Angel Beats! 「死後の世界のあり方」 (Chelia)
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序章

「あの日…そう…あの日はみんなで『死んだ世界戦線卒業式』をやったのよね…」

 

「え?お前誰って?ゆりよ!言わなくても分かって頂戴!」

 

語り役はゆり。まさか、序盤から一人でツッコミ役に回るとは…なんともご愁傷様です。

 

「ふぅ…気を取りなおして…

残ったメンバーで卒業式をして、みんなが成仏した後結構な時間が過ぎた…

私が元の世界に帰った最初の場所は自宅だった。

そこには亡くしたはずの弟や妹がいた…

最初は感動で言葉もでなかった…

私は…私の家族と楽しい生活を始めることができたんだ…

そして、1ヶ月後くらいたった頃…

私は嫌な夢を見るようになった

どこか知らない学校で私が銃を持ち、他人を撃つ…

そんな今では有り得ないような非現実的なことが夢の向こうでは起こっている

ううん…夢なんかじゃない…

私はちゃんと覚えている…

あそこは『死んだ世界戦線』

私たちがそう名付けた場所…

でもどうして? 成仏してもあの場所って覚えてるものなの? それとも私だけ?」

 

…日が経つに連れて私の見る夢は長く辛いものになっていく…それも苦しく…

 

みんな消えた…そして全てが終わったはずなのに…

 

「!?…あれ? 急に意識が遠くなって…」

 

 

そのままゆりは気を失い、現実世界から姿を消してしまった。

二度目の死後の世界への入学。

そこには何があるのか?

みんなは…

先が謎だらけの物語が今…始まる…

 

死後の世界の存在をみんなは信じるだろうか?

天国?地獄?

三途の川が見えて誰かが迎えにくる?

それとも、そんなものは存在せず死んだらすぐに何かに生まれ変わる輪廻転生説を信じる?

 

実際問題、死後の話は死んだ人間にしかわからない。生前の記憶を持ったまま死後の世界を経験し、尚地上に戻ってきた…なんていう人間は未だいないし、いたとしても信じてはもらえないだろう。

 

この物語では、生前にまともな人生を歩むことができなかった高校生に対し、満足な学生生活を送ってもらい、未練を残すことなく成仏してもらおうという小さな世界がある。

存在するのは巨大な学校と周辺の敷地のみ。

 

いや、この物語のキャラクター達が行けるのが高校であっただけで、もしかしたらこれの小学校や中学校バージョンがあるのかもしれない。

 

しかし、これは大元の設定でしかない。

この世界に生活している人間は、それぞれ様々な思想を持っていた。

 

この世界の秩序を守り、理不尽な人生を送ってきた学生に無事成仏をしてもらおうと働きかける者。

 

対照的に、こんな茶番な生活はごめんだと、この制度に抗い続けこの世界に居座ろうとする者。

 

…そして、そのどちらでもなく、この世界の秘密を探り自分自身が神になろうとする者。

 

これの他にもまだまだある。

 

大元は一つの目的でしか作られていなかったこの世界は、こういった混沌(カオス)な思想によって乱れ、一度崩壊寸前になる。

 

その崩壊寸前の状態で、世界をリセットし、最終的に無事成仏を果たした主要人物の一人こそ、死後の世界一期生であり、先程語りを入れてもらった少女「仲村ゆり」なのだ。

 

 

 

 

 



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戦線再び

☆屋上☆

 

「ううっ…ここは?」

 

 

夕方の学校の屋上、ここでゆりは目を覚ました。

場所は言うまでもない…そう、戻ってきたんだ。『死後の世界』へ

でも、なぜ?当たり前のように疑問がわく。

成仏して生前の世界に帰ってからは幸せに過ごしていたし、そもそも死んでいない

 

 

「…もしも、私自身に関係がないと仮定すれば… この世界に何かがあったとか!?」

 

 

細かいことは後から考えたいのか、この世界が今どうなっているのか早く知りたいのか… 理由はわからないがゆりはここで考えるのを止めた

 

 

「制服がSSSの制服ってことは前の続きからになってることは間違いないわね…

とにかく誰かいないか探してみるのが最善策かしら」

 

そう判断したゆりは屋上を後に、階段を降りていく。

 

 

☆校長室☆

 

 

「SSSと言えばやっぱりここよね♪」

 

 

懐かしい気持ちで少々浮かれつつも真っ先に来た所はここだった。

だが雰囲気はそのままだが多少変わっている

さすがに以前仕掛けていた野田お手製の巨大ハンマーは取り外され、最初の状態になっていた

本当にそれだけか?

警戒しながらドアに近づくゆり

 

 

「…人の声?」

 

 

人声が聞こえたが残念ながら何を話しているかまでは分からなかった。

何かを感じたゆりは校長室を詮索せず、更に場所を変える。

 

 

☆廊下☆

 

 

「さてと…どうしたものかしらね~」

 

 

いい考えが浮かばずトボトボ歩いていると後ろで声がする。

 

 

「なあ、大山!もしかしてあれ…ゆりっぺじゃねえか!?」

 

 

「ホントだ~ 早く行こうよ!」

 

 

「おーい! ゆりっぺ~!」

 

 

ゆりの心配もいらなかったのか懐かしい声がすぐに聞こえてきた。

いやぁ、あたしってばラッキー!

わざわざ探しに行かなくても向こうから来てくれちゃって…

これで仕事が一つ減ったわね…

などと咄嗟にえぐい考えを頭に浮かべつつも返事をする。

 

 

「日向くんに大山くん!?」

 

「よう 久しぶりだな!」

 

 

「はぁ? いきなりこの世界に戻されて何も感じないわけ?…少しは不安そうな面しろ~っ!」

 

まずは何気ない言葉からと言葉を選んで話しかけたはずの日向だったが、ゆり的に受けは良くなかった?らしく、ゆりの強烈なラリアットが日向の首にがっしりとはまる

 

「痛ってぇぇ~…」

 

悲鳴をあげたと思ったらあっさり失神した。

流石戦線のリーダー。攻撃力が伊達じゃない。

 

 

「あー!スッキリした!!」

 

 

おい、今聞いてはいけない理不尽な一言を聞いた気がするのだが…

 

 

「ねえ、この世界に戻されたってことはやっぱり…ゆりっぺも急に?」

 

 

何事もなかったかのように大山が話しかける。

…このバイオレンスな光景に慣れてしまったのだろう、それはそれでかわいそうな奴だ

 

「あなたたちも!? もしかして、いきなり目の前が真っ暗になったと思ったら急にこの世界に来てたとかってわけじゃ…」

 

 

まさかと思い、ゆりが問い詰める…

 

 

「そうだけど…よくわかったねゆりっぺ? もしかして本当に超能力者!?」

 

 

「ち…なみに…俺もだぞ」

 

 

ふらふらと立ち上がりなんとか復活した日向も言う。

…言っておくが、全然かっこよくないぞ

 

 

「んで?そんな特徴的な聞き方するってことはゆりっぺも同じなんだろ?」

 

 

「ええ………日向くんユイは?」

 

 

「すまねぇ…元の世界に帰ってから会うことはできたんだがここに連れて来られた時は俺は自分の家だったからなぁ…一緒じゃないんだ…外を歩き回って最初に見つけたのが大山でさ…」

 

日向自身としてもこれは後悔なのだろう…

いなくなる直前にユイの傍にいてあげられなかった為、その後を知ることができなかったらしい。

日向は成仏後、無事にユイと出会うことができ、自分の思い描いていた想像通りに幸せに過ごしていたらしい。

ユイと出会い、その母と共に介護を続け、お昼の買い出しに街に出ていたらしい。

真面目に状況説明しようかと口を開こうとする日向にゆりが一言。

 

 

「役立たず」

 

 

「はぁっ!?」

 

 

ゆりの即答に日向が唖然とする

 

 

「なんか俺にだけ冷たくね?」

 

 

「さぁ♪」

 

 

「その笑い方怖いよ~」

 

 

悪魔の微笑み方を見た大山が言い

 

 

「校長室はどうだったの?」

 

 

と、そのまま質問をゆりへ

 

 

「誰かがいる感じだったわ… 元通りになってたし、万が一のことを考えて調査は後回し。あなたたちは?」

 

 

「俺たちはグラウンドと中庭。外中心に見てきたが大山にしか会わなかった」

 

 

「みんなが同じ条件でこの世界に戻ってるってことは他のメンバーもいる可能性が高いわ…とりあえず校長室以外の場所の調査よろしく」

 

 

「『よろしく』ってゆりっぺは? 」

 

 

「お腹空いたからご飯♪…な・に・か?」

 

 

「「いえ…何も」」

 

もういい、もう無理、こいつに何言っても無駄。さっさと諦める日向と後が怖くてとりあえず従っておこうとする大山の意志が言葉になってシンクロした!

 

「見事なハーモニーね…よくできました」

 

 

「んで集合はどうする?」

 

 

「一時間後に屋上にしましょうか…あそこには誰もいなかったわ」

 

 

「了解… そんじゃ大山行こうぜ?」

 

 

「うん!」

 

…いきさつはともかくゆりと日向たちは廊下を離れ、別々の場所を調査?することになる

一方その頃…

 

 



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ガルデモ登場

☆体育館☆

 

 

「うっ…ここは?」

 

 

ここ、死後の世界でちょっと特殊な話をしよう。

この世界の大元の概念は青春時代をまともに過ごせなかった学生を対象にこの世界という学校で充分な生活を送り、無事成仏してもらおうという意図をもって作られている。

しかし、そんな不幸な生徒を何千人も一度に入れてしまうと、問題が起こりかねない。

なので、不幸な人生を歩んでしまった生徒を2割、そしてこの世界に最初から存在しているデータとしてのみの存在である生徒が8割で構成され合計2000人を超えるマンモス校が建設されているのだ。

このデータとして作られた生徒。日常会話等の会話しかできないと思いきや、かなり精密に作られている。話しかければ普通に返事をするし、部活動をしたり、食事をしたりと一見すれば正規の人間かどうかの見分けが全くつかない。

なので、ゆりたちSSSはこの生徒たちのことをNPC(ノンプレイヤーキャラクターの略)と呼んでいる。

ゲームなどで存在するモブキャラというやつだ。

そして彼らNPCに共通して言えることは、この世界に関する質問には一切無知で回答をしない。あるいは、変な奴と思われて終わり。

そして、生徒としての模範にあるまじき行為には一切手を出さずに黙認するという共通点がある。

何故わざわざNPCの説明をしたかというと、先程説明した生徒としての模範にあるまじき行為には黙認する…という設定を覆す程の実力を見せたとあるバンドがあるのだ。

青春時代をまともに過ごせなかった女子生徒4人で構成されていて、全員がSSS所属。

バンド名をGirls Dead Monster(略してガルデモ)という。

陽動班として、幾多の場でゲリラライブを行い、教師達を困惑させるのが彼女達の役目。

だが、そんな目的で演奏するには惜しいほど物凄い腕を持っている。

おそらく、現実世界でもトップレベルのバンドを組めるであろうほど…

彼女達の演奏時には、データで反応しない設定になっているはずのNPCでさえ、盛り上がって応援してしまうのだ。

 

 

そんな超有名バンドメンバーの一人、リードギター担当の高橋ひさ子が、ステージの上で目を覚ましたところのようだ。

 

夜の体育館。

ステージの上だけ明かりがついていて、演劇のようといえばそんな気もしないことはないが、急に別の場所に飛ばされて頭がパニックになってる今、そんなことを考える余裕はない。

むしろ恐怖心が湧くくらいだ…

慌てて周りを見るひさ子。

 

 

「…岩沢? 岩沢か!?」

 

 

ステージの奥の方にもう一人倒れていた。

短髪にアコギを抱えて倒れている女子でSSSの制服… まあ岩沢しかいないだろう。

この少女、ガルデモのリーダーであり、ボーカル&ギターが担当である。

 

 

「………? ここは?」

 

 

 

「どうやらまた戻されちまったみたいだぜー? …あたしら」

 

 

「そっか… 死んだ感じはしなかったんだけど…」

 

 

「死んでないんじゃないか? 少なくともあたしは死んでないのにこの世界に戻されたぜ?」

 

 

ゆり達と同様、死んだ感じがしなかったのにこの世界に戻されてしまった…なんて会話をしていると後ろから騒がしい声が聞こえてくる。

 

