オレタチノケシン (食蟻獣)
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プロローグ

皆さんのダークソウルがどうかは知りませんが、少なくとも私のダークソウルは糞団子に塗れてました。
あとこのすば要素は薄いです。


 ───王たちの化身。

 それは、はじまりの火を継いだ神の如き薪の王たちを象った『化身』

 

 直剣を持てば素早い連撃と高い攻撃力を誇り……杖を握れば多彩な無数の魔術を……槍を構えれば奇跡と共に鉄壁となり……曲剣を振るえば軽快な動きで翻弄する。

 ソレはまさしく王と呼ぶにふさわしい佇まいで、迎え来る者を打ちのめし、心をへし折ってきた存在である。

 

 

 しかし、それが過去に火を継いできた者の全てでは無い。

 捻れ狂った世界の中にはこのような王もいた。

 

 直剣を持てば敵の尻をひたすらに掘り……杖と弓を握れば”乳首当てゲーム”と称し病み村の奥地にて矢を消費……盾を振ってもパリィが取れず虚しく振り回し……勝てない相手には物陰からクロスボウと糞団子で攻め立てる。

 挙げ句の果てには回避とも呼べないローリングを無駄に見せて奈落に落下……

 

 あまりにも無様な王。

 もちろん、このような恥ずべき王たちは『化身』には内包されていない。

 

 だが、腐っても火を継いだ薪の王。たとえ人様に見せられない戦い方をしてきた王とはいえ、薪の王なのだ。

 故に、別の世界では『化身』として顕現していた。

 

 これは『王たちの化身』に内包されなかった、別の『王たちの化身(オレタチノケシン)』の物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、そんな恥ずべき王たちの化身はというと───最初の火の炉とは全く関係のない平原にて顕現していた。

 

火の燻る全身甲冑に赤熱したボロボロのマント。頭部には異形に歪んだ煤だらけの王冠。

一際目立つのは最早パリィを諦めたかのような巨大な岩のような白銀の大盾。

 

 

そしてそれらを台無しにする、握り締められた糞団子。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の前には1人の女騎士がいた。

しばらくの間、大盾を構えて相手の行動パターンを調べ、いざ攻勢に出ようと糞団子を投げ続けているのだが、どこか様子がおかしい。

 

何故か糞をぶつけるたび、恍惚とした表情を浮かべて、体力が回復しているのだ。毒になる気配など毛頭ない。

意味がわからない。

 

毒が効かぬのならと、クロスボウを構えるが、あの固そうな鎧に効果は薄そうで、リロードの隙を考えると悪手だろう。

 

ならば、バクスタを狙うのが定石なのだが、いつものように尻に剣を突き立てようと、女騎士の尻に熱い視線を送りながら追いかけると何故か相手の体力が回復する。

本当に意味がわからない。

 

ここまでくれば残る手段は1つ。

盾を小ぶりのものに持ち替え、パリィを狙うしかない。

 

 

 

今ここに、当たらない攻撃と決まらないパリィの応酬が始まった──

 

 

 

 



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1.

まさか続くとは思いませんでした。
何にも考えずに書き始めたので、無い設定を絞り出すのに苦労しましたね。


 ある日女神は思った。

 

 ───私の仕事多くない!? 

 と。

 

 実際はさほど多くはないのだが、この女神は怠けるのが三度の飯ほど大好きで、微々たる仕事すらしたくないのだ。

 

 何故こんなに仕事があるのか!? 

 何故こんな面倒臭いのか!? 

 

 貧相な知恵を絞って出た結論は『魔王軍』がいるから。ならば『魔王軍』を殲滅できるほど強い人を送ればいい! 天才的な発想! 

 

 手始めに自分の担当地域を探すも、そんな都合のいい人はいない。

 それならと、別の世界からも手当たり次第に調べ上げてゆく……

 

 そして───見つけた。

 

 多少、人の理から外れてはいるものの、様々な異形から神々まで殺し尽くしたヤベー奴を。

 なんか色々相入れない恐ろしい気配があるが、そんなものは関係ない。コイツを送り込めば、夢の堕落生活。小さなことは気にしない。

 

 しかし、ここで問題が起こる。

 いざ干渉しようとすると、何故か弾かれるのだ。神々しくも禍々しい熱い炎のような何かに囲われている。

 理想の生活を前に、よく分からない火に邪魔されるのだ。こんなの生殺しだと、女神は腹を立て怒る。

 

 でも女神は諦めない。

 珍しく自分から行動を起こしたのだ。ここで引いては負けた気になる。

 何か手段はないかと探ってみると、なんと件のヤベー奴とよく似た存在を見つけたのだ。

 しかも、こっちは謎のプロテクトが無い。なんて都合がいい! まさしく天からの贈り物のようね! 

