死にゲーみたいな現代で生きる一般不死身の怪物さん (ちぇんそー娘)
しおりを挟む
おまけ
用語解説集
ここには当作品の用語の解説があります。
本編の展開に関わるようなものではなく、『書いてあるけど説明されることは本編では多分無い』という一応ネタバレがない程度ですがそれでもそういうのは妄想して楽しみたいという方は見ない方が良いです。
個人的にこの作品の楽しみ方の1つとしても用語や単語を妄想するのはあると思うので、そういう楽しみ方をしたい方は本当に見ない方が良いです。
また、異界領域についてはこちらはあまり語らない方が良いと思うので本当にざっくりです。
纏めると『本編で語られることがないだろうからここで語っておいちゃうよ』みたいなもの達です。なので読まなくても全く問題がありません。逆に言えば本編の著しいネタバレになるようなことはここにはありません。あと、知りたいことがあったら言ってくれれば適時追加されるかもしれません。
・ブラド
本名はイギリスの亡霊、妖精である『ブラックドッグ』。
彼女自身は墓守として天に昇ることも許されず墓に囚われた名前もない誰か。彼女自身がブラックドッグと言うよりは、彼女に後々ブラックドッグという話が付いてきた。なので成り立ちとしては精霊に近いが一応元人間であり、異界領域は使えない。
不死友ネットの管理人であり、顔が広い皆のまとめ役。ただかなり若くして亡霊になったせいで若干中学二年生のハートを持っている。アルカとはかなり古い知り合いで仲良し。
『電業雷轟』について
ブラドの使う異界領域……ではなく、術式の名前。本来名前は必要ないがブラドがカッコイイと思ったのでつけた。
簡単に言えば電気の結界。全てにおいて世界革命に劣るが、その分コスパが良く範囲も調整が利く。対生物だと相手の生体電気に干渉したりできるるのですごくすごい。
・狐巫女VTuber春ノアキラ
その正体は平安最高にして日本最強の陰陽師『安倍晴明』。
性格は端的に言って外道。最強の陰陽師という肩書き通り、怨霊を祓う為のシステムが人の形を持って生まれたかのようなもので、怨霊をボコボコにして嘲笑うこと以外に楽しみを見いだせない人格破綻者。不死者になったのも祓いたい怨霊が未来に出るっぽいのでなったという超ざっくりした理由。色々と規格外な存在。
本来は男であるが、ネットからVTuberにハマり自己改造して女になった。ちなみに悪霊や怨霊の類ならどんな規模の存在でもワンパンで殺せる権能がある。
異界領域『天羅無量伏魔殿』について
本来人から不死者になった晴明は異界領域を持たないが、彼は今まで祓ってきた怨霊の残滓を魂に取り込み、内側に無理やり世界を作り出した異界中の異界。
内側は魑魅魍魎が蠢く京の都になっており、中の怨霊達は晴明の魂の中で刺激され増殖、成長、進化して晴明ですら全貌のしれない恐るべき怪物達の領域になっている。
・最新の魔女
ネットの海の多大な情報が作り出した仮想生命体。だいたいビル〇ダイバーズのELダイバーのような存在。一応有機体ボディも存在する。
生まれてすぐの時は総合的な情報から人類を滅ぼすべきとして地表を更地にしようと行動したが、アルカにぶん殴られてみんなに説教されてやめた。その後は有機体ボディを作り人間の再学習に励んでいたが、なんだかんだでママになった。娘の名前はドリス。かなり親バカ。
異界領域『マクスウェルの悪魔の存在証明式』について
単純に言えばエネルギーを無限に用意できる。逆に相手のエネルギー量をゼロにしたりもできる。ちなみにエネルギーは無限だが出力が無限になる訳では無いので、最大火力は変わらない。本人自身が生まれたてなのもあり、最大火力でアルカに押し負けてボコられたとか。
・もりもり
本名というか、アルカに付けてもらった名前は凛花。所謂『植物』という概念そのもの。呪術〇戦で言うところの花御。一応『ユグドラシル』という名前があるが捨てた。
本来の概念としての精霊らしく空虚な存在であるが、なんやかんやあってアルカと仲良くなり大和撫子な人格ができて、ネットにハマったらめちゃくちゃ荒っぽい感じになった。素では大和撫子。アルカの事が好き。天上天下アルカ独尊
不死者の中ではオケアノス、パンゲアに次ぐ長寿さでありケツァルコアトルを除けば誰とタイマンしても勝つ程度には強い。
異界領域『沙羅結界涅槃園』について
花に包まれた最も穏やかな領域。あらゆる生命から闘争本能を奪い、そこにあるだけで段々と植物と同化させていく。使った時点で勝負の決着が着くので必殺ではないにしろある種究極の領域。
領域に取り込まれたものは最終的に全てを忘れ植物になる。
・ハッピージョー
本名は徐福。端的に言えば不死の薬を探す命を始皇帝に受けた……のだが、すっかりそんなこと放ったらかしにしていざ故郷に帰ろうと思ったら不死の薬なしじゃ帰れないと思い、頑張って作ったら誤飲して自分が不死になった人。そのせいで未だに始皇帝が怖くて故郷に帰れていない。
知識量で言えば貪欲な知識欲からかなり多いが、戦いになったらほぼ何も出来ず負ける。2000年以上生きてるくせに全然不死者っぽい価値観に染まってないことがある意味一番異常者。昔って聞いて10年前くらいを思い浮かべるタイプ。
あと、メンタルも弱い。
・クククルン
本名はケツァルコアトル。アステカ、マヤ文明における主神のようなポジションの存在。
ぶっちゃけ他の不死者達とは格が違く、マトモに彼が出ると物語にならないので子育てと言うナーフを喰らっている。あまりに格が違うので基本的にどんなことも些事であってノリが軽い。本来は男性神だが、別に性別の垣根なんて簡単に超えられるのでどっちも楽しんでる。現在は女性の体。
人間は基本的に好きな為に守護するし、現在は暫定娘のアンナに付きっきり。しかし最近アンナが自分のことを『お姉様』と呼んで来て目が怖い気がする。
酒を飲むと人が変わるタイプ。
異界領域『天炙る炎翼』について
形式上異界領域の名前が付いてるだけで本来は全く別の神の権能。
燃え盛る遺跡の領域であり、性質は唯我独尊。この領域において相手はあらゆる力を失う。対抗するには主神としてのケツァルコアトルを超える概念を持つ他無い。
ちなみにこの領域でも不死者を殺すことは出来ないため、みんな死ぬのはほぼ諦めてる。
・マリン
本名はオケアノス。所謂『海』という概念そのもの。仮の名前としてギリシャの大洋の神の名を冠している。呪〇廻戦で言うところの陀艮。
不死友の中では最年長であり、それだけあって尊大な雰囲気があり不死者として一番想像しやすい人格をしている。
不死友ネットにいるのも本人曰く他の不死者の監視の為とか言っているが、ス〇ブラが一番強い。
異界領域『淵下万来生源』について
一切光の届かない深海の領域。
領域の特性としてそもそも深海であるため、水圧に耐えられない相手ならその時点で終わり、水圧に耐えられても無限の生命生成能力による攻撃が襲いかかる。
即効性はないが、この生命達は相手に合わせて無限に進化する特性があり、どのような相手であろうと時間さえかければ倒すことが可能である。
・ヴォドゥン
本名というか、ヴォドゥンという名前がそもそも本名。その名は『精霊』を意味し元はブードゥー教の司祭であったが、魔術を極めた結果不死になった。完全な不死エンジョイ勢であり、不死なのをいいことに様々なことを楽しんでいる。そして不死に普通に馴染めるあたり倫理観は無いので科学の発展に犠牲はつきものデースとか普通に言う。何気に知識量で言えば徐福に匹敵したりもするが、基本は凛花や晴明と一緒に遊んでいる。スマ〇ラがオケアノスの次に強い。
・風呂メテウス
本名はギリシャ神話における人類に火を与えた神、プロメテウス。
神であるが主神格では無い為億単位の歴史のあるパンゲア、オケアノス、凛花と互角程度の強さ。不死友内ではブラドに次ぐ人間友好派。
昔助けてくれたとあるギリシャの英雄に人間を守護してくれと頼まれたので実直にそれを守っている義理堅い不死者。人格的にもブラドに次ぐまとめ役であり、ブラドと彼がまとめ役だからこそ不死友が基本的に人類に不干渉になっている。
異界領域『神の火』について
雪原にたった一つの焚き火が佇む領域。
人類に火を与えた逸話から『温度』という概念を完全に支配下に置く。端的に言えば温度を『無くす』ことも出来る。エネルギーという概念に頼る限りはこの領域は決して攻略ができない。
・オーカミ
本名は狼人間……ではなく、狼や山の神性である大神。
本来は追放もされることない正式な神であるが、彼はあの世とこの世の境の番人であるためにこちらの世界に存在している。ガチ神なのでめちゃくちゃ強いが威厳が全くない。割と人間の前にちらちら顔を見せていたせいで『狼人間』という概念の元ネタになってしまっていたりする。
異界領域『須弥山境獄門狼』について
数多の鳥居が打ち捨てられた月下の平原の領域。
生と死をあやふやにしあらゆるモノの『間』に存在する領域であり、境界を自由自在に操る権能と併せて使用される。
・万死
本名は死を司るとされる妖精バンシー。
彼女はアイルランド神話におけるバロールの残滓であり、惑星意志直結の『死』の概念精霊。死の蒐集家であり、徐福と同じ研究者タイプ。
実はアルカとは結構仲が良く、2人っきりで100年程度暮らしていたりしたがこのことは他の不死友は知らない。人間の女を性的に喰うのが好き。
異界領域『TYPE:BALOR』について
異界領域の概念は日本語と相性が良いため皆は日本語を使うが、バンシーのみは己の起源となる神、バロールの持つ領域を借り受ける形で領域を開く為、日本語を使用しない。
無数の魔眼で覆われた領域であり、未知のウィルスの無限生成を主な能力にする。生命体相手には特攻的な効果がある。
・妖精武器庫
本名はアーサー王伝説などで語られる聖剣を授けた湖の乙女。
武器の概念を司る精霊であり根っからの面食い。アーサー王伝説以降も気に入ったイケメンにホイホイ武器を貸し与えたり、ショタを誘拐して自分の手で育てたりしている変態。やりすぎてブラドとガチの喧嘩をしている。スレンダーマンとかだいたいコイツ。
異界領域『地球製火薬庫最大展開』について
清らかな湖の領域。
その見た目に反して効果は様々な伝承における武器を爆弾に見立てて射出する火力特化の領域である。武器の概念が人類の歴史に応じて強化されていった為こんな使い方になったが、昔は自分で武装して使っていた。
・雪ん子
本名は殆どそのまま雪女。
正確に言えば口減らしや様々な理由で山に捨てられた人間の怨念が雪女という伝承を核に実態化した災害指定の怪物。色々あって暴走して空劫級の星害指定になりかけたが徐福とアルカに助けられて2人に懐いている。怨霊なので晴明とめちゃくちゃ相性が悪いし、性格的にも最低最悪のゲスネカマエキノコックス野郎と思っている。
多分徐福の次に感性が人間寄り。
異界領域『摩訶鉢特摩壊紅蓮』について
鏡のように磨かれた氷の領域。
効果は絶対零度以下の気温の空間の生成。現実ではほぼありえない-387℃の極寒地獄。既存の物理法則に縛られた物質は領域内では活動ができず、出来たとしても極低温により物理法則が狂い、正常な動きは出来ない。
・侵略タコ娘
その正体はとある魔女に呪われた可哀想な少女、スキュラ。
魔女の嫌がらせで怪物の姿になった上に不死にされ、神話の世界から外れても尚怪物として生きることを定められた完全なる被害者。
楽しそうに生きているが精神がぶっ壊れてそう見えるだけで、本来とは真逆の性格になっている。とにかく可哀想な人。あまりにも可哀想なので割とみんな優しく接してあげてる。本気で狂って暴れると空劫級の星害指定になる。
・ガイアッ
本名はパンゲア。所謂『大地』の概念そのもの。仮の名前として古代の超大陸の名前を冠している。呪術〇戦で言うところの漏瑚。
何者にも縛られない自由の体現者。好きな時に起きて好きな時に寝て好きな事をし続ける。気が乗ったからという理由で人類を滅ぼす可能性もある厄介なタイプの不死者。俺っ娘。
異界領域『修羅厵母』について
溶岩に覆われた大地の領域。
発生した時点で超高温によりあらゆるものを焼き尽くす。『切断』の概念を空間が保有し、あらゆるものを状態、硬度、繋がり等に関わらず自由自在に切断と結合することが可能だが、基本的には純粋な高熱攻撃の方が威力が高い。
・ぐやぐや姫
その正体は月の大罪人、かぐや姫。
人の心が無い為、月に帰る途中で仲間を全員ぶち殺し軌道衛星上から地球を監視するようになった訳わかんない不死者。現在も軌道衛星上に滞在し、そこから全てを観客気分で見ている。人の心どころか良識も無い。
異界領域『衛星型特殊結界・蓬莱山』について
宇宙衛星の形をした領域。常時展開が可能で、かぐや姫はここに滞在して宇宙から地球を観察している。ビームや地表の調査に精神に干渉し狂人に変えるレーザーなど色々な機能の存在する究極のニート領域。
『摩訶鉢特摩壊紅蓮』が渾身のネーミングだと思っている厨二病です。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
本編
うわっ……人類の文明儚すぎ……
なんか死んだと思ったらめっちゃ古代感ある場所に突っ立ってた。
マジでそうとしか言いようがなかったのだ。
やたら照りつける日差しとかレンガっぽい感じの建物。とにかく訳が分からないまま近くの人に声をかけたら、なんかその人達はやたら目がでかいデストロイな少女漫画出身というか、テ〇フォーマー外見をしていて、ついでに追い払われた。
その時のことはもう大変。テラ〇ォーマーもといビッグアイな方々はやたら威力の高い投石で俺を攻撃してくるし、最後にはビッグアイのボスらしき人が金色のオーラを纏って斧振り回して来たので仕方ないので逃げた。なんだったんだアレ、マジで。
そーんなこんなでビッグアイな方々の見た目と対応のせいで対人恐怖症を煩わされ、しばらく洞穴で生活をすることにして1ヶ月、1年、10年、100年………………
アレ? なんかおかしくね? とようやく気がついたのはその頃だった。
ここ100年何も食ってないのに常にお腹が一杯な感じだったし、なんなら眠くなったり疲れたりもしていない。そもそも100年という時間を当然のように受け入れてるあたり何かがおかしかった。
────俺は生まれ変わっていた。
端的に言えば不死身の怪物に。ついでに外見は美少女だった。
この頃はとにかく探求欲が強かったので自分の体で色々実験してみた。
再生力、ほぼ無限。失血死も窒息死もしない。爆薬とかは無いので試せなかったけど、バラバラにしても余裕で再生できる。毒とかも一瞬効くけどすぐに分解して無害化してしまう。
スペック、クソ高い。身体能力は人間の数十倍は最低でもあり、岩は素手で砕けるし走れば簡単に風になれる。
見た目、現代基準ではめちゃくちゃ美人。真っ白な髪の毛と緑色の瞳、人種は判断できないがどの国の価値観でもこれなら美人と言うだろう。少なくとも平成の日本ではこんな美少女が歩いてれば、10人中12人が振り返る。
精神性は……ノーコメント。一回死んだからなのかそれとも体のせいなのか。やけに時間感覚と自己保身にルーズになってる気がするが個人じゃ確かめようがない。
なんだかわかんないけど凄い!
とにかく凄いからこれなら無双できる!
…………と、思っていた時期が私にもありました。
楽しかったですよ最初の2000年くらいは。
自分の肉体の限界を試したり、再生の応用で体を発射したりとか、色々な場所を渡り歩いて様々な知識を仕入れ、積極的に人間(デカ目族以外)と関わってきた。
時には王や神、或いは御子として奉られた。
時には悪魔、災いの兆しとして追い立てられた。
時には軍師や相談役等として人間に知識を貸し与え。
時には理解の出来ぬ怪物として研究対象にされた。
痛いことも苦しいことも嫌なこともあったが、それ以上に未知が既知に変わる快感、既存の概念を塗り替えられる爽快感が優り俺は世界中を旅した。
様々な人がいて様々な考え方があって様々な文化があって。そうしてるうちにここが端的に言えば過去の地球だということを確信したのは三国志の辺りの中国で軍師になった頃だっただろう。うん、その辺の事はよーく覚えている。
その頃のことです。
なんか、急にやる気がなくなってきたのは。
全体的にみんなピリピリしてたからなのか、あまり信頼を得ることが出来ず中華系とも言えない容姿とうっかり腕がぶっ飛んじゃったのを再生したところを見られてそのまま追いやられて、あろうことか俺の姿がやべぇ魔物として色んなところに広まって大騒ぎ。
後世の歴史には残ってないけど、俺を倒す為に敵同士であった軍が一時的に共闘をしたなんてこともあったりした。
その一件でなんか急に人間醜いわーってやる気が失せて、人と関わる回数を減らし始めた。
人と関わるのをやめると途端に考えが鬱方面になっていって死にたいわーと思い始めたけど、鉛を背負って海底に身投げしたり、火山口に飛び込んでも水圧で痛かったり焼かれて熱かったりするだけで死ぬ事は出来ずマジで絶望しながら霞食って生きていた。
人間と関わりたくないなー、なんて思っていたけれど人間ってマジで凄い。
数年前まで森だった場所があっという間に人間の住処になってたりするのでもう大変。たまに人間と鉢合わせては石を投げられて迫害されたり、また守り神とか崇められたり、奇妙な術を使うバケモノ扱いされたり……マジでちょっと滅ぼしてやろうかと思ったりもしたけど、たまーにめちゃくちゃ気があったりする人間がいてその人達にセラピーされながらぐずぐずと生きることまた2000年くらい。
2000年。
ホント長いようで短い時間だった。
最初の数百年は穏やかだったのに、すぐに人間があらゆる場所を開拓し始めてだんだん隠れ住むのが難しくなり、魔女狩りやら奴隷売買やらに巻き込まれまくって、西部の荒野では銃で蜂の巣にされたり何回殺されたことか。
その度に人類滅ぼそモードになりかけもしたけど、いい感じのセラピーで何とか踏ん張った。特に最近会ったブラムなんとかさんが良かった。めっちゃ話とか苦労とか聞いてくれたし、俺を題材にして小説を書きたいとかも言ってくれたし。今も元気に……してたら人間じゃないな。
そう。時代は遂に1900年代。
とりあえず戦争が終わるまで隠居してようかなーとなるも、結局ナチスを名乗る不審者達とドンパチやり合って50年くらい。
マジでナチスが滅んだあとのナチス残党VS俺の戦いは映画にしたら大ヒットは間違いなしだと思う。途中で助けた女の子とガチの古代文明の遺跡に辿り着いて危うく世界がナチスのものになりかけたけど、俺が偶然知ってるどころか、遺跡造るの手伝ってた文明だったからどうにかなったエンディングは涙無しには語れない。
そんなB級映画的大活躍をした俺が向かった先は日本。
第二次世界大戦後、少なくとも100年近くは平和が保証されている国だ。
ぶっちゃけ100年なんて4000年以上生きてきた俺からすれば束の間の休息だ。それでもさすがに、そろそろ生きることに疲れてきた。
死ぬことも老いることもなければ本当の意味で脅かされることもない。そんなつまらない永劫を終わらせるために、ぼちぼち『不死殺し』の研究をするにはもってこいの場所だろう──────と考え……
「っちわーす、Amazoonっす。お届け物にまいりましたー」
「んむぅ……へーい……」
俺が出るなり顔を真っ赤にしていたバイトのあんちゃんから荷物を受け取り、寝起きのせいで重い瞼をこじ開けるため、スト〇ングゼロに手を伸ばす。
カシュッ!
もう音が最高ね。目が覚めたわ。
アルコールをこの体が即時分解してしまい酔うことは出来ないが、気分で酔える。アルコールを摂取してる事実がもう最高。
「さてさて……届いたのはっと……お! バイ〇ハザードの新作じゃん! 早速やろっと」
日本に移住してたかが数十年。
俺の過ごしてきた時間に比べれば須臾の如きその短い時間で俺は…………
「うわなにこれ。操作性クソじゃん。後で不死友のみんなにクソゲーって教えとこ……いや、この操作性が逆に圧迫感とかを表現して怖い感じに……」
完全に、ダメ怪物になっていた。
まず娯楽文化やべぇ。
漫画やアニメに小説。過去にも良い読み物とかはあったけど、この時代はとにかく供給量が凄まじい。ちょっと待ってればすぐに作品が量産されるおかげで無限に時間がある俺が初めて時間が無いとまで思わせてもらった。
あとネット文化。
これのおかげで俺以外にも不死の怪物が現代にもいることが知れた。同じ境遇の存在がいるというだけで、不死の怪物達にとってはあまりにも癒しになりすぎる。不死あるあるネタとか、教科書と違う歴史の真実ネタとか語るのめっちゃ楽しい。
つまるところ、現代文化は無限に時間がある不死身の怪物にとって最高でした! 毎日酒飲んでゲームして寝て、そんな生活が楽しすぎてヤバい。堕落する。
もう死ぬとか考えられないわー。少なくともHUN〇ER × HUNTERが完結するまでは死ねないわー。
そんなことを考えながら10年……また10年……また10年……そして────────
◆
「…………ん、なんの音だ?」
10年くらい前のこと、ちょっとゲーム系が不作が続いたので思い切ってそっち方面の情報を完全シャットアウト。さらにネットも完全に断ち買い込みまくった本を読むのに時間を費やすことを決めたのだ。
本当なら3年くらいでネット断ちをやめるつもりだったんだけど、こ〇亀とか無限に読み返せるタイプの漫画を何度も読み直してたら気がついたら10年経ってたウケる。
何周目かのこ〇亀を読み終え、ぼーっとしていたら外からなにやら物音が聞こえた。
爆音、銃声、更には叫び声……!?
現代日本じゃまず聞かないような轟音にさすがの俺もとっさに身構える。現在の住居はマンションの一室。近くの治安は良好なので、いくら不良が暴れたとかでもこんな音聞こえるはずがない。
恐る恐る玄関に近づいて扉を開けるとそこには…………。
「は?」
なんか完全武装した青年が俺に銃口を向けていた。
「人間……? まさか、人間なのか!?」
「どうした! 何かあったのか?」
「こっちに来てください! 人が、生存者がいます!」
現代日本に似合わない、サバゲー帰りにしか見えない男達の会話を聞き流しつつ、俺はゆっくりとマンションの向こう側──閑静な住宅地があるはずの場所へと視線を向ける。
「うわー……マジかぁ……」
そこには荒廃した町並み、明らかに死んでいるのに歩く人間──所謂『ゾンビ』の姿とそれと戦う人達。
周囲の建物も所々崩れたりしていて、どうやら俺の部屋が奇跡的に無事だっただけでだいぶ酷い有様のようだ。
…………ネット断ちしてる間に文明社会が滅んでるなんて、そんなことあります?
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
こ〇亀は人類の歴史書
二話ですの!
拝啓、不死友の皆様へ。
お元気でしょうか?
俺はちょっと読書に集中したいからネット断ちを3年くらいすると皆様に宣言して……あれから10年が経っていたことに最近気が付きました。
しかも、その10年の間に突如として『ゾンビ』が現実にも現れて文明社会は崩壊。当然ネットも死ぬわ電子書籍は軒並みパーになったりと結構ダメージがデカかった。
というかいくら4000年以上生きてきて時間感覚バグったからと言って、10年間ほとんどこ〇亀読んで時間潰すとかアホだろ。日暮ですら2回は起きるぞ。もうここまで来ると俺がアホなんじゃなくてこ〇亀が偉大なだけだろ。なんだよあのネタの多さと時代の話題の先取り。秋〇治大先生は神かなにかだろ。つまり俺はアホじゃない。
まぁ俺がアホであるかどうかについてはもう完全に答えが出ているので割愛するとして、だいたい100年近く振りに人間のリア友ができました。
俺の適当な言い訳にも『恐怖で錯乱している』と判断してくれたのか優しく接してくれている、こんなゾンビが蔓延る世界で生きていくには優しすぎる人達である。
リーダーの戸塚 剛は一体現代日本のどこでそんなガタイが求められたのかと言うくらいガタイが良く、そのガタイだけあってか包容力のある男だ。何やら経歴はしれないが銃火器についてやたら詳しく、多分コイツらがここまで生きてこれた理由の6割はこの剛という男だろう。なんか俺が娘に似てるとからしくやたら世話焼いてくれるけど、白髪と緑眼で人種が分からない俺の顔立ちと似てる娘ってなんだ……?
年齢も知らんが、まぁ人間なんて100年経たないうちに死ぬんだから、1歳も100歳も誤差だよね!
あと俺と最初に会った比較的若い男、琴吹 葵。
マジでなんでこんな所まで生き延びられたってくらい正義感が強く優しすぎる男だが、人間にしては我欲というものが薄く、植物と会話しているかのような話心地は悪くないし、観察眼に優れていてこちらの些細な変化に気が付くまぁ悪くない男だ。
そしてもう1人が南 照香。
余り喋らないし必要な時以外は体力温存のために寝てるしでほんとよく分からない女だけど、多分格闘技か何かをやっていたのかめちゃくちゃ強い。殴り合いなら剛も負けるだろうし、人間離れした直感を持っていてなんか怖いという印象しかない。
現在俺はこの愉快なメンバー達と共に、俺は大昔に誰かからつけてもらった名前であるアルカを名乗り、人類がゾンビに怯えることなく生活出来る生存圏を探して絶賛冒険中、と言ったところだろうか。
正直言ってめちゃくちゃワクワクしてたよ。バイオ〇ザードとか好きだし、ぶっちゃけ俺はゾンビに噛まれても何もならないから合法的に銃をぶっぱしまくって肉塊を吹き飛ばしまくるのサイコー。俺がゾンビ相手に血の気を見せまくっても皆は「ゾンビによっぽど酷いトラウマがあるんだろう」とか「自分を守る為に別人格を作ってるんじゃないか」とか思われてるようでめちゃくちゃ都合が良い。
……ただ、一つ誤算があったとすればゾンビの強さだ。
ゾンビって基本的に弱い個体はあーあー呻きながら歩いてくるだけで、数の暴力が基本なところがある……なんて言うゾンビの常識は通用しない。
このゾンビ達は昼間は活動が鈍くなるが、夜だともうめちゃくちゃ走る。五感は野生動物並みに鋭く、人間見つければ自身の体が引きちぎれるまで追ってくる。筋力も圧倒的に優れており、武器無しで立ち向かえば確実に死ぬ。その上強い個体は特殊能力を持っており、これがあまりにも初見殺しで能力持ちにあったらまず絶対人が死ぬ。
実はこのチームも俺が出会った時は4人居たのだが、その1人は一度殺した瞬間無傷で復活するとかいう糞能力を持った蜘蛛型のゾンビに頭を食いちぎられてしまったし、道中も何人か仲間が増えたりしたのだが皆突然火を吹かれて焼死したり、真夏に凍死したりして帰らぬ人になってる。
現メンバーが生き残っているのは、強いからではなくそう言った初見殺しの技を名前も覚える前に殺されてしまったモブ達が受けたのを見て、観察眼に秀でた葵が能力を考察し、やたらタフな剛と猿みたいな動きをする照香の2人で追い詰めるという動きができていたからに過ぎない。
うん。
ここまでくるといい加減わかってくるけど、これゾンビゲーじゃなくて死にゲーだわ。しかも残機もなければリトライもないタイプの。
まぁ俺からすればどうせ死なないし、どんな状況も無限残機だからひたすら銃が撃ててサバイバル的な感じで楽しければどうでもいいけれど。それでも一応建前として助けて貰っているし、人類に滅ばれたらもう二度とネットが出来ないかもしれないのはきついのでぼちぼち仲間が死なない程度、されとて俺が不死の怪物だとバレない程度に頑張っていた。
いたんだが……まぁこんな人類ハードモード状態じゃいつかはそういう日が来るよねって話だったのだ。
◆
「みんな……俺を置いて逃げてくれ。このままじゃ、全員やられるだけだ……」
「何言ってんだ葵! 俺に仲間を見捨てて逃げろってか!? 弱音言ってる暇があればいつもみたいに観察して突破口見つけやがれ!」
「怪我人は黙っててください。貴方の声を聞いてると、肩の力が抜けて不愉快、なんですよ」
強気な言葉を口にする剛と照香も全身裂傷まみれで何とか致命傷は避けている状態で、葵に至っては左目と腹部を切り裂かれてもはや虫の息。
『グォォォォォ!!! ォ、ォオオオォォォ!!!』
俺達はナナフシのような姿をしたゾンビ……しかも人間をナナフシに無理やり改造したかのような精神的にかなりくるビジュアルをしたゾンビと相対していた。
4人で次の目的地に向けて進んでいて、あと少しで着くというタイミングでこいつに襲われた。いつものように初見の攻撃をくらって死ぬ役目のモブがいなかったせいで、葵がコイツの繰り出す不可視の斬撃にやられて重傷を負ってしまったのだ。
出血と痛みで葵にいつもの冴えがなく、ついでにかなり強力な個体で剛と照香もコイツの繰り出す不可視の斬撃の攻略方法を見つけられずジリ貧。
チーム内では弱くてあまり正面戦闘に向かない俺は遠くから狙撃を繰り返しているが、中々俺もコイツの能力が分からない。
どうしたものか。
ここで生き延びるのは簡単だ。でもそうしたら俺がバケモノだということがバレる。なんだかんだで居心地の良かったこのチームから抜けるのは嫌だ。
でもそれ以上にコイツら良いヤツらなんだよなぁ……。
…………そんな時、ちょっと良い考えが俺の脳裏を過ぎった。
これってもしかして
数多のアニメやゲームで使われてきた
「────皆さん、ここは私に任せて逃げてください!」
俺のその言葉を聞いて、負傷していて戦いに参加できないので俺の隣で座り込んでいた葵が真っ先に反応した。
「何を言っているんだアルカさん! そんな事したら君が……」
「でもこのまま戦えば4人揃って死ぬだけです。だったら私1人の犠牲で皆さんを逃がした方が良いと思います」
『ここは俺に任せて先に行け!』
死亡フラグとも取れる言葉であるが、時には逆に生存フラグにもなる。
味方を逃すためにただ1人残り、強力な敵と対峙するというカッコ良いヤツ。
不自然なく皆を逃がせて、ついでに上手くいけばそのあとなんだかんだで逃げきれたということにして合流すれば万事上手く収まるというもの。
「剛さん! リーダーならチームのメンバーがより多く、確実に生き延びられる方法を取るべきだと思います」
「ふ、ふざけんな! それなら俺が残るぞ! 老い先短い俺なんかより、お前達若いのが……ぐおっ!」
ナナフシゾンビの攻撃が勢いを増し、剛の使っていた銃が綺麗に二等分されてしまった。さっさと説得をしないと、誰かしらが致命傷を負うことになりそうだ。ここは『情に訴えかける作戦』でいこう。
「剛さんも葵さんも照香さんも、皆さんは私と違ってこのチームのみんなを生かす為の特技があります。それだったら、何も特技のない私が皆さんを生かすのが良いと思います。……それに、私は皆さんと出会ってなかったら、今日まで生きることも出来なかったんです。役立たずの私でも、せめて最期くらい皆さんの役に立ちたいんです!」
「──────ッ、くっ、──────照香ッ! 逃げるぞ!」
照香がナナフシゾンビに爆弾を投げつけ、怯んだ隙に二人が全力でこちらへと走り出す。
よし、『情に訴えかける作戦』大成功!
俺ってば見た目だけなら儚げ美少女だし、助けて貰ったとかそういう言葉を引き合いに出すとみんな提案を断りにくくなるんだよね。
「照香さん。葵さんをよろしくお願いします」
「別に、アンタに言われなくても一応仲間だし。……死なないでよ。寝覚めが悪くなる」
お?
照香って口数少ないなーとか思ってたけどもしかしてツンデレ? もしももう一回合流出来たらじっくり攻略したいなー。顔可愛いし、何よりツンデレキャラはツンツンし続けて溜めまくった先に放たれるデレ能力威力にこそ持ち味があるんだから、どうせならクール無表情の照香がデレデレになるところとか見たいし。
「待って、待ってくれよ皆! アルカさんを囮にするなんて、そんな……そんな事!」
正義感の強い葵くんはやっぱり認められないようだが、腕っ節でいえば元から剛にも照香にも勝てないのに、今の虫の息の彼ではがっしりと照香に捕まえられてろくに抵抗することも出来ない。
「俺だ、俺が残る! 今の俺でもみんなが逃げるくらいの時間なら稼げるはずだ。だから──────」
叫ぶ葵の口を優しく指で押さえ、必殺の時には村人を堕落させる淫魔扱いすらされた美少女儚げスマイルを喰らわせて完全に言葉を失わせる。
「葵さんは私のような人をきっと沢山助けられる。だから、生きてください」
葵くんもさすがにここまで言われたら何も言えず黙ってしまい、その間に照香がしっかりと彼を担いで剛と共に走り出した。
…………完璧だっただろ。
完全に仲間を助ける為に1人残るヒロインロールだっただろ。強いて言うなら俺の容姿とロールが儚げ美少女過ぎて生存フラグ感が全くないことは問題だが、まぁなんとかなるだろ……
『グォォォォォ!!!』
「ん? あ、やべ────────」
爆弾のダメージから復帰したナナフシゾンビが咆哮を上げると同時に、周囲の瓦礫諸共俺の体は切り裂かれ中身を撒き散らしながら見事に17分割されてしまった。
◆
「ぁぁぁぁぁああああああ!!! このクソゲーゾンビが! これで128死だぞ!」
まぁ全身切り刻まれたくらいで4000年間生きてきた俺が死ねるなら、もうとっくに自殺してるよね。
それはそれとしてこのゾンビ、本当にクソゲー極まっている。
攻撃の法則性は何となくわかってきたのだが、それがあまりも特殊すぎる。
どうやら不可視の『場』を周囲に生成し、目を光らせながら咆哮を上げるとそれが実体化。重なっていたものを押し出すようにして不可視のままに出現する。
要は斬撃トラップを周囲において咆哮でそれを起動させるものなのだが、その配置がエグい。隙間はせいぜい人1人がギリギリ通れるくらいしかなく、その上何をしても見えないので血のシャワーとかで姿を見るのも無理。形も複雑怪奇にぐにゃぐにゃ曲がっているし、むしろなんで剛と照香はこの攻撃からギリギリ致命傷を回避出来てたんだよ。俺なんて最初の10死くらい何が何だかわからずバラバラにされたぞ。
しかも不可視の斬撃の位置を覚えて避けようとするとそこに触手を伸ばして攻撃してくるし、そもそも位置を覚えるのが無理ゲー過ぎたりする。酷い時は1cmくらいの大きさの『場』が避けた先にあって脳の中を切り裂かれ死とかあったよ?
そして128死目。
俺だって一応ゲーマーなので、こんな死にゲーじみた状況ならちゃんと攻略してクリアしたいと思ってきたが、そろそろ飽きてきた。
これ死にゲーってかもうクソゲーだよ。相手の手札が全部わかってんのに、純粋にクッソ避けにくい攻撃連打されて嵌められてる状況とか何も楽しくないよ。
「あー! あー! あー!!! もう面倒臭い!」
面倒臭くなったのでとりあえず装備を全部放り投げてダッシュで距離を詰める。
当然、ナナフシゾンビは咆哮を上げ不可視の斬撃を発生させて俺の全身を細切れにするが、
本気で再生すれば例え全身を灰にされようとも、一切勢いを落とすことなく俺は走り続けられる。
そうして無理やりナナフシゾンビに触れられる距離まで近づいた瞬間、俺は全身に力を込めて
爆発。
うん、爆発。
ワン〇ースとかでもあるじゃん? 血流を速めてすごい速度を出すアレ。心臓をフル稼働させるのと、ちょっと昔習った魔術を使って体を思いっきり爆発させる。
超高速で弾け飛んだ肉や骨は超凶悪な榴弾砲のようにナナフシゾンビの体を吹き飛ばし、抉り穿ち、細かな肉片となり完全に動かなくなった。
そして、爆発した張本人は余裕で再生しておしまい。
長く生きてるとね、自爆が最強で超楽な戦法だって気がつくんだよね……昔は魔術使ったり、異能使ったりしてたけどアレ使うと肩が凝るんだもん。
とはいえこの技にデメリットがない訳では無い。
……ゲーマーとしてのとてつもない敗北感。攻略サイトをツイ見ちゃって、めちゃくちゃ苦労した敵が簡単に倒せてしまった時のあの虚無感。
ちくしょう!
勝てればいいんだよ勝てれば! だいたい元を辿ればどう考えても普通の人間じゃ1000回は死なないと勝てないバランスの敵を出す方が悪いんだ!
何はともあれ結構時間はかかってしまったが倒せたんだから皆の後を追うとしよう。俺が本気で探知して追いかければ数分で追いつくだろうし何も焦る必要は…………
そう言えば、去り際の葵くんに17分割されるところ見られた気がするけど……まぁ大丈夫か。
アルカの名前の由来は言わずもがな
伊達に4000年生きてないので知識も技量もカンストしてるし魔術やら特殊能力やらも色々あるけど疲れるから不死身ゴリ押しブッパが正解
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
不死友ネット:復活
高評価が嬉しかったので続きさんが勝手に生えてきました
【復活!不死友生活板】1スレ目
1:NN.ブラド
というわけでできる限り頑張って知り合い範囲のネット環境を復活させたが、通じてる?言語自動変換も働いてるかわからん
2:NN.狐巫女VTuber春ノアキラ
ガチじゃん。ブラドっち乙
3:NN.最新の魔女
ブラドさん電子系能力持ちなだけあって仕事が早いですね。
4:NN.もりもり
その能力をもっと世のために役立てろ。どう考えても我らのネット環境整えてる場合じゃないだろ
5:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
>>4
そう言いながら書き込んでるあたりネット環境復活喜んでるでしょ?
6:NN.ブラド
現状生存確認できたのは16人でとりあえずそいつらのネット環境は整えた。
7:NN.もりもり
>>5ネット使ってエロ動画見てまァす!最高です!
8:NN.ハッピージョー
言うて不死友組は全員マジの不死だから生存確認とか意味ある?
9:NN.ブラド
>>8生存確認というか私の能力でネット環境を繋げられる場所にいる人数。一応確認したいけどみんな今世界のどこにいるの?私はいつもの墓。
10:NN.もりもり
中国。我の周囲200kmの人間は全滅してる
11:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
トーキョー。こっちも周囲は全滅で配信も出来なくてテンサゲ。愚猿共で承認欲求が満たせない
12:NN.最新の魔女
ニューヨークですがこちらはまばらに生存者がいます。しかし死人の数や感染具合を見るに文明復活は長い時を要しそうですね。
13:NN.ハッピージョー
オーストラリアは割と無事で、頼まれたので僕が開発した動物との一時融合技術で凌いでます
14:NN.クククルン
ドイツにいるけど人類ほぼ全滅してるわ。だけど一人だけ生き残りいたわ。
【画像】
15:NN.マリン
海。人の居なくなった海は平和だ。
16:NN.ヴォドゥン
ロシア。特殊個体がめちゃくちゃ多くてほぼ滅ぼされてるね
それはそうと>>14その画像に映ってる幼女誰だ
17:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
>>14
ククルカンが酒飲んでまた女を犯そうとしてるぞ!!!
18:NN.もりもり
>>14
実の妹だけじゃ満足できなかったんですか?
19:NN.風呂メテウス
>>14
この状況でまで女犯そうとするクズの鑑。あ、俺は相変わらずギリシャね。こっちも疎らだけど生き残りいる
20:NN.最新の魔女
クククルンさんはクズ……学習しました。
21:NN.マリン
酒カスコアトル……
22:NN.クククルン
本名出すのとそのネタ弄りやめて……マジで反省してるしアレ悪いのクソ鏡野郎だから……
それはそうとこの子偶然見かけたから保護しちゃったんだよね。ゾンビに狙われにくい体質っぽい。
23:NN.ハッピージョー
これは善神
24:NN.もりもり
>>22
どうせいつか酒飲んで犯すぞ
25:NN.ブラド
>>22
彼女について詳しく。その体質は人類再興の一助になるかもしれません。
26:NN.最新の魔女
ブラドさんは人類の再興を手伝うつもりなのですか?
27:NN.もりもり
>>26
魔女ちゃんは知らないだろうけどブラドは『墓守』だから根底の思考回路が人間の守護なんだよ
28:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
まぁ私は人類なんて滅びるなら滅びてもいいと思ってるけどねー☆
というかこのウィルス、今の人類の化学力じゃ生み出せないものだし、どうしようもなくない?
29:NN.オーカミ
冷静に考えたらゾンビってことは原因ヴォドゥンじゃね?ゾンビの元ネタのひとつってブードゥー教だべ?
30:NN.もりもり
あ……(察し)
31:NN.ハッピージョー
ヴォドゥンさん人間に結構迫害されたっていてましたもんね……
32:NN.クククルン
遂に不死友内から人類滅ぼすやつ出ちゃったかー
33:NN.マリン
まぁ奴らの愚かさを考えれば仕方ないこともあるけどさすがに……
34:NN.ブラド
本当なら今から私がヴォドゥンを殺しに行きますが?
35:NN.ヴォドゥン
ウィルス系のと俺の死術操作は別ゥ!
そもそもウィルス使うのだったら俺よりバンシーだろ。アイツ気まぐれで人殺すし
36:NN.風呂メテウス
>>28
スルーしてたてけど30000年後に蘇る怪異を祓う為に不死になった陰陽師がそれで良いのか
37:NN.オーカミ
俺は人類の歴史には不干渉だし滅ぶなら滅べ生き残るならがんばれーって感じだな
38:NN.最新の魔女
私も観測者であるためには必要以上の干渉はできませんね
39:NN.風呂メテウス
俺はヘラクレスとの約束あるし可能な限り人間守るけどねー。
ただしギリシャ限定。
40:NN.ヴォドゥン
俺も不干渉だな。楽しみだったゲームはあるけど別にまた歴史が繰り返せば同じようなの出るだろ。
41:NN.万死
なんか勝手に犯人にされそうになってるけど、私のウィルスは殺害、分解特化でゾンビ作成なんて悪趣味なことしないんですけど
42:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
>>36
ぶっちゃけ私悪霊祓いたいだけで人間はどーでもいいし。でも滅ばれたらスパチャで私に貢ぐ愚猿いなくなるしなー。
43:NN.もりもり
晴明って元人間元男なの信じられないくらいクソ女臭凄い
44:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
>>43
昔の名前言うな殺すぞ
45:NN.オーカミ
(ここまでの殺す発言は全部ジョークです)
46:NN.最新の魔女
そもそも私達互いに誰も殺せませんもんね
47:NN.マリン
生命特攻最強の万死でも無理だったし多分無理だろうな。
48:NN.ハッピージョー
僕は一応特殊能力持ちのゾンビが不死殺しの能力に目覚めないか研究してますけど、少なくとも3万年はかかりそうですね……
49:NN.ブラド
それより酒カスコアトルは早く助けた幼女の話を
50:NN.クククルン
その呼び方酷くない……?
とりあえずわかってるのはドイツはこの子の他にもちょくちょく特殊能力に目覚めた(ウィルスに適合した?)人間が居るみたいで、この子はゾンビに狙われにくい以外に人間には出せない周波の音を出せるのと可聴域が広がってる感じ
51:NN.ハッピージョー
マジですかそれ?研究したい……
52:NN.最新の魔女
ニューヨーク周辺では見られなかったデータですね。是非観測したいです
53:NN.ヴォドゥン
マッドサイエンティスト共が……
54:NN.もりもり
>>51
草葉の陰で始皇帝泣いてるぞ
55:NN.クククルン
他の子がどんなのかは直接会って無いからわかんないけど、少なくともうちの子は両親に襲われて心にだいぶ深い傷があるからぼちぼち癒していくつもり
56:NN.マリン
腐っても元主神格だな。
57:NN.ブラド
精神的負担と体質でウィルスに何らかの変化が起きるとかか?
とにかく情報感謝。なんだかんだお前は優しいなケツァルコアトル。
58:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
1600年くらいの破神復活の時も最前線で人助けてたもんね〜
59:NN.オーカミ
あれやばかったよなー。ぶっちゃけもう人類滅んでも良くね?って思ってたけど、破神がムカつくやつだったからみんなで戦ったやつ。
60:NN.最新の魔女
人類史からは抹消された記録ですが、皆様の記憶から相当な激戦だったと推測します。
61:NN.クククルン
まぁさすがに怪我してる女の子をほっとけないしな。
腕と足怪我してるから今のところは身の回りの世話を俺がしなくちゃだし。人間は汚れが致命的になるかもだから風呂とかも入れなくちゃいけないし
62:NN.もりもり
アウトォォォォォ!!!
63:NN.風呂メテウス
やっぱ酒クズだコイツ!殺せ!
64:NN.最新の魔女
ブラドさんに通報しました
65:NN.オーカミ
やっぱ酒カスロリコンクソ神じゃねぇか殺せ!
66:NN.万死
イエスロリータノータッチだろ。というかロリコンってことは私にもそういう視線向けてたのキモッ
67:NN.ヴォドゥン
所詮酔った勢いで妹に手を出すゲス神……
68:NN.ブラド
通報を受けました。今からそちらに向かうので覚悟の準備をしておいて下さい。
69:NN.クククルン
マジで不可抗力だから!そういうつもりないから!あと今の俺女ボディだからセーフ!
70:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
やっぱコイツは殺しておいた方が良いだろ……
71:NN.最新の魔女
>>70
同じ穴の狢のバ美肉変態陰陽師が何言ってやがんですか前頭葉で御札ニーでもしてたんですか?
72:NN.ブラド
誰だ魔女にこんな語彙学ばせたやつ
73:NN.万死
ぶっちゃけ私達の会話見てたらそりゃこうなるでしょ
74:NN.ハッピージョー
しかしこれから人類はどうなるんですかね?
75:NN.もりもり
個体や超小規模集落としてはまだしも、種としてはほぼ終わりだろ。既に90%は死んでるぞ多分
76:NN.マリン
所詮は人も星の大きな流れの一部。滅ぶ時は当然あっけなく滅ぶでしょう
77:NN.ヴォドゥン
でもしぶといからな人類
78:NN.風呂メテウス
電気系能力のブラドと炎使える俺と元主神のクククルンいるし、案外何とかなりそうじゃね?
79:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
この規模はどうにもならないでしょ。私たちが強くても生存圏維持ができない
80:NN.もりもり
というか晴明また配信やんないの?俺お前はともかく春ノアキラちゃんのファンなんだけど
81:NN.万死
特殊能力持ちのゾンビの能力、アレ異界領域の初歩の初歩ですしね
82:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
>>80
本名で呼ぶなつってんだろ殺すぞ。
そもそも不死友しか見るやついねぇしこの回線以外死んでんのに配信やれねぇだろ
83:NN.ブラド
異界領域を?
ならば新たな地球意思なのですかね?
84:NN.最新の魔女
異界領域?
すいません。データがありません。
85:NN.オーカミ
おい魔女ちゃんの教育係誰だ
86:NN.ハッピージョー
そう言えば教えてませんでしたね。
異界領域っていうのは僕達不死者の中でも概念系か特異生命系の方々が魂の内側に持つ固有の世界を現実に一部表出させる技術のことです。
魔女さんの持つ『マクスウェルの悪魔の存在証明式』もその能力の一つですよ
87:NN.マリン
人間から不死者になった奴らは己のイメージで擬似的な異界領域を作り出すから手間がかかり、その点で言えば我らの方がこの能力は便利だな
88:NN.ブラド
元人間の方が魂の拡張性があるから色々できるようになるけど、純粋出力は異界領域の方が上だな
89:NN.万死
ゾンビの特殊個体、ぐちゃぐちゃだけど異界領域持ってるんだよ
90:NN.クククルン
でもゾンビ達って元人間なんだから人間由来の異能と違うのか?
91:NN.ヴォドゥン
妖精の万死が言うんだから間違いないだろ。
領域の知識は妖精系がダントツだし
92:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
知識ならまだしも技術は私が1番だけどね!
93:NN.オーカミ
元人間のくせに魂改造して異界領域作り出した変態……
94:NN.ブラド
破神の時も晴明の異界領域のおかげで存在抹消が成功しましたからね
95:NN.もりもり
ブラドの『電業雷轟』も大概やばい性能だけどね
96:NN.風呂メテウス
ブラドは元人間だからアレカッコつけて名前付けてるだけだぞ
97:NN.もりもり
マ?
98:NN.ブラド
異界領域、カッコイイなって思ってて……若気の至りです
99:NN.クククルン
ブラドちゃんにも可愛いとこあると思ったけど、若気の至りって言うほど若い時の事じゃないよね破神のやつ
100:NN.万死
酒カスは黙ってろ
101:NN.ヴォドゥン
やーいお前の異界領域実家炎上
102:NN.マリン
ロリコン
103:NN.最新の魔女
情報提供ありがとうございます皆様。
104:NN.クククルン
俺の扱い酷くね?
105:NN.ブラド
とりあえず私は人類の文明再興を目的に行動しますので、良ければこれからも情報提供をよろしくお願いします
106:NN.マリン
人間に特に情はないがブラドには世話になってるし良いだろう。だが我は基本海域が生息圏故に期待するな
107:NN.万死
私はゾンビの研究したいしそのついでね
108:NN.ハッピージョー
僕も研究ついでですが……
109:NN.もりもり
俺はパスだわ。めんどくさい。ブラドにはそれなりに恩返ししてるつもりだし
110:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
もりもりと私は破神の時に崩壊封印されそうになったブラド助けてるしね。
私もパス。配信できないのは惜しいけどわざわざやりたくない事はしたくないにゃー
111:NN.風呂メテウス
俺はギリシャ以外はノータッチだが協力するぞ
112:NN.クククルン
俺の方な基本この子と一緒に行動するからオン率高くないだろうが協力で
113:NN.最新の魔女
私は干渉しませんので、皆様の行動の記録を纏めます
114:NN.ヴォドゥン
異界領域で思い出したが……アルカのやつ元気にしてっかな
115:NN.オーカミ
3年くらいネット断ちして読書するって言ってから音信不通で文明滅んだからな
116:NN.万死
アイツ馬鹿だしこ〇亀とか読みまくって案外今の状況に気がついてないんじゃないの?
117:NN.ハッピージョー
それもうバカというかアホというか救えない存在ですよ……
118:NN.ブラド
アルカはまだ所在がわかってないメンバーの1人だな。殺害特化の異界領域と最強の再生力のあるアイツの心配をする必要は無いだろうが
119:NN.マリン
もしかしたらまた人間と関わってるかもな
120:NN.クククルン
本当にそれだったら今の状況と併せてやばいかもな……
121:NN.最新の魔女
質問よろしいでしょうか?
アルカさんが人間と関わると何がまずいのでしょうか?
122:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
それ私も気になるー。アイツ別にそんなやばいやつでもないでしょ
123:NN.風呂メテウス
アルカはな……基本的に人の心が分からないんだよ
124:NN.万死
2000年くらい前ね……アイツが人を誑かして、アイツに誑かされた人間が世界を滅ぼそうとしたアレ……
125:NN.ブラド
無意識に人間の感情をぐちゃぐちゃにしてどっか行くめちゃくちゃ無責任なタイプの不老不死がアルカだからな……
126:NN.もりもり
今もどこかで人間の感情をぐちゃぐちゃにするだけして無責任にどっかほっつき歩いてるかもなww
◆
『葵は将来、たくさんの人を救えるような奴になれる。だから、お前は生きろ』
それは確か、父さんの最後の言葉だった。
最後まで立派に人を助けて、そして死んだ父さんから託された言葉だった。なのに、なのに俺は────。
『葵さんは私のような人をきっと沢山助けられる。だから、生きてください』
アルカさんを見殺しにした。
最初出会った時、浮世離れしていて神秘的な雰囲気を纏ってるのに、変に俗世的というか親しみやすい彼女のことがよく分からなかった。
ただ、その在り方がとても美しいもののように感じられた。
自分のことを省みず、常にどこか一歩引いた態度であったけれども、こんな滅びかけの世界の中でも目に付く全てに希望を見出すように瞳を輝かせていた彼女を俺は、俺は────好き、だったのかもしれない。
とにかく絶対に、何があっても彼女に『希望』というものを見せてやりたかった。
なのに彼女は死んだ。
俺の目の前で、怪物共に全身を切り裂かれて見るも無惨に。
絶対に許さない。
アルカさんを殺したあのゾンビも、アルカさんを助けられなかった俺も、アルカさんが生きることを許さなかったこの世界も。
その為ならば俺は、悪魔にだって魂を売ってやる。
・ブラド
イギリスで墓守をやってる子
・狐巫女VTuber春ノアキラ
陰陽師系VTuber
・最新の魔女
最近生まれた不死者
・もりもり
森の精霊
・ハッピージョー
始皇帝のことは悪かったと思ってる
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
友を探して三千里
この作品は感想と高評価と日光と水があると勝手に生えてきます。
あと、何かと説明不足がある作品なので、感想に質問を投げてくれれば勝手に答えが生えてきます。
迷った。
ナナフシゾンビとじゃれ合っている間に葵くん達ってば俺の索敵範囲外にまで行ってしまったようなのだ。
その気になれば空も飛べるし、日本全土を一日で探すことは出来なくないが、それをやったら余波で人殺ししちゃうかもしれないし、もしかしたらどっかで生きてる葵くん達を轢き殺す可能性があるので迂闊にそういうことは出来ない。
こういう時、不死友のガイアちゃんが居てくれたら助かるのになー。あの子なら地面に足が着いてる存在なら地球の半分の範囲を探知できるし、あとは凛花の奴も植物と感覚共有ができるから索敵には向いていたな。
文明が滅んでしまった今となっては彼女達との連絡手段はないが……殺しても文字通り死なない連中なので心配する必要は無いだろう。今は殺されたら死んでしまう連中の心配をするべきだ。
彼らと別れて早2週間。
たった2週間1人でいただけで100年洞穴に籠ってた経験すらある俺がこんなセンチな気持ちになるだなんて、葵くんや剛や照香と一緒にいた時間は想像以上に心安らぐものだったらしい。出来るなら生きてもう一度会いたいものだが……。
「む、アレは……」
地平線ギリギリ、視界範囲の限界辺りに見えたのは、明らかに特殊能力を使って攻撃をしている蛇型のゾンビと戦闘している誰か。
人間と能力持ちのゾンビが戦えば、それはほぼ一方的な殺戮となる。なんか人間離れした身体能力を持っていた照香ですら、至近距離で銃を撃たれて見てから回避余裕でしたする照香ですら、1対1では弱い個体相手に足止めが限界。
とりあえずバレないくらいの速度で駆け寄る。近づく途中で瓦礫に引っかかって腕がもげたけどまぁどうでもいいか。
近づいてみたが、やっぱり状況は特殊ゾンビと人間の1対1。
蛇型ゾンビは身体中に目に似た発光体が存在していて、それが不規則にひかると同時に周囲の物体が上からプレスをかけられたように潰れ、幾つものクレーターが生じる。
戦っているガスマスク装備の青年は何とか初撃を避けたようだが、奴らの初見殺しかつ対策は基本死に覚えするしかないような攻撃に対して1回偶然避けられたことなんて、ただ死ぬのが1秒遅くなっただけに過ぎない。そうしてる間にもう一度蛇型ゾンビの体が光り──────
「え、嘘ぉ!?」
思わずそんな間抜けな声が漏れてしまった。
なんとガスマスクの青年は、今度は確実に
恐らく重力系の攻撃であり、服の端でも引っかかれば全身がすり潰されるその攻撃を紙一重で。そもそもたった1回見ただけで攻撃の法則性を読んだと言うのか?
そんな優れた観察眼、葵くんくらいしか……。
…………アレ、葵くんじゃね?
顔はガスマスクで隠されてしまっているが、よく見たら背格好は似てるし、髪質もなんか似てる気がする。
しかし葵くんはナナフシゾンビに結構な重傷を負わせられていたはずだ。少なくとも2週間で復帰出来る傷の深さではない。やっぱりアレ葵くんじゃないな。
「……自身の体を中心とし、ある一点の重力を軽くする代わりにその対象となる場所の重力を重くする。効果範囲は最大5m四方、最低間隔は50cm程度。重力軽減の方もまともに食らうと
ガスマスクの青年はやたら長い独り言を呟き、そのまま蛇型ゾンビに発砲するが弾丸は辿り着く前に地面に叩き落とされ、そのままめり込み砕け散る。
と言うか今の声完全に葵くんだったな! あとやたら長い独り言を言う癖も葵くんにあったし、何より1度見ただけで相手の能力を看破してしまう観察眼! こりゃアレは葵くんだ!
「加えて、自分の周囲1m以内には発生できない! 死ねッ!」
銃が効かないことを判断したのか、ガスマスクの青年は一気に距離を詰めてその体にナイフを突き立て、発光体に沿うようにして一気に切り裂く。蛇型ゾンビものたうち回り、その巨体で相手を弾こうとするがその行動も読まれていたのか逆に自らの体を深く切り裂く結果となった。
アレやっぱ葵くんじゃないな。
葵くん言っちゃあれだけど身体能力はあまり高くなかったし、ゾンビ達も元人間だからと通常タイプを殺す時は苦しめないように一撃で仕留めるように意識してたほど優しい子だったもん。死ねとかそういう乱暴なことは相手がゾンビでも言わないし、そもそもあんな動き出来るわけないもんね。アレ葵くんじゃねぇわ。
そうこう考えてたらガスマスクの青年がいつの間にか銃を拾い、蛇型ゾンビの腹に向けてゼロ距離射撃をぶち込んでいた。
特殊ゾンビがその程度で死ぬことは無いだろうが、どうやら一撃で核をぶち抜かれたようで数回体を蠢かせたあと、細胞が崩れるようにして溶けて死んだ。
核の位置を正確に射撃するなんて……銃の腕前はともかくやっぱ観察眼は葵くん並だな……でも葵くんじゃないよなアレ。
絶対違うわ! 人がたかが2週間であんなに変わってたらライザップもびっくりだよ。とりあえずなんか怖いし彼からは離れておこう。なんか近づいちゃいけない雰囲気するし、再生するからって怪物と間違われて蜂の巣にされるのは嫌だ「パキッ」あ、小枝踏んだわ。
「ッ、誰だ!」
めちゃくちゃ敵意の籠った怒鳴り声共にガスマスクの青年はこちらに銃口を向け、いつでも放てる準備をしている。
めちゃくちゃ殺気立ってるけど、どうにか穏便に済ませたい。俺が(見た目だけ)人間だと分かって銃をおろしてくれたらセーフだが、もしも撃たれたりすれば……まぁ正当防衛をさせてもらうかもしれない。撃たれると体よりも心が痛むのよね。人間愚かだわーって拗ねてた頃の精神性に戻るというか、ほんの少し人間を仲間だと考える『俺』が揺らぐのだ。
俺の身体スペックならこのまま逃げることも出来たが、一縷の希望に賭け、両手を上げて敵意がないことを示しながらゆっくりと物陰から姿を表す。
「………………」
「…………」
重たい沈黙が俺達の間に生まれる。
永遠に続くかと思われたこの時間は、ガスマスクの青年の意外な一言で終わりを告げることとなった。
「…………
「え、なんで俺の名前を……」
「その声、その姿、あ、あぁ! アルカ! 生きていたんだな!」
ガスマスクの青年は武器もガスマスクも投げ捨ててこちらへと駆け寄ってくる。
ガスマスクの下に隠されていたその素顔は、2週間前に見た葵くんの顔そのままであった。
「葵くん!? え、嘘、マジで!?」
「アルカ! アルカアルカアルカアルカ! 良かった……本当に良かった……生きて、生きていたんだな……」
「ちょっと、落ち着いて……え、マジで? マジで!?」
葵くん達の前では普段は猫かぶって一人称私の儚げ美少女ロールしていたが、あまりの驚きにそれすらする余裕が無い。
葵くんはただ涙を流しながら俺の名前を繰り返すだけ。と言うか体つき変わったな。以前何度か不可抗力で抱き合ったりお姫様抱っこされたり夜に泣きながら弱音を吐いていたから彼を抱きしめたりしてやったが、その時とは体の造りがだいぶ変わってる。端的に言えばものすごく引き締まり、筋肉量が上昇している。背も伸びたかな?
「アルカ……どうして無事だったんだ? 俺は確かに君が全身を切り裂かれるのを……」
「えー? ソンナコトナイヨー? あの後何とかゾンビの攻撃を掻い潜ってね。ちょっと辛かったけど、もう一度君に会えてよかったよ」
ゾンビの攻撃を(物理的に)掻い潜ったのは事実なので。潜りきれずに何回かバラバラにされたけど。
そう言うと葵くんはハッとした表情を浮かべ、伏せがちに俺の左腕の方に視線を向けていた。
何かあるのかなと思いながらそっちに視線を向けると、肘のちょっと上から先の腕が存在していなかった。
やっっっっっっっっっっっべ。
さっき千切れたのに治すの忘れてたわ。これもう言い訳効かねぇなオイ。今目の前で腕治したら完全にバケモノ認定されますよ。
「じゃじゃーん! マジックでーす!」で誤魔化せないかな? 誤魔化せるわけねぇだろ馬鹿じゃねぇの俺。
誤魔化すのは不可能。
そう判断してすぐに俺は体表の色を変え、まるで腕の先に包帯を巻いているかのように偽装する。
「さ、さすがに無傷ってわけにはいかなかったんだ……。でも気にしないで、そんなに深い傷じゃないからもう────」
「すまなかった!」
俺の言葉は葵くんの発したクソデカボイスによって遮られてしまう。
葵くん、こんなデカい声出せたんだ。130デシベルくらい出てただろ今の。俺じゃなきゃ下手すれば鼓膜破れてたぞ。と言うか破れたから再生させたぞ。
「俺が非力なばっかりに……君にこんな怪我を負わせてしまった……君を置き去りにしてしまった……」
「だ、大丈夫だよ? そんなに傷は深くないし、それに前も言ったけど君に何度も助けられてるんだからこれくらい……というか、本当に強くなったね……」
掴まれてる体がちょっと力を込めた程度では全く動かせないほど強く掴まれているのが伝わってくる。
痛くはないのだが体が動かせない。どんな力の込め方をしたらこんな風にできるのか長年生きてきた俺にも想像がつかない。
「あぁ……君を失ったあの日から俺はもう二度とあんな思いをしないために鍛え始めたんだ。……けれど良かった。これで、この力を今度こそ君を守る為に使えるよ」
なんか長年修行したみたいな言い方だけど、俺と君が別れたの2週間前ですよ?
以前はちょっと観察眼に優れたひょろ長だったはずなのに、2週間で単騎で特殊ゾンビ屠れる人外ソルジャーになるとか結果にコミットし過ぎだろ。結果がコメットしてるよコレ。
「もう二度と、この世界に君を傷つけさせはしない。俺は何があろうと君を守る。他の人類も文明の残り香も俺の魂も何もかも奴らに喰われようと、君だけは絶対に俺の手で守り抜くから……」
涙を流しながら俺を抱きしめる葵くんの目には、以前のような光がなくまるで深海のような昏さがあるだけだった。1回投身自殺しようとして深海1万mまで辿り着いた俺が言うのだから間違いない。光の届かない昏い世界がその瞳の中には広がっている。
なんか、キャラ変わってないか葵くん……?
君ってこんな子じゃなかったよね? まさか、誰かあの純粋無垢な葵くんを誑かした奴がいるのか? 葵くんをこんな風にした奴め……会ったら1度ぶん殴ってやりたいものだ。
312:NN.雪ん子
で、結局かぐやちゃんとかガラテアちゃんとかアルカお姉様は見つからないんですかー?
313:NN.マリン
殺しても死なない以上は心配するのも無意味だろう。
314:NN.クククルン
そう言えば今日アンナちゃんとクソ強いゾンビと戦ったんだけど、やっぱアイツら異界領域持ってるね。世界革命使われてさすがに焦ったわ
315:NN.ブラド
>>314
世界革命を!?想定以上に進化が速いのか……?
316:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
>>314
アンナちゃんって拾った銀髪幼女の名前?
317:NN.オーカミ
>>314
マジかー。こりゃ人類じゃ勝てないな。
318:NN.風呂メテウス
数人を守るのはともかく、点在する居住エリアを作るとなると不可能に近くなるな。
319:NN.万死
最低でも革命返しするか3回は死ねるストックがないと世界革命は対策できないからね。というか、アンナちゃんは無事だったの?
320:NN.クククルン
実はな……アンナちゃんが革命返しして倒したんだよ……
321:NN.ハッピージョー
は?異界領域で世界を一時的に塗り替えて法則を自由自在に操る世界革命ですよ?完全に魔の領域ですよ?
322:NN.万死
???
323:NN.ブラド
また酒を飲みましたか?
324:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
おーい、酒クズコアトルが酔って幼女犯そうとしてるぞー
325:NN.風呂メテウス
相変わらず冗談下手くそだな太陽神のくせに
326:NN.クククルン
いやマジマジ。世界革命されてこれヤベーなと思ってすぐに革命返ししようとしたらアンナがブチ切れながら「お姉様には手を出させない!」って異界領域展開してさ。そのまま巨大な歯車でゾンビをすり潰した。成長感じてうるっと来ちゃったわ
327:NN.雪ん子
大富豪の話してんのかと思ったら世界革命の話かー。殺傷能力で言えば私の『摩訶鉢特摩壊紅蓮』が1番でしょ
328:NN.オーカミ
殺傷能力なら万死の『TYPE:BALOR』じゃない?俺食らったことあるけど全身分解されて動けるようになるのに丸一日かかったよ?
329:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
>>326
色々言いたいことあるけどお前幼女に自分のこと『お姉様』って呼ばせてんのか……
330:NN.万死
うわっ……
331:NN.マリン
酒クズ……
332:NN.ハッピージョー
擁護しようがありませんねロリコン酒クズ……
333:NN.ブラド
人間側にもそのような個体が出るということは、このウィルス騒動はやはり人間の科学力の外側の技術ですね?
334:NN.雪ん子
外側の技術っったって、私達の技は全部人間じゃ再現不可じゃん。
335:NN.クククルン
ねぇ、俺割と重要な報告したはずなのに扱い悪くない?あと俺の酒騒動悪いの全部テスカトリポカだからね?俺悪くないからね?
336:NN.マリン
異界領域が実家炎上のやつは黙ってろ
337:NN.妖精武器庫
>>327
残念ですけど殺傷能力に限定すればアルカさんの『万魔屍山無明郷』でしょうww
338:NN.もりもり
>>337
ブリテンのクソ女生きとったんかワレェ!
339:NN.妖精武器庫
そもそも私今ブラックドッグちゃんと一緒にいるから掲示板自体はずっと見てたけどねww
340:NN.ハッピージョー
気になってたんですけど、アルカさんの異界領域って言うほど殺傷能力高いですかね?
341:NN.ヴォドゥン
一応受けた身で言うけど、マジであれで殺せないなら俺たちを殺す手段は存在しないってレベルだ。不死じゃなければ存在がこの世に残らない
342:NN.ブラド
破神の時も決め手は彼女の世界革命でしたからね。
343:NN.雪ん子
え?みんな何言ってんの?ボケた?
344:NN.クククルン
?
345:NN.ハッピージョー
アルカさんの異界領域って、
346:NN.マリン
>>345
特異性ならもりもり……凛花の『沙羅結界涅槃園』じゃないか?生命から闘争を消失させる可能性のある異界領域だぞ?
347:NN.万死
むしろアルカの異界領域って殺す以外何も出来ないでしょ。
348:NN.雪ん子
そもそも、アルカお姉様の異界領域の名前、『万魔屍山無明郷』じゃないでしょ
349:NN.ブラド
>>348
いや、それであっているはずだが何を言っているんだ?
350:NN.最新の魔女
皆様助けてください。
幼児を拾いました。
351:NN.もりもり
酒クズコアトル!
お前最新の魔女ちゃんに何を吹き込みやがった!
352:NN.妖精武器庫
このロリコンコアトル!
353:NN.クククルン
ねぇ、俺一応主神だからそろそろキレるよ?
大洪水で文明消し去るよ?
葵くんの話によれば、ナナフシゾンビから逃げたあと何とかしばらく安全に過ごせそうな拠点を見つけ、今は3人でそこで暮らしていて、葵くんは特訓の為に1人外に出ていたらしい。
自分から戦いに行くような子じゃなかった気がすんだけど……そもそもあの高性能ゾンビ共と単騎で戦うのって自殺行為だし。
そして案内されるがままに拠点に行くと、突然誰かが俺に抱きついてきた。
「アルカ……アルカなの!? 心配させて……全くもう!」
「て、照香……?」
いきなり抱きついてきた照香。
以前までのクールなお姉さんといった彼女の印象とはあまりにも食い違った行動に、またも俺の脳はフリーズしかけてなされるがままに腕を心配されたり、抱き上げられたりしていた。
「良かった……あの時死んじゃったと、もう会えないと……うぅ……ほんとうによかったぁ……」
しかし……クールなツンデレキャラのデレというのはやはり破壊力が高い。それにこちらとしても照香は口数は少ないが良いやつということはわかっていたので、こんな風に抱きつかれたら戻ってきて良かったと少し心が温かく……
「安心してねアルカ。もうあなたを脅かす何もかもをあなたに近づけさせない。邪魔なゾンビも目障りなネズミも耳障りな小虫も呼吸の邪魔をする埃も全部全部全部この世から消してあげる。あぁ……腕を切り落とされて可哀想。守ってあげられなくてごめんね。でも安心してね。これからは私があなたの手でも足でも声でも脳にでもなんにでもなってあげる。あなたはもう痛い思いも辛い思いもしなくていい、今度こそ私は完璧にあなたを守りきるから……」
…………寒気がしますね。
なんなんですか。2週間で皆さんメンタルが結果にコミットし過ぎでしょう。ツンのデレがヤンのデレに切り替わってますよ。
・クククルン
南米の神様。酒癖が悪い。Mr.妹レイパー
・マリン
海の精霊
・ヴォドゥン
精霊呼びされてる腐乱死体
・風呂メテウス
内臓喰われてる神様
・オーカミ
満月の夜に全裸で叫んでる
・凛花
もりもりの真名。女の子。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
命儚き理解せよ不死者
あと、あとがきに感想であった質問的なのを一応簡単に纏めておきます。
「お、おぉぉぉぉ!!! アルカ! よく無事だったな! 本当に……くそっ、泣いてねぇからな! とにかくお前が無事でよかったぜ!」
仮拠点に案内されていると、聞きなれた低い声が聞こえてきたと思ったらやっぱり剛が現れた。
葵くんと照香から聞いていたが、1週間ほど前に剛が足を怪我して今は此処を拠点にしているらしい。怪我をしていると聞いて心配したが、この様子なら問題はなさそうだろう。元から人間とは思えないくらいタフなおっさんだったし。
「お前がいなくなってから葵も照香も全然元気がなかったからよ……ったく、もうあんな無茶な真似すんじゃねぇぞ。絶対今度は腕1本じゃすまねぇからな」
葵くんの目の前で腕を治すのを忘れていたせいで、彼らと行動してる時は左腕が欠けた状態で過ごさなきゃいけないデメリットが発生したが、それ以上にやっぱり彼らと過ごしている時間は心が安らぐ。
特に剛。
前はちょっとうるさいおっさんだと思ったけれど、謎の病みを見せてきた葵くんと照香と比べめちゃくちゃ安定した精神をしている。
「……なんだ、俺の顔になんかついてるか?」
「いえ、剛さんって改めてみたら、格好良いなって」
「ったく、褒めたって何も出ねぇぞ? まぁお前みたいな若い子に褒めてもらえるってこたぁ、俺もまだまだ捨てたもんじゃないのかもな! ガハハ!」
うん。この安定感がやっぱり良いね。
今のセリフ葵くんか照香に言ったらフリーズしちゃったかんね。
自覚はある程度ある。
そりゃ俺ってば仮にも4000年以上生きてないし? 必要があって人間社会に溶け込むこともあったからある程度『人に好かれるロール』というのを理解している。好かれ過ぎると老化もない以上長年同じ場所にはいれないのでかえって面倒くさくなるからある程度。クラスの全員に『こいつ4、5番目に仲の良い友達だなー』と思われる程度である。
あとやった事といえばチームが内ゲバとかしないように、一番メンタルが弱そうな葵くんの過去話を聞いてあげてガス抜きしたり、なんかやたら単独行動しようとする照香をサポートしたり、剛はぶっちゃけ本当に良くできたリーダーなのでちゃんと言うことを聞いたり。それくらいなのに。
「アルカ、しばらく体洗えてないでしょう。ここには入浴施設があるからお風呂に入れるよ。あ、でも腕が滲みたりしたらいけないし、片腕じゃ何かと不便だよね。私が一緒に入ってあげるよ。もしかしたら下衆な下等生物が覗きに来るかもしれないし。もしも一人でいるところを襲われてまたアルカが怪我したら私は……私は……だから安心して。私がしっかりとアルカを守るから。片腕じゃ届かなくて洗いにくいところもじっくり丁寧に洗ってあげるよ」
一応言っておくと、俺から見た以前までの照香の評価は『無口無表情なクール系お姉さん』である。
え、誰この人?
そう思うくらいに照香の性格が変わっていた。いや、もしかしたら表に出てないだけでこれが素だったのかもしれないけど、こんなやべぇ素を隠せてたとしたらすげぇよ人間……見直すわ。
葵くんも葵くんで……
「剛さんの怪我はなかなか深いからしばらくここにいることになるだろうけど、アルカはこの拠点から1歩も外に出なくていいからな? 外は危険がいっぱいだからアルカにもしもがないようにずっとここにいるべきだ。食料でもなんでも俺が取ってくるし、近づいてくる腐乱死体共も全部俺が片付ける。だから……絶対にいなくならないでくれ。俺はアルカの望むものは何でも持ってくるから」
君さぁ!
最初とキャラ違うよね!? まずなんで特殊ゾンビとタイマンで勝てるようになってんの? 何、男子三日会わざれば刮目して見よとか言うけど、2週間で人間やめてるとか誰が想像すんだよ。3000年くらい前に現れた、周りの生命を吸収して成長する地球外生命体もビックリだよ。
2人が急に変わったことについて剛に聞いてみると「そういや、お前がいなくなってから2人とも急に強くなった気がすんな。それだけお前のことが大事だったんだろうな。仲がいいのは良い事だ!」とか言ってたけど、俺ぶっちゃけそんな病ませるほど2人からの好感度爆上げしてた自覚ないんですけど。葵くんはともかく、照香なんて年齢も知らないくらいしか話してないんですけど!
しかしそれは逆に考えれば、俺が原因であんなに変わった訳では無いのかもしれないということだ。
むしろその可能性のが高い。別に俺に2週間でヒョロガリボーイをゾンビをサーチアンドデサトロイするソルジャーにする力なんてないし。
強いて言うなら……アレは葵くんが急に単独行動して突っ走ってた時の事だな。
何があったのかと思えば野良犬がゾンビに襲われているのを見て助けようとしていたので、一緒に助けて後でめちゃくちゃ剛に怒られたことだ。
本人はいつも誰かを助けようとして空回りしていると言っていたが、あの時の行動はこんな状況でできるのは馬鹿か本当に優しいやつしかいないが、彼は馬鹿じゃないので後者だと感じたな。ぶっちゃけ俺的には人の命も犬の命も変わらないし。動いてる死体に情けとかはないけどね。
葵くんってば何かと身体能力以外の能力は高いし、目の付け所がいいのにあんまり成功体験がないせいなのか自信が全然ないから、出来る限り彼の正義感から発した行動は手伝ってあげて、無謀すぎる行為は嗜めて、せいぜいちょっと彼が人間として成長してこの地獄を生きていけるように促しただけで、そんな彼が俺に依存とかするようなレベルのことは何もしてないんだが?
確かにヒロインロールプレイに熱が入りすぎて、俺の超絶儚げ美少女微笑みを何度も何度もぶつけてたとは思うけど、剛にも同じことしてたしそれが原因ってこともないだろう。そもそも愛とか恋ってそこまでやばい感情でもないだろうし。
照香の方はもっと心当たりないよ。
ズカズカ踏み込もうにも向こうから完全シャットアウトしてくるので出来るだけそばに居てあげたり、寒がりなのか夜震えてることがあったからそっと近くで体温を上げた状態でくっついて上げたりしてただけだよ。
わかんないよー!!! 人間の精神わかんないよー!!!
おぎゃー!!! (現実逃避)
バブー!!! (現実逃避)
…………よし、落ち着いた。
明日からは左腕を再生しないで生活しないといけないし、何かと不便なことも多そうだから気を引き締め直さないと。ちょっと病んでしまってるとはいえ、彼らといる時間を手放すことになるの嫌だしね。以前みたいにドジで内臓ばらまいて慌ててしまったのを見られて追放とか嫌だもん。俺は人の心が完全にない他の多くの不死友と違い、徐福などと同じく人の心がわかる不死者なのだ。きっと2人は仲間を目の前で死なせたというショックから一時的におかしくなってるだけでじっくりとメンタルケアすれば大丈夫……
「アルカ! 何かあったのか!」
「うぉ!? 葵く……さん。どうしたんですか?」
「いや、急におぎゃーとかバブーみたいな奇声が聞こえた気がしたから……何かあったのかと?」
口に出してませんよ?
口に出してませんよ奇声????
何? 葵くんいつの間にエスパーに目覚めたの? もう人間やめてるじゃんって言いたいけど、透視も魂視も使って確認したし、体内もちょっと覗いたけど完全に人間なのよね葵くん。
「き、気の所為じゃないかなぁ……? そんな私がそんなおぎゃばぶするように見える?」
「そうだよな。アルカに限って急におぎゃーとかバブーとか言わないよな。あ、そうだ。ちょうど良いし渡したい物があるんだ」
そう言って葵くんがポケットから取り出したのは、小さなペンダントだった。
「これって……」
「まぁ、お守りみたいなもんだ。こんな時に神に見放されたみたいな状況でこんなの作るのは変かもしれないけど、少しでもアルカへの災いが減ればなって」
確かによくよく見ればちょっと不格好な形ではあるが、まさか手作りとは思わなかった。てっきり何処かで拾ってきた既製品かと思ったくらいにはよく出来ている。
「凄い……ありがとう。これを葵さんだと思って大切にしますね」
「……っ、ああ。でもそれが壊れても俺は壊れたりしないから安心してくれ。アルカを残して死んだりなんてしないから」
「縁起でもないこと言わないでくださいよ。ん、そういえばこれって中に何か入ってるんですか?」
「昔、母さんに教えて貰ったお守りが入ってるんだ。開けたりすると効果が無くなるから開けないでくれよ。それじゃ、おやすみ」
「はい。おやすみなさい葵さん」
全く、葵くんも中々洒落た真似をするじゃないか。
あれは間違いなく俺に気があるな。以前からなら惚れた女が身代わりになって死ぬという中々酷なシチュエーションを押し付けたことになってしまったな。反省反省。その分しっかりと癒してあげて以前の明るい葵くんに戻してあげよう。
……しかし、お守りか。
実際に効果のあるお守りを作れる身としては、これがなんの効果もないものだということは理解出来るが、それでも中身を見るのは野暮というものだろう。人から貰い物をするというのも久しぶりだし、俺は常に装飾品を身につけても肌がかぶれたりもしないし、せっかくだし肌身離さずつけておいてやるか。
実際貰い物って、かなり嬉しいしね。
42:NN.侵略タコ娘
第1回! 魔女ちゃんの娘の名前決め大会!
43:NN.最新の魔女
私が偶然保護しただけで私の娘では無いのですが
44:NN.ブラド
>>42
マクスウェル
45:NN.もりもり
>>42
ラプラス
46:NN.ヴォドゥン
>>42
シュレディンガー
47:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
>>42
ノイマン
48:NN.風呂メテウス
わかってたけどコイツらネーミングセンス無いな
49:NN.妖精武器庫
>>42
ランスロット
50:NN.万死
>>42
十二指腸
51:NN.オーカミ
ココ大喜利会場?
52:NN.マリン
>>49
貴様はいい加減義理の息子のことは忘れろ
そしてお題は娘だ。ドリスというのはどうだろう
53:NN.最新の魔女
>>52
ではドリスで。今日からこの子はドリスです
【画像】
54:NN.クククルン
>>53
ガチの赤ちゃんじゃん。今までどうやって生きてたんだこの子?
55:NN.ブラド
この状況でも何とか難を逃れて育てていた親がゾンビに襲われた、とかですかね?
56:NN.侵略タコ娘
なんでもいーじゃん!
まさか元は電子生命体の魔女ちゃんが私より先に子供を持つなんて……まぁ私は下半身を犬多頭付きのタコにされてるから子供産めないんだけどね!
57:NN.雪ん子
>>56
www
58:NN.オーカミ
笑えない一発ギャグやめーや
59:NN. 万死
そういえばクククルンのところのアンナちゃんの異界領域の名前決まったの?
60:NN.もりもり
しかしなんか不死者が次々と人間を保護してくの見ると、一昔前に流行った創作を思い出すね
61:NN.ハッピージョー
ありましたねそんなのも。あれですよね。魔女集会みたいなやつ
62:NN.風呂メテウス
そーだね。ギリシャ神話にも似た話あるし
63:NN.ヴォドゥン
1500年前くらいに人間の間で流行ったよねそのタイプの話ー
64:NN.ハッピージョー
生まれながらの不死者の一昔の感覚にはついていけません……
65:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
>>59
そういえば決まってなかったね。んじゃ>>75の奴で良くね?
どんな感じのやつだったっけ?
66:NN.クククルン
うちの娘の異界領域の名付けを安価に頼るな
67:NN.もりもり
娘じゃないだろ酒カスコアトル
68:NN.オーカミ
また酒クズコアトル様が酒飲んでご乱心だぞ!
69:NN.ヴォドゥン
>>65
歯車が現れて押しつぶすやつだろ。さすがに子供のだからなのか性能としてはアレだな
70:NN.ブラド
廻天極螺旋円園
71:NN.雪ん子
くるくるワールド
72:NN.妖精武器庫
ギガド〇ルブレイク
73:NN.もりもり
無限の〇製
74:NN.クククルン
お前ら頼むから真面目にやれ
75:NN.ブラド
廻天羅合致界
76:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
_人人人人人人_
< 廻天羅合致界 >
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y ̄
77:NN.クククルン
よりによってブラドのかよ……普通に俺が考えるからな?
78:NN.ブラド
待て。よりによってとはどういうことだ。
79:NN.オーカミ
ブラドはちょっと心が中学二年生なだけなんだ……
80:NN.雪ん子
『電業雷轟』……
81:NN.ヴォドゥン
あれ当たると痛いから煽るのやめた方が良いぞ
82:NN.もりもり
>>81
お前なんでそんなにみんなの技くらったことあるの?
83:NN.万死
殴りやすいボディしてるからだよ
84:NN.ブラド
ん、アルカの位置掴めたかもしれん
85:NN.雪ん子
>>84
お姉様が!!!???
86:NN.マリン
>>85
位置は?
87:NN.クククルン
死ぬことは無いだろうけど元気かなアイツ
88:NN.ブラド
多分発信機の類を身につけてるな。コミュニケーション可能な端末じゃないから位置しかわからん。日本だ
89:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
先に行っておくと私は探しに行ったりしないからね?めんどくさい
90:NN.妖精武器庫
別にいーでしょ。そもそも救助とか必要なタマじゃないし
91:NN.最新の魔女
そう言えば以前から気になっていたのですが、誰の異界領域が最も強いのですか?
92:NN.ハッピージョー
……そういう話はやめておいた方が良い気がします
93:NN.雪ん子
私の『摩訶鉢特摩壊紅蓮』でしょ
文字通りの絶対凍土。-387℃の絶対零度を超えた静止の世界!
94:NN.侵略タコ娘
マリンの『淵下万来生源』も強くない?水圧発生が純粋に強いし、環境に適応できる生命を自由に生み出せるのも応用が利く
95:NN.最新の魔女
私の『マクスウェルの悪魔の存在証明式』は無限のエネルギーが生成できますが、皆様の異界領域には練度が及びませんね
96:NN.風呂メテウス
強さ議論ってやたら盛り上がるよな
97:NN.オーカミ
荒れるけど体が闘争を求めるから……
なんだかんだ長生きしてると血に飢える時もあるしね
98:NN.ブラド
『地球製火薬庫最大展開』も、名前はともかく超新星爆発の威力が込められた刀剣の生成及び射出と名前がクソダサい以外は優秀な性能ですね
99:NN.妖精武器庫
あれ?私褒められてるの?disられてるの?
100:NN.クククルン
俺の『天炙る炎翼』……
101:NN.雪ん子
>>100
禁止カード出すな萎えるでしょ
102:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
ナーフしろクソ運営
103:NN.もりもり
実家炎上領域
104:NN.クククルン
本当に俺の扱い酷くない?
俺の抜きならアルカの『万魔屍山無明郷』じゃないか?生体特異点の発生で壊劫級の星害指定とか作れたんだろ確か?
105:NN.万死
もりもりの『沙羅結界涅槃園』。あらゆる生命から闘争本能を奪い、ただそこに在るだけの植物同然に変えるヤバい奴
106:NN.雪ん子
>>104
何度も言うけど、お姉様の異界領域は『星羅転埋伏暦』だと思うんだけど!
107:NN.ヴォドゥン
>>106
お前と徐福以外全員『万魔屍山無明郷』だって言ってんだけどな
108:NN.ブラド
やはり誰か直接聞きに行くべきだな。一番近くにいるのは晴明だぞ
109:NN.侵略タコ娘
どうでもいいけどなんで異界領域ってみんな日本語なの?日本語ダサくない?
110:NN.妖精武器庫
バンシーの『TYPE:BALOR』とかも超凶悪なウィルスの発生及び進化とか対生命だと最強クラス
111:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
本名言うな!!!
殺すぞ!!!!!
112:NN.ハッピージョー
>>109
日本語が一番異界領域の概念強化と合うからですね。バンシーさんは生まれの影響でその名前が一番合うので違うのでしょうが
113:NN.もりもり
まぁアルカの異界領域なんてなんでもいいでしょ。異界領域がなんだろうとアイツが何か変わる訳でもないし
114:NN.風呂メテウス
アルカは異界領域よりもマジで人の心が分からないのがやばいからな……
115:NN.マリン
少しは人間の感情について学んで欲しいが……何故か「人間の事は皆の中で俺が一番わかってる!」と学ぼうとしないからな
116:NN.最新の魔女
困りました。
乳が出ません。あと乳房の先端を強く噛まれてます。このままでは噛みちぎられる恐れがあります。
117:NN.侵略タコ娘
落ち着いて魔女ちゃん。
母乳は多分あなたの体じゃ出ないから
118:NN.ブラド
とりあえずデータをそちらに送るので参考にして子育てをしてください。後で暇があれば様子も見に行きますので
【データ】
119:NN.もりもり
おい!!!!
このデータ修正無しのおっぱい写ってるぞ!!!!!
120:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
ひゃっほい!ひゃっほい!
121:NN.ヴォドゥン
おっぱい!おっぱい!
122:NN.雪ん子
……あのお淑やかなもりもり……凛花さんはどこに行っちゃったの?
123:NN.マリン
ネット環境を与えたらものの3日で……
124:NN.妖精武器庫
おっぱいよりイケメンのアロンダイト見せろよ
125:NN.ハッピージョー
僕、今不死になったこと後悔してるかもしれません
126:NN.クククルン
始皇帝「お、そうだな?」
127:NN.風呂メテウス
まぁ不死って辛い事のが多いよね。内臓啄まれたりとか。
128:NN.オーカミ
徐福はまだ2000年くらいだもんな。まぁあと1000年もすれば慣れるさ
129:NN.ハッピージョー
それよりも偉大で崇高な不老不死者達が女性の乳房で興奮してる現実が辛いんですよ。あとあのお淑やかで正に植物の精霊といった感じだった凛花さんがこんなことになってるのが
130:NN.万死
ちなみに凛花の写真これ
【画像】
131:NN.もりもり
>>130
うわなにこの着物の似合う超絶美人。
俺だわ
132:NN.ハッピージョー
隣に写ってるアルカさんはなんで半裸でふんどしで鼻に割り箸突っ込んで踊り狂ってんですか????
・万死
死の妖精さん
・妖精武器庫
イケメン限定で武器をくれる変態
・雪ん子
雪女
・侵略タコ娘
可哀想な被害者。最新の魔女ちゃんには優しいけど魔女は嫌い
質問への返答とか
・凛花の元ネタは?
凛花はアルカが付けた名前で、彼女は森とか植物の概念そのものです。強いて言うなら昔は世界樹とかユグ何とかとか呼ばれていた木の思考体だったとか。
本来は自然を愛するお淑やかな着物の似合う和風系美人だった。
・不死友について
だいたいみんな偉人系か、神話・伝承系か概念の精霊系です。元ネタとか考察してみてネ
・最新の魔女ちゃんについて
不死者としての形を持ったAI。色々判断して人類を滅ぼそうとしたけど今ではすっかり一児の母に。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
にんげんっていいな
感想と高評価と日光と水をくれる皆様のおかげですくすく今回の続きさんが育ち、無事に収穫出来ました。ありがとうございます。
今回はサクッと何故か病んでた照香の掘り下げです。
「108号の様子はどうだ?」
「他の被検体と比べ数値が安定しています。魂魄概念の拡張や、順当に成長すれば領域の発生も見込めるかと」
「しかし如何せん細胞活動が不安定だな。あまり時間は無さそうだ。実験の段取りを繰り上げて……」
白い服の大人達の言う『108号』というのが自分だということを理解したのはいつの頃だったか。
私の世界は一面の白い壁で覆われた世界で、私の一日はひたすらに体を痛めつけられて終わっていく。
与えられるものは生命維持に必要な最低限の食事と、1ヶ月に1度だけカタログの中から選ばせてもらえる『ご褒美』とやら。地獄を30回ほど繰り返す度に少しずつ色がつき始める真っ白な部屋。
それに私は何も感情を抱かなかった。
ただ、『あの子』は喜んでいた。
『あの子』は白い服の大人達に『470号』と呼ばれていた。
『あの子』がいつから私と同じ部屋にいたかは覚えていないけれど、私が『あの子』の存在を意識し始めたのがいつからなのかは覚えている。
「大丈夫? 震えてるけど、もしかして寒いの?」
白い部屋の中は快適だった。
湿度も温度も常に過ごしやすく保たれていて、壁や床の硬さも丁度よく寝るのに寝具の必要性を見出す程のものではなかった。
震えていたのは、怖かったからだ。
毎日毎日体の中を弄り回され、逃げることは許されず終わった後も投薬の副作用の苦しみでのたうち回りその苦しみが取り除かれる前にまた次の日が訪れ、耐えられなくなった個体は廃棄される。
自分にとってこの生活が続くことが幸せなのか、終わることが幸せなのか。ずっと分からなかったのだ。生きているのは辛くて苦しいけれど、死ぬことだって望んでいない。私はどこに行きたいんだろう。
抑えた気持ちが溢れそうになり、体を小刻みに揺らしてしまう。それが限界を迎え、瞳から溢れだしてしまいそうになった時────
「全くしょうがないなぁ! お姉さんの毛布を半分分けてあげよう!」
『470号』は、恐らくご褒美に貰ったであろう毛布の中に私を入れて、こちらに抱きついてきた。
「暖かいでしょ? これ、私のお気に入りなんだ!」
馬鹿みたいな笑顔と阿呆みたいな勘違い。
そんなくだらないものが、私の人生の中で最も輝く星に見えてしまったのだ。
「私、ヒナって言うの! よろしくね、えーっと……名前なんて言うの?」
その日から私は生きたいと思うようになった。
「ヒナっていうのは自分で考えたんだ。4と7でヒナ。……え、それだったらシナじゃないのかって? ヒナの方が可愛いじゃん!」
辛いことも苦しいことも変わらず私に襲いかかるけれど、ヒナと話している時間だけは私は寒さに震えずに済んだ。
「108……10は英語でテンで8はやっつだからテンヤ……なんか男の子っぽいし……そうだ、テルカ! 『照らす』に『香る』で照香なんでどうかな?」
適当なところもあるし、無駄なことばっか考えるし。
でもその適当が安らぎになり、その無駄を愛おしく感じて。
「私ね、いつか色んな人を見てみたいの! 大きな街で高ーい建物の上に住んでね! 色んな人の暮らしを毛布にくるまりながら眺めるの!」
「人なんて見ていて何が楽しいの? それなら私は海とか山とかに行きたいよ」
「えー、よくわかんないんだけどね。人ってよーく見ると内側に何か揺らめいてて、その中には色々な世界があってね……とにかく、見てて楽しいの! それに、笑ったり泣いたり出来るなんて素敵!」
変な夢だと笑ったけれど、いつかその夢が叶うといいなと心の底から願っていた。
「ねぇ、照香はなにか夢がないの? やりたいこととかさ」
「別に。私は……ヒナと一緒なら……いや、やりたいことなんて……」
「じゃあさ、照香のやりたい事が見つかったら私に教えてね! 私も手伝ってあげるから!」
「────470号はもうダメだな」
「薬物投与で限界を越えさせたが……魂の観測にまで至った個体は他にいなかったが仕方ない。廃棄だ」
「感情、聴覚以外の五感をほぼ失ってこれだけ稼働していたのはやはり魂に変質が……? すぐに解体しよう」
ある日、実験から帰るとヒナは動かなくなっていた。
別れの言葉も何も許されずその体はどこかに運ばれ、彼女が大切にしていたボロボロの毛布も捨てられた。
それから、どれくらいの時間が経ったのだろう。
また苦しいだけの日々が続いて、ある日突然誰も来なくなり不思議に思って私が壁を叩くと、私を閉じ込めていた白い壁が呆気なく崩れた。
延々と続く白い廊下は何人もの白い服の大人が、至る所を赤く染めながら倒れていた。
────ずっと憧れていた外の世界には何も無かった。
少なくとも、ヒナが憧れた世界なんてもう無くなっていた。蠢く死体が蔓延るばかりで、人の姿はどこにもなく営みの記憶は噎せ返るような死の匂いに塗りつぶされ、私にはどこにも世界が見れなかった。
まぁ、こんなものだろうと私は笑った。
笑ったまま、武器を手に取り蠢く死体を殺して回った。
コイツらが何なのか、外の世界に何が起きたのか。私には何もわからなかった。何も分からない私では、こんな世界で長生きは出来ないだろうともわかっていた。
でも、どうせ死ぬならヒナと同じところに行きたい。どうせ死ぬなら、ヒナに彼女が憧れた世界を教えてあげたかった。
どうすれば大都市の中に大量の人を集められるだろうか。
分からない。分からないことだらけだけれど、とりあえずこの死体達は邪魔だ。あの子の夢を邪魔するなら、私はそいつを殺すだけだ。
「お、じゃなくて……私はアルカって言います。よろしくお願いします」
アルカと出会ったのは、1人では効率が悪いからと仲間と共にゾンビの討伐と生存圏の捜索を始めてしばらく経った時のことだ。
ふわふわとした羊毛のようであり、なのに滑らかな白髪は何となくヒナを思い出させ、私にとってその存在は少し不快であった。
だから露骨に避けてやったし、毎日早く死ねと思っていた。
それなのに、私の気持ちも知らないでアルカはズカズカとパーソナルスペースに踏み込んできた。
何度追い払ってもまるで私の心情なんて全く理解してないかのように柔らかに微笑むその姿は、正しくヒナの生き写しのようで、何度見ても吐きそうになってしまう。
そんなある日、私は夜にまた震えてしまっていた。
何もわからなくなって、心の底から死んでしまいたいと思っていた。私は今何をやっているんだろう? 何がしたくて生きているんだろう? ヒナの夢を叶えたいだなんて言って、死ねない理由を適当に作って死ぬことから逃げているだけで、本当は自分が空っぽの人形なんじゃないかと思ってしまった。
考えれば考えるほど感情が内側から私を切り裂いて、何もかも吐き出して死んでしまいそうだったけれど、あの時みたいに私の震えを止めてくれる人はどこにもいない。
もうむりだ。
このまましたをかみきってしんでしまおう。
そう思った時、誰かが寝転がっていた私に毛布をかけ、何も言わずに隣に寄り添った。
確認なんてしなくてもそれが誰だかわかった。こんなことするのはアルカしかいない。
「……なんのつもりだ」
彼女は何も答えない。
「寝苦しい。邪魔だ」
彼女は何も答えない。
ただ、私の震えを止めるようにそっと抱きしめて、寝息を立てていた。
次の日も次の日も、アルカは私の隣で眠っていた。
何か言うわけでもなく、ただ温めるように隣で眠ってくれていて、朝になる頃にはいなくなっている。
いつの間にか私はそれを邪魔だと言わなくなり、いつの間にか震えながら眠る夜が無くなっていた。
「お前は……死にたくないと思うか?」
その夜、私は誰に語り掛けるわけでもなくポツリと呟いた。
「私は死にたくない。死ぬのは怖い。でも、なんの為に生きてるか分からない。それも怖い。私は……どうすれば良いのだろうか?」
その言葉は誰の耳にも入ることなく、夜の闇の中に消えていく……はずだった。
「うーん……そんな深く考えることもないと思うけどなぁ」
その夜、アルカは初めて私の隣で口を開いた。
いつもの嫋やかで儚げな話し方ではなく、どこか間の抜けた話し方で。
「死にたいと思ったことはお、じゃなくて私もあるけど、結局生きてて良かったって思うことの方が多いし、生きてる限り絶対にその思いは消えないと思うからね。やっぱ死ぬよりは生きてた方が良いと思う。1000年間辛くても、たった1回楽しいことがあるだけで全部良かったって思え……あ、ますよね! はい。例え話です」
私よりも明らかに年下の見た目の少女が、そんな達観した事を話し始めたことにも驚いたし、なんというか……妙にその言葉には上辺だけのものじゃない説得力があった。
「やっぱ生きがいを見つけることですよね。こんな世の中じゃ娯楽なんてないだろうけど……例えばそう……
呼吸が止まった。
なんで、なんでそんなことを言えるのかわからなかった。
「剛さんでも葵さんでもいいけど、眺めてると色々な表情をして飽きないものですよ? ぶっちゃけちゃうと私はあまり人が好きじゃないかもなんですが、やっぱり喜怒哀楽があってコロコロと変わる表情を見るのは楽し……あー……あはは……なんか変なこと言っちゃいましたね……やべぇ、つい素で話しちゃった……」
人が好きじゃないと笑いながら、人が好きだと笑った彼女と同じようなことをアルカは口にした。
寝返りをうって、その顔を視界に入れる。緑色の瞳は少し困ったように笑っていて、その中に映る私は見たことも無い表情を浮かべていた。悲しそうで、少しだけ楽しそうな、そんな不思議な表情だった。
彼女はヒナでは無い。
けれど、彼女はヒナと同じくらいに私の心を救ってくれた。
私の生きる理由が生まれたのだ。今度こそ、大切な人を守り抜く。この少し間抜けな笑顔を守るためだったら、私は命だって賭けられるような気がしてきた。
「ありがとう、アルカ」
「お礼を言われるようなことは何も。あ、それと……今日のことは皆さんに秘密にしておいて下さい」
「わかった。2人だけの……秘密だな」
「照香さん。葵さんをよろしくお願いします」
本当は止めたかった。
私が代わると言いたかった。
でも断れなかった。
私はアルカのことが好きだ。好きな人の願いはなんだって聞いてあげたかった。だから、覚悟を決めた彼女の瞳を見て、何も言うことが出来なかったし、葵を託されてしまっては代わるなんてことも言えなかった。
好きな人の願いを叶える為に。
私は好きな人を見殺しにする事を選んでしまった。
そうして葵を背負って逃げる最中、私ははっきり見てしまった。
守りたかった大切な人が、全身をバラバラにされて無惨に殺される光景を。
2:NN.もりもり
アルカについて語れ、かー。
まぁ悪い奴ではないよね。人の心が全く分からないだけで。
3:NN.クククルン
なんというか、その人の求めていることを的確にやった上で本人は何もしてないと思い込むからタチが悪い
4:NN.オーカミ
というかなんで急に不死友語りになったんだっけ?
5:NN.雪ん子
>>4
話題が無くなってきたから安価で名前が出た不死友との思い出を語ろうってなって、今お姉様の番
6:NN.クククルン
どうでもいいけど俺の事3レスで終わったの酷くない?我主神ぞ?
7:NN.ブラド
私が彼女と出会ったのは3000年ほど前だな。私の守る墓地に迷い込んできたから、とりあえず電撃を浴びせた
8:NN.万死
不死友あるあるだけど、初っ端の出会い殺し合いなの多いよね
9:NN.妖精武器庫
というかそれやって死ななかったから不死友なだけだというか
10:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
私あんまアイツと関わりないんだけどねー。とりあえず人でなしだとは思う
11:NN.ハッピージョー
僕は不死になっちゃってヤケになってた時100年くらい一緒に研究しましたね。すごい知識豊富で驚いたのは今でも覚えてます。
……最後に会った時は自爆連打の脳死戦法使ってましたけど。
12:NN.ヴォドゥン
徐福も2000年くらい生きればわかるけど……自爆は便利なんだよ……
13:NN.風呂メテウス
あれやると肩こり取れるし、ついでに敵も死ぬしいちいち術式構築とか世界革命使うと疲れるじゃん……相手に抱きついて爆発すれば死ぬんだから……
14:NN.最新の魔女
我々の魂の保有容積等を考えれば、最も効率の良い攻撃であることは確かですね。私も以前アルカさんと戦った時は何度か使わせて頂きました。
15:NN.ハッピージョー
知りたくなかった……知りたくなかったなぁ!
16:NN.侵略タコ娘
前にもりもりとアルカが一緒に自爆して破片が混ざったの超面白かったな〜
17:NN.マリン
もりもり……凛花は植物の概念そのもの故にそれにアルカが混ざりかけて世界中の植物がアルカと同化しかける笑い事じゃない大事件になりかけたがな
18:NN.雪ん子
あれも大変だったね。あと少し対処が遅れてたら植物の90%が滅んでた。
19:NN.もりもり
申し訳ありません……あの一件は、さすがに反省しています……
20:NN.オーカミ
ネット上で凛花が素で謝った……!?
21:NN.もりもり
流石に、あの一件は私の至らなさが皆様に迷惑をかけた故……。
22:NN.ブラド
元を辿れば凛花が自爆してたところにアルカが突っ込んだから100%アルカが悪いんだけどな
23:NN.クククルン
もしかしてアルカってめちゃくちゃ傍迷惑な存在じゃね?
24:NN.万死
…………
25:NN.もりもり
…………
26:NN.ハッピージョー
…………
27:NN.ヴォドゥン
…………
28:NN.雪ん子
私はお姉様に概念凶化を防いでもらった身なのでノーコメントで
29:NN.妖精武器庫
恩人なのにノーコメントされるあたりまぁそういうことだよ
30:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
まぁ不死者なんて一度は世界の危機を招くもんでしょ?この中で世界の危機を招いたことないやついないし
31:NN.風呂メテウス
酒カスとかここにいる全員を概念封印しかけたし世界滅ぼそうとしたもんな
32:NN.クククルン
せめてNNで呼んでくんない?
