仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 劇場版編 (風人Ⅱ)
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劇場版小説/仮面ライダーディケイド&クロノス 過去と未来の激闘

 

とある平行世界の謎の建造内・玉座の間……

 

 

零達一行が順調にライダーの世界を巡って滅びの現象を阻止し続けてるその頃。とある平行世界の謎の建造物内の王座の間では、一人の男と異形が向き合い対談する姿があった。

 

 

終夜「――成る程……それが貴様の意見か」

 

 

零の持つ破壊の因子と彼の娘であるヴィヴィオを狙い暗躍する組織のNo.1、玉座に座る男……闇無 終夜は目の前に立つ深紅の異形の意見を聞き、何かを納得し目を細めた。

 

 

終夜「確かに、我々にとってあの神共は邪魔な存在……しかし、元大ショッカーの残党である貴様が我らに力を貸すとは……何を企んでいる?」

 

 

『決まっている。私はかつて、我らの組織の大首領であったオリジナルディケイド……門矢 士の手により潰された。あの忌々しい破壊者の手により、私自身も殺された……だが、我らのよく知る鳴滝とよく似た存在によって再び蘇る事が出来た!私の目的は一つ……全てのライダーを抹殺することだ!』

 

 

訝しげな終夜からの問いに、深紅の怪人……嘗て正史世界のディケイドによって倒されたアポロガイストは内なる憎悪の炎を燃やし、握り拳を掲げ力強く叫んだ。

 

 

終夜「ほう……で、我らに何のメリットがある?」

 

 

『鳴滝の情報では、黒月零……外史世界のディケイドは断罪の神の過去の世界、クロノスの世界に行くように仕向けたそうだ』

 

 

終夜「?零の世界の行き先を指定できるのか?」

 

 

『キバーラとか言う蝙蝠を上手く使ったそうだ』

 

 

終夜「……ふむ」

 

 

自分達組織の目的は、零の因子とその娘のヴィヴィオだ。利害は確かに、自分達へのメリットはある。

 

 

終夜「……良いだろう……裕司?」

 

 

アポロガイストと手を組む事を承諾し、終夜が暗闇に向けて名を呼ぶと、暗闇の向こうから裕司が姿を現し玉座の隣に立った。

 

 

裕司「如何しましたか?」

 

 

終夜「真也に伝えろ……アポロガイストと共に【人間時代の天満幸助を抹殺し、時と断罪の因子を手に入れろ】とな……今までの失態をココで取り戻せとも伝えておけ」

 

 

裕司「御意」

 

 

終夜からの指示に一礼してそう応えると、祐司はゆっくりと闇に溶け込むように消え玉座の間から出て行き、終夜はそれを見届けた後にアポロガイストの背後に目を向けて軽く嘆息した。

 

 

終夜「……ところで、一つ聞こう、アポロガイストよ」

 

 

『何だ?』

 

 

終夜「さっきから貴様の後ろで、我らの食糧を淡々と食い続けている男は誰だ?いい加減食うのを止めさせろ……食糧は無限ではないんだぞ」

 

 

『……それはすまないな。彼は【ガオウ】、私の同士でもあり、最強のライダーだ』

 

 

 

何処か呆れるような視線を向ける終夜に一言謝りアポロガイストが背後へと振り返ると、其処にはむしゃむしゃとありったけの食糧を喰らう男……かつて、神の電車と路線を操り、時間を消そうとし電王達によって倒され時間に消えたハズのガオウの姿があった。

 

 

 

ガオウ「むしゃむしゃ……美味いな、この飯」

 

 

 

……話を全く聞いていないが。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―パンデモニウム・訓練室―

 

 

そしてその一方、断罪の神を始めとした神々が住まうパンデモニウムの訓練室では、二人の青年が模擬戦を繰り広げる光景があった。

 

 

幸助「遅い!!もっと周りを見ろ大輝!!相手の動きを何十通りと予測し、誘導しろ!!」

 

 

大輝「グッ!はい!!」

 

 

断罪の神としてあらゆる世界から恐れられている天満幸助と、その弟子海道大輝。今回は珍しく幸助に弄られず真面目に修行を受けていた大輝だが、次第に幸助に押され始め、最終的には首に手刀を当てられ今回の模擬戦は終了したのだった。

 

 

 

 

 

 

大輝「ふぅ……背中は遠いなぁ」

 

 

幸助「当たり前だ。年季が違う」

 

 

休憩に入り、汗だく塗れの大輝は首にタオルを掛けてスポーツドリンクを飲み、一息ついていた。……幸助は全く疲れていないので汗一つ出していなかったが。

 

 

そして、そんな大輝の隣で先程模擬戦で使用した愛剣を磨いていた幸助は綺麗に磨かれた刀身を眺めると、剣を鞘に納めて次の修行を何にするか考えようとした。その時……

 

 

―シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ……―

 

 

幸助「ん……?なんだ?」

 

 

大輝「……えっ?幸助さん!?」

 

 

幸助が地面から腰を上げ様としたその時、突然幸助の身体から無数の粒子が立ち上り始めたのだ。それを目にした大輝も思わず疲れを忘れて立ち上がり、幸助の全身から立ち上る粒子を見て目を見開いた。

 

 

大輝「ちょ!?何ですかそれ!?」

 

 

幸助「……ああ、大体理解した。誰か知らんが、俺の過去を変えたようだな」

 

 

大輝「って、何であわててないんですか!?」

 

 

そう、一大事の筈なのに、全く慌ててなく、寧ろ落ち着いてすらいる幸助にツッコミを入れてしまう大輝。

 

 

幸助「んにゃ、いずれこうなるとは分かっていたしな……まさか今頃とは」

 

 

大輝「いや、分かるように説明して下さいよ……」

 

 

余りに冷静な調子で返され、大輝も落ち着きを取り戻して状況の説明を求めるが……

 

 

幸助「すまん、話している時間はないようだ」

 

 

そう言う様に幸助の粒子化のスピードが徐々に上がり始め、その姿もだんだんと透明になって見えなくなってきていた。

 

 

大輝「幸助さんっ?!」

 

 

幸助「大輝!零の写真館に向かえ!!そこから過去の――クロノスの世界に行け!!敵は恐らく、力がまだ未熟だった時代の俺を狙う筈だ!!」

 

 

その言葉を最後に、幸助の身体は無数の粒子となって宙に拡散し消えてしまった。

 

 

 

否、幸助だけではなかった。

 

 

 

大輝は確認しなかったが、シズクやなのは、レイにナナに雷に刹那も既に消滅していたのだ。

 

 

 

そして、幸助に助けられた並行世界の人物にも影響は出始めていた。

 

 

 

幸助の消滅

 

 

 

それは、彼と関わった世界の消滅に繋がる出来事でもあったのだ。

 

 

 

大輝「不味いな……幸助さんが消えれば、過去にあの人に助けられた人達は……いや、それは俺や零にも影響することだ……時間が無いっ!」

 

 

 

先程まで幸助が立っていた場所を見つめ、これまでにない危機を感じた大輝は、急いでその場から駆け出し光写真館に向かっていった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―光写真館―

 

 

そして、パンデモニウムでそんな大事件が起きているとも露知らず、Wの世界を後にした零達一行は次に現れた背景ロールの絵を見て揃って首を傾げていた。

 

 

はやて「今度の世界……何やろコレ?宇宙の真ん中に、消え掛かってる時計?」

 

 

零「……クロノスの世界か」

 

 

なのは「え?クロノスって、幸助さん達の世界って事?」

 

 

背景ロールの絵を見て次はどんなライダーの世界かとなのは達が考えていた中、鋭い目付きでクロノス……幸助達の世界であることを呟いた零に一同の視線が集まる。だが……

 

 

スバル「あれ?でも待って、何でまたクロノスなの?私達は前にクロノスの世界に行って修行したりしたし、確か幸助さんが一回死んで断罪の神(メモリー)になったから、もうクロノスじゃなくなったハズでしょ?」

 

 

ティアナ「そうよね……あの時はもうホント、なのはさんたちの訓練の方がマシだって思えるくらいヒドイ修行をさせられたし、もう関わる事もないって思ってたのに……」

 

 

ノーヴェ「ま、まさかっ、またあんな地獄みてぇな修行を受けさせられたりとかするんじゃねぇだろうなぁ……」

 

 

前回訪れたクロノスの世界で幸助達に受けさせられた地獄のような特訓を思い出したのか、スバルにティアナ、ヴィータやナンバーズは顔を青ざめあからさまにテンションダウンして落ち込んでいき、その特訓を受けていないメンバーは頭上に疑問符を浮かべて不思議そうに彼女達を見ていくが、それを否定するように零が首を振って口を振った。

 

 

零「いや、どうやら今回は前回とは少し違うようだ。ほら、見てみろ」

 

 

なのは「え…?」

 

 

そう告げて零が指差したのは、自分が座るテーブルの上に置かれた一枚の新聞紙。それを見た一同は怪訝な顔を浮かべながらテーブルの周りへと集まると、フェイトが新聞紙を手に取って記事を読み上げていく。

 

 

フェイト「えっと……【時渡り町の都内某所にて怪人再び、仮面の戦士達は正義の味方か?】これって……」

 

 

なのは「この写真に写ってるのって、クロノスだよね?ちょっとピンぼけしててわかりにくいけど」

 

 

零「それだけじゃない、その新聞に書いてあるだろ?此処は時渡り町……前回はミッドチルダに跳ばされたのに今回は全く別の町で、しかも町の人間にクロノス達の事がまだ知れ渡っていない。つまり――」

 

 

ヴィータ「……!まさか、幸助達の過去の世界だってのか?!此処が?!」

 

 

零が言わんとしている事が伝わったのか、背景ロールの方に振り返って驚愕の声を上げるヴィータ。それを聞いたなのは達もこの世界があの幸助達の過去の世界と知って驚愕していくが、零は何処か複雑げな表情で頭を掻いていた。

 

 

零「まぁ、雷達の件もあるから有り得ない話ではないだろうが、アイツ等の人間時代の世界ってのはな……未来であんなチートになる経緯を見る事になるんじゃないかと恐ろしくも思うが……」

 

 

姫「そうか?私は毟ろ興味があるぞ?あの断罪の神達の人間時代というのも滅多に見られないだろうしな。なあ、ウオミー?」

 

 

「そうですね。彼等がどんな人間時代を過ごしていたかは、彼の七柱神ぐらいしか知り得ないですし。私も非常に興味が沸きます」

 

 

余り乗り気ではない様子の零とは対称に同じ神として有名な幸助達の人間時代が気になるのか、姫と彼女の友神である水ノ神……市杵宍姫ノ命(いつきししひめのみこと・戸籍上は宍戸 魚見)は好奇に満ちた目を浮かべ、そんな彼女を横目に映紀が零へと近付き口を開いた。

 

 

映紀「ま、この世界がなんであれ取りあえず外に出てみるしかねぇだろ。此処でウダウダ言っていても仕方ねえんだし」

 

 

零「ああ、分かってる。何だか嫌な予感もしなくもないが、とにかく外に出てみるか……」

 

 

映紀にも促され、とにかく外に出て此処がどんな世界か自分の目で確かめようと、零は椅子から立ち上がりなのは達と共に外に出ていった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

そして……

 

 

零「――んで、最早恒例の衣更えな訳だが……」

 

 

なのは「にゃはは……また学生服、みたいだね……」

 

 

写真館の外に出れば、例に洩れず零となのはの服装が変化していた。今回は以前にもあった何処かの学校の学生服のようだが、やはり実年齢からして少々無理があるように見える。特に、なのはなんかは出てる所が出っ張っており、それに気付いた零はジト目でなのはの胸の辺りを見つめながら口を開いた。

 

 

零「なのは、お前……また増えたんじゃないのかっ?」

 

 

なのは「え?…う、嘘っ!そんな筈ないよっ!だって最近はちゃんと調整したりして気をつけたりしてるんだからっ?!」

 

 

零「あ?……ああ、いやそっちじゃなくて、その無駄にデカイち―ドグオォッ!―ゴハァッ?!」

 

 

アリサ「余計なことを口にせんでいいっ!」

 

 

どうやら体重のことを指摘されたと思い込んで激しく動揺するなのはに訂正して何かを言おうとする零だが、それを阻むようにアリサの肘が横っ腹に打ち込まれその場に蹲まってしまい、他の一同はそんな三人を無視して外の町並みを興味深そうに見回していく。

 

 

セッテ「此処……ほんとにミッドチルダではないようですね」

 

 

セイン「時渡り町、だっけ?此処が幸助さん達が人間時代に住んでた町なのかね?」

 

 

ディード「さあ……ですが、この時代の幸助さん達がまだ人間だとも限らない気がしますけど。もう人間を辞めているか、或いは神として目覚めてる可能性もありますし」

 

 

オットー「後者はともかく、前者は普通にありそうで怖いけどね……」

 

 

未来であんな理不尽窮まりない存在になってるぐらいなのだから、この頃から既に人間を辞めてたとしても何ら不思議でもないような気がする。そんな事を考えながらセッテ達が苦笑いを浮かべてると、零がアリサに殴られた横っ腹を抑えながらユラリと立ち上がった。

 

 

零「うぐぅ……まぁ、何れにしろこの世界の幸助達に会わないと何も始まらないしな……取りあえず、この制服の学校に行ってみるしかないだろうっ」

 

 

なのは「うん、えっと……あっ、あったあった」

 

 

零の提案に頷きながら自分の制服のポケットを漁って調べると、胸ポケットから生徒手帳らしき物を見付け、なのはは中身を開き手帳の中を一同にも見えるように見せていく。其処には……

 

 

優矢「……TIME学園?」

 

 

すずか「この学園に通う事が、この世界での零君となのはちゃんの役目ってこと?」

 

 

なのは「うん、多分。でも前回が前回だったし、どうせ今回もそんな大した事件なんて起きないと思うよ?」

 

 

零「甘いな。前回があんなだったからこそ余計に油断出来ないんだろ?もしかしたら、実はその学園自体が既に幸助達に支配されていて、またあんな地獄のような特訓を無理矢理受けさせられたりとか……」

 

 

なのは「そ、そうとは限らないでしょっ。だってほら、カードだってあるんだし、もう修行させられる必要は……えっ?」

 

 

最悪のビジョンを想像する零に苦笑いを向けながら、彼を安心させようと事前にKウォッチで出しておいた自分のライドブッカーからジェネシックと冥王の二枚を取り出すが、なのはは二枚のカードを目にした途端何故か突然固まってしまう。

 

 

零「……?なのは?」

 

 

なのは「……え……嘘っ、何で……?」

 

 

突然様子が変わったなのはが気になり問い返してみるが、なのはは信じられないものを見るかのように二枚のカードを見比べ何も答えない。そんななのはの様子から何かあったのかと余計に気になり、一同はなのはの下に集まって彼女が持つカードを覗き込んでいく。其処には……

 

 

優矢「――っ!え、なんだこれ?」

 

 

アズサ「カードの能力が、消えてる……?」

 

 

そう、魔界城の世界や前回クロノスの世界を巡った際に手に入れたジェネシックと冥王のカードの絵柄がシルエットだけになり、二枚のカードに宿っていた能力が何故かいつの間にか消滅してしまっていたのである。能力が消えてシルエットのみとなった二枚のカードを見てなのは達も動揺を隠せない中、その様子を見ていた零も険しげに眉を寄せながら懐からライドブッカーを取り出してクロノスのカードを確認すると、クロノスのカードも同じように絵柄が消えシルエットだけとなっていた。

 

 

零「クロノスのカードも、力が消えてる……?」

 

 

なのは「ど、どうしてっ?だって、今まではちゃんと使えてた筈なのに……」

 

 

零「……単純に此処が過去の世界だからとかじゃないか?ま、何にせよこの世界での役目を果たせばカードだって力を取り戻すだろう。多分」

 

 

カードが力を失った原因を適当にそう考えながらクロノスのカードを仕舞うと、零は地面に置かれた学校の鞄を掴んで背中に背負いながらなのはを置いてとっとと歩き出した。

 

 

零「とにかく、今はそのTIME学園とやらに行ってみるしかないだろ。急ぐぞ」

 

 

なのは「え、ちょ、ちょっと待ってっ?!」

 

 

せっせと歩き出す零を見て地面に置かれた鞄を掴み、慌てて零の後を追い掛けるなのは。そんな二人の後ろ姿を見送りながら優矢達も苦笑いを浮かべてしまうが、この時誰も気が付いてなかった。

 

 

 

 

彼等の知らないところで、世界の命運をかけた死闘が始まろうとしていると言うことに……

 

 

 

 

過去と未来を掛けた決戦の幕が開き始めた……

 

 



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劇場版小説/仮面ライダーディケイド&クロノス 過去と未来の激闘①

 

 

―TIME学園―

 

 

「ったく……何とか終わったな」

 

 

「うん……本当にね」

 

 

「にゃはは……本当にゴメン」

 

 

9月1日の朝。夏休み明けの生徒達が久々の学園に登校する中、生徒達に混じって校舎内の廊下を眠たげに欠伸しながら歩く三人の男女の姿があった。

 

 

彼等の名は、天満 幸助、中島 スバル、不破 なのは……。

 

 

零達も良く知る断罪の神、破壊の神、究極と狂気の神の人間時代の彼等である。

 

 

昨日はなのは(不破)が溜め込んでいた夏休みの宿題を徹夜で手伝った為にかなり寝不足になっていたが、何とか宿題を終わらせられた三人は欠伸を何度か繰り返しながら自分達の教室に入り、三人がそれぞれの席に座ると、ちょうど良く授業の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。

 

 

「ほら、席に座れー」

 

 

チャイムが鳴ると共に幸助達の担任の教師が教室へと入って教壇に立っていき、教室で騒いでいた生徒達もそれぞれの席に着いていく。そして席に着いた生徒達を見回すと、担任の教師は軽く咳ばらいをし話を切り出した。

 

 

「えー、おはよう諸君。早速で悪いんだが……うちのクラスに転校生だ。黒月!高町!入って来い」

 

 

教師が教室の扉に向かって呼ぶと、ガラッと音を立てながら扉が開かれ、二人の男女が教室に入ってきた。そして、クラス全員が教室に入ってきた二人の男女……というか、片方の女を見て驚愕した。何故なら……

 

 

幸助「何ィ!?」

 

 

スバル(中島)「嘘ォ!?」

 

 

なのは(不破)「へ?……私?」

 

 

そう、教室に現れた転校生の一人が、なのは(不破)と外見が瓜二つだったからだ。そして生徒達の間でざわめきが広がる中、教壇の上に立った二人の転校生……零となのはは自己紹介をし始めた。

 

 

零「黒月零だ。よろしく」

 

 

なのは「高町なのはです。よろしく♪」

 

 

零は若干無愛想に必要最低限の挨拶を、それとは対称になのはは人当たりの良い笑顔を浮かべながら生徒達に向けて自己紹介するが、生徒達からの反応は……

 

 

「なん……だと!?」

 

 

「鬼神が……冥王様が二人だと!?」

 

 

「こ……この世の終わりだぁぁぁあああああ!!」

 

 

……生徒達から返ってきたのは、幸助と並んで学園で悪名高い不破なのはがもう一人現れたと絶望し、頭を抱えながら恐怖で泣き叫び絶望する光景だった。

 

 

零「……大体分かった」

 

 

なのは「うん……これは酷いね……」

 

 

そんな光景を目の当たりにした当の本人達はなんとも言えぬ顔を浮かべ、此処に来るまでに見たなのはに対する生徒達の反応や噂などを思い出し、思わず苦笑いを浮かべてしまうのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―市街地―

 

 

零となのはがTIME学園で授業を受けているその一方、二人と別れた優矢達もこの世界の情報収集の為に別行動を取り、チームを別けて街中を散策していた。

 

 

優矢「――タイムオーガ、か……それがこの世界での怪人の名前なんだよな?」

 

 

アズサ「うん……私の中にある記録だと、断罪の神が時の神だった時代に各世界のライダー達を呼び寄せ、タイムオーガを生み出していた元凶を倒した事で全部消滅したらしいの……その時に、零となのはも戦いに参加してたんだって」

 

 

姫「時喰らいの鬼なぁ……私やウオミーが神格に至った時には既に封印された後だったし、今度は私が封印されている間にいつの間にか消えてしまっていたらしいから一度も見る事が出来なかったが、実際どんな感じなんだ?その時喰らいの鬼とは」

 

 

アズサ「ん……実際の姿は他の怪人みたいに色々あるけど、一番多いのは、ゴキカブリを素体にしたタイムオーガみたい……」

 

 

姫「……ああ、つまり雷の世界のローチと同じという訳か……」

 

 

優矢「?……なぁ、ゴキカブリってなに?」

 

 

魚見「今で言う、ゴキブリの昔の呼び名ですよ。昔は『茶碗をかじる』ことから、明治時代までゴキカブリっていう名で呼ばれてたんですが、文献の誤りが原因で今の『ゴキブリ』という名前で呼ばれるようになったそうです」

 

 

優矢「へぇ、そうなのかぁ」

 

 

シロ『ニャ~』

 

 

映紀「……お前らなぁ、人が食ってる時にゴキブリの話なんか持ち出すんじゃねえよ!折角の野菜がまずくなんだろ!」

 

 

優矢「いや……それ以前に野菜を食いながら歩きなさんなよ……」

 

 

映紀「馬鹿、栄次郎の爺さんが丹精込めて作って今朝採った野菜だぞ?!新鮮な内に食わなきゃもったいねえだろ!」

 

 

姫「だからと言って、歩きながら食べるのはさすがに行儀が悪すぎるぞ?子供が見て真似したらどうする気なのだ」

 

 

町を散策しながらワイワイ騒ぐ一団……フェイト達とは別行動で情報収集を行う優矢、映紀、アズサ、シロ、姫、魚見の五人と一匹。

 

 

中身はともかく外見はイケメンと美少女の集団という余りにも目立つ風貌をしている為に、すれ違う人達が好奇の目を向けて振り返るのだが、優矢達はそれに気付かずにタイムオーガの話やトマトなどの野菜を食べながら歩く映紀を注意したりしながら先を進んでいた。そんな時だった……

 

 

 

 

 

―ブオォォォォォォォォォォォォォオンッ……!―

 

 

優矢「……っ?!えっ?!」

 

 

アズサ「!これは……!」

 

 

町を歩いてた中、突然優矢、映紀、アズサ、姫、魚見の四人の周りに歪みが生じたのであった。それを見た優矢達はいきなり発生した歪みに驚いて辺りを見回し、なにが起きているのか分からず戸惑ってしまう。

 

 

魚見「これは、まさか滅びの現象……?!」

 

 

姫「まずい……!皆!引き返すんだ!急げ!」

 

 

―ドォンッ!ドォンッ!―

 

 

映紀「クソッ…!ダメだ!びくともしねぇぞ!」

 

 

急いでこの場を離れようと映紀が歪みに全力で体当たりして脱出を試みるがビクともせず、その間にも歪みの壁は徐々に濃くなっていき、そして……何事もなかったかのように優矢達ごと何処かへと消えてしまったのであった。

 

 

 

 

 

 

鳴滝「――申し訳ないが、この世界では君達の存在は少々邪魔になる。時が来るまで大人しくしていたまえ。この世界のクロノスが、ディケイドを倒すまで……」

 

 

 

 

 

 

歪みと共に優矢達が消えた場所を見つめながら、路地裏からゆっくりと姿を露わにした男……鳴滝は不敵な笑みを浮かべてそう呟き、踵を翻して何処かへと歩き出していくのだった。

 

 



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劇場版小説/仮面ライダーディケイド&クロノス 過去と未来の激闘②

 

 

―TIME学園・保健室―

 

 

零「――ほら、終わった…ぞっ!」

 

 

―ペチィッ!―

 

 

なのは「イタっ?!うぅ……も、もうちょっと丁寧に扱ってよっ……」

 

 

零「知らん。全く、なんで何もない教壇の前でいきなりスッコロンだりするか、お前は……」

 

 

TIME学園の保健室。午前中の授業がまだ続いてる中、其処では零が授業中にドジをして怪我をしたなのはの赤くなった額にシップを貼って軽く平手で叩き、痛みで涙目になりながらジト目で睨むなのはの視線を受け流し救急箱を片付ける姿があった。

 

 

なのは「だ、だってほら、高校の授業ってどんな感じなのかなぁって思ってたら、以外と結構知ってる問題ばっかりだったから……」

 

 

零「……で、調子に乗って自分から当てに行きまくってたら、何もないところでいきなり転んだと?」

 

 

なのは「うっ……はい……」

 

 

呆れるような視線を向けて来る零から逃げるように、シップを貼った額を押さえながら気まずげに顔を逸らすなのは。そんななのはの反応に溜め息を吐くと、零は救急箱を元のあった場所に戻していく。

 

 

零「まあ、お前のおっちょこちょいは今に始まった話じゃないしな……それより今は、幸助達の事だろ」

 

 

なのは「あ、うん。授業中にも気になって何度か顔を見たけど、見た感じは……うん、昔からあんな感じだったんだなーって思ったねっ」

 

 

零「今に比べたら、幾分かマシなように見えるが……ただならぬ気配が滲み出ている辺り、やっぱり普通の高校生じゃなかったみたいだな」

 

 

なのは「冥王と同じ顔してるってだけで、生徒に話しかけただけで怯えられるし……アレはアレでショックだったなぁ……」

 

 

生徒達の反応がそんな感じなのだから、多分学校でもそれだけの事を色々とやらかしたりしてるのだろう。授業の合間に幸助達の顔を何度か盗み見たりしたが、あの三人から猛者のような恐ろしい気配が漂っていたのは一目瞭然だったしと、零はやれやれといった感じに頭を振りながらなのはの下に戻っていく。

 

 

零「まあ何にせよ、この世界のライダーが誰なのかはハッキリしてるんだ。授業が終わったら、早速アイツ等に会ってみるか」

 

 

なのは「だね。えっと……確か今日は始業式で授業も午前中しかないから、次の授業で終わりなんだっけ?」

 

 

零「そのハズだな、今日が始業式で助かったぞ。またファイズの世界の時みたいに長々と授業を受けさせられるんじゃないかと面倒に思ったし」

 

 

なのは「そう?私は結構楽しみにしてたんだけどなぁ……」

 

 

高校に行けるだなんて思いもしなかったしと、なのはとそんな何気にない会話を交わしながら保健室を後にして教室に戻ろうとする零。そんな時……

 

 

 

 

 

 

 

「――幸助……」

 

 

 

 

 

 

 

零(……?あれは……)

 

 

教室に戻ろうと長い廊下を歩いていた中、零の視界の端に人影……窓の外の校庭の真ん中に佇む一人の少女の姿が目に映ったのである。黒い髪に黒い瞳……それだけなら何でもないただの日本人の女性としか思わなかっただろうが、そうではない。その女性の顔は何故か、零が良く知る幸助の顔と瓜二つだったのだ。

 

 

零(幸、助……?いや……幸助と同じ顔をした女……?)

 

 

なのは「……?零君?どうしたのー!」

 

 

 

零「っ!は?あ、いや……」

 

 

目を剥いて幸助と同じ全く顔をした女性を呆然と見ていた中、廊下の向こうからなのはに呼ばれ正気に戻り、もう一度校庭の方に振り返ると、其処には最初から何もなかったように女性の姿が消え去っていた。

 

 

零(いない?……俺の気のせいだったのか……?)

 

 

念のために消えた女性の姿を探して校庭を見回すが、やはり女性の姿は何処にも見当たらない。やはり自分の気のせいだったのか?と若干腑に落ちないように首を傾げると、なのはの下に向かって再び歩みを進めていくのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―時渡り町・某喫茶店―

 

 

幸助「――にしても驚いたな……なのはと瓜二つとは」

 

 

スバル(中島)「うんうん!名字は違うけど、名前も同じだったね」

 

 

なのは(不破)「あそこまで似てると逆に気持ち悪いの……」

 

 

始業式の為、午前中の授業で下校した三人。下校途中に寄った喫茶店で幸助達が話題にしていたのは、今回の転校生……零となのはのことだった。

 

 

幸助「しかし……性格は間逆だな」

 

 

スバル(中島)「確かに……後、何も無い所で転んでる所とか」

 

 

なのは(不破)「私は運動神経【だけ】は悪くないの……」

 

 

そう言って幸助達の脳裏に過ぎるのは、黒板の問題に答えようとして教室の前でなのはが転ぶ光景。そんな彼女と違い運動神経"だけ"は悪くないと無い胸を張るなのは(不破)だが、なのはもそんな彼女とは対照的に理数が得意だった。それはもう天才的に。

 

 

なのは(不破)「うう……見た目が同じなのに~」

 

 

幸助「先生の質問に即答だからな……黒月もそうだが」

 

 

自分と同じ顔でありながら自分が分からない問題を当てまくるなのはの姿を思い出し、頬を膨らませて不満を口にするなのは(不滅)。そんな彼女を横目に幸助も零の顔を思い出すが、すぐに思考を切り替えて真剣な表情になった。

 

 

幸助「ま、んなことより、大事なことはあるだろ?」

 

 

幸助のその台詞で、なのは(不破)とスバル(中島)も表情を引き締め幸助と顔を見合わせた。

 

 

スバル(中島)「アルファちゃんの……ことだね」

 

 

幸助「ああ……既にタイムオーガはアイツの支配下から逃れ、街に放たれている……が、一向に姿を現さない」

 

 

なのは(不破)「前みたいな上級タイムオーガが現れて、組織を作ってる可能性があるの」

 

 

幸助「……だな」

 

 

三人の話題に出て来た名前……アルファという人物の行方について眉を潜めながら話し合い、三人は一旦話を切りアイスティーを飲んでいく。其処へ……

 

 

「――失礼……少し良いかな?」

 

 

アルファについて話し合っていた三人の席に、帽子と眼鏡が特徴のコートを身に纏った男が歩み寄り声を掛けた。

 

 

幸助「……何者だ?」

 

 

幸助はそれが普通の人間ではない事にすぐに気が付き警戒を込めて問い掛けると、コートを着た男……鳴滝は幸助達三人の顔を見回しながら言葉を紡いだ。

 

 

鳴滝「私は預言者、鳴滝……この世界はもうすぐ破壊者の手により破壊される」

 

 

なのは(不破)「破壊者?」

 

 

鳴滝「奴の名はディケイド……急げ、もう時間はない」

 

 

半信半疑で聞き返すなのは(不破)にそう言うと、鳴滝は背後から現れた歪みの壁に呑まれ何処かへと消えていった。そしてその場に残された幸助達はその光景に特に驚く事なく、真剣な顔で互いに顔を見合わせた。

 

 

スバル(中島)「……幸助、どう思う?」

 

 

幸助「胡散臭いな……だが、無視できる話でもない」

 

 

幸助にとっての敵は、大切な人を傷つける物。ディケイドがそうなのかどうかは分からないが、もし鳴滝の言う通りなら……

 

 

幸助「もしそうだったら、倒すだけだ」

 

 

力強い眼差しでそう答えながら拳を握り締め、ディケイドを倒す決意を口にした。その時だった……

 

 

 

 

 

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

『っ?!』

 

 

 

 

 

店の外から突然女の悲鳴が響き渡り、それを耳にした三人が驚愕しながら慌てて外を見ると、其処には店の向こうで5体の怪人が人々に襲い掛かる光景があった。

 

 

幸助「またゴキブリのタイムオーガか!?」

 

 

なのは(不破)「しぶといの……」

 

 

スバル(中島)「人類の敵、また出たね」

 

 

人々を襲う怪人達の正体を知ってうんざりとした様子で溜め息を漏らすが、それでも無視する訳には行かず、お金をテーブルの置いて嫌々店の外に出ていった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

『ゴキゴキゴキ……』

 

 

店を出た幸助達三人が現場に到着すると、其処には黒光りする気持ち悪いボディの怪人……ゴキブリを素体にしたGタイムオーガ達が、獲物を探してウロウロとさ迷う姿があり、その足元にはGタイムオーガに喰われた人間達の服だけが散乱していた。

 

 

幸助「くっ、避難が遅れた人は手遅れか……」

 

 

スバル(中島)「幸助!行こう!!」

 

 

幸助「……ああ、行くぞ!スバル!なのは!」

 

 

スバル(中島)「うん!」

 

 

なのは(不破)「なの!!」

 

 

救助が遅れて民間人を救えなかった悔しさを胸の内に宿しながら、幸助はスバルと共に腰にベルトを召喚し、なのは(不破)は何処からか取り出したベルトを腰に巻いてピンクのパスケースを出し、幸助とスバルも変身の構えを取る。そして……

 

 

『変身ッ!』

 

 

『GATE UP!』

 

『GATE UP!』

 

『Mei-O Form!』

 

 

三つの電子音声と共に三人の身体が淡い光に包まれていき、光が晴れて消え去ると、其処には全く別の姿の幸助達……嘗て時の神時代に幸助が変身していたクロノス、そしてスバル(中島)となのは(不破)が変身したジェネシックと冥王の姿があったのだった。

 

 

クロノス『さあ、纏めて弄り倒すぜ!』

 

 

ジェネシック『貴方達を破壊します!』

 

 

冥王『さぁ、恐怖の悲鳴と断末魔の殺戮オーケストラを奏でるの』

 

 

それぞれ決め台詞を決めたと同時に、三人は剣と拳と薙刀を構え五体のタイムオーガに向かって走り出していくのだった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

そして、Gタイムオーガ達とクロノス達が戦闘を開始したその影で、二人の男女……幸助達を追い掛けてきた零となのはが傍観する姿があり、零はGタイムオーガと戦うクロノス達の写真を撮影しながら三人の姿をカメラで追い掛けていた。

 

 

零「仮面ライダークロノスにジェネシック、冥王……やはり過去の世界でも変身するライダーは変わらずか」

 

 

なのは「うん……でもあのタイムオーガ、気持ち悪いね(汗)」

 

 

零「ゴキブリが素体だからだろ?雷のとこのローチよりまたリアルだから、生理的に受け付けないのは同感だな」

 

 

そんな軽口を叩きながらGタイムオーガや冥王、ジェネシック、クロノスの写真を何枚かカメラで撮影すると、零はカメラから手を離して制服の内ポケットからディケイドライバーを取り出し、それを見たなのはも同じ様にトランスドライバーを出した。

 

 

零「んじゃ、そろそろ行くとするか」

 

 

なのは「うん」

 

 

そう言って互いに顔を見合わせて頷き合うと、二人はそれぞれの腰にドライバーを装着し、左腰に出現したライドブッカーからカードを一枚ずつ取り出して変身の構えを取った。そして……

 

 

『変身ッ!』

 

 

『KAMENRIDE:DECADE!』

 

『KAMENRIDE:TRANS!』

 

 

電子音声が鳴り響くと共に零となのははディケイドとトランスに変身し、変身を完了すると同時に戦場に向かって駆け出していくのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

クロノス『ふっ!てりゃぁっ!!』

 

 

―キィンッ!キィイッ!ガキィインッ―!

 

 

一方場所は戻り、クロノスが振るうクロノスブレイドの剣技がGタイムオーガを斬り裂いていくが、装甲が高いためか中々ダメージを与えられなかった。

 

 

クロノス『ちっ、以前より装甲が上がってるのか……なら、力任せで行くか!来い、ノーム!!』

 

 

『オッケー!オイラの出番だな!』

 

 

『GNOME FORM!』

 

 

何処からかの声と共に電子音声が鳴り響き、クロノスの姿が黒から茶に変化していき、クロノスブレイドもノームフォーム専用武器のノームスコップに変化していった。そして……

 

 

クロノスG『はぁっ!!!』

 

 

―ガアァンッ!ガァンッ!バキャアァッ!!―

 

 

『ゴキィ!?』

 

 

クロノスはGタイムオーガに一瞬で接近してスコップを振り上げ、渾身を込めた一撃をGタイムオーガの頭に叩き込みその身体を地面に沈ませた。そして畳み掛けるかのようにクロノスは地に倒れたGタイムオーガを踏みつけ、そのまま上空に蹴り上げた。

 

 

クロノスG『タイムクラッシュ』

 

 

『TIME CRASH!』

 

 

上空に投げ出されたタイムオーガを見上げながらクロノスの呟きに応じるようにベルトから時破壊の膨大なエネルギーが放たれ、クロノスの手に握られたスコップに集束されていき、そして……

 

 

クロノスG『アーススティングッ!!』

 

 

―バシュウゥゥッ!!!―

 

 

『ゴ……ゴキイイイイイイイイイイイイイっ!!?』

 

 

―ドガァァァァァアアアアアアアアアアアンッ!!!―

 

 

空中から落下してきたタイムオーガの身体をスコップの先端で突き刺して貫き、腹部を貫かれたタイムオーガは【時】を破壊され爆散していったのだった。

 

 

クロノスG『ふう……こっちは片付いたな』

 

 

タイムオーガの撃破を確認し、スコップを器用に回転させて地面に突き立てながら一息吐くと、クロノスはジェネシック達が気になり周りを見渡した。見れば、ジェネシックと冥王も同じくしてタイムオーガをそれぞれ撃退していたが、残りのタイムオーガ二体はクロノス達の力に恐れ逃走しようとしていた。

 

 

クロノスG『ッ!逃がすか!!』

 

 

逃走し始めた二体のタイムオーガ達を見てクロノスも通常フォームに戻り、ジェネシックと冥王と共に後を追おうとする。その時だった……

 

 

 

 

―ガキイィィィィィィィィィィィィィィィィィィインッッ!!!!―

 

 

『『ゴ、ゴギャアアアアアアアアアッ!!!?』』

 

 

―ドガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!!―

 

 

『ッ?!』

 

 

 

 

逃走しようとしたGタイムオーガ達を突如マゼンタとオレンジの斬撃が斬り裂き、Gタイムオーガ達は爆散し断末魔と共に跡形もなく散っていったのであった。その光景を見たクロノス達も驚愕し思わず足を止めると、爆発で発生した爆煙が徐々に晴れ、黒煙の向こうから二人の戦士……ライドブッカーSモードをそれぞれ振り下ろしたディケイドとトランスが姿を現した。

 

 

クロノス『……何者だ?』

 

 

突如現れタイムオーガ達を撃退したディケイドとトランスに警戒心を強めてそう問い掛けるクロノス。それに対しディケイドは左腰にライドブッカーを戻しながら、クロノス達を一瞥して口を開いた。

 

 

ディケイド『ディケイド……通りすがりの仮面ライダーだ。覚えとけ』

 

 

トランス『トランス。同じく通りすがりのライダーだよ』

 

 

クロノス『ディケイド……?』

 

 

敵ではないことを証明するかのように空手でそれぞれ自己紹介するディケイドとトランスだが、クロノスはディケイドの名を聞き先程の鳴滝の警告を思い出した。

 

 

クロノス『――そうか……お前が世界の破壊者か』

 

 

そう呟き、クロノスは突然剣の切っ先をディケイドに向けて突き付けた。

 

 

ディケイド『っ!?何の真似だ!?』

 

 

クロノス『あの胡散くさい預言者が言っていた事を信じるつもりはない。……俺は俺の眼で見た物を信じるだけだ』

 

 

クロノスに予想外の行動を取られ驚愕するディケイドにそう告げると共に、クロノスは地を蹴って駆け出しディケイドに目掛けて迷いなく斬り掛かった。それを目にしたディケイドも咄嗟に地面を転がってクロノスの斬撃を避けながら距離を離し、クロノスが口にした預言者というワードを聞き舌打ちした。

 

 

ディケイド『チッ…!また鳴滝の仕業かよっ!』

 

 

クロノス『言った筈だ……奴は関係ない。俺は俺のやり方で、お前が破壊者か確かめるだけだ!!』

 

 

そう言って剣を構え直し、問答無用と言わんばかりに再びディケイドへと斬り掛かるクロノス。そしてディケイドも左腰に戻したライドブッカーを再びSモードに切り替えてクロノスが振りかざした剣を防ぎ何とか距離を離すが、クロノスはそれを逃すまいとして俊敏な動きでディケイドに何度も斬撃を繰り出していく。

 

 

ディケイド(クッ!流石は幸助っ……人間時代でこの実力かっ……)

 

 

クロノス(ん?……かなり分かりずらいが、この剣技は流水か?何故俺の剣技が混じってる?)

 

 

反撃してライドブッカーを振るうディケイドの剣技が、自分しか使わないハズの剣技……流水剣の形が何故か混じっている事に気付き内心疑問を抱くクロノス。だが……

 

 

ディケイド『ゼェアアァッ!!』

 

 

―シュバアァッ!!―

 

 

クロノス『!』

 

 

クロノスと戦うとなって既に気持ち的にも余裕がないディケイドが突き出してきたライドブッカーの切っ先が迫る光景を見て、瞬時に顔を僅かに動かして切っ先を避け、疑問は残るが今は戦闘に集中しようとディケイドの繰り出す斬撃を弾きながら反撃していくのだった。

 

 

ジェネシック『ちょっと幸助!?』

 

 

冥王『ディケイド……アレが預言者の言ってたライダーなの?』

 

 

トランス『そんな……またこの世界でも……破壊者として拒絶されるの?……あの幸助さんにも』

 

 

 

突然始まった二人の戦いを見て、ジェネシックと冥王はクロノスの突然の行動に戸惑い、トランスはこの世界でまで零が世界の破壊者として拒絶されるのかと絶望してしまい、そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガオウ「ムシャムシャ……アイツらで良いんだな?アポロガイスト?」

 

 

『ああ……行くぞガオウ、荒井真也』

 

 

ガオウ「良いぜ?皆纏めて俺が食ってやる」

 

 

真也「……ちっ」

 

 

三人の人影が二人の戦いを遠くから眺め、クロノスとディケイドが戦う戦場に向かって静かに歩き出し始めていたのだった。

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダーディケイド&クロノス 過去と未来の激闘③

 

 

クロノス『はああっ!!』

 

 

―ガキイィッ!!キイィンッ!!グガァンッ!!―

 

 

ディケイド『ハッ!!チィッ!!』

 

 

戦闘を開始してから数分が経ち、依然クロノスとディケイドはクロノスブレイドとライドブッカーの刃を激しく打ち合わせ互角の斬り合い……否、少しずつクロノスの方が押し始めていた。雷光のような鋭い斬撃を様々な角度から素早く繰り出すクロノスの猛攻に徐々に防戦一方となっていき、このままでは押し切られてしまうと悟ったディケイドはクロノスの振りかぶった斬撃を紙一重で避けながら一旦離れ、距離を保った。

 

 

ディケイド(くっ……やはり過去とは言え幸助か……強過ぎるっ)

 

 

ビリビリと痺れる手を軽く振りながらクロノスの次の動きを警戒し、仮面の下で荒い呼吸を何度も繰り返すディケイド。幸助が相手となれば苦戦は強いられると予想は付いていたが、剣の打ち合いだけで此処まで押されるとは思いもしなかった。以前修行の一環で【完全な時の神である幸助】と【断罪の神である幸助】に鍛えられたとはいえ、【人間時代の幸助】に勝てないのは流石に悔しい。

 

 

ディケイド(……随分前に幸助から聞いたが、「幼い頃から生死の境を行き来する修行を毎日していた」と言っていたのはマジみたいだな……)

 

 

あの時は冗談かと思ったが、こうして刃を交えてみてそれが事実だと悟った。現に今の幸助は、後の彼の弟子に当たる三人……大輝、裕己、翔ですら最終奥義以外を習得するのに何十年と掛ったという【四大奥義】を既に極めてると、戦ってみて分かったからだ。

 

 

ディケイド(一体どんな鍛えた方をすればこうなるのか……。しかし、どうやら幸助は俺を倒す気ではいるが、【破壊者】として殺す気はないみたいだ)

 

 

だが、それでも相手はあの幸助だ。油断をすれば一瞬で倒されるかもしれないが、ディケイドも負ける気はない。この戦況を覆す為、ディケイドはライドブッカーから二枚のカードを取り出してカメンライドしようとした。だが……

 

 

ディケイド『……はぁ!?』

 

 

クロノスの攻撃を無効化するため、クロノスと同じく時を加速出来るキャンセラーのカード、もしくは剣技に特化したエデンのカードを使おうとしたが……ディケイドはその二枚のカードを見て驚愕してしまった。何故なら、二枚のカードは黒く塗り潰され、イラストが消えていたからだ。

 

 

ディケイド『な、何でだ?なら他は……!』

 

 

動揺を隠せぬまま、キャンセラーとエデンのカードを仕舞い再びライドブッカーを開いて別のカードを探すが、それも無意味だった。ライドブッカーからカードを全て取り出しても、ディケイドが今まで関わった外史のライダーのカード全てが、キャンセラーとエデンのカードと同じように絵柄が消えてしまっていたのだから。

 

 

ディケイド(な……何故だ?ココが過去だからか?)

 

 

何故か力を失ってしまった外史のライダーのカードを見て、その理由が分からず慌てふためくディケイド。だがその隙を逃すほどクロノスも甘くなく、クロノスは左腕を空に掲げ高らかに叫んだ。

 

 

クロノス『来い!ヴォルト!』

 

 

『$%?”%!$◇○♪※』

 

 

クロノスの呼び掛けに応えるように謎の言葉が空から響くと、上空から飛来した雷に打たれながらクロノスの姿が雷の中で変化した。そして雷を払うように左腕を払うと、クロノスは紫のボディに雷を纏った長槍を手にした姿……クロノス・ヴォルトフォームにフォームチェンジし、ディケイドに向けて構えを取っていった。

 

 

ディケイド『!チッ……!正史のライダーは使えるな!なら、電気には電気だ!』

 

 

『KAMENRIDE:BLADE!』

 

『FORMRIDE:BLADE!JACK!』

 

 

疑問を拭えぬままとにかく戦闘に集中しようと、力を失った外史のライダー達のカードをライドブッカーに仕舞い、無事だった正史のライダーのブレイドのカードをバックルに投げ入れてブレイドへと変身し、すかさずカードをもう一枚装填しブレイドの強化フォームであるジャックフォームに姿を変えた。

 

 

クロノスV『来い、ディケイド!タイムクラッシュッ!』

 

 

DブレイドJ『ああ……クロノスッ!』

 

 

『TIME CRASH!』

 

『FINALATTACKRIDE:B・B・B・BLADE!』

 

 

長槍に電気を纏わせながら、天満流・疾風の章の奥義【疾風槍・連殺刃】の構えを取るクロノスにそう応え、バックルにカードを装填するDブレイド。そして、Dブレイドは電子音声と共に背中の羽根を展開し上空へと勢いよく飛翔すると、カメンライドと共に右手に出現したブレイラウザーに雷を纏わせながらクロノスに目掛けて急降下していく。

 

 

クロノスV『天満流奥義、疾風の章……疾風槍・連殺刃っ!!!』

 

 

―ビュオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!―

 

 

DブレイドJ『グッ!!!ウエエエエエエエエエアアアアアアアアアァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!』

 

 

クロノスは超光速で回転して自身が竜巻となり、頭上から飛来するDブレイドを取り囲み、嵐の如く無数に斬り刻んでいく。更に竜巻が雷を纏っている為に威力と速さが倍増しているにも関わらず、Dブレイドは目を見開き、竜巻に全身を切り刻まれながら咆哮と共にクロノスに目掛けて急降下し雷を纏ったブレイラウザーを振りかざしていた。そして……

 

 

DブレイドJ『ゼェェェリャアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーッッッ!!!!』

 

 

クロノスV『ッ!!はあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!』

 

 

―ガキイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィインッッ!!!!―

 

 

DブレイドJ『ぐああぁっ!!?』

 

 

―ズバアアアアアアアアアアアアアァァァァァーーーーーーーーッッッ!!!―

 

 

クロノスV『がぁっ!!?』

 

 

降下して来るDブレイドに目掛けて咄嗟にクロノスが振り上げた渾身の長槍がDブレイドの脇腹に直撃するが、負けじとDブレイドが振り下ろしたライトニングスラッシュがクロノスの胴体を頭上から一文字に斬り裂き、互いの一撃を受けた二人はそのままバランスを崩して吹っ飛び、滑るように何度も地面を転がりながら倒れ込み強制的に変身が解除されてしまった。

 

 

トランス『っ!?零君っ!』

 

 

ジェネシック『幸助っ!?』

 

 

変身が強制解除されたボロボロの姿の零と幸助を見て、一目散に二人の下へ駆け出そうとするトランスと冥王とジェネシック。しかし……

 

 

『来るなっ!!』

 

 

『ッ?!』

 

 

零と幸助の下に駆け寄ろうとした三人を制止するように、ボロボロの姿になって倒れる二人が怒号を上げて止めた。それを聞いた三人は驚いて思わず立ち止まると、先に幸助がふらふらと斬られた胸を押さえながら立ち上がり、地面に倒れる零を見つめていく。まさかあの状態でまだ戦うつもりなのか?そんな不安を胸に三人が見守る中、幸助は……

 

 

幸助「――ふっ……まさか俺を強制変身解除まで追い詰めるとはな……やるじゃねぇか、ディケイド」

 

 

微笑と共に幸助が呟いたのは、零を認めたという賞賛の言葉だった。幸助に敵うのは、不破家と中島家現党首である士郎とゲンヤ……そして幼馴染である二人、最後にアルファだけだったのだ。それが別の世界のライダーとは言え自分を此処まで追い詰めた零に関心し、それを聞いた零も激痛の走る脇腹を押さえながら幸助に顔を向け苦笑した。

 

 

零「っ……まぁ、欲を言えば、アンタから一本取りたかったんだがなっ……」

 

 

幸助「……ん?お前……転校生の黒月か?」

 

 

そんな軽口を叩く零を見て改めてディケイドの正体を知り、驚きを露わにして目を見開く幸助だが、すぐに納得した。だから黒月零の情報が一切自分の下に来なかったのだと。そんな幸助の心境を他所に零もふらつきながら立ち上がろうとするが、脇腹に走った激痛で顔を歪めて再び膝を付いてしまう。

 

 

零「痛てて……流石は幸助か……やっぱり簡単には勝たせてもらえんようだっ」

 

幸助「ん?どういう事だ?"流石"とか、"やっぱり"とか」

 

 

赤い血まで滲み出した脇腹の傷を見て顔をしかめる零の言葉……まるで、幸助を良く知っているかのような口ぶりに疑問を抱いて零に話を聞こうとする幸助。だが……

 

 

 

 

 

 

 

 

『――お遊戯はそこまでだ』

 

 

―バシュウゥッ!!―

 

 

『……っ?!―ドッガアアアアアアアァァァァァァァァァァァァアンッ!!!―ぐあああああああああああああああああっっ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

不意に何処からか聞こえたその言葉と共に、零と幸助に向けて一発のエネルギー弾が放たれ二人に直撃してしまったのであった。突然の不意打ちに、先程の戦いで負ったダメージのせいで反応と回避が遅れた二人は爆発に呑まれて空高く吹っ飛び、そのまま地面に叩き付けられて再び地に倒れてしまった。

 

 

ジェネシック&冥王『幸助(くん)っ?!』

 

 

トランス『零君っ?!』

 

 

その光景を目にした冥王、ジェネシック、トランスは二人の下に急いで駆け付け、今の攻撃が放たれた方を睨みつけた。其処には……

 

 

『ふっ……流石の時の神と破壊者も、不意打ちは避けられなかったようだな』

 

 

『ちっ、んなことしなくても俺が食ったんだがなぁ』

 

 

オーガ『……不愉快だぜ』

 

 

三人が睨み付け身構えた先に立っていたのは、右手に持つ銃を零と幸助に向けながら不敵に笑う深紅の怪人、アポロガイスト……否、零の世界の鳴滝の手によりパワーアップして生まれ変わったネオアポロガイスト、ガオウが変身した銅色のオーラアーマーとワニの顔を摸した形状のデンカメンを持つライダー『牙王』、そして彼等の背後で不快げに舌打ちする真也が変身したオーガの姿があったのだ。そんなネオアポロガイスト達の登場に、三人も咄嗟に零と幸助を庇うように身構え戦闘態勢に入った。

 

 

ジェネシック『貴方達……何者?』

 

 

『我が名はネオ・アポロガイスト!大ショッカーに所属する、この世で最も迷惑な男だ!』

 

 

牙王『俺か?俺は牙王だ』

 

 

オーガ『……オーガ』

 

 

トランス(!あのライダー……まさか今までにも私達を襲ってきた……?)

 

 

ネオアポロガイストと牙王と共に名乗るオーガの声を聞いて、今までの世界でも何度も自分達を襲った謎のライダー達の一員であると気付き、より一層警戒を強めるトランスだが……

 

 

幸助「くっ……ダメージが……」

 

 

零「がっ……クソッ……傷がァ……」

 

 

トランス達の背後から呻き声が聞こえ、三人がそちらに視線だけ向けると、其処には先程の不意打ちによる予想以上のダメージで幸助が体中血塗れになり、零も傷が更に開いて地面に真っ赤な血溜まりを作っていた。

 

 

致命傷なのは一目瞭然であり、早く治療しなければ危険な状態だ。

 

 

そんな二人の姿にトランスも内心焦りを覚え、ジェネシックと冥王も努め冷静を装ってネオアポロガイストたちと向き直った。

 

 

冥王『スバルちゃんはあの赤い怪人を、私は牙王とか言う奴を殺るの』

 

 

ジェネシック『……字、違くない?』

 

 

冥王『問題ないの。どうせ殺すから構わないで、しょっ!』

 

 

―バッ!!―

 

 

強気な態度を崩さず薙刀を構え、一息で牙王との距離を詰め脳天目掛けて薙刀を振り下ろす冥王。だが……

 

 

―ガキイイイイイイイイイイイイイイッ!!!―

 

 

冥王『っ!』

 

 

牙王『――ほぉ……お前は中々喰い甲斐がありそうだ』

 

 

牙王はその場から動かず、右手に握るガオウガッシャーのみで冥王の放った一撃を受け止めてしまったのであった。そして牙王はそのまま薙刀を払い退けながら右足に炎を纏い、前蹴りを放って冥王を蹴り飛ばしてしまった。

 

 

冥王『あぐぅっ!』

 

 

ジェネシック『なのはちゃんっ?!―ズガガガガガガガガガガガガガァッ!!―ぐぅっ?!』

 

 

『何処を見ている?貴様の相手は私なのだろう?』

 

 

牙王に蹴り飛ばされた冥王を視界の端に捉えて思わずそちらへと振り向くジェネシックに、銃弾の雨が降り注いだ。見れば、其処にはネオアポロショットを構え不気味に笑うネオアポロガイストの姿があり、ジェネシックはネオアポロガイストに撃たれた身体を押さえながら険しげな顔を浮かべ、今は目前の相手に集中しようと拳を構えてネオアポロガイストへと突っ込んでいくのだった。

 

 

―ガキイィッ!!ガキイィンッ!!ギイィンッ!!―

 

 

トランス『クッ!ハアァァァァァァアッ!!』

 

 

そしてその一方、トランスはオーガが振りかざす大剣をライドブッカーSモードとぶつけ合わせて赤い火花を散らせるが、状況はトランスの方が劣勢なのは目に見えて誰でも分かる。そもそも剣術というジャンルではトランスは半人前以下の実力しかない為に、剣術に心得があるディケイドをも圧倒した事があるオーガに正面から近接戦闘で敵う筈がないのだ。それでも剣で戦うしかないのは、どんな強力な魔法や砲撃を放ってもオーガがそれを掻い潜りながら接近して来るために剣で応戦するしかないからだ。しかし……

 

 

オーガ『ちっ……こっちはお前とのお遊戯に付き合ってる暇なんてねぇんだ……どいてろっ!』

 

 

―ドグオォッ!!―

 

 

トランス『きゃあっ?!』

 

 

オーガからしてみればトランスとの斬り合いもただのチャンバラごっこにしか過ぎず、いつまでも小賢しく邪魔をするトランスに押さえていた苛立ちを露わにしトランスを蹴り飛ばした。それによってトランスは地を滑りながら零と幸助の下まで吹っ飛ばされてしまい、オーガはそんなトランスへと歩み寄りながら大剣を突き付けた。

 

 

オーガ『……死にたくないなら其処を退け……俺らが用があるのはその二人だけなんだからよ』

 

 

トランス『っ……!そんなことは……!』

 

 

そうは言いながら、本当は殺す気などなく脅迫だけでトランスを退けようと殺気を放って警告するオーガ。しかし、トランスも後ろに庇う零と幸助を彼等の好きにさせるつもりなどないし逃げるつもりもない。どうにか形勢逆転を狙おうと、トランスはライドブッカーからカードを取り出し反撃に出ようとする。が……

 

 

 

 

 

 

『――此処は引くべきだと俺は思うよ』

 

 

『ATTACKRIDE:BLAST!』

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガガガァッ!!!―

 

 

『ッ?!ヌオォッ!』

 

 

牙王『っ?!』

 

 

オーガ『何っ?!』

 

 

不意に何処からか声と電子音声が響き、それと同時に上空から無数の銃弾が降り注ぎネオアポロガイスト達に命中して怯ませたのだった。

 

 

ジェネシック『え?誰?』

 

 

冥王『今のは何なの?』

 

 

トランス『……まさか……』

 

 

突然ネオアポロガイスト達に飛来した無数の銃弾と謎の声。聞き慣れぬその声にジェネシックと冥王が困惑した表情で辺りを見渡す中、トランスは見覚えのあるその攻撃と聞き覚えのある先程の声に驚愕していると、一人のライダーがその場にゆっくりと姿を現した。

 

 

ディエンド『やあ、随分と盛り上がってるようだね』

 

 

緊迫とした空気が漂う戦場に似合わぬ飄々とした声でその場に現れたのは、黒とシアンのボディを持つ銃を持ったライダー……未来の"幸助の弟子"にして、泥棒……もとい、怪盗の大輝が変身したディエンドだった。

 

 

トランス『ディエンド!やっぱり大輝くん!?』

 

 

ディエンド『話は後でね?【バジルーラ】!』

 

 

オーガ『ッ!待てッ!』

 

 

突然姿を現したディエンドを見て驚くトランスにそう言いながら、【未来の幸助】から教わった強制転移術を使い、零と幸助とジェネシック達を強制転移させるディエンド。それを目にしたオーガは慌てて零と幸助を捕らえようと駆け出すが、伸ばした手は宙を切っただけで二人も転移されてしまい、自分の手を見つめて舌打ちしながらディエンドを睨みつけた。

 

 

『ほう、舐められたものだ。我々相手に一人で戦う気とは……強力な力を持つ外史のライダーは使えないのではないのかね?』

 

 

ディエンド『そっちこそ舐めないで貰いたいね?俺はこれでも【断罪の神】の弟子だよ?……俺が使えるのが何もライダーのカードだけだと思ったら大間違いさ』

 

 

見下すように鼻を鳴らすネオアポロガイストに軽口を叩きながら、ディエンドは左腰のカードホルダーから二枚のカードを取り出してディエンドライバーへ装填しスライドさせていった。

 

 

『TOUHOURIDE:ADVENT CHILNO!』

 

『TOUHOURIDE:WING UTSUHO ZEROCUSTOM!』

 

『TOUHOURIDE:EX RUMIA!』

 

 

ディエンド『行きたまえ、バカルテット諸君』

 

 

そう言って引き金を引くと共に辺りに無数のビジョンが駆け巡り、三ヶ所にそれぞれビジョンが重なると、それらは三人(?)の少女となってディエンドの目の前に召喚された。

 

 

青色の髪に青いワンピース、背中に氷の羽、左半身が黒の衣装に包まれ、右手にスイカに似たバカでかい剣……エクスイカバーを手にした妖精『チルノ(アドベントver)』

 

 

黒髪の長髪に両腕に長くデカい棒……ツイン制御棒を装備し、メカメカしい青と白の鎧を纏った大きな黒い翼を持つ少女『霊烏路 空(MS少女の空。ウイングガンダムゼロカスタムver)』

 

 

金髪のショートカット、黒いドレスを纏い、バカでかい剣を持つ少女『ルーミア(EX大人ver)』となって姿を現した三人は、それぞれが持つ武器を手に前に踏み出した。

 

 

チルノAD「後はアタイ達に任せな青黒の泥棒。最強のアタイに敵は無い」

 

 

お空ZERO CUS「ターゲット確認……目標、敵機殲滅……排除開始」

 

 

EXルーミア「貴方達は食べられる人間かしら?」

 

 

カリスマ全開で⑨さを微塵も出さないチルノや、普段の馬鹿さを出さずクールにそう呟くお空、いつもの「そーなのかー」という感じの馬鹿さがなく、チルノと同じくカリスマ全開なルーミア。そんな彼女達の性格を見て、ディエンドは顔の下で冷や汗を流した。

 

 

ディエンド『アレ……バカルテット……だよね?幻想郷にいた時は正に⑨だったのに、何で……?』

 

 

てっきり全能力だけが強化されただけで人格まで変化しているとは思いもせず、彼女達の様子に流石に動揺を浮かべるディエンドだが……

 

 

牙王『ハァ……いい加減待たせんなっ!』

 

 

そんな光景を見ていい加減痺れを切らした牙王が怒号と共にガオウガッシャーを振り上げながら飛び出し、ディエンドに目掛けて斬り掛かった。だが……

 

 

チルノAD「させない」

 

 

―ガキイイィィィィッ!!―

 

 

牙王『?!何!?』

 

 

ディエンドを庇うように、チルノが前に飛び出しその手に持つ大剣で牙王が振り下ろしたガオウガッシャーを受け止めたのであった。まさか小さい少女に自分の剣を止められるとは思ってなかった牙王だが、チルノはそんな牙王の心境を他所にディエンドから離れさせようと、ガオウガッシャーごと牙王を信じられない力で押し出していく。

 

 

牙王『クッ……その身体のどこにこんな力がっ!』

 

 

ディエンド『……どうやら心配はなさそうだ、後は頼んだよ?』

 

 

『ATTACKRIDE:INVISIBLE!』

 

 

牙王を驚愕させる程の力で押していくチルノの後ろ姿を見て多分大丈夫だろうと判断し、ディエンドは左腰のカードホルダーからもう一枚カードを取り出しドライバーに装填すると、無数の残像と化してその場から離脱していった。

 

 

『ちっ、逃がしたかっ』

 

 

インビジブルで逃げたディエンドを見て忌ま忌ましげに舌打ちし、憤慨するネオアポロガイスト。その直後……

 

 

―バシュウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!―

 

 

『っ?!なっ!?』

 

 

上空から突如巨大な砲撃がネオアポロガイストに迫り、それに気付いたネオアポロガイストは咄嗟に左手の盾を使い受け止める。だが、次第に押され始めて受け止め切れなくなり、ネオアポロガイストは盾を反らし砲撃を受け流した。

 

 

『ッ……今の攻撃、貴様か!』

 

 

肩で息をしながらネオアポロガイストが上空を睨むと、其処には二つの制御棒を一つに合わせ、銃口をネオアポロガイストに向けながら上空で静止するお空の姿があった。

 

 

お空ZERO CUS「……やるな。だが、次は盾ごと消し飛ばす。ツインギガフレア……排除開始」

 

 

―ギュイィィッ……ドバアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!―

 

 

感情のない声でそう呟いた直後、先程とは比べものにならない巨大な砲撃がネオアポロガイストに目掛けて撃ち出された。

 

 

『くっ?!私は一旦引くぞっ!』

 

 

迫り来る巨大な砲撃を見て凌ぐのは無理と判断したのか、ネオアポロガイストは牙王とオーガにそう告げて背後から呼び出した歪みの壁に呑まれ、間一髪の所で避難していった。そして……

 

 

―チュドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオォンッッッッッッ!!!!!!―

 

 

『ウオオォッ?!!』

 

 

ネオアポロガイストに命中しなかった砲撃はそのまま地表に直撃し、まるで台風のような強風を巻き起こしながら巨大な爆発が発生し、近くで戦うオーガや牙王達を吹っ飛ばし掛けながら跡形も残さずに消滅したのであった。

 

 

お空ZERO CUS「……私はもう、誰も殺さない……」

 

 

木っ端微塵に吹き飛び巨大なクレーターが形成された地表を見て何処か儚げにそう呟き、役目を終えた彼女は幻影のように何処かへと消えていったのだった。

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダーディケイド&クロノス 過去と未来の激闘④

 

 

 

―ガキイイイイイイイイイイイイインッ!!!―

 

 

牙王『やるじゃねえか、氷精!前に戦った特異点なんかよりもやりがいがあるぜ!』

 

 

チルノAD「アンタもね?最強であるアタイとココまで斬り合う奴はそうはいないよ」

 

 

お空が役目を終えて消えたその頃、最早人外の領域といっても過言ではない斬り合い……もとい、殺し合いが離れた場所で周囲を巻き込みながら繰り広げられていた。無数の斬撃の余波が地面や近くの建物を斬り刻み、ベンチや銅像などが意図も安易く真っ二つに斬り裂かれていく中、牙王はそんなものにも目もくれず、ただ目前の相手を斬る為に剣を振るう事が楽しいと言わんばかりに笑みを受かべていく。

 

 

チルノAD「リミットブレイク発動……ブレイバー!」

 

 

牙王『そんな技、効くかッ!!』

 

 

闘気を纏わせながら一気に振り下したチルノの合体剣が襲い掛かる。だが、牙王もガオウガッシャーで簡単にそれを受け止めてチルノを蹴り飛ばし、ガオウガッシャーを構え直して一気にチルノ目掛けて獣のように飛び出していった。そして、オーガとルーミアは……

 

 

 

 

―ガジガジガジ……―

 

 

オーガ『……ヘルプ』

 

 

ルーミア「うまうま」

 

 

 

 

開始からたったの数秒で、ルーミアはEXから普段の姿へと戻ってしまい、何故かそのままオーガの頭にしがみ付いてガジガジと噛みついていたのだった。

 

 

オーガ『いい加減に離れろよ……』

 

 

ルーミア「離れるのかー?それは嫌なのだー」

 

 

オーガ『んでだよ!?』

 

 

ルーミア「足止めなのだー」

 

 

オーガ『……何で俺ばっかり貧乏くじなんだよ』

 

 

ルーミア「そーなのかー」

 

 

もしもコレが見た目通りの化け物とかなら、まだ容赦無く地面に叩き付けてそのまま息の根を止めるとか出来たのだが、外見がまんま生身の女の子であるために邪険にも出来ず、ただ彼女にされるがまま立っていることしか出来ないオーガ。そしてそんなオーガを他所に、チルノと牙王は……

 

 

チルノAD「終わりだっ!!リミットフルブレイク!!超⑨武神覇斬ッッ!!」

 

 

牙王『消えろッッ!!』

 

 

『Full Charge!』

 

 

―ズバアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!―

 

 

超白熱バトルを繰り広げ、お互いに全身全霊を込めた一撃をすれ違い様に相手に叩き込んでいたのだった。そうして二人は互いの得物を振りかざした態勢のまま止まり、二人の間に一瞬の静寂が流れ始める。そして……

 

 

―サアァァァァァァァァァァァアッ……―

 

 

牙王『―――フッ……引き分け、か……』

 

 

チルノAD「クッ……最強であるアタイが、こんな結果……情けないっ……」

 

 

可笑しそうに牙王が最初に口を開いたと共に、チルノは不満げに顔を俯かせて風のように消滅していき、対する牙王は何処か満足そうに砂と化して徐々に消えていったのであった。

 

 

オーガ『……え?俺、もしかしてこのまま?』

 

 

その光景を離れて見ていたオーガは一人寂しく、その場にポツンと取り残されてしまうのだった。ルーミアに頭をかじられながら。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―光写真館―

 

 

一方その頃……

 

 

スバル(中島)「――つまり、貴方達は別の世界から来たと?」

 

 

なのは「はい、そうです」

 

 

ディエンドの助力もあって光写真館の前に飛ばされたなのは達はすぐに館内へと入り、零と幸助を部屋まで運んでシャマル達に二人の治療をしてもらった。だが、二人の傷はどちらも深く、治療を終えてもベッドで気絶したままであり、その間にリビングではなのはがなのは(不破)とスバル(中島)に事情を説明していた。

 

 

なのは(不破)「ってことは、貴方は別世界の私って事なの?」

 

 

なのは「え~と、そうなるかな?」

 

 

スバル(中島)「成る程……でも、同一の存在でも歴史はまるっきり違うみたいだね?【不破】と【高町】、か……確かなのはちゃんのお母さんの桃子さんの旧姓がそうだった気がするけど……もしかして、分岐点の法則に何かそれとも……」

 

 

なのはから一通り話を聞き、顎に手を添え並行世界の理論を考えるスバル(中島)。ひとり思考に浸りながらブツブツと聞き慣れぬ単語ばかりを呟くスバル(中島)を見て、スバルとギンガ、ティアナ、ナンバーズ、ヴォルケンリッター、ヴィヴィオ、フェイト、アリサ、すずか、子狸は呆然とした。

 

 

スバル「……え?何語アレ?この世界の私って本当に何者?」

 

 

ティアナ「シズクさんの過去……人間時代っていうのは分かるけど、その頃から天才的な頭脳だったのね……こっちのスバルと大違い(デスクワーク苦手だし)」

 

 

ギンガ「そっ、そうね……髪の長さ以外ならスバルと同じなのに……お姉ちゃんびっくりよ(この世界ではお母さん生きてるのよね……別の歴史のお母さんでも……会ってみたいな)」

 

 

ノーヴェ「……アレ、本当に別世界のスバルなのか?つか、ドクターより頭良くね?」

 

 

ヴィヴィオ「シズクお姉ちゃんの過去なら納得できるけど、あそこまで違うと凄いね(冥王お姉ちゃんってクールでかっこいいな~。薙刀の技、教えて欲しいかも)」

 

 

シグナム「アレが別世界のナカジマか……試合してみたい」

 

 

ヴィータ「シグナム……あの過去のシズクは【多分】比較的温厚で常識人だが、アイツもチートだぞ?あの人の訓練を受けたアタシだから言える(見た目で判断したら死ねるぜ)」

 

 

フェイト「で、アレが冥王の過去なんだよね?雰囲気が恭也さんに似てるし……ね、はやて?(目付きも違うし……優しくて温かいなのはとは……違う)」

 

 

はやて「そやね……ってか、何で私だけ子狸やねん!?おかしいやろ!?」

 

 

すずか「はやてちゃん……大丈夫?」

 

 

アリサ「あんた、変な電波受信してない?手遅れ?」

 

 

はやて「ちょ、すずかちゃんとアリサちゃん、酷かない!?」

 

 

それぞれの面子がこの時代でのスバル(中島)やなのは(不破)を見てざわめいたり興味を示したりする中、幼馴染に弄られてガーンッ!とショックを受けるはやて。そんな時……

 

 

―……ガチャッ―

 

 

大輝「やあ諸君、さっきぶりだね」

 

 

『大輝(くん・さん)!!?』

 

 

スバル(中島)&なのは(不破)『『……誰?』』

 

 

一同が集まるリビングに、先程なのは達を逃がすためにネオアポロガイスト達と対峙した大輝が入ってきたのである。なのは(不破)とスバル(中島)は変身を解除した大輝とは初対面の為に首を傾げていたが、なのははそれよりも先程から気になってたある疑問を大輝に投げ掛けた。

 

 

なのは「ねえ大輝君、いきなりで悪いんだけど、一つ聞いてもいい?なんで外史のライダーのカードが突然使えなくなったの?」

 

 

そう言ってなのはが背後に振り返ると、其処にはテーブルの上に数十枚のカード……零のカードと同じく、絵柄が黒く塗り潰され使えなくなってしまったなのはの外史ライダー達のカードが並べられていた。

 

 

大輝「……良いだろう。俺も元々そのつもりで来たしね」

 

 

そして大輝はなのは達に、全てを話し出した。

 

 

既に並行世界の外史のライダー……特に幸助に命を救われた者が消えていると。

 

 

原因は、この世界に現れたネオアポロガイスト。

 

 

過去の幸助が死ねば、未来の……断罪の神である幸助は存在が消える。

 

 

それだけでなく、幸助に命を救われた人や世界は数多く存在する。

 

 

祐輔、滝、稟などの苦労人同盟もそうだ。

 

 

苦労人同盟を鍛え強くしたのは幸助。

 

 

祐輔と稟、翔、裕己、幸村達にライダーシステムを託したのも幸助。

 

 

その幸助が消えれば?

