とある魔術の禁書目録~二天龍を従えし者~ (眠らずの夜想曲)
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主人公設定

主人公設定

 

名前

 

・神浄 刃 (かみじょう やいば)

 

種族

 

・神(創造神・破壊神)

 

容姿

 

・黒髪で肩にかかるくらい。後ろ髪は腰のあたりまである。後ろ髪はレティシアからもらった紐で まとめている。

 

能力

 

・創造

  万物を創造できる。無論能力も。

・破壊の刀剣(デストラクション・ブレイド)

  破壊神の力を解放した時限定。

  一刺しで半径6mのもの全てを”壊す”。壊れる概念があるものすべてを。例:生命力、心臓、  心など。

  10秒に一度『Destroy!』の音声と同時に効果範囲を6mずつ広げていく。

  対象を斬ると対象をマーキングして10秒ごとに全体の10%ずつ崩壊してい。く。わかりや  すくHPで例えてみる、。最初のHPが100だったとする。すると10秒たつにつれてHPが1  0ずつ減少するのだ。10秒たつと-10、さらに10秒で-10という具合に。最終的には、  対象を崩壊させ尽くす。この刀剣は太古の破壊神。この破壊神の力に刃自身の破壊神の力を合  わせて使う。

・ATフィールド

  創造で刃が創った能力。基本原作通り。

  ・モード『エンジェル(天使)』

    ATフィールドを攻撃重視にする。新劇場版エヴァンゲリオン破の最後でシンジが使ったよ    うに、変形、変質させて攻撃する。容姿は背中にATフィールドでできた3対6枚の翼がで    てくる。頭の上にはEVA初号機のような輪が出てくる。

  ・モード『ブレイカー(消滅)』

    ATフィールドでできた槍が出てくる。この槍で刺した対象の異能を消す。簡潔に言うと幻    想殺し(イマジンブレイカー)の槍版。容姿はあまり通常と変わらない。背中からATフィー    ルドのエネルギーが噴出されている。

  ・モード『ディザスター(天災)』

    サード・インパクトを意図的に起こせる。ただし、展開される赤い渦に吸い込まれていく    のは、刃が指定したもののみ。

・写輪眼

  原作と同じ。

・永遠の万華鏡写輪眼 

  原作の能力を全部使える。

・時間を操る程度の能力

  時間を自由に操れる。進めたり、止めたり、戻したりなど。

・境界を操る程度の能力

  境界を自由に操れる。

・空間を操る程度の能力

  空間を自由に操れる。空間を圧縮したり、消したり、創ったりできる。

・赤龍帝の龍刀(ブーステッド・ドラゴンプレイド)

  原作と同じ。覇龍も完全に使える。

・白龍皇の龍刀(ディバイン・ドラゴンブレイド)

  原作と同じ。覇龍も完全に使える。

・聖力

  無限。

・魔力 

  無限。

・霊力

  言わずもがな。無限。

・神力

  神の力。無限。

 

※上記の能力はすべて刃自身の能力と刃が創造神の力を使って創った能力です。なおこれからも能力は増えていく。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――ネタバレ警告線―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”問題児”の方のはまだ記されていないが、一度刃は能力をすべて失う。ただし、創造神と破壊神の力は魂に定着していたので、無事だった。そして、創造神として確立したので、さまざまな能力が使えるようになった。



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『神使』詳細

『吸血鬼』

 

レティシア・D・神浄

・基本原作通りの強さだが、『神使』になっている分基本スペックが大幅にアップしている。更に刃の本妻であることが影響し、神格化しているといっても過言ではない。ゆえに、他の『神使』とは強さの次元が違う。刃のことは『刃』と呼ぶ。

 

レミリア・S・神浄

・ツェペシュの末裔と名乗っている。妹のフランドールを刃に助けてもらう。そして、フランドールが『神使』になり、刃について行かないといけないと聞き、自身も『神使』に。刃のことは『兄さん』と呼ぶ。

 

フランドール・S・神浄

・刃が幻想郷に行き、紅魔館の地下で発見。狂気の制御のために『神使』に。『網使』には自分から志願した。刃のことは『おにーちゃん』と呼ぶ。

 

 

『龍(ドラゴン)』

 

紅(こう)

・『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッド。だが、『箱庭』で出会い、意気投合。名前が長くて呼びにくいと言う理由で紅(こう)という名前を付けられる。強さは原作同様、無茶苦茶強い。刃のことを『お兄ちゃん』と呼ぶ。

 

オーフィス

・赤龍帝ドライグの気を感じたとかで『箱庭』に来た。いつものドライグと違うのが気になったらしく、ついてくることになった。強さは原作同様無茶苦茶強い。刃のことは『刃』と呼ぶ。

 

ティアマット

・『業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)』で五大龍王の一匹。刃と決闘をして負けたので刃の使い魔―――『神使』になった。刃のことは『刃』と呼ぶ。

 

 

『魔法(魔砲)』

 

神浄なのは

・元、高町なのは。魔法……魔砲少女。本来は『神使』にはならないはずだったが、ヴィヴィオが刃のことをパパ、なのはのことをママと呼んだので『神使』になった。仕方なくなったつもりだったが、刃との距離はだんだん近づいていき、今ではなってよかったと思っている。刃のことは『刃くん』と呼ぶ。

 

フェイト・T・神浄

・魔法少女。『リリカルなのは』の世界で一番初めに刃が出会う。そしてジュエルシードを集めているうちに親しくなる。刃のことは『お兄ちゃん』と呼ぶ。

 

アリシア・T・神浄

・プレシアと約束をして、刃が生き返らせる。ただし『神使』として。刃のことは『お兄ちゃん』と呼ぶ。

 

神浄ヴィヴィオ

・刃が弱っているところを拾う。そして目が覚めると刃のことをパパと呼んだので娘にした。変態科学者にさらわれた後、救出し、そのあと『神使』になりたいといいそれを刃が承諾。刃のことは『パパ』と呼ぶ。

 

神浄ほむら

・神様がヘマしたのを修正するために『まどか☆マギカ』の世界に刃が行ったときに出会う。まどかを魔法少女にさせなかったので役目は終わったといい、刃についていくことに。刃のことは『刃』と呼ぶ

 

霧雨魔理沙

・刃が幻想郷に行ったときに『神使』にした。本人曰く、『普通の魔法使い』ということだが、『神使』になった今では、必然的に『普通の魔法使い』ではすまない技量になる。苗字については、「神浄だと響きが悪いぜ!!」とのことで『霧雨』のまま。刃のことは『刃』と呼ぶ。

 

 

『精霊』

 

神浄ペスト

・元『黒死斑の魔王』。黒死病で命を落とした八千万人の死者の霊群の代表。ギフトネームは『黒死斑の御子(ブラック・パーチャー)』。

ハーメルンの魔道書から切り離されて神霊でなくなり、霊格が衰えたが、『神使』になったことによって今まで以上の力が発揮できるようになった。刃のことが大好き。刃のことは『お兄ちゃん』と呼ぶ。

 

 

『妖怪』

 

神浄ミツキ

・九尾の妖狐。魔王にやられたところを刃に助けられ、そのまま『神使』に。九尾の姿に戻ると大人の姿になり、口調も変わる。刃のことは普段は『お兄様』と呼び、九尾の姿になると『刃』と呼ぶ。

 

神浄黒歌

・悪魔に追われて瀕死のところを刃が救出。種族は猫又の猫魈。刃のことは『刃』と呼ぶ。

 

神浄白音

・黒歌の妹。刃は魔王城に乗り込み、救出。刃のことは『刃兄様』と呼ぶ。

 

 

『特殊』

神浄ルカ

・元、ルイオスの下僕。封印したあと、こっそり一人で封印を解き『神使』にした。刃のことは『お兄ちゃん』と呼ぶ。

 

 

『能力者』

 

神浄メル

・『箱庭』から仲間を探しに他の世界を周っているときに、『とある魔術の禁書目録』の世界でアレイスターに指令が出て、雑貨稼業(デパート) に行ったときに出会った。バロクソに扱われていて、雑貨稼業を殺してから救出。その後、刃と一緒に行くことを強く望んだので『神使』にした。

能力は元は『空気掌握』から『気体掌握』に変更。効果は半径100m以内の気体を自由に操れる。量を増やしたり減らしたり相手の周りだけ真空状態にすることもできる。刃のことはどの世でも一番好き。刃のことは『兄様』と呼ぶ。

 

神浄・M・御神

・元は打ち止め(ラストオーダー)。バグを修正した後、刃のことをお兄様としたいついてきた。能力は美琴と同等かそれ以上。刃のことは『お兄様』と呼ぶ。

 

 

『聖剣使い』

 

神浄イリナ

・『D×D』の世界でコカビエルにより『聖書に記されし神』の死を聞かされ絶望。その時、刃が手を差し伸べついていくことに。剣は『エクスカリバー』七種類の能力を自由に使える。刃のことは『刃くん』と呼ぶ。

 

神浄ゼノヴィア

・イリナと同様の理由で『神使』になる。剣は『デュランダル』。今では自由に振り回せるようになった。刃のことは『刃』と呼ぶ。

 

 

『巫女』

 

神浄朱乃

・元、リアスの眷属。刃が世界を転移するときに連れて行ってほしいと頼み、それを刃が承諾。刃のことは『刃』と呼ぶ。

 

博麗霊夢

・幻想郷に行ったときに『神使』にした。博麗神社の巫女であるため、基本は『神界』ではなく『幻想郷』にいる。刃のことは『刃』と呼ぶ。

 

 

『戦乙女』

 

神浄ロスヴァイセ

・オディーンのジジイに置いて行かれたところをGet☆待遇の良さから刃の元へ。だがその後、刃に助けてもらい刃に惚れる。そしてイイ感じに……刃のことは『刃』と呼ぶ。

 

 

以下、増加しだい加筆。




『デート・ア・ライブ』で『神使』になった者は、まだ加筆しておりません。


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プロローグ

―――神界。

 

 

毎度おなじみのこの世界。

何回も……と言っても、まだ数回だ。両手で数えられる。

ちなみに、ここに来ると俺は創造神の姿に戻る。

 

 

「久しぶりじゃのぅ」

「あぁ、今回も数百年ぶりか?」

「うむ、そうじゃのぅ。あの世界も人間が多いからのぅ」

 

 

『デート・ア・ライブ』の世界は人間がほとんどだったからな。

精霊といっても、ペストみたいなのじゃなかったし。

 

 

「また世界の創造か?」

「うむ、だが今回から世界がわかるようになるぞ」

「本当か!?そりゃあ、よかった」

 

 

前の世界みたいに、起きた瞬間に義妹が俺の上で情熱的なサンバのリズムを刻まれてたら敵わないもんな。

 

 

「よし、早速創造するぞ」

「全開と同じように、ゆっくりとじゃからな」

「わかってる」

 

 

爺さんは球体を渡してくる。

相変らずの黒さだ。

よし、では早速。

 

 

「このくらいか?」

「うむ、ちょうどいい、いい塩梅じゃ」

 

 

球体が黒だったのが空色に染まっていく。

そして一瞬だけ輝く。

 

俺の元には球体がなくなっていた。

 

 

「どうだ?」

「うむ……お主が創造した世界がわかったぞい」

「どの世界だ?」

「科学と魔術が交差するとき、の物語じゃ」

「よ、よりによって『とある魔術の禁書目録』かよ……」

 

 

あの世界には『めだかボックス』並のチートキャラがいるじゃないか。

 

 

「ルールは前回と同じじゃ、お主の創った世界には『神使』は連れていけないんじゃ。じゃが、月に一度。一人だけ呼び出せる。全員呼び出せるのは一年に一度だけじゃ」

「あぁ、覚えてる」

「そしてお主の肉体も創造した世界にすでに存在しておる。ちょうど高校生くらいじゃの。じゃが、今までと違う点が一つ」

「何だ?」

「今までは主人公の代わりといった感じじゃった。じゃが、今回は神浄刃という存在で行ってもらう。ちなみに、『創造神ジン』と『破壊神デスト』は世界の創造者と破壊者として、最上位の存在となっておる。もしかしたら、拝められるかものぅ」

 

 

でぅへぇ……

ダルいよ……

堅苦しいのきたいよ。

 

 

「では、行ってくるのじゃ」

「あぁ……」

 

 

爺さんがやはり前回と同じくリモコンのスイッチを押す。

やはり足元に穴が開き、そこに落ちる。

これはもう慣れた。

さぁ、行こうか。

次の世界に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――???。

 

 

飛ばされたのはいいが……どの時代で、どのタイミングだのかがわからなくて困るな……

 

まずは現状の把握からだ。

さっきから気になっていたんだが……

背、低くない?

なんか子供になった気分だ。

というよりも、子供の身体ですね。

視点が低くて、手が小さくて、靴も小さい。

完全に子供ですね。

 

次は場所の確認だ。

ブランコ、ジャングルジム、ターザンロープ、鉄棒、砂場。

完全に公園ですね。

 

そんな時だった。

 

 

「やくびょうがみ!!」

「こっちくんな!!」

「ふこうがうつるだろ!!」

 

 

一人の少年が、三人の子供にいじめられていた。

いじめ……だよね?

 

だが、いじめられている少年には見覚えがある。

そうだ……身長は違うけど、顔もまだ幼いけど、あいつの名は―――

 

上条 当麻

 

己の右手一つで、強敵を倒す最弱(さいきょう)の人間だった。

神上の討魔。

この世界の最重要人物だ。

 

俺は当麻たちに近づいていく。

 

 

「おい、そこらへんにしておけ」

「なんだよ、やくびょうがみのみかたするのか!!」

「こいつといるとふこうになるんだぞ!!」

「そうだそうだ!!」

「……………」

 

 

いじめていた三人は、次々に反発してきた。

当麻は下を向いたまま黙っている。

 

 

「それがどうした。そんなに嫌なら無視すればいいだろ。だいたい一緒にいるだけで不幸になるわけがないだろ」

「う、うるさい!!」

「ハハハ、正しいことを言われて反論できないだろ。分かったらさ―――さっさと消えろよ」

「「「う、うぁぁぁん!!」」」

 

 

少し殺気を混ぜながら、言葉に怒気を混ぜながら言うと、三人は泣きながら公園から出て行った。

 

 

「おい、大丈夫か」

「……うん。でも、きみもぼくとはいっしょにいないほうがいいよ。ふこうがうつったらたいへんだからね」

「だから、不幸は移らないっての。そうだ、おまえ。名前は?」

「かみじょう、とうま」

 

 

やっぱり上条当麻か。

 

 

「上条当麻か、いい名前だ。俺は神浄刃だ。よろしく」

 

 

そう言いながら、手を差し出す。

当麻は一瞬ためらったが、すぐに手を取った。

 

 

「よ、よろしく」

「あぁ。これで俺とお前は友達だ」

「ぼくと、ともだちになってくれるの?」

「当たり前だ。よろしくな、当麻」

「うん!!」

 

 

無事に当麻と友達になることができた。

 

 

「一緒に遊ぼうぜ!!」

「うん!!」

「何かやりたいことはあるか?」

「しろ!!すなでしろをつくりたい!!」

「わかったわかった。じゃあ作るか」

「うん!!」

 

 

俺と当麻は砂場に向かい、城を作り始める。

水と砂を正しい分量で混ぜる。

それを当麻にわたして、当麻が城の大部分を作り上げていく。

そして、細かい部分は俺が仕上げる。

 

 

「完成だな」

「す、すごい!!」

 

 

そこには西洋風の城がそびえたっていた。

さすがにそこまで大きくはない。

精々50cmくらいだ。

なんたって、俺、子供ですから(笑)

 

辺りも暗くなってきたな。

日が沈みかけている。

 

 

「お~い当麻!!そろそろ帰るぞ~!!」

 

 

公園の外からだろう。

当麻の親父、刀夜の声だ。

 

 

「おとうさん!!」

 

 

当麻も刀夜を見つけたのか、駆けて行った。

 

 

「おとうさん、あのね。きょう、ともだちができたんだ!!」

「おぉ!!凄いじゃないか当麻!!その友達はどこにいるんだい?」

「こっちだよ!!」

 

 

当麻が刀夜をつれてこっちに近づいてきた。

 

 

「君が当麻とお友達になってくれた子かい?」

「そうだよ。神浄刃です。よろしく」

 

 

あえて敬語を使わない。

この容姿で使ったら変だろう?

 

 

「おや、同じ苗字とは……当麻と友達になってくれてありがとうね」

「うん!!」

「そういえば君はまだ家に帰らないのかい?」

 

 

あ……

この世界での俺の家はないじゃん。

どうしましょ。

と、俺が答えずらそうにしていたのを察したのか、刀夜が口を開いた。

 

 

「よかったら、今日、うちに泊まるかい?」

 

 

な、悩む……あ、そうだ!!

上条家に行って、それで今日一日は泊まらせてもらって、隣の土地を無理やり開けて、そこに家を建てよう。

それがいい、そうしよう。

 

 

「お願いしてもいいですか?」

「もちろんだよ!!当麻のお友達なら大歓迎さ!!」

 

 

こうして俺は上条家に一晩お世話になることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――上条家。

 

 

「じゃんじゃん食べてくださいね」

「い、いただきます」

 

 

夕食をいただいているんだが……

量がハンパない。

 

上条 詩菜

 

上条当麻の母親だ。

ちなみにこのときからかなりおっとりしているようだった。

しかし、うまい。

詩菜の作った料理は量も多いが、普通においしい。

だから箸が進む。

が、あまり食べすぎると大変なことになるから、ここらへんにしておくか。

 

 

「ごちそうさま」

「あら、もういいの?」

「はい!!とてもおいしかったです!!」

「そうだろう!!母さんの料理は世界一なんだぞ!!」

「あらあら、アナタったら」

「ハハハハハ」

 

 

この万年バカップル共め。

 

夕食を食べ終え、少し経ったところで風呂に入った。

ちなみに、俺と当麻、そして刀夜とだ。

三人ってのはなかなかキツかった。

狭くはなかったけどね。

 

風呂に入ったあとは、テレビゲームをやった。

野球ゲーム、格闘ゲーム、さすがにFPSなどはなかった。

 

そして、今は、布団の中にいます。

ちなみに、右から詩菜、当麻、俺、刀夜の順だ。

一人で寝るといったんだが、

 

 

「子供なんだから遠慮はしなくていいんだよ」

 

 

と、言われてしまったので、大人しく一緒に寝ることにした。

あぁ、久しぶりに穏やかな一日だったな……

これからどうなるのだろうか。

原作開始からの転生だと思ったら、当麻の小学生のころからの転生だとは……

まぁ、なるようになるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――翌日。

 

 

「じゃんじゃん食べてくださいね」

「は、はい……いただきます」

 

 

またまた詩菜が張り切ってしまい、ものすごい量の朝食が食卓に並んでいる。

朝食なので、俺はそれほど食べなかった。

だが、刀夜はものすごい勢いで食卓に並んだ朝食を平らげて行った。

 

 

「そうだ刃くん。今日はどうするんだい?」

「えっとね、この家の隣に新しく家が建ってるよね」

「そうだね」

「そこが僕のおうちって言ってたのを思い出したんだ」

 

もちろん嘘である。

上条家の隣に空き家があるのを察知指した俺は、夜中に『時間を操る程度の能力』で分身を数時間前に飛ばし、隣の家を買わせたのだ。

どうやら、今日からでも住めるようだ。

普通はありえないだろうに。

 

 

「そうなのかい!!それはよかった!!」

 

 

なぜ昨日家に帰らなかったかは気にしていないようだ。

 

 

「だから、僕はおうちに帰ります」

「そうかい。あ、そうだ。刃くんのお父さんとお母さんにごあいさつをしたいんだけど……」

「今日はお仕事で帰ってこないよ。明日ならお仕事はおやすみって言ってた」

「そうかい、なら明日ごあいさつに行くよ」

「朝ごはんありがとうございました」

「いえいえ、また来てくださいね」

 

 

詩菜が言う。

詩菜さんマジ天使。

てか、このころから全然変わらなかったんだな。外見。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――神浄家。

 

 

中に入ってみて、部屋を見て回ったが、どうやら基本的な家具はあるようだった。

リビングにはテーブル、その高さにある椅子が四脚。

寝室にはダブルベットが一つ。

そして、ウォークインクローゼット。

トイレは一階と二階に一つずつ。

一番驚いたのは、風呂場の広さだ。

10m×15mはある。

無駄に広いな……

浴槽も馬鹿でかい。

もはや温泉だ。

でも、浴槽は大きいほうがゆっくりできていいからいいんだけど。

 

家の確認を終えた俺は、自分の部屋のメイキングにかかる。

まずは、32インチのモニターを創造。

PCとモニターをつないでデスクトップPCの完成だ。

これを部屋の角にあるテーブルの上に置く。

その両脇にはスーパーコンピューターの本体を配置、そして接続。

ちなみに全部俺特性だから、ウイルスに侵入される心配はない。

ハッキングなんてできたらほめたたえてやりたい。

我がファイヤーウォールを打ち破ったみせよ!!

 

このままだと、部屋の温度が凄まじいことになってしまう。

でも心配はない。

なんせ俺特性だから、熱はほとんど放出しない。

精々、家庭用のPC程度だ。

 

さて、これでやっと椅子から動かなくてもすべてのことができるようになったな。

 

親の件は分身と変化でどうにかなるな。

学校は……どうにかしよう。

はぁ、まだまだやることが山積みだな。

 



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第〇章 対象強化
第Ⅰ話~能力検査~


「次の子、入ってくださ~い」

 

 

係りのお姉さんがまた俺たちと同じくらいの子を奥に連れて行く。

何の為に?

能力開発のためだ。

 

そうです、俺は―――俺と当麻は現在学園都市に来ております。

どうやら、当麻は学園都市に編入することになったらしい。

親父の刀夜が当麻の不幸体質をどうにかしたかったらしく、そこで学園都市に目をつけたらしい。

 

そのせいでこれから右手一つで様々な強者を相手取らないといけなくなるんだけどな。

 

 

「次、上条当麻く~ん。入ってくださ~い」

 

 

もう当麻の番か。

 

 

「ほら、当麻いってこいよ」

「うん。またあとでね」

「おう」

 

 

当麻が係りのお姉さんの後についていく。

まぁ結果は分りきっている。

 

無能力者、LEVEL0

 

これ以外はありえない。

 

 

「次、神浄刃く~ん。入ってくださ~い」

「うっす」

 

 

どうやら俺の番が来たようだ。

当たり前か。

上条に神浄だもんな。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

頭にやたらとパッチが張られる。

最初は、もともとの能力を持っていないか確認するらしい。

係りの人はそんなことあるわけないと考えているようだが。

 

 

「な、何これ……こんなことがあっていいの……?」

 

 

白衣を着たお姉さんが言う。

何だ?

どうした?

 

お姉さんが誰かに連絡を取っているようだ。

そして、それが終わるとこちらに近づいてきた。

そして一言。

 

 

「学園都市統括理事長がお呼びよ。ついて来て」

 

 

うげぇ……

俺が何をした!?

そうだ、まず結果を聞こう。

 

 

「け、結果はどうだったんですか?」

「……ERROR、測定不能よ」

「……そうですか」

 

 

測定不能。

能力が大きすぎるせいなのか?

わからないな……

だがまぁ、結果オーライだ。

アレイスターにこんなに早くコンタクトが取れるなんてな。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「ようこそ、神浄刃くん。私は学園都市統括理事長のアレイスター=クロウリーだ」

「は、はぁ……」

 

 

途中で黒服のお兄さんに変わったと思ったら、テレポートでここまで連れてこられた。

すぐにお兄さんはいなくなったけど。

 

 

「それで、僕に何か?」

 

 

アレイスターは不敵に笑った。

 

 

「神浄刃くん……君は一体何者だい?測定不能、こんな事態は今まで一度としてなかった。普通なら絶対にありえないことなのだよ。普通なら」

 

 

こいつはやっかいだな……

鋭すぎる。

それに普通ならありえないこと、ということは原石の場合はどうなるんだ?

