町人Aは逆ハーヒロインに狙われる (いちおう匿名。いちおう)
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(New)マイナージャンルゆえのストーリー紹介

・・・大変更新が滞り、申し訳ありませんでした。
あんなに評価乞食したくせにエタるとかマジ失礼でした。言い訳は見苦しいのでしません。どうも公務員です(伝われ)。

続きはある程度は書き上がってるんですが、またちょっと更新してすぐエタるよりも、断罪イベントまで書いてから出してやろうと意気込んでいるところです。日刊ランキング入り目指したいです。

そんなわけで、どうか首をながーーーーーくしてお待ちください。
期待、罵倒、批判、不満、誹謗中傷・・・はダメですけど何でも待ってます。ドmなんで全部活力にします。


<注意書き>

・タイトルにマイナーとか言ってますが、「町人Aは悪役令嬢をどうしても救いたい」は小説家になろう様の方でランキング総ナメしていた時期もあり有名であるものの、二次創作は少ないどころか皆無なんでこのような形で紹介させていただきます。
・なお、雑な上に作者の主観が多数含まれますので、ちゃんとしたキャラ設定が知りたいという方は原作読んでください。(隙あらば原作を薦める読者の鏡)


<ただのレビュー>

 

 なろうで人気ジャンルの悪役令嬢に転生・・・するのではなく、転生するのはストーリー上、どこにも登場しないモブ(通称「町人A」)。

 

 ここが乙女ゲーの世界であり、順調にストーリーが進み悪役令嬢が追放されれば母親含め地元が壊滅することに気づいた町人アレンは、ストーリーに介入し悪役令嬢を救い出し、母親と地元を守ることを決意する・・・・・・というあらすじ。

 

 ざまぁ展開はあるが、溜めて溜めてからざまぁするので、そこに至るまで過程を楽しみたい読者におすすめ。また、アフターストーリーも充実・・・というかそこからが本番と言わんばかりに話が展開するため、ざまぁして終わりはちょっと・・・っていう読者にも安心設計。原作、読もう!(隙あれば薦める鏡)

 

 

<あらすじ>

 

 乙女ゲーの舞台は学園であり、これだと学園ファンタジーラブコメのように感じるが、読み始めるとあら不思議。学園どころかヒロイン1人も出ない異世界ファンタジーが開幕。web版だとほぼ100話あるうちの27話もが学園開始前という大ボリューム。書籍一巻でも半分以上を占めていたりする。

 

 なにが凄いかって、普通に面白い。内容としては対断罪イベントのための主人公強化なのだが、あんま本編に関係がないゆえに雑にしがちな部分を作者様は丁寧に描写している。ナーロッパのためご都合主義も多いが、その分ダーク要素もなくサクサク進むから気楽に読める。なんならここだけでも話完結するレベル。サブキャラにかける愛情がよく伝わってくる。あえて詳しく書かないので、気になった方は原作読もう。(隙薦鏡)

 

 肝心の断罪イベントについては、王道のざまぁ展開と言ったところ。実は清廉な悪役令嬢が町人Aの手助けもあり、腹黒のヒロインをざまぁするもの。

 

 断罪イベントを覆した後は乙女ゲーのシナリオから外れていく。戦争だったり、学園が始まる前日譚に訪れた場所に行ったり、伏線を回収したりと物語が動くのはここからだったりする。なんならファンタジーもラブコメもここから始まる。気になる人は以下略

 

 

 

<人物>

ここの二次創作は入学式からなんで、その前に出たキャラを主観たっぷりに紹介する。

 

・アレン

名字なし。母子家庭で育った1人息子。乙女ゲームと気づいて死にたくないからとストーリー介入を決意。性格は元日本人とは思えないほど大胆で強メンタルだが、腹芸は苦手で若干コミュ症。舞台の世界観が基本的に野菜生活のため気にならないが、かなりの楽観主義者。

 

 

・エイミー

一般腹黒逆ハーヒロイン転生者。元平民のためアレンと同じ学園に通っていたがお互い覚えていない。学力が強化され、過去が悲惨になった。でも性格はクズのまま。

モデルは劣化さがみん(俺ガイル)。

 

 

・その他

一切出てこない()




<あらすじ>の、この二次創作に一番関わる部分が一番内容薄いの草なんだ。


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逆ハーヒロイン、町人Aに目をつける

本編スタート、の前にエイミーの独白から。
原作で言うと37話ですね。飛躍しスギィ!?

原作に意識して寄せてあるんで、読み比べても面白いかも。


(以下、オタクの早口)悪役だったり腹黒キャラが、主人公に更生されてツンデレキャラみたいになって、でも主人公とは対立関係というか若干敵視されていて、どうにか好感度を上げようと頑張るけど本音は言えなくて勘違いされて空回りとかして、そのうち主人公と話したり一緒にいることに幸せ感じる系ヒロインが好きです(異常、性癖暴露)

好きな俺ガイルのキャラはさがみん


あたしはエイミー、この世界のヒロインよ。

 

下町で貧乏暮らししていたけど、色々あって2階ベランダから落ちかけた時に突然記憶が戻ってきたの。

 

それで気づいたのよ。この世界は前世のあたしにとって心の支えだった乙女ゲームの内一つ「マジカル☆ファンタジー〜恋のドキドキ♡スクールライフ〜」の舞台で、あたしはそのヒロインだって。

 

あたし、前世は中学高校共にいじめを受けてたんだよね。理由は顔がキモいとか声が汚いとかマヌケとかノロマとかブスとか言いたい放題でさ。女子どころか男子にも言われてきたし、嫌がらせ落書き暴力なんでもあったわ。高校に入ったら終わるかなと思ったらむしろ激化して、一時期の気の迷いで自殺しちゃった。思い出してからは結構後悔したわ。だって自殺したのは好きな乙女ゲームの追加DLC発売日前日だったし。あーあ、プレイしたかったなぁ…。

 

とまぁあたしはこんなかんじで大の乙女ゲー好きで、暇さえあれば乙女ゲーをやっていたの。乙女ゲーの中でならあたしは綺麗な子で、みんなにちやほやされる。そして、いじめ云々は乙女ゲーを支えにしてたら案外へーきだった。

 

中でもこのゲームはサブルート含め100周くらいはした結構なお気に入りだった。ていうか買いたかった追加DLCもこのゲームだし。なんならいじめで死んだショックより乙女ゲーのDLC出来なかったショックの方が大きかったわよ。

