全バンド一貫! バンドリ学園! エンドレス (ダシマ)
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資料集
設定資料


【オリジナルキャラクター】

 

一丈字 飛鳥(いちじょうじ あすか)

この物語の主人公。高校1年生。身長170㎝。

黒髪のストレートでちょっと長め。瞳の色は青で、中性的な顔立ちであるが、真剣な表情をしていると男っぽい。

 

超能力者であり、「WONDER BOY」という超能力者の集団に所属していて、超能力を使った仕事をしている。

 

ハロー、ハッピーワールド!の弦巻こころからの依頼で、彼女が所属しているバンドリ学園のガールズバンドに迷惑行為をしているファン(通称:ヤラカシ)を懲らしめる協力をする為に、バンドリ学園に転入する。

 

余談だが、声がアニメのポケモンの主人公によく似ている。

 

古堂 和哉(こどう かずや)

飛鳥の超能力の師匠であり、WONDER BOYのリーダー。21歳。

こころの依頼を受けて、飛鳥をバンドリ学園に転入させた張本人。

目に大きな隈があり、生気が無い為とても怖い。

普段は警察に協力して、難事件や未解決事件を解決しており、たまに危険な仕事もしている。

 

古堂 孫(こどう そん)

和哉の弟で、飛鳥の兄貴分。WONDER BOYのメンバー。

無印の最終回のみ登場。

 

林 日向(はやし ひゅうが)

林 椿(はやし つばき)

飛鳥の中学時代の同級生であり、こころの幼馴染。

彼女たちの実家もこころと同じくらいのお金持ちで、パーティなどで一緒に遊んでいた。

中学の時にも交流があり、彼女たちがこころに飛鳥の事を話した事がきっかけである。

 

日向:双子の姉で穏やかで優しい性格。飛鳥が中学に入学して一番最初に仲良くなった。

椿:双子の妹でハキハキとして厳しい性格。飛鳥とちょっと喧嘩したが仲良くなった。

 

 

【クラス分け】

 

1年1組

香澄、たえ、りみ、沙綾、有咲、こころ、はぐみ、美咲

 

1年2組

蘭、ひまり、モカ、巴、つぐみ

 

1年3組

飛鳥

 

2年1組

彩、千聖、花音、紗夜、燐子

2年2組

友希那、麻弥、リサ、薫、日菜

中等部

あこ

 

 1組が花咲川、2組が羽丘。

 

 

【飛鳥の正体を知っている人物】

 

<無印>

弦巻こころ(第1話)

こころの黒服一同(第1話)

白鷺千聖(第50話)

 

<エンドレス>

弦巻 こころ(第1話)

こころの黒服一同(第1話)

青葉 モカ(第27話)

 

 

【学校の食堂】

スタンダードな食堂から数点ほど有名なお店が出店している。

弦巻家が金を払って作成したバンドガール専用の特別スペースがある。

(※ ファンのせいで食事が取れない事が多いという理由で学校側に申請した)

 

【飛鳥からの呼称一覧】

 

飛鳥 → バンドガール(同級生): (苗字)+さん

飛鳥 → バンドガール(先輩) : (苗字)+先輩

 

例外:

飛鳥 → 巴 :  宇田川さん(あこが一緒の時は巴さん)

飛鳥 → あこ:  宇田川さん(巴が一緒の時はあこさん)

飛鳥 → 紗夜:  氷川先輩(日菜が一緒の時は紗夜先輩)

飛鳥 → 日菜:  氷川先輩(紗夜が一緒の時は日菜先輩)

飛鳥 → こころ: 弦巻さん(超能力での関係者のみでいる場合、こころ)

 

【バンドガールの飛鳥への呼称一覧】

 

<飛鳥くん>

香澄・たえ、モカ、日菜、リサ、はぐみ

 

<一丈字くん>

りみ、沙綾、ひまり、つぐみ、彩、千聖、友希那、紗夜、燐子、薫、花音、美咲

 

<一丈字>

有咲、蘭、巴

 

<一丈字さん>

麻弥、イヴ

 

<センパイ>

あこ

 

<飛鳥>

こころ、友希那(親密度が高いルートのみ)

 

【飛鳥の連絡先を知っている人物】

 

 仕事用とプライベート用のスマホがあり、仕事用はある程度教えているが、

プライベートで教えているのはこころのみ。

 

 

 

 



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設定資料 第2版

【オリジナルキャラクター】

 

一丈字 飛鳥(いちじょうじ あすか)

この物語の主人公。高校1年生。身長170㎝。

黒髪のストレートでちょっと長め。瞳の色は青で、中性的な顔立ちであるが、真剣な表情をしていると男っぽい。

 

超能力者であり、「WONDER BOY」という超能力者の集団に所属していて、超能力を使った仕事をしている。

 

大阪府出身だが、超能力の関係で転々としており、5歳まで大阪、9歳までアメリカ、15歳まで広島にいた。

 

ハロー、ハッピーワールド!の弦巻こころからの依頼で、彼女が所属しているバンドリ学園のガールズバンドに迷惑行為をしているファン(通称:ヤラカシ)を懲らしめる協力をする為に、バンドリ学園に転入する。

 

声がアニメのポケモンの主人公によく似ている為、友達とカラオケに行くとよく歌わされる。

 

古堂 和哉(こどう かずや)

飛鳥の超能力の師匠であり、WONDER BOYのリーダー。21歳。

WONDER BOYの本拠地は広島の孤島「虹島」にある。

 

こころの依頼を受けて、飛鳥をバンドリ学園に転入させた張本人。

目に大きな隈があり、生気が無い為とても怖い。

普段は警察に協力して、難事件や未解決事件を解決しており、たまに危険な仕事もしている。

 

未成年であり学生である為、飛鳥には極力危険な仕事はさせないようにしているが、実力はそれなりに買っている為、やむを得ず頼むことがある。

 

古堂 孫(こどう そん)

和哉の弟で、飛鳥の兄貴分。WONDER BOYのメンバー。

超能力が使えるが、その関係で学校には通っていない。

和哉とは対照的に明るくて元気だが、思考能力が5歳児並みで一人でやらせるとトラブルを起こすことが多い為、何かをやるときは大体誰かと一緒の事が多い。

だが、ポテンシャルはとてつもなく高く、普通の人間が出来ない事が簡単にできて、驚かせることが多い。

また、強運の持ち主でもある…。

 

大空 未来(おおぞら みく)

虹島高校2年生。

孫のガールフレンド的存在で、しっかり者で孫をサポートしている。孫と同い年で高校2年生(友希那達と同い年)。ガールズバンドに関してはあまり詳しくない。

飛鳥の事は「飛鳥ちゃん」と呼んでいる。

 

志田 省吾(しだ しょうご)

虹島高校2年生。

孫の友達。唯一の女好きで、Pastel*Palettesのファン(だが香澄達ガールズバンドは大体ファンだったりする)。お調子者であるが、面倒見が良い所があったりする。

 

林 幸生(はやし こうせい)

虹島高校2年生。

孫の友達で、林グループの御曹司。日向と椿の実兄でもある。

虹島でも屈指のイケメンであり、女子に超モテモテであるが、あまり興味がなく、シスコン。

 

こころとは面識があるが、日向や椿とは違ってあまりかかわっておらず、幸生としては「妹の友達」としか思っていない。

 

白村 悟士(しろむら さとし)

虹島高校2年生。

孫の友達で、未来や省吾とは幼稚園の頃からの幼馴染。7人兄弟の1番上で、弟や妹たちの面倒を見ており、しっかりしている。

 

奈良川 京(ならがわ きょう)

猪狩学園高等部1年

飛鳥の親友。サッカー部に所属しており、ポジションはFW。

中学時代、飛鳥とは家が隣同士だった。

 

林 日向(はやし ひゅうが)

猪狩学園高等部1年

飛鳥の友達。飛鳥が中学の時一番最初に仲良くなった人物。

とても穏やかな性格だが、物怖じしない性格。

幸生の妹で、椿の双子の姉でもある。京、椿とは幼稚園の頃から幼馴染である。

 

林 椿(はやし つばき)

猪狩学園高等部1年

飛鳥の友達。幸生の妹で、日向の双子の妹でもある。

飛鳥の事は快く思っていなかったが、日向の説得と飛鳥の姿勢を見て仲良くなっていく。

活発で物事をハッキリ言う性格。双子共に男子に人気がある。

 

一丈字 笑子(いちじょうじ えみこ)

飛鳥の母親。外見は飛鳥にほぼそっくりで、違いは目つきである。31歳。

(飛鳥は釣り目で、笑子は垂れ目)

広島県警交通課に所属していて、現在も虹島で勤務をしている。

超能力を持つ息子の事を心配しているが、今は信頼して色んなところに送り出している。

ちなみに巨乳である。

 

林 さくら(はやし さくら)

幸生、日向、椿の母親であり、飛鳥とも昔何らかの関係があった。40歳。

林グループの若奥様であり、警察にもある程度融通が利く。

 

松永 勲(まつなが いさお)

本作オリジナルキャラクター。41歳。

警視庁に所属しており、階級は警部。ひょんなことから飛鳥と出会って以来交流が出来る。

飛鳥の伯父(大阪府警)とは悪友だったらしく、初めて会った時に分かったらしい。

昔気質の型破りな性格で、人情に厚い好人物だが、細かい作業が苦手で短気なのが玉に瑕。

(部下曰く「口よりもすぐに手が出るタイプ」)

 

【場所/地名】

 

バンドリ学園

元々は花咲川女子学園と羽丘女子学園の2つの女子校だったが、色々あって統合し、その上男女共学にして出来上がった学校。

(※ 主人公をどちらかの学校に転校すると偏る上に、女子校に転入するという内容はラブライブでやってしまった為、このような展開になったのは内緒だ)

 

ちなみに飛鳥が高校1年生の時点で、RAS、モルフォニカは他校にいる。

 

猪狩学園

広島にある学校。中等部から高等部まで一貫している。

京、日向、椿は受験して入学したが、飛鳥は超能力関係の仕事が当初からあり、中学1年生の時に別ルートで受験して入学。

 

虹島高校

広島の虹島にある高校。高校が1個しかないが、偏差値は割と高い。

一応寮はあるが、通っている生徒は大体島の子供たちである。

 

【クラス分け】

 

1年1組

香澄、たえ、りみ、沙綾、有咲、こころ、はぐみ、美咲

 

1年2組

蘭、ひまり、モカ、巴、つぐみ

 

1年3組

飛鳥

 

2年1組

彩、千聖、花音、紗夜、燐子

2年2組

友希那、麻弥、リサ、薫、日菜

中等部

あこ

 

 1組が花咲川、2組が双丘。

 

2nd seasonでは全員一括して3組(もしくは7組)

 

 

【飛鳥の正体を知っている人物】

 

<無印>

弦巻こころ(第1話)

こころの黒服一同(第1話)

白鷺千聖(第50話)

 

<エンドレス>

弦巻 こころ(第1話)

こころの黒服一同(第1話)

青葉 モカ(第27話)

白鷺 千聖(第232話)

 

【学校の食堂】

スタンダードな食堂から数点ほど有名なお店が出店している。

弦巻家が金を払って作成したバンドガール専用の特別スペースがある。

(※ ファンのせいで食事が取れない事が多いという理由で学校側に申請した)

 

【飛鳥からの呼称一覧】

 

飛鳥 → バンドガール(同級生): (苗字)+さん

飛鳥 → バンドガール(先輩) : (苗字)+先輩

 

例外:

飛鳥 → 巴 :  宇田川さん(あこが一緒の時は巴さん)

飛鳥 → あこ:  宇田川さん(巴が一緒の時はあこさん)

飛鳥 → 紗夜:  氷川先輩(日菜が一緒の時は紗夜先輩)

飛鳥 → 日菜:  氷川先輩(紗夜が一緒の時は日菜先輩)

飛鳥 → こころ: 弦巻さん(超能力での関係者のみでいる場合、こころ)

 

【バンドガールの飛鳥への呼称一覧】

 

<飛鳥くん>

香澄・たえ、モカ、日菜、リサ、はぐみ

 

<一丈字くん>

りみ、沙綾、ひまり、つぐみ、彩、千聖、友希那、紗夜、燐子、薫、花音、美咲、レイヤ

 

<一丈字>

有咲、蘭、巴、マスキング

 

<一丈字さん>

麻弥、

 

<アスカさん>

イヴ

 

<センパイ>

あこ、透子

 

<飛鳥>

こころ、友希那(親密度が高いルートのみ)

 

<ネス>

チュチュ

 

<ネスさん>

パレオ

 

<一丈字先輩>

六花、ましろ、つくし、七深、瑠唯

 

【飛鳥の連絡先を知っている人物】

 

 仕事用とプライベート用のスマホがあり、仕事用はある程度教えているが、

プライベートで教えているのはこころとモカのみ。

 

【用語集】

バンドガール

バンドを組んでいる少女たちの総称。

 

 



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モブキャラクター図鑑

【飛鳥のクラスメイト関係】

 

1年3組の仲間たち

通称『陰キャクラス』と呼ばれていて、DQNが退学後はほぼ陰キャしかいない。

いつもトラブルに見舞われている飛鳥に対して困惑しつつも、なんだかんだ見守り、親切にしている。

 

ちなみに飛鳥は3組の女子とも平等に接している為、割と人気は高い。

 

元1年3組のDQN

DQNを絵にかいた金髪のイケメン。陰キャを見下して飛鳥に一人だけ仮想大会に出して、赤っ恥をかかせようとしたが、見事に大失敗。1年3組が優勝して飛鳥を押しのけ、恩恵を受けようとしたが、何者かに悪事をバラされてそのまま退学になった。

 

退学になった事で、親戚が経営している会社で日々バイトをさせられて、自由を奪われてしまった。しかも環境が男しかいない。

 

元1年3組のDQNの取り巻き。

DQNの取り巻き、男子生徒が1名で女子生徒2名。いずれも美男美女だが、顔以外問題のある人物。彼らも退学になった。

 

バイトをさせられたり学習塾に行かされたり、自由に遊ぶこともままならなくなった。

 

【バンドガールズ関連】

 

平三

弦巻家につかえる黒服の責任者で、原作に出てくる黒服三人娘の上司。

普段はとても頼りになるが、弦巻家に対して妄信的な所があるため、やや過激になりがち。

 

ちなみに35歳独身である。

 

【その他】

 

谷光

ダシマ高原にあるダシマホースパークの従業員で、ジャックナイフの面倒を見ていた。

知人である高橋からジャックナイフを引き取ったが、競走馬としてのプライドが高く、人を乗せると暴れだすジャックナイフに手を焼いていた。

ジャックナイフが何を考えているのかを調査するため、和哉に依頼したが和哉が急用で来きて来れなくなったため、孫と飛鳥に依頼し、何とか解決した。

 

ジャックナイフが競走馬に復帰して、自身のもとを離れた後は、離れる前に撮った記念写真を眺めるのが日課になっている。

 

 

高橋

ジャックナイフの元騎手。谷光の回想で登場。

白血病の為、騎手を降りて闘病生活を続けたが、復帰はかなわなかった。自分以外にジャックナイフは乗りこなせないと豪語していたが、彼を思っていつか自分以外で乗りこなせる人物が現れることを願い、知人の谷光に託して逝去。

 

騎手としての実力は元から高く、ジャックナイフ以外の馬も乗りこなせていたが、生涯の相棒をジャックナイフと決めていたらしい。

 

ジャックナイフ

元競走馬。好成績を残していたが、騎手をしていた高橋が逝去し、彼以外で乗りこなせる人物がいなくなったため引退したが、のちに乗りこなせる人物が見つかり、競走馬として復帰。

ちなみに今の騎手は孫が彼に食らいついているのを見て感銘を受け、苦労はしたが何とか乗りこなすことに成功した。

 

今でも競走馬として活躍をしているが、孫ともう一度勝負がしたいと思っている。

 

【美味しんぼ関連】

 

この辺りは「美味しんぼ」の登場人物がモデルになっていて、キャラクター設定もほぼ同じなので、完全にオリジナルとはいえない。

 

松永警部

東京の警視庁に所属している警部。

飛鳥の母方の親戚の知り合いであり、ちょっとしたことから知り合いになる。

生粋の江戸っ子で若干乱暴な所もあるが人情深い為、人望もある。

 

ちなみに使っている携帯は最低限の機能しかないものしか使っていない。

 

小塚

初登場:「炭火の魔力」

商店街のうなぎ屋「あたぎ屋」のチーフで、北沢家とも古い付き合いだった。

先代の店主が亡くなり、店の方向性ついて先代の息子で跡継ぎの二代目と対立した挙句、追い出されてしまい、自暴自棄になってやけ酒し暴れていたが、飛鳥によって取り押さえられた。その後は改心して、あたぎ屋を守るためにハロハピ協力のもと、臨時のうなぎ屋を起業して客を集め、二代目と和解した。

 

暴れていた件に関しては、松永警部の恩情と弦巻家の裏工作によってなかった事にされたが、常連客にたびたび弄られているらしく、現在は特別なことがない限り禁酒している。

 

初代あたぎ屋店主

あたぎ屋の初代店主。大らかで町の人達からも人望があり、彼が店主をしていたから店に通っていたという客もいるほどだった。はぐみの父親とも友人だった。

 

二代目あたぎ屋店主

初代店主の息子。経営学を学ぶためにアメリカに留学し、学んだ経営学であたぎ屋をよくしようとしたが、経営方法は鰻屋には合わず、現場を取り仕切っていた小塚と対立して彼を追い出してしまう。その後、学んだ経営学を元にあたぎ屋を取り仕切っていたが、うなぎの質をダメにしていた事に加え、彼の人間性にも原因があり客が来なくなってしまった。

その後は鰻料理の大切さを飛鳥たちに学んで、自身の愚かさを反省して小塚と仲直りし、彼を再びあたぎ屋に招き入れた。

 

その後、学んだ経営学については鰻ではなく、人に対してやった方がいいというアドバイスを受けて実施。その結果、店の風通しはよくなったものの、初代や二代目に媚を打ってばかりいて、仕事を碌にやっていなかった取り巻きの中年男性は平店員に降格になった(初代もその事について咎めていたが、最低限の事は出来ていた為、店には残していたらしい)。

 

 

若林

初登場:『そばツユの深味』

バンドリ学園の近くの高架下でそばの屋台を経営している若者。

そば打ちは一流だが、それに合うつゆがどうしても作れず、悩んでいたが飛鳥のアドバイスによって解決し、今では行列のできる屋台そば屋に成長。

 

飛鳥たちが来る際、そば1杯(並盛)分の料金をタダにしているらしい。

 

五郷

初登場:『トンカツ慕情』

アメリカの大企業の社長。林グループや弦巻財団とも仕事で関わり、飛鳥も面識がある。

大成功するまでに一番お世話になった『トンカツ大魔王』を経営していた夫婦に会いに日本に帰国していたが見つからず、途方に暮れていたところを飛鳥に再会した。

飛鳥たちの協力のお陰で無事に夫婦と再会して、恩返しに『トンカツ大魔王』のお店をプレゼントした。

 

ちなみに自身の会社のビル内にトンカツ屋を出店させているが、社員も利用して大混雑するので、社長専用の席が存在する(しかもその席に座りたいがために、社長の座を狙っている社員もいるとかいないとか)。

 

橋中一郎(夫)/橋中一花(妻)

初登場:『トンカツ慕情』

老舗トンカツ店「トンカツ大魔王」を経営していた夫婦。

町工場で働いていた五郷が不良たちに襲われていた所を助けた事から知り合いになり、五郷がアメリカに旅立つまで食事の面倒を見ていた。

暫くして、同業者に店の権利書を取られた上に、豚肉の質が下がってきたことから、やる気がなくなってしまい、年齢の事もあって老人ホームで余生を過ごしていたが、五郷の再会と飛鳥たちの熱意により、トンカツへの熱意を復活させた。

 

現在では、五郷からもらった店でトンカツをふるまい続けて、老人ホームの利用者たちからも人気が出ているが、自身の会社にトンカツ大魔王の店に似たトンカツ店を出していた事と、自分専用の席がある事を会社のパンフレットで確認した際、一郎は爆笑しながらも感動したらしい。

 

リキ屋店主

初登場:『うどんの腰』

飛鳥・こころ・モカが大相撲を見終わった後に立ち寄ったうどん屋の店主。

チンピラたちの嫌がらせもあり、客は来なくなってやせ細っていたが、飛鳥たちの活躍によりチンピラが来なくなった後は、標準体重に戻った。

高谷の事は当初不安に思っていたが、息子のように接しており今となっては深い絆で結ばれている。

 

ちなみにあの後、高谷と似たような境遇で男性店員が2人入ったらしく、彼らも素質があったそうだ。

 

高谷

初登場:『うどんの腰』

横綱が出た金剛部屋の力士。10年以上も所属していたが結果が出ず、どんどん後輩に追い抜かされて心を悪くし、自殺を決意するも飛鳥たちに阻止された。

だが、ちゃんこを作る技術にかけては金剛部屋では群を抜いており、丁度うどん屋で迷惑行為をしていたチンピラどもを追い返す作戦を考えていた飛鳥に紹介されて、そのまま従業員として働くことになり、チンピラたちも撃退することに成功した。

 

高谷が金剛部屋を退所した後、ちゃんこの味の腕が大幅に落ちてしまい、地獄のような日々を過ごしていたらしく、最近では店主許可のもと金剛部屋で時折ちゃんこを作っては、後輩たちに伝授している。正直力士時代より儲かっている。

 

吉葉若

初登場:『うどんの腰』

金剛部屋に所属しており、高谷の数年先輩にあたる。

大相撲で優勝した横綱だがとても礼儀正しく、幕下の高谷に対しても、見下すことなく大相撲以外の実力でも素直に認める程懐が深い。

 

高谷が退所した後も連勝を続けていたが、ちゃんこの味が大幅に落ちて調子が悪くなってしまったらしく、出前を取ったり、直接店に来て長時間並ぶことになったとしても、大事な試合前には彼の料理を食べるようになったらしい。

 



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日常編
第1話「プロローグ」


 

 

 皆さんこんにちは。初めましての方もいらっしゃますので、初めまして。一丈字飛鳥です。普段私は「ダシマ劇場」というダシマが書いた小説で、主人公をやったり脇役をやったりしております。普通に原作を楽しみたい方には申し訳ございません。

 

 さて、今回は「BanGDream」より「もしも超能力が使える男が主人公で、バンドガール達と絡んだら」というテーマで主人公を務めさせていただきます。まあ、私のあいだでは座長と呼ぶんですけどね。

 

 そして前に50話ほどそのお話を公開し、今度はエンドレスだそうです…。まあ、要するに最終回がないんですね。あるとすれば前の話の第46話から第50話がラストエピソードになります。ドラえもんの「さようならドラえもん」から「帰ってきたドラえもん」みたいなようなものですね。

 

 色々ご指摘も頂きましたが、面白いという声も頂いて、何とかやってきた甲斐がございました。本当にこちらとしても感謝しております。

 

 さて、私の長話はここまでにして、本編を公開したいと思います。それではどうぞ!!

 

 

-------------------

 

ここは東京のどこかにある学校「バンドリ学園」。この学校はガールズバンドがとても有名な学校である。また、ガールズバンドも美少女ぞろいである為、男子生徒達はメロメロのメロンメロンだった。

 

 しかし、一人の男子高校生が転校してきた事がきっかけで、バンドリ学園は大きく変わった…。

 

「……」

 

 彼の名前は一丈字飛鳥。この物語の主人公である。彼はちょっと前に転校してきたのだ。

 

理由としては、バンドリ学園のガールズバンドに関して迷惑行為をしているファン(通称:ヤラカシ)を大事にならないように始末する事である。

 

 なぜこうなったのかというと、実は飛鳥は超能力が使えて、過去に今までも凶悪犯と戦っては対峙し、超能力を使って穏便に事を収められる腕を持っていた。

 

 バンドリ学園のバンドガールの1人であり、ガールズバンド「ハロー、ハッピーワールド!」のリーダーである弦巻こころから、ヤラカシを懲らしめて欲しいとの依頼ではあるが、こころの小さいころの友人と飛鳥の中学時代の女友達が同一人物であり、その女友達から飛鳥の事を聞かされたこころは飛鳥に興味を持って、バンドリ学園に来たのだった。

 

 そしてバンドリ学園のバンドガールで唯一正体を知っている人物でもある。

 

 なるべく目立たないようにしていたが、やっぱり主人公である以上目立たないままだと話が盛り上がらない為、色々大活躍して、バンドガール達から注目を集めていた。

 

 

 そんなこんなで50話に渡り大活躍した一丈字飛鳥と、25人のバンドガール達の物語は新たなステージで幕を開けた。

 

 

飛鳥「お気軽にご覧下さい」

 

 

つづく

 



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第2話「こころとカラオケ」

 

 

 飛鳥がバンドリ学園に転校してから、それなりに時間が経った。

 

 こころから依頼されていた「マナーの悪いファン(通称:ヤラカシ)におしおき」という任務は、着々とこなし、次第にヤラカシはどんどん減っていった。

 

 飛鳥がやった事は、弦巻財閥の裏の力が動いていると言われていて、何とか事なきを得ていたが…。

 

「おかしい」

「やっぱりどう考えてもおかしい」

 

 と、男子生徒達(ヤラカシ予備軍)は学校のとある一室に集まっていた。

 

「あの一丈字が来てから妙な事だらけだ…」

「ああ。香澄ちゃん達がピンチになると、タイミングよく奴が現れて…」

「そうだ!!」

「もしかして…」

 

 飛鳥の自作自演なのでは? と思い始めた。

 

飛鳥「……」

 

 そしてそれを陰で飛鳥は見つめて困惑していた。いや、そうはならんやろと。本当に自作自演だとするなら、準備するの凄くめんどくさいぞと思っていた。

 

飛鳥(そういや思ったけど、クラスの人たちと仲悪いのかなぁ…)

 

 と、一人で帰宅しようとしていると、

 

「飛鳥―!」

飛鳥「?」

 

 こころがやって来た。

 

飛鳥「弦巻さん」

 

こころ「もー! 二人きりの時はこころって呼んでって言ったわよね!?」

飛鳥「いや、学校なので…」

 

 こころが憤慨すると飛鳥が困惑した。

 

こころ「そ、それもそうね…。バレたら大変だわ…」

飛鳥「……」

 

 こころの言葉に飛鳥は困惑した。

 

飛鳥「…それで、何か御用ですか?」

こころ「えっと。今空いてるかしら」

飛鳥「空いてますけど、どうされました?」

こころ「カラオケに行きましょ!」

飛鳥「…え?」

 

 こころの言葉に飛鳥はまた困惑した。

 

飛鳥「…北沢さん達と一緒じゃなくて良いんですか?」

こころ「皆忙しいの。薫は演劇部があるし、はぐみと花音はお店のお手伝いがあって、美咲も用事があるみたいなの」

飛鳥「……」

 すると女性の黒服達が現れた。

 

「一丈字様。それなりの謝礼は致します」

「どうかこころお嬢様のお願い事を…」

飛鳥「…あ、それは大丈夫なんですけど」

 

 飛鳥が困惑すると、男子生徒達が現れた。

 

「一丈字貴様ぁ!!」

 と、突っかかってきたが、男性の黒服達が拳をゴキゴキ鳴らしてきて、男子生徒達は退散した。それを見て飛鳥は困惑した。

 

「…いらっしゃっても、いらっしゃらなくても、結果は同じなので大丈夫ですよ」

「黒服さん…」

 

 耳打ちしてきた黒服Aに対して、飛鳥は困惑した。

 

 そして飛鳥とこころはカラオケに行く事になったが…。

 

飛鳥「家にカラオケとか無いの?」

こころ「あるけど、こういうお店のカラオケに行ってみたかったの!」

飛鳥「そ、そう…」

「お席は取っておりますのでご自由にどうぞ」

飛鳥「あ、ありがとうございます…」

こころ「ありがとー」

 

 飛鳥の中学時代の友人に日向と椿という少女がいて、彼女たちの家もこころと同じくらい金持ちだったが、このような事はあまりなかった。

 

飛鳥(まあ、日向と椿は幸生さん(※日向と椿の兄)がいたからな…)

 

 そしてVIPルームに通された。

 

飛鳥(ああ。完全に家の力だ…)

 

 2人で使うには『ちょっと』広すぎるルームに飛鳥が困惑した。

 

こころ「さあ、歌いましょ!!」

飛鳥「あ、うん…」

 

 飛鳥は何も考えずにこころとカラオケに楽しむ事にした。こころは明るくて可愛い曲を中心に歌っていた。

 

飛鳥(やっぱりボーカルだけあって上手いな…)

 

 飛鳥は歌っているこころをじっと見つめていた。

 

こころ「あ、次は飛鳥の番よ!」

飛鳥「そういや最近の曲って勉強とかしてるの?」

こころ「勿論よ! これでもハロハピのボーカルだもの!!」

飛鳥「そうだよね」

 すると飛鳥がマイクを持った。

こころ「何歌うの?」

飛鳥「最近ポケモンとコラボしたバンドの曲」

 

 と、イントロが流れ出して、飛鳥が歌い出した。

 

『♪Acacia / BUMP OF CHICKEN』

 

こころ「……!!」

 飛鳥の凛々しい歌声がルーム内で響き渡った。外で聞いていた黒服達も心地よさそうにしていた。

 

 そして飛鳥が歌い終わると、こころが拍手した。

 

こころ「やっぱりすごいわ飛鳥は!!」

飛鳥「そんな事ないよ」

こころ「何か歌を聞いて元気が湧いてくるわ!! もしかして超能力の影響かしら!?」

飛鳥「そうかもしれないね」

 飛鳥が苦笑いした。

 

こころ「あたしもそういう力が欲しいなー」

飛鳥「何言ってるの。こころだってもう持ってるよ」

こころ「え!?」

飛鳥「歌声で人を元気にする超能力は、誰でも持ってるから」

 

 飛鳥が笑みを浮かべると、こころは衝撃を受けた。

 

こころ「そ、そういうものなのね!! それじゃもっと頑張るわ!!」

飛鳥「頑張って」

こころ「それじゃ次歌うわね!!」

飛鳥「焦っても仕方ないから、一曲一曲に魂を込めて歌おう」

こころ「ええ!!」

 

 と、飛鳥とこころは数時間ほどカラオケを楽しんだが…。

 

飛鳥「あ、休憩されたいなら構いませんので…」

黒服A「お、お気遣いありがとうございます」

こころ「折角だから皆で歌いましょ!」

黒服B「えっ…」

 

 飛鳥とこころが黒服達に話しかけたりして、楽しいカラオケ大会になった。

 

 

 そして、店から出た飛鳥とこころと黒服達。

 

こころ「今日はとっても楽しかったわ!!」

飛鳥「そりゃあ良かった」

こころ「また行きましょ!!」

飛鳥「機会があったらね」

こころ「絶対よ!! あ、折角だから送っていくわね」

 

 と、飛鳥はこころの車に乗せられて、自宅に帰りついた。

 

 

 翌日

香澄「飛鳥くん!! 昨日こころちゃんとカラオケ行ったでしょ!!」

飛鳥「……」

 

 香澄が3組の教室にやってきて、飛鳥を問い詰めていた。実はこころが登校してすぐに飛鳥とカラオケに行った事を自慢したのだった。香澄の後ろにはたえ、りみ、沙綾、有咲もいた。

 

飛鳥「ええ。行きましたけどそれが何か?」

有咲「もう完全に開き直ってるな…」

飛鳥「あまり気にし過ぎてもアレかなと思いまして…」

香澄「ねえ、私達とも行こうよー」

飛鳥「え」

 飛鳥が驚いた。

香澄「こころちゃんだけずるいー!」

はぐみ「そーだよ! はぐみも飛鳥くんとカラオケに行きたーい!!」

 と、香澄とはぐみが騒いだが、

 

飛鳥「まあ、行くとしても当分先ですね…」

香澄「え、何で!!?」

飛鳥「だってもうすぐテストじゃないですか」

 

 飛鳥の言葉に香澄とはぐみが石化した。

 

香澄「ああああああああああああああああああああ!!! そうだったぁあああああああああああああああああああ!!!」

はぐみ「テストいやぁああああああああああああああああ」

 

 と、香澄とはぐみは頭を抱えて叫んだ。

 

香澄「そ、それじゃ最後の晩餐という意味で…」

飛鳥「平均60以上取れたら一緒に行きましょうか」

香澄「オニー!!」

はぐみ「そーだよ!! 鬼畜だよ!!」

たえ「ちなみに取れなかったらどうする?」

飛鳥「取れなかったら…」

有咲「確か補習あったから…。補習行ってる間に残ったメンバーでカラオケ」

香澄「うわーん!!! 有咲ちゃん酷いよー!!!」

はぐみ「友達いなくなるよー!!?」

有咲「うるせぇ!! ちゃんと勉強すればいいだけの話だろうが!!」

 

 と、ギャーギャー揉めているのを飛鳥は苦笑いして見つめる事しか出来なかった。

 

 

おしまい

 

 

 

 



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第3話「バーベキュー ~Poppin'party編~」

 

 

『モニタリング:もしも一丈字飛鳥と25人のバンドガールズがバーベキューをやったらどうなるか』

 

 ある日の事。飛鳥は弦巻家の庭でバーベキューをする事になったが、それはもう凄い凄い。春になれば軽く花見も出来て、しかもその見物客の中には日本でもトップの人がきたりする。なんと総理大臣も来たという噂もあるのだ。

 

 そんな立派な庭で高校生たちがバーベキューをしているのだ。

 

飛鳥(現実じゃそんなの無いから、夢があっていいよね…)

 

 唯一の男子メンバーである飛鳥は困惑していた。見渡せば女の子ばかり。

 

日菜「飛鳥くん。女の子ばかりで嬉しい?」

飛鳥「普通ですね」

日菜「そこは嘘でも嬉しいって言わなきゃー」

飛鳥「いやー。言ったらそっち系の人間と思われますし」

日菜「そっち系ってどっち系?」

飛鳥「女の子に目がない輩」

 飛鳥が腕を組みながら言うと、皆がしーんとした。すると黒服を見て、

 

飛鳥「あ、いつでも追い出してくれて構いませんので」

香澄「ちょ、悲しい事言わないでよ!!」

 

 飛鳥が平然と言うと、香澄が突っ込んだ。

 

飛鳥「それはそうと日菜先輩」

日菜「なーに?」

飛鳥「思ったんですけど、日菜先輩達ってクラスの人とどこか出かけたりしないんですか?」

日菜「うーん。あたし達は芸能界の仕事があるから、あんまりないかなー」

千聖「少なくとも男子とはいかないわ。下心があるもの」

 千聖が冷徹に言い放った。

リサ「わかるわかる。花見に行こうって前に言われて行ってみたんだけど、やっぱりジロジロ見られたね…」

麻弥「特に湊さんや薫さんが見られてたっすね…」

薫「それは仕方のない事だよ。儚いから…」

 と、薫が喋ると飛鳥がじーっと見た。

 

薫「な、何だい…」

飛鳥「あ、いえ。何も…」

千聖「分かるわよ。その気持ち」

薫「千聖?」

 

 千聖が飛鳥に話しかけると、薫の空気がピリッとした。

 

 なんやかんやでバーベキューが始まった。グループごとに分かれていたが、飛鳥はグループの代表者がじゃんけんして、香澄が勝ったため、ポピパに入れて貰った。

 

 ポピパ

飛鳥「あ、私が焼くのでどんどん食べてください」

香澄「ありがとー!!」

有咲「お、おう…」

 飛鳥がトングを持って肉を焼いていた。

沙綾「ある程度皆食べたら交代するね」

飛鳥「ありがとうございます」

こころ「あ、お肉沢山あるからどんどん食べていいわよ!」

 と、こころが話しかけてきた。

 

飛鳥「そういややっぱりこの食材って良い所使ってますよね…」

こころ「お肉はね。神戸牛を使ってるわよ!」

飛鳥「ワーオ。贅沢―」

 飛鳥が突っ込んだ。

 

沙綾「あ、味わって食べないとね…」

りみ「そ、そうだね…」

たえ「やっぱり野菜とかも高級だったりするの?」

有咲「もうちょっと言い方考えろ!!」

こころ「勿論よ!」

平三「わが弦巻家が厳選した野菜をしようしております」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 飛鳥が苦笑いしたが、殆どが思っていた。弦巻家おそるべし。と。

 

 そしてバーベキューが進んでいき、食材を焼く役は飛鳥、りみ、有咲、沙綾でローテーションしていた。香澄とたえは食べてばっかりいる。

 

 ちなみに他のグループではこんな状態だ。

 

<Afterglow>

 

巴「モカ。肉ばっかり食べてないで野菜も食べろ」

モカ「食べてるよ~。サンチュと一緒に~」

蘭「いや、そういう問題じゃないわよ…」

 

 モカのマイペースぶりに蘭が呆れていた。

 

<Pastel*Palettes>

 

日菜「お肉焼けたよー」

 と、日菜が肉を焼いていたが、いずれも絶妙だった。

彩「さ、流石才能マン…」

日菜「あたし、女の子だから才能ガールって呼んでほしいなー」

千聖「才能があるのは否定しないのね…」

 

 ちなみに紗夜がちょっとだけ日菜を見て、リサが冷や冷やしていたが、特に喧嘩する事は無かった。

 

紗夜「あの子はいつもああなので」

リサ「そ、そう…」

 

<Roselia>

 

紗夜「宇田川さん。ちゃんと野菜も食べなさい」

あこ「はーい…」

 と、紗夜があこに注意したが、

 

日菜「おねーちゃんだって、ポテトばっかり食べてるじゃん」

紗夜「そ、そんな事ないわよ!!/////」

 

 事実だった。

 

<ハロー、ハッピーワールド!>

 

花音「ふ…ふぇええええ…」

 

 花音は困惑していた。というのも、こころ、薫、はぐみの食べるスピードが速すぎて全然肉が取れないのだ。そして美咲が何とか注意して何とかなった。

 

 

香澄「楽しいね飛鳥くん!」

飛鳥「ええ…」

 

 香澄が笑顔で話しかけてくると、飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥(思えば今までずっとバタバタしてきたからなぁ…)

 

 と、飛鳥は男子生徒達にずっと絡まれていた日々を思い出していた。

 

飛鳥(でも、仕事だしこうやって皆さん元気そうだからいっか…)

 

 飛鳥は蘭たちを見渡していた。

 

香澄「あ、そうだ飛鳥くん。食べさせてあげよっか?」

飛鳥「いえ、結構です」

香澄「何でぇ!?」

飛鳥「私、食べさせる方が好きなんですよ」

 と、皆が飛鳥と香澄を見た。

 

飛鳥「でもまあ、市ヶ谷さんからストップがかかったので、この話は無しで…」

有咲「ちょ、私かよ!!」

香澄「じゃあ有咲もやって貰えばいいじゃん」

有咲「そ、そんな恥ずかしい事出来るか!!//////」

 

 香澄の言葉に有咲が恥ずかしがると、

 

香澄「かわいい~」

有咲「か、可愛くねーし!!」

 有咲が飛鳥を見ると、微笑ましげに見ていた。

 

有咲「み、見るなぁ~~~~~~!!!!///////」

飛鳥「あ、ごめんなさい」

 

 他のグループのメンバーも見ていた。

 

モカ「飛鳥くんやっぱり持ってるね~」

飛鳥「え?」

日菜「そうそう。そういう才能持ってたんだねー」

飛鳥「いやいや、まさか…」

香澄「それじゃ食べさせて!」

飛鳥「この空気でようぶっこめましたね」

たえ「ツッコミの才能もあるみたいだね…」

飛鳥「えー。ちょっとどういう事ですか…」

 

 妙の言葉に飛鳥が困惑しつつも、結局食べさせた。

 

飛鳥「はい、あーん…」

香澄「あーん…」

 

 と、食べさせた。

 

飛鳥「どうですか?」

香澄「うん。普通に美味しい」

飛鳥「そうですか」

 

 香澄のリアクションを見て飛鳥が苦笑いした。

 

香澄「それじゃ今度は私が食べさせてあげるね!」

飛鳥「ファンが見たらどうなりますかね」

モカ「殺されるね」

 

 香澄が食べさせようとしたので、飛鳥が皆に話をするとにモカが反応した。

 

飛鳥「でしょうね」

 

 と、飛鳥は若干諦めモードになり、香澄に食べさせて貰った。

 

香澄「どう?」

飛鳥「美味しいですよ」

たえ「何かカップルみたい…」

香澄「え!? そ、そんなんじゃないよ!!/////」

飛鳥「無意識にやってたんですか…」

有咲「こいつそういう所あるんだよ…。お前もだけどな」

 

 有咲が皮肉気味に喋ると、飛鳥と香澄が一斉に有咲を見た。

 

有咲「だからこっち見るなってばー!!!」

りみ「あ、有咲ちゃん!! 落ち着いて!!」

 

 

 と、なんだかんだいって楽しいバーベキューになりました。

 

 

おしまい

 



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第5話「海に行く飛鳥達」

 

 

 ある日のバンドリ学園。

 

「あぁ~~~!! どうして友希那さん達は相手にしてくれないんじゃあ!!」

 

 男子生徒達は嘆いていた。

 

「バンド活動が忙しいからって言ってたけど絶対違うよね…」

「アルバイトをしてる子も沢山いるし…」

「やっぱりオレらじゃ釣り合わないのか…!?」

 

 と、色々嘆いてたが、一番の原因は『下心が見え見え』という事である。ちなみに女子達の間で情報が共有されている事は、男子たちは知らない。

 

「それにしてももうすぐ夏だぞ…」

「ああ…」

「あの子たちと一緒に海で泳ぎたいよな…」

「あと出来れば5バンド全員で…」

 

 男子生徒達の脳裏に焼き付くのは、ビーチサイトで広がる沢山の女体。それもとびっきり顔立ちの良い美少女の女体だ。

 

 しかも彼女たちは水着姿で、制服姿じゃ見られない肌の露出、そして個性のでる体つき。芸術ともいえる肢体。そしてなんといっても女性にしか醸し出せない「色気」。25人もいるのだから、より取り見取りであり、それはまさに楽園と行っても良いだろう。

 

 もしもお金を払っていけるのであれば、全財産払っても行きたい。というか行かせてくださいという気持ちであった。

 

「まあ、でも流石に25人が同時に休みが空いてるなんて無いよなぁ」

「そうそう。パスパレはアイドルだし、バイトしてる子もいるから…」

「全グループがダメでも、せめて1グループくらいなら…」

 

 という話で盛り上がっていた。

 

「…けど」

「?」

 

 男子生徒の1人が頭を抱えた。

 

「…一丈字なら出来そうなんだよなぁ」

「え?」

「ほら、あいつってこころちゃんと仲良いだろ? だから…」

「そうなのか!!?」

 

 皆が驚いた。

 

「一丈字の奴~!!!」

「そうか…弦巻家に何とか取り入ったんだな」

「道理であんな良い思いが出来る訳だ…」

「なんて卑劣な!!」

 

 それを陰から飛鳥、リサ、モカが見ていた。

 

リサ「相手にしちゃダメだよ。飛鳥くん」

飛鳥「あ、はい…」

モカ「飛鳥くんはちゃんと努力してるもんね~」

飛鳥「恐縮です」

 

 リサとモカに励まされるも、苦笑いするしかなかった飛鳥。

 

モカ「でもいい事思いついちゃった~」

飛鳥・リサ「え?」

 

 と、モカはとんでもないことを思いついた。

 

 グループLINE(バンドガール+飛鳥)

 

モカ:飛鳥くん海に連れていきたいんだけど、参加できる人~。ちなみにスケジュールはモカちゃん基準です

リサ:おいおい

飛鳥:あ、無視して頂いて大丈夫ですので。

モカ:ちなみに飛鳥くんとリサさんは確定ですので~。

 

 その結果…

 

「夏だ!! 海だーっ!!」

 

 何という事でしょう。25人全員が集まりました。全員が集まれるという事に飛鳥は困惑するしかなかった。

 

リサ「分かるよ。奇跡としか言いようがないわ…。日帰りとはいえ」

モカ「これも飛鳥くんの人望の賜物だね~」

飛鳥(…欠席者がいると、誰がいないかがややこしくなるからじゃないよな)

 

 飛鳥が考えていると、モカが友希那を見つめた。

 

モカ「それにしても湊さんも来るなんて意外ですね~」

友希那「他のバンドとの交流を深めた方が良いと判断しただけよ」

 

 モカの言葉に友希那は当然とばかりに言い返すると、リサが苦笑いした。

 

香澄「よーし! それじゃ着替えるぞー!!」

はぐみ・日菜「おー!!」

 

 と、香澄たちは着替えにいき、他のメンバーもそれに続いて水着に着替えた。

 

 そして…

 

「それーっ!!」

「きゃーっ!!」

 

 と、バンドガールズ達は海水を掛け合いっこして遊んでいたが、飛鳥はビーチパラソルの下にずっといた。

 

千聖「平和ね」

飛鳥「そうですね…」

 

 千聖が飛鳥に話しかけた。千聖も肌が荒れるからとあまり海で遊びたがらず、パラソルの下にいた。

 

飛鳥「Pastel*Palettesの予定は大丈夫だったんですか?」

千聖「ええ。何とかスケジュールを調整して貰ったわ。弦巻家とあなたがいるって分かった途端に血相を変えてね…」

飛鳥「…いや、どういう伝え方したんですか」

 

 千聖が黒い笑みを浮かべて喋っているのを見て、相当苦労させられたんだなぁと飛鳥は思った。

 

千聖「あなたには感謝してるのよ」

飛鳥「え?」

千聖「誘拐事件もそう。あなたが助けてくれたお陰でいかにうちの事務所の人間が無能だったか、世間に知らしめることが出来て、それ以来は死に物狂いで働いてくれてるわ?」

飛鳥「改善されて何よりです…」

 

 飛鳥はこれ以上は何も言わない事にしておこうと思った。理由としては、余計な事を離してしまえば千聖が更にヒートアップする可能性が高まるからだ。

 

 そんな時だった。

 

「飛鳥くん!」

 香澄がやってきた。

 

飛鳥「戸山さん」

香澄「飛鳥くんも一緒に遊ぼうよ!」

飛鳥「それは構いませんけど…」

 飛鳥が立ち上がって横を見ると、水着姿のこころ、はぐみ、モカが手を振っていた。

 

飛鳥「何だか別世界ですね…」

千聖「うちのクラスの男子だったら泣いて喜ぶでしょうね」

 

 飛鳥が千聖を見つめた。

 

千聖「それにしてもあなた、25人の女の子が水着になってあなたに迫ってるのに、あまりリアクションがないというのもどうなの?」

飛鳥「バレたら絶対学校荒れるだろうなぁって思ってますよ」

 飛鳥が困惑した。

香澄「じゃあ千聖ちゃんはどう思う?」

飛鳥「妖精さんみたいですね」

千聖「どういう意味?」

飛鳥「戸山さん。行きましょうか」

香澄「え!? 私も聞きたい! どういう事!?」

 

 と、香澄と千聖が詰め寄る。

 

飛鳥「いやー。そんなに大したことは言ってないと思うんですけど、戸山さんは白鷺先輩の水着姿どう思います?」

香澄「とってもキラキラしてるよ!」

飛鳥「戸山さんも言っているように、幻想的ってイメージなんですね。だから妖精です」

千聖「そ、そう…」

 

 千聖が若干納得してなさそうだったが、飛鳥は普通にしていたので、何も言わない事にした。

 

香澄「あ、でも飛鳥くん。ここは可愛いって言ってあげないと!」

千聖「べ、別にいいわよ」

飛鳥「いや、白鷺先輩は可愛いというより綺麗じゃないですかね」

千聖「!!?//////」

 

 飛鳥がごく自然に言い放つので、千聖は恥ずかしくなった。

 

香澄「あ、分かる。千聖先輩ドラマとかで見てもずっとカッコイイ感じだもんね。うーん…でもお人形さんみたいで可愛いというのもあるんだよねー」

飛鳥「綺麗と可愛いのダブルコンボですね」

香澄「あ、それそれ!!」

千聖「あ、あなた達…もうその辺にして頂戴…」

 

 飛鳥と香澄のダブル天然ジゴロに千聖はどんどん頬が赤く染まった。

 

飛鳥「あ、すみません」

香澄「赤くなってる…」

千聖「み、見ないで頂戴!!//////」

 千聖がそっぽを向いた。

 

飛鳥「これ以上お邪魔したら悪いので行きましょう戸山さん」

香澄「そ、そうだね…」

 

 飛鳥と香澄が去っていき、千聖とある程度距離を取ると一斉にこう思った。

 

飛鳥・香澄(超可愛い)

 

 するとそれを察した千聖が追いかけてきて、飛鳥と香澄はそのまま逃げた。

 

 

おしまい

 



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第6話「お礼を言われるまでもない」

 

 

 林間学校。なんやかんやでつぐみを救出した飛鳥(詳しくは前作を参照)。

 

 今回は林間学校が終わってからの話である…。

 

――

 

 バンドリ学園。飛鳥は何気ない日常を教室の自席で体感していた。

 

飛鳥(色々あったけど、楽しかったなぁ…林間学校)

 飛鳥が笑みを浮かべていると、

 

「飛鳥く~ん」

 

 と、Afterglowのメンバーである青葉モカが現れた。

 

飛鳥「あ、こんにちは」

モカ「ちょっといいかな~?」

飛鳥「あ、はい…」

 

 飛鳥はモカに連れられて廊下に移動すると、そこには蘭、ひまり、巴、つぐみがいた。

 

飛鳥「おや、皆さんお揃いで」

モカ「連れて来たよ~」

 

 と、モカが話しかけた。

 

飛鳥「何か御用ですか?」

巴「まあ、なんていうのか…改めて礼を言わせて貰おう。つぐみを助けてくれてありがとう」

飛鳥「あ、いえいえ…」

 

 巴の礼儀正しさに飛鳥は苦笑いした。

 

モカ「それでね~。つぐのご両親がどうしても飛鳥くんにお礼したいって言ってるんだけど、時間空いてるかな~?」

飛鳥「羽沢さんのご両親がですか?」

蘭「一丈字がいなかったらどうなってたか、分からなかったからね…。それでどうしてもだってさ」

モカ「今日空いてる~?」

飛鳥「何事も無かったら…」

 飛鳥が視線を逸らした。

 

モカ「どういう意味?」

飛鳥「いや、こういう時って大抵何かトラブルがあったりするので…」

モカ「分かるよ~。可愛い女の子5人から誘われてるから、何も起こらない筈がないよね~」

飛鳥「…結構自己評価高いんですね」

蘭「モカだけだから」

 

 モカの発言に飛鳥が困惑すると、蘭がフォローいれた。

 

モカ「それじゃ放課後、モカ達が迎えに行くからね~」

飛鳥「あ、はい」

 

 そして放課後、本当に迎えに来た。

 

モカ「やっほー飛鳥くーん。お待たせ~」

巴「行こうか」

飛鳥「あ、はい」

 

 そう言って飛鳥も自席から立ち上がって荷物を持って蘭たちと移動した。それを見たクラスメイト達は驚いていた。

 

「一丈字くんとAfterglow…仲良くなってる…」

「そりゃそうだよな。羽沢さん助けたもんな…」

「よく考えたら凄いよな。一丈字って…」

「まるで神様みたい…」

 

 と、生徒達は驚いていた。

 

 こうして飛鳥達は羽沢珈琲店に来たが、客は殆どいなかった。

 

飛鳥「あれ?」

モカ「あー。今日は臨時休業にして貰ったんだー」

飛鳥「え」

つぐみ「ほかにお客さんがいると、お話も出来ないから…」

飛鳥「そんな事していいんですか…?」

モカ「だいじょーぶだよー。結構儲かってるんでしょ?」

つぐみ「モ、モカちゃん…」

 

 モカの発言につぐみがちょっと困った。

 

 そして6人が中に入ると、つぐみの両親がいた。

 

つぐみ「ただいまー。連れて来たよー」

「おかえりつぐみ。それと、いらっしゃい一丈字くん」

飛鳥「あ、こんにちは…」

 

 飛鳥が苦笑いしてつぐみの両親に挨拶すると、蘭が驚いていた。

 

蘭「と、父さん!!」

「!!?」

 

 と、和服の強面の中年男性もいたが、蘭の父親だった。蘭の父親は椅子に座っていた。

 

蘭「ど、どうしてここに!!」

蘭父「羽沢さんから話を聞いてな。私も同席させて貰ったんだよ」

 すると蘭父が席から立ち上がり、飛鳥の前に立った。

 

蘭父「君が一丈字飛鳥くんかね?」

飛鳥「あ、はい…」

 

 蘭の父の威圧に少し押されながらも飛鳥は挨拶をした。

 

蘭父「…美竹蘭の父です。娘がいつもお世話になってます」

飛鳥「あ、いえ。こちらこそ娘さんとはいつも仲良くさせて頂いております…」

 

 蘭の父が頭を下げてあいさつすると、飛鳥も頭をさげた。蘭はちょっと恥ずかしそうにしていた。

 

モカ「まるで結婚の挨拶みたいだね」

蘭「うるさい!////」

蘭父「蘭。静かにしないか」

 

 そして話は本題に進み、飛鳥とつぐみがつぐみの両親と向かい合うように座った。

 

つぐみ父「話は娘から聞いています。助けてくれてありがとう」

飛鳥「あ、いえ。偶然だったので…」

 飛鳥が困惑していた。

 

つぐみ母「それでもあなたがあの時、声をかけてくださらなかったら、娘が遭難していた事に気が付きませんでしたわ」

飛鳥「いえいえ…」

 

 これでもかという程お礼を言われて、飛鳥は辟易していた。これが他の男子生徒であれば「そんな事ないっすよ~」と表向きは言っていても「これでつぐみちゃんの両親の好感度獏上がりだぜ!」と思うだろう。だが、この男は普通に人助けをしただけなのに、何故ここまでお礼を言われるのだろうと真逆の発想をしていた。

 

つぐみ父「お礼と言っちゃあ何だが、今日ここで食事をしていきませんか? その食事代を是非私達の方で…」

飛鳥「あ、いやそんな事したらうちの親が飛んでくるので…」

つぐみ母「そういえば、あなたのご両親にもお礼を言いたいわ」

飛鳥「そこまでしなくても大丈夫ですよ…。一言だけで終わるので」

 飛鳥が困った顔をした。

 

モカ「そういや思ったんだけど、飛鳥くんって地元の学校どこ? 途中から転校したって聞いてたけど」

飛鳥「ああ。中学は広島にいたんですよ」

「!!」

飛鳥「で、高校進学の時にこっちで一人暮らしです」

「一人暮らし!!?」

飛鳥「親の仕事の都合で…としか言えないんですね。父も母も現在の職場から必要とされているらしいので」

つぐみ父「そうだったのか…」

飛鳥「あ、生活費は貰ってますし、自分でも内職して稼いでます」

モカ「何してるの?」

飛鳥「あ、おもちゃにシールを貼ったり、プログラム作ったり、ネットゲームで賞金稼いだり、箱にものを詰めてます」

「何か途中凄くない!!?」

 

 飛鳥の言葉に蘭たちが突っ込んだ。

 

飛鳥「まあ、生活は何とか成り立ってます」

つぐみ父「そ、そうなんだ…」

つぐみ母「……」

 

 つぐみの両親が引いているのを見て、飛鳥は心の中でガッツポーズした。というのも、あまり気にかけられても申し訳なかったからだ。

 

蘭父「普通のアルバイトはしないのかね?」

飛鳥「ああ、そうですね…。やっぱりコンビニとかの接客業の方が対人関係やコミュニケーション能力も上がると思うんですけど、自分のペースでやりたいし、技術を身に着けたいんです」

蘭父「そうか…」

 

 飛鳥の言葉に蘭の父は目を閉じた。

 

蘭父「君は自立しているんだな。そして自分の考えも持っている」

飛鳥「あ、ありがとうございます…」

 蘭の父の言葉に蘭がムッとするが、モカがなだめた。

 

 

 そして…。

 

飛鳥「ご馳走様でした」

つぐみ父「またいつでもおいで」

つぐみ母「待ってるわ」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 と、つぐみ達と別れ、蘭も父親と一緒に帰っていったが、

 

モカ「そういえば飛鳥くんの家ってどこ?」

飛鳥「ああ。私ホテル暮らしなんですよ」

ひまり・モカ・巴「えっ」

 

 

 この発言で嵐が起きたのは言うまでもない。

 

 

おしまい

 



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第18話「意識し過ぎに要注意」

 

 

 それはそれはある日の事だった。いつものようにバンドリ学園でに普通の日常を過ごしていた紗夜。すると、男子生徒達がこんな話をしていた。

 

「あぁ…紗夜ちゃんと日菜ちゃんっていいよな」

「双子で美人とか反則だろ」

 

 と、自分と双子の妹である日菜を褒める内容だった。褒められるのは嬉しいのだが、優秀な妹と比較される事もあり、かつては妹に劣等感を抱いて疎遠になっていたこともあった。仲間たちの協力や自分達が向き合った事で克服できて、特に気にしないようにしたが、やはり少し気になる所はあった。

 

「あの双子をペットで飼ってみてぇ…」

「ご主人様って言われたりしてな」

 

 という会話を聞いて、紗夜は無表情になり、男子生徒達を心の底から軽蔑した。まあ、その冷たい視線や軽蔑する態度も男子生徒達にとってはご褒美でしかないのだが…。

 

「もしくはペットとして飼われてみてぇ!」

「お前気色悪いぞ…」

「二人の前でフルチンになって首輪で繋がれて公園で「わんわん」って…」

「キモイどころかサイコパスだぞ!!」

「エロ漫画の見すぎや!!」

 

 と、周りの男子生徒もドン引きしたが…。

 

「でも、あんな美人に飼われるならな…」

「ま、まあな…」

 

 だが、当の紗夜自身は全く嬉しくないし、今の記憶を完全に消去したかった。

 

 そしてクラスに帰ってくると、彩、千聖、花音、燐子がいて、燐子が異変を感じていた。

 

燐子「ど、どうされたんですか…?」

紗夜「…何でもありません。少し疲れただけです」

 と、紗夜はぐったりしながら席に座った。

 

 

紗夜(破廉恥を通り越して…汚らわしいわ)

 

 

 その夜…

 

紗夜「全然集中できなかったわ…」

 

 放課後、ライブハウス「CiRCLE」でRoseliaの練習があったが、思った以上に力を発揮できず、燐子の提案で早めに切り上げる事になった。

 

紗夜(皆さんに迷惑をかけたし、明日何とか取り返さないと…)

 

 そう思いながら、紗夜は目を閉じた。

 

 

 暫くして…。

 

紗夜(あ、あれ…? 私は…)

 紗夜が夢を見ていた。見ていたのだが…。

 

「わんっ♥ わんっ♥」

「にゃ、にゃあ~…//////」

 

 日菜と紗夜が首輪をつけ、全裸で一人の男に可愛く鳴いていた。

 

紗夜(な、何ですかこれはっ!!!////// な、何で全裸…!!/////)

 

日菜は屈託のない笑みで男にわんわんと鳴き、紗夜は顔を真っ赤にしながらも、男に嫌われないように精いっぱい笑顔を見せて、猫のようににゃーと鳴いていた。そしてその男はというと…。

 

飛鳥「……」

 

 一丈字飛鳥だった。だが、日菜と紗夜の姿を見てドン引きしている。

 

 

「!!!?///////」

 

 飛鳥の顔を見た瞬間、紗夜がベッドから起き上がった。

 

紗夜「な、なななななな何なんですか今のゆめは…!!///////」

 

 紗夜は青ざめていた。男子生徒達の言った事を意識し過ぎたあまり、夢にまで出て来てしまい、夢の中とはいえ、飛鳥の前で全裸になった事を恥じた。

 

紗夜「な、なんていやらしい夢を…///// いや、何かの間違いです!! 心を無にして寝ましょう…」

 

 と、紗夜が気を付けて眠りについたが…。

 

 - 再び紗夜の夢 -

 

 夢の続き、飛鳥がドン引きしていてどうしようか悩んでいると日菜がむくれて、飛鳥に飛びついた。

 

飛鳥「な、なんですか日菜先輩!!!」

日菜「くぅ~ん♥♥」

 日菜が飛鳥の胸に飛び込んで、腰をくねらせた。尻尾も生えているが左右に激しく揺れている。あと尻がエロい。

 

飛鳥「いや、本当にどうしちゃったんですか!? あなたアイドルでしょ!!」

日菜「くぅ~ん…?」ウルウル

 日菜が目に涙を潤ませて

 

飛鳥「紗夜先輩まで…」

 飛鳥が紗夜を見ると、おすわりのポーズをしていて、自分に構ってほしそうにしていた。

 

飛鳥「あの、紗夜先輩…?」

 すると紗夜は足を開いて、顔を真っ赤にして目に涙を浮かべ、横を向きながら大事な部分を飛鳥に見せた。

 

紗夜「にゃ、にゃあ…(かまって…)///////」

 

 紗夜はまた起き上がって震えあがった。

 

紗夜「私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私はどっちかっていうと犬私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない私は破廉恥じゃない…」

 

 と、大量の汗をかいて俯きながらブツブツ呟き、寝る事と起きる事をずっと繰り返していた…。

 

 翌朝

 

日菜「ふぁー…よく寝たぁ」

 日菜が起き上がって、部屋を出ると紗夜と出会った。紗夜はすでに制服に着替えて学校に行こうとしていた。まるで日菜から逃げようとするかのように…。

 

日菜「あ、おねーちゃん。おはよー」

 紗夜が日菜を見ると、げっそりした顔で涙目になった。

日菜「お、おねーちゃん…?」

 すると紗夜は黙って家を飛び出していった。

 

紗夜(最低…私…凄く最低…!!!)

 

 紗夜はあふれる涙が止まらなかった。

 

 そして学校につくと、

 

日菜「おねーちゃーん」

 と、日菜が紗夜の教室を訪ねた。紗夜は1組で日菜は2組である。

 

燐子「どうされたんですか?」

日菜「おねーちゃん来なかった?」

燐子「私が来たころにはもう荷物がありまして…」

花音「…どうしたの?」

燐子「昨日からずっと様子が変なんです…」

 燐子が困った様子で話すと、日菜が思い出した。

日菜「それがさー。おねーちゃん昨日の夜中もおかしいんだよねー。私は破廉恥じゃないってブツブツ言ってたし…。何かエッチな夢でも見たのかな?」

燐子「!!!?///////」

花音「ふぇえええええ!!?///////」

 日菜の爆弾発言に燐子と花音が顔を真っ赤にした。

 

日菜「あ、もし来たらあたしが探してたって言っといてー。じゃ」

花音「ふぇええ!!?//////」

 花音がそう声を上げると、日菜が去っていった。

 

燐子「さ、紗夜さんが…///////」

花音「ふぇええ…/////」

燐子「も、もしかして何かい、いやらしいことがあったんじゃ…」

 

紗夜「なんてこと…風紀委員なのに…風紀委員なのに…」

 紗夜は一人でうろついていると、飛鳥と遭遇した。

 

紗夜「!!?/////」

飛鳥「あ、氷川先輩。おはようございます」

 

 飛鳥が紗夜に挨拶をすると、紗夜は飛鳥の顔を見て顔を真っ赤にした。

 

飛鳥「…ど、どうされました?」

 飛鳥の困った顔に、昨日の夢を思い出した紗夜は

 

紗夜「違うんです!!!!」

飛鳥「!!?」

 紗夜が涙目で急に飛鳥の両肩を掴んだ。

 

紗夜「あ、あれは私の趣味じゃないんです!!! 日菜は分かりませんけど、私はあんなふしたらな女じゃないんです!! 信じてください!!!」

飛鳥「氷川先輩。落ち着きましょう。本当に落ち着きましょう!!」

 飛鳥が困惑した。

 

「ちょっとどうしたの!!?」

「おねーちゃん!!」

 

 燐子と日菜が現れた。

 

飛鳥「白金先輩!! 日菜先輩も!!」

紗夜「!!」

 日菜の様子を見た紗夜は困った顔をした。

 

燐子「あの、どうしたんですか…?」

飛鳥「すみません。ちょっと紗夜先輩を連れてお話しして貰えませんか?」

燐子「え?」

 飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「…男性が加わっていいようなお話ではなさそうなので」

 

 そして移動して食堂。

 

日菜「ごめんねー飛鳥くん」

飛鳥「あ、はい…」

 

 結局飛鳥も同席させられた。周りには何事かとやじ馬がやって来た。

 

日菜「おねーちゃん、こう見えてむっつりだから」

紗夜「むっつりじゃないもん…/////」

 紗夜は涙目で視線をそらしてぼそっと呟いた。そしてそんな紗夜を見て、やじ馬たちはもだえ苦しんでいた。

 

飛鳥「あ、ファンの方に襲われたとかじゃなくて良かったです…」

 飛鳥は困惑していた。

燐子「あ、あははははは…」

紗夜「……!!(涙目)」ブルブルブルブル

燐子「ご、ごめんなさい…。氷川さんも大変でしたね…」

 紗夜が「やめて…」といわんばかりに子犬のように震えながら燐子を見つめると、燐子も困惑した。

 

日菜「でもワンちゃんになるのは面白そうだなー」

紗夜「やめて!!」

日菜「あ、大丈夫だよー。服は着るから。流石に素っ裸は恥ずかしいもん。まあでも…」

 日菜が飛鳥を見た。

 

日菜「飛鳥くんだったら、下着までならOKだよ?」

飛鳥「日菜先輩。ちょっと口閉じましょうか。紗夜先輩が死にかけてますし、後ろからの殺気が凄いです」

紗夜(しにたい)

 

 こうして、一連の騒動が終わった。

 

 

日菜「あたしでえっちな夢見てたんだーへー」

紗夜「……!!!!//////」

 

 だが、紗夜はしばらく日菜にからかわれたという。

 

 

おしまい

 

 

 



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第19話「バッドエンド(前編)」

「いい加減にして!!」

 

 

 ある日のバンドリ学園。Pastel*Palettesの氷川日菜の怒声が響き渡った。

 

 

「てめぇこそ何なんだよ!!

 と、一人の男子生徒が日菜につかみかかった。

 

「オレはこの学校でもトップの男だぞ!! 勉強もスポーツも何もかも上だ!! あいつなんかよりもオレの方が相応しい!! オレこそが真のヒーローなんだよ!!」

 

 鼻息を荒くして男子生徒は掴みかかった。

 

日菜「い、いた…!!」

「なのに何でお前はオレを見ようとしない!! 何故だ!! なぜおまえはオレじゃなくてあの得体のしれないバケモノばかり見やがる!! オレが正しいんだよ!! あいつじゃない!!」

 

 すると日菜が男子生徒を睨みつけた。

 

日菜「誰が正しいかなんてどうでもいい」

「!!」

日菜「これ以上飛鳥くんの悪口を言わないで!!!」

「このアマァ!!!」

 

 男子生徒が日菜を殴った。

 

「女だと思って大人しくしてれば!!」

日菜「いたい!! いたい!! やめてよお!!」

 

 日菜はちょっとやれば何でもできたが、男子生徒の狂気に怯えていた事と、男子生徒がそれなりに強かったことから、反撃する事が出来なかった。

 

「オレは特別な男だ!! ヒーローなんだ!! そうだ! オレはヒーローの筈だぞ!! なのに何で皆オレを嫌うんだよ!!」

日菜「そういう性格だから…」

「口答えするな!! 歯向かうな!! オレに意見するなぁああああああああ!!!」

 

 と、まるで目の前でウロウロする虫を退治するかの如く、男は日菜を殴った。

 

「お前らは黙ってオレの言う事聞いてればいいんだ。そして、お前のようなメスはオレに全てを…」

 その時だった。

 

「うっ…な、なんだ…!! ぐぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 男子生徒が腹を抑えたその時、

 

「氷川先輩!!!」

 

 飛鳥が現れた。

 

「て、てめぇ!! 一丈字!!」

日菜「飛鳥くん!!」

 

 日菜が飛鳥の所に行こうとしたが、男子生徒が日菜の手を掴もうとすると、

 

飛鳥「トランプ手裏剣!!」

 

飛鳥が懐からトランプを1枚取り出して、手裏剣の要領で投げ、投げたトランプは男子生徒の腕に当たった。

 

「ぐぁあああああああああ!!!」

 そして飛鳥は日菜の手を引っ張って、その場を離れた。

 

「ま、まてぇ…!! ぐぁああああああああああああああああ!!!!」

 飛鳥が超能力を使って、更に腹痛を酷くさせた。

 

 

 そして、人気のいない場所。

 

飛鳥「日菜先輩。大丈夫ですか…」

日菜「……」

 

 飛鳥が日菜の顔を見ると、目や頬や腫れあがっていた。

 

日菜「えへへ…大丈夫だよ。助けてくれたから」

 と、日菜は笑っていたが飛鳥は分かっていた。本当は声を上げて泣き出したいのだと。だけど自分が後輩だからそれをしないのだと。

 

飛鳥「保健室に行きましょう。そこで手当てを…」

 その時だった。

 

「日菜!? それに一丈字くんもどうしたの!?」

 と、彩が慌てた。

 

飛鳥「丸山先輩!」

日菜「彩…」

彩「きゃああああっ!!! ど、どうしたのよ!!!」

 

 日菜の顔を見て彩が青ざめていた。

 

飛鳥「男子生徒に襲われたみたいなんです。詳しくは保健室で…」

彩「わ、分かった!」

飛鳥「そういえば日菜先輩、今日仕事は?」

日菜「ないよ」

飛鳥「…そうですか」

 飛鳥と彩が日菜を連れて保健室に移動した。

 

「随分派手にやられたわね…」

 と、保健室の女医の先生も渋い顔をしていた。

 

飛鳥「私は少しのあいだだけ席を外します」

彩「え、何で?」

飛鳥「言う通りにしてください。分かりますから」

彩「!」

 飛鳥が悲しそうに呟くと、そのまま出ていった。

 

彩「日菜…」

日菜「……」

 彩が日菜の方を見ると、日菜はぽろぽろ涙を流した。

 

日菜「…うわあああああああああああん!!! こわかったよぉおおおおおおおおお!!!」

 日菜が号泣すると、彩は気づいてすぐに日菜を抱きしめた。

 

彩「怖かったね!! 日菜ちゃん!! よく頑張ったよ!!」

 

 と、彩も貰い泣きして元気づけると、飛鳥はそのまま廊下で待っていた。その時だった。

 

ひまり「あれ? 一丈字くん。何してるの?」

 Afterglowが現れて、ひまりが話しかけてきた。

 

飛鳥「保健室に入らないように見張ってるんですよ」

蘭「何で?」

飛鳥「後で説明します。今は入らないでください」

 飛鳥の表情に巴は何かを感じた。

 

蘭「説明してくれなきゃ…」

巴「一丈字の言う通りにしよう」

「!!」

巴「その代わり、ちゃんと説明してね」

飛鳥「ええ。皆さんはお帰りになられるんですか?」

ひまり「そ、そのつもりだけど…」

飛鳥「申し訳ございませんが、ちょっと今は帰らないでください」

蘭「ど、どういう事だよ。うちらライブの練習しようと…」

巴「もしかして…保健室に入れない事と、関係があるのか?」

飛鳥「はい。今、暴漢がこの学校をうろついているとの情報が入ったそうです」

「えええええっ!!?」

 

 飛鳥の言葉に蘭たちが驚いた。

 

蘭「ぼ、暴漢って!!」

モカ「特にサイレンとか鳴ってないよ~?」

飛鳥「…犯人が男子生徒ですからね」

蘭「ちょ、ちょっと待って。それじゃ保健室に入るなっていうのは…」

飛鳥「もうそろそろ大丈夫だと思うんですけど…」

 

 飛鳥が困惑すると、彩が入ってきた。

 

彩「あ、もう大丈夫だよ一丈字くん。日菜落ち着いたから…」

飛鳥「そうですか。あ、もし宜しければ中にお入りください。そこで説明します」

 

 そして飛鳥は全ての経緯を説明した。

 

飛鳥「今、弦巻さんの黒服の人たちに捜索をさせていますので、もうしばらくお待ち頂けますか」

つぐみ「う、うん…」

 

 飛鳥が困った表情で話すと、つぐみも困りながら頷いた。

 

蘭「それにしても女子の顔を殴るなんて…」

巴「許せないね」

モカ「同じ目にあわせてやりたいくらいだね~」

 

 その時、平三が現れた。

 

飛鳥「平三さん」

黒服「一丈字様。例の男子生徒を捕らえました。如何なさいますか」

飛鳥「状況はどのような状態ですか」

黒服「暴れておりましたが、手刀で大人しくさせました」

飛鳥「…そうですか。それでは彼の親御さんと学校に連絡をして、日菜先輩達から隔離させてください」

黒服「承知しました」

 と、平三が消えていった。

 

 

 暫くして、

 

紗夜「日菜!!!」

 紗夜が血相を変えて保健室に現れた。

 

日菜「あ、おねーちゃ…」

 すると紗夜が日菜を抱きしめた。

 

紗夜「ごめんね…ごめんね…うわぁああああああ!!」

 と、子供のように泣いた。

日菜「おねーちゃん…」

 日菜も貰い泣きしたのを飛鳥達も見ていた。

 

蘭「くそっ!!」

 蘭が壁を殴った。

蘭「こんな目に逢わせるなんて…」

巴「落ち着け」

蘭「これが落ち着いていられるの!?」

巴「いられないよ。だけど、もう犯人は捕まったんだ」

 

 巴も冷静を保とうとしていたが、頭に血が上りそうだった。

 

日菜「あ、そうだ…飛鳥くん」

飛鳥「あ、親御さんに連絡して迎えに…」

日菜「ううん。助けてくれてありがとう」

飛鳥「いえ。来るのが遅れてしまい、あなたをそのような目に逢わせてしまったので、お礼を言われる資格はございません」

日菜「ううん! そんな事ない!! そんな事ないもん!!」

 

 日菜がまた泣き出した。

 

日菜「そんな事ないもん…」

 と、か細い声を聴いて飛鳥は更に困り果てた。

 

紗夜「一丈字くん…」

飛鳥「!」

紗夜「私からもお礼を言わせてください。妹を助けてくれてありがとうございました…!!」

 

 

 河川敷

 

飛鳥「ハァ…」

 飛鳥は一人河川敷で落ち込んでいた。

 

飛鳥(もしもあの時来るのが早かったら…)

 親に迎えに来て貰った日菜と紗夜を思い出した飛鳥。結果的に日菜をケガさせてしまった事を悔やんだ。

 

飛鳥(あんまりこういう事が続くと、この学校に来てる意味がなくなる…。気を付けないと…)

 

 その後、男子生徒は傷害容疑で逮捕され、退学になった。男子生徒は確かに成績優秀でスポーツ万能だったが、女子にはモテず、自分よりも下だと思っていた人間に次々と恋人が出来た事が、凶行へ走らせるきっかけとなってしまった。

 

 日菜に至っては幸い大事にはいたらず、数日分の仕事をキャンセルした程度で済んだ。また、キャンセルしたことで発生した違約金などは男子生徒の親が支払う事になったという。

 

 こうして一連の騒動は収まったが、目の前で日菜にけがを負わせてしまった事は、飛鳥にとって暗い影を落とす結果になった。

 

 

 その結果…

 

日菜「ねえ飛鳥くん。元気出して? 私大丈夫だよ? ほら!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥が河川敷で落ち込んでいた事が、皆に知られてしまい、日菜は責任を感じてずっと付きまとうようになってしまった。そしてファン達からも余計に嫉妬されるようになった。

 

飛鳥(河川敷で落ち込んだのが一番の失敗だった…)

 

 と、飛鳥は反省したという。

 

日菜「ねえ飛鳥くん。今日の放課後ずっと一緒にいようよ。膝枕とかしてあげるよ?」

飛鳥「あの…本当にすいませ…」

日菜「謝らないでよお…!!」ジワァ…

飛鳥「あ、その!! 泣かないでください! 分かりました!! 今日ちょっと付き合って欲しい所が…」

 

 

 

おしまい

 



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第20話「バッドエンド(後編)」



 前回までのあらすじ

 飛鳥は廊下を歩いていると、男子生徒に殴られている日菜を目撃した。すぐに追い払ったが、顔は腫れあがっており、すぐさま保健室に運んだ。

 大事にはならずにすんだものの、日菜を救いだせなかった事、紗夜と日菜を泣かせてしまった事、そして最悪の事態になっていたかもしれないという恐怖から、飛鳥は一人、自分を責めた。

 今回はそんなお話である。


 

 

 

 

 

 翌日、飛鳥は重い腰を上げて学校に向かった。

 

飛鳥(日菜先輩がケガした事は、オレのせいにされるだろう。だが、それはいいんだ)

 

 問題なのはそこじゃなかった。昨日、保健室を出た後日菜が声を上げて泣いた事。そこが不安だった。痛かったに違いない。怖かったに違いない。だが、アイドルとして、Pastel*Palettesのメンバーとしてやっていくには、表面上明るく振る舞わないといけない。

 

 要は色々と心配なのだ。いつものように全く気にせず明るく登校してくれれば良いのだが、あれだけの事があってそういう事が出来るのは、気丈な人間ではない。かなり頭がおかしい人間だと飛鳥は考えていた。

 

 その時だった。

 

「飛鳥くん!」

 

 と、日菜の声がして、飛鳥が後ろを振り向くと、日菜と紗夜がいた。

 

飛鳥「…日菜先輩」

 

 飛鳥が困った顔をした。というのも、日菜の顔には絆創膏とガーゼが貼られていて、とても痛々しい姿だった。

 

日菜「おはよう!」

飛鳥「おはようございます」

 

 日菜は明るく振る舞っていたが、飛鳥には分かっていた。皆に気を遣わせまいと気丈に振る舞っているのだと。そして紗夜も困った顔をしていた。

 

飛鳥「紗夜先輩もおはようございます」

紗夜「…おはようございます」

日菜「二人ともどうして暗い顔してるの? あたしは大丈夫だよ」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 飛鳥は困った顔をしていた。

 

日菜「もしかして誰かに虐められてるの?」

飛鳥「いえ、まだです」

紗夜「まだって…」

日菜「まだってどういう事?」

 

 日菜の言葉に飛鳥は目を閉じた。

 

飛鳥「恐らく私のせいになるでしょうね。あなたがケガをした事」

日菜「な、何で!!?」

 

 日菜の問いに飛鳥が目を開けた。

 

飛鳥「嫌われてるからですよ。まあ、それはどうでもいいんですけどね」

日菜「どうでもよくないよ!! あたしがケガしたのがどうして飛鳥くんのせいになるの!?」

飛鳥「普段からこうやってお話をしてるからでしょうね。此間の誘拐の件もありましたし、そして犯人の男はもうこの学校にはいいませんし、やり場のない怒りから私に当たるでしょう」

 

 飛鳥が再び困った顔をした。

 

飛鳥「最悪の事態は免れましたけど、こうしてけがをされてしまった事にかわりはございません。仕方ありませんよ」

日菜「……!」

 

 飛鳥の言葉に日菜が困った顔をした。

 

飛鳥「それはそうと、もう学校に登校されて大丈夫なんですか?」

紗夜「…私も止めたんですけど、聞かなくて。一丈字くん。あなたが虐められる可能性があるというのは私も同感です。私のクラスでもあなたの事を快く思っていない方が数人います」

飛鳥「でしょうね…」

 

 紗夜の言葉に飛鳥が首を横に振った。

 

日菜「そ、そんなのやだよ!! どうしてあたしがケガをして、飛鳥くんが虐められないといけないの!!?」

飛鳥「あくまで想定の話なので、何もない事を祈りましょう」

紗夜・日菜「……」

 

 飛鳥がいつも通りの表情で紗夜と日菜を見た。

 

飛鳥「行きましょう。また途中からになりますが、学校まで送ります」

 

 そして飛鳥は紗夜と日菜と一緒に登校した。

 

 それからというもの。飛鳥は普通に自分の教室で過ごしていたが、

 

飛鳥「……」

 飛鳥は困り果てていた。というのも、休憩時間になる度にずっと日菜がいたからだ。

 

飛鳥「あの、氷川先輩…」

日菜「飛鳥くんが虐められないようにするの」

飛鳥「あ、多分これ絶対に来ないパターンですね」

日菜「それだったらあたしがいなくなったら、絶対来るパターンだよね?」

飛鳥「来るけど、色々あって何もなかったっていうパターンですね」

日菜「今日はずっと一緒にいようよ」

飛鳥「……!」

 日菜が寂しそうにつぶやいた。

 

日菜「初めてなの。こんなに怖いと思ったの」

飛鳥「……」

日菜「そして、目を離したら飛鳥くんがいなくなっちゃうんじゃないかって」

 

 日菜が震えていた。

 

日菜「だからお願い」

飛鳥「……」

 

 日菜の言葉に飛鳥は何も言えずにいたが、

 

「一丈字くん。一緒にいてあげなよ」

 と、一人の女子生徒が話しかけた。

 

飛鳥「!」

「私達は大丈夫だから」

「そうだよ。一緒にいてあげて」

 

 次々と女子生徒達が声を出した。

 

飛鳥「皆さん…」

 飛鳥が俯いた。

 

飛鳥「分かりました」

日菜「…うん」

 

 女クラスメイト達の後押しで飛鳥は日菜と一緒にいる事にした。昼休憩は紗夜をはじめ、2年生全員と食事を取っていた。日菜の周りに不審者がいないか見張っていたが、

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥は遠巻きに見ている男子生徒達の「悪意」を感じ取っていた。

 

(おい、あいつ…)

(日菜ちゃんにけがをさせて、何で一緒にいるんだ?)

(日菜ちゃんの顔に傷をつけやがって…!!)

(許せん!)

 

 飛鳥の想定通り、怒りの矛先が自分に気付いている事に気づいた。

 

日菜「…飛鳥くん?」

飛鳥「!」

 飛鳥が日菜を見つめた。

 

日菜「どうしたの? やっぱり虐められてるの?」

飛鳥「いや。虐められているのではなく、不思議がられてましたね」

リサ「不思議がられていた?」

飛鳥「ええ。そんな感じがしていますね」

 

 何故不思議がられているかはあえて言わなかった飛鳥だったが、千聖は気づいた。

 

千聖「それはそうと、いつまでウジウジしてるのかしら?」

飛鳥「ああ、すみません」

 

 飛鳥が千聖を見た。

 

千聖「もう過ぎた事は仕方がないし、いくらあなたでも対処しようがないでしょ」

飛鳥「そうじゃないんですよ」

「!」

 

 千聖の言葉に飛鳥はそう言い放つと、千聖たちが飛鳥を見た。

 

飛鳥「白鷺先輩の仰ってる事は最初から理解しております。昔の事をずっと気にするより、未来に目を向けた方が良いと」

千聖「それだったら…」

飛鳥「あの現場にいたから感じるんですよ。もしもあの時よりも更に悪い状況だったら。と」

「!」

 

飛鳥「白鷺先輩」

千聖「な、なに?」

飛鳥「もしもあの時、日菜先輩が殺されていたらどうしていましたか?」

千聖「!!」

 

 飛鳥の言葉に皆が戦慄した。

 

麻弥「い、一丈字さん! 今はそういう事は…」

日菜「麻弥ちゃん」

 日菜が止めた。

 

日菜「いいの。飛鳥くんは本当にあたしを助けようとしてくれてたから、分かるんだよね」

千聖「分かるって…」

飛鳥「すみません。質問を変えます。もしあなたが私の立場だったらどうしてましたか? 殴られただけで済んで良かったって思いますか? それとも…」

千聖「……」

 

 飛鳥の言葉の真意が分かり、千聖が俯いた。

 

千聖「…ごめんなさい。私が間違ってたわ。殴られただけで良かったなんて…そんな事思えない」

飛鳥「すみません。情けない話なのですが、恐怖を感じてるんですよ」

「!」

 

飛鳥「助けられたから良かったですが、もしもあの時遅れていたら、もしもあの時、あの場所を通らなかったら、日菜さんはどうなっていたんだろうと」

「……!!」

飛鳥「恐ろしくて仕方ないんですよ。人の命がかかっていたから」

 

 飛鳥が一息ついた。

 

飛鳥「白鷺先輩。さっきの質問の答えですが…」

千聖「……」

飛鳥「もう少しだけ待って頂けないでしょうか。心の整理がまだついてないんです」

 

 飛鳥の言葉に千聖は、

 

千聖「分かったわ。そこまで日菜ちゃんの事を考えてくれてたのね。ありがとう」

飛鳥「いえ…」

 その時、日菜が飛鳥に近づいた。

 

飛鳥「あ、日菜先輩。どうされま…」

 日菜が飛鳥に抱き着いた。

 

飛鳥「あの、日菜先輩?」

日菜「ごめんねぇ…!! ごめんねぇ…!!」

 と、日菜が泣いて謝っていた。

 

飛鳥「いや、謝る必要もありませんし私は…」

日菜「…飛鳥くん、昨日の夕方、ずっと一人で悩んでたでしょ。河川敷で」

飛鳥「誰から聞きました?」

日菜「つぐちゃん」

飛鳥「…つぐちゃんって、羽沢さんですか?」

日菜「うん。一人で川をずっと見てたって、電話を見てたよ」

 日菜がポロポロ泣くと、紗夜が慄然とした。

 

飛鳥「…全然気づきませんでした。てっきり美竹さん達と一緒に帰ったのかと思ってたので」

日菜「ごめんね…! あたしのせいで…!!」

 と、泣いていたが、

 

飛鳥「いえ、それはこっちが勝手にやった事なので気にしないでください」

 飛鳥は普通に言い放った。

飛鳥「あ、そういやPastel*Palettesの仕事って…」

千聖「今週はなしよ。流石に顔を殴られて仕事させたら、うちの事務所潰れるわ」

飛鳥「ですよね…」

 飛鳥が困惑して相槌を打った。

 

飛鳥「日菜先輩」

日菜「?」

 

 飛鳥が日菜の身を離して、日菜と向き合った。

 

飛鳥「まあ、色々言いましたが、結果的に私もあなたもこうやって生きてる。一旦は良しとしましょう。そしてこれからの事について話しましょうか」

日菜「…うん」

 日菜が小さな声でつぶやくと、

 

飛鳥「ここにいる皆さんも羽沢さん達もついてます。一緒に頑張りましょう」

日菜「うん…!!!」

 

 と、日菜がまた涙を流したが、鼻水も流れ出た。

 

飛鳥「あ、色々喋ってすみませ…」

 飛鳥が紗夜たちを見ると、彩、麻弥、リサ、燐子、花音が号泣していた。

 

飛鳥「あの、何で泣いてるんですか…」

彩「だってぇ~!!」

麻弥「深く感動したっす…!!」

花音「ふぇええええええええええ」

燐子「……!!」

 

 涙を流している彩、麻弥、花音、燐子を見て飛鳥は気まずそうにした。

 

リサ「河川敷って…またあそこで落ち込んでたのね」

飛鳥「そうですね…。あそこあまり人来ないので…」

友希那「……」

 友希那がじーっと飛鳥を見つめた。

 

飛鳥「あ、すみません…」

友希那「謝る必要がどこにあるの?」

飛鳥「え」

友希那「自信を持ちなさい」

千聖「そうよ。自分のやった事は間違ってないって思ってるんでしょ?」

飛鳥「それはもう」

 飛鳥が即座に答えた。

 

千聖「なら、それでいいじゃない」

薫「なんて勇敢で…儚いんだ」

千聖「かおちゃん静かにして」

薫「ごめんなさい。あと、出来ればもうそれ呼ばないでください」

 千聖と薫の掛け合いに日菜もちょっと元気が出た。

 

日菜「…ふふっ」

飛鳥「日菜先輩…」

日菜「…はー。皆とお喋りしたら元気が戻ってきた。で、飛鳥くん」

飛鳥「何でしょう」

日菜「今日の放課後空いてる?」

飛鳥「空いてないですね」

 空気が止まった。

 

千聖「今の日菜ちゃんよりも優先しなきゃいけない事?」

飛鳥「同じくらいですね」

リサ「無理に好感度下げようとしても無駄だよ」

飛鳥「そういう場合一気に0になりますからしませんよ。弦巻さんと打ち合わせがあるんですよ」

「打ち合わせ?」

飛鳥「日菜先輩を笑顔にする為の打ち合わせです」

「それもっと泣いちゃう奴じゃんか!!!」

「うぇええええええええええええええええええええん」

 

 と、日菜達は泣いたが、皆で一緒に泣いたら日菜は元気になったという。

 

 

飛鳥「人間、素直になるのが一番ですね」

 

 

おしまい

 



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第25話「一丈字飛鳥という男」

 

 

 ある日の事だった。

 

「なあ、聞いたか?」

「最近この学校…幽霊が出るらしいぞ」

「何か3年生がそんな話してたな…」

「おー怖い怖い…」

 

 と、飛鳥が教室で聞いていたが、特に何もする事は無かった。

 

「そういや今日、メンテナンスのために早めに施錠されるんだろ?うちの学校オートセキュリティだから」

「取り残されたら一晩中幽霊に付きまとわれるかもな」

「おーこわ」

「あ、でもガードマンがいるって」

「そっか」

 

 その夜、

 

飛鳥「ふぅ…。今日も何もない一日だったな…」

 と、飛鳥が部屋でくつろいでいると、電話が鳴った。

 

飛鳥「誰からだろ」

 飛鳥が電話を取った。

飛鳥「もしもし」

「あ、もしもし飛鳥!?」

 電話の相手はこころだった。

 

飛鳥「こころ。どうしたんだ?」

こころ「蘭たち知らない!?」

飛鳥「え?」

こころ「蘭たちがまだ学校から帰ってきてないって…」

飛鳥「え!?」

 飛鳥が驚いた。

 

こころ「さっきあこから電話があったのよ! Afterglow全員帰ってきてないって…」

飛鳥「5人全員が行きそうな場所とか調べましたか? 学校とか…」

こころ「学校…そうだわ! 今日確か早く施錠するって黒服の人たちが教えてくれたわ!」

飛鳥「もしかしたら学校に閉じ込められてる可能性が…。けど、羽沢さん生徒会の仕事をしてるから…あ、すぐに帰ろうとしたけど、閉じ込められた奴か」

こころ「警察の通報とかそういう手続きはあたしや黒服達の人がしておくわ! 飛鳥は学校に向かって頂戴!」

飛鳥「分かった!」

 

 飛鳥が存在感を消し、瞬間移動で学校に向かった。ちなみに行った事がある場所はいつでも行けるようになる。

 

 正門を過ぎた所に瞬間移動した飛鳥。正門は既に閉まっている。

 

飛鳥(誰か来てる痕跡もなさそうだな…)

 飛鳥が目を閉じて感知すると、蘭達を捕らえた。停電になり5人で固まっている。

 

飛鳥(いた!)

 そして飛鳥は超能力でカギのロックを解除すると、中に入った。

 

飛鳥「美竹さーん!!! 青葉さーん!!!」

 

 と、大声で叫んだ。

 

 その頃…

 

「うぅぅぅぅ…!!」

 Afterglowの5人は固まっていた。モカ以外の4人はすっかり怯えていた。

 

ひまり「ごめんねぇ…!! 私が参考書忘れたばっかりに…!!」

巴「そ、それはもういいんだよぉ!!」

蘭「怖い…!!」

 

 実はAfterglowは夕方までつぐみの家で課題をしていたが、ひまりが参考書を忘れた事が判明し、5人で忘れ物を取りに行った。すぐに取りに帰る予定だったので、親には特に何も言わず、そのまま飛び出し学校へ。

 

 参考書は無事に見つかったものの、その瞬間に施錠されてしまい、蘭たちは外から出られなくなってしまったのだ。おまけに最近幽霊がいると噂になっている為、すっかり怯え切っていた。

 

つぐみ「お父さんもお母さんも絶対怒ってる…ひっく…」

モカ「つぐ泣かないで~。それは皆一緒だから~」

蘭「…バンド禁止される」

巴「私もあこに何て言われるか…」

ひまり「私のせいだ…うぇええええええええええん!!!」

 

 ひまりが泣き崩れた。

 

つぐみ「ひ、ひまりちゃんのせいじゃないよ!!」

巴「ちょ、やめろよ! そういうの…」

蘭「そ、そうだよ…!!」

 と、つぐみ、巴、蘭も涙ぐんだ。

 

モカ「そんなことよりも、本当にまずいよ」

「!」

 

 モカが険しい顔をしていた。

 

モカ「…『あいつ』がここを突き止めてきたら」

「もう突き止めたよ」

「!!?」

 

 その時、モカの首筋にスタンガンが当てられそうになったが、間一髪でかわして5人は避難したが、完全におびえ切っていた。目の前には狂気に満ちた表情した…。

 

 

 ガードマンの姿があったのだから。

 

 

モカ「……!!」

 モカも今ので完全に青ざめてしまい、目に涙が浮かんだ。

 

ガードマン「もう逃がさないよ。見られたからには、君達には大人しくて貰う」

蘭「な、な、何で…」

ひまり「いやぁああああああああああああああああああああああ!!!!」

ガードマン「泣きわめこうが誰も来ないよ。そもそも下校時間過ぎた挙句、勝手に学校に入ってきた君たちが悪いんじゃないか。そういう事をするなら…やってもいいよね」

巴「な、何をだ…」

 

 ガードマンが笑みを浮かべた。

 

ガードマン「生徒を一人ずつ…なぶり殺しさぁ!!!」

 

 ガードマンが鉄パイプで殴ろうとしたが、動きが止まった。

 

ガードマン「な、なんだ!? 体が…」

「!!」

 その時だった。

 

「はああああああああああああああああああ!!!!」

 

 飛鳥が廊下を走ってきた。真剣な権幕で叫び、そして飛んだ。

 

「!!」

ガードマン「!!」

 

飛鳥「どりゃぁああああああああああああああ!!!」

 

 飛鳥がガードマンの顔にめがけて飛び蹴りをすると、

 

ガードマン「ぐわぁああああああああああああああ!!!!」

 と、ガードマンも悲鳴を上げて壁に叩きつけられそのまま気絶した。飛鳥は綺麗に着地をすると、一気に電気がつくと、飛鳥は存在感を消した。

 

「!!」

飛鳥(学校の給電システムが…)

 飛鳥が灯を見ながらそう呟くと、Afterglowを見つめた。

 

飛鳥「もうじき助けが来ます。そこで大人しくしててください」

 そう言って飛鳥がガードマンの身柄を拘束すると、

 

「皆さま!!」

 弦巻家の黒服の人たちが現れて、蘭たちを保護した。

 

「ご無事ですか!!?」

ひまり「う…うぇええええええええええええええええん!! ごめんなさいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

 ひまりは号泣した。

つぐみ「は、はい! 無事です!!」

モカ「こわかったぁああああああああああああああああああ」

 号泣したひまりに代わってつぐみがそういうが、つぐみも涙をポロポロ流した。モカも号泣し、蘭と巴は歯を食いしばって涙をこらえようとしていたが、涙があふれていた。

 

飛鳥「……」

 飛鳥は何も言わず、一足先にその場を後にすると、入れ替わるように黒服の男たちがガードマンを取り押さえた。

 

 その後、ガードマンは無事に逮捕されたが、完全施錠を行う前に、本来作業をする筈だった作業員たちをスタンガンで気絶させていたことが分かり、おまけに1組で香澄たちの私物を漁っていた事も発覚。器物損壊、傷害、窃盗の疑いで実刑判決を食らった。

 

 蘭たちはというと、校舎に勝手に入った事、連絡をしなかった事について、保護者達からこっぴどく怒られ、Afterglowは最低1週間は外出禁止令が出された。こころが止めようとしたが、保護者の意思をくみ取った黒服達が、こころを説得して取りやめるようにした。

ちなみに施錠されている間、電波が圏外になっていたのだが、連絡できなかった理由にはならなかった。

 

 飛鳥についてはお咎めが無かったが、称賛される事も無かった。

 

 

 こうして、幽霊騒動は、ガードマンが「幽霊」だったという事で幕を閉じた。

 

 

 後日、中庭に飛鳥とこころがいた。

 

こころ「それにしても飛鳥」

飛鳥「なに?」

こころ「本当に蘭たちには何も言わなくていいの?」

飛鳥「いいよ。押しつけがましいし」

こころ「あの時自分達を助けてくれたのは誰だって話してるわよ。あたしもあなただって話したいわ!」

飛鳥「ダメだよ。そんな事したら美竹さん達が気を遣う。誰も笑顔にならないよ」

こころ「どうして?」

飛鳥「そんなの簡単さ。美竹さん達のご両親はずっとその事を負い目に感じるし、美竹さん達も色々気にするでしょ。それに、人助けをして褒めて貰うってのは行儀悪いよ」

 飛鳥がこころを見つめた。

 

飛鳥「美竹さん達が無事だった。もうそれだけだよ」

こころ「……」

 こころが考えた。

飛鳥「皆が笑顔でいる為にはね、ちゃんと相手の立場を思いやって行動する事も大事な事だよ。自分がこうしたいばっかりじゃなくて」

こころ「…難しいわね」

飛鳥「皆笑顔でいられる事にはオレも賛成だけど、今回は見守ろう。美竹さん達の為にも」

こころ「そうね。分かったわ」

 

 飛鳥の言葉にこころが笑みを浮かべると、

 

こころ「あ、そうだ! 今日うちで一緒にご飯食べない!?」

飛鳥「遠慮しとくよ」

こころ「どうして?」

飛鳥「え? そんなの決まってるさ」

 飛鳥がこころを見た。

 

飛鳥「こころのその気遣いだけで、十分に笑顔になれるから」

 

 と、笑ってみせた。

こころ「え、そ、そう? ちょっと恥ずかしいわ…/////」

 こころはモジモジして照れてしまった。

飛鳥「珍しい」

こころ「あ、あたしだって恥ずかしい時は恥ずかしいわよ!! 日向と椿もこういう事言われてるのね…」

飛鳥「何であの二人の名前が出てくるの」

 

 飛鳥は苦笑いしつつも、皆が無事であることを喜ぶのだった。

 

 

おしまい

 



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第29話「飛鳥と千聖」

第29話

 

 Pastel*Palettes。それは丸山彩、氷川日菜、白鷺千聖、大和麻弥、若宮イヴの5人で結成されたガールズバンドもとい、アイドルである。

 

 当初は別々の事を仕事をしていた5人だったが、所属する事務所の無茶振りで急遽ガールズバンドをやる事に。だが、いきなり出来る筈もなく初ライブはエアバンドとしてやり過ごそうとしたが、運悪く機材にトラブルが発生し、エアバンドだったという事がバレてしまう。

 

 バッシングもそこそこあり、解散の危機もあったが、地道に努力して信頼と名誉を無事に回復する事に成功した。

 

 そしてこのバンドリ学園でも5人は大人気である。廊下を歩けば皆が振り向き、いつでも注目の的だった。

 

 中でもベースを担当している白鷺千聖は幼少期から役者として活躍しており、将来も有望とされている女優でもある。

 

 そんな彼女は学校でも超モテモテで、告白しようにも高嶺の花なので迂闊に近づけなかった。

 

 時折、漫画の主人公を見習って、女優としてではなく一人の女の子として馴れ馴れしくしようとしていたが、見破られた上に他のライバルたちからの妨害もあり、すっかり痛い奴認定にされていた。

 

 そんな彼女はそんな彼らに呆れながらも、日々の仕事をきっちりこなしていた。

 

 あの男に出会うまでは…。

 

 

「一丈字くん」

飛鳥「はい?」

 突然千聖が飛鳥に話しかけてきた。それを見て周りの生徒達は驚いている。

 

千聖「今日の昼休憩…時間ある?」

飛鳥「あ、ごめんなさい。ちょっと用事があるんですよ」

千聖「何かしら?」

飛鳥「マイナスイオンを探しに」

千聖「私よりもマイナスイオンを優先したの、あなたが初めてよ」

飛鳥「そうですか」

千聖「それ、昼じゃなきゃダメなの?」

飛鳥「いやー。周りの方々の様子を見て頂けたら分かりますよ。何しろあなた、アイドルじゃないですか」

 

 と、いかにもアイドル扱いをして、自分はその辺にいる奴と同じアピールをする飛鳥。

 

千聖(やっぱり何か引っかかるわね…。この子の真意が見えない…)

 

 一丈字飛鳥。突然この学校に転校してきた男であるが、千聖は飛鳥に一度救われていたのだ。だが、実際に助けている所を見た訳ではなく、後でマネージャーから教わった。他のメンバーとお礼を言ったのだが、特にリアクションも無かった。普通だったら平然を装って何か見返りを見返るものだが、飛鳥には全くなかった。

 

 それからというもの、飛鳥が来てからというもの、自分達を困らせていた者が次々と解決していき、彼女は飛鳥に疑問を抱いていた。

 

飛鳥「それに、同じクラスの方々に声をかけられているじゃないですか」

千聖「…あなたに用があるのよ」

飛鳥「そうですか? あ、もしかして絵ですか!?」

千聖「違う!!!//////」

 

 千聖は絵を描くことが大の苦手だった。此間テレビの収録で絵を描く企画があったが、千聖が露骨に嫌な表情をしたうえで、絵を披露するとすっかりTwitterでバズった。日菜にも物凄く笑われ、引退をすると拗ねて麻弥とイヴが慌て、彩がツッコミをしまくり、色々苦労していた。だがバカ受けした。

 

飛鳥「バンドと同じく、何事も練習あるのみですよ」

千聖「だから違うって言ってるでしょ!!/////」

 その時だった。

 

「おんどりゃああああああああああああああああああ!!! 一丈字ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

 

 と、親衛隊らしき男子生徒達が現れると、飛鳥が逃走した。

 

千聖「こら!! 待ちなさーい!!」

 千聖が叫ぶが、飛鳥はそのまま去っていった。

 

「大丈夫!? 千聖ちゃん!?」

「またあの1年か…!!」

 

 と、男子たちが一斉に千聖を囲んだ。

 

千聖「わ、私は大丈夫よ…」

「そ、そうか…」

「ハァ…フゥ…」

 と、千聖に近づこうとしたが、正直恐怖でしかない。

 

飛鳥「ハァ…」

 飛鳥が困惑していた。

 

飛鳥(…やっぱりもう正体に気付き始めてるな。流石天才子役と呼ばれてるだけあって、鋭いな)

 

 放課後

 

飛鳥(さて、帰るか…)

 飛鳥が帰ろうとすると、上級生たちが現れた。

 

「一丈字はいるか!!」

「出てこい! 話がある!!」

 

 飛鳥は普通に帰った。

 

「一丈字くんならもう帰りました…」

「何ィ!!?」

「空気読めよ!!!」

 

 とあるカフェテリア

 

飛鳥「……」

こころ「千聖にバレかけてるって本当?」

飛鳥「ああ。まあ、あの人の事だから下手に言いふらしたりはしないだろうけど…」

 飛鳥が困惑した。

 

「多分こころちゃんに聞くだろうね~」

 

 飛鳥とこころがモカを見た。先日飛鳥の正体に気づいた。

 

飛鳥「…Afterglowの練習大丈夫?」

モカ「大丈夫だよ~。今日トモちんとひーちゃんバイトだから~。それだったらハロハピもー」

こころ「大丈夫よ! 皆今日部活だって!」

飛鳥「思ったけど、部活とバンドの両立って大丈夫なの?」

モカ「そこを突っ込んだらおしまいだよー」

 

 モカがのほほんとした。

 

モカ「そういや、モカちゃんのバイト先にも気をかけてくれてたんだね。リサさんが本当に助かったって言ってたよ」

飛鳥「…そう」

 飛鳥が笑みを浮かべた。

 

モカ「そういや、いつまでやるの?」

飛鳥「ある程度減ってきてもう問題なさそうだと判断できるまで。それで判断出来ればもう仕事は終わりで、広島に帰る」

モカ「…そうなんだ」

 モカが寂しそうにした。

 

飛鳥「寂しい?」

モカ「そりゃ寂しいよ」

飛鳥「!」

 

 モカが本当に寂しそうにしていた。

 

モカ「ずっと男の人に声をかけられたけど、初めてなんだよ。男の子で仲良くなりたいって思ったの…」

飛鳥「……」

 飛鳥が驚いていた。

 

飛鳥「え、そんな風に思ってくれてたの?」

モカ「恥ずかしいから言わせないで////」

 モカがぷいっと横を向いた。

 

こころ「あたしだって飛鳥が広島に帰ったら寂しいわよ。まあ、日向と椿の事を考えたら、その方が良いのかもしれないけど…」

モカ「え?」

飛鳥「オレの中学時代の同級生で、こころの小さいころからの友達」

モカ「可愛い?」

飛鳥「可愛いっていうか、すっごいモテてたよ。君達と同じくらいね」

 飛鳥が苦笑いした。

 

モカ「そういや飛鳥くんの昔話、聞きたいなー」

飛鳥「あんまり人前に話せる内容じゃないんだよね。モカの昔話を聞かせてよ」

モカ「え~。それじゃあ中学の時に蘭たちといった肝試しの話を…」

 

 と、ずっと談笑をしていた。

 

 その頃の千聖…。

 

「千聖ちゃん!! あいつなんかよりもオレと!!」

「いや、オレと!!」

「僕とぉ!!」

千聖「……!!」

 

 千聖は男子たちに付きまとわれていたが、飛鳥が助けに来る事は無かった。

 

千聖(こういう時こそ助けなさいよ!!!!)

 

 

おしまい

 



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第30話「家は憩いの場所」

第30話

 

 ある日の事だった。

 

 

「飛鳥くんの家に行きたい!!」

 

 と、食堂のカフェテリアで日菜が飛鳥に向かって言い放った。

 

飛鳥「あ、家は勘弁してください」

日菜「どうして?」

飛鳥「…ちょっと人を入れたくなくて」

 飛鳥が視線を逸らした。

 

日菜「もしかしてエッチな本とか隠してあるの?」

飛鳥「年齢的にアウトですね」

日菜「どうして家に入れたくないの?」

飛鳥「中学の時に近隣トラブルがありましてね…」

 飛鳥が視線を逸らした。

 

飛鳥「そういや、同じクラスの方々からそういうお話って来ないんですか?」

日菜「来るんだけど、なんかるんって来なくて…」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 本当に需要と供給が合わねぇな…と飛鳥は思った。合ってしまえば話がすぐに終わってつまらないというのはあるのだろうが、その辺もう少し何とかならなかったのだろうかとも思っていた。

 

日菜「どんなおうちに住んでるのかなーって」

飛鳥「普通ですよ」

日菜「おうちってどこ?」

飛鳥「この学校から5分くらいの所にありますね」

日菜「教えて教えて!!」

 日菜が飛鳥にせがむと、飛鳥は困惑した。

 

 放課後、仕方なしに飛鳥は日菜を家の前まで案内する事にした。

 

飛鳥「こちらですね」

日菜「えっ…」

 日菜は驚いていた。確かに一見普通のマンションに見えるが、日菜でも分かるくらい高級だった。

 

日菜「も、もしかして飛鳥くんのおうちってお金持ちなの…?」

飛鳥「いいえ、このマンションを所有してる林グループの人に友達がいて、格安で借りれたんですよ」

日菜「へえ…」

 日菜が驚いた。

 

日菜「もしかしてホテル暮らししてるのって…」

飛鳥「…まあ、色々あったんですよ」

 飛鳥が悲しそうに笑ったが、

 

飛鳥(能力者だってバレやすいし、プライベートにはあまり触れて欲しくないんだよな…)

 本音はこうだった。やっぱり休める場所が欲しかった。

 

日菜「そっかー…ゴメンね」

飛鳥「いえいえ」

日菜「それじゃあさ。アタシの家に来ない?」

飛鳥「そう来ましたか」

 飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「いや、紗夜先輩もいますし、暫く家はやめましょう」

日菜「おねーちゃんの部屋に入らなかったら大丈夫だよー」

飛鳥「ファンに殺されるので…」

日菜「じゃあ、なんだったらいいの?」

 日菜が憤慨する。

飛鳥「家じゃなかったら大丈夫です。一先ず」

日菜「ラブホテル?」

飛鳥「そこまでして私を困らせたいんですね。分かりました」

「待てーい!!!」

 

 と、男子生徒達が現れた。

 

「貴様ぁ…!! 日菜ちゃんと何をしようって!?」

飛鳥「鍋を食べに行こうかって話をしてました」

日菜「お鍋!!? 食べたーい!!」

「何か話噛み合ってなくない!!?」

「絶対今考えたよね!!?」

 

 日菜の言葉に皆が突っ込んだ。

 

「ラブホテルって話をしてなかったか!?」

「日菜ちゃんをラブホテルに連れていこうとしていたのか!?」

飛鳥「あなた方こそ話聞いてました?」

 飛鳥が腕を組んで言い放った。

 

飛鳥「さあて、これで戸山さん達は私の事を信じてくれるかどうかの賭けが始まりますね」

日菜「皆信じてくれなくても、あたしは飛鳥くんの味方だからね!」

飛鳥「そうでないと困るんですけどね」

 飛鳥が冷徹に突っ込んだ。

 

飛鳥「皆オレを信じてくれるかなぁ。信じてくれなきゃ…」

日菜「バンドの評判堕ちるね」

飛鳥「そうですね」

「いや、待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て」

 と、香澄たちが現れた。

 

飛鳥「あ、皆さん」

香澄「ちゃんと信じてるよ!!」

紗夜「うちの妹が毎回すいません…」

日菜「いたたたたたた!! 痛いよおねーちゃん!!」

 紗夜が申し訳なさそうに頭を下げると、日菜の耳をつねった。

 

「が、ガールズバンドが勢ぞろい…」

「なんて神々しいんだ…!!」

飛鳥「さて、この中で私の事を信じてる人」

「はーい!」

 25人全員手を上げた。

 

飛鳥「よし!」

モカ「ちなみにあげなかったら?」

飛鳥「いや、ショックだなーって」

モカ「次の香澄ちゃんの夢の奴で、恥ずかしい事させられるかもね」

 信じるしかないだろ…と香澄たちは思った。

 

「ぜ、全員が相手じゃ分が悪い!!」

「だけど25人も美少女がいるなんて華やかすぎるだろ!!」

「写真撮らせてください!!」

 

 なんやかんやで男子生徒達は去っていった。

 

飛鳥「皆さん。お騒がせしました…」

香澄「いいんだよ。それは! 困ったときはお互い様でしょ!?」

 と、香澄が言い放つ。

 

たえ「お、主人公の貫禄を見せつけてるね」

有咲「そうだな」

香澄「よ、余計な事言わないでよ!! しかも有咲まで!!//////」

 たえと有咲の冷やかしに香澄は突っ込んだ。

 

彩「それはそうと一丈字くんと日菜ちゃんは何してたの?」

日菜「ちょっとどんなおうちに住んでるか見せて貰ってたんだよ!」

飛鳥「外だけですけどね」

 皆が驚いた。

 

有咲「け、結構いい所に住んでるんだなぁ…」

飛鳥「格安で借りれたので…」

香澄「これだけ学校に近かったら朝寝坊とかも出来るんだろうなー…」

有咲「…そこかよ」

香澄「ねえ! 今度遊びに行っていい!?」

飛鳥「あ、ごめんなさい。それはちょっと…」

日菜「中学の時に、ご近所さんと色々あったんだって」

香澄「そ、そっか…」

 香澄がしゅんとした。

 

香澄「あ、そうだ! さっき鍋とかどうとか言ってなかった!?」

飛鳥「あれは冗談のつもりだったんですけど…」

日菜「折角だからお鍋食べに行こうよー」

飛鳥「晩御飯どうするんですか…?」

紗夜「そうよ」

日菜「ちゃんとセーブするから。じゃ、またねー」

 と、日菜が飛鳥を連れていった。

 

彩「…日菜ちゃんって本当に自由よね」

千聖「ええ…」

 麻弥とイヴが苦笑いすると、紗夜が額を抑えた。

 

 

 

おしまい

 



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第31話「漫画の中のテストは死亡フラグ」

 

 

 ある日のバンドリ学園。来週から定期テストが行われる事になった。

 

飛鳥(まあ、心配ないと思うけど…ちゃんとやっとくか)

 

 飛鳥の中学時代の成績は中の中だが、本当は学年トップだった。何故本気出してないかというと、トラブルが絶えなかったからである。

 

飛鳥(出る杭は打たれるって奴ですね。本当に迷惑な話ですよ)

 

 そしてどうなったかというと…。

 

「飛鳥く~ん」

飛鳥「?」

 

 廊下を歩いていると、後ろからモカが話しかけてきた。蘭、巴、ひまり、つぐみもいた。

 

飛鳥「青葉さん」

モカ「来週のテストに向けて皆で勉強しようと思ってるんだけど~。飛鳥くんも来て~」

飛鳥「あ、来ないじゃなくてですか?」

 飛鳥が困惑していた。

 

飛鳥「え、宜しいんですか?」

モカ「いいよー。飛鳥くんならー」

 と、モカが飛鳥を連れていった。特に予定もないし別にいっかと思ったが、男子生徒達の嫉妬が凄かった。

 

飛鳥(相変わらず睨まれてるなぁ…)

モカ「相変わらず人気者だねぇ~」

飛鳥「…悪い意味でですけどね」

 

 モカの冷やかしに飛鳥は困惑するしかなかった。

 

「あ、Afterglowが男子生徒を連れてるぞ…」

「ていうかまたあいつかよ!!」

「そんなに仲良いんだ…」

「ファンやめようかな…」

 

飛鳥「何かファンやめるとか言われてますよ」

モカ「大丈夫だよ~。音楽で勝負するから~」

飛鳥「ですよね」

 

 モカの堂々とした発言に、飛鳥が苦笑いした。

 

モカ「飛鳥くんもそうするでしょ~?」

飛鳥「そうですね」

ひまり「な、何か二人とも男らしい…」

モカ「モカちゃんは女の子~」

 

 そんなこんなで翌日、羽沢珈琲店でテスト勉強をする事になった。

 

ひまり「う~ん。分かんないなぁ~」

飛鳥「どうされました?」

ひまり「あ、一丈字くん。ここ分かんないんだけど…」

飛鳥「ああ、この問題ですか。これは…」

 と、飛鳥は淡々と解説をした。そんな飛鳥を蘭・モカ・巴・つぐみの4人が驚いたように見つめていたが、飛鳥は気づかないふりをしていた。

 

飛鳥「…という訳です」

ひまり「分かった!! ありがとう一丈字くん!」

飛鳥「いえいえ。試しに数問程解いてみるのがいいかもしれませんね」

ひまり「うん!」

 と、ひまりは再び問題集に目を通した。

 

蘭「一丈字…」

飛鳥「何ですか?」

 飛鳥が蘭を見た。

 

蘭「え、もしかして勉強得意なの?」

飛鳥「自分じゃ分かりません」

モカ「じゃあこの問題分かる~?」

飛鳥「これですか?」

 飛鳥がモカから見せられた問題を解いた。

 

飛鳥「どうですか?」

モカ「蘭。飛鳥くんめっちゃ得意だよ。さっきから見てたけど、数学とか完璧だもん」

飛鳥「まあ、数学ってパズルみたいなもんですからね」

 飛鳥が苦笑いすると、モカ以外の4人が驚いていた。

 

飛鳥「…どうされました?」

モカ「それ、完全に頭がいい人の発言だよ」

飛鳥「えっ」

 

ひまり「苦手科目とかないの?」

飛鳥「古文ですね」

モカ「ひーちゃん。飛鳥くんの言葉を真に受けたらだめだよ。全部出来るけど、一番苦手意識あるのが古文って話だから」

飛鳥「買いかぶり過ぎじゃないですか?」

蘭「じゃあ、これ解いてみてよ」

飛鳥「……」

 

 飛鳥が蘭の問題を解いた。

 

巴「…1問だけ間違ってるけど、後は全部正解だ」

飛鳥「ありゃ」

モカ「だからひーちゃん、頑張りなさい」

ひまり「うぅ~!!!」

 

 ひまりが頭を抱えた。

 

蘭「…けど、そんなに頭良いのに前のテスト、トップじゃなかったじゃん」

飛鳥「上には上がいるんですよ」

 トップに立つと、超能力者だとバレる可能性が高い為、ある程度セーブしていたのだ。

 

 そんなこんなでAfterglowとの勉強会が終わったが、事件が起こった。

 

「はぁ!!?」

 

 今度のテストの1位は好きなバンドガールズとデートできる権利が与えられた。

 

飛鳥「えー…」

モカ「まあ、これくらいやんなきゃ皆やる気出さないよね~」

ひまり「ちょっと待ってよ! 女子何のメリットもないじゃん!!」

飛鳥「女子もあるみたいですよ」

 

 女子が1位の場合:食堂のお食事券10000円分。

 

蘭「何か割に合わない…」

巴「何か安さを感じる…」

飛鳥「しかもこれ学年ごとですよね」

モカ「2年生は日菜先輩がいるから心配ないけど、1年生は…」

 モカ達が飛鳥を見た。

 

飛鳥「え?」

モカ「フラグ、立ったね」

蘭「頼むぞ」

巴「私達も出来るだけ頑張るから」

ひまり「お、お願いっ!!」

つぐみ「え、えっと…一丈字くんなら出来るよっ!!」

 と、モカ達が肩を抱いた。

 

飛鳥(まあいいや。やったろ)

モカ(飛鳥くんのそういう所、本当に尊敬するな~)

飛鳥(心を読まないで)

 

 仕方がないので、飛鳥はテスト勉強に励み、そのまま本番に励んでいた。テストは3日行われて、無事に終わった。

 

 そして飛鳥は1位だった。

 

飛鳥「……」

 しかし、完全に疲れ切った表情だった。

 

モカ「お疲れ様~」

蘭「ありがと。これで防止されたね」

飛鳥「あ、はい…」

 

 しかし、話はこれで終わらず…。

 

「こうなったらヤケだ! 一丈字! 誰とデートしたいか選べ!!」

「ゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 と、飛鳥は選ぶことになった。

 

飛鳥「えーと、それじゃハロハピの弦巻さん」

 飛鳥はあっさり答えると、皆が驚いた。

 

「弦巻さん!!?」

「嘘!!?」

 皆が驚いていたが、こころは特に驚く様子もなかった。

 

蘭「あたし達じゃないんだ…」

モカ「しょうがないよ~。5人もいるし、こころちゃんと仲良いみたいだし~」

巴「そ、そうなのか…」

 

飛鳥「じゃあこの話は終わりで」

 と、飛鳥は去っていった。

 

 そしてどうなったかというと…。

 

巴「まあ、私達も無理させたから労わせてくれ」

 と、飛鳥はAfterglowとラーメン屋で食事をしていた。

 

モカ「で、本当にデートするの?」

飛鳥「まあ、デートっていうよりかは、ただのお出かけになりますけどね。黒服さんがどうしても心配だっていう者ですから…」

モカ「だろうねー」

 モカが笑った。

 

モカ「あ、そうだ飛鳥くんー」

飛鳥「何です?」

モカ「もしこの5人だったら誰とデートしたい~?」

飛鳥「あなたです」

 飛鳥が真顔で言い放つと、モカがちょっと照れてしまった。

 

蘭「…意外と、はっきりしてるんだな」

飛鳥「選ばなかった方は申し訳ございません」

ひまり「あ、うん。それは別にいいんだけど…」

モカ「……」

 モカは飛鳥を睨んだ。

 

飛鳥(ああ。こころを選んどいてそれはないだろって事か。分かるよ)

 飛鳥は覚悟した。

 

モカ「飛鳥くん…」

飛鳥「何ですか?」

モカ「もうそういう所だよ~//」

飛鳥「…え?」

 飛鳥の言葉に他の4人が苦笑いした。

 

モカ「モカちゃんだけ恥ずかしい目に逢ってるじゃん~。ずるいよ~」

飛鳥「そんなに照れないでくださいよ。こっちも恥ずかしいじゃないですか」

モカ「も~!! そういう事言わないの~!!!」

 モカが憤慨した。

 

蘭「モカ。顔赤いよ?」

ひまり「うんうん。真っ赤~」

モカ「分かった~。このお店の隣にお化け屋敷あるから、終わったらそこ行こう~」

蘭・ひまり「ごめんなさい」

巴「ていうかいつから出来たんだよ!!」

モカ「ふっふっふ~。次回はお化け屋敷で蘭たちが大活躍…」

蘭「やめてぇ!!!」

ひまり「すいません!! 本当にすいません!!」

巴「やめてください!!!」

 

 と、モカに平謝りする蘭・ひまり・巴を見て飛鳥とつぐみは苦笑いするしかなかった。

 

 

おしまい

 



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第33話「一丈字飛鳥の不毛なインタビュー」

 

 

 ライブハウス:CirCLE

 

まりな「皆さんこんにちは! CiRCLEのスタッフにして、「BanG! Dream」影のアイドル、月島まりなでーす!! 今回は一丈字飛鳥くんにインタビューをしてみたよ! 宜しくね!」

飛鳥「あ、宜しくお願いします」

 

 飛鳥とまりなが対面で座っていた。

 

まりな「出来れば本編の出番増やしてほしいなー…」

飛鳥「私の権限ではどうにも…」

まりな「まあいいわ。それでは行くわよ!」

 

 こうして質問が始まった。

 

 

 

 

Q.1 あなたの名前を教えてください。

 

一丈字飛鳥です。

 

Q.2 その名前の由来は

 

大空を自由にはばたく鳥のようになって欲しいという意味がこめられているのは効いた事があります。

 

Q.3 誕生日、年齢、学年を教えてください

 

年は15で学年は高校1年生。誕生日は…いつだったっけ。

 

Q.4 星座、血液型は?

 

星座は山羊座だったような…。

 

Q.5 チャームポイントは?

 

分かりません。

 

Q.6 外見はどんな感じですか?

 

傍から見たら女ですね。

 

Q.7 髪型を教えて下さい!!

 

髪型はPastel*Palettesの大和麻弥さんを想像して頂いたら分かります。髪の色は黒ですね。で、目は青くて…。学校にいる時は黒い縁の眼鏡をかけてます。

 

Q.8 あなたが思う自分の性格は…?

 

捻くれている。もしくは歪んでる。

 

Q.9 他人からは性格をどういわれてますか?

 

黒いって言われます。

 

Q.10 長所は?

 

図太い所ですかね。

 

Q.11 短所は

 

物事をハッキリと言いすぎる事ですね。それで大抵トラブルが起きました。

 

Q.12 似てる芸能人は?

 

 昔、ドラマの「探偵学園Q」の主役をしていた方に似てるって言われた事ありますね。

 

Q.13 動物に例えると?

 

 やっぱ鳥ですかね。

 

Q.14 趣味は?

 

 色々ですね。雨降ってる時は割とゲームとかしてます。

 

Q.15 特技は?

 

 楽器は人並みに出来ます。

 

Q.16 好きな人のタイプは?

 

 こっちの意見を尊重してくれる人ですかね。

 

Q.17 芸能人でいうと…

 

 そう言われると分かりませんね…。あ、でもPastel*Palettesの方も芸能人か。うーん…。

 

Q.18 実は好きな人がいる。

 

 いたらさっきの質問でその人を答えてますね。

 

Q.19 その人とはどんな関係?

 

 (なし)

 

Q.20 ライバルっている?

 

 今のところはいませんね。

 

Q.21 そのライバルっててごわい?

Q.22 勝つ自信は…?

Q.23 今してる恋は本気?

Q.24 その人のコト、どれくらい好き?

 

(なし)

 

Q.25 将来、結婚したい??

 

 いやー…どうなんでしょうね。いいかなーとは思うんですけど…。

 

Q.26 何歳くらいで結婚したい?

 

 まあ、30くらいでしょうね。20代は色々頑張らないといけないと思うので。

 

Q.27 将来、子供ほしい?

 

 分かりませんねぇ。

 

Q.28 よく行く場所はどこ?

 

 河川敷ですね。

 

Q.29 休日は何してる?

 

 大体家にいて、勉強とかゲームとかしてます。割と普通ですね。

 

Q.30 カラオケでよく歌う曲は?

 

 よく歌うっていうか、ポケモンのサトシの声優さんが歌っている歌をよく歌われますね。なんででしょう。

 

Q.31 歌の上手さは何点?

 

 機種にもよりますけど、そんなに良くないですよ。

 

Q.32 好きなものと嫌いなものについて答えてください。

 

 はい。

 

Q.33 曲

 

好きなものは和楽器とロックが組み去った和ロックですね。嫌いなのは…騒音ですかね。

 

Q.34 芸能人

 

頑張ってる人は基本的に好きですよ。嫌いなのはその逆ですね。

 

Q.35 食べ物

 

点心系とか好きですね。嫌いなのは…無いんですけど、辛い物が体質的に…。

 

Q.36 本

 

漫画とか小説とか大体読みますよ。エッチな本? あー…エログロ系はダメですね。

 

Q.37 映画

 

本と似た感じですね。

 

Q.38 色

 

嫌いな色はないですけど…。やっぱりカラフルな色とかがいいですね。

 

Q.39 動物

 

嫌いではないですけど、虫はあまり触りませんね。

 

Q.40 ブランド

 

ごめんなさい。ブランドものあまり興味なくて…。

 

Q.41 キャラクター

 

嫌いなキャラは特にいませんよ…って、この手の質問答えづらいんですよね…。

 

Q.42 テレビ

 

好きなスポーツ番組はバラエディ系ですかね。でもやっぱり最近安定志向ですよね。

 

Q.43 教科

 

特に好き嫌いはありませんよ。あ、でも英語の授業で喋るとやたらみられるんですよね。何でだろう…。

 

Q.44 プリクラの機種

 

ごめんなさい。私詳しくないので…。

 

Q.45 それでは、もどります。マイブームは??

 

 マイブーム…。最近は楽器とか触ってますね。理由は…いうまでもないです。

 

Q.46 無人島に1つだけ持っていくとしたら?

 

 何でもいいんだったら、四次元ポケットですかね。

 

Q.47 理由は?

 

 出来る事多いので。

 

Q.48 嫌いな女子ってどんな女子?

 

 理不尽なのは仕方がないとしても、人の話を聞こうとしないって言うのはダメですね。

 

Q.49 嫌いな男子ってどんな男子

 

 心当たりあり過ぎますね。とにかく何の努力もしないで八つ当たりしたり、人を笑う行為ですかね。

 

Q.50 自分の好きな物でベスト3をつくって!

 

1位:自由

2位:強さ

3位:勇気

 

Q.51 そういえば、ドコに住んでるの?

 

 学校から徒歩5分のシティホテルの一室を借りてます。

 

Q.52 HP持ってる?

 

 持ってないです。

 

Q.53 持ってるならアドレスをどうぞ゙

Q.54 何メイン?

Q.55 ズバリ、人気?

 

(なし)

 

Q.56 ペット飼ってる

 

飼ってないですね。

 

Q.57 飼ってない人は飼うとしたら何飼いたい?

 

猫ですかね。この前そういう話をしたんですけど、遠くからRoseliaの方がいて、湊先輩がめっちゃ耳をダンボにしてて、紗夜先輩が「犬の方が良いのに…」って顔してましたね。

 

Q.58 もしも透明人間になったら?

 

 女湯は覗きませんよ。犯罪者になりたくないんで。

 

Q.59 もしも100万円あったら?

 

 特に使う用事がないので、貯金ですね。

 

Q.60 もしも願いが1つだけ叶うなら?

 

 かなえられる願いを増やしてほしい。

 

Q.61 ぶっちゃけ、自分って絵上手だと思う?

 

 いいえ全く。って言ったら白鷺先輩にめっちゃ睨まれました。

 

Q.62 62問目ですが、つかれました?

 

 そうですね。

 

Q.63 クラスでかわいい子っている?

 

 そりゃあ皆さん可愛いですよ。ってか、逆に可愛くないってあなた言えますか?

 

Q.64 クラスでカッコいい子は?

 

 …どうでしょうね。まだ確認できてないです。

 

Q.65 クラスでおもしろい子っている?

 

 何故か私が一番面白いって言われますね。

 

Q.66 クラスでおしゃれな子っている?

 

 派手な子はいないですね。

 

Q.67 占いって信じる?

 

 いい事だけ信じてます。

 

Q.68 おまじないやってる?

 

 いいえ。

 

Q.69 なんでやらないの?

 

 自分の力を信じてるので。

 

Q.70 効果アリなおまじないは?

(なし)

 

 

Q.71 今さらですが性別は?

 

 男ですね。これで実は女でしたなんて言えませんよ。

 

Q.72 部活、クラブは何やってます?

 

 帰宅部です。

 

Q.73 楽しい?

 

 楽しいですよ。帰る家があるので。

 

Q.74 大会とか出た経験は?

 

 ありますけど、そんな大して面白い話じゃないですよ。

 

Q.75 将来の夢は?

 

 隠居したい。

 

Q.76 10年後何してる?

 

 バリバリ働いてるでしょうね。どういう働き方をしてるかは分かりませんけど。

 

Q.77 雑誌とか何買ってる?

 

 最近は買ってないですね~。日菜先輩から自分達が載ってる雑誌は時折頂いておりますが。しかもサイン入りで。

 

Q.78 その雑誌で好きなモデルさんは?

 

 Pastel*Palettesの皆さんです…っていう事にしといてください。

 

Q.79 モデルに憧れは?

 

 一生懸命仕事をこなしている方に関しては尊敬致します。

 

Q.80 将来有名人になりたい?

 

 いいえ全く。

 

Q.81 ○×コーナーです!

 

 はい。

 

Q.82 ズバリ、自分が好き?

 

 △で。正直微妙なんですよね…。

 

Q.83 実はすぐ泣いちゃう!

 

 ×。泣いて解決できるならすぐ泣きますね。

 

Q.84 有名人になりたいと思う!

 

 ×。ってこれさっきの質問にもありませんでしたか?

 

Q.85 実はヲタクです。

 

 アニメヲタクではありませんけどね…。色々知り過ぎてそう言われます。

 

Q.86 人に愛されたい!

 

 ×。愛さなくて良いから言いがかりつけるのやめてください。

 

Q.87 ぶっちゃけ、モテると思う!

 

 ×。そんな自信ないわ…。

 

Q.88 私って地味だーって思う時がある!

 

 〇.え、何ですかその顔。

 

 

Q.89 ここまでで○×コーナーは終わりです!

 

 あ、はい。

 

Q.90 野ブタをプロデュース。見てますか?

 

 小説は読んで、ドラマは…登場人物だけ知ってます。

 

Q.91 あなたは修二派? 彰派

 

 彰派ではないですね。あんな喋り方しませんので。

 

Q.92 2人にプロデュース。されたいですか?

 

 いいや、思いませんね。自分の人生は自分でプロデュースしなければ。

 

Q.93 出演キャストの中で好きな人は?

 

 主役の人とヒロインは分かるんだけど…。

 

Q.94 学校は楽しいですか?

 

 楽しいですね。

 

Q.95 勉強好きですか?

 

 学校の勉強はあまり好きではないですけど、自分の興味のある事の勉強は楽しいですね。

 

Q.96 先生で好きな先生はいますか?

 

 あまりしゃべった事ないんですよね…。

 

Q.97 いろいろと質問内容変わったりしてすみませんね;

 

 あ、いえいえ。

 

Q.98 楽しかったですか??

 

 少し困る質問もありましたけど、楽しかったですよ。

 

Q.99 自己PRをどうぞ!

 

 これからも「全バンド一貫! バンドリ学園」を宜しくお願いします。あと、色々出しゃばってすみませんでした。

 

Q.100 最後に一言!!答えていただき、ありがとうございました。

 

 こちらこそありがとうございましたー。

 

 こうして、飛鳥の質問が終わったが…。

 

 

まりな(所々闇が深い!!!!)

 

 

 

おしまい

 



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第40話「どうしてもお礼がしたいAfterglow」

 

 

 仕事で幾度もAfterglowを救出した飛鳥。だが、彼は礼を受け取る事は一切なかった。

 

飛鳥「今だから言うけど、正体バレやすくなるし、女の子に見返るのはあまり宜しくないからね…」

モカ「今となっては分かるよ~」

 

 今回はそんな一丈字飛鳥とAfterglowの攻防戦である。ちなみにモカは面白がっている。

 

飛鳥「日菜先輩といい、君といい、本当に度胸あるわ…」

モカ「君も大概だよ~」

飛鳥「そうだね…」

 

**********************

 

 ある日の事だった。チャラい男性バンドグループに絡まれていたAfterglowを救出した飛鳥。まあ、ライブやってる途中で「女がバンドをやるなんて生意気だ」といちゃもんをつけてきて、強姦しようとした為、飛鳥が超能力で退散させたのだ。まあ、超能力を使わなくても止められるのだが、飛鳥が強すぎる為警察沙汰不可避である為だった。

 

 飛鳥はいつも通りそのまま事を済ませる予定だったが…。

 

蘭「……」

飛鳥「……」

 

 後日、学校にくるや否や、飛鳥は蘭を筆頭にAfterglowに話しかけられた。

 

飛鳥「あ、美竹さん。おはようございます」

蘭「おはよう」

飛鳥「何か御用ですか?」

蘭「いや、その…」

モカ「色々助けられたから、やっぱりお礼させてくれって~」

 モカが蘭の後ろから話しかけると、飛鳥は困惑した。

 

飛鳥「あ、それでしたら一つお願いしたい事が…」

巴「変な質問とかはなしだぞ」

飛鳥「ちょっと両替してくれませんか? 今1万円札しか持ってなくて…」

 空気が止まった。

 

モカ「…そう来たか」

蘭「食堂に両替機あるから。それ以外で」

飛鳥「じゃあ美竹さん」

蘭「な、なに…」

飛鳥「グリンピース食べてください」

蘭「…それ以外で」

 ちなみに蘭の嫌いな食べ物はグリンピースである。

モカ「それならしょうがないか~」

蘭「いや、モカァ!!!」

飛鳥「じゃ、それで宜しくお願いしま…」

蘭「待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て」

 蘭が止めた。

 

巴「蘭。口調がおかしくなってるぞ」

蘭「ほっといて!」

 巴の言葉に思わずツッコミを入れた。

 

つぐみ「あの、5人でお礼をさせて?」

飛鳥「それが一番問題なんですよ」

つぐみ「え?」

蘭「何が不満なの?」

飛鳥「周りをご覧ください」

 と、周りを見渡すとファンと思わしき男子生徒達が衝撃を受けていた。

 

モカ「あー。多分5人でエッチなお礼をしようと思ってるね~」

蘭「な、何でそうなるの!?//////」

モカ「だってモカちゃん達幼馴染だし、何をやるにしても5人一緒だし~。それに男の子のお礼って言ったらやる事大体決まって来るよね~」

飛鳥「美竹さん」

蘭「な、なに?」

飛鳥「学園の平和のためにも、もう忘れてください」

「学園の平和!!?」

飛鳥「気にする事なんてありませんよ。私は至って当然の事をしたまでですから」

モカ「あそこで見捨てたら、評判も下がっちゃうしね~」

飛鳥「それも込みですね」

 モカが飛鳥の話に合わせようとするが、他の4人は不満そうにしていた。

 

飛鳥(めっちゃ不満そう)

 

巴「そういう訳にはいかない」

蘭「それであたし達が納得すると思ってんの?」

ひまり「いや、上から目線になっちゃダメでしょ! 気持ちは分かるけど…」

 

 巴と蘭が飛鳥ににらみを利かせると、ひまりが突っ込んだ。

 

モカ「じゃあ蘭と巴は飛鳥くんにチューしてあげたら?」

 空気が止まった。

蘭「出来るかっ!!//////」

巴「いや、流石にそれは…/////」

蘭「そ、それだったらモカは出来るの!?////」

モカ「出来るよ?」

 空気が止まった。

 

モカ「だって何回も助けて貰ってるし~。それくらいはいいかな~って」

飛鳥「本当に肝据わってますね…」

 モカのメンタルの強さに飛鳥が困惑した。

 

モカ「それに湊さんが先にやってたらどうするの~?」

蘭「……」

飛鳥「美竹さん。真剣に悩まないで」

 

 その時だった。

 

「ダメだぁー!!!!」

 

 と、お約束のごとくファン軍団が現れた。

 

モカ「やっぱり来ちゃった~」

飛鳥「当然の結果です」

 

「モ、モカちゃん!! キスなんて早まったらダメだ!!」

「そうだ!! こいつは至って当然の結果をしたまでだ!!」

モカ「でも貴方達が飛鳥くんの立場だったら、して貰うんでしょ?」

「そ、そんな事は…」

モカ「だって顔に書いてあるもん。キッパリ断らずに黙ってそういう流れに持ち込もうとしてるのが」

 空気が止まった。

 

モカ「それに、こーんな可愛い女の子からチューされたら、流石の飛鳥くんも顔真っ赤にするんじゃないかなーって」

飛鳥「……」

「おい、そいつさせようとしてるぞ!!」

「そうはいくか!!!」

飛鳥「青葉さん」

モカ「なーに?」

飛鳥「もうすぐチャイムが鳴りますよ」

「空気読めや!!!」

「お前、本当にそういう所だぞ!!」

飛鳥「いやあ、私としましては美竹さん達が無事ならそれでいいんですよ。冗談抜きで」

 飛鳥が腕を組んだ。

モカ「どうして?」

飛鳥「どうしてって…人助けに見返りを求めるものじゃないんですよ。それも異性に」

「!!」

飛鳥「お気持ちだけで十分ですし、美竹さん達程の方となったら影響力も大きいです。頂点を目指すんでしょう?」

モカ「それは勿論~」

飛鳥「それなら、こんな男に構ってる暇はございませんよ。前を向いて歩いて行かないと」

巴「恩をちゃんと果たさないのに、頂点なんて立てないよ」

「!!」

 巴が言い放った。

 

巴「あんただってそうだろう。一丈字」

飛鳥「……」

 飛鳥が目を閉じた。

 

モカ「じゃあトモちんは何するの?」

巴「そ、それは…」

蘭「いや、ここはあたし達らしく…」

 蘭がライブをしようと言いかけた次の瞬間だった。

 

「どうしたの?」

 

 と、あこ以外のRoseliaがやってきた。

 

飛鳥「湊先輩…」

蘭「……!」

リサ「ケンカ?」

モカ「違うんですよ~。かくかくしかじか~」

 

 モカが事情を説明した。

 

モカ「で、ライブをやろうと思ってるんですよ~」

リサ「Afterglowらしいわね」

 だが…。

友希那「普通ね」

 と、友希那が余計な事を言ってしまい、蘭が青筋を立てた。

蘭「ど、どういう意味ですかそれ…」

リサ「え、えっと…。友希那的には褒め言葉よ! バンドガールとしてバンドでお礼をするのは一般的な意味であって…」

 その時だった。

 

「あれー? 皆何してるのー?」

 と、日菜もやってきた。

 

紗夜「ひ、日菜!!」

燐子「!!」

 紗夜と燐子は青ざめた。こいつ絶対余計な事喋ると。

 

モカ「かくかくしかじか~」

日菜「ああ。そういやおねーちゃん達、此間飛鳥くんをご飯に連れていったよね!」

 空気が止まった。

 

燐子「」

紗夜「日菜ぁ!!! もうあんたって子はぁ!!!」

日菜「いたたたたたたたた!!! いたいいたい!! ごめんなさ~い!!!」

 

 すっかり口調がおかしくなった紗夜は日菜の両耳をつねった。

 

蘭「……」

 

 ここで蘭は友希那の「普通ね」という言葉の意味を理解した。

 

友希那(蘭の妄想)『普通ね。ライブ? やっぱりAfterglowはそういう事しか出来ないのかしら。私達はちゃんと食事をご馳走したのに、やっぱりその辺はまだまだね。でも気にする事ないわ。私達の方が年上だし、ま、これからちゃんと勉強するのね。オーッホッホッホッホッホwwwwwwwwwwwwwww』

 

 そう、友希那は見下していると思い込んだ。ちなみに食事に誘おうと言いだしたのはリサであるが、リサは紗夜、燐子と共に青ざめていた。ちなみに友希那の心情としてはどっちも正解である。

 

友希那(恩をバンドで返すところまでは良かったけど、食事まで行った私達の方が一枚上手だったようね)

リサ(友希那お願いだからこれ以上はやめて!!!)

 

 友希那が心の中でマウントを取っていると、リサが心の中でツッコミを入れた。

 

飛鳥「上原さん、宇田川さん、羽沢さん、青葉さん。今お礼が思いつきました」

巴「な、なんだ?」

ひまり「まさか…」

飛鳥「美竹さんを止めてくださ」

蘭「一丈字」

飛鳥「な、なんです?」

 飛鳥が蘭を見ると、蘭が頬を染めた。

 

蘭「そ、その…だ、誰もいない所で…いい…?/////」モジモジ

飛鳥「早く止めてください」

巴「わ、分かった!!」

ひまり「蘭! 落ち着いて!!」

モカ「全員でチューする?」

つぐみ「モ、モカちゃん!!!//////」

蘭「離して!! 離せー!!!!」

 

 と、蘭はモカ達に取り押さえられて去っていった。

 

飛鳥「…はぁ」

 蘭の負けず嫌いと、友希那の言葉足らずには困ったものだと飛鳥は思った。

 

 

おしまい

 

 

 

 

 



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第42話「明日のオレ達」

 

 

「一丈字の奴…香澄ちゃん達とよく一緒にいてずるい…」

「オレだって美竹達と話がしたいのに…」

「パスパレとどうしてあんなに仲がいいんだ!?!」

「Roseliaとどうやって仲良く…」

「ハロハピ…」

 

 と、バンドリ学園ではバンドガールズと一緒にいる飛鳥に対して、男子生徒達が嫉妬していた。そしてそれを飛鳥は陰で聞いていて、その場を去った。

 

 彼女たちとしては平等に接しているつもりである。ライブもお客さんに満足してもらうために最大限のパフォーマンスを発揮している。飛鳥もファンに気を遣って極力顔を出さないようにしている。

 

 しかし、自身の活躍によってヤラカシは減ってきた。

 

 飛鳥は思った。もしも突然バンドリ学園を去る事になったら、彼らはどうなるのだろうと。

 

 一度転校してしまえばもう後戻りは出来ない。一度転校して戻ってきてしまえば、超能力者だという事がバレる可能性は非常に高い。というか普通に怪しまれる。

 

 今日は殆どのバンドガールがバイトやら部活がある日で、飛鳥に構っている時間はない。

 

飛鳥(こういう日とかに声をかけられたりしないのかな…)

 

 飛鳥は調査をしてみる事にした。

 

1人目:花園たえ(ライブハウス「SPACE」)

 

飛鳥「この辺は普通だな…」

 

 たえが接客している様子を見たが、特にファンが押し掛ける事はなく、ごく普通に接客していた。

 

2人目:山吹沙綾(やまぶきベーカリー)

 

飛鳥「……」

 飛鳥が外から店内を見てみたが特に何もないものの、パンが殆ど売り切れだった。

 

飛鳥(接客状況は分からないけど、売り上げは上々か…)

 

3人目:市ヶ谷有咲(流星堂)

 

飛鳥(ここも特に異常なし…。まあ、質屋さんだからあまり来ないよな)

 有咲の実家の前に来てみたが、特にヤラカシがいる訳でもなかった。

 

4人目:青葉モカ(コンビニ)

5人目:今井リサ(コンビニ)

 

飛鳥「わー。やっぱりその手のお客さんが入り浸ってるわ…」

 と、彼女たちのファンらしき男性たちが雑誌を読んだり、店内をウロウロしたりしていた。接客をしているリサとモカは困り顔だった。

 

飛鳥(…シフトとか変えて貰ったりできたらいいんだけど。出来ないのかな?)

 

 飛鳥がその場を後にした。

 

6人目:宇田川巴(ハンバーガーショップ)

7人目:上原ひまり(ハンバーガーショップ)

 

飛鳥「うわっ!! めっちゃ行列!!」

 と、飛鳥が困惑していた。

 

「ここが女子店員のレベルが高いハンバーガーショップか…」

「ちらっと見たけど、本当にレベルが高かったゼェ…」

 

 並んでいた男性客たちがゲスな表情でそう言っていた。

 

飛鳥(大変だなぁ…有名になると…) 

 飛鳥が去っていった。

 

8人目:羽沢つぐみ(羽沢珈琲店)

9人目:若宮イヴ(羽沢珈琲店)

 

飛鳥(そういや若宮さんもここでバイトしてるって聞いたけど…もう言うまでもないな)

 羽沢珈琲店は長蛇の列が並んでいた。

 

「くっそー…早くしろよ!!」

「早くイヴちゃんと、Afterglowのキーボードに接客して貰いたいのに!」

 と、凄くイライラしていた。

 

飛鳥「……」

 飛鳥が超能力で店内を透視をしてみると、つぐみやイヴがバタバタしていた。

 

10人目:北沢はぐみ(北沢精肉店)

 

飛鳥「あれ? 思った以上に客が来てないな…」

 店の近くまで来たが、思った以上に客が並んでなかったが、何か揉めていた。

 

飛鳥「!?」

 飛鳥が近くまで行くと。

 

「はぐみちゃん出せや!!!」

「ですから、娘は家にいなくて…」

「そんな事言って本当はいるんだろ!!!」

 

 と、めっちゃ太った男が店主にいちゃもんをつけていた。

 

飛鳥(あ、これは…)

 飛鳥が指を鳴らすと、男に腹痛を起こさせた。

 

「ぐ、ぐぉおぉぉおお…!! は、腹が…!! 畜生…また来るからな…!!!」

 

 と、男は去っていくと、飛鳥が頭をかいた。

 

 

 飛鳥の家

飛鳥「大体行動パターンは分かって来たぞ…」

 飛鳥がパソコンのWordで今回の記録をまとめていた。

 

飛鳥「パスパレはもう言うまでも無いけど、ターゲットの年層的にやっぱりハンバーガーショップとかがねらい目なんだろうな」

 その時、飛鳥の携帯が鳴り、電話に出た。

 

飛鳥「もしもし」

「あ、もしもし飛鳥くん? モカだよ~」

飛鳥「モカ」

 電話の相手はモカだった。

 

モカ「飛鳥くん今日モカちゃんとリサさんのバイト先のコンビニの前にいたでしょ~」

飛鳥「ええ」

モカ「どうしたの~?」

飛鳥「調査ですよ」

モカ「調査~?」

飛鳥「ええ。例のヤラカシ狩りだよ」

モカ「それなら言ってくれたらいいのに~」

飛鳥「最初はそうしようと思ったけど、今井先輩も侮れないからね…」

モカ「おっぱい?」

飛鳥「話の流れおかしくない?」

 モカの冷やかしに飛鳥が冷静に突っ込んだ。

 

モカ「飛鳥くんそういう趣味が合ったんだ~。へんた~い」

飛鳥「まあ、ヤラカシも減って来たし、もうオレがいなくても大丈」

モカ「冗談だよ~」

飛鳥「頼むよ。その手の冗談は、色々あってもう笑えないよ」

 飛鳥が一息ついた。

 

モカ「それだったらモカちゃんからいい情報があるよ」

飛鳥「何です?」

モカ「トモちんとひーちゃん部活入ってるでしょ?」

飛鳥「うん」

モカ「やっぱり狙ってる男子、多いよ」

飛鳥「まあ、そうだと思うんですけど、それで何か問題とかありますか?」

モカ「やっぱりひーちゃんはおっぱい見られるし、ダンス部は男子たちが練習サボって見に来る」

飛鳥「…まだ手を出したりはしてない?」

モカ「それはしてないよ~。他の女子達が睨みを聞かせてるから~。でも気を付けた方がいいかもしれな~い」

飛鳥「…だろうね」

 飛鳥が困惑した。

飛鳥「そういや羽沢さんは生徒会の仕事やってるって聞いたけど、大丈夫?」

モカ「今のところは大丈夫だけど~。つぐもあんな調子だから男子に若干舐められてるんだよね~」

飛鳥「…あ、何か押せばいけそうみたいな感じ?」

モカ「そんな感じ~。花音先輩とかはもっと危なくて、此間男子に付き合わされそうになったんだよ~。薫先輩が止めてくれたけど~」

飛鳥「…確かに危なさそうだね」

 

 花音はこころに半ば強制的に「ハロー、ハッピーワールド!」に加入させられたことを聞いた事があった為、何となく察した飛鳥だった。

 

モカ「あ、そういえば飛鳥くん」

飛鳥「何?」

モカ「最近、バンドガールズにちょっかいをかけるとお腹が痛くなるって噂が流れてるけど、大丈夫~?」

飛鳥「それは大丈夫だよ」

モカ「どうして~?」

 飛鳥が笑みを浮かべる。

 

飛鳥「やり方はどうであれ、迷惑なファンはいなくなってくれた方が良いし、自分の仕事を全うしてるから」

モカ「……!」

 

飛鳥「本当はね。超能力を使わないで、直接助けに行くことだって出来るんだ。けど、いつまでもそうする事は出来ない。モカ、もう君には正体を知られたから言っておくね。いつかは君が…君たちの手でちゃんと自分達を守る術を身に着けて欲しい。そしていつか、それを誰かに伝えて欲しい」

 飛鳥の言葉にモカが俯いた。

 

飛鳥「まあ、そういう事だ。ヤラカシの数は着々と減ってるから、それまで…」

モカ「飛鳥くん…」

飛鳥「…なに?」

 モカの声が震えていた。

 

モカ「モカの…モカ達の為にそこまでやってくれてたんだね…」

飛鳥「そりゃあお金貰ってるからね。下手な仕事は出来ないよ」

モカ「それだけじゃないでしょ」

飛鳥「?」

 

モカ「お客さんや、自分以外で仕事に携わってる人たちの事を考えなきゃ、いい仕事は出来ないよ。そういう意味では飛鳥くん…モカ達の事を沢山考えてくれてる…」

 

 モカの心情を読み取った飛鳥は目を閉じた。

 

飛鳥「ありがとう」

モカ「!」

飛鳥「まだやる事沢山あるけど、ヘマしないように頑張るよ」

モカ「飛鳥くん」

飛鳥「なに?」

モカ「何かあったらすぐにモカに連絡して」

飛鳥「そのつもりだよ」

モカ「!!」

 飛鳥の言葉にモカが反応した。

 

飛鳥「宇田川さんと上原さんのバイト先も確認してみたけど、ちょっとマズそうだったから、何かあったら連絡する。彼女たちのケアはオレよりも君に任せた方が良さそうだからね」

モカ「…うん! 任せて」

飛鳥「じゃあ、また明日」

 そう言って飛鳥は電話を切った。

 

飛鳥「ふぅ…」

 そして飛鳥が再度電話をかけた。

 

飛鳥「あ、もしもしこころ? ゴメン。さっきモカから電話が来てて…」

 

 明日も色々大変な事があるだろうが、味方がいるから絶対に大丈夫。飛鳥はそう思いながら、こころと話をしていた。

 

 

おしまい

 



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第46話「一丈字飛鳥の長い夜(前編)」

 

 

 ある日の夜。バンドガールズは弦巻家が所有する洋館に集まっていた。

 

まりな「今回は皆にホラー映画を見て貰います」

「ええええええええええええええええええええええええ!!!?」

 

 司会進行を務める月島まりながバンドガールズに話しかけると、一部のメンバーが絶叫した。

 

香澄「おもしろそー!!!」

有咲「いや、全然おもしろくねー!!!」

たえ「映画を見るって事はポップコーンとかいるよね」

有咲「いや、ちげぇだろ…」

 

 どこまでもマイペースなたえに有咲が困惑した。

 

香澄「あ、私チュロス食べたい!!」

有咲「ちょっと静かにしてくんない?」

 

 するとAfterglowがキョロキョロ見渡した。

 

蘭「あれ? 一丈字は…?」

まりな「一丈字くんなら今回来ないわよ」

「えええええええええ!!!?」

巴「どうして!!?」

まりな「いや、一緒に鑑賞するとなんかそういうよこしまな目的があると思われるだろうし、嫌がるだろうからって、辞退しちゃったのよ。あ、頑張ってって」

蘭「連れ戻してください!!!」

巴「何を今更!!!」

つぐみ「ふ、二人とも落ち着いて!!」

 と、つぐみが蘭と巴をなだめた。

 

まりな「それじゃ多数決執るわね。飛鳥くんがいてもいい人」

 全員が手を上げた。飛鳥だけ逃がしたくない人間、純粋に飛鳥と一緒に映画を見たい人、皆手を上げてるから私も手を上げとこ―っていう人。

 

 さらに細かく分けるとこうなる。

 

『飛鳥と一緒に映画を見たい組』

香澄・日菜・イヴ・あこ・こころ・はぐみ

 

『皆手を上げてるから私も手を上げとこう組』

たえ・りみ・沙綾・ひまり・つぐみ・彩・麻弥・燐子・花音・美咲

 

『一人だけ逃がすかこの野郎組』

有咲・蘭・巴・千聖・友希那・紗夜・リサ・薫

 

『飛鳥がいた方が面白い組』

モカ

 

 そしてちょっとして飛鳥が連れてこられた。

 

飛鳥「私の画、必要ですか?」

香澄「飛鳥くんも一緒に見ようよー」

蘭「そうだよー」

巴「水臭いなぁー」

 と、蘭と巴が笑顔で飛鳥を捕まえた。

 

飛鳥「…まあ、あなた方が良いのなら参加しますけど」

 

 こうして飛鳥も参戦する事になった。

 

香澄「あ、やっぱり映画って言ったらポップコーンだよね!」

紗夜「戸山さん。もう夜ですよ!?」

香澄「うっ…」

日菜「おねーちゃん。フライドポテトもあるよ!」

紗夜「か、関係な…」

日菜「今限定のフレーバーだって!」

紗夜「……」

 

 フライドポテト(松茸味) 今限定!! とあった。

 

紗夜「……」

(めっちゃガン見してる…)

 

飛鳥「そういやシアターってどんな感じなんですか?」

平三「こんな感じです」

 と、黒服の男・平三がモニターに表示すると、至ってスタンダードな座席だったが、金色と赤色の席に分けられていた。

 

平三「6つのソファーがありますので、お好きなところにお座りください」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 ちなみに原則バンドごとに固まって座る事になったが、飛鳥は一人だった。

 

飛鳥「見事にど真ん中だなぁ…」

 飛鳥が困惑したけど、特に気にしない事にした。

 

 ちなみに席順

 

 Afterglow  Pastel*Palettes ハロー、ハッピーワールド!

Poppin’party   飛鳥       Roselia

 

飛鳥「まあいっか」

「一丈字くん」

 薫が現れた。

 

飛鳥「どうされました?」

薫「君一人じゃ不安だろう。私が傍にいてあげよう」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は察した。ハロハピのメンバーと一緒に見ていると醜態をさらす可能性があり、ファンであるりみやひまりを幻滅させる可能性がある(まあ、ないんだけども)。それならば、一番ホラーに耐性がありそうな飛鳥の傍にいた方が安全と考えていた。

 

飛鳥「あ、いや。私は一人でも…」

薫「遠慮する事はないよ。さあ」

 薫が飛鳥に詰め寄ったが、目で助けを求めていた。

 

飛鳥(若干半泣きになってる…)

 その時だった。

 

「それなら私もお隣宜しいかしら?」

 千聖が現れた。

 

飛鳥「白鷺先輩」

薫「千聖」

千聖「私も一丈字くんや薫と映画が見たいの。いいかしら?」

 と、千聖が微笑んだが、飛鳥と薫は察した。

 

飛鳥(絶対いじり倒す気だ…)

薫(ちょっと変な事喋らないでよちーちゃぁん…!!)

 

 ちなみに一緒に見ようとしていた香澄と日菜はりみとひまりに止められていた。こころも参加しようとしたが美咲に止められた。

 

 そして映画が始まった。

 

蘭(本当は怖いけど、湊さんがいるし…)

友希那(美竹さんの前で醜態はさらせないわ)

 と、蘭と友希那はお互い対抗意識を燃やしていたが。

 

飛鳥「…あの、すっごい腕痛いんですけど」

薫「お、おっとすまない! 私とした事が誤って掴んでいたよ」

 薫は映画が始まる瞬間から、ビビっていた。すると千聖が

 

千聖「…一丈字くん」

飛鳥「はい」

薫「な、なに!?」

 千聖が飛鳥に話しかけようとすると、薫も反応した。

 

千聖「緊張が解けるおまじないの言葉を教えてあげようと思って」

薫「そ、その言葉だけはやめて!!」

飛鳥「かおちゃんですか?」

薫「や、やめ…」

 その時、大きな音が鳴った。

 

「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 と、一部のメンバーが悲鳴を上げていたが、なかでもAfterglowがパニックになっていて、モカはひまりに首を絞められていて、蘭と巴は逃げ出そうとしていた。つぐみはモカが首を絞められている事に気づかないで、モカにしがみついていた。

 

薫「うぅぅぅ~~~~~~」

飛鳥「……」

 

 薫が飛鳥に思いっきりしがみついていた。

 

飛鳥「…大丈夫ですか?」

薫「だ、だいじょうぶじゃない…」

 飛鳥は千聖に言われたアドバイスを試してみる事にした。

飛鳥「よしよし。心配しないでください。かおちゃん先輩」

 先輩は聞こえないようにぼそっと呟いた。

 

薫「そのあだ名はやめてぇ~」

 と、泣きべそかいていた。

飛鳥「私が傍についてますので、思い切り甘えてくださいな」

薫「…うん」

 飛鳥は何とか薫をなだめたが、千聖が不満そうにしていた。

 

香澄「び、びっくりしたぁ~」

有咲「心臓止まるかと思っただろーが!!」

たえ「有咲。映画に突っ込んでも仕方ないよ」

 

 と、映画は進んでいったが、どんどん怖い映像が流れていった。まあ、怖いというよりえぐいとグロいと言った方が良いのか。

 

千聖「きゃーっ!!! 虫ぃ~~~~~~~!!!!!」

 千聖が飛鳥にくっついた。

 

飛鳥「白鷺先輩。虫ダメなんですか?」

千聖「そ、そうよ!! 悪い!!?」

飛鳥「いえ、問題ありませんが…って瀬田先輩!」

薫「うぅぅぅ~~~~~」

 

 と、飛鳥はずっと薫と千聖の面倒を見ていた。

 

 

つづく

 



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第47話「一丈字飛鳥の長い夜(中編)」

第47話

 

 前回までのあらすじ

 

 度胸試しをする為に洋館に集められた25人+α。まず前哨戦としてホラー映画を見る事になったが、どんどんグロデスクな映像が流れ出て、遂に目を開けると大量の蟲が全身にまとわりついている映像が映し出された。

 

 Poppin’party

 

香澄・りみ・沙綾「きゃあああああああああああああああ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」

 

 香澄、りみ、沙綾が泣き叫んだ。

 

たえ「あれがうさぎだったらなー」

有咲「そんな事言ってる場合か――――――――――――――っ!!!!」

 

 たえがマイペースにそう言うと、有咲が涙目で突っ込んだ。

 

 Afterglow

 

巴「何でカギがかかってるんだよ!!」

蘭「やだぁ!!! 出してぇー!!!!!」

 

 と、巴と蘭は逃げ出そうとしたが、何故かカギがかかっていて必死に扉をたたいて錯乱していた。

 

ひまり「いやあああああああああああ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」

モカ「……」

つぐみ「ひ、ひまりちゃん!! モカちゃん死んじゃうから!!」

 

 ひまりがモカの首を掴んで揺さぶると、モカは顔を真っ青にして死にかけていて、つぐみが慌てて止めていた。

 

彩「いやあああああああああ~~~~~~~~~~~~~~!!!」

麻弥「こ、これは流石にだめっす…」

イヴ「こわ~い!!!」

 と、Pastel*Palettesは千聖が固まっていたが、

 

日菜「おもしろ~い!!」

彩「全然面白くないよ!!!」

麻弥「本当にどうなってるんですか日菜さんの頭ぁ!!!」

 

 Roselia

 

あこ「りんりんこわ~い!!!」

燐子「そ、そうね…」

 あこが泣きながら燐子の胸に飛び込み、燐子が隣にいたリサを見たが、リサは泡を吹いていた。

 

燐子「い、今井さん!!!」

紗夜「気を失ってる…!! 湊さん!!」

 紗夜が友希那を見たが、友希那はじっと映像を見ていた。

 

紗夜「み、湊さん…?」

燐子「……!!?」

 紗夜が呼びかけるが、友希那は何のリアクションも無かった。

 

紗夜・燐子・あこ(気絶してる…)

 

 目を開けたまま気絶している事に、紗夜たちは驚きを隠せなかった。

 

花音「ふぇええええええええええええええええええええ」

はぐみ「こわ~い!!!!」 

 はぐみと花音が抱き合っていた。

 

こころ「可愛い虫ね!」

美咲「本当にあんたの頭どうなってんの!!? ねえ!!? だいじょうぶ!!?」

こころ「あたしは大丈夫よ!!」

 

 そして…

飛鳥「あの、瀬田先輩、白鷺先輩…」

千聖「何よ!! 男の子でしょ!!? ゴチャゴチャ言うんじゃないわよ!!」

薫「何も心配する事はないよ!!? 私にしっかり捕まりたまえ!!」

 と、千聖と薫が飛鳥の両腕にしっかりしがみついていた。ちなみに飛鳥の両腕は千聖と薫のおっぱいが当たっていたが、飛鳥は二人があまりにも怯える為困惑していた。

 

飛鳥「いや、そうじゃなくて」

千聖・薫「!!?」

飛鳥「映画が終わるまでお二人の事、ちーちゃんとかおちゃんって呼んでいいですか?」

千聖・薫「!!?/////」

 千聖と薫が頬を染めた。

 

薫「ダ、ダメ!」

飛鳥「どうしてですか?」

薫「その…/////」

千聖「は、恥ずかしいからよね!?」

薫「そ、そう! 恥ずかしいんだよ!////」

飛鳥「恥ずかしいですか?」

薫「恥ずかしいよ」

飛鳥「そうですか。で、今は怖いですか?」

薫「!!?」

 薫が驚いた。

飛鳥「怖い気持ちがなくなるだけまだ良いと思います」

薫「一丈字くん…」

 薫が飛鳥を見つめた。

 

薫「…あの」

飛鳥「何です?」

 薫が視線を逸らした。

 

薫「…映画が終わるまで。だからね/////」

 飛鳥が千聖を見た。

 

飛鳥「白鷺先輩」

千聖「ええ。言いたい事は分かるけど、何?」

飛鳥「瀬田先輩。めっちゃ可愛いですね」

千聖「そうなのよー。かおちゃんめっちゃ可愛いでしょ」

薫「ち、ちーちゃん!!//////」

 薫が照れた。

 

飛鳥「そういえば普段は男言葉なのに、素は女言葉なんですね」

薫「そ、そんな事はないよ?」

千聖「無駄よ。昔は…」

薫「昔の事は良いじゃないか」

千聖「静かにしてかおちゃん」

薫「だ、だからその名前で呼ばないでってば…」

 その時、とっても気持ち悪い音と共に、虫がドアップされた。

 

薫・千聖「きゃ―――――――――――――――っ!!!!」

 と、飛鳥にくっついた。

 

ポピパ「……!!!///////」

紗夜・燐子・あこ「!!!//////」

 両テーブルから見ていた2バンドがバッチリ目撃した。

 

飛鳥(ああ。人生オワタ)

 飛鳥はそう思いながら、オレの人生終わりだーと叫んでいる映像の中の俳優を見た。

 

飛鳥(オレも終わった)

 

 

 そして映画終了後…。

 

まりな「お疲れ様―…って、あら」

 大半のメンバーがぐったりしていた。

 

 ポピパ

 

香澄・たえ・りみ・沙綾・有咲(薫さんと千聖先輩が(飛鳥くん/一丈字くん/一丈字)に抱き着いてたのが衝撃的過ぎて映画の内容忘れた…///////)

 

ひまり「わ~!!! モカごめ~ん!!」

モカ「ひーちゃんだけもう一度映画見て。一人で…」

ひまり「土下座で勘弁してください」

つぐみ「あはははは…」

 蘭と巴が項垂れていた。

 

 パスパレ

日菜「あー面白かったー!!」

麻弥「ジブンたちからしてみたら、日菜さんが一番面白いっす…」

イヴ「ブシドーです…」

彩「イヴちゃん。意味わかんないよ…」

 日菜が楽しそうにしていたが、他の3人がぐったりしていた。

 

 Roselia

友希那「…はっ!」

 友希那が気をとりもどした。

友希那「映画はもう終わったの?」

紗夜「…ええ」

 友希那が横を見ると、紗夜、燐子、あこが頬を染めていた。

友希那「…どうしたの?」

紗夜「な、何でもありません」

リサ「はっ!!」

 

 ハロー、ハッピーワールド

 

花音「ふぇえええ。やっと終わった…」

はぐみ「怖かった~」

こころ「とっても個性的な映画だったわ!!」

美咲(私からしてみたらこころと日菜さんが一番怖いよ…)

 

 そして…

 

飛鳥「二人とも。もう映画は終わりましたよ」

千聖「はっ!」

薫「そ、そうか…」

 飛鳥に言われて我に返る千聖と薫。後半はずっと飛鳥にしがみついていた。

 

薫「もう心配はなさそうだね」

飛鳥「そうですね」

 飛鳥が困惑した。

千聖「それじゃ私は戻らせて貰うわね」

薫「私も失礼するよ」

飛鳥「あ、はい」

 と、千聖と薫が戻っていった。

 

ポピパ「……」

 ポピパが飛鳥を見つめていたが、飛鳥は視線を逸らした。

 

飛鳥(悪意はスルーするのが一番です)

 

 

つづく

 



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第48話「一丈字飛鳥の長い夜(後編)」

 

 

 映画鑑賞が終わった後…。

 

まりな「お疲れ様。どうだった?」

蘭「まりなさんを殴りたいです」

まりな「落ち着いて。本当に落ち着いて」

 

 蘭の目のハイライトが無くなっていて、今にも殴り掛かりそうだったため、まりなが困惑した。

 

こころ「とっても面白かったわ!」

日菜「るんってした!」

美咲「ごめんなさい。この二人を精神病院に連れていってください」

まりな「美咲ちゃん。いったん落ち着きましょう」

 

 まりなが咳払いした。

 

まりな「実は肝試しはまだこれで終わりじゃないのよ」

巴「何でですか」

 蘭と巴がもう半ギレだった。

 

まりな「ルールを簡単に説明するわね」

 

・ 一人一部屋入って貰い、制限時間までずっとその部屋にいて貰う。ちなみにトイレは存在するが、電気はつかない。

・ ギブアップする場合は部屋に設置してあるブザーを押す。

・ 他の人の部屋に行ったら失格。

・ 一番多く残ったチームが優勝。

 

香澄「優勝したら何があるんですか?」

まりな「優勝したチームは演奏できる権利が与えられるわ!」

 と、まりなが宣言したが皆乗り気じゃなかった。

 

モカ「今は演奏よりパンがいい~。もしくはひーちゃんをもう一度あの映画を見せるか…」

ひまり「本当にごめんってば~!!!」

 

リサ「当分演奏はいいや…。頭痛い…」

友希那「そうね…。万全の状態じゃないわ…」

 と、乗り気じゃなかった。

 

蘭「それよりもまりなさんを一晩あの部屋に閉じ込めてあの映画を…」

まりな「さー!! あともうちょっとだからがんばろー!!!」

 

 渋々部屋に入れられる事になったが、参加予定がなかった飛鳥は…。

 

まりな「ちなみに飛鳥くんは最初から脱落部屋にいて頂戴」

「えっ!!?」

まりな「あなたもうやるだけ無駄だから」

飛鳥「あ、はい」

香澄「ちなみに脱落部屋って何があるんですか!?」

まりな「地下室よ」

「!!?」

 皆がとっても冷たい地下室を連想した。

 

巴「ひ、ひぃいいいいい!!!」

薫「……」

 薫が青ざめた。

 

まりな「という訳で、開始!!」

 と、まりなの号令で肝試しが始まった。この時、午後9時であり、終了が翌日の午前6時である。

 

 地下室

 

 と、飛鳥はエレベーターに載せられて地下室に向かうと、そこは薄暗い牢屋だった。

 

飛鳥「けどいろんなのがありますね。コーヒーマシンとか…」

平三「ここで一丈字様には脱落してしまった方たちのケアをお願いします」

飛鳥「あ、はい」

 

 と、飛鳥は寝ずの番をやる事になった。

 

飛鳥「来る人いるのかな…」

 

 5分後

 

飛鳥「モカ…」

モカ「……」

 

 モカがやってきた。

 

飛鳥「どうしたの? 幽霊とか耐性あった筈なのに…」

モカ「だってつまんないんだもーん」

 モカが悪態をついた。

モカ「それよりも、飛鳥くんに愚痴を聞いてほしくてさー」

飛鳥「…上原さんに首を絞められたことですか?」

モカ「それだけじゃないよー。蘭も巴も暴れるし、つぐはつぐだし、こういう時のモカちゃんの労働半端じゃないんだよー。慰めてー。千聖さんや薫さんみたいにー」

飛鳥「……」

 

 モカの言葉に飛鳥が困惑しながらも、お茶を飲みながらモカの愚痴を聞いた。

 

 30分後…

 

飛鳥「松原先輩…」

花音「ふぇええええええええええ…ごめんなさい~」

 

 花音が恐怖に耐えられず、ギブアップしてしまったのだ。半泣きである。

 

モカ「仕方ないですよ~。あれ、怖いって言うよりグロかったですから~」

花音「ふぇええ…だから一人じゃ怖くて…」

飛鳥「…心中お察しします」

 

 花音の涙声に飛鳥は困惑していた。

 

 そして時間が経つにつれて続々とやって来た…。

 

 1時間後

 

千聖「寝つきが悪かったから来ただけよ。決して怖いとかでは…」

飛鳥「あの映像を見て寝れたらなかなかのものですよ」

モカ「いらっしゃ~い」

 

 と、飛鳥とモカは特に冷やかしたりはせず、千聖を出迎えた。あの映画鑑賞で十分元は取れているからである。

 

モカ(まあ、元以上だけどね♪)

飛鳥(今思えばどっちも凄く甘えて来たなぁ)

千聖「二人とも。何か変な事考えてない?」

飛鳥・モカ「いいえ全く」

 

 1時間半(22:30)

 

薫「おや、君達も来ていたのかい?」

 と、薫がいつもの感じで来ていた。

 

千聖「そういうかおちゃんこそ、何しにきたの?」

薫「わ、私はここにいる子猫ちゃん達が心配で来たんだよ…」

 と、薫がいつものように気取るが、声が震えていた。

千聖「今丁度あなたの昔話をしていた所よ」

薫「む、昔の事!!?//////」

 薫が頬を染めた。

 

薫「な、何喋ったのちーちゃん!!/////」

千聖「そりゃあもう色々よ」

飛鳥・花音「……」

 飛鳥と花音が視線をそらすと、

モカ「いや~。ご馳走様」

薫「ちーちゃああああああああああああああああああああん!!!!!///////」

 

 という薫の悲鳴が響き渡った…。

 

 現在のメンバー

 

飛鳥・モカ・千聖・薫・花音

 

 23:00

 

モカ「……」

ひまり「一週間パンをご馳走するので許してください」

 ひまりはモカに土下座していて、他のメンバーは苦笑いしていた。

 

 

 23:30

 

麻弥「いやー…なんかもう寝つきが悪いので…千聖さんごめんっす」

千聖「いいのよ。こちらにいらっしゃいな」

 と、すっかりくつろいでいた。冷たい牢屋がコンセプトなのにいつの間にか布団も敷かれていて、モカやひまりや花音はババ抜きしていた。

 

0:00

 

こころ「とっても寂しいわ!!」

はぐみ「はぐみ達も仲間に入れてー!!!」

 

 こころとはぐみがやってきた。

 

飛鳥「まあ、そろそろ寝なきゃいけませんね」

ひまり「うう…寝れるかしら…」

 と、皆が不安そうにしていた。

 

飛鳥「皆さんが一緒ですから、大丈夫だと思いますよ」

「!!?」

飛鳥「まあ、布団に入ってみてください」

 飛鳥がそう言うと、皆が寝ようとした。ちなみに飛鳥は別々の所で寝る事になる。

 

はぐみ「飛鳥くんは寝ないの?」

飛鳥「ええ。私は寝ずの番ですので。このまま朝まで皆さんが来るのをお待ちしてます」

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

 

飛鳥「…どうされました?」

千聖「やっぱり私も起きてるわ」

薫「そうだね。君には借りがあるからね」

飛鳥「かおちゃん先輩…」

薫「やめて//////」

飛鳥「あ、そうでしたね。そう呼んでいいのは白鷺先輩だけ…」

薫「違う/////」

千聖「あなた結構薫弄るの好きよね」

飛鳥「そういう白鷺先輩こそ」

薫「いや、あの、そこは否定するところだと思うのだけど…」

 と、薫が困惑していた。

 

はぐみ「それだったらはぐみも起きる~!!」

こころ「皆一緒の方が楽しいものね!!」

 と、皆起きる気満々だった。

 

モカ「モカはもう眠いからおやすみなさ~い」

飛鳥「あ、おやすみなさい」

モカ「…やっぱり起きてる」

飛鳥「えっ」

 

 と、朝までこのメンバーでワイワイ楽しんだそうです。

 

 

 で、どうなったかというと…。

 

香澄「もー!!! 朝5時にダイジェスト流されたけど、すっごい楽しそうだったよ!!? いいな~!!!!」

 

 翌朝、全員が合流したが香澄が憤慨していた。りみ、沙綾、たえ、有咲が苦笑いしていた。

 

蘭・巴「……」

ひまり「ごめんて」

モカ「蘭もトモちんもつまらない意地張らなきゃよかったのにー」

 蘭と巴が恨めしそうにひまりとモカを見つめ、つぐみが苦笑いしていた。

 

日菜「えー!! みんなで遊んでたの!!? あたしすぐに寝ちゃった!! いいなぁ~!!」

彩「しかも一丈字くんも一緒に遊んでたんだ…」

イヴ「とっても羨ましいです…」

 

麻弥「あはははは…」

千聖「……」

 麻弥と千聖は朝まで遊んでいたせいかげっそりしていた。

 

リサ「いやー…。もうアタシはこういう企画結構かな…」

友希那・紗夜「……」

あこ「えー!! 皆でゲームしてたのー!!? いいなぁ~!!!」

燐子「…いいなぁ」

 

 と、メンバー同士で話し合っていたが、一番悲惨だったのがハロハピだった。

 

美咲「……」

 一人だけ戦ってた美咲は隅っこでいじけて、他の4人が平謝りしていた。

 

こころ「ごめん美咲」

薫「済まない事をしたね…」

はぐみ「ごめんなさーい!!」

花音「ふぇえええ…」

 

 

まりな「えーと。優勝はポピパとロゼリアね」

香澄「私も飛鳥くん達と夜遊びしたーい!!」

紗夜「戸山さん!!」

飛鳥「また次回お会いしましょう。さようなら…」

 

 

おしまい

 



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第51話「寝ても覚めても」

 

 

 今回はコナンネタが入っています。

 

 

******************

 

 

 一丈字飛鳥です。51回目になりました。大体50回目で終わっていたのですが、エンドレスなのでダシマの気が済むまで続きます。そして、バンドリの関係者にクレームが来ない事を心からお祈り申し上げます。

 

 さて、今回私は…。見られてますね。Poppin’partyの山吹沙綾さんに…。

 

沙綾「……」

 

 気配を隠して、こっそり見ているつもりなのでしょうが、すみません。バレバレです。しかし、下手にこっちから話しかけても、超能力者なんじゃないかなーって怪しまれる可能性があるんですね。まあ、考えすぎだろって考える方もいらっしゃいますが、一人気づかれてしまいましたね…。青葉さん。

 

 でも、いつまでもたってもこんな事をする訳にはいかないし、どうしたものか…。

 

「あれ? さーや何してんの?」

 

 あ、戸山さんに見つかりましたね。

 

沙綾「ふぇっ!!? い、いや、別に…」

香澄「飛鳥くんの事見つめて…もしかして!!」

沙綾「ちがーう!! そういうんじゃなくて…/////」

有咲「じゃあ何だよ」

 

 市ヶ谷さんの言う通りですね。じゃあ何だよって話になりますね。

 

沙綾「そ、その…ハムサンドの作り方…」

 

 …ハムサンド?