 

 女神は早速ソレを異世界に放り投げた。もちろん一切接触はしない。細かい確認もしない。

 だって直接会うの怖いし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 王たちの化身(オレタチノケシン)は走っていた。全力疾走で逃げていた。

 

 糞を無効化する女騎士と熱い死闘を繰り広げて丸一日。互いに疲労困憊の状況で、朝日と共に地中から巨大カエルが現れたのだ。それも無数の。

 不死人は囲まれると弱い。これは遍く全ての王たちの化身が経験してきた周知の事実。

 

 故に判断は素早かった。重量のある鎧と脚甲の装備を外して、手甲と兜だけの装備になると、女騎士をおとりにして、全力で逃走を始める。

 

 女騎士は困惑の声を上げるが、その時にはもう遅い。王たちの化身はカエルの視線を外れるよう駆け抜け、女騎士にカエルが殺到する。

 女騎士の声が、何処か期待の入り混じった声色をしていたのは気のせいだ。

 

 ちなみに逃げる時のコツは、後は振り返らないことだ。敵の位置が気になったとしても、振り返った隙に手痛い一撃を貰ってしまうと、立て直しが難しいからだ。

 だから、盛大な艶かしい声が気になったとしても絶対に振り返らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして無様な化身は古城にたどり着いた。




アクセルなんぞ知らん。
不死人はどう考えても魔王軍側から始まるべきでしょうよ。


王たちの化身の設定は無印ダークソウルの主人公を基準にすることにしました。糞団子戦術の使用率が1番高そうでしたので。


ちなみにこの王たちの化身は、とある女神が勝手に送り込んだだけなので、特典も加護もありません。つまりこのすば世界の言葉が分かりません。


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2.

遅れてすみません……(小声


 古城……古城……

 ろくな思い出のない古城……

 

 罠だらけの通路。細い道に陣取る蛇人。物陰から雷撃を放つ蛇人。気色の悪い宝箱もどき。高所を陣取る巨人。落下してソウルとなった鉄のゴーレム……

 

 思い出したくもない数々の悪意。そんな古城が目の前にある。

 絶対に入りたくない。『YOU DIED』するわけにはいかない。矮小な王たちの化身は血痕まで向かうのでさえ難しいのだ。

 

 だが、何があるかわからない古城が目の前にあるのは怖くもあるが、同時に唆られるものもある。炎に向かう蛾のようだ、とはよく言ったものだ。

 

 故に化身は準備を始める。具体的には消費した糞を補充する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔王幹部の1人であるデュラハンのベルディアは悩んでいた。

 

「臭い。あまりにも臭い」

 

 そう、臭いのだ。

 

 ことの始まりは先日のこと。

 冒険者の街アクセルに起きた異変調査のため派遣されてきたのだが、古城に住み着いた翌日から異臭騒ぎが始まった。

 

 冒険者の仕業かと思い、少し調べてみると原因は簡単に判明した。

 おそらく自分と同種のアンデッド種であると思われる、火の燻った鎧を身に纏ったアンデッドが糞と毒草をこねこねしてるのだ。古城の目と鼻の先で。

 

 

 ───哀れな……

 それがベルディアの率直な感想だった。

 装備を見るに生前はさぞ高貴な騎士だったろうに、人間性が無いのか理性が無いのか。

 

 己も生前は真っ当に騎士の身分に身を置いていた分、かの者を見ていると心が痛む。

 せめて、同じ騎士の誼みとして、それ以上痛ましい姿を晒さぬように、一思いに弔ってやろう。

 

 そう思い、翌日の早朝。

 ベルディアは単身で騎士の元に向かうと、そこに騎士の姿は無かった。

 まだそう遠くには行っておるまいと辺りを散策して半日。結局、目的の騎士を見つけることは叶わず、その日はひとまず諦めることにした。

 