 

ま、だからあたしはこの世界に転生できたのかもしれないけど。神様が、かわいそうなあたしに第二の人生として乙女ゲーのヒロインにしてくれたに違いないわ。

 

それにしても本当、ご褒美よね。

 

あたしの推しはカール様だけど、他のイケメンたちも逆ハールートさえ選べばみんなあたしを愛してくれるのよ? 逆ハールートはカール様ルートがメインだし、選択肢は全部暗記してるから違えたりなんかしないわ。

 

乙女ゲーのくせに難易度は相当高くて、でも課金はアイテムとかはたくさんソフト買っててお金なかったからできなかったけど、その分時間をかけて攻略したんだもん。スクロール縛りプレイでも楽勝なのよ、あたし。

 

しかもルートをクリアしたらあたしは光の精霊に祝福された慈愛の聖女様よ?あーあ、前世のいじめてきた奴らに今のあたしを見せてやりたいわよ。

 

まあだからこの後の展開は容易について、普通に暮らしてたら、やっぱりその通り!

 

原作通り、あたしはブレイエス男爵の娘だったことが分かって男爵家に引き取られたわ。しかも、【癒し】の加護もっていることがわかったの。

 

ふふ、貴族とかはどーでも良いけど、この光景をいじめてきた奴らに見せてやったらどんなに気分が良いかしら?ブスとかゴリラとか散々言われたあたしが貴族のご令嬢で聖女様の卵よ?

 

あー、もう。笑いが止まらないわよね。せっかくだし、難易度が1番高い逆ハールートでも目指してみようじゃないの。

 

勉強は前世よりは簡単だったけど、前世では勉強道具なんて落書きとか盗まれされ放題だったし、まともにしてないから少し苦労したわ。まぁどうせ暇な時間は乙女ゲーしかしてなかったし、いじめは関係ないかもしれないけど。

 

今世の勉強で覚えてるのは、貧乏暮らしをしていた時に通わされた学校に天才とか言われた男の子がいたことね。苦手な歴史はともかく、前世でちょっとはできた数学分野でもあたしはそいつには敵わなくて、本物の才能を見せつけられた気分だったわ。

 

まぁでも、特に問題なく舞台の王立高等学園に入学したわ。その男の子と関わりはなかったけど、前世のなけなしのプライドが触発されて勉強にはそこそこ力を入れたおかげなのか入学試験では3位だったわ。

 

ゲームでは王太子が1位でヒロインが2位だけど、2位にはアレンって男の子がいたわ。その時は気づかなかったけど、よく考えたらアレンって学校にいた天才君だって思い出したわ。どうせ平民だし、今の貴族のあたしとは比べる対象にすらならない……とか思っていたら、また会う羽目になったわ。しかも舞台の学園で。

 

貧乏学校に居たし平民だから入学金が支払えないと思うのだけど、特待生ってあるし特例でも認められたのかしら?というか、こんな勉強ができるモブなんていなかったし、幼少期のヒロイン(あたし)と接点があるから……もしかしらDLCで追加されるはずの攻略対象かもしれないわね。

 

ちょっと、いやかなり気になったあたしは、入学式の時に隣に座って話をしてみたわ。この時のヒロインはカール達を遠巻きに見ているだけだったから、問題はないはずよね。

 

あたしが話しかけるまで俯いて落ち込んでいたんだけど……ああそう言えば「平民は貴族にはなしかけてはいけない」みたいなルールがあったわね。Aクラスは平民1人だし、そりゃ憂鬱にもなるわね。少し同情するわ。

 

「こんにちはぁ。あたし、エイミー・フォン・ブレイエスです。特待生のアレンさんですよね?よろしくお願いしますぅ」

「はじめまして、エイミー様。俺はアレン、平民のアレンです。よろしくお願いします」

 

話し方はあたしが思う乙女ゲーの主人公を意識して上目遣いで甘い声をだしたが、これが効果的面でアレンが内心かなり取り乱しているのがよく分かった。取り繕ってはいるが、乙女ゲーで鍛えた観察眼、舐めんじゃないわよ。

 

「ふふ、エイミーで良いですよぉ。私は元平民ですし、貴族に対する礼もいりませんわ」

「え、えっと……エイミー、でいいのかな。俺のこともも呼び捨てで構いません」

 

顔は……まぁ及第点。少し陰が暗いけど、それ以外はあたしの好みと結構近いわね。他の攻略キャラにも遜色ないくらい。

 

これでアレンがDLCの攻略キャラというのはほぼ確定ね。コンセプトは貴族と平民の禁断の恋、とかかしら?個別ルートだと聖女と駆け落ちルートとかありそうね。あぁ…乙女ゲーしたくなってきちゃったわ。

ともかく、似たような乙女ゲーの展開は知ってるし、ここは貴族側から歩み寄るといいのよね。

 

「くすくす、敬語もいりませんよぉ。普通に接してくださいねぇ」

「あ、ありがとうござ……ありがとう、エイミー」

 

そう言うと、アレンは露骨に安心した表情を見せたわ。クラスの中に気軽に話せる人ができて嬉しいんでしょうね。まぁこのくらい乙女ゲーマスターとしてできて当然よ。ついでにと、あたしはアレンの好感度が上がりそうなセリフを言ったわ。

 

「アレンさん、11 才の時に全教科満点で飛び級卒業したんですよね。あたし、その時同じ学校に通っててぇ、尊敬しちゃいましたぁ」

 

そう言うと、アレン顔を真っ赤にして照れてしどろもどろになったわ。

 

チョロい。

 

ま、あたしの乙女ゲースキルにかかればこんなもんよ。

 

顔もそこそ好みだしせっかくの新キャラだけど、あたしは逆ハールートに進みたいし、余裕があるなら攻略しようかしらね。

 

「あたしぃ、ちょっと勉強についていけるか不安でぇ。よければ勉強教えてくれませんかぁ」

「えっと……俺で良ければ」

 

約束事を結んで、次のイベントフラグ成立に手答えを感じたわ。前情報があったし、むしろ選択肢がなくて自由な分楽勝よね。

 

ま、あたしレベルになれば平民の1人くらい逆ハーイベントの空き時間に堕とすなんて余裕に違いないわね。

 

そう考えたあたしは、その後もちょくちょくアレンに話しかけ、副次効果で「平民にも分け隔てなく接する優しい貴族令嬢」というステータスを得ることができたわ。

 

実際アレンは賢くて授業内容を分かりやすく教えてくれるのは案外助かっているし、話すと周りの好感度まで上がるなんて、いことづくめのアレンって相当な便利キャラね。しかも元冒険者らしいし、結構強い戦力にもなりそうね。加護はもってなさそうだけど、初期だけ強いお助けキャラみたいな感じかしらね。

 

ほんと、乙女ゲーのヒロインって最高だわ!