 

香澄「ハムサンドがどうかしたの?」

沙綾「此間、一丈字くんがイベントでサンドイッチを作ったって聞いたんだけど、それが滅茶苦茶美味いって評判だったらしくて…」

 

 あ、思い出した。そういやそんな事もあったな。

 

香澄「ハムサンド!!? おーい!! 飛鳥くーん!!」

 

 こうして私は戸山さんに捕まりました。そして、語りを終わります。

 

 

***************

 

飛鳥「…最初からそう言って頂ければ」

沙綾「仰る通りです…」

 

 と、放課後飛鳥はPoppin’partyと一緒にやまぶきベーカリーに向かった。

 

沙綾「皆があまりにも美味しいって聞いたから、分けて貰ったの。そしたら本当に美味くて…。特にハムサンドが美味しかった。正直隣の店に出されたら、うちのベーカリーが潰れちゃう…」

飛鳥「それはちょっとほめ過ぎじゃないですか?」

純「オレの友達も食べてたけど、みーんな美味しいって言ってたぜ!!」

飛鳥「ああ、そうなんだ…」

 純の言葉に飛鳥が困惑した。

 

沙綾「それで、私もちょっと色々調べてみたんだけど、どうしても同じ味が出せなくて…」

香澄「聞いた方が早いんじゃない?」

有咲「バカ!! そういう問題じゃねーんだよ!」

沙綾「…香澄の言う通り、聞けば早かったんだけど、私もパン屋の娘としてのプライドがあったから、今となっては反省してるわ」

 沙綾が困惑した。

 

沙綾「…そんな事ばっかり考えてたら、毎日眠れなくてずっとあなたの事ばっかり考えてた」

香澄・りみ・有咲「!!!?//////」

たえ「大胆」

 

沙綾「ねえ一丈字くん教えて! どうしたらあんな美味しいハムサンドが作れるの!?」

 と、沙綾が飛鳥の両肩を抱いた。

 

飛鳥「あ、はい」

 飛鳥はちょっとコメントに困っていた。

沙綾「…あれ? どうして香澄たち顔真っ赤にしてるの」

香澄「いや、だって飛鳥くんの事ばっかり考えてたって言うから…」

りみ「……//////」

 沙綾は気づいて、ボンっと顔を真っ赤にした。

 

沙綾「ちがーう!!! そういう意味じゃなーい!!!!//////」

 

 

 そんなこんなでハムサンドの作り方を教える事になったが、

 

香澄「食べたい!!」

飛鳥「えっと…蒸し器ってありますか?」

沙綾「あるよ」

飛鳥「良かった。あれが必要なんですよ…」

 

****************:

 

飛鳥「ハムは出来るだけ脂のないものを選んでください」

沙綾「うん…」

 

 沙綾はメモを取った。

 

飛鳥「で、ハムにオリーブオイルを塗ります。これでハムに風味が出ます」

沙綾「確かにいい匂い!」

 飛鳥がハムにオリーブオイルを塗った。

 

飛鳥「で、マヨネーズと味噌を投入します。この時味噌は少量で大丈夫です」

有咲「味噌!?」

たえ「美味しいの?」

飛鳥「ええ。オリーブオイルと味噌の相性は抜群だそうです」

 飛鳥がマヨネーズが入っているボウルに味噌を入れて混ぜる。

 

飛鳥「で、次はレタスですが、40度くらいのお湯に浸します。こうする事で、レタスのシャキシャキ感が残るんですね」

有咲「お前すげーな…。レシピか?」

飛鳥「いえ、名探偵コナンのアニメオリジナルの話でこのハムサンドの作り方をやってました」

「コナンくん!!?」

飛鳥「改良したものを販売したのですが、お客さんはすぐに分かったみたいで、後半から若い女性のお客さんが多かったですね。安室ファン…」

有咲「一丈字…お前一体何者なんだよ…」

 飛鳥の言葉に有咲は困惑した。

 

飛鳥「で、肝心のパンなんですけど、まあこれは種類によりますね。今回は少し硬めのパンを使用しますが、ここで蒸し器の出番です」

 と、飛鳥が少しの間パンを蒸した。

 

飛鳥「山吹さん。触ってみてください」

沙綾「う、うん…」

 沙綾がパンを触った。

沙綾「すっごい!! ふわふわ!」

飛鳥「パンは固い分だけ水分を吸うんですね」

沙綾「だから温かいんだね!」

飛鳥「まあ、私は冷たい方が好きなんですけどね。すぐに食べれるんで…」

(おいおい…)

 飛鳥の言葉に皆が困惑した。

 

飛鳥「で、蒸しあがったパンに味噌マヨネーズを塗って、ハムとレタスを乗せて出来上がりですが…。パンのふわふわはちょっとパンを工夫して貰わないといけないんです。今回の場合は、すぐに食べる分には問題ないんですけど…」

沙綾「それは大丈夫よ。私が工夫するから」

飛鳥「そうですか…」

沙綾「ありがとう。これでスッキリしたわ!」

 と、沙綾が微笑んだ。

 

香澄「ねえねえ。早く食べたーい!!」

飛鳥「あ、ちょっと待ってくださいね」

たえ「ちゃんと人数分作ってる当たり、流石だねー」

飛鳥「恐縮です」

 

 こうしてパンが振る舞われる事になったが…。

 

香澄「美味しー!!」

たえ「ホントだ! めっちゃ美味しい!」

有咲(美味い…)

 

 と、皆大絶賛だった。

 

沙綾「本当にありがとう!」

飛鳥「いえいえ…」

 でもこれアニメの奴を見て作ったパンって販売しても大丈夫かな…と思う沙綾であったが、謎が分かり満足した。

 

 こうして一件落着になったかと思われたが…。

 

モカ「飛鳥くん。聞いたよ。秘密のサンドイッチがあるって」

飛鳥「秘密のサンドイッチって…」

日菜「あたしも食べたーい!!」

あこ「あこもー!!」

こころ「是非食べてみたいわ!!」

黒服「一丈字様。それなりの謝礼は…」

飛鳥「……」

 

 香澄が他のバンドグループに自慢したことが原因で、飛鳥は振る舞う事になった。

 

沙綾「私も手伝うから…」

飛鳥「ありがとうございます…」

 

 

おしまい

 



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第52話「飛鳥とこころとモカ」

 

 

 ある日のバンドリ学園。

 

「女の子同士が抱き合って泣くのって、良いよな」

 と、ファンの男子生徒Aが喋った。男子Bと男子Cが困惑する。

 

B「え、何だよいきなり」

A「萌え。あ、ちなみに可愛い女子に限る」

C「だ、だろうな…」

A「出来ればあと、その女子達が喧嘩をしてて、びしっと解決出来たらカッコよくね?」

B「ま、まあな…」

 

 と、そういう話をしているのを飛鳥、モカ、こころの3人が聞いていた。

 

飛鳥「……」

モカ「いかにも女をモノとして扱ってるのがよく分かるね~」

こころ「でもけんかを止めれる事はいい事だと思うわ!」

モカ「いやいや。あの人たちの場合、可愛い女の子しか止めないよ~。これで普通に男子同士の喧嘩も止めれたら考えるんだけどな~」

飛鳥(…あ、耳がダンボになった)

 

 モカの発言に男子たちの耳がダンボのようにでかくなった。

 

 ちなみに現在放課後であり、飛鳥はモカ、こころと共に下校しようとしていた。

 

 そして弦巻家の車に乗せられた…。

 

モカ「やっぱりこころちゃんちってお金持ちだね~」

こころ「これくらい普通よ?」

飛鳥「いや、普通ではない」

 

 と、相変わらず内装が豪華な弦巻家の車を見て飛鳥は困惑した。

 

モカ「…さて、本題に入ろうか~」

 飛鳥、こころ、モカの3人が向き合った。

 

モカ「改めて、飛鳥くんの正体を知っている子で集まっては見たけど、特に話す事ないね~」

飛鳥「そうだね。絶対に巻き込んだりはしないから」

 飛鳥が笑顔でそう言った。

 

こころ「でも何かあったらすぐに相談して欲しいわ!」

飛鳥「うん。人命救助が先だから弦巻家の方々の協力があると有難いね。というか寧ろ、弦巻家の力で事足りると思う」

モカ「それもそうだね~」

 

 と、そのまま談笑した。

 

飛鳥「そういやさっきの話じゃないけど、モカとこころってグループ内で喧嘩とかすんの?」

モカ「そりゃあするよ~。蘭やトモちんなんかしょっちゅう喧嘩してるよー。此間なんかモカちゃん、とばっちり喰らってまいったよー」

 モカが困った顔をした。

 

モカ「ほら、トモちんってまがった事が嫌いで男みたいでしょ? で、蘭は不器用で捻くれてる所あるからー」

飛鳥「あー。確かにぶつかる要素あるね」

こころ「でも二人ともいい個性だと思うわ!」

飛鳥「まあ、それで喧嘩になっちゃ元も子もないけど…」

モカ「でもまあ、喧嘩した後で二人とも冷静になって仲直り~」

 モカの言葉に飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「ハッピーワールドは?」

こころ「あたし達は特に喧嘩はしないわ!」

モカ「でもたまに美咲ちん怒らせてるよねー」

こころ「そ、そうね…」

 こころが困った顔をした。

 

モカ「いやー。比較的平和だねー」

飛鳥「…他のグループは?」

モカ「あー…。Roseliaはしょっちゅう喧嘩するかなー。プロ意識高いからー」

 モカが困惑した。

 

モカ「此間白金さんが「皆が他の人の音を聞かない」って言って切れてたしねー」

こころ「意外だわ」

飛鳥「何となく想像できる…」

 飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「まあ、そりゃあ喧嘩もするよね。一緒にいたら」

モカ「うちなんか蘭が意地っ張りだからねー」

こころ「仲良くできるのが一番いいわ!」

モカ「そうなんだけどねー」

 

 と、そのままお茶を続けた。

 

飛鳥「…で、このままお茶を続けても大丈夫なのかな?」

モカ「いいんじゃなーい。今回は事情を知っている人間同士で、ゆっくりしようよー」

飛鳥「そ、そう…」

モカ「そういやもう52回目だねー」

飛鳥「お陰様で」

モカ「沢山女の子たちを侍らせてきた感想はどう?」

飛鳥「それよりも、この現状をどう思う? 当事者として」

 飛鳥の言葉にモカは考えた。

 

モカ「まあ、そりゃあいつもと違う蘭たちを見れて楽しいけど、自分がその立場になるとやっぱり色々複雑だよねー」

飛鳥「そうだよね」

こころ「皆も恋をするとあんな感じになるのかしら」

モカ「こころちゃんもだよ」

 モカがこころに話しかけた。

 

モカ「まあ、やっぱりこれからもトラブルは起きるんだよね」

飛鳥「うーん…まあね…」

こころ「平和なのに越したことはないわ!」

飛鳥「そりゃそうだ。今みたいにのんびりしたまま終わって欲しいかな」

 

 と、車はずっと走っていた。

 

飛鳥「ところでバンドやってるけど、部活やバイトもしてるんだよね。忙しくない?」

モカ「忙しいけどね~」

こころ「一生懸命働いたり、部活動に参加する事はいい事だと思うわよ!」

モカ「飛鳥くんは部活入らないの~?」

飛鳥「入らないね。いつまでもここにいる訳じゃないから…」

 と、しんみりとした。

 

モカ「でもこの学校から出ていったら、このシリーズ終わっちゃうし、エンドレスだから部活やバイトをする機会あるかもよ~」

飛鳥「そりゃああるでしょうね」

モカ「でも普段はどうしてるの?」

飛鳥「賞レースに出て、体が鈍らないようにしてますね」

こころ「此間は飛行機のレースに出場したのよね!」

 こころの言葉にモカが驚いた。

 

モカ「改めて飛鳥くんが異世界の人間だという事が分かった」

飛鳥「そ、そう…。でも君達も似たようなものだと思うよ」

モカ「どういう意味?」

飛鳥「そりゃあ言うまでもない。Afterglowはバンドリ学園で有名だし、学校の外にも知られている。十分異世界の人間だと思いませんか?」

 飛鳥がモカを見つめる。

 

モカ「そうだね」

飛鳥「いや、認めるんかい」

 と、飛鳥が困惑するとモカとこころが笑った。

 

モカ「飛鳥くんおもしろ~い」

こころ「こうやってお話しすると楽しいわね!!」

 

 と、ずっと車の中でお喋りをしていたという。

 

 

飛鳥(本当に平和な回だった…)

こころ「またお話ししましょうね!」

飛鳥「うん」

 

 

おしまい

 



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第54話「おジャ魔女みさき」

 ある日の事。とある楽屋に薫、はぐみ、花音、美咲、そして飛鳥の5人がいた。

 

美咲「どうして一丈字くんがここにいるの?」

飛鳥「弦巻さんに呼ばれたからです」

 するとこころが現れた。

 

はぐみ「こころん!」

薫「重大な発表ってなんだい?」

こころ「発表するわ!!」

 こころが皆の前に立った。

 

こころ「10月31日から「おジャ魔女どれみ」とコラボする事になったわ!!」

 こころの言葉に飛鳥、花音、美咲が固まった。

 

はぐみ「おおーっ!!!」

薫「なんて儚いんだ…」

 はぐみと薫は特に疑問に思う事もなく、称賛した。

 

美咲「遂にここまで来たかー」

 美咲はもう魂が抜けていた。

 

飛鳥「おジャ魔女どれみって完全にあれですよね? あのおジャ魔女どれみですよね?」

こころ「本物よ!!」

はぐみ「もしかして飛鳥くんも見てたの!?」

飛鳥「見てましたよー。女児向けアニメだったけど、普通に見てましたよー」

美咲「…Afterglowはペルソナとコラボしてたけど、ハロハピはやっぱりこういう路線なのね」

こころ「という訳だから、皆宜しくね!」

「はーい」

 こころがそう言うと、はぐみ達が反応した。

 

こころ「という訳で解散!!」

美咲「え、もう終わりなの!!?」

 

 さあ、ここからがフリータイムです。

 

美咲「あ、ダシマ劇場そういうスタンスなのね…」

飛鳥「そうなんですよ。だからダシマ劇場って呼ばれてるんですね」

はぐみ「金朋地獄みたいな?」

飛鳥「怒られますよ」

 

 はぐみの言葉に飛鳥がツッコミを入れた。

 

こころ「そうだ! 折角だから衣装とか着替えてみましょう!!」

「えっ!!?」

 

 ちなみに既にハロハピが魔女見習の格好をしている一枚絵が存在している。そして黒服達が現れてセッティングをした。

 

美咲「なんか嫌な予感しかしない…」

飛鳥「奇遇ですね。私もです」

 

 そして…

 

こころ「じゃーん!!」

 こころ、はぐみが着替えた。

 

飛鳥「ももことはづきですね」

美咲「本当によく知ってるわね…」

飛鳥「あの頃は男児女児全く気にしないで見てましたからね…」

こころ「そういえばpixivでプリキュアの子と共演したことがあるのよね?」

飛鳥「そうですね…って、あまりここでpixivの話をしないでください。見てる人たち混乱しますから」

 

 Pixivで飛鳥がプリキュアと共演している小説が存在しております。もし時間があれば探してみてください。

 

 すると、花音と薫もフィッティングが終わった。

 

飛鳥「違和感がない…」

美咲「ホント。髪の色とかもあってぴったりだし…」

 

薫「昔見た魔女見習になるなんて…なんて儚いんだ…」

花音「ふぇえええ…//////」

 

 薫はいつも通りだったが、花音は恥ずかしがっていた。

 

こころ「そうだ! 折角だから美咲もやりましょ!!」

美咲「え゛っ」

 美咲が困惑した。

 

はぐみ「あ、そーだねー。どれみがいないよ!」

薫「やはり主演がいてこそ…だね」

花音「ぜ、絶対似合うと思うよ…」

こころ「そういう訳だから、ゴー!!」

美咲「え、ちょ…いやぁあああああああああああああああああ!!!!」

 

 と、美咲もなんやかんやでどれみの格好をする事になった。

 

美咲「……////////」

 美咲がピンク色の魔女見習の服を着させられていたが、恥ずかしがっていた。

 

こころ「可愛いわ!!」

はぐみ「可愛いー!!」

薫「儚い…」

花音「可愛い…」

 飛鳥が美咲を見て驚いていた。

 

美咲「はずかしい…//////」

 美咲は頬を赤く染め、涙目になっていた。飛鳥がじっと美咲を見ていた。

 

美咲「そ、そんなに見ないでよ!」

飛鳥「あ、ごめんなさい」

こころ「どう!? 美咲の格好!」

飛鳥「いやー。ハッピーとラッキーが確実に皆に届きますね」

美咲「もー!!//////」

飛鳥「世界一不幸な美少女とか言わないでくださいよ」

こころ「そうよ! 今の美咲は世界一幸せな美少女なのよ!」

美咲「うるさ~い!!!///////」

はぐみ「なんてね?」

飛鳥「火山が大噴火」

花音(み、美咲ちゃんが滅茶苦茶弄られてる…!!! ふぇええええ…)

 

 飛鳥が美咲いじりに参加したことにより、花音が戦々恐々としていた。

 

美咲「そ、そうだ!」

「?」

 美咲がある事を言いだした。

 

美咲「折角だから一丈字くんも魔女見習になりましょうよ!!」

 と、言いだした。

 

飛鳥「のんちゃん?」

美咲「誰!!?」

飛鳥「幻の魔女見習い」

 

 飛鳥の言っている「のんちゃん」とは和久のぞみと言って、ニックネームは「のんちゃん」である。魔女に憧れていたが、とある理由から「幻の魔女見習い」と呼ばれている。

 

花音「……!!」

 花音が驚いて口元を覆った。飛鳥が「のんちゃん」の名前を出した理由が分かったからである。

 

飛鳥「まあ、でもやっぱりポジション的にはハナちゃんかな…」

美咲「ちょっと待って。なんでそんなにやる気なの? そんなに好き?」

飛鳥「女装はしょっちゅうやらされてたからもう慣れましたよ」

 

 飛鳥が諦めた目をしていたが、実は裏でこっそり超能力を使って回避しようとしていた。

 

 そして、逃れた。

 

こころ「折角だから皆で写真撮りましょ!」

美咲「あ、折角なので一丈字くんもハナちゃんの格好をさせましょ?」

はぐみ「ハナちゃんって赤ちゃんだよね?」

美咲「違う違う。小学6年生の方」

花音「!!?」

こころ「いいわねそれ!!」

薫「きっと似合うよ」

 

 【悲報】一丈字飛鳥 魔女見習いにされる。

 

 そして飛鳥が着替え終わって、お披露目。

 

こころ「とっても可愛いわ!!」

薫「儚…」

はぐみ「飛鳥くんとっても綺麗…/////」

花音「……!!//////」

美咲「う、うそ…//////」

 

 こころはいつも通りだったが、薫は固まり、はぐみは何やら羨ましそうにしていて、花音は驚き、美咲は信じられなさそうにしていた。

 

飛鳥「声がサトシなのに役柄ピカチュウですよねコレ」

 飛鳥はもういつも通りだった。

 

美咲「いや、その…恥ずかしくないの?」

飛鳥「恥ずかしいって思ったら負けですよ。相手の思うつぼですから」

 飛鳥が腕を組んでそう言った。

花音「それはそうと一丈字くん。足綺麗…」

飛鳥「そうですか?」

こころ「折角だから写真撮りましょ!!」

飛鳥「どういう風に撮るんですか?」

こころ「6人で一緒に撮るのよ?」

飛鳥「あ、戸山さん達に送るなら、私の名前はちょっと伏せて貰っていいですか? 気づくか確かめたいので」

こころ「面白そうね!」

美咲「……」

 

 飛鳥の態度に美咲は困惑した。

 

美咲(逞しいわ…一丈字くん…)

 ちょっと見見習わなきゃと思う美咲であったが…。

 

飛鳥「奥沢さんをセンターにしましょう」

美咲「それだったら一丈字くんもセンターね(逃がさんぞ!!)」

 と、美咲が飛鳥を捕らえてセンターで撮影をさせた。写真の中の美咲は吹っ切れていて、飛鳥もノリノリだった。

 

 この後、写真は香澄たちに送られたが、どうなったかはご想像にお任せします。

 

 

おしまい

 

 



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第66話「千聖とデート?」

 

 

『もしも千聖からデートに誘われたら』

 

 ある日のことだった。飛鳥が教室の自席でぼーっとしていると…。

 

「一丈字くん」

 

 Pastel*Palettesのベース担当である白鷺千聖がやって来た。千聖の登場にクラスメイト達は勿論、廊下にいた男子生徒達は驚いていた。

 

飛鳥「あれ? 白鷺先輩…」

 飛鳥も千聖の姿を見て驚き、席から立ち上がった。

 

飛鳥「どうされました?」

千聖「今日の放課後暇?」

飛鳥「あ、ごめんなさい。学校終わったらすぐに郵便局に行かないと行けなくて…」

千聖「それってすぐに終わる用事?」

飛鳥「一時間はかかりますね」

千聖「郵便局で一体何するつもりなのかしら?」

飛鳥「親に荷物送るんですけど、ちょっと手続きが必要でして…」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

千聖「それなら仕方ないわね」

飛鳥「申し訳ありません…」

千聖「それなら明日はどうかしら?」

飛鳥「空いてますけど…どうされたんですか?」

千聖「ちょっと買い物に付き合って欲しいんだけど」

 千聖の言葉に皆が驚いた。

 

飛鳥「私ですか?」

千聖「あなた以外に誰がいるのよ」

飛鳥「Pastel*Palettesの皆さん」

千聖「そうね…。だけど、ちょっと男性の意見も聞きたいのよ」

飛鳥「それでしたら私以外にも適任者が沢山いる筈では…」

「そうだよ!! 僕達がいるじゃないか!!」

 

 と、ファン軍団が現れた。

 

飛鳥「何かご不満でも?」

千聖「最初は彼らでも良いかと考えたんだけど、やっぱりあなたにお願いしたいの。この際、一時間待ってもいいわよ?」

飛鳥「そんなにですか?」

 

 千聖の言葉に飛鳥が反応すると、ファンの男子たちが騒いだが、聞きつけた先生達に取り押さえられていた。

 

 で、結局千聖に一時間待って貰って、飛鳥は郵便の手続きを行う事にした。

 

飛鳥「お待たせしました」

千聖「…ええ」

 

 飛鳥の様子を見て千聖は困惑していた。飛鳥が郵便局員と手続きをしているのを遠くから見ていたが、高校生であそこまで出来るか? と疑問に思っていた。

 

千聖(…やっぱり、この子普通じゃないわ。高校生にしては)

飛鳥(…やっぱり気づきかけてるな。白鷺先輩も芸能人だから、ある意味似たような環境に置かれると、やっぱり影響大きいんだろうなー。何とか誤魔化そ)

 

 千聖の表情を見て、飛鳥は自分の正体がバレかけている事に気づいた飛鳥。まあ、バレたところでどうもこうもしない為、様子を見る事にした。

 

 そんなこんなで千聖の用事に付き合う事になった飛鳥。タクシーで移動していた。

 

飛鳥「タクシー何て豪勢ですね」

千聖「仕方ないわよ。この時間帯、電車やバスなんかに乗ったら混乱するわよ」

飛鳥「ですよね」

 千聖は飛鳥を見た。

 

千聖(…私が芸能人でも慣れたようにしてるわね)

飛鳥(芸能人が相手ってどのように接するのが正解なのかな…)

 

 こういう場合、2パターンに分かれる。1つ目は普通に芸能人だのアイドルなど、特別な目で見るか、2つ目は漫画の主人公みたいに馴れ馴れしくするか。だが、飛鳥の場合は芸能人だと特別な目で見ていても、実際は普通の先輩や同級生のように接する。

 

千聖(不思議な子。今までこんな男の子なんかいなかったわ)

 

 千聖が飛鳥をじっと見つめていた。千聖の周りには自分と同じ男の子役や、俳優もいたが、飛鳥のような人間はいなかった。

 

 そして目的地に到着して、飛鳥と千聖はタクシーから降りて、そこからちょっと歩いた。

 

飛鳥「どちらへ行かれるんですか?」

千聖「あそこのカフェよ?」

 飛鳥と千聖がカフェの方に向かって歩いていたが、カップルがいっぱいいた。

 

飛鳥「…見事にカップルが多いですね」

千里「ええ、そうね」

 

 飛鳥が苦笑いすると、千聖はいつも通りだった。

 

飛鳥「時間大丈夫ですか?」

千聖「私は大丈夫よ。あなたは?」

飛鳥「私は大丈夫ですけど…。週刊誌とかが大丈夫じゃないですね」

千聖「気にしなくて大丈夫よ。うちの事務所、割と自由だから」

飛鳥「そういう問題じゃないでしょ」

 

 千聖の言葉に飛鳥がまた苦笑いした。

 

千聖「何かあったら、私を守ってくれるんでしょ?」

飛鳥「ええ、それはそうですけど」

 飛鳥はごく自然にそう言うと、千聖がちょっと照れた。

 

千聖「そ、そう…//」

飛鳥「何照れてるんですか」

千聖「て、照れてないわよ! とにかく行くわよ!」

飛鳥「あ、はい」

 飛鳥と千聖が一緒に並ぶことになったが、飛鳥はいたって平然としていて、千聖がちょっと複雑そうにしていた。

 

千聖「ねえ、一丈字くん」

飛鳥「何ですか?」

 飛鳥が千聖を見た。

 

千聖「…あまり自分で言いたくはないのだけど、私、女優よ?」

飛鳥「ええ、存じておりますが」

千聖「もう少し緊張とかしないのかしら?」

飛鳥「そりゃあ緊張してますよ」

千聖「全くそのようには見えないんだけど…」

飛鳥「いやあ、緊張しすぎてもう周りにいる人たちが、急に襲い掛かって来るんじゃないかって」

 飛鳥が周りを見渡すと、千聖はあっけにとられて、クスッと笑った。

 

飛鳥「何か面白い事言いました?」

千聖「いや、あなたって本当に面白いわね」

飛鳥「何故か言われるんですよねー。なんででしょう」

 

 千聖の言葉に飛鳥が不思議そうにしていた。

 

 暫くして、店内に入る事が出来た飛鳥と千聖。

 

飛鳥「やっと入る事が出来ましたね」

千聖「ええ。そうね」

 千聖が神妙な顔をした。

 

飛鳥「どうされたんです?」

千聖「ごめんなさい。実はあなたにお話があって、ここに連れてきたの」

飛鳥「話?」

 千聖が飛鳥を見つめた。

 

千聖「こころちゃんから聞いたのよ。貴方の事」

飛鳥「何をです?」

 飛鳥があっけらかんとした。

 

千聖「いい加減教えて貰えるかしら? あなたの本当の事を」

 

 と、千聖が飛鳥をじっと見つめると、飛鳥が反応した。

 

飛鳥「あー…遂にバレましたか」

 飛鳥が目を閉じた。

飛鳥「ええ。実はあなたに隠していた事があるんですよ。弦巻さんから聞いたんですね」

千聖「ええ…」

飛鳥「すみません。『ママはロボット』っていうドラマのDVDを彼女から借りてました」

千聖「…は?」

 飛鳥が頭を下げて謝ったが、自分が予想していた内容と全く違っていた為、千聖は唖然としたし、よりにもよって、自身が黒歴史としているドラマのDVDを借りていた事が分かり、唖然としていた。

 

飛鳥「白鷺先輩が黒歴史とされていたとの事ですが、どうしても気になってしまい、弦巻さんからお借りしました」

千聖「そ、そう。出来ればもう見ないで欲しいんだけど…」

飛鳥「あ、はい」

 

 千聖は冷静さを取り戻した。

 

千聖「まあいいわ。こうなったら…」

 その時だった。

 

「あー!! 千聖ちゃんだー!!!」

 と、日菜と彩がやって来た。

 

千聖「ちょ、ちょっと日菜ちゃん!!」

飛鳥「……」

 

 Pastel*Palettesのメンバーが3人いる事が分かり、店内がパニックになってしまった。

飛鳥と千聖は早々と去っていった。

 

 ちなみにどさくさに紛れて飛鳥が超能力を使って、千聖の記憶を消したため、バレる事はなかった…。

 

 

飛鳥(ありがとう。氷川先輩…)

 

 

おしまい

 



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第67話「Roseliaの小噺」

 

 

 ある日のことだった。

 

「ぷー…」

 

 Roseliaのドラム担当。宇田川あこはカフェテリアでむくれていた。そして友希那、紗夜、リサ、燐子の4人もいる。

 

あこ「早く高等部に進学したいです」

友希那「どうして?」

あこ「だってあこだけ仲間外れな気がするんです…」

 

 友希那の問いにあこは唇を尖らせた。

 

紗夜「そんな事はないわ」

あこ「だって聞きましたよ! 一丈字センパイの話! 何か毎回面白そうなことが起きてるんでしょ!!?」

 あこの言葉に4人が苦笑いした。

 

紗夜「…私から見れば、あなたが羨ましいわ」

あこ「な、何でですか!?」

紗夜「面白そうと思える事と、中等部は特にトラブルは無いんでしょう?」

あこ「あんまりないですよー」

 紗夜の問いにあこが後ろにもたれて、渋い表情をした。

 

リサ「男子に告白されたりとかしないの?」

あこ「されないよー。精々おねーちゃんや友希那さん達に伝言を伝えるように言われるんだよー」

リサ「…不憫ね」

 

 あこの言葉にリサが困惑した表情を浮かべた。

 

あこ「友希那さんも紗夜さんもリサ姉もりんりんも告白されてるんでしょ!!?」

友希那「…そうだったかしら?」

 

 友希那がとぼけたように横を向いたが、ラブレターは基本的に無視。実際に告白しても即刻断るのだ。

 

紗夜「そ、そんな事ありません!」

 紗夜も割と告白される方であるが、それに加えて彼女にわざと怒られようと男子生徒が風紀を乱すような行為をしている。先ほどあこが羨ましいと言っているのはこの事だった。

 

リサ「あー…されるっちゃされるねー」

 

 リサはコミュニケーション能力も高いし、ギャルという風貌とは裏腹に家庭的である為、人気がとてつもなく高い。だから10人以上は告白されたことがあるのだ。

 

リサ「けど今はバンドとかに専念したいかな」

あこ「言ってみたーい」

 リサの余裕ぶった大人な発言に、あこが嘆いていた。

 

あこ「リサ姉めっちゃ大人な発言してるじゃーん」

リサ「そ、そんな事ないよ…」

あこ「いかにもモテる人が言うセリフだよねそれ。りんりんもそう思わない?」

燐子「え? あ、そ、そうだね…?」

 

 と、燐子は急に話を振られて困惑していた。

 

リサ「そういえば燐子も結構ラブレターとかもらうよね」

燐子「私…男の人…苦手…」

 

 と、燐子が視線を逸らした。

 

あこ「でもセンパイとは普通に話せてるよね?」

燐子「え、えっと…一丈字くん…?」

リサ「あ、そういえば飛鳥くんとは普通に話せてるよね」

 

 Roseliaの脳裏に飛鳥がよぎった。

 

友希那「あの子も顔が結構女子っぽいものね」

紗夜「湊さん。失礼ですよ」

あこ「センパイが来てから、何か面白い事が増えた気がするなー。何かあこ達に絡んできた男の人たちも減った気がするし」

友希那「そうね…」

 あこの言葉に5人が考え込んだ。

 

あこ「もしかしてセンパイって、転生したりとかして」

紗夜「宇田川さん。ゲームのやり過ぎよ。いくら何でも…」

 紗夜がそう言うが、飛鳥の今までの行動を見て、何か実際そうでありそうで恐怖を覚えていた。

 

友希那「まあ、話は戻るけど…高等部に進学するのは私達も楽しみにしてるわよ」

あこ「友希那さん…!!」

友希那「けど、男子は本当にめんどくさいわよ」

 友希那の言葉に、紗夜、燐子が気まずそうにして、リサが苦笑いした。

 

あこ「うーん…あこの所も十分にめんどくさいですけど、友希那さんの所とかは大変そうですね」

友希那「ええ。他のバンドグループのメンバーもいて、教室にいてもいやらしい目で見られるのよ」

 友希那が目を閉じた。

紗夜「うちも同じですね…」

燐子「……」

 と、困惑していた。

 

友希那「今の1年生も同じよ。1組と2組が…」

あこ「そういえばセンパイって何組だったっけ」

紗夜「3組よ。私たちバンドをやってる人はいないわ」

 

あこ「…なんか、センパイが女の子をじっと見つめてる所が想像できないです」

友希那「そうなのよね。寧ろ私達を避けてる気がするし」

リサ「っていうより、何かどっしりしてる感じだよね。飛鳥くんって」

 

 と、Roseliaは飛鳥の話をしだし、それを周りの男子生徒達が見ていた。

 

「友希那ちゃん達…。またアイツの話をしてやがる!」

「畜生!!」

「一体、あいつのどこがいいんだ!!」

 

 そう言って、ただ悔しがっていた。

 

 その頃飛鳥はというと…。

 

飛鳥「……」

 学校の屋上で無心にシャボン玉を飛ばしていた。

 

こころ「とっても楽しいわね!」

飛鳥「…そうだね」

 

 隣にこころがいて一緒にシャボン玉をやり、話しかけると無気力に話しかけた。

 

こころ「楽しいなら、もっと楽しそうにするのよ!」

飛鳥「いや、今すっごい楽しいよ。言葉にならない程平和だから」

こころ「そうね! 平和なのはいい事だわ!!」

飛鳥「いやー。こうやって何も考えずにシャボン玉出来るって幸せだね」

こころ「そうね!」

 

 と、二人はまたシャボン玉を飛ばしていた。

 

 

おしまい

 



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第68話「炭火の魔力・1」

元ネタ:美味しんぼアニメ第7話「炭火の魔力」


第68話

 

 ある日のことだった。

 

「ふざけんじゃねぇーっ!!」

 

 と、一人の男が商店街で暴れていた。周りにいた通行人たちは彼に怯えている。そして飛鳥が通りかかった。

 

飛鳥(何だ!?)

 飛鳥は異変に気付いて、超能力で男を眠らせて、走って男に近づいた。

 

飛鳥「大丈夫ですか!? しっかりしてください!!」

「くーくー…」

 

 眠らせたのは飛鳥自身だが、周りに怪しまれないようにわざと男に声をかけた。

 

「どうしたの!!?」

 と、はぐみがやって来た。

 

飛鳥「北沢さん! 警察を呼んで貰えますか。私がこの人を見ますので」

はぐみ「わ、分かったよ!!」

 そう言ってはぐみは警察を呼びに行った。

 

飛鳥「しかし何でこんな事を…」

 と、飛鳥がふと横を見ると、何かが落ちている事に気づいて、飛鳥は超能力で調べた。ちなみに直接触ったりすると、警察の捜査の邪魔になる為である。

 

飛鳥(ウナギ包丁…?)

 飛鳥が男を見つめていた。

 

 後日、飛鳥は事情聴取のために警察に連れていかれた。

 

「いやあ、まさか大阪府警の神楽さん(飛鳥の親戚、警察官が多い)所の坊主が解決するたぁ、大したもんだ!!」

 

 と、高笑いする中年の男は松永。警部である。

 

飛鳥「どうも…」

 飛鳥もちょっと困惑気味だった。そして飛鳥の向かいには暴れていた男が座っていて、俯いていた。

 

「その…」

飛鳥「?」

「先日はご無礼を働き、申し訳ございませんでした!」

飛鳥「あ、別にいいですよ私は…。ただ、壊したものとかは…」

「はい…。それは責任もって弁償致しますが、あなたにも何てお詫びをすれば良いか…」

 男の名前は小塚であり、暴れていた時とは打って変わって大人しい性格だった。

 

飛鳥「…お詫びは構いませんが、何があったか教えて頂けませんか?」

小塚「それが…」

 

 小塚は商店街の中心部にあるうなぎ屋「あだきや」で働いており、主任的存在であったが、父親から後を継いだ二代目とうなぎの作り方について対立し、追い出されてしまったのだ。

 

飛鳥「…ウナギをガスで?」

 飛鳥は喧嘩よりもウナギの作り方が気になっていた。

小塚「はい…。二代目はよりお客さんをさばき、提供までにかかる時間を減らそうと、ガスを使おうとするんです」

飛鳥「技術があれば問題ないと思いますけど…」

小塚「…ですが、二代目は経営の事ばかりで、ウナギの作り方なんて全くわかってない。店がつぶれるなんて時間の問題ですよ。今まで来てくださってたお客様が離れていくのは目に見えてます!」

 と、小塚は頭を抱えた。

 

飛鳥「…分かりました。ただ、それでああやって大暴れしてよいという理由にはなりませんよ」

小塚「それは仰る通りです。私は結果的に、あだきやの名前に傷をつけてしまった。もうこの手から身を引く事にします」

 小塚の言葉に松永が激怒した。

 

松永「ざけんじゃねぇ!!」

「!!?」

 松永が机をたたいた。

 

松永「自分のやり方を拒否されたくらいで、すぐに諦めんのか!? ああ!? てめぇそれでも男か!!」

飛鳥「いや、松永警部。実際に器物破損で…」

松永「そりゃそうだ。本来ならすぐに豚箱行きだが、どうもすぐに諦めようとするこいつの根性が気に食わねぇ」

飛鳥「えっ」

 飛鳥が驚いた。

 

松永「暫くはオレが面倒を見てやる」

飛鳥「ええっ!?」

小塚「そ、そんな!」

松永「どうするんだ? このまま二代目に好き勝手やらせて、あだきやの味が綺麗さっぱりなくなるか、てめぇのプライドを捨てて、あだきやの味を守り抜くか。どっちか選べ!!」

小塚「……!!」

飛鳥「……」

 

 こりゃあ大事になって来たぞ…と飛鳥は考えた。

 

 警察署から出た後、飛鳥は困惑していた。

 

飛鳥「はぁ…」

 

 結局松永にも協力させられる事になった飛鳥は、どうすれば良いか迷っていた。

 

 すると、

 

「一丈字様」

飛鳥「!?」

 

 弦巻家の黒服達が出迎えていた。

 

飛鳥「お疲れ様です。如何なされましたか?」

「こころお嬢様がご心配されておりました。ご同行をお願いします」

飛鳥「あ、はい…」

 

 飛鳥は車に乗って、こころが待つバンドリ学園に向かった。

 

 バンドリ学園。飛鳥が来るや否や、生徒達が驚いた顔をしていた。

 

飛鳥「すっかり有名人になっちまったぜ…」

黒服「ご安心ください。一丈字様の計画が順調に進めるよう、我々もサポートして参りますので」

飛鳥「…もしかして、全部知ってます?」

黒服「勿論でございます。盗聴させて頂きました」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 飛鳥はツッコミを放棄した。

 

「飛鳥!!」

 

 こころが出迎えたが、後ろに大勢のバンドガールズがいた。

 

飛鳥「わあ」

香澄「聞いたよ!? 警察に捕まったって!!」

飛鳥「私じゃございませんよ」

はぐみ「それはそうと、小塚さんどうなるの!!?」

飛鳥「あれ? お知り合いだったんですか?」

 飛鳥が驚いた。

友希那「気持ちは分かるけど、ゆっくり話せる場所がいいんじゃないかしら」

こころ「そうね! カフェテリアに移動しましょ!」

飛鳥「…あれ? 何もご説明されてないんですか?」

 飛鳥が黒服の方を見て、確認すると…。

 

黒服「一丈字様からご説明された方が宜しいかと」

飛鳥「あ、はい…」

 

 そしてカフェテリアの特別スペースに皆が集まって、飛鳥が事情を説明した。

 

飛鳥「という訳なんです…」

はぐみ「そ、そんな…」

 はぐみがショックを受けていた。

 

飛鳥「…聞きそびれたんですが、お知り合いなんですか?」

はぐみ「うん。元々はぐみのとーちゃんと、あだきやの店長さんが友達で、はぐみも昔から鰻を食べさせて貰ってたの。でも、店長さんが亡くなってから、あまりお店に行かなくなったんだ。でも、そんな事になってたなんて…」

 と、はぐみは泣きそうになっていた。

 

香澄「でも、聞いてて思ったんだけど、どうしても炭じゃないと駄目なの?」

飛鳥「ガスだと中まで火が通らないんですよ」

「!!」

 飛鳥が口を開いた。

飛鳥「炭は赤外線の輻射熱で中まで良く通るんですけど…」

香澄「…ふくしゃねつ?」

 香澄だけでなく、一部のメンバーがきょとんとしていた。

飛鳥「まあ、今回は話をスムーズに進める為に、難しい話は無しにしましょう」

リサ「よ、要は炭の方が美味しく出来るのよね!?」

飛鳥「ええ」

 

 リサのフォローに対して、飛鳥が苦笑いして反応した。

 

飛鳥「まあ、話を纏めると、時間はかかるけど、本来のうなぎの作り方で勝負したい主任と、時間を短縮して顧客のニーズに応えようとしている二代目。価値観の相違が原因で、対立してしまったという訳です」

 

巴「…なんかあたし達バンドみたいだね」

蘭「確かに…」

 まるで他人事じゃないと、巴と蘭が反応した。

 

飛鳥「だけど、結局二代目の方が権力があり、あだきやを追い出されてしまい、やけを起こしたと…」

千聖「結局権力がある方が勝つのよね。どこの世界も」

薫「……」

 

 するとはぐみが立ち上がった。

はぐみ「それじゃ、あだきやのウナギは美味しくなくなるって事なの…?」

飛鳥「ええ。ウナギの提供は早くなりますけどね…」

はぐみ「そんなのいや!!」

 はぐみが机をたたいた。

 

はぐみ「ねえ、何とかならないの!?」

飛鳥「…で、その事でちょっと弦巻さんに相談があるんですけど」

こころ「何かしら? 何でも言って頂戴!」

飛鳥「良い鰻を知ってたら、ちょっと見せて欲しいんですけど」

「一丈字様」

 黒服達が現れた。

 

飛鳥「?」

「もし宜しければ弦巻家にお越しください」

「選りすぐりの鰻を取り揃えてお待ちしております」

飛鳥「そうですか!? ありがとうございます!」

 飛鳥が一礼した。

 

飛鳥「あ、でもそれには少しだけお時間を頂けますか」

「?」

飛鳥「その職人さんも連れていきたいので…」

「……!」

 

 と、飛鳥の様子を見て、バンドガールズは違和感を覚えた。

 

(もしかして(飛鳥の呼び名)って…めちゃんこ凄い人?)

 

 

つづく

 



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第69話「炭火の魔力・2」



前回までのあらすじ

 飛鳥が商店街を歩いていると、うなぎ屋「あだきや」で働いていた小塚という男が商店街で暴れ、飛鳥はそのまま取り押さえた。

 話を聞くと、店主が二代目に変わったことにより、店の方針が大きく変更する事になり、二代目と対立しクビになり、自暴自棄になっていた。

 うなぎ業界から手を引こうとする小塚に対し、面倒を見ていた松永警部が激怒し、成り行きで、あだきや奪還作戦に参加する事となった。

 そして飛鳥は良い質の鰻を知ってそうな、弦巻家に相談する事にしたのだが…。



 

 ***********

 

 翌日、飛鳥は小塚、ハロハピのメンバーと共に弦巻家へ。

 

はぐみ「おじさん!」

小塚「…北沢さんの所のお嬢さんじゃないですか」

 

 はぐみの姿を見て、小塚はしょんぼりとしていた。

 

小塚「なんてお恥ずかしい…。親父さんになんて顔を合わせれば…」

はぐみ「そんな気にしないで! とーちゃんもおじさんの事心配してたよ!?」

 

 小塚の顔を見てはぐみは必死に小塚を慰めていた。花音、美咲も心配そうにしている。

 

飛鳥「…行きましょう」

 

 飛鳥達はそのまま中に入っていった。

 

黒服A「…こちらが、弦巻家が取りそろえた鰻でございます」

黒服B「最高級のものから、庶民的なものまで取り揃えております。お好きな物をご自由にお選びください」

小塚「……!!」

 

 取り揃えられた鰻の種類に小塚は絶句した。

 

美咲(…まあ、そりゃそうよね)

 

 自分も最初は弦巻家のスケールの違いに驚いていたが、人が驚いているのを見て、自分はもうすっかり毒されたと感じていた。

 

飛鳥「このように、うなぎや食材の仕入れは弦巻家から提供して頂けます。お気兼ねなく申し上げてください」

こころ「遠慮はいらないわよ!?」

飛鳥「…敬語を使いなさい」

 

 こころの言葉に飛鳥が突っ込むと、美咲が心の中で申し訳なさそうにした。

 

小塚「こ、こんなに沢山の鰻を…本当によろしいんですか!?」

黒服C「ええ。こころお嬢様の許可が出ております故」

飛鳥「小塚さん」

小塚「!?」

飛鳥「もう一つお話ししたい事が…」

 

 会議室

 

小塚「あだきやの近くに店を!?」

 小塚が驚いた。

 

飛鳥「はい。場所は本店より遠いですけど、何とか場所を取れました。そこで鰻を売ってください」

小塚「そ、そんな…。それじゃあ「あだきや」と競り合うようなものじゃないか! いくら二代目と喧嘩別れしたからって…」

飛鳥「あだきやと競り合うんじゃないんですよ」

小塚「え!?」

 飛鳥が真剣な表情で小塚を見た。

 

飛鳥「あだきやを守る為に鰻を売るんですよ」

 

「!!?」

 

飛鳥「あなたも言っていたでしょう。二代目のやり方でいたら、あだきやが潰れてしまうって。違うんですか?」

小塚「ち、違わない…!! だけど…」

飛鳥「迷ってる暇なんかありませんよ。あなたは商店街で大暴れしてるんだ。このままやらないなんて事になったら、刑務所行きは確実で、その間にあだきやは完全に終わり、何もかもなくなるんですよ!」

 飛鳥が説得した。

 

飛鳥「先日、あだきやを訪ね、自慢とされていた鰻御膳を食べました」

小塚「!!」

 飛鳥が俯いた。

 

飛鳥「…ウナギの味はしたものの、あれは店で出していいレベルじゃあございません。米はふっくらしてませんし、中はべしょべしょです。ウナギの香ばしさはないのに脂っこい。まるで出来の悪い焼き魚ですよ」

小塚「……!!」

 

 飛鳥の言葉に小塚が驚いた。

 

小塚「そ、そんなにひどかったのか…!!」

飛鳥「ええ…。おまけに値段もそこそこしてて…。お客さんが来なくなるのも時間の問題ですよ」

小塚「なんてことだ…そんなにひどいのか…!!」

 と、小塚は頭を抱えていた。

 

飛鳥「小塚さん。本当に今しかないんですよ。今、ここであなたが動かなかったらあだきやは終わります」

はぐみ「そーだよおじさん!!」

 はぐみが飛鳥の隣で叫んだ。

 

小塚「!」

はぐみ「昔、はぐみ達に食べさせてくれたあの鰻、なくさないでよ!!」

小塚「…お、お嬢さん」

はぐみ「はぐみ、どっちかっていうとお肉が好きなんだけど、おじさんや店長さんが作ってくれた鰻、大好きなの。だから頑張って!!」

小塚「……!!」

 はぐみの言葉に小塚は涙を流した。

 

小塚「なんてことだ…。ちゃんと味を分かってくれた人がいたのに、私はなんてことを…!」

飛鳥「小塚さん。悔やむのは後です。今はやるべき事をやってください」

小塚「…ああ。分かったよ」

 小塚が飛鳥とはぐみを見た。

 

小塚「一丈字さん。皆さん。どうか宜しくお願いします!」

こころ「任せて!」

美咲「コラ!!」

薫「私も出来る限り協力しよう」

花音「が、頑張りますっ!!」

 

こころ「よーし! 鰻で皆を笑顔にするわよー!!」

「おー!!!」

 

 そんなこんなで飛鳥とハロハピの大作戦が始まった。

 

 

 数日後の商店街。

 

「何故だ!! 何故客が来ない!!」

 

 あだきやで二代目が机をたたいていた。

 

「わ、若旦那…」

二代目「料理は5分以内に来て、効率を考えて炭からガスに変えたのに…何がいけないんだ!!」

 と、二代目はとにかく荒れていた。

 

 その時、客が来た。

 

二代目「い、いらっしゃいませ!」

「あのーすみません。ここは「小塚」というお店ですか?」

二代目「小塚?」

「いえ、うちはあだきやですけど?」

「なーんだ。違うんだ。お邪魔しましたー」

 と、客が帰っていった。

 

二代目「…小塚?」

「もしかしてあの小塚が!?」

二代目「あの裏切り者め!!」

 

 二代目と取り巻きが小塚の店を探し当てたが、行列が出来ていた。

 

「な、なんだこれは!」

二代目「ヘッ。こんなの今だけだよ。全く、炭なんて古臭いのをまだやってたのか」

 と、二代目が悪態をつくと、並んでいた中年の客たちが睨みつけた。

 

二代目「ひ、ひっ!」

「よ、良く見たら昔の客が!!」

二代目「な、何でだ!!」

 

 二代目がそう言うと、

 

「ああ。あんたの父親には世話になったから通ってたけど、あんたが店主になってからひどい!」

「鰻をバカにしておる!」

「そういやこの店、高校生が手伝ってるらしいけど、その子たちの方が鰻の事よく分かってるよ」

「牛丼チェーン店じゃあるまいし、もうちょっとプライド持ちなよ」

 

 と、罵詈雑言だった。

 

二代目「そ、そんな…」

「こ、こんなの何かの間違いだ!!」

 と、二代目と取り巻きが騒いだが、客はこれ以上相手にする事はなかった。

 

 

 

つづく

 



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第70話「炭火の魔力・3」



 前回までのあらすじ

 弦巻家に敵なし。


*****************



 

 二代目と取り巻きが悔しがっている中、飛鳥、ハロハピの5人はうなぎ屋でアルバイトをしていた。ちなみに花音はファーストフード店のアルバイトがあるが、本日はシフトではない為、参加している。ちなみに黒服達も従業員としている。

 

「小塚様。下準備が整いました」

小塚「あ、ありがとうございます…」

 と、小塚は全く落ち着かない様子だった。

 

飛鳥「いらっしゃいませー」

 飛鳥も制服に着替えて、掛け声をした。

 

 ちなみに役割

ホール:はぐみ、薫、黒服、花音、美咲

キッチン:小塚、飛鳥、こころ、

 

こころ「こんなものでどうかしら!」

 こころが調理した鰻を見せたが、小塚は驚きが隠せなかった。

小塚「す、すごいね…君…」

飛鳥「あははははは…」

 飛鳥が苦笑いしていたが…。

小塚「いや、君も凄い」

飛鳥「あ、ありがとうございます…」

 

 飛鳥とこころも鰻を調理していたが、二人ともそこそこ出来ていた。

 

小塚(串うち3年、裂き8年、串一生と呼ばれてるのに…。この子達、凄い才能だな…)

 

薫「お客様…ご注文を」

「おやあ、別嬪さんだねぇ!」

「ならねーちゃん。わしと…」

「バカ言ってんじゃないよあんた!!」

 

 と、接客業もそれぞれのキャラクターが受け入れられてバカ受け。

 

「おーい。兄ちゃん」

飛鳥「あ、はーい!」

 飛鳥が店員に呼ばれてきた。

 

「鰻を選ばせてくれるんだろ? この店」

飛鳥「ええ。折角ですからお客様に選んでいただこうと」

「何だ。アオはねぇのか?」

飛鳥「お目が高い! 実は売切れちゃったんですよ」

 

 アオとは、青ウナギの事であり、質も普通の鰻より良い。1万円以上もするらしい。

 

「なんでぇー。アオ食えたっつーから急いできたのによ…」

 おっさんはしょんぼりしていた。

「まあまあ、考える事は皆同じさ。坊主、この中でどれが一番活きが良いんだい」

飛鳥「こちらとかお勧めですよ!」

「成程、そりゃあでかい! それはワシが貰おう!」

「あっ! ずるいぞ!!」

 

 と、揉めていたが、飛鳥や他の客は楽しそうに笑っていた。

 

 そして…

 

香澄「わあ凄い!! いきなり大盛況だよ!!」

有咲「すげぇ…」

 遅れてPoppin’partyがやってきた。

 

たえ「でもすっごい並んでる…」

沙綾「これじゃ、お店に行くのは難しそうだね…」

 

 店の大盛況を見てりみと沙綾が苦笑いした。

 

香澄「でも折角だから、並ぼうよ!」

有咲「えー。めんどくせーよ…。こんだけ並んでたら心配いらねーだろ」

香澄「有咲ぁ~」

有咲「くっつくな!!/////」

 

 香澄が有咲に抱き着いて、有咲が吼えると、沙綾がある事に気ついた。

 

沙綾「あれ!? 確かあの男の人は…」

たえ「どうしたの?」

 

 すると二代目と取り巻きが他の客を無視して、店内に入った。

 

「!!?」

小塚「わ、若旦那…」

 二代目の顔を見るなり、小塚が困惑していた。

 

二代目「おい、どういう事だ小塚! 誰に断ってこんな店出してんだ。ああ!?」

「そうだ! お前には初代店主の恩を忘れたのか!? 客を奪いおって!!」

 と、いちゃもんを付けたが、客が騒いだ。

 

「ふざけるなー!!!」

「恩知らずはお前らだ!!!」

「あだきやをダメにしやがって!!!」

「金に目がくらんで店のこだわりを捨てた恥知らずは出ていけ!!!」

 

 と、客が激怒した。

 

はぐみ「み、皆落ち着いて!!」

薫「これは…穏やかじゃないね…」

美咲「言ってる場合じゃないですよ!!」

花音「ふぇえええ…」

 

 飛鳥とこころはどっしり構えていた。

 

「誰に断ってこの店を出してるって?」

二代目・取り巻き「!!?」

 

 二代目と取り巻きの後ろで声がしたので、二代目と取り巻きが後ろを見ると、松永警部が現れた。

 

「オレに断ったんだ。文句あるか」

二代目「な、な、何なんだあんた!!」

飛鳥「これはこれは松永警部。お勤めお疲れ様です」

松永「おお!! 神楽ん所の坊主! 元気にやってるか!」

飛鳥「え、ええ…」

 

 松永の言葉に飛鳥は思わず口元を引きらせた。やらせてんのあんただろ…と言わんばかりに。

 

こころ「確かお母さんの所の…」

飛鳥「うん、そうだよ…」

 

 飛鳥が困惑した。

 

二代目「け、警部!!?」

松永「この店はオレが営業許可証を出してんだ。文句あっか」

二代目「そ、そうじゃないんですよ! ただ、同じうなぎ屋があるなんて聞いてなくて…」

 と、二代目と取り巻きはしどろもどろだった。

 

「てめぇがあまりにも酷い鰻を出すもんだから、小塚さんが店出してくれたんだよ!!」

「そうだ!!」

「天国の親父が悲しんでるぞ!!」

「何が合理化だ!! あんなクソマズイ鰻出しやがって!! あんなもん鰻じゃねぇ!!」

 

 客が二代目に対して文句を言うので、小塚が困った顔をすると、

 

飛鳥「はい、皆さんそこまで!!」

「!!」

 と、飛鳥が両手を叩いた。

 

こころ「それならこの人たちに、小塚のうな丼を食べて貰おうじゃない!!」

飛鳥「小塚さん。彼らにうな丼を」

小塚「は、はい…」

二代目「だ、誰が小塚の作った鰻なんか!!」

松永「食わねぇと公務執行妨害で現行犯逮捕だ!」

二代目「ひぃぃ!! そ、そんなぁ~!!」

「はははは!!」

「いいぞもっとやれー!!」

 

 と、松永にマークされてしまい、逃げ場を失った二代目と取り巻きはやむを得ず小塚のうな丼を食べる事になった。

 

 そして30分後…。

 

飛鳥「どうぞお召し上がりください」

二代目「フン」

 飛鳥がうな丼を二人前提供したが、二代目は悪態をついたままだった。周りの客が見守る中、二代目と取り巻きはうな丼を食べた。すると衝撃が走る。

 

二代目「お、親父が作っていたうな丼と同じだ!!」

取り巻き「ホントだ!!」

二代目「オレが作るのと全然違う…。やっぱり炭だからなのか!?」

飛鳥「炭もそうですけどアナタ…。つくった鰻を作り置きしてるでしょ。温蔵庫に」

二代目「!!」

飛鳥「温度は保てても、鮮度が落ちますよ。これじゃスーパーで買った方がマシですよ」

「そうだそうだ!!」

 

 飛鳥の言葉に客たちが吠えた。

 

飛鳥「それに米もふっくらしてるでしょう。貴方達の鰻御膳とやらはまったくふっくらしてなくて、本当にベチャベチャしてました」

「そうだそうだ!!」

 

 また客が吠えた。

 

 

飛鳥「あなたの仰っていた通り、確かにお客さんが多ければ多いほど、合理的にやった方がスムーズに事が運びますし、負担も少ない。だけど、合理的にしてはいけない所まで合理的にしてしまった。これがお客様に減った原因です」

二代目・取り巻き「!!」

松永「そういうこった」

 松永も口を開いた。

 

松永「鰻を分かっている客はな、たとえ時間がかかると分かっても本物を選ぶのよ!」

二代目「!!!」

 松永の言葉に二代目は衝撃を受けた。

 

こころ「ここのお客さんはみーんな楽しそうに待ってたわ?」

二代目「……!」

こころ「美味しい鰻が食べられるって分かってるから、皆待てるのよ! だからわざわざ時間を短くする必要なんてないわ!」

 こころの言葉に二代目は崩れ落ちた。

 

取り巻き「に、二代目!!」

二代目「…私はなんて愚かだったんだ。利益を上げる事と、合理化を追い求めていたばかりに、一番大事な事を忘れていた…」

 と、二代目が悔やんでいた。

 

飛鳥「…理由はどうであれ、あなたはあなたで「あたぎや」を大きくしたかったんでしょう。それは小塚さんも理解しております」

二代目「!」

飛鳥「だけど、肝心なところで手を抜いてしまえば、考えた事も、やって来た事も全部台無しになるんです。もう一度小塚さんと話し合ってみたら如何でしょうか」

 すると小塚が二代目の元に現れた。

 

小塚「若旦那…」

二代目「小塚…」

小塚「先代の恩もあり、差し出がましいですが、もう一度私に、あたぎやの鰻づくりについて指揮をさせて頂けませんか!」

 小塚が二代目を見つめてそう言った。

 

取り巻き「な、何を言ってるんだ! お前は…」

二代目「小塚…」

取り巻き「!」

 二代目が小塚を見つめた。

 

二代目「戻ってきてくれるのか。お前には今まで酷いことをしてきた。それなのに…」

 小塚が笑みを浮かべた。

 

小塚「いいんですよ。一丈字さんも言っていた通り、若旦那は若旦那であたぎやの事を考えていた」

二代目「小塚…!!」

小塚「ですが今の鰻づくりではお客様は戻ってきてくれません。お願いです、鰻づくりをもう一度任せてください」

二代目「是非頼む! 教えてくれ!!」

 と、小塚と二代目が握手すると、客から大歓声が上がった。

 

「いいぞー!!」

「良く言った!!」

「これで親父さんも安心だ!!」

「頑張れよー!!!」

 

 さっきまで怒っていた客たちも笑顔で二代目と小塚を応援した。

 

 

飛鳥「…ふぅ」

こころ「これで一件落着ね!」

飛鳥「と、言いたい所だけどまだ商売の途中だ。これが終わるまでが仕事だぜ」

こころ「任せて!!」

松永「おや、お前さん喋り方が変わったなぁ」

飛鳥「あっ」

 

 松永の言葉に飛鳥が反応すると、店内から笑い声が生まれた。

 

飛鳥「いやー。大変失礼しましたっ」

 

飛鳥も誤魔化すように笑った。

 

「そっちの方が男らしくていいわよ」

「お兄さん。結構凛々しいわねー」

飛鳥「あ、どうも…」

「なんでぃ。わしだって若い時は…」

「あんたは変わんないわよ」

 

 その頃のポピパ

 

香澄「な、なんか楽しそう…行っていい?」

有咲「いいけどお前だけ並びなおしな」

香澄「有咲も一緒に来て!

有咲「やだよ!!」

 

 後日、バンドリ学園。

 

はぐみ「で、おじさんはあだきやに戻ってきて、再び主任に戻って、鰻づくりも元に戻すって!」

飛鳥「そりゃあ良かったです」

こころ「そうね!」

 と、飛鳥ははぐみ、こころ、美咲と話をしていた。

 

美咲「それはそうと、一丈字くんがあそこまで仕事出来るなんて吃驚したなー」

飛鳥「まあ、昔そういうアルバイトしてたので…」

 飛鳥がそう苦笑いした。

 

はぐみ「そういや思ったけど、こころんにはため口だよね?」

飛鳥「そ、そうですか?」

こころ「そんな事ないわよ! ねえ!?」

飛鳥(へたくそ!!)

 こころがあからさまにごまかしているので、はぐみと美咲が怪しんでいた。

 

こころ「あは、あははははは!!」

飛鳥「……」

 

おしまい

 



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第71話「バンドリ学園のハロウィン」

 

 

 10月30日。この日はハロウィン前日であるが、飛鳥は家でその事を思い出していた。

 

飛鳥(この日は戸山さん達大忙しだろうな…)

 

 というのも、ハロウィンに向けてライブをすると聞いていた為である。飛鳥は邪魔しないように、気にかけていたのだが…。

 

飛鳥(まあ、オレ未だに出入り禁止食らってるから入れないんだけどね)

 

 …そう。嫌がらせで学内のライブに出入りできないのだ。バンドガールズに手を出した人間には即刻そういう禁止令が出される為、飛鳥も例外ではないのだ。この事に関して、最初バンドガールズも納得がいてなかったが、千聖の機転で飛鳥のみのライブをやるように提案したのだ。かといって1回も実現はされていないが…。

 

飛鳥(実際にやったら大問題だよ)

 

 ましてやアイドルであるPastel*Palettesが1人の男性の為にそんな事をしようなどご法度だ。飛鳥は好意のみ受け取る事にした。

 

飛鳥(ま、遠くから成功する事を願ってるよ。頑張って)

 

 そう言って飛鳥は家を出た。

 

 学校につくと、そこにはいつも通りの光景があった。

 

「今日の合同ライブ楽しみだな!」

「ああ! 香澄ちゃん達が仮装するんだろ!?」

「エロい恰好かな? エロい恰好かな?」

「バカ! キュ~トなのもいいだろう!!?」

 

 と、男子生徒達も興奮気味で、飛鳥は存在感を消していた。

 

「けどな…」

飛鳥「?」

 

「問題はあの一丈字だ」

「そうだ! あいつが結局美味しい所を持っていくんだ」

「オレ達にも分けろっつーんだよ」

「ああいうのは皆で楽しまないと!」

飛鳥(だったら出入り禁止解禁してくれ)

 

 そう思いながら、飛鳥は去っていった。

 

 その後、飛鳥は普通に教室で過ごした。

 

飛鳥(学校が終わったら即刻帰るか…)

 

 そんでもって放課後。ライブの時が来た。

 

飛鳥(帰るか…)

 飛鳥が存在感を消して…そのまま帰っていった。

 

飛鳥(こういう時都合よく事件が起きるけど、何も起こらないのが一番いいよ)

 

 と、飛鳥は学校の平和を願っていた。

 

 そして飛鳥が商店街を歩いていた。

 

飛鳥(…とは言ったものの、それはそれでこの後の展開どうするんだって話しだよな。戸山さん達はいないし)

 

 商店街を歩きながら、オリ主の弱みを痛感していた。原作組がいないのであれば、読者が楽しめないのだ。というかもう、バンドリじゃなくても良いわけだ。

 

 飛鳥がふと横に貼ってあったポスターを見ていた。そこには仮装をしている香澄、蘭、彩、友希那、こころが写っていた。

 

飛鳥(まあ、読者の皆が見たいのはオレじゃなくて、戸山さん達だもんな…。素人のこんなの見せられたって)

 

 と、飛鳥はとぼとぼと歩いていった。だからといって事件が起ころうものなら、確かに出番はあるものの、香澄たちのライブが台無しになってしまうからだった。

 

 その頃、香澄たちは順調にライブを行っていたが…。

 

「トリック・オア・トリート! お菓子くれないと悪戯しちゃうぞー!!?」

「お菓子持ってないから悪戯してくれぇええええええええええええええええ」

 

 …男性客の大半がドM思考であり、一部のバンドガールと女性客はドン引きだった。もしもここに飛鳥がいたら…。

 

飛鳥「あー。多分一緒にされるだろうから、行かない方が良いねこれね」

 

 と、投げやりな態度を取っていた。

 

蘭「…キモッ」

ひまり「最近の男子って皆こうなのかな…」

モカ「まー。モカちゃん達みたいな美少女に何かされたいっていう気持ちは分かるよ~」

 

 舞台袖で見ていたバンドガールズは思い思いの感想を述べた。現在Poppin’partyがライブをしている為、香澄達は不在である。

 

彩「それにしても一丈字くんまだ出入り禁止解けてなかったの?」

千聖「どこまでも考える事は姑息ね…」

こころ「……」

 

 飛鳥に対する仕打ちに彩と千聖が不満そうにしていたが、こころはある事を考えていた。

 

はぐみ「こころん…」

こころ「飛鳥なら心配いらないわ」

「!?」

 

 こころの言葉に皆が驚いた。

 

彩「ど、どういう事?」

こころ「その分あたし達が優しくしてあげればいいし、いつか皆で一緒にライブが見れるように、飛鳥も頑張ってるから」

ひまり「頑張る?」

巴「一丈字何もしてねぇだろ」

こころ「…あたしも最初はそう言ったわ。けど飛鳥は、みんなに気を遣ってライブに来ないのよ。何も結果を出してない自分が、あたし達と一緒にいるのが気に食わないんだって」

あこ「そ、そんな…」

 こころが正面を向いた。

 

こころ「でもね。飛鳥なら絶対に出来るって信じてるわ」

モカ「……」

 モカが笑みを浮かべた。

 

モカ「そうだね~。飛鳥くんなら出来そうな気がしてきた~」

蘭「モ、モカまで…」

こころ「だから皆も飛鳥を信じましょう!!」

 

 と、こころがそう言うと、バンドガールズは気持ちを新たにライブに挑むのだった。

 

 その頃の飛鳥…。

 

飛鳥「はぁ…」

 

 河川敷で黄昏ていた。

 

 

おしまい

 



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第75話「頑張れお姉ちゃん」

 

 

 それはある日のことだった。

 

「……!?」

 

 飛鳥は困惑していた。というのも目の前には沙綾の妹である紗南がいたからだ。そして紗南の横で沙綾は申し訳なさそうにしていた。

 

沙綾「ゴメン…。妹がどうしてもあなたに会いたくなったみたいで…」

飛鳥「……」

 

 色々あって沙綾の弟妹達に懐かれた飛鳥。しかし、飛鳥が中々やまぶきベーカリーに来ないせいか、紗南が寂しがり、遂に学校に訪れた。

 

 そしてその日の放課後、飛鳥は仕方なしに山吹家にお邪魔する事になった。純は友達とサッカーをしに外に出かけていた為不在。

 

紗南「えへへへ…」

 と、紗南は飛鳥にべったりくっついていて、飛鳥は苦笑いしていた。

 

沙綾「本当にごめんね。一丈字くん…」

飛鳥「いえいえ…」

沙綾「紗南。今日だけだからね? お兄ちゃんだって忙しいんだから」

紗南「はーい…」

 

 沙綾の言葉に紗南がしょんぼりすると、飛鳥はまた苦笑いした。ここで優しい言葉をかけると、紗南の為にならないと考えた為、あえて何も言わず、明日から様子を見にやまぶきベーカリーの前を通る事にした。まあ、小さい子というのは気まぐれである為、すぐに自分から興味が変わるだろうが、それまでは付き合う事にした。

 

 暫くして、夕方になった。

 

飛鳥「そろそろ帰らなきゃ…」

沙綾「あ、そうだね」

紗南「……」

 その時だった。

 

「ふざけんじゃねぇ!!」

「?」

 

 男の怒声が聞こえた。紗南は怯えて沙綾に抱き着いていた。

 

沙綾「レジの方からだわ!」

飛鳥「あ、山吹さんはここにいてください。私が様子を見てきます」

沙綾「でも…」

飛鳥「いいから」

 そう言って飛鳥がその場を離れた。

 

飛鳥「……」

 

「てめぇのパンを買ってみたら虫が入ってやがった!! どう落とし前つけてくれんだ。ああ!!?」

 と、チンピラ3人組が沙綾の母親にいちゃもんをつけていた。

 

沙綾母「そんだけ大きな虫なら気づいてます!」

「ざけんじゃねぇ! シラを切ろうってか!!」

 と、リーダー格の男が叫ぶと、椅子を蹴り飛ばした。

 

「だったら客が来ねぇようにしてやるよ」

飛鳥「……」

 飛鳥は超能力でチンピラたちを腹痛にさせて、動けないようにチンピラの足に対して金縛りを仕掛けた。

 

「い、いででででで…」

「は、腹が…!!」

「やっぱりパンに何か入れ込んだな!!」

 

 そして飛鳥は警察に通報した。

 

飛鳥「早急に来てください。場所はやまぶきベーカリーです」

 そう言って飛鳥が電話を切ると、

 

「く、くそが!!」

 と、主犯格のチンピラが刃物を取り出すと、沙綾母は怯えた。

 

「こうなったら力づくでも痛い目に遭わせてや…」

 飛鳥が念力を放つと、今度は激しい頭痛がした。

 

「ぐああああ――――――――っ!!!」

「ア、 アニキ!!」

 飛鳥はもうやむを得ないと判断した為、姿を現した。

 

飛鳥「どうかされました?」

沙綾母「あ! い、一丈字くん!! 来ちゃダメ!!」

「な、なんだてめぇ…!!」

飛鳥「お客様ですか?」

沙綾母「違うのよ! こいつらいちゃもんをつけに来て…」

「ふざけるな!!」

「こいつが作ったパンに虫が入ってたから文句を言いに来たんだよ!!」

飛鳥「虫?」

「こいつだ!! こんなもん食わせてただで済むと思ってんのか!!」

 

 チンピラたちの言葉に飛鳥が頭をかいたが、飛鳥はすぐに自作自演の芝居だと気づいていた。沙綾母の言っていた通り、それだけ大きい虫がパンに混入しているならすぐに気づくと。

 

飛鳥「まあ、何でもいいですけど、最近この辺を警察官がパトロールしてるんで、早く逃げた方が良いですよ」

沙綾母「!?」

「ヘッ、どうせハッタリだろ!」

「そうはいくかよ!」

 

 チンピラたちが吠えたその時、警察官が二人やって来た。

 

「動くな!!」

「って、またお前らか!!」

 

 警察官の登場により、チンピラたちはあえなく御用となった。ちなみに捕まった瞬間に超能力を解いた。

 

「離せー!!」

「くそう!! 何がどうなってるんだ!!」

「オレらを逮捕したら上の奴らが黙ってないからな!!」

警官「あー。上の奴等なら下着泥棒してたから捕まえたよ」

 

 と、飛鳥の活躍によって事なきを得た。

 

飛鳥「だから言ったのに」

 飛鳥が一息ついた、

 

 その後…。

 

沙綾母「本当になんてお礼を言ったら良いか…!」

飛鳥「あ、気にしなくて結構ですよ」

 沙綾母が何度も頭を下げるので、飛鳥は苦笑いしていた。

 

沙綾「いや、本当にありがとう! 警察も呼んでくれてたなんて…」

飛鳥「はははは…」

 

 警察官からの口コミで結局バレた。

 

飛鳥(コンプライアンス大丈夫か!?)

 飛鳥は心の中で突っ込んだ。

 

沙綾母「紗南の事もそうですけど、ここまでしてくれるなんて…」

飛鳥「いえいえ」

 飛鳥が反応すると、紗南がじーっと飛鳥を見つめていた。

 

飛鳥「あ、もう大丈夫だよ。こわいおじさん達もういないから」

紗南「うん…」

 飛鳥が一息ついた。

 

沙綾母「是非お礼を…」

飛鳥「いやいや、本当にお気遣い要りませんよ。お礼を受け取ってしまったら、うちの親が飛んでくるので」

 沙綾母が気を利かしてお礼をしようとしたが、飛鳥が慌てて止めた。

 

沙綾母「あ、そうだ。沙綾、紗南をお風呂に入れてあげて」

沙綾「あ、はーい。紗南、行くよ」

紗南「やだ」

「え?」

 皆が驚いた。

 

沙綾「どうして?」

紗南「おにいちゃんといっしょにいる」

 この言葉に飛鳥は察した。

 

沙綾「紗南。お兄ちゃんはお母さんと大事な話をしてるの。邪魔しないで」

紗南「やだ」

 と、紗南がいつになく駄々をこねていた。

 

沙綾「…紗南。いい加減にしないと、お姉ちゃん怒るよ?」

 沙綾の言葉に紗南が怯えると、

 

飛鳥「山吹さん」

 飛鳥が沙綾の名前を呼んだ。

沙綾「一丈字くん…」

飛鳥「いったん落ち着いて。次に紗南ちゃん」

紗南「!」

 紗南が反応した。

飛鳥「紗南ちゃんはどうしたいのかな?」

 すると紗南はとんでもない事を言いだした。

 

紗南「おにいちゃんとおねえちゃんといっしょにおふろはいりたい」

 空気が止まった。

 

飛鳥「…えっと、沙綾お姉ちゃんと純お兄ちゃんの事かな?」

紗南「ううん。沙綾おねえちゃんと飛鳥おにいちゃん」

飛鳥「わあ」

 飛鳥が困惑した。

 

沙綾「あのね紗南ちゃん。どうして飛鳥お兄ちゃんと私とお風呂に入りたいのかな?」

 さっきまで不機嫌だった沙綾も流石にこれは苦笑いした。

 

紗南「ふたりともだいすきだから…」

沙綾母「ちなみに純お兄ちゃんは?」

紗南「ふつう」

飛鳥(純おにいちゃーん!!!!!)

 

 先日、紗南が楽しみにとっておいたプリンを食べてしまい、ずっと拗ねている。

 

沙綾「あ、あのね紗南。お兄ちゃんにそんな無茶な事を言ったらダメよ」

紗南「どうして?」

沙綾「ど、どうしてって…」

 ちょっといいわけに困り始めた沙綾。それに気づいた飛鳥は

 

飛鳥「入っていいかお姉さんに相談してみるね。ちょっと来てくれます?」

 と、飛鳥は沙綾を連れ出した。

飛鳥「あ、お母さんは叱らないであげてください。少しだけお時間をください」

沙綾母「わ、分かったわ…」

 

 飛鳥と沙綾が二人きりになった。

 

沙綾「ごめんこんな事になって…」

飛鳥「いえ、ちょっと私に考えがあります。話を合わせて貰っても良いですか」

沙綾「う、うん…」

飛鳥「あと、あくまで芝居なので気を悪くしないでくださいね」

沙綾「え?」

飛鳥「行きましょう」

 飛鳥と沙綾が戻ってきた。

 

飛鳥「あー…紗南ちゃん」

紗南「?」

飛鳥「ちょっとお姉さんに相談してみたんだけど、お姉さん…おじさんと一緒に風呂に入るのが恥ずかしいんだって」

沙綾(いや、おじさんって)

 沙綾は自分が恥ずかしがってる事よりも、飛鳥が自分の事をおじさんと呼んでいる事に驚いた。

 

紗南「どうして?」

飛鳥「紗南ちゃんは、同じくらいの男の子に裸を見られても恥ずかしくないの?」

 飛鳥の言葉に紗南は頬を染めてモジモジした。

紗南「はずかしい…」

飛鳥「それと同じなんだよ。もしもお姉ちゃんが同じくらいの男の子と一緒に風呂に入る為に、裸になってって言われたらどうする?」

紗南「いや…」

 紗南が首を横に振った。

飛鳥「お姉ちゃんの為に、我慢してあげて」

紗南「……」

 紗南が考えたが、

 

紗南「…わかった」

飛鳥「ありがとう。お姉ちゃんの事を考えれて偉いね」

 と、飛鳥が褒めると紗南が照れた。

 

飛鳥(さあ、今です山吹さん)

沙綾(お、おう…)

 

 飛鳥が沙綾にアイコンタクトを送ると、飛鳥はちょこっとだけ超能力で紗南に暗示をかけ、結果的に未遂に終わった。

 

 そして…

 

飛鳥「いやー。ありがとうございました。こんなにクーポン券頂いて…」

 飛鳥が帰ろうとしていた。

沙綾母「いいのよ。またおいでね」

飛鳥「はい!」

紗南「……」

 紗南がじーっと飛鳥を見つめていると、飛鳥がしゃがんで紗南に目線を合わせた。

 

飛鳥「また来るよ」

紗南「…うん!」

 

 と、飛鳥と紗南が指切りをして、沙綾と沙綾母が苦笑いした。

 

 こうして、事件は解決したかに思われたが…。

 

沙綾「はぁ…疲れた…」

 と、沙綾が部屋に戻ろうとしたが、洗濯物が干しっぱなしだという事に気づいた。

 

沙綾(あ、いけない。洗濯物干し忘れてた!!)

 沙綾が慌てて洗濯物を干そうとしたが、その中に自分の下着があった。

 

 そしてある事に気づいた。

 

 もしかしたら飛鳥に見られた可能性があるかもしれないと…。

 

沙綾「……」

 

 沙綾はすっかり青ざめた。

 

 翌日

 

沙綾「一丈字くん」

飛鳥「あ、昨日はどうも…」

沙綾「ちょっと来て」

飛鳥「あ、はい」

 

 沙綾が飛鳥を教室から連れ出した。

 

沙綾「昨日…台所から一番近い和室に入ったりしてない?」

飛鳥「いいえ? ずっと紗南ちゃんの部屋にいましたけど…」

沙綾「そ、そう。良かったわ…。実は洗濯物干してて、見られたらどうしようって思ったの」

飛鳥「あ、そういう事ですか…」

 飛鳥が苦笑いした。

 

 

 だが…。

 

紗南「紗南もおっきくなって、おねえちゃんみたいなしたぎをつけたいな」

飛鳥「そ、そう…」

紗南「あのね。おねえちゃんはオレンジいろのブラジャーとパンツをはいてるの。あと…」

 

 沙綾が目を離したすきに、紗南が沙綾の下着について喋ってしまったのだった…。

 

 

飛鳥(当分いかない方が良いよなコレ…)

 

 と、沙綾にバレない事を心から祈る飛鳥なのであった。

 

 

おしまい

 



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第89話「男はつらいよ」

 

 

まりな「バンドリ学園! 質疑応答のコーナー!」

 

 とある特設スタジオ。ステージには飛鳥とまりな。観客席にはバンドガールズと、モブたちがいた。飛鳥はなんか嫌な予感がしていた。

 

まりな「今回のゲストは、この物語の主人公にして座長、一丈字飛鳥くんでーす!」

飛鳥「どーもー。チャンネル変えてくださーい」

 

 飛鳥がにこやかにネガティブな発言をした。

 

まりな「ちょっと後ろ向きすぎるわよ?」

飛鳥「すみません。何でか分かりませんけど、嫌な予感がしまして」

まりな「そんな事ないわよー。それじゃ早速行くわね。今回、飛鳥くんに質問するテーマはこちら!」

 

 パネルにある事が表示された。

 

『バンドガールズとラッキースケベになった時、許してくれそうなのは?』

 

飛鳥「え、何ですかこれ。公開セクハラですか?」

 

 飛鳥がツッコミを入れた。

まりな「いや、飛鳥くんのイメージで許してくれそうな子を答えて頂戴」

飛鳥「男子生徒のみなさーん。ビッグチャンス到来ですよー」

 

 まりなの言葉に飛鳥が皮肉気味に突っ込むと、男子生徒達が大歓声を上げた。

 

「お前の天下もここで終わりだ!!」

「ざまーみろ一丈字!!」

「いや、待て。落ち着くんだ。落ち着かないとどんでん返し来るぞ」

「ああ…」

 

 と、良い感じに盛り上げていたが、バンドガールズは何も言わなかった。

 

香澄「天下って何の事?」

こころ「それはそうと、ラッキースケベってなにかしら?」

美咲「ちょ、こころ!!」

 

まりな「ラッキースケベっていうのは、わざとじゃないんだけど女の子の胸を触ってしまったり、パンツを見てしまったりする事よ」

こころ「そうなの。でもしようと思ってしたんじゃないわよね?」

 こころが喋ると、美咲が止めた。だが、男子生徒達はロックオンしていた。

 

美咲(馬鹿ね。こころは怒らないけど、黒服達に消されるわよ)

 と、美咲は男子生徒達に対して冷ややかな視線を送っていた。

 

飛鳥「言葉を選ばないといけませんねー。本人達もいますし」

 飛鳥が腕を組んだ。

 

まりな「それじゃシンキングタイム! まずは、ポピパから行きましょうか!」

 

【戸山香澄】

 

飛鳥「戸山さんはあまり怒るイメージがないんですよね」

香澄「うんうん。もしそうなったら「飛鳥くんのエッチ~」とかってやるよ!」

飛鳥「ご本人が答えてくれました。あと、戸山さんすっごい良い子ですね」

まりな「そ、そうね…」

 

 飛鳥の目が死んでいた。

 

【花園たえ】

 

飛鳥「花園さんか…」

たえ「どんなイメージがあるの?」

飛鳥「いや、実際そうなったらどうします?」

 

 飛鳥がたえと話をした。

 

たえ「飛鳥くんが話してくれたら話す」

飛鳥「何ていうかその…。え、なに? って感じで済ませそう」

たえ「そんな事ないよ。流石に恥ずかしいし」

飛鳥「あ、そうなんですか…」

たえ「ただ一言だけ「エッチ」っていうよ」

 

 空気が止まり、一部のメンバーがこんな想像した。

 

たえ「…エッチ///」

 

 ちょっとムスッとして、頬を赤らめて言い放つたえの姿を見て、ちょっとときめくのだった。

 

「イイ!!」

「程よい恥じらい!!」

「おたえちゃんらしい!!」

 

 と、男子生徒達も興奮していたが、たえは男子生徒達に対して露骨に冷たい視線を向けていた。

 

「その視線もたまんない!!!//////」

 

【牛込りみ】

 

飛鳥「牛込さんか…」

りみ「……」

 

 飛鳥が気まずそうにしていたが、りみも困った顔をしていた。

 

飛鳥「泣いてそうですね」

りみ「う、うぅ…」

飛鳥「で、戸山さん達に怒られるってパターン」

まりな「あー…」

 

 飛鳥の言葉にまりなが突っ込んだ。

 

飛鳥「そういや時々思うんですけど」

「?」

飛鳥「どうして女子の制服ってスカートなんでしょうね。ズボンでも良い気がするんですよ」

まりな「ズボン派なの?」

飛鳥「いえ、ラッキースケベに関する心配が減るので…」

 飛鳥が正面を向いた。

 

飛鳥「時々生きる事に対して息苦しさを感じるんですよ。なんででしょう」

まりな「おーい。落ち着いてー」

 

 飛鳥がどんよりし始めたので、まりながフォローした。

 

香澄「あ、飛鳥くん…?」

たえ「何かとっても辛そう…」

 有咲と美咲は何となく察した。確かに男の立場からしてみたらそうだろうな…と。

 

【山吹沙綾】

 

飛鳥「ちゃんと謝れば1回目は許してくれそうですね」

沙綾「あら」

飛鳥「…あくまでもイメージですけどね」

 飛鳥が視線を逸らした。

飛鳥「もうそうならない事をただひたすら願うしかないですよ…」ズーン

まりな「飛鳥くん…。昔、何かあったの?」

飛鳥「価値観合わなくて同級生と喧嘩ばかりしてましたから、もうひっそりと暮らしたいんですよ」

 飛鳥の発言で段々気まずい空気になっていた。

 

飛鳥「まあ、イメージで語ってますけど、実際は怒らない人なんていませんよ。月島さんは如何ですか」

まりな「そ、そうね…。確かに恥ずかしいって気持ちはあるし、む、胸とか触られたら…そりゃあちょっとは…////」

 まりなの言葉に飛鳥が目を閉じた。

 

飛鳥「それでいいんですよ。怒っていいんです」

まりな「!」

飛鳥「素直に気持ちをぶつければいいんですよ。ただ、やり過ぎるのが良くないだけですので」

 と、飛鳥は苦笑いした。

飛鳥「次行きましょう」

 

 飛鳥の言葉に対して、バンドガールズは困った顔をしていた。

 

美咲「相当苦労してたんだね。一丈字くん…」

有咲「……」

 

【市ヶ谷有咲】

 

飛鳥「間違いなくぶん殴られますね」

有咲「一丈字ぃ?」

 

 飛鳥がきっぱり答えたので、有咲が皮肉気味に突っ込んだ。

 

飛鳥「いや、殴られるっていうか、ビンタされますね」

有咲「一丈字くん。私のイメージどうなってるのかなー?」

飛鳥「え、実際どうなんですか?」

有咲「そりゃ殴るけど」

飛鳥「そうなんじゃないですかー。今にもこんな発言をした事で殴りそうじゃないですか」

有咲「確かにそうだけど!!」

飛鳥「それでいいんですよ、気が済むなら」

有咲「……!」

 

 飛鳥の言葉に有咲が反応した。

 

飛鳥「まあ、度が過ぎれば警察沙汰ですが」

有咲「よーし分かった一丈字。殴らないから、後でちょっとだけ話させてくれ」

飛鳥「はい」

 

まりな「おっと。お時間が来てしまったようですね」

飛鳥「結局何だったんですかこの時間…」

まりな「大丈夫よ。香澄ちゃん達を信じなさい」

飛鳥「は、はい…」

 

 そしてどうなったかっていうと…。

 

沙綾「あの、確かに下着とか見られるのは恥ずかしいけど、そういう理不尽な事はしないから安心してね?」

りみ「あ、で、でも見た事は忘れてください…////」

飛鳥「何か…すみませんね。気を遣って頂いて」

有咲「気を使わせたのはお前だろ!」

飛鳥「そうですね。出来ればお手柔らかにお願いしたいです」

有咲「…ハァ。分かったよ」

 

 と、ポピパから同情された。

 

香澄「飛鳥くん。有咲の今日の下着の色教えてあげよっか?」

有咲「お前はぶん殴る」

香澄「ちょ、やめて有咲!! ぎゃー!!!!」

 

 冗談を言った香澄に対して、有咲がアイアンクローを仕掛けた。

 

たえ「まあ、元気出してよ」

飛鳥「はい」

 

 

おしまい

 



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第90話「オリ主オーディション!」

 

 

 

 ある日のバンドリ学園。体育館であるイベントが行われていた…。

 

「はい、次の方どうぞー」

 

 と、大和麻弥が呼びかけた。そして彼女の横にはバンドガールズがずらりと並んでいて、彼女たちの前に一人の男子生徒が立たされていた。

 

「エ、エントリーNo.25、ま、〇〇です!!」

麻弥「〇〇さんですねー。よろしくお願いします」

「よ、よろしくお願いします!!」

 

 男子生徒の様子を見て、千聖が厳しい表情を浮かべてこう言い放つ。

 

千聖「どうしてあなたはこのオーディションを受けようと思ったの?」

 

 そう、彼女たちは今オーディションをしていたのだ。

 

「は、はい! それは一丈字飛鳥さんに憧れて…」

千聖「けどおかしいわね。あなた、此間他の男子生徒といっしょになって、一丈字くんにいちゃもんをつけたわよね?」

「め、めっそうもな…」

千聖「私、見てたのよ?」

 

 千聖の演技力に圧倒してしまったのか、男は黙り込んでいた。

 

千聖「オーディションに受かるために多少うそをつくことも大事だけど、もうちょっと上手くやらないと、すぐに見抜かれるわよ」

「は、はい…」

千聖「というわけで今回は不採用。またの機会にして頂戴」

 

 うなだれる男子生徒を、ほかの男子生徒達が見ていた。

 

「やっぱり厳しいな…千聖ちゃん」

「けど、千聖ちゃんの演技が生で見れるんだぞ」

「たまんねぇ…あの厳しい視線」

「けど、どうして急にオーディションをやろうって思ったんだろう?」

 

 一人の男子生徒の言葉に男子生徒達が驚いた。

 

「そんなの決まってるだろ! 一丈字のやつ、ついに愛想つかされたんだ!」

「読者にもいちゃこらばっかりしてて飽きたって言われたしなぁ!! いい気味だ!!」

 

 男子生徒達は飛鳥がバンドガールズに嫌われると思って、有頂天になっていた。

 

「このチャンスを逃さない手はねぇ!」

「絶対につかみ取るぞ!!」

 

麻弥「あのー。他の人もオーディション中なので、お静かにお願いします…」

「あ、はーい!」

千聖「失格でいいんじゃないかしら」

「いやいやいやいやいや!!!!」

 

 千聖の言葉に男子生徒達が慌てだした。飛鳥が失脚してチャンスだと言い放った矢先に失格になろうものなら、完全にギャグマンガである。男子生徒達はそうなりたくなかった為、必死に食い下がった。

 

 そんなこんなでオーディションは続き…。

 

「エントリーNO.28。〇〇です」

 

 と、イケメンの男子生徒がやってきて、そうではない男子生徒達が憤慨した。

 

「なんでイケメンがオーディション受けてんだよ…!!」

「その辺の女狙えよな…!!」

「空気読めよ…!!」

 

 ここまで言われると完全に言いがかりである。だが、イケメン風の男は全く気にせず、オーディションを続けようとした。

 

千聖「このオーディションを受けようとした理由を教えてください」

「そんなの決まってる。君たちと釣り合うのは僕だ」

千聖「不採用。話にならないわ」

「なっ!!」

 

 千聖があっさり通知を言い渡した事で、不細工軍団のテンションが高くなった。

 

「誰が不細工軍団だ!!」

「でもあのイケメンざまあ!!」

「イエーイ!!!」

 

 一部は自覚があったのか、構わず喜んでいた。だが、イケメンは全く腑に落ちず、千聖たちに食い下がろうとしていた。

 

「な、なぜだ!?」

千聖「あなたみたいな人、結構苦手なの。もうちょっと謙虚さを持ってほしいわね」

日菜「そーだね。なんか偉そうでるんってしない」

「ひ、日菜ちゃんまで…」

 

 実はこのイケメン。日菜の大ファンであり、タペストリーなどを購入しては…ここでいうのはやめましょう。

 

 で、そんなこんなで合格者は出ませんでした。

 

 

**********************:

 

 

友希那「はあ…時間の無駄だったわ」

 オーディションが終わって、香澄たちが後片付けをしだした。

 

沙綾「それにしても飛鳥くんも思い切ったことするわね。男子たちにもチャンスを与えようなんてさ」

有咲「もし合格者を出したらどうするつもりだったのかな…」

こころ「その時は主人公交代するって言ってたわ?」

「!!?」

 

 こころの言葉に皆が驚いた。

 

花音「ふぇえええええ!!?」

はぐみ「そーなの!!?」

こころ「まあ、そんな事させないわ」

 

 こころがいつになく真剣な表情で言い放った。

 

たえ「そのココロは? こころだけに」

こころ「そんなの決まってるわ」

 

 こころが皆を見た。

 

こころ「飛鳥はあたし達のために今まで頑張ったり、戦ってくれたもの。そんな良い子に優しくしない訳にはいかないわ」

 こころの言葉に皆が驚いた。

 

有咲「…そうだな。あいつ、なんだかんだ言って私たちの為に色々やってくれたもんな」

イヴ「撮影が終わった時も、お菓子とか差し入れしてくれてましたし」

たえ「そういや、舞台になってる学校の教室とかも掃除してたよね」

「え、それは初耳なんだけど」

 

 皆がたえを見た。

 

千聖「結果的にあれよ。日頃から努力して人を思いやれる人間と、何の努力もしなくて人を馬鹿にする人間の扱いが同じなわけないじゃない」

麻弥「手厳しいっすね…。確かにそうだけど…」

 

 千聖の言葉に麻弥が苦笑いした。

 

香澄「そういや思ったんだけど、今日飛鳥くん何やってるの?」

「さあ…」

「用事があるとしか…」

 

 そのころの飛鳥。

 

「く、くそー!!!!」

「拘束させてもらう。大人しくしときなよ」

 

 たった一人で犯罪グループを退治していた。これは本業である超能力者としての仕事であり、飛鳥は無線で上司に報告した。

 

飛鳥「こちら一丈字。ターゲットを全員拘束しました。直ちに帰還します」

 

 

おしまい

 



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第92話「前に出すぎることなかれ」

 

 

 今日も今日とて飛鳥が大活躍した。

 

「大丈夫!? 一丈字くん!!」

「あ、いえいえ。私は何ともございませんよ」

 

 Poppin’partyの山吹沙綾が話しかけてくると、飛鳥は何ともなかったかのようにふるまった。

 

「うえ~~~~~ん!!!」

「本当に…本当になんてお礼を言えば…」

飛鳥「いえいえ。お子さんがご無事で何よりです」

 

 事の顛末はこうだ。下校中、何も考えずに飛鳥は歩いていたが、なにやら変な運転をしている車を発見。そしてその車が走っていた子供を轢きかけたため、飛鳥は瞬時に超能力を使って、少年を抱えて移動させた。

 

 本来であれば少年を自分のところに引き寄せればよいのだが、それを使用するにはあまりにも不自然で、騒ぎが大きくなる可能性が高かったため、このような対処を取る事になったのだ。

 

飛鳥「私はこれにて失礼します」

「あ、ちょっと待って! 名前だけでも…」

飛鳥「一丈字です。それでは」

沙綾「あ、ちょっと!!」

 と、飛鳥が去っていった。

 

沙綾「……」

「も、もしかしてお知合いですか?」

沙綾「は、はい。同級生です…」

 

 後日…。

 

飛鳥「……」

 飛鳥が学校に来たが、大騒ぎになる事はなかった。

 

飛鳥(よかった…。幸い大ごとにしないようにしてくれたんだな)

 

 沙綾や校長が気を利かしてくれたのだと思い、飛鳥は一息ついた。

 

 そして3組の教室にやってきても、クラスメイト達は事故の事は一切話さず、いつも通りにしていた。

 

飛鳥(クラスの皆もいつも通りだ)

 

 午前中の授業、昼休憩、午後の授業と時間が過ぎていったが、誰も事故の事について話さなかった。

 

飛鳥(…もしかして、弦巻家が関わってるのかな?)

 あまりにも事故の事について触れられないため、飛鳥も流石におかしいと感じ始めた。

 

飛鳥(まあいいや。結果的にあの子供が無事だったんだから。大体こういう時大騒ぎになってたから困ってたし…。本当に助かった…)

 

 飛鳥は心の底から安心していた。これがいつもなら、クラスメイトたちが騒いで、学校でも表彰されて、香澄たちから褒められて、彼女たちのファンたちから滅茶苦茶怒られるというのが、ルーティンとなっていたが、今回はなかった。

 

飛鳥(まあ、お約束がなくなったと考えればよいのか…)

 

 と、飛鳥はそう自分に言い聞かせながら、学校を去っていった。

 

 

 翌日。

 

飛鳥「おはようございま…」

「一丈字!!!」

「一丈字くん!!」

 

 飛鳥が3組の教室に来るや否や、クラスメイト達が飛鳥に詰め寄った。

 

飛鳥「どうかされました?」

「どうかされましたじゃねーよ!! お前此間車にひかれかけてた子供を助けただろ!?」

飛鳥「え?」

「新聞に載ってるわよ!! これ!!」

 と、飛鳥が女子生徒から新聞を見せてもらったが、確かに新聞に載っていた。

 

『大手柄 バンドリ学園の男子生徒が間一髪で男児を救出』

 

飛鳥(やっぱりダメだったか…)

 目撃者が沢山いた為、飛鳥はやっぱり誤魔化せなかったと諦めていた。

 

「それから弦巻さん達が探してたよ」

飛鳥「?」

「怒ってたみたい」

飛鳥「あー…」

 

 飛鳥が怒ってる理由について心当たりがあった為、素直に納得した。

 

飛鳥「分かりました。怒られてきます」

 

 そして…。

 

香澄「飛鳥くん!! 聞いたよ!! 車にひかれかけた子供を助けたって…」

飛鳥「ええ」

 香澄が困ったように言い放った。

たえ「間一髪って事は…下手したら一丈字くんも…」

有咲「昨日何事もなく登校してたから何も言わなかったけど、本当に大丈夫なのか!!?」

飛鳥「ええ。大丈夫ですよ。それよりも山吹さん…」

 飛鳥が沙綾を見た。

 

飛鳥「あなたがお話しされたのですか?」

沙綾「そうよ…」

飛鳥「そうですか…」

 

 沙綾の言葉に飛鳥はこれ以上追及しなかった。

 

美咲「その…子供が助かってよかったけど…、いくらなんでも無茶しすぎよ!」

はぐみ「そ、そうだよ!」

飛鳥「ご心配おかけしました。すみません」

 飛鳥が謝罪した。

 

香澄「本当に怪我とか大丈夫なの!?」

飛鳥「ええ。怪我はしておりません」

香澄「本当に?」

飛鳥「ええ。今日また事情聴取があるんですけどね…」

「!!」

 飛鳥が香澄たちを見た。

 

飛鳥「本当にごめんなさい。次はこんな事がないことを祈るしかございませんが、なるべく無茶しないようにします。失礼します」

「あっ…」

 

 と、飛鳥は逃げるように1組の教室を去っていった。

 

 夕方。警察署で事情聴取が終わった後、飛鳥は公園のベンチに寝そべっていた。

 

飛鳥「あーあ…。結局どうすればよかったんだろ」

 飛鳥は空を見上げてぼーっと考えていた。

 

飛鳥「まあ、後悔はしてないけどさ…」

 飛鳥が立ち上がって、助けた子供とその母親の事を思い出した。

 

飛鳥「それでも死んじまうよりかはマシさ」

 そう言って飛鳥はその場を後にした。

 

 

おしまい

 



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第93話「触らぬ神に祟りなし」

 

 ある日のバンドリ学園。もうすぐ文化祭が行われる事になったのだが…。

 

 食堂。飛鳥はこころやモカと一緒に食事をとっていたのだが…。

 

飛鳥「…1組と2組はコスプレ喫茶するんだね」

モカ「まあ、そうなるかな~。2組はチャイナ喫茶で~」

こころ「1組はアニマル喫茶をするのよ!」

 

 こころの発言に飛鳥が片眉を上げた。

 

飛鳥「アニマル喫茶って…着ぐるみとか着るの?」

モカ「ううん。動物のコスプレなんだけど、露出度高めのエッチなコスプレだよ~」

飛鳥「えー。なんでそんな事になったの?」

こころ「香澄とはぐみが此間のテストで赤点を取ってしまったからよ?」

飛鳥「またか…」

 

 実は先日定期テストがあり、女子の赤点が1人もいなければアニマル喫茶は否決して、普通の喫茶店をする話になっていたのだが、香澄とはぐみが赤点を取ってしまい、男子の意見が可決してしまった。

 

 ちなみに2組は普通に多数決だった。女子たちはもちろん抗議をし、男子たちにも仕事をさせるように言ったのだが、近年女子達が楽な仕事しかしていないという苦情が殺到していた為、意見が通らなかったという。1年生からしてみたらとんだとばっちりである。

 

モカ「先生たちが大人の権力使ったんじゃないかな~」

飛鳥「……」

 

 モカの言葉に飛鳥は眉をひそめた。

 

飛鳥「そういやチャイナ喫茶って何?」

モカ「あれだよー。モカたちがチャイナ服着て接客するんだよ~。蘭やひーちゃんが物凄く嫌がってたよ~」

飛鳥「そ、そっか…」

 飛鳥が困惑した。

 

こころ「そういえば3組は何をするのかしら?」

飛鳥「え? 自由研究の展示会」

モカ「…なにそれ」

飛鳥「生徒全員が自由研究をして、そのまとめた資料を教室に展示するんだ」

 

 飛鳥の言葉にモカが不思議そうにしていた。

 

飛鳥「…ぶっちゃけうちのクラス。文化祭に対して消極的なんだよね。で、もう皆めんどくさい事やりたくないから、適当に展示して終わりにしようって事」

モカ「つまんなさそうだけど、チャイナ喫茶よりかはずっとマシだな~。いいな~」

 

 モカがもたれた。

 

こころ「見に行くわ! ちなみに飛鳥は何について調べたの!?」

飛鳥「それは当日のお楽しみ」

 

 こうして、文化祭の準備が進められていったが、3組はすぐに終わった。

 

飛鳥「はー。本当に楽ちんですね…」

「そうだね…」

「正直、陽キャラのノリ苦手…」

飛鳥「分かります」

 と、3組がある方向を見た。

 

ひまり「やっぱり男子もコスプレするべきよ!」

「駄目。ちゃんとやりなさい」

「そうそう。オレら力仕事全部やってるんだから」

 

 ひまりをはじめ、女子たちはまだごねていた。

 

「大変だろうな…1組と2組」

飛鳥「うーん…」

 

 ちなみに3組の女子もコスプレは嫌がっていたが、3組の男子が特に何も言ってこなかったので、ほっとしているが、文化祭に対して消極的なのはちょっと心配していた。

 

「本当は男子にコスプレさせても良かったんだけど…」

「今はもう上級生しかやってはいけないっていう暗黙のルールがあるからねぇ…」

 

 ちなみに3組がコスプレと全く関係ない事をしていたおかげもあり、出し物に関する審議も簡単に済んだ。

 

飛鳥(まあ、頑張ってね…)

 

 飛鳥は恐らく来たら殺されるだろうと思い、バンドガールズがいるクラスの出し物にはいかない事にしていた。ちなみに2年1組と2組も女子がコスプレをする事になっていた。

 

飛鳥(絶対嫌な予感しかしない)

 

 そして文化祭当日。当番はじゃんけんで負けたメンバーがやる事になったが、飛鳥はじゃんけんで勝ってしまった為、1日中自由だった。

 

飛鳥(立候補したんだけどなぁ…)

 

 飛鳥は一応当番に立候補したが、なぜかじゃんけんで負けた人が当番をやる事になり、飛鳥はじゃんけんで勝ってしまって、外れてしまった。

 

飛鳥(何か悪意を感じるぞ…)

 

 と、心の中で嘆きながら飛鳥は中庭のベンチに腰を掛けて、空を見上げた。

 

飛鳥「戸山さん達、頑張ってるかなぁ…って、黒服さーん。ベンチごと持っていかなくても行きますってば」

 

 と、飛鳥は黒服達の手によって1年1組の教室に行くことになったが、案の定1組と2組は長蛇の列だった。3組は何か老人が集まっている。

 

飛鳥「何かちょっと突っ込みたい所があるけど、まさか割り込みとかしませんよね?」

黒服A「ご心配なく」

黒服B「我々がいれば、一丈字様もここにいても問題はございません」

黒服C「是非こころお嬢様の雄姿を遠くから見守っていただきたいのです」

 と、黒服達とともに様子を見たが、とても大盛況だった。心の底から楽しんでる人、恥ずかしがっている人、怒ってる人とか色々いたものの、お客さんは満足していた為、飛鳥も心配はいらなさそうだと笑みを浮かべていた。

 

飛鳥「ええ。ちゃんと働いてますね」

黒服C「そうですね。ちなみに2組も同じように働いていますか?」

「ええ」

 

 ちなみに2組はAfterglowが頑張っていたが、蘭はずっと臍を曲げていたが、そこがかえって大受けした。

 

飛鳥(要はかわいい姿が見れれば何でもいいって事ね…)

 飛鳥は心の中で苦笑いした。また、2年生のクラスも同じ感じであり、コスプレ喫茶は大成功を収めていた。

 

飛鳥「…黒服さん」

黒服A「何でしょう?」

飛鳥「もう行きましょう」

黒服B「行かなくてよろしいのですか?」

飛鳥「ええ。これだけお客さんがいれば、問題ないでしょう。それに、こころお嬢様たちは皆の人気者ですからね」

黒服C「一丈字様…」

 

 すると並んでいた男子生徒達が飛鳥を睨みつけた。

 

「おい、何だよ」

「順番だぞ! 並べよ!」

飛鳥「あ、すみません。私はここで失礼させていただきます」

「?」

飛鳥「それではごゆっくり」

 

 そう言って飛鳥は黒服達と共に去っていき、適当に時間を潰していた。

 

 

飛鳥「ちゃんと見張りはつけて貰ったし、後はこのまま何もないことを祈ろう」

 

 

おしまい

 

 



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第94話「ちょっとだけ本気出した飛鳥」

 

 

 今日も今日とて、バンドガールズはバンド活動に精を出していた。

 

香澄「イエーイ!」

「わあああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 定期的に行われる学内ライブは毎回大盛況であり、香澄たちの人気も不動のものになっていた。

 

「……」

 そんな中、飛鳥はというと、裁縫のバイトをしていた。時折日雇いでアルバイトをしている。

 

「いやー。一丈字くんは5人分の仕事をしてくれるから助かるよ!」

「しかも完璧!」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 と、バイト先の店長に褒められていた。

 

飛鳥(それぞれのステージがそれぞれ頑張ってる。それはとても良いことじゃないか)

 

 そして黒服達から、ヤラカシ達の様子も定期的に聞いていた。

 

飛鳥「そうですね…。今度はそのハンバーガーショップを重点的に取り締まりましょうか。それでは」

 飛鳥が通話を切って、ソファーに腰がけた。

 

飛鳥「モカやこころからも最近問題ないって言われてるから、この調子がずっと続けばいいんだよな…」

 

 飛鳥がそう呟くと、笑みをこぼした。

 

飛鳥「余裕が出てきたし、ちょっと本気でやってみるか」

 

 そして飛鳥は努力を重ねつづけた。学業の勉強を通じて知識を増やしていき、バイトを通じて技術を身に着け、そしてまたはイベントや仕事で、実力を発揮する。それを続けてきた。

 

 その結果…。

 

「一丈字くん。ウルトラマラソン走破おめでとう」

 

 飛鳥は100㎞もあるウルトラマラソンに挑戦して見事走破し、全校生徒の前で表彰されたが、生徒達が驚いていた。

 

「はい、ざわざわしない!!」

 と、教師が生徒達を静かにさせようとしたが、教師たちも内心驚きが隠せなかった。

 

 教室に帰ってくると…。

 

「一丈字くん。いつから練習してたの?」

飛鳥「日頃から筋トレとかしてますよ」

 

 飛鳥はクラスメイト達から質問攻めにあっていた。

 

「でもどうしてマラソン?」

飛鳥「走りたくなったから」

「いやいやいやいや…」

 

 そんな理由で100㎞を8時間で走れないだろとクラスメイト達が思った。

 

「体育館で体育の授業を受けてるのは見た事あるけど…」

「そこまで運動神経良いなんて知らなかった…」

飛鳥「そんな事はございませんよ」

 

 と、飛鳥は謙遜していたが、マラソンを100㎞走破した今、謙遜なんてまったく意味がなかった。

 

 そんな時だった。

 

「飛鳥くん!」

 

 香澄を筆頭にPoppin’partyが現れた。

 

飛鳥「どうかされました?」

香澄「マラソン100㎞も走ったって本当なの!?」

飛鳥「ええ」

「ええええええええええええ!!!?」

 

 飛鳥の言葉に香澄たちが驚いた。

 

たえ「か、簡単に言うね…」

りみ「……!」

 

 困惑するたえとりみだったが、飛鳥はいつも通りだった。

 

沙綾「それはそうと、急にどうしたの…?」

飛鳥「いやあ。山吹さん達がバンド活動がんばってるのを見て、私も頑張らなきゃーって思っただけですよ」

有咲「いや、どう考えてもお前の方が頑張ってるだろ!!! ホントにどうしたんだ!!?」

 

 飛鳥があっけらかんに言うと、有咲が慌てて突っ込んだ。

 

飛鳥「まあ、足がちょっとパンパンになってしまったんですがね」

ポピパ「……」

 

 飛鳥が普通に言うと、香澄たちは言葉を失っていた。

 

 そして昼休憩。

 

飛鳥「?」

 飛鳥が教室を出ようとすると、友希那からメールが来た。

 

飛鳥「話したいことがあるから、食堂に来なさい…」

 飛鳥が考えたが、断りのメールを入れて、どこかに行った。

 

飛鳥(まあ、ファンの男子たちが待ち伏せしてるだろうしな…)

 

 同じころ、友希那、紗夜、リサ、燐子が食堂で待っていたが、断りのメールが来ていたことがわかり、友希那が苛立っていた。

 

友希那「来させるわ」

紗夜「…どう考えても避けてますね」

リサ「でも、急にどうしたんだろう…。飛鳥くん…」

友希那「遂に化けの皮がはがれたようね」

 

 友希那が正面を向くと、ファンの男子生徒達が待ち伏せていた。

 

友希那「…断りを入れた理由が分かったわ」

紗夜「そうですね…」

 

 友希那の言葉に紗夜が同意すると、リサと燐子が困惑した。

 

 そして飛鳥は中庭の公園に一人たたずんでいた。

 

飛鳥「……」

 

 この時、バンドガールズから不在着信がたくさん来ていたが、飛鳥は教室に帰ってから程よく返信した。

 

 放課後、飛鳥が帰ろうとすると黒服達が待ち構えていた。

 

飛鳥「どうされました?」

「こころお嬢様がお呼びです。ご同行願います」

飛鳥「分かりました」

 

 と、飛鳥が黒服達に連れられて、こころと合流したが、ほかのバンドメンバーたちもいた。

 

飛鳥「これはこれは…」

千聖「随分大活躍したみたいね。飛鳥くん」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 千聖がにらみを利かせたが、飛鳥は動じず、視線を横にやった。

 

千聖「早速本題に入っていいかしら?」

飛鳥「はい」

千聖「どうして今日、私たちを避けてたの?」

飛鳥「ちょっと喋っただけで、周りからイチャイチャしてると思われるからです」

 飛鳥の発言に空気が止まった。質問した千聖も唖然としていた。

 

香澄「飛鳥くんは私たちとお喋りするのが嫌なの!?」

飛鳥「とんでもない。楽しいですし。ですが、色々あるんですよ」

 香澄の言葉にも飛鳥は堂々としていた。

 

モカ「飛鳥く~ん」

飛鳥「?」

モカ「もう90回もやってるし、そりゃ飽きるときは飽きるよ~」

飛鳥「……」

蘭「いや、何の話してんの」

モカ「それにさ~」

 

 モカが飛鳥に近づいた。

 

モカ「モカちゃん達だって、ただ単に飛鳥くんといちゃこらしてる訳じゃないんだよ~?」

飛鳥「……?」

 

 モカの言葉に飛鳥が片眉を上げた。

 

モカ「頑張った人はちゃんと報われるし、頑張らない人は何もないっていう事を、伝えるためでもあるのですよ~。努力して結果を出したら、可愛い女の子たちに囲まれる。すごく夢があると思うな~」

 

 モカの言葉に飛鳥が困惑した。

 

「それだったらオレ達も努力したら、一丈字と同じように扱ってくれますか!!?」

 と、ファンの男子生徒達が現れた。

モカ「ゼロではないね~」

「いよっしゃあああああああああああああああああああ!!!」

「やってやるぅ!!」

 

 と、男子生徒達が興奮して去っていった。

 

ひまり「ちょ、ちょっとモカぁ!!」

巴「本当にいいのか!?」

モカ「大丈夫だよー」

「?」

モカ「ちゃんと選択する権利があるからー」

 モカの言葉に皆が驚いた。

 

モカ「そういうわけで男子諸君。モテたかったら、楽しないでね~」

飛鳥「誰に言ってるんですか」

 

 どこまでもマイペースなモカに飛鳥が困惑した。

 

 

おしまい

 



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第101話「ポケモンタワー」

第101話

 

 とある夜。

 

「ごめ~ん…。また忘れちゃって…」

「本当にいい加減にして」

 

 ひまりがまた学校に大事な参考書を忘れてしまい、Afterglowの5人が夜の校舎に取りに行ったものの、蘭が半ギレだった。これが夜の学校でなければ、まあしょうがないなという感じで済ませたが、彼女はお化けが苦手だったので、こればっかりはひまりに当たった。

 

つぐみ「ま、まあまあ…」

巴「かといって、ひまりを見捨てるわけにはいかんしなぁ…。でも、出来るだけ気を付けてくれ…」

 

 つぐみがなだめ、巴も言葉をつづけたが、巴も結構お化けが苦手だったりする。

 

モカ「今度は本当に幽霊出たりするのかなぁ~」

蘭「モカ」

モカ「ごめ~ん」

 

 蘭が本当に切れていた為、モカはこれ以上何も言わない事にした。

 

 十数分後、ひまりは参考書を回収した。

 

ひまり「あった!!」

蘭「よし! すぐに帰ろう! 今すぐ帰ろう!」

モカ「落ち着こうよ~」

 

 その時だった…。

 

「…レ」

 

 という声がした。

 

蘭「な、何!?」

巴「モカ! やっていい冗談と悪い冗談があるぞ!!」

モカ「え~。どう考えてもあたしの声じゃないでしょ~」

 5人がキョロキョロ見渡したが、つぐみとひまりが青ざめていた。

 

つぐみ「これって…」

ひまり「やっぱり…」

 

「タチサレ…タチサレ…」

 

 という5人の誰でもない低い声がして、モカ以外の4人が青ざめ、5人が同じ方向を向いた。するとそこには…

 

 白目で薄笑いをし、浮いている黒い物体が存在した。

 

「タチサレ…タチサレ…」

 

 幽霊の姿を見た瞬間、モカ以外の4人が悲鳴を上げて教室を飛び出したが、巴がモカを抱えていた。

 

「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 という、Afterglowの悲鳴が学園内に響き渡った。

 

********************

 

 翌日…

 

モカ「という訳で、蘭もひーちゃんも、トモちんもつぐも今日はお休みでーす」

「そ、そう…」

 

 モカは飛鳥、こころを屋外のカフェテリアに呼び出して相談をしていた。モカだけ平然としていた為、飛鳥は困惑していた。

 

こころ「幽霊なんて面白そうね!」

飛鳥「私から見たら、あなたが一番面白いけどね…」

モカ「いやいや、飛鳥くんも面白いよ~」

こころ「モカも面白いわよ!!」

飛鳥「いや、何ですかこの会話」

 

 と、飛鳥が突っ込んだ。

 

飛鳥「それで…私たちにお話があるというのは、やっぱりそういう事なんですよね」

モカ「そう。あの幽霊を調べてほしいんだ~」

飛鳥「分かりました…って、まあ普通にお祓いをすれば良さそうだけどね」

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「そういや美竹さん達が目撃する前にも、幽霊って出てきたのかな?」

モカ「それが聞いてみたらあったみたいだよ~。モカちゃん達は何も知らないまま幽霊がいるところに来ちゃったみた~い」

飛鳥「……」

 

 飛鳥はへの字にした。

 

飛鳥「分かりました。調査をしてみます」

こころ「そうだわ! 実際に学校に行ってみましょう!」

飛鳥「そうですね。ただ…」

「?」

 こころとモカは飛鳥を見た。

 

飛鳥「事前に調べておいた方が良さそうですね。こんな騒動になっている上に、時間帯を考えたら先生たちが何も知らない訳がございませんし」

 

 その時だった。一匹の子猫が迷い込んできた。

 

「あおんあおん」

 

こころ「まあ、子猫ちゃんがいるわ!」

モカ「あー。そういやあの子猫。最近ずっとこの学校をウロウロしてるんだよねー。人間が近づくと逃げるけど」

飛鳥「そうですか…」

 と、飛鳥が猫を見た瞬間、とてつもない寒気を感じた。

 

飛鳥「!!!」

モカ「…飛鳥くん?」

 

 飛鳥の脳裏には子猫と母猫が男子生徒達に襲われて、そのうち母猫がとらえられてしまった。子猫はそのまま逃げたのだが…。

 

飛鳥「……」

 飛鳥が冷や汗をかいた。

 

モカ「どうしたのー? もしかして、何かあったりするー?」

飛鳥「…ええ。本当に調べた方が良さそうですね。夜間滞在許可証を貰ってきます」

こころ「あたしも行くわ!」

飛鳥「それはやめといた方が良い」

こころ「何で!? あたしは幽霊怖くないわよ!?」

飛鳥「確かに耐性ありそうだけど、どうやら今回は本当に幽霊がいそうだな…」

モカ「え、どういう事?」

飛鳥「ここで話すのはアレなので、人のいない場所でもう一度話しましょう」

モカ「じゃあ、許可証3人分貰ってきてね~」

飛鳥「え?」

モカ「え? って、そんなのあたしも行くからに決まってるでしょ~」

飛鳥「……」

 

 そして飛鳥は3人分の許可証を貰いに職員室に行ったわけだが…。

 

「ああ。実はあの幽霊って理科の松田先生が趣味でやってる発明品から作り出したものなんだよ。最近どれだけ言っても帰らない生徒が多いから」

飛鳥「そのことなんですが…」

黒服A「本物の幽霊がいるという情報をつかみました」

「いやいや、まさか…」

こころ「本当よ!?」

黒服B「こころお嬢様の仰ってることが嘘だと?」

黒服C「弦巻財閥にたてつくおつもりですか?」

 

 と、黒服達が強引に許可証を作成させた。

 

飛鳥(こういう時は本当に頼りになるなぁ…)

 

 職員室を出ると、

 

「一丈字くん。弦巻さんも」

飛鳥「あ、氷川先輩」

こころ「紗夜!」

 

 と、紗夜と遭遇した。

 

紗夜「どうされたんですか? 黒服の方を引きつれて」

飛鳥「いやあ、ちょっと先日のトラブルの件で説明をしてたんですよ…」

 と、飛鳥が誤魔化した。

紗夜「そうなの? 弦巻さん」

こころ「そ、そうよ! 先日トラブルがあったのよ!」

飛鳥(へたくそぉ…)

 

 こころが必死に誤魔化そうとしていたが、まだ目が泳いでいた為、飛鳥が困惑した。

 

紗夜「…そ、そうですか」

飛鳥(絶対バレてる~~~~~!!!)

 

 飛鳥は黒服達とアイコンタクトを送った。

 

飛鳥「そ、そういう訳ですので失礼しますね!!」

 と、飛鳥が強引に連れ去っていった。

 

こころ「あーん!! なんで嘘をつくのってこんなに難しいの~!!?」

飛鳥「君がものすごい正直者だからだよ…。いい事だけど」

 

 中庭で涙目になるこころに対し、飛鳥はげんなりしていた。ちなみにこころは黒服と一緒に練習をしていたが、あまり発揮できなかったようだ。

 

(こころお嬢様…)

(おいたわしや…)

 

 

 そんなこんなで作戦決行の時が来た。

 

飛鳥「…本当に来たんだね」

モカ「そりゃそうですよ~」

 と、校舎前に飛鳥、こころ、モカの3人が現れた。

 

飛鳥「松田先生にも確認して、夜間滞在許可証が出されてる日はあの幽霊は出さないみたいなので、残りは本物の幽霊を調査する必要がございます」

モカ「あれ、昼間でも出せたからびっくりしたよ~」

 

 放課後に飛鳥たちは松田のところを訪ねて、幽霊を見せてもらったのだ。ちなみに松田はとても気だるげで、無精ひげの生えた30代前半のおっさんである。結婚には全く興味なしだが、実は良い所のボンボンで、兄が家業を継いでいる。

 

飛鳥「さて、行きましょうか」

こころ「ええ!」

モカ「うん」

 

 と、3人が行こうとすると、

 

「待ちなさい!」

「!!」

 

 3人が横を見ると、そこには紗夜の姿があった。

 

飛鳥「氷川先輩!」

モカ「こんなところで何をしてるんですか~?」

紗夜「それはこちらの台詞です。弦巻さんがなにか怪しいと思ったら…」

飛鳥(黒服の人たちは止めてくれなかったのか…。まあ、止めようとしたらこころが嫌われるもんな)

 

 と、飛鳥が考えた。

 

飛鳥「ちょっと忘れ物を取りに来ただけですよ」

紗夜「…忘れ物を取りに行くのに、許可証が必要ですか?」

飛鳥「私個人の忘れ物ではございませんよ」

モカ「まあ、何か本物の幽霊がいるっぽいので、調べてくれって頼まれたらしいんですよ~。飛鳥くんが」

紗夜「はぁ?」

飛鳥「で、他の方に話すと無茶されるだろうし、信じないので内密にするおつもりだったのですが…」

こころ「あたしとモカが付き添うわ! だから心配いらないわよ!?」

 

 こころの言葉に紗夜は少し理解に苦しんだが…。

 

紗夜「こんな事もあろうかと、私も申請書を出しました」

飛鳥・こころ・モカ「!!?」

紗夜「もしあなた方の言ってる事が本当なら、風紀委員として見過ごすわけにはいきません!」

 するとこころの背後から黒服Aが現れて、こころの目を隠し、黒服BとCで紗夜を気絶させた。そして黒服Aが手を離すと紗夜は気を失っていた。

 

こころ「紗夜!!?」

黒服A「氷川様は幽霊に取りつかれてしまったようです」

飛鳥「!!?」

 

黒服B「一丈字様。氷川様の事は我々に任せて先に進んでください」

黒服C「必ずや幽霊の調査をお願いします」

飛鳥「え、あ、はい。行こう…」

こころ「紗夜にこんなひどい事をするなんて許せないわ!!」

モカ(ひどい事したの黒服さんだけどね~)

 

 と、3人が学校の中に入った。

 

飛鳥「……」

 飛鳥が目を閉じて、感知した。

 

モカ「本当に超能力使えるんだね~」

飛鳥「…うん。で、ちょっと集中したいから」

こころ「分かったわ!」

 

 すると飛鳥が幽霊の居場所を突き止めた。

 

飛鳥「いた! ここから一番向こう側の森林エリアにいる!」

モカ「ええー。あそこって確か人が来ないんじゃ…」

飛鳥「…そうだよ。だからここからはオレ一人で行く」

 飛鳥が前から歩き出すと、モカとこころも歩き出した。

 

モカ「そんな言われ方したら行くしかないじゃな~い」

こころ「そうよ! ここまで来たら皆で行きましょう!」

 

 バンドリ学園・奥地森林エリア

 

飛鳥「さあ、来たぜ…」

こころ「ええ…」

モカ「覚悟は出来てるよ…。蘭達の仇!!」

飛鳥「いや、違うから」

 

 と、3人が森の中に進んでいくと、そこには子猫がいた。

 

飛鳥「あの猫…」

こころ「子猫ちゃんがいるわ!」

モカ「でもまだ何かを探してるみたい…」

 

 その時、飛鳥は意を決して子猫に近づいた。

 

こころ「飛鳥!!」

飛鳥「こころ。モカ。そこから絶対に動くなよ」

モカ「!?」

 

 そして子猫を捕まえようとすると、ピリッとした悪寒が飛鳥に襲い掛かった。

 

飛鳥「…やっぱりそうか」

 飛鳥が正面を向くと、そこには黒い影のようなものがあった。

 

モカ「…今、猫のような幽霊が見えた」

こころ「え? 分からないわ! あ、そうだ! 黒服の人たちにスコープを作らせたんだわ! これで見てみましょう!」

 と、こころがスコープを幽霊の方に向けると、幽霊がくっきりと見えた。そこには猫の幽霊が見えた。

 

飛鳥『…聞いてくれ。オレ達はこの子にひどい事をしに来たんじゃない』

「……」

 

 飛鳥が猫の幽霊に語りかけた。

 

飛鳥『見ててくれ』

 

 すると飛鳥が子猫を捕まえると、子猫は震えていて、優しくなでた。すると子猫はとても気持ちよさそうにして、涙を流していた。

 

こころ・モカ「……!」

 

飛鳥『可哀そうに…。お前がいなくなってから、この子はずっとお前の温もりを求めていたんだろう。本当はもっと一緒にいたかっただろうな。この子もお前も』

「……」

 母猫は俯いた。

 

飛鳥『だけどお前はもう行くべき場所へ行かなきゃいけない。それがこの子の為でもあるんだ』

 その時だった。母猫の魂が白く輝いた。

 

「!?」

 そして子猫が飛鳥から離れて母猫に近づいた。そして母猫と子猫が体をくっつけようとした瞬間、母猫の魂は消えた。

 

こころ「えっ…!?」

飛鳥「きっと、成仏したんだよ思うよ。この子の為に」

モカ「……!」

飛鳥「弦巻さん」

こころ「…な、なに?」

 

 飛鳥の言葉にこころが反応したが、こころはモカと共に涙を流していた。

 

飛鳥「…この子の里親を探してくれないか。大切にしてくれる里親を」

 

 

 ******************

 

 翌日

 

こころ「あの子は黒服さんが引き取って、その人の家にお母さんのお墓も作らせてもらったわ!」

飛鳥「ありがとう」

 と、学園の中庭でまた飛鳥、こころ、モカが話をしていた。

 

飛鳥「…で、さっきから後ろで悪寒を感じるのは」

モカ「正直幽霊よりも怖い〜」

こころも困り顔だった。

 

 

「あなた達」

 

 

という声がして、3人が振り返るとそこには紗夜が鬼の形相で睨みつけていた。

 

飛鳥「氷川先輩」

紗夜「何ですか」

飛鳥「ごめんなさい」

紗夜「許しません!」

こころ・モカ「ごめんなさーい!!!」

 

3人は紗夜に追いかけ回されていたという。

 

 

 

 

飛鳥「…あ、第3シリーズ、始まります」

 

おしまい

 



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第103話「雨宿りのPastel*Palletes」

 

 

 ある日の事だった。

 

「あーん!! もう最悪~!!!!」

 

 と、Pastel*Palletesのボーカル担当の丸山彩が叫んだ。彩だけではなく、メンバー全員がいる。彼女達は事務所でバンドの練習をしていたのだが、突然雨に降られてしまったのだ。

 

麻弥「うう…とても冷たいっす…」

イヴ「風邪引いちゃいますね…」

 麻弥とイヴが震えていると、

 

日菜「へっくち!!」

 日菜がくしゃみした。

千聖「大丈夫日菜ちゃん」

日菜「へーきへーき」

 

 日菜が返事をすると、千聖が嫌そうな顔をした。

 

千聖「それにしてもだいぶ濡れてしまったわ…」

日菜「そうだねー。服もスケスケ。ブラも丸見えだよー」

千聖「そういう事言わなくていいから/////」

 

 どこまでもマイペースな日菜に千聖が困惑した。その時だった。

 

「おい、見ろよ。あれ、パスパレじゃね?」

「ホントだ」

「何か濡れてるぞ!」

 

 と、同じ学校の男子生徒5人がやってきた。

 

彩「!!」

千聖「あいつらは…」

 千聖の予想通り、男子生徒達が近づいた。

 

「そんな所でどうしたの?」

「濡れてるじゃん。風邪ひくよ?」

 と、優しく声をかけてくるが、顔が完全に下心丸出しだった。能天気な日菜や、純粋無垢なイヴでも分かった。

 

 これは完全にヤバい奴だと。

 

イヴ「うう…」

 

 男子生徒の気味悪さにイヴがしり込みすると、

 

「そんなに怖がらなくてもいいじゃん」

「オレ達はただ心配してるんだよ?」

 

 と、必要以上にイヴと距離を縮めようとする男子生徒達。それを千聖が遮る。

 

千聖「ありがとう。けど、心配は無用よ?」

(うほっ、結構丸見え…)

(うひょー。こりゃついてる)

 

 男子生徒達は千聖の濡れた姿を見て、興奮していた。

 

「とにかくオレ達と行こうよ」

「駅までさ」

千聖「お生憎様。迎えに来させてるので」

「どうせ一丈字だろ?」

「大丈夫だって。オレ達が送るから」

「無理やりこさせたら悪いよ」

 

 と、男子生徒達も引かないどころか、千聖の手を無理やりつかんだ。

 

千聖「!!」

麻弥「千聖さん!!」

 

「ゴッホン!!」

「!!?」

 

 という咳払いが聞こえたので、皆が同じ方向を見ると、

 

「あー。女の子が襲われてるって通報があったんだが?」

「君たち、ちょっと署まで来てくれるかな」

 

「ひ、ひぃいいいいいいいいいい!!!」

「待て!!」

 と、男子生徒達が退散すると警察官が追いかけて行った。

 

彩「な、なんだったんだろう…」

麻弥「よく分かりませんが…助かりました」

 彩と麻弥が安心していると、日菜がある事に気づいた。

 

日菜「あ!! 飛鳥くんだ!! しかもスマホ弄ってるよ!!」

「!!?」

日菜「おーい!! 飛鳥くーん!!!」

 と、日菜が飛鳥に向かって叫んだが、飛鳥は気づいてないのか、そのまま去っていった。

 

日菜「電話かけよ」

 日菜が電話をかけた。

 

 数分後

 

飛鳥「いや、私通報してませんよ?」

日菜「うっそだー」

飛鳥「それでしたら履歴見ます?」

千聖「履歴って消せるから証拠にならないわよ?」

飛鳥「それでは証拠になるものは何でしょうか」

千聖「私に聞かないで」

飛鳥「私本当に何もしてないんですよ。で、何もしてなくてお礼などをされて、後で違った時に色々言われるの嫌です」

千聖「…正直でよろしい」

 飛鳥の言葉に千聖が困惑しながら突っ込んだ。

 

日菜「えー。本当に飛鳥くんじゃないのー?」

飛鳥「ええ。残念ですが。それよりも早く風呂に入った方が良いですよ」

千聖「それが出来たら苦労しないわよ」

飛鳥「いや、後ろの温泉ハウスなので、風呂入れますよ?」

「!!?」

 飛鳥の言葉に5人が反応すると、確かに温泉ハウスと書いてあり、服や下着も売っている旨が書いてあった。

 

飛鳥「そういう訳ですので、これにて失礼いたします」

 飛鳥が去ろうとすると、日菜が飛鳥をつかんだ。

 

飛鳥「何でしょうか」

日菜「あたし達がお風呂あがるまで待ってて」

飛鳥「ごめんなさい。私ちょっと用事がございまして…」

千聖「用事って何?」

 千聖がジト目で見つめる。

飛鳥「郵便局まで荷物取りにいかないといけないんですよ」

麻弥「た、確かに用事っすね…」

飛鳥「そういう訳ですので」

日菜「それじゃ、荷物を取ってきたらまた戻ってきて! 待ってるから!」

飛鳥「よろしいんですか?」

日菜「うん!」

飛鳥「あ、はい」

 

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

 30分後、飛鳥が温泉ハウスの中に入ると、風呂を浴びたパスパレ5人がロビーで待っていた。

 

飛鳥「お待たせしました」

日菜「荷物何だったの?」

飛鳥「中華鍋です」

 空気が止まった。

 

「中華鍋…?」

麻弥「あ、そういや前にお料理されるって言ってましたね!」

飛鳥「そうなんですよ。で、ちょっと新しいの買ったんですけど、いろいろあって郵送と言う事にしてもらってたんですよ」

 と、飛鳥が苦笑いした。

 

日菜「今度飛鳥くんの手料理食べてみたーい!」

麻弥「いや、日菜さん。流石に迷惑っすよ…」

飛鳥「まあ、そのうちご招待します」

日菜「約束だからね!?」

 

 それなりにパスパレと話をした。

 

 一時間後。空は晴れあがっていた。

 

飛鳥「あ、晴れましたね」

日菜「ホントだ!」

 6人が表に出た。

 

イヴ「うわー…!!」

日菜「虹出てるかな!?」

千聖「流石に出てないわね…」

彩「でも綺麗な空…」

 と、感動していた。すると、先ほどの2人の警察官がやってきた。

 

日菜「あ、さっきのおまわりさんだ」

「!」

日菜「あのー! すみませーん!」

「ん?」

 ひなの声に反応した警官2人が日菜たちを見た。

 

「あ、さっきの…」

日菜「さっきの男の子たちどうなりました?」

「ああ。あまりにも舐めた口を利いてたから、警察署にしょっぴいたよ」

「今頃親御さんに怒られてるだろうな」

飛鳥・麻弥(そこまでするか)

 飛鳥と麻弥が心の中で突っ込んだ。

 

千聖「すみません」

「何ですか?」

千聖「先ほどは助けていただいてありがとうございました」

 千聖が頭を下げると、彩、イヴ、麻弥も頭を下げた。

千聖「どなたかが通報されたのですか?」

日菜「この子が通報したんですか?」

「いやいや、今日はこの子じゃないよ」

「そうそう。パトロール中に…」

千聖「今日『は』?」

 

 警官の言葉に千聖が引っ掛かり、飛鳥を見ると、飛鳥は横を向いた。

 

千聖「顔向けなさい。何かあったんでしょ」

麻弥「え、彼…通報したことがあるんですか?」

「通報というよりかは…」

「3日前。女子高生を付け回してたストーカーをつかまえてくれた事があってね」

日菜「3日前に付け回してたって…女の人の特徴は?」

「そうだな…。君とそっくりだったな」

日菜「やっぱり! おねーちゃん、前に知らない男の人につけられたって言ってたけど、3日前から見なくなったって言ってた!!」

 日菜たちも飛鳥を見たが、飛鳥も千聖たちを見た。

 

飛鳥「はい、それは私がやりましたが、何か間違ったことしましたか?」

彩「いや、なに一つ間違ってないよ」

千聖「その態度は大間違いよ」

 千聖が腕を組んだ。

 

飛鳥「あ、日菜先輩。もちろんお分かりですよね」

日菜「おねーちゃんに喋らないでって事でしょ?」

飛鳥「違います。紗夜先輩が気を遣うので、喋らないでください」

日菜「だいじょーぶだよー。じゃあ電話するねー」

 

 と、日菜は紗夜に電話をかけた。

 

 どうなったかというと…。

 

紗夜「本当にありがとうございました…!!」

飛鳥「あ、いえいえ…」

 

 紗夜にすごく感謝された。

 

 

おしまい

 



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第105話「噴いたら負け」

 

 とあるスタジオ。

 

香澄「何かな」

 モカ、こころ以外のバンドガールが集まっていた。飛鳥も不在していた。

 

まりな「今回の企画は口に水を含んで最後まで耐えられるか、挑戦してもらうわよ!」

友希那「…帰っていいですか?」

 

 まりなの発言に友希那、千聖、蘭が嫌そうな顔をした。

 

まりな「まあまあ。座って頂戴」

 と、渋々まりなの言う通りにする一同。横一列になって牛乳を口に含んだ。友希那達は少量であるが…。

 

まりな「それじゃ始めるわよ! ちなみに吹いたら罰ゲームね」

 

 まりながそういうと、会場が暗くなり、閉じられていた幕が開かれた。

 

 するとギター、ベース、ドラムの音が流れ、イントロが演奏されると香澄たちが不思議そうにしていた。

 

 そして歌いだしになると、一気にライトアップされて演奏している人物が明らかになった。ボーカルとベースが飛鳥、ギターがモカ、ドラムがこころだった。

 

飛鳥「DAN DAN 心魅かれてく その眩しい笑顔に」

「!!!?」

 

 そして飛鳥の歌うと一部が噴出した。

 

<脱落者>

・ 戸山香澄

・ 牛込りみ

・ 市ヶ谷有咲

・ 美竹蘭

・ 上原ひまり

・ 宇田川巴

・ 羽沢つぐみ

・ 丸山彩

・ 氷川日菜

・ 大和麻弥

・ 宇田川あこ

・ 奥沢美咲

 

23人中12人が脱落し、残り11人になった。

 

飛鳥「果てない暗闇から飛び出そう Hold my hand」

 

 と、歌いだしが終わった。

 

ひまり「モカ…いつの間に…!!」

巴「完全にやられた…」

 

 飛鳥が1番のAメロとBメロを歌った。

 

あこ「ひゃー…やっぱり色気があるわー」

 あこが反応すると、残りの4人はコメントが出来ない状態だった。

 

花音(やっぱりこころちゃん…ドラムうますぎ…!!)

薫(儚い…)

 

 そして1番が終わり、間奏に入った。

 

飛鳥「メンバー紹介!!」

 飛鳥がマイクで高らかに言い放つ。

 

飛鳥「ギター! 青葉モカ!!」

モカ「イエ~イ」

 飛鳥がそういうと、モカがどや顔をする。

 

飛鳥「ドラム! 弦巻こころ!」

こころ「イエーイ!!」

 

飛鳥「ボーカル・ベース、一丈字飛鳥!!」

モカ・こころ「イエーイ!!!」

 

 そして演奏が続いたが、特に牛乳を吹き出すことはなく、そのまま演奏が終わった。

 

飛鳥「どーも、ありがとうございましたー」

 

********************

 

まりな「えーと。ポピパが2人、パスパレが2人、Roseliaが4人、ハロハピが3人ね。よって優勝はRoselia!」

蘭「いや、あの、ちょっと待ってください!!!」

 蘭がツッコミを入れた。

 

モカ「どーしたの~?」

蘭「え? ちょっと待って? 一体何がどうなってんの?」

モカ「今回の企画をやる為に、3人で練習してました~」

ひまり「ぜ、全然気づかなかった…」

 

 モカの言葉にひまりが驚きを隠せなかった。

 

モカ「それはそうと、Afterglow全員脱落だよ~? もうちょっとしっかりしてよ~」

蘭「無理だってば!! モカがこういう事するし、こころは担当違うし何よりも…」

 蘭が飛鳥を見ると、後ろにいるこころを見た。

 

蘭「あんたよあんた!!!」

飛鳥「え? 私ですか?」

蘭「ごめん。ちょっと殴っていい?」

モカ「蘭~。Afterglowのイメージが悪くなるからそういう事しちゃダメでしょ~?」

蘭「だって!!」

飛鳥「まあ、何はともあれサプライズ大成功ですね」

 

 飛鳥が何とかまとめた。

 

香澄「それはそうと飛鳥くん。ベースもできたの!?」

飛鳥「牛込さん達程じゃないですけど、覚えてきましたよ」

モカ「あ。あれやってー。おどるポンポコリンの高速スラップ」

飛鳥「あ、はい」

 飛鳥が構えた。

 

 モカが合図を出すと、飛鳥が高速スラップを行った。それを見て香澄たちは驚いていたが、そのうちりみがドツボにはまってうつぶせていた。

 

 そして演奏が終わった。

飛鳥「牛込さん。大丈夫ですか?」

りみ「……!!///////」

 りみがずっと笑いを堪えていた。

 

こころ「ベースってとっても楽しそうね! あたしもやってみたいわ!」

飛鳥「あ、じゃあどうぞ」

こころ「じゃあサザエさんやるわね!」

 と、飛鳥がこころにベースを譲ると、こころが演奏したが、これもまた上手かった。

 

はぐみ「こころんすごーい!!!」

美咲「もうやめたげて!! 上原さん達のライフはもうゼロよ!!?」

花音(本当にごめんなさい…)

 と、はぐみは褒めていたが、ひまり、千聖、リサの3人は石化していた。そして花音は手で口を押えて涙を流しながら3人に同情した。

 

飛鳥「えー。そういう訳で今回の企画は以上です」

まりな「ちなみに牛乳を噴出した人への罰ゲームは…」

 と、まりなが言い出すと飛鳥達がそそくさと退場した。

 

まりな「後片付けです」

千聖「分かりました。それじゃあ彩ちゃん達は後片付け宜しく。私たちはあの3人を捕まえてくるわ!!!」

 

 で、どうなったかと言うと…。

 

紗夜「待ちなさ―――い!!!!」

飛鳥・モカ・こころ「ごめんなさ――――――――――――――――――――――い!!!!!」

 

 

 とまあ、紗夜や千聖たちに追いかけられるという古いオチで終わりましたとさ。

 

 

おしまい

 



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第106話「ありがた迷惑」

 

 

 一丈字飛鳥です。このシリーズも106回目を迎えました。まあ、数字だけ見れば中途半端なんですが、戸山さん達ガールズバンドの人気は衰えを知りません。

 

 ライブハウス「CiRCLE」をはじめ、色んなライブハウスでライブをしてはお客さんを集め、大成功を収めています。男性ファンが多い事から、抽選になるそうです。

 

 中にはチケットの奪い合いや、Twitterでチケットを譲ってほしいと書き込みが…って、某大手アイドル事務所にもあったな…。

 

 それはひとまず置いておいて、ファンも結構個性が強かったりします。女性だと推しにあやかったり、サイリウムを持ってたりしてますね。で、男性の方だと戸山さん達の写真をプリントしたものを着てますね。

 

 勿論、うちの学校の生徒達もライブハウスに足を運んでは、ライブを楽しんでいます。まあ、ここまでは良いんですが…。

 

 問題はここからですね。

 

「こころちゃ~ん。ムヘヘヘヘ」

「薫ちゃんをメスにしてやらぁ!!」

「友希那様ぁ…」

 

 こんな感じでヤラカシもいるんですね。弦巻さんに至っては、黒服の人たちが秒殺しました。実は私も裏で超能力を使ってヤラカシを懲らしめたりしてるんですね。

 

 黒服さんと同じ格好をして…。あ、私の語りはここで終わりです。

 

「お疲れ様です。一丈字様」

飛鳥「いえいえ…。いつも大変ですね」

「いえ。お嬢様の笑顔を考えれば大したことはございません」

飛鳥(この人たちはこの人たちでちょっと妄信的な感じがするんだよな…)

 

 顔色一つ変えず、こころの為に身を粉にして働く黒服達に対して、複雑な感情を抱いていた。

 

 そしてどうなるかというと、

 

「ハァ…」

 友希那が教室で不機嫌そうにしていると、傍にいたリサが苦笑いしていた。

 

リサ「まあ、それだけアタシ達も有名になったって事よ」

友希那「だからって自分のパンツを送る馬鹿がどこにいるっていうの」

リサ「…確かにキモいけど」

 

 先日、ライブをしてファンたちから出待ちをされたが、とあるファンから自分のパンツをプレゼントされたのだ。しかも色々汚くて即座に捨てた。

 

友希那「弦巻さんのおうちの方に頼んで、シベリアに飛ばしてもらおうかしら」

リサ「何でシベリアなの…」

友希那「寒いじゃない。凍死すればいいわ」

リサ「コラコラ」

 

 友希那が物騒な事を考えていたので、リサは諫めたがリサ自身もあのような迷惑なプレゼントは今後はやめてほしいと考えていた。

 

 そんなある日の事だった。

 

飛鳥「……」

 飛鳥の机の引き出しに沢山プレゼントが入っていた。カミソリだったり呪いの手紙だったり、あまり嬉しくないプレゼントだった。

飛鳥「まあ、当然の結果と言えば当然の結果だろうけど、随分古風だな…」

 飛鳥が苦笑いした。

 

「あれ? どうしたの一丈字くん」

飛鳥「奥沢さん」

 

 美咲が3組の教室を通り過ぎようとしたが、飛鳥が困った顔でカミソリを持っているのに気付いたため、声をかけた。

 

飛鳥「いやあ、私もファンからプレゼントをもらいまして」

美咲「は?」

 

 飛鳥が皮肉気味に冗談を言うと、美咲が片眉を上げた。そして美咲の様子を見た飛鳥は事情を説明した。

 

美咲「…マジ?」

飛鳥「まあ、それだけ有名な証拠ですね。パスパレのファンが一番多いです」

美咲「ちょっと一丈字くん。大丈夫…って言っても大丈夫じゃないよね」

飛鳥「まあ、私が我慢していれば大ごとにはならなくて済むのですが、こっちがやり返したら大ごとになりますからね」

美咲「…お、おう」

 

 何かとんでもない奴敵に回してないか? と、美咲は悪寒を感じた。実際に「バンドリ学園の異空間」と呼ばれるこころに対してトレーナーのように接している彼の事は一目を置いていたが、今までの活躍を考えて、絶対只者じゃないと考え始めていた。

 

美咲「な、何かあったら相談して頂戴ね」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 そう言って美咲が去っていった。

 

飛鳥「……」

 

 またある日の事だった。

 

ひまり「……」

 ひまりは激怒していた。

 

モカ「仕方ないってー」

巴「とはいえ…」

ひまり「何で私の差し入れ、下着ばっかりなのよー!!! モカや巴はパンやラーメンとかなのにー!!」

 

 Afterglowも差し入れを貰っていたが、ひまりだけ何故か下着が差し入れされるというセクハラまがいの事をされていた。ちなみに他の4人の差し入れは食べ物が多い。

 

ひまり「しかも何か最近Afterglowのセクシー担当とか言われてるし…!」

巴「その…ドンマイ」

 巴がそういうと、蘭とつぐみが困惑していると、飛鳥が通りかかった。

 

モカ「あ、飛鳥く~ん」

飛鳥「?」

 飛鳥がモカの方を見ると、ひまりが不機嫌そうになっていることに気づいた。

 

飛鳥「どうかされました? 上原さん」

ひまり「聞いてよ!!!」

 ひまりが涙目で飛鳥に不満をぶちまけた。

 

飛鳥「…それは、いろいろ辛いですね」

ひまり「そうなのよぉ!! 好きでこんなに大きくなったわけじゃないのにぃ!!」

飛鳥「落ち着いてください」

 ちなみに、男子生徒が皆振りむいていた。

 

飛鳥「その…慰めになるかどうかはわかりませんが、上原さんはまだマシだと思いますよ」

「?」

モカ「そういや飛鳥くん、カミソリとか呪いの手紙貰ってるんだって~?」

飛鳥「あ、奥沢さんから聞きました?」

ひまり「ええっ!!? そうだったの!!?」

 

 飛鳥の発言に蘭、巴、ひまり、つぐみが驚いた。

 

飛鳥「あ、でも大丈夫ですよ。人に嫌われるのは昔から何で」

蘭「そういう問題じゃないでしょ!!」

巴「一体誰だ!? そんな姑息な事する奴らは!! うちの学校からか!!?」

飛鳥「もう色んな所から来てますね。この学校の人たちからもそうですし、あなたがたのファンからも来てますし、ほかのグループからのファンからも来てます。ある意味人気者ですね」

 

 飛鳥が一息つくと、モカ以外の4人が言葉を失った。

 

友希那「一丈字くん」

 友希那、リサ、美咲が現れた。

 

飛鳥「湊先輩」

リサ「…今の話マジ?」

飛鳥「はい。多分今後も来ると思います」

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「そして今も…」

 飛鳥が男子生徒達を見つめると、

 

「こ、こっち見んな!!!」

「言いがかりだ!!」

「いや、違うんだってマジで!!」

「ふざけんなよ一丈字!!!」

 

飛鳥「じゃあこれで送られる事はございませんね。少なくとも学校からは」

「……」

 すると飛鳥が美咲を見つめた。

 

飛鳥「そういう訳なので奥沢さん」

美咲「!」

飛鳥「外部の人たちをどうすればよいかは、これから考える事にします」

美咲「そ、それはいいけど…随分楽しそうね」

飛鳥「そうですか?」

友希那「そんなの決まってるわ。強いわよ。この子」

「!!」

 

 友希那の言葉に皆が反応した。

 

友希那「希望を捨ててないもの。流石仮装大会でAfterglowを破っただけあるわね」

 友希那の言葉に蘭がカチンと来て、リサ、ひまり、巴、つぐみが青ざめた。

 

友希那「けど一丈字くん。あまり無理はしては駄目よ」

飛鳥「はい」

友希那「私は此間、男性物の下着を送り付けられたわ」

飛鳥「え」

 友希那の発言に男子生徒達は発狂した。

 

友希那「そういう訳だから、変なものを送り付けられた者同士、仲良くしましょう」

飛鳥「は、はあ…」

ひまり「それじゃ私とも仲良くしましょ! エッチな人なんてもう知りません!!」

モカ「モカもー」

 と、よりいちゃこらするようになった。

 

「何でやぁあああああああああああああ!!!」

「また読者に怒られろ!!!」

「ていうか誰だよ!! 使用済みのパンツ送ったのォ!!!」

「友希那ちゃんのパンツほしい…」

 

 

 今日もバンドリ学園は平和…だったのか?

 

飛鳥「聞くな!!」

 

 

おしまい

 



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第107話「負けないで」

誤字指摘ありがとうございます。


 

 ある日の事だった。

 

飛鳥「今日こそ平和な一日だ…」

 

 飛鳥が中庭を歩いていた。今日こそは平和な一日になる事を心の底から願っていた…。そんな時、友希那が猫に話しかけていた。

 

飛鳥(あっ…)

 

 友希那と猫の組み合わせに飛鳥は全てを察した。今日はとてつもなく大変な一日になると。というのも、友希那は生粋の猫好きである。それだけならまだいいが、猫への接し方が普段自分たちに対する態度と全然違い、簡単に言えば『キャラ崩壊』といってもいいほど、甘々なのだ。

 

 だが、彼女はそういう所を誰にも見られたくないと感じていて、もし見つけようものならどんな手を使ってでも記憶を消そうとする。

 

「にゃ~ん」

飛鳥「……」

 

友希那「にゃんにゃ~ん。あなたはどうしてそんなに可愛いのかにゃ~?」

「にゃー?」

 

 友希那がまるでぬいぐるみを扱うかのように猫の手を動かしていた。

 

飛鳥(いつも以上にあらぶってる…)

 飛鳥が困惑した様子で友希那をじーっと見つめていた。

 

友希那「うふふふ…」

 と、友希那がすりすりしていると、飛鳥に気づいて目を見開いた。そして友希那は顔を真っ赤にした。

 

飛鳥「猫、いいですよね…」

友希那「いや、ちょ、ちょっと待ちなさい…待ちなさいよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!/////////」

 

 飛鳥は逃亡した。友希那が悲鳴をあげたが、構わず逃亡した。

 

飛鳥(もう好きなら好きだってカミングアウトしちゃえばいいのに!!!)

 

 飛鳥がある程度距離を取ると、とぼとぼと歩いた。

 

飛鳥「はぁ…。危ない所だった…」

 と、今度はリサを見かけた。

 

飛鳥「あれ? 今度は今井先輩だ。こんな所でどうしたんだろう…」

 その時、リサがくしゃみをしそうだった。

 

リサ「へ…へ…ぶぇっくしょい!!!」

 

 と、親父みたいな低い声でくしゃみをしていた。

 

飛鳥(あ、なんか死亡フラグが立った。逃げよ)

 飛鳥が逃げようとしたその時、リサが飛鳥に気づいた。

 

リサ「あ、ちょっと待って飛鳥く…」

 と、リサが手をどけようとしたその時、鼻水が手にくっついていた。

 

飛鳥「……」

 飛鳥が視線をそらすと、リサが顔を真っ赤にした。

 

飛鳥「あ、今の内緒にしておきますので、ご安心を! それじゃ!」

リサ「待ってぇえええええええええええええええええ!!!!/////////」

 

 飛鳥はリサの叫びを無視して、そのまま走り去っていった。

 

飛鳥(どうしろと)

 

 そして飛鳥はまた別の場所で歩いていた。

 

飛鳥「はー…」

 その時、今度は燐子が何かをしていた。

 

飛鳥「どうしたんだろう」

燐子「我が名はrinrin」

飛鳥(あっ…)

 

 燐子の一言で飛鳥は今自分が何をするべきか察した。

 

燐子「漆黒のうんたらかんたら~」

 と、いつぞやのあこの物まねをしているのかどうかは、分からないが中二病全開のポーズをしていた。

 

飛鳥(あ、気弱な自分を変えたいとかって感じかな…)

 飛鳥が困惑しながら、燐子を見つめていると…。

 

燐子「はっ!!//////」

 燐子が飛鳥に気づいて横を向くと、そのまま顔を真っ赤にしていた。

 

燐子「あ…ああ…/////」

 友希那、リサとは違い、燐子は涙目になっていた。

 

飛鳥「お邪魔しました」

燐子「違うのぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!///////」

 そう言って飛鳥がその場を去っていくと、燐子が悲鳴を上げた。

 

飛鳥(白金先輩。結構大きい声出せるんだな…)

 

 そしてまたしばらく走ると…。

 

飛鳥「そろそろ教室に帰ろう…。色々手遅れかもだけど…」

 と、飛鳥がとぼとぼと教室に帰ろうとして、曲がり角を曲がると…。

 

飛鳥「」

紗夜「」

 

 なんという事だろう。紗夜が日菜のものまねをしていたのだった。かわいい。

 

飛鳥「……」

紗夜「……!!///////」

 

 紗夜はこれでもかという程顔を真っ赤にして、飛鳥は即座に逃げようとしたが、紗夜が飛鳥を瞬時につかもうとしたので、飛鳥が間一髪でかわして、そのまま逃走した。

 

 だが、紗夜がものすごい勢いで追いかけてきた。

 

飛鳥(足早っ!!!)

紗夜「待ちなさぁああああああああああああああああい!!!!」

 

 そして中庭まで走る飛鳥と紗夜。追いかけっこする2人を全校生徒達が見つめていた。

 

「お、おい! 一丈字と紗夜先輩が何か走ってるぞ!」

「何したんだ!!?」

「ていうか一丈字足早くね!!?」

「オレも紗夜先輩に追いかけられてぇええええええええええええ!!!」

 

紗夜「も、もう逃げられませんよ…!!///////」

飛鳥「落ち着きましょう。いったん落ち着きましょう…」

 

 飛鳥が紗夜に追い詰められていた。

 

飛鳥「傍から見たらただの後輩いじめですよ」

紗夜「そんな事ありません。全部あなたが悪いんです…/////」

飛鳥「あ、はい」

 飛鳥が反応したその時、屋上から誰かが飛び降りようとしていた。

 

飛鳥「あの、紗夜先輩」

紗夜「何ですか!?」

飛鳥「後ろ…」

紗夜「だまされませんよ…」

飛鳥「そうですか。それなら仕方ありませんね」

 飛鳥が上を向いて、飛び降りようとしている女子生徒に対して、金縛りを行った。すると、女子生徒は違和感を感じて、足を動かそうとしたが動かせられなかった。そして取り押さえられた。

 

飛鳥(よし、これで何とか止められた。あとは…紗夜先輩を何とかするしかない)

 飛鳥が紗夜を見たが、紗夜がもうギリギリのところまで近づいていた。

 

飛鳥「あの、本当に誰にも言いませんから…」

紗夜「本当ですね?」

飛鳥「ええ…もちろんです」

紗夜「……」

 飛鳥と紗夜がじっと見つめあうと、

 

紗夜「…それならいいんです」

飛鳥「あ、ありがとうございます…」

 紗夜が後ろを見た次の瞬間。全校生徒に見られていた。

 

紗夜「」

 紗夜の息の根が止まって、飛鳥がスーッと逃亡した。

 

「逃げられると思ったのかしら?」

 

 友希那、リサ、燐子が現れた。

 

飛鳥「逃がしてくれないと…喋りますよ」

友希那「何とでも言いなさい」

リサ「飛鳥くん…そういうのは良くないよ?」

燐子「……!!」

 

 後ろには紗夜がいて、飛鳥は全てを察して…ものすごいダッシュを見せたが、4人が追いかけまわした。

 

飛鳥「足早っ!!!」

 

 休憩時間が終わるまで、飛鳥はRoselia4人に追いかけまわされていたという…。

 

 

モカ「飛鳥くん。モテモテですな~」

蘭「何やったんだか…」

 と、2組の教室からAfterglowとあこが見ていた。

 

あこ「あ~ん!! またあこだけ仲間外れ~!!!」

巴「…あの様子だと、仲間外れにされてた方が良かったみたいだぞ」

 

 悔しがるあこに対して、巴が呆れた様子で突っ込んだ。

 

 そして2年生の教室。

 

「うぉおおおおおおおおおおん!!!」

「オレも友希那様達に追いかけられたいよぉおおおおおおおおお!!!」

「おのれ一丈字ぃいいいいいいいいいいいい!!!」

「何でこのオレを誘ってくれないのだぁあああああああああ!!」

 

 と、男子生徒達は号泣していて、女子生徒達はゴミを見る目で男子生徒を見つめていた。

 

 

 

おしまい

 



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第108話「Afterglowとプール!(前編)」

 

 それはある日の事だった。

 

「あっつーい…」

 

 モカは教室でもたれていた。

 

モカ「溶けてアイスになっちゃうー」

蘭「いや、意味わかんないから」

 

 モカの発言に蘭が困惑し、ひまり、巴、つぐみが苦笑いした。

 

巴「まあでも、これくらい暑い方が夏らしくていいけどな」

蘭「…その発言でさらに暑苦しくなってきたよ」

ひまり「それにしてもなんでうちのクラスだけエアコン壊れちゃったのー。もー」

 ひまりが嘆いていた。実際Afterglowは汗をかいていて、それが男子生徒達の下劣を招いていた。

 

ひまり「そうだ。折角だから今度の休み、海かプール行こうよ」

巴「それいいな! 今週はこの辺のスタジオいっぱいらしいからな…」

蘭「…まあ、たまにはいいかもね」

モカ「さんせー。でもモカちゃんプールがいいな~」

蘭「私も」

 と、Afterglowでプールに行く話になっていた。

 

(週末はアフグロはプール!!)

(確かこの辺のプールは…)

 男子たちは偶然を装って、アフグロの水着姿を見ようと計画を立てていた。

 

「なになに? プール行くの?」

 と、チャラいクラスメイトが話しかけてきた。所謂陽キャである。

 

蘭「…何?」

「それだったらさ。オレと行こうよ。こっちも仲間集めるからさ!」

モカ「全部奢りだったら考えるよ~」

 モカの発言に陽キャは一瞬固まった。

 

蘭「ちょ、ちょっとモカ!!」

「まあいいや。それじゃ決まりな!」

モカ「え…」

 まさかOKするとは思ってなかった為、モカも流石に困惑していた。陽キャは去っていった。

 

モカ「あちゃ~。諦めると思ったのに~」

ひまり「えええええ。ど、どうしよう…」

蘭「バックレよ」

つぐみ「ら、蘭ちゃん」

 

 そんなこんなで仕方なしにアフグロは2組の陽キャ男子軍団とプールに行くことになった。

 

 3組教室

 

「という訳だ。邪魔すんなよ一丈字!」

「は、はあ…」

 

 陽キャはなんと飛鳥がいる3組の教室にやってきて、牽制をかけてきたのだ。飛鳥としては、いきなりやってきて「アフグロとプールに行くから邪魔するな」と言われたのだ。行き先がわからなければ邪魔のしようがないのに、なんでこんなに得意げなんだろうと飛鳥は思った。

 

「邪魔したら窓から突き落とすからな」

飛鳥「はあ…」

 

 色々言葉が足りなさ過ぎてリアクションに困っていた飛鳥だった。色々伝えた後陽キャは意気揚々と去っていった。

 

「い、一丈字くん…」

 クラスメイトが心配そうに話しかけた。

飛鳥「…あの人たち、結局どこに行くんですかね?」

「え?」

飛鳥「場所も知らないのに、邪魔しようがないんだけど…よっぽど取られたくないのかな?」

 飛鳥が頭をかいた。

 

 そんなこんなでプール当日。雨が降った。天気予報では晴と言っていたが雨である。そして2組のグループLINEでどうするか話し合っていたが、男子たちは決行もしくは明日に延期と言っていたが、女子たちは中止にしようとしていた。

 

モカ「雨が降ったから中止ね~」

「そ、そんなぁ!! それじゃ明日…」

モカ「明日は予定があるの~」

「ま、まさか一丈字とトコナッツパークに行くつもりじゃないだろうな!?」

モカ「あ、それ面白そうだな~」

 陽キャの発言にモカが悪魔的な笑みを浮かべた。

 

「おい!! そんな話聞いてないぞ!!」

「大体何で同じクラスのオレらより、違うクラスのあいつと仲良いんだよ!」

 と、男子たちが逆切れした。

 

モカ「何でって。こうやって逆切れしたりしないもーん」

「!」

蘭「…ていうかさ、最初私達5人でプールに行こうって話になってたのをあんた達が割り込んだ訳だよね? もうちょっと気を遣ったりとかできないの?」

「!」

ひまり「そうだよね。普通はこっちが選ぶ権利あるよね?」

「そ、それは…」

巴「そりゃあアタシ達とプールに行きたい気持ちはわかるけど、もうちょっとその辺気を遣ってほしいな」

 と、巴に言われて男子生徒達が言葉を失った。

モカ「ていうか大体、プールよりも…エッチな事しようとしてるでしょ~」

「!」

モカ「モカちゃん達とプールに行って、その流れでエッチな事が出来れば、既成事実もできるわけだしね~」

「そ、そんな事は…」

「言いがかりをつけるな!!」

モカ「それがつけられるんだな~」

「?」

 

 モカがそう言った。

 

モカ「此間大掃除あったじゃん? モカちゃん達が最後まで一生懸命働いてたのに、皆帰ったじゃん」

「あ、あれは自由に帰っていいって…」

モカ「けど、最後まで手伝う意思とか見せてくれたら、もっと違ってたよ~?」

蘭「そうそう。ていうか女子に掃除させるとかあり得ないんだけど」

巴「まあまあ。そこは男女平等と行こうじゃないか」

 不満そうにする蘭を巴が諫めた。

 

モカ「で、皆知らないと思うけど、飛鳥くん手伝ってくれたしね。3組の分もやって」

「ええっ!!?」

 実際は3組の分が終わって帰ろうとした後、モカが無理やり手伝わせたのだ。飛鳥としては「まあ、すぐに終わるし、ついでだからやっとくか」みたいな感じだった。

 

モカ「人聞き悪いなー。こんな感じだよー」

 

 こんな感じである。

 

飛鳥「はー…終わった」

 飛鳥が2組の教室を通りかかると、モカたちがまだ作業をしていた。

飛鳥(まだ時間かかってるのか…)

 

 するとモカが飛鳥に気づいた。

モカ「あ、飛鳥くーん」

 モカが飛鳥に駆け寄った。

飛鳥「どうされました?」

モカ「飛鳥くんも最後の作業やってたの~?」

飛鳥「ええ。簡単な作業だったので」

モカ「それだったら2組も手伝って~」

飛鳥「え?」

巴「こらモカ! それは流石に迷惑だろ!」

飛鳥「……」

 飛鳥が2組の教室を見渡したが、40%しか終わってない状態だった。

 

蘭「その前に3組はもう終わったの?」

飛鳥「終わりましたよ」

「!!?」

 飛鳥の発言にモカ以外の4人が驚いた。

モカ「だったらなおさら手伝って~。男子達面倒だからって誰もやってくれなかったの~」

飛鳥「そうなんですか? あなた方5人もいれば、立候補者はいくらでもいそうですけどねぇ…」

蘭「結局そんなもんだよ。面倒な事なんて誰もやりたくないんだ」

つぐみ「ら、蘭ちゃん…」

 蘭の言葉につぐみが困惑した。

 

モカ「ねえ、おねが~い。飛鳥くんは違うでしょ?」

飛鳥「……」

 モカが飛鳥におねだりした。

 

巴「モカ。流石に迷惑だって言ってるだろ」

つぐみ「そ、そうだよ…」

飛鳥「…特に用事ないんで、手伝う分には問題ございませんが」

「!?」

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

飛鳥「ですが、他の皆さんが…」

モカ「あ、そうだよね~。じゃあ5人だけで頑張るよ~」

飛鳥「それじゃ、失礼しますね」

 と、飛鳥が帰ろうとすると、

 

ひまり「あ、ちょ、ちょっと待って!!!」

 ひまりが止めた。

 

飛鳥「…どうされました?」

 ひまりが頬を染めた。

 

ひまり「その…で、出来れば手伝ってくれたら嬉しいかなーって…////」

飛鳥「……」

 

 ひまりの言葉に飛鳥が困惑した。

 

蘭「ほら、やってくれるんでしょ? 宜しく」

飛鳥「美竹さんがお願いしますって、ちゃんとお願いしたらやります」

蘭「な、何で…」

モカ「蘭。当然の結果だと思うよ~」

巴「そうそう。人に頼む態度じゃないぞ。それは」

蘭「わ、分かったよ…。オネガイシマス…////」

飛鳥「宜しい」

つぐみ「ご、ごめんね? 一丈字くん」

飛鳥「構いませんよ」

 

 と、飛鳥は2組の大掃除を手伝った。

 

モカ「…で、あの後1組の手伝いもしてくれたんだよ~?」

「そんな話聞いてないんですけどォオオオオオオオオオオ!!?」

「どう考えても一丈字と青葉たちをプールに行かせる為に、オレ達を納得させるための口実じゃん!!」

巴「けど、働いてくれたのは事実だぞ?」

 

 巴が一喝した。

 

「そ、それじゃ来週はどうだ!?」

モカ「えー。この期に及んでまだ諦めないの~?」

蘭「…鬱陶しい」

「うるさい!!」

「こうなったら意地でもプールに行くぞ!!」

 

 そんなこんなで仕方なく、明日行くことになったそうです。

 

 

 

つづく

 



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第109話「Afterglowとプール!(中編)」

 プール・当日

 

「あっつーい…」

「全く、チケットくらい用意しときなさいよ」

「う、うっせーな…」

「昨日分のチケットはちゃんと買ってたんだよ!」

「いやいや、当日分も用意しとくもんでしょう…」

 

 と、Afterglowと陽キャ男子たちがチケットカウンターに並んでいたが、長蛇の列だった。本来であれば男子だけにチケットを買わせれば良かったが、並ばないとゲートに入れない為、仕方なく並んだのだった。ちなみにチケットがあればすぐに入れる。

 

(けどまあ…これでアフグロと長くいられるチャンスだ…)

(SNSで拡散してくれればオレ達がアフグロの彼氏だって認識してもらえる!)

(わざとチケット買わなくて正解だったぜ!!)

 

 と、男子生徒達はニヤニヤしていたが…。

 

モカ(…あたし達とわざと長くいるためにチケット買わなかったな)

蘭(最悪…)

ひまり(もーあっつーい)

巴(…ハァ)

つぐみ(皆、日射病とかにならないかな…)

 

 そんな時だった。

 

「!!?」

 

 飛鳥がやってきた。

 

ひまり「一丈字くん?」

「ゲッ!!」

「何であいつがここに!!」

 

巴「あいつもプールで遊ぶのか…?」

ひまり「けど一人で…」

(あんのやろ~~~~~!!!!)

(邪魔するなって言ったのに~~~~~~!!!!)

 

 しかし、飛鳥は係員と話をすると、そのまま係員と一緒にどこかに行ってしまった。

 

「……?」

 これにはAfterglowも陽キャたちも頭の上に「?」が浮かんでいた。

 

 30分後、チケットを買った一同は更衣室に分かれて、再び合流した。

 

つぐみ「開園してすぐなのに、もうこんなに混んでるんだね…」

 と、つぐみたちも水着姿になっていた。

 

(おぉぉぉ…!!)

(夢にまで見たAfterglowの水着姿…)

(やべ、もう股間が反応してやがる)

(可愛い雌を求めるのが雄の本能…)

 

 マジレスすると、男子全員がもうすでに雄の本能に目覚めていた。具体的にどうなってるかは言わない。

 

モカ(おちんちんおっきくしてるよ~)

ひまり(うわぁ…最低…)

 ひまりは胸元を隠した。

 

巴(仕方がないといえば仕方がないが…)

つぐみ「?」

蘭(死ねばいいのに)

 

 つぐみ以外の4人が気づいていた。

 

 しかし、後に引けない状態だったので、適当にあしらって帰るつもりでいた。

 

「そ、それはそうと写真撮ろうぜ」

「えっ」

「いいじゃんいいじゃん」

 と、陽キャたちが写真を撮ろうとしたが、

 

蘭「ダメ」

「SNSにアップしないからさー」

「それより、その水着自分で選んだの? 凄く可愛いね」

ひまり(本当は私が選んだんだけど…。どうしてこうもグイグイ来るの!?)

モカ(飛鳥く~ん。ここ助けるところだよ~???)

 

 と、モカはどこにいるか分からない飛鳥の事を考えていた。この後押し問答が続いたが、つぐみが「1枚だけなら…」という事で、蘭達は渋々承諾した。

 

 そして…

 

「蘭ちゃん。オイル塗ってあげようか?」

「じゃあオレはモカちゃん」

「オレはひまりちゃん」

「巴ちゃん」

「つぐみちゃん」

 

 と、男子生徒達がオイルを塗る気満々だったが、

 

モカ「あ~。それだったらもう自分たちで塗ってきたから~」

ひまり「お生憎様!」

「いや、まだ塗れてない部分が…」

蘭「……」

 蘭が男子生徒達を睨みつけると、これ以上粘るのはまずいと判断したのか、諦めた。

 

「そ、それじゃあどこから回る?」

 陽キャはめげずに話を続ける。

巴「アタシとしてはウォータースライダーは外せないかな」

蘭「それだったら優先パス取らないとね」

モカ「モカは温泉プールがいいな~」

ひまり「本当そういうの好きだよねー」

つぐみ「そ、それじゃ先に優先パスから取りにいこっか?」

モカ「さんせー」

「……」

 と、女子たちだけで話を進めてしまったが、

 

「そ、それじゃウォータースライダーの優先パスを買いに行こう!」

 そう言って陽キャたちも続いた。

 

モカ「そういう訳だから宜しく~」

「え」

モカ「いや、こういう時男子が買ってきてくれたらポイント高いんだけどな~」

「そ、それじゃオレが行ってくる!」

「いや、オレが!」

「オレが行くってば!」

「抜け駆けすんなよてめぇ!!」

 と、男子たちが揉めた。

 

巴「あーあ…」

蘭「全く見てらんないよ…」

 と、巴と蘭が呆れていた。

 

ひまり「それはそうと、一丈字くん係員さんと何の話をしてたんだろう…」

モカ「電話をかけても出ないし…」

つぐみ「も、もしかしたらアルバイトかもしれないよ?」

巴「あーもー! こうなったらアタシが行く!! 全員待ってろ!!」

 そう言って巴が一人で行ってしまった。

 

 そんなこんなで優先パスを買ってきたわけだが…。

 

巴「何とかパスは買ってきたけど…」

モカ「それじゃパスはつぐが預かってね~」

つぐみ「え? わ、わたしでいいの?」

モカ「うん。つぐに預けた方が安心できるから~」

 

 と、男子生徒達に良い所を一切与えなかった。

 

(少しは活躍させろよ…)

(こんなに男を立てないなんて…)

 と、陽キャたちはどんどん苛立っていたが、モカの狙い通りになっていた。

 

モカ(甘いよ~。好きでもない男子を相手にする女子なんて皆こんなもんだから~)

 

 そして…

 

「そ、それじゃ泳ごっか」

ひまり「あ、ちょっと待って。私ショッピング行きたいから先泳いでて」

モカ「あ、モカも~」

巴「どうしたんだ?」

 と、女子たちが泳ごうとしない為、男子たちが段々イライラしていた。

つぐみ「あ、色々買った方が遊ぶ幅も広がるからね!」

 つぐみがフォローした。

「そ、それじゃショッピングコーナーに行こうか!」

 陽キャはAfterglowについていこうとしていたが、内心自分の思い通りにいかない為、イライラしていた。

蘭「そんなにイライラするなら、もうアタシらに構わなくて良いよ。チケット代も返すし」

 蘭がそれを見通したのかそう言い放つと、一気に最悪の空気になった。

 

ひまり「ら、蘭!!」

蘭「ひまりも甘やかすからつけあがるんだよ。大体アンタ達、さっきからいやらしい目で見てるでしょ。ひまりの事とか」

「そ、そんな事は…」

蘭「…もう帰ろう。こんなんじゃプールどころじゃないよ」

 蘭が帰ろうとすると、陽キャが蘭の手をつかんだ。

 

蘭「離して!」

「ふざけんな! 黙って聞いてたら言いたい放題言いやがって!!」

「そうだ! 大体チケット代も出したのオレらなんだぞ!」

モカ「そんなの出して当然じゃん。言ったよね。全額奢ってくれたら考えるって」

ひまり「…出してくれたのはありがたいけど、これ以上そんないやらしい目つきで見られたら」

「こ、こいつら…!!」

巴「安心しろ。チケット代はちゃんと返すから」

「羽沢も何か言ってくれよ!」

「そうだ! こんなのおかしい!!」

 と、陽キャの仲間はつぐみに意見を求めたが、つぐみは困惑していた。

 

つぐみ「え、えっと…」

蘭「つぐ。こんな奴らの言う事聞かなくていいよ」

 と、蘭が振り払った。

 

蘭「そういう事だから帰る。チケット代後で返すから。じゃ」

「待て! 逃がさねーって…」

 と、陽キャが追いかけようとしたが、強面の警備員が止めた。

 

「!!」

「女の子が襲われてるって通報があったんだが…君達かね?」

 

 警備員の形相と言葉に陽キャたちはビビッて半泣きになったが、蘭達もちょっと怖がっていた。

 

「ち、違います!!」

「そうです!! オレ達はクラスメイトで…」

 と、陽キャたちが必死に言い訳していたが、

 

「喧嘩の内容は先ほど耳に入れさせてもらったがね。ちょっと来なさい」

 

 と、10人とも連れていかれたという…。

 

「…どうしたんだろ」

 作業着を着ていた飛鳥がその様子を陰から見ていた。

 

 

つづく

 



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第110話「Afterglowとプール!(後編)」

 

 

 前回までのあらすじ

 

 男子生徒達のセクハラに耐えきれなくなった蘭はついに男子生徒達に喧嘩を売り、そのまま騒動になったが、警備員に止められて、事務室に連れていかれた。

 

 そして取り調べが行われ、男子生徒達は小一時間警備員に怒られていた。

 

 事務室を出るころには気まずい空気で、10人が出てきた。周りが楽しそうにしていて、スピーカーから楽しい音楽が流れていたが、それがむなしく響き渡っていた。

 

「……」

 

 警備員に怒られ、すっかり泳ぐ気分ではなくなったのだ。

 

「…帰ろうぜ」

「そうだな」

 と、男子生徒達はとぼとぼと帰っていくと、蘭達を一度振り向いては睨みつけていき、そのまま帰っていった。

 

蘭「はぁ…やっといなくなったよ」

ひまり「いなくなったよじゃないでしょ! もー!!」

 ひまりが憤慨していた。

モカ「まーまー。確かに蘭もやりすぎな所はあったけど、これで男子たちがいなくなって清々したでしょ」

ひまり「それはそうだけど…」

巴「まあ、喧嘩両成敗って事だな。一応チケット代は返しておこう」

つぐみ「そ、そうだね…。お金出させっぱなしも悪いし…」

モカ「じゃあ、それで完全に縁を切ろっか」

 モカが一息ついた。

 

モカ「それよりも、問題は飛鳥くんなんだよね~」

蘭「!」

モカ「ここで何をするつもりなんだろう~」

蘭「どうせバイトでしょ」

ひまり「それよりもどうする? 男子たち帰ったけど」

モカ「え~いいじゃ~ん。このまま遊んで帰ろうよ~」

巴「うーん。悩んでも仕方ないよな! 遊ぶか!」

ひまり「えええええええ」

蘭「賛成。どうせあたし達が泣いて縋るのを想定してるだろうし」

 蘭の言葉にひまりとつぐみが苦笑いし、そのまま遊んで帰った。

 

 そして男子たちはというと…。

 

「クソッ!! なんでオレ達がこんな目に!!」

 と、ゲートを出た後で憤慨していた。

「まさかAfterglowがあんなに我儘だったなんてな…」

「ああ! もうこっちから願い下げだ!!」

 陽キャがそう叫ぶと、

 

「こっちから願い下げ?」

「!!」

 Afterglowのファンらしき男性陣数十名が陽キャたちを囲んでいた。

 

「な、なんだよお前ら!!」

「Twitterでお前らの悪事が投稿されてたぞ…」

「お前…蘭ちゃんの手を無理やり引っ張って何やってたんだ…」

 と、ファンたちは激怒していた。

 

「ちょっと事務所来いや!!!」

 

 そして蘭達は昼になるまで遊んでいた。

 

ひまり「あー楽しー!!!」

モカ「って、ひーちゃんも思い切り楽しんでるじゃん~」

 

 午後0時。蘭達はフードコードで食事をとっていた。

 

モカ「おいひ~」

ひまり「本当に良く食べるわね…」

 と、モカがランチを大量に食べていて、ひまりが困惑していた。そんな中、つぐみだけ落ち込んでいた。

 

巴「つぐ。そんなに気にするなよ」

つぐみ「だ、だって…」

蘭「…本当につぐは優しいな。けど、アタシは許さないから」

 蘭がそっぽを向いた。

 

 その時、飛鳥が作業着のまま店内に現れた。上下ともに紺色で白い靴を履いていて、白いタオルを頭に巻いていた。

 

ひまり「一丈字くん!」

「!」

ひまり「おーい!! 一丈字くーん!!」

飛鳥「?」

 飛鳥がひまり達の方を見ると、ひまりが手を振った。すると飛鳥も手を振り返した。

 

ひまり「あ、ごめん!! ちょっと来て!!」

巴「流石に悪いだろ!」

 

 飛鳥が蘭達のところにやって来た。

 

飛鳥「こんな所で何をされてるんですか?」

蘭「いや、それはこっちの台詞なんだけど」

ひまり「作業着着てどうしたの? アルバイト?」

飛鳥「ええ。裏方のヘルプを受けまして…」

 ひまりの言葉に飛鳥が苦笑いした。

 

 何をしていたかというと、トコナッツパークで使われてるアンプなどの機材のメンテナンスをしていたのだ。飛鳥は技術関係で資格を取っており、トコナッツパークで働いている従業員が知人であり、なおかつ飛鳥の技術力を知っていた為、ヘルプを出したという訳だ。

 

 土曜日にメンテナンスを行い、日曜日にその確認をして、ついさっき仕事が全部終わったのだ。

 

飛鳥「そういえばクラスの方と来られてたんですよね?」

蘭「ああ。あいつらならもう帰ったよ」

飛鳥「ええ。ゲート付近でお見掛けしましたよ…」

 

 強面の男たちに連れていかれるところも見たが、それを話すとつぐみが滅茶苦茶心配するため、何も言わない事にした。出来るなら自分自身も関わりたくないとも思っていたからである。

 

飛鳥「大変でしたね」

モカ「もー大変だったってレベルじゃないよー。慰めてー」

 モカが甘えだした。

 

ひまり「…こんなにもいやらしい目で見られるなんて思わなかったわ」

飛鳥「……」

 飛鳥が露骨に視線を逸らした。

 

モカ「飛鳥く~ん。そんな露骨に視線をそらさなくても~」

飛鳥「いや、そういう事言われると本当に見づらいんですよね…」

蘭「……」

飛鳥「ああ。ご心配せずともすぐに帰りますよ」

ひまり「え? すぐに帰るって?」

飛鳥「テイクアウトしてすぐに出ていきますので…」

ひまり「そ、そこまでしなくてもいいよ!?」

飛鳥「いや、美竹さんの視線も気になるので…」

蘭「…ちょ、アタシに責任転嫁しないでよ」

 

 飛鳥の言葉に蘭が困惑した。

 

ひまり「蘭…。そこまで気にしなくても大丈夫だから」

巴「そうだぞ」

モカ「そーそー。飛鳥くんだったら、ちょっとくらい体見られてもいいじゃ~ん」

飛鳥「…そういう問題ではございませんし、言い方」

 飛鳥が困惑していた。

 

つぐみ「あ、えっと…折角だからお昼一緒に食べない?」

飛鳥「宜しいんですか?」

モカ「いいよ~」

 

 と、飛鳥はそのままAfterglowと食事をとった。この時、飛鳥はもうすでに仕事が終わっているが、ここでAfterglowと遊んでしまうと、色々角が立つので、何とか誤魔化した。

 

 蘭達も色々あったものの、午後もプールで楽しんたという。

 

 そして後日…。

 

蘭「はいこれ。チケット代」

 蘭が陽キャたちに5人分のチケット代を返した。

蘭「これで義理は果たしたから。もう話しかけてこないで」

 

 と、蘭が去っていった。陽キャたちの悪事はSNSで公開され、「自分の思い通りにならないからって女にあたる、ましてやAfterglowのボーカルの手を乱暴に引っ張った屑男」として炎上し、すっかり別人のようにおとなしくなったという。

 

 

飛鳥「男女の関係というのは難しいのでございます」

 

 

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

 

おしまい

 



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第114話「飛鳥、逮捕される(前編)」

 

 

 私の名前は一丈字飛鳥です。まあ、もう114回もやるので自己紹介なんていらないかもしれませんが、話をスタートさせるための潤滑油だと思って聞いてやってください。

 

 さて、自分でいうのもアレですが、私はただの高校生ではないんです。超能力が使えて、超能力を使って色んなトラブルを解決してきました。

 

 で、今回はマナーの悪いファンたちを懲らしめるために、このバンドリ学園に転入してきたわけですが…。結構時間が経ちましたね。今となっては普通の日常を過ごしていています。

いつ帰れるかは未定なんですが、帰ったらこのシリーズ終わりますからね…。

 

 さて、今回のお話ですが、Afterglowに関するお話です…。

 

********************

 

 幼馴染5人で結成された王道ガールズバンド「Afterglow」。演奏の技術もそうだが、何よりも5人とも美少女と言う事で大人気だった。

 

モカ「いやー。今日も大成功だったねー」

 

 Afterglowの5人はつぐみの実家である羽沢珈琲店で反省会をしていた。

 

巴「お客さんからの評判もなかなか良かったしな!」

ひまり「この調子で頑張ろうね!」

つぐみ「うん!」

蘭「……」

 

 と、今日のライブで大成功して士気を上げていた。

 

 しかし、彼女たちにはある悩みがあった。

 

蘭「…まあ、それはそうと」

 蘭が口を開くと、他の4人が困った顔をしていた。

 

巴「あー…」

ひまり「本当にアレ困るよね…」

つぐみ「あはははは…」

モカ「まあ、モカちゃん達美少女だから仕方ないけどさー…」

 

 というのも、男性ファンのマナーの悪さだった。盛り上がってくれるのはありがたいが、時折服を全部脱いだり、下品なヤジを飛ばしてくるのだ。見物に来ている女性客が困った顔をしている。

 

蘭「はー…」

 蘭がため息ついていたが、解決方法も見つからず、そのまま解散になった。

 

つぐみ「また明日―」

巴「おー」

 

 と、解散になり、つぐみ以外の4人は自宅へと帰っていた。

 

ひまり「はー…怖いなぁ」

 ひまりが一人で帰り道についていると、

 

 さわ…

 

ひまり「!!/////」

 誰かに尻と胸を触られた。

 

ひまり「ひゃ…」

「動くな」

「!!」

 

 と、後ろから男が刃物を突き付けてきた。

 

「動いたら殺す」

ひまり「ひっ…!!」

 

 ひまりは恐怖のあまり、動くことが出来なかった。そんな中でも男はひまりの身体をなでるように触る。

 

ひまり(怖い…!! 誰か…誰か助けて…!!!!)

 

 と、ひまりが青ざめ、涙目でそう思っていると、突如刃物が錆びた。

 

ひまり「!!?」

「な、なんだ!!?」

 

 そして男が腹痛に襲われた。

 

「ぐあああああああああああ…!!! は、腹が…!!!」

 と、男は腹を抑えてひまりから離れたが、すぐに立ち上がり、根気よくひまりに近づこうとしていた。

 

ひまり「ひ、ひぃ…!!」

 ひまりは完全に腰が抜けてしまい、動けなくなってしまった。

 

 その時だった。

 

「上原さーん!!!」

 と、飛鳥が走ってきた。

 

ひまり「い、いち…」

飛鳥「大丈夫ですか!?」

 

 飛鳥がひまりの所に駆け付けた。

 

「て、てめぇ…!! オレの邪魔をするな…!! そいつはオレが…」

 

飛鳥「立てますか?」

ひまり「ご、ごめん…腰が抜けて…!」

 

 と、ひまりは恐怖していた。

 

「そいつはオレのもんだぁああああああああああ!!!!」

 男は腹痛を抑えてひまりに襲い掛かったが、飛鳥にハイキックをお見舞いされて、そのまま気絶した。

 

ひまり「……!」

飛鳥「警察呼びますね」

 飛鳥がスマホで警察を呼んだ。

 

飛鳥「警察が来るまで私が傍にいます。もう大丈夫ですよ」

ひまり「……!!」

 飛鳥がそう声をかけると、ひまりの目から涙が、鼻から鼻水が流れた。

 

ひまり「うぇええええええええええええええええええん!!! 怖かったよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 と、飛鳥に泣きついた。

 

 程なくして、警察が駆け付けて男は逮捕されようとしていたが…。

 

「君がこの男を倒したのかね?」

飛鳥「ええ、そうですが…」

 飛鳥は嫌な予感がした。

 

「ちょっと署まで来てもらおうか」

 なんという事だろう。警察官は飛鳥に手錠をかけた。

 

ひまり「!!?」

飛鳥「…あー。もしかしてそちらの人、お偉いさんの息子か何かですかね?」

「黙れ!!」

「とにかくパトカーに乗るんだ!」

 と、警察官は横柄な態度で飛鳥を連行した。

 

ひまり「ちょ、何がどうなってるの…!!?」

 

 そして翌日。新聞に『バンドリ学園の高校生を逮捕 同級生に痴漢か』

 

 と、あたかも飛鳥がひまりに痴漢をして、犯人の男が助けようとしたけど大怪我を負わされたといわんばかりの記事が流れ出た。

 

 この事に学園内が騒然とした。

 

「一丈字が逮捕された!!?」

「しかも上原さんに痴漢って…」

「やっぱりそういう奴だったんだ…」

「最低…」

 

 と、一気に飛鳥の評判は地に落ちた。

 

蘭「一丈字がひまりに痴漢!?」

モカ「……」

巴「一体何がどうなってるんだ!?」

つぐみ「確か現場って、うちのコーヒー店の近くだよね!?」

 

 Afterglowも驚きを隠せなかった。

 

巴「とにかくひまりに聞いてみよう!」

 巴がひまりに電話をかけたが、電話に出なかった。

 

巴「どうして出ないんだ…!」

モカ「多分警察の人に何か言われてるんじゃないかな~」

「?」

モカ「それだったら、モカちゃんにも考えがあるんだから~」

 と、モカが教室を出て行った。

つぐみ「…モカちゃん?」

 

 モカを筆頭にAfterglowは1組の教室を訪れた。

 

モカ「こころちゃーん」

こころ「!」

 こころがモカの方を振り向いた。

 

モカ「今日の新聞見たー?」

こころ「見たわよ! 飛鳥がそんなことしてるわけがないわ!」

モカ「そうだよねー。もし飛鳥くんがそういう子だったら、もうとっくの昔にやってる筈だもんねー。で、お願いがあるんだけど~」

こころ「ええ! 今お父様にお願いして、真相を調べて貰ってるわ!」

モカ「それもそうだけど、その飛鳥くんをはめようとしている真犯人と警察署の悪事も調べてくれる~?」

「!!?」

 皆が驚いた。

 

モカ「さーて。皆の目は誤魔化せても、モカちゃんの目は誤魔化せないよ~」

 と、モカは不敵に笑うのだった。

 

 

おしまい

 



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第115話「飛鳥、逮捕される(後編)」

 

 

 警察署

 

「ああ!!? どーせてめーがやったんだろ!!」

 

 と、机を叩きつけて刑事が飛鳥に問い詰めていた。

 

飛鳥「ここの警察署の方は随分横柄な態度を取るんですね」

「舐めてんのかクソガキ!!」

飛鳥「そのクソガキにここまで言われて、プライドはないんですかね?」

 と、飛鳥は臆することなく微笑んでいた。

 

飛鳥「それはそうと聞きたいことがあるんですよ」

「あ?」

飛鳥「この様子だと知ってるみたいですね…。上原さんを襲ったあの男の事」

「てめーには関係な…」

飛鳥「この町の国会議員の息子で、この警察署の署長から賄賂を受け取っていると」

「……!」

 飛鳥の言葉に刑事は青ざめた。

 

飛鳥「そんな事だろうと思いましたよ」

「ふ、ふん! どっちみちお前はここから出られないんだ! 証明しようにも証明できないな! ずっとここにいろ!」

 と、刑事が悪態をついたその時、別の警察官が現れた。

 

飛鳥「?」

「面会だ」

 

 飛鳥が警察に連れられて面会する場に訪れると、そこには飛鳥を襲った男が現れた。

 

飛鳥「おや」

「てめぇか。オレを襲ったのは?」

飛鳥「いやいや、あなたが上原さんを襲ったんでしょう」

 飛鳥が冷静に言い返した。

 

飛鳥「あ、それとも何ですか? オレの親父は国会議員だから罪を擦り付けたとかマウント取りに来た感じですか? どうぞ」

「て、てめぇ…随分透かしちゃってるみたいだけど、そうだよ! オレの親父は国会議員だから、オレはお咎めなしだ!」

飛鳥「成程。警察官の前でもこんな事言うあたり、相当腐ってるみたいですね」

 飛鳥がそう言うと、男が青筋を立てた。

 

「そ、そうやっていい気になってるのも今のうちだぞ。お前がここを出られる頃には、犯罪者の仲間入りだ! 普通の生活を送れないと思えよ!」

飛鳥「元から普通じゃないんで大丈夫ですよ。それよりもいい年した大人がこんな理由で、親御さんの権力に縋るのは如何かと思いますけどね」

「口を慎め!!」

飛鳥「慎むのはあんたの方ですよおまわりさん。さっきも言いましたけど、プライドないんですか?」

「侮辱罪で訴えるぞ!!」

飛鳥「はいはい。ご自由にどうぞ」

 飛鳥が軽くあしらった。

 

飛鳥「で、言いたいのはそれだけですか?」

「ぐっ…!!」

飛鳥「あ、そうそう。それから一つ聞きたい事があるんですけど、あの上原さんっていましたよね?」

「な、なんだよ…」

飛鳥「彼女、弦巻財団のお嬢様と仲がいいんですけど、知ってました?」

 弦巻財団という言葉に、男や警察官たちが青ざめた。

 

飛鳥「あなた程の人なら、弦巻財団がどういう所かご存じですよね?」

「で、でたらめを言うな!」

飛鳥「まあ、信じなくても結構です。私もそのお嬢様の事を知ってますけど…彼女、行動力半端じゃないですからね。今頃話が行ってるんじゃないですかね。彼女のお父様である、弦巻財団の総帥に」

 飛鳥の言葉に更に青ざめる。

 

「ほ、本当にでたらめな事を言うなぁ!!」

「さ、詐欺罪だぞ!! 威力業務妨害罪だぞ!!」

飛鳥「まあ、話が行ってない事をこっちも願ってますよ。私としてもすごく嫌な予感がしてるんで…」

 飛鳥が男を見つめた。

 

飛鳥「本当に偉い事してくれましたね…」

「ああ!? 何訳分かんねー事言ってんだよ!! 泣き寝入りしてろや!!」

 

 その時、署長らしき中年男性が現れた。滅茶苦茶慌てている。

 

「署長!!」

「聞いてくれよ! こいつ凄く生意気だから死刑に…」

「こいつを捕まえろ!!」

 と、署長の後ろから警察官2人が現れて、男を捕らえた。

 

「な、何しやがる!! オレはあの国会議員の息子だぞ!!」

「馬鹿もん!! それがなんだ!! 弦巻財団と林グループを敵に回しおって! 処刑されるのは貴様だ!!」

飛鳥「いや、あんたもだけどな」

 飛鳥が困惑すると、周りにいた警察官が更に青ざめた。

 

「は、林グループ…!!?」

飛鳥「ええ…あそこのご一家には昔から仲良くさせていただいておるんですよ。何か言われました?」

 すると署長が土下座しだした。

 

署長「まさか林グループの御曹司やお嬢様のご友人だったとは…!! 申し訳ございません!!」

飛鳥「いや、それ完全に身分で態度変えてますよね? で、何か言われたかって聞いてるんですが」

署長「…先ほど、林グループの若奥様から電話がありまして」

飛鳥「あー…リーダーか…」

 

 林さくら。林グループの若奥様で、飛鳥の中学時代の同級生である林日向、材椿の母親である。

 今は専業主婦だが、昔はアメリカの偉い所で働いており、そこのプロジェクトリーダーをしていた。飛鳥はアメリカにいた事があったが、その時にお世話になっている。

 ただ、学生時代は福岡のヤンキーで、今の旦那に一目惚れして玉の輿になりました(ただ、その時は旦那が大金持ちとは知らなかったそうです)。

 

飛鳥「やっぱり怒ってたでしょう」

署長「ええ…。どういう事って、低い声で…」

飛鳥「…あの人、元ヤンだからなぁ」

 

 その時だった。

 

「しょ、署長!!」

「!!?」

 

 警察官が慌ててやって来た。

 

署長「ど、どうした!?」

「…林グループ若奥様、林さくらさんがお越しになってます…」

署長・飛鳥「はぁ!!?」

 こればかりは飛鳥も反応した。

 

「こ、こちらです…」

 と、青い髪のショートヘアの女性が現れた。40代ではあるが、外見的には30代である。

 

飛鳥「リーダー!!」

署長「ひ、ひぎィ!!!」

 飛鳥が驚き、署長は青ざめて奇声を上げた。

 

さくら「はーい飛鳥。元気にしてる」

飛鳥「あなたが来るまでは割と普通でしたよ」

さくら「ちょ、どういう意味よ」

飛鳥「いや、周りを見てください。あなたが現れた事で回りは葬式のテンションになってますよ」

さくら「折角助けに来たのに、何て言い草なのかしら」

飛鳥「いや、それは勿論感謝しておりますよ。ありがとうございます。ただ、アポイントメント取りました?」

さくら「そんなの取る訳ないじゃない。悪事の証拠を隠されたら困るもの」

飛鳥「ですよね」

 

 さくらの言葉に飛鳥は困惑したが、さくらは構わず男を見つめた。

 

さくら「あなたね? 〇〇議員の息子で、この子を嵌めたのは」

「な、なんだぁ!? オレは無実だし、林グループがなんだ!!」

さくら「そうだ。いいものを見せてあげる」

「!?」

 

 さくらが自分のスマホを男に見せた。そこには一人の中年男性が、中年男性に土下座している写真である。

 

「土下座してる男の人…あなたのお父さんよね?」

「!!?」

「で、土下座している先にいる人、弦巻財団の総帥なの。どういう事かわかるわね? あなた…もうすぐ、〇〇議員の息子じゃなくなるのよ?」

 

 さくらの言葉に男は青ざめた。

 

さくら「〇〇議員の息子じゃなくなるなら、もう警察も変に気を遣わなくていいわよね?」

署長「は、はい!! ひっとらえろ!!」

「はっ!!」

「ふ、ふざけんなぁあああああああ!!! パパぁあああああああ!!! パパぁあああああああああああああああああ!!!」

 と、わめきながら男は数名の警察官に連れていかれた。

 

飛鳥「……」

 そしてさくらは残った警察官を睨みつけた。

 

さくら「何ボサっとしてんの。早くこの子を解放して頂戴!」

「し、しかし…」

さくら「これ以上林グループに逆らうっていうの?」

「ひ、ひぎィイイイイイイイイイイイ!!」

「畏まりましたぁああああああああ!!」

 

 こうして、飛鳥は無実を証明することができた…。

 

飛鳥(完全に地位や権力にモノを言わせてたけどね…)

さくら「あら、相手も権力を立てに好き放題やってたんだからいいじゃない。目には目を、権力には権力よ」

飛鳥「……」

さくら「それよりも後でうちの子やお母さんに電話してあげて頂戴。心配してたわよ?」

飛鳥「あ、はい…。ありがとうございました…」

 

 そして…。

 

ひまり「一丈字く~~~~ん!!! ごめんねぇ~~~~~~!!!」

 と、復帰するやいなや、ひまりに泣きながら平謝りされた。

飛鳥「いえいえ、やっぱり警察に口止めされてたんですね」

ひまり「うん…」

 と、ひまりが言うと、蘭と巴が激昂していた。

 

蘭「それにしても許せない。その警察と国会議員の息子…」

巴「そうだな! ひまりと一丈字にこんな目に遭わせたんだ!」

つぐみ「ま、まあ…。結果的に一丈字くんも帰ってきたんだし…」

飛鳥「ありがとうございます。まあ…」

 

 飛鳥が一息つくと、周りの男子生徒達が飛鳥を睨みつけていた。そう、無実を証明できたとはいえ、本当にひまりに痴漢してないかどうか、疑惑の目が向けられていた。

 

飛鳥「まあ、もう慣れましたけど」

モカ「可哀そうな飛鳥くん~よしよし~」

飛鳥「…どうも」

 モカが飛鳥の頭をなでると、飛鳥が複雑そうにした。

 

モカ「ひーちゃんも助けて貰ったんだから、肩もみとかしたら~?」

ひまり「そ、そうね! お疲れ様…じゃなかった、ありがと~」

 と、ひまりが飛鳥の肩を揉みだすと、飛鳥が更に困惑して、男子生徒達の嫉妬の炎が更に燃え上がった。

 

蘭「…ところでさ。一丈字を嵌めようとした警察や国会議員の息子ってどうなるの? やっぱり逮捕されるの?」

飛鳥「……」

 蘭の言葉に飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「…林グループが引き取るとの事です」

「え?」

 蘭達が反応すると、飛鳥が眉間にしわを寄せて、こめかみを手で押さえた。

 

飛鳥「……」

 

 

おしまい

 

 



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第118話「千聖と薫が入れ替わってしまった」

第118話

 

『千聖と薫の身体が入れ替わった』

 

千聖「唐突過ぎるんだけど!!!」

薫「儚い…」

 

 バンドリ学園のとある場所。千聖と薫がなんやかんやで体が入れ替わってしまった。

 

千聖「どうやったら元に戻るの!?」

薫「慌てても仕方ないさ。この状況を愉しもうよ」

 

 千聖の姿で薫がいつものように振舞っていた。

 

千聖「そうね。慌てても仕方ないものね。分かったわ」

薫「ちょっと待ってちーちゃん。何する気?」

 

 千聖の様子を見て、薫が嫌な予感がしたので千聖の肩をつかんだ。

 

千聖「別に。いつも通りにしようとするだけよ?」

薫「私の身体で変な事しないでよ!?」

千聖「それはこっちの台詞よ。とにかく元に戻るまでその宝塚のキャラは禁止! 私らしくして」

薫「わ、分かった…。それだったら千聖も私らしく振舞ってくれよ?」

千聖「ええ」

 

 そんなこんなで元に戻るまで、お互いを演じる事になった千聖と薫。果たして…。

 

「一体何だったんだ今の光は!!」

「うーん。実験は大失敗だな…」

「女子と体が入れ替わるその日までオレ達は諦めないぞ!!」

 

 犯人は科学部の男子生徒達だった。

 

 だが、さっそく問題が起きた。

 

「白鷺さん。あなた1組でしょ?」

 薫が誤って2組に入ってしまったのだ。

 

千聖(もう!! 早速やらかしてるじゃないのよ!!)

