荒廃したこの世界で白鳥は踊る (通りすがりの錬金術師)
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荒廃したこの世界で白鳥は踊る

お気に入りを適当に見直してて、なんか思い付いたので息抜きに書いてみた。


――愛に溺れた瞳は語る(女の話をしよう)

 私の全ては、貴方のために(愛を守る時、女は女神と等しくなる)

 

 おまえの体が目当てだ、と男は笑った。まるでケダモノね、と女は言った。

 おまえの心は俺のものだ、と男は笑った。ええその通りよ、と女は言った。

 助けてくれ、と男は言った。ケダモノではまだ足りない、と女は笑った。

 愛しているのに、と男は言った。ええその通りよ、と女は笑った。

 男女はヴェールの向こうで一つになる。癒着する肌のように。熱に溶ける氷のように。

 溺愛を具現する女は笑う。すべてを支配してこそ、真実の愛たり得るのだと。――

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「鬱陶しいのよ!」

 

 

 振り抜いた脚による一閃が周囲に存在する白い獣の内の一体を切り裂く。そのまま吹き飛んで倒れた一体に他の獣は見向きもせず、私に襲いかかってくる。それを()()()()()()()()()()()()避けつつも反撃の蹴りをいれていく。

 既に何度この作業を繰り返したかしら。なのに数が全く減っている気配がない……というより、これは私の攻撃がそこまで効いてないんじゃないしら?これが本当なら不味い処じゃないわよ。

 

 

「……これは切り札の解放も考えないといけないかしらね」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

………なんでこんなことになってるのか。それは少し時間を巻き戻してみよう。

 

 

「……ここは、どこ?」

 

 

 彼女が目覚めたのは鉄塔の森と呼ばれている場所。しかし、彼女はそこに住んでいる訳ではない。というか、人が住めるような環境ではない。では、何故そこで目覚めたのか。それは彼女にもわからない。

 

 

「それに、()は誰?」

 

 

 更に、彼女には記憶が無かった。自分が平和な2000年代の日本に産まれた人間だということはわかる。しかしそれ以外の、名前、性別、年齢、家族構成、その他諸々についてはほとんど何も覚えていない。

 だが、幸い(?)な事に彼女の()()身体の事についての記憶……いや、記録は彼女の頭の中に存在した。

 

 

「私の名前はメルトリリス……ハイサーヴァント……そして、ムーンセル」

 

 

 その記録から、彼女は様々な情報を理解していく。しかし、断片的に覚えている事とこの記録を照らし合わせても、今の状況や自分という存在についてはあまりよくわからないようだ。

 

 

「たぶん、この『メルトリリス』という器に『私』という人間が入った……?」

 

 

 なんとなくそうではないか、という結論を一先ず出して一旦の納得を得る。その次に彼女が行ったのは、あやふやな自己の確定。記録に残る『メルトリリス』という存在を自分に重ね合わせ(インストールし)ていく

 

 

「………まずは周囲の情報を得るのが一番かしら」

 

 

 そして、彼女は出会う。この時代を生きる人類の不倶戴天の敵、()()()()に。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「ああもう。ほんとになんなのよ、こいつらは!」

 

 

 あのまま暫く戦い続けて十数分。一向に倒れる気配のない獣に私はイライラしていた。悲鳴を挙げるのであれば、蹴り飛ばすだけでも愉しめるだろうけど獣であるこいつらでは、ストレスが貯まる一方。近くの水場に飛び込んで逃げるのも手だとは思うけど、それは『私』らしくない。

 

 

「いいわ、私の毒で甘く溶かしてあげる!」

 

 

 だから決めた。『(メルトリリス)』の『id-es』を解放する事を。

 その名前を『メルトウイルス』。有機物・無機物問わず何でも溶かし、私の養分として吸収する甘い毒。

 

 

「さあ、私の糧となりなさい!」

 

 

 

――skill:クライムバレエ発動――

 

――id-es:メルトウイルス発動――

 

 

 

 相手の数は多い上、ドレインにどれだけの時間がかかるかはわからない。故にクライムバレエによる一時の無敵効果を得てから、脚甲の棘を獣に突き刺す。

 その効果は意外とすぐに現れた。これまでの攻撃ではほとんどダメージを与えられなかった獣が簡単に溶け落ちた。それに触れて私の一部として吸収していく。その瞬間、私の身体に激痛が走った。

 

 

「ッ!?な、なによ、これ……」

 

 

 私の内側から何かが食い破ろうとしてくる感覚。これは、メルトウイルスで吸収した獣の反抗……かしら。冗談じゃないわ。黙って私に溶かされなさい!

 

 

「―――ッ!ふぅ……」

 

 

 なんとか溶かしきったのか、痛みが消える。そして、吸収した獣の情報が私の糧となり、この獣の事が理解出来る。

 

 

「オラクル細胞……へぇ、そういうカラクリだったの」

 

 

 まさか、この獣は単細胞生物だったなんてね。そしてこの細胞の結合は非常に固く、同じオラクル細胞で出来た物以外をほとんど通さないとは。攻撃が効いている気がしなかったのはこのせいね。でも、もう問題ないわ。

 この力も私の一端となった。だったら『私』を構成する一部でもあるこの脚の棘にオラクル細胞の力を流し込めば……。

 

 

「セイッ!……ハハッ!」

 

 

 斬れた。それも真っ二つに。それをみて私は嗤った。これでこれまでの鬱憤を晴らせると。

 

 

「さあ、いくわよ、いくわよいくわよいくわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 観測班からフェンリル極東支部へ。

 

 

 ◯月△日正午頃、鉄塔の森にて正体不明の笑い声らしき声を確認。データベースに存在するアラガミのどの音声データとも合致しなかった事から、警戒しつつ現場へ向かった所、至る所に斬撃痕と多数のオウガテイルを確認した。なお、そのオウガテイルは全てが既に息絶えており、我々が現場に到着した直後にオラクルに霧散して消滅した。

 

 新種のアラガミの発生の可能性も考えられる為、ゴッドイーターの派遣による詳しい調査をすべきと考える。




全てを溶かすメルトウイルスと全てを喰らうオラクル細胞、どっちが強いだろう……

以下、メルトリリス(偽)の設定(一部)

クライムバレエ:メルトリリスの戦闘スタイルそのもの。今回発動したのは『さよならアルブレヒト』(少しの間外部からの攻撃に対して無敵)
なお、使い放題だと強すぎるので、彼女はメルトリリス本人ではないので能力的に未熟であるから(という建前の下)一公演(戦闘)につき一回制限。

メルトウイルス:メルトリリスのid-es。有機物・無機物問わず何でも溶かし、養分として吸収する。今回はオラクル細胞をも飲み込んだが、一度に大量に吸収し過ぎると逆に捕食される可能性がある。


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2

思い付いてなんか書けたので続き

なんかお気に入りが微妙に伸びてるし評価までついてる……?気のせいか(´ω` )zzZ


「……いったいどうなってるのよ、この世界は。人の気配が全くしないんだけど!」

 

 

 この世界で目覚めてから三日。私は現地の人との交流を求めて、目覚めた場所から水路を伝って港と思われる所へと移動していた。

 目的としては、そうね。まずは食料ね。本来の『(メルトリリス)』はサーヴァントだから食事とかは不要なのだけど、私は人間だから食欲もあるし、生きるために必要だもの。次にやっぱり人形ね。『(メルトリリス)』の趣味嗜好に引かれてか、私も人形に非常に興味が出ている。とは言え、本来の『(メルトリリス)』のように気に入った人間を人形にしたいだなんては一切思っていないわ。流石に人間としての私を捨てたくないわ。まあ、あの獣共を嬲るのには全くの抵抗感はないのだけどね。

 

 

「どこもかしこも朽ちているわね……。あの獣共の事もあるし、これじゃ最悪人類が滅びてる可能性もあり得るわね」

 

 

 一先ずの拠点とする予定のこの港らしき場所にある建物の内、比較的ましな建物の中に入って安全の確認を行う。あの獣の痕跡はなかったが、念のため瓦礫の一部を蹴り動かし簡易のバリケードを作成しておく。たまに力加減を間違えて瓦礫を砕いてしまうこともあったけど、それ以外に特に問題はなかった。(※所要時間:1時間。筋力Eは伊達じゃない)

 さて、それじゃあ今日の分の探索といこうかしら。食事は人と出会えるまではメルトウイルスによる獣や木の実の吸収でとりあえず済ましている。毒とかあるとどうなるかわからないし、その分メルトウイルスなら私の一部だし、栄養だけを吸収することも可能なのだから。幸いな事に、何故か食欲を抑える事が出来ているし。ちなみに睡眠欲はそこそこ……っていうか、この状況だとまともに眠れもしない。もうひとつのは余り無いとだけ言っておくわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ………」