 

「ううーっ! ガルデモなら私たちもいるじゃないですか!…いい加減気づいてくださいよぉ…」

 

 

残り二人のバンドメンバー、関根しおりと入江みゆきの二人もステージに倒れていたらしい。 岩沢とひさ子のスルーっぷりに呆れた関根が口を挟んだ。

 

 

「…構って欲しかったのか?」

 

 

岩沢の天然発言はいつも滑らないのが長所だ。

 

 

「気づいてるんなら構ってくださいよー!」

 

 

「そんなカラフルな髪 の色した奴が二人も寝てたらそりゃ気づくだろ… あと関根 お前キャラがユイみたいになってるぞ?」

 

 

グサッとアニメでしか聞こえないはずの効果音が聞こえた気がした。

ユイとキャラが被るのだけは嫌らしい関根さん。

 

 

「そ…それは嫌です…」

 

 

「まあまあ…気づいてもらえてたんだから良かったじゃない…」

 

 

ひさ子にからかわれると関根は大人しくなり、フォローにならないフォローを入江がすると以外にその場は収まった 。

 

 

とりあえずいつまでもステージで寝ているわけにもいかないのでひさ子が話し出す。

 

 

「でさ…これからどうすんだよ」

 

 

「みんなここに寝てたんだよな?」

 

 

「そうです…」

 

 

「ゆりとか戻って来てないのかな~」

 

 

「なぁ…」

 

 

「ん? どうした岩沢?」

 

 

何かを思いついたように話しかけるリーダー岩沢にみんなが耳を傾けると…

 

 

「ライブをしないか? せっかくみんないるんだし… でっかい音出せば誰か気づくんじゃないか?」

 

 

「おーっ!岩沢さん気持ち悪いほど頭さえてるぞー でも絶対思いついたのギター弾きたいからですよね!」

 

 

「お前はいちいち一言多いんだよ!」

 

 

関根の頭をひさ子がぐりぐりと拳で痛めつける。

 

 

「でも、悪くないな… さて!早速準備するか!」

 

 

「いいい痛いですー…アホになっちゃうじゃないですか!?」

 

 

「元からアホだろ!」

 

 

ガルデモのゲリラライブの準備が始まった。

 

 

☆食堂☆

 

 

再び視点をゆりに戻し、ここは食堂。

 

 

「ふぅ…何を食べようかしら…」

 

 

「ん? ゆりっぺじゃないか」

 

 

「あら♪松下くんじゃない 久しぶりね…」

 

 

おっと、以外にもここでSSSメンバーの一人、柔道の達人松下五段を発見!

(ちなみに高校生じゃ五段取れません)

そうよ!私は最初から食堂に松下くんを探しに来たんじゃない!こんなに早く見つかるなんてさすがあたしね☆

 

※思いっきり嘘である。

 

 

「他のみんなも戻って来てるのか…?」

 

 

すでに席について肉うどんをすする松下が言う

 

 

「そうなるわね…」

 

 

ゆりも向かいに座り、ハンバーグを食べながら

 

 

「松下くんは誰かに会わなかった?」

 

 

「ああ…日向たちが廊下に歩いて行くのを見たがそれより飯だったからな…」

 

 

(ちゃんといたじゃない!…あいつら~!)

ゆりの血管がブチブチと音を立てているが気にしない方向で…

というか、もう少し乙女になったほうがいいですよリーダーさん。

 

 

「まっ…まあいいわ… 人数が揃ってきたら校長室に突撃するから、それまであそこには近づかないでね?何かある気がするの」

 

 

 

「うむ 修行に校長室は関係ない。了解した」

 

………

ここでゆりの通信機に連絡が入る

 

 

「もしもし?」

 

 

「あっ!?… 繋がった?」

 

 

「もしかして遊佐さん?…まだ使えたのね、これ…」

 

そして二人目SSSメンバーの存在を確認。

トランシーバーと言うなの通信機を使って連絡をしてきたのは戦線でオペレーターを務める遊佐という少女。

オペレーターなので、他のメンバー達とは行動を共にせず、少し離れた場所からサポートを務めるためあまり接する機会が少ないが、実はこの子、とっても有能な通信士。

彼女の活躍によりどれだけ楽にオペレーションが進行しているかなど、この頃はまだ誰も知らないのであった。

 

 

「お久しぶりです。ゆりっぺさん…このパターンは…」

 

 

「さすが順応性が高いわね…そういうことよ」

 

 

そして遊佐は冷静なのも持ち味の一つ。

アホが集う戦線の中で、数少ない知能派だ。

 

 

「誰かさんの悪影響です」

 

いつも無茶して突っ走るリーダーのせいと遠回しに皮肉を言う遊佐。

 

 

「悪かったわね!…今どこにいるの?」

 

 

「体育館倉庫から連絡をとっています。ゆりっぺさんが欲しそうな情報もいくつか入手済みですのでご期待ください」

 

 

「ホント!?助かるわ…一時間後に屋上に集合になってるから遊佐さんも来てくれないかしら?」

 

 

「了解です…では、私は引き続き独自に調査を進めますので…」

 

そういうと通信が切れた。

全く…どっから通信してるのかしら…

体育館倉庫って…調査方法も気になるんだけど?

 

 

「松下くんも屋上に来てね?」

 

松下が返事をしたので私は次の場所を探す

 

 

☆屋上☆

 

約束の一時間が立ったので屋上に向かう。松下、遊佐は先に来ていて各自暇そうにしていた。

日向と大山がだいぶ人数を集めたらしい

野田、藤巻、高松、椎名、TK、竹山が後ろからぞろぞろと続く。

 

 

「上出来じゃない♪よく集められたわね」

 

 

後々大山に聞いたところ、名誉挽回のために日

向が死に物狂いで校内を走り回ったらしい

 

 

「ゆりっぺが話すと言うから来てやったが、何の用だ?」

 

 

ゆりっぺ信者の野田が早速不満そうな声をあげる

 

 

「あわてなくとも話すわよ…」

 

 

「目視で確認したところ現在いないのはガルデモメンバーと音無さん、直井さんですね」

 

 

「チャーは?」

 

 

「チャーさんとは会っていますのでご心配なく。現在は仲間を集めてオールドギルドの復興に務めていただいています」

 

 

「さすが遊佐さんね…助かるわ」

 

 

なるほど、私の欲しそうな情報ってこういうことね…

チャーを見つけた上に、既に作業を開始させてくれてるなんて…

流石、有能なオペレーター…

ゆりは上記の言葉で遊佐をほめたあと、一同を見渡し

 

 

「さて、そろそろ始めるわよ。いつも言ってるようにこの世界は何が起きてもおかしくない…各自順応性を高めるように」

 

 

「オペレーションか?」

 

 

 

 

「ええ…遊佐さんが言ったとおり、地下では既に私たちの基地を復活させてくれてるみたい。だから私たちは地上の基地を奪うわよ!」

 

 

やはりオペレーション決行のようだ。

日向の質問などかの当然と流し話を進めようとすると、長ドス使いの藤巻が疑問を浮かべる

 

 

「校長室のことか?普通に入ればいいじゃん か! 校長なんてまたどけてよぉ…」

 

まあ、この疑問は当然だろう。

元々校長室は戦線の本拠地だ。しかし、戦闘面に関しては一流の椎名は何かを察したのか名言を一つ。

 

 

「あさはかなり」

 

 

「確かにそう思うのが、ごもっともだわ…でも私は校長室から今までと違う何かを感じたのよ…」

 

 

「具体的な説明が欲しいのですが…」

 

 

今度は具体的データを求める竹山が…

(本人は本名をクライストと言い張るがもはや誰も突っ込んですらくれない)

 

 

「具体的には言えないわ… でも警戒するに越したことはないの… 何か、繰り返してるような気がして…」

 

 

「繰り返す?」

 

 

「なんでもないわ…今武器を持ってる人は?」

 

 

「俺たちの中で武器持ちは野田と椎名っちだけだ… でもまあ、また校長を脅迫するくらいなら野田のハルバートで充分だろう」

 

 

「とりあえず場所がないのも困るし、校長室奪取作戦は今すぐ決行するわ…野田くん、椎名さんよろしく」

 

 

「はっ…ゆりっぺに俺の実力を見せてやる!」

 

 

「あさはかなり」

 

 

「高松くん、松下くん、竹山くん、遊佐さんはギルドに向かってそっちの手伝いをお願いね…何かあったら連絡して」

 

 

「「「「了解(です)」」」」

 

 

「じゃあ始めるわ!オペレーション・スタート!」

 

みんなそれぞれが細かな役割を言い渡され、作戦がスタートされる。

再びこの世界に戻されて初めてのオペレーション。

その名は…「校長室再奪取」!!

 

 



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校長室再奪取

☆校長室☆

 

 

「たのも~う!」

 

日向がドアを蹴破ると戦線メンバーが次々と入っていく

 

 

「ま…また君たちか!? ここは君たちの遊び場じゃないんだぞ!」

 

 

ゆりの予想とは反して、中はいつも通り校長先生が一人椅子に座っていた。

内心ほっとするも、今はオペレーション中。

まずは作戦を成功させてからね!

 

 

「そうなの、またなの、ごめんなさいね♪みなさいよ今では私たちも人数増えたのよ?先生… 生徒同士の絆って素晴らしいわね!」

 

 

わけの分からないことをゆりが言ってる間に野田が校長の首にハルバートを突きつける

 

 

「ふん… 貴様…動けば串刺しだぞ?」

 

 

「何が絆だ!…狂っとる! こんなことしてどうするつもりなんじゃ」

 

 

「さぁ? 今あなたに言う必要はないわ?…それじゃ、連行よろしく!」

 

 

野田と椎名に刃物をつきつけられたまま、校長はあっけなく校長室を追い出されてしまった。再び戦線の基地がここ、校長室となる。

 

 

 

「案外簡単に決まっちまった~…ホントにみんなで強襲する必要あったのか?」

 

 

奪い取った校長室は再び戦線の色に染められ、いつもの席に座ってるゆりに日向が聞く。

他のメンバーは安楽の場所でのんびりしたいのか好き勝手していて雰囲気的には、いつもの状態に戻せたようだ

 

 

「念には念をって言ったでしょ?…第一、一人で言って中にちょー強い奴が10人も20人もいたらどうすんのよ…みんな戻って来たばかりで多少鈍ってるだろうし今までのペースを取り戻すにも丁度いいオペレーションだったと思うわ…」

 

 

さすがだ。もちろん日向にはそんな考えが浮かんでるわけがない

卒業式に見せた雰囲気はすっかり消え、今のゆりはSSSリーダーの顔に戻っていた。寂しいと言えば寂しい

 

 

「残りのメンバーも早く見つかるといいな」

 

 

「そうね…」

 

 

「俺たちは飯行くぜ?…まだ食ってねぇからよ」

 

 

「うん…」

 

 

「…どうかしたか?」

 

 

「何でもないわ… さっさと食べてきなさいよ?」

 

 

「お…おう…行こうぜ?」

 

 

多少疑問を感じながらも日向は大山たちを連れて校長室を後にした。

 

 

無事に校長室を奪取したと同時に、ゆりには新たな悩みが生まれていた。

それは、残りの戦線メンバーの安否。

先程遊佐からの方向にあったように、音無、直井、ユイの存在はまだ確認できていない。

特に前者二人は最後の卒業式の日まで一緒だった今では戦線の要となる存在だ。

無事なのだろうか?