薫「いけないいけない。私とした事がついうっかり…」

 すると千聖が薫を引っ張り出した。

 

千聖「かおちゃん。次やったらかおちゃんの恥ずかしい秘密を一丈字くんにバラすわよ」

薫「ごめんなさい。勘弁してください」

 

 傍から見たら薫が千聖に詰め寄ってるようにしか見えなかった。

 

 そして悪い事は重なるもので…飛鳥が通りかかった。

 

飛鳥「!?」

 飛鳥が2人の様子を見て、驚いていた。

 

飛鳥(何か2人とも様子がおかしい…。体が入れ替わってるのか!?)

 超能力者なので、すぐに察しがつきました。そして2人も飛鳥に気づいた。

 

薫「ち、千聖。これだと私が千聖に詰め寄ってる! イメージが悪くなるぞ!」

千聖「そ、そうね…」

 と、2人は離れた。

「おーい。2人とも教室入れ―」

千聖「あ、はい…って、だからあなたはあっち!」

薫「す、すまない」

千聖「宝塚は禁止!!」

 

 千聖と薫の様子がおかしい事に一部は気づいたが、それ以外は幼馴染特有の漫才だと思い込んでいた。

 

 そして休憩終了後

 

千聖(何とか一丈字くんに誤解を解かないと…)

 千聖が飛鳥のいる教室に向かおうとすると、

 

「薫さーん!!」

「薫せんぱーい!!」

「サインくださーい!!」

 と、ファンの女の子たちが寄ってきた。

 

千聖(ど、どうしてこんな時に…!! だけど断ったら薫に迷惑が掛かって…バカにされる)

 

 こんな感じである。

 

薫『おやおや。いつも私の事に対して偉そうなことを言っていたくせに、千聖は出来ないんだねぇ?』

 

千聖(それだけは絶対に嫌!!!)

 と、千聖は女優魂に火をつけて、薫の物真似をした。女子たちは黄色い声援を上げていたが、千聖は死ぬほど恥ずかしがっていた。

 

 薫は薫で千聖らしく振舞おうとしていたが、どこかぎこちなかった。

 

 そしてまた悪い事は重なり…。

 

彩「千聖ちゃん大変だよー!!」

薫「?」

 彩が慌ててやってきた。

 

薫「どうしたんだい…じゃなかった、どうしたの?」

彩「此間言ってた生放送なんだけど、今日だって!」

薫「!!?」

千聖「えっ!!? そんな話聞いてないわよ!!?」

 千聖が思わず身を乗り出したが、皆が千聖を見た。

 

薫(ちーちゃん…!!!//////)

千聖「え、と…お、おっとすまない。千聖の物真似をしてみたくなったのさ。はっはっは」

薫(ちーちゃんの恥ずかしい秘密、一丈字くんにバラしてやる//////)

 と、薫は涙目で千聖を睨んだ。

 

千聖「そ、それはそうと生放送が今日だというのはどういう事だい?」

彩「えっとね。明日の予定だったんだけど、事務所の人が伝達ミスしちゃったって…」

千聖「また!?」

彩「え? なんで知ってるの?」

千聖「いや、千聖から聞いててね。全く管理がなってないなぁ」

 と、千聖が必死に薫っぽく振舞っていたが、

日菜「それはそうと、千聖ちゃんも薫くんも今日ヘンだよ?」

薫「」

千聖(日菜ちゃんに言われた…!!)

 

 変人である日菜に変と言われて薫は石化し、千聖は屈辱を味わった。

 

日菜「にしても困ったなー。今日飛鳥くんをスタジオに招待したんだけど、空いてるかな…」

千聖「!!?」

薫「よ、予定があるなら来てもらえばいいんじゃないかな」

日菜「ちょっと聞いてみるね!」

 と、日菜が飛鳥に確認を取る為、電話をかけた。

 

千聖(お願い一丈字くん!! スタジオに来て!! 多分あなたなら何とかできそうなの!!!)

薫(千聖の姿でテレビに出るという事は、いつものキャラが振舞えない…どうしよう…)

 薫は青ざめていた。

 

日菜「OKだって!」

千聖(ほっ…)

日菜「あ、それはそうと2人とも」

「?」

日菜「飛鳥くんがちょっと話したい事があるって」

 

 別の休憩時間

 

飛鳥「…入れ替わってますよね。2人とも」

千聖「どうして分かったの!?」

飛鳥「いや、様子がおかしいのもそうだったんですけど、科学部が…」

 と、飛鳥が理科室で科学部が体を入れ替える実験をしていたことを暴露した。

 

千聖「科学部…!!!」

薫「儚くない…」

 千聖が握りこぶしを作り、怒りに震えていた。薫もちょっと怒っていた。

 

千聖「それだったら今すぐ科学部の連中を連れてきて!!」

飛鳥「それが、実験したことが先生達にバレて、もうここには…」

千聖「それだったらあなたが何とかしてよ!! 出来るでしょ!?」

薫「千聖落ち着くんだ! 私が一丈字くんに詰め寄ってるように思われるじゃないか!」

 

 千聖が飛鳥に詰め寄って薫が止めるが、傍から見たら薫が飛鳥に詰め寄って千聖が止めているようにしか見えなかった。

 

飛鳥「弦巻さんに相談するしかありませんね…」

薫「こころにかい?」

飛鳥「…弦巻さんも『今日の薫、千聖みたい』って言ってたので」

千聖(ミッシェルの正体に気づいてないのに、気づくわけないじゃない!!!)

 

 千聖は初めて美咲の苦労が分かったとか。

 

千聖「もー!! どうしてこんな事になっちゃったのよ~!!」

薫「千聖落ち着くんだ! まだ諦めてはいけない! ナポレオンも言っていたじゃないか…」

千聖「だから私の姿で宝塚やるのやめてってば…」

 その時、千聖と薫に異変が起き、2人はそのまま眠るように倒れた。

 

飛鳥「し、白鷺先輩! 瀬田先輩!!」

「安心しろ。眠らせただけだ」

飛鳥「!!?」

 

 飛鳥が横を見ると、和哉が現れた。

 

飛鳥「和哉さん!!」

和哉「そこの2人を元に戻してほしいという依頼があってな」

飛鳥「誰にですか?」

和哉「弦巻家の黒服達だ」

飛鳥「やっぱり…」

 和哉が千聖と薫の頭をつかんで、念じた。

 

和哉「これで元に戻ったはずだ」

飛鳥「あ、ありがとうございます…」

和哉「体を入れ替える能力は持っていないのか?」

飛鳥「持ってませんよ…」

和哉「なら今度の休み、島に戻ってこい。技を教えてやる。実戦形式だがな…」

飛鳥「…もしかして」

和哉「頭の回転は衰えてないようだな。四国で麻薬を取引しているところがあって、そこを叩く。その被疑者を実験台にしろ」

 和哉の物騒な発言に飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「孫さんは…」

和哉「あいつは留守だ。麻薬を誤って吸引されでもしたらたまったもんじゃねェ。それじゃあな」

 そう言って和哉は黒い炎に包まれて消えた。

 

飛鳥「……」

 ある意味薫よりもブレてないだろうな…と、飛鳥が困惑した。

 

「うーん…」

 千聖と薫が目を覚ました。

 

飛鳥「あ、白鷺先輩、瀬田先輩。大丈夫ですか?」

千聖「え、えぇ…」

薫「清々しい朝だ…」

飛鳥「昼です。あ、元に戻ったようですね」

 

 飛鳥の声に千聖と薫が周りを見渡した。

 

薫「おお…!! 元に戻っている!!」

千聖「よかった…もう懲り懲りよ…」

 と、安心して、一件落着かと思われたが…。

 

「…ん。千聖ちゃーん!!」 

 と、パスパレのメンバーがやってきた。その時だった。

彩「千聖ちゃ…」

千聖「何だい? 子猫ちゃん達…」

 

 千聖は思わず薫の真似をしてしまって、空気が止まり、千聖が顔を真っ赤にした。

 

飛鳥(…白鷺先輩も結構抜けてる所があるんだなぁ)

薫(それが千聖の魅力でもあるのだよ。あぁ、儚い…)

 

 その後

 

千聖「一丈字くん。かおちゃんは小学1年生のときに…」

薫「やめてよちーちゃん!!!////////」

飛鳥「……」

 

 日菜たちに散々弄られた腹いせに薫の秘密をばらそうとして、飛鳥は苦笑いしていた。

 

 

おしまい

 



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第119話「バンドリ詰め合わせ」

オムニバス形式です。


 

 

1. こころのお願い(こころ × 薫)

 

こころ「ねえ薫!」

薫「何だい子猫ちゃん」

 

 ライブハウス「CiRCLE」でこころと薫が話をしていて、こころがお願いをしようとしていた。

 

こころ「今度のライブでやってほしい事があるの!」

薫「言ってごらん」

こころ「ギターやりながら、玉乗りをしてほしいの!」

 

 こころの発言に薫が反応した。

 

こころ「驚きとワクワクが組みさって楽しいと思うの!」

薫「はっはっは。こころは相変わらず驚くような事を言うね」

こころ「それじゃ頼んだわよー」

 

 それを遠くから見ていた飛鳥と美咲が、とても困惑した様子だった。

 

飛鳥「…いつもああなんですか?」

美咲「そーなのよ。ツッコミが私しかいなくてカオス状態なの…」

飛鳥「お疲れ様です…」

 

 飛鳥の問いに美咲は肩を落として返事をすると、飛鳥が労った。

 

美咲「おまけにミッシェルの二役やらないといけないから…。もうてんてこまいで…」

飛鳥「いや、もう。本当にお疲れ様です…」

 

 美咲の表情と声色から、いかにこころ達から苦労させられているか、飛鳥は察していた。

 

飛鳥(そういやファンの人たちは知ってるのかな…)

 

 

2. 薫の苦手なもの(薫 × 美咲)

 

薫「うーん…」

 食堂で薫は気難しい顔をしていて、飛鳥と美咲が通りかかった。

 

美咲「薫さん? どうされたんですか?」

薫「ああ…。子犬くんに子猫ちゃんじゃないか」

 飛鳥は薫が見ていた看板に気づいた。

 

飛鳥「…本日の日替わり定食は海鮮丼なんですね」

薫「そうなんだ…」

飛鳥「もしかして、生魚ダメなんですか?」

薫「そうなんだ…。両親からは好き嫌いがないように育てられてきたんだが、生魚だけは…」

美咲「お寿司とか美味しいと思うんですけどね」

薫「残念だよ…。君とは分かり合えないかもしれない…」

飛鳥「そんなに苦手なんですか…」

 

 薫のらしくない態度に飛鳥が困惑していると、

 

飛鳥「もしかしていつも日替わり定食を食べてたんですか?」

薫「そんな事はないよ。私はいつも洋食を食べていて、たまには和食でも食べようかと思っていたんだ」

飛鳥「へー…」

 

 薫の言葉に飛鳥は相槌を打ったが、先日千聖からこんなことを聞いていたのだ。

 

千聖「…薫はね、本当はお雑煮が大好物なのに、そこもキャラ作ってるのよ」

飛鳥「そうなんですか」

千聖「ええ。ここの食堂だってそう。本当は和食を食べたいのに、無理して洋食を食べようとしてるのよ」

飛鳥「…徹底してるんですね」

千聖「全くもう。無理しないで、元の可愛い「かおちゃん」に戻ればいいのに」

 

 という会話をしていた。

 

飛鳥「そうなんですね…」

薫「その様子は、千聖から何か言われていないかい?」

飛鳥「いえ」

薫「いや、絶対言われてるよね」

美咲「あー…。そういや最近白鷺先輩とも仲良くなったよね」

 

 薫が感づいて飛鳥は必死に誤魔化した。

 

飛鳥「魚介類はともかく、和食もたまにはいいと思いますよ…ハイ…」

薫「他に何か言ってなかったかい?」

飛鳥「……」

 

3. 好み(ひまり × つぐみ)

 

ひまり「ねえねえ! このジャケットとっても可愛くない!?」

つぐみ「そうだね。あ、このスカートとかも似合うんじゃない!?」

ひまり「あっ! それ私が好きな奴!」

「……」

 

 飛鳥は暇つぶしにショッピングモールに来たのだが、偶然ひまりとつぐみに遭遇し、買い物に付き合うことにした。

 

つぐみ「…あっ! ごめんね一丈字くん。付き合わせて」

飛鳥「それは構いませんが…。やっぱり幼馴染って好みとか分かるんですね」

ひまり「うーん。まあ、つぐは気配り上手だからっていうのもあるわね!」

つぐみ「そ、そんな事ないよー…/////」

 

 ひまりの言葉につぐみが思わず照れた。

 

ひまり「いやー。それにしても一丈字くんがいると、安心して買い物出来るわー」

飛鳥「そうですか?」

ひまり「そうそう。これが女子だけで行くと、声かけられて、ゆっくり買い物が出来ないの。此間なんか蘭が臍曲げちゃって…」

飛鳥「あー…」

 ひまりの言葉に飛鳥が反応すると、つぐみが苦笑いした。

 

ひまり「それはそうと、今日はいないわよね?」

飛鳥「えーと…。結構隠れてみてる人多いですね」

ひまり「え゛」

飛鳥「私がいるからなのか…。様子見って感じです」

 

 飛鳥がそういうと、所々で男性ファンがスマホを撮ったり、じーっと見ていた。

 

ひまり「ええええ…」

つぐみ「やっぱりこうなっちゃうんだね…」

飛鳥「まあ、それだけあなた方が有名になったって証拠ですね」

ひまり「嬉しいような悲しいような…」

 

 飛鳥の言葉にひまりは肩を落とした。

 

飛鳥「で、買い物を続けられますか?」

ひまり「それは勿論!」

飛鳥「それではごゆっくり」

 

 多分目を離すと一斉に押し掛けてくるだろうな…と、飛鳥はそう思い、監視を続けるのだった。

 

 そして、数十分で2人の買い物が終わった。

 

ひまり「いやー。いい買い物ができたー」

つぐみ「良かったね」

飛鳥「……」

 と、3人が合流した。

 

飛鳥「それで、この後どうされますか?」

ひまり「うーん…。このまま帰ろっか」

つぐみ「そうだね」

飛鳥「分かりました。それでは送ります」

つぐみ「えっ!? そこまでしなくていいよ!」

ひまり「送ってもらいましょ」

「!?」

 つぐみが否定するが、ひまりがつぐみを諫めた。

 

つぐみ「で、でも…」

飛鳥「遠慮はいりませんよ。というか…」

ひまり「一丈字くんがいなくなった途端に声かけるパターンだから」

(うっ!!!)

 

 ひまりの言葉に男性たちは困惑した。

 

ひまり「そういう訳だから行きましょ」

 と、ひまり達は移動して、無事に帰れましたとさ。

 

 

4. 食べ過ぎ注意(モカ × ひまり)

 

ひまり「うぅ…」

 校舎の入口前で、ひまりが苦しそうにしているのを、飛鳥とモカが見ていた。

 

飛鳥「どうされたんです?」

モカ「もしかして~…」

ひまり「朝ごはん食べ過ぎてお腹が苦しい~」

 

 ひまりが苦しそうにしていた。食パンを3枚食べたのである。

 

飛鳥「3枚も…」

モカ「朝からそんなに食べると太…」

ひまり「言わないでっ!!/////」

 モカが何かを言いかけると、ひまりが止めた。

 

モカ「そんなに食べると太」

ひまり「だからー!! 言わないで~!! 自分が一番分かってるの!!////」

 と、ひまりが叫んでいたのを飛鳥は黙って聞いていた。

 

飛鳥(黙っとこ)

 

モカ「飛鳥く~ん」

飛鳥「あ、はい。何でしょう?」

 モカが飛鳥に話しかけると、ひまりは飛鳥をジト目で見つめた。

 

モカ「今日の食堂のスイーツ、有名ホテルのシェフが作ったスペシャルケーキなんだって~」

ひまり「もぉおおおおおおお!!!///////」

 

 完全に自分をからかってる事に気づいたひまりは叫んでいた。

 

「寧ろそこがいい…」

「食べた分は全部あの部分に…」

「更にメスさが増している…」

「あのおっぱいを我が物に…」

 と、陰から男子生徒達が見ていた。

 

ひまり「……//////」

モカ「いや~。大きいと色々苦労しますなぁ~。ねえ、飛鳥く~ん」

飛鳥「あ、ごめんなさい。ヘルシェイク矢野の事考えてました」

 

 

おしまい

 



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第122話「トンカツ慕情(前編)」

元ネタ:美味しんぼ アニメ第35話「トンカツ慕情」

…この話をバンドリでやったらどうなるか、やってみたかったのです。


 ある日の事だった。

 

「ありがとー!! 飛鳥くん!!」

「いえいえ…」

 

 飛鳥はある日の休日、買い物をしに商店街に来ていて、はぐみの実家が経営する『北沢精肉店』に肉を買いに来ていたのだった。

 

はぐみ「かのちゃん先輩がバイトしてるハンバーガーショップは沢山お客さんが来るんだけど、うちはお客さんが少ないの。コロッケとかもあるのに…」

飛鳥「まあ…。コロッケはコンビニでも買えますし、精肉は料理しないといけませんからね」

 

 精々、精肉を買ってどこかに捨てるなんてそんな罰当たりな事をしない事を願う飛鳥であった。

 

飛鳥「それでは私は失礼しますね」

はぐみ「うん! また学校でねー」

 

 と、飛鳥ははぐみに別れを告げてその場を去っていった。

 

 しばらく歩くと、公園にたどり着いたがそこで落ち込んでいる男性を見かけた。

 

飛鳥「…あれ!?」

 飛鳥が男性に気づいたとたん、公園の中に近づいて話しかけた。

 

飛鳥「もしかして五郷さんですか?」

五郷「え?」

 五郷と呼ばれる中年男性が顔を上げて飛鳥を見ると、驚いた顔をしていた。

 

五郷「も、もしかして一丈字くんかい!?」

飛鳥「ええ。お久しぶりです…」

 五郷が話しかけると、飛鳥が苦笑いした。

 

五郷「いや~! なんて日だ! まさか君にまた会えるなんて!! 本当に大きくなったねぇ~!!」

飛鳥「いえいえ。。五郷さんもお変わりないようで…」

五郷「林グループの若奥様は元気にしてるかい?」

飛鳥「ええ。今は第一線を離れて、専業主婦をしてますが…」

 

 飛鳥が苦笑いすると、

 

飛鳥「それはそうと、こんな所でどうされたんですか? うなだれたりなんかして…」

五郷「……」

 

 飛鳥がそう聞くと、五郷がまたしょんぼりした。

 

飛鳥「…その、もし差支えがなければ、お話しいただけませんか?」

五郷「そうだね…」

 

 と、五郷は悩んでいたことを飛鳥に話した。

 

飛鳥「…トンカツ大魔王?」

五郷「ああ。私は若い頃、この辺に住んでいてね。トンカツ大魔王のご主人と奥様にとても良くしていただいたんだ。あの時はお金もなく、食べるものに困っていた私に、よくトンカツを食べさせてくれていた」

 

 五郷は懐かしそうに昔の事を思い出した。

 

「ハァ…ハァ…くそう…!!」

 

 作業着を着た若き日の五郷はボロボロになりながら街を歩いていた。今日は給料日だったが、帰宅途中にガラの悪い男数人に絡まれ、殴られただけでなく給料袋を取られてしまったのだ。

 

「も、もうだめだ…」

 五郷は体中が痛くて耐えられず、その場に座り込んだ。

 

「おいおい、どうしたんだい?」

 と、一人の中年が話しかけてきた。この中年男性こそが五郷の恩人である橋中であった。

 

 トンカツ大魔王

 

「そりゃあ気の毒なこった。最近若い奴らが数人がかりで給料日の労働者を狙った事件が多いんだよ」

「……」

 五郷は席に座ってうなだれていた。

 

橋中「まあ、こんな時はこのトンカツ大魔王のトンカツ定食を食べれば、元気になるってもんよ!」

五郷「い、いやお金は…」

橋中「いいさいいさ。そんな不幸な目に遭ってんだ。そんな目に遭わされたら是非いい事をしてあげたくなっちゃうぜ!」

橋中妻「遠慮せずに食べてね」

 と、橋中の妻がにこやかに話しかける。五郷はずっと遠慮していたが、トンカツの誘惑に勝てず、つい食べてしまった。

 

五郷「美味い…!!」

橋中「そうだろうそうだろう!!」

 

 五郷の言葉に橋中が笑い飛ばすと、五郷の目から大量の涙がふれ出た。

 

五郷「とても美味い…!! こんなとんかつ、今まで食べた事ない…!!」

 と、顔をくしゃくしゃにしながら食べていた。

 

橋中「泣くほど美味いか!! じゃあこれからはうちに食べに来い! 流石に只にするのは無理だが、出世払いにしといてやらあ!!」

五郷「え?」

橋中妻「いいのよ。どうせお客さんも来なくて暇だから」

橋中「おい! 余計な事言うんじゃねぇよ!!」

 と、橋中は憤慨したが、店内は温かい雰囲気に包まれた。

 

********

 

五郷「…大企業の社長になり、時間も出来たから是非お礼を言いにここに来たのだが、店は潰れていたんだ」

飛鳥「そうだったんですか…」

 五郷の言葉に飛鳥が困った顔をした。

 

五郷「まあ。あれは20年以上も昔の話だ。店がなくなっても仕方がない。だけど、ちゃんとお礼が言えなかった事と、あのとんかつをもう食べられない事が心残りだ」

 と、五郷が寂しそうにつぶやくと、飛鳥は言葉を続けた。

飛鳥「そのご主人と奥様の名前は何て言うんですか?」

五郷「ご主人の方は橋中一郎と言っていたよ。それはもうとても気さくな方だった。今頃何をしているんだろうねぇ」

飛鳥「……」

 

 すると五郷が飛鳥の持っている袋を見た。

 

五郷「ところでその荷物は」

飛鳥「あ、今日の晩飯です! 丁度トンカツにしようと思ってまして…」

五郷「君も料理するのかね?」

飛鳥「ええ。やらないと腕もなまってしまうので…」

五郷「そうか。邪魔したね」

飛鳥「あ、折角ですから連絡先交換しませんか?」

五郷「え?」

飛鳥「……」

 

 ****************

 

飛鳥「…ちょっとリーダーに相談してみるか」

 五郷と別れた後、飛鳥は放っておけなかったのか、トンカツ大魔王の主人を探してみる事にした。

 

「あら、飛鳥じゃない!」

 と、こころとはぐみがやってきた。

 

飛鳥「あれ? 北沢さん」

はぐみ「あ! もう店番は終わったんだよ!」

飛鳥「そうなんですか…」

こころ「それはそうと、どうかしたの?」

飛鳥「えーと、これから帰る所ですね」

 飛鳥が苦笑いした。

 

こころ「飛鳥…。何かあたしに隠し事してない?」

飛鳥「隠し事って言ったら大げさだけど、家に帰ったらちょっと人を探さないといけないんです」

こころ「人探し?」

 飛鳥は事情を説明した。

 

こころ「まっかせて! あたし達も探してあげるわ!」

飛鳥「いやー。流石に弦巻財団の力を使うのは申し訳ないですよ」

こころ「けど、日向達には頼るんでしょ?」

飛鳥「それはまあ」

こころ「だったらあたし達も同じように頼っていいのよ!? それに、そのおじいさんとおばあさんが見つかったら、社長さんもきっと笑顔になるわ!」

飛鳥「あー…そうですね…」

 きっと、涙が止まらなくなるだろうな…と飛鳥は思っていた。

 

飛鳥「それじゃ、お願いしていいですか?」

こころ「任せて!!」

 

 と、こころをはじめとする弦巻財団に捜索をお願いした。

 

飛鳥(五郷さん…1週間は日本に滞在するって言ってたから、それまでに何とかなればいいんだけど…)

はぐみ「ねー。はぐみも何かお手伝いすることなーい?」

 と、はぐみが飛鳥に聞くと、飛鳥ははぐみの顔を見てあることを思いついた。

 

飛鳥「橋中さん達が見つかったら、お願いしたいことがあるから待っててください」

はぐみ「え?」

 

 そして翌日。

 

こころ「見つかったわ!!」

飛鳥「早っ!!!」

 

 こころとはぐみが3組の教室に現れて、飛鳥に話しかけると、飛鳥はあまりの速さに突っ込みを入れた。

 

飛鳥「それでどこにいたんですか?」

こころ「えっとね…」

 

 飛鳥がこころから場所を聞いた。するとはぐみは飛鳥の方を見る。

 

こころ「ねえ飛鳥くん!」

飛鳥「ん?」

こころ「おじーさんとおばーさんが見つかったら、はぐみにお願いしたいことがあるって言ってたよね!?」

飛鳥「ええ。北沢さんのお店で一番高い豚肉と脂身を売ってほしいんです」

「!!?」

 

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

 

こころ「どうするつもりなの?」

飛鳥「老人ホームにいるとはいえ、動けるほど元気なら、まだ作れる筈です。とんかつを」

「!!」

 

飛鳥「五郷さんを呼んでもう一度作ってもらうんです。20数年前に食べたとされる、トンカツ大魔王のトンカツ定食を!」

 

 

つづく

 



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第123話「トンカツ慕情(後編)」

 そして休日…。

 

飛鳥「すみません…わざわざお越しいただいて…」

 高級車に飛鳥、こころ、はぐみ、五郷の4人が座っていた。

 

五郷「いいんだ。本当に感謝してるよ。ここまでやってくれるなんて…」

飛鳥「まあ、何か寂しそうだったので、つい…」

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「老人ホーム側にはこちらの弦巻が手配してくれました」

五郷「まさか弦巻財団のお嬢様ともお知り合いだったとは」

こころ「もうすぐで会えるわよ!」

飛鳥「敬語」

 飛鳥が突っ込んだ。

 

飛鳥「…五郷さんの名前を出したら、承諾してくれましたよ」

五郷「そうか。実を言うとあの町を出て数年は連絡を取っていたんだが、色々忙しくなって連絡が取れなかったんだ」

飛鳥「そうなんですか…」

 すると五郷が飛鳥が持っているケースを見た。

五郷「ところで…。何を持ってきたんだい?」

飛鳥「着いてからのお楽しみです」

 

 飛鳥は不敵な笑みを浮かべた。

 

 そして老人ホームにたどり着いた。

 

五郷「ここが…」

飛鳥「……」

 すると責任者がやってきた。

 

「お待ちしておりました。こちらです」

 と、飛鳥達は橋中夫妻の元へ通された。2人は待合室の中で待機していて、五郷の姿を見たときに、目を大きく開け、五郷もまた橋中夫妻の姿を見た途端に目を大きく開け、

 

 20数年前の思い出がよみがえり、大粒の涙を流した。

 

橋中「五郷くん…」

五郷「親父さん…おかみさん…」

 五郷はそのまま橋中夫妻に近づき、橋中と固い握手をした。飛鳥、こころ、はぐみはそれを温かく見守っていた。

 

***********

 

橋中「いやあ、とても嬉しいねぇ。こうやってまた会えるなんて…」

五郷「それも全部、この子たちのお陰ですよ」

橋中「そうかい。本当にありがとう」

飛鳥「あ、いえ…」

 飛鳥が苦笑いし、はぐみが照れた。

 

橋中妻「大富豪になって日本に帰ってくるなんて、本当によく頑張ったわね」

五郷「いえ、何度かくじけそうになった時、親父さんやおかみさん、そしてトンカツ大魔王のトンカツ定食を思い出したんです」

橋中「そうかい! そりゃ嬉しいねぇ」

 と、橋中は昔と変わらず笑い飛ばしていた。

 

五郷「…けど、どうして老人ホームなんかに」

橋中「ああ…それなんだがね」

 と、橋中たちが落ち込んだ。

 

橋中「五郷くんが海外に行った後、信用してた同業者に店の権利書を取られちまったんだよ。それでやる気をすっかり失くしちまったっていうのは言い訳だ。で、身寄りもいねぇもんだから、せめて老後はゆっくり老人ホームでもと思ったんだ。もし権利書を取られてなかったら、もうちょっとやれたんだがねぇ…」

 橋中がそう言うと、皆が困った顔をした。

 

こころ「それならお店をまたやればいいわ!」

橋中「え?」

飛鳥「ごめんなさい。ちょっと語弊がございます」

 こころの発言に対して、飛鳥がストップをかけた。

 

飛鳥「もし橋中さんが良ければですけど、その20年前に五郷さんが食べたというトンカツ大魔王のトンカツ定食、もう一度だけ五郷さんに振舞って貰えませんか?」

橋中「え?」

 飛鳥の発言にも混乱する橋中。

 

五郷「しかし材料は…」

飛鳥「材料ならあります」

 飛鳥が所持していたケースに、豚肉と脂身を取り出した。

 

飛鳥「鹿児島の種子島で養育された黒豚と脂身があります。橋中さん。あなたがお店を始めなかったのは、お店の権利書を取られただけでなく、質の良い豚肉が手に入らなくなかったからだと、お伺いしております」

橋中「よく手に入ったねぇ!!」

飛鳥「えっと…。こちらの北沢のご実家が精肉店でして、無理を言って譲って頂きました…」

はぐみ「ううん! うちのとーちゃんが事情を話したら、泣きながら是非持っていけって!」

飛鳥「…サツマイモをたっぷり食べさせた黒豚ですので、とても質の良いものです。お願いできませんか?」

橋中「まさかここまでやってくれるとは…。五郷くん。こんな素敵な子供達にも恵まれたんだねぇ」

五郷「ええ。本当に彼らには感謝しきれないです」

 

 五郷の言葉に飛鳥とはぐみは照れた。はぐみは顔を真っ赤にして照れたが、飛鳥は苦笑いして照れていた。

 

こころ「それはそうと飛鳥。どうして脂身が必要なの?」

飛鳥「調理してもらったら分かりますよ。お願いできますか?」

橋中「ここまでやってくれたんだ。久々に作ろうじゃないか! トンカツ大魔王のトンカツ定食を!!」

 

 こうして、トンカツづくりが始まった。

 

 老人ホーム・厨房

 

橋中「美味いトンカツを作るにはラードが大事なんだよ!」

五郷「ラード?」

飛鳥「……」

 

橋中「鍋に水を入れて沸騰させたら脂身を入れるんだ。油がどんどんたまってくるだろう。これがラードだ!」

 と、橋中が皆に鍋を見せた。

橋中「また、水を入れたのは最初に入れた脂身をこげつかせない為だよ。油が増えると水が蒸発して最後にはラードだけが残るんだ」

はぐみ「とってもいいにおーい」

 はぐみがそう言うと、橋中はお玉でラードを掬い、豚肉にかけた。そして豚肉を小麦粉とパン粉の順番で丁寧につけていき、鍋に投入すると、音を立てて揚げられていった。

 

橋中「いいラードだと揚がり方も綺麗なんだ。表面もカラリと仕上がって、変な油だと表面がジトジト仕上がって味が落ちるんだよ」

 

 するとはぐみが飛鳥を見た。

はぐみ「そういえば飛鳥くんもうちにお肉買いに来た時、脂身も買ってたけど、ラードも作ってたの?」

飛鳥「ええ、その方が美味しく仕上がるって、昔読んだ本に書いてあったんです」

橋中「それにしても、君良く知ってるねぇ。若いのに驚いたよ!」

飛鳥「いえいえ…」

 褒められてる飛鳥を見て、五郷は笑みを浮かべた。

 

 そして橋中はキャベツの千切りと、トンカツのカットを終えて、ご飯とみそ汁も用意した。

 

橋中「さあ! トンカツ大魔王特製トンカツ定食だ!」

五郷「……!!」

 

 夢にまで見た思い出のトンカツ定食に五郷は心を躍らせた。

 

はぐみ「いいなー」

こころ「まあまあ」

 はぐみが羨ましがっていたが、こころが諫めた。

 

五郷「頂きます」

 と、五郷がトンカツを口にして咀嚼した。それを皆で見守っていると、五郷は目を閉じて静かに涙を流した。

 

五郷「ああ…これだよ。これが私が夢にまで見た思い出のトンカツ定食だ」

飛鳥「……」

橋中「はっはっはっは!! そうかいそうかい!! オレの腕は衰えてなかったという事だ! 今日からでも現役復帰しちゃおうかな!」

橋中妻「まあ、あなたったら」

 と、橋中の妻も嬉しそうだった。そう、トンカツを揚げたりキャベツを切っている夫の姿はとても輝いていたからだった。

 

五郷「…そうですか。それを聞いて安心しましたよ」

橋中「え?」

五郷「これからなんですが、どうするおつもりですか?」

橋中「どうするって…」

五郷「この老人ホームにずっといるんですか?」

橋中「あ、ああ…。そのつもりだけど…」

五郷「それでしたら、見ていただきたいものがあります」

 

 と、食べ終わった後皆は老人ホームの外に出て、となりの建物の前に移動した。看板が設置されていたが、何故かそこだけベールで隠されていた。

 

はぐみ「なーに? あの建物」

橋中「そういえば最近何故か作られたんだ…」

五郷「ベールを外してくれ」

「はい!」

 

 と、五郷の命令で作業員がベールを外すと、

 

はぐみ「わあ!!」

 はぐみが反応した。看板にはこう書いてあった。

 

『トンカツ大魔王』

 

橋中「……!!」

 橋中夫妻は驚きを隠せなかった。

 

五郷「…事前にお話は全部伺いました。遅くなってしまいましたが、僕からのプレゼントです」

橋中「!!」

 五郷の言葉に橋中夫妻は涙を流した。

 

五郷「またいつかここに来ます。豚肉だってこちらで良いものを調べておきます。だからまた作ってほしいんです。トンカツ大魔王のトンカツ定食を」

橋中「五郷くん…!」

橋中妻「ありがとう…。ここまでしてくれて…」

五郷「いいえ」

 五郷が首を横に振った。

 

五郷「今の僕がいるのはあなた方と、トンカツ大魔王のトンカツ定食があったからです。本当にありがとうございました」

 と、五郷が頭を下げると橋中夫妻もまた涙を流した。

 

飛鳥「……」

 飛鳥はそれを静かに見守り、こころとはぐみは貰い泣きしていた。すると五郷は顔を上げて飛鳥達の方を見た。

 

五郷「君達もありがとう。橋中さん達に会えたのは君達のお陰だ」

飛鳥「そんな事はございませんよ。五郷さんが諦めなかったからです」

こころ「そうよ! 橋中さん達に会って笑顔になりたいっていう気持ちが、神様に届いたのよ!」

はぐみ「良かったねぇ…良かったねぇ…」

 飛鳥が横目でこころとはぐみの様子を見ると、五郷達を見つめた。

 

飛鳥「さて、我々はここで失礼します」

五郷「え?」

飛鳥「名残惜しいのですが、私達ちょっと用事がございまして、戻らないといけないんですよ」

 と、飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「まだお時間はたくさんあると思いますので、どうか昔話に花を咲かせてください」

 

****************

 

 後日。

 

飛鳥「大盛況だね。トンカツ大魔王」

こころ「そうね! お客さんがいっぱい来て、皆笑顔だわ!!」

 

 と、飛鳥とこころがカフェテリアで話をしていた。

 

飛鳥「まあ、そりゃいいんだけどさ。もうちょっと敬語使ったらどう?」

こころ「どうして?」

飛鳥「うーん…。マナーって所かな。目上の人にタメ口で話すのあまり好まれないからさ。笑顔にならないよ」

こころ「うーん…笑顔にならないんじゃ、治すしかないわね」

 

 飛鳥の言葉にこころは難しい顔をした。

 

「あっ、飛鳥くーん!!」

 

 と、はぐみがやってきた。

 

飛鳥「北沢さん」

こころ「はぐみ!」

はぐみ「あ、こころんもいたんだ! あのねあのね! 飛鳥くんと五郷社長のお陰で、うちのお店大繁盛したんだ! テレビで紹介もしてくれたの!」

飛鳥「そうなんですか」

こころ「凄いじゃない!!」

 

 そう、飛鳥は五郷に北沢精肉店から豚肉と脂身を譲ってもらったと話し、トンカツ大魔王で使用する肉も、北沢精肉店から仕入れる事にしたのだ。そして五郷がトンカツ大魔王と北沢精肉店を紹介したため、一気に大繁盛したという。

 

飛鳥「まあ、何はともあれ大団円ですね」

こころ「そうね」

はぐみ「あ、それでね!」

飛鳥「?」

 飛鳥は嫌な予感がした。

 

はぐみ「飛鳥くんトンカツ作れるんでしょ?」

飛鳥「アルバイトのご案内でしょうか?」

はぐみ「ううん。ただはぐみが飛鳥くんの料理食べてみたいなーって思っただけ」

飛鳥「私如きの料理を?」

こころ「いいわねそれ!! 飛鳥、作って頂戴!」

飛鳥「いつですか?」

こころ「そうねー。今日にしましょう」

はぐみ「それがいいかも! 早く食べたーい!!」

飛鳥(今日何の予定もないんだよな…)

 

 と、飛鳥はこころとはぐみの為に、トンカツを作る事になりましたとさ。

 

 

飛鳥「まあいいか」

こころ・はぐみ「わーい!!!」

 

 

おしまい

 



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第125話「ナツノヒ」

 

 

 それはある夏の事だった。このバンドリ学園には水泳の授業が存在する。そして…。

 

「今年から水泳の授業、男女混合だぜ―――――――――――――――!!!」

「イエ―――――――――――イ!!!」

 

 と、男子たちが歓喜を上げて、女子たちが絶望していた。

 

「ちょっと弦巻さん呼んできて!!!」

「そうね!! 弦巻さんに頼んで男女別々にしてもらいましょう!!」

「ちっとも笑顔にならないわ!!」

「あ、ちなみに弦巻も「皆一緒の方が楽しいわ」って言って賛成派だったからな」

「そんなぁ――――――――――――――――!!!」

 

 女子生徒達は阿鼻叫喚だったという。

 

 カフェテリア

 

蘭「最悪…」

ひまり「ダイエットしなきゃ…」

 と、Afterglowの5人も困惑していた。

モカ「完全にやらしい目で見てたね~」

蘭「どうしてこんな事になったの…」

巴「まあ、女子の出席率が悪いから男女別々にしたって言ってたけど、よくよく考えたら何で授業にちゃんと出てない奴に合わせなきゃいけないんだって事なんだよな」

蘭「私達もう高校生なのに…」

 蘭が頭を押さえると、つぐみが苦笑いした。

 

モカ「まあ、それもそうだけど女子は女子で男子の水着姿見れたり、カップルもいたりするからね~。いちゃつけるから~」

蘭「アタシ達にメリット全く無いんだけど…」

 

 すると、

 

「あら! 蘭達じゃないの!!」

 こころ率いるハロー、ハッピーワールドが現れた。

 

蘭「こころ…」

はぐみ「聞いた聞いた? 今年から水泳が男女一緒になるんだって…」

 はぐみが何かもじもじしていた。

モカ「どうしたの~?」

はぐみ「いや、男の子の前で水着姿になるの…ちょっと恥ずかしくて…////」

花音「私もです…////」

 と、はぐみと花音が恥ずかしがっていた。

 

薫「子犬くんたちと戯れるのは儚い事だが…子猫ちゃん達も心配だね」

 実は薫もちょっとだけ恥ずかしがっていた。

美咲「まあ、学校の言い分もよく分かるから、何とも言えないけどね…」

 と、美咲は呆れたように笑った。

 

「あれ? 皆もいたの?」

 今度はPastel*Pallettesが現れた。

 

蘭「彩先輩…」

彩「何の話してたの?」

モカ「いやー。今年の水泳、男女混合になった話をですね~」

彩「あー。そういや今度の水泳、男女混合になったみたいだね…」

 彩が苦笑いした。

千聖「うちのクラスの男子が盛り上がってたわ…」

日菜「うちもだねー」

麻弥「…3組が羨ましがってましたけど」

 千聖と日菜の会話の後に、麻弥が苦笑いした。

千聖「全くいい迷惑だわ。こっちも高校生なのだからそれくらい配慮してもらわないと!」

イヴ「?」

 イヴは何故ここまで憤慨しているのか、理解できなかった。

 

「どうしたの? 皆集まって」

 と、あこ以外のRoseliaが集まっていた。

 

「あこも電話で参加してるよー!!」

 と、燐子のスマホからあこの声が聞こえた。

 

あこ「そういえば今度から男女混合になったんだよね!?」

蘭「そういえば中等部は…」

あこ「中等部も男女混合だよー。男子たちがすごく喜んでた」

「……」

 

 何とも言えない空気になっていた。

 

「あ、おーい!! みんなー!!」

 Poppin’Partyが現れたが、有咲だけどんよりしていた。

 

友希那「どうしたの? 市ヶ谷さん」

有咲「いや…」

たえ「今年から水泳男女一緒になったじゃないですかー。だからですよ」

友希那「ああ…」

有咲「ただでさえ男子共がいやらしい目で見てきてるってのに…また不登校になろうかな…」

香澄「えー。そんなのダメだよー。それに男子も一緒なんて楽しそうじゃん!」

こころ「そうよ!?」

「あんた達が羨ましいよ…」

 

 どこまでもポジティブな香澄とこころに皆が困惑した。

 

ひまり「あーん!! ダイエット間に合わないよ~!!!」

モカ「だからあれほど食べ過ぎるなって…」

蘭「それはそうとこころ! 本当に何とかならないの!?」

巴「いや、必死か」

こころ「どうしてそんなに恥ずかしがるのかしら?」

 

 こころの言葉に皆が困惑した。

 

蘭「ど、どうしてって…」

こころ「堂々としてれば恥ずかしくない筈よ?」

美咲「いや、こころはそうなんだけどさぁ…」

つぐみ「やっぱり男の子に水着姿を見られるのは、ちょっと恥ずかしいかな…」

 と、つぐみがそう言って数人が賛同したが、こころは首をかしげるだけだった。

 

こころ「それに女子たちが授業に出ないから、男女一緒になったんじゃないの? それだったらちゃんと授業に出れば男女別々にしてもらえるわよ」

美咲「まあ、簡単に説明したらそうなるわね…」

(弦巻さん、意外にこういう所はしっかりしてるのね…)

 

 こころが正論を言った為、何とも言えない空気になっていた。

 

 そんなときだった。

 

「お昼のバンドリニュース!!」

 

 と、放送委員の女子生徒がモニターに映っていた。

 

「今回は中庭から学校の様子を映したいと思います! おや!? あそこにいるのは噂の1年生、一丈字飛鳥さんですね…」

 

 飛鳥が映し出されたが、ベンチに寝そべって無になっていた。

 

(私達よりも絶望してた!!!)

 

 その映像を見たバンドガールズは困惑した様子で映像を見ていた。

 

「あのう! すみません!」

飛鳥「…あ、はい。何でしょう」

 飛鳥が起き上がった。

 

「その、体調悪いんですか?」

飛鳥「体調が悪いわけではないんですけど、ちょっとこれからどうしようか考えてた所なんですよ」

「…と、言いますと?」

飛鳥「いやあ、今度水泳の授業が行われるじゃないですか。しかも男女混合で」

「はあ…」

 飛鳥が正面を向いた。

 

飛鳥「…何か、冤罪かけられそうな気がして」

 飛鳥の発言にカフェテリアが凍り付いた。

 

飛鳥「目を離したすきに机の上やカバンの中に女子の下着を入れられたりとかしないか、心配なんですよ」

「そ、それはちょっと考えすぎでは…」

飛鳥「下着じゃないんですけど、中学の時冤罪かけられたことあったんですよ。自力で何とか解決しましたけど」

「!!?」

 飛鳥が空を見上げた。

 

飛鳥「その時の犯人も女子と仲良さげに話してたのが気に入らなかったとかなんですけど、そんな事してる時点で相手にされるわけないですよね」

「そ、そうですね…」

 飛鳥がカメラを見た。

飛鳥「あ、これ全校生徒の皆さんが見てるんですか?」

「そ、そうですね…」

飛鳥「そういう訳でやめてくださいね。もしやったら徹底的に出るところ出ますし、水泳の授業…即刻男女別々にして貰うので」

「はい!!! 分かりました!!!」

「!!!?」

 

 そんなこんなで、男子たちは飛鳥に嫌がらせをすることはなく、水泳の授業だけ何故かとても授業態度が良かったという。

 

 1年後…。また男女混合になった。

 

ひまり「って!! 結局私達男子達にジロジロ見られてるじゃーん!!」

モカ「ひーちゃんはいい加減自重しなよ~」

蘭「一丈字―!!!!」

 

 と、水着姿の蘭の叫びが学校中に響き渡りましたとさ。

 

おしまい

 



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第126話「バンドリ詰め合わせ」

 

 

1. 絵になる(たえ × りみ)

 

 スタジオ

 

りみ「おたえちゃんって、ギター弾いてる時、とってもかっこいいよね」

たえ「そうかな? 自分じゃ分かんないや」

りみ「何か、絵になるって感じで」

 

 りみの発言にたえははっとなった。

 

たえ「分かった。こうすればいいんだね」

りみ「…え?」

 と、たえはポーズを取り始めると、りみは驚いた。

 

たえ「え? だって絵になれっていうから…」

りみ「そ、そういう意味で言ったんじゃないよ…?」

たえ「そうなの?」

 

 それを飛鳥、沙綾、有咲が遠くから見ていた。

 

飛鳥「花園さんって…結構天然ボケだったりするんですか?」

沙綾「うん。此間携帯のケースを買いに行って、お店の人に「無色で宜しいですか?」って聞かれて、高校生ですって答えてたから」

飛鳥「それはクリアカラーって言った方が良いのでは…」

有咲「いや、もうなんつーか、天然を通り越してサイコパスな気がするんだよ…」

 

 たえの姿を見て有咲が皮肉気味に答えると、たえが有咲の方を見てむっとした。

 

たえ「私、タコじゃないよ」

有咲「それはオクトパス!!!」

 有咲の言葉に沙綾は噴出した。

 

香澄「ねえ、皆何の話してるの~?」

 

2. 日菜の苦手なもの(紗夜 × 日菜)

 

 カフェテリアで飛鳥、香澄、紗夜が3人で食事をしていた。

 

香澄「そういえば日菜先輩って苦手なものはあるんですか?」

紗夜「そうね…」

 香澄に日菜の苦手なものを聞かれて紗夜は考えた。

紗夜「…地図記号が苦手ね」

香澄「地図記号?」

飛鳥「……」

紗夜「不思議なのよね。大体の事はちょっとやれば出来るのに…」

香澄「意外ですねー」

 

 飛鳥はある事を思い出した。

 

飛鳥「そういえば日菜先輩って地図記号、本当はちゃんと覚えてますよね」

日菜「そんな事ないよー」

飛鳥「……」

 日菜の返事に飛鳥は口角を下げた。

 

飛鳥「…そうですか」

日菜「じょーだんだよ。でもこれおねーちゃんには内緒ね」

飛鳥「え?」

 飛鳥が反応すると、日菜が苦笑いした。

 

日菜「…地図記号が苦手だったのは本当なの。でも、地図記号を聞くときだけならおねーちゃんも昔と同じように話してくれるんだ。今はそんな事をするつもりはないんだけど、それでもね」

飛鳥「日菜先輩…」

日菜「あとね。あたしが本当に苦手なのはね、一つの事をとことん突き詰めてやる事なの」

飛鳥「え?」

日菜「あたしってすぐに飽きちゃうからさ。だから、おねーちゃんって本当に凄いなって思うんだ」

 

 飛鳥は静かに目を閉じた。

 

紗夜「…一丈字くん?」

 飛鳥は紗夜を見つめて苦笑いした。

飛鳥「いえ、ちょっと昔の事を想いだしただけですよ。気にしないでください」

紗夜「そ、そう…」

 飛鳥が苦笑いしたので、紗夜はきょとんとした。

 

3. 花音とクラゲ

 

 水族館

飛鳥「暇つぶしに水族館に来てみたけど、どこから見に行こうかな」

 飛鳥が水族館に来て、色んな動物を見て回っていた。するとクラゲをずっと見ている花音を見つめた。

 

飛鳥(あれ? 松原先輩だ…)

花音「……」

 飛鳥は声をかけようとしたが、熱心にクラゲを見ている花音を見て、思いとどまった。

 

飛鳥(…白鷺先輩からクラゲが好きだって聞いてたけど、まさかあそこまでとはな。お邪魔するのも悪いから、別の所にいこーっと)

 

 そう言って飛鳥は去っていったが、花音はこの後日が暮れるまでクラゲを見ていたという。

 

4. リサと世間話

 

リサ「いやー。ごめんね飛鳥くん。荷物持ってもらって」

飛鳥「いえ」

 

 ある日、ふらふらと街を歩いていた飛鳥だったが、偶然リサと出会い、買い物に付き合う事になった。

 

リサ「…それにしても、飛鳥くんって意外と力持ちだね」

飛鳥「これでも鍛えてますので」

リサ「そっか」

 

 と、そのまま歩いていた。

 

リサ「それじゃどっかでご馳走してあげようかな」

飛鳥「いえ、お気遣いなく」

リサ「気にしないで。ゆっくり話したいし」

 

 そして、カフェで談笑していた。

 

リサ「…そういう事でね。紗夜って変わったのよ」

飛鳥「そうなんですか」

リサ「昔は意地張って日菜のいう事を否定してばかりだったけど、ようやく素直になったっていうかねー」

飛鳥「…ご本人からお話は聞いてましたが、そこまでだったんですね」

 飛鳥がそういうと、リサが笑みを浮かべた。

 

リサ「まあ、アタシ一人っ子だから、紗夜の気持ちを本当の意味で分かってあげられてるかどうか分かんないけどさ、紗夜の気持ちも分かるんだよ。そりゃあお姉ちゃんだから妹には負けられないってのも」

飛鳥「……」

リサ「…でもね。ちゃんと紗夜と日菜が分かりあえて良かったと思ってるんだ。どんな形でも大事な「姉妹」だもの」

飛鳥「…そうですね」

 飛鳥が返事した。

 

リサ「…そういや飛鳥くんって兄弟いるの?」

飛鳥「いえ、一人っ子ですね」

リサ「一人っ子だと、こういう兄弟げんかの仲裁って難しいよねー」

飛鳥「そうですね…」

リサ「あ、そういえば紗夜此間…」

 

 と、ずっと紗夜の事について話をし続けた。

 

 後日

 

紗夜「……」

飛鳥・リサ「……」

 

 学校で、紗夜は飛鳥とリサに対して激怒していた。

 

紗夜「あなた達…」

飛鳥「はい」

紗夜「カフェで私の話を延々としていたそうね…!!」

リサ「ごめんて」

紗夜「恥ずかしいから今後は禁止!!////// 」

 

5. リサと友希那。たまに飛鳥。

 

 ある日の放課後

 

リサ「ねえ、友希那―」

友希那「何」

 リサが友希那に話しかけた。

 

リサ「今日の放課後、付き合って」

友希那「…いやよ」

リサ「えー。どうしても?」

友希那「他の人誘いなさい」

リサ「はーい」

 そう言ってリサは去っていった。

 

 しばらくして…

 

友希那「……」

 友希那は商店街を歩いていると、飛鳥とリサが歩いているのを見ていたが、飛鳥の左肩の上に猫が載っていた。買い物の帰りに遭遇し、そのまま飛鳥に懐いて肩に乗ったという。

 

友希那「!!!?/////」

 

 しかも猫は飛鳥にほっぺすりすりをしていたので、友希那は衝撃を受けた。

 

リサ「その猫ちゃん。飛鳥くんに凄くなついてるねー」

飛鳥「何ででしょうね…」

「にゃーん」

飛鳥「はいはい。にゃーんなの?」

リサ「ぷぷっ…////」

 

 猫の鳴き声に飛鳥が適当に返事をすると、リサがくすくす笑った。

 

飛鳥「どうされました?」

リサ「いや、何か飛鳥くんも猫ちゃんも凄く可愛くて…/////」

飛鳥「そうですかね」

「にゃーん」

飛鳥「うん。にゃーんだねー」

 

友希那(羨ましい…!!//////)

 友希那が後ろで胸をキュンとさせながら猫を見つめていたとさ。

 

 ちなみに猫は飼い猫で、ちゃんと飼い主の所に返した。

 

 

 



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第127話「〇〇しないと出られない部屋」

 

 

【キスしないと出られない部屋(宇田川あこ)】

 

あこ「キ、キスゥ!?!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥とあこは閉じ込められていた。

 

あこ「セ、センパイとキスだなんて…」

飛鳥「方法がございますよ」

あこ「え?」

 あこが飛鳥の方を見ると、飛鳥が投げキッスをした。すると扉が開いた。

 

あこ「……」

飛鳥「どういうキスかまでは指定してないので。お疲れ様です」

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

【媚薬を5本飲まないと出られない部屋(弦巻こころ)】

 

こころ「媚薬って何かしら?」

飛鳥「飲むと、滅茶苦茶人を好きになる薬だよ」

こころ「そんなの要らないわ?」

飛鳥「いや、飲まなきゃ部屋から出られないんだよ」

こころ「じゃあ、あたしが全部飲んであげるわね!」

飛鳥「半分こね」

 

 と、二人が半分こした。

 

こころ「ぷはーっ!!」

飛鳥「どう? 何か変わった?」

こころ「ううん。特に何もないわ?」

飛鳥「そう。凄いね…」

こころ「だって、飛鳥の事は元々好きだからよ?」

 こころの言葉に飛鳥はキョトンとした。

飛鳥「そう。ありがとう」

こころ「飛鳥はどうかしら?」

飛鳥「えっとね。弦巻さんのそういう心の広い所はね。めっちゃ好きだよ」

こころ「嬉しいわ!」

 

 相変わらずだった。

 

【持病がある事を告白しないと出られない部屋(瀬田薫)】

 

薫「なんて儚いんだ…」

飛鳥「いや、どこがですか」

 飛鳥がツッコミを入れた。

薫「しかし、私には持病というものが無いんだ…」

飛鳥「私はありますよ」

薫「そうなのかい?」

飛鳥「実は瀬田先輩が華麗に振舞っているのを見ると、かおちゃんって言いたくなくなる持病が…」

薫「////////」

 

 飛鳥の言葉に薫が頬を染めて睨みつけると、扉が開いた。

 

飛鳥「大丈夫ですよ。かおちゃんって言っていいのは白鷺先輩だけなので、心の中だけにしておきます」

薫「心の中もやめて//////」

 

【持病がある事を告白しないと出られない部屋(北沢はぐみ)】

 

はぐみ「えー? はぐみ、病気なんてないよー?」

飛鳥「そうですか…」

 と、またしても同じお題で閉じ込められた飛鳥。

はぐみ「飛鳥くんは病気がある?」

飛鳥「ありますよ」

はぐみ「なーに?」

飛鳥「えっと。瀬田先輩の事を…」

 飛鳥がそう言いかけると、薫が扉を開けてきた。

飛鳥「…そう来ましたか」

薫「助けに来たよ。子犬くん、子猫ちゃん」

 

【指を合計23個差し出さないと出られない部屋(松原花音)】

 

花音「ふ、ふぇええええええ!? ど、どういう事!!?」

飛鳥「あー。これ指を出す必要がありますね」

 と、飛鳥が靴と靴下を抜いて裸足になった。

花音「?」

飛鳥「松原先輩は指を3本だけ出してください」

花音「う、うん…」

 と、花音が指を3本出して、飛鳥は両手と両足指を差し出した。すると扉が開いた。

 

花音「……?」

飛鳥「ルールガバガバですね…。これでもいいんですね」

花音「ふぇえええ…」

 

【腕を一本差し出さないと出られない部屋(奥沢美咲)】

 

美咲「何よ。腕一本って…もしかしてそういう奴」

飛鳥「そういう奴ですね」

 

 すると…。

 

美咲「頼んだわよ。ミッシェル」

飛鳥「いや、それでいいんですか」

 と、いつの間にか用意していたミッシェルの着ぐるみの片手を差し出した。すると扉が開いた。

 

美咲「全く、何なのよコレ…」

飛鳥「そうですね…」

 

【愛してるって言わないと出られない部屋(戸山香澄)】

 

香澄「ええっ!!?///」

飛鳥「戸山さん」

 香澄が飛鳥の方を見た。

飛鳥「愛してる」

香澄「えっ////」

 扉が開いた。

飛鳥「そう言わないと出られなかったので、忘れてください。それでは」

 そう言って飛鳥は去っていった。

香澄「えっ…ちょ、私だけドキドキしてずるいよー!! 飛鳥くーん!!!///////」

 

【混浴しないと出られない部屋(花園たえ)】

 

たえ「……」

飛鳥「……」

 飛鳥とたえがモニターを見た。

 

たえ「どうする?」

飛鳥「どうするって、花園さんはどうするつもりですか?」

たえ「だって混浴しないと出られないんでしょ?」

飛鳥「そうですね」

たえ「じゃあ混浴しよう」

飛鳥「……」

 

 この後どうなったかはご想像にお任せします。

 

【どちらかが相手を泣かさないと出られない部屋(牛込りみ)】

 

りみ「ええええっ!?」

飛鳥「こりゃあ参りましたね」

 と、困惑していた。

りみ「な、泣かされるのも嫌だけど、泣かすのも嫌…」

飛鳥「じゃあ、私が泣ける話をしてあげましょうか?」

りみ「え?」

 

 10分後、扉は開いたが…。

りみ「一丈字くん…。困ったことがあったら、私が力になってあげるから、もう苦しまないで…!!」

飛鳥「…何かオレが思ってたのと違う」

 

 りみが泣きながら飛鳥に同情してしまい、厄介ごとになってしまったと飛鳥は後悔した。

 

【目玉を3つ差し出さないと出られない部屋(山吹沙綾)】

 

沙綾「ええっ!!? そんなの無理に決まってるじゃない!!」

飛鳥「ちょっと一か八かやってみましょうか」

沙綾「ちょっとどういう事!!? そんなの無理に決まって…」

 と、沙綾が飛鳥の方を見ると、飛鳥が紙に目玉を3つ書いた。とてもリアルである。そしてそれを差し出すと、扉が開いた。

 

飛鳥「早い話がとんちのようですね」

沙綾「お、おう…」

 

【裸踊りをしないと出られない部屋(市ヶ谷有咲)】

 

有咲「よし、頼んだぞ一丈字!」

飛鳥「あ、はい」

 と、飛鳥は上半身裸になった。

飛鳥「下は…」

有咲「脱がなくて良い!! とにかく上半身だけで頑張ってくれ!!」

飛鳥「あ、はい」

 飛鳥が適当にダンスをしたが、ダンスがキレッキレで有咲は驚いていた。扉は開いたが、飛鳥のダンスの切れの良さに有咲は驚くしかなかった。

 

飛鳥「…どうされました?」

有咲「いや、お前ダンスもできるんだな…」

飛鳥「はい」

 

【〇ックスしないと出られない部屋(美竹蘭)】

 

蘭「は、はぁ!!?//////」

飛鳥「……」

 

 蘭が顔を真っ赤にしたが、飛鳥は寝そべった。

 

蘭「無理無理無理無理!!!////// ちょっと一丈字!! これどういう…」

 蘭が飛鳥の方を振り向くと、飛鳥は寝そべってゴロゴロしていた。

飛鳥「何ってリラックスですよ」

 すると扉があいた。

 

飛鳥「安心してください。ダシマ劇場は全年齢向けで、よい子が見ても大丈夫です。それではお疲れ様でしたー」

蘭「……」

 飛鳥が去っていくと、蘭はぽつんと取り残された。

 

 

 

おしまい

 



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第130話「飛鳥不在」

 

 

 今回は飛鳥がいないバンドリ学園をお送りいたします。

 

「イェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエイ!!!」

「フォアッフゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!」

 

 憎き相手、一丈字飛鳥がいない事により、男子生徒達は歓喜していた。理由はただ一つ、飛鳥がいない事で美少女達と戯れるチャンスが自分たちに回ってきたからだった。

 

千聖「早急に連れ戻して頂戴」

「ちょちょちょちょちょちょちょ!!!」

 

 千聖の辛らつな一言に、男子生徒達がツッコミを入れた。

 

「そんなつれない事言わないでよー」

「そうだよ。一丈字以外にもこんなにいい男たちが沢山いるんだぜ?」

 

 と、男子生徒達がこれでもかという程、カッコつけていた。

 

「そ、それにさあ。君達のライブが盛り上がってるのも、オレ達がライブに来てるからなんだよ?」

友希那「そうなの。気を遣わせて悪かったわね。次回から来なくていいわ」

「辛辣!!!」

 

 友希那に言われた男子生徒Aは衝撃を受けていた。

 

「お、おいA…」

「聞いたか…」

「?」

 

 AがBを見た。

 

A「オレ、友希那ちゃんと会話してるぞ…!!」

「うん!! 確かに会話してるな!!」

「今まで一丈字の奴に邪魔されてたからわかるぞ!!」

 

 と、男子生徒達が盛り上がっていた。

 

有咲「それはそうと、一丈字は今どうしてるんだよ!!」

「おっと。一丈字の名前は出しちゃいけないぜ有咲ちゃん!!」

「今回はオレ達のターンだ」

有咲「いや、どんだけ友希那さん達と喋りたいんだよ…」

 

 男子生徒達の異常なテンションに有咲や美咲を筆頭に呆れていた。

 

つぐみ「ま、まあまあ…。前からも一丈字くん気を遣ってくれてたみたいだし、今回はファンサービスという事で…」

香澄「そうだね! それじゃ皆! 何をしてほしい!?」

 

「脱ぎたての靴下をください!!」

 

 と、完全に調子に乗った男子生徒Cが叫ぶと、一気に場の空気が悪くなった。

 

「ばかやろぉ!!」

「せっかくのチャンスだったのに~!!」

「一丈字がもういないんだから、そんな事言わなくても何とかなるんだよぉ!!」

友希那「ならないわよ…」

蘭「ねえ、何でこの学校の男子ってこんなのしかいないの?」

 

「誤解だ!!!」

「ちゃんと普通の男子もいます!!!」

 と、常識のある男子生徒達が突っ込んだ。

 

こころ「どうして脱ぎたての靴下が欲しいのかしら?」

 

 こころがそういうと…。

 

C「女の子のにおいを堪能したいからです!」

「このクソ野郎!!!」

「突き指してしまえ!!!」

 

 と、どこまでもブレないCに女子生徒達が暴言を吐いた。

 

友希那「…話にならないわ」

蘭「ええ…。今回ばかりは同感です」

 

 男子の変態過ぎる発言に、友希那と蘭は頭を悩ませていた。

 

美咲「まー…そんなもんですよね。男子って」

有咲「一丈字みたいなタイプが珍しいだけで…」

「一丈字だって男だぞ!!」

「あいつだって同じように女子の前で良いカッコしてるだけなんだよ!!」

「ていうかあいつ、ラブライブも掛け持ちしてるよな!!」

「何であいつばっかり!!!」

 

 と、男子生徒達は騒いでいた。

 

A「まあ、落ち着けお前たち」

「A…」

 

 男子生徒Aが待ったをかけた。

 

A「今、一丈字がいないこの時がチャンスだ。正々堂々と頑張って、香澄ちゃん達を振り向かせようではないか!!」

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 と、躍起になっていた。

 

モカ「精々頑張ってね~」

蘭・友希那・千聖(早く終わってほしい…この話…)

 

 蘭、友希那、千聖はうんざりしていた。

 

*****************

 

 それからというもの、男子たちは死に物狂いで色々頑張ったが…。

 

(下心が丸出し!!!!!)

 

 やはり下心が見え見えだったのか、やった事に対しては素直に評価できても、人間性としてはあまり評価できず、彼氏にしてくれと言われても微妙だった。

 

麻弥「ありがとうございます」

 と、麻弥がお礼を言おうものなら…。

「お、おう。別に気にしなくていいよ(おっしゃー!! 好感度アーップ!! あ、もしかして今回の事でオレに惚れたりして…うへへへへ)

 

 ちょっと優しくしたらこんな調子である。飛鳥が良いという訳ではないが、奴は能力者としての仕事が忙しいせいか、あまりそういう事は気にしない。

 

 まあ、飛鳥がいるいない関係なしに、元々優しいメンバーからこのようにお礼を言われてたら、勝手に勘違いされるのだが…。

 

(それでも幸せ♥)

(確実にチャンスがあるって分かってるから♥)

 

 男子生徒達はとにかく幸せそうだった。

 

 そして…

 

「白金さん!!! オレは君が好きだ!!  付き合ってくれ!!」

「えっ…」

 

 燐子が一人の男子生徒に呼び出されて、告白された。燐子としては男性が苦手で、Roseliaとしてのバンド活動がある為、OKを出せなかった。

 

燐子「そ、その…」

「付き合ってくれるんだな!?」

燐子「い、いえ。ごめんなさい。私バンド活動が…」

 

 と、燐子が断ると

 

「何でだよ!!」

燐子「!!」

 男子生徒は突然態度を変えた。

 

「バンド活動よりも、オレと付き合えよ! なんでそんなにバンド活動にこだわるんだよ! 一丈字もいねぇし、何やったっていいだろ!!」

燐子「……」

 男子生徒の態度に燐子は恐怖を感じた。

 

「そういう訳だから決まりな。オレとお前は恋人! だから今日からはオレの言う事を聞け!!」

燐子「あうっ!」

 男子生徒が燐子の手を引っ張って、どこかに行こうとしたその時、女子生徒達がぞろぞろと現れた。

 

「な、なんだよ!」

「聞いてたわよ! 白金さんに無理やり迫ってたんでしょ!!」

「最低!!」

「一丈字くんがいないのをいい事に、調子に乗ってんじゃないわよ!!」

 

 女子生徒達からやいのやいの言われて、男子生徒が吠えた。

 

「うるせぇ!! どうしようがオレの勝手だ!! オレと燐子はもう付き合ってるんだ!! 邪魔するな!!」

燐子「……!!」

 

 燐子は顔を真っ青にして涙目になっていた。すると、

 

「一丈字くん!! こっちよ!!」

「いつもみたいに懲らしめちゃって!!」

 

 と、飛鳥が現れた。バンドリ学園の生徒ではない為、私服である。

 

「い、一丈字!!」

燐子「一丈字くん!!」

 すると男子生徒達は歯ぎしりした。

 

「これ以上動いてみろ!! ただじゃ済まさないぞ!!」

飛鳥「ただじゃ済まさないですか。分かりました。それじゃあ私も、もし白金さんにこれ以上ヘンな事をするようでしたら…」

 

 飛鳥が男子生徒に対して、殺気を放った。

 

飛鳥「明日から普通の生活を送れないようにして差し上げましょうか」

「ひ…ひぎィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」

 

 飛鳥の声色に恐怖した男子生徒はそのまま情けない悲鳴を上げて、逃げて行った。

 

飛鳥(はー…。また飛鳥くんすげー小説って言われちゃうよ…。後で白金さんたちの記憶消しとこうかな)

 

 飛鳥が目を閉じた。

 

飛鳥「あ、すみませんが白金さんをお願いできますか」

「任せて!!」

 と、女子生徒数名が燐子を保護した。

 

飛鳥「白金さん。あとはその人たちに任せてください。それでは」

燐子「あっ…」

 そう言って飛鳥は燐子から姿を消し、女子生徒達からある程度離れると、記憶を改ざんした。自分を助けてくれた人はいたけど、結局誰かは分からないという事に…。

 

モカ「モカちゃんは分かるけどねー。あ、お土産ありがとー」

こころ「そうよ!」

飛鳥「……」

 

 次回からはちゃんと元に戻ります。

 

 

おしまい

 

 

 



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第131話「がんばれ! 紗夜おねーちゃん」

 

 

 それはある日の事だった。

 

「……」

 

 紗夜が自分の家で険しい表情を見て雑誌を見ていた。そして紗夜が見ているページには自分の妹である日菜のグラビア写真があった。面積が小さめのビキニを着ている。

 

紗夜「な、なんて破廉恥な…//////」

 

 紗夜は困惑していた。実際に自分のクラスにもPastel*Palletesのメンバー(彩・千聖)がいて、彼女もまたグラビア写真を撮っており、男子たちはそういう雑誌を見て興奮しているのを知っている。

 

紗夜(皆、こういうの着てるのかしら…)

 

 紗夜も年頃の女の子なので、その辺が気になっていた。そして紗夜は日菜が着ている水着を自分が着てポーズをとっている姿を想像した。そしてすぐに顔を真っ赤にした。

 

紗夜(な、なんてきわどい!! なんて破廉恥なの!!!//////)

 紗夜は首を横に激しく振った。

 

紗夜「と、とにかくこんなものはすぐに忘れましょう!!」

 紗夜は雑誌をしまうと、すぐに勉強した。

 

紗夜(はっ!! もしかしてこれはまた変な夢を見てしまうパターンでは…!!)

※ 第18話参照。

 

紗夜(今度また同じような事があったら、完全に姉としての威厳が…!! あれではまるで私が変態みたいじゃない!!! とにかくあのような思いは…あんな思いだけは…!!)

 

 と、紗夜が忌々しい思い出を思い出した。夢を見て一人で錯乱し、全く関係のなかった飛鳥に対して素っ気ない態度を取り、挙句の果てには日菜にバレて散々からかわれたという、黒歴史でしかない思い出である。もしもう一度やり直せるなら是が非でもやり直したいと思っている。

 

紗夜(と、とにかく同じ過ちは繰り返さない!!!)

 紗夜が振り向くと、日菜がいた。

 

日菜「おねーちゃん。ご飯だよ」

紗夜「……」

 

 本当は奇声をあげるところであるが、一周回って大人しくしていた。

 

日菜「どうしたの?」

紗夜「あの…ノックは…」

日菜「したよ! 何回も!」

紗夜「そ、そう…。ごめんなさい…」

 

 と、紗夜が部屋を出ると、日菜が物色しようとしたが紗夜に手をつかまれて叶わなかった。

 

 そして食事を済ませて、就寝の時。紗夜は緊張していた。

 

紗夜(破廉恥な夢を見ませんように…破廉恥な夢を見ませんように…)

 

 紗夜は心の中で念じながら眠りについたが、意識しすぎているせいでやっぱり眠れなかった。

 

紗夜(日菜があんな破廉恥な水着着てるからいけないのよ!! もう!!!)

 

 そして何とか眠る事が出来たが、紗夜はある夢を見ていた。説明のしようがないくらい訳が分からない夢である。

 

 翌朝

 

紗夜「……」

 

 エッチな夢を見なかっただけまだ良かったが、未だにあの夢はなんだったのかよく分からない紗夜であった。

 

紗夜(と、とにかく…。今回の事はバレずに済みそうね…)

 紗夜が一安心して、身支度を済ませた。

 

日菜「あ、おねーちゃんおはよう!」

 部屋を出ると日菜がすでにいて挨拶をしてきた。

紗夜「おはよう。今日は早いのね。仕事?」

日菜「ううん。さっき電話が…あ、そうだ。おねーちゃんに相談したいことがあるんだ」

紗夜「え?」

 

*********************

 

紗夜「嫌よ」

日菜「えー! いいでしょー!! モデルの仕事!!」

紗夜「何で水着なのよ!! おかしいでしょ!!」

 

 日菜は今朝、事務所からモデルの仕事を持ってこられたが、双子コーデをテーマとした写真を撮りたいとあり、紗夜に相談しに来たのだ。

 

紗夜「双子ならほかにもいるでしょ!」

日菜「そんなにいないし、一体何のためにあたしに電話かけたと思ってるのー。おねーちゃんと仕事してみたいなー」

紗夜「……っ」

 

 自分がエッチな夢を見なくて済んで安心したのもつかの間、内心「そのパターンで来たか…」と感じていた。

 

紗夜「と、とにかく私はお断りよ! 大体胸だってあなたの方が大きいじゃない!」

日菜「えー。小さくても良いと思うよ」

紗夜「あなたのそういう所キラーイ…」

 

 悪気はないというのは理解できたが、日菜の発言に紗夜は歯ぎしりした。

 

紗夜「と、とにかく他の人をあたりなさい!」

日菜「はーい…」

 と、紗夜が去っていくと、日菜が電話をかけた。

 

日菜「あ、もしもし飛鳥くん?」

紗夜「!!?」

 

***************

 

 そして撮影当日

 

「はーい。2人とも笑って笑ってー」

日菜「ほら、おねーちゃん。スマイル!」

紗夜「……//////」

 

 紗夜は日菜とともに水着姿で撮影に臨んでいたが、やっぱり布が自分が思っていた以上に短く、羞恥に襲われていた。

 

紗夜(しにたい)

「いいねいいねぇ~。むほほほほほほほほほほ!!!」

 

 と、カメラマンはそんな2人をひたすら撮り続けた。

 

 そしてそれを見学していた彩たちとPastel*Palletesと飛鳥。完全に羞恥を押し殺して撮影に臨む紗夜を見て、飛鳥と千聖は困惑した。

 

飛鳥「働くって…大変ですね」

千聖「そうなのよ…」

麻弥「やりがいがあればいいんすけどねぇ」

 

 飛鳥と千聖の会話に麻弥が苦笑いしながら加わった。

 

 

おしまい

 



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第132話「言葉にできない」

 

 

 言葉にできないを集めてみた。

 

【戸山香澄】

 

香澄「私! 戸山香澄! Poppin’partyの主人公! 今日もキラキラドキドキを求めてバンド活動がんばるぞー!!」

飛鳥「戸山さん。先生が呼んでましたよ。補習ですって」

香澄「」

 

la la la……言葉にできない

 

【花園たえ】

 

たえ「ここに花園ランドを建設するの…ここはオッちゃんの部屋で…ブツブツブツブツ…」

香澄・りみ・紗夜・有咲「……!!!」

 

la la la……言葉にできない

 

【牛込りみ】

 

りみ「お腹空いた…チョココロネを買いに行こう…」

 りみが購買部にチョココロネを買いに行こうとすると、飛鳥が既にいた。

りみ「あ、一丈字くん…」

飛鳥「牛込さん」

りみ「一丈字くんも購買部に買いに来たの?」

飛鳥「あ、はい。チョココロネを買いに来たんですか?」

りみ「う、うん…/////」

飛鳥「…えっと、チョココロネはもう売り切れたみたいですよ」

りみ「」

 

la la la……言葉にできない

 

「りみちゃん!!」

りみ「?」

「もし良かったらこれ食べてくださいっ!!」

 

 と、男子生徒達がチョココロネを差し出した。

 

りみ「……!!」

飛鳥「良かったですね。それでは」

 

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

【山吹沙綾】

 

沙綾「うーん。この味はいまいちね…」

 沙綾は新メニュー作りの為にパンを食べまくっていた。

 

 その結果…。

沙綾「」

 

 風呂上がりに体重計に乗ったが…la la la……言葉にできない

 

【市ヶ谷有咲】

 

香澄「ねーねー有咲。選択授業どこにしたか決めた?」

有咲「別に。香澄に関係ねーだろ」

香澄「教えてくれてもいいじゃーん」

有咲「うるせーな!」

 

 その結果、1組の選択授業で家庭科は有咲で、ほかのポピパの4人は体育だった。

 

有咲「」

 

la la la……言葉にできない

 

 

【美竹蘭】

 

ひまり「ごめんねー皆―」

蘭「全くもう…」

巴「つ、次からは気を付けてくれよな…」

モカ「何回目だろうね~」

つぐみ「モ、モカちゃんっ!」

 

 ひまりが忘れ物をしてしまい、夜の校舎に取りに行ったAfterglow。

 

 後日

 

蘭「」

 今度は蘭が忘れ物をしてしまった。

 

la la la……言葉にできない

 

蘭「……」プルプル

ひまり「だ、大丈夫だよ!! いつも私が忘れて取りに行ってもらってるもん!!」

巴「そ、そうだぞ! 恥ずかしい事じゃないぞ!!」

 

 泣きそうになっている蘭をひまりと巴が必死に励ました。

 

【青葉モカ】

 

モカ「お腹空いた~…パン買いに行こ~」

 モカが購買部にパンを買いに行こうとすると、飛鳥が既にいた。

モカ「あ、飛鳥くーん」

飛鳥「青葉さん」

モカ「一丈字くんも購買部に買いに来たの?」

飛鳥「ええ…。青葉さんはパンを買いに来たんですか?」

モカ「そうだよ~」

飛鳥「…あー。さっき全部売り切れたみたいですね」

モカ「」

 

la la la……言葉にできない

 

「モカちゃん!!」

モカ「?」

「もし良かったらこれ食べてくださいっ!!」

 

 と、男子生徒達が菓子パンを差し出した。

 

モカ「……」

飛鳥「良かったですね。それでは」

 そう言って飛鳥は去ろうとしたが、モカが飛鳥の腕をつかんだ。

飛鳥「え」

モカ「ありがと~。でも今日は飛鳥くんにご馳走してもらうからいいや~。行こ~」

飛鳥「え、ちょっと青葉さん。何ですか急に! 青葉さーん!!!」

 

 モカは飛鳥をどこかに連れて行った。

 

【上原ひまり】

 

ひまり「体重が増えた…」

 

la la la……言葉にできない

 

ひまり「いや、何か私の扱い雑じゃない!!?」

 

la la la……言葉にできない

 

ひまり「二回も流さなくていいわよ!!!」

 

【宇田川巴】

 

巴「言葉にできない事? そんなのあるわけないじゃないか」

モカ「ふーん」

 巴とモカが会話をしていた。

モカ「本当に~?」

巴「本当だとも」

モカ「ところで、トモちんの肩になんか白い手が置かれてるけど、何なのそれ~」

巴「」

 

la la la……言葉にできない

 

【羽沢つぐみ】

 

つぐみ「……」

 つぐみが自分の家でブラックコーヒーが入ったマグカップと向き合い、手を取ってコーヒーを飲んだ。

 

つぐみ「!」

 

la la la……言葉にできない

 

つぐみ「や、やっぱり苦い…」

 と、つぐみが苦い表情をしながら正面を見ると、飛鳥がいた。

 

飛鳥「あ、ごめんなさい」

つぐみ「!!!///////」

 

la la la……言葉にできない

 

モカ「いやー。二段重ねでくるなんてやっぱりつぐみはツグってるねー」

つぐみ「もー!! いるならいるって言ってよー!! 恥ずかしいよ!!//////」

ひまり「やっぱり私の扱い雑じゃない?」

蘭「いや、よくよく考えたら何で私と巴、幽霊系ばっかりなの!?」

モカ「怖がってる蘭とトモちんが可愛いからじゃな~い?」

巴「可愛くないよ!!!」

 

【丸山彩】

 

 とあるライブ

彩「真ん丸お山に彩を!! 丸山…」

「ピィイイイイイイイイイイイイイ!!!」

 

 彩が自分の名前を言おうとした次の瞬間、ピーというノイズが入ってあたかも言ってはいけない人みたいになってしまった。

 

la la la……言葉にできない

 

 ライブ終了後

 

イヴ「ア、アヤさん!! 元気出してください!!」

彩「しにたい」

千聖「ツイッターで、丸山ピーって名前でバズってるわね」

日菜「あははははは!! おもしろ~い!!」

彩「ゴハァ!!!」

麻弥「彩さーん!!!」

 

 千聖が冷静にスマホでツイッターで確認すると、日菜が笑い転げ、彩は盛大に吐血した。

 

【氷川日菜&氷川紗夜】

 

日菜「あれ? おかーさんと…飛鳥くん!?」

 

 日菜が一人で下校していると、自分の母親と飛鳥が話をしていた。

 

日菜「一体何の話をしてるんだろう…」

 すると、飛鳥が口元を抑えて笑っていた。

 

日菜(え、い、一体何の話をしてるんだろう。ちょっと行ってみよ!)

 日菜が行こうとすると、

 

「あ! パスパレの氷川日菜だ!」

「ホントだ!!」

 

 と、ファンが日菜を取り囲んだ。

 

日菜「」

la la la……言葉にできない

 

 母親と別れた後、飛鳥は一人下校をしていた。

 

日菜母『あの子たちね、昔はとっても仲良かったのよ。喧嘩の理由も「ひなちゃんのほうがさよちゃんのことすきだもん!!」「さよちゃんのほうがもーっとひなちゃんのことがすきだもん!!」とかって、お互いのどれくらい好きかで喧嘩してたくらいだもの』

 

 そしてそんな二人を想像して、飛鳥は微笑ましくて笑いが堪えられなかった。

 

飛鳥(やっぱり双子ってあんな感じなのかな…)

 と、飛鳥はかつての同級生である日向と椿を思い出した。

 

飛鳥(まあ、あの二人の場合は日向が椿を引っ張り出して双子のy…)

日向『飛鳥くん!!!//////』

椿『それ言ったら全部の指突き指させるわよ!!//////』

飛鳥「!!?」

 

 コマの外から日向と椿が突っ込んできて、飛鳥は言葉にできなかった。

 

 

おしまい

 



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第133話「恐怖のロケ」

 

 

 ある日の事だった…。

 

「え…」

 

 Pastel*Palletesは突然、誰も使われていない屋敷でロケをすることになった。

 

彩「そ、その屋敷って…」

麻弥「前に何か事件がありませんでしたか!?」

「とはいっても…これは決定事項なので、宜しくお願いします。建物の名前は「セイキョ荘」だそうです」

 

 と、パスパレに仕事の内容を伝えに来たスタッフは逃げるように去っていった。

 

千聖「全く無責任ね…」

イヴ「こ、怖いです…」

 イヴが震えていると、

日菜「えー? 何かおばけ屋敷みたいで面白そうじゃん!」

彩「…何もなかったらいいけど」

千聖「こういう時って、大体何かあるから怖いのよね…」

 皆が千聖を見た。

 

千聖「いや、私がお化けが怖いという訳ではなくて、何か良くない事が起こるからーっていう意味よ!」

日菜「素直に怖いって言えばいいじゃん」

千聖「日菜ちゃん?」

麻弥「ま、まあまあ…」

 

 そんなこんなでロケ当日。

 

彩「真ん丸お山に彩を! 丸山彩でーす!!!」

 と、彩がカメラに向かっていつものキメポーズをした。そして彩の横には日菜、千聖、麻弥、イヴが並んでいた。そしてスタッフが十数人もいた。

 

彩「さて、今日私たちはこのお屋敷でロケをしまーす!」

千聖「ねえ、本当に大丈夫なのこれ…」

 と、いかにも何かありそうな屋敷だった。

 

「あ、大丈夫ですよ。昼に確認しましたけど何もありませんでした」

「という訳で予定通りお願いします」

 

 スタッフは平然と言い放った。

 

千聖「簡単に言ってくれるわね…」

麻弥「もうこの時点で十分怖いんすけど…」

イヴ「……」

 

 イヴは既に体を震えて怖がっていた。

 

「それでは早速ですけど、早く中に入ってください」

千聖「い、いきなり過ぎない?」

「時間押してるんですよ」

「さあ早く」

 

 と、何かしら急いで入らせようとするスタッフ。ちなみにこれは演出であたかも何かあるように思わせていただけだった。

 

彩「そ、それでは頑張りまーす!!」

日菜「楽しみー

 

 彩はプロ根性を見せて、日菜が続くとほかのメンバーも続いて入っていった。

 

「入っていきましたねー」

「ああ。それにしても、丁度ぴったりな屋敷が見つかってよかったな!」

「そうっすねー」

 

 

 中に入ると、彩が一番前に立って懐中電灯をつけていた。日菜はカメラを持っていた。

 

イヴ「うぅぅぅぅ…」

 イヴはずっと震えていた。

千聖「イヴちゃん。間違っても木刀を私たちに向けて振るわないでね…」

イヴ「は、はいぃぃぃぃ…」

 

 イヴはガクガクブルブル震えていた。ちなみにミッションの内容は屋敷の2階の一番奥の部屋にある新曲のCDを取ってくるというものだった。だけど、結構遠くてなかなか進めなかった。

 

日菜「雰囲気出てるねー」

彩「今回ばかりは日菜ちゃんが本当に羨ましいよ…」

 

 と、彩がぼやいだ次の瞬間、がたっと音がした。

 

イヴ「ぴゃあああああああああああああ!!!!」

麻弥「イ、イヴさん落ち着いてください!! 何かが落ちたっすよ!!」

千聖「ちょ、ちょっと!! なんで勝手にものが落ちてくるのよ!!」

 

 イヴが悲鳴を上げると、麻弥と千聖も軽いパニック状態になっていた。

 

日菜「やっぱり5人同時に歩いてるから、揺れたんじゃない?」

彩「そ、そうだよ!! きっとそうだよ!! うん!!」

 

 そんなこんなで、目的地である2階の奥の部屋にたどり着いた。

 

彩「やったー!! CDゲット!!」

 と、彩がカメラに向かって新曲のCDを見せた。

日菜「やっぱり暗くて良く見えないね」

千聖「さあ、早く出るわよ!」

日菜「そんなに必死にならなくても」

千聖「イ、イヴちゃんと麻弥ちゃんがもう限界なのよ!? そうよね!?」

麻弥「そ、そうっすね…」

イヴ「うぅぅぅぅぅぅ…」

彩「そ、そうだね! 早く出よう!」

 と、彩が声を出して5人が部屋の外に出ると、部屋の構造が変わっていることに気づいた。

 

彩「え…うそ…」

千聖「あ、彩ちゃん!! どうしたの!!? 何があったの!?」

 彩は青ざめて呟くと、千聖が冷静かつ慌てて返答した。

日菜「あれ? 何か前に来た時と変わってない?」

麻弥「いいいいいっ!!!?」

イヴ「」

 

 日菜も出る前と出た後で廊下や部屋の扉の位置が違う事に気づいた。

 

千聖「な、何かの間違いよ!! 早く出ましょ!」

 と、千聖が急かして出口に向かおうと、階段で降りようとしたが階段がなくなっていた。

 

千聖「あ、あれ…?」

彩「確か階段…あったよね…ここに…」

 日菜以外の4人が更に青ざめていた。

麻弥「も、もしかして場所を間違えたのかもしれないっすよ!! よ、よくありますし!!」

イヴ「……」

 イヴは一言もしゃべらなかった。

 

千聖「そ、そうね。あとイヴちゃん。気持ちは分かるけど何かしゃべって。喋らないのが一番怖いから…」

イヴ「は、はいぃぃぃ…」

日菜「あ、あれ…? これ、本当にヤバい奴…?」

 

 日菜も流石に状況が呑み込めなくなってきて、焦りだした。

 

彩「と、とにかく戻ろう!!」

 と、彩たちは別のルートから1階に降りようとした。そこには階段があったものの、出口らしき場所が見つからない。

 

彩「ど、どう考えてもおかしいよ!!」

千聖「何がどうなってるの!?」

麻弥「もしかして本当に…」

 その時だった。

 

日菜「ぎゃーっ!!!!!」

「きゃあああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 日菜が突然悲鳴を上げて、彩、麻弥、千聖が悲鳴を上げた。イヴが気絶しかけていた。そして千聖が日菜を盛大にぶん殴った。

 

千聖「こんな時に何考えてんのよ!!!」

日菜「ち、違う!! あたしじゃないの!! 何か急に男の人の悲鳴が聞こえてきて…」

彩「ちょっとやめてってばー!!!」

 その時だった。

イヴ「うきー!!!!」

「!!?」

 ついにイヴが錯乱し始めた。

イヴ「うきー!!! うきー!!!」

千聖「ちょ、ちょっとイヴちゃん!! 落ち着いて!! 木刀を振り回さないでってば!!!」

彩・日菜・麻弥「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」

 

 という悲鳴が屋敷中に響き渡った。

 

 

 その頃…。

 

飛鳥「はー…今日も疲れた」

 飛鳥が部屋でのんびりネットサーフィンをした。すると、丁度『セイキョ荘』の記事を見ていた。

 

飛鳥(セイキョ荘か…懐かしいなぁ。確か2年前だっけ)

 飛鳥がじーっと見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥(借金が返せなくなった人間があの屋敷に連れられて、臓器などを無理やり取り出されて殺されて、殺された人間の亡霊がずっと住み着いてたんだよな…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 飛鳥は静かに目を閉じた。

 

飛鳥(まあ、警察もあそこは立ち入り禁止にしてるし、場所も場所だから誰も来ないだろうな…)

 

 飛鳥はそう考えると、スマホをベッドにおいてその場を後にした。

 

 

おしまい

 



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第135話「そばツユの深味・1」

元ネタ:美味しんぼアニメ第5話「そばツユの深味」


 

 ある日の事だった。

 

「いやー。ラーメン三郎が混んでて食べれそうになかったね~」

 

 飛鳥、モカ、巴の3人が歩いていた。

 

モカ「モカちゃんお腹ペコペコ~」

巴「しかし、この辺にラーメン屋はないしなぁ…」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は私用で出かけていたが、その途中でラーメン三郎に行こうとしていた巴、モカの2人と遭遇し、モカによって強引に連れていかれた。飛鳥自身は危惧していたがモカの「3人だから問題ない」という言葉を信じ、同行する事にした。

 

 だが、ラーメン三郎は予想外の大盛況で、並ぶには一時間以上かかる事から、今回は断念することに。

 

 しばらく歩いていると…。

 

「ふざけんなよコラァ!!」

「!?」

 

 という怒鳴り声がした。

 

飛鳥「何だ?」

巴「あっちの方からだ!」

 

 と、3人が移動すると、そこには屋台があり、白い制服をきた若い男が、スーツを着た男2人に怒声を浴びせていた。

 

「そんなにラーメンが食いたきゃラーメン屋に行きやがれ!! うちは蕎麦屋だ!!」

「ひ、ひぃいいいい!!!」

「そ、蕎麦なんて若い奴は食うかよ!!」

 

 と、男二人は捨て台詞を吐いて去っていった。

 

飛鳥「穏やかじゃないですね…」

巴「しかし、あんな所に蕎麦の屋台なんて珍しいな…」

飛鳥「いや、屋台自体が珍しいですけどね…」

 

 周りを見渡すと、蕎麦屋の他に屋台はなく、ポツンと立っていた。

 

モカ「お腹空いたし~。あそこにしな~い?」

飛鳥・巴「え」

モカ「ああいうのってきっと、腕に自信があるんだよ~。多分」

飛鳥「多分って…」

巴「まあ、確かに面白そうだな! 行ってみようぜ!」

飛鳥「えー…。まあいいや…」

 

 飛鳥は困惑しながらもモカと巴に合わせる事にし、蕎麦屋に近づいた。

 

「あ?」

飛鳥「あ、蕎麦作ってもらえますか?」

「うちは蕎麦屋だよ。ラーメン食いたかったら他所に…」

モカ「お蕎麦食べたいって言ってるんですけど~」

「…え?」

 主人は驚いたように飛鳥達を見た。

 

飛鳥「あ、もしかしてもう店じまいですか?」

「とんでもねぇ!! どうぞどうぞ!!」

 

 と、主人は急に機嫌が良くなって3人が案内した。

 

「何にいたしやしょう!」

飛鳥「えーと…ざる…じゃなかった、もりそば大盛りで。2玉」

巴「じゃあアタシもそれで!」

モカ「あたしも~」

「かしこまりやした! もりそば3丁大盛り!!」

 

 主人はウキウキでもりそばを作り出した。

 

「いやー。こんな時期にもりそばなんてお客さん、通だね!」

飛鳥「え? あ、そうですか…?」

 テンションの高い主人に、飛鳥が困惑したが、主人の持っているそばを見て驚いた。

 

飛鳥「…生そば?」

「おっ! よく分かったね! 駅の立ち食いソバはゆでた面を温めなおしてるけど、うちは本格的に作ってるんだ!!」

巴「それじゃあこの蕎麦は手打ち…」

「そうなんだよ! しかも小麦粉のつなぎなんて使わず、そば粉しか使ってないんだ! しかも国産だ!」

モカ「かなり自信があるようだね~」

「そりゃあ勿論よ!!」

 

 しばらくして、盛り蕎麦が3人分完成された。

 

「へい! 盛り蕎麦3丁あがり!!」

 と、差し出された。

 

巴「確かにいい香りがするな!」

モカ「楽しみ~」

飛鳥「…それでは、頂きます」

モカ「いただきまーす!」

巴「いただきます」

 

 そう言って3人はそばを実食した。

 

巴「美味い!」

モカ「おいし~」

 巴とモカは素直に褒めていた。

「へへへへ!! そうだろう!! 何しろそばも水も本物だからな!! 真ん中のお嬢さんはどうだい!?」

飛鳥「あ、私男です」

「えっ!?」

 主人が驚くと、モカがぷぷっと笑った。

 

飛鳥「とても美味しいですよ」

 飛鳥が苦笑いしていうが、主人の表情は険しかった。

 

飛鳥「…あの、何か」

「…いや、お客さん。嘘をついてるな」

飛鳥「!?」

「食べたときの反応を見させてもらったんだが、どうも美味そうに感じなかった。何かあるのか!?」

飛鳥「……」

 飛鳥が困惑した。

 

巴「おい、一丈字…」

モカ「どうしたの? 虫が入ってた?」

飛鳥「いや、そういう訳じゃないんですけど…」

 

 飛鳥が主人の方を見た。

 

飛鳥「美味しい事は美味しいんです。ただ…」

 

 その時だった。

 

「あのー、すいません」

「!!?」

 警察官が2人現れ、警察官を見た主人は青ざめた。

 

「あなたですね。最近無許可で営業をしているという蕎麦屋は」

「通報があったんですよ」

「ら、来週通る事になってるんすよ!!」

巴「って! 通ってないなら営業したらダメじゃないか!」

モカ「道理でこんな所に屋台がある訳だ~」

「と、通るって分かったら1日でも早く営業したくなっちまったんだよ!」

「見苦しい言い訳だな」

「守らなかったら営業できなくなることくらい分かるだろう!」

「ちょっと署まで来てもらおうか!」

「そ、そんな…勘弁してくださいよぉ」

 

 警官に迫られて困惑する主人。それを困った様子で飛鳥達は見ていた。すると警官の一人が飛鳥達を見た。

 

「君たちは客かね?」

飛鳥「あ、はい。初めて来たんですが…」

「そうか…。それは災難だったね」

「だが、この店は営業許可が出ていないんだ。ここに来るのはもうやめなさい。さあ、一緒に来てもらうぞ!!」

「そ、そんなぁ! 待ってくれ~!!!」

 

 と、主人は連行されていった。

 

モカ「お蕎麦だけでも食べて帰ろ~」

巴「そうだな。残すの勿体ないしな。で、一丈字。一体何だったんだよ…」

飛鳥「…そばツユが麺に負けてるんですよ」

巴「負けてる?」

モカ「あ~。言われてみればちょっと薄いかも~。麺は美味しいのに~」

飛鳥「…まあ、営業許可が出てないんじゃ、仕方ないですね」

巴「だな」

 

 こうして3人は蕎麦を完食すると、屋台を後にした。

 

 後日…

 

飛鳥(本当にもったいなかったなぁ。あの蕎麦屋…)

 と、飛鳥が考えていると、着信が鳴り、飛鳥がスマホを確認すると、以前うなぎ屋の件で仲良くなった松永警部から来ていた。

 

飛鳥「松永警部?」

 飛鳥が電話に出た。

 

飛鳥「もしもし…」

「おう! 神楽の坊主か!! オレだ!! 今学校か!?」

飛鳥「あ、はい」

「終わったら即刻オレがいる警察署に来てくれ! パトカーをそっちに寄越す!!」

飛鳥「!!?」

 

 

つづく

 

 

 

 



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第136話「そばツユの深味・2」

 前回までのあらすじ

 

 休日に巴、モカと共に蕎麦屋の屋台を見つけたが、その蕎麦屋は無許可で営業しており、店主は警察官に連行されてしまう。

 

 結局何もしないまま登校日を迎えたが、飛鳥は休憩時間にうなぎ屋の騒動で知り合った松永から呼び出される事になった…。

 

****************

 

 放課後

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥は学園の正門前まで来ていたが、目の前にパトカーがあって困惑していた。そしてパトカーの前には松永がいた。

 

松永「いやー。悪いな神楽の坊主! 待たせちまって!」

飛鳥「いや、それは問題ないんですけど、どうしてパトカーで…」

松永「警察がパトカーに乗って問題あるか?」

飛鳥「いえ、そうじゃなくて私はこのまま警察署に行くんですよね…?」

松永「悪い事してねぇんだから堂々とすりゃあいいだろう」

飛鳥「ま、まあそりゃそうなんですがね…」

 

 と、飛鳥は困惑した。確かに堂々とすればよいのだが、香澄達バンドガールズの件で色々目の敵にされている為、パトカーで連行となれば色々面倒くさい事になるのは間違いなかった。

 

松永「そうと決まれば早速来て貰うぞ!」

 そう言って松永は飛鳥をパトカーに乗せようとしたが、

 

「一丈字!!」

 

 と、Afterglowが現れた。

 

飛鳥「あ、皆さん…」

ひまり「どうしたの!? 何があったの!!?」

飛鳥「安心してください。ただの事情聴取ですよ」

モカ「事情聴取~? どうして飛鳥くんだけ~?」

飛鳥「あ、青葉さんと宇田川さんはアルバイトだと伝えたら私だけでよいみたいです」

巴「そ、そんな! それじゃあたし達の為に…」

飛鳥「上手い説明しときますので、アルバイト頑張ってください」

 そう言って飛鳥はパトカーに乗せられていき、そのまま後にした。

 

つぐみ「だ、大丈夫かな…」

モカ「……」

 

 つぐみが心配そうにしていたが、巴とモカは不機嫌だった。

 

巴「くそっ!! 一丈字の奴、一人でカッコつけやがって!!」

ひまり「いや、カッコつけてはないと思う…」

モカ「まだまだ無茶する所があるねぇ~」

蘭「…いや、普通にバイトだって聞いてたら気を遣うでしょ」

 

 ************

 

飛鳥「……」

 飛鳥が警察署に来ると、そこには蕎麦屋の主人もいた。

 

飛鳥「ずっと拘束されてたんですか?」

松永「ああ。おめぇとどうしても話がしたいっつーからよ」

「おい、あんた」

飛鳥「?」

「昨日何か言いかけてたよな。一体なんだ! 教えろ!」

 

 と、店主が飛鳥に迫った。

 

飛鳥「つゆが蕎麦の味に追いついてないんですよ。薄いです」

「!!」

飛鳥「自慢じゃないですけど、蕎麦の事は多少分かっているつもりです。蕎麦の事をよく分かっていない一般人ならあれで大丈夫かもしれませんが…、分かっている人から見れば合格点は出せません」

「……!!」

 飛鳥の言葉に店主が怒りで顔を赤くした。

 

飛鳥「そばつゆだけでも、ほかのお店に行って教えて貰ったら如何ですか? そばはいう事ないので、事情を話せば…」

「バカ野郎!! そんな真似できるか!!」

 と、店主が怒鳴った。

 

「せっかくここまで来たんだ。それに、習っちまったらそれはもううちの店のつゆじゃねーだろ!!」

飛鳥「習ったものをそのまま使うのではなくて、研究するんですよ。そこから自分のそばに合ったものを…」

「う、うるせぇうるせぇうるせぇ!! どうして高校生にここまで言われなきゃいけねーんだよ!!」

 と、店主が首を横に振ったが。

 

松永「そういう事なら、店を出す以前の問題だぜ。蕎麦屋」

「え?」

 店主が松永を見ると、松永は真剣な顔をした。

 

松永「人の意見に耳を傾けられねぇ奴は、いずれ周りから見捨てられる。例え実力はあってもな」

「!」

松永「てめぇは成長するチャンスを自ら捨てようとしている。そういうつもりなら、許可証の事は諦めるんだな。そんな奴が打つそばなんて誰も食いたかねぇよ」

「そ、そんな…」

 松永の言葉に店主が絶望した。

 

飛鳥「あの、店主さん」

「な、なんだよ」

飛鳥「質問があるんですが、削り節って…もしかして薄く削ってます?」

「!!?」

 店主が飛鳥を振り向いた。

 

「お、おう。そうだが…」

飛鳥「あー…やっぱりそうでしたか。で、煮詰める時に早く鰹節をあげてたりしませんか?」

「……!」

飛鳥「鰹節って薄削りというイメージが多いですけど、出汁を作るときは、厚削りの方が良いですよ。コクと風味が強いですからね。それから煮詰める時間はもっと長くないと濃厚なだしが出ないんですよ」

「ど、どうしてお前がそういう事分かるんだ!!」

飛鳥「あ、出汁作った事あるんですよ。催し物で市販のめんつゆがどうしても口に合わないっていう人がいて」

 

 飛鳥の言葉に店主も警察官も驚いた。

 

松永「折角だからお前さんが盛り蕎麦を作ってみろい!」

飛鳥「えっ」

 

 そんなこんなで数日後、屋台がある現場で蕎麦を作る事になった飛鳥。

 

松永「ちなみに生そばは押収しているからこれを使うと良い!!」

飛鳥「あ、ありがとうございます…」

 

 30人分はあるであろう生そばを押し付けられた。

 

**********

 

飛鳥「はー…だしを作って来いって言われたよ。かえし(醤油・本みりん・砂糖を混ぜ合わせたもので、そばつゆの元になる調味料)を作るのには最低でも1日はかかるしなぁ…」

 

 飛鳥は松永たちと別れ、警察署から出てきたが、どんよりしていた。すると警察署の前には一台の高級車が止まっていた。

 

「飛鳥!!」

 そこからこころが現れた。

 

飛鳥「こころ!?」

こころ「話は全部聞いたわよ! おそばのつゆを作るのね!?」

飛鳥「うん。そうだよ」

こころ「何かできる事はないかしら!?」

飛鳥「うーん…。蕎麦屋でつゆの作り方を教えてくれそうなお店探しといて。問題になった店主さんにそばつゆの作り方を教えさせたいから」

こころ「分かったわ! あ、乗ってく!?」

飛鳥「いや、早速調味料とかを買いに行かないといけないから…」

こころ「調味料はこっちで用意するわよ?」

飛鳥「ありがとう。でも今はあまり高くない奴の方が良いかな…。コスト的に」

こころ「そうなの?」

飛鳥「そうだよ」

 

 そんなこんなで飛鳥はそばつゆ作りを行うのだった!!

 

 

 

つづく

 



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第137話「そばツユの深味・完結」



 前回までのあらすじ

 警察署に呼ばれた飛鳥は店屋の主人に本音を打ち明けた。そして頑なに認めようとしない店主に対して、松永は飛鳥が主人が打ったそばにあうつゆを作るように提案した。
 飛鳥は仕方なしにそばつゆ作りをすることになったのだが…。

飛鳥「一応、宇田川さんと青葉さんにメールしとくか…」

*******************


 

 

 松永から主人が打った生そばを受け取り、つゆ作りを試した。

 

飛鳥(返しは念のため余分に作っとこう…)

 と、飛鳥は醤油と砂糖を溶かした湯を買っておいた複数の壺に入れた。1日寝かした分、3日寝かした分と日によって取り出せるようにしておいた。

 

飛鳥「で、次は出汁だな。あの人のは鰹節を薄く切ってたからなー…」

 と、飛鳥は大きな鍋に水をかけて沸騰させ、その中に厚削りした鰹節を投入した。

 

飛鳥(一番粉(※ソバの実の胚乳の中心部を砕いたもの)を主につかった蕎麦ならいいけど、あの蕎麦は十割蕎麦だから味も香りも結構強い。それに合うつゆを作るには、出汁を徹底的に煮詰めて取り出す必要がある)

 

 と、そんなこんなしているうちに、そばつゆが完成した。

 

飛鳥「これならいけるかもしれない…」

 飛鳥がそう呟いたその時、スマホが鳴った。

 

飛鳥「もしもし…」

「もしもし飛鳥!? あたしよ! そばツユは完成できたかしら!?」

飛鳥「たった今完成したよ」

「分かったわ! それじゃ今夜おそばを食べましょう!」

飛鳥「それはいいけど、用意してくれって言ったものは用意できた?」

こころ「もっちろんよ!!」

飛鳥「分かった」

こころ「それじゃ、飛鳥のマンションに行くわね!」

飛鳥「…1階にしてね」

 

 と、試食会は飛鳥のマンションの1階にある厨房で行われる事になった。ちなみに住居者であればだれでも使ってもよい。

 

 午後6時。飛鳥が1階のエントランスで待ってると、こころ達が現れた。

 

こころ「飛鳥! 来たわよ!」

飛鳥「ああ。いらっしゃい…って、いっ!!?」

 

 こころの他にも松永、巴、モカがいたので飛鳥は驚いた。

 

モカ「お蕎麦食べに来たよ~」

巴「何か手伝えることはないかと思ってな!」

飛鳥「あ、ありがとうございます…」

 

 巴の言葉に飛鳥が苦笑いすると、店の主人も松永の後ろから現れた。

 

飛鳥「……!」

松永「さあ蕎麦屋。もりを作るんだ!」

こころ「用意したものは全部あるわよ!」

「へ、へい!!」

飛鳥「……」

 

 厨房で主人が蕎麦を茹で、飛鳥がそばつゆを用意した。

 

飛鳥「つゆは3種類あります」

巴「どう違うんだ?」

飛鳥「返しっていう醤油と…」

 と、飛鳥は返しの説明をしていて、主人はそんな飛鳥を見ていた。

 

 そしてもりそばが人数分出来上がった。

 

こころ「それじゃ頂くわね!」

モカ「いただきま~す」

巴「頂きます」

 と、こころ達がそばを食べた。それを飛鳥と主人が見守る。

 

こころ「とっても美味しいわ!!」

巴「言っちゃあ悪いけど…前に食った時と全然違う!」

モカ「これなら3玉いけるね~」

「……!!」

 巴たちの言葉に主人は衝撃を受けた。

 

飛鳥「あ、どうぞ」

 飛鳥がそばつゆが入った器を差し出し、主人も食べてみた。

 

「……!!」

 

松永「ほう。確かに中々の出来だな」

 松永がそう呟くと、主人はうなだれた。

 

「完敗だ…」

飛鳥「……」

「オレが作った蕎麦つゆよりも遥かに美味ぇ…」

 すると主人は飛鳥を睨んだ。

 

「どうしてだ!! どうやったらこんなつゆが出来るんだ!!!」

 と、飛鳥の両肩をつかんだ。

松永「ようやく教わる気になったみてぇだな」

「!!」

松永「坊主。教えてやれ。そばツユの作り方をな」

飛鳥「あ、はい…」

 

 飛鳥が困惑しながらも、主人にそばツユの作り方を教える事にした。

 

飛鳥「かえしは最低でも1日は寝かせるんですよ。まあ、3週間くらい土の中に埋めたら味が良く絡むって言われるんですけど、さすがにちょっと無理でした」

「いや、あそこまで絡むなら十分だ…」

飛鳥(本当は超能力を使って無理にでも染み込ませたら美味しかったかもしれないけどねぇ…)

 だが、そういう事が出来るのは飛鳥だけである為、出来なかった。

 

飛鳥「で、だしなんですが、鰹節を厚削りにしたものを90分くらい煮詰めます」

「90分も!!?」

飛鳥「7分目が3分目になるまでが目安ですね。ところで薄削りにしていた理由って何かあるんですか?」

「…テレビとかで鰹節は薄く削ってるのをよく見てたから、てっきり」

松永「本物しか出さねぇってんなら、妥協したらダメだろう」

 松永の言葉に主人は目を閉じて項垂れた。

 

「で、だしをこしたら、寝かせた返しと共に鍋に入れて、煮立たせないように、じっくり煮込んで…まあ、私の場合は土たんぽに入れてますね」

「土たんぽ?」

飛鳥「土で出来た器の事ですね。これに煮立たせたつゆを入れて24時間寝かせます」

巴「24時間も!?」

飛鳥「ええ。それで24時間たったら、45分湯煎して、ふたをしてまた24時間。これで完成です」

モカ「そんなにかかるんだね~」

飛鳥「ええ。ですが、そんなもんですよ」

 飛鳥の言葉に主人が項垂れた。

 

「オレは…」

「?」

「オレはなんてバカだったんだ…!! つまんねぇ意地張ったせいで、高校生に数日間もこんな苦労をかけさせちまって…」

飛鳥「あ、それは私が勝手にした事なので、お気になさらず」

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「あ、えっと…ご主人」

「!」

 

飛鳥「こんな事もあろうかと、そばツユの作り方を教えてくれるお店を探しておきました。是非行ってみてはどうでしょうか」

こころ「私の家でいつも年越しそばを作って貰ってる所よ!」

飛鳥(東京でもトップクラスの老舗なんだよなー…。こころの頼みならって聞いてくれたんだっけ…)

 

「…一丈字さん」

 主人が飛鳥の名前を呼ぶと、飛鳥が笑みを浮かべた。

 

モカ「おじさん。教わる事は別に恥ずかしい事じゃないよ~」

「!?」

 モカが口を開いた。

 

モカ「あたしもバイトしてるけど~。教えてもらうのに性別も年齢も関係ないよ~? それよりも一番大切なのは、おそばをお客さんに美味しいって食べて貰う事なんじゃないかな~?」

「……」

 モカの言葉に主人は観念したように目を閉じた。

 

「へへ…。その通りだ。よし! もう一度一からやり直すぞ!!!」

 

****************

 

 一丈字飛鳥です。私のそばツユを試飲してもらってから数日後、蕎麦屋の主人・竹林さんはそばツユをもう一度作り直して、松永警部にもりそばを食べて貰いました。

 

松永「坊主が作った奴に比べりゃまだまだだが、これなら及第点だ。これが営業許可証だ! とっとけ!」

若林「は、ははーっ!!」

 

 結果は大成功。色んな蕎麦屋を渡り歩いて、研究をしたそうです。

 

 で、結果的にどうなったかというと…。

 

飛鳥「わー。こりゃあ大行列だな」

 

 飛鳥とAfterglowが蕎麦屋の屋台まで来てみると、行列が出来ていた。

 

巴「ま、これも全部一丈字のお陰だな!」

飛鳥「仰々しいですね…」

ひまり「それにしてもそばつゆまで作れるなんて驚いたなー」

蘭「……」

 巴たちの言葉に飛鳥が困惑しつつも、ふと見えた忙しそうにしながらも美味しそうにそばを食べるのを見て嬉しそうにしている若林の顔を見ると、飛鳥も満足そうにした。

 

飛鳥「これで一件落着みたいですし、行きましょうか」

モカ「そうだね~。久々にラーメン食べたいな~」

飛鳥「そういや最近そばばっかりだったからな…」

巴「あっさりもいいけど、やっぱりこってりだな!」

 

 と、意気揚々とラーメン三郎まで来たが…。

 

『すみません。水道管が破裂したのでしばらく休業いたします』

 

 という張り紙があり、モカと巴がショックを受けた。

 

飛鳥「まあ、こういう時もありますわね…」

 

 飛鳥も渋い表情をしながら突っ込むと、蘭、ひまり、つぐみは苦笑いした。

 

 

 

おしまい

 

 

 



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第138話「お礼」

 

 

 ある日の事だった。

 

「本当にありがとう。飛鳥くん…」

「いえ…」

 

 飛鳥は買い物の途中で、リサとモカが3人の暴漢に遭っているのを目撃した。飛鳥は超能力で暴漢を撃退しようとしたが、暴漢が飛鳥に気づいた為、超能力が使うに使えない状態に。そして2人の暴漢が飛鳥に襲い掛かろうとしたが、見事に返り討ちにした。

 

 そんな中、残った暴漢がモカとリサを人質に取ろうとしたが、そこは上手い事空いての目を盗んで相手を腹痛にさせて事なきを得た。暴漢がリサとモカを離した瞬間に、飛鳥はリサとモカを保護して、そのまま警察に通報。そしてリサからお礼を言われていた。

 

飛鳥「私はこれで失礼します」

リサ「……」

 飛鳥がそういうと、リサが困った顔をした。

 

飛鳥「いつもの事なので」

「また君か…」

飛鳥「すんません」

 

 警察が呆れながら言うと、飛鳥は苦笑いして謝りながらそのまま警察へ連行されていった。

 

モカ「飛鳥くんなら大丈夫ですよ~」

リサ「でも!!」

モカ「まあまあ」

 

 *****************

 

 翌日

 

飛鳥「はー…酷い目に遭ったぜ」

 飛鳥は警察署で事情聴取を受けていたが、気絶させた暴漢の事についてはやり過ぎだとこっぴどく怒られてしまった。学校の教室でぼやいでいる。

 

飛鳥(あれでも一応加減はしたんだけどなぁ…)

 

 飛鳥が頭をかいていると、スマホのメール着信が来た事に気づき、確認した。相手はモカからである。内容は下記の通りだった。

 

『お疲れ~。リサさんとーっても心配してたから、ひと声かけてあげた方がいいんじゃな~い?』

 

 というものだった。

 

飛鳥(まあ、ひと声くらいだったら…)

 その時だった。

 

「飛鳥くん!」

 リサが現れた。

 

飛鳥「今井先輩」

リサ「あ、学校に来てたんだ! 良かった。ちょっと話があるんだけどいいかな?」

飛鳥「昨日の件なら、本当に気になさらずに…」

リサ「そういう訳にはいかないの! 数時間も事情聴取受けてたんでしょ?」

飛鳥「まあ、それはそうですが…」

 

 リサの言葉にクラスメイト達が驚いた。

 

リサ「今日お昼空いてる?」

飛鳥「校長室に来るように言われてます」

リサ「じゃあ放課後!」

飛鳥「あ、放課後は空いてます」

リサ「じゃあ放課後時間空けといて!」

飛鳥「あ、はい。分かりました…」

 

 そう言ってリサは去っていくと、飛鳥が困り果てていた。

 

飛鳥「本当にいいんだけどな…」

「いや、一体何があったんだ!?」

飛鳥「いや、実は昨日…」

 飛鳥が事情を説明すると、同級生はさらに驚いた。

 

 そして放課後

リサ「ゴメン!! 私が急用出来ちゃって」

 

 リサが飛鳥の教室にやってきて、申し訳なさそうに両手を合わせて頭を下げていた。

 

飛鳥「お気になさらないでください」

リサ「だからそういう訳にはいかないの! 明日の昼休憩時間空けといて!」

飛鳥「すみません。弦巻さんから話があるといわれてて…」

リサ「じゃあ明日の放課後!!」

飛鳥「分かりました。それでは明日の放課後でお願いします」

リサ「ごめんねー」

 

 そして飛鳥と別れた後、リサは深くため息をついた。そしてそんなリサを遠くから友希那が見つめていた。

友希那「…リサ?」

 

 

 そして翌日の放課後

 

リサ「ゴメン…。今日バイトだったわ」

飛鳥「あ、分かりました」

 リサの言葉に飛鳥が反応すると、リサが飛鳥を睨んだ。

リサ「明日の昼休憩!! 時間取れる!!?」

飛鳥「あ、はい。大丈夫ですよ…」

リサ「分かった!! 何度もゴメンね!!」 

 

 と、翌日の昼休憩

 

リサ「ちょ、そこを通してよ!!」

「一丈字の所にはいかせんぞ!!」

「オレ達というものがありながら!!」

「どうしてもオレ達じゃなきゃダメか!!?」

 

 リサが飛鳥の教室に行こうとすると、男子生徒達が通せん坊していた。それを後ろから友希那達が見ていた。

 

友希那「…何なの? あれは」

紗夜「一丈字くんの所に行かせないつもりですね…」

燐子「ど、どうして…」

友希那「はぁ…」

紗夜「湊さん」

 友希那がため息をつきながら歩き出した。

 

友希那「リサ」

リサ「友希那…」

友希那「一丈字くんの事は一旦諦めなさい」

リサ「!」

 

 友希那の言葉にリサが反応した。

 

リサ「ど、どうして!? 飛鳥くんは…」

友希那「あの子はさほど気にしてはいないし、こうなってくると分が悪いわ」

 友希那が男子生徒達を見つめた。

 

友希那「…しかし呆れた。そんな事をしてる暇があるなら、別の努力をしたらどうかしら?」

「そ、それは…」

「してるさ! だけどいくら努力しても振り向いてくれないものは振り向いてくれないじゃないか!」

友希那「当り前よ。私達にも選ぶ権利があるんだから」

 友希那が冷徹に言い放つ。

 

「そ、それじゃ一丈字の事を…」

友希那「バカ言わないで頂戴。Roseliaが頂点になるまでそれどころじゃないし、彼もそれを理解していて、必要以上に関わってこないもの。いくわよリサ」

 と、友希那がリサを引っ張って強行突破した。

 

リサ「ちょ、友希那どこ行くの?」

友希那「そんなの決まってるじゃない。一丈字くんの所でしょ?」

リサ「!!」

 友希那の言葉にリサが反応した。

 

友希那「ここまで言っても尚、空気の読めない事をしてくるようじゃ、振り向かせるんて到底無理だから安心しなさい」

 確かに友希那の言った通り、男子生徒は追いかける事はしなかった。

 

リサ「友希那…」

 リサが笑みを浮かべた。

 

リサ「ありがとう!!」

 

 そして、

 

リサ「お待たせ」

飛鳥「あ」

 リサは無事に飛鳥の元にやってきたが、友希那がいる事に驚いていた。

飛鳥「湊先輩」

友希那「私は付き添いよ。リサを助けてくれたそうね」

飛鳥「えーと…」

友希那「謙遜しなくていいのよ。さあ、時間はないけどカフェテリアに行きましょう。ご馳走するわ」

飛鳥「え…」

友希那「…先輩の厚意は受け取っておくものよ?」

飛鳥「あ、ありがとうございます…」

 友希那の言葉に飛鳥が驚いた。

リサ「って友希那! お礼するのは私だから!!」

友希那「どっちでもいいわよ」

飛鳥「……」

 

 結果的に友希那とリサの2人で割り勘をしたという。

 

モカ「うんうん。これにて一件落着~」

巴「やっぱりモカも何かお礼をした方が良いんじゃないか?」

つぐみ「そ、そうだよ…」

モカ「うーん…」

 

 

おしまい

 



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第139話「クラスメイトから見た一丈字飛鳥」

今回のイメージオープニングテーマ
「ねない ねない ねない」
歌:ザ・カスタネッツ


 

 

 

 

 

 

 こんにちは。クラスメイトです。1年3組に所属しています。えっと…あの一丈字くんのクラスメイトの男子生徒です。今回は僕たちの目線からお話を進めさせていただきます。

 

 皆さんも知っていると思いますが、この学校はガールズバンドが盛んです。まあ、演奏している人たちもとても綺麗で可愛いです。その為、学校の中でも外でもファンが沢山います。親衛隊がいたり、ストーカーがいたりして、見てる方は毎日退屈しませんが、バンドガールの人達はとっても困ってるそうです。

 

学校だけならともかく、バイト先にも押しかけて迷惑行為があったそうです。実際に今井さんや青葉さんと同じコンビニでバイトをしてる女の子が、『今井さんと青葉さんのどちらかを出せ』といわれたり、『今井さんや青葉さんがいないと分かった途端に帰ったりする』という事が起きています。そういや、2組の宇田川さんと上原さんは前にバイト先の人と喧嘩したって言ってたな…。

 

 そんな日々が続いていた中、彼は突然やってきました。

 

「今日からこの学校に転入することになった一丈字飛鳥くんだ」

飛鳥「一丈字です。宜しくお願いします」

 

 最初はとてもおとなしそうな子だと思った。黒髪で大きな眼鏡をかけてて…こんな事言ったら失礼だけど、陰キャがそのまま漫画の世界から飛び出したような感じでした。でも、その割にはハキハキと喋ってて、ちょっとよく分からなかった…。

 

 で、彼が来てからというもの、そのファンの迷惑行為が減ってきたような気がします。なんていうか、彼女たちにちょっかいをかけようとすると突然お腹が痛くなったりとかで、祟られるという都市伝説も生まれているみたいです。それはそれで良いのですが、それと同時に一丈字くんが何かしらの事件に巻き込まれてるんですよね。警察に逮捕されたり、何か裏で人助けをしていたり、もしかして一丈字くんが関わってるんじゃないかという都市伝説も流れてますけど、そんな漫画の世界じゃないんだからあり得ませんよね。

 

 でも…一丈字くんって普段から凄いんですよね。あてられた問題は全部答えるし、屋内の体育でも運動神経抜群だし…。此間野球部のボールが横から飛んできて、普通にキャッチしたりするし、本人は大したことなさそうにしているけど、こっちからしてみたら色々ツッコミどころが多くて、聞いてみたいけど怖くて聞けないんですよね…。

 

 まあ、そんな一丈字くんだけど、僕たちが困ってたら助けてくれるし、分からない所があったらちゃんと教えてくれるし…それに、いざっていう時に本当に頼りになるんですよね。頼りになるし、顔つきが何かもう歴戦の勇者みたいに…。人生何週目なんだろう…。

 

 あ、僕の語りはここで終わります。

 

************************

 

 ある日の事だった。

 

飛鳥「……」

 飛鳥は普通に教室で過ごしていたが、クラスメイトの一人が飛鳥の方を見ていた。だが、飛鳥は気配には気づいていたものの、話しかける様子はなかった。だが、クラスメイトは意を決して飛鳥に話しかける事にした。

 

「なあ、一丈字」

飛鳥「何でしょう?」

 

 飛鳥もクラスメイト(以降B)を見つめた。そして語りをしていたAもその様子を見つめている。

 

B「前からずっと思ったんだけどよ…。お前、好きな子とかいねーの?」

飛鳥「いませんよ?」

 

 飛鳥は即答した。

 

B「いや、弦巻とかあんなに仲が良いのに…」

飛鳥「あー…。よくそう思われがちなんですけど、そんな事ないんですよ。それに、彼女たちもバンド活動や部活動で忙しいので、恋人よりもそっちの方を優先したいって言ってましたし」

B「誰が?」

飛鳥「湊先輩や美竹さん、白鷺先輩あたりはそう仰ってましたね」

B「た、確かに言いそう…」

飛鳥「彼女たちとはたまにお話しする機会はございますが、今以上の関係になる事はございませんよ」

B「そ、そうか…?」

飛鳥「そうですとも」

 

 するとチャイムが鳴った。

 

飛鳥「まあ、そういう訳で」

A「……」

 

 飛鳥の様子をAはただ見ている事しか出来なかった。やっぱり見れば見る程不思議で掴み所がなかったのだ。

 

飛鳥(…クラスの人たちからこうやって話しかけてくれるのは嬉しいけど、あまりボロを出すとバレるからなぁ)

 

 昼休憩

 

はぐみ「飛鳥くーん!! 一緒にお昼ご飯食べよー!」

飛鳥「北沢さん」

 

 はぐみが3組の教室にやってきた。

 

飛鳥「今回はお一人ですか?」

はぐみ「うん! こころんもみーくんも用事があってはぐみ一人だから…ダメかな?」

飛鳥「ダメではないですけど…私で宜しいんですか?」

はぐみ「いーよいーよ! それじゃ食堂に行こ!」

飛鳥「ちょ、北沢さん!」

 はぐみが飛鳥の手を強引に引っ張ると、そのまま去っていき、それをクラスメイト達が見つめていた。

 

「一丈字…」

 と、クラスメイト達は苦笑いしていた。

 

「…まあ、未だに謎が多いけど、悪い奴じゃないしな」

「そうね。私達にも優しくしてくれるし…」

「このまま見守りましょう」

「ああ…」

 

 クラスメイト達はそう話をしたのだった。

 

「…って、なんかあった時助けに行ってあげなさいよ!」

「いやー…あんな変態たちの相手したくねーし、一丈字一人で十分だろ…」

 

 

おしまい

 



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第142話「Roseliaの10分トーク」

 

 とある日の楽屋。

 

あこ「大変だよ!! 今回のお話制作時間10分しかないって!!」

「ええっ!!?」

 と、あこの言葉に友希那、紗夜、リサ、燐子が驚いた。

 

友希那「思い切ったことするわね。このハーメルンでは1000文字以上入力しないといけないのよ?」

あこ「だ、だったらあこ!! 大声で「あああああ」って叫びます!!」

紗夜「ダメよ。それは禁止事項よ」

あこ「うう…。でもこんな事喋ってる間に1分経っちゃったよ…」

友希那「しかもタイプミスがあるからなかなか進まないのよね…。あ、もう2分経ったわ」

 

 実を言うと、結構文字を入力するのって大変だったりするんですよね。頭の中でキーボードを入力していくんですけど…。

 

紗夜「何か語り始めたわ」

燐子「とても分かります…」

リサ「そういえば燐子、タイピング早いもんね…」

 

 燐子の言葉にリサが苦笑いした。

 

友希那「10分以内に1000文字入力できるかどうかみものね。もう3分経ったわよ」

あこ「誰に言ってるんですか?」

リサ「言わない方が良いよ」

 

 リサが苦笑いした。

 

あこ「それはそうと、今日はクリスマスイブだねー」

友希那「本当よ。こんなクリスマスイブに一体何をやってるのかしら」

 

 いつも通りです。

 

リサ「…それでいいのかしら」

 

 はい。それでいいのです。

 

紗夜「そ、そう…」

友希那「それはそうともう半分になったのね」

あこ「すごいすごーい!!」

 

 友希那の言葉にあこが感心した。

 

あこ「そういや思ったんだけど、ずっとひらがなで入力したら字数稼げるんじゃないかな!?」

紗夜「ダメよ。読みにくくなるわ」

リサ「あはははは…。確かに読みにくいねー」

紗夜「文字を入力すれば良いっていうものじゃないわ。面白い内容じゃないと…」

あこ「…でも、あこ達。面白い事喋れてるかな」

 

 あこの発言に皆がどんよりした。

 

紗夜「それは言わないお約束よ…」

リサ「さて、もう5分経ってるけど、あと4分の1ね」

友希那「ねえ燐子。これって早い方なの?」

燐子「よ、よく分かりません…」

あこ「あこがタイピングやろうと思ったら…」

 

 あこが自分がタイピングを想像している所を想像したが、だんだん険しい表情になっていった。

 

あこ「ま、まああこよりかは早いと思うよ!」

紗夜「それはそうと、残り4分何をしゃべればいいっていうの…」

リサ「あ、そうそう。ヒナからクリスマス何か言われてる?」

 

 リサの言葉に紗夜が難しい表情をする。

 

紗夜「今年も一緒にクリスマス過ごそうねって…」

リサ「あー…」

あこ「えー!? あこも今年もおねーちゃん達とクリスマス過ごすよ!?」

リサ「いや、まあね…」

友希那「普通は恋人と過ごすものだって聞いてるわ」

 

 友希那の言葉に4人が驚いた。

 

リサ(ゆ、友希那もそういう事は理解できてたんだ…)

紗夜(な、何か意外です…)

燐子(友希那さん…)

あこ(おおーっ…)

友希那「あなた達。私の事を何だと思ってるのかしら」

 

 友希那が4人の様子を察してツッコミを入れると、一斉に慌てだした。

 

リサ「ご、ごめんごめん! そういうつもりじゃないのよ!!」

燐子「あと2分…」

リサ「…よくよく考えたら、アタシらってそういうのあんまり縁がないよね…」

燐子「…私は別に」

紗夜「私もですね…」

 皆が考えると、一人の少年が思い浮かんだ。

 

 

飛鳥『あ、どうも』

 

 

友希那「…彼は、どうなのかしら?」

紗夜「弦巻さんと仲がいいって聞いてますけど…」

リサ「付き合ってる感じではないよね…」

 

 と、皆が苦笑いした。

 

友希那「さて、そろそろ時間ね」

あこ「あ、それじゃあこがあの言葉を言うね!」

紗夜「どうぞ」

 

 するとあこがカメラに向かってにこやかにこう言った。

 

あこ「メリークリスマース!!!」

友希那「ノルマクリアね」

 

おしまい

 



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第143話「間接キス騒動」

 

 

 それはある日の事だった。

 

飛鳥「はー…カフェオーレが美味しい」

 

 飛鳥はカフェテリアで一服していた。グ〇コのカフェオーレ500mlの紙パックを開けてストローで飲んでいる。

 

「あら! 飛鳥じゃない!」

 

 こころが声をかけてきた。こころの後ろにはハロー、ハッピーワールドの面々がいた。

 

飛鳥「ああ。弦巻さん。こんにちは」

こころ「こんにちは。何を飲んでるのかしら?」

飛鳥「コーヒー牛乳です」

こころ「あら! とっても美味しそうね! ちょっとだけ貰ってもいいかしら!?」

飛鳥「構いませんけど…」

こころ「じゃあ貰うわね!」

 こころがストローでコーヒー牛乳を飲んだ。

 

こころ「とっても美味しいわ! ありがとう!」

飛鳥「どういたしまして」

 と、飛鳥がこころが口につけたストローを口に飲んでコーヒー牛乳を飲むと、

 

「ふああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!!」

 

美咲「藤原〇也かよ…」

飛鳥「あの俳優さん、叫ぶこと多いですからね…」

 

 周りにいた男子生徒達が発狂した。

 

「一丈字…貴様、ついにやりやがったな…」

飛鳥「やりやがったの弦巻さんじゃなくて?」

「うるせぇ!! 女のせいにするとかそれでも男か!!」

飛鳥「そんなに騒ぐことですかね…」

 

 こころと関節キッスしたことで騒ぎ立てる男子生徒達に飛鳥は困惑した。

 

こころ「そうよ。そんなに騒ぐことかしら?」

美咲「まー…確かにそうなんだけどさ、高校生でそういうのってあんまりないから…」

 美咲がちょっと頬を染めてこころにツッコミを入れると、薫、はぐみ、美咲は顔を真っ赤にしていた。

 

飛鳥「お気持ちは分からなくはないですけど、このコーヒー牛乳、元々私のですし、意識をし過ぎてもかえって彼女に失礼ですよ…」

「うるせぇこのモテやろう!!」

「どうせお前なんかに陰キャの気持ちなんか分かんねーよ!!」

飛鳥「いや、陰キャでもモテる人いますから」

 

「こ、こころちゃんは良くても完全に他の4人に嫌われたなぁ!!」

「もうこころちゃん以外に手を出すなよ!!」

飛鳥「要するに、あなた方は瀬田先輩たちと関節キスがしたいと?」

 飛鳥の言葉に薫、はぐみ、花音が慌てだし、美咲は憤慨した。

 

美咲「絶対いや!!!」

花音「ふ、ふぇえええええええ!!!/////」

はぐみ「ちょ、ちょっとそれは恥ずかしい…/////」

薫「まったく困った子犬くん達だ…(はずかしい/////)」

 

「そ、そんな事言ってないだろ!!」

「おい! 好感度下げるような発言するなよ!!」

飛鳥「じゃあ、そちらも私に言いがかりつけないでください。本当にそんなんじゃありませんから」

 

 と、険悪な空気になった。

 

「どうしたの~?」

 

 モカの声がして、飛鳥達が声がした方を見ると、Afterglowがいた。

 

こころ「あら! 蘭達じゃない!」

蘭「何…この騒ぎ」

飛鳥「それが…」

 飛鳥が事情を説明しようとしたが、

 

「こいつが、こころちゃんが口につけたストローでコーヒー牛乳を飲んだんだよ!」

 男子生徒が事実を書き換えて、空気が止まった。

 

飛鳥(さあ、アフグロの5人は信じるのか信じないのかどっちなんだい!)

 

蘭「一丈字、何か言いかけてなかった?」

モカ「どうせ飛鳥くんがストローで飲んでたコーヒー牛乳をこころちゃんも飲ませて貰ってストローを口につけて、それをまた飛鳥くんが口につけて飲んだってオチでしょ~?」

ひまり「如何にも一丈字くんを悪者にしたいって感じだよね」

巴「それくらい気にすることじゃないだろ」

つぐみ「いや、それはまた別の話だと思うよ…?」

 

飛鳥(5人とも信じてくれた…)

モカ「信じてくれないと、酷い目に遭わされるもんね~」

ひまり「しかも私たちの場合は、大体お化け屋敷…」

蘭「一丈字。信じてるよ」

巴「そうそう」

飛鳥「私を信じてるというより、お化け屋敷に行きたくないっていう気持ちが強い!!」

 

 蘭と巴がにこやかに言い放つと、飛鳥が困惑しながら突っ込んだ。

 

巴「で、また一丈字に嫌がらせか」

蘭「本当に懲りないね」

「う、うっさい!!」

「オレ達だって女子達とそういうキャッキャウフフしてぇよ!!」

飛鳥「した記憶ないんですけどね…。特に最近何かずっと別行動でしたし」

 

 飛鳥が頭をかいた。

 

こころ「蘭達は飛鳥と関節キッスできるかしら?」

飛鳥「無理でしょう」

 

巴「いや? アタシそういうの気にしないけどな」

モカ「トモちんの方が男らしいよ~。ちなみにモカちゃんも大丈夫で~す」

ひまり「わ、私は…悪いけど、ちょっと抵抗あるかな…」

つぐみ「私は…抵抗じゃなくて、ちょっと恥ずかしいかな…」

飛鳥「上原さん、羽沢さん。それが普通ですのでお気になさらず」

 飛鳥が苦笑いした。

 

蘭「……」

モカ「蘭はどう~?」

蘭「そ、そんなの私も嫌だよ…」

飛鳥「分かりますよ」

 飛鳥がうんうんと頷いた。

 

モカ「もし湊さんが飛鳥くんと間接キスしたらどうする~?」

飛鳥「おーい。そういうオチいらないから」

蘭「……」

 蘭が飛鳥を軽く睨みつけた。

 

飛鳥「ああ、何かまた面倒な事になってきたよ。大丈夫ですよ。湊先輩がそんな事する訳がございませんから」

「何の話?」

 飛鳥が振り向くと、そこにはあこ以外のRoseliaがいた。

あこ「あ、あこもいるよ!!」

 あこも遅れてやって来た。

 

飛鳥「なんでもございませんよ」

リサ「今、関節キスの話してなかった?」

飛鳥「今ここで湊先輩と美竹さんを衝突させると、この学園が崩壊します」

「大げさすぎる!!!」

 

 飛鳥の発言に生徒達が困惑しながら突っ込んだ。

 

友希那「さしずめ、私があなたと間接キスできるかっていう話でしょ?」

飛鳥「はい」

 友希那は飛鳥が呆れた目で見ていた。

 

友希那「そんなに気にしないわよ。だってあなたは年下だもの」

飛鳥「そういう理由ですか?」

友希那「ええ。悪いけど対象には入ってないわ」

飛鳥「そうですかー」

 飛鳥が心の底から安心していた。これでもう友希那ファンから狙われずに済むと。

 

友希那「…何かやけに嬉しそうね」

飛鳥「いえ、そんな事はございませんよ」

 すると友希那が飛鳥のカフェオーレに目をつけて近づくと、なんという事でしょう。飛鳥(とこころ)が口につけたストローを口につけて飲んだではありませんか。

 

蘭「!!」

モカ「わー」

あこ「ゆ、友希那さん!!?」

巴「あーあ…」

リサ「あちゃー…」

こころ「?」

ひまり・つぐみ・薫・はぐみ・紗夜・燐子「!!?///////」

花音「ふぇえええ!!?/////」

飛鳥「……」

 

 その光景に飛鳥達はそれぞれのリアクションを行った。

 

友希那「問題ないわよ。ちなみにこのストローは私が始末しておくわね。変な事考えてる男子共がいるから」

 と、友希那が睨みつけた。

飛鳥「あ、はい…。お手数をお掛けしますが、宜しくお願いします…」

 飛鳥が頭をかくと、蘭がわなわなと震えていたが、友希那が蘭をふと横眼で見て勝ち誇っていた。

 

飛鳥『モカ…!! なんてことをしてくれたんだ…!!』

モカ『いやー。やっぱオチいると思ってさー。めんごめんご』

飛鳥『美竹さん睨みつけてきてるし…超能力で消しとこ』

モカ『わあ』

 

 しかし、沢山の人が見ているので、そんな事が出来るわけもなく…。

 

蘭「一丈字。その…//////」

飛鳥「考え直しなさい。湊先輩の挑発に乗ってはいけませんよ」

 

 と、蘭から迫られたのは言うまでもなかった。

 

 

 

おしまい

 



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第146話「馬のキモチ(前編)」

 

 ある日の事。

 

「聞いたか!? パスパレが今度映画に出るらしいぞ!! 5人全員ヒロインで!!」

「まじか!!?」

「主役俳優が羨ましいぜ~」

 

 バンドリ学園では、Pastel*Palletesの映画出演の話でもちきりになっていた。

 

 2年1組(彩・千聖・紗夜・燐子・花音)

 

花音「凄いね! 映画に出るなんて」

千聖「そうね…」

彩「うぅ~…今から緊張してきたぁ!!」

 

 2年2組(麻弥・日菜・友希那・リサ・薫)

 

麻弥「まさかジブンが映画に出る事になるなんて…」

日菜「るんってするね!!」

リサ「しかも県外で撮影なんだって?」

日菜「そうなんだよ!  馬に乗るらしいから…」

薫「馬なら私の得意分野じゃないか…」

 

 1年1組(イヴ・ポピパ・こころ。はぐみ・美咲)

 

香澄「映画見に行くね!」

イヴ「ありがとうございます!」

 

 1年3組(飛鳥)

飛鳥「…え? オレの画いる?」

 

*******************

 

 一丈字飛鳥です。皆さんもご存じの通りで、Pastel*Palletesの皆さんが映画に出演される事になりました。学校の皆さんも大盛り上がりです。このまま何も起こらなければいいなーと思っていました。

 

 でも、何も起こらないなら起こらないで面白くなかったのか、神様がやらかしました。あ、ここで語りは終わります。

 

*****************

 

 数日後

 

「えええええええええええええええ!!? 撮影中止!!?」

 

 なんという事だろう。パスパレの映画の撮影が中断してしまったのだ。パスパレが普通に学校に来ていて、それを不思議に思った香澄達がカフェテリアで話しかけると、中止になったという事実を聞かされた。

 

彩「そうなの…」

麻弥「主演の俳優さんが馬から振り落とされて大怪我を…」

千聖「…ハァ」

 

 千聖がため息をついたのには理由があった。パスパレの相手である主役俳優は大手スポンサー企業の社長の息子で、実力もないのにコネで主役の座をつかみ取ったのだ。そのせいか、撮影現場でもやりたい放題やって、少しでも文句を言うとスタッフをクビにしたり、父親に頼んで映画やドラマを中止にすると脅しをかけたのだ。おまけに顔も良いのでこれがまた面倒な事になったのだ。

 

 パスパレ相手にも横柄な態度を取り、彩以外の4人にもセクハラまがいな事をしていた為、パスパレからも嫌われていた。ちなみに彩に対して完全に見下していて、罵詈雑言を言い放っていた。

 

香澄「残念でしたね…」

千聖「いいのよ。あんな奴と共演したままだったら、私の経歴に変な傷がついてたもの。いい気味だわ」

 香澄の言葉に千聖は何ともない感じで言い放った。

 

千聖「それよりもあいつが大手スポンサー企業の社長の息子じゃなかったら、即刻訴えてやるのに…!」

彩「……」

 千聖の言葉に彩が俯いた。

 

たえ「そういえば彩先輩。さっきからずっと元気がないですけど…」

千聖「…その俳優さんからね。色々酷い事を言われたのよ。Pastel*Palletesの足手まといとか、才能ないからやめろとかね」

「!!?」

 千聖の言葉に皆が驚いた。

 

千聖「どういう訳か彩ちゃんだけ毛嫌いしてるのよ」

彩「…やっぱり千聖ちゃん達みたいに何もないから」

りみ「そ、そんな事ないですよ…」

 泣きそうになる彩に対して、りみが必死に慰める。

 

千聖「まあ、そういう事もあって罰が当たったのよ。あんな大怪我をして、私達の前で盛大に恥をかいたんだもの」

沙綾「恥?」

 沙綾の言葉に千聖が沙綾を見た。

 

千聖「あの俳優に大けがをさせた馬、元々は競走馬だったんだけど、気性が荒くて今は人を乗せたがらないのよ」

「……」

千聖「…知ってる? 競走馬って引退したら殺処分される事が多いのよ」

「殺処分!!?」

 

 千聖の言葉に香澄達が驚いた。

 

千聖「全部が殺処分されるわけじゃなくて、乗馬クラブに行くこともあるんだけど、それでもゆっくり走ったりできない事があるのよ。今まで早く走るように調教されてるから」

「……」

千聖「…私の見解だけど、おそらく人間を信用できないんじゃないかしら」

有咲「け、けどそれだけ気性が荒かったら殺処分は…」

 有咲の言葉に千聖が目を閉じた。

 

千聖「確かにそれだけ気性が荒ければ人間にとっては不都合。即刻殺処分するべきだけど、あの馬は体も大きくて見栄えも良かったから、残されたって聞いたわ。でも、あんなに大怪我させたんじゃ…」

 

 千聖の言葉に皆が沈む。

 

 一方、飛鳥はスマートフォンで和哉からのメールを確認していた。

 

『今度の土曜日。仕事だ。孫(※和哉の弟)を連れてダシマ高原のダシマホースパークに行け。落馬させた馬の調査をして貰う』

 

飛鳥(パスパレの撮影現場だった場所だ…。まさか…)

 

***************

 

 土曜日、ダシマ高原付近。

 

飛鳥「ありがとうございます。連れて行って下さって…」

「いえ、お嬢様のご命令ですので」

 

 飛鳥は弦巻財閥の車でダシマ高原にあるホースパークに向かっていた。ちなみにプライベートである為、いつもかけている伊達眼鏡は外している。

 

こころ「馬がどうして暴れているのか解明する必要があるわね!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥の隣の席にはこころが座っていた。実は和哉から来ていたメールはこころにもCCで送られていた。ちなみに和哉は別の仕事で参加できない為、飛鳥に代役を依頼したのだった。

 

こころ「孫も今日はよろしく頼むわね!」

「ああ!」

 

 飛鳥とこころの向かいの席には、和哉の弟の古堂孫(こどう そん)が座っていた。大きな双葉頭がトレードマークで、大きな瞳が特徴だった。身長は飛鳥より2㎝高い。年齢は1個上である。

 

 数十分走ると、ホースパークにたどり着いた。

 

「よく来てくださいました!」

 と、従業員たちが出迎えた。

 

飛鳥「お世話になります!」

孫「おせわになります」

こころ「お世話になります!」

 

 と、3人があいさつした。

 

飛鳥「早速ですが、問題の馬を見せて頂けませんか?」

「こちらです」

 

 飛鳥の問いかけに従業員が反応すると、そのまま案内された。しばらく歩いた先には、大きな鼻息を立てながら、黒い馬が孫たちを睨みつけていた。

 

「こいつです。名前はジャックナイフって言うんですけど…」

飛鳥「これはまたかっこいい名前を…」

こころ「あなたがジャックナイフって言うのね! 宜し…」

 こころがジャックナイフに近づこうとすると睨みつけて威嚇した。

 

こころ「何をそんなに怒ってるのかしら?」

 こころの言葉に飛鳥が困惑していると、孫は真顔で馬を見つめた。

 

 

つづく

 



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第147話「馬のキモチ(後編)」

第147話

 

 前回までのあらすじ

 

 映画を撮影することになったPastel*Palletes。だが、主演の俳優が映画の撮影で乗ろうとしていた「ジャックナイフ」に振り落とされて落馬し重傷を負ったことで、映画は中止になってしまった。

 

 飛鳥は和哉からジャックナイフが何故怒ってるかを調査するように依頼され、和哉の弟である孫と、同じく和哉からのメールが送られていたこころを連れて現場に向かう。果たして…。

 

******************

 

こころ「どうしてこんなに怒ってるのかしら?」

孫「オレはタカハシいがいをのせるきはないっていってる」

「!!?」

 

 孫の言葉に初老の従業員が複雑そうな顔をして前に出た。

 

「ジャックナイフ…。お前、まさか…!!」

飛鳥「!?」

 

 そして初老は歯ぎしりした。

 

「お前、あいつの事をまだ…!!」

「ブルォオオオオオオオオオオン!!! ブルォオオオオオオオオオオン!!!」

 

孫「…ましてやあんなクソガキをのせるくらいなら、しんだほうがマシだっていってる」

「……!!」

 

 飛鳥がジャックナイフを見て念じると、そこには競走馬として活躍していた事、そして自分の力をうまく引き出していた高橋の事、そしてその高橋が病気になって騎手を引退したこと、後を引き継いだ騎手があまりにも自分の力を引き出すのが下手糞だったこと、

 

 それにより闘争心を失い、自身も引退の道を選んだことが分かった。

 

初老「そ、そうだったのか…」

 初老の従業員は膝から崩れ落ちた。

 

初老「そんな事も知らずに私たちは…すまない…!!」

 飛鳥は崩れ落ちる初老を見つめると、

 

孫「アスカ」

飛鳥「?」

 飛鳥が孫の方を見ると、孫は真剣な顔をした。

 

孫「ようは、こいつにのってうまくのりこなせればいいんだな?」

「!!?」

 

 頓珍漢な事言っている孫に対して、皆が驚いた。

 

「そ、そんなの無理だ!! ジャックナイフはプロの騎手でもうまく使いこなせなかったんだぞ!! 君のような素人が出来るわけ…って聞けよぉおおおお!!!」

 

 若手の従業員がそう言っている間に、孫はジャックナイフの背中に乗った。そしてジャックナイフは暴れだした。

 

飛鳥「皆さんは後ろに下がってください!!」

 飛鳥が従業員たちを誘導すると、超能力でバリアを作り出して、ジャックナイフが襲ってこないようにした。

 

「超能力者って本当にいたんだ…」

「ああ…」

飛鳥「他言無用でお願いします! あと撮影禁止で!」

 

 後ろでつぶやく従業員たちに対して、飛鳥がツッコミを入れた。

 

ジャックナイフ(舐めやがって!! 振り落としてやる!!)

 ジャックナイフは縦横無尽に暴れまわったが、孫はかけられていた手綱をしっかりつかんでいた。

 

こころ「孫!!」

 こころも心配そうに叫んだが、

飛鳥「心配いらないよ」

こころ「え!?」

 こころが飛鳥を見つめる。

 

飛鳥「孫さんなら必ずやってくれる」

こころ「……!!」

 飛鳥もこころの方を見て笑みを浮かべると、真剣な表情をして正面を向いた。

 

飛鳥「さあ、ジャックナイフに見せてやりましょうか!! 孫さん!!」

孫「しょうぶだ!!」

 

 ジャックナイフは猛スピードで走ったり、上下に揺れて孫を振り下ろそうとしたが、孫は振り落とされる事はなかった。

 

「あの子、凄い…」

「ああ…」

 従業員が驚く中、初老の男性は孫の姿がかつての騎手である高橋の姿に見えた。

 

初老「…まるで高橋を見てるようだ」

 そして初老はジャックナイフに目をやると、振り落とそうとしているものの段々表情が柔らかくなっているように見えた。そしてそんなジャックナイフの姿を見て涙を流していた。

 

初老「そうか…。久しぶりに走れたんだな。やっぱりお前は生粋の競走馬だったか…」

 

 と、静かに目を閉じて笑みを浮かべた。

 

ジャックナイフ「……」

飛鳥(こっちには来ないようにジャックナイフには暗示をかけたけど…。中々意志が強くて破られそうだ…)

 飛鳥がジャックナイフを目で追いかけて、超能力を調節していた。パッと見て分かりにくいが、バリアを張ったり、目でジャックナイフを追いかけて暗示をかけたりするなど、かなり重労働である。

 

飛鳥(普段は伊達眼鏡だけど、本当にお世話になりそう…)

 

 そして…

 

「……」

 ジャックナイフが疲れ果てて、ゆっくり歩きだした。

 

初老「ジャックナイフ!!」

 飛鳥はバリアを解いて従業員達やこころ達と共に駆け付けた。

 

こころ「大丈夫なの!?」

孫「つかれてるだけだ」

 すると…。

 

ジャックナイフ(…オレの負けだ)

孫「!?」

 孫と飛鳥がジャックナイフの方を振り向いた。

 

ジャックナイフ(まるで高橋と走ってるような感覚だった。見事としか言いようがない…)

飛鳥「ジャックナイフ…」

 飛鳥が呟くと、こころが飛鳥を見た。

 

こころ「ジャックナイフがどうしたの?」

飛鳥「孫さんの事を認めたみたいだ」

初老「ああ…。とても見事だった」

 と、初老が感涙した。

 

飛鳥「…原因は分かりましたので、これからはどうされるつもりですか?」

初老「しばらく様子を見る」

「!!?」

 皆が初老を見つめる。

 

初老「高橋の為にも殺処分をしないで、天寿を全うさせたい。私が責任を取る」

「主任…」

 初老はジャックナイフを見つめる。

 

 

『あいつ、気性が荒いから、手懐けるのはなかなか難しいっすよ』

「高橋…」

 

 だいぶ昔の事、初老はとある病院の一室を訪れていた。そこにはジャックナイフのかつての騎手である高橋がベッドで横になっていた。心配そうにする初老に対して高橋は苦笑いした。

 

高橋「…あーあ。白血病にならなかったら、今もあいつと走れたんだけどなぁ。心残りなのはそれだけっすよ」

初老「……」

高橋「そんな顔しないでくださいよおやっさん。どんどん強いライバルも出てきてます。いつか…あいつと一緒に走ってくれる騎手が現れます! だから…」

 高橋が初老を見つめた。

 

高橋「それまで…あいつの…ジャックナイフの事、お願いします」

 

 初老は昔の事を想いだして、孫と飛鳥の方を見た。

 

初老「孫くん、飛鳥くん」

孫・飛鳥「!?」

 初老が笑みを浮かべた。

 

初老「本当にありがとう。君達が来てくれて本当に良かった」

飛鳥「谷光さん…」

 初老こと谷光は言葉を続けた。

 

 

谷光「望んでいた事とはちょっと違うけれど…。高橋もきっと喜んでいるよ」

 

 

********************

 

 後日、バンドリ学園にて。

 

香澄「そういえばあの俳優さん。クビになったって!」

千聖「あんな性格だから、父親にも見捨てられたのね。無様だわ」

彩「ち、千聖ちゃん…」

 

 一部のバンドガールズがカフェテリアで話をしていた。主演俳優は入院したが、悪事がバレて父親から勘当されてしまい、全てを失った。また、暴言やセクハラをした事で、パスパレの事務所に謝罪があったとの事だった。

 

 しかし、千聖は浮かない顔をしていた。

 

彩「…千聖ちゃん?」

千聖「でも、妙なのよね。クビになったのはいいけど、何か話が妙に出来過ぎてるっていうか…」

日菜「あんだけエッチな事してたんだから、周りから恨まれてたんじゃない?」

麻弥「しかもその社長さんはしっかりしてた人らしいですから…」

千聖「そうなのよね…。けど…」

 

 千聖はずっと疑問に抱いていたが、それが結局解決することはなかった。そしてその様子を飛鳥とこころが陰から見守っていた。

 

飛鳥(すみません白鷺先輩。今は知られる訳にはいかないんですよ)

 その時だった。

 

こころ「あ! 飛鳥見て! ジャックナイフが映ってるわよ!」

飛鳥「え!?」

 

 飛鳥とこころがカフェテリアのモニターを見ると、そこにはジャックナイフと谷光達が一緒にテレビに映っていた。そして谷光は高橋の遺影を持っていた。

 

飛鳥「競走馬復帰!!?」

こころ「新しい騎手が見つかったんだわ!!」

 

 そして新しい騎手が紹介されたが、その選手は超一流の選手で、ちゃんと乗りこなせていたことも映像で証明できていた。

 

飛鳥・こころ「……」

 

 そして、ジャックナイフが心の底から楽しそうに走っていることも確認できた。

 

飛鳥「…良かったな。ジャックナイフ」

こころ「そうね…」

 飛鳥とこころが笑みを浮かべていた。

 

「あのー」

飛鳥・こころ「!!?」

 飛鳥とこころが後ろを振り向くと、そこにはむくれているモカの姿があった。

 

モカ「なんか仲間外れにされてる気分~」

こころ「お、お土産のご当地パン買ってきたわよ?」

飛鳥「お納めください」

モカ「それは納めるけど~」

 

 モカは拗ねていて、飛鳥とこころはずっとご機嫌取りをしていたという。

 

 

 そして…孫も地元の虹島からジャックナイフのニュースを見て、微笑んだ。

 

 

おしまい

 

 



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第148話「飛鳥の裏営業(前編)」

 

 季節はもうすぐクリスマス。

 

「ねえ、クラスでクリパしない?」

 

「クリスマスパーティしようよ。クラス全員でさ!」

 

「クリスマスパーティしよう」

 

「そう!! クラス全員でクリスマスパーティ!!」

 

 男子達はお目当てのバンドガール達と戯れる為にクリスマスパーティを計画していた。芸能人であるPastel*Palletesもどういう訳か予定がなかった。

 

 1年1組

香澄「面白そう!」

たえ「んー。いいよ」

りみ「み、皆が行くなら…」

沙綾「私も」

有咲「あ、あたしは…」

香澄「ねー。有咲も行こうよー」

イヴ「ブシドー!」

はぐみ「わーい! クリスマスパーティ!!」

美咲「クラスでっていうのが嫌な予感する…」

こころ「……」

 

 1年2組

蘭「パス」

モカ「蘭~。ちゃんとクラスメイトとも交流持たなきゃ~。気持ちは分かるけど」

蘭「ていうか男女別々にしない?」

巴「コラコラ」

つぐみ「わ、私達は構わないよ?」

ひまり「ただし、コスプレとかはしないからね」

 

 2年1組

彩「いいよ」

千聖「……」

花音「み、皆が行くなら…」

燐子「そ、そうですね…」

紗夜「羽目を外し過ぎないように」

 

 2年2組

日菜「えー。クリスマスはおねーちゃんと…」

麻弥「紗夜さんもクラスのクリスマスパーティに呼ばれてるみたいですよ」

日菜「じゃーしょーがないか」

薫「儚い…」

友希那「興味ないわ」

リサ「まあまあ」

 

 と、バンドガール全員に取り付けた。ちなみにあこは家族と過ごす。

 

「いよっしゃ!! これでクリスマスはオレ達のもんだ!!」

「ざまーみろ一丈字!!」

「3組は3組でクリスマスパーティしてろ!!」

 

 ファンの男子生徒達は歓喜に満ち溢れていた。そして飛鳥が通りかかる。

 

「よう一丈字!!!」

「残念だったな!! 香澄ちゃん達はオレ達とクリスマスパーティするんだよ!!」

飛鳥「ああ、そうなんですか。ごゆっくり」

「お前はどうすんだ?」

飛鳥「バイトなので」

「はーっははっはっは!!」

「クリスマスにバイトなんてざまーねぇな!!」

「ざまーみろ!!」

飛鳥「あー良かったですね。それでは」

 そう言って飛鳥は去っていったが、男子生徒達はずっと飛鳥を笑っていた。

 

飛鳥(こんな事するくらいなら、ちゃんと告白すればいいのに…)

 

 すると飛鳥のスマホが鳴り、連絡を取った。

 

飛鳥「あ、もしもし。ええ、予定通りそちらに伺います…」

 

 

 クリスマスパーティ当日。4クラスとも同じ日に行っていた。

 

「メリークリスマース!!」

 

 1年1組が焼肉屋を貸し切ってクリスマスパーティをしていたが、案の定陽キャ男子が香澄達に言い寄っていた。陽キャではない男子達は女子から遠ざけられてる。

 

「いや、うん。まあね…」

「そんなに興味がある訳じゃないし…」

「嫌がってるの見てたらねぇ…」

 と、困惑した様子だった。ちなみに他の組も同じような感じである。陽キャ組がバンドガールを侍らせて、陰キャ組は女子から遠ざけられていた。

 

こころ「うーん…」

 こころはスマホとにらめっこしていた。

はぐみ「こころんどうしたの?」

美咲「ちょっと。流石に行儀悪いわよ。分かるけど」

「え? 何々? 何見てんの?」

 と、陽キャの一人がこころに近づいてきた。

 

こころ「もうすぐ飛鳥がライブをするのよ」

「え?」

 

 こころの発言に皆が驚いた。

 

こころ「ネット配信で見られるのよ!」

香澄「えーっ!! 飛鳥くんがライブってどういう事!?」

はぐみ「見たい見たーい!!」

 と、女子達の注目が完全にそっちに行ってしまった。陽キャ達は表情をゆがませた。

 

「こうなると思ったよ」

「ホントホント」

 陰キャたちはそう呟いて焼肉を食べていた。

 

 

 午後6時半。映像が映し出されてた。何万人も入りそうなドームの中に特設ステージが用意されていて、正面が映し出されていた。

 

 音楽が鳴ると、大規模なプロジェクション・マッピングが現れた。

 

『♪Amazing Discover   SMAP』

 

 

 すると5人にスポットライトが当たった。双葉頭の男性・古堂孫、赤のロングの女性、茶色で短髪の男性、青い髪の短髪の男性、坊主で大柄の男性の5人だった。

 

こころ「孫だわ!!」

香澄「え? 知ってるの?」

こころ「飛鳥のお友達よ!」

たえ「でも一丈字くんいなくない?」

 

青髪「~♪」

 顔立ちのいい青い髪の男性が最初に歌う。

 

りみ「じょ、上手…」

沙綾「うん…」

 そして、次に赤い髪の女性が歌う。

有咲「この人女性じゃね?」

イヴ「そうですね…」

 

 そしてサビを5人で歌った。

はぐみ「完全にSMAPだよ!」

美咲「歌声とかはバラバラだけど、味があるわね…」

はぐみ「しかもダンスもやってて凄い!」

 

 1番が終わって、2番に映る。

 

孫「~♪」

 孫が歌っていた。

香澄「あれ? この人どこかで見たような…」

たえ「…前に会った古堂さんに似てるね」

 そして次に茶髪の男性と、坊主頭の男性が歌い、2番のサビも5人で歌い、間奏に入る。

 

 そして最後のサビに入る前にステージの真ん中から衣装に着替えた飛鳥が出てきた。眼鏡はかけておらず、綺麗な衣装に身を包んでいて、出てきた途端に大歓声が上がっていた。

 

「!!?」

 香澄達は飛鳥の姿を見て驚きが隠せなかった。完全に男子そっちのけである。

 

飛鳥「~♪」

 飛鳥がサビを歌い上げた。とても上手い。

 

「」

 香澄達は絶句した。そして5人が飛鳥の元へ集まり始めた。サビにもう一度差し掛かったところで飛鳥が叫んだ。

 

飛鳥「せーの!」

 と叫ぶと、6人で歌とダンスをした。飛鳥は真ん中にいる。そしてそのままパフォーマンスは終わって、大歓声が上がった。

 

「……」

 

 香澄達は絶句していた。約一名のぞいて…。

 

こころ「やっぱり凄いわね飛鳥!! あ、お肉焼けてるわよ! 食べましょ!」

 と、こころは電源を切って焼き肉を食べ始めた。

 

香澄「ちょ、ちょっとこころちゃん! もっと見せて!!」

たえ「多分今いい所だから…」

こころ「そうねー。でもクラスのクリスマスパーティも楽しまないといけないし、ちゃんと録画してあるわ! 楽しみましょう!」

美咲「こころ。私が認めるわ」

有咲「うんうん」

陽キャ「いや、ちょ…」

 

 ちなみに美咲と有咲がこんな事を言いだしているのは、陽キャ男子達が王様ゲームをやろうとしていていて、陰キャたちにはいじめまがいの事を、女子達にはセクハラまがいの事をしようとしていたのを知っていたからだ。

 

 

 飛鳥が今いる場所は虹島。飛鳥が所属する「WONDER BOY」の本拠地がある場所でもある。

 

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 という大歓声が響き渡る。

飛鳥「えー…。皆さん、お久しぶりです!」

 大歓声が上がる。

孫「それじゃあしょうかいするぞ。アスカだ!!」

未来(赤髪)「いや、名前だけ言われても分からな…」

 大歓声がまた上がる。

未来「…あ、分かるのね」

省吾(茶髪)「それにしてもお前、今あそこ行ってるんだって? バンドリ学園」

飛鳥「ええ。今をときめかすガールズバンドが沢山いますよ!」

 歓声が上がる。

省吾「マジかよ…。今度パスパレのサイン貰ってきて」

飛鳥「いや、ここで言わないでください。何万人の前でそういう事言えるメンタルは認めますが」

 省吾の言葉に飛鳥が突っこむと、笑いが生まれた。

 

省吾「それはそうと、ガールズバンドの子たちってクリスマスどうしてるんだ?」

飛鳥「確か今日はクラスのクリスマスパーティって言ってましたね」

省吾「そうか。で、お前は?」

飛鳥「ああ。私のクラスはやりませんよ?」

省吾「…まさか、またハブられてるとか」

飛鳥「何てことを言いだすんですか。皆さんそれぞれ予定があるんですよ。アルバイトがあったり、彼女と一緒に過ごしたい人がいたり、パーティが好きじゃない人がいたりします」

未来「そ、そうなのね…」

省吾「お前が今このライブをやってるって知ってるのか?」

飛鳥「知らないと思いますね。教えてないので」

幸生(青髪)「お前…」

 幸生と坊主頭の男性、白村悟士が呆れた。

 

飛鳥「それよりも早く歌行きましょうよ。私のトークを聞いて何が面白いんですか」

未来「そう言わないの飛鳥ちゃん。実はね、アナタが今日帰ってくるって聞いて、皆集まってくれたんだよ。おーい!!」

 するとモニターに飛鳥の知人らしき人達が映った。家族や友人たちだった。

飛鳥「うわー。皆久しぶりー。元気にしてた?」

 

 飛鳥がため口を使った。

「アンタ、無理してない? 大丈夫?」

 飛鳥にそっくりの女性が飛鳥に話しかける。

 

飛鳥「ああ。大丈夫だよ。あ、私の母です…」

 

「あ、飛鳥くん。元気にしてた?」

「本当に忙しいようね…」

飛鳥「ああ。日向、椿。久しぶり」

椿「あっちの学校の女の子達に変な事してないでしょうね?」

飛鳥「してないよ。ていうかさっきも言っただろう? 必要な時以外は話しかけてないって」

日向「…それもちょっとどうかな」

 日向が苦笑いした。

 

飛鳥「ああ…。ここまで来るの、凄く長かった…」

悟士「急にどうしたんだよ」

 悟士が突っ込んだ。

 

飛鳥「さあ、そろそろ歌の方に戻りましょうか。じゃないとずっとトークになっちゃいますし」

省吾「あ、そうだ。お前アレ歌えよ! バンドリ学園の子たちの歌!」

飛鳥「えー。私が歌うんですか? 一応ギターも用意しましたが」

幸生「ノリノリじゃねーか」

 大歓声が上がった。

 

飛鳥「…えー、私事ですが第1部はバンドリ学園のガールズバンド5組のメドレーをお送りします! 知らない方は、是非覚えて帰ってくださいね! それでは行きます!」

 

 そして飛鳥達はメドレー形式で各ガールズバンドの代表曲を熱唱した。

 

 歌った曲

 

1. Yes! BanG Dream!(Poppin’party) /一丈字飛鳥with白村悟士

2. That Is How I Roll!(Afterglow) /一丈字飛鳥with大空未来

3. しゅわりん☆どり~みん(Pastel*Palletes)/一丈字飛鳥with志田省吾

4. Black shout(Roselia)/一丈字飛鳥with林幸生

5. えがおのオーケストラっ!(ハロー、ハッピーワールド)/一丈字飛鳥with古堂孫

 

 

 曲が終了した。

飛鳥「ありがとう!!」

 大歓声が上がった。

 

 

 

 

つづく

 



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第149話「飛鳥の裏営業(後編)」

誤字脱字報告、ありがとうございました。


飛鳥「えー、本当にありがとうございます」

 飛鳥が一礼する。

省吾「ていうかお前…凄すぎ」

飛鳥「何を仰ってるんですか」

未来「練習っていつしてるの?」

飛鳥「家でやってました」

 客が驚いていた。

 

 1年1組・会場

 

香澄「わ、私達の曲まで…」

たえ「歌う人でこんなにカッコよくなるんだね…」

有咲「にしてもあの坊主頭の人は…似合ってなかったな」

沙綾「シーッ!!」

りみ「アハハハハ…」

 

 香澄達の熱意に負けて、こころは黒服の人に頼んでモニターを設置してもらい、メドレーが始まる直前から見ていた。当然陽キャ男子達は面白い筈がなく、陰キャ男子達にあたろうとしていたが、八つ当たりするのが目に見えていた為、香澄達に混ざっていた。

 

 

飛鳥「さて、続いて第2部行きましょうかね。今度はもうちょっと全年齢向けの歌に致しましょう」

悟士「助かる…」

飛鳥「…何で助かるんです?」

 飛鳥が苦笑いしながら悟士を見ていると、悟士は大量の汗をかいていた。気恥ずかしさのせいなのか…。

 

飛鳥「もしかしてさっきの奴、引きずってます?」

省吾「相変わらず硬派だなお前―」

悟士「ほっとけ」

飛鳥「省吾さんはもうちょっと自重してください」

 省吾の言葉に悟士と飛鳥がツッコミを入れた。ちなみにパスパレの時は省吾はヲタ芸をしていたが、あまりの熱の入りっぷりに、歌っていた飛鳥もドン引きしていた。

 

飛鳥「あ、ちなみに推しのメンバーっています? この娘可愛いなっていう人」

悟士「そ、それは…」

飛鳥「それでは聞き方を変えましょう。こちらにパネルがあるんですけどー」

 

(どこから持ってきてんだよ…)

 飛鳥が香澄達の顔写真が乗っているパネルを悟士に見せた。横5列、縦5列でグループごとになっていた。

 

飛鳥「この中で印象が良い人を一人選んでください」

悟士「……」

 悟士が悩んでいたが、ある人物に目が行った。

 

悟士「…この人。か?」

 悟士がさしたのは沙綾だった。

 

沙綾「あら」

たえ「良かったねー」

沙綾「ま、まあ選んでくれるのは嬉しいけど…」

 沙綾が苦笑いした。

 

「あー…」

 未来、省吾、飛鳥が納得した。幸生は特にリアクションせず、孫は頭に?マークを浮かばせていた。

 

悟士「な、何だよ…」

飛鳥「いや、やっぱり似たような人を選ぶんですね…」

 

沙綾「え、そうなの?」

 

 飛鳥の言葉に沙綾が突っこんだ。

 

飛鳥「この人、山吹沙綾さんって言うんですけど、幼い弟さんと妹さんがいるんですよ」

悟士「そ、そうなのか…」

省吾「お前も7人兄弟の長男だもんなー。しかも幼い兄弟がいる」

悟士「一番下はもう小学4年生だぞ…」

 

「7人!!?」

沙綾「滅茶苦茶姉弟多っ!!!」

はぐみ「すごーい!!」

美咲「いや、凄いってアンタ…」

 

省吾「ちなみにオレはパスパレ箱推し!!」

未来・悟士「知ってる」

飛鳥「言うと思った…」

幸生「ミーハーな奴…」

孫「?」

 

イヴ「とっても嬉しいデス!」

(同志がおる…!! 同志がおるぞ…!!)

 

 陽キャたちは省吾を見て希望を持った。

 

省吾「幸生は…ああ、妹だったな」

幸生「無論だ」

省吾「いや、否定しねぇのかよ」

 

日向「お、お兄ちゃん…//////」

椿「あーもー/////」

 妹二人は恥ずかしがった。

 

飛鳥「さて、気を取り直して第2部に行きましょう」

 

香澄「あれ? 飛鳥くんともう一人の人聞いてないよ?」

たえ「うん…」

 

飛鳥「第2部は皆さんが知っている曲をメドレーに致しました。それではどうぞ!」

 そして第2部が始まった。

 

1. 全力少年(古堂孫)

 

 

孫「~♪」

 

 孫が元気よく歌っていたが、意外に音程が取れていた為、周囲を驚かせていた。

 

美咲「この人音外してるように見えて、結構上手…」

はぐみ「うん!」

 すると香澄がある事に気づいた。

 

香澄「あーっ!! RASがいるよ!!?」

たえ「あっ!! レイ!!」

 

 RASが生演奏をしていた。ちなみにモルフォニカが舞台裏で控えていた。

 

ましろ「まさかこんな所で呼ばれるなんて…」

つくし「折角大舞台でライブが出来るんだから、やろう!」

瑠唯「そうね」

 

 

美咲「ていうか一丈字くん…ラップも出来るんだ…」

有咲「舞台慣れし過ぎだろ…」

 

 有咲と美咲が映像に映っている飛鳥を見て困惑していた。

 

2. Rolling star(大空未来)

 

未来「~♪」

 

 未来が一人で熱唱した。

 

香澄「凄い…一人で歌ってる」

有咲「滅茶苦茶緊張するだろうな…」

 

 緊張している未来を見て、香澄と有咲も緊張していた。

 

 

3. ふわふわ時間(志田省吾)

 

省吾「~♪」

 省吾が熱唱しているが、未来、悟士、飛鳥が冷めた視線で省吾を見つめていて、孫だけが合いの手をやっていた。

 

「いや、ちょwwwwww」

「省吾さん嫌われ過ぎでしょwwwwww」

 

 あまりの温度差に香澄達が噴出した。

 

4. 海色(林幸生)

 

幸生「~♪」

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 幸生が歌うと、女性からの黄色い声援が鳴り響いた。

 

香澄「…何かこの人だけ、凄い人気だね」

たえ「そりゃあ男前だからね…」

有咲「うちの学校にはいないタイプだな…」

「こ、これくらいならオレ達だって…」

 と、陽キャ軍団が話に入ってきたが、

美咲「いや、全然違う」

 美咲に一蹴されると、陰キャ軍団もうんうんと頷いた。

「何だとてめぇら!!」

「何だやんのか?」

「柔道部とプロレス同好会と相撲部に勝てるとでも?」

「ごっつあんです!!」

 

5. DAYS(白村悟士)

 

悟士「~♪」

 悟士は緊張しながらも最後まで歌いきった。

 

沙綾「物凄い汗かいてるね…。あ、お肉焼けたよ」

香澄「わーい!」

有咲「って、肉ばっかり食べてないで野菜食え!」

 

 と、テレビを見ながら鑑賞していた。

 

こころ「そういえば次は飛鳥かしら!」

はぐみ「順番的にそうだよね!」

 

6. クリスマスソング(一丈字飛鳥)

 

香澄「back number!」

(一丈字の奴…! 洒落た奴持ってきやがって…!!)

(失敗しろ…!!)

 

 と、陽キャ男子達は飛鳥の失敗を願っていたが、飛鳥はそれをはねのけて歌い上げた。

 

香澄「やっぱり上手…」

たえ「うん…」

 すると陽キャ男子が嫉妬の涙を流した。

 

「ちくしょおおおおおおおおおおおおお!!!」

「お、おい!! どこ行くんだよ!!」

「こんなん聞かされたら勝てるわけないだろぉおおおおおおおおおおおお!!!」

 陽キャ軍団は去っていった。

 

りみ「あっ…」

有咲「ほっとけ」

美咲「あー接待役疲れた」

陰キャ軍団「お疲れ様です…」

美咲「…ありがと」

 

 ちなみに食事をしている間、美咲は陽キャ男子軍団の「接待しろ」アピールを察していた。陰キャ軍団は空気を読んで自分たちでしていた。

 

 そして最後のサビは全員で合唱した。

 

香澄「いやー。こういう演出もあるんだなー…」

こころ「後で蘭達にも見せてあげましょ!!」

 

**************

 

飛鳥「さあ、あっという間にライブも終盤に差し掛かってまいりました。最後の第3部は、虹島高校の皆さんとSMAPメドレーに挑戦したいと思います!」

 大歓声が上がった。

 

省吾「15曲のメドレーだぜ! それじゃ行くぜぇ!!」

 

 そしてメドレーが始まると、6人はステージの上でダンスをした。

 

1曲目:SHAKE   with吹奏楽部

 

香澄「吹奏楽部の演奏に合わせて踊ってるんだ!!」

美咲「す、凄…!!」

 バンドガール達が驚いている。

有咲「一丈字、ダンスも出来るのかよ…」

こころ「あたし達も今度やってみましょう!!」

はぐみ「さんせー!!」

美咲「いや、楽器持ちながら無理でしょ…」

 

 サビに入ると、観客たちが盛り上がったが、6人がそれぞれ移動した。

 

2曲目:ダイナマイト 白村悟士 × 野球部

 

悟士「~♪」

 悟士が歌って、野球部のユニフォームを着た部員たちがバックダンサーで踊っていた。マネージャーの女子生徒もいる。

 

有咲「ていうかあの巨体で踊ってること自体凄い…」

たえ「身長何㎝あるんだろう…」

 

3曲目:がんばりましょう 林幸生 × 書道部

 

幸生「~♪」

 幸生が歌っていると、書道部員が何か書いていた。

 

香澄「書道パフォーマンス!!」

美咲「多分結構練習してるわね…アレ…」

こころ「これも面白そうね!!」

 

 そして書かれたのは…

『がんばりましょう!!』

 と、とても綺麗な字で書かれていた。

 

香澄「おおっ…ダイナミック」

イヴ「とても字が綺麗ですね…」

 

 ちなみに裏話であるが、幸生は部活同士で取り合いになったそうです。

 

4曲目:たいせつ 大空未来 × 新体操部

 

未来「~♪」

 未来が歌うと、その横や後ろで新体操が演技をしていた。

 

りみ「ほ、本当にすごい…」

香澄「皆が協力してくれてるんだ…」

 

 そして未来も技を披露した。彼女もまた新体操経験者なのである。

 

5曲目: 君色想い  一丈字飛鳥 & チアダンス部

 

飛鳥「~♪」

 飛鳥がCメロを歌うと…。

 

有咲「やっぱり一丈字ミュージカルやってるだろ!!」

イヴ「マヤさんやカオルさんの舞台でも出れそうですね!」

美咲「…多分刺されるわよ。彼」

 

 そして曲の最後で派手なパフォーマンスをした。

 

香澄「凄い!! バク転した!!!」

はぐみ「凄い凄い!!」

 はしゃぐ香澄とはぐみだったが、陰キャ軍団はこれで陽キャ軍団に勝ち目は完全になくなったと察した。

 

6曲目:オリジナル スマイル  古堂孫 × 相撲部

 

孫「~♪」

 孫が元気よく歌うと、その後ろで部員達が四股を踏んだり、張り手をしていた。

 

有咲「これはまたインパクトが強いのを持ってきたな…」

美咲「記憶に残るね…どう突っ込んだらいいのやら…」

 

 有咲と美咲が苦笑いしながらツッコミを入れた。

 

 

7曲目:Dear WOMAN 志田省吾 × 男子バスケ部

 

省吾「~♪」

 省吾だけでなく、部員達全員が歌っていた。

 

美咲「モテたいっていう感情が前面に押し出されてるわね…」

有咲「どこの学校の男子もこんな感じなのか…」

 陰キャ軍団は黙々と焼肉を食べていた。

 

 この後もメドレーは続いた。

 

8曲目 らいおんハート  林幸生・白村悟士 × 合唱部

9曲目 オレンジ 大空未来・志田省吾 × 演劇部

10曲目 BEST FRIEND  古堂孫・一丈字飛鳥 × 男子サッカー部

 

 

11曲目 この瞬間、きっと夢じゃない 

大空未来・志田省吾・白村悟士 × 教師陣

 

香澄「先生達も踊るんだ!!」

有咲「いや…ペンライト振ってるだけじゃねーか!」

イヴ「ブシドー!」

美咲「いや、ブシドー関係ない…」

 

12曲目 otherside

古堂孫・一丈字飛鳥・林幸生 × ダンス部

 

 ダンス部をバックダンサーにして、3人が踊っていた。3人とも真剣な顔をしていたが、孫に関しては飛鳥が何とかうまい事誘導させて覚えさせた。

 

「……///////」

 見ていた香澄達はというと、イケメン度を上げた幸生たちに頬を染めていた。飛鳥もまた今まで地味目にしていたせいで、ギャップ萌えを発生させてしまった。

 

 ちなみにSMAPの曲もすべてRASとモルフォニカが交代交代で生演奏している為、負担が大きかったが、2バンドとも楽しそうに演奏していた。ちなみにこの曲はRASが行っている。

 

 

13曲目 STAY 

 SWAP × ???

