ヒロアカに転生して炎の個性を得たけど、俺のせいで平行世界化したんだけど (孤狼 龍)
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火群の設定一覧

火群紅煉の設定集です。

ネタバレ注意

随時更新確定


名前:火群 紅煉(ほむら ぐれん)

出身校:煉獄中学校

誕生日:7月25日

身長:179cm

体重:65kg

血液型:B型

出身地:神奈川県あたり

好きなもの:辛い物

座右の銘:『体は鋼、心は硝子』『悪を倒す正義ではなく、悪を倒す悪となれ』

 

【性格】

冷静な人物だが、根は非常に仲間想いな情に厚く優しい人物であり、仲間だと認識した相手のためなら自分の身を呈することも厭わない。そしてガチでキレる時は大人でも恐怖するような威圧を放つ。

前世の記憶はあるが自分が何者で、なぜ死んだのかは不明。ちなみにどんなことをしてたのかは覚えており、この世界についてもある程度知識はある模様。

転生して得たものは個性。しかも2つある。

さらに冒頭で交通事故でお亡くなりになった主人公の出てる作品の中でしか登場しない最強格闘術“裂蹴拳(れっしゅうけん)”という技を色々な格闘技を習ったり独学で学ぶことで独自に編み出し扱う。

 

座右の銘の『体は鋼、心は硝子』というのは要するに言葉による悪意の刃で傷つくのは身体ではなく心という事。それを理解したうえで紅煉は例え、相手がどんなに酷くても傷つくような暴言は吐かないと決めている。

また、もう一つの『悪を倒す正義ではなく、悪を倒す悪となれ』という言葉は彼の嫌いなモノというか言葉が『正義』なのだ。理由は「概念が無いから」だそうだ。例えば『二つの国がそれぞれの国を取るため争ってる。一つは人口増加により住まいが少なくなったから、一つは人口増加により畑が小さくなったから……』お互いの正義を擦り付け武を持って決める。これのどこが正義というのか?そして今のヒーロー社会でも同じ事。ヒーローはヴィランを倒す為に暴力を振るう。ヴィランはそれぞれの目的は違えど暴力を振るう。で、あるならどちらも正義とは言えない。なので自分を悪とあえて認め、悪を倒す悪になろうということらしい。

 

《症例・脳震盪(のうしんとう)

ほぼツッコミ専用の蹴り技。相手の顎を的確に蹴り穿つ。その際の揺れは相手の意識を確実に奪い取る。

 

裂蹴拳(れっしゅうけん)

その名が示すように破壊力のある足技主体の拳法で、上半身は相手の攻撃を捌く防御を主軸とする。汎用性は高く、体術以外に武器攻撃も対応が可能で、剣や槍までも受け流す。あらゆる体術を修得した者でなければ習えず、幻の拳法、伝説上の技、史上最強の格闘術とされている。

 

紅炎裂蹴拳(こうえんれっしゅうけん)

裂蹴拳の技に炎を加えた状態。この状態だとさらに防御力と攻撃力が上がる。

【スタイル“悪魔風脚(ディアブルジャンブ)”】

本来の“裂蹴拳”は相手の攻撃をいなして脚で攻撃する。だがこれは攻撃特化型。炎の火力を全て脚に集中させて攻撃する。スピードもパワーも桁違いで少しの間だがオールマイトの足止めをした。

《技一覧》

悪魔風脚(ディアブルジャンブ)蹴連撃(ラッシュ・スペクトル)》”

炎を纏った脚で連続でキックする。まるでマシンガンの如く何度もキックする。

 

悪魔風脚(ディアブルジャンブ)蹴鎚撃(インパクト・ショット)》”

炎を纏った脚で強烈な一撃を相手に与える技。オールマイトですら怯むほどの威力。

 

悪魔風脚(ディアブルジャンブ)画竜点睛(フランバージュ)》”

右足に炎を帯び体重を乗せて強烈な蹴りを叩き込む。

 

 

個性『怪焔王(かいえんのう)

詳細:炎と熱を操る個性。自身の血液を熱して摂氏500℃以上にする事ができ、さらには摂氏1500℃の炎を発生し操る事も可能。聞いての通り熱も操るので体内に熱が籠るのを防ぐこともできる。これによって炎系個性の弱点を補っている。また、炎に物量を与えることも可能らしいが、とてつもなく疲れる上に死ぬ程、維持に力を使うそうな。

さらに《オーバーヒート》と言われる個性を使いすぎたことによって体内の酸素が不足した状態に陥ってしまう。この状態でさらに炎を使おうとすると咳き込みながら喀血し、続けようとすると意識を失う。

 

個性『不死鳥(フェニックス)

詳細:“復活の青い炎”を纏い、いかなる攻撃を受けても再生できる(再生には限界あり)

不死鳥の爪を模したものを活かした蹴りや翼を背中から発現させたり、腕を翼に変化させたりして飛行能力などを備えるが、それ以上に特徴的なのが高い再生能力を有している点。 

身に纏う青い炎は「復活の炎」「再生の炎」と呼ばれる代物で、これを纏っていると驚異的な速度で傷などを回復することができる。回復力には限界があるが、絶対的な「不死」である。再生の炎を他者に当てることで、他者の持つ再生力を上げることが出来、傷の治療などに使える。ただし他者に与えられる影響は基本的に微々たるもので、自身がそうするような急激な回復は不可能。また熱を持たないため人を傷つけることは出来ないが様々な攻撃方法がある。

ちなみに蒼炎翼と呼ばれてたが、実際はこの個性によって出した翼。

体力を消耗させて回復させてるため体力が無くなると治りが遅くなる。

 

【技】

怪焔王(かいえんのう)

紅蓮腕(ぐれんかいな)

記念すべき最初の技。

火をまとった腕で相手を掴み小爆発を起こし、相手を吹き飛ばす技。

 

火拳(ひけん)

火力を最大限に高めた炎の拳を巨大化させ打ち込むことで全てを焼き薙ぐ。使い手の力量次第ではとてつもない攻撃範囲と爆発力を持つ。

みんな大好き某ひとつなぎの大秘宝を求めるアニメの主人公の兄の技。

作者が思いつく炎の技と言ったらこれ。

 

火拳銃(レッドホーク)

火拳を最小限かつ最大に活用した一撃であり、纏った炎が相手の背後まで突き抜けるほどの衝撃を与える。威力は火拳そのもの威力を誇っている。

 

灼熱の火拳(ハルハール・インフィガール)

本来は両掌から熱を放つ技だが、右手に炎を集中させ一気に爆発させる事で強力な炎の一撃を相手にぶち当てる。その代償として腕が少し痺れる。元ネタはマギという作品の魔法。

 

煉獄焦(れんごくしょう)

拳に炎を纏い、連続で相手を殴打する技。某邪眼使いの技。

 

神火・不知火(しんか・しらぬい)

両腕から二本の火の槍を形成し投げつける。

 

蛍火(ほたるび)

周囲に無数の火の玉をつくる。

 

火達磨(ひだるま)

“蛍火”で出来た火の玉を相手にぶつけ、発火させることで火だるま状態にする。

 

陽炎(かげろう)

炎を飛ばして相手を攻撃する。目の前で出せば炎の盾にもなる。

 

鏡火炎(きょうかえん)

“陽炎”の強化版。分厚い炎の塊を相手に放つ。

 

十字火(じゅうじか)

文字通り、腕をクロスさせ十字架型の炎を飛ばす。

 

炎戒(えんかい)

自身の周囲、もしくは相手の周囲の地面に炎を展開する。

 

火柱(ひばしら)

炎戒の状態から火柱をつくる。

 

大炎戒(だいえんかい)

炎戒の強化版。ある技を放つ前座とも言える。

 

炎帝(えんてい)

太陽のような巨大な火の玉をつくる。“大炎戒”使用時でないと発動不可。

さらには周囲の被害もでかいため使用頻度は低い。

 

火銃(ひがん)

指先から火の玉を発射する。

 

爆烈煌炎(ばくれつこうえん)

両手の炎を合わせ相手に叩きつける。当たった瞬間巨大な爆発を起こす。

 

爆血(ばっけつ)

某鬼殺しの鬼になった妹の技。自らの血を爆熱させる事により、血が付着した対象を焼却あるいは爆裂させる。

 

“カイザー・フェニックス”

鳥の形を模した炎を作りだし相手に向かって放つ。元ネタはもちろん某龍の冒険の大冒険の大魔王の魔法。

 

“禁忌[レーヴァテイン]”

某吸血鬼姉妹の妹の必殺技の1つ。炎の大剣を造形し相手を切り裂く。また、炎の小弾を剣閃に沿って出現させ相手に飛ばすことも出来る。近距離から遠距離まで幅広く使える。

 

“レア・ラーヴァテイン”

“禁忌[レーヴァテイン]”使用時に使える大技。地面に突き刺すことで半径50m以内に無数の火柱を出現させ敵を殲滅することが可能。

 

万海灼き祓う暁の水平(シュルシャガナ)

メソポタミア神話に登場する戦神ザババの持つ二振りのシミターの片方。紅刃のシュルシャガナ。

この場では武器と言うよりは“禁忌[レーヴァテイン]”を薙ぎ払い広範囲に渡り炎を相手に放つ技。

 

天羽々矢(あめのはばや)

炎の弓矢を作り放つ。威力はほとんど皆無に等しいが貫通力と飛距離は凄まじいものがある。速度もそれなりにある。

 

天津麻羅之鍛冶(あまつまらのかじ)

炎を槍や剣といった様々な武器に変化させ、自在に操作・射出する。 

槍「天沼矛(あめのぬぼこ)

剣「天羽々斬(あめのはばきり)

 

火之迦具土神(ひのかぐつち)

空中にジャンプし、前方に一回転しそのまま振り上げた右足から炎を吹き出し、巨大な剣の形を作り上げる。そのまま踵落としの要領で地面に蹴り込ませると同時に振り下ろす。圧倒的火力と威力で敵を薙ぎ払う。

見た目は完全に某超次元サッカーのイギリス代表のチームのキャプテンだった男が使ってた超ロングシュートの技そのもの。

 

火産霊神(ほむすびのかみ)

右手に高温の炎。左手に低温の炎を纏い、それを合わせることで炎の竜巻を発生させ相手にぶつける技。

 

“奥義・鳳凰烈波(ほうおうれっぱ)

炎を纏い回転しながら飛んで、空中で炎の鳥へと姿を変え突進する大技。物凄い火力で相手を倒す。

 

“奥義・一刀火葬(いっとうかそう)

禁術であり、腕の1本を媒介にしないと発動できない犠牲奥義。発動するとその腕は焼け焦げる。治療に多様な時間がかかるが紅煉の場合すぐ回復する。

刀の先端のような形の巨大な炎を放つ。

 

“奥義・煌龍波(こうりゅうは)

炎の龍を召喚し、放つことで相手を焼き尽くす技。

煌龍波を"喰らう"ことで、戦闘能力を爆発的に高める事も可能になる(つまりは“栄養剤(エサ)”)。

術者は使用後に消耗した火力と体力を回復する為に、強制的に「冬眠」と呼ばれる深い眠り(約6時間)に入る。某邪眼使いの技。

 

不死鳥(フェニックス)

不死鳥の翼撃(ふしちょうのよくげき)

不死鳥の翼に変えた両腕を薙ぎ払うように振るい攻撃する。

 

不死鳥の鉤爪(ふしちょうのかぎづめ)

不死鳥の爪に変化した足で蹴りを放ち切り裂く。

 

不死鳥の抱擁(ふしちょうのほうよう)

両腕を不死鳥の翼に変え、怪我人らを包み込むことで傷を癒す。

 

不死鳥の羽衣(ふしちょうのはごろも)

周囲を巨大な不死鳥の翼で包みその範囲内の自身が味方と認識した者たち全員の傷を癒す。欠陥した腕や臓器までも回復させる癒しの技。

 

【形態】

《ディアブロ・フォース》

紅煉の戦闘能力を底上げする。「力・スピード・破壊力・防御力が全部何倍にもなる」とのことだが「戦闘力の増強に引き換え、体力をもっていかれてしまう」というハイリスクを伴うモード。その威力はまさに悪魔。顔に某鬼の王と同じ痣が現れる。

 

《ドラゴン・フォース》

“煌龍波”を“喰らう”事で術者の戦闘能力と火力を爆発的に向上させる言わば“栄養剤(エサ)”。さらにその効果により肉体を疑似的に竜に近しい属性となるため、嗅覚及び聴覚が異常に発達し、圧倒的火力によるオート防御を可能としている。その代わり解除した後、使用時に消耗した火力と体力を回復する為に、強制的に数時間ほど“冬眠”と呼ばれる深い眠りに入る。顔に龍の鱗のような痣が現れる。

【技一覧】

火竜の鉄拳(かりゅうのてっけん)

拳に炎を纏い、パンチを放つ。また、カウンターの要領で相手の魔法を止めることも出来る。

 

火竜の咆哮(かりゅうのほうこう)

口から灼熱の炎のブレスを放つ。広範囲にわたり放つので至近距離だと逃げ場はない。

 

火竜の翼撃(かりゅうのよくげき)

炎を纏った両腕を薙ぎ払うように振るい攻撃する、両腕から炎を放って相手を焼き尽くす。

 

火竜の鉤爪(かりゅうのかぎづめ)

炎を纏った足で蹴りを放つ。

 

火竜の煌炎(かりゅうのこうえん)

両手の炎を合わせ相手に叩きつける。当たった瞬間巨大な爆発を起こす。

 

火竜の炎肘(かりゅうのえんちゅう)

肘からブースターのように炎を噴射して打撃力を高め、その勢いのまま炎を纏ったパンチを放つ。

 

滅竜奥義(めつりゅうおうぎ)

紅蓮爆炎刃(ぐれんばくえんじん)

「竜の鱗を砕き、竜の肝を潰し、その魂を狩りとる」と言う技。炎を纏った両腕を振るい、爆炎を伴った螺旋状の強烈な一撃を放つ大技。

 

神滅爆炎刃(しんめつばくえんじん)

“紅蓮爆炎刃”の炎に神の炎を混ぜた大技。とてつもない威力を誇る。

 

《ドラゴニック・フォース》

“煌龍波”,“蒼龍波”,“黒龍波”の三種の龍の力を取り込んだ形態。

効果としてはほぼ“煌龍波”を取り込んだ“ドラゴン・フォース”と同じ。ただ違うのは、人間の出す体温とは思えない程の熱を出しながら冬眠し、その冬眠の時間も長いこと。

“ドラゴン・フォース”の超強化版。“ドラゴン・フォース”との違いは髪が薄紅色になること。それ以外はほとんど変わらない。

【技一覧】

炎竜王(えんりゅうおう)崩拳(ほうけん)

拳に巨大な炎を纏い放ち大爆発を起こす。

 

炎竜王(えんりゅうおう)咆哮(ほうこう)

「火竜の咆哮」を遥かに凌駕する威力の爆炎のブレスを放つ。その一撃は大地を大きく抉り取り地形を変えてしまうほど。

 

《ヒノカミ・フォース》

全身から炎のオーラが溢れ出し髪は赤くなる。さらにこの姿だと熱の操り方も精度を増すのか、不死鳥の翼を出さずとも空に浮くことが出来る。その身に纏う炎は穢れが見当たらない。まさに最強の形態。

【技一覧】

《ヒノカミ神楽》

火群一族に代々伝わる厄払いの神楽とそれを舞う為の呼吸法。ヒノカミ神楽の舞いは、新年の始まりに、雪の降り積もった山頂において十二の舞型を、一晩中にわたって何百、何万回と繰り返して奉納することで、一年間の無病息災を祈る舞いでもある。

 

・壱ノ型 円舞(えんぶ)

刀を両手で握り、円を描くように振るう技。 

 

・弐ノ型 碧羅の天(へきらのてん)

刀を両腕で握り、腰を回す要領で空に円を描くように振るう技。垂直方向の強烈な斬撃となる。

技名の由来は晴れ渡った青空を指す『碧羅の天』から。 

 

・参ノ型 烈日紅鏡(れつじつこうきょう)

刀を両腕で握り、肩の左右で素早く振るう二連撃の技。迎撃に向いた左右広範囲の水平斬りとなる。 

技名の『烈日』は夏の強い日差しを、『紅鏡』は太陽を指す。 

 

・肆ノ型 灼骨炎陽(しゃっこつえんよう)

刀を両腕で握り、太陽を描くようにぐるりと振るう技。水平方向に渦巻く焔のような闘気が、前方中距離まで広範囲を薙ぎ払うため、攻防を同時に行える。

技名の『灼骨』は古代の骨を灼いて吉凶を見る占いを、『炎陽』は夏の太陽を指す。 

 

・伍ノ型 陽華突(ようかとつ)

刀を右手で握り、その柄尻を左の掌(たなごころ)で押し込むようにして敵を刺し貫く日の呼吸唯一の刺突技。刀を突き上げると、陽炎を纏った鋭い対空迎撃となる。 

 

・陸ノ型 日暈の龍・頭舞い(にちうんのりゅう・かぶりまい)

暈(かさ、薄雲に映る光輪)の名の通り幾つもの円を繋いで、龍を象るように戦場を駆け巡りながら刀を振るう技。瞬く間に“災厄”の影を祓った。

技名の『日暈』は太陽の周囲に光輪が現れる気象現象を指す。 

 

・漆ノ型 斜陽転身(しゃようてんしん)

我が身を天に捧げるかの如く跳び、宙で身体の天地を入れ替えながら水平に刀を振るう技。相手の攻撃を躱しながらの鋭い一薙ぎとなる。 

技名の『斜陽』は日没間近の沈みつつある太陽を指す。 

 

・㭭ノ型 飛輪陽炎(ひりんかげろう)

刀を両腕で振りかぶり、揺らぎを加えた独特な振り方で降ろす技。その刃の姿(長さ)を相手に誤認させる不可思議な斬撃となる。 

技名の『飛輪』は太陽の別名、『陽炎』は暑い日に景色が揺らいで見える気象現象を指す。 

 

・玖ノ型 輝輝恩光(ききおんこう)

刀を両腕で握り、体ごと渦巻くように回転しながら跳躍、或いは前方に突進する技。

技名の『輝輝』は照り輝く光を、『恩光』は春の日差しを指す。

 

・拾ノ型 火車(かしゃ)

刀を両手で握り、敵の頭上を飛び越え、身体ごと垂直方向に回転して背後から斬りつける技。

技名の『火車』は地獄へと亡者を運ぶ燃え盛る車、或いは地獄にて亡者を責め苛む火の車が元ネタと思われる。 

 

・拾壱ノ型 幻日虹(げんにちこう)

高速の捻りと回転による回避技。速度だけでなく残像によるかく乱効果があり、視覚の優れた相手にほど有効。 

技名の『幻日』は太陽が複数に見える気象現象を、『虹』は光が七色の弧を描いて見える現象であり、どちらも実体を持たない現象である。 

 

・拾弐ノ型 炎舞(えんぶ)

刀を両腕で握り振り下ろした後、素早く振り上げる技。高速二連撃となる。 

 

・拾参ノ型 ????

日の呼吸の十三番目の型

拾参ノ型は、十二の型全てを振るい、正に太陽の様に円環を成すことで完成し発動する。

十二の型のうち壱の“円舞”と拾弐の“炎舞”は繋げることができる。しかしその他の型については作中でも順番がその都度変化しており詳細は不明。

 

《蒼き炎(仮)》

紅煉が自身のオーバーヒートの限界を超え『怪焔王』の炎を燃やし続けることで“完全燃焼の炎”となる事で青い炎と成る。摂氏約10000℃を超えており紅煉の使う炎の中で1番の火力を得る。ただし、オーバーヒートに近い状態なので戦える時間は5秒と、もはや一撃必殺レベル。

【技一覧】

灼熱の蒼火拳(ハルハール・インフィガール)

蒼き炎を腕に纏って対象に向かって放つ。

灼熱の火拳(ハルハール・インフィガール)”の強化版。

 

“奥義・蒼龍波(そうりゅうは)

蒼き炎の龍を召喚し、放つことで相手を焼き尽くす技。

また、“煌龍波”と同様に喰らうことで爆発的な火力を誇る。言わば“煌龍波”の強化版。

 

火滅破滅波(かめはめは)

技名も見た目もまんま『かめはめ波』。違うのは放ってるのが炎で出来たプラズマで出来てるということ。ただ炎の色は青色でプラズマのレーザーのように放つのでまんまかめはめ波である。




技など何かいい案がある方はお気軽に教えて下さい。
『これカッコイイ!』『これは使える!!』と思った技は有難く使わせていただきます。


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火群と雄英高校
第1話 火群の雄英入試と結果


 ことの始まりは中国・軽慶市から発信された、「発光する赤児」が生まれたというニュース。

 以後各地で「超常」が発見され、原因も判然としないまま、時は流れる―。

 世界総人口の八割が何らかの特異体質である超人社会となった現在、生まれ持った超常的な力“個性”を悪用する犯罪者・(ヴィラン)が増加の一途をたどる中、同じく“個性”を持つ者たちが“ヒーロー”として(ヴィラン)や災害に立ち向かい、人々を救ける社会が確立されていた。

 かつて誰もが空想し憧れた“ヒーロー”…それが現実となった世界で、“転生”した、ひとりの少年・火群 紅煉(ほむら ぐれん)もヒーローになることを目標に、名立たるヒーローを多く輩出する雄英高校への入学を目指していた。

 

 ……という説明から察して欲しいが、俺は転生者で、転生した先はヒーローが蔓延る世界……僕のヒーローアカデミアの世界だ。

 まぁ前世でも学生だったし、問題は無いが……問題はこの世界で生まれた場所が特殊だったこと、そして俺の個性は炎なんだけど、色々と特殊である事と、二つあること。

 まぁそれは後々説明するとしよう…そしてもう一つ問題なのが前世の記憶はあっても自分が何者で、なんで死んだのか分からないってことだ。

 ついでに言うとその世界の友達についても居たかどうかは分からない……まぁどうでもいいけどね。

 そして俺の名前は先にも書いてある通り火群 紅煉(ほむら ぐれん)だ…身長はかなり高く髪色は黒で瞳はルベライト色、若干髪を伸ばしてポニテにしてる…髪を切らないのかだって?

 項を触られるのが嫌だから床屋にも滅多に行かないんだよね…あ、それはどうでもいい?OK理解した。

 まぁそれで、今俺はヒーローになるために雄英高校ヒーロー科を受験しに来た。

 

ーーーーー

 

『今日は俺のライブにようこそー!エヴィバディセイヘイ!』

 

「〜ッ!(いやうるせぇよ!!)」

 

 実技試験説明会場。

 

 そこでは、プロヒーローの一人であるプレゼントマイクが実技試験の説明を行おうとしている…それに対して軽く耳を抑える紅煉。

 仕方ないじゃん、うるさいんだもん……鼓膜破けるわ

 

 そして学生から返答がないことにもめげずにプレゼントマイクは説明を始める。

 

 試験の内容としては点数が振られた3種類の仮想敵を行動不能にする事で、その仮想敵に振られている得点を獲得することができ、その合計得点で競うらしい。

 一つお邪魔虫という0ポイント敵が居るらしいが……まぁいいだろう。

 

『俺からは以上だ!最後にリスナーへ我が校『校訓』をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!“Plus Ultra”!それでは皆、良い受難を!』

 

ーーーー

 

 雄英高校敷地内にある試験会場。

 

 なんと敷地内に市街地が作られていた。

 

 しかも試験会場は複数有り、その数だけの市街地が有る。

 

 なおかつ規模が全て同等と考えると雄英高校の敷地の広さと資金の潤沢さを嫌でも理解できてしまう。

 

 紅煉はそんなことを考えながら周囲へ目を向ける。

 

 周囲を見渡せば多くの学生が始まる試験に向けそれぞれストレッチや精神集中を行っていた。

 

「……(まぁ当然か…だが、俺も目標の為に、ここでつまづく訳にはいけないんだ)」

 

 そう思いながら覚悟を決める。

 するとー

 

『ハイ、スタートー!』

 

 プレゼントマイクの突然の試験開始の合図。

 

 周囲の学生が困惑する中、紅煉はその声で意識は瞬時に切り替わる。

 

 そのまま紅煉は周囲の学生がぽかんとしてる中、試験会場を駆け抜ける。 

 

『どうした!? 実戦にカウントダウンなんざねえんだよ! 走れ走れ、賽は投げられてんだよ!1人のリスナーは既に試験会場に走っていったぜ!!』

 

「やべぇ!出遅れた!」

「急げ急げ!!」

 

ーーーー

 

『目標発見。ブッ殺「五月蝿い…」』

 

 見事にスタートダッシュに成功した紅煉は的確に仮想敵を倒し、今は『3』と書かれた敵を右手で掴む。仮想敵はそんな紅煉を叩き潰そうと腕を振り上げる

 

「当たらねぇよ……〈紅蓮(ぐれん)ー」

 

 すると、紅煉が掴んでる右手から炎が弾け、仮想敵の動きが止まる。

 次の瞬間ー

 

「ー(かいな)〉!!!」

 

 右手が爆発し仮想敵が吹っ飛ぶ。

 そしてそのまま動かなくなるところを見ると、それほど強く設定されてないみたいだ。

 

 そのまま受験生を助けながら仮想敵を倒していき、残り時間半分近くになった時、そいつは姿を現した。

 地響きと共に町を破壊しながら現れた仮想敵。

 

 その仮想敵の大きさはビルの高さを超えた、化け物のような仮想敵であった。

 

「でっか!!これが0ポイントか!?」

 

 紅煉もさすがに驚きを隠せずにいると周りの受験生達も皆揃って逃げ出した。

 入試説明の時に0ポイント敵は無視していいと言っていたからだろうが……紅煉は違った

 

「(コイツを野放しにすると周りにさらに被害が出る。だからといってどう倒す?俺の技はどれも決定打に欠ける。試してない技はあるが、あれを使ってほかの受験生に被害が出たら……)「きゃあっ!!」ッ!?」

 

 そんなことを考えてると0ポイントの足元から声が聞こえた。

 見ると、女の子が1人瓦礫に挟まれて動けないでいる……それを見て紅煉は、駆け出した

 

「おい!何してるんだ!」

「よせ!逃げろ!」

 

「な、なんで来てんの!?大丈夫だから逃げなよ!」

 

 周りの受験生たち、そして目の前の瓦礫に挟まれた少女がそう叫ぶが、止まるわけないだろ。

 理由は単純だ。

 

「目の前の驚異から逃げるヒーローが何処にいる!!ヒーローはいつだって、命懸けだ!!」

 

 そう叫ぶと少女を挟んでる瓦礫に手をつける

 

「〈紅蓮腕(ぐれんかいな)ぁぁぁぁっ〉!!」

 

 手を爆発させ瓦礫をはじき飛ばして女の子を助ける

 

「あ、ありがとう……」

 

「礼はいい。それより離れてて」

 

「えっ?」

 

 少女の無事を確認して0ポイントに向かって飛ぶ。

 背中に蒼く美しい炎の翼を出して

 

「えっ!?」

「何してんだアイツ!?」

「てか何!?あの炎の翼!」

 

 ほかの受験生からも驚きの声が上がる。

 それもそうだろう、炎を纏って攻撃してた奴が急に蒼い炎の翼を出して飛ぶのだから。

 

「……綺麗」

 

 さっきの少女がそう言ったが、気にしない。

 そのまま0ポイントの前に来ると、拳を構える。

 

「結構前から使いたかったが、使えなかった技。ここで使わせてもらおう…喰らうといい。俺の個性、『怪焔王(かいえんのう)』の代名詞となる技を……」

 

 そう言うと腕に炎を纏わせるせその腕を思いっきり引く。

 

「〈火拳(ひけん)〉!!」

 

 勢いよく突き出した拳から人ひとり飲み込めるくらいの大きな炎が敵へと伸びていく。

 そしてたやすくその装甲を破壊し、鉄屑へと姿を変えさせた。

 

「俺の炎は全てを飲み込み薙ぎ払う……」

 

 そして、0ポイントを倒れたのを確認してから地上に降りる。

 

「あ、あの……」

 

「ん?」

 

 声が聞こえた方を見るとさっきの少女が立ってた、耳がイヤホンジャックみたいだ。

 

「どうした?」

 

「に、2度目だけどさ……た、助けてくれて、ありがとう」

 

「……ヒーローとして当然のことをしただけさ」

 

 お礼を言われてありがたかったが、ヒーローとしての当然の行為だったから素直にどういたしましてが言えなかった。

 そうこうしてるうちに試験が終わった……あれ?ポイントどんくらい稼いだっけ?

 

ーーーー

 

 一週間が経った日、雄英高校から合否の通知が届いた。

 中を見るとスイッチのついたチップがあったのでスイッチを押してみた

 

『HAHAHAHAHA!初めましてだな火群少年!私はオールマイト!先日の雄英高校の入学試験見事だった!おっと、なぜ私がこんなことをしているかって?私がこれから雄英高校の教師として働くことになったからさ!』

 

 うん、知ってた……原作ある程度知ってるもん…知らない訳ない……ただ、いきなり筋肉隆々のマッチョマンが現れるのは怖い。

 

『さて、先日の試験結果だが、筆記は九割も取れている!!ビックリしたよ!君どんな勉強したんだい!?なかなかこんな点数出せないそうだよ!』

 

 死ぬくらい勉強しただけです……前世でも勉強は頑張ってたけど……

 

『そして実技は敵ポイント100点!これだけでも文句無しの合格だが実はもう1つの採点基準があってね!それは救助ポイント!点数は審査制だがこれの得点も君は非常に高い!救助ポイント50点!実技合計150点文句無しの合格さ!』

 

 何?そんな稼いでたん?やばくねぇか?爆豪より上じゃん、絶対目をつけられる……

 

『来いよ、火群少年!ここが君のヒーローアカデミアだ!』

 

 それを言う相手は他にいるでしょうに……まぁ、あえて言わないけど。

 だけど俺も(おの)が視界に入る全ての人間を背負うヒーローになる為に、頑張るつもりだけど……ね




ヒロアカ系物語の初投稿。
よろしくお願いします。

主人公について軽く説明

名前:火群 紅煉(ほむら ぐれん)
個性:怪焔王(かいえんのう),???
出身校:煉獄中学校
誕生日:7月25日
身長:179cm
血液型:B型
出身地:神奈川県あたり
好きなもの:辛い物
性格:冷静

個性説明に関しては次回


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第2話 火群と個性把握テストと個性の説明

あらすじ

火群 紅煉として転生し雄英高校の入試を行い、見事合格。
さて、彼のクラスメイトはいかに


 雄英高校に入学が決まり、今日が登校日だ。

 そして制服に腕を通し、“誰も居ない”部屋に向かって言った。

 

「いってきます」

 

 扉が閉まる音の後に流れるのは静寂……紅煉は、一人暮らしだった。

 

ーーー

 

 雄英高校に到着し、クラス表を見てA組と分かり、向かう。

 そして教室について思った事はただ一つだけ…

 

「……扉デカすぎだろ。バリアフリーか?」

 

 そう、デカすぎるのだ、それこそ3m級の巨人なら入れそうなほど……まぁ、そういう個性持ちのためかと思い、中に入る。

 中には人はいない…どうやら紅煉が一番乗りのようだ。その後、寝ていたのか起きたら入試のメガネくんと爆発頭が討論してたり緑髪のもじゃもじゃが来たり色々してた。

 そして担任のイモム……相澤先生に少し注意され、ジャージを渡されグラウンドに来るよう言われて向かう

 

 グラウンドに着くとほぼ全員揃ってる……説明会までまだ時間があるなと思ってると

 

「あれ?君は入試の……」

 

 そこに居たのは入試の際に助けたイヤホンジャックの女の子だ。

 

「ん?あぁ、あの時の受かってたんだね。よかった」

 

「こっちも会えてよかったよ。私は耳郎響香。よろしくね……えっと」

 

 そういえば自己紹介がまだだったな。

 

「俺は火群。火群紅煉。よろしくな、耳郎」

 

「うん。よろしくね!火群」

 

 そう言ってると相澤先生が来た…揃ったみたいだな。

 そこから爆豪がボール投げの際に死ねと言ったり、相澤先生が最下位は除籍処分と言ったりしてたが、とりあえずテストを行うことにした

 

【第1種目】 50m走

 

 50m走か……懐かしいな…今回は個性を使っていいから……アレで行こう。

 

『用意ーーースタート!』

 

「爆炎ブースター!」

 

 両腕を後ろに向けて炎を出して走る…まさにブースターのようだ

 

『記録:4,10秒』

 

「まずまずだな」

 

「結構早くね?」

 

「クソが!!」

 

 あれ?爆豪が怒ってる。なんで?

 

【第2種目】 握力

 

 次は握力、これは紅蓮腕と火拳の応用で……腕に炎を纏って

 

「ふんっ!!」

 

『記録:680kg』

 

「え?!障子って人より上じゃん!!バケモンかよ!!」

 

「……俺にもよく分かんね!」

 

 障子くんよ、驚愕の瞳で俺を見るな…俺も驚いてる。

 

【第3種目】 立ち幅跳び

 

 腕を蒼い炎の翼に変えて飛ぶ

 

「火群……それいつまで飛んでいられる?」

 

「激しく動かなくて浮いたまま生活するなら1ヶ月近く、激しく動いても1週間は飛んでいられます」

 

「……無限」

 

「「「「無限出たァァァァァっ!!」」」」

 

 驚く事かね?いや驚くことか……

 

『記録:無限』

 

「……あの時背中から出てなかった?」

 

 耳郎さんめっちゃ見てくるよぉ〜入試の時間近で見てたから背中から出てたことバレてるよね……

 

【第4種目】 反復横跳び

 

 応用効かないし……普通にしよ

 

『記録:72回』

 

 普通だね!!

 

【第5種目】 ボール投げ

 

 さてさて、ボール投げと行きますか……ここは、あえて、あの技を使う!

 

「応用技〈投球火拳(とうきゅうひけん)〉!!」

 

 ボールを握った拳に炎を纏わせぶん投げる…すると炎の推進力も加わり、さらに飛んでいく…結果は……

 

『記録:1000m』

 

「「「「1000m!!?」」」」

 

 すっげぇ飛んだ……ちなみに2回目も同じだった……ぴえん。

 その後、緑谷が相澤先生に色々言われたり、やっと個性を使って記録を出して指を負傷するも動けるよう調整?していたり、爆豪がそれにキレて緑谷を爆破しようとして個性を消されて捕縛されたり、相澤先生がプロヒーローの抹消ヒーロー:イレイザーヘッドであることが判明した。

 ついでに言うと麗日さんが原作通り無限を出した…ぴえん

 

 残りの上体起こしは炎の推進力を合わせ「58回」前屈は普通にやって「50,4cm」と普通の記録でした。

 

「はい、以上で個性把握テストを終わりにします。成績はざっとこんな感じだ。よく見とけよ」

 

 あ、俺2位だ……やったね!

 ん?めっちゃ轟くん……じゃない?轟くんによく似た女の子が見てくる……女の子!?もしかして、轟くんなのか!?マジか!!

 

「ちなみに除籍は嘘ね、君たちのやる気を十分に引き出す合理的虚偽」

 

「「「「えぇぇえええええーーーーっ!?」」」」

 

 笑いながら言う相澤先生…てかそこまで怖い笑みしないで、ちびる……ちびらんけど、まぁ俺は知ってたからさほど驚かなかったけど、みんな驚いてるし、最下位の緑谷なんか目が点になってるじゃん。

 

「あんなの、嘘に決まってますわ」

 

 八百万さんや、嘘に決まってる言うてるけどそうでも無いよ。

 本当に見込みなしの生徒居たら除籍処分されてたよ、最下位関係なく……

 それより今は何故轟くんが轟ちゃんになってるかだ。

 えっと見た目は原作の轟くんとおなじ髪色と目の色、そして火傷の痕……違うのは髪が腰まで長いのと顔が女の子っぽいところ、体つきもどことなく細くて胸も八百万を一回り小さくした感じ……いや変な気分にはなってないよ?本当だよ?

 

「はい、じゃあこれでおしまい。解散ね。教室戻ったら教科書とか受け取るように」

 

「「「「はい!」」」」

 

 てか今思ったけど皆初対面なのによく息合うね。

 まだ轟ちゃん見てるし、なんか爆豪くんも見てくるよ…怖い怖い

 

ーーーー

 

 さて、着替えて教室に戻り色々とやってから放課後になって帰ろうとすると、クラスメイトに声を掛けられた

 

「なぁ!お前の個性ってなんだ!?」

 

「俺も気になる!」

 

「普通の色の炎と腕を青い炎の翼に変えてたよね?!どういう原理!?」

 

「それに腕を炎に変えてたあれは何!?」

 

 めっちゃ個性について聞いてくるじゃん…別にいいんだけどさ……落ち着いて欲しい

 

「待て待て、ちゃんと教えるから落ち着き給え」

 

 なんで上から目線か?勝手に口から出た。

 

「まず俺の名は火群紅煉。君らは?」

 

 自己紹介がまだだからね、先にすることにしたよ、まぁ他のメンバーは知ってるけどね。

 

「俺は切島鋭児郎!よろしくな!!」

 

「俺は瀬呂範太!よろしく!」

 

「私は芦戸三奈!よろしくね!!」

 

「私は葉隠透!!これからよろしく!」

 

 うん、皆知ってるよ居ないの青山だけだもん……ごめん青山……俺のせいで君のきらめきの出番は消えてしまった……

 

「「「「で、個性について教えて!!」」」」

 

 やっぱり聞く?まぁいいか、減るもんじゃないし、派手でわかりやすいし。

 

「俺の個性は『怪焔王(かいえんのう)』っていう個性でな……熱と炎を操る個性でな、自分の血液や体温を超高温にすることも出来るし、炎を発生させて腕に纏わしたりできる。」

 

「すっげぇ!!」

 

「蒼い翼の炎は?アレはその怪焔王っていうやつの個性じゃ使えないよね?」

 

 流石は耳郎さんだ…すっごく鋭い……だけどまだ教えるわけにはいかないんだよなぁ……うーん、どうしよう……そうだ!

 

「えっと、アレは怪焔王の応用技で炎を操って酸素を取り込む量を早くすることで色を変えさせてさらに気流を操って飛んでるんだ!腕を炎に変えてたのはそっちのがコントロール効くから!」

 

 本当は違うけど、これで誤魔化せたか!?誤魔化せてくれ!頼む!!

 

「ふぅん、そうなんだ……」

 

 めっちゃ怪しんでるやん!!ジト目で見てきてんもん!!めっちゃ怖い!助けて!って無理もないか、声裏返ったし。

 とにま個性の説明を“ある程度”したから問題ないとして……今日のこれは序の口なんだよなぁ……明日から頑張らないとな〜……ん?目の前にいるのは緑谷と飯田と麗日さんじゃないか……今のうちにあの3人と仲良くしとこ!

 

「おーい!御三方!今おかえりか?俺もいいかな!?」

 

「君は、蒼炎翼(そうえんよく)で無限をたたき出した無限少年!」

 

「飯田君!それはどう考えてもさっきの麗日さんのパクリだよね?!」

 

「飯田くんおもろいわ!」

 

 飯田……誰の個性が蒼炎翼じゃ、かっこいいけど違うわ。

 緑谷、そのツッコミは麗日さんにもダメージいく……麗日さんはそこで吹き出すか!?

 

「なぜ吹き出す!!麗日くん!」

 

「まぁまぁ、とにま俺の名前は火群紅煉!苗字呼びでも名前呼びでも好きな風に呼んでくれ!」

 

 とにま収集がつかなそうなので自己紹介しとく事にした……俺は間違ってない。

 

「俺は飯田天哉!!よろしく頼む!火群くん!」

 

「僕は緑谷出久!よろしくね!火群くん!」

 

「私は麗日お茶子!よろしく!火群くん!」

 

 3人とも君付けか、しかも苗字呼び……まぁいっか!この3人といると面白いし!その後は4人で談笑しながらそれぞれの帰路についた

 

ーーーー

 

「ただいま〜……って言っても、誰もいないんだけどな」

 

 紅煉は自宅に帰って早々に洗濯機を回し、風呂を沸かし、料理をした。そして出来上がった料理を“2つの皿”にそれぞれ分けて、1つをとある部屋に持っていき、その料理を仏壇の前に置く

 

「…父さん、母さん……今日友達が出来たんだ。緑谷と飯田と麗日さんっていうんだけど……3人とも優しくてな……あの3人となら一緒に学園生活を楽しくやっていけそうだって、思った。そんだけ、じゃあ、また話があるときにここに来るよ」

 

 返事をしない写真2枚にそう言って仏壇の部屋を後にする……

 

 その後は夕飯を食べて軽く掃除をして風呂に入って風呂掃除をして布団を敷いて次の日の準備をし……就寝した。

 次の朝、彼が見たかった深夜番組を録画し忘れて発狂するのは、また別の話。




はい、第2話投稿、終わりました。
この物語内では轟くんは轟ちゃんになっていて、オリ主を“今は”目の敵にしています。
そして最後は少しシリアス?な部分を持ってきてオチをつけました。
いかがだったでしょうか?
ちなみに今回は1日おきに投稿出来ましたが、基本不定期なのでご了承ください。
さて、紅煉の個性説明のまとめと参りましょう。

個性『怪焔王』
炎と熱を操る個性。自分の血液や体温を超高温にすることも出来、炎を発生し腕に纏わしたりできる。
蒼い炎の翼は紅煉は怪焔王の応用技と言ってましたが実際は違う。その説明については次の機会に

いずれ紅煉の総まとめも書くつもりですのでよろしくお願いします。


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第3話 火群と戦闘訓練……そして提案

あらすじ

雄英に初登校
個性を使ってよくある体力テストを行った。
轟くんが轟ちゃんだった
個性についてある程度話した
緑谷と麗日と飯田のトリオと友達になった


 個性把握テストが終わった翌日。

 雄英も結構普通の授業するんだな、とプレゼント・マイクの流暢な英語と普通の教師ボイスを聞きながら思った…あ、ごめん訂正するわ、時たまうるせぇわ、爆豪なんかつまんなそうじゃん

 

 お昼には一流の料理人でもあるクックヒーロー『ランチラッシュ』の料理を安価で頂いた!やったぜ!てか激辛麻婆拉麺がくそうめぇ!飯田と緑谷と麗日は少し引いてたが……なんで?

 

 ………そして、午後の授業―――いよいよ、ヒーロー基礎学!!

 

 オールマイトがやって来てコスチュームに着替えてグラウンドβに集合だそうな……要望通りになってなかったら燃やす……

 

ーーーー

 

 結論から言うなら、大成功だったぜ、要望通りにコスチュームは作られていた。

 コスチューム名は『イフリート』。

 名前の由来?特にない!火の精霊であり火の悪魔でもある『イフリート』の名を貰っただけだ。

 服装は上は黒い詰襟、下は学ランのズボンに似た形をしてる。特別な繊維でできており、通気性はよいが濡れ難く、燃え難い。また並大抵の銃弾や刃をも通さず紅煉の炎にも耐えうる事が出来る。

 また、黒地に炎を象ったデザインのコートを着用している(簡単に言うならFGOの沖田総司オルタの第二再臨のコートの裾がダンダラ模様ではなく炎柱の羽織の裾になってる様なもの)。

 これは某鬼狩りの炎の柱の着用してる羽織を意識して作っていて耐熱や防弾の性能を持つ。こちらも紅煉の炎にも耐えられる。

 ちなみになぜこのデザインにしたか?カッコイイ以外の理由など無い!!

 

 その後、オールマイトが戦闘訓練の内容について説明。大まかにまとめるとこうだ。

 

 敵がアジトに核兵器を隠していてそれを処理しようとしている。ヒーローは制限時間内に敵を捕まえるか核兵器を回収する事。敵は制限時間まで核兵器を守るかヒーローを捕まえること。

 

 設定が超アメリカン!!だけど嫌いじゃない!!

 

 ちなみにチームはツーマンセル。そしてくじ引きにより決定された

 その結果がこちら

 

Aチーム 緑谷 麗日

Bチーム 轟 障子

Cチーム 八百万 峰田

Dチーム 爆豪 飯田

Eチーム 芦戸 火群

Fチーム 口田 砂糖

Gチーム 耳郎 上鳴

Hチーム 常闇 蛙吹

Iチーム 葉隠 尾白

Jチーム 切島 瀬呂

 

 うん、知ってた。青山の代わりに俺だよね、知ってたよ……

 コート溶かしたらとりあえずキレる。まぁ溶けないようにしてるけど……万が一ってこともあるし……

 

 それでまぁ戦闘訓練が始まったわけですけどぉ……とりあえず原作通りに敵の爆豪と飯田、ヒーローの緑谷と麗日さん戦ってヒーローチーム勝って

 轟ちゃん圧勝して……やっぱ炎は使わないのね……で、色々とやってたら

 

「では次!Eチーム(ヒーロー)vsJチーム(ヴィラン)

 

 俺の……いや、俺達の番が回ってきた。

 

ーーーー

 

 芦戸さんとチームな訳だが……作戦を考えたので伝えることにした

 

「俺が正面から突入するから芦戸さんは裏口にある非常階段を使って2階に行って」

 

「なんで?二人で行った方が早くない?」

 

「相手は瀬呂に切島。瀬呂はテープで部屋中をトラップまみれにするはず、それを溶かしたり燃やせるのは俺と芦戸さん、そして轟ちゃんに爆豪。そして万能個性の八百万さんくらいだろう……多分切島もそれを見越して正面から堂々と俺達を待つはず。ちなみに2階からの理由は向こうが非常階段を登る音に気づく可能性があると考えたから」

 

 それにこれが青山であるならレーザーを撃たれることを想定して自身を盾にするため部屋から動かないだろう。

 だが相手はテープを溶かし、燃やせる紅煉と芦戸さん……それを考えると部屋で待つより正面で護っていた方が時間稼ぎになる。

 

「なるほど。確かにあるかもしれない……て事はその作戦って!」

 

 どうやら気づいたようだな。そう、この作戦は囮になるだろう切島を逆に足止めする作戦

 

「そう、あっちが俺らの時間稼ぎの囮を使うなら、こっちも同じやり方をすればいい。作戦名を付けるとするなら『裏の裏作戦』かな?ダサい名前だけど」

 

 それを聞いた芦戸さんは少し笑ったが、そのあとに「じゃあ任せて!部屋の場所見つけたら報告する!!」と言ってくれた。優しいね

 

ーーーー

 

『それでは、演習スタート!!』

 

 オールマイトの声が響く……つまり始まった。

そんじゃ、行きますか

 

 ビルの中に入って数分。やはり目論見通り切島は居た。しかも階段の前だ

 

「よォ!来たなヒーロー!漢らしいぜ!!アレ?芦戸じゃなくて、もう一人はどうした?」

 

「俺の後ろをついてきてる。足音をたよりにな、立ち止まったら接敵って事で巻き込まれないよう待機するよう伝えてある」

 

 もちろん嘘である。他の階に登る階段はあるだろうが、準備時間中に多分全てテープで封鎖、もしくは物を置いて時間稼ぎしようとしてるのだろう。

 

「そうか、言っとくけどほかの所から上に行こうとしても無駄だぜ、色々と妨害してたり罠貼ったりとかやってるからな!」

 

 ビンゴ。だが、さすがに裏口にある非常階段は何も出来てないみたいだな。芦戸さんが俺の後ろにいるって言ってるのを信じきってるみたいだが、先も言ったが嘘だ。

 ヒーローもときたまに嘘をつくもんだぜ、現に俺の耳のインカムから非常階段を登る音が聞こえる。

 

「さて、どうする?ヒーロー。万事休すだぜ?」

 

「いや?そうでも無いさ、お前を倒してこの上にいく!」

 

 手から炎を出して構える。核のあるところだから気をつけないといけないが……。

 

「やってみろ!!」

 

 切島も腕を硬化させて構える。切島をの個性は硬化……自身の体を硬質化させる個性。正直今、この現状の俺には少し分が悪い……が、そのピンチを切り開いてこそヒーローというものだ。

 

「いくぞ!」

 

 両腕に炎を纏って切島に向かって走ると切島も俺に向かって走ってきた。あとは炎と硬化の殴り合いだ。てか普通に痛てぇ……。

 

「いってぇな!喰らえ!〈煉獄焦(れんごくしょう)〉!!」

 

 炎を纏った両の拳で連続で殴打するが、応えた様子はない。

 

「どうした!?そんなもんか!!」

 

 結構危ない状況だ。思ったより切島の硬化は硬い。

 

『火群君!見つけたよ!4階のフロア!』

 

 芦戸さんから連絡きた。ここまで来れば時間稼ぎはもういらない。場所さえ分かればいいのだから……

 

「了解、すぐ向かう」

 

 ボソッと切島に聞こえないように呟いた。するとその隙を見たのか切島がしかけてきた。

 

「よそ見すんなぁ!!」

 

「ガフッ!?」

 

 切島の硬化した拳が紅煉の腹を貫く。そのまま紅煉は俯き痛みに悶える。

 

「よし、後は芦戸を……ッ?!」

 

「まだ、甘いな。切島鋭児郎」

 

 だが、ここで逃がすほど紅煉も甘くない。幼少期から空手を習い護身術を備えてた紅煉は咄嗟に防御しダメージを軽減。さらに切島の手を離そうとしてなかった。そしてそのまま胸ぐらを掴む。

 

「な、何する気だ!?」

 

「絶対硬化を解くなよ?切島」

 

「えっ?」

 

 ちゃんと忠告したので少し本気を出す。胸ぐらを掴んでる腕から炎が弾ける。

 

「な、何を……」

 

 切島が少し焦った顔をしたが、気にせずやる事にした。ゲスだって?敵に容赦無し!

 

「〈紅蓮腕(ぐれんかいな)〉!」

 

「ぶベラっ!?」

 

 切島を掴む腕が爆発し、切島は吹っ飛ぶ、忠告を守ってくれてよかったと思ってる。守ってなかったらどうなってたか?火傷を負っていたと思う。

 なんで思うかと言われたら加減はしたけど威力はそれなりにあったから。とにま確保テープを気絶した切島に巻いて確保してから、4階のフロアへ向かう。

 ちなみに切島に怪我がないかどうか確認もした。問題無かった。

 その後は特に何も無く瀬呂を確保し核を回収した。瀬呂の見せ場は正直なかった……ドンマイ。

 あれ?コール早い?もっと後?まぁいいじゃん

 

ーーーー

 

「今回のベストは瀬呂少年だ!」

 

「え?!俺!!?」

 

 まぁ、予想はしてたよ。うん……

 

「さて、何故かわかる人いるかな?!」

 

「は「はい」……えっ?」

 

 八百万が手を挙げようとしたら先を越され、八百万はそっちに視線をやると紅煉が手を挙げていた。

 そりゃあ驚く。まさか当人が手を挙げるとは誰も思うまい

 

「ほ、火群少年」

 

「瀬呂は自身の個性を大幅に活かして罠の制作を行った。つまり俺らに燃やされ、溶かされる心配をしつつ時間稼ぎの為にやった行い。これが加点に繋がった。さらに核の部屋でしっかりと迎撃の準備していた。これも加点になった。逆に切島は核のあるフロアの前で守っていれば瀬呂の援護を受けれたのにあえて下で待ってしまった。これが減点。協力して俺らの侵入を妨げれば評価はさらに高かった。芦戸さんは俺の作戦を理解し行動してくれたが、ここは麗日さん同様自分の意見を言わなかったから減点。ただしっかり報告した為、良いといえる。最後に俺だが、作戦立案自体は自画自賛するが客観的から見ても完璧に近いと言える。だがどこに核があるか分からない状況で炎を使った攻撃をしたことが大きな減点といえる。また、最後切島を気絶させる段階で攻撃せずとも確保テープを巻けば終わりなのにあえてトドメを刺した。これはでかい減点と言えるだろう。それらを踏まえると瀬呂が1番ベストなプレイをしてたと言えるだろう」

 

「「「「「お〜」」」」」

 

 みんな感心してるけど、分かってたの他にもいるだろ。特に轟ちゃんとか

 

「正直、私も同意見です。しかし火群さんはなぜ自分のいいとこを言わないんですか?火群さんのよかった点をあげるとするなら作戦立案と相手がどう出るかをよく理解してた点はさすがでしたわ」

 

 八百万さんからいい評価を貰った。やったぜ!

 

「う、ウム、その通りだ。火群少年(思ったよりも言われた。八百万少女と言い凄くない?)」

 

「常日頃から自分のことを第三者視点で見つめてますから」

 

 そしてそのまま戦闘訓練は終わり、更衣室で制服に着替えて教室に戻って身支度をする。

 そんな中俺は、爆豪と話をして戻ってきた緑谷を呼び出した。

 

「どうしたの?火群くん…僕を呼び出して」

 

「すまんな緑谷。お前にある提案をしたくてな」

 

「提案?」

 

 間違ってない。これは俺にも利益であり緑谷の為である。

 

「お前のその超パワーの個性……使いこなしたくないか?」

 

「えっ!?」

 

 驚いてる。当たり前だろうな、全く違う個性の奴に教えられたくはないだろ「ぜひお願いします!!」うし……アレ?

 

 目の前を見ると目を輝かせて早く教えて欲しいと言いたげな緑谷が……

 

「いいのか?俺の教えで……」

 

 驚きながら聞いてみる。だが、緑谷はそんなことお構い無しに言い放つ。

 

「構わないよ!むしろ教えてくれるのなら万々歳だよ!!」

 

「そ、そうか。ならいいんだが……」

 

「それで!どう扱えばいいの!?」

 

「あ、あぁ、それは……」

 

 そうして説明を始めた。10分経った頃ぐらいに説明が終わった。分かりやすいように説明をしたつもりだ。緑谷は終始、頷いてただけだったからわかんない。

 

「そんな方法があるなんて……でも、確かにその方が使いこなせるかも」

 

 どうやら伝わったようだ。良かった……じゃ、帰りますか。

 

 こうして紅煉は帰路につく。帰り際に食事も済ませようと思い『麻婆専門店』で食事をとった。美味かった。




第3話、書き終わりました。
今回の戦闘訓練の相手を切島くんにしたのは頑丈だからです。
見てる人のほとんどが「轟じゃないの?」と思ったでしょうが、轟ちゃんとの戦闘は雄英体育祭まで伸ばすことにしました。
轟ちゃんとの戦闘はお楽しみに
そして最後に緑谷出久にワン・フォー・オールの使い方を教えました。緑谷を序盤から少し強めにしておくことで後の雄英体育祭に活躍させようという計らいです

【雄英コソコソ裏話】
1話から登場してる紅煉の技
『紅蓮腕(ぐれんかいな)』について
知ってる方もいると思いますが『紅蓮腕』の元ネタは「るろ○に剣心」に登場する志○雄真実の弐の秘剣と言われる技です。
本来は「相手を掴んだ状態で、手甲の表に仕込んだ火薬に焔霊(壱の秘剣)で火をつけて小爆発を起こし、相手を吹き飛ばす技」ですが、紅煉の場合は「火を纏った腕で相手を掴み(もしくは掴んだ状態で炎を弾けさせ)小爆発を起こし、相手を吹き飛ばす技」としています。
1話を見て分かるとおり、紅煉は「怪焔王の代名詞となる技」を『火拳』にするつもりですが
クラスメイトから見たら『火拳』よりも『紅蓮腕』の方が怪焔王の代名詞となってるようです。
ちなみに『紅蓮腕』の使用率が高い理由は「子供の時から修行の時によく使ってた」という理由だそう。もうこの技が『怪焔王』の代名詞でいいのでは?


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火群とUSJ襲撃
第4話 火群とマスゴミ。たまに委員長決め


前回のあらすじ
戦闘訓練して勝った。
緑谷に提案。どうなる緑谷!



作者「今回のヒーローアカデミア!!」
紅煉「いや今回のはダメでしょう!!」


 相も変わらず通学してると、入学から数日、変わらない通学の風景に馴染まないものがあった。

 ナンバーワンヒーローであるオールマイトが、国立雄英高等学校で教鞭をとっている。

 このビッグニュースは瞬く間に全国を駆け抜け、一晩明けた翌日の早朝には雄英高校の前で報道機関の人間が所狭しと群がり、好き勝手に取材活動に勤しんでいた。

 

「ねぇ!オールマイトの授業について聞かせて!」

 

「オールマイトはどんな授業をしてるの?」

 

「オールマイトの授業について」

 

 彼らは通学してきた生徒達を捕まえては相手の都合を考える事無く、興味の赴くままに質問を矢継ぎ早にぶつけ対象の学生が足早に歩き去れば、また違う学生へ不躾にカメラとマイクを向けては質問を投げかけていく。

 それを見た紅煉は腹が立った。というか……キレた。

 そしてそんなキレた紅煉に気づかないマスコミは紅煉にも質問を投げかけた。

 

「ねぇ君!オールマイトはどんな授業をしてるのかな!?教えてくれない!!?」

 

「……うるせぇ」

 

「えっ?」

 

 目が点になるマスコミの1人。それに気づいたのか周りのマスコミもこちらを向いてきてマイクやカメラを向けて「オールマイトの授業について」と、聞いてきた。

 

「……いい加減にしろや、マスゴミ共」

 

 冷たく、重く、恐ろしい声を発しながら威圧を放つ。学生が出してもいい威圧じゃない。

 

「「「「「ひっ!!」」」」」

 

「……あんたら何してんのか分かってんのか?生徒達が社会について学ぶこの学び舎にアンタらはその門前で座り込み通学の妨げをしている……簡単に言えば邪魔になってんだよ」

 

「なっ、わ、私たちは取材をしに来てるんです!!これが仕事なんです!!」

 

「そうだ!仕事なんだよ!」

 

「何も知らない子供が私たちの仕事に口を出すんじゃない!」

 

 マスコミの発言は紅煉の怒りを更に上げた。

 

「はぁ?取材?仕事?……どこが?」

 

「「「「「「はっ?」」」」」」

 

「取材ってのは双方の同意があって取材と呼ぶ。違いますか?」

 

 ニコッと笑いながら軽く手を広げ語る。まるで支配者の如く

 

「あなた方がしているのは我ら生徒、そして教師からしてみれば迷惑行為そのもの、犯罪に走りきれないヴィランみたいだ」

 

「「「「「「ッ!」」」」」」

 

「俺達は、各々目的は違えど、ヒーローを目指す者だ。その為に俺らは勉学に励み、こうして学校に来てる。それなのになんですか?あなた方は……オールマイト、オールマイトって、馬鹿みたいにさ……どうせアレだろ?「No.1ヒーローのオールマイトだから大変立派な教えをして完璧な授業にしてるに違いない」とか、そんな事を思ってここに来てんだろ?」

 

 それを聞いて顔を真っ赤にするマスコミ達。それを見て図星だったかと確信し、目を細めてドスの効いた低い声で言い放つ

 

「……ふざけんなよ?てめぇらはオールマイトを、そして長年教師をしてきている人達をなんだと思ってんだ?就任していきなりベテラン教師並みの教えをなんもしたことの無いオールマイトが、出来るとでも思ってんのか?どうせお前らの事だ。「オールマイトの授業ですか?間違いなく完璧ですね。教わる事が多くて素晴らしいと思います」って言わなきゃ納得しねぇんだろ?無理に決まってんだろ。いきなりの授業で完璧に間違いなく教えられる事なんか……そんな最初っから何でもかんでも出来る奴がいたら俺達だってヒーロー目指すために勉学を学んでねぇんだよ……努力してなんぼだろうが。ヒーローだろうが警察だろうが政治家だろうが……精一杯努力して為すんだろうが。オールマイトの授業だってそうだ。いきなり生徒が「すごい分かりやすい!」なんて言うような授業すると思うか?思う訳ねぇよ。実際に俺らがしてもらった授業ではカンペ見ながら説明してたしな……ベテラン教師ならカンペ見ずに出来るだろうよ。だけどベテランじゃないオールマイトが急にベテラン教師並に授業すると思うか?否。そもそも出来ねぇ。努力してやっとベテラン教師並にできると思うぜ?何が言いたいか?お前らのしてるこの行動はヒーローを目指して勉学に励み努力する俺ら生徒からしても迷惑。そんな俺らをヒーローにして世の為、人の為に努力して教えてる教師からしても迷惑。さらに教師にとって迷惑なのはテメェらの勝手な妄想で新米教師オールマイトがベテラン教師より上に見られてることも迷惑だ。お前らで言うなら自分らよりも新人の方が上に見られてるもんだ。迷惑極まりないだろ?それをしてんだよお前らは……そもそも来るのならそれなりの礼儀があるんじゃねぇのか?学校側にアポを取るとかよォ……どうせお前らのことだ。してねぇんだろ?でなきゃこんな朝早くに来てるわけねぇもんなぁ?そんな子供でも出来そうな約束が出来ないとか、いい歳した大人が恥ずかしくないんですかァ?」

 

 そこで見下ろすような体制をとって

 

「俺みたいなガキに言われて何も反論できないのは事実だからだろ?お引き取りください。さっさと帰って礼儀という言葉の意味と由来、その他諸々と自分らの犯した過ちをノート丸々1冊にまとめて上司に提出して下さい。それじゃ、Auf Wiedersehen(さようなら)

 

 そのまま一度礼をして校門に入る。校門のそばに相澤先生がいるのを見ると俺が最後の一人らしい。

 

「言っておくが、ホームルームに間に合わなかったら遅刻な」

 

「マジっすか」

 

 急いで教室に向かった。ちなみに1人の女性が「君!取材をさせて!」と言いながら入ろうとした結果UAバリアーに阻まれた。名前はダサいが高性能なんだね。

 

 教室に入るとみんな俺の話をしてる。

 

「最初あの威圧感じたときはビビったぜ!火群ってあんな顔もできるんだな!」

 

「目に感情が一切なかったから相当怖かったな。お願いだから俺らにあの目を向けないでくれよ?」

 

「“馬鹿な”ことしない限りは向けることはねぇよ」

 

 切島と上鳴が言ってきたので峰田を見ながら言う。見られた峰田はその時、後ろを振り向けないほどの悪寒と恐怖を感じたと言う

 

「にしても、最後なんて言ってたんだ?英語?かなんかで言ってたけど」

 

 耳郎さんが聞いてきた。そういえば彼女の耳はいいんだった

 

「あぁ、アレね。ドイツ語でさようならって言ったんだよ」

 

「「「「「ドイツ語ォォォッ!?」」」」」

 

 みんなが驚いてる。ドイツ語を話せるとは思わなかったんだろ。

 

「なんで知ってんの!?」

 

「中学時代にドイツから来た友人に教わってね……簡単なドイツ語なら出来るよ」

 

「すっげぇな……」

 

 そしてホームルームが始まる。

 

「今日は学級委員長を決めたいと思います」

 

『学校っぽいの来たァァァっ!!』

 

 相澤先生が学級委員長を決めると言い出して来た。やっぱあるのね。てか皆やる気満々じゃん……俺はする気ないけど。リーダー?無理無理、そんなタマじゃないし

 

「静粛にしたまえ!!」

 

 そこで声を上げたのは飯田だ。

 彼曰く、学級委員長は他を牽引する重要な仕事なのだから、民主主義の規則に則って投票で決めるべき議案なのではないか(意訳)、とのこと。ただし、そう発言する本人も挙手をしていたので台無しである。

 

 因みに相澤先生は、時間内に決まれば決め方はなんでも良いらしかった。先生ってなんだっけ?

 

 ちなみに俺は緑谷にあるアイコンタクトをした。緑谷も気付いたらしい

 

 投票の結果は……

 

飯田天哉、緑谷出久、八百万百…二票

 

麗日お茶子、轟凍火、火群紅煉…0票

 

上記に出ていない名前…一票

 

「僕二票!?」

 

「僕にも!?何故だ!?」

 

「他に入れたのね」

 

「お前もやりたがってたじゃん……入ってるみたいだけど」

 

 やっぱり原作通り麗日さんと飯田は緑谷に入れた。これを見越して緑谷に「飯田に入れよう」とアイコンタクトしたのだ。

 

「票が入ったのはいいが、どうする?」

 

「決選投票?」

 

「やってる時間がもったいないじゃないの?」

 

 二票が3人。そりゃ決めかねない筈、だから先手はもう打ってある。

 

「僕、飯田くんが委員長で、八百万さんが副委員長でいいと思うな」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

「同感だ。飯田はこの委員長決めに率先して投票の発案をし、尚且つ自分以外の人に票を入れた。自分もやりたいのに他の人に入れるのはそうそうできる事じゃない。だからこそ俺はそういった人間が委員長の座につくべきだと思う。八百万さんは確かに委員長に向いてるかもしれない。現にそう言った事に向いてると思う。だからこそ、率先し指揮する飯田を委員長とし、様々なことに長けてる八百万さんを副委員長とするのがいいと思う。文句あるやついるか?」

 

 そう言うと皆黙るが、納得した様子だ。

 

「……確かにそうだな」

 

「現に飯田のおかげでほとんどまとまりそうだったしな」

 

「緑谷はいいのか?」

 

「僕はいいよ、あまりこういうの慣れてないから」

 

「分かりましたわ、副委員長の任を、しっかりと務めますわ!!」

 

「僕も、皆の手本となるように頑張ろう!!」

 

「決まりだな」

 

 あ、イモム……相澤先生が起きた。

 

「それじゃ、飯田を委員長。八百万を副委員長とする。以上だ」

 

ーーーー

 

 そして昼。俺と麗日さん、飯田と緑谷で食事をしていた

 

「なるほど。緑谷君と火群君が」

 

「でも、なんで飯田君に入れたの?デクくんも火群君も」

 

「クラスをコントロールして投票に持ち込んだから以外に、理由はないさ」

 

「僕もかな」

 

 そうして皆で談笑していると後ろから気配を感じなにかされそうだったので頭を下げて避ける。

 

「なっ!?」

 

 どうやら誰かがわざと俺に肘をぶつけようとしたらしいが、空ぶったようだ。てかなんで気配でわかったんだろうか……まぁいいや。

 

「随分なご挨拶だな?」

 

「ふん。君の頭が大きいから当たりそうになっただけさ」

 

「……」(謝罪も無しか。少しイラッときたな)

 

 振り返ると金髪の優男が立っていた。原作通りならこいつはアイツだろう。

 

「君が入試トップの人だよねぇ?冴えない人だなぁ」

 

 うん、間違いないな。笑いながら煽ってくる……てかやめてその話題。ほら、遠くにいる爆豪が俺に敵意剥き出しで睨んでるじゃん。

 

「いきなり何だ君は!?失礼にも程があるぞ!」

 

 飯田の注意も笑って無視する。本当にヒーロー志望か?あ、やべぇキレそう。

 

「そういえば君達A組だけが入学式にいなかったよね。あれ〜、これってA組だけハブられているんじゃないかな~。入学式ってさ、何回も経験できるものじゃないよね。それを逃すなんてさ君らは疫病神なんじゃないかな。あ〜やだ、その不運さで敵を引き寄せたりしないでおくれよ。迷惑だ「ア゙ァ゙?」ヒッ?!」

 

 本日二度目のガチのキレ発動。別名ヤサ紅煉(クラスメイト命名)。

 ドスの効いた低い声で優男を睨みつける。もはや恐怖でしかない。

 

「黙って聞いてれば言いたい放題言ってくれるじゃないか……俺達は楽しく飯を食ってたのによォ。何様だてめぇ?その発言から察するにてめぇもヒーロー科なんだよなぁ?ヒーロー目指す奴が同じ志持つものに対してなんだその態度?挨拶の一つも出来ねぇのかこの礼儀知らずが……それとA組がハブられてるだァ?こっちだって入学式を楽しみにしてたわ、だけどお優しい優しい我らが担任はそんな暇はないとヒーローを目指す者としての自覚を教えてくれたんですが何か問題でも?自由な校風が売り文句なこの雄英高校。先生側もまた然り。その校風に従っただけですが貴方はこの雄英高校を否定するのですか?どうなんですか?」

 

 睨みながら立ち上がり見下ろす形になった紅煉に優男はガクガクと震えていた。

 

「いい加減にしろ!」

 

「ほぶっ!?」

 

 背後からオレンジの髪色をした少女に首筋辺りに手刀されて気絶した産まれたての子鹿(優男)

 

「ごめんねA組。こいつちょっと心がアレだから」

 

「いや、大丈夫だ。俺も熱くなりすぎた」

 

(((正直に言うと怖かったです)))

 

 緑谷と麗日と飯田は同時に思った。

 

「私はB組の拳藤一佳。よろしく」

 

「A組の緑谷出久です。よろしく」

 

「同じくA組の麗日お茶子。よろしくね拳藤さん」

 

「俺はA組の委員長の飯田天哉だ!よろしく拳藤くん!」

 

「俺は火群紅煉。よろしくな、拳藤さん」

 

 それぞれ自己紹介し、雑談していると突然、大音量のサイレンが校舎全体に鳴り響いた。

 

『セキリュティ3が突破されました。生徒は速やかに屋外へ避難してください』

 

「セキリュティ3って何ですか?」

 

「校舎内に誰か侵入してきたって事だよ! 3年間でこんなこと初めてだ! 君達も早く避難しろ!」

 

 飯田が近くのテーブルにいた3年生に状況を教えてもらい避難を開始する。

 その後は原作通りに進んで、飯田が生徒を鎮まらせた。

 そんな中、紅煉は一瞬少しだけ浮かない表情を見せた。それを見た緑谷はすこし不思議な表情を浮かべたが、気にすることはないと思った。

 しかし、紅煉以外は気付かなかった。悪意が、そこまで来てることに




第4話、書き終えました。
マスゴミ共に対する正論?そしてB組の金髪優男(誰かはあえて言わない)に対しガチギレ。
そして最後にマスゴミ共の襲来が起きました。
次回、とうとうやって来ます。紅煉がどこに飛ばされ、どう動くのか……お楽しみに!


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第5話 火群とUSJ襲撃・前編

前回のあらすじ

通学途中マスゴミ共が腹立つ取材をしておりガチギレ。
恐怖を植え付けた。
その後委員長決め。緑谷と連携し飯田に入れる。飯田が委員長。八百万が副委員長となる。
昼食中にB組の金髪の優男が談笑してる中煽って割り込む。二度目のガチギレ。優男に恐怖を植え付けた。
その後マスゴミ襲来。生徒達は焦って逃げるが飯田の機転のおかげで収まる。
緑谷達はほっとするがそんな中、紅煉1人だけ浮かない表情を浮かべていた。


 マスゴミ騒動から数日

 

 

 A組はヒーロー基礎学の時間であり、教室で相澤から内容が話される。

 

「今日のヒーロー基礎学は俺ともう一人も含めての三人体制で教えることになった。――内容は“人命救助”訓練だ。――今回は色々と場所が制限されるだろう。ゆえにコスチュームは各々の判断で着るか考える様に」

 

「?」(なった?特例なのかな?)

 

「……」(とうとう来たか…この時が)

 

「レスキュー…今回も大変そうだな」

 

「ねー!」

 

「バカおめー、これこそヒーローの本分だぜ!? 鳴るぜ!! 腕が!!」

 

「水難なら私の独壇場。ケロケロ」

 

 人命救助レスキュー訓練に対し、それぞれの思いを口にするクラスメート達。

そんな中紅煉のみ、何かを決した表情を見せる。

 

「訓練場は少し離れた場所にあるから、バスに乗って移動する。出発は20分後だ。以上、準備開始」

 

ーーーー

 数分後。バス内部

 

「こういうタイプだった! くそう!!」

 

「どんまい!」

 

 訓練場行きのバス。その車中で頭を抱える飯田。

 

 バスに乗り込む際、委員長らしく誘導したのは良いが、バスの座席が所謂2人がけの前向きシートばかりではなく、横向きのロングシートも混在した仕様だったのだ。これでは出席番号順に並んでいても意味がない。

 

「私、思ったこと何でも言っちゃうの。緑谷ちゃん」

 

「うわぁぁ!はい!蛙吹さん!」

 

「梅雨ちゃんと呼んで。あなたの個性、オールマイトに似てる」

 

「ええぇぇ!そ、そそ、そそうかなぁ!?ぼぼボクはあのぉそのえっとぉ」

 

 原作通り鋭いな梅雨ちゃん。てか緑谷、隠すのならもっと冷静さを保てよな。

 

「待てよ梅雨ちゃん、オールマイトは怪我なんかしねぇぞ?似て非なるアレだぜ」

 

 ナイス切島。ここは俺も便乗しよう。

 

「その通りだ。俺の個性だって炎。そしてNo.2ヒーローのエンデヴァーも炎だろ?それと同じさ」

 

 切島がうんうんと納得してくれた。ありがてぇ……轟ちゃんの方から殺気という名の視線を感じる。目の敵にされてるなぁ…

 

「でもさ、増強型のシンプルな“個性”はいいな! 派手で出来る事が多い!俺の『硬化』は対人じゃ強ぇけど、いかんせん地味なんだよなー」

 

「そうか?プロでも十分やっていけるとは思うが…」

 

「プロなー! しかしやっぱヒーローも人気商売みてぇなとこあるぜ!?」

 

「そういう意味で考えたら火群、轟、爆豪も派手で強いってことになるか?」

 

「爆豪ちゃんはキレてばっかだから、人気出なさそうね」

 

「ハァッ!!? 出すわゴラァ!! こんな半分女やヘタレ炎野郎よりもメッチャ出すわぁッ!!」

 

「ほらキレる」

 

 蛙吹の鋭い指摘に逆ギレし、紅煉や轟を指さしながら叫ぶ爆豪だったが、蛙吹はどこか納得する様に呟く。

 てかおい、誰がヘタレ炎野郎だって?

 

 それから話している内にバス移動が終わり、到着したのは遊園地のような訓練所だった。様々な災害を再現したアトラクションのような場所。

 

「すっげーーー!!USJかよ!!?」

 

 切島はテンションが上がっている。

 

「水難事故、土砂災害、火事……etc.エトセトラ。あらゆる事故や災害を想定し、作られた…ウソの災害や事故ルーム(USJ)!!」

 

 宇宙服のような格好の人物が、こちらへ近づきながら説明を始め、その名称を言う

 

((((((本当にUSJだった))))))

 

「その名称は大丈夫なんですか?」

 

((((聞いちゃった!?))))

 

 よく聞いたな!? みたいな視線を皆が向けてくるけど、気になったので仕方ない。

 

「大人の事情は気にしないで!」

 

((((そしてめっちゃ誤魔化された!!))))

 

 親指を立てる宇宙服の先生らしき人。

 

 というかこの人、テレビで見た事がある大分有名なヒーローだ。

 

「スペースヒーロー『13号』?」

 

「うん。災害救助でめざましい活躍をしている紳士的なヒーローだね」

 

「わーー! 私好きなの13号!」

 

「そうなん?」

 

「そうなんだ!」

 

 ぴょんぴょん跳ねてテンションを上げている麗日。

 

 好きなヒーローに会えて嬉しくなるのは分かる、麗日にもこんな一面があるのは微笑ましいものだ。

 

「えー始める前にお小言を一つ二つ……三つ……四つ……」

 

((((増える……))))

 

「皆さんご存知だとは思いますが、僕の個性はブラックホール。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」

 

「その個性でどんな災害からも人を救い上げるんですよね」

 

 緑谷の言葉に麗日が物凄い勢いで頷いている。酔いそうだな、大丈夫か?