 

 

 港に拠点を移して早一週間。今日も特に進展は無し……っと。まあ、成果を強いて挙げるなら電気を放つ大きな虎と交戦して勝ったって所かしら。大きい体格しといて、中々の俊敏さも持っていたから倒すのに時間がかかったわ。まあ、私のトップスピードには及ばなかったのだけど?電撃はウザかったわね。迂闊に近づくとビリビリよ。感覚障害で触覚がほぼ死んでるとは言え、身体が動かなくなるのには変わらないもの。

 

 

「……さて、少し疲れたから休憩、という訳にもいかないみたいね」

 

 

 拠点としている港に戻ってくると、そこには白い竜のようなやつが居座っていた。虎と戦った後だから休みたかったのだけど、既に竜は私を見つけて交戦の構えに入っている。どうやら戦いは避けられないらしい。

 

 

「いいわ。蹂躙してあげる!」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 白い竜(ハンニバル)は威嚇の咆哮を挙げた後、二足で立ち上がり、その手に炎の槍を生成する。そして飛び上がり獲物の少女に向けて突撃する。ゴッドイーターでなければ普通は確実にそれで終わるだろう。()()()

 しかし、彼女はメルトリリス。その敏揵値はA+とかなりのものを持っている。彼女的には自然に、見るものが見れば綺麗な踊りのようにも見える、華麗なステップで槍を躱し、ハンニバルの身体を思い切り蹴りつける。

 

 

「『踵の名は魔剣ジゼル(ブリゼ・エトワール)』!!」

 

 

 更に彼女は身体を素早く回転させ、脚から十字の斬撃を飛ばす。オウガテイルのような小型ならこれだけで終わるのだが、流石は大型アラガミ。大したものではないと言わんばかりに左手で裏拳を放ってくる。

 それを大きく飛び上がって躱した彼女はハンニバルの左手の籠手に向けて踵落としを叩き込んだ。籠手が砕ける事はなかったが、そこを攻撃されるのを嫌がったのか、ハンニバルは悲鳴にも聞こえる咆哮を挙げ身体を震わせた。

 

 

「あら?そう、貴方はそこが弱いのね?」

 

 

 それを見た彼女は笑みを浮かべた。しかし、安易にそこに攻め込む事はせず、様子をみる。ハンニバルは二足で立つと、両手に炎の剣を生み出しての連続斬撃を放つ。アルブレヒトを発動させて突っ込むという選択肢も彼女にはあったが、流石にまだ早いと判断して自慢のスピードで尽く斬撃を躱していく。そして攻撃が終わったと見ると彼女は、籠手に向けて一直線に膝蹴りの形で突撃し脚の棘を突き刺しに向かう。

 

 

「『臓腑を灼くセイレーン』!」

 

 

 ハンニバルは攻撃後の隙を晒していた為、それは見事に命中。だが、その攻撃は籠手に突き刺さる事なく弾かれた。

 

 

「え?どういうこと!?」

 

 

 先ほどの踵落としは明らかにダメージを与えた。ならばとただの踵落としより威力のある技を彼女は放ったのだが、予想に反して効かなかった事に混乱してしまった。それをハンニバルは見逃さず、籠手の側に居た彼女を殴り飛ばす。それにより意識が一瞬飛び、近くにあった建物に叩きつけられる事で意識を取り戻す。

 

 

「痛……くはないわね。体質のお陰かしら」

 

 

 ちなみに攻撃が効かなかった理由であるが、ハンニバルの籠手は破砕属性に弱く、刺突、斬撃属性にはそこそこの耐性を持っている。故に結果的な威力では、破砕属性に分類されたのだろう踵落としの方がダメージになったのである。ついでに言えば、セイレーンには炎属性もあるためそれによる軽減もデカイと言える。

 

 

「とりあえずメルトウイルスを撃ち込みましょう。正面からでは間違いなく殺られる……ってマズッ!?『アルブレヒト』!」

 

 

 体勢を立て直した所へ、ハンニバルの口から火球が飛び出し彼女へと襲いかかる。流石に避けられないと、無敵化を使い耐えしのぐ。そして、そのままハンニバルへと駆ける。トップスピードまで一気に加速した彼女は、ハンニバルの周囲を走りながら連続で蹴りを入れていく。

 

 

「さあ、いくわよいくわよいくわよいくわよ!!『王子を誘う魔のオディール』!!」

 

 

 頭、首、腕、腹、足、尻尾、背中……残像が見えるほどの速さでの蹴り。それにハンニバルは反応出来ず、ただただ受けるしかなかった。彼女の内に宿る加虐体質により攻撃性が高くなってはいるが、それでも彼女は理性的な面を残していた。相手の反応を見て、どこに攻撃を加えるのが一番なのかを探っていたのだ。

 結果、足にはブレードによる斬撃、籠手には踵落としのような打撃、頭は満遍なく、背中の逆鱗も同様だが特に刺突が一番通っていた。

 

 

「ウイルスを撃ち込むなら背中ね。理性が飛ぶ前に決めましょう」

 

 

 これで最後とばかりに彼女はハンニバルの上へ躍り出た。そして棘を背中の逆鱗へと突き刺し、メルトウイルスを撃ち込むと同時に逆鱗が砕けた。()()()()()()()

 その瞬間に背中からは炎が吹き出し、その勢いで彼女は飛ばされ強制的に距離を取らされた。

 

 

「っ!?危ないわね。でも、これで終わ……!?」

 

 

 メルトウイルスを撃ち込まれたハンニバルだが、最初は苦しんでいた。しかし、しばらくすると押さえつけたのか彼女の方を強く睨んでいる。この時彼女はハッキリと感じていた。

 

 

「ウイルスが喰われた!?……これは本気でヤバイわね」

 

 

 逆鱗を壊された事により活性化したハンニバルは、炎の羽を広げて二足で立ち上がるとそのまま宙へと浮かび上がった。そして、自身の周りに炎を集めている。

 

 

「これなるは五弦琵琶、全ての洛を飲み込む柱」

 

 

 それが大技だと認識した彼女も、対抗するために自分の魔力を全力で解放する。その身を構成している神の一柱、サラスヴァティーを源流に持つ弁財天の権能を元に形にした宝具を。

 

 

「消えなさい!『弁財天五弦琵琶(サラスヴァティー・メルトアウト)』!!!」

 

 

 ハンニバルの放つ炎の竜巻と彼女の放つ渦巻く激流の二つがぶつかり合う。溢れた水によって火は消されるが、その水も水蒸気となって消えていく。最後まで技を保てた方の勝ちとなる。

 

 

「これでフィニッシュよ!」

 

 

 競り勝ったのは水だった。ハンニバルは激流に飲まれ、その中を高速で動く彼女の蹴りを受けていく事しかできない。そして、とどめのソバットが放たれる。

 

 

「ふぅ、とんでもない相手だったわね」

 

 

 地に伏せるハンニバルとそれに背を向ける彼女。勝負は決まった………かと、思われた。

 ここでハンニバルの別名を告げておこう。『不死のアラガミ』。倒してコアを摘出しても、再びコアを生成し甦る事からついた名前だ。これはゴッドイーターの方で神機に対策を施した事で問題がなくなった。しかし、彼女はゴッドイーターではない。不死性を知らず、それに対する対策も当然行っていない。故に………。

 

 

「Gaaaaa!!!」

 

「!?」

 

 

 復活し、即座に殴りかかってきたハンニバルに対応することが出来なかった。地面を転がり、露出してある部分に傷を作る。

 

 

「この……理由は分からないけど、甦ったならもう一回倒すだけよ!」

 

 

 そう意気込み、戦闘を再開するも彼女の動きには先ほどまでのキレはない。当然だろう。全力で宝具を展開した上に、これまでの疲れとダメージが貯まっていて、そして先ほどの不意打ちを無防備に受けたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 それでも彼女はしばらくは戦えていた。時間はかかったが宝具を使わずにもう一度倒す事が出来た。しかし、ハンニバルは再び復活し、ついにその時は来た。

 

 

「……え、あ、れ?」

 

 

 彼女はまだまだ戦える()()()()()()。しかし、唐突に彼女の身体は地面に倒れ伏した。彼女の体力は限界に達したのだ。魔力が切れたため脚甲も消え去り、手足も動かない。

 

 

「な、んで?」

 

 

 神経障害の影響で、彼女は痛みをほとんど感じていなかった。故に攻撃を受けた回数は理解していても、自分がどれだけダメージを受けたかわからなかったのだろう。

 彼女が最後に見たのは、勝ちを確信してゆっくりと近づいてくるハンニバルの姿だった。そこで彼女の意識は途切れた。




実質ヴァジュラ一頭とハンニバル三頭との連戦。流石に多すぎた?(汗)