 

学園都市第七位、削板 軍覇

通称『ナンバーセブン』

 

能力は学園都市の学者さえも取り扱えないほど複雑かつ繊細な力らしく、超能力者(LEVEL5)に分類できるものかも確信できない能力者であるため世界最高の原石とされている。

あつかえない……

なら、結果はでなかった……?

 

どっちなんだ……

 

とりあえずは、

 

 

「そうだな……『二天龍を従えし者』とだけ言っておこう」

「『二天龍を従えし者』か……おもしろい。字面から二の龍を従えると推測できるのだが」

「そうだ。二天龍は二体の龍を総称みたいなものだ。赤龍帝に白龍皇、赤と白の天龍のことだ。この二天龍はどちらも神を滅ぼすほどの力をを持っている。だから注意してくれよ?あまり俺の行動を邪魔してくるようだと―――日本ごと沈めるからな」

「……善処しよう」

 

 

これだけ釘を刺しとけば心配はない―――とは言い切れないな。

この後はどうなるのだろうか。

このまま帰してくれるわけがないだろう。

 

 

「君に一つ、頼みがあるのだが」

「何だ?」

「学園都市の王になってくれないか?」

「……はぁ?」

 

 

王?

何言ってんだ?

王はアレイスターじゃないのか?

この学園都市を作ったのはアレイスターだし。

 

 

「すまない、言い方が変だったか?学園都市第一位として君臨してくれ、と言っているのだ」

 

 

第一位はまずいだろ……

一方通行さんが二位はおかしいだろ……

そうだ、

 

 

「それはできないが、学園都市第零位。つまりは、『最強』ではなく『無敵』ということでならいいだろう」

「……ふむ、それでもいいだろう」

「だが、俺が第零位ということは、表には流すなよ」

「了解した」

 

 

ふぅ……

さかさまの人間を話すのは疲れるぜ。

なんか気持ち悪くなってくる。

 

 

「あともう一つ」

「一つじゃなかったのか?」

「すまない、もう一つだけだ」

 

 

こいつ……

俺をおちょくってるのか?

だとしたら……むかつくな。

 

 

「暗部に入ってくれないか?」

「おいおい、見ての通り俺はまだガキだぞ?」

「子供がそのような言葉遣いをするとは思えないのだが?」

 

 

それを言われたら終わりだ……

でも、『箱庭』にいたリリなんてものすごく敬語を使っていて、大人っぽかったけどな。

それとは違うか。

 

 

「はぁ……わかった。もちろん組織のメンバーは俺が集めていいんだろ?」

「君がそうしたいならそうするがいい」

「じゃあそうさせてもらう」

 

 

最悪、一人でもいい。

 

 

「それじゃあ、もう帰っていいか?」

「いいだろう。帰りに通信用の端末を渡す。それで任務の連絡をする」

「了解」

 

 

アレイスターから視線を外し、辺りを見渡す。

どこにも扉がない。

が、すぐに黒服のお兄さんが出現した。

 

 

「行くぞ」

 

 

どうやらお兄さんがまたテレポートしてくれるようだ。

お兄さんに近づき、腕に触れる。

すると、景色が変わった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「あら、戻ってこれたのね。てっきりもう戻ってこれないのかと思っていたのだけれど」

 

 

俺のことをアレイスターに報告した女だ。

ひどい言いようだ。

こんなに小さくて、か弱い(笑)子供になんてことを言うんだ。

 

 

「はぁ……戻ってこれましたよ。ただ、余計なものをいただきましたけど」

「余計なもの?」

 

 

女が訊き返してくる。

だが、答えるわけがない。

 

 

「自分で考えろ。俺はこれで失礼する」

 

 

扉があるのでそこから外に出る。

 

 

「あ、やいばくん!!」

「おー、当麻か」

 

 

当麻はとっくに終わっていたのだろう。

でも待っていてくれたと。

優し過ぎんだろ!!

 

 

「帰ろうか」

「うん。でも……おうちのばしょ、わかるの?」

「あ……」

 

 

聞いてねぇ……

俺たちをここまで連れてきたお姉さんはもうどこにもいない。

仮に、場所がわかったとしよう。

鍵は!?

鍵はどうすればいい!?

あれか?

ピッキングしろと?

……それでいいんじゃないかなぁ。

 

 

「やっと来たのね、神浄刃くん」

 

 

声のした方に振り向く。

そこには、俺たちをここまで連れてきたお姉さんがいた。

 

 

「すごく遅いから心配したのよ」

「は、はぁ……」

「あ、そうそう。はいこれ、寮の鍵。寮まで案内するからついて来てね」

「「はい」」

 

 

どうやら、寮まで送っていってくれるらしい。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「へぇ……なかなかだな」

「うん。すごくひろいね」

 

 

この寮、どうやら二人で一部屋らしく、俺と当麻は同じ部屋だった。

部屋は子供が二人で使うには大きい。

二段ベットが一つ、勉強机が二つ。

そしてテーブルが一つ。

クローゼットもある。

極め付けにはシステムキッチンまでついている。

 

 

「とりあえず、もう遅いし寝ようか」

「うん。ベットはどっちがうえをつかう?」

「俺が下でいいよ」

「ぼくがうえでいいの?」

「あぁ」

「わかったよ。おやすみ」

「あぁ、おやすみ」

 

 

当麻がベットの上に上ったのを確認して、俺は部屋の電気を消す。

はぁ、本当に疲れた。

とりあえず、もう寝よう。

 



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第Ⅱ話~質疑応答~

「さて、当麻も学校に行ったことだし、メンバー集めを始めるか」

 

 

当麻には体調が悪いから学校を休むと言った。

そう言わないと「行こう行こう」とうるさいからな。

 

メンバーを集めるといってもどうしようか?

こんなことならアレイスターからリストでももらえばよかったか?

 

そんな時だった。

 

アレイスターからもらった携帯端末が震えだした。

もちろん相手はアレイスター。

 

 

「どうした?」

『任務だ。雑貨稼業(デパート)の人間を殺してほしい』

 

 

あれ?

こんな展開前にもなかったっけ?

そうだ、『箱庭』から仲間を探しに行った時だ。

ということは……

 

仲間Getのチャンスか?

 

とりあえず殺るか。

 

 

「了解した。座標を送ってくれ」

『意外に素直だな。通信終了後に端末に送る。報酬は君の口座に振り込んでおこう』

「了解」

 

 

さて、久々の殺しだ。

気合を入れていこう。

 

端末に送られた座標を確認する。

やはり前と同じか……

さすがにここまで同じだと怖いな。

 

それと口座ってなんだよ。

俺は何も知らされてないぞ。

 

ま、とりあえず任務遂行しますか。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

とりあえず、目標の建物に到着した。

相変らずな建物だった。

ビルだ。

階層もあの時と何も変わっていない。

 

 

「いらっしゃい」

 

 

雑貨稼業がいるフロアに着き、扉を開けると声をかけられた。

これもあの時を変わらないな。

 

 

「ここには何が売ってる?」

「お客さん、初めてかい?」

 

 

こんな会話を続けながら、辺りを見渡す。

いた……!!

 

やはりいたか。

だが、ものすごく気になることが一つ。

 

あの時と同じように、傷だらけで鎖で縛り上げられている幼女(ロリ)もいる。

問題―――気になったのはその幼女の顔だ。

 

メルだ。

 

まんまメルの顔なんだ。

どういうことだ?

どういうことなんだ……

 

とりあえず、話を進めるか。

 

 

「なぁ、アレも売ってるのか?」

「あぁアレか。残念ながら売り物じゃねぇ。他にもっといいのがあるぞ?まぁ一人700万はもらうけどな」

 

 

これもあの時と同じだ。

手に持っていたアタッシュケースを机の上に置き、そのまま開ける。

中には1000万入っている。

 

 

「おいおい……まさか本当にアレが気に入っちまったのか?」

 

 

これも同じ。

だから同じように返す。

 

 

「何か勘違いしてないか?」

「はぁ?」

 

 

一息つく。

そして一言。

 

 

「俺がもらうのは―――おまえの命だ」

 

 

瞬間、刀を創造して首を一気に斬り獲る。

死体は……いいか。どうでも。

 

幼女の元へ行く。

 

 

「メル……なのか?」

 

 

訊いてしまった。

あまりにも似ているから、訊いてしまった。

 

すると、少女の様子が変わった。

今までは、今にも気絶してしまいそうで、弱々しかった。

だが、今はどうだ?

 

 

「ありがとうございます」

 

 

そういいながら、自分で鎖を壊している。

あまりにも急激な変化だ。

 

俺はもう一度訊く。

 

 

「メルなのか?」

「はい!!神浄メルです」

 

 

メルだった……

メルだった!?

 

 

「《神使》……のだよな?」

「そうですよ、兄様」

 

 

あ、今確信した。

完全に、完璧にメルだ。

 

 

「どうしてこの世界にいるんだ?」

「それはですね、爺様が『とあるの世界は昔にちょこっと行っておったし、確かお主と御神嬢ちゃんはあの世界出身じゃったな。よし、わしが送ってやろう。刃も驚くじゃろう』と言っておりまして、成り行きでですね」

 

 

爺さん……

ナイスだよ!!

ナイス!!

初めてじゃないけど久しぶりに爺さんナイスって思った。

 

でも最初に決めたルールを爺さん自体が破ったな。

まぁ、俺が得するだけだからいいんだけど。

 

 

「とりあえず行こうか」

「そうですね、兄様」

 

 

とりあえずメルが仲間になったのは大きい収穫だ。

でも住処はどうしようか?

別に俺と当麻の部屋でもいいか。

当麻がナニするわけじゃないし。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

寮の自室に着いた俺は、とりあえずメルを風呂に入れた。

ボロボロで汚れてたからな。

 

 

「兄様、上がりました」

「おう」

 

 

かなり早かったな。

まぁシャワーだけ済ましたのだろう。

 

さて、これからどうしようか。

一応アレイスターに報告した方がいいのか?

いや、でももうアレイスターは知っているだろうからいいだろう。

 

結論。

 

やることがない。

どうしよう……

このままメルを愛でていてもいいけどな……

それだと時間を忘れて当麻が帰ってきた時がまずいな。

 

そうか、メルの住居空間を創ればいいのか。

 

なら善は急げだ。

 

 

「兄様?」

 

 

俺が急に立ち上がったからだろうか、メルが声をかけてきた。

 

 

「ん?あぁこれからメルの住居空間を創ろうと思ってな」

「あ、ありがとうございます」

 

 

さて、どのようなものにしようか。

和式、洋式、どちらにしようか。

 

 

「メル、和式と洋式どちらがいい?」

「……洋式、ですかね」

「洋式か、わかった」

 

 

メルはどうやら洋式の方がいいみたいだ。

住居空間だけだし、生活空間を大きな一部屋創って、後は水回り、キッチンがあればいいだろう。

 

 

「よし、できたぞ」

 

 

そう言い、空間に穴を開ける。

 

 

「行こうか」

「はい!!」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「おぉ、なかなかのできだな」

「いい部屋ですね」

 

 

メルもお気に召したようだ。

 

部屋は淡い水色で統一されている。

窓は一つもない。

が、さすがにそれでは精神衛生上よくはないので、疑似的な外の景色が見れるようなものはある。

 

一通り部屋を見回したが、特に不備は見つからなかった。

 

これならメルも不備なく暮らせるだろう。

不備があったら改装すればいい。

それにこの空間も中学に上がるまでしか使わない。

中学に上がったらアレイスターに住居を新しくもらえばいい。

 

 

「俺は一旦部屋に戻る。そろそろ当麻が帰ってくるからな」

「当麻……ですか?」

「あぁ、この世界での一番のキーマンだ。こいつ無しではこの世界は回らない」

 

 

そう言い残し、この空間の玄関の扉を開け、部屋に戻った。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「ただいまー!!」

「おかえり、当麻」

 

 

元気よく扉を開いて当麻が部屋に入ってきた。

 

 

「どうだった?何か学校であったか?」

「なにもなかったよ!!」

「そ、そうか……」

 

 

何もなかったか。

これはよかったのかよくなかったのかわからないな。

 

ま、とりあえずはよかったのだろう。

 

例の計画はまだ実行できないしな。

実行するとしたら当麻が中学生になってからだろう。

 

今はひたすら待つしかないのか。

そうなると―――

 

暇だな。

 

メルを愛でていたとしても、やはり時間がありすぎる。

あ、たまにアレイスターからの依頼が入るのか。

 

そういえばまだメンバーもそろっていないな……

 

よし、なら街を散策するか。

そうすれば誰かに会って、仲間をGetなんてこともあるかもしれないしな。

 

出来れば仲間にしたいのが、

 

食蜂 操祈 《LEVEL5 心理掌握(メンタルアウト)》

 

絹旗 最愛 《LEVEL4 窒素装甲(オフェンスアーマー)》

 

黒夜 海鳥 《LEVEL4 窒素爆槍(ボンバーランス)》

 

この三人は欲しい。

 

操祈は捕えた敵から情報を抜き取るだけではなく、スパイとしてそのままッ潜らせることができる。

 

最愛は防御力がかなりあるから、戦闘になった時に中衛で臨機応変に動いてもらえる。

 

海烏は攻撃力がかなりあるから、前衛で敵を薙ぎ払ってもらいたい。

 

こう考えると、回復系の能力者が欲しいな……

まぁ俺がいればどうにかなるんだが、すべて俺がやるのもな。

 

よし、明日から早速街を散策するか。

 




これから刃の仲間集めが本格化していきます。


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第Ⅲ話~心理掌握~

刃くん。
仲間集めを始めます。


さて、今日から早速仲間を集めていこうと思うのだが……

誰から誘っていった方がいいのだろうか?

 

……LEVEL5、行きますか。

 

確か、今のこの時期なら研究所にいるはずだ。

そうと決まれば早速……と行きたい所なのだが。

侵入して攻撃されたら厄介だ。

ここで役に立つのが、アレイスター。

 

携帯端末を取り出し、アレイスターにかける。

 

 

『何かようかい?』

「食蜂操祈とコンタクトを取りたい。研究所の座標と、許可をくれ」

『そんなもの君なら簡単だろうに』

「面倒事は嫌いなんだ。だからお前に頼んでいるのだ」

『そう言うことなら引き受けよう。研究所の座標はメールで送ろう。許可は合言葉でいいかい?』

 

 

合言葉ねぇ……

下の方まで伝えてくれるならそれでもいいが、万が一知らずに侵入者扱いされたらたまったもんじゃない。

 

 

「まぁいいだろう」

『そうか。合言葉は「753951468250」だ』

「了解した」

 

 

そして通話を終了する。

数秒後、アレイスターからメールが送信されてきた。

内容は研究所の座標だ。

 

よし、これで準備は万端だ。

行きますか。

 

研究所の座標を魔法陣に染み込ませ、そのまま転移をする。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「止まれ!!貴様、何者だ!!」

 

 

転移して、研究所に着いた瞬間に、警備員に捕まった。

 

 

「753951468250」

「し、失礼しました!!ようこそ、王(キング)よ。どうかゆっくりしていってください」

「あ、あぁ……」

 

 

アレイスターよ。

なぜ王ということになっているのだ……

まぁ悪い気はしないが。

 

 

「すまない、一ついいか?」

「何でしょう?」

「食蜂操祈とドリーのいる部屋は分るか?」

「すいません、私は研究に関しては何も……」

「そうか、すまなかった」

 

 

その場を離れる。

なるほど、警備員は本当に警備しかやらせていないわけか。

 

辺りを見回すと、研究所の入口らしき場所が見つかった。

そこまで一瞬で移動し、自動扉を開け、研究所内に入る。

 

 

「どちら様でしょうか?」

 

 

受付の女が訝しげに訊いてきた。

それもそうか。

見た目小学生の男がたった一人でこんなところに来るわけがない。

 

 

「753951468250」

「し、失礼いたしました!!ようこそお越しくださいました、王」

 

 

どうやら合言葉は本当に浸透しているようだ。

同時に王ということも……

 

 

「ほ、本日はどのような御用で」

「食蜂操祈とドリーに会いに来た」

「か、かしこまりました!!こちらです」

 

 

そう言い、受付の女が立ち上げる。

どうやら案内してくれるようだ。

というよりもいいのか?

受付がここを抜けても。

 

女に案内されるがままにしばらく歩くと、見るからに頑丈な扉の前へと誘導された。

 

 

「こちらに食蜂操祈とドリーがいます」

「すまない。助かった」

「いえ、では私はこれで」

 

 

それだけ言い、女は戻っていってしまった。

 

さて、行くか。

 

分厚い扉を開ける。

すると、薬品の匂いが鼻に入る。

少しキツいな……

 

研究員は数名いた。

だがそれのほとんどが頭に何か機械のようなものを被っていた。

 

気持ち悪い。

センスないな。

 

 

「坊や、こんなところに何の用だい?」

 

 

少し小ばかにした様子で、研究員が話しかけてきた。

性別は体系から見るに、女のようだ。

 

 

「753951468250」

「こ、これは失礼いたしました。まさか王だったとは……」

 

 

どうやら王の容姿は伝わっていないらしい。

 

 

「食蜂操祈とドリーはいるか?」

「はい、あちらに」

 

 

そう言って、女が指さした。

その先に目をやると、三角座りで蹲っているドリーと、壁に寄りかかりながら立っている操祈がいた。

 

早速話しかけよう。

 

 

「よう」

「「!?!?」」

 

 

二人とも同時にビクッ、と肩を震わせた。

そんなに怖かったか?

俺の声。

 

 

「あ、あなた誰?」

 

 

最初に問いてきたのは、ドリーだ。

 

 

「俺は神浄刃。学園都市では王と呼ばれている。よろしく」

 

 

簡単に自己紹介をして、ドリーの前に右手を差し出す。

ドリーは何回か手を出しては引っ込めて、最終的にはしっかりと握手をしてくれた。

 

その様子を、操祈は少し警戒しながら見ていた。

 

 

「お前たちの名は?」

「わたしはドリー。よろしくね、やいばくん」

「あぁ、よろしくドリー」

 

 

どうやらドリーは素直な子らしい。

 

 

「それで、君は?」

「……食蜂操祈」

「そうか、よろしく」

「……ん」

 

 

警戒しながらだが握手に応じてくれた。

 

ファーストコンタクトはこのくらいでいいだろう。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

操祈とドリーとコンタクトを取ってから、一週間が経った。

あれから毎日研究所に通っている。

 

研究所では、いろいろなことをやっている。

好奇心のままに遊んでいる、というのが正しい。

 

さて、今日もこの研究所に来たのだが。

扉の前で操祈と会ってしまったのだ。

向こうは警戒はしなくなったが、何かおどおどしていた。

何か知られたくないことでもあるのだろうか?

 

 

「入ろうぜ」

「うん……」

 

 

まぁこんな感じで、普通に会話はできている。

 

コンコン、と扉をノックして部屋に入る。

すると、ドリーはすぐにこっちに近づいてくる。

 

 

「きょうもきれくれたんだ!!みーちゃん、それとやーくん」

 

 

やーくんとは俺の愛称だ。

刃のや、からだろう。

まぁ別に嫌ではないからそのままにしている。

 

部屋に入った俺たちは様々なことで遊ぶ。

 

一番初めは、シャボン玉だ。

ドリーがシャボン玉セットで、シャボン玉を作っているのだが……

途中から使い方が変わってしまった。

シャボン液の中にストローみたいなものを入れ、そして一気に息を吐き出したのだ。

もちろん、もの凄い勢いでシャボン玉―――泡が出来上がり、それが宙に浮いていく。

 

 

「わぷっ?むぁ?」

 

 

ドリーはこんな感じで手を振って泡を振り払っていた。

それを見た操祈は、

 

 

「ふふっふふふ……あははははっ☆」

 

 

と、笑だして一言。

 

 

「アナタ本当に中学生ぇ?」

 

 

……え?

ドリーって中学生だったんだ。

俺、初めて知ったかも。

 

 

「むーそーだよ!!センセーにもそーいわれてるもん!!」

 

 

タオルで頭を吹きながらドリーが続ける。

 

 

「ま、ガッコウってとこはいったことないんだけどね」

 

 

そのまま俺と操祈を見ながら、

 

 

「やーくんとみーちゃんはたのしい?ガッコウ」

「さぁ……?どうかしらねぇ。私の能力は疎まれやすいしぃ」

「ウトマレル?」

「まぁ嫌われるみたいなことかしらぁ?」

「えー?」

 

 

ドリーはいまいち理解していないらしい。

 

 

「わたしはみーちゃんのノウリョクだいすきだけどなぁー」

 

 

どうやら違ったらしい。

能力のせいで嫌われているところについて、疑問に思っていたらしい。

 

確かに、心を操れる能力は凄いがな。

まぁ俺には一切効果ないし。

メルにも効果はないだろうし。

 

正直言うと、そこまで恐ろしい能力ではない。

操られていても、《絶対命令権》で簡単に支配できるからだ。

 

 

「ね」

 

 

ドリはそう言いながら水と思わしきものが入った瓶のようなものを操祈に差し出す。

 

 

「……ダメよぉ、能力の使用は控えるようにいわれてるんだからぁ」

「え~~~」

 

 

そこでドリーの言葉が止まる。

瓶を見つめたまま。

正確にはその中に入っている水か。

 

 

「けんきゅーじょのそとってどんなところなのかな?ウミっていうのみてみたいなぁ……」

 

 

ドリーが呟いた。

海が見てみたいか。

学園都市の外に出なければならないがどうにかなるだろう。

 

 

「残念だけど学園都市に海はないんだゾ。チェックが厳しくて簡単には外からでられないしぃ。……まぁでもぉ外出許可が取れたら海に連れてってあげてもいいわよぉ」

「わーーーありがとうみーちゃん!!」

「わぁっ」

 

 

一ついいだろうか。

完全に俺は空気ではないか?

 

ほら、ドリーなんて操祈に抱き着いてまま髪の匂いをスンスンと嗅いでいますよ。

 

そのあとも、二人は仲良く人形で遊んだりしていた。

 

まぁそのあとの人生の遊戯は俺も参加できたけど。

それをやるまではずっと作曲していた。

 

 

「あっがりー!!わーーーいまたわたしのかちーーー♡」

「くッ、あそこから巻き返されるなんてぇ」

「運が良すぎる……」

 

 

結果はドリー―が圧倒的な差からまさかのどんでん返しをして、一位だ。

 

 

「ニヒヒ」

 

 

そう言いながら、ペットボトルのキャップを開けて、中を飲み干していくドリー。

空になったそれを、部屋の隅にあるごみ箱に投げる。

普通なら入らないだろうが、それは見事な放物線を描き、ごみ箱の中に吸い込まれていった。

 

 

「やたっ」

「コレ!!お行儀悪いゾ」

 

 

これはまた二人の世界に入る前兆だ。

 

操祈がベラベラと常識みたいなことを言っていたがドリーの、

 

 

「はいらないの?」

 

 

の一言により、それは一変した。

 

 

「はァーッ?はァーーーーーッ!?誰が入らないって!?こんなもの楽勝だモン!!」

「ホントにー?」

「いいわよぉ見てなさいッ」

 

 

そう言い、操祈が一気にペットボトルの中身を飲み干す。

そして、

 

 

「えいっ!!」

 

 

と、元気よく投げたペットボトルはもちろん入るはずもなかった。

それからも何回も挑戦するが、結局近づいて入れていた。

そして、操祈がゴミ箱に入れた時だった。

 

ドリーが倒れたのだ。

 

 

「ちょ……っ、ちょっと!?誰かッ!!」

 

 

そう操祈が叫んだ瞬間、扉が開け放たれる。

外では研究員がないかを話しているようだった。

十中八九ドリーについてだろう。

 

 

「しっかりしなさいよぉ……だってこんな……」

 

 

操折は声を震わせながら声を発す。

そこでドリーが何か呟いているのに気づく。

耳を寄せ、一生懸命聞こうとしていた。

 

そして、

 

 

「操祈……食蜂操祈よぉ」

 

 

横になっているドリーの手を握りながら、言った。

 

そしてドリーはカプセルに入れられ、どこかへ連れて行かれた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「だっ……大丈夫なのよね?」

 

 

私は研究員に訊く。

 

 

「すぐに元気になって戻ってくるんでしょぉ?」

 

 

期待を込めて、声が震えようと構わずに訊いた。

だが帰ってきた返答は私が望んだものではなかった。

 

 

「いいや、ドリーとはこれでお別れだ」

 

「詳しくは教えられない。そもそも我々も全てを知っているわけではないが……」

 

「ドリーの身体はとっくの昔に限界を超えていたのだ」

 

「学園都市の科学力をもってしてもこれ以上の延命は不可能だったんだよ」

 

「すべては予定通り、ドリー自身もきっとわかっていたんじゃないかな」

 

 

そんな……ッ!!