 だが、高位な騎士が正気を失い、死して糞にまみれた姿を晒すなど、その者の生涯をかけたであろう誇りが地に落ちる行為。

 魔王軍に身を置いているベルディアと言えど、そんなことは看過できない。

 

 ベルディアは硬く誓う。自らの手で必ず土に返すと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とか思ってた前日の自分を殴りたくなった。

 

 さらに翌日、騎士は戻ってきた。

 両手に有り余る糞と毒草を抱えて。

 

 いざ騎士の戦いを……と意気込んで最高のコンディションと装備で迎えようとしたのだが、あまりにも嬉々と糞の団子の山を築く騎士を目の前に考えを改める。

 

 ───こいつ、絶対に意識あるわ。自分の意思でうんこ丸めてるよ……

 

 ベルディアは弱った心と悪臭で丸2日寝込んだ。




ベルディアさん……



時系列をまとめると

女神が恥ずべき化身を送り込む

変態と会合

ひきこもりと女神がアクセルに

ベルディアさんがアクセルの調査に

丸一日かけてカエルから逃げた化身が古城に到着

わかりにくかったのでまとめました


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3.

vsベルディア


「なんということだ……」

 

 2日後、ベルディアが見たのは凄惨となった城内だった。

 

 配下の者と一緒に揃えた調度品や家具は壊され、床には大便がぶちまけられ、壁には無数の矢が刺さっている。

 

 思い当たるのは1人のアンデッド。

 わざわざ古城の目と鼻の先で糞を集めていたアイツ。

 

「お前が……! お前がやったのか!!」

 

 ベルディアは手に持つ大剣で背後を渾身の力で切り裂く。

 すると───ガキン、と硬い何かに弾かれる音が鳴る。

 

 そこには誰もいなかった。何も見えず、音もしない。

 

 しかし、明確な殺意だけはあった。

 背後から襲い、致命傷を与えてやろうという強い意思が、歴戦の猛者であるベルディアに奇襲を気付かせた。

 

 ベルディアは構える。

 目の前の敵は姿が曖昧だ。だが、よく見ればうっすらと輪郭が見て取れる。ヤツの術は完璧ではない。

 

 互いに構えて数秒。

 ジリジリと間合いを詰めるベルディアに対して、不動の王たちの化身。

 戦いの火蓋は、王たちの化身の姿があらわになったことによって落された。

 

 ベルディアの行動は早かった。

 敵が大盾に身を隠していると知ると、剣の間合いから、体術の間合いへと急速に近づき、強烈な蹴りを放つ。

 しかし、王たちの化身はベルディアが詰め寄ってきたのに対し、蹴りをステップで回避すると、背を向けて全力で走り出す。

 

「なに……! 逃げるのか貴様!」

 

 奇襲が不発に終わった上に、姿を晒した王たちの化身は自分に有利な立地に誘い出す。

 すでに城内の構造を網羅している王たちの化身は、ベルディアと遭遇した通路を抜け、より狭く天井の低い通路に逃げ込む。

 

 しかし、激昂しているベルディアはその健脚ですぐに追いつく。

 が、王たちの化身の逃げた通路に差し掛かった瞬間、すでにそこには赤熱した直剣を振りかぶった王たちの化身がいた。

 

「なに……!」

 

 死角からの一撃。

 ベルディアはその攻撃を大剣で危なげなく受け流すと、そのまま体当たりをぶちかます。

 至近距離からのタックルを食らった王たちの化身は、その鎧をガリガリと通路の壁に傷を残しながら勢いを殺し、距離を取ろうとするが、ベルディアの行動は終わらない。

 王たちの化身の体勢が崩れたと見るや、剣を捨て足を掴み取り、王たちの化身をまともに剣も振れない狭い通路から引き摺り出すと、そのまま向かいの壁に叩きつける。

 だが、王たちの化身もタダでは倒れない。

 叩きつけられる寸前にベルディアの身へと糞団子を投げつける。

 

(なるほど、この糞は中々に凶悪だな……)

 

 そこで初めてベルディアは糞の有効性に気づく。うんこと言う忌避される物で、まともに見てなかったが、改めて考えると病原体の温床であるうんこに毒を混ぜることで、立派な戦術兵器となっている。長期戦を考えるのならば、間違いなく食らってならない類の攻撃だ。

 だが、アンデッドのデュラハンであるベルディアに対して、毒はさほど有効な手段ではない。不快なだけだ。

 

 