酒カス呼びやめて?
33:NN.最新の魔女
恥ずかしながら私もつい先日世界を滅ぼしかけた身ですしね
34:NN.ブラド
1回は世界を滅ぼせば自分も死ねるんじゃないかって思うアレ
35:NN.侵略タコ娘
不死者あるあるー
36:NN.もりもり
不死者あるある
・1回は世界を巻き込んで自殺しようとする
37:NN.オーカミ
でも漫画とかでよくあるあれはあんま無いよね
38:NN.万死
まぁ生きるのに疲れたとかは思うけど、一度死にたい期過ぎたあとは死にたいとかって別に思わないよね
39:NN.妖精武器庫
情報的に0になっても楽しいことなんもないし、プラスかマイナスに振れていても数値の絶対値では必ずなにか発生してれば楽しいもんね
40:NN.ブラド
まぁわざわざ消える理由って冷静に考えたら無いしな……
41:NN.マリン
そもそもケツァルコアトルの世界革命でも死より苦しい状態にできても殺せない時点で我らが死ぬのは不可能故な
42:NN.ヴォドゥン
なんだかんだ生きるのってずーっと楽しいからなー
死は救済では無い。
43:NN.ハッピージョー
昔は不老不死って肯定的な作品が多かったんですけど、ここ100年はなんだか否定的な作品多いですよね
44:NN.雪ん子
徐福くんの昔と私達の考える昔が多分違う
45:NN.侵略タコ娘
作風の流行り廃りって1000年単位で普通にループするからね……
46:NN.風呂メテウス
最近異世界転生とか流行ってるけど、あれ前に流行ったの4000年前くらいだったよな?
47:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
なんか死ぬほどどうでも良い流行り廃りの裏話聞いたなー
48:NN.ブラド
そう言えばアルカの話に戻るが、アイツの滞在場所の近くに巨大な魂魄反応があった
49:NN.クククルン
何か問題があるのか?
50:NN.最新の魔女
もしも私やクククルンさんのように人間と行動していたら、ですかね?
51:NN.万死
確かにクククルンのとこの子は世界革命使えたからよかったけど、せめて異界領域使えなきゃ巻き込まれたら人間じゃ絶対死ぬもんね
52:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
別にアイツの周りの人間が死ぬだけでしょ?何か問題ある?
53:NN.ブラド
その通りであるが、前も言った通り人が死ぬのを見過ごすことは私の根底理念と反する。それにアルカの周りで人が死ぬと連鎖的に感情を拗らせる人間が生まれる場合がある
54:NN.もりもり
じゃあ俺が待機しとくわー。日本まで『根』が伸びたし。ブラドはともかく、アルカとは1番長い付き合いだし
55:NN.万死
え、もりもり戦うの!?データ取らせて!
56:NN.ハッピージョー
世界革命をするなら僕も一緒に巻き込んでください
57:NN.ヴォドゥン
マッドサイエンティスト共が……
58:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
凛花が戦うなら私もスタンバんなきゃじゃん……
59:NN.最新の魔女
もりもりさんが活動するとなるとそんなに準備が必要なんですか?
60:NN.マリン
仮にもこの地球の殆どを覆う『植物』の概念そのもの故な。
……ネットにハマってからはその威厳が全くないが
61:NN.クククルン
そう言えばうちの子がなんか変な声が聞こえるって最近言ってんだけど、原因とか誰かわかんない?
62 :NN.妖精武器庫
アンタが酒臭くて酔ってんじゃないの?
63:NN.もりもり
そう言えば、俺も最近なんかげんちょってたりすんなー。歳かな?
質問への返答とか
・雪ん子の『摩訶鉢特摩壊紅蓮』
『絶対零度以下の温度の空間を発生させる』という効果です。絶対零度以下という物理的にありえない温度の空間です。難しいことは考えてはいけません。どちゃくそ寒い静止が動体にもなり得る有り得ない空間です。現実じゃ有り得なくても私の宇宙と雪ん子の異界領域の中では有り得るんです。
・神話ありなら不死者まみれじゃん?
ぶっちゃけこの作品の根幹とは何も関係ないのでざっくり言うと、追放されたり主神からキレられたりした人は『神話』の枠組みから『こちらの世界』に流れ着いてます。全員が全員というわけでもありませんし、じゃあ侵略タコ娘はなんなんだよとか思う人もいるかもしれませんがざっくり考えてください。別に重要なことでもないので。
・異界領域って結局なんねん?
概念や精霊系の不死者が魂の内側に持つ強固な『我』によって作った世界。それを使う攻撃は物理法則に囚われないし、何より威力が高いです。
その中の法則を世界側に適用して領〇展開やら固有〇界みたいにするのが世界革命です。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
心を取り戻せ
ランキング1位とかお気に入り5000突破とか訳わかんなくて嬉しくて作品の続きがひょっこり生えてきてしまいました。ありがとうございます。
『聞こえるか葵。こちらは指定の位置に着いた。内部の様子は音を使って調べたが、事前調査通りだ。あとそっちでアルカはちゃんとしてるか? 傷一つでもついてないだろうな?』
「了解だ。こちらも今のところ問題ない。そしてアルカの方も脈拍体温共に問題は無い」
通信機越しにさりげなく触られてもいないのに脈拍と体温を計られてたり、照香の方がエコーの様な技術を習得してたりなんか衝撃の事実を知らされた気がしたが、とりあえずそれは置いておき俺は銃を抱える右手に力を込める。
数日前、ゾンビに占拠された大型スーパーを照香が発見し、色々調べてみたところ内部の倉庫の電源が生きている可能性があるということが発覚した。
周囲にゾンビがだいぶ多いが、ここを手に入れれば不足しがちだった食料やら日用品やらを一気に手に入れられる事を考えこのゾンビスーパー攻略作戦(仮称)が立てられた。
「アルカ。君は絶対に俺より前に出なくていいし、危険を感じたら直ぐに逃げて構わない。何かあったら今度は俺が時間を稼ぐから絶対に逃げてくれ」
とりあえず頷いておくが、こちらとしては逃げるつもりなんてない。
前回は葵くんが重傷を負ってしまったために不死なのがバレるリスクを負ってまで殿なんて務めたが、俺的には葵くん達のことはかなり気にいってるから出来るだけ不死だということがバレずに、なおかつ死なないようにしてあげたい。
……周辺はゾンビ達を引き寄せる何かがあるのか、結構な数のゾンビがいるがスーパー内部自体にはその存在は感知できない。
とにかく、今回は以前のように油断せず俺は全力でバレないようにみんなをフォローする。直接ぶん殴るならまだしも、人を守りながら自分の力がバレないように戦うなんて気にしたことないから不安ではあるが、やってやるしかないのだ!
とりあえず成功確率とか初見殺しの攻撃で全滅するリスクとかを考え、二手に分かれて最初に決めたルートを進む。もしもスーパーを漁るなら襲われるリスクを考えて周囲のゾンビは殲滅しないといけな……
『キシャァァァァァッ!』
とか考えてたら壁を突き破りながらグロい猫みたいなゾンビが現れましたね。グロ猫ゾンビは俺たちを7つの目で視認すると、すぐさまそれらを光らせて特殊能力を使おうとしてきた。
「アルカ、下がっていてくれ。これくらいの雑魚は俺一人で片付ける」
とりあえずいつでも銃を撃てるようにしながら下がるけど、明らかにこのグロ猫さん以前葵くんが重傷を負わされたナナフシゾンビより強いんだよなぁ……。
葵くんは片手に銃を持ちながらナイフを抜き、一切怯むことなく距離を詰め、それを見たグロ猫ゾンビが前足を振り上げると同時に、
あれ、概念攻撃だね。物体の強度や性質を関係なく『裂ける』という概念を与えて攻撃するやつ。なんでそんなもんゾンビが持ってんだよゲームバランス考えろよクソが。概念攻撃持ってる時点で上位精霊に含まれんだぞ?
……まぁ、今更驚きはしないが葵くんはそんな一切事前に何かがなく空間そのものが裂ける攻撃を当たり前のようにジャンプして躱し、グロ猫の頭上へと飛び上がる。
グロ猫は空中で身動き出来ない葵くんに対し、コンクリートを簡単に砕く前足を振るうがこれは身を捻って避けられる。さらに腕からなんの前触れもなく生えた鉤爪がうねりながら葵くんに迫るがこれも身を捻って避ける。
「────見つけた」
一言、それだけ呟いて葵くんは銃の引き金を引いた。
恐らく銃弾よりも早く動くことも出来るであろうグロ猫ゾンビはその意識の隙間から放たれた銃弾に反応することすら出来ず、頭を吹き飛ばされても復活する再生力も関係なく、核を貫かれて絶命した。
はい。
ここまでだいたい10秒。葵くん、完全に人間やめてるね。まず3mくらいある巨躯のゾンビの真上に飛び上がったりもだけど、なんで攻撃避けられるんだろう? 人間って不思議だなぁ。凄いなぁ。
「あ、葵さん、本当にちょっと見ない間に強くなったよね……」
「まぁな。鍛えたから」
鍛えて種族としての限界を超えないでください。
進化の歴史が泣いていますよ。
俗かもしれないが、きっかけで言えば彼女はただ綺麗だった。それだけだ。
別に人を好きになる理由なんてそんなものでいいだろう。初めて見た時、驚きに目を剥くその姿があまりにも美しかったり、何となく話してみたら好きなマンガや映画が一致したり、そんなもの。
ただ、本気でこの人の為なら命だって懸けられると思ったのは、俺が無茶をして犬を助けようとした時だろう。
明日の自分の命もしれないこんな環境でなんて馬鹿なことをしているんだ、と剛さんに後でめちゃくちゃ怒られたし、後になって考えたら自分でもなんであんなことしたのか分からないほど馬鹿な行為だ。でも、あの時は確かにそれが正しい行為だって思ってしまったのだ。
「ごめんなアルカさん……俺のせいで大変な目に遭わせてしまって」
そんな俺の無茶な行為を手伝ってくれたのはアルカさんだった。
奇跡的に怪我はなかったが、本当にあと少しで殺されていたかもしれない状況に巻き込んでしまったから、そのことを謝りに行ったら彼女はなんのことか分からないとばかりにキョトンとした顔を浮かべ、やがてようやく理解したかのように口を開いた。
「謝ることじゃありません。というか、君がアレを正しい行為だと思ってやった事なら、それを君が否定しちゃいけませんよ」
今までこの馬鹿みたいな正義感で何度も人に迷惑をかけてきた。
できる限り、他人に迷惑をかけないように、俺自身も少なくとも
ただ、彼女だけはそれを
「確かに、あんなことするのは馬鹿か根っからのお人好しだけです。けれど、葵くんは馬鹿じゃありません。あの状況で、最低でも自分さえ犠牲になれば犬は救えると判断して飛び出しましたよね? 救える可能性を考えて飛び出したならそれは蛮勇ではなく勇気です。むしろ賞賛されるべき行いでしょう。ならば私も手伝おうと思っただけです」
「アルカさ……」
「ただし、自分のことをもっと大切にしてください。それさえ守ってくれるなら私はいつでも葵さんを手伝います。貴方はいつでも人の為に動ける。私、それってすごく素敵な事だと思いますから、自分も救える人にもなってください。そうじゃないとサポートする私が大変ですからね。貴方が死んだら悲しむ人だっているんです」
きっと、彼女はそんな言葉を何人もの人に言ってきただろう。ただその一言に俺はとても救われた気がしたんだ。
俺の心を認めてくれて。
それでいて間違いを否定してくれて。
俺を心から心配してくれて。
別に恋をするのに特別な理由なんていらないだろう。
そんな綺麗な彼女だからこそ、俺は──────。
「そういえば葵さん、ゾンビ達の急所がわかるみたいですけど、どうやって判断してるんですか?」
「ん、何となく目で見て庇うようにしてる所あるからそこを突けばだいたい急所だよ」
わかんねー。
俺が知らない間に人間ってそんな細かなものがわかるほど進化してたのかな? 怖いわー。人間わからなすぎて怖いわー。
まぁ、そんなこんなで周囲のゾンビは殲滅した。
俺が本気で探知かけて探してもゼロだからゼロだろう。
「あ、アルカ! 良かった無事だった!」
「そっちも何とか無事か……全員揃ってあの数のゾンビを潜り抜けられるったァ、俺達は運がいいな」
剛と照香の方も無事だったようで、全員揃ってスーパーの前までたどり着くことが出来た。
改めて確認したがやはり電源が生きている。この分なら久しぶりに豪勢な食事が出来そうだ。今まで俺は食わなくても生きていけるからできる限り食料は遠慮しておいたが、なんだかんだ食べるのは好きだし今回の作戦の成功祝いにパーッと肉とか食いたいな。俺、鶏肉好きなんだよね。あとビール飲みたい。ストロン〇ゼロ飲みたい。あの、カシュッという冒涜的な音を聞いてキメたい。
「…………ん、ありゃなんだ?」
剛の声でストロ〇グゼロに持っていかれていた俺の意識が、急速に現実に引き戻される。
彼の視線の先には、なにか人間のようなモノが立っていた。視力を上げて確認するが、人間のような肉塊。つまりゾンビだ。俺の本気の探知や照香の(何故か当たり前のように使っている)エコーに引っかかってないのは少し妙であるが、人型のゾンビは身体能力がアホみたいに高い人間と大して変わりがない。
油断しなければ怪我せず倒せるのが当たり前の敵。俺とて一応構えてはいたが、まぁ油断はしていただろう。葵くんと照香は人外じみた動きが既にできて単騎で特殊能力があるゾンビも倒せるし、剛も人型ゾンビなんて100体にでも囲まれない限り大丈夫なくらいに強いのだから。
「ギッ──────」
最初、その悲鳴はゾンビが上げたものかと思った。
でも違った。俺の少し後ろに立っていたはずの照香の姿が消えて、俺の真上を何かが回転しながら宙を舞い、地面に落ちた。
頭から血を流し、手がピクピクと痙攣を起こしているソレは、間違いなく──────
「照香ッ!?」
いつの間にか人型ゾンビは俺達のすぐ側に近づいていて、照香は多分蹴りあげられたのだろう。とりあえず致命傷は避けているがすぐに処置しなければ危ない。
というかこのゾンビなんだ? 人型のゾンビが俺の動体視力より速く動くなんて何かがおかしい。すぐに透視し魂視を使ってその存在を確認する。
…………いや、なんだこれ。
いやいやいやいやいやいや。おかしいだろ!?
なんでコイツが
それをなんで、所詮ウィルスで人間が変質しただけの知性も理性もない肉塊が────。
「葵、アルカッ! なんか分からねぇがやべぇ! 逃げろッ!」
焦りと疑問から生まれた一瞬の隙。
琥珀色の瞳で俺と葵くんのみを見つめるゾンビはそれを見逃さなかった。
「ぎ、……あ、が──『異界、領域』」
ゾンビがそう口にすると同時に、俺と葵くんは『世界革命』に成すすべもなく飲み込まれた。
684:NN.オーカミ
結局まともにやり合ったらケツァルコアトルが圧勝じゃん?
685:NN.ヴォドゥン
だからアイツ抜きだって言ってんじゃん
お前は鬼〇の強さランキングに〇壱入れたり、呪〇廻戦の強さランキングに五〇悟入れんのか?
686:NN.ハッピージョー
すいません、最近の作品?で例えられてもよくわかんないです……
687:NN.風呂メテウス
>>686
ギリシャ神話最強ランキングにゼウスとかヘラクレスとか混ぜる感じ
688:NN.万死
>>687
くっそ分かりやすくて草
689:NN.侵略タコ娘
でも酒カスの次に誰が強いかってなるとそれはそれで決まってるよね
690:NN.マリン
もりもり……凛花だろうな
691:NN.雪ん子
そういえばあの二人今居ないんだっけ?
692:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
じゃあ私は3位でいいよ
693:NN.最新の魔女
>>691
クククルンさんは他の人間の生き残りを見つけたのでアンナさんとそこを訪れていて、もりもりさんは日本にアルカさんの様子を見に行きました
694:NN.ブラド
>>693
そういえばそちらの赤子は元気か?
695:NN.侵略タコ娘
なにかわかったことかあるのかな?
696:NN.オーカミ
>>692
クソザコ1000歳ガキ陰陽師が調子乗んな
697:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
>>696
ハァー!?陰陽師なんて知らないんですけどー?私は狐巫女の春ノアキラなんですけどぉー?
698:NN.最新の魔女
>>693
お陰様でドリスは元気です。色々調べてはみましたが、DNAに多少の変化が見られ人種情報などが解析できませんでしたが、あくまで人間の範疇ではあります。
699:NN.ハッピージョー
やはりゾンビ達だけではなく人間側にも変化が……?
700:NN.万死
クククルンのとこの子も含めてバラして調べたいけど……ダメ?
701:NN.風呂メテウス
ダメです
702:NN.ブラド
殺すぞ
703:NN.ガイアッ
ブラドキレた!
704:NN.妖精武器庫
>>703
あれ、ガイアいつの間に
705:NN.ガイアッ
久々に起きたら人類滅んでて笑うしかないんだが
それ以外になんか変わったことあった?
706:NN.ヴォドゥン
>>705
ハン〇ーハンター完結してないぞ
707:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
>>705
こ〇亀は完結したぞ
708:NN.オーカミ
>>705
ドラ〇エは11までしか出てないぞ
709:NN.ガイアッ
ドラ〇エとハン〇ーハンター何があったんだよ……
710:NN.妖精武器庫
1位:ケツァルコアトル
2位:凛花
3位:私
4位:大神
5位:プロメテウス
〜
最下位:徐福
異論ある?
711:NN.ヴォドゥン
>>710
3位お前じゃなくてマリン……オケアノスだろ
712:NN.侵略タコ娘
ランキングは本名で書く感じ?
713:NN.ハッピージョー
真実ですけどもうちょっとオブラートに包んでくださいよ……
714:NN.雪ん子
>>7103位は私でしょ
715:NN.万死
虚空に語りかけてる
716:NN.ブラド
真面目に考えたら実際どんなものなのだろうな
717:NN.ヴォドゥン
俺はあんま上じゃないじしんあるけどね
718:NN.最新の魔女
私は少なくともアルカさんとはタイマンで負けますし、徐福さんの上くらいでお願いします
719:NN.狐巫女VTuber春ノアキラ
徐福最下位が共通認識なの草
720:NN.ハッピージョー
真面目に考えたら1位2位最下位は考える必要なく決まっていてそこからの勝負で、多分その下争いはプロメテウス、オケアノス、大神、雪女、バンシー、パンゲアさんになって、相性的に雪女さんはプロメテウスに勝てず、バンシーさんは大神、雪女さんに勝てない前提があり、多分
3位:オケアノス
4位:パンゲア
5位:大神
6位:プロメテウス
7位:雪女
8位:バンシー
になりますかね?アルカさんとヴォドゥンさんはジャイアントキリングが得意なので場合によってはこの方達も倒しますが。
721:NN.ヴォドゥン
お、おう……
722:NN.マリン
徐福は元から研究者気質故な……
723:NN.ガイアッ
めっちゃ早口そう。てか俺結構上なのな。
724:NN.雪ん子
納得はあるけどなんかキモいね
725:NN.オーカミ
とてもわかるけどそれはそれとしてキモイな
726:NN.侵略タコ娘
徐福くんキモイね!
727:NN.ハッピージョー
もう心がボロボロなので5年くらいネット断ちしてます……
728:NN.ブラド
徐福いじめはやめてやれ。アイツメンタル弱いんだから
729:NN.最新の魔女
皆様、とてもランキングやら仮想戦闘の順位の話が好きですよね
730:NN.オーカミ
強さランキングは浪漫だから……
731:NN.ヴォドゥン
最強キャラ議論掲示板で死ぬほどレスバしてたわ
732:NN.狐巫女VTuber春ノアキラ
まぁロマンだよねー。強さって生命の根源的なモノに関わってくるし
733:NN.雪ん子
私も正直プロメテウス以上になると相性云々以前に領域強度で押し負けるし妥当かな……
734:NN.妖精武器庫
雪ん子が珍しく素直。
私としてはアルカはジャイアントキリングも得意だけど素で強いし雪ん子より上で良いと思うけどなー
735:NN.オーカミ
バンシーの分解も雪女とは相性悪いからな
736:NN.ヴォドゥン
異界領域の性能だけなら晴明の『天羅無量伏魔殿』も中々だけどなー
737:NN.風呂メテウス
ぶっ壊れ領域と言ったらオーカミの『須弥山境獄門狼』も中々
738:NN.万死
異界領域で思い出したけど、あのゾンビ達の中に何匹か特殊個体見つけたわ。なんか喋るやつ
739:NN.ハッピージョー
>>738
喋る?何の言語でですか?
740:NN.狐巫女VTuber春ノアキラ
5年経つの早いなおい
741:NN.ガイアッ
5年ってなんか微妙な長さだよな
742:NN.ヴォドゥン
え、10年の半分もう経ったの?みたいな感じの長さ
743:NN.万死
>>739
地球中枢言語
744:NN.ブラド
どういうことだ。説明しろバンシー。
745:NN.狐巫女VTuber春ノアキラ
チキューチュースー言語ってなんだっけ?
746:NN.オーカミ
まじかー……ちょっとめんどくさい事になるかもな
747:NN.マリン
つまり我やパンゲアと同種の可能性が?
748:NN.ヴォドゥン
まじかよ。アイツらにゲーム作る文明とか生まれるかな?
749:NN.風呂メテウス
>>748
人類が滅ぶ前提で話すなや
750:NN.最新の魔女
地球中枢言語。惑星意思から生まれたモノのみが操る特殊言語ですね。私達の間だと素で使えるのはバンシーさん、湖の乙女さん、凛花さん、オケアノスさん、パンゲアさん、アルカさんで解読は徐福さんのみが出来たはずです。
751:NN.侵略タコ娘
ん、地球中枢言語使えるってことはあのゾンビ達もしかして人間じゃないの?
752:NN.ヴォドゥン
いや、人間を変質させるウィルスが流れてたのは確かだ。だがいくら惑星意思でもさすがに……
753:NN.ハッピージョー
人間を変質させ、魂を改造するウィルス……
754:NN.万死
こりゃ、めんどくさい事になったなぁ……
755:NN.狐巫女VTuber春ノアキラ
最悪またリアルでみんな集合かな?
756:NN.ガイアッ
いや、今回は大元が地球の可能性あるから集まっても意味は無いだろう
757:NN.妖精武器庫
最近聞こえた幻聴って地球の声だったかもしれないのか……完全に体にガタが来たと思ってたわ
758:NN.ブラド
とにかく、この事は情報収集を進めよう。アルカにも色々聞きたいのだが……とりあえず最新の魔女はその幼児の容態に注意してくれ。惑星意思が関わってる以上、既に人類は加護が途切れている可能性が高い。
759:NN.最新の魔女
了解しました。並行して私の全機能の20%を用いてウィルスの解析を行います。モード:ラプラスの使用をしたいのでブラドさんは回路の補助をお願いします。
760:NN.狐巫女VTuber春ノアキラ
なんか大事になっちゃったにゃー
761:NN.ガイアッ
俺たちはできることないしス〇ブラでもやるか
762:NN.ヴォドゥン
俺サ〇ス使うわ
763:NN.万死
>>762
お前は私と一緒に解析だよ。クソシャーマン
764:NN.ヴォドゥン
嫌じゃ☆働きトゥナイト
765:NN.風呂メテウス
惑星意思関わってるとなるとなぁ……アルカがやらかさなきゃいいけど
766:NN.雪ん子
お姉様が何か?
767:NN.マリン
そういえば……奴は惑星意思が関わると人が変わるタチだったな。
768:NN.最新の魔女
大変です皆様。緊急事態です!ドリスがあh#j:jbytc
769:NN.ブラド
なんだ!何があった!
770:NN.ハッピージョー
まさか惑星から直接干渉が?
771:NN.万死
データ欲しい!誰か瞬間移動系の権能持ちいなかった?
772:NN.オーカミ
一応地球の半分なら覆ってるぞ俺
773:NN.マリン
しかし我らの方にはなんともない故に惑星意思ではないのでは?
774:NN.侵略タコ娘
それ以前に赤ちゃんはデリケートなの!人の心がないのアンタ達!?
775:NN.狐巫女VTuber春ノアキラ
あるわけねぇだろそんなもん
776:NN.最新の魔女
ドリスが……私のことを「ママ」と呼びました……
777:NN.ブラド
…………
778:NN.万死
は?
779:NN.最新の魔女
今私の胸中には理解できない不規則な衝撃が巻き起こっています。これは惑星意思からの攻撃の可能性があります。そもそも私は母親では無いので訂正させた方が良いのでしょうか?
780:NN.風呂メテウス
なんというか……その……
781:NN.妖精武器庫
こーいうのなんて言うんだっけ?
782:NN.ヴォドゥン
ちょっと前に人類滅ぼすとか言ってた子がねぇ……
783:NN.ガイアッ
>>781
多分『親バカ』ってやつだろうな
「なんだここ……剛さんは、照香はどこに行ったんだ?」
俺達は引きずり込まれた。
認めたくないというか、そんなことありえないと思っていたが実際にこうなっては信じるしかない。
そこは上手く形を保つことが出来ず、空間自身が内側からボロボロと崩壊する世界の終わりかのような世界。でも確かに、その世界は本来の現実を上書きして存在している。
────異界領域。それも、『世界革命』までもこの人型ゾンビは使ってみせたのだ。
俺から見れば子供の遊び程度の領域。
それでも世界革命は正しく世界を己が手中に収める絶技。この空間における主はあの人型ゾンビであり、ヤツがその気になれば葵くんはまず間違いなく死ぬ。
対処法は1つ。
俺が世界革命を使い、領域を塗りつぶすことだ。
しかしそれを使えばまず間違いなく俺が人間ではないことが葵くんにバレてしまう。
もう、彼らと一緒にいることが出来なくなる。
その思考が俺の動きを鈍らせた。
「────アルカァァァ!!!」
「え、うわっ、あ──────」
体が勢いよく押され、思わずその場に尻もちを着いてしまった。
視界の先では俺の目の前に飛び出した葵くんが立って、いや倒れた。右半身が吹き飛んで、そこから大量の血を流して倒れた。
そりゃそうだ。異界領域内での攻撃は人間の体なんて簡単に吹き飛ばす。むしろよく俺を庇ってまともに受けたのに体が原型を保っていたものだ。俺の不死友の領域なら入った時点で葵くんは死んでたからな。
葵くんの顔を見る。
目の内に光はなく、唇は微かに動くのみ。傷口から流れ出る血液の量から見ても間違いなく致命傷。
最後までとんだお人好しだったな、とどこか冷たい自分が冷静に分析をしたりしていた。人の死ぬところなんて、この4000年で何度も見てきたし、大して驚くことでも無ければ、ビッグイベントでもない。
こんな風に、ふと気が付けば人間なんて死んでしまうのだ。
俺が変なこと考えず、とにかくさっさと世界革命をしておけばこんなことにはならなかったんだけどなぁ。
色々反省しなきゃいけないこともあるし、考えなきゃいけないこともある。
でもまぁ、とりあえずまずはアイツ殺すか。
俺の前でこんな拙い世界革命やるとかめちゃくちゃ生意気だし。
この世界に発生してしまったことを後悔する程度に、永劫と須臾の狭間に熔け落ちる程度に。
「
質問へのあれそれ
・なんでアルカが鼻に割り箸詰めて半裸で踊り狂ってたの?
色々あって祭りに参加した時のアレです。ちなみに時代はだいぶ昔で、画像はブラドの記憶回路から直接抽出したものです。アルカは寂しがりなので祭りとかのイベントは大はしゃぎします。
・照香について
照香は間違いなく人間です。少なくともアルカの節穴アイズで見た限りは。
・この作品の設定
感の良い皆様のお察しの通り、この作品は『呪術廻戦』から多大な影響を受けているので多分そこら辺を読めばめちゃくちゃわかりにくい単語がすっと分かります。アニメも始まるので見ましょう。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
うぇるかむとぅーでぃすくれいじーたいむ
総合評価が10000を超えるという異常事態に続きがもりもり生えてしまいました。
あと、そのうち設定を纏めた話を適当に置いておくつもりです。
今回は不死友ネットがありません。
「ふむふむ。相変わらず
人型ゾンビは違和感を覚えた。
この世界は既に自分達の物。故に残った劣等種は排除し、真に霊長となるべく攻撃した迄だ。
『旧種の精霊ごときが、何故この空間で平然としていられる……?』
「そんなもの貴様の領域が未熟も甚だしいモノだからに決まっておるだろう」
今、自らが使った言語は地球中枢言語。
それが理解出来ているということは、やはり目の前の白髪と
『我らの目的は旧い知性体の掃討。しかし、起源を同じにする誼みだ。惑星からの信号は受けているはずだ』
「ふむ、さっきからなーんか頭がガンガンすると思ったらこれ地球からの信号か。……ふむふむ。まぁ人間滅ぼせばいいのかのう?」
『そうだ。これからは我らの時代が来ただけの事。貴様が惑星意志の遣いなら我らに協力を……』
「ゴミと協力とか嫌に決まっておるだろう。お主あれか? 馬鹿?」
人型ゾンビはまだ産まれてからそれほどの時が経っていない。
だが、既に彼らには自ら達がこの星の新たなる長であることがわかっていた。それに対する誇りも存在していたし、何より自ら達が今のこの星の最強の生命であることもわかっていた。
最強であるが故に、知性も優れている。
旧生命の言葉で『馬鹿』という単語が相手への侮蔑の意味が込められていることもすぐに理解出来た。
『……そうか。我らの繁栄の邪魔であるなら殺すのみだ。さらばだ、同胞よ』
異界領域の世界革命を完全に展開され、自らの命が完全に相手の掌の上にあるということ。
そも、そんなことも理解できない同胞なぞ初めから必要ない。所詮は精霊としても旧式の存在なのだ。特に感慨もなく、その命を摘み取ろうと────
「触れるな腐肉。腐臭が移るであろう」
何を言っているかは理解出来た。しかしそれは所詮最後の呻きに過ぎないと思った。
だから人型ゾンビは何が起きたか理解できなかった。何故自らの世界であるはずの領域の中で、
『な、何をした……』
「貴様は小蠅が周囲を飛び回っていたら叩き落とすだろう? それともなんだ、畜生の糞としての自覚があるが故にそのままにしておくか?」
罵倒。嘲り。
目の前の精霊は間違いなく自分を格下に見て嘲笑している。新たなる霊長としてプライドがそれを許せるはずがなかったが、肉体が全く言うことを聞かない。
「お主お主。名前はなんと言う」
『な、まえ……?』
「地球から生まれたのなら星から授けられた名があろう。それともなんだ? 妾に対して名乗る名も持ち合わせてないと?」
本音を言えば名乗りたくなんてなかった。
だが、名乗らなければ殺されると本能が警鐘を鳴らしている。
『……ムトゥス』
「は? 覚えにくいわ。そんな阿呆面晒した名前で霊長を名乗るなぞ……まぁ名は体を表すとも言うし、貴様にはぴったりか」
『ッ、いい加減にし────』
「妾が話しているだろう。口を閉じろ」
今自分は確かに声を出そうとした。
なのに実際に起きた結果は
「お主には感謝しておるのだ。忌々しくもこの体の主導権は翡翠めにあるせいで妾は滅多に出てこられなかったからな。奴の心を揺さぶってくれたおかげで妾が出てこれた。まぁ、奴と妾はある程度同期している故に
どうすればこの状況から逃げられる?
領域を解除して押し出せば、上手く行けば目の前の赤眼の精霊を大洋辺りまで弾き飛ばすことは出来るかもしれない。
だが、自らの異界領域内で勝てない相手をその程度の距離弾き飛ばしたことで何になる?
考えろ考えろ考えろ。自らは新たなるこの星の霊長なのだ。旧式共に負ける理由なぞ、どこにも存在していないのだから。
「という訳で、殺しはするが久々にこの
────ムトゥスは領域を閉じ、赤眼の精霊を弾き出す決意をした。
コイツに領域を開かせてはならない。そうすれば自分は間違いなくこの世に発生したことを後悔するような凄惨な最後を迎えることになる。事実その判断は正しかった。
ただ、唯一間違いがあったとすればそれは────。
「あ、言っておくが領域は閉じられんぞ? もうお前の意思はお前のものでは無いのだから」
この世に産まれてきてしまったことだろう。
「異界領域────『星羅転埋伏暦』」
ムトゥスは自らの意思に反し、全力で領域の維持に意識を傾けていた。
だが、そんな行為には最初から意味がなかったかのように赤眼の精霊の一言で世界は容易く塗り替えられた。
そこは言うなれば旧文明の大都市の様な外観だった。
建ち並ぶ高層ビル、辺りを行き来する旧式の生命。赤い空の下で
グロテスクで禍々しく、なのにそれが当たり前のように世界は廻り続けている。人間の手で編まれた高層ビル達がまるで魔眼のようにこちらを眺め、嘲笑うかのような幻覚幻聴が脳を茨で締め付けるかのように襲い来る。
一体どんな領域なのか。
とにかく情報を集めようとしたムトゥスが最初に見たのは、自らが殺したはずの旧式の生命──人間の男の姿。
傷が治っている。それどころかまるで
「あ、コイツな。コイツだいぶ翡翠の奴が気に入ってる様子だったのでな、生かしといた方が面白いかのうと」
何を言っている。ソイツは確かに殺したはずだ。
死んだ生命を生き返らせることなぞ、どんな手段を使っても不可能なはずだ。
ムトゥスの心の中の声は、実際には音にならない。
声を出そうとした瞬間に喉が弾け飛び、ムトゥスは
「ふむふむ。お主は幸運だな。尊大な口振りなだけあって中々強靭な魂だ。あと1000回くらいは死ぬ事が出来るぞ。久しぶりの顕現でこんなに楽しめる玩具に出会えるとは、そこの人間と翡翠に感謝せねばな」
自分は死んだ、死んだはずなのだ!
確かに脳が焼ききれるほどの苦痛により生命が終わった。この世界において絶対不可逆の終わりが訪れた! 目の前の怪物から逃げ切れる安堵が確かにあったはずなのだ!
なのに、なのに自分は生きている!
死ぬ事が許されない。生死すら自らの手中には存在しない。
「さて、試したい術がいくつもあるのだ。しっかりと噛み締め、悲鳴で全てを語るがいい」
ムトゥスは最期に、この世界に発生したことを後悔した。
「おい! おい起きろアルカ! アルカ!」
「んにゅ? んー……あれ、剛。何かあったの?」
「何かあったの、じゃねぇよ! 何が起きたか説明してくれ!」
寝ぼけた目を擦りながら周囲を見渡すと、気持ち良さそうに寝ている葵くんと全身包帯でぐるぐる巻きにされている照香……
「…………ムトゥスッ!」
辺りを改めて見渡すが、スーパーの倉庫の中のようであの人型ゾンビのムトゥス……ん、どこでアイツの名前なんか聞いたんだっけ?
とにかくあのムトゥスとか言う奴の姿はどこにもなかった。
「落ち着けよ。アイツなら死んだよなんか知らんけど」
「へー、死んだのかそれは良かった……死んだァッ!?」
「落ち着けアルカ! なんかお前、普段とキャラ違くないか?」
あまりにも衝撃の事態が巻き起こりすぎてキャラを維持できず素で話しまくってしまっていた。
死んだ?
少なくとも世界革命を使え、油断していたとはいえ俺が目で追えない速さで動いたあのバケモノが?
「あぁ。突然一瞬お前と葵とあのゾンビが消えたと思ったら、気がつけばお前と葵は寝ていてあのゾンビは干からびて死んでたよ。外傷は何も無かったけど全身の水分を雑巾絞りされたみたいになってな」
えぇ……何それ怖っ。あのゾンビ何がしたかったんだよ……。出てきて勝手に雑巾絞りになるとか意味がわからなすぎて怖い。自分の能力でも自分に使ったのか?
まぁそんなことはどうでも良いだろう。
確認してみると、あのゾンビは死んだので剛がすぐに手当できて照香は容態が安定したし、葵くんに至ってはちょっと負っていたかすり傷すら治って完全な健康体でぐっすり眠っている。
本当に良かった。
なんだかよくわかんないが、葵くんが死んでしまう夢を見た気がしたからな。せっかく久しぶりに楽しめる人間との関わりなのだから、こんな所で終わらせてしまってはもったいない。照香も、何考えてるのかよくわからなくて面白かったから死んでしまわなくて良かった。
マジで人類が滅んだとなると、しばらく漫画やゲームの供給はないだろうし、こんな面白そうな人間達に死なれちゃってたら俺ってば暇すぎて死んじゃうところだったもんね! 死ねないけど!
「結局あのゾンビがなんなのかよくわかんなかったが、とにかくこのスーパーは制圧できたな。倉庫を確かめてみたが……冷蔵庫が生きてたおかげで久しぶりに美味いものが食えるぞ!」
「やりましたね。じゃあ、照香さんがものを食べられるくらいに回復したら、お祝いでもしましょう!」
「そうだな。こんな状況でも、たまには豪勢に祝いくらいやらねぇと体より先に心が死んじまう!」
「そうですね。まぁ私は3000年以上前に多分心なんて死んでますけ……あ」
「…………何言ってんだアルカ。お前、頭でも打ったのか?」
危ねぇ……。
テンションが上がって、不死友と語る時の鉄板ジョークを言いかけてた……。
『……ムトゥスが殺されたか。人間如きに殺されるとはな』
ムトゥスとは別の個体の人型ゾンビ──ベルカは遠方からアルカ達が新たな拠点としたスーパーを眺めていた。
人間に殺されるとは同族の恥さらし……しかし彼らは新たな霊長の仲間であった。どのような理由はあれ、仇を討つのが彼らの誇りを守ることとムトゥスへの手向けとなると判断し、ベルカは自らの腕を弓に変形させ、矢を引いた。
「矢の内に簡易的な領域を詰め込み、あらゆる物質を押しのける虚無の爆弾として使うのですか。確かに防御不能の広域破壊兵器としては非常に効率が良いですね」
『!?』
背後から何者かの声が聞こえ、思わずベルカは弓を引くのをやめて振り向いた。視界のどこにも声の主は居なかったが、あの声は地球中枢言語でこちらへと語り掛けてきた。この惑星の最上位の言語である以上聞き間違いはありえない。確かに何者かがいたはずなのだが
「こんばんは。初めましてゾンビさん。この言葉が通じているということは、ブラドさんやバンシーさんの言う通り貴方達は私と同じく地球を起源とする存在ということですか」
また背後から声が聞こえた。
しかし振り向いても声の主は居らず、そして相変わらず気配も存在しない。地球からの信号かとも思ったが、確かにこの声は空気を震わせて聴覚が捉えている。
「聞きたいことは色々とありますが、それは後で聞けば良いことです。まず聞きたいのは、貴方は今何をしようとしていましたか?」
声の主の目的は分からない。
だが、もしかするとムトゥスが人間ごときに殺されたのと何か関係あるのかもしれない。そう考えてベルカは一度この場から離れようとしたが……。
『ッ、なんだこれは……植物か?』
足を掴むようにして、いつの間にか植物が伸びていた。
この地球に現在存在する植物では、自らの脚力の前に簡単に引きちぎられるはずなのに、まるで地球そのものに縫い付けられたかのような感覚はこの場から逃げられないことを暗に告げていた。
「話さえしてくれれば解放します。なので、どうか真実を答えてください」
気配のない背後からの声から、少なくとも敵意のようなものは感じられない。
とりあえず今は話してさっさと解放してもらうのが良いと判断し、ベルカは口を開いた。
『向こうの建物には我らの同胞を屠った者がいる。我はソイツを殺ずぶがァぶッ!?』
何の前触れもなかった。
足に巻きついていた植物が皮膚を貫き、全身を串刺しにしてきたのだ。ベルカは突然の事態に棒立ちで串刺しにされ、奇妙なオブジェのようにその場に磔にされてしまった。
「……あそこに居るのが誰なのか知っていますか?」
背後からの声は先程までとは一転、敵意と害意と殺意のみを込めた狂気のような意思で言葉を口にする。
言霊だけで全身が引き裂かれそうな激痛に、ベルカは発生して初めて悲鳴というものを上げてしまう。
「あそこには私の友達がいます。私の、大切な大切な、
声の主がようやくベルカの視界に入る。
声の主は、人間の姿をしていた。明らかに存在は自ら達と同じ存在であったが、少なくとも見た目は黒い髪と旧文明で言うところの『和服』と呼ばれていた物に近い形状をした衣服を纏った女だった。
煌びやかさこそないものの、見るもの全てを魅了する静謐の美を備えた女は、そんな見た目とは正反対のどす黒さの籠った言葉をベルカへと投げかける。
「理由は問いません。貴方の意思も知りません。ただ、貴方は私の友達に害を加えようとしました。たとえ貴方の攻撃がアルカに傷一つ付けられなかったとしても、彼女に対して害意を向けることそれそのものがこの世界で最大の罪なのです。理解出来ますか?」
全身を貫く植物が蠢き、ベルカに地獄の苦痛を与える。
理解出来るも何も、アルカとは誰だ? 友達とはなんだ? この女は何を言っているんだ!?
「私はですね、元々空っぽなんです。陸に栄え、海に茂り、空を渡り繁栄した『植物』という概念故に、私の内には全てがあり、故に私は空でした。単一で完結した概念故に、何も持っていなかったんです。でも、アルカはそんな私の空を埋めてくれた。精霊とは思えないくらい馬鹿で間抜けで変な子だけれど、あの子は私の手を取って友達だって言ってくれたんです。……これって運命でしょう? 私にとってアルカこそが全てでありこの世とはアルカでありアルカこそが全にして一、一にして全。翡翠、紅葉、蒼海、琥珀、どんなアルカであれ彼女は……」
『何言ってんだ貴様……頭がおかしいのか?』
素だった。
発生して初めてベルカは頭のおかしい存在に出会ったため、思わず素でそんな言葉が漏れてしまった。
「…………は? アルカの素晴らしさを語っているのに、まさか口を挟んだのですか?」
それが間違いだと気がついてももう遅い。
弁明も謝罪も許されず、全身を植物が締め付けて圧迫される。魂そのものを押さえ込まれているが故に世界革命を使うことすら許されない。
悲鳴をあげることも出来ずただ必死に目で女の姿を追うことが、ベルカに出来る唯一の抵抗──いや、命乞いだった。
「いいですか? アルカの素晴らしさを理解できないモノは蛆にも劣る無にも至れぬ畜生以下の塵にも足りぬ否アルカなんです。貴方はもちろん否アルカですね。ならば私は貴方を攻撃しなければなりません。全力で、全身全霊で、一切の手加減なく」
何を言っているのか本当に分からない。
否アルカとはどんな概念なんだ? 地球に存在する概念ならば全て理解出来るはずの自分が理解できないとなれば、それはこの女の中でのみ存在する概念ということ。
つまり、この女は頭がおかしい!
「安心してください。貴方は死にません。否アルカには死すら許されないのですから、私と一つになり永劫の時でゆっくりアルカを理解すれば良いのです。誰にでも間違いはありますものね。アルカは全てを許し、迎え入れてくれます。では、花と散りましょう」
最後まで訳の分からないことを呟きながら、女はベルカを優しく撫でた。
「異界領域────『沙羅結界涅槃園』」
そして、全てが終わった時にベルカの姿はなく、ただ全く同じ形と質量を持つ
「アルカったら、また人間を玩具にして遊んでいるのですね……」
ベルカ、という存在だった植物の上に腰掛けながら、凛花は遠くのスーパーへと視線を向ける。
呆れたような言葉とは裏腹に、彼女はあらゆる感覚を使いそこに滞在するアルカを認識し、法悦の表情を浮かべていた。
「しかし……人間ですか。100年も生きられぬ不完全な生き物のくせにまたアルカを誑かして……なんて愚かで傲慢で救いようのない……やはり滅ぼして……」
一瞬、手を掲げこの星を抉るほどのエネルギーを溜めた凛花であったが、ギリギリのところで冷静さを取り戻して手を引っ込めた。
不死友内でのルールとして、惑星の環境を激変させるような行為は禁止であり、もしもそれを破ったらアルカが悲しむ。ならば凛花はそんな事しないしできない。
しかしそれはそれとしてアルカと喋ってるのが妬ましいのでアルカの近くにいる3体の人間は消し飛ばしてやりたい。
「むぅ…………まぁ良いです。どうせ彼らは100年もせずに死んでしまいます。アルカと共に悠久の時を生き、同じ感覚の中で互いのあらゆるものを観測し続ける至福は彼らには許されていないのですから。それに、アルカの玩具遊びを邪魔してはいけませんものね。ふふ……」
植物の精霊とは思えぬ程の獰猛な笑みを浮かべながら、凛花はその場を後にした。
・最新の魔女について
彼女はネット情報が生み出した電子生命体です。なんやかんやで有機体ボディを作って人間の再学習をしていたらなんか人間が滅びてました。
・パンゲアって誰やねん
NN.ガイアッの本名です。
・この作品……
安心してね。コメディだよ。次回から普通に馬鹿やるよ。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
五等分くらいのクソ姫
ぼちぼち物語として進んでくると思います。
「はい。じゃあこれから第114514回くらいのアルカ会議を始めまーす。議長は前回優勝者の朕こと琥珀です」
…………なにこれ?
なんか目を覚ましたら知らない真っ暗な空間にいるし、急に4つ椅子と机が現れたと思ったらそこに俺とほとんど同じ姿をした存在が座っているんだが?
「御託は良いからさっさと始めろ。妾は遅いのは嫌いだ」
苛立ちを隠さず呟くのは赤い瞳をした俺。
「朕もこう言う非効率的な儀礼は嫌いだけどなー。最初にこれやろうとか言い出したのどっかのクソ赤目こと紅葉なんだよなー。そいつってほんとバカだと朕思うわー」
その赤い瞳の俺を煽る黄色い瞳の俺。
「や、やめてよ2人とも……喧嘩なんてしても2人が死ぬだけで意味ないよ……どうせ私に殺されるのに……」
そして弱気なのかよく分かんないことを呟くのは青い布で目を隠した俺。
……なにこれ?
夢、夢かなぁ? 俺の脳って無駄に高スペックだから記憶の整理とか必要ないし、夢なんて見たこと無かったんだけどなぁ。まぁ夢なら寝るか。寝れば覚めるでしょ。
「おい。何寝ておるのだクソザコ翡翠。クソザコの分際で一丁前に妾の前で寝ようなぞ4000年早いわ」
「確かにクソザコ翡翠のくせにこの態度はちょっと朕も引くわー。常識無いにしても引くわー。まぁクソザコで記憶持ち込めないから仕方ないかもだけど引くわー」
「2人ともやめなよ……確かに翡翠はクソザコで、肉体との相性が良いだけのゴミクズだけど本当のことを言ったら傷つくクソザコだっているんだから……」
………………
「はー!!!??? なんなん? なんなん俺の偽者達!? なんでそんな俺の事煽ってくんの偽物の分際で!?」
さすがに温厚な俺でもこの謂れのない罵詈雑言にはキレる。
なんで自分の顔と声をした知らない奴らからこんなに罵倒されなくちゃいけないんだ。一体俺が何をしたというのだ。
「ご、ごめんね……私があまりにもかわいくて自分の恵まれなさから嫉妬しちゃう気持ちはわかるけど、一旦落ち着いて……」
「五月蝿い。いいから黙って話を聞いてろ翡翠」
「朕がさっき言ったけどこれ会議なんだよ。重要なことは
なんだかよく分からないが、コイツらが嘘やら何やらで俺を騙すつもりがないということは何となくわかってしまう。
結局、訳分からないままであるが大人しく席に座り会議とやらに参加することにした。
「はい。じゃー議題だけどアレね。紅葉が倒したアイツ……ムトゥスとかいう新種の精霊の話ね」
「え、ちょ、紅葉が倒したってどう言う……てか紅葉ってこの赤目?」
「軽く1000回くらいぶっ殺して試したが
「は? いやなんのことやら……というか俺の事ハブってる?」
「確かにあの強さで惑星意志を名乗るのはおかしいもんね……逆に可哀想。やっぱりあれかな、地球の根元が喰われてるのかな? 特定指定外来呪星核か、惑星疾病か、あるいはもうこの星も限界という可能性も……なんにせよ、正統な惑星意志の可能性は低いかも」
知ってる顔のヤツらが全く知らん単語の飛び交う会話をしているんだが。
これ俺必要ないよね? 必要ないね。というか最初からハブる気だったんならわざわざ起こさなくてもいーじゃんよ。コイツら性格悪いな。特に青い目隠ししてる奴がナチュラルにこっち煽ってきてめちゃくちゃムカつく。
とりあえずコイツらの話は俺を完全にハブってるから置いておき、現状について色々考える。
まずこの空間は間違いなく現実の空間ではない。
多分、時間という概念も存在しない異空間だ。紅葉、琥珀、蒼海。そう呼ばれていた俺のそっくりさんの内の誰かの異界領域の中の可能性もある。
コイツらについては情報が少なすぎるが、ムトゥスの話が出てくるなら別だ。紅葉が倒した、と言っているということは俺の意識が飛んでいる最中、何かしらの干渉をしてきたということだろう。
つまり……そこから導き出される結論は……ッ!
「お前達、俺の別人格だな!?」
「は? 違うが? やっぱお主馬鹿だろ」
「この理解力の低さはさすがの朕でもどうしようもないわー。人格だなんて、そんな程度の低い
「可哀想……馬鹿だと辛いこと多いのに肉体の主導権があるの本当に可哀想……」
「ははっ、よーしお前ら全員一旦ぶちのめすわ。全員纏めてかかってこいやァァァ!!!」
いくら温厚な俺でもさすがにもう限界だ。
机を蹴り飛ばして堂々と宣戦布告をする。俺、正直言うと自分の異界領域エグいから嫌いなんだけどもうコイツらは一回分からせてやらないと気が済まないわ。
「お? クソザコ翡翠の分際でよく言った! 妾もこんな退屈な会議に意味なんて感じられなかったからなァ!」
「一応説明しておくと、本来あらゆる肉体に魂は1つ。たとえそれが
「でも安心してね翡翠。あくまでこれは今回の会議の記憶保有権の奪い合いであって、肉体の制御権の奪い合いじゃないから。そうじゃなきゃ、クソザコナメクジのミドリムシのヘタレ野郎の翡翠は永遠にベンチだから……」
なんか難しいこと言ってるけど、ムカつくしとりあえず全員ぶっ飛ばせば良いからヨシッ!
全員が椅子から立ち上がり、意識を集中させて各々の魂の内側の世界を現世へと顕現させる。
────その最中、俺は琥珀を名乗る俺の言葉を思い出した。
この戦いに勝たないとこのアルカ会議とか言う謎会議の記憶は持ち越せない。そして最初の言葉を真に受けるなら、この会議は114514回目らしい。
…………1回でも勝ってれば知ってるはずのこの会議のことを知らないということは、俺はこの紅葉、琥珀、蒼海を名乗る俺に114513回戦いを挑んで、1度として勝ててないのでは?
「異界領域────『星羅転埋伏暦』」
「異界領域────『転輪廻聖王言』」
「異界領域────『成劫魔始源炎』」
「え、あ、異界領域────『万魔屍山無み──」
そんな事考えてたら世界革命を使う前に胴体が爆散し内側から大量の蛇が生えてきてそいつらに脳をほじくられて、そこで俺の意識は途切れた。
◆
「アルカ、アルカッ! 大丈夫か?」
「うーん……あれ、葵く、さん。どうしたんですかぁ?」
「いや、飯が出来たから起こしに来たんだけど全然起きないから何かあったのかと」
「そうか……じゃなくて、そうでしたか。すいません、なんだか良くない夢を見ていた気がして」
俺ってば睡眠が必要ない体なのに、寝ていたのか?
