友との別れ 〜序章〜 (朝岡南)
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第1話

 

 

 

 

 

 

千尋との別れから数ヶ月、私は今日から千里山女子に入学します!

 

転校先の中学、同じクラスにまさかあの江口セーラがいるなんて思っていなかった私は、自己紹介の際趣味は麻雀と答えてしまい、セーラに目をつけられ私は麻雀部に連れていかれた。そんな出来事も今ではいい思い出だ。その一件で、セーラだけでなく怜、竜華とも仲良くなれた。そしてなんと、その三人も千里山に入学したのだ。

 

私が転校した時期は、もうインターミドルも終わりセーラ達は引退していた。まぁ、麻雀部をたまり場にはしていたけどね。

 

セーラは推薦で千里山、残りの私たち三人は必死に勉強し千里山に入学した。そして、なんと千尋も新道時に入学していた。

 

まぁ、問題はそこからレギュラーを取れるかなんだけどね。セーラはもちろん、竜華もかなり強い。怜は実を言うとそんなに麻雀を一緒に打ったことがない。怜は身体が弱いからそんなにいっぱいの局数は打てないのだ。

 

だからか、どっちかと言うと皆で集まるのは怜の病室が多く、私自身皆とあまり多く麻雀をしてない。

 

でも、セーラ達が言うには私は強い?らしい。多分、お世辞なんだろうけど。

 

「おーい、日和ーー!!早速、部活行くでー」

「あ、うん!今行くー!」

「ほんと、日和はよくぼーっとしとるよな」

「えー、そうかな?」

「そうや、そうや。日和はほんと目が離せへんからな」

「いや、怜には言われたくない」

 

そんな談笑をしながら、私たちは部室に行く。千尋との約束のため、そしてこんな私と仲良くしてくれるセーラ達の為にも私は強くならなきゃいけない。そんな想いで私は今日も部活に行く。

高校2年生のインターハイ。私は補欠、セーラと竜華はレギュラーとして全国に行った。怜も一緒に行けたら良かったんやけど、怜の体調が急に悪くなり行けなかった。そんなインターハイ、決勝直前中堅の先輩が出られなくなり代わりとして補欠の私が出ることになった。インターハイの結果は全国4位。この結果は私のせいだ。先輩の晴れ舞台、皆には本当に感謝してた。なのに、結果はこれだ。

麻雀をしていてこんなに悔しい気持ちになったのは初めてだった。こんな思い二度とゴメンだ。それに今の私の実力じゃ千尋と顔を合わせる資格もない。そして、この負けが私の中の何かを変えた気がした。直感、多分そういうものだろう。それがやけに働くのだ。

昔から、よく直感が働くほうではあった。それは日常生活、麻雀でも。それがインターハイが終わってから、以上だった。特に麻雀、元々自分に来る配牌やツモが何となくわかる時はたまにあった。それが今では毎局だった。

 



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プロローグ

プロローグ

 

「ねぇ、本当に行ってしまうん?」

 

「.........うん、ごめんね。」

 

「ううん、仕方ないのは分かってる。でも、やっぱりまだ私は日和と麻雀したかった。」

 

「わ、私だって!.........私だってまだ千尋と一緒に麻雀したかった。出来ると思ってた。」

 

「うん、それが聞けてよかった。ほら、早くしないとお母さん達が待ってるよ。」

 

突然決まった引越し。住み慣れたこの家、いつも一緒だった親友。

泣きながら抱きしめ合う私達を家族は待ってくれている。

もう行かなきゃ行けない?そんなのわかってる。

でも、あともう少しだけ、少しでいいからこのまま.........。

 

なんて感傷に浸っている私達をべりっと引き離したのは弟の翼。

 

「姉ちゃん達さ、もう二度と会えなくなるわけじゃねぇだろ?」

 

「な、何言ってんのよ。福岡と大阪よ?私たちの年じゃ年に1回会えるかどうかも.........。」

 

私の言葉に隣にいる千尋も頷く。

だが、翼は自信満々と言った顔で言った。

 