そしてもう一人…ずっと敵対してきたけど最後の最後で本当の親友になれた、私、仲村ゆりにとって大切な人がいる。

 

そう「立華かなで」の安否。

これも気になっていた。

かなでとわかり会えたのはあとの話になるため、味方だ…という事情を知っているのは現時点で日向しかいない…

それどころか、私の親友をまだみんなは敵だと思っているのだ。

 

 

「ちょっと物思いにふけり過ぎたわね…」

 

 

……………

気づけばまた遊佐から通信が入っていた。

 

 

「聞こえてるわよ…」

 

 

「どうしました?ご機嫌がよくない様子ですが…」

 

 

「別に機嫌悪くなんてないわよ?少し考え事…」

 

 

「考え事…ですか…」

 

 

「そっちの様子は?」

 

 

「私たちのお手伝いはだいたい終わりました。その様子だとそちらも大丈夫そうですね… なぜ高松さんと松下さんか少々気になりましたが単に肉体派というところでしょうか? 力仕事をしてもらえて助かりました」

 

 

「ご明察~…その通りよ こんなこと遊佐さんに話してもしょうがないんだけど…少し相談してもいいかしら?」

 

 

「珍しいですね…どうぞ」

 

 

「う…うん… かなでちゃんのことなんだけど」

 

 

「かなで…まさか天使ですか!?」

 

 

さすがの遊佐も驚いたのかいつもの冷静口調よりも乱れている。

 

 

「言いづらいのですが、なぜ天使なんですか?」

 

 

「その言い方はやめて… もうかなでちゃんは私たちの敵じゃなくなったのよ?…だから…」

 

 

「ストップです。」

 

 

ゆりの話の途中で遊佐は会話を切った。

通信したまましばらく沈黙が続く。

 

 

(さすがにまずかったかしら…)

 

 

話した後でゆりは後悔してしまった。

さっきも言ったとおり音無、日向、直井以外はかなでと和解したいきさつを知らない。

つまりまだ戦線の敵は天使(かなで)だと思っている… みんなの納得得ずに一人で考えが先走ってしまっていた

 

 

~五分後~

ようやく遊佐が口を開く

 

 

「ゆりっぺさん」

 

 

「………」

 

 

「私はゆりっぺさんを心の底から信頼しています。なので天使…いえ、かなでさんと上手く和解できたのも疑うつもりはありません」

 

 

「ホント!?…ありがとう…私も唐突すぎたわ。今までの最大の敵が仲間になったなんて目で見なきゃ簡単には信用できないものね…」

 

 

「ですが、私以外のメンバーは大変ではないのでしょうか?簡単に納得しない人が大多数のはずです。幸いまだかなでさんは発見されていないので戦闘は起こっていませんが、いつ私たちとかなでさんが戦闘するかなんて分かりません。『その前にみんなの理解を得るために手を打つ』きっと私に相談したいことはそんなとこでは?」

 

…見事!お見通しだ。表向きのゆりの相談とはまさにそれだった

本当はかなでの無事についての心配のほうが上だったが、出会ったとしてまた敵同士 になるのは絶対に嫌。 それがゆりの心だった…

 

 

「そう…ね…90点よ…」

 

 

「かつて戦線メンバーを大いに、その圧倒的な力で苦しめた天使。それが味方に加われば確実に戦力があがる。…そう考えたら怒りますか?」

 

 

「口に出さないで。」

 

 

「分かっていますよ?…すみません。ところで当の本人は戦線に入隊するつもりでいるんですか?」

 

 

「そ…それはこれから…そう!これからよ!」

 

 

ギクリ… あー、そんなこと全然考えてなかったわ!まあいっか!!何とかなるわよ………多分

何て適当にしていたところを容赦なくダメ出しされるゆり。

 

 

「確定していないことばかりですね… そんなことではゆりっぺさんの考える理想には程遠いと予想できます。」

 

 

「そんな… 遊佐さんは…賛成してくれないの?…かなでちゃんのこと」

 

 

「私はゆりっぺさんについて行きます。なのでゆりっぺさんの考えは全て否定しないつもりです…かなでさんの件でも私は味方につくつもりなのでご安心を」

 

 

「うん…ありがとう また相談してもいいかしら?」

 

 

「私でよければ…いつでも」

 

 

そう言って通信は終わった

…遊佐ってこんなに頼りになるやつだったのか

今まで遊佐はオペレーターとしてゆりたちとは直接会わない…一人離れた場所で行動していたためか、まだ不明な点が多い。

てっきり、あっさり否定されるかと思ったが遊佐は協力してくれるらしい…

頼もしい仲間が…近くにいた

 

この日の放課後、生徒会室で会議が行われていた。

 

 

☆生徒会室☆

 

 

「さて…泳がせるのはこれくらいにして… そろそろ行くわよ?みんな…」

 

 

「ああ…」

 

 

「僕たちはいかなる悪も全て排除する最強の新制生徒会。古い違反者どもを叩き潰して、それを見せつけてやらないとな」

 

さて…補足をしましょうか

かなでの卒業後、誰もいなくなった生徒会を再び立ち上げ今はこの世界の最大戦力を集めた生徒がいた。

その生徒が新たな生徒会長を務め、現在この世界に戻ってきた戦線メンバーたちに現在の生徒会の恐ろしさを見せつける。

という内容の会話のようだ

ゆりたちの前に姿を表す生徒会メンバーの実力とは!?

てなわけで、いよいよ最初の敵キャラの登場です!

 

こうして、この日の夜は終わる

 

 

 




皆様のご意見、感想等をお待ちしています。


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トラブルの予兆

カギ括弧の数が複数ある時が稀にありますが、これは同じセリフをハモった人の人数を表しています。

この話の序盤でカギ括弧が3つあるシーンがありますが、例えばここならひさ子、関根、入江の三人がハモってるっといった感じです


☆体育館☆

 

翌朝の体育館

 

 

「はぁ~ったく… 今までの状態に戻すの、結局昨日じゃ終わらなかったな…」

 

 

「楽器も、空き教室と思いきや音楽室でしたしね…」

 

 

「いやいや~楽器は元々音楽室にあるものだから別に不自然じゃないんだけどな」

 

 

先日の話からゲリラライブの準備を進めていたガルデモ。

その準備がようやく終わったのかひさ子と入江が一息つきつつ話していた。

 

「そんなことどうでもいいじゃないか… さっさと曲決めよう?」

 

 

「さっすが岩沢さん!ギター以外のこと全く考えてませんね!!」

 

 

「いや… 歌のことも考えているぞ?」

 

 

「ふぁぁっ…」

 

 

「はいはい…ツッコミ入れられない入江の変わりに突っ込んでやるよ… ていうか岩沢…突っ込む所違うからな~」

 

 

「…そうだったのか?そうだ!それより今日の昼はうどんにしよう!」

 

 

「「「……………はぁ?」」」

 

・・・

 

「っていうか話全然違うし!曲決めの話にもっていくとこだし!なんでうどんだし~!!」

 

 

「おっ…関根が突っ込んだ…」

 

 

「おいしいじゃないか………うどん」

 

 

「だから楽器関係ないだろ~っ!」

 

 

「しおり~ん…だからキャラがユイみたいに…」

 

 

グサッ

 

………あれ?またしてもアニメでしか聞こえないはずの効果音が… というか、ガルデモの中でのユイの評価ってなんなんだろうね。

しかも岩沢さん、これ、ガルデモ以外に言ったら絶対滑るから!天然すぎだから!

 

 

「…自重するのでユイだけは勘弁を~」

 

 

「岩沢に突っ込んでヘコむ気持ちはよくわかるが… とにかく曲決めようか?なぁ入江?」

 

 

「はっ…はい! 私は何でもいいです岩沢さんは?」

 

 

「特に希望はないな………関根」

 

 

「今、精神的に考えられないですよ…ひさ子さ~ん…」

 

 

「結局一周して私に戻るのな。 …じゃあ原点に戻ってCrow Songから行くか!」

 

 

「いいな… そんじゃ行くよ」

 

 

「「「おーっ」」」

 

ガルデモのライブ…ようやくスタートです!

 

 

☆女子寮(戦線)☆

 

 

ガルデモがライブの準備を完成させている頃、寮でゆりが目覚めた

 

 

「微妙な目覚めね…」

 

 

かなでのことであまり眠れなかったらしく、微妙な感じでゆりが目覚める

 

先に寮の説明をしておこう。

この小説でのこの学校の寮は男子寮一号館、二号館。

女子寮一号館、二号館と合計4つにわかれていていずれも学校とは少し離れた位置にある。

大半の生徒はここに寝泊まりし、ここから学校へ登校するのだ NPCが大半をしめているが、肝心な生徒たちが快適に過ごせるように上手く人数調節されている。

さらに、戦線メンバーと生徒会や他のNPCでない生徒は寮が別になっているので夜間抗争が起こらない工夫というわけだ。

簡単な説明は以上

 

 

「さて…今日はどうしようかしら」

 

考えているとコンコンとゆりの部屋にノックの音が聞こえた。

朝早くから誰だろう? ドアを開けると

 

 

「は~い…誰?」

 

 

「遊佐です。おはようございます」

 

 

「あら、遊佐さん? 珍しいわね…」

 

 

「珍しいも何もわざわざゆりっぺさんの部屋に来るのは初めてですが?」

 

 

以外にも目の前には遊佐がいた。

にしても無表情で立たれると少し怖い。

せっかくこんなに可愛いんだからもう少し笑えばいいのに…って私も人のこと言えないか…

 

 

「そこまで細かい突っ込みはいらないわよ… それで何か用事?」

 

 

「はい…昨日の夜、竹山さんと今の生徒名簿をハッキングして職員室から奪おうとしたんですが、きれいに失敗しまして」

 

 

「そこまでしててくれてたのね… でも失敗したのならわざわざ言いに来なくても…」

 

 

「いえ…竹山さんがハッキングに失敗ですよ?気になって詳しく調べてみたんですがかなり精密なガードがかかっていて… とてもNPCには製作不可能なコードでした。それを名簿にですよ?不自然ですよね」

 

 

「そうね… 最悪の場面を想定すると、もう私たちのことを押さえようとする敵勢力が完成しているのかも知れないわ…」

 

 

「校長室でゆりっぺさんが気になったのと関係あるのかも知れませんね… 神からの手先ととりますか?」

 

 

「かなでちゃん以外で不明な敵ととると、それが無難ね」

 

 

「連絡は以上です。」

 

 

「今は何もないからフリーでいいわよ?」

 

 

「いえ…竹山さんとギルドに行きます。武器はそろそろ届けられそうですのでご期待ください。」

 

 

「そう…それじゃよろしく頼むわね?」

 

 

「はい」

 

そういうと遊佐は出て行った。朝から律儀で真面目な子…

いや、もしかしたら竹山とタッグを組むのが意外に気に入ってるのか?

とにかく学校を回って情報収集すべき。

着替えて出かける支度をしよう …

 

 

☆校長室☆

 

 

「おっしゃースリーカード!…もらったぜ!」

 

 

トランプ片手にかっこつける日向。藤巻、大山、TKと朝からポーカーで盛り上がるごく普通、何事もない日々が流れようとしていた。

 

 

「へっ…そんなもんか?フルハウスだぁ!!」

 

 

「ぬぁぁぁに~っ!?」

 

 

「日向くんオーバーリアクション過ぎるよ…」

 

 

「神も仏も天使もなし…か… 今はそんな合い言葉、もう使わないわね…」

 

 

独り言をぶつぶつ言いながらゆりが来る

 

 

「おはよう」

 

 

入り口でばったりあった椎名さんが挨拶をしてきた。

…って!椎名さん!?え、マジ?以外すぎるんですけど!!

 

 

「おはよう椎名さん。とりあえず、中に入りましょうか?」

 

 

「ああ」

 

 

日向たちだけかと思ったが、校長室には殆どの戦線メンバーが集まっていた。

むしろ、私達が最後だったらしい。

遊佐さんたちはいないけどね…

 

 

「ゆりっぺおはようさん」

 

 

「あれ?日向くん、私今日集合なんてかけたかしら?」

 

 

「いや?…多分、みんな不安なんだろうぜ 昨日いきなりこの世界に戻されたばっかで、まだ何もわかってることがないからな」

 

 

「ま、まさか…私が脱ぐことによってこの世界の隠された扉が開くというのか!!」

 

 

戦線で現在参謀を務めている高松が制服に手をかける。

いや、どこをどう解釈したらその結論に至るのか是非教えて欲しい。

というか、もう貴方はヌーディスト○ーチに移籍した方がいいと思うわ…

 

 

「いや待て!どこをどう解釈したらそうなるんだよ!」

 

 

私の心の中と同じことを日向くんが突っ込んでいた。

あれ?そしたら私あいつと同レベル?

いや、それはないわ…私は何も考えてない。前言撤回!私は大人!

 

 

「ゆりっぺー?何自己暗示かけてるの?」

 

 

「って!うわぁぁぁ!?何!?何なのよ大山くん!?貴方は超能力者か何か!?」

 

 

「あれ?なんかその質問昨日僕もした気がするや」

 

 

「そ、そんなことより!せっかく集まってるなら何か行動を起こしましょ まだまだわからないことがいくらでもあるんだから…」

 

 

♪♪♪

ゆりがそう言って何かを考えようとすると外の方から大きな音が聞こえてきた。

…そう、彼女達のライブだ!