 

「ええ……ですが、しかし簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう個性がいるでしょう?」

 

『人を殺せる力……』

 

 その発した言葉に皆が自分の手を見たり腕を組んで考えたりしている。

 千差万別の個性とはいえ、殺傷能力があるものはそれなりに多い。

 俺の『怪焔王』がそうだな。人を焼き殺せる力だ。

 

 

「超人社会は”個性”の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているようには見えます」

 

「しかし一歩間違えば、容易に人を殺せるいきすぎた個性を個々が持っていることを忘れないで下さい」

 

「相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘訓練でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います」

 

「この授業では心機一転! 人命のために”個性”をどう活用するのかを学んでいきましょう! 君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない。助けるためにあるのだと心得て帰って下さいね。以上! ご静聴ありがとうございました!」

 

 終わりと共に惜しみない拍手と歓声が挙がった。

 

『どんな個性でも使う人次第。』

 

 それを分かりやすく表現した言葉は、俺の胸にしかと響いていた。

 

 

 瞬間、紅煉に悪寒が走る。

 それと同時に相澤先生が何かに気づいたようにUSJの中央広場にある噴水付近に目を向ける。見ると黒い霧状のモヤ突然出現し、少しづつ大きくなり広がっている。

 そのモヤからどんどん人が出てくる。間違いない……来た

 

「何だアリャ? また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」

 

 そんな中、みんなも気づいたのだろう。緑谷が動こうとする

 

「動くな!」

 

相澤先生がゴーグルを目に掛けて構えながら言う。

 

「アレは……本物の(ヴィラン)だ」

 

「「「「「!!!?」」」」」

 

「先生! 侵入者用のセンサーは!?」

 

「ありますが……反応しない以上、妨害されているのでしょう」

 

「そう言う個性持ちがいんのか。――場所・タイミング……馬鹿だがアホじゃねぇぞあいつら」

 

「……用意周到。無差別じゃなく、目的ありの奇襲だな。狙いがあるのか?」

 

 驚く生徒が多い中、八百万・13号・轟・紅煉が事態の把握をする中、相澤はイレイザー・ヘッドとして動き出だす。

 

 そして、生徒達がどよめきながらも相澤や13号の指示の下、個性を用いて生徒達が救援を呼ぼうとするのを相澤は確認した後単身でヴィランの群れの中へと飛び込んでいく。

 ヴィラン達が生徒へ注意を向ける前に自身が引き付け、救援が来るまでの時間を稼ぐために。

 その間に生徒達は13号主導の下避難を開始しようとするも、全身を黒い靄に包まれた……否、黒い靄が人を象っているかのようなヴィランに立ち塞がられたことで足を止められてしまい。

 平和の象徴であるオールマイトを殺す事が目的だと告げると、勝己と切島の奇襲を意に介することなく己の個性によって生徒達を掴み、施設内のあちこちへ無造作に散らした。

 

 それは紅煉もまた例外ではなかった。黒いモヤに絡まり飛ばされてしまう。

 

 空に放り投げられた紅煉は軽い身のこなしで数回前回りしたあと地面に着地する。

 

「火群さん!?」

 

「えっ!?火群!?」

 

「お前も飛ばされたのか!?」

 

「八百万さん、耳郎さん、ア……上鳴か」

 

「今何言いかけたの!?俺のことなんて言おうとしたの!?」

 

 どうやら落ちた先は山岳ゾーン。丁度いい敵を一気にぶっ倒してこの3人を入口まで避難させよう。

 

「おうおう、ガキが四人か、少しは楽しめ「《火拳》!!」えっ?」

 

「「「「「ぎゃああああああああっ!!?」」」」」

 

 入試に耳郎が見た炎の拳が一気に敵を薙ぎ払い殲滅させた。

 え?なんで速攻で潰したか?先延ばしにすると面倒臭いから

 

「なっ、い、一撃かよ」

 

「個性把握テストで見せたのは力の一端だと言うの?」

 

「す、すごい」

 

「よし、行こうぜ」

 

 地中に隠れてる敵も流石に火拳の熱さで悶絶してるだろうからほっとく。

 

ーーーーー

 

 4人が入口に戻ると13号先生は倒れていた。話を聞くとあのワープゲートにやられたらしい……麗日さんも芦戸さんも不安がっている。ちなみに飯田は救援を呼びに行ったらしい。さすがは委員長だ。さて、ここからとる行動は

 

「……八百万さんは副委員長としての役目を全うし指示と13号先生の治療を頼む。他の皆も各々が出来ることを模索してくれ……いいな?」

 

「わ、分かりましたわ」

 

「お、お前はどうすんだよ?」

 

「……あんた、まさか……」

 

 皆がポカンとしてる中、耳郎だけ気づく。

 

「……相澤先生1人じゃあの数は無理だ。俺も行く」

 

「「「「「なっ!?」」」」」

 

 皆驚く。当たり前だろう……相手は個性を持て余してるとはいえ多数の敵。ただの学生が相手取って勝てる訳では無い。

 

「だ、ダメです。ここで、待機を」

 

 13号先生も混濁した意識の中告げる。皆がそれに便乗しようとした時……紅煉は言った。

 

「俺の求めるヒーロー像は……『己が視界に入る全ての人間を背負うヒーロー』……で、あるならば今ここで、目の前の先輩を救わずとして、何がヒーローか。そんなもの、ヒーローではない……ただの偽善者だ。ヒーローを真似るだけの贋作者(フェイカー)に過ぎない」

 

「「「「「「……」」」」」」

 

 皆が、13号先生というヒーローですら息を呑む。皆の目の前にいたのは……立派とは言い難いが、ヒーローだったのだから…

 

「俺は目の前の人間を見捨てるほど落ちぶれてはいない。13号先生……俺は、行ってくる」

 

「……約束して下さい」

 

「「「「「「ッ!?」」」」」」

 

 13号先生が……ヒーローが折れた。その事実は皆に衝撃が走る。が、皆もまた、『火群なら…』と、思った。

 

「必ず、生きて下さい。」

 

「……無論。死ぬ訳にはいかない……奴を捕まえるまで」

 

 そして腕を蒼炎の翼に変え広場に向かって飛び、今まさに相澤先生に掴もうとする手だらけの敵を蹴り飛ばす。

 

「っ!?……誰?子供?」

 

「火群!?なぜ、ここに!?」

 

「あっちゃ〜、奇襲かけたのに防がれたか」

 

 手だらけの敵は咄嗟に防いだらしい。相澤先生は驚いてる。

 

「なぜ来た火群!!逃げろ!」

 

「逃げる?ヒーローを目指す者に対して逃げろ?非合理的ですね。イレイザーヘッド」

 

「「「!?」」」

 

 敵も驚いてる。目の前に現れた少年はイレイザーヘッドを助けるために来たのだと理解した。

 

「俺だってヒーロー目指す者の端くれ……少しは貢献させてくださいよ……邪魔、しないんで」

 

「……帰ったら反省文だからな」

 

「はーい。分かりました。」

 

「話は終わったか?子供が一人増えたくらいはどうって事ないよ……」

 

「うるせぇ、倒れるのはお前らだ(ヴィラン)

 

 相澤先生に反省文を書かせられることになったが、まぁいいだろう。手だらけの敵は思いのほか待ってくれた。周りの敵もまた臨戦態勢に入る。

 

「さぁ、やるぞ」

 

炎を纏って構える。これが、火群紅煉の初戦だ。

 

ーーーーー

 時は少し遡り緑谷

 

 緑谷と梅雨ちゃん、そしてブ……峰田は水難ゾーンで敵を倒す算段を模索し、実行しようとしていた。

 

「フルカウル…5%!」

 

 緑谷は原作通り作戦を実行しようとするが、原作通りじゃない点がひとつあった。フルカウルを既に会得していた。

 

「デラウェア・スマッシュ!!」

 

 そして、原作通り水面に強い衝撃を与え渦潮を作りだし、峰田がもぎもぎを投げまくり、梅雨ちゃんが2人をプールサイドまでジャンプして連れていく。

 そんな中、緑谷は提案してきた日のことを思い出していた。

 

【数日前】

 

「超パワーを全身に纏う?」

 

 対人訓練の後、紅煉に呼び出された緑谷は、個性の扱い方の伝授を提案され乗った。

 

「お前の個性。見てる限りだと腕に集中してた。違うか?」

 

「いや、違くない……けど、それがなんで?」

 

「お前は個性を特別な力と思ってないか?」

 

 紅煉にそう言われ緑谷はハッと息を呑む。

 

「超常が日常となった今の時代。個性は最早身体能力の一部だ。つまり、お前のその超パワーもお前の身体能力の一部だろ?」

 

「た、確かにそうだ。でも、全身に纏うってどうやって?」

 

「それこそ今お前がイメージする卵が破裂しないイメージだ。それを別のものに置き換えてみろ……例えばパンを焼く時、どう焼く?お前の全身をパンとするなら、腕だけ焼くか?」

 

「……そうか…纏うってそういう事か!ありがとう火群君!」

 

 緑谷はなにかに気づいたようだ。それを見た紅煉は「おっ?」と声を上げる。

 

「今まで使う事に固執していた。必要な時に、必要な箇所に!」

「スイッチを、切り替えて…」

「それだと二手目、三手目で反応に遅れが出てくる…!!」

「なら、始めからスイッチを、全て付けとけばよかったんだ!!」

 

「全身常時身体許容量5%!」

「ワン・フォー・オール・フルカウル…5%!!」

 

 全身に赤いラインが入り消えると全身から稲妻が走る。

 

「おめでとう緑谷。超パワーの制御が出来たな」

 

「ありがとう火群君!君のお陰だ!」

 

「俺はアドバイスしただけだ。あとは自分で頑張れよ。応援してるぜ、緑谷出久」

 

「ッ……うん!」

 

【現在】

 

「火群君の指導が無ければここで指の1本は使えなかった……本当にありがたいや」

 

 その後、緑谷が地獄を見るのは、もう少し先の事である。




はい、第5話。終了です。
次回を中編にするか後編にするか迷っています。
今回は火群無双でしたが次回は……
そして緑谷へのアドバイスも今回判明しました。ほとんど答えでしたが……
さて、次回はとうとう火群とヤツの戦闘です!お楽しみに!

昨日投稿した火群紅煉の設定集もご覧下さい!
では、また次回!


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第6話 火群とUSJ襲撃・中編

あらすじ

敵が雄英高校敷地内のUSJに襲撃。
紅煉と八百万、耳郎と上鳴は山岳ゾーンに飛ばされるが紅煉の無双によりクリア。入口に戻ると13号先生がやられていた。飯田は救援を呼びに行ったらしい
そして紅煉は相澤先生を助けるために広場に……あれ?時間的に相澤先生もやられてるはずでは?


 敵が襲撃し、相澤先生が苦戦している所を助けに来た紅煉は、ある事に気付く。

 

「おかしい、13号先生が黒霧にやられたというのなら、何故相澤先生はまだやられてないんだ?飯田も既に助けを呼びに行ってる……俺がいる事でイレギュラーが起きたのか?」

 

 ブツブツ呟いてると手だらけの敵が紅煉に話し掛けてきた。

 

「おい、何ブツブツ呟いてんだ?お前の相手をしてやりたいが俺はイレイザーヘッドを叩かなきゃならない……それにお前とは相性悪いしな。炎とか最悪だよ。エンデヴァーの娘か?でもお前男だよな?どうなってんだ?」

 

 相性悪い。つまりは炎で中距離で攻撃出来るという意味であろうか?どちらにせよ一言だけ言わせてもらおうか。

 

「俺が女に見えてんのかよ、目腐ってんのか?その手を引っペがして俺の顔を見ろよ」

 

「は?お前ムカつくな、ここで殺そう。殺れ、脳無」

 

 あ、やらかした。手だらけの敵……いや俺は名前知ってるからいいや、死柄木を挑発してアイツを叩こうと思ったのに……クソッタレめ。

 

 脳無と呼ばれた敵は一気に俺の前まで来ると紅煉を殴るため拳を振り下ろす。その拳圧は、他の雑魚敵を蹴散らした。ちなみに紅煉は客観的から見たら叩き潰されたように見える。しかし土埃で見えない

 

「火群!!」

 

「あーぁ、いきなり死んじゃった」

 

 相澤先生は脳無のスピードとそのパワーに驚き叩き潰された紅煉を心配するよう叫ぶ。死柄木はもはや関心がなさそうだ。

 

 その様子は入口からも確認できた。

 

「火群ァァァっ!!」

 

「そんな、嘘…」

 

 見ていた皆は言葉に出せないほどのショックを受けている。

 

 さらに様子を見に来た緑谷達も……

 

「お、おいおい、火群がやられちまったぞ!死んじゃったぞ!?」

 

「ケロォ……」

 

 峰田と梅雨ちゃんが驚いてる中、緑谷だけ気付いていた。叩き潰される前、紅煉が……“飛んだ”事に。

 

「さ、脳無。次はイレイザーヘッドを殺れ」

 

「くっ!」

 

 そしてそれに気づかない死柄木は脳無に相澤先生を狙わせようとする。相澤先生も身構えるが、相澤先生もあることに気づくのか上を見上げる。

 

「あ?」

 

「《神化・不知火(しんか・しらぬい)》!!」

 

 上から2本の炎の槍が脳無を貫いた。

 

「なに!?」

 

「お前、いつの間に」

 

 それは敵も相澤先生も入口にいた皆も、そして緑谷達も驚愕することになる。

 

「勝手に殺さないでくれるかなぁ?こう見えて俺は空を飛べるんだ」

 

 背中から蒼炎翼を出して飛んでいる……紅煉の姿がそこにあった。

 

「お前、空飛ぶとか卑怯だぞ!」

 

「そんなバカ強い敵を押し付けるお前に言われたくねぇよ……」

 

「そこのガキを殺せ!!脳無!!」

 

 死柄木に命令された脳無は炎の槍を握り潰して消し、跳んで俺の目の前に来る。そう言えばさっきもそうだが、何故俺はこいつの動きについていけてるのだろう?

 答えはすぐ分かった。某願い玉を集める格闘アニメの(スーパー)に出てくる技術を少しだけ持っている。無意識に行動するその御業(みわざ)。神々はこう呼んだ【身勝手の極意(みがってのごくい)】と、それを会得しているのかどうかは分からないが……いやしてないだろう。

 どちらかといえば神がかった反射神経にも見える。どちらにせよ避ける際勝手に動くのだ。ただしこれ以上早く動かれたら無理。

 つまり100%以上のオールマイトの動きや速すぎる男、そして未来予知を持つユーモアを求める男、さらにオールマイトの師匠やその他敵には通用しない。直感で分かる……だがこの脳無くらいなら、通用する!!

 

 そうして脳無の攻撃を避け続ける。しかしやはりオールマイト並とあってちょくちょく掠るし当たる。だが当たった瞬間受け流すので大してダメージはない。

 

「チートが!!何でよけられるんだ!!」

 

「火群……見えてるのか?あの敵の動きを」

 

 死柄木はイライラしてるのか首をガリガリと掻き、相澤先生が驚いてる。見えてないよ〜。

 

「さすがに速いな。《火拳》!!」

 

 巨大化させた炎の拳でぶん殴る。しかし、紅煉は避けれてる事に浮かれたのか、この脳無がショック吸収と超再生を持つのを忘れていた。この油断もまた、無意識から外れるのだろう。炎の中から放たれた拳を避ける事も受け流すことも出来ずその身に食らう

 

「ゴフッ!?」

 

「火群ァァァっ!!」

 

 そのまま吹っ飛んで墜落。まるでミサイルが落ちたような音に皆が目を塞ぐ。

 そして開けるとそこに居たのは右腕が千切れ、頭からおびただしい程の血液を流す紅煉の姿。さらに滝のように喀血し、腹は凹んでいる。内蔵はぐちゃぐちゃだろう……

 

 ーだが……

 

「なぁ、なんで立ってられるんだ?お前、そんな傷で」

 

「火群、お前、何を隠してる?」

 

 立っていた。紅煉はそれ程の大怪我をしておきながら、立っていたのだ。皆が声を出せなかったのは立っていたから。笑いながら…

 

「いってぇな……コスチュームがダメになったじゃねぇか……ふざけやがって……覚悟しろよ脳みそ剥き出し野郎」

 

 その瞬間。紅煉の身体を蒼色の炎が包み込む。それは皆、見慣れた炎だった。しかもその炎に包まれた場所はどんどん治っていく。右腕も再生していく。

 

「アレって、蒼炎翼か!?」

 

「なんで全身に!?」

 

「もしかして、あれが本来の個性の力?」

 

 それは死柄木にも驚愕を与える。

 

「な、なんだよそれ、なんなんだ!!なんだその炎は!」

 

「特別に教えてやるよ……俺のこの炎。この個性の名は“不死鳥(フェニックス)”……“復活の青い炎”を纏い、いかなる攻撃を受けても再生できる個性だ。姿も変えることが出来る優れものだ。だから背中から炎の翼を出して飛べる。いいだろ?」

 

 その個性は聞いていた死柄木、相澤先生。そして聞き耳を立てていた障子、耳郎から皆に伝わり、衝撃を与えた。

 

「ど、どんな攻撃を受けても再生出来るとか、マジかよ」

 

「最強じゃんか」

 

「ですがそれほどの力です。何らかの代償はあるはず……と、思うのですが」

 

「見た感じ、無さそうだけど」

 

 そんな中、死柄木はさらにイラついてる

 

「チートが!!脳無より再生が速いじゃないか!!脳無は、ショック吸収と超再生を持っているのに!クソ!……あ?なんだこれ?」

 

 悪態をついていた死柄木と静止していた脳無に緑色の光の粒が沢山まとわりついてくる。まるで蛍のような光だ。

 

「どこから蛍が?」

 

「《蛍火(ほたるび)》」

 

 死柄木は出処を見ると紅煉からだ。両掌が淡い翠に光り、そこから光が出てる。死柄木は嫌な予感がして叩き落とそうとするが気付いた時にはもう遅い。

 

「《火達磨(ひだるま)》!!」

 

「ぐぎゃああああァァァっ!!」

 

「ウオオオオッ!!」

 

 死柄木と脳無は火だるまになる。脳無は転げ回って消火し、死柄木は近くの噴水に身を投げ込み消火する。

 

「さすがに決定打にはならんか……」

 

「てめぇ、殺す!殺してやる!!殺れ!!脳無!!本気で殺せ!!」

 

「なら、俺も奥義で倒す。行くぜ!」

 

 噴水から死柄木が飛び出し脳無に命令する。命令を聞いた脳無は突っ込んでくる。だが、これが狙いだ。脳無を機能停止させる為、一気にカタをつけようとする為の罠だ。

 紅煉は炎を纏って回転しながら跳び、空中で身を翻し脳無に向かって落ちていく。

 

「な、何をする気だ?火群」

 

 相澤先生が心配そうに見ている。入口にいる上鳴達や緑谷らも心配そうに見る。

 

「死ねぇ!!ガキっ!!」

 

 死柄木がそう叫ぶと脳無が紅煉に向かって跳ぶ。それが、脳無の敗因となる。

 

「《奥義 鳳凰烈波(ほうおうれっぱ)》!!」

 

 空の軌跡に出てくる英雄の大技を真似たもの。巨大な炎の鳥に姿を模して脳無へと突っ込む。脳無は空中で避ける術がなくそのまま激突し地面へと落下する。落下した直後に大爆発が起こる……鎮まると完全に戦闘不能となった脳無と炎を纏いながら立っている紅煉の姿。

 

 紅煉の勝利を物語っていた。

 

 それは皆を歓喜の声を挙げさせ、相澤先生もホッとする。

 

「勝ちやがった!アイツやりやがったよ!!」

 

「マジか!すげぇ!」

 

「強いね火群君!」

 

「……反省文無しでいいかもな」

 

 喜ぶ生徒達。相澤先生もボソリと何かをつぶやく。

 

 そんな中、やはり敵である死柄木だけ違った。

 

「くそチート野郎が!!よくも脳無を!許さねぇ!」

 

「来るか?相手になるぜ?」

 

「ヒッ!?」

 

 冷たいドスの効いた声を響かせると、死柄木は怯む。皆が安心という油断をした瞬間、絶望は始まった。

 

「仕方ない。手を貸そう弔くん」

 

「「「「「「!!?」」」」」」

 

 紅煉が驚き後ろを振り返ろうとするとその身を“黒炎”が貫いた。それに驚く皆と相澤先生。

 

「………はっ?」

 

「すいません死柄木弔……遅れました」

 

 後ろを見ると黒霧ともう1人。その人物を見た紅煉は目を見開いた。

 

「黒霧……お前、お前がいたら脳無はやられなかったんだぞ!……って言いたいけど、脳無よりもいい助っ人を連れてきてくれたから何も言わない」

 

「えぇ、“先生”の盟友。プルトンさんです」

 

「やぁ、弔くん。久しぶりだね。元気かい?」

 

 プルトンと呼ばれた男は髪は白く、目は赤く、180はある身長をしていて、顎髭を少し蓄えてる、その右手には紅煉を貫いたであろう黒い炎を纏わせている。そして、何よりも驚かされたのは……

 

「なぁ、火群に似てねぇか?」

 

「ほ、ほんとだ。な、何でだ?」

 

 その男の顔は、紅煉に似ていた。

 

「プルトン!ヒーローを50人。一般人を120人殺した凶悪敵!!」

 

 相澤先生がそう言うと緑谷はなにか気づいたように口を抑える。

 

「聞いた事がある。唯一、オールマイトから逃げ切れた敵だって」

 

「えぇ?!そんなヤバいやつなのかよ!」

 

「ケロっ!?そんな人が来るなんて……」

 

 それを聞いた峰田と梅雨ちゃんは恐怖を顔に滲ませる

 

「おや、俺のこと知っていたのか?イレイザーヘッド。これは光栄だ」

 

「なんでここに「なんで……生きてる」ッ!?……火群?」

 

「ん?火群?まさか」

 

 プルトンは紅煉の方に顔を向けると紅煉はプルトンに顔を向けており、驚愕に染まった顔をして言い放つ。

 

「なんで生きてると聞いてるんだ!!親父!!」

 

「「「「「「「えっ!?」」」」」」」

 

 その発言は、この場にいた全員。いや、プルトン以外を驚かされた。

 

「おぉ、紅煉か!?大きくなったな〜!!元気にしてたか?まさかヒーローを目指してるなんてな!父さんは嬉しいぞ?」

 

「そんな事はいい!!なんで、なんでプルトンに殺された親父が生きていて、なんでプルトンとして活動してるんだ!!」

 

 死柄木も、黒霧も、相澤先生ですら動けない。目の前で凶悪の敵とヒーローの卵が喋っているのだから……

 

「あぁ、そうだな。結論から言うなら……プルトンは俺で俺として死んでたのは俺の双子の弟だ」

 

「……はっ?」

 

 紅煉も、相澤先生も、黒霧や死柄木でさえ何も言えなかった。

 

「俺は敵として活動するのに家族が要らなくてなぁ。俺にそっくりの双子の弟を呼んでお前の母さんと一緒に殺してやったんだ!俺の影武者として弟には死んでもらってな!そうしたら父親が居ないって思ってお前は俺を探さない。俺はお前を殺さなくて済むだろ?そうじゃないか?紅煉?」

 

「……じゃあ、俺が供養してた親父って」

 

「あぁ、俺の弟だな。いやぁ、紅炎、あぁ弟の名前な。そいつの最期の一言が「なぜ、兄さんが……」って、面白かったなぁ!!紅も絶望した表情で俺に焼かれ「黙れ」……あん?」

 

 プルトンは紅煉を見つめる。少し怒りの籠った感情だ。

 

「なんて言ったんだ?紅煉。父さんにもう一度教えてくれ」

 

「黙れと言ったんだ。ヴィラン……」

 

 紅煉は腕に炎を纏わせ怒りをあらわにしながら冷たく言い放つ。

 

「俺はお前を許さないぞ……火群太陽(ほむらたいよう)いや、敵名(ヴィランネーム)プルトン。俺の手で貴様をぶちのめす」

 

「……どうやら教育が必要のようだな……紅煉。父は悲しいぞ?」

 

 黒炎を腕に纏いながら紅煉を見つめる。紅煉も負けじとプルトンを睨む。

 

「もう俺はお前を父と思わない……」

 

 紅煉にとってそれは信じたくない事実でもあった。だが信じるしかない。そして、受け入れるしかないと悟った。

 ならば俺が取るべき行動は絶望じゃない。どうこいつを捕まえるかだ。

 そう考え、復讐ではなくヒーローとして、自身の父親を捕まえる覚悟をする。

 

 すると、次の瞬間。扉が蹴破られた。

 

 プルトン、死柄木、黒霧や紅煉達が見ると、そこに居たのは……

 

「もう大丈夫。何故って?私が来た…!」

 

 平和の象徴が、そこに居た。

 

「あ、コンテニューの始まりだ」

 

 死柄木は邪悪そうに笑う。脳無が居ない今、本来なら逃げるしかないが、今ここにはプルトンが居る。オールマイトから逃げ果せたプルトンが居る。つまりはオールマイトと太刀打ちできていたのだ。それが居れば平和の象徴を殺せると考えたのだろう。実際その通りだ。プルトンも言い放つ。

 

「来たか、オールマイト」

 

「お前の相手は俺だって言ってんだろ?プルトン」

 

 冷たく、低い声でプルトンに言う紅煉。だが、言った直後、紅煉は吹っ飛んでいた。

 

「口の利き方に気をつけろ……俺は父親だぞ?」

 

「……?ガハッ」

 

「火群少年!!」

 

 喀血。何が起きたのか、どうして擬似的な身勝手の極意が発動しなかったのか?それは相手が格上過ぎるからだ。脳無なんかと比べ物にならないほど強く速いのだ。だから黒炎が飛んでくるのを察知できなかった。

 そう理解した時には、既に遅かった。自身の身体を見ると黒炎が貫いた影響か右胸に、風穴が開き、黒い炎が燻ってる。すぐに不死鳥の炎で治す。

 オールマイトはすぐに俺の前に立ち、守るように立ってくれていて俺の青い炎を見ると驚いたように目を見開く。

 

「……やはりお前に宿ったか」

 

「な、に……?どういう事、だ?」

 

 紅煉は立ち上がる気力も無いままプルトンに問い掛ける。帰ってきた言葉は……

 

「それは俺の盟友が探していた火群一族だけが持ち、100年ほど前に失われた個性だ」

 

「な…なん…だと…!?」

 

 どうやら、この不死鳥の個性は誰かが探し、そして100年間音沙汰がなかったらしい。なぜ紅煉に?

 

「まぁ俺の息子が持ってるとわかったなら決まりだな。連れて帰ろう」

 

「私がさせると思うか?」

 

 プルトンは紅煉を連れて帰ろうとするがオールマイトがそれをさせない。

 

「邪魔だな、オールマイト」

 

「君ほどじゃないさ、プルトン」

 

「黒霧。ワープゲートでアイツを連れてくぞ」

 

「はい。わかりました死柄木弔」

 

「させん!こいつは俺の教え子だ!」

 

 プルトンと死柄木、そして黒霧が紅煉を連れて帰ろうとし、それを阻止しようとするオールマイトとイレイザーヘッド。

 果たして紅煉の運命はいかに




第6話、終了です。
さすがに終わらなかったので中編にしました。
出なかったもう1つの個性がとうとう判明。元ネタは知っての通り不死鳥のマルコの動物系“幻獣種”です。
さらにオリジナルヴィランの登場です。

簡単なプロフィールを


ヴィラン名:プルトン
本名:火群 太陽
個性:?
誕生日:7月28日
身長:187cm
血液型:?
出身地:神奈川県あたり
好きなもの:?
性格:冷酷

火群 紅煉の父親で紅煉の母を殺し、自身の影武者として双子の弟を殺した張本人。オールマイトから逃げ果せたこともあるヒーロー50人。一般人を120人殺した凶悪敵。不死鳥の個性を探していると黒霧に呼ばれUSJに現れると息子と再会。息子が不死鳥持ちと知り連れて帰ろうとする。黒霧が言う“先生”という人物と盟友らしい……
容姿は紅煉よりは髪が短く白髪で、顎髭をすこしたくわえている。完全に大人化した紅煉そのものの姿をしている。

個性『??』
黒い炎を操る個性。名前とは全く異なる個性を扱うがその精度は紅煉でさえ見切れない程。


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第7話 火群とUSJ襲撃・後編

あらすじ

紅煉のもう1つの個性が判明。
そして、新たに来たヴィラン。その正体は紅煉の実の父親であった。
そしてそんな紅煉のもう1つの個性を求めようと紅煉の父は紅煉を連れて帰ろうとする


 対峙するヒーローとヴィラン。

 ヒーロー側には未だに回復しない紅煉と相澤先生、そしてオールマイト。ヴィラン側には死柄木、黒霧、そして紅煉の父親、プルトン。

 

「そこをどきたまえオールマイト。俺は息子を連れて帰ろうとしてるだけだ」

 

「息子?誰のことを言っている?」

 

 オールマイトは途中から来た。なので紅煉の父親が目の前にいる凶悪敵、プルトンだとはまだ知らない。

 

「オールマイト。奴の言う息子とは火群の事です」

 

「なに?!火群少年の!?」

 

 流石のオールマイトでもこの事実は衝撃すぎたらしい。紅煉とプルトンを交互に見ている。

 

「事実です。俺も、今まで生きてるなんて、知らなかったですけど」

 

 傷を回復させた紅煉が立ち上がって言う。その目は冷たく、プルトンを見ている。

 

「やはり再教育が必要か?紅煉。あまり息子を傷つけたくはない父の愛情がわからぬのか?」

 

「愛情?ハッ、笑止。躊躇なく俺の右肺を黒い炎で焼き貫きやがって……どう見ても愛情もクソもあったもんじゃねぇ」

 

 プルトンがわざとらしく目頭を抑えるのを見て紅煉が冷たく言う。紅煉の中ではもう目の前の男は父親では無く凶悪なヴィランというのに変わっている。普通なら精神異常を引き起こすのだろうが……二度目の人生を送ってる紅煉だから受け入れられたのかもしれん。

 

 すると、そこに4つの影が現れ。そのうちの一人が黒霧と死柄木を“氷”で動きを止める。

 

「なっ!?」

 

「む?!」

 

「お前ら…なぜ来た!?」

 

「君達、何をしに」

 

 黒霧、死柄木、相澤先生、オールマイトが反応する。現れたのは切島、爆豪、轟ちゃん、緑谷の4人だ。

 

「ダチを救いに来たんスよ……火群1人戦わせねぇ!」

 

「クソヴィランをぶっ殺しに」

 

「友達を助けに……来ました!」

 

「私はクラスメイトを助けに……」

 

 どうやら爆豪以外は俺を助けに来たらしい。視界の端で梅雨ちゃんと峰田が入口に向かうのが見えたが緑谷は待機してらしい……

 

ーーーー

 

「デクくん達ヴィランの前に出たよ!?」

 

「火群を救うためだろう。爆豪は分からんが」

 

「けろォ……大丈夫かしら?」

 

「オールマイトもいるし大丈夫だと思うぜ!……多分」

 

「でも、あのプルトンっていうヴィラン。オールマイトから逃げ果せた敵なんだろ?どうなんだ?」

 

 クラスメイトは心配そうに広場を見ている。まだ意識のある雑魚敵も大勢居るが、その全てがプルトンたちを見ている。

 

ーーーー

 

 緑谷達を見たプルトンは、不意に口を開く。

 

「……若い。まだ恐怖を知らない子供たちばかりか……そこの緑髪の少年以外」

 

「あ?なんでデクが出てくんだ?」

 

「その少年は我が息子があっさりやられるのを見ていたのだよ。恐怖し目の前に立つことすら出来ない。それが普通だ。だがその少年は目の前に立った。敬意を表する……が、蛮勇だったな」

 

 心底疲れた顔をして爆豪の質問に答えると黒い炎を緑谷に向かって放つ。

 不意をついた一撃に緑谷達は見切れず、相澤先生は愚かオールマイトも反応が遅れた。1人を除いて……

 

「《陽炎(かげろう)》」

 

 緑谷の前に炎の壁が現れ黒炎を防ぐ。炎の出た方向を見ると紅煉がそこにいた。

 

「……紅煉。父は嬉しい。先まで見切れなかった炎を見切るとは」

 

「世辞はいらない。見切りやすいよう威力も速度も落としていたくせに……」

 

 プルトンが笑いながら言うと、紅煉は冷たく言い返す。

 

「おい、切島、轟、デク……今の、見えたか?」

 

「見えなかった……あれが、本物の(ヴィラン)

 

「マジか、さっきまで俺らが戦ってたのとは次元が違いすぎる……」

 

「プロの世界は、僕らの想像以上なのかもしれない……」

 

 四人は、目の前で起こった事を信じられ無かった。同じ土台に立ってると思っていた紅煉は既に、皆の少し上に立っていたのだ。

 

「……父に逆らうか?紅煉」

 

「初めての親子喧嘩といこうか?親父殿」

 

 プルトンと紅煉が対峙する。そこでやっとオールマイトと相澤先生が現状を理解する。

 

「火群!下がー」

 

「火群少年!!そいつから離れー」

 

 そして2人が動こうとすると、2人の前に2つの影が立ち塞がる。

 

「させませんよ」

 

「おい、起きろ脳無」

 

 氷から抜け出した黒霧が相澤先生の前に立ち塞がり、死柄木の呼び掛けに脳無が起き上がりオールマイトの前に立つ。

 

「クソッ!」

 

「君達、初犯でこれは、覚悟しとけよ!」

 

「クククッ、頼れるヒーローは俺の仲間が足止めしてくれてる。一騎打ちだな?紅煉」

 

「一騎打ち?違うな、これは決闘じゃない。親子喧嘩だ。そうだろ?親父殿」

 

 プルトンと紅煉はお互いに薄ら笑いを浮かべながら語り合う。その光景を一言で表すなら………『嵐の前の静けさ』だろう。

 

「《獄炎(ヘル・ブレイズ)》!」

 

「《鏡火炎(きょうかえん)》!」

 

 黒炎の塊と猛炎の塊がぶつかり合う。その威力は緑谷達が無意識に下がる程、さらにその熱量も半端ない。

 

「あっつ!!ぶつかっただけでこの熱量かよ!」

 

「ぐっ、近付けない……」

 

 切島は熱量に驚きを隠せない、緑谷も加勢に行きたいが近付けない。

 

「ほう?俺の黒炎に耐えるか」

 

「驚くのはまだ早いぜ……《十字火(じゅうじか)》!」

 

 腕を十字にして十字架型の炎を放つ。

 

「《波状の獄炎(ヘルブレイズ・ウェーブ)》」

 

 掌から大量の黒炎が出され十字火を相殺させる。

 

「チッ……相殺されたか」

 

「さぁ、次はどう来る?」

 

 お互い余裕なのか涼しい顔で立っている。だが、紅煉の方は少し余裕がなく、逆にプルトンの方は余裕がありそうな表情だ。

 

「舐めんな!!《炎戒(えんかい)》!」

 

 プルトンの周りに炎の円を展開させる。

 

「ほう?それで?どうする気だ?これで終わりか?」

 

「まさか、ここからだ!《火柱(ひばしら)》!」

 

「ぬっ!?」

 

 炎の柱がプルトンを包む。それを見てたクラスメイト達は皆勝ったと確信した……だが、現実はそう甘くない。

 

「《獄門刀(ごくもんとう)》……」

 

 そんな声が聞こえた瞬間、紅煉がいきなりしゃがむ。

 

「あの野郎……なんでしゃがんだんだ?」

 

「さ、さぁ?」

 

 爆豪と緑谷が疑問に思った次の瞬間。黒い炎の塊がUSJの天蓋の1部を突き破っていった。紅煉がしゃがんでなければ吹っ飛んでいたであろう。

 

「……《神千斬(かみちぎ)り》」

 

 炎の柱が消え、その位置からプルトンが黒い炎で作ったであろう巨大で歪な刀を持っていた。

 

「……下手したら俺がやばかったな」

 

「さぁ、終わりにしようか……紅煉。最初の親子喧嘩は……俺の勝ちだ」

 

「なに?」

 

「《付呪・獄炎(エンチャント・ヘルブレイズ)》」

 

 刀に黒炎を纏わせ振るう。その方向は……

 

「おい!?あれこっちに来てねぇか!?」

 

「ケロっ!不味いわ、ここに居たら皆焼けてしまう!!」

 

「正気かよあいつ!!」

 

 USJ入口、皆がいる方向だ。

 

「相澤くん!!個性を使って消せないか!?」

 

「放たれた後じゃ無理です!!くそ!!間に合わない!!」

 

 オールマイトと相澤先生が焦る。爆豪、轟ちゃん、切島も動けない中、一人……いや、二人動いた者がいた。

 

「俺を投げ飛ばせ!!出久!!」

 

「任せて!《スマッシュッ》!!」

 

 紅煉と緑谷は同時に動くと緑谷は紅煉を掴み、思いっきり投げ飛ばす。その速度は黒炎を抜き、入口まで一気に到達する。

 

「「「「「火群(くん)!?」」」」」

 

「皆を、巻き込むんじゃねぇよ、クソ親父!!」

 

 紅煉は皆の前に立つと両腕に炎を纏う。

 

「あの炎、左右で温度が違う……右手が高温で左手が低温……」

 

「ど、どういうことだ?なんで温度に差を」

 

「てかなんでわかんの?」

 

「個性の特性上、そういうの分かりやすいの」

 

 轟ちゃんが炎の温度が左右で違うことに気づき爆豪が考察、切島はなぜ分かったか疑問に思ったが理由を聞いてすぐに納得。

 

「何をする気ですか?あの少年、まさか、止める気?」

 

「……だとしたらチートだぞ」

 

「「火群(少年)……」」

 

 黒霧や死柄木も見てる中、オールマイトと相澤先生も不安そう見ている。助けに行きたいが目の前に立たれて動けないのだ。

 

「さぁ、どうする?その炎じゃ、合わせても意味ないだろうに」

 

「合わせる……?まさか!」

 

 プルトンが煽るように言う。それを聞いた緑谷はあることに気づく。

 

「意味はある……いくぞ!!喰らっとけ!」

 

「《火産霊神(ほむすびのかみ)》!」

 

 両手を合わせると巨大な炎の竜巻が発生し黒炎を打ち消した。それだけではなくプルトンに向かって炎の竜巻が向かっていく。

 

「なっ!?俺の、獄炎(ヘル・ブレイズ)を……おのれ、紅煉ンンンンンッ!!」

 

「さすがに不味い!すいません!横槍を入れます!」

 

 プルトンが黒炎を消されたことに怒り、黒霧はワープゲートで炎の竜巻を別の場所へ飛ばす。

 

「器がちいせぇな、親父殿……もう少し息子の成長を喜んでくれてもいいだろう?」

 

「なんだ……今の技は……」

 

 紅煉は少し疲れた顔をして煽るように言い放ち、プルトンは怒りながら聞く。

 

「自然現象の竜巻を再現した技だ。威力は見ての通りだ。それと、今回の親子喧嘩……俺の勝ちだ」

 

「なに?」

 

 すると、オールマイトに蹴破られた扉から複数の職員……もといヒーローが駆け込んできた。

 

「待たせたね、すぐ動けるものを、かき集めてきた」

 

「1年A組!クラス委員長!飯田天哉!ただいま戻りました!!」

 

「ぐ、紅煉!貴様、まさか!」

 

「俺はお前らをここにとどめておくための時間稼ぎだったんだよ、バカ親父。いくらあんたでもプロ複数はキツいだろう」

 

 舌を出して親指で首を掻っ切る動作をする。つまりこれまでの闘いは他のヒーローが来るまでの時間稼ぎだったというワケだ。

 

「おのれぇぇぇぇっ!愚息がァァっ!!」

 

「クソチートが……」

 

 プルトンと死柄木、それぞれが紅煉に向かって怒りを向ける。

 

「プルトンさん!死柄木弔!ここは撤退を!脳無の回収を……」

 

「逃がすか!」

 

 黒霧がワープゲートで死柄木とプルトンを包み、脳無も包もうとするとオールマイトが脳無を組み伏した。

 

「黒霧!脳無はいい!撤退だ!」

 

「ッ!?ボーッとしていた、待て!」

 

 死柄木がそう言うと黒霧は相澤先生の個性が発動する前に脳無とそこいらの個性持て余しヴィランを置いてプルトンと死柄木と共に消えた。

 助けに来た先生達は他の生徒の救出に向かった。

 

「凄いね!火群くん!!強かったよ!」

 

「……ふぅ…正直に言ってキツかった」

 

「え?」

 

「今の俺じゃ……勝てない。まだ本気じゃなかった」

 

 麗日が強かったと褒めに来たが、紅煉は気付いていた。プルトンが、まだ本気を出していなかったことに……

 

ーーーー

 

 その後、警察の方も来て取り残されたヴィランと脳無を逮捕した。今回の襲撃事件で出た負傷者はほぼゼロ。殆どが軽傷で済んだ。唯一大怪我をした紅煉も不死鳥の個性で傷を癒し、13号先生の怪我もある程度癒した。

 

 そしてオールマイトは自身の親友である警察の塚内という方に、ある言葉を伝えた。

 

(ヴィラン)も馬鹿なことをした!!1ーA(このクラス)は強いヒーローになるぞ!!」

 

ーーーー

 

「あのクソチート野郎が!!」

 

「まさか、あそこまで強い生徒がいるとは」

 

「まだだ……」

 

「「ッ!!」」

 

 死柄木は紅煉に対して悪態をつき、黒霧は驚きながら話してるとプルトンがそう言い放つ。

 

「あいつはまだ強くなる……盟友よ、俺たちの捜し求めるものもあったぞ」

 

『それは本当かい?プルトン』

 

 プルトンが向いた方向にはテレビがあり、それはどこかに繋がってるのか電話のようになっている。

 

「嘘はつかん……奴の個性を私が奪えば、俺とお前で新たなる世界を作れるぞ」

 

『それは嬉しい限りだ。だが、まずは精鋭集めだな……時間はある。最強の精鋭を、作ろうじゃないか』

 

ーーーー

 

 その後、一度教室に戻り起こった出来事一つ一つ説明した後、解散することになったが、紅煉はプルトンの事を含め後日、教員会議の席に呼ばれることとなった。

 紅煉は家に帰ってまず仏壇の前に立つ。

 

「……母さん…そして叔父さん。今までごめん……気付けなかった……今日、親父と会ったよ。昔と違った……俺の知る父さんじゃなかった……ヴィランとなった親父は、俺をも傷つけた……ごめん。10年も、勘違いしてて……ごめんなさい」

 

 そう言って仏壇の部屋を後にする……そのまま夕飯を軽く済ませ、風呂に入り、寝る……が、やはり寝れずに起きる。

 何もすることがないので、とりあえず不死鳥の炎で行われる技を考えることにしたのだが、こういう時に限っていい案というのは思いつかないものである…そうこうしてるうちに既に日付も変わり小腹がすいたからという理由でカップ麺を食べる。健康に悪い?上等!

 ちなみに1週間に3回はそんな生活もあるらしい。不健康な生活を送ってるが、まぁ一般的な学生としてみたら普通な方なのかもしれない。という願望を抱いていたいというのはおかしい事なのか?はたまた普通なのか分からないのである。




父親との1戦。
紅煉は本気で戦うも、父親にはやはり敵わず終始手加減されたまま終わる。そのまま教員、いやヒーローに助けられ、後日、父親について話すこととなった。


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第8話 火群とUSJ襲撃・後日談

前回のあらすじ

自身の父親と喧嘩(バトル)して見事勝利した紅煉……と思いきや実際は父親が手加減していただけに過ぎず、自分の無力さを痛感した喧嘩となった。

自分の父親について知り、そして自分の知る父を話すため後日、雄英高校職員会議+‪α‬に参加することに


 USJ襲撃事件の翌日……紅煉は雄英高校に呼び出されていた。

 会議室と書かれた部屋をノックすると中から「どうぞ」という声が聞こえて来たので扉を開ける。

 

「しつれいします!ヒーロー科、1年A組!火群紅煉です!」

 

「やぁ、待っていたよ火群君。さぁ、入りたまえ」

 

 目の前の1番偉そうな人が座る椅子に座っていたのはスーツを着た……ネズミ?

 

「……失礼ですが、どなたですか?」

 

「よく聞いてくれたね。僕はネズミなのか犬なのか熊なのか、かくしてその正体は」

 

「そ、その……正体は?」

 

 恐る恐る聞いてみる。てか思い出してみればこの姿、原作通りなら……

 

「そう!雄英高校の校長さ!」

 

「無礼な態度をとってしまい申し訳ありませんんンンンっ!!」

 

 そう、原作通り、目の前のネズミ様は雄英高校の根津校長であった。生きてる心地がしない。

 土下座で地面に頭を擦りつけながら謝罪をする。

 

「べつにいいのさ。さ、これで揃った。話し合いを始めよう」

 

 許してくれたので立ち上がり周りを見渡すと。相澤先生等雄英高校の先生方……そして原作を知ってる者なら分かる。この当時はまだ知られてないオールマイトのトゥルー・フォームに警察官の塚内さん。まずは塚内さんから発表に入った。

 

「まず、件のヴィランですが、殆どが路地裏にいるようなごろつきばかりでした。また、脳無と呼ばれるヴィランは抵抗も何もせず連れていかれましたが、受け答えはせず、自我はないように見受けられました」

 

「となると、やはり件の黒幕はあの二人で間違いないな……プルトンと知り合いだったようだし」

 

「プルトント言エバ、ソロソロ聞コウ……火群紅煉。君ハ、アノプルトンノ息子ト相澤……イレイザーヘッドカラ聞イテルガ、事実カ?」

 

 エクトプラズムのその一言はその事実を知らない先生方を驚かせるのに十分すぎる一言だった。

 

「プルトンの息子!?」

 

「つまり凶悪敵の息子ということになるわね」

 

「……えぇ、プルトン。本名を火群太陽。奴は、俺の父親で間違いありません」

 

 皆が驚いたように声を上げてる中、事実を告げる。別に隠す意味もないしな。それに、相澤先生からプルトン、親父については全て聞いた。

 

「聞かせてくれるかい?君の知ってるプルトンを」

 

「えぇ、全て話します……俺の知るプルトンを、そして俺が、ヒーローを目指す原因となった、10年前の両親との決別となった…事件を……」

 

 今度は俺の番だ……

 

ーーーーーーー

【10年前】

 

 この俺、火群紅煉が前世の記憶を思い出す要因となった個性発覚の時の話。

 

「お父さん、お母さん、なんか、身体が熱い……」

 

「紅煉?!大丈夫!!?」

 

 俺は当時5歳。個性が発覚するのが人より遅かった。だが、その分強力な力だった。母の話では、熱で混濁してた意識の中、口から炎の吐息が溢れてたらしい……その後、気絶したらしく病院に連れていかれ、1週間昏睡していたままだった。

 そんな中俺は、前世の記憶を思い出していた。自分という自分はわからなかったが……個性が無く、異能もないただの世界の記憶を……そして、この世界をアニメで見ていたことを……

 そのまま病院で目を覚まし、検査すると個性が確認出来た。熱を操り、炎を操る個性……『怪焔王(かいえんのう)』の発現だった。

 その事実は、当時……普通の父親であったプルトンにも伝えられた。

 

「よくやったな!流石は俺の子だ!!」

 

 いわゆる親バカだった……だが、それでも俺の間違ったことはしっかりと叱ってくれる優しい父親だった。

 

 そうやって楽しく過ごしていると、事件が起きた。

 ある日、いつも通り遊びに行くと評して近くの湖で個性の練習をし、夕方に家に戻る。それの繰り返しだった。その日までは……玄関を開けてから真っ先に感じたのは……

 

“むせ返るような血の匂い”

 

 嫌な予感がし、リビングに入るとそこに居たのは血の海に横たわる母と焼け焦げた父と思われし男の姿だった。この時はわからなかったが、どうやら本当は叔父だったらしい……

 そしてフードを目深に被った男……プルトンがこちらを見てニヤリと笑い、窓を突き破って逃げた。この時俺は、なぜ殺されなかったのか分からなかったが、生かされたという事だけわかった。全てを察した時、泣いた。その声を聞いた近隣の住民が入ってきて現状を見て、ヒーローと警察を呼んだ……その後、俺は孤児院に入り、中学に入ると同時に一人暮らしを始めた。そこからオールマイトを見て、自分が何になるべきかはっきりした。

 

『己が視界に入る全ての人間を背負うヒーロー』

 

 そうなりたいのだと……理解した。そこからヒーローになるため雄英高校に入るため勉学と個性の扱いを上手くするようにした。そして、入学し、USJで父親と再会した。そして今にあたる。

 

ーーーーーーー

【現在】

 

「これが、俺の知る火群太陽と、俺の過去です」

 

 そうして前世のこと以外すべてを話した。

 

「親バカ、とても考えられんな……」

 

 トゥルーフォームのオールマイトもとい、八木さんが呟く。凶悪敵らしからぬ行動だからだろうか……

 

「火群太陽について調べたところ、現に結婚しており、死亡と記されています。時期も彼が幼稚園の時と合致しています。さらに一卵性の双子だったらしく、弟が居て、弟さんは現在も行方不明だそうです」

 

「と、なるとやはりプルトンの正体は火群太陽。そして死んだと思われし君の父親は君の叔父と見て間違いないね」

 

 塚内さんがそう伝え、根津校長が確信つける。すると、エクトプラズム先生が今、この場にいるほとんどの先生の気持ちを代弁して紅煉に言う。

 

「トナルト、我々トシテハ君ヲココニハ居サセテアゲラレナイ」

 

「「ッ!?」」

 

 八木さんと相澤先生が反応する。それをお構い無しに紅煉に事実を伝えるエクトプラズム先生。

 

「君ハ凶悪敵、プルトンノ息子……デ、アレバ我ラ雄英高校ノ示シガツカナイ……君ニハ申シ訳ナイガ退学ヲ「仕方ありませんね」……エッ?」

 

 皆が驚いた顔をしてこちらを見る。紅煉は顔を伏せながら、言葉を続ける。

 

「仕方ありません。俺はヴィランの息子、プルトンの息子だ。このままここに居たら、迷惑になる……って、言うと思いますか?」

 

 そう続けて言ってると、急に顔を上げて特に気にしてない表情をして先生方を見つめる。

 

「「「「「!?」」」」」

 

「ヴィランの息子だからコイツもヴィランだ。あんたらはそう言いたいんだろ?残念だが俺の気持ちは今も昔もヒーローになることだ。父親がヴィラン?なら捕まえて見せよう、殺せというのなら殺してみせよう。父親がヴィランだからといって、ヒーローを簡単に諦めていいわけがない。だからこの学校を辞めるつもりもない、俺をヴィランの息子だと貶すのならとことん貶せ。それでも俺は挫けない……折れるわけにはいかねぇんだ。それと、復讐のつもりでヒーローになる訳でも無い……俺は、母と叔父、そして俺のような被害者を出さないように自分の力を使うつもりだ。復讐だとかそんなモノ狗の餌にでもしてしまえ。俺は俺だ。だから、俺の夢は父親がヴィランだからという理由で折れていいモノじゃない」

 

 そう言い放つとパチパチパチと拍手が響く。その方向を見ると根津校長が拍手してた。

 

「素晴らしい。君は立派なヒーローの意思を持っている。僕は感動したよ。みんなもそうだろ?」

 

 そう言って周りを見渡す。なるほど、どうやら俺は一杯食わされたらしい。エクトプラズム先生が紅煉に話し掛けた。

 

「スマナイ、君ノ心情ヲ聞クタメニワザト煽ラセテモラッタ。許シテクレ」

 

「許すも何も、親族がヴィランだと知れば誰だってそうします。謝られることではありませんよ。エクトプラズム先生」

 

「アリガトウ。君ガ立派ナヒーローニナレルヨウ我々モ指導シテイク、容赦シナイゾ?」

 

「望む所です」

 

 そう言ってエクトプラズム先生と握手する。

 

「少年。1ついいかな?」

 

 八木さんが話し掛けてきた。なんだろ?と、思ってると名刺を渡してきた。八木俊典って書いてある。

 

「はい?」

 

「私は八木、オールマイトの事務所で事務員をしてる者だ。君に色々と聞きたいことがあってね、ここの先生方に頼んで無理を言って中に入らせてもらったんだ」

 

 まさかの設定を突っ込んできた……後々面倒くさそうになるから言っとこっと。

 

「何してるんですか?“オールマイト”」

 

「「「「「……えっ?」」」」」

 

 この「……えっ?」は八木さんがオールマイトだという真実を知ってる先生方がもはや別人並みで誰にも気づかれないトゥルーフォームをオールマイトと見破ったという驚きによる「えっ?」である。

 

「……な、なんで私がオールマイトだと?」

 

 汗ダクダクだよ、緑谷と同じで隠し事下手くそなのね、てかそれでよく個性とかバレなかったな。

 

「金髪、立ててはないが似ている前髪、その瞳に宿る平和の象徴としての折れない意志……どこを見てオールマイトじゃないと言えるのですか?いや、まぁ客観的から見たらオールマイトには見えないですけど」

 

 ちなみに原作知ってるからだけどね……デタラメだよ全部(笑)

 

「まぁ、事実なんだけど……絶対!誰にも言わないでね!私がこの姿だということ!平和の象徴としてこの情けない姿は見せられないんだ!」

 

「言いませんよ。それに、俺からしたらその姿もカッコイイと思いますよ」

 

 そう言うと少し照れるオールマイト。乙女か!

 

「そ、それで君は、プルトンの個性を知ってるかい?」

 

「いいえ、親父の個性を見たのは昨日が初めてです」

 

「個性を見せなくても見せてもプルトンが父親だと気づかなかったわけか。敵ながら合理的だな」

 

 相澤先生が呟く。そして塚内さんがまた話し始める。

 

「プルトンこと火群太陽。個性は『獄炎(ヘル・ブレイズ)』。黒い炎こと獄炎を自在に操る個性で形も自在に操るそうです。また、この個性による体温上昇も無いそうです。」

 

「火群少年の上位互換みたいなものか……厄介だな」

 

「炎を剣にしてたのは個性による操作性が高いのか」

 

 そうして暴かれたプルトンの素性は、雄英高校のヒーロー達に知られ、その後数多のヒーローにも伝えられることとなる。また、死柄木弔や黒霧についても話し合われたが、これといって情報は無く、個性については紅煉が氷を砕くところを見ていたのでそれを話し死柄木の個性も判明した。そして会議が終わり、解散した。

 

ーーーーーー

【自宅】

 

 家に帰ってすぐ、紅煉は地下の自前訓練所に向かい、プルトンの使っていた炎の刀を思い出していた。

 

「……炎の刀か…どうしたらできるのか……イメージか?イメージが大事なのか?」

 

 そうして自分も炎の形状を造るため武器のイメージをしながら炎の形を変えてみる。失敗を繰り返しながらずっとやっている。

 

 そのままやっていたら見たい番組を見逃し、なおかつ疲れて地下の硬い床で眠ってしまった為、身体中がズキズキ痛めたのはまた別の話。




これにて後日談終了。紅煉の身に起きた悲しき事件。それは彼が新たなる目標に目覚めたきっかけでもあった


次回から新章突入。とうとう始まるあの大イベント!


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火群と体育祭
第9話 火群と体育祭


前回のあらすじ
ヒーローとしての心意気を教師陣もとい、プロヒーローに叩きつけた紅煉。
家に帰って新たなる技に挑戦するが果たして……


 ヴィラン襲撃の翌日、学校は臨時休校となったが、紅煉は報告の為に出席、翌々日である今日は「休んでもいい」と言われたが休むわけにはいかない……だって皆勤賞取りたいじゃん!!それにヒーローは風邪を原因に休むわけにはいかんと思います。え?いいと思う?じゃあいいか。

 

 俺はいの一番に登校し教室で皆が来るのを待つ……今日は知らない人のための重大発表をする為だ。数十分もすると集まり始め、ホームルーム間近となる。

 

「皆ーーーーー!!朝のHRが始まる席につけーーー!!」

 

 飯田が前に立ち皆に向かって言うが皆は席に座っている。そう、立っているのは飯田だけである。

 

「ついてるよ。ついてねーのおめーだけだ」

 

 飯田は渋々席に着いた。紅煉はそんなやりとりをしているのを気にもとめず外を見ていた。そして教室のドアが開けられ、相澤先生が入って来た。

 

「おはよう」

 

『おはようございます!!』

 

 相澤先生は教卓に立つと皆を見渡す。

 

「まだ戦いは終わってねぇ」

 

「戦い?」

 

「まさか……」

 

「またヴィランが!!?」

 

 そして相澤先生から告げられた次の戦いとは

 

「雄英体育祭が迫っている!」

 

『クソ学校ぽいの来たァああ!!』

 

「待って待って!ヴィランに侵入されたばっかなのに大丈夫なんですか!?」

 

「逆に開催することで雄英の危機管理体制が盤石だと示す…って考えらしい警備は例年の五倍に強化するそうだ。何より雄英の体育祭は……最大のチャンス、ヴィラン如きで中止していい催しじゃねぇ」

 

 そのあとも説明が続き、雄英高校の体育祭は日本のビックイベント一つでそれは、過去のオリンピックがスポーツの祭典であったように、規模と人口も縮小して形骸化したが、日本においてかつてのオリンピックに代わったのが雄英体育祭となる。プロのヒーローも観るのだ目的はスカウトが主だ。

 

「時間は有限プロに見込まれれば、その場で将来が拓けるわけだ。年に一回……計三回だけのチャンス、ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ」

 

「それと、火群。話すんなら前に出ろ」

 

 話を振られた。有難い。俺から名乗り出るのは、怖かったからな……

 そう思いながら前に出る。

 

「なんの話しだろ?」

 

「何かあったのかな?」

 

 ザワつく。緑谷等は察したのか、何も言わず頷いてくれた。これで心置き無く言える……

 

「……みんな、よく聞いて欲しい。そして理解してくれ、俺は味方であると……」

 

『?』

 

「俺は、今回のUSJ襲撃事件で、首謀者の一人であるプルトンという凶悪敵の……実の息子だ」

 

 静寂。全ての音が消えるとはこのことを言うのだろう……皆の周りから音が消えた

 

『えぇぇええぇぇぇえええっ!!?』

 

 そして響き渡る絶叫。誰もが驚く。誰もが警戒した。

 そして飯田が立ち上がり言う。

 

「どういう事だ!?君の父親がヴィランとは!僕達を騙していたのか!!」

 

 そんな言葉が胸に突き刺さる。だが、意外なところから助け舟、いや、救いの手が出された。

 

「うるせぇぞ飯田。じゃあなんで目の前のやつは俺たちの為にそのヴィランと戦ってたんだよ……居なかったからといって、そいつの話を全て聞いてねぇのに決めつけんな」

 

 そう言ったのは爆豪だった……爆豪!!?

 

「かっちゃんが誰かを庇ったァ!?」

 

「黙れやデク!!お人好しのお前や丸顔なんかが言っても誰も警戒解かねぇだろうが!!だから俺がやってるんだよ!!……俺も、見てたからな」

 

 その意外な所からの発言により、飯田は何も言えなくなる。誰かを貶し、下に見てきた者が人を庇うのを見て絶句してるのだ。すると相澤先生も言った。

 

「爆豪の言う通りだ。火群の話も聞かずにやれ騙した。やれヴィランの息子だ。だから悪いヤツだと言うのなら、そいつを除籍処分にするぞ」

 

「わ、分かりました。まずは、話を聞きます」

 

 そう言って座る飯田。誰もが爆豪と相澤先生に反論しなかった。そして話を聞くことにする。

 紅煉は全てのことを話し終えた。10年前の事件の事、殺したヴィランの正体が親父だった事。その父親と戦ったことを……

 

 全てを聞いてまず立ち上がったのは飯田だ。すると腰を90度に折り曲げて言う。

 

「すまない!!君の過去を知らず騙したなどと言って!君は立派にヒーローをしていたと言うのに!僕は!!」

 

 その姿に同じことを思っていた者たちも居たようだ。顔を伏せ、申し訳なさそうにしてる。だが、俺の心は……最初から怒ってない。

 

「飯田。そして皆……ありがとうな、信じてくれて」

 

『え?』

 

「何も知らなければ誰だって言うことさ……おかしくもなんともない。だから怒らない。憎まない。分かってくれたのなら、こちらからお礼を言いたかった……ありがとう」

 

 そう言って微笑むと皆がわぁ!と叫び心配してたぞみたいな声を出してくれた。それが嬉しくて、笑ってしまった。

 

 そうこうして、放課後になると教室の前に人集りが出来ていた。

 

「何ごとだあ!!!!?」

 

「出れねーじゃん!何しに来たんだよ」

 

「敵情視察だろザコ。ヴィランの襲撃を耐え抜いた連中だもんな体育祭前に見ておきてえんだろ」

 

 爆豪は制服のポケットに手を突っ込みながら歩く。峰田は爆豪を指差し震えていた。緑谷はそれに対し「あれがニュートラルなの」と説明する。

 

「偵察なんて意味ねぇからどけ」

 

 爆豪は睨みながら、どけと言う。すると人混みの奥から声が聞こえる。

 

「どんなもんかと見に来たが随分偉そうだなぁ。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?」

 

「ああ!?」

 

 その言葉に緑谷と飯田ほかメンバーは全力で首を横に振る。そして人ごみを押し退け、気だるげな顔つきの生徒が前に出た。

 

「こういうの見ちゃうと幻滅するな。普通科にはヒーロー科落ちたから入ったって奴が結構多いんだ。知ってた?そんな俺らにも学校側がチャンスを残してくれてる。体育祭のリザルトによっちゃ、俺達のヒーロー科への移籍、あんたらにはその逆があり得る。敵情視察?少なくとも俺は、いくらヒーロー科とは言え調子に乗ってると足元ごっそり掬っちゃうぞって宣戦布告に来たんだけど」

 

 堂々と宣戦布告をした普通科の少年、それを見てA組のメンバーは大胆不敵だなと思っただろう。そして、さらに人混みの中から…

 

「隣のB組のモンだけどよぅ!!ヴィランと戦ったっつうから話聞こうと思っていたんだがよ!!エラく調子づいちゃってんなオイ!!!本番で恥ずかしい事んなっぞ!!」

 

 B組の少年も現れて大きい声で勢いよく言う。

 それを見た紅煉は……キレた。

 

「……馬鹿かてめぇら」

 

冷たいドスの効いた声を響かせる。皆は同時に思った。〔ヤ、ヤサ紅煉(グレン)が、再誕した……〕と

 

「「えっ?」」

 

 宣戦布告に来た生徒とB組の生徒が驚きの声を上げる。周りの生徒たちもポカンとした顔で見てる。

 

「テメェらは何を目指してんだ?ヒーローだろ?宣戦布告した奴はいいけどよ、他の奴らはなんだ?ヒーロー目指してる奴らが、教室前に集まって下校の邪魔しててよぉ……馬鹿じゃねぇのか?特にB組のお前」

 

 さっきのB組の生徒に目線を合わせる。

 

「お、俺!?」

 

「そうだよ。お前はなんだ?ヴィランと戦いました。そのことを詳しく知りたいので話を聞きたいです?巫山戯んな。俺たちは心に傷を負ってる奴もいんだぞ?自分の無力さを痛感した奴らが少なからず居るってのに……そんな奴らの事を考えないでそれを言ってんなら今すぐ帰れ。帰ってメンタルケアの仕方を学んで来い。てめぇのやってる事がヒーロー以前に人としてどれほど最低かを痛感してこい。熱血なのはいいことだと思うけどよ、限度ってもんがあるしなによりプライバシーもあんだぞ?ズカズカと土足で家に入って来られたらお前は怒らないのか?怒るよな?それと同じことをしてんだよお前は人が心の傷を負ってるなと思ったんならこんな事はしねぇんだろうよ……するって事はそういう事と見ていいんだよな?だとしたら俺はヒーローとしてお前を見ないどころか人として見ないぞ?分かったか?」

 

「は、はい。す、すいません」

 

「そして普通科のお前」

 

「は、はい」

 

 次に普通科の宣戦布告に来た生徒を見る。

 

「ヒーロー科全員が偉そうに見えるのなら眼科をオススメしようか?この爆豪はともかく、周りを見てみろ、そんな奴らが集ってるように見えるのか?それと別に足元を掬うなら掬えばいい。宣戦布告は受けて立つ。だが人の性格を1人から連想すんのはやめろ。聞いてて不愉快だし勝手にそう思われてイラつくんだよ……」

 

「は、はい……ごめんなさい」

 

「それと観察に来たテメェら……」

 

『は、はい!!』

 

「この爆豪が言ってた意味ねぇって理由が分かんないみてぇだから教えてやる。『偵察の来たのなら俺たちの外見以外分かることはねぇ……そんな暇があるなら体育祭までに力をつけてこい。こんな事したって意味ねぇ』って事だよ」

 

 人集りの生徒達は皆こう思った〔分かるわけねぇだろ!〕と。

 

「マジなのか?緑谷」

 

「うん。ホントだよ。かっちゃんはあぁやって言わないからね……」

 

「それにさ、さっきも言ったけどヒーロー目指すものとして邪魔すんなよ、分かってんだろ?邪魔になってること……わかんねぇはずないよな?分かったんなら解散して体育祭に向けて力つけてこい……以上」

 

 そう言うと皆ちらばっていく、ちょくちょく「すいません」「ごめん」などと声が聞こえてくる。

 そして爆豪と紅煉は普通に帰った。皆は少し雑談しながら帰った。

 

ーーーーーーー

【体育祭当日】

 出場予定の生徒達は各クラスに分けられた部屋に待機して、入場時刻を待っていた。紅煉のクラスA組の面々は各々、柔軟体操をして体をほぐしたり、張を抑えようと深呼吸を繰り返していたり、いつも通り友達と話したりと過ごしていた。

 

「コスチューム着たかったなー」

 

「公平を期す為、着用不可なんだよ」

 

 そう、雄英体育祭ではコスチュームの着用は認められていないのだ。例外としてサポート科は自分で制作したコスチュームとアイテムは持ち込みが認められている。

 

 紅煉は椅子に座り音楽をイヤホンでながしながら目を瞑っていた。体育祭までの時間は紅煉にとって、そこそこ有意義な時間だった。この体育祭で遅れをとるつもりなど毛頭ないし、寧ろ上を目指している。力を振るうことが出来るのが楽しみのと、クラスの連中や他のクラスの連中と戦う機会があると思うと、テンションが上がってくるというものだ。

 

 そして轟ちゃんが性別は違うが、緑谷に宣戦布告した。

 そして、それは緑谷への宣戦布告を聞くためイヤホンを外した紅煉にも

 

「そして火群……貴方にも勝つ」

 

「……へぇ?」

 

「言っとくが俺も負けるつもりねぇぞ……デク、轟、火群」

 

 爆豪も入ってきた。これは、負けるわけにはいかないなと確信する。

 

「いいぜ?かかってこいよ……俺も全力で応えてやる……お互い、頑張ろうな?」

 

 不敵に微笑む。そして、時間が来た。

 

『雄英体育祭!ヒーローの卵たちが、我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!どうせテメーらアレだろ、こいつらだろ!?ヴィランの襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!』

 

 通路からも聞こえる歓声と実況。そして入口で一度止まり、そして会場に入る。

 

『ヒーロー科!1年A組だろぉぉ!!?』

 

 入場と共に大きな歓声が上がった。会場360度からの歓声が放たれる。

 

「わあああ……人がすごい……」

 

「逆に少なかったらやべぇだろ」

 

 緊張している緑谷の背中を叩きながら紅煉は笑い飛ばす。

 

「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるのか、これもまたヒーローとしての素養を身につける一環なんだな」

 

 そして会場の中心に集まり、各クラス事に整列し開会式が始まる。

 

「選手宣誓!」

 

 1年生が揃うと、ミッドナイトがムチを鳴らして壇上に上がった。またも観客から歓声が上がる。

 

「18禁なのに高校にいていいものか」

 

「いいっ!!」

 

 常闇がいいのかと呟き、峰田は即答で"いい"と答えた。そんなこんなで騒がしい生徒を静かにさせるためにムチを一度鳴らし、黙らせ、選手代表の名を読み上げた。

 

「選手代表!1年A組、火群紅煉!」

 

「え!?火群君なの!?」

 

「あいつが一応入試一位通過だったからな」

 

 紅煉は呼ばれ、ミッドナイトのいる台まで歩いていく。両手をズボンのポケットに入れながら歩く。一段一段上がり、マイクの前に立ち言う。

 

「宣誓!!我々選手一同はヒーローシップにのっとり、正々堂々と戦うことをここに誓います....というのは普通の宣誓だからつまんねぇだろ?」

 

 その意外な一言に全員ザワつく。

 

「お前らがヒーローになりたいなら、自分の信念があるなら、かかって来やがれ!!だけど俺も負けるつもりはない!!俺にヒーロー目指すきっかけをくれた今は亡き母と叔父の為、俺は今日、一位を取ってみせる!!だからテメェらも全力でかかってこい!!以上!!選手代表!1-A!火群紅煉!!」

 

『う....ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ‼︎』

 

 紅煉の選手宣誓で会場のボルテージが最高潮に達した。

 

『火群!!お前やりやがったな!!最高だぜお前!!』

 

『言うようになったじゃねえか。火群』

 

『ちなみに実況は、この俺!プレゼントマイクと、誘拐(ドナドナ)したイレイザーヘッドでお送りするぜ!!』

 

『帰るぞコノヤロー』

 

 実況席も少し熱くなる。それほどの選手宣誓だったのだろう。

 

「火群君!あなた最高よ!!私そういうの大好き!!さぁ、皆の熱い想いが冷めないうちに早速やるわよ!第1競技はこれよ!!」

 

 そうして競技が始まる。

 

 俺達の体育祭は……まだ始まったばかりだ。




という訳で新章。『雄英体育祭』が始まりました!
今回の体育祭の競技内容の1部を原作とは変更してお送りしますのでご了承ください。

次回もお楽しみに!


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第10話 火群と障害物競走

あらすじ
自身の素性をA組に明かした紅煉はみんなに受け入れてもらえる。
そして再誕したヤサ紅煉。
体育祭当日では爆豪と轟ちゃんに宣戦布告を受け、選手宣誓では皆の意識を高めた。
そして、第一競技が始まる


 皆の意識を高めた紅煉は、第1競技が何かを聞く準備に入ってた。

 

「第1競技はこれよ!!」

 

 スクリーンにデカデカと『障害物競走』の文字が映し出される。

 

「内容は計11クラスによる総当たりレース! コースはこのスタジアムの外周、距離は約4㎞よ!因みに個性の発動は自由!コースさえ守れば何でもありよ!!そしてスタート地点はあの門!」

 

 そう言い、ミッドナイトは狭い門を指差す。

 

「……理解した」

 

『さあ、早く準備して!もうすぐ始まるぜ!!』

 

 そう言われ、生徒たちはスタートラインに並ぶ。そんな中、紅煉は不死鳥を発動させ、合図を待つ。

 そして....

 

『スタート!!』

 

 スタート同時に一斉に走り出す。だが、そん中でも紅煉は例外。生徒らの頭上を不死鳥の翼に変えた腕で羽ばたいていく。ちなみにスタート位置の通路は狭くぎゅうぎゅうで通勤ラッシュの電車の様に密集している。

 

「なるほどな、つまりこれが、最初のふるいというわけだな」

 

 そう呟くと同時に前方から冷気を感じ取った。紅煉はさらに上に飛ぶ。轟の氷結攻撃をかいくぐることに成功した。前を見るとクラスの連中が飛び出していた。

 

「クハッ!そう来なくっちゃァなぁ!!面白くねぇよな!」

 

 そして実況席では実況が始まる。

 

『開始早々轟ぶっぱなしたァ!!てか火群飛んでね!?どうなってんだ!?』

 

『アレは火群の個性。不死鳥(フェニックス)。自身の体、もしくは1部を不死鳥の姿に変える事が出来る。ちなみに攻撃されて傷がついても再生の炎と呼ばれるあの青い炎で傷を癒す。他者も癒せる優れものだよ』

 

『チート級に強え!!』

 

『さぁ!スタートダッシュで先頭に立ったはAクラス轟だ!さらに後続の妨害に氷結攻撃!しかし実力者はそれを躱し轟を追いかける!!さぁいきなり障害物だ!!まずは手始め……第一関門ロボ・インフェルノ!!』

 

 一般ヒーロー科の入試の時にお邪魔ヴィランとして立ちはだかった巨大ロボが今回もお邪魔としてコースに立ちはだかる

 

「入試んときの0ポイントヴィランじゃねぇか!!!」

 

「まじか!ヒーロー科あんなのと戦ったの!?」

 

「多すぎて通れねぇ!!」

 

「一般入試用の仮想敵ってやつね」

 

「どこからお金出てくるのかしら……」

 

 轟は見上げながら冷静に分析し、八百万はお金の使い方に若干の呆れている様子だった。

 

「でも、もっと凄いの用意して欲しいわ……クソな父親が見てるのだから」

 

 轟は氷結で巨大ロボを凍らせ倒壊させる。そのまま走り抜ける。そして皆が出来た道を通ろうとすると奥からまた巨大ロボが

 

「通れねぇじゃん!どうすんだよ!!」

 

 峰田が叫ぶと空から青い炎が…紅煉だ。一直線に巨大ロボに向かう。

 

『アレは火群か!?』

 

『何する気だ?あいつ……』

 

 すると紅煉は一回転してその勢いを利用し右脚を上に向けると、炎を吹き出させ、巨大な炎の大剣の形を模す。その大きさは巨大ロボをも超える。

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

『『えっ?』』

 

「いくぞ……」

 

 皆が驚く中、その大剣を振り下ろす。いや、脚から出てるから蹴り下ろす?踵落としの容量なのかもしれん。

 

「《火之迦具土神(ひのかぐつち)》!」

 

 そうして振り下ろした炎の大剣は巨大ロボを一刀両断し爆発させる。さらに大地まで軽く抉れた……

 見た目は某超次元サッカーのイギリス代表のチームのキャプテンだった男が使ってた超ロングシュートを紅煉風にアレンジしたものである。

 

『……なんだそりゃァァァっ!!?』

 

「「「「ええぇぇえええッ!?」」」」

 

 プレゼントマイクとみんなが一斉に驚く。轟も轟だったが、紅煉も紅煉でやばかった。そのまま紅煉は飛翔する。

 そして轟を抜き一気に進むと、第二関門まで来る。

 

「先頭が変わって火群!さっきのヤバかったな!そうこう言ってる間に第二の仕掛けまで到達!!火群、第一がそんなにぬるかったか? ならこれはどうだ!! 奈落に落ちたら即アウト!!ザ・フォール!!空中での移動は厳禁!地面スレスレかその下、つまり土台を避けて飛ばないといけないぞ!』

 

「なら問題ないな……はぁ!!」

 

 すると、紅煉はその姿を青い炎の鳥に変える。その姿はまさに……不死鳥

 

『おぉっと火群!姿が変わって……なんだアレ!?』

 

『昨日見してもらったがあれが不死鳥の完全形態だ。あの状態だとどんな物理攻撃も効かないらしい』

 

『マジかよやべぇ!!』

 

 プレゼントマイクらがそう言ってる間に不死鳥の姿になった火群は地面スレスレを猛スピードで進む。

 

『とかやってるうちに第二関門突破されたァ!!ん?あれ?後ろから誰か来てるぞ!?』

 

 後ろを見た火群は、一気に笑みを零す。後ろから現れたのは……

 

「待てやこの鳥野郎!!」

 

「逃がさないよ!」

 

「僕だって負けてらんないんだ!!」

 

 宣戦布告した3人だ。爆豪は爆破の推進力で一気に飛んで来て、轟は氷の個性を使ってスピードスケート、緑谷はフルカウルで攻めてくる。

 

「いいねぇ!最高だよお前ら!!」

 

 不死鳥状態から元の姿に戻り背中に翼を生やして飛ぶ。

 

『おっとぉ!一気に3人駆け上がってきたァ!!このまま最後の第三関門に向かう!!第三関門の内容は一面地雷原!怒りのアフガンだ!』

 

「「「「関係ねぇ!!」」」」

 

 プレゼントマイクの紹介も虚しく、爆豪は爆破で、紅煉は背中の不死鳥の翼で空を飛び、轟は氷結で無効化し、緑谷は一気に駆け抜けて地雷が発動する前に走り抜けて行く。

 

『あの4人地雷をものともしねぇ!!自由か!おいイレイザー!お前のクラスどうなってんだ!?どんな教育してんだよ!』

 

『俺は何もしてねぇよ、あいつらが火をつけあってるだけだ』

 

 実況席も驚くくらいの大接戦。そしてそのまま通路に入って行く。

 

「「「「負けてたまるかァァァァァっ!!」」」」

 

「超・爆速ターボ!」

 

「ホワイト・スライド!」

 

「フルカウル!上限20%!!」

 

「爆炎ブースター!!」

 

 爆豪は両手から一気に爆風を出して推進力を、轟は地面を凍らせ滑ってスピードを、緑谷はフルカウルの上限になって走行速度を、紅煉も手から炎を吹き出して素早さを高める。

 それぞれがお互いにスピードの出る様に個性を使いゴールする。ほぼ同時にゴールした。

 

『ゴーーーーーールッ!!てか誰が一位だ!?』

 

『ほぼ同時にだったな。ミッドナイトの判断に任せよう』

 

「肉眼ではわからないので、ビデオ判定に入ります!」

 

 ビデオで確認するが、4人とも同時にゴールしてるようにしか見えない。となると……

 

「一位通過は!爆豪くん!緑谷くん!轟さん!火群くん!」

 

『同率一位!!こんなことってあるのか!!?』

 

 会場から一気に歓声が上がる。この結末は誰も予想してないらしい……むしろ誰が予想出来たか?

