召喚!」

 

「!この土壇場で『ドラグニティ-クーゼ』を『調和の宝札』で引いていたのか!?」

 

「まだだ、俺は墓地に眠る『ドラグニティ-クーゼ』『ドラグニティ-セナート』の2体を除外し『ドラグニティアームズ-グラム』を墓地から特殊召喚!!」

 

「あ、あのモンスターは俺とのデュエルでも使っていたんだな!」

 

「ど、どういう事!?何故、そのグラムというモンスターが墓地に!?」

 

「あっただろう?藤原。俺がグラムを墓地に置く機会が、たった一度だけな」

 

「・・・はっ!?」

 

それはデュエルをスタートし、3ターン目の出来事であった。『ドラグニティアームズ-グラム』を墓地へ送る機会はその時、確かに存在していた。

 

『俺は「竜の渓谷」の効果を発動!手札を1枚墓地へ送り、自分のデッキからドラゴン族モンスター1体を墓地へ送る』

 

『あら?手札に加える効果の方を選択しないのかしら?』

 

『これで良いのさ』

 

数秒の思考から現実に戻った時、藤原と呼ばれてる女生徒は驚きを僅かに表情へ出していた。

 

「あの時ね?・・・あの時に墓地へ送ったドラゴン族のカードが!」

 

「そう、グラムだったのさ!更に俺はレベル6の『ドラグニティナイト-ガジャルグ』に『ドラグニティ-クーゼ』をチューニング!!このクーゼは通常召喚されたクーゼ、よって特殊効果によりレベル4として扱う!」

 

★6+★4=★10

 

「天の龍と鳥獣の王が手を結ぶ時、天空を駆ける竜騎士の王が現る!今こそ駆け抜けろ!シンクロ召喚!!王の道を行け!『ドラグニティナイト-アスカロン』・・!」

 

「アスカロン・・・!これが・・・『ドラグニティ』の本気」

 

「『アスカロン』の効果発動!墓地にある『ドラグニティ』モンスターを1体ゲームから除外する事で相手のフィールド上のモンスター1体をゲームから除外する!俺は墓地にある『ドラグニティ-セナート』を墓地から除外して、『終焉の王デミス』をゲームから除外する!!」

 

「勇ましい・・・そして、気高いわ。これが・・・竜騎士なのね」

 

「アスカロンでプレイヤーへダイレクトアタック!!ドラグニティ・シェイバー!」

 

「・・・・」

 

相手のライフポイントがゼロになり、藤原と呼ばれた女生徒が遊来に近付き、キス出来る寸前にまで遊来に顔を近づける。流石に一目見て誰もが美人だと言える相手に顔を近づけられれば驚くだろう。

 

「っ!!??」

 

「貴方の事、気に入ったわ。私も貴方に釣り合えるようになるから、それまで輝いていて?竜・騎・士・さ・ん」

 

それだけ言うと藤原は背を向けて去っていった。遊来は心臓がドキドキしているのを感じつつ、息を一つ吐いた。

 

「危ないな・・・アイツ・・・美人だ・・痛っ!?」

 

『マ~ス~タ~?何、鼻の下をのばしてるんです~?』

 

「(客観的に見てだよ!客観的に!あ~痛い!)っ!?」

 

ルインに背中を抓られた後に何やら殺気を感じたので振り返ると、明日香とジュンコが僅かに睨んでいた。

 

「(俺、何もしてないよね!?あの藤原ってのに近づかれたけど、何もしてないから!!)」

 

『ふん!』

 

『(ルイン姐さん、マスターの事を好いてるんだなぁ・・・精霊にもモテるなんて罪だねぇマスターは)』

 

 

 

 

その日の夜、明日香から機械天使のデッキを見て欲しいとの連絡が来たので部屋へと招待し、デッキを広げてもらいそれを見ている。

 

「ふむふむ、属性も光に種族も天使一本に染まりそうだし天使サポートを入れてもいいな。サイバー・ブレイダーは別のデッキとして持っておくといい」

 

「そうね、機械天使に関して貴方の意見を聞かせてくれる?」

 

「俺の構築だとガッチガチに相手を倒すタイプのデッキになっちゃうし、明日香自身はどうしたい?徹底的に相手を倒したいなら俺が持ってるカードも組み入れるよ」

 

「なら、徹底的にしたいわ」

 

「良いのか?強すぎてドン引きされるレベルになるよ?」

 

「うっ・・・構わないわ。どうなるか知りたいの」

 

「オッケー、となると先ずは」

 

遊来は迷いなく『大天使クリスティア』『トリアス・ヒエラルキア』『神光の宣告者』などを自分のストレージボックスから取り出し、明日香へと手渡した。

 

「?ちょ・・ちょっと待って!遊来!!これとこれを組み合わせたら!」

 

「あ、気づいちゃった?流石に明日香は勘がいいなぁ」

 

「何で、こんなにもえげつないパーツを渡してくるのよ・・・貴方は」

 

「徹底的にしたいって言ったのは明日香だろ?俺はその手助けをしてるだけさ」

 

「だけど!」

 

「ストップストップ!ビートダウンだけっていう考えは凝り固まり過ぎだって」

 

「う・・・」

 

明日香が感情的になってきたのを宥めて、遊来は機械天使パーミッションの説明を始める。この世界ではビートダウンこそが至高のデッキだという価値観が強い。だからこそ、説明をしないといけない。

 

「つまり、相手を妨害しつつ優位性を取っていくデッキになるのね」

 

「そう、これだって有効な戦略だよ。無論、デッキ破壊とかもね」

 

「・・・」

 

「確かにビートダウンでぶつかり合うのは良いかもしれない。けれど、力はより強い力に飲まれてしまう。けれど、その力を止めてしまうことができるなら?」

 

「・・・あっ!」

 

「相手が自分より強い力を持っていたら勝てなくなってしまう。俺の『ドラグニティ』を見てたなら分かるはずだけど?」

 

「そうね。隼人くんや十代とデュエルした時、アスカロンの攻撃力を超えている相手モンスターを除外していたものね」

 

「そ、だから戦略の一つとして考えておけばいいよ。墓地利用してた時なんか俺、かなり言われてたんだから」

 

「そういえば、そうだったわね・・・」

 

明日香もようやく納得してくれた様子だ。デッキを組みテーブルデュエルを行う事にするが二戦のみを行う事にする。

 

「『大天使クリスティア』『神光の宣告者』がフィールドに揃ったわ」

 

「あ・・・済まない。サレンダーで、もう勝てない」

 

「本当にすごいデッキね・・・相手を抑え込んで自分の優位性を不動の物にしちゃうなんて」

 

「仮に出来なくても戦えるようにはしてあるからさ。勝ちへの道筋は多いほうがいい」

 

「ふふ・・・ありがとう。しばらくこのデッキで頑張ってみるわね」

 

「こっちこそ、余っていると言われたとはいえ機械天使のパーツを交換してくれてありがたい」

 

遊来はデュエル前に『大天使クリスティア』『神光の宣告者』などのパーツと引き換えに、機械天使のパーツを明日香とトレードしたのだ。

 

「これで、俺の儀式デッキも組み直せる」

 

「アレを強化するつもりだったの!?ますます負けられないわね!」

 

「『ドラグニティ』だけじゃないって事をアピールしないとな」

 

「それじゃ、私戻るわね」

 

「ああ、またな」

 

「ええ」

 

明日香は遊来の部屋を後にし、通廊を歩き出した。歩きながら明日香は今日の自分の感情に対して考えていた。

 

「遊来が雪乃に言い寄られていた時、どうして私は不快に思ったのかしら?彼の事は何とも思ってないのに」

 

それは明日香の中にわずかに芽生えた感情であった。今はまだ何も感じない、自覚も薄いものである。そんな感情が自分の中で出ている事をまだ認められないまま明日香は自分の部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

 

『マスター!どうして明日香さんのカードを使うんですか!』

 

「これを使わないと単体で組めないんだよ!」

 

ルインと遊来は自室でケンカしながらデッキを組み直していた。ルインは明日香からトレードしてもらった機械天使を組み入れられるのが気に食わない様子だ。

 

『うー、マスターなんて知りません!!』

 

因みに今ルインは『天使』の状態でいる。使用した魔力を蓄える為だそうで、この方が最も効率よく貯められるのだとか。

 

ただ、今の自分と同年代のような姿である為に遊来もより、素の自分に戻ってケンカしてしまっていた。だが、遊来自身は何故、ルインが明日香からトレードされたカードを使われるのが嫌なのか分かっていなかった。

 

「戦略的にはコレを使わないと勝ち筋が増えないんだよ・・・」

 

『・・・(つーん)』

 

「むぅ・・・」

 

ルインは拗ねていて話を聞いてくれる様子では無さそうだ。遊来はとにかく、ルインを単体で使う事の出来るデッキを組み続ける。

 

何故、彼がデッキを組み直す事にしたのか?それは自分が『ドラグニティ』だけに頼りすぎている事を脱却したいと考えたからだ。

 

『ドラグニティ』は確かに非常に強力なデッキだ。しかし、それはシンクロ召喚という最先端の召喚方法によって支えられているからだ。

 

だが、そのシンクロ召喚ばかりに頼りすぎているから強いのだと、言われたくはないのだ。そこで、自分の前の世界で最も使い込んでいたルインデッキを組み直すことにしたのだ。

 

前の世界でも強化はされたがそれ以上に強いデッキばかりで、他のも組んだ方が良いと言われたり、馬鹿にされたりもしたが最大のフェイバリットであるルインをどうしても使わないという事は出来なかった。

 

「(もし、もし俺がまたセブンスターズの一員になった時のようなことがあれば・・・ルインにも止めて欲しい)」

 

そんな心の言葉をルインが聞いているとは思いもしないだろう。ルイン自身も自覚した自分の内なる存在『メラグ』が語りかけて来たのを思い返す。『アルタイスを支えて欲しい』と。

 

『(もしかして・・・『アルタイス』とはマスターの事?メラグ・・・貴女はマスターに何を伝えたいのですか?)』

 

あの時以降『メラグ』がルインへ語りかけてくる事はない。知りたい事、聞きたい事が山程あるというのに何も教えてはくれない。

 

遊来のデッキ作りは深夜ギリギリまで続き、デッキが出来上がると同時にベッドへ入り込み眠ってしまった。

 

これが、三幻魔と闇の炎の側面を持つ『レッドデーモン』との戦う前の日常である。




「あったのさ、たった一度だけカードを墓地へ送るチャンスが!」

「!あの時だ、あのカードを墓地へ置く機会はあの時だけ!」

この二つのフレーズは、かなりお気に入りで使ってしまいます。特にドラグニティは墓地へカードを送る事が多いので。

遊来くんは一応『デュエルが強い』のでアカデミアでは結構モテる方に入ります。

ただ『恋愛』の駆け引きは他の相手に対しては鋭いですが、自分の事になると鈍感です。好意に気づいても本当の好意なのか?と疑問に思ってしまいます。

今回の相手はゆきのんこと『藤原雪乃』に戦ってもらいました。彼女も遊来がお気に入りですが、まだまだ恋愛という感じではなく『デュエルが強い人』という認識です。

次回は本編です。

※アンケートは次回投稿で締め切ります。


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第27話

「琰魔竜レッド・デーモン」とのデュエル。

※色々と修正しました。盤面は本当に難しいです。


「『我の先攻、ドロー!』」

 

『琰魔竜レッド・デーモン』の意志と十代のデュエルが始まった。相手は遊来の身体と実力を乗っ取っている存在、油断は出来ないと十代は感じる。

 

「『我は魔法「コール・リゾネーター」を発動する』」

 

「『コール・リゾネーター』?」

 

「『このカードはデッキから我の眷属である「リゾネーター」モンスターを1枚、手札に加える事ができる!』」

 

「サーチ魔法!?」

 

「『我はサーチした「クリムゾン・リゾネーター」を召喚!更にリゾネーターモンスターの召喚が成功した事により、手札から「レッド・ウルフ」を特殊召喚!このカードの効果は自分が「リゾネーター」モンスターの召喚に成功した時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードの攻撃力は半分になる!』」

 

『レッド・ウルフ』効果/星6/炎属性/悪魔族/攻撃力1400/守備力2200

 

『レッド・ウルフ』攻撃力1400→700

 

「レベル6のモンスターを生贄無しで召喚してきた!?」

 

「『レベル6のモンスターにレベル2のチューナーモンスター、この意味が分かるか?小僧』」

 

「!?シンクロ召喚!」

 

「『その通りだ!我はレベル6の「レッド・ウルフ」にレベル2の「クリムゾン・リゾネーター」をチューニング!』」

 

★6+★2=★8

 

シンクロ召喚のエフェクトが機械的な物ではなく、荒々しい炎のエフェクトになっており、それは遊来自身が戦っていない事を意味している。

 