 

 演奏中、校長先生が妻と思われる女性を中央のステージの上に連れ出し、孫達は奥で歌っていた。6人が最後のサビを歌い終わると、間奏が流れた。

 

 すると校長がマイクを口の前に持った

 

「裕美」

「!」

 

校長「結婚して30年になる。家や子供の事。本当にありがとう。裕美と結婚できて良かった。愛してる」

 校長の妻の裕美は号泣して校長に抱き着いた。

校長「!!/////」

 

 そして曲が終わろうとして、最後の1フレーズを飛鳥が歌った。

 

 香澄達は号泣していた。

 

はぐみ「うぅ~っ…」

香澄「有咲も泣いてる?」

有咲「うるせぇ!! こんなんやられたら誰だって泣くだろーが!!」

 

14曲目:世界に一つだけの花  SWAP × 虹島高校

 

 1曲目から13曲目に出ていた教師と生徒が一気に集結して一緒に歌った。校長夫婦は奥に移動して一緒に歌ったサビに入ると、6人が振付通りに踊った。

 

大サビの最初のフレーズは省吾が1人で歌い、後は6人全員で歌い、中央のステージに移動した。

 

 そして…

 

15曲目:Can’t stop!! - loving-

 

 6人で熱唱した。

 

香澄「デビュー曲!!」

美咲「でも掛け声は「M」じゃなくて「W」なのね…」

有咲「それもそうだけど、あんだけ歌って踊ってまだ体力あんのかよ…!!」

 

『♪1・2・Cant’stop!!』

 

 そしてサビに入ると、6人がハイキックした。

 

有咲「って、よく見たら振り付けが当時の奴だ!!」

 

『♪baby baby 守るのさ』

 

香澄「か、かっこいい…!!」

有咲「それもそうだけど、熱狂ぶりすげぇ!!」

美咲「ホントそれよね…」

 

『♪baby baby』

 そして、孫・未来・省吾・悟士が幸生と飛鳥の周りで踊ると、

 

『♪きらめいて』

 この部分で幸生と飛鳥が映し出されたが、カメラ目線で完全にアイドルになり切っていた。しかも幸生がイケメンで、飛鳥も割と顔が整っていた為、香澄達は頬を染めていた。

いつもと雰囲気が全然違う為、仕方がないと言えば仕方ないのだが…。

 

 そして1番のサビが終わると、間奏に入った。

 

香澄「きらきら星だ!!!」

有咲「いや、反応する所そこかよ!!」

 

するとモニターが青色に変わった。

 

有咲「2014年の27時間テレビかよ!!!」

 

幸生「えー…。2時間という短い間でしたが、本当にライブに来てくれてありがとうございました。そして、オレ達に協力してくれた高校の皆にも感謝しています。ありがとうございました」

 大歓声が上がった。

 

 モニターが黄色に変わった。

 

省吾「えー、最初はとても緊張しましたが、本当に楽しかったです。皆ありがとーッ!!!!」

 省吾が叫ぶと、歓声が上がった。そして背景がピンクに変わった。

 

未来「…えー。本当に楽しかったです! 2時間という時間があったいう間でした。それから、高校の皆! 会場に来てくれた皆さんに感謝してます! ありがとうございました!!」

 未来が叫ぶと、大歓声が上がる。そしてモニターは緑色に変わった。

 

悟士「えー…。今回で2回目ですが未だに緊張しています。ですが、皆さんが支えてくださったお陰で、最後までやりきる事が出来ました。ありがとうございました」

 悟士が言うと、大歓声が上がる。そしてモニターは赤色に変わった。

 

孫「みんな! たのしかったか!? オレ、とってもたのしかった!! ありがとう!!」

 

 孫が叫ぶとモニターが白色に変わった。

 

飛鳥「えー皆様、本日はご来場頂き、誠にありがとうございました。また、ご協力頂いた全ての皆様にも感謝しております! そして最後に一言! メリークリスマース!!」

 大歓声が上がった。

 

『♪素敵な夢を見させておくれ 素敵な夢をかなえておくれ』

 

 この直後、大量の花火が打ち上げられ、モニターにはスタッフロールが流れた。

 

バンドガール「完全に27時間テレビだ!!!」

 

『♪眩しい君を感じていたい』

 孫、未来、省吾、幸生、悟士の順番にアップされていたが、いずれも気持ちよさそうに歌っていた。

 

『♪baby baby 愛し合う』

 

 最後のサビで飛鳥がドアップで歌っていたが、笑顔で両手を上げて孫と共に会場を盛り上げていた。

 

香澄「そういや飛鳥くんが笑ったところ、あんまり見た事ないかも…」

たえ「確かに…」

 

 

 そして、最後の曲も終えて、6人が肩を組むと、大歓声が上がった…。

 

 

 ここで放送が終わった。

 

 

 



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第150話「1年の終わり」

 

 

 クリスマスライブが終わった翌日。今日は終業式だった。だが、普通に終わる訳もなく…。

 

「おい、一丈字はいるか!!」

「出てこい!! 話がある!!」

 

 と、1組の陽キャ男子軍団が飛鳥にいちゃもんをつけようとしたが…。

 

「あ、一丈字くんならさっき弦巻さんの家の黒服の人に連れて行かれたよ」

「モォオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!」

 

 クラスメイト達の言葉に陽キャ男子達が発狂した。

 

*******************

 

こころ「飛鳥! ライブを見せて貰ったわ!」

飛鳥「でしょうね」

 

 黒服達に連行された先にはこころ達1年1組のバンドガールズがいた。

 

香澄「それはそうと飛鳥くん! 凄くキラキラしてたよ!」

飛鳥「ありがとうございます」

たえ「それはそうと、どうしてレイ達がいたの?」

飛鳥「メタ的な話をしますと、2組に募集をかけたらあっさりと…」

有咲「そんなに出番が欲しいのかよ…」

「Shut Up!! アンタ達には分かんないわよ!! ワタシたちの気持なんか!!」

 

 チュチュが現れると、後からぞろぞろとRASとモルフォニカが現れた。ちなみに学年が上がって無い為、色々ややこしい事になってますが、突っ込まないでください。

 

マスキング「あ、別の学校に通ってまーす」

レイヤ「私も…」

ロック「私もです…」

つくし「ちなみに私たちも別の学校です!」

 

チュチュ「それはそうとネス! いつになったらワタシ達をレギュラーにしてくれるのよ!!」

飛鳥「それは私に聞かれても困ります」

マスキング「そうは言うけどチュチュ。なんだかんだ言ってこのポジション、実はおいしいとか思ってんじゃねーの?」

チュチュ「そ…、そんな事ないわよ!!」

(図星かい)

 

 チュチュの態度を見て困惑していた。

 

有咲「まあ、パレオとの組み合わせ的には…」

チュチュ「何が言いたいわけ?」

 チュチュが有咲を睨みつけた。

 

こころ「RASもモルフォニカもいい演奏だったわ!」

ましろ「あ、ありがとうございます…」

チュチュ「だけど、やっぱり準レギュラーのままじゃ納得いかないわ!! カスミ・トヤマ! ワタシと勝負しなさい!!」

香澄「ごめん。今日は飛鳥くんのライブを振り返りたいから無理」

チュチュ「ワタシたちのライブでもあるのよ!!?」

 チュチュが吠えた。

 

美咲「でも、無理にレギュラーにならなくてもいいんじゃない?」

チュチュ「な、何でよ」

美咲「いや、よくよく考えたらRASもモルフォニカも本来のガールズバンド出来てる訳じゃん。レギュラーになったらほぼお笑い芸人と同じ事させられるよ?」

チュチュ「No problem! そんな事させないわ!」

有咲「いや、お前なら絶対にさせられる。ましてやパレオとセットだったら…」

チュチュ「だからさっきから何が言いたいのよアリサ・イチガヤ!!」

 

 有咲の言葉にチュチュが吠えた。

 

たえ「ちなみにツッコミ枠は有咲と美咲で足りてるから」

有咲「ゴメン、それどういう意味?」

美咲「花園さん。それは譲ってあげるわ…」

こころ「あらダメよ。そんな事したら美咲のお仕事がなくなっちゃうわ?」

美咲「こころ。殴っていい?」

 美咲の物騒な発言に黒服達が穏便に済ませようとした。

 

チュチュ「勝負しなさいよ! 勝負勝負勝負―!!!」

 と、チュチュが駄々をこねだした。

マスキング「あーもう…」

 マスキングたちが呆れ始めた。

 

飛鳥「玉井さん」

チュチュ「チュチュ!!」

飛鳥「一応新年というか次の話、全グループを集めての特番をやるので、それまで待って貰えますか?」

チュチュ「え!?」

飛鳥「それで成績が良ければレギュラー入りを検討します。勿論、モルフォニカも」

つくし「ほ、本当ですか!!?」

チュチュ「って、そういう事を早く言いなさいよ! 駄々こねたりして恥ずかしいじゃない!!」

 

 飛鳥の言葉にチュチュとつくしは目を光らせるが、

 

有咲「ちょっと大丈夫なのか!? そんな約束して…」

飛鳥「まあ、150話もやってますし、そろそろいい頃あいかなと。ちなみにGlitter*Green(りみの姉が所属していて、唯一の3年生バンド)とCHiSPA(沙綾が所属していたバンド)も招待しようと思います」

 

香澄「おおーっ!! まさにオールスター!!」

飛鳥「いやはや、皆さんには本当に1年間お世話になりました」

沙綾「あ、ううん! こちらこそ!」

飛鳥「ましてやハーレムものなんてお恥ずかしいものを…」

沙綾「うーん…。まあ、見てる分は楽しかったけどね。香澄達の意外な一面が見れたというか」

 沙綾が苦笑いした。

チュチュ「まあ、ワタシ達のようなBeautiful girlに囲まれれば鼻が高いものね!」

飛鳥「そうですね」

 飛鳥が全く否定しなかった為、チュチュが驚いた。

チュチュ「ちょ、少しは否定しなさいよ!/////」

飛鳥「え、何でですか?」

 飛鳥がチュチュを見つめると、チュチュが顔を真っ赤にしていた。

 

飛鳥「玉井さんもそうですけど、皆さんとても素直な方で、とてもお仕事がしやすかったです」

 飛鳥がPoppin’partyを見つめた。

 

飛鳥「また来年もよろしくお願いします!」

香澄「あ、う、うん…」

チュチュ「ぬ~~~~~~っ!!/////」

 チュチュが一人で顔を真っ赤にさせられたことに対して、憤慨していた。

 

チュチュ「ちょ、ちょっと!! アンタも少しは照れなさいよ!!」

飛鳥「照れてますよ。でも照れ隠しで思ってもない事言いたくないんですよ」

 飛鳥がチュチュを見つめると、

 

チュチュ「見つめるなーッ!!!//////」

パレオ「チュ、チュチュ様!! お気を確かに!!」

 

 パレオに取り押さえられてるチュチュを見て飛鳥が困惑しながらマスキングを見た。

 

マスキング「あー…何つーか…いつもチュチュがごめんな?」

飛鳥「あ、いえ…」

 

 マスキングが苦笑いしながら謝ると、飛鳥も苦笑いした。本当に何とも言えない感じだったからである。

 

香澄「それはそうと早く見ようよ!」

飛鳥「え? 何を?」

香澄「え!? 昨日のクリスマスライブ!!」

飛鳥「見て何になるんです」

香澄「え!? いろんな事お話ししたいの!」

飛鳥「えー…」

たえ「行かないと他のクラスの子呼んじゃうよ?」

飛鳥「それは別にいいですけど」

有咲「いいんかい!!!」

 飛鳥の言葉に有咲が突っこんだ。

 

たえ「じゃあ呼んじゃうね。もしもーし」

 

 すると飛鳥がカメラの方を見た。

 

飛鳥「えー…。そういう訳で皆さん。今年は1年ありがとうございました。また来年も見て頂けたらと思います。あと、これで第3シリーズ終わります」

香澄「それじゃ皆! せーの!!」

 

「よいお年を~~~!!!!」

 と、ほかのクラスのメンツも現れて密集だらけになった。

 

香澄「や、やっぱり36人は多いね…」

飛鳥「ええ…」

 

 それをファンの男子生徒達は見ていた。

 

「来年こそはオレ達が香澄ちゃん達を侍らせてやるからな~~~~~!!!!!」

「皆!! オレ達を応援してくれぇ~~~~!!!」

 

 

 どうもありがとうございました。よい1年をお過ごしください。

 

 

おしまい

 



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第153話「バレたら人生終わるナリ」

 

 

 ある日の事だった…。

 

蘭「はぁ…練習で遅くなっちゃった」

 

 蘭が一人で夜道を歩いていた。自宅に帰る途中である。

 

 その時、後ろから誰かに口をふさがれた。

 

蘭「!!?」

 蘭が必死に抵抗したがスタンガンで気絶させられた。そして目の前が真っ暗になる。

 

「よし、上手くいったぞ!」

「こいつを車に連れ込め!」

 

 と、男たちは蘭を拉致して、車に乗せた。

 

****************

 

 数十分後…。

 

飛鳥「ふー…。久々に走ったなぁ」

 飛鳥が現場の近くを走っていた。眼鏡は外していてジャージ姿である。そして家に帰ろうとした次の瞬間だった。

 

「きゃ――――――――――――っ!!!!!!///////」

 

 という悲鳴がした。蘭の声である。

 

飛鳥「この声は美竹さん!?」

 飛鳥が悲鳴に気づいてすぐに蘭の所に駆け付けた。

 

飛鳥「どうしました!? 美竹さ…」

 飛鳥が駆け付けた先には、蘭がいたものの、スカートとパンツを穿いておらず下半身が丸見えの状態で、背を向けていた為、尻が丸見えだった。カバンや靴下、靴がその辺に散乱している。飛鳥は即刻超能力で存在感を消して、隠れた。

 

蘭「!!? い、今の声…一丈字!!?//////」

 蘭も飛鳥の声がしたのでめちゃくちゃ慌てていた。

 

飛鳥「何かございました?」

 飛鳥は誤魔化さずに、何事もなかったかのようにふるまった。

 

飛鳥「そちらに向かってもよろしいでしょうか」

蘭「こ、来ないでっ!!/////」

飛鳥(でしょうね…)

 

 下半身を露出してるなんてそりゃあ言えるわけがないと飛鳥は思った。しかし、このまま蘭を放って帰るわけにはいかないので、何とか考える事にした。

 

飛鳥「そうですか。それじゃあ私はこれで帰りますね」

蘭「ま、待って!!!」

 飛鳥が二、三歩動いてあたかにも帰ったように見せかけて、連絡を取ろうとしたが、

 

蘭「誰に連絡する気なの!!?」

 飛鳥が後ろを振り向くと、そこには顔だけ覗かせた蘭の姿があった。飛鳥は面倒な事になったと思ったが、何とか演技でしのぐ事にした。

 

飛鳥「…どうされたんですか?」

蘭「な、何でもいいでしょ…。それよりも誰に電話する気だったの?」

飛鳥「ただ単にメール見ようとしただけですよ。美竹さんこそこんな所で何してるんです?」

蘭「…な、何だっていいでしょ//////」

 蘭が視線を逸らした。

飛鳥「それでしたら私だって何だっていいですよね?」

 飛鳥がメールを打っていた。

 

蘭「だ、誰にメール打ってるの!?」

飛鳥「あー。これ仕事のメールなのでご心配なく」

蘭「仕事って…バイト?」

飛鳥「そんな感じですね。所で何で顔だけ出してるんですか?」

蘭「だ、だからなんでもいいでしょ!!/////」

 蘭が頬を染めた。

 

飛鳥「そうですか。なら私は帰りますね」

蘭「だ…だからぁ!!//////」

 飛鳥は蘭の性格を知っていた為、少々面倒でもあるもの、付き合ってあげる事にした。ちなみに先ほどこころの黒服に救援を頼んでいたのだ。

 

『救援 服一式』 と。

 

 その時だった。

 

「一丈字様」

飛鳥「あれ? 黒服さん達じゃないですか。どうされたんです?」

 丁度良く黒服達が現れたが、飛鳥と馬を合わせていて、両方とも演技をしている。

 

「我々は鍛錬の途中でして…一丈字様は?」

飛鳥「私も運動してまして帰る途中なんですけど、美竹さんにお会いしたんです」

「美竹様?」

蘭「!!」

飛鳥「…申し訳ないんですけど、私もうそろそろ行かないといけないので、お相手して頂けませんか?」

「分かりました」

飛鳥「それでは宜しくお願いします」

 そう言って飛鳥が去っていくと、黒服達が蘭に近づいた。

 

蘭「!!/////」

「美竹様。どうなされたんですか?」

蘭「そ、その…/////」

 蘭が黒服達に事情を説明すると、黒服Aが蘭に替えのジャージに着替えさせた。ちなみに着替えている間は黒服Bがガードし、黒服Cが警察に連絡を入れた。スタンガンの跡を確認したからである…。

 

飛鳥(さて、これで何とかなりそうだな…)

 

*****************

 

「…という訳だ。最近女子生徒を狙った脱衣事件が起こっているので、1人で下校しないように」

 

 蘭の事件は学園全体に広まった。名前は出さなかったものの、蘭は尻を丸出しにした事に対してとてつもなく心に傷を負い学校を休んだ…という事はなかった。

 

蘭「……!!//////」

 

 涙目ではあったが、こんな事で休んでしまうと絶対バレるし、巴たちが余計な心配するし、友希那に馬鹿にされるから休まなかった。そして最大の理由としては…。

 

蘭「一丈字はどこ?」

「どっか行った」

 

 飛鳥に事件当日の事を聞き出す為だった。

 

蘭「あたしが探してたって言っといて」

飛鳥「私がどうかしました?」

蘭「きゃああ―――――――――――――――――っ!!」

 

 飛鳥が後ろから話しかけると、蘭がビンタをしようとした為、しゃがんで避けた。

 

飛鳥「落ち着いてくださいな」

蘭「~~~~~~~~~~~~~~!!!! ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!」

 

 蘭が涙目で暴れるのを飛鳥が必死に止めた。

 

蘭「そ、そんな事よりも来て!」

飛鳥「あーはい」

 

 喧嘩もそこそこに蘭は飛鳥を連れ出した。当然注目の的になっている。

 

 そして人気のない場所

 

蘭「その…」

飛鳥「待ちますよ」

 

 蘭が言葉を発するのを待っていた飛鳥。

 

蘭「き、昨日は助けてくれてありがとう…。黒服の人たちを呼んだの…あんただよね」

飛鳥「いえ」

蘭「嘘つかなくていいから。で、その…」

 蘭が頬を染めて飛鳥を見た。

 

蘭「見たでしょ…」

飛鳥「見てませんよ」

蘭「う、嘘言わなくていいから。もう覚悟は…」

飛鳥「幽霊なんていませんでしたよ」

 

 飛鳥の発言に空気が止まった。

 

飛鳥「あ、そういえば美竹さんにわいせつ行為をしたあの犯人、今弦巻財団が総力を挙げて捜索してるそうですので…もうそんなに時間はかからないでしょうね」

蘭「そ、そう…」

 

 飛鳥の言葉に蘭が困惑したが、この時飛鳥は口から超能力を発していて、飛鳥の声を聴いた時に飛鳥の思惑通りに洗脳されてしまうという技を繰り出したのだ。

 

飛鳥(名付けて、幻術・操心声の術。これで不自然なく相手をコントロールする事は出来るけど、これ少人数じゃないと効果が薄いんだよな…)

 

 こうして、何とか蘭に対して、尻を見た事がバレないまま、事件を解決させたのだ…。

 

 

飛鳥(にしても、頭のおかしい変態多すぎだろ…)

 

 

おしまい

 

 

 

 

 



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第156話「収録! Pastel*Palletes!(前編)」

 

 

 一丈字飛鳥です。商店街で買い物したら福引券貰ったので、引いてみました。すると、Pastel*Palletesが出る収録番組の観覧券が当たりました。

 

 だけど、興味ないし持ってたとしても面倒な事になりそうなので…。

 

「おい、一丈字!」

飛鳥「あ、何でしょう」

 

 観覧券を当てたのを見ていたファンらしき男子生徒の方々に差し上げました。

 

「お前、パスパレのチケットあてただろ」

「オレ達に寄越せ」

飛鳥「あ、どうぞ」

「えっ…」

 

 何か驚いたような顔をしてましたけど、私が持ってても仕方ありませんものね。

 

飛鳥「いらないんですか?」

「わ、分かればいいんだよ!」

 

 そう言ってその方は私が持っていたチケットを強奪しました。

 

「パスパレのチケットが手に入るなんてラッキーだなー」

「滅多に当たらないのに馬鹿なやつー」

「ハハハハハハハ!」

 

 と、彼らは私の事を笑ってましたが…まあ、本当に興味ないんで、どうぞごゆっくりって感じなんですけどね。

 

 で、これで話は解決すると思ったんですよ。でも、これで解決しちゃったら話が簡単に終わるし、面白くないんで、終わらなかったんですね。日菜先輩に見られてました。

 

日菜「飛鳥くん。どうしてチケットを他の人に譲っちゃったの?」

飛鳥「あの人たちの方が欲しがってたようなので」

日菜「…何かあっさり渡したのも気になるんだけど」

 

 日菜先輩はジト目で私を見つめてきました。そりゃそうですよね。理由が理由とは言え、自分が出る番組の収録チケットをこうも簡単に他の人に譲ってるのを見てたらそりゃあいい気持ちがしません。ごめんなさい。

 

飛鳥「まあ、あのまま意固地になっても奪い取ろうとしてたみたいですし、人目もあったので、譲りました」

日菜「飛鳥くんは優しいんだねー」

 

 …本当に大ごとにはしたくなかったし、興味も大してなかったんですよね。はい。

 

日菜「それじゃあいいものをあげちゃおうかな!」

飛鳥「え?」

 

********************

 

 収録番組当日。観覧席にはパスパレのファンや他のアイドルグループのファンがいるが、飛鳥からチケットを譲り受けた男子生徒達もいたが、1人だけだった。

 

 他のメンバーは風邪をひいたり、法事があっていけなくなったり、用事を押し付けようとした親と口論になり、そのまま親を殴って警察沙汰になったりしたのだった…。

 

「あいつらの分まで楽しんでやるぜ…グシシシ」

 と、気持ち悪い笑みを浮かべていた。すると向かい側の特別席に飛鳥が現れた。

 

「!!?」

 

飛鳥(氷川先輩から関係者席のチケット貰っちゃったよ。紗夜先輩が行かないからって…)

 

MC「さて、この番組は若いアイドル達が体を張って、自分たちをPRしていくという番組です! 今回のグループはPastel*Palletesの皆さんと…」

 

 と、MCの女性の紹介でパスパレと他のアイドルグループが現れた。

 

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおお!!!! 日菜ちゃあああああああん!!」

「千聖ちゃあああああああああん!!」

「麻弥ちゃああああああああん!!」

「イヴぅううううううううううううう!!!」

 

 ファンの男子生徒達が発狂したが…。

 

彩(私は!!!?)

 彩が呼ばれていない事に気づいて、心の中でツッコミを入れた。そして日菜は関係者席にいる飛鳥の方を見て、飛鳥も日菜の方を見た。すると日菜がウインクしてきた。

 

飛鳥(あー…皆さん怒ってますよ。怒ってますよ。どーすんのこれ!!!)

 

 日菜が自分にウインクしたことがファンに伝わり、ファンは飛鳥の方を見た。

 

(なんだあいつ!!)

(日菜ちゃんの彼氏か!!?)

(何であんな奴が…!!)

(女みたいな顔しやがって!!!)

 

飛鳥(もう出禁になっていいや)

 飛鳥は困惑した。

 

男子生徒(な、何であいつが関係者席にいるんだよ!! さてはパスパレ本人に泣きついたな!!? 卑怯な奴め~~~!!!!!)

飛鳥(違います)

 

 そんなこんなで収録が始まった。

 

MC「アイドル! パーソナルクイズ!!」

 と、クイズ対決が行われた。そしてアイドルたちは水着に着替えていた。当然ながら水着を見ている男性客の顔つきはもうそれは凄かった。

 

男子生徒(ぶっひょー。なんていいケツだ)

 当然ながら鼻の下を伸ばしていたが、飛鳥は

 

飛鳥(こういう時、見つめていいのかどうか迷うよね…って、氷川先輩! こっち向かない!)

 日菜が手を振ってきたので、飛鳥も律儀に手を振りかえした。

 

MC「メンバーがどれだけの事を知っているか…あの鉄棒にぶら下がりながら答えて貰います!」

「ええええ―――――っ!!?」

 

 MCの言葉に彩たちは驚きを隠せなかった。そしてパスパレと他のグループは行ったが…結果は惨敗だった。

 

飛鳥(…手を離すなよ)

 

 喋ってる時に思わず手を放してしまったメンバーが多く、飛鳥は片手で顔を覆った。

 

MC「…さて! ここで嬉しいチャンスがございます!」

「え?」

 

MC「アイドルたちを助けろ! レスキュープリンス!!」

「!!?」

MC「これはアイドル達に代わって鉄棒にぶら下がりながらクイズに答えてもらうコーナーです! さあ! どなたか挑戦者はいらっしゃいますか!?」

飛鳥(へー…観客参加型か…。今どき珍しいな…)

 

 と、飛鳥は他人事のように見ていた。

 

日菜「はい!!」

 日菜が手を上げた。

 

「はい、氷川日菜さん!」

日菜「あたし達パスパレは、関係者席にいるあの子にやって貰いたいです!!」

 日菜が飛鳥の方を指さした。

飛鳥「ええ――――――――――――――――っ!!!?」

 

 日菜のマイペースぶりに飛鳥は思わず絶叫した。

 

飛鳥(って、よくよく考えたら氷川先輩の独断だけで決めれるはずがなかったわ…。危ない危ない…)

 

MC「分かりました! それではこちらにお越しください!!」

飛鳥「ええええええええええええええええええええ!!!?」

 

 まさかのOKが出て飛鳥はまた絶叫した。当然見ていたパスパレファンは大ブーイング。

 

飛鳥(どうすんだよこれェ!!)

 と、飛鳥が日菜を見つめると、

 

日菜「みんなー。応援してくれたらるんってするから応援して?」

「はい!!」

 

飛鳥(男って哀しい生き物だわ…)

 

 日菜のおねだりに飛鳥は遠い顔をした。

 

麻弥「い、一丈字さん…」

彩「が、がんばって…!!」

千聖「……」

 

 千聖は思わず額に手を当てた。

 

 

つづく

 



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第157話「収録! Pastel*Palletes!(後編)」

 

 

 前回までのあらすじ

 

 日菜からPastel*Palletesが出るアイドル番組の収録に招待して貰った飛鳥。だが、ひょんな事から番組に参加する羽目に…。

 

*********************

 

「えーと、氷川日菜さんのご指名によりPastel*Palletesはこの方にプリンス役を務めて貰う事になりました! お名前は…」

飛鳥「えーと…一丈字飛鳥です」

 

 飛鳥は気まずそうに答えていた。というのも、関係者席にいた上に日菜から直接指名があったとなれば、どう考えてもお偉いさんの息子かなにかと勘違いされるのだ。当然見ているファンの男性たちは皆不機嫌になっているし、彩、麻弥、イヴは困惑気味だった。そりゃそうだ。この行いでパスパレのアイドル生命がかかっているといっても過言ではない。

 

飛鳥(下手すりゃ座長降板だな…)

 

 他のアイドルグループはくじ引きで決められた。

 

 そしてジャージに着替えた選手が出そろい、競技がスタートした。飛鳥達は棒にぶら下がっている。

 

「それではスタート!! それではまず第1問!! 丸山彩さんの自己紹介と言えば!?」

飛鳥「え、えーと…何だっけ…」

 飛鳥が困惑しながらつぶやくと、ブーイングが鳴り響いた。

 

日菜「飛鳥くーん!!」

彩「さっきやったよー!!」

飛鳥「思い出した! 真ん丸お山に彩を! 丸山彩です!!」

 

 飛鳥の回答に正解の音が鳴った。

 

千聖「…大丈夫かしら」

麻弥「一丈字さん…あまりアイドルには興味がないと仰ってましたし…」

 

 と、千聖と麻弥も飛鳥にあまり期待していない様子だった。

 

 そして1分後…。

 

「うわあぁああああああああああ!!!」

 他のチームは順調に答えていたが、棒にぶら下がる事が出来ず、次々と脱落して飛鳥一人だけになった。飛鳥はピンピンとしている。

 

日菜「飛鳥くんすごーい!!」

麻弥「運動神経良いんですね…」

 

(あ、あいつ…!!!)

 飛鳥が一人だけ目立っていて、男子生徒は僻んでいた。

 

『それでは10問答える事が出来たらクリアとします!!』

飛鳥(あと、8問か…)

 

『問題!! 若宮イヴさんの嫌いな食べものは?』

飛鳥「ぬか漬け!」

 

『大和麻弥さんはパスパレに入る前、何をしていた?』

飛鳥「スタジオミュージシャン!!」

 

『この曲は?』

 Pastel*Palletesの『パスパレボリューションず☆』が流れた。

 

飛鳥「…ごめんなさい。パスで」

「ええええええ~~~~~~~~~~~~~~っ!!!?」

 

『ズバリ! 白鷺千聖さんが出演していたドラマの役の物まねをしてください!』

飛鳥「あ、それじゃ『ママはロボット』の1シーンやります」

千聖「ちょ、ちょっと!!/////」

 飛鳥が物真似を披露した。微妙に似ていて、日菜はバカ受けし、彩、麻弥、イヴが笑いを堪えていた。千聖は頬を染めて俯いていた。

 

 そして間違いはたくさんあったが、10問達成した。

 

『ステージクリアー!!! パスパレには30ポイントが入ります!』

「やったぁー!!!」

 

 MCの声にパスパレが大喜びした。観客としては飛鳥が出てきたところは面白くなかったが、パスパレが喜んでいるのと、ポイントが入ったとして大喜びしていた。

 

飛鳥(今度は超能力で存在感隠しとこ…)

 飛鳥が一息ついて、ちらっとパスパレの方を見たが、千聖が黒い笑みを浮かべていた。飛鳥は知らんぷりした。

 

*********************

 

MC「アイドルサーフボートチキンレース!! 1人を乗せたサーフボードを他のメンバーに押してもらい、泥のプールでギリギリでとまる程、PR時間をゲットです!! チャンスは3回! 一番良い記録がポイントに加算されます!」

日菜「おもしろそー!!」

飛鳥(あ、これオレの出番なさそうだけど、存在感消そう…)

 

日菜「あたしやりたーい!!」

麻弥「じゃあ、ジブンが押します!!」

 

 と、麻弥が日菜を押したが、あまり力がなかったせいか、記録は3㎝(スタート地点から)だけだった。

 

日菜「えーっ!!?」

麻弥「す、すみません…」

 日菜が絶叫すると、麻弥が謝罪した。

 

千聖「それじゃ彩ちゃん。サーフボードに載って頂戴」

彩「え、で、でも…」

千聖「いいから。私に任せて」

 

 と、千聖が笑顔で圧力をかけた。

 

飛鳥(あぁ…そういう事なんだろうな…)

 

 彩に任せると絶対力を入れ過ぎて落ちてしまうと考えたのだろうと、飛鳥は判断した。

 

千聖「行くわよ!」

 と、千聖がサーフボードを押して、丁度ギリギリまで行った。

 

彩「や、やったぁ!!」

 彩が起き上がると、サーフボードはバランスを崩して泥のプールへ。

 

イヴ「ア、アヤさん…」

千聖「ああもう…!!!」

 

 そして、他のグループも同様挑戦してみたが、見事に失敗した。

 

MC「それでは3回目! ここでルールを変更します! ここでプリンス制度を利用可能です!!」

 ちなみに飛鳥は超能力で存在感を消している為、彩たちが飛鳥に気づくことはなかった…。

 

MC「またくじで決めます!! お手元の整理券をご覧ください!」

 するとくじで挑戦者が決まり、何とパスパレはあの男子生徒に決まったのだ。

 

「や、やった! オレだ!!」

 男子生徒が喜ぶや否や、隣にいたヲタクが整理券を横取りした。

 

「!!?」

飛鳥「!!」

 

「な、何すんだよ!」

「僕の方がパスパレを愛してるんだ。君がパスパレと戯れるなんて10年早い!」

「それはオレのだ!! 返せ!!」

 と、男子生徒が取り返そうとすると、ヲタクの仲間らしき男達が男子生徒を取り押さえた。

 

飛鳥(ああいうのいるんだよな…えいっ)

 飛鳥が超能力でヲタク達に金縛りを放った。

 

「な、何だ!? 体が…」

「動かない…!」

 すると男子生徒はヲタクからくじを取り返して、パスパレの元に向かった。

 

飛鳥(終わるまで大人しくしてて貰うよ)

 

男子生徒「やあ、宜しくね…」

日菜「……」

 男子生徒がパスパレに近づこうとしたが、日菜がジト目で見つめた。

 

男子生徒「な、なに?」

日菜「ううん。何でもなーい。宜しくね。じゃ、やろっか」

 

 と、3回目は男子生徒がサーフボート、日菜が押す係だった。

 

男子生徒「えっ、ちょ、ちょっと待って…」

日菜「人のチケット横取りした人にはおしおきしないとねー」

男子生徒「!!」

日菜「あたし見てたんだよー。他の子と一緒に飛鳥くんからチケット横取りしたの」

男子生徒「あ、あれはあいつが…」

日菜「問答無用!!」

 

MC「それでは始めてくださーい!」

日菜「えーいっ!!!」

男子生徒「うわあああああああ!!!!」

 日菜が思い切りサーフボードを押すと、案の定男子生徒は落下して泥だらけになった。

 

千聖「ま、30秒あれば十分ね」

彩「う、うーん…そうだね…」

麻弥「あははははは…」

 

 そんなこんなで収録が終わった。

 

 

飛鳥「……」

 

 収録後、日菜から建物の前で待っていてほしいと連絡があり、飛鳥は待っていた。

 

「飛鳥くーん!!!」

飛鳥「!」

 飛鳥が振り向くと、日菜を筆頭にPastel*Palletesがいた。

 

飛鳥「お疲れ様です」

日菜「ありがとー。どうだった?」

飛鳥「ええ。面白かったですよ…」

千聖「一丈字くん?」

飛鳥「あ、はい。何でしょう…」

 

 飛鳥は焦っていた。というのも千聖の物まねをした事で、千聖が黒い笑みを浮かべていた。

 

日菜「面白かったよー。千聖ちゃんの物真似wwwwwww」

飛鳥「大変失礼いたしました」

千聖「あのドラマをチョイスするあたり、悪意があるとしか思えないんだけど。黒歴史だって言ったわよね?」

飛鳥「…すいません。あの時、何か面白い事言わないといけないとって思いまして…」

千聖「彩ちゃんのでも良かったじゃない」

彩「千聖ちゃん?」

日菜「あ、そうだねー。彩ちゃんのも面白いよ!」

彩「ちょっと日菜ちゃん!?」

イヴ「そうです! アヤさんはおもしろいですよ!?」

彩「イヴちゃん!!? それ褒めてる!? けなしてる!? どっち!!?」

麻弥「いやー…褒めてますよ?」

彩「うわ~~~~~~ん!!! 皆いじめる~~~~~!!!!」

 

 と、彩が泣き出した。そしてそれをパスパレの事務所の関係者たちが見ていた。

 

「漫才グループとしても行けるかも…」

「よし! 今度はガールズバンドのドリフを目指そう!」

「うん! 行ってみよー!!」

 

 この後、パスパレがどうなったかはご想像にお任せします。

 

 

おしまい

 



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第163話「人に頼る事」

 

 

 それはある夜の事だった。

 

リサ「残業遅くなっちゃったー」

 リサが一人で帰っていた時の事だった。

 

リサ「……」

 リサはチラチラ後ろを見ていた。そう、誰かにつけられていたのだった。

 

リサ(もしかしてストーカー…。どうしよう。この辺暗いから…)

 恐怖で縮み上がりそうだったリサは意を決してその場を走り去った。すると舌打ちする音が聞こえ、そのまま追いかけてきた。

 

リサ(や、やだ!! 誰か助けて!!!)

 と、リサがそう思いながら走ったその時、前方から飛鳥が歩いてきた。

 

リサ「!!?」

飛鳥「!!?」

 

 リサが突然走ってきたので、飛鳥は驚いた様子だった。そしてリサも飛鳥に気づいて、そのまま飛鳥に近づいた。そしてリサを狙っていたであろうストーカーはその場を後にした。

 

飛鳥「どうされたんですか?」

リサ「…怖い」

飛鳥「え?」

 リサは飛鳥にしがみついていた。

 

飛鳥「もしかして…」

リサ「うん…」

 消えてしまいそうなか細い声でリサが返事をすると、飛鳥は何も言わずにリサを家まで送り届ける事にした。

 

 そして…

 

「あら? リサと一丈字くんじゃない」

飛鳥「湊先輩」

 家の前まで来ると、友希那も偶然家に帰ろうとしていた。

 

友希那「リサに至っては震えてるわね。どうしたの?」

飛鳥「それが…」

 

 飛鳥が事情を説明した。

 

友希那「…卑劣極まりないわね」

飛鳥「恐らくアルバイトで一人になるのを狙われたんでしょう」

リサ「……」

 リサは涙目だった。

 

友希那「分かったわ。ありがとうね」

飛鳥「いえ、今後は極力一人で帰らないようにしてください。もし可能であればおうちの方に迎えに来ていただくなりしてください」

リサ「わ、分かった…。ゴメンね飛鳥くん。迷惑かけて…」

飛鳥「いえ、私は大丈夫です…」

 

 そう、こういう仕事をする為に広島から来ている為、飛鳥にとってはどうって事はないのである。

 

飛鳥(かといって、何も起こらないままが一番良かったんだけどね…)

 

 飛鳥は遠い顔をした。

 

友希那「リサ。明日からは私と一緒に登校しましょう。少なくともリスクが減る筈だわ」

リサ「う、うん。ありがとう…」

飛鳥「それからお手数ですが、白金先輩達にも知らせて頂けませんか?」

友希那「分かったわ」

飛鳥「ありがとうございます。学園の先生達にも知らせた方が良いかと思われます」

友希那「そうね。それは3人で行きましょう。1人よりも3人で行った方が信ぴょう性があるわ」

飛鳥「了解しました」

リサ「……!」

 リサが飛鳥と友希那のやり取りを見て、ジーンと感動していた。

 

飛鳥「そういう訳ですので今井先輩。まだ油断はできませんが私達も出来る限りの事はします。ですので、あまり心配し過ぎないでください」

リサ「ううん。ごめんね、こんな事に巻き込んで…」

友希那「いいのよ。言い方古いかもしれないけど、男だもの。ねえ?」

飛鳥「ええ。もしも今井先輩の身に何かあってはいけませんし、そこは思い切って頼って頂いても問題ございません」

リサ「!」

飛鳥「それでは、私はここで失礼します」

友希那「ええ。ありがとうね」

飛鳥「おうちの方にも事情を伝えて、細心の注意を払ってもらうようにしてください。湊先輩の家も同様に」

友希那「…ええ」

飛鳥「また何かあれば連絡ください。その時は一緒に何か考えましょう。それでは」

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

リサ「……」

友希那「…やけに慣れてる感じがするわね」

リサ「友希那もね…」

 

 その後、友希那とリサはそれぞれの両親に事情を伝えて、父親に見張りをして貰いながら眠りについた。

 

 そして飛鳥はすぐさま依頼主であるこころの黒服に連絡を入れ、ストーカーを捕まえて貰うように依頼した。

 

飛鳥「はい…はい…それでは宜しくお願いします…」

 

*****************

 

 翌日

 

「何!!? ストーカーだと!!?」

 友希那、飛鳥、リサの3人が職員室で教師と相談をしていた。

 

友希那「対策を打ってほしいのですが」

飛鳥・リサ「……」

「うーむ…」

 教師は渋った表情をしていた。あからさまに見回りをするのはめんどくさいという感じだった。

 

飛鳥「難しければ弦巻財団に依頼します」

「わ、分かった!! 職員会議で話をしてみる!! だから弦巻財団に連絡はしないでくれ!!」

飛鳥「お願いしますね」

 

 教師の慌てた様子に飛鳥は冷徹な声色で言い放った。弦巻財団はこの学校に資金を援助して貰ってる立場なので、もし依頼なんてされようものなら、こころをないがしろにしてるとみなされて…それはもう恐ろしい事になる。

 

 職員室を出た3人。

 

友希那「全く困ったものね。自分たちが行かなくても他に手はあるだろうに」

飛鳥「そうですね…」

リサ「……」

 

 と、飛鳥と友希那が愚痴をこぼしていた。

 

リサ「あ、あの二人とも…」

飛鳥・友希那「?」

 飛鳥と友希那がリサを見た。

 

リサ「本当にありがとう! 2人がいてくれて助かった!」

 と、頭を下げた。

 

飛鳥「構いませんよ」

友希那「そうよ。Roseliaでいる時はそれなりに厳しい態度を取らなきゃいけないけど、こういう時は助け合うものでしょう」

リサ「ゆ、友希那ぁ~」

 リサが泣きじゃくって友希那に抱き着いた。

 

友希那「人前よ。恥ずかしいからやめて頂戴/////」

リサ「だってぇ~」

 

 そんな様子を飛鳥はほっこりした様子で見ていた。

 

「おーい!!!」

「?」

 

 紗夜、燐子、あこがやってきた。

 

友希那「紗夜、燐子にあこ」

あこ「聞きましたよ! リサ姉ストーカーに遭ってるって…」

友希那「ええ。それで学校に協力して貰うように言ったわ」

燐子「…どうして一丈字くんが?」

友希那「ストーカーに追いかけられてる所を助けてくれたのよ」

飛鳥「助けたっていうより、偶然出会って…」

友希那「それでリサが助かってるなら助けたのと同じよ」

紗夜「そ、そうだったんですか…」

飛鳥「学校には学校周辺などをパトロールをして貰うように依頼して、あと弦巻財団に一目が付きにくい場所をこの地域と、その周辺の地域を見てもらうようにお願いしました」

リサ「!!?」

友希那「あなた、そこまでしてくれたの…?」

飛鳥「…弦巻さんが無茶な事を言う前に、手を打ちました」

 飛鳥が腕を組んで困惑した表情を浮かべた。

 

紗夜「それもそうだけど、弦巻財団の人たちをそういう風に動かせるようになったのも驚きなのだけど…」

飛鳥「もう何かあったら言えって言われてるもんで…」

 リサが飛鳥を見つめた。

 

リサ「あの、飛鳥くん…」

飛鳥「あ、今井先輩以外に被害を出さない為ですので…」

リサ「ううん。ここまでやってくれてありがとう。本当に感謝してる」

 リサが頭を下げた。

 

リサ「だけど…どうしてここまでやってくれたの?」

飛鳥「中学の時も通り魔がいて、皆苦労させられたんですよ」

「!!?」

飛鳥「部活をやってた人は部活動が禁止になって、とある部活は試合とか大会を棄権せざるを得なくなってしまったんです。そういう人達を見てきたので、もう出来る事はやっておこうかなって。丁度弦巻財団の人たちも協力してくれるとの事なので、力を貸していただきました」

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「今井先輩。あまり気に病まないでください」

リサ「!」

 飛鳥が真剣な表情をした。

飛鳥「これ以上被害を拡大しない為です。ここにいる皆さんの為にもご厚意に甘えてください」

リサ「……」

飛鳥「それでは、失礼します」

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

リサ「飛鳥くん…」

 

 そして飛鳥がRoseliaのいない所まで歩くと…。

 

「いや~。カッコよかったよ~?」

飛鳥「……」

 飛鳥が横を向くと、モカがいた。

 

飛鳥「…見てたんだ」

モカ「まあね~」

 モカはのほほんとしていた。

モカ「アルバイトの事はモカちゃんに任せといて~。一緒に帰ってあげるから~」

飛鳥「ありがとう」

 

 そして、名前は伏せられたもののリサがストーカーにあった事が学校中に伝えられ、一人で下校しないようにと催促された。だが、Roseliaが話をしていた様子からすぐにリサがストーカーされていた事が分かった。

 

「リサちゃんがストーカーされた!!」

「許せねぇ!!」

「リサちゃん。今日は一緒に帰ろう!」

「いや、オレと!!」

「オレオレ!!」

 

 と、2年2組では男子生徒達がリサを守ろうと必死だったが、どう考えても下心が丸出しだった。仲は悪くはないのだが、リサが結構分け隔てない性格である為、自分にもチャンスがあるんじゃないかと勘違いしていたのだ。

 

友希那「リサは今日私と帰るから」

「そ、それじゃあオレ達も一緒に…」

友希那「結構よ」

 友希那がきつい視線をぶつけながらけん制した。

 

「そんな事言わずに…」

「非常事態だからさぁ…」

 と、男子生徒達がしつこく言い寄っていた。

リサ「そ、それだったらお言葉に甘えてみようかな」

 リサは事を収める為にそう言うと、男子達は喜んだ。

 

飛鳥「……」

 飛鳥は存在感を消して陰から様子を見ると、何もなかったかのように去っていった。

 

 そして、リサと友希那は男子達と一緒に下校する事になったのだが…。

 

「おい、お前もうちょっと詰めろよ!」

「てめーがどけよ!!」

 と、あからさまに自分とリサに近づこうとしてもめていた。これには友希那も眉間にしわを寄せていた。リサはそんな友希那に対して申し訳なさそうにしていた。

 

 大人数で帰っている為、ストーカーに襲われる心配はないが、後ろで男子がずっと騒いでいる為、恥ずかしい。

 

 そして飛鳥はというと…。

 

飛鳥「連絡が来るのを待ちましょう」

モカ「そうだねー…」

こころ「早く捕まるといいわね」

 

 モカやこころと一緒に犯人が捕まるのをカフェテリアで待っていた。その時、飛鳥の携帯が鳴った。

 

飛鳥「もしもし…はい、はい、そうですか! はい…はい…分かりました! 本当にありがとうございました!」

 飛鳥が電話を切った。

 

モカ「どうしたの~?」

飛鳥「犯人が捕まったって」

モカ「はっや」

飛鳥「となりの区域で捕まったみたいで、ターゲットも変えていたみたいだ」

モカ「顔も見られたかもしれないって、リサさんは断念したんだろうねぇ~」

飛鳥「そうだな。だけど、暫くの間はちょっとパトロールしてもらうか…」

 

 そしてまた翌日

 

リサ「ほんっとーにありがとね飛鳥くん! 色々してくれて!」

飛鳥「いえいえ…」

 リサが頭を下げた。

 

飛鳥「犯人は捕まりましたが、油断はしないでください。犯人が捕まったとはいえ、他にもいる可能性はございます」

友希那「分かったわ」

「そうそう!!」

「?」

 男子生徒達が現れた。

 

「雑用ご苦労さん!!」

「引き続き、リサちゃん達はオレ達と一緒に帰る!!」

「だからお前はひっこめ!!」

「残念だったな!!」

 

 そう言うが、飛鳥はふっと笑った。

 

飛鳥「これだけいれば、ストーカーも襲い掛かってこれませんね」

友希那「そうね。でも鬱陶しいわ」

「それは友希那ちゃん達の事を想って!!」

友希那「…そう。ならもう十分よ。当面は私のお父さんが迎えに来てくれる事になったから」

「!!?」

飛鳥「……」

 

 友希那も友希那で男子達からリサを守る為に、手を打っていたのだ…。

 

友希那「行きましょリサ。練習しにライブハウスに行くわよ」

リサ「え、えっと…皆もありがとねー」

友希那「あなたもちょっと来なさい」

飛鳥「え、あ、ちょっと…」

 

 と、友希那は飛鳥を強制的に連れて行くと、男子生徒達は罪の擦り付け合いを始めた。

 

 

おしまい

 



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第168話「誰がために(前編)」

誤字報告ありがとうございました。


 

 

 ある日の事だった。

 

リサ「飛鳥くん!! 本当にありがと~!!!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥はリサから泣きながらお礼を言われていた。両手を握られ、上下に激しく振られて飛鳥は困惑していた。

 

というのも、飛鳥はリサをつけ狙っていたストーカーを撃退したのだった。しかもその正体は金髪のイケメンだったが、あからさまにチャラ男だった。警察に身柄を取り押さえられた時も大暴れしていたが、そのすきに飛鳥はリサを連れて避難させたのだ。

 

飛鳥「何とかストーカーの身柄を警察に引き渡すことは出来ましたが、油断はしないでください」

リサ「うん。ありがとう…」

飛鳥「明日からは一人で登下校はしないでください」

リサ「分かった。ちょっと友希那やRoseliaのメンバーにも連絡しとく」

飛鳥「それでは失礼します」

 

 こうして、騒動は収まったかに見えたが、問題はここからだった。

 

**********************

 

 後日、バンドリ学園内にて…。

 

麻弥「えっ!!? 一丈字さんが!?」

日菜「リサちーをつけてたストーカーをやっつけたの!?」

薫「儚い…」

リサ「そうなの…」

 リサが苦笑いしながら、2組の仲間と話をしていた。男子達も耳をダンボにして聞いている。

 

リサ「今度何かお礼をしないと…」

友希那「気にしなくていいわよ」

リサ「そういう訳にはいかないでしょ!」

 リサが友希那を睨んだ。

友希那「女子から、それもRoseliaの今井リサからお礼なんてされたら、学校に居づらくなるわよ。あの子、同級生と上手くいってなかったって言ってたし」

リサ「……」

 リサたちが反応した。

 

友希那「そしてこんな事も言ってたわね。そういう嫌な思いをしてきたから、『ありがとう』っていう言葉がとても心に響くんだって」

 友希那がリサを見た。

 

友希那「リサ。あなたの『ありがとう』っていう言葉が、あの子への一番のお礼よ」

リサ「…友希那」

友希那「今はそっとしてあげなさい。それだけ私達も有名になった証拠よ」

 友希那の言葉にリサが俯いた。

リサ「分かった。そうする…」

 そして教室の廊下で飛鳥が聞いており、その場を後にした。ちなみに存在感を消していた為、誰にも気づかれる事はなかった。

 

********************

 

 その日の放課後

 

飛鳥「……」

 下校しようとした飛鳥だったが、目を疑う光景を目の当たりにしていた。

 

「いや、そこまでしてくれなくていいよ…」

「いや! オレ達が家まで送る!!」

 と、バンドガールズは男子生徒達にガードされていたが、正直暑苦しい。

 

飛鳥(大変だな…)

 飛鳥は一言だと思いながら去っていこうとしたが、燐子も男子に囲まれて震えていた。

 

飛鳥(あっ…)

燐子『た、たすけて…』

 燐子は涙目で助けを求めていた。

 

飛鳥(こりゃダメだな。でも声をかけるとアレだし…えいっ)

 飛鳥が超能力で男子生徒達を燐子から遠ざけた。

 

燐子「?」

飛鳥(ま、これで大丈夫かな…) 

 飛鳥が笑みを浮かべると、そのままスーッと存在感を消した。

 

あこ「あ、りんりーん!!」

 と、あこが中等部の校舎からやってきて、そのまま合流した。

 

飛鳥「帰ろう」

 そう言って飛鳥が帰ろうとしたその時だった。

 

「あ、君達Roseliaの白金燐子ちゃんと宇田川あこちゃんだよね?」

「!!?」

 あからさまに何か女性関係にだらしなさそうなDQN5人組がやってきた。

 

燐子「……」

あこ「そ、そうだけど何…?」

「リサちゃんがストーカーに遭ったらしいじゃん」

「女の子二人だけで下校するのは危ないよー?」

「オレらが送ってってあげるよ」

 燐子はあからさまにおびえていた。

 

飛鳥(…まさかとは思うけど)

 と、飛鳥がDQN達の脳内を覗き込んだ。

 

「うひょー。上玉2人ゲット♥」

「前々から白金、いい身体してると思ってたんだよなぁ…」

「もう一人はまあ…ちんちくりんだけど可愛いからいっか☆」

飛鳥(あ、ダメだ)

 飛鳥が再び超能力でDQNを遠ざけようとすると、

 

「くそう!! なんでオレ達は燐子ちゃんから離れてたんだ!?」

「今からでも遅くない!!」

 と、男子生徒達が燐子とあこに近づこうとした。

飛鳥(あ、そうだ)

 飛鳥が超能力を一旦解くと、DQN達が男子生徒達に気づいた。

 

「あ? 何お前」

「え、えっとぉ…」

 そして飛鳥が超能力を使って2グループを遠ざけさせた。DQN達が男子生徒達にいちゃもんをつけさせた。あこと燐子は何が起きているか分からない状態だった。

 

飛鳥(これ以上は怪しまれる)

 飛鳥が燐子とあこに近づいた。

 

飛鳥「どうされました?」

燐子「……」

あこ「あ、あのね! さっき怖い男の人たちがあことりんりんを…」

 その時、燐子が飛鳥に抱き着いた。

 

飛鳥「!!?」

燐子「こわかった…うぇええええええん…」

 燐子はただでさえ人混みが苦手て、ましてや自分よりも体が大きくて顔が怖い男達に囲まれたら泣くのも無理はなかった。

 

飛鳥(だからって私に泣きつかなくても…まあ、仕方ないか。宇田川さんも年下だからね…)

 飛鳥が困惑していた。当然他の生徒達も見ていた。

 

「燐子!! あこ!!」

 友希那、紗夜、リサが男子生徒達を振り払ってやってきたが、男子生徒達もついてきた。

 

リサ「どうしたの!?」

飛鳥「えっと…白金さんを護衛しようと男子生徒の皆さんが取り囲んでいたんですよ。で、白金さんは声が出なくなったみたいで…」

友希那「燐子が人混み苦手なの分かってんのかしら…」

 飛鳥の報告に友希那が青筋を立てた。

飛鳥「で、一回どこかに行って、宇田川さんが合流したのですが、今度は別のグループが来てまた取り囲んだんです」

紗夜「…それで?」

飛鳥「で、一回声をかけたグループが戻ってきたんですけど、後から来たグループがメンチを切ってそのままどっか行ったんですけど…あれ、絶対如何わしい事するつもりでしたね」

友希那「…あなたは止めに入ったの?」

 友希那の問いに飛鳥はある事を考えた。

 

飛鳥「すみません。見てただけでした」

 と、言い放った。

 

友希那「そう…」

飛鳥「はい」

 飛鳥がそう言うと、

 

「何やってんだよ!!」

「すぐに助けに行けや!!」

「やっぱりストーカーを退治したってのは嘘なんじゃないのか?」

「オラ! 燐子ちゃんとあこちゃんはオレ達が送るから、お前はさっさと帰れ役立たず!」

 と、男子生徒達は飛鳥を中傷した。

 

飛鳥「…失礼します。宇田川さん、白金先輩。申し訳ありませんでした」

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

あこ「センパイ…」

燐子「……!」

 

 

つづく

 



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第169話「誰がために(後編)」

 その日の夕方、飛鳥は河川敷の斜面の草むらであおむけになっていた。本当は超能力を使って燐子とあこを助けたが、そのことは一切何も言わず、ただ見てるだけしかなかったと嘘をついていた。

 

 この事で男子生徒達からはなじられ、Roseliaからは信じられなさそうな目で見られた。

 

飛鳥(まあ、遊びに来た訳じゃないからな…。いつか別れが来る)

 

 飛鳥はそう言い聞かせていた。実際に自分の役目は果たしたので、特に気にすることはなかった。もし仮にこれでRoseliaとあの男子生徒達が肉体関係を持ったとしても、飛鳥としてはもう守る義務はなくなる為、どうって事はなかった。

 

 だが、友希那達とはそれなりに仲良くさせて貰った為、それなりに情もあった。だが、今回の事でRoseliaが自分を拒絶すれば、付き合い方を変える必要があった。

 

 許してくれるまで謝り倒せば簡単に済む話だった。だが、下手をすればすべての事を説明をしないといけない為、それは避けたかった。まあ、ばれても飛鳥自身は問題ないのだが、友希那達がそんな漫画みたいなことを信じてくれるかどうかも危ういし、超能力者がいるという事はトラブルが増える。

 

飛鳥(湊先輩あたりには事情を聴かれそうだな。もう潮時か…)

 

 飛鳥はもう正体がバレる事を覚悟していた。つまらない意地を張る事よりも、友希那達バンドガールズを守る事だ。居場所を失ってももう飛鳥は恐れてはいなかった。今に始まったことではないからである。

 

飛鳥「さて、そろそろ帰るか…」

 飛鳥が起き上がったその時、何やら喧騒が聞こえてきた。

飛鳥「何だ!?」

 

 飛鳥が即座に現場に向かうとそこには、飛鳥が移動させた2グループが喧嘩を始めていた。

 

「てめぇらのせいでRoseliaと一緒に帰る機会がなくなっちまったじゃねーか!!」

「どうしてくれるんだよ!!」

 と、DQN達は男子生徒達を痛めつけていた。

 

飛鳥「……」

 痛めつけられている男子生徒達の姿を見て、飛鳥は完全に自分の過失だと感じた。いくら燐子にしつこく迫っていたとはいえ、こんな事になる事は想定していなかった。

 

 飛鳥は超能力を使って、DQN達を大人しくさせて、どこかに移動させた。男子生徒達は何があったか全くわからない状態だった。ただ、DQN達が奇声を上げて去っていったようにしか思えなかった。

 

 飛鳥は名乗り出ようとしたが、名乗り出ても自分が助けてくれたなんて信じてくれはしないだろう。

 

 だが、飛鳥の脳裏に信じられなさそうな顔をしていたRoseliaを見つめていた。

 

 飛鳥は行くか迷った。仕事を取るか、人としての筋を通すか。

 

 だが、飛鳥はすぐに体が動いて男子生徒に声をかけた。

 

飛鳥「大丈夫ですか?」

 

 と。

 

「大丈夫じゃねーよこのクソ野郎!!!」

「何でオレ達がこんな目に遭わなきゃいけねーんだ!!」

「本当だったら燐子ちゃんと一緒に帰ってたはずだったのに!!」

「全部お前のせいだ!!」

 

 男子生徒達は一斉に飛鳥を責め立てた。

 

「お前ばっかり良い思いしやがって…」

「許さねぇ!!」

「ギタギタにしてやる!!」

 

 と、飛鳥に襲い掛かろうとした。だが飛鳥は一歩も動かず、何もしなかった。

 

 そして、男子生徒達にボコボコにされた(ただし、荷物をどこかにぶちまけたりしないように、ある程度超能力で調節はしたが…)

 

 

「はー!! すっきりした!!」

「二度と燐子ちゃん達に近づくなよ!!」

「あのDQN達め!! 頭悪い癖に調子に乗りやがって…」

「全くだ…」

 

 制服が泥だらけになって、かばんは川に投げ出されてしまった。

 

飛鳥「あー、痛った…。鼻血も出てるし…。でもいいや」

 飛鳥があっけらかんとした。飛鳥としては、超能力でDQN達にひどい目に遭わせてしまった為、そのケジメを取っていた。

 

飛鳥「教科書も後で元に戻しとくか…」

 と、川の水で濡れてしまった教科書を見つめて、カバンの中に入れた。

 

飛鳥「さて、家に帰るか」

 そう言って飛鳥はその場を後にした。はれ上がった顔はそのままにして…。

 

 だが、そのままにした事が、この話における飛鳥の最大のミスだった…。

 

********************

 

 飛鳥がマンションに帰ってくると、そこには友希那達の姿があった。Roseliaだけでなく、他のグループのメンバーもいた。

 

飛鳥(やべ、これは…)

 飛鳥が気づくと、香澄が飛鳥の方を見た。

 

香澄「あっ! 飛鳥くんが帰ってきた…って、うわああああ――――――――――っ!!!?」

「え? うわあああ――――――――――――――っ!!!!?」

 

 香澄の悲鳴で皆も飛鳥の方向を見たが、悲鳴を上げていた。

 

飛鳥(そうか。もうある程度腫れあがってるもんな…。無理もないか…。何か頬っぺたとか熱いし…)

 と、飛鳥は何も言わずにいたが、香澄達が本当に慌てて飛鳥の所に駆け付けた。

 

飛鳥「連絡取れずにすみませんでし」

つぐみ「ちょ、ちょっとどうしたのその怪我!?」

飛鳥「えっと。ファンの方々に殴られました」

友希那「あこと燐子の件?」

飛鳥「それも入っていますが、もういろんな理由がありますね」

 飛鳥が友希那を見つめた。

彩「きゅっ、きゅっ、救急車ぁあああああああああああああああ!!!!」

 彩が絶叫した。

飛鳥「丸山先輩。そんな大げさにして頂かなくても…」

薫「一丈字くん。鏡をよく見るんだ!」

千聖「あなた、顔が凄い事になってるわよ!!」

 

 いつもは冷静な千聖と薫が本当に慌てていた為、飛鳥が困惑した。

 

ひまり「鏡見て鏡!!」

 と、ひまりから手渡された手鏡で顔を見ると、飛鳥は内心ぎょっとした。確かに皆がいていた通り、顔の右半分の腫れも酷いし、左目の上には目立つほどの青あざがあった。

 

飛鳥(人いなくて良かったー…)

 

 これを通行人に見られたら、今みたいに絶対に聞かれていただろうと飛鳥は思った。そして飛鳥は忘れていた。皮膚がとても弱いので、少しでもガチで殴られるとこんな状態になってしまうという事を…。実際に師匠である和哉からはダメージを受けてはいけないと言われていたのだった。

 

飛鳥「あ、あー…。ちょっと腫れてますね」

日菜「ちょっとってレベルじゃないよ!!?」

 飛鳥の言葉に日菜が慌てた。その時、燐子が泣き崩れた。

飛鳥「白金先輩…」

燐子「ごめんなさい…ごめんなさい…私のせいで…」

飛鳥「え、何でですか?」

 飛鳥は困惑した。

燐子「だって私とあこちゃんを助けようとして…」

飛鳥「えーと…」

友希那「目撃者がいるのよ。あなた、見てただけって言ってたけど、男子達を睨みつけてたって」

飛鳥(オレ、そんな目つき悪かったかな…)

友希那「やっぱり燐子たちを助けようとしてたんじゃない」

飛鳥「……」

 飛鳥が視線を逸らした。

モカ「そうですよ~。飛鳥くんが燐子先輩達を見捨てるわけないじゃないですか~」

 と、飛鳥がモカを見ていたが、モカは若干悲しそうな眼をしていた。

 

燐子「私…私…うわぁああああああああああああああああああああ!!」

あこ「り、りんりん泣かないで!!」

 燐子がまた泣き崩れるとあこが慰めるが、あこも泣きそうだった。それを見た飛鳥は…。

 

飛鳥(何か…大ごとになっちゃった…)

 

 どう収拾つけようか悩み、燐子たちに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになったとさ。

 

 

おしまい

 



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第170話「オレは一人じゃない!」

 

沙綾「それはそうと今までどこ行ってたの?」

飛鳥「河川敷にいました」

リサ「そうだろうと思って探したけどいなかったわよ!?」

飛鳥「草むらがあったでしょう。そこにいました」

リサ「…道理で見つからなかったわけだ」

 リサが視線を逸らした。

友希那「あなたが殴られたのは草むらに入る前? 後?」

飛鳥「後です。帰ろうとした時に殴られました」

 と、飛鳥はそう言い放った。

 

飛鳥「皆さん。ご迷惑をおかけして、本当にすみませんでした」

「……」

 飛鳥がそう言うと、香澄達は何とも言えない顔をした。

 

友希那「それで?」

飛鳥「……」

 飛鳥は友希那を見つめた。

友希那「これで終わると思ってるの?」

飛鳥「いいえ。これからです」

友希那「……」

千聖「そうね。また私達と関わるたびに男子達が一丈字くんに襲い掛かる可能性があるわ」

「!!?」

飛鳥(まあ、それは返り討ちに出来るんだけど…)

 飛鳥が困惑した。

 

香澄「ちょっと待ってよ…」

「!」

 香澄の声が震えていた。

 

香澄「どうして…どうして飛鳥くんがこんな目に遭わないといけないの…?」

飛鳥「私が嫌われているからです」

 飛鳥があっけらかんと言い放った。

香澄「だって飛鳥くんは燐子先輩やあこちゃんを助けたんでしょ!? 此間だってリサさんを助けたのに何で!!」

友希那「そんなの簡単よ。助ければ助ける程私達の興味は一丈字くんに向く。それが面白くないのよ」

紗夜「…なんて愚かな事を」

 友希那と紗夜の言葉に香澄が俯くと、あこが俯いて震えた。

巴「…あこ?」

 するとあこが泣き出した。

 

あこ「あこ、くやしい…!! センパイがリサ姉やあこ達の為にこんなに頑張ってくれたのになんで…!!」

 飛鳥がある事に気づいた。

 

飛鳥「そういえば、クラスの人たちと一緒に帰ったんじゃ…」

友希那「ああ。あなたの悪口ばっかり言ってたから、頭にきて置いてきたわ」

紗夜「最低極まり無いですね」

リサ「アタシも今回はキレちゃった…」

 友希那達の回答に飛鳥は困惑した。

 

香澄「そうだよ!! 飛鳥くん何も悪くないじゃん!!」

 と、香澄が叫んだ。

飛鳥「戸山さん。お気持ちは有り難いですが、私が殴られた事はもう過ぎた話です」

友希那「過ぎた話?」

 友希那が青筋を立てた。

飛鳥「問題はここからです。ただでさえ学校の周辺にはストーカーがまだ潜んでいる可能性もあります。その辺について真剣に話し合った方が…」

 飛鳥が友希那を見た。

友希那「…それもそうね」

 すると、

 

香澄「私達がバンドをする度に飛鳥くんが苦しい思いをしてたんだね…」

飛鳥「ちょっと違いますね」

有咲「って! なんで軽い感じで言ってんだよ! こっちは真剣にお前の事で悩んでるのに!!」

飛鳥「そんな事ないよって言っても、聞いて貰えそうになかったので、意識して欲しかったんですよ」

 飛鳥が香澄を見た。

香澄「何が違うの!? だって飛鳥くんは…」

飛鳥「バンドは続けてください。寧ろ、続けてくれないとそれこそ一番苦しい思いをします」

香澄「!」

 飛鳥が真剣な表情をした。

香澄「でも…今のままでバンドなんかやったって全然楽しくない…」

飛鳥「まあ、そうですよね」

 飛鳥が普通に返すと、友希那が口を開いた。

友希那「私に考えがあるわ。皆、協力して頂戴」

「?」

 すると友希那はとんでもない事を言いだした。

 

飛鳥「えっ…」

友希那「皆もどうかしら?」

 友希那が他のバンドのメンバーを見た。

 

香澄「……」

沙綾「うちも大丈夫です。ちょっと香澄を休ませた方が良いので…」

有咲「……」

 

蘭「…仕方ないですね。巴がブチ切れてるので」

巴「蘭。悪いがアタシも許せない。あこを泣かして、一丈字をこんな目に遭わせといて、ライブなんかできるか!」

 

彩「私達も賛成だよ」

イヴ「ウチイリです!」

麻弥「よ、良く知ってましたね…」

千聖「ええ。アイドルと言っても人間だもの」

 

あこ「あこ達も賛成!!」

紗夜「そうですね。今の状態でバンドをやる意味がありませんから」

燐子「……」

 

薫「子猫ちゃん達には私から説明しておこう」

美咲「お願いします」

 

 なんと、5バンドが一斉に学内ライブをストライキするという内容だった。これに対して飛鳥が驚いていた。

 

飛鳥「ここまで…」

友希那「ライブなんていつでも出来るわ。ましてやどこでだって出来る。楽器さえあれば。でもね」

 友希那が飛鳥を見つめた。

 

友希那「少なくともRoseliaは頂点を目指すの。だから、メンバーを助けてくれたあなたがこのまま傷ついているのを黙ってみるわけにはいかないの」

飛鳥「……」

彩「そうだよ。ここで飛鳥くんを助けなきゃ、私達もまたエアバンドしてた頃に逆戻り。今度こそ終わりだよ」

蘭「あたし達だってそう。あんたには何度も助けられた。今ここで返さないと。でも、今回だけじゃ足りないよ」

香澄「飛鳥くん」

 香澄が涙をこらえて飛鳥を見つめた。

香澄「私だって何度も飛鳥くんに助けられた。おたえも、りみりんも、さーやも、有咲も皆! だから少しくらいバンドが出来なくなっても平気! 皆、飛鳥くんの事が大好きだもん!」

飛鳥「……!!」

 飛鳥が驚いた。するとこころが前に出た。

 

こころ「飛鳥」

飛鳥「!」

こころ「あなた…こんなにも素敵なお友達が沢山できたじゃないの」

飛鳥「友達…」

こころ「年齢も性別も関係ないわ。思いやりの心があれば誰でも友だちになれるのよ。だからね飛鳥」

 するとこころはこう言った。

 

こころ「あなたは一人じゃないわ」

飛鳥「……!!」

 

 すると飛鳥の脳裏に、中学時代の友達が思い浮かんだ。色々喧嘩もしたけどいつも一緒にいてくれたかけがえのない友達だった。

 

 そして飛鳥は香澄達を見渡した。

 

飛鳥「皆さん…」

 飛鳥が口角を上げた。

 

飛鳥「ありがとうございます」

 

***************************

 

 その後、香澄達は学校で学内ライブを自粛することを発表し、本当に学内ライブを自粛した。これに対して生徒達は騒然としていて、犯人探しが行われた。

 

 目撃者も沢山いた為、犯人もすぐに見つかり、呼び出される事に。

 

DQN「オレ達は手を出してねぇだろ!! こいつらが!!」

男子生徒「ひ、必要以上に近づいたんだ! 何が悪いんだよ!!」

 

 と、この期に及んで罪の擦り付け合いをしていた。

 

巴「どっちともうちの妹に手を出そうとしてたんだろう?」

「!」

巴「おまけに一丈字をあんな目に遭わせて…覚悟は出来てんだろうなぁ!!?」

つぐみ「と、巴ちゃん落ち着いて!!」

ひまり「顔も怖いよ!!!」

 

 巴が殴りかかろうとしているのをひまりとつぐみで取り押さえた。

 

男子生徒「くそう!! チクりやがって!!」

DQN「どうしてあんな奴をかばうんだよ!! アイドルやバンドガールがこんなことしていいと思ってんのかよ!!」

友希那「あら、それだったらなんで私達と一緒に帰ろうとしてたのかしら?」

DQN「それは関係ねぇだろ!! お前らは黙ってオレ達の言う事を聞いてればいいんだよ!」

友希那「そう。ちっとも反省してないようね」

 友希那が豚を見るような視線で言い放った。

 

友希那「もう話すことは何もないわ。ライブへの出入りも禁止にするし、私達は本当に自粛するわ。精々ファンから刺されないように気をつけなさい? 行きましょ」

 

 と、バンドガールズが去っていった。DQNは最後まで喚いていたが、結果は覆る事はなく、燐子とあこに迫ったこと、飛鳥にけがを負わせたことに対する制裁を受ける事に。

 

 そして案の定ライブの見学が決まっていた生徒達を筆頭に、学内ライブの再開を希望する声が上がった。

 

紗夜「…来月あたりにしましょう」

友希那「そうね」

リサ「その間はどうしよっか」

友希那「そうね…」

 

 こうなりました。

 

飛鳥「……」

友希那「皆に心配かけた分、沢山付き合って貰うわよ」

飛鳥「それは構いませんが…遊園地なんて意外ですね」

友希那「私が選んだわけじゃないわよ」

 

 飛鳥とバンドガールズが1か月も一緒に遊んでいたのはまた別の話…。

 

 

おしまい

 



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第171話「久々のアラカルト詰め合わせ」

 

 

1. 寒い(飛鳥 × 花音)

 

ある日の事だった。

 

花音「ふぇえええ…」

飛鳥「寒いですね」

 

 飛鳥と花音が中庭で一緒に歩いていた。特に深い意味はなく、飛鳥がただ歩いていたら花音と遭遇したため、一緒に歩いていた。

 

花音「ほ、本当に寒くなったね…」

飛鳥「冷えないうちに早く中に入りま…」

 その時、飛鳥がぶっ飛ばされた。

 

「花音ちゃん!! オレがあっためてあげるよ!!」

「オレの上着着て!!」

「オレの胸の中においで!」

「オラァ!! あっちいけ一丈字!!」

 

 男子生徒達が花音に詰め寄り、そのうちの一人が飛鳥を蹴ったが、飛鳥はすかさず超能力を使って、喧嘩させた。

 

飛鳥(もう容赦はしない。例えやり過ぎて一人になっても、この人たちを守ると決めたから)

 

 飛鳥が心配する花音を見つめた。

 

飛鳥「行きましょう。松原先輩」

花音「だ、大丈夫…?」

飛鳥「ええ。松原先輩が無事なので」

花音「う、うん…」

 

 そう言って飛鳥は花音を連れ出した。

 

花音(一丈字くん…逞しい人だなぁ…)

 

 

2. こころ(飛鳥 × 美咲)

 

飛鳥「そういえば奥沢さんってミッシェルとして、ハロハピのライブとか出てるんですよね」

 

 渡り廊下で飛鳥と美咲が話をしていた。

 

美咲「そうね。こころが無茶ぶりとかして困ってるのよ…」

飛鳥「あー…」

 

 こころの無茶ぶりは飛鳥も知っている為、何とも言えない感じだった。

 

美咲「…そういえばあなた、こころとよく一緒にいるみたいだけど、何かしてるの?」

飛鳥「私の中学時代の同級生と仲良かったみたいで、その関係ですね」

美咲「どんな子なの?」

飛鳥「えっと…双子で、弦巻さんと同じくらい金持ちなんです」

美咲「そうなってくると、あなたも結構凄い人よね」

飛鳥「そんな事ございませんよ。彼女たちのお母さんの教育方針で、お嬢様学校じゃなくて、普通の人が通う中学校に通わせてたみたいです。世間の事を勉強させるために…」

美咲「…こころもその学校に通わせた方が良かったんじゃない?」

飛鳥「いや、弦巻さんはお金持ちじゃなくても多分ああいう性格だと思いますよ」

美咲「え?」

 

 飛鳥の言葉に美咲が反応すると、飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「寧ろああいう性格以外の彼女は思いつかないんで」

美咲「…それもそうね」

 

 美咲も苦笑いすると、こころがやってきた。

 

こころ「飛鳥に美咲じゃない!! 一体何のお話ししてたの?」

美咲「内緒」

こころ「えー!! 教えてちょうだい! とっても気になるわ!!?」

 

 と、美咲に迫るこころを見て、飛鳥はまた苦笑いした。

 

 

3. ギター(飛鳥 × 有咲 × 紗夜)

 

飛鳥「……」

 飛鳥が中庭で考え事をしていた。そしてそれを有咲が見ていた。

 

有咲「一丈字。どうしたんだよ」

飛鳥「市ヶ谷さん」

 飛鳥が振り向いて有咲を見た。

 

有咲「何か考え事か?」

飛鳥「大したことじゃないんですけど…」

有咲「何だよ」

飛鳥「花園さんや日菜先輩、瀬田先輩を見て思ったんですけど、ギター弾いてる人って結構独特な人多いなって」

有咲「分かる。おたえとか天然を通り越して時折サイコパスなんじゃねーかって思う時がある」

飛鳥「そこまで言います?」

 

 身内に対して容赦ない発言をした有咲に対して、飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「花園さん、青葉さん、日菜先輩、瀬田先輩、紗夜先輩でグループ漫才とかしてみたらどうなるかなと…」

有咲「紗夜先輩、過労死するぞ…」

飛鳥「ですよね…」

有咲「いや、でも紗夜先輩も意外にボケる…」

飛鳥「あっ…」

 

 飛鳥がぎょっとした。

 

有咲「何だよ」

飛鳥「後ろ…」

有咲「え?」

 有咲が後ろを振り向くと、紗夜がいて何か機嫌悪そうな顔でこっちを見ていた。

 

有咲「ちょ、おま…」

飛鳥「お疲れ様です」

紗夜「誰が意外にボケるって?」

有咲「いやー…あのー…そのー…」

飛鳥「ボケ役も悪くないと思いますよ」

有咲「ちょ、お前!!」

 

 そして…

有咲「お前のせいだからな~~~~!!!!!」

飛鳥「……!!」

紗夜「誰が意外にボケるのか言ってごらんなさい。誰が!! 誰がぁあああああ!!」

有咲「ひえ~~~~~~~!!!!!!」

 

 飛鳥と有咲は紗夜に追いかけまわされていた。有咲は涙目で、飛鳥は少し気まずそうにしながら同じ方向を逃げていた。

 

たえ「あれ、飛鳥くんと有咲だ」

モカ「何してんのかな~」

日菜「おねーちゃんと追いかけっこ!? いいなぁ~!!」

薫「儚い…」

日菜「あたしも混ぜて~!!」

有咲「追いかけっこじゃなーい!!!!」

 

 有咲の悲鳴が学校中に響き渡った。

 

4. 温かいチョココロネ(飛鳥 × りみ × 沙綾)

 

りみ「はぁ…暖かいチョココロネが食べたいなぁ」

 

 1組の教室でりみがそう呟いた。

 

沙綾「暖かいチョココロネ…。焼きたての事?」

りみ「うーん…なんて言えばいいのかな…」

 その時、はぐみがニコニコして帰ってきた。あまりにもニコニコしてたのでりみと沙綾は不思議がった。

 

沙綾「どうしたの?」

りみ「凄くにこにこしてるけど…」

 するとはぐみはりみと沙綾を見た。

はぐみ「あのねあのね! 飛鳥くんに美味しい揚げチョココロネを作って貰ったんだ! とーっても美味しかったの!!」

 

 放課後

沙綾「一丈字くん。バイト代弾むから揚げチョココロネ作って貰える?」

飛鳥「いや、でもォ…」

りみ「お願い一丈字くんっ!」

飛鳥「……」

 

 沙綾とりみは3組の教室にやってきて、飛鳥に交渉した。

 

5.舞台(飛鳥 × 千聖)

 

 飛鳥が廊下を歩いていると、千聖がポスターに載っていた。

 

飛鳥(舞台やるんだ…)

 飛鳥がポスターをじーっと見ていた。

千聖「あら、興味があるの?」

 飛鳥が千聖の方を振り向いた。

飛鳥「白鷺先輩」

千聖「もし良かったら、チケット余ってるからあげるわよ?」

飛鳥「ありがとうございます。ただ…」

千聖「大丈夫よ。チケットを取られたら言って頂戴。関係者席に案内するわ」

飛鳥「えっ…」

千聖「うふふふふ」

 

 結局、スケジュールが合わなかった事で、千聖の舞台を見に行くことはなかったが、千聖が結構手ごわい事を知った飛鳥であった。

 

飛鳥(中々油断できないタイプだな…)

千聖(やっぱりこの子…)

 

 

6. 寒い朝(飛鳥 × 彩 × 花音)

 

彩「最近寒いよね~」

花音「うん。中々お布団から出られないよね~」

彩「私ねー。えいっていう掛け声とともに、起き上がるようにしてるんだー」

花音「何かきっかけがあるのっていいよねー」

 

 と、彩と花音が廊下で喋っていると、周りの男子生徒達も遠くから聞いていた。

 

(彩ちゃんと花音ちゃんの間に挟まれて寝てぇ…)

(彩ちゃんと花音ちゃんのパジャマ姿…)

(2人のおっぱいに挟まれて寝たいんじゃあ!)

(いいにおいするだろうなぁ…)

 

 そしてそんなゲスな笑みを浮かべている男子生徒達を飛鳥が遠くから見ていた。

 

 河川敷

 

飛鳥「心が凍えそう」

 

 飛鳥は虚ろな表情で夕日を見つめていた…。

 

 

 

おしまい

 



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第172話「飛鳥と演劇部」

第172話

 

麻弥「今度、外国のバンドを題材にした劇をやる事になったんですよ」

友希那「それは興味深いわね」

 

 と、2年2組の教室で麻弥と友希那が劇の話をしていた。

 

薫「主役は勿論この私、今回もまた儚い劇にしてみせるよ…」

リサ「薫が出れば女子達のハートをつかめる事間違いなしだねー」

日菜「そうだねー」

 

 そんな話を男子達もしっかり聞いていた。

 

 バンドリ学園の演劇部は結構続いており、最近になっては薫が中心となって大盛況をにぎわしている。定期的に学内で公演も行われているのだが…。

 

 チケットに関する問題が発生していた。チケットは大抵早い者勝ちであるのだが、一番良い席(一応有料で、その費用は演劇部の部費に充てられる)は、大抵ガチ勢が陣取ってしまうのだ。おまけに何かしらピリピリしている為、他の生徒達はあまり気持ちよく見れていない状態なのだ。

 

 これだけならまだしも、抽選に漏れた、良い席が取れなかったからといって、当たった生徒に対して暴力や脅迫でチケットを横取りしようとする輩も出ていた。

 

 チケットではなく、いっその事全部電子チケットにする案もあったが、紙のチケットを集めている人もやはりいるわけで、それは失くさないでほしいという声も出ていた(現在、演劇が終わった後に、来場客にチケットを配るという話も出ている。

 

 とにもかくにも、演劇部もまた大人気だったのだ。

 

 

 で、この男はというと…。

 

飛鳥「出禁喰らってます」

 

 そう、演劇部の中には男子達もいるのだが、飛鳥のアンチがいて、嫌がらせで演劇部の定期公演も出入り禁止を食らっていたのだ。ただ、この事を薫も麻弥も知らないのだが、演劇部の雰囲気を悪くしてもまた面倒な事になる為、飛鳥はもう何も触れずにいた。

 

飛鳥(何かあれば連絡が来るしな)

 

 そう言って飛鳥は演劇部から遠ざかっていた。とにかく正当な理由なしで自分を嫌うファン達に対して気を悪くしていた。

 

飛鳥(何か言われるのも嫌だし、何も触れないでおこう…)

 そう言って飛鳥は静かに本位目を通した。

 

**************************

 

 そんなある日の事。飛鳥が演劇部と全く縁のない学校生活を送っていた時の事だった。

 

「そんなに怖がらなくてもいいじゃん」

「オレ達とお茶しようよ」

 

 と、他校の不良生徒達が薫たち演劇部に迫っていた。薫たちは演劇部の買い出しに丁度出かけていた。

 

薫「生憎だが、私達も忙しくてね…」

 薫が気丈に振舞ったが、不良の一人が薫の手を握った。

「まあまあそう言わずに」

「演劇なんかよりも楽しいよー?」

 そう言って薫を連れて行こうとした。

 

「ちょ、ちょっと男子…助けに行きなさいよ…」

「あ、あひ…」

 

 女子は男子に助けに行くように催促したが、男子は足が震えて動けなかった。

 

「あ?」

「何お前ら。やんのか?」

「おい、見せしめに男子はボコボコにしよーぜwwww」

「そうだな。マッパにひんむけば動けないだろ」

 と、男子に近づこうとすると、

 

薫「こ、子犬くん達に手を出そうとするなんて感心しないな。私が目的なんだろう?」

 薫が助け舟を出した。

薫「さあ! 君達は逃げるんだ!!」

「か、薫先輩…」

「そう言われて、はいそうですかって言いたくないなー」

「ついでに他の女子も連れて行くかwwwwww」

「男子は邪魔だからおうちに帰ってね? じゃないと…殺すよマジで?」

「あのー」

「ああ!!?」

 誰かが不良生徒達に声をかけたので、不良生徒達が殺意に満ちた目で睨みをを聞かせた。

そこには40代のおっさんがいた。

 

「あ? 何だテメェ」

「やんのかおっさん」

 するとおっさんは懐から警察手帳を取り出した。

「こういう者ですが」

「知るかボケェ!!!」

 と、不良生徒が警察官を殴り飛ばした。

 

「おい!! 仲間を呼ばれる前にやっちまうぞ!!」

「おお!!」

「動けない程痛めつけちまえば人質に使えるからな!!」

「ちょ、やめ…」

「お前らも逃げるなよ! 逃げたらお前らも同じ目に遭わせてやるからな!! ヒャーハハハハハハ!!!」

 あまりにもとち狂った不良生徒達に薫たちは恐怖でおののいた。

 

 だが、飛鳥が遠くから金縛りで不良生徒達の動きを止めた。

 

(な、何だ!? 体が…)

(くそう!! 動けねぇ…)

 

 その時だった。

 

「コラァー!! 何をしとるかぁー!!」

 と、警察官が複数人やって来て、不良生徒達が取り押さえられた。

 

「離せよコラァ!!」

「偉そうにしてるけど、上級国民様に媚び売っててめぇらだけいい思いしてるの知ってんだぞ!!!」

「アレかぁ!!? 下等生物は上級国民様に逆らうなって事だろ!! いつかお前らの職場に車を突っ込んでやるからな!!」

「うるさい!!」

「さっさと行け!!!」

 

 と、連れていかれたが、不良生徒達があまりにも怖い表情で物騒な発言をしていた為、薫たちや見ていた通行人達は恐怖で震えあがっていた。

 

飛鳥「……」

 飛鳥は陰で見守り、犯人たちがパトカーに乗せられるのを確認するとその場を後にして、電話を取った。

 

飛鳥「はい…はい…間違いありません。商店街のはずれにあるBARが奴らのアジトです。そこに行方不明になっていた女子生徒もいる筈です」

 

 飛鳥は師匠である和哉に連絡を入れ、不良生徒の仲間達を排除するように依頼した。

 

飛鳥(こりゃあ演劇を見に行ってる暇ないな…)

 

 十数分後

 

千聖「ふぅ…」

 千聖が商店街のはずれを歩いていた。

 

千聖「薫たち、今度の演劇は大丈夫かしら。また暴走しなければいいけど…」

 その時、BARの前にパトカーが何台も止まっているのが確認できた。

 

千聖「ん?」

 千聖が驚くと、女性警官がやってきた。

 

千聖「あなた、白鷺千聖さんですよね?」

千聖「え、ええ…そうですけど…」

「申し訳ないんですけど、別の道を通って頂けますか? 護衛しますので…」

千聖「それは構いませんけど、何があったんですか?」

「女子生徒の拉致監禁があったんですよ」

千聖「ええっ!!?」

「それで先ほど、バンドリ学園の生徒さんが襲われたらしく、その犯人の仲間だそうです」

千聖「バ、バンドリ学園の生徒ってどんな特徴の子ですか!? 例えば髪が紫色で何かおかしな喋り方をする…」

「あ、そんな感じでした」

千聖「……」

 

 そして薫たちはというと…。

 

薫「ふぅ…大丈夫だったかい? 子犬くん子猫ちゃん達」

「薫先ぱぁい…」

 薫の言葉に女子生徒達は泣きそうになっていた。男子生徒達は何も言えなかった。

 

「あ、えっと瀬田…ありが」

「ありがとうじゃないわよ!!」

「こういうのは男子が率先してやるものでしょうが!!」

薫「やめたまえ君達。いがみあう事よりも皆無事だった事を喜ぶべきだし、相手が凶器を持っていたかもしれないだろう?」

「……」

薫「それに今は女性も男性の後ろをただ歩く時代じゃない。助けられる人が助ければいいのさ」

 と、薫がウインクすると女子生徒達がときめいて、男子生徒達は小さくなっていた。

 

「薫!!」

 千聖が薫の所に駆け付けた。

 

薫「やあ、誰かと思えば千聖じゃないか。相変わらず眩しい表情をしているね」

千聖「……」

 千聖は薫を見たが、手や足が震えていたのに気付いた。

 

千聖「…全くもう。お巡りさんから聞いたけど結構無茶したのね」

薫「子犬くんや子猫ちゃん達を守れるなら、お安い御用さ」

千聖「本当に強くなったわね」

薫「な、何の事かな?」

 薫がちょっと慌てた。

千聖「何でもないわ。かおちゃ」

薫「これ以上はいけないよ千聖」

 

 薫が少し慌てて千聖に迫った。それを見た男子生徒や女子生徒達はときめいていた。幼馴染コンビのやり取りであり、薫のファンであるりみやひまりが見たら卒倒するだろう。

 

薫「しかし、おまわりさんが来てくれて助かったよ」

千聖「そうね。それはそうと薫」

薫「何だい?」

千聖「あなた達に絡んできた奴らだけど、仲間がいてその仲間は他校の女子生徒を拉致監禁してたらしいわよ」

「!!?」

 

 千聖の言葉に薫たちが驚いた。

 

薫「それは儚くないね…。で、大丈夫なのかい?」

千聖「がさ入れが入って犯人も丁度捕まったわ」

薫「そうかい。それは良かった…だけど千聖。随分腑に落ちない顔をしているね」

千聖「…別に。それよりも今日は早く帰った方が良いわ。じゃ」

 そう言って千聖が帰った。

 

 

 その夜

千聖「……」

 千聖は今日のがさ入れの事を想いだした。

 

千聖(薫の事といい、あのがさ入れの事といい、何もかもうまくできすぎてる…)

 

 千聖の脳裏には飛鳥が思い浮かんだ。

 

千聖(一丈字飛鳥…。彼は一体何者なの…?)

 

 

おしまい

 



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第174話「長生きしたければ賢く生きる事だな…」

 

 

 第172話までのあらすじ

 

 薫たち演劇部は、今度行われる劇の為に商店街まで買い出しに来ていたが、不良たちに絡まれてしまう。飛鳥がいつものように裏で退治をして、不良の仲間も和哉の協力の元退治する。

 

 だが、不良の仲間を検挙している現場を偶然通りかかった千聖が目撃し、警察官から事情をすべて聞いた。千聖はすぐに飛鳥がやったものだと確信したが、あまりにも話が上手くいきすぎている上に、飛鳥の日頃からの様子を見て、飛鳥が普通の人間ではないかと気づき始める。

 

 果たして、飛鳥の運命や如何に!

 

********************

 

 バンドリ学園

 

千聖「……」

 

 千聖は一人で考えていた。

 

花音「ど、どうしたの? 千聖ちゃん…」

 仲良しの松原花音が話しかける。

 

千聖「…花音」

花音「な、なあに?」

千聖「一丈字くんの事なんだけど、あの子…どう思う?」

花音「え? い、一丈字くん…?」

 

 飛鳥の事を急に聞かれて花音は戸惑っていた。

 

花音「う、運動も勉強もできて凄いなぁって思うよ…? 1年生なのに…」

千聖「…そうね」

 千聖が暗い表情をした。

花音「ち、千聖ちゃん…?」

千聖「あのね。花音…。実は」

 千聖がそう言いかけたその時、花音がある人物を見て

 

花音「……」

 青ざめてガクガク震えていた。

千聖「ど、どうしたの花音…」

 千聖が花音が見ていた方向を見るとそこには…。

 

 和哉がいた。目に大きな隈が出来ていて、目のハイライトがなく、雰囲気も生気がない感じがしたので、千聖も震え上がった。

 

和哉「……」

 和哉は千聖と花音を見た。

 

和哉「…どうされました?」

花音「ふぇえええええええええ!!? なんでもありませーん!!!!」

千聖「す、すいませんでしたー!!!」

 と、千聖と花音が逃亡した。

 

和哉「失礼な餓鬼どもめ…」

 だが、和哉は千聖と花音の事は知っていたので、これ以上は何も言わなかった。

 

和哉「…まあいい。次第に記憶も消える。あの様子じゃあいつを任せる事は出来ないな。少しばかり、買い被り過ぎたようだな」

 そう言って和哉はその場を後にした。

 

******************

 

「ハァ…ハァ…」

 

 千聖と花音が息を切らしていた。

 

花音「ふぇえええ…」

千聖「な、何なのよあの人…」

 千聖は冷や汗をかいていた。

 

千聖(全く感情が読めないばかりか、心が真っ黒…)

 と、飛鳥の事を完全に忘れてしまっていた。

花音「そ、そういえば千聖ちゃん…」

千聖「な、なに?」

花音「私達…一体何の話をしてたんだっけ…」

千聖「……」

 

 そう、花音と千聖が逃げる際に和哉は2人に対して飛鳥に対する疑念を忘れるように暗示をかけたのだ。これで千聖の中で飛鳥が普通の人間ではないのではないかという疑問は消えた。

 

*******************

 

和哉「……」

 

 和哉は中庭を歩いていたが、やはり凄みがあるのか通りかかった生徒や教職員は皆和哉を見ていた。ちなみに和哉の服装は黒のジャケットに白いシャツ、黒いズボンといった黒を基調とした服装だった。身長も170後半であり、目の隈がなければそれなりに顔も整っているが…。

 

 やはり雰囲気が怖すぎて誰も近づけなかった。そんなときだった。

 

「ねぇ、いいじゃ~ん」

「やだ、離して!!」

 

 という蘭の声がした。和哉はその方向をゆっくり近づいていた。

 

 和哉が行ってみると、あこが4人が男子生徒達に絡まれていた。他の生徒達はただ見ているだけしかできなかった。というのも絡んでいる男子生徒達は格闘技をやっていて、関われば暴力を振るわれる上に、助け出せるかどうかわからなかったからだ。

 

あこ「嫌だってばぁ!!」

「こっち来いや!」

 男子生徒の一人があこの髪を引っ張っていた。

「連れていけ!!」

 と、4人がかりであこを連れて行こうとした。

 

あこ「うわああああああん!! 助けてぇおねーちゃん!!」

「口を押えろ!!」

 男子生徒の一人が手であこの口を押えた。

 

「高等部は一丈字がいるから無理だが、中等部なら手も届くまい!!」

 と、走って逃げようとしたが、和哉が男子生徒達の前に立ちはだかっていた。

 

「!!」

「な、何だお前!!」

和哉「どうするつもりだ?」

「は!?」

 和哉が殺気を放った。

 

和哉「その女子生徒をどうするつもりかと聞いている」

「あ、あひ…」

 男子生徒達は恐怖で足が動かなくなり、あこを手放してしまったが、和哉は特に何もせずあこはそのまま地面に叩きつけられた。

 

あこ「たっ!! うぅぅぅぅ…」

 あこは泣きそうになっていた。

 

和哉「オレの質問に答えろ」

 和哉が近づくと男子生徒はおののいて、

 

「う、うわぁああああああああああああ!!!!」

「すいませんでしたぁあああああああああ!!!」

 と、和哉から逃げようとしたが、和哉が超能力を使って逃げられないようにした。

 

「な、何だ…体が…!!」

「動かない…!!」

「や、やめろ!! 来るな!! 来るなぁああああああああああ!!!」

 

 しかし、和哉は不良生徒に目をくれず、あこに近づいた。

 

あこ「……!!」

 和哉があこを見つめると、和哉もあこを見た。

和哉「災難だったな」

あこ「え…」

和哉「早くここから離れろ。さもなくば…更に心に傷を負う事になるぞ」

あこ「……!!」

 

 そして同じタイミングで…。

 

「はぁ…何か悪い夢でも見たのかしら…」

 千聖と花音がやってきて、再び和哉達を目にした。和哉に恐怖を抱いている男子生徒達を見て、青ざめ絶句していた。

 

 

「ひ、ひぎィイイイイイイイイイイ!!!」

「た、助けてくれぇえええええええええ!!!」

和哉「……」

 和哉は何も言わずに、ただ近づいていった。それがまた男子生徒達にとって恐怖を感じさせたが、見ていた周囲の人間も同じで、男子生徒達に同情した。

 

「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!!」

 男子生徒達は一思いに絶叫した後、

 

「ブルチィイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!」

 

 …涙を流し、糞尿を漏らして気絶してしまった。

 

「……」

 まさかの事態に生徒達は言葉を失った。

 

和哉「人の顔を見て気絶しやがるとは失礼な奴らだ」

 和哉は背を向けてその場を後にした。

 

 その後…

 

飛鳥「……」

 飛鳥は困り果てていた。

 

飛鳥(なんか最近皆大人しいな…どうしたんだろ…)

 

 廊下などを歩いていると、いつもはうるさい男子生徒達がどこか静かで、女子達も何かにおびえているようだった。

 

飛鳥(やっぱアレだよな~~~~~~!!!!! やり過ぎるなつったのに…!!)

 

 和哉の所業を後で知って、頭を抱えていた。

 

 そんな中、千聖がやってきた。

 

飛鳥(あ、白鷺先輩だ…)

千聖「……」

 千聖が飛鳥の顔を見ると、

 

千聖「あら一丈字くん。こんにちは」

飛鳥「こんにちは…」

千聖「じゃあね」

 そう言って千聖が去っていった。

 

飛鳥(…当分は大丈夫そうだな。こっちは)

 

 女子生徒や本来の役割を果たす身としては良かったのかもしれないが、何となく罪悪感を感じる飛鳥であった。

 

 

おしまい

 

 

 

 

 

 



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第175話「飛鳥とAfterglowとめっちゃ寒い日」

 

 

1. あったかいんだからぁ…(飛鳥 × Afterglow)

 

とある冬の日

 

ひまり「う~~!!! さむ~い!!!」

 

 偶然帰るタイミングが一緒になった飛鳥とAfterglowは一緒に帰る事にした。まあ、飛鳥は自宅まで5分しかかからないのだが…。

 

巴「こういう時はラーメンでも食べてあったまらないとな!」

ひまり「ラーメン屋着く前に凍えちゃう~!!」

 

 ひまりがそう叫ぶと、つぐみが飛鳥を見た。

 

つぐみ「一丈字くん」

飛鳥「何です?」

つぐみ「その…手袋ないけど、寒くないの?」

飛鳥「大丈夫ですよ」

つぐみ「本当?」

飛鳥「ええ…」

 

 飛鳥が苦笑いすると、ある方向を見た。

 

飛鳥「…どういう訳か、温かく感じるので」

 

 男子生徒達からの嫉妬の目線だった。

 

モカ「成程ね~」

飛鳥「もう一緒にいるだけでこんな状態ですね」

 その時、飛鳥とAfterglowの間を割り込むように、1年2組の男子生徒達がやってきた。

 

飛鳥「おや」

蘭「何?」

「オレ達と一緒に帰ろう!」

「そうそう!!」

 と、一緒に帰るように言い放った。

 

飛鳥「それでしたら私席外しますのでどうぞごゆっくり…」

モカ「頑張ってね~」

飛鳥「えっ…」

 

「ちょっとモカァ!!」

 と、他の4人も合流して、飛鳥とモカを回収して逃げた。

 

「あああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

2. あったかいんだからぁ!!!!(飛鳥 × Afterglow)

 

とある冬の日

 

ひまり「う~~!!! さむ~い!!!」

 

 偶然帰るタイミングが一緒になった飛鳥とAfterglowは一緒に帰る事にした。まあ、飛鳥は自宅まで5分しかかからないのだが…。

 

巴「こういう時はラーメンでも食べてあったまらないとな!」

ひまり「ラーメン屋着く前に凍えちゃう~!!」

 

 ひまりがそう叫ぶと、つぐみが飛鳥を見た。

 

つぐみ「一丈字くん」

飛鳥「何です?」

つぐみ「その…手袋ないけど、寒くないの?」

飛鳥「大丈夫ですよ」

つぐみ「本当?」

飛鳥「ええ…」

 

 飛鳥が苦笑いすると、ある方向を見た。

 

飛鳥「…どういう訳か、温かく感じるので」

 

 男子生徒達からの嫉妬の目線だった。

 

モカ「成程ね~」

飛鳥「もう一緒にいるだけでこんな状態ですね」

モカ「じゃあこうしたらどうなるかな~」

飛鳥「え?」

 

 その時だった。

 

モカ「ぎゅーっ♥♥♥」

 

 なんという事でしょう。モカが飛鳥に思いっきり抱き着いたのだ。もう正体を知っていて距離が近づいたのかなのか、何のためらいもなく言星に抱き着いた。

 

飛鳥(バンドリ関係者の皆さん。本当にゴメンなさい)

 

 飛鳥は真顔になった。蘭、ひまり、巴、つぐみが顔を真っ赤にし、男子生徒達が嫉妬の炎を燃やす中、飛鳥は真顔になっていた。

 

モカ「どう~? あったかくなった~?」

飛鳥「温かくなりましたよ。というかもう温かい通り越して、焼け殺されそうですね」

モカ「女の子の柔らかい体はどうかね~? ほれほれ~」

 と、体を押し付けてきた。

 

飛鳥「美竹さん。青葉さん、何かあったんですか?」

蘭「そ、そんなの私に聞かないでよ!! この変態!!」

飛鳥「そうですね」

 

 飛鳥は何とも言えない感じだった。

 

モカ「ダメだよ蘭そんな事言ったら~」

蘭「誰のせいだと思って…」

モカ「飛鳥くんに悪口言うと、自分にチャンスがあるって男子達が勘違いしちゃうよ~?」

蘭「一丈字」

飛鳥「何ですか?」

蘭「ごめんなさい。私が間違ってました」

飛鳥「そんなに…?」

 

 蘭が露骨に謝ってきたので、飛鳥は困惑するしかなかった。

 

ひまり「て、ていうかモカァ!!//////」

巴「大胆だな…」

つぐみ「ひ、人前だよ…モカちゃん…」

モカ「そうだねー。ごめーん」

 

 と、モカが飛鳥から離れた。

 

モカ「女の子が離れて残念~?」

飛鳥「いえいえ、お疲れ様でした」

 飛鳥が何とか社交辞令で何とかした。

 

3. あったかいんだからぁ…(飛鳥 × Afterglow)

 

とある冬の日

 

ひまり「う~~!!! さむ~い!!!」

 

 偶然帰るタイミングが一緒になった飛鳥とAfterglowは一緒に帰る事にした。まあ、飛鳥は自宅まで5分しかかからないのだが…。

 

巴「こういう時はラーメンでも食べてあったまらないとな!」

ひまり「ラーメン屋着く前に凍えちゃう~!!」

 

 ひまりがそう叫ぶと、つぐみが飛鳥を見た。

 

つぐみ「一丈字くん」

飛鳥「何です?」

つぐみ「その…手袋ないけど、寒くないの?」

飛鳥「大丈夫ですよ」

つぐみ「本当?」

飛鳥「ええ…」

 

 飛鳥が苦笑いすると、ある方向を見た。

 

飛鳥「…どういう訳か、温かく感じるので」

 

 男子生徒達からの嫉妬の目線だった。

 

モカ「成程ね~」

飛鳥「もう一緒にいるだけでこんな状態ですね」

モカ「じゃあこうしたらどうなるかな~」

飛鳥「え?」

 

 その時だった。

 

モカ「ぎゅーっ♥♥♥」

 

 なんという事でしょう。モカが飛鳥に思いっきり抱き着いたのだ。もう正体を知っていて距離が近づいたのかなのか、何のためらいもなく言星に抱き着いた。

 

飛鳥(バンドリ関係者の皆さん。本当にゴメンなさい)

 

 飛鳥は真顔になった。蘭、ひまり、巴、つぐみが顔を真っ赤にし、男子生徒達が嫉妬の炎を燃やす中、飛鳥は真顔になっていた。

 

モカ「どう~? あったかくなった~?」

飛鳥「温かくなりましたよ。というかもう温かい通り越して、焼け殺されそうですね」

モカ「女の子の柔らかい体はどうかね~? ほれほれ~」

 と、体を押し付けてきた。

 

蘭「ちょ、ちょっとモカ!!/////」

 蘭が頬を染めて憤慨すると、

 

モカ「そーだ。蘭も飛鳥くんに抱き着いてみたら~?」

蘭「だ、誰がぁ!!//////」

モカ「湊さんにマウント取れるよ~?」

蘭「!!?」

 

 モカの言葉に蘭はとても真剣な表情で迷っていた。

 

飛鳥「あの、美竹さん…?」

ひまり「まさかだよね? まさかだよね?」

巴「やめとけ…」

飛鳥「そうですよ。宇田川さんがこんなに私の事を気持ち悪がってるじゃないですか!」

巴「そんな訳ないだろ!!」

モカ「じゃあ間を取ってトモちん」

「どんな間や!!!」

 

 と、ツッコミを入れた。そしてモカは飛鳥から離れた。

 

飛鳥「いや、宇田川さん。相手にしなくても…」

巴「……」

 飛鳥と巴が向き合ったが、飛鳥が170㎝で巴が168㎝だった。

 

飛鳥「…結構身長変わらないですね」

巴「そうだな。薫先輩は170あるって言ってたな」

飛鳥「私と同じくらいですね」

モカ「じゃあどうぞ~」

飛鳥「…それじゃ宇田川さん」

巴「!」

 

 飛鳥は突っ込まれる覚悟で両手を広げた。

 

飛鳥「私に向かって飛び込んでみますか?」

巴「!!//////」

 

 飛鳥の発言に皆が驚いた。

 

モカ「だいた~ん」

飛鳥「当面はぼっち生活が続きそうです」

モカ「大丈夫だよ~。そんな事させないから~」

巴「い、一丈字。そこまでしなくていいよ…」

飛鳥「その方が良いですよ」

 

 と、飛鳥が苦笑いしたが、つぐみとひまりと蘭が顔を真っ赤にしていた。

 

モカ「あの3人は十分にあったまったみた~い」

飛鳥「……」

巴「でもやっぱりラーメン食いに行きたいな。三郎でいいか?」

モカ「いいよ~。飛鳥くんもいこ~」

飛鳥「え、ちょ…」

 モカが飛鳥の背中を押していくと、巴も一緒に歩いて行った。そして茫然としていた蘭、ひまり、つぐみも後に続いた。

 

ひまり「あ、ま、待ってよー!!!」

つぐみ「モカちゃ~ん!!」

蘭(…一丈字意外と大胆//////)

 

 そして取り残された男子生徒達は、いちゃこら(?)を見せつけられて凍えていた…。

 

「めちゃくちゃさむい…」

 

 

おしまい

 



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第177話「飛鳥と香澄」

 

 

 ある日の事、飛鳥が一人でカフェテリアにいると…。

 

「飛鳥くーん!!」

飛鳥「?」

 

 香澄が飛鳥に話しかけてきた。

 

飛鳥「戸山さん。どうされました?」

香澄「飛鳥くんってギター弾けるんだよね?」

飛鳥「え、ええ…花園さん程ではございませんが」

 

 面倒な事になりそうだな…と飛鳥は思った。実際に香澄達のファンが睨みを聞かせている。

 

香澄「それだったらさ、今日一緒に弾こうよ! 有咲の家の蔵で!」

飛鳥「お気持ちはありがたいのですが、遠慮しておきます」

香澄「えー。なんでー? あ、そっか。用事があるんだね?」

飛鳥「…そんな所ですね」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

香澄「それだったら飛鳥くんの予定に合わせるよ?」

飛鳥「そこまでして頂かなくても…」

香澄「…そんなに私達と一緒にいるのが嫌なの?」ウルウル

飛鳥「あなた方のファンから嫌がらせさせるのが嫌なんですよ」

 

 飛鳥は正直に言うと、香澄が驚いた。

 

香澄「も、もしかして虐められてるの!?」

飛鳥「虐められてるというより、言いがかりをつけられてるんですね。戸山さん達に近づいたら殺すとか、お前の家に火をつけてやるとか、単車でお前をはねてやるとか、色々」

香澄「そ、そんな事言われてるの!!?」

 

 飛鳥の発言に香澄が青ざめた。

 

飛鳥「ええ。それだけあなた方が有名って証拠ですがね」

 飛鳥が苦笑いした。

 

香澄「どうしてそう言う事を早く言ってくれなかったの!?」

飛鳥「まだ自分で何とかできるレベルですので」

香澄「そ、そんな事になってたなんて…」

飛鳥「そういう訳ですので、ギターの件は諦めてください」

香澄「やだよ!!」

 

 香澄が叫んだ。

 

香澄「どうして飛鳥くんに嫌がらせをする人たちの言う通りしなきゃいけないの!?」

飛鳥「矛先をあなた方に向けられるのはまずいんですよ」

香澄「!!」

 

飛鳥「例えば山吹さんですが、山吹さんはご実家がお店をやられてますよね?」

香澄「う、うん…」

飛鳥「…彼女のご実家のお店やご家族にも迷惑が掛かります。ましてや幼い兄弟もいらっしゃるので非常に危ないんですよ」

香澄「……」

 

飛鳥「もしもご家族に何かあった時、山吹さんは悲しまれますよ。そしてその原因を作った私に対して…」

香澄「そんな事ない!! さーやはそんな人じゃない!!」

飛鳥「…それでは戸山さん。これがあなただったらどうしますか?」

香澄「!!」

 香澄が飛鳥を見た。

 

飛鳥「妹さんがいらっしゃいますよね? もし妹さんが…」

香澄「飛鳥くんのせいじゃない!! 悪いのは飛鳥くんに意地悪する人だもん!! だからそんな事言わないで!!」

 

 と、香澄は周りを気にせず叫んだ。

 

飛鳥「戸山さん…」

 

 悲痛な叫びと言っていい香澄の言葉に飛鳥も真剣な表情をした。

 

香澄「…飛鳥くん」

飛鳥「何です?」

香澄「…そうやって、蘭ちゃんや彩先輩達、友希那さん達やこころちゃん達を守ってくれてたんだよね。今まで」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は静かに目を閉じた。同級生に絡まれていたリサを助けたり、野外活動で迷子になっていたつぐみを助けたり、飛鳥はこれまでバンドガールズを助けていた。

 

香澄「…今度は、私にも守らせてよ」

飛鳥「それでしたら早速やって貰いたいことがあるんですよ」

香澄「な、何!? 何でも言って!!」

 

 香澄が飛鳥を見た。

 

飛鳥「テストの成績上げてください」

香澄「そう言うのじゃなくて!!」

飛鳥「戸山さん。これが結構重要なんですよ。冗談抜きで」

香澄「え?」

飛鳥「テストの成績を上げるという事は…」

 

 と、飛鳥は言葉巧みに香澄の成績を上げさせるために説明した。実を言うと、香澄はテストの赤点の常習犯であり、勉強を教えている有咲も手を焼いていたのだ。こうする事で香澄の為にもなるし、勉強を教えていた有咲の負担を避ける事にもつながる。そして上手くいけば自分への関心を避ける事が出来るのだ。

 

香澄「…そ、そっか」

飛鳥「ええ。そういう訳です。戸山さんの為にもなりますし、私の為にもなるんです」

香澄「……」

 香澄が考えた。

 

香澄「分かった! 私頑張る!」

飛鳥「……!」

香澄「だから今度のテスト、期待しててね!」

 そう言って香澄は去っていった。

飛鳥「……」

 飛鳥は静かに目を閉じた。

 

飛鳥(…いい子だな。戸山さん。まるであいつを見てるようだ)

 と、3年前自分に声をかけてくれた林日向の事を想いだした。

 

飛鳥(さて、オレもそろそろ教室に戻るか…)

 飛鳥がそう思って席を立ちあがろうとしたその時、

 

「おい、待てよ!」

飛鳥「?」

 飛鳥が横を向くと、男子生徒達がいた。

 

飛鳥「あ、お騒がせしてすみません」

「てめぇ、香澄ちゃんに何つった!?」

飛鳥「?」

 すると男子生徒達が近づいてきて、飛鳥を捕らえようとしたが、飛鳥は即座に逃亡した。

 

「待て!!」

「逃げるな!!」

飛鳥(すぐコレだよ。話聞いてなかったのかな…)

 

 そして1年1組

香澄「……」

 香澄が突然勉強しだしたので、有咲たちが驚きを隠せなかった。

 

有咲「ど、どうしちまったんだよ急に!!」

香澄「飛鳥くんを守る為だよ」

有咲「は、はぁ?」

 

 香澄の言葉に理解が出来ない有咲であったが…。

 

「待てー!!! 一丈字―!!!」

「逃げるなー!!!」

 と、飛鳥が男子生徒達に追いかけられていた。

 

「!!?」

香澄「飛鳥くん!?!」

有咲(あ、なるほどそういう事か…)

 有咲が困惑していたが、その光景を見て沙綾が驚いていた。

 

飛鳥(まあ、結果的に超能力使って、職員室に誘導して先生達に取り押さえて貰ったんだけどね…)

 

 ちなみにその男子生徒達は放課後まで説教されていた。

 

*********************

 

 そして…

 

香澄「やったよ飛鳥くん!! 私平均点70点以上あった!!」

 

 定期テストが行われ、香澄はなんと上の下まで成績が上がっていた。5分の2以上の順位で、成績表を返してもらった瞬間、3組の教室にやってきた。

 

飛鳥「頑張りましたねー」

有咲「な、何かの間違いだ…」

 ちなみに有咲は香澄の1個下だった。

 

香澄「これで少しは飛鳥くんが困る事はなくなるよね!?」

有咲「その前に今まで勉強教えてたあたしにも感謝しろ…」

飛鳥「まあ、少しはですけどね…」

 と、飛鳥が苦笑いした。

 

香澄「それじゃあそれじゃあ!! 一緒にギター弾こうよ!」

飛鳥「私今ギター持ってないんですけどね…」

たえ「私の貸してあげる」

飛鳥「え、いいんですか?」

 飛鳥が驚いた。

 

香澄「来てくれるの!?」

飛鳥「え、来て良いんですか?」

香澄「来て良いよ!! 大歓迎!!」

飛鳥「…まあ、今回のテスト頑張ったみたいですし、1回だけなら」

香澄「やったー!!」

 と、香澄が喜んだが、次の瞬間だった。

 

香澄「ありがとー!!」

 香澄が飛鳥に抱き着いた。そして空気が止まった。有咲、沙綾、りみが顔を真っ赤にして、たえがちょっとだけ頬を染めていた。

 

飛鳥「戸山さん」

香澄「なに?」

飛鳥「私の性別をご存じでしょうか?」

香澄「え? 男の子でしょ…あっ」

 香澄が気づいた。

 

香澄「あっ…あああああーっ!!!////// ち、違う!! そんなんじゃないよ!!? そういう意味じゃないよ!!?//////」

 と、香澄が慌てふためいた。

 

たえ「香澄大胆…」

りみ「はわわわわわわ…//////」

沙綾「あははは…//」

有咲「な、何やってんだよお前ハァ!! これだから最近の若い男女による…」

 

 慌てる香澄を飛鳥は呆れながら見ていた。

 

飛鳥「…ギター、また今度にしますか?」

香澄「いいえ。来てください…////」

飛鳥「分かりました」

 

 香澄が俯いて返事をすると、3組のクラスメイト達は香澄の可愛さに鼻血を出していた。

 

(やっぱりなんだかんだ言って可愛いんだよなぁ!!)

(羨ましいけど、あいつ等みたいには絶対なりたくない!!)

(一丈字くんなら許せる!! だってうちら3組の女子にも優しいし!!)

(中学絶対一人は、一丈字くんの子好きな子いただろうなぁ…)

 

 

 今日もバンドリ学園は平和だった。

 

おしまい

 

 



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第183話「あこが…」

【2022/4/19】
誤字報告ありがとうございました。


 

 ある日の事だった…。

 

友希那・紗夜・リサ・燐子「」

 

 Roseliaがスタジオで練習をしていたが、唖然としていた。

 

あこ「あこ!! こんなに高得点を取ったの初めて!!!」

 

 あこが友希那達にテスト用紙を見ていたが、ほぼ80点以上だった。

 

燐子「あ、あこちゃん…」

 燐子はロボットのような動きであこを見た。

友希那「…まさかとは思うけど、カンニングをしたわけじゃないわよね」

あこ「あー!! やっぱり言ったー!! 酷いですよぉー!!」

燐子「…いえ、カンニングはしてなさそうです」

 

 燐子がテスト用紙を見て言い放った。

 

燐子「…文章題の回答にあこちゃんらしさが出ています」

紗夜「……!!」

 

 いつも赤点ばかり取っていたあこが急に頭が良くなり始めたので、動揺が隠せなかった。どう考えてもカンニングをしているとしか思えなかったが、だが結果が結果な為、何とも言えずにいた。

 

友希那「…あこ」

あこ「何ですか!? カンニングは本当にしてませんよ!?」

友希那「どうやって勉強したの?」

あこ「ふふーん。センパイに教えて貰ったんです!」

友希那「センパイ…」

 すると4人はすぐにある人物が思い浮かんだ。

 

 そう、一丈字飛鳥である。

 

紗夜・リサ・燐子(あ、あー…)

 何か納得した3人だった。

友希那「どういう勉強法をしたの?」

あこ「えっとですね。例えば数学なんですけど…」

 と、あこが友希那達に勉強法について説明したが、あまりにも逸脱し過ぎていて絶句していた。

 

紗夜(もしかして一丈字さん…。本当は凄く頭いいんじゃ…)

リサ(数学はパズルって…いかにも頭の良い人が言う台詞じゃん…)

燐子(パズルゲー…確かに言われてみれば…)

 

 ちなみにあこの数学の点数は93点だった。

 

友希那「そ、そう…」

 友希那は動揺していた。

あこ「さあ! 赤点は免れたし、練習を始めましょう!」

 と、あこは張り切っていたが他の4人はもうそれどころではなかった。

友希那「ゴメンなさいあこ。ちょっと今日は個人練習でやって頂戴」

あこ「えー!! 何でですか!? あこのテストの点数がそんなに信じられないですか!?」

リサ「ゴメン。本当に信じられない…」

友希那「ちょっと一丈字くんに話を聞いてもいいかしら…?」

あこ「えー」

燐子「う、疑ってるわけじゃないんだよ?」

 

 と、友希那は飛鳥に電話をかけた。

 

***********************

 

 ファミレス

 

リサ「ごめんねー。飛鳥くん。呼び出したりして」

飛鳥「ええ…」

 

 呼び出された飛鳥は困惑していた。本当は電話のみで何とかしたかったが、説明するのに直接会ってやった方が分かりやすいと友希那が判断したため、仕方がなしに直接会う事にしたのだ。

 

リサ「お詫びにご馳走するからさ。好きなの頼んでよ」

飛鳥「いえ、ちゃんと自分で払います…」

友希那「私の顔を立ててくれると有難いわ」

 

 飛鳥が友希那を見た。

 

リサ「えっと。まあそういう事」

飛鳥「…本当によろしいんですか?」

友希那「ええ。呼び出して奢らせるなんて真似は出来ないわ」

飛鳥「わ、分かりました…」

 友希那が目を閉じて答えると、飛鳥は承諾した。

 

友希那「さて、本題に戻るけど一丈字くん。あこにどうやって勉強を教えたの?」

飛鳥「そうですね…。少し説明がおかしくなるんですけど…」

 飛鳥が4人を見渡した。

 

飛鳥「早い話が、宇田川さんの好きな事と、テストで覚える内容を結び付けて、宇田川さんが理解できるように説明したんです」

友希那「!」

飛鳥「例えば数学なんですけどね…」

 と、飛鳥が説明をしだした。

 

友希那・紗夜・リサ・燐子「……」

 飛鳥の説明の内容に4人が困惑した。ぶっちゃけそれで覚えられるの…と、不思議そうにあこを見ていた。

 

紗夜「それにしてもよくこんな勉強方法が思いつきましたね…」

リサ「どうやってひらめいたの?」

飛鳥「前に白金先輩が、宇田川さんが楽譜を読めないって話をされた時に、まさかと思ったんですよね」

「!!?」

 皆が燐子を見ると、燐子ははっと気づいた。

 

飛鳥「確か音ゲーの矢印でドラムをたたいていたと…」

紗夜「そうだったんですか!?」

リサ「ある意味凄いというか…」

友希那「…それで?」

 

飛鳥「それがきっかけでした。で、その後に宇田川さんからテストが近づいてるから勉強を教えて欲しいって相談されて…」

「そうだったの!!?」

燐子「ど、どうして一丈字くんに…」

あこ「えっと…センパイに頼んだら何とかなりそうだと思ったから」

飛鳥「で、私も白金先輩の話を聞いて、確かめたい事があったので、そのまま勉強を見ました」

紗夜「…そして、先ほど仰ってた勉強法で教えたと」

飛鳥「はい。一応覚えるコツとかも教えたので、効果てきめんでした」

 

 飛鳥の言葉に4人が困惑した。

 

友希那「…とにかく、テストの成績はどうにかなったけど、楽譜を読めないって言うのは問題ね」

紗夜「そうですね…」

リサ「燐子の負担にもなるしねー…」

あこ「やっぱり…」

飛鳥「矢印でドラムの演奏ができる点では、ある意味才能ですけど、ちゃんと楽譜を覚えた方が良さそうですね」

友希那「当然よ」

 と、友希那が堂々と言うが…。

 

リサ「あ、そういや今度はあたし達がテストだ」

友希那「……」

紗夜「湊さん」

友希那「興味ないわ」

リサ「興味ないわじゃないでしょ! ここで赤点取ったらあこに偉そうな事言えないよ!?」

燐子「そ、そうですよ…」

 すると飛鳥が困惑した様子をした。

 

友希那「…何よ」

飛鳥「いえ、美竹さんの手前、ちゃんと勉強しないとまずいですよ」

リサ「そうだねー。勉強の方はあたしの方が上でしたねって言われたら先輩として恥ずかしいよ?」

 友希那が固まり、蘭に言われたのを想像した。

 

友希那「一丈字くん」

飛鳥「何です?」

友希那「明日から勉強見て頂戴」

飛鳥「えっ」

リサ「ちょ、友希那! 流石に迷惑でしょ!」

友希那「あこをトップにしたその腕前、私にも見せて貰うわ」

飛鳥「いえ、美竹さんの事を意識して頂ければ十分かと…」

友希那「……」

飛鳥「えぇぇぇ…」

 

 結局面倒を見る事にした。

 

 

おしまい

 

 



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第184話「飛鳥とRoseliaとファミレス」

 

 

 前回までのあらすじ

 

 あこのテストの急成長に飛鳥が関わっている事が判明した友希那は、飛鳥をファミレスに呼び出したが…。

 

***********************

 

友希那「さて、食べましょうか」

紗夜「そうですね…」

 

 と、飛鳥とロゼリアは一緒に食事をとる事になった。

 

 ちなみに席順

 

リサ・友希那・紗夜

あこ・飛鳥・燐子

 

 結構大きなテーブルを取っていたが、飛鳥が説明するにあたり、密集していた。

 

飛鳥「……」

リサ「本当に遠慮しなくていいからね?」

飛鳥「恐れ入ります」

 

 飛鳥が一礼すると、あこが不満そうな顔をした。

 

あこ「そういえばセンパイはいつになったら敬語やめるの?」

飛鳥「今は無理ですね」

あこ「どうして?」

飛鳥「周りの席を見渡して戴ければわかります」

あこ「え?」

 

 と、あこが見渡すとそこには飛鳥に対して嫉妬の念を押している男子生徒達の姿が…。

 

あこ「結構うちの生徒が…」

友希那「ここまでつけてきたのね…」

紗夜「うちのクラスの人もいますね…」

飛鳥「必要になったらお金を払って退場しますので」

友希那「あなたがいなくなったら、一気に詰め寄って来るわ。一緒にいて」

飛鳥「はい」

 すると店員がやってきた。

 

「お客様。ご注文は?」

リサ「はーい、それじゃ皆何にする?」

あこ「あこ、ハンバーグプレート!」

燐子「わ、私はドリア…」

紗夜「私はBLTサンドで」

 すると友希那。リサ、燐子、あこの4人が紗夜を見た。

紗夜「な、何ですか///// 今井さん。ご注文は?」

リサ「そうだね。私ペペノンチーノ! 友希那は?」

友希那「チキンサラダ。後は一丈字くんよ」

飛鳥「あ、すみません。和食頼んでいいですか?」

リサ「い、いいよ…?」

飛鳥「ロースかつ定食。ごはん大盛りで」

「畏まりました。ご注文は以上で宜しいでしょうか?」

 と、注文が終わりかけた時、紗夜は飛鳥が持っていたメニューを見て目を開いていた。

燐子「ひ、氷川さん?」

紗夜「はっ!! な、何でもありません!」

 

 紗夜が慌てたのを飛鳥達が知り、飛鳥がメニューを裏返すと、ポテトの新メニューがあった。

 

『ダイマックスポテト』 ※ とにかく山盛り。

 

飛鳥「…頼んでみます?」

リサ「いや、流石にやめたほうが…」

紗夜「……」

(めっちゃ頼みたそうにしてるっ!!!)

 と、飛鳥、リサ、あこ、燐子が心の中で突っこんだ。

 

友希那「紗夜。あなた、これくらいの量食べられるの?」

あこ「ま、まあ6人もいれば大丈夫だと思いますよ! じゃあこれ1つ!」

「畏まりましたー」

 

 そう言って店員が去っていった。

 

リサ「…そういえば飛鳥くんって和食好きなの?」

飛鳥「ええ。ですが、洋食も好きですよ」

 

 リサと当たり障りのない話をし始めた。

 

飛鳥「ただ、今は白米が食べたい気分だったので…」

友希那「あんな量でポテトも食べられるの?」

飛鳥「まあ、軽くつまむ程度で…」

 

 と、飛鳥が苦笑いしたが、数分後…。

 

「お待たせしましたー。ダイマックスポテトでーす」

「でっけぇえええええええええ!!!」

 

 ダイマックスポテトが運ばれてきたが、6人の予想以上にポテトの寮が尋常じゃなかった。飛鳥、燐子、リサ、あこは困惑していたが、紗夜は気のせいかキラキラしていた。友希那は無表情だった。

 

 すると飛鳥は悪意を感じ取った。

 

『一丈字の奴、げろ吐いて嫌われろ!』

『何であんな奴がロゼリアと…』

『醜態さらせ!』

『はぁーあ…。あの5人、とってもいいにおいするんだろうなぁ…嗅ぎてぇ…』

 

 約一名変態発言をしていて、飛鳥はげんなりしていた。ぶっちゃけ悪口よりも変態発言が一番堪えた。

 

燐子「ど、どうしたんですか…?」

飛鳥「いえ、なんでもございませんよ」

友希那「ハァ…。周りの男子生徒達の目がうるさいわね」

 と、友希那が悪態をついた。

 

友希那「どうせ私達がいい匂いするとか思ってるんでしょう」

飛鳥(正解です)

紗夜「い、いい匂いって…」

あこ「匂いフェチなのかな?」

リサ「…違うと思うよ」

 リサは思わず視線をそらすと、燐子も恥ずかしそうに俯いた。

 

友希那「あなたは特にそう言う事を考えてないでしょうね」

飛鳥「考えてはいないんですけど、私がそういう事を考えていると誰かが噂を広めるでしょうね…」

 飛鳥がどんよりした顔をしていた。

 

あこ「どんな感じ?」

飛鳥「え、私が湊さん達の匂いを嗅いでいたとかなんとかですよ」

 飛鳥の発言に空気が止まった。

 

リサ「だ、大丈夫だよー…」

飛鳥「だと良いんですけどねぇ…」

 リサがなんとかフォローをするが、飛鳥は疲れ切っていた。

 

『一丈字め!!』

『同情を誘うとかマジで卑怯だろ』

『ないわ』

『ああ…Roseliaメンバー全員のパンツ嗅ぎたい…』

 

 飛鳥は更にげんなりした。

 

友希那「気にしないで行きましょう」

飛鳥「…はい」

 

**********************

 

 そして注文したメニューが運ばれたが…。

 

「ダイマックスポテトでーす」

リサ「でっかああああ!!!」

 

 予想以上にポテトの量が尋常ではなく、リサが絶叫していた。他の5人は唖然としている。

 

「ご注文は以上で宜しかったでしょうか?」

飛鳥「あ、はい…」

「それではごゆっくりー」

 

 と、店員が去っていった。

 

リサ「ど、どうすんのよコレ…」

友希那「紗夜がいるから大丈夫よ」

紗夜「ええ。私が言い出したのですから、責任は取りますよ…」

燐子「で、ですが無理はしないでください…」

あこ「ソースのおかわりは自由ですから、頑張りましょう!」

友希那「その前に自分の分を食べてからにしなさい」

飛鳥「……」

 

 こうして皆が食事にありついたわけだが…。

 

飛鳥「本当に量が多いですねコレ…」

紗夜「ええ…」

 

 飛鳥が一足先に食べ終わり、ポテトの消費に貢献していた。

 

あこ「センパイ、食べるの早…」

飛鳥「お腹空いてたもので」

紗夜「……」

 紗夜は熱心にポテトを食べていたので、飛鳥はじーっと紗夜を見つめていた。

 

紗夜「…!!/////」

 飛鳥がじーっと自分を見つめていたので、紗夜が頬を染めた。

紗夜「な、何ですかっ!//// 人の顔をじろじろ見て!!/////」

 と、紗夜が憤慨すると、

 

「そうだ!! 何氷川さんの顔をじろじろ見てんだ!!」

「この痴漢野郎!!」

「やっぱりお前そう言う奴だったんだな!!」

「Roseliaに近づくんじゃねぇ!!」

 

 男子生徒達が騒ぎ始めた。

 

飛鳥「…さて、私はここで退場のようですね」

友希那「待ちなさい。私達を見捨てる気?」

燐子「お願いですからここにいてください…。分かってますので…」

あこ「そーだよ! ポテトも勿体ないよ!!」

 

 と、友希那達に引き留められた。

 

紗夜「いや、その…何故私の顔を見つめていたのかを…/////」

飛鳥「ポテトを美味しそうに食べてたので…」

紗夜「そ、そんな事ありませんっ!!////」

 紗夜がぷいっと横を向くと、男子生徒達のハートが射抜かれた。

 

「ぐ、ぐっはぁ!!」

「氷川さんのテレ顔…」

「トゥンデレ…」

「フォオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 いろんなリアクションでもだえ苦しんでいたが、Roseliaはガン無視した。

 

あこ「紗夜さんってポテト大好きなんだよ」

紗夜「そ、そんなに好きって訳じゃ…/////」

飛鳥「そうなんですか」

 

 飛鳥は普通に言い放ったが、紗夜がポテトが大好きだというのを確信して、穏やかな笑みを浮かべた。

 

紗夜「…わ、私の事、子供っぽいとかって思ってませんよね!?」

飛鳥「思ってませんよ。可愛らしいとは思ってますけど」

 飛鳥のこの一言で紗夜は完全に顔を真っ赤にした。他の4人も頬を染めていた。

 

飛鳥「まあ、ポテトの事がそんなに好きじゃないにしても、恥ずかしがる事ではないと思いますよ…って、どうされました?」

 飛鳥が聞いた時には紗夜はうつぶせ状態になっていて、プルプル震えていた。

 

飛鳥「そんなに面白かったですか?」

友希那「…違うと思うわ」

リサ「紗夜って結構シャイだから…」

紗夜「シャ、シャイなんかじゃありません…!!/////」

 

 うつぶせながら言い放ったが、説得力は全くの皆無で燐子とあこは耳まで真っ赤になっている事に気づいた。

 

 

*******************

 

 後日。2年2組の教室で…。

日菜「おねーちゃん。昨日からずっと様子がおかしいの。何か知らない?」

友希那「…知らない方が良いわ//////」

リサ「そっとしといてあげて…/////」

 

 日菜が紗夜の様子がおかしい事に気づいて、友希那とリサに聞いたが、喋ると紗夜に殺されるので言えなかったという。

 

 2年1組

 

紗夜「あの子ったら…!!!//////」

燐子「…分かります///////」

 

 

 

おしまい

 



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第185話「飛鳥とリサ」

 

 

 それはある夏の日の事だった。

 

飛鳥「暑いなぁ…」

 

 飛鳥は一人で道を歩いていた。夏休みで学校もなかった。長期休暇中は一応、任務の対象外となっていたが、飛鳥は東京に残っていた。

 

飛鳥(ま、定期券とかも持ってるからいつでも広島に帰れるんだけどね…)

 と、その時だった。

 

「おーい!! 飛鳥くーん!!」

飛鳥「?」

 

 誰かに声をかけられて後ろを振り返ると、そこにはRoseliaの今井リサがいた。

 

飛鳥「今井先輩!」

リサ「こんにちはー☆」

飛鳥「こ、こんにちは…」

リサ「こんな所で何してるの?」

飛鳥「買い物です…」

リサ「買い物? もしかして夕ご飯?」

飛鳥「…そんな所ですね」

 

 飛鳥が視線を逸らしながら答えた。

 

リサ「え、飛鳥くんって料理するの?」

飛鳥「ええ。それなりにしますよ。今は夏休みなので、特に」

リサ「へ~。知らなかった。そういえばおうちの人は?」

飛鳥「一人暮らしなんですよ」

リサ「あ、前にそんな事言ってたね」

飛鳥「ええ」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

リサ「あ、そうだ飛鳥くん。もし良かったら、飛鳥くんの家を見せて貰いたいんだけど…ダメかな?」

飛鳥「家の中はごめんなさい」

リサ「どうして? もしかしてエッチな本とかが…」

飛鳥「18歳未満なので、そういうのはないんですが、私としても今井先輩としても、都合が悪いんですね」

リサ「あたし?」

飛鳥「Roseliaのイメージが…」

リサ「あー…成程ね」

 

 リサが納得して苦笑いした。

 

飛鳥「エントランスなら良いんですけど」

リサ「エントランス?」

飛鳥「結構いろんなのがあるんですよ」

リサ「ふーん…。じゃあ、それでもいいわ」

 

********************

 

 と、飛鳥がリサを自分のマンションへ連れて行ったが…。

 

リサ「あ、飛鳥くんちって結構お金持ち…?」

飛鳥「小学校の頃からの友達のお爺さんがオーナーをしてて、家賃光熱費なしで住まわせて貰ってるんですよ」

リサ「そ、そうなんだ…」

飛鳥「食費とかは流石に自腹ですけどね。で、あっちはキッチンルームです」

リサ「キッチンルーム?」

 

 飛鳥がリサをキッチンルームに案内した。

 

飛鳥「ここで自由に調理とかが出来るんですね」

リサ「な、何で…?」

飛鳥「大勢のお客さんが来たときにホームパーティーをする為だって言ってましたね。殆んど使われてませんが」

リサ「へ、へえ…」

飛鳥「ちなみに警備員さんやコンシェルジュさん、このキッチンルームもセキュリティがしっかりしてるので、何かあっても大丈夫です」

リサ「す、すごいね…」

飛鳥「結構いいマンションなんですよね…」

 と、飛鳥とリサが話をしていた。

 

リサ「けど、どうして飛鳥くんはこっちに来ようって思ったの?」

飛鳥「え?」

リサ「確か広島から来たって…」

飛鳥「そうですね…」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「親の仕事の都合なんですよ」

リサ「そ、そうだったんだ。でも親御さんってあまり家にいないんじゃ…」

飛鳥「そうなんですよねー。こっちに転校してきたはいいんですけど、二人とも県外で仕事しなきゃいけなくなっちゃって、私だけこっちに残る事になっちゃったんですよ。まあ、二人ともそれぞれの職場で必要とされてるみたいだから仕方ないんですけどね」

 

 と、飛鳥はあたかも事実のように言っているが、実際はこころの家からの依頼で、広島から急遽東京にやってきて、家もここを紹介して貰ったのだ。ちなみに飛鳥の両親は母親は広島県警で、父親は海外で働いている。必要とされている事はされているが、やめようと思えばやめることも出来るのだ。

 

リサ「……」

 

 飛鳥の横顔を見てリサはある事を想いだした。それは、夏休み前にクラスメイトや同級生の男子が飛鳥の悪口を言っていた事だった。飛鳥の何が気に入らないのか、リサには理解が出来なかった。

 

リサ「…ねえ、飛鳥くん」

飛鳥「……」

 

 飛鳥はリサが何が言いたいかを察し、何も言わずにリサを見た。

 

リサ「その…学校、楽しい?」

飛鳥「楽しいですよ。ちょっとばかしにぎやかですけど」

リサ「……」

 リサが悲しそうな顔をすると、飛鳥が苦笑いして俯いた。

 

飛鳥「…まあ、小さい頃は大嫌いだったんですけどね。同級生は意地悪だったし、先生は信用できなかったし」

リサ「!」

飛鳥「でも今は違う。今でも人に嫌われてるけど、もう一人じゃないって分かったから」

 

 飛鳥がリサを見つめた。

 

飛鳥「あなたや弦巻さん、色んな人が気にかけてくれる。もうそれだけで十分です」

リサ「飛鳥くん…」

飛鳥「まあ、人を部屋に入れたくないって言うのは、そういう事があったからなんですね。あまり昔の事を知られたくなかったからなんですよ」

リサ「ご、ごめんね! 変な事聞いて…」

飛鳥「いえ、いいんですよ。私が勝手に喋ったことですから。寧ろスッキリしました。ありがとうございます」

リサ「!」

飛鳥「Roseliaの活動もそうですが、今後のご健勝をお祈りしています」

リサ「……」

 

****************

 

リサ「お邪魔しました」

飛鳥「ええ」

 

 飛鳥とリサがマンションを出て、リサが帰ろうとしていた。

 

リサ「飛鳥くん」

飛鳥「?」

 リサが困った顔をしながら飛鳥を見つめる。

 

リサ「その…何かあったらいつでも話してね!」

飛鳥「……!!」

 

 リサの言葉に飛鳥が苦笑いした。

 

 

飛鳥「はい」

 

*****************

 

飛鳥「…っていう事があったんだ」

「マジかよお前…」

飛鳥「一時はどうなるかと思ったよ。バレる事も覚悟してた」

 

 その夜、飛鳥は中学時代からの親友・奈良川京と電話で話していた。

 

飛鳥「それよりもちゃんと宿題してるか?」

京「してるよ。椿がうるせぇんだ…」

飛鳥「ガミガミ言われる前にさっさとやっちまいな」

京「そういえばお前、こっちに帰ってこねーのか?」

飛鳥「来週帰る予定」

京「えっ…」

飛鳥「…見て欲しいのか?」

京「で、出来れば…」

 京の声色に飛鳥は一息ついた。

 

飛鳥「仕方ねーな。自分で宿題を片付けようとする姿勢に免じてみてやるぜ」

京「サンキュー!!」

飛鳥「だけど都合が悪くなったら、その時は自分で何とかしな」

京「わ、分かってるよ!」

 と、飛鳥がある事を考えた。

 

飛鳥「京」

「何だよ」

飛鳥「さっきの話だけど、先輩に昔の事を話したらさ。本当に幸せだったんだなって」

京「えっ…」

 飛鳥は静かに目を閉じた。

 

飛鳥「中学3年間。お前や日向、椿がいてくれて良かった。本当にありがとう。感謝してる」

京「……!!」

飛鳥「じゃあな。あんまり夜更かしするなよ」

 そう言って飛鳥は電話を切った。

 

*****************

 

リサ「……」

 

 同じ頃、リサは床に就いていたが飛鳥の事が忘れられずにいた。

 

『あなたや弦巻さん、色んな人が気にかけてくれる。もうそれだけで十分です』

 

 飛鳥の言葉がずっと頭から離れなかった。

 

リサ(あの子…あたしが知らない所でずっと苦しんだり、戦ってたんだね…)

 

 今度飛鳥に遭ったら何をしてあげられるだろう。リサはずっと考えていた。

 

 

おしまい

 



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第186話「ヒーローだって悩んでる Ver.A」

 

 

 それはある日の事だった…。

 

「遅くなっちゃった…」

 

 蘭、ひまり、巴、つぐみの4人が夜道を歩いていた。モカはアルバイトの為不在だった。4人もいるから安心だと思われたが、突如電灯が全部消えた。

 

「!!?」

 

 突然全部切れた事で、4人は不安に駆られた。

 

ひまり「な、なにっ!!? 停電!!?」

つぐみ「いや、周りは電気がついてるみたいから違うけど…」

巴「何で突然全部切れるんだよ!!」

蘭「こわい…」

 と、蘭が震えだした。

 

ひまり「うう…こんな時モカがいてくれたら少しは安心なのに…」

つぐみ「う、うん…」

 

 ひまりとつぐみがそう言うと、4人が身を寄せ合ったその時、後ろから誰かが追いかけてきた。

 

巴「う、後ろから誰かが追いかけてくるぞ!!」

蘭「い、いやあああああああああああああああ!!!!」

ひまり「いやああああああああああああ!!!」

つぐみ「ま、待ってぇええええええええええ!!!」

 

 巴の一言に驚いた蘭とひまりが真っ先に逃げて、巴とつぐみが追いかけていった。

 

「待ってよ蘭ちゃん!!!」

「僕だよ!! ひまりちゃん!!」

「巴ちゃんは僕が守る!!」

「つぐみちゃあああああああああん!!!」

 

 …声をかけた犯人はバンドリ学園の男子生徒達だったのだが、下心が丸出しな上に走りながら叫んでいたので、声が変な感じになって、あからさまに不審者みたいになっていたのだった。しかも運悪く電灯が全部切れるという縁起の悪い事態も起きていたので、蘭達は完全に不審者だと思い、逃走していた。

 

蘭・ひまり・巴・つぐみ「いやぁああああああああああああああ!!!!」

「待ってぇええええええええええええええええ!!!」

 

 と、蘭達の悲鳴は町中に響き渡った。

 

「…あの声は」

 

 飛鳥が近くを通っており、蘭達の悲鳴に気づくと超能力で蘭達の様子を見た。

 

飛鳥「何があったのかわからないけど、パニック状態になってるな…」

 と、飛鳥は現場まで近づいて、超能力で蘭達を落ち着かせた。

 

蘭「…ハァ、ハァ。あれ?」

ひまり「な、何だろう…急に心が落ち着いてきた…」

巴「ああ…」

つぐみ「はぁ…はぁ…」

 

 そして追いかけてきた男子生徒達にも超能力をかけて落ち着かせ、両チームが向き合った。

 

「あっ…」

飛鳥「……」

 これで少しは仲よくしてくれるかと飛鳥は確信していたが…。

 

ひまり「ゲッ!!」

飛鳥「?」

巴「お、お前ら!! こんな所までつけまわしてくるなんて!!」

蘭「最悪…」

 

 飛鳥は一体何のことかわからず、超能力で覗いたが…。

 

 …男子生徒達は日頃からAfterglowに対していやらしい目で見ていたのだ(特にひまりの胸)。バイト先にも押しかけては体をジロジロ見ていたのだった。

 

飛鳥「……」

 飛鳥は額を手で抑えた。せっかくチャンスを作ってやろうと思ったが、自分が何もしなくても勝手に自滅していたので呆れて言葉が出なかった。

 

「違う!!」

「僕たちは女子だけで帰ってる君達が心配だったんだ!」

「電灯が全部消えて震えていたじゃないか!」

「さあ、僕たちと一緒に帰ろう…」

 

 と、男子生徒達が説得したので、飛鳥が頭の中をのぞいたが…。

 

 全員いやらしいことを考えていた。普通にAfterglowからお礼を言われたりお世辞を言われるのを想像してるだけならまだ良かったが、どさくさに紛れて体を触ろうとしたり、ましてや性行為を想像している輩もいた。

 

飛鳥(一人くらい本気で心配してる奴いねーのかよ!!!)

 飛鳥は心の底からあきれ果てた。こんな形でヒーローになってもちっとも嬉しくないし、ましてや広島に帰れるのはいつになるんだと飛鳥はそう思っていた。

 

 ずっと高見の見物でいたかったが、ずっと隠れているとストーカーと間違われる上に、蘭達がずっと警戒して話が進まない為、仕方なしに顔を出す事にした。

 

飛鳥「あのー」

「?」

飛鳥「騒がれてましたけど、どうされました?」

 と、飛鳥が顔を出すと男子生徒達が嫌そうな顔をし、4人はぱあっと表情を輝かせた。

 

「ああ!? てめーには関係ねぇよ!!」

「あっち行け!!」

「邪魔なんだよ!!」

飛鳥「そうですか」

ひまり「いや、そうですかじゃないよ!!」

蘭「アタシ達、こいつらにつけまわされたんだけど」

「誤解だ!!」

飛鳥「……」

 飛鳥が考える。

 

飛鳥「美竹さん達が男子生徒達に追いかけられてる所は目撃しましたが、ちょっとそれだけで判断は…」

蘭「アタシ達の言う事、信用できないの?」

ひまり「ちょ、ちょっと蘭!」

飛鳥「まあ、少なくともこの方たちは前にも絡まれたことがあったので、恐らく美竹さん達の言っている方に分がありますね」

「てめー!! 適当な事言ってんじゃねぇよ!!」

「殺すぞ!!」

飛鳥「殺すなんて言葉、今ここで言わない方が良いですよ」

「は?」

 飛鳥が腕を組んだ。

 

飛鳥「最近この辺で不審者が出てるって話ですから」

「!!?」

 

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

 

飛鳥「まあ、そちらの方々は動機はどうであれ、本当に美竹さん達の事を心配してたんですよね?」

「あ、ああ!! もちろんだ!!」

「てめーなんかに言われなくても!!」

「ていうか大体てめぇ、言い方が偉そうなんだよ!!」

飛鳥「乱暴な言葉づかいも大概ですよ。それよりも早くここから移動しましょ?」

「……」

 

 そう言って飛鳥達が移動しようとしたその時、突如ライトが浴びせられた。

 

飛鳥「!!」

 

「いました!!」

蘭「え!?」

 すると警察官達が飛鳥に近づいた。

 

「君だね?」

飛鳥「……」

 

 警察官の言葉に蘭達が驚いた。

 

「ま、まさか不審者って一丈字の事だったのか!!」

「なんだかんだ言って、蘭ちゃん達を騙して強姦するつもりだったんだ!!」

「失せろ!! 二度とその面見せるな!!」

 と、男子生徒達が騒いで、蘭達は信じられなさそうにしていた。

 

警察官「…何を言ってるんだね? 君達は」

「え?」

 警察官は飛鳥を見た。

 

警察官「一丈字飛鳥くん。君だね? 最近ここをうろついていた殺人犯を捕まえてくれたのは」

飛鳥「……」

「えええええええええええええええ!!!?」

 皆が驚いた。

 

飛鳥「事情聴取は全て済ませた筈ですが…」

警察官「済まなかったね。不審者を捕まえたとはいえ、一人で帰した事が問題だったんだ。さあ、私と一緒に来なさい」

飛鳥「あ、その前にお願いしたい事が一つあるんですよ」

「何だね?」

飛鳥「こちらにいる方々を、自宅まで送って貰えませんかね。特にあちらの女の子4人は別件ですが、怖い目に遭ったらしくて…」

「そうだったのか。分かった。パトカーを手配しよう」

飛鳥「出来れば女の子達は、女性警官の方でお願いします。男性だと性別が違うという事でちょっと…」

「…そこまで気づかいが出来るあたり、流石だ」

 

 と、飛鳥の計らいによって、蘭達(と、男子生徒達も)は自宅までパトカーで送られる事になった。

 

ひまり「あの、一丈字くん。本当にありがとね!?」

飛鳥「いえいえ。後の事は心配しないでゆっくりお休みください」

巴「ていうかお前、殺人犯を捕まえたって…」

飛鳥「ああ。私に襲い掛かろうとしていたのを返り討ちにしただけですよ。包丁を持っていただけで大したことはございませんでした」

蘭「いや、十分大ごとなんだけど!!?」

つぐみ「本当に大丈夫なの!!?」

飛鳥「大丈夫ですよ。それではまた学校で」

 

 そう言って飛鳥はつぐみ達と男子生徒達を見送ると、警察官に家まで送られた。

 

*******************

 

 その後、不審者が捕まったことは学校中で公表され、生徒達は安堵していた(この時、集会では飛鳥が捕まえた事は伏せられていたが、口コミで全部バレた)。

 

 暫くは集団で下校し、人気のない道を通らないようにとの事だったのだが…。

 

「蘭ちゃん! 僕が今日から送ってあげるよ!」

「ひまりちゃん! 今度からはオレと一緒に帰ろ!?」

「巴ちゃん! バイト先まで出迎えしてあげるよ!」

「つぐみちゃん!!」

 

 と、男子生徒達が事前に蘭達に言い寄るようになった。蘭、ひまり、巴は鬱陶しがっていて、つぐみは苦笑いしていた。当然モカにも言い寄ってきたわけだが…。

 

モカ「モカはだいじょーぶー。とーっても強い人にボディーガードを頼んでるから~」

「!!?」

 

 放課後…

飛鳥「……」

つぐみ「ご、ごめんね一丈字くん…」

 5人纏めて送迎する事になったが、後ろに男子生徒達がついてきていた。

 

飛鳥「これ、私が出る意味あります?」

巴「細かい事は気にすんなって!」

蘭「あいつら絶対何かしてくる…」

ひまり「私身体をジロジロ見られる…」

飛鳥「……」

 ひまりの言葉に飛鳥は何も言わなかった。

 

「一丈字の野郎…!!」

「どこまでも卑怯な手を使いやがって!!」

「1人くらいよこせっつうの!!」

「オレ、やっぱりあいつ嫌いだ!!」

 

 と、文句垂れながら飛鳥とAfterglowについて回った。

 

蘭「アタシはその100倍あんた達が嫌い」

モカ「ああいう所だよね~」

ひまり「一丈字くんも大変だよねー。ああいうのに絡まれて…」

飛鳥「…そうですね」

 

 飛鳥としては、ストレス発散の為に最近は弦巻家の施設を借りて、古びたサンドバックなどを思いっきり殴り飛ばしているので、胃が痛くなるという事はなかったが、それでもやっぱりしんどかった。

 

巴「本当にいつもお疲れさん。ラーメン食べに行こうぜ!」

つぐみ「こ、困ったことがあったら言ってね?」

飛鳥「ありがとうございます…」

 

 と、飛鳥は心の中でぐったりしていた。

 

 

おしまい

 



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第187話「ヒーローだって悩んでる Ver.B」

 

 それはある日の事だった…。

 

「遅くなっちゃった…」

 

 蘭、ひまり、巴、つぐみの4人が夜道を歩いていた。モカがバイトの為不在だったが、少しでも上達しようと練習に励んでいたが、気が付けばかなり遅くなっていたのだ。

 

「!!?」

 

 突然周りの電灯が全部切れて、暗くなったことで4人は不安に駆られた。

 

ひまり「な、なにっ!!? 停電!!?」

つぐみ「いや、周りは電気がついてるみたいから違うけど…」

巴「何で突然全部切れるんだよ!!」

蘭「こわい…」

 

 あまりの縁起の悪さに蘭が震えだした。

 

ひまり「うう…こんな時モカがいてくれたら少しは安心なのに…」

つぐみ「う、うん…」

 

 ひまりとつぐみがそう言うと、4人が身を寄せ合ったその時、巴が後ろから誰かが走ってきている事に気づいた。

 

巴「う、後ろから誰かが追いかけてくるぞ!!」

蘭「い、いやあああああああああああああああ!!!!」

ひまり「いやああああああああああああ!!!」

つぐみ「ま、待ってぇええええええええええ!!!」

巴「お、置いてくなぁああああああああああ!!!」

 

 巴の一言に驚いた蘭とひまりが真っ先に逃げて、巴とつぐみが追いかけていった。

 

「待ってよ蘭ちゃん!!!」

「僕だよ!! ひまりちゃん!!」

「巴ちゃんは僕が守る!!」

「つぐみちゃあああああああああん!!!」

 

 …声をかけた犯人はバンドリ学園の男子生徒達だったのだが、下心が丸出しな上に走りながら叫んでいたので、声が変な感じになって、あからさまに不審者みたいになっていたのだった。しかも運悪く電灯が全部切れるという縁起の悪い事態も起きていたので、蘭達は完全に不審者だと思い、逃走していた。

 

蘭・ひまり・巴・つぐみ「いやぁああああああああああああああ!!!!」

「待ってぇええええええええええええええええ!!!」

 

 と、蘭達の悲鳴は町中に響き渡った。

 

「…何やってるんだ?」

 

 飛鳥が近くを通っており、蘭達の悲鳴に気づくと超能力で蘭達の様子を見たが、理由に気づいて困惑していた。

 

飛鳥「かなりパニック状態になってるな…。このままだと危ないかも」

 と、飛鳥は現場まで近づいて、超能力で蘭達を落ち着かせた。

 

蘭「…ハァ、ハァ。あれ?」

ひまり「な、何だろう…急に心が落ち着いてきた…」

巴「ああ…」

つぐみ「はぁ…はぁ…」

 

 そして追いかけてきた男子生徒達にも超能力をかけて落ち着かせ、両チームが向き合った。

 

「あっ…」

飛鳥「……」

 これで少しは仲よくしてくれるかと飛鳥は確信していたが…。

 

ひまり「ゲッ!!」

飛鳥「?」

巴「お、お前ら!! こんな所までつけまわしてくるなんて!!」

蘭「最悪…」

 

 飛鳥は一体何のことかわからず、超能力でひまり達の頭の中を覗いたが…。

 

 …男子生徒達は日頃からAfterglowに対していやらしい目で見ていたのだ(特にひまりの胸)。バイト先にも押しかけては体をジロジロ見ていたのだった。

 

飛鳥「……」

 飛鳥は額を手で抑えた。せっかくチャンスを作ってやろうと思ったが、自分が何もしなくても勝手に自滅していたので呆れて言葉が出なかった。

 

「違う!!」

「僕たちは女子だけで帰ってる君達が心配だったんだ!」

「電灯が全部消えて震えていたじゃないか!」

「さあ、僕たちと一緒に帰ろう…」

 

 と、男子生徒達が説得したので、飛鳥が頭の中をのぞいたが…。

 

 全員いやらしいことを考えていた。普通にAfterglowからお礼を言われたりお世辞を言われるのを想像してるだけならまだ良かったが、どさくさに紛れて体を触ろうとしたり、ましてや性行為を想像している輩もいた。

 

飛鳥(Oops…)

 飛鳥は心の底からあきれ果てた。こんな形でヒーローになってもちっとも嬉しくないし、ましてや広島に帰れるのはいつになるんだと飛鳥はそう思っていた。

 

 ずっと高見の見物でいたかったが、ずっと隠れているとストーカーと間違われる上に、蘭達がずっと警戒して話が進まない為、仕方なしに顔を出す事にした。

 

飛鳥「あのー」

「?」

飛鳥「騒がれてましたけど、どうされました?」

 と、飛鳥が顔を出すと男子生徒達が嫌そうな顔をし、4人はぱあっと表情を輝かせた。

 

「ああ!? てめーには関係ねぇよ!!」

「あっち行け!!」

「邪魔なんだよ!!」

飛鳥「そうですか」

ひまり「いや、そうですかじゃないよ!!」

蘭「アタシ達、こいつらにつけまわされたんだけど」

「誤解だ!!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥が考える。よくライトノベルの主人公が「面倒くさいことに巻き込まれてやんなっちゃうぜ」的な事を言うが、全く持って同感だった。本気でめんどくさいし、これを見てる読者に対しても「お前もそう思うだろ?」とも聞きたくなってしまうくらいだった。

 

飛鳥「美竹さん達が男子生徒達に追いかけられてる所は目撃しましたが、ちょっとそれだけで判断は…」

蘭「アタシ達の言う事、信用できないの?」

ひまり「ちょ、ちょっと蘭!」

飛鳥「大丈夫ですよ。少なくともこの方たちは前にも絡まれたことがあったので、恐らく美竹さん達の言っている方に分がありますね」

「てめー!! 適当な事言ってんじゃねぇよ!!」

「殺すぞ!!」

 

 と、男子生徒達が喚くが飛鳥は冷静に突っぱねた。

 

飛鳥「殺すなんて言葉、今ここで言わない方が良いですよ」

「は?」

 飛鳥が腕を組んだ。

 

飛鳥「最近この辺で不審者が出てるって話ですから」

「!!?」

 

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

 

飛鳥「まあ、そちらの方々は動機はどうであれ、本当に美竹さん達の事を心配してたんですよね?」

「あ、ああ!! もちろんだ!!」

「てめーなんかに言われなくても!!」

「ていうか大体てめぇ、言い方が偉そうなんだよ!!」

飛鳥「それよりも早くここから移動しましょう? 風邪引きますし」

 飛鳥がそう言うと、

 

「何でてめーの指図なんか受けねぇといけねぇんだ!!」

「いい加減にしねーとマジで殺すぞ!!」

「ムカつくムカつくムカつく!!!」

 と、男子生徒達が発狂したが…。

 

「君達」

「!!」

 

「さっきから殺すとかという言葉が聞こえてるけど、どういう事だね?」

 中年の警察官が現れた。

 

蘭「言葉の通りです」

飛鳥「あの、美竹さん?」

「ま、まさか最近出回ってた不審者が高校生だったなんて…」

「君達、ちょっと署まで来なさい!!」

「な、何でオレ達が!!」

「来ないと公務執行妨害だぞ!! おい!!」

「はっ!!」

「は、離せぇ~~~~!!!!!」

 

 と、男子生徒達は警察官達に連れていかれた。

 

飛鳥「……」

 飛鳥は茫然としていた。

 

つぐみ「あ、えっと…一丈字くん。助けてくれてありがとう」

飛鳥「あ、いえ…」

 飛鳥がつぐみを見た。

 

ひまり「さーて! 一丈字くんが来てくれたからこれで安心ね! 帰るわよー!! えいえいおー!!」

巴「ひまり。近所迷惑」

ひまり「あ、はい…」

 ひまりが項垂れたその時がさっと音がした。

蘭・巴「ひぃいいいいいい!!!」

 と、蘭はつぐみに、巴はひまりに抱き着いた。

 

飛鳥「大丈夫ですか?」

蘭「大丈夫じゃない…。一秒でも早くここから離れよう…!!」

飛鳥「あ、はい。それじゃ私は後ろ見てるので…どなたか前見て貰っていいですか?」

「!?」

飛鳥「あなた方の背中は私がお守りしますので」

蘭・ひまり・巴・つぐみ「……」

 

 こうして飛鳥は蘭達を無事に家に送っていった。

 

飛鳥「…スーパーに買い物に来ただけなのに、とんだ寄り道しちゃったな」

 飛鳥はスーパーで買い物をしていたが、お目当てのものが売り切れてガッカリしていた。

 

******************

 

 翌日。全校集会が行われ、不審者が捕まったことが報告された(飛鳥が捕まえたが、公表される事はなかった)。とはいえ、暫くは一人で帰らないように通達された。蘭達は飛鳥を見ていたが、飛鳥は気にすることはなかった。男子生徒達もまた飛鳥の事を恨めし気に見ていたが、本当に気にすることはなかった。

 

 そして放課後

 

「蘭ちゃん! 僕が今日から送ってあげるよ!」

「ひまりちゃん! 今度からはオレと一緒に帰ろ!?」

「巴ちゃん! バイト先まで出迎えしてあげるよ!」

「つぐみちゃん!!」

「モカちゃ~ん!!」

 

 と、男子生徒達は懲りずに蘭達にアタックを仕掛けていて、鬱陶しがられていた。

 

 

飛鳥「ダメだこりゃ…」

 飛鳥はそう首を横に振って、その場を後にした。

 

 

おしまい

 



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第192話「バレンタインデー2021」

 

 

 2月14日。男子にとって待ちに待ったバレンタインデーである。

 

飛鳥(ま、オレにとっては無縁だから問題ないっか! 貰うのあの人たちだし!!)

 

 飛鳥はにこやかな顔をしていた。

 

「あ、一丈字がにこやかな顔をしてるぞ」

「おい!! 一丈字!!」

 

 と、男子生徒達が飛鳥にいちゃもんをつけると、飛鳥が男子生徒達を見た。

 

飛鳥「あ、おはようございます」

「お前、何ニヤニヤしてるんだよ」

飛鳥「いや、今日はバレンタインデーだけど、私には全く縁のない日だから、今日も一日何の変哲もない一日だなーって」

「嘘つくんじゃねぇ!!」

「どうせこころちゃん達から貰うくせに!!」

 

 男子生徒達はいがんでいた。

 

飛鳥「高嶺の花であるあの方々が、私如きにチョコレートを差し上げると、本気でお考えでしょうか」

「え? だっていつもよく喋ってるじゃん…」

飛鳥「それとこれとは話は別ですし、過去に下剤入りのバレンタインチョコ貰った事あるので、トラウマなんですよ。バレンタインチョコ」

 

 飛鳥がそう言うと、男子生徒達は馬鹿笑いした。それを見て飛鳥は苦笑いした。本気で相手にしてないからである。

 

「はははははははは!!」

「ざまーねぇな!! やっぱり嫌われてるんじゃねぇか!!」

飛鳥「そうでしょう? だからバレンタインチョコなんて貰えるわけないんですよ」

「そうだな! こころちゃん達がそんな事する訳ねーし、貰えねーな!!」

飛鳥「ええ。だから安心してください」

「あーあ。心配して損した。行こうぜ」

「そーだな。ま、精々下剤入りのチョコを貰わないようにするんだな!」

「ハハハハハハ!!」

 

 そう言って男子生徒達は笑いながら去っていくと、飛鳥は見送ったが、特に何もリアクションはなかった。日常茶飯事なので特に気にすることはなかったからである。

 

飛鳥「さて、教室に向かうか…」

「飛鳥くん」

飛鳥「?」

 

 飛鳥が教室に行こうとしたが、誰かに呼び止められて後ろを振り向くと、そこにはたえがいたが、いたが険しい表情をしていた。

 

飛鳥「花園さん。おはようございま…」

たえ「今の話、どういう事? 下剤入りのチョコを貰ってたって…」

飛鳥「私の事を嫌っていた女子達からの嫌がらせですよ。もう数年も昔の話です」

 

 飛鳥が苦笑いしながら答えたが、たえの表情には怒りがこもっていた。それは…。

 

たえ「食べ物を粗末にするなんて…」

飛鳥「…まあ、そうですね」

 

 自分の事で怒っているのかと思いきや、チョコに下剤を入れて怒っていたので、飛鳥は少し安心した。というのも、もし自分の為に怒っていたら絶対に香澄達に知られて、大ごとになるからだった。これだったらまだ何とかなるかもしれない。飛鳥はそう思った。

 

飛鳥「それはそうと、花園さん達の方がチョコ貰うんじゃないですか? 今もほら」

 

 たえの手やカバンにはファンからのチョコレートが入っていた。たえ自身もチョコレートを貰って喜んでいたが、飛鳥が男子生徒達と話していた時に聞いた下剤入りのチョコレートを聞いて、すっかり機嫌が悪くなってしまった。

 

たえ「今、その話してる?」

飛鳥「あまり突っ込んで欲しくないんですよ」

たえ「どうして?」

飛鳥「どうしてもです。下剤入りのチョコを貰っただけならまだしも、色々同級生と喧嘩したもんで。この日はもう大人しくしてたいんですよ。すみませんが失礼します」

たえ「あっ…」

 

 そう言って飛鳥は背を向けてその場を去ってしまった。たえはそんな飛鳥の様子を見て、何も言えなくなっていた。

 

*******************

 

 飛鳥が3組の教室に行くが、いつもと変わらない風景だった。

 

飛鳥(良かった…。何か今日のネットニュース見てたら、黒板に男子全員に対してメッセージを書いてチョコを並べられるって奴があったけど…。あの件があってからすっかり信用出来なくなっちまったんだよな…)

 

 飛鳥が難しい顔をしていると、クラスメイトが不思議そうな顔をしていた。

 

飛鳥(やべ、怪しまれる)

 

 と、飛鳥は自然な演技をして何とか誤魔化した。

 

 1年1組の教室

 

たえ「……」

 

 たえは一人落ち込んでいて、俯いていた。

 

有咲「どうしたんだよおたえ」

たえ「有咲…」

 

 有咲がたえの様子がおかしい事に気づいて話しかけてきた。たえが有咲を見た。

 

たえ「えっとね…」

 

 たえが飛鳥の事について説明をした。すると有咲は衝撃を受けた。

 

有咲「え…」

たえ「飛鳥くん…。前に同級生と上手く行ってなかったって言ってたじゃん? 多分それが原因なのかも…」

 

 飛鳥が同級生と喧嘩ばかりしていた事は有咲も知っていたが、もし自分がされたら必ず不登校になる自信がある事をされていた事を知った有咲は冷や汗が止まらなかった。

 

 そして今もその時と同じ事をされかけているのを知り、有咲はいてもたってもいられなくなった。

 

有咲「そ、それで一丈字はどうしてるんだよ!!」

たえ「多分普通に教室にいると思うけど…」

 

 有咲が声を荒げているのを皆が見ていて、何事かと思っていた。

 

香澄「おっはよー」

 

 と、香澄、りみ、沙綾が一緒に教室にやってきて、香澄が挨拶をした。

 

香澄「有咲、おたえ。おはよー」

たえ「お、おはよう…」

有咲「ああ。おはよう」

香澄「ど、どうしたの?」

 

 有咲とたえの様子がおかしい事に香澄が気づき、聞いてみた。

 

有咲「香澄。今すぐ3組に行くぞ」

香澄「え、も、もしかして飛鳥くんに何か用があるの? もしかしてバレンタインチョコ!!?」

有咲「ち、ちがわい!!//////」

 

 香澄の発言に有咲が顔を真っ赤にして照れた。

 

たえ「今日はやめときなよ」

有咲「そ、そんなんじゃねーって言ってるだろ!!」

沙綾「待って待って。一体何があったの?」

たえ「それが…」

 

 たえが改めて香澄、りみ、沙綾の3人に事情を説明した。

 

香澄「ええっ!!? そんなひどい事をされてたの!?」

たえ「飛鳥くんさ。何気に人を信じてない節があるから、多分それが原因かも…」

有咲「あまり心を開かねーもんなぁ…」

 

 超能力者だという事がバレる為、あまり明かしてないだけです。

 

 そんな感じでPoppin’partyは飛鳥の事について教室で話し合っていた。

 

りみ「ど、どうしたらいいんだろ…」

香澄「でも、やっぱりバレンタインって言ったらチョコだよね…」

たえ「別の日に渡してあげたらどうかな?」

沙綾「でも受け取ってくれるかどうか分かんないよ?」

有咲「そうだけどよ…」

 

 と、男子達がいる中で飛鳥にどのような感じでバレンタインのプレゼントを渡すか考えていた。

 

 そんな時、クラスの陽キャ男子達がやって来た。顔はそこそこ良いが性格は屑である。

 

「何の話してんの~?」

香澄「あっ。〇〇くん」

たえ「飛鳥くんにバレンタインチョコあげようと思ってるんだけど、どうしたらいいかなって考えた所」

有咲「バカ!! それ言うなよ!!」

 

 たえから話を聞いた陽キャ男子達は舌打ちをした。

 

「あんな奴なんかにあげないで、オレ達にくれよ」

「そうだよ。オレ達クラスメイトじゃん」

 

 と、悪態をつく。りみは怖がったが他の4人はむっとした。

 

たえ「確かにそうだけど、誰にチョコを上げるかなんて私達の勝手じゃん」

沙綾「それはそうと、あんな奴ってのはないんじゃない?」

「あんな奴はあんな奴だろ!! 女子からチョコ貰えるの分かってて、舐めた口利くしよ!!」

「何が私みたいなやつには縁がねーだよ! ふざけやがって!!」

たえ「わざわざ人の悪口言って、チョコねだって来るよりかはマシだけど?」

有咲「そ、そうだけどおたえ何か怖い…」

 

 本当にたえが不機嫌だった為、他の4人がたじろいていた。男子生徒達はお構いなしにギャンギャン喚く。

 

「何だと!!?」

「黙って聞いてたら!!」

 

 と、騒いでいるとイヴ、こころ、はぐみ、美咲が教室にやって来た。

 

美咲「ちょっとどうしたのよ」

有咲「あ、奥沢さん…」

たえ「〇〇くん達が飛鳥くんの事、あんな奴って言ったの」

「!!?」

 

美咲「ど、どういう事…?」

沙綾「〇〇達が一丈字くんの事が気に入らなくて…」

こころ「それで文句を言ったのね?」

 

 こころが口をはさんでくると、美咲はとんでもない事を言いだすんじゃないかと冷や冷やしていた。

 

こころ「どうして飛鳥の事が気に入らないのかしら?」

「そ、それは…」

「だってあいつ、こころちゃん達からチョコ貰えるの分かってるくせに、自分はチョコを貰えないとか言うんだ…」

こころ「それはおかしいわねー。飛鳥に聞いてみましょう!」

「ちょ!」

 

 こころは即座に3組の教室に向かったが、ポピパの5人はマズそうにしていて、美咲が平謝りしていた。

 

 3組の教室。こころがやってきて、質問してきたので飛鳥が困惑していた。

 

こころ「どうして自分はチョコを貰えるわけがないなんて言ったの?」

飛鳥「謙遜ですよ」

こころ「謙遜?」

飛鳥「仮にそうだとしても、私は弦巻さん達と仲が良いからチョコが貰えるなんて言いませんよ。だって皆弦巻さん達のチョコが欲しいのに喧嘩売ってるように見えますし、仮に貰えなかったら、めっちゃ恥ずかしいですよ」

(た、確かに…)

 

 飛鳥の言葉に香澄達は素直に納得したが、こころが首を傾げた。

 

こころ「どうして恥ずかしいの? 飛鳥は貰えるわよ」

飛鳥「弦巻さん。私はそうかもしれないけど、他の人たちはそうじゃないから文句を言ってるんですよ」

こころ「だったら皆にチョコをあげればいいのね! それだったら文句ないでしょ?」

 

 こころの天然ボケに対して、飛鳥は呆れたように男子生徒達を見ると、男子生徒達は罰が悪そうにした。美咲も飛鳥と同じリアクションだった。

 

 こうして放課後、弦巻家によって皆にバレンタインチョコを振舞われたが…。

 

 夕方・河川敷

 

飛鳥「貰ったチョコは、同じように私を嫌っていた男子に横取りされたんで、私はお腹を壊さずに済んだんですよ」

「……」

 

 飛鳥は1組のメンバーと一緒に夕陽を見ていたが、飛鳥は目が死んでいた。

 

飛鳥「壊れたのはお腹じゃなくて、人を信じる心だったんですよ。あはははははは」

美咲「一丈字くん…その…元気出して!!」

有咲「辛い…!! 辛いよぉ…!!」

 

 有咲と美咲に物凄い同情される飛鳥だった。

 

 

おしまい

 



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第194話「ごめんなさい」

 

「だから偉そうな事を言わないでって言ってるでしょ!!」

「何だよ!! こっちは心配してるから言ってるんだぞ!!」

「ちょ、ちょっとやめなよ二人とも!!」

 

 ある日のバンドリ学園。1年2組で蘭と巴が大喧嘩をしていた。周りの生徒が見ている中、ひまりとつぐみは慌てて止め、モカはそんな4人を見つめていた。

 

 そしてその怒鳴り声は3組の教室まで聞こえていて、飛鳥もその怒鳴り声を聞いていた。

 

飛鳥「……」

 

*********************

 

 放課後。授業が終わって飛鳥が教室から出て、2組の教室の方を見ようとしたが、あえて何も言わずにそのまま2組の教室とは逆の方向から下の階に降りていった。

 

飛鳥(前々からモカから聞いてたけど、美竹さんと宇田川さんって結構相性悪いよなぁ…)

 

 アネゴ肌で面倒見の良い巴と、意地っ張りで不器用な蘭。心配していろんな事に首を突っ込もうとした巴に対し、素直になれない蘭は厳しい言葉をぶつけて喧嘩になったと飛鳥は想定していた。

 

 飛鳥は決意した。Afterglowの事については、何も言わないと。

 

飛鳥(あの人たちは必ず立ち直る。じゃなきゃ、Afterglowとしてやっていけないもんな)

 

*************************

 

 夕方、飛鳥は買い物をして帰宅しようとしていた。すると…。

 

飛鳥「あ」

 

 公園に蘭がいたが、元気はなかった。そりゃそうだ。巴で喧嘩して、皆にも迷惑をかけたので罰が悪いのか、家にも帰ろうとしなかった。

 

飛鳥(まあ、そりゃそうなるか…)

 

 と、飛鳥が考えていると別の学校の男子生徒達が蘭に近づいた。どうやら励まそうとしているのか、手を出そうとしているのか分からないが、蘭に話しかけてきた。案の定、蘭は不機嫌になった。

 

飛鳥(写真撮っておこう)

 

 飛鳥が気づかれないようにスマホで映像を撮っていた。そして男子生徒達と蘭は気づかずに、口論した。

 

「こんな所にいたら風邪引くよ?」

蘭「あたしは今機嫌が悪いの!! ほっといて!」

「そういう訳にはいかない!!」

 

 と、男子生徒の一人は蘭の腕を引っ張った。物語の主人公になったと勘違いしているのか、蘭の腕を強引に引っ張る。蘭はとても嫌がっていて、他の男子生徒達も参加して、蘭を連れて行こうとした。

 

飛鳥「まずい!!」

 

 飛鳥が撮影をやめて参加しようとしたが、

 

「一丈字くん何してるの!?」

飛鳥「証拠を作ってるんですよ」

 

 飛鳥は横を向いて話しかけたひまりの方を見た。するとひまりだけではなく、つぐみ、モカ、ひまり、そして巴がいた。

 

「美竹さんが襲われてるんです」

巴「何!? 蘭が!? 蘭!!」

ひまり「巴!!」

 

 飛鳥と巴が走った。

 

蘭(嫌…!! 誰か助けて!!!)

 

 男子生徒達に取り押さえられ、どこに連れていかれそうになり、蘭が涙目になって助けを求めると…。

 

「ら―――――――――――ん!!!」

「!!」

 

 巴の言葉に蘭と男子生徒達は巴たちを見た。

 

蘭「……!!」

「う、宇田川巴!!」

「それに上原ひまりに羽沢つぐみに青葉モカ!!」

「あいつ誰?」

 

 つぐみは心配そうに蘭を見ると巴、ひまり、モカは男子生徒達を睨んでいた。

 

つぐみ「蘭ちゃん!!」

ひまり「アンタ達何やってるの!! 蘭を離して!!」

巴「離さねーとどうなるか分かってんだろうなぁ!!」

モカ「トモちん暴力はダメだよ~」

 

 と、つぐみ達が喋ると男子生徒達はゲスな笑みを浮かべた。

 

「丁度いい。5人もいるならよりいっそう楽しめそうだな」

「おいモブ男くん。オレ達はこの子たちと楽しみたいから…」

 

 男子生徒の一人が飛鳥に近づいた。

 

「さっさと消えろ…よっ!」

 

 と、飛鳥の胸に向かって正拳突きをしたが、手のひらで受け止められた。しかも飛鳥は涼しい顔をしていたので、皆驚いていた。

 

飛鳥「私がモブ男なら、あなた方は精々チャラ男さんって所ですかね」

「!?」

飛鳥「彼女は今不機嫌なんですよ。あなた方の思い通りには決してなりません。お引き取り願います」

 

 飛鳥がそう言うと、男子生徒達は更に苛立った。

 

「てめっ…」

「1回受けとめたくらいでいい気になるなよ!」

「オレ達空手やってたんだぞ!」

飛鳥「ああ、だからですか。そんなんだから女の子の扱い方がヘタクソなんですね。そういうのカッコいいと思ってやってるんですか?」

 

 飛鳥がにこやかにそう言うと、男子生徒は顔を真っ赤にして、モカが噴出した。

 

飛鳥「青葉さん達は後ろに下がっててください。危ないですよ」

 

「て、てめぇ!!」

「許さねぇ!!」

 

 と、2人がかりの男子生徒が飛鳥に襲い掛かったが、飛鳥が返り討ちにした。それに対してモカ以外の4人が絶句していた。そんな中、モカは満足そうにしていた。

 

「な…な…!!」

 

 2人の男子生徒はすっかり伸びて、蘭を人質に取っている男子生徒やもう一人の男子生徒は恐れおののいていた。

 

飛鳥「あんまりこういう姿は見せたくはなかったんですが…。大人しく美竹さんを渡してもらいましょうか。そうでなければ…」

 

 飛鳥が圧をかけた。

 

飛鳥「二度と太陽の元で生活できないようにして差し上げますよ?」

ひまり(言葉選び怖っ!!)

 

 そして巴も割って入り、拳をゴキゴキ鳴らした。

 

巴「つべこべ言わずに蘭を返せや…!!!」

モカ「トモちん顔こわーい」

 

「ひ、ひぎィイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」

「おまわりさ~ん!!!!」

 

 と、蘭を放っておいて男子生徒達は逃げ出したが、近くでパトロールをしていたパトカーに追いかけられた。

 

ひまり「あ、そ、そうだ! 蘭!」

 

 ひまり達は蘭の所に近づいて、ひまりが蘭に駆け寄った。

 

ひまり「蘭! 大丈夫!?」

蘭「……」

 

 ひまりの言葉に対し、蘭は横を向いた。

 

つぐみ「心配したんだよ蘭ちゃん」

モカ「そうだよ~」

飛鳥「……」

 

 つぐみやモカも言葉をかけるが、飛鳥は何も言わなかった。それでも蘭はそっぽを向いたが、

 

巴「蘭! 聞いてるのか!?」

飛鳥「宇田川さん落ち着いて。美竹さんはちゃんと聞いてますよ」

蘭「う、うるさい! アンタにあたしの何が…」

 

 蘭がそう言った次の瞬間、ひまりが蘭の左頬に平手打ちをした。

 

それに対して驚く飛鳥、モカ、巴、つぐみ。蘭は予想だにしなかった状況に対して、叩かれた左頬を抑えて放心していた。ひまりは目に涙浮かべて、蘭を睨みつけた。

 

ひまり「いい加減にして!! 皆に迷惑かけといて、いつまでそんな意地を張ってるの!!?」

蘭「……」

 

ひまり「それだったらもう私達4人でAfterglowをやる!」

 

 ひまりが本心でそんな事を言っていないのは、誰だって分かっていた。蘭もである。何としてでも蘭と巴を仲直りさせて、蘭に迷惑をかけた事をひまりはちゃんと分からせたかったのだ。

 

ひまり「蘭は…」

モカ「ひーちゃん!!」

 

 ひまりが続けて言おうとした言葉をモカが叫んで止めた。ひまりはモカを見た。

 

モカ「そんな事言ったらダメだよ。それじゃ蘭やトモちんと一緒だし、リーダーでしょ。一応」

ひまり「モカ…」

蘭「……」

 

 何とも言えない気まずい空気に、飛鳥は困惑しながらも、蘭を見た。

 

飛鳥「美竹さん」

蘭「!」

飛鳥「あなたと宇田川さん達の間で何があったかは存じませんし、口をはさむ気もございません。ただ、喧嘩で関係のない人を巻き込むのはやめなさい」

 

 飛鳥の言葉に蘭が俯いた。

 

蘭「…ごめんなさい」

飛鳥「!」

 

 蘭の言葉に対し、皆が蘭の方を見ると、蘭は震えて涙を流しながら謝っていた。

 

蘭「ごめんなさい…意地を張って…ごめんなさい…迷惑をかけて…」

ひまり「……!!」

 

 蘭の顔を見てひまりも感極まり、泣きながらそのまま蘭を抱きしめた。

 

ひまり「私も叩いたりしてごめん! 蘭にどうしてもわかって欲しくて…本当にごめんなさい!」

巴「蘭…」

 

 巴も蘭を抱きしめた。

 

巴「アタシもごめん! 蘭の事を心配してるって言ってたけど、蘭の気持ちを全然考えてなかった! 本当にゴメン!」

蘭「……」

 

 3人がだきしあっているのを見て、つぐみは口元を抑えて涙を流していた。飛鳥とモカが顔を合わせて苦笑いして、飛鳥が超能力で自分が暴力を振るって他校の男子生徒達を締めあげた事を蘭達の記憶からある程度改ざんした。

 

モカ『あくどい~』

飛鳥『それはそれ、これはこれ』

 

 

おしまい

 



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第195話「絶対に大丈夫」

第194話の後日談


 

 

飛鳥「本来だったら一週間の停学だったけど、相手の学校の先生方のご厚意で何とか反省文の提出だけで済みました」

ひまり「本当にゴメンなさい。一丈字くん…」

 

 学校の食堂で飛鳥とAfterglowが一緒に来ていた。というのも、他校の生徒に対して暴力を振るったことが知られてしまい、飛鳥は呼び出されたのだった。

 

 しかも相手の男子達は飛鳥が一方的に暴力を振るったと、この期に及んで責任転嫁しようとしていた為、飛鳥が証拠を突きつけた。まあ、証拠があってもなくても、男子生徒達に非があったのは見えてたので、相手の学校の教師たちが飛鳥に謝罪をしたのだ。

 

 おまけに母親が広島から飛んでくる始末だった。余談だが、飛鳥の友人であり中学時代の同級生である日向と椿の母とは、とても仲が良いママ友で、誕生日プレゼントに1年分の新幹線乗り放題の定期券を貰った。飛鳥が遠方で仕事に行くのを想定しての事である。ちなみに国会議員は無料らしい…。

 

 まあ、そんな話はおいといて、これで一件落着である。

 

モカ「それにしてもひーちゃん見直したよ~」

ひまり「いや、思い出すとちょっと恥ずかしい…//////」

 

 ひまりの言葉に蘭が罰が悪そうに横を向いた。

 

巴「アタシも反省しないとな。これからはもうちょっと蘭の事を観察して…」

蘭「恥ずかしいからやめて」

ひまり「その前に喧嘩しないで。人前で」

巴「…そうだな」

 

 蘭と巴が罰が悪そうにすると笑いが生まれた。

 

ひまり「でもこれでAfterglowも元に戻ったし、これからも頑張ろう! えいえいおー!!」

 

 と、ひまりが号令をかけると、

 

モカ「飛鳥くん。お詫びに今日はアタシが奢ってあげるから好きなの食べていいよ」

飛鳥「えっ…」

ひまり「せめて話を聞いて~!!!! あ、それだったらあたしもお金出すよ!」

つぐみ「わ、私も…」

巴「アタシだって! 蘭もだよな!」

モカ「そうだよ~。蘭が一番迷惑かけたんだから~」

蘭「…分かってるよ」

 

飛鳥「いやー…お気持ちは大変嬉しいのですが」

ひまり「遠慮する事ないよ?」

巴「そうだぞ!」

 

 飛鳥が困った顔をすると、ひまりと巴が反応するが、モカがニヤニヤしていた。

 

モカ「言いたい事は分かるよ~。だってこーんなに可愛い女の子5人にご馳走して貰うんだもん。そりゃ周りの男子もやっかむって~」

「え」

 

 モカの言葉にひまり達が周りを見渡すと、男子生徒達が嫉妬の眼差しで飛鳥を見ていた。

 

飛鳥(あぁ…これでまた食堂に行けなくなってしまった…。もう殆ど使ってないけど)

 

 飛鳥が男子生徒達の顔を見て遠い顔をした。最後に食べた食事の味も思い出せない程、飛鳥はここで食事をしていないのだ。大体嫌味を言われたり、嫌がらせをされるからだ。ほぼ返り討ちにしてるとはいえ、気持ちよく食事が出来なかったのだ。

 

飛鳥「そういう訳ですので、お気持ちだけ受け取っておきます」

巴「だけどこっちの気が済まねぇんだよ!」

蘭「……」

モカ「抑えて抑えて。トモちんはすぐ熱くなるからさ~。じゃあ、こういうのはどう? 飛鳥くんのほっぺにチューするとか」

飛鳥「余計に悪化しない? それ」

 

 モカのとんでもない発言に飛鳥は思わずため口で突っ込んだ。そしてモカ以外の4人が頬を赤く染めた。

 

巴「な、ななななななにを言いだすんだモカぁ!!///////」

モカ「いいアイデアだと思うんだけどなぁ~」

ひまり「キ、キスなんて何考えてんの!!//////」

つぐみ「そ、そうだよ!!//////」

蘭「…モカがやればいいじゃん/////」

モカ「それもそっかー」

 

 モカの発言に4人が顔を真っ赤にすると、男子生徒達が発狂した。

 

「キ、キキキキキキキッスぅ!?」

「だ、だめだぁああああああああ!!!」

「モカちゃんの尊い唇を…」

「一丈字ひっこめぇ!」

「永遠に停学してれば良かったのに…!!」

 

 男子生徒の安定の気持ち悪さに辟易する飛鳥。そしてAfterglowもパニックになっていて、何とか収拾をつけるために、飛鳥は場の空気を冷めさせる一言を言う事にした。

 

飛鳥「あー。本当に大丈夫ですので、私は行きますね」

「あっ!!」

 

 飛鳥が去ろうとすると、Afterglowが反応した。

 

飛鳥「あ、そうだ」

 

 飛鳥が穏やかな顔ででAfterglowを見つめると、

 

飛鳥「怒ってる顔よりも、今の顔の方がずっと素敵ですよ。とっても可愛いですし」

 

 飛鳥の言葉にもモカ以外の4人の目が点になると、今度は真剣なまなざしで蘭達を見つめる。

 

飛鳥「それと、これからも沢山喧嘩をすると思いますけど、その度にちゃんと自分達で立ち直れるって事。私は信じてます」

「!」

飛鳥「では、失礼します!」

 

 カリオストロのラストの銭形警部を彷彿させるような清々しい表情で頭を下げると、飛鳥は去っていった。この時飛鳥の心情しては周りから笑いが生まれるものだと感じていた。失笑でも良い。寧ろ失笑だと、能力者だとバレにくくなる為好都合だったのだが…。

 

「……///////」

 

 蘭、つぐみ、ひまり、巴の4人は完全に固まっていた。そりゃそうだ。いきなり気障な事を言われると、固まるに決まっている。ましてや飛鳥が気障なセリフを言い放ったので、戸惑いを隠せなかった。そういう意味では「一丈字くんってああいう人だったんだ…」と、悪いイメージを持たせて、距離を置く事だってあるだろう。これが飛鳥の狙いだったのだ。

 

 周りの男子生徒もこんな臭い台詞を吐かれて蘭達も引いてるだろうし、自分達にもチャンスがある。というか自分が守らねばならないと感じるだろう。

 

 確かに飛鳥の狙い通り、場の空気は冷めた。本来なら飛鳥はこの事をずっといじくり返されるだろうが、飛鳥は全く気にしない。事実を言ったまでだし、ましてやこんな事を言う奴が超能力者だと誰も思わない為、かえって好都合だった。同級生と喧嘩ばかりして孤立した男は、メンタルも鍛えられていた。

 

モカ(飛鳥くん…。やっぱりおもしろ~いwwwwwww///////)

 

 モカだけは一人笑っていた。それは飛鳥をバカにしてるからではなく、見事に蘭達の顔を真っ赤にさせて唖然とさせた事に対して面白がっていた。そして蘭達が唖然としているのをファンが写真を撮っていた。理由は言うまでもない。可愛いからである。

 

ひまり「あっ、ちょ、こんな所撮らないでぇ~~~!!!!!!/////////」

 

***********************

 

 そしてどうなったかというと…。

 

蘭「一丈字どこ?」

 

 帰りのHRが終わるなり、蘭達は3組の教室にやってきて飛鳥が来たが、すでに飛鳥の姿はなかった。

 

「も、もう帰ったよ…」

巴「そ、そうか。ありがとう」

蘭「まだそんなに遠く行ってないよ。探しに行こう」

巴「そうだな。ありがとう!」

 

 そう言ってAfterglowがその場を去っていくと、クラスメイト達が顔を合わせた。

 

 

「本当に不思議な子だよね。一丈字くんって…」

「あっ、美竹さん達に追いかけられてる」

 

 

おしまい

 




イメージエンディングテーマ
「BEAT」
歌:Say a little letter


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第205話「相手が憎くとも」

 

「2組でテスト勉強をしよう!」

 

 2組の陽キャが言い出した。理由は簡単蘭達とお近づきになりたいからである。勿論自分たち以外の男子は皆自分の引き立て役であるが、女子達は考えが見え見えだった。

 

蘭「男子だけでやればいいじゃん」

ひまり「な、なんか下心が見え見えなんだけど…」

モカ「パ~ス」

つぐみ「え、えっと…」

巴「…つぐ。気持ちは分かるけどな」

 

 女子達は消極的だった。

 

「そんな事言わないでさ。ほら、親睦を深めるために」

蘭「勉強会ってどこでやるの?」

「そ、そりゃあカラオケとか…」

ひまり「絶対嫌らしいことする気満々じゃん!」

モカ「それもそうだけど~。自分たち以外の男子とか絶対パシリとかにするつもりだよね~?」

巴「アタシ、そういうの嫌いなの知ってるよな?」

 

 巴が陽キャ達を睨みつけていた。ちなみに巴はぶっちゃけ女子にモテる。男子よりも男らしく、女子よりも女の子らしいからである。

 

「そ、そんな事しないって~」

蘭「とにかくあたしパス」

モカ「モカちゃんも~」

ひまり「私もー」

巴「アタシも」

つぐみ「え、えっと…わ、私も…」

「私達もパスでーす」

「そ、そんなぁ!!」

 

 女子達が全員パスすると、陽キャ達が慌てだした。そして、飛鳥は困った様子で教室の様子を見ていた。

 

つぐみ「飛鳥くん!」

「てめぇ!!」

「一体何しに来たんだよ!!」

 

 飛鳥の登場につぐみが驚くが、陽キャ達が悪態をついていた。そう、Afterglowが飛鳥に気がある事を知っていた為であり、美少女5人にモテている飛鳥を快く思っていなかった。

ブシロードさんには申し訳ない話だ。

 

飛鳥(じゃあ書くんじゃないよこの話…)

 

 飛鳥がナレーションにツッコミを入れると、

 

飛鳥「いやー。すみませんねぇ。青葉さんに数学の教科書を貸してたもので」

モカ「あ、ごめん。忘れてきちゃった…」

飛鳥「そう…」

 

 モカの発言に飛鳥は特に驚きはしなかった。モカは整理整頓が苦手で、たまに忘れてくることもあるのだ。すると他の4人はチャンスとばかりに、

 

蘭「その、飛鳥…/////」

ひまり「飛鳥くん! 教科書なら貸してあげるよ!」

巴「アタシの使えよ」

つぐみ「わ、私のもあるよ!」

 

 4人から教科書を貸してくれると申し出があると、陽キャ達は不機嫌になり、他の女子達は陽キャに対してざまあみろと思っていた。ちなみに他の女子達は飛鳥に対しては好意的である。流石に異性としては見ていないが…(まあ、見てたら蘭達に殺されるので恐らくないだろう)。

 

飛鳥「ああ、一応スペアがあるから大丈夫ですよ」

「スペア!?」

飛鳥「こういう時のためにね…」

モカ「ちゃんと明日持ってくるから~」

 

 飛鳥がそう言うと陽キャはまた飛鳥に噛みついてきた。

 

「用が済んだらさっさと出てけよ!」

「ここはお前の来るところじゃねーんだよ!!」

飛鳥「そうですね」

 

 陽キャの暴言に対し飛鳥がそう言うと、女子達は一斉に睨みつけていて、飛鳥も含め男子がぎょっとした。

 

「ねえ、流石にそれはなくない?」

「男の嫉妬って醜いよ?」

「うちらが勉強会に行きたくないの、そういうトコなんだけど」

「何様のつもり? 一丈字くんを妬んでばっかりで、何も努力しないくせに」

(女怖ぇ~~~~~~~~~~~!!!!!)

 

 飛鳥・陽キャ以外の男子達がそう思っていた。

 

飛鳥「皆さん。落ち着いてください」

「一丈字くんは悔しくないの!? ここまで言われて」

飛鳥「私としては荒波を立てたくはございませんし、あなた方が私の事をご理解して頂けるだけで十分かと思います」

 

 飛鳥の言葉に2組の女子達は気づいた。

 

飛鳥「そういう訳ですので、お邪魔虫は退散いたします。どうぞごゆっくり」

「おい、待てよ!!」

「何かオレらが悪者じゃねーか!!」

「何お前が良い奴気取って、オレ達をかばってるみたいな感じにしてんだよ!!」

 

 陽キャ達が悪態をついたが、飛鳥はスーッと退散すると陽キャ達はしつこく追いかけまわした。

 

蘭「本当にあいつら嫌い」

モカ「逆拍手されればいいのにね~」

ひまり「何? 逆拍手って」

モカ「相手を呪う意味でやる拍手だよ~」

つぐみ「怖いよ!!!」

 

 モカの発言に蘭と巴が抱き合って震えていた。ちなみに拍手をする時は相手に対して喜びや尊敬の念を表す意味で行われるが、逆拍手…手の甲を合わせて叩く行為はその真逆であるので、人に対しては絶対にやってはいけない。

 

 

蘭「ねえ!!? 誰か今すごく怖い事言わなかった!!?」

巴「アタシも何かそんな感じがする!!!」

 

 蘭と巴が涙目で震えあがっていた。この二人は幽霊やホラーものが大の苦手で、ホラー関係になるといつもこうなのだ。

 

モカ「えー。流石に気のせいでしょー。確かに逆拍手って凄く縁起悪い行為だけど~」

つぐみ「え、縁起が悪いって…?」

蘭「やめて!! 聞きたくない!!」

巴「そんなの知ってどうするんだよ!!」

ひまり「え、でも気になる…」

モカ「じゃあひーちゃんとつぐだけ来て。教えるから…」

 

 モカはひまりとつぐみに教えると、つぐみとひまりが青ざめて絶叫した。他のクラス中にも響き渡った。

 

 そして陽キャ達が戻ってきた。

 

「どうしたんだ!?」

「何かあったのか!?」

 

 怯えているつぐみとひまりを見て、陽キャ達が2人に近づいた。

 

「ひまりちゃん大丈夫!?」

「つぐみちゃん。オレが傍についてるからね」

 

 そう言って二人の男子生徒がつぐみとひまりに駆け寄った。本気で白々しかった。それを見てAfterglow以外の女子達が一斉に逆拍手をし始めた。

 

ひまり「いやああああああああ!!! 皆何やってんのォ!!」

つぐみ「やめてぇ!! 本当にやめてぇ!!!」

 

 女子達が逆拍手をしているのを見て、つぐみとひまりが悲鳴を上げていた。

 

蘭「え、ちょ、ちょ、何ぃ!!?」

巴「モカぁ!! 一体何話したんだよ!!」

モカ「蘭とトモちんは聞かない方が良いと思うよ。つぐやヒーちゃんですら、こうなってるから…」

巴「いいから教えろ!」

蘭「ちょっと待って。物凄く嫌な予感が…」

 

 モカは巴と蘭にも教えたが、蘭と巴はそのまま固まり…気絶した。

 

「み、美竹さーん!!!」

「宇田川さんも!!!」

 

 逆拍手は相手に対して憎悪の念を抱く事を表しているが、死者が生きている人間を呼び寄せようする行為ともされていて、とてつもなく縁起の悪い行為だとされている。もし仮にあなたの目の前に幽霊が現れて、自分に対して逆拍手をしてきたら…。

 

 

 あなたを霊界へ連れて行こうとしています。なので…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絶 対 に 逆 拍 手 は し な い で く だ さ い 。

 

 

 

 

 

おしまい

 



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第206話「慎ましく」

 

 

 ある日の事だった。

 

「麻弥ちゃん!! オレとデートして!!」

「オレと!!」

「僕と!!」

 

「日菜ちゃん!!」

「オレと!!」

「あちきと~!!」

 

 麻弥、日菜姉妹が男子達に囲まれていた。

 

麻弥「うわわっ!! こ、こんなに人が…」

日菜「なんかるんってしな~い」

麻弥「ひ、日菜さん!!」

 

 麻弥は緊張していたが、日菜がいつも通りだった為、すぐにフォローに回り始めた。それを飛鳥は遠くから見ていた。

 

飛鳥(あぁ、いつもの事だな…)

 

 麻弥や日菜は芸能人でアイドルであり、ファンに囲まれる事はいつもの事である為、特に助ける事はせず、そのまま学校を後にした。

 

 そして河川敷

 

飛鳥「綺麗な夕日だなぁ…」

 

 飛鳥は河川敷をある日ながら夕日を見ていた。

 

飛鳥「こういう時は歌いたくなるなぁ…」

 

 飛鳥が一人で河川敷のランニングロードを歩いていたが、周りには誰もいなかった。そして飛鳥はsay a little prayerの「BEAT」を熱唱した。

 

飛鳥「~♪」

 

 歌っている時の飛鳥はとても気持ちよさそうだった。

 

***********

 

 またある日の事。

 

「巴姐さん!! 踏んでください!!」

「美竹さん!! 罵って!!」

 

蘭・巴「……」

 

 蘭と巴の間にドM男子達が群がってきて、蘭と巴は気味悪がっていた。その様子を飛鳥は遠くから見ていたが、特に何もすることなくそのまま後にした。

 

飛鳥「折檻する基準を考えた方が良さそうだな…。声をかけただけでやるのは、若干やり過ぎな気もするし…うーん」

 

 飛鳥が一人、河川敷で考え事をしていた。今日も夕日がとても綺麗だった。

 

飛鳥「まあ、助けを求められた時に対応するか。さて、今日は何を歌おうかな…」

 

 飛鳥はスピッツ「空も飛べるはず」を歌いだして、人に出会うまで歌った。

 

****************** 

 

 そしてまたある日の事…。

 

「イヴちゃん! 僕とデートして!!」

「羽沢さん!!」

「イヴちゃん!!」

「羽沢さ~ん!!」

 

 今度はつぐみとイヴの羽沢珈琲店コンビが男子生徒達に絡まれていた。

 

つぐみ「え、えっと…」

イヴ「こ、困ります…」

 

 男子達の強引な誘いにつぐみとイヴは困っていて、それを飛鳥も見かけていた。

 

「ほんのちょっとだからさ!」

「いいじゃんか」

 

 男子生徒の一部がそれぞれつぐみとイヴの手を強引に引っ張った。つぐみとイヴが怖がっていると、飛鳥は陰に隠れていた黒服達にサインを送って、女性の黒服はつぐみとイヴを保護し、男性の黒服達は男子生徒達の身柄を拘束させた。

 

 つぐみとイヴが保護されたのを確認すると、飛鳥は去っていった。つぐみとイヴが唖然としていると、

 

「つぐー!」

「イヴちゃーん」

 

 蘭、モカ、ひまり、巴が現れ、巴とひまりが声をかけた。

 

つぐみ「皆!!」

イヴ「助かりました…」

モカ「どうしたの~? 何か震えてるけど…」

つぐみ「え、えっと…」

 

 つぐみはそのまま蘭達に打ち明けた。

 

モカ(あ~。そういう事か~)

 

***********************

 

飛鳥「ふぅ…流石にあれはダメだな」

 

 飛鳥が河川敷を歩いていると、はぐみのスカートをめくろうとしていた男子生徒達を思い出して、げんなりしていた。そしてふと夕陽を見た。

 

飛鳥「今日も夕日がきれいだなぁ…」

 

 飛鳥がそう感傷に浸っていると、

 

飛鳥「…今度カラオケにでも行こうかな」

 

 今日も歌いたい気分だったが、流石に人が多かった為止めた。

 

*********************

 

 そして翌日。飛鳥がバンドリ学園に登校してくると、前方にはAfterglow全員が登校する姿があった。昨日ライブをしたのか、そのことについて楽しそうに話をしていた。

 

飛鳥(何ともなくて良かった)

 

 飛鳥は静かに目を閉じて俯いたその時だった。突風が起こった。

 

「きゃああああああああああ!!!!//////」

 

 蘭達のスカートがめくれて後ろは下着が丸見えになっていたが、飛鳥は風が吹いていて悲鳴が上がっていた為、大体察していた。目を閉じて俯いていた為全く見えなかったが、色々言われるとアレなので、超能力を使って避難した。

 

飛鳥(超能力で存在感消して、別ルート行こ)

 

 飛鳥は超能力で存在感を消して、そそくさと別の方向に移動した。

 

巴「凄い風だったな…」

ひまり「ねえ! それもそうだけど、後ろが丸見えじゃなかった!?//////」

蘭「!!/////」

 

 蘭が頬を染めながら睨みつけると、そこには1年2組、蘭達のクラスメイトの男子達がいて、あからさまに見たような顔をしていた。少なくとも内心はとてつもない悦びを感じていた。

 

(なんか前に一丈字がいたような気がしたけど、そんな事はもうどうでもいい!!)