嘘だ、嘘だ!!

そうなわけがない!!

 

どうにかして、どうにしてドリーを助けたい!!

 

誰か……誰か助けてよ!!

 

お願い……やっとできた友達なの!!

初めての……友達なの……

 

泣くことしかできなかった私の前に、一人の男の子がやってきた。

 

神浄刃だ。

学園都市の王と呼ばれていた子だ。

この子には私の能力が全く効果がない。

これは何度も試したことだから分かりきっている。

 

でも何をしに来たんだろう?

泣いている私を、友達を救えなかった私を笑いに来たのだろうか?

 

 

「どうした?」

 

 

彼はやさしい声音で訊いてきた。

 

 

「ドリーが……どりーが……いなくなっちゃう……」

「操祈はどうしたい?」

「え……?」

 

 

私は戸惑った。

 

どうしたい?

 

そう訊かれてしまった。

もちろんドリーを助けたい。

だけど私にはそんな力はない。

 

でもこれでだけは絶対に言う!!

 

 

「助けたい!!ドリーを助けたい!!」

「よく言った。さぁ、助けに行くぞ」

 

 

そう言って、彼は右手を差し出してきた。

私はそれをしっかりととり、立ち上がる。

そして―――

 

 

「うん!!」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

俺は泣きじゃくっている操祈の元に歩み寄った。

 

 

「どうした?」

 

 

できるだけやさしい声音で訊く。

 

 

「ドリーが……どりーが……いなくなっちゃう……」

「操祈はどうしたい?」

「え……?」

 

 

俺の返答に、操祈が固まる。

こう返されることを予想していなかったのだろう。

 

操祈は決心したような目つきで俺にこう言ってきた。

 

 

「助けたい!!ドリーを助けたい!!」

 

 

この返答は満点だ。

この決心は本物だ。

だから手助けするのは、当たり前だ。

 

 

「よく言った。さぁ、助けに行くぞ」

 

 

俺は操祈に右手を差し出す。

それを操祈は取り、立ち上がる。

そして一言、言ってきた。

 

 

「うん!!」

 

 

まずはドリーの気を探る。

かなり弱っているがすぐに発見できた。

 

早く言った方がいいか。

 

操祈ごと、俺はドリーのいるであろう部屋に転移をする。

 

 

「わわっ、何!?テレポート!?」

「後で説明する。今はドリーが先だ」

 

 

幸い、ドリーの入っているカプセルはすぐに見つかった。

それをメルのいる住居空間に放り込む。

 

 

「ちょっと失礼」

「え、えぇぇぇ!?」

 

 

操祈をお姫様抱っこする。

 

 

「イイものを見せてやる」

「いいもの……?」

「あぁ―――すごくイイものだ」

 

 

俺は研究所の外に転移する。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

研究所の外に出た俺たちは、そのまま研究所の上空にいる。

これからイイことをする。

 

イイこととは?

 

研究所の殲滅だ。

地球上から研究所を消しとばす。

 

左腕で操祈をかかえる。

その状態のまま、

 

 

「ATフィールド展開、モード天災」

 

 

背中から、三対六枚の紅色の翼が出現する。

紅い渦は、研究所の横に縦に配置する。

 

もうあとは分るだろう?

 

 

「どうだ?すごいだろ」

「確かにすごい……」

 

 

紅色の渦に研究所が呑まれていくのだ。

渦が徐々に移動し、そのまま研究所を飲み込んでいく。

通った後には何も残っていない。

 

インパクト―――リセットの結果だ。

 

やがて、研究所を飲み込んだ渦は、役目を果たしたので霧散していく。

もちろん、俺の背中の翼も一緒にだ。

 

 

「さて、イイものも見れたものだし、帰ろうか」

「……私、帰る場所ない」

「うちに来い」

「いいの……?」

「あぁ」

「ありがとっ!!」

 

 

操祈がデレてくれた。

それだけで俺の達成感はものすごい。

あとはドリーか。

 

 

☆☆☆

 

 

 

「メル、どうだ?」

「はい兄様。一応、生命活動は続いています。ただ―――かなり危険です」

「そうか……」

 

 

住居空間に転移した俺と操祈は早速ドリーの状況を確認する。

 

 

「ねぇ、本当に大丈夫なの?」

 

 

操祈が心配そうに訊いてくる。

まったく、俺を誰だと思っていやがる。

 

 

「まかせろ」

 

 

ドリーの肉体状況を確認する。

ふむ、ホントにボロボロだ。

 

とりあえず、《フェニックスの涙”極”》を注射器でドリーの身体に直接打つ。

これ身体は細胞単位で復元されていく。

ついでに胸にある機械を排除する。

もちろん、その部分にすぐに《フェニックスの涙”極”》をかけて足りない肉体を補う。

 

よし、これでOKだ。

思ったより簡単に言ったな。

 

 

「ん……んんーーー」

 

 

治りきった瞬間、死んだように眠っていたドリーが目を覚ました。

 

 

「ドリー!!」

「うおっ!?」

 

 

操祈は俺を押しのけ、ドリーに抱き着いた。

 

 

「ドリー……どりー……よかったよぉ」

 

 

泣きながら、ドリーに抱き着いている。

そのままドリーの胸元に顔をうずめている。

そんな操祈をドリーは優しくなでていた。

 

 

「さて、少し離れていようか。メル」

「はい、兄様」

 

 

俺とメルは、この部屋を後にした。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「落ち着いたか?」

「うん」

「うん!!」

 

 

操祈とドリーが元気よく返事をした。

 

それは何よりで。

 

 

「お前達には一つ、頼みたいことがあるんだ」

「何でも言って!!」

「わたしをたすけてくれたから、きいてあげる」

 

 

二人とも機嫌よすぎる。

まぁ好都合だがな。

 

 

「俺のチームに入ってくれないか?」

「「チーム?」」

「そうだ。暗部なんだが……」

 

 

二人は少しの間考え込むようなしぐさをするがすぐに、

 

 

「いいわよ」「いいよ」

 

 

と、元気よく答えてくれた。

 

 

「本当にいいのか?」

「いいのよぉ。だって私のお願いもきいてもらったしぃ」

「わたしも、やーくんにたすけてもらったいのちだからね」

 

 

よし、これで二人増えた。

 

 

「暗部―――といっても、お前達には表には出てもらわない。おもに情報収集してもらいたい」

「まぁ、私は能力でいくらでも人の記憶みれるからねぇ」

「わたしは―――わからない……」

 

 

ドリーがしょぼんと、落ち込んでしまった。

そんな姿も可愛いぜ。

 

 

「ドリー、大丈夫だ。これから力をつけていけば」

「ホントー?」

「あぁ本当だとも」

「わたしがんばる!!」

 

 

まぁ何はともあれ、これで仲間が二人増えた。

 



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第Ⅳ話~強化開始~

上条当麻も高校生になった。

小学生のときとは違い、少し大人っぽくなったと思っているのは俺だけではないだろう。

俺と当麻は同じ高校に進学した。

操祈とドリーにも学校に通ってもらている。

ドリーも学校に通いたいと言っていたし。

 

外装代脳(エクステリア)は研究所から空間倉庫にしまい、完成はさせた。

あとは徐々に使い勝手がいいように改良していけばいい。

ちなみに、外部からは絶対に干渉されない。

故に、『登録』している人物でも《心理掌握(メンタルアウト)》は使えない。

それに加えて『登録』リセットしたから使える者は誰一人いないだろう。

 

 

「ねぇ~、やーくん。何やってるのー?」

 

 

ドリーが後ろから抱き着きながら言ってくる。

俺、操祈、ドリーの三人は俺の部屋に来ている。

小学校を卒業と同時にアレイスターから五十階建てのマンションの四十階から上を全てもらったのだ。

 

ちなみに割り振りはこうだ。

 

四十階:フロアを全てぶち抜いて、客間兼応接室。

四一階:フロアを全てぶち抜いて、ゲームセンター、スポッチャ。

四二階:フロアを全てぶち抜いて、シアタールーム、バー、レストラン。

四三階:ゲストルーム。、

四四階~四六階:フロアと天井を全てぶち抜いて、鍛練場。

五七階:フロアを全てぶち抜いて、武器庫。

四八階:暗部の奴らの部屋。

四九階:フロアを全てぶち抜いて、俺の部屋。『外装代脳』がある空間倉庫への扉。

五〇階:フロアを全てぶち抜いて、浴場。

 

なかなか頑張った。

フロアをぶち抜くときとかマンションが倒壊しないように強化しながらだったからな。

天井をぶち抜くときもだ。

だがその苦労のおかげで快適に住みやすくなったわけだ。

 

 

「んー?あぁこれからの鍛練の方法を考えていたんだよ」

「鍛練って……あぁ、私とみーちゃんを強くするやつ?」

「その認識で間違ってはいない」

「えー?私もやるの?」

 

 

このタイミングで操祈がやってきた。

ちょうど良かった。

今すぐにでもやろうと思っていたからな。

 

 

「よし、二人ともそろったし今からやろうか」

「「い、今から!?」」

 

 

二人が驚くが、何事も早い方がいいだろう。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「さて、お前達には《念》を覚えてもらう」

「「ねん……?何それ」」

 

 

鍛練場にやってきた俺達三人は、動きやすい服装に着替えて座っていた。

俺はサルエルにタンクトップで、色は両方とも黒。

操祈とドリーは仲良くおそろいのショートパンツにTシャツで、色は両方とも白だ。

 

 

「《念》とは自らの肉体の精孔という部分からあふれ出る、オーラとよばれる生命エネルギーを、自在に操る能力のことだ。気にも似ているな」

「「………?」」

 

 

うむ、全くわからないようだ。

 

 

「簡単に言えば、超能力みたいに脳を開発して発現させるものではなく、もともと自分が持っている生命の力を操るということだ」

「「なるほど……」」

 

 

この説明も結構難しいと思うのだが……

 

 

「でも私はもう能力をもっているわよ?」

「それでもだ操祈。《念》が使えれば身体能力を強化することもできる。そうすればお前の運動オンチも少しはマシになって、もしものときに逃げることができる」

「うぅ……それを言われるのなぁ……」

 

 

操祈は少し走っただけで息が切れる。

それは暗部としては最大の弱点だ。

相手に能力を使われたら逃げることができない。

まぁ操祈なら相手を操ればいいのだろうけど、能力がなんらかの方法で防がれた場合に詰んでしまう。

 

ドリーはまず能力がない。

だから開発しよう!!

と、言うわけにはいかないからだ。

《念》なら、能力の問題も解決できるし、加えて身体強化までできて一石二鳥だ。

 

 

「じゃあ早速始めるがその前に一つ。―――すぐに目覚めさせる方法と、ゆっくりと目覚めさせる方法と、どっちがいい?」

 

 

まぁどちらも危険は同じ何だけどな。

俺がいるから無理やり使えるようにして、万が一コントロールできなくても無理やりさせることができるから。

 

 

「「すぐにできるほう!!」」

「だと思ったぜ」

 

 

この二人ならすぐに使いたいとか思っているだろう。

まぁそっちのが早くてこちらとしてもいいんだが。

 

 

「じゃあそこに自然体で立ってくれ」

 

 

二人は立ち上がり、手をぶらりとさせた。

俺も立ち上がり、二人の背中に手を当てる。

そして、《念》を波紋状にしてを放つ。

 

 

「こ、これが……」

「《念》……なの?」

 

 

二人が身体を見回しながら呟く。

よし、ここまでは成功だ。

 

 

「その感じ取れるやつを自分の身体の周りにとどめろ」

「「はい!!」」

 

 

すると、二人はすぐに《纏》をした。

すごい才能じゃないか?

案外早く《発》までこぎつけそうだ。

 

 

「よしよし、じゃあ次は全身の精孔を閉じ、自分の体から発散されるオーラを絶て」

「「はい!!」」

 

 

これはさすがに無理だったようで、わずかだがオーラが漏れてしまっていた。

といっても、常人では確認できる量ではない。

すごいな……スペックが高すぎる。

 

なんだかんだ考えているうちに《絶》も成功させているし。

 

 

「その状態から体内でオーラを練り、精孔を一気に開き、オーラを生み出せ!!」

「「はい!!」」

 

 

一気に二人ともオーラを開放したせいか、少し空間がキシんだ。

というか、初めて《練》をしたのにオーラの量が多すぎだろ!?

こいつら本当に何者!?

学園都市の人間だからなのか?

 

でもこの分ならあの場所に連れて行っても大丈夫だろう。

《念》の修行に打って付けな場所―――

 

グリードアイランドにな。

 

 

「よし、もういいぞ二人とも。《絶》をしてオーラを回復してくれ」

「「ぜつってなに?」」

「オーラを絶ったやつだ」

「「なるほど」」

 

 

二人はすぐに絶をした。

教えることが少なさそうな二人だまったく。

 

 

「じゃあ行ってみようか」

「どこに行くの?やーくん」

「《念》の修行に打って付けな場所。―――グリードアイランドに」

 

 

ちなみに、本物のグリードアイランドではなく、グリードアイランドに似ている空間を創造しただけだ。

 

 

「「ぐりーどあいらんど?」」

「そうだ。まぁ言ってみればわかるだろう」

 

 

部屋の端まで歩き、そこに扉を創造する。

そして《境界を操る程度の能力》で扉とグリードアイランドの空間の境界をつなげる。

 

 

「早く来いよ」

「「う、うん……」」

 

 

少しビビリ気味に返事をしながら歩いてくる二人。

ははは、そんなに怖がらなくてもいいのに。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「「す、すごい……」」

「そうだろうそうだろう?」

 

 

グリードアイランドに来た二人は目を丸くして驚いた。

俺は指輪を空間倉庫から取り出して二人に渡す。

二人はそれを受け取り、首を傾げた。

 

 

「これ何?」

「指輪だ。『ブック』って言ってみろ」

「「『ブック』!!」」

 

 

二人の手にバインダーが現れる。

 

 

「そこにはカードが入れられえる。入手できるカードにはナンバーが付けられており、ナンバー000~099は指定ポケットカード、それ以外のナンバーはフリーポケットカードと呼ばれる。指定ポケットカードをそれぞれ番号が付けられた指定ポケットに収められればクリアだ。各カードは入手難度の高い順にSS、S、A~Hという『ランク』が設定されている。《念》をうまく使わないと入手できないものもあるからな」

「「うへぇ……」」

 

 

女の子がそんな声をだしてはいけませんッ!!

 

 

「あぁあとこれやっておいてな」

 

 

そう言い、二人に紙を渡す。

 

 

「なにこれ?」

「クリアするまでにやっておく修行内容だ。まずこれをやっておかないとクリアできないだろうがな」

 

 

そういうと、二人は顔を歪めた。

それもそのはずだ。

紙に書いてある修行内容は、ゴンやキルアがやったものとすべて同じだ。

山を掘るのに始まり、流々舞(るるぶ)で技の確認。

ちなみにレイザーたちもいる。

 

 

「安心しろ。この世界で死ぬことはない。死のかわりに気絶するけど」

「「気絶するの……えぇ……」」

 

 

いや、むしろ気絶で済むのだから喜んでほしいものだ。

 

 

「じゃあ頑張ってくれ」

「ちょ、ちょ、ちょっとどこに行くのよっ!!」

「いや、俺は戻ろうと思って」

「なんでー!?一緒にやらないの?やーくん!!」

 

 

操祈とドリーがそれぞれ俺の腕を抱きしめて逃げないようにしてくる。

 

 

「馬鹿たれが。俺がやったら半日でクリアするわ。それにこれはお前達二人を強化するためにやるんだ。まぁ頑張ってなッ!!」

「「きゃぁ!?」」

 

 

二人の頭に軽く頭突きを入れて、怯んだすきに扉まで行き、部屋に戻る。

クリアしたら扉の近くにあるブザーが鳴るし、まぁ後は待つだけという奴ですな。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

部屋に戻った俺は久しぶりに当麻に電話をしていた。

 

 

「もしもーし。調子はどうよ?」

『おぅ!!刃か。なかなかだぜ!!』

「具体的には?」

『舞空術ができるようになって、気弾が小さいが撃てるようになったぜ!!』

 

 

ふむふむ、当麻もなかなか成長が早い。

この前まではやっとこさ気を具現化できたのに。

 

 

「よし、その調子で頑張れ。最終的には気を身体の各部にだけ集中させて身体強化ができるようになれ」

『りょーかい!!やってやるぜっ!!』

 

 

当麻はそれだけ言って電話を切った。

よしよし、当麻もいい感じで強化されている。

この分なら当麻は右手がなくても、聖人である神裂火織にも勝てそうだ。

二人がぶつかるまでには当麻を強化しつくさないとな。

 

それでは―――

 

 

「メル~、おいで~!!」

「はい!!兄様!!」

 

 

さぁて、メルと街に出かけようか。

 



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第Ⅴ話~問題遭遇~

メルと街に出た俺は、Joseph's という名のファミレスに来ていた。

そしてパフェを頼んで食べているのだが……

 

 

「兄様、あ~ん」

「あーん」

「おいしいですか?」

「あぁ、メルが食べさせてくれているからな」

 

 

メルが食べさてくれているのだ。

嬉しすぎて俺はきっとニヤけているだろう。

まぁ周りの目をあるが気にはしない。

気にするくらいならこのひと時を最高に楽しむ!!

 

 

「兄様、あ~ん」

「あーん」

 

 

今日は最高の一日になりそうだ。

いや、もうなっているか。

 

 

「メル。どこか行きたい所はあるか?」

「兄様が行きたい所に行きたいです!!」

「むぅ……とりあえず、金を下しに行こうか」

「そうですね♪」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

さて、銀行にやってきた俺だ。

ATMは何気に込んでいて、絶賛すこしイラつき中だ。

なぜこんなにATMが込んでいるのだ。

学園都市のATMは優秀なはずだろ!!

もう少し早くお金が下ろせないものですかねぇ……

 

 

「あぁ!!白井さん、偶然ですね」

 

 

銀行に入ってきた女の子が、少し大きめの声で言った。

白井、白井ねぇ……

うわぁ、面倒事の予感だ。

 

ここでやっと俺の番が回ってきた。

 

 

カードをATMに挿入して、引出しを選択。

そして暗証番号を入力。

暗証番号はもちろん『4510471』だ。

引き出す金額は、二〇万もあれば十分だろう。

 

殺気から気になるんだが、後ろの白井と女の子の発言が黒過ぎて困る(笑)

 

 

「世間知らずの金持ちに、在校生全員がLEVEL3以上の能力者。自分のことを特別だと思っている方たちが多く集まってとか」

「はぁ……」

「中でも超電磁砲(レールガン)などと呼ばれるLEVEL5がいるらしいのですが……きっと高慢ちきでいけ好かない、性悪女に決まってますわ」

「知らない人の事、良くそこまで言えますね……」

 

 

その通りだ女の子。

というか、その女の子は初春飾利ではないか。

白井も白井黒子か。

 

だがまぁ、そんなことは関係ない!!

今はメルとの時間を楽しむのだ。

 

と、銀行を出ようとした時だった。

 

バンバン、と銃の発砲音が聞えてきた。

辺りを見回すと、真ん中に黒いニット帽をかぶり、緑色のスカジャンを着た男が左手で黒い銃を持った男が目に入った。

銃口は天井に向けられている。

銀行にいる全員はその男に視線を向けていた。

それもそうだろう、銃の発砲音が聞えたんだから。

 

 

「おかしな真似すんなよ。お、お客もあんまり騒がないでくれよな」

 

 

銃口を向けられた女の子が、怯えて一歩後ずさった。

 

というか、声が震えすぎだろ。

ビビリすぎだろ。

そんなんだったら銀行強盗するなよ。

 

どうしようか考えているときだった。

黒子が動き出したのだ。

スカジャン男の足を踏んだ。

 

 

「うぅ!?」

 

 

スカジャン男はうめき声を上げて、よろけた。

そしてそこに黒子がスカジャン男のひざ裏を蹴り、体勢を崩した。

そのまま倒れたスカジャン男の腹に黒子の足が入る。

銃はカウンターの舌まで滑ったようだ。

 

 

「きゃぁ!?」

 

 

今度は初春のピンチらしい。

まったく忙しいぞ。

隣にいるメルを見てみろ。

目つきが凄いことになってるし、背後からはどす黒いオーラが見える。

目のハイライトは消えたり現れたり、不安定だ。

 

やばい、このままだと犯人酸欠で死んでしまうぞ……

 

 

「たく、アホかぁ?なぁにガキにノされてんだよ。使えねぇ」

 

 

初春にナイフを突きつけている男が目に入る。

 

 

「初春!!」

 

 

黒子が叫ぶ。

それはいけないだろ。

名前を読んだら知り合いだということがばれて、こちらが不利になるだけだ。

 

 

「あれ?お前ら知り合いだったのか?ふぅん……こりゃ好都合」

 

 

ほらみろ、犯人さんイキイキした顔になっちゃったじゃないか。

好都合とか口に出しちゃってるし。

 

 

「おっと、動くなよ。お前風紀委員(ジャッジメント)か?風紀委員が人質見捨てるわけねぇよな?ましてや、自分の知り合いを」

 

 

うおぉ……この犯人イイ性格してるな。

 

 

「他にも仲間がいるんじゃねぇのか?出てくんなら今のうちだぞ」

 

 

その瞬間だった。

ジリリリリリ、と警報がなり、銀行のシャッターが閉まり始めたのだ。

しかしうるせぇな……

警報に加えて、

 

 

『セキュリティー信号、受信しました。侵入者を排除します』

 

 

警備ロボまで起動した。

クソッ!!

隣のメルの機嫌も大暴落だ。

 

警備ロボが、男に突撃した。

黒子も警備ロボの後ろに隠れて特攻した。

だが、警備ロボは爆発、黒子はスタイルがいいお姉さんに抱きしめられ、吹き飛んで行った。

 

これだけなら問題はない。

だがお姉さんが頭から血を流しているのだ。

これはマズい。

 

俺はメルと一緒にお姉さんと黒子の下に歩みを進める。

 

 

「おいお前!!何勝手に動いてんだ!!」

 

 

男が叫ぶが関係ない。

 

 

「こいつがどうなってもいいのか!!」

「こいつってさ―――この子のこと?」

「何言って―――はぁ!?」

 

 

初春は俺の腕の中にいます。

立った瞬間、男に近づいて奪取、そして代わりに影分身に変化させて男の腕の中に入れた。

ただそれだけだ。

 

そんな事よりだ。

 

 

「大丈夫か?お姉さん」

「だい……じょう……ぶよ……」

 

 

どう見ても大丈夫ではない。

空間倉庫から『フェニックスの涙』を取り出し、お姉さんって固法美偉か。

美偉の頭に振りかける。

 

 

「これで怪我は大丈夫なはずだ」

「す、すごい……」

 

 

黒子が呟いた。

さて、メルの機嫌も下がりきってしまったことだし、さっさと犯人捕まえますか。

 

 

「メル、もう少しだけ待ってくれな?」

「は、はい。兄様」

 

 

頭を撫でながらメルに言う。

メルは顔をふにゃっとさせて返してくれた。

よし、これで少しはもつぞ。

 

 

「動くじゃねぇぞ!!」

 

 

男が銃をこちらに向けている。

カウンターの下にあった銃か?