「『漆黒の闇を裂き天地を焼き尽くす孤高の絶対なる王者よ!!万物を睥睨しその猛威を振るえ!!シンクロ召喚!!我が半身!「琰魔竜レッド・デーモン」!!』」

 

琰魔竜レッド・デーモン、遊来が使っていた時以上に禍々しいオーラが溢れ出ていた。並のデュエリストならば、その瘴気と威圧感に当てられた瞬間、戦意を喪失してしまうだろう。

 

前の戦いでの三幻魔に勝るとも劣らない圧倒的な殺気。デュエルモンスターズを消滅させる気は無いにしても戦い続け、相手を狩り尽くしてしまう気概は感じ取れる。

 

琰魔竜レッド・デーモンは三幻魔とは違った脅威だ。絶滅させるまで獲物を狩り続ける飢えた猛獣のようだ。

 

「1ターンでレベル8のシンクロモンスターを出してくるなんて・・・」

 

「これで十代は、迂闊に攻撃表示でモンスターを場に出せなくなってしまったわ」

 

「どういう事なんだな?明日香さん」

 

「『琰魔竜レッド・デーモン』は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズ1で効果を発動できるの。『琰魔竜レッド・デーモン』以外のフィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスターを全て破壊してしまうのよ。ただし、その効果を発動する時『琰魔竜レッド・デーモン』以外のモンスターは攻撃出来ないけど」

 

「その効果と合わせて攻撃力3000・・・!」

 

「盤面は遊来の方が有利という訳か」

 

『「我はカードを1枚伏せ、ターンエンド」』

 

「俺のターン、ドロー!っ!?」

 

十代は引いたカードに眼を凝らす。手札の中にシンクロ召喚に関するカードがあったからだ。だが、今この盤面で使うことは出来無い。

 

「(今この手札じゃ倒す事は出来無い、耐えるしかないな)」

 

「俺はカード2枚伏せ、E・HERO ブレイズマンを召喚!召喚に成功した事で効果発動!デッキから融合を手札に加えるぜ!」

 

「『正しき闇の使い手・・・その力を束ねる者。それが貴様か』」

 

「?何の事だ?俺はこれでターンエンド」

 

「『いずれ解る事、我のターン!ドロー』」

 

カードを見ると同時にその目に戦いを仕掛ける事が見て取れる。

 

「『我の効果を発動!王が通る道に邪魔者は不要!去れい!!真紅の地獄炎!』」

 

『琰魔竜レッド・デーモン』の拳が攻撃表示のブレイズマンを破壊し、十代のフィールドを更地にしてしまう。

 

「『呆気ないものよな、ダイレクトアタック!』」

 

「トラップカード発動!『攻撃の無力化』!バトルフェイズを強制終了させるぜ!」

 

「『おのれ、耐えるか!モンスターを1体セットし、カードを1枚伏せターン終了だ!』」

 

「俺のターン、ドロー!よし!俺はもう1枚の伏せカードを発動!『戦線復帰』!!墓地にあるモンスター1体を守備表示で復活させる!ブレイズマンを守備表示で復活!」

 

「『何、なぜお前がそのカードを!?』」

 

「ノーマルカードだからだって遊来から貰ってたのさ!場のブレイズマンの効果で融合を手札に加え、そのまま発動!場のブレイズマンと手札のリキッドマンを融合!『E・HERO ノヴァマスター』を融合召喚!!リキッドマンの効果により、カードを2枚引き、そのうち1枚を墓地へ送る。手札を1枚を墓地に送るぜ」

 

「『ふん、その程度の力など我には通じぬわ!』

 

「俺はまだターンを終了してないぜ?更に手札から遊来から貰った『スカイスクレイパー・シュート』を発動!!自分フィールドの「E・HERO」融合モンスター1体を対象として発動できる!そのモンスターより攻撃力が高い相手フィールドの表側表示モンスターを全て破壊する。その後、この効果で破壊され墓地へ送られたモンスターの内、元々の攻撃力が一番高いモンスターのその数値分のダメージを相手に与える!!」

 

「更に自分のフィールド魔法ゾーンに「摩天楼」のフィールド魔法カードが存在する場合、相手に与えるダメージは、この効果で破壊され墓地へ送られたモンスター全ての元々の攻撃力の合計分となる。今の俺の場に『摩天楼・スカイスクレイパー』のカードはない!けれど、今、お前の場に有るのは『琰魔竜レッド・デーモン』だけだ!」

 

「『魔法効果による破壊と、バーンダメージだと!?』」

 

「いっけえええ!『ノヴァマスター』!スカイスクレイパー!ブレイズシュート!」

 

『ノヴァマスター』の掌から放った火球が『琰魔竜レッド・デーモン』を捉え、その身体を炎上させ『琰魔竜レッド・デーモン』を破壊する。

 

「正義の炎が悪しき炎を飲み込む!更に『スカイスクレイパー・シュート』の効果で破壊したモンスターの元々の攻撃力文のダメージを相手へ与える!FIRE CRASH!!」

 

「『ぬおおおおおおお!?おのえ・・・・忌々しい!ヒーロー共!!』」

 

LP4000→1000

 

「はぁ・・・はぁ・・・遊来の相棒が手当してくれたのも限界が近いの・・・かよ」

 

疲労をルインの力によって誤魔化されているだけで、流石の十代も疲労が蓄積されており、それが表立ってきてしまった。

 

「だけど俺は・・・必ず親友を取り戻す!『ノヴァマスター』でダイレクトアタック!!」

 

「『させん!罠カード「リビングデッドの呼び声」!!』このカードの効果により、我の半身『琰魔竜レッド・デーモン』を攻撃表示で復活!」

 

「っ!戦闘を巻き戻して、攻撃はしない!俺は更にカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

「『我のターン、ドロー!ククク・・・遂にこの時が来た!!この身体の闇と我自身の力を使い、我を進化させるこの時がな!!』」

 

「何!?」

 

「『我は「チェーン・リゾネーター」』を召喚!特殊効果発動!フィールドにシンクロモンスターが存在し、このカードが召喚に成功した時に発動できる!デッキから「チェーン・リゾネーター」以外のモンスターをデッキから特殊召喚する!我が眷属、「シンクローン・リゾネーター」をデッキから特殊召喚!」

 

「チューナーモンスターが!」

 

「『我はレベル8の「琰魔竜レッド・デーモン」にレベル1の「チェーン・リゾネーター」をチューニング!』」

 

★8+★1=★9

 

「『深淵の闇より解き放たれし魔王よ!!その憤怒を爆散させよ!シンクロ召喚!蹂躙せよ!「琰魔竜レッド・デーモン・アビス」!!』

 

『琰魔竜レッド・デーモン・アビス』シンクロ・効果/星9/闇属性/ドラゴン族/攻撃力3200/守備力2500

 

「『おおおおおおお!!漲る!力が漲る!!これが進化の力か!』」

 

「琰魔竜レッド・デーモン」以上の体格と大きな角、更には両腕に斧のような刃が生えている。攻撃的だった風貌がより鋭角になり、相手を殲滅せんと唸り声を上げていた。

 

「『進化した我が半身「琰魔竜レッド・デーモン・アビス」の効果発動!1ターンに1度!相手フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。そのカードの効果をターン終了時まで無効にする。対象は『E・HERO ノヴァマスター』!!』」

 

「何!?」

 

「『バトルフェイズ!「琰魔竜レッド・デーモン・アビス」で攻撃!深淵の怒却拳!!』

 

「「させるか!伏せカード、オープン!『和睦の使者』このターン、俺のモンスターは戦闘では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージは0になる!モンスターは破壊されず、戦闘ダメージは無いぜ!」」

 

遊城十代:LP4000

 

「アニキ!」

 

「壁モンスターを守ったか!」

 

ギャラリーの言葉を耳に進化した『琰魔竜レッド・デーモン・アビス』へ十代は視線を向ける。これほどまでに進化させる闇が遊来の中にあったのかと、十代は思う。

 

「(遊来、お前の中の闇って一体何だ?)」

 

「『ちぃ、我のターンは終了だ』」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

十代は顔をしかめる。この状態ではまだ『琰魔竜レッド・デーモン・アビス』を倒すには至らないからだ。

 

「俺はノヴァマスターを守備表示に変更、更にモンスターを1体セット、カードを1枚セットして、ターン終了だ」

 

「『我のターン、ドロー!我は更なる高みへと登る!!』レベル9の「琰魔竜レッド・デーモン・アビス」にフィールドのレベル1のチューナーモンスター「シンクローン・リゾネーター」をチューニング!」

 

★9+★1=★10

 

『琰魔竜レッド・デーモン・アビス』が『シンクローン・リゾネーター」の作り出した炎の輪の中を潜り、星の羅列を作り出す。

 

「『泰山鳴動!!山を裂き地の炎と共にその身を曝せ!!シンクロ召喚!「琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル」!!」

 

『琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル』シンクロ・効果/星10/闇属性/ドラゴン族/攻撃力3500/守備力3000

 

「レベル10のシンクロモンスター・・・」

 

「『うおおおおおお!これが力!全てを滅する事の出来る要因かあああ!!』」

 

「ふざけんな!!遊来を利用して力を得やがって!!うっ・・・!」

 

「『その身体での威勢の良さは認めよう。だが、お前に勝ち目は万に一つもない!』」

 

「くうう・・・」

 

「『我は「デルタフライ」を召喚し、「琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル」の効果を発動!自分フィールドのモンスター1体を生贄にし、自分の墓地の「レッド・デーモン」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する!「デルタフライ」を生贄に墓地より姿を現せ!!「琰魔竜レッド・デーモン・アビス」!』

 

「させるか・・・!伏せカード、オープン!『奈落の落とし穴』!「琰魔竜レッド・デーモン・アビス」を破壊して除外するぜ!」

 

「上手い!蘇生させようとした『琰魔竜レッド・デーモン・アビス』を除外した!」

 

「『ほう・・・だが、まだだ!遊城十代!「限界竜シュヴァルツシルト」を特殊召喚!』」

 

「何!?レベル8のモンスターを特殊召喚だって!?」

 

「『手札は使い切ったが、貴様を追い詰めるには充分!「限界竜シュヴァルツシルト」でセットモンスターへ攻撃!」

 

「ぐあああ!セットモンスターは『フレンドッグ』!!戦闘で破壊された事により、『フレンドッグ』の効果発動!このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地から「E・HERO」と名のついたカード1枚と「融合」の魔法カード1枚を手札に加える!俺はリキッドマンと融合を手札に戻すぜ!」

 

「『まだ「琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル」の攻撃がまだ残っているぞ!ノヴァマスターへ攻撃!割山激怒撃!!』」

 

「うああ!『ノヴァマスター』!!」

 

「『!ライフを削れぬとは!!ターンエンド!』」

 

「俺のターン、ドロー!俺は手札から『ヒーローアライブ』を発動!自分フィールドに表側表示モンスターが存在しない場合、LPを半分払って発動できる!デッキからレベル4以下の「E・HERO」モンスター1体を特殊召喚する!俺はスパークマンを召喚!」

 

遊城十代:LP4000→2000

 

「更に魔法カード『E-エマージェンシーコール』を発動!デッキからフェザーマンを加え!連続融合だぜ!最初に手札のフェザーマンとバーストレディを融合!マイフェイバリット!『E・HERO フレイム・ウィングマン』を融合召喚!更にフィールドのフレイム・ウィングマンとスパークマンを融合!」

 

「現れろ!!悪の炎を飲み込む光の翼を持つヒーロー!『E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン』!!」

 

『E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン』融合/効果/星8/光属性/戦士族/攻撃力2500/守備力2100

 

「『なんだと!?』」

 

「『シャイニング・フレア・ウィングマン』このカードの攻撃力は自分の墓地の「E・HERO」カードの数×300アップする!俺の墓地に眠る『E・HERO』は6体!よって攻撃力が1800ポイントアップ!!」

 

『E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン』攻撃力2500→4300

 

「『進化した我の攻撃力を上回っただと!?』」

 

「いけええ!!『シャイニング・フレア・ウィングマン』!!『琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル』へ攻撃!!遊来にとり憑く闇をかき消し、究極の輝きを放て!シャァァイニング・シュートォォ!!」

 

『シャイニング・フレア・ウィングマン』が青い光を纏って『琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル』へ突撃し、青い光の拳で殴りつけた。

 

「『ぬおおおおお!』」

 

LP1000-800=200

 

「『だが、トドメを刺すに至らなかったようだな!?次のターンで我の勝ちだ!』」

 

「いや、このターンで終わりだ!」

 

「『何!?』」

 

「『シャイニング・フレア・ウィングマン』の効果!このカードが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

「『バ、バカな!進化した我『琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル』の攻撃力は3500!その数値分のダメージが!?』」

 

『シャイニング・フレア・ウィングマン』が遊来の肉体を乗っ取っている『琰魔竜レッド・デーモン』の前に立ち、その青い光を強く浴びせ始める。

 