(美竹たちのパンツ…いや、おパンティが見れる日が来ようとは…)

(大体イメージ通りだ!!)

(神よ…マジで感謝!!!)

 

 男子生徒達の反応を見ていた蘭、ひまり、つぐみは顔を真っ赤にして慌てふためき、巴は睨みつけていて、モカもちょっとむっとしていた。

 

 飛鳥は別ルートから校舎に向かっていた。

 

飛鳥(はぁ…。こういう時スカートの中身を見たって誤解されてビンタとかされたら、綺麗に落ちるんだろうけど、実際はビンタされるだけじゃすまないからな…。ていうか、あの男子生徒達が気持ち悪すぎて頭痛い)

 

 そう言って飛鳥はこめかみを抑えながら教室に向かうのだったが、この後モカから超能力で消してほしいという依頼が来て、男子生徒達の記憶を改ざんした。

 

「すっかり忘れちゃったけど、オレ達はとてつもない喜びを感じていたんだ…」

「ああ…。まるで天使を見ているようだった…」

 

 記憶を消された男子生徒達がまだ気持ち悪い事を言っていたので、飛鳥とモカが揃ってドン引きしていたのは内緒だ。

 

 

 

 

 

 

おしまい

 

 

 



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第207話「ストーカーを撃退せよ!」

第207話

 

 それはある日の事である。

 

「なあ、やっぱり白金って胸おっきいよな…」

「ああ…」

「やっぱり脱いだら凄いんだろうな…」

「暑さで蒸れた谷間に顔ツッコミてぇ~」

「ごめん。それはキモい」

 

 バンドリ学園のとある場所で、男子生徒達が燐子の胸について語り合っていた。そして、その陰で飛鳥と燐子が聞いていたが、とても気まずそうだった。

 

飛鳥(気 ま ず い)

燐子「……///////」

 

 飛鳥が燐子の顔を見ると、燐子は困ったように顔を真っ赤にしていた。そりゃそうだ。変態的な発言をされれば誰だってこうなる。赤面する以外ではゴミを見る目で男子生徒達を見るなり、軽蔑したりするのだが、気の弱い燐子はそんな事が出来なかった。

 

 飛鳥は冷静さを取り戻して、燐子に話しかけた。

 

飛鳥「あ、そういえば白金先輩」

燐子「な、何ですか…?」

飛鳥「Roseliaのライブってまた近いうちに行われるんですか?」

燐子「う、うん…」

 

 と、何とか燐子を上手い事誘導してその場から離れようとしたが、

 

「やっぱりおっぱいが大きいっていいよな~」

 

 男子生徒達は空気を読まずに、胸の話を続けていた。

 

「吸ってみてぇ~」

「やっぱり大きいから吸い甲斐がありそうだよな」

「おっぱいだけじゃなくて、尻もでかいって聞いてるぞ」

「尻も顔に埋めてグリグリされてぇ~」

「お前、本気でキモいぞ」

 

 男子生徒達がそう話していたが、飛鳥が超能力で燐子に聞こえないようにし、その場を後にした。

 

「罵られたい」

「まあ、それは分かるけど…」

 

******************

 

飛鳥(どぶろっくかよ)

 

 燐子と別れ、飛鳥は教室に帰ってきたが、男子生徒達の変態的な発言により、やつれていた。クラスメイト達はそんな飛鳥を見て心配していた。

 

「い、一丈字くんどうしたの? 何か顔色悪いけど…」

飛鳥「ああ。心配はいりませんよ」

「そ、そう?」

「また誰かに悪口とか言われたの?」

飛鳥「ああ。悪口を言われる事は全然大したことないんですよ。ただ…」

「ただ?」

 

 飛鳥がクラスメイト達を見つめた。

 

飛鳥「バンドやってる皆さんも大変だなって…」

 

*********************

 

 ある日の事、

 

飛鳥「えっ、白金先輩が!?」

 

 学園で弦巻家の黒服と電話をしていた飛鳥は驚きを隠せなかった。燐子がストーカーにあっているという情報が入ったのだ。

 

飛鳥「分かりました。こちらも調査して、見つけ次第排除します」

 

 2年1組の教室。燐子が知らない男にストーカーをされていると聞きつけたクラスメイト達やファンの男子生徒達は燐子に詰め寄っていた。

 

「白金さん! ストーカーに付きまとわれてるって本当!?」

「許せねぇ!!」

「オレで良かったらエスコートするよ!」

「オレも!!」

「オレも!!」

 

 と、男子生徒達が詰め寄るが燐子は人が多すぎて怯えていた。

 

紗夜「落ち着いてください皆さん!」

彩「燐子ちゃん困ってるよ?」

千聖「全く…。此間〇〇さん(1組の生徒で顔は美人ではない)がストーカーにあった時は、そんなに騒がなかった癖に…」

 

 千聖が不機嫌になったのを見て花音が慌ててフォローを入れるように燐子に話しかけた。

 

花音「燐子ちゃん。一緒に帰る人っている?」

燐子「……」

「だからオレが!!」

千聖「男子だと逆効果よ」

「いや、女子だけだったら逆に狙われるって!!」

「それはそうと、千聖ちゃん達も心配だ!!」

 

 男子生徒たちの興奮状態が止まらず、燐子は震えていた。

 

千聖「ちょっとあなた達! いい加減に…」

「あのー、すいません」

「?」

 

 飛鳥が2年1組の教室に現れた。

 

飛鳥「白金先輩いらっしゃいますか?」

紗夜「一丈字くん!?」

 

 飛鳥の登場に紗夜たちは驚いたが、男子生徒達は悪態をついた。

 

「一体何しに来た!!」

「まさか燐子ちゃんのエスコートをしに来たんじゃないだろうな!?」

「帰れ帰れ!!」

「お前の出る幕はないんだよ!!」

飛鳥「あ、大丈夫ですよ。エスコートをするのは私ではなくて、弦巻家の黒服の人たちなので」

「!!?」

 

 飛鳥の言葉に燐子も驚いて飛鳥を見た。

 

紗夜「どういう事ですか?」

飛鳥「ストーカーの件で、弦巻さんから伝言を預かっています」

 

 飛鳥の言葉に燐子が目を見開いた。

 

飛鳥「黒服の人たちを護衛につけると言っていました」

燐子「え、えっと…」

千聖「あなたがしてくれるんじゃないの?」

 

 千聖の言葉に男子生徒達が嫌な予感がしたが、飛鳥は冷静に振舞っていた。

 

飛鳥「ええ。今の白金先輩は男性に恐怖を抱いてるでしょうから、私も距離を置く事にします」

燐子「そ、そんな事は…」

飛鳥「無理をなさらないでください。それでは、私は失礼します」

 

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

燐子「一丈字くん…」

 

 飛鳥が2年1組の教室を去ると、

 

飛鳥(さて、白金さんの事は黒服の人たちに任せて、オレは犯人探しと行くか)

 

*******************

 

 その日の放課後、燐子はRoselia、私服の弦巻家の黒服達数名と一緒に帰る事にした。男子生徒達がアプローチをかけようとしていたが、黒服達に睨まれて動けない状態だった。

 

リサ「まさかここまでやってくれるなんてねー…」

友希那「燐子は言い返せないもの。仕方ないわ。それよりもライブハウスに向かうわよ」

燐子「は、はい…」

 

 燐子の言葉に紗夜とあこも心配そうにしていた。

 

 一方その頃、飛鳥は黒服達と一緒に張り込みを行っていた。燐子達がスタジオの中に入ると、いかにも女にだらしなさそうな男が後をついてきて、飛鳥は超能力で男の脳内を探った。すると、男は燐子を付け回し、本日接触出来た暁には、性的暴行を加えようとしていた。後にくる仲間と共に…。

 

飛鳥「被疑者には仲間がいます。スタジオの周りに怪しい男がいないか確認してください」

「了解」

飛鳥「すでに中にいる場合は監視して、絶対に外に出さないように細心の注意を払ってください。

 

 飛鳥が別の所で見張っている黒服の女性たちに小型通信機で通信を行い、指示を出した。

 

****************

 

「燐子ちゃん…もう逃がさないよ」

「Roselia5人全員いるなんてラッキーだぜ…」

「それだけじゃなくて、中々スタイルの良い姉ちゃんもいるぜ…」

 

 罠に嵌められた事を知らないチャラ男たちは、燐子達の後を付け回していた。

 

*****************

 

リサ「ね、ねえ…本当に練習して大丈夫なの?」

友希那「ライブまで時間がないのよ。それに、弦巻家の黒服もいるから心配ないわ」

あこ「りんりん…大丈夫?」

燐子「う、うん…」

 

 燐子達と一緒にいた黒服達は陰に隠れていた。

 

『一丈字様。準備が出来ました』

飛鳥『ありがとうございます。被疑者は全員中に入るつもりなので、全員が中に入ったのを確認して、逃がさないように包囲してください』

 

 飛鳥がそう指示を出したその時だった。チャラ男達がスタジオに入ってきた。

 

「!!?」

友希那「誰?」

「Roseliaの湊友希那ちゃんだよね?」

「本物だー。ねえ、オレ達といい事しない?」

 

 と、悪びれた様子もなくスタジオに入ってくると、燐子が青ざめた。

 

あこ「ねえ、あなた達誰なの!? あこ達これから練習するんだけど!」

紗夜「そうです。出ていって貰えませんか?」

「まあまあ、そんな事言わないでさ」

 

 チャラ男たちが友希那達に近づいて、そのうちの一人が紗夜の手をつかもうとしたその時、黒服達が現れて、チャラ男達を一瞬にして捕まえた。

 

「ぐわっ!!」

「な、何だこいつ等!!」

「は、離せぇ!!」

 

 一瞬の出来事にRoseliaは驚きが隠せなかった。

 

あこ「すごーい!! カッコいい~!!!」

燐子「……!!」

 

『一丈字様。被疑者を全員捕らえました』

飛鳥「ありがとうございます。警察は既にこちらで手配しましたので、そのまま拘束をお願いします」

 

 こうして、燐子を狙っていたチャラ男たちは逮捕された。燐子の他にも複数の女性に集団で手を出していたことが分かり、手口が悪質だとして当分は塀の中に入れられることになったという。

 

飛鳥「これで任務完了ですね。お疲れ様でした」

「いえ、一丈字様もお疲れ様です」

 

 飛鳥が笑みを浮かべた。

 

 

あこ「凄かったねー! 一気に黒服の人たちが…」

燐子「うん…」

 

 あこと燐子が話をしていたが、燐子は考えていた。

 

燐子(…それにしても、あまりにもうまく出来過ぎてる。どうして分かったのかな)

 

 燐子は黒服達がチャラ男たちを取り押さえている所を思い出した。

 

 そして、休憩時間に飛鳥が自信満々に言い放った事が引っ掛かっていた。

 

 

燐子(まさか…)

 

 

 

***********************

 

 後日、犯人が捕まって…。

 

「聞いたよ!! 犯人が捕まったって!!?」

「良かったね!? 本当に良かった!!」

「でも心配だから…」

「オレ達が当分の間送り迎えするよ!!」

 

 と、男子生徒達が懲りずに燐子と一緒に帰ろうとしていた為、

 

「いい加減にしなさい!! あなた達みたいなのがいるから燐子ちゃんや他の女の子達が迷惑してるの!!!」

 

 千聖の怒鳴り声で一蹴させられた。そしてそれを外から飛鳥が聞いていて苦笑いしていた。

 

「あ、あの…白鷺さん」

 

 燐子が話しかけた。

 

燐子「その…皆、私の事を心配してくれたんですよね。だから、そんなに怒らなくても…」

千聖「心配はしてたけど、それをいい事に嫌らしいことを考えてたのよ」

「そ、そんな事ないよ!!?」

「変な事言うなよ白鷺~!!」

「本当にそんなんじゃないから!!」

 

 千聖の嫌味に対して、男子生徒達が慌てると燐子が苦笑いした。

 

飛鳥(まあ、これでもう大丈夫そうだな…)

 

 飛鳥はもう問題ないと判断し、その場を後にした。

 

 放課後、飛鳥が帰ろうとすると…。

 

「一丈字くんっ」

飛鳥「?」

 

 飛鳥が振り向くと燐子がいた。燐子だけでなく友希那、紗夜、リサの3人もいた。ちなみに男子生徒達が追いかけようとしたが、女子生徒達に足止めされていた。

 

飛鳥「どうされました?」

燐子「あの…。色々気を遣ってくれてありがとう…」

飛鳥「いえ、当然の事なので」

友希那「確かに女性同士の方が安全かもしれないけど、気を遣い過ぎじゃない?」

 

 飛鳥の言葉に友希那が困惑した。

 

飛鳥「それはそうかもしれないですけどね、私がついてたらついてたで、逆上しますからね」

紗夜「た、確かにそれは…」

飛鳥「まあ、犯人が捕まったとはいえ、当面は油断はしない方が良さそうですね」

 

 その時、燐子は飛鳥を見つめた。

 

飛鳥「…どうされました?」

燐子「あの、もしかして…」

 

 その時だった。

 

「りんりーん!!!」

 

 あこがやってきて、飛鳥と燐子達が反応した。

 

燐子「あこちゃん!!」

あこ「あ、センパイもいたんだ! こんにちはー!」

飛鳥「こんにちは。これから練習ですか?」

あこ「ううん。りんりんが心配だからここまで来たの」

飛鳥「そうですか。それなら、私はここで失礼します」

燐子「あっ…」

 

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

あこ「行っちゃった」

燐子(……)

 

 燐子は飛鳥の後姿を見つめた。

 

 そして飛鳥が燐子達から離れると…。

 

飛鳥(…危ない所だった。危うく聞かれるところだった。黒服の皆さんを手配したのはオレじゃないかって)

 

 飛鳥が真剣な表情をしながら歩いていた。

 

飛鳥(油断できないな…気を付けないと)

 

 

 

おしまい

 



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第216話「飛鳥とお父様」

 

 

 ある日の事だった。

 

飛鳥「たまには親孝行すっかな」

 

 飛鳥は広島にいる親族にギフトを送る為、デパートに来ていた。

 

飛鳥「広島まで配達」

「はーい」

 

 飛鳥はデパートの特産品売り場にあった東京で有名な洋菓子店のお菓子の詰め合わせを注文した。

 

「3000円です」

飛鳥「はいはい。3000円ちょうどで」

「丁度ですね。今度の土曜日の夕方にお届けします」

飛鳥「宜しくお願いしまーす」

 

 そう言って飛鳥は注文を終え、家に帰るためにデパートから出ようとすると、

 

「君。ちょっといいかね」

飛鳥「?」

 

 飛鳥が後ろを振り向くと、そこには蘭の父親がいた。和服を着ていて、とてもダンディである。

 

飛鳥「あっ!!」

 

 飛鳥は見覚えがあった。以前林間学校でつぐみを助けた事で、つぐみの実家に呼び出された時に出会ったのだ。

 

飛鳥「…これはこれは。ご無沙汰しております」

蘭父「君はこんな所で何をしているのかね?」

飛鳥「ああ。母にギフトを送ってたんですよ。私一人暮らしなので…」

「一人暮らし?」

飛鳥「ええ。進学のために…」

 

 蘭父が一人暮らしという言葉に反応すると、飛鳥が苦笑いした。

 

蘭父「そうか…」

飛鳥「はい」

 

 蘭父が眼鏡をくいっと上げ、飛鳥を見ると飛鳥はまた苦笑いした。

 

飛鳥「えーと…。美竹さんはこちらにはどのようなご用件で」

蘭父「私は娘のライブを見に来たのだ」

飛鳥「え?」

 

 飛鳥が驚くと、蘭の父もあっけにとられた。

 

蘭父「…知らなかったのかね?」

飛鳥「え、ええ…。私は買い物に来ただけなので…」

 

 本当に知らなかった飛鳥は困惑していた。

 

飛鳥「そういや、このデパートの屋上に特設会場があったので…そこでライブをするのでしょうか?」

蘭父「そうだ。君もてっきりライブを見に来るものだと…」

飛鳥「あははは…」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「まあ、私は邪魔みたいなのでここで失礼しますね」

蘭父「待ちたまえ。誰も邪魔だとは言っていないだろう」

飛鳥「えーと…」

蘭父「それとも、私の娘のライブに不満があるのかね?」

 

 蘭の父がにらみを利かせると、飛鳥はまたしても苦笑いした。以前、蘭がライブをする事に大して好意的ではなかったとモカから聞いていた為、変わりように驚きを隠せなかった。

 

飛鳥「本当にお邪魔しても宜しいのでしょうか」

蘭父「構わん。一緒に来たまえ」

 

 そう言われ、飛鳥は蘭の父についていった。

 

飛鳥(まあ…この様子だと、それなりに上手くやってるみたいだな)

 

*********************

 

 そして屋上にやって来ると、ライブ会場がさまになっていて、特設会場には既に多くの客がいた。

 

飛鳥(結構大きなライブ会場だな…)

蘭父「……」

 

 蘭の父とライブ会場を見渡していた。整理券が間に合わず立ち見だったが、立ち見でも十分に蘭達の雄姿を見届けるには十分すぎた。

 

「Afterglow楽しみだな!」

「そうだな」

 

 という声が聞こえると、蘭の父も少しだけ機嫌が良くなり、飛鳥も安心していた。

 

「ひまりちゃんのおっぱいでかいって本当かな?」

「巴姐さんに踏まれたい…」

「モカちゃんになじられない…!」

「つぐみちゃんのお腹に顔をツッコミたい…!!」

 

蘭父「……」

 

 一気に機嫌が悪くなり、飛鳥が辟易した。

 

「蘭ちゃんにhshsしたい」

「prprしたい」

「くんかくんかしたい」

「いっそのこと抱きた」

 

 男性客が変態的な発言をしたため、蘭の父が怒り狂って突っかかろうとしたが、飛鳥が慌てて取り押さえた。

 

飛鳥「あのお父さん!! 落ち着いてください!!」

蘭父「貴様にお義父さんと呼ばれる筋合いはない!!」

飛鳥「字が違いますから!!」

 

*******************

 

 その頃蘭たちはというと…。

 

ひまり「よーし! 皆がんばるぞー!! えいえいおー!!!」

 

 ひまりが叫ぶが、誰も答えない。唯一つぐみが苦笑いしていた。

 

ひまり「乗ってよぉ…」

蘭「やだよ恥ずかしい」

ひまり「…もっと恥をかく呪いかけてやる」

巴「はいはい。バカな事やってないで行くよ」

 

 ステージライブは数組行われ、Afterglowの出番になった。蘭たちが出てくると、大歓声が上がった。前2組は男だけのグループのライブであまり盛り上がらず、ここにいるほとんどの客がAfterglowのファンである。

 

蘭「今日は私達のライブを…」

 蘭が飛鳥と蘭父に気づき、固まったが、何とか持ちこたえた。

 

蘭「た、楽しんでいってください!」

 

 最後まで言い切ると大歓声が上がったが、蘭は何で来たんだと飛鳥と父親を睨みつけていた。

 

つぐみ「一丈字くん!?」

ひまり「それに蘭のお父さんも!!」

巴「妙な組み合わせだな…」

モカ「面白くなってきたー」

蘭(ちっとも面白くない!! 一丈字はともかく、何で父さんがここにいんのよ!!!/////)

 

 蘭が頬を染めたが、お客さんがいる手前地を出すわけにいかないので、ライブを決行した。

父親の前で歌う恥ずかしさもあったが、何とか乗り切り、ライブは大成功させた。

 

飛鳥(あ、コレNARUTOの奴だ…)

 

「ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 演奏が終わり、大歓声が上がった。

 

「蘭ちゃーん!!」

「ひまりちゃーん!!」

「モカちゃーん!!」

「つぐみちゃーん!!」

「巴ちゃーん!!」

 

 という声が上がり、蘭たちも演奏しきって満足そうにしていた。

 

飛鳥(…そういや仮装大会で見たライブもこんな感じだったなぁ)

 

 飛鳥が仮装大会の事を想いだして、蘭の父を見ると、感涙していた。

 

飛鳥(やっぱり親バカだ…(汗))

 

 その時だった。

 

「やっぱりもう我慢できない…」

「?」

 

 するとファンがステージに上ってきて、蘭に近づこうとした。

 

蘭父「蘭!」

飛鳥「……!」

 

 飛鳥が超能力でファンを腹痛にさせたが、

 

「ふふふ…こんな事もあろうかと、おむつをはいてきたのだ!!」

 

 すると男は蘭をはかいじめにした。

 

「美竹蘭はオレが頂いたぁ!!」

 

 男の言葉に会場はパニックになった。

 

つぐみ「蘭ちゃん!!」

巴「このぉ!!」

「おっと動くなよ!! 動いたらどうなるか分かってるよな!?」

 

 ファンが蘭を強く抱きしめたが、その間に飛鳥は超能力で存在感を消して移動していた。

 

蘭「くそっ!! 離せ!!」

 

 蘭が後ろから股間を蹴り上げたが、違和感を感じた。

 

「残念だったねぇ。こんな事もあろうかとちゃんと対策はしてるんだよ。それにしても蘭ちゃんにキンタマ蹴られた…♥」

 

 という男の恍惚な表情に一同がドン引きした。

 

蘭父「あの男…!! 私の娘になんてことを!! 許せん!!」

 激昂したその時飛鳥がいない事に気づいた。

 

蘭父「!!?」

 

「さあ! 僕と大人しく来るんだ!!」

蘭「助けて!!」

「蘭ちゃん!!」

 

 その時、飛鳥がステージまで来て、男に一撃手刀を食らわせて気絶させた。

 

「!!?」

 

 何が起きたか全くわからず、蘭たちもファン達も驚いているが、飛鳥が黙々と男を連れ去った。シーンとする一同だったが、蘭の父親がステージに上がったことで状況が一変した。

 

蘭「と、父さん!!」

 すると蘭の父が蘭を抱きしめた。

 

蘭「!!/////」

蘭父「良かった…本当に良かった…!! お前が死んでしまっては、私はもう生きていけん…!!!」

 蘭父がそう言うと、蘭が顔を真っ赤にして、困った顔をしていた。

 

蘭「や、やめてよ恥ずかしい!!!//////」

 

 ファン達が騒然としていた。

 

「おい! 誰だよおっさん!!」

「蘭ちゃんから離れろ!!」

「殺すぞ!!」

 

 と、ブーイングを上げるが、飛鳥は超能力で音声をスピーカーから音声を流した。

 

『えー。皆さま落ち着いてください。現在、壇上に立たれているお方はAfterglowのボーカル・ギター担当・美竹蘭さんのお父様です!』

「!!?」

 

飛鳥「皆さま。ここは何も言わず、見守ってあげてください」

 飛鳥が毅然とした態度で言い放つと、ファンが大人しくなった。

 

飛鳥「それでは、私はこれで失礼します!」

 飛鳥はそのまま逃亡した。

 

 ファン達が顔を合わせると、さっきよりも大きな歓声が響き渡った。

 

「良かったなー!!」

「良かった良かったー!!」

「これからも頑張れよー!!」

「お義父様―!!!」

 

 観客からお父様コールが沸き上がると、蘭の父が激昂した。

 

蘭父「貴様らにお義父様と呼ばれる筋合いはない!!」

蘭「もうやめてよぉ!!!(泣)/////」

 

 蘭が恥ずかしさのあまり涙目になると、それがファンのハートを貫いた。そして残りの4人は苦笑いした。

 

飛鳥(さて、後始末後始末…)

 

 飛鳥が超能力で蘭達の記憶を改ざんした。

 

*****************:

 

 後日…

 

蘭「待てぇえええええええ!!!!///////」

 

 学園内で飛鳥は蘭に追いかけまわされていた。というのも、記憶を完全に消すとかえって怪しまれるため、一応やった事は記憶に残したが、具体的にどういう事をしたかだけを消したのだ。

 

 だが、結果的に飛鳥が囃し立てた事で、自分の父親が目立ってしまい、最終的に恥をかかされたので飛鳥は蘭に追いかけまわされた。

 

ひまり「…なんか、本当に謎が多いよね。一丈字くん」

巴「ああ…」

つぐみ「うん…」

モカ「でも、おもしろ~いwwwwww」

 

 唯一正体を知っているモカはニマニマしていた。

 

蘭「絶対に許さないからぁ!!!」

飛鳥(これが現実!!!)

 

 

おしまい

 

 

 

 



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第219話「飛鳥と後輩達」

 

 

 ある日のバンドリ学園。

 

「な、なによあんた達!!」

 

 あこ、香澄の妹である明日香、そして最近転校してきた菱川六花(通称:ロック)が談笑しながら下校していたが、途中で何か如何にも女を食ってそうなチャラ男三人組が絡んできた。ロックが怯えていて、あこと明日香が噛みついたが、チャラ男たちがなめてかかっていた。

 

「いやあ、楽しそうに話してたからさあ。オレ達も仲間に入れてよ」

「ていうか、どっか遊びに行かね?」

 

ロック「う、うぅ…」

明日香「行かない!」

「またまたぁ」

「そんな事言わずにさぁ」

 

 完全に女3人だと思って完全になめてかかるチャラ男たち。そしてそれを飛鳥が遠くから見ていた。

 

飛鳥(あれは…宇田川さんと戸山さんの妹の…)

 

 そう考えていると、あこが飛鳥に気づいて、

 

あこ「あ!! センパーイ!! おーい!!」

飛鳥(やべ、気づかれた。でも逃げるわけにはいかないから行くか)

 

 飛鳥が普通にやってきたが、チャラ男たちが舌打ちをした。

 

飛鳥「どうされたんですか?」

あこ「聞いてよ! こいつらがあこ達をナンパしようとしたんだよ!」

飛鳥「ナンパですか…」

 

 飛鳥が男子生徒達を見ていたが、

 

「あぁ? 何見てんだてめぇ」

「センパァイ。オレ達今からこの子遊ぶからかえって貰えませんかねぇ?」

「帰らないと先輩といえど容赦しないっスよ?」

 

 と、飛鳥にメンチを切るが、飛鳥は全く表情が変わらないばかりか呆れて、あこ達を見た。

 

飛鳥「あ、今のうちに逃げてください。この人たちの相手私がしておきますので」

明日香「えっ!?」

「は? そんな事させねーし」

「随分舐めた事するんですねぇ?」

「モブの分際が。さっさと家に帰れ…よっ!!」

 

 と、男子生徒の一人が飛鳥に殴りかかるが飛鳥は普通に受け止めた。

 

ロック・あこ・明日香「!!?」

飛鳥「私がモブというのであれば、あなた方は私を引き立ててくれる悪役でしょうか」

 

 飛鳥は涼しい顔で男子生徒の拳を受け止めたが、徐々に力を入れていき、男子生徒の表情を歪ませていく。その取り巻きの生徒も飛鳥の狂気に怯え始めていた。

 

「ひ、ひぎぃ…!!」

「お、おい!! 何怯んでんだよ!! 3人がかりでやればいいだろ!!」

「そ、そうか!!」

 

 そう言って残りの2人が飛鳥に殴りかかろうとしたが、飛鳥があっさりかわして攻撃を受け止める。

 

明日香「い、一丈字先輩!!」

 

 明日香達が心配するが、飛鳥は普通にチャラ男たちの攻撃をよけていた。

 

「く、くそっ!!」

「どうして当たんねぇんだよ!!」

飛鳥(まあ、こんなもんか…)

 

 その時、一人が後ろから飛鳥を抱えたが、前かがみになって脛を蹴った。

 

「いったぁ~い!!!!!」

「!!!」

 

飛鳥「痛いですか?」

「ぼ、暴力だ!!」

「先生に訴えてやる!」

飛鳥「何とでも」

 

 2人のチャラ男が脅しをかけたが、飛鳥は全く動じなかった。

 

飛鳥「そういう事をされるのであれば、こちらも容赦はしませんよ」

「!!」

 

 飛鳥が笑みを浮かべると、チャラ男たちは恐怖した。

 

飛鳥「落とし前…キッチリつけさせて貰いますので」

明日香・ロック(極道!!?)

 

 飛鳥の物騒な発言に明日香とロックは困惑した。

 

「ひ、ひぎぃいいいいいいいいい!!!!」

「逃げろぉおおおおおおおおおお!!!」

「ま、待ってぇ…」

 

 チャラ男たちは情けない声を出しながら逃げていった。飛鳥はチャラ男たちに呆れながらあこ達を見た。

 

飛鳥「大丈夫ですか?」

明日香「え、ええ…」

ロック「あ、ありがとうございました!」

飛鳥「いえいえ」

 

 ロックからお礼を言われると、飛鳥が苦笑いした。

 

あこ「センパイとってもカッコ良かった!!」

飛鳥「あ、そうですか?」

あこ「あ、そうだ」

飛鳥「?」

あこ「もうそろそろ、センパイの事、飛鳥くんって呼んでもいい?」

飛鳥「あー…そういえば」

 

 初対面の時、飛鳥に対して「飛鳥くん」と呼ぼうとしたが、初対面の先輩に対して馴れ馴れしいという事から、姉の巴から注意されたため、暫くはセンパイ呼びだったのだ。

 

飛鳥(…もう200回もやってるし、それくらいならいいか)

 

 飛鳥が困惑していた。

 

飛鳥「TPOで使い分けて頂けたらいいですよ」

あこ「やったー!! あ、でも。そろそろ敬語も辞めてほしいな」

飛鳥「ごめんなさい。それはちょっと無理です」

あこ「…まあいいや。それよりも助けてくれてありがとね!」

飛鳥「ええ。それはそうと、さっきの彼らとはお知合いですか?」

あこ「ううん。多分別のクラスの子だと思う」

 

 飛鳥の言葉にあこが渋い表情をした。

 

飛鳥「そうですか。まあ、今日はもうタクシーとかで帰った方がよさそうですね」

明日香「そ、そんなお金ありませんよ…」

飛鳥「ちょっと待っててください」

 

 飛鳥がそう言うと、弦巻家の黒服の人がさっそうと現れた。

 

飛鳥「…この人たちを家に送ってあげてください。危ないので」

「畏まりました。それから先程の喧嘩ですが、映像を録画してあるので、エビデンスとしてお使いください」

飛鳥「ありがとうございます。それと、彼らの素性などを調べて頂けますか? あの様子だと余罪がありそうなので」

「畏まりました」

 

 飛鳥と黒服のやり取りを見て、ロック、あこ、明日香は唖然としていた。

 

飛鳥「宜しくお願いします」

「それでは宇田川様、戸山様、菱川様、ご自宅までお送りしますので」

明日香「い、いや! そこまでして貰わなくても!」

あこ「それはそうと、飛鳥くんはどうするの!?」

飛鳥「中等部の先生達にちょっと根回ししてきます」

あこ「そ、それだったらあこも行く!」

ロック「わ、私も…」

明日香「それだったら私も…」

 

 

 こうして飛鳥は中等部の子達と仲良くなった。

 

******************************

 

 翌日

 

香澄「飛鳥くん!!」

巴「一丈字!!」

 

 香澄と巴が血相を変えて1年3組の教室に来たが、飛鳥はいなかった。

 

香澄「あれ? 飛鳥くんは…?」

「ま、またどっか行っちゃった…」

巴「くそう! 礼をさせないつもりだな! 見つけたら探してたって言っといてくれ!」

「あ、うん…」

 

 そう言って香澄と巴が去っていった。

 

 そして飛鳥はというと、中庭のベンチで横になっていた。

 

 

飛鳥「思った他大ごとになっちゃった…」

 

 

おしまい

 



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第222話「リサコレ」

 

 

 ある日の事だった。

 

「練習に付き合ってくれてありがとう! 飛鳥くん」

「いえいえ…」

 

 ライブハウス「CiRCLE」でRoseliaが練習をしていたが、そこに一丈字飛鳥もいた。成り行きでRoseliaの練習を見学する事になったのだ。

 

あこ「それにしてもリサ姉遅いねー」

燐子「事故にあってなければいいんだけど…」

「ゴメーン。遅くなっちゃった…」

 

 あこと燐子が会話をしていると、リサが現れたがびしょぬれだった。

 

あこ「どうしたのリサ姉! びしょぬれだよ!」

飛鳥「外、雨が降ってたんですか?」

リサ「そうなのー…って、飛鳥くんも来てたんだ。いらっしゃい」

飛鳥「あ、どうも…お邪魔してます」

紗夜「それよりも早く着替えた方が…」

友希那「着替えなんてあるの?」

 

 友希那がそう言うと、皆が悩んでいた。

 

友希那「そういえば一丈字くん。あなた、今日体育あったわよね?」

飛鳥「ええ。一式持ってきてますが…」

 

 友希那の言葉に飛鳥が困惑しながら返事をして、リサを見た。

 

飛鳥「少々汗臭いかもしれませんが…」

リサ「いいよいいよ」

飛鳥「ダメだって仰ってますよ」

リサ「…いや、ダメとは言ってないんだけど。それじゃ、お言葉に甘えていい? 洗って返すから」

 

 そんなこんなで飛鳥のジャージ一式を借りる事にしたリサ。

 

リサ「お待たせ~」

あこ「おおーっ!!」

 

 紺色のジャージという地味な服装であるが、素材が良いせいかとてもキラキラしていた。

 

あこ「リサ姉、凄く可愛い~!!」

燐子「素敵です…」

リサ「そ、そう?」

 

 あこ、燐子、リサが会話をしているのを、飛鳥、友希那、紗夜が見守っていた。

 

友希那「身長が違うからダボダボね…」

紗夜「ええ…。上を着る必要はあったのかしら?」

飛鳥「……」

 

*******************:

 

あこ「そうだリサ姉!! あこの服着てみてよ!」

リサ「えっ…今着替えたばっかりなのに…」

燐子「私も見てみたいです…」

友希那「それじゃ、入ってくるところから…」

紗夜「待ってください」

 

 紗夜が割って入った。

 

紗夜「宇田川さんの服はどうするんですか?」

あこ「あこがそのジャージを着ればいいんですよ」

紗夜「なっ…。と、殿方のジャージですよ!?」

あこ「リサ姉が大丈夫なんだから、あこだって大丈夫ですよー。ね、飛鳥くん?」

飛鳥「宇田川さんが着ていただく分には問題ございませんが…」

 

 飛鳥が困っていた。

 

友希那「本人の許可が出ているから、さあ」

リサ「さあって!!」

 

 しかし、そんなこんなであことリサが衣装チェンジをした。

 

**********************:

 

リサ「じゃーん」

あこ・燐子・紗夜・友希那(かわいい)

 

 あこの服に着替えたリサがお披露目をしたが、評判が良かった。飛鳥もリサの服を見ていたが、困惑していた。

 

リサ「ど、どうかな…」

あこ「とっても可愛いよ!」

リサ「飛鳥くん。どう?」

飛鳥「可愛い事は可愛いですけど、なんか印象変わりますね…」

リサ「どんなふうに?」

飛鳥「何ていうか昔はやった小悪魔系みたいな感じですかね」

友希那「リサは元々派手だからというのもあるわね」

あこ「もっと見たーい!!」

燐子「あ、それじゃ今度のライブの衣装のサンプルを…」

リサ「な、何かフリフリ過ぎない…? ピンクだし」

 

 燐子から渡されたフリフリの衣装を見て、リサが少し頬を染める。

 

飛鳥(…ちゃんと服あるじゃない)

 

 飛鳥がそう思っていたが、

 

リサ「いや、流石にこの格好で帰るのは恥ずかしい。目立つから…////」

飛鳥「あ、そ、そうですか…」

 

 そんなこんなで着替えてみると、

 

リサ「ど、どう…?/////」

あこ「可愛い!!」

 

 リサが少し恥ずかしそうにお披露目すると、相変わらず評判が良かった。

 

リサ「これ、どっちかっていうとパスパレじゃない…?」

燐子「でもよく似合ってます…!」

リサ「そ、そう?」

 

友希那「サンプルは他にもあるわ。これも来てみて!」

 

 猫っぽいコスプレ衣装

 

リサ「にゃ、にゃーん…//////」

あこ・燐子・紗夜(可愛い)

友希那「……♥」

飛鳥「!!?」

 

 リサが猫っぽいコスプレをすると、あこたちの評価も良かったが、友希那の表情が蕩けていて,飛鳥が驚いていた。

 

燐子「これはどうですか…?」

 

 野生児

 

リサ「あ~ああ~…」

友希那・あこ・燐子・紗夜(可愛い)

 

あこ「こんなのもー!!」

 

 全身白タイツ

 

リサ「……」

友希那・あこ・燐子・紗夜(可愛い)

飛鳥(すっかりおもちゃや…)

 

 とまあ、リサは完全におもちゃにされて、飛鳥は困惑していた。

 

リサ「も、もういいかな…。練習しなきゃだし…疲れてきた…」

 

 リサが困惑したが、友希那達は完全にスイッチが入っていた。

 

友希那「完全に面白くなってきたわ」

紗夜「……/////」

燐子「ほ、他に何か…」

 

 結局、その日はリサのコスプレショーで終わった。

 

飛鳥(今井先輩…お気の毒に…)

 

********************:

 

 しかし、本当に気の毒なのは勿論こいつだった。

 

飛鳥「……」

 

 後日、バンドリ学園に登校した飛鳥だったが、Roseliaのファンらしき男達にいちゃもんをつけられていた。この様子からある程度飛鳥は察した。

 

「おい、一丈字ぃ…!!」

飛鳥「何でしょう」

「お前聞いたぞ。Roseliaの練習に参加した挙句、リサちゃんとあこちゃんに自分のジャージを着せたそうだな…」

飛鳥(どうして分かるんだろう)

 

 飛鳥が困惑していた。

 

飛鳥「ええ。今井先輩が雨に濡れて着替えが無かったという事なので…」

 

 飛鳥がそう言うと、ファン達が喚きだした。正直見苦しいったらありゃしない。

 

「貴様ぁ!! もしかして今ジャージを持っているのかぁ!?」

「リサちゃんとあこちゃんのぬくもりを感じながら体育を受けようとしてるのか!?」

「そうはいかんぞ!!」

「そのジャージをよこせぇ!!」

 

 あまりの気色悪さに飛鳥は言葉を失いかけたが、

 

飛鳥「あのジャージでしたら、氷川先輩が処分しましたよ」

「!?」

飛鳥「こうなる事を恐れての事です。ジャージは弁償するから、こちらに渡してくれって」

「紗夜ちゃんに何させとんじゃあああああああああ!!!」

「許せねぇ!! 本当に許せねぇ!!」

「Roseliaを財布代わりにしやがって~!!!」

「今日こそぶちのめしてやる!!」

 

 どう考えても自分のせいにしようとする男子生徒達を見て、飛鳥は完全に呆れかえっていた。

 

「覚悟は出来てんだろうなぁ…?」

 

 男子生徒達は拳を鳴らして、飛鳥をボコボコにしようとしていたが、飛鳥は静かに目を閉じた。

 

飛鳥「それはあなた方の方だと思います」

「は!?」

飛鳥「後ろをご覧ください」

「!?」

 

 飛鳥に言われて男子生徒達が後ろを振り向くと、ごみを見る目で男子生徒達を見つめる友希那・紗夜、引き気味に苦笑いするリサ、完全におびえている燐子の姿があった。

 

あこ「あこもいるよ!!」

 

 あこが遅れてやってきた。

 

飛鳥「ちなみにこうなる事を想定して、氷川先輩達とは打合せ済みです」

友希那「あなた達」

「は、はいっ!!」

 

 友希那が青筋を立てた。

 

友希那「今度の学内ライブ、女子限定にするから。じゃ」

 

 そう言ってRoseliaが去っていくと、男子生徒達は慌てて友希那達を追いかけていった。

 

飛鳥「はぁ…」

 

 飛鳥は進歩のない男子生徒達を見てため息をつきながら、教室に戻っていった。

 

 

おしまい

 



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第224話「ハーレムを捨てた一丈字飛鳥」

 それはある日の事だった。

 

香澄「ねえねえ! 皆でお花見しようよ!」

 

 1組の教室で香澄がそう言いだした。

 

こころ「いいわね!」

はぐみ「やろうやろう!」

 

 香澄の提案にはぐみとこころが賛成すると、他のバンドガールズも賛同した。

 

たえ「Afterglowや2年生の先輩達も誘おうよ」

香澄「うん!」

 

 そう言って友希那達にも声をかけ、バンドガールズ25人でお花見をする事にした。

 

香澄「あ、そうだ。飛鳥くんも誘う?」

「!」

 

 香澄の提案に一部のメンバーが困惑した。飛鳥は悪い人物ではないが、女子25人の中に男が1人だけというのは、本人も居心地があまり良くないだろうと、有咲たちは考えていた。

 

こころ「勿論よ!」

美咲「あ、ちょっと待ってこころ」

こころ「どうしたの?」

 

 こころがそう言うと、美咲が待ったをかけた。

 

美咲「一丈字くん男の子だし…、やっぱり気を遣うんじゃない?」

有咲「そうだな。男子とかもうるさいし」

香澄「えー! そんな事ないよー」

こころ「そうよ。飛鳥も一緒にいたら楽しいわよ」

美咲「そうかもしれないけどさぁ…」

 

 美咲や有咲も飛鳥が花見に参加する事は特に反対はしていない。だが、さっきも言った通り、女子の中に男子がいるというのもアレだし、女子のみでお花見がしたいというメンバーもいるかもしれない。なかなか難しい所である。

 

たえ「まあ、一丈字くんの都合も聞いてみたらどう?」

香澄「そうする!!」

 

**************

 

 3組の教室

 

飛鳥「あー…すみません。実はこの日、用事があるんですよ」

香澄「えー! そうなの!!?」

飛鳥「そうなんですよ」

 

 香澄達が飛鳥を誘いに来たが、飛鳥は用事があるからと断った。

 

香澄「日にち変える?」

たえ「けど、皆が集まれるのはこの日しかないよ」

飛鳥「私の事は気にしないでください」

 

 飛鳥がそう言うと、沙綾が困った顔をした。

 

沙綾「一丈字くん…」

飛鳥「何でしょう」

沙綾「もしかして…。私達に気を遣ってる?」

飛鳥「はい」

 

 飛鳥があっさり認めたので、皆がずっこけた。

 

飛鳥「参加されるのって、バンドやってる方たちですよね?」

たえ「うん。うちやアフグロ、パスパレ、ロゼリア、ハロハピ」

飛鳥「そんな環境の中に入ったらどうなるかお判りでしょう」

有咲「…少なくとも、パスパレファンやロゼリアファンが黙ってねぇだろうな」

美咲「だと思った…」

 

 そう言って有咲と美咲が苦笑いしたが、

 

こころ「黒服さん達に警備をして貰えばいいのよ」

飛鳥「まあ、警備は問題ないとして、やっぱりファンの方々が黙ってないですよね」

有咲「ホントそれだよな…」

飛鳥「それに、女子だけでお花見したいって人がいるかもしれませんし」

こころ「そんな事ないわよ」

飛鳥「皆さんも気を遣っていいよいいよって言いますけど、そうとは限りませんよ」

こころ「どうして?」

飛鳥「男性の前だと話しづらい事とかあるでしょう」

こころ「例えば?」

飛鳥「女性のデリケートな話とか」

 

 飛鳥が腕を組んで言い放った。

 

こころ「デリケートな話って?」

飛鳥「例えば…」

有咲「言わんでいいわ!!」

美咲「ゴメン。ホントにゴメン一丈字くん」

 

 話が平行線のまま、その場はお開きになり、飛鳥の参加に至っては残りのメンバーで決める事になった。

 

飛鳥『…1人でも反対者がいれば不参加で』

 

*************

 

 その結果…。

 

沙綾「ゴメン一丈字くん。お花見の件だけど、今回は…」

飛鳥「その方が良いですよ」

 

 反対者が出た為、飛鳥の参加はなしになった。伝えに来た沙綾が申し訳なさそうにするが、飛鳥は至っていつも通りだった。

 

有咲「やっぱり女同士で花見がしたいってよ」

飛鳥「そりゃそうですよ。ゆっくり楽しんできてください」

美咲「ゴメンね…。こころが我儘言って」

飛鳥「いえいえ」

 

 こうして飛鳥の不参加が決まった。

 

**************

 

 そして香澄達のお花見当日。バンドガール25人が集まり、ビニールシートを敷いて桜の下でお花見をしていた。

 

こころ「イエーイ!!」

美咲「切り替え早…」

 

 飛鳥が参加できなくなってショックを受けていると思われたが、すぐにケロッと忘れたかのように、こころがはしゃいでいた。

 

リサ「…飛鳥くん。あたし達に気を遣って辞退したんだよね」

紗夜「確かに、女子の中に男性がいるというのはあまり好ましくありませんが…」

 

 自分たちに気を遣ってお花見を辞退した飛鳥を皆が気にかけて、気持ちが沈んでいた。

 

こころ「お花見はまたいつでも出来るわよ」

花音「こころちゃん…」

こころ「飛鳥が気を遣ってくれたんだもの。あたし達はあたし達で楽しみましょ!」

「……」

 

 こころの言葉にメンバーたちは申し訳なさそうにしていた。

 

有咲「そ、そうですよ! 一丈字だってその…男子だから、やっぱりそういう女子だけで話がしたいってのが分かってくれたんですよ!」

美咲「そうですよ」

 

 有咲と美咲がフォローに入ると、皆が元気を取り戻したが、まだ腑に落ちなさそうだった。

 

香澄「やっぱり今からでも飛鳥くんを呼んでみようよ! こころん!」

こころ「分かったわ。それじゃ電話かけるわね!」

 

 こころが飛鳥に電話をかけたが、飛鳥は電話に出なかった。

 

こころ「出ないわね。いないのかしら」

沙綾「そういえばなんか用事があるって…」

有咲「花見には参加しないと思って、予定入れたんじゃねーの? 花見を始めようぜ!」

 

 こうして、香澄達は飛鳥抜きで花見をする事にした。最初は飛鳥の事を気にかけていたが、次第に元気を取り戻して全く気にすることなく、楽しむことが出来た。

 

***************

 

 その頃、飛鳥というと…。

 

 

 別の場所で1人花見をしていたが、酔っ払いが誤って桜の木に火をつけて引火し、そのまま他の木に燃え移るといった大惨事になった。飛鳥は落ちていた狐のお面をかぶり、超能力を使って消火活動をし、なおかつ煙を吸って倒れている人間を発見しては、安全な場所に運んでいた。消防車と救急車が来るまでたった一人で救助作業に勤しんだ。

 

 そして周りに悟られないように、いつものように存在感を消して、人知れず戦っていた。

 

 

飛鳥(画面の前の皆さん。これからのレジャー…火の元には気を付けてください!!)

 

 

おしまい

 



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第225話「英雄・一丈字飛鳥」

第225話

 

 前回までのあらすじ

 

 女子25人の中で男性がいると色々あれなので、お花見を辞退した一丈字飛鳥。しかし、桜を見るくらいならいいだろうと、香澄達とは別の場所で1人お花見をしていたが、酔っ払いが桜の木に火をつけてしまい、それが次々と火が移って大惨事に。おまけに煙を吸って意識を失い、逃げ遅れた人々も何人かいた。

 

 そんな絶体絶命の状況で、飛鳥は超能力を駆使して救助活動にあたる。全員を救出したものの、命を顧みず救助活動をしている姿は完全にみられてしまう。

 

********************

 

「これを全部君が!?」

「……」

 

 暫くして駆け付けた救急隊員に事情を説明する飛鳥。何とか誤魔化そうとしていたが、飛鳥が全員救出したと周りの人間が証言したため、救急隊員が驚いていた。

 

「それはそうと、君も怪我が酷いじゃないか!!」

「君も病院に!!」

 

 救急隊員にそう促されたが、飛鳥は瞬時に消えた。

 

「き、消えた!!?」

 

 

「…ふぅ」

 

 暫く離れた所で飛鳥はお面を外し、現場の方を見た。

 

飛鳥「何とか全員は救助出来た筈だ。しかし、こんな事になろうとはな…」

 

 そう言って飛鳥はその場を後にした。

 

 一方、香澄達はガールズバンドだけでお花見を楽しんでいた。勿論、彼女目当ての男子生徒達もいて、飛鳥がいないのをいい事にチャンスだと思って、近づこうとしたが弦巻家の黒服達がそうはさせなかった。

 

「何でこんなにガードが堅いんだよ!!」

「一丈字がいないのがチャンスなのに~!!!」

「ああああああああああああん!!!」

「美少女達と戯れさせてくれぇ~!!!!」

「もうこの際黒服の人でもい…」

 

 

友希那「全く、うるさいったらありゃしない…」

蘭「そうですね…」

千聖「ハァ…」

 

 黒服達に取り押さえられてる男子生徒達を見て、友希那と蘭、千聖が冷ややかな目で見ていた。

 

香澄「そういえば、飛鳥くんは今どうしてるかな」

はぐみ「そうだね」

香澄「ちょっとまた電話かけてみよう?」

 

 香澄が飛鳥に電話をかけたが、電話に出なかった。

 

香澄「…お昼寝してるのかな?」

はぐみ「そうなのかなー…」

 

 そんな中、リサがスマホでニュースを見ていたが、少し複雑そうにしていた。

 

あこ「どうしたのリサ姉」

リサ「いや…横浜の花見会場で火事があったみたいだよ。しかも大規模の」

あこ「ええっ!?」

リサ「何か桜の木が次々と燃え移って、山火事みたいになったんだって」

燐子「そ、そうなんですか…」

リサ「あたし達も気を付けないとねー…」

 

 ニュースに火事になった様子が画像として残されていたが、その凄惨っぷりを見て、リサが辟易していた。

 

リサ「でもそれ以上に気になるのが…」

あこ「うんうん」

リサ「逃げ遅れた人がいるみたいなんだけど、その人たちを1人の男の人が助け出したって…」

あこ「何それ。凄くカッコいい!」

燐子「……!!」

 

 リサの言葉にあこが興奮すると、他のメンバーも反応した。

 

香澄「何々!? どうしたんですか!?」

リサ「えっとね…」

 

 香澄の言葉にリサが反応した。

 

たえ「スーパーマンみたい…」

りみ「めっちゃ凄い…」

 

 救助した男(飛鳥)の活躍を聞いて、バンドガールズも感心していた。するとあこがすぐにスマホで何か調べた。

 

あこ「リサ姉! その火事の事でツイッターが凄い事になってるよ!!」

リサ「えっ!?」

 

 皆でユーザーが投稿した火事の様子を閲覧した。そこには燃え盛る炎の中、仮面をかぶった男(飛鳥)が逃げ遅れた人々を抱えて、安全な所に置かせては、炎の中に駆け込んでいったが、スピードがあまりにも早かったのだ。

 

花音「ふぇえええ!! 危ないよぉおお…」

 

 炎の中に突入する所を見て花音が慌てふためいた。

 

日菜「この人、お面かぶってるけど前が見えてるのかな?」

彩「突っ込むところそこじゃないでしょ!」

イヴ「サムライ…サムライがいます…!!」

麻弥「ちょっと違いますね…」

 

 どこまでもマイペースな日菜に彩が突っこみ、興奮するイヴに対して麻弥が苦笑いした。

 

香澄「それにしてもこんな凄い人がいるなんて…」

沙綾「無茶してるのは感心できないけどね…」

 

 皆が話している中、モカは映像をじっと見つめていた。

 

*******************

 

 後日…。

 

飛鳥(はぁ…昨日は大変だったなぁ)

 

 昼休憩、飛鳥は中庭で黄昏ていた。

 

飛鳥(幸い死者が出なくて良かったけど、久々だなぁ。あんな大仕事。お面…屋台で買ったけど、バレてなきゃいいなぁ)

 

 飛鳥がため息をついた。

 

「飛鳥くーん」

 

 モカがやってきたが、なにやらスコープをつけている。

 

飛鳥「どうしたの? スコープなんかつけちゃって」

モカ「それは君が一番よく分かってるでしょ~。此間の花見会場の火事、ニュースで見た?」

飛鳥「見たよ。思った他大ごとになってたね。助けた人凄かったね~」

モカ「……」

飛鳥「何が言いたいの」

モカ「別に~。それはそうと今日予定ないよね~?」

飛鳥「どうあがいても、あるって言わせたくないの?」

モカ「モカちゃんが労ってあげよう~」

飛鳥「……」

 

**************

 

 その夜

 

「一丈字様。お疲れ様でした」

飛鳥「あ、いえ…」

 

 飛鳥、モカ、こころの3人で夜桜見物をしていて、黒服からねぎらいの言葉をかけられた。

 

こころ「今度は一緒にお花見に行きましょうね!」

飛鳥「生きてたらね」

モカ「絶対生きて」

 

 そうモカに牽制されたという。

 

 

 

 その頃…。

 

 

千聖「……」

 

 

 千聖はスマホで火事のニュースの映像を見ていたが、映像に映っていた仮面の男を神妙な顔で見つめていた。

 

 

おしまい

 

 

 



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第226話「Pastel*Palletes映画大作戦!・1」

 

 

 Pastel*Palletesの事務所。

 

「……」

 

 千聖は一人考え込んでいた。というのも、先日起きた火災で、龍狐のお面を被った男が尋常じゃない速さで炎の中に駆け込み、市民を救い出した映像の事でどうしても気になっていた事があった。

 

千聖(…考えすぎかもしれないけど、どうしてもそうとしか思えないのよね)

 

 龍狐のお面を被っている男の正体は飛鳥ではないかと思い始めていた。

 

千聖(花音や燐子ちゃんと話してた事もあったけど…、前々からあの子、色々引っかかる所があるのよね)

 

 千聖がそう考えていると…。

 

「…ちゃん。千聖ちゃん!」

千聖「!」

 

 誰かに声をかけられて千聖が正面を向くと、そこには彩、日菜、麻弥、イヴの4人がいた。

 

千聖「あ、あなた達…」

日菜「珍しいね。千聖ちゃんが彩ちゃんに呼ばれても反応しないなんて」

彩「それどういう意味なの…?」

 

 日菜の言葉に彩が困惑した。

 

千聖「も、もしかしてレッスンの時間かしら?」

日菜「レッスンは明日でしょ」

千聖「あ、そ、そうだったわね…」

 

 らしくないケアレスミスに彩達も心配した。

 

彩「どうしたの千聖ちゃん。千聖ちゃんらしくないよ?」

日菜「きっと疲れてるんだよ。ずっと撮影あったし」

千聖「そ、そうなのよ…」

 

 彩達に言わないのは、恐らく考えすぎだと言われるからだった。千聖は誤魔化すように苦笑いした。

 

麻弥「でも千聖さん。その事でちょっと残念と言っていいのかどうか分からないお話が…」

千聖「どうしたの?」

彩「えっとね。今度5人全員での映画の出演が決まったんだよ!」

千聖「あら、そうなの? 凄いじゃない!」

 

 彩の言葉に千聖がテンションを上げた。

 

千聖「それだったら、頑張らないとね」

彩「う、うん…」

 

**************

 

 そしてPastel*Palletesが5人で映画出演することがバンドリ学園中に広まり…。

 

「おい、今度パスパレが映画デビューするらしいぞ!」

「マジかよ!」

「オレ絶対見に行く!」

「しょっちゅう行く!!」

 

 当然ファンの男子生徒達は大盛り上がりだった。

 

「千聖ちゃん。映画、見に行くからね」

「ありがとう」

 

 千聖も教室でクラスメイト達から沢山声をかけられた。

 

千聖(映画も決まってるもの。いつまでも気にしてる場合じゃないわ)

 

 そう自分に言い聞かせ、頭の中に浮かんでいた龍狐の男(飛鳥)を消していった。

 

*************

 

 そして撮影が始まった。撮影の舞台は京都で行われ、古き日本の文化に触れる事が出来るとイヴは大喜びだった。他のメンバーも東京以外で仕事する事は滅多になかった為、それなりにテンションが上がっていたが…。

 

「おせーよ! 撮影始めるのにどれだけ時間かかってんの?」

 

 と、悪態をつく男がいた。この男は脛梶理太郎。パスパレが出演する映画の主演俳優だった。父親がこの映画のスポンサーのお偉いさんで、正直顔しか取り柄がないバカ息子だった。スタッフも正直相手をするのも嫌だったが、父親がスポンサーのお偉いさんだった為、何も言えなかった。

 

理太郎「何だよその面。不満があるんだったらこの映画、ぽしゃらせたっていいんだぜ? お前らの仕事がなくなっても、オレは痛くもかゆくもないからな。ハハハハハ!」

 

 完全にやりたい放題だった。気に入らないスタッフには暴力、暴言、しまいにはクビ。可愛い女子スタッフにはセクハラ三昧。正直一緒に仕事したくない気持ちが強かったが、上も全く頼りにならない。

 

(こんな仕事ばっかり押し付けやがってあの年寄り共が…!!)

(あんな年寄りがいるから、真面目に働いている高齢者の方々が迷惑してるんだ!!)

(死ねとは言わないけど、子供や孫に嫌われないかな~~~~)

(ネギ焼き食べたい)

 

 他の共演者たちも理太郎の横暴さに辟易していたが、仕事はきっちりこなすことにした。パスパレもまた、他の出演者と同じように撮影をこなそうと頑張ったが…。

 

「カット!」

 

 彩がミスをしてしまった。

 

彩「す、すみません!」

「ハァ…」

 

 相手をしていた理太郎がわざと皆にも聞こえるくらいの大きさでため息をついた。こういう事をすると、嫌われるのはため息をついた方なのでやめましょう。

 

彩「あ、えっと…」

「あのさぁ」

「!」

 

 理太郎が彩に悪態をついた。

 

「オレ、お前が嫌いなんだよね」

「!!?」

 

 場の空気を下げる発言をした事で、皆が驚いた。

 

理太郎「才能もねーのに芸能界に居座る奴が一番嫌いなんだよ。ぶっちゃけパスパレのお荷物なんだよ」

「なっ!!」

「……」

 

 理太郎の言葉にイヴと麻弥が表情を曇らせると、千聖が青筋を立てた。

 

理太郎「とっとと脱退して芸能人も引退しろよ。お前みたいな素人がいていい世界じゃねぇんだよ」

彩「……!」

 

 理太郎の言葉に彩は凄く傷ついて俯く。

 

千聖「ちょっとあなた!!」

「あ? 何お前」

 

 千聖が止めようとしたが、理太郎が悪態をついた。

 

理太郎「子役時代ちょーっと売れたからって、オレに意見なんかしてんじゃねぇよ。エアバンドでファンを騙そうとしてた詐欺師がよ」

 

 理太郎の言葉に千聖はショックを受けた。

 

イヴ「酷いです!」

麻弥「そんな事言わなくても…」

理太郎「あ? 誰に対してそんな口利いてんだよ。オレの手にかかればお前らを簡単に潰すことだって簡単なんだよ」

 

 イヴと麻弥も割って入るが、理太郎が悪態をついた。

 

日菜「簡単なの?」

理太郎「ああ簡単さ。お前らの事務所に仕事を回させないようにするのだってな」

日菜「ふーん…」

 

 理太郎の言葉に日菜はあまり興味なさそうにしていたが、理太郎のマウントは止まらなかった。

 

理太郎「まあいいさ。精々この撮影で現実を見るんだな。どんなに努力しようが、敵わないものは敵わないし、権力がある奴が勝つんだよ!!」

 

 そう悪態をついていたその時だった。

 

「あの~~~~」

理太郎「ああ!!?」

 

 赤いニット帽をかぶって黒い丸サングラスをかけていて、とっても間抜けな声をした男が口を挟むと、理太郎が青筋を立てて怒鳴った。

 

「申し訳ないんですが、出てってもらえないでしょうか?」

 

 その男はずっと監督の隣にいた助監督らしき男だった。とても頼りになりそうにない。それを聞いた理太郎が悪態をついた。

 

理太郎「ふん。オレは注意をしただけだが、助監督がそういうなら仕方ないな。オラ、さっさと出てけよ! パスパレのお荷物が!」

彩「……」

 

 彩は失意のうちに現場を去ろうとしたが、

 

「あー。丸山さんじゃありませんよ」

彩「え…?」

 

 彩が助監督を見つめる。

 

「あなたは必要ですから。この映画にも、Pastel*Palletesにも」

彩「……!」

 

 助監督が優しく微笑むと、彩が目を大きく開けた。そして助監督は理太郎を見た。

 

「出ていくのはあなたですよ。脛梶さん」

理太郎「!!?」

 

 

 助監督の言葉に皆が驚いた。

 

 

 

つづく

 



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第227話「Pastel*Palletes映画大作戦!・2」



 前回までのあらすじ

 龍狐の仮面をかぶった男の正体が気になっていた千聖だったが、Pastel*Palletes全員での映画の出演が決まった為、そっちに集中することに。

 だが、共演者の主演俳優が親のすねをかじったバカ息子で、ひと悶着があったが…?


***********************


 

 

「出ていくのはあなたの方ですよ。脛梶さん」

 

 突如現れた助監督らしき男が理太郎に対して首を宣告した。理太郎は当然納得するわけもなく、青筋を立てて暴言を吐いた。

 

理太郎「は? オレに出ていけだと? 舐めてんのかお前…」

「いやー。舐めてるのはどう考えてもあなたの方だと思いますよぉ?」

 

 助監督は悪びれた様子もなく笑ってみせると、パスパレは驚きが隠せなかった。

 

理太郎「クビだクビ!! お前みたいな奴はオレの映画にはいらない!!」

助監督「いやー。そうは言いましてもねぇ。そういう訳にはいかないんですよー」

 

 他の共演者たちも何事かと驚いていたが、一番偉い監督は何も言わず、腕を組んで座っていた。

 

助監督「それに、オレの映画って言ってますけど、あなただけのものではありませんからね?」

理太郎「うるさい!! ごちゃごちゃ訳の分からない事を言いやがって! 撮影の邪魔をするな!!」

助監督「撮影の邪魔と言われましてもね~」

 

 助監督は理太郎をバカにしたように笑うと、理太郎が歯ぎしりをした。

 

理太郎「お前、いい加減にしないと本当にこの映画をぽしゃらせるぞ!! そうすればお前の首も確実に…」

助監督「構いませんよ?」

「!!」

助監督「スポンサーが無くても、本気を出せば映画は作れますので」

 

 助監督が堂々と言い放つと、理太郎が青筋を立てるかと思いきや…。

 

理太郎「あっそ」

 

 理太郎が急に冷静になると、助監督は口角を下げた。

 

理太郎「それじゃオレ帰るわ。そんなに言うならスポンサーの件も撤収~。映画、楽しみにしてるぞ~」

 

 そう言って理太郎が帰っていった。スタッフが青ざめ、共演者が困惑する中、助監督は監督の方を見た。

 

助監督「帰っちゃいましたね~。監督~」

監督「ああ。だが、代役は既に立ててある」

「!!?」

助監督「流石ッス監督! あ、ちなみに音声も残しときやした~」

監督「ご苦労。それじゃ、主役がいない所だけを先に撮るぞ!!」

「え、ええっ!!?」

 

 監督の発言に皆が驚く中、千聖は助監督をじっと見つめていた。

 

千聖(…あの変装。もしかして)

 

 どう見ても飛鳥としか思えず、険しい顔をしたその時だった。

 

日菜「あっ! 飛鳥くんだ!!」

千聖「!!?」

 

 日菜がある方向に指をさすと、千聖がはっと気づいて日菜が指をさした方を見た。すると、そこには確かに飛鳥の姿があった。キョロキョロ見渡している。

 

千聖(えっ!!?)

 

 助監督が完全に飛鳥だと思っていた千聖は驚きが隠せなかった。

 

日菜「おーい!! 飛鳥くーん!!」

飛鳥「……」

 

 日菜が声をかけると、飛鳥が苦笑いしてお辞儀した。そして助監督がすぐ横をすれ違って去っていった。

 

千聖(…やっぱり、色々考えすぎたようね)

 

 千聖は自分が考えすぎていたと判断した。これでもリアリストで現実しか見ていないつもりだったが、飛鳥の事をずっと追いかけていた事に気づき、自分を恥じた。

 

千聖(これじゃ彩ちゃんの事言えないわ。もっと頑張らなきゃ)

 

 千聖がそう考えると、飛鳥も去ろうとしていた。

 

日菜「あっ! 待ってー!!!」

飛鳥「……」

 

****************

 

 撮影はいったん中断になり、飛鳥はPastel*Palletesと会話をしていた。

 

彩「どうしてここに?」

飛鳥「招待状を貰ったので、ちょっとだけ見ていこうかなと」

「招待状?」

飛鳥「今回の映画のスポンサーが林グループじゃないですか。で、その会長さんのお孫さんと同級生だったので、そのよしみで貰いました」

千聖「そういやそんな事言ってたわね…」

 

 千聖が飛鳥の事をじっと見つめていたが、飛鳥は自然体だった。

 

飛鳥「で…一体何が起きたんですか?」

麻弥「それがですね…」

 

 麻弥が事情を説明すると、飛鳥は少し驚いていた。

 

飛鳥「そうなんですか…」

日菜「飛鳥くん。林グループのお嬢様と友達なんだよね? その子に頼んで、あの人をクビにして貰う事って出来ないの?」

麻弥「ひ、日菜さん!!」

飛鳥「まあ、頼むこと自体は出来るかもしれませんが、その必要はなさそうですよ」

「え?」

 

 飛鳥の言葉にパスパレメンバーが反応した。

 

飛鳥「さっきの人が何か対策を立ててるみたいですし」

千聖「そうだといいのだけれど…」

 

 千聖が飛鳥を見つめていたが、飛鳥は至って普通にしていた。

 

飛鳥「どうされました?」

千聖「い、いえ。何でもないわ…」

 

 この時、千聖は思った。やっぱり飛鳥が怪しいと。いつも自分達とそんなに関わろうとしない飛鳥が何故かこのタイミングに限って自分たちに近づこうとして、なおかつ冷静だったからだ。

 

千聖「ねえ」

飛鳥「何でしょう」

 

 すると、千聖がこんな事を言いだした。

 

千聖「ここに来た本当の目的は何?」

飛鳥「包丁を買いに来ました」

 

 千聖が鎌をかけようとしたが、飛鳥が即答をして固まった。

 

彩「ほ、包丁…?」

飛鳥「折角京都に来るので、料理をする為の包丁を見ていこうかなって思ったんですね。贔屓にしてる所があるんですよ」

麻弥「そ、そうだったんですか!?」

 

 飛鳥が淡々としゃべっている様子を見て、千聖が困惑していたその時、

 

「あ、すいやせ~ん」

「!」

 

 助監督がやってきた。

 

助監督「パスパレさんのスケジュールなんですけど~。脛梶さんがいない所だけ先に撮ってしまって、明日代役の俳優さんと撮影する形になりやしたので、宜しくお願いしや~す」

「あ、はい。分かりました」

助監督「もうすぐ撮影始まりやすので~」

 

 そう言って助監督が去っていった。

 

飛鳥「さて、そろそろ私も行きますね」

日菜「えー。見ていかないのー?」

飛鳥「お気持ちは有り難いのですが、撮影の邪魔になるといけませんので」

 

 飛鳥が千聖の方を見て話すが、

 

千聖「いいわよ。好きなだけ見学しなさい」

「えっ!!?」

 

 飛鳥ではなく、他の4人が反応した。

 

彩「ち、千聖ちゃんどうしちゃったの!?」

日菜「普段は集中できないから、ギャラリーは入れたくないって言ってたのに…」

麻弥「珍しいですね…」

イヴ「な、何かあったんですか…?」

千聖「そ、そんなに心配する事かしら…?」

 

 予想外のリアクションが帰ってきたため、千聖も思った他困惑していた。

 

飛鳥「ありがとうございます」

スタッフ「パスパレの皆さん、お願いしまーす」

パスパレ「あ、はーい!!」

彩「それじゃあね。一丈字くん!」

飛鳥「はい、頑張ってください!」

 

 そう言ってパスパレが去っていき、そのタイミングで助監督が急用の為、現場を去る事をパスパレにも聞こえるように伝わった。

 

 そして飛鳥もその場を去ろうとするが…。

 

飛鳥(役に集中できるように…)

 

 そう言って飛鳥は超能力で千聖の記憶から、自分への疑念を消滅させた。

 

 

 

つづく

 



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第228話「Pastel*Palletes映画大作戦!・3」

 

 

 前回までのあらすじ

 

 京都で映画撮影を行う事になったPastel*Palletesだったが、主演俳優・脛梶理太郎があまりにもクズで、彩に暴言を吐いた事から撮影が中断。突如現れた助監督が追い出したものの、スポンサーが完全に降りると脅して理太郎は退場した。

 

 果たして映画はどうなる?

 

***********************

 

「どうすんだよ…」

「スポンサーが下りるんじゃ、映画の撮影できないぞ…」

 

 と、スタッフ達や演者達が困る中、監督は…。

 

「撮影は続ける」

「!」

 

監督「すでに手は打ってある。さあ、時間は限られている! 続けるぞ!」

 

 監督の言葉に皆が困惑しながらも、信じて続ける事にしたが、理太郎がいなくなった事により、円滑に進んだ。

 

******************

 

「はい…はい…」

 

 助監督は撮影現場から離れた場所で、誰かと話をしていた。

 

助監督「脛梶の追い出しは無事に成功しました。私は彼の監視を続けます」

「ご苦労。こちらは奴の身辺調査を行う」

 

 助監督の声は古堂和哉だった。

 

和哉「引き続き脛梶の尾行を行え。飛鳥」

飛鳥「了解」

 

 助監督の正体は一丈字飛鳥だった。実はこんな事があったのだ。

 

*****

 

飛鳥「え!?」

 

 飛鳥は和哉に連れられて、居酒屋に来ていたが、和哉の横には監督がいた。

 

和哉「隣にいるのが今回の依頼人だ」

監督「宜しく」

飛鳥「よ、宜しくお願いします…」

 

 強面の老人で、いかにも仕事が出来そうな感じだったので飛鳥も萎縮していた。

 

和哉「依頼内容を簡単に説明する。この方が今度監督を務める映画の主演俳優を追い出す事だ」

飛鳥「追い出す?」

 

 和哉の言葉に飛鳥は穏やかじゃないなと思い、表情をこわばらせた。

 

和哉「その映画のスポンサーを務める会社の役員の息子らしくてな。今回の映画の主演もそのごり押しで決まったらしい。周りを固める役者は名前を聞いた事はある有名人ばかりだ」

飛鳥「た、確かに言われてみれば…」

 

 飛鳥はポスターのキャストを確認すると、そこには有名人ばかり並んでいたが、Pastel*Palletesの名前が載っていて驚きを隠せなかった。

 

和哉「お前の顔なじみもいる」

飛鳥「…はぁ」

 

 和哉の言葉に飛鳥は面倒な事になりそうだと考えていた。

 

和哉「別にバレても問題はない」

飛鳥「そう言われましても…」

和哉「逆にぶちのめしてやるまでだ。言いがかりをつければつけるほど、金が手に入るからな…」

飛鳥「和哉さん…あなたって人は…」

 

 慰謝料と損害賠償を片っ端からぶんだぐろうとする和哉の態度に飛鳥は困惑していた。

 

 そんなこんなで和哉の命令で、助監督に変装してPastel*Palletesの手助けと、理太郎の追放を実施したのだった。ちなみに助監督と入れ替わりで出てきた飛鳥は、飛鳥が超能力で作り出した分身である。

 

 第1段階が終わり、飛鳥は脛梶の追跡作業を行った。

 

***********************

 

「お昼でーす」

 

 撮影が順調に進み、役者たちは昼食を取る事にした。

 

日菜「おいしーい!!」

イヴ「ニホンのココロです!」

 

 京都の名産品をふんだんにつかった特製弁当を舌鼓していたイヴと日菜。そんな中、彩だけ元気がなかった。

 

麻弥「…彩さん」

彩「あ、ううん。何でもないよ」

千聖「あの後何度もミスしたものね」

麻弥「ち、千聖さん!!」

 

 麻弥がフォローをしようとするが、千聖が厳しく言い放つ。それに4人が反応し、麻弥が制止しようとすると、彩がさらに落ち込んだ。

 

彩「ごめん…」

千聖「…ハァ。くよくよするのは撮影が終わってからにしなさい。引きずるから集中できなくなって失敗するのよ」

彩「!」

 

 千聖の言葉に皆が千聖の方を見た。

 

千聖「だから、今は役に集中しなさい。いいわね?」

彩「千聖ちゃん…」

千聖「返事は?」

彩「は、はいっ!!」

 

 千聖と彩のやり取りを見て、他の3人も安心していた。

 

日菜「いやー。千聖ちゃんも成長したねー」

千聖「…それはどういう意味かしら?」

日菜「いやあ、パスパレやり始めたころは自分の事しか考えてなかったから…」

麻弥「あー」

千聖「…そういう意味では日菜ちゃんは変わらないわね。マイペースな所とか」

彩「ち、千聖ちゃん…」

 

 彩が困惑すると、パスパレの5人は笑い、他の役者たちやスタッフもそれを見て安心していた。

 

監督「……」

 

****************

 

 その頃飛鳥は、脛梶の追跡をしていたが、事もあろうに酒を飲んで大口を叩いていた。

 

理太郎「全く誰のお陰で映画を撮れると思ってんだよ。舐めやがって!」

 

 複数の女性を侍らせて豪語していた。とてもじゃないが、褒められたものじゃない。

 

理太郎「オレのパパは林エレクトロニクスの専務だぞ! 専務は監督やスタッフより偉いんだぞ!」

 

 よほどアルコール度数の強い酒を飲んでいるのか、かなりベロンベロンだった。

 

飛鳥「あ、もしもし…。はい、かなり酒を飲んでいるようです。早いうちに代わりの俳優さんを…」

 

***************************

 

 翌日。

 

理太郎「……」

 

 理太郎はホテルの一室でイライラしていた。そろそろ監督やスタッフが自分に謝りに来て、主演をやって欲しいと泣きつくところだというのに…と。

 

理太郎「遅い! このオレを一体誰だと思ってるんだ!! もう朝の9時だぞ!! そろそろ呼びに来るところだろうが!!」

 

 理太郎はしびれを切らしたのか、自分から電話をかけた。

 

理太郎「おい!! なにやってんだ!! さっさとオレに謝りに来て「主役をやってください」って言えよ!!」

 

 理太郎はそう激怒したが、ロケはもう既に始まっていて、代わりの役者が来ている事を知ると、理太郎は慌てた。

 

理太郎「はぁ!? 何勝手な事してくれてるんだよ!! 僕のパパを怒らせたら映画も作れないんだぞ! 分かってるのか!!? …は? スポンサーは引き続き継続してくれるそうだから問題ない? ふざけんな!! そこで待ってろ!!」

 

 そう言って理太郎が慌ててホテルを出て、現場に駆け付けた。

 

理太郎「監督!! 一体どういうことだよ!! オレがいなくても困らないって…」

 

 理太郎が現れた瞬間、他の共演者やスタッフが理太郎を睨みつけた。

 

理太郎「な、何だよ…」

 

 すると監督が前に出た。

 

監督「電話で伝えたとおりだ。もうお前は必要ない!」

理太郎「はぁ!? あんたにそんな権限はない筈だろ!?」

監督「林エレクトロニクスの社長がわざわざわしに電話をかけてきて、是非やってくれると伝えてくれたぞ。お前の父親の上司である男がな!」

 

 監督の言葉に理太郎が反応したが、

 

理太郎「分かったぞ。さてはオレのパパの上司を脅したんだな。ここにいる連中もグルって訳だ」

「なっ!!」

「ふざけるな!!」

 

 理太郎の言葉に他の共演者が激怒した。

 

理太郎「だってそうだろうがよ!! 今まで父親がスポンサーの息子だからってだんまりを決め込んでたのはテメーらだろうが!! 落ちこぼれの丸山彩を堂々と叱っても知らんぷり。テメーらも同罪なんだよ!! 金と権力に屈した負け犬共が!!」

 

 狂気ともいえる表情で言い放つ理太郎に、彩達は恐怖したが千聖は動じなかった。

 

千聖「その負け犬にあなたは今からなるのよ」

理太郎「ほう…!!」

 

 千聖の発言に理太郎が青筋を立てた。

 

理太郎「詐欺師が随分と偉くなったもんだな」

千聖「…確かに最初はそうだったわ。皆を騙したことに変わりはない」

 

 理太郎の言葉に千聖は目を閉じた。

 

千聖「そして自分の弱さにも気づいて、皆で頑張ったからここまでこれたのよ」

理太郎「ハッ! 何を言いだすかと思えば、友情や絆に絆されたってか!? どんなに努力しようが金と権力には敵わねぇし、そんなもんオレが片っ端から潰してやるよ!! この世界はな! 凡人が来て良い場所じゃ…!!」

監督「ほざけ青二才が!!」

 

 監督の気迫に理太郎は黙った。

 

監督「まあそういう事だ。もし本当にこの映画がダメになっても、他に充てはあった。もうお前は使わん。父親に泣きつくなり好きにしろ」

理太郎「……!!」

 

 監督が背を向けると、理太郎が青筋を立ててほほ笑んだ。

 

理太郎「いいだろう…」

「!」

 

 理太郎が背を向けた。

 

理太郎「オレにたてついて、ただで済むと思うなよ…」

 

 そう言って理太郎が去っていった。

 

「か、監督…」

監督「撮影を続ける。何としても完成させるのだ!」

「お、おう!!」

 

 クルーは再び一つになった。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥はその様子を陰から見つめていた。

 

 

つづく

 



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第229話「Pastel*Palletes映画大作戦!・4」

 

 

 前回までのあらすじ

 

 映画撮影をするにあたり、邪魔になる主演俳優・脛梶理太郎の追放工作を依頼された飛鳥は、無事に追放させることに成功したが、万が一の事態の為に脛梶の尾行を続けた。

 

*************

 

 夜になり、これ以上の行動は不可能と判断した飛鳥は、和哉に連絡して何とか宿に泊めて貰う事にした。

 

飛鳥「そういや和哉さんは、脛梶の事務所の調査でここにはいないんだよなぁ…。何も起こらなかったらいいけど…」

 

 だが、こういう時に何かが起きてしまうのがお約束なので、飛鳥はいつでも出撃できるように準備をしていた。

 

******************

 

 同じ頃、Pastel*Palletesも本日の撮影を終えて、高級旅館で一泊していた。

 

日菜「はー! 楽しかったー!」

麻弥「いやー。緊張しましたねー」

 

 パスパレの5人は同じ部屋に泊っていて、今日の撮影について語り合っていた。楽しそうに喋る日菜に対し、麻弥やイヴが相槌を打っていた。

 

彩「……」

 

 そんな中、彩は少し苦笑いしていた。理太郎に言われたことをまだ気にしていたのだ。

 

千聖「さて、そろそろ寝るわよ」

 

 千聖の言葉に日菜が反応した。

 

日菜「えー!! 流石にまだ早いよー!!」

千聖「遊びに来たんじゃないのよ? それに撮影も明日早いし…」

彩「そ、そうだよ」

「!」

 

 彩が相槌を打つと他の4人が驚いた。

 

千聖「…彩ちゃん。無理して今日の失敗を取り返さなくていいから」

彩「でも…」

千聖「言ったでしょ。無駄に力を入れても、その事に集中しすぎて役に集中できないって。落ち着きなさい」

彩「う、うん…」

 

 千聖の言葉に彩が反応すると、他の3人が安心していた。

 

*******************

 

 その夜。

 

「くそっ!!」

 

 理太郎は飲み歩いていたが、路地裏に遭ったゴミ箱を蹴って、鬱憤を晴らしていた。

 

「どいつもこいつもオレをバカにしやがって…!!」

 

 と、自分を貶した監督や助監督(飛鳥)、千聖の事を想いだした。

 

 あの後、父親に泣きついたが、林グループに手を回していた飛鳥の手によって父親から一方的に勘当され、路頭にさ迷っていた。このままだと俳優生活が終わるのも時間の問題だった。

 

 突然何もかもうまくいかなくなった事に対し、理太郎は憤りを感じていた。

 

 そんな時だった。

 

「力が欲しいか?」

 

理太郎「ああ!!?」

 

 理太郎が後ろを振り向くと、妖しい男の影が現れ、持っていた銃で理太郎は撃たれた。

 

「貰うぞ。お前の身体」

 

 心臓を撃ち抜かれた理太郎はそのまま倒れたが、男は持っていた銃とは別の光線銃を理太郎に放った。すると、理太郎はそのまま起き上がったがその瞳に生気はなく、赤く光った。

 

「何だ!? 今の銃声!!」

 

 近隣住民や野次馬がゾロゾロと現れたが、理太郎は気にせず、その場を後にして男も消えた。

 

********

 

 そして大通りに出てきた理太郎はほっつき歩いたが、そこでガラの悪い若者と肩がぶつかった。

 

「邪魔やあんた!」

理太郎「……」

 

 若者が理太郎に暴言を歩いたが、理太郎は無視した。

 

「無視すんなや!!」

「待てやコラァ!!」

 

 と、若者の仲間も理太郎を引き留めた。

 

「自分舐めとったらいてまうぞコラァ!!」

「ちょっと来いや!」

 

 そう言って暴言を吐くと、理太郎はぶつかった男の顔を見た。

 

理太郎「誰に向かってそんな口をきいてる」

「はぁ!?」

 

 理太郎の言葉に男は反応をしたが、

 

理太郎「そしてその態度はなんだ。オレは脛梶理太郎だぞ」

「知るかボケェ!! ホンマ殺したろか!!」

 

 そう言って男が理太郎に殴りかかったその時だった。理太郎が男の拳を受け止めた。

 

理太郎「死ぬのはお前だ」

「!」

 

 すると理太郎は男を持ち上げて、車道を走っている車の方に投げた。

 

「!!?」

 

 男は走っていた乗用車にはねられて、宙を舞い、そのまま鈍い音を立てて倒れるとそのまま動かなくなったまま、血を流していた。

 

「う、うわあぁああああああああああああ!!!!」

 

 目の前の惨劇を見て、男の仲間は悲鳴を上げたが、悲鳴を上げたのは彼らだけはなく、通行人もそうだった。それを見て理太郎は不気味な笑みを浮かべた。

 

 男をはねた乗用車は突然の事態に車を正常に運転する事が出来ず、建物に車をぶつけてしまった。幸いけが人はいなかったが、人をはねた事に対して憔悴していた。

 

 理太郎は男の仲間に視線を向けた。

 

「ひ、ひぃいいいいいい!!!」

「オ、オレたちが悪かった!!!」

「だから頼む!! 見逃して…」

 

 理太郎が男を車道に向けてぶん投げ、車にはねられた様子を見て仲間たちは理太郎に恐怖を覚え、腰が抜けて動けなくなり、必死に命乞いをしていた。

 

理太郎「ダメだ。お前達もオレを舐め切った。死んでもらわないといけない」

「そ、そんな…」

 

 その時だった、

 

「おい、てめぇ!!」

 

 車から運転手が降りてきて、理太郎に突っかかった。

 

「よ、よせ!!」

 

 若者たちが止めようとしたが、運転手の男は止まらなかった。

 

「これは一体どういうつもりや!! どないしてくれんねん!!」

 

 運転手の男がそう言うと、理太郎は振り向いて運転手の男を睨みつけた。

 

運転手の男「あ? なんやコラァ」

理太郎「お前。オレが誰か分かってて話してんの?」

運転手の男「そんなん知るか!! お前が誰やろうがこっちには…」

 

 運転手の男がそう言い放った瞬間、理太郎は運転手の男の腹を貫いた。

 

理太郎「だったら死ね。オレの事を認めない奴に生きる事は許されないんだよ」

 

 理太郎が勢いよく、手を引っこ抜くと男の腹から勢いよく血が噴き出て、理太郎は返り血を浴びた。

 

理太郎「このオレの服を汚しやがって…死ね死ね死ね!!!!」

 

 服を汚された怒りからか、理太郎は運転手の男をサンドバックのように殴り続けた。手足が折れようが、歯がぶっ飛ぼうがお構いなし、理太郎は自分の怒りを運転手の男にぶつけていた。人間の行動とは思えない行動に、人々は逃げ惑った。

 

 

*************

 

 その頃のパスパレ、

 

日菜「ちょっとだけテレビ見ようよ~」

千聖「…仕方ないわね。ちょっとだけよ」

 

 どうしても寝れない日菜に対し、千聖はため息をつきながらテレビをつけた。するとそこにはニュースが行われていた。

 

日菜「あれ? この時間帯ってバラエティやってる筈じゃ…」

千聖「しっ!」

 

 目の前のニュース映像を見て、千聖が日菜に静かにするように指示を出した。

 

『速報です。京都の烏丸で男が暴れまわっているという情報が入っていて、男は今も暴れまわっております』

 

 ニュースキャスターがそう言うと、パスパレはショックを受けた。

 

日菜「烏丸ってこのホテルの近くじゃん!」

彩「ええっ!!?」

イヴ「こ、怖いです…」

 

 パスパレメンバーは身を寄せ合っていた。

 

*********

 

 飛鳥は理太郎の邪気を感知し、超能力で場所を特定した。

 

飛鳥(烏丸の方だ!!)

 

 飛鳥が龍狐のお面をつけ、黒いシャツに黒いズボンを穿いた状態で瞬間移動を行い、現場に向かった。

 

 

おしまい

 



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第230話「Pastel*Palletes映画大作戦・5」

 

 

 前回までのあらすじ

 

父親にも事務所にも、そしてすべてに見捨てられた脛梶理太郎が路頭にさ迷っていた所、謎の男によって銃撃されて殺害され、謎の光線銃により戦闘人形に変えられてしまう。そしてそのまま街に繰り出し、自分に突っかかってきた通行人に次々襲い掛かった…。

 

**********

 

「な、なにこれ…」

 

 目の前の惨劇にPastel*Palletesは動揺を隠せなかった。イヴは完全におびえて麻弥に抱き着き、彩も日菜に抱き着いていた。

 

麻弥「どうしてこんな事に…!?」

日菜「一体何があったの!?」

千聖「こんなことしてる場合じゃないわ! スタッフに…」

 

 千聖がそう言い放った次の瞬間、テレビに映し出された現場に龍狐の面を被った男の後姿が現れた。

 

 

「!!?」

 

**************

 

 烏丸。理太郎が大暴れして、車を車にぶつけた事でガソリンが引火して大炎上を起こし、烏丸は火の海になっていた。そして飛鳥と理太郎が向き合っていた。

 

理太郎「何だお前」

飛鳥「……」

 

 理太郎の問いに飛鳥は何も答えなかった。

 

理太郎「オレに舐めた事してんじゃねぇぞ」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は仮面をかぶっているせいなのか、一切喋る事はなかった。それに対し、理太郎は苛立っていた。

 

*********************

 

 Pastel*Palleteも飛鳥の存在に気づいていて、驚いていた。

 

彩「この人誰!? 危ないよ!!」

日菜「勇気ある人だなぁー」

イヴ「ブシドーです!!」

麻弥「そんな事言ってる場合じゃないっすよ!」

千聖「……!!」

 

 千聖は中でも一番驚いていた。そう、京都の撮影が始まる前に見た仮面の男と全く同じで、その男は飛鳥ではないかと疑念を持っていた。一回飛鳥によって消されたものの、再び再燃した。

 

 もしあの龍狐の仮面の男の正体が本当に飛鳥だったとしたら、そう思うと千聖は身震いが止まらなかった。だが、そうするにあたり、飛鳥にも何か事情があるのだと思い、他のメンバーには何も言わず、そのまま見守る事にした。

 

**********

 

理太郎「何だぁ…テメェ!!!」

飛鳥「……」

 

 炎が囲む中、理太郎と飛鳥が向き合っていた。

 

飛鳥(いつものように金縛りが聞かない。こいつも…)

 

理太郎「ふざけた面なんか被りやがって…死にさらせやァ!!」

 

 理太郎が襲い掛かるが、飛鳥は瞬時にかわして、理太郎に蹴りを入れた。吹き飛ばされた理太郎は壁に叩きつけられた。ギャラリーは理太郎に恐れをなして既に避難しており、誰もいなかった。

 

理太郎「く、くそが…!!」

 

 理太郎が飛鳥を睨みつけるが、この時、自分の鼻から血が流れている事に気づき、更に激昂した。

 

理太郎「こ、このオレの顔に傷をつけやがって…!! 絶対にブチ殺してやる!!」

 

 理太郎が飛鳥に襲い掛かろうとすると、飛鳥は逃走した。

 

理太郎「待て!!」

 

 理太郎は絶対に飛鳥を逃がさまいと追いかけた。

 

飛鳥『予定通り、鴨川に被疑者を連れ出します! 皆さんは烏丸の消火活動をお願いします!!』

 

 飛鳥が超能力である所に指示を出すと、超能力で四条大橋まで逃げ、そこまで理太郎を連れ出した。

 

***************

 

彩「い、一体何が起きているの…!!?」

 

 現実離れした光景に彩達はショックを隠せなかった。

 

麻弥「こ、これは…映画か何かですか…!?」

イヴ「ヒトキリ…」

 

 麻弥とイヴもショックを受けている様子で、日菜は紗夜と電話をしていた。

 

日菜「うん。あたしや彩ちゃん達は大丈夫。でも、泊っているホテルから現場は近いみたいなの!」

 

 そんな中、千聖はいてもたってもいられなくなった。

 

****************

 

飛鳥「……」

理太郎「舐めやがって…」

 

 飛鳥と理太郎が再び向かい合っていた。

 

理太郎「オレを認めねぇ奴は片っ端から消してやる!! てめぇもだ!!」

 

 理太郎が激昂するが、それでも飛鳥は喋る事はしなかった。

 

理太郎「その仮面ぶっ壊して、ぐちゃぐちゃにしてやる!! オラァアアアアアア!!!」

 

 理太郎が飛鳥と再び交戦した。理太郎が感情任せにパンチを繰り出すが、飛鳥は全て受け止めた。

 

理太郎「クソ!! なんで当たんねぇんだよ!! 当てさせろや!!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥と理太郎が間を取って、飛鳥は右手に力を入れると、黒いオーラが纏った。

 

理太郎「死ねやぁ!!」

 

 理太郎が襲い掛かったその時、飛鳥は瞬時に理太郎に腹パンした。

 

理太郎「がっ!!」

飛鳥「……」

 

 そしてそのまま飛鳥は拳に力を入れて、理太郎を吹き飛ばした。

 

理太郎「げひゃあっ!!」

飛鳥「…終わりだ」

 

 すると理太郎の身体が朽ち始めていた。

 

理太郎「な、何だァ!!!?」

飛鳥「別れの時間だ。お前はもうじき死ぬ」

理太郎「な、なんでだよ!!」

飛鳥「お前は一度殺され、闇の能力者より改造人間として蘇生された。だが、完全な蘇生ではなく、力がなくなれば動かなくなる。いわばお前は使い捨てのロボットだ」

理太郎「こ、このオレが使い捨てだと!!?」

飛鳥「過剰な自尊心によって周りを傷つけ、厳しい現実から目を背けた愚か者には妥当な末路よ。黄泉の世界で自身の愚行を悔い、殺害した者達に死して償うのだ」

理太郎「し、死ぬ!? このオレが死ぬのか!?」

 

 体が朽ち果て、自分が死ぬことを告げられた理太郎は恐怖で飛鳥を見つめていた。

 

理太郎「そ、そんな事をすればお前も人殺しになるんだぞ!!? バカな事を言うな!」

飛鳥「生憎。貴様のような悪党を闇に葬り去るのが我が務め。国の許可は得ている」

理太郎「そ、そんな…。ああ…!!」

 

 理太郎は死に近づいていく現実に耐え切れず、表情はぐちゃぐちゃになった。

 

理太郎「た、頼む!! 助けてくれ!! オレは死にたくない!!!」

飛鳥「黙れ」

理太郎「!」

 

 飛鳥は冷たい視線で理太郎を睨む。

 

飛鳥「貴様が殺害した者達もそうやって助けを求め、お前はそれを無視して殺害した。それも身勝手な理由でな。通用すると思うなよ」

理太郎「う、うわぁああああああああ!!!!」

 

 理太郎は飛鳥が逃げたが、足がなくなり転倒して動く事が出来なくなった。

 

理太郎「い、嫌だぁ!! オレはまだやりたい事があるんだ!! 俳優としてもっと有名になりたい! 可愛い女の子たちを侍らせたい!! 結婚もしたい!! 一生遊んで暮らしたい!! 勝ち組の人生を送りたいんだ!! それを…それをこんな所で…!!」

 

 理太郎が見苦しく叫んだが、ついに下半身がなくなり、そして首だけの状態になった。

 

 

理太郎「助けてぇええええええええええ!!! パパぁああああああああああああああ!!!」

 

 そう叫んで、理太郎は消滅した。消滅した後は炎が燃え上がるバチバチとした音と、消防隊が火消しをする音だけが聞こえた。

 

飛鳥「……」

 

 理太郎の最期を見届けた後、飛鳥はその場を後にした。

 

 

 

つづく

 



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第231話「Pastel*Palletes映画大作戦・6」

 

 

 翌朝。理太郎の件が無事に解決されたとして、Pastel*Palletesもホテルの一室から出て、他のスタッフと共にレストランでモーニングを取っていた。

 

『9人の尊い命を奪ったのは、俳優の脛梶理太郎容疑者で、警察は現在も行方を追っています…』

 

 ニュースを見ていたが、理太郎の顔写真と昨日の京都の惨劇が映し出されていた。

 

彩「ま、まさかあの人が…」

日菜「ちょ、ちょっと怖いかも…」

麻弥「怖いなんてもんじゃないですよ! 下手したらジブン達が…」

 

 麻弥がそう言うと、イヴは涙目で隣にいた麻弥に抱き着いた。そんな中、千聖は重い顔をして俯いていた。

 

日菜「…千聖ちゃん?」

千聖「え? あ、ど、どうしたの?」

 

 日菜に聞かれて千聖が困惑した。

 

日菜「どうしたの。考え込んだりして」

彩「ダメだよ日菜ちゃん! 千聖ちゃんだって内心ショックを受けてるかもしれないんだから!」

日菜「あ、そっか…ごめん…」

 

 彩に諭されて日菜が困ったように謝ると、千聖も苦笑いした。

 

千聖「いいのよ。気にしないで」

麻弥「千聖さん…」

イヴ「……」

 

 結局、この日は撮影は中止になり、パスパレは他のスタッフ達と共にホテルで待機する事になった。勿論外出は禁止である。

 

***************

 

「申し訳ございません。私がもう少し早く出ていれば…」

「気にするな。寧ろ高校生が深夜に出歩ている方が問題だ」

 

 飛鳥は京都のホテルで和哉と話をしており、飛鳥は事件の一部始終を和哉に報告した。

 

和哉「…またしても奴らの仕業か」

飛鳥「間違いありません」

和哉「……」

 

 和哉が飛鳥を見つめた。

 

和哉「ご苦労だった。後はオレに任せろ」

飛鳥「!」

和哉「脛梶の父親の首を確実に跳ね飛ばす手筈は出来た。後は膿をしっかり排除するまでだ」

飛鳥「……」

 

 そう言って和哉は黒い炎に包まれて消えると、飛鳥は沈んだようにベッドにあおむけになりながら、昨晩の事を思い出した。

 

 多くの人間を守るためとはいえ、たった一人の人間をこの世から消してしまった事、自分の立場、そしてこれからの身の振り方について飛鳥は迷っていた。

 

 実はこのような事が起きたのは今回が初めてではない。中学時代にも何度か、突然変異で暴走した人間と戦っては、息の根を止めた事は何度もある。人の命が消える瞬間を何度も見ては、飛鳥は苦しみ続けていた。

 

 だが、生まれながらに持ったこの能力を持った以上、戦う運命からは逃れることは出来なかった。

 

 飛鳥はせめて、殺害された人間の冥福、そして遺族の今後の幸せ、そして京都で撮影していた千聖たちの今後の健勝を祈るしかなかった。

 

 そんな中、飛鳥のスマホに着信がなった。

 

飛鳥「誰からだろ…」

 

 飛鳥がスマホを確認すると、そこには中学時代からの親友・奈良川京からのメールだった。

 

『あの仮面の奴ってお前だろ! 大丈夫か? 辛かったらオレが聞いてやるからな!』

 

 というメッセージだった。それを見て飛鳥は苦笑いすると、日向や椿たちからも来ていた。

 

『飛鳥くんお疲れ様。大丈夫? 辛くなったらいつでも帰ってきてね』

『お疲れ様。アンタなら大丈夫だと思うけど、辛かったらちゃんと言いなさいよ』

 

 という励ましのメッセージだった。すると、他の友人からもメールが来ていて、飛鳥は静かに目を閉じた。

 

 そんな中、モカからもメールが来ていた。

 

『あの仮面の子って飛鳥くんでしょ。落ち着いたらでいいから、電話頂戴~』

 

 そうメールが来ていると、飛鳥は苦笑いして心配してくれた友人たちに「ありがとう」の返信を送った。

 

**************************

 

 また一方で、千聖は独り考え事をしていた。仮面の男が飛鳥だと確信していたが、そうだとするなら、何度もAfterglowを助けた事、商店街のうなぎ屋の事件を解決させたこと、一度逮捕されたのに何とかなったことなど、今までの事について全てああなるべくしてなったのではと感じた。

 

千聖(本当に彼は何者なの…!? 知りたい…。彼の事をどうしても知りたい…)

 

 千聖がそう決意して、何かをしようとすると、自分の背後に誰かがいる事に気づいて振り向いた。

 

*****************************

 

 その夜、飛鳥は東京に戻り、自室で学校に行く支度をしていた。リュックを見つめる視線はとても沈んだものだったが、友人たちからの励ましのメールを思い出して、空を見上げて星空を見上げた。

 

*************************

 

 そして翌朝。登校日なので飛鳥は学校に向かっていた。後ろ髪をひかれる思いはなく、全てを覚悟した男の顔をしていた。

 

 教室に着くや否や、学校では京都での火災が話題に取り上げられていた。

 

「おい、京都での火事見たかよ!」

「ああ…」

「彩ちゃん達大丈夫かな…」

 

 パスパレの5人を心配する声ばかりで、仮面の男の事は全く取り上げられていなかった。それを知った飛鳥は静かに目を閉じた。

 

 暫くして、1組の方が騒がしくなった。どうやらパスパレも普通に登校していたのだ。

 

飛鳥「……」

 

 声の様子だと、香澄達クラスメイトがイヴの身を案じていたのだ。他のクラスも同じ事になっていると感じていた。

 

 飛鳥は思った。もしもあの仮面の男の正体が自分だとバレたらどうなるだろうと、学校を追い出されたり、自分がぼろくそに言われて尊厳を失う事はどうだって良かった。だが、どう考えてもそれだけで済みそうになかったので、悩んでいた。

 

 そして悩みが解決することもなく、昼休憩になっていた。中庭でボーっとしていた。

 

「飛鳥くーん」

 

 モカがやってきた。

 

飛鳥「…やあ」

モカ「此間は凄かったね~」

飛鳥「確かに凄かったね」

 

 モカの言葉に飛鳥が苦笑いした。その時だった。

 

「探したわよ。一丈字くん」

 

 千聖が現れると、飛鳥とモカが千聖の方を見た。

 

飛鳥「白鷺先輩」

モカ「そういえば色々大変でしたね~」

千聖「ええ。でもそのお陰で一つ分かった事があるの」

飛鳥「……」

 

 千聖の言葉に飛鳥が険しい表情をした。

 

 

 

 

千聖「一丈字くん。あなたの正体をね」

 

 

 

つづく

 



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第232話「能力者・一丈字飛鳥」

第232話

 

 前回までのあらすじ

 

 暴走した理太郎を葬った飛鳥は、後ろ髪を引かれたまま東京に戻ってきて、何気ない日常に戻ろうとしていたが、Pastel*Palletesのメンバーである千聖から、自分の正体を知っている事を仄めかされる。果たして…。

 

********************

 

 千聖から告げられた言葉に、飛鳥は神妙な表情をした。

 

モカ「正体~?」

千聖「ええ。その事で話があるの。放課後時間あるかしら?」

飛鳥「…嫌だと言ったら?」

千聖「皆にこの事を話してしまうわよ?」

飛鳥「それは別に問題ないんですけど…」

千聖「問題ないの?」

 

 飛鳥が思った他全然慌てない為、千聖もちょっと困った。

 

千聖「その前にどうして焦らないの?」

飛鳥「いや、白鷺先輩ならもうたどり着くだろうと思ってましたので。いいですよ、丁度暇ですし」

千聖「……」

 

 自分の想像していたものと全然違ったが、これで本人と話が出来ると思った千聖は笑みを浮かべた。

 

***********

 

 とあるレストラン。そこには飛鳥、モカ、こころ、千聖の4人がいて飛鳥とこころ、モカと千聖が向かい合っていた。

 

千聖「…どうしてあなた達まで?」

モカ「そりゃあ勿論決まってますよ~」

こころ「あたし達も飛鳥の正体を知っているもの!」

 

 モカとこころのマイペースぶりに千聖が咳払いすると、飛鳥を見つめていた。

 

千聖「さて、単刀直入に聞くわね。飛鳥くん、あの龍狐の仮面の男はあなたね?」

飛鳥「その通りです」

 

 千聖の言葉に飛鳥は即答した。

 

千聖「そしてあなたは…普通の人間ではないわね?」

飛鳥「超能力者です。こういう事も出来ます」

 

 すると飛鳥は指から赤い光を出した。

 

モカ「おおーっ」

こころ「とっても綺麗だわ!」

 

千聖「…そう」

 

 千聖が反応をすると、飛鳥は光を消した。

 

飛鳥「もう今だから言いますが、何度もあなたに気づかれてかけて、その度に記憶を消させて頂いたのですが、完全に隠し切れませんでしたね。流石天才子役と呼ばれているだけあって、洞察力もお見事です」

千聖「……」

 

 飛鳥が千聖を見つめた。

 

飛鳥「さて、今度はこちらから質問です」

千聖「……」

飛鳥「古堂和哉と一体何の取引をしました?」

 

 飛鳥が千聖にそう聞くと、飛鳥と千聖の脳裏には和哉の姿が思い浮かんだ。

 

千聖「…私の芸能界のコネクションを共有させる代わりに、貴方の事を教えて欲しいと頼んだわ」

モカ「コネクション?」

千聖「…自分で言うのもアレだけど、こう見えて顔が利く方なのよ。恐らく、芸能人相手にも商売をする為じゃないかしら」

飛鳥「だとしか思えませんね…」

千聖「芸能人はお金沢山持ってる人多いもの。そして人脈もね」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は恐らくその芸能人の中で、クロと呼ばれる芸能人を排除してその報酬を受け取ろうという作戦だろうと考えた。

 

千聖「さて、色々話が反れたけど飛鳥くん…」

飛鳥「何でしょう」

 

 飛鳥がそう言うと、千聖が頭を下げた。

 

千聖「ありがとう。私たちを守ってくれて」

飛鳥「!?」

 

 千聖の言葉に飛鳥は驚いた。モカも驚いたが、モカは千聖が頭を下げた事に対して驚いていた。

 

千聖「あの助監督さん。あなたの変装でしょう」

飛鳥「はい。で、助監督と入れ替わりに出てきた私は超能力で作り出した分身です」

千聖「そこまでしてくれたのね」

 

 飛鳥の言葉に千聖が苦笑いした。

 

千聖「おかげで彩ちゃん。自信を取り戻したのよ。あなたは必要な人だって言われて」

飛鳥「そりゃあ良かったです」

千聖「もしかして気が合ったりする?」

飛鳥「残念ですが、普通に声をかけただけです」

 

 飛鳥がきっぱり断ると、千聖はまた苦笑いした。

 

モカ「けどどうして飛鳥くんの事を調べようって思ったんですか~?」

千聖「そんなの簡単よ」

 

 千聖が飛鳥を見つめた。

 

千聖「あの仮面の男が飛鳥くんだって確信した時、今までの事を思い出したのよ。Afterglowの皆を助けた事や、花音の事を助けてくれた時の事も」

飛鳥「……」

千聖「古堂さんから話は全部聞いてるわ。一丈字くん、あなた私達を守るために、この学校に来てくれてるんですってね」

飛鳥「それもそうですが、マナーの悪いファン達を懲らしめるように言われてますね」

 

 千聖の言葉に飛鳥が苦笑いした。

 

千聖「どうしてあなたがそこまでやる必要があるの?」

飛鳥「求められていたからですよ」

「!」

 

 皆が反応すると飛鳥がまた苦笑いした。

 

飛鳥「ずっとって訳ではございませんし、広島以外の所で頑張ってみるのもいいかなと思ったんです。ただそれだけですよ」

モカ「飛鳥くん…」

 

 飛鳥が千聖を見つめた。

 

飛鳥「ちなみにですが、正体は別に喋って頂いても構いませんよ」

千聖「!!」

飛鳥「それを盾に脅しとかされる方がずっと困りますから。そういう事をされる人に限って危なっかしいんですし、トラブルの原因になるので。下手したら私が手を下さずとも、社会的に抹殺されますね」

千聖「…笑顔で言うあたり、あなたも色々苦労してたのね」

 

 飛鳥の笑顔から狂気を感じた千聖は、思わずたじろいた。

 

千聖「安心して頂戴。そんな話聞いて喋ろうとも思わないし…」

 

 千聖が飛鳥を見つめた。

 

千聖「恩を仇で返すのは私のプライドが許さないの。そして、これ以上何も知らずに助けられるのもね」

 

 千聖の言葉に飛鳥、モカ、こころが驚いた。

 

モカ「おほ~。流石女優さ~ん。肝が据わってるぅ~」

千聖「…そういうものかしら?」

こころ「ありがとう千聖! 感謝してるわ!!」

 

 こころの言葉に千聖が一息つくと。

 

千聖「という訳で、これからは『協力者』として、手助けさせて貰うわ」

飛鳥「は、はあ…」

 

 千聖が手を差し伸べると、飛鳥が手を取って握手した。

 

飛鳥「ぶっちゃけ、うちってあまりカタギとは言えないんですけど、大丈夫ですか?」

千聖「正当防衛なんでしょ? それに、そんなのが怖くて女優が務まらないわよ」

 

 と、そんな感じで頼れる先輩、白鷺千聖を仲間に加えた飛鳥だった。

 

 

 

 

 

 

おしまい

 




***************

 後日、飛鳥は黒スーツで京都にまた向かい、烏丸のとある場所に設置された犠牲者の献花台に花を添え、他の参列者と共に犠牲者に対して黙祷を捧げた。


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第237話「無様!」

第237話

 

 それはある日のことだった…。

 

「ああ!! どうして相も変わらず一丈字ばかりに絡むんだ!!」

 

 バンドリ学園の男子生徒達は嘆いていた。というのも、美少女達が自分達に相手にされないばかりか、飛鳥にばかり構うからだった。彼女達としてはクラスメイトとしてはそれなりに挨拶をしたりして平等に扱っているつもりであるが、飛鳥とは挨拶だけでなく、もっと詳しく話をしたりするので羨望の的になっていた。

 

「それでいて、何故一丈字は彼女たちに手を出そうとしないんだ!?!」

「アレだよ。ラノベでよくある鈍感系主人公だ」

「ああ…リアルでいるとマジでムカつく…」

 

 どんどん飛鳥に逆恨みをし始める男子生徒達。

 

「けどああいうのって、失ってから気づくよね。彼女たちのありがたみに」

「!!」

 

 一人の男子生徒がそう言うと、皆がその生徒を見た。

 

「そ、そうだ!」

「オレ達が寝取れば…」

「そうだよ。一丈字を絶望の底に陥れる事が出来る!!」

「お前天才か」

 

 と、物騒な会話をし始めた。

 

「ようし! そうと決まれば一丈字よりも先に彼女たちにアプローチをかけて、寝取ってやるぞ!!」

「ハーレム気取りも今のうちだ!!」

「25人全員取られた後で、1人で寂しく何かしてるんだなぁ~!!!」

 

 などと言っているが、そもそも相手にすらされてないのに、どうやって寝取るんだという話である。そしてそれを当の本人たちが陰で聞いていた。飛鳥、モカ、千聖、こころの4人である。

 

飛鳥「……」

モカ「モカちゃん達を彼女にしたいって言うより、飛鳥くんへの逆恨みだよね~」

千聖「醜いったらありゃしないわ…」

 

 モカの言葉に千聖は完全に男子生徒達を軽蔑していた。

 

こころ「寝取るってどういう意味かしら?」

飛鳥「人の彼氏や彼女を奪う事だよ」

こころ「誰の彼女を奪うつもりなのかしら?」

飛鳥「本当それな」

 

 と、飛鳥とこころが困惑していた。

 

千聖「全く、本当にバカな事を考えるんだから…」

モカ「まあ、よく一緒に喋る男の子って言ったら飛鳥くんくらいしかいませんもんね~」

飛鳥「……」

 

 千聖とモカの会話を聞いて、飛鳥は何も話さないでおこうと感じた。

 

飛鳥「…まさかとは思いますが、犯罪ギリギリの事をしでかすのでしょうか」

千聖「そんな事絶対させないわ。こころちゃん。黒服の人たちに頼んでマークして頂戴」

こころ「分かったわ!」

 

 そんなこんなで、飛鳥、モカ、千聖、こころによる「バンドガール防衛作戦」が始まった。宣言通り、男子生徒達はあの手この手で香澄達をナンパしようとしたが、あしらわれ、遂には強硬手段に出ようとしたところを、黒服の人たちに取り押さえられてしまった。

 

 その攻防戦は一週間ほど行われ、ミーティングルームで飛鳥達は分析をしていたが、ここである事に気づいた。

 

飛鳥「……」

 

 狙われているバンドガールがある程度限られている事に気づいた。

 

飛鳥「牛込さん、羽沢さん、若宮さん、白金先輩、松原先輩…。押しが弱そうな人たちがやっぱり狙われてますね」

千聖「……」

 

 集計結果を聞いて、千聖は不機嫌だった。というのも花音は千聖の親友であり、あからさまに狙っていた為、本当にキレていた。

 

飛鳥「そして検挙された男子生徒の数が…30人以上って」

千聖「男なんて皆獣よ」

飛鳥「白鷺先輩。残念ながら女子生徒もいらっしゃいます。瀬田先輩目当て…」

千聖「薫はどうでもいいわ。別に困らないもの」

飛鳥「えぇぇぇ…」

 

 薫に対して本当に容赦がない為、飛鳥は困惑していた。

 

飛鳥「次点が戸山さんや北沢さん…。人懐っこいから狙われやすいんでしょうね」

モカ「つぐも人がいいからね~。蘭やトモちんはバリバリ警戒してるから、大丈夫だけど~」

千聖「そういう意味ではイヴちゃんも心配ね…って、日菜ちゃん以外心配だわ。皆人がいいから…」

飛鳥「Roseliaは…予想通りですね。あこさんは巴さんや今井先輩が言い聞かせてるから大丈夫だとしても…」

こころ「こんなにも声をかけられてるのね。何とかできないかしら」

飛鳥「まあ、問題を起こした生徒達とこころ達でゆっくり話し合いをしてみるというのが、手っ取り早い気がするけど…」

千聖「却下よ。誰が花音を泣かした奴らなんかと」

飛鳥「ですよね…」

 

 千聖が割と怒っていた為、飛鳥はこれ以上何も言わない事にした。

 

こころ「花音を泣かせたの!?」

千聖「ええそうよ。複数で詰め寄ったり、此間体操服を盗まれたのよ」

飛鳥「…それはシャレになりませんね」

 

 千聖の言葉を聞いて、こころも流石に怒った。

 

こころ「そういう話なら許せないわ! 懲らしめなきゃ!」

千聖「それでね。作戦を考えたの」

飛鳥・こころ「え?」

千聖「フフフフフフ…」

 

 千聖の黒い笑みを聞いて、飛鳥はとてつもなく嫌な予感がした。

 

**************

 

 ある日の事。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥はとてつもなく困惑していた。というのも、男子生徒達が麻弥の体操服を盗んでいて、女子達が激おこだった。飛鳥としては完全に巻き込まれた形だった。

 

「あ、あの…ごめんなさ」

千聖「いいわよ。謝らなくたって」

 

 ちなみに女子達の間で打ち合わせは済んでおり、全て千聖の指示で従うようにしていた。飛鳥は改めて女の怖さを思い知るのだったが、千聖に至っては元天才子役という事もあり、演技力があり過ぎてとてつもなく怖い。

 

飛鳥(白鷺先輩…スパイに向いてるなぁ…)

 

千聖「麻弥ちゃんの体操服は返してもらうわね」

 

 千聖はそう言って、麻弥の体操服を男子生徒達から取り返した。しかし、花音の体操服が盗まれたばかりなのに、また体操服を盗む当たり、いい根性してるなぁと飛鳥は思った。ちなみにこの時点で既に体育があった。

 

「あ、あの…警察にだけは…」

千聖「警察には言わないわよ。忙しいのに、あなたの為にわざわざ来てもらうのも申し訳ないもの。それよりも良いお仕置きがあるの」

「お、お仕置き…////」

 

 千聖の言葉に男子生徒は興奮していた。それを見て飛鳥は引いていた。すると千聖は飛鳥の方を向いた。

 

千聖「一丈字くん。もうこの体操服使えないから、麻弥ちゃんと一緒に体操服買うの付き合てあげて? ボディガードとして」

「!!?」

 

 千聖の言葉に男子生徒は驚愕した。そして陰で見ていた仲間も驚愕していた。そして飛鳥が一番驚愕していた。

 

千聖「あなたがびっくりしてどうするのよ」

飛鳥「大胆過ぎにも程がありますよ」

 

 千聖の言葉に飛鳥が困惑した。

 

「な、何でこんな奴なんかに!!」

千聖「そんなの決まってるじゃない。あなた達、この子の事をやたら嫌ってるじゃない」

「そ、それはこいつが千聖ちゃん達に付きまとうからで…」

 

 付きまとってんのお前らだろ。と飛鳥は肩を落とした。

 

千聖「だからよ。それに何を言ってるの? 逆でしょ?」

モカ「千聖さ~ん。軽蔑すると逆にご褒美になっちゃいますよ~」

 

 なぜかその場にいたモカが煽った。

 

千聖「そうね。何も言わないのが一番いいわ。それじゃデートして頂戴ね」

「なあっ!!?」

千聖「あ、そうだ。花音の分もお願いね。あの子の体操服を買うのもまだなの」

飛鳥「は、はあ…」

 

 その時だった。

 

麻弥「い、一丈字さんっ!」

飛鳥「?」

 

 麻弥がモジモジしていた。千聖から飛鳥を必要以上に立てるように指示があったが、ガチで照れていた。

 

麻弥「そ、その…。ジブンの奴はもう安物でいいので…//////」

飛鳥「安物って、値段は同じな筈では…」

千聖「うふふ。麻弥ちゃんはスタイルいいから、ちょっと高いのよ」

麻弥「ち、千聖さん!!/////」

 

 その時、花音もやってきた。

 

花音「あ、あのう…。一丈字くん…」

飛鳥「あ、はい」

 

 花音もモジモジしていた。

 

花音「よ、宜しくお願いします…////」

 

 3人で体操服を買いに行く事が分かり、男子生徒達は絶望した。そう、自分たちのやった事が結果的に恋敵(?)である飛鳥に美味しい思いをさせてしまったのだ。

 

「あああああああああ!!!!」

「こんなはずじゃなかったんだぁ!!」

「一丈字頼むそこ代わってくれぇええええええ!!!」

 

 

 そう泣き崩れる男子生徒達を見て、千聖やモカはほくそ笑んだ。それを見て飛鳥は改めて「女子は怒らせてはいけない」と誓うのだった。

 

 

こころ「体操服を買いに行くなんて楽しそうね! あたしも混ぜて!!」

千聖「なら私も」

モカ「モカちゃんも~」

「ふああああああああああああああああ!!!」

 

 

おしまい

 



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第238話「そのままお出かけへ…」

 

 

 それはとある休日の事だった…。

 

「……」

 

 私服を着ていた一丈字飛鳥は困惑しながら、駅前で佇んでいた。というのも…。

 

「お待たせ~」

 

 私服姿のモカがやってきた。

 

モカ「結構早いね~。いつから来てたの~?」

飛鳥「5分くらい前」

モカ「そうなんだ~。そんなに女の子たちと買い物に行くのを楽しみにしてた~?」

飛鳥「そうですね…」

 

 飛鳥が困惑しながら周りを見渡していた。

 

モカ「どうしたの~? 敬語なんか使っちゃって」

飛鳥『…嗅ぎつかれてる』

モカ「?」

 

 飛鳥が周りを見渡すと、男子生徒達が所々で見張っていた。

 

モカ「え~。そこまでする~?」

飛鳥「そりゃそうでしょうよ…」

 

 男子生徒達の執念深さにモカが引いてると、飛鳥も困惑していた。

 

飛鳥「黒服さん達にガードして貰ってるとはいえ、困ったなぁ…」

 

 男子生徒達の執念深さに困惑していた飛鳥だった。

 

モカ「山本〇史の真似かなぁ~」

飛鳥「怒られるからやめて」

 

 猛アタックにより、嫁さんをゲットした某俳優の名前を出したモカに対して、飛鳥は牽制した。

 

「飛鳥! モカ! もう来てたのね!」

 

 こころ、花音、パスパレ5人がやってきて、飛鳥が石化した。

 

麻弥「ど、どうしましたか!?」

飛鳥「…あの、Pastel*Palletesが全員いらっしゃるのは、どういう意味でしょうか」

日菜「いやー。全員で来た方がるんってするかなって!」

飛鳥「少なくとも私はるんじゃなくて、バチって来てますよ…」

千聖「どういう意味? まさか不満だと?」

飛鳥「いえ、つけられてて、全員来た事で衝撃を受けてます」

「!?」

 

 飛鳥の発言に皆が驚いていると、千聖が黒い笑みを浮かべた。

 

千聖「想定の範囲内よ。今回が初めてじゃないもの」

飛鳥「あ、そうだったんですね…」

 

 よくもまあ今まで警察に捕まらなかったなぁ…と飛鳥は思ったと同時に、改めてファンの男子生徒達が異常だという事に気づいた。ちなみに全員が全員こんな感じではないが、こんなことしてたら嫌でも目立つ。

 

日菜「そういう事だから、今日は思いっきり遊ぼうね!」

飛鳥「え? あ、はい…」

 

 自分に言ってるのかどうか分からず、飛鳥は若干疑問形で答えた。

 

彩「ゴメンね。付き合わせちゃって…」

飛鳥「私は問題ございませんが、丸山先輩たちはスキャンダルとか大丈夫ですか?」

千聖「大丈夫よ。事務所には伝えたから」

 

 千聖がそう言うと、ウインクをしたため、飛鳥は超能力で千聖の心を読み取った。事前にかわしたサインである。

 

千聖『和哉さんが手を回してくれるから大丈夫よ』

飛鳥『そ、そうですか…』

 

 まさか自分の師匠が売れっ子女優とそこまでコンタクトを取っていた事に、驚きが隠せない飛鳥であった。

 

千聖「それじゃ、車に乗り込んで頂戴」

飛鳥「え?」

千聖「弦巻さんの車で移動するわよ。後は…分かるわね?」

飛鳥「理解出来ました」

 

 千聖の指示で飛鳥がモカたちと一緒に高級車の中に入り込んだ。これが何を表しているかというと、飛鳥は美少女達と同じ車の中にいるのだ。これが男子生徒達にとってはどれだけ羨ましいか計り知れなかった。

 

「い、一丈字の奴~!!!」

「オレ達が無しえなかったことを!!」

「いいなぁ~!! いいなぁ~!!!」

「オレも千聖ちゃん達と同じ車の中に乗りたい!!」

「しかもあんな可愛い女の子達と一緒にいるから、いいにおいするんだろうなぁ~!!」

「座ったシートに顔を…」

「それは流石にキモいぞ」

 

 と、妄想を垂れ流したので、周囲の人間達は男子生徒達はゴミを見る目で見つめていた。

 

 そして飛鳥も感知したのか、どんよりしていた。

 

彩「ど、どうしたの? 一丈字くん。具合悪いの?」

飛鳥「…いえ、あの人たちはこの状況を見て、どんな事を思い浮かべているんだろうと」

千聖「考えたくないわ。どうせまたエッチな事を考えてるんでしょう」

モカ「エッチな事ですめばいいですけどねぇ~」

 

 モカの発言に花音が怯えていた。

 

千聖「花音に悪影響よ。こんな話は終わりにしましょう」

 

 そう言って一行は、目的地に向かった。

 

「うちの体操服を取り扱っているのはアソコしかいない!」

「ていうか購買部で買えばよくね!?」

 

******************

 

 一行は、繁華街の中にある服屋にやってきた。この店はバンドリ学園の制服やら体操服を取り扱っていた。

 

千聖「さて花音、麻弥。買ってらっしゃい」

花音「う、うん…」

麻弥「はいっす…」

 

 花音と麻弥は体操服のサイズを選定した。ちなみに費用は弦巻財閥が負担する事になった(※出世払いとして)。

 

 飛鳥達は特に用事がない為、二人の買い物が終わるまで待っていた。ちなみに飛鳥は非常事態に制服や体操服がダメになる事を想定して、事前に何着か購入していた。

 

麻弥「そういや、今のサイズどれくらいだったかな…」

花音「あ、そういえば…」

 

 すると千聖がある事を考えた。

 

千聖「そうだわ。この際だからスリーサイズを測りなおしましょう」

 

 と、わざと大きな声で言い放った。近くや中で潜んでいた男子生徒達はまなこを大きくしていた。飛鳥としては、クラスメイトや本当に偶然制服を買いに来た男子生徒達がいなくてよかったと思った。

 

麻弥「ス、スリーサイズを…?」

 

 すると千聖が飛鳥を見た。

 

千聖「飛鳥くん。測って頂戴」

花音「ふぇええええええーーーーーーーー!!!?///////」

麻弥「んあぁ!!?」

 

 千聖の発言に麻弥と花音が絶叫して、事情を知らない彩や千聖、イヴが驚いていた。飛鳥としては、事情伝えてないのかと驚いていた。

 

彩「ち、千聖ちゃあん!!//////」

日菜「おもしろそー!!」

イヴ「ブ、ブシドー!!?/////」

飛鳥「違います。白鷺先輩、冗談はやめてくださいよ」

千聖「冗談よ。少なくとも麻弥ちゃんはアイドルなんだから…それくらいは分かるわね?」

飛鳥「さあ、果たして私は今日生き残る事が出来るのだろうか」

モカ「生き残って貰わないと困るよ~」

 

 と、まあそんな会話をしていたが、

 

「ス、ス、スリーサイズを測るってェ~~~~!!!?」

「け、けしからーん!!!」

「お、乙女の清らかな…」

「一丈字許すまじ…!!」

  

 男子生徒達は嫉妬の炎を燃やして飛鳥を睨みつけ、飛鳥の魔の手から千聖たちを守る事を決意したが、100%負けるのは男子生徒達の方です。

 

飛鳥「それにしても白鷺先輩もそういうジョークを言うんですね」

千聖「どういう意味」

日菜「ホントだ。前は絶対そういう事言わなかったのに」

彩「うんうん」

 

 飛鳥の言葉に彩と日菜も乗ると、千聖が困惑していた。

 

日菜「あ、そうだ! この際だから千聖ちゃんも測って貰ったら!? スリーサイズ!」

飛鳥「氷川先輩。北極から南極なんですけど。どうあっても私を殺しに来てますよね」

千聖「大丈夫よ飛鳥くん。死ぬのは日菜ちゃんだから」

彩「喧嘩はやめて~~~!!!!!」

 

 まあ、なんだかんだ言って楽しい買い物になったそうです。

 

 

おしまい

 



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第240話「そろそろライブに来て欲しい」

 

 

「みんなーっ! ライブに来てくれてありがとー!!」

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「むほぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 ある日の事。バンドリ学園で合同ライブが行われていた。Poppin‘Partyが演奏をしようとステージに立っていて、席はほぼファンの男子生徒達で埋まっていた。可愛らしい衣装を身にまとった彼女たちの姿はまさにファンの心の癒しだった。

 

「はぁ…。香澄ちゃん、いつ見ても可愛いなぁ…!」

「おたえちゃんやっぱり綺麗…」

「りみりんを後ろから抱きしめたい…」

「さーやの髪の匂い嗅ぎたい…」

「有咲のおっぱいぱふぱふ…」

 

 後半からもうセクハラ発言だが、とにかく彼女達は大人気で、Poppin‘PartyだけでなくAfterglow、Pastel*Palletes、Roselia、ハロー、ハッピーワールド!もライブをする度、超満員だった。

 

(……)

 

 それを皆の見えない所から、一人の少年が見ていた。少年の名前は一丈字飛鳥。ファンの男子生徒からのやっかみから、学内ライブへの出入りを禁じられている。まあ、仮に来たとしてもつまみだされるのが落ちなので、もう自分から行かないようにしている。

 

 だが、せめて香澄達が無事にライブ出来ているかどうかだけ確認しに来たのだ。

 

飛鳥「さて、行くか」

 

 そう言って飛鳥は消えた。

 

************************

 

 

 

香澄「はー! 今日も楽しかったー!!」

 

 合同ライブが終わり、控室には25人全員が集まっていた。

 

こころ「とても楽しいライブになったわね!」

彩「そうだねー」

 

 皆が満足そうにしていたが、香澄はすぐに元気をなくした。

 

香澄「…あ、でもそういや飛鳥くん。今日も来てなかった」

モカ・千聖「!!」

 

 香澄の発言に千聖とモカが反応した。

 

たえ「そういえばいつも来ないよね」

りみ「う、うん…」

沙綾「しょうがないよ。一丈字くんには一丈字くんの都合があるんだし」

香澄「でも毎回誘ってるんだよ! 1回くらい来てくれても…」

 

 香澄の言葉に他のメンバーが難しい顔をしていた。

 

はぐみ「こころん。どうにかならないかなぁ?」

こころ「そうねぇ…言われてみれば来てないわね」

薫「彼には彼の都合があるのだろう…」

美咲「…薫さん。それ、山吹さんが言ったよ」

 

 薫が沙綾と同じ事を言った為、美咲がツッコミを入れた。

 

千聖「私達のファンに気を遣って、遠慮してるのよ」

「!!?」

 

 千聖が口を開いた。

 

日菜「どうして千聖ちゃんが知ってるの?」

千聖「私も出演するお芝居のチケットを渡したんだけど、遠慮してて…」

香澄「そ、そうなんですか…」

 

 香澄がつぶやくと、他のメンバーも落ち込み始めた。

 

香澄「と、とにかく明日飛鳥くんに聞いてみよう!!」

リサ「そうだねー。うちのクラスの男子に気を遣ってるんだったら、申し訳ないし…」

紗夜「…こちらも同じく」

 

 そう言って香澄達は翌日、飛鳥に事情を聴いてみる事にした。

 

 その頃、飛鳥はと言うと…。

 

「本当に妻を助けてくれてありがとう。助かったよ」

飛鳥「いえ、ご無事で何よりです」

「ありがとうねぇ」

 

 飛鳥は老婆を助けて、その夫からお礼を言われていた。

 

*****************

 

 翌日、飛鳥が学校に来ると…。

 

「飛鳥くんっ!!」

飛鳥「?」

 

 後ろから声をかけられて、飛鳥が振り向くとそこにはPoppin‘Partyがいた。

 

飛鳥「あ、おはようございます」

たえ「ちょっといい?」

飛鳥「はい。何でしょう…?」

 

 飛鳥はオレ、何かしたかな…? と言わんばかりに不思議そうにたえを見つめていたが、沙綾がそれを察知したのか苦笑いした。

 

沙綾「あ、怒ってるわけじゃないの。ただ…」

有咲「お前、学内ライブとかに来ないらしいじゃねぇか」

飛鳥「ええ、そうですね…」

香澄「どうして!?」

 

 飛鳥の問いに香澄が話しかけた。周りの生徒達もその様子を見ていたが、反応は十人十色で、飛鳥がポピパに責められて喜んでいるファンや、一丈字くんも大変だなぁ…と同情する一般生徒、そして何事かと見ていた野次馬など、色々いた。

 

飛鳥「来てもつまみだされるんですよ」

香澄「ええっ!?」

飛鳥「まあ、徒党を組んでしらばっくれるので、証明しようがないんですけどね」

 

 というのは全くの嘘で、弦巻家の黒服にバッチリ証拠を取って貰っている。誰がどう見ても妨害されていると分かるくらいに…。

 

飛鳥「此間白鷺先輩からチケットを貰った時も、行こうとしたんですけどね。会場の前に白鷺先輩らしきファンの先輩方が見張ってまして、行こうとしたら追いかけまわされましたね。で、撒いたころには開演時間になってて入れなかったって事も」

りみ「ひ、酷い…」

沙綾「それ…千聖先輩は知ってるの?」

飛鳥「知ってますよ。メールで事情を傳えたら「やっぱり…」って言われました」

 

 思った他、ファンからの妨害活動が酷かったので、香澄達は言葉を失った。

 

飛鳥「まあ、そういう訳ですので、今はどうにもならないんですよ。今は」

香澄「そんな…。飛鳥くんにもライブに来て欲しいのに…」

 

 香澄がしゅんとすると、ファンの男子生徒達は罰が悪そうにした。

 

飛鳥「それは光栄です」

有咲「って! 一丈字はそれでいいのかよ!!」

飛鳥「良いも何も、もうこの時点で十分仕返しは出来てると思いますよ」

香澄「え?」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「こうやって戸山さん達が私を心配してくださるんですもの」

「!」

飛鳥「ライブに出入りさせない事で、私をあなた方から遠ざけさせるつもりが、逆に近づけさせてるんですねぇ」

「……!」

 

 すると、たえがある事を思いついた。

 

たえ「そうだ。いい事考えた」

飛鳥「どうしました?」

たえ「別に学内ライブじゃなくてもいいんだよ。飛鳥くんだけに独占ライブをするとか…」

飛鳥「凄い事考えますね…」

 

 その時、男子生徒達が慌ててやってきた。

 

「ごめんなさい!!」

「ライブに入れるようにするので、どうかそれだけは!!」

「羨ましすぎる!!」

 

飛鳥(あぁ…これでやっとライブに行ける…のか?)

 

 飛鳥は土下座している男子生徒達の姿を見て、何となく嫌な予感がした。

 

**************************

 

 そしてPoppin‘Partyライブ当日…。

 

飛鳥「あ、やっぱりな…」

 

 飛鳥はライブに入る事に成功したが、一番場所が悪い席で、座席も汚れていた。香澄達も見えなかった。

 

香澄「飛鳥くんどこ…?」

有咲「一番端っこに一瞬だけ見えたぞ…」

 

 

おしまい

 



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第242話「蛍火の術」

蛍火の術とは、敵にうその情報や手紙を渡し、仲間割れをさせる術を指す。

誤字報告ありがとうございます。


 

 今日は全校生徒対象の肝試し大会だが…。

 

蘭「何でこんなクソみたいなイベントあるの…」

モカ「蘭~。女の子がそんな事言ったらダメだよ~」

 

 クラスごとに整列していて、Afterglowの5人が会話をしていたが蘭が露骨に嫌そうにしていた。しかも涙目である。

 

「えー、生徒会の突然の思い付きで今から肝試し大会を行います。チーム分けは6人1組にします!」

 

 生徒会役員がそう言いはなった。この学園の生徒会は全員陽キャであり、アメリカでいうスクールカーストの最上位に君臨していた。家が金持ちだったりイケメンだったりでやりたい放題やっていた。

 

そしてくじで決められたわけだが、やっぱり生徒会の陽キャ達はバンドガールズでハーレムを作っていて、飛鳥は陽キャの取り巻き達とで構成されていた。

 

(こいつ…いつも美少女に囲まれやがって)

(赤っ恥をかかせてやる)

飛鳥(…とか思ってんだろうな)

 

 何となく予想はついていた飛鳥は困惑していた。どうしてこうも回りくどい事しかできないのだろうと、あきれるばかりだった。

 

*******************

 

 そんなこんなで全校肝試し大会が始まった。陽キャ達は見せびらかすように香澄達と入り口から入っていった。当然羨ましがるのだが、相手は金持ちでイケメン、エリートだった為何も言い返せなかった。

 

 そして女子の陽キャ達はというと、陰キャをターゲットにして冤罪を作り出そうと考えていた。完全にやりたい放題である。

 

 そんな中、飛鳥は陽キャの取り巻き達と肝試しに出かけたのだが、案の定前を歩かされたが、動じなかった。

 

「チッ、透かしやがって…」

「だけど、そんな余裕こいてられるのも今のうちだ」

「もうすぐ第1関門が来るぞ…」

 

 最初の脅かし役がスタンバイをしていたのだが、これがとてつもなく怖い仕掛けになっていて、大抵逃げ出したりしていた。

 

 そして第1関門、脅かし役が飛鳥を脅かしたが飛鳥は全く驚かず、取り巻き達は困惑した。

 

飛鳥(オレの醜態をカメラで撮影し、それを戸山さん達に見せて幻滅させようって魂胆か。本当によくやるよ…)

 

 飛鳥は目の前の脅かし役を呆れた目で見ると、脅かし役は居た堪れなくなったのか、その場を去った。すると取り巻き達は

 

「チッ」

 

 と、聞こえるように舌打ちした。

 

「あーあ。空気読めよ」

「そこは驚くところだろうが」

 

 そう言って飛鳥に悪態をついたが、飛鳥は無表情で取りまきを見つめた。

 

飛鳥「温い」

「は?」

 

 飛鳥が取り巻き達を見つめた。

 

飛鳥「私を嫌われ者にしたいのなら、もっといい方法がありますよ」

「ど、どういう意味だ?」

 

 すると飛鳥がその場を走り出した。

 

「あっ!!」

「待てコラァ!!!」

 

 飛鳥がものすごいスピードで駆け抜けていくと、取り巻き達が追いかけた。

 

 その頃…

 

「オレが絶対に守ってあげるからね」

「ありがとう…」

 

 パスパレは生徒会長と一緒に歩いていた。芸能人5人を侍らせて完全に勝ち組気取っていた。

 

日菜「何かお化けのクオリティ低くない?」

麻弥「ひ、日菜さん…」

イヴ「わ、私はこの方が…」

 

 日菜がお化けのクオリティに対して疑問に思っていると、イヴが麻弥にくっついて、麻弥は日菜を諌めた。

 

「イヴちゃん! もし良かったらオレの傍に…」

千聖「結構です。それよりも前を見てください」

 

 千聖がガードをしていた為、なかなか思い通りにいかず、会長はイライラしていた。千聖さえいなければ何とかできたかもしれないが、しっかりガードをしていた為、近づけずにいた。

 

 そんな時、取り巻き達が追い付いていた。

 

「くそう! どこ行きやがった! 一丈字の奴!!」

「あっ…まずいぞ!」

「!!?」

 

 取り巻き達が会長とパスパレと目が合ったが、会長は表情を歪ませ、取り巻き達は青ざめた。

 

千聖「あら、何の御用かしら?」

「え、えっと…一丈字見ませんでしたか?」

「あいつ、幽霊にビビッて逃げ出しちゃったんですよ…」

「ええっ!!?」

 

 取り巻き達の言葉に日菜たちが驚いたが、千聖は驚かなかった。というのも、すぐ近くの木の陰で飛鳥がいて、サインを送っていたからだ。まあ、飛鳥の正体を既に知っている上に、最初からそんな筈がないと思っていた。

 

日菜「ホントかなー。あなた達が逃げ出したんじゃないの?」

「!?」

彩「うーん…。一丈字くん逞しいから、幽霊から逃げ出すなんてありえないと思うなぁ…」

麻弥「林間学校で羽沢さんを助けたくらいですから…」

イヴ「私もそう思います…」

千聖「まあいいわ」

 

 千聖が割って入った。

 

千聖「あなた達も私達に加わって下さる?」

「!!?」

 

 千聖の発言に皆が驚いた。

 

千聖「そうしましょう。それじゃ、お願いしますね?」

麻弥「ち、千聖さん…?」

 

 千聖の発言に麻弥が戸惑うが、会長はハーレムでなくなる為、それでいいわけがなかった。そして飛鳥が超能力で会長を更に怒らせた。

 

会長「てめぇら…」

「ひ、ひぃいいいい!!」

会長「よくもオレの計画を台無しにしやがって!! ぶっ殺してやる!!」

「ひぃいいいいい~~~~~!!!!」

会長「待てぇ~~~~!!!!」

 

 そう言って会長は取り巻き達を追いかけて、去っていった。

 

彩「えーっ!! ちょ、ちょっと~!!!」

日菜「女の子を置いていくなんてサイテー!!」

イヴ「うぅぅぅぅ…」

麻弥「ど、どうしましょう千聖さん…」

千聖「男の子ならもう一人いるわよ」

「え」

 

 千聖が木の影を見た。

 

千聖「一丈字くん。そこにいるのは分かってるのよ。出てらっしゃい」

 

 千聖がそう言うと飛鳥が出てきた。

 

飛鳥「…バレてましたか」

千聖「あなたも大変だったわね。あいつらのお遊びに付き合わされて」

飛鳥「そうですね。ですが、被害に遭われてるのは私だけではございませんよ」

彩「どういうこと?」

飛鳥「それが…」

 

 陽キャ女子が陰キャ男子をターゲットにして、冤罪をかけようとしていた事を話した。

 

麻弥「なんですかそれ! 悪質っす!」

イヴ「ひ、ひどい…」

千聖「大丈夫よ。私が誤解を解いてあげるから。それよりも…」

 

 千聖が笑みを浮かべた。

 

千聖「出口までエスコートしてくださる?」

飛鳥「他の方は問題ございませんか?」

彩「う、うん! お願い!」

日菜「飛鳥くんがいるなら、るんってするよ!」

麻弥「お、お願いします!」

イヴ「お願いします…」

飛鳥「承知しました」

 

 メンバー全員の了承を得たため、飛鳥は安心していた。

 

千聖「それじゃ、前を歩いてくれる?」

飛鳥「はい。後ろはどうしましょうか」

千聖「私が見てるわ。何があるか分からないものね」

日菜「どうして後ろ?」

飛鳥「後ろから何かが現れる場合があって、その時に耐性のない方が驚いて前に走ろうとすると、前を歩いている人にぶつかって怪我をする可能性がございます。それを防ぐために、後ろを見て頂く番も設置しようかと」

イヴ「……」

 

 イヴが飛鳥を見つめていた。

 

飛鳥「どうしました?」

イヴ「い、いや。なんでもありません」

飛鳥「不安ですか?」

イヴ「い、いえ。そういうわけでは…」

飛鳥「そうですか」

 

 飛鳥が普通に返事すると、背を向けた。

 

飛鳥「後ろは白鷺先輩が見ていますし、横には丸山先輩達もいますので、心配することはございませんね」

イヴ「……」

千聖「そして前にはあなたがいる。しっかり頼むわよ」

飛鳥「はい。ゴールまで白鷺先輩達をお守りします」

 

 飛鳥の頼もしさにメンバーたちが驚いていた。

 

千聖「…まあ、安全に越したことはないわ。行きましょう」

飛鳥「はい」

 

 こうして飛鳥はパスパレと一緒に行動を共にして、そのままゴールをしたが…。

 

「一丈字とパスパレがゴールしてきたぞー!!」

「うぉおおーっ!! 流石一丈字だ!!」

「やってくれると信じてたぜ!!」

「今回は見直した!!」

 

 帰って来るなり、大歓声が上がった。飛鳥は驚いていて、周りを見渡していたが、一緒に歩いていた取り巻き達や陽キャ達は涙目で睨みつけていた。

 

飛鳥「なにがあったんだろう…」

 

 実は会長と取り巻き達は追いかけっこをしているうちにゴールについてしまったのだ。しかし、一緒にペアを組んでいた筈のパスパレではなく、取り巻き達と帰ってきたことにより、パスパレを置いて一人だけ逃げたと認識され、総すかんを食らったのだ。ちなみに他の陽キャ達も他のグループとのハーレムを楽しめるかと思いきや、思い通りにならなかったのだ…。また、飛鳥が懸念していた冤罪の件も、黒服たちが身を潔白して、陽キャ女子たちの野望を打ち砕いた。

 

千聖「ズルをした人にいい結果は帰ってこないのよ」

日菜「そう! 正義は必ず勝つってね!」

 

 千聖と日菜の反応を見て、飛鳥は困惑した。

 

彩「それはそうと一丈字くん。本当にありがとね」

飛鳥「いえいえ。お気になさらないでください」

 

 彩の言葉に飛鳥が苦笑いした。

 

麻弥「一丈字さんが前にいてくれた事もそうですけど、千聖さんが後ろを見てくれたおかげで安心できたっす!」

イヴ「ありがとうございました!」

飛鳥「ご無事で何よりです。さて、そろそろ行かないと」

 

 飛鳥がその場を離れようとすると、

 

日菜「ありがとねー」

千聖「お疲れ様」

飛鳥「あ、はい。お疲れさまでしたー」

 

 軽い挨拶だけをして、飛鳥はパスパレと別れた。

 

飛鳥(今日もいい仕事しました)

 

 普通ならこれだけかと思うが、飛鳥としてはこれで十分だった。理由としては目立つし、修羅場になるからである。

 

イヴ「……」

 

 イヴは飛鳥の後姿をじっと見つめていた。

 

日菜「どうしたの? イヴちゃん」

イヴ「一丈字さん…。まさしくブシドーの精神を持っていました…!

日菜「うーん。どっちかっていうと忍者じゃない? 体軽いし」

 

 パスパレはずっと飛鳥の話をしていたという。

 

 

おしまい

 



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第245話「対決! ゲームセンター!」

 

 

 こんにちは。一丈字飛鳥です。突然すぎて私は疲れました。疲れすぎて…。

 

ドンドカドドドドンカカカカカカドンドカドドドドンカカカカカカ…

 

ゲームセンターでストレス発散をしています。太鼓をたたくゲームで思いくそ叩いてます。超能力の影響でゲームを壊しそうになっておりますが、何とか持ちこたえております。

 

これがついこないだの出来事でした。

 

********************

 

 後日、

 

「一丈字! お前ツイッターで撮られてたぞ!!」

 

2組でAfterglowの宇田川巴さんがカメラで撮影されていたことを教えてくださいました。全く気付かなかった…。

 

飛鳥「あ、そうですか…」

 

 もう撮られてしまったからにはそう言うしかなかった。肖像権という言葉を知らないのだろうか…。

 

巴「それにしてもお前太鼓の達人得意なんだな!」

飛鳥「自分ではよくわかりません…」

巴「そうだ! 今度一緒にゲームセンター行かないか!?」

飛鳥「えっ…」

 

 そんなこんなでゲームセンターに行くことになったのですが、これがすべての騒動の始まりでした。

 

こころ「ここがゲームセンターね!!」

飛鳥「……」

 

 なんという事でしょう。5つのバンドのメンバーが全員来てしまいました。スケジュールどうなっているのでしょう…。あ、ここで語りは終わります。

 

巴「それじゃさっそく行こうぜ一丈字!」

飛鳥「え…」

 

 そんなこんなで巴と太鼓の達人で勝負することになったが、

 

飛鳥(圧すげぇええええええええええ!!!!)

 

 自分の後ろには24人の女の子たちが見ていた。これをファンの男子生徒たちが見たら間違いなく命はないだろうと飛鳥は思った。

 

巴「曲は自分の一番得意な曲な!」

飛鳥「あ、はい…」

 

 すると飛鳥は「ふつう」で選択しようとしたが…。

 

モカ「そういや飛鳥くん。あの時何で選択した~?」

飛鳥「鬼ですが?」

モカ「じゃあそれでやるしかないでしょ~」

飛鳥「ですよね」

 

 そして勝負が行われることになったが、飛鳥は心を込めて正確に太鼓をたたいていた。まさしく本物の太鼓をたたいているような風格を見せつけた。

 

 巴も負けじと魂を込めてなおかつ正確に太鼓を叩いた。

 

 その結果…。

 

モカ「飛鳥くんの圧勝~」

巴「い、一丈字ミスが殆どない…」

飛鳥(あ、あぶねぇ…)

 

 多数の女子が見ているという男子特有のプレッシャーをはねのけ、飛鳥は巴と自分の弱さに勝利した。

 

飛鳥(女子相手に大人げないかなと思ったんだけど…)

巴「…いや、そんな気遣いは不要だ。一丈字」

飛鳥「!!?」

 

 心の中を読まれるというギャグ小説にお約束を体感した飛鳥はぎょっとした。

 

巴「負けたアタシに何も言う資格はない!」

飛鳥「いや、そのセリフどこかで聞いたことあるんですけど」

あこ「おねーちゃんもすごかったよ!?」

 

 巴の言葉に飛鳥が突っ込みを入れると、あこが割って入った。

 

あこ「そうだ! 今度はあこと勝負してよ!」

飛鳥「それは構いませんが…。あ、皆さんは私たちに構わず遊んでてください」

「あ、お構いなく」

 

 こうしてあことも対決をしたが、飛鳥が勝った。

 

あこ「おねーちゃんのスコアにも届いてないよー!!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「あ、せっかくですから湊先輩と美竹さんいかがですか?」

友希那・蘭「!?」

モカ「その二人に聞くあたり悪意があるよ~?」

 

 飛鳥の無茶ぶりにモカが突っ込みを入れる。

 

友希那「私はボーカルよ?」

蘭「湊先輩とはそんなに仲が悪くないから」

飛鳥「そうですか…」

モカ「まあ、どっちが上手なのかは見てみたいけどね~」

友希那「それはもちろん私よ」

 

 友希那の根拠のない発言に空気が止まった。

 

蘭「…は?」

友希那「何か変なこと言ったかしら?」

蘭「いや、あたしも負けてないと思うんですけど」

友希那「そう…」

 

 空気が止まった。

 

モカ「先にやるって言ったら勝ちという事で~」

友希那・蘭「やる」

 

 ほぼ同じタイミングで言った為、勝負することになったが、友希那が勝った。

 

友希那「だ、だから言ったじゃない…」

(ばててる!!)

(普段使わないところ酷使したから凄くばててる!!)

 

蘭「さ、流石ですね…。湊さん」

「!?」

ひまり(蘭が素直に認めた…!!)

 

蘭「でも次やったら間違いなくあたしが勝ちますね! ばててますし」

巴(全然認めちゃいなかった)

モカ(本当に負けず嫌いだなぁ~)

 

 そんなこんなで、友希那と蘭はずっと対決を続けていた。

 

あこ「帰る前にもう1回やろうね!」

飛鳥「……」

 

******************

 

 そしてこの後もゲームセンターを楽しむ一同。

 

日菜「また取れたよー」

紗夜「日菜! さすがに迷惑だからその辺にしときなさい!」

 

 日菜がクレーンゲームで大量にぬいぐるみをとっていた為、遠くから見ていた店員がどんどん青ざめていた。それに気づいた紗夜が困惑した。

 

飛鳥「……」

モカ「もう一人いますよ~」

 

 飛鳥も食品関係のクレーンゲームで景品を取りまくって、こっちには店員が話しかけてきた。

 

「あ、あのうお客様…。賞金をお支払いしますので、もうそれ以上は…」

飛鳥「あ、ごめんなさい」

 

 

『ダンス』

 

 モー娘。のLOVEマシーンを一緒に踊る飛鳥とリサ。

 

あこ「飛鳥くんのポテンシャルたかーい…」

燐子「う、うん…」

 

 これも悲しき過去の中で培われたのである…。

 

 そしてそれを遠くから、男子生徒たちが見つめていた…。なぜ今まで声をかけなかったのかというと、声をかけようとしたけど弦巻家の黒服(男性)にがっちりガードされていたからだった。

 

「オ、オレだって…!!」

「あの子たちとゲームセンターデートしたかった~!!」

「にくい…一丈字が憎いィ…!!」

「オレたちにもあの楽園をォォォォ…」

 

 その様子はまさに、ゾンビゲームに出てくるゾンビを彷彿とさせていて、見ていた一般客をドン引きさせていた。

 

こころ「皆で遊ぶととっても楽しいわね!」

はぐみ「ずっとこうして遊んでたいなー!」

美咲「…それはそれで飽きてくると思うけど」

 

 美咲はそう悪態をつくも、まんざらでもなさそうだった。

 

モカ「それじゃあ最後はあそこに行こう」

ひまり「プリクラ!?」

「ちょっと待てぇ!」

「一丈字にだけ独占はさせぬぞぉ!!」

モカ「ぶっぶー」

「?」

 

****************

 

 お化け屋敷だった。

 

巴「どうしてこんなところにお化け屋敷があるんだよ!!」

蘭「無理無理無理無理!! 絶対に無理!! なんと言われようと行かない!!」

友希那「あら、これは完全に私の勝ちね」

蘭「う、うぅぅぅぅ…!!」

リサ「友希那! 無理させないの! 苦手な人は本当に苦手なんだから!!」

モカ「まあ、オチっているかなーと思って~」

飛鳥「……」

 

 なんだかんだ言って、ストレス発散にはなったそうです。

 

モカ「それじゃ、入るメンバーを決めちゃいましょう~。くじ引きで」

巴・蘭・リサ「くじ引き!!?」

 

 絶対自分たちが当たりそうなので、嫌な予感がしていた。そしてどうなったかというと…。

 

『有咲・蘭・千聖・リサ・薫』

 

有咲「絶対くじ引きじゃね~~~~~!!!!!」

千聖「な、なんで私が!?!」

蘭「巴代わって!!」

巴「なんでアタシなんだよ!!」

蘭「あこが見てるんだよ。それでもいいの!?」

巴「蘭こそ湊先輩に完全に負けを認めることになるんだぞ!」

モカ「じゃあトモちんも追加で~」

巴「はああああああああああああ!!!」

 

 こうして、6人で行くことになりましたとさ。

 

モカ「めでたしめでたし~」

蘭・巴「めでたくなーい!!!」

 

おしまい

 



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第251話「ポテトが生み出すラブコメディ」

 

 

 それはある日の事だった。

 

「……」

 

 Roseliaのギター担当・氷川紗夜はとあるファーストフード店のチラシとにらめっこしていた。

 

『カップル限定フライドポテト誕生! ラブラブピンク味。カップル限定! おひとりさまは誰かに頼んで一緒に買いに来てネ♡ 持ち帰り厳禁』

 

紗夜(な、なんですかこのチラシは!! 恋人がいるのがそんなにいいことなのですか!!? 潰れてしまえばいいんですよこんなお店!!)

 

 とは言いつつも、本当はどんな味か気になって仕方がない紗夜だった。というかもうのどから出るほど欲しかった。

 

紗夜(そ、そうはいっても…私には親しい殿方なんて…)

 

 紗夜が男子生徒を思い浮かべると、飛鳥の顔が浮かびかけた。

 

「はいはいはいはいはいはい!!」

「オレオレオレオレオレ!!」

「オレがいるよ!! オレがいるよ紗夜ちゃん!!」

「一緒にポテトあーんしようよ!!」

 

 ファンの男子生徒たちが急に現れて驚いた。

 

紗夜「い、いや私は別に…/////」

「そんな事言わずにさぁー」

「本当は知ってるんだよ。フライドポテトが好きだってこと」

「僕たちもポテトと同じように熱々に…」

 

 迫りくる男子生徒たちに紗夜が怯えていると、

「紗夜!!」

「!!?」

 

 リサの声がして紗夜と男子生徒たちが振り向くと、リサ、友希那、燐子、あこ、そして飛鳥の5人が駆け付けた。

 

「一丈字!!」

「てめぇ…なんで友希那ちゃんたちと!!」

飛鳥「色々ありましてね…」

友希那「あこが赤点取りかけてるから勉強会するのよ」

あこ「もー!! それ言わないでくださいよぉ!!/////」

 

 友希那の言葉にあこが頬を染めた。

 

リサ「言っとくけど、友希那もだからね」

友希那「……」

燐子「そ、それよりも…。どうされたんですか?」

友希那「決まってるわ。紗夜を離しなさい!」

 

 友希那の言葉に男子生徒たちが困惑していると、飛鳥は原因を察していた。

 

「こ、これじゃオレたちが悪者みたいじゃねーか!」

「オレたちはただ紗夜ちゃんたちと…」

飛鳥「あー。あれですね」

 

 飛鳥が困惑して声を出すと、皆が飛鳥を見た。

 

リサ「どういう事?」

飛鳥「この店、カップル限定のフライドポテトを販売してるんですよ。持ち帰りもできないので、誰が氷川先輩と一緒にそのポテトを食べるかでもめてたみたいですね」

紗夜「いや、私はポスターを見てただけで…/////」

 

 飛鳥の言葉に紗夜が否定したが、どう考えても図星だった。

 

あこ「あー…それだったら飛鳥くんしかいないよね。男の人」

飛鳥「ちなみに同性でも可能ですよ。二人であれば」

「!!?」

 

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

 

飛鳥「此間男性同士のカップルがそのポテトを食べてるの、目撃しましたよ」

友希那「そ、そう…」

リサ「よく知ってるわね…」

飛鳥「買い物の帰りですよ」

 

 飛鳥が苦笑いしたが、男子生徒たちが怒りの炎を燃やしていた。

 

「てめぇ…!!」

「余計なことを言いやがって!!」

飛鳥「それで場を収めるためにも、取引をしませんか?」

「!」

 

 飛鳥が不敵な笑みを浮かべた。

 

飛鳥「今から紗夜先輩に誰と一緒にポテトを食べるか決めてもらうんですよ。私以外の誰かと」

「!!?」

 

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

 

飛鳥「それで選ばれなかったらきっぱりと諦める。これでどうですか?」

「な、なんでお前がそんな事…」

飛鳥「選ばれたら紗夜先輩と一緒にポテトを食べられる上に、今回は私はいません。ましてや、私が見ている前で紗夜先輩とポテトを食べさせあいっこ出来て優越感に浸れ、マウントも取れる。これほど良い条件はないと思いますよ」

紗夜「……!」

 

 飛鳥が紗夜を見た。

 

飛鳥「氷川先輩。場を丸く収めるためです。申し訳ございませんがお付き合いをお願いします」

紗夜「わ、分かったわ…」

 

 紗夜は飛鳥のいつもと違う雰囲気に違和感を感じていた。まるで今の姿が本来の彼自身なのではないかと思うくらいに…。

 

**********************

 

 そして誰と一緒にポテトを食べるかどうかを決めたが、正直同性でも異性でも恥ずかしかった。

 

(かわいい///////)

 

 正直男子生徒たちは恥じらう紗夜を見れただけでも大儲けだった。

 

紗夜「そ、そんなに見つめないでください!!/////」

リサ・燐子・あこ(かわいい)

 

 顔を真っ赤にして照れている紗夜に対して、リサ・燐子・あこはきゅんとしていた。

 

友希那「さあ、紗夜」

リサ「紗夜?」

燐子「ひ、氷川さん…」

あこ「紗夜さん!!」

「紗夜ちゃん!!」

 

『だれを選ぶんですか!!?』

 

紗夜(ポ、ポテトを食べたかっただけなのに…どうしてこうなったの~~~~!!!?)

 

 

 人生初のモテ期(?)がやってきて、紗夜は心の中で絶叫した。

 

飛鳥『第6シリーズ、始まります』

 

 

おしまい

 



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第252話「一丈字飛鳥 完全勝利」

 

 

 それはある日の事だった…。

 

香澄「じー…」

飛鳥「……」

 

 カフェテリアで、香澄が飛鳥をじっと見つめていた。現在飛鳥はPoppin’Partyと一緒に食事をしていた。当然のごとく、男子生徒たちからは嫉妬されていた。

 

「オレと香澄ちゃんとランチしたい…」

「おたえちゃんとご飯食べたい…」

「りみちゃんにチョココロネ食べさせたい…」

「さーやちゃんのパン食べたい…」

「有咲のパンツ食べたい…」

有咲「一人おかしい奴がいるぞ!!!」

 

 男子生徒たちの嫉妬の言葉に有咲が突っ込みを入れた。

 

「あっ!!? ズボンの事じゃなくて下着だからね!?」

「パンティー!!」

「勘違いすんなよ!!」

有咲「猶更タチが悪いわっ!!!//////」

 

 逆効果だとしか言えない男子生徒たちの弁解に有咲はさらに突っ込みを入れた。

 

たえ「有咲人気者だねー」

有咲「喧嘩売ってんのか? 喧嘩売ってんのか? エ?」

 

 たえの言葉に有咲が突っ込むと、沙綾とりみが嫌そうな顔をした。

 

沙綾「…あのさ、そういう話しないでくれるかな?」

「そうだぞ一丈字!!」

沙綾「いや、あなた達なんだけど!!」

 

 沙綾の突っ込みに飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「やっぱりこうなったか…」

香澄「あ、飛鳥くんは気にしなくて大丈夫だよ!」

「女子に味方してもらうなんてきたねぇぞ!!」

「そうだそうだ!!」

 

 と、いがみ合っていると…。

 

「ねえ」

「ああん!!?」

 

 どこからかした声に男子生徒たちがその方を見ると、女子生徒たちがごみを見つめる目で言い放った。

 

「うるさいんだけど」

「うるさいのはお前じゃ!!」

「下級生いじめといて威張ってんじゃねーぞ!!」

「ほかの男と浮気したこと、あいつしってるかんな!!」

(思ったほか、反撃食らってた!!)

 

 にらみを利かせて言い放った女子生徒に対し、男子生徒たちが猛攻撃すると、女子生徒は涙目になった。

 

「そ、そんなに言わなくても…」

「あのさ、泣きたいのは彼氏や後輩の方だよ?」

「泣くくらいなら最初からするなよ」

「ていうか、都合悪かったら泣くとか卑怯すぎだろ」

「泣いてる暇があるなら、さっさと謝ってきな?」

ポピパ(思ったほか正論言い放ってる!!)

飛鳥(それでいて、何でこんなことしてんだろう…)

 

 男子生徒たちが正論をかましていて、ポピパと飛鳥が驚いていると、

 

「ちょ…そ、そこまで言う事ないでしょ!?」

「そうそう! 今その話してないし!」

「ハイ話をそらそうとするー!!!」

「友達ならそういうの止めるなり、しかるなりするもんじゃないの!?」

「それでも友達か!!」

「自分の罪から逃げるな!!」

飛鳥(どう突っ込んだらええねん!!!)

 

 状況があまりにもカオスになってきたので、飛鳥は心の中で突っ込んだ。

 

 そんな中だった。

 

「おい!!」

「!!」

 

 すると女子生徒の彼氏と後輩らしき女子生徒たちが現れた。

 

「た、たっくん!!」

「聞いたぞ。お前、オレの兄貴と乗り換えようとしたんだってな!!」

「ち、違うの!!」

「うるせぇ!! いいか。兄貴は他にも女作って妊娠させたんだ!」

「ええーっ!!?」

 

 衝撃の事実に皆が驚いた。髪型の話からまさかこんなことになるなんて思いもしなかった飛鳥とポピパ、そして男子生徒たちは驚きを隠せなかった。

 

「そ、そんな嘘よ!!」

「残念だったな。兄貴はその女と結婚させられることになったんだ。つまり、お前は捨てられるんだよ。兄貴にもオレにもな!」

「そ、そんな! 考え直してたっくん!」

「オレに近づくな!! この××が!! 生まれてきたことを後悔しろ!!」

(言い過ぎ!!!)

 

 ここでは公開できない差別用語を言い放つと、飛鳥達は困惑した。

 

「あ、それからもう一つありますよセンパイ」

「な、なによ…」

「センパイたち、強制退部になりますよ」

「私たちが密告しときましたー」

「!」

 

 部活の後輩たちが女子生徒に言い放った。

 

「先生は信じてくれて、ほかの先輩達も強制退部だそうです」

「今日までお世話になりました」

「もう部室に来ないでくださいね」

「なんだとお前ら!! 調子に乗りやがって!!」

 

 後輩たちの生意気な態度に女子生徒たちが激高すると、彼氏が激怒した。

 

「いい加減にしろ!! そういう態度が取れる立場か!!」

「うるさいわね!! あんたこそ松原さんの縦笛盗んだくせに偉そうなこと言ってんじゃないわよ!!」

「!!?」

 

 さらに衝撃の事実が発覚して、皆が驚いた。

 

「ちょ、お前それ今言うなよぉ!!」

有咲「少しは否定しろよ!!」

 

 彼氏の言葉に女性陣はドン引きした。

 

「か、花音ちゃんの縦笛だとぉ…!!?」

「ゆ、ゆるせーん!!」

「成敗してくれる!!」

「どんな味がした!! どんな味がしたんだぁ~!!!?」

 

 とまあ、とにかくカオスな状況になったので、飛鳥は超能力をこっそり使って、飛鳥とポピパがほかの生徒に気づかれないようにした。

 

飛鳥「皆さん、ここは退きましょう」

有咲「そ、そうだな…」

香澄「え!? 止めなくていいの!?」

飛鳥「もうここまで大きくなったら、止められませんよ」

有咲「分かった。お前の事は忘れねぇ…」

香澄「ちょ、私も行く~!!」

たえ「気づかれないようにそーっとそーっと…」

 

 飛鳥とポピパはその場を離れていった。

 

「だから…」

「おい」

「!!」

 

 すると一人の男性教諭が現れた。

 

「お前ら全員生徒指導室!!」

 

飛鳥(超能力使えて良かった~)

 

 

おしまい

 

 



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第253話「リサの手作り弁当!」

 

 

 それはある日の事だった…。

 

「はぁ…やっぱりリサちゃんは今日も可愛いなぁ…」

「オレたちみたいな陰キャにも気さくに声をかけてくれるし…」

 

 今日も今日とて、Roseliaのベース担当、今井リサは男子生徒たちにモテモテだった。まあ、リサだけでなくほかのバンドメンバーもモテているのだが…。

 

 カフェテリアで誰かを待っていると、飛鳥がやってきた。

 

リサ「あっ! 飛鳥くん!」

「!!」

 

 リサが飛鳥を待っていることを知り、男子生徒たちが衝撃を受けていた。

 

飛鳥「今井先輩。お待たせしました」

リサ「ううん。あたしも今来たばかりだから。それじゃ、行こっか」

 

 そう言って飛鳥とリサはその場を離れた。

 

「リ、リサちゃんと一丈字…何をするつもりだ!!?」

「もしかして付き合ってるのか!!?」

「ゆ、ゆるせーん!!!」

「こうなったらつけてやるぅ!!」

 

 と、男子生徒たちも飛鳥とリサの後をつけた。

 

飛鳥(…嗅ぎつかれてるな)

 

 飛鳥が察知して超能力で自身とリサの存在感を消した。

 

「あ、あれ!?」

「どこ行ったあいつ!!」

「くそ~!!!!」

 

************************

 

飛鳥「ありがとうございます。態々…」

リサ「ううん。いいのよ」

 

 リサが飛鳥に手作り弁当を作ってきたのだ。

 

リサ「ストーカーを追い払ってくれたお礼。本当は先輩のあたしが守らないといけなかったのに」

飛鳥「滅相もございません。こういう時は男子を頼ってください」

 

 リサのほかにも友希那もいた。

 

友希那「それにしても、随分慣れてたわね」

飛鳥「まあ、そうですね…」

 

 友希那の言葉に飛鳥が困惑していると、リサが苦笑いした。

 

リサ「ま、まあまあ! いいじゃない! 食べて食べて!」

 

 と、そのままランチになった。手作り弁当は玄米ご飯に、唐揚げや筑前煮などがあった和風弁当だった。

 

リサ「洋風の方がよかったかな?」

飛鳥「いえ、和風も好きなので問題はございませんよ」

友希那「此間ファミレスで和食食べてたものね…」

リサ「そういえば飛鳥くんって、洋食は食べないの?」

飛鳥「食べますよ、昼は大体パンなので」

リサ「そうだったの!!?」

飛鳥「朝は米を食べて、昼がパンっていうパターンが多いです」

 

 飛鳥がそう答えると、友希那とリサが驚いた。

 

リサ「パンって山吹ベーカリー?」

飛鳥「いえ、コンビニのパンです。私のマンションから山吹さんの家って結構距離あるんですよ…」

リサ「そ、そう…」

友希那「商店街よりコンビニの方が近いから、そっちの方が妥当よ」

 

 こうして飛鳥はリサの手料理を食べた。

 

リサ「おなか一杯になった?」

飛鳥「あ、はい。それはもう…」

 

***********************

 

 だが、問題はここからだった。

 

「一丈字てめぇー!!」

「リサちゃんの手料理食べやがって!!」

「ファンの暗黙のルールってもんを知らねーのか!!」

「座長だか何だか知らねぇがいい加減にしろー!!!」

 

 放課後、飛鳥は男子生徒たちに追いかけられていたが、足が速くて距離をつけられた。

 

「ちょ、足が速い…」

「ま、待てぇ…」

「オレ、体力には自信があったのに…」

「お願い、冗談抜きで待ってぇ…」

 

 男子生徒たちはすぐにばてていた。

 

リサ「……」

友希那「無様ね」

 

 リサたちが教室の廊下の窓から見つめていたが、リサは責任を感じていた。

 

***************

 

 ファミレス

 

あこ「リサ姉、気にする事ないよー」

飛鳥「そうですよ…」

 

 飛鳥は帰宅後、友希那に近くのファミレスに呼び出されて、Roseliaとこれからの作戦会議を行われていた。飛鳥が男子生徒たちに追いかけまわされた事に対して、リサは落ち込んでいた。

 

紗夜「全く、嫉妬も甚だしいです」

飛鳥「紗夜先輩。それだけRoseliaが有名になった証拠です」

紗夜「だけど、あなたが…」

飛鳥「私はまだ何とか出来ます」

リサ「飛鳥くん…」

 

 リサが申し訳なさそうに飛鳥が苦笑いした。

 

友希那「だけど、このままじゃらちが明かないわ」

飛鳥「そこで私に一つ考えがあるのですが…」

「?」

 

***************************::

 

 後日、

 

「おい!! リサちゃんの手作り弁当が店頭販売されるってよ!!」

「マジ!!?」

「一丈字がプロデュースしてるらしいぞ!!」

「でも行くっきゃない!!」

 

 そして特設会場。

 

あこ「Roseliaの今井リサのお手製弁当を本日限定販売でーす!!」

 

 制服に着替えたあこが呼び込みをしていた。そして特設の青いテントの中で、リサと燐子が調理、あこと紗夜が接客をしていた。友希那が掃除やら皿洗いという雑用をさせられていた。もちろん、食べ物を扱っているので皆髪を結んでる。

 

「ポ、ポニテ姿の友希那ちゃんと紗夜ちゃん…」

「レアじゃ…激レアじゃあ!!!」

「手作り弁当万歳!!」

「いや、Roseliaバンザーイ!!!」

 

 男子生徒たちはよくわからないテンションだった。そして限定販売とされていたリサの弁当はあっという間に完売した。

 

 リサの手料理の信頼もそうだったが、友希那と紗夜のレアなポニーテール姿、そして何よりも可愛い女の子たちが販売していることで男子生徒たちのハートをがっちりゲットして、大成功に終わった。

 

 まあ、実際は飛鳥が弦巻財閥に協力を求め、学校に販売の申請をしたという縁の下の力持ちもあったのだが…。

 

「うめぇ…」

「おい! オレにもたべさせろよ! 買えなかったんだよぉ!!」

「だったらお前今度パフェおごれよ!!」

「もちろんだとも!!」

 

***************************

 

リサ「いやー。大変だった!」

 

 販売が終わり、リサが一息ついた。

 

友希那「それにしてもよかったの? リサ」

リサ「うん。少しでも飛鳥くんの負担になるならね」

 

 友希那の言葉にリサが苦笑いした。そう、あの時ファミレスで飛鳥がリサの手作り弁当を店頭販売をして男子生徒たちに恩を売るというものだった。難色を示した友希那と紗夜だったが、リサ本人が快諾し、あこも協力も乗って出たため、どうせなら全員でという話になった。

 

紗夜「それにしても、接客業がこんなに大変だと思わなかったわ」

リサ「あははは…そうだねー」

燐子「本当に尊敬しかないです…」

 

 自分から裏方に徹した燐子が言い放った。

 

リサ「そういやこのバイト代は…」

友希那「全部あなたのものにしていいわよ。売り上げを見たら全員で分けてもはしたお金にしかならないわ」

リサ「う…でも…」

友希那「もしくはリサの奢りでワンランク上のファミレスに行くとか」

リサ「しょ、しょうがないなー…。それじゃ、飛鳥くんも誘おっか」

 

 と、こうして話は一件落着になるかと思われたが…。

 

**************:

 

 リサの料理が上手だという事が広まったバンドリ学園。すっかり注目はRoseliaに行ってしまった。

 

「やっぱりリサちゃんの手作り料理は最高だったな!」

「かわいい女の子があんな料理を作れるんだから、もういう事ないよな!」

「もしも総選挙があったら、オレリサちゃんに投票する!」

「オレもオレも」

 

 そして極めつけは学園新聞。リサがでっかく1面に乗っているのに対し、Afterglowがとても小さく載っており、それを見ていた蘭が激怒した。

 

 で、結局どうなったかっていうと…。

 

蘭「一丈字どこ?」

「は、果てない暗闇から飛び出していったよ…」

 

 今度は蘭に追われる日々を過ごすことになった飛鳥であった。

 

 

おしまい

 



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第254話「男はつらいよ ~パスパレ編~」

 

 

まりな「バンドリ学園! 質疑応答のコーナー!」

 

 とある特設スタジオ。ステージには飛鳥とまりな。観客席にはバンドガールズと、モブたちがいた。飛鳥はなんか嫌な予感がしていた。

 

まりな「今回のゲストは、この物語の主人公にして座長、一丈字飛鳥くんでーす!」

飛鳥「どーもー。おかげさまで250回突破と新チャンネル開設でーす」

 

 飛鳥がにこやかにネガティブな発言をした。

 

まりな「ちょっと後ろ向きすぎるわよ?」

飛鳥「すみません。相変わらず嫌な予感がしまして」

まりな「そんな事ないわよー。それじゃ早速行くわね。今回、飛鳥くんに質問するテーマはこちら!」

 

 パネルにある事が表示された。

 

『バンドガールズとラッキースケベになった時、許してくれそうなのは?』

 

飛鳥「教えてください。逆に許してくれる人は誰なんですか?」

 

 飛鳥がツッコミを入れた。

 

まりな「いや、飛鳥くんのイメージで許してくれそうな子を答えて頂戴」

飛鳥「男子生徒のみなさーん。ビッグチャンス到来ですよー」

 

 まりなの言葉に飛鳥が皮肉気味に突っ込むと、男子生徒達が大歓声を上げた。

 

「お前の天下も今度こそ終わりだ!!」

「いや、もうマジで終わってください!!」

「落ち着くんだ。落ち着かないとどんでん返し来るぞ」

「ああ…」

 

 良い感じに盛り上げていたが、バンドガールズは何も言わなかった。

 

千聖「…なんなのかしら、この不毛な時間」

モカ「それを言ったらバラエティ番組は成り立ちませんよ~」

こころ「それはそうと、ラッキースケベってなにかしら?」

 

**********************

 

飛鳥「言葉を選ばないといけませんねー。本人達もいますし」

 飛鳥が腕を組んだ。

 

まりな「それじゃシンキングタイム! まずは、パステルパレットから行きましょうか!」

飛鳥「あー、これは全員アウトですね」

「!?」

 

 飛鳥の発言に皆が驚いた。

 

日菜「アイドルだから?」

飛鳥「そうですね。事務所にも消されそう…」

まりな「まあ、事務所とか立場は関係なしに、その人となりを見て頂戴」

 

【丸山彩】

 

飛鳥「謝れば1回目は許してくれそうですね」

まりな「例えばどんな感じ?」

飛鳥「恥ずかしがりながら怒る感じですかね」

「あー…」

 

 飛鳥の言葉に皆が納得した。

 

飛鳥「少なくとも、ガーって怒鳴るイメージはありませんね」

まりな「そうね…」

 

彩「ほ、本当は恥ずかしいけど、怒鳴ったりするとイメージ悪くなるし…」

日菜「でも実際飛鳥くんにパンツとか見られたらどうするの? お芝居してみて!」

彩「えっ…」

 

 日菜の無茶ぶりに彩が驚くも、やってみることにした。

 

日菜「飛鳥くんも来て!」

飛鳥「えっ…」

 

 と、ドラマ仕立てで実演することに。

 

日菜「はい、そこで風が強く吹いて彩ちゃんのスカートがめくれて、パンツが見えて、飛鳥くんは正面を向いて、ばっちり見る」

彩「きゃああっ!!」

飛鳥「……」

 

 驚く彩の顔をじっと見つめる飛鳥。すると彩はスカートを抑えるしぐさをする。

 

彩「み、見た?」

飛鳥「何をですか?」

彩「パ、パンツ…」

飛鳥「すみません。丸山先輩の驚いている顔を見てて、見ておりませんでした」

彩「も、もー!! いじわる~!!!/////」

 

 飛鳥の言葉に彩が憤慨したが、本来の趣旨とは違っていた。

 

(これはこれで…良し☆)

(やっぱ一丈字死ね☆)

 

【氷川日菜】

 

飛鳥「日菜先輩はすごくからかってきそうですね」

まりな「何となくイメージできるわね…」

 

 と、皆が日菜が飛鳥をからかうシーンを想像した。

 

「めちゃくちゃご褒美やんけ!!」

「一丈字!! 一生のお願いだからそこ代われ!!」

「せめてからかわれるシーンだけでも!!」

パレオ「なんて羨ましいことを!!」

飛鳥「鳰原さん何してんの」

 

 なぜかパレオが観客席にいて、飛鳥が突っ込みを入れた。

 

パレオ「あ、今回パスパレメイン回だと聞いて、やってきました!」

飛鳥「そ、そうですか…」

チュチュ「コラー!! パレオ何やってんの!!」

 

**********************

 

【白鷺千聖】

 

飛鳥「恥ずかしがるってイメージはないですね…」

まりな「じゃあ、どんな感じ?」

飛鳥「どんな感じでしょうかね…」

日菜「飛鳥くん。そこは正直に脅してきそうとか言っていいんだよ?」

千聖「よくないわよ?」

 

 日菜の言葉に千聖が黒い笑みで突っ込んだ。

 

飛鳥「まあ、脅すとまではいきませんけど、分かるわよね? という顔はしてきそうですね」

千聖「それ脅してきそうじゃなくて、脅してるじゃないのよ!!」

日菜「千聖ちゃん。突っ込みスキル上がったね。コメディいけるんじゃない?」

千聖「…できれば正統派で売れたいんだけど」

日菜「思いっきり変顔とかするの」

千聖「日菜ちゃん? もしかして喧嘩売ってる? 喧嘩売ってるわよね」

紗夜「本当に申し訳ございません!!」

 

 千聖の言葉に紗夜が平謝りした。

 

【大和麻弥】

 

飛鳥「大和先輩は怒るイメージあんまりありませんね…」

まりな「まあ、言われてみればそうね…」

 

麻弥「いやー…ジブン、そんなに色気もないので」

千聖「それは絶対ないわ」

麻弥「え」

 

「そうだ!!」

「ぶっちゃけ麻弥ちゃんのパンツ、欲しい!!」

「あ、パンツって言ってもズボンじゃなくて下着の方な!!」

「いくらで買えますか!?」

 

 と、セクハラまがいの事を言ってきた。

 

飛鳥「正直あの方たちにいつ嵌められるか、怯えて生きてます」

まりな「ま、まあ…若気の至りで許されればいいわね…」

パレオ「そんな事パレオが絶対にさせません。万死に値します」

(怖っ!!!)

 

麻弥「……」

千聖「…これを機に、もう少し自信を持ちなさい」

 

********************

 

【若宮イヴ】

 

飛鳥「切腹させられそうですね」

イヴ「そ、そんな事しません!!」

 

飛鳥「まあ、これで以上ですかね」

イヴ「ええっ!!? 私これだけですか!!?」

飛鳥「若宮さん。これがオチというものですよ…。ジャパニーズ・トークの一種です」

イヴ「オチ…」

 

 そして飛鳥はカメラの方を見た。

 

飛鳥「今日はここまで、また次回お会いしましょう」

日菜「じゃあイヴちゃん。もし実際に飛鳥くんにパンツを見られたらどうする?」

イヴ「そ、そんなの…恥ずかしいです…/////」

 

 イヴが頬を赤く染めて恥ずかしがると、パスパレファンが昇天した。

 

飛鳥「また次回!!」

 

おしまい

 



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第256話「DAN DAN 心壊れてく」

第256話

 

 それはある日の事だった…。

 

巴「…ん?」

 

 巴が一人で廊下を歩いていると、飛鳥が男子生徒たちに絡まれていた。

 

巴(あいつ、まさか…!!)

 

 巴が割って入ろうとしたその時だった。

 

「おい、てめぇ白状しろよ!!」

飛鳥「何をですか」

 

 男子生徒の言葉に飛鳥が返答をすると、巴が足を止めた。

 

巴(いったいどうしたんだ…!?)

 

 すると男子生徒の一人がこんなことを言った。

 

「巴ちゃん、派手な下着はいてんだろ!?」

飛鳥「知ってるわけないじゃないですか…」

 

 巴の言葉に飛鳥がげんなりしていると、巴が困惑した。

 

巴(アタシ…そんな風に思われてたんだ…)

 

 巴は割とショックを受けていた。

 

「もしかしてふんどしか!?」

「いつもソイヤ言ってるもんな!!」

「ふんどしは赤か!! 白か!? できれば白がいいです!!」

「どうなんだ一丈字! 答えろ!!」

飛鳥「あの、私の話聞いてました?」

 

 飛鳥はもう完全に投げやりになっていた。

 

「もしかして妹のあこちゃんも…」

「姉妹そろってふんどし!! なんてエロいんだ!!」

「あの子なんか中二っぽいから、黒のふんどし!?」

「エロい!!」

 

*******************:

 

 とあるラーメン屋

 

飛鳥「……」

巴「……」

 

 飛鳥と巴は二人でラーメン屋にいた。

 

巴「…なんか、ごめんな」

飛鳥「いえ、滅相もございません…」

 

 飛鳥は完全にやつれていた。というのも、連日男子生徒たちから質問攻めをされていたが、質問の内容があまりにも気色悪かったからだ。

 

巴「その、あたし今日おごるから…」

飛鳥「あ、大丈夫です。あれ頼むので…」

巴「え…」

 

 飛鳥が指さした先は、このメニューでも一番ボリュームが高い超特盛ラーメンだった。

 

飛鳥「明日も体力勝負なので…」

巴「……」

 

**********************

 

 また別の日。

 

つぐみ「ふう…係りの仕事遅くなっちゃった」

 

 つぐみが一人で帰ろうとすると、飛鳥がまたつぐみに絡まれていた。

 

つぐみ「!?」

 

 つぐみが隠れて様子を見ていた。

 

「今日こそは教えてもらうぞ!!」

飛鳥「セクハラ関連はNGで」

「つぐみちゃんのパンツはやっぱり白なのか!?」

飛鳥「ああ、やっぱり誰も話を聞いてくれない」

 

 自身のセクハラ話を聞いて、つぐみは固まった。

 

「もしかして、派手な下着をしているのか!? ガーターベルト…」

「清純そうに見えてそんなギャップが!?」

「でもやっぱり白であってほしい!!」

「どうなんだ一丈字!!」

 

*******************

 

 羽沢珈琲店

 

飛鳥「……」

つぐみ「……」

 

 気まずい空気が流れた。

 

つぐみ「あの…一丈字くん。これ、サービス…」

飛鳥「あ、ちゃんとお金払うので…」

つぐみ「ううん。変な事言わないでくれてありがとう」

 

 飛鳥がサービスのブラックコーヒーを飲んだ。

 

飛鳥「ああ…美味しいなぁ。コーヒー…」

つぐみ(目が死んでる!!!)

飛鳥「そうだ。晩御飯もここで済ませよう。いいですか?」

つぐみ「あ、う、うん…。注文どうぞ…」

飛鳥「えーと…あれとこれとそれとどれと…」

つぐみ「一丈字くん!! しっかりしてー!!!」

 

*********************

 

 そしてまたある日の事。りみが廊下を歩いていると、飛鳥がまた男子生徒たちに絡まれていた。

 

「おい、一丈字…」

飛鳥「大体見当つきますけど、何でしょうか」

 

 すると男子生徒たちはこんなことを言った。

 

「教えろよ!! 牛込先輩のブラジャーの柄!!」

りみ(お、おねーちゃんの方!!? 私じゃなくて!!?)

 

 自分ではなく、姉の方にショックを受けるりみだった。

 

「どんな柄をしているんだ!!」

飛鳥「…その前に牛込先輩とお話したこと自体あまりないのですが」

「嘘つけ!! 3年の教室でお前の話結構してたぞ!!」

飛鳥「えっ!!?」

「しかも妹とくっついたらどうなるかみたいな話もしてたぞ!!」

 

りみ(ええええっ!!!?////////)

 

「お前、もしかして姉と妹両方狙ってるつもりじゃ…」

「けしからん!! 実にけしからん!!」

「宇田川姉妹や氷川姉妹との姉妹丼もコンプリートするつもりじゃないだろうな!!?」

「この罰当たり野郎!! 日本から出ていけ!!」

 

*****************

 

 河川敷

 

飛鳥「やりすぎやろ…」

 

 飛鳥は河川敷で黄昏ていると、こっそり見ていたりみがアワアワと困惑していた。

 

ゆり「何してんの?」

りみ「あ、お、おねーちゃん…あっ!!」

 

 後ろから姉が現れてりみが話しかけた瞬間、飛鳥が消えた。

 

*********************

 

 そしてある日の事。イヴが歩いていると、またしても飛鳥が男子生徒たちに絡まれていたが、飛鳥はげっそりしていた。だが、そんなに飛鳥に容赦なく男子生徒たちが口撃してきた。

 

イヴ(さ、最近アスカさんが男子生徒の皆さんにいじめられているという声を聴きました! 止めないと!!)

 

「おい、一丈字…」

イヴ「!?」

 

 男子生徒が飛鳥に声をかけようとしたその時だった。

 

「イヴちゃんのパンツのにおいを嗅いだ感想を教えろぉ!!」

飛鳥「黄色い救急車呼びますね」

「逃げるな一丈字!!」

「それからわきのにおいも嗅いだんだろぉ!!?」

 

 なんという事だろう。完全に言いがかりをつけられていた。しかも自分に対してそういうセクハラまがいの発言をしていた為、イヴは退いていた。

 

イヴ(い、いけません!! ここで退いてしまっては、ブシドーをモットーとしている私の信条が崩れてしまいます!!)

 

 イヴは飛鳥を助けようとしたが、

 

「恥ずかしがることないってー」

イヴ「!」

 

 男子生徒は完全に妄想にふけっていた。

 

「それで、イヴちゃんの全裸も見たんだろ?」

「しかもあそこも見てー」

「毛も見たんだろ? やっぱり髪の色と同じだったか?」

「それで股間に顔をうずめて…」

 

 イヴは完全に血の気が引いて足が震えて動けなくなった。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥はもう言葉を失っていた。

 

飛鳥「話変わりますけど」

「あああん!!?」

飛鳥「市ヶ谷さんと奥沢さんにお伝えください」

イヴ「!!?」

 

 飛鳥がふっと笑った。

 

飛鳥「次回から宜しくお願いしますと」

 

 飛鳥がそういったその時、有咲と美咲が慌てて駆け込んで、涙目で飛鳥に迫った。

 

有咲「ふざけんなぁ!!!」

美咲「冗談だよね? 冗談だよね一丈字くん。冗談だと言ってぇ!!!」

 

 泣き叫ぶ有咲に対し、美咲は滝のような汗を流して飛鳥に迫っていた。

 

イヴ(あわわわわわ…)

 

 イヴは完全に慌てていた。

 

飛鳥「冗談ですよー」

有咲「アレだよな。完全にお前疲れてんだよ。しっかり休め!!」

美咲「そ、そうそう! 今度さ、慰安旅行とかしようよ!」

「い、慰安旅行ォオオオ!!?」

 

 美咲の言葉に男子生徒たちが興奮した。

 

「お前あれかぁ!?」

「主役の権限悪用して、女湯覗きまくってヒロインたちを食い散らかして…」

有咲「避難するぞ!!」

美咲「もういや!! どうして男ってこんなのばっかりなの!!」

 

 有咲と美咲が飛鳥を避難させた。

 

イヴ(ア、アスカさん…。こうやって今まで私たちの事を守ってくれたのですね…。まさにニンジャです!! シノビたえるココロ!!)