「だーかーら!麻雀!姉ちゃん達元々高校に入ったら麻雀部に入るつもりだったんだろ?それなら、インターハイとか出れば少なくとも年に1回は会えるじゃんか。」

 

「なっ、何言ってんのよ。福岡もそうだけど大阪なんて激戦区なのよ?そう簡単に全国なんて.........。ねぇ?千尋?」

 

千尋も私と同様に動揺しそんな非現実的なことを言う翼に呆れている。

そう思い、千尋に目をやれば目をキラキラと輝かせていた。

 

「ち、千尋.........さん?」

 

恐る恐る私は千尋の顔を見れば、ガシッと肩を捕まれそのまま顔を近づけてきた。

 

「そうだよ!麻雀!麻雀してればまた会えるよ!私は元々新道寺に行こうと思ってたから、あそこ強豪だしそこでレギュラー取れば日和とも戦えるじゃん!ね?だから一緒に頑張ろうよ!全国でまたやるんだ、麻雀!」

 

一気にまくし立てられ目を丸くする私をよそに千尋はその気だ。

新道寺は確かに北九州の強豪と言われるほどの実力だし、全国は夢じゃないと思う。だが、その中でレギュラーになるだなんて本当に難しい。私も千尋も中学では麻雀部がなく、インターミドルには出れてない。やってきたのは家族麻雀くらいだ。それは千尋だけでなく私もそうだ。大阪なんて全国屈指の激戦区。私達が全国の舞台で戦えるのはどれくらいの確率なんだろうか。でも、.........。

 

「日和?やっぱりダメかな?」

 

「ダメなんて一言も言ってないでしょ。はぁ、それにしてもどれだけ無謀なことかわかって言ってんの?」

 

「ちゃんとわかってる!でも、私はやっぱりまた日和と会いたいから。会ってまた一緒に麻雀したいから!」

 

「そっか.........。よし、そうと決まればやってやるか!」

 

「え、いいの?」

 

「良いも何も、私だってまた千尋と麻雀したいし........。ひゃっ!」

 

なんだかだんだん恥ずかしくなってきて、顔を右にそらしてしまう。

と思ったら、いきなりドンッと強い衝撃。すぐに、千尋に抱きしめられていると分かり思わず驚いて声を上げてしまう。

 

「やったーーーー!これで、また日和と会える、麻雀できるんだね!」

 

「ちょ、気が早いよ!」

 

「そうと決まれば私は新道寺で、日和は何処に行くの?」

 

「え〜っと、そうだなぁ。私は引越し先から近い千里山にしようかな。」

 

「じゃあ、私が新道寺で日和が千里山!全国目指して頑張ろう!」

 

「.........そうね。私もまた千尋に会える日まで頑張る。」

 

やっぱり別れはつらいけど、千尋に会うための新しい目標が出来た。

これで向こうに行っても頑張れる。

私は最後に千尋を強く抱きしめて体を離す。

そして家族の待ってるところまで走り千尋に向かって叫んだ。

 

「千尋!また会う日を楽しみにしてる!だから.........、だから!それまでお互い頑張ろ!絶対にまた一緒に麻雀しようね!」

 

「うん、うん!私も頑張るから、日和も頑張れ!絶対にまた麻雀しよう!」

 

お互い泣きすぎて目は真っ赤だし、ぐちゃぐちゃな顔だけど思っていることは一緒なのかな?互いに同じタイミングで拳を前に出しそのままガッツポーズをした。それだけで十分だった。

それからは言葉も交わさず私は車に乗り込んだ。

でも、大丈夫。私達は離れていても繋がってる。そう、信じてるから。

 

車から見えるのは私たちの卒業した小学校、そしてよく二人で遊んだ公園。

この間まで通っていた中学校。私の知ってる景色から段々と知らない景色にわかっていく。また泣きそうになってしまうがもう泣かない。だって決めたから。千尋とまた会えるその日まで私は泣かないって。

 

 

 

 

これはとある田舎で起きた小さな別れ。だが、これが後に新道寺と千里山を大きく変える新山千尋と中野日和。これは誰も知らない少女たちの軌跡。



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