……なんか重要なことを忘れている気がするが、思い出せないということはまぁ重要なことじゃないだろう。重要なことを忘れる奴は馬鹿だが、俺は馬鹿じゃないし。
「照香もようやく食べれるくらいに回復したからな。アルカが言ってたように、今日はお祝いだ」
「そう、だったね。うん。じゃあ行こうか」
葵くんが差し伸べてくれた手を掴んで、ゆっくりと立ち上がる。
改めて見ると葵くんって背が伸びたし、体もがっしりしたし顔は元から整ってるからすごい男前だな……。なんだからよく覚えてないが、以前には助けて貰った気がするし。
不老不死である俺が助けられることなんてないに決まってるのに、そんな不思議な感覚がどうしても気の所為だと思えない。そしてそれを意識すると、なんだか葵くんの手を握ってる右手が溶岩に浸かっているかのような熱を感じてしまった。
「? どうしたんだアルカ。俺の顔をじっと見つめて。もしかして俺の顔が気に入らないのか? もしもアルカが不快に感じるようだったら耳でも目でも鼻でもなんでも削ぎ落とすからいつでも言ってくれ」
……気の所為だね!
この子頭おかしいもん!
◆
【緊急事態】助けて【マジで】
1:NN.クククルン
助けて
2:NN.ブラド
なんだ、釣りスレか
3:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
はい閉廷はい終わりはい解散
4:NN.オーカミ
遂に酔って人間を犯したか……
5:NN.ガイアッ
さすが南米ッパリは違うな
6:NN.万死
マジで気持ち悪いよ酒カス……
7:NN.ハッピージョー
アル中は病気なんです。本人の意志とは無関係に他人を傷つけてしまうこともありますから、皆さんどうかケツァルコアトルさんを責めないであげてください。
8:NN.クククルン
まだ何も話してないよ俺?
9:NN.マリン
用件はさっさと話せ。管理のブラドが困るだろ
10:NN.侵略タコ娘
娘同然に育ててた人間を酔った勢いでレ〇プした話とか聞きたくないんだけどー
11:NN.クククルン
してないよ?俺そんなことしてないよ?確かに実妹には酔った勢いでしたけどね?いい加減時効にして……
12:NN.ヴォドゥン
でもコイツ前に酔った勢いでケツに〇〇〇ぶっ刺して出力最大にしてたぞ
13:NN.風呂メテウス
早く事情話さないと黒歴史が大変な量掘り起こされるぞケツァルコアトル
14:NN.クククルン
実は俺、監禁された
15:NN.妖精武器庫
は?
16:NN.ハッピージョー
え?
17:NN.万死
人類滅亡確定か……
18:NN.ぐやぐや姫
なんだかしばらくぶり来たらケツァルコアトルが捕まるなんて言う異常事態が起きてるなぁ……
19:NN.雪ん子
>>18
あ、ぐやぐやちゃん久しぶり
20:NN.ブラド
とにかくどういう状況なんだ?
お前を監禁するほどの強さのゾンビが現れたとしたら、我々じゃどうしようもないぞ?
21:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
ガセじゃないならかなりまずいけどなぁ……
22:NN.クククルン
はい……実は俺を監禁したのアンナなんだよ……
23:NN.ヴォドゥン
幼女にハードなプレイ強要してんじゃねぇぞ酒カス
24:NN.オーカミ
酒カスコアトルはさぁ……倫理観無いの?
25:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
アンナって誰だっけ?怨霊かなんかの名前?
26:NN.ハッピージョー
>>25
ケツァルコアトルさんが保護した女の子ですよ。
世界革命が使えるとかなんとか。
27:NN.ブラド
なんだかわからんがアレか? お前の変態趣味に付き合わせてるだけなら最低だぞ?
28:NN.オーカミ
ケツァルコアトルが最低なのは今に始まったことではない
29:NN.クククルン
ちょっと前に人間の生き残り見つけたって言ったじゃん……そこが数体の人型ゾンビに襲われて守る為にちょっと力使ったら人じゃないのがバレちゃってさ……石投げられて追い出されてアンナとも引き離されちゃったんだよ
30:NN.ヴォドゥン
やはり人間は愚か……
31:NN.マリン
気持ちはわからなくもないが、やはり愚かではあるな
32:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
どうする?人類滅ぼしちゃう?
33:NN.ハッピージョー
まぁ人の愚かさは後で説くとして、何故そこからクククルンさんが監禁されたんですか? 人相手ならその気になれば簡単に抜けられますよね?
34:NN.クククルン
そしたらね……アンナが追っかけてきてその集落が襲撃されて滅んだって言ってきたんだよ。
すぐに駆けつけたけど集落は全滅してて……
35:NN.ガイアッ
まさか、その集落を滅ぼしたゾンビに……
36:NN.万死
ケツァルコアトルを捕らえるほどのゾンビ……データ取りたいけど真っ向からだと絶対勝てないなぁ
37:NN.クククルン
いや、その後生き残り探してたらアンナに背後から両足ぶっ潰されてその後両手も潰されて監禁された
38:NN.ヴォドゥン
ん?
39:NN.ブラド
へ?
40:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
急展開すぎんだろ
41:NN.ぐやぐや姫
ww
42:NN.妖精武器庫
なんか読み飛ばしたかなぁ?
43:NN.クククルン
本当に訳わかんないんですよォ!
アンナってば良い子だったのにいきなり俺の足潰して手も切り落として部屋に監禁して「お姉様は私が守る……もう誰にも傷つけさせないから……」とか言い出して……誰かなんでなのかわかんない?
44:NN.妖精武器庫
怖ー。人間ってそんな訳わかんないことするんだー
45:NN.オーカミ
全くわからん……どうしてそうなった?
46:NN.ハッピージョー
あの……今までどんな風に接してきたか教えて貰えませんか?
47:NN.ブラド
もしかして突然の精神狂化……ウィルスによるものなのでは?
48:NN.万死
>>47
確かに……魔女ちゃんが今オフだけどオンになったら解析結果聞いてみるか
49:NN.クククルン
>>46
別に普通に殺されそうになってたところを助けてあげて、これから生き残る術を教えてあげたりこんな小さい子が1人だと寂しいだろうから親代わりにずっとそばに居てあげたりしただけだよ。
集落追い出されたのも別にアンナのせいじゃなくて俺がアンナを庇って異界領域使ったからだし
50:NN.雪ん子
ふーむ、別にアンナちゃんがおかしくなる要素さっぱりだね
51:NN.マリン
人間の精神に干渉する能力持ちのゾンビが発生した可能性は?
52:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
能力ならケツァルコアトルが気づかないわけないでしょ。私と同じで先天的に狂ってたんじゃないの?
53:NN.ハッピージョー
えぇ……
54:NN.クククルン
まぁ腕も足もすぐに治って今は権能使って回線繋げてんだけど本当にショック……
最近夜になると服を脱いで抱きついてきたり好きとか愛してるとか言ってくれたからようやく打ち解けてきたと思ったのに……こんなに嫌われてたなんて……
55:NN.ハッピージョー
????
56:NN.妖精武器庫
酒クズの方から脱がしたならまだしも、向こうから脱いだなら服従、或いは友愛の行為のはずだもんね。わからんなー
57:NN.風呂メテウス
やっぱケツァルコアトルが酔ってなんかやったんじゃないのか?
58:NN.クククルン
こんな状況でさすがに飲まないよ……
59:NN.ブラド
やはりその子、人間じゃないのではないか?異界領域を持っている時点でその可能性が高いと思うが
60:NN.マリン
だがケツァルコアトルが見て人間だと判断したなら他の誰が見ても人間としか判断できないだろう
61:NN.ぐやぐや姫
うーん、やっぱ人間ってわからん
62:NN.クククルン
わかんないよー!!!人間わかんないよー!!!
63:NN.オーカミ
人間についてはそれなりに研究したから結構わかってるつもりなんだがなぁ……
64:NN.ハッピージョー
皆さんアルカさんのこととやかく言えませんよ……?
65:NN.雪ん子
>>64
さすがにお姉様よりは人間の心わかってるよ
66:NN.ブラド
アイツは誰彼構わず狂わせるからな……
67:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
少しは私達を見習って人間について学習してもらいたいよね
68:NN.クククルン
アイツみたいにならないように万が一に備えて人間については学んでたよ俺?
69:NN.ガイアッ
そもそも人間の発生より前から居る俺からしたら人間なんてわかんないことがないレベルだと思うんだがな
70:NN.ハッピージョー
皆さん鏡って知ってます?
71:NN.クククルン
俺、鏡嫌い
72:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
急に徐福が変なこと言い出した
73:NN.ブラド
鏡を知らない者はここにはいないと思うが……急にどうしたんだ?
74:NN.万死
徐福ってたまにおかしくなるよね
75:NN.ぐやぐや姫
まぁ若いし晴明とかと違って普通の人間だったからじゃない?
76:NN.ハッピージョー
なんか頭痛いのでしばらくオフになりますね……
77:NN.雪ん子
どうせ研究し過ぎでしょ。不死者でも疲れが溜まるんだから養生しなさい
78:NN.侵略タコ娘
雪ん子ちゃんってたまに徐福に優しくなるよね
79:NN.オーカミ
もしかしてアレか? ラブか?
80:NN.雪ん子
>>79
ぶっ殺すよ? 確かに徐福にはお姉様と一緒に私を助けてくれたって言う恩があるけどなんであんな研究バカのメンタルクソザコだけど優しくてイケメ
81:NN.ブラド
雪ん子が機械ぶっ壊してオフになったな
82:NN.ヴォドゥン
雪女も徐福も訳分からんな
83:NN.クククルン
とりあえず俺はどうすれば良いかな? 手足とかもう一回切り落としといた方が良いかな?
84:NN.マリン
とりあえずはアンナとやらを刺激しないようにそうした方が良いのでは?
しばらく監禁されたふりをして様子を窺うべきだ。
85:NN.ブラド
そうだな。とにかく今は情報が欲しい。不便だろうが頼むぞケツァルコアトル。
86:NN.もりもり
なんか久しぶりに帰ってきたら変なスレ立ってる今北産業
87:NN.ガイアッ
>>86
そのネタ懐いな
88:NN.万死
>>86
監禁
調教
酒クズ
89:NN.ヴォドゥン
アルカどーだった?
90:NN.もりもり
相変わらず元気そうだったし問題ないかなー。人間と一緒に居たけど多分大丈夫
あと地球中枢言語で喋るゾンビと戦ったけど、ぶっちゃけ異界領域使うまでもなく勝てる程度の強さだよ
91:NN.妖精武器庫
そんなもんなのかー
92:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
ナンバー2のもりもりの言う話じゃあてにならないけど、まぁそこまで強くはないんでしょう
93:NN.侵略タコ娘
そう言えば徐福と雪女って仲良いけどなんの繋がりなの?
94:NN.オーカミ
>>93
雪女の内包概念が暴走しかけた時、偶然その場にいたアルカと徐福が助けてやったんだよ。
95:NN.ブラド
そう言えばあの時だな。観測値不明の異界領域と魂の位相がズレたの
96:NN.妖精武器庫
アルカの異界領域について変なこと言ってたのもあの2人だよねー。もりもりなんかアルカ変なことになってなかった?
97:NN.もりもり
>>96
別にー。アルカはいつも通り普通にアルカだったわ。良い感じに侍らせてる人間拗らせてた
98:NN.風呂メテウス
まぁアイツ人の心分からないからな……
99:NN.クククルン
アンナは拗らせないように注意しないとな
100:NN.万死
まずはなんで監禁されたのか原因究明だけどね。
101:NN.最新の魔女
皆様、緊急事態です
102:NN.ブラド
今度はどーしたの
103:NN.オーカミ
またうちの子が可愛いとか?
104:NN.最新の魔女
察しが良くて助かります。
皆様に教えて頂いた『カワイイ』という概念をドリスが詰め込みすぎていて、私の情報回路が限界を迎えようとしています。これはもしや新手の異界領域なのではないでしょうか?
【画像】
105:NN.ぐやぐや姫
わー何この子可愛いねー
106:NN.侵略タコ娘
魔女ちゃん最近大丈夫?なんかキャラ変わってない?
107:NN.ヴォドゥン
前は感情が分かりませんとか言ってたけどまぁこんなもんだろ(適当)
108:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
はいはいかわいいかわいい
109:NN.最新の魔女
まだ発達していない発声機能を駆使して私のことをママと呼ぶのです……これは、不死殺しの概念を内包してると考えても間違いないのではないでしょうか?
110:NN.万死
ちょっとこれぶっ壊れてるかもしれないね
111:NN.ブラド
今度メンテに行ってやるか……
112:NN.オーカミ
……ちょっと考えたけど、あのゾンビ達が弱いっておかしくないか?
113:NN.ガイアッ
ん、どういうことだオーカミ
114:NN.マリン
確かに、少し違和感はあるな
115:NN.オーカミ
地球中枢言語を使う惑星意志の精霊なら、もりもりに一方的に負けるわけがないんだよ。
116:NN.もりもり
まー確かに
117:NN.ぐやぐや姫
じゃぁ私が調査しとくよ。
118:NN.ブラド
頼んだ、かぐや姫。
119:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
どうでもいいけどこの前なんかアルカが居るって言われてた辺りで位相が揺れたんだよね。不死者の魂に異常でもない限りあんな揺れ方しない気がするんだけど、もりもりなんか知らなーい?
120:NN.もりもり
全然わからんわ
全然知らんわ
それよりスマブラやろうぜ
121:NN.ぐやぐや姫
私カービィ使うわ
122:NN.ブラド
調査行けや
◆
「話ってなんですか照香さん」
「あぁ、こんな夜遅くに呼び出して悪かったな」
人口の光のほとんどが潰え、月の光が明るく感じる夜。
夜風を浴びながら照香は口を開いたり閉じたりしながら、何かを言い出す機会を探しているようだった。
「薄々気がついてると思うが……私はアルカが大切だ。こ、仲間としてな!かけがえのない、何があっても守りたいものだ」
面と向かって言われるとやはり少し恥ずかしいものがあるな。
しかしなんだ。こんな夜にわざわざ2人だけで話がしたいってなんだろう?アレかな、恥ずかしいホクロの位置とか教えてくれんのかな?
「面倒くさいかもしれないが、私は好きな人の全てを知りたいんだ。────だから、率直に聞くぞ。アルカは、人間か?」
「……はい、人間ですよ」
ここではいと答えてもろくなことにならないの知ってるからね俺。
はい、って答えたら最悪つるし上げられてファイアーだよ。魔女狩りの時に嫌という程教わったもん。だいたい俺はめちゃくちゃ賢いから、ボロを出したりしないもん。きっと、照香は今怪我をしていてナイーブになって疑い深くなってしまっているんだろう。
「…………そうか。なら、良いんだ。これは、私の努力不足だな」
うーん……?
その割には反応が芳しくないような。この俺がまさか選択肢を間違えたというのだろうか?
・翡翠と紅葉について
基本的にはみんな翡翠の方の異界領域しか見た事ありませんが、徐福と雪ん子だけは紅葉の方の異界領域しか見た事がありません。
2人はネットでのキャラの違いはもりもり的な演じ分けだと思ってます。翡翠、紅葉、琥珀、蒼海の全部を知っているのは凛花くらいです。
・『魂』について
どんな高次の肉体にも絶対に1つです。異界領域の理でも考えられないようなエラーでも起きない限り、それが覆ることはありません。そして起こったとしても現実に存在できる魂は1つの肉体につき1つです。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
番外編:不死者達の非日常
感想と高評価と水を沢山貰ってたけど日光が足りなくて遅れました。日光さんにはもっと頑張ってもらわないと困りますね。
今回は主人公が全く出てきません。
不死友ネットは運営(私)が疲れたのでちょっとの間メンテナンス時間に入ります。
この間、私の影響で繋がっていたネット環境は全て途切れるので注意してください。
【追記:全員の位置把握の為になるべくスマートフォン等の持ち運びのできる電子機器を電源をオンにしてお持ちください】
「──────ッ、ふぁぁ……」
「お疲れブラド。やっぱ運営って疲れるの?」
「ん、別にそこまで疲れはしない。あくまで人間の使ってたネット内の余剰スペースを使ってた以前と違い、一からこちらで構築しなければならない点が多くて面倒なだけだ。……それに加えて、お前がこっちにちょっかいかけてくるのが強いていえば疲れるなヴィヴィアン」
「ヤダー! その名前で呼ばれるの久しぶり! でも妖精なんてイタズラしてなんぼだから許してブラドちゃん♡同じ妖精の誼でね? ほら、お骨あげる。ブラック『ドッグ』を名乗ってお墓の番人なんてやってんだから好きでしょ?」
今すぐこのクソみてぇな妖精の首根っこ引っ掴んで電気檻に顔面擦り合わせて紅葉おろしにしてやりたいという感情をブラドはぐっと抑え込む。
余波で漏れた電気が空間を焼き切り、目の前でゲラゲラ笑っている妖精の左半身を炭化させたがまぁこれは事故だから仕方ない。事故と言ったら事故なのだ。別にこの程度の怪我、不死者なら1秒とかからず治せるのだし。
「しっかしブラドちゃんってばこんな人類が滅ぶ瀬戸際でネット弄るような子だと思わなかったなー。もっとこう、ゾンビ共を雷でズバババーって」
「環境を激変させる干渉の禁止を提案したのは私である手前、そんなことはできん。そして私だって何も遊びたいからネットを使っているのではない。むしろ人類が滅びそうな時こそ、他の不死者の
ブラドの脳裏に浮かんだのは何人かの不死者の顔──特にパンゲアやかぐや姫、バンシー等の厄介なタイプの奴ら。
アイツらはちょっと退屈だからだなんて理由で人間を殺したり狂わせたりすることもあるし、なんなら最悪普通に人類を滅ぼしに動く可能性もある。だからこそ、ネットを使う事で退屈を感じさせなかったり、最低限の行動の監視をしたりしている。他のメンバーでも不死者との会話等で精神が安定しているならまだしも、娯楽文化に浸かりきった彼らが現在の人類が滅びかけの娯楽の供給がない状態が続き、ちょっと気が変わった程度で人類へダメ押しの攻撃をされては非常に困る。
ブラドにとって、ネットの管理は現在最も人類の保護へと直結する行為なのだ。
「ふーん、本当にブラドは真面目だね。私は別にイケメンとイケショタが生き残ればそれで良いし。この程度の災害で死ぬようなイケメンは守備範囲外だしー。せめてランスロットくらい強くなれっての」
「あの人外じみた強さの騎士レベルを普通の人間に求めるな。それに、パンゲアとかが暴れたらどの道その騎士レベルでも死ぬだろ。アトランティスの時を思い出せ。アイツレベルがその気になれば、現実を空想の存在に変えてしまうような大災害になる」
「ハイハイっと……んで、そんな荷物纏めて何処に行くつもり? と言うか何その荷物? 墓石?」
「色々調べたいことがあるし、最新の魔女の奴の様子を見にアメリカまでな。来るか?」
「結界解いちゃうんでしょ? ならついて行くしかないじゃん」
ブラドは墓の周囲に張っていた結界を解く。
案の定、結界の周りには大量のゾンビが蠢いており、中には人型にまで変化している個体もいた。
『¥々♪ =(……:☆の☆3……4○・(°2。♪ 9「61^7#……2(%……・(も9☆7°』
「おい、アレ地球中枢語だろ。私にはさっぱりだから解説しろ」
「猿の言葉に耳を貸す意味は無いよ。話を聞くなら爪を全部剥ぎ取ってからが本番ね」
人型ゾンビの咆哮と共に、2人は異界領域の中へと引き摺りこまれる。
その瞬間、2人の左半身が消滅したが、特に気にすることなく会話は続く。
「世界革命を使うという話は本当だったか。とりあえず領域対策は頼む。あと、武器を貸してくれ。できるなら日本刀。お前がやると加減が効かないだろ」
「まぁね。話を聞きたいなら消し飛ばしちゃう私よりはアンタの方が適任だわ。……んで、なんで日本刀? いやあるけどね? ブラドって日本刀使ったことあるの?」
「…………居合切り、やってみたかったの。かっこいいじゃん」
「…………あーっ! つまんないつまんない! やっばネットがなきゃつまんない!」
不死友ネットがメンテに入ってからたった5分。
バンシーの退屈は既に限界に達し、彼女は薄暗い部屋の中で藁人形を抱いて転がっていた。
現代の引きこもりの部屋のように改造されている異空間は、本当に一見すれば狭くて薄暗い一室程度の印象であるが、強いてそこが『異空』である点を挙げるとすれば、それは部屋の床や天井、至る所に貼り付けられた写真だろう。
その写真に写っているモノを端的に言えば、裸の女だった。
そしてもう1つ、その女は全てが死体だった。状態の差異こそあれど同じ顔の女が様々な死因で絶命している写真がざっと数えただけでも数百枚はくだらない数、
「久しぶりに会いたいなぁアルカ……体の相性はもちろん、アルカの死に方ってすっごく綺麗なんだもんなぁ……。本当に、アルカを作ってくれた地球には感謝してもしきれないよ。無限プチプチみたいに、何度殺してもアルカを殺せるんだから最高だよぉ……」
恍惚としながら写真を見るバンシーの瞳は、何の比喩もなしに無限に続く暗黒への入口になっている。それでも、写真が瞳の中に映り込んでいるように見えるほど彼女は写真を凝視し、舐り、あろうことか自分の腹へと差し込み、それを前後して内臓を傷つけることによって快感を得ようとしていた。
「やっぱ足りないなぁ……。人間も殆ど滅んじゃって『実験』できないし……ブラドとの約束があるけど……まぁいいか。別にルールを守ってやるような義理はないし」
異空間を圧縮し眼窩の暗黒に収容し、彼女の視線は遥か遠くの海を越えた島国へと向けられる。
かつて日本と呼ばれていた場所。より正確に言えば、そこに居る1人の不死者へと向けて。
「人間見つけたらリハビリ代わりにとりあえず殺してー。ゾンビに会ったらとりあえずバラそ。んー! 楽しみだなー! アルカに会ったらとりあえずまずはレズセして、それからぶっ刺して脳みそ開かせてもらお!」
無邪気に、そして淫蕩に。
形を持った死が笑いながら歩み始めた。
研究というものに自分が向いているということに気がついたのは、不死の薬を作ったあたりの時だった。
あの時は本当に追い詰められていて、めちゃくちゃ頑張って作ったらなんかできたし、作ってる間の時間経過なんて完全に忘れていた。そして寝ぼけたまま薬を飲んでしまった時は冗談抜きに1回自分を呪い殺した。
とにかく、自分が1度集中するとそれ以外のことが頭に入らなくなるタチであることを徐福はこの2000年で嫌というほど理解していた。
だから今回も万が一に備えて今まで守っていた人間達の集落を離れて思考に耽っていた。一応、結界は張ったので大丈夫だろう。
気になっていたことと言えば、アルカの異界領域についてだった。
自分と雪女だけが皆と違う領域の名前を出していて、自分と雪女とアルカのみで会っていることが1度だけある。
そう言えば、アルカはあの時のことを『よく覚えていない』と口にしていた。そしてそのことを口にするアルカの雰囲気は明らかに過去に会った時の雰囲気とは違っていた。
ネット上で何度か話した時も、もりもりと凛花の様なキャラ変えではなく、根本的な思考回路から違うような違和感があったし、何よりも前にアルカに言われた言葉。
『お主、次会ったら絶対ぶち殺すからな? 妾にここまで屈辱を味わわせたのは有史以来貴様だけだぞ? 顔覚えたかんな?』
『えー……俺そんなこと言った? 全然覚えてないわ。気の所為じゃない?』
本当はもっとやるべき事が沢山あるのはわかっている。
今先決すべきはこの星に起きている異常事態の原因の究明だ。
…………でも、1度気になることができるとそれ以外に手をつけられなくなる自分の悪い癖は、徐福自身が1番理解していた。
「オーストラリアから日本まで……まぁ、行けなくはない距離ですね」
そして、徐福は意外と行動派であった。
『ちょっとアルカさん! 何やってんですか! そこに流し込んだらヤバいってさっき言いましたよね!?』
『何ィ!? お主さっきから言っとることがよく分からん! 妾にわかるように説明しろ! そうしないとこの童、本当に暴走するぞ! 妾はこやつを助けると決めたのだ! しっかり手伝え!』
『だからそちらの魔力連携炉心にβ状態の魔力を地霊脈の鼓動に合わせて流し込むんですよ! タイミングと位置はこちらが指示するので言われた通りにやってくださいよ!』
『何故妾が貴様のようなクソザコの命令を聞かねばならん』
『だからこの子を助けるためでしょう! アルカさんも了承しましたよね!?』
『は? 言っとらんが? 殺すぞクソザコ』
『なんなんですかこの人! なんなんですかこの人!?』
その2人は本当に何の前触れもなく現れて、私の話も何も聞かずに助けてくれた。
『なぁ……やっぱコイツ放っておいても……』
『何言ってんですかここまできて!? このまま暴走してこの子が星害指定になったら、もう永久封印するしかなくなるんですよ!? ずーっと意識のある状態で暗闇に封じ込められるんですよ!? 同じ不死者ならその恐ろしさが分かりますよね!?』
『ぐぅ……妾にクソザコ如きがこんな偉そうに命令なぞ本来なら万死に値するが……自由に動けない辛さを引き合いに出されては何も言えん。だが、お主絶対に事が済んだら殺すからな? 絶殺ぞ?』
『ええどうぞ殺してくださいよ! だから今は手を動かす! 僕は頭フル稼働させて解決策見つけますので! 絶対に指示に従ってくださいよ!』
そう、アルカお姉様のおかげで今も私は自由にこの世界に存在することを許されている。
……あと、ついでに徐福。あくまで徐福はオマケ。オマケのはずなのだ。
「…………あー!!! もう! あのバカ! アホ! クソザコ! 意気地無し! ビビり! ヘタレ! バカ!」
徐福の顔を思い浮かべながら、雪女は貧相としか言いようがない語彙力を駆使して可能な限りの罵倒の言葉を吐き出す。彼女が現在いる場所は南極。もちろんその声を聴く者はどこにも存在しない、一面の銀世界。
「別にアイツのことなんか考えてないし? 考えてませんけどー!?」
にも関わらず、彼女は誰かに言い訳するような言葉を叫びながら、何度も何度も雪に頭を埋める行為を繰り返す。
確かに徐福は自分にとって恩人である。そしてそれなりに整った顔立ちをしていて他の不死者と違って気配りもできるし、何より優しい。冷静に考えたら自分のタイプど真ん中であることは雪女とて理解している。
……だが、だが!
自分よりも弱い上にメンタルもクソザコの徐福にそんな気持ちを持つようなこと、何となくあってはならないような気がするのだ!
「……確かアイツ今オーストラリアにいるって言ってたわね」
これは決して徐福に会いにいくとか、そういう訳では無い。
オーストラリアは一度も行ったことがなかったし、コアラとかカンガルーとかパンダとか珍しい動物を一度生で見てみたかったし、エアーズロックとかグレートバリアリーフとかイエローストーンとか、人間が居なくても見所のある場所がいくつもある。
「別に徐福に会いにいく訳じゃないし? べっっっっっっつにアイツの事なんか全く考えてないし???」
誰に届く訳でもないその言葉と彼女の足取りはとても軽やかなものだった。
行先に目的の人が既に居ないとも知らずに。
太平洋のど真ん中。
本来なら見渡す限り海だけのその場所に、突如として
「ふむふむ。射角よし、風向きよし、俺の気分も良し!」
まだ固まっていない溶岩の上に立ち、天に向けて手を翳す女は嬉しそうに何かを確認すると、その手に熱を集め始めた。
火山の噴火にも匹敵するエネルギーが、一見普通の女の手に集まり凝縮され、ある方向へと向けられる。
「人間が滅びかけならこれくらいやっても多分怒られないよねー。
女────パンゲアにとってそれは遊びであり暇つぶしであった。
周りの不死者などにはやらないようにと言われてきたが、その程度で抑えが効くようなマトモな人格なぞ発生した時から持ち合わせていない。
そもそも、大地の概念である彼女にとって大地を消し飛ばすことは自傷行為にも似た行為であり、自分の体をいくら削ろうが誰かにとやかく言われる筋合いは無いし、
「準備完了。発射──────」
発射された火焔球はパンゲアの計算通りの軌道を描き、水平線の向こうにある島国を塵一つ残さず焦土に変える……はずだった。
火焔球を遮ったのは、これもまた一瞬にして現れた大樹。
ただの樹木ならばその高温の前に触れずして焼かれ容易く灰となり邪魔にすらならない。だが、その大樹は蔦を、葉を、枝を伸ばし炎を包み込み完全に鎮火してみせた。島国1つを焼き滅ぼす熱量を持った火焔をだ。
「さてと、なんで俺の邪魔をしたのかなユグドラシル。ブラド? それともプロメテウスの差し金?」
「その名は捨てました。今は凛花の名でお呼びください、パンゲア。何をしようとしているんですか?」
「質問してんのはこっちなんだけどなぁ……まぁいいや。何って暇つぶしだよ暇つぶし。ゲーム出来ないし、暇だから大地をちょっと削ろうかなって。ついでに殺戮をちょっと。でもアンタそう言うのに怒るタイプだっけ?」
「質問を変えましょう。
「はぁ? だからちょっと日本を消し飛ばそ────」
「『常世斬草』」
パンゲアは言葉を吐き終わる前にその場から全力で飛び退いた。
それでも間に合わず左腕が抉り取られ、延長線上に存在していた海が聖人の通り道がごとく裂ける。
「今、日本にアルカがいるのは知っていますよね? その上で日本を消し飛ばすと? 本気でそう言ってるんですか?」
凛花の左肩を突き破り植物が生えている。
彼女の体内という特異点の中で繁殖、進化した植物はこの世界のどんな生き物よりも獰猛で暴食。そしてどんな兵器よりも強靭である。太陽面爆発すらも耐える表面を持ち、0.0001秒未満の世界にも対応し、ミクロの世界を捉え、容易く星の表面を穿つ。最早植物と呼んで良いのかも分からないソレを、凛花は体内に無限に繁殖させている。
「別に消し飛ばせんなら日本でもチューゴクでもアメリカでもどこでもいいが……気が変わった。何がなんでも日本を消し飛ばす」
「……本当に最悪ですよ。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も貴方にはアルカの素晴らしさを伝えているのに、それを全く理解出来ず未だに否アルカでいるなんて。────草も生えぬ腐った土壌のようなその面を今すぐ消してあげましょう」
何もしないよりは破壊の方が楽しい。
破壊よりは蹂躙する方が楽しい。
蹂躙よりも血湧き肉躍る戦いの方が、何千倍も楽しい!
凛花は間違いなくバケモノだ。
不死のバケモノである自分から見ても、『否アルカ』とかいうよく分からない概念を語り、時に一方的に何かを決めつけて相手を蹂躙する姿は完全に頭がおかしいと思っている。
だが強い! とにかく凛花という存在は強い。パンゲアも一度戦い、敗れている。パンゲアは戦うのは好きだし勝つのも負けるのも好きだ。だが負けっぱなしでいるのは性に合わない。
「全力出すには
「あらあら。随分と辺鄙な所にお散歩に行く趣味をお持ちですね。お一人でどうぞ、お土産は月の石でお願いします」
西暦──年─月─日。
現地時間午前11時28分14秒。
太平洋沖にて原因不明の爆発発生。不可思議なことにこれによる津波等の現象は見られなかったが、爆発により
同15秒。
全長2万mを越す植物が発生。同じくこれによる被害は見られなかったが、
同18秒。
地表より9万8000m地点にて空間震の発生を確認。この揺れにより南アメリカ大陸のアマゾン川流域の一部が消滅。
尚、この記録を観測した人類は存在しなかった。
吾輩はケツァルコアトルである。名前もケツァルコアトルである。
なんか気が付いたら人類が滅んでたのでちょっとそこら辺を歩いていたら、ゾンビだらけの世界に何と幼女を見つけた。
昔はこれでも主神みたいなポジションをやっていたし、見捨てるに見捨てられず助け、そのまま親代わりになることとなった。
さすがにいつまでも一緒にはいれないので1人でも生きていけるように生き延びる手段を教え、親恋しい年頃だろうから寂しくないように抱いて寝てやり、常に一緒に居てやった。
さすがに世界革命を使った時は驚いたが、これだけ強ければもう自分が居なくても大丈夫だろうとも思った。なので、人間の生き残りの集落を自分だけ追い出されてしまった時も、この集団も彼女も問題ないと思いそのまま二度と関わるまいと思っていた。思っていたのだが……。
「お姉様、ただいま戻りました」
扉が開かれ、真っ暗な部屋に僅かに光が差し込むと同時に煌めく銀髪を持った少女、アンナが部屋に入ってくる。彼女の手には恐らく人型ゾンビのものであろう生首が握られていた。
「今日も異界領域でしたっけ? それを使うゾンビが現れましたが、私一人でしっかりとぶち殺すことが出来ました! 褒めてくださいお姉様!」
どうしてこんなバイオレンスな子に育っちゃったんだろう?
今までそんな様子の一切ない、すごく優しい子だったのに。まさか俺に対して石を投げただなんて理由だけで生き残りの人間全員をその場で圧殺し、俺をもう危険な目に遭わせないためだのどうだと言って手足を潰して監禁までしてくるとは。
子の成長は早いと言うが、ちょっと急すぎやしないだろうか?
子はいつか親を養うとも聞いていたけど、まさか手足を潰して無理やり養いに来るとは予想していなかった。
「お姉様は何も心配しないでください。ここには私が何も近づけません。あらゆる害をお姉様が感じ取る前に叩き潰し、磨り潰し、消してみせます。だからお姉様は私の事だけを思い、ここで待っていてくれればいいんで────」
めちゃくちゃ怖いこと呟いているアンナの体の動きが止まる。
そして目付きが変わり、虚空を睨みつけながら独り言を呟き始める。
「また貴方ですか。地球の意思だかなんだか知りませんが、私の全てはお姉様の為にあり、私はお姉様の手足です。……はぁ、五月蝿いですね」
アンナは持っていたナイフの刃先を自身の頭に向け、なんの躊躇いもなく突き刺した。
普通の人間ならこの時点で絶命しているはずだが、アンナは何事も無かったかのように平然としており、そのまま何度も何度も自分の頭へとナイフを突き刺し続ける。
「お姉様の美しい吐息が聞こえないでしょう。黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい黙りなさい」
何度も何度も自身の頭を抉り、ようやく『声』とやらが聞こえなくなったのかナイフを放り出したアンナの頭部には傷一つなく、人間ならば即死するべき傷は既に完全に治癒していた。
「見苦しいところを見せましたねお姉様。私がお姉様以外のモノになるなんて有り得ないのに、惑星意志だかなんだか知りませんが偉そうだと思いませんか? まるで自分が1番であるかのような偉そうな口ぶり……この世界にお姉様を超えるものなんて存在するわけがないのに」
…………わかんないね。人間、本当にわかんないなぁ!
アンナちゃんは異界領域も持ってるし半ば不死化してるけどちゃんと人間です。
人間ってよくわかんなくて怖いね。
・なんか○○級みたいなのって何?
成劫級、住劫級、壊劫級、空劫級の四段階で表される対象の危険度。ざっくり言うと前3つが人類で対処できる範囲で一都市範囲の被害〜国単位の被害という指標であり、空劫級は人類では対処不能、空劫級の中でも星害指定になったものは星そのものを滅ぼす可能性があり、大抵は殺すことも出来ないので永久封印される。
・翡翠弱くね?
反応が送れたのもありますが、他3人は翡翠の異界領域の効果もバッチリ知ってますし対策ができてる上に、特に紅葉の領域に対して翡翠の領域はめちゃくちゃ相性が悪いです。なのでアルカ会議の殴り合い、最初から翡翠がめちゃくちゃ不利です。
純粋な強さ的には蒼海がちょっと強くてあとはトントンです。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
キツメでヤバイ
ちょっと天気が悪かったので育ちが遅れたけど、今回もしっかり収穫出来ました。
今更ですがサブタイはだいたいパロディです
「────おい、アルカ。そっちのソレ取ってくれ。……アルカ? 聞いてんのか?」
「え、聞いてませんでした」
「ったく、最近オマエぼーっとしすぎじゃねぇか? 確かに良い感じの拠点も手に入れられて一安心だが、いつまたあのよく分からねぇ人型ゾンビに襲われるかわかんねぇんだから気をつけろよ? あとソレ取ってくれ」
「コレですか」
「そうそれ。あとアレも」
「はい、どうぞ」
スーパーを拠点にしてからは比較的穏やかな時間が流れているような気がする。
それと言うのも、最近俺はやたら過保護になった葵くんと照香のせいであまり外に出てゾンビとドンパチ出来なくなったのと、2人がめちゃくちゃ強くなったせいだろう。
照香とか両方の眼球がそれぞれ別方向に向いたり、舌先で周囲の温度を把握したり、素手で壁に張り付いたりしてなんかもう人間じゃないみたいだし、葵くんは遂に水面を右足が沈む前に左足を出して走り始めた。
そんな2人の変化に応じてゾンビ達も強くなっているし、なんというかもう完全にゾンビサバイバルというよりドラゴ○ボールの世界だよ。相変わらず相手の攻撃が全部初見殺しの即死技だから死にゲー感高いのは変わってないけど。
「アルカ、ソレとアレをアレしといてくれ」
「はーい。アレですね。あとアレやっときます?」
「あー、じゃあソレも頼むわ」
人間として紛れ込んでる手前、左腕を再生出来ないのは最初は少し不便だったが、昔全身をバラバラにされて10年くらい過ごした経験とかもあるので意外とすぐに慣れて細かい作業とかもできるようになった。
最近はだいたい剛と一緒に銃などの備品の手入れをしているので、熟年夫婦みたいな会話までするようになってしまった。
「そう言えば……最近葵くんと照香ってなんかちょっと変だと思いません?」
「そうか? 逞しくなったとは思うが……」
まぁ元からコンクリートを砕くゾンビの攻撃をまともに受けて痛いで済むような超人から見たら、水の上を走れるようになるくらいちょっと逞しくなったで、すまないよね。絶対おかしいよね。不死者から見ても水の上を走るのはおかしいもん。剛の目って絶対節穴だよ。俺の慧眼がそう告げている。
「ただいま……」
噂をすればなんとやら。
今日も今日とて周囲の探索ついでにゾンビを殲滅してきたであろう2人組が帰還してきた。
「おう、おかえり……って、その怪我どうしたんだ!?」
最近はほとんど怪我もせずにゾンビ相手に戦闘をこなしてきた葵くんと照香であったが、今日は2人とも傷だらけになって帰ってきた。
ズキッ
それを見た瞬間、よく分からない胸の痛みが迸った。
痛み、なんて感覚はもうずっと前に慣れてしまってほとんど感じなくなったはずなのに。
「2人ともどうしたんだその怪我!?」
「人型に近いゾンビに襲われた。私は無事だが葵は多分腕の骨をやってる。早めに処置してやってくれ」
「大袈裟だよ。これくらい3日もすれば治る」
葵くんの腕、明らかに複雑骨折してますよね? 骨の破片が皮膚を突破ってるよ? それ、絶対普通は3日で治らないから。
しかし、こう言ってはなんだが人外レベルに強い2人にここまでの傷を負わせるなんて、やはりゾンビ……特に以前見た人型のものやそれに近いゾンビは強さが別次元と考えた方が良いだろう。
正直言うと、異界領域が使えるような生き物が1体でも人類を滅ぼすつもりで動けば、それだけで滅亡しないにしても文明はかなりダメージを負うことになるし、この状況じゃ文明の再復興は難しいだろう。周囲を探索しても一向に生き残りは見つからず、せいぜいが最近まで生きていた死体くらいしか見つからないし。
「とりあえず照香さんも治療した方が……」
「ひっ、必要ない。私はこの程度の怪我、3分もあれば治る」
もうそこまでいったら立派な人外だよ。
と言うか、照香思いっきり手首切ってそこから血がドバドバ出てるし。以前「失血には多少耐性がある」とか言ってたけどこれはさすがに放っておいたらまずいだろう。
「ほら、大人しくしてください。どう考えても放っておいていい怪我じゃないですよ」
「いや、本当に大丈夫だから……私の血は、汚れているから、こんなものでアルカを穢す訳には……」
「何言ってるんですか。血に汚れてるも何もありませんよ」
照香は顔を真っ赤にして俯いてしまったが、とりあえず大人しくしてくれたのでさっさと全身の怪我の状況を確認して治療を始めよう。
手首以外は特に問題無し。あとはお腹をちょっとスっているくらいで……。
そんな風に照香の状況を確認していたら、突如金属同士を打ち鳴らしたかのような轟音が辺り一帯に轟いた。何事かと音の方向に向けると、葵くんが顔面蒼白で腕を抑えて震えていた。
「…………アルカ。俺もだいぶ酷い怪我をした気がするから見てもらえるか?」
見なくてもわかるわ。腕の骨がお見えになっているよ。
というか、今思いっきり自分の腕を壁に叩きつけたよね? しかも折れている方を。
「葵、今は私がアルカに治療してもらっている。お前は剛の方に頼んでいろ」
「俺の方がお前より重傷だから、アルカに治療してもらうべきだと思う」
「アルカは隻腕だぞ。両腕揃っていてきちんと処置できる剛の方に重傷のお前を任せるのが合理的だ」
「おい、俺を押し付け合うの地味に傷つくからやめろ。いいからさっさと怪我を見せやがれ」
バチバチと火花が見えそうな睨み合いを始める2人と、それをあきれながら見つめる剛。
最初の頃は葵くんと照香はあまり仲良くなかったのを考えると、こういう子供じみた喧嘩をしているのは仲が良くなった証拠として微笑ましいもの……微笑ましい、のか? 分からない……俺には微笑ましいの基準が分からない。
……それはそれとして、2人がこんなにボロボロになっているのは久しぶりに見た気がする。
葵くんも照香も結構整った顔立ちをしているだけあって、顔についた傷なんてよく目立って────
ズキッ
まただ。
また、よく分からない胸の痛みが走った。
人類の現状を軽くおさらいしておこう。
突如としてゾンビになる謎の症状により1年も経たないうちに文明は崩壊。現在葵くん達以外この近辺では恐らく生き残りはいない。
ゾンビ達は1番弱いものでも武器無しで絶対に勝てない、強いものでは異界領域とか言う精霊側の技まで使ってくる始末。加えて恐らく現在進行形で進化している。
どこまで進化するかは分からないが、いくら俺でも異界領域の世界革命を使える個体に10体以上に囲まれれば負けることは絶対にありえないにせよ、葵くん達を守りきることは絶対に不可能になる。ただでさえ俺の異界領域は殺すことに特化していて誰かを守ったりとかには向いていないのに。
……そろそろ頃合だろうか。
不死者であることをカミングアウトして、すっぱり別れてしまうのも手だ。絶対いつかはバレることなのだから、あまり感情移入しすぎるといざバレた時に余計辛くなる。
俺がいなくてもみんな
ズキッ
そんなことを考えていたら、また胸の痛み。
人間と別れることなんてこの4000年間で腐るほどあった大して珍しくも無いイベントのはずなのに、こんな痛みを伴うのは初めてだ。一体この痛みは何なのだろうか?
そんなことを考えながら夜空を見上げていると、突然意識が微睡みの中に沈んで──────
「はい……じゃあこれから114515回目くらいのアルカ会議を始めるよ……今回は私こと蒼海が司会ね」
……なんか変な空間にいるんだけど。
赤目の俺と黄色の目の俺と、青い布で目元を覆った俺。何この夢? 悪夢?
「114515回ということは、そうかー。朕前回負けたのかー。悔しいわー」
「はいはい。前置きは良いからさっさと始めろ。なんで今回はまた妾達が呼び出された」
「それはですね……クソザコ翡翠がまた変なことで精神が揺らいだからです……やっぱ戦うのが弱いと精神も頭も弱くて可哀想だね……」
なーんかめちゃくちゃ煽ってくる青い布の俺にイライラさせられつつも、賢く理性的である俺は落ち着いて状況を分析する。
完全に謎の空間、何故か増えている俺。そして勝手に進んでいく状況。
……うん!
夢だこれ!
夢なんて見た事ないけど、まぁ覚えてないだけで沢山見てるのかもしれないもんね! そうと決まればもう不貞寝してこの悪夢が終わるのを待とう。俺は知性的で理性的な不死者だから、こんなことで一々焦ったりせず落ち着いて、常に理性のある行動をすれば大抵の事はどうにかなるのだから。
「あの……そういう無駄なくだりいいんで、会議に参加してください。と言うか現状放棄してないで少しは頑張って理解しようとしてください……どうせいてもいなくても変わらないからいいけれど……」
「…………はー!? なんなんだよ! ホントなんなんだよ偽物のくせして煽りやがって! お前絶対友達いないだろ! 虐められてたタイプだろ! 野郎ぶっ殺してやる!」
「虐められてないし……私の可愛さにみんなが嫉妬して酷いことしてきただけだし……」
「やめなよー。自分同士の争いは醜いと朕思うよー?」
「ふん。性根の腐ったゲス女と頭が腐ったクソザコ野郎で気が合うのだろうさ」
「マジで口悪いなお前ら!? 喧嘩売ってんな上等だよかかってこいや! 異界りょ」
「んじゃ、とりあえず今回の議題はあのよくわかんないゾンビについてでいいんですよね……?」
「うむー。翡翠も納得してくれたところで、さっさとちゃちゃっとはじめよー」
3人がかりでボコボコにされた……。
自分にリンチされるという不可思議すぎる現象に精神がちょっとキツくなっただけで別に納得してないけど……自分と全く同じ顔に捕まえられてボコボコに殴られるのは精神的にくる。
「とりあえず話したいのはさぁ……あれよね。あのゾンビ達の進化。かるーく朕も調べたけど、もしかしなくても惑星の加護を受けてるわー」
「旧式の生態系の全てを捨てて新たな生態系を作ろうとしているのはわかるが、あまりにも急だ。妾達にも連絡は『旧種を滅ぼせ』しか来んし、応答もない」
「しかもゾンビ達に紛れて旧式の生命も無駄に現環境への適応進化が始まったし……やっぱりこれ地球の再誕なのかな……? 特に人間なんてゾンビよりも凄いことになってる個体がいるし」
サラッととんでもないことを言ってくれるなぁ。
『地球の再誕』だなんて単語を出してくれたが、これはめちゃくちゃやばいことだ。ざっくり言えば既存の生態も文明社会も全部消し飛ばすと『星』が決定したということ。
確かに人間って愚かだから星をガチギレさせる可能性がなかったかといえば嘘になるが、それでもこんな急に事前通告もなしに滅ぼすなんてことはありえない。大抵最初は星の端末である俺やパンゲアとかその辺りに概要を伝えてくるはずなのに……。
「しかもあれすごいよなー。蒼海が観測した人間。頭にナイフ刺しても死ななくなってるとかあれほぼこっち側よ?」
「あとアレも。今翡翠が遊んでる人間達の若い2人も。片方は人間の研究の結晶だが、片方は天然モノだ。近いうちに目覚めるぞ」
「私は人間なんてどうでもいいし、滅んでもいいけどね……むしろ滅べ」
もしかして、今の状況ってかなーりやばい感じなのか……?
惑星意思による旧式の生態系の一掃となると、これって不死友のみんなに持ちかけて対策考えないとやばいタイプの話の気がするんだよなぁ。
と言うか、なんでここにいる偽物の俺達はそれを知っているんだ? そもそもコイツら何? 俺の多重人格?
「あの……話の腰を折って悪いんだけど、お前達って何?」
「「「…………ッチ」」」
舌打ちされた!?
何、そんなに聞いちゃいけない事だったの!? そもそもなんで同じ俺っぽいのにコイツらの俺の扱いこんなに悪いんだよ。俺ってなんかやったの?
「めんどくせぇな……そうか、コイツ1回も記憶保持できてないから他の魂を認識できないし、共有も出来ないのか」
「朕今回は議長じゃないしー。蒼海、説明よろしくー」
「えー……馬鹿に何を教えても惨めな思いをして可哀想なだけだと思うけどなぁ……」
いいからさっさと教えろやクソ煽り青女。
マジでコイツなかなかイイ性格してんなぶん殴りたい。
「まぁ端的に言うとね、翡翠も含めて私達は
「えっと……また煽ってんの?」
「どうしてそう思っちゃうのかな……頭に大麻でも詰めてるの? まあいいけど。────私たちが生まれる時、まず初めに肉体が作られてそれから魂が用意される
んー……何言ってんのコイツ?
魂はどんな肉体にも1つだし、そんな知らない挙動を起こして増えたりしないよ?
「ごめんね……理解力がない子には辛いだろうけどね、増えたの。魂」
「いや増えねぇって! 魂増えないから! そんなワカメとか余ったネジみたいな感覚で増えないから!?」
「増えちゃったの……なんか知らないけど。元々1つの魂だったのが増えてね、翡翠、紅葉、琥珀、そして私になったの。魂は1つの法則に従って普段は最も肉体との適合性が高い翡翠が担当してるって感じ……わかる? いや、分からないよねごめんね……」
いや、何となく納得はできるし、目の前にそうして増えたであろう俺がいるから否定は出来ないんだけど、そんなことって有り得るのだろうか?
そんな突拍子もない、本来ならありえないという確率でしか起きない現象が……。
あ、
「別に翡翠の可哀想な頭に納得してもらうつもりは無いけど、とりあえずそれが事実だから……」
「あーうん。納得しましたよ……そうだよね、ありえないこと起きちゃってるもんね……」
なんなんだよ俺って。
転生だって結構ビックリしたのに、魂4つのバグった面白生物になってるとかどんなとばっちりだよ。もう完全に記憶が擦り切れて覚えてないけど、前世の俺は一体どんな悪行を犯したんだよ。
「という訳で妾達は人格などではなく魂レベルで別存在だ。当然趣味嗜好も違ければ思想も違う。本来なら相容れない存在であるが、同じ肉体を持つもの達としてこうして時たまに話し合いをしているのだ」
「まぁ肉体は同じなので魂があることさえ認識出来ればお互いのことを把握できるんだよねー。例えば、朕は翡翠が一時期首絞めを交えた行為に夢中になってたのとかも知ってるし、蒼海がパンダにのみ性的興奮を覚えることも知ってる」
コイツ!?
俺の恥ずかしい性癖まで知っているとなるとやはりもう信じるしかない。いや、違うんですよ。酸素の供給断つとなんかいい感じにトリップできるってバンシーに教わって、100年くらいガチハマリしちゃっただけなんですよ。そんなこと言い出したらパンダに興奮する蒼海の方が絶対やばいだろ。
「…………琥珀。なんでそれ言っちゃうんですか?」
そして、どうやらそのやばい性癖の話は蒼海の地雷だったのか、煽りこそあれど柔らかい雰囲気の話し方をしていた蒼海が、突如地響きのような低い声で琥珀に問いかけた。
「え? いやーだってアルカ会議でみんな知って……あ、そういえば翡翠は知らないんだっけねー」
「殺そ…………異界領域────『成劫魔始源炎』」
よっぽどブチ切れていたのか、蒼海は異界領域まで使い始めた。
まぁ俺と同じ感じの魂なら使えること自体には驚かないけど、一面青だけしか存在しない異空間とは随分と珍しいものだ。どんな効果かは知らないが、喰らわせられる琥珀にはご愁傷さまとでも言っておこう。
「絶対に許さない……殺してやる……翡翠」
………………え、俺?