 

「あはは、こんなことあるんだね」

 

「ちっ、次こそ俺が1位だ」

 

「いや、私がなる」

 

「あっ!?俺が……「いーや」」

 

「「「あ(え)?」」」

 

「俺が優勝してやる」

 

 緑谷が乾いた笑み浮かべ、爆豪は舌打ちしながら次の試合の1位宣言をする。轟も同じだ。だが紅煉はその先、優勝するという宣言をする。

 

「上等だ。てめぇを真っ先にぶっ潰してやる」

 

「望む所だよ、火群くん!」

 

「火群……貴方を倒すのは私……」

 

 3人ともやる気満々で結構。さてさてさーて。後ろはどうなってるのやら……と、思いながら見てみる。

 

 そして続々とゴールする人々。峰田が八百万にくっついてたので少しキレたらすぐに離れたので良しとする。

 

ーーーーー

 

 42位までゴールし、スクリーンに結果が発表された。

 

1位 火群紅煉

1位 爆豪勝己

1位 轟凍火(とうか)

1位 緑谷出久

5位 塩崎茨

6位 骨抜柔造

7位 飯田天哉

8位 常闇踏陰

9位 瀬呂範太

10位 切島鋭児郎

11位 鉄哲徹鐵

12位 尾白猿尾

13位 泡瀬洋雪

14位 蛙吹梅雨

15位 障子目蔵

16位 砂藤力道

17位 麗日お茶子

18位 八百万百

19位 峰田実

20位 芦戸三奈

21位 口田甲司

22位 耳郎響香

23位 回原旋

24位 円場硬成

25位 上鳴電気

26位 凡戸固次郎

27位 柳レイ子

28位 心操人使

29位 拳藤一佳

30位 宍田獣郎太

31位 黒色支配

32位 小大唯

33位 鱗飛龍

34位 庄田二連撃

35位 小森希乃子

36位 鎌切尖

37位 物間寧人

38位 角取ポニー

39位 葉隠透

40位 取蔭切奈

41位 吹出漫我

42位 発目明

 

 ……原作通りだな、俺と爆豪と轟ちゃん以外……てか轟ちゃんの名前って凍火なんだ……初めて知ったよ。

 

「普通科とサポート科が1名ずつ……宣戦布告した奴が勝ち上がってきやがったか…いいね、面白くなってきたってもんだ」

 

「あ?まぐれだろ」

 

「そうとも限らねぇさ……」

 

「どういう事?」

 

 爆豪が鼻で笑うと否定する紅煉。それを聞いた緑谷は問い掛けてくる。

 

「まぐれでここまで来るのは有り得ねぇってことさ……誰もが個性を使う中……ここまで来るのは素晴らしいと思うぜ……」

 

「……ちっ」

 

 事実を述べられ舌打ちをした爆豪は結果を見る。合計42人。これほどの人数が次の相手となるか……原作を知ってるがザ・フォールの際少し違ったからどうなるか……

 次の競技の内容で……すべてがわかる。

 

ーーーーー

【他の生徒がゴールする直前の緑谷と紅煉のお話】

 

「ところで緑谷。お前いつから上限を上げること出来たんだ?」

 

「昔っから体は作ってたんだよ。かっちゃんと一緒にね」

 

「えっ?爆豪と?!」

 

さすがに驚く。原作でもいじめられっ子だったはず……いったい何がどうなってるんだ?

 

「かっちゃんは口は悪いけど、ヒーローになりたいって言った僕の為に少しだけど身体を鍛えてもらったんだ。だから自由に動けるのは8%までだけど直線的な動きなら20%まで耐えられるの」

 

「へ、へぇ……」

 

 衝撃な真実に戸惑いを隠しきれない紅煉氏。そこにさらに追い打ちをかける一言が……

 

「それに、かっちゃんと一緒に海岸を掃除したしね」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜っ!?」

 

「だ、大丈夫?顔、変だよ?」

 

 今日1番の驚きを見せる。某ひとつなぎの大秘宝を巡る物語の自称神の驚いた顔と同じ顔になる。

 だって原作だとそんな描写ないし、そもそも知るのはもっとあとのはずだし

 

「ま、待て待て……じゃあ、あの時、個性把握テストの時爆豪が怒ってた理由は?」

 

「え?『まだ個性制御出来てねぇのかデクこらぁ!』って怒られてて」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!?」

 

 さらなる衝撃な事実を突きつけられ目が点になるぐらい驚く。

 

「あの、つかぬ事をお聞きしますが……ヘドロ事件の際……爆豪君助けたあとどうなったの?」

 

 原作だと爆豪は緑谷に会って感謝じゃない感謝を述べた後帰ったはず…

 

「えっ、えっと……」

 

「俺がデクのとこ行って礼を言ってたらこいつの親戚のおじさんが来てな、一緒に駄弁ってた」

 

 緑谷が少し困惑すると爆豪君乱入。だけど詳しく教えてくれたよやったね。じゃねぇよ。親戚のおじさんが来た?そんな描写はない。つまりオールマイトが来た……てことは、爆豪は始めっから緑谷が『ワン・フォー・オール』持ってる事を知ってる…?そういや俺の知ってる爆豪はもっと緑谷に突っかかっているけどしてないし、少し丸い気も……まぁ、うん……また今度考えるとしよう。

 

「そうか、無粋な質問したな。悪かった」

 

「だ、大丈夫だよ!」

 

 爆豪は何も言わずモニターを見る。もう話は終わったし俺もモニター見よ。

 続々とゴールしていくのを見ていると観客席を見る。そして吹き出した。

 

「大丈夫?!どうしたの!?」

 

「ゴホッゴホッ……な、なんでもない」

 

「そ、そう?」

 

 紅煉が吹き出した理由。それは観客席にエンデヴァーが紅煉を見ていてたのだ。そりゃ吹き出す。

 そうこうしてるうちに42位まで戻ってきて第1競技は終了した。

 ここで順位の結果発表のシーンまで戻るというわけだ。




これにて、第1競技は終い。
1位を紅煉と爆豪、緑谷と轟にした理由は今後の展開的に面白そうなことを考えたので1位にしました。

緑谷出久と爆豪勝己の仲直り的ものに関しては原作のままだととてもじゃないが険悪過ぎるのであえて仲直りさせました。
原作のままがよかった人ゴメンなさい。

次回も楽しんでくれることを願っています。
それではまた次回!


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第11話 火群と騎馬戦

あらすじ

同率一位になった紅煉と轟と爆豪と緑谷。
お互いさらに火をつけあって次の試合で1位を取るのを自分だと争ってる中、紅煉は優勝を狙う発言をする。それによりさらに火がつく面々。さて、次の競技はなんだろうか


 さて、第1競技が終わり次からいよいよ次からが本選だ。

 

 はりきって司会進行を務めているミッドナイト先生が宣言する。

 

「さーて第二種目よ!! 私はもう知ってるけど~~~~……何かしら!?」

 

 彼女の背後のモニターからドラムロールのような音を鳴ったかと思えば、『騎馬戦』の文字が表示された。

 

 二種目は個人競技ではないらしい。爆豪が露骨に舌打ちしたのが聞こえた。

 

「参加者は2人から4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ! 基本は普通の騎馬戦と同じだけど、一つ違うのが先程の結果にしたがい各自にポイントが振り当てられる事!!」

 

 

 騎馬戦のルールを聞いてると、紅煉は騎馬戦の例の図に気を取られていた。

 なんで優に200kgを越えていそうなオールマイト(後に聞いた出久ぺディアによると現在255kg。全盛期は274kgだったとか)が騎手で、13号先生とスナイプ先生、プレゼント・マイク先生が騎馬をしているんだろうか。

 

 確かに騎手は強いかもしれないが、明らかにバランスが悪いと思う……てか悪い。

 聞きたいけど、あえて聞かんでおこう。

 

「そして与えられるポイントは下から5ずつ! 42位5ポイント、41位が10ポイント……といった具合よ」

 

(なら1位は210ポイントか。結構細かい計算をして騎馬を――)

 

(って、緑谷は考えてるんだろうなぁ……でも、現実は甘くない)

 

 緑谷が考え事をしてるのを見て予想付けた紅煉。そして1位のポイント発表がされた。

 

「そして1位に与えられるポイントは、1000万!!!!」

 

「「えっ?」」

 

「はっ?」

 

「ふっ…」

 

 ぽかんとする3人と笑う1人。言うまでもなくぽかんとしてるのは緑谷と轟と爆豪。目を丸くしてる緑谷、仰天してる轟、顔を引き攣らせてる爆豪。流石の点数配分に驚きを隠せないようだ。

 そんな中紅煉は楽しそうに口を歪ます。すると理解したのか爆豪も口を歪ます。

 紅煉達4人に視線が集まる。

 

「……の、つもりだったんだけど、1位が四人という事で、一人250万ポイントに変更します!!」

 

 視線は減らなかったがポイントはちょっと減った。けどそれじゃあ面白くない。そう思ってるのは紅煉だけではなかった。

 

「そんな訳で、上位の奴ほど狙われちゃう……下剋上サバイバルよ!!! 上に行く者には更なる受難を! 雄英に在籍する以上何度でも――」

 

「待てや審判」

 

「待ってくださいよミッドナイト審判」

 

 説明するミッドナイト先生の言葉を遮って、爆豪と紅煉が口を挟む。2人は顔を見合わせてニヤッと笑う。

 

「ちょ、ちょっと、まだ話の途中……」

 

「本来なら1位は1000万なんですよね?なら話は簡単だ。なぁ爆豪?」

 

「あぁ、そうだ。デク、轟、火群…俺の馬になれ」

 

「……えっ」

 

「……あー、成る程」

 

 紅煉と爆豪の爆弾発言に、会場がざわめき始める。

 緑谷は納得したらしいが、轟は意味が分かってない様子、紅煉はともかく爆豪はらしくないとしか思えないと思ってる人が多数いた。

 

「轟さん。かっちゃんも火群君もポイントを分散したくないんだと思う」

 

「大正解だ緑谷。さすがだと褒めてやるよ」

 

「1位の価値が下がるよりは、テメェらと組んで格の違いを見せつけた方がマシだって事だ」

 

「……そういう事…」

 

 つまりそうだ。1位が複数いるより1位を統一させる。こうすれば1000万は必然的に1位の物。あとはそれを奪われるか守れるかのサバイバルというわけだ。下克上?させねぇぜ!!

 

「私は構わないよ」

 

「やろうか、かっちゃん」

 

 緑谷は乗り気で轟ちゃんも少し考えたが頷いてくれた。これで決まった。

 

「っつー訳ですぜ。ミッドナイト審判、これで俺達は1000万で文句は無いでしょ?」

 

「勝手に決めないの全く…………けど、そういう青臭いのは、好み!!」

 

 決定事項のように告げる紅煉にミッドナイト先生は溜め息を吐いたが、それはそれで面白いと思ったのか笑みを浮かべながら鞭を振るう。

 今更だけど、結構主審の自由に出来るのかい。

 

「という訳で、1位が全員同じチームになったので、そこを1000万ポイントとします!!」

 

 ちなみに言うと紅煉含めると四人居るので騎馬は完成した。……原作ぶち壊しだな。ごめんなさい

 

 そこからミッドナイト先生が細々としたルールを語ってくれた。

 

 制限時間が15分。騎手はそのチームの合計ポイントの表示されたハチマキを着けてそれを奪い合う。

 0ポイントでもアウトにはならないらしいので、かなりの混戦が予想できる。

 個性もありらしいが、あくまでも騎馬戦なので悪質な崩し目的なのは一発退場になる。

 

 まぁ、確信したことはある……このルールなら

 

俺達に敗北の二文字はありえない

 

ーーーーー

「というわけで作戦は簡単だ。『取られない』以上!」

 

「あぁ!?てめっ1位取りに行くんじゃねぇのか?!」

 

「だからこそ取られないようにするんだよ。轟ちゃんの氷結でも防ぐ奴は居るしな、それに下手に取りに行くより守る方が先決だ。だが、〜〜〜〜〜するってのはどうだ?」

 

「………ちっ、わーたよ」

 

「僕はその作戦で構わない」

 

「私も」

 

「よし、やるぞ!」

 

 作戦を話し終えると制限時間となって、他の騎馬もチームが決まったようだ。

 

『さぁ起きろイレイザー! 15分のチーム決め兼作戦タイムを経てフィールドに12組の騎馬が並び立った!!』

 

『…………なかなか面白ぇ組が揃ったな』

 

 それと同時に実況が復活した。そういえばあったな、てか寝てたのか、相澤先生……

 

『よォーし組み終わったな!!? 準備は良いかなんて聞かねえぞ!!』

 

 さて、始まるようだし、意識を切り替えていこうか。

 

 紅煉らの騎馬は騎手が爆豪、前衛が緑谷、右後ろが轟、そして左後ろに紅煉。

 

 この布陣なら、紅煉達は負けない。と確信がある。

 

『行くぜ!! 残虐バトルロイヤルカウントダウン!!』

 

「火群君、最初はお願いするよ?」

 

『3!!!』

 

「任せろ」

 

『2!!』

 

「かっちゃんと轟さんも、準備しててね」

 

『1……!』

 

「指図すんなわーっとるわ」

 

「うん」

 

『START!』

 

 さあ、騎馬戦もとい……戦争(クリーク)を始めよう。

 

ーーーーー

 

『さァ! スタートと共に1位の騎馬が一斉に狙われて……オォオオ!!?』

 

『ほぉ、攻撃ではなく守備、防衛戦と来たか』

 

「《炎戒(えんかい)》《火柱(ひばしら)》!!」

 

 スタートの合図と同時、紅煉は自分らを中心として広範囲の火柱を繰り出した。

 

「あっつ!!」

 

「近寄れねぇ!」

 

「クソっ!」

 

 だが、次の瞬間……信じられぬことが起こる。

 

「行くぞオルァ!!」

 

『爆豪!?飛び出してきたァァァっ!!!』

 

「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」」」

 

 爆豪が飛び出してきたのだ。流石にこれにはみんな驚くしかない。完全に絶対防御の状態から出てきたのだから。

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーッ!!」

 

 爆破させながらあの昼食の邪魔をした金髪優男のポイントを強奪する。実は決めていたのだ。

 

ーーーーー

【数分前】

 

「とりあえずB組の金髪で優男っぽいやつのなら取っていいからさ……頼むわ爆豪。今は俺の作戦に乗ってくれ」

 

ーーーーー

 

「あ!取られた!!」

 

「何してんだよ物間!!」

 

『おぉっとーっ!爆豪!ポイントを奪ったァァァ!!』

 

 不意打ちだったのか対応もできず取られる物間。仕方ないよ、急だし、不意打ちだし……

 

「ドンマイ……と言うと思ったかバーカ!楽しい談笑昼食会を邪魔した恨み!ここで晴らしてやったり!!クハッ!!パツキン嫌がらせ小僧の貴様らしい最期だ笑ってやる!フハハハハハハッ!!」

 

 相当根に持ってたのか紅煉は隠すこと無くぶちまける。どことなく慢心王に笑い方が似てる気がする?気のせいだ。

 

『……火群、壊れた?』

 

『あいつなんだかんだで1番キレたら怖いし根に持つタイプだからな……』

 

『なんで知ってんの?』

 

『アイツの中学の担任から聞いた。震えながら話してたよ』

 

『担任ビビらせるとかマジやべぇやつやん……怒らせんとこ』

 

 紅煉の壊れように実況席も引いてる。なんとも言えんのだろう。だがB組の反応を見る限り『またなにかしたのか物間』って思われてるみたいなので普通に続行する。

 

 ちなみに爆豪は轟ちゃんの作った氷塊で周りを囲み。落ちてくる所を緑谷がフルカウルで空中を軽く殴って風を起こして落下速度を落とし、紅煉が炎で氷塊を乗り越えた相手を寄せつけないようにし、爆豪が爆破で方向転換して騎馬に着地。

 

『これはありなのか!?』とみんなに言われたがミッドナイト審判は「テクニカルでOKよ。地面についてたらダメだったけど」だそうな。

 

 そのまま1000万に向かってくる人もいる中、自分らで奪い合う人達……特に物間は向かってきたが爆豪の爆破、轟ちゃんの氷結、紅煉の火炎、緑谷の風圧に耐えきれず何度も後退させられてる……見てて滑稽だと思ってしまったのはご愛嬌。

 

 周りを見るとやはりと言った所か……宣戦布告に来た普通科の子…心操人使……やはり洗脳系の個性……しかも言葉でかけにくる。

 やはりそこも原作通りというわけだとわかった。ちなみに原作だと轟ちゃんのチームだった八百万さん達の騎手を務めてるのは切島。そして爆豪のいたチームは騎馬が瀬呂くん先頭で麗日さんと発目さんになってて騎手を芦戸が務めている。え?心操チーム?そういえば騎馬ってB組の子と尾白と青山……気にしないでおこう。うん。そうしよう。

 

「往生せぇやァァァっ!4トップゥゥゥゥ!!」

 

 峰田の声が聞こえてきた。どうやら原作通り障子の複製碗の中にいるらしい。梅雨ちゃんもいるだろうから……よし、こうしよう。爆豪も気付いたみたいだし。爆豪と目を合わせニヤリと笑って言い放つ。

 

「「ア゙?潰すぞブドウ頭」」

 

「すいませんでしたァァァァァァっ!!」

 

「峰田ちゃん……気合を入れるのはいいけどあの二人を敵に回したらアウトよ」

 

 泣きながら叫ぶ峰田。そしてフォロー?する梅雨ちゃんという絵面を見せられた。うーん、これはあれだな……一言で言うならアレしかない

 

「……愉悦」

 

「なにが!?」

 

「えっ?」

 

「お前ら動けや!!」

 

 笑みを浮かべながら小声で言ったが、緑谷には聞こえてたようだ。物凄いびっくりした顔で紅煉を見てる。

 逆に轟は聞こえなかったようでぽかんとした顔で紅煉を見てる。

 爆豪はそんな3人を見てキレた。

 

ーーーーー

 

 そんなこんなで試合が終了した。ゼロポイントのヤツらほとんど1位のグループ……つまり紅煉達のを取りに来た……が、轟ちゃんの氷結、緑谷の拳圧、爆豪の爆破、紅煉の火炎により手も足も出ず終わった。ちなみに勝ち残ったチームは全て第3競技に出場する原作通りのメンバー達だった。やったね分かりやすくてやりやすい!!

 

 とにま昼休憩が挟むので挟んだが……紅煉と緑谷は轟ちゃんに呼び出されて話を聞く。原作通りの展開だったがひとつ違うのは紅煉も呼ばれたこと。緑谷と紅煉で別々に話したが緑谷にはオールマイトの隠し子かなんかを聞き、次は紅煉の番になったが紅煉の場合は自身の素性を話してこう言って来た。

 

「私は、氷で貴方に勝つ事により……あの男を完全に否定する。貴方はあの男と個性が似てるから……」

 

 これを聞いた紅煉はキレた。だが冷静に言った。

 

「エンデヴァーと俺の個性を同じにするな。言っとくが……俺とて簡単に負けるわけにはいかない…俺だってこの身に母と叔父の思いも背負ってんだ……俺に勝つって言うなら、本気を出せ」

 

「……分かった」

 

 多分この分かったは氷での本気という意味だ……だから、個人戦で緑谷が分からせてくれるはず……轟ちゃんの個性は轟ちゃん自身の力であると……

 

 しかし、紅煉は忘れていた。自分というイレギュラーが居ることを……この時、紅煉は緑谷に任せようとした事をハッキリと後悔することとなる。




というわけで騎馬戦。1位が4人居たので分散させると思いきや1位の差を見せつけるため、あえて4人でチームを組ませました。
なので詳細に書こうと思ったのですが無理でした。ごめんなさい。

次回はとうとう個人戦。どういう対戦表になるのかは次回のお楽しみです。
では、また次回!


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第12話 火群と個人戦 ー1ー

前回のあらすじ

騎馬戦で圧倒的差を見せつけた。さて、次は個人戦。轟ちゃんの宣戦布告。
だが原作通りに進むと考え緑谷に任せようとする。
それが後悔に繋がるとは……


 昼休憩が終わり、準備してる頃……女子達が遅く登場した。どうして遅くなったのかは……すぐ分かった。

 

『どーしたA組!?』

 

 チア衣装に着替えて会場に集合した私達A組女子を前にした、マイク先生の一言である。

 

「峰田さん、上鳴さん、騙しましたわね!?」

 

 ……どうやらあの2人が主犯のようだ。

 

 八百万に『女子は午後のレクリエーションをチアコスで応援しなきゃダメ』という大ウソを吹き込んで、見事にA組女子の衣装をチアにすることに成功したと……何でこういう時だけあいつらは抜群の頭の回転と弁舌能力を発揮するんだか。

 最初こそ全員表情死んでたものの……皆割と、呆れ気味ながらも何だかんだで『やってやるか』って乗り気のようだ。

 特に葉隠がやる気満々だった。とりあえず上鳴と峰田は殴った。

 

 最終種目は、トーナメント戦。騎馬戦を勝ち抜いた上位4チーム16人で行われる、一対一のガチバトルだそうだ。ちなみに原作通り尾白とB組の子は辞退して代わりに鉄哲と塩崎さんが入った。

 

 そして抽選の結果、組み合わせは以下の通りに決まった。

 

 

第1試合 緑谷VS心操

第2試合 上鳴VS塩崎

第3試合 飯田VS発目

第4試合 爆豪VS麗日

第5試合 芦戸VS火群

第6試合 鉄哲VS切島

第7試合 八百万VS常闇

第8試合 轟VS瀬呂

 

 

「……(あれ?このまま行くと俺準決勝で轟ちゃんと当たらね?えっ?爆豪じゃないの?俺の相手……轟ちゃんの相手、緑谷じゃないの?……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?)」

 

 紅煉は目の前のトーナメント表の発表に心の中で叫び声を上げ、少し後悔した。緑谷に任せようというフラグを建てなければよかったのに……

 

ーーーーー

 そして始まった第1回戦。緑谷VS心操。原作通り個性に引っかかるが指を犠牲にし復帰、その後背負い投げで勝利。だが心操の評価は爆上げした。

 

WINNER 緑谷

 

 

 第2回戦。上鳴VS塩崎。アホ鳴は原作通りアホやってアホしてあっさり敗退。まさにアホ。アホ過ぎてアホ。そう言ったら「ウェイ……」と言ってしょげた。メンタルくそ雑魚でワロタ。

 

WINNER 塩崎

 

 

 第3回戦。飯田VS発目。こちらも原作通り飯田の真面目さが仇となりいいように使われ、試合に勝ったが勝負に負けた。飯田の最後のセリフはやはり「嫌いだキミィ!!」だった。ウケる!

 

WINNER 飯田

 

 

 第4回戦。爆豪VS麗日。こちらも原作通りに進んでいく。違ったのは始まる前爆豪が麗日さんに対して

 

「おい丸顔……怪我したくねぇなら今すぐ棄権しろ……手加減しねぇから、痛てぇだけじゃ済まねぇぞ」

 

 という事を言ったことだ。これには原作を知る俺は驚いた。相手を心配するような性格ではなかったはず…と言ってる間に戦闘は始まり、そして原作通りプロのヒーローは爆豪が痛めつけてるだけにしか見えてないのかブーイングをしてくる。

 

「それでもヒーロー志望かよ!そんだけ実力差があんならさっさと外に出せよ!」

「女の子をいたぶって遊んでんじゃねぇよ!」

 

 うん。これにはな、生で見ると、キレるわ……

 

「おい、今遊んでるって言ったの誰だ?プロか?巫山戯てんのかてめぇら……何年やってんだ?素で言ってんならもう見る意味ねぇからとっとと帰って転職サイトや求人サイトでも見てろ……アイツは、爆豪はここまで勝ち上がってきた相手の力を認めてるから警戒してんだろ……本気で勝とうとしてるから手加減出来ねぇんだろ……本気で向かってくるから油断しねぇんだよ……なんも見てねぇ奴があの馬鹿を罵ってんじゃねぇよ……どこにも気づいてない奴がブーイングしてんじゃねぇよ。麗日お茶子を、か弱い少女として見てんじゃねぇよ!ヒーローの真似事して遊んでる贋物者(フェイカー)が!!貴様らにとってのヒーロー像はなんだ?!なんのためにヒーローをしてる!!格好をつけるためか?!だったら尚更ヒーローなんかしてんじゃねぇよ!!さっさとやめろ!誰かの為にヒーローする訳じゃねぇんのならやめちまえ!!相性を気にして市民を助けないヒーローなら辞めちまえ!!分かったか無能共!!」

 

「「「……」」」

 

 紅煉は立ち上がって生徒用の観客席から身を乗り出し冷たい目で見渡しながらそう叫ぶ。叫び終えると席に座る。クラスメイトの皆はそんな紅煉を見てすげぇと思い、他クラスの面々も関心と恐怖を覚えた。プロ達は何も言えないのか呆然としてる。

 

『え、えぇ……アイツ、キレるとあんなに怖いの?アイツの目、見た?全てを凍てつかせるような目をしてたよ?』

 

『だから言ったろ。因みに火群の言う通りだ。シラフで言ってんのならもう見る意味ねぇから帰れ。帰って転職サイト見ろ。後は火群と同じ意見だ』

 

 プレゼントマイクは声のトーンがだいぶマジだったので怖さが伝わったのだろう。相澤先生は同意してくれた。本当に俺たち生徒をよく見てくれてる。

 

 そのまま原作通り進んでいき麗日の秘策が発動する。しかしやはり爆豪。一撃で全て消し飛ばす。そしてここでまたもや驚愕な事が…

 

「やってくれんなぁ……正直に言うと危なかったぜ…麗日……そんな秘策があったなんてなぁ。油断しなくてよかったぜ……認めてやるよ。さぁ、来い!麗日ァ!!」

 

 相手を賞賛した……あの爆豪が、と思ってしまう紅煉が居た。そして麗日が攻撃しようと走り出したその時、力尽きる。麗日さんは、容量重量(キャパ)をとっくに超えて戦っていたんだ。

 

「麗日さん……行動不能。二回戦進出、爆豪くん!」

 

 まだ立とうとしている麗日さんに、様子を見ていたミッドナイト先生は難しそうな顔をしながらも、ゆっくりと爆豪の勝利を告げた。

 

爆豪は一息吐いて、リカバリーガールの元へ運ばれる麗日さんを見送ると何かを呟いてステージを後にした。何を呟いたのだろう?と思ってると緑谷が教えてくれた。

 

「かっちゃんは『惜しかったな、麗日』って言ったんだよ」

 

 紅煉はぽかんとしたまま驚いた。てかよく聞こえたなと思った。幼馴染の特権って奴か?

 

ーーーーー

 一足先に観客席に戻った爆豪は、クラスメイトに迎えられた。

 

「おーう、何か大変だったな悪人面!!」

 

「組み合わせの妙とはいえ、とんでもないヒールっぷりだったわ爆豪ちゃん」

 

「うるせえんだよ、黙れ」

 

 瀬呂や梅雨の言葉に静かな調子で罵倒を吐く爆豪。

 皆がいつも通りだと思う中、上鳴が爆豪を指差しながら何でもない調子で話しかける。

 

「まァーしかしか弱い女の子相手によくあんな思い切りの良い――」

 

「おい、今なんて言った上鳴」

 

 瞬間、紅煉の冷たい声が響くと上鳴は紅煉に胸ぐらを掴まれていた。これには爆豪も驚いた。

 

「ぐえっ……!?」

 

「ちょっ!? 何してんだお前!?」

 

「お、お止め下さい火群さん!!」

 

「黙ってろ……」

 

 突然の暴挙にクラスメイトたちが彼を止めようとするが、ヤサ紅煉(グレン)の時のような威圧に固まってしまう。

 それでも比較的動じていない障子や砂藤などが二人を引き離そうとする。

 

「おい、上鳴……テメェの尺でモノ言ってんじゃねぇよ。麗日さんは爆豪に対して本気で勝ちに行っていた」

 

 だが、続く紅煉の言葉に障子と砂藤らは動きを止める。

 

「無茶やって倒れて、それでも立って向かって行こうとしてやがった。最後は這いずってでもって気迫見せてな……」

「それをか弱い女の子だと?紳士ぶって馬鹿にすんのも大概にしとけ!!すぐ終わるとか言って女子に瞬殺されたアホが!!」

 

 紅煉の怒りは上鳴の失言に向いていた。そしてそのまま突き飛ばすと座る。

 

 ゲホゲホと咳き込む上鳴を横目に、思いの外早く終わった一連の流れについて、クラスメイトたちは安堵や納得、意外性を含めた溜め息を漏らしていた。

 

「成る程。火群の怒りはそういう事か」

 

「お茶子ちゃんも全力でやったのだもの、なのにか弱い女の子って言われたら嫌よね」

 

「確かに上鳴さんの発言は、麗日さんに失礼でしたわ」

 

「う…………すんません…………」

 

「……チッ」

 

 どうやら爆豪も言おうとしたらしい……だが先を越されて少しイラッとしたのだろうが、丸くなったものだ……さて、次の試合は確か……

 

「あれ?てか次、火群じゃね?」

 

「「「「あっ……」」」」

 

 上鳴のその発言に紅煉含む全員が反応した。

 

「そうだよ! なんでまだここに居るの!? 三奈ちゃんはもうとっくに行ってるよ!!」

 

「忘れてた……ん?」

 

 葉隠に言われてやっと戻ってきた。そうだ次だ。と思った矢先、あることを考えついた。

 

「早く控え室に向かいませんと!!」

 

「いや、大丈夫」

 

「え?」

 

『ステージも直して次の対決!! どんどん行こうぜ!!』

 

 どうやら始まるようだ。タイミングがいい、そう思いながら立ち上がり観客席の前に進む。

 

「……俺どうやって行くか、なんとなく分かったわ」

 

「ウチも」

 

「えっ? えっ??」

 

 引きつった切島や耳郎の声や、疑問符を上げる八百万の声を後ろに聞きながら、手すりに手と、足を掛け飛び降りた……というか勢いよく手すりを蹴って跳び、不死鳥の翼を背中に顕現させ推進力を利用しながら着地する。

 最後に個性を解除して、会場全体に演目を見せた演出者のごとく一礼をした。

 

 今までにない派手な登場に、多くの観客が沸き上がった。

 

『おおォォ!!? 火群、観客席から華麗に登場!! 容姿と青い炎の翼が美しい旋律を奏でる!!まるで旅芸人だ!!』

 

 誰が旅芸人だコラ。こちらとら羽を失った守護天使じゃねぇわ。

 

『何言ってんだお前。しかし、火群にそんなに目立ちたがりなイメージは無かったんだが……ああいや、何となく分かった。お前、控え室行くの忘れたろ?』

 

「その通りでございます。少し焦りましたが、こんな登場が出来て逆に少し爽快です」

 

『正直でよろしい。次からちゃんと来い』

 

 相澤先生は流石だった。簡単に見抜いてくる。次は気をつけよ、なんか睨まれた感じしたし……

 

『目立つ登場の理由はさておき、次の対戦はこいつらだ!!』

 

『あの角からなんか出んの!?ねぇ出んの!?ヒーロー科、芦戸三奈!!』

 

「かっこよかったよ!火群くん!でも負ける気ないよ!」

 

『対! 緑谷、爆豪、轟に引き続きトップ4の一人!紅き炎と蒼き炎の美青年!同じくヒーロー科火群紅煉!』

 

「それは俺とて同じこと……手加減せずに来い」

 

『START!!』

 

「《火銃(ひがん)》!」

 

 両手を銃の形にして指先から炎の弾を放つ。

 

「おっと!」

 

 両足から酸を出して滑り出し、華麗に炎の弾を避ける……のだが…

 

「関係無いな……」

 

「えっ?」

 

 紅煉は両手に炎を纏わせてる。それを見て芦戸は気付くが、時すでに遅し。

 

「やばっ!!」

 

「《火産霊神(ほむすびのかみ)》!!」

 

「きゃあああっ!!」

 

 両手を合わせて炎の竜巻を起こし芦戸を場外に飛ばす。

 

「芦戸さん場外!二回戦進出、火群くん!」

 

 会場はさらに大歓声に包まれる。短期決戦ながら多大なパフォーマンスを見せた紅煉は好印象を与えただろう。さらに飛ばした芦戸に駆け寄り手を取る。峰田が叫んだが冷たい目で睨むと静かになった。

 

 第6、第7試合も原作通りのメンバーが勝った。

 

 ちなみに最後の第8試合は轟ちゃんの圧勝。原作通りの氷塊で倒した。その際イラついてた様だ。聞こえた限りだと……

 

「ごめんね……イライラしてたの」

 

 と、瀬呂に謝ってた。ちなみに瀬呂にはドンマイコールが響いてきた……哀れな男なり、瀬呂……

 

 そして第2回戦の発表も決まる

 

第9試合 緑谷VS塩崎

第10試合 爆豪VS飯田

第11試合 火群VS切島

第12試合 轟VS常闇

 

 やはり原作と偏った。爆豪の相手は飯田になってるし、轟ちゃんの相手は常闇になっていて、塩崎さんの相手が緑谷になってる。そして紅煉は……切島との再戦となる。

 

 切島と目を合わせると負けねぇ気持ちが伝わってくる。実は今日1番の頑張りを見してくれるのが切島だったりと思っていたりする。




はい、というわけで第12話終了です。
いかがでしたか?爆豪の性格を丸くさせたのは良いですが少しやりにくい気もします。

ちなみに作者は上鳴は嫌いではありませんのであしからず。

次回から戦闘シーンを多くしたいと思っています。
次回、なんと切島が……


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第13話 火群と個人戦 ー2ー

あらすじ
原作とほとんど変わらなかったので省略が多かった。
今回から戦闘シーンを多く書く努力をする。
短期決戦もあります。


 第2回戦。その対戦相手を発表される。そして今、第2回戦、1試合目、もっと言うなら9試合目が始まる。

 

『さぁて第2回戦の始まりだァ!!』

 

 プレゼントマイクの実況が再開する。ステージ上には、出久とB組の塩崎さんが上がっていた。

 

『ここまで成績トップの一人! なのになんだその顔! ヒーロー科A組緑谷出久!!』

 

『対! B組からの刺客!! 綺麗なアレにはトゲがある!? ヒーロー科B組塩崎茨!!』

 

 やる気十分に見える両者。

 しかしマイク先生の紹介で、塩崎さんが実況席へと身体を向けた。

 

「申し立て失礼いたします。刺客とはどういうことでしょう。私はただ勝利を目指しここまで来ただけであり――」

 

『ごっごめん!!』

 

「B組にも飯田君みたいな人がいるんだ」

 

「む、彼女と俺は全く似ていないぞ?」

 

 ぽつりと麗日さんが溢した呟きに、聞こえていたクラスメイトたちは頷いていた。

 確かに飯田と同タイプの、真面目な子みたいだ。

 当の本人は見当違いな事を言って首を傾げていた。うん、良く似ている。間違いない。

 

『す、START!!』

 

 あ、色々と誤魔化してスタートの合図を切った。

 塩崎さんは言い足りなさそうだけど、諦めて緑谷へと向き直る。

 苦笑していた出久も顔を引き締めて、構えをとった。

 

 

「それじゃあ、宜しくお願いします」

 

「ええ。どうか正々堂々と勝負をいたしましょう」

 

「そうだね……塩崎さん」

 

「はい、まだ何か?」

 

 

「真正面から行くけど、気をつけてね?」

 

 言葉と同時、緑谷が身体に緑の雷光を纏って、左腕を構え、離れた距離から、塩崎さんに向かって拳を振り抜いた。

 

「《デトロイト・スマッシュ》!!」

 

「キャッ!」

 

 拳から放たれた風圧は、ステージ自体に大きな衝撃を与えながら塩崎へとぶつかる。

 

 辛うじて反応した彼女は、トゲトゲのツル状の髪を後ろの地面に突き刺して衝撃を抑えて、正面にツルの盾を作り、場外をギリギリ免れた。

 

「もう1発!!」

 

 緑谷はそこで間髪入れずに、右腕も振るう。

 同レベルの衝撃を耐えきる事は、今の状態の塩崎には出来なかったらしい。

 

 ツルごと飛ばされた彼女は空中に放り出され場外に落ちる。あれで10%くらいか?どちらにせよ鍛え慣れてない人は飛ばされると思うが……

 

シン、と余りの光景に会場内が静まり返る。

 

「し、塩崎さん場外! 緑谷くんの勝ち!!」

 

 いち早く復活したミッドナイト先生のコール。

 

 止まっていた空気が、大歓声に変わった。

 

『こいつァやべぇ!! A組緑谷、塩崎のツルもなんのその!! パンチ二発でブッ飛ばしたぁ!!!』

 

『緑谷は件の襲撃以降、個性の扱いが格段に上手くなったな……今のところ、A組では頭一つ飛び抜けてる内の一人だ』

 

 相澤先生からもいい評価を貰ったじゃないかと思いながら見てると紅煉を見て出久がサムズアップしたのでサムズアップをし返す紅煉。

 

「コントロールされた超パワーヤバすぎだろ……」

 

「緑谷ちゃん、本当にオールマイトみたいだわ」

 

「っ……上等じゃねぇかデク……!!」

 

 A組の皆もあのレベルの力を見るのは初めてだったので、唖然としている。

 梅雨ちゃんのオールマイトみたいという発言にも、ほぼ全員が頷いていた。

 爆豪も笑っては居るが、冷や汗を流しているのを隠せていない。

 

 ちなみに緑谷は塩崎さんに駆け寄り手を差し伸べる。互いに話し合い、礼をしてる。うん、友情って素晴らしいと思う。峰田がうるさいので殴っといた。

 

『対戦相手を気遣う姿も合わせて、まるで小さなオールマイトォ!! 緑谷出久、圧倒的なパワーを見せつけ準決勝に進出ゥ!!!』

 

 小さなオールマイト、まさにそれだ。原作知ってるからわかるけど……

 本人は過大な評価だと思ったのか慌ててペコペコ頭を下げているが、そんなに低姿勢にならなくてもいいと思うんだよね。

 

ーーーーー

 第2回戦の次の試合。飯田VS爆豪。どうなることやら……

 そう思ってるとステージに上がっており話していた。

 

「おいメガネ」

 

「メッ!?爆豪くん!メガネとはなんだ!!しっかり名前をー「本気出せよ」……っ!?」

 

 爆豪の言葉に驚く飯田。

 

「隠してんだろ……必殺技」

 

「…………わかった。君を倒すため全力を出そう」

 

『話し合いは終わったかぁ!?そんじゃあ行くぜ!』

 

『第二試合!同じクラスの対決だァ!!』

 

『ターボヒーロー「インゲニウム」の賢弟!飯田天哉!!』

 

「失礼します! 今の俺に賢弟など、身に余る評価ではないかと!!」

 

『えっ、ごめん……対!戦闘センスは神ってるぜ!トップ4の1人!爆豪勝己!!』

 

「アホか!神ってんじゃねぇよ……センスを良くしようと幼少期からヨガとか習ってたんだよ!」

 

『こっちも!?ごめん!!』

 

 まさかの自意識過剰な性格のアイツから考えられない言葉が出てきた。てかヨガ通ってたんだ…爆豪って…

 

『俺、そんなに変な事言ったかなぁ……?』

 

『お前は昔から余計な事しか言わんだろ』

 

『オーノー! イレイザーまで!?』

 

『いいからはよ進めろ山田』

 

『本名ヤメテ!! START!!!!』

 

 締まらねぇ開始合図だったが飯田と爆豪は気にすることも無く行動する。飯田は短期決戦を狙ってるのか何かを企んでる。爆豪はそれを真正面から受ける気だろう……

 

「行くぞ!爆豪君!!」

 

「来いや!飯田ァ!!」

 

 飯田は爆豪の周りを走りながらスピードを上げ、爆豪は両手を爆破させながら迎え撃つ準備をしてる。紅煉は興味深そうに見てる

 

「《レシプロ・バースト》!!」

 

「っ!!?」

 

 鈍い音が響く。飯田の加速した蹴りが爆豪にぶち当たる時、咄嗟に爆豪は左腕でガードしダメージを負ったが軽傷で済んだ。紅煉は爆豪の反射神経に驚く。見てから動くのもそうだが、咄嗟の防御姿勢も流石と感心せざるおえない。あーいう所が爆豪の凄いところとも認識できる。

 

「やるじゃねぇか、飯田……だが、少し遅かったな!」

 

「ぐっ!!」

 

 そのまま飯田に爆破を食らわせる。飯田は体制を立て直し個性を使おうとするがレシプロ・バーストのせいか、上手く個性を使えない。結果は…

 

「……参った」

 

 飯田が負けを認めた。自慢の必殺技を防がれ、動けなくなった自分は既に勝つ見込みはないと自身で判断した結果だろう。

 

「飯田くん戦闘不能!爆豪くんの勝利!!」

 

『これまた短期決戦!!爆豪勝己!持ち前の戦闘センスを用いて準決勝に進出!!』

 

「おい、飯田。もう少し出力を抑えつつコントロール、もしくは維持できるようにしてみろ、そうしたら何か変わるかもしれないぞ……」

 

「爆豪くん。ありがとう……参考にさせてもらうよ。」

 

 爆豪が誰かにアドバイスを与えるところを見て、絶句する紅煉。もはや別人とかした爆豪に恐怖を覚えてきた。

 

ーーーーー

 第3試合目……次の対戦表は紅煉VS切島だ。

 

 既に紅煉と切島はステージに上がっている。対人訓練以来の再戦とあり、2人はやる気満々だ。

 

『さぁ!第3試合と行こうぜ!!こっちも同じクラスのバトルだぁ!!その炎は何を燃やす!?ヒーロー科!火群紅煉!!』

 

「手加減しねぇぞ……」

 

『対!その硬化の強度はどれほどなのか!ヒーロー科!切島鋭児郎!』

 

(おとこ)の闘いに手加減はいらねぇよ!」

 

 紅煉は炎を纏いながら言う。切島は両手を硬化させて応える。

 

『START!!』

 

「行くぜ、切島ァ!!」

 

「おうよ!来いや火群ァ!!」

 

 開始の合図とともにお互い走り出し、互いに殴り合う。切島は硬化した腕で、紅煉は炎を纏った腕で殴り合う。

 

『切島と火群!個性を使っての殴り合いだァァっ!!』

 

「おら!どうした!!技使えよ!!」

 

 切島が煽ってくる。言われずとも使ってやるよ!

 

「《紅蓮腕(ぐれんかいな)》!」

「グッ、効かねぇぞ!!」

 

 右手で切島を掴み爆破させる。切島は少し怯むが応えた様子は無くまた殴り始める。

 

『暑苦しい男2人の殴り合い!これどっちが勝つか予想付かねぇ!!』

 

「グッ、なら、これでどうだ!!」

 

 両手に炎を出して上にあげる。

 

「まさか、炎の竜巻!?」

 

「いや、違ぇ…」

 

 緑谷がそう叫ぶが爆豪は何か違うことに気づく。切島も気付いたのか距離を取ろうとする。彼の硬化なら炎の竜巻程度はなんともないだろうが別の技なら話は別。だが既に時遅し。

 

「《爆烈煌炎(ばくれつこうえん)》!!」

 

 両手の炎を合わせて切島に叩き付ける。瞬間爆発が起きる。

 

『すごい一撃だァ!!火群のやつ手加減知らねぇ!?切島生きてるか!?』

 

「これで、どうだ!切島!」

 

 爆煙の中にいるであろう切島に声をかける。

 

「……やっぱ強えな、火群。男らしいぜ」

 

「っ!?」

 

 瞬間、爆煙の中から声が響く。すると切島が飛び出す。それに気を取られたのか反応に遅れた。

 

「お前を倒すために生み出した俺の必殺技だ!!喰らえ火群!!一点集中させた硬化に炎を纏わせる!」

 

「なにっ!?」

 

『切島ピンピンしてる!!てかなんか炎を纏ってね!?』

 

『あれは火群の炎だな、何する気だ?』

 

 切島の右腕は硬化されていて、なおかつ炎を纏っていた。それにさらに気を取られ防御を怠る。

 

「《赤い一撃(レッド・フレイム)》!!」

 

「がっ!?」

 

 一気に突き出し紅煉の腹部を突く。紅煉はモロに食らったが、倒れない。

 

『モロ入った!!でも倒れない!何があった!?』

 

「……いい、一撃だったぜ……切島」

 

「なっ!?」

 

 苦痛に耐えながら切島に言い、殴ってきた右腕を掴む。

 

『こっちも案外ピンピンしてる!!てかあの一撃喰らってよく意識保てるな!!』

 

 プレゼントマイクがそう叫ぶ。が、実際は痩せ我慢でなおかつ不死鳥の再生能力で紅煉は意識を保っている。

 

「だが、俺の勝ちだ……《火拳(ひけん)》!!」

 

「ぐあああああああああああッ!!」

 

 切島は紅煉の炎の拳をモロにくらい場外まで飛ばされる。その後気絶したのか動かなくなる。

 

「切島くん場外!準決勝進出、火群くん!」

 

『男同士の熱い戦い!しかと見届けられたぞ!てか火群に一撃与えたの切島が初じゃね!?』

 

「……いい拳だったぞ切島…いや、鋭児郎」

 

 リカバリーガールの元へ連れていかれる切島を見てそう呟く。

 

ーーーーー

 第4試合。轟VS常闇……どのような結果になるのか予測不能だが、どうやら轟が常闇に勝ったらしい。氷壁を飛ばして場外に押し出したとか……なぜ知らないか?その時丁度ある人に会っていたのだ。その人物とは……その前に少し時を戻そう。

 

 

 

【数分前】

 

 切島を見送り控え室に戻る途中の紅煉。次の対戦相手が常闇であれ轟であれ本気を出すのだが、如何せん不死鳥の個性をどう活かしたらいいかを考えていながら歩いてると目の前の人物に気付かずぶつかったのだ。

 

「あ、すいません。考え事をしてて前をしっかり見てませんで……」

 

「なに、気にするな。ちょうど君と話がしたかった……そのまま気付かず通り過ぎられたらと思っていたよ…」

 

 言葉に詰まったのは目の前の男の正体がNo.2ヒーローのエンデヴァーだったからだ。

 

「……轟ちゃんの父上様でNo.2のエンデヴァー様が一個人、ましてやヒーロー志望なだけの私に何用ですか?」

 

「ほう?凍火から既に聞いていたか、なら話は早い。君の活躍を見せてもらったよ……炎の個性。まるで俺のようだ。少し嬉しい気持ちもある……だが、君はあのプルトンの息子と聞いている」

 

 その言葉に体を震わせる紅煉。それを見て事実だと確信したエンデヴァーは止まらない。

 

「火群紅煉くん……だったね。君がUSJ襲撃時にヴィランを退けたと聞いた時、同じ炎の個性で嬉しい気持ちになったが、ヴィランの息子と聞いて失望もしたよ。公になった時が怖いとも思う……そこでだ、凍火と戦う時、君には負けてもらいたい。下らん反抗期で炎、つまり左を使わないが、それは決勝戦に来るあの二人のどちらかに任せよう。まぁ君が負けてくれればオールマイトから逃げた最悪のヴィランの息子、その者に俺の娘が勝ったとなれば凍火もオールマイトを超えやすいというものだ。そうなれば凍火は俺の野望を果たし「黙れよ……」ーッ!?」

 

 それを聞いて紅煉は……やはりと言うべきか、キレた。しかも今までのキレとは違う……殺意を持ってエンデヴァーの顔の横に炎の剣を突き出した。冷たい目、いや、死んだ人の目をしながら……

 

「……黙って聞いてればヴィランの息子だから負けろ?ヴィランの息子だから失望した?てめぇは雄英教師、つまり同業者から何を聞いた?俺がヴィランと手を組んで雄英を恐怖に陥れたとでも言いたいのか?巫山戯んなよクソヒーロー……俺は母親と叔父をバカ親父に殺されたんだ。てめぇにそれが分かるか?今の俺がヒーローを目指してる理由が亡き母と叔父のためだというのに……貴様はそれを否定するのか?お前が俺の夢をぶち壊していい理由がどこにある?お前が俺の今後を決める権限がどこにある?舐め腐った事をするのも大概にしろよエンデヴァー。轟ちゃんがどれほど苦労し、苛立ち、そして個性を自分のと思ってない理由があんたに分かるか?全て貴様のせいだ。下らん反抗期だ?てめぇの教育がなってねぇからだろ……」

 

「なんっ」

 

 エンデヴァーが怒りだそうとしたが今の紅煉にはそれはただの言い訳だ。

 

「反論出来んのか?出来ねぇよな?民を笑顔にさせるヒーローが家族を笑わせることも、民を笑わせることも出来ない……そんなんでよくNo.2が務まるな……ランキング最下位からやり直したらどうだ?フレイムヒーロー……貴様のやってる事はヒーローじゃない……ただの自己満足だ。自己中心的な事しかしてない貴様に、オールマイトを超えることすら出来ない……どんだけ越えようと橋を作ろうとしても、土台を良くしなきゃ上手く出来ない……娘に野望を任せるのではなく、俺になにかさせるのではなく……全て自分でやってから、それを託せよ……てめぇがオールマイトを諦めてどうすんだよ」

 

「!!」

 

 エンデヴァーも思うとこがあったのか息を呑む。それを見た紅煉はいつもの表情に戻す。

 

「貴方だってオールマイトは越えられる。壁がどんなに強固でも、いずれ崩れるように、いずれ老朽化するように……平和の象徴は永遠には続かない……だからせめて、自分が守りたい、自分がやらなきゃ誰がやるって気持ちでヒーローしなきゃ……意味無いでしょ」

 

「……火群君。君の求めるヒーロー像は、なんだ?」

 

 エンデヴァーが顔を伏せながら聞いてくる……それに対し紅煉は嘘を言わずに答えた。

 

「『己が視界に入る全ての人間を背負うヒーロー』に、俺はなる」

 

「……そうか。いい目標であり、夢だと思う。先程はすまなかった。訂正しよう……」

 

 エンデヴァーは顔を上げる。そこには優しい父親の顔、娘を思い、目の前の少年に敬意を払う顔が見えた。

 

「君の全力を尽くして、娘と戦ってくれ……あわよくば、娘を俺の鎖から解き放ってくれ」

 

「……言われなくても」

 

 そう言って立ち去る紅煉。その場に残ったエンデヴァーはどこかに電話した。そしてそのまま少し話し、そして切って観客席へと向かった。

 

 この結果、轟VS常闇の試合を見ることはなく、結果準決勝で轟ちゃんと戦うこととなった。

 

(てか俺炎の剣出せてなかったか!?マジか!)

 

 どうやらエンデヴァーのお陰で炎の剣の出し方を無意識ながら理解しマスターしたようだ。やったね!




はい、今回はここまでです。ほとんど短期決戦でした。それと最後の常闇くんと轟ちゃんの戦闘シーン書けなくてごめんなさい。エンデヴァーと話すのに試合前じゃ全然時間なかったので……ちなみにエンデヴァーも嫌いじゃないのであしからず。
今回のキレた紅煉は普段出ません。次出るとしたらどんくらい先か見当もつきません。
それでは、また次回!


【コソコソ噂話】
紅煉のキレ具合には2つの種類が今んとこ判明してる。

《ヤサ紅煉状態》
口悪い、怒鳴る、冷たい目、声が低くなり重くなる。周りへの影響はほぼない

《今回のキレ状態》
口悪い、冷静?、死んだ目、有無を言わせない、周りへの影響は大いにある。怒りの流れ弾で周りにも被害(恐怖で失神する人続出)出る。今回はいなかったのでなんともなかったがいたら確実に失神。爆豪ですら足がガクガク震えるであろう。

【雄英コソコソ裏話】
切島の必殺技。『赤い一撃(レッド・フレイム)』について
《赤い一撃(レッド・フレイム)》
切島が紅煉に憧れを持ち、その憧れに打ち勝つ為に作り上げた技。紅煉の炎を(1部分にのみ)硬化した腕に纏って繰り出す。紅煉を一瞬悶絶させた一撃でもある。
元ネタは漫画『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY R』に登場する必殺技。


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第14話 火群と個人戦 ー3ー

前回のあらすじ
準決勝に勝ち進んだトップ4。それぞれの戦いの為に気持ちを高める4人。そんな中、紅煉は準決勝の対戦相手轟凍火の父、エンデヴァーに対して今までにないキレを見せる。
そして紅煉は轟凍火の心を救うことを決意する。

今回紅煉の戦闘シーンありません!


 観客席に戻った紅煉。イラつきを鎮めてから戻って来て、席に着く。全然喋らない紅煉を見て不思議に思うクラスメイトもいたが次の試合に緊張してるのだろうと思う。実際はイラつきを抑えてるだけだが……

 

『さぁ!ついに準決勝第1回戦!観客のリスナーたちも待ち望んでいただろう二名の戦いが!!間もなく始まるぜェ!』

 

 そうこうしてる間にどうやら準備が終わったようだ。プレゼントマイク先生の実況が始まる。

 

「火群君は緑谷君と爆豪君……どちらが勝つと思う?」

 

 飯田が聞いてきた。純粋にわからないからこその質問だろう。他のみんなも聞き耳を立ててるし……

 

「愚問だな……爆豪の戦闘センスは確かなもの……それこそここにいる殆どのメンバーは対処しようとしても追い付かないほどな……緑谷も粗っぽさが残るがあのパワーだ……少なくとも簡単に負けるアイツじゃない…………そしてそれはお互い幼馴染な点から見ても同じことを思ってるだろうが、爆豪は緑谷をわかってないだろう」

 

「どういう事?」

 

 麗日さんがそう聞いてくる。みんなも同様にはてなマークを浮かべてる。分かってるのは八百万さんとかそんくらいか……

 

「緑谷の個性発現は最近。なんなら入試の時だ……あの超パワーのせいで下手したら四肢が爆散してたかもしれないって聞いたしな……つまり爆豪自体もほぼ初見の緑谷の個性……戦闘訓練を見る限り緑谷は爆豪の動きの癖を知り尽くし、なおかつコントロールした超パワーでぶっ飛ばす。逆に爆豪は緑谷の戦闘の癖をここで見て暴かなきゃいけない……だがそれにも長けている……」

 

「それって、つまり……」

 

 耳郎が聞いてきた。そう、紅煉が言いたいのはただ一つ。

 

「この勝負、どっちが勝ってもおかしくないってことだ。少なくとも俺は予想つかない……」

 

「火群がわかんねぇとなると、どっちが……」

 

「けろ、どちらにせよ爆豪ちゃんにも緑谷ちゃんにも頑張ってもらいたいわ」

 

(だが、爆豪の事だ……緑谷の弱点を直ぐに理解し猛攻を仕掛けるはず……)

 

 紅煉も口では分からないと言いつつ爆豪が勝つことを予想する。昔っから使い慣れてる力と最近使い始めコントロール出来た力……どちらのレベルが上かよく分かる……だが、緑谷の経験値の会得量も馬鹿にならない……この戦いで爆豪のレベルにどれほど追いつくのか、それが紅煉の気になるとこであった。

 さて、そろそろ始まるようだ。しかと見届けよう。

 

ーーーーー

『地味目な顔に派手な個性!予選から圧倒的なパワーとスピードで勝ち上がってきた男!!ヒーロー科!緑谷出久!!』

 

『対!こちらも予選から圧倒的テクニックと技術で勝ち上がってきた男!ヒーロー科!爆豪勝己!!』

 

 紹介が終わると一気に歓声が上がる。

 

『ちなみに聞いた話だが二人は幼馴染だそうだ!マジなのか!?』

 

 あ、緑谷は少し言わないで欲しかったみたいな顔してる。爆豪は…うわ、嫌そう。丸くなってもすぐキレる癖は消えんのか……

 

『らしいな、幼稚園からずっと一緒らしい……』

 

『腐れ縁って奴か!!面白い勝負になりそうだ!!』

 

 驚きの情報に歓声もさらに上がる。五月蝿いんだが……

 

「おい、デク」

 

「なに?かっちゃん」

 

「……舐めプすんなよ?したらぶっ殺す」

 

「君相手に手加減しないさ、今の僕の本気を出す!」

 

 爆豪は両手を爆破させ、緑谷は全身に稲妻を纏う……見てて心が踊るのは気のせいか?

 

『START!!』

 

「喰らえや!」

 

「させない!《デラウェア・スマッシュ》!!」

 

「あめぇぞ!デク!!」

 

 開始の合図とともに突っ込む爆豪。緑谷はそれを冷静に指で弾いて吹き飛ばす。が、爆破の応用なのか空中で身を翻して緑谷の技を避ける。

 

「流石だね!かっちゃん!!」

 

「まだまだこれからだ!!」

 

 二人とも、互いに全力で戦ってる。爆破を受けたり避けたり、拳を受けたり避けたり……緑谷も爆豪も全力で笑い合いながら戦ってる……他のプロヒーローはこの2人の戦いがプロに並べるくらいと思ってる……

 現に二人の戦闘技術はA組でもトップクラス……少なくともそこらのプロよりは出来る。

 

「いくぜぇ!《閃光弾(スタングレネード)》!」

 

「うわっ!くっそ!」

 

『なんだ今の光!!くっそ眩しかったぜ!』

 

『閃光弾みたいなもんだろ……視力を数秒奪ったんだ』

 

『マジかやべぇ!!』

 

 強烈な光で辺りが見えなくなる。特に緑谷は至近距離だったから余計分かりにくい。そして緑谷はそのまま爆破を食らう。

 

「はっ!自分の動きの癖が分かればお前の動きは読みやすいぜ!」

 

ーーーーー

 

「爆豪の奴、気付いたかもな」

 

「何がだい?」

 

 飯田が聞いてくる。皆も紅煉を見る。

 

「緑谷の動きは、爆豪の動きを参考にしてるんだ。いや、模倣してると言った方が正しいか?」

 

「爆豪君の動きを!?」

 

 飯田達が驚く。緑谷の攻撃の動きが爆豪を真似てると知り驚きを隠せないのだ。

 

「なんもおかしい事じゃないさ……10年近く共にいる幼馴染の動きの癖や攻撃パターン……知っててもおかしくない。それを真似したりその癖を見て対策をとるのもな」

「そして爆豪はそれに気づき緑谷の目を封じた。例え爆豪の動きが分かってても目で情報を捉えているものを耳や鼻で分かれって無理な話。だから今の爆豪が持つ最強の光を放つ爆破で緑谷の目を封じた……少なくとも数秒は緑谷の視界はほぼゼロに近い。そして爆豪ならその数秒で緑谷を吹き飛ばす爆破を起こせる」

 

「つまり、それはもしや」

 

 常闇が呟く。それに皆も息を呑む。どうやら理解したようだ。

 

「あぁ、今の緑谷は音を頼りに攻撃を避ける、もしくは爆豪を探す他ない……」

 

 そう言うと皆試合を見る……この試合、結果がどうなるか、誰にも分からない。

 

ーーーーー

 

「クソっ!何処だ!!」

 

「ここだデクッ!」

 

「うわっ!!」

 

 爆豪の爆破の攻撃を受けて緑谷は吹っ飛ぶがフルカウルのパンチで風を起こして体制を立て直す。

 

『爆豪の猛攻!目が見えない緑谷にはもはや為す術無しか!?』

 

『爆豪はセンスも良ければ相手の弱点を突くのも上手い……緑谷もクラスでトップクラスの実力者となりかけてるが、やはりまだ不慣れなところがあるのかもな……だが』

 

「《スマッシュ》!!」

 

「うおっ!?」

 

 緑谷の繰り出した拳圧が爆豪に命中する。

 

『おっと緑谷!!目が見えるようになったのか!?爆豪のいる方向に向かって拳を振るったぞ!!』

 

 プレゼントマイクが驚くようにA組の面々も驚いてた。

 

「まさか、もう見えてるというのか!!」

 

「まだ見えるまで時間かかるわ……何故かしら?」

 

 そして、相澤先生と紅煉が同時に言い放つ

 

『「見えてねぇよ」』

 

『えっ?』

 

プレゼントマイクもA組の面々もそのセリフに驚く。

 

『「緑谷は爆豪が攻撃してからどこに移動するか予測して拳を振るった……お互いをよく知る幼馴染だから出来る芸道だがな」』

 

『そんなんありかァァァっ!!?』

 

「「「「ええええええぇぇぇぇっ!?」」」」

 

「クソデクが……やるじゃねぇか」

 

「伊達にヒーロー目指してないぞ……かっちゃん!」

 

 ようやく目が見えてきたのか目を開け爆豪と対峙する緑谷……双方が改めて構えていると立ち上がる紅煉。そのまま観客席を後にしようとすると声をかけられる。

 

「む?火群君。見なくていいのかい?いくら次が試合といえどこの試合の結果が気にならないわけじゃ無いだ「どっちが勝つか分かったんだよ」……えっ?」

 

 その言葉にクラスメイトらは紅煉を見る。

 

「この試合……見てて意味ある試合だろうが……決勝まで取っておきたい……せめて初見で挑みたいんだ。次の試合もそうだが……“全力”で戦いたい。それだけさ…」

 

 そう言うと控え室に向かう紅煉……それを聞いていた轟ちゃんは静かに言い放った……

 

「私は眼中にナシか……」

 

「火群の奴……轟を舐めすぎてねぇか?大丈夫か?」

 

「そうですわね、いくら炎の個性で相性が上だからって……爆豪さんか緑谷さんと戦うことしか考えてないなんて」

 

 それを聞いてた八百万や峰田らは紅煉を非難するような思いをしていたが……飯田はある事に疑問を抱いてた。

 

(“全力”…?…彼が全力を出すなら、なぜ全力だけ強調して言ったんだ?まるで何か別の意味があるのか?それより、誰が勝つのか分かった!?)

 

ーーーーー

 

 控え室に着いた紅煉が中に入り少し経つと紅煉の携帯から着信音が鳴り響く。

 

「……非通知?……もしもし?」

 

[やぁ、紅煉……久しぶりだな]

 

「ッ!!?……その声、プルトン!?」

 

 かかってきた相手はプルトンであった。あまりの出来事に驚きを隠せない紅煉はとりあえず会話内容を録音する事にした。

 

[クククククッ、録音しようがヒーローに報告しようがどちらでもいいが、今の俺の場所はアジトじゃない。かと言って人目に付く場所でもないがな……体育祭。見てるぞ……準決勝進出おめでとう紅煉。父として誇りに思う]

 

「……それだけか?言いたいことは」

 

[まぁそうだな。とりあえず言いたいことはもう一つだけ……優勝したまえ、さすれば必ずお前は次の強さのステージを超え、お前のクラスメイトとは比べ物にもならないほど強くなる]

 

「………言われなくても優勝は目指す……だが次のステージを越えようがクラスの仲間と共に俺は強くなる道を選ぶ……」

 

[クククククッ……好きにしたらいい。だが忘れるな?お前は俺の息子だ。それは覆しようのない事実なのだからな?]

 

「うるせぇ……んなもん、クソ喰らえだ」

 

[クハハハハハハハッ!!その意気だ。せいぜい励めよ?紅煉]

 

 そう言うと電話は切れる。そのまま相澤先生にメールで〈プルトンから連絡あり、録音済み、後程提出します〉と連絡する。すぐに返信があり〈分かった。気にせず試合しろ。警戒はこちらで行う〉と返ってきた。

 

「……何をする気だ…クソ親父」

 

 そう呟くと試合が終わるのを待つ。

 

 そのまま数分経つと大きな衝撃が響く。そのままプレゼントマイクの声が響くが聞こえにくい……だが、それでもどちらが勝つか分かっている。

 

ーーーーー

 

 大歓声が響いて数分後。先程の試合の選手がドアを蹴破って入って来た。まぁこんなことするのは知っての通りの人物だが……

 

「げっ!なんでお前がここにいんだァ!?」

 

 爆豪がそう叫ぶ。

 

「次が試合だからだよ。分かれ」

 

「そりゃ、そうか……」

 

「決勝進出おめでとう」

 

「っ!?……んで、それを?」

 

 紅煉が爆豪が勝者だと分かっていた。なので決勝進出おめでとうと言うと爆豪は驚く。当たり前だ。ここは会場の音が響きにくい控え室……何故聞こえてないのに勝者だとわかったのか気になるのは普通だ。

 

「緑谷は個性の扱い方が不慣れ、であればまだ対処の余地が多いのが現状……お前の観察眼もバカに出来ないからな……となると戦闘センスも考えると爆豪……お前が勝つ」

 

「……チッ!!ヘタレ炎野郎が」

 

「お前次そのあだ名言ってみろ……全身が焦げ肉になるぞ?」

 

「す、すいませんした」

 

 冷たい声でハイライトの無い瞳で睨むとさすがの爆豪も恐怖したのか素直に謝った。そのまま立ち上がりドアに向かう。

 

「俺はもう行くぞ……爆豪」

 

「あ?んだよ」

 

 控え室を出る直前、振り返り爆豪の名を呼ぶ。それに反応する爆豪。

 

「決勝で待ってろ……」

 

「……それで負けたらぶっ殺す」

 

「負ける気ねぇよ」

 

 そして、紅煉と轟ちゃんの戦いが始まる。

 

ーーーーー

 その頃轟ちゃんも控え室に居た。緑谷が途中来たがまだまだ実力不足だったと笑いながら出て行こうとしたが轟ちゃんが語り始め足を止める。

 

「彼の炎は間違いなく強い……だけど、私は絶対左を使わないで勝つ。舐めた真似をとった彼には目にものを見してあげる」

 

 緑谷は紅煉が轟ちゃんを舐めてる態度をとるとは思えず、聞いてみると紅煉が控え室に行く際の言い放った言葉を聞いてある結論に至る。

 

「……轟さん。多分火群君は轟さんのことを舐めて見てないよ」

 

「……何が分かるのよ」

 

「だって、轟さんは全力で来いって言ってるのに轟さんは全力を出さないんでしょ?それじゃあおかしいじゃん……だから火群君は『次の試合もそうだが』って言ったと思うよ……僕の思い込みかもしれないけど……まぁ、頑張ってね轟さん」

 

 そう言って控え室を出ていく緑谷。轟ちゃんは今の緑谷のセリフを聞いて少し驚いた表情を見せ、すぐに戻す。どちらにせよ左は使わないと決めてるので、紅煉がどんな風に思ってようが左は使わないと決意を固める……




第14話終了です。今回は爆豪VS緑谷の試合だけでした。
どうでしたでしょうか?次回はとうとう炎と氷の対決に入ります。原作のエンデヴァーの激励を大幅に変える予定ですのであらかじめご了承ください。
ではまた次回!


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第15話 火群と個人戦 ー4ー

前回のあらすじ
爆豪と緑谷の試合では爆豪が勝利した。紅煉はそのシーンを見てないが予想はついてたようだ。
今回は轟と紅煉の試合。さて、どうなることやら

冒頭は緑谷と爆豪の決着から


 紅煉が観客席を去ってから数分が経つ頃、緑谷と爆豪の戦いはさらにヒートアップしており、互いにどちらが勝ってもおかしくない状況であった。

 

「二人とも凄いレベルの戦いをしてるな……見習うべきか」

 

「でもそろそろ試合時間が終わるよ?どうすんのあの二人……」

 

 飯田が爆豪と緑谷の戦いを見てると耳郎さんがそう言ってきた。たしかにもう残り時間も少ない。決着をつけるのなら今くらいしかないのだ。

 

「はぁ、はぁ……そろそろ決着つけるぞ……デク」

 

「ぜぇ、ぜぇ……分かったよ……かっちゃん」

 

 そうして構える二人……緑谷は拳を爆豪は掌を爆破させながら構える。

 

「行くぞ!!かっちゃん!!」

 

「行くぜぇ!!デクッ!!」

 

 そう言うと二人は同時に飛び出す。

 

『二人一気に飛ばしたァ!ここでケリをつける気かぁ!?』

 

「「うぉぉおおおおおっ!!」」

 

「喰らえっ!かっちゃん!!」

 

「ごっ!?」

 

 先に攻撃したのは緑谷だった。緑谷の振るった拳は爆豪の頬をぶん殴る。お互いの加速がついた状態でのパンチなのでものすごい衝撃だ。殴った時の音がえげつなかった。

 

「モロかよ!!」

 

「アレは大丈夫なのか!?」

 

『モロ入ったァ!!』

 

 A組の面々もプレゼントマイクも驚きの声を上げる。

 

「な、めんなぁ!!デクッ!」

 

「っ!?しまっ!」

 

 だが、爆豪は怯みはしたが吹っ飛ばされることは無く耐え、逆に緑谷の胸元に掌を掌底するように押し付けると一気に爆破させ、緑谷を吹き飛ばした。

 

「今の技は!!?」

 

「アレって!?」

 

『アイツ……マジか』

 

「えっ?えっ!?」

 

 切島、耳郎、相澤先生が驚き、麗日さんは困惑する。他のA組のメンバーも気付いたものが半々くらいだろう。

 

「今の……」

 

「終わってねぇぞデクッ!」

 

「えっ……うわっ!?」

 

 緑谷が爆豪の攻撃の特徴に気づいたが、試合中。爆豪はその隙を見逃すほどお人好しではなかった。そのまま緑谷の腕と胸ぐらをつかみ爆破の勢いを利用した背負い投げをして場外に叩きつける。その際の衝撃は会場を揺らし響かせる。

 

「「「…………」」」

 

『『…………』』

 

 A組の面々も観客席にいるプロも、実況のプレゼントマイクも相澤先生も絶句する。

 

「ってて……容赦無いな、かっちゃん」

 

「てめぇが隙を見せるからだろうが……」

 

「み、緑谷君場外!!決勝進出!爆豪くん!!」

 

『け、決着ゥゥゥゥゥッ!!爆豪!まさかの背負い投げで勝利したァァァァっ!!』

 

『アイツがあんな勝ち方するとはな……予想つかなかった』

 

 爆豪がまさかの背負い投げという決着方法を思いついたことにプレゼントマイクや相澤先生が驚いてる。それはクラスメイトも同じだが、それよりも驚いたのが……

 

「さっきのって……火群の《紅蓮腕(ぐれんかいな)》に似てなかったか?」

 

「えぇ、似てましたわ……」

 

「まさか、火群君の技を真似るとは……」

 

「けろ……驚きね」

 

「デクくんが隙を見せるのもわかる気がする」

 

 そう、爆豪が緑谷をぶっ飛ばした爆破は紅煉の使う《紅蓮腕(ぐれんかいな)》に似ていた。それは緑谷も分かっていた。だから油断し隙を見せてしまったのだ。

 

「なんで真似したの?かっちゃん」

 

「あ?俺の個性と相性がいいと思ったから使っただけだ……他意はねぇ」

 

 緑谷が聞くと爆豪がそう呟いて戻っていく。緑谷はその後ろ姿を少し見てから戻る。その間に轟ちゃんは控え室に向かい、セメントス先生が舞台を直す。

 

ーーーーー

 そして舞台が直り少し経ってから準決勝最後の試合が始まる。

 

『さぁマスメディア!!とうとう来たぜこの時が!!待ちに待った奴も多いんじゃないか!?』

 

「始まりましたわね……」

 

「とうとうか、緑谷君はどう見る?この戦いを」

 

「轟さんが本気を出すかどうかが鍵だと思う」

 

「だな、半分女は炎を使いたがってねぇしな……左を使うか使わないかで勝敗は大きく左右される」

 

「てことは、もし轟が本気を出して炎を使ったら火群の勝ち率が低くなるってことか?」

 

「そうなるね」

 

 飯田が緑谷に聞くと緑谷はそれに答え、爆豪も意見を出してくる。そう、この戦いの勝敗は轟ちゃんが本気を出すか、出さないかで決まる。

 

『さぁ!選手の入場と行こうぜ!!』

 

『さっさと紹介してやれ……』

 

 プレゼントマイクが焦らすように宣言すると相澤先生がツッコミを入れる。

 

『まずは1人目!!No.2ヒーロー、エンデヴァーの娘にして氷と炎の使い手!その氷は全てを凍てつかせ、その炎は何を燃やす!?今回の体育祭トップ4の1人!ヒーロー科!轟凍火!』

 

 観客席が大きな歓声をあげる。そんな中浮かない顔をする轟ちゃん。それを見つめる父親の目をしたエンデヴァー。

 

『対!!その紅き炎はすべてを薙ぎ払い!その蒼き炎は何を護る!?雄英体育祭選手宣誓通り優勝を狙うトップ4の1人!!ヒーロー科!火群紅煉!!』

 

 歓声上げたのはA組の面々のみ……実は爆豪と麗日の試合でプロヒーローらをディスっ(正論で叩い)てから紅煉はプロから歓声を浴びてなかった。むしろまるで敵を見るような目で見られていた。それを見た他のメディアや観客も自分らが睨まれたくないからと歓声を上げてないのだ。

 

『あらら、火群はやけに嫌われてんなぁ……やっぱさっきのが原因?』

 

『自業自得だろ……』

 

 プロ等は自業自得の対象が紅煉と思っているようだが、相澤先生はプロ達のことを言ってる。それがわかってるのはA組の面々やほかのクラスの者たち……そしてその他先生方とエンデヴァーだ。

 

「……私は貴方を倒して1番になる……貴方の全力に打ち勝つ」

 

「なら本気を出せよ?轟凍火……下手な攻撃したらキレるぞ」

 

『おっと、始める前から既にギスギスだ!!とりあえずSTART!!』

 

 とりあえずでスタートするなよと、A組の面々と紅煉は思った。すると轟ちゃんが速攻を仕掛けてきた。

 瀬呂に使った大氷壁を紅煉にもお見舞したのだ。

 

『おぉっとぉ!?轟が速攻を仕掛けたァァっ!!てかモロだろあれ!!』

 

「さすがエンデヴァーの娘さんだ」

 

「プロの子は違うなぁ、イキってたあの小僧は瞬殺だろうなぁ‪w」

 

「だな‪w‪w大人をバカにした罰だ‪w」

 

 そのプロの発言にむっとしたA組だが、あえて何も言わない。相澤先生もプレゼントマイク先生もほかの先生方もだ。何故って?

 

「……まさか、こんなで俺を倒せると思ったか?だったら甘いぞ。轟凍火」

 

「……やっぱりこんなんじゃ勝てないよね」

 

 大氷壁が一瞬で溶け、一部気化する。その真ん中に立ってたのはやはりと言うべきか……紅煉が笑って立っていた。

 

「う、嘘だろ?」

 

「あの氷壁が一瞬?」

 

「そんな事ありえるの?!」

 

 プロヒーローらはその姿を見て驚愕する。目の前の出来事が信じられないように口を開く。

 

「次は俺の番だ……覚悟しろよ轟」

 

 紅煉は両腕を不死鳥の翼に変える。それを見た轟ちゃんも氷を出す準備をする。

 

「《不死鳥の翼撃(ふしちょうのよくげき)》!!」

 

「うわッ!!?」

 

 空を飛んで轟ちゃんに向かって不死鳥の翼で攻撃する。落下速度も合わさりそこそこのスピードを出して轟ちゃんに直撃する。一瞬怯んだがすぐに氷を出す。それを避けた紅煉は氷壁の先端に立つ。

 

『火群!!不死鳥の翼を巧みに使って攻撃したァ!!』

 

「お、おい……ひょっとしなくてもアイツ、そこらのプロ並なんじゃ」

 

「ま、まさかァ……」

 

「でも、あの強さ……個性の使い方も……」

 

 プロ等は紅煉の強さを目の当たりにしてそう呟く。

 

「……その炎、熱くない……なんで?」

 

「不死鳥の炎は人を癒すため、守るためにある……だから熱なんて概念がない……」

 

『な、なんと!不死鳥の炎は熱くないようだ!!あれ?じゃあなんで紅い方の炎を使わないんだ!?』

 

「まさか、私のことをバカにしてるの?全力で来ないなんて……私を舐めすぎてるのじゃないかしら!?」

 

「舐めてんのはお前の方だ!!轟凍火!!」

 

「っ!!?」

 

 紅煉の怒声は他の人たちもビビらせるほど大きく、強く、重い声量だった。

 

「左は使わず勝つ?炎を使わずに1位になる?俺は選手宣誓の時なんて言った!!俺は全力でかかってこいって言ってんだよ!!てめぇが全力を出さないのなら俺だって出してたまるか!!俺に本気を出させたきゃお前も本気出せ!!轟!!」

 

「クソな父親に金でも握らされたの……?本当に……腹立つ!!」

 

 そう言うと、また大氷壁を繰り出し、紅煉に攻撃する。

 

「……凍火…もう俺に縛られなくていいんだ。だが、まだ言えない。彼が目覚めさせなければ」

 

 エンデヴァーがつぶやくが、拳を握りしめて語り掛けるのを抑える。

 

「……《奥義 一刀火葬(いっとうかそう)》」

 

 瞬間、大氷壁を貫き溶かす刀の先端のような形の炎が吹き上がる。

 

『な、なんだこの炎!!?一瞬で氷塊が熔けたァ!?』

 

「なに、まだそんな力隠し持っ……なに、それ?!」

 

『あ?あぁ!?火群!!どうしたその腕!!』

 

「お、おい!火群の腕見ろよ!」

 

「おい!あいつの腕見てみろよ!」

 

 プレゼントマイクが実況し、轟ちゃんが鼻で笑うように言おうとした時、紅煉の異変に気づく。プレゼントマイクやA組、他のプロらも気付いたのかざわめく。それもそのはず……紅煉の左腕はまるでなにかに焼かれたかのようにドス黒く焦げていて、黒い煙を上げていたのだ。

 

『な、何をしたらあーなるんだァ!?』

 

「俺の奥義の一つ……火群家代々伝わる禁術。犠牲奥義《一刀火葬(いっとうかそう)》……この技を使う代償に体の一部を焼き焦がさなきゃいけない……」

 

「なんで、そんな事を……」

 

「その答えは質問にして返そう。轟凍火……俺の炎はお前の氷壁くらい簡単に溶かす。ならなぜ俺はこの犠牲奥義を使ったかわかるか?」

 

「えっ?」

 

『ど、どういうことだ?』

 

 轟ちゃんもプレゼントマイクもわけが分からないように見てると次の瞬間。紅煉は言い放つ。

 

「その左の炎、エンデヴァーの炎だと思うのならそんな考え捨てろ……その炎は、お前だ。お前の炎だ。お前の、個性だろうが!!俺は、まだお前に傷一つつけられてねぇ!!全力で、かかってきやがれ!!なりたい自分になれ!!轟凍火!!」

 

 その最後の言葉は轟ちゃんが母親に言われた言葉で、これから先の轟ちゃんを支える言葉となる言葉だった。そのため

 

「ッ!!」

 

『こ、これは!?』

 

「熱っ!!」

 

「熱来た!?」

 

「使った……左を!?」

 

「左を使わせたのか?火群少年は、轟少女を救おうと!?」

 

 轟ちゃんの左から、炎が吹き出す。それを見てプレゼントマイクやA組はその熱に驚き緑谷は轟ちゃんが炎を使った事に驚く。オールマイトもそれに気づく。

 

「……勝ちたい癖に、敵に塩を送るなんて……どっちが巫山戯てるのよ……私だってヒーローに…!」

 

「……クスッ、すげぇ」

 

「……フッ、凍火ァァァァァァァァァァっ!!!