 

 そして一番大切なのは、諦めねェど根性。だが、飛鳥はもう限界寸前だった。

 

美咲「一丈字くんしっかりしてー!!!」

有咲「ただでさえ香澄に手を焼いてんのに、あんな変態達の相手するのやだぁ~!!!」

 

 他人は変えられない。変えられるのは自分だという言葉があるが、正直他人に変わってほしいと思う飛鳥達なのだった。

 

 

おしまい

 

 

 



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第257話「飛鳥とモカはいつもここから」

 

 

 今日も今日とて、笑ってはいけないバンドガールズ。

 

有咲「って!! 牛乳含まない奴、何とかならねーのかよ!!」

香澄「今日こそ笑わないようにするぞー」

 

 ここはCiRCLEのスタジオ。バンドガールズたちはいつものように牛乳を口に含んでいて、男子生徒たちが香澄たちの前にしゃがんで、口を大きく開けていた。気色悪すぎる。

 

「くぅううううう!!! また落ちたぁ!!」

「こうすることでしか、あの子とお近づきになれないなんてぇ!!」

「にくい! 一丈字がにくい!!」

「でも牛乳浴びられたい…」

 

 CiRCLEの外では抽選から外れた男子生徒たちがわんさかいた。正直嬉しくない客寄せである。

 

まりな「えー。という訳で今回は飛鳥くんとモカちゃんがお笑いライブをします! どうぞ!!」

 

 すると飛鳥とモカがスーツ姿で出てきた。そしてモカがフリップを持ってきて、準備するとカノンが流れた。

 

飛鳥「悲しいときー!」

モカ「悲しいとき~」

 

 飛鳥とモカのテンションが違いすぎて、噴き出しそうになったが、何とか耐えた。

 

飛鳥「誰かが死んだときー」

モカ「悲しいときー。誰かが死んだとき―」

 

 するとフリップがめくられていたが、そこには飛鳥の遺影が描かれていた。バンドガールズたちは、誰が描いたんだろうと疑問に思っていた。

 

飛鳥「悲しいときー」

モカ「悲しいとき~」

飛鳥「妹さんに割と本気で怒られてる戸山さんを見た時~」

モカ「悲しいとき~。妹ちゃんに割と本気で怒られてる香澄を見た時~」

 

 モカがフリップをめくった。

 

『妹・明日香がガミガミ怒っていて、涙目でしゅんとしながらうつむいている香澄。そして飛鳥が遠巻きに見ていた図』

 

 香澄は盛大に噴き出した。すると香澄担当の男子生徒が必死に香澄が吹いた牛乳を浴びようとして体を動かすと、ほかのバンドガールが必死に耐えていた。

 

飛鳥「悲しいとき~」

モカ「悲しいとき~」

 

飛鳥「ペットショップで亀に対してやたら対抗意識を燃やしている花園さんを見た時~」

モカ「悲しいとき~。ペットショップで亀に対してやたら対抗意識を燃やしているおたえを見た時~」

 

 モカがフリップをめくった。

 

『物凄い顔で亀を睨みつけながら、ペットのウサギたちを考えているたえと、それを困った様子で見つめている飛鳥の図』

 

たえ「!!」

 

 たえはちょっと苦しそうにした。

 

飛鳥「悲しいとき~」

モカ「悲しいとき~」

 

飛鳥「購買部で先にチョココロネを買ったであろうお姉さんに泣きながら、譲ってほしいと交渉している牛込さんを見た時~」

モカ「悲しいとき~。購買部で先にチョココロネを買ったであろうお姉さんに泣きながら、譲ってほしいと交渉しているりみりんを見た時~」

 

 モカがフリップをめくった。

 

『涙目で姉・ゆりにチョココロネを譲るようにせがむりみと、遠くから困惑している飛鳥の図』

 

 りみは噴出しそうになっていたが、何とか耐えた。

 

飛鳥「悲しいとき~」

モカ「悲しいとき~」

 

飛鳥「で、お姉さんはお姉さんでちょっと大人げなかった時~」

モカ「悲しいとき~。お姉さんはお姉さんでちょっと大人げなかった時~」

 

 モカがフリップをめくると、

 

『チョココロネを譲る代わりに今週自分が担当していた家事を全部代わりにやる事を、悪い笑みを浮かべながら言い放つ姉・ゆりの図』

 

 りみは下を向いて噴き出したが、机からこぼれた牛乳を男子生徒が吸っていた。沙綾と有咲は笑う事よりも、男子生徒の気持ち悪さに耐えていた。

 

飛鳥「悲しいとき~」

モカ「悲しいとき~」

 

飛鳥「山吹さんが弟くんに対して若干大人げないことをしている事を知った時~」

モカ「悲しいとき~。さーやが弟くんに対して若干大人げないことをしていることを知った時~」

 

 モカがフリップをめくった。

 

『じゃんけんで自分が勝ったのに、沙綾が「さ、3回勝負!」と必死に言い張ってる図』

 

 沙綾は噴き出した。

 

飛鳥「悲しいとき~」

モカ「悲しいとき~」

 

飛鳥「このネタを作ってる最中に、やまぶきベーカリーに行って、弟くんが教えてくれた時―」

モカ「悲しいときー。このネタを作ってる最中に、やまぶきベーカリーに行って、弟くんが教えてくれた時―」

 

 モカがフリップをめくった。

 

『上には三回勝負と必死になっている沙綾の回想と、それを想像している飛鳥、モカ、そして弟の純の図』

 

沙綾「アイツ…!!!」

有咲(って、事は次はあたしか!!?)

 

 沙綾が怒りに震えていた。

 

飛鳥「悲しいとき~」

モカ「悲しいとき~」

 

飛鳥「美竹さんと湊先輩がしょうもないことで言い争っているのを見た時―」

モカ「悲しいとき~。蘭と湊先輩がしょうもないことで言い争っているのを見た時―」

 

 モカがフリップをめくった。

 

『どっちが朝早く起きたかで、割と本気の喧嘩腰で言い争っている蘭と友希那の図』

 

 蘭とリサが噴き出した。

 

飛鳥「悲しいとき~」

モカ「悲しいとき~」

 

飛鳥「少なくとも美竹さんが明らかに嘘をついてた時~」

モカ「悲しいとき~少なくとも美竹さんが明らかに嘘をついてた時~」

 

 モカがフリップをめくった。

 

『モカが本当に起きた時刻を心の中で突っ込みを入れていていて、LINEに「今起きた」という蘭のメッセージ付きだった』

 

 ひまり・巴・つぐみが噴き出した。

 

飛鳥「かなしいとき~」

モカ「かなしいとき~」

 

飛鳥「あからさまに変装がバレバレの丸山先輩を見た時~」

モカ「悲しいとき~。あからさまに変装がバレバレの彩さんを見た時~」

 

 モカがフリップをめくると、ファッションセンスがよろしくない彩の図が描かれていて、日菜と千聖が噴き出した。

 

日菜「あっはははははははははははは!!!!」

 

 日菜がめちゃくちゃ笑うので、彩が衝撃を受けた顔をしていた。

 

飛鳥「悲しいとき~」

モカ「悲しいとき~」

 

飛鳥「白鷺先輩のネタを考えたけど、どうしても思いつかなかった時~」

モカ「悲しいとき~。白鷺先輩のネタを考えたけど、どうしても思いつかなかった時~」

 

 モカがフリップをめくった。

 

『焼肉屋で怪しげな取引をしている飛鳥、モカ、千聖の図』

 

 彩、麻弥、イヴが噴き出した。

 

飛鳥「悲しいとき~」

モカ「悲しいとき~」

 

飛鳥「夕日が沈んだ時~」

モカ「夕日が沈んだ時~」

 

飛鳥・モカ「どうも、ありがとうございましたー」

 

**********************

 

モカ「蘭許して~」

飛鳥「……!!」

 

 蘭に追いかけまわされる飛鳥とモカだった。

 

 

おしまい

 



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第258話「新しい風向かってSmile Again!」

 

 

 ある日の休日。飛鳥は麻弥に呼び出されていた為、ショッピングモールのカフェに来ていた。飛鳥としてはアイドルなんだし、二人きりになるのまずいんじゃないかと言ったが、麻弥がどうしても二人で話をしたいという事なので、ショッピングモールのカフェにやってきていた。ちなみに相手が芸能人なので、男だという事がばれないように若干女性よりの変装をしていた。

 

飛鳥「えーと…確かこの店だったな」

 

 飛鳥が店の中に入ると、

 

「おーい! こっちでーす!」

 

 麻弥が手を振って飛鳥に教えていた。麻弥は帽子にサングラスをかけていかにも芸能人という感じの格好をしていた。まあ、実際はあまりにもファッションに無頓着だったので、千聖から指導が入ってこのような格好になったのは言うまでもなかった。

 

**************************

 

麻弥「いやあ、わざわざ来ていただいてありがとうございます」

飛鳥「いえ…」

 

 飛鳥が席に着くと、麻弥と向かい合うように席に座ると、飛鳥は超能力で自身と麻弥の正体に気づかれないように細工をした。

 

飛鳥「それで、ご用件というのは何でしょうか」

麻弥「その前に何か頼みましょう」

飛鳥「それもそうですね…」

麻弥「あ、今日はジブンが持ちますよ」

飛鳥「そういう訳にはございませんよ」

麻弥「いいですから。ジブンが呼び出したんですから、お願いします」

飛鳥「そ、そうですか…?」

 

 麻弥の言葉に飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「じゃあこの一番安い奴で」

麻弥「それじゃあジブンはこれにしましょうかね」

 

 麻弥が2人用のメニューを頼んでいた。

 

飛鳥「…結構食べるんですね」

麻弥「まあ、そうですね」

飛鳥(もしかして…オレに気を遣ってるのかな)

 

 だが、飛鳥はこれ以上何も言わないことにし、そのまま注文することにした。

 

飛鳥「さて、ご用件は何でしょうか」

麻弥「そうですね。料理が来る間にお話ししましょう。実は…」

 

 麻弥が飛鳥に相談を持ち掛けた。

 

麻弥「実はうちの事務所の機材で、これだけ壊れてるのですが、一丈字さん、分かりますかね…」

飛鳥「実物を見ないとわかりませんが、そうですね…。これは…」

 

 飛鳥が機械の修正点を、麻弥が持ってきた資料にペンで書き込みを入れた。淡々と作業をこなす姿に麻弥は驚いていた。

 

「お待たせしましたー」

飛鳥「ああ、ありがとうございます」

 

 店員から頼んでいたメニューを受け取ると、飛鳥は凛とした表情で返事した。

 

麻弥(な、なんかまるで別人みたいっす…)

 

 いつもと違う飛鳥の姿に麻弥が驚いていた。

 

飛鳥「頼んでいたものも来ましたし、休憩しましょうか」

麻弥「そ、そうっすね!」

 

 そう言って飛鳥は一番安いコーヒーを飲んでいて、麻弥はアイスティーを飲んでいた。

 

麻弥「あ、よかったら一丈字さんもこのケーキセット、つまんでください」

飛鳥「あ、はい。ありがとうございます…」

 

 店おすすめのケーキ6種セットを進められた飛鳥は素直に返事した。

 

 そしてケーキもそこそこつまみながら、機材の話を続ける。

 

飛鳥「大した損傷はありませんが、修理はプロの方に行っていただいた方が良いですね」

麻弥「や、やっぱりそうでしたか…。ありがとうございます」

飛鳥「いえいえ」

 

 すると、飛鳥が困った様子を見せた。

 

飛鳥「それにしても…なぜ私にこのような相談を?」

麻弥「すみません…。実は以前、一丈字さんが工学の実習をしているのを見てまして…」

 

***********************

 

 ことの顛末はこうだ。教室へ移動中だった麻弥は偶然、工学室を見学していたが…。

 

飛鳥「……」

 

 慣れた手つきで課題の作品を作り上げている飛鳥の姿があった。周りの生徒は飛鳥の手つきとスピードを見て驚いている。

 

麻弥(えっ!!? 一丈字さん機械作るの得意だったの!!?)

 

 そして暫くして作り終えると、飛鳥は何回も見直しをしていて、数回見直した後、その姿を見かねた先生がやってきて、

 

「一丈字くん…。もしかして終わったのかい?」

飛鳥「あ、はい…」

「ちょっと見せなさい」

 

 教師が飛鳥の作品を10秒くらい見て、飛鳥の方を見た。

 

「君はこういうの得意だったりするのかね?」

飛鳥「分かりません」

「いや、私が見る限り君めちゃくちゃ得意だよね。何年か教師やってきたけど、あっさり終えたの君と2年生の氷川日菜さんくらいだよ」

飛鳥「ああ、そうなんですか…?」

 

 飛鳥は困惑していた。

 

麻弥(や、やっぱり日菜さんと同じタイプだったんですね…!! 一丈字さん…!!)

 

 そんなこんなで飛鳥に興味を持った麻弥は、この話を持ち掛けたという訳だった

 

 

*********************

 

飛鳥(…見られてたか)

 

 呼び出された本当の理由がわかり、飛鳥は正体がばれないか不安だった。

 

麻弥「それで、この図面とか分かるかなーと思いましたが、予想通りでした…。こういうのに興味が合ったりするんですか?」

飛鳥「中学の時も実習であったので…」

麻弥「いや、そのレベルをはるかに超えてますよ」

飛鳥「自分ではそういうの分かりませんねぇ…」

 

 と、そのまま談笑していた。

 

******************

 

 ある日の事。事務所で機材の修復作業が行われていた。

 

千聖「麻弥ちゃん。上手くいったわね」

麻弥「ええ。一丈字さんにも相談に乗ってもらったんすよ」

千聖「一丈字くんに?」

 

 飛鳥の名前を聞いて千聖が驚いた。

 

麻弥「いやあ、ジブンの予想通り、なかなか見る目がありましたねぇ」

千聖「……」

 

********************

 

 その夜、千聖は飛鳥に電話をかけた。

 

千聖「…麻弥ちゃんに相談を持ち掛けられたって本当なの?」

飛鳥「申し訳ございません。どうしても直接話がしたいとあったので…」

千聖「気を付けてね。異性と二人きりでお茶してるなんて知られたら…」

飛鳥「ええ。例の力を使ってマスコミにリークされないように最善は尽くしました」

 

 飛鳥が真面目な顔をしたが、千聖は考えていた。

 

千聖「…そういや、麻弥ちゃんから聞いたわ。あなた、機械も強いのね」

飛鳥「普通ですよ」

 

 千聖の言葉に飛鳥は平然と言い返した。それに対して千聖は更に言葉を続ける。

 

千聖「どこかで習ったの?」

飛鳥「……」

 

 千聖の言葉に飛鳥が笑みを浮かべた。

 

飛鳥「ええ。遠い昔に」

千聖「遠い昔?」

飛鳥「アメリカに留学してた時です。理工学に興味があったのでそこでがっつり」

千聖「……」

 

 飛鳥の言葉に千聖が口角を下げた。

 

千聖「…本当にすごいわね。あなた」

飛鳥「ありがとうございます。ですが、千聖さんの方が凄いですよ」

 

 千聖がほめたので、飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「それはそうとどうされたんです? いつもの千聖さんらしくないですよ」

千聖「そ、そんな事ないわよ」

 

 電話の向こうで飛鳥が笑っていたのがわかったのか、千聖は少し驚いたように返事した。

 

飛鳥「ご心配は不要ですよ」

千聖「!」

飛鳥「これでも大分マシになった方なので」

千聖「一丈字くん…」

飛鳥「千聖さんはこれまで通りでお願いします。寧ろこちらもその方が動きやすいので」

 

 こうして、飛鳥は何とか千聖を抑えることができた。

 

*********************

 

 翌日、何とか麻弥と密会していた事はバレずに済んだが…。

 

「麻弥ちゃん!! 今度オレと喫茶店でデートしよう!?」

「貴様には100年早い!! オレとオレと!!」

「オレ、ちょっと機械には詳しいんだよ!!?」

「僕たちの天使(エンジェル)に手を出すなぁ~!!!」

 

 麻弥は男子生徒たちに言い寄られて困惑していた。そしてそれを飛鳥が苦笑いしていた見つめた。

 

飛鳥(まあ、平和だからああいう事が出来るんだよな。大和先輩には申し訳ないですけど)

 

 すると、麻弥が飛鳥に気づいて、飛鳥に走ってきた。

 

麻弥「ああっ!! い、一丈字さん!! 助けてください~っ!!」

飛鳥(助けてほしいのオレなんだけどね!!!)

「オラァアアアアアアアアアア一丈字ぃ!!」

「いい加減死ねやテメェ!!!」

「生きてることを謝れ!!」

 

 麻弥が飛鳥のところに走ってくると、男子生徒たちが追いかけてきたので、飛鳥が麻弥の手を取って走った。超能力を使って男子生徒たちの足を遅くしたり、麻弥の足を速くする不法もあったが、手を取って逃げるという手が一番最初に頭に思い浮かんで、飛鳥は男子生徒たちの足を遅くした。

 

飛鳥「大和先輩、走れますか!?」

麻弥「は、はいっす!!」

「待てぇ~~~~~~~~~~!!!!」

「オレも麻弥ちゃんと手をつなぎたいっ!!」

 

 こうして今日も飛鳥は変態達と戦っていた。ぶっちゃけ、もうバンドリ学園の名物になりつつある…。

 

 

 

千聖「……」

 

 それを教室から見つめていた千聖たち。

 

彩「ち、千聖ちゃん…」

千聖「あの男子生徒たち、全員死刑ね♪」

彩「千聖ちゃん!!?」

花音「ふぇえええええええ!!!?」

 

 にっこり微笑みながら言い放った千聖に彩と花音が青ざめた。

 

 

おしまい

 



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第265話「君がいたから」


イメージテーマソング
『君がいたから』
歌:FIELD OF VIEW


 

 

***************************

 

 一丈字飛鳥です。なんだかよく分かりませんが、気分がすこしだけスッキリしています。なんか頭の中で本気でキレてやりたい放題やったら、なんかスッキリしました。だけど、実際にやると本当に取り返しがつかないことになりますので、皆さんも気を付けましょう。

 

 さて、本日から心を改めて頑張っていきましょう。

 

「なんでだよぉおおおおおおおおおおお!!! オレの言ってることが信じられないのか!!? 日本の女子はオレのようなイケメンにあいさつ代わりにパンツを見せるんだよぉ!!」

イヴ「や、やめてください~!!!」

 

 …ああ、おっさんが若宮さんのスカートを必死にめくろうとしている。しばこ。そして語りは終わります。

 

**********************:

 

 バンドリ学園のとある会議室

 

イヴ「ひっく…ひっく…」

 

 Pastel*Palettesと飛鳥がいたが、イヴは泣きじゃくっていた。抵抗はしてみたが、格闘技をたしなんでいたのか、全く通用せず絶望しかなく、そんな状況で助かったので安心して涙が止まらなかった。

 

飛鳥「…以上が事の顛末です」

千聖「教えてくれてありがとう」

 

 千聖は微笑んだが、目は完全に笑ってなかった。

 

彩「迷惑行為は珍しくはないけど…」

日菜「遂に痴漢行為が出たか…」

麻弥「イヴさん…大丈夫ですか?」

イヴ「いいえ…私の精神が未熟なばかりに…」

飛鳥(大丈夫じゃないのはオレだよ。またオレのせいにされるんだろうなー)

 

 飛鳥がそう考えていると、

 

イヴ「アスカさん…」

飛鳥「なんです?」

イヴ「助けて頂いてありがとうございました」

飛鳥「いえ、お気になさらないでください」

 

 イヴがお礼を言うと、飛鳥が苦笑いした。

 

日菜「まさか家から出ていきなり痴漢現場に遭遇するなんて…」

飛鳥「まあ、そういう日もありますね」

彩「でも一丈字くん…。ほぼ毎日よくないことが起きてるんじゃない? うちのクラスの男子達にも嫌味を言われてるし…」

飛鳥「あー…嫌味を言われるのは昔からなので、その辺はあんまり気にしてないですね」

 

 彩の言葉に飛鳥はあっけらかんとしていた。

 

日菜「…言ってて悲しくならない?」

飛鳥「もう悲しくないです」

千聖「日菜ちゃん。あなたそういう事言うから紗夜ちゃんに…」

日菜「ごめんなさい」

麻弥(もう悲しくないって…)

 

飛鳥「そんな事よりも今は若宮さんですよ」

彩「そ、そっか」

飛鳥「教室には行けそうですか?」

イヴ「は、はい。本当にありがとうございました」

 

 こうして、イヴも元気を取り戻した。

 

イヴ「あ、そうだ。アスカさん」

飛鳥「なんです?」

イヴ「今度お礼をさせてください」

飛鳥「お礼ならもう受け取りましたよ」

イヴ「え? 私何も…」

 

飛鳥「『ありがとう』という一言です」

「!!」

 

 飛鳥の発言に皆が驚いた。

 

飛鳥「その言葉が一番聞きたかったんです」

イヴ「アスカさん…」

 

 飛鳥の言葉に彩・日菜・千聖・麻弥が笑みを浮かべた。

 

飛鳥「今後は先生方や黒服の人たちに見回りをしてもらって、ほかの人たちにも呼びかけをしましょうか」

千聖「そ、そうね…」

 

 こうして、6人だけの会話が終わった。

 

*********************

 

 そして、イヴが教室に帰ると香澄たちクラスメイトから心配された。ちなみに飛鳥から、自分が助けたという事は伏せるように言われたので、名前は言わないようにした。香澄たちは素直に納得した。

 

 

 Afterglowにも同じような話がされたが…。

 

モカ(絶対飛鳥くんだな~)

 

 モカは飛鳥が助けたものだと確信していた。

 昼休憩、イヴは飛鳥のところに行きたくてそわそわしていたが、行くとバレやすくなるから行かないように言われた。

 

 そんな時だった。

 

「若宮さん」

イヴ「!」

 

 男子生徒たちが近づいてきた。

 

「今日はオレたちと一緒に昼飯食べようよ」

「ストーカーが心配だからさ」

 

 などと、理由をつけて一緒にランチをしようとかこつけた。

 

美咲「あ、ごめん。先約があるから」

イヴ「ミサキさん!」

「な、なんだよ奥沢」

美咲「いこ。若宮さん」

イヴ「あ、はい…」

 

 美咲がイヴを連れ出すと、ほかの女子たちも続いた。

 

「く、くそう…!!」

「あいつ、邪魔ばっかりしやがって…!!」

 

 そして1組の女子たちで食事をしていたが、イヴは落ち着かなかった。というのも、自分を助けた飛鳥の姿がなかったからだ。ちゃんと飛鳥を食事をとっているか不安で仕方なかった。

 

香澄「イヴちゃんどうしたの?」

イヴ「な、何でもありません!」

 

 香澄に聞かれてイヴは気丈にふるまった。

 

有咲「やっぱり無理してるんじゃねぇか?」

沙綾「そうだよ」

イヴ「そんなことありませんよ」

 

 有咲と沙綾の言葉にイヴは苦笑いした。

 

こころ「なんていうのかしら」

「?」

 

 皆がこころを見た。

 

こころ「なんかどうしても言いたいことがあるけど、何かに遠慮して言えない感じよね」

イヴ「!!?」

 

たえ「もしかして誰かに脅されてるの!?」

香澄「そ、そうなの!!?」

イヴ「そ、そうじゃなくて…」

 

 イヴが困惑した。

 

イヴ「チサトさん達からはまだしゃべるなって言われてまして…」

香澄「そ、そうなんだ…」

こころ「千聖たちが知ってるなら安心ね!」

有咲・美咲「……」

 

 こころの言葉に美咲と有咲が唖然としていた。

 

*****************

 

有咲「…奥沢さん」

美咲「うん。怪しい」

 

 食事が終わり、美咲と有咲は二人だけで話をした。

 

美咲「大体こういうのって、すぐに報告して皆で共有するはずなのに、一部のメンバーだけにしか教えないってよっぽどだよね」

有咲「…で、一つだけ心当たりが」

美咲「心当たり? あっ…」

 

 すると二人はある男の姿が思い浮かんだ。一丈字飛鳥である。

 

有咲・美咲(あー…納得)

 

**************************

 

 その頃の飛鳥はというと、次の授業の予習をしていた。

 

飛鳥(まあ、これで良かったんだよな)

 

 毎日大変で報われないこともあるけど、それでも夢に向かって頑張る少女たちとその夢を守ることに喜びを感じていた。

 

 『ありがとう』といったイヴの顔を思い浮かべながら、飛鳥もまた次のステージへ歩き出した。

 

 

おしまい

 



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第272話「一丈字飛鳥の長い戦い(前編)」

 ある日の事、飛鳥が彩たちのバイト先のファーストフード店の近くを通った。だが、次の瞬間、目を疑う光景が起きていた。

 

 店の前から若い男性がうんざりした顔で出てきて、店の方を見た。

 

「SNSに上げてこの店潰してやるからな!!!」

「覚悟しろ!!!」

 

 そう言って男たちは怒りながら飛鳥とは違う方向の道を歩いて行った。

 

飛鳥(写真撮っとこう。なんかあっても怖いし)

 

 飛鳥が超能力で男たちの後姿をスマホの写真に記録した。

 

***********************

 

 そして気になったので飛鳥は店内の様子をこっそり見てみるが、店員たちはうんざりした表情を見せていた。見渡す限りほかの客はいない。

 

『はぁ…まだだよ…』

『丸山さん達には罪はないけど、こんな事が続くと…』

 

 店員たちの様子から、飛鳥はすべてを察した。このファーストフード店は彩、巴、ひまり、花音の4人がバイトしており、女性店員の顔面店員が高いと以前から有名になっていたのだ。その為、彼女たちがいる日は長蛇の列が並んだりするのだが…、

 

 そうでない日はお客さんが少なく、仮に来たとしても彩たちがいないと分かると注文せずに帰ったり、文句を言ったりするなど大変失礼極まりない行為をしていたのだ。

 

 ファーストフード店だけではなく、他のバンドガールズのバイト先でもそのような迷惑行為があったりするのだが、このファーストフード店は4人もいる為、一番ひどいのだった。

 

 飛鳥は注文することにして、レジの前に立った。接客をするのは地味目の若い女性だった。

 

「は、はい! ご、ご注文をどうぞ…」

飛鳥(震えてるな…。そして…)

 

 怖がっている少女と、顔には出さないが嫌そうにするほかの店員を見た飛鳥。

 

飛鳥「オレンジジュースのラージサイズと、ハンバーガー1つ。あとこのポテトのS1つ。店内で」

「は、はい! オレンジジュースのLサイズと…」

 

 店員が確認しようとするが、途中でやめてしまった。飛鳥はレジの電光掲示板を見て、注文したメニューが通ってるか確認した。

 

「お、お会計1200円です」

飛鳥「はい」

 

 飛鳥は何も言わずに千円札と100円の硬貨を2枚出した。

 

飛鳥「丁度で」

「は、はい。丁度お預かりします」

 

 そう言って店員は慌ててレジを操作をしていたが、手が震えていた。

 

飛鳥(可哀想に…。前の客によっぽど怖い目にあわされたんだな…)

 

「こ、こちらレシートです」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 飛鳥は安心させようとすると笑顔でお礼を言うと、店員達は驚いた。

 

「せ、席までお持ちしますので、お席でお待ちください」

飛鳥「承知しました」

 

 そう言って飛鳥が近くに座ると、店員たちは不思議そうに飛鳥を見ていた。

 

『なんだあの子…』

『今までのお客さんと違う…』

『確かバンドリ学園の子だよね…』

 

 そんな店員に対して、飛鳥は苦笑いしながらメニューが来るのを待った。

 

 数分後、妙齢の女性店員がメニューを持ってきた。

 

「お待たせしました。ハンバーガーとオレンジジュースとポテトです」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 飛鳥がメニューを受け取ったが、女性店員が飛鳥をじっと見つめた。

 

飛鳥「あ、決して怪しい者ではございませんよ」

「!!」

 

 飛鳥が苦笑いして答えると、女性店員は謝罪してその場を後にした。

 

飛鳥(相当気が張ってるなぁ…)

 

 この後も、飛鳥がずっと食事をしていたが、変わった様子は見られず、客が来ない状態だった。

 

飛鳥(本当に客が来ないなぁ…。まあ、近くにも似たような店があったからかな)

 

***********************:

 

 帰宅後、飛鳥はファーストフード店の事を思い出していた。

 

飛鳥「ちょっと気になるから、調べてみるか。トラブルになっても遅いし…」

 

 そう言って飛鳥は黒服たちに電話をかけて、巴たちのシフトを調べてもらうように指示を出した。

 

飛鳥「SNSは…あ、悪口が書き込まれてる」

 

*********************

 

 それから飛鳥は巴たちがバイトしていない日を狙って、そのハンバーガー店に来ることにした。SNSで悪口が書き込まれていたが、特に変わった様子もなく、店は普通に営業していた。書き込んだ人間の知名度が低すぎるのか、誰も相手にしてない状態だった。

 

「いらっしゃいませ…あっ」

 

 またしても若い女性店員が接客をすることになり、飛鳥の顔を見て驚いた。

 

飛鳥「ダイマックスポテト1つとオレンジジュースのラージサイズ」

「は、はい!」

 

 そう言って注文し、メニューを受け取っては店内で食べていた。

 

飛鳥(そういや宇田川さん達がいない日はあの若い女性店員さんがいるんだよな。毎回行くのはやめて、黒服さん達に監視を任せるか…)

 

 ちなみに黒服は1日ごとに交代して店を見張ったりしていたが…。

 

「あのおねーさん綺麗だな…」

「ああ…」

「尻がでかいな…」

「ああ。あれは安産型だ…」

「いい尻…」

「……」

 

 黒服だと怪しまれるので、私服で行くことにしたが、あまりにも男性客から性的な目で見られるため、巴たちがバイトしてる日は屈強の男性たちが行くことになった。

 

「キモい…」

「気持ちは分かるが…」

「仕事だ! 我慢するんだ!」

 

***********************

 

 そして時間が過ぎて、飛鳥は巴に呼び出され、屋上でAfterglowと話をしていた。

 

巴「聞いたんだけど、最近うちの店に来るそうじゃないか」

飛鳥「ええ」

ひまり「うちのお店の人、結構一丈字くんの話をしてたんだけど…どうしたの?」

モカ「もしかして気になる子がいるとか~?」

蘭「それ、ストーカーだよ…」

 

 蘭の言葉に飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「少しばかり気になることが出来ましてね…」

つぐみ「気になる事?」

 

 飛鳥が真剣な顔でスマホを取り出して、男たちの写真を巴とひまりに見せた。

 

飛鳥「この男たちに見覚えがございませんか」

「!!」

 

 飛鳥が見せた写真を見て巴とひまりが反応した。

 

巴「あっ! 昨日見たぞこの二人!! 確か客と喧嘩して…」

ひまり「追い返されてた…」

飛鳥「……」

 

 巴とひまりの言葉を聞いて、飛鳥は嫌な予感がすると、モカが飛鳥の顔をじっと見ていた。

 

巴「それがどうしたんだよ」

飛鳥「この写真を撮る前、お店の人に対して、店を潰してやるって言ってたんですよ。まさかと思って、可能な限りずっと様子を見張ってたんですよ」

ひまり「ええっ!!?」

 

 飛鳥の様子にひまりが驚いていた。

 

巴「けど、あたしたちは一度も目撃してないぞ!?」

飛鳥「そりゃあ宇田川さん達がいる時は行列が出来るほどですから、流石に馬鹿な真似はしないでしょう。もし変なことをするなら人がいない日でしょうね」

 

 飛鳥の言葉にひまりと巴が不安そうにした。

 

ひまり「それはそうと、どうしてそこまでやってくれたの?」

飛鳥「……」

 

 ひまりの言葉に飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「この男たちがいなくなった後、店員さんがギスギスしてたので…ほっとけなくて」

モカ「……」

 

 飛鳥の言葉にモカがへの字にした。

 

飛鳥「そういう訳ですので、お二人とも細心の注意を払ってアルバイトを頑張ってください」

巴「お、おう…」

ひまり「……」

 

 モカは確信した。飛鳥は巨大な敵と戦おうとしていることに。

 

*****************:

 

 巴の呼び出しを切り抜けた後、飛鳥は放課後モカに呼び出された。

 

モカ「どうして言ってくれなかったの?」

飛鳥「こころにも大人しくして貰ってるんだ。結構無茶するからね」

モカ「…またトモちんとひーちゃんのバイト先に行くの?」

飛鳥「ああ。だけど、今度は夜だ」

モカ「夜?」

 

 モカの言葉に飛鳥は何も言わなかった。

 

飛鳥「…久々の『仕事』になるかもしれないからな」

モカ「……」

 

 飛鳥の言葉にモカはうつむいた。

 

モカ「何かできることはないの?」

飛鳥「あるよ。事が済んでからな」

モカ「売り上げに貢献しろとか?」

飛鳥「それだけじゃないよ。宇田川さんと上原さんのメンタルケア。探せばいっぱいある」

 

 飛鳥が真面目にしゃべると、モカも暗い顔をする。

 

飛鳥「そんな暗い顔をするな。何もなければそれでいいんだ」

モカ「……」

飛鳥「だが、宇田川さんや上原さんの話を聞く限り、近いうちに何か仕掛けるつもりだ。SNSでもほかの客にも返り討ちにされてるんだ。きっと不満がたまってるだろう。世間や自分自身に対して」

 

 モカが俯いた。

 

飛鳥「今日からちょっと様子を見るつもりだ。じゃ…」

モカ「待って!」

 

 モカがそう声をかけた時、飛鳥のスマホが鳴った。

 

飛鳥「ごめん。緊急用だ。もしもし…」

 

 飛鳥が電話に出た。

 

飛鳥「分かりました。直ちに向かいます」

 

 飛鳥が少し慌てて電話を切った。

 

飛鳥「悪い。一足先に店に行ってる」

モカ「えっ?」

 

 飛鳥が存在感を消して瞬間移動を行うと、モカは悲しそうな顔で呆然と立ち尽くした。

 

つづく

 



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第273話「一丈字飛鳥の長い戦い(後編)」

 そして飛鳥はファストフード店の前に立っていた。

 

「くそが!! 離しやがれ!!」

 

 男二人が黒服の男二人に取り押さえられていた。手に持っていたのはガソリンのタンクだった。

 

飛鳥「!!」

 

 飛鳥の読み通り、男たちはこの店に対して嫌がらせをしようとしていたのだが、ガソリンを店にぶちまけて火をつけようとしたのだった。ガソリンをぶちまけて、火をつけようとしたときに黒服に取り押さえられたのだ。

 

「くそう!! あともう少しだったのに!!」

「どうして何もかもうまくいかないんだ!! くそがぁああああああ!!!!」

 

 男たちの怒りの叫びは町中に響き渡った。飛鳥は神妙な表情で犯人の男たちを見つめていた。

 

飛鳥「さて、モカにメールするか」

 

 飛鳥がモカに犯人が捕まったというメールを送った。

 

********************

 

 警察もやってきて、男たちは警察に逮捕された。野次馬がブーイングを上げていて、異常な熱気に包まれていた。飛鳥は陰から様子を見つめる。

 

「…飛鳥くん」

 

 モカが現れると、飛鳥がモカを見つめた。

 

飛鳥「宇田川さんと上原さんは無事だ。他の皆さんも…」

モカ「うん…トモちんやひーちゃんからメール来たよ…」

 

 モカは目に涙を浮かべた。

 

飛鳥「泣くのは後だよ。宇田川さんと上原さんに会えるかな…」

 

 巴とひまり、他の店員と会えたのはそんなに時間はかからなかった。

 

モカ「トモちん! ひーちゃん!」

巴・ひまり「!」

 

 モカが心配そうに駆け寄ると、巴とひまりがモカに気づいたが、飛鳥は存在感を消した。

 

巴「モカ!」

 

 巴が反応すると、モカが巴に抱き着いた。

 

モカ「よかった…。本当によかった…」

巴「モカ…」

 

 その様子を見て、ひまりも泣きじゃくってモカを抱きしめた。

 

巴「あたしもごめんな。心配かけたな…」

ひまり「ごめんねモカ…!!」

 

 3人の様子を見て、他の店員たちはバツが悪そうにしていた。中には飛鳥が初日に接客をしていた少女もいた。その様子を飛鳥が静かに見ていた。

 

巴「それはそうと取り押さえたあの男の人達は…」

モカ「弦巻財団の人達だよ。飛鳥くんが協力を求めたの」

ひまり「そうだったの!?」

巴「いつも黒服だから気づかなかった…」

 

 モカの言葉に巴とひまりが驚くと、他の店員達も反応した。

 

「飛鳥くんって…前に話してた子?」

「!!?」

 

 妙齢の女性店員が話しかけると、3人が店員を見つめた。

 

巴「は、はい…」

「そう…」

 

 妙齢の女性店員はうつむいた。

 

巴「あの、竹本さん。何か…」

竹本「最初あの男たちが怒鳴って帰った後、その飛鳥くんという子が来て、それからちょくちょくお店に来てくれたんだけど…。きっとあの男たちがああいう事をするって分かって、ずっと見張っててくれたのね…」

 

 竹本の言葉に飛鳥は困惑していた。

 

モカ「そうなんですよ~。凄いと思いませんか?」

「!!」

 

 モカの言葉に飛鳥が驚いた。

 

竹本「今度お礼しなきゃ…」

モカ「それは大丈夫だと思いますけど…」

巴「いや、今回ばかりは店も助けてもらったんだ。礼をするしかないだろ」

ひまり「そうだよ!」

 

 飛鳥にどうしても礼がしたいという話をしていたので、飛鳥は超能力で次第にお礼をするという事を忘れるように細工をして、飛鳥がモカ達の前に姿を現した。

 

「!!?」

巴「一丈字!!」

飛鳥「皆さん。ご無事で何よりです」

 

 飛鳥が突然現れた事により、並んでいた客も驚いていた。

 

巴「一丈字! モカから全部聞いたぞ! 何から何までほんとにありがとな!?」

ひまり「うん!!」

飛鳥「それは構いませんが…」

 

 巴とひまりが詰め寄られて飛鳥が苦笑いすると、気の弱い白い髪の女性店員を見つめた。

 

「!」

飛鳥「また会いましたね。店員さん」

 

 飛鳥の言葉に巴たちが驚いた。

 

飛鳥「あれから調子はどうですか?」

「えっ…」

 

 女性店員・白朧(ハクロウ)は驚いていた。

 

飛鳥「あの男たちに怒鳴られた後、凄く元気がなかったので」

白朧「や、やっぱり気づいてましたか…」

 

 飛鳥の言葉に白朧が苦笑いした。

 

白朧「あ、はい。もう大丈夫です」

竹本「丸山さんに励ましてもらったもの。あなたは必要な人間だって」

飛鳥「!」

 

 かつて自分が言った言葉をそのまま人に言っていた事に驚く飛鳥。そして微笑んでいる白朧の姿を見て、飛鳥は一安心した。

 

竹本「…それとね。宇田川さん」

巴「!」

 

 竹本が申し訳なさそうに巴とひまりを見ていた。

 

竹本「上原さんもそうだけど…ごめんなさいね」

「!?」

 

 竹本が謝ったので、3人が驚いた。

 

竹本「お客さんの態度があまりにも悪かったから、ついつい裏であなた達にあたってたわ。悪くないって分かってたのに…」

「アタシもごめん」

「オレも…」

「彩ちゃんと花音ちゃんにも謝らないと…」

 

 そう言って店員達が謝ると、ひまりは号泣し、巴は目に涙を浮かべた。そして飛鳥とモカが顔を合わせて苦笑いした。

 

 その時、店長らしき男が現れると、

 

飛鳥「それでは、私は失礼します」

ひまり「えっ?」

巴「ちょ、ちょっと待て!! 店長にお前を紹介したいんだよ!」

飛鳥「売名行為になりますし、事情聴取があるので」

 

 飛鳥が警察官2人に捕まっていた。

 

「どういうことか詳しく聞かせてもらおうか」

飛鳥「それでは皆さん。またどこかでお会いしましょう」

モカ・巴・ひまり「え」

飛鳥「さようならー」

 

 そう言って飛鳥は警察官に引きずられ、パトカーに乗せられていった。

 

モカ「むー…」

 

***********************

 

 飛鳥は警察に事情聴取を受け、解放されたのは2時間後だった。

 

飛鳥(助かった…。ずっとあの中にいたら英雄扱いされてたからな…)

 

 警察署から出てくると、飛鳥は空を見上げるとまだ茜色だった。

 

飛鳥「確かこの辺、河川敷あったよな…」

 

 そのまま飛鳥は河川敷の道を歩きながら一人帰っていた。そして、脳裏にある曲が思い浮かんだ。

 

『♪I LOVE YOU /河村隆一』

 

 長かった戦いが終わり、戦い抜いた自分自身を祝うかのように流れていた。正直歌詞というよりBGMで決めた。

 

飛鳥(本当に長い戦いだった…)

 

 飛鳥は心底疲れた顔をしながらも、白朧に笑顔が戻ったことを思い出して、静かに笑みを浮かべると、そのまま歌を口ずさんだ。その表情はとても穏やかだった。

 

 

 

 

 

 

おしまい

 



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第274話「いい事は起きるものじゃない、作るものだって誰かが言ってたような気がした」

 

 

 私の名前は奥沢美咲。ハロー、ハッピーワールドというバンドに所属している。まあ、所属してるって言ってもミッシェルっていう着ぐるみなんだけどね。どういう訳かうちのバンドのリーダーである弦巻こころと他2名は、ミッシェルと私が別人だと信じて疑わない。正直言って頭がおかしい。

 

「美咲ちゃん!! 君の躰に直接付着している汗を吸わせてくれぇ!!!」

 

 もっと頭のおかしい奴がいた~!!! 1人だけならまだしも数人がかりで来るんだよもうやだもうね!! 前を歩いてる女の人に不審者と間違われてぇ~!!! すっごい気持ち悪いからさぁ~!!!

 

美咲「は? 何言ってるのか分かんないんだけど。警察呼んでいい?」

「いいよ」

「警察に捕まったところで僕たちは諦めない!!」

「むしろ美咲ちゃんに警察を呼ばれたという事を胸に刑務所で君を思いながら…」

 

 諦めてっていうかどう突っ込んだらいいの~!!!? もうこころなんか比べ物にならないくらい頭おかしいんだけど~!! 普通だったら「あー…そうですね」とか投げやりに返すのに、そんな事したらOKだと思われて完全にやられる奴じゃん!! ねえもうお願い、裸でエベレスト登山してぇ~!!!

 

美咲「いい加減にして!!」

「お前がいい加減にしろ!!!」

「そうだ!! お前がいい加減にしろ!!」

 

 えぇ~!!!? 何この四の五の言わせない空気!! ていうかなんであたしが悪いみたいな感じになってんのねえ、お願い死んで~!! こんな事言いたくなかったけど、死んで~!!!

 

「生きる!!」

 

 ていうかなんであたしの心の声聞こえてんの!!? やだもうね、心折れそうなの!! あたしの平凡な日常を返してぇ~!!!

 

「あのね、美咲ちゃん」

美咲「な、なによ」

「平凡な日常を過ごしたいってね。贅沢言ってんじゃないよ!!」

「そうだ!! 非凡な日常を過ごしたくても過ごせない人がいるんだぞ!!」

「美咲ちゃんは選ばれた人間なんだよ!!」

「羨ましいにも程があるんだ!!」

「という訳だから、その汗を吸わせてくれ!!」

 

************************:

 

美咲「ひっく…ひっく…もうやだぁ…」

 

 ファミレスで美咲は泣きじゃくっていた。そして対面には飛鳥がいた。

 

飛鳥「奥沢さん。あの男子生徒たちは黒服の人達に始末してもらってますので、安心してください」

美咲「ありがと…」

 

 飛鳥の言葉に美咲は涙声で反応した。

 

 暫くして、美咲は落ち着いた。

 

美咲「ていうか、なんであんなに変態が多いのよ!!」

飛鳥「色々理由はありますね。奥沢さん達が人気者というのもありますし、女性に関するコンプレックスがあったりして…」

美咲「はぁ…もうやだ…」

 

 飛鳥の言葉に美咲は涙目になって視線をそらした。

 

飛鳥「まあ、今日の食事代は私がご馳走しますので、遠慮せず頼んでください」

美咲「それは別にいいけど…」

 

 美咲が飛鳥を見つめる。

 

美咲「ねえ、一丈字くん」

飛鳥「なんです?」

美咲「一丈字くんも結構理不尽な目に逢ってるけど、嫌になったりしないの?」

 

 美咲の言葉に飛鳥が少し反応したが、

 

飛鳥「そりゃあ嫌になりますよ。何もしてないのに言いがかりつけられたり、私のせいにされるんですから」

美咲「言い返したりとかしないの?」

飛鳥「もうしませんよ。それで他人は変わりませんから」

美咲「……!」

飛鳥「それよりも別の方法を考えます。しかるべき対処を取ったりするなり、人に協力してもらうなりしてね」

 

 飛鳥が静かに目を閉じた。

 

飛鳥「出る杭は打たれるって言葉を知ってますか?」

美咲「し、知ってるけど…」

飛鳥「人は杭を元に戻そうとして、木づちなどを使って元に戻そうとしますけど、出すぎた杭はどんな手を使っても元に戻せないんですよ。私は出すぎた杭になろうって決めたんです」

美咲「出すぎた杭…?」

飛鳥「人の目を気にしないで自分らしく、前向きになろうって決めたんですよ。どうあがいても人から色々言われ続けてきた結果です」

美咲「……」

 

 飛鳥が美咲を見つめる。

 

飛鳥「奥沢さん。あなた、結構後ろ向きに物事を考える方ですか?」

美咲「ま、まあ…そうね。少なくともこころやはぐみみたいにはなれないかも…」

飛鳥「……」

 

 美咲の言葉に飛鳥が一息ついた。

 

美咲「でも、どうして?」

飛鳥「前向きに物事を考えると言いましたが、たまにそうなりますよ」

美咲「え?」

 

 美咲が飛鳥を見つめた。

 

飛鳥「あまりにも上手くいかなくてね。これをやってもダメなんじゃないかとか、こうしても絶対こうなるに違いないとかって。自分に言い聞かせても、やはり心のどこかで後ろ向きになるんですね」

美咲「……」

 

 美咲は飛鳥という人間が少し理解できた。なんでもできるように見えても、実は結構悩んだり、壁にぶつかったりしていて、自分とそんなに変わらないんだという事に。

 

飛鳥「でも、後ろ向きに考えてるとどんどん悪い方向に行くんですね。そうなると、何もかもうまくいかなくなるんですよ」

美咲「そ、そう…」

飛鳥「何が言いたいかって言いますと奥沢さん。強く生きてください」

美咲「あ、やっぱりそうなるのね…」

 

 飛鳥の言葉に美咲が呆れながら突っ込んだ。

 

飛鳥「まあ、気をしっかり持って。奴らは心が弱った時を狙ってきますから、弦巻さん達の時みたいに軽く受け流しますと、そこで終わりですよ」

美咲「だよね…」

 

 美咲がふっと笑った。

 

美咲「でもちょっとすっきりしたかも。ありがとう一丈字くん」

飛鳥「いえいえ」

 

 その時、美咲の腹が大きく鳴った。

 

美咲「!!!///////」

飛鳥「あ、ごめんなさい。私が鳴らしました」

美咲「いや、そこまで気を遣わなくていいから…/////」

飛鳥「頼みましょ頼みましょ」

美咲「じゃあコレ」

飛鳥「はい」

 

 美咲がわざと一番高いメニューを頼んだが、飛鳥は動じなかった。

 

美咲「…冗談だよ」

飛鳥「大丈夫ですよ。今日はサービスです」

美咲「…ありがと」

 

 とまあ、楽しい食事会になったそうです。

 

 

 

おしまい

 



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第275話「きのこたけのこ戦争」

 

 それはある日の事だった。

 

「そんな! おたえ! りみりん!! 考え直してよ!!」

「考え直すのは香澄だよ」

 

 学校の食堂で香澄とたえが喧嘩をしていた。それをりみと沙綾も一緒にいたが、りみはたえの隣、沙綾は香澄の隣にいた。

 

「待て待て。どうしたんだよお前ら」

 

 有咲がやってきた。

 

香澄「有咲はきのことたけのこ、どっち派!?」

有咲「うわー…めちゃくちゃめんどくさい奴来た…」

香澄「私はタケノコが美味しいと思うんだけど、おたえとりみりんはきのこがいいって言うんだよ!!?」

たえ「有咲はきのこだよね?」

 

 きのこの山とたけのこの里のどっちが美味しいかでもめているのを見て、有咲はあきれていた。りみと沙綾は一応どっちかって言われたらという感じだったが、香澄とたえのヒートアップぷりに困惑していた。

 

 そんなとき、Afterglowがやってきた。

 

蘭「…何やってんの?」

有咲「ゲッ!!」

香澄「あっ! 聞いてよ蘭ちゃん!! 実はね…」

 

 香澄が事情を説明した。

 

モカ「モカちゃんはきのこかな~」

巴「アタシも…」

ひまり「私もきのこかなー。たけのこはチョコで手が…」

香澄「えーっ!!?」

たえ「ほら」

 

蘭・つぐみ「……」

香澄「反応しなかったって事は、蘭とつぐはたけのこだよね!?」

つぐみ「あ、あははは…」

蘭「いや、別にそうなんじゃないし…」

 

 香澄の言葉につぐみが苦笑いし、蘭が視線をそらした。有咲はどんどんめんどくさそうにしていた。

 

「どうしたの?」

 

 今度はPastel*Palettesが現れて、有咲が絶望した。

 

香澄「実は…」

有咲「ちょ、やめろぉ~!!!!」

 

 香澄が事情を説明すると、

 

日菜「分かる! たけのこるんってするよね!」

彩「私もたけのこかな…」

香澄「ですよね!!」

 

千聖「私はきのこね…」

麻弥「そうっすね…。機材触るので…」

イヴ「ブシドー」

香澄「えー!! イヴちゃんは絶対こっちでしょ!! 竹刀使うんだし!!」

有咲「いや、その発想はおかしいだろ」

 

 香澄の言葉に有咲が突っ込みを入れると、香澄は有咲の方を見た。

 

香澄「そういえば有咲はどっちなの!?」

有咲「えっ…」

 

 その時だった。

 

「どうしたの? 随分騒がしいけど」

 

 友希那、紗夜、リサ、燐子の4人が現れた。

 

あこ「あこもいるよ!!」

 

 あこが後からやってきて、Roseliaが揃った。

 

友希那「話は聞かせてもらったわ。きのこたけのこ戦争ね!」

香澄「違います。たけのこきのこ戦争です!」

たえ「いや、きのこたけのこ戦争だよ」

有咲「二人とも静かにして」

 

*************************

 

友希那「さっきも言ったけど、きのこ派ね」

リサ「ごめんねー…あたしも」

あこ「あこも」

 

紗夜・燐子「……」

有咲(思ったけど、どうしてこんなに別れるんだよ…。しかもこの流れは…!!)

 

「あら! 皆集まって何をしているのかしら!?」

 

 ハロハピが現れた。

 

有咲(思ったけど、弦巻さんってきのこたけのことか食べなさそう…)

 

こころ「何してるのかしら?」

香澄「それがね」

 

 香澄が事情を説明した。

 

こころ「そんなのどっちも美味しいわよ!」

有咲(なんだろう。弦巻さんが天使に見えてきた)

香澄「それは私も同じだけど、どっちかっていうと」

こころ「甲乙つけがたいわね…」

 

薫「私はたけのこをお勧めするよ」

りみ・ひまり「え゛っ…」

千聖「残念だったわね」

 

はぐみ「はぐみもたけのこかなー」

花音「わ、私もたけのこかな…」

千聖「」

 

 親友の花音の発言に千聖が石化した。一番残念だったのは彼女だったという事だ。

 

美咲「私もたけのこですね…」

こころ「あら! 皆たけのこが美味しいの!? それじゃ、たけのこにしようかしら!」

香澄「おっしゃあ!!」

たえ「えー…」

 

 こうして、きのこが11人、たけのこが13人になった。

 

香澄「ところで有咲はどっち?」

有咲「えっ…」

たえ「有咲はきのこだよ。此間きのこの山買ってるの見たもん」

 

 たえの言葉に空気が止まった。

 

香澄「えー!! 有咲信じてたのにー!!」

有咲「…で、結局どうすんだよコレ」

こころ「そうだわ! きのこの山とたけのこの里をいっぱい買って、お茶会でもしましょう!!」

香澄・たえ「さんせー!」

有咲「えええええええええええええええええええ」

 

 自由奔放ぶりに有咲は驚きを隠せなかった。

 

こころ「そうだわ! 飛鳥も誘いましょう!」

たえ「そういえば、今日見てないね」

香澄「ホントだ」

 

 その時、カフェテリアのモニターにこんな番組が流れていた。

 

まりな『今日のバンドリチューンは、1997年2月21日にリリースされ、ソロデビューとなった河村隆一の「I LOVE YOU」。この曲を一丈字飛鳥with弦巻家黒服オールスターズの皆さんが演奏いたします』

 

 すると黒服たちがギター、ベース、ピアノ、ドラム、ソプラノサックスを演奏し、飛鳥はマイクを持っていた。

 

 

 飛鳥が歌いだすと、皆がモニターにくぎ付けになった。普段はかけている眼鏡を外しており、スーツで歌っていた。そしてとても色気のある歌声で歌い上げる。

 

香澄「やっぱり歌上手!!」

有咲「それもそうだし、黒服さん達も演奏上手…」

 

 この後1番、間奏、ラストサビという順番に歌い上げたが、飛鳥はミュージカルでもやってるんじゃないかという感じで、感情をこめて歌って、香澄たちを魅了していた。

 

 そして演奏が終わると、飛鳥は完全にやり切った顔をしていた。

 

有咲「いや、何してんだあいつァ――――――――――――――!!!!!」

 

 有咲が学校中に響き渡るほどの突っ込みを入れた。

 

 

おしまい

 



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第276話「おばけタワー・1」

 

 今回はこのメンバーで塔に行ってもらいます。

 

ポピパ  … 香澄

アフグロ … 蘭、ひまり、巴

パスパレ … イヴ

ロゼリア … リサ

ハロハピ … 薫

 

***********************

 

巴「はぁ!!?」

蘭「頭おかしい!! 頭おかしい!!!」

 

 お化け屋敷だとわかり、巴と蘭はマジ切れしていた。

 

香澄「どうしてポピパは私だけなの!!?」

有咲「いやー…りみとおたえに行かせたら、画が取れないからじゃね?」

沙綾「が、頑張って…」

 

ひまり「モカとつぐがいないなんて…」

モカ「頑張れ勇者たちよ~」

 

リサ「なんでお化け屋敷に行かないといけないのよ~!!!」

友希那「仕方ないわよ」

リサ「…1週間くらい、クッキー作ってあげない」

 

薫「私も指名がかかるなんて困った幽霊だな。ハハハハ…」

花音「か、薫さん…」

美咲「膝、凄く震えてますよ…」

 

 薫がいつものように気取って見せたが、内心は幽霊がめちゃくちゃ怖くて膝が震えていた。

 

イヴ「……!」

千聖「イヴちゃん。止めを刺すようで悪いけど、木刀は置いていきなさい」

イヴ「い、いや…これは悪霊退散目的で…」

千聖「置いていきなさい?」

日菜「千聖ちゃんが代わりに行けばいいんじゃない?」

千聖「なんでそうなるの!!?」

香澄「一緒に行きましょう」

蘭「名案」

巴「白鷺さんがいれば心強いなー」

千聖「ちょっと私を巻き添えにするのやめてくれない!!?」

 

 結果的にイヴは木刀を没収されたが、千聖がプラスワンで行かされそうになった。

 

千聖「ちょっと一丈字くんは!!?」

たえ「そういやいないですねぇ」

千聖「ちょっとー!! 一丈字くーん!!!」

 

 千聖がそう反応したその時、香澄とリサががしっと千聖の肩を掴んだ。

 

香澄「一緒にイきましょう…」

リサ「ソウダヨー…」

イヴ「チサトサンモイッショナラアンゼンデス…」

千聖「ひっ!!」

 

 香澄たちの必死ぶりに千聖が涙目になってると、飛鳥が遠くから様子を見ていて、何事かと困惑していた。

 

飛鳥(あれ、何やってるんだろう…)

 

 そして千聖が飛鳥に気づいた。

 

千聖「あっ!! 一丈字くーん!!! 来てー!!! 本当に来てー!!!!」

 

 千聖が飛鳥にバトンタッチをしようとするが、聞こえてないのか、そのまま通り過ぎようとしていた。

 

千聖「本当は聞こえてるんでしょ!!! 来ないと説教よ説教!!! 早く来なさ~い!!!!」

日菜「あははははははは!! 千聖ちゃんおもしろ~い!!」

彩「ち、千聖ちゃん…」

 

 飛鳥とのやり取りを見て日菜は爆笑していたが、彩と麻弥は飛鳥といつの間にか仲良くなっていることに驚いた。

 

 そして飛鳥が来たが…。

 

千聖「さて、やる事は分かってるわね?」

飛鳥「はい、白鷺先輩達がこのタワーに上り終わった後、エンディングテーマを生演奏です」

千聖「…は?」

 

 自分も登ることになっている事に、千聖が驚きを隠せなかった。

 

飛鳥「そういう訳ですので、頑張ってください」

千聖「ちょっと待って!? あなたじゃないの!!?」

飛鳥「本当は私の予定だったんですけど、今回は白鷺先輩をメインにしたいので譲ってほしいと…これがエビデンスです」

彩「うちのスタッフが原因なの!!?」

千聖「あのクソマネージャー…!!!」

麻弥「ち、千聖さん! 女の子がそんな事を言ったらいけません!!」

 

 スタッフの差し金に千聖は怒り狂って暴言を吐くと、麻弥が突っ込みを入れた。

 

香澄「えー!! 飛鳥くん来てくれないの!?」

蘭「無責任すぎない」

飛鳥「え、美竹さん。私に来て頂きたいんですか?」

 

 飛鳥が驚いたように蘭に聞くと、蘭が頬を染めた。それを木の陰で男性スタッフが見ていて、指を鳴らした。

 

*************************

 

 こうして香澄たちはタワー内に入れられたが、入れられた瞬間に大きな音を立てて、閉じ込められた。

 

巴・ひまり「ひぃいいいい!!!!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥も入れられていた。一応助っ人の要員で必要な時に行けるようにしていたのだが、参加者全員から最初から参加するように命じられていた。

 

飛鳥「結構凝ってますね…」

千聖「全く、いつの間にこんなものを…」

 

 飛鳥と千聖が困った様子で扉の方を見た。ちなみに様子が見れるように各地にカメラが仕掛けられていて、残りのメンバーはモニタールームで確認していた。

 

蘭「一丈字」

飛鳥「はい?」

 

 飛鳥が蘭を見つめると、

 

蘭「ほら、前を歩く」

飛鳥「あ、はい」

 

 男だから前を歩かそうとする蘭に対して、飛鳥は素直に返事した。

 

飛鳥「それでしたら、誰か後ろを見て頂けますか?」

「後ろ?」

飛鳥「前と後ろを見ていると、一番安全だそうですよ」

薫「それなら私が見よう。後ろは一番安全そうに見えて危ないと聞くからね」

ひまり「流石薫先輩!!」

 

*******************

 

 モニタールーム

 

りみ「よく考えたら薫さんと一緒に肝試し…めっちゃ羨ましい~!!」

 

 りみがひまりを羨ましがると有咲と沙綾が苦笑いしていた。

 

つぐみ「それはそうと蘭ちゃん達大丈夫かな…」

モカ「大丈夫だよ~。飛鳥くんがついてるから~」

つぐみ「え?」

 

 つぐみがモカを見つめた。

 

モカ「つぐだって知ってるでしょ」

つぐみ「……」

 

 モカの言葉に、つぐみは飛鳥に助けられたことを思い出して、笑みを浮かべた。

 

つぐみ「そうだね」

 

 それを他のバンドグループが見て驚いていた。

 

*********************

 

 そして飛鳥を先頭にして、一行は進んでいった。

 

飛鳥「階段あるので気を付けてください」

香澄「う、うん…」

 

 2階に上がるが、3階へ行くには一番向こう側までいかないといけない上に、迷路になっていた。

 

飛鳥「結構手が込んでるな…」

蘭「これ絶対何かいるよね!?」

巴「怖い事言うなよ!!」

ひまり「お願い余計な事考えないでぇ~」

 

 蘭・巴・ひまりが固まり、香澄・イヴ・リサが固まっていた。千聖と薫が後ろで確認する。

 

飛鳥「とにかく進みましょう」

香澄「す、進むのぉ!?」

リサ「も、もうちょっと時間をおいてから…」

 

 その時だった。

 

「ハヤクイケ…」

 

 という声が下から聞こえてきた。しかし、声があまりにも不気味だった。

 

リサ「ひっ!!?」

 

 全員がその声に気づいて、飛鳥以外がビビった。

 

薫「い、今なんか変な声が…聞こえなかったかい?」

飛鳥「早くいけって言ってますね」

千聖「どっちの意味かしら…」

香澄「ど、どういう事ですか…? どっちの意味って…」

 

千聖「進む方の行くと、死ぬ方の逝く…」

リサ「きゃあああああああああああ!!! ちょっとやめてよそういう事言うのぉ!!」

 

 リサが大声を出すと、他のメンバーもビビった。約一名除いて。

 

薫「そ、そうだぞ千聖。冗談が過ぎる…」

「ハヤクイケ…ハヤクイケ…」

 

 という声がずっと聞こえてきた。

 

飛鳥「これは早く前に進まないと、何か仕掛けてくるパターンですね」

蘭「……!!」

巴「そ、そうと決まれば早く進もう! そうしよう!!」

ひまり「これ、何階まで進まないといけないの~!!?」

飛鳥「6階ですね」

 

 その時だった。

 

「ハヤクイケ…ハヤク…イ…ケ…」

 

 アナウンスの声がどんどん途切れていった。

 

リサ「な、ナニコレ…」

薫「早く行こう。はや…」

  

 その時、下から物凄い足元が聞こえてきて、飛鳥以外の全員が悲鳴を上げて、飛鳥を追い越して逃げると、飛鳥は困惑しながら歩き出した。

 

 そして階段の出入り口を出たところで、閉じ込められてしまった。

 

飛鳥「結構本格的だな…」

 

 2階までたどり着いてこの始末。はてさて、この先どうなります事やら…。

 

リサ「えっ!!? これ、続くの!!?」

ひまり「もう終わりにして~!!!!」

 

 

つづく

 

巴「あっ!! つづくって!!」

蘭「おしまい!!!」

 

 

つづく

 



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第277話「おばけタワー・2」

 前回までのあらすじ

 

 お化けが苦手なメンバーとプラスアルファで肝試しをすることになった。

 

**********************:

 

『6階までたどり着いたらゴールです』

 

蘭「ねえ! これドロップアウトできないの!!?」

飛鳥「そこまでは聞いてないですね…」

香澄「なんかここに手紙が置いてあるよ!」

飛鳥「本当ですね」

 

 香澄が手紙を見つけると、飛鳥に手紙を渡すとそのまま内容を読んだ。

 

飛鳥『ドロップアウトができるのは3階のミッションが完了してからです』

 

蘭「3階まで登らないといけないの!?」

飛鳥「逆に3階まで行けば帰れますよ」

ひまり「モ、モノはいいようだけど…」

薫「それでは3階を目指せばいいんだね。分かったよ」

 

 こうして皆先に進んだのだが、飛鳥が先頭に香澄、イヴ、リサ、アフグロ三人娘、千聖、薫という順番だった。

 

薫「……」

千聖「私たちが先輩なんだからもう少ししっかりしなさい」

薫「わ、分かってるよ…」

 

 薫がさっきから落ち着きがなかったので、千聖が注意すると薫が注意した。

 

リサ「飛鳥くんごめんね~。情けない先輩で~」

飛鳥「そんな事ございませんよ。ただ、戸山さんと若宮さんをお願いします」

 

 香澄とイヴが飛鳥の後姿を見つめた。

 

ひまり「一丈字くんが2組だったらよかったのに…」

巴「…ホントそれな」

蘭「……」

 

 ひまりと巴がほめると、蘭だけが不満そうにしていた。少しだけ男子生徒たちの気持ちを理解したのか、この肝試しは飛鳥をヒーローにする為の話ではないかと思った。けど、飛鳥としては自分を同行させるかは参加者達で決めれたし、一番最初に同行させると言い出したのは彼女である。

 

 そしてそれを飛鳥は背中で感じ取っていた。モカから蘭の事は聞いていたが、本当に気難しい人だと感じていた。

 

飛鳥(…そういや、こんな感じの人を前にも会ったことがあるような)

『イミワカンナイ!』

 

 そんな蘭に悲劇が起きた。彼女の横を幽霊らしき物体が壁からすり抜けてきて、蘭によりそった。それに気づいた千聖が思わず悲鳴を上げたが、それにより他のメンバーの心臓が止まりかけた。

 

******************

 

 モニタールーム

 

有咲「な、何じゃあありゃあ!!?」

沙綾「どうなってんの!!?」

 

 有咲たちも幽霊を確認して、パニック状態になっていた。

 

こころ「おばけって本当にいるのね!」

美咲「そんな訳ないでしょ! どうせ黒服の人達が脅かして…」

花音「ふぇええええ!!?」

はぐみ「こわいよ~!!!!」

 

 はぐみは花音に抱き着いていた。

 

**********************

 

飛鳥「どうしました?」

 

 千聖が悲鳴を上げた瞬間、おばけは逃げていき、飛鳥が振り返った時にはもういないばかりか、千聖の悲鳴を後ろから聞いていた蘭、巴、ひまりは腰が抜けていた。そして横にいた薫も青ざめて涙目になっていた。

 

飛鳥「…出ました?」

 

**********************

 

薫「出てしまったものは仕方がなく、それで巴ちゃんたちが幽霊を見ずに済んだのなら仕方がない。だが…」

ひまり「急に大声出さないでください…」

蘭「腰が…抜けた…」

千聖「ご、ごめんなさい…」

 

 なんとか、2階のゴール地点までたどり着いたが、千聖が悲鳴を上げた事で飛鳥以外のメンバーが完全に怯えてしまい、完全に足を引っ張ってしまうという失態をさらしてしまった。

 

飛鳥「次の階をクリアすればドロップアウトできますので、それまで耐えてください」

ひまり「そ、そうだね! 次の階クリアしたら帰れるんだよね!?」

巴「そうだな!」

千聖「……」

 

飛鳥「白鷺先輩も気を落とさないで、ゴールにたどり着く事に専念しましょう」

千聖「そ、そうね…」

飛鳥「それはそうと、幽霊が出た時、どうするべきか決めておくべきでしたね」

蘭「とにかく大声出すのは無しで…」

ひまり「そ、そうだね…」

 

 少なくとも、それは自分たちが守れるのか不安だったが、さっきみたいにはなりたくなかったので、そうすることにした。

 

香澄「早くここを移動しようよ。いつまでもここにいたら…」

イヴ「さっきの変な声が…」

リサ「そ、そうだね! 早く3階へいこう!! とにかく行こう!!」

 

 そう言って2階から3階へ移動した。3階も迷路になっていたが、なんか幽霊らしき物体が天井をうようよしていた。

 

「ひ、ひィ!!!」

 

 幽霊の姿を見ると、飛鳥以外が怯えた。

 

**********************

 

 モニタールーム

 

モカ「やっぱりただでは帰さないか~」

つぐみ「だ、大丈夫かな…」

彩「み、みんな…」

 

***********************

 

リサ「な、何がどうなってるのあれ!!」

飛鳥(あれは立体映像だな。結構手が込んでるな…)

 

 幽霊の正体を見破った飛鳥は困惑していた。

 

飛鳥「立体映像か何かですねぇ…?」

蘭「立体映像にしても怖すぎでしょ!!」

 

 蘭が叫ぶと幽霊たちが声に反応したのか、キョロキョロし始めた。

 

巴「バ、バカ!!」

ひまり「おばけがこっちに気づいちゃうでしょ!!」

 

 巴とひまりが蘭の口をふさいだ。

 

*******************::

 

 モニタールーム

 

あこ「あれ、本物のおばけ!?」

燐子「……」

友希那「そんな訳ないでしょ」

紗夜「そうです! そんな非科学的なものは信じられません!!」

 

*****************:

 

飛鳥「とにかく気づかれないようにゆっくり進みましょうか」

リサ「す、進むの!?」

飛鳥「…お気持ちは分かります。ですがこのままだと」

 

 飛鳥がそういうと、おばけの一体が壁を擦りぬけて、飛鳥たちに近づいた。

 

飛鳥「こうなりますね」

「……」

 

 するとおばけが大きな口を開けたが、大きく開けすぎだし、歯がめちゃくちゃリアルだし、効果音がリアルだったので、怖がらせるには十分すぎた。

 

 そしてほとんどのメンバーが声にならない叫びをあげて、そのまま逃げだした。

 

飛鳥「あっ!!」

薫「待ちたまえ!!」

 

 残ったのは飛鳥と薫だけになってしまった。

 

飛鳥「参ったな…相当パニックになってるな」

薫「……」

 

 すると薫がそわそわしていた。急に2人しかいなくなった上に、お化けたちがずっとうようよいたため、不安で仕方なかった。

 

飛鳥「瀬田先輩」

薫「!」

飛鳥「私のそばから離れないでください」

 

 飛鳥が真剣な表情で言い放つと、薫は驚いた。

 

***************

 

 モニタールーム

 

日菜「かっこいい~」

彩「一丈字くんって本当に肝据わってるよね…」

モカ「……」

 

 彩の言葉を聞いて、モカは嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

*****************:

 

 飛鳥と薫が移動しようとしたその時、後ろから大きな音を立てて、香澄が突如現れた。

 

飛鳥「!!?」

 

 飛鳥と薫が振り向くと、涙目で放心していた香澄がいた。

 

香澄「ふぇ…?」

 

****************:

 

 モニタールーム

 

はぐみ「こころん!! なんかかーくんたちがパネルを踏んだら、スタート地点に戻ったよ!!?」

こころ「おばけの力かしら?」

美咲(すっごい技術の無駄遣いだろ弦巻財団…!!)

 

 香澄たちがパニックになっている間に踏んでしまったパネルは、スタート地点に戻す力があった。弦巻財団なら本当にやりかねない。

 

紗夜「ど、どうせ何かのトリックよ!!」

あこ「ミスター・サタンじゃないんですから…」

 

 

つづく

 



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第278話「おばけタワー・3」

 

 そして何とか全員が集まれていた。

 

リサ「も、もうやだぁ…!! なんでこんなに難易度高いのぉ…!!」

飛鳥「そ、そうですね…」

 

 勝手に動いたらそりゃそうなるだろと言いたかったが、それを言うと蘭あたりがかみついてきそうなので何も言わなかった。

 

飛鳥「とにかく、皆さん落ち着いて着実にゴールに向かいましょう」

香澄「うん…」

 

 こうして飛鳥が先頭を歩くことになったが、それ以外のメンバーはもうガチガチになっていた。イヴに至ってはずっと目を閉じている。

 

飛鳥「若宮さん。ずっと目を閉じてたら危ないですよ」

イヴ「うぅぅぅぅ」

千聖「一丈字くん。あなたが皆の目になって頂戴」

飛鳥「あ、はい」

 

 飛鳥が懐中電灯で周りを見渡すと、お化けに遭遇した。

 

飛鳥「止まってください」

「ひいぅ!!!」

 

 飛鳥が声をかけると皆が驚いた。そして飛鳥は懐中電灯をお化けに向けると、お化けは見えなくなった。

 

飛鳥「あー。ライトを向けるとお化けが見えなくなる仕組みなんですね」

「え!?」

 

 飛鳥の言葉に香澄たちが正面を向くと、確かにお化けが見えなくなっていた。

 

飛鳥「結構考えてますね…」

 

 飛鳥がライトを下に向けると、おばけが姿を現して悲鳴を上げると、ライトをまたお化けに当てて見えなくした。

 

蘭「一丈字。次やったら殴る…」

飛鳥「そんな無茶苦茶な…」

 

 蘭の言葉に飛鳥が困惑した。

 

****************::

 

 モニタールーム

 

つぐみ「あはははは…」

モカ「ダメだよ蘭~。そんなこと言ったらまた蘭におばけが襲い掛かってくるよ~」

 

*******************

 

 そして予感は的中して、3階のゴールに近づいたときに蘭の周りにおばけが3体もまとわりついた。しかもそのうちの1体が2階で千聖が見た白いお化けだった。そして今度は全員がそれに気づいて、飛鳥以外の全員がゴールに向かって走って、4階に向かって登っていった。

 

飛鳥「あーあ…」

 

 ドロップアウトできる状況を自分たちで捨ててしまって、飛鳥は困惑した。階段からちょっと離れたところに、ドロップアウト用のエレベーターがあったのだ…。

 

********************:

 

 モニタールーム

 

モカ「あーあ…」

 

 モカも飛鳥と同じ反応した。

 

*********************

 

 4階

 

 ドロップアウトを投げ捨ててしまったことに対し、激しく後悔して涙を流す蘭たちだった。

 

蘭「ていうか一丈字どこ!!?」

ひまり「も、もしかして先に帰っちゃったんじゃ…」

巴「えええええ!!?」

 

 ひまりの発言に困惑した。

 

蘭「最低…!!」

ひまり「いや、私たちが一丈字くんを置いて逃げたんだから、最低なのは私達でしょ…」

薫「なんという事だ…。彼にどんな懺悔をすれば…」

千聖「……」

 

 千聖が後ろを振り向いた。

 

香澄「千聖さん?」

千聖「一丈字くんは私たちを置いて逃げたりしないわ。そうでしょ?」

 

 千聖の言葉に飛鳥が現れたが、突然4階の階段の扉が閉ざされてしまい、入れない状態になってしまった。

 

飛鳥「置いて逃げたりはしませんが、どうやら私はここまでのようですね…」

「はぁ!!?」

 

 飛鳥の言葉に蘭と巴が発狂した。

 

香澄「そんな嘘だと言って!! 私たちを置いてかないでよ!!」

リサ「そうだよ!! 飛鳥くんがいなかったら上の階登れる気しないよ!!?」

イヴ「私たちを見捨てないでください~!!!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥が困惑すると、蘭が近づいた。

 

蘭「見捨てたらあんたを一生恨む…」

千聖「そうね。このシリーズの座長も降板…」

飛鳥「2人とも、絶対に後ろを振り向いたらダメですよ」

「ひぃいいいいいいいいいいいいい!!!」

 

 蘭と千聖の後ろには鬼の形相をしたおばけがいて、二人に対して怒っているようだった。

もう完全に香澄たちは腰を抜かしていた。香澄たちの様子を見て、蘭と千聖は青ざめていた。

 

飛鳥「それと安心してください。私は絶対に見捨てません」

「!?」

飛鳥「見捨てたら、間違いなくおばけよりもずっと怖い目に逢いますから」

薫「ど、どういう意味だい?」

飛鳥「あなた方からの信頼を失くします。そうなると、もうこの学校にもいられなくなるばかりか、昔からの知人達も、私を見限るでしょう。そうなれば、私は完全に終わりです」

 

 飛鳥がそういうと、階段の柵が開いて前に出た。

 

飛鳥「他人とのかかわりなくして、この世は生きられないのですから。さあ、行きましょう」

 

 そう言って飛鳥が正面を見つめると、端っこを覗いてはガラス張りになっていて、真下が見える状態だった。それを見て薫が青ざめた。

 

薫「み、皆。折角だからこの下の景色を一番よく見るために側面から歩かないかい?」

飛鳥「おそらく仕掛けありますよ。そう来るだろうと思って」

千聖「確かに言われてみればそうね…」

飛鳥(まあ、脅かさないとお化け屋敷にならないから、どっちにしろ何か仕掛けがあるんだろうけど…)

 

 飛鳥の提案で皆がガラス張りの床を歩くことにしたが、後半に進むにつれて突然3階が見えるようになった。幽霊たちが天井からうようよしていた。

 

ひまり「ひぃいいいいいい!!!!」

飛鳥「皆さん。下を向いてはいけませんよ」

千聖「…痛いんだけど」

薫「何も気にすることはない。しっかり私に捕まっていたまえ」

 

 薫が千聖の腕にしっかりしがみついていた。

 

千聖「それだったら怖くなくなる魔法の言葉を教えてあげるわ。あなた限定で」

薫「魔法の言葉…?」

千聖「かおちゃ」

薫「さあ皆。早く5階に向かおうではないか!!」

(めちゃくちゃ足が震えてる…)

 

 4階から5階に上がったが、香澄はもう限界寸前だった。

 

香澄「お、おしっこ漏れそう…」

千聖「香澄ちゃん。男の子がいるからそういうこと言っちゃダメよ」

 

 5階、電気がついていて、トイレがある以外はごく普通の空間だった。

 

イヴ「一安心ですね…」

ひまり「はぁ~。怖かった~」

薫「ここまでくれば一安心だね…」

千聖「……」

 

 千聖は何となく嫌な予感がした。5階が何もない部屋だという事は、恐らく最上階はかなり恐ろしい仕掛けがあるのだと…。

 

*******************:

 

 モニタールーム

 

沙綾「…どう思う?」

有咲「いや、これは嵐の前の静けさだな…」

 

****************

 

香澄「はー…すっきりした!」

 

 香澄が用を済ませて、全員が集まった。

 

飛鳥「さて、そろそろ行きますか?」

薫「どこにだい?」

飛鳥「6階です」

薫「もうちょっとここでゆっくりするのもいいんじゃないか? ハハハハハ」

 

 薫は完全に現実逃避した。そりゃそうだ。こんな安心できるのだから、離れたくないわけがない。

 

千聖「分かったわ。薫は後で来て頂戴ね」

薫「待ってください」

リサ「ほ、ほんとに行くのぉ…?」

 

 すると香澄があるものをみつけた。

 

香澄「またなんか手紙がありますよー!」

千聖「読んで頂戴

 

 すると香澄が手紙を読んだ。

 

香澄「最上階は懐中電灯が使えません。部屋の真ん中に、エレベータのカードキーがあります。それを使って下に降りてください」

 

 

 そんなこんなで5階から6階へ行くことになったのだが、全員が階段を上ると、誰かが5階の扉を閉めた。

 

「!!?」

 

 自分たち以外誰もいなかったのに、扉の音がしまった為、飛鳥以外がビビった。

 

飛鳥「さあ、クライマックスですよ。心の準備はよろしいですか?」

リサ「全然出来てないっていうか出来ない~」

蘭「もういや…」

ひまり「蘭しっかりして~!!!!」

 

 リサは泣きじゃくり、蘭は放心状態だった。

 

イヴ「ですが、このままではいけませんね」

「!!?」

 

 イヴが口を開いた。

 

イヴ「ずっとアスカさんが私たちの為に頑張ってくれてるんです! このままでは『ブシドー』の精神が失われてしまいます!」

千聖「イヴちゃん…」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は何も言わなかったが、イヴの言葉に皆が励まされた。

 

香澄「皆で行けば怖くないよね! きっとね!」

巴「もうここまで来たんだ! 行くしかない!!」

蘭「うん…」

 

*********************

 

 モニタールーム。階段を上ろうとしている飛鳥たちを皆が応援した。

 

まりな「皆頑張って…!!」

たえ「あ、まりなさんだ。どうしたんですか?」

まりな「出番が欲しいのよ!!」

 

 

つづく

 



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第279話「おばけタワー・完結」

 最上階にたどり着いたが…。

 

飛鳥(無限音階…)

 

 不気味なBGMが突然流れ始めた。

 

蘭「な、なに!!?」

巴「なんだよこれ…!!」

香澄「これ絶対何かある奴だよぉ!!」

イヴ「うううううう~~~~~!!!」

 

 BGMに飛鳥以外の1年生が固まりだした。

 

薫「さ、流石クライマックスを彩るだけにふさわしい音楽だね…」

千聖「じゃあ早くエレベータのカードキーを取ってきて頂戴」

薫「えっ…」

リサ「そうだよ! アタシ絶対に無理!! 薫取ってきて!!」

ひまり「薫先輩!!」

 

 皆から言われて薫が困っていると、飛鳥がすかさず前に出てカードキーを取った。

 

「!?」

 

飛鳥「皆さん。目を閉じ…」

 

 飛鳥がカードキーを取って喋ったその時、音楽が止まり、とても恐ろしい効果音と共に、とてつもなく怖い画像が部屋中に表示された。しかも何画面にも分かれて…。

 

「」

 

 それを見て、飛鳥も少し驚いたが、バンドガールズはもう完全に絶句していた。

 

リサ「あ…あがが…」

 

 リサは涙を流し、

 

蘭・巴・ひまり「……」

 

 蘭、巴、ひまりは腰を抜かし、

 

香澄「お、おしっこ出そう…」

千聖「しっかりして頂戴!!」

 

 香澄は涙を流しながら漏らしそうになり、

 

イヴ「き…きぇええええええええええ―――――――――――――!!!!」

薫「落ち着くんだ!!」

イヴ「うきー!! うきー!!」

 

 イヴが大暴れして薫が取り押さえた。

 

*****************

 

 そしてモニタールームでもその映像は流されていて、

 

有咲・沙綾「きゃ――――――――――――!!!!!」

 

 有咲と沙綾が絶叫して抱き合い、りみとたえは普通だった。

 

モカ「うわあああ~~~」

つぐみ「うわああ――――――――――ッ!!!」

 

 つぐみがモカに抱き着いた。

 

彩「いやあああああああああ!!!!」

麻弥「うわー!!!」

日菜「あはははははは!! 変な顔~~!!!!」

 

友希那「」

紗夜「こ、こんなのお化けと全く関係ないじゃないですか!! 驚かせてるだけじゃないですか!!」

あこ「び、びっくりしたぁ…」

燐子「……」

 

 燐子は突然のショッキングな画像に涙目になって放心していた。

 

花音「ふぇええええええええええ――――――――――――!!!」

はぐみ「きゃああああああ―――――――――!!!」

美咲「ああああああああああああああ!!!!」

こころ「とても大きな口ね!!」

 

 皆が絶叫する中、こころだけはいつも通りだった。

 

****************::

 

 そして効果音と画像が鳴り終わった後、また別の不気味な音楽と共に、とても大きな目玉が映されていた。暗闇の中なので正直夢に出てきそう。

 

飛鳥「ここで本気を出してきましたね。皆さん大丈夫…ではなさそうですね」

リサ「うぇええええ~~~~~~~~~ん…」

 

 そしてエレベータを何とか見つけ出した飛鳥達。

 

飛鳥「さあ、このエレベータに乗れば出られま…」

 

 エレベータが開いた次の瞬間、皆が一斉に乗り込んだ。

 

飛鳥「早…」

リサ「早く乗って!!! 一生のお願いだから早く乗って!!!」

飛鳥「あ、はい」

 

 飛鳥も乗り込んで、これで終わりかと思われた。エレベータの外はガラス張りになっていて、外に設置されているモニタールームで見学している有咲たちが見えた。

 

香澄「あっ!! 有咲たちがいるよ!!!」

リサ「やっと帰れる…」

 

 だが、エレベータはスタート地点があった1階を通り越して、地下へ…。

 

「え…?」

 

 そして扉が開くと、そこは立体駐車場で、何もない不気味な所だった。

 

蘭「なんで地下に行くの!?」

飛鳥「しかも入口には「EXTRA STAGE」って赤い文字が…」

ひまり「そんなのいらないよ~!!!!」

 

 そして皆が順路に従って歩いて行ったが、特に何もなかった。ちなみにどこかの図書館は地下8階まであるらしい。

 

*************************

 

 そして帰ってきた。

 

飛鳥「ただいま戻りました…」

モカ「お疲れ~」

飛鳥「疲れた…」

 

ひまり「うわ~ん!!! 怖かったよ~!!!」

 

 ひまりがモカに抱き着いた。

 

イヴ「生還しました!!」

千聖「そ、そうね…」

 

リサ「もういやだ~~~~」

薫「よしよし、よく頑張ったねリサ」

 

 参加者は無事に帰ったことを喜び合っていた。

 

飛鳥「で、結局白鷺先輩をメインしたいって話は…」

千聖「いいのよ。それはそうと、今回も大活躍だったわね」

飛鳥「そうでしょうか…」

リサ「うん。皆飛鳥くんのお陰だよ」

香澄「ありがと~!!!」

有咲「って、私に抱き着くなぁ!!///////」

 

 と、皆が笑いあった。

 

日菜「あ、そういえばエンディング歌うんだよね!?」

飛鳥「ええ。戸山さん達はまだ動けそうですか?」

香澄「うん!! 飛鳥くんのライブ見てみたい!!」

千聖「そういえば何を歌うの?」

日菜「河村隆一?」

飛鳥「にしようかと思ったんですけど、他の曲にしますか?」

日菜「ううん! あの曲がいいな!!」

 

 そう言って日菜のリクエストにより、エンディングは河村隆一の「I LOVE YOU」になった。

 

 特設ステージに飛鳥と、バックバンドをする黒服オールスターズが立っていた。後ろにはモニターがあった。

 

まりな「それでは、一丈字飛鳥with黒服オールスターズの皆さんで、河村隆一「I LOVE YOU」です! どうぞ!!」

 

 司会のまりながそう言うと、演奏が始まったが、後ろにあるモニターが表示された。それはお化けタワーに入る前の映像であり、映画のエンディングみたいになっていた。

 

香澄「すごーい!!」

リサ「あ、なんかもう泣きそう…」

 

 参加者が最前列に座って、香澄が反応すると、リサが泣きそうになっていた。映像の右には映画のようにクレジットが流れていた。一番最初に参加者、その後にモニタールームにいたメンバー、そして最後には飛鳥が表記されていて、そのあとは黒服たちやおばけタワーに携わった人々が表記されていた。

 

 飛鳥が歌い始めると、飛鳥の歌声とバックバンドの優しい演奏に参加者はうるみ始めた。長い戦いを戦い抜いた自分たちを優しく励まし、包み込んでくれていたからだった。

 

 1番のサビに入ると、香澄、イヴ、リサ、ひまり、巴が感涙していた。スクリーンには3階で幽霊に驚いて逃げ回っていた映像が流れていたが、それを乗り越えて、大きなことを成し遂げた為、感動していた。

 

 2番とラストサビ前は4階と5階、6階の映像が流れていたが、香澄たちは飛鳥を見ていた。参加してない一部のメンバーも香澄たちにつられて泣きそうになっていた。

 

 1回目のサビは歌っている飛鳥の映像が流れて、2回目のサビで地下駐車場で歩いている飛鳥たちが映し出されていた。香澄、蘭と巴がぶつくさ文句を言っているのを、リサとひまりがなだめて、千聖とイヴが苦笑いし、薫がいつも通り振る舞い、飛鳥はそれを何も言わずに聞いている。そしてひまりが出口を見つけると、香澄、イヴ、ひまり、巴、蘭が走り出した。リサが慌てて追いかけて、飛鳥、千聖、薫がそれを見守っている。

 

 そしてリサも早く来るように催促すると、3人が歩き出したところで左側の枠が消えて、クレジットが出終わると曲が終わり、それと同時に、最後にメッセージが表示された。

 

『THANK YOU FOR CHALLENGE!!』

 

飛鳥「ありがとうございました!」

 

 飛鳥がそう言い放つと、大歓声が起きた。最前列にいたタワーの参加者は全員が号泣しながら拍手していて、そのうち巴がスタンディングオベーションをした。

 

薫「とてもいいフィナーレだよ…」

千聖「そうね…。今回ばかりは同感だわ…」

 

 飛鳥とバックバンドへの拍手が鳴りやまず、日菜からアンコールを求められたが、エンディングなので行われなかった。

 

**************************

 

 後日…

 

友希那「Roseliaもあのタワーに上る事にしようかしら」

リサ「やめてぇ~!!!!!」

 

 蘭がマウント取ってきたのが原因である…。

 

 

 

 

おしまい

 



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第287話「女の子たちと海水浴!」

 ある日の事。飛鳥はPoppin’Party、Afterglow、パステルパレット、Roselia、ハロー、ハッピーワールドの5バンドと海に来ていた。

 

飛鳥「何の予告もなしに来れてる…」

美咲「一丈字くん。今回も頑張って」

飛鳥「あ、はい」

 

 美咲に肩を叩かれて、飛鳥は普通に返事をしていた。今回もきっと厳しい戦いになるだろうと思っていたが、これも仕事なので飛鳥は覚悟を決めた。

 

**********************

 

 水着に着替えた飛鳥とバンドガールズたちは、やっぱりバンドガールズはくぎ付けになっていた。というかもう完全に男性客の見る目がエロすぎる。

 

はぐみ「な、なんかすごく見られてるね…」

美咲「そりゃあ女25人もいるし、パステルパレットもいるから当然でしょ」

 

 はぐみが恥ずかしそうにすると、美咲が困惑していた。

 

つぐみ「ところで一丈字くん」

飛鳥「なんです?」

つぐみ「ダイビングスーツなの?」

飛鳥「日焼け対策ですよ。あんまり紫外線を浴びると肌がボロボロになるんで」

 

 つぐみの言葉に飛鳥が苦笑いしていた。

 

モカ「でもこれだと性別どっちかわかんないね~」

飛鳥「分かんない方がいいよ」

 

 モカの冷やかしに飛鳥が目を閉じて首を横を振ると、

 

「しかもあの中に男が一人いるぞ…」

「ああ。あのダイビングスーツの奴、男だろ…」

「前世でどれだけ徳を積んだらこんな事に…」

 

飛鳥(バレてる…)

モカ「この方が面白くなるしね~」

 

 飛鳥が石化していると、モカが反応し、つぐみが苦笑いした。

 

「皆さま。こちらにどうぞ」

 

 そう言って26人が移動すると、プライベートゾーンまで移動した。

 

「こちらをお使いください」

有咲「こ、こんなのってありなのか…?」

美咲「普通に迷惑だと思う…」

 

 本来なら弦巻家が所有している海外のプライベートビーチを使う予定だったが、パスパレの仕事の都合で近場にしようという事になったのだ。ちなみにこの海水浴場はも弦巻家が管理しているとの事だった…。

 

 そして事前に用意されていたパラソルやレジャーシートに荷物を置いた。

 

香澄「さあ、遊ぶぞー!!!」

はぐみ「おー!!」

 

 香澄、はぐみ、あこといった元気組はさっそく海で遊び始めた。

 

巴「あっ! 準備体操しないと足つるぞー!!」

あこ「あ、そうだった」

 

 香澄たちが準備体操をすると、他のメンバーが苦笑いした。

 

*****************:

 

 そしてほどなくして皆遊び始めた。海の中に入って遊んでいるもの、砂浜でビーチフラッグをしているもの、オイルを塗っているもの。

 

 そんな中、飛鳥はパラソルの下で香澄たちを見つめていた。

 

千聖「あなたは遊ばないの?」

 

 千聖が声をかけてきた。

 

飛鳥「白鷺先輩はどうなんですか?」

千聖「日焼けしちゃうわ」

モカ「モカちゃんも同じくで~す」

 

 正体を知る千聖とモカと一緒にいた。こころははぐみや香澄と一緒に遊んでいる。飛鳥は穏やかな時の流れを感じていた。

 

飛鳥「いやあ、本当に平和ですね」

千聖「そうでしょうね」

モカ「今日はいやらしい目で見てくる男子達もいないし~」

 

 モカがそういうと、飛鳥は視線をそらし、ゲートの前を見ていた。パスパレのファンと思われる男性たちが入ろうとしていたが、黒服達にとおせんぼうされていた。

 

飛鳥「…今回は大丈夫そうですね」

千聖「そうじゃなきゃ困るわ」

モカ「そうだよ~。今回は飛鳥くんを休ませるのも目的の一つなのに~」

 

 飛鳥と千聖が呆れていたが、モカはいつも通りだった。

 

 その時だった。

 

「一体何の話してるの~?」

 

 リサ・燐子・麻弥がやってきたが、燐子はリサの後ろに隠れていた。

 

飛鳥「皆さん」

燐子「……!!/////」

 

 燐子は恥ずかしがっていて、飛鳥は察した。

 

飛鳥「皆さんは行かれないんですか?」

リサ「そういう飛鳥くんこそ」

飛鳥「私はそうですね…。暫くこの平和な時間を堪能してたいので」

 

 飛鳥が正面を向くと、リサたちは苦笑いしていた。

 

リサ「本当にお疲れ様」

麻弥「ゆっくり休んでください」

飛鳥「あ、はい。ありがとうございます…」

 

 リサと麻弥からねぎらいの言葉をかけられて、飛鳥が苦笑いした。

 

モカ「これが性別逆だと、女子の嫉妬凄そうだよね~」

飛鳥「凄いよ」

千聖「どうしてそう言えるの?」

飛鳥「私の年上の友人にそういう方がいましてね。彼女は学校一のイケメンと仲が良かったので…」

「あー…」

 

 飛鳥の言葉にリサたちが反応した。

 

飛鳥「嫉妬するのは悪い事じゃないですけど、人に迷惑かけないでほしいですね」

リサ「ご、ごもっとも…」

 

 説得力がありすぎてリサは何も言えなかった。

 

「おーい!! 飛鳥くーん!! みんなー!!」

 

 香澄たちがやってきた。

 

香澄「一緒に遊ぼうよ!!」

あこ「そーだよ!」

日菜「るんってするよ!」

こころ「楽しいわよ!」

ひまり「ずっとそこにいるじゃん!!」

飛鳥「そうですね…」

 

 飛鳥がそういうと、どこからか悲鳴が発生した。

 

「!!?」

 

「一丈字てめぇええええええええええええ!!!」

「誰に断ってハーレム作っとんじゃああああああああああああああ!!!」

「オレもそこに入れろぉおおおおおおおおおお!!!」

 

 バンドリ学園の男子生徒たちもそこにいた。それに加え、

 

「お前パスパレに手を出したら殺す!!」

「どんな手を使った!!!」

「新参者のくせに!!」

 

 パスパレのファンも発狂して、飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「…やっぱりこうなるのね」

モカ「まあ、お約束なものだからね~」

千聖「言わせておけばいいのよ」

飛鳥「ネットである事ない事書かれますよ?」

千聖「大丈夫よ」

 

 千聖が飛鳥の顔ををじっと見ると、飛鳥は察した。

 

飛鳥(あぁ…そういやそうだったな…。あの人がいるもんな…)

 

 飛鳥の脳裏には師匠の古堂和哉が思い浮かんだ。

 

千聖「さ、遊んでらっしゃい」

飛鳥「あ、はい…」

日菜「さあさあ!」

飛鳥「!!」

 

 日菜が飛鳥の手を引っ張ると、また発狂した。

 

「ああああああああああああああああああああああ!!!!」

「夢なら醒めてくれぇえええええええええええええ!!!」

「日菜ちゃんの手をぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 パスパレのファンや男子生徒たちがもだえ苦しんでいた。

 

リサ「ア、アイドルって大変だね…」

千聖「そうなのよ…」

 

 リサと千聖はドン引きしていた。

 

麻弥「それもそうですけど、一丈字さんが毎回相手をしているんですよね…」

モカ「なんかアイスでも奢ってあげましょ~」

 

 この後、飛鳥は普通に遊んだ。紗夜とペアを組んでこころ、香澄ペアとビーチバレーをして勝利した。

 

日菜「おねーちゃんが凄く嬉しそう!!!」

紗夜「そ、そんな事ないわよ!!//////」

 

 

 

おしまい

 



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第289話「フライドポテト祭」

 

 

 ある日のバンドリ学園。

 

香澄「私、白いご飯とフライドポテトが大好きなんだー」

 

 カフェテリアで香澄と飛鳥が会話をしていた。飛鳥が普通に食事をしていた所、香澄がやってきて一緒に食事をすることになったのだ。ちなみに飛鳥は一人用のカウンターに座っていたのだが、香澄が隣に来たという感じである。

 

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 飛鳥が普通に返事をしていた。

 

香澄「飛鳥くんは?」

飛鳥「私も好きですね」

香澄「良かったー…」

 

 飛鳥の発言に香澄は何故か安心した。

 

飛鳥「ファミレスとかで、ハンバーグの突合せにポテトありますもんね…」

香澄「そう! ハンバーグのソースにポテトを絡めて、白いご飯と一緒に食べるのも美味しいんだよねー」

 

 ちなみに香澄がランチで頼んだのはハンバーグ定食だった。ポテトとライスがついていた。飛鳥はそんな香澄の表情を見て苦笑いしていたが、

 

飛鳥(なんでもいいけど紗夜先輩が、後ろから凄くうなずいてらっしゃる…)

 

 紗夜が会話を聞いていたのか、香澄の言葉に力強くうなずいた。他の生徒たちが見てすぐに分かるように…。

 

飛鳥「そういや、マックのナゲットのソースにつけても美味しいですよね」

香澄「分かりすぎる。一番好きな味は?」

飛鳥「バーベキューですね」

香澄「うーん。私はマスタードかな。飛鳥くんって辛いの苦手?」

飛鳥「マスタードくらいなら大丈夫ですけど…」

香澄「ケチャップと一緒につけて食べるのもまたいいんだよねー」

飛鳥(紗夜先輩が凄くうなずいてらっしゃる…)

 

 飛鳥はさっきから紗夜が気になって仕方なかった。自分も会話に加わりたいが、キャラを崩したくないし、どうしたらいいか迷っていた。

 

香澄「どうしたの?」

飛鳥「いや、何でもないですよ」

 

 香澄にそう聞かれて、飛鳥が苦笑いした。

 

香澄「そういや期間限定のソースがあるけど、あの中で好きだったソースとかってある?」

飛鳥「最近はステーキソースが好きでしたね」

香澄「私はやっぱりチーズかなー」

飛鳥「チーズって相性いいですもんね…」

 

 そうポテトの話をずっとしていた。

 

香澄「この際、全部のソースが一度に楽しめるのをやってくれないかなー」

飛鳥「注文が大変そうだから、流石に無理じゃないですか?」

香澄「そうだよねー」

 

 そんな時だった。

 

「あら! 香澄に飛鳥じゃない!」

 

 こころがやってきた。

 

飛鳥(あっ…)

香澄「こころちゃん!」

こころ「楽しそうな話をしてたわね! 何の話をしてたの?」

 

 飛鳥が事情を説明した。

 

こころ「いいわね!」

飛鳥「けどお店の人に負担がかかるから止めといた方が…」

こころ「それなら、今度あたしの家でポテトパーティしましょ?」

飛鳥「まあ、それだったら…」

香澄「さんせー!! おたえ達も誘うね!」

こころ「あたし達もはぐみ達を誘うわ!」

紗夜「……!!」

 

 果たして自分は誘ってもらえるかどうか不安だった。本音としては喉から手が出るほど行きたかった。だが、ポテト好きを公言してしまえば、自分が今まで積み上げてきたイメージを崩しかねない。何とかごく自然にパーティに混ざるにはどうしたらよいか考えていた。

 

飛鳥「他のバンドグループも誘いますか?」

紗夜「」

 

 飛鳥の言葉に紗夜は感心した。流石座長だと。もしこれで出身作品が違っていなければ間違いなく惚れていただろうと紗夜は感じていた。

 

こころ「そうね! 皆にも声をかけましょう!」

 

 ポテトパーティをやる約束を取り付けたわけだが…。

 

 ここからが問題だった。

 

***************************

 

「オレたちもパーティに混ぜろ!!」

「ポテト!! ポテト!! ポテト!! ポテト!!」

 

 下心丸出しの男子生徒たちが自分たちも参加させろと言ってきたのだ。特に悪い事はしていない為、むやみに邪険に扱う訳にもいかなかった。

 

こころ「いいわよ?」

 

 こころがあっさり認めると、飛鳥と黒服たちが裏で打ち合わせをしていた。

 

(ようし…これでオレたちも美少女との食事にありつける…)

(いつまでもいい気になるなよな一丈字…)

(うひひひひ…ポテトだけじゃなくて、あの子も食べてやる…)

(オレのポテトを…)

 

*********************:

 

 パーティ当日。絶好のパーティ日和で屋外で行われることになった。男子生徒たちも私服で来ていたのだが…。

 

「……!!!」

 

 黒服を着た屈強な男たちが警備をしていた。こんなところで下手なナンパをすれば消されてしまうのは間違いなかった。

 

 そして女子たちも来ていて、皆おしゃれな私服だった。

 

(おおおおおおおおおおおお!!!)

(流石最近有名になっているガールズバンドなだけある!!)

(めっちゃいいにおいするんだろうな…)

(汗舐めたい…)

 

 あからさまに下心を丸出しにすると、黒服の男たちが目を光らせた。

 

(こえぇえええええええええええええええええ!!!!)

 

こころ「皆よく来てくれたわね! いっぱいポテトを楽しんで頂戴!!」

 

 こころがそういうと、確かに言葉通りポテトの山があった。しかも作り置きしている奴と、弦巻家の人間が揚げたてを用意してくれるというサービス付き。しかもソースが数十種類もあった。

 

香澄「うわー! すごーい!!」

有咲「あんまり食べ過ぎるなよ」

沙綾「そうそう。ポテトってカロリー高いから…」

香澄「大丈夫だよー。ライブでカロリー消費すればいいんだし」

有咲「それで消費できるなら、あそこまで苦労しねぇってば…」

 

 そして紗夜も目を光らせていた。

 

紗夜「……!」

あこ(紗夜さん…。凄く目を輝かせてるな…)

リサ(天国なんだろうねぇ。今…)

 

 その様子を男子生徒たちも見ていた。

 

(やっぱり噂は間違いなかった。紗夜ちゃんポテトが好きなんだな)

(萌え)

(スマホの準備は用意した。撮りまくってやる)

(ぬおおおほおおおおお!!!)

 

 こうして、普通にポテトパーティを楽しみました。

 

飛鳥「あー…今日はいたって平和な回」

美咲「ずっとこうだったらいいのにね」

飛鳥「本当にそう思います」

 

 

おしまい

 



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第290話「飛鳥と怪しいお店」

 

 

 それはある日の事だった。Afterglowがライブハウスで練習を終えて帰路についていた時の事。

 

「おなかすいたー」

 

 モカがそう言い放つと、他の4人がモカを見た。

 

つぐみ「何か食べて帰る?」

モカ「うーん」

巴「それだったらラーメンにすっか?」

蘭「なんでもいいよ。行こう」

 

 そう言ってAfteglowがラーメン屋に行こうとしたその時、ひまりがある事に気づいた。

 

ひまり「あれ? あそこにいるのって一丈字くんじゃない?」

「え?」

 

 ひまりが指をさした先に、私服姿の飛鳥がいた。いつもは眼鏡をかけているがプライベート時は外している。案外気づかれないのだが、ある程度顔なじみになったのである程度は分かるようになった。

 

つぐみ「ホントだ」

モカ「声かけてみる~?」

蘭「邪魔しちゃ悪いよ。行こう」

 

 すると飛鳥は周りをキョロキョロ見渡して、その場を後にした。

 

巴「…何か探してるみたいだな」

モカ「ちょっと追いかけてみる~?」

蘭「いや、いいよ…。後で聞けばいいんだし」

モカ「それもそうだよね~」

 

 そう言って蘭たちはラーメン屋に向かったが、その途中で飛鳥が路地裏に入っていくのを見た。

 

モカ「路地裏…」

蘭「ちょ、ちょっとやめようよ…。なんかやばいって…」

 

 蘭は嫌な予感がしたのか、困った顔をした。するとモカ以外の3人も困った顔をした。

 

巴「そ、そうだな…。後でメールで聞いてみるか…」

 

 約1時間後

 

モカ「まだ既読つかないなぁ~」

 

 カフェでの食事が終わり、モカはスマホで飛鳥に送ったメールを確認していた。

 

蘭「まさかとは思うけど…本当にやばいところに行ってるんじゃ…」

モカ「それはないよ~」

ひまり「どうして?」

モカ「なんとなく~」

ひまり「それじゃ分かんないよ!」

 

 そう言いあっていると、飛鳥が路地裏から出てきた。

 

「!!」

 

 飛鳥の姿を見るなり、蘭たちは飛鳥の方に駆け出した。

 

つぐみ「一丈字くん!」

飛鳥「?」

 

 飛鳥が横を見てAfteglowの存在に気づいた。

 

飛鳥「これはこれは。練習帰りですか?」

モカ「そうだけど、メールしたんだよ~?」

飛鳥「あ、そうなんですか? すみません、確認してませんでした」

 

 するとモカがウインクをして飛鳥にサインを送ると、飛鳥は苦笑いした。

 

飛鳥『…大丈夫だよ。事件性はないからちゃんと説明する』

モカ『それならいいけど~』

 

巴「それはそうと、路地裏に入って何してたんだ?」

飛鳥「ラーメン屋に行ってました」

「…え?」

 

 飛鳥の言葉にモカ以外の4人の目が点になった。

 

飛鳥「広島にいたころの知り合いがこの辺にラーメン屋を開店したって聞いて、行ってたんですよ」

蘭「ろ、路地裏にラーメン屋って…」

ひまり「お客さん来るの…?」

飛鳥「ちょっと秘密のあるラーメン屋にしたいという事で、あの場所を選んだみたいなんですよ。写真がこちらです」

 

 飛鳥がスマホで撮影した店の写真をAfterglowに見せた。

 

ひまり「ラーメン…霊界…?」

蘭「何この呪われそうな名前…!!」

つぐみ「も、もしかして店主さんの趣味…?」

飛鳥「そうなんですよ。店主さんは黒魔術とかが大好きで…」

巴「…あこが好きそうだな。あと、りみ」

 

モカ「で、飛鳥くんはここでラーメン食べてきたんだ~」

飛鳥「ええ。あと、スイーツも頂きました」

ひまり「スイーツ? どんなのがあるの?」

飛鳥「裏メニューなんですけど、こんなのがありますね」

 

 飛鳥が写真を見せたが、チョコレートケーキに脳みそをムース上にしたものや、どくろ型のチョコレート。あとは黒いワイングラスに注ぎこまれたブラッドオレンジジュースが映っていた。

 

ひまり「お、おいしそう…」

モカ「これ、店主さんの手作り?」

飛鳥「そうですね」

ひまり「スイーツは食べてみたいけど、お店の雰囲気怖そう…」

飛鳥「まあ、そうなりますよね」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

モカ「ラーメンはどんなラーメンがあるの?」

飛鳥「そうですね…。富山ブラックみたいにスープが黒いです」

巴「あー…」

飛鳥「店長のイメージとしては、ツボの中になんか薬の材料を入れるイメージですかね。これが写真です」

モカ「お~。確かに黒魔術~」

 

 確かに魔法の鍋っぽい器に黒いスープと具材が入っていて、いかにも魔法のスープみたいな感じだった。

 

蘭「けど、これなんか量が多くない…?」

飛鳥「あ、ごめんなさい。メガ盛りサイズを頼んだのでこの写真なんですよ。本当はもっと小さいです」

「メガ盛り!!?」

飛鳥「お腹すかせてまして…」

 

 驚くAfterglowに対し、飛鳥が苦笑いした。

 

モカ「そういえば飛鳥くんもよく食べるもんね~。あ、そうだ。この店に連れてってよ~」

飛鳥「え?」

 

 飛鳥が驚いた。

 

ひまり「モ、モカまだ食べるの!!?」

蘭「結構食べたんじゃ…」

モカ「店の様子を見るだけだよ~。他の皆はどうする~?」

巴「本当は気が引けるけど…ラーメンと言われちゃ黙ってられないね」

ひまり「ええっ!!? でも私もスイーツは気になるかも…」

蘭「……」

 

 蘭が嫌そうにしていた。

 

つぐみ「あ、えっと。私は今日は遠慮しとくよ。蘭ちゃんが…」

蘭「行く」

つぐみ「え」

蘭「……」

 

 そして6人で店の前まで移動することになったが、黒い看板に紫色の文字で店の名前が書いてあって、気が引けていた。

 

蘭・巴「ひっ!!」

モカ「お~。確かに霊界に連れていかれそうだね~」

ひまり「実物で見ると凄く怖いよぉ!!」

飛鳥「まあ、もし機会があれば行ってみて」

 

 その時だった。

 

「あれ? 飛鳥くん…?」

 

 横からとてもか細い男性の声がして、飛鳥たちが横を向くと、長身で長髪、根が暗そうな男性が現れた。

 

蘭・巴・ひまり「うわああああああああああああっ!!!!」

 

 3人が驚いて腰を抜かした。

 

飛鳥「皆さん。この人が店長ですよ」

「ああ…。驚かせてごめんね」

 

 店長が困ったように蘭たちに謝った。

 

****************

 

「改めて、ラーメン霊界の店長の影野です。宜しく…」

「よ、よろしくお願いします…」

 

 3人が起き上がった後、店長の影野が自己紹介をした。

 

影野「どうしてここに?」

飛鳥「彼女たちに店の話をしたら、是非案内してほしいと」

モカ「黒魔術ラーメン美味しそうだったので~」

影野「そうですか。お客さんですね…」

モカ「でも、さっきカフェでご飯食べてきちゃったので、また来ますね~」

影野「お待ちしております…」

 

 こうしてAfterglowは後日改めてラーメン霊界に行くことになりましたが…。

 

飛鳥「私必要ですか?」

 

 なぜか飛鳥も駆り出され…。

 

************************

 

影野「お待たせしました。黒魔術ラーメンと裏メニューの暗黒スイーツです…」

「おおおおおお!!!」

 

 6人でラーメンとスイーツを食べましたとさ。

 

蘭「み、店の雰囲気が…」

ひまり「あのー。明るくして貰う事って…」

モカ「二人とも―。お店の雰囲気壊しちゃダメだよー。Afterglowがパスパレ路線になるようなものだよ~?」

ひまり「ひ~ん」

蘭「……」

 

 特にオチはない。

 

おしまい

 



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第291話「香澄の誕生日!」

 

 

 7月14日。

 

「せーの…」

「香澄! お誕生日おめでとー!!」

「ありがとうございまーす!」

 

 有咲の家の蔵で、Poppin’Partyが香澄の誕生日を祝っていた。

 

香澄「テストが終わった後で良かったー」

有咲「学校から誕生日プレゼントとして追試を貰わないようになー」

香澄「ちょ、ひどいよ有咲ぁ~」

有咲「だから抱き着くなっての!!」

 

 香澄が有咲に抱き着くと、有咲が鬱陶しがっていた。

 

たえ「いやー。それにしても今日も学校凄かったよね」

りみ「うーん…」

沙綾「まあ、いつもの事と言えばいつもの事なんだけど…」

 

 Poppin’Partyは他の人の誕生日の事を思い返していた。

 

*************************

 

『4月6日:白鷺千聖』

 

千聖「この時はまだ始業式前だから、学校の皆とのかかわりはないのだけど…」

 

 千聖はパスパレの事務所の会議室にいた。メンバーも一緒にいる。

 

日菜「そういやどうなってんだろうね。時の進み具合」

千聖「日菜ちゃん?」

イヴ「でも、事務所への誕生日プレゼントはたくさん届いてますよ!」

千聖「そうなのよね。でも…」

日菜「下着が結構多いね。パンツとか派手だし…」

千聖「一体どういうつもりなのかしら…!!」

麻弥「いやあ、それは…」

 

 麻弥が視線をそらした。

 

日菜「まあ、これもアイドルの運命という事で」

千聖「あなたにも下着が送られることを祈ってるわ」

日菜「えー。なんかるんって来るもの送られるかなぁ」

彩(日菜ちゃん。メンタル強すぎ…!!)

 

『美竹蘭:4月10日 & 宇田川巴:4月15日』

 

モカ「蘭、巴。お誕生日おめでとー」

蘭「…ありがとう」

巴「サンキューなー」

 

 Afterglowで蘭と巴の誕生日パーティーをしていた。2人とも誕生日が近いという事と、メンバーの予定も考慮して、5人が一緒に集まれる日に誕生日パーティーを行った。

 

モカ「それはそうと、此間の10日とかすごかったよねー。蘭が男子にモテモテで」

蘭「…そんな事ないし」

 

 モカの言葉に蘭が照れていた。

 

モカ「でも下着を送ってくるのは凄かったよねー」

蘭「…あれはいらない」

巴「なんで下着送るんだろうな?」

モカ「それはあれだよ~。自分が送った下着をつけて貰う事で、蘭を束縛…」

蘭「ちょっとやめよう。その話…」

巴「アタシの誕生日、不安になってきた…」

 

 モカの話に蘭がドン引きすると、数日後に誕生日を迎える巴が困惑していた。

 

モカ「中学までは女子校で、男女共学にしてみたけど…男子って大胆だね~」

ひまり「そんな大胆さはいらないんだけど…」

巴「アタシは、前もって要求しようかな…」

蘭「それはそれでいやらしいよ…」

 

 そして巴の誕生日前日、2組の教室で巴は誕生日プレゼントはラーメンが欲しいと遠回しに言ってみた。すると当日…。

 

巴「ラーメンの山だ」

モカ「しかも全国ご当地…」

 

 巴の机やロッカーにはラーメンの山が…。

 

巴「こんなに食べきれないけど…まあいいか!」

ひまり「……」

蘭「ひまり。自分の誕生日にスイーツをねだるのはなしだよ」

モカ「ひーちゃんは体重計とかダイエット器具がいいんじゃないかな~」

ひまり「ひどい!!!」

 

 ひまりが涙目で叫ぶと、つぐみが苦笑いした。

 

『松原花音:5月11日』

 

「花音ちゃん! お誕生日おめでとう!!」

「これ、オレからのプレゼント!!」 ※ ブラジャー

「これ、オレの!!」 ※ パンティ

「オレがプレゼント!!」

花音「ふ、ふぇえええええええええええ~~~~~~~~~~~」

 

 男子生徒たちに一斉に詰め寄られて、花音がパニック状態になっていると、千聖がガードした。

 

千聖「プレゼントがある人はこちらに渡して頂戴。検品するわ」

「おお!! 千聖ちゃんが現れたぞ!」

「圧倒的幼馴染!!」

「ちさかの!! ちさかの!!」

「あの間に挟まれたい…」

 

 その後

千聖「飛鳥くん。ぬいぐるみに仕込まれた盗聴器を破壊して頂戴…」

飛鳥「は、はい…」

 

 千聖は飛鳥に盗聴器の破壊を依頼したが、げっそりしていた。

 

飛鳥「大丈夫…ではないですね…」

千聖「飛鳥くん」

飛鳥「な、なんですか…?」

 

 千聖が飛鳥を見つめた。

 

千聖「あなたが最後の希望よ…」

飛鳥「千聖さん。お気を確かに!!」

 

 話が急に重くなったので、飛鳥も思わず困惑した。

 

マスキング「ちなみに翌日アタシの誕生日です」

飛鳥「プレゼント送らせていただきました」

 

***********************

 

『山吹沙綾:5月19日』

 

「さーやちゃん! お誕生日おめでとう!!」

沙綾「あ、ありがとう…」

「ベーカリー買ってくね!!」

沙綾「あ、ありが…」

 

 やまぶきベーカリーは長蛇の列となり、それを見ていた商店街の人達は「ああ、今日沙綾ちゃん誕生日か…」と思っていた。

 

沙綾父「一丈字くん! ヘルプ助かるよ!」

飛鳥「あ、はい」

 

 飛鳥がこっそりアルバイトをしていたのは内緒だが、めちゃくちゃ手際が良く何とかさばけた。ちなみに客は飛鳥がアルバイトしていた事は知らない。

 

 そして…

 

沙綾「やっぱり下着が送られるのね…」

紗南「おとな…」

純「紗南はこっちであそぼうな」

 

 沙綾の弟である純も流石に空気を読んだのか、妹の紗南を連れて行った。

 

『6月16日:広町七深』

 

七深「広町はこの時お嬢様学校の『月ノ森』にいて、男性との接触が殆どないので、被害がありませんでした~。でも、下着が送られるのが普通なのかな?」

「普通じゃありません!!!」

 

『6月27日:若宮イヴ』

 

 事務所

イヴ「こ、これは!!」

千聖「……!!」

 

 事務所に送られたイヴの誕生日プレゼントを見て、千聖は頭を抱えていた。

 

イヴ「フンドシです!!」

日菜「あー…そう来たか」

麻弥「どこで売ってるんですかね…」

 

 日菜たちも思わず苦笑いするしかなかった。

 

イヴ「赤や白、色々ありますね!」

 

 イヴは思ったほか喜んでいた。そう、昔の日本人の下着はふんどしが普通で、イヴが心がけている武士道の武士もふんどしを履いていたからだった。

 

千聖「イヴちゃん。喜んでくれて何よりだけど、あまり喜んだようにしないで頂戴。このままだと他の子にも…」

日菜「そういや送られてくる下着って、結構持たれてるイメージに持たれるもの多いよね」

千聖「そ、そうね…」

日菜「千聖ちゃんなんか、派手か白か、黒だし…」

千聖「どういうイメージを持ってるのかしら?」

 

 千聖が黒い笑みを浮かべて日菜を問い詰めた。

 

*********************:

 

『宇田川あこ:7月3日』

 

あこ「あこ! 誕生日プレゼントはかっこいいのがいいな!」

 

 姉・巴の成功談を参考に、あこはけん制した。自分も「Roselia」のメンバーだし、もしかしたらそういうのを貰うかもしれないと思っていた。

 

あこ「確かにかっこいいけど…」

 

 かっこいい下着が送られた。

 

******************

 

「……」

 

 思い返すPoppin’Party。苦笑いするかドン引きするかだった。

 

有咲「なあ、女子に下着を誕生日プレゼントするってどういうつもりだよ」

沙綾「そ、そういう事なんじゃないの…?」

たえ「そういや飛鳥くんからは貰ったことないよね」

有咲「いや、出費が凄い事になるだろ。高いの貰っても困るし…」

香澄「あ、そういえば飛鳥くんって誕生日いつなんだろ」

沙綾「そういえば、1月だって聞いたことあるけど…」

 

 色々ありつつも、Poppin’Partyはいつもと同じように過ごすのだった。

 

たえ「ちなみに香澄はどんな下着貰ったの?」

香澄「えっとね。なんか白いのばっかりなんだけど…」

沙綾「それってアレかな。純真なままでいてほしいって事かな…」

有咲「今度禁止にしてもらおうぜ…」

沙綾「いや、パスパレは無理でしょ」

 

 

おしまい

 



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第292話「土用の丑の日で地獄を見た」

 ある日のこと。

 

「そういや今年の土用の丑の日っていつだっけ」

 

 Poppin’Partyは市ヶ谷家の蔵でバンドの休憩をしていた時のことだった。ドラム担当の山吹沙綾がそういう。

 

有咲「確か7月28日だったような…」

香澄「土用の丑の日って、確かうなぎを食べる日だったよね!?」

有咲「まあな。別に「う」がつくものだったらなんでもいいんだけど…」

たえ「うさぎ?」

 

 たえの発言に空気が止まった。夏真っ盛りでとても暑いはずなのにとても凍り付いた。

 

沙綾「お、おたえ…」

有咲「あの、食べものの話をしてるんだよ? もしかして家で飼ってるウサギって…」

香澄「え~~~!!!! そんなのダメだよ!! かわいそうだよぉ!!!」

有咲「いや、そんなこと言ってたら他の動物も可哀そうになっちまうから…」

 

 なんか話がややこしくなりそうな気がした有咲だった。そして予感は的中した。いつもひょうひょうとしているたえが急に真っ青になった。

 

りみ「ど、どうしたの…?」

たえ「も、もしかして…」

「?」

 

 たえがブルブル震えていた。

 

たえ「今回の話…オッちゃん達を食べる話なんじゃ…」

有咲「大丈夫だと思うよ!!?」

 

 一体どうやったらそんな発想になるんだと有咲はそう突っ込まずにはいられなかった。

 

沙綾「いくらなんでも考えすぎじゃ…」

香澄「そ、そうだよ! あってはならない話だよぉ!!」

 

 沙綾と香澄がなだめようとするが、たえの震えが止まらない。

 

有咲「あれだ。ちょっと一丈字に電話してみたらどうだ?」

たえ「うん!」

 

 たえが飛鳥に電話をかけようとしたが、たえのスマホに飛鳥の連絡先がなかった。

 

たえ「…あれ?」

有咲「ど、どうした?」

 

 たえが有咲の方を見た。

 

たえ「ねえ有咲…。飛鳥くんの電話番号って分かる?」

有咲「はぁ? アドレス帳に残してねーのかよ…」

 

 香澄も自分のスマホで飛鳥の連絡先を確認したが、

 

香澄「あれ!? なくなってる!!」

「!!?」

香澄「飛鳥くんの連絡先がなくなってるよ!?」

 

 皆が驚き、有咲も確認したが自分のスマホにも飛鳥の連絡先が消えていた。

 

 

有咲「う、うそだろ…」

たえ「どうしよう…。このままオッちゃんたちが食べられちゃったら…」

りみ「だ、大丈夫だよ。おたえちゃん」

たえ「…しちゃいられない」

「え?」

たえ「私ちょっと切り上げる! 練習はまた倍にするから!」

香澄「え!?」

有咲「おい、おたえぇ!」

 

 たえは荷物をまとめて帰ってしまい、4人は茫然と見つめた。

 

香澄「おたえ…」

沙綾「考えすぎだと思うんだけどね…」

りみ「でも、どうして一丈字くんのアドレスが…」

有咲「……」

 

 すると有咲があることに気づき、とてつもなく嫌な予感がした。

 

有咲「悪い3人とも。あたしもちょっと用事できたから練習切り上げるわ」

沙綾「え!?」

有咲「練習倍にすっから」

 

 そう言って有咲も荷物をまとめた。

 

香澄「ど、どうしたの有咲!!」

有咲「このままだと…このままだと私と奥沢さんの負担がすごいことになるんだよぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

*****************************

 

 そしてどうなったかというと…。

 

「~~~~~~~!!!!!」

 

 たえと有咲、そして香澄、りみ、沙綾は新幹線に乗り込み、バスに乗り込んで、ある場所に向かった。

 

****************************

 

 

「…土用の丑は平賀源内が鰻屋を繁盛させるために張り紙を貼った事から始まったんだ」

「へー」

 

 広島のとある小さな町で、飛鳥は親友である奈良川京、林日向の3人で遊んでいた。遊んでいたというより、京のサッカーの練習に飛鳥が付き合っていたと言ってもいいだろう。

 だが、現在は休憩して談笑しながら水分補給をとっていた所だった。

 

 そんな時だった。

 

「いた!!」

飛鳥・京・日向「!!?」

 

 Poppin′Partyが現れたことで飛鳥、京、日向が驚いていた。

 

たえ「ようやく見つけた…飛鳥くん!!」

飛鳥「え、えっと…花園さん!? どうしてここに!?」

 

 するとたえが飛鳥に縋りついた。

 

たえ「お願い!! オッちゃんたちを食べないでぇ!!」

有咲「お前自分だけ逃げようとしてもそうはいかないからなぁ!!?」

 

 有咲も飛鳥に詰め寄ったが、飛鳥はいったい何のことかわからなかった。京と日向も一応「バンドリ関係」の用事である事は理解できたが、いったい何のことか分からなかった。

 

 

*******************************

 

 

飛鳥「ああ…。そういう事だったんですね…」

 

 京の実家である「奈良川ベーカリー」のイートインで飛鳥たちはいたが、沙綾から事情を聴いた飛鳥は納得した。

 

有咲「もー大変だったんだぜ。考えすぎだって言ってるのにおたえが…」

京「いや、お前も飛鳥に押し付けられると思って来てたじゃねぇか」

有咲「ま、まあそりゃそうだけどさ…」

 

 京に言われて有咲が視線をそらした。

 

飛鳥「本題に戻りますけど、その…ペットのウサギを食べるということはないのでご安心ください」

たえ「うん。ありがとう…」

飛鳥「しかし、よくここまで来れましたね」

日向「交通費とか大丈夫ですか?」

たえ「大丈夫。バイトしてるから」

香澄「ああっ!! もう私ギリギリだよ~」

有咲「…香澄たちは来る必要あったのかよ」

香澄「大ありだよ! だって気になるじゃん!!」

 

 香澄の言葉に飛鳥たちは困惑した。

 

沙綾「ところで…ここが奈良川くんちのパン屋さんね」

京「ああ。折角だから食べて帰ってくれよ」

 

 このままパンパーティーが行われたという。

 

香澄「その、帰りの交通費…」

飛鳥「……」

 

 

おしまい

 



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第293話「一丈字飛鳥に明日はない」

 

 

 一丈字飛鳥です。

 

「りみちゃん!! チョココロネなんかよりも、オレのチ〇ココロネぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

りみ「……!!」

 

 なんという事でしょう。私の目の前には牛込さんと全裸の男がいて、男は股間のブツを牛込さんに見せつけてました。で、牛込さんはチョココロネを丁度食べてる最中でした。

 

 そしてなんかもうヤバイワードが出そうだったので、超能力を使ってぶっ飛ばしました。誰も見てないし、セーフだよね。

 

りみ「……!?」

 

 牛込さんは何が起きたか理解できてなかったようでしたが、私は構わず超能力で牛込さんの記憶を消しました。目の前で卑猥なワードを叫ばれた記憶なんてないほうがいいよね。

 

 もう夜も危ないし、私は牛込さんに声をかけることにしました。牛込さんはもうチョココロネを食べ終わっていた。

 

飛鳥「牛込さん」

りみ「あ、一丈字くん…」

飛鳥「ここで買い食いですか?」

りみ「え、えっと…。おうちに帰って食べようと思ったんだけど、我慢できなくて…」

飛鳥「そうですか。最近この辺に不審者が出てるみたいなので…」

「りみちゃぁん!!?」

 

 全裸の男が懲りずに出てきた。あれぇ? さっき思いっきりぶっ飛ばしたんだけどな。まあ、全裸の男が現れて男のブツを見たので、牛込さんは顔を真っ赤にして両手を覆っていて、私はスマホを取り出しました。自分でも自覚があるくらい無表情でした。

 

飛鳥「これ以上近づくと警察呼びますよ」

「それでオレが怯むと思ってるのか!!」

飛鳥「怯んでください。はい、呼びました。できれば婦人警官を1名連れてきてください」

「なら、通報されるまでの間、オレの×××を見て赤面しているりみちゃんのリアクションを楽しむまでだァ!!」

 

 男のリアクションを見て、飛鳥は石化した。久々のバンドリでこんなにも狂った話を書いて、ブシロードに怒られないか不安だった。

 

飛鳥(二次創作だからって、色々と甘えてたらいけないんだよなぁ)

 

 そう思いながらも飛鳥は振り返った。

 

飛鳥「牛込さん。私の傍を離れないでください」

りみ「ひゃ、ひゃい…//////」

「あぁ…りみちゃんがオレの裸を見て赤面している…」

飛鳥「あのー。なんで牛込さんに対して裸を?」

「正直若い女の子だったら誰でもよかった」

飛鳥「きっつい言葉をかけられるかもしれなかったんですよ?」

「寧ろご褒美!!! 呆れた目で×××小さいとか、赤ちゃんみたいな×××××とか、そんな体を自分より年下の女の子の見られて恥ずかしくないのとか?」

飛鳥「ああ、本当に黄色い救急車があればよかったのになぁ」

 

 りみは必死に耳をふさいでいて、飛鳥が超能力を使って聞こえないようにしていた。

 

 そして暫くして警察官がやってきて、男を取り押さえた。

 

「なんでこんなマネを!! 仕事は何をしてるんだ!!」

「無職!!」

「家族に申し訳ないと思わないのか!!」

「両親も兄弟も元嫁も子供も皆エリート!! オレの逮捕で壊れちまえばいいのさ!!」

飛鳥(あぁ…人間失うものがないと、本当に何するかわからないもんなんだなぁ…)

 

 飛鳥はりみをガードしながら、そう思っていた。

 

「大丈夫かね君たち!!」

飛鳥「ええ。彼女を家まで送ってやってください。できれば婦人警官の方で」

「わ、分かった…」

「さあ、行きましょう!」

 

 若い婦人警官がやってきて、りみをパトカーで家まで送ろうとすると、りみが飛鳥を見た。

 

りみ「あ、一丈字くん…」

飛鳥「あとは私が何とかしておきます。終わったらメールしますから」

 

 そう言って飛鳥はりみを家に帰らせた。

 

飛鳥「さて、行きましょうか」

「あ、ああ…」

 

 そして飛鳥は状況説明の為、警察署で事情聴取を受けていた。

 

飛鳥(これで何回目だろう…)

 

*******************************

 

 そしてすぐさま学校で噂になった。

 

「お、おい…。聞いたか…?」

「不審者がりみちゃんに×××を…」

「な、なんて破廉恥な!!」

「オレも見られてぇ…」

「え?」

 

 そして1年3組の教室はというと…。

 

「一丈字くん。大変だったね…」

飛鳥「もう慣れましたよ」

 

 クラスメイト達に囲まれて、飛鳥は静かに苦笑いしたが、もう本当に遭ってほしくないと考えていた。もしも見せていた相手がこころだったら、凄く大変な事になっていたと思っていた。

 

飛鳥「とにかくもう無事だったので、何も言わないでください…」

「う、うん…」

 

 その時だった。

 

「一丈字くん」

飛鳥「!?」

 

 声をかけられたので、飛鳥が横を向くと、一人の女子生徒がいた。りみの姉である牛込ゆりである。

 

飛鳥「牛込先輩!」

ゆり「ちょっといいかしら」

 

 そう言ってゆりは飛鳥をカフェテリアに連れ出した。

 

ゆり「先日は妹を助けてくれてありがとう」

飛鳥「いえ…。それよりも、りみさんは…」

ゆり「大丈夫よ。ちょっとショックを受けてたみたいだけど、元気そうにしてるわ」

飛鳥「そうですか…」

 

 ゆりの言葉を聞いて、飛鳥が苦笑いした。

 

ゆり「にしても…犯人が結構狂ってるわね」

飛鳥「そーなんですよ…」

 

 ゆりの言葉に飛鳥はめちゃくちゃ肩を落とした。

 

飛鳥「もしかしたら他にもいるかもしれないので、気を付けた方が…」

「気を付けた方がいいのはお前だ。疫病神」

「!?」

 

 飛鳥とゆりが振り向くと、そこには男子生徒たちがいた。

 

「お前がいるから、りみちゃん達が変質者に襲われるんじゃないのか?」

「そうだ。それで結局お前がヒーローになるって魂胆だろ」

飛鳥「ハァ…」

ゆり「…一丈字くん、大丈夫よ。私やグリグリや3年女子はあなたの味方だから」

 

 男子生徒たちの嫌味についに飛鳥は頭を抱えてため息をついた。それをゆりが慰めている。

 

「なに慰めて貰ってんだよ!!」

「3年にまで手を出しやがって!!」

「女がいないと何にも出来ねーんだなオマエ!!」

「そんなにつらいならオレに代われよ。オレだったら…」

 

 その時、ゆりが男子生徒たちを見つめた。

 

ゆり「あなた達は見せる側でしょ?」

 

 ゆりの言葉に皆が固まった。飛鳥もぎょっとしながらゆりを見つめていた。

 

ゆり「家族を助けてくれた子にそんな事言う人に、女性がなびくわけないでしょ? 精々×××××を丸出しにして、女性に振り向いてもらえるように頑張りなさい」

飛鳥「あの、牛込先輩! そういう事言ったら…」

 

 ゆりの言葉にほとんどの男子が何も言えない状態だったが、約一名興奮して股間を押さえていた。しかも体のくねらせ方が気色悪い。

 

ゆり「!?」

飛鳥「…ああいう手の人間に女性の罵声は逆効果なんですよ。かえって元気に…」

 

 飛鳥がゆりの前に出た。

 

飛鳥「私が時間を稼ぎます。ここを離れてください」

ゆり「え? え?」

飛鳥「もしあなたの身に何かあったら、りみさんに合わせる顔がございません。早く行ってください!!」

「ゆりちゃあああああああああああん!!!」

飛鳥「……!!」

 

 男子生徒がゆりに向かってルパンダイブをしたが、飛鳥が受け止めてそのままあて身投げをした。

 

飛鳥「このように頭のおかしい奴がいたら、戦おうとしないでその場を離れ、警察に通報してください。本当にこういう奴ほど何考えてるかわからないので怖いですよ」

ゆり「は、はい…」

 

 

おしまい

 



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第294話「千聖たちのミステリー!」

 

 

 ある日のバンドリ学園。

 

「花音ちゃん!! お願いだから膝枕して下さげふぅ!!!」

 

**********************

 

千聖「どうしてこの学校には変態しかいないのかしら…!!」

 

 学園のカフェテリアで千聖、彩、紗夜、燐子、花音が話をしていたが、男子の変態ぶりに千聖は頭を抱えていた。

 

紗夜「全く女子をなんだと思っているのですか!!」

燐子「私も此間せがまれました…」

彩「……」

 

 自分は一回も頼まれたことはなく、私アイドルだよね? と彩は疑問に思っていた。

 

千聖「彩ちゃん。まさかとは思うけど、羨ましいなんて思ってないわよね?」

彩「そ、そんな事ないよ!! でも、皆困ってるしどうしたら…」

 

 彩の言葉に悩みだす千聖たち。

 

千聖「とにかく今後も続くようなら、クラスを男女別々にしてもらうなりして貰いましょう」

 

 どうなったかというと、男子達から膝枕をせがまれる事はなくなり、学園が平和になった。

 

彩「平和になったね…」

花音「そ、そうだね…」

千聖「まあ、これで良かったのよ」

 

 5人がまたカフェテリアでお茶をしていたが、彩が困惑していた。

 

彩「…でもさ。最近何も起きて無くない?」

 

 そう、彩の言う通り男子達が膝枕をせがむことがなくなって以来、男子達からのセクハラはなくなったものの、これといって何も面白い事が起きていないのだ。

 

千聖「セクハラが無くなるなら別にいいじゃない。でも、画が地味になるのは問題ね…」

 

 女優として自分が出ている話で地味なものになっているのは流石に許せなかった。

 

花音「そ、そういえばパスパレの最近の活動はどう?」

彩「普通に仕事出来てるよ。たまに私がドジしたりすることはあるけど…」

千聖「ハロハピはどう?」

花音「私たちの所もいつも通りだよ。相変わらずこころちゃんの考えてる事は、予想を超えるけど…燐子ちゃん達は?」

燐子「私たちもいつも通りです…」

 

 そう言うと、今までがあまりにも異常だったのかがよく分かる5人であった。

 

紗夜「もしかして、大人しくさせておいて、油断したころに…」

花音「か、考えすぎじゃないかな…」

千聖「だけど今までの事があるから、それもあり得るわ…。とにかく細心の注意を払いましょう!!」

 

 こうして、5人は細心の注意を払ったが、何も起こらなかった。

 

 花音は普通にアルバイトもできたし、燐子はいつも通りあことネットゲームで遊ぶことが出来たし、千聖はいつものように女優の仕事をして、紗夜はいつも通り風紀委員の仕事を果たして、彩はいつも通り収録でドジをやっていた。

 

彩「いや、私のいつも通りはいらない!!!」

千聖「それにしてもいったいどうなってるの? 本当に何も起こらないじゃない!」

 

 本当に何も起こらない日常に5人は不自然に感じ始めていた。

 

紗夜「本当に今までの日常がアレだったせいなのかしら…」

花音「ま、まあ何事も起こらないなら平和でいいんじゃないかな…」

彩「でも、画的に凄く地味なんだよ…」

燐子「そ、そうですね…」

 

 すると千聖がある事を思いついた。

 

千聖「そうだ! そういえば一丈字くんはどうしてるかしら!」

彩「一丈字くん?」

 

 千聖がスマホで飛鳥を呼び出そうとしたが、飛鳥の番号がなかった。

 

千聖「あれ!?」

燐子「ど、どうしたんですか…?」

千聖「…誰か、一丈字くんの番号知らない?」

彩「ちょっと待ってて…って、あれ? 番号が無くなってる!!」

紗夜「私のもです…」

 

 千聖が飛鳥の番号を聞き、4人が調べるが飛鳥の携帯番号とメールアドレスが消えており、連絡がつかない状態になっていた。

 

千聖「い、いったいどうして…」

 

 千聖がそう考えると、すぐさま1年3組の教室に向かった。すると千聖が来て皆が吃驚していた。

 

千聖「一丈字くんはいるかしら?」

「一丈字くん?」

「うちのクラスにそんな子はいませんけど…」

千聖「いない!? そんなはずはないわ! だって…」

 

 千聖がそう思った次の瞬間、冷静になる事にした。

 

千聖「…い、いえ。なんでもないわ。ありがとね」

 

 そう言って千聖が去っていくと、3組の生徒たちは不思議そうにした。

 

花音「ち、千聖ちゃん…」

 

 花音たちが追いかけてきた。

 

千聖「まさかとは思うけど…。今回一丈字くんの出番がないパターンなのかしら…」

紗夜「出番って…」

千聖「しかも今のところ出てるのは私たち2年1組の5人。もしかして…この5人に対して何かあるという事なのかしら?」

「!!?」

 

 千聖の言葉に皆が驚いた。

 

燐子「な、何かあるというのは…」

千聖「考えられるのは、花音が膝枕をせがまれたことと、私がクラスを男女別々にしてもらうと言ったこと。男子達が大人しくなったこと。これが手掛かりね…」

 

 千聖が考えながら言うと、紗夜は何となく嫌な予感がした。

 

紗夜「もしかして…今回私たちは男子達に膝枕をするのでしょうか…!!」

 

 紗夜の言葉に皆が驚いた。

 

花音「ふぇえええええ!?」

燐子「そ、そんな…」

千聖「そんな事絶対にさせないわ! そうだわ! こころちゃんに一丈字くんの居場所を探してもらいましょう!!」

 

 そう言って千聖がこころがいる1組を訪ねた。

 

*******************

 

こころ「飛鳥?」

千聖「そうよこころちゃん。あなたは知ってるわよね?」

こころ「勿論知ってるわよ!」

千聖「え?」

 

 通常だったら自分たち以外知らないパターンなのだが、こころが何故か知っていたのだ。

 

千聖「…ほ、他の皆は知ってる?」

香澄「知ってますよ!」

たえ「はい。知ってます」

りみ「確か広島の高校に…」

千聖「とにかく連れてきて頂戴。私たち、凄く嫌な予感がするの!」

こころ「分かったわ! 任せて頂戴!!」

 

 そう言ってこころは飛鳥を連れてきた。飛鳥も大してそんなに忙しかったわけではないので、すぐに来れた。そして皆近くのファミレスに集まっていて、千聖と飛鳥が向き合って座っていた。周りのテーブルには紗夜たちがいる。

 

千聖「一丈字くん。これはどういう事かしら?」

飛鳥「あー…今回は白鷺先輩達にスポットライトを当てるお話だったんですよ」

紗夜「それだったら、男子達が急におとなしくしてた理由は何なの!?」

飛鳥「…恐らくですが、あえて大人しくすることで、白鷺先輩達を動揺させようとしたんでしょう。いつもがいつもだったので…」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

千聖「そ、そういう事だったのね…」

飛鳥「そういう事ですね」

 

 その時だった。

 

飛鳥「…で、オチはどうしましょうか」

千聖「いいわよ。このまま終わりで」

香澄「そもそも、千聖さん達はどうして飛鳥くんを読んだんですか?」

「!!」

こころ「そういえば膝枕がどうとか言ってたわね!」

飛鳥「あ、オチがつけられそうですね」

千聖「良かったわね。膝枕してもらえるわよ」

飛鳥「そうではなくて…」

 

 その時、男子達が壁に張り付いた。

 

「オレたちにひざまくらしてくれぇえええええええええええええええええ」

千聖「ギャアアアアアアアアア――――――――――――――――ッ!!!!!」

飛鳥「おあとがよろしいようで」

 

 

おしまい

 



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第295話「膝枕戦争」

 

 

 ある日のバンドリ学園

 

「花音ちゃん! 膝枕して!!」

「紗夜ちゃん! 膝のにおい嗅がせて!!」

「千聖ちゃん! 膝の間に顔挟んで!」

「燐子ちゃん! やっぱりおっぱいで何かして!」

「彩ちゃん! もっとしっかりして!!」

 

**************************

 

 2年1組のバンドガールズは地獄に落ちていた。

 

彩「なんで私だけ悪口なのぉ!!?」

千聖「彩ちゃん。私たちに喧嘩売ってる?」

彩「だってぇ~」

 

 自分だけなんか扱いが雑だしオチ要員なので、腑に落ちない彩だったが、他の4人は完全にセクハラだったため、彩には同意できなかった。そんな彼女たちは今カフェテリアで話し合いをしていたが…。

 

千聖「…アイドルになったらこういう厄介なファンが出来るのは覚悟してたけど」

紗夜「膝のにおいって…何考えてるのかしら…」

花音「怖いよぉ…」

燐子「……」

 

 千聖と紗夜はドン引きして、花音と燐子は恐怖に震えていた。そんな中、飛鳥が通りかかったが、特に何もなかった。

 

千聖「待ちなさい。こんなにも困っているのにどうしてほっぽりだすのかしら?」

飛鳥「あ、ごめんなさい。お姉さま方の会話に首を突っ込むのは野暮かなと思いまして」

千聖「お気遣いありがとう。でも結構よ。来て頂戴」

 

 そう言って飛鳥は千聖に連れてこられた。

 

紗夜「一丈字くん」

飛鳥「こんにちは。何かありました…?」

 

 飛鳥も沈み切った紗夜たちの顔を見て何か嫌な予感がしていた。

 

千聖「それがね…」

 

 千聖が事情を説明すると、飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「本当にぶれませんねぇ…」

千聖「ぶれて欲しいわよいい加減」

飛鳥「パスパレはともかく…松原先輩達もですか」

千聖「ここにいる全員よ。全くもう…」

 

 空気がどんよりしていた。そうしている間にもヤラカシたちは飛鳥を睨みつけていた。

 

飛鳥「そういえば普段はクラスの男子達とは仲良くされてるんですか?」

千聖「最低限はね。ちゃんとまともな子もいるわ。けど…」

紗夜「それでも圧倒的に多いわね」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 千聖と紗夜の言葉に飛鳥が困惑した。

 

千聖「女子と仲良くしたい気持ちは分からなくはないけど、体の接触を求めるなんて限度にも程ってもんがあるわよ!」

飛鳥「そ、そうですね…。同じクラスだから結構舞い上がってるとか…」

 

 飛鳥は何とかして千聖と紗夜の怒りを収めようとしていたが、千聖は止まらなかった。

 

紗夜「その前に女子のひざのにおいを嗅ぎたいってどういう事なんですか…!?」

飛鳥「申し訳ございません。私の口からはちょっと…」

 

 飛鳥が視線をそらした。

 

千聖「どうせあれでしょ。女子の方がいいにおいするからとかでしょ?」

飛鳥「…ご想像にお任せします。変な事を言うとセクハラと言いがかりをつけられるので」

彩「だ、大丈夫…?」

飛鳥「大丈夫な訳ないじゃないですか…」

 

 彩の発言に飛鳥がげんなりしていた。

 

飛鳥「あんな変態達にいつ社会的に抹殺されそうになるか怯えながら生きてるんですよこっちは」

千聖「…け、結構言うようになったわね」

 

 飛鳥の本音に思わず千聖もたじろいた。そして彩は申し訳なさそうにし、花音と燐子は飛鳥に同情した。

 

「だったら千聖ちゃん達とつるむのをやめろ」

 

「!!!」

 

 男子生徒軍団が現れたが、千聖たちがドン引きしていて、それを感知した飛鳥はもう自分の事がどうでもよくなっていた。

 

飛鳥「やっぱりそうなりますよね」

「それはそうとお前、誰に断って千聖ちゃん達と一緒の席座ってんだよ」

千聖「私よ。文句あるかしら?」

 

 ドン引きしつつも、千聖が後輩を守ろうと立ち上がった。

 

「千聖ちゃん!」

「こんな奴に洗脳されてるのか!?」

千聖「随分失礼な事を言うわね。私は正気よ!」

 

 千聖がそう言い放つと、

 

「あのー。それだったらちょっと聞いていいですか?」

飛鳥「?」

千聖「何かしら?」

 

 男子生徒軍団の一人がある事を聞き出した。

 

「そいつに膝枕をしたことは…」

千聖「ないわよ」

「じゃあ膝のにおいを嗅がせたことは…」

千聖「ある訳ないでしょ!!」

「膝の間に挟んだことは…」

千聖「私の事なんだと思ってるの!!?」

「一丈字と仲良いから、どうせそういう事させてんだろ!!」

千聖「どうしてそういう考えになるの!!!」

 

 男子生徒たちの妄想ぶりに千聖が怒鳴った。

 

紗夜「それはそうと、女子に対してそういうセクハラはやめなさい!!」

「はうっ!!」

 

 紗夜の罵声を聞いて、男子生徒たちはもだえ苦しんだ。

 

紗夜「えっ…?」

「いいぞぉ…もっとオレたちを罵ってくれぇ!!」

紗夜「は!?」

飛鳥「氷川先輩。罵声は逆効果です。それよりも白金先輩達を連れてここから離れてください。ここは私がやります」

 

 飛鳥が前に出た。

 

「ああ!? 何正義のヒーロー気取ってんだよ!!」

「これじゃまるでオレたち悪者じゃねーか!!」

千聖「実際そうでしょうが…!!」

 

「流石卑怯者。自分を主役に仕立て上げるのはうめーな!」

「詐欺師が…!!」

 

 男子生徒たちの言葉に千聖と紗夜は青筋を立て、彩、花音、燐子がむっとした。

 

「そしてアレだろ? 千聖ちゃん達に味方してもらうんだろ!」

「いいよな! 主人公様は可愛い女の子たちに味方してもらえて!」

飛鳥「さあ、早く行ってください。ここは私一人で十分です」

 

 飛鳥は男子生徒たちを無視して、千聖たちを逃がそうとした。

 

千聖「それよりもいい事考えたわ。そんなに可愛い女の子たちにこの子の味方をして欲しいなら、お望みどおりにしてあげるわよ」

「え?」

 

 千聖の言葉に皆が驚くと、千聖が座敷の方を見た。

 

千聖「一丈字くん。ついてらっしゃい」

飛鳥「あ、はい…」

 

 そして座敷スペースに移動すると、千聖が飛鳥の方を見た。

 

千聖「さ、膝枕するから頭を出しなさい」

 

 なんという事でしょう。千聖は飛鳥に膝枕しようとしていた。

 

「やっぱり役得だぁあああああああああああああああ!!!」

「千聖ちゃんの事信じてたのにぃいいいいいいいい!!!」

 

 騒ぐ男子生徒をよそに飛鳥は困惑した。

 

飛鳥『フリですか?』

千聖『もう今回はガチでやっていいわよ。流石にあそこまで言われたら私も黙ってられないわ』

飛鳥『事務所的に大丈夫なんですか?』

千聖『劇の練習に付き合って貰ったって言えばいいもの』

 

 飛鳥と千聖がテレパシーで会話をした。

 

花音「ち、千聖ちゃん!!?」

紗夜「は、破廉恥です!!」

千聖「この男子どもを懲らしめるためには、罵声よりも一丈字くんに美味しい思いをさせるのが一番よ。さ、私に恥をかかせないで頂戴。紗夜ちゃんたちもこっちにおいで」

 

 千聖は特に恥ずかしがる様子もなく、どうどうして飛鳥を引っ張って連れ出すと、紗夜たちもついていった。男子生徒たちは発狂している。

 

燐子「ほ、本当に大丈夫なんですか…?」

千聖「大丈夫よ。膝枕が怖くて女優はできないもの」

燐子「いや、そうではなくて…」

彩「アイドルが膝枕…どうなのかなぁ」

 

 その時、男子生徒軍団が慌てふためいた。

 

「うわああああああああああああああああ!!! やめろおおおおおおおおおおお!! やめてくれええええええええええええええ!!!」

「千聖ちゃんの神聖なる膝をあいつにぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

「においクンクンするなぁあああああああああああああああああ!!」

「寝取られプレイもまた…萌え」

 

 発狂する男子生徒軍団を見て、千聖以外の全員がドン引きしていた。

 

千聖「さあ、来なさいな。一丈字くん?」

飛鳥「あ、はい。分かりました」

「あああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 

 この後、どうなったかは言うまでもない。

 

 

おしまい

 



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第296話「空白の夏休み」

 

 

 それは夏休みが始まる前だった。

 

「もうすぐ夏休みだなー」

「休みは嬉しいけど…」

 

 1組の男子達が憂鬱だった。

 

「香澄ちゃん達に会えなくなる!!」

「そういや夏休みってライブすんの!?」

「絶対行くからね!?」

 

 男子生徒たちは香澄たちに話しかけた。

 

香澄「勿論する予定だよ!」

有咲「いや、それもそうだし宿題とかもあるからな…」

香澄「……」

 

「それだったらオレと宿題しよ!!?」

「オレとオレと!!」

「オレんち来て!!」

「オレ!!」

 

 とまあ、ここぞとばかりに男子生徒たちは香澄たちとお近づきになろうとしていた。

 

 そしてまた2組や2年生たちも同じ感じであり、バンドで人気が出た反面、このようなアプローチは極力勘弁してほしいと考えていた。

 

 そんな中、この男はというと…。

 

「そういや一丈字くんって夏休みどうするの?」

飛鳥「課題終わらせたら、広島に帰ります」

 

 香澄たちと沢山遊ぶものだと思っていたクラスメイト達は意外だと感じていた。

 

「広島に帰るって…」

飛鳥「親が広島に住んでて、親孝行しないといけないと思いまして」

「そ、そうなんだ…」

飛鳥「この学校って、ポストにできた課題のテキストが置けるみたいなので、課題を早く終わらせて帰ります」

 

 それを聞きつけたヤラカシたちはチャンスだと思った。

 

********************

 

「聞いたか?」

「一丈字の奴、夏休みは広島に帰るらしいぞ!」

「それなら、香澄ちゃん達を遊びに誘うチャンスだ!!」

「2学期が始まるころには、オレたちが香澄ちゃん達と付き合って、そっけなくされるあいつの顔が見れるってもんだ!」

 

 とまあ、悪だくみを考えていて、飛鳥も感知していた。

 

飛鳥(…まあ、精々頑張ってくださいな)

 

 こうして、それぞれの夏休みが始まるかと思われたが…。

 

*********************:

 

 その日の昼休憩。飛鳥は一人中庭のベンチにいた。

 

飛鳥「はー…。もう夏かぁ。早いなぁ…」

 

 飛鳥がそう思っていると、

 

「ここにいた!」

飛鳥「?」

 

 すると香澄たちがやってきたが、人数が多すぎた。

 

飛鳥「多っ!!」

モカ「やっぱりここにいたんだね~」

たえ「こんな所で一人で食べてたの?」

飛鳥「まあ、たまには日光浴も悪くないかなって…」

 

 飛鳥は何とかごまかしていた。

 

香澄「私たちもここで食べていい!?」

飛鳥「それは構いませんけど…食べるものとかは?」

こころ「黒服の人達が用意してくれたわ!」

 

 こころ達が持っている豪華な弁当に飛鳥は困惑した。

 

飛鳥「そ、そうですか…」

こころ「飛鳥の分もあるわよ!?」

飛鳥「そりゃどうも…」

 

 とまあ、26人で食事をすることになり、黒服たちの協力も得てピクニックみたいにレジャーシートの上で食べる事となった。

 

香澄「そういえば飛鳥くんは夏休みどうするの?」

飛鳥「広島に帰ります」

「!!?」

 

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

 

たえ「あー…そういえば広島に住んでたって言ってたよね」

飛鳥「ええ。たまには親孝行をしないとですね」

りみ「それって夏休みずっと?」

飛鳥「そうですね。特にここにいる予定もないので、今日から数日かけて宿題を全部終わらせて、学校のポストに課題を置こうと思います」

香澄「ええっ!? あれ数日で終わる量じゃないよ!?」

飛鳥「まあ、長くて一週間ですね」

沙綾「それでも結構多い方だと思うんだけど…」

 

 飛鳥の発言に沙綾は困惑した。

 

飛鳥「皆さんはやはりバンドとかですか?」

香澄「うん!」

沙綾「まあ、私は店の手伝いとかもあるけど」

巴「アタシもバイトとかあるしなー」

日菜「あたし達は夏休みなんてないもんだよー」

 

 日菜がため息をつくと、皆が困惑した。

 

香澄「それにしても広島かー。どんなところなの? やっぱりお好み焼きとかが美味しいんだよね!?」

飛鳥「お好み焼きもそうですけど、海の幸も美味しいですよ」

沙綾「瀬戸内海だもんねー」

こころ「そうだわ!」

 

 こころがまたあることを考え、飛鳥と千聖はイヤな予感がした。

 

飛鳥「ど、どうしたんですか…?」

こころ「今度皆で広島に行きましょう!」

飛鳥(ぜってー言うと思った…)

 

 こころの言葉に飛鳥が困惑した。

 

千聖「それはいいのだけど…。皆、予定が合わないんじゃないかしら?」

日菜「えー。でも行けるなら行きたいなー。飛鳥くんの故郷なんでしょ?」

飛鳥「故郷…」

たえ「え? 飛鳥くん生まれた場所大阪でしょ?」

飛鳥「…まあ、第二の故郷と呼ぶべきでしょうね」

 

 それはそうと、正体がバレるリスクがあったので、本当にこころは何を考えているんだと飛鳥と千聖は困惑した。自分たちだけで行くならまだしも、自分が広島に住んでいたからという理由では、昔の事を聞かれる可能性もあったのだ。

 

こころ「それもそうねー。皆予定がバラバラだし…」

モカ「これなかった人は、写真とかで楽しむとかでいいんじゃないかなー」

飛鳥(何お前も行く気になってんだ!!)

千聖(…県外になんて中々行く機会ないものね)

 

香澄「あ! 広島に行くんだったらやっぱり海とかいきたい!」

たえ「いい海水浴場所知ってる?」

飛鳥(知ってる事は知ってるけど、島なんだよなぁ…)

 

 このまま広島へ旅行する話へとなった。

 

 だが…。

 

「男1人女25人で広島旅行だとぉおおおおおおおおおおおお!!!」

「そんなの絶対ゆるさーん!!」

「オレたちも混ぜろぉおおおおおおおお!!!」

 

 と、男子生徒軍団が現れて、千聖が飛鳥に合図を送り超能力で記憶をごっそり消した。

 

 

飛鳥『そしてこの後は何事もなく、2学期を迎えることになりました』

 

 

 

おしまい

 

 

 



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第298話「握手会」

 

 

 バンドリ学園は今日も平和…とは言い難かった。

 

「日菜ちゃんと握手させろぉ!!」

「千聖ちゃんと握手した~い!!」

「麻弥ちゃんと握手~!!」

「イヴちゃんと握手させて!!」

 

 バンドリ学園ではルールを守らない外部のヤラカシが一斉に押しかけてきた。メンバー全員が同じ学校に通っているという事もあり、学校の外で待ち伏せをするという事も珍しくないのだ。

 

「あいつらまた来てるぞぉ!!」

「日菜ちゃん達を守れぇ!!」

 

 外部のヤラカシたちに気づいたのか、男子生徒たちが露骨に日菜たちをガードしたが…。

 

彩「あれ!? よく考えたら私呼ばれてない!!」

千聖「彩ちゃんは…うん、オチ担当ね」

彩「ひどい!!!」

千聖「というか教室の中なんだから…!!」

 

 千聖と彩も男子達に囲まれていて、千聖が暑苦しそうにしていた。

 

 飛鳥はというと、生徒たちの騒ぎによって事態に気づき、存在感を消して仕事に向かった。

 

******************::

 

 飛鳥が近くまでやってきて、超能力を使ってヤラカシ達を追い払った。対応していた警備員や教師たちはいったい何があったんだと困惑しながらヤラカシ達を見送っていた。

 

「あいつら帰っていくぞ!!」

「全く迷惑だよなー」

「いや、あんた達も十分迷惑だから」

「どさくさに紛れて日菜ちゃん達に近づくとかマジないわ」

 

 男子生徒たちが自分たちの手柄のようにふるまうが、周りで見ていた女子生徒は冷ややかな目で見ていた。

 

飛鳥(さて、オレも退散するかな)

 

 飛鳥も役目を終えて退散していった。

 

***************************

 

 昼休憩

 

「いやー。相変わらず凄いねー」

 

 中庭に飛鳥、モカ、千聖がいて、モカが飛鳥に対してそう言った。

 

千聖「本当に助かったわ」

飛鳥「いえいえ」

 

 千聖も礼を言うと飛鳥は苦笑いした。

 

モカ「もしかして~。昔もこういう事やってたの~?」

飛鳥「…まあね。実際にご当地アイドルの握手会でそういうバイトはしてた」

モカ「ご当地アイドル?」

千聖「そのグループ名は何か覚えてる?」

飛鳥「えーと…」

 

 飛鳥がそのアイドルグループ名を言うと、千聖が驚いた。

 

千聖「あら、その人たち知ってるわよ」

飛鳥「そうですか」

千聖「一度パスパレとして共演したことがあるのよ」

飛鳥「まあ、向こうは私の事を覚えてないでしょうけどね」

モカ「いやいや~。忘れるわけがないよ~」

 

 飛鳥の言葉にモカがきっぱりと否定したのもつかの間、飛鳥がある事に気づいた。

 

飛鳥「そういえば校内で握手会とかってされるんですか?」

千聖「あなたが来る前に一回したことあるわよ」

飛鳥「どうでした?」

千聖「…あまり良いものではなかったわ。ルールは守らないし、けんかはするし、散々だったわよ」

モカ「今じゃ握手会禁止だもんね~」

飛鳥「…そ、そうなんだ」

 

 握手会で何があったか何となく想像がつく飛鳥だった。

 

飛鳥「にしても…。学校にまで押しかけてくるとは」

モカ「ジ〇ニーズとかも普通にあるらしいよ~」

飛鳥「…もともとヤラカシという言葉もあそこの事務所のファンから生まれた言葉ですしね」

 

 モカの言葉に飛鳥が頭をかいた。

 

千聖「もしこの状況が続くようなら、色々対策を立てないといけないわね…」

モカ「まあ、これもアイドルの運命ですね~」

千聖「他人事みたいに言ってるけど、Afterglowももっと有名になったら、今の私たちみたいになるのよ?」

モカ「もうなりつつありますよ~。ひーちゃんの差し入れがえっちぃものばっかりですし~」

 

 モカの言葉に飛鳥が視線をそらした。

 

飛鳥「そういえばまたパスパレの握手会ってあるんですか?」

千聖「勿論あるわよ。でも、この様子だと中止になりそうね…」

モカ「コンサート自体も中止にするところもありますし、いい判断だと思いますよ~。今はYoutubeとかもありますし~」

千聖「それはそうなんだけど、彩ちゃんあたりが悲しむわね…」

飛鳥「まあ、それはそうですね…」

モカ「ファンと触れ合ってこそですもんねー」

 

 どうしたらよいものかと3人が考えていたが、そんな事を考えているうちに昼休憩が終わりそうだった。

 

千聖「もうそろそろ時間ね」

飛鳥「そうですね」

 

 こうして3人がそれぞれの教室に帰っていったが…。

 

************************

 

「一丈字くん」

飛鳥「何です?」

 

 飛鳥が教室に帰って来るやいなや、クラスメイトに話しかけられていた。

 

「中庭で千聖ちゃんや2組の青葉さんと話してたでしょ」

飛鳥「ええ」

「いつからあんなに仲良くなったの?」

飛鳥「何でかわからないんですけど、急に話しかけられるようになったんですよ」

「あぁ…」

 

 何となく想像がついたクラスメイト達だった。

 

 1年2組・教室

 

ひまり「そういえばモカ」

モカ「なに?」

ひまり「たまに一丈字くんや白鷺先輩と話をしてるけど、どんな話してるの?」

モカ「ちょっとした世間話だよ~」

巴「そういや千聖さん。一丈字の事を何かしら気にかけてるよな」

つぐみ「そういえば…」

モカ(こっちもちょっと考えないといけないかな~…)

 

 そして2年1組はというと…。

 

「千聖ちゃん!! どうしてあんな奴と一緒にいたんだ!!」

「ヤラカシに襲われたらどうするんだ!!」

 

 男子生徒たちからウザ絡みをされていた。

 

千聖(あぁ…なんかもう胃が痛くなってきたわ…)

 

 千聖は飛鳥の気持ちが痛いほど理解できたという。

 

 

おしまい

 



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第299話「飛鳥と有咲」

 

 

 それはある日の事だった

 

りみ「やっぱりさーやちゃんのチョココロネはおいひ~」

 

 Poppin’Partyが中庭でランチを取っていたが、沙綾が家から沢山パンを持ってきていて、りみは大好物のチョココロネを食べていた。

 

沙綾「ありがとう」

香澄「それにしても、今日の経営学難しかった~」

 

 香澄がだれていた。

 

たえ「今日は財務諸表について習ったね」

有咲「ああ。貸借対照表な」

香澄「あれっていったいどういう意味なの~?」

有咲「どういう意味って…お前全然授業聞いてなかったのか!?」

香澄「聞いたけど、全然分かんなかったんだよぉ~」

沙綾「…はぐみと一緒に白目になってたの、見たんだけど」

 

 香澄の言葉に沙綾が苦笑いしながらつぶやいた。

 

有咲「いや、少なくともはぐみとかは分かるはずだろ。肉屋の娘なんだし」

沙綾「私もいう程詳しくはないんだよね…」

たえ「有咲は分かるの?」

有咲「いや、会計やってるからアレだけど、こういう時は…」

 

 そんな時、飛鳥が近くを通りかかった。

 

ポピパ「おった!!!」

飛鳥「え? 市ヶ谷さんがやれば宜しいじゃないですか」

有咲「やだよ。めんどくせーし」

香澄「そんな事言わないで有咲ぁ~」

 

 有咲がそう言ったその時、男子生徒軍団が現れた。

 

「僕もお願いします市ヶ谷さん!!」

「オレもお願いします!」

「オレを教えて叱ってください♡」

「オラァ!! 向こう行けやゴミ虫が!!」

 

 そうポピパを囲んで、そのうちの一人が飛鳥をけ飛ばした。

 

飛鳥「いったー」

 

 飛鳥はそんな男子生徒たちに呆れて、こう言い放った。

 

飛鳥「あぁ…今回は市ヶ谷さんが全部やってくれるのか。じゃあいいかな」

 

 飛鳥がそう帰ろうとすると、有咲が猛スピードで追いかけてきて、後ろから飛鳥を捕まえた。

 

有咲「ふっざけんなぁああああああああああああああああ!!!!」

飛鳥「市ヶ谷さん。冗談です、冗談ですってば」

有咲「ただでさえ香澄に手を焼いてんのに、こんな変態達の相手なんか出来るかぁあああああああああああああ!!!」

 

 有咲がそう叫ぶと、男子生徒たちがまた悲鳴を上げだした。

 

有咲「な、なんだよ!」

飛鳥「?」

 

「あ、有咲ちゃぁん!!」

「当たってる! 当たってる!!」

有咲「は?」

 

 有咲が何の事か理解できずにいると、りみ・沙綾・たえが気づいたが、香澄だけ理解していなかった。

 

たえ「おー…だいたーん…」

りみ「はわわわわわわわ…!!//////」

沙綾「ちょ、ちょっと有咲!」

有咲「ど、どうしたんだよ。そんなに慌てて…」

香澄「後ろから飛鳥くんに抱き着くなんて、だいたーん」

 

 香澄の言葉に空気が止まった。そして有咲は我に返ると、自分が後ろから飛鳥を抱きしめている事に気づいた上に、胸も飛鳥の背中に当たっていた事が分かった。

 

飛鳥「市ヶ谷さん。忘れるので、そろそろ離れて頂けないでしょうか…」

有咲「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」

 

 有咲はとっさに離して、飛鳥を蹴り飛ばそうとしたが、飛鳥がさっとかわした。

 

飛鳥「後ろから背中を蹴るのはやめましょうよ」

有咲「うるさい!! バカ!! 変態!!//////」

飛鳥「はあ…」

 

 有咲の言葉に飛鳥が困惑すると、飛鳥と有咲の間を男子生徒軍団がはさんだ。

 

「そうだ! 変態はとっとと消えろ!」

「そうだそうだ!!」

「有咲ちゃんのおっぱいを堪能しやがって!!」

「消え失せろゴミ虫が!!」

飛鳥「そうですか」

 

 飛鳥が冷めた一息ついた。

 

飛鳥「それでは私は去る事にしますね」

有咲「いや、ちょっと待てよ一丈字!」

飛鳥「何です?」

 

 飛鳥が有咲を見た。

 

有咲「いや、あたし達を見捨てるのか…?」

飛鳥「見捨てる?」

 

 飛鳥がそういうと

 

「そうだ。よくよく考えたら一丈字、有咲ちゃん達を見捨てようとしてるぞ!」

「これでお前の天下もおしまいだな!」

「主役交代か!?」

「いっとくが全員の相手をするのか!?」

 

 男子生徒たちも便乗して騒ぎ出すが、飛鳥は困惑していた。

 

香澄「飛鳥くんがそんな事する訳ないよ!」

沙綾「そうだよ。ねえ?」

りみ・たえ「……!」

 

飛鳥「見捨てるも何も、私が出るまでもございませんよ」

「え?」

飛鳥「魔法の言葉を知ってますから」

「…は?」

 

 飛鳥の言葉に皆目が点になった。

 

香澄「魔法の言葉!? どんなの!?」

飛鳥「ただ一言だけですよ。市ヶ谷さん」

有咲「やめろ…やめろォ!!」

飛鳥「後はお願いします」

 

****************************

 

飛鳥「何とかなりましたね」

 

 ここは有咲の家の蔵。ここでいつもPoppin’Partyが練習しているのだが…。

 

有咲「ガルルルルルルル…!!」

飛鳥「これをお納めください」

 

 そう言って飛鳥はどこからか盆栽を取り出すと、唸っていた有咲がご機嫌になった。

 

香澄「おもしろーい! 私もやるー!! 有咲! あとはおねがいしま…」

 

 香澄がそういうと、有咲が香澄に対してはずかし固めを行った。

 

香澄「いたたたたたた!!! ちょ、パンツ見えちゃうぅ!!!」

有咲「一丈字ぃ! ほらぁ、香澄のパンツで良いなら拝めコラァ!!」

飛鳥「山吹さんに目をふさがれてるので無理です」

沙綾「有咲。男子がいるからもうその辺にして」

 

*************************

 

香澄「そういえば飛鳥くんってここに来るの初めてだよね」

飛鳥「思えばそうですね…」

たえ「おめでとう」

飛鳥「え、あ、ありがとうございます…」

有咲「一丈字」

飛鳥「あ、はい」

 

 飛鳥が有咲を見つめると、有咲が睨んでいた。

 

飛鳥「何でしょう」

有咲「今日の事…忘れろ」

飛鳥「はい、忘れます」

 

 飛鳥があっさり言い放ったので、有咲が更に憤慨した。

 

有咲「絶対言うなよ!! 絶対に男子どもに聞かれても答えるなよ!」

香澄「なんて?」

たえ「有咲のおっぱいがどうだったかって事」

有咲「言うな!!//////」

 

 こんな事がありましたが、なんだかんだ有咲とまた仲良くなった飛鳥なのであった。

 

「市ヶ谷ってやっぱりおっぱいでかいよな」

「あれこそメスの身体って奴だな…」

「それな」

 

 飛鳥と有咲の戦いはまだまだ続く…。

 

 

おしまい

 



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第302話「盛り上がりの代償」

 

 

 バンドリ学園でもハロウィンは訪れていた…。

 

「ポピパのハロウィン衣装楽しみだなぁ…」

「アフグロどんな恰好するんだろ…」

「パスパレ…」

「ロゼリア…」

「ハロハピ…」

 

 バンドガールズはもうハロウィンの格好をする事を前提で、男子生徒たちは妄想を繰り広げていた。

 

「またやってるよ…」

「せめてこっち側にも恩恵ないかなぁ…」

 

 そんな男子生徒たちを女子生徒たちは冷めた目で見ていた。

 

*********************

 

 そんな中、この男はというと…。

 

飛鳥「……」

 

 自分のスマホでニュースを見ていたが、神妙な面持ちだった。

 

「一丈字くん。どうしたの?」

飛鳥「え? ああ…」

 

 そんな飛鳥の様子を見ていたクラスメイトが話しかけてきた。

 

飛鳥「ちょっとニュースを見てただけですよ」

「ニュース?」

飛鳥「もうすぐハロウィンですね」

「…それにしては、随分真面目な顔をしてたけど」

飛鳥「そうですね…。ハロウィンにかこつけて物騒な事件も起きてますからね。人ごみの多い所は気を付けないと」

「最近怖いよねー」

 

 と、普通に世間話をしていたのを、モカが廊下から聞いていた。

 

************************

 

 そして昼休憩。飛鳥が中庭のベンチに行こうとすると、モカがすでに来ていた。

 

飛鳥「!」

モカ「やあ~」

 

 そしてモカは飛鳥にニュースの事について聞き出した。

 

モカ「そっか~」

飛鳥「…まあ、ハロウィンは仮装が出来る分、リスクも増えるんだ」

モカ「確かに怪しまれないもんね~」

 

 モカはそう言ってメロンパンを食べた。

 

飛鳥「そういやAfterglowもハロウィンにライブするの?」

モカ「ううん? 特にしないよ?」

飛鳥「そうなんだ。てっきりやると思ってたけど」

モカ「最初はやる予定だったんだけど、つぐがお店の手伝いとかで忙しいから~」

飛鳥「そうか…」

 

 モカの言葉に飛鳥が相槌を打った。

 

モカ「…もしかして、やるの?」

飛鳥「ああ、ここでモカ達に何かあったら元も子もないからな。弦巻家の人達にも協力してもらって、特に人が多く集まる場所を巡回してもらう」

モカ「ふーん…」

 

 モカの言葉に飛鳥は苦笑いした。

 

飛鳥「そういう訳だから、君はハロウィン楽しんでね。何かあったら連絡してくれるだけでいいから」

モカ「はーい」

 

*************************:

 

 そしてハロウィンが近づいたのだが、やはりトラブルが起きた。

 

「いいか。お前らは友希那ちゃん達に執拗にトリック・オア・トリートって菓子と悪戯をせびるんだ」

「……」

 

 DQNっぽい陽キャたちがいじめられっ子の陰キャたちに脅しをかけていた。

 

「そこでオレ達がさっそうと現れてお前達から友希那ちゃん達を守る。これでモテモテだ!」

「やらなかったらどうなるか分かってんだろうな?」

「仲間呼んでお前たちをボコボコにするからな」

 

 取り巻き達もいじめられっ子たちに脅しをかけていたが、飛鳥はその近くにいて録音をしていた。

 

飛鳥(やれやれ…)

 

 そう言って飛鳥は指を鳴らした。

 

**********************

 

 ハロウィン当日、いじめられっ子たちは普通に過ごしており、DQN達も普通に過ごしていたのだが…。

 

DQN「友希那ちゃん! トリック・オア・トリート!」

友希那「……」

 

 DQNのリーダー格が友希那にそういうが、友希那はガン無視していた。

 

男子A「瀬田! トリ…」

「男子ごときが薫様に近づくんじゃないわよ!!」

「恥を知れ!!!」

 

 薫に仕掛けようとしたが、ファンの女子に妨害された。

 

「白金! トリック・オア・トリート!!」

燐子「ひいっ!!」

「あの、怖がってるから近づかないでくれる?」

 

「日菜ちゃん! トリック・オア…って、いない!!」

 

 思った他玉砕していた。そして飛鳥は見回りをしていた。

 

飛鳥(話が面白くなくなるかもしれないけど、何も起こらないでくれ。面白さより皆の安全が一番だ)

 

***********************

 

「ああああああああああああ!!! どうしてこうも相手にされないんじゃあ!!」

 

 DQN達は涙を流していた。

 

「そ、そういやあの陰キャたちを盾にしてオレたちがヒーローになるって作戦はどうしたんだよ!」

DQN「わ、忘れてた!!」

取り巻きA「何やってんだよ!」

DQN「お前だって忘れてただろうが!」

取り巻きB「待て、まだチャンスはあるかもしれないぞ」

DQN「そうだ…。今からでも遅くない。でっち上げて、恩恵を受ければいいんだ…」

 

 DQNがにやりと笑ったが、またしても飛鳥が通りかかってその話を聞いて、超能力で記憶を消した。

 

飛鳥(強い気持ちがあれば、金縛りや洗脳が解けるけど…それをもうちょっと良い事に使ってほしいなぁ)

 

************************

 

 そして何とか放課後まで耐えた飛鳥。

 

飛鳥「ハァ…。だけど問題はここからだ。夜に結構事件が起こるからな…」

 

 弦巻家から連絡があったら動こうと決めた飛鳥は、そのまま自室で過ごしていた。

 

 暫くして一本の電話が入った。

 

飛鳥「もしもし」

モカ「あ、もしもし~?」

 

 電話の相手はモカだった。

 

飛鳥「何かあった?」

モカ「ううん。明日空いてる?」

飛鳥「どうしたの?」

モカ「直接会って話したいことがあるから、放課後時間空けといて~」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は何となく言いたいことが理解できた。

 

飛鳥「ありがとう。でもそこまで気を遣わなくていいよ。仕事だから…」

モカ「まあ、そうなんだけど、こころちゃんも知ってるから、多分明日は来ることになるよ」

飛鳥「だろうね」

 

 仕方ないので飛鳥は明日時間を空けることにした。

 

飛鳥「RoseliaとAfterglow以外の3グループがハロウィンライブをしてるって言ってたけど、無事に終わればいいなぁ…」

モカ「だいじょーぶだよ」

飛鳥「そうだな…」

 

********************:

 

 ファンがバンドガールに詰め寄る事はあったが、それ以外は何とか無事に終わった。

 

飛鳥「はぁ…。なんとかハロウィンは無事に終わったな。でもこの様子だとクリスマスも怖いなぁ…」

 

 飛鳥がそう考えている時はもう放課後で、学校の外にいた。

 

「飛鳥!」

 

 飛鳥が振り向くと、そこにはこころとモカ、そして千聖がいた。

 

こころ「さあ、行くわよ!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は1日遅れのハロウィンを楽しんだのだった。

 

 

おしまい

 



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第304話「飛鳥は今日も大変だ」

第304話

 

 ある日のバンドリ学園。今日も今日とて…。

 

「飛鳥くん!」

「?」

 

 3組の教室にPoppin’Partyがやってきたのだが…。

 

飛鳥「いや、多い!!」

 

 Poppin’partyだけではなく1年生全員が来ていた。

 

飛鳥「急にどうされたのですか」

香澄「お昼ご飯一緒に食べよー!!」

飛鳥「あ、はい…」

 

 飛鳥がそう返事したその時、校内放送が流れた。

 

『1年3組一丈字、1年3組一丈字! 大至急職員室!』

 

 というアナウンスが流れて、3組の教室内はシーンとした。

 

飛鳥「ごめんなさい。また今度で」

 

 そう言って飛鳥は教室を後にすると、男子生徒たちが飛鳥を笑っていた。

 

「残念だったな一丈字!」

「精々先生に怒られろ!」

「ザマーミロ!」

「そうやってイキってるから、こうなるんだ!」

 

 その生徒の中には1組や2組の生徒もいて、香澄たちは心底苛立った。

 

飛鳥(あー…もうオレ、知らねぇぞ)

 

 笑われる事よりも、香澄たちが怒っていて男子生徒たちがどうなるか心配になっていた。

 

***************************

 

 そして飛鳥は職員室に来たが…。

 

「最近君が女子生徒たちをたぶらかしているとあって…」

飛鳥「あー…」

 

 生徒指導の中年男性が飛鳥に注意をしていた。

 

飛鳥「本当にそう思いますかね」

「とにかく、風紀を乱すような事はしないでくれ」

飛鳥「どなたがそんな事を仰っていたのですか?」

「色んな男子生徒たちからだよ。とにかく君も気を付けてくれたまえ」

飛鳥「気を付けるにしても、女子生徒たちにこの話はされたんですか?」

「人の事は良いんだよ!」

 

 飛鳥がそういうと、机をバンと叩いたが飛鳥は動じなかった。

 

「お前も気をつけろ!!」

飛鳥「言ってる意味が分かりませんね」

「あぁ!?」

 

 飛鳥の言葉に生徒指導教師が青筋を立てたが、飛鳥も動じなかった。

 

飛鳥「それでしたら私からも質問がございます」

「お前目上の人間に向かって…」

飛鳥「昨晩、正門前で生徒から何か物を受け取ってましたよね」

「!!」

 

 飛鳥の言葉に生徒指導教師が青ざめた。ちなみに超能力で教師の記憶の中を覗き込み、そこから生徒から金を受け取って、飛鳥を陥れようとしている事を突き止めた。

 

飛鳥「あれ…何を受け取っていたんですか?」

「お、お前には関係な…」

飛鳥「ああ、言っときますけど、あなたと話してた人、実は私のちょっとした知り合いで…全部問い詰めて吐かせましたよ。生徒指導の立場を利用して私の社会的地位を損なわせることを条件に…金を受け取りましたね?」

 

 飛鳥の言葉に他の教師たちは驚いた。

 

「そ、そんなでたらめな事を言うな!!」

飛鳥「でたらめかどうか試してみますか?」

「!!」

飛鳥「これでもしも本当だったら…」

 

 飛鳥が超能力で圧をかけた。

 

飛鳥「落とし前…きっちりつけて頂きますよ?」

 

 飛鳥の圧に押された生徒指導教師は、即座に土下座した。

 

「す、すまない!! 魔が差したんだ!! 金欠で貰った金額があまりにも高かったから…」

飛鳥「…そうですか」

 

 飛鳥は一息ついた。

 

飛鳥「ここに来るまでに、皆私の事を笑ってたみたいだけど、今日私が消されることを知っていたからなんですね」

「……」

 

 生徒指導教師はおそるおそる顔を上げた。

 

飛鳥「分かりました。それでしたら私から言う事はもう何もございません」

「本当に済まなかった! だからこの事は…」

飛鳥「ええ。私はもう何も言いませんよ。私はね」

「え?」

 

 その時だった、

 

「〇〇先生」

「!!?」

 

 女性の低い声がして、後ろを振り返るとそこには初老の女性がいたが、とてつもなく怒っていた。

 

「が、学園長!!!」

「生徒指導の立場を悪用して一人の生徒を陥れるとは、指導者として最低な事をしてくれましたね」

「申し訳ございません!!」

 

 生徒指導教師が即座に土下座した。

 

学園長「謝る相手が違うでしょう?」

飛鳥「あ、もう謝らなくて結構です」

「!?」

 

 皆が飛鳥を見た。表面は笑っていたが、もう内面は全然笑ってはいなかった。

 

飛鳥「謝るくらいなら、さっさと罰を受けてください」

「辛辣!!!」

 

学園長「ごめんなさいね一丈字くん。嫌な思いをさせて…」

飛鳥「いいえ。もう慣れましたよ。それよりも先生はどうなるんですか?」

学園長「生徒からお金を貰っているので、当然クビです」

「そ、そんな!!」

学園長「勿論その生徒も直ちに退学にします。さあ、午後からはとことん話をしましょうか!」

 

 こうして、飛鳥は昼休憩が終わるころに解放されたが、昼食を食べ損ねた。

 

飛鳥「何だったんだろ…」

 

******************************

 

 放課後

 

飛鳥「やっと終わった…」

 

 飛鳥は腹を空かせながら、帰ろうとすると…。

 

「飛鳥くん!!」

 

 またしても香澄たちがやってきた。

 

飛鳥「お昼はすみませんでした」

香澄「ううん。大丈夫だった!?」

飛鳥「微妙ですね…」

 

 本当に大丈夫だったとは言えない状況だったので、飛鳥が困惑していた。

 

飛鳥「ギャグ小説だから簡単に済んでますけど、普通だったら人間不信になってるレベルですね」

美咲「そ、そうね…」

 

 飛鳥の言葉に美咲が困惑すると、有咲が腕を組んだ。

 

有咲「一丈字」

飛鳥「何でしょう」

 

 有咲が飛鳥の肩を抱いた。

 

有咲「…お疲れっ」

飛鳥「あ、はい。ありがとうございます」

 

 飛鳥は理解していた。有咲がこんなにやさしいのは、今のような役回りが自分に回ってこないようにするためでもあった。

 

つぐみ「あ、良かったら今日うちの店寄ってく? コーヒーサービスするよ?」

飛鳥「いや、ちゃんと自分のお金で払いますよ…」

香澄「そうと決まればいこー!!」

 

 と、飛鳥は香澄たちと羽沢珈琲店に向かっていったのだった。

 

 ちなみに飛鳥の事を笑った男子生徒たちは当面蘭たちに口を利いてもらえなかったという。

 

 

つづく

 

 



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第312話「涙が出ちゃう、女の子だもん」

 

 

 それはある日の事だった。

 

「…ぐすっ…ぐすっ…」

「……」

 

 河川敷で飛鳥はどんよりしていて、紗夜は泣き崩れていた。

 

紗夜「もう…いやぁ…!!」

飛鳥「そうですね…」

 

 紗夜はそう言うと、飛鳥はそう答えながら、なんでこんな事になったのかを思い出した。

 

*********************

 

『学校にエロ本を持ってくるなーッ!』

『それよりもどうして持ち物検査が今日に限って紗夜ちゃんじゃないんだよ!! おかしいだろ!!』

『学校にエロ本を持ってくるなーッ!!』

『うるせぇよ!!』

『大声でどなれば生徒が言う事聞くと思ってんのか!?』

『学校にエロ本を持ってくるなーッ!!!』

『どうせ紗夜ちゃんにいい格好したいからに決まってんだろ!!』

『教師でもそういうの多いんだよ!!』

『ロリコン教師がよ!!』

『先生は日菜ちゃん派だーッ!!!』

 

飛鳥・紗夜「……」

 

 朝登校すると、生徒指導の男性教諭と生徒3人が揉めていたが、生徒たちが頭がおかしいのと、生徒指導の男性教諭もなんだかんだ言わなくてもいい事を言っていて、カオスになっていた。

 

 そして紗夜は最近持ち物検査でエロ本の持ち込みが多かった原因が判明した上に、持ち物検査を買って出てくれた男性教諭が妹の日菜と仲良くなる為に自分を出汁に出しに使ったのではないかという不信感に襲われ、ちょっと傷ついた。

 

 飛鳥は新しいパターンのトラブルに絶句した。

 

*************************

 

 そして今、頭の中では『スーパードンキーコング』のゲームオーバーのBGMが流れていた飛鳥だった。

 

飛鳥「紗夜先輩」

紗夜「……」

 

 いつもの紗夜なら泣かないように強がったりするが、あまりにも衝撃的すぎてもうそんな余裕がなかった。

 

飛鳥「本当に今日までよく頑張りましたね」

紗夜「……!!」

 

 飛鳥の言葉に紗夜は感極まった。

 

飛鳥「もう思い切り泣いていいですよ」

紗夜「うっ…うううう~~~~~~~~~~~~っ!!!!」

 

 声を上げることはなかったが、紗夜は思い切り泣いた。飛鳥は何も言わずに紗夜に寄り添った。

 

 その時、飛鳥は何かの気配に気づき、自身と紗夜に対して超能力をかけた。

 

「あれー?」

 

 日菜がやってきた。飛鳥は焦りながら通り過ぎる事を願っていた。

 

日菜「何か今おねーちゃんがいるような気がしたんだけどなー」

 

 日菜はきょろきょろ左右を見ながら紗夜を探していたが、そのまま通り過ぎていった。

 

飛鳥(…まぁ。超能力を使うまでもなかったとは思うけど、紗夜先輩も妹さんの前で泣いてる姿なんて見られたくないだろうからな)

 

***********************::

 

紗夜「…一丈字くん」

飛鳥「あ、はい。なんでしょう」

 

 暫くして、紗夜も落ち着きを取り戻したのか、紗夜は飛鳥に声をかけた。

 

紗夜「その、お見苦しい所をお見せしました…」

飛鳥「そんな事はございませんよ。見苦しいのは…彼らですので」

紗夜「そうですね」

飛鳥「……」

 

 紗夜の容赦ない発言に飛鳥は困惑した。だが、同感だったので何も言う事はなかった。

 

紗夜「さ、さあ。帰りましょうか」

飛鳥「はい」

紗夜「それから…」

飛鳥「はい」

 

 紗夜が頬を染めた。

 

紗夜「その…私が泣いてた事、内緒にしてください」

飛鳥「それは勿論ですが…」

紗夜「絶対ですよ?」

飛鳥(…まあ、周りに誰もいなかったし、大丈夫だろうけど)

 

 飛鳥は紗夜がこういうだろうと思って、周りにバンドリ学園の関係者が来てないかを確認していた。

 

飛鳥「ただ…」

紗夜「なんですか?」

 

 紗夜の言葉に飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「本当に困ったら、Roseliaの皆さんにも相談してください。一人で抱え込まないで」

紗夜「…分かりました」

 

 飛鳥と紗夜がそう話をしたその時だった。

 

「あ!! やっぱりここにいた!!」

 

 日菜がやってきた。

 

紗夜「日菜!!」

飛鳥「それでは、私はここで失礼します」

日菜「あれ? 飛鳥くんもいたの?」

 

 日菜がそう声をかけると、飛鳥が日菜の方を向いて、口角を上げた。

 

飛鳥「ええ。偶然ここで会ったので、少し世間話をしていました」

日菜「そうなんだ」

飛鳥「失礼します」

 

 そう言って飛鳥が去ろうとしたが、

 

日菜「あ、ちょっと待って飛鳥くん」

飛鳥「何です?」

 

 日菜が飛鳥をじっと見つめた。

 

日菜「何か、あたしに隠し事してない?」

飛鳥「いいえ?」

日菜「いや、絶対してる」

 

 日菜がそういうと飛鳥が笑みを浮かべた。

 

飛鳥「してますけど、言えないんですよ」

日菜「どうして?」

飛鳥「本当に知らない方がいいので」

日菜「分かった。それじゃ当ててあげる」

飛鳥「はい」

 

 日菜がじっと飛鳥を見つめた。

 

日菜「飛鳥くん…」

飛鳥「……」

 

 すると日菜はこう言った。

 

日菜「いじめられてたおねーちゃんを慰めてたでしょ」

飛鳥「紗夜先輩。どうですか?」

紗夜「全然違うわね」

 

 飛鳥が紗夜に確認を取ったが、紗夜は首を横に振った。

 

日菜「おねーちゃんに叱られたくて男子達がわざとエッチな本を持ち物検査の日に持ってきて、先生と揉めてて飛鳥くんとおねーちゃんが引いてたの、皆が見てたし2人が今こうやっているのが何よりの証拠なんだよね。飛鳥くんって何かあるとここに来るってリサちーが言ってたし」

飛鳥(この人本当に才能マンだな…)

 

 日菜の推理が完全に当たっていた為、飛鳥は困惑した。

 

日菜「どう? 完全に当たってるでしょ」

飛鳥「その前に一つだけお伺いしたいことがございます」

日菜「なあに?」

飛鳥「紗夜さんがそういう目にあって…。今、どんなお気持ちですか?」

日菜「そうだねー。とにかくおねーちゃんをいじめたり、泣かしたの絶対に許せないし、そんなに叱られたいなら…あたしが叱ってあげるよ?」

 

 日菜が微笑みながらそう言ったが、青筋が立っているし目も笑ってないし、何もかも怖くて飛鳥と紗夜が困惑していた。

 

紗夜「ひ、日菜? 落ち着きなさい…」

飛鳥「暴力は駄目ですよ」

日菜「あ、そうだ。いいこと思いついた♪」

飛鳥・紗夜「え?」

 

***************************:

 

 またある日の事…。

 

「だからぁ!! なんで持ち物検査が紗夜ちゃんじゃないんだよ!!」

「うるせぇ!!」

 

 とまあ、またしても懲りずに生徒指導の教諭と男子生徒が揉めていたが…。

 

「やっぱりやってたね。それじゃ作戦開始!」

「ほ、本当にやるの…?/////」

「……」

 

 飛鳥、日菜、紗夜の3人が登校したが、周りの生徒たちは驚いていた。

 

「な…な…!!」

 

日菜「おっはよー!!」

 

 なんという事だろう。飛鳥が日菜と紗夜に挟まれて登校しているではありませんか。飛鳥としては日菜がアイドルとしての立場を理解しているのかが疑問に思ったが、日菜としては双子としてやっているのでOKだとか。

 

「そ、そんな…日菜ちゃん…!!」

 

 生徒指導の教諭もショックを受けていて、飛鳥としては仕事しろと心の中で突っ込んだ。ちなみに紗夜は男性とこういう接触をした経験があまりなく、周りの目が気になって恥ずかしがって視線をそらしている。

 

日菜「さ! 早く荷物検査して! これ、飛鳥くんのカバンね!」

 

 そう言って日菜は自分のカバンと飛鳥のカバンを確認するように指示した。男子生徒たちはしぶしぶ確認したが、これでは完全に自分たちは負け犬だった。

 

「一丈字めぇ…!!」

「今度はどんな手を使ったんだ…!!」

「双子両方だなんて…!!」

「やっぱりあいつキライ…!!」

 

 とまあ、飛鳥はまたしても敵を作ってしまったが、飛鳥はもう泣く気にもなれなかった。

 

飛鳥(泣いても状況は良くならないからね…)

 

 ここ数年で数えきれないほどの苦労をしてきた彼にとって、前を向いて進む事が一番の答えだと知っていたからだった。

 

 だが、3人の荷物検査が終わった後…。

 

日菜「それじゃ行こっ! 飛鳥くん、おねーちゃん♡」

紗夜「そ、そうね!」

 

 紗夜が日菜の指示でスマイルを見せると、さらに状況が悪化した。そう、滅多に笑わないクールビューティーの紗夜が間接的にであるが飛鳥に微笑みかけたのだから…。ちなみに紗夜はこの後悶絶した。

 

 そして微笑む双子に囲まれて飛鳥は進んでいったが、完全に目が死んでいた。

 

 

飛鳥(エンディングまで泣けない)

 

 

おしまい

 

 



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第315話「逃げきれ! 一丈字飛鳥!」

 

 

 今日、バンドリ学園は全校生徒対象のマラソン大会が行われようとしていたが…。

 

「1位になった奴は好きな子とデートが出来ます!」

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 陽キャが突然こんな約束をしだし、男子生徒たちが興奮していたが、飛鳥は突っ込むのもめんどくさくなったのか、超能力で存在感を消した。

 

香澄「えーっ!!?」

有咲「ただでさえ寒くてくそだりぃのに、もっとだりぃ事しやがって…!!」

りみ「だ、誰が選ばれるのかな…?」

沙綾「いや、そのまえに男子が一方的に言ってるだけだから」

たえ「誰とデートするんだろ」

有咲「いや、おたえさん!!?」

 

蘭「またなんかやってるよ…」

ひまり「ねー。いい加減迷惑だって気づいて欲しいよね」

つぐみ「あはははは…」

巴「ん? どうしたモカ」

モカ「いやあ…。なんか忘れてるような気が…」

 

彩「ま、まさかとは思うけど私達じゃないよね…?」

日菜「まあ、1位になれたらの話だから」

千聖「頼んだわよ。日菜ちゃん」

麻弥「あははは…」

イヴ「ブシドー!!」

 

こころ「とっても面白そうだわ!」

花音「ふぇえええ…」

美咲「いや、これ面白くないし、止めた方がいいよ」

薫「全く。困った子犬くんたちだ」

はぐみ「デートって誰とするつもりなんだろう…」

 

友希那「……」

リサ「本当に好きだねぇ…」

燐子「ど、どうしよう…」

紗夜「すぐに止めるべきです!!」

 

 紗夜が止めようとしたその時、男子生徒たちがブロックした。

 

「おっとぉ!」

「そうはいかないぜ!」

紗夜「何を考えているのですか!! それで女子がなびくとでも!!?」

「うるせぇ!!」

「こうでもしないと、振り向いてくれないじゃないか!!」

 

 紗夜が注意したが男子生徒たちが逆切れした。

 

リサ「せ、先生に言わないと…」

『えー。昨年女子が特に真面目に走らなかったので、適用する』

「そんなぁ!!!」

 

 リサが教師たちに助け舟を出そうとしたが、中年男性教諭が許可してしまった。ちなみに女子が真面目に走ってなかったのは本当である。

 

*********************

 

 こうして、マラソン大会が始まったのだが…。

 

「へへ、1位はオレだ!」

「いや、オレだ!」

「オレ!!」

 

 男子生徒たちが1位になろうと我先に走っていたが、飛鳥が瞬時に抜け出した。

 

「はぁ!!?」

 

 そして飛鳥は空気を読むことなく、そのままゴールまで駆け抜けていった。普通なら何かしらトラブルが起きるだろうが、そんな事もなく、史上最速記録をたたき出して、ゴールした。

 

**********************

 

『1位。一丈字飛鳥さん』

飛鳥「ありがとうございます」

 

 飛鳥が1位に入着したが、ブーイングが起きていた。

 

「ふざけるな!!」

「どうせインチキしたんだろ!!」

「オレは認めない!!」

「デートの件は無効だ!!」

 

 とまあ、男子生徒たちが見苦しく騒いでいて、女子生徒たちは呆れていたが、飛鳥も特に気にすることなく、これからの事に焦点を置くことにした。

 

***********************

 

 マラソン大会が終わり、解散すると飛鳥が超能力を使って存在感を消した。すると、教師がいなくなったタイミングを見計らって、陽キャと取り巻きが飛鳥を探した。

 

陽キャ「くそっ! あの陰キャはどこだ!! オレの見せ場潰しやがって!!」

飛鳥(見せ場って…あの人何位だったっけ…)

 

 15位と、女子とデートするにはかなり微妙な順位だった。

 

飛鳥(まあいいや。さっさと帰ろ)

 

 飛鳥は特に気にする事もなく帰っていった。

 

リサ「ほら友希那―。大丈夫?」

モカ「もー。変な意地張るから…」

 

 リサとモカがそれぞれ友希那と蘭を介抱していた。張り合っていて途中で体力が尽きてしまったのである…。

 

************************

 

 その夜、

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥が自室でゆっくりしていると、千聖やモカとZoomで話をしていた。

 

千聖「ありがとう飛鳥くん。お陰で助かったわ」

モカ「いやー。さす飛~」

飛鳥「いえ…。ですが、これからが問題ですね…」

 

 飛鳥が腕を組みながらそう言うと、千聖も困惑した。

 

千聖「本当に見苦しいったらありゃしない…」

モカ「まあ、こういう悪役が必要なのかもしれないですけどね~」

飛鳥「うーん。正直言わせてもらいますと、ハイリスクハイリターンですね…」

 

 飛鳥は困惑していた。

 

モカ「まあ、こんな可愛い女の子達にちやほやされるのはせめてもの救いだよね~」

飛鳥「というより、理不尽な事言わないし、暴力振るわないのが幸いですね。もしそうだったらもう何を信用したらいいか分かりませんよ」

千聖「ほ、本当に疲れてるわね…」

飛鳥「もう走るより疲れます」

 

 飛鳥がそうやって愚痴を言うと、

 

モカ「まあでもさ。こうやって愚痴をはける相手がいて良かったんじゃない?」

飛鳥「ホントそうだね。一人で抱え込んでると、いつか暴力振るいそうな気がして…」

千聖「怖い事言わないで」

 

 飛鳥の言葉に千聖が困惑していた。

 

モカ「そうだ~。今度1位取ったお祝いに、どこか出かけない?」

「いいわね!」

 

 こころもグループ会話に参加してきた。

 

飛鳥「こころ」

こころ「本当にお疲れ様! とっても速いわね!」

飛鳥「ま、まあね…」

 

 こころの言葉に飛鳥は苦笑いした。

 

こころ「けど、結局デートはしなくていいのかしら?」

飛鳥「いいよ。相手が楽しめなきゃ意味ないし」

モカ「まあ、結果的に3人の美少女とデートする事になるんですけどね~」

飛鳥「……」

 

**************************:

 

 こうして、次の休日。

 

千聖「あんっ」

飛鳥「千聖さん…」

 

 飛鳥、こころ、モカ、千聖の4人は弦巻家が所有するアミューズメントパークで一日中遊んだ。ちなみに今はローラースケートをしていたが、千聖が転倒していた。

 

飛鳥「本当に運動の方は…」

千聖「ほ、ほっといてよ!/////」

モカ「飛鳥く~ん。手を取ってリードしてあげたら~?」

飛鳥「オレはいいけど、千聖さんは…」

千聖「そ、そうよ…。飛鳥くんの力を借りなくても…」

 

 数分後

 

千聖「ぜ、絶対に手を放しちゃダメよ! いいわね!?」

飛鳥「はい」

 

 飛鳥が手を取って、千聖がローラースケートの練習をしていた。千聖は手を離さないようにお願いしていた。というのも、今度ロケでメンバー全員がローラースケートに挑戦することになっていたのだ…。

 

飛鳥「離さないので、まずは歩いてみましょう」

千聖「わ、分かったわ…」

モカ「ありゃりゃ…」

 

 結局飛鳥に休む暇はなかったが、人気女優である白鷺千聖の手を握っていたので、モカは良しとしていた。

 

こころ「とっても楽しいわ!!」

 

 こころは滅茶苦茶滑っていた。

 

 

おしまい

 



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第316話「クリスマス2021」

 バンドリ学園にももうすぐクリスマスがやってきていた…。

 

「今年こそは!!」

「可愛い彼女と!!」

「クリスマスデートを過ごすんじゃ~!!!」

 

 とまあ、男子たちが張り切っていたが、女子たちはごみを見る目で見つめていた。

 

*******************

 

「でもやっぱり…」

「オレは○○ちゃんとクリスマスを過ごしたいんじゃあ~!!!」

 

 とまあ、男子生徒軍団はお目当てのバンドガールズにどんどんアプローチしていった。そしてそれを飛鳥は遠巻きに見つめていた。

 

飛鳥(まあ、今回は特に何も言わないでおくか…)

 

 飛鳥がそう言って何も言わずにその場を後にした。だが、この後本当に何もしなかったものなので…。

 

 

「飛鳥く~ん」

「なんでしょう」

 

 Afterglowの青葉モカに声をかけられた。

 

モカ「本当にこのまま何もしないってのもどうなの~?」

飛鳥「皆さんがそれぞれ楽しいクリスマスを過ごしている画を映して、私が最後に一言だけ言って締めるパターンを考えております」

モカ「お~。ちゃんと考えてたんだ~」

飛鳥「ええ。今回はもうお互い平和に過ごして終わらせましょう」

モカ「確かにそれが一番良いけど、なんかそれはそれで面白くないな~」

飛鳥「まあ、そうなんですけどね」

 

 飛鳥とモカがそういう会話をしていると、

 

「おーい。何してんだモカー」

 

 巴が声をかけてきたが、蘭、つぐみ、ひまりもやってきた。

 

モカ「お~みんな~」

飛鳥「……」

 

 Afterglowが全員集まったことで、飛鳥はとてつもなく嫌な予感がした。

 

巴「一丈字も一緒だったのか!」

飛鳥「どうも…。私はもう行きますので」

モカ「あ、そうそう皆」

「?」

モカ「今度のクリスマスパーティだけどさ~。飛鳥くんも誘わない~?」

 

 モカの言葉に皆が驚いた。

 

飛鳥「青葉さん。お気持ちはありがたいのですが…」

蘭「…5人でやるって話だったじゃん」

 

 蘭の言葉にモカと飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「そうですよ。5人だけで積もる話もあるでしょうから」

つぐみ「い、一丈字くん…」

飛鳥「私のことはお気になさらず、楽しいクリスマスをお過ごしください」

ひまり「そういえば一丈字くん。クリスマスどうするの?」

飛鳥「実家に帰ろうと思います」

「!?」

飛鳥「そういうことですので、失礼します」

 

 そういって飛鳥は去っていった。

 

**************************

 

 そして何もないまま放課後を迎え、飛鳥が帰ろうとすると…。

 

「だからあんた達とは遊ばないって言ってるじゃん」

 

 蘭の声がして、飛鳥はまさか…と思いながら近づくと、そこにはAfterglowと男子生徒たちが揉めていた。というか、男子生徒たちが一方的にAfterglowに迫っていた。

 

「そんなこと言わないでさあ」

「オレ達と遊んだほうが楽しいよ?」

「こっちも5人いるしさあ」

 

 あからさまに下心が丸出しだったので、ひまり達も警戒していた。

 

「羽沢さんもそう思わない?」

つぐみ「え、えっと…」

蘭「だから、こっちはもう予定立ててるの!」

モカ「全部奢りなら考えてもいいけどさ~」

蘭「モカ!」

「もちろん全額奢るとも!!」

「だから…」

 

 男子生徒たちがもう少しだと言わんばかりに押していくが、飛鳥は存在感を消して超能力を放った。

 

「…って思ったけど、やっぱり嫌がってるからやめとこうか」

「え?」

 

 男子生徒たちが急にあきらめたので、蘭たちが驚いたが、モカは飛鳥がやってくれたと確信した。

 

巴「な、なんだったんだ…?」

ひまり「さあ…」

 

************************

 

飛鳥「はぁ…」

 

 飛鳥が河川敷で黄昏ていた。

 

飛鳥「今年ももう終わりか…」

 

 飛鳥はクリスマスよりも一年の終わりを気にしていた。

 

飛鳥「猪狩を卒業してバンドリ学園に来たけど、いろんなことあったなぁ…」

 

 飛鳥がバンドリ学園の思いでいろいろ振り返った。こころと出会って、モカや千聖に正体がバレて一時的にどうなるかと思ったが、彼女たちのやさしさにも助けられて、ここまで来たのだと感じた。

 

飛鳥「まあ、来年もここにいるのなら、これからも色んなことがあるのだろうな」

 

 そういって飛鳥はその場を後にしていった。

 

******************************

 

 そしてクリスマスイヴ。この日は金曜日で終業式していた。ポピパ、アフグロ、ロゼリアはグループでクリスマスパーティを開き、パスパレは仕事、ハロハピはというとこころの父親の仕事の関係で、弦巻家でパーティが行われる事になった。

 

 そんな中、飛鳥は本当にどのグループともクリスマスパーティをする事はなく、そのまま広島に帰ることになった。

 

 

飛鳥「おまけに最後の最後でコレだよ」

「ち、ちくしょ~!!!!」

 

 バスターミナルでひったくりを捕まえて、警官に身柄を引き渡していた。

 

飛鳥「こちらでお間違いありませんか?」

「ありがとうございます!」

 

 飛鳥が女性に財布を返した。

 

飛鳥「それでは私は行きます」

「あ、あの! ぜひお礼を…」

飛鳥「そのお気持ちがお礼ですね」

 

 そういって飛鳥がほほ笑んだ。

 

飛鳥「それでは、メリークリスマス!」

 

 そういって飛鳥は颯爽とバスに向かっていったが、翌日この事が新聞に載っていろいろ面倒なことになったのは言うまでもなかった…。

 

 

おしまい

 




cast

一丈字 飛鳥

青葉 モカ

美竹 蘭
上原 ひまり
宇田川 巴
羽沢 つぐみ


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第318話「サヨコレ」

 

 それはある日のことだった。

 

「今日は練習付き合ってくれてありがとー!!」

「いえいえ」

 

 飛鳥は宇田川あこに誘われて、湊友希那、今井リサ、白金燐子とスタジオで練習していた。ギター担当の氷川紗夜は遅れてくるとの事なので、飛鳥が紗夜の代役でギターを演奏していた。

 

友希那「それにしてもあなた、なかなかね」

飛鳥「いえいえ」

リサ「それにしても紗夜遅いね。そろそろ来てもいいころなんだけど」

 

 リサが時計を確認したその時だった。

 

「お、遅れてすみません…」

「!」

 

 紗夜がやってきたが、服がびしょ濡れだった。

 

あこ「ど、どうしたんですか紗夜さん! びしょ濡れじゃないですか!」

紗夜「その…。突然雨が降りまして…。やはり私は雨女…。そうなんですよ…私はやっぱり雨女なんです…」

 

 びしょ濡れになったことよりも、自分が外に出たちょっと後に雨が降ったことにショックを受けていた。

 

リサ「そ、それよりも紗夜。早く着替えた方が…」

紗夜「…無いんですよ。完全に晴だと思ってたし、取りに行こうにも微妙な所まで来ていましたから」

 

 完全に地雷を踏んだとリサは困惑した。そんな中友希那は飛鳥を見た。

 

友希那「そういえばあなた、今日体育あったわよね?」

飛鳥「ええ、結局自習になって使わなかったんですけど、まさか…」

友希那「体操服を貸してあげなさい」

 

 友希那の発言に皆が驚いた。

 

紗夜「だ、男子の体操服を!?」

飛鳥「氷川先輩が嫌がってますし…」

紗夜「い、いえ。嫌がっているというわけでは…/////」モジモジ

 

 年下とはいえ、男子に体操服を貸してもらうことに紗夜は恥ずかしがっていた。

 

友希那「びしょ濡れのままじゃ練習は出来ないわ」

リサ「た、確かにそうだけど…」

 

 女子校ではあり得なかった光景に、燐子、あこがドキドキしていた。

 

紗夜「そ、そうですね…。これ以上我儘をいうものではないですよね…」

飛鳥「氷川先輩。本当に無理しないでください。私が近くのコンビニまで替えの服を買ってきますので」

紗夜「いえ! 誠に申し訳ないのですが、体操服をお借りしてもよろしいですかっ!?」

飛鳥「あ、はい…」

 

 こうして紗夜は飛鳥の体操服を借りることになった。

 

*****************************

 

 そして、飛鳥の体操服に着替えた紗夜が友希那たちの前に現れた。

 

紗夜「お、お待たせしました…//////」

 

 紗夜はとても恥ずかしそうにしていた。

 

あこ「やっぱりサイズが合ってないですね…」

友希那「そうね。あなた170あるものね」

飛鳥「ええ…」

リサ「薫と同じくらいか。まあ、制服は練習している間に乾かせばいいよね」

紗夜「そ、そうですね…。それじゃ練習を始めましょうか」

 

 こうしてRoseliaが練習を開始して、飛鳥が見学していた。本番さながらの迫力あるライブに飛鳥も感嘆していた。

 

飛鳥(…二次創作とはいえ、主役をやるのは本当に申し訳ないよなぁ。こういうライブを見ると)

 

****************

 

 暫くして、Roseliaが休憩時間に入った。

 

あこ「あ、そうだ紗夜さん!」

紗夜「な、何かしら!?」

あこ「あこの服着てみてくださいよ!」

紗夜「嫌です!!」

 

 あこの言葉に紗夜が強く否定した。

 

あこ「そ、そんなに嫌がらなくても…」

紗夜「えっと、そういう意味ではなくてですね。私にそのような派手な服は…」

あこ「だから見たいんじゃないですか!」

紗夜「だから見たい!?」

 

 あこの発言に紗夜が困惑した。

 

リサ「アタシもちょっと見てみたいかも…」

友希那「そうね。それじゃ紗夜」

紗夜「えぇぇぇ!!?」

 

 こうして紗夜とあこの衣装を好感した。ちなみにあこも紗夜同様体操服がブカブカだった。

 

紗夜「ど、どうですか…?//////」

 

 紗夜があこの格好をして出てきた。確かに紗夜が言っていた通り、紗夜が着るには派手すぎるが、恥じらいが可愛さを引き出していた。

 

あこ「いや、可愛いじゃないですか。自信持ってくださいよ」

紗夜「これ、肩出てるし…/////」

 

 あこが褒めるが、紗夜はとにかく恥ずかしがっていた。

 

燐子「あ、あのう…」

紗夜「な、なんですか?」

燐子「実は今度の衣装のサンプルがあるんですけど、着てもらえませんか…?」

紗夜「え゛」

友希那「やりましょう」

紗夜「え゛ぇええええええええええ!!?」

 

 そして言われるがまま衣装を着てみると、めちゃくちゃフリフリしていた。

 

あこ「いや、ヒナちーと共演させてみたい」

紗夜「これ完全にパスパレの衣装じゃないですか!!」

燐子「だ、だめでしょうか…」

紗夜「いや、Roseliaのイメージとあってないような気が…」

燐子「そ、そうですね…」

 

 紗夜の言葉に燐子がしゅんと落ち込んだ。

 

リサ「あ、せっかくだから羽丘の制服着てみる?」

紗夜「え、別に…」

リサ「ちょっと見てみたくなってきたなー」

あこ「こうなったらどんどん行きましょう!」

紗夜「えぇぇぇ!!?」

 

 こうして紗夜のファッションショーが沢山行われたが、その時飛鳥の体操服はRoseliaメンバーが最低1回は着ていた。

 

************

 

友希那「もうこんな時間だわ」

紗夜「結局途中から練習してなかったじゃないですか!!」

 

 紗夜のファッションショーに夢中になっているうちに、終わりの時間になってしまった。

 

飛鳥「それはそうと、制服もそろそろ乾いたころじゃないですか?」

紗夜「そ、そうですね…」

 

 こうして紗夜は制服に着替えたわけだが…。

 

紗夜「その、これは洗って返します」

飛鳥「あ、はい。わかりました」

 

 紗夜が飛鳥にそう言ってジャージを預かった。

 

友希那「そういえばこの体操服はこれからも使うのかしら?」

飛鳥「…処分したほうがよろしいですかね。やっぱり」

友希那「そうね…」

 

 飛鳥の言葉に友希那が困惑した。

 

友希那「あの連中が私たちが着た奴を狙う可能性があるわね」

飛鳥「ですね…」

紗夜「…すみません。弁償します」

飛鳥「いえいえ…」

 

 こうして飛鳥とRoseliaが外に出ると、

 

「メリークリスマス!!」

「そのジャージをよこ…プレゼントしてくれ~!!!」

飛鳥「もうクリスマスは完全に終わりです!!」

あこ「キモーイ…」

 

 飛鳥がツッコミを入れると、Roseliaがドン引きしていた。

 

おしまい

 




キャスト

一丈字 飛鳥

氷川 紗夜

湊 友希那
今井 リサ
白金 燐子
宇田川 あこ


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第319話「美咲の初夢」


 スタジオ

香澄「新年、あけまして!」
「おめでとうございます!」

 香澄達バンドガールが新年のあいさつをした。

ひまり「昨年は皆さんに大変お世話になりました!」
彩「今年も頑張りますのでどうかよろしくお願いします!」

こころ「今年もいーっぱい楽しいお話を皆に見せるわね!」
友希那「…にしても、このシリーズって本当に変態が多いわね」

 友希那の言葉に大半がため息ついた。

リサ「…男子がいるってこんな感じなのね」
紗夜「全く…」
あこ「あこ達女子校だから新鮮だよねー」
燐子「…男の人、怖い」

香澄「じゃあ、それじゃ早速最初の一発目いっちゃおー!! どんな話かなー!?」


 今年もよろしくお願いします。

チュチュ「ワタシたちの出番が全然ないじゃないのよー!!」
七深「まー3年生たちが受験だからねー」


 

 

 1月1日。

 

「あけましておめでとー。はーい、それじゃまた朝ねー」

 

 そう言って電話を切った彼女の名前は奥沢美咲。ハロー、ハッピーワールド!のメンバーである。

 

美咲「さてと…もう寝るか…」

 

 そういって美咲は眠りについた。

 

******************************

 

 そして美咲はこんな夢を見た…。

 

『新春! バンドガール争奪バトル~!!!』

 

 いきなり自分たちをかけた戦いが始まっていた。ちなみに美咲はミッシェルだったので、除外されていた。

 

美咲(な、ナニコレ!?)