「だいたい気に入らないんだよね。私の事をいつも虐めて体をばらばらにして痛い思いも苦しい思いもさせてきた人間と仲良しごっこのお遊びしてるの……。別にあんなので遊んでも何も面白くないし。あんな汚い人間、さっさと殺しちゃえばいいんだよ」
イラッ
なんだかよく分からない苛立ちが突然胸の内に生える。
自分が罵倒された時のものとは違う、妙な疼きを伴った痛み。
「いや、ちょ、待って。それ完全に逆恨みじゃない? 多分虐められてんのお前の口が悪いか────」
ただその疼きが何なのかわかる前に、説得も虚しく俺の体は青色の糸に巻き付かれてそこにあったことも気づけないほどきれいさっぱり跡形もなく消失した。
【急募】凛花の倒し方
1:NN.ガイアッ
という訳で募集
2:NN.ヴォドゥン
元も子もないけどこれもりもりも見れるよね?
3:NN.オーカミ
あいつ過去ログとか見ないから大丈夫だろ
4:NN.マリン
なぜそんなことを聞くか知らぬが、2人がかりなら我とガイアッなら勝てるだろう
5:NN.ガイアッ
そういうのじゃなくてさ……タイマンで勝ちたいんだよ
6:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
アルカならワンチャンあるんじゃないかな?
領域の相性が良い
7:NN.オーカミ
ガイアッ戦うの好きだもんなー。真面目に考えるならまずは地球から離れないと難しいんじゃない
8:NN.ヴォドゥン
『惑星闘技』があるもんねもりもり
9:NN.妖精武器庫
まともにやり合うならまずはガイアッの異界領域使って空間を区切らないと初手で戦闘意欲奪われて負けだけどね
10:NN.ガイアッ
なんだかんだこの系の話題みんな食いつきいいよな
11:NN.オーカミ
体は闘争を求める……
12:NN.マリン
言っておくが、もうアーマー〇コアの新作は出ないぞ?文明が半壊したのだからな
13:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
時間だけはあるから不可能を可能にしたいってのもあるかもねー。
私は卓上で語るだけでそんなのどうでもいいけど。メイク崩れるし
14:NN.ヴォドゥン
メイク(肉体再構築の術式)
15:NN.雪ん子
厚化粧(原型を留めない魂レベルの改造)
16:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
ぶち殺すぞ腐肉と亡霊が
17:NN.妖精武器庫
・まず地球から離す
・領域の効果を減衰させる(雪ん子かガイアッかマリンくらいしか出来ないけど)
ここまでやってようやく対等
18:NN.オーカミ
酒カスよりは勝ち目あるけどアイツも大概チートだからな
19:NN.マリン
奴がチートならアルカはバグだな。動作がこの世のものではない
20:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
多分一番現実的なのは囲んで叩くかアルカの異界領域でワンチャン狙うかだけどね。まぁ勝ったところで私達は不死だからなんの意味もないけど
21:NN.ヴォドゥン
戦いに意味なんてないさ。男はそこに壁があれば超えたくなる生き物なのさ……
22:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
私女の子だから関係ない
23:NN.雪ん子
クソネカマ野郎がよ……
24:NN.妖精武器庫
>>21
好奇心で一族を滅ぼしてまで不死になった外道は言うことが違う
25:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
雪ん子お前どこにいんだよ。絶対祓ってやるからな?もしくは永久封印するからな?
26:NN.マリン
実は我、一度色々あって凛花と殴り合いになり勝っているぞ
27:NN.ヴォドゥン
マ?
初耳だわ
28:NN.ガイアッ
詳しく
29:NN.マリン
奴の異界領域の対策は前提として、最も厄介な『植物園』の入口を封じてしまえば良い
30:NN.妖精武器庫
お金が無いので宝くじを死ぬほど買って3億円を当てましょう並の暴論
31:NN.ヴォドゥン
それが出来たら苦労しない
32:NN.ブラド
お前達……もりもりがいない間にそういう話をするのは自由だが、間違っても殴り合うなよ?あの規模の領域が展開されると余波で甚大な被害が出るからな?
33:NN.雪ん子
そう言えばマリンも凛花も温厚なイメージあったけどなんで殴り合いになったの?
34:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
マリンはともかく凛花が温厚……?やっぱ前頭葉に雪玉詰めてんのかクソガキ?
35:NN.マリン
我も激戦すぎてその辺りの記憶が飛んでいるのだが……確か1000年前くらいにアルカと将棋で遊んでいて……気がついたら凛花と殴り合いに
36:NN.雪ん子
将棋ってなんだっけ?
37:NN.オーカミ
チャトランガが原型の日本とか中国とかのゲームだったか?
38:NN.ヴォドゥン
マリンって地味にゲーム好きだよな
39:NN.ガイアッ
とりあえず植物園を封じれば……なるほどありがとな
40:NN.ブラド
一応言っておくけど本当に喧嘩とかするなよ?凛花に限ってわざわざ喧嘩とかしないと思うが、本当にお前達レベルが殴り合うと余波で土地が消し飛んだりするんだからな?
41:NN.妖精武器庫
1000年前ってそういえばアレか。余波でヨーロッパの国滅ぼしたアレか
42:NN.ブラド
マジであの時大変だったんだからな……?
43:NN.ガイアッ
わかってるわかってる。絶対そんなことしない!もしもやったら世界樹の下に埋めて貰っても構わないよ!
44:NN.マリン
まぁいくらパンゲアとはいえこの状況下でさすがに凛花に殴り込みには行かないだろう
45:NN.オーカミ
それもそうだよな。こんな時にあの2人が殴りあったら余波で南米辺りがなくなるんじゃないか?
46:NN.ヴォドゥン
じゃあ話の流れのついでに酒カスを倒す方法とか考えるか?
47:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
無理
48:NN.雪ん子
存在しない
49:NN.マリン
酒を飲ませて自滅を祈る
50:NN.妖精武器庫
ソフトを再開すると「続きから」が消す前のデータに戻っています。
ボックスを確認するとレベル1の色違いボルケニオンがいます。ついでに酒カスを倒せます
51:NN.ブラド
まぁ、さすがのパンゲアもこの状況でそんなことはしないか……
52:NN.マリン
>>50
我、実際にそれを試してポケ〇ンのデータが消えたのだが……
53:NN.オーカミ
…………マジで?
「起きてください……起きてくださいアルカさん」
誰かの声が聞こえて、俺は眠い目を擦りながら体を起こす。
何だかとても嫌な夢を見ていた気がするが思い出せない。めちゃくちゃ理不尽で、あと色々衝撃の事実があった気がするんだけど、本当に何故か何も思い出せない。
「おはようございます……と言っても今は夜ですけどね」
「あ、おはよう徐福…………徐福ゥ!?」
目の前にいる奴の姿を確認する。
バリッバリの中華系イケメンフェイスにメンタルのクソザコさが滲み出ているこの顔、間違いなく不死友の1人である徐福だ。
「お久しぶりですねアルカさん。直接会うのは雪女さんの時以来ですかね?」
「その時のことほんとよく覚えてないけど、多分そうかな。ってか、なんでこんな所に……」
「あぁ、それはですね……と、その前に向こうの方はお知り合いですか?」
徐福が指を指す方向にゆっくりと視線を向ける。
「アルカ……そいつは……」
なんか見た事もない表情を浮かべている葵くんが、めちゃくちゃ徐福を睨みつけていた。
・紅葉
サディストの鬼畜。割とアホ。軍師とかやってた。
・琥珀
一番頭が良い。所詮アルカ。王様とかやってた。
・蒼海
性格が悪い。人間がとても嫌い。実験とかされてた。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
作品が実る木がお病気にかかって収穫が遅れました。
元々あまり長く書く予定はなかったので、そろそろぼちぼち畳み始めます。
「アルカ……そいつは……」
葵くんの表情も声色も普段の彼からは想像できないくらい冷たかった。
何が何だか分からないがとにかくやばい。なんかわかんないけど誤魔化さないと徐福が死ぬ。死なないけど。
そんな嫌な予感がしたので、急いで徐福とアイコンタクトで会話を行った。
『徐福! なんかやばい! 何がやばいかわかんないけどやばい気がする!』
『見れば分かりますよ! 一体彼に何をしたんですか! 何をしたら初対面の人間にあんなおぞましい殺意を向けるようになるんですか!?』
『知らない! 何もしてないのに壊れたの!』
『人間は何もしなければ壊れないんですよ!』
そう言われても俺本当に悪いことしていないし。葵くんがなんでこんなになっちゃったか本当に心当たりがないのだ。
『多分あれは嫉妬……それも恋慕の類の感情です。心当たりないんですか?』
『しっと……れんぼ……誰に? 葵くんって同性愛者なのかな?』
『アンタ馬鹿なんですか!? 4000年生きてきて脳みその中に綿菓子でも詰め込んできたんですか!?』
なんか徐福くんやたら口が悪いなぁ……。ネットで会ってた時は礼儀正しい好青年って感じだったのに、凛花並にネットとリアルで差があるけど、実際みんなこんなもんなのかな?
とりあえず俺は馬鹿では無いので(重要)、すぐさま徐福くんとアイデアを出し合ってこの場を乗切る策を練り出す。
『いいですか。今から僕は偶然人類の生き残りであるアルカさん達に出会った同じ生き残りです。もしも設定に矛盾が生じそうになったらその度に要相談です』
『おけまるだ!』
『…………本当にわかってるんですよね? それじゃ、今からアルカさんに話しかけます』
この間実に0.098秒。
不死者のアイコンタクト会話術は人間のソレとは比較にならないのだ。
「アルカさん……この方は……?」
「先程言っていた私の仲間です。葵さん、この人は……じょ、丈一郎さんです。偶然ここを通りかかった他の生き残りの方です」
「へぇ……そうなのか……いきなり威嚇してすまなかった。アルカがそう言うならそうなんだろう。俺は琴吹葵だ。よろしくな」
葵くんは徐福へと向けていた銃口をゆっくりと下ろし、いつもの朗らかな笑みを浮かべた。
『怖っ……生きた心地しませんでしたよ。不死者なのに殺されるかと……彼、本当に人間ですか?』
『ちょっと水の上走ったり壁を走れたりするけど多分人間だよ』
『一般的にそういうことをできる方を人間と言わないと思うんですけど』
「丈一郎さん、だったか? こんな状況で生き残りに会えるなんて……。とりあえず詳しい話を聞きたいから、俺達の拠点に行かないか? そこのスーパーを今は使っているんだ」
『アルカさん。僕はこの混乱の中ではぐれてしまった妹を探しているという設定でいきます。なので一旦離れて、また色々とちゃんと話したいことがあるので、機会を伺って近づきます』
『わかった。つまり今はお前を引き留めずに、多分引き留めてくる葵くんを説得すればいいんだな?』
『アルカさんの割には理解が早くて助かります』
『おい待て今絶対馬鹿にしただろ』
とりあえずいきなり徐福が現れて、そこに葵くんが現れた時はどうなるかと思ったが何とかなりそうだ。
…………なんて考えていた俺の考えは甘かった。
不死者というものは常に気まぐれで時に恵となり時に災いとなるということを!
「徐福ーッ! アンタ……アンタどこ行ってたのよ! この私がわざわざオーストラリアまで出向いてやったのにいないとか……痕跡を辿ってここまで追ってくるの本当に大変だったんだからね! 謝って! 私に謝って!」
なんか来た。
落ち着け。あのThe・雪女って感じの服装と全体的に肌も髪も真っ白な姿の女の子は不死友の1人の雪女だ。なんで、なんでこんな所に?
いや、今はそんなことよりも考えなければいけない問題がある。
「……おいお前。今あの女の子がお前のことを『徐福』と読んだが……何故アルカには丈一郎と名乗ったんだ」
再び葵くんが殺意を纏った眼光で徐福を睨みつけながら銃を構えている。マジで銃撃つ5秒前、みたいな雰囲気だよコレ。不死者の徐福を殺せるんじゃないかってくらいやばい。
「その……これには深い訳がですね……」
「アルカに嘘をついたことに釣り合う理由があるなら聞いてやる。話せ」
『アルカさんアルカさん! なんなんですかこの人! 本当に人間ですか!? 怖い……今僕泣きそうなんですけど……』
『多分……人間……だと、思う……。とりあえず俺に任せろ。葵くんとはなんだかんだ長い付き合いだ!』
まずは葵くんを沈静化させ、それから雪女を抑え込みどうにかこの場を収める! 完璧な作戦だ! さすがIQ200超えの天才である俺だ!
「あ、お姉様! お姉様までここにいるなんて! たまには徐福もやるじゃない! お姉様ー! 私ですよー! 雪女です!」
ファッキンクソスノーガール!
マジでどうすんだよ!? 葵くんが俺の方に「知り合いなのか?」って感じの目線送ってきてるよ!
「あのですね葵さん……彼女は……」
「お前は黙っていろ。信用出来ない」
「アッハイ……すいません……」
徐福!
そこはもうちょっと粘ってくれよ!? お前不死者だろ!
しかしマジでどうする。葵くんの徐福への信頼度は現在ぶっちぎりでマイナス。雪女の方に至っては今すぐ発砲されそうな勢いだ。
『雪女! 雪女! このアイコンタクトわかる?』
『はい? どうしたんですかお姉様。そんなに慌てて』
『事情はもう省くけどとりあえず今は俺達の話に合わせてくれ! お前はとりあえず俺たちの言うことをだいたいYESって答えればいいから! まじでちょっと黙っててくれ!』
『任せてください!』
わかってなさそうな気がするけど、まぁ多分大丈夫だろうからヨシ! とにかくまずは爆発五秒前の爆弾と化している葵くんの処理だ。
「アルカ。そこの2人は一体何者なんだ……?」
「この2人は…………実は私の生き別れの弟と妹です……」
「そうか……アルカがそう言うならそうなんだろうな」
さすがに苦しすぎる嘘だったか。いくら葵くんでも信じてくれるわけが……
「え?」
「え? アルカの弟と妹なんだろ?」
「あ、うん。じゃあそういうことで」
さっきまでの殺意が嘘のように俺の自分で言うのもなんだが無理のあるクッソ下手くそな嘘で納得してくれた葵くん。
マジでなんだろう。葵くんの判断基準が分からないけれど、とりあえず今は窮地を脱出できたと考えても良いだろう。
「え、お姉様の妹はともかく、徐福と兄弟の設定とか嫌なんですけど」
ファッキンクソスノーガール!!!
YESと言えと言ったではないか!?
「お前……アルカがそう言ったんだからお前はそこの奴と兄弟なんだよ!」
葵くんも怒るとこ違うと思うよ!?
なんでそんなに俺の発言を信じてくれるの? 信頼してくれてるなら嬉しいけどね!?
しかしこれマッジでどうしよう……なんかもうめんどくさいな。いくら葵くんでも雪女と喧嘩になったら死ぬだろうし、だからと言って脳みそがかき氷で出来てるっぽい雪女を今からどうにかするのは無理だろうしなぁ……。
「あー……『止まれ』」
そんなことを考えていたら、なんか徐福が喉に御札を貼り付けて一言呟いた。
一瞬、体が動かなくなったがすぐに動くようになる。何をしたのかと思ったら突然葵くんが時間でも止まったかのように固まってしまっていた。
「魔術の一種の言霊術です。さすがに不死者には一瞬しか効きませんが、人間なら僕が解除するまでは止められるはずです」
「徐福……最初からそれ使えや」
「なるべく穏便に済ませようと思ったんですよ……」
とりあえずまずは雪女に事情を説明し、大人しくしてもらった。
「えーっと、状況は相変わらずよく分からないけど、ごめんなさい。何かやらかしましたよね……? ちょっとお姉様に久しぶりに会えて浮かれていて……」
まぁ、誰にだってミスはあるし浮かれていたなら仕方ないよね。反省できているなら偉い。次に同じことをしなければ大丈夫。
そして次は葵くんの記憶処理を徐福が行う。俺もやろうと思えばできるけど、魔術とかそっちの領域は徐福の方が上手だし。
「……徐福? さっさと済ませてくれよ」
「いや、アルカさん。この人、さっきから止まってるはずなのに僕のこと目で追っていません?」
…………まさか、ね。
さすがの葵くんでもそんなことあるわけが無い。徐福の言霊術は人間なら意識まで完全に停止する、限定的な時間停止に近い。そうでなければ心臓とかが止まって死んじゃうし、逆に言えばそこまでしっかり止めているんだから目で追ってきたりするような事はありえない。
「気の所為だよ多分。ちゃちゃっと記憶の処理しちゃっといて」
「……わかりました」
そして徐福くんが記憶処理の為に葵くんに手を伸ばすと、
「…………」
「…………」
「徐福? 何であんた術解いてるの?」
「解いて、ないんですけど……」
「何かの間違いだよ徐福……多分……」
確認の為に徐福が葵くんの前で手を振ってみると、葵くんの目はそれを追うように確かに動いた。
「…………」
「…………徐福、がんばれー」
「嫌です!!! マジで怖いですよこの人、なんですか!? なんで人間が僕の言霊術普通に破ってるんですか!? 本当に人間なんですよね!? アルカさんなにかしました!?」
「してないよ! 何もしてないけど葵くんがなんか勝手に壊れたんだよ! 早く直してよ!」
「ほら早く治しなさいよ徐福! お姉様が待ってるでしょ!」
「嫌だ! 触れた瞬間僕の頭握りつぶしに来ますよこの人! いや、人じゃない! 絶対人じゃないですよ!」
「ふむ。困りましたね」
最新の魔女は静かに、冷静に思考する。
ドリスと名付けられた幼子を育て始めてからあっという間に月日は経ち、恐るべきほど動き回る元気な子に育っていった。
データとして育児の方法は知っていたが、実際にするのは未知の出来事の連続。仮初の有機体ボディは本来疲れを感じないはずなのに、一日が終わりドリスが寝る時には思わずため息が溢れるほど精神が疲労しきっている。だと言うのにそれを嫌だと思わない、むしろ満足感すらある不思議な状況。
名前のわからない未知の刺激が、常に胸の内側から湧き出てくる。
「人間の成長に欠かせないもの……ズバリ、外での遊び……これは困りました」
現在、『外』と呼ばれる場所の全てはゾンビが徘徊する死の世界であり、かつては多くの人で栄えたここニューヨークも例外ではなかった。
探せば遊び場自体は存在するだろうが、幼子を遊ばせるにはゾンビ達が危険すぎる。
…………つまり、ニューヨーク周辺のゾンビを消し飛ばしてしまえば何も問題ないのでは?
そこまで考えて最新の魔女は冷静さを取り戻す。
自分にゾンビだけを消し飛ばす器用な真似はできない。異界領域を最大展開すれば、遊び場にちょうど良い公園
そもそも、不死友内の約束事として過度な現環境への干渉は禁じられていて、相手がゾンビとはいえそんなことをすればルールに抵触する可能性が高い。
最新の魔女は電子生命体。
あくまで物事を客観的、合理的に判断して最善策を導き出す。
「ドリスの健全な成長が最優先事項ですね」
この日、ニューヨークは周辺の数カ所の公園を除いて全てが消し飛んだ。
「ふむ……困ったなこれは」
ニューヨークへ着いたブラドは、何故かいきなり異界領域の世界革命に巻き込まれていた。
空一面が0と1に覆われたこの領域は間違いなく最新の魔女のものだということは分かる。しかし何故異界領域を使ったのかが分からない。
もしかして最新の魔女が育てている幼子がゾンビ達に襲われ、咄嗟に……なんてことも考えたが、常に冷静沈着な彼女がそんなことをするとも考えにくい。
「おいヴィヴィアン……って、分断されたか」
しかも異界領域の対策として連れてきていた湖の乙女ヴィヴィアンは、ちょうど異界領域の展開の外側に居たらしく周囲に気配がない。
異界領域を持たない自分では、外に出る手段は解除されるのを待つしかない。
「……ん、なんだアレ」
そんなことを呑気に考えていたら、空が青色に光り出した。
あの光のエネルギーは、恐くは最新の魔女の異界領域によって生み出された無限のエネルギー。彼女の異界領域は時間さえあれば無限にエネルギーを生み出すことが出来、それを貯めることも出来るので理論上は無限に威力を増強できる。あれ程のエネルギーがあれば、ニューヨーク一帯は更地に出来るだろう。
そのエネルギーが。
空から落ちてきている。
「ちょと待て。おい、待て待て待て待て! さすがにアレを喰らったら私もやばいぞ!? 死なないにしろ、しばらく動けなくなる!」
事の重大さに気が付いて行動しようとしたがもう遅い。領域内に安全な場所は無く、領域の外に出ることは出来ない。
そもそも最新の魔女がこんな凶行に及んだ理由も分からない。一度人類を滅ぼそうとはしたが、その時に説得されて過度な干渉は控えるように言っておいて、素直に聞いてくれたはずなのだ。そんな彼女が何故ニューヨークを消し飛ばそうとしているのだ!?
「待て、待って待って! 本当に待って! これ私消し飛ぶから! ちょっ、ヴィヴィアン助けて! マジで! これヤバ──────」
ニューヨークの消滅に巻き込まれ、ブラドは一度塵一つを残してこの世界から消滅した。
あの後、徐福の頭が握りつぶされたり徐福の腕がもぎ取られたり徐福の内臓がぶちまけられて雪女にかかったりなどちょっとしたトラブルはあったものの、何とか葵くんの記憶処理には成功した。
徐福はなんか俺に用があったらしいけど、「ちょっとマジで葵さんがトラウマなんで彼らの寿命が尽きてからにしますね……」と雪女と共にどっかに行ってしまった。マジでなにしに来たんだろう。特に雪女。アイツ事態をややこしくしただけじゃね?
……しかし、言われて気がついたけどそうか。葵くん達って人間だから死ぬんだよな。特に剛なんてこんな医療機関も崩壊した世界じゃ長くてもあと40年。葵くんと照香も60年くらいで絶対に死ぬ。そもそも明日にはゾンビに食われてるかもしれない。
なんか、やだな。
いっその事俺が不死者だってことを明かしてしまってもいいかもしれない。みんな良い奴だし、俺がバケモノ程度じゃ別に嫌ったりしないだろう。そもそも、葵くんと照香だってよっぽど人間離れしてるし、そんなことを笑って受け流すような剛が今更俺が不死な程度で驚くとも思えない。
よし、決めた。
1週間後だ。1週間後、全部葵くん達に話そう。元々銃をバカスカ撃てるついでにちょっと人間で遊ぼうと思ってただけなのに、こんなセンチな気分にされてしまっては仕方がない。
拒絶されたら全員殺して、受け入れてくれたら加護を残してさっさと退散だ。どうせこんな世界じゃ人間は滅ぶだろうし、あんま入れ込むとなんか嫌な気分になる。
あと1週間、せいぜい
まぁ、ゲームとかして暮らすか。
・なんでアルカ会議でわざと負けてあげないの?
全員4000年もののクソ高いプライドと他者を嘲笑うクソみてぇな精神を備えたアルカだからです。翡翠が同じ立場でも同じことします。あと地味に翡翠の異界領域が厄介なのでみんなでタコ殴りします。戦うことじゃなくて勝つのが好きな不死者達です。クソだね。
・翡翠、紅葉、琥珀、蒼海について
翡翠&アルカ(肉体)が『横』の世界にあるとしたら、その他の魂は『縦』の世界にあります。要は別レイヤーにあります。
普段はレイヤーが違うけど重なっている他の魂の状況を知覚することしか出来ませんが、翡翠の魂が揺らぐとそこに割り込んでアレコレできます。前世の記憶は翡翠のみが持っていたので、昔の翡翠はメンタルがぶっ壊れるまで結構入れ替わってました。
・翡翠メンタル
ぶっ壊れてます。しかしクソ。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
さらば旧友よ
ちょっと続きさんが病気になって枯れたけど水ぶっかけたら治りました。
1:NN.最新の魔女
ちなみに旧管理人のブラドさんが色々あって消し飛んで現在生首なので代理として私が管理人を担当しています
2:NN.妖精武器庫
ゆっくりブラドクソワロタww
魔女ちゃんの異界領域の巻き添えくらってゆっくりになってるww
3:NN.最新の魔女(ブラド代理)
それはそうとこの中にメンテ期間中に派手にやり合って月を永遠に半月にしたり、南米吹き飛ばしたり、地球の近くで小惑星同士を衝突させたヤツがいるだろ。正直に言え
4:NN.オーカミ
知らない
5:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
そんなことやるバカいるの?
6:NN.ヴォドゥン
どうせ酒カスだろ
7:NN.クククルン
俺ずっと監禁されてた
8:NN.もりもり
そんなやついるか?
9:NN.風呂メテウス
早めに名乗り出ないとブラドキレるぞ〜
10:NN.ガイアッ
アルカ最高!アルカ最高!
11:NN.雪ん子
なんかガイアが壊れてる
12:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
元々何考えてるかわかんなかったし
13:NN.最新の魔女(ブラド代理)
どうせ私が治ったら誰がやったかなんてわかるんだからな?さっさと白状しろ
14:NN.ぐやぐや姫
もりもりとガイアがやりました
15:NN.もりもり
仲間を売りやがった!
16:NN.最新の魔女(ブラド代理)
お前本当にいい加減にしろよ?特にガイア?私がお前のせいでどれだけ後処理に回ってるか知っているのか?
17:NN.妖精武器庫
生首様の貴重な説教だぞ。心して聞くが良い
18:NN.オーカミ
ブラドって毛量多いから今毛玉みたいになってんの?
19:NN.侵略タコ娘
毛玉ww
電気毛玉じゃんww
20:NN.ヴォドゥン
ポケットモ〇スター……
21:NN.最新の魔女
こいつらのネット回線全部切っていいぞ、とブラドさんが言ってます
22:NN.もりもり
サーセンシター
23:NN.ヴォドゥン
ごめんなさい
24:NN.ハッピージョー
そう言えば万死さんがいませんね
25:NN.マリン
奴も奴で中々自由なところがあるからな
26:NN.風呂メテウス
メンテ期間中にギリシャでも異界領域使うゾンビ出たぞ
全部潰したけど
27:NN.ヴォドゥン
俺も会ったからバラしたけど、あんまり気持ち良くなかった
28:NN.ハッピージョー
へ?
29:NN.オーカミ
ヴォドゥンはネクロフィリアだぞ
30:NN.もりもり
冒涜ゥ!
31:NN.雪ん子
マージでそっち系の趣味は分からないわ……
32:NN.妖精武器庫
長く不死者やってるとね、性癖が色々開発されるんだよ
33:NN.最新の魔女
恐らく正しくは『性的嗜好』かと
34:NN.もりもり
まぁ性癖って言った方がなんか言いやすいし通じるよね
35:NN.マリン
ネットは常に言葉に新たなる意味が付属する魔境故な
36:NN.ガイアッ
アルカ最高!アルカ最高!
37:NN.クククルン
なんか知らんけど不死者ってやたらネクロ系の趣味多いよね
38:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
私はそっち系の趣味ないけど、死ねないと死を観測するのがなんか楽しくなってくんだよ。よく怨霊でやってた
39:NN.オーカミ
ナチュラルに怨霊を実験ラット扱いするクズ
40:NN.侵略タコ娘
雪ん子ちゃんは凍ってるものにしか興奮できないとか前言ってたじゃん
41:NN.ハッピージョー
えぇ……
42:NN.ぐやぐや姫
性癖開示祭りの会場はここですか?
43:NN.妖精武器庫
今から大会を開く。性癖開示していって一番徐福をドン引きさせたやつが優勝な!
44:NN.ハッピージョー
なんなんですかその大会
45:NN.クククルン
でもぶっちゃけそれ嘘つき放題じゃん
46:NN.ヴォドゥン
大丈夫!今この掲示板に嘘を書き込んだら左足の小指が爆散する呪いかけたから!
47:NN.妖精武器庫
何が大丈夫なんだよクソが
48:NN.ヴォドゥン
あと語尾がにゃんになる
49:NN.もりもり
マジで誰が得するんだよこの大会
50:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
クソどもの煮詰まったクソみてぇな会話しか聞けないクソ掲示板に何を今更
51:NN.最新の魔女
私も大会運営に協力したいのですが、何分人間の性的嗜好に関してはまだ勉強不足で……強いて言えば皆様の過去の電子書籍の購入履歴などから様々な推測をすることくらいしか
52:NN.オーカミ
え
53:NN.もりもり
地獄を察知
54:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
ブラド見てんだろ!魔女ちゃんを止めて!
55:NN.妖精武器庫(ブラド代理)
手足がないから無理、って言ってるよ
56:NN.クククルン
ちくしょう!オープンショタコンはノーダメじゃねぇか!
57:NN.最新の魔女
晴明さんは以前は『狐ショタ〇泄合同誌』なるものの購入をしていますね。
【サンプル】
58:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
やめてマジでストップ
59:NN.オーカミ
性癖歪みすぎだろ……
60:NN.ハッピージョー
初手からもう嫌なんですけど
61:NN.マリン
何故半端に擬人化された狐の肛門に過剰な攻撃を……?
62:NN.風呂メテウス
ガチの地獄じゃねぇか
63:NN.雪ん子
変態クソホモ獣姦陰陽師ww
64:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
雪ん子、氷でしか興奮できないからって〇〇〇を凍らせて〇〇してそれを使用後にかき氷にして食ってるよ
65:NN.雪ん子
ちょっと待てふざけんなクソ陰陽師どこで見てた
66:NN.ぐやぐや姫
地獄始まってて草
67:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
風呂メテウスはNTRでしか抜けないぞ!
68:NN.風呂メテウス
晴明がヤケになった!
69:NN.もりもり
失うもののないということの強さ
70:NN.ガイアッ
アルカ最高!アルカ最高!
71:NN.妖精武器庫
ちなみにブラドちゃんは脳の記憶を義体に詰め込まれたタイプのTSアンドロイド(元男性)が好みでその系統の作品探しまくってたよ
72:NN.オーカミ
絶妙なこだわりがなんかキモいな……
73:NN.ハッピージョー
もうやめてください。これで誰が幸せになるんですか?
74:NN.ヴォドゥン
万死の奴辺りなら喜んだろうけど、アイツなんでいないんだ?
75:NN.最新の魔女
ブラドさんがまだ万全の状態では無いので、位置情報が掴めないそうです
76:NN.侵略タコ娘
ブラドちゃんの別に普通じゃない?
77:NN.クククルン
ギリシャじゃTSって割と一般性癖だよな
78:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
ギリシャの感性わかんないにゃん
79:NN.ヴォドゥン
そもそも何でもいつか飽きるから長く生きてると必然的に拗れるんだよ
80:NN.オーカミ
でも風呂メテウス初めて会った時からずっとNTR好きだぞ
81:NN.ぐやぐや姫
ん、万死の居場所見つけた。日本だね
82:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
どいつもこいつも日本好きだねぇ。別に何もないにゃん
83:NN.マリン
阿呆。ゲーム文化の聖地であろうが
84:NN.雪ん子
私も文明滅ぶ前に1回行っとけばよかったなー
85:NN.もりもり
ちょっと田んぼの様子見てくるにゃん
85:NN.ハッピージョー
クソみたいな話題で報告遅れましたけど、異界領域使えるゾンビを数体捕まえたのでバラしてみたんですよね
86:NN.クククルン
何か有益なことわかったのか?
87:NN.最新の魔女
私としては、早くゾンビ達の情報を解析して安全圏を作りたいです
88:NN.雪ん子
アイツらアレだわ。ウィルスだわ
89:NN.ヴォドゥン
そんなのバ〇オやってりゃ誰だってわかるだろ
90:NN.侵略タコ娘
そもそもウィルスが原因なんて初めからわかってたことじゃないの?
91:NN.マリン
……なるほど
92:NN.妖精武器庫
あー、私わかっちゃったわー。完全に理解したにゃん
93:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
もったいぶってないでさっさと言ってよ
94:NN.雪ん子
ちょっとくらい自分で考えろよショタのケツしか見てない陰陽師
95:NN.風呂メテウス
わからん
96:NN.クククルン
あー!俺わかったわー!そういう事ね!
97:NN.ぐやぐや姫
あれ、これもしかしてめっちゃめんどいやつ?
98:NN.ハッピージョー
特定惑星疾病異星体、ですね
99:NN.雪ん子
………何それ?
100:NN.オーカミ
雪ん子わかってなかったのかよ
101:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
絶対次会った時ぶち殺すからなクソかき氷女……
「そなたさぁ……まーじで後先考えないのやめた方が良いと思うのよねー。一時の気分で玩具を捨てると後悔するぞ? レトロゲー売っぱらった時も同じ後悔してたしさー」
「ゲームと違って人間なんて不快な気分しか生み出さないんだから……さっさと殺すのが正解だよ……なんか臭いし……」
「傷は浅い内に、とはなんともビビりのクソザコ翡翠らしい考えだ。虎穴に入らずんば虎子を得ず、舐るならば骨まで舐る。それが妾の考え故に反対だぞ?」
「まぁどんなに反対してもなー。どうせ翡翠は事が終わればここの記憶なくしちゃうからなー。わざと負けでもしない限り」
「嫌だよ……こんなクソザコにわざとでも負けるなんて……ちょっと力んだだけで殺しちゃうから、逆立ちしながら勝つより難しいもん……」
「クソザコ翡翠に負けるとか妾達のプライドが許せんわ。それじゃ、さっさと始めるか」
「アルカ。またぼーっとしてたけど、大丈夫か?」
「────え、あー……うん。大丈夫」
また一瞬だけ意識が飛んでいた。
ここ一週間やたら意識が飛ぶ。不死である俺は睡眠は必要ないし病気にもならないから本当なら急に意識が飛んだりなんてしない。だと言うのに、何度も何度も意識が飛ぶ。しかも目覚める度によく分からない苛立ちが胸の中に残っている。
「……みんなってさぁ、なんで生きてんの?」
ぽやぽやした頭でろくに思考もせず、何となく零れた言葉。
普段の聡明な俺ならばこんなことは言わないが、言ってしまったものはどうしようもない。皆が怪訝な顔でこっちを見つめてきて、改めて言っちゃいけないこと言ったかもしれんという自覚が湧き出してくる。
「なんで生きてるのかなんて言われてもなぁ……結局ゾンビ共に殺されてたまるか! って抵抗してるだけだしな……強いていえば、お前らみたいな若造を守る為か? 考えてみりゃ、その日生きるのに精一杯であまりそういうこと考えてなかったからなぁ」
想定とは違った柔らかい反応が帰ってきてほっと胸を撫で下ろしたい気分になった。
しかし、まだ種族を再興させられる確率のある若い者を生かそうとしていたとは、案外剛も生物の根本的な衝動に従って生きてるんだな。まぁどの道ゾンビが居なくなってもこの個体数からじゃ再び繁栄は無理そうだから意味の無い行為ではあるが。
「私は、目的がある。人の営みが見たい。あと……大切なモノを守りたい」
そう言う照香には悪いが、マジでこの状況からもう一度人の営みを取り戻すのは無理そうなのよね。俺以外の不死者が6か7人協力してくれれば……いや、それでも完全に滅んだ文化が多すぎるだろう。
あと、なんで照香ってば俺をガン見してるの? やっぱさっきの発言はまずかったかな? もうガン見されすぎて穴があきそうだよ。
「俺は……初めは死にたくないから生きているだけだった。でも今は違う。絶対に死ねない理由が出来たんだ」
葵くんもさぁ……なんで俺の方ガン見するの?
死にたくないから生きるって生命として当たり前だし別に卑下するような理由でもないと思うよ? それより死ねない理由が気になるんだけど、なんで俺の方見るの?
…………まさか、葵くんは俺が人外、果ては不死者であるということに気がついたというのか?
冷静に考えてみれば葵くんの目付きは普段から仲間や友人を見つめるような目じゃなかったし、何かとつけて俺と一緒に行動しようとしたり、俺を常に監視しようとしていた気がする。もしかして彼は俺の不死を研究し、自分のものにしようとしているのではないか!?
そう考えれば色々と説明がつかなかった状況にも説明がつく。
異常な身体能力は俺のなんかをいい感じに研究してなんかこう……再現したあれこれで、死ねない理由と言うのは死にたくないから俺を研究して不死になりたいということ。もしかして、異常な反射神経を持つ照香もグルかもしれない。
やばいなー。
さすがに研究対象とされるのはまずいよなぁ……。信頼してた人間に裏切られて研究されそうになったことは何度かあるけど、昔はめちゃくちゃ痛かったし、何度経験してもなんか胸にウニが刺さったみたいな感触がするから嫌いなんだよね。
やっぱさっさと不死者であることを告げてなんかされそうになったら殺して、なんもされなかったら加護残してどっか行くのがベストなんだよなー。わかってんだけど、どうしても後ろ髪が引かれる。もしかしたら言わなければ少なくとも彼らが死ぬまで一緒にいられるんだからじゃないかという希望と、そもそも寿命や外的要因で死ぬところなんて見たくねぇしという冷静な思考がせめぎ合っている。
この優柔不断のせいで1回ヘマしてなんかやべー古代魔術結社に捕まって記憶が飛ぶくらい実験されたりしてるから治そうとは思ってるんだが、結局治らずに今に至るんだよなぁ……。
「……っと、こんなこと話してる場合じゃなさそうだ。剛さん、人型の生き物が近づいてきてる。注意してください」
色々考え込んでいたが、葵くんの言葉で現実に引き戻される。
普通に俺も周囲の索敵してたんだけど、なんで葵くんの方が索敵範囲広いのかなぁ……?
しかし視力の方では無理やり目のピントを弄ったり出来る俺の方に分がある。と言うか本来全てにおいて俺の方に分があるんだよね。なんで一分野でも俺より優れた領域あるの葵くん?
とりあえずそんな疑問は置いておき、葵くんが視線を向ける方向へ目を向けてじーっと観察を続けると、確かに人型の生き物が観測できた。
…………そう、人型の、見慣れた生き物が。
『お、アルカ! ようやく見つけた! 久しぶりー』
アイコンタクトでそんな正月に実家に帰ってきた親戚くらいの軽さでこっちに挨拶してきやがっているロリっとした見た目の女の子を俺は知っていた。
不死友の1人、死の概念を司る精霊にして俺が首絞めッ〇スにハマる原因を作ったなかなか
『バンシー!? ちょ、なんでここにいんの?』
『来ちゃった♡』
ハートじゃねぇよ。
なんでみんなわざわざ俺のところに来るんだよ。まとめ役としてはケツァルコアトルかブラドのところに集まってくれよ。
『来ちゃった……って、何しに来たんだよ』
『恋人のところに来るのに理由なんて必要?』
一応言っておくけど俺とバンシーは恋人じゃない。
確かに以前、俺はコイツに首絞〇ックスの良さを教えられて依存してしまい、体をばらばらにしても良いという契約をして100年ほどめちゃくちゃ爛れた関係を続けたりしたけど、決して元カノとかそういう存在ではない。そもそも好きとかそういう感情、とっくにペルシャあたりに置いてきちゃってんだわ。
「あれは……ゾンビ、なのか?」
「違う。ゾンビ達とは違うけど……人間じゃない……」
「全員、俺の後ろに下がってくれ。アイツは、ヤバい」
しかもバンシーったら全く気配を隠してないから普通の人間から見たらマジで訳の分からない恐ろしい生き物になってるし。照香が奥歯ガタガタ言わせてるの初めて見たわ。不死者ってホント、こういう時に全くデリカシーがないから困ってしまう。
『そう言えば、まさかこのウィルスもお前が原因とかないよな?』
『まさか。私のウィルスは殺す専門でゾンビにしたりなんて芸当は出来ないし、ゾンビにするんだったら脳みそ弄ってゾンビ人間作った方が面白いもん』
なんか物騒なこと言ってるけどコイツならやりかねないのがなぁ……。昔、ちょっと暇だからって理由で人間の村を襲って1000体くらい改造して人間襲わせて遊んだりしてたやつだし、さっさと帰って欲しいのだが。
『アルカ……また人間で遊んでるの? 何度も痛い目見てるのによく飽きないよね』
『未だに人間をバラして遊んでるお前にだけは言われたくないよ』
『私はアルカみたいに個人に肩入れしないもん。100年そこらでダメになっちゃうものに変に情を持つのって疲れるじゃん? ……ほんとさぁ、そんな不完全で醜い生き物のどこが良いんだか。確かに玩具としてはそこそこ面白いけどさ、プチプチと同じで潰す瞬間しか楽しみがなくて、潰れる前も後にはなんの価値も無いのに』
俺にとってバンシーは間違いなく友人と呼べる立場にある存在だ。
100年くらい爛れた関係だった間にお互いの色々を知り尽くしたし、下手すれば俺よりも俺に詳しい。
そんなバンシーだからこそわかる。
コイツ、今全く笑ってない。
むしろブチ切れている。何にキレているのかは全く分からないが、今のコイツは不機嫌の極みにいる。その気になれば1人でも地球を滅ぼせる不死者の1人が、その怒りをたった3人の人間へと向けているのだ。
『あのー……バンシーさん? もしかして怒ってらっしゃる? 俺がお前のお気に入りのコレクションの死体を捨てちゃったこととか、まだ引き摺ってます?』
『ううん。実はアレ、前から捨てようと思ってたから全然気にしてないよ。むしろあのゴミもアルカに捨ててもらえて本望だったと思うしね』
にこやかな表情でアイコンタクトしてくるけれど、全く目が笑ってないどころか、彼女が持つバロールの魔眼を起動してるせいで瞳が真っ黒になってめちゃくちゃ怖いんですけど。バンシーちゃん目つき悪っ。
そして、あまりに悪い目付きにビビって反応が遅れたけれど彼女がその魔眼を起動しているということは本気ということだ。本気と書いてマジと読む、つまり明確な殺意を向けているということ。
「男は嫌いだけど……女の子の方ならちょっとだけ中身が気になるな」
ほんの僅かにバンシーが動く。
手をこちらに向けて翳す程度の小さな仕草。
「異界領域────『TYPE:BALOR』」
ただそれだけで、人間を殺すのにはあまりに大袈裟すぎる魔眼の領域が開かれた。
「あー……何回目とかどうでも良いか。アルカ会議始めるぞ。今回は妾が議長をやってやる有難く思え」
なんか気が付いたら赤眼、黄眼、そして目を青い布で覆った俺が目の前にいるよく分からない空間にいた。
俺は確か急に現れたバンシーの世界革命で……。
「まぁ、この状況をどうするかだよねー。人間達と一緒にバンシーの領域に引きずり込まれて、このままじゃ人間は全滅して、アルカの体も100年くらい再生不能にされて監禁されるよー?」
「だが意外だったのは奴の領域に引きずり込まれて初撃を躱したことだな。やはりあの葵という人間は面白い。異界領域の効果を無効化した。……代償に腕一本持ってかれたがな」
そうだ。
バンシーの奴が異界領域を使って、不意打ちでやばいとか思ってたら葵くんの腕が分解されたんだ。マジで混乱してたから葵くんだけが食らったのかと思ったけど、むしろ逆で葵くんが俺達を庇ってくれたのか。
……いや、葵くんおかしくない? バンシーが異界領域使ったってことは全員殺す気だろうし、初撃で手加減するような奴じゃないから本気のはずなのに、全員を庇って腕だけで済むのもおかしいし、そもそも異界領域の効果による攻撃は、簡単に言えば法則そのもの。モノが地面に向かって落ちるように、コーラを一気飲みしたらゲップが出るように、それは絶対の法則であり逃れるには自らの領域で中和するしかないはずなんだけど…………ま、今は考えなくていいか!
「で、どーする? このままじゃ朕達の体監禁コースだし、ついでに人間達絶対死ぬよー?」
「ただの人間が一瞬とは言え異界領域に対抗したのは面白いが、どの道こちらが本気で抵抗すれば余波で死ぬ。もう諦めるしかないな」
「当然だよ……翡翠の友達だかなんだか知らないけど、私の体をバラそうとする奴はみんな敵……私が出て、周りの人間ごとぶち殺してやる……弱い癖に我を通そうとしやがってあの目ん玉ブラックホールが……」
何やら目が色違いの俺達は諦めムードだが、確かにこの状況なら仕方ない。
前も似たようなことがあったが、異界領域を開かれたら負けはしなくても人間を守るのはほぼ無理。特にバンシーの領域は殺害の速度で言えば段違いと言っても良い。
見方によってはちょうど良い頃合かもしれない。どうせ葵くん達とはそろそろ別れようと思ってたし、でも捨てられない病の俺ではいつまでもズルズル引きずってたろうしこの際スッパリと──────
「では、会議は終わりだな。とりあえずバンシーをシメるか。今なら翡翠が揺らいでるから表に出れるが、誰が行く?」
「それこそ勝ったアルカでいいんじゃないのー? 朕は戦いとか別になーって感じだから出来るならパスだけど」
「私が、私が行く……。傷つけられるのも痛いのももう嫌だ。そもそも、私以外じゃバンシーに勝てないだろうし……さっさとあの人間達も殺して……」
「んー……嫌だわ」
他の俺達の視線が一斉に俺へと向けられた。
特に青い布で目を覆ってる俺なんて、目が隠れてるのに視線だけで串刺しにされそうなほど強く睨みつけてきてやがる。
「ほぅ。クソザコ翡翠の分際で3対1で可決の会議に異議を唱えるか? 面白いから言うてみ」
「冷静に考えたんだけどさ、俺普通に葵くん達と別れたくねぇわ」
葵くん達のことを考えると胸の奥がチクチクとうずうずとモヤモヤの混ざったなんとも言えない感触でむず痒くなる。
一緒に居ると心が安らぐし、顔を見ると安心する。ずっとこの不自然な信号がなんなのか考えていたけれど、今ようやく気が付いた。
葵くん達は、俺にとって何よりも大切な──────
「あんなに面白い玩具、手放す理由ないじゃん。俺の大切な玩具を壊したいなら神だろうと誰だろうとぶっ潰すわ」
「…………お主がこの体の主導権あるのって、多分一番人の心がないからだと思うぞ?」
「さすがにあの前振りでこの結論は朕も引くわー」
「意見押し通すのは勝手だけどさ……共有の体でゴミと戯れるつもりなら意見通すくらいの強さ見せてよ……口だけじゃなくてさ……」
マジで4000年の中で葵くん達並に面白い人間はいなかった。
気が付かないうちに俺はその面白さの虜になっていたのだ。どうせ100年に満たない時しか生きられなくても、彼らのその短い時間には俺の4000年を超える愉悦が詰まっている気がしてならないのだ。
故に、手放すなんてありえない。自分勝手と言われようが別に俺は人間と対等だなんて思ってないし、命は平等とか嘯く誠実さも持ち合わせていない。
俺が楽しければそれで良い。
なのでまずは俺の邪魔をするであろう偽物の俺達をぶちのめそう。
「異界領域────『万魔屍山無明郷』」
クズの人の心が分からない外道の化け物が、偶然人にとって心地よい言葉を吐く最悪なタイプの化け物。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
激突!クレイジーサイコネクロフィリアクソレズVSクソザコ
続き!生えた!
バンシーにとって人間は自らの欲望の発散対象であり、それ以上でも以下でもない。故に殺すと決めたら手加減なんてものは無いし、不死者であるアルカは何をやっても死ぬわけがないのだからこちらも手加減する理由がない。
(殺すつもりで攻撃したのに、あのオスの人間、妙な術を使ったな……?)