 

 

零達が出会った彼らは消滅する。

 

 

それは零達も例外ではなく、魔界城で彼に助けられ、ブレイドの世界で使用したクライマックスフォーム、NXカブトの世界で重傷を負った零の治療、桜ノ神の世界での幸助を筆頭とした増援に助けられた零達の存在も危うくなっているのだ。

 

 

なのは「……そんな」

 

 

大輝「事態は一大事を要するよ……今回はお宝とか言ってる余裕はないしね」

 

 

なのは(不破)「つまり結論として……あのアポロガイストをぶっ殺せばいいの」

 

スバル(中島)「……言い方考えようよなのはちゃん」

 

 

なのは(不破)「スバルちゃんは甘いの。敵……特に男は容赦なく殲滅せよ。お父さんとゲンヤおじさんの口癖なの」

 

 

スバル(中島)「(お父さん……士郎おじさん……ギン姉とお母さんと桃子さんを交えて今度OHANASHIですね)」

 

 

なのは(不破)の台詞を頭に痛めながら、この件が片付いた後の父親と叔父の処遇について内心そう決心するスバル(中島)。そしてなのは(不破)のそのセリフを聞いて、スバルとギンガは「お父さんも別の存在なんだ……」と力なく呟き複雑げに苦笑いを浮かべていくのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

一方同じ頃、とある世界のミッドチルダ……

 

 

優矢「……ここ……何処よ?」

 

 

アズサ「さあ……」

 

 

シロ『にゃあ……』

 

 

魚見「見たところ、ミッドチルダかと思われますが……」

 

 

姫「クロノスの世界の……ではなさそうだな……一体何処の世界のミッドチルダだ?」

 

 

映紀「おいおい……なんでいきなり違う世界になんて飛ばされるんだよ」

 

 

鳴滝の手によって、何処かに転移させられてしまった四人と一匹。そんな彼等が飛ばされた先はクロノスの世界とは全く違う別世界のミッドチルダであり、一同は突然の出来事に困惑した様子でミッドの町並みを見回していた。其処へ……

 

 

 

 

「時空の乱れを観測したから来てみれば……何者だ、お前ら」

 

 

 

 

優矢達の前に突如現れた、一人の青年。

 

 

彼は未来にて、【七柱神】と恐れられる1柱。

 

 

今の段階では【三柱神】と呼ばれる存在。

 

 

【想像神】東海竜也が不審げな顔で四人と一匹の前に転移してきたのであった。

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダーディケイド&クロノス 過去と未来の激闘⑤

 

 

―時渡り町・廃工場―

 

 

真也「牙王は死んだぜ」

 

 

『……それは分かった……が、お前は頭に幼女を噛みつかせるのが趣味なのか?』

 

 

真也「んなわけねぇだろうがゴルァァァァァァァアアアアアアア!!!(#゚д゚)」

 

 

ルーミア「そーなのかー」

 

 

それから数分後。隠れ家である廃工場で合流した直也とネオアポロガイスト……と、まだ真也の頭に噛み付いたまま消えていなかったルーミア。結局戦いのあとも消えなかったルーミアを連れてきたせいか、何処か冷たい目を向けて来るネオアポロガイストにマジギレして叫ぶ真也だが、すぐにハッと我に返り一度咳払いをした。

 

 

真也「ンンッ……で、どうすんだ?貴重な戦力。幾ら零と断罪の神に怪我負わせたからって、あの程度で引っ込むような奴らじゃねえぞ?」

 

 

『それには考えがある……死者の世界からスカウトするのは大変だったが』

 

 

ネオアポロガイストがそう言ってゆっくりと背後へと振り向くと、それと同時にネオアポロガイストの目前に歪みの壁が出現し、其処から五人組の男女が姿を現した。

 

 

「――報酬は分かってるな、アポロガイスト?」

 

 

真ん中の五人組のリーダーと思われる茶髪に青いメッシュが入った青年が睨みつけるようにそう問い掛けると、ネオアポロガイストは口端を吊り上げながら何処からか銀のアタッシュケースを取り出した。

 

 

『もちろん、お前達を再び【ダブル】の世界に送る事であろう?』

 

 

そう答えてネオアポロガイストがアタッシュケースを茶髪の青年に渡すと、茶髪の青年……【大道克己】はアタッシュケースを開き、ケースの中に入った五本のメモリと五基のドライバーを確認してニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

克己「【T2メモリ】と【ロストドライバー】……人数分、確かに受け取った」

 

 

「ふふ……これでまた熱くなれるわ」

 

 

「……確認完了」

 

 

「いいわいいわね~ゾクゾクしてきたわぁ~ん」

 

 

「相変わらず気持ち悪りぃな京水……俺としては速く戦いてえぜ」

 

 

克己と共にケースからそれぞれメモリとドライバーを手にしていく四人のメンバー……【羽原レイカ】、【芦原賢】、【泉京水】、【堂本剛三】は腰にドライバーを巻いていき、克己も空になったケースを投げ捨てドライバーを腰に装着すると、五人は手にしたメモリをそれぞれのドライバーのスロットへと装填していく。

 

 

『ETERNAL!』

 

『HEAT!』

 

『TRIGGER!』

 

『LUNA!』

 

『METAL!』

 

 

五つの電子音声が重なって鳴り響くと共に、五人の姿が吹き抜ける風と共に装甲に覆われて徐々に変化していく。

 

 

真っ赤なボディに全身が炎に包まれた仮面ライダー……『ヒート』

 

 

青い体にトリガーマグナムを持つ仮面ライダー……『トリガー』

 

 

黄色い体で全身クネクネさせている伸縮自在の仮面ライダー……『ルナ』

 

 

銀色の鋼鉄のボディにメタルシャフトを装備した仮面ライダー……『メタル』

 

 

そして、【永遠の記憶】を内包した白いボディに全身に26個のマキシマムスロットを装備した地獄の仮面ライダー……『エターナル』

 

 

彼らはかつて【NEVER】に所属していた特殊部隊のメンバーで、死者蘇生技術により不死の殺し屋だった。

 

 

とある計画でダブルの世界でひと悶着を起こすが、ダブルにより計画を壊され、全員死亡した彼等だったが……ネオアポロガイストの手によって再びこの世へと蘇ったのであった。

 

 

エターナル『行くぞ。風都に戻る前に、先ずはこの町を地獄に染め上げてやる』

 

 

宣言するようにそう告げてエターナルが親指を立てた右手を下に向けると、背後から現れた歪みの壁が五人のライダーを呑み込み何処かへと消えていく。恐らくひと足先に町に向かったのだろうと予想すると、ネオアポロガイストは真也の方に視線を向けて口を開いた。

 

 

『では、我らも行くとしよう』

 

 

真也「そだな……っていい加減、噛むの止めろ!!」

 

 

ルーミア「嫌なのか~」

 

 

真也「……はぁっ」

 

 

残念そうにシュンッと落ち込むルーミアを見て仕方がないといった感じに嘆息し、結局真也は頭にルーミアを噛みつかせたままネオアポロガイストと共に歪みの壁を潜って町へと向かっていくのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

一方その頃……

 

 

なのは(不破)「―――もう一度聞くけど、本気なの?」

 

 

なのは「うん……もちろん」

 

 

なのは(不破)「なら……私も手加減は一切しないの」

 

 

不破家の道場にて、胴着を着て薙刀型の竹刀を持った不破なのはと、同じく胴着を着て竹刀を構える高町なのはが睨み合って対峙する光景があった。

 

 

何故こんな状況になってるのか?事の発端は数十分前、なのは(不破)がなのはの欠点……接近戦を指摘したのだ。

 

 

彼女はさっきの戦いで足手まといだったと思いそう告げた。現にトランスに変身したとはいえ、本来の身体能力に変化はない。

 

 

トランスはディケイドと同じく他のライダーに変身し強化する。

 

 

だがトランスが持つライダーのカードは、全て外史のカード。

 

 

故に今回は、トランスの力だけで戦闘しなければいけないのだ。

 

 

自身とフェイト達の魔法と同じ力を使えるとはいえ、そればかりに頼っていてはオーガのような各上の相手には決して勝てない。

 

 

例え付け焼き刃であろうとも、少しでも剣の腕を上げトランスのライドブッカーSモードを使いこなす為、同じ自分であるなのは(不破)に協力を求めたのだ。

 

 

そして実を言うと……パンデモニウムの冥王より実力は劣ってるのだから、あの地獄のような修業よりかはマシかもという本音もあったのだが、現実はそんなに甘くはなかった。

 

 

剣の指導の開始と同時に、相手の動きを良く見て警戒していればなのは(不破)に勝つ為の勝機もきっと見付けられると、咄嗟に距離を取った瞬間……

 

 

 

 

 

なのは「にゃあ……きゅうぅぅぅぅ……」

 

 

なのは(不破)「情けない……本当に別世界の私なの?」

 

 

 

 

たったの一息で一瞬で距離を詰められ、驚く隙もなく脳天に薙刀型の竹刀を叩き込まれ床にダウンしていたのだった……。

 

 

そこからはなのは(不破)に頭から水を掛けられて意識を取り戻し、再び剣の指導を再開するも、やはり終始なのは(不破)にボコボコにされまくっていた。

 

 

もちろん、ただフルモッコにされた訳ではなく、剣術の指導はちゃんとされていた。

 

 

別世界とはいえ、なのはにも御神と不破の血が流れている。それを抜きにしても、これでも訓練学校で運動音痴を地道に改善してきたのだ。

 

 

昔よりかは大分マシになっているが、やはりそれでもまだなのは(不破)の足元に及ばない。

 

 

連敗続きでなのは(不破)に打たれた個所に激痛が走り、体力も削られるばかりで肩で息をしながらも竹刀を杖代わりにし、呼吸を整えようとするなのは。

 

 

なのは(不破)「はぁ……まともに戦わせるのに時間がかかりそうなの」

 

 

なのは「っ……も……もう一本、お願いっ!」

 

 

それでも諦めず、再び立ち上がって竹刀を両手で構え直す。

 

 

彼女が此処まで必死なのも、なのは(不破)に指摘される前から先程の戦いで自分が足手まといだったことを自覚してるからだ。

 

 

実際先程のオーガとの戦闘で自分は手も足も出させず、もしも彼処で大輝が来てくれなければ、自分は零と幸助を守り切れなかった。

 

 

あんな重傷を負った二人を守る立場でありながら、それが分かってしまったから悔しかったし、勝てないと思ってしまった自分が情けなく思えた。

 

 

だから彼女に協力を求め、少しでも剣術を自分の物にする為に自ら志願したのだ。

 

 

なのは(今までの戦いじゃ、その場凌ぎでずっと剣を扱ってきたけど、これからはちゃんと剣も扱える様に訓練メニューを組まなきゃね……フェイトちゃんシグナムさんにもお願いして、ご教示願おうかな?)

 

 

なんてね、と内心苦笑いしながら深く息を吸い込むと、なのはは真っすぐなのは(不破)を見据えながら竹刀を両手で構え、勢いよく床を蹴り自ら間合いへと踏み込んでいくのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―光写真館―

 

 

大輝「――まだ、零と幸助さんは目を覚まさないのかい?」

 

 

スバル(中島)「うん、幸助の傷はそんな深くないハズなんだけど……」

 

 

なのはがなのは(不破)から剣の教授を受けているその頃、写真館では未だに零と幸助が意識を取り戻さず、大輝が二人を看病するフェイト達やスバル(中島)と二人の容態について話し合っていた。

 

 

シャマル「零君も、何時もみたいにもの凄い回復力でもうすぐ完治しそうなんだけど……一向に意識を取り戻す気配がないの」

 

 

フェイト「いつもだったら、もう目を覚ましても可笑しくない筈なんだけど……なんでだろう……」

 

 

未だに目覚める気配がない零と幸助を案じるように、フェイト達とスバル(中島)の視線が二人の眠るベッドに向けられていく。そんな彼女達の視線を追うように大輝も二人を見つめると、アリサが零の眠るベッドに近寄り零の掛け布団を直していく。

 

 

アリサ「まったく、懲りずにまたみんなに心配掛けて……さっさと起きなさいよ……このバカ」

 

 

口ではそう言いつつも、実際は彼女も心配しているのだろう。アリサは不安げな顔で死んだように眠る零を見つめ、フェイトはそんなアリサへと近付いて励ますように彼女の肩に手を置いていく。そんな時……

 

 

 

 

零「……っ……ぅ……」

 

 

アリサ「?!零?!」

 

 

フェイト「零っ!」

 

 

 

 

ベッドで眠る零が突然呻き声を漏らし、苦しげに顔をしかめたのだ。それを見たアリサとフェイトは慌ててベッドに眠る零に近づき、シャマルも零のベッドに近づいて零の身体を揺らしていく。

 

 

シャマル「零君!聞こえる?!私達の声が分かる?!」

 

 

零「……ッ……シャマ、ル……アリサ……フェイト……?」

 

 

フェイト「零…!良かった!」

 

 

アリサ「大丈夫よね?私達の事、分かる?!」

 

 

漸く目覚め、朧げな意識の零に自分達の事が分かるか必死に呼び掛けるアリサ。すると零は、ゆっくりと目を動かしてシャマルの顔を見た後、アリサとフェイトに視線を向けて……

 

 

 

 

零「109……118……あぁ……その有り得ないサイズは間違いなくお前ら―バキャアァァッ!!!―ごばあぁッ?!」

 

 

 

 

零がぼんやりと何かの数字を口にしながらそう告げた瞬間、目にも留まらぬ速さのアリサの鉄拳が零の顔面に、フェイトのボディーブローが零の腹にほぼ同時に捩り込まれ、零は再び意識を刈り取られてベッドに力無く沈んでいったのだった。

 

 

アリサ「うん、意識はしっかりしてるみたいね」

 

 

フェイト「みたいだね」

 

 

シャマル「い、いえ、あの……零君、今のでまた気を失っちゃってるんだけどっ……」

 

 

大輝「おいおい……やっと目を覚ましたのにまた気絶させてどうするんだい?もう一度起こしてくれたまえよ、こっちは彼とこの後の戦いについて話があるんだから」

 

 

先程までの心配そうな表情から一変して全くの無表情になったアリサとフェイトに苦笑いするシャマルと、漸く目覚めた零をまた気絶させられ二人を睨む大輝。するとアリサは何か考えるように思案した後……

 

 

アリサ「フェイト。確か、前に私達が零に内緒で使ったナマコ料理が、まだ台所に残ってた筈よね?アレ、ちょっと持って来てくれる?」

 

 

フェイト「?どうするの?」

 

 

アリサ「ナマコをこいつの口に捩込んで無理矢理にでも叩き起こすのよ。ついでにいつまでもナマコ嫌いを克服しないコイツを、私達で後押ししようってわけ」

 

 

フェイト「ああ、成る程」

 

 

シャマル「……それ、下手したらまた零君が気絶するかもしれない気が……」

 

 

大輝(中々容赦ないね……まあ止める気は全然ないけど)

 

 

ポンッと掌に拳を下ろして納得するフェイトに苦笑いを深めて冷や汗を流すシャマル。その会話を聞いてた大輝は零が目を覚ますなら何でもいいのか傍観に徹し、スバル(中島)はなんとも言えぬ顔で苦笑を浮かべながらその光景を見ていたのだった。

 

 

 

 

そして、フェイトが台所にナマコ料理を取りに行ってから数十分後、館内中に零の大絶叫が響き渡ったのは言うまでもなかった……。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―町外れの洞窟―

 

 

鳴滝「――アポロガイストめ。もっと上手く立ち回りさえすれば、ディケイドを始末出来たものを……」

 

 

時渡り町から遠く離れた地に位置する山の山頂の洞窟。その奥に、コートを身に纏った男……ネオアポロガイストを蘇らせたこの事件の元凶のひとりである鳴滝が、洞窟の奥で眠る巨大な"何か"を見つめていた。

 

 

鳴滝「ガオウの為にコレも蘇らせたというのにまんまと倒されるとは……まあいい。先程回収したこれさえあれば、ガオウも必要ないだろう」

 

 

そう呟きながら鳴滝が懐から取り出したのは、冥王のパスと同じ形状をした金色のパスケース……ガオウが牙王への変身に用いていたマスターパスであり、鳴滝はマスターパスから目の前に存在する巨大な何か……列車の様な姿をした物体に目を向けて口端を不気味に吊り上げた。

 

 

鳴滝「今度こそ、このクロノスの世界が貴様の墓場だ……ディケイド」

 

 

確信に満ちた様な声で鳴滝がそう告げたと同時に、今まで沈黙していた列車の姿をした何かの瞳の部分が怪しげに輝き、徐々に起動し始めていたのだった。

 

 



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劇場版小説/仮面ライダーディケイド&クロノス 過去と未来の激闘⑥

 

 

 

―時渡り町・市街地―

 

 

平穏な生活の光景が広がる時渡り町の市街地。そんなビル街の中心に突如歪みの壁が出現し、其処からゆっくりと五人のライダー達が姿を現した。

 

 

エターナル『まずは、この街の住人を絶望に落とさないとなァ……芦原』

 

 

トリガー『了解』

 

 

エターナルの命令に事務的に答えながら、トリガーは腰のバックルからトリガーメモリを抜き取って右手のトリガーマグナムに装填し、銃口をマキシマムモードに切り替えた。そして……

 

 

『TRIGGER!MAXIMUM DRIVE!』

 

 

トリガー『ライダーシューディング……』

 

 

―バシュウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!ドッガアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーアァンッッッッ!!!!―

 

 

「っ!!?う、うわあああああああああああああああああああっっ!!?」

 

 

「きゃああああああああああああああああっっ!!!」

 

 

引き金を引きトリガーマグナムの銃口から撃ち出された巨大な砲撃が複数のビルに直撃して次々と倒壊させていき、無数の瓦礫がビルの真下を歩く人々を襲い下敷きにしていってしまい、平穏な町並みは一瞬の内に地獄と化したのだった。

 

 

エターナル『フフフッ……はっははははははははっ!逃げ惑え!恐怖で絶望しろ!ふははははははははははははははっ!!』

 

 

地獄の業火に包まれる街と恐怖で逃げ惑う人々の姿を目にし、両手を広げながら狂った様に笑うエターナル。そしてこの状況を更に混沌化させようと、エターナルの背後に控えるNEVERが不気味に笑いながら人々に向かって歩き出そうとした。其処へ……

 

 

―ブオォォォォォォォォォォォォォォォォオンッ……キイィィィィィィッ!!―

 

 

スバル(中島)「――っ!これは……!」

 

 

悲痛な悲鳴と共に逃げ惑う人々の間を駆け抜け、二台のマシン……マッハキャリバーに乗るスバル(中島)とレイジングゼオライマーに乗るなのは(不破)となのはがその場に到着し、馴染みのある自分達の街が業火に包まれる光景を見て言葉を失ってしまうスバル(中島)となのは(不破)。そして、なのはも変わり果てた街の姿を見て怒りを覚え思わずエターナル達を睨むが、その五人のライダー達を見て驚愕の表情へと変わった。

 

 

なのは(アレは……エターナル?!それにジョーカーみたいなライダー達までっ……どうして此処に?!)

 

 

そう、燃え盛る街の中心に悠然と佇む白いライダー……その正体は、自分達が前の世界で戦って倒したハズの仮面ライダーエターナルだったのだ。他にも翔一のジョーカーと同じ姿をした四人のライダー達もおり、色彩からしておそらく他のNEVERの一員なのだろうとすぐに理解でき、何故一度は倒したハズの彼等が此処にいるのか分からず激しく動揺するなのはだが、スバル(中島)は構わずにマッハキャリバーから降りエターナル達を睨みつけた。

 

 

スバル(中島)「何をしているの……貴方達!」

 

 

この惨状が彼等の手による犯行なのは明確だ。慣れ親しんだ自分達の街を焼かれスバル(中島)は怒りの表情でエターナル達を睨みつけ、なのは(不破)も既に憎悪と嫌悪の域の感情で五人を睨んでいるが、エターナルはどこ吹く風と言うように鼻を鳴らしていく。

 

 

エターナル『見て分からないか?この街を地獄に変えるんだよ……俺達の目的の為にな』

 

 

スバル(中島)「そんな……どうしてそんな!?」

 

 

エターナル『そんなことを聞いてどうする?お前たちもどうせ死体の仲間入りになるんだ、関係ないだろう?』

 

 

馬鹿馬鹿しげに笑いながら、話し合う余地などないと切り捨てるエターナル。それを聞いた三人も話し合いは無駄だと悟り、それぞれドライバーとベルトを装着しながら並び立って変身の構えを取っていく。そして……

 

 

『変身っ!』

 

 

『GATE UP!』

 

『Mei-O Form!』

 

『KAMENRIDE:TRANS!』

 

 

バックルにカードとパスをセット&セタッチし電子音声が鳴り響くと同時に二人のなのははトランスと冥王に変身し、スバル(中島)も光りに包まれジェネシックへと変身しエターナル達に向けて構えていく。

 

 

ヒート『克己……あの青髪が変身した仮面ライダーと戦わせて?ムカつくから』

 

 

メタル『俺はあのスゲェー殺気を放つ白いライダーとやりてぇ!』

 

 

トリガー『俺は……トランスを』

 

 

エターナル『……良いだろう。京水、俺達は別の場所に向かう』

 

 

ルナ『良いわよぉ。貴方のそういうの、嫌いじゃないわ』

 

 

一歩前に踏み出してこの場を引き受けるヒート達に後を任せると、ルナは手短なビルに極限まで手を伸ばし、エターナルを抱えてその場から離れていった。

 

 

 

ジェネシック『待てっ!―ブザアァッ!!―ッ?!』

 

 

ヒート『行かせないよ?』

 

 

エターナルとルナを追おう慌てて駆け出すジェネシックだが、それを阻むようにヒートが真横から上段蹴りを放って妨害し進行方向に立ちふさがった。

 

 

ヒート『私より熱い情熱を持つなんて、気に入らない……灰にしてあげるっ!』

 

 

ジェネシック『くっ!』

 

 

忌ま忌ましげにそう告げると共に、両手に炎を纏ってジェネシックに目掛け突っ込み、宙にオレンジの線を描きながら腕を振るい殴り掛かるヒート。それに対しジェネシックも迫り来る拳を上手く弾きながら拳底をヒートの腹に打ち込んで後退りさせ、ヒートに飛び掛かり反撃を開始していくのだった。

 

 

冥王『……私の相手は貴方なの?』

 

 

メタル『ああ、似たような得物同士、仲良くやろうやァッ!』

 

 

冥王『暑苦しいの……まあいいの。さぁ、恐怖の悲鳴と断末魔の殺戮オーケストラを奏でるの!』

 

 

メタルシャフトを手にして吠えるメタルに向けて殺気を全開し、両腰のメイウオガッシャーを薙刀に変えて斬りかかっていく冥王。そしてその端では……

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガアァッ!!!―

 

 

トランス『クッ!どうしてまた貴方達がっ?!』

 

 

トリガー『…………』

 

 

ライドブッカーGモードとトリガーマグナムから撃ち出される互いの銃弾が相殺し合い、ライドブッカーの引き金を引きながら疑問を投げ掛けるトランスだが、トリガーは一向に口を開こうとせずトランスの急所に目掛けてトリガーマグナムを乱射させていくのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

そして、ジェネシック達とヒート達が戦闘を開始したのと同じ頃。六人が戦う戦場から遠く離れた高層ビル屋上に逃走したエターナルとルナはビル群を見回し、追っ手が来てないのを確認して再び別の場所に移動しようとするが、その時二人に銃弾が命中して怯ませた。

 

 

エターナル『くっ!』

 

 

ルナ『アイタァッ?!何よ今の!』

 

 

突然の攻撃に驚愕しながら二人が銃弾が放たれてきた方に振り向くと、其処には緑の服を着た黒髪の少年と幸助と瓜二つの顔の少女が、二人を待ち受けていたかのように立っていた。

 

 

「やあ、久しぶりだね……大道克己」

 

 

エターナル『?!貴様……フィリップか?!』

 

 

エターナルは緑の服を着た黒髪の少年……それが嘗て自分を倒した宿敵のダブルの片割れであるフィリップだと知り驚愕を隠せぬ様子で身じろぎ、フィリップはそんなエターナルと対峙するように前に踏み出した。

 

 

フィリップ「風都だけでは飽きたらず、この街にも死の風を吹かす気かい?」

 

 

ルナ『何よアンタ……どうしてこの世界に!?』

 

 

フィリップ「ある人の頼みで来たまでさ……まだ僕の本体は修復中なんだけど、マリアさんの為にも、大道克己……僕はもう一度、君を止めないといけない」

 

 

「……幸助の好きな街……壊させない」

 

 

力強い眼差しでエターナルを見据えながらフィリップは懐から取り出したロストドライバーを、フィリップの隣に並び立つ様に幸助と瓜二つの少女……アルファはアルファギアを何処からか取り出して腰に装着し、フィリップは更に緑色のガイアメモリを、アルファは右手に持つ携帯を開き1の番号を三回押してエンターキーを押した。

 

 

『CYCLONE!』

 

『Standing by…』

 

 

『変身っ!』

 

 

『CYCLONE!』

 

『Complete!』

 

 

ドライバーとアルファギアのバックルにガイアメモリと携帯をセットすると共に電子音声が鳴り響き、フィリップの姿が黄色のラインが走る緑のボディーの仮面ライダー……サイクロン、アルファはファイズに酷似した外見のαをモチーフにした仮面ライダー……アルファへと変身しエターナルとルナと対峙した。

 

 

サイクロン『もう一度君に言うよ、大道克己……さあ、お前の罪を数えろ!』

 

 

アルファ『ミッション……スタート』

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダーディケイド&クロノス 過去と未来の激闘⑦

 

 

―TIME学園―

 

 

『キシャアァァッ……!』

 

 

『グルァァァァッ……』

 

 

ジェネシック達が市街地で戦ってるその頃。TIME学園に様々な世界の怪人が大群で続々と迫りつつあり、その先頭にはネオアポロガイストとオーガ(肩車されながら噛みつかれてるルーミア付き)の姿があった。

 

 

『ククク……奴らが死者共に気を取られている隙に、学園の生徒を人質に取るのだ!』

 

 

オーガ『……ちっ』

 

 

ルーミア「……そーなのかー」

 

 

ネオアポロガイストがこれから行おうとする作戦が気に入らず、不快げに舌打ちするオーガとあからさまに不愉快そうなルーミア。それでも私情を押さえようと沸き上がる感情を押し止め、怪人達が学園の門を潜ろうとする光景を黙って見届けようとした。その時……

 

 

 

 

 

―ブオォォォォォォォォォォォォォォォォオンッ!!バキャアァッ!!―

 

 

『ギシャアァッ?!』

 

 

『グオォッ?!』

 

 

『ッ?!』

 

 

怪人達が学園の敷地内に足を踏み入れようとしたその瞬間、二台のマシンが真横から飛び出し怪人達を撥ね飛ばしていったのだった。突然現れたマシンに怪人達やネオアポロガイスト達が驚愕し後退りすると、怪人達の前に立ち塞がった二台のマシン……マシンディケイダーに乗った零とタイムストライクに乗った幸助はそれぞれのマシンから降り、ネオアポロガイスト達と対峙していく。

 

 

零「やっぱり此処に来たか……。お前らみたいな連中が考えることは何処も一緒らしいな……うっぷっ……まだナマコの食感がっ……」

 

 

幸助「よくも俺に不意打ちしてくれたなこの野郎……100倍返しだっ!」

 

 

何故か青ざめた顔で片手で口を塞ぎながら皮肉る零と、明かな私念でネオアポロガイスト達の前に立つ幸助。そんな二人を見てネオアポロガイストも一瞬驚きはするも、すぐに平静を取り戻し軽く鼻を鳴らした。

 

 

『大人しく寝ていればいい物を……まずは貴様らから血祭りにあげてやろうっ!行け!怪人共よ!』

 

 

『イーーーッ!!』

 

 

『ガアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』

 

 

ネオアポロガイストの命令にショッカー戦闘員やクライシスの怪人、グロンギやファントム達が雄たけびを上げながらジリジリと二人に迫り、零はディケイドライバーを片手に目の前から迫り来る怪人達を見て溜め息を吐いた。

 

 

零「これはまた数が多いな……」

 

 

幸助「ビビってるのか、破壊者?」

 

 

零「いいや……こんな数、未来のアンタの修行に比べれば屁でもないさ」

 

 

幸助「……(未来の俺……どんだけスパルタなんだよ)」

 

 

薄く息を吐いて首を振る零の言動に流石に未来の自分が不安になったのか、冷や汗を流す幸助。だが、そうこうしてる間にも眼前から怪人達が迫り、零と幸助は真剣な表情へと変わって腰にドライバーとベルトを巻き、変身の構えを取った。そして……

 

 

零&幸助『変身っ!』

 

 

『KAMENRIDE:DECADE!』

 

『GATE UP!』

 

 

二つの電子音声が鳴り響くと同時に零はディケイド、幸助はクロノスに変身して複眼を輝かせ、ディケイドはライドブッカーをソードモードに、クロノスはクロノスブレイドを取り出してスッと刃を撫でていく。

 

 

ディケイド『よし、ケリを付けるぞっ!』

 

 

クロノス『纏めて弄り倒すぜっ!』

 

 

『グルアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーッ!!!』

 

 

ディケイドとクロノスが勢いよく啖呵を切ったと同時に、怪人の群れが地響きのような雄叫びと共に二人に向かって襲い掛かり、二人は最初に飛び掛かってきた怪人達を斬り捨てて大群の中へと飛び込もうとした。その時……

 

 

 

 

 

―ファアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!―

 

 

『ゴアァッ?!』

 

 

『ガハアァッ!』

 

 

クロノス『?!何……?』

 

 

ディケイド『これは…デンライナー?』

 

 

上空から突如白い電車……デンライナーが汽笛を鳴らしながら現れ、ディケイドとクロノスを襲おうとした怪人達の半数を轢いて二人の目の前に停車していったのであった。突然目の前に現れたデンライナーにディケイドとクロノスだけではなく、怪人達やネオアポロガイスト達も目を見開くが、それを他所にデンライナーの扉が音を立てて開き、中から数人の男女が降りてきた。それは……

 

 

 

 

 

「よし、幸助の世界に到着だな」

 

 

「だな……ったく、面倒なことになったな幸助?」

 

 

映紀「やっと戻って来れたぜ……」

 

 

姫「むぐむぐっ……流石は後の七柱神が想像した時の列車だ。中々に快適だったし料理も贅沢な逸品ばかりだな」

 

 

魚見「珈琲も中々の珍味でしたしね。しかし、珈琲を飲むときに付いたミルクが完全に取れませんでした……母乳が出てると思われたらどうしましょう?」

 

 

優矢「人は其処まで妄想豊かじゃありません……」

 

 

アズサ「あ、零、ただいま」

 

 

シロ『にゃあ!』

 

 

デンライナーの扉から降りてきたのは、幸助の親友であり戦友の【始まりの三柱神】と後に呼ばれるようになった二柱の神のライダー……想像と英雄の神『ベルクロス』の東海竜也と狩人の神『テスタメント』の工藤京介。

 

 

そして鳴滝の手によって別世界のミッドに飛ばされていた優矢、映紀、アズサ、シロ、姫、魚見の七人と一匹だったのだ。

 

 

クロノス『竜也!京介!』

 

 

ディケイド『アズサに映紀?!木ノ花と魚見……あ、優矢もか』

 

 

優矢「って待てや零!何だその『お前も居たのか?』みたいな言い方っ!!」

 

 

ディケイド『いや、そんな濃い面子の中に混じられたら分からんよ。お前ただでさえ影薄いのに……』

 

 

優矢「ぐっ……お、俺だって……俺だって……もっと出番が欲しいんだよォォォォォおおおおおお!!!」

 

 

なんとも言えぬ顔のディケイドにそう言われてなにも言い返す事が出来ず、優矢はそのまま悲劇のヒロインのように涙しながら何処かへと走り去ってしまった。

 

 

クロノス『……何しに来たんだあいつは』

 

 

姫「こら零、あんまり優矢を虐めてやるんじゃない。あれでも傷付き易いんだぞ彼は」

 

 

ディケイド『虐めるも何も、事実なんだから仕方ないだろう』

 

 

魚見「それでも言葉には気をつけた方がいいですよ?言葉のちょっとした違いで、今の様に人を傷付けるんですから」

 

 

姫「ウオミーの言う通りだ。君もマグロ野郎と言われるより不動明王と呼ばれた方がまだ気分がいいだろう?」

 

 

ディケイド『それ根本的な部分からもう意味違うからな……?』

 

 

何処かへと走り去っていく優矢に呆気を取られるクロノスの横で、得意げな姫に無表情でツッコミを入れるディケイド。そんな彼等を尻目にクロノスは気を取り直すように咳ばらいすると、竜也と京介と向き合っていく。

 

 

クロノス『で、よく来てくれたな竜也、京介』

 

 

竜也「当然だろ親友?前に俺の世界で助けてもらったしな」

 

 

京介「俺もだ……借りは返さないとな」

 

 

アズサ「零……私達も戦うよ」

 

 

ディケイド『アズサ……いや、だが――』

 

 

映紀「良いからとっとと片して来い。考えてもみろ?この面子で、こんな雑魚共に遅れを取ると思うか?」

 

 

姫「それに、断罪の神に消えられたら私達の出会いも消えてなくなってしまうんだ……それだけは、絶対に許す訳にはいかない」

 

 

魚見「右に同じく、です」

 

 

ディケイド『……分かった、気をつけろよ?』

 

 

アズサ「うん…!」

 

 

ディケイドとクロノスに向けて力強く頷くと、竜也、京介、アズサ、映紀、姫、魚見は二人の前に出てそれぞれ変身ツールを取り出し、変身の構えを取った。そして……

 

 

『変身っ!』

 

 

『CHANGE UP!SYUROGA!』

 

『KAMENRIDE:DISPAR!』

 

『F・I・S・T・O・N!』

 

 

電子音声と共に六人の姿がベルクロス、テスタメント、シュロウガ、ディスパー、イクサF、ファムに酷似した仮面と胴体にブレイドの両腕を合わせた様な桃色と純白のツートンカラーのライダー……『聖桜(セイオウ)』へと変身し、六人は一斉に怪人達に向け身構えた。

 

 

ベルクロス『突破口は俺達が開く……アポロガイストとオーガは任せるぞ幸助!ディケイド!』

 

 

テスタメント『ここは竜也と俺達に任せろ!』

 

 

シュロウガ『だから行って、零!』

 

 

ディケイド『ああ、幸助!』

 

 

クロノス『よし、行くぞ!』

 

 

ベルクロスとテスタメントが突き出した片手の手の平から巨大な砲撃が放たれ、大群の敵を蹴散らして中央に道を作った。それを見たディケイドとクロノスも顔を見合わせて互いに頷くと、怪人達に目もくれず二人が作った道を疾走してネオアポロガイストとオーガの下に向かっていくのだった。

 

 

イクサF『二人も行った様だな……さて、ならこちらもやるか!』

 

 

ディスパー『ああ、纏めて片付けてやるぜっ!』

 

 

聖桜『本当なら桜井さんの力もお借りしたかったんですが……まあないものを値だっても仕方ないですね』

 

 

未だに目眩を覚えてしまいそうな数の怪人達の大群にやれやれと溜め息を吐いてしまう聖桜だが、それでも闘志は萎えず背中のマントを翻して構えを取り、他のメンバーも気と魔力を全開にし残りの群れに構えた。その時……

 

 

 

 

『――流石に数が多いみたいだから、援軍を貸してあげるよ』

 

 

『ッ?!』

 

 

 

 

何処からか不意に聞き覚えのある声が響き渡り、それと共に六人の目の前に突如歪みの壁が現れ、其処からゆっくりと一人のライダー……大輝が変身したディエンドが姿が現した。

 

 

シュロウガ『大輝?』

 

 

ディエンド『やあ諸君。前の世界ぶりだね?』

 

 

ディスパー『お前っ、一体何しに来やがった?!』

 

 

ディエンド『今言っただろ?今回はかなりやばいから、手を貸しに来たのさ』

 

 

また何か横槍を入れに来たのかとディスパランサーで怪人を纏めて斬り払い突然現れたディエンドに食ってかかるディスパーだが、それに対しディエンドは軽い調子でそう返しながら何処からかケータッチを取り出し、コンプリートカードを装填して画面をタッチしていく。

 

 

『CLONOS!CANCELA!FIRST!TOUGA&SIVA!EDEN!HOTARU!MA-O!EXE!STRIKE!』

 

『FINALKAMENRIDE:DI-END!』

 

 

最後にディエンドの紋章をタッチすると共に電子音声が響き渡り、ディエンドの姿がコンプリートフォーム(外史のライダー版)に強化変身していく。そしてディエンドは強化変身完了と共にバックルからケータッチを取り外し、画面に浮かび上がる紋章を順番にタッチしていく。

 

 

ディエンドCP『さあ、出血大サービスだ』

 

 

『CLONOS!KAMENRIDE:FINAL!』

 

『CANCELA!KAMENRIDE:ALPHA!』

 

『FIRST!KAMENRIDE:ZERO DRIVE!』

 

『TOUGA&SIVA!KAMENRIDE:DESPERADO!』

 

『EDEN!KAMENRIDE:QUANTA!』

 

『HOTARU!KAMENRIDE:MASTER!』

 

『MEI-O!KAMENRIDE:OMEGA!』

 

『EXE!KAMENRIDE:EXTRA!』

 

『STRIKE!KAMENRIDE:MATERIAL!』

 

 

画面に浮かび上がる紋章の全てをタッチして電子音声が響き渡り、ディエンドが腰のバックルにケータッチを戻したと共にディエンドの左右に九つの人型の残像が現れて徐々に実体化していき、九人の外史ライダーの最終フォームが現れた。

 

 

ディエンド『さらに!』

 

 

再び腰のバックルからケータッチを取り外し、左腰のホルダーからまた別のコンプリートカードを取り出してカードを入れ替え、新たにタッチし始めた。

 

 

『FRANCDOLL!YUKARI!SUICA!MOKOU!EIKI!SUWAKO!TENSHI!KOISHI!NUE!』

 

『FINALTOUHOURIDE:DI-END!』

 

 

再度電子音声が響くと共にケータッチをバックルへと装填すると、ディエンド・コンプリートフォームの胸のカードが九人の少女達の絵柄のカードへと変化していき、ディエンドは更にもう一枚カードを取り出してディエンドライバーに装填しスライドさせていった。

 

 

『ATTACKRIDE:EX BOSS!』

 

 

ドライバーからの電子音声と共に銃口を頭上に向けて引き金を引くと、銃口から放たれた九つの弾丸がディエンドの目の前に降り注ぎ、それらは全て少女(?)達の姿となってディエンドの前に立ち並んだ。

 

 

 

ありとあらゆるものを破壊する程度の能力を持つ狂気の吸血鬼……フランドー・スカーレット。

 

 

境界を操る程度の能力を持つ、もっとも古くから生きている一妖一種の妖怪……八雲 紫。

 

 

密と疎を操る程度の能力を持つ鬼……伊吹 萃香。

 

 

老いる事も死ぬ事も無い程度の能力を持ち、炎を自在に操る蓬莱の少女……藤原 妹紅。

 

 

白黒はっきりつける程度の能力を持つ地獄の裁判官の閻魔(ロリ)……四季映姫・ヤマザナドゥ。

 

 

坤を創造する程度の能力を持つ蛙の姿をした神……洩矢 諏訪子。

 

 

大地を操る程度の能力を持つ自己中の天人……比那名居 天子。

 

 

心を読む能力のせいで皆に嫌われることを知ったため、心を読む第三の眼を封印した無意識を操る程度の能力を持つ妖怪の少女……古明地 こいし。

 

 

正体を判らなくする程度の能力を持ち、人前に姿を現さず、人間が自分のことを怯えて姿を想像する様子を楽しんでいる鵺の妖怪……封獣 ぬえ。

 

 

ディエンドCP『んじゃ、俺は零に用があるから後は頼むね』

 

 

怪人の群れに指鉄砲を向けながらそう告げたと同時に、ライダーと東方キャラ達は一斉に怪人達に目掛けて走り出して攻撃を開始していき、ディエンドはその間にディケイドとクロノスの後を追い走り去っていくのだった。

 

 

ベルクロス『……超豪華なゲストだな』

 

 

テスタメント『ああ……負けてられないな』

 

 

ディスパー『アイツにだけいいとこどりなんてさせるかよ、行くぞっ!』

 

 

シュロウガ『うん、頑張る……!』

 

 

怪人達に猛攻撃を仕掛ける外史ライダーと東方キャラ達の姿を見て呆気に取られたが、六人はすぐに気合を入れ直し、それぞれの武器を構えて怪人の群れの中に飛び込んでいった。

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダーディケイド&クロノス 過去と未来の激闘⑧

 

 

 

―時渡り町・市街地―

 

 

ヒート『ハァッ!フンッ!ハッ!!』

 

 

ジェネシック『くぅッ?!うあぅっ!』

 

 

そして場所は戻り、市街地でエターナルとルナを除くNEVERと三者三様の戦いを繰り広げるトランス達だが、その中でジェネシックは、ヒートの猛攻に押されて徐々に後退し始めてていた。最初こそはヒートと一進一退の格闘戦を繰り広げていたものの、ヒートの鋭い戦闘術に圧倒されて次第に防戦一方となっていたのである。

 

 

ジェネシック(はぁ…はぁ……この赤い仮面ライダー……強いっ……)

 

 

ヒートが素早く振り抜いた炎の拳を上手く払いながら、ジェネシックは心の中で素直にそう思った。純粋な強さなら互角の筈なのに、此処まで圧されるのはやはり経験の差なのかもしれない。

 

 

幼い頃から裏の世界で幾つもの修羅場を潜り抜けてきた幸助やなのは(不破)とは違い、自分はただ修行だけ……。

 

 

其処に大きな差があるのかもしれないが、恐らくそれだけではない。

 

 

ヒートの拳から伝わってくる感情……負けられないという想いが、彼女自身の心の強味となってるのかもしれない。

 

 

正直立ってる事すら限界に近いが、それでも負けていられないと、ジェネシックは弱気になりつつある自分を奮い立たせようとするが……

 

 

ヒート『ちっ、しぶといね……さっさと倒れなッ!』

 

 

―ズガアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーアンッッッ!!!―

 

 

ジェネシック『っ!!?』

 

 

どんなに全力で拳や蹴りを打ち込んでも倒れようとしないジェネシックに痺れを切らし、トドメと言わんばかりに放たれた炎を纏ったヒートの渾身の連続攻撃がもろに決まり、ジェネシックは地に両足を着けたまま後方へと勢いよく吹っ飛ばされていってしまう。吹き飛ばされながら燃えるような痛みが全身を駆け巡るが、ジェネシックは仮面の下で唇を噛み締め……

 

 

ジェネシック『――負、けて……たまるかぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああっっ!!!!』

 

 

―ドバアアァァッッ!!!シュンッッ!!!―

 

 

ヒート『?!―バキイィィッ!!!―ウアァッ?!!』

 

 

全身の痛みを吹っ飛ばすかのように限界まで体中から気を放出し、そのまま残像の如くヒートの目の前から消えながら一瞬で接近し、ヒートの顔面を殴り付けたのだった。

 

 

ジェネシック『ゲム!ギル!』

 

 

ヒート『くっ?!カハッ!』

 

 

更に続けて右手でヒートの顔を殴り、左手で肩を掴み空へと投げ飛ばす。

 

 

ジェネシック『ガン!ゴー!』

 

 

投げで空中に浮いたヒートに右足で腹部を蹴り、左足で頭部に踵落としを繰り出し、

 

 

ジェネシック『グフォ!!!』

 

 

―ズガアァァァァッ!!!―

 

 

ヒート『あああああっ?!』

 

 

右ストレートでぶん殴って吹っ飛ばすと同時に、莫大なエネルギーが蓄積された右手と左手を合わせヒートに向けて突き出した。

 

 

ジェネシック『はあああああああああああああ!!!』

 

 

―ガキイィィィィィィィィィィィィィインッ!!―

 

 

ヒート『?!か、体が?!』

 

 

両手から放出された衝撃波がヒートの動きを捕らえ、全く身動きが取れなくなった自分の身体に驚愕し動揺するヒート。そして……

 

 

ジェネシック『ウィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイタァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!』

 

 

―ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーアァンッッッ!!!!―

 

 

ヒート『がっ……?!!!キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

 

地面を破壊しながらヒートに目掛けて突進したジェネシックの両手が腹部を貫通し、ヒートの腹から夥しいどす黒い何か……最早生きてる人間の物ではない黒い血を噴き出しながら吹っ飛ばされたのだった。完全に技が決まり、出血の量からしてもう戦いを続ける事は出来ない筈だ。だが……

 

 

ヒート『―――がっ……ぅ……まけ……負けられないのよ……克己の……私達の目的の為にも……生きてる人間を死人に変えるためにも……私を裏切った克己をもう一度信じる為にもっ!』

 

 

大量の血が溢れ出る腹部を押さえながら、ガクガクと震える足で尚も立ち上がり戦おうとするヒート。ジェネシックはそんなヒートを見て悲しげに眉を潜めると、瞼を伏せて心の中で彼女に謝り、無言のまま片腕を空に掲げた。

 

 

ジェネシック『……マッハキャリバァァァァアアアアアアアアアアアアっ!!』

 

 

―ブオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーオォンッッ!!!!―

 

 

片腕を掲げ高らかに叫ぶと共に、ジェネシックの背後からジェネシックのマシンであるマッハキャリバーが自動操縦で駆け付け、走りながら巨大な黄金の右腕と黄金の槌のようなパーツに変形しながら分離し、そのままジェネシックの右腕に装着されていった。

 

 

ジェネシック『マッハクラッシャァァァァアアアアアアアアアア!!』

 

 

ハンマーから放たれる金色のオーラがジェネシックを包み込んで黄金に光り輝き、右手に握り締める黄金のハンマーをヒートに向けて突き付けていく。

 

 

ジェネシック『……同情はしないよ。この街を、家族を、友達を……好きな人を守るためなら、私は破壊神になる!だから……貴女を殺します!!』

 

 

自分にも守るべき物がある。その為なら敵である彼女も倒すと、迷いのない覚悟を秘めた瞳でジェネシックがそう告げると、ヒートはこちらを向いて何かを悟っていた。

 

 

ヒート『……いいよ……私は元々死んでるし……気にしなくていい……どうせ私は、克己にとって捨て駒でしかない……私達のヒーローだった克巳は……もう、何処にもいないんだから……』

 

 

そう呟くヒートは、何故か仮面の裏で涙を流しながら笑ってる気がすると思った。そしてそんなヒートの姿を見て何かを感じたのか、ジェネシックは突き付けたハンマーを徐に下ろすと、穏やかな声で語り掛けた。

 

 

ジェネシック『……私は中島スバル。貴女は、名前はなんていうんですか?』

 

 

ヒート『羽原、レイカ……これから殺す人間の名前を聞くなんて、変な女ね』

 

 

ジェネシック『私は殺した人を背負って生きていく気はないよ……でも、殺した人の名前は覚えていくつもりです。それが私の罪だから』

 

 

ヒート『そう……勝手にしなさい』

 

 

そう言って、ヒートはまるで眠るように瞼を閉じ顔を俯かせていく。それを合図と受け取ったジェネシックはゆっくりと右手のハンマーを振り上げ、そして……

 

 

ジェネシック『羽原さん……光にぃぃい!なぁあああああああれぇぇぇええええええええええええええええええええ!!!!』

 

 

咆哮と共にジェネシックが全力で振り下ろした黄金のハンマーが迷いなくヒートに叩き付けられ、ヒートの身体は徐々に光の粒子と化して空へと昇華していく。その間際……

 

 

ヒート『先に逝ってるわ……地獄で会いましょう……克己……』

 

 

完全に光となって消滅する寸前、何処か穏やかな声でそう呟き、その言葉を最期に光となって空へと消えていったのだった……。

 

 

ジェネシック『……勝った』

 

 

そして、ヒートのその最期をしっかりと見届けた後、ジェネシックはゆっくりとハンマーを上げながら変身を解き、そのままその場に仰向けで倒れ込んだ。

 

 

もう気も体力も使い切った。

 

 

体中が痛くて、今にも気絶しそうだった。

 

 

スバル(中島)「……強かったな」

 

 

そんなボロボロの状態なのに、脳裏に思い浮かぶのは先程まで戦ってた相手……羽原レイカの事だった。

 

 

彼女は確かに強かった。だが……彼女は道を間違えた。

 

 

自分は……間違えたりしない。

 

 

その為にも、もっと、彼女よりも強くならないといけない。

 

 

心の中でそう強く決心し、スバル(中島)はマッハキャリバーに運んでもらうよう頼んでそのまま気絶した。

 

 

後のことを、親友の彼女に任せて……

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

メタル『ウオオオラアァァァァァァァッ!!』

 

 

―ブオォンッ!!ブオォッ!!―

 

 

冥王『……はぁ』

 

 

スバル(中島)がヒートを倒したのと同じ頃、メタルが振りかざすメタルシャフトを身を僅かに動かして避けながら、冥王はあからさまに落胆していた。

 

 

この銀色のライダーは確かに攻撃力は高いが……それだけだ。

 

 

動きは単調、非常に読みやすいし避けやすい。

 

 

これでは自分が望む心躍る戦いなど求められそうにはないと分かり、既に冥王はやる気なく攻撃をかわすばかりだった。

 

 

メタル『んの野郎っ……!ちょこまかちょこまかと、やる気ねぇのかテメェ!!』

 

 

冥王『煩いの』

 

 

全く戦う素振りを見せない冥王のやる気のない態度が癪に障ったのか、怒号と共にメタルシャフトを振り上げ叩き付けようとするも、冥王は一瞬でメタルの背後に回り込み、背中を薙刀で斬り付けた。

 

 

メタル『グアッ!!このっ……アマぁぁああああ!!』

 

 

冥王『はぁ……この程度の攻撃も避けられないなんて……もういいの』

 

 

―ドガアァッ!―

 

 

メタル『グアァッ?!』

 

 

遊びはおしまいと言わんばかりに放たれた回し蹴りがメタルの頭に直撃して吹っ飛ばして、冥王はつまらなそうに嘆息しながら何処からか取り出したパスをバックルへとセタッチした。

 

 

『Full Charge!』

 

 

メタル『させるかァ!!』

 

 

電子音声が鳴り響くと共に薙刀に強大なエネルギーが蓄積されていき、それを目にしたメタルは冥王が技を放つ前に息の根を止めようと、メタルシャフトを振り上げながら冥王に正面から突っ込んだ。が……

 

 

 

 

―フッ……―

 

 

メタル『なっ……消え……』

 

 

―シュババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババアァッッッッ!!!!!!―

 

 

メタル『ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア??!!』

 

 

 

 

冥王が一瞬でメタルの視界から姿を消したと同時に、メタルの身体を視えない何かが高速で斬り刻んだのであった。そうして何百回と斬りつけられた後、メタルの真後ろに冥王が音もなく姿を現し、直後にメタルは断末魔を上げながら粉々に爆散したのだった。

 

 

冥王『全然オーケストラにもならない断末魔だったの』

 

 

非常につまらなかったと、薙刀を肩に乗せガッカリといった感じに溜め息を吐く冥王。やり足りないので、今もトランスとやり合っているであろう残ったトリガーを狩る為に、トランスに加勢に行くことにした。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガガガガァンッ!!―

 

 

トランス『くっ……!』

 

 

そしてその一方、トランスはトリガーの素早く正確で精密な射撃に翻弄され、何とか近づこうとするが中々それが出来ずにいた。

 

 

トランス(流石は狙撃手、かな……弾が全部こっちの急所を正確かつ精密に狙って来るし、撃ち落とすのも精一杯で近付くのも難しいけどっ……)

 

 

だが、絶対出来ないというワケではない。トリガーが放つ銃弾をライドブッカーGモードで撃ち落として出来るだけ数を減らし、落とし損ねた弾はギリギリ避けながらライドブッカーからカードを取り出しバックルへと投げ入れスライドさせていった。

 

 

『ATTACKRIDE:WING LOAD!』

 

 

―ギュイィィィィィィィィィィィィィインッ!!―

 

 

トリガー『……っ?!』

 

 

電子音声と共に、トランスとトリガーの周囲に無数の蒼白の光の道……スバルが空を駆けるために使用するウィングロードが展開されたのだ。突然周りに現れたそれにトリガーも驚きを露わにして辺りを見渡すが、トランスが何かをしようとしている事だけは分かり、すぐにトリガーマグナムでトランスを狙い撃っていく。だが、それより速くトランスは既に一枚のカードをバックルに装填しスライドさせていた。

 

 

『ATTACKRIDE:SONIC MOVE!』

 

 

―シュンッ!―

 

 

トリガー『ッ!何……?!』

 

 

再度電子音声が鳴り響くと共に、トランスは超高速で動きトリガーの放った銃弾を回避しながら姿を消したのだった。突如有り得ない速さで動き出したトランスにトリガーも驚愕しながらトランスを探し周囲を見回すが、トランスの姿は地上の何処にも見当たらず一向に姿を見付けられない。その時……

 

 

―……シュンッ!!―

 

 

トリガー『ッ!』

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガガガガァッ!!―

 

 

トリガーの真上に展開されたウィングロードを超高速で金色の閃光が駆け抜け、トリガーはそれに反応してすぐにトリガーマグナムを頭上に向けて連射するが、其処には既に何もなかった。だがトランスがウィングロードを使って自分を翻弄しようとしていることに気付き、トリガーも迷わずにウィングロードに乗って空に戦場を変えていく。

 

 

トランス(―――確かに、私はこの世界の私みたいに強いわけじゃないし、お父さん達みたいに凄いわけでもない……でもっ!)

 

 

一方で、ソニックムーブの効力で閃光と化しウィングロードを超スピードで駆け抜けるトランスがふと下を見れば、地上にいたトリガーが光の道を跳び移りながら上へ上へと昇って来る姿が目に映り、それを確認したトランスはライドブッカーをSモードに切り替えた。

 

 

トランス(皆を守りたいっていうこの気持ちだけは、私だって負けたりはしないっ!私は私なりのやり方でっ、戦ってっ、守りたい人を守るんだっ……!魔法が使えなくなって、空を飛べなくなっても……!)

 

 

トリガー『……!!』

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガガガガァンッ!!!―

 

 

ウィングロードを光の速さで駆け抜けて接近しようとしてるトランスに気付き、咄嗟にトリガーマグナムの銃口を向けて近付けまいと射撃を試みるトリガー。

 

 

しかし、トランスも負けじとウィングロードを目にも止まらぬ速さで駆けながらトリガーを放浪していくと、トリガーが立つ光の道へと跳び移り、そのまま怯む事なく銃弾の中を潜り抜けながらトリガーに真っすぐ突っ込み、銃弾が肩や仮面を掠るのを感じながらあらかじめライドブッカーから取り出しておいた二枚のカードの内の一枚を、バックルに投げ入れスライドさせていった。

 

 

『ATTACKRIDE:SLASH!』

 

 

―ガキイィィィィィィィィィィィィインッッッ!!!!!―

 

 

トリガー『グッ…?!!』

 

 

トランス『――皆のこの力と一緒に、今度こそ守り抜いてみせるんだっ!!!』

 

 

閃光の速さですれ違い様に振るわれたトランスの剣がトリガーの身体を横一閃に斬り付けて怯ませ、トリガーの背後にトランスが姿を現した。それを視界の端に捉えたトリガーは、身体をふらつかせながらトリガーマグナムを背後のトランスに向けて引き金を引こうとし、トランスも振り向き様に手に持った最後のカードをバックルに装填してスライドさせた。

 

 

『ATTACKRIDE:KARYUU ISSEN!』

 

 

トランス『火竜……っっ!!!』

 

 

―バアァンッ!バリイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィインッッ!!!!―

 

 

鳴り響く電子音声と共に、トリガーマグナムから撃ち出された銃弾がトランスの仮面の右側に直撃し、音を立てて砕け散った。そして砕かれた仮面の隙間から血が飛び散るが、仮面の奥に隠されたトランスの瞳はトリガーを見据えたまま離さず、火炎に包まれるライドブッカーの柄を両手で強く握り締め、そして……

 

 

 

 

トランス『一閃っっ!!!!』

 

 

トリガー『ッ!!?』

 

 

―ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーアァンッッッッ!!!!!―

 

 

 

 

雄叫びと共に突き出されたライドブッカーから放たれたのは、シグナムの技の中でも最大の威力を誇る攻撃。ほぼ零距離から撃ち出されたその大威力火炎斬撃は一瞬の内にトリガーを飲み込み、トリガーは言葉を発する間もなく跡形も残さずに爆発し散っていったのであった。

 

 

トランス『はぁ……はぁ……はぁ……やっ……た……?』

 

 

視界を遮っていた炎が消えた先にトリガーの姿がないのを確認すると、緊張の糸が解けたのか、トランスはそのまま肩で息をしながらペタリとその場に座り込んでいった。其処へ……

 

 

冥王『……ちっ、こっちももう終わってたの』

 

 

トランス『ぇ……あ、そっちも終わったんだ……?』

 

 

メタルを片付けて、物足りなさを埋める為に加勢しに来た冥王が、トランスが座り込むウィングロードまで浮遊しトランスの隣に降り立ったのであった。そして冥王は辺りを見渡してもう敵がいないか確認すると、落胆したように肩を落としウィングロードに座り込むトランスに目をやった。

 

 

冥王『それにしても、随分とボロボロになってるみたいだけど……そんなに苦戦したの?』

 

 

トランス『あっ……うん、あのライダーの射撃が早くて正確だから、中々近づけなくて……』

 

 

冥王『……一つ尋ねるの。貴女の家族に不破御神流はいるの?』

 

 

トランス『え?お父さんとお兄ちゃんとお姉ちゃんがそうだけど?』

 

 

冥王『貴女自身は学ばなかったの?』

 

 

トランス『……その……幼い頃から想像を絶する程の運動音痴だったからっ』

 

 

冥王『(同じ私なのに世界が違うだけでこうも差があるの……情けないの)……ってことは神速も使えないの?』

 

 

トランス『神速?……む、無理だよ!あんなクロックアップに対抗できそうなチート体術は無理っ!』

 

 

冥王『……はぁ……貴女みたいなのに倒されるぐらいだし、あの青いライダーもそんな大した奴じゃなかったって事か……』

 

 

トランス『酷くないっ?!私、一応貴女の教えも生かして戦ったんだよっ?!』

 

 

ちゃんと彼女の教えも生かしながら勝ったというのに何故か落胆されガーン!とショックを受けるトランスだが、もっと戦いたかった冥王からすればそんな事は余り重要じゃないのでどうでもよろしいらしい。

 

 

冥王『まあいいの……それよりも早くさっき逃がした白いのと、クネクネして気持ち悪い金色を追い掛けるの。金色はどうか知らないけど、白い方はそれなりに楽しめそうだし』

 

 

トランス『……なんだろ、この勝ったのに全然釈然としない感じ……』

 

 

何か納得いかないが、とにかく冥王の言う通りさっき逃がしたエターナルとルナをこのままにしておく訳にはいかない。額から流れる血を拭いながら何とか立ち上がると、トランスは冥王と共にエターナル達を追い掛けようとする。が、その時……

 

 

 

 

―バシュウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!―

 

 

『…っ?!―ドガアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァアンッ!!!―うああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっっ!!!?』

 

 

 

 

突如上空から、無数のミサイルや砲撃が飛来してトランスと冥王に直撃し吹っ飛ばしてしまったのだった。更にウィングロードや周囲の建物までもが破壊されていき、二人は足場を失って地上に目掛けて落下し地面に叩き付けられてしまう。

 

 

トランス『ぁ……くっ……今のはっ……?!』

 

 

―グギャアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァーーーーーーーーーーーーッッ!!!!!―

 

 

冥王『!……あれは……』

 

 

突然の攻撃に困惑する二人の頭上から響き渡る、獣のような鳴き声。それを耳にした二人が空を見上げると、其処には……

 

 

 

 

 

―バシュウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!―

 

 

『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!』

 

 

 

 

 

上空に敷かれた線路を走り、後続車両から展開されたミサイルや砲撃を乱射して街を無差別に破壊して回るワニのような頭部の銅色の列車……ガオウライナーが雄叫びを上げる姿が其処にあったのだった。

 

 

トランス『あれは、デンライナーっ?!でも先頭車両が違う……?』

 

 

冥王『……ふっ、なんだか知らないけど面白そうなのが出て来たの。ちょうど物足りないところだったし』

 

 

トランス『も、物足りないってっ……とにかく、早くアレなんとかしないとっ!』

 

 

冥王の発言は取りあえず無視し、とにかく今は上空を走り回り無差別に市街地を破壊するガオウライナーを止めねばと考えるトランスだが、あれほどのサイズの相手となるとまともに戦うのは難しい。一体どうすればいいかとトランスが頭を悩ませてると……

 

 

―ガチャッ……ブォンッ!―

 

 

トランス『……へ?』

 

 

不意に、トランスの左腰にあるライドブッカーが勝手に開いてカードが三枚飛び出し、トランスの手の中に収まっていったのである。トランスも突然飛び出してきたカードに驚きながらも手の中に握られたカードを見ると、それは絵柄を取り戻した冥王のカードとファイルアタックライドカード、そしてまだ未使用だった冥王のファイナルフォームライドのカードだった。

 

 

冥王『?そのカードはなんなの?』

 

 

トランス(な、なんでよりにもよってこのカードが出てくるの!?)

 

 

トランスはこのカードを渡した未来の幸助からどんなカードなのか詳しく聞いていた。

 

 

ぶっちゃけ、対軍殲滅兵器である(イメージで例えるなら、ガンダムSEEDのミーティアのハイマットフルバースト)

 

 

そんな強力過ぎるファイルフォームライドの為に正直目茶苦茶使いたくないのだが、ガオウライナーを止めるにはこの力でなければ不可能に近いだろう。

 

 

トランス『……他に手がないから仕方ないか』

 

 

断念をするように溜め息を吐いてそう呟き、トランスは他の二枚をライドブッカーに仕舞って『しぶしぶ』(ここ強調)カードをバックルに装填しスライドさせていった。

 

 

『FINALFORMRIDE:M・M・M・MEI-O!』

 

 

トランス『ちょっとくすぐったいよ?』

 

 

冥王『え?何をするの―ドンッ!―にゃ!?』

 

 

戸惑う冥王の背後へと回り込みトランスが背中を開く動作をすると、冥王は宙に浮きながら徐々に変形していき、巨大な大軍殲滅兵器……メイオウジェノサイド(冥王カラーのミーティア)へと超絶変形し、トランスの背中と両手に装備されていったのだった。

 

 

冥王(G)『凄いの……力が溢れるの!今、私は究極の力を手にしたのっ!!』

 

 

トランス『……本当に今も昔も冥王は変わらないんだね(汗)まぁ、とにかく行くよっ!!』

 

 

『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーッッッ!!!!!』

 

 

冥王の台詞に冷や汗を掻きながらも、メイオウジェノサイドのバーニアを全開にし一気に空へと飛び上がるトランス。そして地上から接近して来るトランスに気付いたガオウライナーもトランスに標的を変え、後続車のミサイルと砲撃の照準をトランスに定め迎撃していくのだった。

 

 



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劇場版小説/仮面ライダーディケイド&クロノス 過去と未来の激闘⑨

 

 

―高層ビル・屋上―

 

 

エターナル『ウオオオオッ!!』

 

 

―ザアァンッ!!ギイィンッ!!ズシャアァッ!!―

 

 

サイクロン『クッ…!!』

 

 

とあるビルの屋上にて、白と緑のライダーが凄まじい挌闘戦を繰り広げていた。

 

 

ナイフの形状をした武器、エターナルエッジで攻めるエターナルの猛攻に対し、メモリの特性を利用し疾風の如く動き回り、鋭い打撃を繰り出すサイクロンだが、総合的な能力ではエターナルの方が遥か上だった。

 

 

そもそもダブルの時……特にエクストリームの状態でも苦戦した強敵を相手に、その片割れである本体ではないサイクロン……フィリップの勝ち目は殆どないに等しかった。

 

 

―ガキイィィィィィィィィィィィィィィインッ!!―

 

 

サイクロン『ッ!不味いね……このままではっ……』

 

 

負ける……そう悟って半ば諦め掛けた、その時だった……

 

 

 

 

「おろ?何処や此処?」

 

 

 

 

いつの間にか一人の青年が、エターナルとサイクロンが戦っている屋上に現れたのだ。

 

 

サイクロン『?!君は……速く逃げるんだ!』

 

 

市街地の騒動から避難していた一般人が迷い込んだと思い、サイクロンが少年に向けて叫ぶ。しかし少年は……

 

 

「んー……たしかにワイは関係あらへんけど……」

 

 

目前で繰り広げられる戦いに臆せずそう呟くと、少年の腰に南京錠の様なベルトと右手に変わった形状の鍵が現れた。

 

 

「その白いライダーの心の闇は見逃せへん!」

 

 

不敵な笑みと共に、少年は右手の鍵を前に突き出して「変身!」と叫び、ベルトの中央部にある鍵穴に差し込んで180度に回していった。

 

 

『Change!unlock!』

 

 

ベルトから電子音声が響くと共に、少年はベルトから出現した鎖に包まれていき、鎖が消えると、少年の姿は全く別の姿へと変わっていく。

 

 

鍵穴だらけの体。

 

 

背中には巨大な鍵の剣。

 

 

エターナル『何だ……貴様は!?』

 

 

サイクロン『仮面、ライダー……?』

 

 

『ワイは……心の力を解き放つ者、キーロック!仮面ライダーキーロックや!!』

 

 

高らかにそう名乗ると共に、ライダーに変身した少年……『キーロック』は鍵を摸した剣を背中から抜き、エターナルに目掛けて走り出し剣を振り下ろした。

 

 

エターナル『食らうか!』

 

 

―ガギイィッ!!―

 

 

しかしエターナルはそれを難無くエターナルエッジで受け止めて弾き、距離を離すように後方へと跳んだ。だが……

 

 

キーロック『ワイの剣からは逃げられへんでっ!』

 

 

それを目にしたキーロックは直ぐさま左腰に掛けてある複数の鍵のうちの一つを取り、剣の鍵穴へと差し込んだ。

 

 

『POWER!unlock!』

 

 

再び電子音声が鳴り響き、キーロックは剣を握り直しエターナル目掛けて一気に飛び出すと、剣の刀身が淡く輝き光りを纏った。そうして……

 

 

キーロック『でぇやあああああああッ!!!』

 

 

―ブザアアアアアァッ!!!!―

 

 

エターナル『なっ?!ぬあああああああああああっっ!!?』

 

 

咆哮と共に真下から一気に振り上げたキーロックの剣がエターナルを捉え、エターナルが咄嗟にそれを受け止めようとしたエターナルエッジごと彼を力任せに吹っ飛ばしていったのだった。そして地面を滑るように吹き飛んでくエターナルを見据えながら、キーロックは再び鍵を取り出していく。

 

 

キーロック『お前を、心の闇から救ったる!』

 

 

ふらつきながら身体を起こしていくエターナルにそう言って、キーロックは取り出した鍵を腰のベルトの中央へと差し込んだ。

 

 

『SPIRAL!unlock!』

 

 

三度鳴り響いた電子音声と共に、キーロックは地面に剣を突き立てながら上空へと飛び、体をドリルのように高速回転させながらエターナルに目掛け跳び蹴りの構えを取った。そして……

 

 

キーロック『スパイラルブレイク!!でえりゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーッッ!!!!』

 

 

―バキャアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーッッ!!!!―

 

 

エターナル『ぐ……ぐああああああああああああああああああッッ!!!?』

 

 

キーロックの放った必殺技……スパイラルブレイクが見事に炸裂し、エターナルは悲痛な悲鳴と共に爆発を起こしたのだった。そして爆発を背にキーロックが悠然と着地すると、その背後で変身が解除された克己が膝を着きながらゆっくりと地面に沈んでいき、克己の腰から外れたドライバーとエターナルメモリが地面に落下して砕け散っていった。

 

 

サイクロン『す……凄い!ファングジョーカーの……いや、それ以上の回転でのキック……凄まじい攻撃力だ』

 

 

サイクロンも、自分達があれほど苦労して倒したエターナルを一瞬で撃退したキーロックに呆気に取られる中、キーロックは変身を解いて少年に戻り大きく伸びをした。

 

 

「んー……ふう……さてと、ワイの役目はお終いや。帰ろっ」

 

 

驚愕するサイクロンを尻目にそう呟くと、少年はそのまま背後から現れた歪みの壁に呑まれ何処かへと消えていってしまった。

 

 

サイクロン『消えた……彼は一体?』

 

 

サイクロンは変身を解除しフィリップに戻りながら、突然現れてライダーに変身し、エターナルを撃退して消えてしまった少年に疑問を抱くが、其処で何かを思い出したようにハッと顔を上げた。

 

 

フィリップ「そうだ…大道克己は?!」

 

 

キーロックに倒された克己のことを思い出して克己の姿を探し辺りを見渡すと、彼は地面を這い蹲りながら逃走しようとしており、彼の先には何かのスイッチのようなものが転がっていた。

 

 

克己(あれさえ……あのスイッチさえ押せば俺達の……勝ちだ!街一つ吹き飛ばす爆弾の、スイッチを!)

 

 

フィリップ「大道克己…!何をする気だっ?!」

 

 

その光景を見て克己が手にしようとしてるスイッチが直感で危険なものだと悟り、克己を止めようと慌てて走り出すフィリップ。だが……

 

 

 

 

 

『SKL!MAXIMUM DRIVE!』

 

 

―バシュウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!―

 

 

克己「ぐあああああああああああああっっ!!?」

 

 

 

 

 

突如、何処からか前触れもなく紫色の閃光が放たれ、克己の腹を貫いたのだった。そして、閃光を貫かれた克己は断末魔を上げながら全身から無数の粒子を放ち完全に消滅してしまった。

 

 

フィリップ「なっ……今のは!?」

 

 

克己を襲った閃光に驚愕しながらフィリップは慌てて周りを見渡していくが、誰かの姿を視界に捉える事はなかった。

 

 

それどころか、ここは街で一番高いビルの屋上。他のビルからこの場所を狙撃するのは不可能なのだ。

 

 

 

フィリップ「……ゴメン、マリアさん……また彼を救えなかった……」

 

 

何れにせよ、克己を救えなかったことに後悔しながら、フィリップは何処からか飛んできたエクストリームメモリの中に吸い込まれ、そのまま歪みの壁に呑まれ消えてしまった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

そして、彼等が戦っていた高層ビルから少し離れた遥か上空で浮遊する黒いハードタービュラーに乗り、黒い銃を手に白い帽子を頭部に被った骸骨のような外見のライダーの姿があった。

 

 

『……まだ甘いな、フィリップ』

 

 

フィリップが消えたビルを見下ろしながら静かにそう呟き、骸骨のライダーは頭の帽子を被り直し背後から現れた歪みの壁に飲み込まれ何処かに消えたのだった。

 

 



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劇場版小説/仮面ライダーディケイド&クロノス 過去と未来の激闘⑩

 

―TIME学園―

 

 

そして場所は戻り、怪人の大群を振り切ったディケイドとクロノスはネオアポロガイストとオーガ(まだルーミアに噛みつかれてる)の下に辿り着いていた。のだが……

 

 

 

 

クロノス『――ククク……あっはははははははははははははははは!!!』

 

 

オーガ『ぷっ……くくくっ……!』

 

 

ルーミア「笑うのかー」

 

 

『……あー?』

 

 

 

 

――何故か、腹を抱えて大笑いするクロノスと必死に笑いをこらえようとするオーガと頭に噛みついているルーミア、どう突っ込めばいいのか分からないネオアポロガイストの姿が其処にあり、そして……

 

 

 

 

Dブレイド『…………ちっくしょうがあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっっ!!!!』

 

 

 

 

Dブレイドに変身したディケイドがたぶん泣きながら叫び、地面に拳を打ち付け崩れ落ちていた。

 

 

何故こんな事になっているのか?それはDブレイドに変身したディケイドが使用したカードに問題があった。

 

 

そのカードと言うのが……

 

 

 

 

【アタックライド―――オンドゥルルラギッタンディスカー!!】

 

 

【アタックライド―――ウゾダドンドコドーン!!】

 

 

【アタックライド―――ウェエエエエエエエイ!!】

 

 

 

 

 

……爆笑でした。

 

 

Dブレイド『おのれぇぇっ……刹那ぁぁぁぁぁぁぁああああああっ!!!』

 

 

またしても台詞叫ぶだけで何の役にも立たないカードを使わされ、此処にはいないブレイドの世界の刹那に怒りを覚える(とばっちり)Dブレイドなのだった。

 

 

『……ん、んんっ!ディケイド、クロノスよ!ここが貴様らの墓場だ!』

 

 

オーガ『んっ!……その通りだ』

 

 

ルーミア「そーなのだー」

 

 

取りあえず空気を戻そうとわざとらしく咳ばらいしながら、ネオアポロガイストは背後から巨大な魔化魍……正史の響鬼が倒したモノより更に数倍巨大化させたオロチを呼び出した。

 

 

クロノス『うわ……コイツはまたでけーな』

 

 

Dブレイド『……敵にまで気を遣わせるとか……何だこの言葉にし難い屈辱的な感情っ……』

 

 

クロノス『おい黒月、いつまでも凹んでねぇで、何かアレに対抗できるカードとかないのか?』

 

 

Dブレイド『は?あー……あるにはあるが……使ってから暴走とかするなよ?』

 

 

クロノス『は?』

 

 

あまり乗り気ではなさそうにそう告げるDブレイドの言葉に頭上に疑問符を浮かべるクロノスだが、Dブレイドはディケイドへと戻りながら立ち上がって左腰のライドブッカーから絵柄が消えた三枚のクロノスの力を秘めたカードを取り出すと、三枚のカードの絵柄が蘇り、その中から一枚抜き取ってドライバーに装填しスライドさせていった。

 

 

『FINALFORMRIDE:C・C・C・CLONOS!』

 

 

ディケイド『ちょっとくすぐったいぞ』

 

 

クロノス『うん?おい何を―ドンッ!―おわっ!?』

 

 

電子音声と共にディケイドがクロノスの背後に回って背中を開く動作をすると、クロノスは空中に浮かびながら体中を変形させていき、黄金に輝く巨体の龍……嘗て魔界城の世界でも使用したクロノススペリオルに超絶変形していったのだった。

 

 

クロノス(S)『グルルルルッ……(スゲぇ……力が湧いてくる……が、気を抜くと理性が飛びそうだ)』

 

 

ディケイド『そのまま理性を留めておいてくれよ?……アンタまで暴走されたらこの街が消え兼ねんし……』

 

 

以前ホルスとシリウス達にファイナルフォームライドを使用した際、巨大過ぎる力を制御出来ずに暴走した例がある為に、この時代の幸助にファイナルフォームライドを使うことに若干躊躇ったのだが、クロノススペリアルの様子を見る限り暴走の心配はなさそうだ。内心ホッと一息吐きながらクロノススペリアルにそう告げると、ディケイドは更にカードを一枚取り出した。

 

 

ディケイド『よし、行くぞクロノス!これが俺とお前の力だ!』

 

 

クロノス(S)『ガアアアアアアアアアアッ!!(理性が消える前にケリを付けてやる!)』

 

 

クロノススペリアルが翼を羽ばたかせながら咆哮を上げるその横で、ディケイドは取り出したカードをディケイドライバーに投げ入れスライドさせた。

 

 

『FINALATTACKRIDE:C・C・C・CLONOS!』

 

 

バックルから響き渡る電子音声と共にディケイドがクロノスの頭部へと飛び移ると、ライドブッカーをガンモードに切り替え、オロチに照準を定めながらライドブッカーの銃口とクロノススペリアルのアギトに膨大なエネルギーを収束させていき、そして……

 

 

ディケイド『食らえ!エンド・オブ・スペリオル――!!』

 

 

クロノス(S)『グルゥアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!(ブレイカアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーッッッ!!!』

 

 

―バシュウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!―

 

 

「グッ……グギャアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーッッ!!?」

 

 

―チュドオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーオォンッッッ!!!―

 

 

ディケイドのライドブッカーの銃口とクロノスのアギトから放たれた二つの砲撃が一つとなって更に巨大となり、オロチに直撃しそのまま胴体を貫いたのだった。そうして胴体を貫かれたオロチは凄まじい断末魔を上げながら、粉々に爆散し跡形も残さずに消滅したのであった。

 

 

『ば、馬鹿な?!最強の魔化魍が?!』

 

 

オーガ『あー……やべえなコレ、完全に負け戦だろ……』

 

 

ルーミア「そーなのだー」

 

 

どうやら今倒されたオロチが切り札だったと思われるネオアポロガイストの反応から、オーガは今の戦況が不利と悟りどうしようかと迷っていた。

 

 

自分にはもう後がないので失敗は許されない、戻ればどんな処罰が待っているかも分からない。

 

 

かといって、此処で逃げれば裏切り者扱い。

 

 

オーガ……真也は自分の目的の為にも、まだ死ぬわけにはいかない。

 

 

その時だった……

 

 

ルーミア「わはー!逃げるのだー!夜符『ナイトバード』!!」

 

 

オーガの頭に噛みついていたルーミアがスペルカードを発動させ、オーガごと自分を闇で包み込んだのだった。

 

 

オーガ『お、お前?!っておわあああああああああああああっっ!!?』

 

 

その直後にオーガの足元にスキマが出現してルーミア共々その中へと落下してしまい、闇が晴れた後にはオーガとルーミアの姿は何処にもなかった。

 

 

幸助「……何だったんだ一体?」

 

 

ディケイド『逃げたのか?……ま、この状況じゃ無理もないか』

 

 

突然のことだった為に反応出来なかった幸助(FFRが解けた時に変身も解除された)の隣で溜め息と共にそう呟き、ディケイドはゆっくりと一人残されたネオアポロガイストに目を向けた。

 

 

『……はっ!?置いてかれた!?』

 

 

漸く今の自分の置かれてる状況に気付き、ネオアポロガイストは流石に不味いと判断してその場から慌てて逃走しようとするが……

 

 

―ズギャアァンッ!!―

 

 

『ヌオォッ?!』

 

 

何処からか放たれた銃弾がネオアポロガイストの足元に撃ち込まれ、逃げようとしたネオアポロガイストの動きを止めたのであった。そしてそれが放たれた方に一同が振り返ると、其処には、ディエンドライバーを構えながらゆっくりと歩み寄って来るディエンドの姿があった。

 

 

『ディエンド?!貴様ぁ!』

 

 

ディエンド『おいおい……此処までの騒ぎを起こしておいて、今更逃げられると思ってるのかい?』

 

 

幸助「そっちの青いのの言う通りだな。この俺に不意打ちなんてしたんだ、ただで帰すハズねぇだろ?うん?」

 

 

『ぬ、ぬぅぅっ……!』

 

 

ディケイド『(……最早、どっちが悪役かも分からんな、この状況……)―ブオォンッ!―……うん?』

 

 

幸助とその未来の弟子に挟まれて追い詰められるネオアポロガイストを見てそんな事を考えていた中、ディケイドの左腰のライドブッカーから何も描かれていない一枚のカードが飛び出し、ディケイドの手の中に収まったと同時に何も描かれていなかったカードに一人のライダー……未来の幸助が変身するメモリーの絵が浮かび上がった。

 

 

ディケイド『このカードは……?』

 

 

突然飛び出したメモリーのカードに驚きながら、取りあえず使ってみようとディケイドがバックルにカードをセットしようとした直後、ディケイドの前を何かが横切りカードを奪われてしまった。その何かとは……

 

 

ディエンド『止めたまえ零、君にはまだそのカードは使えない』

 

 

ディケイド『海道?!』

 

 

ディケイドからメモリーのカードを奪った何か……ディエンドはディケイドに奪ったメモリーのカードを見せながらそう言うと、そのままカードをドライバーに装填しスライドさせた。

 

 

『KAMENRIDE:MEMORY!』

 

 

ディエンド『ふっ!』

 

 

―バシュンッ!―

 

 

ディエンドがドライバーの引き金を引くと、銃口から撃ち出された銃弾が幸助の隣で無数のビジョンと化し辺りを駆け巡り、一カ所に集まって一人のライダー……ではなく、一人の青年となって姿を現した。

 

 

幸助と瓜二つで、黒髪黒瞳の青年……。

 

 

その見覚えがあり過ぎる顔に、ディケイドは思わず後退りしながら驚愕を露わにした。

 

 

ディケイド『まさか……幸助っ!?』

 

 

幸助「え?俺……なのか?」

 

 

そう、彼等の前に現れたのは未来の……断罪の神時代の天満幸助だったのである。ライダーではなくその本人を呼び出されて驚愕してしまうディケイドと、自分と同じ顔をした人間の登場に呆気に取られる幸助だが、ディエンドに召喚された未来の幸助はそんな反応を気にも止めず過去の自分と向き合った。

 

 

幸助(未来)「……過去の俺、夢で話したことを覚えているな?」

 

 

幸助「夢……?あ……お前あの時の……?」

 

 

夢……。

 

 

それは幸助が気絶しているときに見た夢の事。

 

 

もう一人の自分が闇の中に現れ、自分にある事を伝えて消えた。

 

 

それは……

 

 

幸助「『自分を信じろ』……だろ?」

 

 

幸助(未来)「そうだ……ならもう言葉は必要ないな」

 

 

幸助「ああ……そうだな!」

 

 

力強く幸助が未来の自分に頷けば、幸助(未来)もまた無言のまま過去の自分に向けて頷き返し、二人は肩を並べながらそれぞれの腰にベルトを召喚し別々に構えを取った。そして……

 

 

 

 

幸助&幸助(未来)『変身っ!!』

 

 

『CHANGE UP!MEMORY!』

 

『GATE UP!』

 

 

 

 

高らかに叫ぶと共に、二人の身体を光が包み込みそれぞれ別々の姿のライダーに変身していったのだった。過去の幸助はクロノスに、未来の幸助はメモリーに。変身を終え肩を並べた過去と未来の幸助を前に、ネオアポロガイストも思わず後退りして怯んでしまう。

 

 

クロノス『さあ!テメエを弄り倒すぜ!』

 

 