まったく面倒事がまた増えたよ。

まぁ、関係ないけど。

 

俺は無言で男に近づいていく。

ゆっくり、一歩一歩、歩みを進める。

 

 

「う、動くなって言っただろうが!!撃つぞ!!」

 

 

手が震えてるぜ、あんちゃん。

そんなんじゃ当たらないぜ。

 

俺は無視して歩みを進める。

男まで残り五メートルくらいの時だった。

 

バン、と発砲音が聞えたのだ。

俺は反射的にプログレッシブ・ナイフを胸元から抜き、銃弾を切り裂いた。

ちなみに形は『PKN-01C』だ。

大きさは俺の使いやすいように調節されているがな。

 

 

「なんだ?そんなに死にたいのかお前」

 

 

最高にイイ顔を作り、男を見据える。

 

 

「お、お前……まさか銃弾を……」

「そうだけどどうかしたか?このくらいなら能力者じゃなくてもできるだろう」

「できねぇよ!!」

 

 

当麻もそのうち出来るようになってもらわないとな。

 

 

「さぁ、ショータイムだ。楽しんでいってくれよな?」

 

 

床にクレーターができるほど力を入れて一歩目を踏み出す。

そしてそのまま男の手にある銃をナイフで切り裂く。

 

 

「ひぃ!?」

 

 

男が悲鳴を上げながら後ずさる。

逃がすわけがないだろ。

 

すぐに背後に周り、背中に掌底を入れる。

もちろん加減は忘れない。

力入れ過ぎて貫通したとかなったらシャレじゃすまないからな。

 

男は噴きとび、壁にぶつかって床に落ちる。

加減をしていたせいか、男はすぐによろよろと起き上がりメルにナイフを当て―――あ……

 

や、やばい……

これはもうドンマイとしか言いようがない。

 

 

「う、動くなよ!!動いたらコイツを殺すぞ!!」

「あなたが死になさい!!」

「ガハァ!?い……きが……」

 

 

男が床に崩れ落ちる。

どうやらメルが男の周りの酸素を全て排除したらしい。

さすが《気体掌握》の原石だ。

 

男の腕を背中側に回し、手錠をかける。

あとは警備員(アンチスキル)にまかせればいいだろ。

 

おっと忘れるところだった。

 

 

「お姉さん。これ。もし他に傷があったらかけるといいよ。傷跡も残さないからね」

「あ、ありがと……ってあなた何者!!風紀委員じゃないのに犯人を―――」

 

 

そこで俺は美偉の唇に人差し指を当てる。

 

 

「そこまでだぜ、お姉さん。じゃあね……行こうか、メル」

「はい、兄様」

 

 

メルが俺の腕に抱き着いてくる。

 

 

「ま、待って!!せめて名前だけでも聞かせてちょうだい」

 

 

俺は振り返り、いつものセリフを言ってやる。

 

 

「神をも浄化する刃。神浄刃だ」

「神浄メルです」

 

 

それだけ言い、俺とメルは銀行を後にした。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「はぁ……まったくなんで面倒事に巻き込まれんのかな……」

「兄様ですから」

 

 

メル……お前までそんなことを言うのか。

この世界で不幸は当麻の特権だろうに。

まぁ今はメルのとの時間を楽しむか。

 

 

「お、ゲーセンじゃないか!!久しぶりだな、外のゲーセンに来るのは」

「そうですね。普段はうちにおいてあるもので遊んでいますからね」

「プリクラとろうか」

「もちろんです!!」

 

 

メルがふんふん鼻息を荒くしながら俺の腕を引きだす。

 

プリクラの筐体に入ると、軽快な音声が鳴りだした。

説明されるがままにお金を入れる。

そしてモードを選び、フレームを選ぶ。

 

 

『―――3、2、1』

「兄様!!」

「うぉ!?」

 

 

カウントが開始された瞬間、メルがほっぺたにキスをしてくれた。

そしてそのまま撮られた。

そのほかにも、抱き着くなど、様々な格好で撮った。

 

おえかきは全てメルに任せた。

まぁなんて書いてあったかは秘密だ。

誰にも教えん。

 

もらったプリクラは空間倉庫にしまう。

永久保存するにはもってこいだからな。

メルはメルで何かをしているようだが、気にしない。

 

プリクラを終えた後も、エアホッケーや、UFOキャッチャーなどで遊んだ。

ゲコ太はなかなか取るのが困難だったぜ。

 

家に帰ると、風呂に入り、夕食をとり、寝た。

もう寝たね。

銀行強盗に遭遇とか面倒くさすぎだ。

まぁベットに入ったときメルが、

 

 

「兄様、一緒に寝ていいですか?」

 

 

と、枕を胸元に抱えて上目づかいで訊いてきて、最高だった。

 

 

「もちろんいいぞ」

「ありがとうございます♪」

 

 

ふははは、昼間の出来事何てどうでもよくなってきたぜ!!

まぁこんな感じでメルとの一日は終わりを告げた。

 



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第Ⅰ章 禁書目録
第Ⅰ話~物語始動~


本編に入ります。


俺のいる学園都市は、二大勢力の一方たる科学サイドを支配する総本山だ。

東京西部に位置する完全独立教育研究機関であらゆる教育機関・研究組織の集合体であり、学生が人口の八割を占める学生の街にして、外部より数十年進んだ最先端科学技術が研究・運用されている科学の街だ。

また、人為的な超能力開発が実用化され学生全員に実施されており、超能力開発機関の側面が強いとされている。

学区も、一学区から二十三学区まである。

 

この学園都市では全学生を対象に『時間割り(カリキュラム)』という超能力開発が実施されている。

学園都市における能力は学力と同等以上に重要視されるステータスであり、LEVELの高低がコンプレックスに繋がる事も少なくなく、まるで熾烈な競争社会のようだ。

また、『SYSTEM』と呼ばれる概念が学園都市のスローガンであり存在意義とされている。

 

超能力とは、薬物投与、催眠術による暗示、直接的な電気刺激などを施すことによって脳の構造を人為的に開発し、科学的に作り出された物だ。

 

ようは、人の脳をかき回して、無理やり発現させたということだ。

 

基本的に一定のカリキュラムを受ければ誰でも能力を開発することが可能だが、能力の系統・種別は各個人の先天的資質に大きく左右され、どんな能力が身に付くかは開発するまで分からない。

 

これもかなり不便なことだ。

《念》とかならリスクもほとんどない状態で能力が使えるというのに。

気もまたしかりだ。

 

能力は一人につき一種類しか使えず、一度発現した後では能力の種類の変更は不可能とされる。また能力は全て六段階の強度(レベル)に分類される。

 

レベルはこんな感じで分かれている。

 

無能力者(レベル0) 測定不能や効果の薄い力

低能力者(レベル1) 日常では役に立たない力

異能力者(レベル2) レベル1とほとんど変わらない力

強能力者(レベル3) 日常生活で便利と感じられる力

大能力者(レベル4) 軍隊で価値を得られる程の力

超能力者(レベル5) 単独で軍隊と戦える程の力

 

と、まぁこんな感じだ。

正直に言えば、レベル2まではいらない。

確かにあってよかったという時もあるだろうが、ほとんど役に立たないからな。

そしてもう一つレベルがある。

 

絶対能力(レベル6)だ。

超能力者を越えた能力とされる仮定のレベルで、理論上の概念であり、実際には未だ到達した人間はいない。

『最強を超えた無敵の存在』『神の領域の能力』とも評され、『SYSTEM』と同一視する者もいる。

 

これ、俺のことですか?(笑)

神だし。

 

そうだ、レベル5の人たちの説明もしておこうか。

 

第一位 一方通行 《一方通行(アクセラレータ)》

第二位 垣根帝督 《未元物質(ダークマター)》

第三位 御坂美琴 《超電磁砲(レールガン)》

第四位 麦野沈利 《原子崩し(メルトダウナー)》

第五位 食蜂操祈 《心理掌握(メンタルアウト)》

第六位 不明   《不明(わからない)」》

第七位 削板軍覇 《名称不明(わからない)》

 

と、こんな感じで中二感極まりない名称だ。

この俺でも第六位は分らない。

 

さて、テンプレもいいところな説明も終わりにして、今の状況でも説明しようか。

 

 

「不幸だぁぁぁぁぁ!!」

「うるさいぞ当麻!!」

 

 

当麻と一緒にランニングしてます。

ちなみに、後ろからは馬鹿が団体様でついて来ている。

 

 

「オラァ!!止まれクソガキ!!」

「待て!!この逃げ足王!!」

 

 

こんな感じでたまにヤジも飛んできたりする。

なぜこうなったかというと、夜の街を散歩していた時に、当麻が馬鹿共を連れて俺に声をかけてきたのだ。

そして俺も仲間ということになり、一緒に追われているのだ。

 

 

「もういい加減飛ぼうぜ当麻」

「そうだなぁ……そうしようか」

 

 

俺と当麻は舞空術を使って空を飛ぶ。

 

 

「能力者だったのか!!」

「しかも飛んでるぞ!!」

「クソッ!!ふざけやがって!!」

 

 

後ろからヤジが聞こえてきたが全く気にしない。

気にする必要がない、というのが正しいか。

 

 

「あの橋でいったん降りるか?」

「あぁ、そうしようぜ」

 

 

俺と当麻は鉄橋に降り立つ。

当麻も成長した。

一年前までは舞空術も安定せず、途中で落ちることがよくあったが、今はそんなことはない。

舞空術は最高速で飛んでも一日は持つようになり、気弾も体育祭の大玉ころがしなどで使う玉ぐらいの大きさまで撃てるようになった。

気を操って拳や足だけに纏い、強化することもできるようになった。

そのせいか、気で強化した当麻の百メートルのタイムは、五秒を余裕で切る。

 

 

「何やってんのよアンタ」

 

 

どこからか女の子の声が聞こえてきた。

俺と当麻は辺りを見回す。

後ろを向いたところで、声の主を補足する。

 

 

「不良を守って善人気取りか?熱血教師ですか?」

 

 

この人物を俺は知っている。

学園都市第三位《超電磁砲》御坂美琴だ。

 

 

「当麻……お前そんなことしたうえに俺まで巻き込んだのか?」

「うぅ……しょうがねぇだろ!!そうしないと不良達が黒焦げになっちまうだろうが!!」

 

 

当麻はお人よしだ。

だからいつも「不幸だー」とか叫んでいるのだろうけど。

 

 

「そう言えばあいつらが追っかけてこなくなったのって―――」

「うん、メンドいから私がやっといた」

 

 

美琴が前髪をかき上げながら言う。

そのさい、少しビリビリしていたのはご愛嬌だろう。

 

 

「あはは、面白いなこいつ」

「……ねぇ?」

 

 

俺の言葉に反応したのか、美琴がスカートのポケットからコインを取り出しながら言う。

 

 

「レールガンって……知ってる?」

「れーる、がん?」

 

 

当麻よ、この前散々説明したではないか。

 

 

「別名、超電磁砲。フレミングの運動量を借りて、砲弾を打ち出したりできるもんなんだけど―――」

 

 

そう言い、美琴はコインを弾く。

 

 

「―――こういうのを言うらしいのよね!!」

 

 

そしてそれに向かって美琴が電撃を放つ。

ソレは俺と当麻の間を通って真っ直ぐ進んでいった。

ふむ、この程度の速さなら普通に避けられるな―――当麻でも。

 

 

「こんなコインでも、音速の三倍で飛ばせばそこそこ威力が出るのよね」

「まさか……連中を追い払うのにそれを?」

「馬鹿か当麻。そんなわけがないだろう」

「ソイツのいう通りよ。馬鹿にしないで。レベル0の無能力者どもの料理法ぐらい、心得てるわよ」

 

 

料理法まで心得ているとは……

生粋の女王様か?

あぁ、女王様は操祈だったな。

 

 

「じゃあそう言うことで。帰ろうぜ、当麻」

「お、おい待てよ!!」

 

 

美琴に背を向けて歩き出す。

それに続いて当麻も歩き出す。

だが―――

 

 

「待ちなさいよ!!」

 

 

美琴が言うと同時に、電撃のレーザーが飛んでくる。

それを当麻が当たり前のように右手で防ぐ。

すると、ガラスの砕けるような音と共に電撃が霧散する。

 

 

「……なんだ当麻。面倒事か?」

「や、刃?」

「面倒事なら―――お暇するぞ!!」

「さすが刃!!」

 

 

俺は素の身体能力で、当麻は気で身体を強化して一気にこの場から逃げる。

後ろから「待ちなさい!!」という叫び声と高電圧な電撃が発せられていたが気にしない。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

美琴の襲撃から一夜明け、現在は朝だ。

昨夜から学園都市のほとんどが停電に襲われるという最悪の事態に陥っているのだが、もちろんうちは無事だ。

 

 

「やーくん、朝だよー」

 

 

ドリーか。

どうやら起こしに来てくれたようだ。

 

 

「起きてるよドリー」

「ご飯もできてるから早く来てねー」

「はいよー」

 

 

基本的にご飯は俺の部屋で食べる。

レストランもあるが、基本的には使わない。

当麻やその友人を呼んで打ち上げをするときぐらいだ。

 

 

「それじゃいただきます」

「「「いただきます」」」

 

 

朝食を食べ終えた俺は、シャワーを浴び、甚平に着替える。

色は黒だ。

甚平は涼しいし、動きやすいしなかなか重宝。

今日から学校は夏季休業だ。

そう、夏休みなのだ!!

 

 

「それじゃあ当麻に朝食届けに行くわ」

「「「いってらっしゃい」」」

 

 

多分、昨夜の停電の影響で冷蔵庫の中身は全滅だ。

朝食がないだろうからな。

 

俺は当麻の家に転移をした。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

俺は当麻の部屋に来て戦慄した。

なぜなら、シスターらしき女の子が裸で腰に手を当てて立っていたからだ。

もちろん当麻は顔を赤くしながらもガン見だ。

シスターは自分の身体を見て、

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

と叫んだのはしょうがない事だと思う。

シスターが当麻に向かって噛みつこうとしたのを止めるついでに、空間倉庫からタオルケットを取り出し、シスターの身体に巻きつける。

 

 

「シスター服が直るまでそれでも巻いてろ」

「……あなた誰?」

「刃!!ナイスタイミングで来てくれた!!」

「当麻、これ朝飯だ。どうせ冷蔵庫を死んで食材全滅だっただろ?」

「さすが刃だ!!」

 

 

そう言いながら、当麻は俺が持ってきた朝飯を食べ始める。

それを横目に俺はシスター服―――《歩く教会》を修復していく。

簡単な作業だ。

《時間を操る程度の能力》で破壊される前まで時間を戻す―――わけではない。

ネックレスに《歩く教会》の術式を加えた俺だぞ?

普通に修復するわ。

 

 

「ほれできたぞ」

「《歩く教会》が完全に修復されてる……君、一体何者?」

「魔術を知っているし、使える。ただそれだけだ」

 

 

インデックスが考え込む。

と、ここで当麻が話しかけてきた。

 

 

「刃……こいつの名前はインデックスって言うらしいんだけど……」

「偽名ではないだろう。その子がそう言ったんだから。それに偽名ならもう少しマシなものがあるだろう」

「確かにな……」

 

 

当麻は右手を見つめ、何かを考えているようだ。

おおよそ、「修道服が壊れたのだから魔術は存在する」とでも考えているのだろう。

 

 

「当麻。そんなことより補修はいいのか?」

「やべっ!!そうだった!!」

 

 

当麻はインデックスの方を向き、

 

 

「俺、これから学校行かなきゃなんねぇんだけど……お前どうすんの?ここに残るなら鍵渡すけど?それか刃のところにでも―――」

 

 

当麻がイケメンすぎるのだが……

さすが一級フラグ建築士。

だがな、俺を巻き込んだのはいけないな。

 

 

「いい、出てく。いつまでもいると、連中ここまで来そうだし。君だって、そこっちの君だってこの部屋ごと爆破されたくないよね?」

「おい!!」

 

 

玄関に向かったインデックスを追う当麻。

だがその途中で転んで携帯電話を踏みつぶしたのはしょうがないのだろうか?

 

 

「当麻、貸してみろ」

「いつも悪いな……」

 

 

壊れた携帯電話を投げ渡してくる。

《時間を操る程度の能力》で、携帯電話の時間を壊れる前まで巻き戻す。

 

 

「ほれ、これでいいだろ」

「おーさすが刃」

 

 

携帯電話を当麻に投げ返す。

受け取った当麻はインデックスに向き直った。

 

 

「お前、ここを出てどっか行くあてでもあるのかよ?」

「ここにいると、敵が来るから」

「敵?」

 

 

当麻が訊き返す。

魔術師のことだろう。

 

 

「この服は魔力で動いているからね。それを元にサーチかけてるみたいなんだよ。でも大丈夫。教会まで逃げ切ればかくまってもらえるから」

「ちょっと待てよ、それをわかってて放り出せるかよ!!なぁ刃」

「俺に振るのか……まぁそうだな」

 

 

可愛い女の子を放り出すことなんてできるわけがない。

これ常識ね。

 

 

「じゃあ―――私と一緒に地獄の底までついて来てくれる?」

 

 

インデックスは顔を下にうつむかせながら言った。

ようは、ついてくるなと言っているのだ。

まぁ俺も当麻も答えは決まっている。

 

 

「「もちろんだ」」

「え……?」

 

 

インデックスが目を見開いて驚いている。

 

 

「別に地獄なら何回も行ったことがあるから」

「うげぇ……刃はやっぱり規格外だな」

「よせ、照れるだろ」

「……お、おぅ」

 

 

当麻、そこでガチ引きはないと思うんだ。

先に仕掛けてきたのは当麻なんだから。

 

 

「で、でもやっぱりいいよ。迷惑かけたくないし」

「ゴメン、それ無理。最低でも教会までは俺が送り届ける。当麻、お前は補修に行け。後は任せておけ」

「お、おぅ。じゃあ頼んだぞ」

 

 

当麻は靴を履き、玄関から外に飛び出す。

鍵はピッキングを応用すればいいだろう。

 

 

「……君は自分勝手だね。どうなっても知らないよ?」

「安心しろ。最低でも自分の身ぐらいは守れる。じゃあ行こうか?」

 

 

インデックスを部屋の外に出し、俺も出る。

そして鍵をかける。

ははは、面倒事の予感しかしねぇ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

辺りも暗くなり、街灯がつき始めた。

教会まで行くのにものすごく時間がかかった。

途中でインデックスがあちらこちらで食べ物を食べ始めたせいだ。

全て俺が金を払った。

……諭吉が何十人と俺の下を去っていったよ。

だが過ぎたことは仕方ないし、インデックスが可愛いから許そう。

 

そして教会に着いた。

そう、一度教会に着いたのだがここでインデックスはあることに気づいた。

 

頭に被っていたものがないのだ。

 

思い当たる場所など一つしかない。

当麻の部屋だ。

あそこで一度修道服を脱いだのだ。

 

というわけで、当麻の部屋まで来たのだが面倒事が起きた。

 

 

「その子を渡してくれないかな?」

 

 

赤髪で神父の格好をして、頬にはバーコードのタトゥー。

そしてタバコを吸っている。

神父にあるまじき行為だ。

 

 

「あんた誰?」

 

 

一応聞いておく。

 

 

「んー……僕達、魔術師だけど?」

 

 

なぜ疑問形で答えたのかは聞かないでおこう。

というか、自分から複数人ってバラしてるし。

 

インデックスが俺の背後に隠れる。

ステイルは今は敵と判断していいらしいな。

 

 

「じゃあ初めまして魔術師。『二天龍を従えし者』、神浄刃だ」

「へぇ……君が例の……」

 

 

アレイスターの野郎バラしやがったな。

まぁいいか。

さて、ステイルをどう料理しようかな?

 



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第Ⅱ話~魔剣試斬~

「まけんしざん」と読みます。
試し斬りとういう意味ですね。


タバコを加えて口元をニヤつかせている赤髪神父。

さらに耳にはピアスを何個も着け、右目の下にはバーコードのタトゥーらしきもの。

 

明らかに不審者ですな(笑)

 

 

「魔術師ねぇ……それで?ただの魔術師が何の用だ」

「その子を渡してくれないかな?素直に渡してくれれば怪我をすることはないよ」

 

 

フフン、とドヤ顔しながら赤髪神父が言った。

この野郎……完全に俺のことナメてやがるな?

 

 

「嫌だと言ったら?」

「実力行使だね」

 

 

そう言い、赤髪神父は炎を放ってきた。

インデックスが俺の前に出ようとするがそれを腕をつかんで防ぐ。

おおよそ、《歩く教会》で炎を防ごうとでも思ったのだろう。

だがその必要はない。

 

魔力を開放すればあら不思議。

簡単に炎から身を守ってくれます。

なお、この方法はある程度の魔力が必要なので気をつけるように。

 

 

「……なんだい君のそのデタラメな魔力の量は」

「なんだ?うらやましいのか?」

「……そんなわけないだろう」

 

 

少し考えたな、少し。

 

 

「君に力があるのを認めよう。だから僕も名を名乗ろう―――」

 

 

推測では、魔法名でも名乗るつもりなのだろうが……

 

 

「―――Fortis931!!」

 

 

そう叫びながら先ほどとは比べものにならない量の炎をこっちにぶちまけてきた。

インデックスはまたもや俺の前に出ようとするが、それを羽交い絞めにして止める。

その時、インデックスのほとんでないであろう胸が当たったのは気のせいだろう。

そしてインデックスの顔が赤くなったのは、炎が熱かったからだろう。

 

おっと、楽しんでいる場合ではなかったな。

右足を後ろに引き、そして一気に振り上げる。

すると、竜巻が起きて炎を消しとばしていった。

良かった……炎をき吸収して、火炎旋風にならなくて。

そんなことになったら領が炭化して、当麻にドヤされるからな。

 

 

「……君、本当に人間かい?足を振り上げただけで竜巻を起こすなんて信じられないんだけど」

「今実際に目の前で起きただろうが馬鹿タレめ」

 

 

現実から目を逸らすの、良くないと思うよ。

目を反らし過ぎると、現実が全く分からなくなるし。

 

 

「なぁ赤髪神父」

「……なんだい?素直にその子を渡してくれる気になったのかい?」

「何ほざいてんだ馬鹿」

「……じゃあなんだい?」

 

 

何をイライラしているんだか……

ニコチンが足りないのだろうか?

 

 

「いい加減帰ってくれない?もう遅いしさ」

 

 

そう言った瞬間だった。

ブチッ!!と音が鳴ったと思ったら赤髪神父から聞こえてきた。

その瞬間だった。

赤髪神父が何かつぶやき始めた。

 

 

「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ。それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり。それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり。その名は炎、その役は剣。顕現せよ!!我が身を喰らいて力と為せ!!」

 

 

赤髪神父がそう言い放った瞬間、赤髪神父の背後から爆炎が出現した。

ついでになんか叫び声みたいなものも聞こえてきた。

爆炎はやがて人型に収まっていった。

これは《魔女狩りの王(イノケンティウス)》だな?

このままで三〇〇〇度の熱で寮が本当に炭化してしまいそうだ。

よし、もう凍らせよう。

鎮火は面倒そうだし。

でも《魔女狩りの王》は確か、ルーン魔術だったっけ?

ルーンを破壊しないといけないのか……

 

まぁ、とりあえずやってみようか。

と、意気込んだ時だった。

 

 

「あっつ!?なんだこりゃ!?一体何が―――って刃!!テメェの仕業か!!」

 

 

エレベーターから当麻が出てきた。

当麻……タイミングが悪いのか良いのかわからないな……

まぁこの場合は前者だろう。

 

 

「俺じゃない。そこにいる赤髪神父の仕業だ」

「なっ!?ヤロー……」

 

 

当麻が珍しく殺る気だ。

最近ストレスが発散できなくて溜まっていたんだろうな。

特に、美琴が原因で。

 

 

「―――《魔女狩りの王》!!」

 

 

当麻と話をしているうちに、赤髪神父は攻撃に出た。

面倒だな……赤髪神父と《魔女狩りの王》ごと河川敷に転移させるか。

そしてそこで殺るか。

 

 

「当麻。あいつらごと転移するぞ。そこで存分に殺ろう」

「わかった。さっさと行こうぜ!!」

 

 

魔法陣を展開し、赤髪神父と《魔女狩りの王》を河川敷に転移させる。

次いで、俺と当麻も転移する。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「なんだここは……?さっきまで寮にいたはずだが?」

 

 

赤髪神父が辺りを見回しながらながら言った。

 

 

「ここは河川敷だ。ここなら多少派手に殺っても大丈夫だからな」

「そうかい……それならお望み通りに―――《魔女狩りの王》!!」

 

 

ルーンがかなり遠くになったのによく起動しているな……

まぁルーンに関しては寮に置き去りにしたインデックスがどうにかするだろう。

だからそれまでのお楽しみだ。

 

 

「当麻!!お前は赤髪神父を叩け。俺は《魔女狩りの王》で実験してくる」

「わかった!!だけど俺に被害を受けさせるなよ!!」

「……………………善処する」

「随分と間が開いたなオイ!!」

 

 

攻撃の余波がいくかもしれないじゃん?