メルトが拠点にしたこの港(仮)は愚者の空母の近くにある設定です。つまりエイジス島も見えない事もない。

メルトウイルス:アラガミにも効くが、個体毎に効き目が変わる。
小型→すぐさま溶けていく。
中型→弱っていれば溶けていく。
大型→弱体のデバフは入るが、倒さないと溶かせない。
と、しています。理由としては個体の大きさとか、内包するオラクルの量とかですね。ウイルスの方が強ければ溶かし、オラクルの方が強ければ捕食するって感じで。

当然ながら、宝具はFGO仕様です。本来のCCC仕様はSE.RA.PHでないと使えないので。

ハンニバルのファイアストームを強く書いたけど、ゲーム的な威力だと、炎の剣による切り払いとか火球とかの方が上なんだよなぁ()

ちなみにこのメルトリリスがハンニバルを一人で倒す方法ですが、普通に倒した後、復活するまでの間にメルトウイルスで吸収すれば終わります。


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3

卒研で疲れたので息抜きに製作、と
……って、え?なんか評価が増えてるんだけど!?
ありがとうございます!(土下座)

ででで、でもなんかプレッシャーががが……今回、こんなので良かったかな……


 フェンリル極東支部、通称アナグラ。アラガミの楽園とも言われる極東地域にて、その地でアラガミと日々戦い続けるゴッドイーターたちが拠点としている所である。

 

 ちなみにこのアナグラで今、人気なのは最近出来たばかりのラウンジ。そこでまだ幼いながらも女将の風格を持つムツミちゃんのご飯はとても美味しい。……そう、あのアリサの料理と言っていいのか分からないあれとは比べ物にならないくらい。と言うか、比べるのは失礼だね(もちろんムツミちゃんに)。任務終わりには必ず食べたい。

 

 と、まあ今のアナグラについては置いといて。実は任務明けで自室で休息を取っていた所にサカキ博士から呼び出しがあった。サカキ博士の呼び出しってなんか嫌な予感しかしないんだよねぇ……。さっきみたいに逃避しないとやってられないレベルの無茶振りがたまに飛んでくるから。

 

 

「失礼しまーす」

 

 

 支部長室に着くと、そこにはサカキ博士を始めとして私と同じ第一部隊の皆が揃っていた。それと何故かオペレーターのヒバリさんも。いつもはいないのになんで?

 

 

「よし、ユウ君も来たことだし今回の呼び出しについて話をしよう。ヒバリ君、頼めるかな?」

 

「はい。つい先ほど、愚者の空母付近の港区域にてアラガミとは異なる異常なエネルギー反応を検知しました」

 

「ん?アラガミじゃないの?」

 

 

 コウタの言葉に皆同じ疑問を持っていたのかヒバリさんの話の続きを待つ。

 

 

「オラクル反応は検出されたのですが、アラガミ特有のパターンが検出されず、サカキ博士に尋ねましたらアラガミ以外の可能性が高いと。

それと、ハンニバルの反応も有りますが、このエネルギーの発生源を探ってみた所、どうやら敵対しているみたいで……」

 

「ちなみに敵対状態だと判断した理由は、ハンニバルから活性化しているときの反応が出たからだね。

君たちに頼みたいのはこのエネルギーを発生させている者の調査だ。ハンニバルがいるともなると、君たちにしか頼めないんだ」

 

 

 なるほど。確かにあのアラガミは私たち以外には荷が重すぎる。それに、そのハンニバルと敵対している何者かの相手もしないといけなくなるかもしれない。

 

 

「さて、悪いけど急いで出撃をお願いしてもいいかな。時間がないかもしれないんだ。理由は移動中に伝えるよ」

 

「了解!」

 

 

 

 そしてヘリに乗っての移動中。

 

 

「リーダー。今回の調査対象はいったいなんだと思います?」

 

「んー……。アラガミじゃないって言ってたし、ゴッドイーターなら腕輪の反応とかでわかるだろうし……」

 

 

 個人的にはシオみたいなヒト型アラガミだといいなって思ってる。アラガミじゃない可能性が高いってだけでアラガミである可能性はゼロじゃないからね。

 

 

『あー、あー。諸君、聞こえているかい?』

 

「はいはーい、こちらコウタ。バッチリ聞こえてますよ、博士」

 

『それじゃあ、さっき出来なかった話をしよう』

 

「時間がないかもしれないって言ってたやつだな」

 

『その通りだよ。答えは簡単さ。ハンニバルの反応が()()()()()()()()

 

 

 え?それって……。

 

 

「もう戦闘は終了してしまった、という事ですか?」

 

『いやいや、戦闘自体は今も続いていると思うよ。ハンニバルの反応は確認されているからね。言っただろう?一時ってね。恐らくハンニバルを一度倒したのだろう。でも……』

 

「復活した……って事か」

 

『そう、その通り!これもあったからアラガミではないだろうと踏んでね………』

 

「とにかく、それで今の状況は!?」

 

『おっと、そうだね。もう片方のは……時折反応が跳ね上がるが先ほどのより低いね。基本的にはかなり微弱なレベルまで落ちている。恐らくまだ生きてはいるが、あまり長くは持たないだろう』

 

「じゃあ、急がないと!」

 

『第一部隊に通達。ハンニバルの反応、沈黙。しかし、再びの活性化を確認。復活したものと思われます』

 

 

 現地にいるのが何かは分からない。でも、私たちと協力出来るような存在なのならば……お願い、無事でいて!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まもなく作戦区域に到着します。各員、準備を!』

 

「了解」

 

「ああ」

 

「了解しました」

 

「よし、行くよ!」

 

 

 目的地に直接ヘリで降りるのは流石に危ないから、少し離れた所でヘリのハッチを開けて飛び降りる。そして、目的地で私の目に入ってきたのは、顔、籠手、逆鱗と全てが結合崩壊を起こしたハンニバルと、ボロボロで少しブカブカな服(?)を羽織って倒れているヒト型に見える何か。

 

 

「ソーマはハンニバルに突っ込んで!アリサとコウタはソーマの援護を!」

 

「「「了解!」」」

 

 

 三人に即座に指示を出した後、私はスナイパーに付いている機能であるステルスフィールドを展開して、姿を隠す。回り込む形で倒れている何かの近くへと向かう。

 

 目の前に来たことで正体が少しわかった。女の子だ。青い髪をした、リッカさん(※神機の整備士、身長150㌢)より少し大きいくらいの女の子。たぶん、人間?いや、ハンニバルと戦って二回も倒したのだろうこの子が本当に人間なのかは疑わしいけど。ヒト型アラガミって言った方がしっくりきそう。

 ん?この子がただ巻き込まれただけの可能性?ないない。仮にそうだとしたら普通は見つからないようにどこかに隠れるだろうし、攻撃なんて受けたら傷だらけになる前に……まあ、そんなことになるよね。

 とりあえずボロボロの彼女を背負って、戦場から離れる。ヘリの所に戻る途中で聞こえた無線からは、もうすぐハンニバルを倒せそうという連絡。援護もいらないと言われ、博士にもそれなら先に彼女を連れて極東支部に戻って来てほしいと言われた。既に彼女の治療の手配や皆の帰投の為のヘリの準備は整えたらしい。サカキ博士……こういう時だけ無駄に仕事が早い、自重して(色んな意味で)。おっとつい本音が。

 

 

 そんなこんなで保護した女の子。ボロボロだったけど、どうやら骨は折れてなかったみたいで治療そのものはすぐに終わった。傷を消毒して、包帯を巻いて、と簡単に。

 問題はこの子をどこで寝かせるか。普通なら医務室でいいんだけど、万が一に備えて博士のラボの小部屋という案も出た。

 

 

「彼女の容態も安定しているようだし、目覚めるまでそう時間はかからないと思うから、医務室でいいんじゃないかな。ユウ君とアリサ君も交代で彼女の様子を見てあげて欲しい。目覚めた時にいるのが同じ女性の方が彼女も安心するだろう」

 

 

 最終的に博士のこの言葉で決まった。

 そして、目覚めたら連絡してね、と言って博士は支部長室へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、すぐに目覚めると予想されていた彼女が目覚めたのは、なんと4日後だった。




初代主人公を男にするか女にするか悩んだ結果、ユウちゃんになりました。
男にして、メルトが惚れるという展開も浮かびはしたのですが、個人的に初代男主人公はアリサとのカップリングこそ正義だと思っている(異論は認める)ので、それは違うなというわけで女になりました。


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4

ゴッドイーターシリーズのストーリー見直そうと思ったら、2のソフトだけが行方不明になってた錬金術師です( ;´・ω・`)ツライム
漫画と攻略本は持ってるからある程度ならなんとかなるのがまだ救い

今回はメルトリリスというよりも本来の人格(?)要素が強いです。基本はメルト:一般人(?)=7:3くらいをイメージしてますが、今回は反転して3:7くらいです。次回からはメルトリリス強めに……なるといいなぁ。

拙い文章ですが、どうぞ!