どうでしょうか?

若干改善しつつも、悪役臭は消えないざまぁ系ヒロインの独白でした。特にアレンに対する印象が「顔は好みじゃないけど下僕なら良い」→「顔はそこそこ好みだけど今のところはただの便利キャラ」と顔以外大して変わってない気がします。

変更理由はエイミー救済ルート構築のためですね。原作ほど救いようのない悪人ではないよってことです。
まぁでも逆ハーは目指してるし、男を侍らせたり、完璧な悪役令嬢を敵対視してたりと根本的な性格は変わってないです。そうなった原因が追加されただけですので。なので真っ当な不幸ヒロイン救済が見たい方は原作読んで、どうぞ。(隙あれば推薦する読者の鏡)


次はエイミー独白の続きか、町人Aサイドで書くか……ま、ノリで書いているんでノリで決めたいと思います。


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町人A、エイミーの態度に困惑する

マイナー枠にしては読まれてると思う。読んでくれてダンケダンケ。
アレンサイドの27話!入学するぞするぞ。おら、あくしろよってところです。


桜舞う季節、ついに俺は乙女ゲーの舞台である全寮制の王立に入学した。

 

理由はもちろん、町のみんなを守るために悪役令嬢断罪イベントをぶち壊すこと。そのために今まで準備を重ねに重ねてきた。冒険者ランクも最年少でCになったし、レベルも37まで上がって、ゲームだとラスボスに挑めるくらいだ。師匠との剣の鍛錬も欠かせていない。目立ちたくない俺にとって、入学試験では派手な魔法は使えないから剣術が重要だったしな。

 

ちなみに俺のステータスは【隠密】スキルで風魔法以外全て隠蔽している。平民でレベル37とか怪しすぎるし面倒事は起こしたくない。いくら課金アイテムとは言え気配も消せるし、ほんとこのスキルは便利すぎる。

 

とはいえ、教室で隠密スキルを使うわけにもいかず、目立ちたくない俺は教室に1番乗りしてそそくさと窓際最後尾、通称「主人公席」を手に入れることに成功した。まぁ俺自体は平民モブだけどな。

 

俺のクラスはA。この学院は成績順でAとBの2クラスに振り分けられていて、つまりAクラスはエリートクラスだ。さらに、入試では落とされないよう魔法以外全力で挑んだせいか、俺は平民ながら入試ランキング2位(1位は王太子)を獲得してしまい、原作で2位だったヒロインのエイミーを抜かしてしまった。扱いも「一般(平民)」ではなく「特待生」だ。違いはよく分からないが。

 

正直断罪イベントまでは目立ちたくなかったし、イベントに介入する気もあまりない。だから別にBクラスでいいんだけど。……というよりBクラスが良かった。

 

平民はBクラスには3人、Aクラスは俺1人だけ。この国のルールで平民は貴族側から許可がない限り、こっちから話しかけることはできない。そして貴族は平民なんか眼中にない。

 

……つまりはぼっち確定である。

 

確かにぼっちは目立ちにくいんだけど、俺も人間で、学院での青春を全て諦めたわけじゃない。人並みには友人も欲しいし、友人との学院イベントというのも期待していたんだ。

 

「こんにちはぁ」

 

俺が絶望を味わって俯いていると、ふと隣から声が聞こえてきた。顔を上げると、そこには予想外の人物がいた。

 

「あたし、エイミー・フォン・ブレイエスです。特待生のアレンさんですよね?よろしくお願いしますぅ」

 

馬鹿な?この入学式でヒロインは王太子を見てドキドキしているというイベントのはずだ。ランキングで抜かしたのもあるし、俺というイレギュラーが狂わせたのか?

 

「はじめまして、エイミー様。俺はアレン、平民のアレンです。よろしくお願いします」

 

とりあえず身体を向け、平民が貴族に対する臣子の礼をしてから俺は平静を装って返した。しかし、俺は動揺を隠し切れなかったのか目の前にいるエイミーは可笑しそうに笑って言う。

 

「ふふ、エイミーで良いですよぉ。私は元平民ですし、貴族に対する礼もいりませんわ」

「え、えっと……エイミー、でいいん、いいのですか?なら俺のこともも呼び捨てで構いません」

「くすくす、敬語もいりませんよぉ。普通に接してくださいねぇ」

 

最初は思わずぼっちから逃れたことに安堵してしまったが、ゲームにないエイミーからの予想外すぎる好待遇に、俺は内心でかなり困惑した。ゲームのエイミーは基本的に自分から積極的に話す性格ではないし、おまけに敬語まで要らないと言われ、ただの平民モブの俺になぜそこまでするのか、俺はいよいよ混乱し始めた。少なくとも原作ではこんな展開は無かった。ゲームだと平民がまずほとんど登場しなかったが、大抵出ても敵キャラだったし……。

 

エイミーは混乱する俺を見てもなお、楽しそうに笑っていて、俺はとりあえず礼を言おうと席を立って頭を下げた。

 

「あ、ありがとうござ……ありがとう、エイミー」

 

いちいち吃ってしまう俺に対しても、エイミーは終始笑顔だった。

 

か、かわいい……。

 

さすがは乙女ゲーのヒロインだ。この可愛らしさ、そして平民モブの俺に対等に接する慈悲深さに攻略対象達が落ちるのも無理ない、と俺は思ってしまった。

 

……いやいや!でも断罪イベントだけは全力で妨害するけどね!