 

 

「…演奏? もしかしてあいつらのライブか!?」

 

 

ひさ…ゲフン、ガルデモの存在を頭に思い浮かべた藤巻が叫ぶ。

 

 

「どうやら、ガルデモのほうも大丈夫のようね」

 

 

「みたいだな せっかくだし、ライブ行ってみないか?」

 

 

「確かに、私達は同時進行でオペレーションを行うのであまりガルデモの演奏を聞いたことはありませんね」

 

 

「そうだね!こういう時くらいしか聞けないし僕賛成!」

 

 

日向の提案に高松、大山も賛成した

 

 

「ふん、そんな女々しいものを見に行くなど…!」

 

 

「あら?私もせっかくだし行こうと思うんだけど野田くんはこないのね?」

 

 

「行く!行くぞおおお!!!ゆりっぺえええええ!!!!」

 

 

「それじゃ、決まりね!みんなで体育館に行くわよ!」

 

 

☆体育館☆

 

 

Crow Song、Alchemy、My,Soul Your Beats!、Hot Mealと次々と演奏していきたくさんのNPCが集まり歓声をあげている。

だいぶ盛り上がってきた

 

 

「ふぅ…思ったより集まって来てるな…」

 

 

「久しぶりのライブっていうのもあるんでしょうね~」

 

 

「よし!一旦休憩しよう」

 

 

ガルデモがステージを降り、休憩タイムを取る。ライブの曲も後半は聞けたし話しかけるなら今ね…

 

♪//♪//♪//♪//♪//♪

 

 

「ちょうど休憩みたいね…今のうちに話しをしに行くわよ?」

 

 

というわけでぞろぞろと戦線メンバーがステージ裏に向かっていく。

その時、ゲリラライブの音を聞きつけ、敵が迫っているのに気づいた者は誰もいなかった。

 

 

☆体育館(ステージ裏)☆

 

 

「あれ?ゆりたちじゃん…」

 

 

「久しぶりだなー」

 

 

「ええ。…ガルデモも無事みたいでよかったわ」

 

 

「あの…ユイを知りませんか?」

 

 

「やっぱりいないか…」

 

 

ここでもうなだれる日向。やはりユイは戻っていないらしい

 

 

「どうする岩沢? 目的は一応果たせたし今日はやめるか?」

 

 

「大変だよー!先生達がたくさん来た!急いで逃げようよ」

 

 

体育館入り口で様子を見張ってた大山が慌てて走ってきた。

 

 

「…だそうだ」

 

 

「よし…じゃあ楽器片付けてとっとと逃げるぞー!」

 

 

慣れたようにガルデモメンバーに指示を出すひさ子と岩沢。

 

 

「校長室で待ってるわ…終わったらメンバーみんなで来てね?今は情報集めが先決になってるから」

 

「はいよ」

 

 

「片付けてめんどくさいねーみゆきち」

 

 

「しおりんはベースだけじゃない…」

 

 

「ドラムは大変そうだな…俺も手伝うぜ」

 

 

「しゃーねー 俺もやってやっか」

 

 

ガルデモ+日向、藤巻はライブの片付けを。残りのメンバーは校長室に行く…予定だったが?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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Rewrite組登場

・・・だいぶ間が空いての投稿になります。
ネタが唐突に思いついたので再喝。
この小説はだいーぶ昔に私が作成したものを書き直したものになるので、考えたのももう何年も前の話になります。
というわけで、6話を投稿しますが以前と比べて書き方等だいぶ変わっております。
5話と6話の間で違和感があるかと思いますが、今後は今回の書き方に統一して書きますので宜しくお願いします。


時はゆりたちが目覚めた頃に巻き戻る。

死後の世界と対となる世界である「現世の世界」

今回はこちらの世界でのお話だ。

といっても、現世のどこかが舞台となるわけではない。

現世であって現世でない、そんなありえない場所に少年・天王寺瑚太朗はある意味この世界の神とも呼べる存在に呼び出し・・・いや、召喚をされていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

白、白、白・・・

辺り一面真っ白。

自分は全方位真っ白の立方体の中に呼び出されたようだ。

これだけでどう考えても知っている日常ではない。

「異常」に首を突っ込んでしまったことを察する。

そんな真っ白の空間の中で唯一異質である木製の椅子に自分は座り、対面には今まで何度も顔を合わせてきた黒衣に身を包み、真紅のリボンが象徴的な神様がいた。

 

「細かい設定とか、状況は抜きにして単刀直入に聞く。今回俺を呼んだのは何故なんだ?『篝』。」

 

語りかけたのは瑚太朗。

そして、目の前にいるのは篝と呼ばれた少女。

少女といっても外見がそう見えるだけで人間ではなく、地球という星が生み出した観測者に過ぎない。

今後地球に起こる先々までを観測し、地球が崩壊すると判断すれば救済という名の世界崩壊を起こす危険な存在。

そうであるが故に、この篝という少女「通称:鍵」を巡り、地球で大規模な戦闘が起こったのは過去の話だ。

天王寺瑚太朗はその戦闘に関わり、その中で最も鍵と接触し、鍵の理解を得た人間なのである。

現在は大規模戦闘は終結し、細かいいざこざはあるものの概ね皆が平和に暮らしていた状態。

篝も姿を消していたが、突然このような呼び出しを受けた瑚太朗。

困惑はするも顔には出さず、冷静に上記の質問をする。

 

「あなた達が住む世界とは別の世界、そこで悪しき記憶が生まれようとしています。・・・ぶっちゃけマジヤバです。」

 

「単刀直入にとは言ったが直すぎんだろ!・・・悪しき記憶ってのは、良い記憶の逆と捉えればいいのか?」

 

「はい、樹形図の中にそんな未来が生まれました。この先のこととはなりますが、別世界の記憶がこの世界に干渉し、やがて救済を起こすこととなる。それくらい、別世界に干渉を及ぼすほどの強大な悪意が生まれようとしているのです。というわけでちゃちゃっと解決してきてください。」

 

「・・・なぁ、前後の口調どっちかに合わせらんねぇの?何か重要な話をしてるのに緊張感がだな・・・」

 

「うぃーす、おっけー☆」

 

「そっちに合わせんのかよ!!」

 

・・・冗談はさておき、鍵が救済を起こすかどうかには必ずトリガーが存在する。

そして、そのトリガーを引かないようにするためには、鍵に「良い記憶」を見せなければならない。

良い記憶といっても、具体的に何が良い記憶なのかはさっぱり分からず、それを見せるのは非常に困難である。

さらには、篝がこうして申告してくれなければ、現状がどの程度まずい状態なのかさっぱりわからない。

今回については、別世界で未来、悪しき記憶が生まれ、それが現世の良い記憶に干渉する。

そうすることによって、鍵である篝は救済を起こさざるを得ない状況になってしまったと瑚太朗に報告しているというわけだ。

 

「とはいえ、別世界かぁ・・・ 月とかそういうオチも見てきたから、今更驚くつもりはないけど、本当にあるんだな。」

 

「篝ちゃんもその世界について詳しくは知らないのですが、どうやらそこは死後の世界というらしいですね。あ、ちなみにそこに飛ばすこと、できるんでちゃちゃっとよろぴく☆」

 

「できるのかよ・・・ というか、死後の世界ってなんだよ。今度はゾンビが相手とかか?流石に未知の世界に1人で飛ばされるのはなぁ・・・ それに今回、俺はどういう世界の俺になるわけよ。」

 

「現在のあなたは全ての世界を経験し、かつその記憶を共有した言わば最強の状態です。その力を全て引き継いだ状態で更に仲間も転生させるとなると、・・・限界は5人と言ったところでしょうか。」

 

「5人か・・・ そんだけいれば十分だ!俺が誰を連れていきたいかなんて、今更説明するまでもないよな?」

 

天王寺瑚太朗が生き、そしてその生涯を共にした仲間。

神戸小鳥、鳳ちはや、中津静流、此花ルチア、千里朱音・・・

彼女達がいれば恐れるものは何も無い。

そして、それぞれがそれぞれの世界での最強状態を維持できるというのであれば、様々な世界を生きてきた瑚太朗は全く負ける気がしなかった。

 

「私は観測に集中しなければならないため、ここを離れることはできません。唐突なお願いであり、また貴方方を頼らなければならないことを謝罪せねばなりませんが、地球のため、どうかよろしくお願いします。・・・瑚太朗」

 

「ああ、任せておけ!」

 

 




Rewrite組登場です!
改めて、今作品はAngel Beats!、Rewriteのクロスオーバー作品に多数のオリキャラを加えた完全オリジナルストーリーのため、原作沿いには進みません。
原作ブレイク、オリジナル展開、原キャラへの追加設定等あるのでキャラ崩壊もします。
それでもいいよ!って方のみ見ていただければ幸いです。
特に音無、かなで、遊佐あたりはだいぶ原作とキャラが変わるので、キャラ崩壊が苦手な方へのために改めて注意書きとさせていただきますのでご了承ください。


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新たな敵『新制生徒会』

☆注意書き☆

今回のお話ではオリキャラが大量に登場します。
それでもいいよ!って方のみこの先へお進みください。

最新話の方お待たせしました!
早速オペレーション・スタート!



☆体育館☆

 

時はゆりたちが校長室に再奪取に成功した時まで巻き戻る。

岩沢達ガルデモメンバーは第3話の発案のとおり、自分たちの存在をゆりたちSSSメンバーに伝えるため(という名目で実際は岩沢が楽器を弾きたいだけ)

このまま体育館でライブをすることとなり、その準備を進めていた。

幸い前回消えるまで使用していた自分たちの楽器はすべて残っており、最も厄介な入江のドラムの設置まで完了すると、メンバーはようやく一息つく。

 

「始める前に少し休憩してからにしませんか?私、飲み物買ってきますので・・・」

 

と入江。

皆それに賛同し、関根同伴で二人は自動販売機へ向かった。

 

「なら、待ってる間に前回の話をしとくよ。あたしも最後まで残ってたわけじゃないけど音無から大体の考えは聞いてる。予想が間違っていなかったなら、最終的にはこういう流れで終わっていたはずなんだ。」

 

ひさ子は岩沢に、前回岩沢が消えてから自分が消えるまで、自分たちの身に起こった出来事を話した。

いなくなった岩沢の枠にユイという少女が入り、ガルデモは継続。

新曲を出しつつSSSの陽動班としてライブを続けたこと。

この世界は生前をまともに過ごせなかった高校生の生徒が集められ、その心残りを埋めることで現世に成仏という名の転生をすること。

(なお、現世に成仏できることは前回死後の世界にいたときはわからなかったが、今回再びこの世界に自分たちが戻ってくるまでは現世にいたこと、またその記憶を引き継いでいることからくる実体験である。)

そして、みんなを現世に戻そうと働きかけ行動したのが音無と天使こと立華かなでであること。

この世界に長くいすぎたためなのか、原因は最後まで判明しなかったが、捕食した人間をNPCに変えてしまう影が現れたことなどなど。

ひさ子、関根、入江の3人はこの段階で現世に成仏したため、考えられるのは影に全員捕食されるか、音無がみんなを成仏させるかの2択だが、ひさ子の予想では後者が正しいと確信している。

そんな話をしているうちにいつの間にか入江と関根が戻ってきており、ひさ子の話を一緒に聞いていた。

 

「前回のお話ですね・・・色々大変でしたよねえ・・・」

 

「なるほど、私が消えてからそんなことがあったのか・・・新人のイメージしかなかった記憶無し男がそこまでね・・・」

 

「ま、そういうこった。だから正直、ガルデモメンバー全員揃ってここに戻ってきたのがあたしは未だに信じられない。」

 

「特に私とひさ子はゆりたちがSSSを立ち上げる前からこの世界にいた超古参メンバーだが、ひさ子の話に出てきた超イレギュラーの連続なんてとてもじゃないが経験したことないしな。私としてはこの世界がどういかいうより、そのユイって子が気になるけど。まさか私が昔、ひっそりとストリートライブ見に行ってた子が、次期ガルデモのボーカル&ギターをやってたなんてさ。」

 

「さっすが岩沢先輩!自分の命が危険に晒される可能性ガン無視で相っ変わらず音楽のことしか考えてないアホですね!!」

 

「てめえは少しは岩沢をみ・な・ら・えっ!仮にも先輩だろーが!!」

 

とひさ子が関根の頭を両拳でグリグリし、関根が痛いですー><と涙目になるところまでは最早ガルデモ恒例の行事である。

そんなこんなでガルデモ同士での情報交換会もすんだところでいよいよゲリラライブの始まりだ!