メモリー『断罪の時間だ!その命貰うぞ!!』

 

 

『お、おのれぇっ……!!いでよ我が同士達っ!!』

 

 

それぞれの愛剣を手に決め台詞を叫ぶ二人のライダーを忌ま忌ましげに睨みながら、ネオアポロガイストはマントを翻して背後に歪みの壁を出現させ、数十体の怪人を出現させた。しかし先程の大群に比べその数と質は明らかに格段に落ちており、この最悪タッグを相手にするには弱小過ぎると、ディケイドとディエンドは揃って溜め息を吐きながらクロノスとメモリーの両脇に立った。

 

 

ディエンド『大事な場面でまた致命的なミスをしたね?この人達を相手にするのならもっと強力な怪人……いや、どうせ結果は変わらないか』

 

 

ディケイド『同情はせん……が、骨ぐらいなら拾ってやるから、安心して逝け』

 

 

『え、ええい!黙れっ!!』

 

 

『ウオオオオオオオオオオオオオッ!!!』

 

 

最早向こうに勝ち目は薄いと悟っているディケイドとディエンドの言葉に怒鳴り声を荒げ、自暴自棄気味に怪人達を差し向けるネオアポロガイスト。それを見たメモリーとクロノスも同時に駆け出し、ディケイドとディエンドもそれに続く様に怪人の大群へと突っ込んでいくのだった。

 

 



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劇場版小説/仮面ライダーディケイド&クロノス 過去と未来の激闘⑪

 

 

―時渡り町・上空―

 

 

『ギシャアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーッッ!!!!』

 

 

―バシュウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥーーーーーーーーッッッ!!!!―

 

 

時渡り町の上空。其処には、メイオウジェノサイドを装備したトランスが上空を飛び回り、無数のミサイルと砲撃を乱射しながら襲い掛かるガオウライナーの迎撃の雨をかい潜りながら、両手のウェポンアームから展開したビームサーベルでミサイルと砲撃を斬り裂き、街への被害を最小に抑えながら郊外に向け全速力で加速する姿があった。

 

 

冥王(G)『――ちょっと、いつまで逃げ続ける気なの?早く私の力を使ってあのヘンテコ列車をぶっ潰すのっ!』

 

 

トランス『そういう訳にはいかないでしょっ!町の上であんな巨大な物を爆発させたら、町にも被害が出る可能性あるんだから!せめて町の外に誘い出さないとっ!』

 

 

冥王(G)『そんなのは関係ないのっ!私は!今!この最強の力を使いたいのっ!良いから早く!早くー!!』

 

 

トランス『うわあああん!冥王がFFRのせいで暴走し始めてるううううっ!!』

 

 

FFRを使われてもどうにか理性を保っていた幸助とは違い、FFRの影響か早く力を使いたいとウズウズする冥王に急かされて仮面の下で堪らず喚いてしまうトランス。だがそれでも彼女の意見に圧されるには訳にはいかないと、トランスは頭を振って冥王の意見を無視しながらミサイルと砲撃の雨を何とか回避し郊外の森に向かい、ガオウライナーを誘い出すのに成功した。

 

 

トランス『よしっ……このまま一気にっ!』

 

 

『ギシャアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーッッッ!!!!』

 

 

ガオウライナーを郊外の森まで誘い出したトランスは、メイオウジェノサイドのバーニアを噴出させて軌道を変え、ビームサーベルを構えながらガオウライナーに目掛けて一気に加速する。それを迎え撃つように、ガオウライナーも軌道を変えながらミサイルを乱射していき、トランスはローリングでミサイルの雨をかい潜りながらガオウライナーに接近しビームサーベルを振るった。

 

 

―ジジジジジィッ……!!―

 

 

トランス『くぅううっ……はああああああああっ!!』

 

 

―ズシャアアァァッ!!!ドガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!―

 

 

『ギシャアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーッッッ!!!!』

 

 

トランスの振るったビームサーベルがすれ違い様にガオウライナーの車両の二つを纏めて斬り裂き、粉々に爆散させたのだった。そしてガオウライナーが爆発の余波でバランスを崩しよろめいている隙に、トランスは空高く飛翔しながら左腰のライドブッカーから一枚のカードを取り出してドライバーに装填しスライドさせた。

 

 

『FINALATTACKRIDE:M・M・M・MEI-O!』

 

 

トランス『コレで、トドメッ!』

 

 

電子音声と共にトランスが太陽を背にガオウライナーへと振り返ると、メイオウジェノサイドの全砲門が開きガオウライナーに狙いを定めていく。そして、どうにかバランスを立て直したガオウライナーが咆哮と共にトランスに目掛けて再び突進して来る中、トランスはガオウライナーをマルチロックして両手のウェポンアームを構え、そして……

 

 

トランス『でやああああああああああっっ!!!』

 

 

冥王(G)『微塵に砕けるのォォォォォォおおおおおおおおっっ!!!』

 

 

―バシュウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!―

 

 

『!!!!!?』

 

 

トリガーを引くと共にメイオウジェノサイドの全砲門から一斉に撃ち出された、無数のビーム砲とミサイルがガオウライナーを貫いたのだった。そしてその一斉射撃から逃れられなかったガオウライナーは、悲鳴を上げることも出来ないまま大小の爆発を起こしながら砲撃に飲まれ跡形も残さず完全に消滅したのであった。

 

 

冥王(G)『粉砕!玉砕!大喝采なのっ!!!』

 

 

トランス『……うん……やっぱり、街中でコレを使わないで正解だったかも……』

 

 

身体が元に戻っていれば腕を突き上げんばかりの台詞を叫ぶ冥王に苦笑しながらそう呟くと、トランスは空に浮遊したまま眼下の密林……ガオウライナーに直撃し損ねて地上に着弾してしまったビームとミサイルの被害で作られたクレーターの数々を見下ろし、深々と疲れたように溜め息を漏らしていくのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―ガギイィッ!ギィンッ!ズガアァッ!!―

 

 

『ヌウアァッ?!』

 

 

『グギャアァッ!』

 

 

ディケイド『ハッ!!デェアァッ!!』

 

 

同じ頃。メモリーの参戦によって完全に流れを掴み、ディケイドは迫り来る怪人達をライドブッカーで斬り捨てながら背後から不意を突こうとした怪人の一体を振り向き様に蹴り飛ばし、ライドブッカーから一枚のカードを取り出してディケイドライバーにセットした。

 

 

ディケイド『新しい力を試してやる、変身ッ!』

 

 

『KAMENRIDE:DOUBLE!』

 

 

電子音声が響くと共にディケイドの周りを突風が吹き荒れ、ディケイドの身体を装甲が纏い緑と黒のアンシンメトリーのライダー……前の世界で翔一とアイリスの二人が変身したダブルにカメンライドし、両手を素早く払いながら再び怪人達に切り込んでいった。

 

 

―ズガガガガガガガァッ!!―

 

 

『ガハァッ!』

 

 

『ヌオォォォォォォッ!!』

 

 

ディエンド『チッ、数だけのクセしてしつこいな……』

 

 

一方で、後方からの射撃で向かって来る怪人達を狙い撃つディエンドだが、しつこく迫り来る怪人達に痺れを切らして左腰のホルダーからカードを一枚取り出し、ドライバーへと装填してスライドさせた。

 

 

『ATTACKRIDE:BLAST!』

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガァンッ!!!―

 

 

『ッ?!ヌグアァァァァァァァァァァアッ?!』

 

 

Dダブル『?!危なッ?!』

 

 

電子音声と共にディエンドがドライバーの銃口を頭上に向けて引き金を引くと、放たれた銃弾がDダブルと怪人達の頭上から雨のように降り注ぎ怪人達に直撃していったのだった。そして危うくソレに巻き込まれ掛けたDダブルは慌ててその場から離れるように地面を転がってギリギリ銃弾を避けると、銃弾が掠った背中を摩りながらディエンドを睨みつけた。

 

 

Dダブル『クッ、おいコラ海道ッ!お前今俺ごと当てようとしてたなッ?!』

 

 

ディエンド『そんなところに君がいるのが悪いんだろ?文句を言う暇があるなら、さっさと動いてソイツ等を片付けたまえ』

 

 

Dダブル『喧しい!お前が指図するなっ!』

 

 

詫びれた様子もなく指鉄砲を向けるディエンドに苛立ちを露わにそう叫びながら、Dダブルは腕を振り上げ襲い掛かってきた怪人達を纏めて蹴り飛ばし、ライドブッカーから一枚のカードを取り出してバックルへと投げ入れた。

 

 

『FORMRIDE:DOUBLE!HEAT JOKER!』

 

 

再度電子音声が鳴り響くと共に、Dダブルの右半身が黒から緑に変化してヒートジョーカーへとハーフチェンジし、右拳に炎を纏いながら怪人達に殴り掛かっていく。そしてディエンドも怪人達の攻撃を避けながら得意のボクシングスタイルで拳を打ち込んでいき、Dダブルは更にライドブッカーからカードを取り出してバックルに装填した。

 

 

『FORMRIDE:HEAT METAL!』

 

 

電子音声と共に、今度はDダブルの左半身が黒から銀へと変化してヒートメタルにハーフチェンジすると、背中から抜き取ったメタルシャフトを展開して怪人達に棒術を叩き込んでいく。そしてディエンドが左腰のホルダーからカードを一枚取り出してドライバーへと装填するのを横目に見ると、Dダブルもソルメモリを何処からか取り出しメタルシャフトのスロットに装填していった。

 

 

『FINALATTACKRIDE:DI・DI・DI・DI-END!』

 

『SOL!MAXIMUM DRIVE!』

 

 

ディエンドライバーとメタルシャフトから電子音声が響く共にと、ディエンドはドライバーの銃口を怪人達に狙い定めながらディメンジョンフィールドを展開していき、Dダブルもメタルシャフトを中空に掲げるとスロット部分から炎が噴出して炎の球を形成しながら巨大化していくと、まるで太陽を模したような巨大な火炎弾となっていった。そして……

 

 

DダブルHM『ハアァァァァァァァァッ……ソル・ストレイドッ!デエアァァァァァァァァァァァァアッ!!』

 

 

―バシュウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥーーーーーーーーッッッ!!!!―

 

 

『ヌ、ウガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!?』

 

 

―ドッガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!!―

 

 

ディエンドがドライバーの引き金を引くと同時にエネルギー弾、Dダブルがその場でクルリと回転して勢い付けながらメタルシャフトで打ち付けた火炎弾が放たれ、二人に挟まれた怪人達は前方と背後からエネルギー弾と火炎弾に挟み撃ちにされて断末魔と共に爆発し全滅していったのだった。そしてクロノスとメモリーは……

 

 

メモリー『おらおらおら!遅せェぞ!』

 

 

クロノス『動きは全部みえてるんだよボケが!もっと速く避けないと首が飛ぶぜ!』

 

 

―――時の神と断罪の神の二人の幸助が揃った時点で勝機があるハズもなく、一方的にジワジワと苦しめながらネオアポロガイストを追い詰めていたのだった。因みに強さはメモリーの方が規格外に上だが、同一人物な所為か息はぴったりで見事なコンビネーションでネオアポロガイストを斬りつけていく。それに加えて……

 

 

メモリー『はっ!その程度で大ショッカーを名乗ってんのかよこの(ピー)が!!所詮テメーは(ピー)以下の(ピー)なんだよ!!』

 

 

クロノス『(ピー)臭せェ息吐くな!移るんだよ(ピー)野郎!一回死んで(ピー)からやり直して(ピー)して来い!』

 

 

……根源が同じドSな所も変わらない為に暴言も酷く、二人に斬り刻まれながらネオアポロガイストも涙目になっていたのだった。

 

 

ディエンド『うわぁ……えげつないなぁ……』

 

 

ディケイド『やっぱり過去も未来もドSなのは変わんないんだな、幸助は……』

 

 

その光景にDダブルから元の姿に戻ったディケイドもディエンドも冷や汗を掻きながらドン引きし、そんな二人を尻目に今までネオアポロガイストを一方的に痛め付けていた二人の幸助は……

 

 

クロノス『……飽きたし、終わらせるか?」

 

 

メモリー『そうだな』

 

 

そんな理由で!?とディケイドとディエンドは思わず心の中で突っ込んでしまうが、決してそれを口には出さなかった。口に出したら自分たちがターゲットにされるのは目に見えているし……

 

 

クロノス『行くぜ!』

 

 

メモリー『天満流奥義!!』

 

 

『流水剣・蒼龍王天斬!!!』

 

 

声を重ね合わせ高らかに叫びながら、二人は剣に蒼い氣を纏わせて見えない速度で駆け出し、連続してネオアポロガイストを斬り刻み、最後に上空へと飛び剣に纏わせた氣を衝撃波にし、同時に放った。その衝撃波の斬撃は十字の形となり、ネオアポロガイストを十字に斬り裂いていった。

 

 

『ぐあああああああああああああああああ!!!だ、大ショッカーにっ……栄光あれぇェェえええええええええ!!!』

 

 

―ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッッッ!!!!―

 

 

十字形の斬撃を身体に刻み込まれたネオアポロガイストは両手を広げながら悲痛な断末魔を上げ、そのまま力無く地面に倒れ込んで大爆破を起こし塵も残さず散っていったのだった。

 

 

ディケイド『……とんだ地獄絵図だな……』

 

 

ディエンド『俺も一番相手にしたくないね、幸助さん二人なんて悪夢以外何物でもないよ……』

 

 

結局のところはネオアポロガイストの自業自得な為に同情はしないが、少なくとも二人の幸助の両方を相手にするとどんな目に遭うかは分かった為、その辺りに関しては反面教師になってくれたネオアポロガイストを密かに讃えるディケイドとディエンドなのであった。

 

 

クロノス『――終わったか……』

 

 

メモリー『ああ』

 

 

そんな事を考えてる二人の心境を露知らず、ネオアポロガイストを撃破して一息吐きながらクロノスが静かに剣を下ろすと、メモリーはそんなクロノスの前に立ち、クロノスに剣の切っ先を向けた。

 

 

メモリー『ここから先は、お前の物語だ……時間の改変の影響で【この出来事の記憶】は消えるだろうがな。ま、今の俺になれば思い出すだろうが』

 

 

クロノス『だろうな……未来が過去に影響を与えたらまずいしな』

 

 

メモリーの言葉に驚く様子を見せず、寧ろ自分の予想通りだったと頷いて見せるクロノス。やはり自分同士、言いたいことはわかっているようだ。そんな過去の自分を見てメモリーも仮面の下で微笑すると、メモリーの身体が突然透け出して徐々に消え始めていく。

 

 

メモリー『時間か……じゃあな……次はお前の番だ』

 

 

過去の自分にそう言い残すと、メモリーはまるで周りの景色に溶け込みように消えていき、最後には風と共に完全に消えていったのであった。そしてクロノスはメモリーが消えた場所から視線を上げ青空を見上げていくと、仮面の下で微かに笑みを受かべた。

 

 

クロノス『歴史は繰り返されるか……ま、どうせ記憶は消されるから関係ないか。その時はその時だ』

 

 

ならば、今は未来の自分が言ってた通り自分の物語を進むだけだと、クロノスは変身を解いて幸助へと戻り、そんな幸助の下に同じく変身を解除した零と大輝が歩み寄っていく。

 

 

零「どうにか終わったな、これで一件落着って訳だ」

 

 

幸助「ああ……そういや、竜也達は大丈夫なのか?」

 

 

自分達を先へ促す為に多くの怪人達と戦うため残った親友達が気になり、幸助は一旦彼らの下に戻ろうと零と大輝と共にTIME学園の校門前に向かって走り出していった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

一方、竜也達は……

 

 

竜也「――はぁ……お茶が美味い」

 

 

京介「だな……なごむ」

 

 

アズサ「そうだねー……」

 

 

零と幸助を先に行かせる為に残った筈の竜也達一同は、ビニールシートを敷いてお茶会を開き呑気にお茶を啜っていた。何故なら……

 

 

 

 

フランドール「行っくよ!禁忌「フォーオブアカインド」!!その状態でー!」

 

「「「「禁忌「レーヴァテイン」!!!」」」」

 

 

 

 

四人に増え、炎の魔剣で怪人の群れをなぎ払うフランドール。

 

 

 

 

こいし「無意識の力、見せてあげるね!深層「無意識の遺伝子」!!! 」

 

 

紫「うふふ♪スキマの真髄を見せてあげるわ♪」

 

 

萃香「にゃっははははは!ミッシングパワー全開ーーーーっっ!!!」

 

 

妹紅「ふはははははは!!燃えろ燃えろォっ!!」

 

 

 

 

敵を撃ち殺していくこいしに、怪人をスキマに吸い込んでいく紫。巨大化して敵を吹き飛ばしたり踏みつぶしたりする萃香、炎の翼を生やして怪人を燃やしていく妹紅。

 

 

 

 

キャンセラーα『ああもう!!なんで僕がこんな目にーーー!!!体が消えたと思ったらいきなりこれだよ!!!』←泣き叫びながら敵を切り裂いていくキャンセラー。

 

 

エクスEX『あはは……この戦いが終わったら菫と一緒に遊園地に行くんだァァァァァァッ!!!!』←死亡フラグ全開のエクス。

 

 

 

 

その他のEXボスに最強フォームの外史のライダー達(一部、本人の意識があるが)が次々と怪人を無双していく為に、竜也達の出番はなく、怪人達は数分もしない内に全滅し、ディエンドに召喚された者達も消えていったのだった。

 

 

姫「ズズゥー……お?向こうも終わったようだな」

 

 

魚見「みたいですね、はむ……あ、このお団子美味しい」

 

 

映紀「はあ……楽だなぁ」

 

 

怪人達が全て倒されたのを見ても特に気にせず、結局幸助達が合流して来るまでお茶会をしていた一同なのであった。

 

 

 

 

因みに優矢は……

 

 

 

 

―ズザザザザザザザザザザザザザザザザザザザァッザザザザザアァッ!!!!―

 

 

優矢「うぎゃああああああああああああああ!!!熱い熱い熱い!!!摩擦で燃えるううううう!!!!」

 

 

なのは(不破)「やかましいの!」

 

 

なのは「あはは……南無」

 

 

 

 

泣きながら走ってるところを町まで戻ってきたなのはコンビに見つかり、なのは(不破)がお仕置きとしてみの虫状態にされバイクで引きずられており、なのははそんな光景に普段零にしていること(GYAKUSATUという名のOSHIOKI)を棚に上げ、優矢に手を合わせ合掌していたのだった。

 

 



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劇場版小説/仮面ライダーディケイド&クロノス 過去と未来の激闘⑫(完)

 

 

 

一方その頃……

 

 

アルファ『……あっちも終わったみたい』

 

 

戦闘開始した直後にサイクロンと別々に別れて戦っていたアルファは、地面に倒れるルナを踏みつけつつ、幸助達の戦いが終わったのを感知して彼方を見つめていた。すると、アルファに踏み付けられるルナがズタズタになった顔を上げアルファを見上げていく。

 

 

ルナ『はあ……はあ……化け物ね……貴女……人間の……強さじゃ……ないわ』

 

アルファ『……』

 

 

苦しげな声でそう呟くルナのその言葉が気に障ったのか、アルファは無言のままアルファを踏みつける足の力を強めた。

 

 

ルナ『がっ……!!』

 

 

アルファ『黙れ……死体のお前に言われたくない』

 

 

冷淡な声でそう言いながらゴミを見るような目でルナを見下ろし、アルファはそのまま容赦無くベルトごとルナの腹部を踏みつぶしていった。

 

 

ルナ『ギャアアアアアアアアアアアッ?!!!』

 

 

アルファ『消えろ……』

 

 

ルナ『ぐ、ふっ……地獄でまってるわよ……』

 

 

仮面の下から血を吐き出しながらアルファにそう告げると、ルナはそのまま灰と化して消滅していったのであった。

 

 

アルファ『……私は……化け物じゃない……』

 

 

そしてその場に一人残されたアルファは、灰となったルナだった物を見下ろして何処か寂しげにそう呟き、変身を解除してその場から静かに去っていくのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―天満家―

 

 

幸助「いや、本当に助かったぞ竜也、京介」

 

 

竜也「俺の世界を救ってくれた礼だぜ?それにライダーは助け合いだろ?」

 

 

京介「だな……まあ、あの青いライダーの所為で全然噛み殺してないが」

 

 

ネオアポロガイスト達との戦いから数十分後。竜也達の無事を確認した幸助は零と大輝を連れて彼らを家に招き、竜也と京介に救援に来てくれた礼を改めて口にし、その光景をアズサ達と合流した零がカメラに収めていた。

 

 

零「昔の幸助に後の七柱神と呼ばれた二人の過去か……貴重な一枚が取れたな!」

 

 

姫「おぉっ、それはかなりレアな写真じゃないか?」

 

 

大輝「ふむ……確かにそれはお宝だ。俺にも後で焼き回しをくれたまえ零」

 

 

零「まだいたのか海道……」

 

 

大輝「まあね。この時代のシズクさん……もとい、スバルさんに風麺を評価してもらうのさ!より美味い風麺を作る為にね」

 

 

零「……ホントに泥棒よりラーメン作りの方が生き生きしてないかお前……」

 

 

得意げに笑いながら告げる大輝に零も顔を引き攣り、姫達もそんな零の隣で苦笑を隠し切れずにいた。

 

 

その後、実際にラーメンを食べて貰ったスバル(中島)にアドバイスを貰った大輝は試行錯誤を繰り返し、また一段と風麺がおいしくなったとかなんとか……

 

 

零「――あ……そういえば優矢はどうした?」

 

 

大輝「ああ、彼かい?彼なら……」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―天満家道場―

 

 

なのは(不破)「うふふ~♪避けないと逝っちゃうの~♪」

 

 

優矢「いやああああああああああああ!?過去も未来も冥王は冥王なのねーーーーー!?」

 

 

今回役立たずだった優矢はOSHIOKIと称し、なのは(不破)との訓練を受けさせられていたのだった。

 

 

と言っても、薙刀(真剣)で攻撃し、それをひたすら避けるだけだが……

 

 

そしてそれから数分後に、何処からか話を聞いたなのはの父と兄がやってきて訓練に混ざったとか……

 

 

零「……無事には帰って来れんなアイツ……冥王に父さんと恭兄が相手とか……」

 

 

大輝「まったく、もう少しメンタル面を鍛えられないものか。オリジナルクウガの五代雄介を見習ってほしいね」

 

 

零「誰だそれ?」

 

 

大輝から話を聞いて道場にやって来た零と大輝もその訓練の風景を陰から眺め、あの三人に見付かって巻き込まれない内に逃げようと静かにその場から離れていくのだった……。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―光写真館―

 

 

優矢「痛い……体中が痛いよ……」

 

 

それから数時間後。夕方になって漸くなのは(不破)達の訓練から解放された優矢は、全身包帯だらけの姿で写真館に戻ってきて直ぐにソファーに倒れ込み呻き声を上げていた。

 

 

ヴィータ「アイツ、冥王の訓練受けてよく生きてたな……」

 

 

スバル「あははは……ま、まあでも、これで優矢さんもかなりレベルアップしたんじゃないですかね?私達もそうでしたし!」

 

 

ノーヴェ「ああ……初めてクロノスの世界で訓練を受けた後、アタシ等もあんな感じだったしな……」

 

 

思い出すように瞳を伏せてノーヴェの瞼の裏に蘇るのは、今の優矢のように未来の幸助達の訓練を受け全身包帯だらけになった自分達の姿。同じようにその時の記憶を思い出していくティアナ達も額から冷や汗を流しつつ遠くを見つめ、他のメンバーもそんな彼女達と優矢を見て苦笑していた。

 

 

映紀「大輝の奴も、もう他の世界に行っちまったみたいだしな」

 

 

零「ああ、結局はまた借りを作るハメになったし……良いとこ取りが上手い奴だよ、本当に」

 

 

栄次郎が容れてくれた珈琲を手に大輝の事を口にする映紀の言葉に頷きながら、焼き回しの写真を受け取りさっさと別世界に向かった大輝の顔を思い出し溜め息を吐く零。すると、そんな零の下になのはが歩み寄り、零がこの世界で撮影した写真の為にスペースを空けるアルバムを見つめながら口を開いた。

 

 

なのは「ねえ、零君。これでこの世界は救われたのかな?」

 

 

零「ん?……ああ、多分な」

 

 

何処か穏やかげに微笑んでなのはにそう言うと、零は天井を見上げながら先程別れてきた幸助の事を脳裏に思い出していく――。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

数十分前、天満家前……

 

 

幸助「――行くのか?」

 

 

竜也と京介が自分達の世界でやることを成す為に元の世界に帰り、姫達もなのは(不破)との訓練で動けない優矢を運ぶために一足先に写真館に戻った後、幸助は天満家の玄関から表に停めてあるディケイダーに誇る零とアズサに話し掛けていた。

 

 

零「ああ……俺の役目も、これで終わりだと思う」

 

 

幸助「そうか……色々助かった」

 

 

零「いいさ。未来のアンタにはデカイ借りが山ほどあるんだ……これでもまだ返し切れてない借りがな」

 

 

思えば、未来の幸助達には助けられてばかりである。NXカブトの世界でも命を救われ、桜ノ神の世界でも彼が筆頭に駆け付けくれなければ姫を救い出す事など出来なかったのだから。

 

 

幸助「お前たちがこの世界から去れば、俺たちの記憶から今回の出来事が消えるだろう……まあ、未来の俺は思い出すだろうが」

 

 

零「……未来のアンタならあり得るな」

 

 

幸助「別れは言わん……いつか、未来で」

 

 

そう言って、幸助は玄関から外へと出てディケイダーに歩み寄り零に右手を差し延べる。それを目にした零は一瞬呆気に取られるようにキョトンとなるも、直ぐに笑みを浮かべ頷き返した。

 

 

零「ああ……また、未来で会おう」

 

 

今此処にいる幸助にとっては遥か未来になるが、必ず会えることに違いはない。未来で必ず再会することを誓い、零は幸助の手を握り返し、過去の世界の幸助と別れてディケイダーを走らせるのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―光写真館―

 

 

零「――幸助は変わらないな……過去も未来も」

 

 

この世界の幸助との最後の会話を思い出しながら零は彼と握手した右手を見つめギュッと握ってると、包帯だらけの優矢を部屋にまで運ぶザフィーラとすれ違いに写真を現像していた栄次郎が室内に入ってきた。

 

 

栄次郎「零君、頼まれた写真の現像終わったよ。今回もかなりの傑作揃いだね♪」

 

 

零「お、待ってました」

 

 

なのは「あ、私達にも出来た写真見せて!」

 

 

栄次郎からこの世界で撮った写真を受け取る零の下になのは達も集まると、零はテーブルに現像した写真を並べていく。その中には、大輝も絶賛した幸助と竜也と京介の三人が写る写真もあり、彼等の背後には写真でも凄みを感じさせるオーラと三人が変身するライダーの姿が浮き上がっていた。

 

 

なのは「竜也さんに京介さんに幸助さんかぁ……三人の背後に変身したライダーが映ってるね(汗)」

 

 

フェイト「しかも、何かオーラみたいな物が湧き出てるような……(汗)」

 

 

零「ああ、海道の奴が欲しがるのも頷けるな……」

 

 

アズサ「零、その写真も飾ろうか?」

 

 

その凄まじい写真になのはとフェイトも冷や汗を掻き、零もそんな二人の反応に頷いてると、アズサもその写真を気に入ったのか額に入れようと提案する。

 

 

零「そうだな。額縁は……」

 

 

なのは「あっ、じゃあ私が取って来るよ」

 

 

アズサの提案に頷き額縁を取りに零が立ち上がろうとすると、なのはが代わりに立ち上がって背景ロールの横に置かれた写真を入れる額縁を取りに向かった。が……

 

 

―カクッ!―

 

 

なのは「にゃあああああああああああ!!?」

 

 

額縁を取りに向かう途中で足を捻り、背景ロールに目掛けてそのまま突っ込みぶつかってしまったのだった。

 

 

フェイト「な、なのは?!大丈夫!?」

 

 

はやて「ちょ、なのはちゃん!まだ怪我も治ってへんのに無理したらあかんよ!」

 

 

なのは「にゃ、にゃはは……だいじょぶだいじょぶっ」

 

 

心配するフェイトとはやてに苦笑を浮かべながら頭を摩って立ち上がろうとし、つい背景ロールの鎖を掴んだ。その時……

 

 

 

 

―ガララララララァッ!!パアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!―

 

 

 

 

背景ロールに再び新しい絵が下り、また次なる世界に写真館が移ったのであった。その背景ロールはミッドチルダの背景が写し出されており、その空から青い翼、オレンジ色の銃、雷を纏った槍、ピンク色の龍の頭を模したコアのようなものが降ってくるという絵が描かれてた。

 

 

なのは「ミッドチルダ…?私達の世界に帰ってきたのかな?」

 

 

零「いや、これは……ストライカーズの世界?」

 

 

新たに出現した次の世界を表す絵を前に、零達は興味深げに背景ロールをまじまじと見つめていく。その中で……

 

 

 

 

―……パアァァァァァァァァァァァァアッ……―

 

 

 

 

ディケイドライバーと共にテーブルの上に置かれた、零のライドブッカーの中にある二枚のカード……以前彼等と共に戦った『A's』と『マテリアル』の二枚が淡い光を放っているのを、零達はまだ気付いてはいなかった……。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―パンデモニウム―

 

 

幸助「――御苦労だったな、大輝」

 

 

大輝「大変でしたよ、本当に……」

 

 

幸助「ま、歴史が変わるかどうかの瀬戸際だったしな……仕方ないか。で、コンプリートフォームはどうだった?」

 

 

零と幸助達の活躍で歴史の改変が防がれたお陰で、他の世界と同様未来の幸助達が復活したパンデモニウムの幸助の自室では、零達と別れた大輝が幸助とお茶を飲んでいた。

 

 

大輝「やっぱり、召喚する方が身体に負担が少なくて使いやすいですね。制御が難しいですが」

 

 

幸助「だろうな。今のお前ではそんなもんだ……ってことで」

 

 

くたびれたようにやれやれと首を振る大輝に、幸助は黒い笑みを浮かべる。大輝はその表情を見て直感的に嫌な予感を感じ取り、顔を青ざめた。

 

 

幸助「修行だな♪冥王も待ってるぜ!」

 

 

大輝「やっぱりっ?!い、いやだあああああああああああああああっ!!?」

 

 

嫌がる大輝の襟をひっ掴み、ズルズルと訓練場(処刑場)に引きずっていく幸助。そんな幸助の手から逃れようと必死に抵抗する大輝だが、それも無駄な足掻きにしかならず、結局は訓練という名の地獄場に連れ込まれる事になるのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―TIME学園―

 

 

 

幸助「――なあ、昨日までのこと、覚えてるか?」

 

 

スバル「うーん……ゴメン、思い出せないや」

 

 

幸助「だよなぁー……何か忘れてる気がするんだよな?」

 

 

なのは「私も何か引っかかる気がしてイライラするの……」

 

 

それから翌日の朝。いつも通りの日常に戻った幸助、スバル、なのはの三人だったが、歴史の修正のためにやはり昨日までの出来事が記憶からすっぽりと消えていた。思い出せそうなのに思い出せないという感覚に気持ち悪そうに首を傾げる三人だったが、それもすぐに溜め息を吐いて考えるのを止めた。

 

 

幸助「まあいいか。タイムオーガの件も早く解決し、気にしてる場合じゃねーよな……」

 

 

「「だよね……」」

 

 

そう、彼らの戦い(物語)はまだ終わっていない。

 

 

本当の戦い……試練はこれから始まるのである。

 

 

 

幸助「うしっ、一刻も早くタイムオーガを倒すぞ!」

 

 

スバル「うん!」

 

 

なのは「なの!」

 

 

 

 

そして、彼等の物語は未来へと続く……。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

オマケ

 

 

―幻想郷―

 

 

『グガアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』

 

 

真也「なああああああああああああっ!!なんなんだよコイツ等はっ!!次から次へとウジャウジャウジャウジャめんどくせえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 

ルーミア「そーなのかー」

 

 

真也「つーか、お前もいい加減に降りろよっ?!てか戦い辛いんだよマジで!!」

 

 

ルーミア「離れるのかー?それは無理なのだー」

 

 

真也「なんでっ?!」

 

 

ルーミア「足止めなのだー」

 

 

真也「まだ続いてたのソレっ?!もういーだろ戦いも終わってんだからぁっ!!ってかどう帰りゃ良いんだよチキショオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオォッ!!!!」

 

 

零と幸助達との戦いの中でルーミアによって幻想郷に飛ばされてしまった真也は、未だにルーミアを肩に担いだまま次から次へと襲い掛かる妖怪達を薙ぎ倒し、帰る方法も分からずに森の中を長らくさ迷っていたのだった……。

 

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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole ディケイドパート

 

 

―〇〇〇の世界・雑木林―

 

 

――とある町の郊外に存在する寂れた雑木林。其処は昼夜問わず幽鬼の類が出て来ても可笑しくないような不気味な雰囲気が漂う場所な故、付近の住民の誰もがその森に足を踏み入れる事は皆無に等しい。だが……

 

 

―ザザザザザァッ!!―

 

 

「はぁ、はぁ、はぁっ……!!」

 

 

「早くっ!早くっ!!」

 

 

そんな人気のない筈の場所で、必死に木々の間を駆け抜ける数人の少年少女達の姿があった。

 

 

彼等が背中に背負っているリュック、その服装や頭に被ってるキャンピング用の帽子などの格好から、恐らく学校行事の遠足かキャンプの為にこんな場所に来ていたのだろう。

 

 

だが、彼等のその表情はまるで幽鬼でも目にしたかのような恐怖に染まった顔を浮かべており、その彼等が逃げてきた方向からは……

 

 

 

 

 

 

『グルァアアアアアアアアアアアァッ!!!!』

 

 

『シャアァァァァァァァァァァアッ!!!!』

 

 

 

 

 

 

有象無象の幽鬼達……否、グロンギやオルフェノク、アンデッドやゾディアーツなどの多種多様の怪人達が奇声や雄叫びを上げながら彼等を追って来る姿があり、少年少女達はその怪人達に追われて逃げていたのである。しかし……

 

 

―ガッ!―

 

 

「あっ?!」

 

 

―ドシャァッ!―

 

 

「ッ?!かおりっ!」

 

 

少女の一人が雑木の根に足を引っ掛けてしまい、そのまま転んで倒れてしまったのだった。それを見た他の少年少女が慌てて少女へと駆け寄って彼女を抱き起こしていくが、これを機にと怪人達が一気に子供達へと迫って飛び掛かり、もうダメだと子供達が思わず顔を背けた。次の瞬間……

 

 

 

 

 

―ブゥオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーオオォンッ!!!!―

 

 

『?!―ドグオォッ!!―ヌエァッ?!』

 

 

『ギャッ?!』

 

 

「……え?」

 

 

「な、なに……?」

 

 

 

 

 

一体の怪人の爪が子供達に目掛けて振り下ろされようとしたその時、突如轟音のようなバイク音と共に一台のマシンが子供達の頭上を飛び越えて現れ、怪人達に突撃し跳ね飛ばしていったのだった。そして怪人達を跳ね飛ばしたマシンはそのまま呆然と固まる子供達の前で停止すると、マシンに乗った青年……黒月零はヘルメットをかなぐり捨てて子供達に叫んだ。

 

 

零「おい、何してるッ?!とっとと逃げろッ!」

 

 

「ッ……!は、はいっ!」

 

 

「あ、ありがとうございますっ!」

 

 

零に呼び掛けられ漸く正気に返り、子供達は零にお礼を言いながら倒れた仲間を支えて森の外へと逃げていく。そして零もそれを最後まで見送ることなく自分のマシン……ディケイダーから降りて怪人達と対峙していくと、森の奥から続々と現れる怪人達の数に思わず舌打ちしながら、コートの下にあらかじめ巻いていたディケイドライバーを露出させ左腰のライドブッカーからカードを取り出した。

 

 

零「此処もかっ。クソッ、どうなってるんだこの世界はっ……変身ッ!」

 

 

『KAMENRIDE:DECADE!』

 

 

そう毒づきながらバックルにカードをセットしてスライドさせると電子音が鳴り響き、零はディケイドへと変身して両手を叩くように払いながら怪人の大群へと勢いよく駆け出していくのであった。

 

 

 

 

 

『仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神

 

戦国バトルロワイヤル!』

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

――どうしてこんな事態になってしまっているのか、その経緯は数時間前にまで遡る。

 

 

自分達の世界を救う為に、様々な仮面ライダーの世界を巡ってその世界で起きる滅びの現象を阻止し解決してきた零達一行が次に辿り着いたのは、学校の歴史の教科書に載っているような大昔の日本の城や武士達、そしてマシンに乗った様々な仮面ライダー達が戦場を駆け抜けるという謎の絵が描かれた背景ロールの世界だったのだ。

 

 

そんな不可解な絵に零達も最初は困惑しながらも、とにかくこの世界を調べれば何か分かるだろうと何時も通りに探索を開始しようと写真館の外に出て、零達は真っ先に視界に飛び込んできた光景に絶句して言葉を失ってしまった。何故なら……

 

 

 

――写真館の外に広がっていたのは、阿鼻叫喚が絶え間なく響き渡る地獄絵図の光景……。

 

 

数えるのも馬鹿らしくなるほど無数の怪人達が無差別に人々を襲い、町を焼き、無慈悲に命という命を食い散らかす地獄のような世界だったのだ。

 

 

 

そんな光景を不意打ちで見せられ呆気に取られるのも束の間、人々を襲っていた怪人達は驚愕する零達を次の標的にして襲い掛かり、零達もすぐさま応戦し人々を救う為に駆り出した。

 

 

写真館の防衛をヴィヴィオとナンバーズが勤め、それ以外のライダーである零、なのは、優矢、姫、アズサ、魚見、映紀の七人はそれぞれ街中に散らばって怪人達を撃退し、逃げ惑う人々をスバル達が安全な場所にまで誘導して避難させる。

 

 

そうしてスバル達が避難させた住民から話を聞いた所、どうやらあの無数の怪人達は突然前触れもなく何処からか現れ町を襲ってきたらしく、その原因は誰にも分からないらしい。

 

 

故に謎ばかりが深まるが、それでもみすみすこの世界の住民達が見殺しにされるのを見過ごす訳にはいかないと、零達は住民の救出を続けながら怪人大量発生の原因究明に動いていたのだが……

 

 

―ガギイィィッ!!―

 

 

『グゥアァッ?!』

 

 

『ガアァァァァァッ!!』

 

 

ディケイド『ッ!次から次へとっ……!一体何処から沸いて来るんだコイツ等っ?!』

 

 

原因究明に動いてから休む間もなく戦い続けて、既に数時間が経とうとしているのに、怪人達は未だその数を減らす事なく増え続けている。その事実に連戦続きのディケイドも流石に疲労を隠せずにいるが、それでも負けじとライドブッカーSモードを振るって怪人達を次々と斬り捨てていき、ライドブッカーからカードを一枚取り出してバックルに投げ入れた。

 

 

『FINALATTACKRIDE:DE・DE・DE・DECADE!』

 

 

ディケイド『ハアァァァァァァァァァアッ!!』

 

 

―ガギイィィィィィィィィィィィィィィインッ!!!―

 

 

『グッ?!が、ウゥアアアアアアアアアアアアアアアッ?!!』

 

 

―ドッガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!―

 

 

電子音声と共に怪人の大群に向けて出現したディメンジョンフィールドを一気に駆け抜け、ライドブッカーによる一閃で残った怪人を纏めて斬り裂き爆散させるディケイド。そして怪人の全滅を確認したディケイドは大きく息を吐くと、くたびれたように近くの木に背もたれ掛かった。

 

 

ディケイド『ッ……これで一体何戦目だ……いい加減に奴らの出所を見付けないと、これ以上はっ……』

 

 

怪人の大群と戦闘し、すぐにまたバイクで別の場所に移動して逃げ遅れた住民の救出と避難、怪人達の大量発生の原因の探索。これを既に休む間もなく数時間も繰り返し体力の限界が近いのだが、それでも泣き言を言ってる隙はないと、ディケイドは別の場所に向かう為に雑木から背中を離した。その時……

 

 

 

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガアァンッ!!!―

 

 

ディケイド『?!グッ?!何だッ?!』

 

 

 

 

 

突如ディケイドに目掛けて何処からか無数の銃弾が放たれて襲い掛かり、それに反応したディケイドは咄嗟にライドブッカーで銃弾を防ぎながら身を屈めて残りの銃弾を回避したのだった。そしてディケイドも突然の不意打ちに困惑しながらも銃弾が放たれてきた方に視線を向けると、其処には……

 

 

 

 

 

―ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……―

 

 

『…………』

 

 

 

 

 

雑木林の奥から、草を踏み鳴らして静かに歩み寄って来る一人の人物……。灰色のマントを纏って全身を隠し、赤い銃のような武器の銃口をディケイドに向けながら近づいてくる謎の戦士の姿が其処にあったのだった。

 

 

ディケイド『ッ……!お前は……?』

 

 

『……フン……』

 

 

―ギュィィィィィィィィィィィィッ……!―

 

 

突然現れた謎の戦士にディケイドが怪訝な様子でそう問い掛けるが、謎の戦士は鼻を鳴らすだけで何も答えず、代わりに何かの能力なのか自身の足元の影をディケイドの周囲へと伸ばしていき、其処から無数の怪人達が出現しあっという間にディケイドを包囲していったのだった。

 

 

『グルァアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!!』

 

 

ディケイド『ッ!……成る程……お前か?こいつ等の発生源である元凶って奴は……』

 

 

『……ハアァッ!』

 

 

警戒心を強めて問い掛けるディケイドの質問にやはり答えようとせず、謎の戦士は銃のような武器を剣形態に切り替えながら問答無用でディケイドに斬り掛かっていき、それに対しディケイドも咄嗟にライドブッカーで謎の戦士の剣を弾いて初撃を退けそのまま鍔ぜり合いになるが、謎の戦士が持つ剣を目にしてその表情が驚愕の色に変わった。

 

 

ディケイド『赤い、ライドブッカーだと……?お前は……?!』

 

 

『フッ……ゼエェァッ!!』

 

 

―ズシャアァッガギイィィンッ!!ガギャアァンッ!!―

 

 

ディケイド『グウゥッ?!グァッ!!』

 

 

そう、ディケイドのライドブッカーと刃を交わし拮抗する謎の戦士の武器とは、ディケイドのと同じライドブッカーSモードを全体的に赤く染め上げたような剣だったのだ。ディケイドも自身の武器と酷似した武器に驚愕を隠せないでいるが、謎の戦士は構わずにディケイドのライドブッカーを切り払いながら素早く斬撃を叩き込み、後ろ回し蹴りを放ってディケイドを吹っ飛ばしてしまう。

 

 

ディケイド『クッ!クソッ……!思うように身体が動かんっ……!』

 

 

此処に来るまで連戦続きで体力を消耗している上に、疲労で満足に身体が動かせない。しかしそんな事は向こうからすれば好機でしかなく、謎の戦士が左腕を掲げると共に無数の怪人達が一斉に動き出し、ダメージと疲労で動きが鈍くなっているディケイドに向かって一気に飛び掛かっていく。が、その時……

 

 

 

 

 

 

『ATTACKRIDE:BLAST!』

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガアァンッ!!!!―

 

 

『ッ?!ギャアァッ!!』

 

 

『ヌゥアァッ?!』

 

 

『……!』

 

 

ディケイド『ッ!今の攻撃は……』

 

 

ディケイドに飛び掛かろうとした怪人達の真横から、何処からか響き渡った電子音声と共に無数の銃弾が飛来して怪人達に直撃し吹き飛ばしていったのだ。その光景を目にしたディケイドが目を見開いて呆然となりながら銃弾が放たれてきた方に振り返ると、其処にはライドブッカーGモードとウィザーソードガンGモードの銃口を謎の戦士達に向けながらディケイドの下に駆け寄って来る二人の仮面ライダー……なのはが変身したトランスと、魚見が変身した聖桜の姿があった。

 

 

トランス『零君、大丈夫ッ?!』

 

 

ディケイド『なのは、市杵宍……!お前ら、町の方はどうした?!』

 

 

聖桜『桜井さん達が代わりに引き受けてくれています。貴方が郊外の森に行ったきり戻って来ないから、何かあったのではと追い掛けてきたのですが……これは、どういう状況ですか?』

 

 

トランスと共にディケイドを守るように前に出て、謎の戦士と怪人の大群に銃口を向けたまま状況の説明を要求する聖桜。

 

 

トランスと聖桜からすれば、いつまで経っても戻って来ない零を追い掛けて来てみれば、いきなり見知らぬ戦士と怪人達がディケイドを襲っている場面に出くわした訳なのだからこの状況に困惑するのも当然だが、生憎ディケイドもあの謎の戦士の正体についてはまだ何も分かっていない。だが……

 

 

ディケイド『詳しいことはまだ分からん、俺も今さっき奴らに襲われたところだからな。ただどうやら、町を襲った怪人共を呼び出しているのは、あのマントを身に付けてる奴のようだ……』

 

 

トランス『?あの人が……?』

 

 

ふらつきながら身体を起こしてそう答えるディケイドの言葉を聞いて二人が謎の戦士に目を向けると、確かに謎の戦士の足元の影から未だ大量の怪人達が湯水のように出現しており、それを見て聖桜も納得したように頷いた。

 

 

聖桜『成る程……つまりあの人物が、この世界で暴れている怪人達を呼び出して、操っている元凶という事ですか』

 

 

トランス『でも、どうして……ううん、ならどうして、あんな酷い事をっ!貴方は一体、何が目的なんですかっ?!』

 

 

『…………』

 

 

何の罪もない子供から老人までの人々の命を無慈悲に奪い取り、町を焼いて破壊と殺戮の限りを尽くす蛮行。それらの行為が怪人達を生み出した元凶である謎の戦士による指示なら、何故あんな残酷な真似をしたのか。その光景を実際に目の当たりにしたからこそ、怒りを露わに謎の戦士に問い詰めるトランスだが、謎の戦士は無言のまま何も答えずに右手に持つ赤いライドブッカーを構え直し三人に再び斬り掛かろうとする。だが……

 

 

 

 

―……シュウゥゥゥッ……―

 

 

『ッ!……時間切れか……』

 

 

ディケイド『……?何?』

 

 

ディケイド達に斬り掛かろうとした動きを何故か突然止めて、謎の戦士は自分の左手を見下ろしながらそう呟いたのだ。その僅かな声を聞き取ったディケイド達もどういう意味だと訝しげな反応を浮かべるが、よく見ると謎の戦士の左手から粒子のようなものが立ち上り始めており、謎の戦士はそんな自分の左手を見ても気に留めた様子もなく軽く鼻を鳴らした。

 

 

『まあいい……コイツ等を制御する実験は済んだ……後は――』

 

 

 

 

―……ピシッ……ビシッ、ビシィッ……ガシャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!!―

 

 

 

 

ディケイド『ッ?!何だッ?!』

 

 

聖桜『空が……割れた?!』

 

 

謎の戦士がそう呟いた次の瞬間、突如謎の戦士の上空に巨大な亀裂が走り、硝子細工のように砕けて時空の裂け目を作り上げたのだ。そして前触れもなく上空に突然出現した時空の裂け目から巨大な突風が放たれた後、裂け目は周囲の木々や怪人達を吸い込んでいってしまい、更には謎の戦士もそれに身を委ねて裂け目の中へと飲み込まれていってしまった。

 

 

―ビュウウゥゥゴォオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオォッッッ!!!!!!―

 

 

トランス『うぅっ……!!な、何なのあれっ?!吸い込まれるっ……!!』

 

 

ディケイド『クソッ……!市杵宍ッ!お前の魔法の力でどうにか出来ないのかッ?!』

 

 

聖桜『無理ですッ!こんな状況では指輪を取り替える余裕もっ……!』

 

 

三人とも裂け目に吸い込まれまいと雑木にしがみつくだけで精一杯で、カードや魔法の力を使う余裕なんてない。そうして三人が必死に雑木にしがみつく間にも、裂け目は徐々にその勢いを増して周りの木々を根っこごと吸い込んでいってしまい、そして……

 

 

―……バキッ、バキャアァァッ!!―

 

 

トランス『っ?!う、嘘っ?!キャアァッ!!』

 

 

ディケイド『ッ!なのはッ!!』

 

 

―ガシッ!―

 

 

トランスがしがみつく雑木が遂に耐え切れなくなってバキバキッと嫌な音を立てながらへし折れてしまい、折れた雑木と共に吸い込まれようとしたトランスの手をディケイドが慌てて掴んで助ける。しかしその次の瞬間、ディケイドが反対の手で掴む木の枝が軋む音を立て折れ始めていた。

 

 

トランス『は、離して零君ッ!!このままじゃ二人共……!!』

 

 

ディケイド『出来るかそんな事っ!!ぐっ、くぅっ……!!』

 

 

―ミシッ、ミシミシミシッ……!!―

 

 

トランスを見捨てる事など出来る筈がない。どうにかして彼女だけでも助けようと、必死にトランスを自分が掴まっている木に近づけさせようとする。が……

 

 

―ミシッ……バゴォオオオオオオオオオオォンッッッ!!!!!―

 

 

ディケイド『ッ?!何?!グッ……ウゥアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!』

 

 

聖桜『ッ!零ッ!!高町さんッ!!』

 

 

トランス『キャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!!!』

 

 

ディケイドが掴まる雑木が地面ごと捲れ上がり、二人は雑木と共に裂け目に吸い込まれてしまったのだ。

 

 

そしてそれを目にした聖桜もすぐさま二人を助ける為に自ら裂け目へと飛び込んでトランスの右手をどうにか掴み取るが、ディケイドに伸ばした手は届かずそのまま二人諸共裂け目の向こうへと飲み込まれてしまい、ディケイド達と謎の戦士を飲み込んだ裂け目は徐々に縮小され、最初から其処に何もなかったかのように完全に消滅してしまったのであった……。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

―――そして……

 

 

 

―???の世界―

 

 

―……ビュウゥゥゥゥッ……―

 

 

零「…………ん、うっ…………ぁ…………?」

 

 

――吹き抜けた冷たい風が肌に当たり、裂け目に飲み込まれた影響で気を失っていた零は、漸く其処で意識を取り戻した。

 

 

零「…………っ…………ここ、は…………俺は……?」

 

 

何やらズキズキと痛む頭を抑えながら零がゆっくりと身を起こして辺りを見回すと、其処はゴテゴテとした岩山が何処までも続く荒野だった。

 

 

何故、自分はこんな場所に倒れて気を失っていたのか?

 

 

まだ完全に覚め切っていない脳裏にそんな疑問が思い浮かんだが、先程まで自分の身に起きた出来事……謎の戦士と戦い、トランスと聖桜と共に時空の裂け目に飲み込まれてしまった記憶がフラッシュバックした。

 

 

零「―――ッ!そうだ、俺は……なのは!市杵宍ッ!何処だッ?!」

 

 

先程までの出来事、そして自分と一緒に裂け目に飲み込まれてしまった二人の事を思い出して、近くにあの二人がいないか慌てて呼び掛ける零。だがそんな彼の声に返って来る返事はなく、零は思わず「クソッ」と毒づきながら二人を捜しに向かおうと一歩踏み出した。その時……

 

 

 

 

 

 

『『『ウゥゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!』』』

 

 

零「ッ?!……何だ、今の……?」

 

 

 

 

 

なのはと魚見を捜しに向かおうとした矢先、突然何処からか地を揺らがす轟音のような雄叫び声が聞こえてきたのだ。それも数人や数十人ではなく、数百数万の人間が一度に叫んだような、腹の底にまで響き渡る声。

 

 

それが気になり、零が何となしにその声が聞こえてきた方に向かって歩いていくと、その先に広がっていた予想外の光景を目の当たりにし、目を見開いて愕然としてしまった。何故なら……

 

 

 

 

 

 

 

 

―ドオオォンッッッ!!!ドオオォォンッッッ!!!ドッガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッッッッッ!!!!!!―

 

 

ノーヴェ?「怯むなぁあああああッ!!敵将の首に目掛けて、突き進めぇえええええええッ!!」

 

 

『ウゥゥオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!』

 

 

シリウス『ハァアアアアアアアアアアアアッ!!!!』

 

 

フェイト?「勝機はこちらにあるッ!!ディジョブド、貴方の力を見せてッ!!迎え撃てぇえええええええッ!!!」

 

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!』

 

 

ディジョブド『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!』

 

 

 

 

 

 

―――零の目前に広がっていたのは、あまりに異質で、荒唐無稽で、デタラメな光景だったからだ……。

 

 

何故か昔の戦国武将のような鎧と兜を身に纏ったノーヴェとフェイトの二人が、それぞれシリウスのエンブレムとディジョブドのエンブレムが描かれた旗を背中に掲げて対峙し、数百人を越える大勢の武士達を互いの陣営に差し向け、爆発と銃弾が飛び交う戦場で戦い合う姿……。

 

 

そして何より可笑しいのは、歴史の教科書に載ってるような武士と武士が命懸けで戦う戦場に似つかわしくない二人のライダー……零の異世界の友人である紲那が変身するディジョブドと神威が変身するシリウスが、互いの武器をぶつけ合わせて激突する姿が其処にはあったのだ。

 

 

零「…………なんだ、これ…………どうなってるんだ…………」

 

 

あまりに意味不明な光景を目の当たりにし、零は思考停止して目の前で繰り広げられる合戦から目を離せずにいた。

 

 

ノーヴェとフェイトは一体何をやってる?

 

 

あの武士達や、あの二人の恰好は一体何だ?

 

 

何故、シリウスとディジョブドが互いに武器を向けて戦い合っている?

 

 

そもそも、何故連中はこんな大昔の合戦みたいな真似をしているんだ?

 

 

目の前の光景を眺めながらそんな疑問ばかりが次々と思い浮かぶ中、今度はまた別々の場所から爆発音と雄叫びが響き渡り、その音に釣られるように零が周囲を見渡すと、其処には……

 

 

 

―ブゥオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオンッ!!!!―

 

 

first『ハアァッ!!!』

 

 

ロード『ハッ!!!』

 

 

 

――此処とは別の戦場で、firstのエンブレムが描かれた旗と、ロードのエンブレムが描かれた旗を背中に掲げた武士達が刀をぶつけ合わせて激突し、その中でそれぞれのマシンで戦場を駆け抜けて激しいカーチェイスを繰り広げるfirstとロードの姿があり……

 

 

 

―ズガガガガガガガアァンッ!!―

 

 

エグザム『ゼェアァッ!!ハッ!!』

 

 

エクス『グッ、ウアァァッ?!』

 

 

 

また別の戦場では、武士達と入り乱れエグザムがエグザムカリバーによる攻撃で怯んだエクスに飛び掛かって土砂を転げ落ちていったり……

 

 

 

『ガオォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!』

 

 

ディライト『グッ!このっ!』

 

 

雷牙『ダァアアアアアアアッ!!!』

 

 

 

他の戦場では、素早い動きで襲い掛かって来るサンダーレオンの爪を必死に避けながら応戦するディライトに、雷牙が両腕のクローを振り上げて奇襲を仕掛ける姿もあったのだった。

 

 

零「―――そうか……そういう事か……此処は……」

 

 

三者三様……様々な場所で見知ったライダー達が合戦を繰り広げるその光景を前に、幾分か冷静さを取り戻した零は何かを理解したように目を細めて呟く。

 

 

 

 

 

 

零「――『戦国世界』……『武者ライダー』の世界か……」

 

 

 

 

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole ディケイドパート①

 

 

――戦国バトルロワイヤル。

 

 

それは、この"戦国世界"において『天下』という名の夢想に取り憑かれた武将達がそれぞれの国々の守護者である『武者ライダー』を使役し、他の武者ライダーを全て倒して最後の一人になるまで戦い続けるという天下取りの大合戦の事だ。

 

 

そして全ての武者ライダーを倒し、最後の一人として勝ち残った瞬間にその覇者には天下と、天下を支配した証である"力"が与えられると言い伝えられているらしい。

 

 

 

 

 

 

零「―――ほほう……で?そんな嘘か誠かも分からん与太話を信じて、こんなド派手なドンパチが毎日日常茶飯事で起きてるって事か?」

 

 

―ドッガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーアァンッ!!!!―

 

 

『『『ウゥゥオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!』』』

 

 

 

 

 

 

若干呆れを含んだ様な口調でそう言いながら零が目を向けた先には、無数の爆発と銃弾が飛び交う戦場を駆け抜けながら敵軍に目掛けて進軍する武士の軍勢の姿があった。

 

 

そしてその様子を岩影からモグラのように顔を出して観戦していた零だったが、突然真横から誰かに引っ張られて岩影に引きずり込まれてしまい、零を岩影に引っ張った人物……全身や甲冑もボロボロの恰好になっている武士は、涼しい顔を浮かべる零に大声で怒鳴った。

 

 

「ちょ、なにやってんスか旦那ッ?!危ねぇーでしょッ!流れ弾が飛び交ってんのに頭出すとか死にてぇんですかいッ?!」

 

 

零「悪い悪い、分かったからそう怒鳴るな……んで?それよりさっきの続きだが、その武将達ってのはその天下と"力"とやらを手に入れる為に、あっちこっちでライダーを従えて戦ってるのか?」

 

 

先程適当に選んだこの戦場に密かに侵入した時に取っ捕まえ、戦国バトルロワイヤルの事を初めとしたこの世界での様々な出来事を教えてくれたボロボロの武士に再びそう問い掛けると、武士は岩影からこっそり外の戦況を盗み見ながら話の続きを語り出した。

 

 

「さぁ……皆が皆そうなのか分かりやせんが、少なくともこの天下取りに挑んでいる殆どの武将さん方は、そのつもりじゃぁないスかねぇ?武者ライダーが一体ありゃ、国を一つ焼くなり奪うなり簡単に出来るわけですからぁ、遊びでやってんじゃねぇのは確かですし」

 

 

零「……それがこの世界の現状、か……何となく察しは付いてたが、これはあの二人を探し出すのも骨が折れそうだ……」

 

 

「……?何か言いやしたか?」

 

 

零「……いや、なんでも」

 

 

そう答えつつも、零は頭痛を覚えて思わずこめかみを抑えてしまう。恐らく自分と同様にあの裂け目に吸い込まれこの世界に飛ばされたであろうなのはと魚見を早く見つけ出し、光写真館が滞在する世界に戻ろうと考えていたのだが、こんな戦国時代真っ只中な世界であの二人を見つけ出そうなど至難の業だ。

 

 

そう考えて溜息を吐きつつも、それでも諦める訳にはいかないかと、零は重い腰を上げて服に付いた汚れを払っていく。

 

 

「あ、もう行くんですかい旦那?」

 

 

零「ああ、早く探さなきゃならない奴らがいるんでな……いきなり踏ん捕まえて悪かった、世話になったよ。……そういえば、お前は一体何処の軍に仕えてるんだ?」

 

 

一応この男にはこの世界の現状を教えてもらった恩もあるし、仮にもしこの世界の武者ライダーと戦わなければならない事態になったとしても、彼が仕えてる軍とは出来るだけ戦わないにしようと考え、何となしにそう質問すると……

 

 

「あっしですか?あっしゃ、武者ツヴァイ軍の武将、"信長"様に仕えてるんですわ」

 

 

零「…………は…………?」

 

 

ピタッと、武士が口にした予想外の名前を聞いた途端に服の汚れを払っていた零の手が不自然に止まり、険しげな顔で武士の方に目を向けていく。

 

 

零「信長って……まさか、あの織田信長の事か……?」

 

 

「……?どの信長様かは知りやせんが、あっしが仕えている主君は織田信長様で間違いないですぜ。……それが、どうかしましたかい?」

 

 

零「……いや、別に何でも……」

 

 

天下統一を目指す戦国世界と言うぐらいだからもしやと思ったが、まさか本当に有名な武将、それも図らずもあの織田信長が率いる軍の武士と話をしていたとは思わず内心驚いてしまう零だが、努めて冷静さを装いながらポケットからコインを取り出し、指で弾き武士に渡した。

 

 

「うおっ、おおぉっ?な、何すかこりゃ?」

 

 

零「色々と教えてもらった礼だ。ついでにアンタと、アンタの大将の無事をせいぜい祈らせてもらうよ……」

 

 

「お、おお。へへッ、そんなん流れ者の旦那に祈られるまでもねぇですよ。何せあっし達の武者ツヴァイは最強ですからね!そんじょそこらの武者ライダーにゃ遅れは取らな―――」

 

 

 

 

 

「う、うあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!?」

 

 

『……ッ?!!』

 

 

 

 

 

 

零が武士と別れの挨拶を交わしている中、不意に突如戦場の方から悲痛な悲鳴が響き渡ったのである。そうしてその悲鳴を聞いた零と武士が慌てて戦場の方へと振り返ると、其処には……

 

 

 

 

 

『グルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!』

 

 

『シャアァァァァァァアッ!!!!』

 

 

―ズシャアアァッ!!―

 

 

「ギャアァッ!!」

 

 

「ひ、ひいいいいいッ?!く、来るなッ!来るなぁッ!ウワアァアアアアアアアアアアッ?!!」

 

 

 

 

 

其処には、先程まで戦場に見られなかった筈の異形の怪物達……ミラーモンスターやワーム、ドーパント達の姿があり、陣営を問わずに無差別に武士達を襲っている光景があったのだった。

 

 

零「ッ!アイツ等は……!」

 

 

「な、何だぁッ?!化けもんッ?!『ギシャアァァァァァァァァァアッ!!!』ひ、ひぃいいいいいッ?!」

 

 

零「?!クソッ!」

 

 

何処からともなく突如現れ戦場を掻き乱してる見覚えのある異形達を見て思わず驚愕する零だが、その間に岩影に隠れる武士の下にもオルフェノクとイマジンが現れ彼に襲い掛かっていき、すぐさま我に返って武士に組み付くオルフェノクとイマジンを蹴り飛ばし、腰にドライバーを装着した。

 

 

「だ、旦那ぁ……!」

 

 

零「下がってろッ!変身ッ!」

 

 

『KAMENRIDE:DECADE!』

 

 

そう言って立ち上がるオルフェノクとイマジンを睨み据えながらバックルにディケイドのカードを装填してスライドさせディケイドへと変身していき、それを目にしたオルフェノクとイマジン、そして武士も驚愕を露わに動揺していた。

 

 

「だ、旦那ッ?!アンタッ?!」

 

 

ディケイド『驚いてる暇があったら早く隠れてろッ!ハアァッ!』

 

 

そう言いつつ正気に戻って飛び掛かってきたイマジンの攻撃を払い退けながら拳を打ち込んで後退りさせ、ディケイドは左腰のライドブッカーをソードモードに切り替えてオルフェノクに斬り掛かっていく。

 

 

ディケイド(いきなり前触れもなく現れた怪人……間違いない、恐らく奴が……!)

 

 

オルフェノクと戦いながらディケイドの脳裏を過ぎるのは、この戦国世界に飛ばされる要因となったマントを纏ったあの謎の戦士との戦い。あの裂け目の中へと消えた奴がこちらの世界に来ていたとしても可笑しくない。ならば恐らくはこの怪人達もと、オルフェノクとイマジンを纏めて斬り裂いて爆散させ、ディケイドは戦場で武士達に襲い掛かる怪人達に目掛けて疾走しライドブッカーを振るって怪人達に斬り掛かっていくのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

そしてその一方、ディケイド達がいる戦場から離れた場所に位置するとある戦場でもまた、突如現れた無数の怪人の大群がやはり無差別に両陣営の兵達を襲う姿があった。だが……

 

 

―ズシャアァッ!ガギイィンッ!―

 

 

『ウェアァッ?!』

 

 

『グボァッ!』

 

 

武者ツヴァイCP『ハァッ!フッ!』

 

 

武者リノベーション『ハッ!ヤアァッ!』

 

 

其処は、まともな抵抗も出来ぬまま武士達が怪人達に襲われる他の戦場とは明らかに違い、兵達に襲い掛かる怪人達を次々と撃退していく二人の武者ライダー……武者ツヴァイ軍の守護者の武者ツヴァイ・クラスターパンドラと、武者リノベーション軍の守護者である武者リノベーションが、自分達の陣営の兵達と総大将を守る為に戦う姿があったのだった。

 

 

「クッ!何なのだこやつらはッ?!いきなり現れたかと思えば、いきなり襲い掛かって来るとは……!」

 

 

「家康様ッ!このままでは危険ですッ!一度本陣まで退却を……!」

 

 

「馬鹿を言うなっ!敵軍の大将を前に、こんなところで引けるものかっ!」

 

 

家康と呼ばれた馬に跨がる白髪の女性はそう言うと、怪人達が現れるまで今まで対峙していた敵陣営である武者ツヴァイ軍の武将……家康と同じく馬に跨がって武者ツヴァイの戦いを静かに見守る、背中から真紅のマントを靡かせる流麗な黒の甲冑を纏った長い黒髪の女性を睨み付けていく。が、その時……

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガガガガアァンッ!!!―

 

 

武者ツヴァイCP『ッ?!グ、ウグアァッ!!』

 

 

武者リノベーション『ウアアァッ!!』

 

 

「ッ?!ツヴァイッ!」

 

 

家康「な、何だ、今度はッ?!」

 

 

足軽達を守りながら怪人達を蹴散らす武者ツヴァイと武者リノベーションに突如無数の銃弾が撃ち込まれ、二人は装甲から無数の火花を散らして吹っ飛ばされてしまったのだ。そしてそれを見た家康と黒髪の女性が銃弾が放たれてきた方へと振り返ると、其処には……

 

 

 

 

 

―ザッ、ザッ、ザッ……―

 

 

『―――先ずは二人……見付けた……』

 

 

 

 

 

赤いライドブッカーの銃口を突き付け、背後に無数の怪人達を従えて静かに歩み寄って来るマントを纏った人物……零達がこの世界に飛ばされる前に戦った、謎の戦士の姿が其処にあったのだった。

 

 

「奴は……」

 

 

家康「また新手かっ……!リノベーションッ!早くあやつを仕留めて、敵の武者ライダーも倒してしまえッ!」

 

 

「ッ!待て家康ッ!迂闊に手を出すなッ!」

 

 

武者リノベーションに謎の戦士の討伐を命じる家康を黒髪の女性がすぐさま呼び止めようとするが、時既に遅く、武者リノベーションは周囲のグロンギとヤミーを斬り捨てながら謎の戦士に目掛けて一気に駆け出し斬り掛かっていく。しかし……

 

 

―ガギイィッ!!―

 

 

武者リノベーション『ッ?!―ズバアァッ!ガギイィィンッ!グガアァンッ!―ウアァッ?!』

 

 

『ヌウアァッ!ハアァッ!』

 

 

武者リノベーションが振りかざしたアマノハバキリを払い退け、謎の戦士が瞬時に剣形態に切り替えた赤いライドブッカーによる凄まじいまでの速さの斬撃が武者リノベーションに叩き込まれていき、武者リノベーションの首を掴み上げた。次の瞬間……

 

 

―バチバチバチィッ、ギュイィィィィィィィィィィィィィィィイッ!!!!―

 

 

武者リノベーション『う、うぐうぅっ?!ウアアアアアアアアアアアアアアアッ……!!!』

 

 

謎の戦士に首元を掴まれる武者リノベーションの全身に青白い火花が撒き散り、武者リノベーションの身体が突如捻れ、そのまま謎の戦士に腰に吸収されて消滅してしまったのであった。

 

 

家康「リ、リノベーションッ?!」

 

 

「武者ライダーを……取り込んだ、だと……?」

 

 

『……先ずは一人……次はお前だ……』

 

 

―ダッ!―

 

 

武者ツヴァイCP『!クッ!』

 

 

武者リノベーションを取り込んだ謎の戦士を見て驚愕する一同の反応に構わず、謎の戦士は次の標的に武者ツヴァイを狙い定めて勢いよく突っ込んでいき、それを見た武者ツヴァイもすぐさまパンドラソードを構えて謎の戦士に対し迎撃していく。其処へ……

 

 

―ガギイィィィィィィィィィィィィィインッ!!―

 

 

『グゥアアアッ?!』

 

 

『シャアァッ!!』

 

 

ディケイド『チィッ!いい加減しつこいッ!』

 

 

他の戦場で襲われる武士達を守りながら怪人達と戦っていたディケイドが、残り僅かとなった怪人達を引き連れその場に現れたのだ。そして、ファントムが振りかざした槍をライドブッカーで受け止めながら押さえ込むと、ディケイドは武者ツヴァイと切り合っている謎の戦士の姿に気付き目を見開いた。

 

 

ディケイド(アイツは……?!やっぱり、コイツ等が現れた原因は奴が……!)

 

 

―ギュイィィィッ!―

 

 

『フッ、ゼエェイアアァッ!!!』

 

 

―シュババババババババババババババババババババババババババババババアァッッッッ!!!!!!―

 

 

武者ツヴァイCP『グッ?!グアァッ!!』

 

 

ディケイド『うおぉッ?!』

 

 

―ドッガアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーアアァンッッッッ!!!!!!!―

 

 

『うっ、うあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーっっっっ?!!!!!』

 

 

ディケイドがファントムの槍を払い退けて謎の戦士の下に向かおうとした瞬間、謎の戦士が武者ツヴァイのパンドラソードを弾き返しながら赤いライドブッカーの刃に莫大なエネルギーを溜めて横一閃に薙ぎ払い、それと共にライドブッカーの刃から無数の真紅のエネルギー刃が縦横無尽な軌道で武者ツヴァイとディケイド、そして二つの陣営……武者ツヴァイ軍と武者リノベーション軍に襲い掛かって無数の爆発を巻き起こしていき、両陣営の多くの兵達が次々と事切れて倒れていってしまう。

 

 

「ぐうッ!い、家康様ッ!リノベーションも失い、我が軍も甚大な被害を受けていますッ!これ以上は……!」

 

 

家康「クッ……おのれぇぇぇぇっ……退却だっ!退却しろぉっ!」

 

 

武者ライダーを失った以上、これ以上この場に留まっても自分の軍が余計な被害を受けるだけだと悟ったのか、家康は馬を操って自軍の兵達に退却指示を送りながら撤退を開始していく。そして家康達の後を追って逃げる武士達を怪人達が背後から追い撃ちを掛けようとするが、それを阻むように敵軍の大将であるハズの黒髪の女性が馬を操って怪人達を刀で切り払い、武者リノベーション軍の兵達の撤退を何故か手助けしつつ自軍の兵達に叫ぶ。

 

 

「我々も陣形を立て直しつつ、本陣にまで後退するぞッ!余力がある者は負傷している兵を守りながら避難させるのだッ!」

 

 

『……あの女……』

 

 

武者ツヴァイ軍と武者リノベーション軍の兵達の撤退を手伝いつつ、的確な指示を飛ばして馬を巧みに操りながら怪人達を次々と蹴散らしていく黒髪の女性。だが、謎の戦士は武者ツヴァイと戦いながらそんな黒髪の女性を無言のままジッと見つめ、何を思ったのか、いきなり武者ツヴァイの腹を蹴り飛ばし黒髪の女性に目掛けて赤いライドブッカーから巨大なエネルギー刃を飛ばしたのだ。

 

 

武者ツヴァイCP『ッ?!殿ッ!!』

 

 

―ズバアァァァァァァァァァァァァァッァァァァァァァァアンッ!!!―

 

 

「……?!ツヴァイ?!」

 

 

しかし、黒髪の女性に襲い掛かろうとした巨大なエネルギー刃は、武者ツヴァイが咄嗟に黒髪の女性の前に飛び出て身代わりになり、盾となったのだ。謎の戦士はその隙を見逃さずにすかさず武者ツヴァイへと斬り掛かり、何度も斬撃を叩き込んで弱らせてから力強く首を掴み、そして……

 

 

―バチバチバチバチィッ、バシュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーッッッ!!!!―

 

 

武者ツヴァイCP『ウグッ、クッ……グゥアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!』

 

 

先程の武者リノベーションと同様に、武者ツヴァイは全身から青白い火花を撒き散らしながら身体を捩らせ、そのまま謎の戦士の腰に吸い込まれるように吸収されてしまったのであった。

 

 

「なっ、また武者ライダーを……?!」

 

 

『これで二人……次は……』

 

 

武者ツヴァイを取り込んで満足げに溜め息を吐いた後、謎の戦士は黒髪の女性に目を向けてゆっくりと彼女に歩み寄っていき、それを見た黒髪の女性も険しげに顔を歪めて刀を持つ手に力を込めた。その時……

 

 

―バシュウゥンッ!―

 

 

『……ッ!チッ!』

 

 

謎の戦士の真横から、突然一発の銃弾が放たれて謎の戦士に襲い掛かった。完全に頭部を捉えたその弾は謎の戦士に直撃し掛けたが、謎の戦士は咄嗟に身を傾けてソレを回避しながらその場から跳び退くと、今まで怪人達と戦っていたディケイドがライドブッカーガンモードの銃口を謎の戦士に突き付けながら女性の前に立った。

 

 

「ッ……!お主は……」

 

 

ディケイド『怪人達を生み出すだけでなく、武者ライダーを吸収する能力か……いよいよ持ってきな臭さが増してきたな、お前の正体も』

 

 

『……貴様……何故此処に……』

 

 

ディケイド『お前のせいでこっち側に飛ばされてきたんだよ、お陰で大迷惑している……で、お前こそ何をしてる?あの世界での破壊だけでなく、こんな真似をして……何が目的だ?』

 

 

ライドブッカーGモードの銃口を突き付けたまま謎の戦士の目的を問い詰めようとするディケイド。しかし、それを見ても謎の戦士は軽くを鼻を鳴らすだけで身構えもせず……

 

 

『生憎だが、こちらはお前なんぞに構ってる暇はないのでな……お前はコイツ等とでも遊んでいろ』

 

 

―ギュイィィィィッ!―

 

 

『グルアァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!』

 

 

ディケイド『!逃がすかッ!』

 

 

足元の影から無数の怪人を再び生み出して逃げようとする謎の戦士を追い掛け、ディケイドは襲い掛かってきた怪人達の攻撃を退けて潜り抜けていく。だが謎の戦士は背後にそびえ立つ崖の上へと跳躍して戦場から離脱してしまい、ディケイドもその後を追おうとするが……

 

 

「グ、ウアァッ!」

 

 

ディケイド『!』

 

 

背後から不意に悲痛な悲鳴が響き、ディケイドがそれを聞いて背後に振り返ると、其処には先程謎の戦士が生み出した無数の怪人達が黒髪の女性や武者ツヴァイ軍の兵達に襲い掛かる光景があった。

 

 

ディケイド『っ……ええい、クソッタレめっ!』

 

 

―バッ、ズシャアァッ!―

 

 

『ギャアッ?!』

 

 

「ッ!何……?」

 

 

一瞬謎の戦士を追い掛けるか踏み止まるディケイドだが、このまま彼等を見捨てる訳にはいかないと引き返して黒髪の女性を襲うドーパントを後ろから切り捨て、ライドブッカーから一枚カードを取り出しバックルにセットした。

 

 

『ATTACKRIDE:ILLUSION!』

 

 

電子音声が響き渡ると共に、ディケイドは四人に分身しながらそれぞれ散開し、兵達を襲う怪人達へと斬り掛かっていく。そして怪人全てを兵達から引き離して戦場の一カ所に集めていくと、それぞれカードを取り出しドライバーに装填してスライドさせた。

 

 

『『『『FINALATTACKRIDE:DE・DE・DE・DECADE!』』』』

 

 

『『『『フッ……ゼエェヤアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!!』』』』

 

 

『グ……ァ……ウゥオアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッッッッ?!!!』

 

 

―ドッガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!―

 

 

再度響き渡った電子音声と共にディケイド達が空高く跳躍すると、それと同時に怪人達に目掛けて四人分のディメンジョンフィールドが形成されていき、四人のディケイド達はフィールドを一瞬で潜り抜け、怪人達にディメンジョンキックを打ち込み爆散させていったのだった。そして爆炎の中から飛び出たディケイドは既に一人に戻り、怪人達が爆発した炎を見つめて両手を叩くように払いながら身を起こしていく。

 

 

ディケイド(これで粗方片付いたか。それにしても、奴は一体何が目的だ?武者ライダー達を取り込んで……いや、アレは倒しているのか……?)