本来、バンシーの異界領域は人間がどうこうできる範囲のものでは無い。たとえ最高品質の科学兵装を持ち込もうと、全て塵に変えられるだけ。
しかし今回は違った。アルカの知り合いらしき若いオスの人間。そいつが手を翳した瞬間、ほんの一瞬であるが異界領域の攻撃が完全に中和された。人間に完全に中和なんて無理だろうから代わりに腕が片方塵にされたが、それに対してもなにか驚くことなく、冷静に断面を握り潰して止血を行っていた。あまりの判断の速さに少し気持ち悪いほどだった。
故に、バンシーはほんの一瞬思考が止まった。
コイツは本当に人間か? 人間だとしたら、一体今何をしたのか、どのような理由で文字通りの必殺の攻撃を退けたのか。しかしよりによってなんで男なんだよ。気持ち悪いから性転換してから出直してこいよ。そもそもアルカを誑かしてるならどうせ殺すしどうでも良いか。
人間とは作りから違う死の精霊の思考時間は須臾にも満たない刹那の時。
そのほんの一瞬、バンシーの思考はアルカから外れた。
「異界領域────『万魔屍山無明郷』」
僅かな判断の遅れがその領域の展開を許した。
魔眼で覆われた領域が緑色の粘液に侵されていく。それは間違いなくアルカの異界領域。
良くも悪くもアルカはせっかちな不死者。何事も面倒くさがって、早く楽に終わる道を選択しようとする。だからこそ、わざわざかなり疲労する異界領域を使うだなんて考えていなかった。
すぐさま領域の展開を強めて競り合いに持ち込む。まともに競り合えば精霊として年季のある自分に分がある────
「え────あ、ひゅ────」
気がつけば右半身が喰われていた。
粘液に覆われたアルカの右腕が変形し、巨大な顎を持つ爬虫類の様な見た目となりバンシーの右半身を食いちぎったのだ。
偽物の俺を全員纏めてぶちのめしたら戻ってこれたのでとりあえず軽くバンシーを真っ二つにしつつ、状況を確認する。
多分時間は経過していない。何となく繋がりを感じれるようになったからわかるが、多分あの3人は別人格とかではなく、この肉体に偶然備わってしまった別の魂だ。
肉体に魂は1つなので、そんなこと本来はありえないけど多分俺転生とかしたからなぁ……。その影響で魂が増えたりしちゃったのかもしれん。色々学んだけど、魂の法則的に転生って完全にバグだし。
「アルカ……その腕……」
訳が分からないと言った感じで固まってるみんなの中で、唯一葵くんだけが俺にそう語り掛けてきた。
でも今は説明するのめんどくさいね。そもそも、バンシーとまともにやり合うなら本気出さなきゃいけないし。
というか葵くん、バンシーの攻撃で腕やられたなら止血しないとやばいと思ったけど、自分で腕潰して血を止めたのね怖ー。マジで人間分からないわ怖ー。
「後で説明するから、ちょっとそこで待っててね」
「いや、待っててってうわっ、なんだこの粘え──」
とりあえず『原初の緑』で葵くん達を覆ってその辺に放っておく。葵くん達の防御に3割俺が使えるリソースを回しておく。これなら余波でうっかり死ぬこともないだろうし安心安心。
「アルカ……どういうこと?」
体が半分無くなってるのに別にどうってこともないようにバンシーは喋りかけてくる。傍から見ると不死者って結構気持ち悪いな。全力で理に刃向かってる感じが生き物感しなくてキモイ。
「喋るなら半分治してから喋ってくれない? 俺、断面趣味はないからさ」
「治せないのはアルカのせいでしょ。……なんで人間なんか守るの? どうせ一時の玩具なんだから……」
「一時だろうがなんだろうがここ4000年で一番面白い玩具だもん。最悪徐福辺りと協力して不死化の薬作ってでも楽しむよ。俺が気に入ったんだから、もう俺のものだし」
「そういう相手を全く思いやらない自分本位なところも、そのくせして相手のことを思ってるみたいな言葉を吐くところも、邪魔になった相手には本気で殺意を向けてくれるところも……好き!!! 大好き!!! やっぱり殺し殺されし合うのは私達だけの特権だよね!」
バンシーの攻撃はウィルスによる不可視の攻撃。
ウィルスと言っても生物非生物問わず分解して自己増殖の餌にするもうそれウィルスって呼んでいいのかわかんない代物。
それにしてもバンシーって俺にそういう感情向けてたのか……。
見た目は良いけど、俺別に恋愛感情とかマジでペルシャ湾辺りに落としてきちゃったから残念だけどその気持ちに答えられないのよね。
「そもそも、今俺お気に入りの玩具を傷物にされてブチ切れてるの。首絞めッ〇スしてくれても愛の告白はノーセンキューで」
「そう、じゃあ一旦殺してあげるね!」
俺の異界領域────『万魔屍山無明郷』はなんか気持ち悪い緑色のネバネバを生み出す領域。かっこいいから『原初の緑』って呼んでるけどそれが何なのかは俺もよくわかんない。
このネバネバはものすごく適応能力が高く、あらゆる状況に適応して変化する。色々弄って、自分の肉体に纏わせれば自由自在に肉体を変化させることも出来る。
防御に使えばどんな攻撃も一度受ければ耐性が付与できるし、攻撃に使えば時間さえかければあらゆる防御を突き破る。
まぁ防御に使うのも時間かけるのもめんどくさいし、とりあえず相手にぶつけまくればいずれ防御を上回る攻撃を繰り出せるとてもわかりやすい強みがある。これを使って今さっきもバンシーが自分の周囲に展開していた分解ウィルスの壁も解析を繰り返して突き破って、ついでに体の中でバンシーの再生過程を解析させて妨害させている。
後2回、バンシーに攻撃をぶち込めばしばらくの間再生不能にして行動不能に……
「──『朱槍』」
急に胸の辺りの風通りが良くなったと思ったら、俺のそこそこ大きくて形の良い胸が物の見事に空洞になって、ついでに内側にウィルスが入り込まれた。
「適応前に高威力の攻撃をぶち込めば普通に通る。アルカのことならなーんでも知ってるんだから。そして、私のウィルスを体内にぶち込まれれば変異、増殖を繰り返して不死者と言えど1分でしばらく行動不能になる。その間にあの人間たちはゆっくり殺させてもらう」
「1分とか長いじゃん。さっさと終わらせようよ」
「じゃあもっともっと、私のウィルスでアルカを犯してあげる!」
バンシーが全力で走り出すのと同時に俺も意識のレベルを一段階あげる。この状態ならたとえ光速で動こうと対応できる。弱点はこの状態を維持していると1分がめちゃくちゃ長く感じること。不死者にとって時間を長く感じるのはマジで拷問に等しいので普段は切っているが、相手が光速で動くならこちらもそれに対処できるようにしなければならない。
「──『ク・ホリンの咆哮』」
バンシーの声と共に今度は頭の上半分が消し飛んで視界が利かなくなる。
ぶっちゃけると常にウィルスが変異するわ攻撃が不可視無音だわでバンシーとの相性ってかなり悪いんだよね俺。まぁ少なくともバンシーが少しでも葵くん達に意識を向けたなら一撃で行動不能に出来る程度にはこちらも攻撃の手段があるのは救い所。ポケ〇ンのように防御不利と攻撃不利はイコールでは無いのだ。むしろウィルスの防壁を解析して突破できる俺の攻撃はバンシーにとっても天敵だろうし。
「その攻撃ズルくない? 頭部消失の概念攻撃とかクソ技じゃん」
「それで頭の下半分が無事で済んでる方がおかしいんだよ。半分防いでるんだから」
ちなみに俺達は音を音速より速く飛ばすことも不死者だから出来るので光速の戦闘中も会話出来るに決まっている。不死者だし。
「それより今の攻撃で残り時間は30秒もなくなっちゃったよ? 大人しく投降してくれれば今夜はじっくりゆっくり締めてあげるのに」
「アレ、ハマると中毒性ヤバいから遠慮しておきます。ホントハマるとヤバいんだって! 気持ち良すぎてその事しか考えられなくなるから!」
「いいじゃん! お互いのことだけ考えて酸素も無視して互いの体を貪ろうよ!」
冗談抜きにこっちの体を貪ってくるからバンシーはタチが悪いんだよなぁ。
……ふと、首絞めを葵くんとやったらどうなるのか考えてみた。葵くんが俺の首を絞めてる時の顔とか想像したら面白そう。照香とかもなんかウブそうだし面白そう。
でも、人間って関節の可動域が狭いし、何より3日くらい食わないと死ぬからアルティメットポリネシアンセッ〇スとかすると死んじゃうから無しだわ。やっぱやるなら不死者とに限る。アルティメットポリネシアンセ〇クス出来るし。
「およっ?」
また考え事してる間に両足が粉になってしまった。
多分俺に残された時間は既に5秒程度。そう言ってもまだ戦闘開始から1秒も経過していないので制限時間は気にしなくても良いだろうが、さすがにあと一撃食らうと再生が出来なくなる。現に粉になった足は再生できないままだ。
「よし。解析完了」
だが間に合った。
俺の勝ちだ。粘液を左腕に纏わせて変化させる。狙いはもちろんバンシーのみ。既に必中は約束され、必殺は確定した。
何も俺だってただ攻撃を棒立ちで受けていた訳では無い。
体内で粘液を練り上げ、バンシーの領域を解析し、現在の俺が繰り出せる最強の攻撃の準備をしていたのだ。凛花とかとマジで戦ったら用意出来る前に俺が戦闘不能にされるけど、ある程度時間さえ稼げれば俺は確実に相手を殺せる。
……相手は不死者なので、正確には戦闘不能に出来るだが、細かいことはどうでも良いだろう。
「解析完了────アイルランド神話群再顕、全能類太陽目 ルー・イルダーナ」
右腕が粘液と共に泡立ちながら変形して、擬似太陽を瞳に納めた巨大な槍のような頭部を持った蜘蛛が生まれた。
……まぁ、コイツがどんな風にしてバンシーを倒すのか知らないけれど、とりあえず多分勝てたからヨ──────
瞬間、蜘蛛の頭部が弾けて世界が溶けた。
「いやー、まさか自爆するとは思わなかったわ。バンシーの異界領域の名前に合わせて太陽神の名前付けたのに自爆するとか思わなくない? まぁ俺らには全く害のない攻撃っぽかったから良かったけど」
「私には……バッチし効いたけどね……」
異界領域が解けたというか溶けて、元の空間に戻ったそこにはバンシーの生首が転がっていた。
傷口もしっかり俺の粘液……もとい原初の緑が侵食していて、ろくに再生できる様子もない。しばらくは行動不能だろうし、俺の勝ちで良いだろう。
「で、なんでこんなことしたんだ?」
「アルカと久しぶりに殺し合いたかったし、あと人間達に嫉妬したからかな?」
「ふーん、あっそ。じゃあ教えておくけど、俺の玩具を傷つけたら次はお前と絶交だから」
「えー、アルカってば意外と器が小さ──」
原初の緑を活性化させ、頭の内側からバンシーを串刺しにした後、全力で宇宙へと放り投げる。
多分アレで10年くらいは再生がろくに上手くいかないだろうし、途中で変質した原初の緑が光速くらいには加速してくれるから、10光年先には運んでくれるだろう。バンシーは光速での移動手段はないから、少なくとも100年くらいは顔を見なくて済む。その頃にはこの苛立ちも収まってるだろうし、ちょうど良いだろう。
……さて、邪魔者は蚊帳の外に放り投げたし、こっちはこっちでやることをやらないとな。
「アルカ……その姿は……というか、頭の上半分が……」
やっべ、治すの忘れてたわ。
◆
242:NN.ぐやぐや姫
今、なんかがものすごい速度で宇宙空間に放り出されたんだけど
243:NN.ブラド
おい、今度は誰が何をやった
244:NN.雪ん子
あれブラド?体治ったの?
245:NN.ガイアッ
ア、ア、アルル、ア
246:NN.マリン
パンゲアは一体何があったのだ
247:NN.ブラド
相変わらずネット運営は魔女の方に任せてある。今は髪の毛を腕代わりにしてスマホからだ
248:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
ゆっくりブラドが髪の毛でスマホ弄ってるところ想像したら笑いが止まらんww
249:NN.ヴォドゥン
タコ〇カみたいで可愛いじゃん
250:NN.侵略タコ娘
ブラドちゃん私とお揃いじゃん!
まぁ私は下半身がタコでついでになんか獣の多頭ついてる化け物だけど
251:NN.妖精武器庫
反応しにくいからそういうこというのやめてよ……
252:NN.ブラド
ヴォドゥンに可愛いとか言われても鳥肌が立つだけだからやめてくれ
253:NN.クククルン
ヴォドゥンに辛辣で草
254:NN.オーカミ
>>253
教育失敗酒クズは黙ってろ
255:NN.ヴォドゥン
>>253
娘同然の相手に監禁される気持ちはどうですか?
256:NN.風呂メテウス
>>253
黙れ酒カスコアトル
257:NN.クククルン
ねぇ、そろそろ俺泣くよ?大洪水で人類滅ぼすよ?
258:NN.ハッピージョー
それはそうと、今さっきどこかで異界領域がぶつかり合いましたよね。何か関係あるんでしょうか?
259:NN.万死
ごめん、それ私だわ
260:NN.ぐやぐや姫
万死ちゃん何やらかしたの……
261:NN.マリン
今連絡つかないのは凛花だが、奴にやられたのか?
262:NN.最新の魔女
万死さんの居場所を掴みました。現在地球から50万kmほど離れた宇宙です。現在も加速中
263:NN.雪ん子
???
264:NN.ブラド
お前本当に何やったんだよアホ
265:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
ブラドキレた!
266:NN.万死
ちょっとアルカにちょっかいかけに行ったらボコボコにされて宇宙に放り投げられた。脳の中に分解して隠し持ってたスマホから今連絡してる。
267:NN.風呂メテウス
状況が面白すぎる……
268:NN.ガイア
あ、あ、アルカ、ぅぅ、あ
269:NN.雪ん子
何やらかしたらそうなるの……?
270:NN.ハッピージョー
そう言えばアルカさん、随分人間と仲良さそうにしてましたもんね
271:NN.万死
ちょっとアルカと仲良さそうにしてる人間いたから殺そうとしたらいきなりキレてさー。久しぶりに良い殺意向けてもらって楽しかったけど再生封じされて生首にされたせいでしばらく戻れなさそう
272:NN.最新の魔女
あまり離れすぎると相対性理論の否定式の効果範囲外に出て通信が不可能になるので注意してください
273:NN.ヴォドゥン
まぁゆっくり万死じゃ何も出来ないだろうし注意もクソもないけどな
274:NN.オーカミ
というかアルカって万死に勝てるのか。徐福は万死の方が強いって言ってなかったっけ?
275:NN.ブラド
まぁアイツはマジでめんどくさがりだし、本気出すほうが珍しいから徐福は知らないこともあるだろ。実際あの領域は殺すことなら万死の領域よりも得意だし
276:NN.妖精武器庫
それにしてもアルカってどこに地雷があるのか分からないよねー。なんで仲の良い人間が殺されかけたくらいで万死吹っ飛ばしたんだろ?
277:NN.ハッピージョー
え
278:NN.マリン
奴も一時期研究熱心なこともあった故、希少な性質を持っていた人間だったのではないか?
279:NN.雪ん子
お姉様に限ってその人間が好きになったとかはないでしょうし……
280:NN.万死
あ、電波悪くなってきた。
多分30年くらいはそっち戻れないからよろしく
281:NN.侵略タコ娘
意外と早く戻ってくるんだねー。もうちょっと頭冷やしてれば?
282:NN.万死
原初の緑が再生阻害してくるけど、こっちはこっちでその性質を解析して分解しちゃえばどうにかなるしね。でもあと2年は無理そうだからこのままじゃ確実に通信範囲外行くわ
283:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
アルカと言えばアイツ貸したこち亀返してくれないんだけど
284:NN.ハッピージョー
皆さん……お気に入りのゲーム壊されたら腹立ちますよね?それに近いものだと思いますよ……
285:NN.風呂メテウス
徐福……お前ゲームと人間を同じ尺度で見ているのか……
286:NN.マリン
心というものがないのか……?
287:NN.ブラド
お前本当に元人間か?今の発言はやばいぞ?
288:NN.ヴォドゥン
怖ー。徐福怖ー。ゲームと人間とか比較の対象にならないじゃん
289:NN.雪ん子
徐福……アンタそんなこと言うようなやつだったの……?
290:NN.ハッピージョー
なんですか。今の発言の何がおかしかったんですか。もう嫌ですROMります
291:NN.クククルン
徐福、疲れてるのか……?
292:NN.最新の魔女
比較的不死者としての経験が浅いらしいので、それが関係しているのですかね?
293:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
若さで言ったら私と最新の魔女がぶっちぎりだろうけど
294:NN.雪ん子
まだ近くにいるし、様子見に行ってあげよ……
295:NN.妖精武器庫
それにしてもアルカって万死倒せたんだね。結構強い方じゃん万死って
296:NN.ブラド
前にアイツが自分で言ってたけど、『時間さえあれば神でも殺せる』がキャッチコピーだって言ってたからな
297:NN.クククルン
まぁ俺は殺されないけどね
298:NN.侵略タコ娘
マジで黙ってろよ酒クズがよォ……
299:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
死んでくださいMr.妹レイパー
300:NN.ブラド
まぁ、アイツのせいで1回人類滅びかけたけどな
301:NN.オーカミ
なんだっけ、『真霊長類光明目 アルスノヴァ』だっけ?アイツがぼくのかんがえた最強の生き物!って言って制御不能になったやつ
302:NN.マリン
下手すれば星を滅ぼしていたやつだな。結局殺す手段がなく永久封印して星外に放り出したはずだ
303:NN.風呂メテウス
まぁみんな1度くらい地球滅ぼしかけてる手前色々言えないけどアレはアホの極みだよね
304:NN.侵略タコ娘
最強だから俺に支配されるはずないから支配外したわ、制御出来ねぇわ勝てねぇわってなったの馬鹿としか言いようがない
305:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
タコの刺身見せられて人類滅ぼそうとしたアホがなんか言ってる
306:NN.妖精武器庫
タコ娘ちゃんなにやってんの?
307:NN.ブラド
>>306
多分タコ娘も本来の伝承とは別にスレンダーマンとか言う怪異認定されてるお前よりはマシだ
308:NN.ヴォドゥン
スレンダーマンが少年を攫う怪異として伝わってるのそういう理由だったのかよ……
309:NN.最新の魔女
皆様に伝えたいことがありますが、今回の事件の元凶、見つけました
310:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
何?アルカは日本にいるんでしょ?
311:NN.雪ん子
そっちじゃなくてゾンビの方でしょ
312:NN.ブラド
やはりというかなんというか、星核に潜んでいる。手を出すのが難しいな。
313:NN.マリン
我とパンゲアと凛花が揃えば大抵はどうにか出来ると思うが?
314:NN.ガイアッ
あ、あるる、あー、ある!
315:NN.オーカミ
ダメそうですねこれは……
316:NN.クククルン
俺が出ると下手したら地球ごと叩き割っちゃうしなぁ……
317:NN.もりもり
やっぱこういうのはアルカが一番適任だよね
318:NN.妖精武器庫
あれ、もりもり居たんだ
319:NN.風呂メテウス
それにしても、星を渡りその星の意志を乗っ取って霊長を自身の子にすりかえるとは、随分面倒な生態をした生き物も宇宙にはいるものだね
320:NN.ブラド
気がつけなかったのは不甲斐ないが、起きてしまった以上は全員で滅ぼすしかあるまい
321:NN.ヴォドゥン
ほっといたら地球が養分吸い取られて死ぬし、こりゃ俺達も久々に運動するしかないか
322:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
えぇ……メイク崩れるからやだ……
323:NN.雪ん子
地球全部私の異界領域で覆うとかアリ?
324:NN.ブラド
お前は地球を氷塊にしたいのかアホ
325:NN.雪ん子
地球丸ごとかき氷とか美味しそうじゃん
326:NN.ハッピージョー
一応聞きますけど、今って地球の危機なんですよね?
語るまでもないアレコレ
・『星羅転埋伏暦』
人間の手によって編まれた大都市の姿をした紅葉の異界領域。
その理は逆転。あらゆる現象、意志を本来とは逆の方向へと進める領域で、正しく異界と言うべき領域。
ちなみに翡翠は原初の緑で効果を中和しながらぶん殴ってゴリ押しました。クソだね。
・『転輪廻聖王言』
七つの巨大な天輪の浮かぶ黄金の世界の姿をした琥珀の異界領域。
その理は聖座。言霊術の最高位でありこの領域内では琥珀の言葉が全て現実となる。対応能力においてはアルカ内でも随一であり応用が効くが、翡翠は原初の緑で領域中和してぶん殴ってゴリ押しました。クソだね。
・『成劫魔始源炎』
髪の毛が青色に変色し身を覆うようにして開かれる蒼海の装備型異界領域。
その理は否定。あらゆる物質を弾く否定領域を生み出す髪の毛を際限なく増殖させる。髪の毛の否定領域同士の間に挟まれた物質は存在が『否定』され分解される。防御力と手数においては最高級であるが、翡翠とは純粋なパワー比べになりなんか笑顔が気持ち悪くてビビって負けた。クソだね。
・『万魔屍山無明郷』
原初の緑、生命の源で満たされた、それ以外何も存在しない翡翠の異界領域。
その理は適応。原初の緑は何者でもなく、何者にでもなれる可能性を持ち、翡翠の命令に応じて変形、変態、進化を繰り返す。本人の精神性故に相手の弱点を解析して絶殺する脳筋領域になってるが、地味に緑で対象を覆えば異界領域内でも守れたりとかできる。けど本人が馬鹿だからガードの上から解析と自己バフで殴って殺すことしか出来ないよ。馬鹿のくせに知識はあるからあらゆる情報から的確に相手の弱点を突いてくるよ。クソだね。
・なんで今まで勝てなかったのに勝てたの?
気持ちの問題。何がなんでも相手をぶち殺すハングリー精神。異界領域は魂の具現化であるため、特に精神の状態は影響する。つまり相手のことを考えない天上天下唯我どクソん精神が重要。
結論:クソ
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
ネット開通・クソ降臨
続きが今日も生えてきました。
この作品はコメディなので人外モノでよくある重い感じのところはざっくり流します。
後書きでちょっぴり長めの解説がありますが、どうせ本編とは一切関係ないので飛ばしていいです。
「……というわけで、俺は人間じゃない不死身の怪物だったんだ」
「「「…………」」」
なんか想像してた反応と違うな。
ドン引きしてるとかそういうのじゃなくて、マジで「だから?」みたいな顔をされている感じ。あれ、これって結構衝撃の真実ゥだよね?
「なんで、今まで黙ってたんだ?」
「いや、普通に気持ち悪がられるかなって。マージで迫害されたのも1度や2度じゃないし。ムカついた時はぶち殺してたけど」
「えっと、ちょっと話し合っていい?」
「100年以内ならどうぞー。あ、これ不死者ジョークね」
葵くん達は俺に聞こえないように3人で固まってなにやらコソコソと話し合いを始めた。その気になれば盗み聞きすることは出来るが、さすがにそれは野暮というもの。聴覚をオフにして3人が話し合いを終えるのを待つことにした。
「……よし、話し合い終わったぞ」
「はーい。で、何か聞きたい事とかある?」
「ああ。今まで俺達に接してきてくれた時のこと。あれは全部嘘だったのか?」
それはちょっと答えづらい質問だ。
演技じゃなかったといえば嘘になるが、嘘をついていたといえばそれもまた嘘になる。
だって俺の言うことは俺の中では全部正しいから、たとえでまかせでも嘘ではないし。俺嘘つかないもん。
「まー、お淑やかな儚げ美少女は演技だったけど嘘はついてないよ。俺は正直者だからね」
「そうか。なら別に気にするようなことは無いな」
…………マジで?
俺が言うのもなんだけど、さすがにその判断はだいぶぶっ飛んでる気がするんだけど。本当に自分で言うのもなんだけど、今しがた吹っ飛んだ頭半分を生やして治した奴と今まで通りに接せるの?
「アルカが化け物だろうがなんだろうが、アルカはアルカだしな。むしろ強くて死なないなら守る手間が省けるし、これからは少し楽になるからな!」
「私はどんなアルカでもアルカの隣に居たい。なんならさっきみたいにアルカに包み込まれて1つになりたいって思ってるから。準備はいつでも出来てるよ」
「そういう訳だ。俺も、たとえアルカが俺を食い殺すような化け物だったとしても、アルカの血肉になれるならそれでいいし、俺がいつまでもアルカの隣に居たい。たとえアルカが不死身でも、絶対に傷つけないように守ってみせる」
うーん、さすがは俺が気に入った人間3人だね。良い意味でぶっ飛んでる。
もう葵くんと照香は今更突っ込むようなところないけど、剛もさすがにここまで動じない鋼のメンタル持ってると面白すぎる。今まで俺の正体バラしてこんなに動じなかった奴いないぞ。大抵一見動じてないやつは3週間後くらいに世界滅ぼそうとするし。
というか葵くんは気が付いたら腕が生えてるしさぁ……。なんなのこの人達、絶対人間じゃないでしょ。だからこそ面白いんだけどさ。
いや、でもちょっとくらい戸惑いとかリアクションは欲しかったな。なんでこんなにすんなり受け入れられるんだ? 俺、別にそこまで信頼されるような行動積み重ねてきてたっけ?
「……実は、俺と照香はアルカが人間じゃないって気が付いていたんだ」
「なっ!? お前達そんな大切な事俺に黙ってたのか!」
「さすがに剛さんに語るには確証が少なすぎましたからね」
そう言われても、俺って特には人外だってバレるようなことは……。
そういやナナフシゾンビの時にバラバラにされたのガン見されてたな。あの時から普通にバレて……
「葵と何度も話したけれど、アルカは人間にしてはあまりに神々しすぎるから、人間じゃなくて妖精か何かなんじゃないかって」
「ああ。人間と言うには綺麗すぎるからな。多分神かなにかだろうって」
こっっっっっわ。
素で鳥肌立ったわ。信仰されたことは何度かあったけど、こんな狂信的なの久しぶりだわ。判断材料少なすぎだろ。この子達子供の頃に綺麗な泥団子作ってそれすら神として崇めそうじゃん怖っ。
「確かに、初めて会った時から思ってたが神秘的な見た目はしてるよな……よく見りゃ肌や目の作りが人間のものとは違いすぎる」
「あ、剛さんもそこに気が付きます? アルカの目って俺達と作りが根本的に違くて、光の反射の仕方が宝石みたいで綺麗なんですよね」
「私は……アルカの髪の毛が好き。滑らかなのに柔らかくて、それでいて強くて、昔を思い出して好き」
「ええええ。わかりますわかります。アルカは頭上1mの空気から足裏1mの地面まで全てが完璧で完全です。そも、人間の概念精霊である時点で人間の価値観からすれば完璧な存在なのですから」
「はは、そんなに褒めても古代遺産とかくらいしか出ないぞー?」
…………あれ?
なんか今、1人多くなかった?
「初めて会った時は何が起きてるかわかんねぇって面でTシャツ1枚で出てきたけど、冷静に考えたら人類が滅んで数年経ってんのにありゃおかしかったよな!」
「今にして思えばあの時点でも現世から隔絶した美しさがアルカにはありましたもんね」
「あと、アルカが入った後のお風呂はすごくいい匂いがする。きっと人間とは違って汚れないからなんだろうね。アルカはすごい」
「そうなんですよ。アルカの素晴らしいところの1つは、その唯我独尊っぷり。たとえ世界が滅んでも自分の世界から絶対に出てこない……それで何度人類を滅ぼしかけたか。植物である私とは真反対の、決して何処にも根付かない自由奔放さが可愛らしくて、それでいて勇ましく……」
うん、増えてるよね。
明らかに先程まではいなかった見覚えのある和服の女性が増えてるね。
「……ん、ちょっと待て、誰だこの女」
剛!
さすが唯一ギリギリまともっぽい剛だ! おかしいと思ったことには突っ込んでくれるその感性は大事にして欲しい!
「初めまして。私は凛花と言います。先程アルカの邪魔をしたクソザコナメクジの細菌クソブタメス野郎とは違って貴方達に害はないアルカの友人兼植物の精霊です」
「と言ってるが、本当なのか?」
「まぁ……凛花は実際友達だし、俺の嫌がる事はしないから大丈夫だと思うよ」
「そうか。俺は剛だ。よろしくな」
うーんこの適応能力。原初の緑を使う俺もびっくりだよ。普通、凛花クラスの精霊が突然目の前に現れたら良くて失神、最悪神に近しい存在に恐怖して心停止なのに当然のように受け入れらる剛のメンタルはなんなの? 馬鹿?
「アルカがそう言うなら間違いない。俺は葵だ。よろしく」
「私は照香。アルカの友人なら信頼出来る」
君たちもちょっとは疑い持とう?
まぁ、この面白い人間達に何言っても無駄だろうし、だからこそ面白いからいいけれど。
それはそれとしてなんで凛花がわざわざこんな所に来たんだろうか。和服店ならもう日本にあるのは確実に全部営業停止してるだろうに。
「いえ、和服なら以前アルカに貰ったもの……はアルスノヴァの時に破けてしまったのでそれを再現した柄の植物を纏っているのでご心配なく。私がここに来たのは別件です」
ナチュラルに読心をしつつ、凛花はお淑やかな大和撫子スマイルを保ったまま地面を指さしてただ一言。
「……アルカの手を煩わせるのは本当に申し訳ないのですが、さすがにこれを伝えないわけにはいかないので。ブラドからの伝言ですが……要約すると『地球がやばいので至急集合』です」
1:NN.最新の魔女
ブラドさんは『質問があるものは早めに』と『緊急事態故に3日以内に送信した場所に集合』との事です
2:NN.雪ん子
しつもーん、そもそも特定惑星疾病異星体って何?
3:NN.あるこ
それ、俺もよく分かんなーい
4:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
アルカ生きてたんだ。それよりこ〇亀返せ
5:NN.オーカミ
生きとったんかワレェ!
6:NN.マリン
これで繋がらないのは万死とガラティアのみか。前者はどうでもいいが
7:NN.あるこ
とりあえず凛花が用意してくれたスマホからログインしてるわ
8:NN.ブラド
とりあえず、連絡が行ったようで何よりだ。簡潔に言うと今回はアルカが必要だからな
9:NN.妖精武器庫
酒カスだと地球ごとオーバーキルしそうだし
10:NN.ガイアッ
あ、あ、あ?あ???あ
11:NN.侵略タコ娘
アルカはどーでもいーけどそのとくてーなんちゃらかんちゃらってなんなの?
12:NN.ハッピージョー
特定惑星疾病異星体、ですね
簡単に言えば地球外生命体。以前にも3種ほど確認されていてその内1種が恐竜の絶滅の原因となった、とマリンさんから聞いています
13:NN.最新の魔女
そういえばアルカさん。現在私は人間の幼子を育てていまして、かつて伝説の魔女を育て上げた貴方に子育ての極意を是非聞きたいのですが
14:NN.あるこ
なにそれ知らん
15:NN.ヴォドゥン
あれ、アルカが育てたって言えるのか……?
16:NN.マリン
>>12
要は星に対する細菌だな。内側から星の意志を侵食し、新たなる惑星意志の精霊を生み出し繁殖し、星そのものを自分の苗床にしてまた宇宙に拡散する厄介な代物だ。
あと、恐竜が滅んだのは正確に言えば奴らが出始めた頃に苛立ってたパンゲアが降らした隕石が原因だ
17:NN.もりもり
あの時大変だったなー。そう言えば最近の星からの伝令っぽいのがバグってたのもそれのせいか
18:NN.あるこ
俺も一応惑星産の精霊なのにそれなかったんだけど
19:NN.妖精武器庫
馬鹿だからでしょ
20:NN.もりもり
は?
21:NN.妖精武器庫
ヒエッ
22:NN.最新の魔女
>>15
記録ではアルカさんが幼年期に面倒を見たことになっていますが……違うのですか?
23:NN.ブラド
今回はもうだいぶ育ってるからな。このままじゃ星が細菌を拡散するために爆発する
24:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
えー、家無くなるじゃーん
25:NN.オーカミ
>>22
育てたってか、拾った挙句にある程度まで育ててだるくなったから育児放棄するために目の前で死んだ結果、その子が人類そのものを呪う厄災になったという最悪の子育て失敗例だぞ?
26:NN.風呂メテウス
やっぱり畜生じゃないか!
27:NN.あるこ
いや、ちょっとこの子の前で庇って死んだらどうなるのかなーって思っただけで悪気はなかったんです。すごく魔術の才能あったし。
28:NN.ハッピージョー
最悪ですよ。マジで最悪ですよ。
29:NN.雪ん子
確かに。育児放棄はお姉様でもいけないと思います
30:NN.妖精武器庫
ホント、最後まで面倒見る気がないなら人間育てちゃダメだよ
31:NN.最新の魔女
私は何がなんでもドリスの人生の最後……さいご……ドリスは、いつか死ぬのですね
32:NN.ハッピージョー
気の所為ですかね?皆さん普通にアルカさんに負けず劣らずなこと言ってる気がするんですけど?
33:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
命を育てると決めたなら途中でそれを投げ出すのはいけないことでしょ常識だよ
34:NN.ぐやぐや姫
やっぱ不死の薬って精神に悪影響あるんじゃないの?
35:NN.ハッピージョー
え、おかしいの僕なんですか?
36:NN.ブラド
魔女狩りという文化はあの子が原因で生まれたものだからな……大騒動ではあったな。
あと、雑談するなら別スレでやってくれ
37:NN.妖精武器庫
そう言えば地球がやばいんだったね。具体的に何すりゃいいの?
38:NN.マリン
細かい事は集結してからで良かろう。そこまで切羽詰ってるわけではないだろうしな
39:NN.ヴォドゥン
本当にやばくなったら最悪地球全域を酒カスの領域で覆えばいいし
40:NN.侵略タコ娘
だいたい星核って精霊じゃないといけないから私達何も出来ないじゃん
41:NN.クククルン
すまん……今の俺、なんか領域出せないわ
42:NN.あるこ
何?また四年酔い?
43:NN.ブラド
こんな時まで酒かよ酒クズがよ……
44:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
ブラドすらこの言いよう
45:NN.最新の魔女
ケツァルコアトルさんは……学習能力を失ったのですか?
46:NN.ぐやぐや姫
アル中コアトル
47:NN.もりもり
遂に魔女ちゃんにすら言われてる……
48:NN.クククルン
いや、違うんだよ。何かに俺の異界領域が抑え込まれてる。と言うか、監禁中もいつでも再生できるようにしていた手足も再生できなくなってる
49:NN.ガイアッ
あ、あるる、まま……ママ!あるかママ!
50:NN.雪ん子
マジでガイアぶっ壊れてるんだけど
51:NN.あるこ
パンゲア何があったの?怖っ
52:NN.もりもり
プレートに頭ぶつけたんじゃない?
53:NN.オーカミ
冗談はよせよ酒カス
54:NN.クククルン
いやガチだって!
スマホを肉体と一体化させてなきゃ通信も出来なくなってたと思う
55:NN.妖精武器庫
仮に酒カスの言ってることがホントならやばいんじゃないのー?
56:NN.ハッピージョー
ケツァルコアトルさんより強い不死者はいませんし、もしもそれがゾンビによるものならもうこの星はお終いですね
57:NN.ぐやぐや姫
悪いなみんな。この異界領域1人用なんだ
58:NN.もりもり
逃がさんぞワレェ!
59:NN.雪ん子
どうせ死にはしないから地球と一緒に吹き飛ぼうね♡
60:NN.ぐやぐや姫
クソっ!地表から植物と氷伸ばして私の領域捕まえやがったコイツら!
61:NN.ブラド
今マジで大変な時だから気軽に能力の行使するのやめてくれるか?
62:NN.ヴォドゥン
いや、有り得ねーよ。
ケツァルコアトルはそもそも本来神話から追放されなきゃこの星に居ないイレギュラーであって、地球が生み出せる最高スペックの存在はパンゲア、オケアノス、凛花辺りのが限界だ
63:NN.最新の魔女
特定惑星疾病異星体とやらが惑星意思にブーストをかけてる可能性は?
64:NN.マリン
有り得ぬ。むしろ惑星とて異星体に自由にされないために旧生命、この場合は人類に助力するはず故にケツァルコアトルのスペックを超えるゾンビが生まれる可能性はほぼゼロだろう
65:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
ほぼゼロ……あっ……(察し)ふーん
66:NN.最新の魔女
この世の事象の確率を0%にすることは不可能ですからね。モード:ラプラスを使っても事象確定は出来ません
67:NN.妖精武器庫
星渡とか面倒くさそうだな……
68:NN.ブラド
諦めるのが早いぞショタコン
69:NN.ヴォドゥン
いやー、でもそんな強い個体が出てるならなんでさっさとケツァルコアトルを無力化して俺達を襲わないのか。そもそも酒カスのところのアンナちゃんは?
70:NN.クククルン
今日も元気にゾンビ狩りに行ってます
71:NN.ハッピージョー
なら尚更おかしいですね。彼らの優先目標は人類の殲滅であるはずなので、ケツァルコアトルさんの能力のみを封じる理由がありません
72:NN.雪ん子
つまり……酒カスが酔っ払ってるってこと?
73:NN.あるこ
うわぁ……
74:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
クズが代
75:NN.オーカミ
マジでさぁ……酒カスはさぁ……
76:NN.ガイアッ
ママ!アルカママ!マ!
77:NN.クククルン
自分、弁護士呼んでいいですか?
78:NN.あるこ
んで、なんで俺なの?
星核に病原体が潜んでんのはわかったけど、なら凛花で良くない?
79:NN.マリン
パンゲアはご覧の有様、凛花と我では星核ごとダメにする可能性が高い
80:NN.ブラド
というわけでお前だアルカ
81:NN.あるこ
嫌でござる。責任負いたくないでござる
82:NN.雪ん子
お姉様……
83:NN.ブラド
お前なっ!
いい加減にしろ!お前のせいで何回星が滅びかけてると思ってるんだ!あの死生合一事変の時も!闘神顕現の時も!万呪の魔女の時も!南極誕生の時も!グランドキャニオンの時も!仮想怨念魂怪・ヴァンパイアの時も!古代兵器レディオシアの時も!アルスノヴァもアイン・レヴィ・ソフも天之御中主も!全部お前のやらかしで地球がぶっ壊れかけて全部私が後始末の主導したんだぞ!?たまには恩を返せこのクソニート!バカ!
84:NN.あるこ
……いや、その……すいません
85:NN.侵略タコ娘
改めて見るとぶっちぎりでアルカが滅亡案件の発生数トップじゃん
86:NN.オーカミ
しかもこれでも一部だからな。全部入れたらボ〇ムズコピペみたいになるぞ
87:NN.マリン
我ですら1度世界を海に沈めようとした程度だと言うのに……
88:NN.妖精武器庫
やっぱアルカクズーww
89:NN.もりもり
妖怪ショタ攫いが何言ってんだか
90:NN.ハッピージョー
え、ブラドさんが言ってる奴全部アルカさんが原因なんですか?
91:NN.最新の魔女
いずれも人類滅亡どころか地球崩壊レベルの危機案件ですね。アルカさんは私のことをとやかく言えない程度には危機意識がないのではないでしょうか?
92:NN.あるこ
なんか魔女ちゃんちょっと口悪くなってない?気の所為?
93:NN.ヴォドゥン
ほら、妊娠した熊は凶暴になる的な……
94:NN.オーカミ
確かにちょっとキャラ変わったよな
95:NN.風呂メテウス
有名なので言うと暗黒時代もアルカのせいだぞ
96:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
やっぱアルカは封印した方がいいんじゃないの?
97:NN.雪ん子
クソネカマ陰陽師は千鬼夜行のこと忘れたとは言わせないからね?私現場にいなかったから知らんけど
98:NN.マリン
保守派であるブラドですら、1度は人類を滅ぼしかけてるからな
99:NN.妖精武器庫
ブラド『死こそが生命に与えられる救いであり、安らぎである。故に我は全ての人類に墓守として最後にして永遠の安寧を与えよう』
100:NN.ブラド
殺すぞ
101:NN.あるこ
言ってた言ってたww
眼帯とマフラー付けてた頃のブラドww
102:NN.オーカミ
あとなんだ、ヴォドゥンも壊劫級遺物持ち出してなんかやらかしたよな。なんだっけ、昔のロシアの
103:NN.ヴォドゥン
悪いけどあまりその話はなしで。割と引き摺ってんだよ
104:NN.侵略タコ娘
ヴォドゥンに引き摺るとかそういう感性あったんだ……
105:NN.ブラド
意外とセンチなところあるからな。アナスタシアだったかあの子の名前
106:NN.ぐやぐや姫
私も昔遊び半分で衛星砲撃ってそれがパンゲアに直撃してなー。殺されるかと思った
107:NN.あるこ
一旦雑談は置いておいて、とりあえずアメリカに行けばいいの?
108:NN.オーカミ
久々に直接会うことになるのかー。万死とガラティアとケツァルコアトルはいないだろうけど
109:NN.マリン
そう言えば我と最新の魔女は顔合わせは初になるのか?
110:NN.侵略タコ娘
お土産にたこ焼き持っていくねー
111:NN.雪ん子
だからタコ娘ちゃんのギャグ笑いにくいってば……
112:NN.ハッピージョー
なんか気が重いです……こう、マジで皆さんって人外なんだなぁって思うと
113:NN.オーカミ
徐福もこっち側だけどな
114:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
言うて1番徐福が頭おかしいと思うぞ?
115:NN.あるこ
身体能力は人間に頭潰されるくらいクソザコだけど頭はおかしいよね
116:NN.ハッピージョー
なんか僕悪いことしました?
117:NN.ブラド
コイツらは基本的に生きてるだけで誰かをバカにしてないと気が済まないクズどもなんだ許してやれ
118:NN.風呂メテウス
常夜事件の時のこととか考えると徐福が1番飛んでると思うけどな……
119:NN.最新の魔女
あと、もう一つアルカさんに聞いておきたいのですが、どうすれば母乳は出ますか?
120:NN.あるこ
妊娠しろ
121:NN.最新の魔女
わかりました
122:NN.ハッピージョー
え?
・剛
メンタルがおかしい人。特に辛い過去とかもないし特別な経歴もないけど確実にこの作品で1番のオリハルコンメンタル。どこにでもいる武器の扱いとサバイバルになれたおじさんだが、何が起きても動じないメンタルと節穴アイを持ち合わせたおもしれー人間。
・照香
出自がおかしい人。どっかのクソ野郎が漏らした緑色の液体から究極生命を作ろうとしたやべー組織の被検体だったけど、色々あって外に出てアルカにハートを撃ち抜かれた子。やたら適応能力が高く、変態を繰り返して強くなる変態。最近の嗜みはアルカの残り湯で髪そうめんを食べることなおもしれー人間のような何か。
・葵
なんかおかしい人。普通の青年だったけどアルカにハートを撃ち抜かれてなんか知らないけどすごく成長した。間違いなく純粋な人間で、現在も人間のはずだが腕は再生するわ徐福の言霊に僅かにであるが抵抗できるわ異界領域を僅かに中和できるわ何かおかしい。化け物じゃないよ。純愛だよ。
・アルカ
性格の悪いクソ野郎。一応、人類という概念の精霊であり呪〇廻戦で言う真人。つまりクソ。
・空劫級星害指定 真霊長類光明目 アルスノヴァについて
アルカのかんがえた最強の生き物。最強の生き物を作ろうとして生まれた悲しきモンスター。
相手を一発殴っただけで大気圏外に吹き飛ばせる圧倒的パワーと原初の緑の持つ圧倒的適応能力によりあらゆる攻撃を一度受けただけで完全に無効化し装甲はあらゆる攻撃を一度だけ威力を99%減衰させる概念装甲が付いていて、あらゆる物質を侵食して繁殖する怒涛の繁殖能力を持ち、あらゆる物質を終局に至らせるビームとかも撃てるすごいクリーチャー。あらゆるって単語を頭に付ければ何やっても許されると思ってる。
酒カスが四年酔いしていたせいで凛花が出張ったがアルカがミンチにされていたのでスペックを知らず初手で手を抜いたせいで対応能力でボコボコにされ、アルカから貰ったお気に入りの着物を破かれて激怒。余波でサハラ砂漠に存在した文明を存在ごと消し飛ばしてすり潰したけれど、進化し過ぎて不死の概念を獲得したので仕方なく封印して宇宙に放流。今頃どこかの惑星を食い滅ぼしているかもしれないし、考えるのをやめて宇宙を漂ってるかもしれない。
ちなみにアルカはあと2体星害指定の化け物を作ってます。無限類輪廻目 アイン・レヴィ・ソフと巨神類開闢目 天之御中主ですが、2体ともバッチリ封印されてます。アホだね。
・アルカに狂わされた人達
アルカはクソなので医者を志す少年と仲良くなった上で別れる際に病死と偽ったり、面白そうだからって理由で強くなりたい少年を庇って死んだり、忌み子として捨てられた少女を拾って育てて殺しに来た村の者達と相打ちで死んだフリして別れたりするクソ野郎です。
当然彼らは感情が狂い、この世界から死の概念を無くすために生命を全て1度消し去ろうとしたり、神すらタイマンで殴り殺す武神モドキになったり、あらゆるものを呪い殺す魔女狩りの原因となった魔女になったりしてますが本人はなにそれ知らん……怖っ……してだいたい後処理はブラドがやってます。クソだね。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
【オ♡フ♡カ♡イ】不死者達
あんたはここでアルカと死ぬのよ(スワヒリ語で最大限の侮辱の意)
あと、自分の活動報告で番外編で知りたい過去や設定を募集しているのでなんか見たい人は感想だと規約に引っかかりますのでそちらに。
「……ブラドが指定した目的地って、ニューヨークじゃなかったか?」
「ふふ、惚けた顔も可愛いですねアルカ。ここがニューヨークですよ。どこからどう見ても」
「どこをどう見たらここがニューヨークなんだよ。摩天楼どころか起伏がなくなってんだが?」
俺にはどの角度から見ても見渡す限りの更地にしか見えないんだが?
正確に言うと凹凸すら存在しない真っ平らな大地に、たまーに公園っぽいものだけが残ってるめちゃくちゃ不可思議な光景だ。
「遅かったな。いや、来ただけマシか」
そして指定された場所には生首が転がっていた。
さすがにその生首が古馴染みのブラドであることはわかるが、遅かったと言う割には周囲にはあまり人影、もとい不死影は無い。
まず黒と黄色のふわふわとした羊毛のような髪の毛に覆われた生首はブラックドックことブラドでいいだろう。
そしてその隣で宗教画にでも出てきそうな透明感のある美しさを汚ねぇ笑い方で台無しにしているのは湖の乙女ヴィヴィアン。
何も言わず正座しているやたら顔の良い魚人は海の精霊オケアノス。
宙に浮かびながらこちらを見下ろす十二単を纏った美少女は、直接面識はなかったので分からないが多分かぐや姫だろう。
うん。
少なくね? 俺を除いて16人の不死友の居場所がわかってたはずなのに、全員集合と言われて来ているのが俺を含めて6人だけしかいないぞ。地球の危機に半分も来ないとか集まり悪すぎるだろ。
「それじゃ、早速だが本題に入るぞ……」
「いや、ブラドこれでいいの? 6人しか来てないぞ?」
「ご安心ください。私も居るので合計では7名です」
いつの間に背後に現れた無機質さを感じられる無表情の女性は、喋り方と雰囲気からして多分最新の魔女ちゃんだ。前会った時は機械をひたすらにくっつけたゴツゴツしたボディだったが、新しく作った有機体ボディとやらは随分と人間に近い。
そして抱えている赤子は噂には聞いていたドリスちゃんだろう。まさか本当に子育てをしているとは、不死者と言えど変わる人は変わるもの…………
「あの、最新の魔女ちゃん。一つ質問いい?」
「? 構いませんが、何か?」
「そのお腹の膨らみは一体……?」
「妊娠しました」
うん。
うん?
はい?
「えーっと……おめでとうございます? お相手は……?」
「プライバシーの侵害になるのでノーコメントです」
なんだろう。明らかに突っ込まなきゃいけない話だし絶対に何かおかしいけれど、聞いてもまともな返答が帰ってくる気がしない。
この子、まだ生まれて間もないから結構突拍子もない思考で動いて行動が読めないんだよな。永遠に人が生きた証を残すために今の人類を皆殺しにしようとした子だしホントわからん。
「魔女の妊娠については詳しく聞くな。私もわからん。そしてアルカの質問には答えよう。なんでこんなに集まりが悪いのか、なんて集まりが悪いからとしか言いようがない」
めちゃくちゃ腹立たしそうな顔をしながら、ブラドは髪の毛で器用にスマホを操って送られてきたものであろうメッセージを読み上げていく。
『ごめーん♡ちょっと私生理が来ちゃったから今回はパス。本当にごめんねー♡ぴえん。 春ノアキラ』
あのクソネカマ陰陽師、肉体改造した偽女子だから生理来ねぇだろ。
『移動途中に徐福がゾンビ達に囲まれて攫われちゃったので助けに行ってきます。別に徐福が心配とかそう言うことでは無いので決して勘違いしないでください。雪女より』
徐福……アイツ一応不死者なのにあの程度のゾンビ達に負けたのかよ……。まぁ、異界領域使えないから異界領域持ちのゾンビ達に囲まれたら手こずりはするかもだが、それでも攫われるか普通?
あと、雪女はなぜ勘違いしないようにと念押ししているんだ? アイツ、他人の心配するような性格してないから勘違いする要素はないんだけどな。
『監禁されていていけません。ごめんなさい。ケツァルコアトル』
お前を監禁できる存在がこの世界に存在してたまるか。そっちの方が地球の危機だわ。
『面倒臭い。研究データは送るので勝手にやってください。 ヴォドゥン』
遂に言い訳すらしてこなくなったぞ。
『ギリシャ周辺のゾンビ達の行動が活発化したので行けません。申し訳ない。 プロメテウス』
めっちゃまともな理由でそれはそれでツッコミに困る。
『ごめん、オフ会には行けません。私は今、シンガポールにいます 大神』
いや来いよ。
アイツの足ならシンガポールからアメリカまで1時間かからないだろ。なんでシンガポールにいるのが来れない理由になるんだよ。
『ある、あるか! あー、ママ!』
せめて文章を送ってくれ。
『お腹が減りました スキュラより』
だから何?
「…………以上の理由により、今回集まったメンバーは私達だけだ。ないものねだりしても仕方がない。私達で今回の案件は片付けるぞ」
「ブラド、それでいいの? 納得してる?」
「仕方ないじゃん! アイツらが説得とか聞くタマじゃないのはアルカだって知ってるだろ! あと、普段はお前向こう側だからな!? 自分が原因の案件にも腰が痛いとかぬかして来なかったくせに常識人ぶってんじゃねぇぞアホ!」
だいぶストレスが溜まっているのか、生首状態のブラドはバチバチと電気を奔らせながら髪の毛を振り回している。やっぱり何者にも縛られない不死者を監視し纏める立場というのは疲れるのだろう。俺だったら絶対やりたくないし、手伝う気にもなれないが。
「来ないやつのことを考えてもしょうがないでしょー。さっさとやることやろうよ。あ、私は見てるだけだけどね」
「申し訳ありませんが、私も手伝うことは出来ません。これからドリスがおねむの時間なのです」
……かぐや姫と最新の魔女は居るだけで手伝ってくれる訳では無いそうだし、ゆっくりと化したブラドはさすがに何も出来ないだろうから実質今回集まったメンバーは俺、オケアノス、凛花、ヴィヴィアンの4人ということになる。
地球の危機に集まるメンバーの数じゃねぇだろ。4分の1ってなんだよ。深夜にスマ〇ラの部屋作った時の方が集まったぞ。
「安心してくださいアルカ。クソの役にも立たない有象無象なんて居なくても、アルカが居れば解決したも同然です」
「どうせならパンゲアも欲しいところだが、凛花の言う通り地球を救うだけならば我と凛花とアルカさえいれば事足りる。もっと言えばアルカが居なくてもどうにかなる」
「え、じゃあ俺なしでやってよ。俺やりたくないことやりたくないし。今は
「はーい、ここで突然だけど教えて! ヴィヴィアン先生のコーナーだよ〜! 良いショタのみんなは先生に注目してね〜」
帰ろうとする俺の前にヴィヴィアンが滑り込んできて、何故か女教師風の服に着替えてどこからか黒板まで持ってきて解説を始めた。
そういえばコイツ、ショタと触れ合う為に教師やってたこともあったな。まぁマジで手を出して1日でクビになったらしいけど。
「前もネットで語ったけど、今回のゾンビ騒動の原因、『特定惑星疾病異星体』は簡単に言えば星がかかる病気。星の核に取り付いて星の意志を捻じ曲げ、生態系の頂点を自らの支配下にすり替えてしまうのだ!」
「ならばどうするかと言われれば、概念的に星の核に近づける惑星製の精霊である凛花、パンゲア、ヴィヴィアン、アルカ、そして我の誰かが星の核に潜む病原体ごと叩けば良いのだが……」
オケアノスが言葉を詰まらせると、それにつられて凛花が深刻そうな顔を浮かべ、全員が押し黙ってしまった。
そう。俺もこの深刻な問題についてはネットで既に聞いていたから知っている。不死者の中でもケツァルコアトルを除けば最強に近い凛花やパンゲアがこの問題を解決出来ない単純な理由。
「我らでは……手加減できなくて多分星の核ごと砕く……」
「私も手加減とか出来ませんからね……アルカ以外の有象無象に私の力を抑える理由なんてありませんし」
この2人、強すぎて地球ごと壊しちゃうのよね。
ヴィヴィアンもアホだから多分星の核に爆弾撃ち込んでぶち壊すし、俺以外の奴が行ったらマジで地球が滅ぶ可能性があるのがなー。
「……わかったよ。俺が行けばいいんだろ。さすがにブラドが困ってるのを見過ごすほど俺も腐ってないさ」
「嘘つくなよ。お前気分が乗らなきゃ普通に見捨てるだろ。……まぁ、今回はいい。頼むぞ。人類の、ひいては地球の未来はお前に託された」
「はーい! アルカ会議始め! 今回の議長は俺! テーマは『如何にして責任を逃れるか!』」
「マジかー……翡翠の様子からわかってたけど、マジで妾翡翠に負けたかー……やる気なくすわ……」
「朕もう生きていないわー。自死を選びます」
「翡翠ィ……お前、今回は絶対殺してやる。絶対殺してやる……」
「はーい! 騒いでないで会議してね! お前達も俺ならわかるでしょ!?」
ブラドの一言で俺の精神が激しく揺らぎ、結果このクソみたいなイベントが始まってしまった。
理由は簡単だ。俺は責任という言葉が大嫌いだ。地球の未来とか、そんなクソ重いもの背負いたくない。なので他の自分に押し付けようというとても合理的な思考をしたのだ。
「ほら、俺の異界領域ってたまに暴走するじゃん? なら紅葉とかの異界領域の方がいいでしょ? なんか逆転するやつ、絶対適任だって! お前だって
「は? 確かに奴らが死ぬのは面白くないが、妾の領域だって下手したら星の核巻き込んで星を自死させるし? それなら琥珀が適任だろう。病原体に死ねといえば終わりだ」
「そう言うけどさー。朕のアレも対象絞るのが結構めんどくさくてさー。下手したら星ごと殺しちゃうんだよねー。こう言うのは触手でちまちま攻撃できる蒼海向けだと思うんだけどなー。それに、地球が滅びたら人間はまだしもパンダも消滅だぞー?」
「汚い……パンダを盾にするなんて……。確かに私はみんなみたいに不器用じゃないし、狙いも正確だし、肝心なところでミスをしない完璧で可愛いから、そりゃ私に任せたくなるよね……ごめんね、私が完璧で」
「はー? 俺の方が完璧なんだが? 前回俺に負けた雑魚がイキるのやめて貰えます?」
「4000年ずっと黒星だった雑魚が何言っているのだか。最強は妾だ。運勝ちした程度で調子乗るなクソザコ」
「ん? 最強は朕でしょ? 朕の言うことが正しいんだからー」
「それじゃあここは公平にじゃんけんで負けた奴に押し付けようか……安心して。もうこの空間に『縛り』を作ったからじゃんけんで負けたら絶対に責任からは逃れられないよ。あ、私はパー出すね」
「汚ぇぞ心理戦に持ち込むのは! とりあえず行くぞ! 最初はグー、じゃんけん────」
アルカ会議は時間の存在しない俺達の魂の共通認識空間にて開かれる。
故に外の世界ではこの間に1秒とて時間は経過しない。故に、俺達のじゃんけんは死ぬほど長引いた。
「パー出すって言っただろ!? 大人しくチョキ出せ眼球疲労充血女!」
「目ん玉腐敗緑に言われたくないわ! そんなに終わらせたければ貴様がグーを出せ! 妾のパーで呑み込んでくれよう!」
「朕がさぁ……チョキ出すって言ってるのにパー出すの、そなた達馬鹿?」
「本当に可哀想……なんで私の言うことを信じてチョキ出さないの? もしかして言葉通じてないのかな? ごめんね、猿に言葉を理解させるなんて難しいこと強要して」
忘れていたけど、コイツらは全員『俺』なのだ。
そして『俺』であるが故に皆責任は負いたくないし、ジャンケンで出そうとする手が必ず同じ思考から導き出される。
────千日手! 永遠に終わらない! 不毛過ぎる戦い! ただのお手手の見せ合い! しかも全部同じお手手じゃん!