あ、非ログインの人も感想を書けるように設定変更しました。


 電子の海の中、沈んでいく人影。その肉体は徐々に光へと返っていく。彼女はそれを『死』と直感した。既に記憶は完全に無くし(吸われ)、後はその精神(こころ)が溶かされ尽くすのを待つだけしかない。ただ、それだけの存在だった。

 

 しかし、ある人物(ワカメ)の貢献があり、とあるサーヴァントとそのマスターがとある存在を打ち倒した。それにより、彼女はそれ以上溶かされる事はなかった。だが、もう彼女には存在意義(記憶)も無く、存在手段(肉体)も無い。機能を取り戻した●●●●●により復元され、元の時へと戻った彼女もいるのだろう。だからといって、この彼女がいなくなるわけでもない。故に、廃棄データの一部となった彼女は●●●●●の中を彷徨い、そして、ある世界の●●●●●へと流れ着いた。

 その世界では●●●●●は知られていなかった。地上にも関連する存在は無く、ただそこにあるだけだった。そんな中、月で終末捕食が起こった。それによりこの世界から●●●●●は消滅。同様にに彼女も完全に消え去る、と思われた。しかし、終末捕食による生命の再分配により彼女は生まれ変わった。精神は彼女のまま、既に無かった肉体は変異する予定だったメルトリリスの物で。

 そして、偶然にも彼女が生まれ落ちるはずだった場所は月から剥がれ落ち、人知れず地上へと落ちていた。剥がれ落ちた部分は大気圏で燃え尽き流れ星となったが、彼女を産み出そうとしていたオラクルは大気圏を突破して、地上へと着いた。そこで目覚めた彼女は二週間の時を経て、ついに人と邂逅する事となった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「―――ぁ」

 

 

 眩しい……。それに音が聞こえる。これは、人の声?私は助かった?そう思うも、私の感情を支配したのは安堵や歓喜ではなく恐怖だった。何故?そう思ったのは一瞬。手や足から何も感じないのを理解した。

 

 

「ッ!起き、た?」

 

「ぅ……ぁ」

 

「大丈夫。落ち着いて」

 

「あぁ……い、いや!」

 

 

 近くにいる誰かが近づいて声をかけてくる。でも私はそれが耳に入っていても気にする余裕がない。まだ視界が安定しないので、自分の状態も分からない。怖い。誰か、私に温もりを、生きてる安心感をちょうだい!

 視界がハッキリとしてくると、長袖長ズボンの病人服に、手や足に包帯が巻いてあるのが見える。感触が分からないけど、視界だけを頼りに包帯とかを外しにかかる。

 

 

「ちょ、ちょっと!」

 

 

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い………

 

 

「落ち着いて!」

 

 

 パシンっという音と一緒に私の頬に誰かの手が触れる。それを感じると共に、私の心は落ち着きを取り戻した。

 

 

「大丈夫、私がここにいるから。ね?」

 

 

 それを聞いて、何故か涙が溢れだしてくる。そして、そのまま私は声をあげて泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、恥ずかしい……」

 

 

 恐怖で混乱していたとはいえ、あんな醜態を晒すだなんて。

 

 

「あはは。うん、可愛かった……よ?」

 

「煩いわよ!」

 

 

 照れ隠しに反論にもならない言葉を返すも、笑顔で流される。……そういえば、目の前にいる彼女って何気にこの世界で会う初めての人、よね。

 

 

「?」

 

 

 えっと……こういう時って、どう話せばいいのかしら。『(メルトリリス)』の記録はこういう時に全く役にたちそうにない。あの言動だと、確実に引かれると『私』の人間の部分が必死に叫んでいる。どうする、どうすればいい。考えろ、私!

 

 

「……えっと、その、貴女のお名前は?」

 

 

 このポンコツ頭!(自虐)

 この程度の言葉しか出せないなんて……。コミニュケーション能力を鍛えないとダメかしら。

 

 

「あ、そう言えば自己紹介とかしてなかったね。私は神薙ユウ、ユウって呼んでね。あなたは?」

 

「メルトリリスよ。よ、よろしくしてあげるわ、ユウ」

 

 

 あ、あぁ!な、何が『してあげる』よ、私!失敗した、絶対引かれる……。

 

 

「うん!よろしくね、メルトちゃん」

 

 

 って、あら?引かれなかったわね。まあ、それなら良し……でいいのかしら?

 

 

「ええ……ってメルト()()()?」

 

「ダメ?言いやすいし、可愛いと思うんだけど」

 

「……別にダメじゃないわよ」

 

 

 この後、色々と理由を付けて、巻いている包帯は取ってもらった。幸い、戦闘の怪我もすでに瘡蓋になっていて、外しても問題なかった。

 

 

「……さて、メルトちゃんも無事に起きた事だし、ちょっと話をしようか」

 

「……そうね。私も聞きたい事があるわ」

 

「うん。それじゃ、ちょっと待っててね。皆を呼ぶから」

 

 

 そう言うと、ユウは端末を取り出して誰かに連絡を取る。

 

 

「あ、メルトちゃん。立ち上がって歩く事は出来る?」

 

「へ?……ああ、よっ……とと。ええ、少しふらついたりするけど歩くくらいなら問題ないわ」

 

「オッケー。――はい、そういうわけで………分かりました、博士―――じゃあ移動しようか」

 

 

 ユウに先導されて医務室から出て、部屋の近くにあったエレベーターに乗って、役員区画と書かれた階層へと移動した。そこから少しあるいて着いた先は……

 

 

「……支部長室?え、ユウ。ここであってるの?」

 

「うん、そうだよ。失礼しまーす」

 

 

 さっきユウは『博士』なる人と連絡を取っていたから、てっきり研究室みたいな所に案内されると思っていたのだけれど。もしかして、ユウって意外と偉い人だったりするのかしら?

 まあ、それはともかく私もユウに続いて部屋に入っていく。そこには手袋をしてメガネをかけた、いかにも『博士』って感じの人と、赤い帽子に赤いスカート、そして黒の服を着た女性、ニット帽とマフラーを着けた男性、フードを被った男性の四人が待っていた。

 

 

「ようこそ、フェンリル極東支部へ」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「初めまして、私はここの支部長代理をしているペイラー・榊だ。気軽に博士とでも呼んでくれ」

 

 

 支部長室で、メルトちゃんと博士、そして私たち第一部隊が集まっての話が行われた。ここまで移動する途中、メルトちゃんに軽く質問とかしてみたけど、メルトちゃんがフェンリルやアラガミの事を知らなかった事とか、何故かアラガミを倒せる事とかしかわからなかった。

 

 

「メルトリリスよ……です。よろしくね……お願いします、博士」

 

 

 ん?メルトちゃん、緊張……じゃないね。なんか話すの少し無理してる?

 

 

「メルトリリスくんだね。ああ、別に無理に敬語で話そうとしなくていいよ。君の話したいように話してくれ」

 

「……わかったわ。貴方がそれでいいなら、そうさせてもらうわ」

 

「ほう。それが君の素かい?」

 

「そう……ね。素になるのかしら?ごめんなさい、わからないわ」

 

「わからない?」

 

 

 つい話に割り込んでしまった。だって自然と口から出てくるのが素なんじゃ……?

 

 

「私、今日を除くと凡そ10日分の事くらいしか記憶がないもの」

 

「えっ!?」

 

 

 それを聞いて部屋の全員が驚いた。博士もいつもの糸目を開いている。

 

 

「過去の記憶が一切ない、つまりは記憶喪失みたいなものかな」

 

「そうなるわね。だから自分自身の事は私も知りたいのよ」

 

 

 そう、なんだ。メルトちゃんの記憶が……あれ?