「『ぐああああああああああ!!!!』」

 

LP:200→0

 

「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!(ゴメン『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!出す事が出来なかった)

 

「『フフ・・・進化を果たした所で所詮は闇に去る宿命か。だが忘れるな?我の意志が無くなろうと我も「レッドデーモン」ある事を!光と闇は表裏一体、我はいずれ復活する!その時を楽しみにしておけ!』」

 

そう言い残して『琰魔竜レッド・デーモン』の意志は消えて、カードに封印された。その時イメージイラストが一瞬、炎の色のようなオレンジ色の光が出た。

 

それは『琰魔竜レッド・デーモン』の意志が完全に封印された事を意味していた。闇の炎と光の炎に分かれていても両者共に「レッドデーモン」である事に変わりはない。

 

闇の意志が封印された事で、光の意志が遊来を狙うという事はない。だが、光の意志は遊来の意識を、とある時代へ飛ばそうとしていた。それと同時に十代も意識が薄れかかっている。

 

「あ・・・れ・・・?目の前が・・・回って・・・」

 

「十代!?」

 

「う・・・・」

 

遊来が倒れた後、十代も続くように倒れてしまった。三幻魔からの連戦で消耗しており、そこへルインによる強引な奮い立たせのような物を受けていたのだから、当然の結果だ。

 

「十代!」

 

「遊来!」

 

二人はギャラリーとなっていた友人達の手によって、保健室へと運ばれていった。十代は倒れてから2時間後に目を覚ましたが、ルインの強引な回復の副作用で筋肉痛のような状態であり、遊来は昏睡したままであった。

 

「遊来・・・・」

 

隣で昏睡状態の遊来へ視線を向ける十代。シンクロ召喚のテスターに選ばれる程の実力を持つ彼が何故、カードの闇に飲まれてしまったのか疑問が残った。

 

セブンスターズに関しては、その一人であったアムナエルこと大徳寺先生から彼を利用した事を聞かされている為、何も疑問にならない。

 

だが、『琰魔竜レッド・デーモン』に関しては別だった。カードの意志が遊来を飲み込み、利用された。その事が腑に落ちない。

 

「遊来・・・お前は何を抱えてるんだ?なんでそれを打ち明けてくれないんだ?」

 

十代の問いに、昏睡状態の遊来は何も答えない。親友だからこそ、相談して欲しかった。

 

彼の抱えている闇、それが何なのか?それを知りたい、十代はそう考えながら眠りへと落ちていった。




これにて『レッドデーモン』は遊来くんの制御下になりました。ただし今は『琰魔竜レッド・デーモン』の進化態である『アビス』『ベリアル』のみしか使えません。

理由はダブルチューニングが使えないからです。

ダブルチューニング、トリプルチューニングを会得する為には「境地」が必要です。

これから遊来くんは魂だけが時間を遡り5千年前に「境地」を会得した始祖に出会います。

それこそが彼の光の境地となります。

闇の境地はメラグに関連するものですので、まだまだ先です。

※遊戯王はやっぱり『光と闇』の二つが重要だと思うのです。


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間話 荒ぶる魂と三原色の三人

「境地」の始祖と出会う。

とある三人と一人が押しかけ。


自分の意識を取り戻した遊来は自分が何処に居るのかを確認する為に周りを見渡していた。テレビのドキュメンタリーなどで見た事のある遺跡が現役の建物としてそびえ立っている。

 

そこでは何やら祭りが行われているようで、遊来は隠れて様子を見る。

 

「我らが光を齎らす太陽はいずれ消え失せる。だが、生贄の心臓によってその輝きは伸びるであろう!」

 

「「おおおおおおおおおお!!!!」」

 

「(太陽、生贄・・・まさか!?ここはアステカ文明か!?)」

 

アステカ文明、それは生贄の文化が根付いていたという有名な文明の一つだ。太陽はいつか光が消える、その輝きは心臓を燃料として燃え続けられるのだという終末信仰に近いものである。アステカ文明をモデルにした作品で特に有名なのは大人気且つ、名言で有名な『ジ○ジ○の奇妙な冒険』の最初期の冒頭シーンだろう。遊来はそれを思い返していた。

 

「おい、お前!」

 

「(ドキッ!)え?」

 

「ここは危険だぞ?テスカ族に見つかったら生贄にされる。こっちへ来い!」

 

「え、あ・・!?(ジャック・アトラス!?いや・・・その先祖か?)」

 

ジャック・アトラスに似た人物に腕を引っ張られたまま村らしき場所に案内されると、自分の身体も原住民のようになっている事に気づく。

 

「アトラ!帰ってきたか!ん?誰だ?そ奴は?」

 

「!!(ふ、不動遊星!?いや・・・先祖だよな?同じ事で何回驚くんだよ!俺!)」

 

「ユウか、どうやらコイツはテスカ族の祭りから逃げてきたようでな」

 

「そうか、よく頑張ったな。ところで、お前の名は?」

 

「あ・・ああ、俺は■■■だ(!名前が言えない!?)」

 

「歓迎する。コッチへ来てくれ」

 

村の中へ案内されるとそこには所狭しと石像が置かれている。その中に気になるものが目に入った。

 

「これは・・・赤き竜!?」

 

「ん?それは、この村の守り神ケツァルコアトル様を模した物だ。知らないのか?」

 

「あ、ああ・・・あまり外に出ていなかったからさ」

 

「そうか、テスカ族と星の民であるアトル族との争いも知らないか?」

 

「ゴメン・・・分からない」

 

ユウと呼ばれた青年はそれ以降、沈黙してしまった。行動で着いてこいと言っているのが分かり、後へ着いて行く。

 

ユウが向かった先にはまだ、死んで間もない女性の遺体が横たわっていた。胸元には抉られたような痕があり、心臓が無くなっていた。

 

「(この女の人・・・『ガーディアン・エアトス』に似てる?)」

 

「・・・・」

 

ユウは女性を弔うと、祈りを捧げる仕草をした。遊来も仕草を真似して鎮魂の祈りをする。

 

「ユウ・・もしかして、この人は?」

 

「ああ・・・テスカ族に捕まって生贄にされた。俺の親戚だ・・・」

 

「っ・・・!?」

 

弔いを終えた後に村へ戻ると、村の長老と言われている老齢の女性が男性4人、女性の巫女を1人指名すると予言を言葉にした。

 

「其方等5人は我が守護神の眷属を従え、戦う事になろう。その中でもアトラよ、お前は己の魂を荒ぶる炎の如く燃え上がらせ、紅蓮の悪魔をその命と引き換えに封ずる事になる」

 

長老の女性は遊来に視線を向けると手を差し出してきた。遊来はその手を握ると長老が遊来に予言を言い始める。

 

「肉体はこの仮初の場に、魂のみが異なる次元・未来から来た来訪者よ。其方はアトラの荒ぶる魂を継承する者なり。継承した後、二つの炎の竜を従え、銀河の眼を持つ闇の竜の記憶を蘇らせるであろう。近い刻、悲しき戦いが起こり、ひと時の別れが訪れる」

 

「別れ・・・」

 

「此処での役割は、アトラを見届ける事・・・心せよ」

 

 

 

 

しばらく生活していた後に皆既日食の日が訪れた。この時を好機とばかりに邪神である地縛神が目を覚まし、それを率いる紅蓮の悪魔が現れた。

 

赤き竜、ケツァルコアトルと共に五匹の竜達もシグナーとなった者達と共に戦うが、劣勢を強いられている。

 

「嘘・・・だろ?」

 

遊来も話でしか聞いていなかったが、ここまで壮絶で劣勢に追い込まれていた事実が信じられなかった。五匹の竜も全てが傷だらけで倒れており、シグナー達も1人を除いて虫の息だ。

 

「■■■!俺は今、此処で命を懸ける!」

 

「アトラ!?」

 

心臓が有る位置に炎が灯っている。それは次第に激しさを増していき、赤く燃え上がり始めた。

 

「見届けろ!そして、お前が継承し伝えていくのだ!この『境地』を!!うおおおおおおおおお!!」

 

燃え盛る魂をその手の中へと収めたアトラは、更に己を滾らせていく。その「境地」を目撃した遊来にもその炎が魂の底へと宿った。

 

「紅蓮の悪魔よ!地の底へと眠れ!!」

 

「アトラーーー!!」

 

己の心臓を抜き出し、それを紅蓮の悪魔へと投げつけ封印していく途中で赤き竜が炎を吐き遊来を飲み込むと同時に、その意識は光の中へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

「っはぁ!」

 

「おわっ!?びっくりした!遊来、目を覚ましたのか!」

 

「じゅ、十代?俺は一体?」

 

「三幻魔とのデュエルの後『琰魔竜レッド・デーモン』の意志に飲み込まれて、俺とデュエルしたんだよ。俺が勝って、そのまま意識を失ったんだ」

 

「そっか。俺はどの位、意識を失っていたんだ?」

 

「三時間くらいだな」

 

遊来は自分が意識を失っている間、アステカで過ごした時間がこちらでは僅か三時間の出来事だった事に内心驚く。

 

「それよりも、かなり魘されてたけど大丈夫なのか?」

 

「ああ、大丈夫だよ。悪夢に魘されてただけだからさ」

 

「そっか、それにしても腹減った~。メシ食いに行こうぜ!」

 

「そうだな」

 

身体を起こし、解す為の体操を行うと屈伸し動けることを確認すると食堂へと向かった。途中で鮎川先生から心配され、簡単な診察を行われ問題無しとの事でそのまま出て行った。

 

「うん、美味い!」

 

「良いのか?俺まで」

 

「良いから良いから」

 

今現在、トメさんとセイコさんの手料理をオシリスレッドの食堂で食事を取っている。白米をメインに豚汁、野菜炒めの大盛りだ。

 

相当お腹が空いていたのか、二人ともまるでドラ○ン○ールに出てくるサ○ヤ人レベルの食欲を発揮しており、ガツガツと食べ続けている。

 

「ふぅ・・・美味かったなぁ」

 

「ああ、本当だぜ!」

 

「じゃあ、俺は一旦自分の部屋に戻るよ」

 

「ああ、またな」

 

 

 

 

「はぁ、後でみんなに謝らないとなぁ・・・」

 

そんな事を呟きながら自分の寮であるオベリスクブルーの部屋の扉を開けた。

 

『主様』

 

『お帰りなさいませ』

 

『お待ちしておりましたわ』

 

「・・・・・」

 

『マスター、また連れ込みですか?』

 

「待て待て、俺さっきまで保健室に居ただろうが」

 

思わず扉を閉めてしまう遊来。ルインが睨みを聞かせてくるが、それをいなして自分の部屋は間違っていないと確認する、誰も居ないはずなのに間違いなく三人の女性がいた。もう一度改めて、部屋の扉を開ける遊来。

 

「・・・・」

 

『『『お帰りなさいませ、主様』』』

 

三人は和装をして「赤」「黄」「青」を主色にした着物を着ており、髪の色も三色に黒いメッシュが入っている。

 

「・・・オタクら、誰?」

 

『分かりませんか?私達は』

 

『貴方と遊城十代が戦った』

 

『三幻魔ですわ』

 

「はあああああああ!?」

 

遊来は素っ頓狂な声を上げてしまう。それもそうだろう、目の前にいる三人の女性が自らを三幻魔だと言っているのだから。

 

『信じられませんか?』

 

『では』

 

『証明しましょう』

 

三人はそれぞれ、三幻魔の特徴である翼や尾びれなどを出現させ、本来の姿となった。余りにも巨大な姿に遊来も納得せざるを得ず「分かった」としか返せなかった。

 

「じゃあ、質問タイムに入っていい?」

 

『『『どうぞ』』』

 

「じゃあ、最初の質問。封印されたはずなのになんで此処に居る?」

 

『それはですね』

 

『封印される間に分霊を作り出し、それに意識を乗せ主様が持っているカードへと』

 

『宿らせて頂きましたわ』

 

「!??」

 

遊来はまさかと思い、自分の机の上を確認する。そこには出しっぱなしにしてある『自分の世界』の三幻魔のカードがあった。

 

「だ、出しっぱなしにしてたー!」

 

『おかげさまで』

 

『宿るのは』

 

『簡単でしたわ』

 

「うう・・・じゃあ、次の質問。なんで俺の所に来た?」

 

『主様が』

 

『我らのカードを』

 

『お持ちになっていましたので』

 

それを聞いて遊来は膝から崩れ落ちた。自分と一緒に飛ばされてきたカードが原因となってしまったのだから。それも究極の精霊とされる三幻魔が宿ってしまった事が何とも言えない状態だ。

 

「じゃあ、此処からは疑問点を指摘する。何で和服、それも着物なんだ?」

 

『主様が』

 

『この国の正装を』

 

『大のお気に入りと聞きましたので』

 

「ぐはあああっ!?誰から聞いた!」

 

『『『あの子達です(わ)』』』

 