 

しかし、エイミーってこんな甘ったるい間延びした声だっけ?まぁゲームだと口調しか分からないから判断しようもないけど、そこはイメージとは結構違ったな。

 

「アレンさん、11 才の時に全教科満点で飛び級卒業したんですよね。あたし、その時同じ学校に通ってて、尊敬しちゃいましたぁ」

 

考えごとをしていると、エイミーは顔を少し赤らめ、そしてキラキラした目で俺のことを上目遣いに見つめてくる。男子が憧れるシュチュエーションベスト3に入るだろう光景に、俺は内心で打ちのめされた。

 

ぐふっ……。これが……乙女ゲーヒロインの力、か……。

 

攻略キャラ以前に美少女耐久0な俺が落ちかけている事実に、俺自身が戦々恐々としていると、講師らしき人物が教室に入って来た。エイミーも気づいたようで、俺はとりあえず思考を整える時間ができそうなことにホッと安堵する。

 

ところが、エイミーは去り際に追加爆弾を投下していった。

 

「あたしぃ、ちょっと勉強についていけるか不安でぇ。よければ勉強教えてくれませんかぁ」

「えっと……俺で良ければ」

 

俺は、気づけば反射でそう答えてしまっていた。

 

ともあれ、こうして俺の学園生活は、早くも大波乱の予感を感じつつもスタートしたのであった。




思った以上にアレンがチョロかった。ま、まあ原作でも一言だけ誉められても浮かれるくらいだし多少はね?

・お願い
マイナー二次創作とかほんと読まれにくいんですよね。今読んでくれた読者様、低くても良いので評価をしていただけませんか?ちょっとでもランキングに載れば、マイナージャンルは読まれるチャンスが数倍に跳ね上がります。そして原作も読まれてさらに人気になります(こっちが本命)。約10秒で終わりますので、気が向いたらよろしくお願いしますm(_ _)m

感想や誤字報告もお待ちしています。良ければアンケートもどうぞ。


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町人A、ダイジェストにされる

評価ありがとうナス!想像以上に高評価で驚きました!あやがたやありがたや。お礼に、アンケート結果最下位の町人Aダイジェスト編をどうぞ!………………えぇーと。すみませぇん、もう前話出した時には9割書き終わってたんですぅ(エイミー感並)。

何故にアンケートしたし……あ、でも安心して下さい。要望の多かったアナスタシア編は今日中に書き上げ投稿しますので。(ちゃんと要望に対応する作者の鏡)




というわけで、28話から一気に駆け抜けるぜ

いろいろ飛ばしまくってるから原作読むのを推奨しとくぜ。まぁざまあ無いし詳しい描写なんて要らんだろ(ポイッ)


ーー原作読んでいると違和感バリバリなんで、いくつか注意点をば(飛ばして、どうぞ)ーー

・現状で唯一対等に話せるエイミーに対しアレン(主人公)の好感度は高め。
・Bクラスの平民は良いとこの商人出身で、無名の特待生であるアレンへはプライドや偏見で相手にしていない。
・エイミーの口調は話してるうちに慣れた(馬鹿っぽいとか思っても言ってはいけないよね精神)。原作のように「なんか媚び売ってんなー、裏ありそうだなー」とは薄々感づいているが、それなら平民モブの自分に話しかける理由が分からず(まさか自分も狙われてるとか思うわけない)ただの疑問に収まっている。


さて、俺が学院に入学してから1ヶ月程度が経過した。相手は貴族だが友人もできて、ぼっち生活はなんとか回避することができた。

 

まぁ9割方はぼっちなんだけど。だって友人のエイミーは攻略対象達に大人気だし。

 

入学初日に話しかけてきたエイミーは、俺というイレギュラーを挟みつつも無事にフラグイベントこなしたようだが、今でも偶にだが俺に話しかけてくれていた。

 

「アレン、約束は覚えてますかぁ?」

 

エイミーが本当に勉強を教えて欲しいとお願いしてきた時は驚いた。半分くらい社交辞令だったんじゃと思っていたし、エイミーは平民に教えを請うのは嫌ではないらしい。

 

「元平民同士、仲良くしましょうねぇ」

「いや俺は今も平民なんだけど」

 

その後も、授業の合間に分からない場所を聞きに来たり、先週なんて短時間だったとはいえ放課後に勉強会を開いたりもした。

 

だからといって別にキャッキャうふふなイベントは一切無いが。さすがに平民と貴族だし、そこら辺はちゃんと線引きしている。それに、そういうのは王太子と愉快な仲間達がいろいろイベントを起こしているから、そういう意味でも俺は要らなそうだし。

 

そして魔法演習授業でのイベント。子供以下の王太子の暴走と、暴走を止めたアナスタシアを邪険に扱いエイミーだけに感謝するというクソほどどうでもいいイベントが起こった後のこと。

 

クラスの雰囲気は最悪と言っても差し支えなかった。

 

王太子に気に入られたエイミーに対して、大なり小なりの嫌がらせが行われるようになった。

 

相変わらず平民の俺に話しかけてくるエイミーにそれとなく聞いてみたが、エイミーは貼り付けた笑顔で「大丈夫ですよぉ、慣れてますしぃ」と言ってのけた。その言葉には妙な凄味というか強がってるようで本心のようにも感じて、俺は何も言えなくなってしまった。

 

痩せ我慢なのか本当に平気なのか、実際どうなのか分からなかったが、ぼっち学院生活を回避させてくれた恩人に対して俺は影ながら助力することにした。

 

と言っても出来ることは大してない。平民は貴族に話しかけられないし、「Aクラスの平民がエイミーに取り入ろうとしている」という噂が立って不必要に目立つのも嫌だったため、俺ができたのは嫌がらせを妨害するだけだ。

 

具体的にはエイミーのそばでこそこそと陰口を話す声を風魔法でエイミーには聞こえないようにしたり、隠密で尾行して隠したエイミーの持ち物を元に戻しておいたりしたが、根本的な解決にはなってないのは分かっている。女子寮で起こったことはどうしようもないし。

 

でも、一度だけ表立って嫌がらせを止めてしまったんだが……、アレは失敗だったな。あくまで俺の目標はアナスタシアを救うことで、だから目立つことは控えていたのだが、あの時は何故か相手に一言言ってやりたくてしょうがなかった。幸い周囲には誰も居なかったし、数日間隠密で調査したが広まってはいなさそうだけど。

 

まぁゲームイベントとは言え、いじめ見ていて気持ちの良いものではない。前世でも高校生の時、周囲でいじめがあった。俺は殆ど関係なかったし、気づいたら当事者全員退学していたのだが。もしかしたら、俺が一言言いたかったのはその時の感情も含まれていたのかもしれないな。

 