 

 

「待って。記憶がないって言ったけど、じゃあその名前は?」

 

「これが本名なのかどうかはわからないわ。ただ、それしか名前となるのが頭に無かったの」

 

「なるほど……。それじゃあ、他の事について話してもらえるかい?過去の記憶は無くとも、10日分ならばあるのだろう?特に、君がどうやってアラガミの闊歩する外の世界で生きてきたのか、どうやって戦っていたのかをね」

 

「ええ。そうね……最初は――」

 

 

 メルトちゃんが言うには、メルトちゃんの主観で10日前(実際の時間では2週間前)に森で目覚めて、困惑していた所をオウガテイルの群れに襲われた。戦い方は何故か身体に染み付いていたから、それで戦った。でも攻撃が通らなかった。

 

 

「そこで一つ、私は切り札を切ったわ」

 

「切り札?」

 

「ええ。その名も『メルトウイルス』。無機物、有機物問わずなんでも溶かす私の毒。それでそのアラガミ――オウガテイルだったかしら?――の一体を溶かして吸収したわ」

 

「なにそれ、こっわ……」

 

「コウタ!」

 

「あ、ごめん」

 

「気にしなくていいわ。怖いのは本当だし、こんなのを使える私は人間じゃないのかもしれないもの……」

 

 

 メルトちゃん……。

 

 

「話を戻すわ。それで吸収したときに、オラクル細胞をほんの少しだけ操れるようになったの。それで攻撃が通るようになって他のアラガミも倒したわ」

 

 

 その後は、私たちがメルトちゃんを保護した港に移って人を探していたらしい。そして、数日経ってハンニバルと戦って、今に至る。

 

 

「こんなところね」

 

「なるほど。いやいや、実に興味深い事だらけだね。ところで、アラガミを倒したと言ったが、武器とかはあるのかい?」

 

「ええ、これよ」

 

 

 それを言うと、メルトちゃんは軽く跳んだ。次の瞬間、メルトちゃんの足に何かはわからないけど金属で出来た刺々しい……ブーツ?みたいなのが現れた。

 

 

「これは、なんとも……」

 

「ちなみにメルトウイルスもこの棘から撃ち込めるわ」

 

「ふーむ。と、ありがとうメルトリリス君。それはもう消してくれて構わない……というか、基本的に屋内では消しておいてほしい。理由は、言わなくてもわかるね?」

 

「ええ、それくらいわかるわ。……これなら大丈夫かしら?」

 

 

 メルトちゃんはブーツからあの棘や足裏の部分だけを消した。これだと見た目はただの義足に見えなくもない。

 

 

 

 

 

「さて、それじゃあ今後の話をするとしようか。まず君はゴッドイーターでもなければアラガミでもない。かといって、普通の人間かと言われると……まあ非常に怪しいが」

 

「ええ、自分では人間だと自覚しているのだけれど……今日、こうして話していたらなんか薄れてきたわ」

 

「まあ、それは一旦置いといて。君は、これからどうしたいんだい?」

 

「……私は、その、出来ればここに居たいわ。

自分が何者かもわからないし、頼れる知り合いもいない。ユウたちが助けてくれなかったら死んでいたかもしれない。でも、戦う事しか私は出来ないし、それでしか私は生を実感出来ない。他にも、記憶がなかったり、色々と問題を抱えてはいるけれど。

それでも……やっぱり一人は寂しいから。

 

 

 

こんな自分勝手な理由だけれど、お願いします!」

 

 

 メルトちゃんはそう言うと頭を下げた。博士は私たちに視線を向けてくる。言わんとする事はわかってるから、頷く事で返事をする。

 

 

「メルトリリス君、頭をあげて聞いてほしい。君は人間じゃないのかもしれない、と言った。でも、実際がどうであれ、君はこうして私たちと言葉を交わした。話も通じるし、無闇矢鱈に暴れたりした訳でもない。それに、君は私たちを気遣ってか、話していない事があるだろう?」

 

 

 え、あるの!?メルトちゃんを見ると明らかに驚いていたので、あるんだろう。

 

 

「……別に気遣ったわけではないわ。ただ、あまり迷惑をかけるものじゃないと思っただけよ」

 

「まあ、それについては君の気が向いたらで構わないよ。とにかく、そう言うことが出来る君は十分人間だよ。

私たちはそんな君をこのアナグラに歓迎しよう。例え、君が人間でないとしてもね」

 

「……ありがとう」

 

 

 顔を赤くしてメルトちゃんは小さくそう言った。こうして、メルトちゃんというゴッドイーターじゃないけど、新しい仲間がアナグラに加わった。

 そして、私たちは改めて自己紹介をする。私がアナグラのエリート部隊である第一部隊の隊長だって言ったら驚いてた。コウタはちゃっかりとバガラリーを宣伝してたし、アリサとも仲良くやれそうだった。ソーマは、まあ、意外と面倒見はいいからたぶん仲良くやれるだろう。で、最後にメルトちゃんの番。

 

 

「それじゃあ……ごほん。

私の名前はメルトリリス。今日からアナグラで世話になるわ。蹂躙するのは得意だから、アラガミの相手するときは呼びなさい。ええ、アラガミならいくら嬲っても心が痛まないし、私の気分も良くなる。ついでに人類の脅威も減る。ほら、まさに一石三鳥ね……ってあら?ねぇ、なんで引いてるの?ねぇ!?」

 

 

……メルトちゃんってドSだったんだね(トオイメ)




ここくらいしか主人公が生まれた経緯を入れるような所がなかったので、突っ込みました。
というわけで、主人公の正体は、メルトリリス(本物)にドレインされたマスターの一人、という設定です。
無かった事になった裏側の出来事って、つまり剪定事象になった……ってことでいいんです、よね?最後に解決したCCC主人公がなんとなくの既視感(?)を持ったのは彼(彼女)がそういう存在だから……って思ってるんですが。(言いたい事が伝わってるといいな)
まあ、地上で目覚めた理由には少し無理があるのですが、見逃してくれると嬉しいです(汗)(2RBのラスト的なのと思っていただければ)

(この設定は前回投稿してすぐ浮かんできたものだというのは秘密)


最後に性癖というか加虐体質なのを少しぶっちゃけてるのは、自分が人間だと言われ、仲間と認められた事で、言っても大丈夫だろうと認識が変わったからです。当然、引かれます。……でもゴッドイーターって変わった人が多いですから、皆すぐに慣れます。



なお、最初の方に出てきたマスターとサーヴァントの名前やクラスは皆さんの想像にお任せします。


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5

気づいたらお気に入り100越えてたんだが……と、今さらながらぼやくヴァリアントサイス使いの錬金術師です。RBで『血塗れのツァンナ』使って難易度15+30のウロヴォロスをソロで遊んだりしてます。一振で1万近くのダメージ出るの見て和んでます←

さて、最初に言っておく。あまり内容に期待しないでね?(てへぺろ)


 2071年、人類の天敵たるアラガミと日夜戦いを繰り広げる極東のゴッドイーターたち。その仲間として新しく加わったメルトリリス。彼女の実力は並みのゴッドイーターを越えていて、第一部隊の面々と比べても遜色ないのであった。

 

 そんな彼女(休暇中)の今の様子がこうだ。

 

 

「……ズーーー、プハァ.これはまあまあね」

 

 

 目線を隠すサングラス。ペンギ「リヴァイアサンよ!」……リヴァイアサンをモチーフにしたフード付きパーカー(メルトデザイン、リッカ作)を着用。足は棘とブレードを収納した状態。

 そう、彼女はリヴァイアサンの要素を前面に出した『謎のアルターエゴ・Λ(ラムダ)』の格好で、ラウンジでソファに持たれながら、アナグラの神機整備士リッカのオススメの『冷やしカレードリンク』をストローを使って飲んでいた。どうやらその評価は微妙なよう。

 ちなみに、そんな彼女のお気に入りは『初恋ジュース』。なんと表現したらいいのかわからないくらい、美味しいらしい。『これが、初恋の味なのね!』とは、彼女の談。それを聞いたアナグラのゴッドイーターたちは彼女を奇妙なものを見る目で見たとのこと。

 

 と、まあどうでも良さそうなジュースについては置いといて。

 彼女が『メルトリリス』ではなく『謎のアルターエゴ・Λ』の格好でいるのには訳があった。

 

 

 

……………そう、それは彼女がアナグラの一員となった翌日のこと。『メルトリリス「これは露出しているのではないの。貞淑に隠しているのよ!」』事件、通称『アナグラ男子危機一髪』が起きた事に起因する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 アナグラに受け入れられた翌日。この日はユウたちと合同でのミッションの予定が入っていた。

 与えられた自室で、目覚めた時から来ていた病人服から『(メルトリリス)』の服へと着替えてミーティング予定のエントランスへと移動する。

 そこでは何故か、私を見る人たちの様子がおかしい。顔を赤くしたり、私から目を反らしたり、私を凝視したりしている。

 それに疑問を覚えながらも、ユウたちを見つけたので近づいていく。

 

 

「ユウ」

 

「あ、メルトちゃ……んんん!?」

 

「どうしたのよ?」

 

 

 私の声に気づいたユウがこっちを振り向くと、何故か声が上擦った。

 

 

「な、おま、なんて格好を……グハァ!?」

 

「お、男の人は見ちゃダメです!」

 

「ちょっと、メルトちゃん!なんでそんな格好してるの!?」

 

「そんな格好って……どこかおかしいかしら?」

 

 

 コートも脚甲も髪型も特に問題はないはず。当然ながら私の身体は完璧。ええ、問題ないわね。

 