だから保証はできないぜ。

 

さて、今回は何を使おうか。

出来る限り神滅具は使いたくない。

アレイスターにバレるのもあるが、この程度の敵に使うのもなんか嫌だ。

となると、聖兼か魔剣で行こうか?

よし。

 

 

「―――ダインスレイブ」

 

 

魔剣ダインスレイブ。

振るう事で巨大な氷の柱を多数生み出して攻撃できる伝説の魔剣だ。

炎な《魔女狩りの王》とはなかなか相性がいいと思う。

だって氷だし。

 

一気に《魔女狩りの王》に近づく。

そしてそのままダインスレイブを振りぬく。

ただ、それだけのこと。

それだけで《魔女狩りの王》は氷柱の中に封じ込まれた。

 

魔剣すげぇ……

 

氷柱が砕けたと思ったら、そのまま《魔女狩りの王》まで消さった。

どうやらインデックスがうまいことやったらしい。

 

そして当麻はというと―――

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」

 

 

もの凄いラッシュをお赤髪神父に叩き込んでいた。

もう……やめたげてぇ……

顔が……顔が原型をとどめてないんだ……

誰だか全くわからないな、ザマァ(笑)

 

 

「ふぅ……気が収まったぜ。刃、そっちはどうだ?」

 

 

当麻が赤髪神父をポイ捨てしながら声をかけてきた。

あんな大男を軽くポイ捨てできる当麻はもう十分人の域を超えたと言っても過言ではない。

 

 

「インデックスがうまくやってくれたらしい」

「それは何よりで……」

「そんじゃまぁ……飯でも食いに行くか?インデックスも連れて」

「……金、大丈夫か?」

「俺を舐めるな」

 

 

とりあえずインデックスを回収して、飯を食べに行こう。

腹が減ってたまらない。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「それじゃあメニューに書いてあるの全部持ってきて」

「か、かしこまりました」

 

 

Joseph's、それが今俺と当麻とインデックスがいる場所だ。

メニューを見るのが面倒だったのと、インデックスだからのこのくらいは食べるだろうという推測から大雑把な頼み方をしてしまった。

 

 

「や、刃?さすがにこの量は―――」

「安心しろ。金は心配ないし、見てみろ―――インデックスの目が輝いているだろう?」

「……心配はなさそうだ」

 

 

当麻も分かってくれたか。

インデックスの目が輝きまくっているのと同時に、よだれも凄まじいことになっている。

もう食べたくて食べたくて仕方がない状態だ。

 

それにしても気になることが一つある。

俺達が現在腰掛けているのは何ともまぁ珍しい八人掛けのテーブルだ。

なぜ三人なのにこのテーブルなのかというと、頼んだメニューの量もそうだが他の団体さんのお客がいるからだ。

 

まぁその団体さんが武装無能力集団(スキルアウト)だったんだけどな。

俺達がいるこのテーブルを覗くすべてが暑苦しい男どもで埋め尽くされている。

席の数はピッタリだ。

 

 

「お待たせしました。こちら―――」

 

 

ウェイトレスの女の子が次々と料理を運んでくる。

そしてそれを次々にインデックスは腹に収めていく。

作業を見ているようだ。

耀を思い出すな……

 

料理が運ばれて、それをインデックスが食べ、料理を運んできたウェイトレスが開いた皿を回収するのローテーション。

俺と当麻はそれを見守りながら、ハンバーグプレートを食べている。

たまに飲み物も飲むけど。

 

レシートを確認すると、諭吉さんが十人はいなくなるらしい。

まぁこれからも増えるだろうし。

だって―――

 

 

「ここからここまでください!!」

 

 

なんて言っているインデックスが目の前にいるんだもん。

まぁ俺と当麻はデザートを食べて休憩中―――というわけでもなく、気の鍛練中だ。

気を操作して消化を速めるのと同時に気を回復させる。

 

 

「こういう細かいのはまだまだ苦手だなぁ……」

「そうだな。だが一ヶ月以内にはできるようになってもらうぞ」

「ま、まぁそれだけあればどうにかなるな。うん」

 

 

当麻のセンスがあればしっかりと鍛練すれば二週間ぐらいでマスターしそうだ。

と、その時だった。

 

 

「すいません、お客様。相席よろしいでしょうか?」

 

 

ウェイトレスさんが声をかけてきた。

相席か……まぁ幸いこの席は八人掛けだし、他の席は暑苦しい男しかいないからな。

まぁいいか。

 

 

「当麻、いいよな?」

「あぁ、俺は別にいいけど……インデックスは?」

「むぐぅ?んぐ……別にいいんだよ」

 

 

インデックスからの了承も出たことだしOKということで。

 

 

「いいよ、ウェイトレスさん」

「ありがとうございます。四名いらっしゃいますので―――」

「片方によっておくよ」

「ありがとうございます。では、失礼いたします」

 

 

インデックスは食べるのに忙しいので、俺と当麻がインデックスを挟みこむように座る。

俺はスマホを取り出し、『アブソリュート』の面々に連絡を入れる。

『アブソリュート』は俺をリーダーとした暗部組織だ。

メンバーは俺、メル、操祈、ドリーの四人だ。

 

 

『今日は遅くなる。ヘタしたら帰れないから先に寝ていていいぞ』

 

 

こうメールを送ると、僅か数十秒後には全員から返信がくる。

しかも内容が全員同じだった。

 

 

『『『了解、新しい女の子でもひっかけたの(ですか)?』』』

 

 

あいつらめ……帰ったら滅茶苦茶可愛がってやる。

と、そこで相席の相手が来た。

来たのだが……厄介極まりない者だらけだった。

 

 

「そこの三人……AIM拡散力場が感じ取れない。なぜ?」

 

 

そう言ったのはピンクのジャージを着た女の子だった。

その子の顔を見て俺は―――

 

 

「げぇ……」

 

 

と、思わず声を漏らしてしまった。

なぜならそこにいたのは―――

 

 

「滝壺、それ本当?」

「超本当ですか?」

「ホントなの~?」

 

 

アレイスターからもらった暗部の情報の中にもあった。

こいつらは暗部組織『アイテム』だ。

面倒事の予感しかしないな……

 




絞首 斬首 銃殺 釜ゆで 溺死 電気
火あぶり 生き埋め 薬殺 石打ち 鋸 はりつけ 


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第Ⅲ話~正体発覚~

「そこの三人……AIM拡散力場が感じ取れない。なぜ?」

 

 

滝壺がそう言った瞬間、俺は面倒事の予感しかしなかった。

AIM拡散力場のことを学園都市第四位、麦野沈利が知ったらどうなる?

グイグイ突っ込まれるに決まっているだろう。

 

 

「へぇ……まぁその件に関しては後回し。とりあえず―――」

 

 

『アイテム』の面々は、自分で持ってきた鮭弁当や、サバの缶詰などを食べ始めた。

今のうちに出て行こうか。

 

 

「当麻、インデックス。ここから出るぞ。厄介なことになる前にな」

「刃、あいつら何者なんだ?」

「……面倒な奴らだ。いいからでるぞ」

「あ、あぁ……インデックス。ここから出るぞ」

「むぐぅ?んぐ……うん、もうお腹いっぱいになったからいいんだよ」

 

 

俺が立ち上がると、続いて当麻とインデックスが立ち上がる。

無言でレシートを取り、レジまで歩いて―――いけなかった。

なぜなら、

 

 

「おい、ちょっと待とうか?」

 

 

麦野に肩を掴まれながら話しかけられたからだ。

 

 

「なんだよ?なんかようか?俺はもう帰りたいんだが」

「滝壺がアンタらのAIM拡散力場が感じられないって言っているんだ。―――これはどういう意味だい?」

「そうか……で?」

「ハァ?」

「で?それを知ってどうするの?いい加減に―――『離せ』」

「―――ッ!?」

 

 

《絶対命令権》を使い、麦野の手を肩から外す。

 

 

「じゃあね」

 

 

ハラハラと手を振り、先にレジへ向かった当麻とインデックスの下へ行く。

その時、背後から殺気が放たれたが無視をした。

いちいち相手にできるか。

 

レジに諭吉を十五人置いて、

 

 

「釣りは取っといていいよ」

「は、はぁ……」

 

 

唖然としている店員を横目にさっさと出ていく。

どうやら追っかけてくることはなさそうだ。

 

Joseph'sから出た俺たちはこれからどうするか話し合っていた。

 

 

「インデックス、お前はどうするんだ?当麻のところに戻るのか?」

 

 

インデックスは首を横に振った。

 

 

「いいよ。また魔術師が追ってくるだろうし、そしたらまた君たちに迷惑をかけちゃうもん」

「そしたらなおさら一人にできねぇじゃねぇか!!」

 

 

当麻の気持ちはよく分かる。

正直に言えば、俺の家に来れば万事解決なんだ。

魔術師からの追跡はおろか、滞空回線(アンダーライン)からの追跡も逃れられる。

滞空回線は俺の部屋があるビルには一切ない。

そのことはアレイスターは知らないだろう。

ダミーを見せているからな。

 

 

「インデックス、うちに来るか?うちなら魔術師からの追跡を逃れられるし」

「それでもいいんだよ。迷惑をかけることには変わりは―――」

「まぁ拒否権はないけど」

「え―――」

 

 

インデックスの首に手刀を落として意識を落とす。

気絶したインデックスを抱きかかえ、当麻に向き直る。

 

 

「当麻、インデックスはこっちで責任を持って保護する」

「わかった。刃なら安心して任せられるしな」

「それじゃあな。それと明日の朝飯は自分で用意してくれ」

「う……わかったよ。じゃあな」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「兄様、おかえり……な……さい」

「おう、ただいま。なんだ、先に寝てるのかと思ったぞ」

「―――兄様」

 

 

あ、あれ……?

メルの気配が黒くなった?

 

 

「やはり新しい女の子をひっかけていたんですか?しかも意識を失うほど激しくシたんですか?」

「違うわ!!こいつはインデックスって言ってな?ほら、『箱庭』で耀に渡した《禁書目録》っていうギフトがあっただろ?それ元のとなった人物だ」

「それのなにが関係あるんですか?」

 

 

なぜ察せないんだ?

いつものメルならすぐに察するはずなんだが……

 

 

「魔術師に命を狙われている。だから保護した」

「なるほど、そう言うわけですか」

 

 

そう言った瞬間、メルからの黒い気配が引いていった。

はぁ……冷や汗かいたぜ。

 

インデックスを俺の部屋のソファに寝かせる。

そして、部屋にある円卓に腰を掛けてメル、操祈、ドリーを待つ。

しばらくすると、三人が部屋に入ってきて、席に腰を掛けた。

 

 

「どーしたの?こんな夜中に……先に寝ていていいっていたのは、やーくんでしょー?」

「すなまいドリー。緊急だから許してくれ」

「緊急?」

「そうだ操祈。今回俺が連れて帰ってきたインデックス―――あの女の子の警護だ」

 

 

その言葉に、操祈とドリーが目を見開く。

 

 

「なんで?あの女の子がそんなに重要なの?」

「そうだ。最重要だ。あの子一人で世界が変わるからな」

「そ、そんなに?」

「まずは魔術師のことから説明しよう。魔術しのことを知らないと重要度がわからないからな。魔術師とは―――」

 

 

そこから、操祈とドリーに魔術師のことを説明した。

非科学的な手段で超常現象を発生させる技術・理論の総称だということ。

超能力との最大の違いは、どのような系統・効果の魔術を習得するかが術者によって選択可能なこと。

数に制限なく複数の種類を使えることであり、自分の目的に沿った魔術を自在にセッティング出来るため、超能力と比べて非常に自由度・万能性が高いことなどをお大雑把に、簡単に説明した。

 

もちろん、二人は驚いた。

メルはもともと知っていたのでもちろん驚いていない。

 

 

「魔術っていうのは便利なんだねー」

「そうねぇ……でも私たち超能力者が使えないっていうのは少し不便ねぇ」

 

 

それは仕方がないと思う。

超能力者が魔術を使えたら、簡単に魔術師共は倒されてしまう。

なんせ、魔術の発動は判断できても超能力の発動は判断できない。

操祈の《心理掌握》なんて魔術師殺しだろ。

まったく操られている自覚がないんだし。

 

 

「結論な、結論。インデックスを守るという簡単なお仕事です」

「「「えぇ……」」」

「ただ魔術師からの攻撃があるだけだ。その魔術師も炎を使う奴と、世界でも二〇人ほどしかいない聖人の一人だけだ。余裕だろ?」

「「「………………」」」

 

 

三人ともジト目で俺を見るなよ。

本当に余裕だろ?

だって―――

 

《念》を完全に習得したし、そのうち二人はレベル5だぞ?

まぁメルはレベル6すら余裕で超えているだろうけど。

 

 

「それだけだから。じゃあおやすみ」

「「「おやすみ」」」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

翌日、朝ごはんを作っている最中に事件は起きた。

メルが俺の部屋のキッチンで朝食を作っている間、俺、操祈、ドリーの三人はソファに座ってテレビを見ていた。

インデックスは未だ目を覚ましていない。

少し強かったか……?

そんなことを考えているときだった。

ぐぅ~、とお腹の鳴る音と同時にインデックスが目を覚ました。

 

 

「ん……んん……ふぁ~……」

 

 

キョロキョロと辺りを見回しているインデックス。

だがそれはとある一点で止まることになる。

キッチンだ。

そこから香ってくるいい匂いに反応したのだろう。

と、次の瞬間―――

 

 

「がるるるるるるる!!」

 

 

そう叫びながらインデックスがキッチンへ特攻したのだ。

もちろん、それを許す俺ではない。

すぐにインデックスの身体の時間を止めて特攻を阻止する。

そしてそのままソファに座らせ、能力を解除する。

 

 

「わわっ!?」

 

 

座らせたと説明したが、背もたれの方にインデックスの正面を向けたのだ。

そのまま勢いが殺しきれずに、ソファから転落した。

 

 

「いたたたた……あ、あれ?ここどこなんだよ?」

「目を覚ましたか?」

「や、刃?」

 

 

ようやく理性を取り戻してくれたようだ。

ここから話を進めて行ってもいいのだが、

 

 

「兄様、朝食の準備が済みました」

「わかった。インデックス、とりあえず朝食を食べようか。腹減っているだろ?」

「う、うん。わかったんだよ」

 

 

朝食はインデックスが冷蔵庫の中身の九割を食い尽くすという事態以外は、滞りなく進んだ。

デザートにインデックスがパフェを食べたのには少し驚いた。

操祈とドリーはそんなインデックスを見て、顔をしかめていた。

メルは『箱庭』で耀の食べっぷりを見ていたので、特に何も思っていないようだ。

 

さて、これからどうしようか?

魔術師共にインデックスを渡すのは論外として、魔術師共を殺すのもなしだ。

バックにいる奴らが流れ込んで来たら、地図から国がいくつか消えてしまうかもしれないからな。

戦闘の余波でだけど。

 

マジでどうしよう……

説明するのもいいけど、俺の言葉を信じそうにない。

神の名を出せば信じるだろうが、それだとさすがにアレイスターに感ずかれる。

というよりも、全世界の魔術師どもに感ずかれるだろう。

やっぱりアレだな。

力でねじ伏せるのが一番いい案かもしれない。

そうすれば、ある程度話も聞いてくれるだろう。

 

すぐには行動しなくていいだろう。

あれからこのビルの近くには魔術師の気配がない。

さすがに、当麻の住んでいる寮みたいにするわけにはいかないしな。

 

 

「インデックス、何かしたいことはあるか?」

「うーん……特にないんだよ。ご飯もお腹いっぱい食べたし。あ、教会に行きたいんだよ」

「駄目だ。あそこもイギリス清教の奴らがいる」

「むぅ……」

 

 

ジト目をするなよ……

しょうがないじゃないか、そういうものなんだから。

 

 

「しゃーない。街でも案内してやる。途中で何か買ってやるから」

「むぅ……わかった、それでいいんだよ」

 

 

少しだけ表情が柔らかくなった。

なかなか可愛いな。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

街の案内が終わり、家に帰る途中に異変に気づいた。

周りに誰もいないのだ。

すぐそばを歩いていたインデックスすら。

 

すぐさま《円》で辺りの気配を探る。

そして一人だけ感知した。

ソレは徐々にこちらに近づいてきて、やがて目の前に現れた。

 

 

「―――ルーン」

 

 

背後から女の声がした。

 

 

「人払いのルーンを刻んでいるだけですよ」

 

 

俺を安心させようとでも思っているのか?

そんな必要はないのだがな。

振り向かず今度はこちらから声をかける。

 

 

「俺に何の用だ―――聖人」

「―――ッ!?私を、ご存じで?」

 

 

恐る恐るといった様子で訊きかえしてきた。

 

聖人。

それは生まれながらにして神の力の一端、《天使の力(テレズマ)》を宿した人間のことだ。

偶像崇拝の理論によって、神の子に似た身体的特徴や魔術的記号(聖痕)を持つ事で発現する先天的体質で、身に宿す力を引き出すことで超人的な力を使うことができ、素手で建造物を破壊する程の怪力、音速以上で動くことができる高速運動、その他反射神経・耐久力・精神力等も異常に高いなど圧倒的な身体能力を持っている。

また卓越した魔術の技能も有し、平常時でも幸運などの加護が付加されるというすばらしく運の良い人間のことだ。

 

今こうして聖人に出会ったが、確信した。

聖人は俺の神力のおこぼれをもらった存在だと。

なので―――

 

 

「―――ッ!?」

「どうした聖人。この程度の力に何を怯えている?」

 

 

少しばかり神力を開放するだけで、圧倒的な力の差を感じ取ってしまうのだ。

俺は振り向きながら言い放つ。

 

 

「もう一度問おう。俺に何の用だ聖人」

 




お久しぶりです。
季節外れのインフルエンザに苦しめられていた眠らずの夜想曲です。
まだまだ本調子ではないので毎日更新はキツそうです。


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第Ⅳ話~完全記憶~

「もう一度問おう。―――俺に何の用だ聖人」

「……………」

 

 

本当に何をしに来たんだコイツは。

容姿は日本人だ。

ひざ裏までありそうな黒髪をポニーテールにしていて、上は白い半そでシャツの裾を胸の下までまくって結んでいる。

下はデニムで、左側は太股の付け根のあたりでバッサリと裁断されている。

ウエスタンベルトにウエスタンブーツを装着しており、ウエスタンベルトには刀を携えていた。

ウエスタンルックサムライガールってやつ?

さらに本人のスタイルが合わさると……

うん、エロい。

ジーっと見たくなるやつですね。

 

おっと、そんなことは今はどうでもいい。

あくまでも、今はだ。

 

 

「インデックスを保護したいのですが……」

 

 

腰に携えている刀に手を掛けながら言ってくる。

余程警戒しているらしい。

 

 

「え?嫌だけど」

「仕方ありません……」

 

 

刀に添えられている手に力が込められた。

そして抜刀摺るふりをしてワイヤーを使って斬撃攻撃してきた。

 

 

「おっと……手癖が悪いな」

「な!?」

 

 

もちろんそのまま殺られる俺ではない。

ワイヤーを全て左手で掴みとる。

 

 

「何を驚いているんだ?この程度なら幼稚園児でもできるだろ?」

「できるわけないでしょうが!!」

 

 

そう叫びながら、攻撃を加えてくるのはやめてもらいたい。

しかもワイヤーじゃなくて刀で。

 

 

「―――唯閃!!」

 

 

キィィィン!!と耳障りな音が鳴り響いたと思ったら、もう凄い斬撃が俺の身体を襲った。

身体に傷はないが、服がボロボロだ。

上に来ていたシャツは刻まれて地面に落ちているし、ズボンはかろうじて大事な部位を隠している程度しか布が無くなってしまった。

 

 

「……本当にあなたは何者ですか?―――唯閃」

 

 

再び同じ攻撃を放ってきたのでそれを手刀で全て捌く。

うーむ、単調な攻撃過ぎてあくびが出そうだ。

 

 

「もうさ、いい加減帰ってくれないか?お前じゃどう逆立ちしても俺には勝てないし」

「……あの子を、インデックスを保護するまでは帰れません」

 

 

この子面倒だな……

自分の考えを一切曲げないタイプの人間だ。

故に、本当のことを聞いても全く聞き入れない。

 

 

「まず保護してどうするんだ?」

「……私の所属する組織は『必要悪の教会(ネセサリウス)』」

「へぇ?インデックスと同じ、イギリス清教のねぇ」

「彼女は私の同僚にして、大切な親友なんですよ」

 

 

突如語りだしたので、黙って聞くことにした。

 

敵対して保護しないとインデックスは生きていけないらしい。

インデックスは完全記憶能力を持っているらしく、それがすべての元凶らしい。

一〇万三〇〇〇冊の魔導書の記憶がインデックスの脳を圧迫しているんだと。

魔導書の記憶だけで脳の八五パーセントの容量を使っているらしい。

残りの一五パーセントは一年でうまってしまう。

それだけならまだしも、完全記憶能力を持っているインデックスは忘れることによって情報の整理ができない。

それができないせいで、脳のキャパシティがすぐにオーバーしてしまうらしい。

 

それで、インデックスと女の子が敵対している理由は単純だった。

何も覚えていない。

ただそれだけだ。

 

一年周期で記憶を消しているのだから当たり前と言えば当たり前だ。

自分を狙う魔術師は、一〇万三〇〇〇冊の魔導書を狙う敵だと判断するしかないインデックス。

 

不憫すぎじゃね?

だって勝手に魔導書を一〇万三〇〇〇冊も覚えさせといて記憶を消すとか……

俺だったら、世界を壊してでも反抗するね。

まぁ覚えてないだろうからできないだろうけど。

 

とりあえず正しい知識を教えておこうか。

 

 

「一年周期で記憶を消す必要はないだろ。だって人間の脳は確か一四〇年分くらいは記憶を溜めこめるはずだ。その前にさ、一五パーセントで一年分の記憶しかため込めなかったら、人間はみんな五年ぐらいしか生きれないよな」

「あ………」

 

 

どうやら矛盾に気づいたらしい。

なぜ今まで気づかなかったのかが不思議だ。

そしてこの結論から導き出される事実は―――

 

 

「結論な、結論。『必要悪の教会』の仕業だったってことだろ?インデックスに記憶を消さなければならない魔術を仕掛けて、それをインデックスが裏切らないようにするための首輪にしただけの簡単なお話でした」

「そんな……まさか……」

 

 

なかなか呑み込めないのですね?