 

「ウォオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 そして男子生徒軍団がいた。自分のクラスメイトや2組の生徒、先輩たちもいた。

 

美咲(いや、本当に何がどうなってんの!? ツッコミが追い付かないんだけど!!)

 

『それでは早速まいりましょう! 第1種目目はシャトルランです!』

美咲(い、いきなり過酷…)

 

『シャトルランで50回走ってください。もし走れなければ…服が1枚消えます』

美咲(あ、なんかオチ読めた)

 

 アナウンスの言葉に美咲はオチが読めて無表情になった。

 

 そしてシャトルランが行われたが、見事に男子生徒たちはほとんど達成できず、服が1枚消えた。

 

美咲(ていうかなんで動けないのよ!)

 

 美咲は何とか止めようとしたが、自分の夢の中なのでどうすることも出来なかった。

 

 そして第2種目は上空からスーパーボールを一発でキャッチするという内容だったが、スーパーボールが思った以上に痛くて、受け止められず、気が付けばほとんどが上半身裸になっていた。耐性のないバンドガールは頬を染めて、視線をそらしていた。

 

 第3種目の輪投げもなかなかうまくいかず、気づけば90%がパンイチになっていた。

 

香澄「あ、あははは…/////」

たえ「皆パンツ一枚だね」

りみ「あぅぅぅ…/////」

有咲「なんなんだよこの企画ぅ…!!」

 

 ポピパは天然ボケのたえと、弟がいる沙綾以外の3人は恥ずかしがっていた。

 

「あぁぁぁ…○○ちゃんに見られてる…/////」

「見ないでぇ…/////」

「見られてるぅ…/////」

「興奮してきた」

 

 男子生徒たちは例によって変態が多かった。

 

美咲(ていうか一丈字くんどこ!!?)

 

 美咲は飛鳥を探したが、どこにもいなかった。そう、一丈字飛鳥なんて男は最初からいなかったのである。

 

美咲(いや、存在否定しないであげて!!?)

 

 そして運命の第4種目。それは滑り台だった。好きなバンドガールを一人指名して30秒以内にたどり着ければクリアというものだった。クリアすればバンドガールと触れ合えるが、失敗すればそれはそれは悲惨なものだった。

 

「成功しても失敗してもわしゃあ天国じゃあ…♡」

 

 本当に失うものがない奴もいて、大変なことになってきました。

 

美咲(ブシロードに怒られてしまえ!!!)

 

*****

 

 で、そんなこんなで行われた運命の第4種目。1人ずつ挑戦するというもので…。

 

モカ「えー。モカちゃーん?」

 

 モカが指名されて、台に立たされ、滑り台の下から挑戦者が昇ってくるというものだった。バンドガールからしてみたら地獄以外何者でもない。

 

美咲(あああああああああああああ!!! ごめんなさいいいいいいいい!!!)

 

 美咲は必死に夢から覚めようと思ったが、疲れがたまっていたのか、なかなか目を覚ますことが出来なかった。

 

 で、案の定30秒経ってしまい、男子生徒のパンツが消えた。

 

ひまり「きゃー!!!/////」

蘭「最低…/////」

 

 ひまりが悲鳴を上げて、蘭が恥ずかしそうに視線をそらした。つぐみは顔を覆って、巴は困惑した表情を見せていた。モカはいつも通りである。

 

「あぁぁ…。女の子たちにちんちん見られてる…//////」

美咲(興奮すんなこの変態!!!)

 

 男子生徒はすべてが終わったとばかりに上を見ていた。かくしてない。

 

モカ「へんたーい」

美咲(青葉さん耐性ありすぎない!?)

「いやぁん!!/////」

美咲(だから気色悪いってば!!)

「どうしよう。このままだとほかの皆さんにも…!!)

 

 美咲の思惑通りになった。

 

リサ「あの、ちょっと来ないで…//////」

 

 失敗して全裸になった男子生徒に対して、リサが頬を染めて視線をそらした。

 

友希那「なんなのこの企画…」

紗夜「は、破廉恥です!!!/////」

あこ「やだもー!!/////」

燐子「……//////」

 

 友希那はいつも通りで、紗夜は激怒し、あこと燐子は恥ずかしそうに視線をそらした。

 

**

 

 イヴが指名されたが、失敗された。

 

イヴ「み、見てませんっ!!/////」

 

 イヴは頬を染めて目を閉じた。

 

「いや、見て! 僕の日本と…」

千聖「さっさと降りなさいっ!!!//////」

日菜「えー? 小刀じゃない?」

麻弥「日菜さん!!!//////」

彩「この先こういう仕事あるのかな…/////」

 

 パスパレは日菜だけ耐性があった。

 

 そしてパスパレは花音が指名されて、失敗した。

 

花音「ふぇええええーーーーーーーーーー!!!////////」

美咲(ああああ…!! 花音さんごめんなさいぃいいいいいいいいい)

 

 夢の中で完全に巻き込んでしまった事に美咲は心の底から謝罪した。

 

こころ「あれがおち」

薫「こころ。それ以上はいけないよ/////」

はぐみ「あわわわわ…!! とーちゃんとにーちゃん以外の人の見ちゃった…//////」

 

「やめてぇ! 見ないでぇ!!/////」

美咲(見られたくなかったら顔じゃなくて股間隠せコラァアアアアア!!)

 

 美咲が思いっきり突っ込んだその時、目が覚めた。

 

 

美咲「……」

 

 

 そしてハロハピで初詣に行くことになったが、

 

こころ「あけましておめでとう! 美咲!」

美咲「あ、あけましておめでとう…あはははは…」

 

 美咲はげっそりしていた。

 

はぐみ「みーくんどうしたの?」

薫「顔色が優れないようだが…」

美咲「あ、そ、そう? じゃあこれ終わったらすぐ帰るね…あはははは…」

 

 美咲がそう苦笑いすると、こころは不思議そうに、

 

こころ「どんな初夢を見たの?」

 

 こころの言葉に美咲はグサッと突き刺された。

 

こころ「きっと悪い夢を見たのね。でも心配ないわ! あたしが楽しい夢に変えてあげるわ!」

美咲「……!」

 

 美咲はこの時、こころがめちゃくちゃ天使に見えて、涙がこぼれて、こころの胸に飛び込んだ。

 

美咲「うう…うぅうううう~~~~~~~~~~~~~っ!!」

花音「美咲ちゃん!!?」

こころ「よしよし、任せなさい」

 

 こころの胸で思いっきり泣いている美咲を見て、いったいどんな夢を見たんだろうと薫たちは気になっていたが、美咲の様子を見る限り、聞かない方がいいのだと感じた。

 

 

 その頃の飛鳥、大阪の母方の実家でゆっくりしていた…。

 

飛鳥「…あ、今年もよろしくお願いします」

「誰に話しとるん?」

飛鳥「読者の皆さん」

 

 

おしまい

 



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第323話「アイドルは強し」

 

 

 オレはモブA。バンドリ学園に通うモブだ。見た目も成績もごく普通。しいて違う処を上げるとすれば、可愛い女の子が大好きだという事だ。

 

 そしてオレは今街を歩いている。というのも、バンドリ学園のアイドルにして芸能人である『Pastel*Palettes』が近くで撮影をしていることもあって見に来たのだ。え? 学校でも見れるから別にいいんじゃないかって? 馬鹿だなぁ。学校での彼女たちも楽しんで、外の彼女たちも楽しむ。一粒で二度おいしい。そうだろう?

 

 だけど、考えてることが同じ奴らが多いのか、パスパレが集まっているところにはもうすでにたくさんの人が…。お前ら暇なのかよ…!!

 

「日菜ちゃーん!!」

「千聖ちゃーん!!」

「麻弥ちゃーん!!」

「イヴちゃーん!!」

「丸山~!!!!」

 

 男たちの気持ち悪い声援が響き渡り、スタッフが静かにしろと止めている。気のせいか彩ちゃんが「なんで私だけ呼び捨て!?」という顔をしているが、そういう顔をするのがいいからだ。

 

 一番後ろになったが、オレもパスパレの撮影を見学することにした。やっぱり可愛い女子5人がいるのは絵になる。というかこの光景をいつまでも眺めていたいくらいだ…。

 

 そしてほかの連中も同じで、なんか息が荒かったり、目が怖かったり、鼻息が荒かったり、股間を抑えていたりした。うん、こんな人間にならないように気を付けよう。

 

************

 

 暫くして休憩に入り、彩ちゃん達も一息ついた。そんなとき事件が起きた。

 

「あ、あいつは…!!」

 

 そう、にっくき一丈字飛鳥がこちらに向かって近づいてきたのだ。奴も休みに町を歩いているだけなのかもしれないが、奴は少なくともオレ達より彩ちゃん達と仲が良い。もし彩ちゃん達とばったり会って、友達のように話なんかされたら、折角の楽しい気分が台無しだ。オレだけじゃない。ここにいる全員がそうだ。少なくともあいつにはこの場から去ってもらわなくてはならない。そう、オレがあいつの事を嫌いだからではなくて、皆の為に!

 

 そしてオレは行動を起こすことにしたが…あいつがいなくなっていた。急にいなくなるものだから、一丈字なんて最初からいなかったんじゃという感じになっていた。も、もしかして一瞬の隙を払って彩ちゃん達の近くに!? 

 

 しかし、彩ちゃん達の方を見ても一丈字はおらず、寧ろ彩ちゃん達も何事もなかったかのようにロケバスの中に入っていった。オレが見たのは果たして幻だったのか…。

 

 でもまあいい、これで心置きなく彩ちゃん達を楽しむことが出来る…。

 

 

 そんなこんなで撮影終了までオレはパスパレの撮影を楽しんだ。やっぱり美少女はいい。美少女は正義。女の子はやっぱり綺麗で可愛くなければいけない。もしあんな子たちをオレの彼女にすることが出来たら…ふへへへへへ…。

 

 彩ちゃんが挨拶をして帰っていくと、ギャラリーも解散していった。さあ、オレも帰ろう。今日は一丈字やほかの連中に邪魔されずにすんだし、とっても良い一日だっ!

 

 オレの語りはここで終わる!

 

*******************************

 

 モブの語りが終わり、パスパレは撮影を終えてロケバスの中にいた。

 

彩「なんで私の扱いだけ雑なんだろう…」

日菜「いーじゃん。一番美味しいところ持ってってるんだから」

彩「そ、そうかもしれないんだけどさ…」

千聖「でもまあ、面白かったわ」

彩「千聖ちゃんまで!」

 

 自分以外の4人は「名前 + ちゃん」付けなのに、自分だけ名字で呼び捨てなのに納得がいかない丸山だった。

 

彩「ナレーションまで呼び捨てにしないで!!」

麻弥「ま、まあ…愛されてる証拠だと思いますよ?」

イヴ「ニンキモノです!!」

彩「そ、そうだといいなぁ…」

 

 麻弥とイヴの言葉に彩が苦笑いすると、日菜が首を傾げた。

 

日菜「それはそうとさー」

千聖「どうしたの?」

日菜「なんでか知らないんだけど、飛鳥くんが近くを通ってた気がするんだよねー」

 

 日菜の言葉に皆が反応した。

 

麻弥「あ、それ自分もそう思いました」

イヴ「ニンジャなのですか?」

彩「えっ、私気づかなかった…。千聖ちゃんは?」

千聖「……」

 

 パスパレで唯一正体を知っている千聖だったが、特に慌てることもなく冷静だった。

 

千聖「気づいてたわよ」

彩「ええっ!!?」

日菜「どうしていなくなっちゃったのかなー」

千聖「私たちに気を使ったって言うのもだけど、日菜ちゃんが声をかける可能性があったからじゃない?」

日菜「えー。流石にそこまでしないよー」

千聖「…日ごろのあなたを見てるとやりそうな気がしたんじゃないかしら」

麻弥「アハハハ…」

 

 こうしてパスパレも一日を終えたが…。

 

********************

 

 その夜、千聖は飛鳥に電話をかけた。

 

千聖「で、実際のところどうなのかしら?」

飛鳥「千聖さんが考えている通りですよ。日菜さんがなんか退屈そうにしてましたし…」

千聖「ええ…。だから私も声をかけるんじゃないかって危惧してたのよ…」

 

 今日行ったロケはいたって平和なものだったが、あまりにも時間が長すぎて日菜が飽きてしまっていたのだ。そんな中でいつも面白い事が起こりまくる飛鳥がいたら、興味がそっちに行ってしまう可能性があった為、飛鳥と千聖も危惧していた。

 

千聖「ところであなたは今日何してたの?」

飛鳥「買い出しですよ。日用品の」

千聖「そう…」

 

 飛鳥の言葉に千聖の声のトーンが低くなった。

 

千聖「本当に?」

飛鳥「ええ、本当ですよ」

 

 千聖が飛鳥を疑ったが、飛鳥は何事もなかったかのように返答した。

 

千聖「分かったわ。ごめんなさいね」

飛鳥「いえいえ」

千聖「それじゃ、また学校でね」

飛鳥「あ、はい。おやすみなさい」

 

 そういって飛鳥と千聖が電話を切った。

 

飛鳥(…外国人に道を聞かれたけどね)

 

 流ちょうに英語をしゃべって周りの人間が驚いていた時の事を思い出す飛鳥。

 

飛鳥(けど流石千聖さんだ。声のトーンの低さに気づかなかったら危うく引っかかる所だった)

 

 千聖はカマをかけようと圧をかけたが、飛鳥はそれを見抜いて疑われないように返答をしたのだった。

 

飛鳥(明日ちょっと様子を見よう…)

 

***********************

 

 そんなこんなで翌日。

 

A「さーて、今日も学校頑張るぞー」

 

 Aが登校してくるやいなや、飛鳥を見かけた。

 

A「一丈字…! そういえば昨日町にいたよな。何してたか聞いてみるか」

 

 Aが飛鳥に聞こうとしたその時だった。

 

「飛鳥くーん!」

 

 日菜がやってきて、Aが驚いた。

 

飛鳥「日菜先輩。おはようございます」

日菜「おはよー。そういえば昨日町にいたよね?」

飛鳥「あ、わかりました?」

日菜「そーだよ。いるならなんで撮影見てくれなかったの?」

飛鳥「トラブルが起こるからですかね…」

 

 日菜の言葉に飛鳥が視線をそらしていた。

 

日菜「もー。別に気にすることないんだよ?」

飛鳥「日菜先輩が気にされなくても、見ている方々が気にされるんですよ。ところで何か御用ですか?」

日菜「今日の放課後空いてる?」

飛鳥「ええ、どうかされました?」

日菜「遊ぼ!」

飛鳥「え?」

日菜「いやね。飛鳥くんって本当にるんってするなと思って!」

飛鳥「意味が分からないです」

 

 日菜の言葉に飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「遊ぶって私と日菜先輩だけですか?」

日菜「ううん。パスパレの皆」

飛鳥「わあ」

A「な、なんだとー!!?」

 

 日菜の言葉に皆が驚いた。

 

A「そ、そんなのゆるさーん!! オレだって昨日一丈字を町で見たんだ! オレも混ぜ」

 

 Aが飛鳥と日菜に走って近づこうとしたその時、飛鳥と日菜がAに気づいた。

 

日菜「キャー!!!」

「!!」

 

 日菜が悲鳴を上げて飛鳥に抱き着いたその時、日菜の親衛隊らしき男子生徒たちがAを運んで去っていった。

 

「オラァアアアアアアアア!!!」

「日菜ちゃんに手を出しやがって!!」

「覚悟はできてんだろうなぁ!!?」

A「ち、違うんだ!! 一丈字が日菜ちゃんを…」

「お前も手を出そうとしてたのは事実だろうがぁああああ!!!?」

A「あああああああああああああああああああああん!!!!」

 

 嵐のように過ぎ去り、飛鳥は困惑しながら日菜を見た。

 

日菜「どう?」

飛鳥「いや、どうって言われても…」

 

 ちなみに本当にその日はパスパレと遊んだ飛鳥だった。

 

 

おしまい

 

 

 

 



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第324話「選ばれし者の条件」

 

 

「ねー。お願いがあるんだけどー」

 

 日菜がお願いしてきた。

 

日菜「役者さんが風邪引いちゃって来れなくなっちゃったから、代役やってくれない?」

彩「やってくれたら心強いなぁー」

千聖「やってくれるわよね?」

 

 日菜だけでなく、彩と千聖もお願いしてきた。

 

「申し訳ございません。お礼は是非させていただきますので…」

 

 そしてそのお偉いさんもお願いしてきた。

 

麻弥「えっ!? やってくれるっすか!? うれしいッス!」

イヴ「ブシドーです!!」

 

***************************

 

 

「…ってなる寸法なんだ! 邪魔すんなよ!」

「……」

 

 ある日の事。飛鳥は街に出かけていたが、偶然Pastel*Palettesが撮影をしているのを目撃して近くまで来たが、Pastel*Palettesの相手の俳優が風邪でダウンしてしまい、代役を探しているところだった。飛鳥としてはどうせ代わりの役者が来るだろうと思っていたのだが、そのギャラリーの中にバンドリ学園の男子生徒、それもパスパレの大ファンがいて、飛鳥にけん制をしていた。

 

飛鳥「いや、流石に素人に代役やらせませんよ」

「どうだか! どうせお前主人公だからさせて貰えると…」

 

 男子生徒がそう言ったその時だった。

 

「監督! 代わりの俳優さんが来てくれるそうになったそうです!」

 

 と、代役が見つかった。

 

飛鳥「これで主人公だから良い思い出来るっていう考え方を改めていただけますか?」

「ぐ、ぐ~っ!!!」

飛鳥「ご安心ください。私はすぐにこの場を後にしますので、それでは…」

 

 そういって飛鳥はその場を後にして、男子生徒は歯ぎしりした。

 

************************

 

 だが、問題はここからだった…。

 

日菜「飛鳥くん。代役やってくれない?」

飛鳥「Oops」

 

 何という事だろう。Pastel*Palettesが直接飛鳥に頼みに来たではないですか。

 

「ちょ、ちょっと待てー!!!」

 

 男子生徒も当然やってきた。

 

「一丈字!! やっぱりお前が何かしたんだろ!」

飛鳥「ああ、すぐに話が終わってしまっては面白くないという事なので、最後は…」

千聖「ていうかさっきからなんなのあなた?」

 

 千聖が男子生徒に向けて軽くにらみつけた。

 

「い、いや千聖ちゃん! オレは君たちを思って…」

日菜「ありがとう。でも、今回は役者としてお願いしてるから」

「いや、役者ならほかにもいるだろう!」

千聖「残念だけど、ほかにスケジュールが空いてそうな人がいないのよ。結局代わりに来たあの人は全然ダメだったし…」

 

 そう、結果的に代役の俳優が来て、撮影は一応したのだが、元々撮りたかったものと大きくかけ離れていたため、没になったのだ。

 

日菜「飛鳥くんの演技前に見た事あったけど、普通に上手いしるんってするから」

彩「その、お願いできないかなぁ…」

 

 パスパレがそう頼むと飛鳥は考えた。男子生徒は勿論断れとにらみを利かせていた。

 

飛鳥「生憎ですが、あまりメディアには出たくないんですね」

千聖「…まあ、それは理解できるわね」

 

 飛鳥の言葉に千聖は納得した。そう、メディアに出れば有名人にはなれるものの、有名人になったらなったで色々リスクが高いのだ。長年芸能界にいる千聖は流石に理解できたという。

 

(一丈字が断った! ここはオレが来る流れだろ…!)

 

 飛鳥が断ったことで、男子生徒は自分に声がかかると思っていた。

 

飛鳥「他に心当たりのありそうな人はいないのですか?」

千聖「いいえ。いないわ?」

 

 飛鳥の言葉に千聖がきっぱり言い放つと、男子生徒は無言でアピールした。そう、早い話この男子生徒はパスパレに求められたいというとてつもなくめんどくさい奴である。これは女子の前でやたらかっこつける中二病そのもので、だるいとか悪態ついてる割に全力を出したりするという奴である。

 

(ほかにいるだろ! オレとか! このオレとか!!)

 

 この場にいる為、男子生徒はワンチャン自分が選ばれるものだと思っていた。

 

麻弥「そこを何とかお願いできないでしょうか…」

 

 麻弥が飛鳥に対してお願いをしてきたが、男子生徒は余計なことをしやがってと怒っていた。

 

日菜「うん。やっぱり飛鳥くんじゃないとるんってしない」

イヴ「アスカさんお願いします! イッショーのお願い!」

 

 そういって日菜とイヴも頼んできた。飛鳥としては多少メディアに出ようが問題なかったが、自分の目の前にいる男子生徒がまたいちゃもんをつけてくるだろうと予測していたので、どうやって切り抜けようか考えていた。

 

千聖「その顔はやってくれるのね?」

飛鳥「そこまで言うなら考えますが」

千聖「そう。それじゃ考えといて頂戴。皆、いったん行くわよ」

日菜「え」

彩「いいの?」

千聖「ええ」

 

 そういってパスパレの5人が去っていき、飛鳥と男子生徒、そしてクラスメイトが残っていた。

 

 すると男子生徒はパスパレメンバーがいなくなったのを機に、飛鳥に悪態をついた。

 

「で?」

飛鳥「で? とは…?」

「パスパレの頼み、勿論断るんだよな?」

飛鳥「あ、はい。あなたがそこまで言うならお断りします」

「オレのせいにするなんて男らしくないぞ。ちゃんと自分の意志で断れ」

 

 と、悪態をついていたが、

 

「男らしくないのはあなたよ」

「!?」

 

 千聖たちが戻ってきていた。

 

日菜「さっきから飛鳥くんに嫉妬してるの見え見えだよ?」

千聖「本当に役者としてお願いしていたのだけど」

「な、なんでよりによってこいつなんだよ! 他にもたくさんいるだろうが!!」

 

 千聖と日菜の言葉に男子生徒が逆切れしたが、千聖たちの態度は変わらない。

 

千聖「人ならたくさんいるけど、私たちは一丈字くんがいいの」

「こ、こんなのスキャンダルだ! 応援してくれてるファンを裏切ってる!」

千聖「何とでも言いなさい」

「!?」

 

 千聖の言葉に男子生徒が驚いた。

 

千聖「少なくとも、せこい真似をする人には頼まないわよ」

日菜「普通にるんってしない」

麻弥「あ、あの…。本当に一丈字さんの腕を見込んでの事なので…」

イヴ「ブシドーを持ってます!」

千聖「まあ、そういう訳だから一丈字くんよろしくね?」

飛鳥「あ、はい…」

 

 こうして飛鳥はパスパレと仕事をすることになった。

 

「どう考えてもマンネリだーっ!! オレにも良い思いさせろー!!」

 

 そういって男子生徒は開き直って叫んだが、そんな彼に誰も見向きはしなかった…。

 

飛鳥(本当に下心あるとろくなことないな…)

 

 

おしまい

 

 



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第328話「飛鳥と紗夜と笑顔」

 

 ある日の事。飛鳥と紗夜がとあるファーストフード店にいたが、飛鳥は困り顔で紗夜は頬を染めていた。

 

飛鳥「言いませんって」

紗夜「いや、念には念を入れてです/////」

 

 というのも、飛鳥が学園を歩いていたら、一人で笑顔の練習をしていた紗夜を見かけて、こともあろうに、紗夜が客に対して愛想を振りまくイメージで、とびっきりの笑顔を見せたのだ。そしてその様子を飛鳥にばっちり見られてしまったのだ。

 

飛鳥(超能力で記憶を改ざんしようと思ったのに、紗夜先輩の意志が強すぎて効かなかったんだよなぁ…)

 

 ある意味で紗夜に対して超能力関連の才能があると思った飛鳥だった。

 

飛鳥「私に発言力があるとでも?」

紗夜「念には念を入れてです!!/////」

 

 飛鳥の言葉を紗夜は強引に突っぱねた。飛鳥はもうこれ以上は何も言うまいと、紗夜の好意を受け入れることにしたのだが、やっぱり問題は起こるもので…。

 

***********************:

 

 翌日、紗夜とのハンバーガーショップデートが学園内に報じられた。

 

「一丈字てめぇ!!」

「紗夜ちゃんとハンバーガーショップに行ったってのは本当か!?」

 

 飛鳥は紗夜ファンから問い詰められていた。

 

飛鳥「あなた方が考えているような関係ではございませんよ」

「うるさい!!」

「ただでさえ紗夜ちゃんと二人きりで食事をする事自体許されざる行為だというのに!!」

「恥を知れ!!」

 

 完全に嫉妬しているのが目に見えていたので、飛鳥は困惑していた。

 

「それはそうと、紗夜ちゃんとどんな話をしてたんだ?」

飛鳥「それを聞いて怒られるのはあなた方ですよ」

「何だと!?」

「生意気な奴め!!」

飛鳥「女子のプライバシーに首を突っ込むと後が怖いですよ。それでは」

 

 そう言って飛鳥が超能力を使ってスーッと消えると、男子生徒たちは飛鳥を探そうにも見つけることが出来なかった。

 

飛鳥(超能力が使えて良かったなぁ。こういう時って追いかけっこになるか、突然拉致されるもんなぁ…)

 

 もしも超能力が使えず普通の人間だった場合の事を考えると思わずぞっとする飛鳥だった。そう、一度捕まると人数も多いし、そう簡単には帰してくれない。飛鳥としては無駄な努力をしていると考えていた。

 

飛鳥(何が一番怖いって、話を聞いてくれない事なんだよなぁ)

 

 これからの身の振り方について色々考えなければいけないとも考えていた。

 

**************************

 

「一体誰ですか!! こんなふざけた噂を流したのは!!」

 

 当然この噂は紗夜の耳にも届いて、激怒していた。

 

燐子「そ、その…///」

彩「やっぱり違うんだ…」

紗夜「当たり前です! 確かに一丈字さんは良い人ですけど、そんな感情を持ってません!!」

千聖「…あの子も今頃苦労してるわね」

 

 紗夜の言葉を聞いて、正体を知っている千聖は深くため息をつきながら飛鳥の身を案じた。

 

「紗夜ちゃん! 本当にあいつと付き合ってるわけじゃないよね!?」

「そうだよね!?」

 

 そう言って男子生徒たちが紗夜に問い詰めるが、

 

紗夜「付き合ってるわけないでしょう!!」

 

 そう言ってマジ切れすると、皆が黙った。

 

紗夜「黙って聞いてたら言いたい放題言って!! 少しは言われる側の立場になりなさいよ!!」

 

 紗夜がそうキレるとそのまま教室を出て行ってしまった。

 

彩「紗夜ちゃん!!」

燐子「……!」

 

 同じメンバーの燐子はまた昔の紗夜に戻ってしまったと、内心慌てていた。

 

千聖「ハァ…」

 

 そんな様子を見て千聖はため息をついた。

 

「さ、紗夜ちゃ…」

千聖「やめなさい」

「!」

 

 追いかけようとした男子生徒たちを千聖が止めた。

 

千聖「もう何もしないで頂戴。追いかけてもいい格好をしようとしてると思われるだけよ」

 

 千聖の言葉に教室は静まり返った。

 

***********************

 

 その頃、1年3組の教室はというと、飛鳥はクラスメイト達に上手い事説明していた。

 

「大変だったね…」

飛鳥「いえいえ。私は大丈夫なんですけど、氷川先輩が…」

 

 すると、飛鳥は紗夜の気配を感知した。

 

飛鳥(…まさか)

 

**************************

 

 始業のチャイムが鳴ったが、紗夜は教室に戻れずにいて、校舎裏にいた。

 

紗夜「…何よ。皆して」

 

 紗夜は何もかも嫌になっていた。笑顔の練習をしていたのを飛鳥に見られたこと、飛鳥を口止めしようとハンバーガーショップに連れて行ったが、それが結果的に逆効果だった事。何もかも上手くいかない日々にも運のない自分自身にも嫌になっていた。

 

 飛鳥とのうわさが関係された今、自分の学校生活がこれからどうなるのかも不安に感じ、教室に帰れずにいた。

 

紗夜「もういや…」

 

 そう言って紗夜がしゃがみこもうとしたその時、

 

「あれぇ? こんな所に風紀委員がいるぞぉ?」

紗夜「!?」

 

 どう考えてもガラの悪そうな男たちがやってきた。

 

紗夜(どうして私ばっかり…もうイヤ!!)

「本当だ」

「へへへへ…」

 

 いかにも何かやらかしそうな雰囲気に、紗夜は絶望した。

 

「丁度いいや。オレ達とこのまま××しようぜェ!?」

 

 ここでは記載できない卑猥な言葉をぶつけた。最近はヤンチャしてるように見せかけて、実は滅茶苦茶いい奴だったというパターンだったが、こいつらは典型的な悪党だった。

 

紗夜「い、いや…!!」

「おっとぉ!」

「逃がさないぜ!」

 

 そう言って男子二人が紗夜を取り押さえた。

 

紗夜「た、助けて!! 助けてー!!1」

「無駄無駄。教室までは遠いんだ。誰も聞いてやしな…」

 

 その時、大音量でサイレンが鳴った。

 

「!!?」

 

『緊急事態発生!! 緊急事態発生!! 校舎裏で女子生徒が襲われています!! 教職員は直ちに現場に急行してください!!』

 

 というアナウンスが学園中に響き渡った。

 

「な、なんだこのアナウンスは!!」

「おい! 逃げるぞ!!」

「うわあああああああああああああああ!!!!」

 

 こうして男子生徒たちは逃走すると、紗夜は唖然としていた。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥は教室にいて目を閉じて、校舎裏の様子を感知していた。紗夜は無事に教職員に保護されているのも確認した。

 

**************************

 

「…すみませんでした」

 

 紗夜はちゃんと教室に帰り、クラスメイト達に迷惑をかけた事を謝った。

 

「こっちこそごめん…」

「紗夜ちゃんの気持ちを考えずに…」

 

 男子生徒たちも今回ばかりは本当に反省して謝った。彩、千聖、花音、燐子も安心して見つめていた。

 

彩「ま、まあこれで無事に解決できて良かったね…」

千聖「でもまあ、まだ他のクラスの子たちがしつこいから、気を付けた方がいいわね?」

「オレ達が責任をもってくぎさしときます!」

「ですので安心してください!!」

 

 千聖が女優オーラを出していう事を聞かせると、彩、燐子、花音が苦笑いした。

 

紗夜「白金さん達もすみませんでした。ご迷惑をおかけして…」

燐子「い、いいえ…」

 

 紗夜が謝ると燐子が苦笑いした。

 

********

 

 放課後

 

 飛鳥が気配を消して、紗夜の様子を見に2年1組の教室を覗き込んだ。笑顔は若干ぎこちないけど、クラスメイト達と和気藹々としているのを見て安心し、その場を後にした。

 

 

飛鳥(まあ、何だかんだ言っていつもの氷川先輩が一番素敵だって事だね)

 

 

 

 

おしまい

 



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第329話「T O M O R R O W」

 一丈字飛鳥です。なんだかよく分かりませんが、気分がすこしだけスッキリしています。なんか頭の中で本気でキレてやりたい放題やったら、なんかスッキリしました。だけど、実際にやると本当に取り返しがつかないことになりますので、皆さんも気を付けましょう。

 

「なんでだよぉおおおおおおおおおおお!!! オレの言ってることが信じられないのか!!? 日本の女子はオレのようなイケメンにあいさつ代わりにパンツを見せるんだよぉ!!」

 

イヴ「や、やめてください~!!!」

 

 …おっさんが若宮さんのスカートを必死にめくろうとしている。しばこ。そして語りは終わります。

 

**********************:

 

 バンドリ学園のとある会議室

 

イヴ「ひっく…ひっく…」

 

 Pastel*Palettesと飛鳥がいたが、イヴは泣きじゃくっていた。抵抗はしてみたが、格闘技をたしなんでいたのか、全く通用せず絶望しかなく、そんな状況で助かったので安心して涙が止まらなかった。

 

 飛鳥は千聖に連絡して、千聖が彩、麻弥、日菜に対して召集をかけて今に至る。

 

飛鳥「…以上です」

千聖「教えてくれてありがとう」

 

 千聖は微笑んだが、目は完全に笑ってなかった。

 

彩「迷惑行為は珍しくはないけど…」

日菜「遂に痴漢行為が出たか…」

麻弥「イヴさん…」

イヴ「いいえ…私の精神が未熟なばかりに…」

飛鳥(またオレのせいにされるんだろうなー)

 

 飛鳥はこれから起こりそうな事に、困惑を隠せなかった。

 

 

イヴ「アスカさん…」

飛鳥「?」

 

 イヴに名前を呼ばれて、飛鳥はイヴの方を向いた。

 

飛鳥「なんです?」

イヴ「助けて頂いてありがとうございました」

飛鳥「いえ、お気になさらないでください」

 

 イヴがお礼を言うと、飛鳥が苦笑いして返事をした。

 

日菜「飛鳥くんも家から出ていきなり痴漢現場に遭遇するなんて…」

飛鳥「まあ、そういう日もありますね」

 

 日菜にそう言われると、飛鳥の目が死んでいた。そんな飛鳥に対して彩は心配していた。

 

千聖「うちのクラスの男子達にも嫌味を言われてるし…」

飛鳥「あー…嫌味を言われるのは昔からなので、その辺はあんまり気にしてないですね」

 

 千聖の言葉に飛鳥はあっけらかんとしていた。

 

日菜「…言ってて悲しくならない?」

飛鳥「もう悲しくないです」

麻弥「もう悲しくないって!!」

 

 麻弥は飛鳥の言葉の重さを感じ取って、慌てて突っ込んだ。

 

飛鳥「そんな事よりも今は若宮さんですよ」

彩「そんな事よりで済ませたらいけない気がするけど…」

飛鳥「教室には行けそうですか?」

イヴ「は、はい。本当にありがとうございました」

 

 こうしてイヴは少しだけ元気を取り戻した。

 

イヴ「あ、そうだ。アスカさん」

飛鳥「なんです?」

イヴ「今度お礼をさせてください」

飛鳥「お礼ならもう受け取りましたよ」

イヴ「え? 私何も…」

 

飛鳥「『ありがとう』という一言です」

「!!」

 

 飛鳥の発言に皆が驚いた。

 

飛鳥「その言葉が一番聞きたかったんです」

イヴ「アスカさん…」

 

 飛鳥の言葉に彩・日菜・千聖・麻弥が笑みを浮かべた。

 

飛鳥「人から感謝されると、アスファルトに咲く花のようになれます」

彩「ア、アスファルト…?」

 

 飛鳥の変な言葉にすぐにキョトンとしたが…。

 

飛鳥「冗談はここまでにして、今後は先生方や黒服の人たちに見回りをしてもらって、ほかの人たちにも呼びかけをしましょうか」

千聖「そ、そうね…」

 

 こうして、6人だけの会話が終わったが、飛鳥の『アスファルトに咲く花』の意味が理解できないパスパレだった。

 

千聖「…さっきのアスファルトに咲く花ってなに?」

飛鳥「ご存じないですか? 岡本真夜の『TOMORROW』」

千聖「ああああ!!!」

 

***********************

 

 そして、イヴが教室に帰ると香澄たちクラスメイトから心配された。ちなみに飛鳥からは自分が助けたという事は伏せるように言われたので、名前は言わないようにした。香澄たちは素直に納得した。

 

 Afterglowにも同じような話がされたが、モカは飛鳥が助けたものだと確信していた。

 

******************

 

 昼休憩、イヴは飛鳥のところに行きたくてそわそわしていたが、行くとバレやすくなるから行かないように言われた。

 

「イヴちゃん」

イヴ「!」

 

 男子生徒たちが近づいてきた。

 

「今日はオレたちと一緒に昼飯食べようよ」

「ストーカーが心配だからさ」

 

 などと、理由をつけて一緒にランチをしようとかこつけた。イヴが困っていると美咲が割って入った。

 

美咲「あ、ごめん。先約があるから」

イヴ「ミサキさん!」

「な、なんだよ奥沢」

美咲「いこ。若宮さん」

イヴ「あ、はい…」

 

 美咲がイヴを連れ出すと、ほかの女子たちも続いた。

 

「く、くそう…!!」

「あいつ、邪魔しやがって…!!」

 

 そして1組の女子たちで食事をしていたが、イヴは落ち着かなかった。というのも、自分を助けた飛鳥の姿がなかったからだ。ちゃんと飛鳥が食事をとっているか不安で仕方なかった。

 

 

香澄「イヴちゃんどうしたの?」

イヴ「な、何でもありません!」

 

 香澄に聞かれてイヴは気丈にふるまった。

 

有咲「やっぱり無理してるんじゃねぇか?」

沙綾「そうだよ」

イヴ「そんなことありませんよ」

 

 有咲と沙綾の言葉にイヴは苦笑いした。

 

こころ「なんていうのかしら」

「?」

 

 こころが言葉を発すると、皆がこころを見た。

 

こころ「なんかどうしても言いたいことがあるけど、何かに遠慮して言えない感じよね」

イヴ「!!?」

 

たえ「もしかして誰かに脅されてるの?」

香澄「そ、そうなの!!?」

イヴ「そ、そうじゃなくて…」

 

 本当の事が言えないイヴが困惑した。

 

イヴ「チサトさん達からはまだしゃべるなって言われてまして…」

香澄「どうして?」

こころ「千聖たちが知ってるなら安心ね!」

有咲・美咲「……」

 

 こころの言葉に美咲と有咲が困惑していると、すぐに飛鳥が関わっていたことに気づいた。

 

有咲(あー…道理で言えんはずだわな…)

美咲(でもいったい何があったんだろ…)

 

***************************

 

 放課後。イヴはいてもたってもいられず、飛鳥の所にやってきた。

 

イヴ「アスカさん!」

 

 珍しく飛鳥は教室にいて、イヴに声をかけられて彼女の方を振り向く。

 

飛鳥「若宮さん」

イヴ「あの、今日空いてますか!?」

飛鳥「ええ、空いてますが…」

イヴ「す、少しだけお付き合いいただけますか!?」

飛鳥「構いませんよ」

 

 そう言って飛鳥はすぐに承諾して、イヴの所に向かうと、超能力で感づかれないように細工をした。

 

****:

 

 3組の廊下の前で話をしていた。

 

飛鳥「何かありました?」

イヴ「そ、その…。やっぱりお礼をさせてください!」

飛鳥「……」

 

 イヴの言葉に飛鳥は沈黙した。

 

イヴ「そ、その…迷惑だというのは理解しているのですが、やはりこのままだと…」

飛鳥「そうですね…。それじゃ一つ聞きたい事があるんですよ」

イヴ「な、なんですか? 何でもおっしゃってください!!」

飛鳥「TOMORROWって曲知ってます?」

 

 飛鳥の言葉にイヴがキョトンとした。

 

イヴ「トゥモロー…?」

飛鳥「岡本真夜っていう人が作った曲なんですが、ご存じないですか?」

イヴ「す、すみません…」

飛鳥「ああ、知らないんですね…」

イヴ「どんな曲なんですか!?」

飛鳥「そうだね…。強く生きようって思える曲ですね。Youtubeとかで聞いてみてください。それでは」

イヴ「えっ…」

 

 そう言って飛鳥は去っていき、イヴが取り残された。

 

**********************

 

 その夜、イヴは飛鳥に言われた通り、岡本真夜の「TOMORROW」を聴いてみた。

 

イヴ「……!!」

 

 感動して号泣した。

 

******************

 

 翌日…

 

「貴様ぁ!! 昨日イヴちゃんと一体何の話をしてたんだ!!」

「教えろー!!」

 

 飛鳥は今日も男子生徒たちに絡まれていた。飛鳥はほかにやる事はないのかと考えていた。

 

イヴ「アスカさん!」

 

 イヴがやってきた。

 

飛鳥「若宮さん…」

イヴ「大丈夫ですか?」

飛鳥「ええ、大丈夫ですよ」

「イ、 イヴちゃん!」

「どうしてこんな奴なんかを…」

イヴ「アスカさんは痴漢にあっていた私を助けてくれたんです!!」

 

 イヴは思い切りしゃべってしまい、飛鳥は真っ白になった。

 

「ち、痴漢から助けただと…」

「も、もしかしてアレか…。助けたのをいいことにあんな事やこんなことを…」

「ファアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!」

「もう許さんぞ一丈字ぃ!! ぶっ殺してやる!!」

イヴ「え? え?」

 

 男子生徒たちがさらに興奮し、イヴが困り果てると、

 

香澄「え!? イヴちゃん痴漢にあったって本当なの!!?」

ひまり「大変じゃない!!」

 

 香澄達も出てきて、有咲と美咲がご愁傷さまと飛鳥に向けていた。

 

「一丈字くん! あなた痴漢にあっていた若宮さんを助けたんだって!?」

「ちょっと色々聞きたいから職員室に来なさい!!」

 

 そんなこんなで飛鳥は今日一日大変な目にあったという。

 

********************

 

 放課後、河川敷…。

 

飛鳥「来るかなぁ…明日…」

 

 飛鳥は一人で黄昏ていた。そしてそれを陰で見ていたパスパレ。

 

千聖(飛鳥くん…)

麻弥(ファイトです!!)

彩(か、かわいそう…)

イヴ「あわわわわわわ…」

 

 千聖、麻弥、イヴは飛鳥に同情の涙を流し、イヴは青ざめていた。

 

日菜「なんていうか…本当にアスファルトに咲く花って感じだよね。飛鳥くん」

 

 すると飛鳥がスッと立ち上がった。

 

日菜「立ち上がった」

飛鳥「次回は市ケ谷さんと奥沢さんに頑張ってもらうか…」

 

 そう呟いて飛鳥が帰ろうとすると、有咲と美咲が即座に後ろから追いかけてきたが、飛鳥は即座に逃亡した。

 

有咲「ふざけんなぁ~~~~~~~~!!!!」

美咲「待ってぇ~~~~~~~~~!!!!!」

飛鳥(そしてその回のエンディングは「TOMORROW」にするか…)

 

 そう叫ぶのをパスパレメンバーは聞いていた。

 

彩「あわわわわ! 大変なことになっちゃった!」

日菜「なんていうか、平成初期のオチだよね」

千聖「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!」

イヴ「せ、切腹したほうが良いでしょうか…」

麻弥「お、落ち着いてくださいイヴさーん!!」

 

 

有咲「待てつってんだろぉ~~~~~~~~!!!!」

 

 

 明日は来るよ。お前のためかは知らんけど。

 

 

おしまい

 



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第330話「女の園に男は入ってはいけない」

 

 それはある日の事だった。

 

彩「ねえねえ。今度パスパレでパジャマパーティーしてみない?」

 

 カフェテリアでパスパレの5人が集まっていて、彩がそう口を開くと一斉に男子生徒たちがパスパレを見た。見たというかガン見である。

 

(パ、パスパレがパジャマパーティー…?)

(何それ超行きたい)

(美少女5人とかめっちゃ華やかじゃん)

(良い匂いするんだろうなぁ…)

 

 それを感知した千聖は困惑していた。

 

千聖「…今はやめときましょう」

彩「や、やっぱりそうだよね…」

「なんでやめちゃうの!!?」

 

 男子生徒たちが一斉に騒ぎ出した。

 

「パジャマパーティーやればいいじゃん!!」

「そうだよ! やれよ!」

「諦めんなよ! どうしてそこで諦めるんだそこで!!」

「やってください!!」

 

 何故か男子生徒たちにやたらプッシュされていて、困るパスパレ。

 

日菜「あの、言っとくけど収録じゃないよ?」

麻弥「完全にプライベートっす…」

千聖「まさかとは思うけど、自分たちも参加したいなんて思ってるんじゃないでしょうね?」

「とーんでもない」

「美少女5人の中に入ろうだなんて…」

「そんな奴いたらぶち殺しますよ」

「ま、まさか一丈字を入れるつもりなの千聖ちゃん!!」

千聖「そんな訳ないじゃない!! あの子男の子よ?」

「皆! 今の聞いたか!」

「一丈字は入れないそうだ!」

「おっしゃああああ!!」

 

 と、妙に盛り上がり始めたのでパスパレは困惑していた。

 

日菜「本当にアスファルトに咲く花が良く似合うね。飛鳥くん…」

麻弥「な、なんか可哀そうになってきたっス…」

 

 すると千聖が咳払いした。

 

千聖「と、とにかくパジャマパーティーはやりません!」

「やーらないのー!!?」

千聖「ひまりちゃんの物真似をしてもダメです!」

ひまり「えっ!? 私!!?」

 

 千聖の言葉にたまたま近くで蘭たちと食事をしていたひまりが振り向いた。

 

「本当にやらないの!?」

「残りの尺どうすんの!?」

「まだいっぱい残ってるよ!?」

「何か代替案あるん!?」

 

 そう男子生徒たちが粘ると、千聖が困惑した。

 

「そっか…。千聖ちゃんが絵を描いてくれるんだね」

千聖「文章だから分かるわけないでしょう…!」

日菜「いや、ただ絵をかいてるって事くらいは分かると思うよ?」

「千聖ちゃん。ありがとう!」

千聖「いや、まだ書くって決めたわけじゃ…」

「ありがとうございます!!」

「流石パスパレのベース!!」

「天才女優!!」

 

 こうして男子生徒たちの強引なノリで、千聖のお絵描き会が始まる事になりました…。

千聖は心の底から帰りたいと思っていたが、なんかどうにも帰れる雰囲気ではなくなり、男子生徒たちがどこからか持ってきたサイン色紙にいろんな絵をかいては、男子生徒たちに色紙を配るという事をする羽目になった。

 

*****************************

 

千聖「パジャマパーティをするから、一緒に来なさい」

飛鳥「……」

 

 後日、千聖は飛鳥を呼び出してパスパレと共にパジャマパーティーをすることを計画した。千聖は散々弄られて超不機嫌だった。

 

飛鳥「私じゃなくてもォ…」

千聖「あなたに拒否する権利はあると思ってるの?」

飛鳥「思ってますよ?」

 

 飛鳥がキョトンとしながらそう言い放つと、千聖は黒い笑みを浮かべた。

 

飛鳥「いや、少なくともご自身の立場をお考えになってください。大人気アイドルが男とパジャマパーティーなんかしたら大問題じゃないですか」

千聖「大丈夫よ。偶然にもパジャマパーティー形式でのトーク番組があるの」

飛鳥「それ、事務所の人たちに頼んだ方が良くないですか? 許可は…」

千聖「大丈夫よ。OKが出たわ」

飛鳥「大丈夫なんですか!!?」

 

 飛鳥は念のため超能力で確認したが、確かにOKを出していた。

 

千聖「うちの事務所ってそういうの割といい加減だから大丈夫なのよ。いつもはクソみたいだなって思うけど、今回ばかりは助けられたわ…ふふふふ…」

飛鳥(完全にオレに復讐する気満々だ…)

 

 飛鳥は超能力を使おうと考えたが、

 

千聖「ちなみに超能力を使っても無駄よ? その分あなたの罪が重くなるだけだから」

飛鳥「相当ご立腹ですね…」

千聖「当たり前よ!! ここまで人をこけにしといてただで済むと思ってるの!!?」

飛鳥「好感度は上がったと思いますよ…」

千聖「あなたも好感度を上げて差し上げるわ…?」

飛鳥「リンチされて終わりですよ」

 

 そんな話をしていると、男子生徒の一人に聞かれてしまった。

 

飛鳥「あれはいいですよね」

千聖「勿論よ」

 

********************

 

 そんなこんなでパジャマパーティーをすることを彩、日菜、麻弥、イヴに伝えた。飛鳥にはトーク番組の練習相手として来てもらう事を伝えて…。

 

彩・麻弥(絶対此間の事根に持ってるな…)

日菜「いいね! るんってしてきた!」

イヴ「トーク番組のお相手、よろしくお願いします!」

 

 こうして、飛鳥とパスパレはパジャマパーティをすることになりました。普通は男子生徒たちにここでバレてしまうのだが、千聖の一声で飛鳥は徹底的に記憶を消した。

 

 その結果、無事にパジャマパーティをすることに成功した。場所は事務所の近くの小さな旅館だった…。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥は気まずい気持ちで参加していた。

 

彩「ごめんね一丈字くん。つき合わせちゃって…」

千聖「いいのよ。これくらい朝飯前でしょ?」

飛鳥「白鷺先輩」

千聖「何よ」

飛鳥「…此間のお絵描き会、SNSでバズってます」

千聖「はあ!!?」

 

 千聖がツイッターで確認すると、男子生徒たちの誰かが千聖の書いた絵をアップロードしていたのだ。

 

千聖「……!」

日菜「あーあ…」

麻弥「ち、千聖さんの許可なしに…」

飛鳥「まあ、消せっていうリツイートもあるので、消えるとは思いますが…」

 

 飛鳥が千聖の方を見ると、千聖がとてつもなく震えていた。彩、麻弥、イヴが震えていた。

 

飛鳥(これは楽しいパジャマパーティーじゃなさそうだ)

 

 飛鳥は覚悟を決めた。

 

 

おしまい

 

 

 



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第331話「薫と飛鳥、たまに千聖」

 

 

 それはある日の事。飛鳥がカフェテリアで食事をとっているときの事だった。

 

「おや、一丈字くんじゃないか」

飛鳥「あなたは…」

 

 ハロー、ハッピーワールドの瀬田薫がやってきた。

 

飛鳥「瀬田先輩。こんにちは」

薫「こんにちは。今からお昼かな?」

飛鳥「ええ。瀬田先輩もですか?」

薫「ああ。ご一緒してもいいかな」

飛鳥「それは構いませんが…」

 

 飛鳥がそう言い放ったその時だった。

 

「一丈字ィイイイイイイイイイイイイイイ!!」

 

 例のごとく男子生徒たちがやってきて、飛鳥は困った顔をした。

 

「瀬田先輩と食事なんて何を考えてるんだ!!」

「お前命いらんのかァ!?」

「とてつもなく儚くない事しやがって!!」

 

 そう言っていつものように男子生徒たちが騒ぎ立てていたが、すぐさま女子たちがやってきて、男子生徒たちを取り押さえた。

 

「アンタ達こそ薫先輩の食事の邪魔してんじゃないわよ!!」

「そういう女々しいところが気に入らないのよ!!」

「薫様に喧嘩売ろうなんて、あんた達こそ命がいらないようね!!」

「××××引きちぎってやろうかァー!!!?」

 

 そう言って男子生徒たちは取り押さえられていき、飛鳥は呆然としていた。

 

飛鳥「…あの、瀬田先輩」

薫「何だい?」

飛鳥「瀬田先輩のファンって…いつもあんな感じなんですか?」

薫「そうだね。とても元気な子犬くんと子猫ちゃん達がじゃれあっているよ…」

飛鳥(いや、ガチの喧嘩だよねアレ)

 

 今まで女子が男子と自分の間に挟まれることがなかったので、困惑する飛鳥だった。

 

 そしてともに食事をする飛鳥と薫だった。

 

薫「そういえば君に対しては、気になっていたことがあるんだ」

飛鳥「何でしょう」

薫「千聖と…随分仲が良いようだね。こころとも」

飛鳥「そうですね」

 

 薫が自分の正体に気づきかけている事を想定し、飛鳥は警戒したが純粋に聞いただけのようだった。

 

飛鳥「以前にもお話したかは分かりませんが、弦巻さんは共通の友人がいたからというのもありますね」

薫「そうか…。なら、千聖とはどうやって仲良くなったんだい?」

飛鳥「そうですね…。Pastel*Palettesは日菜先輩を中心によくして頂いたのですが、白鷺先輩が興味を持ってくださって…そのままという感じですかね」

薫「儚い…」

 

 薫の儚いという言葉に飛鳥は首を傾げた。

 

飛鳥「儚い…?」

薫「まあ、私としては素晴らしいという意味だね」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 薫の宝塚キャラは一目見て作っているものだと感づいた飛鳥は、彼女にも何か事情があるのだろうと思い、突っ込まないことにした。

 

薫「千聖は私の幼馴染なんだ」

飛鳥「あ、そうだったんですか?」

 

 幼馴染だったという事は知らなかったので、飛鳥は驚いた。

 

薫「だが最近はシャイになったのか、中々つれなくてね…」

飛鳥「そうなんですか…」

薫「君の事は日菜から度々聞いていたんだが、まさか千聖も君に興味を持つとはね…」

飛鳥「……」

 

 その時飛鳥は陰で千聖、りみ、ひまりが聞いているのを感知した。

 

飛鳥「あ、そ、そうなんですか…」

 

 これ以上は何も聞くまいと飛鳥は相槌だけで済まそうとした。

 

薫「千聖も昔は…」

飛鳥(ああああああああああああああああああ)

 

 薫が千聖の昔話をし始めたので、飛鳥は絶望して超能力を使い、千聖たちに感づかれないようにした。

 

************************

 

 その夜

 

飛鳥「超能力が使えてよかった」

 

 飛鳥は自宅で安心しきっていたが、スマートフォンが鳴った。千聖からである。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥は超能力でどんな理由で電話をかけてこようとしているか探ってみたが、案の定薫との会話の事だった。どうやらほかに聞いていた人が喋ってしまったらしい。

 

 かといって電話に出ないとメールで何言われるか分かったものではないので、電話に出ることにした。

 

飛鳥「もしもし一丈字です」

『お疲れ様飛鳥くん』

 

 千聖から電話がかかってきた。

 

千聖『さて、なんの件で電話をかけてきてるかは…分かってるわね?』

飛鳥「瀬田先輩の件ですよね。はい、もう色々お話をされていたので超能力で消させていただきました」

千聖『それはもういいわ』

飛鳥「え?」

千聖『私もちょーっと薫の事で話したい事があってね…』

飛鳥「……」

 

 飛鳥は薫に心の底から同情した。まあ、薫の話を聞く限りだと、距離を置かれても仕方がないのかもしれないとも感じた。

 

********************

 

 翌日、飛鳥は薫に出会わないことを祈りながら、廊下を歩いていたが…。

 

「やあ、一丈字くん」

 

 出会ってしまった。そりゃあ出会った方が展開的には面白いからである。飛鳥は振り向くと、やっぱり薫がいた。

 

飛鳥「おはようございます」

薫「おはよう。いい朝だね…」

飛鳥「え、ええ…そうですね…」

 

 飛鳥は視線をそらすと、薫が飛鳥の異変に気付いた。

 

薫「おや、どうしたんだい? 私の顔に何かついているのかな?」

飛鳥「あ、違うんです」

薫「じゃあなんだい? もしかして私が儚すぎるから直視が出来ないのかな?」

飛鳥(別の意味で直視できません)

 

 薫の言葉に飛鳥が心の中でツッコミを入れた。

 

薫「まあ、理解できるよ。何しろ私だからね! 君も虜になってしまうのは仕方のない事だ!」

飛鳥「瀬田先輩の虜になったっていうより…」

 

 次の瞬間、飛鳥はこんな事を言った。

 

飛鳥「かおちゃんが可愛いなって」

 

 飛鳥の言葉に薫が石化すると、飛鳥は超能力を使って存在感を消して逃亡した。

 

*******************

 

 そしてどうなったかというと…。

 

薫「一丈字くんはいるかな?」

「…またいなくなりました」

 

 薫が休憩時間になるたびに1年3組の教室に来るようになったし、その夜千聖は薫に滅茶苦茶怒られた。

 

千聖「あなたが悪いのよ? うふふふふ…」

薫「もーっ!!//////」

 

 

おしまい

 



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第332話「どうあがいても鬼娘」

 

 

 もうすぐ節分の日である。

 

「あぁ…節分といえばラムちゃんの格好!」

「鬼娘の格好…」

「ぜひ着てもらいたいものだ…」

「そうだな。ぜひ着てもらいたいものだ…」

 

 そう言って男子生徒たちは期待の目をバンドガールズに向けるが、当然着るはずもない。

 

「特に千聖ちゃんは着なきゃ!」

千聖「どうしてそうなるのよ!!!」

 

 中の人が関係している。とだけ言っておこう…。

 

************************

 

 そんな中、この男はというと美少女たちとは全く無関係の生活を送ろうとしていた。

 

飛鳥「いや、無関係も何もトラブルがないときはノータッチですよ。向こうも忙しいですもん」

 

 トラブルが起きない分には飛鳥も対処のしようがなかったので、これからどうするか考えていたが…。

 

***********************

 

千聖「その日は丁度仕事がないのよ。私の護衛について頂戴」

飛鳥「……」

 

 何という事だろう。鬼娘コスをどうしても避けたい千聖から、護衛依頼が来ていた。しかもその日も平日で登校日なのだ。

 

飛鳥「他の皆さんも仕事あるんですか?」

千聖「それがどういう訳か全員ないのよ。全くあのスタッフときたら…」

飛鳥「…オフがあるのはいい事だと思うんですけどねぇ」

千聖「2月3日じゃなかったら良かったのよ…」

 

 今までの事を考えたら男子生徒軍団は一体何をしでかすか分からない為、飛鳥は一応承諾した。

 

*******************

 

 そして迎えた節分の日。

 

「今回はもうアレだ…」

 

 男子生徒たちが何やら作戦を考えていた。

 

「一丈字は完全に妨害するとして、完全に着てくれそうな子に声をかけよう!」

「ああ…!」

「正直友希那ちゃん達にも来てほしいが…確率は極めて低い!」

 

 そんなこんなで作戦が始まった。

 

『花音』

 

「花音ちゃん! この鬼娘コス着てぇ!!」

花音「ふぇえええええええ!!?」

 

 一人目は松原花音。男子生徒が複数現れて襲い掛かったが、千聖から依頼を受けた飛鳥が邪魔をして、千聖が黒い笑みを浮かべた。

 

千聖「本当にあなたたちも懲りない人ね…?」

「おお、来たぞ! 千聖ちゃんの黒い笑みが!!」

「やっぱり鬼に似合う!!」

「それで電撃も流して、『浮気はダメだっちゃ』って言ってくれぇ~!!!!」

 

 男子生徒たちはドMが多くて、千聖の威圧は逆効果だった。そして言動を見て千聖たちはドン引きしていた。

 

花音「ふ、ふぇえ…」

飛鳥「…松原先輩、こちらです」

 

 飛鳥がこっそり現れて、花音の手を引っ張った。

 

『薫』

 

「薫先輩! これ着てください!」

薫「ファンの期待にこたえなくては…」

 

 薫がいつものように宝塚風で華麗に答えようとしたが、鬼娘コスが思った以上にきわどくて、薫が思わず固まった。

 

薫「えっ…」

 

 すると薫のファンたちが現れた。

 

「ちょっとあんたたち!」

「薫様に何するのよー!!!」

「お前達も見たくないか!? 薫様の鬼娘コス!」

 

 女子生徒たちが割って入るのを想定していた男子生徒たちがそう言うが…。

 

「あ、女子だけ楽しみますので」

「男子に見せる肌は一つもねぇ~んだよぉ!!」

「うわー。女の嫌な部分出まくってるわー」

「これ見てる女性読者はこんな人間になっちゃだめだよ? ろくな死に方しないから」

「お前らにだけは言われたくねーんだよ!!」

「男子もこんなんなったら人生詰むからな!!?」

 

 とまあ、男子と女子が喧嘩を始めていた。

 

薫「やめたまえ君たち!!」

 

 飛鳥が陰から超能力で生徒たちを操って、薫のメンツをつぶさないようにした。

 

千聖「…そこまでしなくても大丈夫よ?」

 

*************************

 

『こころ』

 

「やっぱりここは大本命!!」

「こころちゃ~ん!!」

 

 こころに頼もうとしたが、黒服(♂)たちに盛大に阻止された。

 

飛鳥「…こうなるって分からなかったのかな」

千聖「馬鹿に分かるわけないでしょ」

 

 飛鳥と千聖が陰から様子を見ていたが、すっかりあきれ果てていた。

 

 

***********************

 

 そんなこんなで放課後を迎えることになった。

 

飛鳥「やっと放課後ですね…」

千聖「そうね…」

 

 飛鳥と千聖はすっかり疲れ切っていた様子で、中庭のベンチに座り込んでいた。そこにはモカもいる。

 

モカ「いや~。お二人ともお疲れ様で~す」

飛鳥「…そういや2組はどうだった?」

モカ「も~。2組でもAfterglow5人でラムちゃんの格好をしてくれって大変だったよ~」

飛鳥「そ、そう…」

千聖「完全にそれ以外の女子に喧嘩売ってるわね…」

 

 モカの言葉を聞いて飛鳥と千聖は困惑した。

 

千聖「ちなみになんて言って断ったの?」

モカ「何回かしつこく頼んできて、『いい加減にしないと、飛鳥くんにだけ見せちゃうぞ~』って言ったら大人しくなりました~」

飛鳥「あー…。またなんか仕事が残ってそう…」

 

 モカの発言に飛鳥はなんとなく嫌な予感がし、男子生徒軍団がエンカウントした。

 

飛鳥「あー。本当の鬼は皆の心の中にいるんだなぁ」

モカ「名言~」

 

「一丈字てめぇええええええええええ!!!」

「やっぱり千聖ちゃんとモカちゃんにラムちゃんの格好をさせようとしてたんだなぁ!?」

飛鳥(電撃ぶつけれねぇかな~)

 

 飛鳥もちょっとイライラし始めた。

 

モカ「本当にやっちゃおっかな~」

千聖「モ、モカちゃん!?」

「うわぁああああああああああ!! やめろぉおおおおおおおお!!」

「え? オレ達も見せてくれるの? ありがとうございますぅ」

「やったぞお前ら! モカちゃんと千聖ちゃんがラムちゃんの格好をしてくれるそうだ!」

千聖「飛鳥くん」

飛鳥「はい」

 

 飛鳥が超能力を使って男子生徒たちの記憶を消して、退散させた。

 

飛鳥「最近こんなのばっかりだなぁ」

千聖「いいじゃない。それで女の子の貞操が守れるなら」

飛鳥「…それもそうですね」

 

 これで本当に一件落着になるかと思いきや…。

 

「千聖ちゃーん!!!」

 

 彩がやってきた。

 

千聖「彩ちゃん?」

飛鳥「丸山先輩」

 

 やってくるなり、彩がちょっと気まずそうにしていた。

 

彩「…あのね」

千聖「どうしたのよ」

彩「此間ぽしゃらせた企画あったじゃん。ラムちゃんの水着着る奴…」

千聖「ま、まさか…」

彩「やっぱりやるって…」

 

 空気が止まった。

 

**************************

 

 後日

 

「やっぱりパスパレがやってくれたぁああああああああ!!」

「オレ達だけ独占できなかったのは残念だが、マンモスうれピー!!」

「やっぱり5人の肢体…イイ…!!」

「これで全裸コラ作ろーっと」

 

 パスパレは見事に鬼娘コスをさせられたという…。

 

飛鳥「…やっぱりこうなるのね」

モカ「今、こち亀のオチのBGMが流れてるよ~」

 

 飛鳥とモカも雑誌を見ている男子生徒達の様子を見て困惑していると、千聖がやってきた。

 

飛鳥「あ、白鷺先ぱ…いっ!!」

 

 千聖は超不機嫌だった。多分雑誌に載ってる写真のほかにも色々きわどいポーズを撮らされたのだろうと思った。モカも流石に慌てていた。

 

千聖「モカちゃん?」

モカ「あ、はい…なんでしょう…」

 

 千聖が黒い笑みを浮かべた。

 

千聖「こうなったらあなたもやりましょ?」

モカ「飛鳥くん」

飛鳥「おっけ」

千聖「させないわよ!!」

 

 飛鳥が千聖の記憶を消そうとしたその時、千聖がものすごい勢いで飛鳥とモカを追いかけた。

 

千聖「待ちなさぁああああああああああああああああい!!!!」

モカ「ひぇええええええええええええええ~~~~~~~~!!!!!」

飛鳥(本当に鬼は皆の心の中にいるんだなぁ…)

 

 

おしまい

 

 

 



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第333話「飛鳥とひまりとりみ」

 

 

 ある日、偶然であるが薫と食事をした飛鳥。それをいろんな人に見られてしまい…。

 

*********************

 

 そしてまたある日。飛鳥が廊下を歩いていると

 

「一丈字くんっ」

「?」

 

 飛鳥が振り向くと、上原ひまりと牛込りみがやってきた。

 

飛鳥「上原さんに牛込さん。どうされたんですか?」

 

 殆ど喋ったことがない2人に飛鳥は困惑した。

 

ひまり「今時間空いてる?」

飛鳥「ええ、何もなければ…」

「あるんだなぁこれがー!!!」

 

 飛鳥がそう言うと、男子生徒軍団がエンカウントした。

 

飛鳥「…ところで、ご用件は何でしょう」

りみ「あ、あの…昨日薫さんとお昼ご飯食べてたから…」

ひまり「詳しく聞きたいなーって」

「コラァー!! 無視するなー!!」

 

 飛鳥がりみに事情を聴こうとすると、りみとひまりの2人が答えた。だが、男子生徒たちは結果的に無視されたのでツッコミを入れる。

 

飛鳥「瀬田先輩の件ですか…」

「あとオレ達にも教えろ!!」

「そうだ!」

 

 男子生徒たちの言葉に飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「やめといたほうがいいですよ」

「は?」

飛鳥「白鷺先輩のプライバシーもあるので」

「そんなの関係あるか!!」

「大ありよ」

 

 千聖が現れた。

 

飛鳥「白鷺先輩」

千聖「昨日の会話には私の昔話も入っていて、あまり聞かれたくないのよ」

 

 千聖が笑みを浮かべたが、目は全く笑っておらず、忖度させようとしていた。

 

「え、猶更聞きたいんですけど」

「かおちさ? ちさかお?」

「幼馴染だから猶更なんですけど」

「え、本当にダメなんですか?」

 

 男子生徒たちは本当にキョトンとしながら聞いていて、飛鳥と千聖は狂気を感じた。

 

千聖(飛鳥くん。記憶を消して頂戴)

飛鳥(はい)

 

 飛鳥は超能力で思い切り記憶を消した。

 

***************************

 

 放課後…

 

千聖「全く本当に困ったものね」

飛鳥「そうっスね…」

 

 千聖と飛鳥は中庭のベンチで話をしていた。超能力で結界を張っているため、周りの生徒は2人に気づいていない。

 

飛鳥「ところで…」

千聖「何かしら?」

飛鳥「牛込さんと上原さんって、瀬田先輩のファンなんですか?」

千聖「そうみたいよ。全く理解できないけど…」

 

 千聖の言葉に飛鳥が困惑していた。

 

千聖「正直なんであんなキャラになったのか、私には理解できないわ」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は千聖から薫の過去を聞いていて、推測であるが大体わかっていた。

 

飛鳥「それは瀬田先輩にしか分からないでしょうね」

 

 千聖が飛鳥を見ると、

 

千聖「あなたはどう思う?」

飛鳥「え?」

 

 飛鳥が千聖を見ると、千聖は真剣な表情で飛鳥を見ていた。

 

千聖「薫に対して何か思う処があるんでしょう? 正直に答えなさい」

飛鳥「強くなりたかったんでしょうね」

千聖「え?」

飛鳥「まあ、私の推測なんですけどね」

 

 そう言って飛鳥は正面を向いた。

 

飛鳥「きっと今の宝塚風のキャラが、瀬田先輩のなりたいものなんだと思います」

 

 飛鳥がそう言うと、千聖は理解できなさそうにしていたが、

 

飛鳥「ずっと誰かの後ろについて歩いていたからこそ、自分もいつかその誰かのような存在になりたかったんでしょうね」

千聖「……」

 

 飛鳥のこの一言で、千聖は昔の事を思い出した。昔の薫はとても臆病な性格で、自分が引っ張っていたり背中を押したこともあった。

 

 飛鳥にそう言われると、千聖はどこか納得したような表情をしていた。

 

千聖「…そう」

飛鳥「今は見守ってあげた方が良いかと思います」

千聖「…そうね」

 

 千聖が苦笑いした。

 

千聖「それにしても、本当に大した子ね。あなた」

飛鳥「え?」

 

 飛鳥が千聖を見ると、千聖が飛鳥を見た。

 

千聖「あの力は使ってないんでしょう? 薫の事を理解するのに」

飛鳥「……」

 

 千聖の言葉に飛鳥は困惑した。

 

飛鳥「職業病という奴ですかね」

千聖「ええ、そうね」

 

 飛鳥の言葉に千聖はクスッと笑った。

 

****************************

 

 そして別の日…。

 

ひまり「今日こそ一丈字くんに薫先輩の事を聞かないと…」

りみ「うん…」

 

 ひまりとりみが薫の事を聞こうと、1年3組の教室に向かうと、飛鳥が教室から出てきた。

 

ひまり「い、一丈字くん!」

飛鳥「?」

 

 飛鳥がひまりとりみの方を見た。

 

飛鳥「どうされました?」

ひまり「その、今時間空いてる?」

飛鳥「ええ、空いてま…」

「せん!!」

 

 男子生徒たちが現れた。

 

ひまり「ちょっと! 邪魔しないでよ!」

「オレ達も仲間に入れて!?」

「そうだ! 入れろ!!」

 

 男子生徒たちがそう言って騒ぐと、飛鳥が困惑した。

 

「おやおや、いったい何をしているんだね?」

 

 薫が現れた。

 

ひまり「か、薫先輩!!」

りみ「薫さん!」

薫「子犬くんにかわって、私が相手をしてあげよう!」

「え、本当ですか?」

「それじゃぜひお願いしま…」

 

 その時、薫のファン(女子)が男子生徒達をしめあげた。

 

「だーかーらー男子たちが薫様に触れるなつってんでしょうが!!」

「そういう女々しいところがあるからモテないのよ!!」

「人をひがんでる暇があるなら少しは努力しなさいよ!!」

「楽して女にモテると思うな!!」

 

 

 そうしばかれる様子を見て、飛鳥は唖然としていたが、

 

ひまり「本当にいっつもいっつもいい加減にしなさいよ!!」

りみ「薫さんに手を出すなんて許さへん!!!」

 

 ひまりとりみも女子生徒たちに混ざって、男子生徒をしばいていた。

 

「あぁあああああああああああああ!!!♥♥♥♥ あぁあああああああああああああ“!!!!!!!!♥♥♥♥」

「おい! ずるいぞ!!」

「ひまりちゃん! 僕にもやって!!」

「りみちゃ~ん!!!」

 

 ひまりとりみに対しては男子生徒たちは喜んで、取り合いをしていた。それを見て飛鳥と薫、女子生徒たちはドン引きしていた。

 

飛鳥(道理で瀬田先輩に女性ファンが多いはずだわな…)

 

 少なくとも周りの男子たちに絶望していることもあり、薫のファンは女性が多いと認識した飛鳥であった。

 

 

おしまい

 



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第340話「バレンタインデー2022」

 

 

 バンドリ学園にもバレンタインデーがやってこようとしていたが…。

 

「…すみませんが、よろしくお願いします」

「りょーかーい」

「任せて頂戴」

 

 飛鳥はモカ、千聖の2人と事前に打ち合わせをしていた。まあ、大体検討はつくのだが…。

 

************************

 

 バレンタインデー。飛鳥はいつものように登校したわけだが、学園は異様な熱気に包まれていた。

 

 そう、男子が女子からチョコを貰えるかどうか気にしてるならまだ良いのだが、ファンたちは香澄達からチョコが貰えるか気にして、誰がチョコを貰うか気にしていたのだった。

 

飛鳥(…まあ、ハロハピメンバーあたりがくれそうだけどな)

 

 大金持ちで楽しい気持ちとかは皆と共有するこころ、ファンを何よりも大事にする薫、人懐っこいはぐみ、押しに弱い花音がいるハロハピメンバーならチョコをくれそうと考えているが、実際は美咲がストッパーになっている。

 

飛鳥(まあいいや…。早く作戦実行しよ)

 

 ちなみに飛鳥は超能力で存在感を消して進んでいて、もしもこれが普通に進んでいようものなら、気づかれただろう。

 

飛鳥(最近超能力に頼りきりだけど…まあいいや。修業にもなるし)

 

************************

 

 そんなこんなで飛鳥は学内に入り、カフェテリアにやってきたが、モカ、千聖が既にやってきた。この時に超能力を解いた。皆の前に姿を現している。

 

モカ「おはよー」

千聖「おはよう一丈字くん」

飛鳥「おはようございます」

 

 すると飛鳥がカバンからあるものを取り出した。2つの大きな紙袋である。

 

飛鳥「これが例のものです」

モカ「お~」

飛鳥「皆さんに渡しておいてください」

千聖「ありがとう♪」

 

 そう、飛鳥が持ってきたものはバレンタインチョコであり、25人分作ってきたのだ。1年生にはモカから、2年生には千聖から渡すという作戦だったのだ。教室に入ろうとすると追い出される為である。

 

飛鳥「それでは失礼します」

モカ「ありがとね~」

 

 モカがそう言うと、飛鳥はその場から離れたが、注目はモカと千聖に向かい、飛鳥も何か警戒したように見渡すと、陰に隠れていた弦巻家の黒服とアイコンタクトを行った。

 

**********************

 

「一丈字がモカちゃんと千聖ちゃんになにか渡したぞ!」

「もしかしてバレンタインチョコか!?」

「気になるぅ!!」

「何とかして聞き出せ! これがチョコだったら奪え!」

「どうやって奪うんだよ!! よりにもよってモカちゃんや千聖ちゃんに渡しやがって!」

 

 男子生徒軍団にも飛鳥がチョコを渡したことが耳に入り、作戦を考えていた。

 

「一丈字めぇ…! チョコが貰えないからって、自分がチョコを渡してホワイトデーにお返しを貰おうって魂胆か!?」

「どこまで卑怯な奴なんだ!!」

「女からチョコを貰うというプライドを捨てたのか!!」

「そこまでして千聖ちゃん達からのチョコが欲しいか!!」

 

 とまあ、醜い嫉妬の炎を燃やしていたわけだが、飛鳥としてはこうなる事も想定済みで…。

 

***********************

 

 1年3組・教室

 

「一丈字くん」

飛鳥「何です?」

 

 飛鳥はクラスメイト達に話しかけられていた。

 

「青葉さんと白鷺先輩にチョコ渡したって本当?」

飛鳥「ええ」

 

 飛鳥はあっさり認めると、クラスメイトは不思議そうにしていた。

 

「どうしてチョコを?」

飛鳥「いやあ、いつもお世話になっておりますので」

 

 そうあっけらかんと話していたその時、男子生徒軍団が1年3組に乗り込んだ。

 

「おい! 一丈字!」

飛鳥「……」

 

 来たな。と言わんばかりの目つきで男子生徒たちを見つめた。

 

飛鳥「何か御用でしょうか」

「お前、モカちゃんや千聖ちゃんにバレンタインチョコを渡したそうだな!」

飛鳥「ええ、日ごろからお世話になっているので、お渡ししただけですが?」

 

 飛鳥がそう返事すると、それがさらに男子生徒たちを苛立たせた。

 

「そんな事はどうだっていいんだよ!」

「抜け駆けしやがって!!」

「喋れば喋るほどムカつく奴だな!!」

 

 と、一方的に飛鳥に怒りをぶつけたが、飛鳥は毅然とした態度をやめない。

 

飛鳥「それで、私にどうしてほしいのですか?」

「!」

 

 飛鳥がそう言うと、一人の男子生徒がマジ切れして、飛鳥に掴みかかろうとしたが、飛鳥が返り討ちして、羽交い締めをした。

 

飛鳥「落ち着きましょうよ」

「……!」

 

 そして飛鳥は男子生徒を離して距離を取った。

 

飛鳥「何がそんなに気に入らないんですか?」

「お、お前の全てが気に入らないんだよ!! 透かしたような面しやがって!」

「そうだそうだ!!」

 

 男子生徒たちの言いがかりに飛鳥は首を傾げた。

 

飛鳥「それでしたら皆さんも今からバレンタインチョコを買って差し上げたら如何でしょうか」

「!?」

飛鳥「ただ待ってるだけじゃ、相手も何もしてくれませんよ」

 

 飛鳥がそう言うと、男子生徒たちは地団駄を踏んだ。

 

「う、うるさいうるさい!! お前は主人公だから何もしなくてもチョコ貰えるじゃないか!」

飛鳥「貰ってないですよ。実際に青葉さんや白鷺先輩からあの時貰いませんでしたし」

「でもそのうち貰えるんだろ!!? 貰える時点で大罪だ!!」

「そうだそうだ!」

 

 その時だった。

 

「飛鳥くん」

 

 千聖が教室にやってきて、飛鳥に声をかけたが、千聖だけではなくて他のバンドガールもやってきていた。

 

「多っ!!!」

飛鳥「ど、どうされました…?」

 

 飛鳥も流石に困惑していた。というのも、先日バレンタインの件でどうするべきかモカや千聖と打ち合わせをしたのだ。流れとしては飛鳥がモカ、千聖に全員分のチョコを渡して、モカ、千聖経由で男子生徒達からのやっかみ対策にチョコを渡しているので、お礼はしないでほしいと伝え、そのあと皆の前でモカと千聖に対してチョコを辞退するという意思表示をして、大人しくさせようというものだった。

 

 ちなみに何もしてない場合だと、香澄達からチョコを貰っていると勘ぐられてずっとつきまとわれる可能性があったからというものある。

 

モカ「いやー。皆飛鳥くんにお礼が言いたいってついてきちゃったんだ~」

つぐみ「あ、一丈字くん。チョコありがとね?」

蘭「…ここまで気を遣わなくて良かったのにって思ってたけど、こいつらも絡んでたのか」

 

 蘭が困惑したように男子生徒たちを見つめていた。

 

ひまり「これ結構有名な所のチョコだよね!?」

飛鳥「精を出してください」

 

 飛鳥が普通に返事すると、つぐみや沙綾が困った顔をした。

 

沙綾「…モカから聞いたけど、お礼はいいって本当なの?」

つぐみ「やっぱりそういう訳には…」

飛鳥「いえ、お気持ちだけ受け取っておきます」

 

 飛鳥が手を突き出した。

 

有咲「まあ、今はやめた方が良さそうだな」

美咲「本当に懲りないわね…」

 

 と、有咲と美咲が冷めた目で男子生徒たちを見ていた。

 

「こ、これじゃオレ達が一丈字に忖度してもらってるみたいじゃないか!!」

「どこまでも卑怯な手を使いやがって!」

 

 男子生徒たちが飛鳥に対してやっかむと、飛鳥も困った様子で視線をそらした。

 

千聖「まあ、そういう訳だから私たちは一丈字くんにチョコを渡す予定はないので、安心して頂戴?」

 

 と、千聖がそう言うと男子生徒たちは罰が悪そうにその場を去っていった。

 

「ちくしょー!!!」

「バレンタインなんて大嫌いだぁああああああ!!!」

 

 そう叫びながら去っていくと、飛鳥は困惑した。

 

飛鳥「…本当にご迷惑をおかけしました」

 

 飛鳥はクラスメイトや千聖たちに頭を下げて謝ったが、クラスメイト達も本当に大変だなと飛鳥に同情した。まあ、ここで文句を言おうものなら、さっきの男子生徒たちみたいになるのは間違いなかったので、そんな事は出来なかったが、

 

千聖「まあ、これで今日はあいつらも大人しくする事でしょう」

飛鳥「そうだといいですね…」

こころ「あら? そんなにチョコが欲しいなら…」

美咲「こころは黙ってなさい」

 

 美咲がこころの口をふさいだ。

 

飛鳥「そういう訳ですので…。お返しは本当にいらないです…」

「お、おう…」

 

 当面の間は人付き合いに苦労しそうな飛鳥を見て、バンドガールズは何とも言えない顔をしていた。

 

美咲「一丈字くん。本当にお疲れ様…」

有咲「お前がいてくれて本当に助かってるぜ…」

 

 有咲と美咲がねぎらいの言葉をかけた。

 

飛鳥「今度はお二人メインでやってみます?」

有咲・美咲「勘弁して!!(泣)」

 

 

おしまい

 



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第341話「調子に乗りすぎは禁物」

 

 

 ある日のバンドリ学園。『結婚したい男子ランキング』というものが発表されていた。

 

「よっしゃオレ1位~」

 

 そう言ってニヤニヤする男子生徒は、容姿端麗でスポーツ万能、サッカー部のキャプテンを務めている男子生徒だった。

 

「かーっ! やっぱり勝てなかったか~」

 

 そう言って友人たちは男子生徒…DQNに言い放つと、DQNは更に気分を良くさせた。

 

DQN「まあオレなら当然だよな! これでバンドをやってる奴らも…うひひひひ」

 

 とまあ、如何にも下半身でモノを決めそうなオス猿になっていた。

 

DQN「一丈字の時代も終わりだ…。今に見てろ!!」

 

*************************:

 

 その頃、飛鳥はというと…。

 

飛鳥「さて、もうすぐだな…」

 

 結婚したい男子ランキングどころではなかった。というのも、今度小型ロボットテクノロジーコンテストに参加することになり、その準備で忙しかった。

 

 そしてDQN達とも遭遇することなく、飛鳥はテクノロジーコンテストに臨み、見事に優勝した。

 

********************

 

「一丈字くん。本当におめでとう」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 そして優勝したという報道は全校生徒にも流れ、全校集会で表彰を受けた。

 

DQN「……!!」

 

 DQNが飛鳥の活躍を知って、歯ぎしりをしていたが、飛鳥はまったく気にしていなかった。というのも、昔からこういう目で見られていたという事もあったからだ。

 

飛鳥(超能力で存在感消したろ)

 

**********************

 

「くそっ! あいつ余計な事しやがって…!!」

 

 DQNは自分の教室で憤慨していた。彼は2年3組で友希那達とは違うクラスだった。

 

DQN「だが、これでも結婚したい男No.1なんだ。焦らずに行こう」

 

 そう言ってDQNは冷静を取り戻して、友希那達にアタックする事を決意した。

 

 早速隣の2組にいる日菜、麻弥、薫、友希那、リサにアタックすることにしたが…。

 

「まさか一丈字さんがあの小型ロボットに詳しかったなんて…」

 

 様子を見に行くなり、麻弥がとても震えていた。

 

日菜「ホント驚きだよねー。初心者とは思えないし、昔からやってたのかな…」

友希那「中々芸達者ね」

薫「儚い…」

 

 すると麻弥が立ち上がった。

 

麻弥「こうなったら早速聞いてみるッス!」

 

 そう言って麻弥が飛鳥の所に行こうとすると、日菜たちも面白がってついていこうとした。

 

DQN「ちょ、ちょーっと待った麻弥ちゃん!」

麻弥「!?」

 

 突然DQNが現れたので、麻弥たちは驚いた。

 

DQN「そ、そういえば1年の一丈字が優勝したいみだいだねぇ」

麻弥「そうっすよ! 実はジブンもあの小型ロボットには興味があって…」

DQN「ま、まあ一丈字もすごいかもしれんが、オレもすごいんだぜ? サッカー部のキャプテンでイケメンだし、バンドリ学園で結婚したい男No.1にも選ばれた…」

友希那「御託はいいからそこをどいてくれないかしら」

 

 友希那は毅然とした態度でDQNを一蹴した。

 

DQN「な、なんでだよ! たかがオモチャで優勝したくらいだろ! 主人公だからってあんな陰キャにチヤホヤなんてしてんじゃねーよ!」

 

 DQNがそう怒鳴ると、友希那はため息をついた。

 

友希那「…やっと本音を吐いたわね」

リサ「あのさ。結局あなたは飛鳥くんに対して僻んでるだけじゃない?」

DQN「そ、それはあいつは主人公だからで…」

友希那「主人公かなんだか知らないけど、もしあの子があなたみたいだったら、ここまでしないわよ。行きましょ」

 

 そう言って友希那が他の4人を連れだした。

 

DQN「…く、くそ!! なんでだよ!!」

 

 DQNは友希那達の事は諦めて、彩たちがいる1組に向かったが、教室に来るなり紗夜と千聖がDQNを睨みつけていた。

 

DQN「な、なに怖い目で見てるのかな…」

千聖「友希那ちゃん達との会話、聞こえてたわよ」

 

 燐子や花音は怖がっていた。

 

彩「一丈字くんだってちゃんと頑張ったんだから、そういう事言うの良くないよ?」

DQN「あ、あれはちょっと語弊があって…」

千聖「ないじゃない。なかったらあんな事言わないでしょう?」

紗夜「あなたはサッカー部のキャプテンでしょう? 部を纏める人間がそんな調子でどうするんですか?」

 

 と、冷静に諭されてDQNは歯ぎしりした。

 

DQN(何もかも一丈字のせいだ!!)

 

**********************

 

 そして昼休憩、飛鳥は存在感を消してそのまま中庭にいて、いるだろうと予測していたモカやこころと会話をしていたが…。

 

「一丈字くん!! 2年のDQN先輩たちが一丈字くんを出せって怒ってて…」

飛鳥「……」

モカ「来ないとどうするって言ってた?」

「一丈字くんが来るまで教室に居座ってて、説得しても帰ってくれないし、暴れるの…」

こころ「それは良くないわ!」

飛鳥「心配ないよ」

「え?」

 

 飛鳥が一息ついた。というのも、こうなる事を想定して弦巻家の黒服たちがDQN達を取り押さえたのだ。

 

DQN「く、くそう! 卑怯だぞ!!」

 

*******************

 

飛鳥「ご迷惑をおかけしました」

「う、うん…」

 

 教室に帰るや否や、飛鳥はクラスメイト達に謝罪した。モカやこころだけでなく2年生たちも来ていた。

 

日菜「別に飛鳥くん悪くなくない?」

飛鳥「まあ、そうなんですが、結局皆さんに迷惑がかかったので」

 

 飛鳥が困ったように言い放った。

 

友希那「それはそうとどうして大会に出たのかしら?」

飛鳥「優勝賞品を欲しがってた人がいて、私が丁度あの小型ロボットを触ったことがあったので、出場したんですよ」

薫「で、その賞品は渡せたのかい?」

飛鳥「はい、すっごく喜ばれてました」

 

 飛鳥がふっと笑った。

 

麻弥「そういえば一丈字さんってあの小型ロボットのメンテナンスとかもやってるんですか!?」

飛鳥「ええ。カスタムからメンテナンスまで全部やってますよ」

麻弥「こ、今度作業場とか見せてもらう事ってできませんか!?」

飛鳥「あー…。作業場は無理ですが、近くにそういう施設があるので、そこでなら作ってる所とかお見せできますよ」

麻弥「是非お願いします!」

日菜「アタシもいきたーい!!」

 

 とまあ、結果的に飛鳥は今日も沢山の人々に囲まれましたとさ。

 

飛鳥(まあ、本当に人に囲まれたいなら、自分の事ばかり考えたらダメだね)

 

 ちなみに一連の騒動があって、DQNは結婚したい男ランキング1位は剝奪になったが…。

 

「元々の1位が2年生の薫先輩だから、威張られてもねー」

「だから無効にしない方がいいって言ったのに」

 

おしまい

 

 

 



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第344話「座長はつらいよ(前編)」

 ガールズバンドを狙う悪質なファン『ヤラカシ』を排除する為に協力を要請され、広島から東京のバンドリ学園にやってきた一丈字飛鳥。

 

 だが、バンドリ学園にはとてつもなく強い格闘少女がいて、男子生徒たちは彼女ともお近づきになろうとしていた。

 

 飛鳥としては彼女の人柄から関わると面倒くさそうだと判断したので、関わらないでいるつもりだったが、彼女が所属する空手部の見学に行った弦巻こころが余計なことをしゃべってしまい、飛鳥は格闘少女と鉢合わせしてしまう。

 

***********************

 

「あなたが一丈字飛鳥くんね」

「あ、はい」

 

 カフェテリアで飛鳥と少女が鉢合わせし、周りには皆が反応した。こころと美咲もいる。

 

「弦巻さんから話は聞いてるわ。私と一戦お願いできるかしら」

飛鳥「お断りします」

 

 飛鳥は毅然とした態度で言い放った。

 

「逃げるの?」

飛鳥「ええ。逃げますよ」

 

 飛鳥が堂々と言い放つと、他の生徒たちが騒ぎ立てた。

 

「逃げるのか一丈字!」

「男らしくないぞ!」

「戦え!!」

「それでも主人公か!」

 

 そう騒ぎ立てると、飛鳥は冷たい視線を向けながらも、女子生徒を見つめた。

 

飛鳥「あなたが戦いたい理由は何ですか?」

「早い話、格闘家としてあなたに興味が沸いたの」

飛鳥「だったら猶更ですね」

「え?」

 

 飛鳥は静かに目を閉じ、女子生徒に背を向けた。

 

飛鳥「私は微塵も興味ありません。他をあたってください」

 

 そう言って飛鳥が歩き出そうとしたが、男子生徒たちが立ちふさがった。

 

飛鳥「そこまで戦ってほしいですか?」

「逃げるなんて許さねーぞ」

「戦え」

 

 飛鳥は一息ついて周りを見渡すと、誰も自分を助けてくれそうになかった。こころ達も自分が戦うものだと思っていたが、すっかり冷めてしまった。

 

美咲「こ、こころ。やっぱり無理やり戦わせるのはよしなよ。一丈字くん嫌がってるじゃん」

こころ「そうなの?」

 

 こころの言葉に飛鳥は困惑した。

 

こころ「飛鳥は強いからその子と戦うものだと思ってたけど…」

飛鳥「戦いませんよ」

こころ「どうして?」

「私じゃ相手にならないからかしら?」

 

 そう言うと、飛鳥は女子生徒の方を見た。

 

飛鳥「いいえ。自分の力を誇示しようとしているからですね」

「誇示?」

飛鳥「そういうのいつか痛い目にあいますし、いくら格闘技とはいえ、男が女性に手を上げるなんて、男からしてみたらあまり宜しくない事ばっかりなんですよ」

 

 飛鳥がげんなりした表情で女子生徒にそう言うが、

 

「女だと思って甘く見る方こそ痛い目に合うんじゃないかしら?」

飛鳥「あと、結構人の話聞かないですよね」

 

 飛鳥の言葉に美咲は嫌という程同情した。

 

飛鳥「まあ、そこまで言うなら相手してもいいですけど…」

「やっと勝負する気になったわね」

飛鳥「でももしかしたら、ここにいられなくなるかもしれないから…」

「その心配はないわ。私が…」

飛鳥「次回は冗談抜きで奥沢さんと市ケ谷さんに頑張って貰いましょう」

美咲「いや、待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て!!!!」

有咲「いちいちアタシと奥沢さんを巻き込むのやめろぉ!!!」

 

 美咲が出てきたし、有咲も画面の外から出てきた。

 

「そうだぞ一丈字!!」

「男らしくないぞ!」

「ていうかなんでこんな奴が主人公なの!?」

「もうお前いい加減にしろよ!!」

 

 とまあ、男子生徒たちもブーイングをしたが、飛鳥は変わらなかった。

 

飛鳥「もう昔からこんな感じなんですよ。全部私のせいにされるんです」

有咲・美咲「……」

 

 飛鳥の言葉に有咲と美咲は困惑したし、女子生徒も流石に状況を把握したのか、態度を改めた。

 

「分かったわ」

「!」

女子生徒「あなたが相当苦労してるってわかったし、今は退いてあげるわ」

飛鳥「感謝します」

女子生徒「けど、諦めた訳じゃないから」

 

 そう言って女子生徒は去っていった。

 

飛鳥「ふぅ…」

 

 飛鳥が一息ついたが、皆冷めた目で飛鳥を見ていたが、本当に気にしなかった。

 

飛鳥「あ、それでは私はこれで失礼しますね」

 

 そう言って飛鳥は去っていき、超能力を使って悟られないようにした。

 

「何だよあいつ…」

「白けるな」

 

 男子生徒たちは冗談抜きで飛鳥を軽蔑していたが、飛鳥としては「じゃあお前がやってみせろ」と言うだろう。

 

**********************

 

美咲「本当にごめんね一丈字くん…」

飛鳥「いえ、弦巻さんの事はもう分かってるので…」

 

 飛鳥は一人で中庭のベンチに座っていたが、美咲・こころ、有咲が追いかけてきた。

 

美咲「こころ!」

こころ「飛鳥。どうしてあなたは戦おうとしないのかしら?」

有咲「いや、そうじゃなくて…」

 

 本当に理解できていないこころに有咲と美咲は呆れかえっていた。

 

飛鳥「弦巻さん。別に戦う事自体はしても良いんですよ」

こころ「そうでしょ?」

飛鳥「とはいえ奥沢さん」

美咲「はい?」

 

 突然自分の名前を呼んだので、美咲が反応した。

 

飛鳥「いくら試合とはいえ、女をボコボコにする男ってどう思います?」

美咲「……」

 

 飛鳥の言葉に美咲は嫌という程理解できた。

 

飛鳥「戦いに勝っても、皆からぼろくそ言われますよ。女相手に本気でやるなだの、手加減してあげればいいのにだの。こっちは何一ついい事なんてないんですよ」

 

 しかもおまけにあの変態たちの相手もいけない。そんな飛鳥の苦労の多さに美咲と有咲は涙した。

 

こころ「良い事がないなんて事はないと思うわ?」

飛鳥「せめてね。私があの人をコテンパンにやっつけても、一人だけでも味方してくれる人がいるだけでいいんですよ」

こころ「何言ってるのかしら? あたしは味方よ?」

 

 こころは普通に言い放ったが、美咲としてはトラブル起こしたのお前だからここまで困ってるんだろと突っ込みたかった。

 

飛鳥「ありがとう。でもその味方に窮地に追いやられてるのはなんでだろう?」

美咲「ですよね!!」

有咲「一丈字。アタシ達が味方になるから。あと、出来れば代役は勘弁してください」

 

 そんなこんなで美咲と有咲に励まされて、飛鳥はとりあえず元気になった。

 

 

つづく

 



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第345話「座長はつらいよ(後編)」

 

 後日、女子生徒がすぐにやってきました。

 

「一丈字くん。私と勝負しなさい」

飛鳥「いいですよ」

「!?」

 

 飛鳥がスッと立ち上がると、クラスメイト達が驚いた。

 

「やっと勝負する気になったのね」

飛鳥「ええ。気が変わりました。そこまで言うのであればやりましょう」

 

 飛鳥がにっこり笑っていたが、目が笑っておらず女子生徒が困惑した。

 

「ど、どうしたの…?」

飛鳥「どうもしませんよ。やっぱりやめますか?」

「や、やめない!!」

 

 そんなこんなで飛鳥と女子生徒が試合をすることになり、ギャラリーも集まったが。

 

「!!」

飛鳥「……」

 

 女子生徒が攻撃を仕掛けるが、飛鳥には全く通用せず普通に防いでいた。

 

「え…ちょ…」

 

 見学に来ていたリサ達も普通に驚きを隠せなかった。

 

「さっきから全然攻撃しないのはどうして!?」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は言葉を一切放つことなく、女子生徒の攻撃をかわした。

 

「防戦ばかりしても勝てないわよ!!」

 

 そう言って女子生徒は攻撃を繰り出すが、飛鳥は全く答えていなかった。

 

飛鳥(…確かに言うだけの事はあるけど、それでもねぇ)

 

 能力者として訓練を受けている飛鳥にとっては全く相手にならなかった。

 

 そしてそんな事が続いて、女子生徒は遂にバテた。

 

「ハァ…ハァ…」

飛鳥「……」

 

 それでいて飛鳥は涼しい顔をしていた。

 

「そ、そんな…」

「全く歯が立たないなんて…」

「一丈字の奴、こんなに喧嘩が強かったのか…?」

 

 いつも飛鳥に対して文句を言っている男子生徒達ですら、恐れおののいていた。

 

有咲「い、一丈字の奴、こんなに強かったなんて…!」

はぐみ「かっこいー!!」

 

 という言葉が聞こえて、飛鳥はまずいと判断した。というのも、好感度が上がってしまうと、色々面倒なことになるからだった。

 

「ど、どうして…」

 

 女子生徒が飛鳥の方を見た。

 

「どうして一切攻撃をしてこな…」

 

 女子生徒が飛鳥に対して文句を言おうとしたその時、飛鳥が『後掃腿』で女子生徒を転倒させた。

 

「!」

 

 そしてしっかり女子生徒の両足を左腕でガッチリ締めて、身動きが取れないようにした。

 

飛鳥「それはすぐにわかりますよ」

「!」

 

 次の瞬間、飛鳥は右手で女子生徒の左足裏をくすぐった。

 

「っ!! あははははははははははははははははははははは!!」

 

 女子生徒はくすぐりに堪えられずに大笑いしたが、飛鳥は無表情だった。その様子に有咲と美咲は唖然としていた。

 

「きゃははははははは!! や、やめて!! 私くすぐりは弱いのぉ!! あはははははははははは!!!」

 

 何という事だろう。女子生徒はくすぐりが大の苦手だった。見ていたギャラリーは唖然としていた。

 

飛鳥「○○さん」

「な、なに?」

飛鳥「恐らくこの戦いが終われば、私は女子生徒達から嫌われ、男子生徒達から嘲笑される事でしょう。ですがもう後悔はしません」

「!」

飛鳥「冥土の土産にあなたを徹底的にしばきますわ」

 

 そう言って右足裏をくすぐり始めた。

 

「あっははははははははは!! 私! 私右はもっとダメなのぉ!!!」

飛鳥「そうですか」

 

 女子生徒の顔面は完全に崩壊して、口は大きく開き、目からは大量の涙があふれていた。

 

飛鳥「それはそうと○○さん。今あなたが大笑いしているのを皆さんが見てますよ」

「あははははははは!!! あ、ああっ!! は、恥ずかしい! み、見ないでぇ…///// あっはははははははは!!!」

 

 大勢の生徒に自分の醜態を見られて恥ずかしがっていたが、それでもくすぐりに対する笑いが止まらなかった。

 

飛鳥「恥ずかしくないのですか?」

「は、恥ずかしくなんか…いひっ…」

飛鳥「どんどん可愛いらしい顔になってますよ」

「いやああああああ!!! 見ないでぇええええええええええ…ガッハハハハハハハハ!!!!!!!!」

 

男子生徒たちはくすぐりにやられている女子生徒を見て…性的に興奮していた。

 

美咲「最低!!」

有咲「い、一丈字!! もうやめてやれ!!」

飛鳥「はい」

 

 飛鳥はあっさりやめると、女子生徒は息を切らしていた呼吸を整えようとしていたが、顔はすっかり蕩けており、足を思い切り開いていた。

 

「あああああああん!! もう無理っ!!」

「胴着姿でそんな顔と格好をされたら!!」

 

 男子生徒たちは興奮が抑えきれなかったが、飛鳥が近づけないように細工だけして、男子生徒たちもまた醜態をさらし続け、女子生徒からの信頼をほぼゼロにした。

 

 そして飛鳥は立って女子生徒を見下ろす。

 

飛鳥「恐らく私は今日で最後になるでしょう」

有咲「ならないからな?」

美咲「次回からもよろしくお願いします」

飛鳥「あ、大丈夫ですよ。原作をベースに市ヶ谷さんは可愛い可愛いって愛されまくるお話…」

有咲「猶更だよ!!//////」

美咲「ち、ちなみにあたしは?」

飛鳥「奥沢さんは…おそらく私とほぼ同じ道です」

美咲「何この格差!! それだったらあたしも…」

 

 皆が美咲を見つめた。

 

飛鳥「…ですよね」

美咲「一丈字くん?」

飛鳥「まあ、そういう訳なので、私の事は忘れてください」

 

 女子生徒に対してそう言い、飛鳥は超能力を仕込み、逃げるように去っていった。

 

************************

 

 で、どうなったかというとこうなりました。

 

「次っ!!」

「ああん!!」

 

 空手部には大量の男子生徒たちが入部してきたのだが、男子生徒たちはドMがすごかったので、女子生徒のサンドバッグになったとかならなかったとか。

 

(なんだかよく分からないけど、倒したい相手が近くにいるような…!!)

 

 空手部の道場を近くで飛鳥、有咲、美咲が見つめていた。

 

飛鳥「何とかなったと信じたい」

有咲「一丈字。とにかく次回もお前が座長な」

美咲「こころの事は本当に申し訳ないと思ってるから、頑張って頂戴」

飛鳥「はい」

 

 

おしまい

 



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第346話「訳ありなお茶会」

 

 

 ある日の弦巻家。飛鳥、モカ、千聖は能力者関係の話をするために集まっていて、こころはお茶菓子を選ぶために席を外している。

 

飛鳥「態々来ていただいてありがとうございます」

千聖「仕方ないわ。家で話しても家族から変な話をしてると思われるのも嫌だし」

モカ「そうだね~。中二病だと思われるから、あこちゃんとキャラかぶっちゃうよ~」

飛鳥「キャラとか言わない」

 

 モカの言葉に飛鳥が困惑した。

 

モカ「でも思ったんだけど~。飛鳥くんってなろう系主人公っぽいよね~」

飛鳥「うん。そうだね…」

 

 モカの発言に飛鳥が遠い顔をした。

 

千聖「なろう系って何かしら?」

モカ「最近はやっている主人公で、何でもできて女の子にモテる主人公の事ですよ~」

飛鳥「モテた記憶ないんですけど…」

モカ「あるじゃん。『何かがあったシリーズ』とかで」

飛鳥「あー」

 

 モカの言葉に飛鳥が反応した。

 

飛鳥「本当に申し訳ない」

モカ「まあ、二次主人公じゃなくても、女の子がそう簡単に惚れる訳ないもんね~って言いたいけど、飛鳥くんは冗談抜きで素質あるよね~」

飛鳥「喜んでいいのかどうかわかりません」

千聖「その、二人で盛り上がっているところ申し訳ないのだけど、もう少し詳しく説明してもらえるかしら?」

モカ「いいですよ~。多分女優のお仕事で、そういう作品に出るかもしれませんし~」

 

***********************:

 

『なろう系主人公あるある:髪の毛は黒』

 

飛鳥「該当してますね」

モカ「まあ、髪の色が黒じゃなかったら、髪を染めてるかくらいだよね~」

飛鳥「高校生デビューをしようとして金髪とかにしたら、事故ってそのまま異世界転生なんて事も…」

千聖「確かに黒の方が普通ってイメージがあるわね…」

 

『なろう系主人公あるある:チート級に強い』

 

飛鳥「なろう系じゃなくても、チート級に強い主人公いくらでもいると思うんですけど…」

モカ「ドラゴンボールやワンピースがそうだよね~」

飛鳥「悟空さんは作中で結構修業してるけどね。ルフィさんは少ないような…」

千聖「どうして『さん』付けなのかしら?」

飛鳥「pixivの二次創作の関係もありまして…」

モカ「そう言えばチョイ役で出てたねー。そこでは座長とかやらないの?」

飛鳥「いやいや。もうドラゴンボールやワンピースくらいになると、座長は無理だよ。戦いについてこれないもの」

 

 飛鳥が頭をかいた。

 

飛鳥「ただでさえ他の作品で座長をやる事自体、関係者の皆さんに対して恐れ多い事なのに、悟空さんやルフィさんより強いってなったら、間違いなく反感買うよ」

モカ「まあ、レジェンドだもんね~」

 

 飛鳥の言葉にモカが反応した。

 

『なろう系主人公あるある:力をセーブしてる』

 

飛鳥「これは該当してますね」

モカ「どうして力をセーブしてるの?」

飛鳥「まあこれ力をセーブしてるとかって以前に、格闘技も嗜んでるから…手加減しないとダメでしょ」

千聖「そ、それもそうね…」

モカ「そういえばよくなんか力を測るイベントってあるじゃん。あれ、飛鳥くんはどうしてるの?」

飛鳥「原作ではそんなのないけど、絶対失敗しないようにするよ」

千聖「もし失敗してしまったら?」

飛鳥「普通に一言『終わりました』とかって言いますね」

モカ「飛鳥くんのこれからの人生も?」

飛鳥「座布団があったら一枚あげたんだけどなぁ」

 

『なろう系主人公あるある:順応性が高い』

 

飛鳥「あー…」

 

 飛鳥は困惑した。

 

モカ「飛鳥くんって結構順応性高いよね」

飛鳥「これは認めよう」

千聖「何か理由はある?」

飛鳥「そうですね。昔からいじめられたり、ハブられてたり、何かしら嫌われたり、色々あったんで、もう慣れましたね…」

 

 飛鳥の発言に空気が止まった。

 

飛鳥「私の場合はすぐに対応できるというか、長年の経験からもう順応性が高くなってしまったの間違いですね」

千聖「…本当に苦労してたのね」

モカ「つぐが本気で心配してたよ…」

 

『なろう系あるある:女神が理不尽』

 

飛鳥「そもそも女神様にあった事ないんだよな…」

モカ「そういえばラブライブではおじいちゃんの神様とコンビ組んでなかった?」

飛鳥「ああ、羅城丸様の事? 羅城丸様はちゃんと事情とか説明してくれたよ」

千聖「そういえば、ダシマ式ラブライブには女神様とか出てたわよね?」

飛鳥「あ、そうですね…。既婚者の女神さまがいたり、楽してモテようとする転生者を懲らしめたりとか…」

モカ「どっちかっていうと転生者が理不尽だよね~」

飛鳥「全くだ…」

 

 モカの言葉に飛鳥が腕を組んで納得した。

 

 

*****************************

 

モカ「なろう系主人公の特徴はこんな感じですね」

千聖「そ、そうね…。飛鳥くんはちょっと違う所があるけど、なんか現実味がないわね」

飛鳥「そうですね…」

モカ「千聖さんが言った通り、なろう系主人公って好まれない場合もあるんですよ~」

千聖「やっぱり現実味がないから?」

モカ「それもそうですけど、まず…」

 

『嫌われる理由:努力をしない』

 

モカ「楽して力を得ているからですね~」

千聖「…飛鳥くんはそんなことないわよね?」

飛鳥「ないです。力はあったけど、コントロールとかは殆ど自分の力でやらないといけないので、努力をしてないって事は絶対ないです。まあ、努力してるシーンが殆ど書かれてないから、努力してないと思われても仕方ないですけどね」

モカ「苦労はしてるよね」

飛鳥「なので、努力をしてないなんて事はないです」

 

『嫌われる理由:現実味がない』

 

飛鳥「それを言ったらおしまいな気が…」

千聖「主人公って何とかなるものじゃない」

モカ「まあ、何とかならなかったらお話になりませんもんね~」

飛鳥「あまりにもすごすぎて共感してもらえないって所ですかね」

 

***********************

 

モカ「とまあ、なろう系主人公についてお話したわけですが、理解してもらえましたか?」

千聖「そうね。飛鳥くんはどうかしら?」

飛鳥「私は大丈夫ですよ」

モカ「何か言いたい事はある?」

飛鳥「そうだね」

 

 飛鳥がカメラの方を向いた。

 

飛鳥「仮にチート能力を手に入れても失敗はしますし、すべてが思い通りになるわけではありません。なので、手に入れた力をどのように使い、これからどうするか考えることで道は開かれます。なので、地道に努力しましょう」

モカ「以上!」

こころ「お待たせ! 何の話してたのかしら?」

 

 

おしまい

 



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第347話「ユキコレ」

 

 

 それはある日の事だった。

 

「今日も練習に付き合ってくれてありがとー!」

 

 飛鳥は今日もRoseliaの練習に付き合う事になったのだが…。

 

リサ「そういえば友希那遅いなー」

紗夜「もうそろそろ来ても良いころなのだけど…」

 

 ボーカルである湊友希那は用事がある為、少し遅れるとの事だったが、到着予定時間よりも5分以上過ぎていた為、流石に心配になった。

 

 そんな時、友希那がやってきた。

 

友希那「お待たせ…」

「!」

 

 やってきた友希那はびしょぬれだった。

 

リサ「ど、どうしたの友希那! びしょぬれじゃん!!」

友希那「車に水をかけられたのよ…」

 

 実際は猫がかけられそうだったのを、友希那が身を挺して庇ったのだ。

 

紗夜「は、早く着替えないと…」

燐子「な、何か着替えとかは…」

 

 皆が友希那の替えの服をいかにして用意できないか考えていたが、

 

あこ「あ、そういえば飛鳥くん! 体操服持ってなかった!?」

飛鳥「え」

 

 あこの発言に飛鳥が驚いた。

 

あこ「しかも今日使ってないって!」

飛鳥「あるっちゃありますけど…」

紗夜「い、いったい何を考えてるの! 男子の体操服を借りるなど…ふ、風紀委員である以上見過ごせません!」

飛鳥「そういやサークルでシャツとか売ってませんでしたか?」

 

 サークル・売店

 

まりな「ゴメーン…。実は売り切れちゃって…」

紗夜「そ、そんな…」

 

 売店を訪ねたが、店員の月島まりなが苦笑いしながらそう言われた。

 

友希那「仕方ないわね。一丈字くん、体操服を貸して頂戴」

まりな「え?」

飛鳥「本当によろしいのですか?」

友希那「練習の時間が減ってしまうわ。じゃないとここに来た意味もなくなるじゃない」

飛鳥「わ、分かりました…」

 

 こうして友希那は飛鳥の体操服を借りることにしたのだが…。

 

友希那「練習始めるわよ」

「……!」

 

 飛鳥から体操服を借りたが、結構ぶかぶかだった。

 

紗夜「み、湊さん!!/////」

友希那「何よ」

紗夜「ちゃ、ちゃんときつく締めましたよね!? 下着が見えてしまっては…」

友希那「気にしすぎよ」

飛鳥「あ、私はもうここで引き揚げますね。後日返していただければ…」

友希那「気にしなくていいわ。それよりも刻一刻も争うわ。練習を始めるわよ」

 

 こうして友希那達は練習を始めたが、紗夜は友希那の体操服がずれ落ちないか不安で仕方がなく、演奏に集中できなかった。飛鳥もそれを感知したのか、何とも言えない顔で見ていた。

 

友希那「紗夜。いくら何でも気にしすぎよ」

紗夜「そんなこと言われたって…////」

 

 異性の間で服の貸し借りしている事が強烈すぎて、悶々とする紗夜だった。

 

 そんな中、

 

「友希那ちゃーん」

 

 まりながやってきた。

 

リサ「まりなさん!」

まりな「良さそうなのがあったから、これなら行けるんじゃないかしら」

 

 こうしてまりなに言われた通り友希那はその服に着替えたが…。

 

リサ「……!!」

 

 前にでっかく『音楽馬鹿』と書かれていて、後ろには『オレの夢は野垂れ死に』と書かれていた。それも服の色はピンク色で、ズボンもピンク色だった。

 

 友希那との普段のイメージと全く合わない上に、シュールな組み合わせにリサは吹き出しそうになっていた。

 

あこ「結構斬新だね…」

燐子「そ、そうだね…」

 

 あこと燐子は何とも言えないリアクションをしていた。

 

紗夜「……」

 

 紗夜も最初は無表情を装っていたが、やっぱり面白かったのか、後ろを向いて笑いをこらえていた。

 

友希那「一丈字くん。紗夜が笑ってる事皆にしゃべっていいわよ」

飛鳥「え」

紗夜「れ、練習始めますよ!!!////// あと一丈字くんは内緒にして!!」

あこ「リサ姉は何もないの?」

友希那「大丈夫よ。今度また肝試しさせるから」

リサ「友希那ぁ~!!! ごめんって~!!!!!」

 

 リサが涙目で謝罪して、このまま練習が行われた。

 

友希那「やっぱりRoseliaのイメージに合わないわ」

リサ「ま、まあそうだけど…。わがまま言うのは良くないよ」

燐子「あ、あのう…」

「?」

 

 燐子が話しかけた。

 

燐子「今度のライブの衣装のサンプルを持ってきたのですけど…。これも試してみますか?」

友希那「燐子。それを早く言ってほしかったわ…」

リサ「あの、まさかと思うけど本当に肝試しやらないよね…?」

 

 そんなこんなで友希那はサンプル衣装を着たのだが…。

 

友希那「……//////」

 

 ピンクを基調としたフリフリの衣装で、事もあろうにツインテールにさせられていた。

 

あこ「可愛い!!////」

燐子「素敵です…」

友希那「リサ。次回は肝試しよ。良かったわね」

リサ「燐子~~~~~~~~~!!!!!!」

燐子「ひゃあああっ!! す、すみません~~~~~!!!!!」

友希那「自業自得よ」

 

 友希那、リサ、燐子、あこのやり取りを飛鳥と紗夜は何とも言えない表情で見ていた。

 

リサ「あ、そうだ。燐子にはたくさんの人に囲まれる奴を…」

燐子「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

あこ「リ、リサ姉! りんりん死んじゃうよ!!」

リサ「アタシだっておばけがいるところにぶち込まれたら死んじゃうわよぉ!!」

友希那「はぁ…。もうこれじゃ練習どころではないわね」

飛鳥「いったん休憩にしますか?」

 

 こうして色々あったが、その日の練習は終わった。

 

 で、勿論最後はこうなる。

 

「友希那ちゃんのぬくもりをまとった体操服をよこせぇ~!!」

飛鳥「私からしてみればこれが一番ホラーです!!」

 

 

おしまい

 



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第348話「人豚(前編)」

 

 

 ある日の夜。弦巻家にバンドガールが集まっていた。

 

まりな「えー、今回も皆にはホラー映画を見て貰います」

「は?」

まりな「気持ちはわかるけど、一言に圧縮するのやめて。こわい」

 

 司会進行を務める月島まりなだったが、香澄達の静かなるブーイングに萎縮した。

 

リサ「き、肝試しって言ったじゃん…!!」

燐子(人込みに巻き込まれたりしないよね…?)

 

 リサと燐子は涙目で震えていた。

 

香澄「えええ、もうイヤなんだけどぉ…」

有咲「前はあんなに面白がってたのに」

香澄「皆と一緒に映画を見るのは楽しかったんだよぉ!」

有咲「だから抱き着くなってのー!!」

香澄「…ところで、有咲のおっぱいって」

有咲「気持ち悪い事言うなぁー!!!!」

 

 香澄の発言に有咲がとてつもなく青ざめて叫んだ。

 

蘭「あれ? また一丈字がいない…」

まりな「ああ。一丈字くんなら選択方式で連れてこれるわよ?」

巴「選択方式?」

まりな「女子だけで楽しみたい場合は今回出番なしだし、いてほしいなら連れてこれるわよ?」

蘭「連れてきてください」

巴「アタシらが怖がってる中、一人だけ楽しようとか絶対に嫌です」

 

 まりなの発言に対し、蘭と巴が無表情で突っ込んだ。

 

まりな「あ、ちなみになんだけど…」

「?」

まりな「男子25人…」

蘭「絶対いやらしい事する気満々でしょう!!」

ひまり「あれだけの事しといて、一緒に映画見る訳ないじゃないですか!」

巴「下手すりゃ男子の方が怖がりそうだな…」

モカ「どさくさに紛れて体触ってきたりしますも~ん」

 

 そんな時だった。

 

「なんでだよぉ!!」

 

 と、どこからか声がして皆が驚いた。

 

「オレ達香澄ちゃん達と一緒に映画見れるの楽しみにしてたんだぞ!!」

「そうだそうだ!」

「ひどい!」

蘭「いや、映画を楽しみにしてたというより、アタシ達が怖がって自分たちに甘えてくるのを楽しみにしてるんじゃないの?」

ひまり「本当に趣味悪いよ?」

 

 蘭とひまりの口撃を受けて、男子生徒たちは萎縮した。

 

「何とでも言えぇ!!」

「オレだって甘い時間を過ごしたいんだよぉ!!」

「どうしてあいつばっかり!!」

モカ「あたし達も忙しいし、飛鳥くんも忙しくてそれどころじゃないよ~?」

蘭「少なくとも一丈字に対する嫌がらせをやめない事には何も進まないけどね」

「み、美竹さん!!」

「そんなに一丈字の事を…」

蘭「そういう所が嫌つってんの!!!//////」

 

 男子生徒の言葉に蘭が頬を染めた。

 

蘭「と、とにかく退場させてよ!」

こころ「あら、本当にいいの?」

巴「アタシが許す!!」

「許さないで!」

「こころちゃ~ん!!!」

 

 だが、結果的に皆の総意で男子生徒たちは退場させられた。ちなみにオーディションがあって勝ち上がった25人である…。

 

*************************

 

まりな「えー。そういう訳で、飛鳥くんがいてもいい人」

 

 そう言うと、全員が手を上げた。

 

『純粋に飛鳥と一緒に映画が見たい組』

日菜・イヴ・あこ・こころ・はぐみ・モカ

 

『一人だけ逃がすわけねーだろバカタレ組』

香澄・有咲・蘭・巴・千聖・リサ・友希那・紗夜・薫

 

『皆手を上げてるから私も手を上げとこう組』

たえ・りみ・沙綾・ひまり・つぐみ・彩・麻弥・燐子・花音・美咲

 

 そんなこんなで飛鳥が連れてこられた。

 

飛鳥「お疲れ様です」

リサ「ねえ飛鳥くん」

飛鳥「…ええ、おっしゃりたい事は分かり案すよ」

リサ「ホラーネタ多くない!!?」

モカ「まあ、怖がってるリサさんが可愛いからじゃないですかね~」

リサ「可愛くないもん!!!」

友希那「いや、可愛いわよリサ」

リサ「もぉ許して~!!!!」

 

 リサが涙目で叫んだ。というのも、何故今回ホラー回のリメイクをすることになったかというと、友希那のフリフリ衣装姿を見てリサが笑ったからである。

 

友希那「人の事を笑うと痛い目にあうという事を皆に教えてあげるわ…」

あこ「友希那さんが一番怖いよー!!!」

 

 友希那の言葉にあこがツッコミを入れた。

 

紗夜「ところで湊さんは、今から放送する映画の内容を知ってるんですか?」

友希那「知らないわ。一丈字くんは知ってる?」

飛鳥「そうですね。『人豚』っていう映画をこれから見て頂きます」

リサ「何その如何にも怖そうなやつ!!」

 

 飛鳥の言葉にリサが困惑して突っ込んだが、そのまま映画を見ることになった。ソファーは大きく分けて6つあり、グループごとに座っていて、飛鳥は一人で座ろうとしたが、モカに声をかけられて、Afterglowと一緒に見ることにした。

 

つぐみ「ち、ちなみにだけどどんな映画なの…?」

飛鳥「漢王朝の初代皇帝・劉邦の奥さんの話ですね」

蘭「劉邦…?」

飛鳥「まあ、怖いのは最後だけですので…」

巴「ど、どうなるんだよ」

モカ「トモち~ん。オチを聞くのは野暮だよ~?」

 

 そんなこんなで映画の鑑賞会が始まっていたが、香澄は最初から怖がっていた。

 

香澄「きゃーっ!!」

有咲「落ち着け!! まだ映画始まってねーぞ!!」

 

 ブザーの音だけでもビビる香澄だった。

 

リサ「ちょっと香澄やめてよぉ!!」

燐子「ど、どんな映画なんだろう…」

 

イヴ「ううう…せ、せめて木刀があれば…」

千聖「私たちが怖い目に合うからダメ!!」

 

薫「は、儚い…」

美咲「…薫さん。足すごく震えてますよ」

 

 そして映画が進んでいき、そこそこの愛憎劇が繰り広げられていたが、一部のメンバーはなんとなく嫌な予感がした。

 

 物語は後半に差し掛かり、物語の主人公である呂雉は皇帝となった息子の力を借りて、次々とやりたい放題し始めた。中でも映画で一番の肝となるのが、かつて夫が寵愛していた側室への復讐だった。側室の息子を呼び出しては殺害するシーンが行われた。

 

香澄「ぎゃあああああああああああああああああああああ!!! ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 香澄はパニック状態になっていた。

 

有咲「だ、だから落ち着けって香澄!! いたたたたたた!!」

 

蘭「こ、これ本当にどうなんの!? 最後どうなんの!?」

飛鳥「見てからのお楽しみです」

巴「教えてくれぇ!!!」

ひまり「ら、蘭も巴も落ち着いて…いたたたたたたた!!!」

 

イヴ「うぅぅぅぅぅ~…」

麻弥「だ、大丈夫ですよイヴさん…。ジブンにしっかり捕まっててください…」

 

 イヴが暴れないように麻弥がしっかりガードしていた。

 

リサ「こ、これ下手なホラー映画より怖いよね!? 絶対怖いよね!?」

友希那「そうね。女の嫉妬は幽霊よりも怖いものよ」

紗夜・燐子「……!」

 

こころ「死んじゃったわ!」

美咲「こころ。お願いだからあなたはそのままでいて」

 

 美咲はこの映画が原因でこころの何かが変わってしまう事を心配していた。

 

薫「か、花音、はぐみ! 怖いだろう。私にしっかり捕まるといい…」

花音「あ、はい…」

はぐみ「薫くんがはぐみに捕まってるよ?」

美咲「余計な事言わない!」

 

 物語は終盤に差し掛かり、主人公は側室の息子を殺しただけでなく、側室を問答無用で投獄させ、奴隷にした。極めつけは誰もいないシーンで、側室の悲鳴と、手足が切断されたような生々しい音が聞こえた。もうこの時点でビビり組(香澄・蘭・巴・イヴ・リサ・薫)は死にかけていた。だが、通常組もそれなりにビビり始めている。

 

 そしてラストシーン。主人公は自分の息子である皇帝を呼び出して、側室の成れの果ての姿を見せた。

 

 側室の成れの果ての姿を見た次の瞬間、香澄達は今までにないくらい恐怖した。

 

 Poppin‘Party

 グロさにりみ、沙綾、有咲が絶叫し、香澄は泡を吹いて気絶。たえはちょっと引いていた。

 

 Afterglow

 蘭、巴、ひまりの3人が逃亡しようとしたが、鍵がかかっており出られず、つぐみが止めようとしたが、彼女もパニック状態になっており、飛鳥とモカが何とも言えない顔で見ていた。

 

 Pastel*palettes

 日菜ですら青ざめ、彩、千聖が絶叫してイヴは麻弥の胸に顔をうずめて映像を見ていないにも関わらずパニック状態に。麻弥一人で皆をなだめる羽目に。

 

 Roselia

 リサはもうイヤな予感がしてずっと目を閉じていたが、紗夜が悲鳴を上げた事で思わず見てしまい、そのまま涙を流して気絶。あこは燐子にずっと抱き着いていたが、燐子は映像を見て気分が悪くなってしまった。友希那は普通に引いていた。

 

 ハロー、ハッピーワールド!

 美咲がこころの目をふさいだが、4人は映像を見て絶叫した。薫は強がってごめんなさいと花音に泣いて謝り、はぐみも訳が分からず一緒になって謝っていた。

 

 こうして、恐怖のホラー映画観賞は終わった。

 

つづく

 



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第349話「人豚(後編)」

 

 

 とてつもなく恐ろしいホラー映画観賞が終わったが…。

 

まりな「あ、あのう…大丈夫…?」

 

 一部のメンバーがげっそりしていたし、いまだに人豚にされた側室の顔が脳裏に思い浮かんでいた。

 

蘭「これが大丈夫に見えますかぁ!!?」

巴「ホントいい加減にしてくださいよ!!」

 

 蘭と巴が涙目で叫んだ。

 

リサ「あぁもう怖かったぁ…ってかもう思い出したくないんだけどぉ…」

 

 リサは涙目でぶつぶつ言うと、モカ、千聖、飛鳥は目を合わせた。今すぐ記憶を消した方が良いかもしれないが、これだと話がすぐに終わってしまうため、どうすればよいものかと。

 

まりな「さて、これからの事なんだけど…」

蘭「え? まりなさんが一人であの映画を見るんですか?」

まりな「やめて!!!」

巴「頑張ってください」

まりな「嫌よ!! 一人であの映画見るのぉ!!」

 

 まりなが涙目で叫んだ。

 

千聖「ちなみに何をされるのですか?」

まりな「数パターン考えてみたんだけど、皆で決めて!」

 

 するとまりながフリップを持ってきた。

 

まりな「その1! 前回と同じように一晩我慢大会!」

蘭「それはもう嫌です」

 

 まりなの言葉に蘭が難色を示すと、

 

友希那「あら、やはり怖いのかしら」

蘭「こ、怖い訳じゃ…」

リサ「友希那お願い。今回はホントにやめて。やめてください」

 

 リサが滅茶苦茶怖い顔で友希那に迫った。一部のメンバーはお前が怖いわと心の中で突っ込んだ。

 

まりな『その2! 体育館で男25人女25人でお泊り会!』

「50人で!?」

 

 まりなの言葉に皆が突っ込んだ。

 

まりな「一般公募した男子生徒の皆と香澄ちゃん達の25人ずつでお泊りをするパターンです」

蘭「それも絶対嫌です」

 

 どうなるかなんてわかりきっていたため、蘭以外にも一部のメンバーが難色を示していた。

 

「なんでだよお!!」

「僕たちが守ってあげるよ!?」

「やらしい事しないって!!」

「でもせめてパジャマ姿を見つめる事くらいは…」

 

 と、どこからか声がして、ドアをバンバン叩いていた。

 

まりな「その3! 普通にここで解散」

千聖「それが一番無難だけど…」

イヴ「きょ、今日誰もいないんですぅ…」

たえ「私も今日お泊り会って言っちゃった」

 

 その3が一番自分たちにとって良いのかもしれないが、洋館に一泊するという前提で話を進めてしまったため、残るしかなかった。

 

まりな「その4! 25人で普通にお泊り会」

香澄「そうしよう! 全員で同じ部屋に泊まって布団を敷いたりして…」

 

 香澄の発言に飛鳥は超能力をこっそり使って、自分に話が行かないようにした。

 

こころ「いいわね! 皆一緒なら楽しいわ!」

薫「そ、そうしよう…」

はぐみ「さんせー!!」

 

 そして飛鳥は更に細工をした。

 

まりな「それじゃ私と一丈字くんはここでお別れね」

飛鳥「お疲れさまでした」

「お疲れ様―」

 

 そう言って飛鳥とまりなは退場していったが、すぐに超能力を解くとモカと千聖は我に返った。

 

こころ「あら? 飛鳥がいないわ?」

千聖「…一丈字くんなら帰ったわよ」

「え!?」

 

 千聖の言葉に皆が驚いた。

 

ひまり「もしかして私たちだけで過ごせって事!?」

「ご安心ください」

「!」

 

 弦巻家の黒服たちがやってきた。

 

「我々が警備しますので、皆さまはごゆっくりお休みください」

「あ、ありがとうございます…」

 

 そして飛鳥はというと、結果的に用済みになった男子生徒たちを帰していた。

 

「畜生!!オレ達も香澄ちゃん達とパジャマパーティーしたかったぁ!!」

「せめてどんなパジャマを着ているかだけでも…」

「ネグリジェでも可!!」

 

 それを陰から見ていた飛鳥は超能力を使って、男子生徒たちを帰した。

 

飛鳥「それでは、後はお願いしますね」

「了解しました」

 

 後の事は弦巻家の事に任せ、飛鳥も帰る事にした。

 

********************

 

 そして大部屋。25人は一緒に泊まる事にした。

 

香澄「う~…」

有咲「香澄…。いつまで抱き着いてんだよ」

 

 香澄はラストシーンが相当答えたのか、有咲にずっとくっついていた。

 

たえ「でも流石に最後のシーンはびっくりしたよね」

りみ「ホラーっていうより、普通に怖い…」

沙綾「いや、グロいの間違いだよね」

 

 たえ、りみ、沙綾も会話に参加していた。

 

モカ「それにしても、飛鳥くんも残れば良かったのにね~」

 

 Afterglowは飛鳥の話をしていた。

 

蘭「いや、流石に一緒には寝れないでしょう…」

モカ「でも面白さが半減したような気も…」

ひまり「いや、男子たちが暴れるでしょう…」

巴「にしても、こんな所まで来てたとはな…」

つぐみ「あははは…」

 

 巴が呆れながらつぶやくと、つぐみが苦笑いした。

 

イヴ「や、やっぱり木刀を…」

千聖「ダメよ」

日菜「前みたいに暴れたりしたら、イヴちゃんああなっちゃうよ?」

イヴ「ヒィイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!」

麻弥「日菜さん!!!!」

 

 日菜が余計に怖がらせてイヴが悲鳴を上げると、麻弥も流石に怒鳴り、紗夜が日菜が耳をつねった。

 

紗夜「本当にごめんなさい。日菜!」

日菜「ごめんなさい~!!!!!」

 

友希那「…リサ」

リサ「無理無理無理無理!!!」

 

 リサはさっきからずっと怖がっていて友希那にくっついていた。ちょっと仕返しするつもりが、リサがここまでビビるとは思ってもみなかった。

 

あこ「りんりん大丈夫…?」

燐子「だ、大丈夫だよ…。でももう寝たい…」

 

 燐子は衝撃が強すぎる映像を見たため、具合が悪くなっていた。

 

はぐみ「薫くんもう寝ちゃったね」

花音・美咲(…本当に具合が悪くなったんじゃ)

こころ「きっと怖い思いをしたから楽しい夢を見ようとしてるんじゃないかしら」

花音・美咲「!!?」

 

 とまあこんな感じで、そのまま就寝することになったが…。

 

(…何もないならないで、普通だなぁ)

千聖(認めたくないけど…オチとしてはイマイチだわ)

 

 本当に何も起こらなかったので、一部のメンバーは物足りなさを感じていた。

 

 

おしまい

 



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第350話「人豚(IFルート)」

 

 

 とてつもなく恐ろしいホラー映画観賞が終わったが…。

 

まりな「あ、あのう…大丈夫…?」

 

 一部のメンバーがげっそりしていたし、いまだに人豚にされた側室の顔が脳裏に思い浮かんでいた。

 

蘭「これが大丈夫に見えますかぁ!!?」

巴「ホントいい加減にしてくださいよ!!」

 

 蘭と巴が涙目で叫んだ。

 

リサ「あぁもう怖かったぁ…ってかもう思い出したくないんだけどぉ…」

 

 リサは涙目でぶつぶつ言うと、モカ、千聖、飛鳥は目を合わせた。今すぐ記憶を消した方が良いかもしれないが、これだと話がすぐに終わってしまうため、どうすればよいものかと。

 

まりな「さて、これからの事なんだけど…」

蘭「え? まりなさんが一人であの映画を見るんですか?」

まりな「やめて!!!」

巴「頑張ってください」

まりな「嫌よ!! 一人であの映画見るのぉ!!」

 

 まりなが涙目で叫んだ。

 

千聖「ちなみに何をされるのですか?」

まりな「数パターン考えてみたんだけど、皆で決めて!」

 

 するとまりながフリップを持ってきた。

 

まりな「その1! 前回と同じように一晩我慢大会!」

蘭「それはもう嫌です」

 

 まりなの言葉に蘭が難色を示すと、

 

友希那「あら、やはり怖いのかしら」

蘭「こ、怖い訳じゃ…」

リサ「友希那お願い。今回はホントにやめて。やめてください」

 

 リサが滅茶苦茶怖い顔で友希那に迫った。一部のメンバーはお前が怖いわと心の中で突っ込んだ。

 

まりな『その2! 体育館で男25人女25人でお泊り会!』

「50人で!?」

 

 まりなの言葉に皆が突っ込んだ。

 

まりな「一般公募した男子生徒の皆と香澄ちゃん達の25人ずつでお泊りをするパターンです」

蘭「それも絶対嫌です」

 

 どうなるかなんてわかりきっていたため、蘭以外にも一部のメンバーが難色を示していた。

 

「なんでだよお!!」

「僕たちが守ってあげるよ!?」

「やらしい事しないって!!」

「でもせめてパジャマ姿を見つめる事くらいは…」

 

 と、どこからか声がして、ドアをバンバン叩いていた。

 

まりな「その3! 普通にここで解散」

千聖「それが一番無難だけど…」

イヴ「きょ、今日誰もいないんですぅ…」

たえ「私も今日お泊り会って言っちゃった」

 

 その3が一番自分たちにとって良いのかもしれないが、洋館に一泊するという前提で話を進めてしまったため、残るしかなかった。

 

まりな「その4! 25人で普通にお泊り会」

香澄「そうしよう! 全員で同じ部屋に泊まって布団を敷いたりして…」

 

 香澄の発言に飛鳥は超能力をこっそり使って、自分に話が行かないようにした。

 

こころ「いいわね! 皆一緒なら楽しいわ!」

薫「そ、そうしよう…」

はぐみ「さんせー!!」

 

***********************

 

 飛鳥が超能力で香澄達と切り離そうとしたその時、

 

モカ「飛鳥くんも一緒においでよ~」

 

 モカが制止し、皆が反応した。

 

つぐみ「モ、モカちゃん!?」

飛鳥「そういう訳にはいきませんよ」

 

 飛鳥が困惑していた。

 

モカ「いやー。なんか飛鳥くんがいないと面白くなくなるような気がして」

飛鳥「他の方はどう思いますか?」

蘭「いや、流石に同じ部屋で寝るのはちょっと…」

飛鳥「美竹さんもこう言ってるじゃないですか」

蘭「いや、何アタシのせいにしてんの!」

飛鳥「してませんよ。やっぱり男子と一緒に寝るの嫌ですよね」

蘭「嫌って言うか…普通に考えたら分かるでしょ」

 

 蘭がモジモジしていた。

 

モカ「しょうがない」

 

 モカが諦め、蘭たちが安心したが…。

 

モカ「結局ボケる人がいないとダメだから、それはAfterglowがすることにするよ」

蘭「ボケる人ってどういう事!?」

モカ「このまま普通にお泊り会をしてたら、これ見てる人も普通過ぎて面白くないと思うよ? アンパンマンでばいきんまんが悪さしないようなもんだし~」

ひまり「た、確かに…」

巴「こんなこと言うとあれだけど、ちょっと地味になるかもな…」

 

 モカの言葉にひまりと巴が困惑した。

 

モカ「まあ、そういう訳だからAfterglowがボケまくる事にするから~」

蘭「いや、ちょっと待って…」

 

 蘭がそれでもごねるので、友希那はイライラしていた。

 

友希那「私は構わないわよ。一丈字くんがいても」

「!!?」

 

 友希那がここぞとばかりにマウントを取った。

 

飛鳥「湊先輩…」

友希那「一丈字くんが変な事するわけがないし、私は年上だもの」

 

 とまあ、一見飛鳥を擁護しているように見えるが、何だかんだ蘭に対して自分の方が上だと言っていた。そして飛鳥やリサはそれを感知して、苦い表情になった。

 

蘭「べ、別に嫌とか言ってないじゃないですか…! ただ普通に男子と女子が一緒に寝るのはどうかって言っただけで…紗夜さんもそう思いますよね!?」

紗夜「え!?」

 

 いきなり話を振られて紗夜が困惑した。

 

紗夜「そ、そうですね。やっぱり風紀委員の立場としては…」

友希那「このまま一丈字くんを帰してもいいけど、いなくなった途端に何かがあるかもしれないじゃない」

 

 友希那の言葉に皆が困惑した。

 

リサ「へ、変な事言わないでよ友希那ぁ!!」

友希那「大丈夫よ。もしそうなったら私が何とかするけど…」

 

 友希那が飛鳥を見つめた。

 

友希那「あなたも分かっているわね?」

飛鳥「その、弦巻家の黒服の人たちにも警備はお願いしていますが…」

友希那「仕方ないわね。じゃあ一丈字くんはRoseliaで引き取るわ」

「!!?」

 

 友希那の発言に皆が驚いた。一見友希那が面倒見がいいように見えるが、蘭が我儘を言ったのを友希那がそれに付き合ってあげたという図が出来上がってしまったのだ。

 

 悪い言い方をすればAfterglowよりもRoseliaが上に立ってしまったのだ。

 

蘭「ちょっと待ってください。そこまでやる必要ないですし、モカが最初に言いだしたのでAfterglowで面倒見ます」

友希那「あら、遠慮しなくていいのよ?」

 

 とまあ、また小競り合いが始まって飛鳥達は困惑した。

 

飛鳥「…まあ、結果的に面白くはなりましたね」

モカ「そうだね~。でも、一番面白くなるのは…」

 

蘭「一丈字!」

友希那「一丈字くん」

 

 蘭と友希那が飛鳥の方を見た。

 

蘭・友希那「どっちを選ぶの?」

 

 とまあ、修羅場ものではお約束の主人公に選択を迫るシーンだった。そして注目は飛鳥に集まり、飛鳥がふっと笑うと上の方を向いた。

 

飛鳥「また次の第8シリーズもよろしくお願いしまーす」

蘭「いや、次のシリーズって!!」

友希那「どっちか選んで頂戴」

飛鳥「もう決めましたが、読者の皆さんの前ではあえて秘密という事で」

モカ「その手があったか~」

 

 

おしまい

 



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第355話「DQNに絡まれた飛鳥組」

 

 

 私の名前は一丈字飛鳥。バンドリ学園に通う高校1年生ですが…。

 

「おい、陰キャくん」

 

 いきなり失礼な人が現れました。この人は確かサッカー部のエースですね。昼休憩、私とモカと千聖さん、こころの4人で中庭のベンチで食事をしていると、いきなり現れました。

 

飛鳥「陰キャって私の事ですか?」

「そうだよ。オメー以外に誰がいるってんだよ」

モカ「あたし」

千聖「あら。てっきり私かと思ったわ?」

 

 サッカー部のエース・DQNさんの言葉にモカと千聖さんが反応した。2人ともノリ良すぎだろ…。

 

こころ「陰キャって何かしら?」

DQN「陰キャっていうのは、暗くてうじうじしてダセー奴の事だよ!」

こころ「あら? 飛鳥は暗くないわよ?」

モカ「それにうじうじしてないし」

千聖「ダサいのはあなたよ。少しばかり顔がいいからって、思い上がってるんじゃないかしら」

 

 千聖さんの口撃は相変わらず凄い。そしてDQNさんは言われたことに歯ぎしりしながらも、退こうとしない。

 

DQN「お、おい。それはそうとモブの一丈字くん」

飛鳥「あ、はい。何でしょう」

DQN「女子三人に囲まれるべきはお前じゃない。陽キャでイケメンであるオレなんだ」

飛鳥「はははは…」

 

 私は思わず笑ってしまった。今まで遠くから嫉妬とか、言いがかりをつけられる事はあったが、自分の事をここまで良く言いながらいちゃもんをつける人は初めてだったからだ。

 

DQN「は? 何笑ってんの?」

飛鳥「いや、そこまで自分の事をイケメンだなんてそんな…」

千聖「ホント、勘違いもいいところね」

モカ「ちょっと自意識過剰が過ぎるんじゃないかな~」

こころ「なんだかよくわかんないけど、あたし達は普通にお昼ご飯を食べてただけよ?」

 

 こころだけ状況が分かっていないが、モカや千聖さんがいるので、話を進めることにする。案の定DQNさんは全然諦めない。まあ、引き下がれませんもんね。

 

DQN「と、とにかく一丈字。お前は千聖ちゃん達を置いてどっかいけ。今ならまだ許してやるぞ?」

飛鳥「って言ってますけど」

モカ「え~」

千聖「あなたがどっか行きなさいよ」

こころ「なんだかよく分からないけど、あなたを見てるとなんだかすごくモヤモヤするわ?」

 

 こころは無意識に嫌な気持ちになっていた。

 

DQN「お前がどこかに行けばいいだけの話だろ! どうして分からない!!」

飛鳥「そういえば…」

DQN「うるせぇな! てめぇはさっさとどっか行けばいいんだよ!」

モカ「じゃあ、4人でどっか行こ」

千聖「そうね。バカが移るわ」

こころ「とても楽しい事が思いつかないわ…? どうしてかしら…」

 

 そう言って4人が移動しようとすると、DQNが追いかけてきた。

 

DQN「なあ、同じこと何回も言わせるなよ。一丈字がどこか行けばいいんだ」

飛鳥「じゃあ、こっちに行きますね?」

 

 飛鳥がそう言って逆の方向に走ると、モカと千聖も飛鳥を追いかけ、こころも後を追いかけた。

 

こころ「追いかけっこかしら!?」

DQN「お前さては千聖ちゃん達を脅迫したんだな!?」

飛鳥「脅迫できると思いますか?」

モカ「ていうかさ、さっきから飛鳥くんばっかりに文句言ってるけど、アタシ達に文句言えばいいじゃん。アタシ達が飛鳥くんを追いかけてるのに」

DQN「一丈字に言わされてるんだろ!?」

千聖「は? 私の事なんだと思ってるの?」

 

 DQNの言葉に千聖が迫真の演技で切れた。

 

飛鳥(演技ではないだろ…)

モカ(ガチギレじゃん…)

 

DQN「と、とにかく君たちに一丈字はふさわしくない!」

千聖「相応しくないかどうかは私たちが決めるから」

モカ「ていうかいい加減しつこいよ~?」

こころ「あなたのせいで折角のお昼御飯が台無しだわ!?」

 

 こころがそう言うと、飛鳥はもうDQNは完全に終わったと思った。実際に黒服たちがDQNに対してこれでもかという程マジ切れしていた。

 

飛鳥(…ていうか、本当にオレおらんでも黒服さん達だけでいいんじゃないかな)

 

 ちなみに飛鳥はテレパシーで、もうちょっと待ってもらうように指示を出していた。

 

DQN「というかお前も辞退しろよ! お前のような陰キャが千聖ちゃん達に釣り合うと思ってんのか!!?」

 

 DQNが飛鳥の胸ぐらをつかんで叫んだが、飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「釣り合ってるかどうかはともかく、サッカー部のエースでイケメンと呼ばれてる方がこんな事していいんですか?」

DQN「うるせぇ! てめぇの話は聞かねぇって言ってんだろ!!」

 

 そう言ってDQNが飛鳥を殴りかかったが、飛鳥が拳を受け止めた。

 

DQN「!」

飛鳥「やってしまいましたね」

 

 飛鳥が冷たい視線を浴びせると、黒服たちが証拠のデータを学園に流した。

 

飛鳥「あなたが私の話を聞いてくれないのなら、私もあなたの話を聞く筋合いはありません」

DQN「てめぇ…! 陰キャの分際で舐めた口きいてんじゃねーぞ!!」

こころ「飛鳥に乱暴しないで頂戴!」

飛鳥「大丈夫」

「!?」

 

 飛鳥がこころを見つめた。

 

飛鳥「乱暴のうちに入らないから」

DQN「……!」

 

 飛鳥の言葉にDQNが憤った。

 

DQN「カッコつけてんじゃねぇよ…!!」

飛鳥「……!!」

 

 飛鳥は一瞬の隙をついて、DQNに関節技を仕掛けて、そのまま地面に伏せた。

 

DQN「いてぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」

モカ・千聖「!!」

飛鳥「あんたの負けだ。大人しくしときなさいね」

 

******************

 

 その後、DQNは仲間たちの元に引き渡されたが…。

 

DQN「一丈字が千聖ちゃん達に手を出そうとしたんだ!!」

「手を出そうとしたのはお前だろ!!」

「もうお前のいう事なんか信じないよ」

 

 DQNが必死に飛鳥に罪を擦り付けようとしたが、サッカー部の仲間が冷たくあしらった。

 

「仮に言ってる事が本当だとしても、お前の味方をする奴はいないよ」

DQN「何だと!!?」

「もうお前のワンマンプレーにはうんざりなんだよ! お前がキャプテンになってから無理難題押し付けて、チームの雰囲気は悪くなるし、お前が暴力振るったせいでやめた奴も出てくるし、マネージャーも気に入ってる奴とそうじゃない奴とで、扱い変えるからマネージャー達の仲が悪くなるし! お前の尻ぬぐいするのはもううんざりだ!」

DQN「うるせぇ!! 実力がねーんだからそれくらいやれ!! 今までさんざんオレ頼って、オレがいなきゃ大差でボロ負けした癖に! いきがってんじゃねーぞ!」

 

 とまあ、DQNはもう完全に本性をむき出しにしてサッカー部と揉めており、それを飛鳥達が見つめていた。

 

千聖「…救えないわね」

飛鳥「こうなってくると、彼だけじゃなくて周りも甘やかしていたのも問題ですね…」

モカ「そうだね」

 

 飛鳥、千聖、モカはサッカー部の姿を見て、何とも言えない気持ちになり、その場を後にした。

 

********************

 

 河川敷

 

こころ「なんか今日は楽しくなかったわ」

 

 4人で黄昏ていた。

 

飛鳥「これが庶民の生活だよ。楽しい事ばかりじゃない、自分に持ってないものを羨んでは嫉妬して、つまんない喧嘩ばっかりしてるんだぜ」

モカ「努力をすることの大事さが良く分かった一日だよ~」

千聖「…そうね」

 

 モカや千聖の言葉に飛鳥は正面を向いた。

 

飛鳥「明日もどこかでまた争いがあるだろう」

こころ「そんなの嫌だわ!?」

飛鳥「オレも同じ気持ちだよ。だから少しでも争いがなくなるように一人一人が前を向いて頑張らなきゃいけないんだ。人生ってのはその繰り返しなんだと思う」

千聖「完全に達観してるわね…」

モカ「15歳だよね?」

飛鳥「15年だけど、それでもオレは色々あったよ…」

 

 そう飛鳥達が話していると、こころはとても難しそうな顔をしていた。

 

飛鳥「まあ、こころがもう難しそうにしてるから、そろそろ楽しい事でもやって、解散しようか」

こころ「楽しい事!? どんな事するの!?」

飛鳥「……」

 

 焼肉屋

 

飛鳥「たまには思い切り羽目を外して焼肉」

モカ「豪勢~」

千聖「誰が持つの?」

飛鳥「私が連れまわしてるので、私が持ちます」

 

 飛鳥達は思い切って焼き肉屋で打ち上げをした。

 

こころ「お肉を食べることは楽しい事なのかしら?」

飛鳥「美味いものを食べて、自分の気持ちを吐き出して、すっきりさせる。これが庶民特有の楽しい事さ…」

 

 そんなこんなで本当に焼き肉を楽しんだという。

 

飛鳥「あ、すいません。この列1つずつください」

千聖「よ、良く食べるわね…」

こころ「全部頼みましょう?」

飛鳥「全部はやりすぎ」

 

 

おしまい

 



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第356話「飛鳥を超えろ!」

誤字指摘ありがとうございました。


 ある日の事だった。飛鳥は疲れ切った様子でゲームセンターに来ていた。

 

飛鳥「今日も疲れたなー。こういう時は気分転換に何かするか…」

 

 そう言って飛鳥が目を付けたのは、太鼓をたたくゲームだった。

 

『太鼓の超人』

 

飛鳥「そういや久々に叩いてみるか」

 

 そう言って飛鳥はかけていた伊達メガネを外し、髪型を変えて太鼓を打ち込んだ。

 

************************

 

 後日

 

「おい、聞いたか…」

「昨日○○店で物凄い奴がいたってよ!」

「太鼓の超人で凄い連打してた奴!」

「スコアはまあ微妙だったけど…見てたプロが絶賛してたって話もあるぜ!」

 

 バンドリ学園でとある話題がもちきりになっていた。そう、早い話飛鳥が太鼓の超人で凄いテクニックを繰り広げていた。

 

「うちの制服着てたって…」

飛鳥「……」

 

 まあ、自分だとは思ってないし、自分だったとしても誰も信じないだろうとタカを括っていたが…。

 

************************

 

モカ「これ、飛鳥くんでしょ~」

 

 案の定モカにバレ、彼女のスマホからタイッツーを見せて貰ったが、そこには太鼓を打ち込む飛鳥の後ろ姿があった。

 

飛鳥「良く分かったね」

モカ「そりゃあモカちゃんは天才だから~」

飛鳥「その天才ぶりをもっと学業の方に活かそうか」

モカ「ことわる~」

 

 とまあ、こんな冗談を繰り広げつつも本題に入った。

 

モカ「トモちんやあこちんもこのゲームセンターにたまに来てるんだよ~?」

飛鳥「なんてこった」

モカ「で、これを見たトモちん達が、この子に会ってみたいって~」

飛鳥「会ったらどんな反応するんだろうね」

 

 飛鳥は困惑すると、モカは飛鳥をじっと見た。

 

モカ「もう太鼓叩かないの?」

飛鳥「ほどほりが冷めたらね。それよりも気をつけなきゃならんのは…」

 

 飛鳥はある事を考えた。

 

*********************

 

 放課後、例のゲームセンター

 

「おいへたくそ! いい加減代われよ!!」

「この『NESS』って奴よりもランクを上にして、巴ちゃんやあこちゃんとお近づきになるんだ!」

「順番守らない奴がお近づきになれる訳ないだろ!!」

「もしかしたら有咲ちゃんや麻弥ちゃんや花音ちゃんともお近づきに…ぐひひひひ…」

 

 邪な考えを持っている男子生徒たちがゲームセンターを占領していた。長蛇の列ができており、人がたくさん来てお金を落としてくれるため、店としては有り難いのだが、一般客からしてみたら怖すぎる。

 

飛鳥「…ゲームセンターでトラブルが起きないかどうかだな」

モカ「うーん」

 

 飛鳥とモカが隠れて様子を見ていた。その時だった。

 

「ゲームセンターがいっぱいだよ!」

「そうだなー…」

 

 巴とあこがやってきたが、お気に入りのゲームが男子生徒たちに占領されていて、出来そうにないと感じて残念そうにしていた。

 

巴「ゲームセンターはこの辺じゃここ以外ないから、また今度にするか」

あこ「えー」

巴「仕方ないだろ。ずっと待ってたら店閉まっちゃうぞ?」

あこ「はーい…」

 

 そう言って2人が店に去ろうとしたが、当然男子生徒たちが逃がすわけなく、逃げ道をふさいだ。

 

巴「な、なんだお前ら!!」

「ゲームやりたいんでしょ? 好きなだけやって?」

「うんうん」

「いざとなれば僕たちがお金払うから♥」

 

 気持ち悪さ全開で、飛鳥とモカが完全にドン引きしていた。

 

「僕の股間についてるスティックで叩いてみませんか?」

モカ「キモ~い!!!!」

飛鳥「あいつらの頭に連撃ぶち込みたくなってきた…」

 

 いつも飄々としているモカですら青ざめて気持ち悪がり、飛鳥は死にかけていた。

 

あこ「お、おねーちゃん…」

巴「い、妹にだけは手を出させんぞ!!」

「じゃあおねーちゃんだけ来てもらおうか…?」

あこ「そ、そんなのダメぇ!!」

 

モカ「飛鳥くん」

飛鳥「任せろ」

 

 そう言って飛鳥は有無を言わさず、巴とあこを何とか逃がした。

 

飛鳥「超能力めっちゃ便利」

モカ「ホントそうだよねー」

 

************************

 

あこ「あれ? そういやあこ達ずっと囲まれてたような気が…」

巴「そうか?」

 

 あこと巴の周りには誰もおらず、不思議そうにきょろきょろ周りを見渡していた。

 

モカ「おーい。トモちーん、あこちーん」

 

 モカがやってきた。

 

巴「モカ!」

あこ「モカちん!」

 

 巴とあこもモカに気づいて反応した。

 

モカ「二人ともゲームセンターに来てたんだ~」

巴「そういうモカこそ」

モカ「いや~。なんか男子たちがゲームセンターにゾロゾロ来てたから、何事かなと思ってきてみたんだけどね~」

あこ「そ、そうなんだよ! あの人たちもハイスコア狙いに来たのかな?」

モカ「それもそうだし、トモちん達とお近づきになろうって考えてるんじゃないかな~?」

あこ「あー…なるほどね…」

 

 モカの言葉にあこは何となく察しがついた。

 

あこ「まやさん達も多分危ないんじゃないかな…」

巴「危ない…?」

 

 巴がやっとあことモカの言っていることに気づいた。

 

モカ「とにかく今日は諦めた方がいいし、ここを出よう。絡まれたらめんどくさいし~」

巴「そ、そうだな…」

あこ「仕方ない…」

 

 こうしてモカが宇田川姉妹を外に連れ出して、外で飛鳥と合流した。ちなみに飛鳥はいつの間にかスタンバイさせていたであろう弦巻家の黒服たちに、モカたちの護衛を依頼してその場を後にした。

 

**************************

 

 その夜、飛鳥とモカが家で電話していた。

 

モカ「いやー。なんか今日は飛鳥くんの素の姿を垣間見えたよー」

飛鳥「素の姿って…」

 

 モカの言葉に飛鳥が困惑した。

 

モカ「そういえばあのタイッツーで、イケメンなんて言われてたねー」

飛鳥「そうなんだ。確認してないな…」

モカ「自覚ある?」

飛鳥「ないね。どんどん女っぽくなってるって言われるくらいだよ」

モカ「なんか薫さんっぽいよねー」

飛鳥「上原さんに怒られるよ。そんな事ないって」

 

 飛鳥が困惑した。

 

モカ「でもまあ」

飛鳥「?」

モカ「またなんかあったら呼んでね~。あれくらいだったらモカちゃんでも出来るから~」

飛鳥「ありがとう。けど、あまりオレに関わらないでいつも通りにしてくれた方が動きやすいから、最後の手段ね」

モカ「りょーかーい」

 

 そう言って飛鳥は電話を切って、明日を迎えることにした。

 

 

 それからどうなったかというと、男子生徒たちはあくる日もあくる日もゲームセンターに入り浸り、飛鳥のスコアを破ろうとして、遂に記録が破られたが…。

 

 記録を破ったのはプロドラマーの女性で、男子生徒たちは涙目で放心していた。

 

飛鳥「チャンチャン♪」

 

 

おしまい

 



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第357話「バンドガールズの合コン!」

 

 バンドリ学園の体育館

 

「今回はバンドガール25人と男子生徒25人の合コンです!!」

「ええええええええええええええええええええええええ!!!!」

 

 突如香澄達は自分たちのファンであり、ストーカーでもある男子生徒達25人と合コンをすることになった。

 

有咲「ちょ、ちょっと待てぇええええええええええええ!!」

美咲「これ結局やるの!?」

「安心してください。しょうもない事をすると弦巻家の黒服たちに消されます」

「消されるって!!」

 

 バンドガールのほとんどのメンバーが絶望する中、選ばれた25人の男子生徒たちは喜び、観客席から見ているヤラカシと女子生徒たちはブーイングをあげた。

 

ヤラカシA「うるせぇぞお前ら!!」

ヤラカシB「そうやってブーイングをあげるから選ばれなかったんだブァ~カ!!」

ヤラカシC「負け犬ども!!」

 

モカ(あー…あの人たちが今回のオモチャか…)

 

 モカはこの合コンの真意に気づいて、すぐに安心していた。

 

香澄「合コンって何するんだろ?」

たえ「合バンなら知ってるけど…」

りみ「な、なんか男の人たちが怖いよぉ…」

有咲「そ、それはそうと一丈字はどこに行ったんだよ!」

マスター「用事があるって言ってましたね」

沙綾「用事!?」

 

 飛鳥も今回不在の為、更に不安が蘭たちを襲う。

 

蘭「アタシ達を見捨てたんだ…」

モカ「そういう言い方しないの。大丈夫だよ~」

ひまり「どうして?」

 

 ひまりの言葉にモカは自信満々そうにした。

 

モカ「そんなこと言って、最後はいつも助けてくれるから」

巴「そ、そうだといいけど…」

モカ「忘れたの? 林間学校でつぐを助けたときの事を」

「!」

 

 Afterglowが林間学校の時の事を思い出した。

 

モカ「今は信じようよ」

つぐみ「そ、そうだね…」

 

 そんなこんなで、合コンが始まったわけだが…。

 

ヤラカシD「お前離れろよ!」

ヤラカシE「てめーが離れろ!」

リサ「ちょ、やめなって!」

 

 推しがかぶって揉める輩。ちなみに推しはリサである。

 

ヤラカシF「友希那ちゃんの匂い…あっちは紗夜ちゃんの匂い…」

友希那・紗夜「……!」

 

 においをかいだりする奴もいた。

 

日菜「おねーちゃんの匂いをクンクンしていいのはあたしだけなのー!!!」

紗夜「いや、それもどうなの!?」

ヤラカシF「じゃあ日菜ちゃんのを…」

 

 

ヤラカシG「モカちゃん。もうあいつに近づかないで」

ヤラカシH「そうそう。あいつは紳士のふりをした変態なんだよ」

モカ「へー」

 

 モカに対して飛鳥の悪口を言ったり、

 

ヤラカシN「り、燐子ちゃん…」

ヤラカシO「ふ、ふひひひ…」

燐子「……!」

あこ「り、りんりんは男の人が怖いの! だからあまり近づいたらダメ!」

ヤラカシN・ヤラカシO「ぼ、僕たちで練習…」

 

 2人の男子生徒に迫られ、ただでさえ対人恐怖症の燐子は涙目で震えていて、あこがガードしていた。だが、あこも結構怖がっていて最終的には巴がガードした。

 

ヤラカシI「彩ちゃん。此間の放送まだ堅いよ」

ヤラカシJ「司会の人が欲しいものを返さなきゃ」

彩「私だけ普通にダメ出し!」

千聖「彩ちゃん。そのポジションある意味美味しいわよ」

ヤラカシK「千聖ちゃんは良かったよ! 此間のあの馬の絵!」

千聖「…犬なんだけど」

ヤラカシL「犬なの!!?」

ヤラカシM「い、犬ってあれかな? マルチーズ!」

千聖「…柴犬よ」

 

 千聖はブルブル震えていた。

 

 とまあ、案の定男子生徒たちは変態ぶりを発揮し、ギャラリーたちはブーイングをあげていた。

 

有咲「うわぁああああああああああああああん!!!」

美咲「助けてぇええええええええええええええ!!!」

 

 有咲と美咲は原作以上のカオスぶりに抱き合って号泣していたが、ヤラカシはそんな2人の気持ちなんて考えずに、

 

ヤラカシP「有咲ちゃん! 美咲ちゃん! 僕が守ってあげるゥ!」

ヤラカシQ「いや、オレが!」

ヤラカシR「写真撮るね!?」

 

 とまあ、本当に目も当てられないくらいカオスだった。

 

************************

 

千聖「それはそうと一丈字くんはどこ行ったの!?」

マスター「あ、やっぱり知りたいですか?」

有咲「出せ!! そして今すぐアタシ達を解放しろぉ!」

「出さなくていい!!」

「そのまま大人しくしてろぉ!!」

美咲「うるさい!!」

 

 マスターが飛鳥に電話をかけた。

 

『あ、もしもし?』

 

 飛鳥の声がした。

 

千聖「一丈字くん! あなた今何してるの!?」

飛鳥『たこ焼き焼いてます』

 

 飛鳥の言葉に皆がキョトンとした。

 

有咲「た、たこ焼き…?」

飛鳥『ちょっと色々ありまして』

美咲「あ、もしかしてアルバイト…?」

飛鳥『そんなところですね』

有咲「そもそもなんでこんな企画作ったんだよ!?」

飛鳥『それについてなんですけどね、市ヶ谷さん達に負担かけて申し訳ないのですが、たまにはこういう回がないと、たまりにたまって偉い事になるので』

 

 飛鳥が淡々と説明した。

 

蘭「アタシ達がどうなっても良い訳…?」

飛鳥「それに至っては心配はいりませんよ」

ひまり「どういう事?」

飛鳥「弦巻家の黒服さん達がガードしてますし、ブシロードの件もあるので変なことは絶対できないですよ」

モカ「そりゃあブシロードに訴えられたら勝ち目ないもんね~」

 

 モカの言葉に皆が困惑した。

 

たえ「そういやお客さん来てるの?」

飛鳥「いや、お客さんというかグリグリとチスパの人たちに振舞っています」

マスター「ちなみに中継がつながっています」

 

 すると飛鳥とグリグリ、チスパが映し出されていた。飛鳥は黒のTシャツにジーンズの上に赤いエプロンをして、頭にバンダナを巻いていた。眼鏡はかけている。

 

 ちなみにこのシリーズではグリグリはバンドリ学園の3年生、チスパは他校の1年生という設定です。

 

沙綾「夏希!!」

りみ「おねーちゃん達!!」

ゆり「あ、お疲れー」

 

 ゆりを筆頭にグリグリとチスパは沙綾達に手を振った。

 

紗夜「そ、そういえばどうして牛込先輩達は対象に入ってないの!?」

ゆり「いやー。私たちサブバンドだし」

夏希「そうそう。ブシロードから押されなかったし、ガルパピコでもハブられたし」

 

 夏希とゆりがわざと拗ねたように視線をそらしながら話した。

 

ゆり「いやー。流石っすわりみさん」

りみ「おねーちゃん! 普段そんな話し方しないでしょ!!」

 

 ゆりのボケにりみがツッコミを入れた。

 

夏希「流石ポピパは勢い乗ってるね。さーや」

沙綾「悲しい事言わないで! 泣くよ!?」

 

 夏希もボケたので沙綾も突っ込んだ。

 

ゆり「あ、でも安心してりみ」

りみ「え?」

ゆり「あんたに手を出そうとした奴、黒服の人たちにしばいて貰うように言っといたから」

「怖い!!」

「流石お姉ちゃん!!」

 

 

飛鳥「えー。そういう訳ですので今回は牛込先輩たちのお相手をしないといけないので、頑張ってください」

有咲「いや、頑張れって!」

美咲「いや、もう尺はもう残ってないし、このまま終われるかも!!」

有咲「!!」

 

 もう既に文字数が2500文字以上になったので、このまま終われると思った有咲と美咲。

 

「延長戦! 延長戦! 延長戦! 延長戦!」

「シリーズ化希望!!」

有咲「ぜってーやだぁ!!!」

美咲「本当に一丈字くんがいかに苦労してたかもう分かったからぁ!!」

千聖(有咲ちゃん、美咲ちゃん。あなた達がそういう面白いツッコミをするからよ!!)