そう言って視線を向けた先に居たのは『妖怪少女』達だった。彼女達は全員オドオドしながら、遊来に謝ってきた。

 

『ごめんなさい・・・!』

 

『教えないと・・・って言われて・・・・怖くて』

 

「はぁ・・・怒る必要もないことだから良いよ」

 

そう、遊来は大の和物好きであり、食事、甘味、建物なども和物好きなのだ。アニメなどのキャラクターも純粋な和装、和装をモチーフにしたキャラクターが好きで夢中になってしまう。

 

「それと、隠れてないで出てきなよ。もう一人の精霊さん」

 

『あ、バレてましたか?』

 

『え?エアトス!?』

 

『お久しぶりです、ルイン』

 

「え!?『ガーディアン・エアトス』!?」

 

『はい』

 

気配を隠していた精霊は『ガーディアン・エアトス』だった。それもルインと顔見知りの様子で、遊来は驚きを隠しきれていない。

 

『ルインの力に引っ張られたんです。ルイン自身、私に用があるとも言ってませんでしたし』

 

『そうですね・・・』

 

「????」

 

ルインの話によるとエアトスはガーディアンの長らしく、他のガーディアンモンスター達はそれぞれが守りについているらしい。

 

その中でもエアトスは、天使族の統治する世界へ通ずる道を守護しているそうだ。守る事に特化している彼女が呼ばれた事には何かしら意味があるのだろう。

 

「とりあえず、問題は三幻魔だなぁ・・・」

 

『『『何故ですか?』』』

 

「三幻魔の速攻召喚のためのカード。特にサーチカードを俺、持ってないんだよ」

 

それを聞いた三幻魔の三人は固まってしまった。自分達が活躍できると考えていた為にショックを受けてしまったのだろう。

 

「だから、三幻魔デッキは組めないんだ。それ以上にこの世界で三幻魔を操ったら大変なことになる。ごめんよ」

 

『・・・不服ですが』

 

『仕方ありませんね』

 

『それでも、我ら・・・主殿をお守りしますわ』

 

三幻魔の三人は綺麗な和式の一礼で、遊来への礼儀を見せた。だが、遊来は自分が何故、ここまで守護されるのかを疑問に思っていた。

 

「(まさか・・・二年生時の驚異から俺を?それに悲しい戦いがあるって・・・それに此処に来てからずっと見てるあの夢・・・ああ!もう!!色々有り過ぎて混乱しそうだ!)」

 

『新たな主となる方、私もよろしくお願いします』

 

「っ!ああ、それとエアトスに聞きたいんだけど」

 

『なんでしょう?』

 

「貴女はあの人の精霊じゃないのか?」

 

遊来が言った「あの人」とはガーディアンデッキを使いこなす決闘者、ラフェールの事だ。彼が持つガーディアンのカード達はそのほとんどが精霊を宿している。もし、自分の所に来てしまっていたら?という疑念があって聞くことにしたのだ。

 

『いえ、あの「ガーディアン・エアトス」と私は同一でありながら別の個体なのです』

 

「まるでF○teのサーヴァントみたいだ」

 

『その認識に近いものですよ。同一のカードの精霊が一人だけとは限りませんが、伝説の決闘者が使ったカードは殆どが同一の精霊です。例えば「ブラック・マジシャン」は古代エジプトの神官の魂が宿っていますし、この世界のヒーローのカードもそうです』

 

「なるほどねぇ・・・」

 

エアトスの説明を聞いて納得してしまう遊来。精霊と一言で言っても個体別があるのを初めて聞いたからだ。

 

『主様』

 

『我らとも』

 

『お話してくださいませ』

 

和装した三幻魔も迫ってくる。傍から見ればスタイルが抜群で赤い髪、金髪、青い髪に黒のメッシュがそれぞれ入った大人の女性達だ。流石の遊来もドギマギしつつ赤面してしまう。

 

『マスタ~!?』

 

「仕方ないだろー!」

 

ルインの嫉妬を受けつつ、三幻魔の三人とガーディアン・エアトスを向かえ、次なる脅威へ備える事となった。

 

 

 

 

 

その深夜、誰もが寝静まった夜。遊来もベッドで休んでおり、『妖怪少女』『三幻魔』も全員眠っている。そんな中、オベリスクブルーの寮の屋上に2体の精霊がいる。

 

『来てくれたわね、「ガーディアン・エアトス」』

 

『ルイン?いえ・・・貴女は別の方ですね』

 

『流石は守護者の名を冠するだけあって、見抜かれちゃうわね』

 

『貴女は誰ですか?貴女が私を呼んだのでしょう』

 

ルインの隣に薄い姿で顔を仮面で覆い、白い鎧と青髪の女性の姿が現れる。

 

『私はメラグ・・・このルインに魂の半分を宿している存在。普段は出られないけど、貴方に頼みたい事があって出てきたわ』

 

『私に・・・頼みごと?』

 

『そう、予感だけど。このルインが消えてしまう予感がするの』

 

『!?』

 

エアトスはメラグの言葉に目を見開く、このルインが消えてしまうかもしれないと言われたからだ。それは消滅なのかと頭を過る。

 

『それは、ルインが消滅してしまうということですか?』

 

『そこまでは分からないわ。けれど、それがアルタイスにとって最大の苦しみになる事は間違いないわ』

 

『??アルタイス?』

 

『彼は光と闇を併せ持つ者、境地へのキッカケは掴めた。おそらくは次の戦いで境地を掴み、全てを思い出すわ』

 

メラグからの言葉を黙って聞き続ける。彼女の言葉を聞く度に分かる、彼女はアルタイスと呼ばれる人を好いているのだと。

 

『話が逸れたわね。もし、ルインの意志が居なくなってしまったら、その間、貴女が守護して欲しいの。彼女のマスターをね』

 

『・・・その為に私を?』

 

『守護に関しては守護者に任せるのが一番、私はメラグでありルインでもある。だから貴女を呼んだの』

 

『・・・良いでしょう。親友の頼みとして聞きます』

 

『ごめんなさいね・・・利用する形になってしまって』

 

『いいえ、貴女の意志はルインの意志でもありますから』

 

その後、二人は屋上から去った。この後に破滅の光との戦いが始まり、遊来が「境地」を手にするのはまだ先の話。




次回は隼人の一足早い卒業式になります。

三幻魔はあくまでも分霊なので本体は封印されてます。

女性化ウリア(CV植田佳奈)

女性化ハモン(CV石川由依)

女性化ラビエル(CV真田アサミ)という感じです。

着物姿に髪のメッシュは作者の趣味ですw。遊戯王で和風というと「不知火」や「魔妖」がありますが登場させるかアンケートにします。

※カードはあってもリンクは使いません

※前回の恋人アンケートはルインに決まりました。メラグの魂、強い。


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第28話

隼人の旅立ち


本日は通常授業日、各々が好きな絵を描くというもので、モノクロやカラーなどは問わず、描くものも自由だそうだ。

 

「こんな所かな」

 

「お?遊来、出来たのか?見せてくれよ!」

 

「ラフ画でしか描けないけどな」

 

遊来がラフ画で描いたのは『ギャラクシーサーペント』だ。星を描く事は出来ないが、ベタなどで宇宙空間の暗さを表現する事で、白紙部分が色であるように映っている。

 

「おお~!すっげえ・・・!これって、ドラゴンだよな!?」

 

「ああ、チューナーモンスターのな。十代のは?」

 

「俺のはコレさ!」

 

笑顔で見せられた絵は子供の絵本などにあるイラスト調で、HEROが描かれていた。

 

「へぇ、温かみのある絵だな」

 

「そっか?俺は遊来のようにカッコイイ絵が羨ましいけどな!」

 

「二人共、絵が描けるのが羨ましいッスよ」

 

それぞれが見せ合ってる中、隼人の席が盛り上がりを見せている。それが気になって、隼人が座っている席へ視線を向ける。

 

隼人のカンバスには風景画が描かれており、それを見た翔と十代が口を開く。

 

「うわぁ、すごーい!」

 

「綺麗な漬物石だな!」

 

「(ガクッ)十代、これは漬物石じゃなくてだな!」

 

「何言ってんッスか!オーストラリアの『エアーズロック』ッス!」

 

「そうそう(待てよ、エアーズロック・・・そうか!という事は今日が隼人のスカウトの日か!)」

 

「エアーズ・・・ロック?」

 

「世界の中心と言われているアボリジニの聖地なんだな」

 

「細かく言うと『エアーズロック』は、昔のイギリスの探検家が、探検行の途中で発見して、当時の南オーストラリア植民地首相の名前にちなんで名付けられたと言われてるんだ。因みに世界で二番目に大きな単一の岩石で『世界の中心』との意味合いで『地球のヘソ』とも言われてる」

 

「その通りなんだな、俺にとっても大切な場所なんだんだな」

 

「なるほどなぁ」

 

※現在『エアーズロック』は2019年10月25日の夜を以って、観光客向けの登山が恒久的に禁止されています。

 

『あー、シニョール前田・・・シニョール前田。校長室までちょこっと来るノーネ。それとシニョール遊来、シニョール前田の話の後に校長室まで来て欲しいノーネ。話が終わり次第、連絡するノーネ』

 

「?」

 

「隼人だけじゃなく遊来も?」

 

「隼人は進級の事かな?」

 

「遊来くんは分からないッスね」

 

 

 

クロノス教頭に呼ばれた隼人は校長室へと向かい、中へ入ると鮫島校長とクロノス教頭が居た。

 

「あの・・・お話って、進級の事ですか?」

 

不安そうな隼人に対し、鮫島校長は軽く笑った後、本題を口にする。

 

「ハハハ、前田君。今日呼んだのは、君の将来についての話です」

 

「はぁ・・・」

 

「コレを」

 

鮫島校長はそう言うと1枚のカードを手渡した。そのカードを見て隼人は驚きを顔に出す。

 

「このカードは!?」

 

「君のデザインしたカードが、インダストリアルイリュージョン社が主催するコンテストで優勝したのです」

 

「え、本当ですか!?」

 

隼人は自分のイラストがデュエルモンスターズを生み出している会社が主催するコンテストにおいて、優勝したと聞き信じられない様子だ。

 

「ホントデース、隼人ボーイ。グッドイマジネーション!ユーの作品は素晴らしい!ソーグッド、デスからデュエルモンスターズの正式カードとして採用する事にしマース!」

 

デュエルモンスターズの生みの親であるインダストリアル・イリュージョン社の会長であるペガサスからの言葉に、隼人は思わず笑みを浮かべる。

 

「アーンド、もし・・・デュエルアカデミアが推薦してくれるナーラ、正式にデュエルカードデザイナーとして我が社に迎えたいのデース!」

 

そこでペガサスからのメッセージはそこで終わってしまう。

 

「私は君の才能を認め、インダストリアル・イリュージョン社に推薦しようと思っています」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「鮫島校長、ちょっとお待ちーを!」

 

「何ですか?」

 

「シニョール前田は、留年しているノーネ!私はドロップアウトボーイを推薦する事は出来無いノーネ!」

 

「ま、まぁ・・・確かにクロノス先生の仰る事分かりますが・・・」

 

「ただし、明日の実技試験で私に勝てば、認めても良いノーネ!」

 

「実技試験・・・」

 

「しかーし!結果次第では即刻、退学処分も有るノーネ!!」

 

「前田君、厳しいようですが今回の実技試験、頑張ってみてください」

 

「一切手加減するつもりは無いノーネ」

 

「うええ・・・」

 

実技試験に関しての不安を胸に隼人は、校長室から出ると扉の前にいた十代達と共に戻っていった。

 

 

その10分後、今度は遊来が校長室に入ってくる。クロノス教頭、鮫島校長、今度はペガサスまでもがオンラインで参加している。

 

「あの・・・俺になんの御用でしょうか?」

 

「ええ、前田君の話は聞きましたか?」

 

「え?はい、なんでもインダストリアル・イリュージョン社のイラストコンテストで優勝したとか」

 

「はい、それと同時に貴方の意見が欲しいのです」

 

「え?」

 

「シニョール遊来、アナタはドロップアウトボーイだったシニョール前田を成長させたと聞いているノーネ」

 

「え?まぁ・・・焚きつける事はしましたけど」

 

『遊来ボーイ、ユーから見て隼人ボーイは学生から脱却出来ると思いマスか?隼人ボーイは是非とも欲しい人材なのデース』

 

「!」

 

ペガサスの言葉で遊来はハッとする。そうだ、隼人がもし推薦されれば彼は一足先に社会人になる。それは守られる立場からの卒業ということにもなるのだ。

 

「隼人は夢が出来たと言っていました。デュエルは好きでもプロになれる程の力はない。けど、デュエルに関わっていきたいって・・・カードデザイナーになりたいって宣言してましたよ」

 

「初耳ナノーネ・・・」

 