わかりま―――せん。

現実はしっかりがっしり受け止めなければ痛い目に合う。

これは今まで神として生きてきた数万年間の間に学んだことだ。

そしてその現実から対策をすぐに考える。

そうしなければどんどん不利になっていく。

 

 

「まぁそういうわけだから。じゃあな」

 

 

ハラハラと手を振りながらこの場から離脱しようとした。

だが―――

 

 

「唯閃!!」

 

 

向こうは俺を逃がすつもりはないらしい。

それならこっちも攻撃してやろうか。

もういい加減やられてばっかりでムカついていたからな。

 

久しぶりに使ってみよう。

そして、この世界での扱いを知ろうか。

 

 

「〈神威霊装・十番(アドナイ・メレク)〉―――〈鏖殺公(サンダルフォン)〉」

 

 

俺の身体に霊装が纏わられていく。

紫色の鎧と燕尾服が混同しているような、イメージは十香の霊装のドレスを燕尾服に変わったものだ。

 

唯閃による攻撃が霊装を纏った俺に直撃する。

だが全く効かない。

さすが霊装だ。

 

 

「もういい加減にムカついらからこっちからも仕掛けるぞ」

 

 

そう言いながら〈鏖殺公〉を横なぎに振るう。

女の子は危険を察知したのか、上へ跳んだ。

そして道路標識の上に降り立った。

それは悪手だぞ。

 

道路標識に向かって跳び、そしてその勢いのまま〈鏖殺公〉を縦に振るう。

それを受けようと、刀を振るった女の子。

だが当然受け切れるはずがない。

向こうは魔術霊装でもないただのデカイ日本刀。

対してこちらは精霊の天使だ。

負ける理由がない。

 

 

「さすがにあっけなさすぎるな……そっちから仕掛けてきたくせにワンパンとかつまらなさすぎるぞ」

 

 

そう呟くと、女の子がこちらに特攻してきた。

それを〈鏖殺公〉でさ捌いていく。

上下左右に突き、すべてを例外なくだ。

一撃一撃が結構な重さで、少しずつだが後退させられていく。

 

だがそれも経った一撃で終わりを告げる。

 

後方に控えさせていた玉座を蹴り、粉砕させる。

そして細分化された玉座を〈鏖殺公〉と一体化させる。

 

 

「―――【最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)】」

 

 

一振りするだけで山をも両断する。

なので―――

 

 

「やべ……」

 

 

縦に振るったので、地面が深くえぐれてしまった。

底が全く見えない。

これはアレイスターにドヤされてしまう。

 

とりあえずは、女の子が近くから離脱したので地面を直そうか。

時間を操って、地面がえぐれる前まで時間を巻き戻す。

それと同時に斬ってしまったビルや道路標識も元に戻す。

 

さて、これからどうなるんだか。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「―――と、まぁこんな感じで襲撃に会ったわけだ」

「また女ですか?」

「それは俺に言われても困るな」

 

 

メルに今日あった魔術師による襲撃のことを話した。

だが襲撃されたことはそこまで重要ではなかったらしい。

問題は、襲撃してきた魔術師が女だということらしい。

 

 

「私がその魔術師を殺りましょうか?」

「いやいや、やめろよ。それは俺の仕事だし、そいつは聖人だから死なれると困れる」

 

 

この世界での聖人の存在は貴重だったはずだ。

なので、聖人の消失によってこの世界にどのような影響が出るかはわからない。

世界崩壊、みたいなことになったら面倒すぎる。

 

そのあと、どうにかメルをなだめた俺は操祈とドリーの様子を見に行った。

メルの話では鍛練場で念能力の強化をしているらしい。

 

鍛練場につくと、二人は《念》を使っていた組手をしていた。

《堅》も滑らかになり、すぐに各部に移動できるようになっている。

 

と、そこで俺に気づいたのか組手を止めて俺の方に走ってきた。

 

 

「ねぇねぇ、やーくん。そろそろ《発》をやってみたいんだけど……」

「系統がわからないのよねぇ」

 

 

そういえばこの二人に水見式をやっていなかったな。

グラスに水を入れてその上に葉っぱを浮かべたものを創造し、床に置く。

 

 

「両手をグラスの脇にかざして《練》をしてくれ」

 

 

二人は無言でそれを行った。

すると、操祈のグラスの葉は動いていた。

ドリーのグラスの葉は何も変化がなかった。

 

 

「やーくん、私の葉っぱ、何も変化がないんだけど……」

「水を舐めてみろ」

「う、うん……あ、甘いね!!」

 

 

これで二人の系統がわかった。

操祈は操作系、ドリーは変化系だ。

予想通りと言えば予想通りだ。

 

このことを二人に伝えると、二人とも納得してうんうん、とうなずいていた。

それからは、二人は各々に《発》の開発に臨んでいた。

話を聞いたが、操祈は短刀を浮かべてそれを操作することに重点を置くらしい。

ドリーは属性方面で行くらしい。

電気や炎、水などの。

 

《発》が完成したらこの二人も本格的に戦闘に参加してもらうことになるだろう。

まぁそれは当分先のことだろうけど。

《発》の具現化は今までよりも何倍も難易度が高い。

一ヶ月はかかるだろう。

楽しみだ。

 



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第Ⅴ話~早期解決~

今夜の夜中の十二時。

それがインデックスの記憶を消去しなければならない時刻だ。

まぁ記憶を消すわけないんだけどね。

俺がアレイスターに与えられた部屋で首輪を破壊してもいいんだけど、《聖ジョージの聖域》の余波でビルごと倒壊させられたらたまらない。

直すのは時間を巻き戻すだけだから簡単だけど、あまりにも目立ちすぎる。

河川敷などが最適かな……

周りには障害物が少ないし。

 

まぁとりあえずは当麻に連絡だな。

スマホを取り出して当麻へコール。

 

 

「もしもし、当麻か?」

『あ、あぁそうだけど。珍しいな、刃からかけてくるなんて』

「そうか?まぁそんな事よりも頼みがある」

『なんだ?さらに珍しいな。刃から頼みなんて』

 

 

確かにそう思えばそうだな。

いつもは当麻からの頼みごとが多いしな。

金を貸したり、飯を用意したり……

 

 

「インデックスを助けるためにその右手を貸せ」

『詳しく聞かせろ』

 

 

即答ですか。

 

そこからは簡単に当麻に現状を説明した。

インデックスは同僚―――イギリス清教はインデックスに首輪を付けた。

そのせいでインデックスは一年周期で記憶を消さなければならない。

そして今夜の夜中の十二時に、インデックスの首輪は起動してインデックスを殺す。

それを防ぐために当麻の右手―――幻想殺し(イマジンブレイカー)の力を借りたい。

 

簡単に説明したが、このことを聞いた当麻は、

 

 

『協力するぜ!!いや―――させてくれ!!』

「おまえならそう言うと思ったぜ。今すぐお前の部屋に転移する」

『了解!!さっさとこいよ!!』

 

 

ここで当麻との通信を切り、転移を開始する。

 

 

 

☆☆☆

 

 

「なるほどな……なかなか魔術師ってのも複雑だな」

「まぁな。まだまだこの程度は序の口だ。これからお前は―――いや、なんでもない」

「なんだよ、気になるじゃねぇか」

「まだお前には早い」

 

 

当麻を四〇階にの客間兼応接室に案内し、更に詳しい事情を説明する。

現在夕方の一〇時ジャスト。

リミットまで残り二時間。

でも二時間たつと十二時になって手遅れなので、余裕を持って一時間だ。

だがこれと言って準備をする必要はない。

 

当麻が首を破壊して、発動した『聖ジョージの聖域』を俺が防ぎつつ当麻が追い打ちをかける。

 

ただそれだけのことだ。

だが攻撃が終わった後の光の羽は危険なので、俺がすぐに重力の膜を張らなければならない。

俺は別に触れても問題ないが、当麻はそうはいかない。

右手―――幻想殺しなら問題ないだろうが、それ以外部位はまずい。

 

 

「兄様!!インデックスさんが!!」

 

 

部屋を行き来する転移魔法陣がある方向から切羽詰まった声が聞こえてきた。

声のする方を向くと、そこにはメルがいた。

 

インデックスの身体が結構キツくなってきたか……

これはさっさと首輪を破壊した方がよさそうだな。

 

 

「―――当麻」

「わかってる。さっさとやっちまおうぜ刃!!」

 

 

見ると、当麻も肩を回しながら立ち上がっていた。

準備万端、やる気十分。

最高の状態だ。

 

当麻を連れて、インデックスがいるであろう四九階の俺の部屋へ転移する。

ここで不便なのが、当麻が部屋に備えうけられている転移魔法陣が使えないことだ。

仕方がないので、俺が当麻を転移させる羽目になった。

 

部屋につき、ソファのある場所へ歩く。

そこには、苦しそうに呼吸をしているインデックスが横になっていた。

これはもう少し早く首輪の破壊を試みた方がよかったな。

 

 

「インデックス、首輪を破壊するからな。もう少しの辛抱だ」

「う……ん……」

 

 

インデックスの頭を優しくなでながら言う。

インデックスは苦しそうに返事をした。

 

 

「よし、当麻。首輪の破壊は河川敷で行う。転移するぞ」

「了解だ!!」

 

 

俺、当麻、インデックスを転移させようとした時だった。

 

 

「兄様!!私も行きます!!」

 

 

メルがそんなことを言いだした。

よくよく考えると、メルの能力は応用が利くからな……

ここは連れて行かない理由がないな。

 

 

「よし、メルにも来てもらおう。戦力は多い方がいいからな」

「ありがとうございます!!」

 

 

今度こそ俺たちは河川敷に転移した。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

河川敷に到着した俺達は、各々準備を開始した。

当麻は気を高め、メルはインデックスに寄り添って励ましている。

俺はというと、インデックスを座らせるための椅子を創造してどこに配置をするか悩んでいた。

下手な位置に配置して、被害がでたらアレイスターにぐちぐち言われてしまう。

まぁいいか、どうでも。

結論。

適当な位置に配置しました☆

 

 

「メル、インデックスをこの椅子へ」

「はい、兄様」

 

 

メルがインデックスを空気に乗せて運んできた。

そしてそのまま椅子に座らせる。

 

 

「じゃあ始めるぞ。当麻、首輪は口の中―――のどの辺りにあるはずだ。手を突っ込め。その際、噛まれるかもしれないから気で手を強化しておけよ」

「お、おぅ……」

 

 

少し顔を引きつらせる当麻。

だがすぐに表情を引き締めて、気で手を強化してインデックスの口の中に右手を突っ込む。

そしてしばらくすると、ピシィ!!とガラスの砕けるような音が辺りに鳴り響いた。

当麻はそれと同時にこちらに後退してきた。

 

インデックスの身体の周りに、黒いオーラが纏わりついている。

椅子に座っていたが、のそりと立ち上がり―――

 

 

「俺の後ろに着け!!ATフィールド全開!!」

 

 

瞬時に俺の言葉に反応し、メルと当麻が俺の背後に着く。

それと同時にインデックスがこちらに向かって突っ込んでくる。

インデックスが俺とぶつかるまえに、ATフィールドにその身を阻まれている。

 

 

「警告、第三章第二節、第一から第三までの全結界の貫通を確認。再生準備―――失敗。自動再生は不可能。現状一〇万三〇〇〇冊の魔導書の保護の為、侵入者の迎撃を優先します。書庫内の一〇万三〇〇〇冊により、結界を貫通した魔術の術式を逆算―――失敗。該当する魔術は発見できず、術式の構成を暴き、対侵入者用のローカルウェポンを組み上げます。侵入者個人の為、最も有効な魔術の組み合わせに成功しました―――」

 

 

シュイィン、と風を切るような音が鳴り響く。

そして紅色の魔法陣が展開された。

 

 

「これより特定魔術、《聖ジョージの聖域》を発動。侵入者を破壊します」

 

 

で、でたぁぁぁ!!

《聖ジョージの聖域》だぁぁぁ!!

 

インデックスの両目の間を中心として、そこから黒い稲妻のようなものが外側に向かって展開されている。

そしてインデックスの目が見開かれた瞬間、青白い閃光発せられた。

それは次第に収束していき、一本のレーザーになった。

《竜王の殺息(ドラゴンブレス)》だ。

伝説のドラゴンが繰り出す攻撃と同義であるといわれているが……

まぁ余裕でしょ。

伝説のドラゴンならいままでいくらでも相手取ってきた。

龍神との痴話喧嘩はいつでも命懸けだった。

一撃で空間ごとごっそり削れていく。

かすっただけで肉体はミンチになって吹き飛んで行ったな……

今では懐かしい思い出だ。

 

《竜王の殺息》はATフィールドで防ぎきっている。

 

 

「《聖ジョージの聖域》は侵入者に対して効果が見られません。他の術式へ切り替え、侵入者の破壊を継続します」

 

 

インデックスが言いきった瞬間、レーザーの威力が増した。

これは拙いな……

 

 

「メル!!気体を制御してインデックスを空に向かせろ!!」

「わかりました!!」 

 

 

瞬間、メルが手を掲げたと思ったらインデックス仰向けに倒れ、空に向かってレーザーを放つ。

すると、上空から光の羽が降ってくる。

それを重力を操って宙にとどめる。

 

 

「当麻!!」

「わかってる!!」

 

 

当麻がインデックスの下へ走る。

気を使って脚力を強化しているせいか、かなりの速度だ。

 

 

「警告、第十章第十三節。新たな敵兵を確認。戦闘思考を変更―――戦場の検索を開始―――完了。現状もっとも難易度の高い敵兵、上条当麻の排除を最優先します」

 

 

レーザーの勢いが増し、ATフィールドでの防御にも限界が―――来るわけないだろ。

だがこのままではじり貧なので、重力を操ってブラックホールを創り、そこにレーザーを吸い込ませる。

これで多少は楽になる。

 

 

「《聖ジョージの聖域》を第二段階へ移行―――」

 

 

これ以上は面倒だ。

 

 

「当麻!!さっさと右手を当てろ!!」

「わかってる!!」

 

 

そしてその時は来た。

当麻が地面にクレーターができるほど踏込み、一気にインデックスの頭に右手を当てた。

ピシィ!!とガラスの砕ける音が辺りに鳴り響き、《聖ジョージの聖域》が破壊される。

もちろん、光の羽は宙に浮いている。

だがこのままでは危険なので、全てブラックホールに吸い込ませる。

 

 

「警……告……最終……章……第……〇……首輪……致命的な……破壊……再生……不可―――」

 

 

そこでインデックス―――《自動書記(ヨハネのペン)》の声は途絶えて、地面に倒れ伏した。

あれ?

俺ってATフィールドで《竜王の殺息》を防いで、重力操って光の羽を防いだだけ?

まぁいいか。

 

 

 

☆☆☆

 

 

「おかわりなんだよ!!」

「落ち着け、まぁ落ち着け」

 

 

昨夜、気絶しているインデックスをうちに運び込みベットに横にさせたまではよかった。

今朝インデックスが目を覚ますと、第一声が「お腹すいたんだよ、刃」、だった。

とりあえずメルに飯を作らせながら、俺は緑茶をすすっていた。

飯が運び込まれると、それを一心不乱に食べ始めるインデックス。

途中で冷蔵庫の食材が尽きてしまい、俺が創造する羽目になった。

 

 

「ふぅ……ごちそうさまなんだよ」

「はいはい……まったく……」

 

 

どんだけ食うんだこいつは。

インデックスの胃袋はブラックホールかよ。

 

 

「インデックスはこれからうちで保護―――っていうか住んでもらうことになるけどいいか?」

「別にいいんだよ。こんなにおいしいご飯が毎日食べられるんだもん♪」

 

 

当麻のところでは、セキュリティが甘いのと、食費が……と言う理由でなしになった。

正直いうと、それは好都合だった。

だって無駄に監視する範囲を広げなくていいんだもん。

 

まぁ何はともあれインデックスの件は解決した。

面倒事が増えるような予感しかしないが、それはそれでおもしろそうだ。




刃くんの戦闘は次章からになりそうですね。


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第Ⅱ章 吸血殺し
第Ⅰ話~天敵来訪~


吸血殺し編、始まります。


今日もものすごく暑い。

学園都市はビルに囲まれているせいか余計に熱く感じる。

だが俺はそれでも外に行かなければならないのだ。

インデックスが外に行きたいというのだから。

 

当麻に押し付けてもよかったのだが、「参考書を買いに行く」などとほざきやがった。

確かに当麻の脳だと、参考書なしで夏季休業の課題をこなせるとは思わない。

それに参考書は以外と高い。

一冊三六〇〇円だとかなんとか。

それ一冊でどれだけゲーセンで遊べるか……

 

インデックスと二人だけというのも何なので、メル、操祈、ドリーを誘ったのだが全員に断られた。

 

メルは学園都市に嫌な気配がするとか何とかで、そちらの調査をするそうだ。

それに関しては俺も同感だ。

俺には害がなさそうだが、知っていた方がいいしな。

 

操祈とドリーは《発》の開発が忙しいとか。

今は波に乗っていてうまくいきそうなので、というわけらしい。

まぁそれなら仕方がない。

波に乗っているときにできるだけ進めておいた方がいい。

 

結局、俺はインデックスと二人でクソ暑い学園都市を練り歩くことになった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

インデックスと学園都市を練り歩いて数時間。

簡単に街の紹介などをしていた。

どこに食べ物屋があるか、などがほとんどだったが……

怖くてインデックスにはあまり金を持たせられないな。

全て食費に費やしそうだ。

 

そして現在、インデックスはアイスクリームが大きく描かれた看板の前で歩みを止めていた。

確かに熱いので、アイスの一つや二つぐらいは……

 

 

「―――インデックス」

「べ、べつに食べたいわけじゃないんだよ」

 

 

いや、明らかに食べたいときの反応だろそれ。

素直になれよ、素直に。

 

 

「そうか?まぁどのみち行くつもりだったし、俺の分だけ買うか」

「嘘なんだよ!!私も食べたいんだよ!!」

「最初から素直にそう言え」

 

 

コツン、と軽くインデックスの頭を小突き、再び歩みを進める。

幸い、アイスクリーム屋の場所はここからそう遠くない。

早くアイスが食べたいぜ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「おいしいんだよ!!」

「あー……冷たくてうめぇ……」

 

 

アイスを買った俺達は、近くにあった木陰の下のベンチに腰を掛けてアイスを食べていた。

 

インデックスはストロベリーとブルーベリーの二段。

俺はストロベリーチーズケーキだ。

サイズはもちろん全て一番大きいものだ。

 

気温が高いせいでアイスの解ける速度が尋常じゃない。

一気に喰らって―――うおぉぉぉぉ!?

あ、頭が……キーンて……

 

 

「ふぐぅ……あ、頭がキーンてするんだよ」

 

 

どうやらインデックスもアイスに頭をやられたらしい。

くそぅ、アイスめ……なかなかやるではないか。

 

アイスを食べ終えたので、再び散策をすることにしたのだが……

 

 

「刃!!これ見て!!」

 

 

そう言いながら木の根ものと置かれた段ボール箱を指さした。

近くに行き、中を確認するとそこには三毛猫の子猫がいた。

 

 

「捨て猫か……」

「刃~ねぇ~飼っていい~?」

 

 

そんな猫なで声で、なおかつ上目遣いで言わないでくれ。

断れないじゃないか。

だが捨て猫は病気を持っているかもしれないしな……

まぁそんなのは神様クオリティーの浄化をかければ解決なんだがな。

 

 

「うし、少し待ってろ」

 

 

インデックスに待てをして、三毛猫を浄化する。

段ボールごと浄化をかけたので、段ボールも三毛猫も綺麗になった。

病原菌など存在しないし、させない。

さらに神様クオリティの加護で、三毛猫に病原菌や害虫がつかないようにする。

これで完璧だ。

 

三毛猫を段ボール箱から抱え出して、インデックスに渡す。

インデックスは三毛猫をしっかりと受け取り、ニコッと笑った。

ぐはぁ!!

なんて威力だ。

 

 

「スフィンクスよかったね~」

 

 

スフィンクスって名づけたのか……

正直その名前はどうかと思うぞ。

 

 

「あれ?何だろう……近くで魔力の流れが束ねられてる。属性は土、色彩は緑。この式はルーン?」

 

 

そう言いながらインデックスは駆けだしてしまった。

 

 

「誰かが魔法陣を仕掛けてるっぽい。当麻は先に帰ってて」

 

 

多分魔法陣はフェイクだろう。

本命はルーンだ。

そしてルーンを使う魔術師は俺が知る中ではステイルとやらだけだ。

ということは―――

 

 

「ルーン魔術か……」

「さすが、としか言いようがないね」

 

 

面倒事か……

 

声のする方を向くと、そこにはやはり赤髪長身で咥えタバコ。

そして耳には無駄に多いピアス、極め付けには右目の下にあるバーコードのタトゥー。

 

ステイル=マグヌス。

イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会』所属の魔術師で、インデックスの元同僚だっけか?

どちらにせよ面倒なことには変わりない。

 

 

「久しぶりだね、神浄刃」

「あぁ……当麻の寮でボコボコにして以来だな」

 

 

そう言いかえすと、ステイルは顔をひきつらせた。

まぁ苦い思い出なのだろうから仕方がないか。

 

 

「それで?一体魔術師が何の用だ?」

「……………」

 

 

俺がニヤニヤしながら問うと、ステイルは無言でルーンの描かれたカードを懐から取り―――出せるわけがないだろ。

俺が取り出そうとした腕を掴んでいるからな。

 

 

「それで?何の用だ魔術師。こちらとて忙しいんだ。用件がないんなら帰らせてもらうけど」

「……………」

 

 

ステイルは無言で懐から書類を取り出した。

 

そこからステイルの説明が始まった。

三沢塾に女の子が監禁されているらしい。

今の三沢塾は科学崇拝を軸としたエセ宗教と化しているらしい。

教えについてはそれほど問題ではないのだが、三沢塾が乗っ取られたところに問題があるらしい。

三沢塾を乗っ取った人物は、正真正銘の魔術師―――正確にはチューリッヒ学派の錬金術師らしい。

錬金術師の名はアウレオルス=イザードといい、三年前から行方不明だったらしい。

それがいきなりひょっこり出てきたらしい。

 

その理由とは何か?

重要なのはそこだ。

そしてその理由と言うのが、三沢塾に捕らわれていた吸血殺し(ディープブラッド)らしい。

その吸血殺しは、吸血鬼を殺すための能力らしい。

 

やべぇ……俺、あった瞬間吸血殺しの女の子殺しちゃうかも。

だってレティシアを殺す―――苦しめるかもしれない存在だろ?

さっさと消した方がいいんじゃないか?

 

結局何が言いたいかと言うと、ステイルは三沢塾に特攻を仕掛けて吸血殺しを連れ出さないとマズイ状況にあるらしい。

そしてそれに俺を巻き込むらしい。

 

え……?

俺、巻き込まれるの?

 

どうやら拒否権はないらしい。

従わなければ、インデックスは回収と言う方向になるらしい。

『必要悪の教会』が俺にくだした役は、インデックスを裏切らせないようにするための足枷らしい。

 

俺がインデックスの足枷だと?

 

 

「笑わせんなよ魔術師。俺がインデックスの足枷だと?―――俺がそんなに貧弱に見えるか?」

「くっ……」

 

 

殺気を浴びせながら言い放つ。

 

インデックスの足枷。

それは俺が『必要悪の教会』からしてみれば全く脅威にならないことを示している。

インデックスが裏切りそうになったら俺を人質に取る、という意味の足枷なのだろうから。

 

それはありえないだろう。

 

俺は全世界の魔術師が力を合わせて俺に攻撃してきても、全て防いでなおかつ反撃するくらいには強い。

世界を削っていいのなら、全員殺すことだって可能だ。

 

その俺をインデックスの足枷だと?