 

「下だよ、下!ちゃんと隠して!アリサみたいになっちゃうよ!」

 

「そうですよ!色々と見えてしまいます!スカートかズボンか忘れてますよ!………ってリーダー、私みたいってどういうことですか!?」

 

 

………?ああ、そういうことね。

 

 

「勘違いしないでちょうだい、二人とも」

 

「へ?」

 

「これが私の正装よ」

 

「いやいや、え?本当に?」

 

「それにしても露出し過ぎだと思うんですが……見えません?それ」

 

「違うわ」

 

 

 アリサはわかってないわね。これは……。

 

 

「これは露出しているのではないの。貞淑に……隠しているのよ!そう、貴女と違ってね」

 

 

 そう宣言した所、少し騒がしかった周囲が一気に静かになった。

 

 

「だ……」

 

「……アリサ?」

 

「だ、誰が露出してるというんですか!私はちゃんと隠しています!」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

「だいたい――――!」

 

「それが――――!」

 

 

 メルトちゃんの一言から始まったアリサとの口論……口論?いや、これメルトちゃんはただ思っている事を素直に口にしてるだけで、それにアリサが突っかかっているようにしか見えない。

 

 

「はいはい。二人ともそこまでそこまで。ほら、ここで騒ぐと迷惑だから……それに任務もあるから」

 

「……そうね。少し熱くなってしまったわ」

 

「……わかりました」

 

 

 なお、この日の任務は難なく終わった。メルトちゃんは素早い動きでアラガミを翻弄しつつ、あの棘や蹴りで容赦なく屠っていっていた。たまに周りが見えなくなっててアラガミに突っ込み過ぎる癖が見られたけど。アリサも対抗心を燃やしたのかいつも以上にいい動きをしていた。

 反面、コウタは少しミスが目立っていた。うん、分かるよ。見えないと思っていても気になっちゃうよね、あれは。ソーマ?ソーマは別にいつも通りだったかな。特に気にしてないように見えたけど。

 

 その後、数日間メルトちゃんと行動を共にしていると、私とアリサはメルトちゃんの格好があんまり気にならなくなってきた。慣れって怖い。だけど、コウタや他の男性ゴッドイーターたちはどうやら違ったみたいで……。

 

 

 

「……と言うわけでメルトリリス君に苦情が来ているんだ」

 

「なんでよ!?」

 

 

 メルトちゃん(と、何故か私)はサカキ博士に呼び出されて、こう話をされた。後、メルトちゃん、その解せぬって表情やめよ?確かに私は慣れてきたけど、男の人にとっちゃ刺激が強いのは変わらないからね?後、子供に悪影響を与えかねないと思う。

 

 

「まあ、戦闘の時は仕方ないとして……それ以外では、その、もう少し隠して貰えるかな?」

 

「……納得は出来ないけど、わかったわ。でも、他の服なんて持ってないわよ?」

 

「そこは安心してくれ。リッカ君、頼んだよ」

 

「はーい。それじゃ、メルトちゃん行こうか」

 

 

 部屋の隅で待機していたリッカさんにメルトちゃんは連れていかれた。なるほど、確かにリッカさんは以前にアラガミ素材でシオの服を作った事もあるし大丈夫かな。……ところで、なんで私は呼ばれたの?

 

 

「ああ、メルトリリス君の事について言っておく事があってね」

 

「何か、あったんですか」

 

 

 博士が真面目な雰囲気を出して語り始めたのを見て、私は気を引き締める。何か重要な事がわかったに違いない。

 

 

「今日付けで第一部隊所属にすることに決定したからね」

 

「……はい?」

 

「報告書を見た限りだと、少し暴走癖(?)があるみたいだけど、君たちなら止められるだろう?本人の実力的にも十分みたいだし、頼んだよ」

 

 

 え?いやいやいや。

 

 

「えーと、それだけですか?」

 

「これだけだとも」

 

「その……もっと他の何かが分かった、とかじゃないんですか?例えば、メルトちゃんの秘密とか」

 

「んー、そういうのは見つかってないね」

 

 

 話は本当にこれだけのようだった。……なんのために気を引き締めたんだ、私は。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

「じゃあメルトちゃん。どんなデザインがいい?希望は可能な限り聞くよ」

 

「そうね……なら――?」

 

「なるほど、――?」

 

「いいわね!ここは――」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

「と、いうわけで、メルトちゃんの新しい服が完成したよ!」

 

 

 三日後。第一部隊のメンバーはリッカさんと博士に呼ばれて研究室に集合していた。メルトちゃんはシオが過ごしていた小部屋で着替えて待っているらしい。

 

 

「リッカさん……信用していない訳ではないんですが、大丈夫ですか?」

 

「もちろん!自信作だから安心していいよ。メルトちゃん、かもん!」

 

 

 リッカさんの言葉に続くようにドアが開く。

 そこから出てきたメルトちゃんはフード付きのパーカーを着ていた。……おお、予想外にまともな格好だ。メルトちゃんの事だからもっと露出している所が多いのかと思ってた。

 

 

「どうかしら?」

 

「……驚きました」

 

「似合ってるじゃん。な、ソーマ」

 

「……」

 

「何か言えよ……」

 

 

 確かに似合ってる。でも、一つ気になるのがパーカーの下だよね。

 

 

「メルトちゃん、そのパーカーの下ってどうなってるの?」

 

「あ、うん……その、それはね?えっと……」

 

 

 尋ねたら、リッカさんが何かいいずらそうにしている。

 

 

「この下は水着だけね」

 

 

 そしたら、メルトちゃんの口から爆弾発言が飛び出た。いや、なんで水着!?

 

 

「なんでですか!?」

 

「ちょっとリッカさん!?」

 

 

 問い詰めるようにリッカさんの方を見つめる。リッカさんは目線でメルトちゃんになにか確認をとっている?それで許可が出たのか、リッカさんは話し出す。

 

 

「まあ、正直私もそれはどうかと思ったよ?でも、メルトちゃんの体質の事聞かされたら、さ」

 

「体質?」

 

「メルトちゃんは、触覚がかなり低いみたいなんだ」

 

「え?」

 

 

 まさかのここで明らかになったメルトちゃんの秘密。

 

 

「簡単に検査してみた所、特に手は布一枚隔てるだけでもほとんど何も感じないみたい。メルトちゃんの薄着(?)はこれが少し関係しているみたいだね」

 

 

 いや、それ結構重くない?当の本人は全く気にしてないって雰囲気だしてるけど。

 

 

「別に気にする必用なんてないわよ。特に問題なんてな……ええ、無いわね」

 

「あるだろ」

 

「ありますね」

 

「大丈夫よ!……力加減がわかりづらくて、箸とかが非常に使いづらいくらいだもの」

 

 

 ああ、そういえばメルトちゃんって食事の時はいつもスプーンかフォークしか使ってないね。席もカウンター席しか座らないし。そういう理由だったんだ。

 

 

「メルトちゃん、日常で困った事あったら言ってね?手伝うから」

 

「ええ、その時は頼むわ」

 

 

 そう言ったらメルトちゃんは『手駒発見』みたいな笑みで私を見つめながらそう返した。……なんか早まった気がする。

 

 そんなこんなで、服装の変わったメルトちゃんを連れてエントランスへと向かうと、明らかに落胆しているのが何人かいた。その顔覚えたぞ、貴様ら(変態ども)




内容が薄い……薄くない?まあ、とりあえず普段着はラムダリリスですよ+触覚障害発覚、って話です。

アーカイブ
『メルトリリス「これは露出しているのではないの。貞淑に隠しているのよ!」』事件(命名:第一部隊隊長神薙ユウ)

通称『アナグラ男子危機一髪』
普段着(彼女談)で現れたメルトリリスの格好に、刺激が強すぎるから何とかならないかとアナグラのゴッドイーター含む職員(主に男子)がサカキ博士へと苦情をいれることになった事件。

結果的に戦闘時と緊急時を除き、別の格好をするという事で落ち着いた。
この事件後しばらく、メルトリリスへと目線が移ってしまった男性陣は女性陣から冷ややかな目で見られた。

なお、極一部(へんたい)が解決までの間、莫大な戦果を挙げた事も追記しておく。

この情報は極東支部部外秘とする。


オマケ:二人の内心
メルト→アリサ:あの服装……なるほど、見せているのね。
アリサ→メルト:な、なんですかあの格好は。破廉恥です!
なお、別に二人の仲が悪くなったとかは特にない。


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6

天撃も書き進めないと……でもなかなか書けない。これも全て卒研が悪いんだ!(責任転嫁)
こっちは何故か出来たので、投稿。文字数的には少し短め。

今考えているストーリーは2がメイン
漫画のthe 2nd break編はいれようか悩む所


 2072年某月、本日も晴天なり。アラガミも元気に(?)地を歩いている。それを狩るべくゴッドイーターも元気に(ブラック気味に)働いている。

 

 

 贖罪の街。アラガミが出現した直後に多くの人が集まり身を寄せあっていた都市の一角。そこの高台に二人のゴッドイーターと共にメルトリリスはいた。

 

 

「さて、今日の獲物はなんだったかしら?」

 

「えーと、確かウコンバサラとコンゴウだったと思います」

 

「ああ、鰐と猿ね」

 

 

 メルトと共にいる二人。一人は、ピンクの髪をボブカットにしていてブラストの第一世代神機を使用しているゴッドイーターの台場カノンだ。

 

 そしてもう一人は、仲良く話す二人を見て内心で歓喜の声をあげていた。

 

 

(これはついてるっす。ベテランのカノン先輩に、第一部隊のメルト先輩の二人の任務についていけるなんて!同じブラスト使いのカノン先輩の動きを参考にさせてもらうっす!)