「まぁ、コレは彼のお父さんが来た時に言っていた事でしたから。俺は彼ならきっとインダストリアル・イリュージョン社へ入ってもやっていけると思いますよ。ですが・・・」

 

「なんでしょう?」

 

「まだ、踏ん切りがついていないみたいなんです。だから、もう一度、発破をかけてみます」

 

『遊来ボーイ、頼みマシタよ』

 

「はい!」

 

遊来は自分が使っている『ドラグニティ』が隼人に敗北している事は口にしなかった。それを口にしてしまえば、自分の鶴の一声だと思われてしまうし、何よりも隼人の為にならない。

 

折角のチャンスを他人の力ではなく、自分の力で勝ち取って欲しい。遊来はそう考えているのだ。

 

その夜、遊来は隼人を呼び出して話をする事にした。進級試験の前ではあるが1対1で話すべきだと思ったのだ。

 

「隼人」

 

「遊来、俺に話って何なんだな?」

 

「ああ、進級試験。勝つ気で挑むんだろう」

 

「もちろんなんだな・・・だけど、このデッキがクロノス先生に通用するか不安なんだな・・・」

 

そう言って隼人はデッキを取り出して、自分の手の中に収め見つめる。皆で組み上げた獣族の統一デッキ、下準備が必要にはなるが、それでも爆発力は十代のHEROにも引けを取らない。

 

「なんだ、そんな事か」

 

「むっ、そんな事とは何だ!?」

 

「あ、ごめんごめん。バカにした訳じゃないって、確かに生徒相手なら今のお前はオベリスクブルーの下位にも勝てる力があるさ。けど、教師相手に戦った事がないから不安なんだろう?」

 

「う、うん・・・その通りなんだんだな」

 

「じゃあ、思い返してみなよ。俺の『ドラグニティ』と戦った時をさ」

 

「遊来の『ドラグニティ』と戦った時・・・あっ!」

 

「な?」

 

遊来に言われて隼人は思い出したように声を上げた。忘れもしない、全力で戦ってくれた竜騎士達の姿を鮮明に思い出す。倒されても倒されても立ち上がってくる姿に隼人は感動を覚えた事もあった。

 

自分が絶対に勝利できる時に戸惑った時も、遊来は絶対に躊躇するなとも教えてくれた。そのおかげで『ドラグニティ』にリベンジを果たす事もできたのだ。

 

「ありがとう遊来、俺・・・やってやるんだな!」

 

「その粋だ!だけど、そのデッキの基本の動きを忘れたらダメだぞ?それと、俺からアドバイス、バトルフェイズの前のタイミングを忘れるなよ」

 

「バトルフェイズの前のタイミング・・・分かったんだな。俺、少しだけデッキを回したら寝る事にするんだな」

 

「おう、気張っていけよ。それと楽しむ事も忘れずに」

 

「ああ!それと、遊来にお願いがあるんだな」

 

「俺に?」

 

「うん」

 

 

 

そして翌朝、隼人はクロノス教頭の前に立っている。ギャラリーには隼人をよく知るメンバーが集まっている。

 

十代を始めとしたメンバー達で、もちろん遊来も来ており進級試験を見に来ているのだ。

 

「シニョール前田!これより進級試験デュエルを始めるノーネ!」

 

「すぅ・・・ふう・・・はい!」

 

「ぬ?先攻はシニョール前田に譲るノーネ!」

 

「よろしくお願いします!それと始める前に・・・」

 

「?何をするノーネ?」

 

隼人はデュエル前に深呼吸をして自分を落ち着かせた。デュエルディスクを構えるがライフポイントの表示部分が点滅している。

 

「お、おい!遊来、アレって!」

 

「ああ、隼人に頼まれて共有状態にしたのさ」

 

そう、遊来は何故かデュエルディスクを持ってきていた。だが、その疑問もすぐに解決する。それは試験が始まる一時間も前の事だ。

 

『遊来、俺にも変身機能を使わせて欲しいんだな』

 

『良いけど、何かお気に入りがあるのかい?』

 

『○鬼かビー○トをお願いしたいんだな』

 

『分かったよ』

 

そういった経緯があり、隼人の手には変身音叉『音角』が握られている。バチンと折り畳まれていた『音角』を展開するとその先端を自分の手の甲に軽く当てて、キィーンという高い音と共に先端から波紋のような物が出ている。隼人はそのまま、自分の額に『音角』を近づけていき、額から鬼の顔のような文様が出ていた。

 

「ぬぬ?」

 

「ハアアアア・・・・たぁ!」

 

紫色の炎に包まれたかと思えば、それを振り払うとそこには一人の鬼が居た。心優しくも未来への一歩を厳しくも進んでいく決意を固めた鬼が。

 

「な、何なノーネ!?(そういえば、シニョール遊来から聞いていた事があるノーネ、海馬コーポレーションで新しいシステムを開発し、その体験データを集めていると。シニョール前田の姿が変わったのはそのシステムを使っているからナノーネ?)」

 

クロノス教頭は遊来の方へと視線を向け、その視線に気付いた遊来は「ごめんなさい」のジェスチャーをしている。

 

「(仕方ないノーネ、デュエルに影響は無いようなので続行するノーネ)」

 

「「デュエル!!」」

 

前田隼人(仮面ラ○ダー○鬼):LP4000

 

クロノス教頭:LP4000

 

「俺のターン、ドロー!俺はモンスターをセット!更に手札から魔法カード『迷える仔羊』を発動するんだな!!」

 

「ぬぬっ!?」

 

場に2体の羊トークン(攻守0)が現れ、更にはセットモンスター。手札2枚でのモンスター3体の展開、これだけでも隼人自身が無駄に時間を過ごしていた訳ではないとクロノス教頭は感じ取れた。

 

「更にカードを2枚伏せて、ターンエンドなんだな」

 

「私のターン、ドロー!(シニョール前田の手札は残り2枚、それデーモ・・・2枚のカードを使って3体のモンスター展開は見事ナノーネ。おそらくは伏せカードのタイミングも見図られているノーネ)」

 

「魔法カード!『磁力の召喚円 LV2』を発動するノーネ!」

 

「なっ!?」

 

「おいおい、ホントに手加減無しか!?」

 

三沢の驚きと万丈目の呟きから、クロノス教頭が本気を出しているのが伺える。だが、デュエルアカデミア実技担当最高責任者として、私情を持ち込むことは出来無い。これがクロノス教頭の考えであり、ポリシーなのだ。

 

「このカードの効果により、手札の『古代の歯車』を特殊召喚!更に自分フィールド上に『古代の歯車』が表側表示で存在する時、手札からこのカードを攻撃表示で特殊召喚する事ができるノーネ!よって、もう1体の『古代の歯車』を特殊召喚するノーネ!更に2体の『古代の歯車』を生贄にして『古代の機械巨人』を通常召喚!」

 

「っ!!」

 

「(普通なら、トークンを攻撃するべきナノーネ・・・けれどもし、あのセットモンスターが反転召喚され、相手モンスターを破壊するモンスターだとしターラ・・・)」

 

此処でクロノス教頭が一瞬だけ、迷いを見せた。もしも、隼人がセットモンスターだけを出して居たならば迷わなかっただろう。だが、トークンが居るとは言えど場にはセットを含めた3体のモンスター、破壊による誘発があれば恐ろしい事になる。

 

「『古代の機械巨人』でセットモンスターを攻撃!アルティメット・パウンド!」

 

反転したモンスターは『デス・コアラ』だった。守備力は1800であり、『古代の機械巨人』の攻撃力よりも低い。

 

「『古代の機械巨人』は守備モンスターを攻撃した時、攻撃力が相手モンスターの守備力を超えていレーバ!」

 

「貫通ダメージを与えてくる!うあああっ!気張れ!俺の『デス・コアラ』!」

 

前田隼人(仮面ラ○ダー○鬼):LP4000→2800

 

『デス・コアラ』は『古代の機械巨人』の拳を止めながら、最後の足掻きでクロノス教頭へ爪の斬撃を繰り出した。

 

「『デス・コアラ』のリバース効果!相手の手札1枚につき、400ポイントダメージを与えるんだな!クロノス先生の手札は2枚!よって、800ポイントのダメージなんだな!!」

 

「だああ、ぐうう!」

 

クロノス教頭:LP4000→3200

 

「出た、隼人君の得意のコアラバーン!」

 

「ああ、僅かとはいえどダメージを与えたぜ!」

 

「ぬぬう、ターンエンド・・・ナノーネ」

 

「俺のターン、ドロー!俺は羊トークン2体を生贄に『ビッグ・コアラ』を通常召喚!更に魔法カード『一族の結束』を発動!」

 

「『一族の結束』ですと!?(シニョール前田のデッキにそんな魔法カードが!?)」

 

「『一族の結束』?あんな扱いの難しいカードを?」

 

明日香は隼人のデッキが進化しているのを知らない。知っているのはデッキを一緒に組み上げた十代、翔、遊来、そして同じオシリスレッドでテーブルデュエルを偶然見た万丈目だけだ。

 

「(扱いの難しい・・・か、種族を考えてなければ、そう見えるだろうさ。けど、今の隼人は一回りも二回りも違うぜ?)」

 

「『一族の結束』は自分の墓地の全てのモンスターの元々の種族が同じ場合、自分フィールドのその種族のモンスターの攻撃力は800アップする永続魔法なんだな!俺の墓地には獣族の『デス・コアラ』が1体だけ!よって同じ獣族の『ビッグ・コアラ』の攻撃力が800ポイントアップするんだな!」

 

『ビッグ・コアラ』攻撃力2700→3500

 

「デメリットのない状態で攻撃力3500!?」

 

「まさか、隼人のデッキは!?」

 

勘の良い三沢はデッキの特徴に気付いた様子だ。だが、隼人の目にはクロノス教頭と同じ位置に遊来の幻影が立っているのが見えていた。

 

落第していていようと、デュエルに対する面白さや厳しさを教えてくれ、自分が好きなカードを活かす事を主体にデッキを組むアドバイスをくれた友人。

 

更には『ドラグニティ』達と共に全力で戦ってくれたのを思い返す。友人間のデュエルだったとはいえ、あそこまで自分の中から熱い気持ちが出てきたのは初めての体験だった。

 

必ず勝てる時は躊躇するなとも言ってくれ、攻めの姿勢を改めて教えられた。

 

「俺はやるんだな!『ビッグ・コアラ』で『古代の機械巨人』を攻撃!ユーカリボム!」

 

『ビッグ・コアラ』の勢いを付けた体当たりに『古代の機械巨人』は耐え切れず破壊され、その余波がクロノス教頭へ襲いかかる。

 

「ぬああああ!?」

 

クロノス教頭:LP3200→2700

 

「よし、僅かだけど隼人がライフを逆転させた!油断するなよ!隼人!!」

 

遊来の言葉に十代と翔が頷き、隼人も力強く頷く。隼人の実力は自分が思っている以上に上がっている、それが自覚出来ていないだけで、自分のデッキに対するプレイングは身体が動くように自然と身についている。

 

「ぬぅ・・・!(まさか、此処までとは思わなかったノーネ!ドロップアウトボーイだったアナタが、確実な成長をしているのを認めなくてはならないノーネ!)」

 

クロノス教頭も生徒の成長は内心嬉しいものだと感じている。目の前に居るのは一年前に落第した生徒ではなく、自分の夢と道を見つけだした生徒なのだと。

 

「俺はこのまま、ターンエンドなんだな」

 

「私のターン、ドロー!ナノーネ。私は速攻魔法!『サイクロン』を発動!」

 

だが、隼人の勢いを止めるカードをクロノス教頭が引いてしまい、これには隼人も驚く。

 

「えっ!?」

 

「このカードの効力により、『一族の結束』を破壊するノーネ!」

 

突風によって『一族の結束』が破壊されてしまい、『ビッグ・コアラ』の攻撃力が元に戻ってしまった。

 

『ビッグ・コアラ』攻撃力3500→2700

 

「ううっ!?(いや、これは当然の事なんだな!冷静に場面を見つめ直すんだな)」

 

「更に魔法カード『おろかな埋葬』を発動!『トロイホース』を墓地へ『早すぎた埋葬』を発動するノーネ!ライフを800ポイント払い、墓地の『トロイホース』を特殊召喚!更に『トロイホース』を生贄に、この時『トロイホース』は地属性モンスターを生け贄召喚する時、1体で2体分とする事が出来るノーネ!これにより手札の『古代の機械巨人』を通常召喚するノーネ!」

 

「なぁっ!?」

 

クロノス教頭:LP2700→1900

 

「『古代の機械巨人』で『ビッグ・コアラ』を攻撃!アルティメット・パウンド!」

 

前田隼人:LP2800→2500

 

「うああ!まだなんだな!これで、必要な条件が揃ったんだな!俺のフィールド上の獣族モンスターが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地に存在する獣族モンスター2体をゲームから除外する事で、このカードを手札からこのカードを特殊召喚するんだな!現れろ!『森の狩人イエロー・バブーン』!!」