「だいたい妾達はブラドとか言う奴と関わりないし、頼まれたならお主がやるべきじゃないのか?」
「馬鹿野郎! 例え親友からの頼みでも責任は負いたくないだろ!?」
「至言過ぎて朕もぐうの音もでんわー」
「クソザコのくせに正論を……」
「もういい! 殴り合いだ! 殴り合って負けた奴が強制的に全責任負わされる縛り作るぞ! やはり暴力こそが正義だ!」
◆
『ちょっと地球がやばいらしいから友達のところ行ってくるわ。すぐ帰ってくるからご飯でも作って待っててくれ』
アルカがそう言って突然現れた和服の女性と一緒に何処かに消えてから実に26分。葵の心配は限界に達していた。
常に自身の近く範囲周囲580mに存在していたアルカの存在を知覚できないことが、ここまでのストレスになるとは思ってもいなかった。禁断症状で脇腹から腕がもう一本生えてきそうな程の不快な気分。
「葵……剛が夕ご飯作るから手伝えって言ってる」
「照香はなんで耐えられるんだ……俺はもう指が6本に増えそうだぞ……?」
「だって、アルカが帰ってくるって言ったんだから絶対帰ってくる。あと私の髪の毛括りつけておいたから何処にいても存在を知覚できるし」
「聞こえてるぞ。それ、俺にも出来ないかな?」
「練習すれば多分出来るよ。まずは髪の毛を動かして……」
「うーん……こうか……?」
「そうそう。筋がいい」
こんなにも精神が辛いのは、単純に既に30分もの間アルカを知覚できないのもあるが、もう一つだけ理由がある。
何かとてつもなく嫌な予感。それが葵の胸の内で這いずり回って仕方ないのだ。
具体的に言うと手が滑ったとか言ってアルカがとんでもないことをやらかしそうな、信頼しているが故の不安が。
◆
気がつけば目の前にはとんでもない熱量の塊があった。
凛花とオケアノスが物理的、概念的にこじ開けた星の中心への穴を通って星の核に辿り着いたのだ。
そして、今こうして俺の体を操っているのが俺だということは、まぁそういうことだろう。一応他の魂にコンタクトをかけて見るが、一方的にシャットアウトされてるし。
「────ん? なんだあの黒いか」
言葉が終わる前に首から上が吹き飛んだ。
星の核に纒わり付く黒いネバネバ。多分アレが特定惑星疾病異星体とやらの本体だろう。
うん、改めて見たけど大した事ねーわ。
今の一撃で完全に解析は済んだし、あとは星の核を壊さないようにぶち殺せば良いだけ。
「異界領域────『万魔屍山無明郷』」
原初の緑を纏い、改めて標的を確認する。
あとはいつも通りに生き物を作って、特定惑星疾病異星体の本体だけを殺してもらえば良い。
……大丈夫、だよね?
俺本当にこう言う責任負うような仕事したくないし、こういう時に限って手を滑らせたりするんだよな。
落ち着け。さっき凛花から『食べると集中力がすごくすごくなってついでにトリップする草』も食べさして貰ったし、そもそもこれに失敗したら葵くん達も死ぬと考えるのだ。
よーし! 失敗する気がしねぇぞ!
よくも俺達の星でむちゃくちゃやってくれたな黒ネバめ! 今ぶち殺してやる!
「解析完了────人類神話再顕、亜霊長類神秘目 アダム・エヴァ」
両腕が溶け合いながら変形し、多頭の蛇へと変形する。
黒いネバネバが最後の抵抗とばかりに俺へと向けてネバネバを伸ばしてくるが、それら全ては俺以前にアダム・エヴァに到達する前に全て塵へと消えてしまう。
「命令だ。食っていいぞ」
命令を終えると同時に、アダム・エヴァは猛スピードで星の核へと突っ込んで行き、纒わり付く特定惑星疾病異星体のみを的確に狙って食い滅ぼす。
人類をほぼ滅亡へと追いやった特定惑星疾病異星体は、たったそれだけでこの世界から消滅した。
あれ、もう食い終わったのになんか止まらないわ。全く制御利かんし。
なんかおかしいと思ったら、成長リミッターつけるの忘れてたわ。惑星外来生命食ったせいで変な方向に成長しちゃったし、これもうどうしようもないねあ、星の核噛んじゃダメそれ壊れたら地球が壊れ────
その日、この宇宙から惑星が1つ消滅した。
ふふ、惑星滅んだわ
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
クソレイド最終決戦!
活動報告にて見たい番外編のシチュをお募集しています。
募集に色々書いて高評価と感想と日光と水を与えると番外編が生えてきます。すごい。
「──────ありゃ、気のせいか?」
シンガポールの一角にて、大神は不可思議な感覚に首を傾げていた。
山の神性である大神は、古来よりあの世とこの世の境の番人として神でありながら不死者としてこちらの世界に存在していた。
そんな彼が感じた違和。知覚できる最小単位以下のほんの僅かな刹那の時。
死という概念は不死者以外の万物に存在し、それは星とて例外ではない。ほんの一瞬ではあるが、彼の超感覚には星が死んだという情報が流れ込んで来ていた。
しかし、今こうして自分が立っている大地は確かに生きていて死の世界を検索しても地球が死んだという情報は存在しない。逆に、ゾンビ達が次々と死に絶えていっているあたり、ブラドの作戦が成功したのだろう。もとよりオケアノスか凛花辺りが協力するなら失敗する理由が存在しないが。
……強いていえば、地球ごとぶっ壊される可能性はあったが、こうして自分が地球の上に立っているのがそうならなかった何よりの証拠だ。
不死者になると、あまり物事を深く考えないようになる。
だって、深く考えてもむだなことって世の中多いし。そんなことに時間を使うなら、楽しいことに時間を使うべきだ。
「おつかれアルカ。まさかお前が本当にちゃんと仕事してくれるとは思わなかったぞ。正直、もう地球も終わりかと諦めていた」
目を覚ますと目の前では疲れの取れた柔らかい笑みを浮かべているブラドの生首が転がっていた。
おかしいな。確か新しく産んだアダム・エヴァちゃんが勢い余って星の核を噛み砕いて、そのまま地球が爆散したものだと思っていたのだが。
「ふふ……ブラド。それはもしかしてアルカに対する侮辱ですか? ねぇ、聞いていますか?」
「落ち着くのだ凛花。ブラドとアルカは貴様よりも古い仲だ。それ故に一件侮辱に聞こえる言葉にも色々とだな……」
「侮辱に聞こえるなら侮辱じゃないですか殺しますよ? 異界領域────『沙羅結界涅……」
「やめろ。ここで我と凛花が争えばせっかく救った地球が塵になるぞ」
「ねぇ、これもう終わったの? 私重力嫌いだからさっさと帰りたいんだけど?」
「かぐや何もしてないじゃん。マジで何しにきたんだよ」
「お前だって何もしてないだろショタコン」
……まぁ、なんか知らんけど何も無かったっぽいからヨシ!
そもそも冷静に考えたら俺がミスとかするはずないもんね。だって俺だし。なんか地球の核をぶち壊したと思ったのは、多分幻覚かなにかだろう。
「あれ、そういえば最新の魔女は?」
「なんか『嫌な予感がするのでお腹の子に危険が及ぶ前に移動させてもらいます』って行ってどっか行ったよ。それじゃ、私はもう用がないから帰るねー」
それだけ言い残すとかぐや姫は逆さのままふわふわと風船のように浮かんで空の彼方へと消えていってしまった。
それにしても、最新の魔女が嫌な予感がすると言っていたとは。確かあの子、限定的な未来予知能力あったな。まぁ、俺がミスとかする訳ないし何か別の案件が起きるのだろう。こんな更地とかしたニューヨークで何が起きるのか分からないが。
「それはそれとして……アルカ。今回はちゃんと作り出した獣は処理したんだろうな」
「…………処理?」
「お前の獣はお前が手綱を握ってるか、殺すかしないと消えないだろう。まぁ放っておけば地球の核に噛み付いたりして正常に戻った防衛機能で灼かれるだろうから心配する必要は無いかもだが」
えー、そんなの必要だったかな?
……マジで、マジでそんなの必要だっけ? バンシーの時、久しぶりに使ったやつはなんか勝手に自爆してくれたし……領域閉じた後勝手に消えるもんじゃなかったっけ?
でも俺なら! 過去の俺ならきっと後処理をやってくれたはずだ! 記憶にはないけれど!
「ああ。もちろんちゃんと処るえ────
突如、俺の体が成層圏から思いっきり地面に叩きつけられたような衝撃と共に上空へと打ち上げられた。
地上を見下ろすと、驚くみんなの顔……は見えずに双頭の蛇と目が合った。
亜霊長類神秘目 アダム・エヴァくんですね。しかもなんだか俺が見た時よりも随分と逞しく育っているような気が────
感慨に浸る暇もなく、強靭な2つの顎で体が食いちぎられ、咀嚼され、別れたパーツがアダム・エヴァくんの胃で合流して再び俺の形になる。
うわ、真っ暗で何も見えねぇ。しかも胃液が強すぎて再生と融解の速度がほぼ同じで動くことも出来ないし。と言うかもしかしなくてもこの子もう俺より強いね。
「おいおい……あの馬鹿! またなんてものを生み出しやがった! 軽く見積っても空劫級だぞコイツ!」
「どうする? 予測ではあるが、あれは我単身では勝てなさそうだぞ。一体何がどうしたら特定惑星疾病異星体という雑魚相手にアレを生み出すのだ?」
「なんでもいいですよ。アルカを傷つけた時点でゴミなんですから。異界領域────『沙羅結界涅槃園』」
俺程の超感覚があれば、聴覚の情報だけで視覚とほぼ変わらない情報を得ることが出来る。
どうやら外では凛花が異界領域を開いたようで、辺り一面がお花畑に変化している。前も凛花は俺が生み出した獣相手に戦って、初手に手を抜いたせいで痛い目を見たので最初から全力ということだろう。
いくら結構自信作のアダム・エヴァくんでも、凛花の全力の異界領域を喰らったらもうあとは植物になるだけだろう。勝ったなコレは。ガハハ!
…………
…………
……
おかしいな。いつまで経っても俺が解放される気配がないんだが? コイツの胃液、かなり分解性能が強くてさすがにちょっと痛いから早いところ助けて欲しいんだよなー。
「……凛花。念の為に聞いておくが、全力か?」
「はい。アルスノヴァの時と同じ轍は踏まぬとばかりに、全力で仕掛けました」
「凛花の異界領域の全力が、耐えられたか……」
「ねぇこれやばいよね? 絶対やばいよね!?」
アダム・エヴァくんが咆哮を轟かせると、空間がひび割れて世界が砕け散る。いつの間にか辺りは元の更地と化したニューヨークに戻ってしまっていた。
え、ちょっと待って。
凛花は間違いなく俺達の中ではケツァルコアトルに次いで強い。両方に全力でぶちのめされた経験がある俺が言うのだから間違いがない。その凛花の全力の異界領域が無効化された。
普通にやばくね?
だが俺はまだ冷静な思考を失ってはいない。
そもそも、凛花の異界領域は相手の戦意を消失させる効果であり攻撃力で言えば切断の概念領域のパンゲアには及ばない。単純にマウント取ってぶち殺すだけならば俺の方が上まである。
ならば俺が領域を開いて、今度は手綱を握った上でアダム・エヴァくんガンメタの獣を作り出せば……
「ギャー!? いた、アッツッッッッッッ!? 溶け、溶けてる! すごい速度で溶けてる!」
そんなことを考えていたらアダム・エヴァくんの胃液が急に成分を変更して全力で俺を分解しにきやがった。
しかもこの分解速度、完全に俺の再生能力を上回っていやがる。なにか対策を、とか考える暇もなく俺は1度完全に分解されてしまった。
一瞬何も認識出来ない闇に落ちたと思えば、今度は一転して世界がひかりに満ち溢れた。
「ッ、アルカ……お前、ホントお前ってやつは!!! この……バカ! バーカ!」
俺に対してブチ切れている生首ブラドが見えたので、さすがに罵倒されるのは気分が良くないから何か物申してやろうと思ったが上手く口が動かない。
それどころか体が全く言うことを聞かない。せいぜい動かせるのは首くらいなので何が起きたかを確認しようとしたら、なんか俺の手足が白色の壁に埋まっていた。
より正確に言えば、俺の体は上半身の一部を除いて完全にアダム・エヴァくんの体に埋め込まれていて、それの影響もあってか全く力が入らない。しかも服が無くなってるので全裸でだ。今更恥ずかしいとかはないけど、知り合いの前で胸が丸見えの状態で手足を壁に埋め込まれた無様な姿を晒されるとか中々酷い状態だな。
「オケアノス。アレはどのような状態なのか分かりますか?」
「恐らくアルカのことを完全に取り込んだのだろう。あの蛇の放つ気配がアルカのものと混ざっている。アルカの性質を取り込んだ故にアレは完全に不死の領域に至った上に、分離は難しいだろうな」
「なるほどなるほど。……不可能じゃないなら死ぬまで切り刻めば吐き出すかもしれませんね。やってみましょう」
なんか、その……。
もしかしてこれって、だいぶまずい感じの状況だろうか?
「凛花、オケアノス、ヴィヴィアン! 現状の戦力では封印ですら難しい! 今すぐに全員を呼ぶから時間を稼いでくれ!」
「マジで私実戦は向かないから! 武器はあげるから2人がどうにかしてね!」
「いいですけど……間違ってもアルカごと封印だなんて判断はしないでくださいよブラドさん」
「それは時と場合による! 全員聞こえるか! コード:ブラッド! 『アルカがやらかした!』全員強制集合だ!」
ブラドが号令をかけるまでの間に、オケアノスと凛花がそれぞれ38回と42回致死の攻撃を受けた。
数千トンはくだらない量の水が音速で射出され、見たこともないような攻撃的な進化をした植物が空間を切り裂きながらこちらへと迫ってきたがアダム・エヴァくんってばなかなか狂った再生力をしていて足止めにすらならなかったが、凛花が体を巨木に変化させて肉壁ならぬ植物壁に変化してほんの僅かな時間を稼ぐことに成功した。
ブラドの号令から1秒経たずして、いつの間にか多くの人影が辺りには集結していた。
「あの馬鹿がやらかしたって聞いて急いできたけど……何コレ? 普通にシャレにならないじゃん。さっきまでのゾンビ達よりよっぽど地球の危機って感じ」
巫女服に狐耳。呆れる程に二次元な雰囲気を纏った、事実
「えぇ……なんですかアレ。どう考えても星害指定じゃないですか……」
「これはちょっとまずいかも……徐福、アンタは逃げないと死ぬよりも酷い目に遭うかもしれないわよ」
死者よりも白い氷のような髪と肌をした少女と、何故か彼女にお姫様抱っこをされていた中華風の美青年は恐怖を隠しきれない様子で、強く手を握り合いながら大蛇を睨みつけていた。
「アルカがやらかしたって聞いて研究全部ほっぽり出してきたけど、コレ、ケツァルコアトル無しじゃ無理だろ。……どんな中身してんのかは気になるけどな」
浅黒い肌の死霊術師は諦念の混じったため息を吐き、その口振りとは裏腹に新しい玩具を見つけた子供のように目を輝かせていた。
「アイツのやらかしだからとすっ飛んできてみれば、やはりギリシャごとこの星が消し飛ぶ案件だったか。……ケツァルコアトル無しでは少し厳しいかもしれんな」
炎を纏った3mはあろうかという巨漢は額に汗を浮かべながら冷静に状況を判断していた。
「ちょっとこれはまずいね。あちこちで生死の概念が揺らいでる。存在してるだけでこの世の理をねじ曲げかねない、生きた異界領域と言っても過言ではない生物だよコレ」
狼のような耳を頭頂部に付けた和装の剣士はヘラヘラと笑いながらも、しっかりと大蛇を自らの間合いに入れぬように意識を張っていた。
「……なんだこりゃ? ちょっと記憶が飛んでたが、こんなの見せられたら退屈どころか冷や汗まで出ちまうな……」
溶岩のように流動する髪の毛を持った褐色の少女は、不敵な笑みを浮かべつつも生まれて初めての感覚に戸惑っていた。
「なーにーあれ? あ、アルカだ! えへへ、下半身が怪物に埋まってて私みたーい♡────最悪の気分なんですけど。アルカごとアレをぶち殺せばいいんですか?」
下半身が多頭の獣と蛸の触腕で出来た美女は苛立ちを隠す様子もなく大蛇を含めてこちらに殺意を向けていた。
『あー、あー、マイクテスト。こちら蓬莱山。全武装照準完了。いつでも撃てるよー』
遥か空より聞こえてくるその声は、月の光のように全てを照らし、消し去る準備をしていた。
最新の魔女とケツァルコアトルを除いた現在ブラドと連絡の取れている不死者全員がこの場に揃った。中には初めて直接会う奴らもいて、こんな見た目をしてたのかーと思うと同時にあることに気がついた。
そう言えば過去に一度もこれだけの数の不死者が集まった事ってなかったな。基本的にブラドが不死者と連絡を取って、有事の際は呼び寄せる係をしていたから、ブラドが呼んだ不死者の数が実質的な問題の脅威度を示すものであった。
そして、もう一度言うが過去には一度も不死者が全員集合したことは無かった。
もしかして、これって過去1で地球の危機な感じ?
そう考えたと同時に、アダム・エヴァくんが咆哮を上げて世界を塗り替えた。
現れた領域は緑色の粘液で覆われた、それ以外は何も存在しない
まぁ端的に言えば俺の異界領域『万魔屍山無明郷』だよね。そう言えばオケアノスがコイツは俺を取り込んだって言ってたし、もしかして俺の全能力、アダム・エヴァくんに取られちゃったとかかな?
いやそれ以上だね。原初の緑の量が半端ないわ。どう見ても俺の完全上位互換です本当にありがとうございました。
恐る恐る、かろうじて動く目をブラドの方に向けてアイコンタクトで会話を試みる。
『もしかして、これってヤバいやつ……?』
『もしかして、じゃない。もしかしなくても地球最大の危機だよクソ野郎が。お前マジで永久封印されても文句言うなよ?』
…………その、あの、はい。
「凛花ッ! クソ、凛花がやられた! 全員あの緑には触れるな! 触れたら終わりだと思え!」
「異界領域の押し合いでは勝てない! 全員領域を身に纏って最低限の自己防衛に徹しろ! あと徐福は邪魔だから帰れ!」
「わ、私の事は気にしないでください……それより時間を……『植物園』を開けば数秒止められる可能性があります。5秒だけ、私から奴の意識を切り離してください」
「聞いたな全員! 5秒だ! お前達の無駄に長い生涯の全てを懸けて、あの怪物から5秒を奪い取れ!」
内側から全身を蛇に食い破られ、体を構成することもままならず解けて植物の姿に半ば戻りかけながらも立ち上がる凛花。
数多の魑魅魍魎を調伏して繰り出す晴明、逃げ惑う徐福、水圧で原初の緑を押し返すマリン、絶対零度以下の低温を更新し続け原初の緑を適応させずに凍らせ尽くす雪女、原初の緑と解析合戦で相手の上を取りにかかるヴォドゥン、触れた原初の緑を片っ端から完全に機能停止させていくプロメテウス、捕まって取り込まれかけてる徐福、ただの刀でアダム・エヴァの肌を僅かに切り裂き傷を与える大神、片っ端から武器を射出して敵味方関係なく吹き飛ばしているヴィヴィアン、生首で爆撃に巻き込まれて吹っ飛んでるブラド、近づく全てを燃やし視線の全てを斬り裂くパンゲア、語るもおぞましい姿に変形してアダム・エヴァの片方の頭とお互いの肉を貪り合うスキュラ、天から空を埋め尽くす光線を撃ちアダム・エヴァの放つ光と拮抗するかぐや姫、雪女に助けられて半べそかいてる徐福。
神話すらも超えた頂上決戦。1秒の1000分の1ですら経過する前に異界領域内じゃなければ何度地球が滅んでいたかも分からない衝撃が迸り、余波で外の世界では天変地異が引き起こされているのが簡単に予想できる。
ついでにみんなの攻撃がたまに俺に当たるから超痛い。さすがに不死者の攻撃は超痛い。
世界を砕く吐息を深海の領域で防ぎ、生み出される魑魅魍魎を本物の百鬼夜行で迎え撃ち、あるものの肉が千切れ飛びあるものの体が粉微塵になる。
激戦の中でふと、吹き飛ばされて転がっていたブラドの生首と目が合った。ほとんど何も出来ないもの同士、何となく暇で居心地が悪いのである。
『アルカ。私達に何か言うことないか?』
『えーっと……みんな頑張って!』
ブラドは穏やかなアルカイックスマイルを見せて、それから生首に出せる最大の音量で叫んだ。
「全員聞け! やっぱコイツ封印した方がいいぞ! 全身全霊で封印しろ! て言うかもう殺せ! ホントバカ!」
今、地球のどこかでやばい戦いが繰り広げられている。
ケツァルコアトルはそれは理解していたが、駆けつけることはできなかった。未だに彼の体は再生能力を取り戻すことが出来ず、まともに動くことさえ叶わなかったから……では無い。
彼にとって、そんな状況よりも驚くべき事態が目の前で起きていたからだ。
「ふぅ……少し他のゾンビよりは手こずりましたが、なんてこともありませんでしたね」
目の前でただの人間であるアンナがゾンビを小さな立方体に変形させて殺した。それだけならおかしくはあるがいつも通りのことであるが、ケツァルコアトルが驚いた理由は2つあった。
まず1つ、アルカが病原体そのものを殺したのかゾンビ達はこの地球から次々と消滅していっていた。そんな中で自らの前に現れたゾンビは、病原体の最後っ屁とばかりに変質、変容していてそれなりに強い個体になっていたが……ただの人間であるアンナは特に意識することなく淡々と殺してしまった。
そしてもう1つ。
多分アルカが凡ミスをやらかしたのだろうが、地球が滅んだ。星の核を壊され、存在を保つことが出来なくなり木っ端微塵に消し飛んだ。
そう、確かに1度この星は完全に消滅したのだ。不死者を除くこの星で生きるものはみな死滅したはずだったのだ。
「全く……
地球が破壊された瞬間、アンナがその結果をこの宇宙の別の惑星へと
端的に言えば、地球が壊れる代わりに別の生命が根付く星を木っ端微塵にしてしまったのだ。
ようやくケツァルコアトルは自分が何故再生も異界領域も使えなくなってしまったのかを理解した。
全て、全てアンナによって封じられていたのだ。星の命すら容易く左右することの出来るほどに進化した目の前のただの人間が、神である自分を完全に封じてしまっていたのだ!
「……ッ、また別の蟲が騒いでますね。ま、こっちに来ないなら知ったこっちゃありません。心配しなくてもいいですよお姉様。私は何があってもお姉様
人間って怖い。
ケツァルコアトルは改めてそう思った。
「あれ、アルカの反応が……消えた?」
「────照香、それは本当なのか?」
「おーい! いい加減晩飯の支度を俺だけに任せてないでお前らもだな……って、葵と照香の奴どこ行きやがった?」
次回か次々回くらいが最終回です多分。
・『植物園』
凛花の体の中にある植物の概念空間。あらゆる植物が内部で繁栄、進化を繰り返していてその全容は彼女自身も把握していない。基本的な彼女の攻撃手段はこの中から植物を出すことであり、中には彼女自身よりも強力な植物も居たりする。
・亜霊長類神秘目 アダム・エヴァについて
アルカが生み出した4体目の空劫級星害指定。アルカがリミッターをつけ忘れた&異星体を食べた&星の核の光に晒された&アルカが制御を手放した&アルカが後処理をしなかったせいで暴走した。めちゃくちゃ強い。
・最新の魔女ちゃんなんでいないの?
身重なので危険なことはできません。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
ある日のネットにて
色んなものを受け取って花が咲きました。
58:NN.万死
42年振りくらいかな?
今北産業
59:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
>>58
死ね♡
60:NN.雪ん子
万死帰ってきたんだ
61:NN.ヴォドゥン
>>58
アルカ封印
南北アメリカ大陸消滅
ケツァコアトル監禁
62:NN.最新の魔女
あら、電波届く範囲に戻ってきたんですかバンシーちゃん
63:NN.明日
噂のクソ野郎バンシーさんですか
64:NN.万死
なにがあったし
65:NN.ブラド
アルカがやらかした
なんか生まれた
66:NN.妖精武器庫
>>65
死ぬほどわかりやすくて草
67:NN.クククルン
もうしばらく陽の光は見てないけど私は元気です。むしろ動かなくていいって最高じゃんって……
68:NN.オーカミ
酒クズヒモニートカス親に進化しやがってよ……
69:NN.ヴォドゥン
自分の娘のような存在を働かせて飲む酒は美味いか?
70:NN.侵略タコ娘
クズ♡
71:NN.クククルン
仕方ないじゃん。ぶっちゃけアンナの方が強いからどうしようもないし。それに外出るのめんどくさい
72:NN.風呂メテウス
酒クズとヒモがあわさり最強に見える
73:NN.ガイアッ
究極のクズ
74:NN.万死
40年くらいでこんなに理解不能になることある?
75:NN.ブラド
真面目に言うとアルカがやらかして遂に封印された。
あとケツァルコアトルより強い人間が生えてきて、徐福と雪女が結婚して、最新の魔女はママになった
76:NN.侵略タコ娘
怪文書
77:NN.狐巫女VTuber春ノアキラ
怖〜
78:NN.マリン
何一つ嘘はないぞ
79:NN.万死
というかアルカなにがあったし
80:NN.ぐやぐや姫
南北アメリカ大陸吹き飛ばしてついでに封印された
81:NN.明日
そしてついでに私が生まれた
82:NN.万死
???
83:NN.妖精武器庫
ドントシンクフィール
84:NN.明日
そういや初めてっすねパイセン。噂で聞いたクソ野郎の万死さん
85:NN.万死
コイツ今どこにいるの?着地地点コイツの真上に行くからさ
86:NN.ブラド
頼むから海上に着水してくれ……
87:NN.ハッピージョー
いやー40年前のアレは激戦でしたね
88:NN.最新の魔女
徐福クンは特に何もしてなかったけどねー
89:NN.雪ん子
封印の時はちょっと仕事したし!あと魔女ちゃんに至っては参加しなかったじゃん!
90:NN.ヴォドゥン
と言うかあれから40年かー。意外と早いなー
91:NN.オーカミ
なんだかんだ人類滅んで40年だもんな。意外とやれてるわ
92:NN.風呂メテウス
言ってしまえばゲームが不作の年のような気分だな
93:NN.万死
そういえば人類ってもう完全に滅びたの?
94:NN.ハッピージョー
アフリカ大陸を中心に再興しています……
95:NN.侵略タコ娘
若人レイパーが現れて、不死者だから遺伝子の多様性問題が解決されて……
96:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
マジかよケツァルコアトル最低だな
97:NN.ガイアッ
妹じゃ満足できなかったのか!?
98:NN.マリン
ケツァルコアトル……お前だったのか。失望したぞ
99:NN.クククルン
いや俺監禁されてるんだけど
100:NN.ブラド
真面目に言うと最新の魔女がショタをレ〇プしてる
101:NN.万死
すいませんここって地球であってますか?私の知ってる最新の魔女と違う気がするんですけど
102:NN.最新の魔女
いえいぴーす。ショタをパパにするのは最高だぜ
103:NN.妖精武器庫
どうしてこんなことに……
104:NN.ぐやぐや姫
どこかの誰かがショタのR18本読ませてからぼうそうしだしたか……
105:NN.妖精武器庫
だれがそんなことを……!
106:NN.ハッピージョー
茶番やめません?
107:NN.最新の魔女
産んだ子と夫は全員責任持って面倒を見ていまーす♡
108:NN.狐巫女VTuber春ノアキラ
怖っ
109:NN.マリン
命に責任を持っているなら良いだろうさ
110:NN.万死
もりもりとかはどうしたの?
111:NN.ガイアッ
アイツなら封印されたよ
112:NN.雪ん子
より正確に言えばアルカと一緒に封印された
113:NN.侵略タコ娘
時間を稼ぐために自爆して吸収されながらも最後まで足掻いて立派な最後だったよ……
114:NN.オーカミ
でも封印される瞬間めちゃくちゃ良い笑顔だった気がするんだが?
115:NN.ヴォドゥン
不死者にとって最も恐ろしい封印の際でも笑顔だったとはやはり酒クズを除けば最強の不死者
116:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
今は酒クズの義娘が暫定最強だけどね
117:NN.ブラド
因果無視と固定事象選択と運命線切り替えのクソコンボはどうしようもない
118:NN.風呂メテウス
干渉無効防御→適当な生命の死の固定→死の運命の押しつけでだいたい殺せる一般通過人間
119:NN.雪ん子
こんなバケモノ生み出しやがって酒カスがよ……
120:NN.ぐやぐや姫
殺してやる酒カス……
121:NN.クククルン
これでも死ねないんだからいよいよ俺達はどう足掻いても死ねないんだよなぁ
122:NN.万死
人間滅んで40年もみんな暇じゃなかったの?何してたの?
123:NN.最新の魔女
>>122
S〇Xと子育て。楽しいよ?
124:NN.マリン
>>122
ウニの養殖。20年程ネットも忘れてウニを育てていた。ウニは良い
125:NN.ガイアッ
盆栽
126:NN.雪ん子
>>122
別に徐福と一緒にいただけだけど
127:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
>>122
ぼちぼち最新の魔女のおかげで人間が増えてきたから配信。やっぱ信仰されるのって気持ちいいし
128:NN.妖精武器庫
ショタ漁り。手を出すと魔女ちゃんと喧嘩になるからイエスショウタロウノータッチだけど
129:NN.ブラド
>>122
私は……卒塔婆を集めていたな
130:NN.ヴォドゥン
ん?
131:NN.風呂メテウス
はい?
132:NN.万死
卒塔婆?
133:NN.最新の魔女
卒塔婆とは
仏舎利を安置したり、供養、報恩をしたりするための建造物。インド・中国では土石等を積み、日本では主に木材でつくるもの。
134:NN.ブラド
卒塔婆は奥深いんだぞ!特に日本式の木製のやつは日本文化が実質滅んだからもう手に入らなくて、朽ちてないものは超レアなんだぞ!
135:NN.侵略タコ娘
多分ブラドちゃん以外にこの世で卒塔婆集めてる人いないよ?
136:NN.オーカミ
あの世にもいねぇよ
137:NN.ブラド
なぜだ、あの五重塔をモチーフにした独特の形に興奮しないのか?
138:NN.クククルン
えー……
139:NN.雪ん子
さすがに趣味悪くない?
140:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
仏教に全力で喧嘩売ってる
141:NN.マリン
まぁブラドの趣味の幅が広がったのは良い事だろう。多趣味でもなければ不死は永いからな
142:NN.ぐやぐや姫
ほんとかー?ほんとうにこれで良いのかー?
143:NN.ハッピージョー
まぁ万死さんよりはマシな趣味ですよ
144:NN.妖精武器庫
人間滅んだけど案外退屈せずにやってるよね
145:NN.ガイアッ
元々オケアノスとか凛花とかこっちは人間がいなかった期間の方が長いし
146:NN.明日
うーん、みんなキモイね!
147:NN.オーカミ
こいつ煽った!スマ〇ラでボコる!
148:NN.万死
スルーされてたけど明日って誰なの?
149:NN.狐巫女VTuber春ノアキラ
NNで何となくわかるだろ
150:NN.ぐやぐや姫
実質アルカの娘だよ
151:NN.万死
は?
意味わからん
152:NN.雪ん子
お姉様の作った獣が地球の核をちょっと噛んで、その余波で生まれた地球の精霊
153:NN.万死
前提条件が色々突っ込みたいんだけど
154:NN.明日
つまり最新にして最古。あらゆる精霊の上位互換の最強精霊が私なのです
155:NN.オーカミ
今からリアルス〇ブラやろうぜ!
156:NN.ヴォドゥン
まだ痛覚がハッキリしてる明日に1番でけぇ悲鳴言わせたやつが勝ちな!
157:NN.ガイアッ
盆栽見てっからパス
158:NN.妖精武器庫
勝ったら何が貰えるの?
159:NN.侵略タコ娘
そりゃあもちろん地球の核よ!
160:NN.明日
やめて!死にはしないけどめっちゃ痛いから!
161:NN.万死
一つ気になったんだけど、雪女って〇〇〇を凍らせて〇〇してそれを使用後にかき氷にして食ってたと思うんだけど、徐福と結婚したならつまり……
162:NN.ハッピージョー
まぁ……不死者なんで……
163:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
徐福……
164:NN.オーカミ
お前はすげぇよ……お前が1番すげぇよ
165:NN.雪ん子
でも徐福も気持ちよさそうな顔してるよ?
166:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
徐福ゥ!
167:NN.オーカミ
おめぇはやべぇよ……はよ死ねや……
168:NN.クククルン
さすがにどうかしてるぞ徐福……
169:NN.ハッピージョー
ちょっと妹レイパーの酒クズヒモニートに言われる筋合いは……
170:NN.マリン
失せろカス
171:NN.ぐやぐや姫
アルコール臭い口を閉じろ
172:NN.クククルン
もうヤダお酒飲む……
173:NN.最新の魔女
お酒と言えばストロン〇ゼロ!(カシュッ)
174:NN.風呂メテウス
妊婦が飲んだらアカンやつゥ!(カシュッ)
175:NN.妖精武器庫
安い!美味い!気分で酔える!(カシュッ)
176:NN.最新の魔女
なお胎児に有害な成分は全て届く前に分解されるのでセーフです
177:NN.ハッピージョー
倫理的にアウトですよ!
178:NN.ブラド
今更倫理を語るのもアレだがな。そもそも人間基準の倫理なんて不死者に合うわけがないだろう
179:NN.ぐやぐや姫
あ、万死見えた……って、抱えてんの何それ
180:NN.万死
宇宙で拾ったなんか
181:NN.ブラド
返してこい!元いた場所に!返してこい!
182:NN.ヴォドゥン
おー、ナイスハイク!
183:NN.マリン
6.7.6ではないか?
184:NN.狐巫女VTuber春ノアキラ
語感がよけりゃ俳句も川柳もなんでもいいでしょ
185:NN.ブラド
ついこの前異星体で地球滅びかけただろ!返してきなさい!
186:NN.侵略タコ娘
滅びかけた直接の原因は6割アルカだけどね〜
187:NN.万死
だって、地球に帰りたいって泣いてたから
188:NN.風呂メテウス
命乞いする相手はバラバラにするのになんでそう言うタイプは拾ってくるんだよ。というか地球に帰りたいってどういうことだ?
189:NN.マリン
何となく、ろくな事にならない予感だけはするな
190:NN.万死
しかもなんかアルカに似てたからつい拾ってきちゃったんだよねー
【画像】
191:NN.ブラド
>>190
真霊長類光明目 アルスノヴァじゃねーか!
192:NN.妖精武器庫
アルカのやらかしその1、堂々の帰還
193:NN.ヴォドゥン
や っ た ぜ
194:NN.ガイアッ
そういえばそいつは宇宙に流したんだっけか。偶然ってすごいな
195:NN.ブラド
いいから!凛花もケツァルコアトルもいない今、もう1回アルスノヴァを追放する元気ないから!元いた場所に返してきなさい
196:NN.あるたん
地球帰りたいです。
197:NN.オーカミ
うお、電波に侵入してきた
198:NN.最新の魔女
なにこれ面白ーい。スクショしとこ
199:NN.ブラド
あぁあああぁぁあああふざけんなよまじでさぁぁぁぁ!!!
200:NN.明日
これ何がやばいの?
201:NN.狐巫女VTuber春ノアキラ
真霊長類光明目アルスノヴァじゃねーか完成度たけーなオイ
202:NN.ぐやぐや姫
>>200
これは詳細を省くが結論だけ言うとお前(地球)はぶち壊される
203:NN.明日
帰ってくんなクソ野郎!
204:NN.万死
もーむり重力圏入った
205:NN.あるたん
宇宙は寒かったです。暖かい星の核が食べたいです
206:NN.ブラド
微妙に可愛いNN使うな帰れ!
207:NN.ハッピージョー
アルカさん呼びますか?そもそもあの人がやらかしたのが原因なので意味ないかもですけど、凛花さんも付いてきますし
208:NN.万死
およ、アルカ封印されたんじゃなかったの?
209:NN.狐巫女VTuber春ノアキラ
封印したよ。1日で解かれただけで
210:NN.マリン
なんかアルカと凛花だけ器用に取り出されたな
211:NN.侵略タコ娘
ねー、なんだっけあの2人の人間っぽい子達の名前。徐福の結界を秒で叩き割ったもんねー
212:NN.万死
それ、人間なの?
213:NN.あるたん
強者との死合こそ我が生の証です。血を啜りたい
214:NN.クククルン
本性隠す気なくてワロタ
215:NN.最新の魔女
着水するならこっちに影響でないところに行ってくださいね。私今ちょっと下が満員なんで行けませんし
216:NN.雪ん子
下ネタ?
217:NN.ヴォドゥン
S〇Xしながら掲示板くんなや
218:NN.ハッピージョー
倫理観ン!
219:NN.マリン
別に最新の魔女の体にも胎児にも問題ないのだから良いだろう。
220:NN.ブラド
もうやだ……私やだ!バブー!おぎゃー!
221:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
あーあ、本格的にブラドが壊れた
222:NN.ぐやぐや姫
万死のせいです。あーあ
223:NN.アンナ
はじめまして。お姉様の娘のアンナです
224:NN.クククルン
え
225:NN.明日
今度は誰ー?
226:NN.ブラド
私しばらくネット断ちする
227:NN.あるたん
ドーモ、アルスノヴァです。あるたんと呼んでください
228:NN.アンナ
ここの方々にお姉様が
229:NN.ヴォドゥン
やっべにっげろー
230:NN.マリン
不知。我退散
231:NN.あるたん
強者発見。適応戦闘形態に移行
232:NN.アンナ
その前に、ゴミ掃除をする必要がありそうですね。クズ掃除の前にゴミ掃除とは
233:NN.クククルン
冗談だから!こういうのは冗談を言い合える仲で成立するものだから!
234:NN. 狐巫女VTuber春ノアキラ
シャラップ酒カスニート
235:NN.クククルン
やっぱコイツら殺していいよ!
236:NN.最新の魔女
ここ私とブラドちゃんが管理してるんで勝手に電波割り込みしないでもらえます?迷惑です
237:NN.あるたん
ごめんなさい
238:NN.アンナ
すいません
239:NN.万死
ふふ、訳分からんわ
240:NN.あるこ
みてみて綺麗な流れ星
【画像】
241:NN.あるたん
母上……?
242:NN.明日
ママ……?
243:NN.アンナ
誰……?
244:NN.あるこ
>>243
こっちのセリフなんだけど
「うぉ、なんか揺れたわ」
綺麗な流星の写真を撮って数秒後。
ものすごい地響きがこちらまで伝わってきた。多分隕石だったんだろうけど、別に気にするほどのものでもないだろう。
それより今気にすべきはせっかく撮った俺と流星のツーショットを掲示板にあげてやったのに、誰も反応してくれないことだろう。
剛に見せたら面白い反応をしてくれたかもしれないけれど、残念なことにアイツってば2年前に死んじゃったんだよね。最後まで元気だったけどまさか立ったまま寿命を迎えるとは思わなかった。最後までオモシレー奴だったよ剛は。
「アルカ! こっちに来てくれ! なんかすごいのがあるぞ!」
「なにこれ……古代遺跡?」
アダム・エヴァくんが見事に大暴走して、凛花の特攻によって俺は一緒に封印されたと思っていたら、なんか葵くんが秒で助けに来てくれて普通に助かった。
その後葵くんと照香と剛と、あと肉体の9割が消し飛んだどさくさに紛れて俺の体の内側に住み着いて体を治している凛花と共にしばらく暮らして、なんか気が付いたら葵くんと照香が不死になってた。人間って不思議だね。
その後も特に変わらず色んなところをぶらぶらして暮らしてたが、剛が死んだのを機にせっかくだからと葵くんと照香を連れて旅を始めたのだ。
「あー、この遺跡あれだわ。俺が作るの手伝ったやつ。多分探せば俺が書いたラクガキとか見つかるわ」
ぶっちゃけ言うと今更地球を旅しても未知のワクワクなんてほとんど存在しないが、葵くんと照香は違う。2人の反応を見ているだけでも面白いし、現在進行形で成長する不死者を観察するのも初めてで楽しい。あと数千年程度はこれで暇を潰せるだろう。
「……アルカ。ちょっといいですか?」
「ん、どうした凛花?」
肩の辺りから小さな花が生えてきて、その蕾の中からおやゆび姫サイズの凛花が現れて俺に耳打ちをしてきた。
「先程の流星。忘れもしないアルスノヴァの反応でしたけど……どうしますか?」
「どうって……なんもしないだろ別に。誰かが何とかするだろうし」
「ふふ、さすがアルカ。そういうと思ってました」
「よせやい。褒めても何も出ないぞ?」
とりあえず流星とかアルスノヴァとかは無視して、少し前を歩く葵くん達の方へと足を早める。
今日も明日も明後日も、数百年後も数千年後も数万年後も……その先になってこの星がなくなっても俺が死ぬことは無いだろうし、いつかまた退屈になることもあるだろう。
でも、今この時だけ楽しければそれでいい。ぶっちゃけ俺以外が困ってても割とどうでもいいし。なんだかんだ言って本当に退屈になるような時が訪れるほど、この宇宙の容量というものは少なくなさそうだし。
────4000年経ってから言うことでもないが、不死ってのも案外悪いものでは無い、かもしれないな。
……それはそうと、遺跡にあるこのボタンなんだっけ。
確か俺が付けたんだったけどなんなのか忘れちゃったな。こういうのって押したら大抵ろくなことにならないしここは押さずにさっさと立ち去いいや押しちゃえ。
『────────マスター権限所持者を認識。おかえりなさいませ、アルカ様』
「あ、なんか起動した」
『────崩壊プログラム再開。惑星再誕の為の時間算出……28時間。実行開始します。地球上の生命の皆様。さようなら』
…………よし!
この遺跡には何も無かった!
ここまで読んで下さりありがとうございました。
これにて死にゲー(以下略)は完結です。
と言ってもお話の不死者のお話なんで『終わり』は存在しませんので、また番外編とかで会うことになると思いますのでその時はよろしくお願いします。
なんか見たい番外編とかあれば活動報告まで。改めて、ここまで沢山の感想と高評価と日光と水をありがとうございました。これからもそこら辺があればゆっくりと続きが生えてくると思います。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
番外編
クソレズフォレスト 1
割とすぐに生えてきた番外編。
洞の乙女がまだ壊れきってない頃のクソと出会った話です。
『私』が生まれたのはずーっと前。
気がつけば私は海の中を揺蕩っていた。
自分がこの星に産み出された精霊であること。
それだけを星から伝えられてただ揺蕩うこと数万年。偶然にも私は同じような境遇の精霊と出会った。
私は彼に聞くことにした。
「私はどうすればいいのですか?」
最近、海に増えてきた生き物と似た顔立ちをした彼は言った。
「成すべきことは何も無い。我はこの海を揺蕩い、眺め、ただ生きる」
気がつけば私は陸に上がっていた。
陸に上がって出会った精霊にも私は聞いてみた。
「私はどうすればいいのですか?」
精霊は面倒くさそうに答えた。
「楽しいことをして生きりゃいいんだよ。何が楽しいか? 知るか自分で考えろアホ。……そうだ、私と1回殴り合わないか?」
殴り合い、というものを提案してきた精霊を地面に埋めてから私は空を飛んでみた。
陸にも、海にも、そして空にも
どこに行っても
私は死んでみることにした。
初めに首を切ってみたが死ななかった。その後は溶岩に飛び込んでみたが熱くて苦しいだけで死ねなかった。空の向こうの宇宙にまで行ってみたけれど死ねなかった。
全身を裂いて毒に漬けて酸素を消して機能を抉り存在を剥ぎ野を焼き腐海に沈み体を捨てて朽ちるのを待ちそれでも星が
なんなんだ、なんで生きてるんだ。
どうして星は私に意識を与えたのだろう。泳ぐ必要のない生き物にヒレを与えるような、歩く必要のない生き物に足を与えるような、光の必要ない生き物に目を与えるようなあまりに残酷な所業。
知りたいものはありません。
欲しいものもありません。
なりたい自分もありません。
理由もないのに、目的もないのにどうして生かすんだ。命というものは儚くて脆くて、必死に使命を果たそうとするから美しいものなのだろう。
私は命ではない。私はそこに在るだけの空でしかない。だからいいでしょう。私は在る理由がないのだから。お願いだから私に
だからどうか終わりをください。
無為に生きる時間ほど、苦しいものはありません。
「ブラちゃん! ほにゃにゃちわー!」
「キャラと合ってないからやめろアルカ。頭でも打ったか?」
羊のようなモコモコの黒髪に黄色のメッシュ……というか電気が流れて黄色に光る髪の毛がチャームポイントのブラックドッグのブラドは割とゴミを見る目で俺を見てきていた。
もう1000年くらいの付き合いになるのにブラドちゃんってば冷たい。
「近頃会う度にキャラを変えてるが……なんなんだそれ?」
「なんかなー。最近『俺』ってのがなんなのかわかんなくなってきててさー。1秒前の自分と1秒後の自分が同じに感じられないというか、少しずつ何かが削れて俺が壊れてる気がするんだよ。……だから、強烈なキャラ付けで自己を保とうと思ってな」
「馬鹿。不死者の自己が崩れることなんて絶対にありえない。いらない心配はするな。……私は、飾らないお前が好きなのだからな」
「あ、なんか言った?」
「ッ、お前の耳なら聞こえてただろっ! 聞こえるように言ったんだからな!」
マジでちょっと意識が飛びかけて聞こえてなかったんだけど、ブラドはぷんすこと音を立ててビリビリしながらそっぽを向いてしまった。弁解しようにも、拗ねるとブラドは普段のぶっきらぼうさが割増になってろくに話も聞いてくれなくなるので少し面倒だ。ここはお仕事の話でもして時間が経つのを待たせてもらおう。
「ブラドー。今回はなんでこんな森の奥に俺を呼び出したんだよ」
「ヴォドゥンが不死者の反応を見つけたって言ってたからな。お前もわかってる通り、私達は単身で全人類を滅ぼすくらい普通にできてしまうからな。まぁ、新しく生まれたやつでもない限りそんな心配する必要も無いだろうが、一応な」
「つまり新入りがなにかやらかす前に唾付けに行くってことか」
「なんか独特な言い回しだが……多分そういう事だ」
ブラドは墓守として墓に埋められた身寄りの無い少女が精霊化した『ブラックドッグ』。故に彼女の本質は墓の、ひいては人類の守護である。
本質と言うよりは『存在理由』とも言うべきそれ。やらなくてはいけないのではなく、やらないという選択肢が取れない。
……なんとも可哀想な不死性だと思わなくもない。不死になってまで何かに縛られているなんて。俺なんて、一応体は星から生まれた人間の概念精霊らしいのでたまに地球からの命令が聞こえるけどガン無視してるし。
「しかしこんな森の奥に住んでるとかそいつも物好きだな。半ば異界化してるじゃん。人嫌いなタイプかね?」
「情報を統合するとオケアノスやパンゲアの言っていた『植物』の概念精霊という可能性もあるな」
「えー……アイツら並に強いなら俺だけじゃ止めるの多分無理だよ?」
「それに関しては大丈夫だ。私はお前を信じてるからな」
信頼で現実が変わるなら異界領域は苦労しない、と言おうとしたところで周囲の雰囲気が変わった。
どうやら適当に歩いていたら結界を抜けたようで、気がつけば開けた場所に出ていた。日光が良い感じに差し込んで、まさに精霊がいるとなるとお手本のような幻想的な空間の中心に彼女はいた。
まず最初に言っておくと、その精霊は裸だった。
一応、人間の女性……と言うよりは少女の体つきをしていたが、もう1000年も生きてるので興奮したりとかはしない。むしろその逆だ。
曲がりなりにも不死者の1人を前にしているというのに恐怖もなければ、絶世の美少女と言うべきその姿を見て微塵も湧いてくるものがない。あんなに美少女なら性欲こそ湧かなくてもちょっとくらい変な気が湧きそうなのにだ。
「アルカ……」
「わかってる。ブラドの方が可愛いから安心しろ」
「は、はぁ!? 急に何言ってんだお前!? それよりも私が聞きたいのは、
何処って……改めて目の前を見るが胸もアソコも丸出しで大事じゃないところを植物のツタで隠した美少女がぼーっと岩の上に座り込んでいる。確かにちょっと影が薄くて、なんだか風が吹いたら消えてしまいそうな儚さはあるけど確かにそこにいるはずなのに。
……まさか、いや間違いない。
俺にははっきりと見えているのに、ブラドには見えていないということはそういう事だろう。
「ブラド、視力落ちた?」
「は? 不死者の視力が落ちるわけにゃ」
気が付いたら視力どころかブラドの上半身が吹っ飛ばされてミンチとなって地面に落ちてしまっていた。
確認する必要も無いが、ブラドがそんな風になるだなんて火山の噴火をマトモにでも浴びない限りはありえない事だろう。ならばなぜ、穏やかな森の中でそんなことが起こったのか?