舐め過ぎだろう。

 

 

「き、君だけじゃない……上条当麻だって足枷の一人さ」

 

 

ステイルがうめくように声を上げる。

 

 

「そうか……お前達は当麻の強さを知らなかったな。―――当麻はもう聖人程度なら相手取れるぞ?」

「なんだと……?」

 

 

実際問題、気を十分に扱えるようになった当麻は最早対魔術師専門の戦闘員だといっても過言ではない。

気で身体を強化して、気弾で弾幕を張り、その気弾に紛れながら相手に右手で一撃を入れる。

相手が放ってきた魔術は右手で打ち消す。

止めには気で強化した右アッパーでも決まれば、もう勝ちだ。

 

 

「まぁそう言うわけでインデックスの足枷にはならないな。まぁ気が向いたら着いて行ってやるよ。じゃな」

 

 

ハラハラと手を振りながら自宅に転移をする。

あ、途中でインデックスを回収しないとな。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

家に帰った俺達を待っていたのはメルだった。

インデックスはさっさと部屋の奥に行ってしまった。

俺もそれに便乗しようとしたのだが、メルが目で「話があります」と訴えてきたので、俺は大人しくメルの後をついてい行くことにした。

 

 

「兄様、気配の正体がわかりました」

「吸血殺し、か?」

「……既にお分かりでしたか」

「んにゃ、さっき知ったばかりだ」

 

 

俺はメルと吸血殺しの対策を話し合った。

 

一つ目、吸血殺しを保有する女の子を殺す。

二つ目、吸血殺しを保有する女の子を保護して、その力を無効化、または封印する。

三つ目、面倒なので三沢塾ごと消しとばす。

 

まず一つ目はできればなしにしたい。

女の子を殺すのは、大切な者を傷つけられただけでいい。

三つ目はビルを消しとばしたらアレイスターにドヤされそうだからあまりよろしくない。

後始末が面倒ということだ。

したがって一番の有力候補は、二つ目だ。

吸血殺しの力を無効化、または封印する。

これが一番気分も悪くならず、なおかつ後始末をしなくて済む。

 

メルはその決断に文句はないらしい。

だが、「吸血殺しをどうやって探すのですか?」と聞かれてしまった。

それに関してはすでに知っているというと、「さすが兄様!!」と褒めてくれた。

少し、いや、かなりうれしかったり。

 

確かステイルは今夜、三沢塾に特攻すると言っていたような気がする。

多分だが、俺に断られたので当麻の方にも行っているだろう。

当麻は即OK出しそうだしなぁ……

まぁそれはそれでいいんだけど。

 

当麻とステイルとは別行動だな。

そっちの方が手早く済みそうでいいんだけど。

当麻といると当麻がギャーギャー騒いでなかなか前に進めなさそうだもの。

 

とりあえず、夕方にもう一度集まり、そして俺達も三沢塾に特攻することになった。

まだ昼を少し過ぎ辺りだ。

時間は少しある。

インデックスには黙っておこう。

操祈とドリーにはインデックスの監視兼ボディーガードを頼もう。

学園都市のレベル5がいれば十分だろうしな。

 

あぁそうだ、今のうちに着替えを済ませておこうか。

 

そして着替えが終わり、三時のおやつを食べ終えた俺とメルは、ソファでぐだー、としていた。

準備をするものは特にないので、このありさまになっている。

 

だが悪くはない。

久しぶりにメルと二人っきりになれた。

メルは俺の左腕に抱き着きながら、こくりこくりと船をこいでいる。

どうやら眠くなってしまったようだ。

 

 

「メル、出撃まで寝ていていいよ」

「すいません……」

 

 

すぐに、すぅすぅ、と規則正しい寝息が聞こえてきた。

くくく、可愛い奴め。

メルの頭を優しくなでながら、久しぶりの休息を楽しむとしようか。

 

 

 

☆☆☆

 

 

「メル、起きてくれ。もうそろそろ行くよ」

「ふぁぁ……はい、兄様」

 

 

目をごしごしと擦りながら返事をするメル。

可愛いなぁ……

 

メルが完全に目を覚ましたのを確認して、俺はメルと一緒に転移した。

場所はもちろん―――三沢塾だ。

 




この吸血殺し編は三話程度で終わる可能性が大ですね。


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第Ⅱ話~黄金錬成~

メルと一緒に転移してきたのは三沢塾だ。

当麻とステイルの気配が感じられるので、すでに特攻しているようだ。

転移した場所は、ビルのロビーらしき場所だ。

すぐ後方にビルの入口らしき自動ドアがあるのですぐにわかった。

 

辺りを見回すと、西洋の甲冑のようなものを装備している死体が転がっていた。

うーむ、甲冑がなかったらなかなかグロい光景だっただろうな。

 

そして今もう一つ気づいた。

周りにいる塾生がこちらに気づいていない。

死体の存在にも気づいていない。

 

このビルには、俺とメルがいる裏の世界と、塾生たちのいる表の世界があるようだ。

まるでコインの裏表のようだ。

多分、敵は問答無用で裏の世界に行くようになっているのだろう。

それと同時に、裏の世界の者は表の世界の者には一切干渉ができない。

 

この結界は核がある。

その核を潰せば一発で結界は解ける。

だがその核はなかなかなカモフラージュがかけられていて、見つけにくそうだった。

能力使えば一発だけどな。

だが核を潰すと少々面倒なことになる。

このビルには敵の魔力が充満している。

核を潰すのと同時にそれがバレてしまうだろう。

それと同時に俺の居場所がバレる。

そうすると必然的に面倒が向こうからやってきてしまうわけだ。

 

 

「メル、ゆっくりこのビルを見て回ろう。それでこのビルの仕掛けを知ろう」

「はい、兄様」

 

 

メルは俺の腕に自分の腕をからませながら返事をした。

なるほど、ちょっとしたデート感覚ですか。

まぁメルの実力ならそう感じてしまっても仕方がないか。

 

散策を開始したのはいいが、何も面白くない。

ひたすら一階から見て回っているのだが、裏の世界には特に人がいない。

もちろん、当麻とステイルは除外だ。

この二人に関しては、あえて避けているからな。

表の住人は楽しそうに談笑したりしている。

 

なんか気持ち悪いな。

こっちに視線を向けているのにスルーされる。

これがものすごく気になってたまらない。

 

このまま散策をしていても仕方がないか……

 

今度はあえて当麻達の下へ向かった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

到着したのは食堂らしき場所だった。

塾生が仲良く食事を摂っていた。

ファストフードみたいなセットや定食など様々な種類があった。

 

そして当麻とステイルの姿を捉えた瞬間だった。

 

空気が変わった。

 

今まで俺達に見向きしていなかったのに、急に視線が集まってきたのだ。

それも瞬きを全くせずに、瞳を暗くしながらだ。

 

これはマズイねぇ……

 

 

「始点の翼は輝く光」

 

 

男子塾生が呟いた。

それに続くように、

 

 

「輝く光は罪を暴く純白」

 

 

女子塾生が唱える。

その近くにいた女子も唱え始めた。

 

 

「「「純白は浄化の証」」」

 

 

そして塾生全員が唱え始めた。

 

 

「「「「「証は行動の結果。結果は未来。未来は時間―――」」」」」

 

 

………やっぱり面倒なことになった。

だから当麻とステイルと合流するのは避けたかったんだ。

でもまぁ、つまらないと言って合流したのは俺だ。

このくらいはしょうがないか。

 

これはおそらく、本来表の世界にいる塾生達を裏の世界に立たせたのだろう。

身体にも影響があるはずなんだがな……

 

呪文を唱えていた塾生達の額から、青白い球体出現した。

これは魔術だな……

 

と、ここでこの様子を見ていたステイルがこの場を離脱した。

 

どうやら当麻にすべてなすりつけたようだ。

ちなみに、まだ当麻達から俺とメルは視認できない。

こんなこともあろうかと、ステルスをかけていた。

 

と、さらにここで当麻がこの場を離脱した。

 

お前ら本当になんでここに来たんだよ……

相手に取らないならなんにもしないでくれよ……

 

仕方がない、俺とメルでどうにかするか。

まぁメルの能力は相性が悪そうだが。

 

青白い光球がこちらに向かって、弾幕のように襲い掛かってくる。

だが速さは全くと言っていいほどない。

この魔術を解析した結果、疑似的な《グレゴリオの聖歌隊》だということがわかった。

 

《グレゴリオの聖歌隊》は、ローマ正教の切札的な大魔術だ。

聖堂に三三三三人の修道士を配し、その祈りを集める事で目標を狙い撃ち、破壊する『聖呪爆撃』を行う事ができるものだ。

だが、塾生達が疑似的に行ったものは爆撃というのには無理があるだろう。

あまりにも弱々しすぎる。

もしかして触れた瞬間に爆発するのか……?

どちらにせよ、さっさと片付けてしまった方がよさそうだ。

 

重力を操りブラックホールを創造する。

そして青白い光球を全て吸い込ませる。

ただそれだけだ。

簡単な作業でしたな。

 

そこで新たな人影が出現する。

 

白いスーツに黒いシャツ、そして白いネクタイ。

見事に俺の服装とかぶっているな。

あぁ、もちろん今の服装ではない。

特別なときとかしか着ない。

 

髪型はオールバックで、結構整った顔だ。

そしてこいつから感じる魔力は僅かだが、このビルを満たしている魔力と同じものだった。

どうやらこいつが面倒事の張本人らしい。

でも魂の質が悪い。

どうやらダミーのようだ。

 

そいつは何かダラダラと言っているが、全く頭に入らない。

それだけ俺は考えていたということだ。

メルも何やら思うことがあるのか、顎に手を当てながら難しい顔をしていた。

 

その時だった。

 

突然男が首に針を刺したと思ったら、

 

 

「ここで起きたことは全て忘れろ」

 

 

などと言ってきた。

そんなことできるわけないじゃないか。

と言うかその前に―――

 

 

「誰に命令しているんだ?―――調子に乗るんじゃねぇぞ。『跪け』」

「―――ッ!?」

 

 

《絶対命令権》を行使し、男を跪かせる。

そして威圧を掛けながら言葉を続ける。

 

 

「神(俺)に命令とはいい度胸だな?それ相応の覚悟はできているんだろうな」

 

 

少し威厳のある感じで言ってみた。

すると、男は顔中に汗をかき始めた。

 

 

「まぁいい。今は機嫌がいいからこの程度にしておいてやる。あばよ」

 

 

男の顔面に拳を入れると、男は吹き飛んで行ったが、最終的には霧散してしまった。

分身だから当たり前か。

 

よし、それじゃあ当麻達を回収しに行くか。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

二人は三沢塾の近くの公園のブランコに仲良く座っていた。

馬鹿みたいに。

何やら話し合っているようだが関係に。

一気に目を覚まさせてやるぜ。

 

気配を消して当麻の背後に近づいていき、そして当麻の右手を当麻の頭に触れさせる。

その際、当麻が驚いて声を上げそうになったが目で黙らせる。

大人しく当麻は下がってくれた。

状況判断力が上がっているようで何よりだった。

 

当麻が全てを思い出したのと同時に、ステイルに右アッパーをプレゼントしていた。

それも顎に。

もちろんステイルは盛大にぶっ飛んだ。

当麻は気で腕力を強化したようだ。

ステイルはごろごろと地面を転がっていたが、メルが気体を制御してそれを止めたようだ。

 

メルさんマジ天使!!

 

そして当麻とステイルはまた何かを話し始めた。

だがそれを黙って眺めているほど俺は忍耐強くない。

 

 

「おいお前ら。俺が来てやったのにシカトか?」

「「うぉ!?いたのかお前」」

 

 

こ、こいつら……

 

折角来たのになんだその反応は。

もう俺帰っちゃうよ?

いいよね?

 

まぁもちろん止められたのでその場にとどまったがな。

 

公園を出ると、そこには甲冑を着た人間が何人も発見した。

どいうら十三騎士団の生き残りらしい。

 

 

「砲撃を開始する!!」

 

 

リーダーらしき人物の掛け声とともにそれは始まった。

 

 

「グレゴリオクライアー……正真正銘の《グレゴリオの聖歌隊》か」

 

 

ステイルが呟いた。

どうやら三沢塾で行われた疑似的な《グレゴリオの聖歌隊》ではなく、本物らしい。

 

《グレゴリオの聖歌隊》には三三三三人が必要だったはずだ。

あぁそうか……どこか違う場所で三三三三人の信徒が祈りをささげているのか。

簡単な話だったか。

 

リーダーらしき人物が立て続けに何かを唱えると、掲げていた剣から出ていた光線が強くなった。

そして天候が変わった。

 

ビルの上空に雲が集まり始め、雷が鳴り響いた。

そしてその雷がビルに落ちる。

同時にビルの窓ガラスが全て砕け散る。

そしてビルが斜めに傾き崩れ落ち―――なかった。

 

うーむ、あの男の仕業か……?

さらに面倒なことになってきたな。

 

そんなことを考えていると、メルがこちらに何かを持ってきた。

渡されたものを確認すると、それはインデックスのシスター服だった。

どうやらこれはビルの入口で見つけたらしい。

 

あー……

インデックスめ、面倒事を増やしやがって。

 

とりあえず、このことを二人に報告しておかないとな。

 




活動報告にて、アンケート実施中です。
ご協力お願いします。


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第Ⅲ話~状況打破~

吸血殺し編、最終話です。


インデックスの件を報告した瞬間、当麻とステイルが走り出した。

それをメルが二人の足元の気体を操作して転ばせた。

まったく、何の対策もせずに特攻しても返り討ちにされるだけだろうに。

 

だがメルは足止めだけでやめる気はなかったようで……

 

 

 

「「ぉ……ぉ……ぉぉ」」

 

 

二人の周りの酸素を失くしたらしい。

 

 

「メル!!さすがにそれは死ぬからやめてあげてくれ」

「………兄様がそう言うのでしたら」

 

 

俺が言わなかったらそのままだったのか……?

二人とも三沢塾に特攻する前にゲームオーバーだったのか……?

それはさすがにねぇ……

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

特に対策もしないまま三沢塾に戻ってきてしまった。

俺とメルは対策をしなくても大丈夫だが、当麻とステイルは分らない。

当麻は、右手をうまく使えれば対策は可能だ。

ステイルに関しては……まぁ頑張ってくれとしか言いようがない。

 

ビルの廊下を歩いている途中でステイルが色々と説明をした。

ステイルはどうやら無駄にビルを散策していたわけではないようだ。

魔術の核はすでに判明しているようだ。

俺はビルに着いた瞬間に分かったけど。

そして一番重要なインデックスの件は心配ないそうだ。

すぐに危害は加えられないらしい。

だがそのことに気づいた瞬間、ステイルがタバコを廊下に投げ捨て、舌打ちをした。

何かに気づいたようだ。

 

しばらく歩くと、核らしき部屋の扉の前まできた。

 

 

「ここだ」

 

 

ステイルが一言いい、扉に手を掛けたところで俺がストップを入れる。

何か言いたそうな顔だったが、俺のイイ顔を見て顔をひきつらせながら後ろに下がった。

俺が何をするかが予想できたらしい。

 

ここは『箱庭』で十六夜が披露してくれた扉の開け方を実践しようと思う。

右足を引き絞り、軸足なる左足に体重をかける。

そして―――

 

 

「邪魔するぜ!!」

 

 

叫びながら右足を振りぬく。

扉は吹き飛ぶと思ったのだが、粉々になってしまった。

俺が理想としていたのは、扉がぶっ飛んびなおかつ中にいるであろう男に当たることだ。

 

粉々になってしまったのなら仕方がない。

あきらめて堂々と部屋に入っていこうじゃないか。

 

俺が部屋に入ると、それに続いてメル、当麻、ステイルという順番で着いてきた。

そして俺は部屋の中で横になっている人物を見て一言。

 

 

「インデックスみーつけた」

 

 

インデックスは魔術かなにかで気絶させられているようだ。

 

 

「残念だが、君に目的を成し遂げることはできないよ」

 

 

ステイルが声を発した。

男の目的とはなんだ……?

 

 

「ふん。今更ながら我が真意に気づいたか。ならばその大成を前に、斧が無力を嘆き、嫉妬に身を焦がすが良い」

「うまくいくなら焦がしがいもあるんだがねぇ……繰り返すが、君に彼女を救うことはできない。―――インデックスを救うことはね」

 

 

なるほどね……

あの男は多分インデックスの前のパートナーか何かだろう。

そしてやはり記憶を消すときがあり、分かれた。

それから救い出そうとあの男は……

だがもう無駄ですな。

インデックスは当麻によって記憶を消す原因―――首輪を破壊された。

あの男のしてきたことは全て無駄だったわけだ。

 

男が語りだしたので、耳を傾ける。

そう言えばあの男の名前はアウレオルス=イザードと言うらしい。

ステイルが当麻に説明しているときに聞こえてきた。

 

吸血鬼。

それが今回のキーマンだ。

アウレオルスが知る吸血鬼とは、無限の命を持つ者らしい。

無限の記憶を人と同じ脳に蓄え続ける。

吸血鬼はどれだけ大きな記憶を取り入れ続けても決して自我を見失わない術があるらしい。

それを吸血鬼から教えてもらおうというわけだ。

そしてそれがうまくいかなければ吸血鬼にしてしまおうというわけだ。

 

馬鹿じゃね?

普通に魔術でインデックスの脳の容量を上げようとは考えなかったのかね。

それができなかったとしても、首輪の存在などを疑わなかったのかね。

首輪が存在することがわかればある程度なら対策を練れたはずだ。

まぁ俺には全く思いつかないけど。

 

アウレオルスの説明が終わると、ステイルが当麻に言葉を促した。

 

 

「ほら言ってやれよ今代のパートナー。致命的な欠陥を抱えた目の前の錬金術師に」

 

 

それは俺も入っているのだろうか?

当麻が口を開く。

 

 

「お前、一体いつの話をしてんだよ」

「何?」

 

 

当麻の言葉にアウレオルスは虚を突かれたように声を上げた。

それに構わず当麻は続けた。

そしてアウレオルスは知った。

インデックスは当麻によって救われていたことを。

今代のパートナーによって救われていたことを。

ステイルはそれに乗っかり、アウレオルスのやってきたことは無駄だと言った。

それは俺も同意だ。

 

アウレオルスも悲惨だな。

三年間地下に潜ってようやく上手くいくかもしれない方法を考えたのに、たかが高校生の右手一本で全て解決されてしまった。

それもたった数時間で。

 

その事実を知った―――知らされたアウレオルスは狂ったように笑った。

そして―――

 

 

「倒れ伏せ、侵入者ども」

 

 

バタン!!と音を立てて当麻とステイルが床に倒れ伏せた。

かなり痛そうだった。

メルは俺の方に視線を向けて、「倒れ伏せた方がいいでですか?」と、目で訊いてきた。

俺は苦笑いをしながら首を横に振った。

 

 

「我が想いを踏みにじり、我が殊勲をあざ笑い―――よかろう。この屈辱、貴様らの死であながってもらう!!」

「待って!!」

 

 

アウレオルスが首に針を刺し、錬金術を繰り出そうとした時だった。

巫女装束に身を包んだ女の子―――確か姫神秋沙だったな。

姫神がアウレオルスに待ったをかけた。

両手を広げて当麻とステイルをかばっているように見える。

 

ちなみに、俺とメルは当麻とステイルが倒れ伏した瞬間、ステルスをかけて部屋の隅で大人しくしていた。

 

当麻がうめくように姫神に忠告するが、それを受け取らずに姫神はアウレオルスに声をかけ続けていた。

しかも同情するかのように。

ここでその言葉のかけ方はいけない。

余計に相手を怒らせるだけだ。

 

そしてアウレオルスはもう姫神を必要としていない。

インデックスが救われているのだから。

 

アウレオルスは針をふたたび首に指した。

そして―――

 

 

「死ね」

 

 

一言……言った。

姫神は後ろに倒れる。

目から光が失われている。

 

当麻も復活していないようなので、俺が助けに行くか。

ステルスを解除して、姫神の下へ瞬間移動する。

そして姫神を抱きかかえ、状態を確認。

まだ死に切っていないようだ。

魂は肉体に残っている。

それなら神滅具の《幽世の聖杯(セフィロト・グラール)》で一発だろ。

 

《幽世の聖杯》とは神滅具であり、聖遺物の1つである聖杯のことだ。

生命に関する能力を持ち、生物を強化したり、肉体が滅んだ者を残っている魂から再生することや、滅んだ者の肉体の欠片からレプリカだが能力の情報を抽出して作成することができる。

乱用すると精神が汚染され、既に死んだ亡者が見えるようになる。

 

とりあえず、姫神生命活動を再生させて肉体を強化する。

ついでに吸血殺しもオン・オフの切り替えができるようにした。

さらに吸血殺しの情報もいただいた。

 

 

「―――はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 

姫神は呼吸を再開した。

どうやらうまくいったようだ。

 

 

「ば、馬鹿な!?我が《黄金錬成(アルス=マグナ)》を打ち消しただと!?ありえん……確かに姫神秋沙の死は確定した。貴様……一体何を―――」

 

 

アウレオルスはそこで言葉を止めた。

俺の顔を確認したからだろう。

 

 

「貴様……いつの間に」

「よぅアウレオルス。何をしたかだったか?ただ生命の操作をしただけだが?」

 

 

この言葉にアウレオルスが目を見開く。

さも当然のように言ったからだろうな。

 

さて、そろそろ決着をつけようか。

メルの機嫌も悪くなってきた。

早く済ませないと俺がメルに半殺しにされてしまう。

 

アウレオルスが唖然としているうちに、当麻に近づき右手を無理やり動かして自身に触れさせる。

同時に拘束が解け当麻が立ち上がる。

当麻はそのままステイルに近づいていき、ステイルの拘束も解いた。

 

これで全員戦闘できる。

だが―――

 

 

「メル、当麻、ステイル。こいつは俺が殺る」

「刃!!俺も―――」

「お前のせいでストレスがたまってるんだ当麻。たまには暴れさせろよ」

「お、おぅ……」

 

 

当麻も納得してくれたようだ。

これで心置きなくできる。

 

瞬殺だ。

それ以外は認めない。

 

 

「赤龍帝の龍刀―――極限倍化(オーバー・ブースト)」

 

 

通常の刀の姿から、太刀に変化する。

服装は、侍のような格好になる。

袴は漆黒で上着は紅色だ。

そして―――

 

 

『square』

 

 

極度倍化モードの能力は倍化ではない。

二乗だ。

なので倍化よりも早く力が溜まる。

 

 

『square』

 

 

ここまでで、四の二乗の倍化計算で行くと十六倍だ。

たった二回でここまで力の倍増はすさまじい。

 

 

「さて、アウレオルス。メルが飽きてきてしまったのと、俺の憂さ晴らしをさせてくれ。―――行くぞ」

 

『square』

 

 

ここでさらに二乗が入る。

十六の二乗で―――二五六倍だ。

ここまでくればもう十分と言ってもいい。

 

 

『explosion』

 

 

力を開放すると、床にクレーターができてしまった。

空間も歪み始めて、多大な被害が出そうだ。

 

なのでさっさと決める。

 

アウレオルスを殺るのはいたって簡単だ。

近づいて一太刀いれるだけだ。

アウレオルスは近接戦闘ができるとは考えにくい。

《黄金錬成》によって言葉一つである程度攻撃できるからな。

近接戦闘は想定していないだろう。

 

実行に移そう。

神速でアウレオルスに近づき、そのまま一太刀―――というよりも斬撃を滅多クソ入れた。

 

もちろんアウレオルスは吹き飛んで―――いかなかった。

いや、もっとひどかった。

空間ごと斬ってしまったのか、アウレオルスは消え去ってしまった。

 

俺はみんなの方に振り返り一言。

 

 

「あっけなくね?」

「「お前……鬼畜すぎだろ……」

「さすが兄様です!!」

 

 

当麻とステイルは顔をひきつらせながら、メルは目をかかやがせながら言った。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

三沢塾から帰った俺は―――いや、俺、メル、姫神は円卓に座っていた。

他にも、操祈とドリーが座っている。

 

 

「いい感じにメンバーも集まってきたな」

「そうですね兄様」

「なんで女の子ばっかりなのかが気になるけどね☆」

「まぁやーくんはカッコイイからしかたないよねー」

 

 

好き勝手に言ってくれるな。

きちんと能力で判断しているっての。

 

姫神は俺が率いる暗部組織―――『アブソリュート』のメンバーに入ってもらうことにした。

それと同時に魔術を習得してもらうことにした。

魔術というよりも、陰陽術だ。

もともと、姫神は陰陽術の適正があったのでそれに乗っかることにした。

さらに、《念》も習得してもらおうと思っている。

そうすれば最低でも自らの身は自分で守れるだろう。

 

姫神を『アブソリュート』に入れたせいでさらに面倒事が増えそうだがまぁ仕方がないか。

そう言えばインデックスはどうしようか。

『アブソリュート』に入れるべきか、入れないでおくか。

悩みますな。

インデックスが入ってくれればもの凄い戦力強化になる。

それに俺達が協力すれば、インデックスは一〇万三〇〇〇冊の魔導書を使いこなせるようになるはずだ。

走すれば魔神に至る可能性もある。

どちらにせよ、問題は山積みか……




吸血殺し編、終了です。
刃くんを相手に取るには、近接戦闘ができないと話になりませんね(笑)