そして隠密スキルで情報収集した限り、嫌がらせの主犯格は予想通りアナスタシアの取り巻き達だった。大方、王太子がエイミーに奪われそうで焦っているんだろう。俺が嫌がらせを止めたのもその1人だ。

 

まぁアナスタシア自身は嫌がらせには関与していないし、寧ろ真剣に取り巻きを止めようとしているのだが。俺が前世でアナスタシアを好きになったのはそういう所だ。

 

俺なら見捨ててしまうような王太子や取り巻きでも、アナスタシアは最後まで説得しようとしていたしな。

 

それと朗報なことに、エイミーは平民の俺にも差別意識なく接するため、アナスタシア以外にも「善人をいじめるのは気が引ける」と思っている取り巻きもいるようだ。まぁ肝心本人の意志が弱いせいで嫌がらせ自体には関与しているのだが。

 

それからさらに時間は経って、気づけば夏休み目前に迫っていた。

 

まだルート確定はしていないが、エイミーは順調にイベントをこなしたようで、王太子と愉快な仲間たちに囲まれてすっかりお姫様状態だ。

 

「アレン、この前の勉強会覚えてますかぁ?」

「ああ、うん。覚えてるけど。説明分からないとこでもあった?」

「いえいえ。前にアレン欲しがっていた小物入れが手に入ったので差し上げますぅ」

「……えっと、ありがとうエイミー」

 

しかし、エイミーは俺にも変わらずに話しかけくれ、この前なんかは可愛らしい小物入れをプレゼントしてくれた。対価は要らなくて普段勉強を教えてくれているお礼らしい。……まぁ俺が欲しがっていたのはエイミーの勘違いなんだけど。嫌がらせで隠されていたエイミーの持ち物を取り返して、こっそりと戻そうとした時に見つかってしまい、俺が慌てて誤魔化したせいである。

 

勉強も他の攻略キャラにでも聞けば良いのに、エイミーは相変わらず授業の隙間なんかに俺へ聞きに来ていた。もしかしたら、俺がAクラスで孤立しないように配慮してくれているんだろうか。

 

さてそんなエイミーだが、教室での会話イベントを聞く限り、順調に逆ハールートを進んでいるようだ。だとすると断罪イベントは確定してしまうが、その為に俺が居るんだし、逆ハールートは難易度の高さから何度もやり直したルートだから行動を読みやすい利点はある。

 

一旦考えるのを止め、俺は終業式に参加するために講堂へと向かった。すると講堂の壁に人だかりができており、そこには期末試験のテストの結果が張り出されていた。

 

まぁ詳細はカットするが、1位俺2位アナスタシア3位エイミー(他だいたい原作通り)とだけ言っておこう。俺は満点、アナスタシアとエイミーも490点を超えている。他は……だいたい400点くらいに固まってるな。

 

内容は日本でいう中学生レベルで、王立学院がこのレベルの学習でいいのかと偶に不安に思ってしまうが。まぁ魔法学院だし、それに貴族同士で青春してるんだろう。俺は勉強に油断や慢心はしてないし、エイミーに勉強を教えるのは自分の復習にも一役買っていた。特待生という分類とはいえ、平民は平民だし退学はなんとしても避けなければならないから、これからも全力で取り組むつもりだ。

 

青春……前世……高校生時代……。はぁ、入学したての頃は退学騒ぎでクラス全体が暗かったし、一時期はクソ姉貴のせいで乙女ゲーばっかやってたし……。貴族とか身分云々言っても、こっちの方がまだエイミーいるだけマシかなと思ってしまう。

 

まあ勉強とか剣術、魔法に関しては現状維持で大丈夫だろう。剣術はともかく勉強は1位だし、魔法はまだ実力はほぼ隠している。剣術も足を引っ張る程ではない。総合的に見て余裕があると言えるな。

 

不安なのは貴族特有の不正だが、この世界の元が乙女ゲームということを考えるとほぼ100%ないだろう。まぁ確証はないが、先生方は俺を平民だからと侮る行為はしないし、入試や期末テストの結果を見る限り大丈夫だと思う。

 

終業式が終わって教室に帰るとホームルームが始まり、一人一人名前を呼ばれて答案が返却される。俺も呼ばれたので前に行くと、先生は返す時に一言。

 

「アレン君、君は一人だけ満点でした。我が国の学校制度が始まって以来の天才と聞いていましたが、その才能を遺憾なく発揮してくれましたね。皆さん、アレン君に拍手を送ってください」

 

嬉しいんだけど、どーせ貴族様は拍手しないだろ……って思っていたらアナスタシアとエイミーが拍手してくれた。釣られるようにクラス全体が拍手を俺に送る。

 

俺はクラス全員に向かって深く一礼し、自分の席に戻った。

 

それから夏休みの自由研究について説明されるが、内容自由で評価基準もないらしい。まぁ、お偉い様の貴族に平常点を与えるための課題だろう。

 

とはいえ、俺には関係ない。夏休みは悪役令嬢関連のイベントで気になるものは無いし、自由研究もエルフかオークの迷宮関連の内容を書けばいいだろう。

 

……と、思ってた時期が俺にもありました。

 

「おい、アレンといったな」

 

はっ、しがなきモブです悪役令嬢様。町人Aとお呼びください。

 

 

………………

 

 

 

「追って使いの者をやろう。呼び止めて悪かったな」

「はっ」

 

アナスタシアはそれだけ言うと取り巻き令嬢と共に踵を返して歩いていった。

 

使いの者が来る?

 

という事は俺、もしかして目をつけられたのか?