 

「な、なんデスート!?」

 

『森の狩人イエロー・バブーン』効果/星7/地属性/獣族/攻撃力2600/守備力1800

 

「すごい!上級モンスターが途切れない!」

 

「ああ、けど・・・これで隼人の墓地には獣族のモンスターが居なくなっちまった。『一族の結束』は使いにくい状況だぜ」

 

「カードを1枚セットしてターンエンド、ナノーネ」

 

「俺のターン、ドロー!俺は伏せておいた二枚のカードのうちの一枚である速攻魔法を使うんだな!『異次元からの埋葬』!!このカードは除外されている自分及び相手のモンスターの中から合計3体まで対象として発動でき、そのモンスターを墓地に戻す事が出来るんだな!俺は『ビッグ・コアラ』と『デス・コアラ』の二枚を選択して墓地へ戻すんだな!」

 

「上手い!これでまた『一族の結束』を引き込んでいれば!」

 

「(今の俺の手札に『一族の結束』は無いんだな・・・けど、手札には『強欲な壷』がある・・・!これに賭けるんだな!今、俺が変身しているこの姿へ変わる本来のあの人のように!)俺は『強欲な壷』を発動!カードを二枚ドロー!更に『天使の施し』を発動!さらにカードを三枚引いて、二枚を捨てる!」

 

隼人は変身している状態ではあるが、目の部分だけを解除していた。それにより、クロノス教頭は隼人の目を見て笑みを見せている。

 

「シニョール前田、良い目をしているノーネ!」

 

「(!引いた!)二枚目の『一族の結束』を発動するんだな!」

 

「此処で二枚目を引き込んだのか!?」

 

「すっげえぜ!隼人!」

 

「『森の狩人イエロー・バブーン』の攻撃力がアップ!更に俺は手札から『エアーズロック・サンライズ』を発動!このカードは1ターンに1枚しか発動できない。自分の墓地の獣族モンスター1体を対象として発動でき、その獣族モンスターを特殊召喚し、相手フィールドに表側表示モンスターが存在する場合、それらのモンスターの攻撃力はターン終了時まで、自分の墓地の獣族・鳥獣族・植物族モンスターの数×200ダウンさせるんだな!」

 

『森の狩人イエロー・バブーン』攻撃力2600→3400

 

「スプレンティード!素晴らしいノーネ!」

 

「あの朝の太陽のように、俺は自分の夢を諦めない!『ビッグ・コアラ』を墓地から蘇生させ、更に俺の墓地には獣族『デス・コアラ』とコストで捨てた『コアラッコ』の2体!よって、400ポイント攻撃力をダウンさせるんだな!」

 

『古代の機械巨人』攻撃力3000→2600

 

「更に魔法カード『融合』を発動!手札の『デス・カンガルー』と場の『ビッグ・コアラ』を融合して『マスター・オブ・OZ』を融合召喚!『一族の結束』により攻撃力をアップ!」

 

『マスター・オブ・OZ』攻撃力4200→5000

 

「攻撃力5000と3400!!」

 

「すごい・・・!隼人のデッキは種族統一デッキになり、ここまで進化していたのか」

 

「あそこまでデッキを変えたの貴方の仕業ね?」

 

「さぁ?俺はアドバイスしただけだもの」

 

明日香からの追求をサラリと避ける遊来。明日香は当然嘘だと見抜いている、何故なら自分のデッキもガチガチになる魔改造の提案を出したのが遊来だったからだ。だが、デュエルの神は隼人に試練を与え続ける。

 

「罠カード『威嚇する咆哮』を発動!このターンの攻撃宣言は出来無いノーネ!」

 

「うっ!ターンエンド」

 

「防御が完璧だな、だが・・・どう対処してくる?」

 

「私のターン、ドロー!ナノーネ。私も『強欲な壷』と『天使の施し』を発動するノーネ!更に『死者への手向け』を発動!手札を1枚捨てる事で『マスター・オブ・OZ』を破壊するノーネ!」

 

「うわっ!?『マスター・オブ・OZ』が!」

 

「更に魔法カード『攻撃封じ』を発動!『森の狩人イエロー・バブーン』を守備表示に変更するノーネ!」

 

「そんな・・!」

 

「『古代の機械巨人』で守備表示の『森の狩人イエロー・バブーン』へ攻撃!!アルティメット・パウンド!」

 

前田隼人(仮面ラ○ダー○鬼):LP2800→2100

 

「うあああ!うう・・・俺のモンスターが全滅!」

 

「(これは重いぞ、勝てる布陣を完璧に崩されたんだ。持ち直す事ができるか?布陣だけじゃなく、自分自身をもだ)」

 

隼人は超強力な自分の布陣を崩され、僅かとはいえライフポイントも削られてしまった。此処から持ち直すのはプロデュエリストでも難しいだろう。それ程までに逆転が難しい盤面をひっくり返されたのだ。

 

「っ・・・いや、俺は最後まで抗うんだな!(『一族の結束』もまだある!負けた訳じゃないんだな!)」

 

「むむっ!?(あの目は、まだ諦めていないノーネ!)ターンエンド、ナノーネ」

 

「俺のターン、ドロー!(盤面と手札をよく見ろ・・・!どうすれば勝てるかを見極めるんだな)」

 

「俺は『吸血コアラ』を召喚!『一族の結束』の効果で攻撃力アップ!」

 

『吸血コアラ』攻撃力1800→2600

 

「ダメだ、『古代の機械巨人』の攻撃力は3000に戻ってる!いくらパワーアップしても無理だよ・・!」

 

翔の言葉は最もだろう。だが、遊来と十代は笑みを浮かべたままデュエルの様子を見ている。たった一箇所、逆転出来る部分を隼人自身が見つけ出し、そこを突破できれば勝つ事が出来る。

 

「(伏せカードは罠カード、手札をよく見るんだな・・・きっと、きっと逆転が・・・!そうか・・!コレを使えば逆転出来るんだな!!)」

 

「んん!?」

 

「俺はメインフェイズに伏せカード『幻獣の角』を発動!『吸血コアラ』の攻撃力を更に800ポイントアップさせるんだな!」

 

『吸血コアラ』2600→3400

 

「『古代の機械巨人』の攻撃力を上回った!」

 

「だが『古代の機械巨人』を倒してもクロノス教頭のライフは残ってしまう!」

 

「(いや・・・逆転の手が手札にあるんだろ?隼人)」

 

「更に俺は手札から魔法カード『野生開放』を発動!『吸血コアラ』の攻撃力を更に守備力分アップ!」

 

『吸血コアラ』3400→5200

 

「こ、攻撃力5200!?」

 

「行けえ!『吸血コアラ』!『古代の機械巨人』に攻撃!」

 

それは隼人が遊来からのアドバイスを受けた時、初めてもらったカードだった。自分だけじゃない、友がくれたカードが逆転の一手となったのだ。

 

「ぬわああ!!」

 

クロノス教頭:LP1900→0

 

この瞬間、全てのソリッドヴィジョンが消え、決着がついたのだ。隼人は以前のように信じられない様子で呆然としている。

 

「お、俺・・・勝ったの・・・か?」

 

ギャラリーに居るメンバー達は立ち上がって拍手している。勝利もそうだが、何よりも最後まで勝利を目指して戦い抜いた事に対しての賞賛だ。

 

「シニョール前田」

 

「は、はい」

 

「見事なデュエルだったノーネ!戦術、デュエルに対する姿勢、最後まで向かってくる心意気、どれも素晴らしかったノーネ!」

 

「う・・・ううう」

 

「勝者が涙を見せるものじゃないノーネ、進級試験はアナタの勝利。デュエルアカデミア実技担当最高責任者として、アナタをインダストリアル・イリュージョン社に推薦するノーネ!」

 

「クロノス先生・・!」

 

「シニョール前田、アナタは私の誇りナノーネ!」

 

クロノス教頭と隼人が握手を交わし、互の健闘を湛え合った。

 

 

 

 

そして、進級試験の翌日。隼人はインダストリアル・イリュージョン社からの迎えの飛行機に乗り込もうとしていた。

 

「おーい、隼人!」

 

「遊来!?」

 

「はぁはぁ・・・良かった、ギリギリ間に合って!」

 

「どうしたんだな?」

 

「コレを渡しておこうと思ってさ!」

 

「これは・・・?写真と『ドラグニティ』のカード!?」

 

遊来が手渡したのは皆で取ったデジタル写真と『ドラグニティ・ブラックスピア』のカードだった。

 

「そうさ、再会の証にな。俺以外の皆とは挨拶を済ませてあるんだろ?」

 

「ああ、もう済ませてあるんだな。遊来・・・」

 

「ん?」

 

「俺がこうして旅立てるようになったのは、遊来のおかげなんだな。ありがとう」

 

「何言ってるんだよ。それは隼人自身が掴み取ったんだろ?それに離れてても俺達は友達だ」

 

「ハハハ・・・それ、十代にも言われたんだな」

 

「そろそろ、時間じゃないのかい?」

 

「うん、じゃあ・・・行くんだな」

 

「気張っていけよ!」

 

「おう!」

 

軽く拳をぶつけ合うと隼人は飛行機に乗り込み、旅立っていった。遊来は仮面ラ○ダー○鬼の主人公が行う人指し指と中指を伸ばして敬礼のようなポーズを行い「シュッ」という仕草をして見送った。別の場所でも隼人の乗った飛行機を十代達も見送っていた。

 

「気張れよ、隼人」

 

飛行機の中、遠ざかっていくデュエルアカデミアを窓から見つめながら、隼人は思いを馳せた。

 

「翔、十代、遊来、みんな・・・俺、気張るよ!」

 

涙が溢れそうになるのを堪え、席に戻り遊来から手渡された『ドラグニティ・ブラックスピア』のカードを見つめる。

 

「きっとまた、会える。そんな気がするんだな」

 

飛行機は青空を飛び続け、旅立っていく。別れは新たな始まり、それが隼人自身が歩き出す事だ。新たな決意を胸に隼人はアカデミアから旅立っていった。




次回は卒業模範デュエル回となりますが、遊来が再び悪者役をやります。

しかしデュエルの棋譜を考えられる方々はすごいです、脱帽します。

遊戯王小説のデュエル場面を見ていてつくづく、そう考えています。

※魔妖に関してですが、リンク召喚のカードである雪女をどうするか、ご意見を頂けると嬉しいです。

ですが、リンク召喚は使いません。


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第29話

最高学年卒業

カイザーへ心理フェイズの洗礼をする為、悪人かつ社長状態に。

遊来が秘密の一部をカイザーに話す。



日数が過ぎ、学校の最大行事の一つ卒業式の日が来たのだ。三年生は大学やプロリーグ入りなど、それぞれが目指す場所へ向けての準備をしているようにも見える。

 

そんな中、デュエルアカデミア最大の卒業イベント、卒業模範デュエルが行われた。生徒達の間では竜騎士こと遊来が相手だろうと噂していたが、カイザーが指名したのは遊城十代であった。

 

 

遊来が選ばれなかったのは在学中に何度もデュエルしており、シンクロ召喚を抜いたデッキでも対戦しており、それ以前にカイザー自身が自分の中で遊来以外に注目している相手が十代だったのだ。

 

そして、その卒業模範デュエルは『決闘融合-バトル・フュージョン』を二人が発動し、『サイバー・エンド・ドラゴン』が『シャイニングフレア・ウイングマン』の攻撃力を上回りカイザーの勝利と思われている時まで遡る。

 

「やっぱ、カイザーは強ええ・・・パーフェクトだぜ!」

 

「それは違うぞ、遊城十代」

 

「え?」

 

「俺はパーフェクトではない、相手を倒せる戦術を効率的に選んでいるに過ぎない」

 

「カイザー・・・?」

 

「俺自身もまだまだ発展途上、それを気付かせてくれた奴がいる」

 

「遊来・・・」

 

「そうだ、俺もお前も可能性を秘めている。更なる強さへ目指せる可能性を!パーフェクトなど幻想に過ぎない!その幻想を打ち破れ!」

 

「ああ!サンキュー、カイザー!卒業生の言葉、しっかりと受け取ったぜ!在校生代表として、俺から卒業の記念だ!受け取れ、カイザー!!罠、発動!『決戦融合-ファイナル・フュージョン』!!」

 

「!?そのカードは俺が遊来とのデュエルで使った、負けず嫌いめ!」

 

「効果は知っているよな?このカードは自分フィールドの融合モンスターが相手フィールドの融合モンスターと戦闘を行うバトルステップに、その融合モンスター2体を対象として発動する事が出来る。その攻撃を無効にし、お互いのプレイヤーはその融合モンスター2体の攻撃力の合計分のダメージを受ける。行くぜ、カイザー!」

 

「来い!!」

 