 

 轟ちゃんの姿を見て、紅煉は笑う。それを見てエンデヴァーはとうとう我慢出来なくなったのか轟ちゃんに語り掛ける。その声に皆驚きエンデヴァーを見る。

 

「とうとう、受け入れたか!!お前自身の炎を!自分の本当になりたいものを!!」

 

「っ!?」

 

 轟ちゃんが驚いたような顔でエンデヴァーを見る。紅煉も原作と違うエンデヴァーの激励に耳を傾けエンデヴァーに視線を向ける。

 

「そうだ!!それでいい!!ここからがお前の始まりだ!!この俺という呪縛を乗り越えたお前は、必ず強くなる!!この俺の野望などもうどうでもいい!俺の血を気にしなくていい!!俺と言うヒーローを超え、最高のヒーローになれるよう励め!!炎と氷の二つを使いこなし、なりたいお前になれ!!凍火!!」

 

『エンデヴァーさん。急に激励……か?親バカなのね』

 

 エンデヴァーがそう叫ぶとプレゼントマイクが原作通りのセリフを吐く。

 

「な、なんで、今更……そんな言葉、かけたこと無かったのに」

 

「人は変われるもんさ……どんな悪党だろうが、どんなアホだろうが……絶対に変わるんだ」

 

 

 轟ちゃんが驚いたように声を上げるとそう返す紅煉。そんな言葉を発した紅煉を見る轟ちゃんは、紅煉が笑ってるのに気づくと、言い放つ。

 

「なんで、笑ってられるの?」

 

「えっ?」

 

「ピンチ、なんだよ?」

 

「……プルトンに比べたら、マシなほうさ……さ、お互い全力を出そうぜ?轟!」

 

 紅煉は全身から炎を吹き出させる。そして轟ちゃんも構えようとすると、不意に言葉を漏らした

 

「……凍火」

 

「えっ?」

 

「凍火って呼んで……お願い」

 

「……分かった。じゃ、行くぜ……凍火ァァァァっ!!」

 

「!……うん、行くよ……紅煉!!」

 

「ミッドナイト!これ以上は!」

 

「彼らの身が危険すぎる!!」

 

 轟ちゃん……もとい凍火が氷を出して炎をで溶かし、紅煉が腕に炎を纏う。それを見たセメントスはヤバいと思ったのかミッドナイトに中止を求めセメントで止めようとしミッドナイトもそれを了承し個性で止めようとするが、もう遅い。

 

「……ありがとう。紅煉。これが、私の全力!!」

 

「いくぜ!これが俺の最大最高の《火拳(ひけん)》だァァっ!!」

 

 瞬間。大爆発が起こり、セメントス先生もミッドナイト先生も吹っ飛ぶ。そして収まり、爆煙で周りが見えなくなる。

 

「大きければいいってもんじゃないが、凄いなこれ」

 

『な、なんだ?今の……イレイザー、今の何?』

 

『散々冷やされた空気が熱により一気に膨張して爆風を起こしたんだ』

 

『それでこの威力!?どんな熱だよ!なんも見えねぇし!これ勝負どうなった!?』

 

 凍火は冷たい温度となった空気が凍火の炎の熱により膨張し強大な爆風を生み紅煉を襲うが、紅煉は火拳でそれを打ち消すように拳を振るった結果なのだろう……そして、爆煙が晴れると場外の壁に吹き飛ばされている凍火の姿が……そして舞台の中央には……

 

「……今回は、俺の勝ちだ。凍火」

 

 堂々と立っている紅煉の姿が、そこにあった。

 

「と、轟さん!場外!決勝進出!火群くん!!」

 

「「「「「「うぉぉおおおおおっ!!」」」」」」

 

 一気に大歓声が広がる。プロらもこの戦いのせいか紅煉を見る目が180度変わったようだ。すげぇと言ったりしてる。だが、そんな中歩き出す紅煉。左腕を完全に治すと両腕を不死鳥の翼に変える

 

「《不死鳥の抱擁(ふしちょうのほうよう)》」

 

 両腕を不死鳥の翼に変えてその翼で凍火を包み、傷を癒していく。

 そのままある程度治すと俗に言うお姫様抱っこしてその場を後にする。紅煉なりの優しさなのだろう。

 

『おいおいおい!!火群の奴!轟を抱えてどこか向かってくぜ!』

 

『リカバリーガールのとこだろう。あいつも回復させてから傷は残らないだろうが……』

 

『なるほどなぁ!!さて!ここから舞台を直していくぜ!!少しの間休憩だ!!……イレイザー。飲みもん買おうぜ』

 

『急に素に戻るなよ』

 

ーーーーーーーーー

 リカバリーガールの出張保健所にて

 

「……ここは?」

 

「目が覚めたか?凍火」

 

 凍火が目が覚めると保健室によくあるベットの上で傍に紅煉が居た。

 

「……紅煉?なんで?ここは?」

 

「臨時の保健所だ…悪かった、全力出しすぎた」

 

「うんうん、気にしないで」

 

 凍火はそう微笑む。すると紅煉が何かを思い出したように言う。

 

「エンデヴァーさんからの伝言。[惜しかったな、凍火……今まですまない。許してくれとは言わん。だが、分かって欲しい……もう強制しないと……家に帰ったらゆっくり話そう]……だそうだ」

 

「今更すぎる……所で、決勝は?」

 

「まだ少しかかるそうだ。だからいる……」

 

「起きたのかい?全く、やりすぎには注意しとくれよ?」

 

「返す言葉もありません」

 

 話してるとリカバリーガールがやって来て紅煉に叱責する。紅煉はそれを甘んじて受け入れた。

 

「じゃあ凍火。俺はもう行くな」

 

「うん、応援してる。それと、絶対に見届けるから」

 

「……あぁ、分かった」

 

 そう言って保健所を後にする。そしてリカバリーガールは凍火に対して話しかけた

 

「あの子、あんたのことだいぶ心配してたよ」

 

「……そうですか、それは良かったです」

 

「……ん?」

 

リカバリーガールは凍火の心情の変化から何かを察知したという。

 

ーーーーーーーーー

「……次の相手は爆豪か…さて、どうやり合おうかな」

 

 紅煉は既にスイッチを切りかえ、決勝に勝つ事だけを頭に入れた。

 次が最終決戦……これで優勝者が決まる。

 

「火群君。少しいいかな?」

 

「……エンデヴァーさん」

 

 紅煉を呼び止める声が聞こえ、振り向くとエンデヴァーが居た。

 

「まず、俺の呪縛から凍火を救ってくれてありがとう。そうした俺が言うのはおかしいが、礼を言う」

 

「ヒーローとして当然のことをしただけです……エンデヴァーさん」

 

「……なにかな?」

 

「……凍火の事もそうですが……家族の事も見てあげてくださいね…」

 

 そう言うとエンデヴァーは驚いたように目を見開いて紅煉を見つめる。

 

「……勿論だ。後で冷……凍火の母と電話で話そうと思っている」

 

「そうしてください。それでは……」

 

「最後に、もう一つだけ言わせて欲しい」

 

「ん?」

 

 エンデヴァーのその一言に立ち去ろうとしたが歩みを止めてエンデヴァーを見る。

 

「決勝進出、おめでとう。応援は出来ないが、見届けたいと思っている」

 

「……プッ、クククク」

 

 その言葉を聞いた紅煉は吹き出して笑ってしまう。

 

「ムッ、何故笑う?」

 

「凍火と同じことを言ってるからですよ。ほとんど同じセリフを親子揃って吐くもんだから、おかしくって」

 

「そ、そうなのか?そんなに似てるか……」

 

「心配しなくても、俺は優勝する気でいます……見ててくださいね」

 

 そう言って今度こそ立ち去る紅煉。その後ろ姿を見たエンデヴァーは本物のヒーローの後ろ姿を見てる気分になった。

 

 そのまま紅煉は観客席に戻らず控え室に入り次の爆豪との試合に備えるのであった。




第15話終了です。
いかがでしたでしょうか?少し急ぎ足的感じになりましたが……
気に入っていただけたら幸いです。

次回はいよいよ最終バトル。どうなるのかは次回のお楽しみ!!


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第16話 火群と個人戦 ー5ー

前回のあらすじ
轟凍火との試合を終えた紅煉。
ついに決勝戦。相手は戦闘センスがバカ高い爆豪。さて、どうなることやら
そして前回匂わせた凍火の心情も明らかに?

アンケートの票が多くて驚きました。アンケートに参加してくださった方々に感謝を、ありがとうございました。



 凍火が観客席に戻ってくる。まだ試合は始まってなかった。

 

「轟!戻ったのか!」

 

「轟さん!もう大丈夫なの?!」

 

「うん、みんなありがとう」

 

どうやら最後のぶつかり合いでクラス全員心配してたらしい。

 

「でも、惜しかったな。轟くん。もう少しで決勝に進めたのに……」

 

「ケロっ、そうね炎と氷使っても彼には勝てなかったわね」

 

「うん、でも大丈夫。紅煉は私の目を覚ましてくれた。結果はどうであれ、私に悔いはないよ」

 

「そうか……それなら良かった……ん?」

 

「「「「「ん?」」」」」

 

 飯田が惜しかったと言ってそれに梅雨ちゃんも同意するが凍火が悔いはないと言った時、クラスメイト全員がある発言に注目した。

 

「な、なぁ轟……今、火群のことなんて呼んだ?」

 

「ん?紅煉って呼んだけど?ダメだったかな?」

 

「「「「「……えぇぇぇぇぇぇええっ!?」」」」」

 

 覚悟を決めた峰田が質問するとあっさり返す凍火。その答えにクラスメイト全員が驚愕した。

 

「ど、どういう事ですの!?」

 

「と、轟!!その辺りくわしく!!」

 

 八百万さんと耳郎さんがめっちゃ突っかかる。驚きながら紅煉に言われた事や自分の呪縛を解いてくれた事を話す。

 

ーーーーーーーー

 八百万達に色々と説明してるといつの間にか舞台が直っていた。そうしてとうとうはじまりの合図が……

 

『さぁ!舞台も直った所で、決勝戦だァァァっ!!』

 

 プレゼントマイクのマイクの実況が始まると大歓声が起こる。

 

『選手の入場だ!!まずは、その爆破で掴み取るは優勝!近寄る敗北は爆破で吹き飛ばしそうなこの男!!ヒーロー科!爆豪勝己!!』

 

 そう言うと爆豪が登場する。その瞬間一気に大歓声が巻き起こる。

 

『対!!紅き炎は敵を焼く!蒼き炎は友を守る!その紅き炎で敵をなぎ払い!蒼き炎で優勝を引き寄せそうな男!!ヒーロー科!火群紅煉!!』

 

 さらなる大歓声が巻き起こり紅煉が登場する。

 爆豪も紅煉も目の前の相手しか見てない。

 

「……来たか。宣言通り……これで」

 

「言ったろ?待ってろって……だから」

 

「「心置き無くてめぇをぶち倒せるって訳だ。」」

 

 紅煉も爆豪も戦闘を楽しみにしてた戦士のような笑みを浮かべる。

 

『2人とも怖い笑みを浮かべてやがる。早くしねぇと勝手に始めそうだ!というわけでSTART!!』

 

 しまるどころかもうやけくそな開始の合図をする。だが、爆豪も紅煉も今はそれがはじまりの合図で十分だった。

 

「死ねぇぇぇぇっ!!」

 

「くたばれぇぇっ!!」

 

 互いに走り出すと紅煉は炎を使って爆破を起こし、爆豪は普通に掌から爆破を起こす。

 

『いきなり爆破かよ!てかこいつらの掛け声怖っ!!』

 

『爆豪はともかく、火群もか……案外戦闘狂なのな』

 

「死ねやぁ!!」

 

「らっしゃァ!!」

 

「クソがっ!!」

 

「甘いわッ!!」

 

『怒涛の爆破ラッシュ!!てかお互い大丈夫か!?火傷とかしねぇ!?』

 

『どこに心配要素出してんだお前』

 

 爆破で攻撃し合いながらも近接戦闘も行う。ちょくちょくプレゼントマイクのツッコミが入ってきたりするが特に気にしない。

 

ーーーーーーーー

 

 観客席……A組の面々らもその試合を食い入るように見ている。

 

「かっちゃん……持久戦に持ち込もうとしてるね。多分火群君が動けなくなるのを待ってるのかも」

 

「どういうこと?緑谷ちゃん」

 

 緑谷が考察してると梅雨ちゃんが聞いてくる。

 

「火群君の個性は炎を操る。つまりずっと使っていればいずれ熱がこもり動きが鈍くなる。それを狙ってるんだ」

 

「なるほど……確かにそれなら爆豪くんの勝率が一気に上がる」

 

「つまりここを爆豪が耐えれば爆豪の勝ち確ってことか!?」

 

「その作戦は失敗に終わるよ」

 

「「「「えっ?」」」」

 

 緑谷が考察を言うと皆理解するように頷くが、凍火はそれを否定した。ソレに皆が驚く。

 

「なんでそう思うの?轟はさ」

 

「そうですわ。何故ですの?」

 

「彼の個性、覚えてる?」

 

「えっ?炎を操る個性だろ?」

 

「それは半分正解で半分不正解」

 

「あれ?違ったっけ?」

 

「あっ!!」

 

 耳郎と八百万が聞くと質問をする凍火。ソレに上鳴が応えるも半分不正解という言葉に疑問を抱く。そしてある事に気づいたのは緑谷だった。

 

「炎と熱を操る個性!!」

 

「緑谷、正解」

 

「でもそれがなんの関係があるんだ?」

 

 緑谷が正解を言う。それに疑問を持ったのは峰田だ。すると緑谷は言い放つ

 

「熱を操るということは自身の体温も操作できる。熱をこもらせずに戦うことができるんだ!!」

 

「「「「「「えっ!?」」」」」」

 

「現にずっと炎の個性を使ってるのに冷ましてる様子もないしね」

 

 そう、紅煉は炎と熱を操る。つまり彼の体温はどんなに上がっても一定の温度に保つことが可能なのだ。

 つまりどんなに個性を使ってもその動きは体力面以外では鋭いままなのだ。それに凍火は気付いていたのだ。

 

「これ、爆豪の奴……思ったより不利じゃないか?」

 

 切島がそう呟くと、みんなはまた試合に集中する。

 

ーーーーーー

 

「ちっ!熱こもる頃だと思ってたが、よくよく思い出してみればお前熱も操れんだったな」

 

「その通り!俺は炎と熱を操る!しかし強いな爆豪。生半可な力出すとこっちが押されちまう」

 

 爆破ラッシュが止まりお互い距離をとる。

 

「そして爆豪。君のその勝利への執着。そして本気で向かってくるその姿勢に敬意を評して、今俺が出せる炎の造形術を見せてやる」

 

「あ?」

 

 そう言うと紅煉は足元に炎を展開する。

 

「《炎戒(えんかい)》……この造形術は俺の体力と精神力を多く持ってく。いずれ使いこなしてみせるが、今は5分が良いとこ……だがお前には出していいと思った。この出来上がったばかりの技をな!!」

 

 そう言うと展開した炎に手をつけて何かを掴む

 

「来たれ!北欧神話に伝わりし、邪神ロキにより創られし『害をなす魔の杖』よ!我が手中に収まり、その猛威を振るえ!!《禁忌[レーヴァテイン]》!」

 

「っ!?」

 

「なんだアレ?!」

 

 そう言いながら腕を引き上げると紅煉の手に一振りの炎の大剣が握られていた。その刀身も、柄も、鍔すら炎で出来ている。

 刀身に関しては紅煉の背丈を遥かに超える大きさだ。その形はまるっきり某弾幕ゲームの吸血鬼姉妹の妹の持つカードの技だ。

 

「な、なんだそりゃ……」

 

「け、剣!?」

 

「てかすごくデカっ!!」

 

『火群ァ!!なんだその炎の剣!!振り回せるのか!?』

 

『炎の能力者だから振れなきゃ意味ねぇだろ』

 

 爆豪やA組の面々、プレゼントマイクが驚く中、紅煉は笑いながら肩に炎剣……レーヴァテインを担ぐ。

 

「気をつけろよ?爆豪……俺もこの剣が振りこなせるか……」

 

「っ!?」

 

 そう言って剣を振り上げる紅煉。爆豪はなにか危険を察知したのか身構える。

 

「分かんねぇからよ!!」

 

 そして振り下ろす。爆豪は最初爆破で弾こうとしたが嫌な予感がしたのか横に避ける。その選択は……正解だった。

 紅煉のレーヴァテインは舞台を割り、その剣閃に沿って炎の弾幕が形成される。この弾幕が当たった場所も爆破しているので恐ろしい技と認識せざるおえない。

 ただ、弾幕が残るのは数瞬。警戒すれば避けれ無い訳では無いといえる……だがそれはあくまでも弾幕単体の話。弾幕を貼られながら斬りつけられようものなら弾幕の餌食にもなる。

 

「っんだよ、その技!」

 

『な、なな、なんじゃその威力!!本当に炎で形成された大剣なのか!?』

 

『制御しきれてない状態での使用……合理的とは言えないが、制御すればこの上ない頼もしさもあるだろうな』

 

 爆豪やプレゼントマイクは驚き、相澤先生も驚きつつその性能に注目した。

 

ーーーーーーーーーー

 炎剣を紅煉が出してから皆の表情は少し変わり舞台を割ったのを見て驚愕する。そんな中、緑谷は……

 

「炎の形を大剣にしてそれを維持する。極度の集中力と維持するための精神力が凄い高いのかな?限界は5分って聞こえてたしそれ以上はさすがにキツイのかもしれない。となると短期決戦?にしては動きが単調すぎる。それよりも出来上がったばっかということなら以前から練習はしてた?となるとその練習期間に応じて技術も高めていたのかな?とするとやはり剣術を身につけた可能性も低くは無い。でもそんなことが可能だろうか?となれば……」

 

 いつも通りの超高速考察詠唱をしていてクラスメイトを驚かせていた。

 

「……でも、緑谷君の言う通り、火群君の技術は凄いな……そこらのプロ以上の実力を見せてるかもしれない」

 

「爆豪も負けてないと思うけどね……」

 

「ケロ、でも火群ちゃんのあの剣。実践で使うには危なすぎるわね」

 

「そうですわね、もう少し火力や威力を落とし、維持に集中が向きつつ大勢の敵と交戦する場合もありますし」

 

「ふむ、北欧神話の『害をなす魔の杖』……レーヴァテインか、良い名前だ……まさしく炎の響宴。」

 

 という感じに皆も考察しており紅煉のレーヴァテインの評価を始める。やはり常闇はぶれなかった。

 

ーーーーーーーーー

「クソがっ!!なんだよその剣!!」

 

「本気を出してやってんだ。有難く受け取れ!!」

 

 地面にレーヴァテインを突き刺すと半径50mの謎の炎の円が浮び上がる。爆豪はその円の中にいる。

 

「なっ!?」

 

『おぉ!?火群のやつ!なんかする気のようだぞ!!』

 

「焼き払え!!《レア・ラーヴァテイン》!!」

 

 紅煉はそのまま剣を地面に突き刺すと、炎の柱が幾つも円の中に出現し爆豪に近づく。

 

「んだよ、コレ!」

 

「今の俺が放てるレーヴァテインの最強の技だ!受け取れ爆豪!!」

 

『おぉっとぉ!!すごい数の火柱だ!!爆豪これは万事休すか!?』

 

「……舐めた真似すんなクソがッ!!」

 

 爆豪が自身の足元を爆破させる。すると舞台はえぐれ火柱も炎の円も消えた。

 

『爆豪止めたァァっ!!どうやったんだ!?』

 

「今の技……あの円の中でしか発動してなかったな……つまりあの技は円の中でしか本領を発揮しない。地面を抉ったり円を消せば1発でおしまいって訳じゃねぇか」

 

「……バレてたか。流石は爆豪と褒めてやるよ」

 

 爆豪が悪い笑みをしながら紅煉を睨むように見て、紅煉はそんな爆豪を尊敬するように見る。

 

『爆豪すっげぇぇぇぇっ!!火群も凄いやつだがやはりトップ4の1人、そしてここまで勝ち上がっただけの事はある!!』

 

『火群も見所はあるが轟、緑谷、爆豪もまた見所がある人材の1人……ここまで勝ち上がってくる程だからな』

 

 プレゼントマイクと相澤先生から高評価を貰うトップ4の面々。そうこうしてると2人はさらに動き出す。

 

「さてと……そんじゃあここいらで終わりにしようぜ……爆豪」

 

「……その意見には同意してやるぜ……火群っ!俺が1番になってやる!本気のお前を倒して、俺が!!」

 

 跳躍すると両手を左右逆方向に向けて爆発を連続発生させ、その反動で錐揉み回転しながら紅煉に突撃してくる。

 

「……悪いな爆豪……倒されんのは……お前だ!奥義!!」

 

 紅煉はその身に炎を纏い回転しながら飛んで、空中で炎の鳥へと姿を変え突進する……

 

『爆豪と火群!大技を出すつもりだ!!てか火群のあの技って何!?見たことねぇんだけど!!』

 

『アレは火群の奥義の一つ、《鳳凰烈波(ほうおうれっぱ)》。火群自身を火の鳥に見立てて相手に突進する技だ。威力は俺らプロが見てもすげぇって思うほどだ。本来なら止めるべきだ……だが、俺もこの結果を見て見たい……教師としてプロとして…』

 

 プレゼントマイクが実況すると相澤先生がそう言う。そして爆豪と紅煉が……それぞれの大技がぶつかる

 

 

「《榴弾砲(ハウザー)ー」

 

「《鳳凰(ほうおう)ー」

 

 そしてお互いニヤッと笑い合い、即座に真面目な顔になって一気に叩き込む。

 

 

「ー着弾(インパクト)》!!!」

 

「ー烈波(れっぱ)》!!!」

 

 爆豪は勢いを乗せたまま大火力の爆発を叩き込み、紅煉は炎の鳥となって突進することで、互いの大技がぶつかり合い鍔迫り合いに近い何かを起こす。

 

「こんな、トコで、負け、るか……よ!勝己ィィッ!!!」

 

「完膚なきまでに……潰して、やる!紅煉ンンンッ!!!」

 

 爆豪も紅煉もお互いに譲らない一撃。その絶大な威力は強烈な熱と爆風を生み出していた。

 

「「うぉぉおおおおおぉぉおおおおおっ!!!」」

 

 そのまま一歩も譲らないまま大爆発が起こり会場はまた爆煙に包まれた。その爆風によりミッドナイトとセメントスも吹っ飛ばされる。

 そして爆音が止み……爆発による振動がなくなった頃にプレゼントマイクは言った

 

『……ヤベぇ……今年の一年超やべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!ミッドナイトやセメントスは無事か!?』

 

『互いの本気の一撃……よくここまで耐えたもんだ。どっちが負けても勝ってもおかしくないなこりゃ……』

 

「いててっ、無事ですか?ミッドナイト」

 

「え、えぇ、何とか……どっちが勝ったのかしら」

 

 プレゼントマイクは驚愕し相澤先生が冷静に解説。ミッドナイトとセメントスは無事。観客もA組の面々もプロヒーロー等も結果を見る。

 

 会場……舞台に立ってたのは……

 

 

 

 

 

 肩で息をしながら拳を高々と上に挙げ笑みを浮かべてる紅煉の姿だった。場外では爆豪が壁にもたれかかって舞台を見てる。

 

「えっ…?」

 

「……見ての通りだ審判。俺はあの爆風に耐えきれず場外に落ちた。立ってたのは、そいつだ」

 

 腕を組みながらそう答える爆豪。その言葉が意味するのはたった一つしかない。原作ではその結果を認めようとしないだろうが……

 

「……爆豪君場外!!よって今期雄英体育祭の一年の部優勝者は……火群君!!」

 

「「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」」」」」」

 

 会場から一気に歓声が起こり火群の勝利を悦んでくれている。

 紅煉はその光景を目にしさらなる笑顔を向けた。

 

「勝ったよ……母さん」

 

ーーーーーーーーーー

 この雄英体育祭は中継されており、テレビの向こうで見ることが可能。その結果今、ある一人の男が見ていた。

 

「……おめでとう紅煉。父として誇りに思うよ。そして改めて確信した。かならず手に入れてみせる。それまで待ってるんだぞ…………紅煉」

 

 凶悪敵のプルトンは笑みを浮かべながらそう呟く。彼の悪意もまた、着々と近づいてきていた。




これにて雄英体育祭最終種目終了となります。次回は後日談的感じにしていこうかと思います!
アンケートに関してですが作者も驚く程多く出してくれる人がいて良かったです。答えて下さった皆様、ありがとうございました。締切は今日の午後11時を予定としております。残り時間が少ないですがご了承ください。
次の次からとうとう職場体験編になります。紅煉がどこのヒーロー事務所に行くかのアンケートも次回に取ろうかと思ってます。多分取らないかもしれないのであらかじめご了承ください。

それではまた次回おあいしましょう!


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第17話 火群と閉会式と凍火のセカンドオリジン

前回のあらすじ
紅煉と爆豪の試合が始まり互いに1歩も譲らない試合をする。
最後にお互いの大技を決め、勝利したのは紅煉だった。


 全ての試合が終わり閉会式が始まる。因みに飯田は家の急な用事で早退したと聞いた。

 だが原作と違って1位~3位の人物は全く違う。

 

「それではこれより!! 表彰式に移ります!」

 

 ミッドナイト先生の言葉と共に、表彰台が煙幕と共に地上へと上がる。

 スタジアムの上空に打ち上げる花火と、観客からの大きな歓声がトップ4を迎えてくれた。

 

 三位台には、いつもの柔らかい笑みを浮かべた緑谷と、迷いを捨てた微笑みを見せる凍火。

 

 二位台には、両腕をギブスで覆い三角巾で首に固定されている仏頂面の勝己。

 

 そして一位台には……いつも通りの表情で腕を組みながら立つ紅煉。というかなんか笑みを浮かべてる?

 

「すげぇな紅煉の奴。堂々としてるぜ」

 

「まるでどこかの王様みたいだな」

 

 切島と瀬呂がそう言ってるとミッドナイト先生がまた話し始める。

 

「それではメダル授与よ!! 今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!」

 

「HAーHAHAHA!!!!」

 

 スタジアムの上から日本人なら馴染み深い笑い声が聞こえる。

 ここ暫くで見慣れていたが、もの凄い有名人が教師になってたんだった。

 その人、オールマイトは代名詞にもなっている台詞を叫びながら飛び降りてくる。

 

「私が!! メダルを持っ「我らがヒーロー、オールマイトォ!!」たァ!!!!」

 

 台詞が被ってしまう。プルプル震えるオールマイトに、ミッドナイトが手を合わせて謝っている。

 そのまま気を取り直して、メダル授与が行われる。

 

 まずは、三位の2名から

 

「緑谷少年!第3位おめでとう!」

 

「あ、あああ、ありがとうございます!!」

 

 緊張する緑谷。こういう場面で言われるのに慣れてないのだろう。

 

「君の場合、地力は十分に出来ている。後は個性の細かな制御の練習が必要だね」

 

「は、はい! 個性の訓練も、戦闘スタイルの見直しも、これからも全部頑張って……立派なヒーローになります!!」

 

「うむ! 期待しているぞ!!」

 

 そう言うと次に凍火に顔を向ける。

 

「轟少女!3位おめでとう!」

 

「ありがとうございます。頑張ってこの結果だったのが残念でしたが、一つ殻を破れて良かったと思ってます」

 

「うむ!その個性を使いこなせれば君はもっともっと強くなれる!炎と氷、両方を使いこなせるようにな!」

 

「はい」

 

 次に爆豪の前に立つ。

 

「爆豪少年!2位おめでとう!見事な成績だったぞ!」

 

「慰めは要らねぇよオールマイト。1位になれなかったのが悔しいが全力を出し尽くしての結果だ。この順位には価値はねぇが満足してる」

 

 オールマイトの称賛を淡々と否定する爆豪。気持ちはわからんでもない。

 彼は他人や世間の評価など気にせず、自分の中の絶対的な基準の上を歩いている。傲慢にも思えるそれは、彼の強さでもある。

 そこはオールマイトも理解しているらしく、頷きながら言葉を紡ぐ。

 

「うむ! 相対評価に晒され続けるこの世界で、不変の絶対評価を持ち続けられる人間はそう多くない。自分を貫く君の姿勢は、多くの人に理解されただろうさ!」

 

「どうでもいいからさっさとメダル寄越せや……“傷”として、忘れねえように取っとくからよ」

 

「HAHAHA! そうだね!」

 

 負けた自分を忘れないようにと、弱さや戒めの証として持っておくつもりのようだ。原作とは違う爆豪を見て少し尊敬の念を抱く紅煉。

 

 さて、最後に紅煉の番だ。

 

「火群少年。優勝おめでとう!見事に伏線回収した訳だな!」

 

「ありがとうございます。今自分が出せる全てを出し尽くしました」

 

 そう言うと大きく頷かれて、金色に光るメダルを掛けられる。

 見た目以上のずしりとした重さは、ここまで来た証だろう。

 

「個性も地力も申し分はないが、加減を覚えるようにな、特に最後に見してくれたあの剣に関してはな」

 

「承知しております。御指南ありがとうございます」

 

「うむ!」

 

「さぁ皆さん、今回は彼らだった! しかし! この場の誰もが、ここに立つ可能性を持っていた! ご覧いただいた通りだ……競い、高め合い、さらに先へと昇っていくその姿! 次代のヒーロー達は、確実にその芽を伸ばしている!」

 

 気負うことなく、言葉を素直に受け止めて前を見るトップ4人。眼下にいるクラスメイト達もそうしているようだ。

 

「てな感じで最後に一言! それではみなさん、ご唱和ください……」

 

「あ…(そういや原作だとこれって)」

 

「「「Plus Ul「お疲れ様でした!!」」」」

 

「「あっ…」」

 

「プックククッ(やっぱこうなったか…)」

 

 オールマイトが締めくくろうとすると締まるどころかこれまでの言葉を全て忘れてしまいそうになるほどの脱力感に陥る。

 緑谷と凍火はポカンとしていて爆豪は呆れ、紅煉は笑ってる。すると観客からもブーイングを受けるオールマイト。

 

「そこは『Plus Ultra』でしょオールマイト!」

 

「あ、いや……疲れただろうなーと思って……」

 

「クククッ(だが、この締まらない最後もまた一興……だから俺達が締めよう)」

 

 そう思いながら緑谷を見ると緑谷と目が合う。そして紅煉の考えてる事を理解したのか頷く。

 すると紅煉が大声で言い始める。

 

「此度の体育祭!互いに良い結果を出せた!!」

 

「「「「えっ?」」」」

 

「だが、これは始まりに過ぎない!!翌年はここに立つのが俺らじゃないかもしれない!皆、力をつけ、また翌年に繋げようじゃないか!!それでは皆さん!ご唱和ください!」

 

「更に!!」

 

「向こうへ!!」

 

 紅煉がそう叫ぶ。それに緑谷も応えるとA組の面々は察し、全員で言い放つ。

 

「「「「「Plus Ultra!!」」」」」

 

 それに観客もオールマイトも呆然とする。だがすぐに理解して全員が「いいぞぉ!」「よくやった!」「これで締まりはいい方向にいったな!!」等々の言葉が聞こえてくる。するとオールマイトが紅煉と緑谷に小声で「ありがとう二人とも」と言った。

 

ーーーーーーーーーーーー

 その後、全員教室に戻るが紅煉は一人職員室に向かう……その原因はもちろんの事だ。

 

「これが録音したデータです」

 

「確かに受けとった。それで?そのあとは」

 

「音沙汰無しです」

 

「そうか、だが用心しておけよ?いつまた現れるか分からんからな」

 

「はい。分かりました」

 

 そう、プルトンからの電話を録音したデータを相澤先生に渡したのだ。その後何を話したかを話して教室に戻る。

 教室には誰も居なかった……たった一人以外

 

「あ、おかえり。紅煉」

 

「……凍火?他のみんなは?」

 

 そう、教室に残ってたのは轟凍火だった。

 

「もう帰ったよ。それぞれ今日の事家族に沢山話したいんだって」

 

「……お前はどうしてここに?」

 

「……家でお姉ちゃんが御馳走作ってるんだけど……紅煉もどう?って」

 

「…………えっ?」

 

 どうやら紅煉の戦いは、これからのようだ……

 

ーーーーーーーーーー

 どうやってここまで来たのか、覚えてないというのが今の紅煉の心情。本来なら申し訳ないからと解散していつも通り自分で作るかレンチンか外食だろうが今現在の立ち位置は前門の轟宅、後門の凍火。もう手遅れである。

 

「ただいま」

 

「お、お邪魔します」

 

「あ!凍火お帰り!それと、君が火群君ね!」

 

 眼鏡をかけた綺麗な女の人が出迎えてくれた。原作だとこの人は確か……

 

「あ、私は轟冬美、凍火の姉です。いつも凍火がお世話になってます」

 

「同じクラスの火群紅煉です。むしろこちらがお世話になってるくらいです。こちら、ささやかですがお納めください」

 

 そう紅煉が言うと持ってた紙袋から菓子包みを渡す。

 

「あら、わざわざありがとうございます」

 

「いえ、常識ですから……」

 

 そのまま居間に通される。

 

「……緊張してる?」

 

「……まぁな」

 

 本来ならもっと先になるはずの轟家での食事。なぜ今なのか考えずにはいられないが、そんな暇は無い。凍火は紅煉のテーブルを挟んで目の前でなく、紅煉の隣に座ってるのだ……

 

「……なんで隣?」

 

「……ダメ?」

 

「……ダメじゃないけども」

 

 捨てられた子犬の目で見られたら断れないに決まってる。全世界共通だろう、まず間違いなく……

 

「お待たせ~。あら?お邪魔だった?今日もお姫様抱っこしてたもんねぇ」

 

「お姉ちゃん!」

 

「ブッ!?(そういえば全国中継されてんだったァァァっ!忘れてたァ!)」

 そして料理を盛り付けた皿を持ってきた凍火の姉、冬美さんが笑うように言うと凍火は顔を赤くし紅煉は吹きだす。

 そんな冬美さんの後ろに1人の男性がいることに気づいた。白髪で逆立ってるこの人は確か……

 

「夏兄。おかえり」

 

「どうも、お邪魔してます」

 

「あぁ、ただいま。姉ちゃんから話は聞いてる。俺は轟夏雄。よろしく」

 

「俺は火群紅煉といいます。よろしくお願いします」

 

 夏雄さんと挨拶を交した所で夕飯をご馳走してくれた。普通に美味しくて驚いた。ちなみに紅煉も料理をするが腕前は中の上……それでも他の人に比べたら上手い。

 そうして楽しい夕食が終わる。そして夏雄さんは部屋へ、冬美さんは洗い物を、凍火はやる事があるからと自室へ、暇だった紅煉は冬美さんの洗い物を手伝っている。

 

「……ねぇ、聞いてもいい?」

 

 唐突に冬美さんがそんなことを言い出す。

 

「はい?なんでしょうか」

 

「なんで、凍火を助けてくれたの?」

 

「……発言の意図がわかりません」

 

「私の、私達の父はエンデヴァー。それに君はエンデヴァー……父が凍火にどう教育してたか教えられたんだよね?なのになんで助けたの?下手したら父に関係ないって怒られたかもしれないのに……」

 

 そう、紅煉は確かに凍火を助けた。だからこその疑問だったのだろう……だが紅煉は言い放つ。エンデヴァーに激昴した事を伏せて……

 

「例えどんなにも市民から慕われるヒーローであろうとも、家族を傷つけていい理由にはならない……そんなものヒーロー以前に人のする事じゃない。だからこそ俺はそんな事をされていた凍火を見て、助けなきゃと思ったんです。ヒーローのお節介ってやつでしょうね…それでも……俺は彼女を助けなきゃいけないと思ったんです」

 

 紅煉は事実を述べた。嘘偽りの無い言葉を全て話した。

 

「……それでも救ってくれました。エンデヴァーに怒られる事を覚悟し、自分の身を顧みず……一人の姉として言わしてください。ありがとうございました」

 

「……俺はヒーローを目指している身……当然の事をしたまでです。あるヒーローが言いました。ヒーローはいつだって命懸けと……なら、これくらいしなければヒーローにはなれないと思っただけです」

 

「……優しいんだね。君は」

 

 そう言って微笑む冬美さん。紅煉は黙って皿洗いを続ける。

 その後、雄英高校で何をしてるのか、友人関係はどうなのかを話した……紅煉は自身の事については一切語らなかった。聞かれても言葉を濁し半分嘘を交えて話した。

 それから少し経って紅煉は帰る時間となったので帰ろうとすると凍火に止められる。

 

「ねぇ、待って」

 

「ん?どうした?凍火」

 

「……私は、このあとどうしたらいい?私はこれからどうやってヒーローを目指したらいい?この炎をどう使ったらいい?」

 

 そう言う凍火の目は迷いが見えた。答えを教えてやることは出来ない紅煉はせめてと思い言葉を残すため話し始める。

 

「……試合でも言ったがなりたい自分になればいい……だが、炎を使わずというのは無理だろう。だからといって使い方が分からない。なら父親の技を真似をすればいいんじゃないか?」

 

「えっ……?」

 

「エンデヴァーの炎の使い方はヒーローの中でも随一。俺のはあてにしない方がいい……てか俺のは不死鳥の個性あってこそだしな」

 

 そもそも紅煉の個性とエンデヴァーの個性は似てるようで違う。なのであえて自分は教えないという姿勢を見せてる。

 

「俺から言えるのはそのくらいだ。お前はお前だ。エンデヴァーはエンデヴァー、俺は俺……互いに高め合うだけさ……お互いの技術をな」

 

「……ありがとう。色々とわかった気がする。これから私がどうこの炎と向き合ったらいいか……ありがとうね、紅煉。」

 

「あぁ、どういたしまして。それじゃあな。また学校でな」

 

「うん」

 

 そうして紅煉はそのまま帰ってく。見えなくなるまでずっと紅煉を見てた凍火は少し考えてから家に入る。

 

「あれ?紅煉君帰ったの?泊まらせれば良かったのに」

 

「……お姉ちゃん。お願いがあるの」

 

「えっ……な、なに!?なんでも言って!」

 

 今までほとんど言われたことの無いお願いに冬美は驚くが、すぐに聞いてきた。

 

「……料理、教えてくれないかな?」

 

「!?…………もちろん!」

 

「ありがとう……(今は、まだ言えない。でも言ってみせる……紅煉。私は、貴方の事を好きになってしまった。覚悟してね?この恋の炎は私の氷でも冷やせないんだから!)」

 

 凍火が頬を赤らめながら言う。冬美は未だかつて、見たことの無い末っ子の恥ずかしそうにお願いをする姿を見て驚愕するもすぐに承諾した。

 凍火は紅煉に好意を抱いてる事を自覚した。

 

ーーーーーーーーーーー

 紅煉が帰路についてると目の前からエンデヴァーと女の人が歩いてきた。

 

「あ、エンデヴァーさん」

 

「む、火群君か……そう言えば冬美が家に招待したと言ってたな」

 

「炎司さん。この子は?」

 

 エンデヴァーの隣にいた女性。暗くてよく分からなかったが、声を聞いて確信した

 

「あぁ、この子は火群紅煉君だ。今日話した少年で、俺の目を覚まさせてくれた子だよ。火群君、紹介しよう。俺の妻で凍火の母、冷だ」

 

「轟冷です。君のおかげで炎司さんとしっかりと話すことが出来ました。ありがとうね」

 

 そう、エンデヴァーの隣にいた女性はまさかの凍火の母親、轟冷だったのだ。俺のせい原作ぶち壊しだよコノヤロウと紅煉は思った。

 

「火群紅煉です。見知らずの他人がズケズケと他人の家庭事情に土足で踏み入れてしまい申し訳ありませんでした。」

 

「謝ることは無いですよ。そのおかげで話し合ってまた一緒に暮らせることが出来るのですから……まだ病院には通わなければなりませんが精神的にもすごく安定してますし」

 

 と言いながらエンデヴァーを微笑んで見つめる冷さん。なんか目が笑ってない。

 

「本当にこれまでのことはすまんかった」

 

「大丈夫ですよ、炎司さん。」

 

 エンデヴァーが素直に謝ってる。完全に尻に敷かれそうなイメージしか湧かない……

 

「では、俺はこれで」

 

 そう言ってすれ違おうとすると冷さんとエンデヴァーに肩を掴まれる。

 

「えっ?」

 

「泊まっていきたまえ、この時間に帰らせるわけにはいかんからな」

 

「えっ?でも」

 

「泊まっていってください。未成年者の学生が1人夜間に帰ると危ないですよ?」

 

「……はい」

 

 エンデヴァーに言われ断ろうとするが冷さんの絶対帰らせないと言いたげな目を見て折れる。

よくよく思い出せばエンデヴァーの目を見たら帰られたら俺が怒られると言いたげな目をしてたな……既に決定事項だったわけだ。

 

 そのままUターンし轟家に入ると母親が帰ってきたことに冬美さん、夏雄さん、凍火は驚きつつ喜び、紅煉が泊まる事になったとされ冬美さんに客間に案内されると何故か布団が用意されていた。なぜ用意されていたのだろうか……

 

~To Be Continued~




第17話。終了です。少し早足になり原作かなり無視になってしまいすいませんでした。
アンケートの期間が終了し確認した所

王道中の王道 轟凍火 141票

第1話からの登場 耳郎響香 23票

意外と接点がある? 八百万百 15票

今後登場する先輩 波動ねじれ 7票

いっその事一夫多妻でもいいんじゃね?てかしろよ 159票

という結果になりました。その為ハーレム展開にしたいと思います。他にもヒロインにして欲しいキャラがおりましたらお申し付けください。最低でも5人にしようかと思います。

そして新たに今回から職場体験のアンケートを実地します。またアンケートのご協力お願いします。
締切は一週間後にしたいと思ってます。


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火群と職場体験
第18話 火群と指名とヒーロー名


あらすじ
雄英体育祭の閉会式を終えると轟宅に招待される。そのまま帰ろうとするとエンデヴァーとその妻、冷と会い少し話してから帰ろうとすると泊まっていけと言われ泊まる。


 1泊だけ、轟家に泊まりその後振替休日を家で過ごして登校日。

 いつもより早くに電車に乗ってると周りのサラリーマンや大人から凄かったなどの声援を頂き小学生からタッチを中学生から握手を求められてそれに全て受け答える。

 そうこうしてると学校に着いた…やはり皆の朝の話題は登校中に声をかけられたことらしい。

 そうこうしてると呼び鈴が鳴り教室に入ってきた相澤先生の声が聞こえクラスメイト達は素早く着席した。

 

「今日の"ヒーロー情報学"ちょっと特別だ」

 

 相澤先生のその言葉を聞き、クラスメイト達を緊張が包み込む。

 

「コードネーム――つまり“ヒーロー名”の考案だ」

 

「「「「夢膨らむやつ来たァァァァっ!」」」」

 

 叫び声が上がり教室内に響く。クラスメイトの殆どがテンションが高まり、立ち上がる。騒がしくなるが相澤によりクラスは一気に静まり返る。

 

 体育祭前に相澤先生が話したが、今回のヒーロー名を決めるのは「プロのドラフト指名」に関係してくる。体育祭の様子を見て既にプロ達から指名があり、それを元にプロの所へ職場体験に行かせるのが学校側の考えらしい。

 

「――と言っても指名が本格化するのは2・3年……つまりは即戦力になってからだ。一年は大体将来への“興味”によるもので、情けない姿を見せれば一方的にキャンセルも珍しくない」

 

「大人は勝手だ!」

 

「ちなみに、肝心の指名結果はこれだ」

 

 相澤が黒板を操作すると、映像として結果が表示された。そこには名前・指名数が表示されており、全員がそれに意識を向けた。

 

――A組・指名件数。

 

火群:5284

 

爆豪:4492

 

轟:3186

 

緑谷:2672

 

飯田:2564

 

常闇:309

 

切島:268

 

麗日︰218

 

八百万︰108

 

上鳴︰20 

 

芦戸︰14

 

「例年はもっとバラけるが……今回は突出した連中が多くてな」

 

「凄い。僕にあんなに指名が!!」

 

「俺は5000以上か……すげえな……」

 

「私は親父の話題性か……」

 

「指名が200も……よっしゃー!」

 

「これを踏まえ…指名の有無関係なく、いわゆる職場体験ってのに行ってもらう」

 

「それでヒーロー名か!」

 

「俄然楽しみになってきた!」

 

「だが、適当に付けると…」

 

「地獄を見ちゃうよ!」

 

 カツカツとヒールの音を立てて教室に入ってきたのは、露出の多い戦闘服を着込んだミッドナイト。

 

「仮のまま世に認知され、プロ名になっている人多いからね!!」

 

「そういう事だ……俺には無理だからその辺はミッドナイトさんに頼んだ」

 

 そう言うと怠そうな相澤は寝袋に入ってしまい、そこからは説明通りミッドナイトが仕切り始める。名は体を表すという言葉がある。自分の持つ個性、将来自分がどうなるのか。名を付けることでイメージが固まりやすくなり、思い描くヒーロー名に近づく。

 

「それが「名が体を表す」ってこと、『オールマイト』とかな」

 

~15分後~

 

「そろそろ良いわね!――できた人から発表してね!」

 

『まさかの発表形式!?』

 

 ミッドナイトの言葉に全員が驚く。

 皆がザワザワしだす中、芦戸がウキウキしながら教卓に立つ。

 

「じゃあアタシからね! エイリアンクイーン!!」

 

「2!! 血が強酸性のアレを目指してるの!? 止めときな!!」

 

「ちぇ~」

 

「「「「(馬鹿野郎ーーーっ!!)」」」」

 

 芦戸さんが発表すると、空気が変になった気がする。発表しづらい空気というか、誰も行く勇気が無い感じ。

 

「ケロッ、じゃあ次私良いかしら」

 

「「「「梅雨ちゃん!!」」」」

 

 そして壇上へ向かう彼女に、クラスの皆が勇者を見るような視線を向けている。

 

「小学生の時から決めてたの。梅雨入りヒーロー『フロッピー』」

 

「カワイイ!! 親しみやすくて良いわ!! 皆から愛されるお手本のようなネーミングね!」 

 

「「「「フロッピー!! フロッピー!!! フロッピー!!!!」」」」

 

 それから皆が次々とヒーロー名を発表していく。

 

 切島の「烈怒頼雄斗」に始まり、耳郎の「イヤホン=ジャック」障子の「テンタコル」瀬呂の「セロファン」尾白の「テイルマン」砂藤の「シュガーマン」芦戸2度目の「ピンキー」上鳴の「チャージズマ」葉隠の「インビジブルガール」など、どんどん皆らしい名前が出されていった。

 そして緑谷が出したのが『デク』。みんなから心配されていたが、緑谷はそれを選んだ。

 次にやってきたのは凍火。原作だと名前だったが、何にするのか気になって仕方ない。

 

「……氷炎ヒーロー『フレイシア』」

 

「フレイシア?どういうことかしら」

 

「炎のフレイム。氷河のグレイシア。2つを合わせてフレイシア。それが私のヒーロー名。私を変えてくれた人への感謝を込めて」

 

「シンプルイズベストって感じね! 個性も分かりやすくて良いわ!!」

 

「ありがとうございます」

 

 少し照れてる凍火は逃げるように席につくと。今度は爆豪が出てくる。原作通りなら「爆殺王」って名付けるんだよなぁ

 

「……『爆心地』。それが俺のヒーロー名だ」

 

「爆心地……全ての真ん中にいるって志かしら?」

 

「俺はオールマイトを越えるヒーローになる。どんなヴィランも俺が中心に倒してトップに立つ」

 

 ギラついた目で不遜に言い切る爆豪。悪くない、それにいい心掛けだと紅煉は思った。

 

「さて、最後に火群君ね」

 

 そう言われて教卓に立つ紅煉。最後と言うだけあってプレッシャーは凄まじいものがあるがそれでも堂々としてるのは出しても文句を言われない自信があるからなのだろうか……

 

「俺のヒーロー名は、最初っから決まってた……父との因縁を断ち切るために、この名前にしました。俺のヒーロー名は……『スルト』。北欧神話に登場する巨人の名前です」

 

「いいじゃない!スルト!気に入ったわ!!」

 

 皆からも好評だった。昔っから決めてたから褒められてよかったと思ってる。

 そしてやはり飯田はいつもよりおかしい。この職場体験先、飯田が何処に行くかを理解した紅煉であった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 ヒーロー名を決めた後、皆は職場体験にどのヒーローの所に行くかを話し合っていた。

 そしてその話は今体育祭トップ4も……

 

「デクくんたちはどこ行くん?」

 

「僕は考え中。かっちゃんは?」

 

「俺も決まってねぇ……そういう丸顔。お前は?」

 

「また丸顔って、ウチはガンヘッドの所!爆豪君との戦いを得て私に足りないのは格闘技って分かったから!」

 

「ははは、麗日さんらしいや。火群君と轟さんは?」

 

 爆豪や緑谷らが話してると緑谷が話を紅煉達に振ってくる。

 

「「エンデヴァーの所」」

 

 2人して即答であった。すると疑問に思った麗日さんが紅煉に聞いた。

 

「なんで?凍火ちゃんは分かるけど火群君はどうしてなん?」

 

「俺の個性は炎。エンデヴァーも炎だからな。技術を増やそうと思ってな。炎と熱を操るなら何か別の力の使い方があるだろうし」

 

「なるほど!」

 

「そうか、火群君は個性欠点の熱の篭もりがない。そして体力面も高いから持久戦も可能。だけど手数は多いけど動きが単純すぎる致命的な欠点があるんだ、その欠点を補えれば火群君もまた一歩先に進む……」

 

 緑谷はいつも通りブツブツ言ってると今度は爆豪が話し掛けてきた。

 

「いいのかよ……お前の技術ならほかのヒーローでもよかったんじゃないのか?火力は充分。なら技術面を応用するなら今人気のミルコとかの指名あったんだろ?」

 

「「「「「ええっ!?」」」」」

 

 その発言にクラス全員が驚く。特に峰田なんか血涙しながら拳を握りしめて紅煉を見ている。

 

「確かに来てたけど……多分今の俺じゃまだ追いつけないからな。だから同系統のエンデヴァーにしたんだ」

 

「なるほどな。なんか言われたりしねぇかな?」

 

「んな馬鹿なことあるかよ。ナイナイ」

 

 この発言が後に後悔を生むことになるのを、紅煉はまだ知らない。何が言いたいか?巨大なフラグを立てたというわけさ。

 

ーーーーーーーーー

 

 その頃、人気の無いそのバー。昼間だから居ないというわけでない。人目に寄り付かず、分かりにくいその場所で今、数人の男が対峙していた。

 

「……ハァ、まさかこんな所にかの有名なプルトンが居るとはなぁ」

 

「俺がいては不満か?ヒーロー殺しステイン……私は君を買っている。数多のヒーローを滅ぼしてきたのだから、そして今回は連合加入以外にも君に頼みがあるのだ」

 

「なに?」

 

「どういうことです?聞いてませんよ」

 

「おい、どういうことだ?」

 

 この場にいる男は4人。ヒーロー殺しステイン。プルトン、死柄木弔、黒霧である。そんななかプルトンはステインにある事を頼む。

 

「君のその身体能力……記録を取らせてくれないか?」

 

「……はぁ?」

 

 着々と大きくなりつつある悪意。プルトンの狙いはなんなのか、何を狙っているのか……

 プルトンのこの頼みは、後に紅煉等に大きな進歩と、大きな欠点を見つける事になる。

 

ーーーーーーーーー

 

〔速報です。少子高齢化の進みにより子供が激減してる現代。それを打開すべく政府は新たに[一夫多妻制度]を設けることになりました。この制度に国民からは賛成が過半数、反対が少数とすぐにでも可決されることと見て…〕

 

 この俺、紅煉は1人、自分の家で料理を作ってる。だが今回のは数人分多い。何故かって?……轟家全員集合してるんだもん。

 

「ねぇ見た炎司さん。一夫多妻制ですって」

 

「ほう、これはこれでどうなるのか少し気になるな」

 

「政府め、余計なことを」

 

「一夫多妻制にしたって、意味あるのかしらね、ね?夏雄」

 

「分かるわけないじゃないか。“燈矢兄”だってわかんないでしょ?」

 

「まぁね」

 

 ……うん、今の会話を聞いての通りだけど。どうやらこの世界線。轟燈矢は居るみたいなんです。俺もびっくりした。目が飛ぶくらい。しかも個性見たら青い炎を放出する個性、『蒼炎』って個性でエンデヴァーの求めた炎の完成系らしい。これと凍火の個性が合わさったら最強らしい。燈矢さんの個性見て絶対に荼毘だったやんって思った私が居ます。まず間違いなく。まぁ実際は不明だが……そして今はエンデヴァーの元でサイドキックしてるそうです……

 

「紅煉君。少しいいかな?」

 

「えっ?あ、はい」

 

 そんな事を思ってると不意に燈矢さんに呼ばれる。何の用なのだろうか……

 

「君は炎を……どう使う?」

 

つまりどう使えば持久戦に持ち込めるかを聞いてるのかな?

 

「……エンデヴァーさんのような戦いは体質的に無理なんですよね?ならあえて言うなら自分の炎で自身が焼かれることはないのですから長い棒状の武器を使い槍術を習ってみては?それに炎を加えれば下手に放出せず棒に纏わせることで打撃と熱攻撃を与えることが出来るはずですよ」

 

「なるほど、今度試してみるよ。ありがとう」

 

「いえ……大したことは」

 

「いや、助かったのは事実さ……ありがとう。この調子で凍火のことも宜しくね」

 

「なっ!?」

 

 燈矢は笑いながら言ってきたので驚いた。そのまま家族の団らんに戻る燈矢。そして料理を作り終え運んでる時、紅煉は真っ先に思った……

 

[……荼毘……轟燈矢の代わりは、一体誰なんだ?クソ親父か…?だとしても不自然過ぎるか……]

 

 そう思いながら料理を運び終え、席について轟家の面々と食事をする。皆が美味いと言ってくれて嬉しかった。ちなみに言うと個人評価はまぁまぁだったのは言うまでもないであろう。

 後片付けは冬美さんと冷さん、凍火も手伝ってくれた。その後は燈矢さんと夏雄さん、エンデヴァーと4人でスマ〇ラの対戦をしエンデヴァーがボロ負けしたのは言うまでもない。




はい、というわけで今回はここまで。
とうとう始まりました職場体験編。ここが紅煉の成長に繋がる力を得る場となります。
職場体験の行き先はアンケート結果に基づきエンデヴァーの事務所にしました。他に投票してくださった皆様、申し訳ありません。アンケートのご参加、ありがとうございます。
さらに荼毘の正体が轟燈矢というネットの予測を信じて荼毘=轟燈矢とし、その轟燈矢はヴィランではなくエンデヴァーのサイドキックとして活躍させることにしました。
荼毘の代わりは検討中です。なんなら知ってるアニメ作品の炎を使う悪役から出そうかと思ってます。

それではまた次回!


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第19話 火群とエンデヴァー事務所

前回のあらすじ
ヒーロー名を決めて指名を受けたよ!どこに行くかを決めたその日の夜、轟一家がやって来て夕飯を共に食したよ!何故か轟燈矢が生きてたよ!驚いたよ!


 色々とあったが、職場体験当日。

 全国各地のヒーロー事務所に散らばる為、新幹線の駅に赴いたA組一同は相澤先生から最後の連絡を受けていた。

 

「コスチューム持ったな。本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ。落としたりするなよ」

 

「はーい!!」

 

「伸ばすな「はい」だ芦戸……くれぐれも体験先のヒーローに失礼のないように。じゃあ行け」

 

 元気な返事をした芦戸を含め、大体皆そわそわしていて。

 

 これから行くヒーロー事務所を楽しみにしていたり、実際に現場を見れる事へ思いを馳せている。

 

 ただ一人、まるで仇討ちするような目をし、悲しそうに俯く飯田以外だが……

 インゲニウムがヒーロー殺しにやられて以降、雰囲気が固くなった飯田は、ココ最近ずっと上の空だった。

 聞けば、飯田が職場体験に行くヒーロー事務所は事件があった保須市だとか。とても偶然とは思えない。

 どこか遠くを見ているような目の飯田は、解散と同時に自分の乗る駅のホームへ向かっていく。

 

「飯田くん」

 

 暗い空気を纏う彼の背に、思わずといったように緑谷が声を掛けた。

 

「…………本当にどうしようもなくなったら言ってね。友達だろ」

 

 麗日さんもその言葉にコクコクと頷き、不安げな顔を向けている。

 

「ああ」

 

 振り返った飯田は小さく返事をして、そのまま一人で行ってしまった。そして緑谷、麗日さんもそれぞれの事務所に向かい、紅煉もまた凍火と共にエンデヴァーの元へ向かう。

 

ーーーーーーーーー

 そしてたどり着いたエンデヴァー事務所。やはり圧巻の一言に尽きる。流石はNo.2のヒーロー事務所と言う感想が出る。

 

「やぁ、よく来たね。2人とも……ようこそ!エンデヴァー事務所へ!」

 

 気前よく出迎えてくれたのはエンデヴァーだった。

 両隣に燈矢さんと……原作だとこの人は

 

「紹介しよう。彼らは俺のサイドキックだ」

 

「私はバーニン!短い期間だがよろしく頼むぞ!」

 

「俺はアジュール。バーニンと一緒になるがよろしくな」

 

 やはりバーニンさんか……てか燈矢さんのヒーロー名ってアジュールなんだ。炎の色が青いからかな?

 とりあえず挨拶には挨拶で返さないいけないので…

 

「雄英高校からこの度、職場体験にやって参りました!1年A組!ヒーロー名はスルトと申します!!短い期間ですが、この職場体験で学べるものを学びたいと思います!よろしくお願いします!」

 

「同じく1年A組、ヒーロー名はフレイシアです。よろしくお願いします」

 

 真面目に挨拶した紅煉は恥ずかしくなってきたのか顔が真っ赤になる。ちなみに気づいたのはエンデヴァーだけだったのが幸いだ。

 

「それはそうと……ウチにチームアップの要請が来ててな」

 

「「チームアップ?」」

 

「それも期間がほ……スルトとフレイシア。君らがいる期間なのだ」

 

「……えっ?」

 

[あれ?なんか嫌な予感してきたぞ?]

 

 エンデヴァーがチームアップの要請が来てると言うと紅煉も凍火もはてなマークをつける。しかも期間が職場体験中と言うのでさらにはてなマークをつける凍火。それに引き換え嫌な予感を感じた紅煉。

 その嫌な予感は当たることになる。

 

「私の指名を蹴飛ばしてタダで済むと思ってんのか?雄英高校の期待なる超新星君」

 

「なっ!?」

 

「っ!!!?」

 

 不意に後ろから抱き着かれる。その事に驚く紅煉と凍火。後ろから抱きついてきたのは……

 

「「ラビットヒーロー、ミルコ!?」」

 

「よう、初めましてかな?雄英高校の火群紅煉君。いや、聞いてた通りならヒーロー名はスルトくんか」

 

 どうやら兎の名の通り聴力はいい模様だ。てか何故ここに!?

 

「おい、ミルコ。チームアップ要請をしてきて了承はしたが、その子はウチで預かってる。勝手な真似はするなよ」

 

「No.2さんが怖いこと言うなよ。チームアップに賛成してくれたのならこれくらいの接触は許してくれよな」

 

「ダメ!」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

 エンデヴァーが庇ってくれるとミルコがそれに反発し抱き着くくらい許せと言ってくる。すると凍火が急に声を上げて皆が驚いてる隙にミルコから紅煉を奪い抱き寄せる。

 

「紅煉は渡さない!!」

 

「……~~!!???」

 

「アッハハハハッ!!活きのいい小娘だな!エンデヴァーの娘だったな!」

 

 そう言うと凍火の頭をポンポン叩く。

 

「ならしっかり守っておけ?兎だって獣。狙った獲物は逃がさないからな?」

 

「というか一夫多妻制が出来たのだから仲良くしたらいいのではないか?」

 

 ミルコが紅煉を狙うと言った発言をするとエンデヴァーが新しく出来た制度があるのだからそれに沿えばいいのではと言う。

 

「どうやら同士のようですね。ミルコさん……」

 

「そうみたいだな。共に共有しようか」

 

「ちょっと待って!?ちょっと待って?!すっごい展開がおかしくなるから待って!?」

 

「「「「「何言ってるの?」」」」」

 

 紅煉のメタ発言が分からない皆がポカンとした顔で紅煉を見る。だがそれも仕方ない。急展開過ぎて紅煉ですら頭が回ってない。

 数分後、ようやく落ち着いた紅煉。改めて紹介に戻った。ちなみにこの騒動でほかのサイドキックが出てきたのでバーニンさんと燈矢さんことアジュールさんが対応してくれてる。

 

「そんじゃあ、自己紹介に戻ろっか。私はヒーロー『ミルコ』!今回チームアップの要請を提案したのは勿論私だ!理由は言うまでもないけどな!」

 

「というわけで君たちを預かる間、ミルコとの連携も視野に進めていく。よろしく頼む」

 

「それよりフレイシアをどうにかしてください」

 

「「無理」」

 

 ミルコの自己紹介をしてる際も凍火はずっと紅煉の傍を離れてなかった。理由?ミルコさんが紅煉の額にキスしようとしたからだ。

 とりあえず進まないので取り敢えずエンデヴァーが提案をする。

 

「それではまず、力を見せてくれないか?フレイシアの力は知ってるのでな……スルト、君の力を見せてくれ」

 

「…はい!」

 

 エンデヴァーのその提案に、少し考えてから了承する紅煉。そのまま一同と言ってもエンデヴァーと紅煉、凍火とミルコだが……一同はエンデヴァー事務所の地下に向かう事にした。

 

ーーーーーーーーー

 地下のトレーニングルームに着いた一同。頑丈に作られており換気も良好。ちょっとやそっとじゃ壊れないらしい。

 

「さぁ、来たまえ」

 

「んじゃあ、遠慮なく……《神火・不知火(しんか・しらぬい)》!!」

 

「むん!!」

 

 紅煉が炎の槍を投擲するとエンデヴァーも炎の槍を投擲し相殺。

 

「やっぱり一筋縄じゃいかないか……」

 

「なかなか筋がいいじゃないか」

 

 お互い睨み合う。その姿を見て凍火とミルコは少し寒気を感じたらしい。

 

「さぁ、まだ来れるだろ?来たまえ」

 

「舐めるなよ……エンデヴァー」

 

「ん?……なんだ?あの構え」

 

 紅煉は体の左側を前にし両手を握りしめ腰に構える。それを見たエンデヴァーが少し驚いた顔をし、ミルコはなんの構えなのか考察する。

 

「その構え、素人から見たらなんも変哲が無いように見えるが、何か違う……」

 

「驚くのはまだ早いですよ……さぁ、来てください」

 

そう言うと左手でちょいちょいと挑発する。

 

「ほう、ならば受けてみるがいい、これが、No.2の拳の重みだ!!」

 

「えっ、避けない!?」

 

「ま、まさか!?」

 

 そう言って殴りに来るエンデヴァー。それを避ける素振りを見せること無く正面に堂々と立つ紅煉。それを見た凍火は驚き、ミルコはさらに驚愕の表情をする。

 そして、次の瞬間。監視カメラから見てたサイドキック達も、ミルコも凍火も驚愕する事になる。

 

「ふっ!」

 

 鋭い打撃音がトレーニングルームに響きわたる。そしてそのまま床に倒れるエンデヴァー。

 

「ぐはっ!??な、何が起きた?」

 

 紅煉はエンデヴァーの拳を左手で受け流すとそのままエンデヴァーの脇腹に強烈な蹴りを与えたのだ。

 

「な、なんだ。その武術は……見た事がないぞ!」

 

「“裂蹴拳(れっしゅうけん)”」

 

「っ!!?」

 

「な、なんだそれは?」

 

 そうミルコが答えると紅煉は少し驚いた顔でミルコを見る。エンデヴァーは聞き覚えのない拳法の名前に驚きの声を上げる。

 

「“裂蹴拳(れっしゅうけん)”上半身は防御に徹し、屈強な蹴りのみで攻撃する肉弾系格闘技史上最強の拳法だ。だが実際に使えるものはおらず、あらゆる体術を修得した者でなければ習えない。だから実在しない拳法なんだ。何故使える?」

 

「実在しない……だと?なら、なぜ彼が……」

 

 エンデヴァーやミルコが紅煉を見る。だが紅煉は驚愕していた。何故ミルコがこの技を知ってるのか考えた。その結果、ひとつの理論にたどり着いた。転生した紅煉は転生前の世界でアニメや漫画にハマっていた。その中で見た事があったアニメの武術をそのまま会得するためにこの世界で蹴り技の格闘技を独自で習い、空手と柔道を軽く習ってこの“裂蹴拳(れっしゅうけん)”を実現させた。だがここに自分というイレギュラーが介入したことで自分の世界の常識が入り込んできていると理解したのだ。そうなると轟燈矢がいる事実、轟焦凍が女である事実、そして紅煉の父が敵である事実にならない。原作と違う、それはつまりあることを意味する

 

この世界は、原作とは別の平行世界(パラレルワールド)であることを意味してる。

 

 それよりも今は質問の答えをせねばと紅煉は考える。

 

「はい。実は独学で蹴り技系の格闘技を少し嗜み空手と柔道を軽く習ったんです。そしてこの技を使えるようにしたんですよ。勿論そのせいでほかの蹴り技系の格闘技とか忘れてしまいましたけど」

 

「……凄いな、君は…」

 

「すっげぇじゃねぇか!!流石だな!!」

 

 エンデヴァーとミルコから賞賛を貰い有難く思った。凍火も微笑んでくれてる。習ってよかった暗黒天使(ダークエンジェル)の格闘技。

 

「君の力は理解したよ。所でそれに炎を纏わせたり出来ないのかね?」

 

「えっ?」

 

「「「えっ?」」」

 

 エンデヴァーが何を言ったのか理解出来ず聞き返すと逆に驚かれる。なんなんだ?

 

「つまり、その技に炎の火力を足せば君はさらに強くなれるのではないかね?」

 

「……盲点だったァァァァァァァァァァっ!!」

 

「「「え"え"え"え"え"え"え"え"え"ッ!?」」」

 

 紅煉は今それに気づいたと言わんばかりの絶叫をしそれを聞いた凍火、ミルコ、エンデヴァーは逆に驚きの声をあげる。そして3人は同時に『天然か!』と思った。

 

「そうか……炎を足に纏わせれば強力な矛になるのか……腕に纏えば強力な盾にも!?くっそぉ、もっと早く気づいてれば!」

 

 頭を抱えて座り込む紅煉。そんな紅煉を初めて見るのか凍火は驚きの表情のまま静止していた。

 少し経って落ち着きを取り戻すとエンデヴァーが話を戻す。

 

「まぁ、これからの君の方針は決まったな。君はこのままその“裂蹴拳(れっしゅうけん)”に炎を纏わせる訓練をしつつパトロールを頼む!凍火は俺と一緒に炎の使い方を行う!氷は、何とかしてください」

 

「はい!」

 

「炎はいいけど氷はどうしよう……」

 

 炎しか使えないエンデヴァーは氷に関しては無頓着。ここはこの前世で色々と見てきた紅煉の出番であろう。

 

「凍火。氷の事なんだが……少し案が無い訳でもない」

 

「えっ?」

 

 驚いて紅煉を見る凍火。そんな会話を大人二人は黙って聞いてる。

 

「造形って知ってるか?物を作るのには何かとイメージが必要だ」

 

「イメージ……」

 

「それを氷で表すんだ。例えば氷の剣、氷の槍、氷の弓とかな。生物は無理でも物質は簡単だろう?」

 

「イメージ……こうかな?」

 

 そう言う凍火の手には小さいが氷の剣が作られていた。

 

「そう!そういう簡単な物質ならどう出来てるかわかりやすいだろ?そうやって作っていくんだ!そうしたら氷の使い方も幅広くなるだろ?あとは練習あるのみだ!」

 

「うん!ありがとう!紅煉!」

 

 お互い微笑み会いながら話を終える。

 

「エンデヴァーさんもあんな風にアドバイスしてあげてくださいね‪w」

 

「わ、分かってる!」

 

 ミルコにからかわれるエンデヴァーの図はとても面白かったです。




今回はここまで!
いかがでしたでしょうか?これまで、そしてこれからの様々なイレギュラーはオリ主介入という事で落ち着きそうです(無理矢理感)
凍火の技はFAIRY TAILのグレイの技とONE PIECEのクザンの技をモデルにしていきたいと思ってます。炎系はエンデヴァーの赫灼熱拳と他に何かあればいいなぁと思ったりも
次回はいよいよ保須市に向かいます。ミルコをヒロインにしようか迷っている。
てか上限決めないとな……何人にしよう。

それではまた次回!


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第20話 火群と保須市

前回のあらすじ
職場体験にエンデヴァー事務所にやって来た紅煉と凍火。するとそこにはチームアップの要請が来ており、要請したのは今話題のミルコだった。
各々のこれからを見つめ始める。


 職場体験に来てから三日。凍火並び紅煉はメキメキと技術を上達させていく。凍火は炎の使い方をエンデヴァーから学び、氷の造形を上手くできるようにしていく。分かんない時はエンデヴァーか紅煉に聞きながら。紅煉はひたすら蹴りを繰り返したり早く走れるよう走り込みしたり筋トレをしている。たまに燈矢(アジュール)さんとミルコさんと、対人訓練とパトロールをしながらヒーローの奉仕活動やサービスを学んでいった。

 そして今日。エンデヴァーに呼び出された紅煉と凍火はエンデヴァーのもとにやって来た。

 

「今日から保須市に向かう」

 

「「保須!!?」」

 

 紅煉も凍火も驚くのは無理もない。保須市は今ヒーロー殺しステインが身を潜めてる街。紅煉の見立てではあと1日置いて行くのかと思っていたほどだ。

 

「今から向かう。準備しなさい。ミルコは先に向かったと連絡が来てる」

 

「は、は「待ってください。エンデヴァー」……え?」

 

 凍火が返事をし、エンデヴァーが準備に向かおうとすると紅煉が止める。

 

「む?なんだね、スルト。質問かね?」

 

「いいえ、提案というか、お願いです」

 

「お願い?」

 

「な、何を聞く気なの?スルト…」

 

 エンデヴァーは眉を軽く上げ、凍火は心配そうに紅煉を見つめる。

 

「保須市での俺ら雄英生(・・・・・)の個性使用許可を下さい」

 

「なに?!」

 

「紅煉?!何聞いてるの!?」

 

 エンデヴァーは何を言ってるんだこいつと言うような目で紅煉を見、凍火は驚いて声を上げる。しかし紅煉は臆すること無く説明する。

 

「保須市では現在、ヒーロー殺しが身を潜めてる。それを見つけるのでしょうが、万全な対策を練らねばなりません。もし我らが人質に取られたりした際、個性の使用許可があれば簡単に対処出来ます。その場での使用許可を貰ってもすぐ殺されるのがオチでしょう。如何ですか?」

 

「……君は余程の切れ者と見た。よかろう。このエンデヴァーが許可する。君達の個性使用許可をな」

 

「ありがとうございます」

 

「え、あ、ありがとうございます!」

 

 紅煉の説得もありエンデヴァーに個性使用許可を得た2人、そんな中紅煉は見えない所で三日月よりもさらに深い悪い笑みをして思った。

 

[計画通り!]