しかし、狼煙とは味方へ知らせる合図であると同時に、敵にも同じ情報を与えてしまう諸刃の剣である。

この安直な考えが、今後SSSメンバーを重大な危険に晒してしまうことを、今は誰も知らないのであった。

 

☆生徒会室☆

 

ガルデモのライブが始まった。

この世界へ舞い戻り、最初の1曲目はCrow Song。

その歌声を聞き、NPCを中心とした多くのメンバーが集まりだす。

もはや教師でも止めることはできないこの観客の声援。

以前は天使ことかなでが止めようとしていたが、そのかなでも今やこの世界に戻っているかどうか不明だし、戻っていたとしてもゆりたち戦線メンバーとは和解している。

これではやりたい放題ではないか!

・・・となればいいのだが、世の中そう上手くは行かないようだ。

たとえそれが、死後の世界であったとしても。

 

「・・・いよいよ始まったわね。ようやく私たちの時代が始まるわ。」

 

「俺達はそのために集められた、この世界で最強と言っても過言ではない精鋭部隊で構成された新制生徒会。その力は、一方的な暴力となる。」

 

「生徒会長の敵は俺の敵。命令に従い斬り捨てるだけだ。」

 

「僕も頑張るよ、この世界は好き放題暴れていい場所なんかじゃない。」

 

「だりぃ・・・面倒なのはごめんなんだが・・・」

 

「ふん、神である僕の力。貴様らとともに使わなければいけないのは非常に不本意だが、あのお方のためなら本望だ。」

 

この世界でゆりたちが無事成仏した後のお話。

この世界の根幹に関わる証拠物については当然消去されるのが基本だが、何にでも穴や抜け道は存在する。

神に抗い何十年とその歴史を作ってきた死んだ世界戦線と天使の抗争は、その記憶と記録から後世に語り継がれてきた。

この世界は、青春時代をまともに過ごせなかった少年少女に満足してもらうための世界。

つまり、この世界にとって死んだ世界戦線のように維持することを目的とした組織は絶対に存在してはならないのである。

そんな組織や集団を二度と作らないようにすべく、この世界の生徒で最も知略、戦闘力に長けたメンバーのみで構成し、最早最強と化した6人の集団が生徒会室に集まり牙を研ぎすませていた。

それが、立華かなでがいなくなった後の生徒会『新制生徒会』なのである。

 

☆校長室☆

 

ガルデモのライブが始まった。

この世界へ舞い戻り、最初の1曲目はCrow Song。

その歌声を聞き、NPCを中心とした多くのメンバーが集まりだす。

校内響き渡る他者を魅了する歌声は、当然SSSをの新拠点(再拠点?)である校長室にも届いていた。

 

「ん、これ、ガルデモのライブじゃねえかゆりっぺ!?」

 

「そう・・・ボーカルは岩沢さんね。彼女たちも戻っていたのね。」

 

「ねね!早く行こうよ!僕もう待ちきれない!」

 

大山が言う。

確かに、天使をおびき出す以外の目的でちゃんとガルデモのライブを聞いたことなんてあったかどうか覚えてもいないレベルだ。

 

「そうね、たまにはそういうライブもいいかもしれないわ」

 

「ゆりっぺのやつ随分と丸くなったじゃないか、これもかなでty・・・ぶふーっ!?」

 

「とにかく!!今は特に新しいオペレーションはないわ。各自ライブを見に行って、終わり次第ガルデモと接触するわよ!」

 

ゆりに殴り飛ばされ、壁に頭をめり込ませている日向を放置しメンバーは各々体育館へと向かっていった。

この茶番劇も最早恒例行事といえば恒例行事である・・・

 

☆体育館☆

 

場所は再び体育館へ。

音を聞きつけギャラリーは次々と増える一方。

しばらくぶりのライブというのもあってその勢いは止まることを知らず、2曲目のHot Meal、3曲目のAlchemyへと差し掛かる頃には観客はマンモス校用の巨大体育館を満員へと埋め尽くされていた。

ガルデモだー!いいぞー!など、NPCの歓声が聞こえてくる中、邪魔をされないライブはさらなる盛り上がりを見せ、最高潮まで達していた。

思いっきり曲を演奏できる嬉しさ反面、ユイの姿が見えないことや、オペレーションではないので遊佐の指示が飛んでこないところなんかは少し寂しくもある。

Alchemyの演奏が終わろうかという段階でひさ子がSSSメンバーを発見したため、物足りなさはあるがライブは終了となった。

ライブ後、ステージ裏で岩沢たちとゆりたちが再会を果たす。

 

「岩沢さん久しぶりね!そちらは揃ってるようで安心したわ。」

 

「そっちも相変わらずだな。ライブをすれば気づいてくれると思っていたさ。とりあえず情報交換でもしようか。」

 

ここで再び、成仏後の情報交換などが行われた。

 

「なるほど、校長室の再奪取は完了、幹部で存在が確認できないのは音無、直井、ユイの3人か。」

 

一通り話を聞き終えた後、ひさ子が要点をまとめる。

ゆりとしてはガルデモ方面でもユイの存在が確認できなかったのは意外だったようだ。

 

「となると、たまたま見つかっているだけであって、必ずしも全員転生したとは限らない可能性も出てくるわけね・・・」

 

ゆりがその考えに至ったのもつかの間、血相を変えた藤巻と大山が駆け込んできた。

 

「やべえぜゆりっぺ!何かやばいのが来た!!」

 

「・・・うるさいわね。今は取り込み中よ。」

 

「ホントなんだよゆりっぺ!武装した集団がこっちに向かってきてるんだ!その中には・・・その・・・」

 

藤巻のアホ説明に大山も補足するが、最後の方は言いにくいのか口ごもってしまった。

天使不在の今、武装していて且つ集団。

その情報だけで、ゆりは新たな敵がこちらに歯向かってきたことを察する。

 

「とにかく、一度本部へ戻るわよ!男共はガルデモの安全を最優先!」

 

「あ、あの・・・私のドラム・・・」

 

言いにくそうな顔でおどおどしながら入江がおずおずと手を挙げる。

新たな敵がどういう相手か分からない以上、ミュージシャンの命とも言える楽器を放置したまま逃げることは入江だけではなく、全てのガルデモメンバーは反対のようだ。

他のメンバーはギターまたはベースのみであり、アンプは予備があるため問題ないが、入江のドラムだけはどうにもならない。

華奢な女の子1人で運ぶのは不可能な話だった。

 

「楽器は今後のオペレーションでも必須になるし仕方ないわ、ここは二手に別れましょう。日向くん、大山くんは入江さんの手伝い、藤巻くん、野田くん、椎名さんは私と一緒に来て!ガルデモメンバーが逃げる間、敵の注意を引きつけるわよ!」

 

遊佐、松下、高松、竹山はギルド方面での作業に出ていることから、メンバー編成はこのようになった。

陽動及び迎撃部隊となった4人は敵の注意を引きつけるため、敢えて体育館の正面から打って出る。

周りのNPCはライブが終わっているため閑散としており、残っているNPCも武装集団の姿を見た瞬間逃げ出して行った。

 

☆体育館前☆

 

体育館から外に出ると、ぱっと見敵らしい敵は見つからない。

ならそれはそれで問題ない。

こちらとしては校長室へ戻ってしまえさえすれば勝ちなのだ。

そう考え、そのように指示を出そうとすると、注意していたはずにも関わらず四方八方から声をかけられた。

 

「そこまでよ!」

 

正面から、ゆりと同じくらいの体格の少女が姿を現した。

肩にかかるくらいの緋色のセミロングヘアーに新緑の瞳、模範生の制服を身に纏い武装は特になかった。

そんな彼女から予想できたようなできなかったような、そんな言葉を浴びせられた。

 

「私は新制生徒会・生徒会長の花園華蓮(はなぞのかれん)。貴方方死んだ世界戦線を拘束します!」

 

北東方面からはロングストレートヘアの男性が姿を現した。

少し色の抜けた黒髪で黒目、身長は170センチほどだろうか・・・

かなりガラの悪い目つきでこちらを睨んでおり、会長同様模範生の制服を着ている。

手には日本刀が握られていてすでに抜刀済み、剣先は戦線メンバーへと向けられていた。

 

「生徒会副会長の三条彰(さんじょうあきら)だ。会長の命令が聞けないやつは容赦なく斬り捨てる。」

 

北西方面からは青年が姿を現した。

この青年だけが、新制生徒会の中で唯一異質な雰囲気を醸し出している。

身長は180センチを越える長身で、銀髪の長い髪をワイルドポニーという独特の髪型でまとめ、右目は前髪によって完全に隠れている。

左目は真紅の瞳だが、右目は見えないので想像のしようがない。

義眼やオッドアイなど、実は特別な設定がありましたとか言われたら、あ、そうですかと言ってしまいそうな痛々しい外見この上ない。

生徒会と名乗るからには真面目なのだとは思うが、メンバーの中で唯一私服を着ている。

悪役が好んで着そうな真っ黒な黒衣を着ており、直接武器は持っていないが、一切隙を見つけることができない。

そんな気味の悪い青年だった。

 

「同じく副会長の鉤爪龍(かぎつめりゅう)だ。戦いはあまり好きではないが、会長の命令とあればやらせてもらうよ。」

 

南東方面からは少年が姿を現す。

この少年が一番説明しやすいかもしれない。

なんというか、外見が大山のそっくりさんなのだ。

違うところといえば、模範生の制服を着ていて髪が黒髪であることくらい。

おそらく、横に二人並べてぱっと見で判断しろと言われれば判断がつかないであろうそんな少年だ。

 

「生徒会書記の中務雅(なかつかさみやび)です。特徴がないのが特徴って笑われたりもするけど、こう見えて僕、結構強いですから!」

 

最後に南西方面から現れたのは、音無に諭され仲が良かったかと言われればそうでもないかもしれないが、かつて戦線メンバーの仲間だった男がそこにはいた。

 

「生徒会会計の直井文人(なおいあやと)です。貴様らは神である僕に消される。それはあの方が決めた変えられない運命だ。」

 

「・・・敵が出できたと思ったら、まさか直井くんとこんな形で再会になるとはね・・・」

 

椎名がいたにも関わらず、自分たち4人を完全包囲してくるような『新制生徒会』と名乗る集団。

その5人のメンバーを見る限り、武器を持っているのは彰と名乗った副会長だけだが、ゆりが長年戦い続けてきた経験を持ってしても、冷や汗と恐怖という心身の両方からここは逃げろという警笛が鳴っている。

しかし、他のメンバーがいる以上そんな真似はできないし、第一ここでこの生徒会共を足止めできなければ岩沢たちガルデモメンバーに危害が及び可能性が十分すぎるほどある。

 

「さあ、武器を捨てておとなしく投降しなさい!」

 

「へぇ・・・こちらのことを知っているようだけど、随分と大きく出たのね。私たちを知っているのなら、はい、そうですか。って素直に従う組織じゃないのも織り込み済みなんじゃなくて?