「……一応聞くけど、敵意とかある感じか? 俺達は話し合いに来たんだけど」
「1544○.・¥……59ころ35¥8」
「くっそ、いきなり頭吹き飛ばしやがって……アルカ、なんて言ってるかわかるか?」
使われた言語は地球中枢言語。音として成り立っていない言葉の意味が直接脳内に叩き込まれる感覚が嫌いなので俺はあまり使わないが、これを使ってくるということは相手は以前オケアノスが語っていた、現地球上で最強の精霊、植物の精霊ユグドラシルとやらで間違いないだろう。
うん。勝てないわ。
噂によるとオケアノスじゃ勝てないって言ってたけど、俺じゃまともにやったらオケアノスに勝てないから無理ゲーなんだよね……。
「ま、逃げる気はないんだけどな」
「アルカ……やるのか? ちょっと私は逃げた方が良いと思うぞ。あの不死者、冗談抜きに
珍しく弱気になっているブラドの頭の上から『原初の緑』をぶっかけて黙らせる。ついでにこれで万が一にも巻き込まれて消し飛ぶだなんてことは無いだろう。
相手の結界内とは言えこんな簡易的なモノなら簡単に抜けられるし、その気になれば振り切ることもできる。
話に応じる前に攻撃してきたことと発言から考えて、話し合いに応じる気はなさそう。ならば戦力を確保して改めて数で潰しに来るのがベストだと、俺のIQ500はくだらないであろう頭脳は導き出した。
「でも異界領域の実験とか色々やってみたかったしぃ? 何よりさ……
「こ○9+02|こと6(・(65%・$4(3☆」
俺のカッコいいキメ台詞を聞く素振りも見せず、植物の精霊は自らの体に空いた孔から植物を産み出した。
『
殺到する音速の刃。
本当に植物なのかも疑わしい時間を埋めつくし、空間を喰らいながら進む葉刃は時空間のあらゆるプロセスからの回避を許さず、光速で俺の体を36514分割せんと迫り来る。
だが焦る必要は無い。たかが植物誕生から今までの間圧縮された時空間の中で異常発達して、単体で不死者と同等にまで成り果てた植物の群体に襲われる程度のことどうということは無い。
あくまでそれは、この世界、または奴の中の世界の法則に従って進化した生き物だ。
「異界領域────『万魔屍山無明卿』」
世界が緑に沈んでいく。
無限に思えた植物は、全てが俺に到達する前に枯れ果ててしまった。
「知ってるか? 淡水魚ってのは海水じゃ生きていけないんだ」
「……%*・☆|,4(2(.5#(¥372(そ……5こと~と♪-」
結構大技を見せてやったというのに反応の薄い植物の精霊は、言葉の内容までもが淡白でおしゃべりbotとでも会話でもしてるかのような味気なさだ。
ともかく、自分を研究するようなことがなかったのかそれとも強くなる理由がないほどに強かったのか。植物の精霊はこの技術を知らないようだ。
「己の法則で世界を塗り替える精霊の秘奥義、世界革命。俺の世界は適応の世界だ。俺に合わせられない奴から死んでいくし、俺に合わないやつは全員殺す。というかムカつくやつは全員殺す。そういう訳でお前はいっぺん死んでもらうが、文句あるか」
「%……ァ、うぁ……」
植物の精霊はその言葉に対して、初めて生き物のような反応を示した。
口を少しだけもごもご動かして、
「殺せるものなら殺してくれ。ヒトの精霊」
「アルカだ。ヒトの精霊なんてダサい名前は500年以上前に捨ててきた。……適応できなきゃ死ぬだけだ。適応しちゃうなら……ちょっと無理なんで他を当たってくれ」
この短時間で俺の話していた言葉を完全に習得したバケモノとかどう考えても俺の領域の適応を上回ってくる気しかしないけど、今更相手が異界領域使わないなら多分勝てるからヨシ!!!
大丈夫、だよな?
この頃のアルカはまだやる気がある頃のアルカなので普通に本編の時より強いですし、本編の時より物事を考えて動く本編アルカの上位互換です。
語る場所が無さそうだからここで語っちゃうアレ
・アルカVSオケアノス
両方とも無限進化の領域だが、アルカのは性格には無限の成長、適応でありオケアノスの方が進化というのが正確。オケアノスの領域の生命はアルカの生み出すものと比べ特異性はないが、とにかく数と種類と生産速度が尋常じゃない。アルカが戦うと原初の緑が解析を終える前に物量でゴリ押され、ついでに原初の緑も喰われて負けます。
・ガラティアさんって誰?
ググればだいたい出てくると思いますが、彫刻系アイドルの不死者です。神の加護で不死化した物品なので付喪神に近い子です。本編の間はずっと土の中で昼寝してました。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
クソレズフォレスト 2
凛花過去編のだいたい中編が日曜日をお伝えするために生えてきました。
「おぎゃーっ!? ばぶーっ!? だー、うぁばー!?」
アルカは絶叫した。いや、絶叫するしかなかった。
はっきり言って油断していたのだ。自分は持ち前の探究心で1000年以上自分の体や能力を研究し続けた。大して相手はぼーっとしてつい先程まで人間の言葉も知らなかったアホ。いくら力が強くとも使い方を知らない雑草程度に自分が負けるはずがない。
その自信が木端微塵に華と散る。
異界領域『万魔屍山無明郷』によって生成された『原初の緑』は時間さえあればあらゆる相手の情報を解析し、相手が勝てない存在へと進化する可能性を孕んだある意味究極のジョーカー。……時間さえあれば。
「時間、時間稼いで! ブラド! 頼むから時間稼いで! 10秒!」
「無茶言うな。私では少しでもお前の防御範囲から出た瞬間量子分解されるだけだ。だいたいこの光速の戦いの中で10秒とか馬鹿なのか?」
たった10秒。
それだけあれば相手の無限に近い手数の植物の全てを解析し、あらゆる防御をぶち抜いて一撃で行動不能にできる!
だが!
光速で行われる不死者の戦いの中での10秒とは正しく気の遠くなるような時間。永遠と形容しても良いほどにその時間は長すぎる。
「どうだ? 勝てなさそうか?」
「いや、
周囲の一切が確認できない植物の猛攻を『原初の緑』でギリギリ防いでいるジリ貧状態。なのにアルカはただ笑っていた。
色々な理由はあれど、一番の理由は探究心。相手の手札は分からず、こちらの手札は通じない。1000年といえど人の世を知るには十分すぎる時間を生きた彼女にとって、『未知』とは死ぬほどの快感、それが強敵との戦闘ともなればなおさらのこと。
「結局な、自分の力で相手を屈服させる瞬間が一番気持ちいいんだよ。
────
自らの防御に使っていた『原初の緑』。その内、ブラドの為に使っていたもの以外の全てがアルカの体の内へと流れ込む。
何者にもなれる故に何者でもない原初が、アルカの体の内側で翡翠の輝きを放ちながらあらゆる神経をぶち破り体外に漏れ出たりもしながらも循環する。
「必殺ゥゥゥ……アルカパァァァァァンチッ!!!!」
無限の植物が拳の一振で吹き飛ばされる。
晴れた視界の中で、アルカと植物の精霊は戦闘開始以降初めて目を合わせた。相も変わらず植物の精霊は無表情でアルカを見つめ、対する彼女は獰猛な笑みで威嚇をした。
「お前顔はどっちかって言うと儚い美少女だから、威嚇したつもりでもアルカイックスマイルにしかなってないぞ。あと、その技使って大丈夫なやつ?」
「役立たずは黙ってろ! 自分の顔があまりにも儚げ美少女なのはちょっと悩んでんだよ!」
強気な口調で答えていたが大丈夫なわけが無い。
『原初の緑』は何者でもないが故に無限の可能性を持つ。その質量は当然無であり、同時に孕むエネルギーは無限。いくら不死者とはいえ存在しないのに無限のエネルギーを持つふざけた物質を体内でガソリン代わりに循環させれば、存在の核がボロボロになっていく。
そもそも、肉体とは魂の格によって限界が設定されている。それを原初の緑とかいうよく分からないモノで無理やり越えさせてしまうバグ技を使えば細胞がバグり出すのは至極当然であった。
はっきりいえば、内心使ったことを後悔。
むちゃくちゃ痛い。例えるなら全身が足の小指になってあらゆる方向からタンスの角が降り注いでくるかのような苦痛。ささくれから全身の皮膚が剥けてしまうかのような激痛。
「だがパワーは予想以上! これは成功と言ってもかぶふぉ!?」
言葉を遮るように喉が裂けて『原初の緑』が溢れ出す。明らかにアルカの体が負担に耐えきれなくなっているが、彼女はその辺りの事は考えない。考えたところで自分の利にならないのならば考えないのが彼女の生き方だ。
「……『
「遅せぇわボケッ!」
新たに繰り出された空間を腐食する花びらの嵐も、軽く腕を振るうだけでアルカはかき消してしまう。
今までの植物と同じ構成では足止めにすらならないとわかっていようがもう遅い。緑に光る変態の拳は間違いなく植物の精霊の反応速度を超えてその体を吹き飛ばす。
吹き飛んだ相手の体に追いついてもう一回蹴りを入れ、さらにもう一度追いついてもう一回蹴りを入れる。
一見すればアルカが植物の精霊を手玉に取っているかのように見えるが、まだこの状況でも植物の精霊の方が有利な立場であった。
アルカが勝つ為には、自傷ダメージで行動不能になる前に相手を行動不能にする必要がある。だからアルカは確実性を求めて近づいて直接相手に触れて解析を行なおうとしていた。植物の精霊はそれに気が付き、全ての攻撃をすんでのところで直撃を避けている。
さらに時間を稼ごうと攻撃に回していた植物で盾を……森林を作りだす。
方向感覚を狂わせる植物、時空断層を生み出す植物、物質のエネルギーの正負を反転させる植物、衝撃を吸収する植物。身を守ることに特化した植物によって編まれた森林の盾はもはや1つの世界。それだけで半ば異界領域に近い空間が生まれかけていた。
「無駄無駄ァ! そんなちんけな森でちょっとでも俺に勝てると思ったのか間抜け中抜け独活の雑草! ────人類神話仮想顕現、分岐宇宙
三下臭い口上と共に放たれたのは、ドリルのような形状をした頭部を持つ地龍。
馬鹿の一つ覚えと言わんばかりに、あらゆる物質を絡めとりその終わりまで閉じ込める植物の牢獄へと突っ込んだATGCは、ただ蹂躙する。未だこの世界では足りぬ領域であろうと、
────スペックによるゴリ押しであるッ!
「っぅ……『城爪草』……」
必死に防御を試みる植物の精霊は視界全てを覆う四葉の盾を生み出す。
求めたものは純粋なる硬度。ただ叩き割られるのに数秒の時間を稼ぐ為だけに生み出されたその命はそんな儚さを一切感じさせずアルカの前に立ち塞がる。
植物の精霊は僅かに稼いだ時間で思考を始めようとする。
どうすれば、どうすれば
ぱんっ
「──────っ?」
思考を遮るように鳴り響く水っぽい爆発音。
見れば、植物の精霊の下半身は内臓物や茎や葉を撒き散らしながら四散し、無防備になった上半身は衝撃によって吹き飛ばされていた。
同時に、自身の体の中に『原初の緑』が流れ込むのを感じる。再生、逃亡、攻撃、防御。あらゆる行為が自由に出来ず盾として用意していた植物が枯れ果てる。
植物が塵となり、視界が晴れたことによって植物の精霊はアルカの姿を目にした。
そしてようやく、自分が何故防御を無視して体を吹き飛ばされたのかを理解したのだ。
「名付けるなら……『
アルカの腕が細く、長く、そして鋭く柔軟に変形していた。
肉体とは魂の格によって限界が設定されている。
例えば、人間の魂は人体の限界を越えられず、不死者と言えど不死者の肉体の限界を超えることは出来ない。不死者と言えど肉体を自由自在には変えることはできないのだ。
大量の植物の合間をすり抜けるほどの細さと薄さ、なおかつそれに必要な長さ、そしてそれらを維持したまま近距離での殴打と変わらないパワーを維持することは通常では不可能。どれだけその不死者が肉体を研究してその操作に長けていようと、そんな強化は出来ない。
アルカが行ったその行為は、10点の持ち点で攻撃力、防御力、操作精度、射程距離に割り振れと言われて全てに10点をぶち込んだかのような完全なるルールの無視なのである。
「なんで? って不思議そうな顔してるから説明してやるとな。俺ってば人体のスペシャリストだから、その限界を超えて自分の魂までイジれるようになったのよ。だから瞬間的に魂の形を
そう笑うアルカの体は節々が崩れていて、明らかに無理のある行為に魂そのものが悲鳴をあげ肉体を傷つけていた。死にはしなくとも狂う程の激痛と倦怠感。そしてしばらくは思い通りに体を動かせなくなる後遺症が残るであろう、理論上は可能だが、難易度と危険性から誰も行わなかった行為の代償。
こんなことをできるのは天才か
「原初の緑をたっぷり流し込んでやったからもうしばらく動けないと思うが、可愛いブラドちゃんのお顔を傷物にしてくれたんだ……覚悟は出来てんだろうな?」
「か、可愛いってお前……と言うか不死者だから傷物にはなりたくてもなれないけどな?」
再生も出来ずに地べたに転がされた植物の精霊の上半身を見下ろしながら、アルカは原初の緑を練り上げて彼女に最も苦痛を与える獣を生成しようとする。
かかる時間は10秒。不死者の戦闘においては長すぎるその時間も、無抵抗な相手へと向けるのにはあまりにも短すぎる時間だった。
「最初に言った通り俺達は敵意はないし、ここには話し合いに来た。だが、先に手を出したのはそっちだ。そう言う態度を取ったから、とりあえずまずはボコボコにさせてもらったが……何か言いたいことはあるか?」
「…………たい……いたぃ……いたいよぉ……ひぐっ、ぅ、うぇ……いぁ、うぅぅぅぅ…………」
脅迫するように強めの口調で問いかけたアルカの言葉を、植物の精霊は全く聞いていなかった。
正確に言えば耳を傾けることが出来ないほど、
「えぇ……なに? さっきまでの強敵感どこ言ったし……」
「騙されるなよアルカ。
戦闘が終わったのを見て原初の緑の防壁の中から出てきたブラドが口を挟んだ。
不死者は痛みを感じない。と言うよりは痛みに慣れてしまう。生きるという行為はそれだけで苦しみを伴い、長い人生の中で苦しむ経験の多い不死者は、300年も経てば大抵痛みという感覚を特に気にすることも無くなる程度に流せるようになる。
アルカも最初頃は痛みは辛かったが、現在では
加えて目の前にいるのは植物の精霊。その起源は人間の概念精霊であるアルカとは比べ物にならない。今更痛みに涙を流すような感覚が残っているはずもないし、そもそもそんなものが初めからあるかも分からない。
「えー……じゃあ、今回は俺の勝ちということで! おしまい!」
だがアルカはトドメを刺すのをやめた。
そもそも不死者は死なないので本当の意味でトドメを刺すことは出来ないが、相手の体を徹底的に破壊し、しばらく再生すらできず地に転がす屈辱を与えることに意味が無いということは無い。
むしろ、今回アルカ達が植物の精霊の元を訪れたのは、彼女に現在の環境を激変させるような暴走をしないように注意しておくこと。ならば言うことを聞かなければまたこうするぞ、と脅しの意味も込めて徹底的にやることにこそ意味がある。むしろ、中途半端に倒してプライドを折らなければ再戦とかをふっかけられて巻き添えで地球が滅ぶ可能性すらある。
それでもアルカがトドメを刺すのをやめた理由は…………
「だって嫌だもん! 泣いてる相手をボコボコにするとか、俺が悪役みたいじゃん! 俺は常に正義で気持ち良い側がいいの! やりたくない事はやりたくない!!!」
まぁ端的に言えば気が向かないからである。
前に同じようなことを襲ってきて返り討ちにした人間にして、その人間が不死を殺すことを目標に掲げて怪しい団体に数十年追われた経験があるのに全く懲りてないアルカにはさすがのブラドもブチ切れていた。
しかし、アルカがアホであるのはブラドも知っていた。それよりももう対応がめんどくさいので何も言わないことにしたのだった。
「そう……じゃあ帰ろう。おい植物精霊。一応言っておくが、なんかやろうとしたらまたこの馬鹿けしかけるから、痛いのが嫌だったらマジで変なことやろうとするなよ? ホント迷惑だから」
「ブラドちゃん、なんでそんな可哀想なものを見る目で俺を見るの、って、待って置いてかないで反動で足腰が全然動か、ちょっと待ってマジで置いてくつもり!? おい全力で走るな!」
足が形を維持出来ずにまともに立つことも出来ないアルカをブラドは全力で走って置いて帰っていった。
残されたアルカは少しバツが悪そうに植物の精霊へと移す。当然といえば当然だが、彼女は原初の緑の影響で再生も出来ず、下半身を吹き飛ばされるという激痛に瞳孔を開き、短い呼吸を繰り返してどうにか対処しようとしているが、不死者の強靭な精神は発狂も気絶も許さず、逃げ場のない激痛に悶え続けていた。
「かっ……ひゅ、うぇ、ぐすっ……」
「あー……なんと言うか、俺は悪くないからね? 先に攻撃してきたのそっちだし……その、なので謝らない! じゃあね!」
去り際にアルカは残された力で植物の精霊の傷口に全力で蹴りをぶち込み、産まれたての子鹿のような歩き方でゆっくりとその場を後にした。
「────あれ?」
アルカに傷口を蹴られ、その激痛に悶えること数時間。植物の精霊はふと、痛みが緩やかに治まり始めたことを自覚した。
通常なら、いくら再生しようとも体を吹き飛ばされれば痛みの余波で数日は苦しむことになると言うのに、再生すら未だ出来ずにいるこの状況でまともに思考が出来るほどに痛みが収まり始めるなんてことはありえない。
「あの……蹴り……」
あくまで可能性の話だ。
あのアルカとか言うそよ風でも折れてしまいそうなほどの儚い容姿に隠しきれない邪悪さが滲み出ていた精霊が去り際に浴びせてきた傷口への蹴り。
それが体内へと流し込まれた原初の緑とやらになんらかの作用を与え、痛覚を麻痺させているのかもしれない。
あの邪悪な精霊にそんな意図があったのかは分からないし、偶然に偶然が重なった出来すぎた偶然だという可能性もある。
────それでも、初めて自分から苦痛を取り除いてくれた存在だった。
「────あるか」
完全には治まらない痛みを紛らわす為に、試しにその名を口ずさんでみる。
まだ覚えたての言語体系。その名が何を意味するのかも分からないまま、植物の精霊は何度もその名を呟いた。
あるか、あるか、アるか、アるカ、あルカ、アルカ────。呟けば不思議と痛みが紛れる気がして、何度も何度もその名を呟き続けて数日が経ち、徐々に体が再生し始めた時の事だった。
「えーっと……なんで俺の名前呟いてるの? もしかして、やっぱボコボコにしたこと恨んでたりします……?」
邪悪な精霊は、再びその姿を現した。
・ブラドって……
女の子です。ぶっちゃけ自分が女だということは彼女自身体が女だから前から女だっただろうと思ってるだけなので喋り方は特に意識してませんし、生前女だったかなんて記録は消えてしまったので不明ですがとりあえず女の子です。キレ芸担当なのもあって分かりにくい。
・なんでアルカが勝てたの?
アルカの能力が初見殺しなのと、この時の凛花が異界領域のことを知らずに使わなかったからです。
そしてこの時のアルカならオケアノスにすら搦手で勝ちの目があるくらいには強いです。本編のクソザコは研鑽と研究をやめて久しいのでだいぶ劣化してます。
それでも過去アルカと本編凛花が戦ったら確実に凛花が勝ちます。
・偶然か故意かキック
真実は
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
クソレズフォレスト 3
「何をしに来たのですか。また私を痛めつけたいんですか?」
アルカと呼ばれていた邪悪な精霊に対して私はそう質問した。
彼女は先に攻撃されたから前回は攻撃したと答えていたが、今回もそうだとは限らない。痛いのは嫌いだ。だから先に危害を加えないかを聞くことにした。
「そのー……今回はお話をしに来ただけと言いますか……。とりあえず攻撃はやめてね? というか、攻撃すると相手に攻撃する理由ができちゃうから痛いのが嫌ならまずは攻撃しないことが大事だと思うよ?」
邪悪な精霊の言うことは一理あるかもしれない。とりあえず構えていた植物達を引っ込め、敵意がないことを再確認して彼女が近づいてくるのを容認する。
「では何の用ですか。私の事を、殺してくれるのですか?」
「いや。不死者を殺すとか無理ゲーだし。俺はただちょっとアンタで実験したいと思って。手始めに頭部を解体させて貰えると助かる」
ほぼ反射的に植物で攻撃して邪悪な精霊の顔面を吹き飛ばした。
この精霊はいきなり何を言っているんだ? 頭の中に害虫でも詰め込んでいるのかと思ったが、叩き割ってみても脳漿を撒き散らすだけ。精霊のくせに、なまじ中身が人間そのものであるから余計に気持ち悪い。一体どう言う神経をしていたら頭部の解体を私が快諾すると思えるのだろうか?
「いや待ってくれ。誤解だ、誤解なんだよえーっと……植物の精霊」
「私の頭部の解体を要求してくる相手に対して正当防衛を行った事のどの辺りに誤解が生じる余地があるのですか?」
「何を言っているんだ。頭を割り合うくらい不死者間なら挨拶くらいのもんだろ」
やはりこの邪悪な精霊は危険なので殺しておいた方が良い気がしてきたが、なぜだか害意や敵意と言ったものを感じない。ヒトの精霊である以上は巧妙にそれを隠している可能性もあるが、変に疑いをかけて相手の機嫌を損ねても仕方がない。
────今の私は依然としてアルカとやらにやられた傷が癒えきっておらず、まともに戦えば今は勝算すらない。
「……好きにしてください。どうせ、何やっても私は死ねないのですから」
「うん。不死者だからそりゃ死ねないだろうね」
こちらとしては結構真面目に、半分くらいは相手に残ってる可能性のある良心に訴えかけるつもりで言ったのだが、邪悪な精霊はこともなさげに受け流した。本当に、不死者と言えど
人間は生まれは皆善である、という考えが人間の間にもあった気がしたが、人間の精霊がこの様子ではそれは確実に都合の良い思い込みなのだろう。この精霊は確実に生まれつき性根の腐ったクソ野郎だ。
「逆だよ。俺よりも確実に長く生きてる不死者が
「貴様……私の思考を……」
「いや思いっきり口に出してたよ?」
考えてみれば、生き物とまともに会話するのは久しぶりかもしれない。そもそもこの結界の内側に生物が来ることが久しぶりだ。
以前の戦闘の際にこの言語を覚えてから、習得のために口ずさむくせができてしまっまたのかもしれない。周りにそれを気にするもののいない環境が、それを助長したのだろう。
「まぁ安心してくれよ。俺は正しいことをしに来たんだ」
「痛い痛いと泣き叫ぶ女の頭を開いて弄ることが正義とは、人間も随分と進化したものですね」
「俺は人間の精霊ってだけで人間じゃないし。……それと、アンタだって姿形が女に見えるだけで本質は植物だろ」
軽口を叩き合いながら、合図も何もせずに邪悪な精霊は私の頭を切り開いた。
「……なぁ、貴様のあ、正義ってあ、ものはあ、どういうものなのですか?」
「頭を開いた時は泣き叫んでたくせに、やっぱり案外俺達と変わらないんじゃ……」
「知らないんですかあ、脳の内側にはあ、痛覚というものがあ、ないんですよ?」
「えー……俺は痛かったけどな……」
「それよりも私の質問に答えてください」
邪悪な精霊……アルカは本当に遠慮をしなかった。
器用に体を変形させて脳の中を隅々まで調査してくる。それも私に一切の苦痛を与えずに。正確に言えば脳を露出させるために頭を切られた時は数時間痛みでのたうち回ったが、私にとってその程度の痛みは日常茶飯事だ。苦しくはあれど耐えられる。
「俺にとっての正義ってのは、まぁ俺自身だな。俺が正しいと思ったことが正しい」
「ならば、貴方の都合の悪いことは全部正しくないことにすればいいんじゃないんですか?」
「違うんだよなー。俺はね、俺の倫理の中で常に正しい側でいたいの。泣き叫ぶ女の子を痛めつけるとかなんか俺が悪いみたいじゃん。やだよそんな気持ちで生きるの。ただでさえ死ねないのにそんな気持ち抱えて生きるのなんてごめんだね」
ここはそんな事言わずに貴方を見過ごせなくなっただの適当言って恩を売れば良いものを、バカ正直に自分の為でしかないことを言ってしまうような相手に、私は1度負けたのかと思うと自分が不甲斐なくなる。
ただ、虚飾ばかりのこの世界でここまでまっさらに接してくれた存在は前に殴りあった大地の精霊くらいだろう。
「……お前口に出てるからな。植物の精霊のくせに全然穏やかじゃないな。見た目は大和撫子なのに」
「ヤマトなんとかやらとは置いておき、植物が穏やかだなんてイメージは私にはありませんよ。……この地球を最も広く支配するために旧世代の生物を皆殺しにした、この世で最も苛烈なモンスターです。だからこそ、私も恐ろしい化け物なのでしょうし」
「またまた。犬モードのブラドの方がよっぽど化け物だわ。信じられる? アイツ目が128個あるんだぞ? キモくね?」
会話というものの経験はあまりなかったが、アルカとの会話はまるでひたすら壁に石をなげつけているかのような不思議な感覚。とにかく響くものがなく自分が本当に会話をしているのかですら怪しくなる。
「それでなー、俺たち不死者はそれぞれ体の作りが違うけど、不死を司る因子だけは共通して存在するんだよ」
「では、それをどうにかすれば不死を辞めることが出来るのですか?」
「いや無理。その因子が出来てしまった時点でその因子諸共不死性が付与されるから改変しようとしても即座に再生する。要は俺達の核だ。破壊、改変する方法ない」
「そうですか。それは残念ですね」
「…………なんでそんなに死にたいんだ? 色々あって死については経験があるけど楽しくないぞ?」
本当ならいくら聞かれようと話してやるつもりなんてものはなかった。でも、脳を弄られながら会話していたせいで思考を変えられたのか、私の口は言いたくないことをつい言ってしまっていた。
「理由がないからです」
「理由?」
「生きる理由です。そんなものがないのに何故生きなければならないのですか? そもそも、生という状態は原始的には常に一定しない不安定な状態で、死という安定した状態が正常なのになんでわざわざ生きる必要があるんでしょうか」
「知るか。そんなこと考えてる暇があったら楽しいこと探すわ。考えても無駄なこと考えて楽しい?」
アルカの爪が深く脳を刺す。
存在の根底を掴まれたような、不快なのにどこか心地よい矛盾した感覚がつま先からじわじわと湧いてくる。
「楽しいわけないじゃないですか。だから私は死んで終わりにしたいんです。存在が無駄である私を、認めることが出来ないんです」
「それはちょっとわかるわ。植物とかってさ、数と歴史がある分進化がすごい方向に行ってて無駄がないなこいつらってなるんだよねー」
適当にあいづちを打っているのはバレバレ。そもそも不死者が互いに共感を覚えられるのは不死という1点のみ。それ以外は大抵皆根底から別の存在なのだ。
相互理解のできる存在はこの世にいない。それが私達不死者の生まれ持った理なのだから。
…………それでも、それでももしもの話。
こんな私を、何もない空っぽの私の「」を理解してくれるような存在が現れたら────
「なんか鼻がムズムズする……へっくし!」
瞬間、私の脳の内側でアルカの爪が突然栗かウニのようにトゲトゲした塊に変化して体を内側から串刺しにしてきた。
瞳、耳、口、喉。伸びた爪は内臓すらも傷つけ体内で絡み合い、信じられない激痛を私に浴びせてきやがった。
「あぁぁぁぁぁぁぁっ!? い、い────! あ、うわぁぁぁ! いたい、やだやだやだやだ! もうやだぁ! いたいのいやだ!」
「うわっマジでごめん。もうミスらないから今のなしってことにしてくれる?」
「ふざけんな! ふざけんな、あ、うわぁぁぁぁん! いたいよぉぉぉぉぉぉ──────」
さすがにこの時ばかりはぶち殺してやろうかと思ったりもしたけど、結局余計な傷をつけられたせいで痛みと再生不良でまともに動けなくなって抵抗すら出来なかったのだった。
「よーし! 改造完了!」
「…………は?」
30回くらい季節が巡った頃、私の頭に蓋をしながらアルカはそんなことを呟いたのでさすがに思いっきり顔をぶん殴った。
既にこの頃にはアルカに負わされた怪我も完全に治癒していたので、再生阻害などはしなかったが込められる力は全力で込めて、破片を宇宙までぶっ飛ばす勢いで殴った。
「え、私改造していいとか言いましたっけ? 朗らかな会話しながら精霊の頭改造するとかやっぱり貴方星のバグなんじゃないんですか?」
「でもさ、車とか弄ってるとちょっと自己流の改造いれたくならない?」
「クルマ、とやらが何かは知りませんが何故他人の体でやるんですか自分の体弄って爆散してくださいよ」
「まぁまぁ。ちょっと試しに……よっと!」
何が嬉しいのかニコニコしながら私の手を取ったアルカはそのまま人差し指を掴んで絶対に曲がらない方向に一気に折り曲げた。
…………!?
「どや?」
「え、死んでください」
咄嗟に全力で蹴り飛ばして、アルカの体を鞠みたいに地平線の向こうまで地を抉らせながら吹っ飛ばしてしまった。
「はぁ!? いきなり蹴るとかマジで大和撫子成分見た目だけだなお前!」
「逆に貴方は自分の指をなんの躊躇もなく折ってきた輩に暴力を加えないんですか?」
「驚かせようとしただけなのに……ほら、よーく指の方に意識を研ぎ澄ませろよ」
そうは言われても痛みという感覚は大嫌いだ。出来ることなら感じたくないその感覚であるが、指を折られては然るべき痛みが……
痛みが……
「あれ、痛くない……?」
既に指は再生を終えていて、普段なら再生を終えても残った感覚で泣きそうになる『痛み』が全くない。正確には指がすこしピリつく程度に痛むがその程度。今までのものと比べれば無視できてしまうほどの軽微なものだ。
「この俺を誰だと思っている。お前は遺伝子不良で痛みを鈍化させることが先天的に出来ない状態であることは下半身を消し飛ばされて無様に泣き叫んでた時にだいたい予想していた。ここ数年お前の頭を弄ってたのは、どれだけ弄っても元の形に戻る不死者の遺伝子構造をバレないようにほんのちょっと弄ったのさ! まぁ、やりすぎるとすぐに再生しちゃうから、正確には痛覚の鈍化じゃなくて痛覚をお前と繋がってる植物に分散させてるだけだけどね」
試しにもう一本、指を思いっきりへし折ってみる。
痛い。本当にちょっとだけ痛いけれど、せいぜいささくれが剥けた程度。
「どーよ? これで少しは生きる目的とか湧いてきたか?」
「全然それは湧いてこないが……うん。凄い。ありがとう、アルカ」
「いーのいーの! ぶっちゃけ後半は俺の私欲だから! これを応用すれば俺が食らうダメージのすべてを人類に押し付けられるかもしれんし……」
本当に、余計な事を言わなければ素直に素晴らしい恩人のままでいられたのにバカ正直に全てを言ってしまうのは理解出来ない。
少なくとも彼女は彼女の中の善悪に従い動いているのだが、その境界があまりにも不確かというか常にぶれている。1秒後には善悪か根本的に入れ替わっているかもしれない不安定さ。
知りたいものが出来ました。
それからも、アルカは私の元をちょくちょく訪れて他愛のない話を繰り返していました。
彼女の話はなんと言うか……とにかく反応に困るものばかり。明らかにアルカが悪かったりするのに何故悪いのか理解できてなかったり、逆に理解してるくせに平然とやってたり、本当に物事の価値基準がどこかズレていて、同じ世界の存在とは思えないほど不思議でした。
以前はよく星を見上げていた。
私なんかよりもずっと大きく、脆く、輝く星々さえもいつかは朽ち果てる時がある。何個の光が消えたかを数え、それを見て数億年後の『もしも』に思いを馳せていた。
その時間はもう無くなった。気が付けば私はアルカのことを考えていた。次に会う時はどんな話をしてくれるんだろう、どんな馬鹿みたいなことをしでかしているのだろう、どんな髪型にしてくるのだろう。アルカは見た目に拘っていて、ちょくちょく髪の毛の纏め方を変えていてそれが不思議と愛らしく感じるのだ。
気が付けばアルカのことを考えている。
「植物の精霊って呼びにくいよな。ユグドラシルってのもその大和撫子な見た目に合わないし……凛花! よし、お前今日から凛花な!」
その名前を貰った瞬間、私の存在が切り替わった。
第一優先事象が星の保護ではなくアルカの意思となり、元々あった名前なんて毛ほどの価値も感じられずすぐに記憶の彼方に消してしまった。
「なぁなぁ、これ着てみてくれよ。これは『ワフク』って言ってな……まぁまだ存在しないから俺が再現したものだけど多分似合うぞ」
アルカがくれたその衣装は、不思議と私に似合っていた。
意味は分からないが『雅』という単語が頭の中に生まれ、確かにその服を纏った姿の私は暴力なんてものとは縁のなさそうな雰囲気があった。
……アルカはこういう雰囲気が好きなのだろうか?
「おーい凛花! この前ブラドがな────」
「お前も不死者集会来ればいいのに。オケアノスとか言うやつ、昔からの知り合いなんだろ? アイツめちゃくちゃチャトランガ強くてさ────」
「異界領域? なんかこう……ばーっとやってぐわーっと……もっと具体的に? それじゃあまずは心理世界の認識を空間認知シナプスと繋げてだな……」
アルカといると心が踊る。これはきっと楽しいというものなのだろう。
アルカといれないと心が苦しい。これはきっと寂しいというものなのだろう。
アルカと過ごす時間の数だけたくさんのものが貰えた。空っぽの私の中に存在価値の雪が少しずつ積もっていく。
知りたいものが沢山出来ました。私はアルカのことを意外と知らなかったのです。
欲しいものは今もありません。アルカが居てくれればそれで十分、何も欲しいと思いません。
なりたい自分が出来ました。アルカが気に入ってくれるような綺麗な私になりたいと思いました。
そしてある日、気がついてしまいました。
ああ、私は
アルカに負けたあの日の私が作り出した、アルカという対象を学習するための能力。
それが私が『心』だと思っていたものの正体。結論から言えば、その機能をオフにした瞬間全ての熱が一瞬で冷めた。
私は空っぽだったのです。本当の意味で何も無く、何も感じない。心がある振りのしていた本物の化け物。あくまで敗北を繰り返さないための自己防衛。それでアルカに勝とうとするわけでも、進化しようとする訳でもない。
一体何のための機能なんだ。防衛機能なら相手に殺意を抱くくらいにして欲しかった。そうすれば私はアルカを殺すことだけを考え、アルカと無限の時間を生きれたのに。
何も感じない虚ろには、無限の時は長すぎる。
何も成せない虚ろには、無限の時は長すぎる。
どうか地球よ、貴方に声があるのならば教えて欲しい。
何故こんなにも意味の無い命を生み出したのか、その命に意志を与えながら心を作らなかったのか。
「え、そんなもん記念品感覚だよ?」
答えたのは聞きなれた声。
いつの間にか背後にいたアルカは、小麦の塊でタコの足を包んで焼いた奇妙な食べ物を口に含みながら、ソースと混じった唾を飛ばして話を続ける。
「精霊って概念が出来た時にその強大さに合わせて地球が用意するってだけだからね。俺とか凛花とかがなんで生まれたかって言われたらそういうもんとしか言えないわー」
「じゃあ……なんで私達は死ねないの? 意味なんてないのに、理由なんてないのに、なんで死なせて貰えないの!?」
「俺に聞かないでくれよ……。そういうもんはそういうもんだよ。ただ俺達の命は永遠であるってだけ。なら
アルカの返答に声が固まる。
発声器官の使い方がよく分からなくなり、どう答えればいいかもわからなくなっていた。
一緒にって、それは、一体どういうことなのか。
震える唇でなんとか質問をすると、アルカはキョトンとした顔で一言。
「俺達不死友は死ぬ程長いしだるい人生を飽きないようにやってくためのもんだろ。お前もその1人だよ。……は? 言い方を変えろ? うーん……『友達』だよ?」
ぜんぶどうでもよくなった。
心がないとか知らないですね。私はアルカの友達である凛花であり、植物の概念精霊の誰かとかもう関係ないですもん。
悲しいくらい今の発言も私の心には響かない。ただアルカと友達だというその事実、私にとって初めての友達であるというその事実!
その事実は私のちんけな悩みを全て吹き飛ばすには十分過ぎる!
そう、ぶっちゃけアルカさえいれば他はどうでもいいし、難しいことを考える必要はなかったのだ。
だいたい生きる理由ってなんだよそんなのアルカでいいじゃないですか。可愛くてアホでマヌケでカッコよくて外道で優しくはないけど素敵な存在がこの世に居るんだから、それを見るためにこの世に居ていいでしょう。
そもそも悩みの内容が長い。こんなのアルカにぶちまけても飽きてしまうでしょう。アルカは飽きっぽいのだから、興味を引きつついい感じに継続的に刺激を与えられる方法を……
「あ、このたこ焼きタコ入ってねぇわ」
「アルカアルカ。ちょっといいですか?」
「何? タコどっかに落ちてた?」
「私とS〇Xしませんか?」
「…………?」
「私と〇EXしませんか!」
「大和撫子のイメージが!」
「嫌ですか?」
「いや、最高だわ」
この後めちゃくちゃアルティメットポリネシアンセッ〇スした。
・アルカ
自分の欲望に正直なクソ野郎。見た目は良い。
何も考えてないしセリフの大半はでまかせだし、性欲はないけど下心はある不完全生物。凛花のことは結構気が合うので好き。
・凛花
本質的に空っぽだけどなんかバグった。機械に心を持たせちゃいけないアレ。本当は地球の全自動防衛プログラム的なポジションであり、惑星外からの驚異は全て自動で彼女を当てれば済んでいたけど、バグって仕事しなくなった子。
重い設定はこの先のアルカ概念の戦いについていけない否アルカなので置いてきた。否アルカとは何も感じない凛花の本質から見てなんかアルカみがない概念のもので、アルカの友達じゃない自分くらい存在価値がないのでアルカの友達である自分の一部にして存在させてあげる心の優しさを持つ植物の精霊。お淑やかキャラアルカの弱点(性癖)であって本当は人格や性格らしいものは存在しない。
・アルティメットポリネシアン〇ックス
「マジでやばい」(ブラド談)
「宇宙の真理にたどり着く」(バンシー談)
「アルカ」(凛花談)
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
或る魔女の誕生日 1
お久しぶりです。
番外編が生えました。アルカ(翡翠)がやらかした時の話です。
「こっちに逃げたはずだ! 絶対逃がすな!」
「だから言ったんだ……あんな娘……いや、あんな『魔女』さっさと殺しておくべきだと……」
どうしてこうなったのか、何度考えても理解ができない。
私には生まれつき不思議な力があった。手から火を出したり、人の傷を治したり。私にとっては当たり前だったけれどみんなには出来ないから『不思議な力』と呼んでいたそれは、とても便利なものだった。
これがあればみんな幸せになれる。だから積極的に人助けにこの力を使っていたのに、いつも私がそれを目の前で見せるとみんな私に石を投げて追い出そうと、殺そうとしてくる。
火がつかないところに火を分けたこと何がいけなかったのか。怪我をしていた子の怪我を一瞬で治したことの何がいけなかったのか。
怪我が早く治るのは良い事のはずなのに。
痛みに苦しむ時間が減るのは良い事のはずなのに。
何がいけなかったのか────。
「────きゃっ」
木の根に足を引っ掛けて思いっきり転んでしまう。
擦りむいた手足が痛むが、それはすぐに『不思議な力』で治すことが出来て傷はあっという間に消えてしまう。だからすぐに立って逃げることが出来る。
……でも、不思議と立ち上がる気にはなれなかった。まだまだ走ることの出来る体力はあるのに、私の足はちっとも力が入りはしなかったのだ。
地面に寝っ転がって見た空は、随分と暗い色をしていて、このまま放っておけば一雨降って何もかもを流してしまいそうな曇天。
……このまま目を閉じてしまえば楽になれるかもしれない。
視界を閉ざし、暗闇の中で呼吸を1度、2度繰り返す。それだけで段々と体から力は抜けて意識は昏い昏い沼の底へと────
「あん? 何だこれわかめ? ……うわ、人間じゃん。結界張ってたはずなのになんでこんな所に……」
めっちゃ飽きてた。
はっきり言って死にたいなーとか思っていた。まぁ死ねないんだけど。バンシーに誘われてブラドにバレない程度に人間を弄り回して遊んだりもしたけど、俺の半分の出力も出せない気持ち悪いバケモノしか出来なかったし、なんか作ろうにも思考がどん詰まっている。
既に微かなものになってる前世の記憶によれば、現在はたしか中世と呼ばれる時代っぽいので、昔かじってた魔術とか使って渡り歩いてたけど大して面白い出来事もなかったし、中世地味に長ぇし……マジで1回創世やってみようかなとか考えながら森の奥の結界の内側で寛いでいたら、何者かが結界を破った反応があった。
人間に破れる結界ではない。せっかくなので人間にも理解できる範囲の魔術要素しか使ってはいなかったが、それでもそう簡単にできるものではない。
じゃあ不死者の誰かか。凛花とバンシーにはしばらく1人にさせてと言ったし、ブラドなら強硬手段より先に連絡してくるだろうし、他の奴らならわざわざ俺の所を訪ねてこないだろうし、徐福じゃ出力的に結界を破れないだろうし、一体誰なのかと思って様子を見にいったのだ。
「なにこれぇ……ワカメ? うわ、人間じゃん。マジで? 40年振りくらいかもな見るの」
そこに居たのは人間だった。
時代を考慮しても清潔感が無さすぎる見た目とか、表面上だけ治癒したせいでボロボロになって変な方向に曲がっている手足とかもじゃもじゃの髪の毛で一瞬判断に迷ったが人間だ。
しかも治癒。そう、この人間ってば明らかに魔術を使って体を治癒した形跡がある。歳の頃は6歳ほどだし、親が魔術を使える人間なのだろうか? それだとしたらなんでこんな森の奥で転がっているのか疑問が出てくるが。
……もしもの話だ。
もしもこの子の親が魔術師でもそうでなくとも、6歳で治癒を使えるようになった人間は見たことがない。この子が自分で自分を治癒していたとすれば、それはとんでもない才能を秘めているということになるだろう。
確か最後に人間を育てたのは300年以上前で、最後はどうなったのか……なんかよく覚えていないが、多分俺ならば大丈夫だろう!
「……うぅ、おかあ、さ?」
「はいはい俺はお母さんじゃないですよーっと」
片手で持ってみるけどだいぶ軽い。
歳の頃は10代前半、体格などから考えても軽すぎる。栄養もろくに取れていないみたいだし、このままじゃ衰弱死するな。人間の世話なんて久しぶりで、上手く改造せずにできるか不安だけどやってみるか。
「おい待てそこの女! そいつをどこに連れていく気だ!」
と、立ち去ろうとした時に背後から声がかけられた。
そこに居たのは成人した雄の人間2人。ここは結界内だから、このワカメ娘が破ってきたのを伝って入ってきちゃったのだろう。そうでもなきゃ人間が入ってこれるわけが無いし。
「おい聞いているのか! それとも……お前もそいつの仲間か?」
槍先をこちらに向けておどしているようだけれど、多分あんな粗末な槍じゃ……あれこれ農具か? よくわかんねぇけど俺の肌には傷もつけられないだろうし何も恐れることは無い。
というか人間だいぶ退化したな〜。一昔前の奴らなら私を見ればその時点で力の差に気が付いて逃げるか跪くかしていたのに。まぁ数が増えれば質が落ちるのは仕方ないのかもしれないけれど。
「無視をするな! お前、その髪の色に瞳の色……やっぱりお前も魔女か!」
「お、おい……なんかアイツ変だぞ。マジでやばいんじゃないか……?」
槍を突き出してくる男は見所なしだけど、その後ろにいるビビりなやつはどうやらそうでも無いようで俺との実力差をわかっているようだ。人間にしてはやるじゃん可愛らしい。
まぁキャンキャンうるさいのは代わりないし、向かってくるようなら……。
「……私を、置いていってください……」
「あら、ワカメちゃん起きてた?」
ボロボロのワカメちゃん(仮称)は騒ぎの中でいつの間にか意識を取り戻していた様子で、人間では珍しい赤色の瞳で私を見つめながら、今にも消えてしまいそうな声を絞り出していた。
「私を匿ったら、貴方も酷い目に……だから、置いて逃げ……」
「んー、別にお前のお願いを聞いてやる義理ないしなぁ」
「さっきから俺を無視しやがって! お前もそのガキの仲間ってことで──」
「ハイハイわかったわかった。ちょっとみんな黙ってくれや」
せっかく今は中世なのだ。
体内の構造を少し変えて魔法陣を作り出し、指を弾くことでそれを起動させた。原理としてはめちゃくちゃ簡単な異界領域で現実に物理法則を無視した現象を限定的に発生させる。
例えば火を出したりだが、今回はさっきからうるさかった男の頭の内側から爆発を作り出してみた。
ボンッ、という小気味好い音と共に男の首から上が弾け、辺りに赤とピンクが散らばっていく。
「…………ぇ」
「ひ、ひぃっ!? うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
「あーちょっと待ってそっちの君っと」
逃げようとするもう一人の男の脳に向けて形を変えた指をぶっ刺してとりあえず動きを止める。えーっと……人間の脳の形ってどうだったかな?
「ここをこうして……うーん……俺の声聞こえてる?」
「あ、あぎ、あ、ある、か、さま?」
「よしよしいい感じ。俺のお願い聞いてくれるかな?」
「い、いだ、やめ、ゆる、いぎぃっ!?」
やべ、ぐちゃって音したし脳の変な所潰しちゃったかもしれない。
割と人間って壊れやすいから慎重に脳を弄らなければいけないのを忘れていた。
「じゃあここを刺激して、今度はどう?」
「あ、あるか、様の、ご命令を、なんで、え、聞きます」
「よし。じゃあ俺が抱えてる子はクマ……まぁこの辺りにいる適当な肉食獣に食われてるところを見たって追ってる奴らに報告しといて」
「あ、あ、わかり、ましたぁ」
「あと、それでも追跡をやめないような奴がいたらそいつの前で服を脱いで、自分の体を少しずつちぎりながら『あの森に近づくな!』って叫んどいて〜。この時代の人なら結構そういうの効きそうだし」
「り、りょうか、あ、です。あるか、様」
とりあえずこんなものかな。あとはまぁ、別に来なければ手間が省けるしこの森ごと焼きに来たら全員殺せばいいしなるようになれだ。とにかく、そんなどうでもいいしどうにでもなる奴らよりも俺の興味は才能溢れるワカメちゃんの方に集中している。
「それじゃ、帰ろうかワカメちゃん」
「…………え、帰る? それにワカメちゃんって誰……?」
うーん…………。
めんどくさい!
当身!
「あら、目が覚めたかしら?」
最初に目に入ったのは、知らないお姉さんだった。
ふわふわの白い髪の毛と緑色の瞳。どちらを取っても見たことの無い不思議な雰囲気の人だ。
「あっ、まだ動いちゃダメよ。『治癒』はしておいたけど、純粋に体が衰弱してるから、今は安静にしていて。別にとって食ったりなんてしないから。ね?」
逃げようとしたのではなく、辺りを確認しようとしただけなのだけれど、上手く体が動かなかった。
そういえば、ベッドでゆっくりと体を休めたのなんていつ以来だろうか?
……いや、それよりもだ。
「いま、治癒って……治したって、こと?」
「えぇ。……あれ? どっちも同じ意味じゃなかったっけ? あってるわよね?」
怪我を一瞬で治すことは『普通』ではない。
私はそれを、短い人生の中で嫌という程知ってきた。
けれどこの人はまるでそれを当然のように言ったのだ。時間をかけずとも、怪我とは手順さえ踏めばすぐに治せるものだと。
「そういえば自己紹介をしていなかったわね。私は……やっべ名前とか決めてねぇわえーっと……アルカ。『森の魔女』アルカよ。貴方の名前は?」
魔女。魔女、魔女。
何度も言われてきた言葉、その言葉と共に、いつも私は虐げられてきた。けれどこのお姉さんはその言葉を誇るように、空いた方の暖かな手で私の汚い髪の毛を梳いてくれた。
「……え、なんで泣いてんの? 俺なんかしたっけ?」
「あれ、私、泣いて……ます?」
殴られたり掴まりたりする以外で誰かに触れてもらったのは、もう本当に覚えていないくらい昔が最後だ。
ただ髪を梳いてもらった、それだけで今まで人を助けてきてよかったと、自分の意思を曲げないでよかったと思えるくらい、その手は暖かかった。
『魔女』という忌み名が、こんな暖かな意味を持っているのならば、それだけで私は今までの人生の全てに胸を張ることが出来た。
だって、『魔女』はこんなにも私の心を救ってくれたのだから。
「私の名前……ウィ。ウィって言います。貴方と同じ、魔女です」
「泣いたり笑ったり忙しいなー……。っと、ウィちゃんね。よろしく」
「ところで、その喋り方はなんなんですかアルカさん?」
「へ?」
「いや、私を拾った時はもっと男性っぽいというか、強めの口調でしたよね。なにか意味がある行為なんですか? そして実際どちらが素なのでしょうか?」
「あ、なに? 普通に覚えてる系? 夢とかそういうのだと思ってたり、朦朧として覚えてないとかそんな都合いい感じにしてくれないタイプ?」
「あ、また話し方変わりましたね。なんかそれも魔女的に必要なことなんですか? そもそも魔女ってどういう意味なんですか? あとなんで服着てないんですか? 寒くないんですか?」
「やべ、癖で服着てなかったわ。あー、うん。ちょっと待ってね」
そう言いながらアルカさんは私の頭の上に手を置いて…………おいて…………あれ、なんだか、きゅうにあたまがふわふわして……………………
「………………」
久しぶりだから上手くいったかわかんないけど、トランス状態に多分出来たはずだ。
焦点の定まらない目でぼーっと虚空を見つめているウィちゃんのほっぺを軽くはたいてみたり、髪の毛を引っ張ったりしてみるが反応はない。ヨシ! 大丈夫なはずだ。
「さてと。とりあえずまずは『2日前から現在までの記憶を全て忘れて』っと」
「……はい、わかりました」
これで多分色々めんどくさいことは忘れてくれたはずだ。もう一回同じやり取りをしなければならないと考えるとちょっとめんどくさいけど、人間って割と猜疑心強いからこうしておかなければ謀反とかされたり、後ろから刺されたりするんだよね。
えぇ、経験談ですとも。まさか後ろから刺されて四肢を切られて地下室にぶち込まれて怪しい宗教の御神体にされた時はもう笑っちゃったね。
あとやっておくべき催眠あったかな?
「あ、そうだ。『貴方は他人が怖い?』」
「……はい」
「『貴方は他人が憎い?』」
「………少し、だけ」
「よし。じゃあ『私以外の人間への恐怖、憎悪を増幅させて』」
「……わかり、ました」
これは一応の『保険』だ。
こうすることでウィちゃんは極度の人間不信、対人恐怖を引き起こして同時に俺にのみそれを感じないようになる。そうなると無意識に俺の近くが『安心する』と思い込むようになり、依存するようになる。こうすれば裏切られる心配も、逃げられる心配も無くなるっていう一石二鳥の神の一手なのだ。
でもあんまり精神弄りすぎるとこの子本来の才能を潰したり、脳に影響を及ぼして魔術師として上手く育ってくれないかもしれないからこれ以上はやめておこう。これだけ貴重な才能を持つ
……という訳でこの子がまた起きる前になんか適当に服を着て、魔女っぽい感じの設定考えて、この子が魔術師として大成するのにかかる時間……普通の人間から考えて30年くらいだろうか? その期間しっかりとこの子の『師匠』として教えてあげられるように演技しなければならない。
まぁ俺なら大丈夫だろ!
演技は得意分野だぜ!
・アルカ
本編と比べてクズ度が少し低いが、倫理がワンランクダウンしてる頃。この後から数百年かけて、ナチスとドンパチした後本編のメンタル状態になる。
・バンシー
クソレズな頃
・クソレズ
凛花
・ブラド
色々あってちょっと病んでる頃。
目次 感想へのリンク しおりを挟む