 

ーーーーーーーーー

 エンデヴァーと数人のサイドキック、そして凍火と紅煉は保須市にやって来た。ミルコとは現地で集合した。

 

「それではこれよりパトロールをする。フレイシアはミルコと行きたまえ、スルトは俺と一緒にだ」

 

「え?なんで一緒じゃないの?」

 

「1人で2人指導するより現場を知ってる人達で1人ずつ指導する体制なんだろう。大丈夫だよ。また後で会えるから」

 

「絶対だよ?絶対だからね?」

 

「分かったから、抱きつくな」

 

「めっちゃ惚れられてんな」

 

「だが気づいてないのだ……あんなに積極的に来てるのに」

 

「マジか、どんだけ鈍感なんだ?」

 

 エンデヴァーの命令に疑問を感じた凍火だが紅煉がそれをフォローする。その後抱きつかれ絶対に会う約束をする。ミルコは凍火がどれほど紅煉に惚れてるか改めて理解するがエンデヴァーの発言に驚いた顔で紅煉を見ている。

 

「じゃあ行くぜフレイシア!」

 

「はいっ!」

 

「では行くぞ!スルト!」

 

「はい!」

 

 ミルコと凍火、エンデヴァーと紅煉はそれぞれパトロールを開始する。

 

 少し経って(ヴィラン)が現れたという情報が入り現場に向かう。その道中紅煉は携帯を見ると緑谷からで緑谷の現在位置が示されていた。即座に反対方向に向かう。エンデヴァーに止められるも「そっちはエンデヴァーさん一人で事足りるでしょう!?こっちにも敵がいる!友達が危ない!」と言って上手く説得した。

 そして目的地に着くとそこにはヒーロー殺しと緑谷と飯田がいてやられそうだったので火を放ってヒーロー殺しを遠ざける。

 

「ちっ、今日は邪魔が入りまくる。誰だ?」

 

「ヒーロー殺しステインだな?友のピンチに駆け付けた、ヒーローだよ!」

 

そう聞くとステインは嬉しそうな笑顔をしながら紅煉を見る。

 

「いいなぁ、お前。生かす価値がある」

 

「俺の友達は生かす価値がねぇって言いてぇのか?ヒーロー殺し!」

 

 ステインが見極めるように言うと煽りを加えて炎を腕に纏い臨戦態勢になる紅煉。

 すると緑谷が大声で話しかけてきた。

 

「火群君!!ヒーロー殺しは血を舐めて相手の動きを封じる個性を持ってる!!気を付けて!!」

 

「承知したぜ!来い!ヒーロー殺し!!」

 

 緑谷のアドバイスを貰いヒーロー殺しに対峙する。

 

「邪魔をするな、怪我をするぞ?子供」

 

「ヒーローになればいつだって命懸け、それくらい覚悟してるに決まってんだろ?ヒーロー殺しさんよ……」

 

 ステインが睨みを利かせ紅煉を怯ませようとするがそれを笑っていなす紅煉。

 

「ヒーロー『スルト』……推して参る!」

 

「はぁ……来い!」

 

 《禁忌[レーヴァテイン]》を造り出し向かう。それを見たステインは少し驚くがすぐに対応する。

気高い金属音が辺りに響き渡る。

 

「はぁ……密度の高い炎の剣か、厄介だな」

 

「お褒めの言葉どーも。実は維持するのに極度の集中力が必要なんで、短期決戦と行かせてもらう!!」

 

 一気に押し切ろうとするもステインの技術が上なのか弾かれる。

 

「マジかよ!?」

 

「無駄だ。経験が浅い。まだ動きが荒い。それでは俺を止められん」

 

 その際ステインの刀が紅煉の頬を掠め、血が滲んでいる。

 

「ちっ!!」

 

「あぁっ!火群君!!」

 

「火群くん!逃げるんだ!!」

 

 それを見た緑谷と飯田は絶望した。これで希望は絶たれた。狙われたヒーローはここで殺されると思ってしまった。ステインは勝ちを確信しながら血を舐めようと舌を刀に近づける。

 

「ヒーロー殺しよ、こんな言葉を知ってるか?」

 

「ん?」

 

「「「えっ?」」」

 

 ステインは動きを止め、飯田達は紅煉を見る。

 

「勝利の確信は、最も油断に近い行為……って言葉をよ……お前が舐めるのは俺の血であって俺の血じゃない………喰らっときな」

 

「なに?油断だと?遠く離れてる貴様。炎を放ってもおれの反射神経ならよけられる。そして何よりそこから何が出来る?」

 

 ステインが眉をひそめながら紅煉に聞くと、紅煉は右手を前に突き出し掌を広げる。

 

「………怪焔秘術」

 

「む?」

 

「「っ!!?」」

 

 その時、ステインは気付かなかったが、飯田と緑谷は気付いた。ステインが持つ刀。紅煉の血が付着してる部分が紅く発光した事に……

 

「《爆血(ばっけつ)》!!」

 

「ぬおっ?!」

 

 紅煉が手を握ると紅煉の血が爆発しステインをぶっ飛ばす。刀は少し焦げてるが特に変化はない。そして紅煉は不敵に笑うと話す。

 

「驚いたか?俺の個性は血液の温度も操る。その気になれば血液自体を爆弾のように燃やすことが出来るんだよ」

 

「はぁ…はぁ…ただの子供と思って甘く見ていた。だが次は油断は…「まだだぜ?」なにっ!?」

 

 ステインが怯んだすきに一気に懐まで潜り込む紅煉。そのまま拳を構える。

 

「これがこの職場体験で新たに得た力!この狭い場所でも周りに被害を出さずに高威力の《火拳(ひけん)》!その名も!!」

 

「ま、待てっ!!」

 

 ステインは抵抗しようとするが時すでに遅し……飯田と緑谷は紅煉の動きを見ている。紅煉は腕に炎を纏って一気に拳を突く

 

「《火拳銃(レッドホーク)》!!」

 

「ぐおっ!!?」

 

 ステインの腹部に強力な炎の拳がぶち当たりステインを貫通するように炎がステインの背中から吹きでる。

 

「がっ、はっ……俺は、正しき、社会の為に………」

 

「その思想も大事だが……殺しはダメだろ。流石にさ」

 

ステインはそうつぶやくと紅煉は返す。そのまま気絶するかと思ったが、急に目を見開いた。

 

「なにっ!?」

 

「貴様が言ったのだろう?勝利の確信は最も油断に近い行為だとな」

 

「火群君!!」

 

 ステインが刀を持ち直し紅煉に向かって振り下ろす。対処しようとするが間に合わない。緑谷も動けるようになるが間に合わない。誰も彼を助けられないと悟った。

 

「《氷塊造形(アイス・メイク)投擲槍(ジャベリン)”》!!」

 

 氷の投擲槍が無数に飛んできてステインを紅煉から退けた。それを見た飯田と緑谷は驚く。

 

「この氷って!?」

 

「本当に、次から次へと邪魔が入る……」

 

「来てくれたか、フレイシア」

 

「救援に来たよ……スルト!」

 

 助けに来たのは轟凍火だった。それにしても高精度な造形術。流石は推薦入学者と言うべきか……炎の方はどうなったんだろうね。

 

「助かった。奴は血を舐めて動きを止める個性らしい……緑谷は動いたから時間制限があるのか?」

 

 ステインと対峙しながらそう話し合うがすぐにプロが否定をする。

 

「いや、彼は1番最後にやられた。俺はまだ動けない」

 

「血を取り入れて動きを奪う。僕だけ先に解けたということは」

 

「時間制限が無いとなると考えられるのは2パターンね」

 

「人数が多くなるほど効果が薄まるか、血液型によって効果に差異が生じるかだな」

 

「血液型……俺はB型だ」

 

「僕はA……」

 

「血液型……ハァ、正解だ」

 

 ステインは簡単に認めた。それでも勝てる自信があると踏んだのだろう。

 

「分かった所でなにか状況が変わる訳じゃないが……デク、フレイシア」

 

「「なに?」」

 

「そこの2人を連れて大通りに行って救援を……言えばミルコとか来てくれるはずだ」

 

「なっ!?何を馬鹿なことを!?」

 

「バカっ!子供一人に殿をさせる訳には……」

 

「そうだよ!他に方法はあるはず!!ここには動けるのが3人もいるんだよ!?」

 

 紅煉が提案すると緑谷、飯田、プロが反対する。凍火は驚いたように紅煉を見る。

 

「それでもやつには勝てない。本気を出したら俺らは一瞬だ。だが、俺には隠し玉がある。エンデヴァーにしか知らない隠し玉がな」

 

「えっ?」

 

「“裂蹴拳”だけじゃ勝てない……だから、使う。今使わずいつ使うのかって話だしな」

「な、何を言ってるの?」

 

「作戦会議にしては声が丸聞こえだ。ハァ……逃がすわけなかろう」

 

 紅煉が言うと信じられないと言わんばかりに驚く緑谷達。ステインは刀を構え突進してきた。緑谷と凍火は反応するも防御に間に合わない。凍火の“穿天氷壁”は範囲が広く他の建物に被害が出るので出せないでいる。

 ステインが刀を振り下ろそうとすると急に軌道が変わり頬に熱と衝撃を受け吹っ飛ぶ。

 

「ぐあっ!!?」

 

「「えっ?!」」

 

「「なっ!?」」

 

「まだ作戦会議中だぞ……フライングにも程があるだろう…ヒーロー殺し」

 

 ステインをぶっ飛ばしたのは紅煉だった。脚と腕に炎を纏っている。

 

「ほ、火群君。それは、何?」

 

「これか?これは“紅炎裂蹴拳(こうえんれっしゅうけん)”って言うんだ。とある武術と個性を合わせた技でな……これならまだステインの動きは無力化できる。だがやはり速さが足りないな……仕方ない。ドーピングするか」

 

「「「ドーピング!?」」」

 

 紅煉が対応策を考察してるとやばい単語が聞こえ緑谷らが驚く。

 

「あ、ドーピングって言っても薬を使うわけじゃないぞ?個性のちょっとした効果だよ。正直、使えば明日は半日は筋肉痛に悩まされるけどな……」

 

「個性の効果?まさか!?」

 

 紅煉は自身の体内の熱を上げてるのか汗が蒸発する。緑谷はそれを見て何をするのか理解する。

 

「熱エネルギーを体内で循環させ身体能力を爆発的に向上させる…………名付けるとしたら《ディアブロ・フォース》!!」

 

 紅煉が構えると顔に赤い痣が現れる。ちなみにこの痣は某鬼殺しの刃の鬼の王と同じ痣です。

 

「…ディアブロ……」

 

「……フォース?」

 

「体内の熱エネルギーを循環して身体能力を向上させる。つまり、力もスピードも全てが強く?」

 

「それが、どうした?見掛け倒しであっ……がはっ!」

 

「「「「なっ!?」」」」

 

 飯田と凍火が紅煉の変化に驚いてると緑谷が考察。そのスキをついてステインが攻撃しようとすると腹部を紅煉に殴られる。その速度を見て緑谷達は驚く。

 

「よそ見すんな。お前の相手は、俺だ。ヒーロー殺しステイン……」

 

「ゴホッ……ハァ、強い。本当に、子供なのか?」

 

 ステインは紅煉の変化に危機を感じたのか紅煉を睨む。紅煉は緑谷達を庇うように立ち、ステインと対峙する。

 この勝負、どちらが勝つのだろうか。

 

 

ーto be continued




はい、今回はここまでです。次回“紅炎裂蹴拳”と“ディアブロ・フォース”の強さを出していきたいと思います。少し展開がはやいのと強化が早いと思った方もいると思いますがこの“ディアブロ・フォース”の他にも考えてるので大丈夫です。
気付いた方もいらっしゃるかと思いますが“ディアブロ・フォース”の元ネタは炎炎ノ消防隊のレオナルド・バーンズとオグン・モンゴメリの技をモチーフにしてます。
次回は本気を出したステインVS本気の紅煉の戦いです。勝負の行く末は……次回のお楽しみ!

それでは、また次回!!


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第21話 火群VSヒーロー殺し

前回のあらすじ
保須市にやって来たエンデヴァーと紅煉と凍火とその他サイドキック。敵の襲来に向かおうとすると紅煉は踵を返し別の場所へ、そこに向かうとヒーロー殺しに襲われてる緑谷と飯田とプロ。そこで救いに戦うが本気を徐々に出してくるヒーロー殺しに対応するため紅煉は隠し玉を使う。
ヒーロー殺しに対応するため隠し玉を使った紅煉はヒーロー殺しに勝てるのか!?


 保須市内の裏通り。そこで今、一人の雄英生徒が三人の友と一人のプロを助けるためヒーロー殺しと対峙していた。

 

「ハァ……貴様、本当に子供か?その力の使い方、普通は思い付かないぞ?」

 

「失敬な。俺が老け顔とでも言いたいのか?」

 

 ステインが紅煉の個性の使い方を見て子供とは思えない何かを感じた。事実紅煉の年齢は15だが、前世からの記憶で精神年齢は三十路と言ってもおかしくないのだ。頭脳も悪くないものの個性の使い方を人一倍理解してると言ってもおかしくない。それを悟らせぬようあえてボケをぶちかます。

 

「ハァ……だが、やはり子供、武術の構えに見えたが……ただ構えただけか」

 

「……」

 

 ステインは“裂蹴拳”の構えを知らない。つまりこの拳法は通じるとわかった。なので紅煉は何も言わない。

 

「沈黙は肯定と見るぞ……失せろ、正しき社会の卵よ」

 

 そう言って刀を振りかぶって突進し振り下ろす。だが……

 

「なにっ!!?」

 

「えっ?!」

 

「馬鹿な!!刃物だぞ!?」

 

「嘘だろっ!?」

 

 ステインも、緑谷もプロも飯田も驚く。紅煉は炎の手を軽く前に出すと刀をいとも簡単に捌いたのだ。

 そしてそのままステインに蹴りの一撃を与える。刀で受け止めようとしたが折られて脇腹に蹴りがめり込む。

 

「ぐあっ!なんだ、その速さ、なんだ、その力!」

 

「敵にタネを簡単に明かすと思うか?」

 

「ぐっ……おのれ、はやく贋物(にせもの)を殺さねばならないのに」

 

「火群君!!もうやめてくれ!!君には関係ないだろう!!」

 

 ステインが動揺と苛立ちを隠せないでいると飯田が紅煉に話し掛ける。だが、飯田のその言葉は紅煉の怒りに触れた。

 

「ア?なんて言った。飯田天哉」

 

「「「「「っ!!!!?」」」」」

 

 冷たく放たれた言葉に当事者の飯田だけではなくステインやプロヒーロー、そして緑谷と凍火まで背筋が凍る。

 

「関係ない?関係ないだと?巫山戯るな。兄を殺されかけて復讐に心を奪われた哀れなヒーローの卵が……お前の目指すヒーローは復讐の為に動くのか?憧れのヒーローは憎悪を煮えたぎらせながらヒーローをしてるのか?違うだろ……ヒーローはいつだって誰かの為に動く。ヒーローがヒーローを助けちゃいけないなんて、誰が決めた?友達が友達を助けちゃいけないって、誰が決めた?確かにヒーローだって復讐心に囚われる。だがそれに呑まれたらそいつはヒーローとは呼ばない。そいつは“復讐者(アヴェンジャー)”と呼ぶ。今のお前だよ飯田天哉。私欲を優先させるな。前を見ろ、立って歩け。ヒーローを目指したいのなら振り返るな……過ぎた後悔は、決して取り戻せない。起こった過去は、二度と巻き戻せない……」

 

「っ!?」

 

 紅煉の言葉に目を見開く飯田。ステインもプロも黙って聞いてる。

 

「だから、その過去を、後悔を自分以外の誰にもさせないために戦うんだよ。それが、ヒーローってもんだろうが……私利私欲ではなく、誰かの為に戦うのが、ヒーローじゃないのか!?飯田天哉!!」

 

「あ……」

 

「………素晴らしい。貴様、生かす価値があるどころの話ではない……その言葉の重み、まるで歴戦の覇者のごとく……ハァ…やっと見つけた。(オールマイト)以外の本物の英雄(ヒーロー)になりうる存在を……」

 

 紅煉の言葉に飯田は何を目指していたのかを思い出し、ヒーロー殺しは紅煉の言葉の重みを理解しそして笑った。本物になりうる存在を見つけたと……

 

「ハァ……いいぞ、貴様のようなヒーローを、俺は探していた!!」

 

「そうかよ。俺は一般論を述べただけだ……ヒーローとしてのな」

 

 再びステインと対峙する紅煉。その背中は飯田がUSJにて聞いた、立派とは言えないが確かなるヒーローの後ろ姿と一致していた。

 

「さぁ、第2ラウンドといこうか……ヒーロー殺し!」

 

「ハァ……来い!」

 

 紅煉が宣言し突っ込むと笑いながら応え突っ込むステイン。刀を折られたからかナイフで攻撃を始め、紅煉はというと《ディアブロ・フォース》と“紅炎裂蹴拳”でステインのナイフを炎を纏った腕で捌いて炎を纏った脚で強烈な一撃を与えてく。だがだんだんステインの動きが素早くなっていき傷を付けられる。その度に“爆血”で血を舐められないようにし、不死鳥の個性で傷を癒す。だが不死鳥の炎も体力的にもキツくなってきたのか精度が落ちる。不死鳥の癒しの炎は使うと大きく体力が減るという……

 

「くそっ……ヒーロー殺しめ、ここに来て本気を出してきやがった……」

 

「どうした……?ハァ…動きが遅くなってきてるぞ」

 

「うるせぇ。俺はヒーローの卵といえど子供だ。自分の力量が相手に届かないくらい見て明らかだろ」

 

「なら何故戦う?なぜそいつらを庇う?」

 

 そう言いながら飯田とプロヒーローを見るステイン。それを聞いた紅煉は嘲笑うように告げる。

 

「友達を捨てて逃げる奴が、ヒーローになれるかってんだよ」

 

「ハァ……やはり良い」

 

 そうしてまたぶつかり合う。すると、現状を見てた緑谷が紅煉の異変に気づく。

 

「火群君の動きが鈍くなってる?」

 

「なに?」

 

「どういう事?緑谷」

 

「炎と熱を操る個性。でもあの姿は熱エネルギーを体内で爆発的に上昇させ身体能力を上げてる。つまり……」

 

「「熱は体内に保ち続けるから熱が篭もる!!?」」

 

 緑谷が解説すると凍火と飯田も気付く。

 

「そう。それがあの《ディアブロ・フォース》の弱点なんだ。多分あの姿だと火群君の体力を沢山持っていかれる。さらにそこに熱を籠られたら……動きはすごく鈍くなる。短期決戦型の姿なんだ」

 

「ふぅ……」

 

「!」

 

 紅煉は一息つくと緑谷にアイコンタクトする。緑谷はそのアイコンタクトを見て紅煉の思惑に気づく。

 そのままステインの猛攻を捌く紅煉。

 

「飯田君、轟さん。作戦がある」

 

「「作戦?」」

 

 緑谷が紅煉の思惑を伝えてる間、紅煉はステインと対峙している。

 

「ハァ……見た事ない武術だ。なんだ?それは」

 

「……“裂蹴拳”という拳法だ。上半身を相手の攻撃を捌く盾に、下半身を強力な蹴りを放つ矛にすると言ったらわかりやすいよな?いわゆる近接最強拳法だ。それに俺の個性と身体能力向上のドーピングをしてるから動きに鋭さが増している」

 

「ハァ……なるほどな。だが動きが鈍くなってるのを見ると諸刃の剣のようだな」

 

Halt die Klappe(だまれ)!勝負はこれからだ!!かかってこい!」

 

「ハァ……いいだろう。では、容赦せん!!」

 

[今っ!!]

 

 そう言って突っ込んでくるステイン。それを見た紅煉は少し笑い立ち止まる。そして、ナイフを紅煉の肩に突き刺してステインは驚く。

 

「貴様!?なぜ避け無かった!!」

 

「こうでもしねぇと、捕まえられないんだよ」

 

「なに!?」

 

 そう言ってステインの腕と頭を掴む。そして炎を頭を掴む腕に纏わせる。

 

「ぬっ!?」

 

「喰らえ……《紅蓮腕(ぐれんかいな)》!!」

 

 そのまま腕を爆破させステインを壁にふきとばす。

 

「グッ、なんという火力……っ!?」

 

 ステインはなんとか意識を保ち前を見ると左右から緑谷と飯田が飛び出していた。

 

「いつの間に!?」

 

「ヒーローはいつだってピンチを切り開いていく!!」

 

「僕らはそれを気付かされた!だから!!」

 

「「トドメは僕らがさす!!」」

 

「インゲニウム!?」

[感化されたと言えど、ここまでの強いヒーローへの意思は一体!?]

 

 ステインは飯田の目の変化に気付く。さっきまで復讐に囚われていた目は全てを吹っ切った目をしていた。

 

「人間は変わる生き物だ。例え復讐に囚われても、助け出せば全部どうでもよくなっちまうんだよ」

 

「なにっ!?」

 

 紅煉は意地悪そうに言うとステインがそんなバカなと言いたげに見てくる。だがその隙が油断を生んでしまい、避けられるはずの二人の攻撃を受けてしまった。

 

「《SMASH》!!」

 

「《レシプロ・バースト》!!」

 

「ぐおっ!!?」

 

 そのままステインは吹っ飛んで壁に激突し緑谷と飯田は落ちる寸前に凍火が氷を展開して2人は滑り落ち、ステインは気絶する。

 それと同時に紅煉は《ディアブロ・フォース》を解く。

 

「なんとか、勝てたか……気絶してるっぽいな」

 

「そうみたい、拘束して表に出よう」

 

「僕はあのプロの方を見てくる」

 

「……」

 

 飯田は信じられないとで言うようにステインを見てる。

 

「飯田」

 

「っ!」

 

 紅煉が飯田に話しかけると飯田は体を強ばらせる。

 

「そう身構えるな……最後、悪に立ち向かうヒーローになってたな……カッコよかったぜ…インゲニウム」

 

「……あ、ありがとう」

 

「……お前の兄さん。動けるようになるかもしれない」

 

「っ!!?」

 

「体を休めた後、会わせてくれ」

 

「あ、あぁ!」

 

 数分後にはステインをゴミ捨て場を漁り見つけたロープで縛り、プロと共に路地裏から出ていく。その間プロの方は少し落ち込んでいたが……

 そしてほかのプロの方々も応援に来てくれた。その中にはグラントリノが居た。グラントリノは即緑谷を叱っていたが……

 その後、ステインの引き渡しの為、警察と救急車を呼ぶ事にした。すると、急にグラントリノが叫び出す。

 

「お前ら伏せろ!!」

 

 なんと、上空から脳無が飛んできたのだ。二体(・・)も……一体は原作で緑谷を攫おうとした脳無、もう一体は黒い脳無だ。原作の緑谷を攫おうとした脳無には傷があったが、黒い脳無にはなかったところを見ると……突然現れたようにも見えた。

 

「えっ!?」

 

「なにっ!?」

 

 原作通り緑谷を攫おうと掴む脳無と、もう一体は紅煉を掴んだ。

 

「チッ!!《神火・不知火(しんか・しらぬい)》!」

 

 炎の槍を形成し1本を緑谷を掴む脳無へ向かって投げ翼に穴を開け落下せる。もう1本を自分を掴む脳無に突き刺そうとした瞬間。

 

「ッ!!?ゴホッ!ゴホッ!!かはっ!」

 

「紅煉!?」

 

「火群くん!?」

 

 急に咳き込み喀血する。凍火と飯田はそんな紅煉を見て驚く。

 そして黒い脳無は紅煉の首に軽く爪を突き刺す。

 

「なに、しやがる!!」

 

「あれじゃあダメだ!力が入ってない!!」

 

「どうにかしないと!!紅煉が!」

 

 急に首を刺され抵抗の為蹴り上げるが効果はない模様。全員が為す術がないまま呆然と見てるだけかと思われた次の瞬間だった。

 

「氷を張れ、そこの女。あいつに届くくらいの、氷を」

 

「は、はい!!」

 

 急に凍火の耳に男の人の声が聞こえ咄嗟に返事をして巨大な氷を張る。

 

「轟さん!?」

 

「あなた、何してるの!?」

 

「えっ?」

 

 だが、緑谷やプロの方々は驚いていた。すると全員の横から通り過ぎる影が……全員がそちらを向くと、ヒーロー殺しステインが氷を駆け上っていた。

 

「礼を言う。これで届く!」

 

「「「「「ヒーロー殺し!!?」」」」」

 

「偽物が蔓延るこの社会も…」

 

 全員が驚く中、ステインは素早く氷を駆け上がり黒い脳無に追いついてジャンプし脳無の横に並ぶ。

 

(いたずら)に“力”を振りまく犯罪者も…」

 

 そのまま隠し持っていてロープを切ったそのナイフで脳無の頭部、剥き出しの脳を刺す。

 

「粛清対象だ……ハァ…ハァ」

 

 そのまま紅煉を脇に抱え降り立つ。

 

「全ては、正しき社会のために」

 

「ヒーロー殺し……」

 

 紅煉は脇に抱えられたまま動けないでいた。まさか自分がこんな風に助けられるとは思ってもなかったからだろう。

 

「助けた……!?」

 

「バカ、人質とったんだ」

 

「躊躇なく人殺しやがったぜ」

 

「いいから戦闘態勢をとれ! とりあえず!」

 

 ザワザワしだすプロヒーローたち。

 

「何故一カタマリでつっ立ている!!? そっちに逃げたハズだが!!?」

 

「エンデヴァーさん!あちらはもう?!」

 

「多少手荒になってしまったがな! して…あの男はまさかの……」

 

 エンデヴァーはそこまで言って視線をソッと動かす。そこには脇に抱えられた紅煉が……

 

「ヒーロー殺し!その子を離してもらおう!!」

 

 我が子を守る親のような目でヒーロー殺しに襲い掛かろうとするエンデヴァー。

 それをグラントリノが止める。

 

「待て、轟!!」

 

 グラントリノがそう言うと同時に主にエンデヴァーに向かって、ヒーロー殺しから殺気が向けられた。

 USJの時に感じた悪意・害意・殺気なんて比較にならないほどだった。

 

贋物(にせもの)…。正さねば――――。誰かが…血に染まらねば……。“英雄(ヒーロー)”を取り戻さねば!! 来い。来てみろ、贋物(にせもの)ども。俺を殺していいのは本物の英雄(オールマイト)だけだ!!」

 

 そこまで言って動かなくなるヒーロー殺し。そのあまりの迫力に腰を抜かしているプロヒーロー。さらにはあのエンデヴァーですら後ずさったのだ。

 だが、それ以上ヒーロー殺しが動くことは無かった

 

「気を、失っている…」

 

 後から聞いた話だが、原作通りの大怪我をしていたそうだ。そんな満身状態の体で、誰も血を舐められていないのに……誰も動けなかった。あの場のあの一瞬。唯一確かに……ヒーロー殺しは相手に立ち向かっていた。

 

 その後、ヒーロー殺しは気絶したので紅煉は不死鳥の個性でヒーロー殺しの傷をある程度治した。細かい傷は残ってる理由は大きい怪我を治すのにヒーロー殺しの体力を大幅に消費したらしい……だから細かい傷は残ったが大怪我してる部分は完治させた。

 

「なんでそいつの……ヒーロー殺しの怪我を治した?スルト」

 

 エンデヴァーがそう話しかけてきた。とても怖い顔で……ほかのプロヒーロー達も何でこいつ犯罪者を助けてるの?という目で見てる。それを見て紅煉はエンデヴァーの方を向いて言った。

 

「相手が凶悪な犯罪者だから……怪我は治すなと言うのですか?相手が人を殺したから、治るなと言うのですか?飯田にも言いましたが、それは勝手な復讐心によるもの……ヒーローとは呼べない悪の一面です」

 

「……」

 

「「「「っ!」」」」

 

 エンデヴァーは黙って聞き、ほかのプロヒーローたちはバツが悪そうに顔を背ける。

 

「確かにヒーロー殺しのしてる事は悪です。ですが、俺達も同じことをした。悪を倒すために暴力を振るう。これはどう見ても悪ではありませんか?」

 

「なに?」

 

「「「「えっ?」」」」

 

「ヒーローだから暴力は許される……そんな世界に俺らは立ってるんです。ならそれは正義というのか?否。正義とは言えない。血みどろな道の上を歩いて得た称号が綺麗なはずないでしょう?だから俺は悪を倒すために悪をなす……だから俺はたとえ相手が犯罪者でも、傷を癒し続けよう……それが俺の出来る事だから。それに、理由はどうであれ助けられた事に変わりは無い……」

 

 そう言うとプロヒーローたちは何かを考えるように俯き、エンデヴァーは黙って頷く。

 

「そうか。たしかにもっともだな……とりあえず病院に行きたまえ、君も体力がないから大怪我をしてるんだろ?あの脳無に体を掴まれてから動きが遅いとフレイシアから聞いてる」

 

「あ、バレてました?」

 

 その後、現場はエンデヴァーとプロヒーローたち、そして警察に任せて今回の戦いで負傷したプロ1人含む5人は最寄りの病院へと搬送された……

 

ーーーーーーーーーーーー

 古びたBARの中。そこでは一人の男が笑っていた。

 

「くくくっ、そうか、裏切ったか」

 

「何を笑ってるんだよ……あいつ、絶対いつか殺す」

 

 プルトンは笑いながら酒を飲み、それを死柄木がキレる。黒霧はそんな二人を見つめながらグラスを拭いている。

 

「しかし、あの脳無はよろしかったので?」

 

「あぁ、あれは使い捨てみたいなもんだ。一刺しでもすればもうおしまい。あの脳無はもう戦力にならん」

 

 黒霧の問いに笑いながら返すプルトン。

 

「さぁ、計画の発動まであともう一押しだ。雄英高校に絶望を与え、プロ達にも絶望してもらう……あと少しでそれが達成する!その時が!俺達の新たなる日の出となるぞ!」

 

 古びたBARの中で豪快に笑うプルトン。その笑い声は周辺を、夜中まで木霊させた。

 死柄木と黒霧はそんなプルトンを見て悪寒を感じたと言う。




という訳でヒーロー殺し戦終了しました。
次回は後日談ということになります。最後、紅煉が炎を使えなかった原因も明らかになります。

それではまた次回!!


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第22話 火群と職場体験・後日談

前回のあらすじ
ヒーロー殺しと決着つけた。
脳無2体に襲われた。ヒーロー殺しに助けられた。

以上!

紅煉「ほかにもあったでしょう!?」


 あの事件から一夜明け、保須総合病院。そこに緑谷、飯田、紅煉は入院していた。

 

「冷静に考えると……すごいことしちゃったね」

 

「そうだな。とんでもなく凄いことしたな」

 

 緑谷が不意に告げると紅煉は返す。

 

「僕の脚、これ多分…殺そうと思えば殺せてたと思うんだ」

 

「俺は完全に生かされたな……あんだけの殺意を向けられてよくまぁ立ち向かったよ……救けたつもりが救けられちまった。悪いな」

 

「いや……違うさ、俺は…」

 

 飯田が発言しようとすると病室のドアが開く。入って来たのは緑谷が世話になってるプロヒーローのグラントリノさんと飯田がお世話になってるマニュアルさん。さらには凍火とエンデヴァーが入ってきた。あともう一人後ろにいる……

 

「おおォ、起きてるな怪我人共!」

 

「グラントリノ!」

 

「マニュアルさん」

 

「凍火……エンデヴァーさんも」

 

 するとグラントリノは即緑谷の前にやってきた。

 

「色々とグチグチ言いたいが…その前に来客だぜ」

 

「「「?」」」

 

「保須警察署署長の面構犬嗣さんだ」

 

「面構!!……署、署長!?」

 

「掛けたままで結構だワン」

 

 後ろから来たもう一人が面構署長……その見た目は犬だ。

 

「君たちがヒーロー殺しを仕留めた、雄英生徒だワンね」

「ヒーロー殺しだが。怪我自体は既に完治しかけてるが、聞いた話によると君が治したそうだね。その時の傷は?」

 

「火傷に骨折。肋骨に関しては肺に突き刺さってました。下手したら今も重症の治療中だったでしょう」

 

 署長は紅煉を見ると紅煉は包み隠さず全て話す。

 

超常黎明期(ちょうじょうれいめいき)…警察は統率と規格を重要視し、個性を“武”に用いない事にした」

「そしてヒーローはその“穴”を埋める形で台頭してきた職だワン」

「個人の武力行使、容易に人を殺められる力。本来ならこれが糾弾されて然るべきこれらが公に認められているのは……」

「先人たちがモラルやルールをしっかりと遵守してきたからなんだワン」

 

「資格未取得者が保護管理者の指示なく“個性”で危害を加えたこと」

「これは立派な規則違反だワン」

 

「君たち四名及びプロヒーロー。エンデヴァー、マニュアル、グラントリノ……この七人には厳正な処分が下さらなければならない」

 

 これを聞いて凍火や緑谷、飯田は目を見開く。自分らのした過ちを理解したようだ。そんな中、ニコニコしてる紅煉を見て面構署長は少しムッとした表情を見せた。

 

「何がおかしいのかワン?」

 

「いや〜……簡単ですよ。保護管理者の許可は得てますよ。俺達雄英生徒はね」

 

「「「「「「えっ?」」」」」」

 

「あっ……」

 

 皆驚く中、一人なにか気づいたような声を発する。凍火だ。

 

「と、凍火……何か知ってるのか?」

 

「エンデヴァーさん……そういえば許可してましたね」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

 更なる衝撃が皆を貫く。そんな中でエンデヴァーはさらに雷に打たれたような顔をする。なにか勘づいたようだ。そこでさらに紅煉が追い打ちをかける。

 

「保須市に来る前に言いましたよね?『保須市での俺ら雄英生(・・・・・)の個性使用許可を下さい』って、それに許可してくれましたよね?エンデヴァーさん」

 

 皆の視線がエンデヴァーに集まる。凍火は少し笑いを堪えながら、紅煉はニヤニヤしながら、他のみんなはポカンとしながら……エンデヴァーは一言言い放った。

 

「……許可してました」

 

「「「「「………えぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」」」」」

 

 エンデヴァーはあっさりと認め、さらにみんなが驚く。

※詳しくは本編第20話「火群と保須市」をご覧あれ(唐突な宣伝)。

 

「そう。エンデヴァーは許可してくれました。それはつまり俺らは保護管理下にあったと言うことを示してます。それ即ち俺らの場に許可するヒーローはいなくても“事前に”許可を貰っていたんですよ。ヒーロー殺しがいる現場。何が起こるかわからない。ならどうするか?掛け合うしかないでしょう。そして俺らは許可を頂けた。つまり今回の1件ではプロにも俺らにもお咎めは何も無いというわけです。Hast du verstanden?(ご理解頂けましたか?)ちなみに証拠もあります」

 

 完全なる屁理屈にも似た説明だが……エンデヴァーが認め証拠のボイスレコーダーがある時点でそれは事実。もはや覆しようがなかった。

 

「……正直驚いているワン。君は切れ者だな。とても子供とは思えないワン。だが、君らがヒーロー殺しを捕まえたと報道されたら君たち四人には賞賛は上がるが、敵に狙われやすくなるのだワン……」

 

「俺は覚悟の上ですよ」

 

「「「えっ!?」」」

 

 面構署長の言葉に紅煉はあっさりと答えると飯田と緑谷と凍火は驚く。

 

「ヒーローはいつだって命懸け……命狙われる時なんか腐るほどある。それこそエンデヴァーやオールマイトは狙われやすいだろう。人気もあり敵退治にも多く貢献してるのだから……その土俵に立つにはそれ相応の覚悟が必要。ならば、俺は甘んじてその賞賛と殺意を受け入れよう。この選択は他の人から見たら間違いだが、俺はその道を選ぶと決めていたから……」

 

 そう言う紅煉の目は覚悟の炎に染っていた。それを見た面構署長は少しため息をついてから言った。

 

「なら、今回の件は君とエンデヴァーだけの功績にしてもいいかワン?」

 

「「「「「ええっ!?」」」」」

 

「理由は?なんでですか?」

 

「君は肝が据わってると見た。君なら世間の評判も気にはとめないだろうと思った。だが他の子らは違う。だからこそ君とエンデヴァーの功績にした方がいいと思ったんだワン。どうかね?」

 

「それで構いませんよ……奴に知らしめられるのなら、それで構わない」

 

「「「「「?」」」」」

 

 紅煉の最後の一言に誰も気にとめなかったが、凍火だけはその顔に少しばかりの憎しみを抱いてるのを感じた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 その日、新聞にはヒーロー殺しステイン逮捕の話が持ち切りだった。約四人の雄英高校の生徒が職場体験に来ており、ヒーロー殺しの動向を察知し一人の生徒が対峙してたところをエンデヴァーが助けたと……さらには個性使用の許可を貰い保護管理下にあったことが伝えられ、更にはヒーロー名と顔写真がドンッと載せられていた。

 

「ここまで大袈裟にしなくてもいいのにな……」

 

「にしても凄いことを考えたね……僕らにお咎めないようにするなんて」

 

「まぁやろうと思えば簡単にコネは回せる分だけ回す。使える駒は使った方がいいからな」

 

「駒って……」

 

 紅煉が新聞紙を置きながら言うと緑谷が答える。飯田は左腕に後遺症を残す大怪我を負い、治そうとしたが止められた。

 ちなみに飯田のお兄さんは紅煉の不死鳥の個性によって傷を完治させ、リハビリをすれば歩け、ヒーロー復帰できるようにさせた。とてもお礼を言われたし喜ばれた。

 

「それにしても、弱点があったんだって?火群くんの個性……」

 

「あぁ……俗に言う《オーバーヒート》……個性使用限界だ」

 

「オーバーヒート……?」

 

「俺の個性はどうやら、俺の体内の酸素によって炎を操ってたみたいなんだ」

 

「そうだったの!?」

 

 紅煉の個性、『怪焔王』には弱点があった。それはすなわち、無敵では無かったのだ。

 

「今回は《ディアブロ・フォース》と《紅炎裂蹴拳》の同時使用が原因らしくてな……それによって使用限界に陥り、咳き込んだらしい」

 

「そうだったんだ……」

 

「まぁ強力な力の同時使用をしなければなんとかなると思うけど。使い過ぎには注意しないとな……」

 

「うん。火群くんはいつ退院なの?」

 

「お前と一緒」

 

「えっ?そうなの?」

 

「うん」

 

 そのまま退院するまで2人はこれからどのように力を使っていくかやヒーローについて語ったりしながら過ごした。

 ちなみにその間も軽い筋トレは欠かせず行った。紅煉は何故か重い筋トレをして看護婦さんに怒られていたが……今回の傷は不死鳥の個性を使わず治して体を慣らせるつもりらしい。

 

ーーーーーーーーーーーー

 退院した日、紅煉はエンデヴァー事務所に戻ってきていた。因みに凍火は既に帰ったそうだ。というか帰らされたらしい……なんでだろ?

 

「短い間でしたが、ありがとうございました」

 

「うむ」「おう!」

 

 返事をしたのはエンデヴァーとミルコ……そういえばあの時ミルコ居なかったような……

 

「そういえばミルコはあの時何してたんですか?」

 

「私はあの黒い脳無?って化物とやり合ってた!」

 

 道理でいなかった訳だよ畜生と紅煉は思ったが声には出さなかった。

 

「今回は散々だったが、君のおかげでヒーロー殺しを捕まえることも出来た。礼を言う」

 

「あれは結局そうなっただけですから、頭を下げないでください。」

 

そう言って頭を下げようとするエンデヴァーを紅煉は止める。

 

「そうか、だが本当に助かった。これから君にはたくさんの苦難や課題が待ち構えてるはずだ。それにめげず突き進めるよう頑張ってくれ」

 

「はい!」

 

「それでは短い間だったが、これにて君の職場体験を終わりにする」

 

「ありがとうございました!!」

 

ーーーーーーーーーーーー

 その日の夕方頃に家に着くと何故か鍵が空いており中に入ると轟家一同がいた……

 

「いや、なんでだよ……鍵は?」

 

「以前来た時に壁にスペアがかけてあったので拝借して合鍵作りました」

 

「道理で見当たらないと思ったよ畜生。てか普通に犯罪行為なんですがそれは」

 

「大家さんからの許可は取ってます」

 

「大家さん……さすがに止めようぜ」

 

 なぜいるのか紅煉が聞くと冷さんが堂々と爆弾発言し大家さんも共犯と伝える。最早何言っても無理だと思い合鍵の所有は認めたが……ちなみに来た理由は職場体験お疲れ様でした会をするらしい。

 そのパーティーは深夜まで続いたのは言うまでもないだろう。もちろんこの状況で帰すわけにもいかないので男連中は床で雑魚寝し女性陣にはベットを引き渡したのは言うまでもない……

 エンデヴァー?今頃事務所で1人事務でもしているんじゃないかな?何気に最近優しくなってるからサイドキックの人達も全員帰してると思うし大丈夫でしょ。

 

ーーーーーーーーーーーー

 その頃、エンデヴァー事務所

 

「……やっと終わった。今から帰っても遅いか、今日は泊まるとしよう……火群君は帰れただろうか。家でも1人と聞いてるが……」

 

 いらぬ心配をするエンデヴァーがそこに居た。




はい。というわけで今回はここまでです。いかがでしたか?
今回で職場体験編終了と、行きたいところですが次回。職場体験を生かした救助訓練の授業があるのでそれを終えて職場体験編終了とさせていただきます。
次回をお楽しみに。


それではまた次回!


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第23話 火群と救助訓練レース

前回のあらすじ
ヒーロー殺しとの戦闘の傷を癒すため入院。
職場体験が終了して家に帰ると轟家エンデヴァー以外集合してた……


 職場体験、つつがなく終了し、家に戻って体を休めた紅煉は次の日には全快していた。

 そして振替休日を1日挟み、登校日となった今日、1-Aのクラスではそれぞれが学んだことの情報交換……というか、『こんなことがあったぜ!』的な報告兼バカ話が行われていた。

 (ヴィラン)退治や事件解決に協力したという耳郎さんや梅雨ちゃん(密入国者逮捕したって)の話もそうだし、メディアに顔を出してTVCMデビューすることとなった八百万さん、職場体験を通じて他のクラスの奴と友好を深めた切島とか、注目を集める話題はあちこちに転がっていた。

 かと思えば、期待していたような経験ができなかったと、やや落ち込んでいる者もいたし……中には、体験先で何があったのか心配になるような変化を遂げている奴もいた。

 前者は主に常闇や尾白、後者は麗日さんや峰田あたりである。

 常闇は、No.3ヒーロー『ホークス』の事務所に行ったはず……なんか、振り回されっぱなしで、1人で全部やってしまう彼の仕事の後始末とかしかできなかったらしい、ドンマイとしか言い様がないな……

 尾白は……こう、何と言ったもんか……新宿二丁目界隈を仕切る『二丁目拳銃』とかいう、『男で女』な特殊な立場のヒーローの事務所にいたんだとかなんだとか……色々身になる経験もできたそうだが、気苦労も多かった様子で……

 麗日さんは……なんか、7日間いっぱいガンヘッドのとこで経験を積んだ結果、『コォォォ……』って不思議な呼吸音と共に、腰の入った見事なスクリューパンチ繰り出すようになってた。………なんかオーラすら纏ってるように見えるのは気のせいか?

 そんでもって、峰田が……『女は元々みんな、悪魔のような本性を隠し持ってんのさ!』って影のある表情でブツブツ呟くように言いながら爪を噛みながら言ってる。

 性欲の権化であるこいつがこんなになるとは……Mt.レディの事務所で何見たんだ?とりあえず当分は大人しくするだろう……しなかったら殴る。

 

「けどやっぱ一番大変そうだったのは……お前ら4人だよな!」

 

「そうそう、ニュース見てびっくりしたぜ。『ヒーロー殺し』!」

 

 そんな、上鳴と瀬呂の声一つで、皆の視線が一気にその当事者の4人……緑谷、凍火、飯田、そして紅煉に集中する。

 そりゃあ話題にもなる。ニュースでも連日報道されてる超凶悪犯だったってのに加えて、保須市の一件では、脳無……すなわち『敵連合』まで絡んできたんだし。

 つまり紅煉の父、プルトンも関わってるという事だ。

 

「てか火群!お前が1番やべぇよ!!みんな守るために事前に個性使用許可もらって対峙してたんだろ!?」

 

「ん?あぁ……保須市に行くって聞いてからそれなりの準備のためエンデヴァーの名前を利用させてもらっただけだ。アレがそこら辺のわんさかいるようなヒーローだったら確実に許可は得られなかっただろうな……」

 

 当然と言えば当然…皆は発表された方の『真実』……エンデヴァーと紅煉が、今回の事件解決の功労者で、緑谷達は巻き込まれたに等しい立場だって認識していた。

 まぁ逆に言うならそうしないと敵に注目されるのだからこれが正解だと言えるのだろうがと思っている。

 

 その話の中で、上鳴がヒーロー殺しのことを『ちょっとカッコよくね?』って言っちゃったんだが……それを気にするかもしれないと危惧された飯田は、そのことについても自分なりに既に心の整理をつけていた。

 動揺した様子もなく、はきはきと自分の考えを口にする。 

 

「確かに奴は、信念の男ではあった。好感を覚える者が出るのもわかる。だがその果てに奴が選んだ『粛清』という手段。どんな考えの元であっても、それだけは間違いなんだ。俺のような者を、これ以上もう出さないためにも……改めてヒーローへの道を俺は歩む!」

 

 と、いつも通りのカクカクした動きでびしっと言い切る飯田を見て……クラスメイト達は『もう問題なさそうだな』と悟っていた。

 軽率なことを言ってしまった上鳴は『なんかすいませんでした』と謝っていた。

 

「いい目標だな。飯田……そして俺は上鳴の発言にも共感出来る部分はあるぞ」

 

「「「「えっ?」」」」

 

 紅煉の思わぬ発言にクラスのほとんどが一気に紅煉に向く。

 

「ヒーロー殺しの理屈は完璧だ。行いは人道的とは言えないが……今のヒーローは相性だとか人気を得るためにやってる。エンデヴァーのようにNO.1ヒーローになるという目標ではなく人気を求め、自分に相性が悪い個性がいたら何も対策を考えず呆然と見つめる。そんなのをヒーローと呼ぶのなら誰だってなれるさ……だがそれはヒーローとは言わない。オールマイトが言ってるようにヒーローはいつだって命懸け、けして相性だとか人気だとかでヒーローをしてるなら辞めちまえって話だ。その理屈通りにヒーロー殺しは動いていた。そのお陰かヒーロー殺しが出現した街の犯罪数は減少してると聞く。十中八九ヒーロー殺しが関与してド三流ヒーローがヒーローとしての在り方を少しは理解出来たからだろう」

 

 思わぬヒーロー殺しへの擁護にクラスメイトのほとんどが言葉を失う。確かにヒーロー殺しのやり方は人道的とは言えないが理屈は通っているのだ。

 

「ま、これは俺個人の意見だから正解は無いけどな……そろそろ朝のホームルームが始まるな。席に着こうぜ」

 

ーーーーーーーーーーーー

 入り組んだ工場地帯……A組はヒーローコスチュームに着替えてこの場に来ていた。

 と言っても雄英高校の敷地内なんだけどね……

 

「ハイ 私が来た」

「って感じでやっていくわけだけどもね。ハイ ヒーロー基礎学ね!」

「久々だね少年少女!元気か!?」

 

「ヌルッと入ったな」

「久々なのにな」

「パターンが尽きたのかしら」

 

 オールマイトが担当でなおかつ久々な授業なのにこんな軽くていいのか?と思う紅煉であった。

 

「職場体験後ってことで今回は遊びの要素を含めた」

「救助訓練レースだ!!」

 

「救助訓練ならUSJでやるべきではないのですか!?」

 

「あすこは災害時の訓練になるからな。私はなんて言ったかな?そうレース(・・・)!!」

「ここは運動場γ(ガンマ)!複雑に入り組んだ迷路のような細道が続く密集工業地帯!五人四組に別れて一組ずつ訓練を行う!」

「私がどこかで救難信号を出したら街外から一斉スタート!誰が一番に私を助けに来てくれるかの競走だ!!」

「もちろん、建物の被害は最小限にな!」

 

「指さすなよ」

 

 オールマイトが説明してると立てた人差し指をゆっくり爆豪に向けて遠回しに加減しろと言ってくる。

 指をさされた爆豪はなんとも言えぬ表情でそっぽ向いていた。

 

「じゃあ初めの組は位置について!」

 

 ここでもまた原作と違う点がでた。最初の組は芦戸さん、飯田、尾白、瀬呂……ここまでは原作通りだが五人目はまさかの紅煉だった。

 ちなみに不死鳥の個性を使うなと言われてしまった。

 

「飯田まだ完治してないんだろ、見学すりゃいいのに」

 

「クラスでも機動力良い奴が固まったな」

 

「強いて言うなら火群さんが若干不利かしら…」

 

「確かにこの場所で被害最小限で怪焔王の個性だけでしょ?」

 

「被害が出てしまうと思いますわね」

 

 八百万さんと耳郎さんが心配そうに言う。

 

「トップ予想な!俺瀬呂が一位!」

 

「あー…うーん、でも尾白もあるぜ」

 

「オイラは芦戸!あいつ運動神経すげぇぞ!」

 

「火群が最下位!」

 

「怪我のハンデがあっても飯田くんな気がするなぁ」

 

「ケロッ」

 

 切島、上鳴、峰田、爆豪、麗日さん、梅雨ちゃんが予想する。

 

『START!!』

 

 開始の合図がされると皆一気に行動する。瀬呂は個性を利用し上へ行く。

 

「ほら見ろ!!こんなゴチャついたとこは上行くのが定石!」

 

「となると滞空性能の高い瀬呂が有利か」

 

 切島がそう言うと障子も納得する。

 

「ちょーっと今回俺にうってつけ過ぎ…る……?」

 

 そう言って余裕をかましてる瀬呂の横を何かが通り抜ける。瀬呂が見ると紅煉が跳んでいた(・・・・・)

 

「修行に丁度いい。試させてもらうぜ《ディアブロ・フォース》!」

 

「おおお!!火群!」

 

「なんだあの動き!てか痣!!なにあの痣!!?」

 

 紅煉はヒーロー殺し戦で見せた《ディアブロ・フォース》を使って複雑な工業地帯の上、パイプやら壁やらを跳び移りながら移動していた。

 

「ッソだろ!?」

 

「な、なんなんですの!?あの痣は!それより炎を使ってないのになぜあんなにも俊敏に動けて…」

 

「「《ディアブロ・フォース》」」

 

「「「「「《ディアブロ・フォース》?」」」」」

 

 緑谷と凍火が同時に言う。クラスの皆が何それと言いたげな顔をする。

 

「《ディアブロ・フォース》……熱エネルギーを体内で循環させ身体能力を爆発的に向上させる」

 

「それによって力・スピード・破壊力・防御力が全部何倍にもなる」

 

「チートじゃん!!」

 

「そう思ったら大間違いだよ峰田くん」

 

 緑谷と凍火が交互に説明すると峰田がそう叫ぶ。しかしそれを緑谷が即否定する。

 

「どういう事ですの?」

 

「弱点があるの……あの姿には」

 

「「「「「弱点?」」」」」

 

「炎と熱を操る個性。でもあの姿は熱エネルギーを体内で爆発的に上昇させ身体能力を上げてる。つまり熱の操作は出来ない状態……」

 

「それって……つまり?」

 

「熱は体内に保ち続けるから熱が篭もるという事ですわね?」

 

「そういう事」

 

 クラス全員が紅煉の形態の弱点を知り如何に強くなってもその分のリスクは伴うという事を知った。

 それでもすごい速さでオールマイトに向かっていくのを見て短期決戦の姿といえど馬鹿にならないと思うしかなかった。

 

「えっ、火群!?跳んでるの!?」

 

「そんなのありかよ……!?」

 

 芦戸と尾白もそんな紅煉の姿を見て驚きの声を上げる。

 結果的に言うならやはり一位は紅煉になった。緑谷は別のグループで一位になりオールマイトに小声で称賛されていた。原作を知ってるのでオールマイトが緑谷に何を言ってるのか分かってた紅煉はあえて何も言わなかったが……

 そして全組が終わり授業の終盤となった時、オールマイトが最後の締めくくりをする。

 

「さて!今日の訓練はここまでにしよう!皆入学時より“個性”の使い方に幅が出てきたぞ!」

「この調子で期末テストへ向け準備を始めてくれ!!」

 

 これを聞いて紅煉は少し身構える。そう、もうすぐそこまで悪意が来てるのだ……

 

ーーーーーーーーーーーー

 それから時は流れ期末テストまで残すところ一週間を切っていた。相澤先生からテストで赤点を取った者は夏にある林間合宿に行けず補習地獄だと聞いた。

 

 そしてここは暗い病室のような部屋の中……そこに一人の男がたくさんのチューブに繋がっていた。そしてもう二人、髭を生やした小柄な太った老人と……プルトン。

 

「ヒーロー殺しが捕まるとは思わなかったな……」

 

「だが概ね想定通りだ。暴れたい奴や共感した奴、そんなヤツらが衝動を開放するために敵連合にやってくる」

 

「弔はそんなヤツらを統括しなければならない……」

 

「出来るかね?あの子供に……ワシは先生が前に出た方が事が進むと思うが…」

 

「なら早く治してやれ……“超再生”の個性を手に入れるのが5年早ければよかった」

 

「全くじゃ、傷が癒えてからでは意味の無い期待外れの個性じゃった」

 

「いいのさ!彼には苦労してもらう!次の“僕”となるために……あの子はそう成り得る。歪みを生まれ持った男だよ」

「今のうちに謳歌するといいさ、オールマイト……“仮初の平和(茶番)”をね」




はい、今回はここまでとします。
次回期末の実戦形式と行きますがそれを行うためアンケートをとります。
期間は11月21日の0時とさせていただきます。
アンケート結果がどうなっても新スタイル(新技)を出す予定なのでご安心ください。
他に案がある方はどうぞ感想でもメッセージでも受け付けてますので意見をください。

それではまた次回!


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火群と期末テスト
第24話 火群と期末テスト準備


前回のあらすじ
救助訓練レースを行い、見事1位を取った紅煉。
とうとう期末試験が近くなりその準備を始めた。


そしてだんだん近づいてくる悪意……影から伸びる手はもうすぐそこまで来ていた。


 期末テストまで残すところ一週間を切っていた。

 

「全く勉強してねー!!」

 

「あはははー」

 

 上鳴が叫び芦戸の渇いた笑い声も聞こえる。

 

「体育祭やら職場体験やらで全く勉強してねー!!」

 

 二人が騒いでるとふぅーとわざとらしい溜息が吐かれた。そこを見れば峰田が椅子に偉そうな態度でふんぞり返っていた。

 

「演習試験もあるのが、辛ぇとこだよな」

 

 上鳴と芦戸が騒ぐ。

 

「あんたは同族だと思ったのにぃ!!」

 

「お前みたいな奴はバカではじめて愛嬌出るんだろうが!そこそこ出来やがって、どこに需要あんだよ!」

 

「世界かな…」

 

 そんな二人に救世主が…

 

「お二人共、微力ながらお手伝いしますわ」

 

「「ヤオモモ!!」」

 

「お二人じゃ無いけどウチもいいかな?二次関数の応用つまずいて……」

 

「悪い八百万!俺も頼む!」

 

「俺も」

 

 二人がそれに乗っかると耳郎さん、瀬呂、尾白も便乗していく。

 

「いいですとも!!」

 

 昼休み、食堂にて…紅煉、緑谷、麗日、飯田のいつものメンバープラス凍火で昼食を食べてようと席を探していた。

 ちなみに紅煉は飲み物を買いに行ってる。

 

「演習試験か〜内容不透明で怖いね」

 

「突飛な事はしないと思うがな…」

 

「筆記試験は授業範囲でやるから何とかなるしな」

 

「何とか…」

 

 期末テストについて話し合っていると……

 

「いてっ!?」

 

 緑谷の頭を誰かが小突いた。

 

「ああ、ごめん。頭が大きいから当たってしまったようだ!」

 

「B組の物間君!?よくも!!」

 

 すると物間は煽るような表情を作りながら騙り始める

 

「君らヒーロー殺しに遭遇したんだってね」

「体育祭に続いて注目を浴びる要素ばかり増えてくよねA組って」

「ただその注目って決して期待値とかじゃなくてトラブルを引きつける的なものだよね」

「あー怖い!いつか君たちが呼ぶトラブルに巻き込まれて僕らにも被害が及ぶかもしれないなぁ!あー怖い!」

 

 紅煉が居ないからだろう。いつもより多く煽れると思っているのか煽りまくってる。

 だが緑谷達には届いていなかった。なぜって?そんな煽ってる物間の後ろに鬼神(紅煉)が居るのだから言葉も失う。

 

「どうしたんだい!?僕の後ろに誰かいる……の……か……い…」

 

「「「「あっ……」」」」

 

 ようやく緑谷達の変化に気づいた物間が後ろを振り返ると完全ブチ切れモード……ヤサ紅煉が居た。

 

「……選べ」

 

「は、はい?」

 

 冷たいトーンで言葉に重みを乗せながら呟く。物間は何選べばいいのか聞いて見ることにした。

 次の瞬間、最初の選択肢を聞いて全て後悔していた。

 

胸筋から腹筋にかけてのほんの少しの皮を全て剥がされて神経むき出しにした状態で指でなぞられるか……ちなみに0,2mmある表皮を削ったら神経があってそれをなぞられるとバーナーで炙られてるみたいらしいよ?治るまでどれくらいかかるかな?もうひとつの選択肢は俺の怒りの鉄槌が下る前に今すぐ飯田に土下座して謝るかってあるけど……どうする?ちなみに俺は後者を勧めるよ……前者は俺もやりたくないんだ。仮にもヒーロー志望だからね……でも君が前者を選ぶなら喜んでやらせてもらうよ」

 

「大変に失礼かつ心の傷をえぐるような真似をしヒーローを目指すものとして間違ってると自覚しました!!本当に申し訳ございませんでした!!!」

 

「き、気にしてないとも……」

 

「「「……」」」

 

 物間に対して絶対に放送してはならない言葉を並べた後にもう1つの選択肢を与えると即飯田に謝る物間。

 それを見た凍火達は絶対に紅煉は怒らせないようにしようと心に誓ったのであった。

 

 物間がガタガタ震えながら戻った後、期末テストの話をする紅煉らの後ろから近づいてくる人物。

 

「せめて実技の内容が分かればいいんだがな」

 

「私、知ってるよ!テスト内容!ねぇねぇ、教えて欲しい!?」

 

「「「「「っ!!?」」」」」

 

 その時、水色のロングヘアの誰もが振り向くであろう美女が元気良く話に入ってきた。

 

「……失礼ですが、あなたは?」

 

「私?私は3年の波動ねじれ!よろしくね!」

 

「1年の飯田天哉です!」

 

「同じく緑谷出久です」

 

「同じく麗日お茶子です」

 

「同じく轟凍火です」

 

「同じく火群紅煉です」

 

 飯田が自己紹介したのでみんな自己紹介する。すると波動先輩は紅煉の名前を聞いて歓喜の表情を浮かべる。

 

「君が火群紅煉君なんだ!」

 

「え、ええ。はい」

 

「ヒーロー殺しをやっつけたんでしょ!?凄いよね!なんで髪の毛伸ばしてるの!?短いの嫌いなの!?」

 

 グイグイ来る波動先輩に気圧される紅煉がそこに居た。

 

「ヒーロー殺しにも立ち向かった彼が気圧されるとは」

 

「所で波動先輩」

 

「ねじれちゃん」

 

「えっ?」

 

 頬を少し膨らませ怒ったような感じの波動先輩。なんで?という感じに見てると続けて言い放つ。

 

「私の事はねじれちゃんって呼んで欲しいな」

 

「……えっ?波動先輩?何を言って」

 

「ねじれちゃん」

 

「ね、ねじれ先輩」

 

「ね・じ・れ・ちゃ・ん!」

 

「ね、ねじれちゃん……」

 

「うん♪よろしい!」

 

 紅煉はどうしたものかと緑谷達を見ると飯田は静かに顔を背け麗日さんはニコニコ笑顔で微笑み緑谷は明後日の方向を見てて凍火は少し怖い顔をしてる。

 

「そ、それでねじれちゃん……テスト内容についてですが……」

 

「うん、それはねー…」

 

 

 

 

 

「「ヤッターーーっ!!」」

 

 教室に上鳴と芦戸の歓喜が響く。

 

「んだよ、ロボなら楽勝だぜ」

 

「ホントホント」

 

 ねじれちゃんが教えてくれた…演習試験はロボとの戦闘だと。紅煉らはその事をクラスの皆に伝えた。

 

「お前等は対人だと個性の調整大変だもんな」

 

「ああ!ロボならブッパで楽勝だー!」

 

「私も溶かして楽勝だー!」

 

 

 

「人でもロボでもぶっ飛ばすのは同じだろ!何が楽チンだアホが!!」

 

「アホとはなんだ!」

 

「うっせえな!!調整なんて勝手にできるもんだろ!!アホが!!」

 

 爆豪の怒鳴り声が響く。

 

「なぁ火群……」

 

「ん?」

 

「てめぇ、まだなんか隠してるだろ」

 

「「「「「えっ!?」」」」」

 

 爆豪のその一言にクラスの皆が紅煉を見る。

 

「……その根拠は?」

 

「てめぇの《ディアブロ・フォース》だかなんだか……見てて思った。使い慣れてるように見えた……だがお前は「修行に丁度いい」って言ってたな……」

 

「読唇術まであるのか……」

 

「それってそのスタイルが初めてなだけで別の強化形態があるんだろ……そしてそれは《ディアブロ・フォース》より上」

 

「………」

 

 爆豪がめっちゃ考察し的確に自身の憶測を紅煉に叩き付ける。それに対して紅煉は沈黙をする。

 

「黙るってことはそう見ていいんだな。そして体力を持っていかれるのは《ディアブロ・フォース》よりも楽なんだろう?」

 

「それは違うな」

 

「あ?何が違うんってんだ?」

 

 爆豪が少しキレ気味な口調になる、よほど違ったことにイラついたのだろう。

 だが臆することなく紅煉は話す。

 

「《ディアブロ・フォース》より楽なんじゃない……むしろその逆、使ったら戦えなくなるんだ」

 

「「「「「えっ!!?」」」」」

 

「……っんだと?」

 

 クラスメイトと爆豪が驚きの表情をする。

 

「と言っても数時間戦えないだけなんだけど……ただ、その形態だと俺が本気で戦えるのは30分あるかないかだ。ハイリスクを伴うのが《ディアブロ・フォース》だとしたら俺が今言ってる形態はハイリスクハイリターンなんだよ。つまり簡単に言うなら超短期決戦型……放つ技の一発一発は全力かつ全開だ」

 

 そう言う紅煉の顔はずっと表情が変わってない。嘘は何も言ってないようだ。

 

「……いつから使えてるんだ?」

 

「プルトンが両親を殺した際に使った技がそれと聞いてな……復讐の為に調べて使って何度も腕を焦がしアレンジした時だからな……6歳とかそんくらいから使って完全に極めたのは14歳だ。まぁ今となっちゃ復讐なんかどうでもいいが……」

 

 嘘である。使い始めた時期や極めるに至るまでの過程は本気(マジ)本当(マジ)だが使い始めた理由は全く別の理由。ただの憧れである!

 ちなみに憧れてるのは勿論父親(プルトン)ではないぞ!

 

「待って?極めたって言ったよね?」

 

 緑谷が割り込んで来るがその発言にクラスの皆がハッと息を飲む。

 そう、紅煉は極めたと言った。そう言ってなおかつリスクが大きいと言っているのだ。

 その時、クラス全員の思ってることは一致した。

 

[どれほど危険な技なんだ!?極めたのにリスクが高いなんて!!]

 

「あぁ、どんなに極めようがどれほど使おうが避けようがないリスクに見舞われる。俺も使うのなら一撃必殺を覚悟してる」

「まぁ今回はロボが相手だからな、使うことは無いだろう……相手がオールマイトとかなら別だが」

 

「「「それは無いだろ〜!」」」

 

「ちっ!使えや!」

 

 紅煉が冗談じみたことを言うと上鳴と切島と瀬呂が否定してくる。爆豪は舌打ちして文句言ってきた。酷い。

 

 そして残りの期間、紅煉は死に物狂いで勉強に漬け込んだ。

 因みに中間の結果は6位とそれなりに高いのだ。伊達に学生を二度してないということだろうか?




今回はここまでとさせていただきます。
どうでしたか?最近はたくさんの方から評価を頂いて本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。評価して下さってる皆様には感謝しています。
たとえどんなに低くても評価して下さってるだけで自分がまだ至らない所があると創作意欲をさらにかき立てられるのでありがたく思っています!
感想も多い時は4件くらい来る時があり励みになっております!
これからもこの作品の方をよろしくお願いします!
アンケートは今日までなので参加をお待ちしております!

それではまた次回!


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第25話 火群と演習試験

前回のあらすじ
期末テストに向けて対策を考えていると3年の波動ねじれ先輩に出会い知り合いになる。
何故かねじれちゃんと強要される。
そして爆豪に力を隠してることがバレる。

アンケートの結果緑谷とペアでオールマイトが相手になることが決まりました。参加してくださった皆様ありがとうございます。


 演習試験当日。A組の生徒達はコスチュームに着替えて試験会場に居た。

 するとその場には複数の先生方がそこにいた。

 

「諸君なら事前に情報を仕入れて何するか薄々と分かっているだろうが...」

 

「入試みてぇなロボ無双だろ!!」

 

「花火!カレー!肝試しー!!」

 

 上鳴と芦戸が騒ぎ出す。そんな中…

 

「残念!!諸事情あって今回から内容を変更しちゃうのさ!」

 

 相澤先生の捕縛武器の中から校長が現れて宣言した。

 上鳴と芦戸が固まった。紅煉達も固まった。

 

「何故かと言うとね...敵活性化の恐れのある社会情勢故に、これからは対人戦闘・活動を見据えた、より実戦に近い教えを重視するのさ!という訳で諸君らにはこれから、二人一組でここにいる教師一人と戦闘を行ってもらう!」

 

「な...なんだと...⁉︎」

 

「尚、ペアの組と対戦する教師は既に決定済み。動きの傾向や成績、親密度…その他諸々を踏まえて独断で組ませて貰ったから発表していくぞ」

 

 相澤は次々とペアを発表していく。そのメンバーは以下の通り

 

轟・八百万VSイレイザーヘッド

 

耳郎・口田VSプレゼント・マイク

 

瀬呂・峰田VSミッドナイト

 

蛙吹・常闇VSエクトプラズム

 

飯田・尾白VSパワーローダー

 

爆豪・切島VSセメントス

 

葉隠・障子VSスナイプ

 

砂藤・上鳴VS校長

 

麗日・芦戸VS13号

 

「最後に緑谷と火群がチームだ。相手は……」

 

 この時点で紅煉は全てを察した顔をしている。それほどの相手が目の前に現れた。

 

「私がする!」

 

「「「「「「オールマイト!!?」」」」」」

 

 目の前にオールマイトが現れ紅煉除くクラスメイト全員が驚きの声を上げる。

 

「協力して勝ちに来いよ、お二人さん」

 

 オールマイトはそう言って笑う。紅煉はなにかを悟った。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 時は少し戻り期末テスト演習会議。そこで誰と誰がペアでどの教師と戦うかの会議がされていた。

 

「次に火群と緑谷ですが……オールマイトさん頼みます」

「この2人に関しては能力の相性や成績の良し悪しで組んでいません」

「偏に本気を出させるため!」

 

「本気?」

 

「どういうことだい?相澤くん」

 

 相澤先生がそう言うとほかの教師の面々が疑問の声を上げる。

 

「以前ヒーロー殺しとの戦闘で彼が使った《ディアブロ・フォース》と呼ばれる戦闘スタイル。どうやらあの上があるそうなのです」

 

 それを聞くとほとんどの教師陣が驚きを隠せないでいる。

 

「本気に近いヒーロー殺しと対等に渡り合ってたあの力にさらに上があったの!?」

 

 ミッドナイト先生も食い気味に聞いてくる。

 

「しかし、その分《ディアブロ・フォース》よりハイリスクハイリターンを求められるそうで、数時間はまともに動けないそうです」

「それを引き出しどんな力か見るための今回の実技演習です。緑谷を選んだのは単純にあなたを憧れてるからです。オールマイト。そして貴方も緑谷がお気に入りなんでしょう?上手く誘導しといて下さいね」

 

[よく見てるよ相澤くん]

 

ーーーーーーーーーーーー

 そして現在、試験のルール説明が行われている。

 場所は市街地で制限時間は三十分、勝利条件は2つ…一つはハンドカフスを教師につける事、もう一つはチームの一人がステージから脱出する事。

 

 ほとんどのペアは原作通りに合格している。

 ちなみに上鳴と砂藤は根津校長に翻弄され何も出来ず、麗日さんと芦戸さんは13号先生に吸われてる際青山のセリフを芦戸さんが言って麗日さんが動揺し自身の有利な立場に持っていき合格。何故かペアは違うのに原作通りなのが少し驚いた紅煉であった。

 

 そして今、切島と爆豪の演習試験が始まろうとしていた。

 

「切島君とかっちゃんか……どんな戦いになるんだろ……」

「切島は正面突破しそうな雰囲気だからな、それをカバーすると思うが……どちらにせよ、正面突破は……この試験じゃ1番の高難易度だと俺は思う」

「どういう事なん?」

「相手はプロ、それが敵役となれば遠慮はほとんどなし。つまりはどんな事してでも俺らの妨害をする。そこを正面突破したところで簡単にいなされる……ならどうするか、簡単だ……これは二人一組、それを活かせる方法はたった一つ……ツーマンセルのチームプレイだ」

 

 それを聞いたクラスメイトは納得する。そうこうしてると試験が始まった。

 

『切島、爆豪チーム。演習試験、Lady Go』

 

 街中を走る爆豪と切島はゲートに向かっている。

 

「なぁ爆豪」

「あ?」

「この試験さ、逃げるより捕まえる方が当然点数高くなると思うよな?」

「アホかクソ髪」

「えっ!?違うのか!?」

「考えてみろ、相手はプロだ。捕まえるのも逃げるのも一筋縄じゃいかねぇ。だからこそ自身の弱点を理解し、どう立ち回れるかによって相手のペースを乱す……さらにそこから攻められるかどうかを判断し助けを呼びに向かうか撃退するかを試されてるんだよ……捕まえた方が点数が高いんじゃなくてどう相手を出し抜き自分のペースを持ってくるかが重要なんだ」

 

 爆豪がそう言うと切島は少し考え込み理解する。

 

「なるほど、俺らの相手がセメントス先生なのはコンクリートで俺らの前に壁を貼り続けて体力が無くなってきたところを叩くって訳か!真正面からぶつかれば俺らの負けなのか!」

「ようやく理解したかよ。そしてコンクリートを操るってことはビルの合間も無理だ……手っ取り早くセンコーをぶちのめすには囮が必要ってことだ」

「ならそれは俺がやるぜ!」

「ダァホ!!勝手に決めんな!……俺に考えがある」

 

 一方その頃、ゲートの一本道にある通りに、セメントス先生は居た。

 

「ふむ、そろそろ来る頃か……ん?」

「見つけたぜ!セメントス!!」

「やはり正面突破で来ますか、爆豪君……切島君は?」

「あんなウスノロ置いて来たに決まってんだろ!!」

 

 セメントス先生が立っていると真正面から爆豪が飛び出してくる。そこに切島が居ないことに気づくと爆豪は置いて来たと叫んだ。

 

「やれやれ、なんのためのツーマンセルだと思ってるのか」

「こんな薄い壁!何度でもぶっ壊してやらァ!!」

「やれやれ……む、意外と強いな、少し強度を上げなければ」

 

 セメントス先生が何度もコンクリートの壁を生やすとそれを破壊し続ける爆豪。だんだんとだが近づいてくるその姿を見て少し焦りを見せる。

 

「どうした!?こんな強度かよ!セメントスセンコー!!」

「口が悪いのもどうにかしたほうがいいよ。特に君はね!」

[それにしても、あまりにも切島くんが遅すぎやしないか?彼もまたヒーロー志望。体力的にもそろそろ来てもいい頃のはず……]

「考え事かよ!!喰らえや!!」

「むっ!?たしかに、気にしちゃいられない!」

 

 セメントス先生が色々と考えてると一気に爆発が起きセメントス先生に隙が生まれる。

 すると、爆豪の後ろから切島が急に現れた。

 

「何!?まさか、ずっと死角に!?」

「よっしゃあ!行くぜ爆豪!!」

「来い!クソ髪ィ!!」

 

 切島がそう叫ぶと応える爆豪。切島の腕を掴み爆発の回転力を加えて投げ飛ばす。

 

「《爆破式(エクス)カタパルト》!!」

「切島くんを投げ飛ばした!?しまった!これではコンクリートの壁が間に合わない!!」

「行くぜぇ!!硬化した腕を一点集中!!《烈怒頑斗裂屠(レッドガントレット)》!!」

「ごはっ!!」

 

 回転しながら飛んだ切島はコンクリートの壁を突き破りながら勢いを殺すことなく硬化した腕でセメントス先生を殴る。

 そのままセメントス先生は吹っ飛ぶ。

 

「よっしゃあ!」

「おい!クソ髪!うしろ!!」

「勝った気で、居ないことです!」

「おらぁ!!」

「ぐっはっ!」

 

 しかし、何気に威力は落とされていたのかコンクリートが襲ってこようとすると爆豪が爆破しながら近づきセメントス先生を爆破で目くらましした後確保した。

 

『切島、爆豪チーム。条件達成』

 

「見事ですよ、2人とも……どんな作戦だったので?」

「俺が囮になってわざと前線に出て切島がいないと思わせる。切島はその後ろから気づかれないよう俺に近づく。そんときアンタは俺の対応に対処しっぱなしで切島は見てなかった。あとは隙ができたら必ず勝機がある。そこを突いて切島をぶん投げた。あとは切島の攻撃で気絶させるかひるませ俺が捕まえる。それが今回の作戦だ……」

「ちなみに最後のセメントス先生へ俺を飛ばせさせたのは俺のアイデア!」

 

ーーーーーーーーーーーー

「爆豪ちゃん。すごい作戦だったわね」

「自分の性格を理解した上での連携プレーか、セメントス先生に切島が見えないよう何度も爆破を繰り返し爆煙で見えなくさせる。見事な作戦だ」

 

 みんな分析してるとリカバリーガールが紅煉と緑谷に話しかけた。

 

「さぁ、最後はアンタらだよ。さっさと行ってきな」

 

 それを聞いて緑谷は表情が強ばらせ、紅煉は少し笑う。

 それを見ていた相澤先生ほか先生方。

 

[さて、見させてもらおうか……火群。お前のさらなる上の力を]

 

 しかし教師陣も驚くことになる。ディアブロ・フォースよりも強い形態の、その実力に……

 

〜to be continued〜




はい、今回はここまでにします。
次回はオールマイトVS緑谷&紅煉となります。
とうとう明かされる紅煉の真の実力。それはどんなものなのか……予想しながら楽しみにしててください。
多分待ってた方も沢山いらっしゃると思いますので

それではまた次回!


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第26話 火群と緑谷VSNO.1ヒーロー

前回のあらすじ
上鳴と砂藤が落ちたよ。
爆豪と切島の作戦が通用し勝利したよ。


 最後の演習試験。緑谷と紅煉は演習会場の場にバスに乗ってやって来た。

 

『火群、緑谷チーム。演習試験、Ready,Go』

 

「火群くん。作戦はどうする?」

「作戦は意味ないと思う」

「えっ?」

「相手はプロ。それもNo.1ヒーローのオールマイトだ。一筋縄でいくような相手じゃない。ならどうするか、正面突破は非合理的。それにそもそもこの試験は俺らがオールマイトに負けようが何しようがな、そもそもこの試験。俺らは目的を言われただけでそれを達成したら合格なんて言われてねぇ」

「あっ……」

「撃破しても行動が駄目ならアウト。クリアしても何もしてなければアウト……つまり自分の出せる今の最善の判断をし相手の足止め、もしくは躱して助けを呼びに行く、もしくは撃破する……」

「なるほど、そういう事か……」

 

 緑谷と考察しながら歩いていると急に突風がふきあれ、二人は立ち止まる。

 

「街への被害なぞクソ喰らえだ」

「試験だなんだ考えてると痛い目見るぞ」

「私は(ヴィラン)だ、ヒーローよ。真心込めてかかってこい」

 

 そう言うと突っ込んでくるオールマイト。

 

「正面戦闘はマズイ!逃げよう!!」

「逃げる前に捕まっちまうよ……それに逃げる前に足止め!《陽炎(かげろう)》!」

「アッツ!」

 

 目の前に炎を展開させ路地裏に逃げる。そのまま進んでる内に紅煉はあることに気づく

 

[この試験……なんで俺なんだ?爆豪の自尊心はあまり変わってないはずだが……緑谷に対しては突っかかりはないにしても……もしかして、それ以上に気になるのがある?……まさか!!]

「火群くん!!出口だよってええぇぇぇっ!!?」

「っ!?」

「よっ!待ってたぞヒーロー!びっくりしたなぁさっきは……炎を展開するなんて!」

[もうここまで来たのか!?いくらなんでも速すぎる!!]

[ッ!!そうか、これが!]

「あ、あぁ…」

[これが!!この威圧感が!]

「さ、もうおしまいかい?有精卵共」

 

[[最強の男(オールマイト)なのか!!]]

 

 路地裏の反対側の出口に出ようとするとその前には既にオールマイトが待ち構えていた。

 

「なら、寝ていたまえ!ヒーロー!」

「ぐあっ!」

「うわぁっ!!」

 

 オールマイトの振るった拳は的確に2人を殴りつけ、二人共吹っ飛びビルの中に倒れ込む。

 

「オエェッ」

「ちっ!」

 

 緑谷は胃液を吐き、紅煉は舌打ちをしながら血の塊を吐き捨てる。

 

「さぁ?どうした、本気を見せろよ、ヒーロー」

「……仕方ない」

「火群君、まさか…《ディアブロ・フォース》を使うの!?」

「……不正解だ。“紅炎裂蹴拳(こうえんれっしゅうけん)・スタイル[悪魔風脚(ディアブルジャンブ)]”! 」

 

 紅煉は脚に炎を纏って構える。

 その光景はほかのクラスメイトも見ていた。

 

「おぉ!あれがヒーロー殺しと渡り合ったとされる“紅炎裂蹴”と言うやつか!」

「アレは似てるようで違うよ」

「「「「えっ?」」」」

 

 凍火のその一言はクラスメイトを驚かせる。

 

「あれは確かに“紅炎裂蹴拳”だけど、本来の“裂蹴拳”は相手の攻撃をいなして脚で攻撃する。だけど今のあれは攻撃特化型……炎の火力を全て脚に集中させて攻撃する。“紅炎裂蹴拳・スタイル[悪魔風脚(ディアブルジャンブ)]”」

「つまり、アレは本来の用途ではないって事か」

「そういうこと」

 

 凍火の解説に爆豪が反応すると皆また試験の様子を注目する。

 炎を纏ったのを見てオールマイトはさらに身構える

 

「む、くるか!」

「“悪魔風脚(ディアブルジャンブ)蹴連撃(ラッシュ・スペクトル)》”!!」

「あ痛たたたたたっ!!」

「“悪魔風脚(ディアブルジャンブ)蹴鎚撃(インパクト・ショット)》”!」

「ぬぅ!!やるねぇ、ってえぇ!?」

「《デラウェア・スマッシュ》!」

「うおっ!!?」

「今だ!!火群くん!」

「おう!」

 

 紅煉は炎を纏った脚で連続でオールマイトに向かってキックする。それに怯んだ隙を見て強烈な一撃を与えると緑谷が指を弾いて空気を押し出しオールマイトの顔を伏せさせ、その間に走る。

 

「ふむ、なかなかやるね……さてと…先生頑張っちゃうぞ!」

 

 オールマイトは腰を低くし走る体制、クラウチングスタートに入る。

 その頃紅煉達はゲートに向かって走っていた。

 

「この後どうするの!?」

「あの程度でやられるならいいんだが、そう上手くいかないだろう……次は《ディアブロ・フォース》で対応しなきゃいけない」

「うんうん、それでそれで!?」

「「ッ!!」」

 

 なんと、走りながら作戦会議してると後ろからオールマイトが追い付いてきた。

 

「速すぎる…!」

「何を驚いてるんだ?これでも重りのせいで全然トップギアじゃないんだぜ……さぁ、くたばれヒーロー共!!」

「ぐあっ!!!」

「がはっ!!?」

 

 オールマイトは二人をぶん殴り飛ばす。そして二人は壁に激突して蹲る。

 

「うぅ、つ、強すぎる」

「ゴホッ!圧倒的すぎる、パワーも、スピードも耐久力も……シンプルな強さ……これが、最強のヒーローか……やっぱり使うしかないか 」

「おっ?何をするのかな?」

 

 その様子はほかのクラスメイトも見ていたと思ったら先生方もぞろぞろ入ってきた。

 それを見てクラスメイトはみんな驚く。

 

「相澤先生?!」

「火群の力を見に来た。皆と一緒に見て学ぼうって校長の判断だ」

「どういう事ですか?」

「もしかして、オールマイトと当たるようにしたのって」

「あぁ、そうだよ。火群の隠してる力を出すためさ」

「「「「えぇぇぇぇええええっ!?」」」」

 

 そうして皆がスクリーンを見ると紅煉が動きを見せる。

 

「オールマイト。俺は貴方を倒すつもりでこの試験に臨んだわけではない。だがらと言って簡単に逃げれるわけでもない。だからもしもの時は《ディアブロ・フォース》で足止めをするつもりでしたが、どうやらそれも上手くいかないと思う……ならどうするか?それ以上の力を使って貴方に立ち向かおう」

 

 紅煉はそう言いながら立ち上がり右腕に炎を纏い構える。その火力は先程の紅炎裂蹴拳の比にならない。

 

「す、すごい。なんて火力」

[さぁ、来たまえ!火群少年!]

