言った事が現実になる系チート少女 (ルテチウム)
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暗殺

「『……』」

 

無言だった。欠片も言葉を発さず、その少女は白銀の髪を振り撒きながら無愛想な様相で木々を見渡し、そしてくるりと背を向ける。

そして最後に軽く一瞥すると、ある木に向けてポツリと溢すように、その涼やかな声で言葉を放った(・・・・・・)

 

 

「『――弾けろ』」

 

 

同時、轟音。鳴り響いたのは、一本の木が爆散する――そしてそこから飛び出てきた影が地面へと転がる二つの音だった。

その影は一瞬硬直したように見えたが、すぐさま跳ね起き視線を少女へ向ける。どこか間の抜けた声が響き渡る。

 

「っぶねー!マジかよ!お前さんなんだなんだ?!

わざわざ俺に殺害の依頼がきたんだから相当とは思ってたが……『最上位』ってのは嘘じゃねぇみたいだなぁ?」

 

それを見て少女はその端正な顔を歪めてため息をつくと、再び喋った(・・・)

 

「『崩壊(・・)』」

 

「いきなり襲ってくるなんて――なっ?!!」

 

その言葉が放たれたのと同時に男が立っていた地面が崩れる(・・・)。そこだけ地盤沈下したかのように唐突にボコリとヘコみが出来ると、それがパラパラと破片を溢しながら文字通り「崩壊」し始めた。

 

それに気が付いた男は咄嗟の判断で飛び上がり、そして次の目的である木の枝へと飛び乗ろうと――

 

「『破損』」

 

――バキリ、と飛び乗ろうとした枝が儚い音をたてて折れた。

 

「ッ!」

 

だが男もただ者ではなかった。それすら瞬時の判断で乗り越え、バランスを整えながら地面へと着地しようと下を見据える。足を下へ、重心を保ち、しっかりと着地点を確認し、

 

(これだけ簡単に『壊す』なんてな……この女の魔術は破壊関連か……?いや、仮にも『最上位』がそれだけとは思えねえ。だが――)

 

そして落ちていく最中、真っ直ぐに自分を見つめる白銀の少女を見つめ返す。どうやら彼女には動く気が無いようだった。

 

(――その余裕に満ちた面、血に染めてやる)

 

その油断が命取りだ、と男はニヤリと笑む。これまで幾人もの強者を屠ってきた男は後ろ手で強く短剣を握った。

 

地面へと足をつき、その瞬間に全力で駆けて少女へと向かい、反撃のタイミングで横に跳ね――これからの手を思考し、そして固めた時。その瞬間。涼やかな声で、この場には似つかわしくない不可思議な「言葉」の羅列が聞こえた。

 

 

「『陥没、突出、隔離、閉鎖、硬化、封印――圧縮

 

そして……さようなら』」

 

 

その声が聞こえた瞬間、ゆっくりと「何か」が自分の周りを取り囲むのを感じ――男は、その意識を失った。



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