武器の数ならこっちの方が上だしね!」

 

華蓮とゆりが正面切って会話という名の前哨戦を始める。

対する戦線メンバーは、野田がハルバート、椎名がクナイを持っている。

さらに、前回はなかったが自分で創作したのか、藤巻も長ドスを持っている。

ゆりは武器を所持していないが、近接格闘にもそれなりの自信がある。

直井の催眠術は厄介であり、人数でも劣っているがそこまで劣勢ではないだろう。

相手の戦闘能力が未知数である以上、視覚情報で得られるのはそれくらい。

それを踏まえてゆりは上記の言葉を返したのだ。

だが、その前哨戦など問答無用と言わんばかりに華蓮はすぐに打って出た。

 

「聞いていたとおりのでかい態度ね。なら、実力で分からせてあげるわ!全員拘束しなさい!」

 

華蓮の指示で生徒会メンバーが一斉に襲い掛かってくる。

 

まず、刀持ちの彰には椎名が挑む。

続いて、野田は逆に先手を取って龍に斬りかかった。

藤巻は直井と対峙するが、直井の催眠術に対抗する手段がない以上おそらく長くは持たないだろう。

華蓮はすぐには手を出さないのか、手を出すまでもないと思っているのか攻撃してきていない。

そしてゆりの前には大山そっくりの雅が立っている。

 

「あなたに直接恨みはないけど、会長のために頑張らせてもらうよ!格闘には格闘ってね!」

 

「はぁ・・・私、あなたに似てる仲間を持っているけど、正直負ける気がしないわね・・・ ま、来るっていうなら容赦はしないけどっ!!」

 

先手を取ったのはゆり。

速攻をかけて蹴りをかます。

会長と名乗るのあれば、この中では紅一点とは言え、一番強いのはおそらく華蓮だろう。

数の上でも劣勢であるならば、長々戦っているほどの余裕はない。

蹴りの狙いは腹部。

一発のノックアウトで終わらせる・・・そのつもりだった。

 

「やだなあ、女の子が蹴りなんて軽々放つものじゃないよ?」

 

「うそ・・・」

 

雅はゆりの蹴りを両手でガッチリと受け止めていた。

そしてそのままゆりを持ち上げ、頭からコンクリートの地面に叩きつけようとしてくる。

体術にかなりの自身があるのか、見かけによらずパワーがあるようだ。

逆にこっちが一発ノックアウトを食らうと判断したゆりは強引に身体を捻り拘束を解くと着地し、一旦バックステップで距離を取る。

そして思わずこう呟いてしまった。

 

「大山くんの上位互換じゃん!!」

 

・・・大山が聞いたら泣くぞそれ。

 

「あはは、誰のことかよくわからないけどお褒めに預かり光栄だよ。僕、体術には結構自身があってね。他の得意分野は勉強とお茶入れかな。」

 

「それ以外は地味!!中身までそっくりさんじゃん!!・・・って、そんなこと言ってる場合じゃなかった。」

 

大山のように終始ニコニコしながら会話をしてくるため、思わずペースを崩しそうになるが、今はそんな馬鹿話をしている場合ではない。

銃があればとも考えたが、ないものをねだっても仕方がない。

他のメンバーも、各々撃退してくれるとは思っていないので、ここは自分が頑張らなければいけない。

重い一撃を受け止められるのなら小技の連続技で叩き潰すまで!

ジャブ、ジャブ、ストレート。

今度はボクシングを中心とし、蹴りや投技を混ぜ込んだ完全我流の連続技で攻めに出るが、雅はそれを一つ一つ丁寧にいなしていく。

体術だけで言えば、ゆりと雅は互角の実力のようだ。

 

「さすが戦線のリーダーだね。防ぐことはできるけど、こんなに叩き込まれたら僕じゃ反撃できないよ。」

 

「決めきれないか・・・ でも、これで私に勝てないって分かったでしょ?貴方の会長を一発ぶん殴るから、そこをどいてくれない?」

 

「それはちょっと早まり過ぎじゃないかなあ・・・ 戦ってるのは僕達だけじゃない。貴女は確かに強いけど、他はどうかな?」

 

自身の戦いに夢中になり、ハッと周りを見渡すゆり。

彰と椎名の戦いは終わっていないようだが、若干椎名が押されているようにも見える。

リーチの差でクナイが不利なためだろうか。

機動性では流石に椎名に分があるようだが、致命傷となる攻撃は完璧に彰にかわされてしまっている。

野田はいつの間にやられたのか地面に伸びており、そのハルバートは龍の手に握られていた。

アホだ。

藤巻は早々に催眠術をかけられたのであろうしゃがみこんで地面に人差し指で何やら落書きをしている。

・・・アホだ。

相手の男はこれだけ強いのにうちの男どもときたらと下唇を噛むゆり。

気づけば5VS4から5VS2の絶体絶命に追い込まれていた。

しかも片方は均衡、片方はやや劣勢。

さらには全方位を取られており、逃げ場はない。

 

「くっ・・・こうなったら!」

 

ギルドからの追加物資及び増援があれば一発逆転が可能。

遊佐がどの程度まで作業を進めているかは半ば賭けだが、ゆりは遊佐にインカムで連絡を取ろうとする。

 

「もう・・・しわけ、ありません・・・ こちらも狙撃手に完全補足され、身動きが・・・」

 

インカムからは疲弊しきってハァハァと荒い呼吸をする遊佐の吐息と、支援できないという回答が返ってきた。

おそらく、敵に見つかって相当走ったのであろう、息を整えている余裕もないようだ。

心の中で舌打ちするゆりに対し、そのインカムからは遊佐ではない男の声が聞こえてきた。

 

「生徒会会計の檻宮駆(おりみやかける)だ。面倒事は好きじゃなくてな。君のところのオペレーターを無事に帰す代わりに投降してくれないか?だるくて・・・」

 

全員拘束って言ってるのに帰すわけないだろうと心の中で突っ込む。

遊佐まで人質にされてしまっては、状況は最悪の状況となってしまった。

 

「期待の増援も絶たれ、打つ手なしってところかしら?これで分かったでしょう?貴方たち程度、私たちの『相手にすらならない』ってことが。」

 

そこまで計算ずくなのか、華蓮が煽ってくるかのような笑みを浮かべ、上記の言葉を発してくる。

まさしくそのとおりであり、返す言葉がなくなってしまったゆりに椎名がどうにか接近し、提案をした。

 

「ゆり、ここは撤退を。男を1人担いでくれれば私がなんとかする。」

 

椎名も焦っているのだろう、あさはかなり以外のセリフなんて久々に聞いた気がする。

撤退って言われてもどうやって?

全方位を塞がれているこの状況で強行突破?

だとしても、ここで私が捕まれば戦線の維持はおそらく難しくなる。

仮にこちらが逃げ切れたとして、別位置で捕まった遊佐はどうする?見捨てる?

様々な思考を同時に処理していく。

頭が割れそうに痛い。

だがそんなとき、ゆりは以前かなでのことについて、遊佐に相談したことを思い出した。

 

(遊佐さんは私が思っているよりかなり頭が切れるし、状況を判断して行動できる戦線メンバーで数少ないアホじゃないメンバーの1人。

遊佐さんには申し訳ないけれど、ここは一か八か賭けるしかないかしらね。)

 

結果的に遊佐を見捨てるということにはなるが、遊佐が現状どこにいるかわからない以上、仮に優勢でも援護に行くことは難しい。

そして、指示を出さずともギルドの復興をしたり、かなでの話をしたときなどの遊佐の冷静な分析力。

それを持ってすれば、もしかしたら自力で状況を打破してくれるのではないか?

そんな都合のいい自己解釈に吐き気を催しながらも、それ以外に方法がないのならとゆりは『決断』した。

 

「椎名さん、お願い。」

 

そういって藤巻を強制的に気絶させ、担ぎ上げるゆり。

 

「あさはかなりー!!」

 

やっぱりそれなのか、椎名がわけのわからないアホセリフを叫んだかと思うと、隠し持っていた煙玉を複数個投げ、野田を担ぐ。

更に華蓮に対し、持っていたクナイを全て同時投擲。

そうなれば、武器持ちの人間が華蓮を助けるしかなくなる。

案の定、彰が華蓮のカバーに入り、日本刀でクナイを全て弾き落とした。

そうすることによって、完全包囲されていた空間の中で、彰が守っていた北東方面ががら空きとなる。

そこまでくればわざわざ説明されずともゆりには状況が把握できた。

椎名とともにその唯一の穴に全力でダッシュし、そのまま駆け抜ける。

 

「逃がすか、私たちが本気を出せば・・・!」

 

「やめておくんだ華蓮。ここは深追いをする場面ではない。」

 

「てめえ、会長の命令に従わないっていうのか!」

 

どうやら新制生徒会も1枚岩ではないのか、龍と彰が揉めだした。

その僅かな隙ですら今は好機。

ゆりと椎名は逃走に成功するのであった。

 

「待って彰。深追いをしない理由を聞かせて、龍。」

 

「今回は確かに目的は彼女たち全員の捕縛だが、それはベターな選択肢であってベストではない。俺達の目的は死んだ世界戦線を壊滅に追いやること。捕縛しても成仏には繋がらない。1度目は牽制し、それで彼女たちが己の危機を察し、自分たちで勝手に成仏してくれたほうがこちらとしては儲けものだということだよ。」

 

「・・・なるほど、流石うちの頭脳ね。ここは撤収よ!」

 

「チッ・・・」

 

龍の意見が通ったのか、新制生徒会がこの時、さらに追手をかけるというようなことはなかった。

彰は最後まで納得がいかなかったのか、舌打ちをしながら生徒会室へ戻っていった。

 

こうして、死んだ世界戦線は復帰して間もなく、かつて経験したことがないような、組織的な大敗北を経験することなった。

 




新制生徒会キャラクター紹介
死後の世界の生徒会は下記の7名で構成されており、本作品では直井を除く全員がオリキャラとなります。
7話では、そのメンバーが一気に登場したため分かりにくかった方がほとんどかと思いますので、ここで各キャラクターの簡単なプロフィールを公開させていただきます。
ただ、基本情報以外は全てネタバレになってしまいますので、その点については後日追記するか、新たに場を設けて再度紹介するかは検討中となっています。
よろしくお願いします!

生徒会長

花園華蓮(はなぞのかれん)(女)
身長:162
体重:乙女の秘密☆
スリーサイズ:だから秘密だっつーの!!(カップ数はC)
髪型及び瞳:緋色のセミロング、新緑の瞳
使用武器:???
特殊能力:???
キャラクター紹介:
ゆりやかなでたちが卒業した数年後、新たに結成された生徒会「新制生徒会」の生徒会長。
現在紹介されている生徒会メンバーの中では唯一の女性であるが、本人がおてんば娘なところもあり、あまり気にはしていない模様。
死んだ世界戦線のことについて、理屈としては理解できるが賛同はしないという考え方を持つ。
規律を重視する性格で融通はあまり効かないが、自分より良い案や策だと認めた場合には素直に受け入れる一面もある。
特に龍に対する態度がそうであり、彰には龍に気があるのではないかと誤解されている。
また、かなでに対しては最初は立派な生徒会長だと崇拝していたものの、後にテストで全教科0点を取ったり(ゆりのせい)、会長を辞めたり(ゆりのせい)、学食で時間外に食事をしたり(音無のせい)エンジェルプレイヤーで飾りなどという遊び道具を作ったり(音無のせい)などと、とても生徒の模範とは思えない不良娘に転換したことを知り、自分はそんなふざけた会長にはならないと一方的にかなでを嫌っている。
生前:
とあるお嬢様学校で生徒会長を務めていた。
勉強は中の中だったが、規律を重視し、各生徒の模範となれるよう行動していたが、そんな彼女をうざいと思った不良生徒に罠に嵌められて人為的な交通事故に巻き込まれて死んでしまう。


生徒会副会長

三条彰(さんじょうあきら)(男)
身長:176
体重:75
髪型及び瞳:少し色の抜けた黒のロングストレート、瞳は黒。
使用武器:日本刀
特殊能力:無し
キャラクター紹介:
蒔岡流剣術という剣術の使い手でその道場の元門下生。
蒔岡流剣術は今や禁じ手とされる実剣で人を殺すことを目的とした剣術であり、その力を好き勝手振るい、人を殺しすぎたことで道場を破門となる。
その後は各地を放浪としていたが、金を持て余し、人生の娯楽に飢えた観客たちを楽しませるために、その運営が仕組んだゲームに参加させられそこで命を落とす。
死後の世界に来てからも相当荒れていたが、華蓮と出会い、生きることの大切さを教えられ改心する。
それでも消えないのは、彼が生前に犯し続けてきた過ちをこの生徒会できちんと償いきってからという彼なりの信念のため。
そんな経緯から華蓮に片思いをしており、事あるごとに華蓮に意見し、且つ華蓮を納得させてしまう龍を嫌っている。
華蓮のために働き、華蓮以外の指示には従わない。そういう意味ではゆりっぺを崇拝する野田に似ているのかもしれない。
生前:
キャラクター紹介に含む。
補足すると、生前の彼には姉がおり、姉は彰と違い、同じ蒔岡流道場の門下生であるが、礼儀を重んじる気高き武士の鏡だった。
そんな姉もまた、拉致され、ゲームに参加させられて命を落とした。
彰は姉の復讐を誓い、ゲームに参加させられたとはいえ、半分は自分の意思でゲームに参加したとも言える。
なので、時系列的には姉の死→彰の死となる。


生徒会副会長

鉤爪龍(かぎつめりゅう)(男)
身長:184
体重:70
髪型及び瞳:銀髪のワイルドポニー、真紅の瞳。
使用武器:???
特殊能力:???
キャラクター紹介:
生徒会の頭脳の要。
新制生徒会は一人一人がそれぞれ意思を持ち、単独で行動することはできるが、彼は戦闘能力はもちろんのこと、頭脳面でかなり秀でており、推定IQは200を越えると言われている。
そのため、作戦を考えるのは大抵龍であり、修正や変更の必要性が生じれば唯一生徒会メンバーの中で華蓮に意見する。
そのせいか、彰からはかなり嫌われている模様。
また、本人は自称戦闘嫌いということで、本当に必要がなければあまり前戦には立ちたがらない。
外見もかなり特徴的で、180センチを越える長身の他、独特の髪型、そして黒衣の私服は周りから見ても相当な異常者であることは明白。
特に服装については、当時は華蓮からもかなり指摘されているが、その他の面で相当な働き・活躍を見せることにより、他の生徒会メンバー、それを越えNPCの教師にまで反論させない功績を作ってしまうほど。
生徒会以外では、人望のある人間や頭脳派の人間など、優秀な人間に興味があるようで、該当すれば戦線メンバーやRewriteメンバーにも無断で接触をする。
生前:
???