「……奥義…」

「「えっ?」」

 

「《煌龍波(こうりゅうは)》!!」

 

 紅煉が奥義と言うとポカンとするオールマイトと緑谷。

 そして紅煉は炎を纏った腕を思いっきり前に突き出すとその腕から炎の龍が現れオールマイトに向かっていく。

 

「えぇぇぇぇええええっ!?」

「ジーザス!!技じゃないか!」

 

 そしてそれは映像を見てるクラスメイトや先生方も同じリアクションをしていた。

 

「技じゃねぇか!」

「どう考えても人に放つ技じゃねぇだろ!!」

「人に放つ?まさか……」

「気づいたか、轟……あいつは言った“それ以上の力”と」

「てことはアレはその力を引き出すための足止め?」

「それはわからん。だが、何かあるのは間違いないだろう」

 

 オールマイトは煌龍波を両手で掴みそのまま飛ばされる。

 

「あちちちちっ!思ったより熱いなコレ!いい技だが、私には効かんよ!《TEXAS SMASH(テキサス スマッシュ)》!!」

「弾かれた!?」

 

 オールマイトは煌龍波をものともせず殴り付けると弾かれる煌龍波。そのまま紅煉の元に戻ってきてバクンッと紅煉を食った……

 

「「……ん?」」

 

「「「「………えっ?」」」」

 

「「 「「「「「えぇぇぇぇえええぇぇえぇぇぇええええぇぇえええええっ!?」」」」」 」」

 

 緑谷も弾いたオールマイトも、相澤先生やほかの先生も、クラスメイトも目の前で起こった事に目を点にしていたがすぐに意識を取り戻す。

 

「火群少年が食われた!!」

「えぇ!?技が謀反を起こした!?」

 

「あいつ食われたぞ!」

「てかあの炎の龍って人食うの!?」

「知るかボケ!!」

「リカバリーガール!即刻止めるべきなのでは!?」

「そうだぜ!このままだと火群が焼け死んじまうぞ!」

「うるさいね!静かにおし!火群紅煉のアレは自らの意思だよ!」

「「「「えっ?」」」」

「見てればわかるよ」

 

 オールマイトも緑谷もクラスメイトと先生方も驚いてる中、リカバリーガールだけ驚いた様子もない。そして言われた通り見てると……

 

「見せたいのは、これからですよ……オールマイト」

「「!?」」

 

 紅煉の声が聞こえるとオールマイトと緑谷は驚き、煌龍波の方を見ると煌龍波は形を変え竜巻のようになる。

 

「勘違いしてると思いますが……《煌龍波》は単なる飛び道具ではありませんよ?《煌龍波》を“喰らう”事で術者の戦闘能力と火力を爆発的に向上させる言わば“栄養剤(エサ)”なんです。さらにその効果により肉体を疑似的に竜に近しい属性となるため、嗅覚及び聴覚が異常に発達し、圧倒的火力によるオート防御を可能としてます……この形態は《ディアブロ・フォース》の原点であり、そして今俺がなる中でも一番強力……その名も《ドラゴン・フォース》」

 

 炎の竜巻の中から現れた紅煉。その姿は特に変化はないが、黄色の瞳、紅き瞳孔、そして猫のような虹彩となっていたり、顔に龍の鱗のような痣が現れている。

 

「これが、君の隠してた力という訳か!?」

「えぇ、では、時間もないので、一気に決めます。緑谷!俺が足止めするから早く行け!!」

「わ、分かったよ!!」

「おぉっと!させないよ!!」

「させてくださいよ」

「ぐおっ!?」

 

 オールマイトが戦闘態勢に入ると紅煉は緑谷に先に行けと言う。そして緑谷が動こうとするとオールマイトがさせんとばかりに腕を振るおうとしてるがその直前に紅煉によって蹴られる。

 

「痛たた、強くないかい!?火群少年!!」

「竜の力はこの程度じゃありませんよ……《火竜の鉄拳》!!」

「あっついし痛っ!でもおかげで緑谷少年を止められる!《New Hampshire SMASH(ニューハンプシャースマッシュ)》」

「ぐへっ!!?」

 

 そのままオールマイトを上に向かって殴り飛ばすとオールマイトはそのまま緑谷の進行方向の逆にパンチを放ちジェット噴射の要領で緑谷に追いついてヒップドロップした。

 

「危ない危ない、させないぞ!ヒーロー!……ん?」

「《火竜の翼撃》!!」

「危なっ!」

 

 緑谷をそのまま戦闘不能に近い状態にさせると後ろから紅煉が炎を両手に纏って薙ぎ払うが避けられる。

 その光景を見てた爆豪らは驚愕していた。

 

「あれ《ディアブロ・フォース》よりも強い」

「見て分かるわ、なんだあのバカげた力」

「今までの技が全て炎重視の技としたらアレは炎と体を使った技だな。しかも威力は文字通り“(ドラゴン)”。多分だが相当なリスクがあるな」

 

 オールマイトと紅煉が交戦してる中、緑谷は腰の痛みで動けないでいた。しかしそれでも戦闘をしっかり見ている。

 

「《火竜の鉤爪》!」

「《TXAS SMASH》!!」

 

 紅煉の炎を纏った脚とオールマイトの拳がぶつかり合いものすごい風圧が生まれるとそのまま足を掴まれる。

 

「HAHAHAHAHAHA!これで高威力の炎の拳や蹴りは出せまい!」

「なっ!?拳も蹴りも無効化された!?」

 

 オールマイトが笑いながら言うと緑谷が絶望するように言う。

 その様子はしっかりとみんなが見ている。何度目だこの説明も……

 

「あ!オールマイトきったね!!」

「戦術だから仕方ないんじゃない?」

「てかよく掴めましたね…」

 

「本当に防いだつもりですか?オールマイト」

「えっ?」

「《火竜の…」

「えっ?ちょっ、まさか……」

 

 紅煉が言うとオールマイトは紅煉の顔を見る。すると紅煉は頬を膨らませる。オールマイトは何かを察したのか止めようとするが、もう遅い。

 

「…咆哮》!!」

 

 口から灼熱の炎のブレスを放つ。その範囲は広く、オールマイトを容易く飲み込んだ。

 

「あちちちちっ!あちぃ!!」

「《火竜の煌炎》!!」

「ぐほっ!?」

 

 圧倒的な炎の波に飲まれたせいか紅煉を離すオールマイト。そのまま紅煉は着地して両手に炎を纏い両手を合わせて叩きつける。

 そのまま爆発が起きてオールマイトは吹っ飛ぶ。

 

「今っ!《不死鳥の抱擁》!」

「これは“不死鳥”の!?」

「それ以上はさせんよ!火群少年!」

 

 緑谷に不死鳥の炎を纏わせ、回復を促してるとオールマイトが戻ってきた。

 

「緑谷」

「は、はい!?」

「最後決めるのはお前だからな」

「えっ?」

 

 それだけ言うと紅煉はオールマイトに向かって走り出す。

 

「《DETORIT SMASH(デトロイト スマッシュ)》!」

「《火竜の炎肘(えんちゅう)》」

 

 オールマイトは思いっきり拳を振り、紅煉は肘からブースターのように炎を噴射して打撃力を高め、その勢いのまま炎を纏ったパンチを放つ。

 二人はまるで鍔迫り合いのごとく拳を合わせていたその時、紅煉の後ろから人影が現れる。

 

「むっ!?」

〔怖い時、不安な時こそ…笑っちまって臨むんだ!!〕

「どいて下さい、オールマイト!」

 

「《SMASH》!!」

 

 紅煉の後ろから現れた緑谷はぎこちない笑みを浮かべながら思いっきりオールマイトを殴った。

 

「うっ、ゲホッ!ゴホッ!」

「行くぞ!緑谷!」

「うん!!」

 

 思いがけない一撃に怯んだ隙に一気にゴールに駆け出しくぐった。

 その瞬間ブザーが鳴り響き、放送が入る。

 

『火群、緑谷チーム条件達成』

 

「「いよっ、しゃあぁぁぁっ!!」」

 

「「「「やったァーーーーっ!!」」」」

 

 紅煉と緑谷は空を仰いで喜びの声を上げ、クラスメイトの大半は歓喜の雄叫びをあげる。

 

「火群のあの力……なるほど、確かに強力ですね」

「それもそうさね、彼本人から聞いたからね、デメリットはまだ教えてもらってないんだけどね、それじゃあ行こうか」

 

ーーーーーーーーーーーー

 全員が最初に集合した位置に戻ると相澤先生が前に出る。

 

「はい、みんなご苦労さま。結果に関しては後日発表する。そして火群……なんで眠そうなんだ?馬鹿にしてるのか?除籍にするぞ?」

 

 相澤先生が睨む先には今にも寝そうな紅煉の姿が、さっきからあくびもしていて確かに傍から見たら完全に安心しすぎて眠くなった生徒にしか見えない……が。

 

「いえ、違うんです……これが《ドラゴン・フォース》のデメリットなんです」

「「「「「えっ?」」」」」

「この力は、使用後に消耗した火力と体力を回復する為に、強制的に数時間ほど“冬眠”と呼ばれる深い眠りに入るんです……」

「「「「「冬眠!?」」」」」

「熊かよ」

 

 紅煉がデメリットについて説明すると皆が驚き瀬呂が更にツッコむ

 

「これは、いかにこの力を極めようと、フワッ……抗えないんです……」

「そ、そうなのか?すまん、知らなかったとはいえ」

「いえ、大丈夫です。だから、奥の手でもあり、禁術にして、その代わりとしてデメリットの少ない……フワァ…《ディアブロ・フォース》を作ったんです……あ、もうダメです……意識が……」

 

 そのまま倒れると寝てしまう。クラスメイトも相澤先生も他の先生方も倒れた紅煉の顔を見る。

 

「これだけ見るとただの少年なんですけどね」

「さっきまでドラゴンのような力で戦ってたとは思えねぇよな」

「てか冬眠って……」

「彼の力には意外な弱点が存在してたと聞きますし、これも似たようなものなんですかね」

「なんか、可愛いわね」

「梅雨ちゃんもそう思う?」

「うん、可愛い。写真撮ろう」

「「後でその写真送って(くださいまし)」」

 

 各々が紅煉の寝顔を見て《ドラゴン・フォース》の力の強さの原因を考えたり凍火が写メを撮ったりと色々としている。

 紅煉はそんなことが行われてるとは知らず今も眠る。

 

「よし、今のうちに落書きでもしとこ…ギャバっ!」

 

 そして峰田が紅煉の顔に落書きしようとしたら寝返りを打った紅煉が峰田の顔面をぶん殴り峰田は壁にめり込むのであった。




今回はここまでとします。
紅炎裂蹴拳の新スタイル《悪魔風脚(ディアブルジャンブ)》。知ってる方は多いでしょう。ワンピースのサンジの技です。裂蹴拳は防御をしてから攻撃に転じる技なので最初っから攻撃をするにはどうしたらいいかと考えていた所たまたまサンジの技を見ていてこれだと思ったので使いました。

そして、お待たせしました!火の能力者と言ったらワンピースのポートガス・D・エースの他に代表格に位置するのはやはりこの作品のこの人!フェアリーテイルのナツ・ドラグニル!
滅竜魔法の使い手でもあるナツの技を素の状態でも使ってよかったのですが、それではあまり味気ないと思い《ドラゴン・フォース》状態で行うと思い色々と設定しました。
そして皆さんご存知の方もいるかと思いますが《奥義・煌龍波》ですが、幽々白書の飛影の使う《邪王炎殺黒龍波》から持ってきております。
新スタイルや進みの展開が早いと思った方もいるかと思いますがここ以外出すところがあまりありませんでした。ごめんなさい。作者の力不足です( ̄▽ ̄;)
次回はショッピングモールでのお話となります。原作と違う点を用意してるので乞うご期待を!

それではまた次回!


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第27話 火群と試験結果……そして死柄木

前回のあらすじ
演習試験でオールマイトとの戦闘を行い見事出し抜いて条件を達成。
新スタイル《ドラゴン・フォース》の力を見せつける。


 次の日、期末試験の実技をクリアできなかった砂藤、上鳴の2人はまるでガチャで爆死したように目が死んでいた。上鳴などは涙を流している始末である。声の掛けようもない。蛙吹ですら何も言えずに心配そうに見るばかり。

 

「皆……土産話っひぐ、楽しみに……うう、してるっ……がら!」

 

 瀬呂が上鳴達を慰めるように言う。

 

「わかんねぇのは俺もさ。峰田のお陰でクリアはしたけど寝てただけだ。とにかく採点基準が明かされてない以上は……」

「同情するならなんかもう色々くれ!!」

 

 そこへ勢いよく相澤が入ってきた。

 

「予鈴がなったら席に着け」

 

 その言葉に直ぐ様行動に移す。

 

「おはよう。今回の期末テストだが……」

 

 第一声に、悲壮な表情になる敗北組。

 

「残念ながら赤点が出た…したがって……林間合宿は全員行きます!!」

「「どんでんがえしきたぁ!!!!」」

 

 二人が嬉しさの叫びをあげる。

 

「静かにしろ。えー筆記の方は赤点ゼロ。実技で上鳴・砂藤あと瀬呂が赤点だ」

「ですよね。クリアしたら合格とは言ってなかったもんな……」

 

 瀬呂は諦めた様に呟く。

 

「本気で叩き潰すと仰っていたのは……?」

「追い込む為さ。そもそも林間合宿は強化合宿だ。赤点とった奴ほどここで力をつけてもらわなきゃならん。合理的虚偽ってやつさ」

「「「ゴーリテキキョギー!!!!」」」

 

 立ち上がり喜ぶ瀬呂を加えた赤点三人衆、だが相澤がそんな優しさだけの行為を行うわけもない。

 

「またしてもやられた...流石雄英だ!しかし、二度も虚偽を重ねられると信頼に揺らぎが生じるかと!!」

「わぁ、水差す飯田くん」

「確かにな、省みるよ。ただ全部嘘って訳じゃない。赤点は赤点だ。お前らには別途補習時間を設けてる。ぶっちゃけ学校に残っての補習よりキツイからな」

 

 喜んでいた赤点三人衆の顔色が死んだ。

 

「じゃあ合宿のしおり配るから後ろに回しておけ」

 

 その日の放課後は皆は林間合宿に行くための準備の為に木椰区ショッピングモールにクラスの一部が行くらしい。それに紅煉も同行することにした。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 次の日の午後、紅煉らは約束してたとおり、木椰区ショッピングモールへ来ていた。

 皆で別行動をとる時、紅煉は緑谷の向く方向とは逆の方向に歩く。そこで一人の男とぶつかりそうになるとその男が話しかけてきた。

 

「おー、雄英の人だスゲー!サインくれよ!」

「確か体育祭で一位になってた奴だよな?!」

「ええ、そうですね」

「んで、確か保須事件の時にヒーロー殺しをエンデヴァーと一緒にぶっ倒したらしいよな!」

「よくご存知で……」

「いやぁ、ホント信じられないぜ!こんなとこでまた会うとは(・・・・・・)!」

「………」

「ここまで来ると何かあるんじゃって思うよ!」

「運命……因縁めいたもんが。まぁお前にとっては雄英襲撃以来になるか」

「……そうだな…確かにその通りだ。お前は何度も俺らを見てたが俺はお前を見たのはあの日だけだ」

 

 お互いを認識し合うと死柄木は紅煉の首を掴もうとする……。

 

「お茶でもしようか火群 紅煉」

「悪くない誘いだな死柄木 弔」

 

 だが、その一言で死柄木は紅煉の首を掴まなかった。

 

ーーーーーーーー

 ショッピングモール内の喫茶店。人目に付きにくいテーブル席、そこに対面するように死柄木と紅煉は座っていた。

 

「まさか脅して話をしようと思ってたらそっちから受け入れるとはな……肝が据わりすぎていないか?火群」

「あそこで何かしようにも俺は個性使用許可の何かを得てる訳では無いからな、抵抗しねぇしお前がその気ならすぐに俺を殺してるだろ?」

 

 そう言いながらアイスコーヒーを飲む紅煉。とても目の前に敵がいると思ってるようには見えない。

 

「……それで、話って何?」

「まぁ、個人的な話なんだけど、だいたい何でも気に入らないんだけどさ、今1番腹立つのはヒーロー殺しさ」

「…やっぱり仲間じゃなかったんだな」

「そ、俺も認めてたわけじゃない。世間がそう言ってただけさ。問題はそこだ」

「雄英襲撃も保須で放った脳無も……全部奴に食われた。誰も俺を見ないんだよ。なぜだ?いくら能書き垂れようが、結局奴も気に入らないものを壊してただけだろ?俺と何が違うと思う?火群」

 

 最後まで聞いてから一息つけて言う。

 

「何が違うか……簡単に言うなら理解されるかされないかだ。ヒーロー殺しの理屈や思想、そして非人道的ではあるが行いは理解できるものがある。だが死柄木、お前にはそれは無い。それこそゲームのように事を運ばせてる。それでは見るものも見ないだろ……言わばわかりやすい展開のストーリーを見ずに進めるって事だ。だからその思想にも理屈にも誰も見ない。だがヒーロー殺しのはストーリーを見なければなぜそうなるのか分からないからみんな見てる。つまりそういうことさ……簡単に言うなら、ヒーロー殺しや緑谷の始まりはオールマイト。やり方は違ってるが、理想に生きようとしてたんじゃないか?」

 

 その瞬間、一気に背筋が凍るような不気味さが滲み出してきた。その後の死柄木の呟きは原作通りだった。

 簡単に言うなら「全てはオールマイトが悪い。まるで救えなかった人なんか居なかったみたいな笑顔をしてるからだ」かのような発言をして殺気を滾らせていた。

 その後、喫茶店から出て軽く話をする2人。

 

「あー、スッキリした……ありがとうな?火群」

「それより聞かせろ……死柄木」

「ん?」

「オールフォーワンとプルトンは、何が目的なんだ?」

「……さぁね、俺も知らない。あ〜だけど、一つだけいい事を教えてやるよ」

「なに?何を教えてくれるんだ?」

「火群の人間はお前とプルトンの他にもう一人いるからな。覚えておいて損は無いと思うぞ」

「っ!?ま、待て!死柄木!!」

 

 しかし、死柄木は待たずに人混みの中へと消えていく。ついて行こうにも人混みが多くて無理だし何より一般人に危害が与えられると思うと追うにも追えなかった。

 その後、たまたま居合わせた緑谷と麗日さんの通報により、ショッピングモールは一時封鎖、警察やらヒーローが来るが死柄木は見つからず、紅煉は塚内さんに死柄木の人相や会話内容を伝えた。

 

「ふむ、聞く限り、連中も一枚岩じゃないというわけか」

「えぇ、オールフォーワンやプルトンに関しても何も知らないみたいでしたし」

「そんな事を聞いてたのか、君は父親に復讐でも……今、なんて言った?」

「ん?オールフォーワンやプルトンに関し…」

「なんで君がその名前を知っている!!?しかもその口ぶり、奴らからじゃなくて自分から聞いたのか!?」

「えぇ、そうですよ?」

「ちょ、ちょっと待っていなさい!」

 

 その後、急遽部屋を出た塚内さんはオールマイトを連れてやって来てオールフォーワンについて聞かれた。

 

「なぜ君がオールフォーワンについて知ってる?」

「……その理由はすぐわかります。オールマイトの後継者、緑谷出久。違いますか?オールマイト」

「「!?」」

「俺は何でも分かる……この世界で誰が動いているのか、オールマイト。貴方の個性、ワンフォーオールもね」

「……き、君は一体、何者なんだ?」

「俺は火群紅煉。最悪ヴィラン「プルトン」の息子です。ある程度知ってますよ……俺もなぜか教えましょうか?オールマイト」

 

 その後、オールフォーワンについてやワンフォーオールについて話し、プルトンがそういう話をしていたのを聞いた事あると言ったら信じてくれた。実際に話してはいたが忘れてた。前世の記憶に関しては何も言ってない。

 そして秘密は守ると約束し、解放された。とりあえずこれで堂々と緑谷とオールマイトの会話に参加できる。

 

「火群少年……聞いてもいいかな?」

「なんでしょうか?オールマイト」

「もし君が消えそうな火を燃やすとしたら、何をして燃やす?」

「……俺だったら風に当たらぬようにし、抗い続けます。自分の身が燃えようとね……たとえその炎が己を焼こうと俺はその炎を燃やすためになんでもしますよ」

「そうか、教えてくれてありがとう」

「いえいえ、こんなんで良ければまた仰ってください」

 

 そうして紅煉は警察の人に送られて家に帰ると、そのままベットに倒れるように寝転がり眠った。

 

 

 夢を見た。青い空、青い地面。いや、空を映す鏡のような地面が拡がっており、その中心に紅煉は立っている。そして前を見てると急に炎が巻き起こり、その中に一人の女性が悲しそうにしてるのを見た。

 そこまで見て目を覚ました。夜中だったのですぐに寝直すが……最後、一瞬見た顔を忘れられなかった。

 その女性は目が覚める直前に俺を見て邪悪な憎悪を持ってる笑みをして俺を見てきたのだ。まるでお前を利用させてもらうみたいな、見つけたというような…そう言った類の目で、俺を見ていた。その笑みが不気味そうだったが、彼女の笑みから感じていたのは……悲しみだった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「……というわけで、例年使用させていただいている合宿先は急遽キャンセル。合宿の行先は、当日まで明かさない運びとなった」

「「「え―――!?」」」

 

 という説明と同時に、先日配ったばっかりの『合宿のしおり』をびりっと破いて捨てる先生。『コレもう役に立たねーぞ』的な演出だろうか?

 告げられた内容に、教室中が『マジかよ』的な空気になるけど……まあ、仕方ないかな。

 紅煉と死柄木の接触自体は、そいつの言動が本当なら、単なる偶然だったっぽいけど……今後、『敵連合』が本格的に動き出すとしたら、USJに引き続き、雄英がターゲットになりかねない、という可能性は否定できない。

 なら、今までと同じ行き先を使うのは危険というのもうなずける。

 瀬呂とかは『もう親にどこ行くか言っちゃってるよ』って困った風な顔になってたけど、その後に八百万が指摘していた通り、まさにそれが変更の理由なんだろうな。

 ただでさえ、40人もの生徒が、敷地内であれば一応は警備体制万全の学校を1週間も外れて外泊する。さらにはその学校のセキュリティすら抜いて侵入してきた連中が相手だとすれば……このくらいしないと警戒十分にはならないだろう。

 

「つか、いきなりイベント始まったり、当日まで秘密だったり……雄英ってこういうの好きというか、得意だよなホント」

「今回ばかりは好きでやってるわけじゃないだろうけどね……」

 

 思わずつぶやいてしまったような紅煉の言葉に、後ろの席の緑谷が返してくる。

 確かに……今回のコレは、意外性を狙ってでも何でもなく、単純に安全確保のためだしな。

 それでも合宿自体を中止にしないっていうのはまあ……思い切った判断というか、またこれも体育祭の時と同じ『屈しないよ!』アピールなのか……。

 

こうしてあまりにも濃密であった前期が終了して夏休みに入る。




今回はここまでとします。
期末テストの結果。死柄木との会合。そして謎の女性……その正体はなんなのか……
次回は林間合宿にしようかと思ってたのですが、ちょうどこの時期あたりに最初の映画、2人の英雄の時系列がここくらいなので林間合宿に入る前に2人の英雄をするべきかどうか迷っています。
ので、アンケートをとります。期限は11月28日午前0時にします。参加の方をどうかよろしくお願いします。


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映画編《2人の英雄》
番外編 《3人の英雄》Part1【I・エキスポへようこそ】


今日から始まる2人の英雄編。
紅煉が介入してる時点でどうなるかは分かりません。もしかしたらオリキャラが出てくるかも


『えー、当機はまもなく《I・アイランド》への着陸態勢に入ります』

 

 そういうアナウンスが聞こえてくる。ここは飛行機の中、そこに今紅煉はいる。

 

「……そろそろ着くか…にしても《Iエキスポのチケット》を雄英体育祭の景品として手に入れるとは、少しラッキーだったな。まぁペアチケットだったから爆豪が来れるように切島に渡したが、飯田がチケット余ったからってくれたのはでかい。うん。」

 

 自分から来れる原因を独り言で話す。少し寂しいように見える紅煉であった。

___________________________________________________

 

 《I・アイランド》に来て今ヴィランアタックの場所に来ていた。緑谷達が先に始めてたようで切島が33秒、爆豪が15秒、緑谷が16秒、凍火が14秒となっている。

 

「へぇ、やるじゃん緑谷……よし、俺もやるか」

 

 そう言うと飛び入り参加する紅煉。

 

「もう一人の飛び入り参戦者!どんな結果を見せてくれるのでしょうか!?」

 

 紅煉がスタート地点に着くと緑谷と金髪の眼鏡をかけた女性と話してる。

 

「もしかして、あの子も?」

 

「クラスメイトです」

 

「最強のね」

 

 その言葉に首を傾げる金髪の女性。そして、紅煉のターンが始まる。

 

「ヴィランアタック!Ready Go!!」

 

「《炎戒・火柱》!!」

 

 紅煉は自分の周囲に火の海を作り火柱を起こす。そして次に紅煉は自身の指を噛み切って血を流す。

 

「怪焔秘術《百火繚乱(ひゃっかりようらん)》!!」

 

 自身の血液を火柱に付与して爆裂させてロボットヴィランに向けて火の玉を放ち全爆破する。

 

「す、凄い!11秒!トップです!トップに躍り出ました!」

 

「す、すごい」

 

「でしょ?あれがウチらのクラス最強」

 

「名を火群紅煉」

 

「ヒーロー名は、スルト」

 

 耳郎、八百万、凍火はそれぞれそう言う。そして金髪の女性はスルトを見て驚いてる。

___________________________________________________

 

「で、緑谷。そろそろ紹介してくれない?」

 

「あ、ごめんね!」

 

 紅煉は緑谷にそう言うと緑谷は謝りながら金髪の女性を紹介する。

 

「彼女はメリッサ・シールドさん。この“I・アイランド”に住んでて大学にも通ってるすごい人なんだ!」

 

「へぇ、はじめまして、俺は緑谷の友人でクラスメイトの火群紅煉と言います」

 

「はじめまして!私はメリッサ・シールド!よろしくね、紅煉君!」

 

「はい。よろしくお願いします。メリッサさん」

 

 そう言って握手を交わす二人。この時、緑谷たちはまだ気づいていなかった。この人工島を脅かす脅威に……

 

「問題なく到着した。ブツはどこで貰えばいい?……了解した」

___________________________________________________

 

「あ、あぁ……!どういう事だ……トシ。個性数値がなぜこれほど急激に下がってるんだ!?オール・フォー・ワンとの戦いで損傷を受けたとはいえ、突然この数値は異常すぎる……。いったい、君の身に何があったというんだ……!?」

 

「ゴホッ……。長年ヒーローを続けていれば、あちこちガタが出るさ」

 

 カプセルから出たオールマイトは、心配をかけまいと気軽な口調で言った。それでもデヴィットの心配は晴れる事はなかった。

 

「…(ワン・フォー・オールの秘密は話せない。話せば、オール・フォー・ワンとの戦いに、デイヴやメリッサを巻き込む事になってしまう…)」

 

 親友を慮ったことで親友を苦悩させている事に、どうすればいいのかとオールマイトは悩む。

 

「このままでは平和の象徴が失われてしまう。日本がヴィラン犯罪発生率を6%で維持しているのは、ひとえに君がいるからだ。他の国が軒並み20%を越しているというのに……。君がアメリカに残ってくれればと何度思ったことか……」

 

「……それほど悲観する必要はないさ。優秀なプロヒーローたちがいるし、君のようにサポートしてくれる方たちもいる!私だって、1日数時間はオールマイトとした活動でき━━━」

 

「しかし……オール・フォー・ワンのようなヴィランが、どこかにまた現れる可能性も……」

 

「デイヴ。……その時の為にも、私は平和の象徴を降りるつもりはないよ」

 

 デヴィットにそう言い聞かせたあと、オールマイトは心の中で呟いた。

 

「……(それに……希望だってある……。ワン・フォー・オールの意志を……平和の象徴を……次の世代に繋ぐ希望が……)」

 

 心の中に浮かべたのは、まだまだ幼い愛弟子……緑谷出久の姿、そしてヴィランの父を持つも確かなヒーローの志を持つ火群紅煉の姿だった。

___________________________________________________

 

〈本日のエキスポは18時で閉園になります。ご来場ありがとうございました。〉

 

 日隠夕日色に染まった時間、紅煉達は上鳴と峰田のアルバイト先に来ている。

 

「はぁ…」

 

「プレオープンでこの忙しさってことは....明日からはどうなっちまうんだ一体....」

 

「やめろ!!考えたくない!!」

 

「二人とも、お疲れ様」

 

「そんなお前らに褒美だ。ほれ」

 

 紅煉は二人にある物を見せる。それは今夜行われるレセプションパーティーの招待状だ。

 

「なにこれ?」

 

「レセプションパーティーの招待状よ」

 

「メリッサさんが用意してくれたの」

 

「ぱ、パーティー....」

 

「俺らが....?」

 

「余ってたから。よかったら使って」

 

「上鳴....」

 

「峰田....」

 

「「俺たちの労働は報われたぁ!」」

 

 上鳴たちの参加も決まったことで飯田が仕切り始める。

 

「パーティーには多数参加すると聞いている。雄英の名に恥じぬよう、正装に着替えて団体行動で行動しよう。18:30にセントラルビルの7番ロビーで待ち合わせだ!」

 

 その言葉を聞いてメリッサは腕時計を見る。どうしたんだろか?

 

「轟君と爆豪君には俺からメールしておく。では各自、解散!」

 

 そう言うと飯田は一目散に去っていく。紅煉達も一度ホテルに戻ろうとする。

 

「ねぇデク君」

 

 そんな時、緑谷はメリッサに呼び止められた。

 

「どうしたの?」

 

「ちょっと付き合ってくれる?」

 

「え?いいけど」

 

「ありがとう!じゃあついてきて」

 

 そう言って連れていかれた緑谷。紅煉はそれを見て微笑む。この後起こることに警戒をしながら……




今回はここまでとさせていただきます。
少し展開が早いですがあと2話くらいで終わるかと思われます。最低でも5話にしておきたい気もしますが……ご了承ください。
また次回おあいしましょう。


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火群と林間合宿
第28話 火群と林間合宿


前回のあらすじ
死柄木と出会い話をした際、火群という名字の者が他にもいるとわかった。
そして謎の女性の夢を見る。

アンケートの結果、やらなくていいと言う結果が99票差で多かったので映画編はやらないことにしました。映画を見た時に書いて期末テストと林間合宿の章の間に取り入れようと思いますので気長にお待ちください。


 林間合宿当日

 

 集合場所には既にA組の面々が揃っていて大型バスが2台停まっていた。

 

「あはは!!聞いたよ!!A組、補習いるんだって!?つまり赤点取った人がいるって事?!えぇ!おかしくない!?おかしくない!?A組はB組より優秀なはずなのにアレレレェ!?ホゲっ!?」

 

「…《症例・脳震盪(のうしんとう)》」

 

 物間がいつも通りA組を煽り散らかすので俺から物間の顎に一撃蹴りぶっぱしてぶっ倒れる。

 

「悪いね……」

「物間怖っ」

「体育祭じゃいろいろあったけど…ま、よろしくねA組」

「ん」

 

 B組の女子達が話しかけて来てそんな事を言ってくる。

 

「えぇ、こちらこそよろしくお願いします」

「ハァ、ハァ……よりどりみどりかよ」

「お前ダメだぞ、そろそろ」

「……《症例・脳震盪》」

 

 とりあえず物間を返しておくと峰田がB組の女子を欲望まみれの目で見ていた。

 切島の注意も耳に入っていないのでとりあえず峰田にも蹴りを顎に与えた。

 その後、峰田が目を覚ますと相澤先生が隣にいたらしいが、意識を失う前何されたかは覚えてないようだった。

 

 そしてA組を乗せたバスは見晴らしのいい空き地に止まった。ちょっとした展望台のようなそこには何もない。てっきりトイレ休憩か何かかと思っていただけに、その止まった意図に疑問を持った。

 

「…つか何ここ。パーキングじゃなくね?」

 

 切島の疑問の言葉。

 

「よーうイレイザー!!」

 

「ご無沙汰しています」

 

 相澤が頭を下げた。相手はコスチュームを身に纏った2人の女性。

 

「煌めく眼でロックオン!」

 

「キュートにキャットにスティンガー!」

 

「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」

 

 決めポーズを決めた2人のヒーローがそこにいた。

 

「今回お世話になるプロヒーロー『プッシーキャッツ』の皆さんだ」

 

 相澤の紹介が終わると緑谷が暴走したようにヒーロー説明すると水色のコスチューム……ピクシーボブが緑谷の口を封じ鬼気迫る表情で「心は18!」と言いながら緑谷を掴む。

 するとその間に赤色コスチュームの女性…マンダレイから説明が始まる。

 

「ここら辺はうちらの所有地でね……それで、あんたらの宿泊施設はあの山のふもとね」

 

 指差された方向を見れば、はるか彼方に山が見えた。

 

「「「「「遠っ!!?」」」」」

 

 ザワつき始める皆。俺はとりあえず柵の傍に立つ。

 

「今は午前9:30。早ければ12時前後かしら」

「ダメだ……おい…」

「も、戻ろう」

「バスに戻れ!早く!!」

 

 その言葉に皆がぞっとした顔をしバスに戻ろうと声をあげる。

 

「12時半までに辿り着けなかったキティは、お昼抜きね」

 

 瞬間、地面が波打つのが見える。その光景を前にした俺達の耳に、相澤先生の声が聞こえてきた。

 

「悪いね、諸君。合宿はもう始まってる」

 

 急激に盛り上がった土砂が逃げ惑う皆を飲み込んでいく。土砂はうねりをあげながら、悲鳴と共に皆を崖の下へと運んでいった。

 たった1人、自ら下に落ちた俺を除いて。

 

「……今1人自分から行かなかった?」

「………行きましたね」

 

 マンダレイと相澤先生がそう言うとマンダレイは少し咳払いして言う。

 

「私有地につき、『個性』の使用は自由だよ!今から3時間!自分の足で施設までおいでませ!!この“魔獣の森”を抜けて!!」

 

「“魔獣の森”!?」

「なんだそのドラクエめいた名称は…」

「ぎえええあぁぁぁっ!!?」

 

 すると峰田の悲鳴が聞こえた。視線をそこへと向ければ峰田が土色の四足の獣みたいな奴に襲われそうになっていた。

 

「「マジュウだー!」」

 

 上鳴と瀬呂が叫ぶ。

 

「静まりなさい獣よ。下がるのです!」

 

 口田がすぐさま“個性”を発動するが……効果がない。

 

「《不死鳥の鉤爪(ふしちょうのかぎづめ)》!!」

「《氷塊造形(アイスメイク)暴雉嘴(フェザントベック)”》!!」

「《爆炎腕(ばくえんかいな)》!!」

「《デトロイト・スマッシュ》!」

 

 クラスでも実力が高い4人。俺と凍火、緑谷、爆豪が攻撃する。

 俺が両腕を不死鳥の翼に変えて足を不死鳥の脚に変え魔獣の足を切り裂いて体制を崩し、凍火が氷の雉で魔獣の重心を後ろにし、爆豪が魔獣を掴んで爆破させることで粉々にし、緑谷が拳で吹き飛ばす。

 

「まだまだ来るぞ!!」

「数……多数!?」

 

 周囲を警戒していた障子と耳郎さんの警告と共に何体もの魔獣が押し寄せてきた。

 

「上等だ。12時半前に辿り着いてやる……行くぞA組!俺達の力!見せてやろうぜ!!」

「「「「「「応ッ!!」」」」」」

 

 俺が鼓舞するように皆に言うと皆も応えた。なんか嬉しい。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……いや〜嘘でしょ?」

 

 山の麓の合宿施設…ピクシーボブは唖然としながらボロボロになりながらも12時10分に辿り着いたA組を見ていた。

 

「アレは私達ならって話だったのに…」

「いいよ、凄くいいよ…特に其処の男子三人と女子一人、私の土魔獣を一掃するなんてね…」

「いや、それよりも火群くんだっけ?なんで君は炎を使わなかったの?その青色の炎は“癒しの炎”で温度を持たない炎って聞いてるけど」

 

 ピクシーボブが紅煉、爆豪、緑谷……そして凍火をマジマジと見てると、マンダレイが俺を見ながら言ってくる。そう、紅煉は森の中で魔獣を倒す際も移動する際も《怪焔王》は一切使ってないのだ。

 

「私有地と言えどここは森、個性使用許可が降りても炎を使えば火事になるのは必須。なら被害を出さないように攻撃するのが1番だと考えました」

 

 紅煉はそう言うとマンダレイもピクシーボブも相澤先生すら驚愕の表情を作る。紅煉は被害を出さないやり方で戦っていたのだから驚くのも無理もないだろう。

 

「くぅ〜、君いいね!他の2人も!3年後が楽しみ!!唾つけとこ!!」

 

 と、紅煉と緑谷と爆豪に向かうと凍火が前に出る……紅煉の前に……

 

「凍火?」

「轟さん?」

「あ?」

「えっ?」

「ん?」

 

 紅煉ら三人はなぜ紅煉の前に出たのかという顔をしピクシーボブはまさかという表情で見つめ、相澤先生は轟は何してるんだって顔で見る。

 

「“私達”の紅煉に唾をつけないでください」

「えっ?!」

「はぁ!?」

「えっ?」

「ごはっ!!」

「「「「「「ええぇぇぇぇえええぇぇぇぇえええええええええっ!!?」」」」」」

 

 凍火のその発言に緑谷と爆豪は驚愕の表情を、紅煉は放心し、ピクシーボブは膝をつき、相澤先生はは?という顔で見てA組は目が飛び出そうなほど見開き驚きの声を上げる。

 

「……待て、私達?」

「そうですわね……“私達”の火群さん……いえ、紅煉さんに唾をつけるのは許しませんわ」

「同感。“ウチら”の紅煉に唾つけるのなら頭の中に直接心音を叩き込むから」

「ハーレムかよ!!」

「耳郎に八百万!?マジか!!」

「嘘だろ!?そんなんあり!?」

「火群〜、許すマジ!!」

 

 紅煉が凍火のセリフのあることに気づくと耳郎さんと八百万さんが凍火の隣に立ち言い放つ。

 それを見てピクシーボブはさらに落ち込み、上鳴と瀬呂は知らなかった的声を上げ、峰田は憎悪を滲ませた顔で紅煉を見てる。

 

「「「という訳で紅煉(さん)」」」

「あ、はい」

 

 紅煉の方を向く耳郎さんと八百万さんと凍火。紅煉は何故か気を付けをする。

 

「順序がおかしくなったけど……」

「私達の気持ちは本気ですわ…」

「だから……」

「「「私達と付き合ってください」」」

「……えっと…三人って、ありなのかな?」

「一夫多妻制が可決されてるから問題無いぞ。さっさと受け入れちまえ火群」

「「「「「相澤先生!!?」」」」」

 

 女子三人の告白にしどろもどろする紅煉。てか三人ってアリなのか?と聞くとまさかの相澤先生からはよ受け入れろ発言。A組の一部を除いて皆が驚く。

 

「……えっと、それじゃあ……よろしくお願いします」

「「「はいっ!!」」」

 

 紅煉が受け入れる返事をすると耳郎さん、八百万さん、凍火は嬉しそうな顔をする。

 

「なぁイレイザー……これ私らへのあてつけかな?」

「悪気は無いと思いますよ」

 

 マンダレイとピクシーボブは未だ自分らが独身なのが辛いのにこの若者共はという目で四人を見てる。

 その後、緑谷が洸太君に陰嚢を殴られたり昼飯を食べた後ひたすら戦闘訓練……そうして今は露天風呂で入浴時間だ。

 

「夜空を眺めながら体の疲れを癒す…最高だな」

「うむ、それに、都会と違って星がよく見えるのも良い」

「確かに…こういう場所じゃないと全然見れないもんね〜」

「正直言って同感だ……」

 

 紅煉は飯田と緑谷と爆豪と一緒に夜空を見上げながらくつろいでいた。

 

「まぁまぁ…飯とかはねぶっちゃけどうでもいいんスよ。求められてんのってそこじゃないんスよ。その辺わかってるんスよオイラ…求められてるのはこの壁の向こうなんスよ…ほら、居るんスよ。今日日、男女の入浴時間をズラさないなんて、事故…そう、もうこれは事故なんスよ」

 

 そう言い壁に張り付く峰田…壁の向こうは女湯だ。周りの男子は顔を赤くする。

 

「やめたまえ峰田君!君の行為は己も女性陣も貶める決して許される事では無い恥ずべき行為だ!!」

 

 飯田が叫ぶが…

 

「やかましいんスよ」

 

 清々しい笑顔で峰田は言った。

 

「壁とは越えるためにある!!“Plus Ultra”!」

「速っ!!」

「校訓を穢すんじゃないよ!」

 

 そう言いながらモギモギで壁をよじ登る峰田。だが、次の瞬間地面に叩き落とされる。

 

「ぐへっ!?だ、誰だよオイラの邪魔…する…のは…」

 

 なぜ最後に勢いが無くなったか?簡単だ。目の前に鬼も修羅も泣いて逃げ出すだろう殺気を零し、峰田を睨み見下ろすヤサ紅煉を超えた何かがそこに居た。

 その殺気のような威圧に何故かヒーロー殺しを思い出す緑谷と飯田。あまりの迫力に気絶する口田。強烈な怒りを感じガタガタ震える爆豪ら……峰田はもはや泡を吹きながら紅煉を見上げている。

 

「おい、峰田……お前、あの場所に誰がいると思ってるんだ?今日からと言えど俺の女達がいるんだよ……分かってるよな?分からないはずないよな?見てたもんな?聞いてるんだから答えろよ峰田……なぁ?違うのか?お前のしてる行為は俺を怒らせる行為でもあったんだが気付かなかったか?お前なんの為にヒーローを目指してるんだっけ?女性にモテるためだよな?こんなことしてたらモテるわけねぇだろ?しかもやろうとしてた行為はヒーロー以前に人としてどうなんですか?教えてくれませんかね?君は何をどうしたら俺たちと対等な人になれるんでしょうか?こんな事してどうやって人として成り立つのでしょうか?さっさと答えろよおい。いつまで泡吹いてんだ?そんな時間ねぇよ、さっさと質問に答えてさっさと今自分がやらなきゃいけないことをしろよ。俺の言ってる事の何か間違ってる事があったら謝るからさっさと言ってみろよ」

 

 紅煉がハイライトの無い目で峰田を見下ろし氷よりもはるかに冷たい声で呪言のようにながったらしい言葉を言い放つ。その声にさらに震えるA組一同。その迫力で常闇や上鳴、砂藤までぶっ倒れる。

 

「シュ、シュイマヒェンレシタ」

「……次やったら全身焼くからな」

「ヒャ、ヒャイ」

 

 峰田が舌が回らない頭が回らない状態で質問には答えられずに謝ると次はねぇぞという感じで言い放つ紅煉。それを聞いてもう二度とこんな行為はしないと心に誓う峰田。

 

「あれ?皆どうしたの?」

 

 紅煉は倒れてたりガタガタ震える皆を見てキョトンとした顔をして見てる。その時、A組男子一同は心を揃えて確信した。

 

[[[[[絶対に火群を怒らせたら駄目だ!!殺気だけで人を殺せる!!]]]]]

 

 その後、女子が風呂から出ると土下座して謝って女子の分のコーヒー牛乳を置いていったそうな……

 ちなみに殺気の余波で見張りをしていた洸太君にまで気絶するという被害が及んだが気絶する前の事は覚えてないそうだ。気絶してる洸太君は相澤先生が救出し、そして元凶の峰田を叱ろうとしたがガタガタ震えながら布団を被ってるのを見て何も言えなかったそうな。




今回はここまでとします。

林間合宿編に突入しました。
魔獣の森では不死鳥の個性だけ使って突破させました。本当に森に火がついたら大惨事ですからね……。

そして凍火、八百万さん、耳郎さんの告白。これはここしかないと思ってこのタイミングにしました。ちなみにいつ八百万さんと耳郎さんと凍火が話してたのかは体育祭の後、紅煉が相澤先生の所に言ってた時です。その時は凍火もまだこの時は恋心をわかってませんでしたが家に招待し話してた際に恋心に気付き、紅煉が眠りに入った頃2人に連絡してた模様。抜かりない……。そして今回のピクシーボブの暴走でタガが外れたのか告白したという形です。

そして風呂での峰田の所業に久々に登場させました。エンデヴァーとの初めての会合で見せたキレ紅煉。因みに本人は殺気がダダ漏れな事に気づいてない様子。

【雄英コソコソ裏話】
今回爆豪の使った“爆炎腕(ばくえんかいな)”。実は紅煉の使う“紅蓮腕(ぐれんかいな)”を意識して作ったらしいよ。
理由はいずれ超える壁だから戒めと敬意をもっての意味らしい。
これを聞いた紅煉は嬉しいようなこそばゆいような感覚になったんだって


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第29話 火群と個性伸ばし

前回のあらすじ
プッシーキャッツの皆さんに無理矢理“魔獣の森”の攻略をされるも制限時間内にクリア。
ピクシーボブが紅煉らに唾をつけようとすると凍火、耳郎さん、八百万さんの3人に阻まれ、その3人に告白される紅煉。
そしてそれを受け入れたその日の夜、峰田の暴走が炸裂するが修羅も逃げる殺気を放ってる紅煉の前にあえなく沈黙。


 翌日、午前5時30分。朝早くだからか昨日の疲れからか皆どこか眠たそうだ。それでも相澤はお構いなしで言い始めた。

 

「本日から本格的に強化合宿を始める。今回の合宿の目的は全員の強化及びそれによる“仮免”の取得。具体的になりつつある敵意に立ち向かうための準備だ。心して臨むように、というわけで爆豪。こいつを投げてみろ」

 

 そう言って爆豪に渡したものは個性把握テストで使ったボール。

 

「これ…体力テストの…」

「前回の…入学直後の記録は705.2m…どんだけ伸びてるかな」

「おぉ!成長具合か!」

「この三ヶ月色々濃かったからな!1kmとかいくんじゃねぇの!?」

「いったれバクゴー!」

「んじゃ、よっこら…くたばれ!!!」

 

 そう言いながらボールを投げる爆豪。緑谷と紅『……くたばれ…?』と思った。

 結果が届いたのか相澤先生の持つ端末の音が鳴り、皆にも見せるように結果を言い放つ

 

「709.6m」

「「「「「「!?」」」」」」

「あれ…?思ったより…」

 

 思ったよりも地味すぎる記録にザワつくA組。そこに相澤先生が追い打ちをかける。

 

「約三ヶ月間…様々な経験を経て、確かに君らは成長している。だがそれはあくまで精神面や技術面。あとは多少の体力的な成長がメインで……」

「“個性”そのものは今見た通りそこまで成長してない。だから……今日から君らの“個性”を伸ばす。紅煉みたいに自身の“個性”がどんなものかしっかり理解して伸ばしていけ。あ、そうそう、あと一つ……」

 

 相澤先生がそう言うとみんな取り組もうとするが最後に一言言うつもりのようでみんな止まる。

 

「死ぬ程きついが、くれぐれも……死なないように」

 

 紅煉と女子は相澤先生の滅多に見れない邪悪な笑みに悪魔を連想させたが、男子は全員『紅煉よりはマシ』と思っている。

 

ーーーーーーーーーーーー

 午前6時、B組の面々も外に出てブラド先生が説明をする。

 

「“個性”を伸ばす…!?」

「A組はもうやってるぞ、早く行くぞ!」

「いいか?前期はA組が色々と目立ってたが、後期は我々B組だ。いいか!A組ではなく、我々だ!」

[先生……!!不甲斐ない教え子でごめん!]

 

 そう言うブラド先生の言葉に鉄哲や吹出が涙を流す。

 

「突然“個性”を伸ばすと言っても…20名20通りの個性があるし…何をどう伸ばすのかわかんないんスけど」

「具体性が欲しいな」

 

 そう不満げに漏らす取蔭や鎌切。それにブラド先生が答え始める。

 

「筋肉繊維は酷使することにより壊れ…強く太くなる。“個性”も同じだ!使い続ければ強くなり、でなければ衰える!」

「すなわち、やるべき事はひとつ……限界突破!!」

 

 開けた場所に出ると、地獄絵図が拡がっていた。

 

 爆豪勝己!熱湯に両手を突っ込んで汗腺の拡大!及び爆破を繰り返して規模を大きくする特訓!

 轟凍火!氷結と炎を交互に出して体温の微妙な変化を感じ取る特訓!氷塊と炎を同時に操れるかも!

 瀬呂範太!テープを出し続けることで容量、強度の拡大、及び射出速度を上げる特訓!

 常闇踏陰!暗闇で暴れる黒影(ダークシャドウ)を押さえ込み、コントロールする特訓!

 尾白猿尾!切島鋭児郎!硬化した切島を、尾白の尻尾で殴り、互いの個性強度を高める特訓!!

 峰田実!もぎってももぎっても血が出ないよう頭皮を強くする特訓!!

 蛙吹梅雨!全身の筋肉と舌を使って筋トレをすることで個性強化を図る特訓!

 耳郎響香!プラグ部分を岩に突き鍛え音質の強化を図る特訓!

 芦戸三奈!溶解液の長時間使用に耐える皮膚の耐久度強化を図るため酸を出し続ける特訓!

 麗日お茶子!酔っても個性を使い三半規管の鍛錬、及び限界重量を増やす特訓!

 飯田天哉!脚力と持久力を高めるために走り込みの特訓!!

 砂藤力道!個性発動に必要な甘いものを食べながら筋トレをしてパワーアップを図る特訓!

 八百万百!こちらも食べ物を食べながらものを作り続ける!さらにクオリティを高くする特訓!

 上鳴電気!大容量バッテリーと通電することで大きな電力にも耐えられるからだにする特訓!!

 口田甲司!生き物ボイスが遠くに届くように発声練習をする特訓!内気な性格も直せるかも!!

 障子目蔵!複製速度強化や、複数同時複製時のコントロール調整をし葉隠を見つける特訓!

 葉隠透!隠密能力を向上させる為障子を相手に気配を消し続ける特訓!

 緑谷出久!地力を鍛えて増強率向上のために我ーズブートキャンプを行う特訓!

 

「何…この地獄絵図」

「もはや可愛がりですな」

「許容上限のある発動型は上限の底上げ。異形型、その他複合型は“個性”に由来する器官・部位のさらなる鍛錬」

「通常であれば肉体の成長に合わせて行うが…」

「まぁ時間が無いんでな、B組も早くしろ」

 

 ブラド先生が説明してると相澤先生もやってくる。しかしそこで疑問が生まれたのか拳藤さんが話しかけてくる。

 

「しかし、私たちも入ると40人。そんな人数の“個性”をたった6人で管理出来ますか?」

「だから彼女らだ」

「そうなの!あちきら四位一体!」

 

 そうして4人の人影が現れる。

 

「煌めく眼でロックオン!!」

「猫の手手助けやってくる!」

「どこからともなくやって来る…」

「キュートにキャットにスティンガー!」

「「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」」」

 

 ポーズを決める女性三人と、同じように女性物のコスチュームを着ている男の人。

 

「あちきの“個性”「サーチ」!この目で見た100人の情報丸分かり!!居場所も弱点も!」

「私の「土流」で各々の鍛錬に見合う場を形成!」

「そして私の「テレパス」で一度に複数の人間へアドバイス」

「そこを我が殴る蹴るの暴行よ」

[色々ダメだろ…]

 

 ラグドールからピクシーボブ、マンダレイ、虎と各々の役割を言う。最後の虎のセリフには皆ビビっていたが……さらにはブートキャンプをしてると聞いて皆が[古っ!]と思ったのはご察しの通り…

 

「プルスウルトラだろォ?!しろよ!ウルトラ!」

[この人だけ性別もジャンルも違うんだよなぁ…]

「あれ?相澤先生」

「なんだ?質問か?」

 

 すると物間があることに気付き相澤先生に聞いてくる。

 

「A組の火群は何処にいるんですか?」

「あれ?確かにいないな」

「火群ならあそこだ」

 

 相澤先生が指さす先には巨大な火柱が上がっている。

 

「「「「「えぇぇぇぇぇぇええぇぇぇっ!?」」」」」

 

 それを見たB組の面々は驚きを隠せないでいた。

 

「か、彼はどんな訓練を!?」

「あいつにも弱点があってな、体内の酸素が無くなると炎が出せないデメリットがあるそうだ。つまりそれを克服しようって訳だ」

「無理がありすぎません!?」

「無理を押し通すのがヒーローってもんだ。逆に火群はそれを聞いてやる気を出したぞ」

「修行バカかい?彼は……」

 

 今回は物間の意見に賛成なB組であった。

 一方その頃、炎を出し続けてる紅煉はという、地面に倒れていた。当たりが炎によって焦げてるのを見るとずっと炎を出してたようだ。

 

「ハァ…ハァ…ハァ……なかなかにしんどいな。にしてもどうやって炎の限界を超えれば……考えても仕方ねぇな、まずは出来る強化を行おう。そうすれば自然と限界は越えられるはず」

 

 そう言って立ち上がると“紅炎裂蹴拳(こうえんれっしゅうけん)・スタイル[悪魔風脚(ディアブルジャンブ)]”を発動させる。

 

「確か、親指を小指の付け根に、人差し指を親指の付け根に……これで古武術の“虎拉ぎ”の型だったよな……よし……あとは的、的…」

「ん?……あっ、おーい!土魔獣いるかい?!」

 

 両手を“虎拉ぎ”の型にして構える…それを見たピクシーボブはいいことを思いついたように提案をする。

 

「はい!お願いします!」

「OK!任しときなさい!」

 

 ピクシーボブはそう言うと張り切りすぎたのかどデカい土魔獣を作る。

 

「へぇ、これはなかなか」

「デカすぎませんか!?」

「アレは火群でもキツいって!!」

「紅煉なら大丈夫……だよね?」

「いやそこは断言しろ轟…」

「やっばでかくし過ぎた……」

「……手の型を変えるだけでどれほどの強さになるのかな、見せてもらうよ……火群」

 

 紅煉は笑いながら土魔獣を見つめ、A組は驚きを隠せずB組は絶句していた。ピクシーボブはやり過ぎたという感じの表情をする。他のプッシーキャッツの人や相澤先生は何故か傍観してる。

 

「さて、いいのを作ってもらったし……始めるか!」

 

 そう言うと土魔獣に向かって走り始める紅煉。皆も相澤先生に止められて見ている。

 

「“悪魔風脚(ディアブルジャンブ)画竜点睛(フランバージュ)》”!」

 

 右脚に炎を思いっきり纏わせて体重を乗せた強烈な蹴りを叩き込むと土魔獣は粉々に崩れ落ちた。

 

「「「「「「「「「ええぇぇええええええっ!?一撃ィィィッ!?」」」」」」」」」

「なんという火力だ……」

「あれ、私が作った中でも最硬度の硬さなんだけど」

「手の型って凄いんだな…案外バカに出来ないかもな」

 

 A組とB組の生徒は皆驚きを隠せず、教師陣もそれなりに驚愕していた。

 

「思ったよりすっげぇパワーが出た……すげぇな“虎拉ぎ”……今まで以上に走りやすかった」

 

 その後は順調に“個性”伸ばしは進んでいき、午後四時となりA組、B組全員が宿舎前に集合する。そして目につくテーブルに乗せられた山盛りの食材、食器、調理器具。

  

「さあ世話焼くのは昨日まで!!」

「己で食う飯くらい己で作れ!!カレー!!」

 

 A組、B組全員、もう言葉をだす気力すらないようだ。

 その後は飯田の便利な解釈により真剣に料理に取り組み、カレーを作りあげ食べる。

 だがそこに紅煉の姿は無い。

 

「あれ?火群はどこいったんだ?」

「えっ?いないの」

「どこいったんやろう……デクくんもいないし」

 

ーーーーーーーーーーーー

 洸太君と話し終えた緑谷が戻ろうとするとどこかに向かう紅煉の姿を見つける。

 

「何してんだろ……?」

 

 緑谷はコッソリあとを尾けると開けた場所に出る紅煉。

 

「……ここなら大丈夫か…出てこいよ。緑谷」

「えっ!?バレてたの!?」

「むしろお前と話がしたくて来たんだ」

「えっ……?」

「……俺は知ってるんだ。お前の“個性”の秘密」

「っ!?」

 

 そうして紅煉はオールマイトにした説明をそっくりそのまま緑谷に伝える。

 

「って、事は……オールフォーワンは……」

「確実に生きてるとみて間違いないだろう。プルトンは毎夜よく出掛けてたし、会ってたとしたらおかしくない。たまにだが、帰りは遅かったしな…まぁ今は個性伸ばしに専念しよう」

「そうだね」

 

 紅煉と緑谷はどう個性を伸ばせばいいか軽く話し合いながら戻るのであった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 その頃、出久達のいる合宿施設を見下ろすように崖の上に立ち、禍々しき気配を漂わす六人の人影があった。

 

「おいおい早く暴れようぜ!もう俺は早く血が見てぇんだよ!」

「黙ってろ、今回は偵察だって出る前からわかってたろ“血狂い”」

「ちっ、わかってるよ。疼いて仕方ねぇがまだなら仕方ねぇ」

「それよりこれ可愛くないです!」

「裏のデザイナーが設計したから見た目はどうあれ、理は適ってるはずだよ」

「そんなこと聞いてないです!可愛くないって話です!」

「それで?いつ決行なの?」

「まだだ、決行は人数が揃ってからだ」

「かぁー!そんな待ってられっかよ!!早く行こうぜ!!」

「あんたは落ち着きなさい!まだその時じゃないんだから!」

「けっ!しゃあねえな。だが、俺の炎が早く焼きてぇって言ってるんだぜ!待ち遠しいに決まってんだろ!」

「まあなにはともあれ、まずは思い知らせろ。テメェらの平穏は俺達の掌の上だってことを…」

 

 全身包帯の男は歪んだ笑みを浮かべながらハイライトのない黄色い目で宿泊施設を見ていた……。




今回はここまでとなります。
次回は荼毘に変わる敵の登場となります。
そしてもう一人、マスキュラーの相手はいつも通り緑谷となりますが……ド派手な火力勝負が可能なキャラを一人、他作品から連れてこようと思っておりますのでそれを紅煉とぶつけたいと思いますのでご期待ください。
最後のヴィラン同士のセリフを見れば少しわかりやすいかと思います。



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第30話 火群VS神殺しの炎

前回のあらすじ
林間合宿2日目、各々の“個性”を伸ばすため個性を多用する。
その夜、合宿の宿泊施設を見つめる怪しい瞳が……


 林間合宿三日目、相も変わらず“個性”伸ばしの訓練をするA組とB組一同。

 補習組は眠そうにしつつもしっかりと励み、他の生徒もしっかりとやっている。

 そして紅煉はというと……

 

「ファイヤァァァァァァァァァっ!!……うん、絶対これじゃない感がすごいあるな……」

 

 身体中から炎を絶やさずにずっと出し体内の酸素を抜いてから炎を出すのをやろうとしてるが武術を行っていた為かなかなか上手くいかないようだ。

 

「これで上手くいかないなら仕方ない……別のやり方思いつくまで別の技とか鍛えるか……何を鍛えよう……《ディアブロ・フォース》は問題無いし、《ドラゴン・フォース》は終わると寝るから時間ロスになる……あ、いいのがあったな。来い《禁忌「レーヴァテイン」》」

 

 紅煉は炎の大剣を造り出すと軽く振るう。

 

「よしよし、後は他にも武器を作り出せるようにしないとな……よしっ」

 

 そのまま個性を別方向の伸ばし方をする紅煉。相澤先生はそれを黙って見ていた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 三日目の訓練と夕食作りと食事が終わり、皆が待ちに待ったイベントが待っていた。

 

「さて、腹もふくれた。皿も洗った!お次は…」

 

「肝を試す時間だぜ!!」

 

 と、上鳴が嬉しそうに声を上げる。が、そこで相澤先生が残酷な報せを届ける。

 

「その前に大変心苦しいが、補習連中は……これから俺と補習授業だ」

「嘘だろぉ!?」

 

 上鳴ら赤点者の体に瞬時に巻かれる包帯。

 

「すまんな。日中の訓練が思ったより疎かになってしまったので、こっちで削る」

「うわぁ!堪忍してくれぇぇ!!試させてくれぇぇ!」

 

 すると、ピクシーボブからルール説明が言い渡される。

 

「相手に直接攻撃しなければ何でもOK!個性を使って、個人の創意工夫を凝らして驚かせちゃおう!」

「多くの人を失禁させた組が勝利となる!!」

「辞めてください…汚い」

 

 ペアを決めるくじ引きだが――A組は三人が補習に行っているので残り17人。一人余るのだが……

 

「……一人余る…」

「クジ引きだから……必ず誰かこうなる運命だから……」

 

 まさかここに来てまで緑谷のくじ運が無いとは、ちなみに原作と違うのは八百万のペアは芦戸さん。爆豪のペアは切島。凍火のペアは俺という点だろう……

 

「……ま、どちらにせよ俺がやることは変わらない…」

 

 紅煉は不気味な雰囲気漂う森を見つめていた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 始まって約10分経った頃、三番目に出発した俺らが感じたのは、焦げ臭さだ。

 

「紅煉。この匂い、何?」

「誰かが火をつけたんだろうな。凍火、お前はこの先にいる爆豪と合流しろ、3分後ってことはそう遠くは無い」

「分かった……紅煉はどうするの?」

「……嫌な予感がする。俺は焦げ臭い匂いがする方に向かう。なんかあったらすぐに逃げろよ」

 

 そう言って紅煉は森の中へと走っていく。凍火は紅煉の言葉通り切島と爆豪と合流する。二人も異変に気づいてるようだ。

 

「おい半分女。この匂いなんだ?お前らのどっちか驚いて火をつけたんか?」

「私達じゃない。けどなんか嫌な予感するって紅煉が……」

「マジか!?どこに行ったんだ!?」

「わからない。けど私たちは施設に戻ろう」

「今はそれが最短だな……さっきガスが撒き散らされてるのを見たが……B組の奴らは大丈夫なんか?」

「わかんない」

 

 とりあえず三人はここで立ち止まってちゃ仕方ないと歩き始める。

 三人は気づいてないが彼らの見える位置で火は燃えている……黒く燻る炎が森を焼いているのだ。

 

 

 その頃、紅煉はというと木の上に立ちゆっくりと回るガスの渦を見ていた。

 

「これがB組を困らせてるガスか……速攻で潰すのが最適だな。つーわけで新技試すか」

 

 そう言って紅煉は炎を出して弓を引くように構えると炎の弓矢が完成する。勿論この技の元ネタは某消防隊の弓矢使いです。技名は無いけど勝手に付けるなら……

 

「行ってこい……《天羽々矢(あめのはばや)》」

 

 そうして放たれた炎の矢は一直線にガスの中心地へと向かっていく。しばらくするとパキャンと乾いた音と「アッツ!?」という声とガツンというどデカい音が響く。

 するとガスが霧散していく。どうやら上手くいったらしい……

 

「まさか当たるとは……ん?」

 

 遠くの崖の方で巨大な土煙が舞うのが見える。てことは……

 

「あそこが緑谷とマスキュラーがいる位置か……それよりもラグドールを助けなきゃ……」

 

 よく目を凝らすと脳無と交戦してるラグドールの姿が見えた。

 

「居た……よし」

 

 そう言って不死鳥の翼を生やして一気に急降下しラグドールの傍に落ちるように着地し脳無の懐に入る。

 

「えっ!?君っ!?」

「《火拳》!!」

 

 巨大な炎の拳で脳無を撃破させる。広範囲の攻撃と火力で当分は起き上がれないはず……

 

「ラグドール!B組の人達を連れてすぐ施設へ!」

「き、君はどうするの!?」

「俺も人命救助に専念します!」

 

 そう言ってると紅煉は背後から嫌な気配を感じる。どうやらそれはラグドールも感じたようだ。

 

「ウハハハハッ!おめぇ見たぜ!捕獲者(・・・)リストに載ってた奴だな!名前は確か、火群紅煉!!」

「う、嘘だろ?なんで、この場に………いや、それよりもなんで…“この世界(・・・・)”に居るんだよ…」

 

 目の前に現れた男は、鎧を着ているがなぜか右肩を大きく露出していて、髪は獅子を思わせるボサボサの金髪で、その真っ赤な瞳は瞳孔がなく渦巻いている。

 そう、その男は某妖精の尻尾の敵キャラ……その名は

 

「俺っちを知ってんのか?俺っちはザンクロウ!“神殺し(ゴッズキラー)”のザンクロウって言うんだ!」

「ラグドール!!急いでここから離れて!!」

「えっ!?君は、どうするの?」

 

 敵がどれほどやばいかを知ってる紅煉はとりあえずラグドールを逃がそうとする。だがラグドールは動かない。

 

「さっさと行け!!ここに居ると死ぬぞ!!それとも死にてぇのか!?」

「は、はい!!」

 

 殺気と怒気を含んだ声で叫ぶと怯えた猫のように逃げるラグドール。

 

「ウヒヒッ、女を逃がしたつもりか?むしろ好都合だぜ!てめぇを連れていかなきゃ行けねぇからな!」

「さっきもそんなこと言ってたな……俺以外にもいんのか?」

「あぁ!爆豪勝己って奴だよ!」

[やっぱりか……だがコイツは正直に言うと厄介。ここで倒さないと……俺がヤバい。てかよく見たら黒い炎が燻ってやがる。夜だから気付かなかった!]

 

 ザンクロウと対峙したままどうするかを紅煉は考えてると相手から仕掛けてくる。

 

「まぁ、さっさとやられちまえ!」

「っ?!《火拳》!!」

 

 ザンクロウは手から黒い炎を紅煉に向かって放ち紅煉はそれを相殺しようとするが呆気なく紅煉の炎は呑み込まれる。

 

「何っ!?クソっ!《鏡火炎》!」

「おっ!俺っちの好物!頂きマース!」

 

 そう言ってザンクロウは紅煉の放った炎を食べる。

 

「はァ!?嘘だろ!?」

「ふぅ、美味ぇなぁお前の炎。驚いてるようだが、たかが焔王(えんおう)如きが頭が高ぇんだよ……俺っちのは神の炎。俺っちの個性は炎神なんだぜ!」

 

ーヴィラン名 の神殺し(ゴッズキラー)のザンクロウー

 

個性【怪炎神(かいえんじん)

神の炎と呼ばれる黒い炎を纏い、放出が可能!さらにこの炎は普通の炎では相殺出来ない!

さらに自身が使う属性を摂取すれば体力が回復し、力も強化される。

紅煉の個性の圧倒的上位互換とも呼べる個性!

 

「ちっ!厄介だな!くらいやがれ!!」

「おっ!?来るか!!?だが」

 

 紅煉は両手に炎を纏うとザンクロウは片手に神の炎を纏う。

 

「《爆烈煌炎》!」

「効かねぇよ!」

 

 両手の炎をザンクロウにぶつけるが、ザンクロウは片手で簡単に防いだ。

 

「なっ!?」

「神の炎の前には、全ての炎は無力なんだよ!!」

「ぐあぁあぁっ!!」

 

 そのまま紅煉はザンクロウの神の炎に焼かれる。だが不死鳥の炎により火傷は治ってく。

 

「おっ!それが噂に名高い不死鳥の炎か!俺っちに食わしてみろよ!」

 

 ザンクロウはそう言うと不死鳥の炎の一部を食らう。すると咳き込む。

 

「ごほっ!なんだこりゃ!」

「っ!?」

[不死鳥の炎が効いた?!]

「どうやら俺っちには食えない炎みたいだな!だけどそれで攻撃しても俺っちは痛くも痒くもねぇぜ!」

 

 ザンクロウはそう言って笑う。どうやら本当に食えないようだが効かないらしい。それが分かると紅煉は覚悟を決める。

 

「ちっ、使うしかねぇか……奥義」

「おっ?!」

「《煌龍波》!!」

 

 紅煉は右手から炎の龍を上空に放つとそのまま龍は紅煉に落ちる。

 

「なっ!?てめぇ!自ら焼かれるとか馬鹿なのか!?」

 

 ザンクロウは目の前の状況が理解出来ずにいたが、直ぐに理解すると笑みが零れた。

 

「てめぇ、自分の炎を、喰いやがったな!」

「……《ドラゴン・フォース》」

 

 紅煉は自身に向かって煌龍波を放ち《ドラゴン・フォース》に覚醒する。

 

「竜の炎って訳か、それでも俺っちの神の炎には勝てねぇよ!」

「そうかな?やって見なきゃわかんねぇ!《火竜の鉄拳》!」

「おっと!っぶねぇってよ!」

 

 ザンクロウは紅煉の攻撃を避けると紅煉はまた両手に炎を纏う。ザンクロウはそれを見るとザンクロウも両手に神の炎を纏う。

 

「竜の炎は全てを焼き、薙ぎ払い、終りを告げる息吹とならん」

「神の炎は神の息…この星に新たなる命の恵みを与えたまえ」

 

「《火竜の煌炎》!!」

「《炎神のカグツチ》!!」

 

 2人の炎はほぼ同時に放たれ、2つの炎がぶつかり合う。しかし紅煉の方が徐々に押され始め、押し負けてしまう。

 

「ぐあっ!?」

「うひひっ!言ったろ?!神の炎には如何なる炎も勝てやしねぇ!知ってるか?人間に火という知性を与えたのは神だってよ。火を生んだのは人でも、動物でもない....神だ!」

「知ってるよ」

「あ?」

 

 思わぬ返答にザンクロウは眉間にシワがよる。

 

「神の炎がすげぇのも、神の炎のおかげで俺らが生活出来てるのも知ってる……それでも、負けるわけにはいかねぇんだ!!《火竜のー」

「んなもん、ただの屁理屈じゃねぇかってよ!見せてやるよ!どんなに自身を鼓舞しても絶対に超えられない力があるってのを!《炎神のー」

 

 紅煉とザンクロウは互いに息を大きく吸い込み始め、一気に解き放った。

 

「ー咆哮》!!」

「ー怒号》!!」

 

 紅煉のブレスとザンクロウのブレスがぶつかり合う。お互いに1歩も引かなかったがやはり1歩及ばず紅煉が押し負ける。

 

「ぐあぁあぁっ!」

「何度やっても無駄だってよ!」

「くっ!滅竜奥義!《紅蓮爆炎刃》!!」

 

 炎を纏った両腕を振るい、爆炎を伴った螺旋状の一撃を放つ。

 

「なにっ!?」

 

 そのままザンクロウは炎の渦に飲み込まれる………だが…

 

「あっぶねぇってよ、俺が炎を食えなきゃやられてたぜ」

「くそっ……」

 

 ザンクロウは紅煉の奥義を簡単に食い尽くした。

 

「へへっ!これで終わりにしてやるってよ!!神は炎を喰らうのが大好きなんだってよ!《炎神の晩餐》!」

 

 そしてザンクロウは神の炎で紅煉を閉じ込める。

 

「ぐあぁあぁァああぁぁっ!」

「この炎に包まれたら最後、灰になるまで出る事は出来ねえ!最もてめぇの場合は不死鳥のおかげで死ぬことはねぇだろうよ!」

 

 紅煉が神の炎に焼かれ意識を失うその瞬間、声が聞こえた。

 

『負けるな』

[誰……だ]

『まだお前は負けてない。神の炎なんか食っちまえ』

[無理だ。相手は俺より格上なんだぞ]

『火群の一族は炎の個性を得て生まれる。そしてお前のとザンクロウってのは同じような名前の個性だ。奪っちまえ、その炎を』

[どうやってだよ、無理に決まってる……奴の炎は俺よりも…]

『「己が視界に入る全ての人間を背負うもの」だろ?』

[!!?]

『自分の約束、破るのか?母親と、叔父にした約束を……自ら破るのか?』

[……そうだ、こんな所で、諦めてたら……]

「なに!?」

 

 燃え盛る神の炎の中で目を見開く紅煉にザンクロウは驚く。

 

「守るべき物も、守れねぇよな!!」

「何言ってやがる!神の炎の前には全てが無……力…」

 

 ザンクロウは目の前の光景に自身の目を疑った。何故か?神の炎を、紅煉は食っていたのだ。

 

「て、てめぇ!どうして俺っちの、神の炎を食えてる!!?」

「決まってんだろ……俺は、火群一族の火群紅煉!炎の扱いなら、神より長けてる自信があるんだよ!!」

 

 そう言って《炎神の晩餐》によって紅煉を閉じ込めてた炎を紅煉が全て食い切る。

 

「ば、馬鹿な!?」

「いいこと教えてやる。俺の炎は……何度でも立ち上がる!何度でも燃え上がる!何度でも、仲間を照らす!!滅竜奥義!!《神滅爆炎刃(しんめつばくえんじん)》!!」

「ぐあああああああああああぁぁぁっ!?」

 

 紅煉は右手に怪焔王の炎、左手に怪炎神の炎を纏ってザンクロウに向かって放つ。

 

「な、めるなぁ!!この程度で俺っちは…なにっ!?」

 

 だがザンクロウはダメージは大きかったが、気絶はしなかった。だが、それを予測していたかのように紅煉は次の“攻撃”の準備をしていた。

 

「喰らえ……俺の出せる最強の火拳…《灼熱の火拳(ハルハール・インフィガール)》!!」

「ぐぎゃあああぁぁああああああああぁぁぁッ!!」

 

 圧倒的な熱量を持つ《火拳》が炸裂し、今度こそザンクロウは意識を失い吹っ飛んでいく。紅煉は静かにそれを見届け自身の腕を見る。そこには未だに黒い神の炎が燻っていた。




今回はここまでとなります。
参戦した今回の敵はFAIRY TAILの敵キャラ。ザンクロウです。詳しく知らない人は調べて見てね
次回は包帯だらけの男の正体を出そうと思っています。お楽しみに!

ではまた次回!


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第31話 火群とヴィラン連合、そして再会と対面

前回のあらすじ
ザンクロウとの死闘を繰り広げ一時は圧倒されるも逆転する。
その際自身の変化に気づいた模様。


 紅煉がザンクロウを倒した頃、緑谷は洸太君の救出に成功し相澤先生に言われマンダレイにそれを報告し爆豪が狙われてる事を伝えると同時に爆豪の元へ向かおうとする。

 

「やばいわこの子!本当に殺しといた方がいい!」

「待て!手を出すな!マグ姉!」

 

 その際、マグネから殺されそうになるがスピナーに呼ばれ止められると同時に()が行く手を阻む。

 

「ちょっと!槍は反則じゃない!!」

「まて、その槍は俺じゃない」

「えっ?」

「《天津麻羅之鍛冶(あまつまらのかじ)天沼矛(あめのぬぼこ)”》」

 

 そこに現れたのは少し息を切らし不死鳥の炎に身を癒されてる紅煉だ。どうやら槍は彼の炎によって造られたものらしい。

 

「「「火群!?」」」

「君は、A組の!?」

「あら!最優先捕獲対象の子じゃない!」

 

 突如登場した紅煉に避難しようとしてるクラスメイトや応戦してるマンダレイ、そして敵のマグネが反応する。

 

「おや、ここに居たのか、最優先捕獲対象」

「っ!新手!?」

 

 マグネやスピナーの後ろから全身包帯まみれの、簡単に言うならるろうに剣心の志々雄真実のような姿に某消防隊の最狂のサラリーマンの服を着た男がやって来た。

 

「ヴィラン名『死神』、本名 黒野 志々雄(くろの ししお)!殺人104件!殺人未遂92件!傷害251件を起こした凶悪ヴィラン!それによって付けられた通り名は『最狂』!」

「ほう?俺も有名になったなぁ……」

「遅いわよ死神」

[なんだろう……予想通りの名前が出てきて逆に驚けないよ……てか最狂で黒野って言ったら……]

「マスキュラーといいザンクロウといいこんな子供にやられるとはな……それほどコイツらは強者だったって事か……」

 

 そう言うと志々雄は右手から黒煙を出して刀の形を作る。

 

「やっぱりそういうことだよなぁ……その個性だよなぁ…知ってたよ……《天津麻羅之鍛冶(あまつまらのかじ)天羽々斬(あめのはばきり)”》」

 

 紅煉は分かってたように呟くと炎の剣を造り出し構える。

 

「ほぉ?俺とやる気か?」

「ちょっと、あんた本気で戦えないんだから…」

「分かってるさ、ほんのお遊びだよ、それに見て見ろ」

「ん?」

「フワ……ッ」

[[なんで眠そうなんだ?]]