『サイバー・エンド・ドラゴン』と『シャイニング・フレア・ウイングマン』が中心でお互いを攻撃した瞬間爆発と共に強い光に包まれ、二人はその場で倒れている。結果は引き分けになったが、デュエルを見ていた観客席の生徒達や教員が立ち上がり、拍手をし始めた。

 

「大丈夫か?」

 

「ああ、カイザーこそ大丈夫かよ?」

 

「デュエルは良い」

 

「ああ、アンタとのデュエル最高だったぜ!!」

 

「後は任せたぞ!在校生!!」

 

「おう、任せろ!卒業生!!卒業おめでとう!カイザー!!」

 

「ああ!」

 

お互いに健闘を湛え合う事と在校生へ卒業生から、バトンを渡された事を意味するハイタッチをすると二人は寝転び笑いあった。それはお互いに全力を出し合った事による喜びから来るものだ。

 

「「アハハハハ!」」

 

「羨ましいな、全く・・・(さて、準備するか)」

 

誰もが十代とカイザーの熱戦に目を奪われている中、遊来はコッソリとデュエル場から出ていき、ある準備を始めている。

 

 

 

 

「サイバー・ダークは止めておこう・・・うーん、デッキ破壊と許可をもらったのと・・・どっちが良いかな?」

 

そう、遊来は模範デュエルが始まる前にプライベートメールをカイザーから受け取っていた。

 

『模範デュエルが終わった後、午後18:00に灯台へ来て欲しい。そこで、デュエルをしたい』

 

無論、遊来はOKを出した。だが『ドラグニティ』は完全に対策されており、通用しない。『ルイン』も最近は機嫌が悪く上手く回らない。『レッドデーモン』を主軸にしたシンクロデッキは使うのを拒まれており、使う事ができない。

 

そこで二つのデッキが候補に挙がったのだ。一つはデッキ破壊を可能とし、ビートダウンも可能なデッキ。もう一つは扱う許可を貰った『ブルーアイズ』デッキだ。

 

「・・・・」

 

遊来は迷いに迷い、デッキをへと手を伸ばす。そこへ誰かの手が重ねられたような感覚を味わった。それは男性ではなく女性の手の柔らかさだ。

 

「え?」

 

それはほんの一瞬だった。青みがかった銀髪に白い肌の女性が一瞬だけ頷いて消えたのだ。それは間違いなく『青眼の白龍』を宿していた女性、キサラだった。

 

「キサラさん・・・本当に良いんですか?貴女の魂の欠片を使う事を。あの人以外・・・許さないと思ってたのに」

 

遊来は瀬人とキサラの因縁を『前の世界』で知っていた。だからこそ、自分の世界から持ち込んだ『ブルーアイズ』を使わないと決めていた。だが、此処でその封印を破ろうとしている。

 

「貴女は優しいから・・・構わないというでしょう。けど」

 

迷っている中、3枚のカードが光を帯び始めたデッキを確認にすると『青き眼の乙女』『青き眼の賢士』『青眼の亜白龍』のカードが光を帯びている。

 

「『青き眼の乙女』『青き眼の賢士』それに『青眼の亜白龍』のカードが・・・なんで?」

 

『それは迷わず使えって事じゃないのかい?』

 

「レヴァティン?」

 

『「青き眼の乙女」はさっきの女の人、「賢士」はきっと社長さんだろう。「亜種の白龍」はこの世界の「白龍」が姿を変えて使えって言ってるのかもな』

 

「・・・・よし、使うか!」

 

遊来は『ブルーアイズ』デッキを広げて自分なりに組み直し始める。そのままでは瀬人の使うデッキ(遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS)のコピーとなってしまう。

 

それではバレた時に「俺のコピーを使うなど貴様には過ぎたものだ!」と怒号を貰うのは当たり前の出来事だ。

 

そう思いながら組み直そうとすると同時に一枚のカードを手に取る。

 

「銀河眼・・・」

 

そう、銀河眼。何度も何度も見る夢の中に出てくるカードだ。その能力の強力さは知っている。今はまだ封印されているが、エクシーズ召喚で現れる『もう一体の銀河眼』も居る。

 

「俺のデッキは組み合わせタイプにしよう。それで差別化出来る」

 

遊来はチラリと、エクシーズモンスターが封印されているデッキケースに視線を送る。そのデッキケースは人間から見れば、なんの変哲もないデッキケースだが『ルイン』と『エアトス』が厳重に行った封印が施されている。

 

これが解放される時は遊来が大きな絶望に堕ちた時だろう、彼にとってエクシーズは『闇』の象徴でもあるのだ。

 

「カイザー、貴方だけには俺の秘密の一部を教えます・・・」

 

デッキを整え、使うことを決めている時に収めるデッキケースへ『ブルーアイズ』デッキを収める準備する。約束の時間になるまで何度も組み直しながら。

 

 

 

 

「来たか」

 

「ええ、あの時以来ですね・・・」

 

「やり残しを残しておく訳にはいかないからな」

 

「・・・行きます」

 

「「デュエル!!」」

 

龍谷遊来:LP4000

 

丸藤亮:LP4000

 

「先攻は俺ですか・・・ドロー!」

 

[現在の手札6枚]

 

[ドローカード[ドラゴン・目覚めの旋律]

 

※青き眼の乙女

※伝説の白石

※銀龍の轟咆

※星雲龍ネビュラ

※ガード・ブロック

※ドラゴン・目覚めの旋律

 

「俺はモンスターを1体セット、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

「(基本通りの先攻の動きだな?逆にそれが不気味だが)俺のターン、ドロー!俺は手札の『プロト・サイバー・ドラゴン』を召喚!『サイバー・ドラゴン』と手札『融合』!現れろ!『サイバー・ツイン・ドラゴン』!!」

 

「通常融合?」

 

「俺が毎回『パワー・ボンド』を手札に引き込んでいると思うのか?」

 

「思います」

 

「・・・・」

 

遊来の断言に亮は意外そうな顔をしている。だが、遊来は容赦なく言葉を紡いだ。

 

「テーブルデュエルで毎回、攻撃力5600の『サイバー・ツイン・ドラゴン』で後攻ワンキルしてきたの、覚えてますから」

 

「む・・・」

 

「ですが、それはあくまで学園での事・・・カイザー・・・貴方に俺から試練をプレゼントします」

 

「試練だと?」

 

「ええ、まだカイザーのターンですよ」

 

「俺は『サイバー・ツイン・ドラゴン』でセットモンスターを攻撃!エターナル・ツイン・バースト!」

 

セットされたモンスターの正体は巨大な白い石だった。『サイバー・ツイン・ドラゴン』は貫通効果を持っておらず、その為、通常破壊しかできない。瞬間、遊来が口を開く。

 

「『伝説の白石』の効果発動。このカードが墓地へ送られた時、デッキから『■■の■■』を1枚手札に加える」

 

「(!?上手く聞き取れず、カードも夜の暗さで上手く見えなかったが、強力なカードを手札に加えたか)『サイバー・ツイン・ドラゴン』は二回攻撃が可能!エターナル・ツイン・バースト!第二打!!」

 

「伏せカード、発動!『ガード・ブロック』!相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、自分のデッキからカードを1枚ドローする!カードを1枚ドロー!さらに戦闘ダメージはゼロだ」

 

「流石に防いだか、更にカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

後輩からの試練という言葉を聞いて亮は警戒する。相手は自分と同等・・・否、それ以上の実力を持ち『竜騎士』の異名を持つに至った決闘者。シンクロ召喚のテスターであり、あらゆる召喚を使ってくることもあり得るからだ。

 

「俺のターン、ドロー」

 

[ドローカード [太古の白石]

 

[現在の手札6枚]

 

※青き眼の乙女

※銀龍の轟咆

※星雲龍ネビュラ

※ドラゴン・目覚めの旋律

※青眼の白龍

※太古の白石

 

「俺は手札から魔法カード『ドラゴン・目覚めの旋律』を発動」

 

「『ドラゴン・目覚めの旋律』だと!?あのカードは手札1枚をコストに攻撃力3000以上、守備力2500以下のドラゴン族を2枚までデッキから手札に加えるカード!龍谷のデッキにはそれがあるのか!」

 

「・・・・カイザー、此処からは学生じゃなく、プロレベルの戦いを見せますよ」

 

「!?」

 

「手札を1枚『太古の白石』を捨てて、俺がデッキから手札に加えるのはこの2枚だ!」

 

遊来は『ドラゴン・目覚めの旋律』によって手札に加えたカードをしっかりと見える位置にかざした。そのカードを見て亮は戦慄と同時に驚愕した。

 

「ブ・・・『青眼の白龍』!!バカな!?更には『青眼の亜白龍』だと!?」

 

1枚は幻と言われ、アカデミアのオーナーであり、海馬コーポレーション社長である海馬瀬人だけが所持しているとされている『青眼の白龍』。さらにもう1枚は自分の知らない『青眼』の名を持つカードだった。

 

「この程度で動揺してどうするんだ?」

 

「何!?」

 

「動揺や熱くなりすぎれば勝てる勝負も勝てないぜ?この言葉の粗さが俺の試練だよ、先輩」

 

遊来の態度が急に変わり、まるで嘲るようで相手を貶めてくる。先程までとは違い、徹底的にだ。

 

「・・・・っ」

 

「俺は手札の『青眼の白龍』を相手へ見せる事で『青眼の亜白龍』を特殊召喚!!」

 

「何!?」

 

『ドラゴン・目覚めの旋律』によって手札へ加えられた『青眼の白龍』を晒す事で特殊召喚されてきた『青眼の亜白龍』。特定のカードを公開しなければならないデメリットを既に公開した物を見せる事で、回避している。

 

「更に手札の『星雲龍ネビュラ』の効果発動!このカードと手札のドラゴン族・レベル8モンスター1体を相手に見せて発動できる!俺はこのカードを公開する」

 

「二枚目の『青眼の白龍』!?バカな!」

 

「『伝説の白石』の効果で1枚目を手札に加えたんですよ~?最も見えない位置だったようですけどね~?」

 

「ぐっ・・!」

 

「『星雲龍ネビュラ』と公開した『青眼の白龍』をそれぞれ守備表示で特殊召喚!ただし、この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、この効果の発動後、ターン終了時まで俺は光・闇属性のドラゴン族モンスターしか召喚・特殊召喚できない!さて、カイザー先輩?『サイバー・ツイン・ドラゴン』を出してきたなら、こちらも同じタイプのモンスターを出さないと、返戻になりませんね?」

 

「同じタイプだと?」

 

「はっ・・・!俺は場の2体の『青眼の白龍』を墓地へ送り」

 

「!?バカな、2体の『青眼の白龍』は場に居ないはず!?まさか!」

 

意味がわからない、わざわざ召喚してきた『青眼の白龍』を墓地へ送るなどと、それと同時に2枚目の『青眼の白龍』が居ると言うのが不思議だ。だが、その疑問はすぐに氷解した。確かに居るのだフィールドに守備表示ではない『青眼の白龍』が。

 

「気づいたか『青眼の亜白龍』はフィールド上では『青眼の白龍』として扱う!2体を墓地へ送り、現れろ!『青眼の双爆裂龍』!!」

 

『青眼の双爆裂龍』融合・効果/星10/光属性/ドラゴン族/攻撃力3000/守備力2500

 

『青眼の白龍』+『青眼の白龍』

 

このカードは融合召喚及び以下の方法でのみ特殊召喚できる。

 

●自分のモンスターゾーンの上記カードを墓地へ送った場合にEXデッキから特殊召喚できる(「融合」は必要としない)

 

(1):このカードは戦闘では破壊されない。

 

(2):このカードは1度のバトルフェイズ中に2回までモンスターに攻撃できる。

 

(3):このカードの攻撃で相手モンスターが破壊されなかったダメージステップ終了時に発動できる。その相手モンスターを除外する。

 

それは『サイバー・ツイン・ドラゴン』と同じように双頭を持った『青眼の白龍』の姿だった。攻撃力と守備力は単体の『青眼の白龍』と変わらないが特殊効果を併せ持っている。

 

「っ!?」

 

「『青眼の双爆裂龍』の攻撃!!滅びのツインバースト・ストリーム!!『サイバー・ツイン・ドラゴン』!粉砕!」

 

「うああああ!?」

 

『サイバー・ツイン・ドラゴン』が双頭を持つ『青眼の双爆裂龍』の攻撃によって倒され、その余波が亮へ襲いかかる。

 

丸藤亮:LP4000→3800

 

「『青眼の双爆裂龍』の追撃!滅びのツイン!」

 

「二回攻撃だと!?」

 

「なーんてね?『青眼の双爆裂龍』はモンスターだけにしか二回攻撃はできないんだよ。カードを1枚伏せてメインフェイズ2からエンドフェイズへ、エンドフェイズ時に墓地にある『太古の白石』の効果発動!このカードが墓地へ送られたターンのエンドフェイズに発動できる。デッキから「ブルーアイズ」モンスター1体を特殊召喚する!俺は『白き霊龍』をデッキから特殊召喚!」