 ───少々、認識を改めよう。

 

 此奴は弱い。それは間違いない。自力は低く、行動も無駄がある。だが、それを補うほどに策を練り込んでいる。

 よく見れば城内の壁に突き刺さる矢は死角となる部分によく放たれている。死角を恐れての行動だろう。

 

 先程までの行動もそうだ。大剣を持っている俺の不利な狭い場所に誘い出し、死角からの奇襲。大盾での立ち回りといい、奥に入り込まれたらまともに手の打ちようがなかった。

 周囲の物を壊して糞まみれにしたのも、俺を怒らせて判断力を無くすための行動だと思えば納得がいく。

 

 よく見てよく考えて行動している。

 此奴はこの俺を攻略するために、糞を集めて、入念に下準備をし、有利な地形を把握した上で、姿と音を消しての奇襲を行ったのだ。

 

「認めよう。お前は騎士とは呼べないが、戦士としては一流だ。自分に足りない物をよく理解し、それを補うためにどんな手も使う。

 その勝利への貪欲さに敬意を評して、俺も全力で答えるとしよう」

 

 ベルディアは自身の頭部を上部に放り投げ、戦場を俯瞰する。

 

 そして、王たちの化身の構える大盾を歯牙にもかけず掻い潜り───致命傷となる一撃を与えた。




まあ、俺たちの化身だとベルディアさんにまともに勝てないよね。
体力の減った王たちの化身に期待しましょう。


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4.

 

 ───決着はついた。

 

 ヤツは背中を地につけ、ピクリとも動かない。だが、ベルディアは油断しない。トドメを刺すまで、なにが起こるか分からない。それが目の前の敵だ。

 

 ベルディアは王たちの化身の一挙一動を見逃さず、じわりじわりとにじり寄る。

 後一歩で剣の間合いに入る、その瞬間

 

「……Tranquil Walk of Peace」

 

 ───もう手遅れだった。

 

 呻き声すら上げなかったヤツが、ナニカを発した。なにを意味する言葉か知らないが、間違いなく罠だという確信がベルディアにはあった。

 即座にケリをつけようと、大きく踏み込み剣を振ろうとするが、足が鉛のように重い。

 走ることが出来ず、体を倒すことも出来ない。どうあがいても歩く以上のスピードを出すことが出来ない。

 そうこうしているうちに、ヤツにゴロゴロ転がって距離を稼がれてしまう。

 

「魔法にも精通していたか……」

 

 よく見れば武器が変わっている。

 装いこそ鎧姿のまま変化は無いものの、先程まで使っていた直剣とボウガンは見当たらず、その手にはタリスマンが握られていた。

 

「なんとも厄介な魔法だ」

 

 しかもなんともムカつくことに、こちらの攻撃の届かない位置で、ヤツは両手を軽く広げて首を振り、【呆れる】かのようなポーズを連続で行い煽るのだ。すごいムカつく。

 さらに苛立たせるのが、こちらが攻撃の意思を見せると、煽りを中断して大盾に身を隠すのだ。物凄く小物臭い。

 そして極め付けはこれだ───

 

「Hello〜、Hello〜、Hello〜、Hello〜、Hello〜」

 

 意味はわからないが凄くムカつく。

 何か道具を使って鳴らしているのだが、絶妙に小馬鹿にしたかのような音が腹立つ。

 

 しかし、そんな煽りを受けている間に身体の拘束が解ける。

 

 と、同時に互いが瞬時に行動する。

 王たちの化身は杖を掲げ、ベルディアは肩に剣を担ぎ切り伏せにかかる。

 

 ───今度こそ、俺の勝ちだ。

 行動の初動も、攻撃の速さもベルディアの方が上。目の前の魔法が完成する前に、あの腹立つ鎧にトドメを刺せる。ベルディアがそう思うのも無理はない。

 

 それを見るまでは。

 

 そこにあったのは【闇】だった。

 自分の存在を崩壊させ、壊し、狂わせ、ただただ堕とす。身の毛がよだつ恐ろしき闇。

 アンデッドに落とした身でさえ、自身の根幹を揺るがす恐怖。それが襲い掛かろうとしていた。

 

 今、攻撃すればこの魔法は完成しない。自分に飛んでさえこない。それを理解していながらも、ソレが己に向けられているのが耐えられない。

 ───近寄りたくない。

 ただその一心で、ベルディアは攻撃を中断して、距離を取ると即座に配下のアンデッドを召喚する。

 