 

 

あの謎の戦士は何が目的で動いてるのか。元の世界で戦った時もそうだが、この世界で再び奴の行動を目の当たりにしてその謎が更に深まるばかりだ。とにかく奴を捕まえる……の前に、なのはと魚見と合流して奴を見つけ出なさいと、また破壊と殺戮を繰り返すかもしれないと考える中……

 

 

 

 

―ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッッッッ……!!!!!!!―

 

 

ディケイド『……あ?』

 

 

 

 

思案するディケイドの周りを、突然武者ツヴァイ軍の兵達が取り囲み始めたのである。その光景を目にしてディケイドも頭上に疑問符を浮かべて辺りを見回していくが、兵達は構わずディケイドを包囲して一斉に刀をディケイドに突き付け、その中でも特に目立つ甲冑を身に纏った茶髪の少女が敵意を込めた目付きで口を開いた。

 

 

「貴様……何の真似だ?他の陣の武者ライダーが我等を助けるなど、我等に恩を売るつもりか?!」

 

 

ディケイド『?……意味が分からんな。大体何の真似だ、これは?この世界じゃ、恩人に刃を突き付けるのが礼儀なのか?』

 

 

「惚けるなッ!我等が武者ライダーを失った直後に助けに現れるなど、そんな都合のいい話が「止せ、蘭丸」……ッ!」

 

 

わざとらしく戯けるように小首を傾げるディケイドに蘭丸と呼ばれた茶髪の少女が食ってかかるが、それを制するように蘭丸達の背後から声が聞こえて振り返ると、其処には赤いマントを靡かせこちらに歩み寄って来る黒髪の女性の姿があった。

 

 

蘭丸「姫様……!」

 

 

ディケイド(?蘭丸、って……まさか、森蘭丸?この女が?……いや、それこそまさかだな)

 

 

森蘭丸と言えば、あの織田信長の側近であった有名な武将の名だ。それがまさか、こんな年端も行かぬ少女な訳がないと心の中でディケイドが否定する中、黒髪の女性は兜を脱いで誰もが見惚れるような綺麗な黒髪を曝し、ディケイドと向き合っていく。

 

 

「助けてくれた事には素直に礼を言おう……だが、伊達家の武者ライダーであるハズのお前が、何故我等を手助けするのだ?武者ディケイドよ」

 

 

ディケイド(……?伊達家?武者ディケイド?)

 

 

黒髪の女性の質問の意図が分からずに思わず口を閉ざしてしまうディケイドだが、黒髪の女性はそれを質問の拒否と受け取ったのか、一度瞼を伏せた後に再び口を開いた。

 

 

「答えられぬなら、質問を変えよう。伊達の奴は何処にいる?奴は生きているのか?無事なのか?何故今になって、お前が姿を現したのだ?」

 

 

ディケイド『おい……おいちょっと待てっ。さっきから何の質問をしてるんだっ?伊達って誰の事だっ?』

 

 

「?伊達は伊達家の伊達だ。『伊達政宗』……お前の主君だろう?」

 

 

ディケイド『伊達、政むっ……?』

 

 

伊達政宗。戦国時代を駆け抜けた有名な武将の一人であるが、それが自身の主君と言われ一瞬困惑してしまうも、ディケイドはすぐに首を振った。

 

 

ディケイド『誰と勘違いしているのかは知らんが、俺は武者ディケイドでもなければ伊達政宗の武者ライダーでもない……通りすがりの仮面ライダーだ』

 

 

そう言ってサイドバックルを開くと、変身を解除して零に戻り、それを目にした兵達と蘭丸、黒髪の女性は目を見開いて驚愕を浮かべた。

 

 

「人間、だと……?」

 

 

零「ご覧の通りな。だからお前の言う伊達政宗の武者ライダーでもないし、その伊達政宗が何処にいるのかなんて俺には分からん」

 

 

「……そう、か……俄には信じがたい話だが、我等の勘違いだった……という事か……?」

 

 

零「そういう事だ……で、そういうお前こそ一体何者なんだ?人に質問ばかりしていないで、そろそろ名前ぐらい教えてくれても良いんじゃないか?」

 

 

蘭丸「無礼者っ!貴様っ、姫様になんという口の聞き方を……!」

 

 

「構わんよ、蘭丸……確かにお主の言う通りだ。命を助けてもらっておいて恩人に勘違いで刃を向け、名も名乗らないとあっては末代までの恥……無礼を詫びよう」

 

 

蘭丸を制止して素直に自分の非を詫び、謝罪の言葉を零に口にする黒髪の女性。そんな彼女の姿を見て蘭丸や他の兵達も互いに顔を見合わせると、おずおずと零に突き付けた刀を下ろして一歩退いていき、それと入れ代わるように、未だ警戒を解かずジト目を向ける零の前に黒髪の女性が立ってマントを勢いよく翻し……

 

 

 

 

 

 

「うむ。では、名乗らせてもらおう。問うたからには簡単に忘れてくれるなよ?我こそ、この武者ツヴァイ軍の総大将にして、織田の当主……

 

 

 

 

……『織田信長』だッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

零「………………………………………………………………………………」

 

 

 

 

 

 

………………………。

 

 

 

 

 

 

零「はぃ?」

 

 

 

 

 

 

堂々と、長く美しい黒髪を靡かせて天にまで届かんとばかりに高らかにそう叫ぶ黒髪の美女……"織田信長"と名乗る彼女の名乗りを耳にし、零は思わず間抜けな声を上げて唖然とした顔を浮かべてしまうのであった。

 

 

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole ディケイドパート②

 

―安土城・謁見の間―

 

 

―――安土城。現代の歴史では織田信長が建てた城として有名であり、本能寺の変で明智光秀に織田信長が討たれた後、その後を追うように焼かれて崩れ落ちたとされている。そうしてそんな有名な城で、あの謎の戦士についてと零自身についての説明を聞きたいと申し出た信長達に保護された零は、今現在城の謁見の間に通されている訳なのだが……

 

 

零(―――想像していた城のイメージと随分掛け離れ過ぎてるな……おい……)

 

 

若干気落ちした様子で内心そう思いながら零が謁見の間の部屋中を見回していくと、先ず零の目に付いたのは、畳み18以上はあると思われる部屋の壁にこれでもかと言うぐらいに埋め込まれたモニターの数々。

 

 

次に、零の正面に腰を下ろしているこの城の主の信長の背後に掛けられた信長の刀……のすぐ隣の壁に立て掛けられてる、火繩銃よりも高性能なライフルやハンドガン等の様々な銃器。

 

 

……折角の立派な城の和のイメージが台無しである。

 

 

信長「―――?どうした、ディケイドよ?何やら落ち込んでいるように見えるが」

 

 

零「……いや……なんか、一種のカルチャーショックみたいなものを受けている真っ最中というか……まぁ気にするな……」

 

 

信長「?」

 

 

何気に歴史の教科書に書かれているような、日本の城というものに始めて訪れるとあって少なからず期待があったのだが、実物を目にして想像してたイメージと違い過ぎててあからさまにテンションが下がっている零。

 

 

因みに何故こんなモニターやらハンドガンなどの現代的な品物があるのかというと、どうやらこの戦国世界は科学技術が異常なまでに発達しているらしく、その技術力は現代に追い付くかそれ以上にまで匹敵するらしい。

 

 

それ故に釜は勿論、炊飯器に似たような機械とか普通にあるし、筆も使われるがペンに似た筆も普通に使われている。

 

 

戦場においても、ロケットランチャーや戦車までもが持ち出されているらしく、これらを始めとして若干の違いはある物の、この世界の歴史や文化は零達の知る日本の史実とは大きく掛け離れているらしい。

 

 

零(信長を始めとした武将が女だったり、武者ライダーがいたり、この戦国世界も平行世界の可能性の一つって訳か……最早なんでもありだな……)

 

 

信長「――ふむ……つまり今までの話を纏めると、こういう事か?お主やお主の仲間達は様々な世界を旅しており、その折に訪れたとある世界であの敵と遭遇して戦いになり、奴がこの世界に逃げた際にお主とその仲間達も巻き込まれてこの世界に飛ばされてしまった……と?」

 

 

零「……ん?ああ……一応はそんな感じ、だな」

 

 

少しばかり考え事をしてたせいで後半の部分しか聞き取れなかったが、取りあえず話を進める為に一応頷いておく零。そしてその話を今まで訝しげに聞いていた、蘭丸と信長の家臣の一人である白の甲冑を纏ったポニーテールの茶髪の女性、柴田勝家は戸惑いを覚えていた。

 

 

勝家「しかし、俄かには信じ難い話ですね。此処とは別に違う世界があるなどと……」

 

 

蘭丸「私は寧ろ一つも信じられません、そんな異世界などと突拍子もない……。この男が虚言を吐いているだけなのでは?」

 

 

「そうかもしれませんね。ですが、彼の話が本当ならただ虚言と吐き捨てることも出来ないでしょう。実際あの敵は、我等と家康の軍の武者ライダーを二人も圧倒して取り込み、更に無数に怪物を生み出して戦場を掻き乱している……それに私達の知る武者ライダーと違って、人間である彼そのものが、今までの話の信憑性を物語っていますし」

 

 

零に疑いの眼差しを向ける蘭丸にそう言って宥めるのは、温厚な雰囲気を漂わせる赤み掛かった長髪の女性……信長の家老の丹羽長秀であり、彼女の言葉に同意するように信長も静かに頷いた。

 

 

信長「武者ライダーはこの世界において、武の概念が守護者として具現化した、言わば守り神のような人間とは異なる存在だ。人間が変身して戦うなど聞いた事がない。……最も、伊達家の武者ライダーが例外で、人間が変身していたとあらば話は別だが」

 

 

零「……伊達家、ねぇ……そういえばさっき戦場でも気になる質問を幾つか受けたが、その伊達政宗に何かあったのか?無事なのかとか生きているのかとか、何やら随分穏やかじゃなかったが……」

 

 

武者ディケイドの主君……この世界の伊達政宗の身に何かあったのか。零がそう質問を投げ掛けると、信長は無言のまま長秀に目配りし、長秀も小さく頷き返し代わりに零に説明し始めた。

 

 

長秀「もう半年ほど前になるのですが……我々や他の陣営と同じように武者ディケイドを従え、天下取りの戦いに明け暮れていた伊達政宗率いる武者ディケイド軍が、突如何者かの襲撃を受けたのです」

 

 

零「襲撃……?他の陣営からか?」

 

 

長秀「分かりません。我々も散々調査を繰り返しましたが、武者ディケイド軍を襲撃した者の正体に繋がる手掛かりは何一つ得られませんでしたので」

 

 

信長「……その襲撃により、武者ディケイド軍は事実上の壊滅。伊達家の当主である伊達政宗は消息不明。奴に付き従ってた武者ディケイドも見付からず、恐らく襲撃を受けた際に何者かに倒されたのだと思われるが……」

 

 

零「……成る程……だから俺を見て、その武者ディケイドが現れたと勘違いしたって事か」

 

 

伊達政宗と共に行方知れずになってる武者ディケイドと寸分違わない外見をしたディケイドがいきなり目の前に現れれば、伊達政宗が生きていて差し向けたか、そうでなくても武者ライダーが死んだ伊達政宗の弔い合戦で戦に乱入してきたと考えても無理はない。零がそう考え一人納得する中、信長が不意にニヤリとその顔に笑みを張り付けながら立ち上がった。

 

 

信長「しかしまあ、お主が武者ディケイドであろうがそうでなかろうが、そんなのは我等にとって些細な事だろう……寧ろ、運はまだ我等を見放していなかったと喜ぶべきか」

 

 

勝家「……え?」

 

 

蘭丸「姫様?それは、どういう……」

 

 

家臣である勝家や蘭丸でも信長が何を言っているのか分からないのか、二人揃って頭上に疑問符を浮かべているが、長秀は何か知っているのか両瞼を伏せて何も言わず、信長は何処からか美しい扇子を取り出し零に突き付けて……

 

 

信長「ディケイド――いや、その姿では零だったか。お主は確か、お主と一緒にこちらの世界へ飛ばされた仲間達を探し、あの敵を見つけ出して倒そうと考えているのだろう?」

 

 

零「?……ああ。あの二人、特に片方の力がないと元の世界に戻れんし、アイツの能力を考えると放置するのは危険だろうしな。なにより奴には個人的な借りもあるから、それを返さないと気が済まん」

 

 

信長「ふむ、そうか。――では零よ、我等がその二人を探す手伝いをする代わりに、我が軍の武者ライダーにならぬか?」

 

 

零「…………は?」

 

 

まるで不意を突くような、予想外な言葉を投げ掛けられた零は鳩が豆鉄砲を食ったような顔を浮かべて信長を見上げていき、零と同じように今の信長の言葉を聞いて唖然としていた勝家と蘭丸も我に返って慌てて声を荒げた。

 

 

勝家「ひ、姫様ッ!突然何をおっしゃるのですかッ?!」

 

 

蘭丸「そ、そうですよッ!そんな、何処の馬の骨かも分からぬ輩を武者ライダーにするなどッ!」

 

 

信長「突拍子もない事を口にしている自覚はしておるよ。だがな、我が軍は先の戦でツヴァイを失ってしまっている……。戦国バトルロワイヤルの要である武者ライダーが無くては、この先の戦を戦い抜くなど到底不可能に近いのだ。それは、お主達とて分かっておるだろう?」

 

 

勝家「そ、それは……そうかもしれませぬが……」

 

 

信長「……我はどうしても天下が欲しい。この手で、天下を取らねばならぬのだ。その為に武者ライダーが必要ならどんな手を使ってでも手に入れてみせる……それが異世界人であろうとな」

 

 

蘭丸「し、しかしっ!長秀様も何とかおっしゃって下さいっ!」

 

 

長秀「?あら、私は姫様の意見に賛成ですよ?」

 

 

勝家「は、はぁッ?!何を言ってっ……!」

 

 

長秀「止める理由こそ、それこそ私達にはないハズでしょ?姫様が今言った通り、我が軍が武者ライダーを損失したのは相当の痛手……無論、例えこのまま武者ライダーを失った状態でも策を張り巡らせさえすれば、武者ライダーの一人や二人は倒せるかもしれないけれど、それは得策とは言えない。こちらの方が甚大な被害が出るのは目に言えているし、そんな無茶な戦法でこの先も勝ち続けていくなんて、不可能よ」

 

 

蘭丸「それはっ……むぅっ……」

 

 

零「……おい……勝手に話が盛り上がっているところ悪いが、俺はお前達の武者ライダーになる気なんてないぞ」

 

 

信長「ぬ?」

 

 

零を新たな武者ライダーとして迎えるか否か。それについて徐々に熱を帯び始めている武将達の会話を断ち切るかのように零が横から割って入ってそれを止め、信長達の視線が零に集まっていく。

 

 

長秀「何故ですか?貴方が織田家の武者ライダーとなれば、貴方が探しているお仲間を広い範囲で探せますし、なにより此処で不自由なく過ごせる……悪い条件ではないと思いますけど?」

 

 

零「確かにそれは願ったり叶ったりだが……生憎俺は天下に興味はないし、戦の道具にされるのも御免だ。そもそもそんなに天下取りをやりたいって言うなら、お前達だけでやればいいだろう」

 

 

蘭丸「なっ……貴様ぁっ!我等の戦への決死の想いを侮辱するつもりかっ?!」

 

 

零「だからこそだ。俺にはお前達が戦に掛けてる覚悟なんぞ分からんし、興味も一切沸かない……そんな奴がお前達と肩を並べて戦っても、お前達のその想いとやらを汚すだけにしかならないだろ」

 

 

信長「ふむ……成る程……だから我等の武者ライダーになる気はない、と……お主の気持ちは分かった。

 

 

 

 

 

……しかし、お主に拒否権はないと思うぞ?」

 

 

零「……何?」

 

 

ヒュッと、零と信長の間に冷たい風が吹き抜けたような感覚がした。その意味深な言葉に場の空気が不穏な物へと変わり、零は険しげな目付きで悠然と佇む信長を見据えた。

 

 

零「どういう意味だ、それは……何が言いたい?」

 

 

信長「どうもこうもない、そのままの意味だ。お主には、我等の武者ライダーになる以外に道はないのではないかと言っている」

 

 

零「それがどういう意味かと聞いているんだ……まさか、従わなければ此処で俺を捕らえて、拷問でもするつもりか?」

 

 

信長「最初は必要とあらばそうせざるを得ないかとも考えはしたが、今のところそれも必要ないだろ。そんな無粋な真似をせずとも、お主は今や我と共に戦うほか選択肢はないのだからな」

 

 

零「……意味が分からないな。俺にはお前に従う理由などない……その底抜けの自信は一体何処から来るんだ?」

 

 

例え此処で今さっき言ったように信長達が零を捕らえようとしても、ライダーに変身さえすれば此処を抜け出す事など簡単に出来る。だというのに、零には自分の意向に従うしかないなどと絶対の自信を持って言い切る信長に零は目を細めて思わず身構えていき、信長はそんな零にニッコリ、と天使のような悪魔の笑顔を向けて……

 

 

 

 

 

 

 

 

信長「自信ならあって当然だろう?何せ、我とお主はもう『夫婦』なのだからな♪だから、『夫』が『妻』を裏切るなど出来るハズがないだろ?」

 

 

零「………………………………………………………………………………………………………………はぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

何言ってんだコイツ?、とそう思うしかない戯言を口にしたのであった。無論、そんな意味不明な言葉を向けられた零も頭の可笑しい人間を見るような目でニコニコと笑う信長を見上げ、勝家と蘭丸も間抜けな顔で呆然とそんな信長の背中を見つめているが、丁度そこへ城の廊下から一人の侍女が現れ、信長の傍に近づき頭を下げて一枚の文書を手渡した。

 

 

「姫様、こちら、先程届けられました」

 

 

信長「む、丁度いいところに来たな。よし、下がっていいぞ」

 

 

「はい、では」

 

 

信長と家臣達に深々とお辞儀をすると、役目を終えたからか侍女はそのまま謁見の間を後にして出ていき、信長は侍女に渡された文書に目を通しニヤリと不敵に笑った。

 

 

信長「よし、これでやっと杞憂は全て晴れたな」

 

 

零「…………おい、こっちは杞憂どころか疑問一つも晴れていないぞ、さっきのはどういう意味だっ?」

 

 

信長「ん?ふむ、そうだな……まっ、実際にその目で見てみるといい。百聞は一見に如かず、だ」

 

 

零「あ?」

 

 

にんまりと満足げな笑みも隠さずに文書を見せてくる信長に若干イラッと苛立ちを覚えつつも、零、ついでに勝家と蘭丸もその背後に回って怪訝な目付きで文書を覗き込んでいく。其処には……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

婚姻届 【承認済み】

 

 

妻 【織田 信長】(拇印)

 

夫 【黒月 零】(拇印)

 

 

(中略)

 

 

以上、上記二名を『夫婦』と認め(略

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「…………………………………………………………………………………」

 

 

勝家「………………………………………………………………………………」

 

 

蘭丸「………………………………………………………………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はあぁぁぁぁああぁぁぁあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ?!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一同絶叫。其処に書かれていたのは、信長の達筆な字と零の字で書かれた二人の名前と、二人の拇印が確かに押された婚姻届だったのである。その見覚えのない紙切れを見て零と他二名の、最早喧しいを通り越して心地好いとすら感じるほど気持ちよく重なった三人の悲鳴が城中に響き渡り、そんな三人の反応に信長も更に満足し扇子を開いて笑ってみせた。

 

 

信長「どうだ?これでよく分かっただろ?お主が幾ら我等の申し出を断ろうとも、お主は既に織田家の人間なのだ。最早選択など意味は成さぬという事だな♪」

 

 

零「…………ぁっ…………な、がっ…………ぅあっ…………ふ、ふふふっ、ふふふふふふざけるなァッ!!!!!何なんだこの婚姻届ってッ?!!!!俺はこんなモノを書いた身に覚えなぞないぞッ?!!!さてはあれだなっ、でっちあげたなぁッ?!!!!」

 

 

信長「ん?いやいや、此処に書かれているのは確かにお主がその手で書いたものだぞ?ほら、よーく思い出してみろ、この城に入る時のこと」

 

 

零「な、にっ……?」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―――数刻前……

 

 

零『―――入門表?』

 

 

『えぇ、城に入る人間には全員書いてもらっているんです。なにせこんな世の中ですから、怪しい輩が身分や姿を偽って姫様に近付こうなどと考えるやもしれませんので……』

 

 

零『……ふむ……ま、それぐらいなら別に構わんが……』

 

 

―カキカキカキッ―

 

 

零『……?なんだ?おい、この筆、字が書けないぞ?』

 

 

『え?嗚呼、申し訳ありません。もしかしたらインクが切れ掛かっていたのかも……手元に変わりもありません故、お手数ですが、少し力を込めて強めに書いて頂けないでしょうか?そうすれば普通に書けるようになるかと……』

 

 

零『む……仕方ないな……えっと……黒、月……』

 

 

『あ、そこ、もうちょっと強めに力を込めて書いて頂ければ……そうそう、もう少し、グッと、そんな感じでグイッと―――』

 

 

 

 

 

◆◇◇

 

 

 

 

 

零「――ま……ま、まさか……あの時のっ……」

 

 

長秀「ええ、入門表の裏に感圧紙と婚姻届を仕込ませて頂きまして。思ったより簡単に署名を頂き、助かりました♪」

 

 

零「何処の使い古された結婚詐欺だぁッ!!!!!というか、その声……まさかお前、あの時俺に入門表を書けって言ったっ……?!!!」

 

 

長秀「あら、漸く気付いてくれました?まぁ、あの時は顔も隠していたのですぐに気付かれるとは思いませんでしたけれど、少々鈍感過ぎるかと思いますよ?」

 

 

零「黙れ詐欺師めぇええッ!!!!」

 

 

今やもう、悪女の微笑みにしか見えないおっとりとした顔で優しげに笑いかける長秀に向け全力で叫びつつ、零はキッ!と信長を睨みつけて文書を指差した。

 

 

零「だ、大体、その拇印だって俺は押した覚えなんてないぞッ?!!!名前はともかくっ、それが偽物なら幾らでも取り消しがっ――!!!!」

 

 

信長「ああ、これか?これはお主が手に取った入門表から採取した指紋を使って押した奴だから、れっきとした本物だぞ?かがくのちからってすごいだろー?」

 

 

零「れっきとした詐欺行為じゃねぇかぁッ!!!!!ってか無駄に進歩し過ぎだよお前等の世界はクソッタレェエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!」

 

 

撃沈二度目。あまりの理不尽に最早この世界すら呪いそうな勢いで絶叫しながら床に崩れ落ち、ダンッ!ダンッ!と床を思いっきり叩きまくる零。そうしてそんな零を勝ち誇ったように見下ろしながら、信長は胸を張り追い撃ちを掛ける。

 

 

信長「ちなみにだが、詐欺だと訴えても意味はないぞ?一度申請が通った以上はこちらのものだし、どうせコレ(金)で幾らでももみ消せるしな♪」

 

 

零「ぅぉぉおおっ……げ、外道、悪魔っ、下衆がぁぁぁぁぁぁっ……こ、こんな無法でっ、いや、そもそもこんな方法で、俺がお前に従うとでも思ってるのかっ……?!」

 

 

信長「ん?ふむ……まぁ、これでも我等の武者ライダーにならないと言うなら諦めるが……いいのか?今のお主はもう、他の陣営からその首を狙われる身なんだぞ?」

 

 

零「……は……?何故そうなるっ……?」

 

 

信長「決まっておろう?我が結婚して夫を迎え入れたという知らせはすぐにこの国に広まり、外にも流れ、他の陣営の武将達の耳にも届く事だろうさ。お主の顔が割れるのもそう時間も掛からん。そうなれば、お主は様々な陣営から狙われるようになるだろうよ。我の夫となれば、その首は我と同じ……とはいかなくとも、それなりに価値があるだろうからな」

 

 

零「……要するに、お前のせいで俺は余計な敵を作る羽目になった、って事かっ……」

 

 

信長「理解が早くて助かるな。それでも構わぬのなら止めはしない。お主の仲間探しの旅の準備も手伝って見送るが、我等もお主の代わりとしてその仲間二人を探し出し、今度こそ我等の陣営の武者ライダーとして招き入れてみせる。お主の知り合いだと語れば、お主を一緒に探すという条件で手を貸してくれぬとも限らないからな」

 

 

零「クッ……クソォッ……」

 

 

勝家「あ、あの、姫様……何も其処までしなくともっ……」

 

 

蘭丸「そ、そうですよっ。大切な婚姻すら利用して、こんな男を繋ぎ止めなくても……」

 

 

流石に今の零が不敏に思えてきたのか、無礼を承知で信長に物申す勝家と蘭丸。それを聞いた信長も勝家と蘭丸を一瞥すると、静かに瞼を伏せて……

 

 

信長「―――先程も言った筈だろう?我はどうしても天下を手に入れねばならぬ。その為なら手段は選ばぬさ。この先の戦を勝ち抜く為なら、我は外道とも畜生とも呼ばれる事も厭わぬし、女としての幸せすらドブに棄てる覚悟だ」

 

 

蘭丸「し、しかし……」

 

 

信長「それにな。我が漸く夫を迎え入れたと国中に広まれば、織田家を乗っ取ろうなどと考え政略結婚を申し出て来る輩もいなくなって、戦に専念出来るではないか。故に、愛のない婚約だろうと、我にも確かに得する物があるのだから問題なかろうさ」

 

 

そう言って肩を竦めてフッと笑う信長。しかしそんな彼女を見つめる家臣達の顔は何処となく寂しげであり、信長はそれに構わず黒い長髪を揺らして零の前に屈み、その黄金の瞳で零の目を見据えながら真剣に語る。

 

 

信長「……我を恨みたければ好きなだけ恨め。殺意を覚えたなら、いつでも寝首を掻きに来るといい。例え千の怨恨だろうとこの身で甘んじて受けて、命はくれてやれぬが、片腕の一つは運が良ければくれてやる。お主には、それだけの事をしたと自覚はあるからな」

 

 

零(……?コイツ……)

 

 

そんな彼女の瞳を見て何かを感じ取ったのか、今まで崩れ落ちていた零は信長の目をジッと見つめ返すと、暫くして顔を逸らしながらチッと舌打ちし、徐に身を起こしていった。

 

 

零「……どっちにしろ、こうなった以上は今の俺には選択肢なんて無いに等しいって事なんだろう……?だったらなってやるよ、武者ライダーって奴に」

 

 

信長「……いいのか?本当に」

 

 

零「そうせざるを得ない状況にお前がさせたんだろうがっ……ただし、それに当たって一つか二つ条件がある」

 

 

信長「?条件?」

 

 

零「そうだ……先ず一つ、もしも戦に駆り出される事になっても、俺が戦うのは敵の武者ライダーだけだ。それ以外の兵や武将達は知らん、お前達でどうにかしろ」

 

 

信長「……分かった。次は?」

 

 

零「二つ。この先俺の仲間を見付けても、絶対にあの二人を武者ライダーとして取り込んだりするな。もしそうした場合、俺は仲間達と一緒にこの軍を離反させてもらう」

 

 

信長「ふむ……良いだろう。武者ライダーが一人いるなら、私も其処まで欲張りはしない。で、これで最後か?」

 

 

零「いいや、まだだ。次が重要だ……俺達があの正体不明の敵を倒して元の世界に戻る事になったら、お前との婚姻は破棄してもらう。これが最後の条件だ」

 

 

信長「……婚姻破棄か……まぁ我は別に構わないが、そうなるとお主はバツイチになるぞ?いいのか?」

 

 

零「だ・れ・の・せ・い・だ・と・お・も・っ・て・い・るっ?」

 

 

信長「あぁ、分かった分かった。分かったからそんな視線だけで人を殺せそうな目で睨むな」

 

 

詐欺紛いというか、まんま結婚詐欺のせいでいらないバツを背負う事が決まってしまった為に、恨み辛みを込めた目で睨む零をどーどーと宥めると、信長は茶を啜る長秀に目を向ける。

 

 

信長「長秀、零もこうして我等の武者ライダーになってくれると引き受けてくれたし、手筈通り、各陣営に使いを送ってくれ」

 

 

長秀「分かりました」

 

 

蘭丸「?使い、って……」

 

 

勝家「姫様、一体何を?」

 

 

二人の会話の意図が読めず勝家が問い掛けると、信長は先程まで腰を下ろしてた場所にゆっくり戻りながら語り出す。

 

 

信長「武者ライダーを新たに手に入れ、このまま天下取りの戦に再戦することも可能だろう。しかし、あの正体不明の敵の力を考えると奴を放置するのは危険だ……。また戦場を掻き乱すだけならまだしも、民達にまで危害が及ばぬとも限らないからな。だから――」

 

 

パサッ!と、景気のいい音と共に扇子を勢いよく開き、腰に手を当てながら信長は堂々と告げる。

 

 

信長「各陣営に一時休戦を呼び掛けて、武将達を召集するのだ。あの正体不明の敵を倒すまでの間、戦国バトルロワイヤルを一時中断する……とな」

 

 

蘭丸「それは……しかし、それに応じる陣営がいるのでしょうか?」

 

 

信長「……まぁ、各陣営の当主達の性分を考えれば、現実的に考えてそう簡単に応じてくれる者達は少ないだろうな。だが……」

 

 

長秀「ですが、決して皆無という訳でもありませんよ。私達の呼び掛けに応じてくれそうな方に、一人だけ心当たりがありますし」

 

 

零「……心当たり……?」

 

 

信長「そう……」

 

 

訝しげな顔で問い掛ける零に信長が小さく頷き返すと、もうすぐ夕日が沈もうとしてる窓の外を眺めながら……

 

 

信長「――武者キャンセラー軍の総大将、"豊臣秀吉"……戦国バトルロワイヤルから一線を引いたあやつなら、既に今回の異常についても何か掴んでいるやもしれん。アレは勘が鋭い上、博識な奴だからな……」

 

 

そう言って武者キャンセラー軍の武将、豊臣秀吉の事を語る信長は表情は、何処か此処にはない遠い記憶に思い馳せているように見えた―――。

 

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole ディケイドパート③

 

―安土城・庭―

 

 

あれから数時間後、夕日が完全に沈んで夜となった。謁見の間での話し合いの後、各陣営に使いを送る準備を進める為に一先ず解散となり、精神的にボロボロになりながら謁見の間を後にした零は城内を適当にぶらついていたところ、昼間に戦場で出会った武士の男と偶然にも再会し、昼間のお礼がしたいという事から彼の持ち場である城の庭に訪れ、今日の出来事について彼に愚痴を聞いてもらっていた。

 

 

「――あー……そ、そりゃまた、旦那も随分苦労なされたそうですねぇっ……」

 

 

零「……本当にな……訳の分からん奴と戦っていきなり違う世界に飛ばされ仲間とはぐれ、会ったばかりの初対面の女に騙されて勝手に籍を入れられて夫婦にされた上、この戦いが終わったら離婚してバツイチにならなきゃならんとか……」

 

 

今日一日で起きた出来事を全てズラリと並べてみるが、たった一日で何故こんなことになってしまったのか。改めて今の現状を再確認すると頭痛がして思わず頭を抑えながら溜め息を吐き、武士はそんな零の様子に苦笑しながら焚火の火に牧を投げ込んだ。

 

 

「し、しっかしまぁ、最初に話を聞いた時は驚きやしたよ。旦那がまさか別世界の人間で、しかもあっし等の軍の武者ライダーになった上に信長様の夫になるなんて、すげぇ大出世じゃねーすか!」

 

 

零「こんなにも嬉しくない出世は生まれて初めてだけどな……それにその出世も一時的なものだし、俺達の用件が片付けば解消されるのは決まってる。長続きはせんさ……」

 

 

「あー……で、でも、一時とは言え、あの信長様の夫になれるなんざ貴重な経験だと思いますよっ?なんせあの方、この国でも指折りの美女なんですからぁ!」

 

 

零「ほう、そうなのか。俺の中じゃ既に美女=危険という方程式が成り立って、あの女を魅力的とは思えんが……」

 

 

「だ、旦那ぁ……」

 

 

彼も彼なりに零を元気付けようとしているのだろうが、何分バツイチという重荷を背負う事になってるからか彼の言葉を聞き入れずに暗い影を落とし、そんな零に対し武士もオロオロしてしまう。そんな時……

 

 

 

 

 

 

 

 

―ズズズゥ……―

 

 

シャドー『――まぁ、今回は少々相手が上手だったという事もあるのだろうが、お主も迂闊が過ぎたという所もある。もう少し警戒心を持つべきだったでござろうな』

 

 

零「…………………」

 

 

「……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

やれやれと、首を横に振りながらいつの間にか零の隣に腰を下ろして呑気に茶を啜る一人の忍……滝の世界のダークライダーである筈の仮面ライダーシャドーがそう呟き、零と武士は突然現れたその忍を見て思わず固まってしまった。

 

 

「―――って、な、なななななんじゃあああぁッ?!忍者ぁッ?!」

 

 

零「……おい、なにちゃっかり溶け込んでるんだお前……どっから沸いて出た?」

 

 

シャドー『むっ?人聞きの悪い事を言ってくれるな。我は影、影にして忍。ならば、何時何処に姿を現そうと不思議ではあるまい』

 

 

零「不思議だよ、寧ろ不思議しかなくて驚いたわ」

 

 

気配も音もなくいつの間にか二人の傍に現れたシャドーを見て武士が驚愕しながら飛び退いても気にも留めず、再び茶を啜って呑気に一息吐くシャドー。そして零もそんなシャドーにジト目を向けたまま、コートのポケットから僅かにディケイドライバーを取り出しつつ……

 

 

零「で、本当にこんなところで何してる……?まさか、滝の世界のショッカーはこの世界に介入する気か?」

 

 

シャドー『……ふむ……取りあえず、そのポケットの中のものは仕舞うがいい。そう警戒せずとも、拙者の世界のショッカーはこの件に関わる気も無し、拙者もこの世界で入らぬ介入をする気などない』

 

 

零「……?だったら、何でこの世界にいるんだお前?あれか?忍者だからって、戦国の風に吹かれにでも来たか?」

 

 

シャドー『……確かにこの世界に吹き抜ける風は嫌いではないが、此処に来たのは我が主の命故。少しばかり調べ事をしている最中にお主を見掛けて、こうして邪魔をしただけに過ぎぬでゴザルよ』

 

 

零「……何処まで本当だかな……」

 

 

悠然とした態度を崩さないまま語るシャドーに憎まれ口を叩く零だが、シャドーが嘘を口にしている訳ではない事は感じ取れたのか、シャドーに向けていた警戒を解きバックルを仕舞って焚火に牧を投げ込んでいくと、シャドーは再び茶を啜って零達が腰掛ける木材の上に茶を置き口を開いた。

 

 

シャドー『しかし、お主の愚痴を影ながら聞かせてもらっていたが、お主は女人を見る目がまだまだのようでゴザルな』

 

 

零「……何の話だ?」

 

 

シャドー『あの信長という女子の事でゴザルよ。無論散々な仕打ちを受けてお主があの女子に対して恨みの念を抱くのも、魅力を感じぬと申するのも無理はないが……あの女、お主が思うほど悪人ではないと思うぞ』

 

 

零「……意外だな。お前がそんな事を言うなんて……ああいうのが好みか?」

 

 

シャドー『そういう訳ではないのだが、このままでは、お主もあの女子との余計な確執で苦労をするのではないかと気になってな……少しばかり、お節介を焼かせてもらおうかと思い至った次第だ』

 

 

―ガシッ―

 

 

零「……は?おい、なんでいきなり襟を掴む?」

 

 

―グイッ―

 

 

零「……なんで無理矢理立たせる?え?」

 

 

―ダアアァァンッ!!!―

 

 

零「なんで跳ぶぅうううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!?待っ、ちょ、何処に連れていく気だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ………………?!!!!!」

 

 

いきなり襟首を掴まれ立たされて、突然何も言わずに零を抱えながら空高く跳び上がったシャドー。そしてシャドーはそのまま城の塀を軽々と飛び越えて城下街に向かっていってしまい、その今までの様子を愕然とした表情のまま見ている事しか出来ず一言も声を発せられなかった武士は……

 

 

「…………だ、旦那の知り合いって…………結構、奇抜な方でいらっしゃいますね…………」

 

 

漸く搾り出した声で静かに呟き、呆然とシャドーと零が去っていた方角を見つめていたのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―城下街・広場―

 

 

安土城の城下。其処は現代の歴史書に書かれてるような町並みが広がっているが、やはり科学技術の発達もあってか、家や店等で普通に電気が使われていたり、武者ライダーが戦でマシンを走らせる事もあって自動車やバイクが走ってる姿も見られる。

 

 

零「……思いっきり人の首を引っ張りおって……お前あれか、事故と見せ掛けて俺の首をもぐ気かっ……?」

 

 

シャドー『強引だったのは謝ろう。だが、どうしてもお主の見せておきたい物があってな……そら、見えてきたぞ』

 

 

零「……?何が?」

 

 

そんな人気の多い町から少し離れた場所にシャドーに連れられて零が首元を摩りながらやって来たのは、暗がりに包まれた広場……というよりは、遊具等がそれなりに設置された公園のような場所だった。昼間には子供達で賑わっていそうな遊び場だが、今は夜中の為に静かだ。こんな場所に連れてきてどうする気だと、零が訝しげに広場に視線を向けると……

 

 

 

 

 

 

―ヒュウゥゥゥゥゥッ……バアアァァァァンッ!!!バアアァァンッ!!!―

 

 

零「ッ!あれは……花火?」

 

 

 

 

 

 

暗がりに包まれる公園から空に目掛けて不意に一発の狼煙が上がり、夜空に大輪の花が咲き開いたのである。その大輪の花……市販のものと思われる花火を見て不意を突かれた零は僅かに目を見開きながら狼煙が上がった公園に視線を戻すと、先程までは暗がりで良く見えなかったのだが、夜空に上がる花火の光によって公園に集まる複数の小さな人影、子供達の姿があり、その中に……

 

 

信長「―――ほぉ。市販の売り物でも此処まで綺麗に上がるものなのか……本物には程遠くはあるが、期待以上だったなぁ」

 

 

零「……アイツ……」

 

 

子供達の中に混じって夜空に次々と消えていく花火を見上げる女性……安土城にいなければならないハズの城主である信長の姿があり、そんな信長の下に子供達が各々違う花火を手にして集まってきた。

 

 

「殿様殿様!オレ、今度はこれやりたい!火ぃ付けてー!」

 

 

「ダメだよ!次はコレやるってさっき決めたでしょう!」

 

 

「ねぇ、殿様ー!」

 

 

信長「これ、分かったから少し待たぬか童共っ。そう急がんでも我も逃げはせぬわっ」

 

 

零「……何やってんだアイツ?こんな時間にこんな所で……城の主が抜け出したらまずいんじゃないか?」

 

 

シャドー『自身が必要と思われる軍事は全て片付けてあるようだが、まぁ、此処に君主がいるのは些か問題でござろうな。城の者達が主がいないことに気付けば騒動は間違い無しだろうが……この国の人間にとっては、そんな事は何時もの事らしい』

 

 

零「?……アイツが城を抜け出すなんて日常茶飯事、という事か?」

 

 

子供達に花火に火を付けて欲しいとせがまれる信長を見て、何やら訳知りを浮かべるシャドーに怪訝な顔で問い掛けると、シャドーは腕を組んだままポツポツと語り出す。

 

 

シャドー『歴史上の織田 信長は、尾張の大うつけと呼ばれた有名な武将だったのはお主も知っておろう。それはこの世界でも例外でなく、あの織田信長も尾張のうつけ姫などと呼ばれているらしい』

 

 

零「うつけ姫、ね……ま、武者ライダーを新たに手に入れる為だけに自分の婚姻すら利用するぐらいだしな、そう呼ばれるのも無理もないだろ」

 

 

シャドー『……そうだな。だが逆に言えば、それだけ天下統一という名の夢想に誰よりも真摯なのだろう。夢の為なら女の幸せすらも捨て、野望の為なら人間性すら切り捨てられる。アレはそういう、リアリストな思考と決断が出来る女だ。……何故そんな事が出来ると思う?』

 

 

零「…………もしかして、あの子供達に関係してるのか?」

 

 

シャドー『正確には、あの子供達も……でゴザルよ』

 

 

シュボオォォーッ!!と、不意に火花が勢いよく噴出するような音が目の前から聞こえた。二人が目の前を見ると、どうやら子供達にせがまれ折れたのか、子供達が持つ花火に忙しなく火を付ける信長の姿が見えた。

 

 

シャドー『あの女子は、昔からああやって自らの身分を問わずに、下々の民達と触れ合ってきたそうだ。今もああやって一日の仕事が終わった後も、睡眠時間を削って城をこっそり抜け出してな』

 

 

零「…………」

 

 

シャドー『自らが統べる国を、民の生活を己の目で見つめる……そうして己等が守るべきものを実感して、己の国や民達を『自分』という一つの勘定に入れてるようだ。民達や国、天下の為とは、延いては己の為に繋がる……そう考えているからこそ、『自分』の為にどんな卑劣な方法を使っても汚名を被れるし、それを阻む全てを自らの手で問答無用で切り捨てる事が出来る』

 

 

零「……だから、『自分』の為に自分を犠牲に出来るか?とんだ矛盾だな。理解に苦しむ自己犠牲精神だ」

 

 

シャドー『フム……だが、拙者の目から見ると、お主とあの女子……何処となく通ずる物があると思うぞ?』

 

 

零「はぁ……?アイツと俺が?」

 

 

心外だ、と言わんばかりの目付きでシャドーを睨む零。だが、シャドーは不動のまま淡々と語り続けた。

 

 

シャドー『自分の命と同等のものの為に自己を犠牲にする……それだけならまだ、桜ノ神や本郷滝等とも通ずるが、お主等には決定的な共通点が一つ存在する』

 

 

零「……共通……?」

 

 

シャドー『……自分を犠牲に出来るだけの物を失った時、"自壊する危うさ"、だ』

 

 

零「……ッ!」

 

 

まるで、全てを見透かしているような鋭い眼光を向けそう語るシャドーの言葉に、零は思わず一瞬息を拒み目を見開いた。

 

 

シャドー『あの織田信長という女は、天下統一を果たしさえすれば己が大事な国や民の安泰が約束されると信じている。その為に自分のありとあらゆる大事な物……何時かは出会えていただろう、愛する者との婚姻すら捨ててこの戦乱の世を生き抜くと覚悟してるようだが、結局その夢を掴めず、それらが全て無駄に終わればどうなるか……恐らく自ずと脆く壊れ、水泡のように消え去るかもしれぬな』

 

 

零「……大袈裟過ぎだろ。大体天下を取られなかったからといっても、その国や民の事もあるし、案外特に気にした様子もなく何処ぞのお偉いさんの下で働くんじゃないのか?普通はそうやって妥協するものだ」

 

 

シャドー『……妥協か……確かにその可能性もなくはない……だが黒月よ。仮にもし、万が一の話、お主が仲間達である高町なのは等を失ったその時、果たしてお主は今までの自分を保ちながら、新たな人生を歩む事が出来るか?』

 

 

零「ッ!…………何故そういう話になるんだっ……?」

 

 

考えたくもない可能性の話をされたからか、零はあからさまに不快げな顔を浮かべるが、シャドーはそんな零を見据えながら"何処か遠い未来"を見るように、僅かに顔を俯かせて言葉を続けた。

 

 

シャドー『あやつにとって天下を諦めるという事は、お主が考えたくもないというその可能性の話と同義の意味を成すのだ。夢を実現出来ず敗れるという事は、あやつにとって死も同然。常人からすれば、たかだが夢如きでと思うやもしれんが……それほどまでにあの女は、自分の夢に己の命と人生の全てを掛けているのでゴザルよ』

 

 

零「……やけにあの女の事に詳しいな……そもそも、何故そんな話を俺にする?」

 

 

シャドー『……フム。何故かと問われれば……実は、拙者自身も良くは分かっていない。ただ――』

 

 

と、其処で言葉を区切り、シャドーは静かに零に背中を向ける。もう先を行く、という意思表示なのだろう。

 

 

シャドー『――ただ、あの女に僅かばかり、我が主の影を見たせいかもしれん……己を捨て、本心を偽り、辛み苦しみを受け入れて、傷付きながらも前へ進もうとするその姿にな』

 

 

零「……?何の話だ?」

 

 

シャドー『……さてな……黒月よ。騙され、不本意で形式上の夫婦にされたとは言え、今のお主があの女の夫である事に違いはないのだ。万が一の時、あの女の傍で手を差し延べられるのはお主しかいないという事を……忘れるなよ?』

 

 

そう言い残した次の瞬間、シュンッ!とシャドーの姿が零の視界から掻き消えてしまい、零が思わず視界をさ迷わせてシャドーの姿を探すと、遠くに見える建物の屋根を飛び越えて何処かに去っていく影のような物を僅かながら捉えることが出来た。

 

 

零「……何が忘れるなよだ、お節介忍者め……お前のそれで何処がダークライダーなんだか……」

 

 

結局何しに来たのかはサッパリだったが、もしかして先程城で言っていた通り、本当に自分と信長が余計な確執で苦労するのを見てられずに助言しに来ただけなのかと考えるが、すぐに首を横に振って否定した。

 

 

零「まさかな……そもそもアイツとは敵同士なんだし、わざわざ俺を助ける理由だってないだろ」

 

 

……まぁ確かに、アイツの話を聞いて幾分か信長への印象が柔らかくなったのは確かなのだが、それを素直に認めるのは妙に癪なので考えないようにしようと、拗ねるように口先を尖らせ零は信長達の方を見た。

 

 

零(……まぁ、それほど悪人ではないって事は大体分かっていた事だし……一応、バツイチの件は許してやるか……)

 

 

気分は乗らないけどな、と付け足して溜め息を吐くと、零は首に掛けたカメラのレンズを信長達に向け写真を撮っていき、何枚か撮り終えたところで踵を返してそのまま城に戻ろうとした。が……

 

 

 

 

 

 

「あ、あぶなぁぁぁぁーーーーーいっっ!!!」

 

 

零「…………え?」

 

 

 

 

 

 

背後から突然悲鳴が響き、零は思わず足を止めて背後に振り返った。そしてすぐに、振り返ってしまったと後悔した。何故なら……

 

 

 

 

 

 

―――信長達が火を付けたと思われる無数のロケット花火が、何故か零に目掛け一斉に飛来してくるという悪夢が広がっていたからだ……。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

数十分後……

 

 

―信長家屋敷―

 

 

―ピチャッ……ピチャッ……―

 

 

長秀「―――で?彼に燃え移った花火の火を急いで消そうと慌ててバケツで水を掛けたせいで、零はこんなずぶ濡れになり、その後の後始末で貴女は本来戻って来る筈だった時間に戻ってこれなかった、と?」

 

 

信長「ウ、ウム……」

 

 

零「」

 

 

安土城とは別に、信長が住まいとする大きな日本屋敷。その屋敷の前では、城を抜け出した信長を探してた長秀が、所在無さげに視線をさ迷わせてしゅんとなる信長と、全身びしょびしょで前髪で顔が隠れてしまってる零の前で仁王立ちしていた。

 

 

長秀「全く……勝手に城を抜け出すだけならまだ何時もの事で済みますが、君主がボヤ騒ぎを起こしたとなれば一大事じゃありませんかっ。零、貴方も傍で見ていながら何をやっていたのです?」

 

 

零「……俺は悪くぬぇ……悪いのは花火の扱いがなってなかったコイツだ……」

 

 

長秀「武者ライダーなら、主君の傍にいつどんな時にも付き添って主を守るものです。それが主の名や評判に関わる事なら尚更。貴方はそれでも姫様がお選びになった武者ライダーですか?」

 

 

零「……理不尽だ……」

 

 

俺とて被害者だろうよと声を大にして言いたかったが、そんな気力もないし、何より言い返したら倍にして言い返されそうなので口を閉ざす事にする零。そして長秀は気まずげにうなだれる信長と、目を逸らし深々と溜め息を漏らす零を交互に見て溜息すると……

 

 

長秀「まぁ、姫様がきちんと事後処理をなさっているなら心配は入らないでしょう。幸い、火が燃え移ったのは零のみでしたようですし」

 

 

零「俺が火だるまになり掛けたのは幸いなのかよっ……」

 

 

長秀「貴方は現にこうしてピンピンしているではありませんか。後は私の方で他に問題がないか処理を済ませておきます。ですので、お二人は……」

 

 

と、其処で何故か、長秀の言葉が不自然に途切れた。どうした?と、零と信長の訝しげな視線が長秀に向けられると、長秀はポンッと掌に拳を落としてニッコリ笑い……

 

 

長秀「そうですわねぇ……お二人も服が汚れて濡れているようですし、このままお風呂に入って下さい……"一緒に"♪」

 

 

零&信長『…………は?』

 

 

……などと、とんでもない事を口走ったのであった。

 

 

零「……おい、待て、何だそれ?どういう意味だっ?」

 

 

長秀「?何か変な事を言いましたか?お二人は夫婦なのですから、風呂で背中を流し合う事ぐらい可笑しくはないでしょう?」

 

 

信長「い、いや、そうかもしれぬが、我等はっ……」

 

 

長秀「では問題ないでしょ?着替えはこちらで用意しておきますから、このまま風呂場に直行して下さいな♪」

 

 

零「…………」

 

 

ニコッと、そう言ってあの城で見せた悪女にしか見えないおっとりとした笑みを向ける長秀。それを見た零は無表情のまま佇むと、小さく息を吐き、そして……

 

 

 

 

 

ダアァンッ!!と地を蹴り、屋敷とは反対方向の正門に向かって走り出す。が、それを予期してたかのように、長秀が大柄の武士二人を差し向けて零を捕らえて地面に押さえ込んだ。

 

 

零「ぬおおおおおしまったあああああああッ?!!」

 

 

長秀「往生際が悪いですね、私がこうなると予想していなかったとでも思いましたか?ではお二人共、よろしくお願いします」

 

 

「「えいほっえいほっえいほっ!」」

 

 

零「や、やめ、止めろおぉッ!離せえぇッ!嫌だあぁッ!何故俺がそんな事しなければならんのだあぁッ?!だ、誰かあぁッ!誰かああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーッッッ!!!!」

 

 

イヤだイヤだと首を激しく振りながら必死に抵抗する零を、大柄の武士達がズルズルと引きずって屋敷の中へと連行していってしまう。そしてその様子を眺めていた長秀も後を追い屋敷の中に戻ろうとするが、信長がその背中を呼び止めた。

 

 

信長「長秀よ……一体何の真似だ、これは?」

 

 

長秀「……さて、何の真似だ、とは?」

 

 

信長「惚けるなっ。我は女としての幸せなど入らぬし、それを捨てる覚悟もあると言った筈だろっ?お前もそれに賛同したからこそ、あやつを武者ライダーとして引き入れる協力を……」

 

 

長秀「……そうですね。確かに私は、姫様のご覚悟を汲み、彼を我が軍に引き入れる為に策を練って協力をしました。ですが……」

 

 

フフッ、と長秀は口元に手を添えて微笑し、信長に顔を向ける。

 

 

長秀「女の幸せというモノは、実は案外、その辺りに転がってるようなモノかもしれませぬよ?」

 

 

信長「……?何を言って……」

 

 

長秀「ただの戯れ事です、気になさらないで下さい。私はただ、家臣として主君の幸せを願ってるだけですから」

 

 

では、と信長に一礼して、長秀は今度こそ屋敷の中に入っていき、信長はそんな長秀の背中を納得出来ない顔で見送りながら溜め息を吐くと、自身も観念し屋敷の中に戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

そして、同じ頃……

 

 

―ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーアアァンッッッ!!!!!―

 

 

『シュアアアアアッ!!』

 

 

「う、うわああああッ?!」

 

 

「ギャアアアアッ!!」

 

 

とある荒野にて激しい戦いを繰り広げていた、二つの武者ライダー軍。だがその二つの陣営の戦いは、突如現れた無数の怪人達の乱入により混戦となり、無差別且つ無意味な破壊と殺戮が広がってるばかりになっていた。そして……

 

 

―ガギイィィィィッ!!―

 

 

武者エデン『ぐわああああああッ!!』

 

 

武者クロノス『クッ?!何なんだ、奴は?!』

 

 

―ザッ、ザッ、ザッ……―

 

 

『…………』

 

 

二つの陣営の守護者である二人の武者ライダー……武者エデンと武者クロノスを相手に圧倒してジリジリと迫り来るのは、やはり昼間の戦で武者リノベーションと武者ツヴァイを吸収した謎の戦士であり、謎の戦士は赤いライドブッカーを手に二人に斬り掛かっていく。

 

 

―ガギイィッ!!ガギイィィィィンッ!!ドグオォッ!!―

 

 

武者クロノス『チィ!タイムクイックッ!』

 

 

武者エデン『タイムクイックッ!』

 

 

『TIME QUICK!』

 

『TIME QUICK!』

 

 

このままでは追い込まれるばかりだと感じ取ったのか、二人は態勢を立て直しながらタイムクイックを発動させ、信じられぬスピードで動き出し謎の戦士へ反撃を開始するが……

 

 

『――タイムクイック』

 

 

『TIME QUICK!』

 

 

―シュンッ……ガギイィィィィィィインッ!!―

 

 

武者エデン『?!何ッ?!』

 

 

武者クロノス『コイツ、タイムクイックをッ?!』

 

 

ボソリとそう呟いた直後、なんと謎の戦士はタイムクイックを使用して超速度で迫る二人の斬撃に対応してみせたのである。本来なら限られたライダーにしか使えない筈の能力を使用した謎の戦士に驚愕を隠せない二人だが、タイムクイック……正確には吸収した武者リノベーションの力を引き出した謎の戦士は構わずに二人へと斬撃を叩き込んで吹き飛ばし、二人に止めを刺そうと剣を構え直した、その時……

 

 

 

 

 

 

『Full Charge!』

 

 

―チュドオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーオオォンッッッッ!!!!―

 

 

『……!』

 

 

―ガギイィィィィッ!!―

 

 

 

 

 

 

二人に止めを刺そうとした謎の戦士の背後から、突如電子音声と共に一発の砲撃が飛来してきたのである。それに反応した謎の戦士は咄嗟に背後へと振り返って赤いライドブッカーで砲撃を打ち消し、砲撃が放たれてきた方に視線を向けると、其処には……

 

 

 

 

 

 

―シュウゥゥゥッ……―

 

 

冥王『――フッフフッ……武者ライダー、やっと見付けたの。さぁ、冥王の戦国大戦は此処から始まりなのッ!!』

 

 

『(……何だ、コイツ……?)』

 

 

 

 

 

 

……メイオウガッシャーの先端を謎の戦士達に向け、今までのシリアスな空気をぶち壊す勢いで叫ぶ冥王の姿が何故か其処にあったのだった……。

 

 

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole ディケイドパート④

 

 

―織田家屋敷・風呂場―

 

 

―……チャプッ―

 

 

零(――――どうしてこうなった……)

 

 

―ゴシゴシゴシゴシッ……―

 

 

信長「………………」

 

 

前髪から滴り落ちた水滴が湯舟の水面に落ちていく様を眺めながら、零は鼻の上まで湯舟の水の中に沈めて心の内でそう歎き、湯舟の外で身体を洗う信長を横目で見た。

 

 

この様子を見れば一目瞭然だが、あの後、結局抵抗も虚しく大の男二人組に服を強引にひん剥かれてしまい、零はそのまま湯舟の中に問答無用で叩き込まれた上に、零が逃げないようにと風呂場の窓の柵と左手に手錠(しかも趣味の悪い純金製)を繋がれてしまったのだった。

 

 

零(くそっ……ただの手錠ならまだ壊して逃げる事も出来るというのに、あの女っ……)

 

 

忌ま忌ましげに左手に繋がれた純金製の手錠を睨む。純金とあってどうやらこの金の手錠はかなり値が張るらしく、長秀にも「もし壊した場合は全額弁償してもらいますからね♪」と笑顔で念を押されたのは記憶新しい。

 

 

……恐らくというか、絶対その為だけに、わざわざ何の為に作ったのかも分からない純金製の手錠なんて物を選んで零に付けさせたのだろう。もし逃げた場合の時のリスクを更に増やす為に。

 

 

零(畜生めっ、何処までも意地の悪い女だな本当にっ……!)

 

 

癪に障るが流石は織田信長の参謀というべきか、これでは絶対に逃げる事なんて出来ない。毟ろ、下手に削ったり傷を付けたりしたらそれだけで高額な金額を弁償させられ兼ねない為に、おちおち左手を動かす事も出来ない。最早逃げるのは諦めるべきかと、零は観念するように小さく溜め息を吐きつつ、未だ身体をゴシゴシと洗う信長に再び目を向けた。

 

 

零(……それにしても……何でコイツもわざわざ家臣の言う事に従って風呂場に来たんだ……?)

 

 

君主であれば「嫌」の一言でも口にすれば此処へ来る必要もなかっただろうに、何故にわざわざこの女は裸になって風呂に入ってきとるんだろうか?と、ジィーーッと泡に包まれた信長の背中を睨んでいると、信長もその視線を感じ取ったのか僅かにビクッと身を縮こまらせ、顔を赤くしながら慌てて身体を隠し零を見た。

 

 

信長「な……なんだ?何をジッと見てるっ?」

 

 

零「……いや……特にこれとあって見てる訳じゃないが……」

 

 

信長「だ、だったらこちらを向くな!我の裸は見世物ではないのだぞ!」

 

 

零「……何でお前が怒るんだよ……」

 

 

そんなに見られたくないなら最初から入って来なきゃ良かっただろう、と文句を言いたげなジト目で信長をムスッと睨む零。だが信長の方はそんな零の視線を受けて何やら余裕なさげに泡に覆われた身体を両腕で隠しながらオドオドして身体を洗い流せずにおり、その様子を見て流石に可哀相に思えてきて仕方ないと溜息しつつ零が湯舟の縁に頬杖を突いて視線を逸らすと、信長もそれを見て安堵するように一息吐いて桶に溜めていた水を被って泡を全て洗い落とし、布で前を隠しながら立ち上がって湯舟に怖ず怖ず近づく。

 

 

信長「……入るぞ……少し空けてくれ……」

 

 

零「……ん……」

 

 

言われた通り、信長に背を向けたまま湯舟のスペースを空けるように湯舟の中で僅かに前へ進む。とは言え、湯舟のスペースも一般的な家庭の風呂とそう変わりないので、二人入れるか入れないか微妙なところだが、信長は湯舟の水面に片足を通してゆっくりとお湯に浸かっていくと、そのまま湯舟の湯に身体を沈ませ、自ずと零の背中と肌と肌を合わせピッタリくっついていく。

 

 

信長「は、ぁぁぁ……」

 

 

零「………………」

 

 

信長「…………………」

 

 

零「………………」

 

 

信長「…………………」

 

 

零「………………」

 

 

信長「………………」

 

 

零「………………」

 

 

信長「………………」

 

 

 

 

 

 

………………。

 

 

 

 

 

 

零(…………あれ?何だ、コレ…………?)

 

 

 

 

 

 

いや、本当……何だコレ?と、零は信長と背中合わせになりながら内心ポツリと呟きを漏らした。今、何故自分は今日会ったばかりで形式上の夫婦となった女とこうして裸同士で風呂で背中合わせに湯舟に浸かって無言なってるんだ?と、今のシチュエーションに今更かよ!と思うが困惑を隠せない。

 

 

というか、何だろうか……ほんとに今更ながら、この状況が途端にもの凄く恥ずかしくなってきた。信長が裸だからとかでなく、この不可解な状況に対してだが。

 

 

零(まずい……なんだこのこっ恥ずかしい状況……?目茶苦茶気まずい……な、何かこの沈黙を崩す話題とか……)

 

 

女心にはとことん疎いくせして、場の空気や雰囲気にはそれなりに敏感なのか。今の状況がとてつもなく気まずい上に目茶苦茶恥ずかしいと今更になって漸く気付き、何かこの沈黙を破る為の会話のネタがないかと内心そわそわしながら思案する零だが、その時……

 

 

信長「―――すまなかった、な……」

 

 

零「……は……?」

 

 

先にこの沈黙を破ったのは零ではなく、背中の向こう側にいる信長が呟いた謝罪の言葉だった。余りに突然且つ不意打ちだった為に零も困惑を浮かべ思わず振り返りそうになるが、それを察したのか信長は零の背中に自分の背中を強く押し付けて振り向かせないようにした。裸を見られたくないからか、それとも何か別の理由があるのか……。

 

 

取りあえず零が振り向くのを諦めると、強張っていた信長の背中もだんだんと力が抜けていき、ポツポツと再び語り出した。

 

 

信長「お主を騙して婚姻届を書かせた事について、一応な……お主には戦場で命を救われた恩があるというのに、我はそれを仇で返すような真似をしてしまった……その事について、一度謝るべきかと……」

 

 

零「……今更だろうよ……大体、そうやって俺に謝るくらいなら最初から――」

 

 

信長「そうするべきではなかった、だろうな……だが、それでも我等は――――いや……我にはどうしても、お主が必要だった。繋ぎ止めたかったのだ。天下を取る為にも……お主の力がどうしても欲しかった……」

 

 

零「…………」

 

 

そう己の心の内を吐露する信長の声音は、戦場や城で零と話した堂々とした話し方と違い、何やら妙に女らしく感じる。肌を全て晒した開放感か何かから、彼女の本音が浮き彫りになっているのだろうか。ならば……

 

 

零「……どうして其処までして天下にこだわる?自分が憎まれると分かってて、恩を仇で返したり、自分の婚姻すらも利用して……何がお前を其処まで駆り立たせるんだ?」

 

 

信長「…………」

 

 

今なら、彼女の天下統一に対する本当の想いも聞き出せるのではないか。そんな淡い期待から彼女の核心に迫る問いを投げ掛けると、やはり信長はすぐには受け答えず黙ってしまう。振り向いてどんな様子なのか顔を見てみたいが、それだとまた拒否されるだけなので出来ない。やはり踏み込み過ぎたかと、零が半ば諦め掛けた時、信長の口からポツポツと言葉が紡がれた。

 

 

信長「―――我が生まれた織田家は、元々大勢力に囲まれた弱小の家柄でな……。その家を父の命によって背負った時から、我よりも弱い者達の命を預けられる立場となったのだ」

 

 

零「…………」

 

 

信長「家督を背負った最初の頃から、国を背負うこととなって、民達全ての命を預かる身となって、今この国の命運は、明日は、民の生活は、我の一言や生死で変わるようなもの……だが我は、そんな不確かな今の現状が許せぬのだ」

 

 

零「……?」

 

 

さっきまでの弱々しい口調と違い、最後の語末の部分のみを力強く感情を込めて語る信長の言葉を聞き、零は信長に悟られないようにこっそりと信長の顔を覗き見る。其処には、何か強い決意のようなものを秘めた信長の凛とした横顔が僅かに見えた。

 

 

信長「人間ならば、国の主の命運によってその人生が左右される必要などない。己が思うままに、自らの欲のままに自分だけの人生を全うする……それが、人としての本来の在り方なのではないか?」

 

 

零「……程度にもよると思うがな。俺も沢山の世界を巡る中で自分の欲のまま、自分の為だけに好き勝手に命や世界を食い物にして、破滅していった奴らをこの目で沢山見てきたし……」

 

 

信長「そんな非道は自由などとは程遠いだろう?例え心の何処かでそうしたいと思う心があったとしても、実際にやるのとやらないのとでは全然違う……そんな理性のない自由は自由などではなく、ただの獣畜生に過ぎん。人間の自由というものは、不自由があるからこそ輝くのだから」

 

 

零「……ほぉ……もしや暴君的な思想でもあるんじゃないかと思わず身構えたが……案外まともなんだな」

 

 

信長「……からかってるのか?」

 

 

零「いや、素直に見直しただけだ。気分を害したなら謝ろう……で?その人間が自由に生きられる世界というのが、お前の目指すものなのか?」

 

 

信長「……ああ……だが、それだけが理由という訳でもない」

 

 

チャプッと、背後で信長が動く気配がした。零からはどうなっているのかは分からないが、信長は風呂場の窓の向こうに見える夜空の月を見つめて続きを語る。

 

 

信長「この混乱の世を治めたい。平定した世を築き、秩序が回復したこの世界で……ただの人として生きてみたい……そんな世界で、仲間達と共に我等が生きる世界をもっと見てみたい、知りたいと思うのだ。自分達が生きている世界なのだから、そう思うのは不自然ではあるまい?」

 

 

零「……まあな……」

 

 

信長とは事情が少し違うが、自分の世界を知りたいと思う気持ちは分からなくはない。自分も旅を続ける中で様々な事を知り、自分が生まれた世界を、家族がいる世界を知りたいと思う気持ちが芽生えたからだ。

 

 

……例え其処に、知りたくもない真実しかなかったとしても……。

 

 

信長「……そんな世を築く為にも、我はどうしても、天下を取らねばならぬのだ。家や身分も囚われず、誰もが自由に人間らしく生きられる世界を築く。他の者になど任せて実現出来る夢でもない。我自身の手で形にしなければならない……だからこそ、我は――」

 

 

零「……だから、その為に何もかも犠牲に出来るって言いたいのか?自分すらも……」

 

 

信長「…………」

 

 

此処まで話してみて分かったが、この信長という女は確かに悪人ではない。寧ろ、その心根は優しくある。天下を取り、家や身分などに囚われずこの世界の人々が人間らしく自由に生きられる世を築く。それを真摯に目指す彼女なら、きっと彼等がそうして生きられる世を作れるとは思う。だが……

 

 

零「自分や、何かを犠牲にするっていう方法が、必ずしも間違ってるとは俺も言わない。時と場合によってはそうせざるを得ない場面もあるだろうし、それが道を切り開く時だってある事は俺も知っている。だが……お前のソレはあまりにも程度を行き過ぎてる」

 

 

武者ライダーを新たに手に入れる為、天下統一の為に一族の系統に関わる大切な婚姻を簡単に策に組み込む。そんな事を平然とやって退ける信長に妙な危機感を覚えたのもまた事実であり、零が警告するようにそう告げると、信長は淡々とした声音で零に言い返すように語る。

 

 

信長「今この世は戦国乱世なのだぞ。何もかも失わずに天下を取れるほど、この戦国世界は安易くないのだ……戦とは程遠い生き方をしてきたお主に何が――」

 

 

零「――そうだな。今まで命のやり取りを散々してきたとは言え、戦のことまでは俺も分からんし、偉そうに言える立場でもない……ただ今は俺もその戦に巻き込まれている一人だし、分からないなりに恥を忍んで偉そうに言わせてもらうが……」

 

 

―グイッ!―

 

 

信長「ッ?!なっ……!」

 

 

一拍置き、零は突然信長の左腕を強く掴んだかと思えばその腕を引っ張りながら振り返り、少々強引に信長を振り向かせた。零の視界に飛び込んできた信長は、彼の突然の行動に戸惑いと驚きを隠せないでいるようだが、それよりも彼に肌を見られてしまってるという羞恥からか耳まで顔が赤く染まっており、豊艶な胸を必死に右腕で隠しながら身を縮こまらせ、恥ずかしさから潤んだ瞳でビクビクと零を見つめている。そんな彼女の目を、零は真っすぐ見つめ返し……

 

 

零「自分という代価を犠牲にして何かを得る……確かにそれも最良の選択の一つに違いない。だが、それは最良であって最善じゃないんだ。そんな真似をし続けて天下を統一したところで、其処にあるのは既に今のお前じゃなく、民や国の為に今のお前を築き上げているもの全てを失って、全く別人になった……お前だけだ」

 

 

信長「……!」

 

 

……例えばの話をしよう。

 

 

もし仮に、自分が世界を救う為だと割り切って人間性を殺し、旅の過程でなのは達を切り捨てながら進んだその先で、果たして自分は今の自分のままでいられるか。

 

 

……答えはきっとNOだ。

 

 

恐らく何もかも捨てる事に慣れて、捨てる事に何の感情も抱かなくなって、何を切り捨てたのかすら思い出させず、何故自分が其処までして戦ってきたのか理由すら忘れて疲弊し切ってるだろう。

 

 

そんなのはもう、自分ではない。他の人間だ。

 

 

先刻シャドーが言っていた、自分と信長が通ずる物があるという話を信じるなら、恐らく彼女もこの先の未来でそうなる。

 

 

天下統一という夢想の為に人間性を殺し、身内や仲間すら切り捨て、非常に徹し先を歩む。

 

 

その果てに天下を手に入れ彼女が語った世を築いたとしても、きっと信長はその世界で心の底から笑う事はない。

 

 

……"化け物同然の存在"となった、自分のように。

 

 

零「天下を統一した後で、お前はしたい事、やりたい事が沢山あるんだろう?」

 

 

信長「……ああ……」

 

 

零「だったら、その為にももう自分を犠牲にするような真似なんかするな。お前がその心に思い描く世界に抱く気持ちが、移り変わらない為にも、気付かない内に何処かへ捨ててしまわない為にも……そんな自由な世界で目にしたもの全てに対し感じたものを、素直に受け止められるようになる為にもだ……」

 

 

信長「…………」

 

 

失ってしまった物、捨ててしまった物がどんなに尊い物だったか。後からその事に気付いても戻らない物があるのを知っているからこそ、彼女にもそうならないで欲しいという意味も込めて告げる零。そうして信長はそんな零の目と言葉と真っすぐ向き合い、暫くの間互いに視線を交錯させると、顔を俯かせ小さな笑みを浮かべた。

 

 

信長「可笑しな男だな……自分を騙した人間にそんな物言いをするとは」

 

 

零「……まぁ、馬鹿げた事を口にしてるという自覚はある。俺とお前とじゃ事情が違うし、それでも――」

 

 

信長「いや、分かってる。皆まで言わなくていい……何故かは知らないが、お主はお主なりに、我の身を案じてくれているのだろ?」

 

 

零「……別に、そんなんじゃ……」

 

 

妙な気恥ずかしさから、小さく微笑み掛ける信長の顔から目を背ける零。そんな零を見て信長もまた可笑しそうに笑いをこぼしていくが、ふとその表情が物憂い物へと変わる。

 

 

信長「その気持ちは素直に嬉しく思う……だが、我は―――私は、この道を歩むと既に決めているのだ……天下統一を実現する為には、生半可な覚悟では果たせない。例えこの身が第六天魔王と化そうとも、頂への歩みは決して止めぬと……そう決心しておるのだ……」

 

 

零「…………」

 

 

やはり、自分の言葉なんかでは彼女の覚悟を止められはしない。何となく察しは付いていたが、改めてそれを実感させられた零は無言のまま渋い顔で瞼を伏せると、そんな零の頬をグニッと信長が指で摘んだ。

 

 

零「ッ?!な、何だっ?」

 

 

信長「いや……何だか変な気を使わせてしまったようだからな。すまない。それから……ありがとう……。お主と話したからか、少しばかり気が楽になった気がしてな」

 

 

零「……礼を言われるような事なんかしていないし、必要ないだろう。俺は一応お前の武者ライダーなんだし、武者ライダーとして主に進言しただけだ……」

 

 

信長「ん……?何だ、其処は夫じゃないのか?」

 

 

零「それはないっ!お前と夫婦関係って事だけは絶対認めんっ!」

 

 

信長「枯れてる奴だなぁ。……一応、その、裸の女が隣にいるのに平然としてるし……」

 

 

零「…………なら、此処で俺が手を出しても文句言わないのか、お前?」

 

 

信長「え?……い、いやっ、それは……っ」

 

 

零「……冗談に決まってるだろバカ。なに本気にしてるんだ」

 

 

信長「なっ!……も、もういいっ!知らんわっ!先に出るぞっ!」

 

 

呆れたような表情で横目で見つめる零を見てからかわれたのだと分かり、羞恥と怒りから顔を赤くしながらザパアァッ!!と勢いよく湯舟から立ち上がる信長。その様子を見て零も信長の裸を見ないようにすかさず顔を逸らし、ズンズンッ!と風呂場から出て勢いよく扉を閉める信長の姿が完全に見えなくなってから、小さく安堵するように息を吐いた。

 

 

零「冗談に決まってるだろ……そういう事はちゃんと好きな奴としろ……」

 

 

本当に好き同士で結婚した夫婦ならばともかく、そうでない男と女がいつまでも裸同士で風呂になぞ入っていい訳がない。……まぁ、長々とした会話にのめり込んでたせいで追い出すのに時間が掛かったが。

 

 

零「……あ……そういえばアイツ、結局何で俺と一緒に風呂に入ったんだ……?」

 

 

結局その事を聞けず仕舞いで出ていかれてしまったが……もしや、自分に謝ろうと思って一緒に風呂に入ると決めたとか……?