 

 紅煉はザンクロウとの戦いで《ドラゴン・フォース》を使用して勝利を掴んだが《ドラゴン・フォース》の効力が切れた今、とてつもない睡魔に襲われている。それを自ら抗っているのだ。

 マグネとスピナーはそんな紅煉が眠そうにしてるのを見て疑問に思う。

 

「チャンスだと思わないか?」

「そうね、ならあたし達もあのプロの足止めしておくわ」

「任せてもらおう。ステインの名にかけて」

「君、施設に避難してな」

「その通りだ、ここにいては君の身が危ない」

「残念ですけど、出来ない相談です。道中眠りに落ちて結局連れていかれる……だから、やった事ないけど」

 

 そう言うと紅煉は右手に炎を纏い天に掲げる。

 

「奥義《煌龍波》!!」

「なにっ!?」

「なによこれ!?」

「ほぉ?」

「なんと!?」

「な、何してるの!?」

 

 紅煉は再び煌龍波を出すとまたその身に受けて喰らい再度その身を《ドラゴン・フォース》へと覚醒させる。

 

「これでリセット……だが数分しか持たないか」

「……面白い」

「何だこの迫力、プロヒーロー並みじゃねぇか!」

「どうなってんのこの子!?」

「なんと、これがオールマイトと渡り合ったという力か!」

「凄い……」

 

 敵も味方も驚いてるとマンダレイと虎の後ろからモヤが現れる。

 

「っ!!マンダレイ!虎!!」

「「えっ!?」」

「少しここは退いて頂きますよ、プロの方々」

 

 紅煉はいち早く察知するが既に遅い。二人はモヤに包まれどこかに連れていかれる。するとそこに現れたのは

 

「おー!!知ってるぜそいつ!だれだ!?」

「あはっ!出久君以外にもボロボロの人いるんだァ!かっこいいねぇ」

「超最悪だ……めっちゃ最悪だ」

「いでっ!!」

 

 現れたのは(ヴィラン)連合のトガとトゥワイス……紅煉にとっては一番攻撃したくない二人なのだ。

 さらに上からMr.コンプレスと負傷した緑谷と障子と切島、そして凍火が落ちてきた。

 

「《不死鳥の抱擁》!」

「あ、ありがとう」

「いいから!離れろ!」

「Mr.コンプレス……避けろ」

了解(ラジャ)!」

 

 紅煉は緑谷の傷を癒しつつ逃げろと言い、黒野はMr.コンプレスに避けるよう促すと黒煙を放つ。Mr.コンプレスは地面と自分を圧縮し避ける。

 緑谷と凍火はギリギリで避け、切島と障子は掠めてしまう。

 

「ぐあぅ!」

「あっつぅ!」

「切島!障子!」

「死柄木の殺せリストにあった顔だな!そこの地味ボロくんとお前!なかったけどな!」

「凍火から離れろ!!《鏡火炎》!」

「冷たっ!」

「《氷塊造形(アイスメイク)氷欠泉(アイスゲイザー)”》!!」

「熱っつ!」

 

 後ろに現れたトゥワイスを紅煉が炎をで距離を離し、凍火が氷で一気に拘束しようとするが紙一重で避ける。

 

「くそっ!」

 

 その間に黒野とMr.コンプレスは爆豪を連れ去ろうとする。

 が、ポケットをまさぐるMr.コンプレス。

 

「逃げるぞ!4人とも!常闇と爆豪は救出した!さんざん見せびらかした右ポケットに入ってたこれが、常闇と爆豪だな?エンターテイナー」

「でかしたよ!障子!」

「ナイスっ!」

「それはダミーだ!本物のエンターテイナーがものを見せびらかす時は見せたくないもの(トリック)があるときだ!本物はその仮面の下!!《天羽々矢(あめのはばや)》!」

「なっ!?」

「ぐへっ!?」

「頼むぞ!凍火!緑谷!……クッ、シマッ…モウ」

 

 障子が球体を確保したが即ダミーと気づいた紅煉は炎の矢を放ちMr.コンプレスの仮面をはぎ取る。

 するとそこからふたつの球体が飛び出す。

 

「くっ!」

「うおぉぉっ!!」

 

 凍火は常闇の球体を掴み、緑谷は爆豪の球体を掴もうとするが……

 

「惜しい。後一歩」

 

 黒い煙が球体を覆い黒野の元へ、すると今度は紅煉が消えた。

 

「っ!?紅煉は!!?」

「彼なら疲れて眠ってしまったようなのでね……ここに居るよ」

「っ!さっきから様子がおかしいと思ってたらそういう事か!《ドラゴン・フォース》の二回使用で限界だった体をさらに酷使したから予兆もなく眠ってしまったんだ!」

「「なにっ!?」」

 

 黒野は黒煙で掴んだ眠ってる紅煉を掲げる。緑谷は紅煉の異変に気づいていたが気にする暇がなかったようだ。そのため気づくのが遅れたのだ。勿論それは障子や切島、凍火とて同じ事。

 黒野は右手に球体、左手に紅煉の首根っこを掴みワープゲートの中に消えてく。

 

「それじゃあな、雄英生徒」

「「待て!!」」

 

 切島と凍火が飛び込もうとするが、ワープゲートは閉じ、爆豪と紅煉は連れ去られてしまう。

 

 こうして雄英高校は敵連合に完全敗北した。生徒の40名のうち、ヴィランのガスの攻撃によって軽い目眩を訴えるのが15名。重・軽症者12名。無傷で済んだのは11名だった。そして....最後に行方不明2人。ヴィラン側は4名の現行犯逮捕。彼らを残して他のヴィランは全員姿を消してしまった。

 

 ーこうして楽しいことになるはずだった合宿は最悪の結果に終わってしまったのだー

 

ーーーーーーーーーーーー

「……ッ…こ、ここは?」

 

 紅煉が目を覚ますとそこは暗い空間だった。

 

「縛り付けられてる。個性で溶かせなさそうだな……耐熱性十分か、用意周到なこった」

 

 紅煉は十字架に張り付けられてるらしい、御丁寧にも鎖や十字架は耐熱性でちょっとやそっとじゃ溶けもしないし壊れないだろう。

 

「やぁ、起きたか?息子よ」

「最悪な目覚めだよクソ親父。こういう時は可愛いお姉さんが来るもんだろうが、オッサンなんてお呼びじゃねぇよ」

「まぁいいじゃないか、今日は会わせたい人がいる」

「俺に?」

 

 縛られてる紅煉の目の前にやってきたのはプルトンこと、火群太陽。紅煉の父親だった。

 すると紅煉に会わせたい人物がいるらしく、微笑みながら言ってくる。

 その人物が奥から歩いてくる足音が聞こえる。その瞬間……

 

「ーーッ!!?」

 

 声にならない何かを上げる紅煉。感じ取ったのだ。その男のプレッシャーを、分かってしまったのだ、その男の圧倒的なカリスマを、その際汗を一筋滲ませるが、その汗は重力に逆らい、上に流れていった。

 

「やぁ、初めましてかな?火群紅煉くん。いや、スルトくん?」

「あぁ、初めましてだな……オール・フォー・ワン。俺はあんたを知ってるぜ、かつて超常現象をまとめた人物だろ?」

 

 その男が姿を見せると口はあるが髪と目と鼻はなく、まるでのっぺらぼうのような顔をしていた。

 だがそれでも溢れ出る悪のカリスマ性はまさに魔王と呼ぶべき器と言えるだろう。

 

「ほぉ?僕を知っているのか。それは丁度いい」

「なに?」

「君にはお願いがあるんだ」

「……お願いだと?」

「そう!君の“個性”《不死鳥(フェニックス)》!それを僕にくれないか?」

 

 オール・フォー・ワンはそう言って両手を広げる。だが紅煉は特に驚きもしない。

 

「おや?驚かないのかね?」

「てめぇらが俺の“個性”を狙ってるのは分かってたからなぁ……だが、くれてもやらないし奪わせもしない。この“個性”は俺が預かった(・・・・)“個性”なんだから……だから、てめぇにくれてやらねぇし与えねぇ……複製もさせねぇよ」

 

 紅煉は守る意思を燃やした瞳でそう言い放つ。それを見ているプルトンとオール・フォー・ワン。

 しばらくしてオール・フォー・ワンが拍手し始める。

 

「素晴らしい。まさに火群一族の鏡というわけだ。プルトンよ、君の息子は立派な“炎の意志”を継いでるぞ。不死鳥の“個性”が彼から奪えない訳だ」

「あぁ、そのようだ。我が息子ながら立派になったものだ」

「ハッ、息子だ?自分の妻と双子の弟を殺しておいて今更家族ごっこかよ……グッ!」

 

 そこまで言うとプルトンが紅煉の首を片腕で握りしめてくる。獄炎を纏いながら

 

「忘れるなよ?お前は俺が生かしてやってるだけだ。その生意気な口を閉じないとお前が死ぬだけだぞ?」

「やっと正体を現したか…ネタは充分上がってんだよ。俺一人残したのはただの偶然だったんだろ?あの場に最初っから居たのなら俺も殺してたのだろう?」

 

 紅煉は首絞めにも臆することなく淡々と告げる。プルトンはそれを聞いていると眉間に皺を寄せていく。

 

「沈黙は肯定と見るぜ?俺は火群の家系について調べたんだ。その結果面白いことがわかった。俺達は一族なんだろ?簡単に言うなら火群の苗字を持つものしかいない里があった。それが火群一族……炎の“個性”を巧みに操る一族。発生した炎を自在に操る“個性”と体の一部から発火せる“個性”の一族……それが火群一族」

「……ッ」

「その反応、当たりみたいだな……さらに言うなら火群一族はその炎による弱点がほとんどない強力な一族…そしてもう一つ……この世界とは別…異界に通じることが出来るんだろ?俺ら火群一族には。その異界はこことほぼ同じ世界だが黒い炎にまみれていて“焔ビト”と呼ばれる者たちが蔓延る世界……そうだろ?」

 

 紅煉は火群家の……否、火群一族の秘密を調べあげそしてある結論に辿り着いた。

 

「そしてオール・フォー・ワンの目的がこの世界の支配だとしたらプルトン……あんたの目的はその異界……“煉獄(アドラ)”の支配が目的なんだろ?」

「……よくそこまで調べあげた。正解だよ紅煉…その為には……お前の“個性”《不死鳥(フェニックス)》が必要なんだ。分かってくれ、確かに殺さなかったのは偶然だ。だが、今はお前が必要なんだ」

「……断る。俺はあんたの道具に成り下がらない」

 

 紅煉が出した結論を聞いたプルトンは肯定すると今は紅煉が必要な事を言う。

 だが紅煉はそれに断りを入れる。

 

「……ダメか、仕方ない。この方法はあまり使いたくなかった」

「仕方ないよプルトン。彼もヒーローの卵だ……大丈夫、僕なら彼をヴィラン(こちら)側に引き入れられることが出来る」

「……何する気だ?」

「すぐ分かる」

 

 プルトンは残念そうに顔を伏せるとオール・フォー・ワンがプルトンをなぐさめ意味が深そうな発言をする。それに勘づいた紅煉は質問するがオール・フォー・ワンは嫌な笑みを浮かべながらはぐらかす。

 

...To Be Continued




今回はここまでとなります。
攫われた紅煉と爆豪。そして拘束された紅煉はオール・フォー・ワンとプルトンと対峙する。
そしてプルトンの目的……紅煉が必要な理由とは?
次回、最悪の悪夢が始まる。

というわけで林間合宿編が終わりました。色々と駆け足気味なってしまいすいません。
今回から某消防隊の要素が増えていくと思いますのでご了承ください。
それではまた次回!


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火群と神野の悪夢
第32話 火群と爆豪の救出、そして始まり


前回のあらすじ
ヴィラン連合に拉致られた紅煉と爆豪。
紅煉は父親と再会し、ヴィラン側のボスであるオールフォーワンと対峙する。
そこでプルトンの目的を推測したことを話すとそれが正解だとわかる。


 林間合宿の襲撃から二日経ったその日、緑谷は病院のベットの上で寝ていた。

 紅煉により怪我は治ったが精神的に疲労などが込み上げ倒れ近くの病院に運ばれたのだ。

 そして切島と凍火から助けに行こうと言われ覚悟を決めて同行しようとすると飯田に止められそうになる。

 それでも行くと言った後、戦闘ではなく救助優先と聞いて飯田はストッパーとして同行を決める。

 今回の紅煉、爆豪救出作戦のメンバーは飯田、切島、緑谷、凍火、八百万さん、そして耳郎さんになった。

 

「なんで耳郎さんも?」

「耳郎は耳がいいから索敵にいいかと思ってよ…ダメ元で誘ったらOKが出た」

「ヤオモモや凍火が行くのにあたしが行かなかったらどうすんの」

「えぇ、そうですわね。とりあえず紅煉さんに取り付けた発信機の方へ向かってみましょう」

 

 八百万さんは紅煉に頼まれ発信機を付けていた。紅煉の手の中に埋め込んでいたのだ。

 

「じゃあヴィランに顔をバレてるから変装をしなきゃね」

 

 そう言って一同は店に入り変装用のウィッグや服を買う。

 耳郎さん以外は皆原作通りで、耳郎さんはホストみたいな格好になってる。

 

「なんでうちだけこんな格好なの?」

「なんかちょうどいいのがそれしかなくて」

 

 そのまま動こうとすると雄英高校の会見が始まるのを見て緑谷たちはそれを見る。最初は雄英高校の対策不足に対しての批判、そして爆豪に対して悪に染まるのでは?としかしそれを否定する相澤先生ら…

 

「では、同じく攫われた火群くんにも同じことは言えますか?」

「体育祭での優勝。職場体験中…遭遇したヒーロー殺しに対して捨て身の迎撃。…経歴こそタフなヒーロー性を感じさせてくれています。

だがその反面で彼自身の自身の強さへの傲慢もこの活躍から見受けられます。

もしそこに目をつけた上での拉致だとしたら?彼は最後まで自分のヒーローとしての根拠があり続ける確信がありますか?未来があると言い切れる根拠をお聞かせ下さい」

〔わかっちゃいたが攻撃的…!ストレス掛けて粗野な発言を引き出そうとしてる。

いかんぞ…恐らくイレイザーのメディア嫌いを知っての挑発!ダメだ乗るなっ!〕

「行動については私の不徳の致すところです。ただ、その傲慢さを目につけてでの行動とするなら、それは違います。火群は誰よりもヒーローの本質を理解してる。誰よりも友情を大事にしています。そんな彼の傲慢さを見て“隙”と捉えたのなら、(ヴィラン)も浅はかであると思います」

 

 ほっとするブラド先生。だが、次の瞬間。マスコミから意外な言葉が出てきた……。

 

「さらに…それとは別で…彼はあの凶悪な(ヴィラン)……プルトンの息子と聞いております。こちらをご覧ください」

「「「!?」」」

 

 マスコミがそう言うと驚く相澤先生にブラド先生、そして根津校長。マスコミがパソコンを見せるとそこにはプルトンが映っている。マスコミが音量を上げると声が響く。

 

『初めまして諸君。私の名はプルトン……本名は火群太陽。この苗字を聞いてピンと来た者は居るかな?そう、私は雄英高校の火群紅煉の父親だ。信じられない者もいるかもしれないが紛れもない事実。此度の雄英高校の合宿の襲撃は私の息子を取り返すための襲撃でもある。諸君らにあえて伝えておこう。我が息子が次現れるとしたらそれは(ヴィラン)として現れる。私の息子は私の気持ちを理解してくれるはず、いや、断言しよう理解する!私達親子はヒーロー社会に強大な炎で永遠に残り続ける火傷を与えて見せよう。それでは諸君。次会うときまで』

 

 そこまで言うと映像は途切れる。そしてマスコミは言葉を続ける。

 

「これを踏まえると火群君はプルトンに賛同し敵として君臨する可能性があると思えますが?かの凶悪なプルトンと手を組み、この日本を滅ぼすつもりだとしたらどう責任を取るつもりで?どんなヒーローとしての志を持ってるか知りませんが、そんなもの実の親子の絆の前には無意味ではないでしょうか?」

 

 自信ありげに話すマスコミ。周りは大きくざわめく。プルトンの息子…それが雄英高校に置かれていたとなればソレは大問題だろう。だが…それも一瞬で無くなった。

 

「おい…お前…それを本気で言っているのか。お前は火群があんなのと一緒に見えるのか。火群紅煉という人間は…どんな人間か…テレビを見ているお前らが1番知っているはずだろう。見なかったのか?

仲間のためにヒーロー殺しと戦い…誰かのために自分の身を犠牲に殿を務め…そんな奴をあの人殺しと……そんな陰湿なやり方で自分の息子と自慢げに話す奴一緒だと思っているならここから消えろ…目障りだ」

 

 相澤先生の殺意のこもる目がマスコミに向かって放たれる。さらにそこから根津校長の説明も付け足される。

 

「これは警察が調べた事ですが、プルトンこと火群太陽は自身の妻と双子の弟を殺害しています。息子である火群紅煉に母親と共に自分が死んだと思い込ませすぐ助けに来なかったヒーローに絶望を与えさせようとしたのでしょうが、それは失敗に終わってます……こちらのボイスレコーダーにUSJ襲撃時後、プルトンの息子と我々雄英側が分かり、彼がそれを知った際、教師の一人が彼がこの雄英高校にいられないと発した際、彼が発した言葉です。お聞きください」

 

 根津校長がそう言いながらボイスレコーダーを取りだしオンにすると紅煉の声が響く。

 

『仕方ありません。俺はヴィランの息子、プルトンの息子だ。このままここに居たら、迷惑になる……って、言うと思いますか?

ヴィランの息子だからコイツもヴィランだ。あんたらはそう言いたいんだろ?残念だが俺の気持ちは今も昔もヒーローになることだ。父親がヴィラン?なら捕まえて見せよう、殺せというのなら殺してみせよう。父親がヴィランだからといって、ヒーローを簡単に諦めていいわけがない。だからこの学校を辞めるつもりもない、俺をヴィランの息子だと貶すのならとことん貶せ。それでも俺は挫けない……折れるわけにはいかねぇんだ。それと、復讐のつもりでヒーローになる訳でも無い……俺は、母と叔父、そして俺のような被害者を出さないように自分の力を使うつもりだ。復讐だとかそんなモノ狗の餌にでもしてしまえ。俺は俺だ。だから、俺の夢は父親がヴィランだからという理由で折れていいモノじゃない』

 

 その言葉を聞いて息を飲むマスコミ達。そこで相澤先生が再び言う。

 

「これを聞いて火群が敵として君臨するという可能性があるのなら出てこい」

「火群君はプルトンの息子と知ったのがUSJ襲撃時と仰いましたが、それが嘘だとしたらどうなるのですか?!」

 

 一人のマスコミがそう言うと今度はブラド先生が立ち上がり話す。

 

「両親を殺されたと認識してたのにどうやって知るというのだ!」

 

 そのブラド先生の言葉にマスコミ達は驚きの表情を浮かべる。

 

「火群紅煉……彼は母親と父親を幼少期に亡くしてる。と、本人も勘違いしていた。父親と思っていた人物は実は叔父で自分の父親はプルトンとして人々を殺していた……火群と最初は復讐してやると思っていたらしいが……我々がよく知るヒーロー“オールマイト”の人を助ける姿を見て復讐なんてしても意味ないと悟り、ヒーローとして自分と同じ人間を増やさないようになると意気込んでいた。そんな奴が自身を見捨て、家族を殺したプルトンに簡単に首を縦にふると思うか?」

 

 そこまで言うとマスコミらも何も言えなくなる。なんせ教師三人共、紅煉を庇ったのだ。どう言ってもこの三人は何も変えるつもりはないと思ったのだろう。

 

「我々も手を拱いてるワケではありません。現在 警察と共に調査を進めております。我が校の生徒は必ず取り戻します」

 

 緑谷達はそれを見て絶対に二人を取り戻そうと意気込む。

 悪夢が近づいているとも知らずに……

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 場所は変わって廃工場内部……そこの奥、巨大な機械仕掛けの中にオール・フォー・ワンとプルトン、そして謎の禿げた医者のような人物がいた。

 

「オール・フォー・ワン!出来たぞい!やったぞい!」

「流石はドクター、仕事が早くて助かるよ」

「おぉ、終わったのか。俺の可愛い息子が出来たのだな!」

「勿論じゃ!」

 

 医者のような人物の視線の先には耳と目に謎の機械をつけられた紅煉の姿。

 数分前、紅煉はオール・フォー・ワンのする事を理解したが逃げることは叶わなかった。動きを止められ為す術もなく頭に機械を取り付けられ言われたのだ。

 

『さらばだ火群紅煉。次会うときは君はスルトでしかない…名前も…親も…何も無くなる。そして君の中には母親を殺した憎きオールマイト…その姿だけが映り、プルトンと僕を家族としてみることになるだろう』

 

 そのまま機械が作動し十数分……やっと止まった機械は紅煉を拘束してるだけだった。

 

「クククク、無駄な努力だったな紅煉。いや、スルトよ……」

「君は僕達のものとなり、僕達の仲間となる」

「なんとも可哀想な子供じゃな……こんな事で記憶を消すことになるとは」

「さて、行こうかプルトン。お客だ」

「おう!スルトは任せる!」

「任されたわい」

 

 そう言ってプルトンとオール・フォー・ワンは外に向かう。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 所変わって緑谷達は発信機の示す場所につき中を見ると沢山の脳無が量産されているのを見つける。

 するとそこにたくさんのヒーロー……ベストジーニストやMt.レディ、ギャングオルカが駆けつけ一気に工場を制圧する。そのままヒーローに任せて帰ろうとした緑谷達だがその時……背後から巨大な衝撃波を感じる。

 それは振り向くことすら一瞬の出来事、何が起きたのか……一瞬、一秒にも満たない!それでもその者の気迫は、緑谷達に死を錯覚させた。

 

〔嘘だろ!?オールマイト!あれが、まさかあれが!オール・フォー・ワン!!〕

 

 その男、オール・フォー・ワンは……脳無を確保した全てのヒーローを一瞬にして蹴散らした。

 

「流石はNo.4ベストジーニスト!僕は全員消し飛ばしたつもりだったんだが……」

 

 そのままベストジーニストが攻撃しようとするとオール・フォー・ワンはベストジーニストの腹に風穴を開けた。

 

「君のはいらないな……」

 

するとすぐ横に黒いヘドロが現れ、そこから勝己や連合のメンバーが出てきた。

 

「ゲボっ!?クセえ!なんじゃこりゃ!?」

「悪いね。爆豪君、手荒な真似で歓迎してしまって」

「あ!?」

「また失敗したね、弔。でも決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい。こうして仲間も取り返した、この子もね....君が大切なコマだと考え、判断したからだ」

 

 するとオール・フォー・ワンは死柄木の頭に手を置き、こう続けた。

 

「いくらでもやり直せ。そのために僕がいるんだ。全ては君のためにある」

 

 それを近くで聞いた勝己は背筋が凍るような感覚を覚える。

 敵であるはずのやつの言葉がまるで敵とは思えない善人の言葉に聞こえてしまったからだ。

 するとオール・フォー・ワンは何かに気づいたのような反応をする。

 

「やはり来たか....」

 

 その瞬間、オールマイトが空から飛んできてオール・フォー・ワンに向かって拳を振るうがオール・フォー・ワンは受け止める。

 

「全て返してもらうぞ!オール・フォー・ワン!!」

「また僕を殺すか?オールマイト!!」

 

 その瞬間、悪夢が始まった……




今回はここまでとなります。
とうとう対峙したオール・フォー・ワンとオールマイト。紅煉は一体何をされたのか!?
そして緑谷達の爆豪の救出作戦が作動する!

ちなみに原作通りバーにいたヴィラン連合と爆豪は話し合い?をしてました。
さらに原作通り黒霧と荼毘枠の志々雄が気絶しております。

それではまた次回!


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第33話 火群VS……

前回のあらすじ
爆豪と紅煉の救出作戦に来た緑谷達は発信機の示す場所につくとそこでは脳無が量産されていた!
だがそこにヒーローが到着し事態は終わりに向かっていたが、最悪の存在オール・フォー・ワンが登場し事態は一変!
さらに爆豪も強制的に連れてこられる!そこをオールマイトが助けに来た!!
爆豪と紅煉はどうなるのか!?


 神野の廃工場、その工場でオールマイトとオール・フォー・ワンはぶつかり合っていた。

 

「随分と遅かったじゃないか。以前の君ならもう少し早かっただろう?衰えたねオールマイト」

「貴様こそ何だその工業地帯のようなマスクは!だいぶ無理してるんじゃないか!?」

「言うじゃないかオールマイト」

「もう私は五年前の過ちを犯さん!爆豪少年は取り返す!お前と連合を刑務所に打ち込んでやる!」

 

 オールマイトがはオール・フォー・ワンに向かって拳を構える。するとオール・フォー・ワンは腕を上げ、オールマイトがの方へ向ける。

 

「それは…やることが多くてたいへんだな。お互いに」

 

 そして手を出した瞬間、オールマイトに衝撃が襲い、後方へ吹き飛ばされる。

 

「オールマイトぉ!!」

「心配しなくてもあれくらいならば死なないよ....だから弔、ここは逃げろ。彼を連れて」

 

 するとオール・フォー・ワンの指が黒くなり、黒霧に伸び、突き刺さる。

 

「黒霧!彼らを逃がすんだ!」

「ちょっと!?黒霧は気絶してるのよ!?それにあんたがすればいいでしょ!?」

「それはできないんだマグネ。僕のはその人に関わる場所や人しか無理なんだ。黒霧のようにはいかないのさ」

 

 すると黒霧から黒いゲートが開く。

 

「さあ、行け」

「せ、先生は....?」

 

 消え入りそうな声で死柄木はオール・フォー・ワンに問いかけるがそこへ先程吹き飛ばされたオールマイトが戻ってくる。

 

「逃さん!」

「常に考えるんだ弔、君はまだ成長できる」

「行こう死柄木!あのパイプ仮面がオールマイトを食い止めてくれている間に!コマを持ってよ!」

 

 Mr.コンプレスは気絶した志々雄を個性で玉に変え、トォワイス達は勝己の方に向く。

 

「めんっ....どくせえー....」

 

 爆豪はそう吐き捨て、今の状態を打開する方法を考えていた。連合側も必死なのか爆豪を強引にでもとらえ連れて行こうと躍起になる。

 

「爆豪少年!!今行くぞ!!」

「させないさ、そのために僕がいる」

 

 オールマイトもオール・フォー・ワンに邪魔をされ助けに行けない。

 すると緑谷はこの状況を打破するための策を思いつき飯田達もそれに乗る。

 

「僕のフルカウルと飯田君のエンジンの推進力!そして切島君は硬化して壁をぶち破る。それと同時に轟さんは氷を展開する。なるべく高く、跳べるように……」

 

 緑谷はフルカウルになり飯田はエンジンを吹かし、硬化した切島を担ぐ。

 そして耳郎と八百万の合図とともに二人は壁をぶち抜き、それと同時に轟が巨大な氷のジャンプ台を形成し、そのまま走り抜け、空に跳び出す。

 

「奴らは僕らに気づいてない!これまで散々出し抜かれてきた相手に、今度は僕達がそれをできる立場にある!そしてそのまま手の届かない高さから戦場を横断する!ヴィランのボスはオールマイトを食い止めてる、これは逆もまた然り!!

「そしたら切島君が一言、たった一言言うだけでいい。そうすればかっちゃんは必ず答えてくれるはずだ。僕や、飯田君、八百万さん、耳郎さんや轟さんじゃダメだ!入学してからずっと対等な関係を築けた君の言葉ならきっと!」

 

 そして切島は爆豪がいる方に手を伸ばし、その一言を叫ぶ。

 

「来い!!」

 

 その声を聞いた爆豪は目を見開く。爆豪の次の行動に気付いた死柄木はすぐさま爆豪を掴もうとしたが次の瞬間、爆破で爆豪は離脱し、切島の腕をしっかりと掴む。

 

「……バカかよ!」

 

 そう悪態をつくが爆豪の表情には「遅せぇよ」と言わんばかりの、小さな笑みがあった。

 

「爆豪君!俺の合図に合わせて爆風で!」

「あ"あ"!?てめぇが俺に合わせろ!!」

「張り合うなこんな時に!」

「思った通り向こうに釘付け!逃げるよ!」

「何処にでも、現れやがる!!」

「マジかよ…全く!」

 

 そして緑谷達に注目されている隙に凍火達はその場から退散していく。しかし敵連合も動きを見せる。

 

「逃がすな!遠距離ある奴は!?」

「志々雄に黒霧!両方ダウン!!」

「あんたらくっついて!!」

 

マグネ!“個性”『磁力』!

自身の半径4.5mの人物に磁力の付加する!

全身、一部力の調節可能!男はS極、女はN極になるぞ!

なお自身に付加できない!

 

 マグネは自身の個性をスピナーとMr.コンプレスに個性を付加する。

 

「行くわよ!《反発破局・夜逃げ砲》!!」

「《タイタンクリフ》!!」

「っだ!!?」

「Mt.レディ!!?」

「救出…優先、行って!バカガキ」

 

そしてMr.コンプレスは個性の反発で射出され、緑谷達の方へ迫っていく。

しかし突如、Mr.コンプレスの目の前に巨大化したMt.レディが現れ、Mr.コンプレスはMt.レディとぶつから、二人とも衝撃で気絶する。

 

「まだ間に合う!もう1発!…ウッ!」

「ごっ!?」

「がっ!」

「…あぁ!グラントリノ!!」

 

 そしてマグネ達はもう一度夜逃げ砲を打とうとするがグラントリノによって阻止される。

 

「遅いですよグラントリノ」

「おめえが速いんだよ!それより俊典!またあのアイツ!緑谷!?っとにますますお前に似てきとるよ!悪い方に!!」

「保須の経験を経てまさか来てるとは……」

「しかし情けないことにこれで心置き無くお前を倒せる!!」

 

 オールマイトはオール・フォー・ワンを見てそう言う。グラントリノは死柄木とトガと対峙して攻撃しようとするが、オール・フォー・ワンは動じた様子もなく言い放つ。

 

「やれやれ、一手できれいに形勢逆転か……仕方ない…と言うと思ったか?オールマイト!僕のコマはこれだけじゃない!!」

「「なにっ!?」」

「来たまえ!!」

「「「「うわぁぁぁっ!!」」」」

 

 オール・フォー・ワンはそう言い放つと天に手を掲げ叫ぶ。すると、青黒い(・・・)炎が緑谷、飯田、切島、爆豪を戦場へと押し戻した。

 

「緑谷少年達!?」

「何故ここに!?それよりも今の炎は!?まさかプルトンか!」

「俺はここだよグラントリノ、にしても老けたなクソジジイ…驚いたぜ」

「なにっ!?では誰だ!!」

 

 プルトンはオール・フォー・ワンが出た工場から姿を現す。とてもそこからでは四人を押し戻す炎は出せないとわかったオールマイトはその方向に目を向ける。

 緑谷達も同様にその方向に視線を向けるとその目を疑った。

 

「紹介しようオールマイト。彼は僕達の新しいペット。記憶は消され、母親が殺されてる現場を君は通ったのに見捨てられ僕らに拾われたという新しい記憶を植えつけた、もはや君たちの知る彼(・・・・・・・)ではない!」

「そ、そんな、まさか……」

「あ、あの小僧は」

「ククククッ、いいねぇその顔、見て見たいと思ってたんだ」

「う、嘘だろ?そんな訳」

「な、なんてこった」

「マジかよ、クソが!」

「そんな、嘘だ!」

 

 オールマイトやグラントリノ、緑谷達の前に現れたのは彼らのクラスメイトであり共に競い合ってきた仲間、そして……今回の林間合宿で爆豪と共に攫われていた筈の……

 

「スルトだ」

 

 火群紅煉だったのだ。

 

「……鳩が豆鉄砲喰らったような顔してなに人の顔を見てるの?そんなにおかしい?」

 

 いつもの暖かい表情ではない。冷たい表情で、ハイライトの無い目で緑谷達を見ながらまるで鉛のような重く冷たい声を滲ませながらそう呟く。緑谷達の知る紅煉では無い。

 

「オール・フォー・ワン!!貴様ァァァっ!!」

「僕のやりそうなことさ!そうだろ?オールマイト!!」

 

 オール・フォー・ワンは指を黒い触手に変化させ、オールマイトに伸ばし、オールマイトは咄嗟に右に避ける。しかしその触手はオールマイトではなく、マグネに突き刺さる。

 

「っ!?」

 

「個性強制発動....磁力!」

 

 すると敵連合のメンバー全員に磁力が付加され、ゲートの前にいるトガに向かって気絶したメンバーが全員引き寄せられる。

 

「え!?そんなに急に来られても!?ふがっ!?」

 

 トガは敵連合のメンバーに激突し、ゲートの中へ消えていった。

 そして死柄木も個性に抗いながらもその場に止まろうとする。

 

「先生!だめだ!その体じゃあんたは!」

「大丈夫さ。君はまだやることがあるだろ?」

「でも!俺は!!」

「弔....君は戦いを続けろ」

「しまった!!」

 

 その言葉を最後に死柄木はゲートに消え、ゲートは消滅した。

 

「今助けるぞ!小僧ども!」

「させねぇよ」

「ぬっ!?」

「お前の相手は、俺だ。クソジジイ」

「退け青二才!!」

 

 グラントリノが緑谷達を助けに向かおうとするとプルトンがその行く手を阻む。

 

「なんかの冗談だよな!?火群!」

「俺達は君を連れ戻しに来たんだ!火群君!」

「どうしちゃったんだよ!火群君!」

「デク!眼鏡!クソ髪!!下がってろ!!」

「「「っ!?」」」

 

 切島と飯田、緑谷は紅煉に精一杯声を掛けるが、爆豪に下がれと言われる。その爆豪の顔は焦り顔が滲み出ていた。

 

「今のアイツには何も響きやしねぇ、俺はまだ戦闘許可を解除されてねぇ!お前らされてんだろ?!」

「かっちゃん!でも火群くん相手に一人じゃ」

「そうやってまた体をぶっ壊す気か!?今度は治してくれる鳥野郎は居ねぇんだぞ!?」

「敵を前に喧嘩か?余裕だな」

「っ!!?緑谷!爆豪!!」

「《炎戒・火柱》」

「「グアアァァァァァッ!!!」」

 

 紅煉は爆豪と緑谷に青黒い火柱を放ち二人はそれをもろに食らう。

 

「緑谷少年!爆豪少年!!」

「いい眺めだなオールマイト。しばらく2人で見続けようじゃないか!」

「くっ」

 

 オールマイトはすぐにでも助けに行きたいがオール・フォー・ワンに邪魔をされる。かと言ってオール・フォー・ワンと戦えば周りに被害が及び紅煉らを傷つけることとなる。

 

「さぁ、始めようか?雄英高校ヒーロー科の諸君。蹂躙だ」

 

 紅煉は冷たく緑谷達に言い放つと緑谷達はゆっくりと構える。

 

「《赫灼熱拳“ジェットバーン”》!」

 

 すると紅煉と緑谷達の間を縫うように炎が吹き上がる。その方向を見ると凍火と八百万さん、耳郎さんが立っている。

 

「轟さん!」

「八百万君に耳郎君まで!!」

「轟?そうか、あれがNo.2の娘か……」

「なにしてんの?紅煉……」

「どういう事ですの?爆豪さん達が吹き飛ばされたのを見て戻ってきたら……」

「どう見ても紅煉は操られてるだけっしょ!なんとか正気を戻さないと」

「でもどうやって?」

「今は様子を見よう」

 

 緑谷達はなぜ来たという目で凍火達を助けに見て紅煉があっちに行ったら大変だと紅煉の方を向くと…

 

「女を痛めつける趣味はねぇ……アイツらは無視させてもらう。あまりにもしつこかったら炎の壁で閉じ込めればいいしな、それに最優先はそこの爆豪勝己だ」

「どうやら轟さん達が狙われることはなさそうだ」

 

 紅煉は凍火達に興味はないようだ。最優先として爆豪の方を向きながら言う。

 

「爆豪。こっちに来い、そうすればそいつらは逃がしてやる」

「あ?寝言は寝て死ね!!てめぇこそ記憶がねぇのならぶん殴って思い出させてやらァ!!」

 

To Be Continued




今回はここまでとします。
爆豪奪還作戦成功と思いきや意外な乱入者、紅煉の登場。
いつもの紅き炎とは違う青黒い炎を扱う。この炎については次回説明します。


それではまた次回!


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第34話 火群の覚醒

前回のあらすじ
ついに対峙したオール・フォー・ワンとオールマイト!
爆豪が脱出の手段を考えてるとはるか上空から緑谷達の救援が!それを利用し脱出する爆豪と緑谷達だったが、突如また戦場に戻される!
そこに居たのは記憶を消され敵として君臨したクラスメイトの姿だった!!


 神野の廃工場跡地、そこでは沢山のプロヒーローが倒れ、今現在……紅煉と爆豪らが対峙していた。

 

「爆豪。こっちに来い、そうすればそいつらは逃がしてやる」

「あ?寝言は寝て死ね!!てめぇこそ記憶がねぇのならぶん殴って思い出させてやらァ!!」

 

 紅煉の提案をあっさりと突き放しながら爆破で飛び上がり突っ込んでくる爆豪。それを見た紅煉はやれやれと肩を竦める。

 

「君は馬鹿か?この状況でどうするのだ?後ろはヒーロー免許がないと闘えない足手まとい…いくら君が抵抗したって無意味だと思わないか?」

「思わねぇな!!《閃光弾(スタングレネード)》!」

「ッ!?閃光弾だと!?」

 

 爆豪の掌から強烈な閃光が辺りを照らし視界を真っ白にする。

 

「記憶がなくなれば俺たちの技も覚えてねぇだろ!死ねぇ!!」

「ぐっ!」

「凄い!火群君に対応してる!!」

「おぉ!すげぇぜ爆豪!!」

 

 紅煉が怯んだ隙をつき連続爆破で紅煉を攻撃する。皆もその土壇場な判断力に驚かされる。

 

「まさか彼の頭の回転がここまで早いとは、少し誤算だった」

「くっ、すまない少年少女!!私は助けに行けない!怪我せず、無理せず、逃げれる時は逃げろ!」

 

 オール・フォー・ワンとオールマイトは爆豪と紅煉の戦闘を見てるだけしかしてない。むしろオール・フォー・ワンは結果が気になり、オールマイトはどうにかしたいがオール・フォー・ワンのせいで何も出来ずにいる。

 

「オラァ!!どうした!?もうおしめぇかよ!」

「調子に乗るな!爆発三太郎!!《大炎戒》!」

「うおっ!?」

 

 爆豪の猛攻に嫌気が差したのか一気に巨大な炎戒を広げる。

 

「これは仕方ない事だ。爆豪!貴様を捕えるためにまず、この辺り一帯を消し飛ばす!!」

「「「「なにっ!!?」」」」

「《炎帝》!!」

 

 紅煉は青黒い太陽のような巨大な火の玉を造り出し、天に掲げる。

 

「なんじゃ、そりゃ!!」

「不味い!あの大きさだとこの辺り一帯は焼け野原になるぞ!!」

「逃げろ!小僧共!!焼け死ぬぞ!」

「もう遅い、貴様ら全員、焼け焦げろ!!」

「《穿天氷壁(がてんひょうへき)》!!」

 

 紅煉が炎帝を投げると凍火が氷結の能力を使い広範囲を一気に凍らせ圧倒的大質量の氷を作り出し、炎帝を相殺した。

 

「クソっ!邪魔をするな!!《天津麻羅之鍛治(あまつまらのかじ)天沼矛(あめのぬぼこ)”》一斉発射!」

「轟さん!!」

「おい!逃げろ半分女!!」

 

 炎の槍をいくつも造り出して凍火へと放つ。だが凍火は恐れる様子もなく前へ出る。

 

「《氷塊造形(アイスメイク)氷創騎兵(フリーズランサー)”》!!」

「す、すごい、こんなことが出来るなんて」

 

 掌から無数の氷の槍を高速で飛ばして天沼矛(あめのぬぼこ)を相殺させる。

 

「クソがっ!なら、これでも食らうがいい!《大炎戒・火柱》!!」

 

 紅煉は自身を中心に巨大な青黒い炎の柱を放つ。だが寸前で全員範囲外に逃げた。

 

「ぐっ!あぁっ!」

「火群君!?まずい、あの炎は火群君も焼いてる!!」

「「「なんだって!?」」」

「そうとも、彼の個性は彼の感情で炎の昂り方が違う!憎悪を抱けば抱くほど、炎の威力も火力も上がるが彼の身を蝕み続けるいわば諸刃の剣!あれを続けたら死ぬと思うよ、どうする?オールマイト!!」

「なっ!?火群少年!よせ!やめるんだ!!」

 

 緑谷は紅煉が自分の炎で焼かれていることに気づき皆に言い放つと、オール・フォー・ワンが炎の解説をする。それを聞いたオールマイトが紅煉を止めようとしてる。

 

「敵の心配とは、余裕だな!!オールマイト!!俺はあんたが憎い!俺の母を殺した、あんたが憎い!!」

 

『本当にオールマイトが殺したのか?』

 

 紅煉の頭の中にノイズのような音と女性の声が響く。

 

「っ!!?誰だ!!?」

「あ?どうしたあいつ急に」

「オール・フォー・ワン、なんかしたのか?」

「僕は何もしてないよ、その様子だとプルトンもわからないのか?」

「わからない。何を言ってるんだ?」

 

 突如発した紅煉の謎の台詞。紅煉本人にしか聞こえてないその声とノイズ音は紅煉はどこかで聞いた気がした。

 

「誰だ!!答えろ!!」

『お前の母親は本当にオールマイトに殺されたのか?』

「っ!?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 紅煉は気が付くと謎の空間に居た、黒き炎が燻る、よく分からない場所。そしてそれは、何となく理解した。まるで記憶のどこからか取り出されたような……この場所の名は…

 

「……異界“煉獄(アドラ)”」

『その通り。ここはお前らの世界とは別の世界だ。異界“煉獄(アドラ)”へようこそ』

「あんたは、誰だ?なぜ俺を…なんだ?この記憶は、親父が、俺の敵?」

 

 紅煉は無意識に異界を調べてた際の記憶を取り戻した。その際何らかのキーが外れたのか一気にこれまでの記憶が流れ込んでくる。

 

「違う!俺の母を殺したのは、オールマイトなんだ!」

『違う。お前の母親を殺したのはお前の父親だ』

「どうなってんだ、俺は…何を?俺は、もう……もうやめろ、頭が痛い!何も思い出したくない!!」

『本当にそう?聞こえないか?お前を呼ぶ声が』

「なに?」

 

 紅煉が謎の声と話していると体の内側から響くように声が届く。暖かくて、とても悲しそうな声が……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「「「紅煉(さん)!」」」

「八百万君!?」

「轟さん!?」

「耳郎!?」

「てめぇら、何してやがる!!」

 

 八百万さんと耳郎さん、そして凍火は未だに炎を出す紅煉に凍火が氷を出しながら抱きつく。それを見た緑谷達は驚きの声を上げる。

 

「分かるんだ!紅煉は記憶を取り戻そうとしてる!!」

「でしたら、私たちが呼び戻さなくてはならないのです!」

「私たちがしなきゃいけないんだ!だって」

「「「紅煉(さん)の事が、大好きだから!!」」」

「「「「っ!」」」」

「おー、面白そうな話してんなぁ、おじさんも混ぜてくれよ」

 

 凍火達が自分の気持ちに答えると緑谷達はその覚悟を見て息を飲む、そこを邪魔するようにプルトンが立つ。

 

「俺の可愛い息子に手を出すなよ」

「《レシプロバースト》!」

「《SMASH》!!」

「《閃光弾(スタングレネード)》!」

「《烈怒頑斗裂屠(レッドガントレッド)》!」

「うおっと、いってぇな、やるねぇ最近のガキ共は」

 

 凍火達からプルトンを離すように間に立つ緑谷と飯田と切島と爆豪。

 

「3人とも、火群くんを頼むぞ!」

「僕達が時間を稼ぐ!」

「火群を助けてやってくれ!」

「失敗したらぶっ潰す」

「委員長」

「緑谷、爆豪」

「切島……」

 

 凍火達は4人のクラスメイトの背中を見てヒーローの背中と錯覚する。

 

「ふん、お前らだけで俺を止めるだと?個性使うまでもねぇぜ」

「ヒーローとして、友を守る!」

「救けて、勝つ!」

「勝って、救ける!」

「護る、ヒーローに!!」

「紅煉!戻って来て!!」

「負けないでくださいまし!」

「私達は信じる!あんたが帰ってくんのを!」

 

 プルトンと緑谷達は対峙を始め、凍火達は紅煉に語り掛ける。

 

「緑谷少年!ダメだ!!逃げるんだ!!」

「くそ!ダメだ俊典!奴が邪魔で向かえん!!」

「させないよ。オールマイト、グラントリノ!せっかく面白くなってきたんだ!」

 

 オールマイトとグラントリノも加勢に向かおうとするがオール・フォー・ワンに邪魔をされ何も出来ない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『お前を呼ぶ声が聞こえるだろ?お前はヴィランじゃない。ヒーローなんだ』

「俺が、ヒーロー……?」

『そうだ、お前はどんなヒーローになりたい?』

「俺の、なりたいヒーロー?」

 

 紅煉が何かを思い出そうとすると目の前の景色が変わる。あの日、あの事件が起きる前、最後に交した、出かける前に母に聞かれた質問だ。

 

〈紅煉……紅煉は、どういうヒーローになりたい?〉

「母…さん?」

〈う~ん、分かんない!〉

「昔の、俺?」

〈そっか、じゃあ決まったら教えてね!母さんとの約束!〉

〈うん!分かった!〉

 

 それが母との最後の会話。約束が果たせなかったその日、紅煉は泣き叫び終えた時、母の遺体に向かって、その手を握って言った。

 

〈母さん、僕は、俺は……“己が視界に入る全ての人間を背負うヒーロー”に、なりたい!〉

 

 紅煉の目から、自然と涙がこぼれる。全てを思い出した。母親とした、自分への誓いを…

 すると、謎の声はさらに言う。

 

『改めて聞くよ、火群紅煉。君は、どんなヒーローになりたい?』

「……俺は…“己が視界に入る全ての人間を背負うヒーロー”になりたい!いや…ならなきゃ、いけない!!」

『いい答えだよ……紅煉。さぁ行け!そしてあの火群太陽に言ってこい!俺は、ヒーローだってな!』

「はい!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「がはっ!」

「おいおい、口だけかよ……準備運動にもなりゃしねぇ」

 

 緑谷達はプルトンにいとも簡単に倒された。緑谷は腹に蹴りを貰い、飯田は頭を掴まれ地面に叩きつけられ、切島は殴り飛ばされ、爆豪は踏み潰された。

 

「さてと、お嬢さん達?今すぐそいつから離れねぇと、お前らを焼く」

「くっ!八百万たちは逃げて!」

「逃げる訳にはいきませんわ!」

「私達にだって、意地はある!」

「ひゅ~♪かっこいいねぇ、さすがはヒーロー志望。だけど、これでおしまいだ。」

 

 凍火達は紅煉の前に立つ。そこをプルトンが右手に獄炎(ヘルブレイズ)を纏いながら近づいてくる。だがそれでもどかない凍火達。凍火が相殺してたとはいえ熱量で動けないのもあるのだろう。

 

「死ね……《波状の獄(ヘルブレイズ・ウェー)「《火拳銃(レッドホーク)》!!」ブッ!?」

 

 プルトンは凍火達の背後(・・)から伸びた炎の拳に頬を殴られ吹っ飛ぶ。

 

「「「えっ?」」」

「「「「な…」」」」

「なんと、まさか」

「おいおい、マジかよ!」

「そんな、馬鹿な!?」

「嘘、だろ?」

 

「俺の女に手を出すなクソ親父」

 

 右腕に紅き炎を纏いながら紅煉はそう言い放つ。

 

「「「紅煉(さん)!!」」」

「「「「火群(君)!!」」」」

「火群少年!」

 

 凍火達、緑谷達、オールマイトは歓喜の叫びを挙げる。そして彼らの知らないところで見ていた他のA組のクラスメイトもこの事態をテレビで見ていて喜び叫ぶ。

 

「馬鹿な!!記憶は完全に消したはずだ!何故、なぜだ!?」

「てめぇらの嘘くせぇ記憶じゃ、俺の志までは変えられねぇんだよ!!全てを終わらしてやるよ……覚悟しやがれプルトン!!……今俺は、今までで一番、燃えてきてるんだ!!」

 

 紅煉の背中から不死鳥の翼が一気に辺りに拡がる。すると、すぐに変化が訪れる。

 

「僕の怪我が、癒えてく!?」

「緑谷君もか!俺もだ!」

「俺も!」

「まさかこりゃ、全員そうなのか?」

「っ!?(これは、失われた臓器が、傷が癒えてく!?)」

 

 不死鳥の翼は緑谷達を包むと怪我が癒えていってる。それに気づいたオールマイトは自身の変化にも気づく。さらにその他のプロヒーロー、特に大怪我をしていたベストジーニストの傷も癒えてく。

 

「これはまさか《不死鳥の羽衣》!?」

「馬鹿な!!その技は彼女(・・)にしか出来ないはず!!」

「その人に教えてもらったんだよ、先代不死鳥(フェニックス)保持者……火群天照からな!!」

 

 オール・フォー・ワンとプルトンが驚いていると紅煉がそう言い放つ。それを聞いた瞬間、プルトンとオール・フォー・ワンは驚きの表情を見せた。

 

「この不死鳥の“個性”は預かりもんだ……プルトン、あんたがこれを狙う理由はただ一つ、異界“煉獄(アドラ)”にいる天照を通して“アドラリンク”を行い煉獄(アドラ)に行き、その世界を支配する!だがさせない……約束したんだ。てめぇを、ぶっ飛ばすってな!!俺は、ヴィランのスルトじゃねぇ!!俺は……」

 

 紅煉は一度目を閉じ、下を俯く……何かを考えるように、なにかの誓いを立てるように…そして目を見開くと言い放った。

 

「俺は…ヒーロー“スルト”だ!」

 

 そう叫ぶと全身から炎がオーラのように溢れ出し髪が紅くなる。

 その姿は某龍球探しのスーパーヤサイ人ゴッドを連想される姿をしていた。

 

「な、なんだ!?その姿は!」

「個性伸ばしで考えてたのと少し違うが、名付けるとしたら……《ヒノカミ・フォース》!これが俺の、今なれる最強の姿だ!」

「くっ、貴様ァ!」

 

 そう叫ぶとプルトンは歯ぎしりをして紅煉を睨みつける。

 

「さぁ始めようぜクソ親父、最後の親子喧嘩ってやつをよ!!」

「最後だと?ふざけるな!!ここで貴様らを殺して、ジワリジワリと雄英高校の奴らも皆殺しにしてやる!!」

「オール・フォー・ワン。私たちも決着と行こう!この私の全てを、今ここで使い果たす!!」

「そうか、君も来るかオールマイト!!」

 

 紅煉とプルトン、オールマイトとオール・フォー・ワンが対峙する。その間に緑谷達は少し離れて様子を見ていた。

 

「かっちゃん!逃げよう!」

「待てよデク……俺はこの場で見てぇんだ。オールマイトの戦いっぷりを、火群の戦いを…」

「……かっちゃん……分かった。僕も残る」

「乗ったぜ爆豪!!俺も残るぜ!!」

「ここまで来たら乗りかかった船!俺も残る!」

「私も残りますわ」

「私も残る」

「私も」

 

 緑谷達は紅煉達の戦いを見るため、離れた位置で見るようだ。

 今この場で、全ての決着が着こうとしていた。

 

To Be Continued




今回はここまでとします。
前回の投稿からすごく早い投稿となりました。作者本人1番驚いております。
紅煉の帰還と覚醒。モデルはもちろん超サイヤ人ゴッドです。
次回は紅煉とプルトンの戦いがメインでオールマイトとオール・フォー・ワンはさほど原作と戦闘状況は違えど戦闘の仕方は変わらないので最後の一撃だけ出そうかと思ってます。

それではまた次回!


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第35話 火群VSプルトン

前回のあらすじ
記憶を失った紅煉の猛攻に自身を焼いていた。それを見かねた凍火達が無理矢理でも記憶を取り戻そうとする。
そして異界の世界に迷い飲むと謎の声に自身の目的、夢を思い出しそして今、プルトンの戦いに入る!


 会見の後、相澤先生やブラド先生は根津校長と共にテレビを見ていた。

 場面で言うなら紅煉が《不死鳥の羽衣》を使った辺りから報道ヘリが着いたようだ。

 その前から遠目からマスコミが歩いてやって来て遠くから撮っていたが……

 

「火群…爆豪!無事でよかった……それよりも、緑谷の奴、またこんな無茶を」

 

「にしてもA組の連中が向かってるとは、戦闘と言うより自衛のためだったようにも見えたが…」

 

「彼らも必死だったんだろうね」

 

 相澤先生は紅煉と爆豪の無事に安堵すると同時に緑谷達を怒る教師の目で見る。ブラド先生はそんなA組の心情を理解し、根津校長は緑谷達を賞賛した。

 そのまま三人は、この後どうなるかをしっかりと見ておくことにした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「この俺を倒すつもりとは驚いたぞ紅煉!だがもう容赦はしない!貴様を殺して不死鳥の“個性”を貰う!!」

 

「させると思うか?クソ親父」

 

 対峙するプルトンと紅煉。紅きオーラを放ち赤き髪を揺らす紅煉。

 

「《ヒノカミ・フォース》だったか?それが今お前がなる最強って言ってたが……変化したのは髪色だけ、とんだ見掛け倒しにか見えんぞ?今からでも遅くないから言ったらどうだ?『これはただの見掛け倒しです』ってよぉ、そうしたら少し痛い目に遭うだけで許してやっ!?」

 

「ペラペラとよく喋る……ここは戦場だぞ?一家団欒のお茶の間じゃねぇんだ」

 

「今、いつ動いた?」

 

「瞬きのような一瞬で、こんな芸当を……」

 

 喋り続けるプルトンを黙らせるように腹パンをする紅煉。だがいつ動いたのか誰も理解できなかった。オール・フォー・ワンやオールマイトですら…

 

「くっ!!《獄門刀》!」

 

「《禁忌[レーヴァテイン]》」

 

 プルトンは巨大な刀を生成すると振り下ろすが紅煉はそれを炎の大剣で受け止める。

 

「何っ!?馬鹿な!!」

 

「そんな刀もどきじゃ俺のレーヴァテインは折れねぇよ……“ヒノカミ神楽”《円舞(えんぶ)》」

 

「グッ!?なんだその……まさか!?」

 

 レーヴァテインを両手で握り、円を描くように振るう。プルトンはそれを受けてからその技に気づく。

 

「《灼骨炎陽(しゃっこつえんよう)》!《日暈の龍・頭舞い(にちうんのりゅう・かぶりまい)》!《火車(かしゃ)》!《飛輪陽炎(ひりんかげろう)》!《幻日虹(げんにちこう)》!《斜陽転身(しゃようてんしん)》!」

 

 紅煉のその技を繰り出す動きは、あまりに美しくまるで精霊が舞っているように見えた。

 それを見てプルトンは確信した。その攻撃を、否“舞い”を……

 

「やはりそれは、火群一族に代々伝わる厄払いの神楽の舞いか!何故それを使える!?何故教えてないのに使える!?それよりも、なぜ攻撃にできる!!」

 

「知る必要あるか?《烈日紅鏡(れつじつこうきょう)》!《碧羅の天(へきらのてん)》!《陽華突(ようかとつ)》!《輝輝恩光(ききおんこう)》!《炎舞(えんぶ)》!」

 

「ぐっ!だが、それで終わりだ!!ヒノカミ神楽は全十二の型しか無い!つまり!これからは俺のターンだ!」

 

 紅煉はその舞いを舞い続ける。すると型を全て出したのか獄門刀で防いでいたプルトンが勝ち誇った顔をする。

 だが、次の瞬間。

 

「《円舞(えんぶ)》《斜陽転身(しゃようてんしん)》……」

 

「は?」

 

 プルトンは素っ頓狂な声を出す。

 

「《火車(かしゃ)》!《幻日虹(げんにちこう)》!《輝輝恩光(ききおんこう)》!」

 

「馬鹿な!?繋げてるだと!?反撃の隙がない!」

 

 紅煉はヒノカミ神楽という名の舞いを舞い続けている。型を全て出しても途切れること無く続けている。

 

「そんな、馬鹿な!?まさか……そうか、そうだった!ヒノカミ神楽の舞いは、新年の始まりに、雪の降り積もった山頂において十二の舞型を、一晩中にわたって何百、何万回と繰り返して奉納することで、一年間の無病息災を祈る。そう言った舞いだった!まさか、朝までやるつもりか!?どれほどの時間と体力と呼吸を消費すると思っている!?酸素が取り入れられなくなって酸欠になるぞ?!」

 

「そうなったとしても、貴様を倒せるのなら本望!《碧羅の天(へきらのてん)》!《日暈の龍・頭舞い(にちうんのりゅう・かぶりまい)》!」

 

 途切らせること無く舞い続ける紅煉。だが、その心境に余裕など無かった。

 

「《陽華突(ようかとつ)》!《灼骨炎陽(しゃっこつえんよう)》!(クソっ!呼吸が続かない!ヒノカミ神楽の舞いは今俺も初めて使う!正しいヒノカミ神楽の呼吸が出来てない!正しい呼吸なら疲れないし酸欠にもならないはず!)まだまだ!!《飛輪陽炎(ひりんかげろう)》!《烈日紅鏡(れつじつこうきょう)》!《(えん)……ゴホッ!!」

 

 すると、技の使いすぎかなんかで咳き込み舞いの連撃が止まる。その隙をつかれプルトンは距離をとる。

 

「……恐ろしい子供だ。まさかここまでとは……《ヒノカミ・フォース》とやらも馬鹿にならんというわけだな……だがそれもこれまでだ!貴様の負けは確定しているんだよ!紅煉!!《獄炎の怒号(ヘルブレイズ・スクリーム)》!!」

 

 プルトンは螺旋状の獄炎を紅煉に向かって放つ。

 

「はぁ,はぁ……《火産霊神(ほむすびのかみ)》!!」

 

 紅煉も負けじと炎の竜巻を放つ。

 二人の技はぶつかり合い、互いの技をかき消した。

 

「《獄炎鳥(ごくえんちょう)》」

 

「《カイザー・フェニックス》!」

 

 プルトンが鳥のような形をした炎を放つと、紅煉も鳥の形を模した炎を作りだしプルトンに向かって放ち相殺させる。

 

「なかなかに粘るじゃねぇか……だがいつまで持つかな?倒すんだろ?この俺を……勝機はいくらだ?千に一つか万に一つか、億か兆かそれとも京か?」

 

「それがたとえ那由他の彼方でも、俺には充分過ぎる確率だ」

 

 そう言う紅煉は右手に炎を纏わせる。その温度はどんどん上がっていくのに気付かず……

 

「そうか、ならばこの技で終わりにしてやろう……那由多の彼方がどれほど遠くかその身をもって味わうがいい!」

 

「俺は、自分のダチを、恋人を守り、己が視界に入る全ての人間を背負うヒーローになるんだ!!」

 

 紅煉はそのままプルトンに向かって走り出す。

 

「死ね!紅煉!!《獄炎極(ヘルブレイズ・オメガ)》!」

 

 獄炎(ヘルブレイズ)を超える熱量と大きさを誇る獄炎を紅煉に向かって放つ。

 

「俺は、お前を倒さなきゃ、いけないんだ!」

 

 そう意気込み炎を纏った腕を構える……が、その炎は急に消え、《ヒノカミ・フォース》も解除された。

 

「ッ!?“オーバーヒート”!?」

 

「フハハハハハッ!!どうやら運は俺についたみたいだな!!そのまま焼け死ね!紅煉!!」

 

 巨大な獄炎が迫る中、紅煉はどうしたらいいか考えた。

 

[そうだ。確かに俺には運がない……幼少期に母を亡くして、父がその犯人で、しかも知ったのは本当に最近だ……だけど、それを理由に負けたら……それを理由に俺のなりたいものになれなかったら……]

 

「意味がねぇんだよ!!だから、諦めない!!」

 

「ハッ!!やめとけ!“個性”が使用不可の状態で使えばお前が苦しいだけだぞ!フハハハハ……はっ?」

 

 紅煉はそう叫ぶとまた腕に炎を纏う。それをプルトンが笑うとあることに気付く。

 

「苦しくなるって知ってる……だからって、諦めろってか!?巫山戯んな!!俺は、ヒーローになるんだ!!」

 

 そう叫ぶ紅煉の炎を纏った腕、紅煉自体に変化はない……だが、纏っている炎が蒼くなっていくのだ。

 それを見てたプルトンはあることに気付く。

 

「まさか、“完全燃焼の炎”!?摂氏約10000度を超えるとされるあの炎が、紅煉の腕に!?」

 

「これは、お前に殺された母と叔父の分だ!!《灼熱の蒼火拳(ハルハール・インフィガール)》!!」

 

 紅煉の放った蒼き炎はプルトンの放った獄炎をかき消し、プルトンの横を過ぎていく。

 

「な……なん…だと…!?馬鹿な、こんな炎が……」

 

「はぁ,はぁ,はぁ,はぁ…今の、炎は?……懐かしいような……」

 

 紅煉は無意識に使ったその炎に懐かしさを感じていた。

 するとプルトンが仕掛けてくる。

 

「ならこれならどうだ!!この獄炎なら、貴様を焼き殺せる!!」

 

 そう言うとプルトンは右腕に獄炎を纏う。

 

「この技は俺も使うのを避ける!使うと火傷を負うからだ!だがお前には使おう!貴様を殺すために!この禁術を!!」

 

「っ!!」

 

 身構える紅煉。プルトンは構えるとその獄炎を纏った右腕を前に突き出しながら言う。

 

「《邪王炎殺黒龍波(じゃおうえんさつこくりゅうは)》!!」

 

 黒き獄炎の龍を放つプルトン。こちらに向かってくる黒龍波を見た紅煉はぽかんとしながらもある事を思いついたのか、少し笑みをこぼす。

 

「右腕にさっきの青い炎を、左腕にいつもの炎を……二重奥義!《煌龍波(こうりゅうは)(アンド)蒼龍波(そうりゅうは)》!!」

 

 紅煉は右腕から蒼き炎の龍を、左腕から紅き炎の龍を放つ。

 

「何っ!?お前も使えたのか!?」

 

「……この蒼い炎……俺の力不足か、それとも“オーバーヒート”のせいか?纏って使うとしたら5秒しか持ちそうにないな……だけど“コレ”なら問題ない」

 

 紅煉はプルトンの質問を無視して蒼い炎の考察をしている。どうやら蒼い炎は今は一瞬くらいしか使えないようだ。

 紅煉の放った二匹の炎龍とプルトンの放った炎龍は何故か互いに空へと昇り紅煉に落ちていき、紅煉は三匹の炎龍に呑み込まれた。

 

「……ハッ!大口を叩いておきながら自滅とはな!やはりお前はその程度の男よ紅煉!!どんなに頑張ろうが、この俺には勝てないのだ!!」

 

「何言ってんの?見せたいのはここからなんだよ?」

 

「……えっ?」

 

 プルトンは紅煉が自殺したと勘違いすると紅煉は暖かい声色でそう言う。

 そして蒼色と紅色と黒色の炎が治まると紅煉が炎の真ん中に立っていた。

 

「親父は勘違いしてるようだけど……《黒龍波》,《蒼龍波》,《煌龍波》は単なる飛び道具ではない。《黒龍波》,《蒼龍波》,《煌龍波》を“喰らう”事で術者の戦闘能力と火力を爆発的に向上させる言わば“栄養剤(エサ)”なんでだよ。さらにその効果により肉体を疑似的に竜に近しい属性となるため、嗅覚及び聴覚が異常に発達し、圧倒的火力によるオート防御を可能としている。《煌龍波》単体なら《ドラゴン・フォース》と言ってるとこだが、これは3つの龍を合わせた……名付けるなら、そう《ドラゴニック・フォース》」

 

「ド、《ドラゴン・フォース》?《ドラゴニック・フォース》?てか、黒龍波を喰らう?何を言って…」

 

 プルトンは紅煉の言ってることが理解出来ないのかオドオドしている。

 

「何を言ってるか?簡単だよ。俺はあんたで言う所の《黒龍波》を極めたって言ってんだ。とりあえずコレでオーバーヒートの心配はなくなった。酸欠も多少楽になってたしな、何より今の俺は……強い」

 

「なん…だと…!?」

 

 そこまで言うと紅煉は拳を構える。

 

「さぁ、続けようぜ……技を極めようとしなかったクソ親父」

 

「……舐めるなよ?技を極めただけの糞餓鬼…」

 

 今、最強最悪の親子喧嘩が始まる……

 

To Be Continued




今回はここまでとなります。
復活した紅煉の新たなる力、その最大を発揮することなく無茶をした舞いでオーバーヒートとなってしまった。
しかしプルトンの煽りにより、オーバーヒートの状態から完全燃焼の炎を出せるようになった。
しかしほんの5秒しか纏えない為連続使用は不可、そこでプルトンが黒龍波を放ったので蒼い炎での奥義《煌龍波》改め《蒼龍波》と《煌龍波》を同時に放ち黒龍波と共に喰らい尽くして新たなる力に目覚める。
プルトンと紅煉の親子喧嘩の結末は?オールマイトはオール・フォー・ワンに勝てるのか!?

次回《火群と決着》

それではまた次回!


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第36話 火群と決着

前回のあらすじ
新たなる力《ヒノカミ・フォース》に目覚めたがヒノカミ神楽の舞いを行い正しい呼吸が出来なかった為酸欠になりオーバーヒートとなってしまう。
そこにプルトンの追撃に襲われ焼かれそうになった時蒼い炎を放つ。
プルトンはなかなかとどめを刺すことができず黒龍波を放つが紅煉が放った蒼龍波と煌龍波と共に紅煉に食われてしまう。そして紅煉は《ドラゴン・フォース》を超える力を得た……


 オール・フォー・ワンとオールマイトが戦ってるすぐ側で親子喧嘩をするプルトンとスルトこと紅煉……彼等も決着の時が近づいていた。

 

「さぁ、続けようぜ……技を極めようとしなかったクソ親父」

 

「……舐めるなよ?技を極めただけの糞餓鬼…」

 

 そう言いながら構える紅煉とプルトン。

 

「《灰燼龍(かいじんりゅう)》!」

 

 プルトンは炎の龍を紅煉に向かって放つ。それを見た紅煉は拳を構える。

 

「無駄だ!火竜程度ではその炎は防げん!!」

 

「……《炎竜王(えんりゅうおう)崩拳(ほうけん)》」

 

 紅煉はその拳に巨大な炎を纏い放ち大爆発を起こす事で灰燼龍をかき消した。

 

「な、なにぃ!?」

 

「弱っちい炎だな……喰らえ《炎竜王(えんりゅうおう)のー」

 

「なっ!?ま、待て!!俺は実の父親だぞ!?俺はお前の親父なんだぞ!!?」

 

 プルトンが驚くと紅煉は追撃しようと口を軽く膨らませる。何をするか気づいたプルトンは命乞いなのか止めるよう促すが、それは紅煉の怒りの炎を焚き付ける火に油を注ぐ行為だった。

 

「そんな父親が居てたまるかよ!《炎竜王(えんりゅうおう)咆哮(ほうこう)》!!」

 

「ぎゃああああああああああああぁぁぁッ!!?」

 

 その爆炎のブレスは「火竜の咆哮」を遥かに凌駕する威力だった。その一撃は大地を大きく抉り取り地形を変えてしまう……プルトンはそれに呑み込まれ、地面に伸びているが、まだ意識はある。

 

「グッ、クソ、だが、詰めが甘いわ!!」

 

 そう叫ぶとプルトンは緑谷達の方に手を向ける。

 

「貴様等を殺して、紅煉の精神にトラウマを植え付けてくれる!!《爆発する獄炎(ブラスト・ヘルブレイズ)》!!」

 

「なっ!?汚ねぇ!」

 

「やばい!あれは私の氷結でも防げない!」

 

「逃げれない!」

 

「フハハハハハッ!死ねぇ!!」

 

 プルトンは勝ち誇った声を上げながら球状の獄炎を放つ。…だが、緑谷達の前に“ソレ”は緑谷達を護るように立った。

 

「そうすると思った……だから油断も隙もねぇんだよ……」

 

「な!?い、いつの間に!!」

 

 プルトンは驚きながら紅煉を見る。紅煉はさっきまでプルトンを挟んで緑谷達の反対方向に居た、それが一瞬で目の前に来たのだ。

 

「《ドラゴニック・フォース》強制解除……《ヒノカミ・フォース》発動」

 

 紅煉は《ドラゴニック・フォース》を解除し、《ヒノカミ・フォース》を再発動する。

 

「火群君!それを使ったらまたオーバーヒートしちゃうんじゃ!?」

 

「大丈夫……この一撃で終わる…」

 

「なんだと?どうするというのだ!?その獄炎の球は触れたもの全て焼き尽くすぞ!」

 

「ならそれ以上の火力で消し飛ばすのみだ……()〜…()〜……」

 

 紅煉は両手を前に突き出すと“()”の発音時に両手首を合わせて手を開いて、体の前方から腰にもっていく“()”の発音時に腰付近に両手を持っていきながらさらにその体制を維持する。

 

()〜…()〜……」

 

 そのまま“()”の発音時に蒼い炎を集中させ両掌の中で圧縮させプラズマを発生させエネルギー状にさせ“()”の発音時に両手を完全に後ろにもっていて、溜めが満ちた状態にする。

 

「な、なんだ!?」

 

「ー()ーーーーーーーッ!!」

 

 最後の発音で両手から蒼きプラズマとなった炎を対象に向けて放つ。その見た目はまんま“かめ○め波”……もはや伏字も意味をなさないが…

 その炎は獄炎の球を消し飛ばしプルトンに向かっていく。

 

「なっ!?く、来るな!!《獄炎(ヘルブレイズ)》!《獄炎(ヘルブレイズ)》!」

 

 プルトンは最後の足掻きなのか獄炎を放つが《火滅破滅波(かめはめは)》に当たると全てかき消える。

 そのまま蒼き光の炎はプルトンを飲み込み空へと昇り消えていった。え?プルトンは死んだのか?生きてるよ……気絶はしたけど

 

「……これで、終わった……」

 

 紅煉は《ヒノカミ・フォース》が解けると膝をつく。それを見た緑谷達は駆け寄る。

 

「大丈夫か!?火群!」

 

「無理しないでください!」

 

「す、すまない……だが、俺にも最後まで、見なきゃいけない……」

 

 そう言って見た先にはオール・フォー・ワンと対峙するオールマイト。

 

「オールマイト……なんなんだよあの敵……オールマイトと渡り合ってるぞ」

 

「奴の名はオール・フォー・ワン。奴の“個性”は『他者の"個性"を奪い自身の"個性"にする。他人から奪った複数の"個性"を個々に使用できるだけでなく、複合させて使用することもできる。また、奪った"個性"を他者に与える事も可能』ということ事が出来る“個性”だ」

 

 紅煉のその説明に爆豪達は息を飲む。それを聞いてあまり驚かなかったのは緑谷だった。

 

「クソ親父はこんなのと手を組んでたのか……」

 

 紅煉は武者震いしながらその戦闘を見ていた……自分がやってきたことが幼稚に見えるようなその戦闘を…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 オールマイトの拳とオール・フォー・ワンの攻撃がぶつかり中心で反発し合って大きな爆発を起こしているような衝撃が辺りに広がる。

 

「本当に厄介だねオールマイト。だが戦うというのなら受けて立つよ」

「なにせ僕は君が憎い。かつてその拳で僕の仲間を次々と潰し回り、お前は平和の象徴と謳われた。僕らの犠牲の上に立つその景色。さぞやいい眺めだろう?」

 

 するとオール・フォー・ワンはオールマイトではなく街の方角に向けて腕をふくらませる。

 そしてオールマイトは腕の方向に回り込み拳をぶつけて相殺する。

 

「(強引に打ち消したか)心おきなく戦わせないよ。ヒーローは多いよな…守るものが」

 

 街は少し壊れ安全な区域に避難をしはじめる人々が出てきた。

 

「黙れ!!貴様はそうやって人を弄ぶ!壊し!奪い!つけ入り支配する!日々暮らす方々を!理不尽に嘲り笑う!私はそれが!!」

 

[マズい…“転送”を]

 

 オールマイトはオール・フォー・ワンの腕の骨がボキボキと折れる音が出るほどの力で掴みこみ腕を振りかぶった。

 

「許せない…!!」

 

オールマイトの拳がオール・フォー・ワンの顔にモロに入る。

そしてオール・フォー・ワンの顔に着けていたマスクが粉々に砕けた。

 

「…いやに感情的じゃないか。前にもそんなセリフを聞いたよ。先代ワンフォーオール継承者…志村菜奈。」

 

「貴様の穢れた口で…!お師匠の名を出すな!!」

 

「理想ばかりが先行しまるで実力の伴わない女だった…。ワンフォーオール生みの親として恥ずかしくなったよ。実にみっともない死に様だった。子供を助け、そのこの前で息絶え…子供に絶望を与えた後…その子供は一時だろうと敵に堕ちた…!!」

 

「Enough!!」

 

 オールマイトは声を上げて拳を上げたが、一瞬の隙をついてオール・フォー・ワンがオールマイトを空に打ち上げた。それをグラントリノが受け止めた。

 

「俊典!!8年前と同じだ!落ち着け!!そうやって挑発に乗って!奴をとらえ損ねた!腹に穴を開けられた!」

「お前のダメなとこだ!奴と言葉を交わすな!」

 

「……はい…」

 

「前とは戦法も使う個性も違うぞ!正面からまず、有効打にならん!虚をつくしかねぇ!まだ動けるな!?限界を超えろ!!正念場だ!!」

 

「……はい!」

 

「弔がせっせと崩してきたヒーローへの信頼……決定打を僕が打ってしまってよいものか…。でもね、オールマイト。僕が君を憎むように、僕も君が憎いんだぜ?」

 

オールマイトに対して、マスクが壊れた状態で言葉を継ぐオール・フォー・ワン。

 

「僕は君の師を殺したが、君も僕の築き上げてきたモノを奪っただろう?だから君には可能な限り醜く、酷たらしい死を迎えてほしいんだ!」

 

 そう言い終えると、オール・フォー・ワンは個性で片腕を膨らませ、更に強力な攻撃を繰り出そうと構えた。

 

「でけぇの来るぞ!避けて反撃を━━」

 

「避けて良いのか?」

 

「…!」

 

 僅かに聞こえた瓦礫の音。そこには、逃げ遅れた一人の女性がいた。

 

「君が守ってきたものを奪う」

 

「ぐっ…!」

 

「まずは怪我をおして通し続けたその矜持……惨めな姿を世間に晒せ、平和の象徴」

 

 瓦礫にいた女性を守るべく、ワン・フォー・オールによる強い衝撃で相殺させたオールマイト。だが、煙が晴れた時、彼の姿は…………トゥルーフォームになってしまっていた。

 その様子は街のモニターの生中継にも映し出されていた。

 

「そ、そんな……あれが…オールマイト…なの…?」

 

「い、一体何がどうなってんだよ!?筋骨隆々だった肉体が…」

 

「今はすっかり……痩せこけてしまってやがる」

 

「ば…馬鹿な…」

 

「これ……ドッキリじゃ……ないよね…?」

 

「そんな…ひみ…つ…」

 

「嘘…だろ?不死鳥の…個性で…傷は治した……ハズ」

 

 皆が驚く中、緑谷と紅煉はかなり青ざめた表情でオールマイトの姿を目の当たりにしていた。

 

 オール・フォー・ワンはトゥルーフォーム姿のオールマイトを見て、愉快そうに両手を広げながら笑っていた。

 

「頬はこけ、目は窪み!!貧相なトップヒーローだ。恥じるなよ。それがトゥルーフォーム(本当のキミ)なんだろう!?」

 

 だが、そんな姿を晒されてもオールマイトはオール・フォー・ワンに睨みつく

 

「……そっか」

 

「…身体が朽ち、衰えようとも…その姿が晒されようとも…私の心は依然、平和の象徴!!一欠片とて奪えるものじゃあない!!」

 

「素晴らしい!参った、強情で聞かん坊な事を忘れてた」

 

 一切屈する事なく言い張ったオールマイトに対して、オール・フォー・ワンは余裕の態度で更に続けた。

 

「じゃあこれも君の心に支障ないかな…あのね…………死柄木弔は、志村菜奈の孫だよ

 

 その瞬間、オールマイトの中の全ての時が止まった……

 

「君が嫌がる事をずぅっと考えてた」

 

 突然の衝撃の告白に、動揺を隠せない様子のオールマイト。オール・フォー・ワンは死柄木とオールマイトが会う機会を作る為、USJに襲撃させたのだった。それを知らずにオールマイトは、勝ち誇った笑顔で彼を下していた。

 

「ウソを……」

 

「事実さ。分かってるだろ?僕のやりそうな事だ。あれ…おかしいな、オールマイト。笑顔はどうした?」

 

 そのオールマイトの表情は笑っていなかった。同時に、彼の脳裏に浮かび上がったのは、先代の志村菜奈の姿だった。

 

『人を助けるってつまり、その人は恐い思いをしたって事だ。命だけじゃなく、心も助けてこそ真のヒーローだと…私は思う。どんだけ恐くても、「自分は大丈夫だ」っつって笑うんだ。世の中、笑ってる奴が一番強いからな』

 

「き…さ…ま…!」

 

「やはり…楽しいな!一欠片でも奪えただろうか」

 

「(お師匠のご家族……私は、なんということを━━…)~~~~ぉおおお━━…!!」

 

 オールマイトが酷く狼狽しかけたその時だった。

 

「負けないで……オールマイト……お願い…救けて」

 

 瓦礫の女性が、涙ながらにオールマイトに救いを求めたのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 その声は市街地からも響いていた。が、それを知るよしはない……だがオールマイトの為に、悪を倒すために紅煉達は叫ぶ。

 

「勝って!オールマイト!」

 

「みんなを救ってくださいまし!」

 

「漢だろ!オールマイト!!」

 

「我々も必死に応援させてもらいます!だから勝ってください!」

 

「頑張れ!オールマイト!!」

 

 凍火、八百万さん、切島、飯田、耳郎さんが声援を送る。次の瞬間

 

「勝って!!」

 

「勝てや!!」

 

「勝てよ!!」

 

「「「オールマイトォ!!」」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「お嬢さん、もちろんさ」

 

女性からの声に応えたオールマイトは、AFOに対して言った。

 

「ああ…!多いよ…!ヒーローは…守るものが多いんだよ、オール・フォー・ワン!!」

 

「だから、負けないんだよ…!!」

 

 そう叫ぶとオールマイトは、ワン・フォー・オールの残り火で右腕のみをマッスルフォームにした。

 

「痛…っ(あれ程の大規模攻撃を何度も相殺した……とうに活動限界を迎えている……右手のみのマッスルフォーム、その歪な姿が物語っている━━…)」

 

「渾身。それが最後の一振りだね、オールマイト。手負いのヒーローが最も恐ろしい。腸を撒き散らし、追ってくる君の顔。今でもたまに夢に見る。二・三振りは見といた方がいいな」

 

 腕を膨張させて攻撃しようとしたオール・フォー・ワン。しかし、横からきた炎を咄嗟に片手で払った。

 

「なんだ貴様…その姿は何だオールマイトォ!!!」

 

 脳無たちを全て制圧したエンデヴァーとエッジショット、そして何故かミルコが駆けつけてきたのだった。

 

「全て中位(ミルドレンジ)とはいえ…あの脳無たちをもう制圧したか。さすがNo.2に登り詰めた男」

 

貴様(オールマイト)……何だその情けない背中は!!」

 

「…!」

 

「応援に来ただけなら、観客らしく大人しくしててくれ」

 

 オール・フォー・ワンに対し咄嗟に飛び上がって蹴りを入れようとしたミルコ。しかし、オール・フォー・ワンはなんなく回避した。

 

「ゴチャゴチャとうるせぇんだよ!破壊者!!よくも私の可愛い鳥を誘拐しやがったな!」

 

「俺たちは救けに来たんだ……ミルコはどうかは分からんが」

 

 続いて駆け付けたシンリンカムイが『樹木』でベストジーニストとMt.レディ、ギャングオルカを絡め取って救出した。

 

「頑張ったんだな…!!Mt.レディ」

 

「!」

 

「我々…には、これくらいしか出来ぬ…。貴方の背負うものを、少しでも…」

 

「虎…!」

 

「あの邪悪な輩を…止めてくれ、オールマイト…!!皆、あなたの勝利を願っている…!!どんな姿でも、あなたは皆のNo.1ヒーローなのだ!」

 

オールマイトの目の前では、エンデヴァーとエッジショット、ミルコがオール・フォー・ワンと交戦を繰り広げていた。

 

「煩わしい」

 

オール・フォー・ワンは個性による計り知れない程の衝撃破で、周りにいるプロヒーローたちを吹き飛ばした。

 

「精神の話はよして、現実の話をしよう。『筋骨発条化』『瞬発力』×4『膂力増強』×3『増殖』、『肥大化』、『鋲』、『エアウォーク』、『槍骨』、今までのような衝撃波では体力を削るだけで確実性がない。確実に殺す為に、今の僕が掛け合わせられる最高・最適の個性たちで……君を殴る」

 

 右腕が尋常じゃないほど肥大化し、凶悪な形になったオール・フォー・ワン。彼はオールマイトに攻撃を仕掛ける前、こう言った。

 

「緑谷出久。譲渡先は彼だろう?」

「ある程度制御出来てるとはいえ、資格も無しに来てしまって……。存分に悔いて死ぬといいよ、オールマイト。先生としても、君の負けだ」

 

 そして一気にお互いに拳をぶつけた。その衝撃でまたしても周囲に大きな衝撃が巻き起こった。

 

「そうだよ」

 

「!?」

 

「先生として…叱らなきゃ……いかんのだよ!私が!叱らなきゃいかんのだよ!!!」

 

「……成る程、醜い(吹かずとも消え行く━━…弱々しい残り火。抗っているのか。役目を全うするまで絶えぬよう、必死で抗っているのか)」

 

[象徴としてだけではない…!!お師匠が私にしてくれたように…私も彼を育てるまでは…]

 

「まだ死ねんのだ!!!!」

 

 右腕で振りかぶるオール・フォー・ワンに対し、オールマイトは左腕で殴った。

 

[最後の一振り!右腕のパワーを左腕に、右腕を囮に使った!]