 

 

 彼女は、ゴッドイーターでないメルトと射撃型第一世代神機使いのカノンだけではアラガミのコアが回収出来ないため、回収の為だけに連れてこられた憐れな被害者(新人)である。(※名前は特に決まってない)

 

 

(一応、一番後ろで適度に援護とコアの回収だけでいい、とは言われているっすけど……機会があればうちも活躍したいっすね)

 

 

 しかし、彼女は知らない。この先は地獄だということを。それはメルトの加虐体質(ドS)もあるのだが、それ以上にカノンの存在が大きい。カノンは誤射率が世界一(誇張無き事実)というとんでもない記録を持っている。そのため、カノンと共に任務に出た者は、ほとんどが(誤射による被害で)ボロボロになって帰ってくる事になるのだ。

 

 

「とりあえずここから見えるのは鰐だけ、ね」

 

「コンゴウは耳がいいですから戦闘中に乱入されそうですね……」

 

「それならそれで探しに出なくて楽じゃない。さて、そろそろ時間だし始めようかしら?」

 

「そうですね、いきましょう」

 

「りょ、了解っす!」

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、いくわよいくわよいくわよ!!!」

 

「アハハ!この程度で終わらないよねぇ?」

 

 

 加虐体質を全開にしたメルトの乱舞とカノンの砲撃が絶え間なくウコンバサラを襲う。新人の彼女は援護しようにもそんな間がなく、ただ後ろで周囲を警戒するしか出来なかった。というか、二人のその姿に恐怖を覚えていた。

 ウコンバサラは反撃の為に背中のタービンを回し、電撃を放とうとするが、

 

 

踵の名は魔剣ジゼル(ブリゼ・エトワール)!!」

 

「Gaaaaa!?」

 

「ハハッ!無様だね、もう潰れちゃったの?」

 

 

 いち早く気づいたメルトの放ったジゼルが直撃し、結合崩壊を起こす。それで動きが止まったところに二人は更に畳み掛けるように次々と攻撃を加えていく。

 

 

(いやいやいや、なんなんすか!?さっきまでとは完全に別人なんすけど!?)

 

 

「Goaaa!!!」

 

「!?」

 

「ッ!コンゴウ!うちが止める……っす!?」

 

 

 カノンがウコンバサラへと追加の一撃を放とうとした時、背後からコンゴウが転がってきた。それに気づいた新人の彼女は装甲を展開して、狙われているカノンの前に立ち塞がった……そう、立ってしまった。

 次の瞬間、振り返ったカノンの砲撃が彼女ごとコンゴウを吹き飛ばした。

 

 

「射線上に入るなって……私、言わなかったっけ?」

 

「ひいっ!?」

 

 

 そのままカノンはコンゴウに向けて笑いながら連続でバレットを放っていく。当然ながら(?)何発かはそれて新人の彼女へと流れていく。

 

 

「さあ、もっとボロボロにして………」

 

「か、カノン先輩……?」

 

「チッ、こんな時に弾切れなんて……クソッ」

 

「あら、それならあの猿も私が貰うわね」

 

 

 弾切れにイラつくカノン。そこに颯爽と現れたメルトがコンゴウへと蹴りを叩き込んだ。

 

 

「あれ、ウコンバサラは……もう倒れてるっすね」

 

 

 さっきまでウコンバサラの相手をしていたはずのメルトがコンゴウと交戦を始めたのを目にした彼女は、チラリとウコンバサラがいた方を向く。そこにはタービンだけでなく、尻尾と頭部までも結合崩壊して倒れていた。とりあえず与えられた仕事であるコアの回収を行った。そして、(カノンの誤射に)巻き込まれたくないので、カノンにオラクルだけ渡してそこから二人の戦闘を見ている事にした。

 

 

 

 

 

「アン!ドゥ!」

 

 

 宙返りと共に放たれた蹴りがコンゴウの顎を打ち上げ、続く回し蹴りが腹に直撃し吹き飛ぶ。そこを待ち構えていたカノンの放つ砲撃が続き様に襲い掛かる。

 

 

「ねぇねぇ、この程度なの?あなたって」

 

「たかが猿だしね。大型の任務にした方がよかったかしら?」

 

 

 背中のパイプに顔面をカノンの砲撃で、尻尾をメルトの脚による斬撃で、破壊される。虫の息ほどに弱ったコンゴウは回復の為に二人から逃げ出す。その方向は……。

 

 

「うおぉっ!?こっち来たっす!?」

 

 

 新人の彼女のいる方だった。神機を射撃形態に変形させ、射撃を行う。彼女のブラストから放たれた弾はコンゴウの顔面へとクリーンヒット。ダウンを取った。

 

 

「今よ!畳み掛けるわ!」

 

「ウフフ!いい的じゃない!」

 

「捕食いくっす!」

 

 

 メルトの膝蹴り(セイレーン)が、カノンの砲撃が、新人の彼女の捕食攻撃が、ダウン中のコンゴウへと集中する。

 

 

「トドメは譲ってあげるわ」

 

「万が一の時は助けますから。ドンといっちゃってください!」

 

「わ、わかったっす!」

 

 

 神機のショートブレードを構えてコンゴウへと斬りかかる。五連撃を放った後、ライジングエッジで飛び上がる。

 

 

「おぉぉぉ!!」

 

 

 そして最後に空中で姿勢を整えて突撃する。その一撃はコンゴウを貫き、二度とコンゴウが起き上がる事はなかった。

 

 

「や、やったっすか……?」

 

「はい!討伐完了です!」

 

 

 歓喜の声をあげて、彼女は喜んだ。想定とは色々と違ったけど、中々いい経験にはなったようだ。

 

 

 

 

 

 

「と、まあ今日はこんな感じだったわね」

 

「へぇ……」

 

 

 帰還後、ラウンジで食事中にメルトから話を聞いたユウは思った。その新人の子、大丈夫かな?と。

 

 

(カノンさん一人でも(誤射的な意味で)大変なのに、メルトちゃんも一緒だったなんて)

 

 

 もし、会えたら少し労ってあげようと決めたユウだった。




新人ゴッドイーター(名称未定)(女性・16(2072年時))
メルトとカノンの二人に同行した新人。先輩ゴッドイーターに『何事も経験だ!』と生け贄にされてしまった子。第二世代神機(ショート・ブラスト)使い。防衛班見習い。どこがとは言わないけど、ペタンである。
笑顔で徹底的にアラガミを嬲るメルトとカノンのいう二重の恐怖を間近で見て以降、些細な事では恐怖を感じなくなってしまった。
2074年、ハルさんにその度胸を買われ(ナンパされ)、なし崩し的にカノンもいる第四部隊に配属になる。彼女の明日(みらい)はどっちだ。

「ふふふ……あの二人の笑顔に比べたらアラガミなんて全く怖くないっす!」

ちなみにメルトとカノンの事は、戦闘時の笑顔が恐怖の対象であって、普段は平気だし、実力的にはメルトを、人格的にはカノンを尊敬している。



本日の二人の内心
メルト:カノンとは仲良くやれそうね。火力はもちろんの事、私と同じ(加虐体質)なところ(※勘違い)が特にポイントね。
カノン:メルトちゃんには一回も誤射ありませんでした!これは私たち、とても相性いいのでは?また今度、任務に誘いたいです!


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7

とりあえず年内最後の投稿!