 

 

零(……まさかな……まあほとぼりが冷めてからまた聞き出せばいいだろうし、俺もそろそろ上が――)

 

 

―ガシャッ!―

 

 

零「……え?」

 

 

これ以上湯舟に浸かっててはのぼせてしまうと、零も風呂から上がろうとするが、左腕を何かに引っ張られ立ち上がる事が出来ない。

 

 

……その今まで忘れていた感覚に零は顔を青ざめさせ、ゆっくりと背後へと振り返ると……風呂場の窓の柵と自分の左腕を繋ぐ純金の手錠が、淡い輝きを放っている姿が其処にはあった。

 

 

零「………………………………し、しまったあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーッ?!!!お、おい信長ぁッ!戻ってこいッ!ちょ、これはどう外せばいいんだッ?!誰かッ!おいッ!誰かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」

 

 

のぼせる寸前になって漸く手錠の事を思い出し慌てて先に風呂を上がった信長を呼ぶ零だが、今さっきの件でお冠の信長がそれに応じる筈がなく、結局それから数十分、何も知らずに風呂に入ってきた蘭丸が悲鳴を上げるまでずっとそのまま放置されっぱなしになるのであった……。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―ガギギギギギギッ!!!バシュウゥッ!!!ガギイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィインッ!!!!―

 

 

武者クロノス『グゥッ!!ガハァッ!!』

 

 

一方その頃、武者クロノスと武者エデンの両軍を襲撃した謎の戦士達が戦う戦場に突如冥王は武者クロノスと武者エデン、そして謎の戦士に敵味方関係なく襲い掛かり乱戦となっていた。武者エデンの刀を腋で抑え込みながら、正面から斬り掛かってきた武者クロノスに前蹴りを打ち込んで吹っ飛ばし、右手に持つ薙刀で立ち回る謎の戦士に砲撃を放ち追撃していく。

 

 

冥王『あっはははははは!弱い弱い弱い弱い弱い弱いのぉッ!!この世界の武者ライダーはこんなのしかいないのぉッ?!』

 

 

―ズシャアァッ!―

 

 

武者エデン『グハッ!』

 

 

―バゴオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオンッ!!!!―

 

 

『(チッ!また面倒なのが……だが、こちらに狙いを絞って来ないのは幸いか)』

 

 

一見して驚異的な戦闘力を備えているようだが、その狂気的な戦闘意欲から見境なく攻撃するのが欠点か、冥王は謎の戦士への追撃を中断して武者エデンに狙い絞って襲い掛かっていき、その隙に謎の戦士は態勢を立て直そうとしていた武者クロノスをすれ違い様に赤いライドブッカーで斬り裂いて怯ませ、首を掴み……

 

 

『これで、十三人目ぇッ!』

 

 

―バシュウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーウウゥッ!!!!!―

 

 

武者クロノス『ぐ、ぐああああああああッ?!!』

 

 

首を掴まれもがく武者クロノスの全身から青い火花が噴き出した直後、武者クロノスの全身が捻れそのまま武者リノベーションや武者ツヴァイ同様、謎の戦士の腰に吸収されていってしまうのであった。

 

 

冥王『……!武者ライダーを取り込んだ?』

 

 

『はあぁぁぁっ……来い、スペリオルゥウウウウウウウウウウッ!!!!』

 

 

武者クロノスを取り込んでゆらりと幽霊のように冥王と武者エデンと向き直り、謎の戦士は両腕を広げ全身をまばゆい光を纏っていく。そして光に包まれた謎の戦士は、徐々にその姿形を変化させながら巨大化していき、光が晴れたその姿は全身が赤黒く禍々しい形状をした巨大な翼竜……クロノスの形態の一つである漆黒のスペリオルフォームに変身したのであった。

 

 

冥王『なっ……スペリオルフォーム?!』

 

 

『グウゥガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』

 

 

―ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーオォンッ!!!!―

 

 

武者エデン『グゥアッ?!』

 

 

冥王『グッ!!』

 

 

スペリオルフォームに変身した謎の戦士を見て驚愕を浮かべる冥王だが、漆黒のスペリオルフォームは獣のような雄叫びを上げながら巨大な尻尾を勢いよく振り回して武者エデンと冥王に襲い掛かり、武者エデンは吹っ飛ばされ、冥王は咄嗟に障壁を張るも衝撃を防ぎ切れず吹っ飛ばされてしまう。更に……

 

 

―ギュイィィィィィィィィィィィィッ!!―

 

 

漆黒のスペリオルフォームは冥王に追撃を仕掛けるべく、自身の口内に膨大なエネルギーを蓄積させ始めたのだ。それを目にした冥王もすぐに応戦しようと障壁を解除し、バックルにパスをセタッチさせていく。

 

 

『Full Charge!』

 

 

冥王『上等なの、纏めて消し飛ばしてあげるぅうッ!』

 

 

『グウゥガアアアアアアアアアアアアアッ!!!!』

 

 

―チュドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーオオォンッッッッ!!!!!!―

 

 

電子音声が響き渡ると共に、パスを投げ捨てて薙刀の先端に一気に溜まったエネルギーを砲撃に変換し撃ち放つ冥王。それと共に漆黒のスペリオルフォームも口から極太の砲撃を発射して冥王の砲撃とぶつかり合い、正面から押し合う拮抗の末に、巨大な大爆発が巻き起こり周囲を凄まじい爆風が飲み込んでいってしまう。だが冥王もそれに怯まず追撃を仕掛けて、爆風越しに漆黒のスペリオルフォームが立つ場所に薙刀の狙いを定めるが……

 

 

冥王『――チッ……逃げられたの……』

 

 

何かに気付いたように口の中で舌打ちし、薙刀を持つ手を下ろした。そしてその直後、戦場に吹き抜けた風が周囲を覆う爆風を徐々に払っていき、目の前の視界がクリアになると、其処には漆黒のスペリオルフォームと武者エデンの姿は既になく、代わりに武者エデンが吹っ飛ばされた場所に残されたズタズタの爪痕だけが、あの一瞬の間に何が起こったのか物語っていたのだった……。

 

 

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole ディケイドパート⑤

 

―織田家屋敷―

 

 

零「――武者キャンセラー軍との同盟が決まった……?」

 

 

翌日の朝。織田家の屋敷で朝食を終えた直後に信長と長秀が告げた言葉に、零と蘭丸と勝家は揃って頭上に疑問符を浮かべて訝しげな表情を浮かべた。その内容とは、昨日信長が宣言した戦国バトルロワイヤルの中断と他の陣営との一時休戦についてだった。

 

 

長秀「ええ。今朝に戻った使いの者が持ち帰った封書を先程確認した所、我が軍との同盟に賛同し、今後について話し合う為に昼過ぎにこちらへ訪れるとの事です。ただやはりと言うべきか、他の陣営からの返答は揃って拒否の一点張りでしたね。例えそやつが襲って来ようとも我等が返り討ちにしてくれるわ、と」

 

 

信長「他の陣営の武将達は、無駄に勇猛な連中が多いからな……まあ、そやつ等に関しては初めから大して期待はしていない。我等の本命は秀吉だからな」

 

 

長秀「天下取りの戦いから一線を引いた彼女ならば、こちらの一時休戦の申し出を断る確率は低いですから……それに何故彼女が急に天下取りから手を引いたのかも、個人的に気になっていましたし……」

 

 

信長「まぁ、何にしても先ずは会って話をしなければな。支度が整い次第、城へ向かい秀吉を迎える準備をするぞ」

 

 

一同にそれだけ言い渡すと、信長は座布団の上から腰を上げて立ち上がり、支度をする為に部屋を後にしていく。それを見送った他の一同もそれぞれ支度を始めようと部屋を出ていくが、零は部屋を後にしようとしていた勝家を呼び止めた。

 

 

零「なぁ……一つ聞いてもいいか?この世界の豊臣秀吉って、アイツとどういう関係なんだ?何だかやけに親しげな感じだったが」

 

 

勝家「?どういう関係って……お二人はご幼少期からの昔馴染みだ。幼少の頃は家康公も交えて良く遊んでいられたそうだが、今の乱世になってからは敵同士となってしまい、戦場で顔を合わせるのが常になってしまってな……」

 

 

零「……そうなのか(つまり、この戦国世界じゃ信長と秀吉と家康の関係も本来の史実とは大きく違う訳か……今更な感想だが、此処まで違ってくるものか?)」

 

 

本当に何処までも出鱈目な世界だと改めてそう感じる零だが、空間や時間や歴史や人間関係が違うのは並行世界では良くある事だし、とにかく今は自分も早めに支度した方が良いだろうと、零も勝家と別れ準備をしに昨夜自分が寝泊まりした部屋に戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

―尾張国境近くの森林―

 

 

―……バチッ……バチバチバチバチッ……シュパアァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!―

 

 

零が滞在する尾張の国境の近くに存在するとある森林の奥地。其処に突如、桜の花弁に酷似した無数の光の粒子を撒き散らして一つの光球が何処からともなく現れた。そして光球が弾けるように消え去ると、光球があった場所に一人の人物……零の仲間である姫がその姿を現し、ゆっくりと身を起こしていく。

 

 

姫「―――此処があの三人の気配が感じる世界か……どうしてこの世界にいるのか知らないが、魚見が一緒なら零となのはも戻って来れる筈なのにな……やはりあの三人の身に何か起きたのか?」

 

 

周囲を見回してそう呟く姫の顔には、やはり零達から未だに連絡がなく戻って来ない事に不安を感じているのか、明らかに心配と焦りの色が浮かび上がっている。

 

 

姫(あちらの世界は怪人達も全て片付けて、優矢達に任せて来たから心配は入らないと思うが、またいつ怪人達が現れないとも限らないし……急いで彼等を見付けなければ……)

 

 

それに何故かは分からないが、妙な胸騒ぎを感じる……特に零に関しては。その言葉には表わし難い感情に突き動かされるように、姫は急いで三人を探しに向かおうと一歩前へ踏み出す。が……

 

 

 

 

 

『グルルルルッ……』

 

 

姫「……ッ!誰だ?」

 

 

 

 

 

何処からか不気味な唸り声が響き、姫は真剣な表情に切り替わり警戒心を露わに周囲を見回す。すると、森の木々の影から次々と無数の異形達……ドーパントやファンガイアを始めとした様々な怪人達が唸り声を上げて姿を現し、姫の四方を囲んでいたのである。

 

 

姫「また多種多様の怪人だと……?まさか、あちらの世界で暴れ回っていたのと同じ?」

 

 

『グルアァァッ!!!』

 

 

熟考に入り始めた姫に問答無用で襲い掛かる怪人達。しかし姫も咄嗟に護身術の体さばきで怪人達の攻撃を次々と払い退けていくと、怪人達から一度距離を取り、後ろ腰からバックル部の右側にカッティングブレードが設置されてる黒いドライバー……戦極ドライバーを取り出して腹に当てるとドライバーの端からベルトが伸びて姫の腰に装着され、更にスカートに身に付けた装身具に繋げられている桃が中央カバーに描かれた錠前を取り外して構えた。

 

 

姫「いずれにせよ、コイツらを野放しにしておく訳にはいかないか……変身ッ!」

 

 

―ガチャッ!―

 

 

『PEACH!』

 

 

高らかに叫びながら中央のカバーに桃が描かれた錠前……ピーチロックシードの側面の解錠スイッチを押すと電子音声が響き、それと同時に姫の頭上にチャックのような物が出現して丸い裂け目を開き、その裂け目の向こうに繋がってる違う世界から更に桃に酷似した巨大な果実が宙に浮きながら姫の真上に降りてきた。そして姫はそれに見向きもせずピーチロックシードを軽く投げて左手でキャッチし、戦極ドライバーのバックル部に錠前をセットして固定する。

 

 

『Lock On!』

 

 

―ブォオオオオッ!!!ブォオオオオオオッ!!!―

 

 

『ヌッ?!』

 

 

再度電子音声が鳴り響くと、法螺貝のような和風テイストの待機音声が戦極ドライバーから響き渡り怪人達を驚かせていく。そして姫はそんな怪人達を見据えたままバックル右側に設置されたカッティングブレードを倒し、バックルにセットされたピーチロックシードのカバーを切った。

 

 

―スパァンッ!―

 

 

『Soiya!』

 

『PEACH ARMS!Gouka☆kenran!』

 

 

ピーチロックシードを切断してカバーの下の断面図が明らかにされると、高らかな電子音声と共に姫の頭上に待機していた巨大な桃の果実が落下し、姫の頭へとズッポリ収まっていったのだった。

 

 

そしてその直後、巨大な桃の果実から植物の根のように伸びたエネルギーが姫の全身を覆い銀色のアンダースーツに変化し、更に姫の頭に収まってた桃の果実が徐々に花開くように開いて桜色の鎧と化し、姫に装着されて桃の果汁が飛び散り、露わになった姫の顔には戦国武将の兜をモチーフにしたような薄桃色のパルプアイと、鎧武と斬月の中間に近いデザインの銀と桃色の仮面が纏われていたのであった。

 

 

全ての変身が完了したその姿は、後ろ腰から袴に酷似した銀のコートを靡かせる銀色のアンダースーツと、桃の果実をモチーフにした桜色の和風の鎧を身に纏い、左腰に鍔の部分が銃身になっている銃剣を装備し、右手には桃色の長刀を握り締めた銀色の仮面ライダー……『天神(アマガミ)』へと変身した姫は、桜色の長刀・桜雪を両手に構えていく。

 

 

天神『開演の時だ。その目で刮目しろッ!!』

 

 

『グルルルッ……シャアァッ!!!』

 

 

決め台詞を叫び啖呵を切る天神に怪人達が一斉に飛び掛かっていく。だが、天神も最初に殴り掛かってきたファンガイアを一瞬で桜雪で斬り伏せながら侍を連想させる立ち回りで怪人達を次々に切り捨てていくと、インベスの腹に桜雪を突き刺し、バックルのカッティングブレードを一回倒した。

 

 

―カシュゥッ!―

 

 

『Soiya!』

 

『PEACH SQUASH!』

 

 

天神『ハアアァッ!!ゼェイヤアァァァァァァァァァァァァァアッ!!!』

 

 

―ズシャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!!―

 

 

『ウ、ウグアァァァァァァァァァァァァァアッ?!!』

 

 

―ドッガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!!―

 

 

電子音声と共に膨大なエネルギーが蓄積された桜雪をインベスの腹から勢いよく抜き取ると同時に、天神はその勢いを利用して回転し桃の切り身の残像を描きながら周囲の怪人達を纏めて斬り裂き爆散させていったのだった。

 

 

天神『っ、ふぅ……これで一先ず片付いたか?』

 

 

桜雪を肩に添えながら軽く一息吐き、周辺に怪人達の姿が残っていないのを確認してから変身を解除しようとバックルのピーチロックシードに手を伸ばす天神だが、その時……

 

 

―ガサガサガサッ……―

 

 

『――シャアァァァァァッ……』

 

 

『ウゥアアアアッ……』

 

 

天神『ッ!……やれやれ、まだ一休みには早いか……』

 

 

背後から茂みを掻き分けるような物音が聞こえ慌てて背後に振り返ると、其処には先程とは別の怪人の群れがゾロゾロとこちらに迫って来る光景があったのだ。それを見て天神もうんざりとした溜め息と共に桜雪を下ろしていくが、怪人達は構わずに天神に目掛けて獣の咆哮を上げながら駆け出し、天神も仕方なくそれに応戦しようと右腰のホルダーからサクランボのロックシードを掴んだ。が……

 

 

 

 

 

―バッ!―

 

 

「デエェェヤアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!」

 

 

―ザシュウウゥゥッ!!!ズバアァァァァァァァァァァァァアァンッ!!!―

 

 

『ッ?!アグッ……ァ……ギャアァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!』

 

 

―チュドオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオンッ!!!!―

 

 

天神『?!な……何だ?』

 

 

 

 

 

天神が怪人達に応戦しようとしたその時、何処からか突然一つの黒い影が飛び出してきたのだ。その黒い影はすれ違い様に怪人の大群へと紫電一閃の斬撃を叩き込み、更に駄目押しのもう一撃を放って怪人達を纏めて撃退してしまい、天神は何が起きたのか理解出来ず目を見開いて呆然としながら怪人達を倒した黒い影を見た。それは……

 

 

「……んー。武者ライダー目的でこっちに来たってのに、何かこんなのにしか会わないわねぇ……」

 

 

天神(……?子供?)

 

 

不満げに怪人達が爆発した場所を見下ろしてそう呟く黒い影の正体とは、漆黒のブーツにスカート、漆黒のジャケットにプレートアーマー。背中には黒いマントを靡かせ、顔に黒いバイザーを装着した年端もいかぬ金髪のポニーテールの少女だったのである。怪人達を撃破したその予想外の正体に天神も先程とは別の驚愕を浮かべるが、そんな天神に気付いてか気付かぬか、黒い少女は右手に持つ見覚えのある剣に語り掛けた。

 

 

「ねぇちょっと、いい加減武者ライダーがいそうな場所とか教えてくれてもいいんじゃないの?アンタならナビの真似事とか余裕でしょ?」

 

 

『――確かに我ならばその程度のこと造作でもないが、これは貴様の修行の一環でもあるのだ。自らの敵は自らの目と足で見付けろ。我は一切それに関与せん』

 

 

天神(ッ!アレは……クロノスブレイド?!というか喋った?!)

 

 

「そうは言ってもっ、こっちに来てから一日経ってるのに全然噂の武者ライダーに会えてないじゃないッ!ほんとにそんなのいる……ん?」

 

 

見覚えのある剣……クロノスブレイドとナビゲートの役を拒否されても食い下がろうとする黒い少女だが、其処で彼女は背後で呆然と佇んでいる天神の気配に気付いて振り返った。

 

 

「…………」

 

 

天神『…………』

 

 

「…………誰?」

 

 

天神『いや、それ私の台詞なんだが』

 

 

今自分が言いたい質問を先に言われ思わずそう返してしまう天神。だが黒い少女は、其処で訝しげな様子で顎に手を添えながらジッと天神の姿を観察していく。

 

 

「んー……如何にも武者っぽい出で立ちと、仮面に、刀……もしかしてアンタ、武者ライダー?」

 

 

天神『?まぁ、一応武者のライダーではあるが?』

 

 

「否定はしないのね?ふぅん……じゃあ……」

 

 

ジャキッ!と、黒い少女はそう言いながら突然右手に握るクロノスブレイドの刃の切っ先を天神に突き付けた。

 

 

天神『!何の真似だ?!』

 

 

「ちょっとばかり手合わせを願いたいのよ。私、修行でこの世界に武者ライダーとやり合いに来たんだけど、正直今の自分の腕が何処まで通ずるか不安もあるの。だから先ず、貴方と手合わせして自分の力量がどれほどのものか確かめさせて欲しいのよ……貴方が武者ライダーじゃないなら悪いとは思うけど」

 

 

天神『この世界に来た……?武者ライダー……?ちょっと待て!一体何の話をしているんだ?もう少し詳しく事情を――!』

 

 

「事情なんて話したら、お互い戦い難くなるだけじゃない?勝手で悪いけれど、私もいい加減ライダーとの戦いの経験値が欲しいし、ちょっとばかり付き合って頂戴ッ!』

 

 

天神『君が子供という時点で私は既にやりにくいぞッ?!ええいっ、仕方ないッ!』

 

 

クロノスブレイドを構えて問答無用で斬り掛かって来る黒い少女を見て話し合いでの決着は無理だと悟ったのか、天神は半ばヤケクソで桜雪を左手に持ち替えながら左腰に装備した銃剣……無双セイバーを抜き取って二刀流となり、黒い少女の振りかざす斬撃を受け止めながら戦闘を開始していくのだった。だが……

 

 

 

 

 

 

『………………』

 

 

 

 

 

 

そのライダーバトルの開始を影から盗み見る怪しい影……謎の戦士が剣を交える二人の姿をジッと観察する姿があり、静かに足元の影から大量の怪人達を新たに生み出していたのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◇

 

 

 

 

 

―安土城・評定の間―

 

 

あれから数時間後。安土城にて武者キャンセラー軍を迎える準備を終えてから間もなくして武者キャンセラー軍の到着の知らせが届き、信長は武者キャンセラー軍の武将である秀吉と彼女の数人の家臣達を安土城の評定の間に通して対面していた。

 

 

零(……まあ、話を聞いた時から何となく分かってはいたが、やっぱり秀吉も女なのな……)

 

 

艶やかな金色の長い髪に、碧眼の瞳。その脇に自身が従える武者キャンセラーを控えさせ、背筋を伸ばして綺麗に正座を組んでるその姿から威厳と美しさが滲み出ている女性……豊臣秀吉を見て零がそう考える中、秀吉は信長を見つめ小さく微笑んだ。

 

 

秀吉「お久しぶりですね、信長公。暫く見ぬ間にまた美しさに研きが掛かってるように見られますが、結婚して夫が出来たからでしょうか?」

 

 

信長「下手な世辞はいい、それにそんな似合わぬ敬語を使わなくていいぞ。貴様と我の仲だろうよ?」

 

 

秀吉「……そうおっしゃられましても、ね……私にも立場というものが……」

 

 

信長「デアルカ。ふむ……ならば我だけでもそうするぞ?無論貴様の呼び名も、昔のあだ名で『猿』と呼ぶが?」

 

 

秀吉「……ハァ……分かった……だからその呼び名は止めて頂戴、ノブ……」

 

 

信長「うむ、そう呼ばれるのも久しいな、ヒデよ」

 

 

零(……なぁ。あの秀吉は何で猿って呼ばれてるんだ?)

 

 

勝家(?ああ……幼少の頃の秀吉公はとてもやんちゃな子で、良く木登りをして遊んだり木の上で昼寝する事が多かったらしくてな。その姿がまるで子猿のようで、それを見た姫様が秀吉公にそうあだ名をつけたのが発端らしい……まあ昔はともかく、今はその名で呼ばれるのは嫌なそうだが)

 

 

零(……まぁ、だろうよな)

 

 

やんちゃっ子な昔ならともかく、成長し大人になってから猿呼ばわりされても女は嬉しくもないだろうしなと零が納得する中、秀吉が気を取り直すように咳払いした。

 

 

秀吉「んんっ!……さて、それじゃあ早速本題に入らせてもらうけど、貴方達の同の件についてはこちらも慎んで受けさせてもらうわ……私達も、あの謎の敵の脅威については身に染みて理解しているし、このままアレを放置するのは危険だと思っているから」

 

 

長秀「……身に染みて理解してる、というと、秀吉公は既にあの敵と交戦した経験がお有りなのですか?」

 

 

秀吉「……えぇ、そうよ。だからこそあの敵の脅威にいち早く気付き、天下取りをしている場合ではないと戦から一線を引き、我々は我々でアレの調査を独自に進めていたの。それで幾つか分かった事があるのだけど……キャンセラー?」

 

 

武者キャンセラー『はっ』

 

 

脇に控える武者キャンセラーに秀吉が目配りすると、武者キャンセラーは秀吉と信長の間に一枚の地図の絵を広げていく。そして一同がその地図を覗き込むと、どうやらその地図は各陣営の勢力が描かれた勢力地図らしいのだが、殆どの陣営がその上に赤い×が書かれてしまっている。

 

 

長秀「これは……」

 

 

秀吉「あの敵の動向を探ってその足取りを追ってみたのだけど、どうやらあの敵は他の陣営に積極的に攻め込み、その陣営を守護する武者ライダーを次々と倒し回っているそうなの……。しかも活動限界がないのか、奴は武者ライダーを倒してからまたすぐに別の陣営に攻め込んで武者ライダーを倒し、それを繰り返している……この×は、昨夜に奴の手によって武者ライダーを倒された勢力の数よ」

 

 

勝家「なっ?!こ、これが……これだけの数の勢力が、たった一晩で倒されたというのですかっ?!」

 

 

勝家が驚くのも無理はない。何せ勢力地図に付けられている赤い×の数は、既に十を軽く越えてしまってるのだ。これだけの数の陣営が既にたった一晩であの敵に倒されたというのならば、その脅威は零や信長達の予想を遥かに上回っているとしか言いようがない。

 

 

秀吉「奴のこの動向から既に予測は付いていると思うけど、十中八九敵の狙いは武者ライダーに違いないと思う。その目的は恐らく……武者ライダーを全て倒した際に手に入るという、天下を支配出来るほどの力だと思うわ」

 

 

長秀「……寧ろそうとしか考えられませんね……武者リノベーションとツヴァイを倒しておきながら、零を狙わなかったと聞いた時は怪訝に思い、まさかとは思いましたけれど……」

 

 

信長「奴もまた天下統一とその力を狙ってる、か……だが、何の為にだ?天下を手に入れ、力を手に入れ、その力で奴は何を成す気なのだ?」

 

 

同じ天下を目指す者としてか、何故あの戦士が天下の頂を手に入ようとしているのか理由が気になり秀吉に問い掛ける信長だが、秀吉はそれに対し無言のまま首を横に振った。

 

 

秀吉「残念ながら、奴が何を目的に天下を手に入れようとしているのかは私達も分かっていない……ただ、奴をこのまま放置しておくのが危険だという事は分かりきってる。無差別に破壊と殺戮を繰り返す奴が天下を、それも天下を支配するほどの力を手に入れてしまえばこの世界がどうなるか……」

 

 

零「……まぁ、人間が無事に生きていられるか怪しいだろうな。最悪、皆殺しにされる可能性もなくはない……」

 

 

零の脳裏に過ぎるのは、この戦国世界に飛ばされる前の世界で起こった地獄絵図の光景。未だに何が目的であんな真似をしたのかは分からないが、あんな残酷に人間の命を簡単に奪う輩がまともな目的を持っているとは到底思えない。やはり何か良からぬことを企んでいるのかと思考に浸る中、評定の間の戸が不意に勢いよく開き、其処から蘭丸が血相を変えて現れた。

 

 

蘭丸「姫様ッ!一大事でこざいますッ!」

 

 

勝家「ッ!いきなり何事か蘭丸ッ!姫様と秀吉公の御前だぞッ?!」

 

 

蘭丸「あっ……も、申し訳ありませんっ、ですが……」

 

 

信長「いや、構わぬ。……それでどうした、蘭丸?」

 

 

蘭丸「は、はいっ!実は今しがた、このようなものが……!」

 

 

そう言って蘭丸は慌てて懐を漁ると、其処から一枚の白い封書……『決闘状』と書かれたソレを取り出し信長達に見せていく。

 

 

長秀「それは……?」

 

 

蘭丸「武者リノベーション軍の総大将、家康公から我々に宛てての決闘状ですっ!」

 

 

秀吉「ッ!家康から?!」

 

 

徳川家康から送られてきた決闘状。それを聞き一同の間にざわめきが広がる中、信長は蘭丸の手から封書を受け取って中身の紙を取り出し、其処に書かれている内容を目で追っていく内に徐々に渋い表情へと変わっていく。

 

 

信長「……成る程な。要約すると、今から正午、尾張国境の地にて武者ライダー同士による決闘を申し出る。こちら側が勝てば武者ツヴァイ軍の軍門に下るが、あちら側が勝った場合我の首を差し出してもらう……だそうだ」

 

 

勝家「な、なんと無礼なっ……!決闘状を叩き付けてくるだけなら未だしもっ、姫様の首級を指してくるなどとっ!」

 

 

零「……問題は其処じゃなくないか?」

 

 

決闘状の内容に憤り思わず立ち上がる勝家に零が冷静にそうツッコミを入れると、長秀は顎に手を添えつつ訝しげな顔を浮かべていた。

 

 

長秀「武者ライダー同士の決闘……まさかこんな状況でそれを申し出て来るとは……」

 

 

信長「家康らしいと言えば家康らしいがな……しかしあの阿呆、うつけっぷりと空気の読めなさが更に増長しておる……」

 

 

秀吉「今がどういう状況になっているのか、あちらもある程度情報を掴んでいるでしょうにね。……それにしても、武者ライダー同士の決闘なんて、彼女は一体どうするつもりなのかしら?」

 

 

秀吉の疑問も最もだ。秀吉の軍は既に、先の戦で武者リノベーションを損失してしまっている。故に、武者ライダー同士の決闘など、武者リノベーション軍には出来ない筈なのだが……

 

 

長秀「……もしかしたら、私達のように向こうも武者ライダーを新たに召喚して引き入れた、という可能性はなくはないでしょうか?それならば、向こうが武者ライダー同士の決闘を申し出てきた事についても合点が行きますし」

 

 

勝家「それは……しかし、それだと奴らは一体何処から武者ライダーを引き入れたというのだ?我等のような例外はともかくとして、そうポンポンと武者ライダーがそこらに転がっている訳でも無し……」

 

 

向こうが決闘に用意するという武者ライダーは何処で手に入れた者のか。それについて様々な可能性を挙げ議論を述べる一同。しかし……

 

 

信長「……零……」

 

 

零「……ああ。俺も多分、お前と同じ事を考えてると思うぞ……」

 

 

何かに気付いたのか、何処となく零を案じるように伏し目がちに小声で呼び掛けて来る信長にそう答えつつ、零もまたある予想が脳裏を掠めて思わず頭を抱えたくなり溜め息を吐いた。

 

 

武者リノベーションを損失した家康の軍が新たに武者ライダーを引き入れる事が出来るとしたら、考えれる限り二つしか方法はない。

 

 

一つは、今自分達と秀吉達が脅威と感じているあの謎の戦士を武者ライダーに仕立て上げるか。最初に零はその可能性を挙げて考えたが、あの敵は無差別に殺戮と破壊を撒き散らす危険な存在。そんな存在が何処かの武将に大人しく仕えるなど有り得ないだろう。

 

 

そうなると、残る可能性はあと一つ……

 

 

零「―――なのはと市杵宍……捜索隊が見付けられていないあの二人が、恐らく向こうの軍に引き入れられている可能性が大きいだろうな……」

 

 

 

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole ディケイドパート⑥

 

 

―尾張国境・荒野―

 

 

―ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッ……!!!!!―

 

 

――それから更に数時間後。あの後秀吉を交えた評定の間での話し合いの末に、信長達は家康が新たに招き入れた武者ライダーの正体を確かめる為にも家康からの決闘の申し出を受け、念には念を入れてと戦の準備をしてから武者キャンセラー軍と共に町を後にした。そして家康が指定した尾張国境を目指して無数の馬と様々な銃火を積んだ戦闘車を走らせる中、零はディケイダーを走らせ信長の馬と秀吉の馬と並走していた。

 

 

信長「――それで、お主は一体どうするつもりなのだ?零」

 

 

零「……どうもこうも、敵の武者ライダーの正体を確かめんとどうにもならないだろう?杞憂だったならそれでいいし、もしそうだったなら、話し合いでどうにか済ませるつもりだ……最も、両方のどっちかが人質にされて戦わざるを得ない状況にされていたら話は別だが……」

 

 

秀吉「家康に限ってそれはない、と言いたい所だけど……彼女も一度武者ライダーを失って余裕がない筈だからね。今は戦の真っ只中で敵同士である以上、そうしてこないとも限らないと思うわ」

 

 

零「……やっぱり、最悪の事態も想定しておいた方がいいか……」

 

 

信長「備えていて損はないだろうからな。……しかし、家康の奴は確かにうつけではあるが、アレはうつけなりに人並みの志は持っているし、無駄にプライドも高い。戦だからとは言え、人質などという下賎なやり方を進んで行い勝利を狙うような乏しい女ではないさ……そう信じたくある、という気持ちでもあるのだがな」

 

 

零「……だといいがな」

 

 

今は戦場で相見える敵同士とは言え、それ以前に秀吉と同じ昔馴染みである家康の人間性を信じたいと言う信長に零も少なからず同調する。人質を突き付けられて無理矢理戦わせられるという展開になれば最悪だが、そうでないなら幾らでも戦いを回避する方法があるはず。そう考えながら零が一同と共にディケイダーを走らせると、暫く走り続けてた荒野の向こうに大群の姿を捉え一斉に足を止めていく。その大群とは……

 

 

 

 

 

 

家康「――ふーはっはっはっはっはっはっ!!!!!のこのこやって来たか信長めっ!!今日こそこの地を貴様の墓場にしてくれるぞっ!!覚悟しろぉっ!!」

 

 

 

 

 

 

……大群の先頭の戦闘車両の上に様々な銃器を背負いながら仁王立ちし、お馬鹿丸出しで高笑いする一人の女性……武者リノベーション軍の総大将である家康の姿があったのだった。

 

 

零「………………なぁおい。まさかとは思いたいが、あの馬鹿っぽい女がもしかして……」

 

 

秀吉「……ええ。武者リノベーション軍の大将、徳川家康よ。間違いなく」

 

 

零「…………」

 

 

マジか、と零は直接声には出さずに左手で顔を覆ってしまう。信長や秀吉が散々うつけなど空気の読めない奴などとこぼしていたからどんな人物かある程度想像しつつも、交渉次第では話し合いでケリが付けられるかもしれないと考えていたのだが目論みが甘かった。

 

 

ああいう如何にもノリとかそういうので生きてるような感じのタイプが相手では、どう交渉を持ち掛けるべきか分からない。そうしていきなり出鼻を挫かれた零がどう策を練り直すかと頭を悩ます中、信長が家康に向けて叫んだ。

 

 

信長「貴様からの決闘の申し出に応えに来てやったぞ、家康。……だが、貴様は既に先の戦で武者ライダーを失っている筈だ。本当に武者ライダーを用意しておるのだろうな?」

 

 

家康「ふん、無論だとも。余は貴様のような大うつけみたく己の切り札を曝すような真似はせぬのだ。さあ、その目で刮目して見よッ!これが我が武者リノベーション軍の、新たな武者ライダーだッ!!」

 

 

バサッ!!と、家康がそう高らかに叫ぶと同時に彼女が佇む戦闘車両の脇に立て掛けられた武者リノベーション軍の旗が退けられ、その奥から二人の人物が姿を現す。それは……

 

 

なのは「――!零君!」

 

 

零「!なのは、市杵宍……!」

 

 

魚見「……やはり、そちら側の武者ライダーの正体は貴方でしたか」

 

 

旗の向こうから姿を現した二人……それは、この戦国世界に飛ばされた際に零と離れ離れになってしまったなのはと魚見の二人であり、零もやっと二人の安否を確かめられて安堵するのも束の間。予想通り、これからあの二人とライダー同士による決闘を行わなければならないのだという事実を改めて突き付けられて渋い顔を浮かべ、信長は横目でそんな零の様子を見て僅かに険しげな表情をしながら家康に視線を戻す。

 

 

信長「驚いたな……まさか三日と経たずに二人も新たな武者ライダーを手に入れていようとは……。よほど運に恵まれているのだな、貴様」

 

 

家康「ふっ、当然よ!貴様との戦で我が守護者である武者リノベーションを失い敗走を強いられ、挙げ句の果てにあの物のけ共の追撃に遭い一時はこれまでかと思ったが、天はやはり余を見放さなかったさ!我等の危機に颯爽と現れたこやつ等に命救われ、更には武者リノベーションを失い意気消沈していた我等の新たな武者ライダーとなってくれたのだからなぁ!」

 

 

零(……聞いてもいないのにベラベラと経緯を話してくれるな、あの女)

 

 

長秀(一度おだてると乗りやすいお方ですからね……長年の腐れ縁のおかげか、姫様も家康公の太鼓持ちが板に付いてますし……)

 

 

零(太鼓持ちというか……まぁ、あの女のチョロさに付け込んで情報を引き出すのは確かに手慣れているな……)

 

 

おかげであの二人が家康の武者ライダーになった経緯も大体分かった。多分あの二人も自分と同じように、はぐれてしまった自分を探そうとした矢先に戦の光景を目の当たりにし、一先ずこの世界についての情報を集めようとしてたところに武者ライダーを失って逃走していた家康の軍が怪人達の追撃に遭っている場面にたまたま出くわして咄嗟に助けに入り、そのまま家康に保護されて武者ライダーに仕立て上げられたというところだろう。……当然だが、やはり詐欺で婚姻届は書かされてなどはいないのだろうが。しかし……

 

 

秀吉「貴方が武者ライダーを新たに仕入れた経緯は何となく分かったわ……けれど解せないのよ。何故貴方はこの時機に信長に決闘を申し出てきたの?今の私達には、戦国バトルロワイヤルで鎬を削り合ってる場合ではない事ぐらい、貴方も重々承知してる筈でしょ?」

 

 

そう、秀吉の言う通りだ。幾ら武者ライダーを新しく手に入れたとは言え、今は戦国バトルロワイヤルの勢力図を大きく変える程の力を持つ謎の敵の出現により戦どころではない。なのにこのタイミングで信長を名指して決闘状を叩き付けたのには何の意図があるのか?それについて秀吉が問い詰めると、家康は愚問だと言わんばかりに鼻を鳴らした。

 

 

家康「決まっておろうが?この時機だからこそ、だ……今この日ノ本を騒がせるもののけ共を一掃するには、陣地を更に広め、新たに武者ライダーを手に入れて力を付けねばなるまいて。だから信長の首級と共に、そやつの武者ライダーを手に入れにきたのだ」

 

 

零「おいおい……」

 

 

秀吉「……それが解せないと言ってるの。貴方もあの敵を脅威に感じているなら、今は徒に戦火を広げるのは得策でない事ぐらい分かっている筈でしょ?武者ライダーが必要なら、同盟を組むという手も――」

 

 

家康「同盟?ふんっ、それこそ有り得ぬわ。……特に信長、貴様とならば尚の事なッ!」

 

 

信長「…………」

 

 

ビシィッ!と、人差し指を突き付けてそう叫ぶ家康に信長は無表情のまま家康を見つめ返すが、家康は構わず信長を見据えて拳を握り締めた。

 

 

家康「貴様は確か以前言ったな?この天下を力で統一し、その果てに、今の体制を棄てて新たな世を築くのだとか」

 

 

信長「……うむ、言ったな……で、それがどうしたというのだ?」

 

 

家康「貴様のうつけぶりも遂に自棄が回ったと言っているのだ。今の体制を棄て新たな世を築く?馬鹿めが……この体制を棄て去ればこの国が一体どうなるか、本気で分かっているのか?我等が潰えれば民達は烏合の衆となり、この国は衰退していくのみ……。貴様はこの国が今まで築き上げてきた物を棄て、今の暮らしを好み満足している者達の意志を無視して、民達を滅ぼすつもりか!」

 

 

高らかにそう叫び、信長が目指そうとしている天下を真っ向から否定する家康。しかしそれに対し、信長も落ち着き払った様子で首を横に振って応えた。

 

 

信長「確かにな……我が目指そうとしている世界は、この国が今まで築き上げてきたしきたりや様式を棄て去る事になる。それを愚かだうつけだと思う者も大勢いるだろう。……だが家康よ、この世に移り変わらぬものなどないのだ」

 

 

家康「……何?」

 

 

信長「人は飽く無き欲望を抱き、常に変化を求め進化し続ける生き物だ……それでも中には貴様の言う通り、今の生き方を維持したいと望む声もあるだろう……。だがな、世の中はそんな者達の意志とは関係無しに変化していくのが常なのだ」

 

 

家康「それを不変のものとするのが民の上に立つ我等の役目だろう!早急に全ての戦を納め、他国との同盟を結んで現状を維持する!それで十分だろうて!民達の今の生活と財産を守らずしてどうするか!」

 

 

信長「民達の事を思うなら尚の事だ……下克上が常のこの乱世、今この戦国世界は我や貴様のような様々な人間の野心や疑心から簡単に人を欺き、裏切り、奪い合う……ほんの少しのきっかけで簡単に戦が起きるのが今の現状だ……例え貴様の言うように、早急に戦を納めて他国と同盟しようと、それで絶対に裏切りには遭わない、戦には繋がらぬという確かな確証があるのか?」

 

 

家康「確かな、確証だと……?」

 

 

信長「……人は決して強い生き物ではない。例えば、今まで憎み合い敵同士だった隣国同士が同盟して和平を結んだとしても、いつか裏切られやしないかという隣国への疑心と恐怖に耐え切れず、どちらかが先に裏切って新たな戦に繋がり、新たな戦はその度に民達の財産や生活を奪い苦しめる……貴様が維持しようとしている現状とは正にそんな危ういもの、そんな惨状を我はこの目で何度も目にしてきたのだ。だから変えたいと思った。民達が二度と戦の影に怯えずに済む世界。そんな世界を築き上げるには、天下を統一し、今の現状を根本から変える必要があるのだと」

 

 

家康「何を小綺麗事を……そう言いつつ、貴様も戦を起こして戦火を広げている武将の一人だろう!」

 

 

信長「貴様に言われずとも重々承知している……それでも誰かがやらねばそんな世を築けぬのなら、他の誰でもない、我の手でやる。この戦国乱世を納められる事が出来るなら、幾らでもこの身を堕とし、幾らでも憎まれようさ……その覚悟はとうに出来てる」

 

 

零「…………」

 

 

互いに睨み合い、問答する二人の姿を零や他の一同も無言のまま見守り続ける。今の体制を変える事に否定的で、早急に全ての戦を納め現状を維持するべきだという家康と、今の体制を根本から変える為に天下を取り、この国の民達が二度と戦の影に怯えずに済む世を築くという信長。相反する考えを持つそんな二人に零も思わず何かを口にしようとしたが、すぐに口を閉ざした。

 

 

零(いや……よそ者の俺が口出しする事は何もないか)

 

 

この世界の行く末は、この世界の住人である信長達が最終的に決める事だ。他所の世界の人間である自分が深く関与するべきではないと考えながら、零は家康陣の武者ライダーのなのはと魚見に呼び掛けた。

 

 

零「おい二人共、こっちに来い」

 

 

なのは「え?け、けど……」

 

 

零「漸く合流出来たんだぞ?これ以上そっちにいても何のメリットもないだろ?あの敵の件もある以上、こんなところで決闘の真似事なんてしている余裕もないんだ」

 

 

魚見「それはそうですが……しかし、私達も家康さんには一宿一飯の恩義がありますから、彼女にその恩を返せないまま裏切るような真似は……」

 

 

零「む……」

 

 

零と違い根が真面目過ぎる二人だからか、一宿一飯の恩をまだ返せていない以上、このまま家康を裏切って信長側の零の下に戻る事は出来ないと、なのはと魚見はそう言って零と家康の顔を交互に見ながら迷いを浮かべていき、そんな二人の性格を知っている零もそれ以上は強く言えずに押し黙ってしまうが……

 

 

零(だが、どうする……?このままじゃどちらにせよあの二人と戦う事に……)

 

 

しかも自分が負ければ信長の頸を家康に差し出せねばならない。だからといって二人と本気で戦う事も出来ない。二人と戦うべきか、それともそれを理由に決闘を放棄して信長の頸を差し出すか。どう決断するか心の中で迷い零が苦悶する中、その様子を今まで見ていた長秀が信長の傍に近付き耳打ちしていく。

 

 

長秀(姫様……やはりあの様子だと、零も本気で戦う事は出来なさそうです)

 

 

信長(だろうな……探していた仲間と望まぬ形で戦わされるのだ。あやつに本気であの二人と戦うことなど出来はしないだろ……)

 

 

長秀(ええ。ですが、このまま決闘になったとしてもあの二人に圧されて負けてしまう可能性の方が高いでしょう。そうなれば姫様の頸を差し出さねばならなくなる……ですから――)

 

 

ごにょごにょ、と長秀は小さな声で信長の耳に何かを耳打ちしていき、その内容を聞いた信長は目を見開き思わず長秀の顔を見た。

 

 

信長(それは……しかし、大丈夫なのか?)

 

 

長秀(あちらのお二方も、家康公に恩があると引けぬようですからね。このままあの三人に望まない陰惨な戦いをさせるよりかはマシかと思います)

 

 

信長(……むう……分かった。今はそなたを信じよう。話はこちらで合わせる)

 

 

長秀(お願いします)

 

 

これも零達が今よりも辛い戦いに身を投じさせない為だと自分に言い聞かせて、信長は軽く咳ばらいした後に零に向け口を開いた。

 

 

信長「んんっ!……零よ、やはりあの二人と戦う事になりそうだが、大丈夫なのか?」

 

 

零「……どうだろうな……生憎本気で戦える相手ではないし、こっちが加減しながら戦うという手もあるが、それで勝てる相手でもないし……」

 

 

信長「うむ、確かにお主にとっては戦い難い相手この上ないだろうしな……だがそれでも、我は貴様が必ず勝つと信じているぞ?何せ、その……貴様は我の……最愛の『夫』、なのだしな……」

 

 

 

 

 

 

なのは「………………………………………え?」

 

 

魚見「……………………………………おっ、と?」

 

 

 

 

 

 

ヒュンッ……と、その瞬間、この戦場に漂う空気が一段と冷たくなったような気がした。が、肝心の零はそんな空気の変化には気付かず、あからさまに嫌そうな顔で信長の方に振り返った。

 

 

零「だからっ、そのらしくもない台詞もその呼び方も止めろと言っただろうがっ。お前との夫婦関係なんて俺は一切認めてないぞっ」

 

 

信長「ん?貴様が認めまいと、事実上我等は夫婦関係なのだから仕方なかろう?貴様は嬉しくないのか?こんな美人な妻を嫁に出来たというのに」

 

 

零「自分で言うなっ!大体あんな形で夫婦にされて、どう嬉しく思えと言うんだっ!」

 

 

信長「それはまぁ……あれだな、新妻らしく夫に色々と尽くすつもりでいるぞ?例えばこの決闘に勝った暁には、そうさなぁ……うむ、今晩の夜伽は貴様の望む通り、我を好きにしてくれてもいいぞ?」

 

 

蘭丸「なっ、ひ、姫様っ!なんとはしたない事をっ!」

 

 

零「……馬鹿にしてるのかお前?そんな物で俺が本気出してアイツ等と戦うとでも思って―――」

 

 

 

 

 

―……ゾワアァッッッ―

 

 

 

 

 

零「………………え?」

 

 

 

 

 

その時だった。ぞくりと、絶対零度の冷たい視線が零の全身にべったり張り付いたのは。全身からブワッと冷や汗が噴き出し、額から一筋の汗が流れる。その冷たい視線に釣られるようにゆっくりと零が振り返ると、其処には……

 

 

 

 

 

 

魚見「―――結婚、夫婦、新妻、夜伽……ほぉう……少し離れていた間に、随分良いご身分になられていたようですね……零……?」

 

 

なのは「ほんとだねぇー。私達が、零君一人で大丈夫かなってずっと気掛かりで昨日も一睡も寝付けられなかったのに……うっふふふふっ……ど う い う こ と か なぁ ?」

 

 

零「…………………………………………は……………………ぇっ…………?」

 

 

 

 

 

 

……完全な無表情と冷たさしか感じない眼差しを零に向ける魚見と、凄く優しげな笑顔を浮かべつつも絶対零度の凍気を放つなのはの姿が其処にはあり、そんな二人の姿を見て零も何故か心の内から自然とある確信を得た。

 

 

―――あ、これ死ぬな……と。

 

 

零「――あ…………あ、の…………ど、どうしたんだお前等…………?な、何故急にそんな怒り心頭になってるんだっ……?さ、さっきまで全然普通に話してただろうっ?」

 

 

魚見「いいえ、別に…………ただ貴方の節操の無さにいい加減、つくっ!づくっ!呆れ果ているだけですので…………」

 

 

なのは「私達も、ある程度は覚悟は決めてたよ?この世界の武将さん達って全員女の子みたいだから、ぜっっっっったいにまた零君が誰かにフラグ立ててふらっと帰ってくるんだろうなぁーって……なのに予想の斜め上を超えて結婚って……ねぇ、一体どうしたらそうなるのかなぁ……?」

 

 

零「…………ぃ、ぃゃぁぁぁぁ…………く、黒月さんもなんでこんな事になったのか全然分からないというかなあぁっ…………事故というかっ、うっかりというかっ、因果率が狂ったというかぁっ…………」

 

 

なのは「事故やうっかりでどうすれば織田信長さんの旦那さんになんかなれるのォオッ!!!!!!」

 

 

零「知らんわぁあッ!!!寧ろ俺が聞きたいッ!!!こっちだって自分の女運の無さにつくづく嫌気が差している真っ最中なんだぞぉおッ!!!」

 

 

何が悲しくて結婚詐欺に引っ掛かった上に織田信長の夫にされねばならぬのか。最早号泣一歩手間といった感じに叫ぶ零だが、信長は頬を紅くしながらモジモジと毛先を弄って拗ねるように口先を尖らせた。

 

 

信長「むー、其処まで嫌がる素振りをせずともよいではないか……我等はもう、一緒に裸で風呂に入った仲だろう……?」

 

 

なのは「ッ?!は、はだっ……?!//」

 

 

零「ぬおおおおおおおおおおおおいッ!!!お前も何とんでもない爆弾パスしてくれとるんだぁッ?!!」

 

 

信長「ん?今さら恥ずかしがるような事でもないだろう?貴様もあの時は堂々としていたし、我の裸をあんなにもじっくりと隅々まで見ていたではないか……あんなにも恥ずかしい体験は生まれて始めてだったのだぞ……//」

 

 

零「じっくりとも隅々とも見てはいないだろうがぁッ!!誤解を招くような発言するなぁッ!!」

 

 

魚見「……見て"は"いない、ですか……つまり彼女と裸同士で浴場に入ったのは嘘ではない、と?」

 

 

零「ッ?!……ぁ……い、いや、ち、違くてだなっ……?お、俺はっ、コイツと風呂になんぞ入る気なんて更々なくてっ……!」

 

 

信長「『なら、此処で俺が手を出しても文句言わないのか、お前?』……あんな言葉を男から向けられる日がこんな我にも来ようとはな……あの時は一瞬、我も自分を忘れて女になってしまったぞっ……//」

 

 

零「いい加減にしろテメェエエエエエエエエェェェェェェェェェーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!俺に何の怨みがあるってんだあああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーッッッッ?!!!」

 

 

『RIDER SOUL TRANS!』

 

『KAMENRIDE:TRANS!』

 

『gouka!now!』

 

『gou!gou!gou-gou-gou!』

 

 

どう見てもわざと焚き付けているようにしか見えない発言を繰り返す信長に零も思わず涙目になりながら怒鳴るが、直後に聞き慣れた電子音声が響き渡り慌てて振り返ると、其処には変身を完了してライドブッカーをガンモードに切り替えるトランスと、淡々と右手のリングを取り替える聖桜が背後からゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……と、とてつもない威圧感を放ちながら佇む姿があった。

 

 

聖桜『――成る程、よーく分かりました……どうやら貴方にはいい加減、『躾』という物を教え込んだ方が良さそうですね……』

 

 

『Explosion!Now!』

 

 

トランス『お父さんが勝手に結婚しただなんて、ヴィヴィオに一体なんて説明すればいいのっ……ほんっっとにもうっ……いい加減、その頭の芯まで冷やそうか……?』

 

 

『ATTACKRIDE:DIVINE BUSTER!』

 

 

零「ぁ……だ、だ、だから待てと言っているだろうッ?!!少しはこっちの言い分も聞けぇッ!!!確かにちょっとした手違いで夫婦になんかされたが、アイツとはきっちり別れて離婚するんだッ!!!別にアイツの事は特別好きでもなんでもないんだぞッ?!!」

 

 

トランス『なっ……あ、愛してもいないのに信長さんとの結婚を決めたっていうのッ?!最っ低ッ!!』

 

 

聖桜『しかもこんな大勢の前で離婚宣言するとは……ドン引きしました……デリカシーがないにも程があります……』

 

 

零「だからそうじゃないと言っているだろうがぁあッ!!!!」

 

 

信長(……ふむ。長秀よ、こんな感じでどうか?)

 

 

長秀(上々です♪これで零も本気で戦うのは無理だとしても、彼に本気で応戦させる事は可能でしょうね。……まぁ彼には気の毒ですが、嫌々仲間同士で戦わされるよりかはマシでしょう)

 

 

そのおかげか、仲間と戦わなければならないと沈んだ気持ちにっていた零からは既に悲壮感は漂っていない。……その代わり、なのはと魚見からの制裁を必死に回避しようと血相を変えて必死に弁解しているが。

 

 

家康「―――き、貴様等、いつまで余を放って駄弁っているのだぁッ!!!いい加減にしろッ!!!我等は決闘しに来ているのだぞッ!!!」

 

 

信長「むっ、言われずとも分かっておるわ」

 

 

秀吉「あら、私は別にもう少し続けてもらっても構わないんだけど?他所様の修羅場ほど見ていて飽きないものはないし」

 

 

家康「部外者は黙っておれ猿ッ!!大体信長ぁッ!!貴様は昔からそうやって余が気に入らぬ事ばかり――!!」

 

 

と、何処までもマイペースな信長と秀吉に家康が怒りを露わに怒鳴り散らし始め、両陣営の武者ライダーと武将達が勝手に言い争いを始めて決闘の雰囲気でなくなり掛けていた。そんな時だった……

 

 

 

 

 

 

―ガギイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィインッ!!!!―

 

 

『グアァァァァァァァァアッ!!』

 

 

「キャアァァァァァァァァアッ!!」

 

 

『『『……ッ?!!』』』

 

 

 

 

 

 

決闘の雰囲気がうやむやになり掛けてたその時、突如その戦場に甲高い金属音と二つの悲鳴が響き、それと同時に二人の人物が何かに吹き飛ばされるようにその場に転がり込んできたのだ。そしてその悲鳴と金属音に驚き一同が振り返ると、其処には両者共に剣を支えに立ち上がろうとしている二人……ライダーバトルを繰り広げていたハズの仮面ライダー天神と黒い少女の姿があったのだった。

 

 

天神『グッ……!クソッ、なんて出鱈目な強さだっ……!』

 

 

「ッ……不意打ちとは言え、私が遅れを取るなんてっ……」

 

 

家康「な、何だ、あやつらは……?」

 

 

零「あれは……まさか、天神かッ?!」

 

 

聖桜『桜ノ神ッ?!』

 

 

天神『……ッ?!零ッ?!それに魚見、なのはもッ!無事だったのか!』

 

 

突然戦場に吹っ飛ばされてきた二人組の片方が天神と知って零達が驚愕する中、天神も身体が傷付いているにも関わらずに三人の姿を見付けて安堵の様子を浮かべていくが、其処へ……

 

 

 

 

 

 

―ザッ、ザッ、ザッ……―

 

 

『――邪魔物の掃除をしていたところに、まさか最後の一人を見付けようとはな……これは運がいい』

 

 

 

 

 

 

天神と黒い少女が吹っ飛ばされてきた方からゆっくりと新たな参戦者……全身を覆う灰色のマントを纏い、右手には鮮血のように赤いライドブッカーを手にした謎の戦士が姿を現し、零達は目を見開き驚愕を浮かべた。

 

 

零「アイツはっ……!」

 

 

トランス『あ、あの時のマント付きッ?!』

 

 

秀吉「そんな、どうして奴がこんな場所にっ……!」

 

 

信長「っ……」

 

 

たった一晩で各陣営の武者ライダーを十人以上倒した謎の戦士の参戦。本来なら、入念な準備や各陣営との一致団結を持って戦わねばならないほど危険な存在の予想外の登場に動揺してしまう一同だが、そのことを知らない天神は右手に握り持つ無双セイバーの鍔の部分のスライドを引き……

 

 

天神『いつまでそうやって顔を隠してるつもりだっ?いい加減正体を現せっ!!』

 

 

―バシュウゥッバシュウゥッバシュウゥッ!!!―

 

 

『……!』

 

 

―ガギイィィィィッ!!―

 

 

無双セイバーの鍔の部分の銃口を突き付けてトリガーを引き、数発の弾丸を謎の戦士に目掛けて素早く乱射したのである。それを目にした謎の戦士も咄嗟に赤いライドブッカーを盾に使い咄嗟に弾丸を防いでいくが、数発の弾丸を防ぎ切れずに幾つかがマントに直撃し、その内の一発がフードを払い退けてその下に隠されていた素顔を露わにしたのだった。その素顔とは……

 

 

 

 

 

ディケイド?『…………………………………』

 

 

 

 

 

天神『ッ?!な、何……?』

 

 

聖桜『あ、あれは……?』

 

 

零「……ディケイド……」

 

 

そう、フードの下に隠されていた謎の戦士の素顔とは、血のように赤く染まった仮面と複眼以外ディケイドに全く酷似した外見をしていたのであった。その予想外の正体にトランスと聖桜と天神は驚愕してしまい、前の世界での謎の戦士との戦闘で見たその武器から既にその正体がある程度予想が付いていた零は険しげな眼差しで赤いディケイドを睨むが、信長達はその赤いディケイドを見て信じられないものを見たような顔で驚愕していた。

 

 

家康「あ、あやつはっ?!」

 

 

秀吉「まさか……武者ディケイド……?!生きていたの?!」

 

 

零(ッ!武者ディケイド?……確か、伊達政宗の武者ライダーだったっていう?)

 

 

この世界の半年前に、突然何者かの襲撃によって伊達政宗と共に何処かへ消えてしまったという武者ディケイド。それがあの赤いディケイドだという秀吉に零も訝しげな表情を浮かべてしまうが……

 

 

ディケイド?『武者、だと?……否……断じて否!!我はそんな軟弱な存在などではない!!』

 

 

信長「……?武者ライダーではない?……なら貴様、一体何者だというのだ?」

 

 

自分は武者ライダーなどではないと否定する赤いディケイドに対し、その正体を見極める為に一歩も退かず鋭い眼光を向ける信長。するとそんな信長の問い掛けに対し、赤いディケイドもマントを剥ぎ取って今まで隠していた姿を曝しながら両手を広げ……

 

 

ディケイド?『良いだろう……知らぬならば聞かせてやる、心して聞けッ!!!我が名は"邪武者"!!!"邪武者ディケイド"ッ!!!この天下を手に入れる者為りッ!!!!』

 

 

零「……邪武者、ディケイド……?」

 

 

邪武者。零も知らない武者ライダーとは全く異なる異名を名乗る赤いディケイド……『邪武者ディケイド』の高らかな名乗りを聞き零や他の一同も呆然としてしまうが、それを他所に、邪武者ディケイドは足元の影から再び無数の怪人を生成して新たに呼び出していき、その数はあっという間に万を軽く超える程の数にまで増えていってしまったのだった。

 

 

『『『グウゥゥルアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!』』』

 

 

勝家「っ?!な、何だあの馬鹿げた数はッ?!たった一瞬であんな数のもののけを……?!」

 

 

信長(ッ……!前に戦った時よりも遥かに化け物共を生み出す速さが増している……やはり武者ライダー達を倒さずに取り込んでいる影響なのか……?)

 

 

明らかに以前よりも怪人を生み出す速さが増している邪武者ディケイドに一同が戦慄を覚え、武士達もその圧倒的な数に腰が引けてたじろいでしまう中、そんな一同に邪武者ディケイドは徐に赤いライドブッカーの切っ先を向けていき……

 

 

邪武者ディケイド『漸くだ……この戦で漸く全てが手に入る……天下の頂は目の前にぃッ!!!掛かれえぇぇッ!!!皆殺しにしろおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!』

 

 

『『『グルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!!』』』

 

 

零「ッ!いきなりかクソッ!信長ッ!兵達を下がらせろッ!生身の人間にアイツ等の相手は危険過ぎるッ!」

 

 

長秀「ッ!いけませんッ!此処から一山越えた先には人里もあるんですッ!此処で兵達を下がらせれば、あの化け物達を人里に侵入させ兼ねませんッ!」

 

 

信長「……つまり、此処で食い止める以外ない訳か。秀吉ッ!貴様の軍だけでも下がらせろッ!奴の狙いは十中八九貴様の武者ライダーだッ!」

 

 

秀吉「馬鹿を言わないで、同盟軍を置き去りにして逃げ帰るほど、私達は薄情ではないわ……信長軍を援護するぞッ!!キャンセラーは私の傍を離れるなッ!!家康、貴方も手伝いなさいッ!!」

 

 

家康「貴様が命令するなッ!!全軍、迎え撃てッ!!こうなればあの主を失った幽鬼を討ち取り、信長の頚も討ち取ってやれえぇッ!!」

 

 

秀吉「ッ!貴方ねぇ!」

 

 

信長「おけぃ。向かって来るなら家康達は我等の軍で抑える、貴様はあの邪武者達を零達と共に頼む。……全軍、此処で必ず奴らを食い止めるぞッ!!!絶対にあの邪武者共に尾張の土を踏ませるなぁあああああああああああッ!!!!」

 

 

『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!!』』』

 

 

信長の号令と共に信長軍の兵達がそれぞれ武器を掲げながら高らかに叫ぶ。そうして、邪武者ディケイド軍の怪人達と家康軍の兵達が一斉に動き始めたと同時に信長と秀吉の連合軍も馬と戦闘車を走らせ、天下分け目の三つ巴が火蓋を切って落とされたのだった。

 

 

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole ディケイドパート⑦

 

―尾張国境・荒野―

 

 

―ドバババババババババババババババアァッ!!!!ドグオオォォンッ!!!!ドッガアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアァァンッッッッ!!!!!!―

 

 

「怯むなぁッ!!!突き進めぇええええええええええッ!!!天下の頂は我等に在りぃいいいいいいいいいいいいいいッ!!!」

 

 

「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!」」」

 

 

『『『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!』』』

 

 

邪武者ディケイド軍の乱入により火蓋を切って落とされた天下分け目の三つ巴。戦場は既に信長と秀吉の連合軍の兵達、家康軍の兵達、そして邪武者ディケイドが生み出して従える怪人達が入り乱れて乱戦になり、爆発と銃弾が飛び交い激闘と化しつつあった。

 

 

「うぉおおりゃあぁッ!!―ドゴオォッ!―ごはあぁッ?!」

 

 

「邪魔よッ!!怪我したくなかったら下がってなさいッ!!ハアァッ!!」

 

 

―ズシャアァッ!!―

 

 

『ギャアァッ?!』

 

 

天神『チィッ!一体何がどうなっているんだこの世界はッ?!ハッ!!』

 

 

そんな中、黒い少女は刀を振り上げて襲い掛かってきた家康軍の武士達にクロノスブレイドの峰の部分を叩き込んで吹っ飛ばしながら瞬時に刃を返して怪人達を切り捨てていき、その背後には家康軍の武士達を気絶させて戦場の外に放り投げつつ桜雪でファンガイアを切り裂き、無双セイバーで銃撃してグロンギを吹っ飛ばす天神の姿もあった。更に……

 

 

家康「でぇええああああああああああああああッ!!」

 

 

信長「ハッ!!」

 

 

―ガギイィィィィィィィィィィィィインッ!!!―

 

 

連合軍が武将の一人である信長、そして自身の愛馬に乗り換えた家康軍の大将の家康はお互いに馬を戦場に走らせ、すれ違い様に刀と刀をぶつけ合わせ激突している姿があった。しかし、二人が振り下ろした互いの刀は二人の頚を落とすまでに至らず、信長の頬が切れて流血し、家康の白い髪がパラパラと落ちていく。

 

 

家康「ッ!いい加減にしろ信長ッ!貴様っ、いつまでそうやって手を抜くつもりだッ?!」

 

 

信長「……別に手を抜いているつもりはないのだがな。単に貴様が力み過ぎてるだけではないか?昔から刀の扱い方が下手だったろ、貴様?」

 

 

家康「喧しいわッ!!だったらこれでどうだッ?!」

 

 

―ジャキッ!ズガガガガガガガガガガガガッ!!―

 

 

信長「!チッ……!」

 

 

『グァッ?!』

 

 

『ヌァッ?!』

 

 

呆れ気味に溜め息を吐いた信長の言葉が癪に障ったのか、家康は背中に担ぐ火器の中からサブマシンガンを取り出して銃口を突き付け信長に向けて乱射し出したのである。それを目にした信長は咄嗟に愛馬を操って銃弾を避けていき、信長にかわされた銃弾はそのまま背後から信長に襲い掛かろうとした怪人達へと直撃し吹っ飛ばしていく。そして……

 

 

邪武者ディケイド『ヌゥエアァッ!ハッ!』

 

 

―ガギイイィィッ!!ガギッ……グガアアァンッ!!―

 

 

ディケイド『グウゥッ?!グッ、クソッ……!!』

 

 

戦場の中心では、秀吉の傍に付き従う武者キャンセラーを目指す邪武者ディケイドを零が変身したディケイドが食い止めようと試みていたが、邪武者ディケイドの圧倒的な戦闘力の前に圧されてしまい、赤いライドブッカー……ブラッドライドブッカーで何度もボディを切り刻まれ吹き飛ばされてしまっていた。

 

 

邪武者ディケイド『……どうした?その程度の力しか持たぬ分際で我が前に立ち塞がったのか、貴様は?』

 

 

ディケイド『チッ……他の武者ライダーを散々喰らっておいてよく言うっ……!』

 

 

強気な態度を崩さずライドブッカーを構え直しながら態勢を立て直し邪武者ディケイドを睨むディケイドだが、その心中では焦りを浮かべていた。

 

 

邪武者ディケイドは確かに以前一度戦った時より遥かに力を増しており、単純な力押しの勝負など正面からでは通じない。

 

 

それを感じ取り邪武者ディケイドと一定の距離を保ちつつどう戦うべきかとディケイドが思考を駆け巡らせる中、邪武者ディケイドはジリジリとディケイドへと迫りブラッドライドブッカーで再び斬り掛かろうとした、その時……

 

 

『Explosion!Now!』

 

 

邪武者ディケイド『―――ッ!!』

 

 

―チュドオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーオォォンッッッッ!!!!―

 

 

ディケイド『ッ?!これは……?』

 

 

何処からか突然電子音声が響き、それと同時に邪武者ディケイドに朱い魔法陳が浮かび上がり大爆発を巻き起こしたのだ。その見覚えのある爆発の中に呑まれた邪武者ディケイドを目にしディケイドが驚いていると、武士達と怪人達が戦っている混戦の中からトランスと聖桜が飛び出してきた。

 

 

聖桜『無事ですか、零!』

 

 

ディケイド『!お前ら……。良いのかよ?敵軍の武者ライダーを助けるような真似なんかして?』

 

 

トランス『皮肉なんか言ってる場合じゃないでしょうッ!いいから今の内に早く態勢を立て直して―……ブザァアアアアアッ!!!!―……ッ?!』

 

 

先の件で拗ねる様に皮肉を口にするディケイドに態勢を立て直すように促すトランスだが、その時、邪武者ディケイドを飲み込んだ爆炎が内側から斬り裂かれて霞のように消え去ったのである。そして爆炎の中から、全身に炎の様に揺らめく赤黒いオーラを身に纏った無傷の邪武者ディケイドがその姿を現した。

 

 

聖桜『ッ!こちらの魔法が効いていない?!』

 

 

邪武者ディケイド『何人集まろうとも同じ事だ……纏めて黄泉へと墜ちるがいいッ!!』

 

 

―シュブォオオオォッ!!ブザァアアアアッ!!!―

 

 

トランス『?!速っ―ガギイィィィィッ!!―ウアァッ?!』

 

 

ディケイド『ッ!なのはッ!!―ズシャアァッ!!!―グアァッ!!』

 

 

そう言いながら邪武者ディケイドは全身に身に纏った赤黒いオーラの能力なのか目にも留まらぬ速さで一瞬でディケイド達の間に姿を現し、赤黒いオーラを刃に纏ったブラッドライドブッカーを振るってディケイド達を次々と斬り飛ばしてしまったのだ。

 

 

そしてディケイドが何とか反撃し邪武者ディケイドと鍔ぜり合いになる中、地面を転がりながら咄嗟に態勢を立て直したトランスはライドブッカーからカードを取り出しバックルにセット、聖桜は左手の指輪を取り替えバックルに翳していく。

 

 

『KAMENRIDE:SEI-O!』

 

『rekkuu now!』

 

『byuu!byuu-byuu-byuu-byuu!』

 

 

T聖王『ヤアァッ!!』

 

 

聖桜RS『ハッ!!』

 

 

―ガギイィンッ!!ガギイィィィィッ!!―

 

 

邪武者ディケイド『ヌゥッ?!デェアァッ!!』

 

 

二つの電子音声が重なって響き渡ると共にトランスはホーリーフェアリスを手にした聖王、聖桜はレックウスタイルに姿を変えながら邪武者ディケイドへとそれぞれの武器で斬り掛かってディケイドから引き離していき、ディケイドもそれを見て二人に続こうとライドブッカーを構え直すが、その時……

 

 

『――零ッ!!』

 

 

ディケイド『……ッ?!』

 

 

不意に背後から名を呼ばれ、ディケイドは足を止めて背後へと振り返る。すると其処にはこちらに向かって駆け寄ってくる二人組……天神と黒い少女の姿があった。

 

 

ディケイド『木ノ花……!』

 

 

天神『やっと見付けたぞっ……!説明してくれ!これは一体どういう状況なんだ?!』

 

 

ディケイド『は?あぁ……この状況については色々と話が長くなるから追い追い説明する……というかそれより、何でお前が此処に?』

 

 

天神『何でって、君達を捜しに来たに決まっているだろう!急にいなくなるから心配して気配を頼りに来てみればこんな戦国みたいな世界に辿り着くし、着いたら着いたでいきなりこの娘に襲われるわ……!』

 

 

「だから、それに関してはごめんって……」

 

 

ディケイド『……?誰だ、そいつ?』

 

 

此処に至るまでの苦労話を語る天神の脇に立つ小さな少女の存在に漸く気が付き、怪訝な表情で問い掛けるディケイド。だが黒い少女はそれに対して無言のままクロノスブレイドの切っ先をディケイドの後ろに向け……

 

 

「私については取りあえず、今は敵じゃないって理解してくれれば十分よ。それより……アイツをどうにかする方が先じゃない?」

 

 

―ガギイィィィィィインッ!!!―

 

 

T聖王『キャアァッ!』

 

 

聖桜RS『クッ!』

 

 

ディケイド『ッ?!二人共ッ!』

 

 

黒い少女が忠告した直後、邪武者ディケイドと戦っていたT聖王と聖桜が三人の前にまで地を転がるように吹っ飛ばされ、更にT聖王と聖桜はダメージで強制的に通常形態に戻ってしまったのだ。

 

 

そしてディケイドと天神が慌てて二人へと駆け寄って身体を抱き起こしていくと、トランスと天神を吹っ飛ばした邪武者ディケイドがブラッドライドブッカーを振りかざし四人に再度斬り掛かろうとするが、それを阻むように黒い少女が飛び出し邪武者ディケイドの剣を受け止めた。

 

 

―ガギィッ!!―

 

 

邪武者ディケイド『ッ!貴様ッ……!』

 

 

「さっきは良くもやってくれたわね?借りは倍にして変えさせてもらうわッ!」

 

 

啖呵を切る様にそう叫ぶと共に、黒い少女はクロノスブレイドで邪武者ディケイドのブラッドライドブッカーを斬り払いながら巧みな剣技で斬り掛かっていき、その間にディケイドと天神の手を借りて立ち上がったトランスと聖桜は邪武者ディケイドと戦う黒い少女を見て疑問符を浮かべた。

 

 

聖桜『あの子は一体……?』

 

 

天神『私も詳しくは判らん。ただこの世界に着いてからいきなり勝負を挑まれたんだが……君達は知らないのか?特に零、ロリは君の専門だろう?』

 

 

ディケイド『誰がだッ!!ったくッ……まあ武者ライダーには見えんし……どちらかと言えば、ツカサや翔子と同じライダー少女に似ているような……というかあの剣からして、クロノスじゃないか?』

 

 

トランス『あっ、言われてみるとそうかも……でも、それ以外に何か誰かに似てない?あの声とか金髪とか……』

 

 

ディケイド『お前もか?実は俺も何かさっきからそんな感じがしてな……しかも嫌な方向で――』

 

 

「くッ!ちょっと!いつまで其処でボーッとしてんのよっ?!観戦してる余裕があるなら手伝ってっ!」

 

 

ディケイド『ッ!あ、あぁ分かってるッ!取りあえずアイツについて考えるのは後にするぞ……!』

 

 

トランス『う、うん!』

 

 

今はあの黒い少女の疑問に関しては後回しだと、そう自分に言い聞かせるようにディケイドはライドブッカーの刃を撫でてトランス達と共に邪武者ディケイドに突っ込んでいった。先ずは聖桜がウィザーソードガンで黒い少女と切り結んでる邪武者ディケイドとの間に割って入り、その後に続くようにディケイドと天神がライドブッカーSモードと桜雪で邪武者ディケイドに斬り掛かり、トランスがGモードに切り替えたライドブッカーを乱射させ邪武者ディケイドを怯ませた直後、黒い少女がすかさずクロノスブレイドで斬り付けて後退りさせていく。

 

 

邪武者ディケイド『ヌグッ?!クッ、小癪な……』

 

 

ディケイド『五対一で悪いが、こっちとしては何度もお前を見逃す訳にはいかないんでな……一気にケリを付けさせてもらうぞッ!』

 

 

『『『『ハアァッ!!』』』』

 

 

ディケイドが勢いよく地を蹴って邪武者ディケイドに再び斬り掛かったと共に、聖桜、天神、黒い少女が三方向から同時に踏み込み、トランスもライドブッカーの銃口を邪武者ディケイドに狙い定めて引き金に指を掛けた。が……

 

 

 

 

 

 

邪武者ディケイド『―――来い、シノビラーッ!!』

 

 

―シュバババババババババババババッ!!!―

 

 

「ッ?!」

 

 

ディケイド『何?!』

 

 

四方から邪武者ディケイドに仕掛けようとした直後、邪武者ディケイドが高らかにそう叫んだと共に邪武者ディケイドの足元の影から無数の影が飛び出してきたのである。そして無数の影は五人の前で忍者の怪人達……嘗て拓斗と守が倒したシノビラーとなって現れ、素早い動きでディケイド達に斬り掛かって来た。

 

 

天神『グッ?!何なんだコイツ等はッ?!』

 

 

聖桜『忍者の怪物っ……?こんなものまで隠し持っていたなんてっ―ズバアァッ!!―ウァッ!』

 

 

トランス『クッ!う、動きが読み辛いっ、キャアァッ!』

 

 

如何にも忍者らしい素早さとトリッキーな動きにより攻撃を当てる事が出来ず、シノビラー達に翻弄されて苦戦を強いられてしまうディケイド達。そして邪武者ディケイドはその隙にブラッドライドブッカーを左腰に納めると、両手に二本の同じ剣を何処からともなく出現させる。それは……

 

 

ディケイド『……ッ!あれは、約束された勝利の剣(エクスカリバー)ッ?!』

 

 

そう、邪武者ディケイドが両手に握り締めた剣の正体とは、仮面ライダーエクスが主要武器として使用する約束された勝利の剣(エクスカリバー)だったのだ。

 

 

しかしその外見はディケイド達が見慣れている黄金の剣ではなく、禍々しい漆黒の色に染められた魔剣と化しており、邪武者ディケイドはその両手に握り締めた二本の魔剣をゆっくりと頭上に掲げて一つにし、合わさった二本の魔剣は漆黒の輝きを放ち圧倒的な魔力を放出し始めたのだった。

 

 

―ギュイイイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!―

 

 

ディケイド『……マズイ……周りの兵達を避難させろッ!!!"アレ"を撃たれたら一たまりもないぞッ!!!』

 

 

その漆黒の光を目の当たりにして直感的に危険を感じ取り、ディケイドはライドブッカーでシノビラー達を退けながらトランス達や周りの兵達にも聞こえるように呼び掛けた。

 

 

ただでさえ高火力を誇るエクスカリバーがそれ単体でも十分脅威だというのに、それが二本となって合わさり、しかもこんな敵味方が入り乱れる戦場で撃ち込まれてしまえば大惨事となるのは目に見えている。

 

 

それをディケイド同様理解しているトランス達もそれぞれが戦うシノビラー達を払い退けて周りの兵達を慌てて避難させていき、ディケイドもすぐ近くの怪人を切り捨てて兵達を逃がしていく。

 

 

―ギュイイイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!―

 

 

家康「……ッ?!な、何だあれは?!」

 

 

信長「……アレは……」

 

 

秀吉「黒い、光……?」

 

 

そして、戦場の各所にて邪武者ディケイドが放とうとしているエクスカリバーの漆黒の輝きを信長達も目の当たりにして思わず戦闘を止め、各陣営の兵達もその光に気付きザワザワとどよめきが広がっていた。そうして……

 

 

邪武者ディケイド『―――約束された(エクス)……』

 

 

―ゾワアアァァァッッッッ!!!!―

 

 

信長「ッ?!!家康ッ!!伏せろッ!!!」

 

 

家康「は?―ガバアァッ!―ぬあぁっ?!」

 

 

武者キャンセラー『ッ!!姫様ッ!!お下がりをッ!!』

 

 

秀吉「?!キャンセラーッ?!」

 

 

邪武者ディケイドがボソリと放った一言。そのたった一言から言い知れぬ恐怖を遠くから感じ取った信長はすぐさま家康を強引に引っ張って地面に覆いかぶさり、武者キャンセラーも黒い閃光に背を向ける形で秀吉を抱き留め、そして……

 

 

 

 

 

 

邪武者ディケイド『勝利の剣(カリバー)――――――――――――――ッッッッッッッッ!!!!!!!!!!』

 

 

―ドバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアアアアアァァァァンッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!―

 

 

 

 

 

 

冷徹に告げられた真名解放と共に振り下ろされた魔剣。それと共に漆黒の閃光が打ち放たれ、戦場は漆黒の光に飲み込まれてしまったのであった。

 

 

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole ディケイドパート⑧

 

 

―……ビュウゥゥゥゥゥッ……―

 

 

邪武者ディケイドが放った漆黒の閃光に焼き尽された戦場。周囲を覆い隠す程の白煙が立ち込め、肉が焼き焦げた嫌な臭いが鼻に付く……。そんな焼け野原と化した戦場一帯には、信長と秀吉の連合軍の兵達と家康軍の兵達が瀕死の状態で苦しみ悶えながら倒れる姿があり、その中には、変身が強制解除されたボロボロの零達の姿もあった。

 

 

零「――――…………ッ…………おいっ…………お、まえら…………無事かっ…………?」

 

 

魚見「―――ぅ……えぇ、何とかっ……」

 

 

姫「奴の周りに障壁を張って、どうにか威力を抑えたからな……私達は平気だっ……それよりも、君達は……?」

 

 

零「こっちは何ともないっ……俺よりもなのは、お前は―――なのは……?」

 

 

なのはの安否を確かめようと彼女の姿を探す零だが、其処で気付いた。先程まで近くにいた筈のなのはの姿が何処にも見当たらない。それに気付き零達が慌ててなのはを捜し辺りを見回していく中、彼らから少し離れた場所では……

 

 

「―――ん……ッ…………?私…………?」

 

 

零達や他の兵達と同様に、エクスカリバーの光に巻き込まれた黒い少女も其処で漸く目を覚ました。意識が戻ったばかり故に未だうつらうつらとするが、何やらズキズキと後頭部に鈍痛が走って頭を抑えると、彼女の右手に握られたクロノスブレイドが声を発した。

 

 

CB『漸く目を覚ましたか』

 

 

「ッ!クロノスブレイド?……私、確か……」

 

 

CB『あの邪武者ディケイドとやらが放った光の被害に巻き込まれ、意識を失っていたようだな。全く、まだまだ鍛え足りんようだ……取りあえず、其処の女を退かしてさっさと起き上がれ』

 

 

「……え?」

 

 

―ドサッ……―

 

 

何やら可笑しな発言をするクロノスブレイドの言葉に黒い少女が思わず上半身を起こそうとした瞬間、彼女の上から何かがずり落ちて真横に音を立てて転がった。それに驚いて黒い少女が振り返ると、其処には体中に傷を負った女性……変身が解けたなのはが気を失い倒れる姿があったのだ。

 

 

「っ?!この人……え……なの、は……?」

 

 

なのは「…………………………………ぅ…………………………」

 

 

CB『ふむ。どうやらお前があの光に飲み込まれる直前、咄嗟にお前を抱き留めて自分を盾にしたようだな。お前の見た目が子供だからと庇わずにはいられなかったのか……何にしてもお節介な奴だ』

 

 

「ッ!そんなこと言ってる場合じゃないでしょッ?!ちょっと、しっかりしなさいよッ!ねぇってばッ!」

 

 

呆れるように溜め息を吐くクロノスブレイドにそう言いながら黒い少女はすぐになのはに大声で呼び掛けて、彼女の身体を必死に揺さぶっていく。そして、また別の場所では……

 

 

 

 

 

 

―ピチャッ……ピチャッ……―

 

 

家康「―――貴様……何の真似だっ……?」

 

 

信長「……ッ……」

 

 

 

 

 

 

周りに重傷を負って苦しげに横たわる兵達の姿が見られる中、家康と信長の姿もその中にはあった。家康は服の所々が焦げてるぐらいで大した外傷はないようだが、それに対し信長はボロボロで、額から流れる血が家康の顔に滴り落ちていき、家康はそんな信長を睨み突き飛ばした。

 

 

信長「グッ……」

 

 

家康「何の真似かと聞いておるのだッ!貴様と余は敵同士だろうッ?!それなのに自らを傷付けて余を庇うなど……!貴様、余に情けを掛けるつもりかッ?!」

 

 

何処まで人に恥を掻かせれば気が済むのだと、倒れる信長を睨み付けて叫ぶ家康。しかしそんな家康を見て、信長もけだるげに上体を起こすと……

 

 

信長「別に……貴様に情けを掛けた訳ではない……ただ、貴様を此処で失えば我が困るから、貴様を庇っただけだ……」

 

 

家康「……何?」

 

 

家康を失えば信長にとって都合が悪いから助けただけ。その意味が分からず家康が訝しげな顔で聞き返すと、信長はそんな家康の目を真っすぐ見つめ返しながら口を開いた。

 

 

信長「貴様は、確かに空気は読めぬし、阿呆な奴ではあるが……国を纏め上げるその手腕や統治力、その他の才は我も買っておるのだ……そんな貴様の能力を、我はずっと以前から欲しいと思っていたぐらいだしな……」

 

 

家康「ッ……!何を馬鹿なこと……!」

 

 

信長「冗談でこんなことは言わぬさ……寧ろ貴様程の逸材を、このような場所で失うことの方こそ愚の骨頂だろう……っ……」

 

 

自分が欲しいと思っていた高い能力を持つ家康を此処で失いたくなかったが為に、家康を助けただけに過ぎない。激痛の走る身体を抑えつつそう語る信長に家康は戸惑い浮かべずにはいられなかったが、信長は構わず家康を見据えて語り続ける。

 

 