 

とはいえアナスタシアは身分が低い者には誰だろうとこの口調だ。さっきの答案返却では1位を奪われながらも拍手をしてくれたことから、決して悪くは思われてない……と信じたい。

 

「アレン?どうしましたかぁ?」

「いや、なんか試験で1位取ったせいか公爵令嬢様に目を付けられたらしい」

 

次に話しかけて来たのはエイミーだ。話しかけてくれるのは嬉しいんだが……後ろで王太子が凄い目でこっちを見てるのが怖い。

 

「……アレンは賢いですしぃ、アナスタシア様に目をつけられるのも納得ですねぇ」

「そうか?エイミーも3位じゃないか。この調子なら次は満点狙えると思うぞ」

「ありがとうございますぅ。アレンに言われると嬉しいですぅ。次はぁ、アナスタシア様を超えられるよう頑張りますぅ」

 

ん?エイミーからアナスタシアに対する敵対心を感じ、俺は内心首を傾げる。エイミーはそういう敵対視はしないタイプかと思っていたけど。エイミーも満点取れなかったのが悔しいのかな。

 

その後、エイミーが一緒に自由研究しないかと誘ってくれた。俺を1人にしないようにという配慮だろう。もちろん歓迎だったが、返事をする前に痺れを切らした王太子がエイミーを呼びに会話を中断してきた。「俺はまだ誘われていない」とか「平民が先か」とか煩かったんで申し訳なさそうな顔のエイミーに「気にしてない」とアイコンタクトを送り、俺は教室から立ち去った。人気なのは大変だなーと他人事のように考えつつ、夏休みどう過ごそうかと俺は思考を巡らせるのだった。

 

まぁ数日後、使いを通してアナスタシアにも自由研究のグループに誘われて、結局エイミーとも一緒になったのだから、結果的には同じだったのだろう。

 

とりあえず、俺は乙女ゲーの夏休みイベントにモブ枠で参加することが決まったのだった。




9評価を3つも!!こんな趣味全開な小説にありがとうございます!!その評価が読まれるきっかけになり、沢山読まれて作者の書く気も上がり、評価が増える、ととても良い循環ですね!評価!最高!

まぁある程度の低評価は覚悟してましたが、思いの外優しい方が多くて感謝極まっています。とりあえず断罪イベントまでは書き切りたいなーと思っていますので、よろしければ評価・感想お願いします!!評価なんて2クリックで終わりますよー(露骨な催促)

ということでー、アンケートですっ(反省しない作者の屑)


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逆ハーヒロイン、町人Aに勘違いする

エイミー視点!!口調が書き辛いんじゃー!!毎日投稿の作者様には尊敬せざるを得ない。
悪役令嬢に救済ルートがあるなら、踏み台転生逆ハーヒロインだって救済ルートあっていいよなぁ?

ーー同じく注意点をばーー
・エイミーのアレンに対する好感度は並。勉強は教えてくれるし、貴族と違って謙虚で素直なとこらに「これはこれであり」とか考えてる。今んところは王太子がトップ。
・アレンは基本的に必要以上に目立ちたくないのは不変。しかし原作でも断罪イベント前からアナスタシアと仲良くなってたりとそんなに強い意志ではない。



アレンとの会話イベントというイレギュラーが追加されたけど、あの後は他の攻略キャラとも順調にイベントをこなしていって、きちんと逆ハールートのフラグを立ててあげたわ。そうしたら面白いように攻略キャラはあたしに魅了されて傅いてくれるようになったわ。

 

でも、アレンはゲーム通りのセリフじゃないせいか、そんな魅了されている感触はなかったわね。やっぱDLCの情報が分からないのが痛手だわ。まぁ主観だけど好感度はそれなりって感じね。

 

その後ゲーム通り嫌がらせは少しあったけど、前世で散々いじめられてきたあたしにとっては1ダメージにもならなかったわ。実害がない分むしろ優しいくらいよ。

 

それでも、ゲーム内の描写から予想してたのとは違って思ったより少なかったわ。意外に思ったけど、まぁでも攻略キャラとのイベントは問題なく進んでいるから特に気にしなかったわ。

 

でもこの前、少しびっくりしたことがあったの。放課後、アレンと勉強会を開く約束をして、ついでに嫌がらせの犯人探しのために少し教室を離れて見張っていたのよ。そしたら、案の定あたしの持ち物に近づく女子生徒が現れたわ。まぁこの女との会話イベントはゲームでも必要だったし、あたしは偶然を装って教室に入ろうとしたんだけど、驚いたことにアレンがその女を止めていたのよ。

 

ちょっと前に、アレンもあたしが嫌がらせを受けているのを知っているようで、「最近何かあった?」って遠回しにだけど他の攻略キャラと同じように心配した声をかけてきたの。だからあたしも同じように「大丈夫ですよぉ。慣れてますしぃ」って返したのよ。

 

そう言うとカール達は大なり小なり気遣う声をかけてくれて、犯人探しをしてくれたり好感度が上がったりするんだけど……アレンは「そっか」の一言だけだったのよ。それ以降、アレンは何も聞いてこなくなったわ。アレン関連のイベントなんて事前知識もないし、選択肢間違えたんじゃないかと思ったわ。まぁアレンは平民だし、貴族同士のいざこざには関与したくないのかもしれないけど。

 

今考えたら、その会話の後から妙に嫌がらせが減っていたのよね。悪口が聞こえる回数が減ったり、無くなったと思っていた物がいつの間にか戻ってきたりとか。もしかしたらアレンがこっそりと止めてくれたんじゃないかと思うわ。

 

あの時も、アレンはその女が持っていこうとした物を無言で手に取って止め、貴族令嬢であるアナスタシアの取り巻きに対しても怯えずに毅然とした態度で接してわ。

 

「な、なに?平民のくせに邪魔する気?」

「……友人を守るどこがいけないのでしょうか」

「あんた、もしかして恩を売って取り入ろうとしているの?あの女は辞めておいた方が」

「そういう貴方は、アナスタシア様を利用して王太子に取り入ろうとしているのではないですか?」

「「……っっ!?」」

 

取り巻きを途中で遮ってアレンのセリフに息を飲んだのは、取り巻きだけでなくあたしもだったわ。

 

正直に言うと、あたしはアレンのことを侮っていたのよ。平民だけど、賢くて魔法と剣術が少しできるから学院に特待生として入れたんだろうから、こういう貴族間のトラブルは疎いと思っていたのよ。クラスでも目立たないように過ごしていたし。でも実際はその真逆で、アレンは自分の立場をよく分かっているのよ。不干渉だったのは……たぶん、あたしのためね。

 

きっと平民のアレンは、貴族のあたしとの間に変な噂が立たないようにしているんだわ。恐らく、アレンは他の攻略キャラと違って影ながら助けようとしているのね。

 

これはアレンの攻略フラグは立っていると言っても過言じゃないわね。だってあたしの事を第一に考えているし、普段控えめなのも実は惚れていて、身分の差に嘆いているんじゃないかしら。そうに違いないわ。

 

それにしても、あの時のアレンの横顔は格好良かったわ。声も普段からは想像できないくらい冷たかったし、凄く頼り甲斐がある声だったわ。あれはDLCで追加されたイベントなのかもしれないわね。もしそうならいつもの照れたアレンとのギャップもあって、かなり良イベントだと思うわ。

 

言われた相手も、アレンの思わぬ反撃に言い返すことも出来ずに逃げていったわ。逃げる途中であたしとすれ違ったんだけど、目が合うとかなり怯えた表情をしていたわ。ふふ、今の会話を聞いたあたしが王太子に密告されるのが相当怖いんでしょうね。いい気味だったわ。

 

アナスタシアの取り巻きの姿が消えた後、あたしは何事もなかったように教室に入ったわ。アレンは疲れたような表情をしてため息を吐いていたのだけど、その手には未だ私の持ち物を持っていたのよ。あたしに気づくと慌てて元に戻していたけど、あたしが見逃すわけないでしょう?