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第Ⅲ章 妹達
第Ⅰ話~妹達出現~


妹達編、始まります。
個人的には、この話が一番好きです。



現在時刻21:00。

良い子はもうオネンネしている時間だ。

俺は今、製薬会社の研究所に来ている。

理由は簡単だ。

絶対能力進化計画の阻止―――もとい、妹達の救出だ。

妹達は御神の姉に当たる。

これは救わない理由はないだろう。

 

この実験を知ったのは、美琴が俺に泣きついてきたから―――ではない。

路地裏などから血の匂いが微かにしたり、人間の皮膚が残っていたりしたので何かあるなと思った。

『アブソリュート』を動員して調べたところ、絶対能力進化計画が判明した。

 

研究所を破壊して、研究を食い止める。

というのは建前で、ただ単に暴れたいだけである。

最近ストレスが溜まりまくっている。

うちにいるメンバーに非はない。

俺にストレスを与えまくっているのは魔術師共だ。

インデックスを狙ってくる者はいなかったが、ステイルなどアレイスターに認められて学園都市に侵入している奴が絡んできてうっとおしかった。

殺すにしても人の目が多すぎるし……

戦闘はいつも不完全燃焼で終わってしまう。

まぁ俺を頼ませてくれる奴はそうそういないだろうけど(笑)

 

いつもは研究所を破壊して終了だが、今日はそうも簡単にいかなさそうだ。

AIM拡散力場の大きさがかなりのものだ。

これはおそらくレベル5の能力者だな。

それも二人。

その他は……そこまで脅威にならなさそうだ。

 

待ち伏せしているのか、それとも戦闘をしているのかわからないが俺はスキップをしながら進んでいく。

もちろんAIM拡散力場が強い方向に。

 

スキップスキップらんらんらん♪

スキップスキップらんらんらん♪

スキップスキップらんらんらん♪

 

と、こんな感じでウキウキしながら進んでいく。

だがそれは唐突に終わりを告げた。

 

天井が急に崩れたのだ。

いや、爆破されて崩されたという表現が正しいだろう。

そして今度は瓦礫が飛んできた。

それも爆破された。

 

……やってくれんじゃねぇか。

いいぜ、相手になってやる。

 

煙が晴れると奥に人影が一つあった。

中学生くらいだ。

キャップをかぶっていて、ボーイッシュな格好だが女の子のようだ。

 

近寄ろうとした瞬間、再び爆破が開始された。

今度は床だ。

女の子は後ろに吹き飛んで行った。

いや、電気を使って磁力を操作して後退したんだな。

だけど最後に機械に背中をぶつけて下に落ちたけど。

 

しゃーなし。

あの子は悪い子ではなさそうだし助けちゃおうか。

 

追撃が来る前に神速で女の子に近づく。

そして顔を見て多少驚きながらも声をかける。

 

 

「無事かい?美琴」

「なッ!?な、なんでアンタがここにいんのよ!!」

「それは多分美琴と同じ理由だと思うぞ?研究所潰して、ストレス発散して、妹達を助ける。そして御神も―――っとこれはいいか」

「そう……アンタも知ってるのね」

 

 

美琴は顔を下にうつむかせながら呟いた。

だがそんなことを気にしている暇はなさそうだ。

いつ床に張り巡らされた導火線が爆破させられるか分からないからな。

まぁ導火線の対処は簡単だ。

魔力を水に変換して床をぬらす。

こんな簡単な作業だけで対策になる。

 

と、ここで気配を感じた。

上の階に通じる階段の途中にいた。

そしてこちらを見下ろしている。

 

 

「美琴、ちょっと失礼するよ」

「ちょ、え、ま、まってぇぇぇぇぇ!!」

 

 

美琴の制止を無視して美琴を抱きかかえる。

まぁお姫様抱っこだな。

そしてそのまま跳ぶ。

一度の跳躍で敵まで近づく。

敵の顔が引きつったのがわかった。

敵は金髪の女の子だった。

しかも―――幼い。

幼女……なんだ……

だが関係ない!!

 

 

「あーやばー!!まずいわー!!」

 

 

女の子は素人丸出しの芝居をしている。

こちらを油断させるためなのか、それとも罠にはめるためなのか。

もう一度跳躍するために階段に茶駆使した瞬間に結果は分った。

どうやら後者だったようだ。

だがまぁ―――

 

 

「関係ないんだなこれが」

「「うそぉぉぉぉぉぉぉ!?」」

 

 

空中で跳躍する。

気体を足場に跳躍した、簡単な作業でした。

美琴と女の子は仲良く驚いていた。

この程度なら『アブソリュート』の人間はみんなできるし、もう少しで当麻もできそうだ。

 

 

「なにそれずっる!!」

 

 

女の子が改めて叫んだ。

そしてそのまま奥に逃げて行った。

流石にこれ以上長引くと仲間がやってきてしまいそうだな。

一気に蹴りをつけようか。

 

女の子のあとを追い、奥の部屋―――もといフロアに入る。

 

 

「まさか、ここまで追い込まれるとは思わなかったわぁ」

 

 

俺もここまで時間がかかるとは思わなかったな。

早く帰らないとメルに締め出されてしまうからさっさと片付けたいな。

それと女の子の顔、前にも見たな。

Joseph'sで相席した相手の一人だ。

 

と、ここで背後のシャッターが閉ざされた。

それはどうでもいいか。

転移すればいいだけだし。

 

相席した相手は暗部組織『アイテム』だった。

そして金髪のこと言えば、フレンダ=セイヴェルンしかいないだろう。

アレイスターから送られてきたメンバーのリストに載っていたしな。

 

俺がこんなことを考えている間にも美琴とフレンダは何か話していた。

 

 

「足下見てみなさいよ」

 

 

フレンダが言い、俺と美琴が舌を向く。

それと同時に天井が少しだけ爆破され、人形が落ちてきた。

これが爆弾か……

 

 

「退路は断たれ!!身を守る盾も無し!!この窮地、凌げるものなら凌いでみなさい!!」

 

 

同時に導火線に着火された。

だがただそれだけだ。

 

美琴が行動を起こそうとするがそれを手で制す。

 

 

「―――バルムンク」

 

 

爆破された瞬間にバルムンク突きだす。

もちろんフレンダを延長線上に入れないようにしてだ。

バルムンクから放たれた竜巻状の破壊の渦が爆風ごと空間を削っていった。

フレンダはもちろん、美琴も身を見開いて驚いていた。

ちなみに突き出した延長線上は何も残っていなかった。

外が見えるようになり、なおかつ換気もできたからちょうど良かっただろう。

 

フレンダの方を見ると、床にへたり込んでそして床が濡れて―――

ま、まさか……聖域を展開してしまったのか!?

聖水に満たされし領域、すなわち聖域。

分かる人にはわかるであろうこの言葉。

あまり深く考えないでおこう。

 

次のエリアに進もうとした時だった。

熱線が俺が開けた穴の方から発射された。

バルムンクを霧散させ、相棒を出現させる。

 

 

「―――赤龍帝の龍刀」

 

 

魔剣も凄まじいスペックだが、神滅具も負けていない。

いや、神滅具の方が上か?

まぁいいか。

 

刀を振るい、熱線を両断する。

美琴は俺の背後に隠しているので、両断した熱線が当たることはない。

しかしまぁ、美琴の消耗は尋常じゃないな。

肩で息をしているからな。

 

 

「あんまり静かだから。てっきりやられちゃったかと思ったけど危機一髪だったみたいね」

 

 

む、麦野でたぁぁぁ……

これはなかなかストレスの発散のしがいがあるやつが来てくれたもんだ。

 

 

「ん?アンタあの時の!!」

 

 

麦野が俺の顔を見て指さしながら叫んだ。

どうやらまだ覚えていたようだ。

なんかうれしいな。

 

 

「へぇ……侵入者ってのはアンタと―――その後ろにいる第三位かい?」

 

 

美琴のことも知っているようだ。

流石『アイテム』のリーダーだ。

ということは俺のことも知っていてもおかしくはないな。

俺がアレイスターに頼んだのは表の人間への正体発覚だけだもんな。

 

 

「そうだよ第四位。また会ったね、第四位」

「けっ、そういうアンタだっていい肩書きを持っているじゃない。なぁ―――第零位」

 

 

やはりバレていたようだ。

自分で調べたのかな?

それともアレイスターから知らされたのか?

どちらにせよ正体がバレたことには変わりないか。

能力に関してはアレイスターも知らないだろうから問題はない。

まぁここでバラして他の暗部組織への釘がさしてもいいな。

 

 

「ちょ、ちょっとアンタ第零位ってどういうことよ!!」

 

 

やはり反応してしまったか美琴ちゃんよ。

まぁここは自己紹介ついでにある程度能力(笑)に関しても教えちゃうか。

慢心からくるかもしれない。

後悔するかもしれないけどいい。

今が良ければそれでいい。

いや、いいわけないんだけどとりあえずはね。

 

 

「どういうことといわれても事実としか言いようがない。この学園都市最強は第一位の一方通行だ。そして第零位である俺はこの学園都市で無敵だ。第零位が表す意味は、無敵。ただそれだけだ」

「「「「「―――――ッ!?」」」」」

 

 

ここに居る俺以外の全員が息を呑んだのがわかった。

最強―――第一位にすら敵わないのだからしょうがない事か。

 

 

「情報は善意一〇〇パーセントでプレゼントしてやったんだ。ほら、さっさと殺り合おうぜ!!」

 

 

そう言いながら刀を振るう。

 

 

「デタラメすぎだろ!!」

 

 

麦野が叫びながら回避をする。

ただ斬撃を飛ばしただけなんだがな。

次いでさらに斬撃を五つほど飛ばす。

すると今度は避けずに熱線で防いだようだ。

こちらにも熱線が飛んできた。

美琴はまだ背後にいる。

 

よし、今度は身体能力だけで相手してみよう。

 

刀を霧散させ、手刀で熱線を引き裂く。

それを見た『アイテム』のメンツが目を見開く。

だがそんなことは気にしない。

 

 

「結。美琴、そこで大人しくしていてくれ。巻き込んだら悪いからな」

「え、え?ちょ、ちょっと―――」

 

 

美琴が結界をガンガン拳で叩いたり電撃を放って破ろうとしているが無視をする。その程度で破れるわけがない。

 

麦野の姿を補足する。

それと同時に駆け出す。

腕はだらりと脱力したままだ。

麦野まで残り五メートルのところでその勢いを殺さずに蹴りを放つ。

それは衝撃波となって床を深くえぐりながら麦野へ進んでいく。

麦野は横っ飛びでそれを避けるが、すでにその場には俺がいるぞ!!

 

 

「はい、俺の勝ちね」

「は、放せこの変態がぁぁぁ!!」

 

 

電子を身体から解放して俺に攻撃を加えてくる。

麦野を羽交い絞めにしていた俺はもちろんもろにそれを受ける。

勝った!!

そう思ったのか、麦野の口角がつりあがった。

 

 

「甘いぜ麦野。その程度じゃ俺には傷つけられない」

「なッ!?化物かテメェ!!」

「否定できねぇな……」

 

 

否定しようにもどう否定すればいいかわからない。

と、悩んでいるとうまく麦野に逃げだされてしまった。

そしていつの間にか『アイテム』のメンツが退避していったようだ。

 

行動が早いな……

まぁ気楽にいこうか。

ストレス発散もかねているんだからな。

 

 

「美琴、外に出る……ぞ……うぉぅ!?」

 

 

結界を解き、美琴がこちらに歩いてきたのだが……

一つ、問題があった。

 

 

「兄様……遅いと思って兄様の気配を追って転移して見ればなんですかこれは」

 

 

メルがいたのだ。

それも瞳のハイライトを亡くしてだ。

 

 

「あとこの者たちは一体なんですか?突然レーザーのようなものが飛んできたので少しやりすぎてしまいましたが……」

 

 

そういって差し出してきたのは、『アイテム』の面々だった。

全員そろって気絶している。

酸素か……酸素を薄くしたのか……

 

ふと美琴の方を見る。

美琴はガタガタと震えていた。

それもそのはずだ。

メルの殺気が美琴に注がれているのだから。

 

と、とりあえずは……

 

 

「全員家に連れて行こうか。それで、そいつらが目を覚ましたら詳しいことを話すよ」

「絶対……ですからね?」

 

 

カクン、と首を真横に倒しながらメルが言う。

怖いよ!!

どこのヤンデレだよおい!!

 

 

「美琴。そう言うわけだからうちまで来てもらえるか?」

「ひぃ!?あ、う、うん」

 

 

そこまで怯えなくても……

というよりもなんで俺に怯えているんだ?

俺は特に何かしたわけではないのだけれど……

 

 

 

 




詰め込み過ぎた感がありますがお許しを。
滅茶苦茶になっているところもあるかもしれないので、気づいたことがあったら書き込んでください。


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第Ⅱ話~状況確認~

俺達が拠点としているビルの四十階―――客間兼応接室に着いた。

転移したので一瞬だ。

ちなみに全員靴は脱がせている。

転移した場所が玄関だしね。

ビルの外から転移すると玄関に着き、部屋の中から転移してくると部屋の隅の魔法陣に着く。

なかなか便利な仕組みだろ?

 

とりあえず気絶している『アイテム』のメンバー四人はソファに転がしておく。

 

 

「美琴、シャワー浴びてこい。流石にその格好はね」

「う、うん……でも着替えはどうするのよ?」

「適当に創っておくからそれまでバスローブで我慢してくれ」

「りょーかい」

 

 

メルに美琴をシャワー室まで案内させる。

 

美琴がシャワーを浴びているうちに俺も部屋に戻ってシャワーを浴びる。

着換えてすぐに部屋に戻ると、『アイテム』の面々が目を覚ましたのか、キョロキョロと部屋を見回していた。

そして俺に気づいたのか、一気に警戒しだした。

 

 

「落ち着けよ。何かするんだったお前達が気絶しているうちにしているし」

「……それもそうだな」

 

 

麦野が反応し、全員の警戒が少しだけ弱まった。

 

 

「ここはどこなんだ?」

「ここは俺の部屋の一部だよ。客間兼応接間」

「部屋の一部……ってお前の拠点かよ!!」

 

 

今頃かよ。

案外麦野って抜けてるのな。

 

そしてこのタイミングで美琴とメルが部屋に戻ってきた。

 

 

「あいつ……私たちをやった奴だ!!」

 

 

フレンダがメルを指出しながら叫んだ。

そしてメルに殺気をぶつける麦野。

やめておけ。

返り討ちにあうだけだ。

ていうか、抵抗できなかったからここにいるんだろうが。

 

とりあえず全員をソファに座らせて、話し合いの体制をとった。

俺の方にはメルと美琴が。

対面に『アイテム』のメンバーが座っている。

 

話し合いは案外安全に進んだ。

美琴は電撃を放たないし、麦野は電子をまき散らさない。

その他の能力者も大人しくしていた。

原因はメルだろう。

話し合いが始まった瞬間、俺、美琴、『アイテム』の関係を瞳のハイライトを消しながら訊いてきた。

 

 

「それで?兄様との関係は?まさか……男と女の関係とは仰りませんよね?」

「わ、私は違うわよ!!ただ能力が気になっただけよ!!」

 

 

美琴はすぐにそう返した。

『アイテム』―――麦野は少し顔をひきつらせた。

だがすぐに、

 

 

「違うね。ファミレスで会ったことはあるけどその時は逃げられたし、それにさっきいた研究所でも敵同士だったしね」

「そう……ですか。それで兄様。ファミレスとはなんの話ですか?」

 

 

やっぱ余計なこと言いやがった!!

 

 

「あぁ……俺と当麻が初めてインデックスに出会ったときにな、ファミレスに行ったんだ。そのとき相席したんだよ。まぁ俺たちはすぐに出て行ったけど」

「それなら仕方がありませんね」

 

 

どうやら納得してくれたようだ。

よかった……

 

ここから本題に入った。

なぜ研究所にいたのかだ。

 

 

「俺が研究所にいた理由は妹達の実験を遅らせるのと、ストレス発散だ」

「アンタ妹達のこと知ってたのね……」

「まぁ学園都市の王だしね」

 

 

美琴は若干声を震わせながら言った。

自分の細胞からできたクローンだもんな。

まぁ自分のせいで死んだとか思っているんだろう。

 

 

「つか、ストレス発散で研究所潰すとかデタラメすぎだなお前」

「そう言うなよ麦野。最近我慢することが多くてたまってたんだから」

 

 

魔術師とか魔術師とか魔術師とかな。

あいつら自分の都合しか考えないから外で休んでいるときにも攻撃を仕掛けてくるんだ。

全員殺さずアレイスターのところに転移させているけど。

 

次に理由を言ったのは美琴だ。

 

 

「私は妹達の細胞提供者なのよ……償い―――までとは言わないけど、実験を止めたかったのよね。でも意味がなかったみたいね。研究所を潰しても次の研究所に実験は引き継がれちゃうし」

 

 

憂鬱そうな顔をしたままそう呟いた。

まぁ美琴も小さい時だったから騙されたのだろう。

最近になって細胞を獲られたとかだったらフォローのしようがないけど。

 

そして最後に『アイテム』だ。

 

 

「上からの命令でね。研究所への侵入者の撃退だよ」

 

 

この理由が一番普通だよな。

命令されたから。

単純でわかりやすくていい。

 

美琴は『アイテム』のメンバーに軽くだが謝っていた。

てっきり実験にかかわっていると思っていらしい。

なので攻撃したと。

勘違いと言うやつか。

 

話し合いはそこで終了した。

ただ、『アイテム』からお願いをされてしまった。

 

 

「うちらさ、固定されて拠点ってないんだよねー。いいとこ知らない?」

 

 

などと上目遣いで言われてしまった。

フレンダってさ、可愛いよね。

可愛い子にねだられたんだぞ?

断る理由はない!!

 

 

「うちにくるか?」

「いいの!?」

「嫌じゃなかったらな。まぁある程度ルールに―――ってかうちの暗部に入ってもらうけど」

 

 

そう返した瞬間、『アイテム』の話し合いが開始された。

しばらく時間がかかりそうなので、美琴に話しかける。

 

 

「お前今夜どうするんだ?寮に帰るにしても時間がまずくないか?」

「う……そうなのよね……せめて黒子がいてくれたらよかったんだけど」

「良かったら転移させてやるけど?」

「いいの!?」

 

 

結局美琴は転移させて寮に帰らせた。

まぁ寮監に関してはどうにか自分で言いくるめてもらうしかないな。

俺は寮まで転移させるまでが仕事だし。

 

そしてさっきからメルの視線がいたい。

多分『アイテム』のメンバー居住の件だろう。

仕方ないだろうに。

可愛い子におねだりされちゃったんだから。

まぁフレンダだったからってのもあるな。

麦野は駄目だ。

年増すぎる。

 

と、話し合いが終わったらしく『アイテム』のメンバーがこちらを向いていた。

 

 

「私たち『アイテム』はあんたについていくことにするよ。学園都市の王が率いる組織を衝突なんてしたくないからね。確実に殺されちまう」

 

 

懸命な判断だな。

これから暗部抗争が起きたとしたら絶対に『アブソリュート』がかつ。

例え学園都市のレベル5全員が相手でもだ。

いや、全世界が相手でも勝てる。

 

『アイテム』全四名―――麦野沈利、絹旗最愛、フレンダ=セイヴェルン、滝壺理后が『アブソリュート』に加入することが決まった。

これで『アブソリュート』の戦力はさらに上がった。

少し人数が増えてしまったような気がするがまぁいいだろう。

頂点に俺、次にメル、操祈、ドリーそして後に会うだろう御神。

最後に麦野、最愛、フレンダ、滝壺だ。

苗字と名前で分けて呼ぶのはイメージからだ。

麦野とか沈利と言われてもパッと頭に浮かばない。

名前で呼べと言われたら呼ぶけど。

 

部屋は全員四十八階だ。

操祈とドリーは常盤台の寮に入ってしまっているからいない。

まぁ転移魔法陣でいつでもこっちに来れるんだけど。

ダミーとなる分身を出現させる札も渡したし。

ちなみにメルは俺の部屋に住んでいる。

別にいまごろだろう?

『箱庭』でだって俺は大部屋だったし。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

翌日、メルには元『アイテム』四人の調教―――訓練を頼んだ。

もちろん《念》のだ。

『アブソリュート』に加入してもらうんだ、《念》くらいは覚えてもらわねば。

グリードアイランドもまた使えるね。

 

そして俺は何をしているかというと、

 

 

「あり?美琴じゃん。どうした?こんなところで」

 

 

散歩をしていたら美琴を発見しました。

今日は比較的に熱くなかったので、学園都市中に魔法陣を仕掛けていたんだ。

それが美琴に会うだなんてな……

 

 

「あぁ……アンタか。昨日はありがとね。ギリギリ寮監にバレなかったわ」

「それは何よりで」

「それで何よ。何かよう?」

「いや、こっちが聞いてんだけどね」

 

 

こっちが質問したのに質問で返されちまったよ。

頭のいい美琴らしくないね。

どんだけ思い悩んでるんだか。

 

 

「まぁいいや。俺は散歩だな。ほら、あの飛行船にも表示されているみたいに晴れだからね」

 

 

そう返すと、美琴の目が鋭くなった。

そして強い口調で言った。

 

 

「私、あの飛行船って嫌いなのよね」

「またどうしてだ?」

「機械が決めた政策に、人間が従ってるからよ」

「『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』のことか?」

 

 

そう言いかえすと、黙って美琴はうなずいだ。

 

 

「『樹形図の設計者』なら数ヶ月前にすでに破壊されているぞ」

「はぁ!?ちょ、な、何よそれ!!詳しく教えなさい!!」

 

 

美琴が俺の胸ぐらをつかみながら怒鳴ってきた。

 

 

「数ヶ月前、学園都市から放たれた謎の光線によって破壊された―――表向きわね」

「表向き?どういうこと?」

「本当は本当は少女によって壊されたのさ。理由は偶然としか言いようがない」

「……まるでその場にいたような口調ね」

「そうだけど?その場にいたし、ついでにその『樹形図の設計者』を破壊した一撃もくらっている」

 

 

美琴は目を見開いた。

確かに『樹形図の設計者』を破壊した一撃をくらってここにいるんだもんな。

普通ならあり得ないだろう。

まぁ一方通行ならあり得るかもしれないな。

演算が完了すればの話だけど。

 

 

「『樹形図の設計者』が破壊されたとしても、何で実験が続いているの?」

「それはな、すでに計算が終わっているからだ。まぁ絶対能力進化計画はどのみち失敗すんだよね」

「なら何でこんな実験を続けてるのよ!?」

「研究者は実験が成功すると思っているからだ。もともとこの絶対能力進化計画は学園都市統括理事長のアレイスター=クロウリーが提案したものだ。アレイスターは計画が実行されてそれが失敗するまでを計画としている。ちなみに『樹形図の設計者』が破壊されたのは計算のうちではないだろうが、良いか悪いかで言ったら良かったんだろうな。なんせ再計算されなくて済むんだから」

 

 

一応簡単に俺の考えを説明してみた。

多少変な解釈が混じっているだろうが、根本的な部分は合っているだろう。

 

美琴はこのことを聞いて一度キレたが、すぐに冷静になった。

学園都市統括理事長が相手だとさすがの第三位でもつらいことがわかったんだろう。

結局美琴との会話はここで途切れてしまった。

美琴が視認できなくなったのを確認してから俺は歩み出した。

 

だがすぐに問題が発生した。

まぁ今までの問題からしてみるとそこまでの問題ではなかった。

 

 

「妹達の一人か……?しかも黒猫に餌あげてるとか……」

 

 

思わず呟いてしまった。

ちなみに妹達と見分けられた理由は、地面にゴーグルが転がっていたからだ。

さて、声でもかけてみますかね。

 




妹達と出会いました。
さて、刃くんはこの妹さんをどうするのでしょうか?
殺させるのか、それを防ぐのか、それとも―――


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