信長「なぁ、家康よ……確かに貴様の言う通り、我はこの国の古くからの様式や、しきたりを捨て去ろうとしている大うつけやもしれん……だがそれでも、我はもっと人間が進化していく様をこの目で見たいのだ……人の可能性が、この日ノ本という国を何処まで成長させ伸ばしていくのか……それを見届けたい……我と貴様、それに秀吉が組めば、それを形に出来るかもしれんとは思わんか……?」

 

 

家康「ッ……そんなことを言って、余が貴様の下に付くとでも思っているのかっ?」

 

 

信長「思っておらん……。だから戦で貴様を下そうという打算もあって、先の戦とこの決闘を受けたのだ……我が本気であることを示して、貴様を納得させ引き入れる……それまで貴様には、勝手に死なれては困るのだ……」

 

 

家康「ッ……貴様……」

 

 

本当に何処までうつけなのかと、家康がそう告げようと言い掛けた、その時……

 

 

 

 

 

 

「――キャンセラーッ!!しっかりしなさいッ!!」

 

 

信長&家康『……?!』

 

 

 

 

 

 

不意に背後から張り詰めた悲鳴が響き、それを聞いた信長と家康が驚愕して振り返ると、其処には二人から離れた場所でボロボロの姿で倒れ、右腕と左足が消滅してしまっている武者キャンセラーを抱き抱えながら必死に呼び掛ける秀吉の姿があった。

 

 

武者キャンセラー『ッ……姫様、お逃げ下さいっ……私の事など、お気になさらずっ……』

 

 

秀吉「何を言っているのッ?!馬鹿を言わないでッ!気をしっかり持ちなさいッ!急いで戻ればまだ――!」

 

 

 

 

 

邪武者ディケイド『―――生憎だが、ソイツは此処で渡してもらう』

 

 

 

 

 

秀吉「ッ?!―バシィッ!―ウアァッ?!」

 

 

信長「ッ!秀吉ッ!!」

 

 

武者キャンセラー『姫様ッ?!―ガシイィッ!―ウグアァッ?!』

 

 

瀕死の武者キャンセラーを肩で抱えて戦場から離脱しようとした秀吉だが、真横から飛び出してきた邪武者ディケイドが秀吉に平手を打ち込んで吹っ飛ばし、更に動けない武者キャンセラーの首を掴み持ち上げてしまう。

 

 

邪武者ディケイド『これで十五人……フフフッ、ハハハハッ!最後の一人、討ち取ったりィイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!』

 

 

―バチバチバチバチバチィッ!!バシュウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーッッッッ!!!!―

 

 

武者キャンセラー『ウグッ?!ァ……ウゥグアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ?!!!!』

 

 

邪武者ディケイドが高らかに叫ぶと共に、武者キャンセラーは全身から青い火花が撒き散らしながら身体が捻れて邪武者ディケイドの腰に巻かれてる赤いディケイドライバー……ブラッドディケイドライバーに吸い込まれ、今までの武者ライダーと同様に吸収されてしまったのだった。

 

 

秀吉「ッ?!キャンセラァーッ!!」

 

 

邪武者ディケイド『……これでこの地上から、全ての武者ライダーが消え去った……天よォオッ!!天下はこの手に落ちたァアッ!!今こそ我が前に現せッ!!天下を支配する『力』をォオオオオオオッ!!!!!!』

 

 

 

 

 

―……ゴゴゴゴッ……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォオッッッッ………!!!!!―

 

 

 

 

 

信長「ッ?!何だ……空が……?!」

 

 

両腕を広げ、天に向かって邪武者ディケイドが高らかに叫んだと共に、先程まで晴れ渡っていた筈の青空が何処からともなく出現した暗雲に覆い隠されてしまう。その天変地異を目にして信長達が戸惑う中、暗雲の向こうで一瞬何かが煌めき、其処から一本の赤黒い刀が回転しながら飛来して邪武者ディケイドの目の前に突き刺さった。

 

 

家康「ッ?!アレは?!」

 

 

邪武者ディケイド『天下人だけが持つ事を赦された刀、"天将刀"……これで天下は我が物に……!』

 

 

ズブリッと、地面に深々と突き刺さった歪な形をした刃の赤黒い刀……天将刀の柄を掴んで抜き取り、まるで己が天下人である事を示すように頭上に刀を掲げる邪武者ディケイド。その時……

 

 

 

 

 

 

―ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……ドッッッゴオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオォォォンッッッッッッッッ!!!!!!!!―

 

 

 

 

 

 

それに呼応するかのように、突如地を揺るがす地響きと共に巨大な大地震が発生したのだ。その異常事態に周囲の兵達が恐れて尻込む中、遠方の山々が吹き飛び、その真下から巨大な物体……全長500mはあるだろう謎の大樹が姿を現したのであった。

 

 

秀吉「ッ……?!な、何、あれ……?」

 

 

邪武者ディケイド『フ……フフフフッ……漸くその姿を現したか、『神樹カーラーン』ッ!!さぁ、この世全てを我が手に治めさせろッ!!天下をこの手にィイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!!!』

 

 

―シュルルルッ……ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオォンッッッッッ!!!!!!―

 

 

天将刀を頭上に掲げて謎の大樹……神樹カーラーンに邪武者ディケイドがそう命じた瞬間、神樹カーラーンから無数の触手が伸長して大地を削りながら様々な方へ広がり始めたのだった。そうして、神樹カーラーンから伸びた無数の触手達は此処から離れた場所に位置する人里や村、更には信長達の町にまで拡大して建物を破壊し、人々を捕らえて取り込んでいってしまう。

 

 

蘭丸「そ、そんな、尾張が……私達の国がっ……!」

 

 

信長「ッ……!貴様ぁっ、止めろォオッ!!!」

 

 

自分達の国までもが触手に覆われていく光景を遠目で目の当たりにし、信長は地に転がる刀を掴んで邪武者ディケイドに向かって斬り掛かった。しかし、邪武者ディケイドは振り向き様に天将刀で信長の刀を安易く切り払って叩き落としてしまい、そのまま信長の首を掴み上げてしまう。

 

 

長秀「ッ!姫様っ!ぐっ、うぅっ……!」

 

 

邪武者ディケイド『さぁ、最後の仕上げだ。貴様には、あの神樹の成長の促進を手伝ってもらうぞ……』

 

 

信長「ウグゥッ!クッ、な、何だとっ?―ドゴォッ!―グッ?!ァ……ッ……」

 

 

神樹カーラーンの成長促進を信長に手伝わせる。その意味が理解出来ず、邪武者ディケイドの手から逃れようともがきながら苦しげに聞き返す信長だが、邪武者ディケイドはそれに何も答えず信長の腹を殴って意識を刈り取り、そのまま信長を肩に背負って神樹カーラーンへと跳び去っていってしまったのだった。

 

 

家康「?!信長?!」

 

 

勝家「姫様ぁあああああああああああッ!!!」

 

 

「―――勝家ッ!長秀ッ!秀吉ッ!」

 

 

信長を連れ去る邪武者ディケイドの後を追おうと勝家や長秀、蘭丸達が傷付いた身体を無理矢理動かして後を追おうとするもそれすら出来ぬ中、倒れる彼女達の下に零と姫と魚見、そして三人と合流したなのはが黒い少女の肩を借りて駆け寄っていく。

 

 

長秀「ッ……!零……!」

 

 

零「おい、大丈夫か……!何なんだあの馬鹿でかい樹は?!一体どういう状況だ?!」

 

 

秀吉「ッ……あの邪武者に、キャンセラーを倒されたの……そしたら、空から突然刀が振ってきて、奴がそれを手にしたら……」

 

 

勝家「あの大樹が現れて、我々の国やこの先の人里や村を襲い始めて……姫様がそれを止めようとしたら、奴は姫様を連れ去ってしまって……!」

 

 

零「なっ……信長を?!」

 

 

信長が邪武者ディケイドに連れ去られた。それを聞き零が目を見開いて驚愕していると、姫と魚見、そしてクロノスブレイドは無数の触手を未だ伸ばし続けてる神樹カーラーンを見上げて険しげな様子を浮かべていた。

 

 

姫「あの大樹……まさか、神樹か?!」

 

 

なのは「っ……?神樹?何か知ってるのっ……?」

 

 

魚見「ええ……一般的には神霊が宿ると伝えられてる木の事を指しますが、アレはそれとは違うもっと別の危険なモノ……恐らく条件付きで、他者の願意によってその願い通りに起動する願望機の一種でしょう……」

 

 

CB『しかもあの神樹……掛けられた願望は"天下統一"という形でしか顕現出来ない欠陥品のようだな。そら、見ろ』

 

 

―……ピシッ……ピシピシピシィッ……ガッシャアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーアァンッッッッ!!!!!!―

 

 

クロノスブレイドにそう言われて神樹カーラーンへと目を戻した瞬間、神樹カーラーンから伸びた触手達が何もない空に亀裂を入れて空間を破壊していき、その向こうに繋がってる次元の向こう側にまで無数の触手を伸ばしていく。

 

 

零「ッ?!次元の壁を破壊した?!」

 

 

「天下統一……もしかしてあれって、他の並行世界も含まれてるって事?!」

 

 

CB『恐らくな。まぁ、あの程度の神樹で何処までそれが出来るかは知らないが、少なくとも多くの並行世界はアレに支配されることになるだろ。どうやらアレは一度起動すれば、この世全てを自分が望む世界に塗り替えるまで止まらぬようだしな……』

 

 

なのは「そんな……!」

 

 

あの神樹カーラーンが統一しようとしてる天下はこの戦国世界だけでなく、他の並行世界まで侵食しようとしている。その驚異を聞かされた零達は驚きを露わにするが、とにかく今は一刻も速くあの神樹をどうにかしなければならないと我に返って秀吉達の前に立ち並んでいく。

 

 

零「要するにあの樹をどうにかして壊さないと大惨事になるって事だろっ、とにかく今はアレを『グゥオアァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!』……ッ?!」

 

 

神樹カーラーンを止める為にディケイドライバーを腰に巻き付けて変身しようとする零だが、前方から獣のような雄叫び声が聞こえてそちらに振り向くと、其処には神樹カーラーンが聳え立つ方向から無数の怪人達が迫り来る光景があった。

 

 

姫「ッ!また大量の怪人か……!」

 

 

零「チッ、あのディケイドも中々容赦ないなっ……。魚見ッ!お前の治癒魔法で負傷した兵達を治療して、連中を避難させろッ!奴らは俺達が相手するッ!」

 

 

魚見「分かりました……!」

 

 

秀吉「ちょ、ちょっと待ってっ、まさか貴方達だけでアイツ等と戦うつもりなの?!無謀よ!貴方達もボロボロなのに、その上あんな数を相手になんてっ……!」

 

 

零「他に戦える奴もいないんだから仕方がないだろっ!お前等も魚見を手伝って兵達を安全な場所まで誘導させろっ!変身ッ!!」

 

 

『変身ッ!!』

 

 

『KAMENRIDE:DECADE!』

 

『KAMENRIDE:TRANS!』

 

『Soiya!』

 

『PEACH ARMS!Gouka☆kenran!』

 

『Gouka!Now!』

 

『Gou!Gou!Gou-Gou-Gou!』

 

 

零達自身もボロボロなのにあんな数を相手にするなど無謀だと訴え掛ける秀吉の声を振り切り、零達はそれぞれ変身動作を行ってディケイド、トランス、天神、聖桜へと変身していった。そして変身を完了した聖桜は右手のリングをヒーリングウィザードリングに取り替えて秀吉達や兵達の治療へと向かい、ディケイド、トランス、天神、黒い少女はそれぞれ武器を手にして神樹カーラーンから迫り来る怪人の大群に切り込んでいくのだった―――。

 

 

 

 

―NEXT STAGE ZWEI―

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole①

 

 

―戦国世界・尾張国境近くの森―

 

 

―……ピシッ……ピシッピシイィッ……バリイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィインッ!!!―

 

 

「どぉおわぁああああああああああああああああああああああッ?!!!!」

 

 

「クッ……!」

 

 

尾張国境近くに存在する森の中。その上空に突如巨大な亀裂が空間に走って硝子のように崩壊し、その向こう側から二人の青年が落下し地上に叩き付けられてしまっていた。

 

 

「ッ~~~~!!イ、イッテェ~ッ……!!クッソォッ、何なんだよ一体ッ!!何が起きたんだッ?!」

 

 

「ッ……俺が知るか」

 

 

余程打ち所が悪かったのか、尻餅を着いたまま後頭部を抑え涙目になる青年……"鳴神恭司"を尻目にそう言いながら、もう一人の青年の"佐月影虎"は服の汚れを払いつつ立ち上がって辺りを見回していく。

 

 

影虎「……それにしても、此処は一体何処だ?見た所、元いた場所とは違うようだが」

 

 

恭司「っ……さぁな。いきなりあの変な穴みたいなのに吸い込まれちまった訳だし……あ、今俺達が落ちてきた穴は?!彼処を通れば元の場所に――!」

 

 

と、恭司はそう言いながら自分達が落ちてきた裂け目を探して空を見上げる……が、其処には既に二人が落ちてきた裂け目は塞がってしまっており、穴は何処にも見当たらなかった。

 

 

恭司「う、嘘だろォッ?!おい冗談にも程があるだろッ!!どうやって帰りゃぁ良いんだッ!!」

 

 

影虎「一々騒ぐな……帰る方法があの裂け目しかないとも限らん。地道に探すしかあるまい」

 

 

恭司「…………もしそれで見付からなかったら?」

 

 

影虎「此処で生きていくだけだ。此処が何処であろうと、俺は俺の強さで自らの道を切り開くのみだからな」

 

 

恭司「なにその前向き思考のポジティブ精神コワイ」

 

 

こんな異常事態にも関わらず全くブレない影虎に呆れやら何やら様々な感情が沸き上がる恭司だが、そんな恭司を置いて影虎は歩みを進めてズンズン先に進んでいき、恭司も慌ててその後を追い掛けて走り出した。その時……

 

 

 

 

 

 

―ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアアァァンッッッッ…………!!!!!!!!!!―

 

 

影虎「……?!」

 

 

恭司「ッ!な、何だ、今の音?!」

 

 

 

 

 

二人が元の場所に帰る方法を探しに行動を開始しようとした直後、突如耳の鼓膜にまで響くような轟音が何処からか響き渡り、二人は思わず動揺し忙しなく辺りを見渡していく。そして、再度同じ轟音が鳴り響いて二人はその轟音が聞こえてきた方へと同時に駆け出し、森を抜けると、其処には……

 

 

影虎「……なっ……」

 

 

恭司「何だよ、コレ……」

 

 

森を出て恭司と影虎が真っ先に目にしたのは、有り得ないほど超巨大な謎の大樹の姿。そしてそのすぐ後に、その謎の大樹から伸びた無数の触手達が町や人里を襲い、その上空に自分達が落ちてきたのと同じ無数の裂け目を作り出してその向こう側へと根を張り巡らせ、その謎の大樹を止めようと無数の怪人達に挑むディケイド達の姿を目の当たりし、二人は言葉を失い絶句してしまうのだった。

 

 

 

 

 

『ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole』

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―尾張国境・荒野―

 

 

『『『グルァアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!』』』

 

 

長秀「クッ!第四波が来るわッ!!兵達の避難をもっと急がせてッ!!早くッ!!」

 

 

戦国世界に突如現れた謎の巨大樹・神樹カーラーンによる平行世界を含めた天下統一が開始され、更にその神樹カーラーンを操ってる邪武者ディケイドにさらわれた信長を助けに向かおうとするディケイド達だったが、迫り来る怪人の大群の襲来と負傷した兵達の避難が滞り、怪人達の足止めと撃退に足を止められてしまっていたのだった。

 

 

―ズシャアァッ!!―

 

 

『ギャアアァッ?!』

 

 

『ガァアアアアアアッ!!』

 

 

ディケイド『クソッ……!おいまだ兵達の避難は終わらんのかッ?!これ以上は本当に持たないぞッ!!』

 

 

トランス『クッ!それでも持たせるしかないよッ!!コイツ等を止められるのは今は私達しかっ、キャアァッ?!』

 

 

ディケイド『?!なのはッ!!クッソッ、退けえぇッ!!』

 

 

ライドブッカーGモードを使った遠距離攻撃でディケイドと天神を援護していたトランスの背後から、ドーパントが不意打ちでしがみついて動きを封じてしまい、それを見たディケイドも直ぐさまトランスの救援に向かおうとするが、その前にミラーモンスターとアンノウンが立ち塞がって邪魔してしまう。しかし、別の怪人を相手にしていた天神がそれを見て直ぐさま無双セイバーを投擲し、トランスの背中にしがみつくドーパントに突き刺していった。

 

 

『ギャアァッ?!』

 

 

トランス『!姫さん!』

 

 

天神『背後にも常に気を配っておくんだッ!動きを止めた隙に大群で押し寄せられたら一たまりもないぞッ!』

 

 

トランス『はいっ!ヤァッ!』

 

 

桜雪で怪人達を纏めて斬り裂く天神に頷き返し、トランスもドーパントの背中に突き刺さった無双セイバーを抜き取って飛び掛かってきたグロンギを斬り捨てながらライドブッカーを乱射させていく。そして、ディケイドと黒い少女もライドブッカーとクロノスブレイドで怪人達を確実に撃破し数を減らしていくが、更に神樹カーラーンの方向からまた新たな怪人達の大群が押し寄せてきてしまう。

 

 

「また増援ッ?!ほんっとにキリがないっ!」

 

 

ディケイド『ッ!このままじゃジリ貧にしかならないかっ……!お前等、此処を任せても大丈夫かッ?!』

 

 

トランス『任せてもって、どうするつもりなの?!』

 

 

ディケイド『あの樹の中に侵入するッ!コイツ等の出所の邪武者ディケイドを止めさえすれば、コイツ等の発生も止められる筈だッ!そうすれば……!』

 

 

天神『馬鹿を言うなッ!君一人を行かせられる訳ないだろうッ!行くならアマテラスとツクヨミになれる私か魚見が一緒に……!』

 

 

ディケイド『後ろにはまだ避難が済んでいない兵達が大勢いるんだぞッ!二人も抜ければコイツ等を足止めするなんて――!』

 

 

この怪人達の発生源である邪武者ディケイドを叩く為に、単身で神樹カーラーンへと攻め込むべきかで言い争うディケイド達。しかし……

 

 

 

 

 

 

『――その心配は入らんよ。貴様らにはもう暫く此処で、足止めを受けてもらうからな』

 

 

―バシュウゥッ!!!―

 

 

『ッ……?!―ドッガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!―グアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ?!!』

 

 

 

 

 

 

そんな四人に向けて、突如何処からか不意打ちで一発のエネルギー弾が放たれてディケイド達を吹っ飛ばしてしまったのだった。それに対しディケイド達もいち早く反応し直撃こそ避けたものの、爆風に耐え切れずゴロゴロと地面を転がってしまい、四人はふらつきながら身を起こして今のエネルギー弾が放たれてきた方に目を向けていく。すると、其処には……

 

 

 

 

 

 

―ジャリン!ジャリン!ジャリン!―

 

 

『――こちらの調子は上々か……予想外のアクシデントでアマテラスのベルトは手に入らなかったが、神樹が落ちたならば問題は無さそうだな』

 

 

ディケイド『……ッ?!お前はっ……!!』

 

 

トランス『アルゴゾディアート……アルペジオッ?!』

 

 

 

 

 

 

怪人の大群の中から、脇に玄武に酷似した一体の怪人を引き連れて杖に付いた鈴を鳴らしながら姿を現した一体の怪人……それは嘗て、零と祐輔達が戦って彼等を追い詰めた財団ケルベロスの第二位、"アルペジオ"が変身したアルゴゾディアートだったのだ。予想外の強敵の登場にディケイド達が驚愕を隠せずに動揺する中、アルゴゾディアートはそんなディケイド達に杖の先端を向け冷淡に告げる。

 

 

『悪いが、此処から先には通さんぞ破壊者よ。あの邪武者が天下統一を果たすまではな』

 

 

「ッ!何ですってっ?」

 

 

ディケイド『ッ……そうか……今回の件はやけに妙な部分が多いとは思ったが、お前達財団が一枚噛んでいたのか……!』

 

 

『好きなように解釈すればいい。どの道、貴様等にはもうあの神樹を止める事など出来ぬのだからな』

 

 

ジャリン!と、鼻を鳴らしながらアルゴゾディアートが地面に杖を突いた瞬間、アルゴゾディアートの頭上に無数のチャックが開いて裂け目が出現し、其処から無数のパンデミック、更にアルゴゾディアートの周囲に無数のシノビラー達が姿を現していく。

 

 

トランス『ッ!あの忍者の怪人は……!』

 

 

天神『あのディケイドが出していたのと同じ個体か……零の言う通り、連中が今回の件に関わっている線が濃くなってきたなっ』

 

 

『その様子では、既に此処までの戦いで疲弊し切っているのだろう……?その上でこれだけの数、貴様等に凌ぐ術はあるまい!』

 

 

―ジャリン!!―

 

 

『『『『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!』』』』

 

 

アルゴゾディアートが一際力強く杖で地面を突いたと同時に、シノビラー軍団とパンデミック、今まで動きを止めていた無数の怪人達が一斉にディケイド達に目掛けて飛び掛かってきた。それを見て、やはり財団と邪武者ディケイドが繋がっているのだと確信して舌打ちし、ディケイド達も咄嗟に押し寄せて来る怪人達に迎撃していくが……

 

 

―ガギイィィィィッ!!―

 

 

『グルルゥッ……』

 

 

「なっ?!」

 

 

ディケイド『刃が通らないッ?!―ドグオォッ!!―グゥオッ?!』

 

 

先陣を切って襲い掛かってきた玄武の怪人……ゲンブジャキにライドブッカーとクロノスブレイドを叩き込むディケイドと黒い少女だが、ゲンブジャキの胴体に刃が打ち込まれた瞬間に大きく弾かれてしまい、その隙を突くかのようにディケイドに体当たりを噛まし、更に黒い少女の身体を軽々と持ち上げながら放り投げてしまったのだ。そしてトランスと天神も他の怪人達を蹴散らしながらアルゴゾディアートに挑むが、幻術を用いた戦法に惑わされて苦戦を強いられていた。

 

 

―バシュウゥッ!―

 

 

天神『ッ!コイツも分身か!』

 

 

トランス『クッ!相変わらず厄介なっ!』

 

 

『貴様ら如きが私に敵うとでも思っているのか?片腹痛いッ!!』

 

 

―ギュイイィィッ!ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーアァンッッッ!!!!―

 

 

『ッ?!グッ、ウアァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!』

 

 

聖桜『ッ?!皆さんッ!』

 

 

家康「なのはッ!」

 

 

アルゴゾディアートがトランスと天神に突き付けた杖の矛先が輝き、次の瞬間、ディケイド達に無数の爆発が襲い掛かり纏めて四人を吹き飛ばしてしまったのだ。後方で兵達の治療に専念していた聖桜はその光景を見て慌てて四人の下に駆け寄っていき、そんな五人にアルゴゾディアートが杖を突き付けながら怪人達を従えてにじり寄って来る。

 

 

『最早、貴様ら如きにどうする事も出来ん……聞こえないか?全てを終わりへと誘う、このメロディーが』

 

 

 

 

 

―………~~~~♪~~♪―

 

 

 

 

 

「……!な、何?この歌っ……?」

 

 

アルゴゾディアートの言葉と共に、何処からともなく聞こえて来る歌声。普通の人間が聞けば誰もが魅了されてしまいそうなほど綺麗なメロディーだが、しかし、その歌声には何処か言葉では言い表せない危険を感じる。そんな歌声を聞いてディケイド達が歌の発信源を探して辺りを忙しなく見回していくと、その時……

 

 

―…………ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ…………ドバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーアアアァンッッッッッッ!!!!!!!―

 

 

まるでその歌に感化されるかのように神樹カーラーンが活性化し、先程よりも更に多くの無数の触手が神樹から伸びて次元の壁を次々と破壊していき、他の平行世界を目指して浸蝕の速度を速め出したのだった。

 

 

聖桜『ッ?!神樹が更に活性化した?!』

 

 

トランス『ど、どういう事?!何が起きてるの?!』

 

 

CB『……!まさか、この歌の仕業か!』

 

 

『ご明察……。あの神樹に欠陥部分がある事ぐらいは既に調査済みだったからな。その欠陥部分を補う術もこちらで既に用意してあるのだよ……つまりこれで、あの神樹に欠点はなくなったという事だ』

 

 

ジャリン!と、そう言ってアルゴゾディアートは杖の先端を再びディケイド達に向けていく。

 

 

『さて、では折角だ。あの女の代わりにコンサート料としてその"破壊"と"再生"は頂いていこう……此処で今度こそ朽ち果てるがいい、破壊者ッ!』

 

 

『ガァアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!』

 

 

ディケイド『クッ……!』

 

 

アルゴゾディアートがそう告げると共に、ゲンブジャキを始めとした無数の怪人がディケイド達にトドメを刺そうと雪崩の如く押し寄せていき、それを目にした聖桜も四人を守ろうと咄嗟に前に出てウィザーソードガンを構えた。その時……

 

 

 

 

 

 

―ギュウゥゥゥゥゥッ……バシュウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーウウゥッッッ!!!!!!―

 

 

『ッ?!!!ギッ、ガ……ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ?!!!!!』

 

 

―ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアァァンッッッッ!!!!!!―

 

 

聖桜『……え?』

 

 

『ッ?!何……?!』

 

 

ディケイド『ッ……!今の砲撃は……』

 

 

 

 

 

 

ディケイド達に再び襲い掛かろうとした怪人達に向け、突如ディケイド達の後方から一発の極太の砲撃が放たれて怪人達を薙ぎ払っていったのだった。断末魔と共に一度に多くの怪人達が爆発して散っていったその光景にアルゴゾディアートとディケイド達も驚愕し、今の砲撃が放たれてきた方に目を向けると、其処には……

 

 

 

 

 

 

冥王『―――ふふふふっ、やはり私の勘は当たってたの!!よし、全軍に次ぐ!!私はあの樹を食い止める!!その間、指揮権は幸村と光秀に託しておくの!!幸村ちゃん、光秀ちゃん、織田軍と徳川軍の援護を頼むの!!』

 

 

光秀「了解ッス姉御ッ!!いいかお前らッ?!負傷者がいたら回収して戦場から引き離せッ!!戦ってる奴がいたら援護しろッ!!」

 

 

幸村「何か面倒になってきてんなー……まあいいや、行くぞお前らッ!!」

 

 

『『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!!』』』』

 

 

 

 

 

……崖の上に立ち並ぶ無数の軍勢。其処には何故か、零がこの世界に来て最初に目にした武者シリウス軍のノーヴェ似の武将とウェンディ似の武将を従えて先頭で仁王立ちする、冥王の姿があったのだった。

 

 

ディケイド『な、冥王?!何やってるんだアイツ?!』

 

 

長秀「ッ!あれは……まさか、武者シリウス軍の真田幸村?!」

 

 

勝家「あ、明智の奴まで?!何故奴らが此処に?!」

 

 

CB(……椛の奴め……この世界に来てから薄々気配は感じ取ってはいたが、やはりまた祿でもない事をしていたようだな……)

 

 

他の武者ライダー軍を自分の軍門に下して従え、織田と豊臣の連合軍と家康軍の兵達の回収と援護に兵達を駆り出させ、自身は次元の向こうに触手を伸ばす神樹カーラーンの木の根の処理に向かう冥王。そんな予想外の乱入者にディケイド達も戸惑う中、アルゴゾディアートは苦虫を噛み潰したような顔で舌打ちした。

 

 

『あの狂神までこの世界に来ていたか……だが、幾ら冥王が現れたとは言えまだ想定な―キュイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイッ!!!―……ッ?!』

 

 

冥王の乱入に驚きつつも気を取り直してディケイド達に視線を戻すアルゴゾディアートだが、背後から突如けたたましいスキール音が響き渡った。そしてその音に驚き一同が振り返ると、其処には何処から現れたのか無数の怪人達を跳ね飛ばしてこちらに向かって来る巨大な戦車のマシンの姿があり、戦車のマシンはそのままディケイド達とアルゴゾディアート達の間に割って入るようにドリフトして停車していった。

 

 

トランス『ッ?!こ、このマシンって……!』

 

 

ディケイド『……ツヴァイギャリー……?』

 

 

『ま、まさか……!』

 

 

そう、その戦車のマシンの正体とは、ディケイド達の異世界の友人の一人である早瀬智大の愛車のツヴァイギャリーだったのだ。その見覚えのあるマシンをディケイド達が呆然と見上げ、アルゴゾディアートが顔を引き攣らせて後退りする中、ツヴァイギャリーの上部ハッチが開き、其処から数人の男女が続々と姿を現した。それは……

 

 

 

 

 

 

大輝「――ふぅ、やれやれ。今度こそ目的地に着いたか」

 

 

霧之「皆……戻ってきたわよ……」

 

 

ヒビキ「と、刀夜君っ!手を貸して下さいっ!お尻がジンジンして上手く立てませぇ~んっ!」

 

 

刀夜「……何やってんだよお前は……」

 

 

智大「よぉ、零。暫くぶりだな」

 

 

ディケイド『!智大!海道?!』

 

 

 

 

 

零達とは別にアマテラスのベルトを巡って財団と戦い、シャドウ達によって連れ去られたカガミを助けにこの戦国世界へと飛び込んだ早瀬智大達だったのである―――。

 

 

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole②

 

―尾張国境・荒野―

 

 

ディケイド達の絶体絶命の危機に、予想外の形で乱入してきた冥王軍と共にツヴァイギャリーに乗って駆け付けた早瀬智大達。そんな五人の参戦にディケイド達も唖然となる中、アルゴゾディアートは忌ま忌ましげに智大達を睨み付け舌打ちした。

 

 

『貴様ら、まだ我等の邪魔をする気かッ!』

 

 

智大「当たり前だ。お前等の企みもそうだが、こちとら知り合いも誘拐されてんだからな。邪魔するなって方が無理だろ?」

 

 

ディケイド『……おい……なぁ智大、何がどうなってるんだ?何でお前や海道が一緒にいてこの世界にいる?』

 

 

智大「ん?あー、そうだな……簡潔に話すと――」

 

 

斯く斯く然々と、智大は手っ取り早く自分達の世界で起きた事件について簡単にディケイド達に説明する。彼等の世界でアマテラスという神のライダーのベルトを巡る戦いがあり、ベルトの適合者である霧之の力を借りて財団の手の者を撃退するも、そのアマテラスの相棒の巫女さんであるカガミという少女がシャドウにさらわれてしまい、智大達はそのカガミを追ってこの戦国世界にやってきたのだと。

 

 

ディケイド『ああ……あぁ成る程、大体分かった……要するにお前も知り合いを誘拐されて、ソイツを助けに来たって訳か』

 

 

智大「まあな。……うん?お前も、というと、お前も誰か知り合いが連れ去られたのか?」

 

 

ディケイド『……まあ……な……』

 

 

此処で信長について話すと後々面倒な事になりそうなので、取りあえずこの戦国世界や武者ライダーの事、そして邪武者ディケイドとあの神樹カーラーンの事を簡潔に纏め智大に説明するディケイド。それで智大も大体の事情を理解し、目の前のアルゴゾディアートに目を向けてドライバーを腰に巻き付けていく。

 

 

智大「ま、財団の事だからどうせ祿なこと考えちゃいないだろうとは思ってたが、また随分と大胆な事してくれるじゃないの」

 

 

『……フン。今更気付いた所でどうする事も叶わん。既に神樹を落とした以上、あの樹は全ての平行世界を天下統一するまで決して止まる事などないのだからな』

 

 

刀夜「……んじゃあ、その前にあの樹をぶっ壊しちまえば止まるんじゃないのか?」

 

 

大輝「寧ろそれ以外に方法はないだろうね。あの樹を放置してても面倒な事にしかならないのは分かってるし、破壊する方が手っ取り早いさ」

 

 

そう言いながら大輝も何処からかディエンドライバーを回転させながら取り出し、刀夜と霧之もそれぞれ腰にアマツドライバーとアマテラスドライバーを装着しカード型の札を取り出して立ち並んでいく。

 

 

『正気か……?この軍勢とあの神樹を相手に、貴様等に勝機があるとでも?』

 

 

智大「あるから戦うに決まってんだろう?まぁ例えなかったとしても、だからってこのままお前等の悪企みを黙って見過ごす理由にはならねぇさ……ライトッ!」

 

 

『FANG!』

 

 

ライト『やっと出番?待ちくたびれたよ、智大』

 

 

『TORNADO!』

 

 

刀夜「めんどくせぇが、やるしかなさそうだな。ヒビキ、少し離れてろ」

 

 

ヒビキ「はい!」

 

 

霧之(皆……今こそ仇を取るわ……)

 

 

智大がコートの内ポケットから取り出したファングメモリのスイッチ部分を人差し指で押すと、ツヴァイの世界の智大の事務所で待機するライトもトルネードメモリを構えてスイッチ部分を押し電子音声を鳴らす。そして大輝もディエンドのカードをドライバーに装填してスライドさせ、刀夜と霧之もそれぞれのカード型の札を構え……

 

 

『変身ッ!』

 

 

『TORNADO!FANG!』

 

『KAMENRIDE:DI-END!』

 

『TEN-SHIN!AMATSU!』

 

『TEN-SHIN!AMATERAS!』

 

 

それぞれが変身動作を行い重なって電子音声が響くと、智大はツヴァイ、大輝はディエンドに。そして刀夜は陰陽師をイメージさせる白いアーマーを身に纏い、赤い複眼に響鬼などを連想させる和風の仮面を纏ったライダー……『アマツ』に、霧之は黒いアンダースーツに真っ白な羽衣のような美しいアーマーとひらりと舞うマントを装備し、仮面ライダーファムに酷似した仮面を身に纏ったライダー……『アマテラス』に変身し、変身を完了した四人はディケイド達と肩を並べてアルゴゾディアート達と対峙していく。

 

 

『チッ……ならば貴様等も纏めて滅するのみだ……掛かれぇッ!!!』

 

 

『『『グルァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!』』』

 

 

杖の先端を突き付けアルゴゾディアートがそう命じると共に、怪人の軍勢が奇声と雄叫びを上げながら九人のライダーへと突っ込んでいく。そしてそれに対して九人のライダー達も一斉に身構え、押し寄せる怪人の軍勢を迎え撃っていくのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―人里―

 

 

―バッゴオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーオォォンッッッッ!!!!!!―

 

 

「う、うわあああああッ!!」

 

 

「た、助けてくれええええええッ?!」

 

 

そしてその一方、突如出現した神樹カーラーンの付近に存在する人里にも神樹の触手が襲来し、人々に牙を剥いて襲い掛かっていた。民家に無数の触手が巻き付いてミシミシと音を立てて粉砕し、捕えられた人間はそのまま取り込まれ神樹の栄養にされてしまう。そんな阿鼻叫喚が響き渡る惨状の中、逃げ惑う人々の中に混じって逃げていた少年が足を引っ掛けて倒れてしまい、そんな少年へと無数の触手が襲い掛かった。

 

 

「ひっ……?!い、嫌だ、誰かぁ!誰かぁああああああああああああああああッ!!!」

 

 

恐怖と絶望から誰かに助けを求めて泣き叫ぶ少年だが、既に触手は少年の両足を捉えてしまってる。彼を助けようとした人々もそれに気付いてもう間に合わないと悟って足を止めてしまい、その間にも触手が少年を取り込もうとした。その時……

 

 

 

 

 

―フッ……ズババババババババババババババババァッ!!ドバアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!―

 

 

「……え……?」

 

 

 

 

 

触手が少年を取り込もうとした瞬間、突如何処からか黒い影が現れ、少年の両足に絡み付く触手を目にも取らぬ速さで微塵に斬り裂いていったのだった。その光景を目の当たりにした少年や周りの人々は何が起きたのか理解が追い付かず唖然となるが、そんな少年の前に一人の黒いライダー……シャドーが両腕を組んで姿を現した。

 

 

シャドー『―――ふむ……成る程……覇者共の夢想を叶える願望機かと思いきや、その実……世界を喰らうもののけの類だったか……』

 

 

「ぁ……む、武者ライダー……?」

 

 

シャドー『……今の内に下がっていろ、童子よ。直にこの恐怖もあの者達の手で終わる。それまでは、この里とお主等は我が守り抜こう』

 

 

―バサアァッ!―

 

 

そう言いながら、シャドーは何処からか数本の巻物を取り出して宙に放り投げ、巻物を一度に開く。それらの巻物には、『仮面兜』、『仮面桑形』、『仮面蜂』、『仮面蜻蛉』、『仮面蠍』、『仮面飛蝗・脚』、『仮面飛蝗・拳』の字がそれぞれの巻物に書かれており、シャドーは素早く両手で印を切り……

 

 

シャドー『いでよ、仮面を纏いし異世界の者達よッ!我が呼び掛けに応えろッ!口寄せの術ッ!!』

 

 

―ボシュウゥンッ!!!―

 

 

高らかに叫ぶと共に、数本の巻物から次々と爆発するように白煙が発生しシャドーの周囲を煙が覆っていく。そして徐々に白煙が晴れ消え去っていくと、シャドーの目の前には彼が口寄せで召喚した数人の戦士達……仮面ライダーカブト、ガタック、ザビー、ドレイク、サソード、キックホッパー、パンチホッパーが立ち並ぶ姿があり、シャドーも腰の刀を抜き取り戦闘態勢に入った。

 

 

シャドー『さて、では開幕と行こうか……此処から先へは一歩も通さんぞ、もののけよ』

 

 

『CLOCK UP!』

 

 

シャドーが真剣な眼差しで迫り来る触手を見据えそう宣言すると共に電子音声が鳴り響き、直後にシャドーとカブト達の姿が掻き消え、様々な色の閃光が常人の肉眼では捉えられぬ速度で次々と触手達を薙ぎ払っていくのであった。更に……

 

 

―ドゴオォォォォォォォォォォォォォォォォォオンッ!!!―

 

 

『―――ふむ……どうやら彼方は大丈夫ですね』

 

 

『こっちに怪人居ないけど、この人達守りきれるかな?』

 

 

『来たら相手になりますが、それまでは人々を守る剣になりますよ』

 

 

『おー!』

 

 

シャドー達が戦う人里とはまた別の違う町では、玲奈にねだられ戦国世界に来ていた運命優花が変身する仮面ライダーストリームが同じく町の人々を守って触手を撃退する姿があり、神樹から飛来する無数の触手を水の盾を用いて触手を凌ぎ叩き切っていた。そして……

 

 

―ドッガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!―

 

 

『よし、これで撃破!』

 

 

『廻琴!神樹の方からまた怪物達が来るよ!数は50!』

 

 

『分かってる……!いくよ、三人共!』

 

 

人里から離れた場所に位置する草原では、ディケイドとツヴァイ達が取り零して町に向かおうとする怪人達を人知れず撃退する一人のライダー……神樹カーラーンによって次元の壁を破壊され戦国世界に飛ばされてしまった"姫之音 廻琴"が変身する仮面ライダー『シンフォニー』の姿があり、シンフォニーは神樹の方角から更に迫り来る怪人達に向けて飛翔し撃退に向かっていったのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―尾張国境・荒野―

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガガガァッ!!バキィッ!!ズシャアァッ!!―

 

 

アマツ『ラアァッ!ハッ!フンッ!邪魔だッ!』

 

 

―ドゴオォッ!―

 

 

『グルアァッ?!』

 

 

『Lock ON!』

 

『Ichi…Juu…hyaku…Sen…Man!』

 

『PEACH CHARGE!』

 

 

天神『ゼェアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』

 

 

―ズバアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!―

 

 

『ウガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ?!!』

 

 

そして場所は戻り、ディケイドとツヴァイ達はアルゴゾディアート率いる怪人の軍勢との戦闘へと突入し、それぞれが得意とする戦法で次々と怪人達を撃退していた。アマツは蹴りを主体としたアクロバティックな動きで怪人達を薙ぎ払い、天神は桜雪と無双セイバーを連結させ放ったナギナタ無双スライサーで怪人達を纏めて撃破していく。そうして各々が怪人の数を徐々に減らしていく中、ディケイド、ディエンド、ツヴァイは連携を組んでアルゴゾディアートを相手に善戦していた。

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガガガァッ!!―

 

 

『ちぃ!小癪な!』

 

 

ディエンド『一応アンタには借りがあるからね、ついでに此処でそれも清算させてもらうよッ!』

 

 

『ッ!嘗めるなぁ!』

 

 

ディエンドライバーを乱射させるディエンドの銃弾を杖で弾き返しながら、杖の先端から光弾を放って反撃に出るアルゴゾディアート。それに対して三人も咄嗟に散開して光弾を回避するが、その隙にアルゴゾディアートは再度幻術を用いた分身を使ってあっという間に三人を包囲してしまう。

 

 

ツヴァイ『チッ、またお得意の幻術か。だが……』

 

 

『SNIPER!』

 

 

ディケイド『同じ手は二度も食わんっ!』

 

 

『ATTACKRIDE:ILLUSION!』

 

『TORNADO!SNIPER!』

 

 

ディケイドとツヴァイがバックルにカードとメモリを装填すると共に電子音声が響き、ディケイドは十人にまで分身して円陣を組み、ツヴァイはスナイパートルネードへとハーフチェンジし、十人のディケイド達とツヴァイとディエンドはそれぞれの武器の銃口を周囲のアルゴゾディアート達に向けて引き金を引き、強烈な弾幕を撃ち放って全てのアルゴゾディアートの分身を撃破していったのだった。

 

 

『ッ?!馬鹿な、私の幻術を……!』

 

 

―ダンッ!!―

 

 

ツヴァイ&ディエンド『ハァアアアアアアアッ!!』

 

 

―ドゴォオオッ!!!―

 

 

『グゥッ!』

 

 

全ての分身達を掻き消され、白日の下に曝し出された本物のアルゴゾディアートにツヴァイとディエンドのダブルキックが炸裂する。だがアルゴゾディアートも咄嗟に杖を盾に使って二人の足蹴を防ぎそのまま後方にまで後ずさるが、それを逃すまいとしてディケイドが二人の頭上を飛び越えてアルゴゾディアートに上段からの斬撃を叩き込んだ。

 

 

『グッ?!おのれっ!』

 

 

ツヴァイ『ハハ、やるじゃないか零?前より断然強くなってるなぁ』

 

 

ディケイド『海道じゃないが、こっちも受けた借りは返さないと気が済まない質なんでな……。二度も同じ相手に遅れを取ってるようじゃ情けないだろ』

 

 

スルリと、ライドブッカーの刃を撫でながらそう軽口を叩き通常形態へと戻ったツヴァイとディエンドと肩を並べアルゴゾディアートと対峙するディケイド。そしてアルゴゾディアートもそんな三人を前に忌ま忌ましげに舌打ちして次の手を打つべく動き出し、それを見た三人もすぐに身構えた。その時だった……

 

 

 

 

 

―ギュイィィィィィッ……バシュウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!!―

 

 

ディケイド『……?!何ッ?!』

 

 

―ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアァァンッッッッッッ!!!!!!―

 

 

『グッ……ウワアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ?!!!!』

 

 

 

 

 

アルゴゾディアートと戦闘を続行しようとしたその時、突如神樹カーラーンから無数の巨大な光弾が飛来しライダー達に襲い掛かって来たのだった。その圧倒的なまでの威力と攻撃範囲はライダー達だけではなく、後方で負傷兵の避難と援護を行っていた織田豊臣軍と家康軍と冥王軍にまで被害が及び、戦場を火の海と化してしまった。

 

 

「ぅあっ……ぐっ……な、何なの一体っ、今のっ……?!」

 

 

聖桜『神樹からの、攻撃っ……?どうして急に……!』

 

 

この戦国世界と他の世界を天下統一する為に見境なく触手を放っていた今までと違い、今のは明らかにライダー達を狙っての攻撃だった。何故急に?と、ライダー達が激痛で身を捩らせながら今の光弾が放たれてきた神樹カーラーンに視線を向けると、なんと、神樹の木々に無数の果実が実り、巨大な花が開き始めていたのである。

 

 

ディエンド『ッ!神樹に花と果実が……?!』

 

 

『―――どうやら、神樹の核の礎の設置が済んだようだな』

 

 

ジャリンッ!と、鈴の鳴る音と共に冷淡な声がその場に響き渡り、その声に釣られてライダー達が振り返ると、其処にはライダー達と同じく神樹からの攻撃に巻き込まれたハズのアルゴゾディアート達が無傷で立つ姿があった。

 

 

アマツ『なっ……なんで傷一つ付いていないんだよッ?!お前達もアレに巻き込まれた筈だろッ?!』

 

 

『……何故?愚問だな。私は散々口にしていた筈だぞ?あの神樹は既に我等と邪武者ディケイドの手に落ちたと……つまりあの神樹は我々の兵器と言っても過言ではない。邪武者に命じてあの神樹の概念を変質させ、我々だけには害無き物にさせる事も安易いという事だ』

 

 

トランス『そ、そんな……そんな事が本当に可能なの……?!』

 

 

天神『……不可能ではないだろうな……あの神樹は文字通り神の樹。樹を掌握する者がいるなら、持ち主の望み通りに神樹の概念を変える事も出来る筈だ……』

 

 

つまりあの神樹は、自分達や人間達にとって致命傷になるが、怪人達が傷つく事は決してない攻撃を放つ事が可能になったという事。苦々しげにそう語る天神に一同も息を拒むが、その時、ディケイドは先程アルゴゾディアートが口にした言葉をふと思い出した。

 

 

ディケイド『待て……"礎"の設置が済んだ、と言ったか?……まさかっ』

 

 

『……察しが付いたなら隠すだけ無駄か……そうだ。邪武者がさらったこの世界の織田信長、そしてアマテラスの巫女が礎となった事で、神樹カーラーンに更なる成長を促したのだ。特に天下人の素質を持つ織田信長と神樹カーラーンの相性はこれ以上になく一致し、特殊な力を持つアマテラスの巫女は神樹を彼処まで一気に成長させてくれた……あの二人はこれ以上にない程の逸脱だったよ』

 

 

アマテラス『ッ……!』

 

 

ヒビキ「そんな、カガミを道具みたいにっ!!」

 

 

人を人とも見ていない発言をするアルゴゾディアートに怒りを露わにしてヒビキが叫ぶ。それは他の一同も同じで怒りを力に震える体に力を入れて立ち上がり、ディエンドも仮面の汚れを拭いながらディケイドとツヴァイに呼び掛けた。

 

 

ディエンド『零、智大、君達はあの神樹に向かいたまえ。アルゴ達は俺達が引き受けよう』

 

 

ディケイド『!引き受けるって、お前達だけでどうにかなる相手じゃっ……』

 

 

ディエンド『このまま頭の上を陣取られて一方的に攻撃され続けたら、全滅は免れない。とっととあの神樹の主を倒してくれないと、この怪人達もいつまでも増え続けるだけだろ?』

 

 

ツヴァイ『それが最良だな……行くぞ零ッ!』

 

 

『させると思うかッ!』

 

 

『『『ガアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!』』』

 

 

神樹カーラーンに向かい、大元の邪武者ディケイドを叩く。そうするしか神樹を止める方法はないと踏んで、アルゴゾディアート達の相手を引き受けると告げるディエンドとライダー達にアルゴゾディアートが再び怪人の大群を差し向けるが、ディエンド達はディケイドとツヴァイに近付けさせまいと怪人達を抑え込んでいく。

 

 

トランス『早く言って二人共ッ!アルペジオの言葉が本当なら、急いで信長さん達を助け出さないとッ!』

 

 

聖桜『こちらは冥王もいますから、私達だけで心配は入りませんッ!急いでッ!』

 

 

ディケイド『ッ……すまん、頼む。智大ッ!』

 

 

ツヴァイ『ああ、もう準備してる!』

 

 

そう言いつつ、ツヴァイは懐から取り出したビートルフォンを操作して、いつの間にかツヴァイギャリーに積んだ自身とディケイドのマシンに飛行ユニットを装備させている。そしてディエンド達と共に怪人の群れを撃退していたアマツはドーパントとファンガイアを蹴り飛ばし、離れた場所に立つカガミに向けて叫んだ。

 

 

アマツ『ヒビキ、こっちも戦絡繰だ!カガミを助けに向かうぞ!』

 

 

ヒビキ「ッ!わ、分かりました!」

 

 

アマツに呼び掛けられ一瞬は驚くもすぐに頷き返し、ヒビキは素早く特殊な術式を組み上げていくと、完成された術式を前にして高らかに叫ぶ。

 

 

ヒビキ「式神展開―――!来て、真月妃(マガツヒ)ッ!!!」

 

 

―シュウゥゥゥゥゥッ……バシュウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!―

 

 

彼女のその言葉に反応するかのように、術式からまばゆい閃光が放たれ、直後に巨大なカラクリが術式から飛び立った。てるてる坊主のような形でアームが腕のように2本装備され、宙に浮かぶ不思議なマシン……カガミの世界に伝わっていたカラクリ、戦絡繰(いくさからくり)の出現を確認すると、アマツもは呼び出されたカラクリを背に『武』とかかれた札を取り出しベルトにスキャンした。

 

 

『KARAKURI BUSOU!YOROI NO KATA!』

 

 

スキャンされた札にベルトに反応して電子音声が響き渡り、真月妃が分解するとアマツに合体し、アマツは真っ白な戦闘メカのような『鎧』を装備した巨大な剣を持つ『マガツヒフォーム』に転身していった。

 

 

「ッ?!ちょ、なにアレ、デカッ?!」

 

 

CB『ほぉう……ライダーで言う所の支援マシンのようなモノか?中々興味深いな』

 

 

天神『おお、あのライダーも巨大マシン持ちだったか!ならばこちらも……!』

 

 

―ガチャッ!―

 

 

『SU・I・CA!』

 

 

マガツヒフォームへと姿を変えたアマツに触発されたのか、天神も右腰に下げたホルダーからスイカの錠前を取り出して解錠スイッチを押し、戦極ドライバーのバックルにセットされてるピーチロックシードと取り替えて錠前をセットすると、カッティングブレードを倒してロックシードを切断した。

 

 

―スパァンッ!―

 

 

『Soiya!』

 

『SUICA ARMS!』

 

『Oodama Big Bang!』

 

 

―ドシャアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーアァンッッッ!!!!―

 

 

「ッ?!こ、今度はでっかいスイカッ?!なんなのよ一体ッ?!」

 

 

電子音声と共に天神の遥か後方の上空に開いた裂け目から巨大なスイカのような緑色の果実のマシンが轟音を響かせて落下し、それを確認した天神は今まで身に纏っていたピーチアームズを消しながら跳躍して緑色の巨大なスイカのマシン……スイカアームズへと乗り込むと、スイカアームズは徐々に変形して巨大な薙刀を手にした人型パワーローダー形態へとその姿を変えていった。

 

 

『YOROI MODE!』

 

 

天神SA『此処から先へは通れると思うなよッ!行け、三人共ッ!』

 

 

ディケイド『任せた……!智大、アマツ!』

 

 

ツヴァイ『あいよ!』

 

 

アマツMF『ヒビキ、しっかり掴まってろよ!』

 

 

ヒビキ「は、はい!」

 

 

スイカアームズにアームズチェンジした天神の援護を受け、飛行ユニットに換装したそれぞれのマシンに跨がったディケイドとツヴァイ、そしてアマツはヒビキをマガツヒに乗せて一斉に神樹カーラーンに目掛けて飛び立っていき、それを目にした飛行能力を持つ怪人達は三人を引き止めようと翼を羽ばたかせ飛翔しようとした、その時……

 

 

 

 

 

―バッ!!―

 

 

「ウゥオォラァッ!!」

 

 

「ハッ!!」

 

 

―ドグオォッ!―

 

 

『?!ギャッ?!』

 

 

『ガハッ?!』

 

 

ディエンド『?!』

 

 

トランス『な、何?!』

 

 

 

 

 

三人を追おうとした怪人達の背後から突如謎の二人が飛び出し、怪人達の背中に跳び蹴りを打ち込んでディエンドとトランスの前まで吹っ飛ばしたのであった。それを見てディエンド達も驚き怪人達が吹っ飛ばされてきた方へと振り返ると、其処には見慣れない二人の青年……腰にドライバーを装着した恭司と影虎が着地して佇む姿があった。

 

 

『?!貴様等は……!』

 

 

恭司「んー、なんか大事っぽいから駆け付けてみたけど……一体どういう状況なんだ、コレ?」

 

 

影虎「さあな……しかし、財団の幹部が居るならろくでもない事になってるのは確かだろう……それだけで十分だ」

 

 

そう言って影虎はジャケットの内ポケットから翼竜が描かれた錠前を取り出し、恭司もそれを横目に見て仕方なさそうに溜息して朱雀に酷似した異形が描かれた錠前を取り出し、二人同時に解錠スイッチを押した。

 

 

―ガチャッ!―

 

 

『GARUDA!』

 

『BAHAMUT!』

 

 

天神SA『ロックシード?!いや……何か違う?』

 

 

聖桜『貴方達は、一体……?』

 

 

恭司「え、俺達?えーっと……俺は鳴神恭司!又の名を、仮面ライダー迅武!変身ッ!」

 

 

影虎「……佐月影虎、仮面ライダードラコだ。別に覚えなくてもいい……変身!」

 

 

『『Lock On!』』

 

 

ディエンド達に向けてそれぞれそう名乗りつつ高らかに叫び、恭司は錠前を戦刃ドライバーに、影虎はパイルドライバーに錠前をそれぞれセットして固定させると、カッティングブレードを倒して錠前を切断させていった。

 

 

『Soiya!』

 

『GARUDA ARMS!Samurai of Night!』

 

『Come on!』

 

『BAHAMUT ARMS! Dragon of Night~!』

 

 

二つの電子音声が鳴り響くと共に恭司と影虎の上空に裂け目が出現し、其処から不死鳥に似た朱雀の異形と翼竜が現れてそれぞれ恭司と影虎に被さり、アンダースーツを形成して仮面と鎧に姿を変えていく。そして恭司は白銀と赤のライダーの『迅武』、影虎は騎士の姿のライダーの『ドラコ』に変身し、二人はそれぞれの得物を手にして怪人達と対峙していく。

 

 

『チッ、またイレギュラーか……!一体カンパネルラは何をして――!』

 

 

 

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガアァッ!!!!ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーアァァンッッッッッッ!!!!!―

 

 

『グルアァァァァァァァァァァァァアッ?!』

 

 

『ギャアァァァァァァァァァァァァァアッ!!』

 

 

『ッ?!何だ?!今度は何が起きた?!』

 

 

新たに乱入してきた迅武とドラコを忌ま忌ましげに睨み付けて身構えようとしたアルゴゾディアートだが、その背後に突如、上空から無数の銃弾とロケット弾が飛来して爆発が巻き起こり怪人達を吹き飛ばしたのであった。突然のソレにアルゴゾディアートも再び驚愕を浮かべてると、遠方から不意に地を揺るがすような大喚声が響き渡る。それは……

 

 

 

 

 

長秀「――邪武者ディケイド軍への全弾の着弾、確認しました!秀吉公!」

 

 

秀吉「戦える者は剣を取って我等に続けぇッ!!!真の敵は神樹に有りぃいいいいいいいいいッ!!!」

 

 

『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!』』』

 

 

家康「これ以上奴らにこの世界を好きにはさせるなッ!!民達に牙を向ける者は我等の敵ッ!!我等の守るべき者達を蹂躙する悪鬼共を、決して許すなぁあああああああああああああッ!!!」

 

 

『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!』』』

 

 

光秀「負傷者の避難も無事完了ッスッ!!全軍ッ!!姐御の教えはなんだッ!!我々の目的はなんだッ!!」

 

 

『殺せッ!!!殺せッ!!!殺せッ!!!』

 

 

光秀「お前たちの目標は何だッ!!!」

 

 

『殺せッ!!!殺せッ!!!殺せッ!!!』

 

 

光秀「お前たちは国を愛してるかッ!!!民を愛してるかッ!!!」

 

 

『ガンホー!!!ガンホー!!!ガンホー!!!』

 

 

光秀「ならばよろしい、戦ッス!!!」

 

 

『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!』』』

 

 

幸村「……アタシ等だけ、何か違う気ぃすんな……」

 

 

勝家「明智の奴、あんな奴だったか……?」

 

 

蘭丸「怖い……」

 

 

 

 

 

其処には、負傷兵の避難を完了させ、馬と戦闘車両を走らせてこちらに向かって来る軍勢……織田豊臣軍、家康軍、冥王軍が結託した連合軍の姿があり、連合軍は突然の展開に呆然となるディエンド達とアルゴゾディアート達に構わず怪人達へと切り込んで戦闘を開始していったのだった。

 

 

聖桜『これは……!』

 

 

家康「――何をしておるか、なのは!魚見!貴様等も手伝え!」

 

 

トランス『ッ!家康さん!一緒に戦ってくれるの?!』

 

 

家康「……信長の奴には助けられた借りがある……それを返すまで、奴に生きて帰ってきてもらわねば困るだけだ」

 

 

トランス『……分かった♪一緒に頑張ろ、家康さん!』

 

 

そう言いながら家康に向けてガッツポーズを取るトランスだが、それに対し家康は「ふんっ……」とそっぽを向いて戦線に戻っていき、そんな家康を見てトランスと聖桜も互いに顔を見合わせて微笑しながら戦いに戻っていくのであった。

 

 

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole③

 

 

―神樹カーラーン―

 

 

神樹カーラーン内部。其処は植物の外見をした外側と違い、神樹の内側はまるで日本の城に酷似した和風の作りとなっている。そんな神樹の内部の最上階に位置する広場の奥には、中央に巨大な赤い球体が備え付けられた祭壇のような場所があり、その球体の左右には"楔"として植物に捕われる信長とカガミ、そして二人を見つめる邪武者ディケイドの姿があった。

 

 

―バチバチバチバチバチバチバチバチイイィィィィッ!!!!―

 

 

カガミ「うぁあああッ!!ぅ、ああああああああああああッ!!」

 

 

信長「グッ……!も、もう止めさせろ邪武者ッ!それ以上はその娘も持たないッ!このまま死なせるつもりかッ?!」

 

 

何かを吸収されるかのように全身から火花を撒き散らすカガミの姿を見て、このままでは彼女の命が危ないと悟り邪武者ディケイドに叫ぶ信長だが、邪武者ディケイドはそれに対し淡々と告げる。

 

 

邪武者ディケイド『身体が残ってさえいればそれでも構わんさ。必要なのはその女の持つ特別な力のみなのだからな……それに、他人の身を案じる余裕がお前にあるのか?』

 

 

信長「貴様っ……!ぅ……ぐっ……!」

 

 

非常な物言いをする邪武者ディケイドに憤る信長だが、彼女も楔として取り込まれているせいで身動き一つ取れず、全身から赤い火花を撒き散らし悶え苦しんでいく。そして邪武者ディケイドもそんな二人に背中を向けて広場の中央まで歩き、右手に持つ天将刀を掲げ高らかに叫んだ。

 

 

邪武者ディケイド『さぁ、この礎達を糧に更なる地を目指せカーラーンッ!!!そして、全ての天下をこの手に―――!!!』

 

 

 

 

 

『FINALATTACKRIDE:DE・DE・DE・DECADE!』

 

『FANG!MAXIMUM DRIVE!』

 

『SAISHUU OUGI!』

 

 

―ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーアァンッッッッ!!!!!―

 

 

邪武者ディケイド『――ヌッ?!』

 

 

 

 

 

邪武者ディケイドが天将刀を通じて神樹カーラーンに天下統一拡大を命じようとしたその時、突如頭上から複数の電子音声が響き渡り、それと同時に天井が巨大な爆発と共に破壊されたのであった。それを目にして邪武者ディケイドが動揺し破壊された天井を見上げると、黒煙に覆われた天井の穴から三つの影……ディケイド、ツヴァイ、そしてヒビキを抱えたアマツが落下して邪武者ディケイドの前に降り立った。

 

 

邪武者ディケイド『貴様等……!』

 

 

ディケイド『よぉ……うちのご主人を返しにもらいに来たぞ、邪武者』

 

 

信長「ッ!零っ?!それに……ツヴァイっ?!」

 

 

ヒビキ「刀夜君っ!彼処っ!カガミがっ!」

 

 

カガミ「うぅっ……ぅ……うううううううううううううっ……!!!!」

 

 

アマツ『おいおい、何だよアレ……!想像以上にヤバそうな事になってんじゃないか……!』

 

 

奥で植物に取り込まれ悲痛な叫び声を上げるカガミを見て仮面の下で顔を引き攣らせるアマツ。そんな彼の隣に立つツヴァイのソウルサイドのライトは奥の二人の様子を冷静に観察し、右の複眼を点滅させて語り出した。

 

 

ツヴァイ(ライト)『恐らくアレがアルペジオも言っていた"礎"とやらの状態なんだろうね……僕が見るに、片方はこの神樹を長く維持する為に生命力を吸収する役割の礎、もう片方は彼女の特殊な力を吸収してこの樹の力を増幅させる役割の礎のようだ……要するに――』

 

 

ツヴァイ『とっとと彼処から二人を引き離さないと、マズイって事かっ!』

 

 

ツヴァイ(ライト)の分析からあまり時間を掛けられないと理解し、三人は急いで信長とカガミの下に駆け出そうとするも、そんな三人に邪武者ディケイドがブラッドライドブッカーで斬り掛かり立ち塞がった。

 

 

アマツ『クッ!こいつっ……!』

 

 

邪武者ディケイド『無駄だ。最早あの女達を助けた所で神樹の成長も、天下統一も止まりはしない。どの道貴様等がやろうとしてる事は全て手遅れに過ぎん』

 

 

ディケイド『ッ……!それはお前が決める事じゃないだろうッ!』

 

 

啖呵を切るようにそう言って、左腰に納めたライドブッカーをSモードに切り替えながら引き抜いて邪武者ディケイドに勢いよく斬り掛かるディケイド。しかし邪武者ディケイドも右手に持つ天将刀でそれを安易く弾きながら左手のブラッドライドブッカーでディケイドを退け、すかさず華麗な回し蹴りを放って仕掛けてきたツヴァイの右足を払い退けながら双剣による斬撃で斬り飛ばし、更に同じく跳び蹴りを放って突っ込んできたアマツの攻撃を避けながら天将刀で突きを放つも、アマツはそれを脇に抱えて抑え込みながらヒビキに叫んだ。

 

 

アマツ『ヒビキッ!コイツは俺達が何とかするッ!お前は今の内にあの二人をッ!』

 

 

ヒビキ「ッ!は、はいッ!」

 

 

そう力強く頷き返すと共に、三人が邪武者ディケイドを抑え込んでる隙に信長とカガミの下にまで一目散に駆け出すヒビキ。それを見て邪武者ディケイドもすぐにアマツを斬り払いながらヒビキの後を追おうとするが、その前にツヴァイとディケイドが立ち塞がった。

 

 

邪武者ディケイド『チッ!貴様等……!』

 

 

ツヴァイ『戦う相手を間違えるなよ、邪武者!』

 

 

ディケイド『お前の相手はこっちだッ!』

 

 

『LIGHTNING!GRAND!』

 

『KAMENRIDE:BLADE!』

 

 

ツヴァイは両方のバックルのメモリを取り替えてライトニンググランドにメモリチェンジ、ディケイドはドライバーにカードを装填しDブレイドにカメンライドしてそれぞれ剣を抜き取り邪武者ディケイドへと斬り掛かると、アマツも参戦し邪武者ディケイドに得意の蹴り技をお見舞いしていく。そしてその隙に二人の下に辿り着いたヒビキは急ぎ植物に取り込まれるカガミを引き離そうとするが、どんなに力を込めて引っ張ってもまるでビクともしない。

 

 

ヒビキ「だ、駄目っ!全然引き離せないっ!どうすればっ……!」

 

 

―ガギイィィンッ!!!―

 

 

Dブレイド『グゥッ!おい、だったらコレ使えッ!』

 

 

邪武者ディケイドと剣撃を打ち合っていたDブレイドは左腰に戻していたライドブッカーをSモードに展開してそれをヒビキに目掛け投げ付けていき、地面に転がるライドブッカーを見たヒビキも「は、はいっ!」と慌ててライドブッカーを拾い、ソレを使ってカガミを捕らえる植物を引き裂き少しずつカガミを引き離していく。が……

 

 

邪武者ディケイド『――小童共が、何処までもっ……我が野望の邪魔立てをするなぁああああああああああああああッ!!!!』

 

 

『ATTACKRIDE:ILLUSION!』

 

 

ツヴァイLG『?!』

 

 

アマツ『何?!』

 

 

邪武者ディケイドは突如雄叫びを上げ、ブラッドディケイドライバーから電子音声を響かせながら、天将刀を持たぬ二体の分身を生み出したのだ。そうして分身した邪武者ディケイド達はDブレイド、ツヴァイ、アマツへとブラッドライドブッカーを振りかざしてそれぞれに襲い掛かり、先程とはまるで違う猛攻で三人を圧倒していってしまう。

 

 

アマツ『な、何だコイツっ、急に強くなりやがったっ……?!』

 

 

『Rider Slash!』

 

 

邪武者ディケイドB『ゼェアアアアアアアアッ!!!』

 

 

―ズバアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!!―

 

 

アマツ『グアアァッ?!!』

 

 

ツヴァイLG『ッ!アマツッ!』

 

 

『TORNADO!MAXIMUMDRIVE!』

 

『LIGHTNING!MAXIMUMDRIVE!』

 

『SHADOW!MAXIMUMDRIVE!』

 

『BLAZE!MAXIMUMDRIVE!』

 

『FANG!MAXIMUMDRIVE!』

 

『GROUND!MAXIMUMDRIVE!』

 

『SNIPER!MAXIMUMDRIVE!』

 

『PANDORA!MAXIMUMDRIVE!』

 

 

邪武者ディケイドA『パンドラエクストリーム……』

 

 

―ブザアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーアアァァッッッッッッ!!!!!!―

 

 

Dブレイド&ツヴァイLG『『ッ?!グッ、ウグアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!』』

 

 

今まで取り込んできた武者ライダー達の力を駆使し、邪武者ディケイド達は三人に必殺技の嵐を浴びせ吹き飛ばしていってしまったのだ。アマツは全身から激しく無数の火花を撒き散らして床に叩き付けられていき、Dブレイドとツヴァイも壁を突き破ってゴロゴロと転がりながら大ダメージで通常形態に戻ってしまい、邪武者ディケイド達はそんな三人を無視して一人へと戻ると、ヒビキに目掛けて天将刀から真紅の斬撃波を放った。

 

 

アマツ『ぅッ……ぐっ……ッ?!ヒビキッ!!逃げろぉおおッ!!』

 

 

ヒビキ「……え?!」

 

 

邪武者ディケイドに受けた傷付いた身体を引きずりながら慌ててヒビキに大声で叫ぶアマツだが、既に遅い。アマツの声を聞いてすぐに振り返ったヒビキの目前には、既に邪武者ディケイドが放った真紅の斬撃波が迫っており、最早避ける事は不可能だ。ヒビキもすぐ其処に迫る死を感じ取って恐怖で足が竦み、涙を浮かべながら思わず顔を背けてしまった。が……

 

 

 

 

 

―ガギイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィインッ!!!!―

 

 

ディケイド『グウゥッ?!ッ……ァッ……!!』

 

 

ヒビキ「……ッ?!え?!」

 

 

信長「ッ……!!零ッ?!」

 

 

邪武者ディケイドの放った斬撃波がヒビキを襲おうとした直前、なんとヒビキの前にディケイドが飛び出し彼女の身代わりになったのだった。そしてディケイドは身体から白煙を立たせてその場に跪いてしまうが、邪武者ディケイドはそんなディケイドに容赦無く飛び掛かって何度も斬り掛かり、ブラッドライドブッカーの切っ先をディケイドの右肩へと突き刺していった。

 

 

―ブザァアアアッ!!!―

 

 

ディケイド『ウグアァァッ?!!あっ、うあぁっ……!!』

 

 

邪武者ディケイド『愚かな、一度拾った命を他人の為にわざわざドブに捨てるとはな……そんなに死に急ぎたいなら、此処で消えろ』

 

 

信長「ッ?!!や、やめ、止めろ邪武者ァッ!!!」

 

 

冷酷にそう言い放つ邪武者ディケイドの言葉に絶望を垣間見て必死に叫ぶ信長。しかしそんな彼女の懇願にも耳を傾けず、邪武者ディケイドはディケイドの右肩からブラッドライドブッカーを抜き取りながら天将刀に赤黒いオーラを身に纏い、そして……

 

 

邪武者ディケイド『さらばだ……ヌゥウウウエアァアアアアアアアアアッ!!!』

 

 

―ブザアアァァッ!!!!ズバアァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーアァァンッッッッ!!!!!!―

 

 

ディケイド『ッ?!!!!ウッ、ァ……グアァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!』

 

 

―ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーアアァンッッッッッ!!!!!!!!―

 

 

ツヴァイ『……ッ?!れっ―――!!!』

 

 

ヒビキ「そ、そんなっ……?!!」

 

 

信長「ぁ……れ、いっ……零ィイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッッ!!!!!!!」

 

 

天将刀から三度振るわれた真紅の斬撃。それは瀕死の状態のディケイドの身体を容赦なく何度も斬り裂き、ディケイドは悲痛な叫び声を上げながら大爆発を巻き起こしていったのだった。そして邪武者ディケイドはブラッドディケイドライバーで他の武者ライダー達のようにディケイドが散った爆炎を火の粉すら残さずに吸収していき、完全にディケイドを吸収した邪武者ディケイドはクツクツと肩を震わせた。

 

 

邪武者ディケイド『他愛がない。別世界のディケイドとやらもこの程度なのか?こんな力しか持たぬ分際でこの我を止めようなどと……全く、とんだうつけがいたものよなァッ!』

 

 

信長「っ……き、さまぁっ……一度ならずっ、二度までも……っ!!!!」

 

 

武者ツヴァイだけでなく、心通わせたディケイドまで奪っておきながら嘲り笑う邪武者ディケイドに無念と憎しみを込めた瞳で睨み付ける信長。しかし、邪武者ディケイドはそんな信長の殺気の篭った視線すらどこ吹く風と言わんばかりに鼻を鳴らして構わず、アマツとツヴァイと向き直り両腕を広げていく。

 

 

邪武者ディケイド『さぁ、残るはお前達のみだ……あの愚か者のように、貴様等も我が血肉と化すがいいッ!!!』

 

 

ツヴァイ『チィ……!』

 

 

アマツ『上等だ……やってみろよ邪武者ぁッ!』

 

 

『TAKEMIKADUCHI!TEN-SHIN!』

 

 

ディケイドを倒された怒りから邪武者ディケイドへと再度突っ込むツヴァイと、交わした言葉は少ないが、ヒビキを庇って散ったディケイドを嘲笑う邪武者ディケイドに対し憤りを抑えられず、アマツは『雷鎚』と書かれた札を取り出しバックルにスキャンさせてその身に雷を纏い、黄色い分厚いアーマーと巨大なハンマーを手にしたタケミカヅチフォームに姿を変え、鉄鎚を振り上げて邪武者ディケイドへと突っ込んでいくのであった。

 

 

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole④

 

 

―尾張国境・荒野―

 

 

聖桜『―――?!』

 

 

天神『な、なんだ、これは……?魚見っ!』

 

 

聖桜『ええ……零の気配が、いきなり消えた……?』

 

 

その一方、助っ人に現れた迅武とドラコと連合軍を加えてアルゴゾディアート達と戦っていた聖桜と天神は、戦闘の最中に零の気配を感じ取れなくなり、互いに顔を見合わせて困惑の様子を浮かべていた。

 

 

聖桜『けれど、どうして急に……まさか、零の身に何かっ……?』

 

 

天神『ッ!馬鹿を言うな!智大達も一緒なんだぞ?!彼がそんな簡単に『シャアァッ!!』ウァッ?!』

 

 

不安げに呟く聖桜の不穏当な言葉を強く否定する様に叫ぶ天神だが、そんな二人にライオンヤミー、クジラヤミー、ゴキブリヤミーが飛び掛かって襲い掛かり、更に迅武とドラコは互いの得物を用いてゲンブジャキに叩き込んでいたが、二人の武器はゲンブジャキの並外れた身体の前に弾かれて一切通用していなかった。

 

 

―カアアァンッ!!―

 

 

ドラコ『クッ!硬いッ!』

 

 

迅武『ああああ、もうッ!何なんだよコイツッ!堅すぎにも程あんだろォッ!』

 

 

『グルアァッ!!』

 

 

―バキイィィィィィッ!!―

 

 

迅武&ドラコ『『ガハアァッ?!』』

 

 

―ドガアァッ!!―

 

 

トランス『きゃあぁッ?!』

 

 

「ちょ、なにぶつかって来てんのよッ?!っていうか重っ、退いてってばッ!!」

 

 

攻撃を弾かれ、逆にゲンブジャキに吹っ飛ばされてしまう迅武とドラコ。二人はそのまま吹っ飛ばされた先で怪人達と戦っていたトランスと黒い少女に衝突して二人を下敷きにしてしまい、そんな四人に向けてゲンブジャキが両腕を広げ再び襲い掛かっていき、時を同じくしてディエンドも単身では流石に遅れを取るのか、アルゴゾディアートに徐々に追い込まれ体力の消費と共に劣勢になりつつあった。

 

 

―ガギイィィィィィィィィィィィインッ!!―

 

 

ディエンド『グウゥッ?!クソッ……!』

 

 

『フン、どうした盗っ人?先程までの威勢の良さは何処に行ったッ!』

 

 

ディケによる棒術を用い、ヒット&アウェイで仕掛けて来るディエンドの戦法を見破り反撃してディエンドを吹き飛ばしてしまうアルゴゾディアート。そうして、ディエンドに追い撃ちを掛けようと杖を振りかざして再度襲い掛かるが、それを阻むように横合いから盾と日本刀が合体した銃盾剣・アマタテノツルギがアルゴゾディアートの杖を受け止めて弾き、ディエンドを庇うようにアマテラスが立ち塞がった。

 

 

『ッ!貴様……!』

 

 

アマテラス『貴方の相手は私がしてあげるわ……皆の仇、此処で討たせてもらう……!』

 

 

そう言い放つと共に力強く地を蹴り、銃盾剣を振りかざしてアルゴゾディアートに斬り掛かるアマテラス。しかしアルゴゾディアートも咄嗟に杖でアマテラスの銃盾剣を弾きながら距離を離すが、すかさず再度斬り掛かってきたアマテラスの剣を受け止めて鍔ぜり合いになる。

 

 

『死に損ないが、笑わせるなッ!部下を見捨て、我等から逃げ出す事しか出来なかった分際でッ!』

 

 

アマテラス『……確かに、あの時の私にはそうする事しか出来なかった……でも今は違う。この力で必ず、貴方達組織を潰してみせる!』

 

 

『戯言を!―ズガガガガガガガァンッ!!―ヌッ?!』

 

 

アマテラスの剣を払い退けディケを叩き込もうとしたアルゴゾディアートだが、二人の間に突如無数の銃弾が飛来してアマテラスからアルゴゾディアートを引き離し、アマテラスが銃弾が放たれてきた方を見ると、其処には態勢を立て直したディエンドがドライバーを構えてアマテラスの横へと歩み寄る姿があった。

 

 

アマテラス『貴方……』

 

 

ディエンド『一人で戦って勝てるほど簡単な相手じゃない。手を貸そう、不本意だけどね』

 

 

アマテラス『……別に構わないわ。けれど、足は引っ張らないでよ』

 

 

ディエンド『お互いに、ねぇッ!!』

 

 

―バシュウゥンッ!!―

 

 

『チィ!』

 

 

ディエンドが銃口を向けてアルゴゾディアートに発砲したと共に、アマテラスはアマタテノツルギを構えて一気に距離を詰めるようにアルゴゾディアートに目掛けて飛び出した。それに対してアルゴゾディアートも素早く杖で銃弾を叩き落としながらアマテラスの剣と打ち合い、格闘戦に持ち込んできたディエンドも交えて戦闘を再開していくのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―???―

 

 

――暗闇に覆われたとある空間。一筋の光すら射さないその場所は闇に覆われて何も見えず、一体何処まで広がっているのかも分からない。そんな場所の中心には、全身ズタロボで力無く横たわる青年……邪武者ディケイドに倒され取り込まれた零が気を失って倒れる姿があった。

 

 

―……ズキッ―

 

 

零「――…………ゥッ…………ッ…………?ここ…………は…………」

 

 

先の戦いで邪武者ディケイドに貫かれた肩の激痛から、ゆっくりと瞼を開き漸く目覚める零。そして、意識が戻ったばかりではっきりとしない頭で呆然と辺りを見渡すと、ふらつきながら身を起こして頭を振る。

 

 

零「ッ…………俺は…………そうだ……確か、邪武者ディケイドと戦っていて、それで――――」

 

 

一つ一つ、此処に至るまでに起きた出来事を思い出し意識がはっきりしない頭の中を整理していき、其処で漸く、自分が邪武者ディケイドに倒されて奴に吸収された事を思い出した。

 

 

零「……そうだったな……だとすると、此処は奴の中って事か……?」

 

 

冷静にそう考え再び辺りを見回すが、何処までも闇が広がるばかりでやはり何も見えない。此処が推測通り邪武者ディケイドの中なら長居など出来ないのだが、肝心の出口がなければ此処から出ることは出来ない。ならば無理矢理にでも作るしかないかと考えて、零は懐からディケイドライバーを取り出し変身しようと腰に巻き付ける。が……

 

 

 

 

 

―ギュイィィィィィッ……バシュウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーウゥゥンッ!!!!!―

 

 

零「……ッ?!何っ、ウオォオオオオッ?!!」

 

 

零が再びディケイドに変身しようとしたその直後、突如闇ばかりが広がる暗闇の向こうから無数の黒い影が触手のように飛来し、零の身体に『蛇』の如く纏わり付き動きを封じてしまったのである。そして、身体に巻き付いた影に零が驚愕しながらも影を引き千切ろうと試みる中、零の両足にも影が侵食して地面に取り込もうとしていた。

 

 

零「ッ!この影、奴が怪人を生み出してたのと同じっ……!俺まで取り込もうとしているのかっ……?!」

 

 

まさか、今まで取り込んだ武者ライダー達もこうして吸収していたのかと考えると共に、自分も彼等と同じ末路を辿ろうとしているのだと理解して焦り、一層激しく抵抗する零。しかし、四方から更に飛来する無数の触手が零の全身に纏わり付いて完全に身動きが取れないようにしてしまい、遂に下半身までが地面に取り込まれようとしていた。

 

 

零(このままじゃっ……!クソッ、こうなればっ……!)