 

「えーっとぉ、アレンさんあたしの小物入れ欲しいんですかぁ?」

「あ、いや、そーじゃなくて。えっと、ごめん」

 

さっきまでの泰然自若な佇まいとは打って変わって羞恥心で頬を染めて謝るアレンに、あたしはギャップ萌えをしてしまったわ。今までツンデレとかクーデレにはさほど興味なかったけどね。これは実物を見たら考えを一変するものよ。

 

「いいですよぉ。今度お揃いの物を差し上げますぅ」

「あー、うん……ありがとう」

 

ふふ、この様子だとアレンの逆ハーレム入りも確実かしらね?

 

それから他の攻略対象者含めてイベントはゲーム通り順調に進んで夏休み直前になったわ。夏休みもいくつか個別イベントがあるけれど、1番大きいのはやっぱ迷宮探索イベントよね。逆ハールートだとアレン以外の5人からは確実に誘われるんだけど、アレンだけはよく分からないわ。

 

平民だからって遠慮してしまうかもしれないし、彼はあたしが誘っておかないとないね。で、先ずは終業式を受けるために講堂に向かったわ。そしたら期末試験の成績一覧が貼られていたのよ。ゲームではヒロインが1位で悪役令嬢が2位なんだけど、やっぱり1位はアレンだったわ。あたしも想像以上にできていたのだけれど、悪役令嬢の点数も予想外に高くて僅差で負けてしまったわ。

 

そして終業式とホームルームも終わって、アレンが帰ってしまう前に話しかけようとしたら……先に悪役令嬢のアナスタシアがアレンに話しかけていたの。

 

……期末試験で興味を持ったのかしら?悪役令嬢がカール様以外に話しかけるシーンなんて見たことないし、目的が分からないわ。点数もあまり下がってなかったし、少し警戒する必要がありそうね。

 

アナスタシアは、あたしのとっては嫌がらせをしてくる奴らのトップで、前世のいじめっこのリーダーみたいなものよ。だから、断罪イベントで前世の分も纏めて報復してやるつもりよ。そうしないとこの世界に転生した意味がないもの。

 

しばらくしたら、ようやくアナスタシアがアレンから離て行ったわ。ようやくアレンと話すことができるわね。

 

「アレン?どうしましたかぁ?」

「いや、なんか試験で1位取ったせいか公爵令嬢様に目を付けられたらしい」

 

どういうことだろうか?平民のアレンを取り込もうとしているのかも……それだけは何としても阻止しないと。

 

「……アレンは賢いですしぃ、アナスタシア様に目をつけられるのも納得ですねぇ」

「そうか?エイミーも3位じゃないか。この調子なら次は満点狙えると思うぞ」

「ありがとうございますぅ。アレンに言われると嬉しいですぅ。次はぁ、アナスタシア様を超えられるよう頑張りますぅ」

 

そうよ。今度こそアイツを超えてアレンから遠ざけてやるんだから……。

 

「エイミー、そろそろ行かないか」

 

そして、本来の目的である自由研究を一緒にやらないか誘おうとしたら、背後からカール様に話しかけられたの。

 

「カール様ぁ、分かりましたぁ。でも、ちょっとアレンに話したいことがありましてぇ」

「自由研究か?そういえば、俺はまだ誰にも誘われていないぞ。エイミー、この平民を先に誘うわけではないだろう?」

 

……どういうこと?カール様が嫉妬深い性格なのは知ってるけど、そうなるのは2年生以降のはずよ。他の攻略キャラと話しても何も言わないのに……とりあえずは2年生のイベントと同じセリフで切り抜けよう。

 

「もちろんですぅ、カール様を最初に誘うつもりでしたぁ」

「そうか、ーーならいいんだ」

 

あたしがそう言ったら笑顔になるカール様。だけどアレンは、チラっと視線を向けたら顔を俯けて去っていってしまったわ。アレンは平民寮だから、夏休み中に会えるチャンスなんて限りなく0だし……。仕方ないわ、アレンの夏休みイベント参加は諦めるしかなさそうね。

 

でも、どうしてカール様は会話を妨害してたの?平民のアレンだから?……こっちも少し考える必要があるわね。とりあえずは夏休みイベントを満喫しましょう♪




アナスタシア?

時間軸の関係上、次回になりました。とりあえずアンケートはやす……まずに適当なキャラで人気投票します。(するんかい)

…………5票入ったら良いほうかな?


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悪役令嬢は平民に目をつける

お久しぶりです。原作の本編削除されちゃいましたね……。
でも安心して下さい!読めますよ!
カクヨムへれっつぎょ!

https://kakuyomu.jp/works/16816452218841045726

(それを伝えようと更新しました)

原作アナスタシアside1です。どうぞ


優秀な平民もいる、頭ではそう理解してるつもりだった。

 

だが、高等学園の入学日に入試の席次を見た時には随分と驚いたものだ。何しろ平民と元平民が2位と3位にいたのだから。

 

我が公爵家の者が調べたところ、2位の男の方はアレンと言い、かなり貧しい地区の母子家庭に生まれのようだ。

 

幼いころから相当な苦労をして育ったが、史上最年少の飛び級で平民向けの学校を卒業し、さらには冒険者として荒事も経験しているらしい。

 

3 位の女はエイミーと言い、どうやらブレイエス男爵の落し胤だねで、それなりの援助が男爵家から行われていて人並みの生活は送っていたようだ。

 

加えて、【癒し】の加護を持っていることが分かり、急遽ブレイエス男爵家に母親ともども引き取られたという経緯らしい。

 