 

「らしくない小細工だ。誰の影響かな。浅い!」

 

 左腕を肥大化させたオール・フォー・ワン。だが、オールマイトの目は死んでなかった。

 すると左腕がトゥルーフォームに戻ると右手を構える。

 

「!?」

 

「そりゃア……腰が、入ってなかったからな!!!」

 

 吐血しながらもマッスルフォームの右腕で思い切り振りかぶるオールマイト。その脳裏には先代の姿、そして言葉が聞こえてきた。

 

『何人もの人がその力を次へと託してきたんだよ。皆の為になりますようにと…一つの希望となりますようにと。次はお前の番だ。頑張ろうな俊典』

 

「おおおおおお!!!!!」

 

 オール・フォー・ワンの顔面に拳をのめり込ませ、一気に振り落とすオールマイト。

 

「UNITED…!!STATESOF…!!SMAASH!!!!!」

 

 全身全霊を込めた、残り火のワン・フォー・オールによる渾身の一撃。その威力はすさまじく広大な衝撃と渦を巻くような煙が上がった

 この場にいるプロヒーローたちと緑谷達、そして市街地でモニターの中継を見ながら見守っていた市民たちが、その行方を固唾を飲んで見ていた。

 

 重傷を負いながらも、オールマイトはマッスルフォームで左の拳を掲げて仁王立ちした。オール・フォー・ワンはその場に倒れてピクリと動かなかった。

 

「「「「オールマイトォ!!」」」」

 

『ヴィランは━━━…動かず!!勝利!!オールマイト!!勝利の!!スタンディングです!!!』

 

 オールマイトのその姿に、大歓声を上げる市民たち。中には号泣してる者も多くいた。

 

「な…!今は無理せずに━━…」

 

「させて……やってくれ。……仕事中だ(平和の象徴…No.1ヒーローとして、最後の━━…)」

 

その後、他のプロヒーローたちも大勢駆けつけ、懸命な救助活動が行われていた。オール・フォー・ワンは移動牢(メイデン)に収監されていた。

 

『元凶となったヴィランは今…あっ今!!移動牢(メイデン)に入れられようとしています!オールマイトらによる限界体制の中、今…!』

 

 オールマイトは無言のまま、左手でカメラを指差した。

 ……否、その後ろにいた緑谷に指差していた。それに気づいたのは紅煉と緑谷……二人だけだった。

 

「…次は、君だ」

 

「「……!」」

 

 そう告げたオールマイト。これを聞いて感涙しながら喜ぶ市民たち。

 短く発信されたそのメッセージはまだ見ぬ犯罪者や敵への警鐘、平和の象徴の折れない姿……。

 だが、緑谷、そして紅煉にはそれは真逆のメッセージと取れた。

 

【私はもう、出し切ってしまった】

 

「…うぅ……ひぐっ…ああぁ…うぅ……!」

 

「緑谷君?どうした!」

 

「おい!?デク!?」

 

「緑谷!?大……」

 

「「「えっ?」」」

 

 皆が驚いた理由は緑谷が泣いたからだけじゃない、紅煉が緑谷を抱きしめたのだ。

 

「今は泣け……緑谷出久。全てを吐き出せ……ヒーローだって、泣いていい時はあるもんだ」

 

 紅煉は眠気を抑え、そう言いながら緑谷を暖かく慰め続けた。

 その姿はまるで、母を亡くした子を抱きしめる父親のようだったらしい。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 その後、紅煉と爆豪はヒーローに保護された。その途中で紅煉は《ドラゴニック・フォース》の使用と《ヒノカミ・フォース》を二回連続で使った影響でか歩いてる途中で眠りについてしまったらしい。

 そして緑谷達は帰路に着いた。

 

 ちなみに紅煉は寝ている間体温が40度近くあったそうだ。多分《ドラゴニック・フォース》の影響だと思われてるらしい。

 

 そしてこれも後から聞いた話だがプルトンも見つかり逮捕されたそうだ。




今回はここまでとなります。

オールマイトは怪我こそ治しましたがワン・フォー・オールの残り火はどうにも出来なかったので本来の姿を晒してしまったということにしました。
てかこれほとんどオールマイトとオール・フォー・ワンの戦闘になったな……
しかし悔いはない。
これにて神野の悪夢編は終わりとなります。
次回は後日談的感じ、もしくはそのまま寮生活の始まりのどちらかになります。
また次回をお楽しみください。

それではまた次回!


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火群と仮免試験
第37話 火群と寮生活


前回のあらすじ
プルトンとオール・フォー・ワンとの決着が着いた紅煉とオールマイト……しかしその代償は大きくオールマイトはヒーローを続けられなくなってしまった。
爆豪と紅煉はそのままヒーローに保護された。


 神野区での決戦から数日後、オールマイトと相澤は家庭訪問と称して各生徒の家へと訪問をしていた。

 というのも、今回の事件から雄英高校の全寮制導入の説明とその同意を得るためである。

 そして今現在、相澤はとあるアパートの前に来ている。

 因みにオールマイトは別の生徒の家へ向かっている。

 

「あれ?相澤先生」

 

「ん?……火群…お前何を」

 

 相澤が後ろから声をかけられその方向を向くと紅煉が立っていた。

 

「買い物ですよ……もちろん警察同伴です」

 

「そうか、お前は母親が……」

 

「別に慣れました。警察が着いてくるのは驚きでしたが」

 

 紅煉が後ろを見ると私服警察官がお辞儀をする。こうやって紅煉は守られてるようだ。

 

「それよりも家庭訪問ですよね?部屋へどうぞ、お茶出します」

 

「あぁ、いえ、お構いなく」

 

 そうして紅煉が自宅の鍵を開け中に入るとそこには

 

「お待ちしておりました相澤先生」

 

「ズコーーーっ!?」

 

 満面の笑みの轟冷と申し訳なさそうな表情のエンデヴァーが中に居て紅煉はそれを見てずっこけた。

 

「……なんで居るんですか?」

 

「いや、その……冷が『いずれ家族になるのだから彼の両親の代わりとして家に居てもいいじゃない』って事で……」

 

「ツッコミどころ満載!」

 

 相澤が驚いた声色で言うとそう答えるエンデヴァー、それに対してツッコミを入れる紅煉。

 なんやかんやありつつお茶を入れ席につく相澤先生と紅煉。そして轟夫妻。

 

「さて相澤先生……私は娘を寮に入れることは許可しましたが、義息子(むすこ)は許可してません。何より彼は今色んな意味で注目されています……凶悪(ヴィラン)…プルトンの息子として」

 

「存じております……」

 

 そう、神野のあの事件の後、紅煉がプルトンの息子という確実的な事だけは後を引いていて今でもアパートの彼の郵便受けには沢山の迷惑手紙が届いていた。内容は分かっての通り『ヒーローの面汚し』『さっさと死ね(ヴィラン)の子供』『人々に恐怖を与える悪魔』等々の皮肉や脅迫ばかりだ。

 

「それでいて全寮制となれば紅煉を狙う人達に襲われる可能性もあります。何よりマスコミの目が彼に向かれることになるのです。そうなれば紅煉への批判は大きくなると思いませんか?」

 

 事実、今回の全寮制で入れる条件に紅煉を辞めさせろという人が多いらしい……それを何とかして紅煉もヒーローを目指してるとわかってもらって寮生活に賛成してくれてる。

 だが日本全体がそうではない……彼が寮に入り生徒達の妨げになるのなら辞めさせなければならない。

 

「そうなったら、責任は取れますか?」

 

「……私は「言いたいなら言わせておけばいい」っ!?」

 

「えっ?」

 

 話を妨げたのは紅煉本人だった。

 

「別に誰がなんと言おうが俺の夢は変わらない……俺の夢は誰かにどうこう言われて変わるものほど軽くも浅くもない。1人でもわかってくれてるならそれでいい」

 

 そう言いながらお茶を啜る紅煉。それを聞いてエンデヴァーは口を開く。

 

「イレイザーヘッド……確かに紅煉は心身共に強い。少なくともそこらの高校一年生よりは遥かにだ。だがそれでも未熟な部分はある。これはNo.2ヒーローではなく、1人の親代わりとして言いたい。彼をよろしく頼む」

 

「エンデヴァーさん……」

 

「そもそも俺は最初っから行く気でしたよ。俺の居場所はここでもあり、雄英でもあるんですから……」

 

「火群……」

 

 その後、軽く雑談をして相澤先生と轟夫妻は帰っていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして家庭訪問から数日後、紅煉達は雄英高校の敷地内にある広場に集まっていた。そしてメンバーの前にはこれから彼らが共に暮らす寮、【ハイツアライアンス】が立っていた。

 

「ここが……」

 

「私達の新しい家…」

 

「みんな許可降りたんだな」

 

「私は苦戦したよ〜…」

 

「まあ仕方ないよね」

 

「二人はガスを食らったからな……」

 

 そこに相澤先生がやって来た。

 

「とりあえず無事にまた集まれて何よりだ」

 

「集まれたのは先生もよ。会見見た時はいなくなってしまうかと思ったから」

 

「俺もびっくりさ....まあ色々あんだろうよ。っと、そんなことはいい。今から軽く説明をするんだが....その前に一つ、当面は合宿で取る予定だった仮免取得に向けて動いていく....」

 

「そういやそうだった!?」

 

「色々あって忘れてた!?」

 

「大事な話だ。いいか……緑谷、切島、飯田、八百万、轟、耳郎……この6名はあの晩あの場(・・・・・・)へ爆豪と火群救出に赴いた」

 

その言葉を聞いた瞬間、爆豪と紅煉救出に行ったメンバーとそれを知るメンバーは言葉をつまらせる。そして相澤はこう続ける。

 

「その様子だと行く素振りは皆も把握していたワケだな?色々棚上げした上で言わせて貰うよ。オールマイトの引退がなけりゃ俺は、葉隠、爆豪、火群以外の全員を除籍処分にしてる」

「彼の引退によって、しばらくは混乱が続く…。(ヴィラン)連合の出方が読めない以上、今雄英から人を追い出す訳にはいかない。行った6人は勿論、把握しながら止められなかった11人も理由はどうあれ、俺たちの信頼を裏切った事に変わらない。正規の手続きを踏み、正規の活躍をして、信頼を取り戻してくれるとありがたい」

 

「以上!さ、中に入るぞ!元気に行こう!」

 

[[[[いや、待って行けないです]]]]

 

「「……」」

 

 皆が落ち込んでると一人、前に出てきたヤツが居た。紅煉だ。

 

「「「「?」」」」

 

「……いつまでシミったれた空気を出してんだよ…」

 

「「「「え?」」」」

 

 紅煉のその一言にみんなが驚きを隠せない。

 

「ほら」

 

 紅煉は両手の人差し指で両頬を持ち上げる。みんなはそれに困惑するばかり

 

「「「「「……えっ?」」」」」

 

「こういう時こそ笑っちまうんだ。どうしようもない時こそ、笑って笑って、大いに笑って吹き飛ばすんだよ……オールマイトだってどんなに辛くても笑ってたろ?それと同じさ」

 

 みんなはそれを聞いて少し元気を取り戻す。

 

「……おい、切島」

 

「んあ?って、え!?爆豪オメェどうしたんだよその金!?」

 

 爆豪が切島を呼ぶと金を渡す。

 

「俺が下ろした金だ。いつまでもシミったれられっと、こっちも気分悪ィんだよ…」

 

「爆豪……お前、どこでそれを」

 

「お?なになに爆豪く〜ん。助けられてほんとは嬉しかったのかなぁ?」

 

 紅煉が煽るように爆豪の頭に手を置いてわしゃわしゃ撫でると爆豪はキレる。

 

「あ!?んだとてめぇこの野郎!!てめぇこそ敵の洗脳に落ちやがって!俺なんかそうはならねぇぞ!!」

 

「お!?なら試してみるか馬勝己くん!」

 

「上等じゃこの阿火群!!」

 

 口ではお互いをバカにしてるがその顔は本人は意識してないが笑顔が出ている。彼らは彼らなりにクラスメイトを笑わせようとしてるらしい。

 それに気づいたみんなが吹き出していつも通りのA組に戻るのに、そんな時間はかからなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 A組は相澤先生に案内されて、寮内へと入った。そこで相澤先生から更に説明を受けた。

 

「1棟1クラス。右が女子棟、左が男子棟と分かれてる。ただし、一階は共同スペースだ。食堂や風呂・洗濯などはここで」

 

「広キレー!」

 

「中庭もあんじゃん!」

 

「豪邸やないかい!!」

 

「聞き間違いかな……?風呂、洗濯が共同スペース?夢か?」

 

「男女別だ……お前いい加減にしとけよ?」

 

「は、はい…」

 

 寮の説明を受けてるといつも通りの暴走を見せる峰田。しかし相澤先生の一言により元に戻る。

 すると紅煉がやって来て……

 

「おい峰田……もし俺の彼女になんかあったり女子になんかしたら……てめぇのそのもぎもぎ二度と出せねぇよう頭皮焼くからな?」

 

「サー!!イエッサー!!」

 

 えらくドスの効いた渋い、まるで某大罪の傲慢の罪さんのような声色でそう呟く。

 

「久々に出たヤサ紅煉」

 

「説明を続けるぞ。2階からは1フロアに男女各4部屋の5階建て、更に地下には自主トレーニングルームもある。一人部屋でエアコン、トイレ、冷蔵庫にクローゼット付きの贅沢空間だ。因みにベランダもある」

 

「我が家のクローゼットと同じくらいですわね」

 

「豪邸やないかい!!」

 

「部屋割りはこちらで決めた通り…各自事前に送ってもらった荷物が部屋に入ってるから」

「とりあえず今日は部屋を作ってみろ。明日今後の動きを説明する以上解散!」

 

「「「「ハイ先生!!」」」」

 

 ちなみに紅煉の部屋は5階の原作だと轟君の部屋だった場所でその隣は緑谷。瀬呂と砂藤はそれぞれ2階の原作だと青山と緑谷の部屋だった場所になっていた。

 凍火は2階の真ん中あたりの部屋になっていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 そして時刻は夜…紅煉と爆豪を除いた男子が共同スペースでくつろいでいると……

 

「男子部屋できたー?」

 

「うん…今くつろぎ中」

 

 こちらも終わったのだろう…女子達もやってきた。芦戸がルンルン気分で提案する。

 

「あのね!今話しててね!提案なんだけど……お部屋披露大会しませんか!?」

 

 芦戸の言葉に常闇が動揺した。

 ちなみに全員部屋は原作と同じだったので省略。すると唯一見られるのを逃れた紅煉が共同スペースにやってきた。

 

「ん?みんな何してたんだ?」

 

「あ!火群!実は…」

 

 凍火の説明を聞きながら紅煉は皆を連れて自分の部屋に来た。

 

「部屋王ね〜」

 

「じゃあ最後の締めは火群君で」

 

「まぁ、構わねぇけどよ」

 

 そう言いながらドアノブを捻り中に入る。

 皆も中に入ってくると目が点になる……

 

 部屋の中は普通に整ってる。なんなら尾白と変わらない。なぜ目が点になったのか……その理由はたった一つ

 

「ただいま“レグルス”に“アーネスト”」

 

「ガウッ!」

 

「ワンッ!」

 

 部屋にライオンとオオカミがいるのだから……

 

「「「「「え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"っ゙!?ライオンとオオカミィィィッ!!?」」」」」

 

 これには流石のクラスメイトらも驚きを隠せなかった。なんせポーカーフェイスの凍火ですら目が点になってたのだから。

 

「驚くなよ……レグルスにアーネストがビックリするだろ」

 

「いや驚くよ!!なんでいるの!?」

 

「一応許可されてるよ。それに人は襲わないし」

 

「そんな問題!?」

 

 その後、クラスメイトはなんとか落ち着きを取り戻した。

 

「じゃあ自己紹介からだな。ライオンの方はレグルス。好奇心旺盛で誰にでも懐く。スキンシップに甘噛みしてくる良い奴だ。次にオオカミの方がアーネスト。リーダーシップがあって俺ん家の周りの飼い犬と野良犬を全て束ねた王の素質がある。2匹とも俺が少年期に殺処分されそうになってたのを引き取ったんだ」

 

「へ、へぇ……餌は?」

 

「鶏胸肉。1日に50キロ食べる。2匹ともな」

 

「人が襲わない保証は?」

 

「うちのアパートの大家さんはご近所のおばちゃんやおじちゃん」

 

「芸は何か出来るの?」

 

「特に無い。お手とかは出来る」

 

「峰田が噛まれてるけどいいの?」

 

「死なない程度だから問題ない」

 

「あるよ!助けてぇ!!」

 

 峰田は心に黒い何かを抱えてるからかレグルスに軽く頭を噛まれていた。

 

「散歩は?どうするの?」

 

「2匹とも勝手に散歩するよ。ドアノブの開け方上手いしアーネストに関しては鍵を閉めれる」

 

「いやすげぇ!!」

 

「時間は決まって昼頃かな?本当にいい子なんだよね」

 

「他の生徒に見られたら大変なのでは?」

 

「だから首輪はしてある」

 

「ちなみに名前の由来は?」

 

「レグルスは「小さき王」って意味でコイツは殺処分されそうな時アーネストを守ってたんだよね。だからこの名前。アーネストは「シートン動物記」の作者の名前から」

 

 そう言うと嬉しそうに喉を鳴らすレグルスとしっぽを振るアーネスト。それを見てみんなほっこりしてる。

 

「ちなみにもう皆の顔とか匂い覚えてると思う。この2匹頭いいから」

 

「「「「マジで!?」」」」

 

 その後、1階の談話スペースに爆豪を除いた皆と2匹が集まってる。

 

「トイレする場所あそこなんだ……」

 

「ちゃんとトイレってわかってんだね」

 

 共同スペースの傍に置かれた消臭トイレ動物用をアーネストが使ってるのを見て皆が言う。その後ろで待機してるのは勿論レグルスだ。

 

「しつけたからな」

 

「それでは爆豪を除いた…第一回、部屋王、暫定一位の発表です!!」

 

 と、芦戸が発表する。

 

「部屋王はーー火群紅煉!!」

 

「俺?なんで?」

 

「理由は…言わなくてもわかるよね」

 

 芦戸の言葉に頷く皆…首を傾げる紅煉…こうして寮生活の初日が終わった。

 あの後、口田がウサギを連れてくるとアーネストとレグルスは口田のウサギと仲良くなっていた。

 その後、口田が自身の合鍵をアーネストに渡してたまには遊んであげてねと言ってるのが聞こえた紅煉は感動していた。ちなみに他の皆も居て同様に感動していた。




今回はここまでとなります。
轟夫妻の不法侵入(了承済み)。そして家庭訪問の始まり(なぜ轟夫妻が……)
その後初めての寮生活。レグルスとアーネストは大家さんの家の離れに住まわしてもらっていて紅煉は週5で遊びに行ってた模様。
そして今回の寮生活で根津校長と相澤先生に許可を貰ってなおかつ二匹の行動パターンを伝え雄英高校敷地内での自由な行動も認められた。これはどの先生にも伝えられたらしい。

それではまた次回!


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第38話 火群と必殺技

前回のあらすじ
寮生活のための部屋づくり。紅煉の部屋にオオカミとライオンが居た。
二匹とも賢く言うことを聞くらしい。


 翌日、部屋の模様替えを終えた紅煉達は教室に集められた。

 

「昨日話した通り、まずは仮免の取得が当面の目標だ。ヒーロー免許ってのは人命に直接関わる責任重大な資格だ。当然その取得の為の試験はとても厳しい。仮免といえどその取得率は例年5割を切る」

 

「仮免でもそんなキツイのかよ」

 

 という峰田の呟きが響く。

 

「そこで今日から君らには一人最低でも二つ....」

 

『必殺技を、作ってもらう!!』

 

その言葉と共にミッドナイト、エクトプラズム、セメントスがドアから現れた。

 

「「「「学校っぽくてそれでいて、ヒーローっぽいのキタァア!!!」」」」

 

「必殺!コレスナワチ、必勝ノ技・型ノコトナリ!」

 

「その身に染みつかせた技・型は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押し付けるか!」

 

「技は己を象徴する!今日日必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」

 

「詳しい話は実演を交え合理的に行いたい。コスチュームに着替え、体育館γに集合だ」

 

『はい!』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「体育館γ、通称トレーニングの台所ランド略してTDL!!!」

 

【それは流石にまずいて……】

 

全員がそう思う中、説明が始まった。

 

「ここは俺考案の施設、生徒一人一人に合わせた地形や物を用意できる。台所ってのはそういう意味だよ」

 

そう言いながらセメントスは個性で地面のコンクリートを操り、それぞれの修行に用いるステージを構築していった。

 

「なーる」

 

「質問をお許しください!」

 

飯田が手を挙げて質問をした。

 

「何故仮免許の取得に必殺技が必要なのか、意図をお聞かせ願います!」

 

「順を追って話すよ。ヒーローとは事件・事故・天災・人災....あらゆるトラブルから人を救い出すのが仕事だ。仮免試験では当然その適正を見られることになる。情報力・判断力・機動力・戦闘力・他にもコミュニケーション能力・魅力・統率力など、多くの適正を毎年違う試験内容で試される」

 

「その中でも戦闘力は、これからのヒーローにとって極めて重視される項目となります。備えあれば憂いなし!技の有無は合否に大きく影響する。状況に左右されることなく安定行動を取れれば、それは高い戦闘力を有している事になるんだよ」

 

「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハ無イ。例エバ飯田クンノ【レシプロバースト】。一時的ナ超速移動、ソレ自体ガ脅威デアル為必殺技ト呼ブニ値スル」

 

「アレが必殺技でいいのか……」

 

 そう説明する先生方、飯田は自分のレシプロが必殺技と言われて嬉しそうにしてる。

 

「なる程、これさえやれば有利・勝てるって型をつくろうって話か」

 

「そうよ。スタイルで言うなら火群君のドラゴン・フォースや奥義が一番わかりやすいわね」

 

「確かに、火群の鳳凰烈波や煌龍波は必殺技としては申し分ないですよね」

 

「中断されてしまった合宿での“個性”伸ばしは、この必殺技を作り上げるためのプロセスだった。つまりこれから後期始業まで....残り十日あまりの夏休みは、個性を伸ばしつつ必殺技を編み出す、圧縮訓練となる!」

 

「尚、個性の伸びや技の性質に合わせて、コスチュームの改良も並行して考えていくように。プルスウルトラの精神で乗り越えろ。準備はいいか?」

 

「「「「ワクワクしてきたァ!!」」」」

 

「……俺、どうしよ」

 

 紅煉は1人、どうしたらいいか分からず立ち尽くしていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 皆が着々なと力をつけてる中、紅煉はヒノカミ・フォースをその身に纏って戦闘スタイルをどうにかしようとしていたが……

 

「つ、使えない?」

 

「ドウシタ?止マッテイルゾ?」

 

 ヒノカミ・フォースが使えず立っていると背後からエクトプラズム先生がやってくる。

 

「えぇ、実は……」

 

 エクトプラズム先生に言われ正直に現状を話した。

 

「……ナルホド、君ノ戦闘スタイルヲ考エルト…マズハ“ドラゴン・フォース”ノ強化ニ専念シタラドウカナ?時間制限ヲ伸バシタリトカ」

 

「……なるほど、確かに先にそっちを優先させた方がやりやすくなる。ありがとうございます。エクトプラズム先生」

 

 そう言うと紅煉は言われた通りドラゴン・フォースになり制限時間を伸ばすための訓練を始める。

 しかしやはり伸ばすことは叶わず断念。その後何度かディアブロ・フォースになったりしながら自分なりの戦闘スタイルを掴んでいこうとする。

 そして数分後。

 

「出来た、新スタイル。これなら長時間闘える」

 

 そう言う紅煉は少し達成した感のある笑みを浮かべて拳を握りしめた。

__________________________________________________________________

 

 それから四日後、体育館γ(TDL)。A組が各々のスタイルを見極めるためや必殺技を得る為のトレーニング真っ最中である。

 そんな中トゥルーフォームのオールマイトがやって来た。

 

「Hey!進捗どうだい?相澤くん」

 

「また来たんですか……ぼちぼちですよ」

 

 スタイルが定まったものや複数の技を習得をするものが増えてる中、爆豪の新技によって落ちた大きめの瓦礫がオールマイトに向かって落ちてくる。

 

「あ!オイ上!!」

 

「馬ッ…!」

 

 咄嗟に爆豪が叫ぶと相澤先生が止めようと動くがそこに近づく2人の影。

 

「《SMASH》!」

 

「来い!《禁忌“レーヴァテイン”》!そして、焼き尽くせ!《万海灼き祓う暁の水平(シュルシャガナ)》!」

 

 近付いてきた影の正体は緑谷と紅煉。緑谷は蹴りで瓦礫を砕き、紅煉は右手に炎の大剣を作り、炎を纏わせて薙ぐ事で広範囲に炎を放つことで瓦礫を粉々にする。

 

「俺の必殺技は基本的に腕から炎を放ったり足から放ったりする……それ故に気づかなかった。シンプルで単純なスタイル。炎を具現化できるのなら、炎で武器や鳥を形どってる攻撃や防御を連続して行えるスタイルを取れば相手への牽制にもなる。そうしたらよかったんだ!」

 

 緑谷も紅煉も、お互いに答えを見つけたというようないい顔をする。

 

「……正解だ。有精卵共!」

 

 それを見たオールマイトは笑顔で呟く。

____________________________________________________

 

 そして、とうとう仮免試験当日……

 

「降りろ到着だ。試験会場…国立多古場競技場だ。」

 

「緊張してきたぁ…」

 

「多古場でやるんだ」

 

「試験て何やるんだろ…はー仮免取れっかなぁ…」

 

「峰田、取れるかじゃない。取ってこい」

 

 相澤先生がダランと力が抜けたようにしながら峰田と目線を合わせる。

 

「え?!あ、も、モチロンだぜ!!」

 

 気だるげだった相澤先生は仕切り直し皆に向かい合う。

 

「この試験に合格し仮免許を取得できればお前らタマゴは晴れてヒヨっ子…セミプロへと孵化できる。頑張ってこい…」

 

「っしゃあ!!なってやろうぜ!ヒヨっ子によぉ!!」

 

「おうよ!!やってやるぜ!!」

 

「そんじゃあ!いつもの決めて行こーぜ!!せーの!puls…「ultra!!」

 

 全員で校訓を叫ぶ…だが、その直後…別人間の大きな声が入った。

 

「勝手に他所様の円陣に加わるのは良くないよイナサ」

 

「ああ!!しまった!!どうも!!大変!!失礼!!致しました!!!」

 

 校訓に乱入してきた男は謝りながら地面に頭を打ち付けるほどおじぎしてきた。

 

「なんだこのテンションだけで乗り切る感じの人は!?」

 

「切島と飯田を足して二乗したような……」

 

「…!(この男…)」

 

 すると周りの野次馬からも声が上がる。

 

「待って…あの制服…!」

 

「あ!マジでか!!」

 

「あれじゃん!!西の!!有名な!!」

 

 周りからの声の中…意外な人物が声を出した。

 

「東の雄英、西の士傑」

 

「数あるヒーロー科の中でも雄英に匹敵する程の難関校ーーーー士傑高校!!」

 

「一度言ってみたかったっス!!プルスウルトラ!!自分雄英高校大好きっす!!

雄英の皆さんと競えるなんて光栄の極みっす!!よろしくお願いします!!」

 

「あ、血」

 

「行くぞ」

 

 士傑高校の生徒は軍隊のようにその場を去っていった。

 

「夜嵐イナサ」

 

「先生 知ってる人ですか?」

 

「すんげぇ前のめりだな…言ってることは普通に気のいい感じだ」

 

「ありゃあ強いぞ。夜嵐…昨年度…つまりお前らの年の推薦入試トップの成績で合格したにもかかわらず…何故か入学を辞退した男だ」

 

「え…じゃあ1年…!?ていうか推薦トップの成績って…(実力は轟さん以上!?)」

 

「雄英大好きの割には入学は蹴るとはよくわかりませんね…」

 

「変なのー」

 

「変だが本物だマークしとけ」

 

 全員の空気が少し重くなった。

 だがそれも次の瞬間からさらに重くなることだろう。

 

「イレイザー!?イレイザーじゃないか!!それにかの有名な火群くんも!!」

 

「!」

 

「テレビや体育祭で姿は見てたけど、こうして直で会うのは久しぶりだな!!」

 

「…」

 

 どこからともなく声が上がる、その声を聞いた相澤先生は途端に嫌な顔をした。

 

「あの人は…!」

 

「結婚しようぜ」

 

「しない」

 

「わぁ!!」

 

 急に求婚をする女性、そしてその求婚を速攻で断る相澤先生。芦戸はそれを見て少女漫画を見てる気分になっている。

 

「しないのかよ!!うける!」

 

「相変わらず絡みづらいなジョーク」

 

「スマイルヒーロー「Ms.ジョーク」……“個性”は「爆笑」。近くの人を強制的に笑わせ、思考とともに行動も鈍らせる」

 

 緑谷に説明させると長くなりそうなので紅煉が代わりに言う。

 

「私と結婚すれば笑いの絶えない幸せな家庭が築けるんだぞ!」

 

「その家庭幸せじゃないだろ」

 

「ブハッ!!」

 

「仲がいいんですね」

 

「昔事務所が近くでな!助け助けられを繰り返すうちに相思相愛の仲へと「なってない」」

 

 ジョークが話すと即否定する相澤先生。なんか見てると夫婦漫才に見えて……やっぱ気の所為だ。

 

「そういやお前の高校とこもここか…」

 

「いじりがいがあるんだよなイレイザーは、そうそう、おいで皆!雄英だよ!」

 

「おお!本物じゃないか!」

 

「凄いよ凄いよ!テレビで見た人ばっかり!」

 

「1年で仮免?へぇー随分ハイペースなんだね。まぁ色々あったからねぇ、さすがやることが違うよ。」

 

「傑物学園高校2年2組!あたしの受け持ち!よろしくな!」

 

 ジョークが紹介をすると真っ先に前に出て出久の手を握った。

 

「俺は真堂!今年の雄英はトラブル続きで大変だったね!」

 

「えっあ」

 

「しかし君たちはこうしてヒーローを志し続けているんだね!素晴らしいよ!」

 

 次々と握手を交わしていく真堂に全員は困惑しつつもそれを返す。

 

「不屈の心こそこれからのヒーローが持つべき素養だと思う!!」

 

((ま、眩しい…!!))

 

 眩しいイケメンオーラを発するその男を見てみんなは眩しそうに目を細める。

 

「ドストレートに爽やかイケメンだ…」

 

「本当にこんなヤツいるんだな…」

 

「俺達も見習うか!!」

 

「この暑苦しさからどうやったらこうなるんだ…」

 

「中でも神野事件の中心である火群君。君は特別強い心を持ってる。今日は君たちの胸を借りるつもりで頑張らせてもらうよ」

 

 そう言って紅煉にも手を差し伸べるが紅煉はそれをはたく。

 

「ぬかせ、口も顔も達者だが、目の奥に敵意が丸見えだ。それと、偽りの笑みで馴れ馴れしく近づいてくるんじゃねぇよ。贋作者(フェイカー)風情が」

 

 紅煉はそう言って軽く睨む。それを見た真堂はは冷たく言い放つ。

 

「……怖いね、流石はヴィランの子だ。ヒーローなんてならずヴィランになったら?」

 

 そう言った真堂は紅煉を睨む。それを聞いた耳郎達は文句を言おうとした。

 

「あんた!」

 

「別にいい、相手するだけ無駄だ」

 

 そう言って静止させると相澤先生が言い放つ。

 

「お前ら!着替えてから説明会だ!時間を無駄にするなよ!」

 

『はい!』

 

 こうして紅煉達はコスチュームに着替えるために会場の更衣室に向かったのだった。




お待たせしてしまい。今回はここでおしまいです。
投稿がすごく遅れました。少し忙しい期間だったので書く暇が無かったので……これからも投稿は遅いですがよろしくお願いします。


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第39話 火群と仮免試験ー1ー

前回のあらすじ
必殺技考えたよ!


 更衣室で着替えを済ませた紅煉達は説明の会場へと向かうが、其処に広がっているのはとんでもない人数でごった返されている会場であった。100人や200人では説明し切れないほどの人数が会場の中に詰めていた。

 

「うわっ....めっちゃいるじゃん」

 

「なんか雄英の入試を思い出すわね」

 

「てかそれよりいんじゃねえか?」

 

「可愛い女子....可愛い女子....!」

 

「お前は平常運転なんだな....」

 

「頼むから火群を怒らせんなよ」

 

 すると壇上に一人の男性が立つと皆の視線が其処へ集中していく。

 

「えっ~....それでは仮免のアレをね、説明始めて行きたいと、思います....私は、ヒーロー公安委員会の目良です、好きな睡眠はノンレム睡眠、どうぞ宜しく....」

 

 独特な自己紹介を始めるヒーロー公安委員会の目良は説明を始める。

 一次試験は1550人の勝ち抜き演習。まず受験者にはターゲット3つとボール6つが配布され、このターゲットにボールを当てると光が灯る。

 このターゲットの三つ目を光らせた者が倒した者となり、二人倒せば合格となり、3つのターゲットにボールを当てられた者は脱落となる。一次試験通過できるのは100人。

 但し幾つかの注意事項もある。

 

 1.ターゲットは体の好きな場所に付ける事が出来る、しかし脇や足裏などの見えない場所はNG。常に見える場所に付ける事、コスチュームのマントの裏などもアウト。

 

 2.あくまで3つ目のターゲットを光らせる奪う、これが重要。故に他人が2つ光らせた人物の最後のターゲットを光らせる事が出来れば、自分がその人物を脱落させ、自分の合格条件を満たす事にも繋がる。

 

「えー....じゃあ展開後ターゲットとボール配るんで、全員に行き渡って1分後にスタートです」

 

「展開?」

 

 すると突然、壁と天井が開くと外にはまるで雄英のUSJのように、各所に環境の違うフィールドが準備されていて各々戦い易い場でやってくれという物だった。

 

「マジでか....」

 

「ハリボテ!?」

 

「無駄に大掛かりだな!」

 

 そして他校は行動を始める。

 

「先着で合格なら…同校で潰し合いはないな、むしろ手の内を知った中でチームアップが勝ち筋ってところかな?」

 

「そうだな!皆!あまり離れずひとかたまりで動こう!」

 

 火群がそう考察すると飯田も賛同する。すると勝己が単独行動をしようとし、飯田が止めようとする。

 

「爆豪君!単独行動は危険だ!みんなで行動しよう!」

 

「はっ!遠足じゃねえんだ!勝手にやってろ!」

 

「爆豪!俺も着いてく!」

 

「俺も俺も!」

 

 そう言うと勝己は離れていく。それを見た切島と上鳴が共に行動する。

 

「緑谷、私も単独行動させてもらうね、私のは範囲が凄いし」

 

 そして凍火も離れていく。

 

「轟さんまで……」

 

「凍火達なら大丈夫だろ……」

 

 爆豪達がいなくなったのを見て紅煉は言うが、緑谷は複雑そうな顔をしてる。

 

「単独で動くのは良くないと思うんだけど…」

 

「なんでだ?」

 

 峰田が緑谷に聞いてくる。

 

「だってほら…!僕らはもう手の内がバレてるんだ。」

 

「さっき火群君が言ったことは他校も同様なわけで……学校単位での対抗戦になると思うんだ。そしたら次は当然どこの学校を狙うかって話になる。全国の高校が競い合う中で唯一「個性不明のアドバンテージ」を失っている高校。体育祭というイベントで個性はおろか弱点・スタイルまで割れたトップ校」

____________________________________________________

 

 その頃、相澤達は観覧席で出久達の姿を見ていた。

 

「今回は除籍無しって、気に入ってんだ。今年は」

 

「いいや、別にそうじゃねえ」

 

「ブハッ!照れんなってダッセぇなぁ!付き合お」

 

「断る」

 

「例年形式は変われど。この仮免試験には1つの慣習に近いものがある」

 

「雄英潰し...だろ?」

 

「そう、可愛いクラスなら言ってあげればいいのに!」

 

「その必要はねえから言わなかった。ただそれだけだ」

 

「え?」

____________________________________________________

 

 緑谷が考察を終えると先程の真堂達がやってくる。

 

「“自らをも破壊する超パワー”に“圧倒的火力を放つ炎の個性”……まぁ、杭が出てればそりゃあ打つさ!」

 

 いっせいにボールを雄英陣に目掛けて投げてくる。

 

「雄英潰し…別に言わない理由もないが結局やる事は変わらんからな。ただ乗り越えていくだけさ」

 

「《禁忌“レーヴァテイン”》……万物を灼熱の業火で焼き払え《万海灼き祓う暁の水平(シュルシャガナ)》!」

 

 雄英陣を狙ってに飛んできたボールは消滅させる。その他の火群の取りこぼしはヒーロー科全員がこの数日で作り上げた必殺技を用いて防ぐ。

 

「ピンチを覆していくのがヒーロー。そもそもプロになれば個性を晒すなんて前提条件。悪いがうちは他より少し先を見据えてる」

 

「さぁ、締まっていこうか!」

 

「ほぼ防がれるか…」

 

「こんなものでは雄英の人はやれないな。…作戦としては早すぎるけど…」

 

 そう言うと真堂は地面に手をつえける。

 

「離れろ!!彼らの防御は固そうだ。あのヴィランの子もいる。少し早いが割る!!最大威力!!」

 

「“震伝動地(しんでんどうち)”」

 

 真堂を中心に振動が響き、広範囲の足場が崩れていく。

 

「むちゃくちゃしてくれるなぁ!」

 

 それにより、紅煉達は散り散りに分散されてしまった。

____________________________________________________

 

 分断された紅煉は瓦礫を持ち上げて出てくる。

 

「ってぇ……下手したら死人出るぞ、これ」

 

 そう言いながら辺りを見渡す。

 

「……完璧に離されたな。皆は無事だろうか……」

 

 そう言いながら歩き始める紅煉。

 

「……ま、あいつらなら無事だろう」

 

「よし、作戦通りだ」

 

 歩き始め少し経つと周りに他の学生が現れる。全員が敵意を向けている……それはまるで、(ヴィラン)を見るような目で紅煉を見ていた。

 

「……あの極悪のプルトンの息子だ。俺たちのヒーローとしての名が上がるぞ」

 

 どうやら紅煉1人を狙いに来てる。しかも普通に倒す気なのかボールを守ってない。

 

「ここで君には永久退場してもらうよ」

 

「ヒーローにもならさず、ヴィランにもさせない。君はここで動けない体にしてあげるよ」

 

「感謝してくれよ?君が動けない代わりに安心する市民が沢山いるんだから」

 

「そうそう、抵抗せず倒されてくれよ?僕達のためにもさ」

 

 そんな自分勝手なことを言う学生たちの言葉を聞き、紅煉は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ"あ"??」

 

 ……本気でキレた。その結果“ディアブロ・フォース”になる。

 

「「「「「ひぃ!?」」」」」

 

「……あんたら、本当にヒーロー希望か?ヒーローを目指す子がヴィランの子供だからヒーローになるな?巫山戯るなよ?……俺だって好きでそうなったわけじゃない……お前らが同立場ならなんて言った?お前らがそれならどうした?ヒーローを諦めるか?否だ。俺の覚悟を、舐めるな!雑種!!貴様ら如きに立ち止まるほど、俺はヤワじゃないぞ!!」

 

 全身から炎を吹き出しながらキレる。その顔はまさに修羅。

 

「「「「「ぎゃああああああああああああぁぁぁっ!!」」」」」

 

 その顔を見て全員が逃げ出す。

 

「……逃げるくらいならやるなよ」

____________________________________________________

 

 その頃、爆豪達は別エリアの高速道路のはしごを登っていた。

 

「なんでテメェ等ついてくんだよ!?」

 

「いいじゃねえか!一人より断然いいだろ」

 

「俺は面白そうだからついてきた」

 

「....けっ....足引っ張んじゃねえぞ」

 

「あいよ!」

 

 そして登り終えた爆豪達は周りを見渡し始める。しかし高速道路には人の姿は見当たらず、足元にはなにかの塊が落ちていた。

 

「なんだよ、全然いねえじゃん」

 

「なあ爆豪、なんでここに来たんだ?」

 

「感!」

 

「感かい!?」

 

「爆豪らしいな....っ!あぶねえ!」

 

 すると切島は爆豪を押し退ける。その直後、切島は何かに包まれてしまった。

 

「切島!?」

 

「クソ髪!?」

 

 何かに飲み込まれた切島はしばらくするとなにかの中から肉の塊が落ちた。

 

「なっ!?切島が肉の塊に!?」

 

「っ!そういうことか....」

 

「な、なにかわかったのかよ?」

 

「少し考えればわかんだろうがクソがぁ!この肉の塊は、受験者だってことだ」

 

「ま、マジかよ!?誰がこんな!?」

 

「やはり年々、雄英は質が落ちているな....」

 

 するとそこに士傑の帽子を被った細目の男が現れる。

 

「士傑か....」

 

「私の名は肉倉。我々士傑生は活動時、制帽を着用を義務付けられている。なぜか....我々の一挙手一投足が士傑高校という伝統の名を冠しているからだ。これは示威である。就学時より責務と矜持を涵養する我々と粗野で徒者のままヒーローを志す諸君との水準差」

 

「嫌いなタイプだ....」

 

「てか全然言葉が響かねえ!」

 

「私は雄英高校を尊敬している....しかし、年々その質は落ちつつある。極めつけに1-A!貴様らは品質を貶してばかり....そしてその要因は2つ!」

 

「さっきから御託はいいんだよ....行動で示してくださいよ....先輩よぉ!」

 

 爆豪はそのまま肉倉に向かって走り出す。

 

「1つ目は貴様だ!爆豪勝己!」

 

 肉倉は腕を背後に組むと後ろから切島を肉の塊にした物体がいくつも出てくる。そしてその物体は爆豪達めがけてまっすぐ飛んでいく。

 

「《徹甲弾(A・Pショット)機関銃(オートカノン)》」

 

 すると勝己はA・Pショットをガトリングのように連射して物体を撃ち抜いていく。

 

「うわすっげ!ガトリングかよ!」

 

「対人用に威力は落としてるがな」

 

「ふむ、やはり一筋縄にはいかんか....伊達に雄英に来ていないな....だが所詮はその程度」

 

 すると爆豪が撃ち抜いた物体が浮かび上がる。

 

「言ってくれんじゃねえか....クソ陰キャがぁ!!」

 

「よし!俺もやるかね!」

 

 上鳴はそう言うとベルトからカートリッジを取り出して右腕にはめたガジェットにセットする。

 

「いっちょ行くぜ!」

 

 上鳴は肉倉に向かってディスクを射出するが簡単に避けられてしまう。

 

「やっぱ、避けるよな....」

 

「飛び道具とは目障りな....先に肉片にしてくれる!」

 

「俺を忘れてんじゃねえぞ!」

 

「忘れるわけがなかろう」

 

 そこへ爆豪が肉倉に向かっていく。しかしその時、背後から肉倉の放った物体が爆豪を包み込み、爆豪も肉の塊に変化した。

 

「爆豪!?」

 

「まずは目的の一つが済んだ。あと一つ」

 

 上鳴は肉倉の言葉に疑問を持ち、肉倉に質問する。

 

「目的?なんスカ目的って」

 

「私は先程も言ったはずだ年々、雄英の品質が落ちつつあると。その要因は2つ。一つは爆豪勝己。そしてもう一つは火群紅煉....やつだ」

 

「っ!」

 

 それを聞いた瞬間、上鳴の中でなにか切れる音がした。

 

「先輩....火群が品質を落とすってどういうことすか?」

 

「こちらも調べさせてもらった。火群紅煉。奴はヴィランの息子でありながらヒーローを目指している。それだけに飽き足らず、以前に幾つもヴィランと遭遇し、使用を禁じられている身でそれらを倒している。そしてそれをまるで自身こそ本物のヒーローだと謳っているのだろう?そんな者がヒーローなることこそ笑止千万!ヴィランの息子でありながら、そんな奴がヒーローを目指してるだと?私はそれを認めるつもりはない!」

 

「....難しい言い方ばっかだな....ようは火群はヴィランの息子のくせして、自分は特別だ。自分こそが最高のヒーローだって威張り散らしてるって言いたいんすか?」

 

「そうだ....その通りだ」

 

「ふざけんじゃねえよこの細目陰キャ野郎!」

 

「っ!」

 

 上鳴は声を上げて怒りを見せる。

 

「爆豪ディスるのはわからないでもねえよ。でもそれは百歩譲っての話だ!だけど火群はディスられんのはおかしいだろ!」

 

「どこがおかしいのだ?私は間違ったことは言ったつもりはないが?」

 

「さっきあんたは言ったよな!火群が威張り散らしてるって、自分を特別視してるって....んなわけねえだろ!!あいつはなぁ!どんな状況でも仲間を第一に思って行動して、指示出してくれんだよ!あいつは最高の仲間だ!それを何も見てねえあんたが俺の仲間をディスってんじゃねえよ!ヴィランの息子だからってなんだよ!そんなの関係ねぇだろうが!」

 

「立場を自覚しろという話だ!馬鹿者が!」

 

 肉倉はそう言いながら上鳴の方に向かってあの物体を放とうとする。しかし放とうとした直前に上鳴が腕を振るうと物体が弾け飛んでいく。

 

「なっ!?一体何が!?」

 

 肉倉はあまりのことに理解できず、混乱していた。しかし上鳴を見て答えを見つけることとなる。上鳴の右手になにかが握られていたからだ。

 

「貴様!何を持っている!?」

 

「これすか?これは俺のもう一つの武器っすよ」

 

 上鳴はそう言うとその物体を肉倉に見せる。そこにあったのは雷のマークが入った黄色のヨーヨーだ。

 

「ヨーヨーだと!?」

 

「アンタがディスった火群からの助言ですよ。ヨーヨーに電気を流しやすくする性質で作ってるんすよ。火群に言われる前から趣味としてやってはいたんすけどね」

 

 そう言うと上鳴は肉倉目掛けてヨーヨーを投げ飛ばす。肉倉はそれを左に避ける。

 

「そんな物が通用すると思うな!」

 

「まだ終わってないっすよ!」

 

 上鳴はすかさず、左手のヨーヨーも投げ、肉倉に巻きつかせ、さらに右手のスナップをきかせ、ヨーヨーを肉倉の後頭部に直撃させた。

 

「なっ!?」

 

「言い忘れたんすけど俺、こういう時のためにヨーヨー両利きなんすよ。それといいことを教えておきますよ。ヨーヨーってのは手首のスナップで動きを変えられるんすよ。まあそれまでに練習が必要なんすけどね」

 

 肉倉はそのまま地面に倒れる。

 

「くっ....」

 

「無駄っすよ。こいつのワイヤーは強度半端ないすから。さて先輩、散々と仲間をディスってくれたお礼、させてもらいますよ」

 

 上鳴はそう言うとワイヤーを握る。

 

「ま、待て!」

 

「待たねえよ。《伝達放電“110万V”》!」

 

「ぐわぁぁぁぁぁあ!?」

 

 上鳴は電気をワイヤーを通して肉倉に流し込む。そして少しすると肉倉は白目をむいて気絶し、勝己と切島がもとに戻った。

 

「いっちょ上がり!二人共!大丈夫か?」

 

「おう!サンキュー上鳴!」

 

「気絶すると個性は解除されんのか。通りで遠距離しかしてこねえわけだ」

 

「何解説してんだよ!ほら爆豪も上鳴に礼を言えよ」

 

「なんで俺がアホ面に礼を言わなきゃ行けねえんだ!」

 

「ひどくね!?やっぱお前、ディスられて当然だわ!」

 

「たくっ....あんがとよ....」

 

 爆豪は悪態をつきながらも、小さく礼を言った。それを聞いた上鳴は少し驚くがいつもの笑顔に戻る。

 

「おう!気にすんな!」

 

「さて、一段落済んだし....こいつらどうにかしようぜ!」

 

 そう言って切島は視線を移すとそこには肉の塊から戻った他の受験者達が立っていた。

 

「わーっとるわ!」

 

「そうだった!忘れてた!?いけっかなぁ?」

 

「大丈夫だって!俺らならな!」

 

「切島....そうだな!」

 

「たくっ....こんなところでもたついてられっか!さっさとやんぞ、切島、上鳴」

 

「「おう!!」」

 

 そうして勝己達は他の受験者達の方へ向かっていったのだった。




今回はここまでとなります。
今回は上鳴を活躍させました。戦闘方法はキルア(だったよね?)を参考にしました。
次回は紅煉が活躍します。


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第40話 火群と仮免試験ー2ー

あらすじ
上鳴がすごくかっこいい。


 その頃、別のエリアでは飯田と峰田が他の受験者達に囲まれてピンチを迎えていた。

 

「峰田君!ターゲットは無事か!?」

 

「2つやられちまった!もうやべぇよ!」

 

「くっ....どうすれば....っ!危ない!」

 

 飯田は咄嗟に峰田のコスチュームのマントを取り、ボールから避けさせる。

 

「飯田、まずいって!オイラが囮になるから、その間に逃げるか何とかしてくれ!」

 

「なっ!?何を言ってるんだ!?」

 

「オイラのターゲットは残り一つ。お前がオイラを庇ってたら共倒れになるくらいならお前に二次試験に向かってくれ!」

 

「ふっ!ふざけるな!君もヒーローになりたいんだろ!ならここで諦めるべきではない!」

 

 飯田は峰田にそう怒鳴る。

 

「そりゃあオイラだって諦めたくねぇよ!けどこれしかねぇんだ!!」

 

「峰田くん!!僕は諦めない!君も、僕も!合格するんだ!!」

 

「よく吠えた。それでこそ委員長だ!飯田!」

 

「「えっ!?ほ、火群(君)!?」」

 

 ピンチな飯田と峰田と前に現れたのは紅煉だった。

 

「何故ここに!?」

 

「皆を探しに来た。お前と同じだよ飯田。さて2人とも、いい案がある。乗れ」

 

「「……分かった!!やろう(ぜ)!」」

____________________________________________________

 

「雄英は何処だ?」

 

「まだ見つかんねぇのか!?」

 

 他の受験生達が雄英生徒らを探してる。すると

 

「《炎戒・火柱》!!」

 

 紅煉は敵地のど真ん中に立つと炎の柱を立たす。

 

「な!?雄英!?」

 

「この炎、見た事あるぞ!奴だ!」

 

「っ!(気付けよ、残ってる皆!!)」

 

 突然、受験者達の周りを鳩が飛び回り始める。

 

「なんだ!?鳩!?」

 

「どこから!?」

 

「鳥達よ!その場で旋回するのです!」

 

 すると鳩の中から黒い影が見え、テープが伸びて受験者を攻撃していく。

 

「火群!助太刀する!」

 

「わかりやすくて助かったぜ!」

 

 さらに攻撃され受験者よろけた先の足元には見覚えのあるボールがあり、それに身動きができなくなっていく。更にそこへ1-Aの残りのメンバーが続々と集まっていく。

 

「取れるやつからとってけ!!」

 

「他に取られる前に!先にさせてもらう!」

 

「お先ね!」

 

 そう言い、次々と通過していく1-Aメンバー達。そして飯田と紅煉は近くの受験者に接近し、ボールをターゲットマーカーにぶつける。

 

「飯田!ぜってぇ合格すんぞ!!」

 

「ああ、勿論だ!!」

 

〘終了〜!!現時点で通過者が百人となりましたので一次試験これにて終了〜!〙

 

 飯田と紅煉がターゲットマーカーにぶつけた瞬間、一次試験終了の合図を知らせる放送が流れる。それは一次試験通過者の待機室まで流れた。

 

「一次試験全員通過だぁー!!」

 

「「「「やったァァァァァっ!!」」」」

 

「……ふぅ……っしゃあァァァァァァァァァっ!!」

 

 紅煉は上を向いて叫ぶ。

____________________________________________________

 

 無事一次試験を終えた1-Aメンバーは二次試験が始まるまで待機室にて談話などをしていた。そんな中、紅煉は部屋の端で壁にもたれて目を瞑り精神統一をしていた。

 

『えー、一次試験通過した100名の皆さん、モニターにご注目』

 

 全員、モニターに視線を移すと一次試験試験に使われたステージのあちこちが爆破され、建物などが崩れる様子が映されていた。

 

(何故ーーーーー!!?)

 

 壊れたフィールドに全員が困惑する。

 

『これで最後の試験となります。この被災現場でバイスタンダーとして救助演習をして頂きます。』

 

「パイスライダー…?」

 

「バイスタンダー!現場に居合わせた人の事だよ!授業でやったでしょ!」

 

「一般市民を指す意味でも使われたりしますが…」

 

「む…人がいる」

 

「え…あぁ!!」

 

 そこには老人や子供の姿が見受けられた。

 

『彼らはあらゆる訓練において今引っ張りダコの要救助者のプロ!!「Help・Us・Company」略して「HUK(フック)」の皆さんです。傷病者に扮した「HUC」がフィールド全域にスタンバイ中。皆さんにはこれから彼らの救出を行ってもらいます。尚今回は皆さんの救出活動をポイントで採点していき、演習終了時に基準値を超えていれば合格とします。10分後にスタートしますのでそれまでにトイレとか済ましてねー』

 

 そうして待っていると士傑生徒がやってくる。どうやら肉倉という名の生徒が爆豪と紅煉に対して無礼を働いたと謝りに来たようだ。いい関係を築きたいと言って居たが、坊主頭の青年は凍火を睨む。

 

「ねぇ、そこの人。私、なんかした?」

 

「……ほォ?」

「いや、申し訳ないっスけど……エンデヴァーの娘さん。俺はアンタらが嫌いだ。エンデヴァーもあんたも、昔よりは幾分がマシになってるみたいだが……根本から変わることはないっスから」

 

「夜嵐、どうした?」

 

「何でもないっス!!……そんじゃあ失礼するッス」

 

「おい、待て、坊主頭」

 

 立ち去ろうとする夜嵐という名の男を紅煉は呼び止める。

 

「?」

 

「紅煉…」

 

「アンタに何があったか知らんが……俺の女を昔と同じと思うな……この救助試験で邪魔するようなら……それなりの対応はするぞ」

 

 夜嵐が振り向くとそう言う紅煉。

 

「……あんたもッスよ……プルトンの息子」

「アンタみたいな奴がヒーローを目指す?本当にいいご身分ッスね……アンタみたいなのはとっととヴィランとして捕まった方がいいんじゃないッスか?」

 

「夜嵐!!」

 

「っ!?し、失礼しました!!」

 

 夜嵐がそう言いながら紅煉を睨むと毛むくじゃらの士傑生徒が叱責する。それによって夜嵐は自分が失礼な事を言ったと自覚したようだ。

 

「気にすんな……プルトンの息子だってのは事実だ……だが言わせてもらおう……俺とクソ親父を一緒にすんな…」

 

「っ!」

 

 そう言いながら紅煉は、ハイライトの無い目で夜嵐を見る。それを見て夜嵐は息を飲む。

 その後、毛むくじゃらの士傑生徒は紅煉に謝りながら夜嵐を連れていく。

 

「……紅煉」

 

 凍火が紅煉を心配してると警報が鳴り響く。

 

『敵による大規模破壊が発生!規模は○○市全域建物倒壊により傷病者多数!』

 

「演習のシナリオね」

 

「え!?じゃあ....」

 

「これがはじまりの合図ですわね」

 

 警報音と共にその場にいた全員の気を引き締める。そして一次試験スタートと同様建物は外側に開き、外に開放される。

 

『道路の損壊が激しく、救急先着隊の到着に著しい遅れ!!到着するまでの救出活動はその場にいるヒーロー達が指揮をとり行う。1人でも多くの命を救い出すこと!!それではSTART!!!!!』

 

「僕達は都市部から行こう!!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

 だが、爆豪らは別行動を始める。最初は皆が慣れない救助に戸惑ったが、その後は皆が落ち着いて救助をする。

 

「ふむ、皆さんいい調子ですね。最初は注意されてた人も多かったですが、例年と比べると少ない方ですかね……コレならいいでしょう」

 

 それを見ていた目良さんはある方々(・・)に連絡する。

 

「状況は?」

 

『概ね問題ないかと』

 

「市民を守るため、ヒーローは複合的な動きが求められる。即ち……」

 

「救護と」

 

「対敵」

 

「どう出る?ヒーロー!」

 

 怪しげな黒い影が3つ、受験場を見ている。




今回は少し短めですがここまでとなります。
次回で仮免編は終わりかな?
それではまた次回お会いしましょう!


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第41話 火群と仮免試験ー3ー

前回のあらすじ
救助試験開始!そして蠢く怪しい影。


 全員が救助をしている中、皆が協力していく。すると突然、試験所の壁が爆発する。

 

「な、なに!?」

 

 さらに他のエリアも誘爆していく。全員が予想外の展開へ唖然とする。そして救護所付近の壁の方の煙が晴れた先に現れたのは....

 

「さぁ、俺達から救助者を守れるかな?」

 

 プロヒーローであるギャングオルカ、そして全身スーツを着た軍団が現れる。

 

『えー、敵が姿を現し、追撃を開始しました。現場のヒーロー候補生は敵を制圧しつつ救助を続行してください』

 

「なんだって!?」

 

「やばいんじゃないこれ!?」

 

「おい、待て、あれ見ろ!!」

 

「嘘だろ!?」

 

「まじかよ!!」

 

 全員が見てるその先、そこにはもう二人のプロヒーローが居た。1人はラビットヒーロー“ミルコ”。

 もう1人は……No.2ヒーロー……“エンデヴァー”とそのサイドキック……“バーニン”と“アジュール”だ。

 

「俺たちを止めてみるがいい」

 

「止められるもんならな!!」

 

 その二人を見て緑谷達は驚く。

 

「嘘、エンデヴァーに、ミルコ!?」

 

「アジュールにバーニンもいるぞ!?」

 

そんな中、それに突っ込む風が……

 

「エンデヴァァァァァァァッ!!」

 

「夜嵐!!激情に身を任せるな!」

 

 夜嵐が自分の応援する気持ちを裏切ったエンデヴァーに向かっていく。すると、エンデヴァー達と要救助者の間に炎の壁が放たれる。

 

「なんだこれ!?」

 

「炎の壁!?」

 

「……来たか」

 

「ここは簡単には通しませんよ……ヴィラン」

 

 エンデヴァー等の前に立ち塞がったのは……紅煉だ。

 

「……来たか、ヒーロー」

 

「エンデヴァー!くそ!なんだこの炎!」

 

 夜嵐は全力の風で炎の壁を吹き飛ばそうとするが収まる気配なし。

 

「紅煉…?」

 

 凍火が少し心配そうに見てる。

 

「《赫灼熱拳“ジェットバーン”》!」

 

「《火拳》!!」

 

 エンデヴァーと紅煉の炎がぶつかり合う。その熱量は周りの大気を揺るがし、辺りを爆煙がたちこめる。

 

「……むっ!?」

 

「《火拳銃(レッドホーク)》!!」

 

「ぐおっ!?」

 

 紅煉は爆煙の中から姿を現しエンデヴァーに一撃を与えた。

 

「ぬるいわ!!《赫灼熱拳“ヘルスパイダー”》!」

 

「《炎戒・火柱》!」

 

「エンデヴァー!私達は先に行ってるぞ!」

 

「あぁ、そっちは任せる」

 

 バーニン等は避難所に向かおうとするが…

 

「やらすかぁ!」

 

「させない!」

 

「行かせない!」

 

 爆豪がアジュール。凍火がバーニン。緑谷がミルコを止める。そしてオルカを止めたのは夜嵐だった。

 

「てめぇは、プルトンの!」

 

「今はそんなこと言ってる場合か?俺がヴィランの息子だろうがなんだろうが今この場ではなんも関係ないだろ」

 

「あるね!アンタはプルトンの息子だ!そんな奴がヒーローを目指せるわけない!エンデヴァーは俺がやる!!」

 

「好きにしろ」

 

「喰らえ!!エンデヴァー!!」

 

 夜嵐はそう言うとエンデヴァーに向かって強力な風を放つ。

 

「ふん。《プロミネンス・バーン》!」

 

 エンデヴァーは夜嵐の風を受けてもこれといってダメージを負わずにかき消す。

 

「ば、馬鹿な!?」

 

「その程度の風。ぬるいわ!」

 

「くっ、クソォ!」

 

「敵を目の前にして何をしてる?」

 

 夜嵐はさらに攻撃しようとするがギャングオルカが迫っていた。

 

「しまっ!?」

 

 避けようとしたが、ギャングオルカは超音波を放つ。

 

「ぐあっ!?くそっ……」

 

「敵を前に一つのことに集中しすぎだ……」

 

 オルカはトドメを刺そうと拳を振り上げる。それを見た夜嵐はエンデヴァーしか見てなかったことに後悔したその時だった。

 

「《火拳銃(レッドホーク)》!!」

 

「ぬっ!?」

 

「えっ!?」

 

 オルカは急にやってきた男の炎の拳をモロに食らって吹っ飛び、夜嵐はその男の姿を見て驚愕した。その男こそ紅煉だったからだ

 

「常に冷静でいろ。激情に身を任せるな……士傑高の夜嵐」

 

「あ、あんた」

 

「余所見してる場合か?」

 

 しかし、そんな二人の前に現れたのは、エンデヴァーだ。

 

「エンデヴァー!?」

 

「しまっ!」

 

「《赫灼熱拳“ヘルスパイダー”》!!」

 

 夜嵐は咄嗟に目を瞑る。しかし何も来ないので目を開けると

 

「あ、アンタ……なにして」

 

「知るか……身体が勝手に動いたんだよ」

 

 紅煉は夜嵐を庇うように立ち、ヘルスパイダーをモロに食らっている。

 

「仲間を守るとはな……いい心掛けだが、防御面は甘いな」

 

「うる、せぇ……」

 

 口ではそう言ってるが、実際防御面が甘いのは事実。ディアブロ・フォースで防御面も上がるが、それでも目立つ上がり方をしてるのはスピードやパワー。素でも防御面はあまり意味を成してない。

 いくら不死鳥の炎で傷が癒せると言っても体力は無尽蔵ではない。

 

「ちっ!(どうする?これじゃあいくらやっても意味無い。炎で鎧が作れれば……炎の、鎧?なんで俺は怪焔王で作ろうとしてるんだ?不死鳥の炎も操れるのなら……そうか、その手があった!最初っから形を自在に操る炎を使えばよかったんだ!)」

 

 そう確信つくと、立ち上がる。

 

「ほう?次はどう来る?ヒーロー!」

 

「スゥ〜……いくぞ……エンデヴァー!!」

 

 そして高らかに吠えると不死鳥の炎が紅煉を覆い尽くす。そしてその青き焔は、紅煉の体に纏わり、鎧となる。

 

「こ、これは!?」

 

「コレが、俺の最強の鎧。名付けるとしたら、そうだな……“不死鳥の聖衣(フェニックス・クロス)”!」

 

 そう言って構える紅煉。もちろん見た目は聖闘士星矢のフェニックス一輝の鳳凰星座の青銅聖衣そのものだ。

 

「不死鳥の炎で、鎧を?」

 

「ふむ、ならその性能。試してみよう!《赫灼熱拳“ヘルスパイダー”》!」

 

 相澤先生が紅煉の鎧を見てそう呟くとエンデヴァーは少し笑みを浮かべて攻撃を放つ。すると……

 

「……」

 

「なに!?」

 

 涼しい顔をしてヘルスパイダーを手の甲で弾き消したのだ。

 

「………凄いな。それが君の本来の力というわけだ」

 

「もっと上があると思うけどな」

 

 そうしてエンデヴァーと紅煉は互いを見つめ合う。その異様な光景は皆の動きが止まるほどであった。

 

「どちらがフレイムヒーローとして強いか、決めようか」

 

「受けて立つ」

 

 今此処に、フレイムヒーロー、エンデヴァーVS豪炎ヒーロー、スルトのカードが対決する。




今回はここまでとさせていただきます。
短いのはご了承ください。
そして続きが気になってる方々に申し訳ありませんが、今日から当分の間は第1作目の映画、2人の英雄を書き進めていこうと思います。
以前書けなかった原因は単純に見てないだけでしたので、今回映画公開記念ということで、地上波で初の映画を公開するということなのでそれを見て書いていこうと思います。
ご理解の程、よろしくお願いいたします。

では皆様、また次回会いましょう。Plus ultra!!


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御提案

数ヶ月も放置しててすいません。

今回はちょっとしたお話です


 皆様、『ヒロアカに転生して炎の個性を得たんだけど、俺のせいで平行世界化したんだけど』を閲覧くださり、ありがとうございます。

 この度何故このような形式になってるかと申しますと、単刀直入に言います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この作品のリメイクを考えています!

 設定の変更、キャラ性別、様々な要素が詰まっておりますが、本編を見て一から作り上げたいと思い、約数ヶ月の期間こちらの投稿を保留にしておりました。

 まだ完全に出来上がってはいませんが、少なくとも考えてるのは以下の通りとなります。

 

・火群 紅煉の個性変更。

・オリキャラ追加。

・プルトンの名前変更。

 

 以上の点を踏まえた上で新たに作り直そうと考えておりますが、こればっかりは読んでくださってる皆様方が納得しないと思われます。

 よって、アンケートを取らせて頂きたく思います。期限は7日後、つまり7月16日の零時までとさせて頂きます。

 長らくお待たせした上での勝手な判断なのは承知の上ですが、皆様、協力のほど、よろしくお願いします!

 

 因みにオリキャラの追加というのは知っての通り、今作品に登場するヴィラン達だけでなく、オリジナルのヒーロー側キャラの登場も含めます。

 また、プルトンの名前、火群 太陽となっていますが、太陽ではなくこれもまた別の名前にしたいと思っております。こちらに関してはまだ決まっておりませんのでリメイク版にしてもいいという方で、こんな名前はどうか?と思ってくれる方がいらっしゃいましたら感想の方で受付致しますので、ご協力の程、よろしくお願いします。

 

 また、リメイクにあたりまして、皆様の御意見なども参考にしたいと思っております。こちらも感想で受け付けしておりますので、何かございましたら是非ともお申し付けください。

 

 リメイクしないでこのままでいいよという意見が多ければ、こちらの投稿を削除し、またいつになるかは分かりませんが映画版の続きを書かせて頂きたいので、気長にお待ち頂けたら幸いです。

 

 この度急なお話となってしまいましたが、皆様がこれ程期待してくださってるこの作品をリメイクし、また一から読んでいただきたいという思っているという本心を知って頂きたいという気持ちから、今回の提案を致しました。

 これまでの連日投稿や面白い話になっていくかは正直、私にも分かりません!しかし!皆様がそれでもいいと仰ってくださるのであれば、是非とも私に、もう一度この作品を一から作る機会を、どうか与えてはくれませぬでしょうか!?

 

 

 よろしくお願いします!!以上で報告を終わらせて頂きます!アンケートのご協力の程、お願い致します!!




※追記

アンケート中にリメイクした際のご意見なども感想に書いてもらっても構いません。
作者自ら許可します。見て不快に思われる方もいらっしゃると思いますが、全てのご意見を受けさせて頂きますので、遠慮なさらずお書きください。


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第42話 火群と仮免試験-4-(リメイク前最終回)

前回のあらすじ
救助訓練中にエンデヴァとそのサイドキックにミルコ、ギャングオルカのヴィラン役が攻めてきた。雄英高校のメンツが止める中士傑高校の夜嵐が紅煉とエンデヴァーの戦闘に割り込み隙をつかれてしまい戦闘不能に陥ってしまった!
紅煉はそんな夜嵐を助け新たな新スタイルに目覚める!エンデヴァーVS紅煉の戦いが、今始まる!


 様々なヒーローの卵が要救助者を助けてる中、数人がヴィラン役の面々と対峙していた。

 その内の一角、フレイムヒーローのエンデヴァーは、不死鳥(フェニックス)の炎を鎧のように纏った紅煉とぶつかろうとしていた。

 

「さぁ、来い!ヒーロー!!」

 

「行くぞ!」

 

 エンデヴァーが構えを取ると紅煉が突っ込む。不死鳥の鎧を纏った紅煉の拳とエンデヴァーの炎を纏った拳がぶつかり合いとてつもない衝撃を生み出す。

 

「な、なんてレベルの戦い?!……これが、プルトンとやり合った、雄英の火群の力!?」

 

 2人の激突により、周りの緑谷達も目の前の戦いを忘れそちらに注視する。

 

「“赫灼熱拳、ジェットバーン”!!」

 

「“鳳凰激烈掌”!!」

 

 エンデヴァーの赤い炎を噴出してる拳と紅煉の青い炎を纏った掌底がぶつかる。

 

「ぬっ!?俺の炎に対抗するか!」

 

「あぁ!そのための鎧だよ!!」

 

 互いの拳が鍔迫り合いのように拮抗する様は、もはや芸術とも言える。何故か?それは紅き炎と蒼き炎の美しい絵に描いたかのような光景が、目の前に広がっているからだ。

 

「ハハッ!存外扱いやすい!流石は不死鳥の炎と褒めてやりてぇ!」

 

「貴様の炎だろうが!」

 

「少し、違うけどなぁ!」

 

 エンデヴァーと紅煉の戦闘は他の者たちも見惚れる戦いとなっておりエンデヴァーも紅煉も互いに攻撃しながら最大の一撃を放とうとしていた。

 この戦いは最初っから短期決戦である為……互いに一撃を決めようとした。

 そして、その時は、唐突に来た。

 

「アレが……プルトンの……火群紅煉の、力」

 

 夜嵐がピクリと動くと小石が跳ね、それが地面に落ちる音が小さく響く。そして、次の瞬間エンデヴァーと紅煉は目を見開く。

 

「“赫灼熱拳、プロミネンス・バーン”!!」

 

「“火拳”ンンンンンンンンッ!!」

 

 エンデヴァーは全身から炎を放ち、紅煉は炎の巨大な拳を放つ。互いの大技がぶつかり合い、そして爆発を起こす……。

 

「ぐぁ!!」

 

「ぬぅ!!」

 

 紅煉は吹き飛んだのに対して、エンデヴァーは何とか踏みとどまる。その瞬間、試験終了の合図がした。

 

「今回は、俺の勝ちだったようだな……スルト」

 

「クソっ、フレイムヒーローの座は遠いもんだなぁ……流石だよ、エンデヴァー」

 

 互いに笑いながらそう話す。それを見てた夜嵐はエンデヴァーの変わりように驚きを隠せずにいた。そして結果を聞くため全員治療して戻っていく。

 結果、紅煉は合格したのであった。

 追伸ではあるが、夜嵐は途中の風のせいでやはり不合格。爆豪も原作通り素行が悪かった為不合格。凍火も誤って味方陣営側に範囲攻撃を放ってしまって不合格になってしまった。

 そんなこんなで雄英高校から2人の不合格者が出てしまった。




リメイク前、これが最終回となります。
勿論駆け足になった為色々とおかしくなってるのは承知してますが、あえてこの状態で出してます。
そのためリメイク後の展開をお楽しみ頂けるようお願いします。

リメイク版の作品名は『ヒロアカに転生した俺は最強になる』になります。


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