 そして、暗き闇が飛沫状になって襲い掛かると、蹂躙された結果だけ残る。

 一瞬だった。

 飛び散った闇はアンデッド達を灰塵にすると、血痕だけ残した。

 

 状況を判断したベルディアの行動はあいも変わらず素早い。残りの配下を全て召喚して呼び寄せると、盾になるように隊列を組ませる。

 通路いっぱいに呼び寄せられたアンデッド。数の有利はあるものの、同じ魔法をもう一度使われるだけで崩壊するほんの僅かなアドバンテージ。

 それでも一度は耐えれる。たった一度耐えれば、魔法行使の隙をついて決着はつく。

 

 無論、それは向こうも理解しているはずだ。

 故にこの睨み合いの硬直状態は長く続くに思われた。

 

 王たちの化身が全裸になるまでは。

 化身はアンデッドの群れを見るや否や、大盾以外の全ての装備を外して軽装になると、背を向けて全力疾走を始めた。しかもある程度の距離を稼ぐと即座に姿と音を消して完全に気配が無くなる。

 

「…………えぇ」

 

 あまりの潔い全力逃走に、ベルディアは困惑するしかなかった。

 




ベルディアさん好きに配下呼び出せるから最初から化身に勝ち目はありませんでした


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5.

難産でした。詳しいことは後書きにて


 ───『YOU DIED』

 それは篝火と並ぶ不死人の故郷。

 

 

 ───『YOU DIED』

 それは数多の不死人の行き着く先。

 

 

 ───『YOU DIED』

 それは絶望と諦めの衝動。

 

 

 ───『YOU DIED』

 返せよ、俺のソウルと人間性。

 

 

 ───『YOU DIED』

 それは……

 

 

 

 

 

「ようこそ死後の世界へ。わたしは貴方に新たな道を案内する女神、エリス。

 貴方はキャベツの群れに襲われて死んでしまったのです」

 

 王たちの化身は『YOU DIED』してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方にはいくつか選択肢があります。このまま成仏して天国に行くか、この世界……あるいは別世界にて転生するかって、え? あの、話聞いてます? あ、ちょっと椅子を壊さないでください! 素振りもやめてください!」

 

 エリス様は真摯に職務を全うしようとするが、残念なことに王たちの化身は言葉がわからない。エリス様がなにを言おうと目の前の全身甲冑は止まらない。何もない空間にポツンと椅子が有れば壊したくなってしまうものだ。

 

「納得いかない気持ちは理解できますが、だからと言って出たら目に暴れないでください!」

 

 エリス様は見ていた。目の前の甲冑がキャベツにボコボコにされているのを。

 大盾の内側で縮こまっている間に体力を削り切られ、カッコいい爆発と共に第二形態になったはいいものの、飛来するキャベツの群れになす術なくボッコボコにされている様子を。

 だから、王たちの化身を誤解するのも無理はない。

 

 何も出来ずに死んでしまったのだ。やるせない気持ちはわかる。だからこそ、次の人生は是非とも幸せに───

 

「あれ? 貴方何かおかしくないですか? 上手く言えませんが、言葉にするのなら……抜け殻の寄せ集めみたいな、というか貴方薄くなってませんか? だんだん透けてきて……

 て、ええぇ!? なんで独りでに蘇生してるんですか!?」

 

 最早エリス様には何がなんだかだった。

 明らかに人の概念を逸脱した者が自分の目の前にやってきて、備品を壊した挙げ句勝手に立ち去ろうとしているのだ。

 しかも、謝罪するかのように頭を下げているため怒るに怒れない。

 

 結果、エリス様は王たちの化身が立ち去るのを黙って眺めるしかなかった。

 

 だが、それより困惑したのは───

 

 

 椅子の代わりです、とでも言わんばかりに現れた篝火の存在だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃……

 

 

「俺はつい先日、この近くの城に越してきた魔王軍の幹部の者だが……。

 

 んんんっ……毎日毎日毎日毎日! お、俺の城に毎日欠かさず爆裂魔法打ち込んでくる、ああ頭のおかしい大馬鹿は誰だああっ!!! 