これらを総合的に考えると注意すべきは 2 位のアレンのほうだろう。貧しい家庭の出で冒険者など、普通に考えればこの高等学園に入学しようなどと考えるはずがないし、そもそも金銭面からできるはずもない。

 

我が公爵家の者が調べたところによると、アレンは幼いころから目利きが良く、露商店で二束三文で売られている魔道具を見つけ出してギルドで売却する……という行為を繰り返していたらしい。それも【鑑定】などの加護やスキルが一切ないにも関わらず、だ。

 

入学金を全て稼いだのではないかも知れないが、それでも最底辺の身分でありながらも莫大な入学金を払えたのは称賛に値するだろう。

 

成績に違わず優秀なようだが、裏があるかも知れない。当分は様子を見て注意しよう。

 

この高等学園には殿下をはじめとして隣国の王子や多くの貴族家の子弟が通う。そこで万が一のことが起きてはならないからだ。

 

二重の意味で、この男には細心の注意を払っておく必要があるだろう。

 

私は入学式の行われる講堂に友人たちと入場すると、最後列の隅の席に座るアレンをちらりと確認する。

 

こざっぱりとしてはいるが茶髪に茶色の目、どこにでもいる普通の平民だ。怪しさは見て取れない。

 

この平民がもし裏がなく本当に優秀な人材なら、卒業後に公爵家に雇い入れても良いかもな。

 

私がその平民を盗み見ている間、当の本人は何故か俯いたままだったが、私は視線に気付かれる前に着席することにした。私の席は最前列の殿下の隣だろう。殿下がいらっしゃる前に確保しておこうか。

 

****

 

……入学から一週間ほど経った。

 

私は間違っていた。危険なのはアレンではなく女のエイミーのほうだった! お互いに愛のない割り切った政略結婚とは言え、王太子殿下は私の婚約者だ!

 

それをベターベターと!

 

いくら学園の中とは言え、物事には限度というものがある。まだ殿下に話しかける許可すら得ていないのに自分から声を掛け、そして二言目には甘えた声で「カール様ぁ」などと言うとは。あの女は娼婦か何かだ!

 

しかし殿下は殿下でそれをお許しになり、諫める私の言葉には耳を傾けてさえ下さらない。

 

このまま殿下があのような女に誑かされ、骨抜き肉抜きにされてしまっては国が乱れてしまうだろう。エイミーの目的は不明だが、そうなった時にそのしわ寄せはやがてアレンのような民へと向かってしまうのだ。

 

平民からの優秀な人材を失うだけでなく、貴族として民の税金で恵まれた生活をしているのだから、私にはそれに対する責任がある。

 

誑かす方にも問題はありそうだが、エイミーの真意は定かではない。ここはやはり我慢強く、婚約者として殿下に諫言し続けるしかないだろう。

 

大丈夫、殿下だって愚か者ではない。根気強く説得すれば理解されるはずだ。

 

 

 

最初はそう思っていた。だが私の思いとは裏腹に事態は悪い方へ悪い方へとコロコロ転がっていってしまう。

 

初めての魔法演習の際、殿下は私に対する対抗心から魔力を暴走させ、エイミーに治療された。

 

……ここまではまだ良い。しかし、その後殿下は私の諫言を無視し、エイミーに対して甘言を掛けるばかりだった。

 

 

 

……だが、唯一の救いなのはエイミーが殿下しか目に映らないような盲目者ではないことだろう。

 

今やエイミーは殿下だけでなく、複数人の男と仲を深めているが、その内の1人はあの平民のアレンであった。ある放課後には、2人一緒に勉強を励む姿が見られた。

 

元平民同士ということで気があったのかもしれないが、エイミーは王妃の座を狙っているわけではない?とすると、エイミーは何の目的で殿下に近づいている……?

 

全く分からない。それが私の結論であり、結局何とかしようと焦りばかり募る。

 

そんな私の焦りは他所に、物事はさらに悪い方向へと転がっていくのだった。

 

****

 

その後、案の定ではあるがあの女への嫌がらせが始まった。私の周囲で友人が勝手に忖度して嫌がらせに加担しようとしていたのはやめさせた。友人以外の他の者にも注意したが、それでも嫌がらせは止まらない。

 

クラスの雰囲気は最悪となり、それを何とかしようと手を回すがどれも空振りに終わり、徒労感ばかりが蓄積していく。当のエイミーは嫌がらせを何の気にもしておらず、殿下らや平民と話す姿も相変わらずだ。

 

気疲れが増え、見回りによって勉強時間が減ったのが原因か、期末試験では満点を逃してしまった。ケアレスミスで選択肢を一つ間違えていた。またエイミーも490点を超えており、ほぼ私と同じ点数だ。

 

自信があり、平民のアレンには1位を奪われ、はっきり言ってプライドが大きく傷ついたが、それと同時に私は深く反省した。

 

勉強をするためにこの高等学園に入学したのに、それを疎かにしてまで殿下とエイミーの嫌がらせの事を何とかしようとあれこれ構っていたからこうなったのだ。

 

最悪な環境の中、この平民のアレンは黙々と努力を積み重ね、またエイミーとも勉強会を開き、切磋琢磨していたではないか。そして見事に 1 位の座を取って見せたのだ。

 

それに比べて私はなんと愚かだったことだろう。しょうもない事に時間を捨てて、点数まで失った。

 

そうして心から反省した私は、彼が教師にクラスメイトの前で表彰された時も素直に拍手することができた。

 

そう、色々と難しく考えていたことがとてもシンプルな話に思えてきたのだ。

 

まずは勉強に集中する。それで良いではないか。

 

元々殿下とは愛のない政略結婚だ。そして王族と男爵家の庶子では身分差を考えると結婚は不可能だ。ならば殿下の火遊びは放っておけばよい。最初から心を砕く必要すら無かったのだ。

 

そうしてすっきりした私は夏休みの自由研究について考える。もともと貴族に対する加点目的の課題であるから内容は何でも良いだろうが、さすがに私が殿下と共同で行わないというのは色々と問題がある。ならば殿下の行きたがっていた遺跡に行くのが良いだろう。

 

とすると、冒険者のガイドがあると心強い。公爵家の私兵でも良いが、遺跡は不慣れだろうし、家の力を利用したと思われかねない。

 

それに我がクラスにはちょうどいい人材がいる。ついでにどれだけ優秀か確認できるではないか。

 

そう思い至った私はアレンに声をかけたのだった。



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