 

 

最早手段を選んではいられないと、零は額から汗を流しながら破壊の因子を使用して、この危機的状況から脱出しようとした。その時だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

―……シュウゥゥゥゥゥッ……シュパアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!!―

 

 

『ッ?!!グッ、ァァ……ギシャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!!!』

 

 

―バシュウゥゥッ!!!―

 

 

零「ッ?!なっ……今度は何だっ?!」

 

 

零の全身がもう完全に影に覆い隠されてしまいそうになったその時、零の四方の闇の向こう側から突然無数の光が刺し、やがて一つの強大な白光となってまるで太陽の如く零の姿を照らし、零の全身に纏わり付く影を泡のように打ち消したのだった。そうして零が消滅した影と突然刺した白光に再び驚愕していると、白光は少しずつ弱まっていき、闇の向こう側で仄かに光り輝く『15』の光が見えた。それは……

 

 

 

 

 

 

武者ツヴァイ『―――無事のようだな……紙一重で間に合ったか……』

 

 

武者エクス『…………』

 

 

武者ロード『…………』

 

 

零「ッ!お前、達は……」

 

 

 

 

 

暗闇を照らす15の人の形をした淡い光。その正体は、戦国バトルロワイヤルにて邪武者ディケイドに取り込まれてしまった十五人の武者ライダー達だったのだ。自分を助けた光の正体が彼等だと知った零も驚きを浮かべ、武者ライダー達はそんな零を見つめて口を開いた。

 

 

武者エデン『黒い髪に、真紅の瞳……成る程。やはりお前が異世界を旅するディケイドとやらで、間違いなさそうだな』

 

 

零「!俺の事を知ってるのか……?」

 

 

武者雷牙『ああ……数ヶ月ほど前、我々の前に預言者を名乗る男が警告を知らせに現れたんだ』

 

 

武者クロノス『"何れこの世界に、君達が知るのとは別のディケイドが現れる。奴はあらゆる世界を破壊する悪魔であり、君達には奴を倒す為に戦って欲しい"……とな』

 

 

零(……鳴滝の奴、こんな世界にまで俺の噂を広めに来てたのか……)

 

 

相変わらず自分を潰す為の余念の無さに最早感服すら覚えそうだと、零は何処かウンザリした様子で小さく溜め息を吐き、自分を見つめる武者ライダー達に再び目を向けた。

 

 

零「だが、何でお前達はその悪魔を助けるような真似をしたんだ?鳴滝の忠告を受けてるなら、俺なんぞ助けたところでお前達には何のメリットもないだろう?」

 

 

そもそも、彼等とまともに対面したのもこれが初めてだし、彼等には零を助ける義理などないハズだ。それなのに何故?と、零が怪訝な眼差しを武者ライダー達に向けると、彼等もそれに対し否定せず頷き返した。

 

 

武者シリウス『確かにな。俺達にお前を助ける義理はない。だが……』

 

 

武者エグザム『それで俺達に利点がない訳じゃない。……お前を助けたのは、お前に邪武者を倒して欲しいからだ』

 

 

零「……?どういう事だ?」

 

 

零を救ったのは邪武者ディケイドを倒してもらう為。そう告げる武者ライダー達に零が訝しげに問い掛けると、武者ディライトが無言のまま何かを取り出し零に投げ渡した。それは……

 

 

零「これは……ディライトのケータッチ?」

 

 

そう、武者ディライトから渡されたのは、ディライトがコンプリートフォームへと変身する際に用いる強化ツールのケータッチだったのだ。何故コレを自分に?と、零がディライトから手渡されたケータッチと武者ライダー達を交互に見つめ困惑気味な表情を浮かべていると、武者ライダー達の姿が残像のようにブレた。

 

 

零「ッ?!お、おい……!お前等?!」

 

 

武者リノベーション『……私達は既に、邪武者に完全に取り込まれ、身体を失ってしまっているの……』

 

 

武者ディジョブド『今こうして君と話している僕達は、実体を持たない精神のみ存在……実質、死んでると言っても過言じゃないんだ』

 

 

零「ッ……!」

 

 

こうして自分と話している武者ライダー達は既にあの邪武者ディケイドに取り込まれ、実体を持たない死者同然の存在。そう言われて目を見開き息を拒む零だが、すぐにいつもの表情へと戻り、ケータッチを見つめながら口を開いた。

 

 

零「成る程……要するに、お前達の仇を取って欲しいから俺を助けたって事か?まぁ、確かに夢半ばで敗れたお前達の無念も分からんでも『違う』……え?」

 

 

恐らくは天下統一への道のりを邪魔された無念を晴らして欲しいという理由かと推測する零の言葉を、武者ライダー達に遮られてしまい、零が呆然と振り向くと、武者firstが自分の胸に手を当てて答えた。

 

 

武者first『天下統一の夢も、俺達自身の事も、そんなのはどうだっていいんだ。今俺達が強く望むのは、ただ一つだけ……』

 

 

武者キャンセラー『秀吉様を……いや、僕達の主を、国を、民達を……この世界をどうか、僕達の代わりに守って欲しいんだ……君に……』

 

 

零「……俺に……?」

 

 

どうしてだ?と、零が言外に訝しげな表情でそう聞き返すと、武者ライダー達は互いに顔を見合わせた後に零に答えた。

 

 

武者ディジョブド『僕達はずっと、此処から君達と邪武者の戦いを見ていたんだ。そうして、敵味方問わずに邪武者から皆を守ろうとした君を見て、思った……君になら任せられるって』

 

 

武者クラスト『それに今の俺達にはもう、此処を出て、それを果たすだけの力も身体も持たない。けれど……』

 

 

武者ストライク『俺達全員に残された力をお前に注ぎ込めば、お前一人だけでも此処から出す事は出来る。そうすれば……』

 

 

零「それは……いや待て、だがそうしたらお前達はどうなる?!身体を失ったとは言え、まだお前達は此処にいるんだろう?!邪武者を倒すという事は――!」

 

 

邪武者ディケイドと共に、彼等も消滅するという事ではないのか。最後までそう言い切る事が出来ず口を閉ざしてしまう零だが、零が言わんとしている事は伝わったのか、武者ライダー達はそれに対し徐に頷き返した。

 

 

武者ディライト『そんなのは覚悟の上だ……』

 

 

武者エクス『元々俺達が戦い合っていたのも、全ては主と国、民達の為……この身も力も全て、皆を守る為に捧げてある』

 

 

武者ロード『その俺達の力が、皆を苦しめる為に利用されているなんて、そんなのは我慢ならないんだ……』

 

 

武者ツヴァイ『勝手な申し出をしている事は百も承知だ……それでも、頼む……異世界のディケイド。俺達が守りたかったものを……何よりも大切なものを……どうか……』

 

 

零「……ッ……」

 

 

自分達の主達や民達、この戦国世界を救えるのなら、この身が消えようとも構わない。強い決意を秘めた眼差しでそう語り、自分達の最後の願いを聞き入れて欲しいと頼む武者ライダー達のその言葉を聞いて、零もそれ以上は何も言えず顔を俯かせる。そうして、やがて無言のままライドブッカーから一枚のカードを取り出し、バックルに装填してスライドさせていった。

 

 

『KAMENRIDE:DECADE!』

 

 

ディケイド『―――俺は破壊者、悪魔だ……お前達が壊せと望むなら、俺は容赦なく、後腐れが残らぬように徹底的にぶっ壊すぞ……お前達ごと、あの邪武者を』

 

 

武者エデン『……フッ……頼もしい限りだ』

 

 

武者リノベーション『ごめんなさい、貴方達に損な役割を背負わせる事になって……後は……』

 

 

武者クロノス『頼むぞ……別世界のディケイド』

 

 

ディケイド『っ……本当に、何処の世界にもいるものだな……とんだ物好きが……!』

 

 

憎まれ口を叩きながら、託されたケータッチを掲げるディケイド。すると、武者ライダー達はディケイドが掲げるケータッチに向かって一斉に掌を翳していき、全身から淡い輝きを放ちながらケータッチに残された自分達のエネルギーを注ぎ込んでいく。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

―シュウウウゥゥゥッ……バシュウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッ!!!!!!!―

 

 

 

 

 

 

 

 

……ディケイドが掲げるケータッチからまばゆい輝きが放たれて一気に広がっていき、闇に包まれた空間を暖かな光が優しく包み込んでいったのだった―――。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―神樹カーラーン―

 

 

―ガギイィィィィィィィィィィィィインッ!!!―

 

 

アマツ『グアァッ!!』

 

 

ツヴァイ『グウゥッ!』

 

 

そしてその頃、ディケイドを倒された怒りから邪武者ディケイドに果敢にも挑み続けてたツヴァイとアマツだったが、天将刀の力と今まで取り込んだ武者ライダー達の力をフルに使用する邪武者ディケイドに苦戦を強いられてしまい、邪武者ディケイドはそんな二人に向かって嘲笑を込めて叫んだ。

 

 

邪武者ディケイド『無駄だァ!今の我は武者ライダー共と先程取り込んでやったディケイド、そして天下人の資格である天将刀の力を手にしている!貴様等がいくら束になって掛かろうとも、既に我が敵ではない!』

 

 

アマツ『ッ!勝手に決め付けてんじゃ、ねぇよっ……!』

 

 

ツヴァイ『相手がどんなに強かろうがな、それでも、守るもんが後ろにある以上は引く事なんてないんだよ……仮面ライダーってのはなぁッ!』

 

 

邪武者ディケイド『……そうやってまた自ら命を棄てに来るか……理解に苦しむ……ならば消えろ、今度こそなぁッ!!!』

 

 

―ギュイイイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッ!!!!!!―

 

 

そう叫びながら邪武者ディケイドが天将刀を掲げると同時に、巨大な火花を撒き散らして真紅の光がうねりを上げながら天将刀から放出されていく。それで今度こそ、邪武者ディケイドが自分達を葬り去ろうとしているのだと悟ったアマツは最終奥義の札を取り出して迎え撃とうとし、ツヴァイも此処で切り札を切るべきかと考えて身構えようとした、その瞬間……

 

 

 

 

 

 

―……ピシッ、ビシィッバキィッ……シュバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!―

 

 

邪武者ディケイド『――ッ?!!な、何ッ?!!』

 

 

ツヴァイ『……?!』

 

 

アマツ『な、なんだッ?!奴のベルトがッ?!』

 

 

邪武者ディケイドが天将刀から強力な一撃を放とうとした瞬間、邪武者ディケイドのブラッドディケイドライバーに突如前触れもなく亀裂が走り、その隙間から凄まじい勢いで白い閃光が放出され始めたのであった。それを目にしたツヴァイとアマツ、そして当の本人である邪武者ディケイドも驚愕を露わにして白い閃光が溢れ出るバックルを抑え込み、信長達も目を見開き戸惑っていた。

 

 

信長「な、何だ?何が起きてるんだっ?」

 

 

邪武者ディケイド『ガァアアアアッ!!!グッ、何だコレはッ?!!何故こんな、グゥウウウウッ!!!』

 

 

アマツ『おいおい……何がどうなってんだ……』

 

 

ひび割れるバックルを抑えながらもがき苦しむ邪武者ディケイドを見て何が起きているのか分からず、ただ突然の出来事に呆然と佇む一同だが、その時ツヴァイ(ライト)が大声を張り上げツヴァイに叫んだ。

 

 

ツヴァイ(ライト)『智大ッ!ウィザードメモリだッ!』

 

 

ツヴァイ『ッ!ライト?』

 

 

ツヴァイ(ライト)『あの邪武者ディケイドのベルト、どうやらあの中から"何か"が外へ出て来ようとしてるようだッ!僕の推測が正しければ、恐らく――!』

 

 

ツヴァイ『……!まさか!』

 

 

ツヴァイ(ライト)の言葉で何かに気が付いたのか、ツヴァイは直ぐさま右手を掲げる。すると、何処からともなく一体の鳥型の機械が飛来してツヴァイの右手に収まり、ツヴァイは鳥型の機械をバックルに合体させて両翼部分を左右に開き、Wの形に展開していった。

 

 

『WIZARD!』

 

 

鳥型の機械……ウィザードメモリから電子音声が鳴り響いた次の瞬間、ツヴァイの身体がクリスタルのように輝く無数の虹色の粒子に包まれていく。そうしてツヴァイの身体中央から粒子が全て消え去っていくと、其処には緑の右半身と黒の右半身の間に透明な銀色のラインを大きく取り入れた三色の姿に、背中には黒いマントを背負い、"W"に形取られたショルダーと複眼を持ったツヴァイ……最強フォームである『ツヴァイ・ウィザード』に強化変身したツヴァイの姿があった。そして……

 

 

ツヴァイW『『パンドラビッカーッ!!』』

 

 

智大とライトが同時に叫ぶと共に、ツヴァイの身体の中央に入ったクリアシルバーの部分が一瞬淡い虹色の輝きを放ち、其処から剣と盾が合わさった武器……パンドラビッカーが出現してツヴァイの手に握られていき、ツヴァイは何処からかパンドラメモリを取り出し、スイッチの部分を人差し指で押してからパンドラビッカーに収められた剣……パンドラソードの柄の末端に取り付けられたスロットへと装填し抜刀した。

 

 

『PANDORA!』

 

 

ツヴァイW『悪いな邪武者。チャンスに付け入るような感じだが、ソイツは返してもらうッ!!』

 

 

―ダンッ!!―

 

 

邪武者ディケイド『グッ!!貴様ァアッ!!』

 

 

パンドラソードとパンドラビッカーを構え弾丸の如く迫るツヴァイを目にし、もがき苦しみながらブラッドライドブッカーを横薙ぎに振るう邪武者ディケイド。しかしツヴァイは低い姿勢で突進しながら、パンドラビッカーでブラッドライドブッカーの刃を上へと押し上げつつ潜り抜けて肉薄し、そして……

 

 

ツヴァイW(ライト)『今だ智大ッ!!!』

 

 

ツヴァイW『ハァアアアアアアアアアアッ!!!!』

 

 

―ズバァアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーアァァンッ!!!!―

 

 

邪武者ディケイド『しまっ?!グッ、ウグゥアアアアアアアアアアアアアアアッ?!!』

 

 

ツヴァイの突き出したパンドラソードの切っ先が亀裂の走る邪武者ディケイドのバックルへと正確に突き刺さり、ブラッドディケイドライバーに更に大きな傷を付けたのだ。それにより、ブラッドディケイドライバーから先程の比じゃない勢いで閃光が溢れ出し、その中から一つの赤い光が飛び出てアマツの隣へと飛来し、人の姿を形作りながらその姿を露わにしたのだった。それは……

 

 

 

 

 

 

ディケイド?『……………………』

 

 

アマツ『?!アンタは……?!』

 

 

信長「れ……零ッ?!!」

 

 

 

 

 

 

そう、赤い光の正体とは、邪武者ディケイドに倒され取り込まれてしまった筈のディケイドだったのである。しかし、その姿は彼等が最後に見た時とは違って、全身がまるで鎧武者を模した姿をした真紅の鎧となり、腰のバックルには十五人の武者ライダー達の紋章が入ったコンプリートカードを装填したディライトのケータッチ、胸には同じく十五人の武者ライダーのカードが並べられたヒステリーオーナメントを装備し、両手には日本刀のような形状の機械の双剣を握り締めた武者の姿……十五人の武者ライダーの力を借りて変身した『ディケイド・戦国コンプリートフォーム』へと変わっていたのだった。

 

 

邪武者ディケイド『ガァッ、クッ……!き、貴様っ、何故ッ?!どうやってあの空間から脱出したッ?!一度取り込まれれば、彼処から抜け出す事など……!!』

 

 

ディケイド戦国CP『――自分達の主や民、この世界を想うアイツ等の力を、侮り過ぎてたようだな……』

 

 

邪武者ディケイド『ッ!何だとっ……?』

 

 

何が起きたのか事態が理解出来ぬまま、ディケイドの言葉に思わずそう聞き返す邪武者ディケイド。するとディケイドはゆっくりと身を起こし、右手に握る機械の日本刀……戦国ブレードの切っ先を邪武者ディケイドに突き付けて力強く言い放った。

 

 

ディケイド戦国CP『俺と同じように、お前に取り込まれた武者ライダー達が、残された力を使って俺を外へ出してくれたのさ……この世界を、民達を、主達を自分達の代わりに守って欲しいと、俺にこの力を託してな』

 

 

信長「……!ツヴァイ達が……?」

 

 

邪武者ディケイド『馬鹿なっ……!!奴らは既に我が血肉と化したハズ……!!それにそのような真似をすれば、奴らの魂が我に取り込まれる時期が更に速まるばかりなのだぞっ……?!なのに何故ッ?!』

 

 

ツヴァイW『――まだ分かんねぇのかよ、邪武者』

 

 

理解が出来ない。そう訴え掛ける邪武者ディケイドにツヴァイがそう言い放ち、ゆっくりとディケイドの横に立ち並ぶ。

 

 

ツヴァイW『ライダーってのは、守るもんがあるから戦い抜く。例え身体一つになろうと、身体が消えようと、それでも食らい付いて大事なもん守る為に戦う……その心そのものがライダーなんだよ』

 

 

ディケイド戦国CP『それは仮面ライダーだろうと、武者ライダーだろうと変わらない……それを忘れ去ったお前の野望如きで、アイツらの想いや願い、何よりも守りたかった大切な物を、踏み躙れると思うなッ!!』

 

 

邪武者ディケイド『ッ……!!何なんだ……何なのだ貴様等はァッ?!!』

 

 

苛立ちのあまり、天将刀を突き付けて喚き散らすように叫ぶ邪武者ディケイド。それに対してディケイドは両手の戦国ブレードを、ツヴァイはパンドラソードを構え直し……

 

 

ディケイド戦国CP『通りすがりの……』

 

 

ツヴァイW『『二人で一人の……』』

 

 

『『『仮面ライダーだッ!憶えておけぇッ!!!』』』

 

 

邪武者ディケイド『ッ!!ほざけぇえええええええッ!!!!』

 

 

同時に地を蹴って飛び掛かる二人に対し、邪武者ディケイドも怒号を飛ばして同じように飛び出し迎え撃つ。最初に斬り掛かってきたツヴァイのパンドラソードを弾きながら、続けざまに仕掛けてきたディケイドの戦国ブレードを天将刀で受け止め、そのまま鍔ぜり合いになりながら真横の壁を突き破り戦いの場を変えていったのだった。

 

 

ツヴァイW『アマツッ!今の内にあの二人を助け出せッ!奴は俺達が引き受けるッ!』

 

 

アマツ『……!あ、あぁ、分かったッ!』

 

 

信長とカガミの救出を依頼するツヴァイの言葉に一瞬戸惑いながらも頷き返して、アマツは信長とカガミの救出へと向かい、ツヴァイもアマツの後ろ姿を見送りながらディケイドと邪武者ディケイドが共に消えた壁へと飛び込んで二人を追い掛けていった。が……

 

 

 

 

 

 

 

 

―……シャララララッ……シャララララッ……―

 

 

 

 

 

 

 

 

アマツ達の遥か頭上。其処には、先程邪武者ディケイドのドライバーの亀裂から溢れ出た閃光の残滓が宙を漂う光景があったのだった。そして、光の残滓はそのまま天井の穴を抜けて、外の神樹の木々に実る果実へと吸い寄せられていき、そして………

 

 

―ギュイィィィィィッ……バシュウゥンッ!―

 

 

光の残滓を吸い込んだ果実が突然淡い光を放ちながらその姿を変化させ、なんと、クロノス、ツヴァイの顔が描かれた二つの錠前……クロノスロックシード、ツヴァイロックシードに変化していったのだ。と、更に其処へ……

 

 

―ドッゴオォオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオォンッッッッ!!!!!―

 

 

冥王『――これで53本目と……ん?これは……』

 

 

上空を縦横無尽に飛び回り、神樹カーラーンから平行世界に目掛けて放出される触手を片っ端から撃破していた冥王が、偶然にもその二つの錠前を発見し、クロノスロックシードとツヴァイロックシードをもぎ取り二つのロックシードを眺めていく。

 

 

冥王『クロノスとツヴァイのロックシード……?どうしてこんな所にこんな……もしかして……?』

 

 

と、其処で何かに気付いたのか、冥王は適当に近くに実る果実へと手を伸ばして果実をもぎ取り、手にした果実に自身の神氣を僅かに注ぎ込んでいく。すると、冥王の神氣を帯びた果実が淡い光を放ち、冥王の顔がカバーに描かれたメイオウロックシードへと変化していった。

 

 

冥王『これはっ!……フ、フフフフッ、木の根の相手ばかりで少し飽きてきた所だったけど、此処に来て面白い発見があったの!これは試さない手は無いの♪』

 

 

まるで新しい玩具を買ってもらった子供のようにウキウキしながらそう言うと、冥王は近くの触手達を一瞬で切り落としながらその場を離れてUターンし、トランス達が戦う戦場を目指し飛んでいったのだった。

 

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole⑤

 

 

―尾張国境・荒野―

 

 

『グゥルアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!』

 

 

―ガギイィッ!!バキィッ!!ガギイィィンッ!!―

 

 

ドラコ『ガハッ!』

 

 

「ウアァッ?!」

 

 

天神『グッ!』

 

 

その頃、トランス達は未だ並外れた防御力を誇るゲンブジャキに対しダメージを通す事が出来ずに苦戦し、鋭爪を振るって襲い掛かるゲンブジャキの猛攻に圧倒され次々と吹き飛ばされてしまっていた。しかしそれでも負けじと、態勢を立て直したトランスはライドブッカーからカードを取り出してドライバーに装填し、聖桜も右手の指輪を取り替えてセイオウドライバーのバックルへと右手を翳していく。

 

 

『ATTACKRIDE:DIVINE BUSTER!』

 

『Cho-iine!』

 

『Special!Saiko-!』

 

 

聖桜『ハァッ!!』

 

 

トランス『シュウゥーーーーーートォッ!!!』

 

 

―ドシュウゥウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!―

 

 

『ヌッ!』

 

 

重なり合う二つの電子音声と共に、トランスはライドブッカーGモードの銃口から桜色の極太の砲撃を撃ち出し、聖桜は前方に出現させた朱い魔法陣から巨大な火炎放射をゲンブジャキに目掛けて放出した。しかしそれに気付いたゲンブジャキは咄嗟に両腕を広げてトランスの砲撃と聖桜の火炎放射を真っ向から受け止め、そのまま砲撃と火炎放射を弾き返してしまう。

 

 

―ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアァァンッッッッ!!!!!―

 

 

トランス『クッ!やっぱりこっちの技が通じない……!』

 

 

迅武『クッソッ!おい、どうするんだッ?!このままじゃジリ貧だぞッ?!』

 

 

ドラコ『言われなくとも分かっているッ!弱音を吐いてる暇があるなら、その足りない頭で打開策を考えろッ!』

 

 

迅武『それが分かんねぇから聞いてんじゃねぇかッ!ってか足りない頭言うなッー!』

 

 

「ああもうっ、こんな時に喧嘩なんかしてんじゃないわよ鬱陶しいッ!!」

 

 

『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!』

 

 

ゲンブジャキを倒す攻略法が分からず焦りばかり募り子供染みた喧嘩まで勃発する中、そんなライダー達に無数の怪人達が追い撃ちを掛けるように襲い掛かり、ライダー達も咄嗟に反撃しそれぞれ怪人達と戦っていくが、そんな彼等にゲンブジャキが再度攻撃しようと蛇に酷似した尻尾を向けて尻尾にエネルギーを溜めていく。そんな時だった……

 

 

 

 

 

―バシュウゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!―

 

 

『……?!ヌゥオッ?!』

 

 

―ドッガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーアアァンッッッッ!!!!―

 

 

『ッ?!!ギガッ、ギィヤアァアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ?!!!!』

 

 

聖桜『ッ?!』

 

 

ドラコ『な、なんだ、今の砲撃はッ?!』

 

 

ライダー達に再攻撃しようとしたゲンブジャキを邪魔するかのように、上空から突如巨大な砲撃が降り注いで来たのだ。ゲンブジャキは直ぐさまその場から退き砲撃を回避したが、かわされた砲撃はそのまま連合軍の武者達に襲い掛かろうとした別の怪人達を飲み込んで蒸発させていき、それを見たライダー達と怪人達が砲撃が放たれてきた方へと振り返ると、其処には上空に浮遊しながらメイオウガッシャーの先端を突き付ける冥王の姿があった。

 

 

冥王『ふむ、どうやら良い具合に苦戦しているみたいなの』

 

 

天神『冥王?!』

 

 

トランス『ちょっ、神樹の木の根の方はどうしたのっ?!まだあんなに沢山残って……!』

 

 

冥王『言われなくて分かってるの。ただあの樹の方で何か面白そうな物を見付けたから、姫ちゃんと其処の二人に渡そうかと思って♪』

 

 

迅武『へ?俺、たち?』

 

 

天神はともかく、初対面である筈の自分達まで名指しされ困惑気味に顔を見合わせる迅武とドラコ。冥王はそんな二人と天神に後ろ腰から取り出した三つの錠前をポイッと投げ渡し、それを見た迅武は慌てて錠前……クロノスロックシードを、ドラコはツヴァイロックシードを、天神はメイオウロックシードを受け取っていく。

 

 

ドラコ『ッ?!これは……!』

 

 

天神『仮面ライダーのロックシード?!何故こんな物が……?!』

 

 

冥王『さぁ?私はただソレを見付けただけだし、とにかく、苦戦してるならソレを使ってみたらどう?』

 

 

迅武『な、何か良く分かんねぇけど……これであの亀野郎に対抗出来るなら!』

 

 

あのゲンブジャキの防御を突破出来るならばと、迅武はクロノスロックシードの解錠スイッチを押し、それを見たドラコと天神も決心してツヴァイロックシードとメイオウロックシードの解錠スイッチを押していく。

 

 

―ガチャッ!―

 

 

『CLONOS!』

 

『ZWEI!』

 

『MEI-O!』

 

 

解錠された三つのライダーロックシードから立て続けに電子音声が響き、直後に迅武、ドラコ、天神の頭上にジィッ!と、ファスナーが開くように裂け目が現れ、其処から果実や異形とも違うあるモノが出現する。それは……

 

 

トランス『え、な、何アレ?!』

 

 

「クロノスの……顔?!」

 

 

そう、裂け目から現れたモノの正体とは、クロノス、ツヴァイ、冥王の顔に酷似した三つの巨大なアームズだったのである。一見すると異様にしか見えないそのライダーアームズ達を見てトランス達や怪人達、当の本人達である迅武達も騒然としていたが、すぐに気を取り直してライダーロックシードをそれぞれのベルトのバックルにセットし、カッティングブレードでスライスさせていった。

 

 

―スパアァンッ!―

 

 

『Soiya!』

 

『CLONOS ARMS!』

 

『GATE UP!Ijiri Taosuze!』

 

 

『Come on!』

 

『ZWEI ARMS!』

 

『TORNADO!FANG!HA・HA・HA!』

 

 

『Soiya!』

 

『MEI-O ARMS!』

 

『Saikyou no Orchestra~♪』

 

 

それぞれのドライバーから電子音声が響き渡ると共に、迅武達の頭上に浮遊するライダーアームズが迅武、ドラコ、天神の頭に次々と落下していき、そのライダーをモチーフにした鎧へと変形してアームズチェンジしていったのだった。

 

 

迅武はクロノスをモチーフにした赤い瞳に漆黒の鎧、右手にクロノスブレイドを握り締めた『迅武・クロノスアームズ』に、ドラコはツヴァイをモチーフにした緑と黒のツートンカラーの鎧にスナイプトリガーを手にした『ドラコ・ツヴァイアームズ』、天神は冥王をモチーフにした純白の鎧にメイオウガッシャーを手にした『天神・メイオウアームズ』となり、アームズチェンジした三人はゲンブジャキ達と対峙していく。

 

 

迅武CA『さぁ、お前ら全員弄り倒すぜッ!!』

 

 

ドラコZA『さあ、お前の罪を数えろッ!!』

 

 

天神MA『さぁ、恐怖の悲鳴と惨劇の断末魔のオーケストラを奏でてやろうッ!!』

 

 

『グウゥゥゥッ……グゥルアァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!』

 

 

三人がそれぞれのアームズの元となったライダー達の決め台詞を叫ぶと同時に、ゲンブジャキが獣の雄叫びを上げて背後に従える無数の怪人を迅武達に差し向けていき、それを見た迅武も腰に差した無双セイバーを抜いてクロノスブレイドとの二刀流となり、トランス達と共に怪人の軍勢を迎え撃っていくのだった。

 

 

 

トランス『ヤァッ!』

 

 

聖桜『ハッ!』

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガガアァンッ!!バキャアァッ!!ズガァンッ!!―

 

 

『ヌガァッ?!』

 

 

ドラコZA『フッ!どうしたその程度かッ?!ハッ!!』

 

 

迅武CA『ウオォリャッ!!まだまだ行くぜぇッ!!』

 

 

―カシュゥッ!―

 

 

『Soiya!』

 

『TIME QUICK!』

 

 

「こっちもいくわよ!タイムクイックッ!」

 

 

『TIME QUICK!』

 

 

トランス、聖桜、ドラコはそれぞれの銃から銃弾の雨を振り撒いて怪人達を次々と薙ぎ倒していき、迅武と黒い少女はタイムクイックを用いて高速戦に突入し、怪人達の軍勢を目にも留まらぬ速さで斬り裂いて爆散させていく。そして二人がタイムクイックを解除した直後にゲンブジャキが迅武と黒い少女に襲い掛かり、咄嗟に反撃して斬撃を叩き込むも、やはり並外れた防御力の前に弾かれてしまう。

 

 

迅武CA『クッ?!この錠前の力でもまだ通用しないのかッ?!』

 

 

「やっぱり、コイツの固い装甲をどうにかしないとっ。でもどうすればっ……!」

 

 

 

 

 

 

―ギュイィィィィィッ……ドッゴオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオォンッッッッッッ!!!!!!―

 

 

『ッ?!!ヌ、ヌガァアアアアアアアアアアアアアアッ?!!』

 

 

『ッ!!?』

 

 

ゲンブジャキの装甲をどう打ち破るか再び躓き掛けたその時、トランス達の背後から先程の様に一発の砲撃が放たれてゲンブジャキを飲み込み吹っ飛ばしたのであった。

 

 

ドラコZA『今のは……あの冥王とやらの砲撃か?』

 

 

トランス『え、でも冥王は……?』

 

 

そのさっきと同じ展開に、もしや冥王が手を貸してくれたのかと彼女の方に目を向けるが、冥王は神樹から伸びる木の根の処理で上空を飛び回っており、こちらに援護してくれたようには見えない。ならば誰が?と、トランス達が今の砲撃が撃たれてきた方向に視線を向けると……

 

 

 

 

 

 

天神MA『――――フフ……フフフ……フフフフフ……』

 

 

 

 

 

 

其処には、身体を仰け反るような姿勢で佇み、薄気味悪い笑い声を漏らす天神がいた。しかしその姿は先程までと違い、まるで何かが壊れたかのような不気味な感じになっている。

 

 

聖桜『さ、桜ノ神……?』

 

 

天神MA『フフフフ……駄目じゃないかァ、彼の大事な宝物を、仲間を傷付けたら……彼が悲しんでしまうだろォ?そんな悪い事をするんだったら…………少し、頭を冷やそうか…………?』

 

 

何故か先程までと雰囲気が一変しただならぬ威圧感を放つ天神にゲンブジャキ達だけではなく、トランスや聖桜、迅武達も圧されてしまい後退りをしてしまうが、天神は構わずゆっくりと宙に浮きながらドライバーのカッティングブレードを一回倒した。

 

 

―カシュゥッ!―

 

 

『Soiya!』

 

『FULL CHARGE!』

 

 

電子音声が響くと同時に、天神がメイオウガッシャーの先端をゲンブジャキ達に向けると、天神の足とメイオウガッシャーの先端に光の翼が現れ、更にその先に光が集まっていく。そして……

 

 

天神MA『彼は私のモノ……彼を傷付けるモノなどこの世には要らないんだ……私の彼を傷付けようなどと、思い上がるなぁあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!』

 

 

―ドバァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーアアァァンッッッッッッ!!!!!!!―

 

 

『グ、グゥオアァアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ?!!!!!』

 

 

メイオウガッシャーから凄まじい閃光が放たれ、標的となったゲンブジャキ達は何も出来ぬまま閃光に飲み込まれ、ゲンブジャキを除いた怪人達は塵一つ残らず消滅していったのだった。そしてゲンブジャキはどうにか耐え切ったようだが、天神が更に砲撃を乱射し、ゲンブジャキは装甲が次々と吹き飛んで徐々に丸裸にされつつあった。

 

 

トランス『……ひ、ひひひ姫さんがヤンデレ化したアァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ?!!!ど、どどどどうなってるのォオオッ?!!!』

 

 

聖桜『ま、まさかっ……椛さんッ!あのロックシード、もしやあのお二人が使っている錠前とは別の物では……?!』

 

 

冥王『えー?あー、冥王のロックシードは私があの樹に生ってる変な果実に神氣を流し込んで変化したものだから、別物と言えば別物なのー。まー、何か副作用があるかもしれないけど、気にするレベルじゃないと思ふー』

 

 

トランス『思ふーじゃないよォッ!!気にしなくちゃ駄目なレベルだよォッ!!何かもうっ、ほらぁッ!!何かもう元の人格の原形が微塵もないぐらいに別人になっちゃってるじゃないッ!!!!』

 

 

天神MA『あァははははははははははははははッ!!!どォーしたその程度かァッ?!!私から彼を奪うなどと吐いておきながらその程度なのかァッ?!!イケナイナァ、イケナイナアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!!!』

 

 

CB『……最早可笑しな被害妄想をする領域にまで精神が汚染されているな。まぁ、アイツのロックシードという時点でこうなることは予想出来たが』

 

 

「予想出来てたんなら止めなさいよぉッ!!!ちょ、こっちにまで来たあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっっっ?!!」

 

 

メイオウロックシードの影響か、狂気の高笑いを上げながらメイオウガッシャーから間髪入れず砲撃を撃ちまくる天神。危うくソレに巻き込まれそうになり黒い少女も慌ててトランスの下にまで避難するが、天神が放つ砲撃は怪人達だけでなく連合軍にまで被害が及び、戦場は更に混沌と化しつつあったのだった。

 

 

―チュドオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオンッ!!!!―

 

 

『ヌッ!何だ?!』

 

 

アマテラス『ッ!ちょっと、どうなってるのコレっ?!』

 

 

ディエンド(……ああ……何かまためんどくさい事になってるな、アレ……)

 

 

―ドゴオォンッ!!!―

 

 

トランス『あぅッ!こ、このままじゃ、家康さん達にまで被害がっ―ブオォンッ!―……え?』

 

 

天神の砲撃を何とかかわしながら打開策を考えようとしたトランスだが、その時ライドブッカーが突然勝手に開いて中からシルエットのみの三枚のカードが飛び出した。そしてトランスがそれを掴むと、シルエットのみだった三枚のカードの絵柄が蘇り、トランスの隣に立つ黒い少女……ライダー少女クロノスのカードに変化していったのだった。

 

 

トランス『ッ!これは……ううん、一か八か、やるしかないッ!』

 

 

これを使えば更にこの状況が混沌と化するのではないかと一瞬迷うが、すぐに頭を振って迷いを払い、中央のカードを抜き取りながら黒い少女の背後に回り込み、ドライバーに装填しスライドさせていった。

 

 

『FINALFORMRIDE:C・C・C・CLONOS!』

 

 

トランス『ちょっとくすぐったいよ!』

 

 

クロノス「……え?ちょ、なに―ドンッ!―ひやぁッ?!」

 

 

トランスの突然の言葉に戸惑い振り返ろうとした黒い少女……ライダー少女クロノスだったが、トランスは構わずにそんなクロノスの背中に両手を伸ばして背中を開いた。しかし、クロノスの身体は他のライダー達のように超絶変形はせず、クロノスの開いた背中からまるで赤ん坊のように小さな竜の足の爪先が生えていた。

 

 

トランス『あ、あれ?変形しない?あ、そっか、ライダー少女は変形しないんだっけ……!』

 

 

クロノス「ね、ねぇ!ねぇ何してるのッ?!っていうか私の身体に今何が起きてるのッ?!―ズプッ!―ヒィイッ?!」

 

 

トランス『ご、ごめんね!ちょっとだけ我慢してて!』

 

 

流石に自分の背中が開いているという状況に戸惑いと動揺を隠せないでいるクロノスだが、トランスはそんなクロノスの背中に両腕を突っ込んで彼女の中にいる"ソレ"を取り出そうとする。が……

 

 

クロノス「いやぁああああああああああああッ!!!無理ィッ!!こんなの無理ィッ!!死んじゃうッ!!死んじゃうってばぁああああああッ!!!」

 

 

トランス『りっ、力んじゃ駄目ッ!!力んだら引っ込んで取り出せないからッ!!ほらっ!ヒッヒッフーッ!ヒッヒッフーッ!』

 

 

クロノス「ひっ、ひぃぃっ……ひぃ、ひぃ、ふぅぅっ……ひぃ、ひぃ、ふぅぅぅっ……!」

 

 

トランス『そ、そう!その調子ッ!ヒッヒッフーッ!ヒッヒッフーッ!あ、魚見さんッ!魚見さんも手伝ってッ!』

 

 

聖桜『クッ!はいっ?…………え、出産プレイ?』

 

 

トランス『違いますッ!!と、とにかくそっち持ってくださいッ!!もうちょっとで取り出せそうなんですからッ!!』

 

 

聖桜『は、はあ……』

 

 

クロノス「ひっ……ひぃ、ひぃ……ふぅぅっ……」

 

 

トランス『ほら、頑張ってッ!もうちょっとだからッ!ハイ、ヒッヒッフーッ!ヒッヒッフーッ!』

 

 

CB(……何だこの図)

 

 

混戦の横で、仮面ライダー二人が年端も行かぬライダー少女の背中に両腕を突っ込み、一緒にラマーズ法を繰り返すという何ともシュールな光景に、そんな感想をポツリと漏らすクロノスブレイド。で……

 

 

トランス『せぇーーのぉっ!!』

 

 

―ポンッ!―

 

 

『――――……ゥゥッ……キュァァ~ッ……』

 

 

トランスの掛け声と共に、クロノスの背中から思いっ切り引っ張り出されたモノ。小さく欠伸をするそれは正に赤ん坊サイズの小さな黄金の竜……クロノススペリオルドラゴンだったのであった。

 

 

トランス『や、やったッ!取り出せたぁッ!』

 

 

聖桜『おおっ……!ほら、しっかり見て下さい……!生まれました、元気な男の子ですよお母さん!』

 

 

クロノス「ぜぇええッ……ぜぇええッ……だ、誰がお母さんよぉっ……!」

 

 

苦労の末に取り出し、最早感動すら覚えてミニスペリオルドラゴンをクロノスに見せる聖桜だが、クロノスの方は無駄に体力を大幅に消費したせいで全身汗でびっしょりになって話す余裕もなく、取りあえず呼吸を整えてからトランスの手を借り立ち上がっていった。

 

 

クロノス「……んで、コレ一体なんなの……?」

 

 

トランス『あ、えっと……多分、コレが貴女のファイナルフォームライド、だと思うんだけど……』

 

 

『キュアァァ~ッ……』

 

 

トランス『……ちょっと小さい、よね』

 

 

聖桜『ちょっとどころか、かなり小さいと思いますが……コレ、どう使えば……?』

 

 

取りあえず無事に取り出せたのはいいが……よくよく考えると、こんなミニサイズのスペリオルドラゴンをどう戦闘に活かせば宜しいのか。冷静に改めて考えて再び悩み始めるトランス達だが、そんな彼女達の悩みなど露知らず、ミニスペリオルドラゴンは聖桜の手から飛び降りて地に降り立ち、そして……

 

 

 

 

 

―ドッシャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!!!―

 

 

『グゥウウウルゥアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!』

 

 

トランス『……え?えええええええええええええええええッ?!!!』

 

 

クロノス「きゅ、急に巨大化したぁッ?!!」

 

 

そう、なんと、ミニスペリオルドラゴンは脈絡もなく突如巨大化を果たし、地面を爆発させながら竜の咆哮と共に戦場に降り立ったのだ。そして怪人達や連合軍も突如前触れもなく現れたその巨大な黄金の竜を見て騒然とする中、スペリオルドラゴンは口から強力な砲撃を撃ち出し怪人の軍勢を薙ぎ払っていくのだった。

 

 

「お、おいっ!何なんだよありゃあっ?!」

 

 

「む、武者クロノスのスペリオルフォームか?!け、けど、何処から出て来たんだぁっ?!」

 

 

トランス『…………あー…………うん、まぁ、なんて言うかな……取りあえず、結果、オーライっ……?』

 

 

聖桜『……あっという間に成長期を終えて大人に仲間入りとは……子供の成長が早いとなるとこれから大変ですね、お母さん』

 

 

クロノス「だからお母さん言うなァーーッ!!」

 

 

トランス『にゃははは……と、とにかくこれで決めるよ!恭司さん!影虎さん!手伝って!』

 

 

迅武CA『ウォッ?!えっ?あ、ああ、分かったッ!』

 

 

ドラコZA『こっちもこれ以上付き合い切れんっ、さっさと決めるぞッ!』

 

 

突然現れたスペリオルドラゴンと砲撃をむやみやたらに撃ちまくる天神の暴走にこれ以上巻き込まれたくはないからと同意する二人。それに対してトランスも思わず苦笑いしながらライドブッカーからカードをもう一枚取り出してバックルに装填し、聖桜も左手の指輪を取り替えてバックルへとタッチし、迅鎧とドラコもそれぞれのバックルのカッティングブレードを操作していく。

 

 

『FINALATTACKRIDE:C・C・C・CLONOS!』

 

『Cho-iine!』

 

『Kick Strike!Saiko-!』

 

『Soiya!』

 

『TIME CRASH!』

 

『Come on!』

 

『MAXIMUM DRIVE!』

 

 

『!!ギュアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!』

 

 

四人のベルトからそれぞれ鳴り響く電子音声と共に、スペリオルドラゴンは竜の咆哮を上げながら翼を羽ばたかせて飛び立つ。そしてトランス、クロノス、聖桜、迅武は同時に地を蹴って空高く飛び上がり、ドラコはゲンブジャキ達に向けてスナイプトリガーを構えながら銃口にエネルギーを収束させていき……

 

 

ドラコZA『オーバーヒートレーザーッ!!!!ハァッ!!!!』

 

 

―チュドオォオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーオオオオォンッッッッ!!!!―

 

 

『ヌゥガアァッ?!!』

 

 

『ギャアアアアアアアッ?!!』

 

 

スナイプトリガーから撃ち出された超高熱のレーザーが無数の怪人達を呑み込んで焼き尽くし、ゲンブジャキの動きを封じた。その隙にトランス達は上空で空中回転して跳び蹴りの態勢を取り、そして……

 

 

 

 

トランス『ハアァァッ……セェヤアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!!』

 

 

クロノス「デエェアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!!」

 

 

「グルルゥッ、ギュオアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!!」

 

 

―バシュウゥウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!―

 

 

聖桜『ハアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!!』

 

 

迅武CA『セイッハアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!!』

 

 

『ッ?!ガッ、ガ……ガァギャアァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ?!!!!!』

 

 

―ドッガアァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーアアァンッ!!!!!!―

 

 

 

 

聖桜のストライクセイオウ、迅武のライダーキック、そしてスペリオルドラゴンの放つエネルギー砲を身に纏ったトランスとクロノスのエンド・オブ・スペリオルがゲンブジャキに同時に炸裂し、天神により大部分の装甲を剥がされたゲンブジャキは抵抗も出来ぬまま断末魔の悲鳴を上げ爆発し、遂に撃破されたのだった。

 

 

『ッ……!馬鹿な、ゲンブの鉄壁を突破しただと?!』

 

 

ディエンド『フッ、彼等を大した事がないと侮り過ぎたようだね?これで君の手札の一つは倒した』

 

 

アマテラス『後は貴方だけよ、覚悟しなさい!』

 

 

『……ジャキを倒した程度で嘗めてくれるなよ?良い機会だ、貴様等にも見せてやる。私の超新星を!』

 

 

ゲンブジャキを倒されたのは予想外だが、これで追い詰められた訳ではないと、アルゴゾディアートは左手を突き出して自身の身体に刻まれた星座から宇宙の闇を放出し始めていく。それを見たアマテラスとディエンドも咄嗟に身構えていき、闇がアルゴゾディアートを飲み込もうとした。その時……

 

 

 

 

 

 

―……其処までだよ、アルペジオ。此処はまだ、君が全力を出す場所じゃない―

 

 

 

 

『……ッ!』

 

 

ディエンド『ッ?!何だ?声っ……?』

 

 

アルゴゾディアートが更なる力を行使しようとした瞬間、それを制止するように何処からか声が響いたのだ。その声の主を探してディエンドとアマテラスが周囲を見渡すと、アルゴゾディアートの前にまるで幻影のように二人の人物……アルペジオと同じ財団と幹部であるカンパネルラ、そしてフードで全身を隠した謎の人物、ノアールが現れたのだった。

 

 

アマテラス『ッ!貴方達は……!』

 

 

カンパネルラ「やぁ、こうしてお目に掛かるのは始めましてかな?ディエンド、それからアマテラス……。僕は財団の幹部が一人、カンパネルラ。そしてこっちは、僕とアルペジオと同じ幹部のノアールだ。以後、お見知り置きを」

 

 

ノアール「…………」

 

 

突如現れたカンパネルラとノアールを見て警戒するアマテラスとディエンドに対し、軽い調子で自分と隣に立つノアールについて自己紹介をするカンパネルラ。すると、超新星の発動を邪魔されたアルゴゾディアートが軽く舌打ちしカンパネルラに食ってかかった。

 

 

『今更何しに出て来たカンパネルラ?冥王やイレギュラーの侵入を許しておきながら……』

 

 

カンパネルラ「その辺は別にいいじゃない。『クライアント』に渡す神樹と邪武者ディケイドのデータも一通り揃ったし、結果さえ出せば過程は問題じゃないよ」

 

 

『そういう問題ではっ……』

 

 

カンパネルラ「ハイハイ、小声なら後で幾らでも聞いてあげるって。それよりもほら、戻るよ。ノアール?」

 

 

ディエンド『ッ!逃がすと思うかッ!』

 

 

ノアールに目配りして撤退しようとするカンパネルラ達を引き止めようと、ディエンドはすぐさまドライバーを突き付けて銃撃する。だが、その前にノアールが何処からかトランペット型の武器を取り出してフードの下に隠された口に当て、そして……

 

 

―♪♪~♪~♪♪~♪―

 

 

ディエンド『ッ?!なっ、グッ?!な、何だこの音ッ?!』

 

 

アマテラス『ッ……!この嫌な音色っ……戦国世界に戻ってきた時にも流れていたっ……?!』

 

 

トランペット型の武器から放たれたのは、美しい旋律の魅惑のメロディー。一度聞けば誰もが魅了されるような音色だが、ディエンドとアマテラスにはその音色が不快且つ苦痛のメロディーに聞こえて耳を押さえながら悶え苦しみ、ノアールはその隙に自身とカンパネルラとアルゴゾディアートの周囲に音譜と楽譜を摸した転移術を使用し、三人はそのまま何処かへと消えてしまったのであった。

 

 

ディエンド『ッ!ハアッ、ハアッ……逃げられたっ……!』

 

 

アマテラス『……何だったの……あの楽器使い……』

 

 

カンパネルラ達に逃げられ悔しげに地団太を踏むディエンド。その隣に立つアマテラスはカンパネルラ達と共に逃げたノアールの姿を思い出して険しげな表情を浮かべ、未だ遠くにそびえ立つ神樹をジッと見つめていくのであった。

 

 

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole⑥

 

 

―神樹カーラーン―

 

 

―ガッシャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーアァァンッッッッ!!!!!―

 

 

ディケイド戦国CP『ゼェアアァッ!!!』

 

 

邪武者ディケイド『ヌゥエアアァッ!!!』

 

 

―ガギイィィィィッ!!!―

 

 

トランス達がアルゴゾディアートを退けたその一方、神樹カーラーン内部では時を同じくして邪武者ディケイドとの最後の決戦が火蓋を切って落とされ、十五人の武者ライダーの力を借り戦国コンプリートフォームに強化変身したディケイドと邪武者ディケイドは壁を突き破って別区域に戦いの場を変えながら、互いに目掛け戦国ブレードと天将刀を振るい鍔ぜり合いとなっていた。

 

 

―ギギギギギイィッ!!―

 

 

邪武者ディケイド『破壊者ごときが、図に乗るなよッ!!貴様等程度がいくら力を付けようが、天下人たる我には到底及ばんと知れぇッ!!』

 

 

ディケイド戦国CP『知るのはお前の方だ……コイツに託されたアイツ等の力、身を持って味わせてやるよッ!!』

 

 

邪武者ディケイド『ほざくなぁあッ!!』

 

 

ディケイドの言葉を戯れ事と切り捨てながら天将刀とブラッドライドブッカーによる猛攻でディケイドへと容赦なく斬り掛かる邪武者ディケイド。しかし、ディケイドも引けを取らず両手の戦国ブレードで邪武者の剣撃を弾きながら武者を連想させる立ち回りで邪武者ディケイドの双剣を背面受けで凌ぎ、もう片方の手で素早くバックルにセットされているケータッチを操作していく。

 

 

『RENOVATION!CLONOS!KAMENRIDE:MUSHA!』

 

 

―ガギイィィッ!!―

 

 

邪武者ディケイド『ヌゥッ?!』

 

 

ケータッチから電子音声が響くと同時に、ディケイドが背面受けで止める邪武者ディケイドの双剣が不意に横合いから飛び出してきた二人のライダーによって弾かれたのであった。そして邪武者ディケイドも突然の乱入者に驚きながら咄嗟に距離を離してディケイドを見据えると、ディケイドの左右に見覚えのある二人……邪武者ディケイドが今も体内に取り込んでいる筈の武者リノベーションと武者クロノスが立ち構える姿があった。

 

 

邪武者ディケイド『なっ……武者ライダーだとッ?!』

 

 

武者クロノス『ハアァッ!!』

 

 

武者リノベーション『デェヤァッ!!』

 

 

何処からともなく出現した二人の武者ライダーを見て驚愕を隠せない邪武者ディケイドだが、ケータッチによって武者ライダーの力が具現化した存在である武者リノベーションと武者クロノスはそれぞれの剣をふりかざしてそんな邪武者ディケイドに斬り掛かり、ディケイドもそれに続き三人の剣舞へ参戦しながら左腰のライドブッカーから二枚のカードを取り出すと、右腰のバックルにセットし掌で押し込んだ。

 

 

『FINALATTACKRIDE:RE・RE・RE・RENOVATION!C・C・C・CLONOS!』

 

 

『『TIME CRASH!』』

 

 

武者リノベーション『ヤァアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!』

 

 

武者クロノス『ゼエェェヤァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!』

 

 

―ズシャアァアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!―

 

 

邪武者ディケイド『グゥアアアアァァッ?!!グッ、キッサマァアッ!!!』

 

 

電子音声が響くと共に、邪武者ディケイドを挟み撃ちにした武者リノベーションと武者クロノスの必殺剣がすれ違い様に叩き込まれる。だが邪武者ディケイドもそれで簡単には膝を屈せず、必殺技を発動し消滅した二人の武者ライダーに目もくれずディケイドに目掛け天将刀から連続で斬撃波を飛ばした。だが……

 

 

 

 

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガガガガガァアッ!!!ドガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!―

 

 

ディケイドに向け放たれた斬撃波に無数の銃弾が降り注いで直撃し、爆発を発生してディケイドへの攻撃が阻止されたのだった。

 

 

邪武者ディケイド『ッ?!な、何ッ?!―ズバァアッ!―ヌゥオォッ?!』

 

 

その思わぬ妨害に邪武者ディケイドも爆発から発生した爆風に耐えながら驚愕を浮かべる中、突然何者かが爆風に紛れて邪武者ディケイドに斬り掛かり吹き飛ばしたのだった。そしてディケイドも吹き飛んだ邪武者ディケイドを見て、邪武者ディケイドが吹き飛んできた方へと振り返ると、其処には右手に笛の武器、パイドバイパーと、左手に銃型の武器のウィザードリボルバーを握り締めたツヴァイ・ウィザードの姿があった。

 

 

ディケイド戦国CP『智大……!』

 

 

ツヴァイW『あの二人はアマツとヒビキに任せてきた。それからさっき大輝から連絡があったが、どうやらアルペジオ達を無事に退けたらしい。残るは……』

 

 

ビュンッと、パイドバイパーを振り回して風を切り、笛の切っ先を邪武者ディケイドに突き付けるツヴァイ。

 

 

ツヴァイW『テメェとこの神樹を仕留めるだけだ……邪武者ァッ!』

 

 

邪武者ディケイド『ッ……!!笑わせるな……貴様等ごときに我が野望っ、我が天下の夢想を滅ぼせるモノかァアアッ!!!!』

 

 

『FINALFORMRIDE:E・E・E・EDEN!S・S・S・STRIKER!LO・LO・LO・LOAD!』

 

 

邪武者ディケイドの怒号と共に、ブラッドディケイドライバーから立て続けに発せられる電子音声。

 

 

それと同時に、邪武者ディケイドのベルトのバックルから漆黒の戦闘機、漆黒の巨大な剣、漆黒の巨大な刀……仮面ライダーエデンのファイナルフォームである『漆黒のエデンオーライザー』、仮面ライダーストライクのファイナルフォームの『マテリアル・ストライク』、仮面ライダーロードのファイナルフォームライドである『ロードブレイド』が飛び出し、邪武者ディケイドはそれらを背中と両手に装備して赤黒いオーラを身に纏っていく。

 

 

邪武者ディケイド『爆ぜろっ、滅せよッ!!我が創世せし世に貴様らは要らぬッ!!この世全ての世界から消え去るがいいッ!!!!』

 

 

ツヴァイW『生憎だが、消えるのは……!』

 

 

『TORNADO!MAXIMUMDRIVE!』

 

『LIGHTNING!MAXIMUMDRIVE!』

 

『SHADOW!MAXIMUMDRIVE!』

 

『BLAZE!MAXIMUMDRIVE!』

 

『FANG!MAXIMUMDRIVE!』

 

『GROUND!MAXIMUMDRIVE!』

 

『SNIPER!MAXIMUMDRIVE!』

 

 

ディケイド戦国CP『お前の方だ、邪武者ぁッ!!』

 

 

『ZWEI!KAMENRIDE:MUSHA!』

 

 

邪悪なオーラを身に纏い、最大の一撃を放とうとしている邪武者ディケイドを迎え撃つべく、ツヴァイはツヴァイリボルバーに六つのガイアメモリを一度に装填し、ディケイドもベルトのケータッチを操作し自身の隣に再び一人の武者ライダーの残像……武者ツヴァイを召喚して実体化させ、更に左腰のライドブッカーから三枚のシルエットのみのカードを取り出すと、絵柄が消えた三枚にツヴァイの力が宿り、その中から一枚のカードを抜き取って右腰のバックルに装填する。

 

 

『FINALFORMRIDE:Z・Z・Z・ZWEI!』

 

 

ディケイド戦国CP『ちょっとくすぐったいぞ……!』

 

 

―ドンッ!―

 

 

武者ツヴァイ『ウッ!』

 

 

再度響く電子音声と共にそう言いながら武者ツヴァイの背後に回り込んで背中に手を伸ばすと、なんと武者ツヴァイの右半身と左半身が割れ、存在しない半身を補って二人の存在へと分離していき、黒のツヴァイと緑のツヴァイ……『ファングファング』と『トルネードトルネード』に超絶変形し、更にカードをもう一枚取り出して右腰のバックルに装填した。

 

 

『FINALATTACKRIDE:Z・Z・Z・ZWEI!』

 

 

邪武者ディケイド『何をしようとも無意味だァッ!!二人諸共っ、無間奈落へと堕ちるがいいィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイッッッッッ!!!!!!!!!』

 

 

―シュウゥゥゥゥゥッ……ドッッッバァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーアアァンッッッッッッッッ!!!!!!―

 

 

ツヴァイW(ライト)『智大ッ!!』

 

 

ツヴァイW『ああッ!!』

 

 

漆黒のエデンオーライザーからの莫大なエネルギーと、自身の赤黒色のオーラをマテリアル・ストライクとロードブレイドの刃に注ぎ込み、五十メートルは軽く越える両手の漆黒の光刃を二人に目掛けて振りかざす邪武者ディケイド。

 

 

しかしそれに対しツヴァイも冷静さを崩さず、天井や壁を破壊しながら自分達に迫り来る漆黒の光刃を真っすぐ見据えたままツヴァイリボルバーの銃口に六つの光を収束させていき、漆黒の光刃の向こう側に立つ邪武者ディケイドに狙いを定め、そして……

 

 

 

 

ツヴァイW『――ツヴァイシューティング……』

 

 

―バァアアアアンッ!!!バリィイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイィィンッッッッ!!!!!―

 

 

邪武者ディケイド『――ッ!!!?なんっ……―バキュウウゥッ!!!―ガァアアアアアアアアアッ!!!?』

 

 

 

 

カウンターショット。二つの漆黒の光刃が重なる瞬間を狙い、静かに引き金を引いてツヴァイリボルバーから撃ち出された一発の弾は、ディケイドとツヴァイの目前にまで差し迫っていた漆黒の光刃を意図も易く真っ二つに砕き、その先に待つ真のターゲットである邪武者ディケイドの右肩を貫いたのだった。

 

 

そして、ディケイド、ファングファングとトルネードトルネードもその隙を見逃さずに同時に空高く跳躍し、肩を貫かれて怯む邪武者ディケイドに向かって跳び蹴りの態勢を取り……

 

 

 

 

ディケイド戦国CP『エクストリーム・ツヴァイッ……!!!!』

 

 

『『『ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!!』』』

 

 

―ドグォオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオォォォンッッッッ!!!!!!!!―

 

 

邪武者ディケイド『ッッッッ!!!?ウッ、ぐぁ……ウゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!?』

 

 

 

 

ディケイド、ファングファング、トルネードトルネードのトリプルキック……エクストリーム・ツヴァイが邪武者ディケイドに見事に炸裂し、邪武者ディケイドはそれをかわす事も凌ぐ事も出来ず、悲痛な叫び声を上げながら後方の壁を突き破って吹き飛んでいったのだった。

 

 

―スタッ!―

 

 

ディケイド戦国CP『ッ……ふぅ……ふぅ……これで、終わった、か……?』

 

 

ツヴァイW『――ああ、多分な』

 

 

ポンッと、そう言いながら邪武者ディケイドが突き破った壁を険しげに見つめるディケイドの肩を背後から軽く叩くツヴァイ。そしてディケイドもそれでやっと終わったと実感したか、肩に張った緊張が解けたように溜め息を吐いてツヴァイの手を借りながら徐に立ち上がり、仮面に付いた汚れを拭って邪武者ディケイドが消えた暗闇ばかりが広がる穴の向こうをツヴァイと共に見つめていた。其処へ……

 

 

『――ツヴァイ!!』

 

 

「智大さぁーーーんッ!!」

 

 

ツヴァイW『……!』

 

 

背後からツヴァイを呼ぶ声が聞こえ、二人がそちらの方に振り返ると、其処には神樹の核として捕らえられていた信長とカガミを連れ駆け寄って来る、アマツとヒビキの姿があった。

 

 

ツヴァイW『カガミ……!無事だったか……』

 

 

カガミ「はい……!アマツとヒビキのおかげで、どうにか……!」

 

 

アマツ『……で、そっちは?もう終わったのか?』

 

 

ツヴァイW『一応な。後はこの神樹をどうにかすれば、この事件も漸く片が付く』

 

 

ヒビキ「こ、この樹をですか?それはちょっと、骨が折れそうというかっ……」

 

 

この神樹の馬鹿でかさを直に見てるからか、何となしにそう呟くツヴァイに思わず苦笑を浮かべるヒビキ。ディケイドもそんな四人の姿を横目に僅かに微笑すると、同じくツヴァイ達を見て何処か複雑げに笑う信長の下へと歩み寄っていく。

 

 

ディケイド戦国CP『信長……』

 

 

信長「……漸く、終わったな……お前が無事で、本当に良かった……」

 

 

ディケイド戦国CP『……すまない……俺はアイツごと……武者ツヴァイや、他の武者ライダー達を……』

 

 

信長「…………」

 

 

この世界や、国や、民達、そして主達を守る為、残された力を自分に託し邪武者ディケイドと一緒に消えた武者ライダー達。信長達を助ける為とは言え、自分はこの手で奴ごと彼等を破壊してしまった。僅かに顔を伏せて謝罪するディケイドに対し、信長は一度足元に視線を落とした後、顔を上げてディケイドに告げた。

 

 

信長「……彼奴らは、最後の最後まで、我等に忠義を尽くしてくれた……お前という希望を託し、この戦国世界を救ってくれたのだぞ?そんなお前を、どうして我が責められる?」

 

 

ディケイド戦国CP『…………』

 

 

信長「だから……彼奴らが希望を託したお前が、その姿で、彼奴らの代わりに受け取ってくれ……我等と、民達と、この世界への忠義……大儀であった」

 

 

ディケイドと、ディケイドを通して、この戦国世界を救う力を託してくれた武者ライダー達に感謝の言葉を贈って微笑む信長。そんな彼女の顔を見てディケイドもマスクの下で微かに息を呑むと、一瞬だけ口を閉ざし、信長から顔をそらして言葉を紡いだ。

 

 

ディケイド戦国CP『そんな大層な言葉、代わりとは言え、俺なんぞに贈る物じゃないだろ。俺はただアイツ等の願いを叶えてやっただけだし……』

 

 

信長「そうか?その割には、我を助けに此処まで来てくれたり、あの娘達を身を呈して庇ったりと、お主も負けず劣らず頑張っていたと思うが?」

 

 

ディケイド戦国CP『智大達に余計な負担や心配まで掛けさせたんだ、利口なやり方じゃなかったのは自覚してる。それに……』

 

 

スッ……と、徐に信長の顔に手を伸ばすディケイド。あまりに突然だったために信長は驚いてビクッと肩を震わせるが、ディケイドは構わずそんな信長の頬に付いた汚れを出来るだけ優しく拭い取る。

 

 

ディケイド戦国CP『……俺はただ、お前が無事だったならそれで十分だ。他には何もいらん……』

 

 

信長「ッ……!なっ……ふ、ふん……またそれっぽいことを言って……また我をからかうつもりかっ?」

 

 

ディケイド戦国CP『そんなつもりはない。一応は……まぁ、なんだ……散々認めないだの何だの言ってきたが、形式上だけとは言え、俺とお前は夫婦関係だし、俺だってお前にはそれなりの情を抱いてるんだ……妻のお前が危険な目に遭えば、命掛けてでもお前を助ける責任が夫の俺にはあるし……単純な話、自分の女が無事で、喜ばない男がいる筈ないだろ……』

 

 

きっかけは確かに最悪ではあったし、普通の夫婦がお互いに抱くであろう確かな愛情があるとは言い難いが、仮にもこんな自分の妻に初めてなってくれた女性なのだ。

 

 

短い夫婦関係ではあるが、せめて夫として、離婚するその時まで彼女には幸せであって欲しいという気持ちは確かにある。

 

 

だから彼女が無事である事は素直に嬉しいとその意味を込めて信長に伝えると、信長は面を喰らったように耳まで顔を赤く染め上げていた。

 

 

信長「ぅっ……ぁ……な、なんなのだ貴様はッ!人を小馬鹿にする食えん奴かと思えばっ、そんな急にいじらしくなってッ!こ、これでは、我もどう受け取ればよいか分からんではないかッ!///」

 

 

ディケイド戦国CP『はっ?いや、どう受け取ればいいかも何も、そのままの意味で捉えればいいだろうっ?俺は素直に思った事を口にしてるだけだし……』

 

 

信長「ぅっ、ぅぅううううっ……だったら尚更悪いわ馬鹿ァッ!!!!///」

 

 

ツヴァイW『……零、お前って奴は、なんていうか……相変わらずだな……』

 

 

ディケイド戦国CP『……は?な、何がだっ?』

 

 

アマツ『おい……まさか、自覚も無しに言ってんのか?こりゃまた、とんだ大物だなーオイ……』

 

 

ツヴァイW(ライト)『いいかい、二人共?ああいうのを全方位型フラグ建築士というらしい。君達も十分に気を付けるんだ。一般的にああいうのは一度気を許すと何処までも女性の女心を弄ぶ、危険で冷徹な人間だから』

 

 

カガミ「は……はい……」

 

 

ヒビキ(……というか、刀夜君にもその片鱗がちょっと見られるような気が……)

 

 

ディケイド戦国CP『だから一体何の話だッ?!というか其処ォッ!!人を悪人かなんかみたく人様に吹き込むなァッ!!』

 

 

ツヴァイ(ライト)に失礼窮まりない事を吹き込まれたせいでビクビクと怯えた目で自分を見つめるカガミを見て、内心若干傷付きながらもツッコミを入れるディケイド。信長も信長で耳元まで赤く染まった顔を両手で隠してディケイドから顔を逸らてしまっており、そんな一同の様子を苦笑いと共に楽しんで見ていたツヴァイは両手を叩いて一同の意識を自分に向けさせた。

 

 

ツヴァイW『ま、取りあえず続きはこの神樹を焼き払ってからだ。大輝達も外で待っているだろうし、さっさと此処を出て―――』

 

 

 

 

 

 

 

 

―…………ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォオオッッッッッッッッッ……………………………!!!!!!!!!!!―

 

 

『――ッ!!!?』

 

 

カガミ「きゃっ?!」

 

 

ヒビキ「な、なに?!地震?!」

 

 

 

 

神樹を片付ける為に一度外に出ようとディケイド達に提案しようとしたその時、主である邪武者ディケイドを失って機能を停止した筈の神樹カーラーンが突如激しく揺れ出し始めたのだ。一同も突然の事に対応が遅れバランスを崩し倒れそうになるも、何とかお互いに支え合って倒れるのを防ぎ、ディケイドとツヴァイは険しげな表情で顔を見合わせた。

 

 

ディケイド戦国CP『これは……智大、まさかっ……!』

 

 

ツヴァイW『ああ……あんにゃろぉ、まだしぶとくっ――――!』

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――来い……スペリオルゥウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!』

 

 

―ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアアァァンッッッッッ!!!!!!!!!―

 

 

アマツ『ッ?!!な、何だッ!!?』

 

 

信長「ゆ、床がッ!!?うわぁあッ!!!」

 

 

ディケイド戦国CP『ッ!信長ぁッ!!』

 

 

一同が動揺を浮かべる中、神樹中に響き渡った悲鳴にも似た雄叫び。その直後、ディケイドとツヴァイ達の足元の床が爆発するように弾け、ディケイド達はそれに巻き込まれ掛けた信長達の手を咄嗟に掴んでその場を離れ、弾け飛んだ床へと視線を向ける。

 

 

すると其処には、自分達が今の今まで立っていた場所が巨大な穴ができ、その穴の真下から巨大な漆黒の竜……黒いクロノス・スペリオルフォームが姿を現した。

 

 

ディケイド戦国CP『ッ?!スペリオルフォームッ?!』

 

 

『――――まだだ……まだ終わらせん……こんな事で、『我らが夢』は終わらせんぞォオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!!!!』

 

 

アマツ『ッ!この声っ、やっぱ邪武者ディケイドかよッ!!』

 

 

ツヴァイW『なんっつー執念だよ、ったくっ……!!』

 

 

あれだけの技を叩き込まれ倒されても可笑しくはないダメージを受けているハズなのに、執念深く姿を変えてまで床を突き破って現れ、憎しみの雄叫びを上げる黒いスペリオルフォーム……邪武者ディケイドが変身した邪武者ディケイド・スペリオルフォームを目の当たりにし流石に驚愕を隠せない一同だが、スペリオルフォームは狭い室内にも関わらずその巨大な両腕の爪をがむしゃらに振るってディケイド達へと襲い掛かり、そして……

 

 

『グゥウウウウウルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッッッッ!!!!!!』

 

 

―ドゴォオオオオオオオオオオオオオォォオンッッッッ!!!!!!!―

 

 

『『『グッ!!!!?ウァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!』』』

 

 

―バゴォオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオォンッッッッッ!!!!!!!―

 

 

信長「ッ!!?れ、零ぃッ!!!」

 

 

ヒビキ「と、刀夜君ッ!!!智大さんッ!!!」

 

 

信長達を守りながらに加え、こんな狭い室内で巨大な両腕による攻撃を避け切れる筈がなく、三人はスペリオルフォームの鋭爪をまともに受けて天井を突き破りながら神樹の頂上を目指し吹っ飛んでしまい、それを追うようにスペリオルフォームも背中の翼を羽ばたかせて神樹の頂上に向かって飛び立っていったのだった。

 

 

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole⑦

 

―神樹カーラーン・頂上―

 

 

―ドグォオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオォンッ!!!―

 

 

アマツ『グァアアアアアアアアアアアァッ!!!』

 

 

ディケイド戦国CP『グウゥッ!!』

 

 

ツヴァイW『チィイッ!』

 

 

神樹カーラーン頂上。スペリオルフォームに変身した邪武者ディケイドによって何層もの天井を突き破りながら勢いよく吹き飛ばされてしまった三人は、最後の天井を突き破ってその場所にまで打ち上げられていた。そして三人が勢いを殺せないままゴロゴロと地面を転がり、ふらつきながら起き上がる中、三人を吹き飛ばした邪武者ディケイド・スペリオルフォームも天井を突き破ってその場に飛び出し、天に向かって吠えるように叫んだ。

 

 

『カーラーンよォッ!!!我に全ての力を寄越せぇッ!!!天下を統一する神の力を、この身にィイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!!!!!』

 

 

―ドバァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアアアァンッッッッ!!!!!!!―

 

 

邪武者ディケイド・スペリオルフォームが天に向けて怒号を上げると共に、それに呼応するように無数の木の根と蔓が神樹カーラーンから伸びて邪武者ディケイド・スペリオルフォームを飲み込み、やがて徐々に巨大化しながら何かを形作り、無数の木の根と蔓で形成された巨大な邪武者ディケイドの上半身……荷葉座(かしょうざ)・邪武者ディケイドへとその姿を変貌させたのであった。

 

 

アマツ『?!アイツ、巨大化しやがったっ?!』

 

 

ディケイド戦国CP『神樹と一体化したのか……面倒なっ……!』

 

 

『ウゥゥオオオオオオオオオオオオオオオァアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!!!!今度こそ滅するがいいッッッッ!!!!!!我が力、この神樹の力によってぇええええッッッッッ!!!!!!!!』

 

 

神樹カーラーンと一体化し巨大化した荷葉座・邪武者ディケイドを見上げて三人が驚愕する中、荷葉座・邪武者ディケイドはその巨腕の手に巨大化した天将刀を出現させて握り締めると、まるで芝生の草を刈り取るかのように天将刀を横薙ぎに振るい、それを目にした三人は咄嗟に転がるように跳び退いて天将刀をかわすが……

 

 

―シュバァアアアアアアアッ!!!!―

 

 

ツヴァイW『……ッ!―ガシィッ!―グッ!』

 

 

アマツ『な、何ッ?!グァッ!!』

 

 

ディケイド戦国CP『ッ?!智大ッ!アマツッ!』

 

 

ツヴァイとアマツが瞬時に態勢を立て直して反撃に出ようとしたその瞬間、不意に二人の足元から無数の蔓が伸びて二人の両足に絡み付いて動きを封じてしまい、更に荷葉座・邪武者ディケイドの身体からも無数の植物が飛来してツヴァイとアマツに巻き付き、完全に身動きが取れなくなってしまったのだった。

 

 

一人だけどうにか無事だったディケイドはそれを見てすぐさま二人を助け出そうと駆け出すが、それを阻むように荷葉座・邪武者ディケイドが素早く巨腕を伸ばしディケイドを神樹の頂上から吹っ飛ばしてしまう。

 

 

ディケイド戦国CP『しまっ……?!うぉおおおおおッ?!!』

 

 

アマツ『グッ!ディケイドッ!』

 

 

ツヴァイW『ったく、何処までも手間を掛けさせるッ!』

 

 

頂上から投げ出され、地上に目掛け落下していくディケイドを見てアマツが叫ぶ中、ツヴァイは拘束されたまま懐からビートルフォンを取り出して操作を行っていく。すると……

 

 

―ガシャンッ!ウイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィインッ……!―

 

 

神樹の真下で停止していたツヴァイギャリーのボディが左右に開き、ギャリーの中に収納されてある一つのユニット……ディケイダーの換装ユニットのウィングガードが独りでに起動して飛び出し、地上に向かって落下して来るディケイドの下へと飛翔していったのであった。

 

 

ディケイド戦国CP『ッ?!アレは……?!』

 

 

落下中のディケイドも自分の下へ自動操縦で向かって来るウィングガードの姿に気付いて困惑の表情を受かべる中、ウィングガードはディケイドと並走して背中に回り込み、なんと徐々にその形状を変形させてディケイドの背中にドッキングしたのだった。

 

 

ディケイド戦国CP『なっ……?!コイツ、こんな機能まで備わってたのか?!』

 

 

自身の背中にドッキングしたウィングガードを目にし驚愕するディケイドだが、今は驚いてる場合ではないとすぐさま気を取り直してウィングガードのスラスターからバーニアを噴出させ、なんとか態勢を立て直し、自分が落ちてきた神樹の頂上に目掛けて猛スピードで飛翔していった。

 

 

―ギリギリギリギリギリギリギリィイイッ!!!!―

 

 

アマツ『グァアアアアアアアアアッ!!グッ、こい、つっ……!!!!』

 

 

『次は貴様等だッ……!!!!今度は塵も残さず消滅させてやるぞォオッ!!!!!!』

 

 

ツヴァイW『チッ……』

 

 

そしてその一方、ツヴァイとアマツは未だ神樹の蔓に捕らえられて身動きひとつ取れない状態にあり、荷葉座・邪武者ディケイドはそんな二人にトドメを刺そうと額のポインターに膨大なエネルギーを凝縮させ巨大なエネルギー弾を形成していき、その万事休すの状況にツヴァイも思わず舌打ちしてしまうが、その時……

 

 

 

 

 

―ドシュゥウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!チュドォオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオンッッッッ!!!!!―

 

 

『ヌゥオォッ!!!!?』

 

 

アマツ『?!な、何だっ?』

 

 

荷葉座・邪武者ディケイドの額のポインターからエネルギー弾が撃ち出されようとした直前、上空から突如無数のミサイルが飛来して荷葉座・邪武者ディケイドの顔面に直撃していったのであった。

 

 

荷葉座・邪武者ディケイドも突然襲った爆発と黒煙に顔を覆われもがき苦しみ、アマツもその様を見て驚く中、上空から今度は二つの紅い閃光が降り注いで二人を拘束する蔓を焼き払い、その張本人……ウィングガードを装備したディケイドは二人の間に降り立った。

 

 

アマツ『ディケイド?!』

 

 

ツヴァイW『よぉ、おかえり。どうだった?ウィングガードの新ギミックは』

 

 

ディケイド戦国CP『悪趣味にも程があるだろっ、改造を加えていたならどうして先に言ってくれなかったんだっ』

 

 

ツヴァイW『そりゃ、そうした方が面白そうだからに決まってんだろう?土壇場でいきなりの変形!なんて感じになればお前が驚くかと思ったんだが、この目で直接反応を見られなかったのは残念だったなぁ』

 

 

ディケイド戦国CP『ハァ……まぁ、おかげで助かったのは確かだからあまり強くは言えんが、それにしたって―――』

 

 

―ブオォオオオオオオッッッッッ!!!!!!―

 

 

『ヌゥウウウウエェアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!!』

 