書記

中務雅(ナカツカサ ミヤビ)男
身長:160
体重:52
スリーサイズ:UNKNOWN
髪型及び瞳:黒髪黒目
使用武器:無し
特殊能力:無し
キャラクター紹介:
特徴がないのが特徴というどこかで聞いたようなフレーズ。
外見もそっくりであり、作中で述べたように髪を染めさせて隣に立たせれば恐らく見分けがつかないほどのそっくりさん。
しかし、ちゃんと別人であり、本家大○くんとは生きてきた境遇も違う。
近接格闘戦術が得意であり、柔道や空手、CQCなどありとあらゆる格闘戦術を盛り込んだその力は戦線リーダーのゆりとも互角に渡り合う。
最も得意な格闘技はボクシングで、その他の得意分野は勉強とお茶入れ。
生前:
普通の学生といえばそうだが、小学校の頃からずっといじめられてきた少年。
そんな自分に嫌気がさし、強くなりたいと願い中学校からボクシングを始める。
動機は単純だが、やってみると意外と本人とあっていて、体格などで格上の相手も倒してしまうほどに成長した。
そんなある日、街中でカツアゲをされていた子供を発見し、犯人を得意のボクシングでボコボコにするも、その犯人が暴力団の一員。
組に目をつけられて拉致されてしまい、殴る蹴るの暴行を受けた後、薬漬けにされて死亡してしまう。


書記

空席


会計

檻宮駆(おりみやかける)(男)
身長:174
体重:65
髪型及び瞳:青髪のミディアムで瞳は右目が金、左目が青のオッドアイで右目に眼帯をつけている。
使用武器:DSR-1、BLASER R93、ワルサーWA2000、Beretta92FS、ダガーナイフ、手榴弾、フラッシュグレネード、スモークグレネード、ポイズングレネード、注射器、アタッシュケース
特殊能力:future vision(詳細についてはおって)
キャラクター紹介:
他人に干渉することを嫌う極度の面倒くさがり屋。
口癖は「だるい」や「面倒事は嫌いなんだが・・・」等
死後の世界に来てろくに授業にも出ず、自堕落な生活を送っていたところを華蓮に見つかり徹底指導され、半ば強制的に生徒会メンバーとされ今に至る。
戦闘面については指導の必要もなく卓越しており、基本的に武器を使用して戦う人間が少ない生徒会メンバーの中で武器の特徴や種類に詳しく、大量の武器をアタッシュケースやギターケースに入れて持ち歩く。
狙撃手であり、対物/対人であれば対人狙撃の方が得意という相当な変わり者。
本人曰く、頭という弱点箇所が明確であれば、わざわざ対物のように有効箇所を探すのが面倒くさくなくて良いとのこと。
戦闘にせよ、私生活にせよ、何事も面倒の一言で片付けてしまう彼も、彼女と出会うことによって変わることとなる・・・?
生前:
殺し屋。
特に狙撃での暗殺を専門としており、その技術は生前で培ったもの。
眼帯をしていても距離2000メートルオーバーで一発も外したことのない気持ち悪いほどのその腕は、所属していた組織内でも大きな評価を得ていた。
しかし、とある任務で対象以外の人間を誤射し、たった1度の失敗で組織を追放される。
その後、殺害された人間の関係者と思われる人物に復讐され、逆暗殺により死亡。


会計

直井文人(ナオイ アヤト)
身長:UNKNOWN
体重:UNKNOWN
髪型及び瞳:緑髪に黄色の瞳、学生帽を常に被っている。
使用武器:無し
特殊能力:催眠術
対象者に自分の目を直接見させることより、自分が発した言葉通りの暗示をかけることができる。
直接相手の目を見なければならない弱点はあるが、それ以外にはデメリットが全くない能力のため、その強さはチート級と言っても過言ではない。
催眠術を発動させる際には、自分の瞳が赤に変わるという特徴がある。
キャラクター紹介:
新制生徒会メンバーの中で唯一ゆりたちがいた頃に存在している、いわば華蓮たちの先輩。
だが、年をとらないので世界なので外見や実年齢に変化はなく、本人の性格もあってか、生徒会メンバーの誰からも敬われてはいない。
本編通りに成仏を果たしたが、いつの間にかこの世界に戻ってきており、そのタイミングはゆりたちより圧倒的に早かった。
音無不在の今、戦線に味方する理由もなくなったことから、自らを神と呼称し、好き放題やっている。
また、直井自身も新制生徒会メンバーと馴れ合うつもりはないらしく、自らが崇拝する神のためだけに動いている様子が伺われるが、真相は不明。
生前:
陶芸の名士である父の下に生まれるが、才能豊かな双子の兄・健人が跡取り候補となったため、誰からも期待されない毎日を送っていた。
しかし木登りの際に枝が折れ二人そろって落下、運悪く石の上に落ちた健人が死亡したことで健人と入れ替わり、父の下で周りに受け入れられるチャンスをつかむべく壮絶な修行を積むが、師である父が病に倒れたことで再びチャンスを失う。そのため、「自分の存在を誰かに認められること」が彼の行動原理になっていた。尚、死因は不明。(Wikiより抜粋)


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開戦のクロスオーバー! 瑚太郎VSゆり

Rewrite組、死後の世界へ本格参戦です!


☆校長室☆

 

突然出てきた新制生徒会とかいうわけのわからん集団。

何故か直井も混じっているし、これだけ大組織となった戦線メンバーがここまでの大敗北をするなど今までになかったことだ。

現状、自分たちの置かれている状況、戻ってきていないメンバーの安否など、ただでさえ考えなければいけないことが多すぎる中で、ここまで厄介事を増やされてしまっては苛立ちを隠すなというのが無理な話である。

ガルデモメンバー及び陽動部隊は、なんとか全員無事に戻ってきたとはいえ、遊佐は戻らず、死んだ世界戦線リーダーこと仲村ゆりはかなり苛立っていた。

 

「くそっ・・・!」

 

とても女の子とは思えないキック力で、乱暴に視界に入った椅子を蹴り上げる。

アホが大多数を占める戦線メンバー幹部も、この状況下で余計なことを言おうというメンバーは誰もいなかった。

いつもは賑やかな校長室も、人数はいるにも関わらず沈黙が続いている。

 

数十分後、その沈黙を破ったのは、以外にも外からだった。

 

「神も仏も天使も無し・・・」

 

そんな懐かしい合言葉を言い現れたのは、ゆりが見捨て今回の作戦失敗で最も心を痛める原因となった少女・遊佐だった。

 

「申し訳ありませんゆりっぺさん・・・私のせいで敗北を・・・」

 

「遊佐さん!?・・・いいのよ、私こそ貴女を見捨てるような真似をしてごめんなさい・・・」

 

遊佐の体力は戻っており、特に目立った外傷もなかった。

前回の声を聞くからして、何かされていてもおかしくはない状況ではあったが、ゆりはそこに安堵する。

遊佐の後方には松下、高松、竹山がおり、それぞれの両手には大量の武器が抱えられていた。

 

「お待たせしました。メンバー全員の装備を用意しました。敵が発生しているため、車を用いての予備弾倉の搬入まではできませんでしたが。」

 

流石遊佐である。

自分たちが不利な状況に追い込まれていても、現状何が求められているかを冷静に判断し、必要物資を届けてみせた。

 

「ありがとう・・・本当に感謝するわ。」

 

「うわー、俺遊佐がこんな喋ってるの初めて見たかも。お前こんなキャラだったっけ?」

 

「日向さん、それは見かけの判断では?私は必要があればきちんと話しますし、現れます。そういうキャラです。」

 

「逆に、あんたは最古参の幹部なんだから、もう少し遊佐さんを見習ったほうがいいわね・・・」

 

「へいへいそうかよ・・・ んでもま、これで今いるメンバーは全員揃ったみたいだし、やっと今後の方針を練れそうだな。」

 

珍しく日向がまともなことを言った。

 

現在この場にいるのは、音無、直井、ユイ、チャーを除いた全ての幹部メンバーである。

ゆりは遊佐が無事帰還したことで少し冷静さを取り戻したのか、今現在までの出来事を日向、高松にそれぞれ報告させる。

まず日向たち、こちらはガルデモとともに入江の楽器を搬送しつつ逃走。

ゆりたちが正面からやりあってくれていたお陰で特に実害はなく校長室にたどり着けたようだった。

高松たちの方は、ギルドで生産された武器や弾倉の搬入が最優先とされるため、それを目標としてひたすら行動を続けていた。

必要数の管理は竹山、搬入は高松と松下が担当し、武器の搬入へ。

こちらも特に敵と遭遇することなくたどり着けたが、今到着したことからわかるようにその用意ができたのが今現在というわけだ。

一通りのベースが整ったため、今後はもっと早急な調達が可能となるが、それらが全てなかった状態、つまり土塊から銃などを作り直すにはチャーの技術が不可欠であり、1回目である今回に限り、相当な時間がかかってしまったというわけ。

遊佐の方は、ギルドを担当しているメンバーに指示を出しつつ、逃走班の方が狙撃手に狙われているところを発見。

妨害しようと試みるが、新制生徒会の1人に対して1人ではどうすることもできず、失敗に終わる。

だが、結果的にガルデモが無傷で校長室に帰れたというのであれば、その功績は100%の失敗ではないとも言えた。

遊佐がどうやって駆の前からここまで戻ってこれたのか、それを遊佐は語らなかった。

 

「なるほど、各員の状況はそんなところか・・・大体決めたわ。」

 

報告を聞き終え、完全に戦線リーダーの顔に戻ったゆりに安心するメンバーや、次のオペレーションに対してわくわくを隠せないメンバーがその視線をゆりへと向ける。

 

「大掛かりなオペレーションはまだ無理ね、まずは新制生徒会について各員に調べてもらう。行動方針、敵戦力などどんな情報でもいいから拾ってきなさい。ただし、戦闘は禁止、向こうから仕掛けられそうになっても1対1で戦うな。必ず2人以上で行動し、非戦闘員だけでパーティを組まないこと。また、調査の合間を縫って音無くんとユイの捜索を続けること。その作戦指揮は日向くんに預けるわ・・・報告は高松くんがするように。以上よ。」

 

「俺か?ゆりっぺはどうすんだよ。」

 

「私たちが死んでいないのにも関わらず、なぜこの世界に再び戻ってしまったのか、また私たちはこの世界で何をしなければならないのか。ただこちらでのほほんと生活するためだとは私は思っていないの。だから私は独自にこの世界についての調査をするわ。遊佐さん、ついてきてくれるわね?」

 

「仰せのままに・・・」

 