 

 やっとの思いでウンコを掃除し終わった矢先に、ポンポンポンポンポンポン打ちに来おって、どいつもこいつも頭おかしいんじゃないのか!」

 

 始まりの街アクセルに、大層お怒りのデュラハンが文句を言いに来ていた……。




今回、王たちの化身の第二形態の処遇にかなり悩みました。
正規の方の第二形態はグウィンがベースとなっておりますが、このグウィンさんがとても扱いに困りました。
元より、大王グウィンはカアスとフラムトのどっちの話を信じるかによって、印象が大きく変わるのが特徴のキャラです。
せっかく二面性のあるキャラなので、この作品では闇の時代を恐れたグウィンを前面に出した、第二形態にしようかと思っていましたが、果たしてそれはオレタチノケシンなのでしょうか? グウィンさん普通に強いもんね。
というか、それ以前にまともに喋れない設定で、闇を恐れたグウィンを表現できません。それをすることが出来る技術がありません(本音

なので、申し訳ありませんがオレタチノケシンにグウィンさんは居ないこととします。リストラです。
第二形態にグウィンを期待した人はごめんね。代わりはちゃんと考えてるからそれで勘弁して下さい。

次回更新は私事で遅れそうです。申し訳ない。


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6.

ベルディアにウンコ言わせたかっただけです



 王たちの化身は走っていた。

 姿を消し、音を消し、鎧を脱ぎ捨て軽装での全力疾走だ。

 

 経緯は半刻前のことである。

 復活して早々、太陽を眺めながら日がな一日を過ごそうとしていた王たちの化身は、遠目に嫌な気配を感知する。

 

 王たちの化身は滅多に使わない双眼鏡を取り出す。最後に使ったのはいつだろうか。アノールロンドの至宝のお宝(おっぱい)以降使った覚えがない。折れかけた心が一瞬で固くて太くなったのを今でも覚えている。あの巨大なお宝(おっぱい)はどれだけ摩耗しようと忘れることはないだろう。

 

 王たちの化身は双眼鏡を覗く。するとそこには見知った姿があった。

 奴だ首無し騎士である。

 なんと彼の守護する古城を離れ、奥に見える街に赴いているではないか。

 

 さて、如何様にちょっかいをかけて煽り散らそうか……

 そこまで考えて冷静になる。かの首無し騎士が城にいないのであれば古城を安全に探索できるのではないか? 

 

 思い立ったが吉日。

 王たちの化身はそれはもう見事なフォームで走り去っていった。

 

 ◇◇◇

 

 その日、ベルディアはものすごーく機嫌が良かった。

 辛いうんこ掃除が終わり、ストレスだった爆裂魔法の使い手に釘を刺し、仲間のために命を張れる良き騎士とも巡り会えた。少し言動はアレだが……

 

 だからもうウキウキだった。

 かの女騎士を救うため、綺麗になった古城で、女騎士を含む冒険者たちとの熱い死闘が始まると思うと、胸が高鳴って仕方がないのだ。

 

 ───だと言うのに……

 

「一面のクソまみれ……」

 

 膝から崩れ落ちる光景が、古城に広がっていた。

 そう、クソまみれである。

 もう嫌がらせとしか思えないほどのウンコ。悪臭を放つ大便がこれでもかと投げ捨てられている。瑞々しいうんこから、乾いたうんちまで、選り取り見取り。糞のオンパレードである。アイツ絶対面白がってやってるだろ、ふざけるな。覚えてろよ……

 

 しかも何か変な篝火まであるし、どうすんよのコレぇ。聖なる物の類か知らんけど、アンデッドの俺が触ることすら出来ない代物じゃねぇか。

 

 もう変な笑いが込み上げてくるベルディア。

 でも、めげることはない。栄えある魔王幹部がウンコ如きに屈するなどあってはならない! 

 冒険者一行は間違いなく数日中に来る。女騎士を救うため来てしまうのだ。そのような決意を持った者達に、こんなクソまみれの城など見せるわけにはいかない。

 なに、ウンコ掃除をするのは、もう手慣れたものだ。ストレスの権化の爆裂魔法はもう来ない。俺の全力をもってすれば城中のウンコ如きすぐに掃除して消臭までしてくれるわ! 

 

 翌日、相も変わらず放たれる爆裂魔法に発狂するデュラハンの姿があった。




アノールロンドにておっぱいに集中しすぎた結果、ロクに話を聞かずに何をすればいいか分からず攻略を開いた不死人は私です。


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