色々と考えた結果、2nd breakやろうかなと。(ウコンバサラ先に出しちゃったけど問題はないかな。三巻はメルト突っ込むところないしね。強いていうならエリナ&エミール編?)
クレイドル設立やら、エリナ、エミール加入の話も同時に出来て一石二鳥だよね、と。
……決して2までのネタが無くなった訳じゃないよ?ホントだよ?
というわけで2nd break編一話です。

(卒研忙しくて更新止まってました)


 2074年。メルトがアナグラの仲間になって二年と少しが経過した。既に彼女の名は第一部隊の一員としてアナグラ内で広く知られている。

 そんな彼女は今何をしているかというと……。

 

 

 

「……いったいここはどこなのよ?それに、アリサとソーマは無事なのかしら……」

 

 

 

 この世界に降りたって以来、約二年ぶりのサバイバルが始まろうとしていたのだった。どうしてこうなったかを知るためには数時間程度、時間を遡る必要がある。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「君たちには新しいサテライト居住区の候補地を探してきてほしいんだ」

 

 

 ここ、フェンリル極東支部の支部長代理を勤めている榊博士に呼び出された私、アリサ、コウタ、ソーマ。そこで告げられた新たな任務がこれだった。

 

 

「……博士、正気なの?」

 

「アラガミとやり合うならまだしも、住みやすい土地とかわかんないすけど!?」

 

「いや、君たちにはその前の下準備をお願いするよ」

 

 

……?それは、どういうことかしら?

 

 

「新しい居住区を建設するにあたって、アラガミの存在は無視できない。じゃあまずは基本的な質問をしようか」

 

 

 そう言って、博士はプロジェクターに一体のアラガミ――私が初めて戦ったアラガミであるオウガテイル――の画像を映し出した。

 

 

「アラガミとは、何かな?」

 

「オラクル細胞の集合体……ですよね?」

 

 

――説明しよう!

 オラクル細胞はあらゆるものを取り込み、喰らう細胞である。そのオラクル細胞の集合で構成された生命体、アラガミは食べたものの特徴を取り込み進化する。

 アラガミのオラクル細胞はコアと呼ばれる指令細胞群を中心に形を作っている。このコアを摘出しない限りアラガミは再生する。なので、摘出する手段を持たないメルトはオールドレインの力でアラガミのコアを構成しているオラクルを吸収することで倒しているぞ!もちろん、吸収するとメルトの経験値となりコアは得られないので、基本的にメルトはコアを回収可能なゴッドイーターと一緒に出撃しているぞ!――

 

 

 え、何よ今の……。頭の中に声が?

 

 

「アラガミの心臓とも言えるコアを加工したものは我々の生活にも、多大な恩恵をもたらしている。その一つがアナグラをぐるりと囲んでいる、この対アラガミ装甲だね」

 

 

――対アラガミ装甲とは!

 アラガミには偏食傾向と呼ばれる共食いを避ける行動の特性がある。この特性を外壁に利用し、アラガミに「食べたくない」と認識させているのが対アラガミ装甲である――

 

 

 また出たわね!?これくらい前に習ったわよ!

 

 

「コアは他にもさまざまな形で使われているが……。さて、既存の通常兵器ではコアどころかまわりのオラクル細胞ですら破壊することはできないよね。どうやってアラガミからコアを取り出しているのかな?」

 

「いや……だから俺たちがいるんじゃないすか」

 

「そう。同じオラクル細胞を組み込んだ神機に適合した戦闘員、ゴッドイーターが人類最後の砦となってアラガミと戦い、コアを摘出しているんだね」

 

「博士――俺らこうみえてももう中堅っすよ?今さらこんな新人講習みたいな……」

 

「さて、ここからが本題だ」

 

 

 コウタのボヤキを遮り、笑顔になって体をこちら側につきだして博士が話を続ける。

 

 

「実は最近、アラガミの行動にはそれぞれ規則性ごあることがわかってきたんだ」

 

「……規則性、ですか?」

 

「例えば君たちも、朝起きて歯を磨いて……なんて毎日のリズムや通る道なんかが決まっていたりするだろ?アラガミにもそういう行動が見られるんだ」

 

 へぇ?なるほどね……。

 

 

「……だから?」

 

「あ、もしアラガミの生活のリズムがわかれば、アラガミが普段近づかない場所もわかる……?」

 

「そこに居住区を建てればアラガミに襲われる確率も少なくてすむ、か」

 

「さらに守るための人員や費用もこれまでより抑えられる、ってわけね」

 

「ご名答!」

 

 

 私たちの解に満足しただろう博士は日本地図を下ろし、その左半分を指し示す。

 

 

「今回はその行動の特性を広域的に定点観測することで、比較的安全な地域の割り出しを行いたいんだ。君たち第一部隊は西日本を中心に観測装置を設置してもらいたい。第二、第三部隊は第一部隊の支援にまわってもらうことになっているよ」

 

「我が第一部隊のリーダー、神薙ユウ君をお忘れじゃないですか?」

 

 

 そこでコウタが手を挙げて質問をする。アリサも横でうんうんと頷いている。

 

 

「ああ、彼女には別件でツバキ君、リンドウ君と出征してもらうからね」

 

 

 なるほど、だからここにユウがいないのね。

 

 

「極東各地をまわる長期の遠征になってしまうだろうけど、よろしく頼むよ」

 

 

 アラガミとの交戦は少なくなるだろうけど、まあ頑張ろうかしら。

 

 

「長期かぁ……」

 

「あ」

 

「こりゃ、おみやげどっさりと買って帰ってやんないと」

 

 

……ああ。そういやコウタには家族がいるんだったわね。何回か聞かされたことがあるわ。

 

 

「あ、コウタ君はここに残ってね」

 

 

 え?と、全員の声が揃った。

 

 

「各員の状況を把握してバックアップする司令官が必要でしょ?」

 

「…………でも」

 

「それだけじゃない。君にしかできない重要な任務があるんだ……」

 

「……!」

 

「呼んでくれ」

 

 

 博士が通信でそう言って少し。部屋のドアが開いて男女二人入ってくる。

 

 

「はじめまして。エリナ・デア=フォーゲルヴァイデです」

 

「僕の名はエミール。エミール・フォン=シュトラスブルク」

 

 

 少女――エリナの方は簡素に、男の方――エミールは髪を揺らし、キメ顔で自己紹介をした。

 

 

「よろしく」

 

「キッモ」

 

 

 そして唐突に始まる二人の口論。それを見たコウタは声にならない声を出し、博士に詰め寄る。

 

 

「はは……二人の家は犬猿の仲というやつらしい」

 

 

 博士は笑顔を崩さずにコウタに返した。

 

 

「新人育成。よろしく頼むよ」

 

「なるほど、これはコウタにしかできませんね」

 

「がんばれよ」

 

「応援だけはしてあげるわ」

 

 

 私たち三人はコウタの肩や背中に手をポンと当ててそう告げた。

 

 

「お前らな……」

 

 

 コウタの恨めしげな声は無視した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、コウタってば失礼ですよね。何が「この三人のコンビってなんとなく不安」ですか!?候補地のひとつやふたつ、ぽぽーんと見つけちゃいますよ」

 

 

 移動用のヘリに乗り込み飛び立った後、アリサがそう言った。そのヘリの中だけど、なんというかその……。

 

 

「――おい、アリサ」

 

「はい?」

 

「なんだこの荷物」

 

「着替えですけど?」

 

 

 そう、アリサの荷物で床のほとんどが埋まっている。え、私?リヴァイアサンパーカーは着てるし、あの服(初期霊基の服)はいつでも呼び出せるから、アリサの荷物に一部の生活用品だけ入れさせてもらったわ。まあ、さすがにアリサのこの荷物は多すぎるような気もするのだけど……。

 

 

「……チ」

 

「あ、なんですか!?言いたいことがあるならハッキリ言ってください!ソーマの悪い癖ですよ?」

 

 

 さて、移動中は暇だし少し寝させてもらいましょうか。ではお休みなさ

 

 

「ユウだったら良かったのにッッ!!!」

 

 

 うるさいわね!?

 

 

 

 そしてそれからしばらく経って、警報音で私は目覚めた。どうやら新種のアラガミがレーダーにかかったらしい。そしてパイロットの困惑の声が聞こえてくる。

 次の瞬間、爆音と共にいきなりヘリが激しく揺れたかと思うと、目覚めたばかりなのに私はそのまま意識を失った。

 

 

 

 再度目覚めると、そこはどことも知らぬ森の中。まわりには誰もおらず、アラガミに襲われただろうヘリの残骸すらない。恐らく、墜落の途中で私はヘリから投げ出されたのだろう。

 

 

「……いったいここはどこなのよ?それに、アリサとソーマは無事なのかしら……」

 

 

 とりあえず、二人を探しつつ食料……はドレインでなんとかすればいいわね。見つからなかった時用に寝床の確保は必要、後はアナグラへの連絡手段の捜索。はぁ、新任務開始早々これは気が滅入るわね。




次の投稿は天擊と同じく、一月末から二月頭になるかと。卒研の〆切が一月中旬だから、たぶん。


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