というわけで、ゆり、遊佐は死後の世界についての調査、それ以外の日向たちは新制生徒会の調査と音無、ユイの捜索を行うことなった。

世界の調査といっても、調べなければいけないことなんて無限にあるが、それは前回この世界にいたときから何も変わってはいない。

前回の経験を活かしつつ、1つずつ潰していくしかないだろう。

また、校長室がリセットされていたにも関わらず、強引に奪取したことは当然生徒会にも知れ渡っているため、危険なのではという声もあがったが、新制生徒会の行動範囲がどの程度なのかまだ不明なため、野田お手製ハンマーのトラップを再び張り、とりあえず様子見ということになった。

拠点についての判断は日向たちの調査結果に委ねられることになる。

こうして、次の方針を決めたSSSメンバーはそれぞれの行動に出ることとなった。

 

☆校庭☆

 

性格にはグラウンドのど真ん中ではなく、そこから少し離れた校舎前のコンクリートの部分。

以前音無が最初に目覚めた場所とでも言えば分かりやすいだろうか。

その場所である男が目を覚ます。

 

「・・・はっ!?」

 

見慣れない空、見慣れない学校、見慣れない制服、そして見慣れない世界・・・

周りの風景を見渡しただけで、自分が風祭市ではない『何処か』に転移させられたのだと、その男、天王寺瑚太郎は直感で理解した。

 

「なるほど、前回篝が言っていた死後の世界ってやつはここのことか・・・本当に死なないやつばっかがいるのか?」

 

そう当然の疑問を思わず口にするが、時刻は夕刻。

学校であるなら当然行われているであろう部活動がグラウンドでは行われており、見た目の判断だけでは普通の学校にしか見えない。

現状、これだけの視覚情報だけでは得られるものには限度があった。

瑚太郎は、この世界に来る前、篝に呼び出されてした会話を思い出すことにした。

悪しき記憶・・・それが生まれてしまえば、地球は滅びてしまう。

思い返せば、情報はたったのそれだけだった。

無理ゲーの極みである。

 

「そういえば、呼び出された場所、いつものヒナギクの丘じゃなかったな。」

 

それにも何か理由があるのだろうか。

まさか、篝の偽物が話をしてきたなんてオチはないだろう。

・・・きっとないはずだ。

そのあたりは追々考えるとして、瑚太郎はもう1つの会話を思い出す。

 

「仲間・・・みんなも来てるはずなのに!?」

 

篝は約束を破ることはない。

それにも関わらず、瑚太郎が目覚めた周りには誰もいなかった。

単純に目覚めるタイミングが別だったり、場所が違うなどの話なら問題はないのだが、この世界がどういう世界か分からない以上、敵に狙われる可能性も十分に考えられるし、他のみんなは何の説明も受けていない。

突然この場所に転生なんてさせられれば驚いてしまうのは当然だ。

いずれにせよ、今の瑚太郎にとって仲間との合流が最優先だと考えられた。

 

「こうしちゃいられない・・・まずは、校舎内でも当たってみるか・・・」

 

若干早足で瑚太郎は校内に足を踏み入れるのであった。

 

☆本庁舎1F 廊下☆

 

でかい。

校舎に入って第一に思ったことはそれだった。

瑚太郎たちが通っている学院、風祭学院も相当な広さであり、しかも6階建てという巨大校舎であるが、このマンモス校は下手したらそれ以上かもしれない。

廊下の端から端が見えないほどの広さなら、探すのにも苦労しそうなものだ。

 

「というか、周りの連中と違って俺だけ風祭の制服じゃ目立つなんてレベルじゃないぞ・・・ その辺は気が利かないのな、篝・・・」

 

瑚太郎の嫌な予感はすぐに的中することとなった。

 

☆本庁舎1F 廊下☆

 

同刻、同所において視点は瑚太郎からゆりへ

先程決めた手はず通り、ゆりはこの世界の秘密を探るべく単独行動をしていた。

遊佐とはいつでも連絡を取ることができるため、一旦別行動をしようという話になったのである。

まずは何から調べればいいのか、そんな事を考えていると、ゆりの視界に見慣れない制服を着た男が立っていることに気づいた。

それを見て咄嗟に日中の戦闘のことがフラッシュバックする。

圧倒的力の前に手も足も出すことができなかった新たな敵・新制生徒会。

それに対抗するには、現在のメンバーだけでは戦力が足りないことは明らかだった。

目の前の男はどうみてもNPCではないし、初心に返って勧誘をしてみようと考えたのである。

 

★Side 瑚太郎★

 

仲間がいるとしたらどこだろうか?

みんながいそうな場所を考えようとすると、ふと目の前の少女に声をかけられた。

その少女は、今まで自分が見てきた女子の制服とは違う制服を着ている。

今まで数々の修羅場をくぐってきた瑚太郎にとって、その違いだけでも何かあると疑ってかかってしまうのは当然。

そして、その少女から発された言葉によって、その疑いは確信へと変わる。

 

「唐突だけど、貴方入隊してくれないかしら?」

 

・・・は?

入隊ってなんだ。

学校なのに軍隊とかか?

考えても仕方がないのですぐに言葉を返す。

 

「何のことだ。俺はこんな場所知らない・・・さっき目覚めたらいきなりこの場所にいたんだ。」

 

「ここは死後の世界。ここに来たってことは貴方、死んだのよ。」

 

真面目な目でそんなことを言ってくる少女。

なるほど、本当に初めて来た人が聞いたら訳の分からない世迷い言と切り捨てるような台詞だ。

だが、篝から事前に話を聞いていた瑚太郎にとって、その言葉はきちんと死語の世界への転生に成功したという裏付け情報以外の何物でもなかった。

自分たちが本当は死んでいないなどということを素直に話す必要はないため、ここは一度相手に話を合わせることにする。

 

「死んだ・・・か。で?入隊ってのは何だ?」

 

「死んだ世界戦線によ。私はそこのリーダーをしているの。生前をまともに過ごせなかった私たちにとって、そんな過酷な運命を与えた神様なんて許せないじゃない。

だから私たちは神を見つけ、神を殺すのよ。」

 

「なっ・・・!?」

 

神を殺す。

表現の仕方は人によって、世界とってそれぞれ違うだろう。

しかし、瑚太郎にとって神に等しい力を持つ者など、どう考えても1人しか思い浮かばなかった。

 

(篝を殺す集団・・・まるで自己の欲求を満たすためだけのガーディアンじゃないか・・・こんな自分勝手な奴等が鍵を殺そうとしているだと?)

 

それは即ち、篝の言う『悪しき記憶』に直結する解となるのではないか?

 

「俺はお前らの仲間にはならない。・・・そして、お前らは恐らく、俺の敵となる。」

 

そう言い放ち、ゆりを睨む瑚太郎。

 

「死んでなお、神を擁護するというの?いいえ、違うわね。通常の死者なら模範生の制服を着ているはず。貴方何かおかしいわ、何者なの?」

 

ゆりの方も瑚太郎の違和感に気づいたようだ。

自分が死んだことを受け入れられなかったり、こんなありえない話を信じることはできないのが通常であるのに対し、目の前の男は冷静に神を擁護し、ゆりを敵だと言い放った。

神を守るということは神の使い。

立華かなでではない本物の天使という可能性がある。

一方瑚太郎にとっては、己の大切な存在、篝の命を奪う可能性のある人間が、向こうから勝手にやってきた状況だ。

瑚太郎にとってもゆりにとっても引き金を引く理由は十分すぎるほどあった。

 

「天使!!」

 

最初に行動に出たのはゆり。

目にも止まらぬ早抜きで懐からハンドガンを取り出すと、それを瑚太郎の頭目掛けて的確に撃ち放つ。

NPCか死者ならそれで死亡し、数十分後に保健室で生き返って終わり。

・・・それだけのはずだが

 

「・・・!!」

 

瑚太郎は3本に分かれたオーロラブレードを右手から展開し、その銃弾を叩き落として見せた。

瑚太郎にとってはいつもの戦い方なのだが、ゆりにとっては以前自分が天使だと思いこんでいたかなでが使用していた技・ハンドソニックにしか見えない。

そして、今のやり取り1つで互いの推察が互いの確信へと変わった。

そう、瑚太郎はゆりを悪しき記憶の原因だと判断し、ゆりは瑚太郎を憎き神の使い・天使だと判断したのだ。

 

「あなたのその武器・・・確信したわ。あなた、やっぱりこの世界のこと、何か知っているわね?全て話してもらうわよ。」

 

「どうしてそういう結論になる。お前も見ていたとおり、俺はたった今この世界で目覚めたばかりの人間だ。お前のいう神とか天使がどういう存在なのかは知らないが、そう結びつけるのには無理があるんじゃないか?」

 

「なら、なぜ私のことを敵と言い放ったのかしら?」

 

「神を殺すとかいう宗教信者が聞いたら発狂しそうな台詞が、俺には合わなかっただけだ。」

 

「武器については?」

 

「俺のこの力、説明したところで理解できるものじゃないさ。」

 

互いに武装を解かないまま、言葉での牽制が始まる。

しかし、会話については平行線のまま。

たった今、たった一度の交戦で瑚太郎とゆりは互いの力は拮抗していると判断した。

また、他にどんな能力、どんな隠し玉を持っているか分からない以上、会話で少しでも引き出したいと考えたのである。

ゆりは戦線を率いるリーダー、そして瑚太郎もまた対立する組織のメンバー同士を繋ぎ止めた、いわばリーダーのような存在である。

似たような立場であるが故なのか、考えることもある程度似ているのだろうか?

 

「ちょうどいいや・・・」

 

「・・・?」

 

今度は先に話を切り出したのは瑚太郎の方だった。

 

「さっきも言ったが、俺は今この場所に来たばかりでこの世界のことはよく知らない。ただ、物騒な話を聞いたし、目の前のお前は武装をしている以上、戦闘が必要になることだけは理解した。なら、俺達の力がこの世界でどの程度通用するのか、それを知るのはいい機会だってことだよ。」

 

右手から伸びているオーロラブレードを振り上げ、とても常人では不可能な速攻でジャンプ斬りを仕掛ける瑚太郎。

ゆりは銃弾を放つも弾かれたため、後退して攻撃を躱す。

そこから先は攻守の嵐が続いた。

接近を許した以上、銃器は不利と判断しナイフへと切り替えオーロラと斬り合う。

2,3回斬り合えば互いに後退し、今度は銃での攻撃。

 

「行け・・・!」

 

瑚太郎はオーロラの形状を変更。

今まで3本で形成した鉤爪のような形状だったオーロラは形を変え、今は獣の頭のような形状に変化している。

それが本人の意思で操っているのか手元を離れ、飛び道具のような勢いで襲い掛かってくる。

獣の頭はその鋭い牙で銃弾を噛み砕き、そのままゆりへと襲いかかった。

 

「なんなのよ、それ!!」

 

後退し獣から逃げるゆり。

過去何十年とこの校舎に居続けたゆりにとって、ここは庭のようなもの。

新参者の瑚太郎と比べれば圧倒的に地の利はこちらにある。

廊下から教室に入り、ドアや机など、あらゆる障害物を駆使して追尾して追ってくる獣を躱しつつ、手榴弾でそいつごと破壊した。

 

「これも躱すのか・・・どうやら、相当戦闘には慣れているようだな。何か鍛えていたのか?それとも、生前にある組織に入っていたのか・・・ どっちだ?」

 

「私は一般人よ、神の使いである貴方と違って、戦う力はこの世界に来てから自力で身につけたわ!」

 

「あくまでそう決めつけてかかるか・・・そうかい・・・!」

 

瑚太郎はさらにオーロラの形状を変更。

獣から今度は大剣へ。

野田のハルバートよりも一回り大きいその武器を軽々と振り上げ、障害物もろとも真っ二つにしようと迫りくる。

いつの間にか、ゆりは既に教室の角へと追い込まれていた。

追尾攻撃を仕掛ける際、ここに誘導されるように仕掛けられたのであろう。

相手の武器のリーチを考えても、どう考えても次は避けられない。

いくら死なないと言っても、死と同じ痛みを受けることにはかわりはない。

仕方がないと諦め、痛みを少しでも耐えようと本能的に目を閉じるゆり。

戦闘はここで幕引きとなるはずであったが、大剣を振り下ろすその直前、教室の窓ガラスが割れた。



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