 

「っ・・・!?デッキから高レベルモンスターを特殊召喚しただと!」

 

「このカード名はルール上「ブルーアイズ」カードとしても扱うから何の問題もありませーん」

 

『白き霊龍』効果/星8/光属性/ドラゴン族/攻撃力2500/守備力2000

 

このカード名はルール上「ブルーアイズ」カードとしても扱う。

 

(1):このカードは手札・墓地に存在する限り、通常モンスターとして扱う。

 

(2):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを除外する。

 

(3):相手フィールドにモンスターが存在する場合、このカードをリリースして発動できる。手札から「青眼の白龍」1体を特殊召喚する。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

「更に『白き霊龍』の効果発動!このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを除外する!!」

 

「何っ!?」

 

『白き霊龍』が亮の伏せカードへ小さな光の球を口から放ち、亮の場にあった伏せカードがゲームから除外されてしまった。

 

「伏せカードを一枚、除外だと!?(リビングデッドの呼び声が・・・!)」

 

「俺はこれでターンエンド、フフフ・・・」

 

「くっ、俺のターン!ドロー!」

 

今の遊来はからは生真面目さが抜け落ちており、臨時教員を倒したあの時と雰囲気が酷似している。更に亮は自分の身体の様子に気づく。

 

「(震えている?俺が?)」

 

「怖くなったのかい?負けるのが」

 

「!」

 

「そうだよな?リスペクトを謳っているサイバー流継承者が負ける訳にはいかないものなぁ?」

 

「お前・・・!」

 

「もっと本心からデュエルしなよ?勝ち負けは関係ない?相手をリスペクト?そんなもんかなぐり捨ててさ!」

 

「何を・・・言っている!」

 

「隠している本心をこのデュエルで出せって言ってんだよ!勝ち負けは関係ない?そんなもん、幼稚園生までしか通用しねえよ!」

 

「!サイバー流を愚弄するのか!お前は!!」

 

「はっ!怒ったかい?だが事実だろう?勝ち負けは関係ない、相手をリスペクトする事が出来れば問題ない・・!ちゃんちゃらおかしくてヘソで茶が沸かせるわ!!」

 

「貴様・・・!」

 

「そんな考えでプロリーグに入ったら、アンタ・・・一発で終わるぞ?」

 

「!?」

 

「プロの世界はどんなジャンルでも勝利こそが全て!!勝って勝って、勝ち続けなければ転がり落ちる世界!上位ならば例外で負けても取り戻せる。だが、上位にすら入れないプロは廃れるだけ!!」

 

年上に対して敬語を使わず話す遊来の本心は、まだ学生の状態である亮に甘さを断ち切れというものだ。だが、普通に説得した所で聞く耳を持つ相手ではない。

 

だからこそ、圧倒的な差を見せる他はないのだ。今の遊来は自分の中で押し殺していた『前の世界』での戦略を惜しみなく使っている。

 

『前の世界』のデュエルは、この世界においてデュエルでは無いと言われても文句が言えないものばかりだ。パーツさえ揃えば1ターンで逆転も可能だし、攻撃できない先攻であってもビートダウン以外の方法で勝利をもぎ取ってしまう。ビートダウンにしても攻撃力は3000以上は当たり前且つワンショット狙い。

 

無論『ドラグニティ』『ルイン』『シンクロレッドデーモン』などのデッキもワンターンキルは可能だ。だが遊来はオベリスクブルーのトラブル以降、それらの戦略を封印していた。十代などは気にする事はないだろうが、他のメンバーから指摘されるのが怖かったからだ。

 

だが、今は違う。自分自身を偽ったままの目の前の相手を完膚なきまでに叩きのめす。そうしなければ絶対に強固な殻を破る事は出来無いと確信を持てているから。

 

「さぁ、どうした?そちらのターンはまだ続いてるぞ?」

 

「っ!俺は『サイバー・ヴァリー』を召喚!ターン終了だ」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

[ドローカード 『カオス・フォーム』]

 

[現在の手札2枚]

 

※青き眼の乙女

※カオス・フォーム

 

「『白き霊龍』で『サイバー・ヴァリー』を攻撃!」

 

「『サイバー・ヴァリー』の特殊効果!このカードが攻撃対象に選択された時、このカードを除外して発動できる。自分はデッキから1枚ドローし、その後バトルフェイズを終了する!」

 

『サイバー・ヴァリー』が光の中へ消えて行き、亮はデッキからカードを一枚ドローする。

 

「メインフェイズ2で『青き眼の乙女』を召喚!更にレベル8の『白き霊龍』にレベル1の『青き眼の乙女』をチューニング!」

 

「チューニングだと!?しかもレベル9のシンクロ召喚!」

 

「勝利をもたらす青き龍よ、白き祈りの導きによりその姿を昇華せよ!シンクロ召喚!現れよ『青眼の精霊龍』!守備表示!」

 

『青眼の精霊龍』シンクロ・効果/星9/光属性/ドラゴン族/攻撃力2500/守備力3000

 

チューナー+チューナー以外の「ブルーアイズ」モンスター1体以上

 

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いに2体以上のモンスターを同時に特殊召喚できない。

 

(2):1ターンに1度、墓地のカードの効果が発動した時に発動できる。その発動を無効にする。

 

(3):S召喚したこのカードをリリースして発動できる。エクストラデッキから「青眼の精霊龍」以外のドラゴン族・光属性のSモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。そのモンスターはこのターンのエンドフェイズに破壊される。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

「っ!?」

 

「特殊召喚の制限効果持ちだと!?」

 

「お互いにな!ターンエンド」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

手札にはそれを倒せるカードが来ている。だが、この状況の遊来はすぐに逆転のカードを引き込んでくるだろう。

 

「・・・だ」

 

「ん?」

 

「嫌だ・・・」

 

「嫌だ?」

 

「嫌だ!俺は・・・負けたくないィィィーーーッ!!」

 

「ククク・・・やっと、やっと本心を見せたか!!そうだ、それでいい!!どんな形であろうと勝ちたい!それがアンタの本音だ!」

 

「ああ、今ようやくわかった・・・俺は飢えている、渇いている!勝利に!!」

 

「そう!勝負の世界へ行くのなら、勝ち負けは関係ないなどという甘っちょろい考えを此処へ置いていけ!」

 

「ああ、そうだな、その通りだ!俺は手札の『サイバー・ドラゴン』を特殊召喚!更に魔法カード『エヴォリューション・バースト』を発動!『青眼の双爆裂龍』を破壊!」

 

『サイバー・ドラゴン』から放たれた光線が『青眼の双爆裂龍』を飲み込み、破壊されてしまう。

 

「ぐううう!」

 

「まだだ!魔法カード『エヴォリューション・バースト』第二打ァ!『青眼の精霊龍』を破壊!ターンエンドだ!」

 

「俺の場を・・・ガラ空きに!」

 

「!?っくくく・・・これが・・・殻を破るという事か!なにを耐えていたんだ俺は!」

 

「それなら、サイバー流は自分の原点だという事を忘れなきゃ良いのさ。人から何を言われようと無様を晒そうと関係ないんだからな!俺のターン!ドロー!メインフェイズで伏せカード発動!『銀龍の轟咆』!『白き霊龍』を攻撃表示で復活させる!蘇生時の効果は使わない!」

 

[ドローカード 『青眼の混沌龍』]

 

現在の手札2枚

 

※カオス・フォーム

※青眼の混沌龍

 

「俺は手札から儀式魔法『カオス・フォーム』を発動!」

 

「儀式魔法だと!?その手札の枚数では召喚する儀式モンスターしかいないはず!コストになるモンスターは!」

 

「確かに『カオス・フォーム』は「カオス」儀式モンスターの降臨に必要でレベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように、自分の手札・フィールドのモンスターを生贄にしなければならないが、生贄の代わりに自分の墓地から『青眼の白龍』または『ブラック・マジシャン』を除外する事で、手札から「カオス」儀式モンスター1体を儀式召喚する事が出来る!!」

 

「墓地にある『青眼の白龍』・・・!『青眼の双爆裂龍』のコストか!」

 

「ご名答。墓地の『青眼の白龍』を除外し儀式召喚!!降臨せよ!!『青眼の混沌龍』!!」

 

『青眼の混沌龍』儀式・効果/星8/闇属性/ドラゴン族/攻撃力3000/守備力0

 

『カオス・フォーム』により降臨。

 

このカードは儀式召喚でしか特殊召喚できない。

 

(1):このカードは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。

 

(2):『青眼の白龍』を使用して儀式召喚したこのカードの攻撃宣言時に発動できる。相手フィールドの全てのモンスターの表示形式を変更する。この効果で表示形式を変更したモンスターの攻撃力・守備力は0になる。このターン、このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

 

「バトルフェイズ!『青眼の混沌龍』の攻撃!『青眼の白龍』を使用して儀式召喚したこのカードの攻撃宣言時に効果発動!!相手フィールドの全てのモンスターの表示形式を変更し、この効果で表示形式を変更したモンスターの攻撃力・守備力は0になる!」

 

「何っ!?」

 

「更にこのカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える!」

 

「守備力を0にした上での貫通効果だと!?」

 

「『青眼の混沌龍』で守備表示の『サイバー・ドラゴン』へ攻撃!!混沌のバースト・ストリーム!!」

 

「うあああああああ!」

 

丸藤亮:3800→800

 

「『白き霊龍』の攻撃!ホワイト・バースト!強靭!無敵!最強!!」

 

「うおおおおお!!」

 

「粉砕!玉砕!大喝采!!アハハハハハ!!!」

 

丸藤亮:800→0

 

デュエルが終了し、亮は片膝を付いている。遊来は亮へ近付き手を差し出したデュエルの時にあった粗暴さが消えている。

 

「負けた・・・か・・・これが・・・俺の行く世界の厳しさ」

 

「その通り、そして貴方にだけ打ち明けましょう。俺が何故『青眼の白龍』のカードを持っているか。その理由は簡単です。俺はこの世界の人間じゃないからです(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「!どういう事だ!?」

 

「カイザーは次元の違いや平行世界を信じますか?」

 

「SFの話などにある別世界の事か?にわかに信じられないが」

 

「そうでしょうね。俺はこの世界とは異なる世界から来たんです。その世界、俺が『前に居た世界』ではデュエルはただの娯楽で、『青眼の白龍』を始めとするカードも子供のお小遣いで買えるレベルの値段でしか無い所でした」

 

「なんだと・・・!」

 

「無論、ワンキルなんて当然ですしデッキ破壊、特殊勝利、ビートダウンに至っては攻撃力が8000を超えるなんて当たり前の環境でしたよ」

 

「・・・・」

 

亮は驚きと同時に納得と腑に落ちた気持ちが自分の中で出ていた。目の前にいるこの相手はワンキルに関してなんの抵抗も示さず、使っていた。コンボも一度決まってしまえば相手に何もさせずに勝利してしまう凶悪なものを勧めてきた事も。

 

「信じられんが別世界から来たのなら、凶悪コンボを知っているのも納得できる・・・カードの事もな」

 

「この事は内密でお願いしますよ?貴方に話したのは、強さの要因とカードを持っている理由を知ってもらうためなんですから」

 

「ああ、分かっている」

 

「それと、俺からプロでの要注意を一つだけ」

 

「ん?」

 

「マネージャーが有頂天になってもすぐに海外へ行かない事。本場のアメリカなどでは俺がやっていたような煽りは日常茶飯事、最短で二年、最長で四年は日本のプロリーグで力を蓄えてから行ってください」

 

「肝に銘じておこう」

 

「それに、もう貴方は自分の殻を破った・・・人からなんと言われようとも叩き潰すスタイルを貫いてください。それとコレを、俺からの卒業祝いです」

 

「ん?こ、これは!?」

 

亮が遊来から手にしたのは『サイバー・ドラゴン』に関連するカードだった。新規の『サイバー・ダーク』も含まれており、驚愕する他なかった。

 

「それを使って日本で腕を磨いてください、俺が教えたコンボも使って良いんじゃないですか?」

 

「つくづくお前は恐ろしいな・・・だが、俺はもう負けん!」

 

その翌日、カイザーはアカデミアから卒業していった。その目には地獄であろうと荒野であろうと歩き続けるという信念を持った目をしながら。

 

 

『ようやく見つけたえ、我らの主殿』

 

『やっと見つけ出す事が叶いました』

 

アカデミアに和装をした二人の人物が向かっている事を誰も知る由もなかった。




粉砕!玉砕!大喝采!!を言わせたかったので「ブルーアイズ」デッキを使いました。

ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴンは後に出します。

今後カイザーはヘルカイザーとなりますが、デュエルスタイルを『徹底的に相手を倒す』に変えただけです。

遊来くんの「ブルーアイズ」はこれ以降、儀式『ブルーアイズ』に特化します。

最後に出てきた二人・・・何デッド族の精霊なんだ?


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