 

ツヴァイに感謝はしつつも、密かにウィングガードに新ギミックを加えていたのを黙っていた事に関しては頭を抑えるディケイドだが、その時、荷葉座・邪武者ディケイドが左腕で顔面を覆う黒煙を全て払い退け、その奥から巨大な複眼を妖しげに輝かせながら三人に目掛けて天将刀を振りかざした。

 

 

―ドッシャアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアアァンッッッッッッッ!!!!!!!!!―

 

 

ツヴァイW『チィッ!とにかく愚痴なら後で幾らでも聞いてやるッ!今はコイツを止めるぞッ!』

 

 

ディケイド戦国CP『あぁっ、りょーかい、だッ!!』

 

 

―バシュウゥウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!―

 

 

そんな軽口を叩き合いつつ、ディケイドはツヴァイとアマツと散開しながら背中に装備したウィングガードの武装の一つのヴェスバーから二つの紅い閃光を撃ち放ち、荷葉座・邪武者ディケイドの気を自身に向けさせてウィングガードによる機動力で翻弄していく。

 

 

その隙にツヴァイもビートルフォンを再度操作すると、ツヴァイギャリーに待機させていた飛行ユニットを装備済みの自身のマシンを呼び出して搭乗し、神樹の上空を縦横無尽に駆け回りながらツヴァイリボルバーによる銃撃で荷葉座・邪武者ディケイドに挑む。

 

 

そしてそれに続くように、荷葉座・邪武者ディケイドの放つ無数の蔓を必死に避け続けていたアマツも単身で突っ込もうとした、その時……

 

 

 

 

 

―メキッ、メキメキメキッ……バゴオォオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーオオォォンッ!!!!!!―

 

 

『―――ッ!!!?ヌゴォアアアアッ!!!?』

 

 

アマツ『ッ!アレは?!』

 

 

 

 

荷葉座・邪武者ディケイドの真下から突如巨大な何かが勢いよく飛び出し、荷葉座・邪武者ディケイドの顎に目掛け激突していったのだった。

 

 

あまりにも突然の不意打ちだった為に荷葉座・邪武者ディケイドも対応が間に合わず、もろに顎を打ちのめされて怯んでしまい、その隙に荷葉座・邪武者ディケイドの顎に激突した巨大な何か……アマツが神樹への突入に使った戦絡操(いくさからくり)・真月妃(マガツヒ)はアマツの背後へと降り立った。

 

 

アマツ『真月妃?!そうか、ヒビキの奴が……よし、これならっ!』

 

 

『KARAKURI BUSOU!YOROI NO KATA!』

 

 

突然現れた真月妃に驚愕しつつも、コレを寄越したのがヒビキの仕業だとすぐに悟って武の札を取り出し、ベルトにスキャンさせる。そして電子音声と共に分解した真月妃と合体してマガツヒフォームへと転身し、巨大な剣を振るって荷葉座・邪武者ディケイドの天将刀と激突していった。

 

 

―ガギイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィインッ!!!!―

 

 

『チィイイッ!!!!何処までも邪魔をする気かァアアッ!!!!』

 

 

アマツMF『ったりまえだろがッ!!カガミを利用した代償はキッチリと支払ってもらうぜッ!!』

 

 

ディケイド戦国CP『こっちも忘れてくれるなッ!!』

 

 

『CANCELA!RAIGA!SIRIUSU!KAMENRIDE:MUSHA!』

 

 

アマツがマガツヒフォームのスペックをフルに活用し荷葉座・邪武者ディケイドと渡り合う中、ディケイドが空を駆け巡りながら再びケータッチを操作して武者キャンセラー、武者ライガ、武者シリウスを召喚し、三人の武者ライダーは呼び出されて瞬時に超高速移動を開始して荷葉座・邪武者ディケイドへと素早く切り込んでいった。

 

 

超高速移動を用いて、武者キャンセラーが無効化の力を宿した刀を荷葉座・邪武者ディケイドの全身に叩き込んで少しずつ弱体化させていき、それに続くように耐久力が弱まった部分を武者ライガと武者シリウスがそれぞれの武器で引き裂きダメージを与えていく。

 

 

そしてその隙にツヴァイはパンドラビッカーに六本のメモリをセットし、ディケイドもライドブッカーからカードを取り出して右腰のドライバーにセットし掌で押し込んだ。

 

 

『TORNADO!MAXIMUMDRIVE!』

 

『LIGHTNING!MAXIMUMDRIVE!』

 

『SHADOW!MAXIMUMDRIVE!』

 

『BLAZE!MAXIMUMDRIVE!』

 

『FANG!MAXIMUMDRIVE!』

 

『GROUND!MAXIMUMDRIVE!』

 

『FINALATTACKRIDE:CA・CA・CA・CANCELA!』

 

 

ツヴァイW『コイツも持っていけッ!!パンドラエクスチャージッ!!!』

 

 

ディケイド戦国CP&武者キャンセラー『『ゼェエェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!』』

 

 

―ズババババババババババババババババァアアッ!!!!チュドォオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオオォンッッッッッ!!!!!!―

 

 

『ヌゥウウウウウウウゥッ?!!!!』

 

 

六本のガイアメモリが装填されたパンドラビッカーを突き出して、七色に光輝く巨大な砲撃を荷葉座・邪武者ディケイドに撃ち込んで怯ませるツヴァイ。そしてその隙にディケイドも武者キャンセラーと共に上空で無数に分身すると、無効化の力を宿した戦国ブレードと刀で目にも留まらぬ速さで襲い掛かり、荷葉座・邪武者ディケイドを切り刻み弱体化を更に促していく。が……

 

 

 

 

 

 

『――――このっ……いつまでも、図に乗るなァアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!!』

 

 

―シュウゥッ……ドッッッバァアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアァアンッッッッッ!!!!!!!!―

 

 

ディケイド戦国CP『ッ?!何ッ?!』

 

 

ツヴァイW『グゥッ?!』

 

 

アマツMF『ウォオオオオッ!!?』

 

 

 

 

 

 

今まで追い込まれていた荷葉座・邪武者ディケイドが突如天を仰ぎながら怒号を飛ばし、その巨体から膨大なエネルギーを放ち出したのだった。

 

 

それは広範囲の真紅のエネルギー波となって広がって三人を吹き飛ばしてしまい、更にはディケイドが召喚した武者ライダー達までもが打ち消されてしまうが、三人はどうにか態勢を立て直して合流しエネルギー波に堪えながら荷葉座・邪武者ディケイドに再び視線を向けると、其処には荷葉座・邪武者ディケイドが天将刀を頭上に掲げ、その刃身に信じられない量のエネルギーを収束させていく姿があった。

 

 

『最早加減は無しだッッッ!!!!!!!この国土諸とも、貴様等を纏めて葬り去ってくれるわァアッッッ!!!!!!!!』

 

 

―ギュイィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッ!!!!!!!!!―

 

 

最早手段は選ばぬと、神樹カーラーンからも莫大な量のエネルギーをかき集めて天将刀へと収束させていく荷葉座・邪武者ディケイド。

 

 

そのあまりにも巨大な力は神樹だけでなく空をも揺れ動かし、空間を歪めていき、三人はその力の余波を肌で直接感じて全身の鳥肌が総立ちしていくのを感じながら、本能が叫んでいるのを感じていた。

 

 

アレを撃たれれば、自分達はともかく、この国の全てが焼き尽くされてしまうと。

 

 

アマツMF『クッ……!ア、アイツ、正気かっ?!本気であんなのを撃つつもりかよっ?!』

 

 

ツヴァイW『寧ろ、良く今まで撃たなかったなと疑問だったがな。神樹を使った天下統一の惨状を見ても、アイツにとっちゃこの世界の人間や国がどうなろうが知ったこっちゃないのは一目瞭然だったし』

 

 

ツヴァイW(ライト)『最初からアレを使っておけば、一気に勝負も片が付いてただろうしね。……それとも、何か"撃てなかった理由"が彼にあったのか……或いは――』

 

 

ディケイド戦国CP『推理なら後にしろッ!!それよりもどうやって止めるッ?!アイツ、本気でアレをぶっ放すつもりだぞッ?!』

 

 

エネルギーの収束の余波に必死に堪えながら荷葉座・邪武者ディケイドの攻撃をどうやって阻止するべきか必死に思考を駆け巡らせる三人だが、武者キャンセラーの無効化の力で幾分か弱体化させるとは言え、まだあの巨体を倒し切るまでには至っていない。

 

 

今からどんなに攻撃を仕掛けても瀕死にまで追い込められるだろうが、恐らく奴も死なば諸共の覚悟でアレを放って来るに違いない。そうなっては、最早アレを食い止める手段はないのだ。

 

 

一体どうするべきか。どんなに考えても結局は其処に後戻りしてしまう今の状況に三人が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる中、荷葉座・邪武者ディケイドは空気を重たく震動させながら莫大なエネルギーを溜め込んだ天将刀を振り上げ、国土諸とも三人を葬り去ろうとした。次の瞬間……

 

 

 

 

 

 

 

 

―……ブザァアアアアッッッッ!!!!!!シュパァアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!―

 

 

『――――ッ!!!?な、何ィッ!!!?』

 

 

ツヴァイW『……?!』

 

 

アマツMF『な……なんだ、急に……?』

 

 

ディケイド戦国CP『邪武者の胸に……風穴が……?』

 

 

 

 

そう、真紅に光輝く天将刀を振り下ろそうとした瞬間、突然荷葉座・邪武者ディケイドの胸に前触れもなく巨大な穴が開き、其処から無数の赤い粒子が勢いよく噴き出したのである。

 

 

まるで鮮血のように胸から粒子を撒き散らす荷葉座・邪武者ディケイドのその姿を見て、三人もいきなりの事に呆然となり、荷葉座・邪武者ディケイドも自身の身に起きたアクシデントに驚愕を隠せずにいたのだった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

―神樹カーラーン内部―

 

 

―ガギィイイイイッ!―

 

 

信長「ぐぅううっ!!」

 

 

ヒビキ「の、信長さん?!」

 

 

カガミ「大丈夫ですか?!」

 

 

信長「っ……心配するな、少し弾かれただけだからな……それに、どうやら傷はちゃんと付けられたようだぞ?」

 

 

同じ頃、カーラーン内部。其処には、ディケイド達が頂上に吹き飛ばされて取り残された信長達三人の姿があり、彼女達は今、信長とカガミが捕らえられていた神樹の核が存在する広場にまで戻ってきていた。

 

 

そして信長は、何故か片膝を付いて苦悶の顔を浮かべ、その手にはディケイドとツヴァイに倒された時に邪武者ディケイドが落としたブラッドライドブッカーSモードを握り締めてふらつきながら身を起こし、正面……中央に大きな亀裂が走る神樹の核を見据えながら、ゆっくりと剣を構えた。

 

 

信長「やはり一撃程度では、簡単には壊ぬか……だがこいつを壊せば、少なからず零達に戦況が傾く筈……二人共!もう一度だ!頼むぞ!」

 

 

ヒビキ「は、はいっ!」

 

 

カガミ「智大さん達を助けられるなら、幾らでも手を貸しますっ!」

 

 

ブラッドライドブッカーを中段に構える信長の背中に回り込み、それぞれの両手を信長の左右の肩の上へと置き、何かを念じるように瞼を閉じるヒビキとカガミ。

 

 

すると、二人の身体から念のようなオーラが浮かび上がり、オーラはゆっくりと信長の身体へ、其処から更にブラッドライドブッカーに流れ込んでいき、剣の刃が極光を身に纏って眩い光を放っていく。

 

 

信長「よし……十分に離れておれよ?今度、こそっ!」

 

 

ダァンッ!と、力強く足の裏で地面を蹴り付けて勢いよく飛び出し、核に目掛けブラッドライドブッカーを振りかざし、そして……

 

 

信長「破ぁああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!ぜぇああぁッ!!!!」

 

 

―バリィイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーイイィンッッッッッ!!!!!!!―

 

 

気合一刀。上段から振り下ろされた光の刃は真っすぐと神樹の核に打ち込まれ、無数の結晶を撒き散らして粉々に砕け散っていったのだった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

―神樹カーラーン頂上―

 

 

―バシュウゥウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!―

 

 

『ウ……ウゥグァアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!?な、何だッッッ!!!!?一体何が起きたァアッッッ!!!!!?』

 

 

そして場所は戻り、荷葉座・邪武者ディケイドの胸に開いた風穴が更に大きく開かれ、荷葉座・邪武者ディケイドは胸の風穴から真紅の粒子を噴き散らしながら悲痛な悲鳴を上げて苦しみ続けていた。

 

 

アマツMF『な、何なんだ?何が起きてんだよ、アレ?』

 

 

ツヴァイW(ライト)『……あれは……まさか、神樹の力が暴走しているのか……?』

 

 

ツヴァイW『?何か分かるのか、ライト?』

 

 

ツヴァイW(ライト)『あくまで推論だけどね。だが、現に今の彼は今まで使い熟していたハズの神樹の力を御し切れず、苦しんでいる。理由は今一つ分からないが、一つ確かなのは――』

 

 

ディケイド戦国CP『あぁ、大体分かった……要するに今が、千載一遇のチャンスって事だろうッ!!』

 

 

何故かは知らないが、今の邪武者は神樹の力を完全に発揮出来なくなって暴走を引き起こし、先の一撃が放てない状態にある。

 

 

つまり今以上の好機はないのだと直ぐに悟り、ディケイドは戦国ブレードを投げ捨てて左腰のライドブッカーから一枚のカードを取り出して右腰のドライバーに装填し、アマツも同じくカード状の札を取り出してベルトにスキャン、ツヴァイはバックルのウィザードメモリの翼を一度閉じ、再び左右に開くように展開していった。

 

 

『FINALATTACKRIDE:DE・DE・DE・DECADE!』

 

『SAISHUU OUGI!』

 

『WIZARD!MAXIMUM DRIVE!』

 

 

『『『ハァアッ!!!!』』』

 

 

三つの電子音声が重なって響き渡り、それと共にディケイド、ツヴァイ、そしてアマツは真月妃との合体を解除し空高く跳び上がった。しかし、荷葉座・邪武者ディケイドも苦しみながら三人の姿を捉え、左手で顔を覆いながら右腕の天将刀を引いて突きの構えを取った。

 

 

『やらせはせんっ……やらせはせんぞォオッ!!!!漸く手に入れた天下人の座をッ!!!!神樹の力をッ!!!!『我等の夢』をッ!!!!貴様ら如きにィイイイイッッッッ!!!!』

 

 

苦しみで唸り、だが吠えるように叫ぶ荷葉座・邪武者ディケイドに目掛けて三人は跳び蹴りの態勢を取り、そして……

 

 

 

 

『やらせてなるものかァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアァァァッッッッッッ!!!!!!』

 

 

『『『ゼェエエリャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッ!!!!!!!』』』

 

 

―ズガァアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーアアアアァンッッッッッ!!!!!!!!―

 

 

 

 

咆哮と共に荷葉座・邪武者ディケイドが勢いよく突き出した巨大な天将刀の切っ先に目掛け、三人の必殺技……ディケイドの戦国ディメンジョンキック、アマツの天流脚、ツヴァイのツヴァイエクストリームが耳の鼓膜を裂くような轟音と衝撃波を発生させながら激突し、三人の右足と荷葉座・邪武者ディケイドの刀の間からまばゆい閃光と青色のスパークが巻き起こったのであった。

 

 

―バチィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!!!―

 

 

アマツ『グッ!コイツっ、暴走してるのにまだこんな力がっ?!』

 

 

『言った筈だァッ!!!!『我等の夢』はこの程度では終わらせんとッ!!!!貴様ら如きにっ……貴様ら如きになどォオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!!』

 

 

ツヴァイW『……てめぇが一体、何に対して其処までの執念を抱いているのかは知らねぇ……だがなぁッ!』

 

 

『FINALATTACKRIDE:MU・MU・MU・MUSHA RIDER!』

 

 

ツヴァイの言葉に続くように、ディケイドが天将刀にキックを打ち込んだまま更にカードを取り出して右腰のドライバーにセットする。そして次の瞬間、ディケイドの周囲に十五の残像達……三人と同じく跳び蹴りの態勢を取る武者ライダー達の残像が次々と出現し、荷葉座・邪武者ディケイドの天将刀を徐々に押し返していく。

 

 

『!!!!?な、何だとッ……!!!!?』

 

 

ディケイド戦国CP『―――お前に譲れない何かがあるように……こっちにも退けない理由があるんだよォッ!!!!』

 

 

ディケイドの怒号と十五人の武者ライダー達の残像と共に全力と気合いを込め、邪武者の天将刀を少しずつ押し返していく三人。次の瞬間……

 

 

 

 

 

 

―……パキッ……ピシッ、ビシィッ……バリィイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーイィンッ!!!!―

 

 

 

 

 

 

天下人の証である天将刀。その刀の刀身に巨大な亀裂が走り、刃が音を立てて真っ二つに蹴り折られたのであった。

 

 

『っ……!!!!?ば、馬鹿な、こんな……こんなっ――――!!!!?』

 

 

 

 

 

『『『ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!ダァアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!!!』』』

 

 

―ドッッッッッゴオォオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオォォンッッッッッッ!!!!!!!―

 

 

『……ァッ……あぁッ……グゥウアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアアアァッッッッッッッッ!!!!!!?』

 

 

 

 

 

天将刀を目の前で折られ、信じられないと驚愕し動揺する荷葉座・邪武者ディケイドの巨体をディケイド、アマツ、ツヴァイ、そして十五の武者ライダーの残像達のライダーキックが続け様に貫いていき、荷葉座・邪武者ディケイドは悲痛な悲鳴と共に巨大な大爆発を起こし、全身が激しい炎に包まれて炎上していったのだった。

 

 

―ボォオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!―

 

 

『ガッ…………ウァッ…………く、朽ちるっ…………神樹がっ……『我等の夢』がっ…………シャドウ様、たちのっ――――』

 

 

 

 

 

 

 

 

―……ふふっ、流石は我等の武者ライダーだな。忠義、大儀であった……―

 

 

 

 

 

 

 

 

『ァ――――…………違う…………『あの方』の…………『皆』の…………ゆ、め…………が…………』

 

 

ディケイド戦国CP『……?あの方……?』

 

 

全身が業火に焼かれながら、譫言のように何かを呟き虚空に手を伸ばしていく邪武者ディケイドの声が微かに聞こえて、ディケイドが思わず振り返ろうとした。その時……

 

 

 

 

―ボォオオォンッ!!!!ボォオオォンッ!!!!ボガァアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!!!!!―

 

 

 

 

アマツ『ッ?!う、うおッ!今度は何だッ?!』

 

 

全身から小規模の爆発を起こして炎上する邪武者ディケイドだけでなく、今度は三人の周囲一帯からも無数の爆発が発生し始めたのである。危うく爆発に巻き込まれそうになりディケイドとアマツが慌てて周りを見回す中、ツヴァイ(ライト)が何かを推理するように口を開いた。

 

 

ツヴァイW(ライト)『どうやら、樹の主である邪武者が倒された事で神樹を維持する力を失い、神樹自体も崩壊を始めたようだね』

 

 

アマツ『崩壊?!』

 

 

ディケイド戦国CP『……という事は、つまり……』

 

 

ツヴァイW『もう間もなく崩れるってこったな、ココ』

 

 

アマツ『冷静に言ってる場合じゃないだろっ?!急いでヒビキ達を連れて脱出しねぇとっ……!!』

 

 

邪武者ディケイドが倒された事で、神樹カーラーンももうすぐ崩壊する。そんな危機的状況とは裏腹に冷静に分析するツヴァイにそう言いながらアマツは慌ててヒビキ達の下に急ぎ、それに続くようにツヴァイも後を追って駆け出すが、ディケイドだけは何故かその場に留まって業火に焼かれていく邪武者ディケイドをジッと見つめていた。

 

 

ツヴァイW『……?零?何やってる!急げ!』

 

 

ディケイド戦国CP『……ああ』

 

 

三人が吹き飛ばされた際に突き破った穴から飛び降りようとした直前のツヴァイに呼び掛けられ、ディケイドは短く答えながら最後にもう一度邪武者ディケイドを一瞥してツヴァイの下に駆け出し、そのまま穴から飛び降りて元の場所にまで戻っていった。其処へ……

 

 

信長「零!」

 

 

ヒビキ「皆さん!無事ですか?!」

 

 

同じタイミングで神樹の核を破壊した信長達もその場に駆け付け、三人の下へと駆け寄ってきた。

 

 

ツヴァイW『何とかな……お前達も無事だったか?』

 

 

カガミ「はいっ。だけど、この揺れと遠くから聞こえてくる爆発音は一体……?」

 

 

アマツ『詳しい話は後だ!とにかく今はこっから脱出するぞ!』

 

 

そう言いながら、アマツとツヴァイは先程の戦闘でも使用した真月妃とマシンを呼び寄せてヒビキとカガミを乗せていく。そしてディケイドも信長を抱えようと手を広げる、のだが……

 

 

ディケイド戦国CP『……おい……おい信長……』

 

 

信長「な、なんだ……?」

 

 

ディケイド戦国CP『なんだじゃないだろッ!何で俺が近づく度に離れるんだッ!さっさとこっち来て掴まれッ!なに恥ずかしがってるんだッ?!』

 

 

信長「は、恥ずかしがってなどおらんわッ!だ、ただ、あの、だからっ、ど、どどどど何処に掴まればいいか分からなくて……!」

 

 

ディケイド戦国CP『普通に首にでもしがみつけばいいだろうがッ!とにかく急げッ!時間ないんだぞッ!』

 

 

信長「ぁ、うぅ……デアルカ……じゃ、じゃぁ……」

 

 

ツヴァイW『気を付けろよ~信長ちゃーん?零の奴は別名歩く生殖器とも呼ばれてるから、触れただけでも妊娠しちまうぞー?』

 

 

信長「にんッ……!!?」

 

 

ディケイド戦国CP『こんな状況でタチの悪いジョークかますなッ!!あとお前も真に受けて離れようとするなぁッ!!』

 

 

お前らは揃いも揃って俺をなんだと思ってんだと心外に思いつつ、とにかく何故か自分に近づく事にわたわたしてる信長を半ば強引に抱き抱え、三人は崩壊していく神樹カーラーンからの脱出を開始していくのであった。

 

 

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole⑧

 

 

―尾張国境・荒野―

 

 

―ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーオオォンッッ……ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーアァァンッッッッ!!!!!―

 

 

家康「……ッ?!神樹が!」

 

 

アルゴゾディアートがカンパネルラとノアールと共に撤退し、残るは有象無象に湧き出る怪人の大群を撃退し続けていたライダー達と連合軍。その最中、遠方にそびえ立つ神樹カーラーンが樹の全体から無数の爆発を起こしながら崩れ落ち、崩壊していくのが皆の視界の端に見え振り返っていく。そして……

 

 

『ッ!!!?ゥッ……アガ……ウゥアァアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーアアアァッッッッ!!!!?』

 

 

―シュウゥゥゥゥゥッ……―

 

 

ライダー達と連合軍が食い止めていた怪人達が一斉に突如苦しみ出し、まるで樹と共に消え去るかのように露となって消滅していったのだった。

 

 

トランス『!怪人達が……消えていく?』

 

 

ディエンド『どうやら、零と智大達が上手くやってくれたようだね……』

 

 

その光景を前にトランス達も肩で息をしながら愕然とした様子で佇み、同じく怪人と戦っていたディエンドはその原因が零達によって邪武者ディケイドが倒されたのだと直ぐに悟り、一息吐きながら爆発と共に崩壊していく神樹カーラーンに目を向けると、神樹の方角からこちらに飛来してくる三つの影……信長達を抱えたディケイド、ツヴァイ、アマツの姿があった。

 

 

聖桜『ッ!零、早瀬さん……!』

 

 

蘭丸「姫様っ!!」

 

 

長秀「姫様……!ご無事で……!」

 

 

信長「蘭丸……長秀、勝家……心配を掛けたな」

 

 

ゆっくりと、上空から地上に下り立つディケイド達の下に駆け寄ってくる仲間達と連合軍。ディケイドの腕から降りた信長も、よほど心配していたのか各々涙を浮かべる家臣達に柔らかい笑みを向けていくと、その後ろから秀吉と共に静かに歩み寄って来る光秀と幸村、そして家康の顔に気付き驚きを浮かべた。

 

 

信長「明智に真田……それに家康、お前まで……?」

 

 

家康「……ふん、別に貴様を助けた訳ではない。余はただ、貴様に請けた借りを返しただけに過ぎぬわ」

 

 

秀吉「……ハァ……貴女も素直じゃないわね……いい加減、自分の気持ちに正直になったらどうなの?」

 

 

幸村「あんま無茶言ってやんなよ、豊臣の大将さん。徳川の大将は東海一の石頭とも呼ばれてんだから、そう簡単に自分の本音開かすほど人間出来ちゃいねーだろうさ」

 

 

光秀「まー、石頭というか、単なる典型的なツンデレにしか見えなくてこっちが恥ずかしくなるッスけどねー。その辺ちゃんと自覚があるんスかね、この人?」

 

 

家康「ぴーちくぱーちく五月蝿いわ塵芥共ッ!!喧嘩売っとるのか貴様らッ!!」

 

 

やれやれと呆れる秀吉達に憤慨して食ってかかる家康。そんな彼女達の様子に目を見張って驚いていた信長も、徐々に穏やかな笑みを浮かべていく。

 

 

邪武者ディケイドと神樹という、この戦国世界を脅かす共通の敵の存在があったおかげとはいえ、本来なら戦国バトルロワイヤルで鎬を削る敵同士である武将達が集まり、談笑している。

 

 

恐らくその光景に、自分が夢見る天下統一の未来の姿を垣間見ているのかもしれないと、ディケイドはそう考えながら少し離れた場所からジッと信長の後ろ姿を見つめていた。

 

 

ディケイド戦国CP(まぁ、武者ライダー達も神樹もなくなった以上、必然的に戦国バトルロワイヤルもなくなった訳だしな。……其処から先、アイツ等がどうするかは――――)

 

 

武者ライダーがいなくなっても天下取りの戦を続けるか、或いはそれ以外の道を模索するのか……。それは当人達が決める事だが、願わくば消えていった彼等の意志を汲んだ選択がされることを切に願いたいと思うディケイド。と、その時……

 

 

―……シュウゥゥゥゥゥッ……―

 

 

ディケイド戦国CP『……!ケータッチが……?』

 

 

突然ディケイドのバックルにセットされたケータッチから、前触れもなく無数の粒子が立ち上り始めたのである。恐らく、邪武者ディケイドに取り込まれた武者ライダー達が消えた影響でその役目を終えたのだろう。ディライトのケータッチはそのまま完全に粒子と化して消滅し、それに伴って零も変身が解除された。

 

 

零(……すまん……だが、有り難う……お前達の力で、俺もコイツ等も、助けられた……)

 

 

直接言葉には出さず、瞼を臥せて胸の内で消えた武者ライダー達に礼の言葉を口にする。が、怪我と疲労も相まってそのままふらつき膝から崩れ落ちそうになるが、同じく既に変身を解除してたなのはが咄嗟に抱き留めた。

 

 

なのは「ちょっとっ!もぉっ、またこんな傷だらけになってっ……!また無茶な真似したんでしょっ?!」

 

 

零「っ……仕方ないだろっ……人命に関わる事だったし……ああしなきゃ、信長も智大の知り合いも助けられんかった訳だし……」

 

 

魚見「言い訳は聞きませんよ。……だから貴方が女性絡みの事件に関わると、ロクな事にならないんです」

 

 

零「あ?別にいいだろ……どうせロクな目に合わんのは俺なんだし……」

 

 

なのは「だからだよッ!」

魚見「だからでしょう」

 

 

零「……なんで其処で嫌に息が合うんだよ……というか――」

 

 

妙に息ピッタリにハモりながら怒鳴る二人から視線を逸らしながらなのはから離れると、零は先程から気になっていた、魚見の前に仰向けに倒れる人物に目を向けた。それは……

 

 

 

 

 

姫「ぅぅううう……きもちワルーイっ……うっぷぅっ……」

 

 

 

 

 

魚見が翳すヒーリングウィザードリングの治療を受けながら、額にタオルを乗せてグッタリ仰向けに倒れる人物……グロッキー状態の姫に目を向け、怪訝な表情で二人に視線を戻した。

 

 

零「……何があったんだ、コイツ……」

 

 

なのは「あ、えーっと……なんていうかぁ……」

 

 

魚見「あまり気にしないであげてください。ただ冥王の毒に当てられただけなので」

 

 

零「……毒……?」

 

 

言葉の意味が分からず小首を傾げる零だが、二人からすればあのメイオウロックシードによる暴走はあまり思い出したい記憶ではないので詳細は伝えず、なのはは苦笑いを、魚見は無言のまま姫の治療を続けていくと、そんな零の背後から、変身を解いた智大がライトと共に歩み寄ってきた。

 

 

零「智大、ライト……」

 

 

智大「よっ。お互い、どうにか無事に人質助けて生き延びれたな」

 

 

零「……そうだな。まぁ、脱出直前にいらん煽りさえなきゃ、もっとスムーズに脱出出来たんだが」

 

 

智大「固いこと言うな言うな、思いの他スリルあって良かっただろ?」

 

 

零「全然良くないッ!」

 

 

またカガミには怯えた目で見られるわ、信長は余計に自分に寄り付かなくなって脱出に手こずるわで散々な目にあったと文句を言う零。それに対して智大も飄々とした笑みで受け流すが、不意にその表情が真剣味を帯びた顔に切り替わった。

 

 

智大「けどまぁ、何もかも平穏無事に終わったとは言い難いよな。今回の事件も一先ず片付きはしたが……大輝の話じゃ、財団の幹部連中は取り逃がしちまったようだし」

 

 

零「……確かに、黒幕をふん捕まえられなかったのは痛いな……だが連中、今回は一体何が狙いで仕込んだんだ?」

 

 

ライト「……幹部達と直接対峙した彼等の証言から察するに、恐らく、邪武者と神樹のデータを集めて何者か……財団に協力を依頼したクライアントに渡す事が彼等の目的だったのだろうね。退く際、カンパネルラがそんな発言をしてたようだし」

 

 

零「クライアント、な……黒幕は一人だけじゃないってわけか……財団だけでも厄介なものを……」

 

 

智大「ま、その辺も戻ってから調査を続けるつもりだから安心しろ。俺達もこれ以上、連中の好きにさせるつもりはねぇさ」

 

 

零「そうしてもらえるなら助かる……何か分かった時は、俺にも知らせてくれ。その時は手を貸す。今回、連中にはまた借りが出来たからな」

 

 

智大「ああ、武者ライダーや信長ちゃん……いや……邪武者の件も含めて、か?」

 

 

零「…!」

 

 

智大にそう指摘され、零は僅かに息を拒み智大の顔を見た。どうして分かる?と、そんな表情を浮かべて。

 

 

智大「神樹から脱出する際、お前、妙に神妙な様子で邪武者を見てからな。何となく察しは付いてたさ……何か感じ入る物があったのか?奴に」

 

 

零「……さあな。ただ最期の瞬間、奴の―――」

 

 

 

 

 

 

―ドシャアアァッ!!!―

 

 

『……ッ!!!?』

 

 

 

 

 

 

零が智大の質問に対し言葉を紡ごうとした、その時であった。零と智大達の背後に突如凄まじい音が響き、零と智大達、お互いの無事を喜び合っていた信長達もその音がした方へと一斉に振り返ると、其処には……

 

 

 

 

 

 

邪武者ディケイド『…………ッ…………ぅっ…………』

 

 

 

 

 

 

智大「!お前は……!」

 

 

秀吉「邪武者ディケイドっ……!!」

 

 

そう、音の正体とは、崩壊した神樹カーラーンと運命を共にして消滅したと思われた今回の事件の元凶……零と智大と刀夜達に敗れ、上半身のみとなり、今にも消滅寸前となってる邪武者ディケイドが落下した音だったのだ。それを見た零達もまさか邪武者ディケイドが生きてたとは思わず驚愕する中、連合軍が零達の前に出てそれぞれの腰から刀を抜き取った。

 

 

幸村「コイツっ、まだしぶとく生きてやがったのかっ……!」

 

 

家康「ならば今度こそ、我等の手で引導を渡して息の根を止めてくれるわっ!!」

 

 

「おおっ!!!」

 

 

「殺された連中の仇だっ!!!」

 

 

「頸を跳ね飛ばしてやれぇっ!!!」

 

 

クロノス「え、ちょっと……」

 

 

零「おいっ、おい待てっ!ソイツは――――!」

 

 

仲間達と武者ライダー達の仇である邪武者ディケイドに自ら引導を与えんとし、次々と刀を抜き取っていく連合軍。そんな頭に血を上らせる彼等の姿を見て、零が連合軍の兵達を引き止めようとした。その時……

 

 

 

 

 

 

『―――止めろ』

 

 

 

 

 

 

『……!!?』

 

 

ピシャリッと、不意に突然、緊迫した空気になりつつあったその場に冷たい声が響き渡ったのだった。まるで、仲間達の仇の為に熱くなる彼等の頭を冷やす冷や水のように放たれたその一言を聞き、連合軍も思わず背筋が凍り付くような感覚に襲われて恐怖し、その声が放たれた方へ振り返っていく。其処には……

 

 

 

 

 

 

アマテラス『……………』

 

 

 

 

 

 

刀夜「……お前……?」

 

 

カガミ「き、霧之、さん?」

 

 

其処には、未だに変身した姿のまま、連合軍の兵達の後ろに空手で静かに佇むアマテラスの姿があったのだ。しかしその雰囲気は先程までトランス達と共に戦っていた時とは違い、何処か研ぎ澄まされた刃のような冷たさ、そして見た者を圧倒するようなとてつもない威圧感が放たれており、彼女と顔見知りである刀夜達も身に纏う雰囲気が一変してているアマテラスを見て目を見張る中、アマテラスが無言のまま変身を解いて霧之の姿に戻ると、彼女の顔を見た信長達の間にざわめきが広がった。

 

 

家康「き、貴様は?!」

 

 

幸村「え、ちょ、ま、まじッスか?!アンタ……!」

 

 

秀吉「――伊達……?伊達政宗公?!貴女なの?!」

 

 

ヒビキ「え?…………ええええええええええええええええッ!!!?」

 

 

なのは「だ、伊達政宗って、確か……!」

 

 

零「武者ディケイド軍の、武将だったって言う……?」

 

 

霧之「…………」

 

 

霧之の顔を見て、秀吉の口から飛び出た予想外の名前。それは、嘗て謎の襲撃によって壊滅したという武者ディケイド軍の武将であり、武者ディケイドの主君であった者の名……伊達政宗であると、霧之の顔を見てそう言い放たれ、それを聞いた零達も驚愕を露わに霧之を見た。

 

 

信長「伊達……貴様、生きて……」

 

 

霧之「…………」

 

 

半年前の武者ディケイド軍の壊滅から消息不明で、今の今まで死んでいたのだと思われた伊達政宗の生存に信長も愕然とした顔で霧之を見つめるが、霧之は周りの好奇の視線に目もくれず兵達を押し退けながら進み、瀕死の邪武者ディケイドの前に立ち、視線を合わすように腰を屈めた。

 

 

邪武者ディケイド『…………ッ!!?ぁ…………ひ…………姫、さま…………?』

 

 

そして、邪武者ディケイドも漸く霧之の顔を見て彼女の正体に気が付いたのか、驚きのあまり息を拒んでいる。その様子から、霧之が本当に伊達政宗であるのだと一同が認識させられる中、霧之は無言のまま邪武者ディケイドの手を静かに手に取った。

 

 

霧之「……すまん……すまぬ、我が武者よ……私が……私がもっと早く、この力を手に入れてさえいれば……お主に、こんな真似をさせずに済んだのに……」

 

 

ポツポツと、静かにそう語り始めた霧之の口調は先程までと違い、一個の武将としてのモノだった。

 

 

邪武者ディケイド『ひめ、さま…………』

 

 

霧之「……いいや、違うな……そもそも私自身に力が足りなかったから……皆を失い、お主を邪武者になど堕として……お主達を置き去りにして、ただ逃げる事しか叶わず……お主に向ける顔がなかったとは言え、今更、のこのこ顔を出した私を……赦してくれ……」

 

 

詫びるように、前髪で顔を隠して邪武者ディケイドに謝罪する霧之。だがそんな彼女に対して、邪武者ディケイドは首を振り、霧之の手を力無く握り返した。

 

 

邪武者ディケイド『いいえ……いいえ…………赦しを乞わねばならぬのは、私の方です…………外道に身を堕とし、貴女だけと心に決めていた…………ただ一人の主君の事さえ忘れ…………あまつさえ…………貴女と、殺された皆と共に追い求めた『夢』を汚した、この不忠義者を…………どうか、お許し下さい…………』

 

 

霧之「違う……違う!お主は決して不忠義者などではないっ!あの夜、お主や皆が身を呈して守ってくれたから今の私があるっ!お主や皆には感謝しても足らぬのだっ!なのにっ、なのに私はお主達に、何も―――!」

 

 

ライト「……そうか、そういう事か……漸く分かったよ。最後の最後の瞬間まで、邪武者ディケイドが自らこの世界に手を下せなかったワケが」

 

 

零「……どういう事だ?」

 

 

顎に手を添えながら何かを推理するライトにそう問い掛けると、ライトは親指を立ててこう説明した。

 

 

ライト「少しばかり憶測も混じってはいるが、恐らく財団は、武者ディケイドの伊達政宗への忠義心をそのままに利用したんだと思うよ。多分、邪武者としての力を与えたと共に、高度な記憶の改竄も行ったんだ。そして彼の記憶の中の伊達政宗を何者か……この場合、シャドウか例のクライアントに置き換える事で、それ以外の記憶はそのままに武者ディケイドは、本来伊達政宗に向けるべきであるハズの忠義心をその人物に向けて動いていた……」

 

 

智大「分かりやすく言えば邪武者ディケイド……いや、武者ディケイドは記憶を改竄された後に自身の主君を伊達政宗からシャドウ達にすり替えられてたって事か。だから、伊達政宗の夢だった天下統一の為に戦うのに疑問も抱かなかった……だが、もしかするとその辺りの境界線はアイツ自身も分かっていなかったのかもしれん。シャドウ達の企みの為に神樹の力を使えても、伊達政宗達が愛したこの世界を自分の手で壊す事は出来なかった、とかな。……何にせよ、色々な意味で不完全だった訳だ」

 

 

ライト「だが、その不完全のおかげで救われた部分もあるのは事実さ。そうじゃなきゃ邪武者はもっと早い段階、神樹の力を手に入れた時点でこの国土を焼き尽くしてた可能性もある……最も、財団の目的はデータ収集のようだったし、今回の件が成功しようが失敗しようがどうでもいいんだろうけどね」

 

 

零「…………」

 

 

つまり、邪武者ディケイドの政宗への忠義心を利用して神樹を手に入れ、それでも天下統一を果たせずとも財団には何の痛手もないという事。

 

 

そんな財団の非道を聞かされて零もなのは達も怒りで険しい表情を浮かべる中、邪武者ディケイドは霧之の顔を見上げ……

 

 

邪武者ディケイド『姫さま…………もし…………もし一つだけ、こんな汚れ切った私の望みを聞き入れて頂けるのなら…………一つだけ…………口にしてもよろしいですか…………?』

 

 

霧之「っ……?望み……?」

 

 

邪武者ディケイド『はい…………』

 

 

そう言って頷くと、邪武者ディケイドは握り締めてた霧之の手を放し、ゆっくりと霧之の頬に、粒子となって消え掛けている手を伸ばす。

 

 

邪武者ディケイド『どうか……御身を責めず、幸せになってください…………私は、貴女の武者ライダーとして、共に戦場を駆け抜けた日々に…………一片の、悔いもない…………ただ一つの心残りであった、貴女の健やかなお姿を見られた…………それだけで…………もう、思い残す事はない…………』

 

 

霧之「……ディケイド……」

 

 

邪武者ディケイド『…………犯した大罪は、外道の私自ら、地獄に堕ちて償います…………例えその先に、永久に終わらぬ地獄廻りが待ち受けてようとも――――』

 

 

―バリィイイイインッ!―

 

 

霧之「!ディケイドッ!」

 

 

霧之の頬に触れていた邪武者ディケイドの手が、硝子のように砕け散った。それと共に、グラリと倒れそうになる邪武者ディケイドの体を慌てて抱き留めようとするが……

 

 

 

 

 

 

邪武者ディケイド『――――貴女の未来に、幸ある限り……………それだけ…………で………………わたし、は……………………』

 

 

―バシュウゥンッ……―

 

 

霧之「ッ!!ぁ…………」

 

 

 

 

 

 

霧之の両手が、邪武者ディケイドを抱き留める前に、邪武者ディケイドは霞みとなって呆気なく消え去ったのであった……。

 

 

財団に利用するだけ利用され、何よりも大切な主君達と共に追い求めた『夢』を自らの手で汚し、最期には世界の敵として消えた。

 

 

そんな望まぬ最期を遂げさせられた自身の武者ライダーの死を前に、霧之は何も掴めなかった両手を見下ろし、ただ悔しげに拳を握り締めていく。

 

 

信長「……伊達……貴様は……」

 

 

霧之「―――違う」

 

 

そんな彼女の背中に向けて、信長が何かを告げようとするのを遮るかのように口を開き、霧之は静かに立ち上がった。

 

 

霧之「戦国世界の伊達政宗は、あの夜に死んだ。……武者ディケイドと、皆と共に……」

 

 

信長「…………。ならば、貴様は何者だ?」

 

 

その言葉から何か強い意志を感じ取ったのか、信長は敢えてそう問い掛け、霧之はアマテラスドライバーを手に握り締めて静かに振り返る。

 

 

 

 

 

 

霧之「霧之……草薙霧之。それ以上でも、それ以下でもないわ」

 

 

 

 

 

まるで、この世界と完全に決別するかのように、嘗て鎬を削り合った武将達を見据えてそう言い放ったのであった。

 

 

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole⑨

 

 

―――そしてその後、神樹カーラーンの消滅によって戦国世界と全ての平行世界への天下統一という名の侵略は収まり、神樹の触手に取り込まれた人々も死人が出ることもなく解放されたらしい。

 

 

他の平行世界も似たような状況らしく、被害も思ったほど広がらずに済んだようだったが、それでも神樹の発生源であった戦国世界の各国は壊滅的な打撃を受け、武者ライダー達と神樹の消滅もあって戦国バトルロワイヤルのこれ以上の続行は不可、不毛であると断定された。

 

 

今後一体どうするべきか、それについて一度腰を据え話し合う必要があると考え、連合軍は一先ず一時休戦、各国を治める他の武将達にも休戦協定を持ち掛ける方針を決め、それまでの間は神樹の被害に遭った民達の救護と壊された町の修繕に力を入れる事を決めた。

 

 

そんな中……

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

―城下町・公園―

 

 

零「――――何故に俺だけ絶対安静で留守番なんだよ……」

 

 

事件から翌日が経ち、仲間と共に信長等の国に戻ってきた零は包帯だらけの格好で以前信長と子供達が花火をして遊んでた公園の滑り台に腰を下ろし、不満げに頬杖を突きながら溜め息を吐き、首に掛けたカメラで修繕が進む町の光景を撮影する姿があった。

 

 

零「もうこの程度なんでもないっていうのに、過保護にも程があるだろアイツ等……」

 

 

袖をめくり包帯が巻かれた腕を眺めてそう呟き、そのままふと遠くを見つめると、此処から見える町の一角にある巨大な瓦礫を纏めてツヴァイギャリーで何処かへと引っ張っていく光景が目に映り、それを見て更に溜息してしまう零。

 

 

因みに何故彼がこんな場所にいるのかと言うと、先の神樹カーラーン事変の際に邪武者ディケイドとの戦いでまた無茶をやったことをなのは達に咎められ、安静にして休んでろと言い渡されたのである。

 

 

だが今はもう動き回っても特に痛みを感じぬし、大人しくしているのは性に合わないから、町の修繕や瓦礫の処理を手伝うと信長達に申し出たというなのは達に付いていこうとしたのだが……

 

 

 

 

『良いから大人しくしてるっ!』

 

 

『無茶した後の君の"大丈夫"は絶対信じないようにすると決めているんだっ!』

 

 

『そもそもこれだけの人数が揃っているんですから、貴方がいなくても問題はありませんし』

 

 

『というか必要ない』

 

 

『ってか頼むからジッとしててくれ、作業中に倒れられても迷惑だから』

 

 

『邪魔』

 

 

 

 

……若干凹んで泣きそうになったのは秘密だ。

 

 

しかも治ったら治ったで、『信長さんとの結婚の話はその時に改めて問いただせて頂きます』などと笑顔で言われるものだから、気分はもう処刑執行を持つ罪人のソレである。

 

 

まあそんなこんなで智大達が町の人達の手助けをしている間、零は信長の屋敷で言われた通りに今まで安静にして休んでいた訳なのだが、屋敷の中でも町の修繕や被害報告などでバタバタと走り回る声や足音が絶え間なく聞こえてくるため、とてもじゃないがあの屋敷で何も気にせず安静に休むなど到底無理だった。

 

 

なのでこっそり屋敷を抜け出し、町の様子を一通り見てからこの公園にまで足を運んだ訳だが……

 

 

零「やる事が何もないな……これだったら、アイツ等に無理言ってでも何か作業をさせてもらった方がまだマシだったか……」

 

 

信長「―――成る程。そうやっていつもあの娘達を困らせている訳か。貴様も罪な男だな」

 

 

零「怪我が治ってる後まで心配する必要ないだろう?別に今から働いたところで死ぬ訳じゃ、な――――ぅおおおおおおおおおおッ!!!?」

 

 

と、其処で零は漸く自身が誰かと話をしている事に気付いて驚愕し、勢いよく飛び退き自分が今まで座っていた滑り台の横を見てみれば、其処には何故か秀吉や家康などの大名達が集まる城の評定に出席している筈の信長が、町娘の格好で頬を膨らませながら佇む姿があった。

 

 

信長「なんだその反応は?まるで人をもののけみたいに、失敬な奴だな」

 

 

零「前触れもなくいきなり現れれば驚くに決まってるだろうがッ!こっちは右目に包帯を巻いてる上に気を抜いてたんだぞッ?!死角から声掛けんなッ!」

 

 

ビシィッ!と、頭から右目に掛けて巻かれた白い包帯を指差し、バクバクと早鐘を打つ心臓を押さえながらまくし立てるように文句を叫ぶ零。だが……

 

 

信長「ああ……そうだったのか……すまなかった……我もまだ、貴様の怪我の具合を知らなかったものでな……」

 

 

零「……は……?」

 

 

「気を抜いてた貴様が悪い」などの皮肉や意趣返しの言葉などが返ってくるかと思いきや、髪を掻き分ける彼女から返ってきたのは、妙にしおらしい謝罪の言葉だった。そんな反応に対し零も流石に予想外で目を白黒させ、信長はそんな零の様子に気づかずに彼が座っていた滑り台に無言のまま腰を下ろすが、零の様子を見て訝しげに眉を寄せた。

 

 

信長「どうした?そんな珍妙な顔をして、腹でも下したか?」

 

 

零「……いや、別になんでも……」

 

 

また直ぐにいつもの態度に戻った信長にそう言われ、ただの気のせいか?と小首を傾げながら、取りあえず信長のすぐ隣のもう片方の滑り台の台に腰掛ける零。

 

 

零「……というか、こんな所で何やってんだお前?確か暫くは秀吉達と城での話し合いで屋敷にも顔を見せられなかったんじゃなかったか……?」

 

 

信長「ん?ああ……今日の評定は確認と顔見せぐらいだったから、早く終わってな。まぁ、また何かあれば向こうから知らせが来て呼びに来るだろうし、屋敷に戻っても仕事が待っているだろうから、今の内に息抜きをな」

 

 

零「……流石にお忙しいな……大丈夫なのか?あの事変からすぐに連日で働き詰めで、身体が持つか?」

 

 

信長「ふ、なんだ?らしくもない心配をしてくれるのか?」

 

 

零「……別に……ただこっちがあれだけ苦労して助けたってのに、過労なんかでぶっ倒れられておっ死られたらやり切れんからな」

 

 

信長「……相変わらず意地の悪い物言いだな。神樹の中で助けに来た時はあんなに優しかったというのに」

 

 

両手で抱いた膝に口元を埋め、不満げに「むぅ…」と唸りながら零を睨む信長。しかし零も其処を突かれると都合が悪いのか口を閉ざしてそっぽを向いてしまい、信長はそんな零の横顔を見て軽く溜め息を吐くと、懐から紙包みを取り出し、紙包みを開いて様々な色が綺麗に付いた粒状の菓子を露わにさせた。

 

 

零「……?何だ、それ?」

 

 

信長「我の好物の金平糖だ。此処へ来る前に我が贔屓にしている店に寄ってな。幸運にも彼処は無事だったから、一つ買ってきた」

 

 

零「ほう……随分洒落た物を好むんだな……」

 

 

信長「……む。何だ、何か可笑しいか?」

 

 

零「いいや。俺もそういう菓子は結構好む方だが、俺がいた世界や今まで巡った世界でも、其処まで綺麗な金平糖はあまり見た事ないんでな。物珍しく思ってる所だ」

 

 

信長「……なら……食べる、か?」

 

 

零「ん……じゃ、何粒か」

 

 

おずおずと問い掛ける信長にそう言って手の平を差し出すと、その上に金平糖を何粒か乗せてもらい、一粒摘んで口に運んだ途端、目を僅かに見開いた。

 

 

零「美味いな……」

 

 

信長「ふふん、だろう?我も初めて食した時は一発で惚れ込んでしまってな……だから、お主達や武者ライダー達のお陰で、またこの味を噛み締める事が出来て、嬉しく思っておる」

 

 

零「…………そう、か」

 

 

ポツリとそう呟いた信長にそう短く返し、再び金平糖を口の中へと放り込んで舌の上で転がすと、ほんのりとした甘みが口の中に広がっていくのを感じながら、晴れ晴れとした青空を無言のまま見上げていく。

 

 

 

 

零「…………」

 

 

 

 

信長「…………」

 

 

 

 

閑寂。互いに目を合わせず無言となる二人の間に響くのは、遠くから聞こえて来る修繕作業や人々の声と、二人が口にする金平糖を口の中に転がす音だけ。そうして暫く時間ばかりが過ぎてゆく中……

 

 

零「……なあ」

 

 

信長「あの……」

 

 

零&信長『……え?』

 

 

二人ほぼ同じタイミングに声を発して重なり、思わず顔を見合わせる二人。

 

 

零「……そっちから話していいぞ」

 

 

信長「い、いや、我は別に……貴様から話せ……我もまだ、心の準備が足りていなくてだな……」

 

 

零「?……そうか」

 

 

物憂い様子で髪を弄る信長に少し疑問を抱きはするも、こちらも彼女に聞きたいことがあるのは確かなので、お言葉に甘えて先に質問させてもらうと、零は手の平の上の最後の一粒を摘み口の中に放り込んだ。

 

 

零「―――お前、これから一体どうする気なんだ?」

 

 

信長「?どう、とは……?」

 

 

零「……武者ライダー達も神樹も、俺達が潰して消えたから戦国バトルロワイヤルもなくなった……同時にそれは……お前が目指していた天下統一の夢もなくなった、って意味だろう?」

 

 

信長「…………」

 

 

零「ずっと追い求めていた夢を失った……今の現状が回復した後……そんなお前は、これから一体どうする気なんだ……?」

 

 

先程と同じ問いを投げ掛けながら、零は脳裏に以前、この公園の影でシャドーと交わした会話を思い出していく。

 

 

シャドーはあの時、信長は自分に似ていると言った。

 

 

国や民達の事を自分という勘定に入れ、夢の為に自身の幸福や身を削る事も厭わない矛盾した自己犠牲の精神を持った女だと。

 

 

だが、その自分自身を犠牲に出来るだけの物を失った時、信長は自ずと自壊していく脆さを持った人間でもあると。

 

 

その自身を犠牲にしてでも追い求めた夢を失った今、彼女はどうするつもりなのか……。

 

 

一抹の不安を胸に隣に座る信長の横顔を見つめると、信長は金平糖を一粒頬張りながら……

 

 

信長「さて、どうしたものか……町の再建が片付いた後、同盟国の浅井と我の妹にでも国を任せて風来坊にでもなるかどうか……」

 

 

零「茶化すなっ……ん?というかお前、妹なんていたのか?」

 

 

信長「ああ、そういえば話してなかったか?まあ今は浅井の下に嫁いでこの国にはいないのだが、我に似てお転婆な娘だ。それ以上に可愛い奴でもあるがな」

 

 

零「ほぉう……お前に似たお転婆となると、その浅井って男も夫として苦労が絶えんだろうなぁ」

 

 

信長「どういう意味だっ。あと、長政を勝手に男にするな。彼奴はれっきとした女子だぞ?」

 

 

零「…………は?いや……長政の下に嫁いだとか……まさか、女同士で……?」

 

 

信長「?同性でも、大事な親友同士でならそれくらい普通ではないか?」

 

 

零(……この世界の結婚の定義は一体どうなっとるんだ……)

 

 

此処に来てどうでもいい新たな謎が増えて頭を思わず押さえてしまう零。信長はそんな零を見て不思議そうに小首を傾げつつも、ふとその顔に複雑げな笑みを浮かべ前を向いた。

 

 

信長「まあ確かに……武者ライダー達も消え、神樹による被害の爪痕で我等の国を含むこの世界は、最早戦などしていられる状況ではないだろうな。貴様の言う通り、我の悲願である天下統一を果たすのはほぼ無理と言っていい」

 

 

零「……と言う割りには、お前もいつも通りに見えるが?」

 

 

信長「まさか……正直、これでも落ち込んではいるのだ……邪武者ディケイドに天下を取られ、天下を支配するほどの力であると言い伝えられていた神樹があんな邪悪なモノだったと知った時には、愕然とした……我等はこんな植物如きの為に戦っていたのかと、自分を見失い掛けた……だが……」

 

 

膝に口元を埋め、瞼を伏せながらポツポツと話の続きを紡ぐ。

 

 

信長「それ以上に……このままでは、長秀達や秀吉や家康、あの場にいた皆も、我らの国も民も、この世界も、あの樹に全て呑み込まれてしまう。そう思った時には落ち込むよりも先に、皆を守らねばという気持ちから邪武者ディケイドに挑んでた……それに、貴様達や武者ライダー達が我らとこの戦国世界を守ってくれなければ、きっと我は本当に、今まで戦ってきた意味を失って生きる事すら諦めていたと思う……だから、我は感謝している。貴様達にな」

 

 

零「……財団を追ってきた智大達はともかく、俺達の方は殆ど成り行きみたいなものだがな。それが結果的に、お前達を助けたってだけだ」

 

 

信長「例えそうであっても、我等が助けられた事に違いはなかろう?……貴様達には確かに感謝しておるのだ。おかげで我も、新しい目的を得られたのだからな」

 

 

零「……新しい目的?」

 

 

零が訝しげに聞き返すと、信長は「うむ」と頷き返しながら滑り台から腰を上げて立ち上がり、遥か頭上の太陽に向けて掌を伸ばした。

 

 

信長「天下統一という夢想を果たすことは今や不可能になってしまったが、我が目指すのは、この日ノ本の民達が二度と戦の影に怯えずに済む世を築く事。その出発点として天下統一を目指したのであり、天下統一が到達点という訳ではないのだ。だから我は……戦国バトルロワイヤルとは別の道で、この日ノ本中の民達を平穏の世へと導いてみせる……秀吉や家康達と共にな」

 

 

零「戦以外の別の方法で、か……それはいいが、秀吉はともかくとして、家康がそう簡単にお前に協力してくれるのか?アイツ、お前の事やけに目の敵にしてただろう?」

 

 

信長「ふふっ、確かに……しかし彼奴も悪い人間ではない。例え今は無理でも、真摯に向き合い、言を重ねていけば、いずれ納得して力を貸してくれるやもしれんしな」

 

 

零「そう上手くいくものかね……」

 

 

信長「なに、もしもの時は彼奴が飛び付いてきそうな取引を幾つか用意しておるから心配はしとらんさ。家康の扱い方を昔から誰よりも理解しておるのは、我だと自負しているぐらいだしな♪」

 

 

零「…………俺の時もそうだったが、お前大概腹の内が真っ黒だよな…………」

 

 

信長「それぐらいの強引さが、時には国を引っ張ってゆくのに必要な時もあるからな。……それとも貴様は、綺麗事を述べる大名の方が好きか?」

 

 

零「……いや。少なくとも俺は、そういう駆け引きも出来る奴でないと安心して国を任せられない方だな」

 

 

おどけるように肩を竦めてそう言えば、信長は小さく微笑し「そうか」と呟き、そんな彼女の顔を見て零も胸の内の不安が消えていくのを感じていた。

 

 

彼女の選択が正しいのか、間違いなのかはわからないが、それでも何かの為に前に進む事を諦めない気概がある限り、彼女はきっと大丈夫なのだろうと確信させられる何かを感じる。

 

 

それが彼の織田信長だからか、それとも彼女の本質からなのかと考えるが……これ以上は蛇足だなと考えるのを止め、同時に先程信長が何かを言い掛けてたのを思い出す。

 

 

零「そういえば、お前からも何か話があるんだったよな?何だったんだ?」

 

 

信長「む?…………ああ…………それ、は…………」

 

 

思い出したように零がそう問い掛ければ、途端に信長は先程まで饒舌に話してた時と打って変わってあからさまに口数が少なくなっていき、そんな信長の様子の変化に零が訝しげな視線を向けると、信長は妙に落ち着かない表情でそわそわしながら……

 

 

信長「ぁ…………その、な…………以前、貴様と城で話した、離婚の話……なんだが…………」

 

 

零「ああ、その話か。離婚届が届いたのか?」

 

 

この世界に来たばかりの頃、詐欺紛いというか、まんま詐欺行為で信長と結婚させられた日に彼女と取り交わした条件である離婚の話。その為の用紙が漸く届いたのかと零が聞くと、信長は小さく頷き返した。

 

 

信長「昨日の夜に届いてな…………後は、貴様と我が必要な署名をして、届けを出せば離婚は成立する…………らしい…………」

 

 

零「で、晴れて俺とお前はバツイチか……最初の頃はそうなると知った時は鬱々とした気分にばかりなったが、此処まで来ると不思議とそうでもなくなるものだな……お前はもう署名したのか?」

 

 

信長「いや……まだ……」

 

 

零「そうか……まあお前も昨日はそんな事してる余裕もないぐらい忙しかっただろうしな。何なら、今から行って一緒に署名するか?何処にある?……信長?」

 

 

信長「…………」

 

 

顔を覗き込んで声を掛けてみるが、信長は両手を前の方で組んで俯いたまま何も答えない。

 

 

……可笑しい。先程まではあんなに自分達のこれからについて生き生きと話していたのに、何故か離婚の話になった途端あからさまに元気を無くしてしまってる。

 

 

零「信長……?おい、どうしたんだ?」

 

 

信長「…………なぁ、零…………その…………一つ、貴様に聞いてもいいか…………?」

 

 

零「……?別に構わんが……何だ?」

 

 

信長「……ぁ……あ、の………その、な……」

 

 

聞いてもいいかと言いつつも、所在無さげに視線をさ迷わせたり、腹部の下で組んだ両手をジッと見つめたりなどして中々本題に移れないでいる。よほど言いにくい事なのか、時折思案するように物憂いげに瞼を伏せたり、溜息にも似た深呼吸を繰り返し、やがて……

 

 

信長「あの……も、もし、我―――私、が……結婚をなかったことにするのを、なかったことにして欲しいと言ったら……貴様、どうする……?」

 

 

零「……?なかったことにするのを、なかったことにして欲しいって……」

 

 

それはつまり……要するに、離婚の話をなかった事に出来ないか、という……?

 

 

零「いや、何言ってるんだお前っ?邪武者ディケイドを倒して、俺達が元の世界に戻ることになったら婚姻破棄するって約束だった筈だろうっ?」

 

 

信長「わ、分かっておるわ!言われずとも忘れてなどおらん!だから昨日の夜も長秀が持ってきた離婚届けに署名しようとしてっ、の、だが……出来なく、て……分からなくて……長秀に相談したら、そのっ……だからっ……だから……」

 

 

零「……っ?」

 

 

徐々に言葉尻が小さくなる信長が何を伝えたいのか分からず余計に訝しげに眉を寄せる零だが、信長は何故分からんのだと言うようにそんな零の顔を見上げて不満げに視線を投げ掛けるも途端に顔を紅くし、目尻に涙を浮かべながら地面に目を落として……

 

 

 

 

 

 

信長「離婚、したくないんだ……夫婦のままでいたい……だって―――本気で私は、貴様を……好きになってしまったのだから……」

 

 

 

 

 

零「…………………………………………はい?」

 

 

 

 

 

先程よりも数段頬を赤くし、突然愛の告白を口にしたのであった。

 

 

零「………………」

 

 

信長「……っ……///」

 

 

零「……あー……っと……それは……なんだ……友達とかそういうのでなく……男女的な意味、で?」

 

 

信長「…………ん…………///」

 

 

コクッと、面食らう零からの質問に対し控えめに頷き返す信長。その様子はまるで借りてきた猫のようで、彼女が嘘や冗談などの類を口にしているようには見えない。

 

 

零「………………」

 

 

……え、なにこの超展開?予想外DEATH。

 

 

零(いや……いやいやいやいやいやいやっ……待てっ……は?コイツが、俺を……え?どういう事だ?何故こうなったっ?!何がどうしてこうなったっ?!)

 

 

あまりに予想外過ぎる展開に理解が追い付かず、零も困惑して言葉を失い、内心動揺しまくっている。だがそんな零の心境など露知らず、信長は耳まで顔を真っ赤に染まりながらボソボソと語り出した。

 

 

信長「わ、私だって、最初からそんなつもりなんてなかったし、こうなるなんて予想もしてなかったっ……貴様と婚姻を決めた時から、女としての幸せなど捨て去ると覚悟を決めていたし……なのに……」

 

 

自分でも未だに気持ちの整理が付いていないのか、目を泳がせながらも一つ一つ自分の心の内を絞り出すように語り、おずおずと顔を上げた。その顔はこちらが心配してしまいそうなほど真っ赤で、瞳を潤ませ、思わず零もたじろいでしまうほどの女らしい艶っぽさがあった。

 

 

信長「全部……全部貴様のせいだっ……こんな気持ち、知る必要などなかったのに……一度知ってしまったせいで、手放したくない、もっと貴様に……なんて、自分でも似合いもしない事を思うようになってっ……全部、貴様のせいだ……」

 

 

零「ッ……いや……だが、なんで俺なんだっ?自分で言うのもなんだが、正直、俺を好きになる要素なんて何処にもないだろうっ?」

 

 

信長「それは、まあ……確かに貴様は、意地が悪いし、無愛想だし、女心は分からんし、デリカシーもないし、正直貴様よりも中身が整った男なぞその辺を探せば腐るほどいるだろうが」

 

 

零「おう、喧嘩売ってんのかお前」

 

 

自分の欠点はそれなりに自覚してるつもりだが、此処までボロクソに言われると流石にカチンと来る。顔を引き攣らせてそんな文句を思わず口にしてしまうが、信長は俯いて両手を忙しなく組み直しながら……

 

 

信長「だが、な……それでも私は、貴様がいい……どんなに貴様よりも、性格が良くて……頭が良くて……容姿が良くとも……貴様でなければ、意味がないんだ……だから……だから、な?」

 

 

躊躇いがちに顔を上げて、上目遣いで零を見つめる。

 

 

信長「貴様に……その……す、好きになってもらえるように、私なりに頑張るから……努力する、から……だから……貴様の、嫁のままで……いさせてはもらえない……かっ……?///」

 

 

零「ぁ……ぅ、ぐっ……」

 

 

恥ずかしさを必死に押し殺し、そんな殺し文句を口をする信長の飾りのない告白に流石の零も勘違いのしようもなくたじろぎ、目を泳がせてしまう。

 

 

……正直に言えば、信長の気持ちは物凄く嬉しい。

 

 

女心にも疎く、デリカシーも致命的にないとは言え、自分とて男だし、信長のような美女に告白されて喜ばない筈がない。しかし……

 

 

零(……いや、駄目だ……俺には、コイツの気持ちに応える資格なんて……)

 

 

自分は世界を破壊する存在……悪魔、破壊者だ。

 

 

自分に関わる人達が自分のせいで何人も傷付けてきたし、その中には何かの介入がなければ取り返しの付かない事態になってたものだって沢山あった。だから、自分が傍にいれば、彼女もいずれそうなって傷付けてしまうかもしれない。

 

 

それに、結婚なんてものはもっと大事な契約だ。

 

 

苦楽を共にして一緒に生き、何物に代えてでもその人だけを守り抜くという誓いなのだ。

 

 

だが、死が二人を別つまでその人の傍にいられるかと問われれば、今の自分にはもうそれを誓う事すら出来ないし、仮に仲間達か信長かどちらかが大事かと問われれば、自分はすぐに信長を選ぶ事は出来ないと思う。

 

 

……そんな不純な気持ちのままで、こんな汚れ切った醜い手で、信長の真摯の気持ちを受け止める事などしていい筈がない。

 

 

自分なんかよりももっと、彼女の傍に相応しい人間が、きっと何処かにいるハズなのだ。だから……

 

 

零「―――信長……お前の気持ちは、正直に言えば、素直に嬉しく思う」

 

 

信長「…………」

 

 

零「けど、な……俺はお前にそんな気持ちを向けられてもらえるような人間ではないし……結婚なんてものは、互いが互いを一番に想えてから初めて成立するものだとも思う。俺はお前をそういう風には想えないし、こんな中途半端な気持ちのままお前の夫で有り続けるだなんて、お前の真っすぐな気持ちをただ侮辱するだけだ……」

 

 

信長「……っ……」

 

 

零「だから、俺は……お前の気持ちに応え―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

―ダアァンッ!!―

 

 

なのは「ちぇええええりぃおぉおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっ!!!!!!」

 

 

零「……は?―ドゴォォォォオンッ!!!!―ごはぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ?!!!!!」

 

 

―ビュンッ!チュドォオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーオオォンッッッ!!!!!―

 

 

信長「ッ!!?な、何だっ?零っ?!」

 

 

零が信長に自身の気持ちをそのままに伝えようとしたその瞬間、公園の入口から突如一人の人物……何故か修繕作業を手伝いに行っている筈の作業服のなのはが高らかにジャンプしながら現れ、ライダーも顔負けの跳び蹴りを零の横っ腹に打ち噛まして公園の一角にまで吹っ飛ばしていったのだった。そしてなのはは華麗に着地しながら両手を叩き、吹っ飛んだ零をビシィッ!と指差しながら叫んだ。

 

 

なのは「こぉんの、鈍感っ!!朴念仁っ!!あんまりだよ零君っ!!奥手の信長さんが此処まで自分の気持ちを打ち明けてくれたっていうのに、ちょっとぐらい信長さんに此処から頑張るチャンスを上げてくれてもいいでしょうっ?!」

 

 

零「ぐぅおおおおおおおおおおおおおおぉっっっ……ちょ、ま、待でっ……というか、そもそもなんでお前がこんなところにっ……!「――家康さんが信長さんに確認して欲しい書類があるからと、私達に信長さんを探してきて欲しいと頼まれたんです」……ッ?!」

 

 

脇腹を押さえて悶える零の前にそう言いながら現れたのは、同じく作業服に身を包んだ二人組……魚見と姫であり、更にその後ろには意地の悪い笑みを浮かべる智大とライトの姿もあった。

 

 

零「お、お前等っ……?!何で此処にっ……!」

 

 

智大「いやぁ、なのは達が信長ちゃんを探してるって言うから手伝っててな。人探しは探偵の得意分野だし。んで、お前と信長ちゃんがなんか話してるとこを見掛けて、暫く隠れて様子を見てたってとこだな」

 

 

信長「か、隠れて、とは……どの辺からっ……」

 

 

ライト「そうだね……確か『死角から声掛けんなッ!』の辺りからだったかな?」

 

 

零「思いっきり最初辺りじゃねぇかぁあッ!!!!」

 

 

信長「ぅあっ……ぅぅ~~~~っっっっ……///」

 

 

つまりあのやり取りも全部見られていたという訳で。信長は恥ずかしさのあまり湯気が立ちそうなほど真っ赤になりながら涙目になって俯いてしまうが、そんな信長の両手を突然なのはが掴んで握り締めた。

 

 

なのは「信長さんっ!私、信長さんの勇気に感動したよっ!女を感じたっ!」

 

 

信長「……え……?」

 

 

姫「ああ、あの朴念仁の塊みたいな彼に彼処まで真っすぐに自分の気持ちを打ち明けるとは……武将にはあまり良い印象は持っていなかったが、あっぱれだ、別世界の織田信長……!」

 

 

なのは「グスッ……私なんてっ、私なんてねっ……?『家族』っていう他の皆より身近な立場のせいでっ、しかも超がいくつあっても足りないくらいありえない鈍感だって嫌ってほど知ってるから、自分の気持ちを打ち明けても『家族として好き』みたいに受け取られんじゃないかって、怖くて怖くて告白も出来なくてっ……!」

 

 

魚見「心中お察しします、高町さん……。私もあの人と契約した際にここ十年の記憶の一端を垣間見ましたけれど、アレは確かに酷い。酷すぎる」

 

 

零「……あの……さっきから一体何の話して……」

 

 

『ちょっと静かにしてて(していろ)(してて下さい)!!!』

 

 

零「」

 

 

会話に割り込もうとしたら一喝されて、無理矢理押し黙されてしまう零。そんな朴念仁を尻目に、なのはは信長の手を握ったまま……

 

 

なのは「大丈夫、諦めないで信長さんっ!零君は確かに愛想もないしふてぶてしいしマイペースで、変な所でマイナス思考だからあんな事も言っちゃうけれど、此処からいくらだって巻き返しも出来るハズだから!一緒に頑張ろっ!!」

 

 

信長「は……ぇ……あ……ああっ……?」

 

 

と、涙ながらそんな応援をするなのはに同意するように姫と魚見も頷き、信長は状況が未だに飲み込めず困惑したままだったが、何とか戸惑いがちに三人に頷き返していったのだった。

 

 

零「……なあ、早瀬探偵……」

 

 

智大「なんだい、色男」

 

 

零「俺……何か、間違ったこと言ったんだろうか……?結婚って、もっとこう、互いの真摯な気持ちが大事だと思う訳で……俺なりに正論を言ったつもりなんだが……」

 

 

智大「ふむ……まあ確かに、お前が言ってた事は正論っちゃあ正論だが」

 

 

ライト「正論が時に必ずしも正く機能するとは限らない。今回はそういうケースだったと、諦めるべきじゃないかい?」

 

 

零「……理不尽だ……」

 

 

こっちだって色々と考えて答えを出したのにと、肩を落として四つん這いになり落ち込んでしまう零だが、そんな零の隣に智大が腰を下ろして肩を叩いた。

 

 

智大「だけどまあ、どうせお前の事だ。なのはの言う通り、また良からぬ心配をして信長ちゃんを自分から引き離そうとしたんじゃないのか?」

 

 

零「……別に、そんなつもりは……」

 

 

智大「そうかい。ま、お前がそう言うなら信じるが……」

 

 

ふっと、意地の悪い笑みを浮かべていた智大の表情が真剣味を帯び、零の瞳を捉える。

 

 

智大「ただ、忘れんなよ?お前にだって、ちゃんと、人並みの幸せを得る権利はあるんだって事を……あんまりズルズル引っ張って、アイツ等に心配掛けんじゃねぇぞ」

 

 

零「っ……俺の兄貴か親父かよ、お前は……」

 

 

智大「ハッハッハッハッ、ある意味そうかもなぁ……ってな訳で、ホイ」

 

 

零「?何だ、チラシ?」

 

 

智大「うちのホテルのブライダルプランでございまーす、信長ちゃんとの結婚式の際には是非とも御参考に――♪」

 

 

零「いらんわぁああああああああああっっっ!!!!!」

 

 

結局茶化すのが目的じゃねーか!!と、HAHAHAHAHAと爽やかに笑う智大にチラシを突っ返しって怒鳴る零。その後も智大にしつこく冷やかされるわ、信長と団結したなのは達に説教されるわと散々な目にばかり遭い、最終的には逃走を謀ってなのは達に町中を追いかけ回されると心身共にボロボロになったのであった……。

 

 

 

 

 



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劇場版小説/仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole⑩(完)

 

 

―アマツの世界・神社―

 

 

ヒビキ「カガミー!こっちの葉っぱも掃き終わりましたから、塵取りお願いしまーす!」

 

 

カガミ「分かったー!」

 

 

その一方。アマツの世界のとある古い神社の境内では二人の巫女……ヒビキとカガミが庭の掃除に勤しむ姿があり、そんな彼女達の姿を尻目に本殿の手間の階段に横になる刀夜と、その脇に腕を組んで立つ大輝の姿があった。

 

 

刀夜「ふぁああ……あー、カガミが来てくれたおかげか、神社の掃除も楽出来て助かるなぁ……」

 

 

大輝「とんだ怠け者だな、君は。まるで何処ぞの知り合いでも見ている気分だよ」

 

 

刀夜「いいだろー、この前でっかい戦いがあったばっかりなんだ。少しくらい怠けたって罰は当たんねぇよ」

 

 

大輝「だからといって本殿の前でねっころがるのはどうかと思うが……まあ今更か」

 

 

刀夜という男がどんな人物か良く分かっているからか、それ以上の小言は口にはせず溜め息を吐く大輝。

 

 

大輝「で、アマテラスドライバーに選ばれた彼女……元伊達政宗君は何処に行ったんだい?」

 

 

刀夜「ん?あー……何か、この世界を見て回って来るとか言ってさっき出てったな。なんでも「戦いやすい場所、戦い難そうな場所を事前に下見しておく必要がある」とか何とか……」

 

 

大輝「……流石は元武将か……君も少しは彼女を見習って、ベルトの後継者としてもっと自覚したらどうだい?」

 

 

刀夜「俺はこれでいいんだよ。アイツみたく常時気を張ってると、いざって時に使いもんにならなくなるからな……ってか、お前もいつまでいる気だよ?言っとくが、アマテラスドライバーはもう霧之のもんだから掠め取っても意味ねぇぞ」

 

 

大輝「そんなつもりは毛頭ないよ、アレは財団に対抗するのに貴重な力だからね……だからこそ、彼女にはきちんと使いこなしてもらわなければ困る」

 

 

肩を竦めながらそう言うと、大輝は腕時計の時間を確かめ、壁から背を離してゆっくりと歩き出した。

 

 

大輝「じゃ、そろそろ師匠達が別件から戻って来る頃だし、俺はそろそろ行くよ。……また機会があれば会おう、アマツ君?」

 

 

刀夜「出来ればそんな日が来ない事を祈りたいが……お前さんも達者でな、怪盗」

 

 

気怠げに手を上げる刀夜を背に、目の前に現れた歪みの壁を通ってまた次の世界を越える大輝。そしてそれを気配で感じ取りながら、刀夜はヒビキが呼びに来るまで二度寝を決め込む事にするのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―アマツの世界・森―

 

 

同時刻、アマツの世界の町を一望出来る程の高台の森。其処には、町を下見して回っていた霧之が風で髪を揺らしながら町を見下ろす姿があった。

 

 

霧之(……此処が……私が戦う場所……私の、新しい世界……)

 

 

ポケットに手を突っ込み、取り出したのは固まった血がこびりついたディケイドのカード。財団が襲撃したあの夜、武者ディケイドが自分を逃がす際に手渡した形見であり、霧之はそれを手に握り締めて瞼を伏せる。

 

 

霧之(この世界で、私は戦い続ける……草薙霧之として、アマテラスとして……皆……ディケイド……どうか、見守っていて……)

 

 

カードを胸に当て、心の内で死んだ皆にそう決意して瞼を開き、霧之は踵を返して歩き出す。

 

 

新しい世界、新たな戦場で、財団を討つその日まで、戦い続ける事を誓って……。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

オマケ

 

 

―光写真館―

 

 

零「―――おい、シャドー……」

 

 

シャドー『む、何だ?』

 

 

零「何だ、じゃない……何だ、この馬鹿みたいに山のような本が入った段ボールの数々は……?」

 

 

シャドー『うむ、戦国世界の長秀殿からお主に届けて欲しいと頼まれたものでな。軍略や政略、礼式に戦国世界の歴史、家系図……織田信長の旦那として恥ずかしくないように覚えて頂く、資料の一式らしい』

 

 

零「……十……三十……五十……百……ぇ……え?こんな、にっ……?」

 

 

シャドー『これでも一部だそうだ。これ全てを覚えたら、また次を送るとのコトでゴザル』

 

 

零「……………………………………………………………………………」

 

 

後日、シャドーの手により戦国世界の長秀から百冊を超える古文書が段ボールの山で届けられ、その絶望的な数に零は言葉を失いテーブルにダンッ!と頭を打ち付けていたのであった。

 

 

 

 

仮面ライダー×仮面ライダー ディケイド&ツヴァイ NOVEL大戦Evole END

 

 

 



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