日菜「千聖ちゃんもツッコミ上手になったよね」

千聖「余計な事言わないで!」

 

香澄「それはそうと飛鳥くんがたこ焼き作ってるんだよね! 美味しいの!?」

夏希「めっちゃ美味いよ。特にスイーツたこ焼きが」

ひまり「スイーツたこ焼き…?」

飛鳥「恐縮です。あ、もうそろそろ時間ですので切りますね」

ひまり「せめてスイーツたこ焼きの詳細だけでも!!」

りみ「それじゃ頑張ってねー」

ひまり「スイーツたこ焼きをぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 ひまりがそう叫んだが、無情にも通信は切れてしまった。

 

マスター「さて、続きやりましょうか」

有咲「まだやんの!!? まだやんの!!?」

美咲「チャイムが鳴ったのにまだ授業を続けようとする先生を見てるような感覚!!」

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

有咲・美咲「もうやだぁああああああああああああああああああ!!!」

 

 こうして、バンドガール25人と男25人の合コンは幕を閉じたが、男子生徒たちの間で第2弾をやろうと画策していたが、結局足止めとなった。

 

 そして飛鳥はというと…。

 

「スイーツたこ焼き食わせろぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

飛鳥「Oops」

 

 この後の想像はお任せします。

 

 

おしまい

 



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第360話「リンコレ」

 

 ある日の事だった。

 

「今日も練習に付き合ってくれてありがとー!!」

 

 飛鳥はRoseliaと合同練習を行っていた。飛鳥もそれなりに楽器が出来る為、あこから練習に付き合ってもらうように依頼されていたのだ。だが、その中で燐子だけがいなかった。

 

リサ「燐子遅いねー」

紗夜「そろそろ来ても良いころなのだけど…」

 

 リサと紗夜がそう会話をしていたその時。

 

「お、お待たせしてすみません…」

「!」

 

 燐子がやってきたが、びしょ濡れだった。すると飛鳥がすっと後ろを向いた。

 

あこ「ど、どうしたのりんりん! びしょ濡れだよ!」

燐子「途中で雨を降られて…」

リサ「天気予報は曇りだって言ってたけどねー」

 

 すると紗夜が燐子の下着が透けて見えていることに気づいた。

 

紗夜「い、一丈字さん! 後ろを…」

飛鳥「もう向いてますよ」

紗夜「そ、そうですか…」

 

 思ったほか準備が良くて皆が困惑した。

 

飛鳥「さて、私はここでお暇しましょうかね」

燐子「あ、あの…。私も一丈字くんの演奏見たいので…」

飛鳥「そうですか?」

友希那「それはそうとあなた、体操服持ってたって言ってなかった? それも使ってない」

飛鳥「ええ。ですが私ので宜しいでしょうか」

燐子「……」

 

 飛鳥の言葉に燐子が困惑した。

 

飛鳥「嫌ですよね」

燐子「い、嫌じゃないです! い、一丈字くんこそ私なんかが着て…」

飛鳥「白金先輩。沢山のファンがいるのにそんな事言ったらあきませんよ」

 

 申し訳なさそうにする燐子に飛鳥は苦笑いした。

 

友希那「そうよ。もし文句を言うようならぶっ飛ばしてるわ」

飛鳥「お気になさらず」

燐子「……」

 

 そんなこんなで燐子は飛鳥のジャージに着替えて、姿を現した。

 

燐子「お待たせしました…」

「おおーっ!!」

 

 サイズは若干ぶかぶかだが、何とかきれていた。

 

あこ「りんりん何か可愛い!」

燐子(これが…男子の体操服…)

飛鳥「どうですか? 若干サイズが大きめだと思いますが…」

燐子「い、いえ。ありがとうございます」

友希那「それじゃ練習始めるわよ」

 

 そんなこんなでRoseliaは練習を行った。体操服ではあるものの、演奏の質に全く問題はなかった。飛鳥はそんなRoseliaの演奏を満足そうに見つめていた。

 

*******************

 

 暫くして休憩時間に入った。

 

あこ「ねえりんりん! あこの服着てみてよ!」

 

 と、あこが急にそう言いだすと皆が驚いた。

 

燐子「え…。あ、あこちゃんの服…?////」

 

 燐子は少し恥ずかしがった。

 

リサ「でもあこの服って結構露出度高めだし、燐子のイメージとは違って…面白そう」

紗夜「面白そうなんですか!?」

友希那「良く分からないけど燐子、着て頂戴」

紗夜「良く分からないのに着させてどうするんですか!」

燐子「そ、その前にあこちゃんの服は…」

あこ「あこがそれ着るから大丈夫だよ! ね?」

飛鳥「あ、私は大丈夫ですけど…」

 

 飛鳥はこの後起こりそうなことを考えて、嫌な予感した。

 

*******************

 

燐子「お、お待たせしました…////」

 

 燐子があこの服を着てみたが、紗夜とリサの目が点になった。

 

リサ「け、結構派手…////」

紗夜「そ、そうですね…」

 

 そう言うが、リサと紗夜は燐子の胸元を見ていた。

 

燐子「あ、あの! どこ見てるんですか!?////」

 

 燐子がそう言うと、友希那とあこが飛鳥の方を見たが、飛鳥は既に友希那とあこの方を見ていた。

 

飛鳥「え、何ですか」

リサ「ごめん。アタシと紗夜…」

紗夜「し、白金さんのスタイルが良いと思っただけですっ!/////」

燐子「そ、それなら良いんですけど…。なんかここに来る途中で会った人たちと同じ目つきだったから…」

 

 燐子の発言に飛鳥はなんとなく察した。襲われなかっただけ幸運だったろうと。

 

友希那「どんな目つきだったの?」

燐子「その…」

 

 友希那の言葉に燐子は視線をそらして涙目になった。

 

燐子「…なんか、いやらしい目つきで」

 

 燐子の言葉に飛鳥は静かに目を閉じた。

 

紗夜「い、いやらしくないです!!」

リサ「紗夜。気持ちはわかるけど…うん、一旦落ち着こう? 燐子もホントゴメンって」

 

 燐子の言葉を聞いた友希那はなんとなく察した。

 

友希那「全く男ってのは…」

燐子「…女性の方にも見られました」

 

 友希那は犯人は男だと思っていたが、燐子の発言を聞いて唖然とした。

 

あこ「そ、それだけりんりんはスタイルが良くて美人さんだって事だよ!」

燐子「でも、恥ずかしい…/////」

 

 あこの言葉に燐子は背を向けてどんよりした。

 

友希那「それはそうと、あの男子たちのセクハラどうにかならないかしら…」

紗夜「全くです」

 

 友希那と紗夜が憤慨すると、飛鳥は男子生徒達からの暴言を思い出した。

 

飛鳥(オレもモラハラされてるなぁ…。よく考えたら)

 

 飛鳥がそうやって落ち込んでいると、

 

リサ「あ、そういう意味では飛鳥くん。いつもごめんね」

飛鳥「え?」

 

 飛鳥がリサの方を見た。

 

リサ「その…うちのクラスの男子とか飛鳥くんに喧嘩売ったりしてるから。やめろって言ってるんだけど」

飛鳥「今井先輩のクラスだけではないので…」

友希那「他には?」

飛鳥「うちのクラス以外全部ですね…」

 

 飛鳥の言葉に燐子とあこも心配していた。

 

あこ「そういや中等部でも、飛鳥くんの悪口言う人いるよ…」

飛鳥「そりゃそうでしょう」

友希那「そりゃそうでしょうなんて事はないでしょう」

飛鳥「こんな別嬪さん達と仲良さそうに話してたら、そりゃあ悪口も言いたくなりますよ」

 

 飛鳥がさらっと別嬪さんと褒めると、5人は気恥ずかしくなった。

 

紗夜「そ、そういう恥ずかしい事をさらっと言わないで頂戴!////」

飛鳥「え?」

あこ「あこ、漫画でこういうの見たことあるよ…。確か、たらしって言うんだよね?」

飛鳥「ご冗談を。私はそんな事が出来るほど男前ではございませんよ」

友希那「別嬪さん…」

 

 そんなこんなで練習が終わりの時間を迎えた。

 

あこ「もうそろそろ制服が乾いたころじゃないかな!」

燐子「う、うん…」

 

 燐子がスタジオに飾っていた制服が元に戻っていることを確認すると、そのまま着替えた。

 

燐子「一丈字さん。今日は本当にありがとうございました」

飛鳥「いえいえ」

 

 こうして燐子の一連の騒動が収まった。…かに見えたが、

 

燐子「その、体操服は洗ってお返しします…」

飛鳥「分かりました」

あこ「そういえばもう本当に何とかしたほうがいいよね」

飛鳥「そうですね…」

 

 すると飛鳥はあこの事に関して男子生徒たちが聞いてきた時の事を思い出したが、あの時はあこの姉である巴がどこからか現れて大変なことになったのを思い出した。

 

飛鳥「本当に何とかしたほうがいいかも…」

燐子「……」

 

 そして外に出ると男子生徒たちが待ち伏せしていた。

 

「燐子ちゃん! 君が持ってるそのジャージを寄越せェ!!」

飛鳥「これは今すぐ何とかしなきゃ!!」

 

 

おしまい

 



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第361話「天才の苦悩(前編)」

 

『テスト事情』

 

 ある日のバンドリ学園。今日は定期テストの結果が帰ってくるのだが…。

 

「一丈字くん」

飛鳥「はい」

 

 飛鳥がテストの結果を受け取ろうとしたが、先生が飛鳥を見つめていた。

 

飛鳥「どうかされましたか?」

「その、今回もあなたが1位よ」

飛鳥「あ、そうですか…」

 

 担任の言葉に飛鳥は普通に返事したが、クラスメイト達が驚いていた。

 

「マジかよ…」

「一丈字すげぇな」

 

 と、クラスメイト達は飛鳥をほめていたが、飛鳥はあまり嬉しそうじゃなかった。

 

「どうしたの?」

「嬉しくなさそうだけど…」

飛鳥「問題なのはここからなんですね」

「え?」

 

 飛鳥が困惑しながら正面を向くと、皆が困惑した。

 

*********************

 

 バンドリ学園もテストの成績優秀者は張り出されることになるのだが…。

 

「一丈字! お前絶対カンニングしただろ!!」

飛鳥「ほらね、絶対こういうと思った」

 

 飛鳥は案の定男子たちからいちゃもんをつけられていた。

 

有咲「ていうか一丈字…アタシよりも頭良かったんだ…」

飛鳥「偶然ですよ」

「どうせ主人公補正使ったんだろう!?」

「きたねぇ真似しやがって!」

飛鳥「まあ、そう思われても仕方ないですけど、本当にカンニングしてませんよ。というかもうするまでもないですし」

「するまでもない!?」

「どこまでも舐めやがって!」

飛鳥「かといって、ここで手を抜いたら後で先生に生徒指導室に呼ばれて「なぜ手を抜いた?」って言われるんですよね…」

有咲「…実際に言われた事あるのか?」

飛鳥「ないですけど」

有咲「ねーのかよ!」

 

 飛鳥の言葉に有咲が突っ込んだ。

 

飛鳥「ですが、「今度手を抜いたらグーで殴る」って言って、アカハラで訴えられてクビになった先生がいますけどね。うちの中学」

有咲「こえぇよ!!」

飛鳥「そういう子はどうしてもそうしなきゃいけない理由があるから、そこも考慮しないとダメですよね」

「そんな話はどうだっていいんだよ!」

「とにかくオレ達は認めないからな!」

飛鳥「分かりましたよ。お好きにどうぞ」

 

 そう言って飛鳥は大人の対応を取った。

 

*********************

 

 河川敷

 

飛鳥「はーあ、テストでいい点とっても悪い点とっても、周りからいちゃもんつけられる。本当に敵が多いなぁ。オレ」

 

 飛鳥が体育座りしながら夕陽を見つめていた。

 

「一丈字くん?」

飛鳥「ん?」

 

 飛鳥が後ろを向くと、紗夜がやってきた。

 

飛鳥「氷川先輩」

紗夜「こんな所で何をしているのですか?」

飛鳥「いやあ、ちょっとこれからの身の振り方を考えてただけですよ」

紗夜「身の振り方?」

飛鳥「ですが、もう帰りますね」

紗夜「待ちなさい。何かあったの?」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は事情を説明した。

 

飛鳥「…という訳なんですよ」

紗夜「そ、そんな事が…」

 

 ショックを受ける紗夜に対して、飛鳥はふっと笑うとまた夕陽を見つめた。

 

飛鳥「やっかみやいちゃもんをつけられるのは昔からなんでもう慣れてます。それに、今更クラスメイトの皆さんから褒められたり、近づかれたりしても、昔の事がどうしてもチラついて、そんな気分になれません」

紗夜「……!」

 

 飛鳥の言葉に紗夜は日菜の事を思い出した。日菜は自分とは違い、ちょっと勉強すれば何でもできる『才能マン』だった。そして飛鳥もまた芸達者で、今回の成績も実力でたたき出した実力者でそういう意味では彼も『才能マン』だった。

 

 だが、日菜との決定的な違いは、結果を出したことで人から嫌われているかいないかだった。飛鳥は同級生たちに嫌われ、担任からも冷遇を受けていたため、良い事ばかりではなかった。

 

 そして紗夜は日菜に対して勝手に劣等感を抱いて、彼女から目を背けていた時期があった。飛鳥の事も日菜と同様才能マンだと思っていたが、妹とは違い、それによって苦悩していたのだった。もしかしたら日菜もこんな感じになっていたかもしれないと、紗夜は飛鳥の事を放っておけなくなった。

 

紗夜(もしかしたら…日菜も…)

 

 紗夜の表情を見た飛鳥はふっと笑った。

 

飛鳥「さて、私はもうそろそろ行きますね」

紗夜「っ!」

飛鳥「失礼します」

 

 そう言って飛鳥はその場を後にすると、紗夜は飛鳥の背中を見つめる事しかできなかった。

 

***********************

 

 翌日、紗夜は飛鳥の元を訪ねた。

 

紗夜「少しお時間をいただいてもよろしいですか?」

飛鳥「あ、はい…」

 

 飛鳥は不思議そうにしながらも、断ってもまた来るだろうと判断したため、彼女の言うとおりにした。

 

 そしてカフェテリアで話をした。

 

紗夜「…昨日はごめんなさい。気の利いたことが言えなくて」

飛鳥「お気遣いなく」

 

 紗夜の言葉に飛鳥は苦笑いした。

 

飛鳥「まあ、本当は手を抜いて点数を調整しても良かったのですが」

紗夜「そ、それはいけません! テストを何だと思っているのですか!!」

飛鳥「それはそれでまた文句を言われてしまうのですよ」

紗夜「!」

 

 飛鳥が目を閉じた。

 

飛鳥「結局何をやっても批判は免れません。そして紗夜先輩も理解して頂けていると思いますが、私は敵が多いです。ならばもうこのまま進むしかありません」

 

 飛鳥が目を閉じて紗夜を見つめる。

 

飛鳥「そういう訳ですので」

 

 飛鳥がそう言ったその時だった。

 

「おいおい、こんな所で何してんだよォ」

飛鳥「?」

 

 飛鳥と紗夜が横を向くと、2年生のDQNが現れた。

 

 

つづく

 



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第362話「天才の苦悩(後編)」

 

飛鳥「どちら様ですか?」

「オレはバスケ部に所属しているイケメンだよ。おい陰キャ」

飛鳥「紗夜先輩に対して失礼だと思わないんですか?」

「おめーに言ってんだよ!!」

 

 飛鳥の発言にイケメン…ではなくDQNがツッコミを入れた。

 

飛鳥「え? てっきり紗夜先輩に言ってるのかと思いましたよ」

DQN「んな訳ねーだろこのクソ陰キャが…」

紗夜「さっきから人の事を陰キャだなんて、何様のつもりですか!?」

DQN「そう怒るなよ。で、話は戻すけどお前…誰に断って、紗夜ちゃんと一緒にいるんだ?」

飛鳥「紗夜先輩ですが?」

 

 飛鳥が普通に言い返した。DQNにすごまれてるというのに飛鳥は全く動じなかった。

 

DQN「喋れば喋るほどムカつく奴だな…! いいか、紗夜ちゃんと一緒にいていいのはお前じゃない。このバスケ部のイケメンであるオレなんだ。さっさとどけ」

飛鳥「って言ってますけど」

紗夜「気にしなくて結構よ」

DQN「て、てめえ! さっきから紗夜ちゃんに意見を求めるなんて卑怯だぞ!!?」

飛鳥「顔がいいのを鼻にかけて好き勝手やってる方に言われましても説得力ないですよ」

DQN「んだとコラァ!!」

 

 DQNが飛鳥の顔を殴ろうとしたが、普通に受け止めた。

 

紗夜「!!?」

 

 そして飛鳥はそのままDQNの腕をひねった。

 

DQN「…いったぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~い!!!」

 

 DQNはそのまま情けない声を出して、悶絶した。

 

飛鳥「あ、紗夜先輩。今のうちに逃げてください。この方は私が始末しておきますので」

紗夜「え、えっと…」

「なにごとだ!!?」

 

 他の生徒たちが集まり始めていた。

 

「い、一丈字!!」

「お前ついに暴力行為を!!」

「キャー!! バスケ部の○○くんが!」

「どういう事か説明してもらおうか!」

 

 と、非難は飛鳥に集中したが、飛鳥は動じなかった。

 

紗夜「一丈字くんは悪くありません! この人が私にちょっかいをかけようとして守ってくれてるんです!」

 

 そう叫ぶと、飛鳥が紗夜の方を見た。

 

「えっ、そ、そうなのか…?」

「あー。確かにあいつ女癖悪いから…」

「言われてみれば一丈字くん、羽沢さんとかクラスの男子とか助けてるしね…」

「ていうか一丈字くん。普通に喧嘩強くない?」

 

 と、紗夜に言われて一部の生徒が冷静になった。

 

DQN「ち、違う! こいつが紗夜ちゃんに手を出そうしてオレが守ろうとしたんだ!」

飛鳥「あなたは紗夜先輩が皆に嘘をついてると?」

DQN「じ、実際そうだろうがよ! オレは悪くない!!」

 

 そう言うが、

 

「一丈字ィイイイイイイイイイイイ!!!」

 

 男子生徒軍団が現れた。

 

飛鳥「私を消しに来たようですね」

DQN「ちょ、ちょうどよかった! おいお前ら! オレを助けろ!!」

 

「一丈字もそうだが貴様もゆるせーん!!」

「そうだ! お前此間紗夜ちゃんの事を『日菜ちゃんと比べたら失敗作』とか言ってたじゃねーか!!」

 

 男子生徒軍団の発言に飛鳥は息の根が止まった。絶対嫌な予感がすると。案の定紗夜はショックを受けていた。

 

「あとこう言ってたよな! 日菜ちゃんと比べて貧乳とか!」

「こんな事も言ってた! 美人だけどあの性格がきつ過ぎるとか!」

「そういえばこんな事も言ってた! 一日で飽きると!」

「それから…」

飛鳥「すいません。あなた方は誰の味方なんですか」

「紗夜ちゃんの味方に決まってんだろバカタレ!!」

「バカタレはお前らだ!!!」

 

 紗夜の味方と言っておきながら、言わなくていい事まで言っていた。

 

DQN「そ、そんな事言ってねーぞ!! 適当な事言うな!! ぶっ殺すぞ!!」

紗夜「……」

 

 DQNがそう怒鳴るが、紗夜は俯いて泣きそうだった。特に日菜と比べて失敗作という言葉に。

 

飛鳥「まあ、本当に言ったのかどうかは分かりませんが、もし事実ならそう思ってるのはあなただけですよ」

「!」

 

 飛鳥が真剣な表情で言い放った。

 

飛鳥「思い上がりも大概にしなさいね。顔が良いかもしませんが、それでも紗夜先輩やRoseliaの足元には及びませんよ」

 

************************

 

 放課後、飛鳥はあの後先生に呼び出されて事情聴取を受ける羽目になった。

 

飛鳥「結局こうなったか…」

 

 飛鳥が生徒指導室から出てきた。すると紗夜や日菜、友希那、リサ、燐子が飛鳥を待っていた。

 

飛鳥「これはこれは…」

紗夜「……」

 

 飛鳥は紗夜を見つめた。

 

飛鳥「何か御用でしょうか」

友希那「御用でしょうかじゃないわ」

リサ「飛鳥くん。紗夜を助けてくれたんだってね。それで事情聴取を」

飛鳥「お気になさらずに。出れなかった授業のノートは隣の席の方に見せて貰います」

 

 リサが申し訳なさそうにすると、飛鳥は苦笑いした。

 

日菜「あの、おねーちゃんを助けてくれてありがとね!? 飛鳥くん」

飛鳥「いえいえ。今日はもう紗夜先輩の傍にいてあげてください」

日菜「それは勿論だけど…」

 

 飛鳥が紗夜を見つめた。

 

飛鳥「紗夜先ぱ」

紗夜「一丈字くん」

 

 紗夜が飛鳥を見つめて言い放った。

 

飛鳥「どうされました?」

紗夜「その、助けて頂いてありがとうございました」

飛鳥「お気になさらないでください」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「私はもうそろそろ行かないといけませんので、失礼しますね」

友希那「一つ聞きたい事があるの」

飛鳥「何でしょう」

 

 友希那が飛鳥を見つめた。

 

友希那「あなたはどうしてそんなに平然としてられるの?」

飛鳥「もう慣れたからです」

 

 友希那の質問に対して飛鳥が即答すると、皆が困惑した。

 

飛鳥「確かに私は敵も多いですし、色んな目に合ってますけど…それでも希望を捨ててないので。それでは失礼します」

 

 そう言って飛鳥は強引にその場を去っていった。

 

友希那「あの子…やっぱり普通じゃないわね」

リサ「そ、そうだね…」

飛鳥(正体バレそうだな。改ざんしとこ)

 

 飛鳥が超能力を使って、ある程度調整した。

 

**************************

 

 それからどうなったかというと、紗夜はいつも通りRoseliaのメンバーや1組のメンバーに囲まれて学園生活を送っていた。ちなみにDQNはというとあの騒動の後、彼に恨みを持っていた生徒に証拠の品を叩きつけられて、停学になったのちバスケ部も強制退部になってしまい、ぼっちになってしまったという。

 

 そして飛鳥はというと、

 

飛鳥「まあ、これで一件落着かな」

 

 皆に囲まれてる紗夜の様子を見た後そう呟いて、その場を後にした。

 

 

おしまい

 



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第365話「絶対に家に入れない飛鳥さん」

 

 

 それはある日のバンドリ学園だった。

 

「おい、一丈字。正直に答えろよ…」

「……」

 

 飛鳥はいつものようにパスパレのファンである男子生徒たちに問い詰められていた。

 

「彩ちゃん達を家に連れ込んだりしてねぇだろうな!!?」

飛鳥「私の家すぐそこなので、連れ込んでたらすぐに分かると思いますけどね?」

 

 飛鳥が困惑しながらツッコミを入れた。

 

「そんな事言ってお前あれだろ。彩ちゃん達を家に連れ込んで…」

飛鳥「……」

 

「彩ちゃん達の匂いがしみついたカーテンとか絨毯とか堪能してるんだろ!!」

飛鳥「ちょっと何言ってるか分かりませんね」

 

 飛鳥は色々言いたい事はいっぱいあったが、なんかもう突っ込んではいけないような気もしたので、何も言わないことにした。

 

「今の季節、彩ちゃん達をこたつに入れてその中に自分も…」

飛鳥「あ、私の家炬燵無いんですよ」

「ないにしてもアレだろ! 暇だから来ちゃったとか言われたりとかしてんだろ!?」

飛鳥「さっき私が連れ込んだって言ってませんでした?」

「うるさーい!!」

「とにかくお前ばっかりパスパレと仲が良いからオレ達は怒ってるんだよ!!」

 

 と、とてつもない言いがかりをつけられて飛鳥は困っていた。

 

飛鳥「私はあなた方にいちゃもんをつけられて困ってます」

「あんな可愛い美少女たちといつも一緒にいられるんだから、それくらい我慢しろや!!」

 

 そんな時だった。

 

「一体何を騒いでるの?」

 

 パスパレ本人が現れて、千聖が話しかけた。

 

飛鳥「あ、取り込み中ですのでお引き取り願います」

「日菜ちゃん!! こいつに変な事されてないか!?」

「千聖ちゃん! こいつにエッチな事されてないか!!?」

「麻弥ちゃん! こいつと一緒にお風呂入ったりしてないよね!?」

「イヴちゃん! こいつと××××してないよね!!?」

「彩ちゃん! 今日数学の宿題あったけど、ちゃんとやってきてるよね!?」

千聖「どっからどう突っ込んだらいいの!!!」

彩「なんか私だけ普通の事言われてるんだけど!!」

イヴ「××××?」

麻弥「イヴさん。ちょっと、お静かに」

 

 イヴが何事も知らずに禁止ワードを言い放つと、麻弥が困惑して男子生徒たちが自分のスマホで録音しようとしたが、飛鳥が超能力を使って妨害した。

 

飛鳥「何も聞かない方がいいです」

「一丈字の家に連れ込まれたんじゃないか心配してただけなんだよ~!!」

日菜「あ、そういえば飛鳥くんね」

飛鳥「日菜先輩。その言い方は語弊が…」

「やっぱり何かしてたんじゃないか!!」

「人事じゃあ! 人事をよべぃ!!」

飛鳥「もうめんどくさいから、後はもう全部白鷺先輩に任せましょう」

千聖「やめて頂戴!! あと座長ならあきらめないの!!」

 

 飛鳥の言葉に千聖が慌てて突っ込んだ。

 

日菜「いや、飛鳥くんね。家に入れてくれないの」

 

 日菜の言葉に空気が止まった。

 

「いや、家に入れないのが普通だよ?」

「え? 日菜ちゃん?」

 

 アイドルとしてあるまじき発言に男子生徒たちが困惑したし、千聖は頭を抱えた。

 

飛鳥「質問なのですが、自分の家にパスパレの皆さんが行きたいって言ったらどうします?」

「そりゃあ来てもらうに決まってるだろ!!」

「来てもらうだけど、今その話してなくね?」

「え? 日菜ちゃん? アイドルだよね?」

飛鳥(あ、これなんだかんだで最終的に弱み握るタイプだ)

 

 飛鳥が日菜の失言を盾に男子生徒たちが好き勝手やろうと考えていた。

 

日菜「え? あたし一人じゃなくてパスパレの皆で行くんだよ?」

 

 日菜の言葉に空気が止まった。

 

飛鳥「通訳すると、日菜先輩は私に対してそんな気はないそうです」

「けど、結局家に行くんじゃん!」

「はい! それだったら僕も行きたいです!」

「オレもオレも!!」

 

 飛鳥は強引に超能力を使って記憶を消去させた。

 

***********************

 

 その夜

 

飛鳥「もう最近投げやりになってきた…」

 

 飛鳥は自室で超能力に頼ってばっかりの現実に嘆いてきた。

 

飛鳥「もうそろそろ潮時かなぁ…」

 

 なんて話していると、千聖から電話があって電話に出ることにした。

 

飛鳥「あ、お疲れ様です。一丈字です」

『お疲れ様。今いいかしら?』

 

 千聖から電話があった。

 

飛鳥「どうかされました?」

千聖『…あなた今日、思いっきりあの力使わなかった?』

飛鳥「使いました」

 

 飛鳥はあっさり認めた。

 

飛鳥「いや、なんか家荒らされそうな気もしたんで…」

千聖『まあ、日菜ちゃんやあの男子生徒たちの事を考えたらそうね…。それを聞きたかったのよ』

飛鳥「すいません。けどもう本当にこの力があって良かったなって」

千聖『そうね。それで結果的に私たちも何度も助けられたもの』

 

 千聖の言葉に飛鳥が一息ついた。

 

千聖「それはそうとモカちゃんやこころちゃんはあなたのおうちに行った事あるの?」

飛鳥「ないですね。入れると他の人たちも来る可能性があるので遠慮してもらってます」

千聖「そう…」

 

 そんなこんなでその日の会話は終わった。

 

**************************

 

 そしてまたある日の事。

 

「逆にお前、彩ちゃん達の家に行った事あるのか!?」

飛鳥「いやー。ないですねー」

 

 飛鳥は今日も男子生徒たちに問い詰められていた。

 

飛鳥「逆にあなた方はあるんですか?」

「あるわけねーだろ!!」

「あったらこんな事聞かんわい!!」

「千聖ちゃんの家の前を通ったことはあるけど…」

「犬にほえられたな…」

飛鳥「……」

 

 

 アイドルって大変だなと痛感する飛鳥だった。

 

千聖『いや、あなたの方が大変だから』

 

 

おしまい

 



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第368話「飛鳥とポピパのお昼ご飯」

 

 

 ある日の事、飛鳥は一人で食事をとろうとしたが偶然香澄達と出会い、飛鳥とポピパの6人で食事をとる事になったのだが…。

 

「一丈字貴様~!!!!」

 

 1組の男子生徒たちがやってきて、いつものようにいちゃもんをつけてきて、飛鳥は困惑し、有咲はゴミのように見つめてきた。

 

飛鳥「何がどうなってるんですか」

「どうなってるもこうもないよ!」

「どうしてオレ達はダメでこいつはいいんだ!?」

「主役だからか!? 主役だからなのか!?」

有咲「お前ら今までやってきたこと考えろ!!」

 

 男子生徒たちのいちゃもんに有咲がツッコミをした。

 

飛鳥「あの、ちょっと疑問に思ったんですけど…」

「お前の疑問は受け付けない!」

飛鳥「相手にされないのそういう所だと思いますよ?」

沙綾「い、一丈字くんも結構いうわね…」

 

 飛鳥の言葉に沙綾が辟易していて、男子生徒たちが顔を真っ赤にした。

 

「聞いてやろうじゃないか」

飛鳥「同じクラスですし、仲良くなるチャンスは十分にある筈なんですけど、いったいどうやったらこんな事に…」

有咲「ああ。それに関してなんだがな…」

「オレ達は普通にやってるだけだぞ?」

有咲「聞けよ。人の話を」

 

 有咲は苛立っていた。

 

有咲「此間の授業なんか…」

 

 それは自分たちの教室で座学を受けている時の事だった。座席は男女1列ずつになっていた。男子15人、女子15人である。

 

 皆が真面目に授業を受けている中、はぐみが誤って消しゴムを机の上から落としてしまった時の事。周りにいた男子生徒たちが血眼になって消しゴムを取ろうとしていたのだ。

 

飛鳥「あー…」

 

 飛鳥はすべてを悟った。きっとはぐみとお近づきになりたいって言うのもそうだが、下心が丸見えだったのできっと見ていた女子たちも必死過ぎる姿を見てドン引きしたのだろう。その証拠にりみ、沙綾が視線をそらしていて、有咲は心底うんざりしていた。

 

「ぼ、僕たちははぐみちゃんの事を思って」

飛鳥「にしても隣の席に座ってる人だけで良くないですか?」

「前に転がってたりするんだよ!」

「ていうかお前は口をはさむな!」

飛鳥「はい」

たえ「あー。そういや体育の授業が合同になった時に…」

 

 と、たえが体育の授業を思い出したが、男子たちは露骨に香澄達の体操着姿をガン見していた。

 

有咲「いやらしいっていうか怖すぎる!!」

たえ「そんなに珍しい? 女子の体操着姿」

沙綾「絶対に違うから…」

 

 飛鳥は困惑していた。

 

「お前だって見てるだろ一丈字!」

「女子の体操着姿!!」

飛鳥「見てませんし、此間クラスの女子から『私たちの事は気にしなくていいからね』って慰められたんですよ。なんでか知りませんけど」

 

 飛鳥の言葉に有咲と沙綾は察した。

 

「女子に気を遣わせんなよてめぇ!!」

「それでも男か!!」

有咲「お前らにそっくりそのまま言い返してやんよ!!」

沙綾「ていうかもうあっち行ってくれない? お昼食べたいんだけど」

「イ・ヤ・だ!!」

 

 沙綾がそう言うと男子生徒たちは拒否したが、飛鳥が超能力を使って退散させた。

 

飛鳥「なんだか知りませんけど、行ったみたいですね」

有咲「もう疲れるよ…」

 

 飛鳥の言葉に有咲が困惑すると、

 

飛鳥「そうですね」

有咲「分かってるとは思うけど、逃げんなよ」

飛鳥「このシリーズが続く限りは…」

沙綾「私たちも出来ることがあれば協力するから」

有咲「ていうか思ったんだけど、お前この学園に友達いるのか?」

飛鳥「この状況でいると思いますか?」

 

 飛鳥の発言に皆が困惑した。

 

香澄「ク、クラスのみんなは…?」

飛鳥「最低限は仲良くしてくれますけど、何かもう色々ありすぎて…ねぇ」

 

 飛鳥が何か言いたそうにしたが即座にやめて、有咲たちもこれ以上聞かないようにした。

 

たえ「元気出して。ハンバーグ一口あげるから」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 たえからハンバーグを一口分貰うと、

 

「ヒィーン!!」

「おたえちゃんからハンバーグを貰ったダハァーン!?」

 

 奇声を上げながら今度は別の男子生徒数人が現れたが、飛鳥はめんどくさくなったのか超能力ですぐに追い返して、たえのハンバーグをすぐに食べてごはんをかきこんだ。

 

飛鳥「頂きました」

たえ「そういえば一丈字くん今日はおそばなんだね…」

飛鳥「はい。いりますか?」

たえ「いいや…」

飛鳥「そうですか…」

 

 そう言って黙々と食べ続けた。

 

沙綾「それはそうと一丈字くん。本当に無理してない?」

飛鳥「しまくりですよ。ですが、それだけあなた方が人気者だという事ですね」

有咲「まあ、そうかもしれねーけど…」

 

 飛鳥の言葉に有咲が困惑した。

 

飛鳥「そういや2組はどんな感じなんでしょうね」

有咲「モカちゃんから聞いたけど、似たような感じだって。5人だけで食べたいのに男子たちがやたら声かけてきて、蘭ちゃんが機嫌悪くしたって言ってたな」

飛鳥「…何となく想像つきますね」

 

 有咲の言葉に飛鳥は嫌そうにしている蘭の姿を思い浮かべた。

 

有咲「定期ライブが満員なのは有り難いけど、ああいうのは勘弁してほしいよな」

沙綾「全くだよね」

有咲「そういやさーやの店って大丈夫なのか?」

沙綾「う、うーん…」

 

 有咲の言葉に沙綾が苦笑いすると、りみがどんよりした。

 

飛鳥「…まさか」

沙綾「そのまさか。最近チョココロネが売り切れるようになって、こっそり渡してる事が多くなったんだ」

りみ「さーやちゃんに頼まんと、いっつもないねん…」

飛鳥(モロ関西弁!!)

 

 りみの言葉に飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「てっきりファンが牛込さんに渡すものだと思ってたんですけどね」

沙綾「私もそうだと思ったのよ。けど、そうでもなくて…」

飛鳥「へえ…」

 

 そんなこんなで食事会は終わった。

 

*******************

 

 後日

 

飛鳥「…ん?」

 

 飛鳥が街を歩いていると、2人の男が揉めていた。

 

「オレがりみちゃんにチョココロネ渡すんだ!」

「ふざけるな! そんな事させるか!!」

 

 そう言って2人の男がチョココロネを取り合っていたが、遂にチョココロネを道路に放り投げてしまい、通りかかった車が踏んづけてしまったのだ。

 

「!!」

飛鳥「あーあ…」

 

 飛鳥がそう言って困惑していると後ろから妙な殺気が放たれたので、後ろを振り向くとそこにはマジ切れのりみと沙綾がいた。

 

沙綾「ショックだなー…。わざとじゃないにしても、せっかく作ったチョココロネを道路にぶちまけるなんて…」

りみ「絶対に許さへん…」

 

 沙綾とりみの存在に気づいた男2人は顔面蒼白になっていて、飛鳥は当分苦労しそうだなと首を横に振ったその時、

 

沙綾「まあいいや。そっちがその気ならこっちも考えがあるから。ちょっと付き合って。一丈字くん」

りみ「せやね。薫先輩の事とかも聞きたいし」

飛鳥「私は構いませんが…」

 

 飛鳥が後ろを見ると、滅茶苦茶悔しそうにしてお互いを責めあっている男子生徒2人の姿が確認できた。

 

飛鳥「もう十分制裁されたと思いますよ…」

沙綾「まあ、純達も会いたがってるしさ」

りみ「あと、おねーちゃんに変な事言われてないかとかも」

飛鳥「……」

 

 

おしまい

 



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第369話「美咲の逆襲?(前編)」

此間のガルパピコふぃーばーより。


 

 

 ある日の事、とある一室に美咲、有咲、飛鳥の3人がいた。

 

有咲「あの、奥沢さん…」

美咲「うぇえええーーーーーーーーーーーーん!!! もうハロハピなんてやってられっかよーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 美咲が号泣していた。というのも先日弦巻家で瞬間移動できる装置が開発されたので、ハロハピメンバーで見に行き、こころ達も試そうとして5人で装置の中に入ろうとしたが、一番後ろにいたはぐみが急かして皆がバランスを崩した状態で装置が起動して体が入れ替わってしまったのだ。

 

 そこまでなら良かったのだが、案の定こころ達がやりたい放題やったのだ…。

 

飛鳥「サンバ踊ってましたね…」

美咲「しかもこころ、アタシの体でしたのよ!! もう恥ずかしくて外歩けないわよ~~~~~~~~!!!!!!!!」

 

 美咲がそう叫んで号泣した。

 

 ちなみにこころと美咲が入れ替わり、他の3人は下記のように入れ替わった。

 

<精神> → <肉体>

薫    →  花音

はぐみ  →  薫

花音   →  はぐみ

 

美咲「どうしてよりによってこころなのよ~~~~~~~!!!!」

有咲「奥沢さん…アタシも物凄く分かる…!! なんでか知らないけど、あたしも香澄にやりたい放題されて…」

 

 有咲も大粒の涙を流されていた。というのもポピパも色々あってメンバー全員の体が入れ替わってしまったのだが、

 

<精神> → <肉体>

香澄   →  有咲

有咲   →  りみ

りみ   →  沙綾

沙綾   →  たえ

たえ   →  香澄

 

有咲「完全に悪意しかないんですけど」

美咲「そうね。完全に脚本が悪いわよね…」

飛鳥「……」

 

 どんどんあらぶっていく有咲と美咲を飛鳥はただ黙って見つめる事しかできなかった。

 

有咲「まあそういう訳だ一丈字。これでわかっただろう」

飛鳥「え、何がですか?」

 

 飛鳥がそうやってわざとボケると…。

 

有咲「お前今までの話聞いてなかったんかぁ!!?」

美咲「もう本家だけでお腹いっぱいなの!! お願いだから引き続きお願いって事ぉ!!」

有咲「この際もう打ち切りでもいい!!」

 

 有咲と美咲はとにかく自分たちの負担を避けたかった。まあ、飛鳥も先日心が折れてしまったので、理解はできなくはないが…。

 

飛鳥「心が折れると本当にやる気が起こらなくなるもんなんですね…」

有咲「いや、お前の心はまだ折れちゃあいない!」

飛鳥「それは市ヶ谷さ」

有咲「あーあー!! 何も聞こえなーい!!」

 

 飛鳥の言葉を有咲が耳をふさいで叫んだ。

 

飛鳥「市ケ谷さん。それやると余計に…」

美咲「だったらどうしたらいいのよ~!! こころに仕返ししようにもあの子、前向きにとらえるから動じないしぃ!!」

飛鳥「まあ、弦巻さんの事は一旦置いといて、問題はここからですよ…」

 

 飛鳥の言葉に有咲と美咲が困惑し、美咲は絶望した。

 

飛鳥「体が入れ替わった状態でサンバカーニバルに参加したもんだから…」

美咲「そうね。あたしと花音さんと薫先輩に対してのセクハラが…あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 美咲が頭を抱えて発狂した。飛鳥はその叫びを何とも言えない顔で聞くしかなかった。ただでさえ花音は男子からのセクハラ被害が激しく、今回の件で悪化してしまったのだ。

 

美咲「テニス部や家族からも変な目で見られるし、もういやあああああああああああああああああああああ!!」

有咲「奥沢さん! その気持ちすっごい分かるよ!! 辛いよな! 辛いよなぁ!!」

 

 美咲の叫びに有咲も同調した。

 

美咲「…そうだ。もういい」

飛鳥・有咲「え?」

美咲「こうなったらもうとことんやろう」

 

 美咲は自暴自棄になり、電話をかけた。

 

美咲「あ、もしもしこころ? ちょっと楽しい事考えたんだけどさー」

飛鳥(奥沢さんが壊れたぁああああああああああああ!!!)

 

 美咲の目のハイライトが消え、笑いながらこころに話しかけると飛鳥は心の中で叫んだ。有咲も美咲が何かにとりつかれたんじゃないかと震えていた。

 

***********************

 

 そんなこんなでハロハピはサンバ姿でライブをすることになりました。

 

有咲「なんやて!!?」

 

 サンバ大会で見た薫たちのサンバ姿をまた見れる事に興奮する生徒達や、当時は参加しなかったこころやはぐみのサンバ姿も見れると興奮する生徒達もいたが、そのライブは女性限定だった。

 

「男性軽視だー!!」

「こんなのハロハピらしくないぞー!!」

「オレ達にも見せろー!!!」

「オレもサンバ姿になるから見せて!!」

 

 とまあ、こんな感じで盛り上がったことは盛り上がったのだが…。

 

 そして打ち合わせも行われた。結果的に飛鳥と有咲も参加することになったのだが…。

 

美咲「これがこころと薫先輩とはぐみの衣装ね」

薫・はぐみ「えっ…/////」

 

 こころとはぐみと薫の衣装はサンバ大会で来ていたものよりも露出度が高く、ちょっと尻が見えそうなくらいきわどかった。

 

薫「み、美咲? これはちょっと露出度が高い気が…」

美咲「そんな事ありませんよー。それに、薫先輩なら着こなせます」

はぐみ「は、はぐみちょっと恥ずかしい…////」

美咲「大丈夫大丈夫。薫先輩の姿であんな立派に踊れたんだから」

 

 美咲は笑いながらそう説得したが、ずっと目が笑ってなくて飛鳥と有咲が汗を流しながら視線をそらし、花音は2人の様子を見て何かを察した。

 

こころ「それにしても美咲の方から声をかけてくれるなんてとっても嬉しいわ! この衣装も中々可愛いわね!」

美咲「たまにはこういうのいいんじゃないかなって。ふふふふふ…」

 

 こころも若干きわどい衣装だったが、こころは特に恥ずかしがることなく普通に喜んでいた。

 

有咲(弦巻さん強すぎるだろ…)

飛鳥(ていうか、オレ体入れ替えられたら、間違いなく人生終わるだろうなぁ…)

 

 

 飛鳥は自分がそうなったときの事を考えて絶望していた。

 

 

つづく

 

 

有咲「続くの!!?」

 

 

つづきます

 



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第370話「美咲の逆襲?(後編)」

 

 

 そして迎えたライブ当日。バンドリ学園内にある特設ライブ会場にてハロハピの定期ライブが行われることとなったが、今回は女性限定である。

 

香澄「そういや今回は有咲もゲスト出演するんだって! 行かなくちゃ!」

沙綾「そ、そうだね…」

 

 沙綾はずっと美咲が機嫌が悪かったことが気になっていて、何やら嫌な予感がしていた。

 

千聖「花音が心配だわ…。行くしか…」

 

 千聖も花音が気になってライブ観戦を決意した。

 

「あたしは女子よ!?」

「お前のような女子がいるか!」

「男子は立ち去れ!」

 

 女子の制服を着てまでライブ会場に入ろうとした男子生徒もいて、弦巻家が用意した警備員に止められていた。

 

「くそう! 何かこころちゃんやはぐみちゃんや薫ちゃんの衣装がきわどいって聞いたからやってきたのに!」

「しかも今回は松原や1年の奥沢もサンバの衣装するんだろ!?」

「いーれーろー!!!」

 

 とまあ、男子たちが騒いでいて、

 

「お生憎様。ま、男に生まれた事を嘆くのね」

 

 と、女子たちが男子を小ばかにしたが…。

 

「待て。あんた今日当番だろ」

「あ、代わって貰いました」

「代わって貰いましたじゃない! 冠婚葬祭以外認めないからな!」

「あ~~~!!!!」

 

 そう言って先輩に連れていかれた。

 

「へへーん! ざまーみろ!!」

「人様をバカにする奴に明るい未来はね~んだよ!!」

「読者の皆もこんな事したらダメだよ!?」

「そうだ! ろくな大人にならないよ!?」

 

 どの口が言ってんだと周りの生徒たちは思ったが、関わるとろくなことがなさそうなので、そそくさと入っていった。

 

 そして会場は超満員。結果的にポピパ、アフグロ、パスパレ、ロゼリアのメンバーも全員来た。

 

ひまり「薫先輩のサンバ姿…見れなかったから是非見とかないと!」

りみ「うん!」

モカ「二人ともちょっと気持ち悪いよ~…?」

 

リサ「いやー…ハロハピっていつも思い切った事するねぇ」

友希那「学ぶことがあればいいのだけど…」

 

 舞台裏ではハロハピと飛鳥、有咲がスタンバイしていた。

 

こころ「それじゃ行ってくるわね!」

飛鳥「行ってらっしゃい」

 

 こうして幕は開かれて1曲目は『えがおのオーケストラっ!』で始まった。サンバ衣装でやっていた事も驚きだったが、美咲が素顔でDJをやっていた事に皆驚かされた。

 

香澄「美咲ちゃん!!?」

蘭「!?」

 

 そして…

 

ひまり「か、薫先輩のサンバ姿…」

りみ「は、儚いぃ~…」

 

 薫のサンバ姿にひまりやりみ、ファンの女子生徒は悶絶した。

 

 そして1曲目があっという間に終わると、大歓声が上がった。

 

こころ「ハッピー! ラッキー! スマイル! イェーイ!」

「イェーイ!」

 

 こころの言葉に皆が大盛り上がりした。

 

こころ「今回も沢山の笑顔を届けるわ! と、言いたいところなんだけど…」

「?」

こころ「今回はミッシェルがお休みなの! で、今回はいつもハロハピを裏で支えてくれてる美咲が来てくれたわ!」

美咲「あ、どーも。奥沢美咲でーす」

 

 美咲がいつものテンションで自己紹介すると、皆が一斉に写メを取った。

 

美咲(突っ込みたいところだけど我慢我慢…ああもうカメラの音やめて)

 

こころ「そして今回は素敵なゲストも来てくれてるわ! まずは1人目よ! 出てきて頂戴!」

 

 こころの言葉に飛鳥が出てくると、皆が驚いた。

 

香澄「飛鳥くん!!?」

飛鳥「えー…どうもこんにちは。一丈字飛鳥です…」

 

 飛鳥の登場に会場がざわつき、飛鳥は「だろうな」と思いながら会場を見つめた。

 

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

「薫様の近くに男がァアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 主に悲鳴は薫のファンからだった。

 

飛鳥「えー…はい、分かりますよ。なんで女性限定のライブに男がって話ですよね」

 

 飛鳥がそうMCを続けた。

 

飛鳥「実を言いますと、あちらにいらっしゃる奥沢さんから今回のライブに出てほしいと依頼があったんですね。依頼理由につきましてはうーん…」

 

 飛鳥が少し考えた。

 

飛鳥「このライブが女性限定であることと、ハロハピメンバーが全員サンバ姿なのと、私の普段の学校生活を思い出していただけたら、大体検討はつくと思います」

 

 飛鳥が笑いながらそう言うと、一部で笑いが起きた。

 

飛鳥「というわけで今回は趣向を変えて私が司会進行をさせていただきます。よろしくお願いします」

 

 飛鳥の言葉に皆が拍手した。

 

薫「儚い…」

はぐみ「飛鳥くんと一緒にライブできるのは楽しいけど…。や、やっぱりこの格好はちょっと恥ずかしいな…////」

 

 はぐみがモジモジしていた。

 

飛鳥「私の事はジャガイモだと思ってください」

はぐみ「ジャ、ジャガイモ!?」

飛鳥「それでは早速ですが2曲目に参りましょうか」

 

 そんなこんなでハロハピのライブは続けられたが、男子生徒たちは飛鳥がMCをやっている事が分かり、発狂していた。

 

「オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!」

「われらにもパラダイスを!! 天国をぉおおおおおおおおおおお!!!」

 

 醜い男たちの叫びが会場の外で響き渡ったが、屈強な男性警備員たちに取り押さえられていた。

 

「一丈字様が毎回やつれる訳だ…」

「オレ、彼女いないけど人生楽しいぜ…」

 

 ちなみに女性警備員はご褒美になりかねないので一人もいない。

 

 途中で有咲がゲストとしてやってきたわけだが…。

 

香澄「有咲!!?」

たえ「やっぱりスタイルいいね」

りみ「あ、ありさひゃん…」

沙綾「りみ。いつまで鼻血出してるの…」

 

 有咲はステージに立ったが、全観客が自分を見ていて顔を真っ赤にした。

 

飛鳥「ゲストの市ケ谷有咲さんです!」

 

 飛鳥がそうアナウンスすると、大歓声が上がった。

 

「何ぃ!? 有咲ちゃんがゲストだと!?」

「ゲストって事は有咲ちゃんもサンバ姿に!?」

「有咲ちゃんおっぱいでけーんだよ!!」

「クソ一丈字ぃ!!!」

 

 と、また男子生徒たちが中に入ろうとしたが、警備員たちが止めた。

 

有咲(き、消えてなくなりたい…)

 

 有咲も一緒にダンスを踊ったわけだが、踊ると胸とかが揺れてその乳揺れとかも見られて涙を流していた。そして飛鳥は普通にライブを見ていたが、有咲が『こっち見てんじゃねー!』とにらみを利かせて視線をそらしたが、司会という立場上そういう訳にもいかなかった。

 

 そしてあっという間にラストになり、

 

こころ「それじゃ最後はもう一度『えがおのオーケストラっ!』だけど…今回は飛鳥も一緒に歌ってもらおうかしら! 来て頂戴!」

 

 そう言うと香澄達が驚き、飛鳥がステージの上に立った。

 

飛鳥「私必要ですかね?」

こころ「必要よ! それじゃミュージックスタート!」

 

 すると最後の曲が始まったが、こころと飛鳥が交互に歌った。飛鳥の歌声を聞いて、また香澄達は驚いた。

 

香澄「飛鳥くんやっぱり歌うまい…!」

たえ「いつ聞いてもサトシだよね…」

 

 2番のサビは飛鳥がソロで歌ったが、歌唱力に皆が固まった。

 

モカ「いつか『めざせポケモンマスター』歌わせたいね~」

巴「確かに面白そうだけど…」

 

 そしてラストサビは飛鳥とこころが2人で歌うと、めちゃくちゃ盛り上がり、曲が終わるタイミングで幕が閉じた。

 

 こうしてライブは大成功に終わった…。

 

美咲「ありがとう。これですっきりした」

飛鳥「そ、そうですか…」

有咲「機嫌が直って何より…」

 

*********************

 

 その後どうなったかというと…。

 

「女の園に入った感想はどうだァー!!?」

「また心を折ってやる~!!!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥はよりいっそういちゃもんを付けられることになったが、こんな事をしても結局男子生徒たちに対しては何もいい事がないという事に気づいているので、何も言う事はなかった。

 

 そしてまた…。

 

香澄「有咲。サンバの衣装…」

有咲「もうやらねー!!!//////」

 

 有咲は香澄に何度もサンバをせがまれるようになったという…。

 

香澄「いや、めっちゃエロかった」

有咲「もういやあああああああああああああああああああああああ!!!」

 

おしまい

 



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第375話「飛鳥を追え!」

バンドリプロジェクト7周年おめでとうございます。
そして、7周年だというのにこんな内容でごめんなさい。


 それはある日の事だった。

 

「今日も練習疲れましたねー」

 

 バンドの練習がえりであるRoseliaが街を歩いていた。

 

紗夜「ええ。ですがライブも近いので…」

リサ「そういやお腹すいたね。どこかで食べてく?」

あこ「あ! それだったらいつものファミレスに…」

 

 あこがそう言い放ったその時、友希那がある事に気づき、リサも友希那の様子に気づいた。

 

リサ「友希那。どうしたの?」

友希那「あそこにいるの…一丈字くんじゃない?」

「!」

 

 友希那がそう言うと、他の4人が友希那が見ている方向を見た。すると確かに友希那の言う通り、飛鳥がいたが友希那達に気づいていなかった。

 

あこ「ホントだ!」

リサ「飛鳥くんも誘う?」

友希那「それは構わないのだけど…」

 

 友希那がそう言い、Roseliaの5人が飛鳥を誘おうとしたその時、飛鳥は路地裏に入っていった。

 

あこ「路地裏の中に入って行っちゃった!」

紗夜「一体何をする気なの!?」

 

 風紀委員である紗夜が語気を強めた。

 

リサ「確かあそこ人があまり来ない所だよね…」

紗夜「皆さんは先に帰っててください。私はちょっと一丈字くんに声をかけてきます!」

あこ「紗夜さん!」

友希那「落ち着きなさい。あなた一人じゃ危険だし、一丈字くんはそんな危ない事をしないと思うわ」

紗夜「だったら何故路地裏なんかに…」

 

 紗夜の言葉に友希那も何も言えなかった。

 

あこ「そういえば飛鳥くんって結構謎が多いって、中等部でも噂になってるんですよ」

紗夜「そ、そうなの…?」

リサ「そういやRoseliaは同級生いないからねー」

 

 と、普通に喋っていると紗夜はいてもたってもいられなくなっていた。

 

紗夜「謎が多いなら猶更です! 皆さんは先に帰っててください!」

リサ「あ、紗夜!」

あこ「あこも行く!」

リサ「ちょ、あこ!!」

 

 こうしてRoseliaメンバーは飛鳥を探しに行ったが、燐子は『メールで何をしてるのか聞いた方がいい』と言おうとしたが、言いそびれた。まあ、結果としては紗夜あたりに『絶対はぐらかす』と言われるのがオチだが…。

 

*******************

 

「おーい! 飛鳥くーん!」

 

 と、Roseliaメンバーは路地裏を抜けて道の通りに出たが、誰もいなかった。

 

あこ「この道を通ったよね…」

 

 あこがキョロキョロ探していると、ふとある店に気づいた。そこは大人のお店である…。

 

「……//////」

 

 まさか飛鳥はあの店に行っているんじゃないかと思い、Roseliaは困惑した。

 

リサ「ま、まあ…飛鳥くんも男の子だしね…////」

燐子「……/////」

紗夜「そ、そうはいってもまだ18歳にもなってないのに、そんなお店に行くなんて許されません!!/////」

 

 そう言って紗夜が飛鳥を止めようと店の近くまで行き、Roseliaもついていった。案の定エッチなポスターとかが並べられていた。

 

あこ「うわわわわわ!!///// 裸の女の人がいっぱい!!/////」

燐子「あ、あこちゃん!! 見ちゃダメ!!/////」

 

 燐子はあこの目を塞いだが、紗夜は構わず店の中に入った。

 

リサ「さ、紗夜!!////」

 

 紗夜が店の中に入ると、店主が驚いた様子で紗夜を見た。

 

「あの、お嬢ちゃん…」

紗夜「さっきここに男子生徒が入ってきませんでしたか? 黒い髪で眼鏡をかけた子で、私よりも背が高い子です!」

「黒い髪で眼鏡をかけた子…。入ってきてないよ」

紗夜「本当ですか?」

「ああ。というか店の外で見かけたんだ」

紗夜「え?」

 

 紗夜がそう返事をすると、友希那とリサもやってきたが、リサは恥ずかしさから両手を顔を覆っていた。

 

「いやー。最近色んな学校の男子生徒がここに来るもんだからね。ここに来たらダメだってその子にも言ったんだけど、その子はね、この店を出てずっと左に行ったところにあるラーメン屋に用があったみたいなんだ」

紗夜「ラ、ラーメン屋?」

 

 店主の言葉に紗夜たちがポカンとした。

 

「何でも広島にいたころの知り合いが店長らしいんだ。前に一度会ったけど暗いから、友達がいないもんだと思ってたけど、あんな若い友達がいたんだな…」

 

 ラーメン屋の店長と友達という事実が、また一丈字飛鳥という少年に関する謎が増えた。

 

「ところでお嬢ちゃん達。ここは女の子が来る場所じゃないよ。早急に出ていきな」

 

*******

 

紗夜「とにかく一丈字くんが来てなくて安心したけど…/////」

リサ「男子ってあんなの見てるんだ…////」

友希那「汚らわしい…//////」

 

 エロビデオ店から離れたRoseliaが集まって話をしていたが、エロDVDやポスターの刺激が強すぎてリサ、紗夜、友希那は困惑していた。

 

リサ「どうする? もう帰る?」

あこ「ところで飛鳥くんはどこ行ったんだろう…」

友希那「ラーメン屋を探してたって言ってたわね…」

燐子「あのう…」

 

 燐子が困った様子で友希那に話しかけた。

 

友希那「どうしたの?」

燐子「その…。もしかしてラーメン屋さんってあそこじゃ…」

 

 と、燐子の案内でラーメン屋まで向かったわけだが、

 

『ラーメン 霊界』

 

 という紫色の文字で店の名前が書いてある黒い看板を見つけた。どうやら地下に繋がっている。

 

リサ「な、なななななななにこの物騒な名前…!!」

燐子「霊界…!?」

 

 あまりにも物騒すぎる店名と看板にリサと燐子は恐れおののいた。紗夜もちょっとビビっている。

 

あこ「なんだかおもしろそー! 入ってみましょうよ!」

友希那「ここで聞き込みをするのが一番ね」

 

 そう言って友希那とあこが入っていくと、

 

リサ「ゆ、友希那ぁ! あこぉ!!」

 

 3人だけ取り残され、周りには誰もいない状態だった。

 

リサ「な、何かこの静けさが逆に怖いんだけど!!」

燐子「わ、私たちも入りましょう…」

紗夜「その方がいいわね…」

 

 紗夜と燐子も続いて入ろうとすると、

 

リサ「ま、待ってぇ~!!!」

 

 リサが半泣きで入っていった。

 

 そして5人が一斉に店の中に入ると、テーブルのカウンター席に飛鳥がいた。

 

飛鳥「あれ? 皆さん…」

あこ「飛鳥くん!!」

 

 飛鳥をやっと見つけてRoseliaメンバーは安心したが、それもつかの間内装も物騒だし、店内で流れるBGMがオルガンで演奏されたものであり、リサ、燐子、紗夜は真っ青になった。

 

友希那「探したわよ」

飛鳥「探した? もしかして何かありました?」

あこ「飛鳥くんが急に路地裏の中に入るから何事かなって皆で話し合ってたんだよ!」

飛鳥「あー…そういう事でしたか」

 

 あこの話を聞いて、飛鳥が納得すると…。

 

「いらっしゃい…」

「!」

 

 店主が現れたが、幽霊みたいな男だった。

 

リサ「で、ででででで出たァーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

燐子・紗夜「」

 

 リサが悲鳴を上げると、燐子と紗夜はリサの悲鳴で心臓が止まりそうになった。

 

飛鳥「あ、この人店長です」

友希那・あこ「……」

 

 こんな状況でも平然としている飛鳥に友希那達の中で更に飛鳥がどういう人間か分からなくなっていった…。

 

 ちなみにラーメンは普通に食べていった。

 

あこ「美味しいし、何か魔法の壺みたーい!」

「広島にいる職人に作って貰ったんです…」

 

 スープを入れると色が紫色に見える特殊な皿を使ったラーメンにあこは満足だったが、リサ、燐子、紗夜は一秒でも早く帰りたかった。というのも、後ろに飾ってある絵が白い文字で「R.I.P」と書かれていたが、文字がとてつもなく怖かった。

 

紗夜(ゆ、夢に出そう…)

リサ(あ、味分かんない…!)

燐子(どうしてあこちゃんや一丈字くんは平気なんだろう…)

 

 だが、本当にRoseliaが恐怖するのはここからだった。

 

 

**********************

 

 翌日

 

「おい! うちの女子があのエロビデオ店に入ったって噂があるぞ!?」

「マジか!!」

「ああ!」

「一体どこの誰なんだ!!?」

 

 とまあ、名前はバレなかったものの、バンドリ学園の女子がエロビデオ店から出てきたといううわさが流れた。

 

紗夜・リサ「……!!」

 

 当事者である紗夜とリサは震えあがっていた。もしバレたら自分たちはどうなってしまうのだろうと。そんな中友希那は堂々としていた。

 

燐子(は、入った生徒は3人って言ってたし…。わ、私とあこちゃんは違うよね…。でも…)

 

 リサと紗夜は早くこの噂がなくなる事を心の底から願っていた。

 

 

飛鳥(…今度からは違うルートで行こう。丁度帰りに見つけたし)

 

 

 飛鳥も噂は聞いていたものの、それが友希那達だとは思っていなかったのは内緒だ。

 

 

おしまい

 



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第377話「Afterglow VS Roselia 5番勝負! ~試合前編~」

 

 それはある日の昼休憩だった。AfterglowとRoseliaが普通に食事をとっていたが、蘭と友希那が同じ空間にいるせいかちょっとピリピリしていた。

 

 だが、そんな中でも一部の男子生徒たちは空気を読まなかった!

 

「そういやAfterglowとRoseliaっていつも張り合ってるけど、音楽以外はどっちが上なのかな?」

「そうだなー」

 

 いかにもなんかやらせそうだったので蘭、巴、ひまり、モカ、リサ、紗夜は若干嫌な顔をし、燐子は困った顔をしていた。つぐみは苦笑いしていた。

 

「例えば相撲とか…」

「そうだな。相撲はどっちが上だろう」

 

 両バンドは無視しようとした。約一名を除いて…。

 

リサ「ゆ、友希那!?」

燐子「友希那さん!?」

 

 すると友希那が男子生徒たちの所にやってくると、男子生徒たちは驚いていた。

 

友希那「そんなものRoseliaに決まってるでしょう。分かりきった事をわざわざ言わないで頂戴」

 

 友希那のこの一言が全ての始まりだった。蘭はブチギレているし、リサは本気で頭を抱えていた。どうやら今回のツッコミ役はリサで決定のようだ。

 

リサ「絶対嫌ぁ!! 友希那本気でやめて!! マジでやめ…」

 

 リサが友希那を止めようとしたが、蘭がすかさず友希那に突っかかった。

 

蘭「うち、巴とかひまりがいますけど?」

巴「蘭? 少しは自分で戦おうな?」

ひまり「え? それどういう意味? 私パワーキャラ? 蘭の中では私パワーキャラなの!!?」

巴「いや、それだったらアタシも…まあ、ドラム叩くしそれは否定しないけど」

リサ「いや、巴とひまりもボケるのやめて!! それから友希那と蘭も本当に落ち着いて! このままだと男子の思うつぼだよ!?」

友希那「分かっているわ。リサ」

リサ「いや、分かってるんだったら…」

友希那「けれど今はガールズバンドも戦国時代。力がなければ生き残る事は出来ないわ」

リサ「うん。それは音楽の話だよね?」

友希那「そしてRoseliaは頂点を目指すの」

リサ「そうだよね。頂点目指してるけど、これはどう考えてもおかしいと思うなぁ」

 

 どうあっても相撲大会をやめさせたいリサだったが、友希那はやる気満々だった。そう、このままやめてしまえば蘭がマウントを取ってくるのが目に見えていたからだった。

 

 そして男子生徒は友希那が相撲をする気満々になっていて、露骨にテンションを上げていた。

 

リサ「ちょ、ちょっと誰か一…」

 

 リサがあの男の名前を呼ぼうとした次の瞬間だった。

 

***********************

 

 とある特設相撲会場

 

『えー。という訳で今回はAfterglow VS Roselia 5番勝負をお送りしたいと思います』

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 とまあ、AfterglowとRoseliaが相撲対決をすることになり、10人がスクール水着に白いまわしをつけていた。

 

「アフグロのまわし姿…」

「まわし一丁じゃないのが惜しいが、それも良し!」

「寧ろ逆にエロい!」

「というかもう女子高生のまわし姿が…」

 

 男子生徒たちは相変わらず気持ち悪かったし、写メを撮りまくっていた。

 

ひまり「撮るなぁ~!!!//////」

紗夜「何でいつもこうなるの…」

 

 ひまりが頬を染めて怒鳴ると、紗夜は涙目になった。

 

司会「ルールは簡単です。1人ずつ戦ってもらって、先に3勝したほうが勝ちです。ちなみに負けたチームは罰ゲームがあります」

リサ「罰ゲームまであるの!!?」

司会「ちなみにこれは男子生徒たちが一生懸命考えて、厳選したものをいくつかピックアップしたので、その中からご自由に選んでもらいます」

リサ「へ、へー…」

 

 そして罰ゲームの内容が紹介された。

 

司会「1番:スクール水着を脱いでまわし一丁で四股踏み」

「絶対嫌!!!/////」

 

 簡単に言えば胸を丸出しにしてそのままで四股踏みをするというセクハラ以外何物でもなかった。

 

リサ「本当に厳選してるの!?」

司会「まあ、ほんのジョークですよ。ちなみに1番多かったのはシンプルに全裸になるでしたが、これは流石にアウトにしました」

リサ「寧ろなんで逆にセーフになると思ったの」

 

 司会の言葉にリサが食い気味に突っ込んだ。

 

司会「2番:おばけタワー2で肝試し」

リサ「おばけタワー2ってなに!!?」

蘭「ま、また肝試し!?」

ひまり「ホントホラーネタ多いってぇ~」

 

 ひまりが涙目になった。

 

司会「いやあ、ポピパとハロハピはリアクションがあまり…」

「そういう問題なの!?」

司会「しかもパスパレは日菜ちゃんが平常運転だから、緊張感があまり伝わってこないし…」

紗夜「そうね」

 

 紗夜は全然否定しなかったが、観客席から日菜がツッコミを受けた。

 

司会「3番」

「……」

司会「シンプルに勝ったチームに土下座」

あこ「バラエティ番組でよく見る奴だ…」

リサ「でも1番マシだから3番!!」

 

 とまあ、色々話し合った結果…。

 

巴「どれも嫌だが、妹に土下座するのは姉としてのプライドが…」

ひまり「わ、分かった…」

蘭「……」

 

友希那「私たちも2番で行くわよ」

リサ「何で問題起こした友希那が決めてんの」

あこ「お化け屋敷楽しいじゃん!」

リサ「あたしは楽しくないの!!!」

友希那「この方がリサもやる気出すでしょ?」

リサ「うん」

 

 そんなこんなで相撲大会が始まろうとしていたのだが…。

 

リサ「それはそうと飛鳥くんは今何してるの!?」

司会「一丈字さんですか?」

 

 司会が反応した。

 

司会「レポーターが家まで訪ねたのですが、家にいなく様子で…あ、中継がつながってるようですね。レポーター!」

「はーい」

 

 するとモニターにレポーターが映っていたが、レポーターの後ろは何やらステージが映っていた。

 

リサ「これは一体何なの!?」

レポーター「私は一丈字さんが何をしているかを知るために、この○○スタジアムまで来たのですが、なんと今パズルゲームの大会に参加していた様子です」

燐子「パズルゲーム…?」

あこ「まさか…」

 

 パズルゲームと聞いて、燐子とあこが反応したその時だった。

 

『NEO FANTASY PUZZLEもいよいよ準決勝! そして次が第2試合だ!!』

 

 という大会のアナウンサーの声がした。

 

『第2試合はA選手 VS 一丈字飛鳥選手!!』

 

 そして飛鳥がその大会に参加していたのだ。

 

あこ「飛鳥くん!!?」

燐子「嘘…」

 

 そして対戦相手の紹介がされて、次に飛鳥の紹介がされた。

 

『一丈字飛鳥選手は今大会史上最年少の出場者で、1回戦では前大会優勝者のB選手をたったの30秒で撃破し、その後も撃破する時間を縮めながらここまで進んでまいりました! まさに今大会のダークホースです!』

 

 アナウンサーの紹介に会場がシーンとした。

 

リサ「さ、30秒ってすごいの…?」

燐子「は、はい…。プロ同士でも1分はかかります…」

 

『果たして! この大会に優勝して賞金と副賞のアイリス鉱石とレアアイテム『ダシマミコス』を手にするのは誰だ!!』

燐子「ダシマミコス!!?」

 

 燐子が酷く反応した。

 

リサ「え、な、なにそれ…」

あこ「りんりんとあこが限定イベントで手に入れられなかったレアアイテムだよ!」

燐子「ま、まさか再配布されることになってたなんて…」

 

 燐子は今すぐにでも飛鳥に連絡を取りたそうにしていたが、無情にもバトルが開かれることになりました。

 

「現場からは以上でーす」

あこ「試合を見せてぇええええええええええええ!!!」

 

 

おしまい

 



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第378話「Afterglow VS Roselia 5番勝負!」

 

 前回までのあらすじ

 

 男子生徒たちのある一言がきっかけで、AfterglowとRoseliaは相撲対決をすることになったが…。

 

**************************

 

『さて、それでは第1戦目から参りましょう! キーボード対決です!』

 

 白金燐子 VS 羽沢つぐみ

 

ひまり「つぐー! ファイトー!」

つぐみ「うん…」

 

 仲間の声援を受けて気合を入れるつぐみだったが、対戦相手の燐子はもう既に何か気合が入っている状態だった。

 

つぐみ(も、ものすごい気迫…どうしたんだろう…!?)

燐子(…一丈字くんに電話して、レアアイテム譲って貰えないか聞かなきゃ)

 

 燐子の気合の入れように紗夜とリサも困惑していた。ちなみに髪が長いメンバーは結んでいる。

 

リサ「り、燐子…どうしちゃったの…?」

あこ「多分レアアイテムの事が気になるから、試合をさっさと終わらせて飛鳥くんに電話しようとしてるんだよ。それで運が良かったら譲って貰おうとしてる…」

紗夜「そ、そんなに貴重なアイテムなんですか…?」

あこ「はい。限定のボスを倒さないと出てこなかったアイテムなんです。倒しても出てくる可能性が凄く低くて、出した人はTwitterで報告するくらいだったんですから」

紗夜「そ、そうなの…」

 

 そして試合が始まる。

 

「はっけよーい! 残った!」

燐子「羽沢さん。勝たせてもらいます!」

つぐみ「!」

 

 すると燐子はつぐみに掴みかかり、そのまま上手投げした。

 

『一本!』

リサ「燐子強っ!!」

あこ「ある意味レアアイテムの力で強くなってるね…」

 

 覚醒した燐子の姿に皆が驚きを隠せなかった。

 

「燐子ちゃん強ぇ…」

「ああ…」

「強いのもそうだけど…」

「ああ…」

 

 男子生徒たちは燐子の胸や尻を見ていた。

 

(やっぱエロい…)

 

 と、皆がいやらしい目で燐子を見ていたが、燐子はレアアイテムの事で頭がいっぱいになっていた。

 

燐子(可能性はゼロに近いけど…。それでも可能性があるなら…)

 

つぐみ「つ、強い…」

モカ「つぐー。ドンマーイ」

 

 そしてお互い一礼をすると、燐子は司会の方を見た。

 

司会「あ、一丈字さんですか? 決勝戦進出です」

「!」

 

 司会の一言に皆が驚いた。

 

司会「対戦相手を18秒で倒しました」

リサ「凄さがあまり伝わらない!」

燐子「そ、そうですか…」

あこ「試合見せてくれないの!?」

司会「そうはいってもあこさん。次はあなたの出番ですよ」

あこ「あ、そうだった…」

 

 第2試合: 宇田川巴 VS 宇田川あこ

 

司会「さあ、ドラム対決でありますが姉妹対決でもあります!」

巴「あこ。手加減はしてやらないからな?」

あこ「も、勿論だよっ! あこだって手加減しないよ!?」

 

 そう言って相撲が始まると、あこは一生懸命巴を押し出そうとしたが、ビクともしない。

 

あこ「ん~っ!! ん~っ!!」

巴「どうしたあこ。これが限界か?」

 

 完全に巴がリードしていたが、姉妹特有の微笑ましさがあった。男子生徒たちが写真を撮りまくっていた。

 

ひまり「だから写真撮るなってばー!!!」

蘭「後で消させる…」

 

 そして勝負は覆る事なく、巴が勝った。

 

あこ「うわーん! 負けた~!!」

巴「アタシに勝つのはまだまだ早いぞあこ」

あこ「でも、流石おねーちゃん…」

巴「あこ…」

 

 とまあ、姉妹喧嘩することなく無事に終わりました。

 

「うちの姉とは大違い…」

「何だって?」

「見習え」

「いや、少しは誤魔化せや!!」

 

*****

 

司会「これで1勝1敗! 続いて第3戦です!」

 

 ベース対決:上原ひまり VS 今井リサ

 

リサ「……」

ひまり「リ、リサさん…?」

 

 リサのただならぬ雰囲気にひまりが困惑した。というのもこれは友希那の作戦で、

 

**

 

友希那「リサ。負けたらどうなるか分かってるわね」

リサ「勿論だよ友希那…」

友希那「あなたの大好きなお化け屋敷よ」

 

***

 

リサ(ぜってぇ負けられねぇ…)

 

 リサが滅茶苦茶ウォーミングアップしながら、気合を入れていて、対戦相手のひまりがビビっていた。

 

モカ「あー…お化け屋敷がかかってるからねぇ…」

巴「ひまりー!! 負けるなよー!!」

つぐみ「ひまりちゃーん!!」

 

 こうして第3戦が始まった。

 

ひまり「うっしゃああああーッ!!!」

 

 ひまりが果敢に攻めるが完全に掛け声が力士で、他の4人も完全に力士だと思い、つぐみは苦笑いして他の3人は呆れていた。

 

 だが、完全に負けフラグを立ててしまっており、案の定リサに秒殺された。

 

ひまり「何であたしの扱いこんなのばっかりなの~!!!?」

モカ「Afterglowではひーちゃんにしか出来ないからだよ~」

蘭「いや、そんなのいいから勝ってほしかったんだけど」

ひまり「あ、もううちの負けでいいです。蘭にお化け屋敷させてください」

蘭「ダメに決まってるでしょ!!?」

リサ「え? 本当?」

「めっちゃ嬉しそう!!」

 

 お化け屋敷に行かなくて済みそうになり、リサが露骨にうれしそうにした。

 

あこ「り、りんりん…。リサ姉ってあんなに面白かったっけ…」

燐子「分からない…」

 

 燐子は決勝戦がどうなったのか気になって仕方なかったが、Roseliaの試合をないがしろにするわけにもいかなかったので、そわそわしていた。でもどっちかっていうと決勝戦がどうなったのか気になって仕方なかった。

 

 そして第4試合:青葉モカ VS 氷川紗夜

 

日菜「おねーちゃん頑張ってー!!」

 

 試合が始まり、お互い好調なペースを見せていたがものすごく密着していた。

 

紗夜(青葉さん…意外と力あるわね…!)

モカ「紗夜さん」

紗夜「?」

 

 モカが紗夜の耳元でこうささやいた。

 

モカ「にゃーん♥」

紗夜「!!?!?!?!?!?!?!///////」

 

 モカが猫なで声を出すと紗夜の顔が真っ赤になった。

 

友希那「!」

リサ「友希那じゃない。座ってて」

 

 猫なで声に反応した友希那が立ち上がったが、リサが冷静にツッコミを入れた。そして紗夜が怯むとモカはそのまま上手投げを繰り出した。

 

『勝負あり! 勝者、青葉モカ!』

紗夜「ちょ、ちょっと待ってください! 今の反則では…!」

日菜「そ、そうだよ!」

 

司会「えー。特に反則ではありませんし、寧ろ紗夜選手の方に耐性がなさすぎだと言いたいですね」

紗夜「た、耐性がないだなんて…////」

モカ「紗夜さん」

紗夜「!」

 

 紗夜がモカを見た。

 

モカ「ごっつあんです!」

紗夜「~~~~~!!!!!/////」

 

 こうして2勝2敗となった5番勝負。

 

 ちなみに相撲の反則行為は以下のとおりである。

 

・ 丁髷をつかむ

・ 拳で殴る

・ 張り手を両手でする

・ 指を折りかえす

・ 急所攻撃

・ 膝蹴り

・ 喉への攻撃

・ まわしの前袋(急所を隠す部分)を意図的に握る

 

また、ルール違反ではないが相手の攻撃をかわすこともあまり宜しくないとされている。

 

 そして最終戦 美竹蘭 VS 湊友希那…なのだが、皆の予想通り互角というか、いつまでたっても決着がつかない状態で、最終的に引き分けになった。

 

「いや、めっちゃ雑っ!!」

「でも本当に決定打に欠けるんだよな…。2人とも体力ないから」

「でも鍛え甲斐があるなぁ…」

「特に友希那ちゃんはひょろひょろしてるから…ふひひひひ…」

 

 とまあ、最終的に引き分けになりました。

 

**********

 

友希那「いい勝負だったわ」

蘭「ええ…」

 

 友希那と蘭が握手して、一件落着かに思われた。

 

巴「まあ、引き分けだったしこれでお化け屋敷の件も…」

司会「えー。その件ですが」

「!」

 

 皆が司会の方を見た。

 

司会「やっぱりオチは必要なので、10人で『おばけタワー2』に挑戦してもらいます!」

リサ「もう嫌!!!」

 

 司会の言葉にリサ、蘭、巴、ひまりがずっこけた。

 

あこ「そんな事より決勝戦どうなったの!?」

 

 こうなりました。

 

『おめでとー!! 優勝は今大会史上最年少! 一丈字飛鳥選手だー!!』

飛鳥(アイリス鉱石が手に入った。これで後は林グループが所属する研究機関に渡すだけだな…)

 

 飛鳥は希少価値があるとされているアイリス鉱石を手に入れる為にNFPに参加したのだった…。

 

レポーター「めっちゃええ試合やった…!!」

 

 また、レポーターは感涙して惜しみない拍手を送っていた…。

 

 

おしまい

 



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第379話「おばけタワー2」

第379話

 

 とある夜

 

「えー。皆さんこんにちは。今回のダシマ式バンドリ!はリニューアルした『おばけタワー2』のお話です。今回挑戦して頂くのは、AfterglowとRoseliaの2グループです!」

あこ「イエーイ!」

モカ「イエ~イ」

 

 司会の言葉にあことモカが反応したが…。

 

リサ「え? うそでしょ? 本気でやるの?」

司会「本気です」

リサ「い゛や゛だぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」

 

 リサは露骨に嫌がった。

 

蘭「ねえ、女の子いじめて楽しい?」

司会「少なくとも美竹さんは自業自得です」

「ごもっとも!!!」

 

 そもそもは男子生徒の発言に友希那が乗っかり、友希那の発言に対して蘭が乗ってしまったのが原因です。

 

司会「寧ろ今井さんや宇田川さん達に謝るべきではないでしょうか?」

リサ「蘭。今回ばかりはその通りだと思う」

 

 リサの言葉に蘭はばつが悪そうにした。

 

友希那「だったらもうRoseliaだけでいいわよ」

リサ「あのー。Roseliaだとアタシ入ってしまうんだけど…」

司会「今井さんは2年生なんだから頑張りなさいよ」

リサ「ホラーネタ以外だったら頑張るもん!」

「え? それじゃコスプレ大会とかしてくれる!?」

「えっちぃネタOK!?」

「おっしゃあ!」

「僕たち企画考えてくるからね!!」

リサ「も~!!! 飛鳥くん助けてぇ~!!!!」

 

 男子生徒たちの言葉にリサは涙目で叫ぶと、観客席にいた有咲と美咲も涙を流して、心の底からリサに同情した。ちなみに観客席の男子生徒たちは涙目になっているリサを可愛いと思っていた。

 

「リサちゃん! 一丈字じゃなくてオレが助けるよ!」

「いや、僕が!!」

「オレだつってんだろ!」

「あとなんでオレら観客席にいるんだ!!?」

 

**

 

あこ「そういえば飛鳥くんどうなったの!?」

司会「今、本人と連絡が取れています。一丈字さん?」

『あ、もしもし。お疲れ様です』

 

 飛鳥の声がして、皆が驚いた。丁度パズルの大会が終わって会場の外に出ていた所だった。

 

あこ「飛鳥くん! NFPに出てたんだよね!?」

飛鳥『あ、はい。そうなんです』

燐子「も、もしかしてレアアイテムの『ダシマミコス』を…?」

飛鳥「いえ、賞金と鉱石が目的だったんですよ。そのレアアイテムは5個くらい持ってるんで…」

あこ「5個も持ってるの!?!」

飛鳥「ええ。暇つぶしに何回も遊んでたら…」

燐子「あの、そのレアアイテム1つ譲っていただけませんか…?」

飛鳥「あれ? 持っていらっしゃらなかったんですか?」

あこ「そーなんだよ! あことりんりんが二人がかりでやっても手に入らなくて…」

飛鳥「分かりました。それじゃお譲りしますね。私は特に集めてるわけではなかったので…」

あこ「やったー!」

 

 飛鳥の言葉に燐子とあこが喜んだ。

 

リサ「それはそうと飛鳥くん?」

飛鳥「あ、はい。何でしょう」

リサ「…今回のおばけタワーだけど、飛鳥くんも来るんだよね?」

飛鳥「来るというのは?」

リサ「だから飛鳥くんも一緒に来てくれるんだよね!?」

飛鳥「いやあ、それは会場にいらっしゃるお客様が許してくれないでしょうし、今回は湊先輩やあこさん、青葉さんといった耐性のある方もいらっしゃいますし、女性だけのメンバーに男が入るのは野暮というものでは…」

蘭「は? 来ないと許さないから」

 

 飛鳥の言葉に蘭が逆切れすると、飛鳥が困惑した。

 

モカ「あーあ…蘭、ご愁傷様…」

蘭「変な事言わないで!」

友希那「私は構わないわよ。許可するわ」

 

 友希那が許可したが、案の定男子生徒たちがブーイングをした。

 

「オレ達は認めない!!」

「そうだそうだ!」

「女の子達だけの甘ったるい空間を見たいんだ!!」

「でも優勝おめでとう!!」

 

 するとリサが観客席の方を見た。

 

リサ「ごめんね。今回はちょっと実績のある人に来てほしいから…」

蘭「文句があるなら帰れば?」

 

「帰りません!!」

「そうだそうだ!」

「こんな華やかな空間の中帰れるもんか!」

「ちなみにオレちゃんと優勝お祝いしたから、見直してくれてもいいよね!?」

 

飛鳥「…ちなみに、他の方はどうでしょうか?」

 

 飛鳥が友希那たち以外のメンバーに確認を取った。

 

リサ「ぜーったい来て!」

燐子「私も来てくれた方が嬉しいです…」

あこ「それとNFPの事について聞きたいし!」

紗夜「…皆さんがこう言うなら」

 

巴「ゴメン。ちょっと来て」

ひまり「おねがーい!」

つぐみ「わ、私も来てくれたほうが嬉しいな」

モカ「まあ、来るまで待ってるよ~」

 

飛鳥「分かりました。それじゃトロフィーとかを黒服さん達に預けて、そちらに向かいます」

 

 こうして飛鳥の到着を待ってから、ロケが開始されることとなった。

 

***********************

 

飛鳥「お待たせしました」

司会「それでは11名様で行ってらっしゃい!」

 

 こうしておばけタワー2に入ったわけだが、案の定飛鳥が先頭を歩かされていた。

 

 1F

 

あこ「なんかワクワクするね!」

飛鳥「そうですねぇ…」

 

 飛鳥がキョロキョロ見渡していた。

 

モカ「どうしたの? まさかもうビビったとか?」

飛鳥「そうじゃなくて、前とだいぶ内装違うけど、いつ作ったんだろうって…」

 

 ちなみに1階は電気がついていた。

 

ひまり「そういえば前は1階の時点で電気ついてなかったもんね…」

飛鳥「まあ、上に上がりましょうか」

 

 そう言って飛鳥達が階段を上がろうとするが、中の様子はモニターで映し出されていた。

 

「一丈字めぇ…!」

「醜態晒して女子に嫌われろ!!」

「いいなぁ…」

「女の子にキャーって抱き着かれたら絶対に許さん…」

 

飛鳥「皆さん。大丈夫ですか?」

 

 そう言って飛鳥は段差を1個飛ばして階段を上がった。2階に上がるにつれて部屋はどんどん暗くなっていき、リサは既にビビっていた。

 

友希那「リサ。ビビりすぎよ…」

リサ「だ、だってぇ~…」

 

 Afterglowも蘭と巴がビビッて、本当なら誰かにくっつきたかったが、友希那やあこがいた為、それが出来なかった。

 

ひまり「モカぁ~」

モカ「大丈夫だよひーちゃん」

 

 ひまりはそんな事を気にしなくてもいいので、普通にモカに抱き着いていて蘭と巴からうらやましがられていた。

 

(ひまモカ…)

(あぁ~…やっぱ女子がくっついている姿はええのう…)

 

 とまあ、男子生徒たちはほっこりしていた。

 

香澄「な、なんだか怖そ~…」

有咲「怖いんだろ…実際に」

香澄「うん」

有咲「暑苦しいんだよ!!」

 

 香澄が露骨に有咲にくっついていたので、有咲が思わず突っ込んだ。

 

 さあ、果たして飛鳥達の運命は!!

 

 

つづく

 

 



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第380話「おばけタワー2・2」

 

 

 こうして2階に上がった飛鳥達だったが、特に何も変わらなかった。

 

友希那「結構普通ね」

ひまり「で、ででででもこういうのって結構変な仕掛けがあったりするんですよぉ…」

あこ「わー! 本当にホラーゲームみたーい!」

紗夜「変な事言わないで!!」

 

 あこの言葉に紗夜がツッコミを入れたが、彼女もちょっと怖がっていて、外から見ていた日菜が頬を染めていた。

 

日菜(怖がってるおねーちゃん可愛い…)

 

 そして2階の中を探索するが、迷路になっていた。

 

飛鳥「一方通行になってますね」

友希那「割と簡単じゃない」

 

 飛鳥と友希那が喋ったその時、あこが踏んだばしょから男性の悲鳴が聞こえた。

 

『アァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』

 

 それを聞いた瞬間、リサ、燐子、蘭、巴、ひまりが衝撃を受けた。

 

あこ「え!? な、なに今の!?」

飛鳥「どうやら隠しパネルがあって、それを押すと悲鳴が聞こえるというギミックがあるようです。皆さん、大丈夫ですか…」

 

 飛鳥が後ろを振り向いたとき、既に5人が死にかけていた。

 

リサ「も、もういや、かえりたい…」

燐子「し、心臓…止まるかと思いました…」

ひまり「……?」

巴「……!」

蘭「……」

 

飛鳥(ダ、ダメだ…。完全にショックを受けてる)

つぐみ「み、皆! しっかりして!!」

 

**

 

蘭「ねえ、一丈字」

飛鳥「私に聞かれても、今回は分からないんですよ」

蘭「まだ何も言ってないじゃない…」

リサ「ドロップアウト出来るよね? ドロップアウト出来るよね?」

 

 と、今度は蘭とリサが飛鳥にくっつきだした。当然男子生徒達からは嫉妬されていた。

 

「ハァアアアアアアアアアアアアアアアン!!」

「やっぱりこうなるオチなのね!?」

「あ、でもここに香澄ちゃん達いるし…」

「オレらも香澄ちゃんにくっついてや…あ、ごめんなさい。冗談です」

 

 男子生徒たちが香澄達にくっつこうとしたが、弦巻家の屈強な黒服男性たちがしっかりガードしていた。

 

友希那「ドロップアウト出来たとしても、面白くないからどうせ最後まで行かされるわよ。諦めなさい」

リサ「そんなぁ~!!」

 

 そしてその後もパネルを踏んで悲鳴が聞こえたが、バリエーションが豊富で「イタイ」「タスケテ」「ナニシヤガル」「アフターグロウ」という声が聞こえた。

 

飛鳥(なんでAfterglowが…?)

友希那「Roseliaは?」

リサ「さ、さあ…あるんじゃないかな」

友希那「それを聞くまでは…」

リサ「はい! さっさと3階行く!」

 

 リサによって強引に3階に連れていかれたが、ここは前回と同様ホログラムで作成された白い幽霊がうろうろしていて、パネルを踏むと、スタート地点に戻されるというギミックだった。

 

飛鳥「ここは前と同じのようですね…」

リサ「で、でも何かうろうろしてる~!!!」

 

 リサは幽霊にビビっていた。

 

紗夜「皆さん。ここは前にも来たはずですからそんなに怖くないはずです。先を急ぎましょう」

飛鳥「あ、氷川先輩! そういう事言うと…」

 

 紗夜が前に進もうとして飛鳥が止めたその時、怖い形相をした白いおばけが紗夜の目の前に突如現れて大きな音を鳴らした。

 

紗夜「きゃーっ!!!」

 

 紗夜は悲鳴を上げて飛鳥の胸に抱き着いた。飛鳥はキョトンとしたが、リサ、あこ、燐子、そしてモカ以外のAfterglowが顔を真っ赤にした。

 

 外で見ていたメンバーはどよめきが起きた。

 

日菜「あーっ!! おねーちゃんにくっついたー!!」

千聖「いや、くっついたの紗夜ちゃん…」

 

紗夜「……/////」

 

 そして抱き着いたことに気づいた紗夜は飛鳥の胸の中で顔を真っ赤にして震えていた。

 

飛鳥「…あの、氷川先輩」

紗夜「ご…ごめんなさい…/////」

 

 紗夜はプルプル震えていた。

 

飛鳥「あなたのお陰で皆さんから怖い気持ちがなくなったみたいですよ」

紗夜「……」

 

 飛鳥の言葉に紗夜は何も言わなかった。

 

飛鳥「お心遣い感謝します」

リサ(飛鳥くん…めっちゃいい子…)

 

 飛鳥のフォローにリサが心の中で涙したが、外では大変なことになっていた。

 

日菜「おねーちゃんとくっつかないでー!!!」

麻弥「ひ、日菜さん落ち着いてください!!」

日菜「やっぱりあたしも行くぅー!!!!」

千聖「やめなさい! あなたが行ったら、男子たちも行くでしょうが!!」

 

 パスパレメンバーは日菜を止めていた。

 

友希那「…ところで、いつまでくっついているつもりなのかしら?」

紗夜「ハッ!!/////」

 

 友希那の一言で紗夜が飛鳥から離れると偶然目が合ってしまった。困惑している飛鳥と、顔を真っ赤にして完全に間抜けな顔をしている紗夜。飛鳥は何も言わずに静かに目を閉じて紗夜を通り過ぎる、

 

飛鳥「皆さん。氷川先輩が頑張っていただいたので、何も言わずにここを抜けましょう」

モカ「はーい」

 

 モカも流石に空気を読んで、3階を抜けるように努めた。おばけはうろうろしていたものの、紗夜が飛鳥に抱き着いたという衝撃的な光景のお陰でおばけが全然怖くなくなった。

 

紗夜「……//////」

リサ「ドンマイドンマイ//////」

 

 紗夜は顔を真っ赤にして両手で顔を覆ったまま前に進んでいて、隣にいたリサに慰められていた。

 

(紗夜ちゃん滅茶苦茶可愛い…)

(あんな顔するんだ…)

(風紀委員の時の凛々しい顔もいいけど、やっぱりこっちも良い!!)

 

 そして日菜はというと…

 

日菜「おねーちゃん可愛すぎかよ…」

 

 日菜が一番重症で、鼻血を出しながら紗夜を見ていて、千聖たちは何とも言えなさそうな顔をしていた。

 

 3階のダンジョンを抜け、リサ達はドロップアウトできる場所を探したが…。

 

 なんと故障中だった。

 

「何でや!!!」

リサ「そんな事言って本当は使えるんでしょ? ねえそうなんでしょ?」

友希那「馬鹿な事言ってないで次行くわよ」

リサ「うわあああああああああああああああああん!! そんなああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 リサは友希那に連行されていき、蘭は飛鳥を涙目で睨みつけたがモカに連行された。

 

モカ「問題起こした蘭は最後まで行くべきだよね~」

蘭「もう許してぇえええええええええええええええええ!!!」

 

 

つづく

 

 



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第381話「おばけタワー2・3」

 

 3階でドロップアウトできるかと思いきや、故障中だった為仕方なしに全員で4階まで上がる事となった飛鳥一行。果たしてどうなるのでしょうか?

 

***

 

 4階は映像を使ったギミックになっていて、端っこに道がありそれ以外はガラス張りで映像が映し出されていた。

 

飛鳥「今回はマグマのようですね…」

 

 映像は赤い溶岩が敷き詰められた火山の中が映し出されていたが、何故か一本道が存在していて、出入り口も存在していた。

 

あこ「それもそうだけど、結構暑いよ…?」

飛鳥「リアルさを追求してるんですね」

リサ「まあ、お化けよりかはマシだけど…」

友希那「ここは2手に分かれましょう。AfteglowとRoseliaで丁度分けられるはずだわ」

飛鳥「まあ、あまり人数が多くても動きづらいでしょうし…」

 

 すると飛鳥は紗夜の気配に気づいた。紗夜は下の階で飛鳥に抱き着いてもじもじしている。

 

飛鳥「…私はAfterglowと一緒に行きます」

友希那「分かったわ。紗夜もこんな状態だしね」

紗夜「あ、暑さのせいですっ!////」

 

 紗夜がプイっと横を向くと、外の客たちがまた紗夜の可愛さにもだえ苦しんだ。

 

日菜「あ~!!! 早くおねーちゃんに抱き着きたいよ~!!」

千聖「…抱き着いてどうするのよ」

 

 こうして二手に分かれた飛鳥一行だったが、勿論何も起こらないわけがなく、映像の方で異変が起きた。一本道から猫が数匹飛び出してきたのだ。明らかに冗談だと分かるのだが…。

 

友希那「にゃーんちゃん!!!」

 

 屈指の猫好きだった友希那はすぐに反応して、覗き込んだ。一本道はとてつもなく細く、猫が落ちてしまってもおかしくない状態だった。

 

 そしてそんな姿の友希那を見てリサは嫌な予感がした。案の定、猫が一匹火山の中に落ちてしまいそうだった。

 

リサ「友希那!! あれは映像だから!!」

友希那「離してぇ!!! にゃーんちゃんが!! にゃーんちゃんがあああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 友希那が猫を助けようとガラスに突っ込もうとしたため、リサが思い切り止めた。紗夜、燐子、あこは何が起きているか分かっていなかった。

 

 そして他の猫も落ちそうになっていた。

 

友希那「ああっ!! 皆動いちゃダメ!! じっとしててー!!」

 

 友希那はもう他の人間がいようがお構いなしに叫んで、飛鳥とAfterglowは見てはいけないものを見てしまったような感覚になっていた。

 

モカ「…湊さん。猫好きなのは知ってたけど、ここまでとは」

飛鳥「しかしどうもこんなにピンポイントの奴を…」

 

 飛鳥がそう言いかけたその時、誰かに肩を叩かれて振り向くと、黒子に杖と紙切れを渡された。そして黒子は何事もなかったかのように去っていき、飛鳥は紙切れを読んだ。

 

モカ「何渡されたの?」

飛鳥「それ説明する前に、ちょっと杖振るね」

 

 飛鳥がそう言って振ろうとしたとき、猫の一匹が落ちてしまい、火山の中にダイブしようとした。

 

友希那「ああああああああああああああああ!!!」

飛鳥「PKサンダー!!」

 

 飛鳥がそう叫んで杖を振ると、突如映像から謎の光弾が現れて、それが火山の中に入っていくと、溶岩が一転して温泉に変わった。

 

「!!?」

 

 そして猫が温泉の中に入ると、猫は溶岩に解かされることなく、いつの間にか頭の上にバスタオルを乗せてゆっくり浸かっていた。

 

 ちなみに外でもその様子はモニターで見れたが、外では猫の様子をアップで見ることが出来て、猫はとても気持ちよさそうにしていた。

 

飛鳥(…PKサンダーって、こういう技じゃなくね?)

 

 飛鳥は何故『PKサンダー』だったのか理解できていなかったが、

 

友希那「にゃーんちゃん…!!////」

 

 猫が無事で友希那がとても嬉しそうだったので何も言わないようにしたが、喜んでる姿が完全に別人だったので、何も言えないというか何とも言えなかった。実際に燐子やあこはポカンとしていたし、リサは困惑してたし、紗夜は驚いていた。

 

友希那「はっ!!/////」

 

 まあ、すぐに気づいて友希那が頬を染めたのだが…。

 

 4階のダンジョンを抜けると、

 

友希那「あなたが猫を助けてくれたのね。礼を言うわ」

飛鳥「は、はあ…」

 

 ちなみに杖と紙は『ここに置いてください』という返却スペースがあったので、そこに返そうとしたが、あこが貸してほしいとねだったので、貸している状態だった。

 

 

あこ「PKサンダー!」

 

****

 

 そして5階に上がると休憩スペースで、電気がついていた。

 

リサ「やっと5階だけど…問題は次だよね」

蘭「ええ…次ですね」

 

 リサ、蘭、巴、ひまりのビビり組はある事を思い出した。そう、恐怖の画像である。

 

蘭「って! 誰がビビり組なの!!?」

巴「せめてあこの前だけではやめてくれ!!」

あこ「大丈夫!! おねーちゃんはあこが守るから!!」

巴「それ妹に言われると、威厳なくなる奴~!!!」

 

 巴がショックを受けると、紗夜も視線をそらしてつぐみが苦笑いした。

 

「あぁ…可愛い女子が10人もいる空間…」

「でもなんでか知らんけど、一丈字なんか違和感ない…」

「それオレも思った…」

 

 飛鳥は観点を変えれば女性と間違われる事も少なくなかった…。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥は目を閉じて何もしゃべらず、椅子に座っていた。

 

つぐみ「どうしたの? 一丈字くん」

飛鳥「あ、準備できたら声をかけてください」

 

 飛鳥が目を開けてつぐみを見た。

 

モカ「いつまでも待たせるのアレだし、サクッと終わらせちゃお~」

巴「お、おー。そうだなー。皆を待たせると悪いしなー」

 

 そう言って巴は姉の意地を見せようとプライドを見せた。

 

モカ「じゃあ最後はトモちんが一番先頭ね」

巴「お、おー!! 任せとけ!」

 

 そう言って巴とあこが先頭を歩くが…。

 

蘭「ほら、あんたが前なの変わらないから」

 

 蘭は飛鳥を連れだして、前を歩かせた。

 

 

つづく

 



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第382話「おばけタワー2・4」

【2022/4/5】
第4問で友希那がリサに文句を言っているシーンで、紗夜になっていましたので修正しました。

誤字脱字ありがとうございます。


 そして6階にたどり着いた一行だったが、前とは違って何故かネプリーグのような乗り物があった。

 

友希那「何なのこれ…」

あこ「あこ、これ見た事ありますよ! ネプリーグの奴です!」

リサ「あー…なんか言われてみれば…」

 

 全員が完全に中が入ったその時、鍵がかかった音がしてビビり組が反応した。

 

蘭「だからそれやめ…」

 

 蘭が喋ったその時、目の前にあったモニターから顔が表示された。

 

「よ う こ そ」

 

 その女性はとても目が大きかったが、普通の人間の数倍はあり、口は大きく笑っていたがとてもでかかった。とてもじゃないが、直視できるものではなかった。

 

 それなのに声は至って普通だったが、かえってそれが恐怖心をあおった。

 

リサ「あ、あががが…!!」

 

 リサは白目になって涙を流した。

 

蘭「うわぁー!!!!!」

燐子「……!!」

 

 蘭も悲鳴を上げて燐子が震えていた。

 

巴「あ、あこ! ねーちゃんがついてるからな!! ついてっからな!!?」

あこ「う、うん…!!」

 

 巴が強がってみせるが、あこもそれなりにビビっていた。そんな中耐性があったのは飛鳥、モカ、友希那の3人だけだった。

 

幽霊?「そこの3人は大丈夫なようね」

飛鳥「大丈夫というかなんというか…」

モカ「モカちゃんは天才だし、この子も色々凄いので~」

友希那「Roseliaは頂点を目指すのよ。あなた如きにビビってられないわ」

 

 友希那の発言に蘭が反応した。

 

蘭「べ、別にビビってないですし…?」

「そう。けど、そこの生意気なあなたはすぐに怯えることになるわ」

友希那「…言ってくれるじゃない。それだったらお手並み拝見と行こうじゃないの」

「ええ。6階のミッションを始める前に…」

「?」

 

 幽霊は飛鳥とモカを見た。

 

幽霊「そこの男の子と隣にいる白い髪の子はあそこのエレベーターに乗って、椅子に座って頂戴」

飛鳥「え?」

モカ「どーして~?」

幽霊「いいから」

 

 そう言って飛鳥とモカは言われた通りにエレベーターの中にある椅子に座ると、ゲートが閉められ中に入れなくなった。

 

「!?」

 

幽霊「あなた達2人が生贄よ。残りのメンバーでミッションをクリアしてもらうわ」

「ミ、ミッションって…!?」

 

 友希那が中心となって幽霊を見つめる。

 

幽霊「フ〇イブツアーズ」

「やっぱりネプリーグじゃねーか!!!」

幽霊「そして今回はそのパロディの『ゴーストツアーズ』」

「いや、やってる事同じだから!!」

 

 最終ミッションが某クイズ番組の人気アトラクションで、皆はツッコんだ。

 

幽霊「だけどルールは全然違うわよ」

友希那「何が違うの?」

幽霊「制限時間があって、時間内に15問正解できなければあなた達の負け。あそこにいる2人が犠牲になるのよ」

つぐみ「い、一丈字くんとモカちゃんが…?」

幽霊「そしてあの2人には回答権がないわ」

モカ「回答しようにもモニターの字が見えないから頑張ってね~」

 

 モカと飛鳥が生贄になっていることが分かった友希那達は気を引き締めた。

 

幽霊「そして問題を解いている最中はお化けたちが邪魔をしてくるわ…」

リサ「そんなんしなくていいから」

 

 幽霊の言葉にリサが半ギレになると、

 

幽霊「分かったわ。今晩あなたの夢の中で暴れてやるわ」

リサ「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいホントごめんなさい」

 

 幽霊の言葉にリサが平謝りした。

 

幽霊「さあ、それでは始めるわよ…」

 

 幽霊の言葉で不気味なファンファーレが流れ、壁から幽霊たちが出てきて応援したが、友希那とあこ以外恐怖で震えていた。

 

「ガンバレー」

「ガンバレー」

 

 そして外で見ていた香澄達はというと、

 

薫「とても素敵なお出迎えじゃないか…」

 

 薫が気丈にふるまっていたが、足がとてつもなく震えていた。

 

千聖「じゃあ行ってきて頂戴」

薫「そうしたいのだが、友希那達を信じようじゃないか」

 

****

 

 そして本家さながらの映像が出てきたが、不気味だし何か怖い。

 

『第1問』

「!」

 

『今、何問目?』

 

 というお約束のギャグ問題に皆がずっこけた。

 

友希那「1問目よ!」

 

 友希那だけ真面目に答えていた。するとモニターは正解となって次のステージへと進んでいった。

 

『第2問』

蘭「今度はあたしが…」

 

 蘭が答えようとすると、

 

『美竹蘭の父親と一丈字飛鳥が偶然出会ってお茶をした際、美竹蘭の昔話をしました。どんな話をしてた?』

蘭「はぁ!!? これ初耳なんだけど!!」

 

 蘭が飛鳥の方を向いたが、飛鳥は問題が見えてない為何のことか分からなかった。

 

幽霊「ちなみに答えを教えてもらうのは反則負けで…もっとビビらせるわよ」

リサ「ら、蘭~!!!」

蘭「どうせあたしの恥ずかしい秘密かなにかでしょ!?」

 

 蘭がそう答えたが、不正解だった。

 

蘭「なんでよ!」

 

幽霊『正解は10年前の自分の誕生日に蘭が自作のバースデーソングを歌ってくれた事についてよ』

蘭「それ恥ずかしい奴じゃん!! なんで正解じゃないの!!?」

幽霊『お父さんにとっては恥ずかしくない事だからに決まってるじゃないのよ!!』

蘭「いや、あたしの恥ずかしい秘密つってんじゃん!!」

 

 と、蘭は抗議したが結局認められなかったし、

 

つぐみ「ら、蘭ちゃん! 抗議してる間に時間が…」

蘭「く、くそー!!!」

幽霊「はい、次いきまーす」

 

『第3問目』

 

『ズバリ! 上原ひまりの体重は何㎏?』

ひまり「今度はアタシの恥ずかしい秘密じゃん!!」

巴「××㎏!!」

ひまり「巴。次言ったらグーで殴るからね?」

蘭「××㎏」

ひまり「そんなにないもん!!////」

友希那「じゃあ何㎏なの?」

ひまり「いえる訳ないでしょう!! 男子がいるのに!!」

 

 ひまりが飛鳥の方を見たが、飛鳥は耳をふさいでいた。

 

モカ「ひーちゃん! 飛鳥くんは耳をふさいでるよ!」

ひまり「いや、外で男子が聞いてて声も聞こえてるでしょう!?」

紗夜「パス!! パスで!!」

 

『第4問』

「!」

 

『ズバリ! 湊友希那の此間の数学の点数は?』

リサ「38点」

 

 リサがあっさり答えると、正解の音が鳴った。

 

幽霊「あなた…友達を庇おうという気持ちはないのかしら…?」

リサ「いや、寧ろあたしはよく庇いました。でも友希那は…」

友希那「リサ。友達を売ると碌な目に合わないわよ」

リサ「友達だったらいつも勉強を教えるこっちの身にもなってください」

つぐみ「あ、あの二人とも。喧嘩してる場合じゃ…」

モカ「ここにきてつぐが本気を出してきましたよ~」

 

 今まで存在感がなかったつぐみがここにきて、仲裁役で花開いた。

 

 

 さあ、ここから巻き返せるか!?

 

 

つづく

 



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第383話「おばけタワー2・完結」

『それでは5問目』

 

 と、次の問題に移った。

 

『この中で、正しい羽沢つぐみを選んでください』

 

 モニターに4つの羽沢つぐみが表示されたが、1つ目はいつもの羽沢つぐみ、2つ目はガルパピコ(第1期)でキャラ変更の為にロック調になったつぐみ、3つ目はキャラ変更の為にアイドル調になったつぐみ、4つ目はヘビメタ調になったつぐみだった。

 

つぐみ「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛///////////」

 

 つぐみは別世界の自分の黒歴史を掘り起こされて顔を真っ赤にしてもだえ苦しんだ。

 

友希那「全員羽沢さんね」

 

 正解の音が鳴った。

 

ひまり「えっ!? つぐヘビメタ調もやってみたの!?」

つぐみ「…だってぇ////」

モカ「なんだか良く分かんないけど、つぐのコスプレシリーズが出来そうだねー」

つぐみ「勘弁してください~!!!」

 

 そんなこんなでクイズは続いていったが…。

 

「なぞなぞです。ハロー、ハッピーワールド! でいつも違う楽器の事ばかり考えている人がいます。それは誰でしょう?」

 

 ハロハピに関するなぞなぞが出てきて、皆が困惑した。

 

こころ「誰かしら?」

はぐみ「誰だろうね」

 

 当事者であるこころ達も考えた。

 

飛鳥「あ、分かった」

 

 聞こえてた飛鳥がたどり着いた。

 

日菜「あたし分かっちゃったー!」

 

幽霊「えー。一丈字くんと氷川日菜さんが分かった模様です」

紗夜「どうして外の様子も分かるの…って、日菜と一丈字くんが!?」

あこ「え!? 誰なの!?」

幽霊「まあこれまで待ってても仕方ないから、一丈字くん。代わりにこたえてあげなさい」

飛鳥「答えは松原先輩です」

 

日菜「答えは花音ちゃんだよ!」

 

 飛鳥と日菜がそれぞれの場所で回答した。

 

花音「わ、私…?」

こころ「どうして花音なのかしら?」

日菜「花音ちゃんはドラムなのに「ふえ」って言ってるから」

花音「ふ、ふぇえええ!!?」

美咲「あ、確かに…」

 

 日菜が解説したと同時に飛鳥もあこ達に説明した。

 

飛鳥「…という訳ですね」

あこ「すごーい!」

幽霊「だけどカウントされないわよ」

飛鳥「ありゃ…」

 

 そしてまた次の問題では…。香澄、沙綾、麻弥、彩の4人の共通点を上げよという問題では…。

 

あこ「うーん。香澄以外の3人は最後に「や」が付くんだけどなー…」

 

 と、考えると飛鳥と日菜が分かった。

 

飛鳥「あ、分かった」

日菜「分かっちゃった!」

 

幽霊「時間切れね。代わりにこたえて頂戴」

飛鳥「全員名字に…」

日菜「『やま』がつく!」

 

とやまかすみ

やまぶきさあや

まるやまあや

やまとまや

 

沙綾「あっ! 言われてみれば…」

麻弥「ジブン…ひっかけだったんですね。何かすみません…」

 

 とまあ、こんな感じで進めていった結果…。

 

幽霊「時間切れね。15問中5問正解でミッション失敗よ…」

「あああああああああ!!」

 

 そして飛鳥とモカがいるエレベーターは赤いブザーがなった。

 

幽霊「さて、言い残したことはあるかしら?」

飛鳥「皆さん。本当にお疲れさまでした」

モカ「もうちょっと遊んできまーす」

 

 こうして飛鳥とモカは閉ざされ、下におろされていった。

 

「モカぁあああああああああああああああああああ!!」

「一丈字くぅううううううううううううううううううん!!!」

 

幽霊「さて、ミッション失敗だけど、これで6階のミッションは終わりよ。あなた達は反対側のエレベーターに乗りなさい。じゃあね…」

 

 そう言ってモニターが消えると、飛鳥達とは反対側のエレベータが開かれた。

 

ひまり「どうしよう…。後でモカと飛鳥くんに謝らなきゃ…」

巴「……」

 

 皆がばつが悪そうにエレベータに乗った。9人が乗るには結構余裕があった。

 

友希那「一丈字くんと青葉さんなら大丈夫よ」

紗夜「湊さん…」

友希那「私たちは私たちの出来ることをやりましょう」

 

 友希那がそう言った次の瞬間、エレベータが閉まった。9人は今頃自分たちの分まで頑張っているであろうと飛鳥とモカの事を考えていたが、途中でエレベータが丁度地上の所で止まったと同時に、外には飛鳥とモカがいた。

 

「は…?」

 

 まさかの光景に皆目が点になり、リサが真っ先に身を乗り出した。

 

『あなた達は何か勘違いをしているわね』

 

 さっきの幽霊の声がエレベーターのスピーカーから聞こえ、蘭や巴が悲鳴を上げた。

 

友希那「何を勘違いしてるって?」

「あなた達がミッション失敗したのよ。だったら罰を受けるべきはあなた達じゃないかしら」

リサ「は? そんなん聞いてない…」

 

 リサが涙目でそう言うと、

 

幽霊「まあ、あの2人はあまり怖がってなくて面白くなかったから追い出したのだけど」

リサ「あっち行けばよかったあああああああああああああああ」

 

 リサが泣き崩れた。

 

幽霊「さて、あなた達にはこれから地下4階まで行ってもらって…私たちとまだまだ遊びましょ?」

蘭「もう無理! 無理無理無理ぃ!!」

幽霊「無理じゃないの。やるの。さてお二人さん、何か言いたい事はあるかしら?」

「!?」

 

 幽霊の言葉に友希那達は飛鳥とモカを見つめると、飛鳥は気まずそうに首を横に振ると、モカはいつくしむ表情で、ファイト! と応援していた。

 

リサ「ふざけんなぁ~~~~~~~~!!!!!!」

 

 リサはたまらず大声を出したが、地下4階にそのまま連れていかれたとさ。

 

 

*****

 

 そしてなんやかんやでリサ達は出てこれたが…。

 

リサ「飛鳥くんとモカ、どこ?」

 

 リサ達が半ギレだった。

 

たえ「エンディングライブをするので、その準備に行きました」

あこ「またライブをしてくれるの!?」

蘭「ライブはいいから説教したいんだけど…」

ひまり「え? モカも?」

 

 そして飛鳥達がステージに立った。飛鳥は相変わらずボーカルだったが、モカもギターをしていた。

 

飛鳥「えー…皆さん。本当にお疲れさまでした」

リサ「お疲れさまでしたじゃないよもー!!!」

蘭「やっぱりアンタ知ってたんじゃん!!」

ひまり「ていうかモカも知ってたの!?」

モカ「ううん。飛鳥くん一人だけだと可哀そうかなーと思ってついてきたら、外出れちゃった」

リサ「本当にそっち行けば良かった」

飛鳥「えー。追加の地下ミッションも含め、本当にお疲れさまでした。そんな皆さんの健闘を称え、一曲歌わせていただきます」

蘭「いや、そんなのいいから説教…」

飛鳥「曲は河村隆一『I love you』」

蘭「話を聞けー!!!!」

 

 蘭が怒鳴るが、無情にも曲が始まった。仕方ないので皆ライブを聞くことにしたが、前回と同様モニターには黒服たちがまとめたスタッフロールが流れ、枠内におばけタワーでの飛鳥達の行動が映し出されていた。

 

 そして飛鳥が1番のサビを歌うと、参加者の涙腺が緩んだ。

 

ひまり「あ、ヤバい。泣きそう…」

蘭「泣いちゃダメ…。泣いたら一丈字の思惑通りになるから…」

 

 ひまりが泣きそうになると蘭が制したが、蘭も涙腺が緩み始めた。

 

あこ「なんかあこ達。偉業を成し遂げた勇者みたい…」

燐子「ホントそれだよね…」

 

 燐子とあこは既に号泣していた。

 

友希那「一丈字くんの歌声とこの曲が一つになっていて、この感動を生み出しているのね…」

紗夜「……」

友希那「歌唱力もそうだけど、とても味があるの」

紗夜「そうですね…」

 

 そして終盤に差し掛かると、友希那以外の全員が感涙していた。お化け屋敷から解放された安心感と、飛鳥の歌声、そして何よりも曲がエンディングにとてもふさわしかったからだ。

 

リサ「あーあ!! もうズルいなぁー!!!」

蘭「ホントそれですよね…」

 

 そして曲が終わると、大歓声が起きた。

 

飛鳥「えー。また次回もダシマ式バンドリをよろしくお願いします!」

モカ「サンキュー!!」

 

 

おしまい

 



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第384話「アココレ(前編)」

 ある日の事。友希那、紗夜、リサ、燐子、そして飛鳥はライブハウス『サークル』にいた。ちなみにサークルの正式名称は「CiRCLE」であるが、タイピングが面倒なのでカタカナである。

 

リサ「いや、そこはちゃんとしよう!!?」

 

 リサが思いっきり突っ込むと、皆がリサを見た。

 

友希那「リサ。思い切りツッコミ役が様になってきたわね…」

リサ「言わないで友希那…」

紗夜「今井さんがツッコミ役だとするなら…」

 

 紗夜が考えると、紗夜はある事に気づいた。

 

紗夜「ツッコミ役が2人になってしまいますね」

友希那「何を言ってるの? あなたもボケよ?」

紗夜「いや、そんな筈はありません。私はツッコミです」

リサ「そ、そうだね…紗夜はツッコミ…」

燐子「……」

紗夜「すみません。せめてそのリアクションだけでもやめてもらっていいですか? 不愉快です」

 

 リサと燐子は遠回しに「おまえはどう考えてもボケやろ」という顔をしていたので、紗夜がイラっとした。

 

燐子「そ、そんな事よりあこちゃん、遅いですね」

 

 燐子が話題をそらそうとした。

 

友希那「そうね。一丈字くんに練習付き合えって言っておきながら、何をしているのかしら」

リサ「今日日直があるって言ってたよ…」

 

 その時だった。

 

「遅れてすみませぇ~ん…」

「!」

 

 あこがやってきたが、びしょ濡れだった。

 

リサ「どうしたのあこ! びしょ濡れじゃない!!」

あこ「もー。途中で雨が降ってきたんだよぉ。天気予報は晴だって言ってたのにー」

 

 あこは涙目でリサに文句を言っていた。

 

紗夜「早く着替えないと風邪引きますよ」

あこ「着替えも持ってないんですよー」

 

 あこがそう言ったその時、友希那が飛鳥を見た。

 

友希那「一丈字くん。あなた体操服を…」

飛鳥「持ってる事は持ってますけど…使ってない奴」

 

 友希那の反応に飛鳥が困惑していた。

 

あこ「じゃあ貸して!!」

飛鳥「サイズとか大丈夫ですかね…。私と宇田川さんって結構身長差が…」

あこ「着れればいいよ!」

 

 そんなこんなであこは飛鳥の体操服を借りて、元の服は乾きやすい場所に乾かしていた。

 

あこ「なんか男子の体操服ってしんせーん」

友希那「さあ、練習を始めるわよ」

 

 こうしてRoseliaのバンド練習が始まった。

 

リサ「そういや思ったけど、何気に演奏とかも出来てるよね…。このシリーズ…」

友希那「言われてみればそうね」

 

 そんなこんなで今回はちゃんと練習できた。

 

あこ「じゃあ飛鳥くん! 体操服洗って返すねー!」

飛鳥「あ、はい」

 

 結局元の服は乾かなかった為、あこは飛鳥の体操服を着たまま家に帰ったが、読者の皆さんはお察しの通り、ここからが本題です。

 

*****

 

 宇田川家

 

あこ「ただいまー」

「おう、おかえりあ…」

 

 あこが家に帰ってくると、姉である巴が出迎えた。だが、あこの格好を見て驚きを隠せなかった。

 

巴「あ、あこ! それ男子の体操服じゃねーか!」

あこ「うん。飛鳥くんから借りたんだ!」

巴「そ、そうか…」

あこ「何かおねーちゃんに服を借りてるみたい!」

巴「ま、まあ…一丈字とアタシってそんな背丈変わんねーからな…」

あこ「明日洗濯して返さなきゃ」

 

 そう言ってあこは自分の部屋の中に入っていったが、巴はあこと飛鳥の間に何があったのか気になってしょうがなかった。

 

******

 

巴「以下の理由により、我が妹と何があったのか説明して頂きたいのだが、説明会場はここで合っているでしょうか」

飛鳥「……」

 

 翌日、巴は飛鳥をカフェテリアに呼び出して事情聴取を行った。そしてAfterglowのメンバーもいた。

 

飛鳥「お姉さんなら心配ですよね…」

 

 飛鳥は困った顔をして巴に言い放った。

 

蘭「ていうか一丈字…。Roseliaと練習してたんだ…」

飛鳥「あこさんに練習見てほしいって頼まれまして」

モカ「へー。そうなんだー。モカちゃんも流石に知らなかったなー」

飛鳥「聞かれなかったので」

 

 モカの言葉に飛鳥は悪びれた様子もなく言い放った。

 

巴「今はそんな話は良いんだよ! 本当にあこと何もしてないんだなッ!?」

 

 巴がテーブルをバンっと叩いた。まるで刑事ものの取り調べである。

 

飛鳥「しておりませんよ。Roseliaの方々だって一緒にいましたし、手を出してようものなら、その時点で通報が行っている筈です」

 

 飛鳥も毅然な態度で巴と向き合うと、巴は静かに目を閉じた。

 

巴「よし分かった一丈字。その言葉を信じ…」

 

 その時だった。

 

「いや、巴ちゃん! こいつはあこちゃんに手を出していた!!」

 

 と、男子生徒達が現れた。

 

飛鳥「その理由を聞かせて頂きましょうか」

「そ、その理由って…」

飛鳥「そこまで言い切るなら、私や巴さんを納得させられるだけの証拠はあるんでしょうね?」

 

 飛鳥が笑みを浮かべてそう言い放ったが、目は一切笑っておらずモカ以外の4人が恐怖していた。

 

「しょ、証拠も何も…」

「オ、オレたちは確かに見たんだ!」

飛鳥「何を見たんですか?」

「お前があこちゃんに手を出してるのを!」

飛鳥「手を出してるというのは、具体的にどんな事をしてるんですか?」

「そ、それは…」

飛鳥「先に言っときますね。こうなるだろうと思って先ほどの罵声はスマホで録音させて頂きました。何事もなければ消去いたしますが…」

「はぁ!?」

「何勝手な事をして…」

飛鳥「無茶苦茶な事をされてるあなた方に言われたくありませんよ」

 

 男子生徒たちのヤジを飛鳥は簡単に一蹴したが、Afterglowは飛鳥が完全に怒っていると判断した。

 

ひまり「ほ、本当に一丈字くん…!?」

つぐみ「いつもと雰囲気が全然違う…!!」

蘭「こ、こわい…」

 

 ひまり、つぐみ、蘭は涙目で身を寄せ合っていた。

 

飛鳥「ちなみに…ウソをつかれている場合ですが」

「!」

飛鳥「ついた事が判明した後のあなた方の対応によって、被害届を出すかどうか判断させて頂きます」

 

 

つづく



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第385話「アココレ(後編)」

 飛鳥の反応に男子生徒たちも固まった。

 

飛鳥「ちなみですがあこさんと別れるまでは、ずっとRoseliaの方々と一緒にいたので、手を出してない事については湊先輩達が聞いてくれますし、そもそも…あこさんの件に関してもすでに手は打ってあるんですよ」

「!」

飛鳥「もう分かりますね? あなた方に勝ち目はございませんし、これで嘘が証明されましたね」

 

 飛鳥がそう言い切ると、男子生徒たちは何を言えば分からなくなっていた。

 

飛鳥「何も答えない。これがあなた方の対応ですか」

「!」

飛鳥「謝罪であれば見逃そうと思ったのですが…」

「す、すまない一丈字!!」

「オレ達が悪かっ…」

飛鳥「もう遅い」

「!」

 

 飛鳥の言葉にさらに凍り付いた。巴も流石に飛鳥の怖さに涙目になっていたし、ひまり、蘭、つぐみはもう何も言えなくなっていて、唯一正体を知っているモカは苦笑いしていた。

 

モカ(…いっつもこんな感じで仕事してたんだな~)

 

飛鳥「どう落とし前をつけて貰いましょうか…」

巴「い、一丈字!? アタシもう気にしてないから!! 本当に悪かったって!!」

飛鳥「巴さんは謝らなくても大丈夫ですよ。お姉さんとして心配ですよね。ですが彼らはあなたの妹さんを利用して私を陥れようとしてたんですよ?」

 

 飛鳥の発言に空気が止まった。

 

飛鳥「この様子だと…。私があこさんを傷物にしたと騒いで学園中に広めるつもりだったんでしょうね。そうなればあなたも激怒して私と衝突し、Afterglowも巻き込むつもりだったんでしょう。卑劣極まりない行為です」

巴「うんそうだな! でももうアタシは大丈夫だし、皆大丈夫だから! とにかく怒りを抑えてくれぇ!!」

 

 さっきから飛鳥が笑みを崩さずに物騒な発言ばかりする為、巴は必死に止めようとしていた。するとモカは男子生徒たちに向かった。

 

モカ「まあそういう訳だからさ、さっさとどっか行ってくれないかな」

「!」

モカ「飛鳥くんが本気で怒る前に」

 

 モカの発言に男子生徒たちは泣き叫びながらその場を退散していった。

 

飛鳥「……」

モカ「飛鳥くんもそこまで。蘭たちが完全に怖がってるから」

 

 モカの発言に飛鳥は俯いた。

 

飛鳥「…そうですね。申し訳ございません」

つぐみ「い、一丈字くん…」

 

 飛鳥の発言につぐみが困った顔をした。

 

飛鳥「宇田川さん」

巴「あ、ああ…。アタシはもう気にしてないから…。た、大変だったな」

飛鳥「いえ、先ほども言いましたが姉として心配ですよね」

 

 飛鳥が蘭たちの方を振り向いた。

 

飛鳥「美竹さん達も怖がらせてすみませんでした」

ひまり「あ、う、うん…」

蘭「ていうか完全に別人みたいだった…」

飛鳥「そうですね」

 

 蘭の言葉に飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「結構いろんな人にも見られてますし…」

 

 飛鳥が周りを見渡すと、そこには何事かと見に来た生徒たちもいたが、皆飛鳥を恐れていた。

 

飛鳥「まあ、これで当分は彼らも大人しくするでしょう」

モカ「飛鳥くん…」

飛鳥「それでは失礼します」

 

 そう言って飛鳥はその場を後にしたが、Afterglowは飛鳥を心配した様子で見送っていたが、飛鳥は皆が見えなくなった後で指を鳴らし、皆の気持ちをやわらげた。

 

 自分自身に対する恐怖は消さずに…。

 

*************

 

 その夜

 

モカ「いやー…。何かもう鳥肌立ったよ」

飛鳥「素直に怖かったって言えばいいんだぜ」

 

 飛鳥はモカ、千聖と会話をしていた。

 

千聖「…私は後になって聞いたけど、あなた」

飛鳥「お騒がせして申し訳ございませんでした」

 

 千聖の言葉に飛鳥は頭を下げた。

 

千聖「いや、もう普段からあそこまでやられてるから、キレて当然だと思うのだけど…」

飛鳥「そういう訳にはいかないんですよ。本気で切れると超能力が暴発してしまうんです」

モカ「何かもう窓ガラスとか割りそうな感じだったよね。アレ」

 

 モカの言葉に飛鳥は静かに目を閉じた。

 

飛鳥「…中学の時に一度やらかして、学校を追い出されそうになりましたからね」

千聖「そういや前に言ってたわね。強い心がないと超能力は扱えないって」

飛鳥「扱えないどころか、超能力に心も体も乗っ取られてしまうんですよ。本来私はいてはならない『イレギュラー』みたいなものですからね」

 

 飛鳥の言葉に千聖やモカが口角を下げると、飛鳥は静かに目を閉じた。

 

 

飛鳥「死ぬまでずっと戦いですよ。少なくとも自分自身とは」

 

 

*****

 

 後日、飛鳥は普通に登校したが、噂が広まったせいで皆飛鳥を敬遠するようになった。飛鳥としてはもう絡まれることもなくなるし、上手くいけば任務完了で広島に帰る事が出来るので、何も気にすることはなかった。

 

 そんな時だった。

 

「一丈字!」

飛鳥「?」

 

 巴の声がしたので、飛鳥が後ろを振り向くとそこにはAfterglowとあこがいた。

 

飛鳥「ああ、おはようございます」

巴「昨日は本当に悪かった!!」

 

 巴が思い切り頭を下げた。

 

飛鳥「あの、巴さん」

巴「アタシが疑ったばっかりに、お前が…」

飛鳥「すみません。それちょっと一番やってほしくなかったんですよ」

巴「分かってる! でも、アタシの気が済まねーんだ!!」

飛鳥「いや、また変な誤解が生まれますので」

 

 飛鳥の言葉に巴が顔を上げ、モカたちと一緒に飛鳥の顔を見た。

 

蘭「どんな?」

飛鳥「今回の件でAfterglow、特に巴さんは私に逆らえなくなったと」

モカ「それで飛鳥くんがエッチな事を要求しても断れないだろうからって…また新しい言いがかりだよね~」

飛鳥「その通りです」

 

 飛鳥の言葉に蘭たちはうんざりしていた。

 

あこ「どうしてそんな事ばっかりになってるの!?」

飛鳥「女の子達に囲まれてたら、普通の男子は嫉妬したりするものです」

 

 あこの言葉に飛鳥は無表情になって言い放つと、モカ、あこ以外の4人は青ざめた。

 

飛鳥「それならまだ私も許せるんですよ。確かに自分にないものを人が持ってたりすると羨ましいってのは私にもあるので。ですが…」

あこ「ですが?」

飛鳥「そういう人に限って、自分で努力せず他人を蹴落として上になろうとするんですね。そんな輩にとやかく言われる筋合いはございません」

モカ「女子にもいるよ~。そんな人」

飛鳥「あぁ…」

 

 飛鳥が窓を見つめた。

 

飛鳥「今度何かあったら入院しそう」

蘭「急に何を言い出してるの!?」

モカ「それだったらツッコミ役とかが大変だね~。有咲とか美咲ちんとか」

 

 モカの発言に有咲と美咲が勢いよく飛び出してきて、飛鳥に詰め寄った。

 

有咲「一丈字!! お前の大好きなグルコのカフェオーレだぞ!!」

美咲「いつも買ってる500mlよ! しっかりして!!」

「滅茶苦茶必死か!!」

モカ「美咲ちんは此間サンバカーニバル…」

美咲「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

 

 モカの発言で美咲は崩れ落ちた。

 

飛鳥「あ、大丈夫ですよ青葉さん」

モカ「何が大丈夫なの~?」

飛鳥「2年生には今井先輩と白鷺先輩が…」

 

 すると今度はリサと千聖がやってきて、飛鳥に詰め寄った。

 

千聖「飛鳥くん。あなたが来てくれて私の負担が減って本当に助かってるわ? だけどもうちょっとだけ頑張ってくれませんか?」

リサ「飛鳥くん! クッキー食べる? あ、肩叩こうか?」

「先輩なのに露骨に後輩に媚売ってる!!」

「そんなに嫌か!!」

 

 とまあ、随分大事になってしまいましたとさ。

 

蘭「そういやAfterglowはあたしがツッコミ役だから…」

モカ・ひまり・巴「いや、それはない」

蘭「何で!? 今もこうやって突っ込んでるじゃん!!」

モカ「だって蘭はすぐキレるし、全員ボケだよ~」

蘭「それもどうなのー!?」

 

 そしてまた、この様子をRASとモルフォニカがモニタリングしていた…。

 

チュチュ「出番が全然なくてBADだと思ったけど…」

マスキング「こりゃあ気が強えー奴がツッコミにいる必要がありそうだな…」

 

七深「確かにつーちゃんじゃ荷が重いなぁ~」

つくし「そ、そんな事ないし…」

ましろ(何か…見てるだけで気持ち悪くなってきた…)

 

 

おしまい

 



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第390話「頑張る人たち」

 

 

 それはある日の事だった。

 

「はぁーあ…。一丈字の奴、相変わらず香澄ちゃん達に囲まれてるよ…」

「ああ…」

 

 男子生徒たちはうんざりしていた。というのも、一丈字飛鳥が人気ガールズバンドのメンバーに囲まれていたからだった。

 

「あいつ、見た目も地味で陰キャのくせに…」

「こころちゃんの知り合いじゃなかったら…」

「それだけだったらまだいいよ。何よりも…」

 

 男子生徒たちの飛鳥に対する憎しみが強まった。

 

(何の努力もしてないで囲まれてるのが気に食わねぇ!!)

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥も男子生徒たちの視線に気づいて、何も言えずにいた。

 

香澄「どうしたの? 飛鳥くん?」

飛鳥「いえ、何でもありませんよ…」

たえ「あ、そういえば飛鳥くん」

飛鳥「何です?」

 

 飛鳥がたえを見つめる。

 

たえ「此間河川敷で走ってる所を見たんだけど…」

飛鳥「ああ、最近運動不足気味なもんで、最近走ってるんですよ」

りみ「そ、そうなんだ…」

 

 こういう会話も男子生徒たちにとっては耳障りでしかなかった。

 

************************

 

 そんなある日の事。飛鳥がとある陸上競技の大会に出場していたことが判明していた。

 

巴「一丈字! お前陸上やってたのか!?」

飛鳥「いえ、走る専門です…」

 

 知人たちにバレて飛鳥はばつが悪そうにしていた。飛鳥としては内密にしておきたく、学校にも報告していなかったのだが、準決勝で同じ学園の生徒が別の選手の応援に来ていて、そこで判明したのだ。

 

ひまり「しかも今度決勝戦なんでしょ!?」

飛鳥「え、ええ…。次勝てば優勝です…」

蘭「そもそもどうして大会に出たの?」

飛鳥「あ、賞金が出るので」

 

 賞金稼ぎのつもりで参加していた飛鳥に皆が更に驚いていた。

 

たえ「運動不足だから走ってたって言うのは嘘なの?」

飛鳥「いや、それは合ってます。本当に運動してなかったもんで、ちょっとリハビリも兼ねて参加したわけですが…」

 

 ちなみに超能力は一切に使っていない。というのも、超能力を使えばそれこそスピードは上がるが、コーナーなどが曲がり切れない上に、カメラ判定でも不審な点が発生するため、不正したのがすぐに分かってしまうか、誤解される可能性があるからだ。

 

「はああああああああああああああああああああああああ!!?」

 

 突如の『実は努力してました』展開に男子生徒たちは発狂し、飛鳥達も流石に反応した。

 

「いや、ちょっと待てよ!!」

「そんなのおかしいだろ!!」

飛鳥「……」

 

 男子生徒たちが言いがかりをつけると飛鳥が困惑した。

 

蘭「おかしいって何が?」

男子A「いや、急に努力してましたって言われても、こっちは何の感動もしねーよ!」

男子B「蘭ちゃん達とイチャイチャさせるための口実やん!!」

モカ「あなた達は何か努力でもしたの?」

 

 男子生徒たちの言葉にモカはバッサリと言い放った。

 

男子A「そ、それは…」

モカ「努力してないのに人の事悪く言う資格なんてないんじゃないの?」

男子B「いや、なんか急にこいつが努力してるのを見せるから…」

沙綾「努力って人が見てないところでするものだと思うんだけど」

 

 男子生徒たちの言葉をバッサリ切り捨てるモカと沙綾を見て、飛鳥は口喧嘩では女性にかなわないなあと改めて思った。

 

たえ「それだったら私は飛鳥くんが努力してる所を見たって事になるよね?」

「え?」

たえ「それだったら、私は感動する権利があるって事だよね?」

「そ、それは…」

 

 たえの言葉に男子生徒たちがモゴモゴすると、

 

有咲「はいはい。結局女の子に囲まれてるのが気に入らないだけだろ? 本当にみっともないな」

「な、なんだと!?」

有咲「だってそうだろ!? 陸上の件もそうだけど、一丈字は普段から人の為に一生懸命頑張ってくれて、そういう所も見てるんだ! 林間学校でつぐみを助けた時とかも、沙綾の妹に自転車頑張らせるためにテストを頑張った事も、リサさんを痴漢から助けたときも! それに比べてあんた達は人の為に何かしたのか!? 言えば人の悪口ばかり! 本当にみっともないんだよ!」

 

 有咲の熱弁に皆が驚いた。

 

香澄「あ、有咲…!」

 

 そう言って男子生徒たちは罰が悪そうにその場を去っていった。

 

有咲「あ、待て! 一丈字に…」

飛鳥「いいんですよ市ケ谷さん」

有咲「でも!」

 

 有咲がそう言って飛鳥の方を向くと、飛鳥は静かに首を横に振った。

 

飛鳥「無理やり謝らせても、それは心からの謝罪ではございません。今は彼らが変わるのを信じて待ちましょう」

有咲「一丈字…」

飛鳥「あなたの気持ちは十分に伝わりました。ありがとうございます」

 

 そう言って飛鳥が一礼をすると、時計を見た。

 

飛鳥「もうそろそろ時間ですね。私は教室に戻ります」

 

 飛鳥が教室に戻ろうとすると、香澄が声をかけた。

 

香澄「あ! 飛鳥くん! 決勝戦応援に行くからね!?」

飛鳥「ありがとうございます。ですがその日は合同ライブでは…?」

香澄「あっ…」

 

 そう、実は陸上大会の決勝戦と、香澄達が前に計画していた5バンドの合同ライブの日程がかぶっていたのだった。

 

飛鳥「お気持ちだけ受け取っておきます。それでは」

りみ「あっ…」

モカ「飛鳥くん」

飛鳥「何です?」

 

 唯一正体を知っているモカが笑みを浮かべた。

 

モカ「頑張ってね」

 

 モカの言葉に飛鳥が笑みを浮かべたが、目に凛と輝いていた。

 

飛鳥「勿論」

 

 凛とした目でモカ達に言い放つと、香澄達はちょっとドキッとした。完全に『デキる男』の顔をしていた。

 

モカ(あ~…。これはもうあの男子たちは絶対に勝てないな~)

 

 モカは頬を染めている香澄達を見て、ひとりニマニマしていた。

 

****************

 

 そして次の月曜日…。

 

「一丈字くん。優勝おめでとう」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 飛鳥は学校に来るなり、Pastel*Palettes、Roselia、ハロハピのメンバーに祝福されていた。

 

日菜「2400mってすごいの?」

麻弥「いや、凄いと思いますよ。中距離が1500mですから…」

友希那「意外と体力あるのね。あなた…」

飛鳥「いえいえ」

 

 友希那の言葉に飛鳥が苦笑いした。飛鳥は2400mの部に出場して優勝を果たしたのだ。これが高校生だけとか、性別とか関係なしの『オールスター部門』である。

 

紗夜「けど、長距離は3000mと言われていて、2400mなんてのは…」

飛鳥「その大会オリジナルの距離みたいですね」

 

 とまあ、そのままバンドガールと談笑していて、男子生徒2人が恨めしそうに睨んでいた。

 

「なんか納得いかねぇ~!!!!」

「やっぱり主人公だからって、良い思いしてるんじゃ…」

 

 その時だった。

 

「あれ? あんな所に相撲部がいるぞ?」

「え?」

 

 と、皆がグラウンドにいる相撲部を見つめていたが、何やら練習をしていた。

 

「相撲部も一丈字どんに負けずに頑張るぞー!!」

「うっす!!」

 

 一生懸命努力していて、男子生徒2名が驚いていた。

 

男子生徒A「お、おいおい待てよ…」

男子生徒B「これってまさか…」

 

 その時だった。

 

女子生徒A「へー。やるじゃん相撲部」

女子生徒B「ちょっと見直しちゃった」

女子生徒C「少なくとも、人の悪口ばっかり言ってる男よりかはマシだよねー」

女子生徒D「今度差し入れでもしようかな」

 

 とまあ、女子たちからの評価は少しだけ上がっていて、男子生徒2人も努力することを決意した。

 

 まあ、この後どうなったかというと…。

 

「努力してるのは認めるけど、ごめんやっぱり無理」

「」

 

「やっぱイケメンがいいわー」

「」

 

「あ、あのう…タイプじゃないんです…」

「」

 

「普通に無理」

「」

 

 努力したからと言って必ずしも報われるとは限らないのである。

 

「今日一緒にお風呂入ってくれへん? もちろんマッパで」

「い、いいけど…/////」

 

 もちろん例外もあって、逆もまた然り。これは仕方のない事である。

 

「オレ達もそっちが良かったよぉおおおおおおおおおおおおお」

「ていうか普通に最低過ぎない!?」

 

男「あ、僕たち幼馴染ですねん」

「聞いてねぇよそんな事!!!」

 

 

おしまい

 



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第391話「それでもポピパにお世話されたい」

 

 それはある日のバンドリ学園だった。

 

「あーあ。Poppin‘Partyが家でオレの世話してくれたらなー…」

 

 開口一番、最低な発言を言い放つ男子生徒。香澄達と同じクラスである。

 

B「馬鹿お前、同じクラスなだけでもありがたいと思えよ」

A「そりゃそうだけどさ。やっぱりもっと先に行きたいと思わんかね」

B「そりゃそうだけどさ…」

C「美少女な女子5人に色々世話されたいって、健全な男子なら思い浮かぶよな!」

A「そうだろ? それなのにあいつときたら…」

 

 Aがある人物を思い浮かべた。

 

*****************

 

A「お前、それでも男か!!」

「ちょっと話が良く見えてきませんねぇ」

 

 カフェテリアでA達モブ3人と、飛鳥・ポピパの5人が向かい合っていて、Aの発言に飛鳥がツッコミを入れた。飛鳥としては何が言いたいか理解できていたが、あえてしらを切っていて、沙綾と有咲はまたか…という顔をして、うんざりしていた。

 

B「女の子達に囲まれているという事で、アレだろ。家に突然遊びに来られたりとかしてるんだろ!?」

飛鳥「してませんし、そういう事されるの嫌いなんですよ」

「き・ら・い!!?」

 

 飛鳥の発言に皆が困惑していた。

 

A「何でこんな事言う奴が主人公やってるんだぁ!!」

B「え? 君マジで何しにこの学校に来てるの?」

飛鳥「学校生活を送る為」

 

 飛鳥が堂々と言い放った。

 

飛鳥「仮に聞きますけど、もしあなた方が私の立場だったらどうするんですか?」

A「は? マジで喜ぶに決まってるだろ?」

B「そうだよ」

 

 AとBのテンションに飛鳥、沙綾、有咲がドン引きした。

 

沙綾「あ、あの…。一応家の中に勝手に入ってこられるんだよ?」

有咲「友達でもこえーのに…」

C「香澄ちゃん達なら大歓迎さ!」

飛鳥「それ以外の人たちだったら? 例えば男子とか…」

A「は? 一発で通報じゃボケ」

B「損害賠償と慰謝料たっぷり請求してやるわ」

C「人様に迷惑を掛けたらいけないというのが分からないのかこのゴミムシが!!」

有咲「ゴミムシはお前らだ!!」

「「「ありがとうございます!!!」」」

 

 有咲が罵声を浴びせると、A・B・Cが一斉にお礼を叫ぶと、有咲は青ざめて飛鳥の後ろに隠れた。

 

A「ああっ! 一丈字てめぇ!」

飛鳥「私がお相手しましょう」

B「てめぇ! 有咲ちゃんを怖がらせやがって!」

C「覚悟はできてんだろうなぁ!?」

飛鳥「そりゃあこっちのセリフだ!!」

 

 完全に自分のやっている事が悪い事だと自覚していないというか、しらを切っているAたちに思わず飛鳥も言葉遣いが荒くなってしまった。

 

************************

 

A「なあ一丈字。正直に言えよ。オレらにだけは本当の事教えろよ…」

飛鳥「なんか、現実が見えてないような気が?」

たえ「やってるのかな?」

飛鳥「何を!?」

 

 たえの発言に飛鳥が思わずツッコミを入れるが、有咲は完全に男子たちに怯えていた。

 

香澄「ね、ねえ! 有咲と飛鳥くん嫌がってるよ!?」

A「いや、香澄ちゃん。悪いのは一丈字なんだ」

B「そうだ。せめて一丈字を引き渡してくれないか?」

C「ここは男子だけで話を…」

沙綾「そんな事言って、いちゃもんつけるの分かってるからね? 前に2年生が同じことしてたから」

 

 沙綾がびしっと止めると、Aたちはその2年生に対して「へましやがって…」と思っていた。

 

A「よ、よし分かった! それじゃ一丈字! せめてこれだけ教えてくれ!」

飛鳥「な、何でしょう…」

 

 Aが飛鳥に向かってこう言った。

 

A「お前…ポピパの皆に自分の洗濯物洗わせてないだろうなぁ!?」

飛鳥「その前に家にも入れてないんで、洗わせようがないんですけど?」

 

 飛鳥の言葉にポピパメンバーがなぜかたくなに家に入れないか理解できた。そう、ここで家に入れた事があれば、更に面倒くさい事になっていたからだった。

 

B「じゃあ家以外で洗わせたことは!? パンツとか!!」

飛鳥「その前に同級生の男子の下着を洗ってくれると思いますか?」

C「お前ら仲いいからそういうのやってるんだろ!? 男子と女子ってそういうのやってんだろ!?」

飛鳥「漫画の見過ぎですね」

 

 飛鳥としては漫画の中でよくあるシチュエーションをA達は必ずやってくれるものだと勘違いしていた。実際はそんな訳がなく、よっぽどの事情がなければあり得ないのだ。その前に家族に絶対からかわれるので、あり得ないのである。

 

A「いいや! 絶対やってるに決まってる! だって仲いいもん!」

B「そうだ! あと主人公だし!!」

C「そういうのをやらないでハーレム小説とは言えませんよォ~!!?」

 

 暴走するAたちを見て、飛鳥は困った様子で香澄達を見た。

 

沙綾「ゴメン。気持ちはわかるけど、私たちに言われても困る…」

たえ「…そんなに女の子に囲まれたいの?」

A・B・C「ええ! そりゃあもう!!」

 

 Aたちの言葉にたえが困惑した様子で考えた。

 

たえ「でも座席は殆ど囲まれてない? 前と後ろの席は確かに男子だけど、横とその後ろと前は女子だよ?」

 

 たえが1組の座席順を例に出すと、皆が困惑した。

 

飛鳥「…要するに、あなた方は戸山さん達ともっと仲良くなりたいと?」

A「もっと仲良くなりたいです!」

B「そうです!」

C「そのうえ、一丈字がずっと一緒にいるのでずるいのでこうやって声をかけてます!」

 

 飛鳥としては「最初からそう伝え方をすれば香澄達も分かってくれたんじゃ…」と思ったが、本当の目的はいかがわしい事だというのは分かっていたので、これ以上は何も言わないことにした。

 

香澄「な、なんだー。そう言う事ならちゃんとそう言ってくれればいいのに…」

有咲「騙されるな香澄。そんな事言ってこいつら、アタシ達に対してエッチな事するつもりだぞ!」

香澄「そ、そうなの!?」

 

 香澄が驚いた様子を見せたが、Aたちは何か期待している様子だった。そう、Aたちが思い描いていた様子はこうだった。

 

妄想香澄「もー。最初からそう言ってよ。私たちがいるんだよ?」

妄想沙綾「そーだよー。エッチだなぁー」

妄想りみ「お、男の子だもんね…////」

妄想たえ「いいよ。させてあげる♡」

妄想有咲「アタシのボディでメロメロにさせてやんよ。あ、でも一丈字はもうダメだぞ。あれだけ声をかけたのに…。こいつらとアタシ達がしてるのを見て、独り寂しくなんかしてな」

 

****

 

 自分がエロい目を見ても、彼女たちは笑って自分たちの思い通りにさせてくれる。そう思っていた…。

 

香澄「も、もぉ!/// いくら何でもそれはダメだよ!?////」

りみ「……////」

たえ「うん。普通にダメだね」

沙綾「ていうか、私たちとあなた達ってそんなに仲良い訳じゃないし…」

有咲「てか、ただでさえ人に嫌がらせするような奴に、良い思いをさせる訳ないだろ」

 

 有咲もいつの間にか復活して、男子たちに辛辣な言葉をぶつけた。

 

A「んんんんん~!!! どうしてダメなのぉ!!?」

 

 Aがやけになって地団駄を踏んだ。

 

B「一丈字にはさせてるじゃないか!!」

C「そうだ! どうせ一丈字にはさせてるし、したいって言ったらさせるんだろ!?」

香澄「し、しないよぉ!!」

りみ「う、うん…恥ずかしいし…////」

 

 BとCの言葉に香澄とりみが反論した。

 

有咲「ちょっと男子と女子が仲良くしてるだけで、すぐそっちの方向を考えるなんて…変態だな」

沙綾「ちょ、有咲。そんな事言ったら…」

 

 有咲の罵声に沙綾が困惑すると、Aたちはゾクゾクと身震いさせた。

 

有咲「もう一丈字!! なんなんだよこいつら~!!!」

飛鳥「…有名人になるリスクを表してるんですね」

たえ「あ、そうだ。こいつらを止める方法考えた」

「え?」

 

 たえが飛鳥を見つめた。

 

飛鳥「どうしました…?」

たえ「もしこいつらがこれ以上変な事言ったら…」

 

 たえの発言に香澄、りみ、沙綾、有咲が顔を真っ赤にした。

 

沙綾「お、おたえまさか!!?/////」

有咲「やめろ!! いくら何でもそこまでする事ねーだろ!!///// おい! 一丈字も止めろぉ!!////」

飛鳥「大丈夫だと思いますよ」

「え?」

 

たえ「今日の放課後、一丈字くんとハンバーグ食べに行く…」

 

 たえの発言に空気が止まった。

 

有咲「ハ、ハンバーグって…」

A「うわああああああああああああああやめてくれぇえええええええええええええ」

B「いや、ちょっと待て!? おたえちゃんだけという事は他の4人は…」

C「仕方ない! 全員じゃないのは残念だが…」

 

 そう言うと、

 

有咲「あっ! それだったらアタシも行きたいなー!!」

沙綾「私も。6人で行こうよ」

りみ「う、うん…」

香澄「行こう行こう!」

A「ちょ、ちょっと待て!!」

B「オレ達も連れてってくれ~!!!」

C「奢るから…」

 

 3人が香澄達に縋ろうとしたが、

 

「お前達は放課後生徒指導室だ!」

「!」

 

 Aたちが後ろを振り向くと、生徒指導の先生がいた。

 

A「な、なんでですか!!」

「これだけの事を聞かされて、行かせてたまるか! いますぐ来い!」

A「うわあああああ~いやだああああ~!!!!」

 

 そう言って教師はAだけ連れて行き、BとCはそのまま逃亡した。

 

飛鳥「ありゃりゃ…」

有咲「はー疲れた」

 

 飛鳥とポピパは疲れ切った表情をした。

 

飛鳥「助けてくださり、ありがとうございました」

沙綾「ううん。一丈字くんもお疲れ様」

たえ「あ、そうだ。本当にハンバーグ食べに行く?」

飛鳥「それは…」

 

 たえの言葉に飛鳥が困惑すると、

 

たえ「それとも…やっぱりエッチがいい?/////」

飛鳥「ハンバーグ屋行きましょう」

 

 

おしまい

 



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第392話「お世話?」

 

 WFFへの出場を目指す本格的ガールズバンド「Roselia」。彼女たちもまた男子生徒達からの人気は高かったのだが…。

 

「あ~…。Roseliaに身の回りのお世話をしてほしい」

 

 彼女たちが所属するバンドリ学園では、彼女たちのファンらしき男子生徒たちが変態的な発言をしていた。

 

「ホントそれだよな」

「朝目覚めたら、エプロン姿のリサちゃんが朝ご飯作ってて…」

「そうだな…」

「着替えとかも手伝ってくれるんだ」

「いいよな…」

「部屋の掃除とかもやってくれて…」

 

 そんな男子生徒たちの妄想を女子生徒たちがゴミを見る目で見ていた。そう、こんな奴らと結婚したらいざという時に、「は? オレの飯はどうすんの?」という妻が夫に言われて殺意が沸く言葉ベスト5くらいの言葉を平気で言われかねないからだ。

 

「あ、それ逆もまたしかりだと思います」

「絶対これ奥さん側も言ってるよね…」

「何で旦那ばっかり取り上げるかなー」

「例の団体がうるさいとか?」

 

 とまあ、ナレーションの言葉に対して男子生徒たちが反論した。これを読んでいる皆さまは、パートナーや家族に対して、思いやりの心を持ちましょうね。

 

「もしかしたら…」

「もしかしたら?」

「一丈字が既にこういう事をされているかもしれない!!!」

 

**********************

 

飛鳥「だからされてませんってば」

 

 男子生徒たちが飛鳥に対してやっかみを起こしていた。

 

「嘘つくんじゃない!!」

「どうせカメラが回ってないところでやって貰ってるんだろ!」

飛鳥「いや、普通にそんな暇ないと思いますけど。宇田川さんに至ってはお姉さんが飛んでくる可能性がありますし」

「え? あこがなんかあった?」

飛鳥「今もこのように」

 

 巴があこの名前が聞こえてきたので、すぐに駆け付けた。

 

「巴ちゃんはちょっと黙っててくれるかな」

「オレ達は一丈字と大事な話があるんだ」

「そうそう。男だけで…」

 

 男子生徒たちが巴に対して退場するようにお願いしたその時だった。

 

「何が男だけよ。私たちのいない所でいちゃもんをつけるんでしょう」

 

 友希那、紗夜、リサ、燐子の4人が現れた。ちなみにあこは中等部であるため不在である。

 

巴「おう。今回はアタシがあこの代わりやってやんよ」

飛鳥「あ、はい…」

「いや、一丈字! 女子引き連れてくるのは卑怯だろ!!」

「そうだそうだ!」

友希那「何言ってるの。数人がかりで一人にいちゃもんをつける方がよっぽど卑怯よ」

紗夜「その通りです」

リサ「…何があったか分からないけどさー。そういうのダメだと思うよ?」

 

 そう言って友希那、紗夜、リサが諭した。

 

「ど、どうして一丈字にはそんなに優しいんだ!」

「そうだ! 主人公だから優しくしてるんじゃないか!?」

飛鳥「分かりました。それではあなた方を立てれば宜しいんですね?」

「え?」

 

 飛鳥が黒い笑みを浮かべた。

 

飛鳥「それでは今井先輩以外のRoseliaの4名とあなたがた3名で肝試しに行って貰いましょうかね」

「!!?」

 

 飛鳥の発言に皆が驚いた。

 

「ちょ、ちょっと待て!! どうしてリサちゃんだけいないんだよ!」

「そうだ!!」

「Roselia全員だろそこは!!」

 

 とまあ、男子生徒たちがいちゃもんをつけるが、飛鳥は笑みを浮かべた。

 

飛鳥「そんなの決まってるじゃないですか。今井先輩は幽霊が苦手なんですよ?」

「!」

飛鳥「そして今までも2回行って貰ってるんです。3回目やって貰おうと思っても…やってくれると思いますか?」

「そ、それは…」

 

 飛鳥の気遣いにリサが泣きそうになっていた。自分が幽霊が苦手なのをちゃんと理解していて、少なくとも自分だけ見逃してくれようとしている飛鳥の優しさに感動したからだった。

 

友希那「そうよ。リサだって3回もやらされたら不貞腐れるに決まってるじゃない。それくらい分かってほしいわね」

燐子「い、今井さんが可哀想です…」

 

 とまあ、友希那達からにらまれて男子生徒たちは罰が悪そうにしていた。

 

「って! 今その話してじゃないか!!」

飛鳥「あ、お化け屋敷に一緒に行くのはもう宜しいですか?」

「そ、そりゃあ行きたいけど!!」

「全員とじゃなかったら意味がない…じゃなかった、なんでお化け屋敷なんだよ!」

飛鳥「お化け屋敷とかそういうピンチになりそうな時に活躍したら、評価が高くなりますよ?」

 

 飛鳥の言葉に男子生徒たちが更に憤った。飛鳥としてはなんで人を蹴落とすことにこんなに熱気になるんだろうと考えた。

 

「よ、よーし分かった! そこまで言うなら行ってやるよ! お化け屋敷!」

「そうだ! 後悔しても知らねぇからな!」

「見ててね!? オレ達のカッコいいところ…」

 

 そんなこんなで放課後。

 

「行かせると思ってるのかぁ!!」

「何でお前らだけ!!」

「ここは通さん!!」

 

 と、話を聞きつけた他の男子生徒たちが、男子生徒3名を取り押さえていた。

 

「は、離せぇ!!」

「友希那ちゃん達とお化け屋敷に行くチャンスなんだ!!」

「一丈字に差をつけられるチャンスなんだぁぁああああああああ!!」

 

 とまあ、男子たちの醜い小競り合いを飛鳥と巴、Roseliaが困惑した様子で見ていた。

 

飛鳥「…一応弦巻家の黒服の人たちにも協力は要請しましたけど、これだと必要なさそうですね」

友希那「ご苦労様」

リサ「それだけRoseliaが有名になったのは嬉しいけど…」

友希那「その辺の対策も真剣に考えないといけないようね」

 

 友希那が静かに首を横に振ると、あこが考えた。

 

あこ「ところでお化け屋敷には本当にいかないの?」

リサ「絶対に行きませんッ!!!!」

 

 リサがびしっと言い放つと、飛鳥、紗夜、燐子、巴が困惑した。

 

 

おしまい

 



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第393話「アイドルは大ヘンだ」

 

 

「あ~…。パスパレはやっぱりええのう!」

 

 カフェテリアで男子生徒たちがパスパレが乗っている雑誌を見ていたが、メロメロになっていた。

 

「このタペストリーもやっぱり可愛い!」

「オレ、全部予約しちゃった!」

「馬鹿だな。本人に頼めばサインくれるって!」

「それもいいんだけどさ…」

 

 そう言って会話をしていると、飛鳥がやってきて一気に不機嫌になった。

 

「…ハァ。人が楽しんでる時に白ける奴が来ちゃったよ」

「全くだぜ…」

「いいよな。主人公様は何もしなくてもヒロイン達にチヤホヤされて…」

「全く羨ましい限りだぜ…って、いない!!」

 

 飛鳥に聞こえるように嫌味を言う男子生徒達だったが、飛鳥はいつの間にかいなくなっていた。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥は陰で困惑したように男子生徒たちの方を覗き込んだが、相手にしたくなかったのでそのまま去る事にした。

 

 そして入れ替わるように彩たちがパスパレメンバー全員がそろっていた。

 

「人が楽しんでる時に、もっと楽しくなる子たちが来ちゃったよ!」

「全くだぜ!」

「オレ達が主人公だった!?」

「うらやましいだろお前らへへーんだ!!」

 

 とまあ、分かりやすいくらいにくずっぷりを発揮したため、千聖はものすごく嫌な顔をした。彩と麻弥は苦笑いしていたが、内心千聖と気持ちは全くで、イヴは困った顔をしていた。

 

日菜「そういやさっき飛鳥くんがこっちに来たような気がするけど、飛鳥くん探そっか」

千聖「そうね」

「いや、待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て」

 

 日菜に至っては完全に眼中にない上に、白けると言っていた飛鳥を探し出そうとしていた。千聖も日菜の意見に賛同して5人で探しに行こうとしたところを男子生徒が止めに入る。

 

千聖「あら、私たち人を探してるの。どいてくださる?」

「いや、ちょっと待ってよ…」

「アイドルでしょ? 特定の人間に対して肩入れは良くないんじゃない?」

「ほら、一丈字だって気を遣ってるんだからさ…」

 

 とまあ、男子生徒たちは媚びるが、

 

日菜「人の事を白けるって言う人にるんってしないの」

 

 日菜は至極当然な事を言うと、男子生徒たちは沈んだ。しかもいつものおちゃらけた様子ではなく、真面目な口調で言い放つので、男子生徒たちへのダメージも大きい。

 

「あの、ちょっと聞いていい?」

千聖「何かしら。私たち忙しいんだけど」

「いや、どうしてそこまでして一丈字の肩を持つわけ? もしかして何か脅されてるとか…?」

千聖「脅す? 一丈字くんが私たちを?」

 

 男子生徒の言葉に千聖が怒りの表情を見せた。

 

千聖「随分失礼な事を言うのね」

「いや、そうじゃなくて…」

 

 千聖が完全に怒ってるので、男子生徒たちが慌てると、一人がある事に気づいた。

 

「そ、そうだ! 仲が良いからパスパレの限定グッズをあげたりとかしてないよね!?」

千聖「そんな訳ないじゃない」

日菜「寧ろ欲しいって言われた事すらないもん」

「え!?」

「欲しいって言ったらくれるの!?」

千聖「勘違いしてるようだけど、彼は私たちにグッズが欲しいってねだった事もないって意味よ。ちゃんと私たちの事考えてくれてるの。誰かさん達と違って」

 

 千聖の言葉に男子生徒たちは更に飛鳥に対してやっかんだ。ただでさえ自分たちは千聖たちとこうやって喋る機会もないのに、後からきて千聖たちと仲良くなった飛鳥が気に入らなかったのだ。

 

「で、でもいいのかなぁ。人気アイドルが特定の男子と仲良くしてて仕事に影響でないの?」

千聖「それじゃあなた達と仲良くする理由もないわね」

 

 千聖がにっこり笑ってそう言うと、男子生徒たちは墓穴を掘ったと苦い顔をした。

 

「そういう事いうんだ」

日菜「アイドルだって文句を言ってもいいと思うんだけど」

千聖「寧ろ今までも被害に遭ってるし、ネットも結構味方してくれるのよ?」

 

 男子生徒が脅しをかけるが、日菜と千聖がブロックをかけた。

 

「けど、万が一これがマスコミとかにバレたらどうするの? 今度こそパスパレは…」

千聖「ダメならもうそれまでよ」

 

 千聖が堂々と言い放つと、男子生徒たちは言葉を失った。

 

千聖「何はともあれ、あなた達の思い通りにならないから。行きましょ」

 

 そう言って千聖は4人を連れてその場を後にすると、男子生徒たちはどうして上手くいかないんだと地団駄を踏んだ。

 

*******************

 

 その頃、飛鳥はと言うと、いつものベンチの近くの草原で横になりながら、空を見上げていた。

 

飛鳥「あー…。空が綺麗だなぁ…」

 

 先ほど男子生徒達から『白ける』と言われ、昔の嫌な思い出を思い出した。

 

飛鳥「どうして自分で努力しねーんだろ…」

 

 飛鳥がそう嘆きながら起き上がり、そのまま教室に帰っていった。

 

**********************

 

 放課後、飛鳥は存在感を消して学校を帰ろうとしたが、パスパレが男子生徒たちに絡まれていた。飛鳥にいちゃもんをつけた男子生徒達とはまた別の人物である。

 

「ねえねえ! 今日オフだって聞いたけど、一緒に遊ばない!?」

「いや、オレ達と!」

「部活も休みだしさ! 遊ぼうよ~」

「せめて写真撮って写真!」

飛鳥「……」

 

 普段パスパレってオフの日何してるんだろうと思いながら、飛鳥は超能力で男子生徒たちを遠ざけてあげると、千聖のみ飛鳥の存在に気づいてアイコンタクトを送った。

 

飛鳥『いつもお疲れ様です』

千聖『いつもありがとう。これからも頼りにしてるわ』

 

 

おしまい

 



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第396話「お風呂に入りたい」

 

 

 それはある日の事だった。

 

「一丈字。バンドやってる子と一緒にお風呂に入った事ある?」

「あー。直接聞きに来るパターンですかー」

 

 飛鳥はいつものように学園生活を送っていたが、突如ヤラカシ達がやってきて飛鳥にこの質問を投げかけた。

 

飛鳥「ないですよ」

「嘘つくんじゃねぇ!!」

「どうせ一緒に風呂入った事あるんだろ!?!」

飛鳥「あったら私の立場とか色々変わってると思うんですけど、その辺については如何ですか?」

「お前の話は聞いていないッ!」

飛鳥「いや、聞きなさいよ」

 

 会話が通じなさそうだなと飛鳥は思ったが、始まってしまったからには最後までちゃんと相手をしようと考えていた。

 

「なあ、どうなんだよ一丈字…」

「お前見たんだろ?」

 

 しつこく絡んでくるヤラカシに、飛鳥のクラスメイト達は困惑していた。

 

飛鳥「あなた方の末路ですか?」

「聞いてねぇよそんな話!!」

飛鳥「恐らくですけど、名前を出した人が出てきそうですね」

「はぁ? 何言ってんのか分かんないんですけど」

「とにかく教えろオラ。ポピパと一緒に風呂に入ったんだろ?」

飛鳥「入った記憶ないんですけど、皆さんはどうですか!?」

 

 飛鳥が廊下の方を見て叫ぶと、ポピパ5人が入ってきたが、案の定有咲が怒っていた。

 

有咲「ねぇよ」

飛鳥「ほら、市ケ谷さんもこう言ってるでしょう」

「いや、絶対嘘だ!!」

有咲「アタシら本人がねーって言ってるのに、なんでウソになるんだよ!」

沙綾「ていうか最近このパターン多くない?」

飛鳥「すべて弦巻家の黒服の皆さんに任せて、私がこの学園を去れば済む話なんでしょうけど…」

たえ「いや、それだったらこのシリーズ終わっちゃうよ」

 

 皆がたえの方を見た。

 

たえ「ドラえもんで言うと、のび太くんの運が良くなって、ドラえもんの力を借りる必要がなくなるようなものだし」

有咲「お、おたえ? 急にどうしたの?」

 

 たえの発言に有咲が思わず困惑しながらツッコミを入れた。

 

たえ「それにしてもあなた達も、一丈字くんを困らせたらダメだよ」

「いや、もうだってさぁ…」

「それだったらオレ達と一緒に風呂に入ってくれるのか!?」

有咲「そんな訳ねぇだろ!!」

たえ「有咲。水着着用で入れる温泉があるらしいけど…」

有咲「いや、こいつらと一緒に風呂なんか入っちまったら、もう何から何まで負けだよ」

 

 たえの発言に対して有咲がかたくなに否定した。

 

有咲「大体お前らも懲りねーな! いくら一丈字を蹴落としたところで、アタシ達の気持ちは変わんねーよ!」

香澄「というか前から思ったんだけど、有咲がめっちゃカッコいい」

有咲「お前も余計な事言うな!!/////」

 

 香澄が有咲をほめると、有咲が頬を染めてツッコミを入れた。

 

たえ「そうだよね。びしっと言ってくれるし…」

りみ「そ、そうだね…」

沙綾「ある意味有咲を目立たせるために…」

有咲「…ああんもう一丈字!! お前何とかしろ!!/////」

 

 そう言って有咲が飛鳥を表に立たせた。

 

飛鳥「これで理解して頂けましたかね」

「…まあ、ポピパと一緒に風呂に入っていないことは分かった」

飛鳥「あの、質問宜しいですか」

「何だよ」

飛鳥「あなた方が一番やりたい事は何ですか?」

「そんなの決まってるだろ! バンドやってる子達と風呂に入りたいんだよ!」

「裸が見たいんだよ!」

「体も触りたいんだよ!」

「あとできればそれ以上の事も…」

飛鳥「気は確かか!!」

 

 男子生徒たちの只ならぬ欲望に飛鳥がツッコミを入れた。案の定有咲や沙綾は嫌な顔をしているし、香澄、りみは苦笑いしていて、たえは無表情だった。

 

「お前は主人公なんだからやってるんだろ!?」

「そうだって言ってくれ! そうすればオレ達も少しは気が楽になる!」

飛鳥「私は凄く気が重いんですけど…」

 

 飛鳥はげんなりしていた。

 

香澄「あの、本当に一緒にお風呂入ってないよ?」

有咲「ていうかなんで一丈字と一緒に風呂に入らなきゃいけねーんだよ!」

飛鳥「市ケ谷さん」

有咲「な、なんだよ…」

 

 飛鳥が有咲を見つめた。

 

飛鳥「もっと言ってやってください」

有咲「は、は?」

たえ「有咲が飛鳥くんと一緒にお風呂に入るのをものすごく嫌がれば、退いてくれるって作戦なんだね」

飛鳥「まあ、そんな所ですね」

有咲「い、いや普通に考えて同級生の男子と一緒に風呂に入るとかありえねーだろ!」

飛鳥「市ケ谷さん。そこはもう私だけで大丈夫です。とにかく私と混浴したくないという事を、あの人たちにお伝えください。そうすれば何とかなる筈です」

沙綾「とにかく、あいつらは一丈字くんが私たちから嫌われればいいって事?」

 

 沙綾の言葉に飛鳥は視線をそらした。

 

香澄「そ、そんなの出来ないよ!!」

飛鳥「えーと…。戸山さんがこう仰っていただけるので、なるべく言わないでほしかったのですが…」

 

 飛鳥は一息ついた。

 

飛鳥「分かりました。話の続きは私とあなた方で行いましょうか」

香澄「ダメ。私も行く」

 

 飛鳥が香澄を見つめると、香澄がジト目で飛鳥を見つめた。

 

たえ「この際だから本当に混浴する?」

 

 たえの発言に皆が驚いた。

 

「え!? マジ!?」

「本当に混浴してくれるの!?」

たえ「うん。するよ?」

有咲「いや、ちょ、おたえ!!/////」

沙綾「待って有咲…」

 

 止めようとする有咲だったが、沙綾が止めた。

 

有咲「な、なんだよ!」

沙綾「いいから…」

 

 沙綾が黒い笑みを浮かべると、有咲が何か嫌な予感がした。

 

「それだったら気が早い!!」

「いつ頃にする!? 今度の休み!? 明後日! 明日! 今日!?」

 

 完全に欲望をむき出しにしている男子生徒たちに、大半がドン引きしていた。

 

たえ「そうだなー…。今日の放課後にしようかな」

「ウォオオオオオオオオオオ!!」

たえ「そういう訳だから飛鳥くん。一緒に入ろうね♡」

「は?」

 

 たえの発言に男子生徒たちが固まると、沙綾が噴出して、有咲が唖然としていた。

 

「え? い、一緒に風呂に入るって…」

たえ「何って。飛鳥くんと温水プールに行くんだよ? あそこは水着着用OKの温泉があるの」

 

 たえの発言に空気が止まった。そして男子生徒たちは完全に自分たちと勘違いしていた上に、欲望も完全に丸出しだったので、完全に赤っ恥だった。沙綾にも笑われているので、大ダメージだった。

 

「うわ~ん!! 恥かかされた~!!!!」

「でもこんなプレイも悪くない!!」

「悪くない訳ないだろ!!」

「ポピパがダメなら他のグループ狙ってやる~!!!」

 

 と、男子生徒たち…ヤラカシが退散していった。

 

飛鳥(もうこれ…オレじゃなくても良いんじゃないかな?)

 

 たえの天然ボケのお陰で救われた飛鳥だったが、それと同時に自分が学園にいる存在意義について疑問を感じていた。だが、助かったのでたえにお礼を言う事にした。

 

飛鳥「ありがとうございました花園さん。助かりました」

たえ「ううん。気にしないで」

有咲「それにしてもおたえの天然ボケが役に立つときが来るなんてなー」

沙綾「温水プールっていう手は思いつかなかったな」

 

 そう言って皆がたえをほめていたが、

 

香澄「あ、そうだ! 折角だからこのまま温水プール行こうよ! 勿論飛鳥くんも一緒に!」

飛鳥・沙綾・有咲「え?」

 

 香澄の言葉に3人が驚いた。

 

たえ「え? 最初からそのつもりで言ったんだけど…」

有咲「あ、あの。おたえ?」

たえ「あ、ちなみに水着のレンタルOKだから…」

有咲「そんな話は聞いてねぇよ!!」

飛鳥「いや、そこまでしてもらわなくて結構ですよ…?」

 

 飛鳥が苦笑いしたが、たえの態度は変わらなかった。

 

たえ「もうこの際だから一緒にお風呂入って、あいつらに見せつけちゃおう」

飛鳥「地元帰れるかなー…」

 

 とまあ、たえの強引な押しで温水プールに行くことになりましたとさ。

 

飛鳥「私色々あってダイビングスーツなんですよね」

香澄「すごーい!」

 

 水着を着ているとはいえ、本当に湯船につかっているポピパと飛鳥であった。

 

たえ「はー…極楽極楽…」

有咲(凄いのかすごくないのか分かんねぇ…/////)

 

 ちなみに有咲は水着着用とはいえ、恥ずかしがっていた。

 

 

おしまい

 



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第397話「全校大掃除からの身辺調査!」

 

 

 それはある日の事。バンドリ学園で校内清掃が行われることになったのだが…。

 

飛鳥(学年混合…)

 

 何故か学年混合で班編成を行う事になったのだ。早い話、陽キャ軍団が権力を悪用して、自分とバンドガールを侍らせようという作戦だった。

 

 当然くじ引きと称していたが完全に出来レースであり、陽キャ軍団のリーダー格は確実に美少女たちと当たるように仕向けていたのだ。そしていつも一緒にいる飛鳥には自分の取り巻き達と組ませてある事ない事仕事を押し付けて、冤罪をかけようとしていたのだ。

 

飛鳥(いかにもそんな面してるなぁ…)

 

 自分が取り巻き達と当たるのを今か今かと待ちわびていて、遂に抽選会が行われていた。

千聖やモカも思惑に気づいており、3人がアイコンタクトを取ると、飛鳥は超能力で陽キャ軍団の思惑を打ち砕くことにした。

 

 そして陽キャ軍団のリーダー格が、飛鳥と組むはずだった取り巻き達とペアを組み、リーダー格が組むはずだった蘭・薫・リサ・日菜・麻弥、そして別の女子生徒と組むこととなった。

 

「な…!」

 

 当然予想してたことと違う事が発生したので、リーダー格のAは唖然としていて、取り巻き達も唖然としていた。それに対しモカが噴き出すと、千聖もくすくす笑っていて、飛鳥は平然としていた。

 

 リーダー格のAはすぐに苦笑いした。

 

A「ど、どうやらくじで不正があったようだ…」

 

 と、やり直ししようとしたが、当然ブーイングが凄かった。

 

「そんな訳ねーだろー!!」

「そんなの汚いぞー!!」

「ちょーっと顔が良いからって調子に乗るな!!」

「お前なんか2年生の瀬田の足元にも及ばねーんだよ!!」

「そうよそうよ!!」

 

 薫の名前を出すことによって、女子たちの賛同を得ることにした男子生徒軍団。今回は珍しく活躍している。

 

A(く、くそう…! 陰キャ共がいい気になりやがって…!)

 

 このAという男は顔は確かに良かったものの、性格はクソ下水煮込みである。こんな奴はもう2秒でやられる。

 

飛鳥(まあ、これで後は仲間割れするのを待つだけだな…)

 

 飛鳥は自分の番が来るのを待っていたが…。

 

「どーせ日菜ちゃん達とペアを組むつもりだったんだろー!」

 

 というヤジに対してAは

 

A「い、いったい何のことかな?」

「しらばっくれるな! パスパレが2人もいる時点でおかしいんだよ!」

「しかも2組の生徒ばっかりだし!」

「1年生の美竹さんを入れて誤魔化せると思ったのか!?」

「薫様を独り占めするなんてサイテー!!」

 

 とまあ、日菜たちと同じ班になれなかったばかりか、皆から批判を食らって、Aはしくじった取り巻き達を睨みつけたが、取り巻き達も何が起きてるか分からなかった。すると飛鳥は早く終わらせるように教諭を操作した。

 

「えー。まだ他の班の発表がおわってないので、進めるように…」

 

 こうしてこの後普通に班きめが行われたが、飛鳥の班はいたって普通の班だった。大人しめの男子2人と、地味めな女子3人だった。

 

飛鳥「よろしくお願いします」

「よろしくね…」

 

 飛鳥は何食わぬ顔で同じ班の生徒に挨拶をしていた。だが、これで終わるわけがなく…。

 

**************************

 

 放課後、飛鳥が一人で歩いていると…。

 

「やい、一丈字!」

 

 Aたちが現れて飛鳥に突っかかろうとしたが、飛鳥は超能力を使って存在感を消し、そのまま通過した。

 

A「ちょっと面貸…って、いない!?」

B「どこ行ったんだ!?」

A「くそう! 確かあいつの家はこの辺の近くだったよな!! 何が何でも引っ張り出してやる!!」

 

 そう言ってA達は飛鳥の住むマンションに押しかけて中に入ろうとしたが、警備員が容赦なく通報して、そのまま警察沙汰になった。そしてそのことを知った生徒たちはあきれ果て、すっかりA達から遠ざかったのだ。

 

 で、そのついでに男子生徒たちの計画が全て露呈されたという…。

 

蘭「本当に最低」

リサ「あはははは…でも、ここまでするかねぇ…」

薫「人に迷惑をかけるのは感心しないな」

 

 カフェテリアで蘭、リサ、薫、日菜、麻弥が話をしていた。蘭はへそを曲げていて、リサは苦笑いしつつも内心蘭と似たような気持だった。薫は毅然とした態度で言い放った。

 

日菜「あの人たち、女子から人気はあったみたいだけど、なんかるんってしないんだよねー」

麻弥「まあ…。ジブンは元々ああいうタイプ苦手なんです…」

 

 日菜と麻弥もA達に対してあまり良い印象は持っていなかった。

 

蘭「あいつら自分の事かっこいいと思ってるから、日菜さん達と釣り合うと本気で思ってるんですよ」

日菜「アタシ達だけじゃなくて、蘭ちゃんとも釣り合うと思ってたんじゃないかなー。るんってするし」

蘭「そ、そんな事は…/////」

 

 日菜の言葉に蘭が照れて、視線をそらした。

 

麻弥「それはそうと…。また一丈字さんが絡まれたそうですね」

日菜「あ、そうそう。それでずっと思ってたんだけどさ。飛鳥くんって本当に不思議な子だよね」

 

 日菜の言葉に蘭たちは「あんたもだけどな」と思っていたが、日菜の言う通り、飛鳥は結構謎が多いため、気になっていた。

 

麻弥「…そういえば、一丈字さんがこの学校に来てからなんか変わった気がします」

薫「そういえば最近千聖とも親しげに話すようになったね。彼女はそういうタイプではなかったのだけど」

日菜「それ! 一番気になってたんだよ。千聖ちゃんと仲が良いの」

 

 日菜が薫に対して指をさすと、蘭も何か考えていた。

 

蘭「そういやモカとも仲が良いんですよ…」

日菜「うーん…。これは一度ちゃんと調べた方が良さそうだね」

麻弥「ひ、日菜さん…いくらなんでもそれは」

日菜「アタシ達ですら仲良くなるのに時間がかかったのに、飛鳥くんとは割とすぐに仲良くなった気がするんだよね」

麻弥「た、確かにそうですけどもう千聖さんは昔の…」

日菜「よーし! こうなったら調べるよ!」

 

 とまあ、日菜の強引なリーダーシップにより、飛鳥への身辺調査が行われることになった。

 

 その結果…。

 

「一丈字くん。申し訳ないんだけど、掃除する場所とメンバー代わって。日菜ちゃん達と同じ班ね」

飛鳥「」

 

 日菜の裏工作によって同じ班に変更させられてしまった。どうなる飛鳥!!

 

 

飛鳥(ていうか…一生徒の言葉で変えられるものなの?)

 

 

おしまい

 



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第398話「全校大掃除!」

 

 日菜の裏工作により、急遽掃除する場所とメンバーを変えられてしまった飛鳥。果たして運命や如何に!!

 

*************************

 

 全校校内清掃・当日

 

飛鳥「確か場所ここだったよな…」

 

 当日になって教師から場所とメンバーの交代を言い渡された飛鳥は嫌な予感がしていた。というか嫌な予感がしなかった。

 

飛鳥(正体がバレかけているとしか思えないな…。変えた本人が日菜先輩という事は…)

 

 バンドリ学園が誇る才能マンならぬ才能ガール・氷川日菜の存在が飛鳥に緊張感を走らせた。

 

飛鳥(日菜先輩は自然に話しかけてるように見えて、結構こっちの動向を探る傾向があるからな…。よし)

 

 こうして飛鳥は日菜たちと合流した。

 

日菜「あ! 来た来た! 飛鳥くーん!!」

 

 飛鳥が集合場所に来ると、すでに全員来ていた。

 

飛鳥「お待たせしました…」

リサ「ごめんねー。話は聞いてた? 日菜がどうしても飛鳥くんとペアを組みたいって言うもんだから…」

 

 飛鳥の不服そうな表情を見て、リサは苦笑いしながら謝ってフォローを入れた。

 

飛鳥「というか、一生徒の言葉で変えられるものなのですか…?」

日菜「先生に直接おねだりしたら、上手くいったよー?」

飛鳥「なんかそれはそれで学園の危機が訪れそうな気もするのですが」

麻弥「ごめんなさい。もうさせませんので…」

 

 日菜が男性教諭におねだりして、班を無理やり変えさせたのだ。まあ、陽キャ軍団が私利私欲で班決めをしていて、日菜たちも一応被害者という立場にある為、こうなっても陽キャ軍団への制裁にしかならなかったのだ。

 

薫「子犬くんと掃除が出来て嬉しいよ…」

飛鳥「子犬くん…」

 

 薫の発言に飛鳥が困惑したが、脳裏に千聖の言葉が思い浮かんだ。

 

千聖『あまりにも変な事言ってたら『かおちゃん』って呼んでみて頂戴。許可するわ』

 

飛鳥「…あ、はい。光栄です」

薫「ちょっと待ちたまえ。千聖に何か言われただろう」

飛鳥「いえ、それよりもはやく掃除を始めましょう」

 

 飛鳥は思いっきり掃除を進めようとしたので、日菜がすかさず話しかけた。

 

日菜「そういえば飛鳥くんって、千聖ちゃんと随分仲良くなったよね」

飛鳥「え、ええ…。お陰様で…」

日菜「どうしてそんなに仲良くなれたの?」

飛鳥「仲良くなれたのかどうかは分かりませんが…」

 

 飛鳥が考えると、日菜たちが飛鳥をじっと見つめていた。

 

飛鳥「少なくとも松原先輩がかかわってる事は確かですね」

日菜「花音ちゃん?」

飛鳥「ええ。ずっと前に松原先輩の私物が盗まれたじゃないですか」

リサ「あー…そういやそんな事あったねぇ」

飛鳥「で、私が危うく犯人にされかけて、真犯人を見つけ出して私物も松原先輩に返したんですね。その時にちょっと話したことは覚えてます」

日菜「どんな話?」

飛鳥「あの事件が起きる前から、色々敵を作ってるというお話です」

 

 飛鳥が笑いながら話をすると、日菜と薫以外は沈んでいた。

 

麻弥「…本当にご苦労様です」

飛鳥「いえいえ」

 

 そんなこんなで掃除を進めることになった一同。担当場所はグラウンドの横の森林エリアである…。茂みが伸び放題になっている所だが…。

 

リサ「そういやあそこ、あの井戸がある場所じゃ…」

飛鳥「井戸?」

リサ「うん。飛鳥くんは転校してきたから知らないと思うけど、あそこの井戸はバンドリ学園の七不思議と言われてて、覗き込むと引きずり込まれるって噂があるの…」

飛鳥「そうなんですね」

 

 リサの言葉に飛鳥が普通に返事をすると、日菜たちは飛鳥の事を怪しいと思っていた。

 

日菜(やっぱり。怖がるか、明るく振舞うかの2択なのに、そういうリアクションする人ってあまりいないよ…)

麻弥(なんか…慣れてる感ありますよね…)

飛鳥「……」

 

 飛鳥は日菜たちの視線を感じて、彼女たちが何を考えているのか手に取るように理解した。

 

飛鳥(普通そこまで考える人っていないと思うけどなぁ…)

 

 自分の事を完全に疑っているからなのか、疑心暗鬼になる日菜たちを見て飛鳥は困り果てていた。

 

********************

 

 そして森林エリアでの掃除が始まったが、飛鳥はてきぱきと仕事をやっていたが、仕事のスピードがあまりにも早く、麻弥たちが驚きを隠せなかった。

 

麻弥(は、早い…!!)

蘭(儚い…)

リサ(か、考えれば考えるほど分からない…。飛鳥くんって本当に何者なの…?)

 

 そして飛鳥は一通り仕事を終える。

 

飛鳥「大和先輩。こちらの掃除は片付きました」

麻弥「あ、ありがとうございます! にしても…だいぶ早いですねぇ…」

飛鳥「昔からこういう事はやってきたもので」

 

 飛鳥がそう言い放つと、余計に怪しんでいた。

 

飛鳥(あー…こりゃ完全に怪しんでるな。どっかで改ざんでもするか)

 

 そう考えた飛鳥は隙を見て記憶を改ざんすることを決意した。

 

リサ「ま、まあ! 終わった事だし早く草持っていこう!」

蘭「そうしましょう!」

 

 リサと蘭が何やら急ごうとしていた。

 

日菜「もー。2人ともそんなに怖がらなくていいのにー」

麻弥「まあ、この辺は日があたりませんからねー」

リサ「そ、それもそうだけど、やっぱり井戸が不気味で…」

薫「全く、なんて罪づくりな井戸なんだ。ハハハハ」

 

 薫が一番井戸から離れていて、今度は薫に視線が集まった。

 

薫「ど…どうしたのかな?」

麻弥「いや、美竹さんとリサさんは分かったのですが、どうして薫さんもそんなに離れてるんですか?」

日菜「あ、分かったー。さては薫くんもお化け怖いんでしょー」

薫「何を言っているんだ日菜。私は2人が怯えないように傍にいただけの事さ…」

 

 薫がふっと笑ったが内心は怖がっていた。というか超ビビりである。すると飛鳥は普通に井戸を覗き込んだ。

 

リサ「ちょ、飛鳥くん!!?」

飛鳥「何もないですよ。懐中電灯をつけて中の様子も探ってみましたが、何も…」

 

 その時、飛鳥は何かを感知した。

 

リサ「何も…なに!?」

蘭「途中で会話止めるのやめて!!」

薫「な、なにがあったんだ!?」

 

 そう言ってリサ達が慌てていると、日菜は確信した。飛鳥はやはりただ者ではないと。

 

麻弥「ど、どうされたんですか!?」

飛鳥「…いや、なんかメモ帳みたいなのが落ちてました」

「メモ帳?」

飛鳥「ちょっと取りに行ってきますね」

 

 そう言って飛鳥が井戸の中に入っていった。

 

リサ「飛鳥くん!!」

麻弥「危ないっすよ!!!」

日菜「……」

 

 そして飛鳥がメモ帳を取り、上に上がろうとしたが、井戸の中から飛鳥の手だけ出てきた状態になってしまい…。

 

リサ・蘭「きゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 リサと蘭が絶叫してそのまま逃げだしてしまった。

 

薫「ま、待ちたまえ!! 待ちたまえよ!!」

 

 薫もどさくさに紛れて逃げ出した。

 

飛鳥「…瀬田先輩いますか?」

麻弥「逃げちゃいましたね…」

飛鳥「そうですか…。練習用のノートがここに落ちてたので、後で渡して貰っていいですか…」

麻弥「わ、分かりました…」

 

 日菜は飛鳥の事をじーっと見つめていた。

 

飛鳥「それはそうと早くここを出ましょう。何もありませんでした…」

日菜「う、うん…」

 

 こうして3人もその場を移動したが、報告しに行くときに日菜と麻弥が前になったので飛鳥は後ろから超能力を仕掛けて、正体に気づきかけた事に関する記憶を改ざんした。

 

飛鳥(危ないところだった…)

 

 だが、ここからが問題だという事に、まだ誰も知る由がなかった…。

 

 

つづく

 



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第399話「危機は何度でも訪れる」

 

 大掃除終了後、事件が起きた。飛鳥が七不思議を利用としてリサ達を驚かせたという噂が学校中に広まってしまったのだ。

 

 そのせいでアンチ達からは総スカンを食らったわけだが…。

 

飛鳥「元から総スカンを食らってるからどうって事ないんだけどさ」

 

 飛鳥はどうして人はこうも噂を真に受けやすいんだろうと思いながら、河川敷で黄昏ていた。今回驚かせたメンバーの中に薫もいた為、女子生徒達からも総スカンを食らっていた。ちなみに薫のファンであるりみとひまりに関してだが、彼女たちも当初怒っていたものの、モカが冷静に対処した事で事なきを得た。

 

飛鳥「まあ、これで暫くは日菜先輩たちに近づけそうにないな…」

 

 そう言って飛鳥が立ち上がって帰ろうとすると、何やら悪寒を感じていた。

 

飛鳥(な、なんだ!?)

 

 飛鳥は悪寒がする方へ近づくと、他校の女子生徒が複数の男に囲まれて、車に連れて行かれそうになっていて、飛鳥が目を光らせて連れ込もうとしている車を故障させた。電磁パルスを使ったのである。

 

飛鳥(次はあの女子生徒を解放させないと…)

 

 飛鳥が超能力を使っていつも通り男たちを腹痛にさせようとしたが、

 

「飛鳥くーん!!」

 

 と、日菜が声をかけてきたが、飛鳥はお構いなしに超能力を使って男たちを腹痛にさせた。

 

「ぎゃああああああああああああああ!!!」

「は、腹が!! 腹がァ!!」

「う、うんこ…」

 

「オオオオオオオオオオオオオ…」

 

 男たちは激しい便意に襲われて紗夜を離し、車に乗り込んでトイレのある場所まで移動しようとしたが、飛鳥が電磁パルスで車を故障させたため、動かなかった。

 

「く、くそう! なんで動かないんだ!!」

「おい、嘘だろ…?」

「まさかここで仲良く…」

「いやあああああああああああああああああああ!!!」

 

 と、悲鳴を上げていた。

 

飛鳥「日菜先輩。一緒に来てもらえますか」

日菜「え?」

飛鳥「あそこに女子生徒が襲われてるんですよ」

日菜「わ、分かった!」

 

 そう言って日菜と一緒に女子生徒の所に移動したが、飛鳥は日菜の後ろにいて、そこから自分を疑う心を消したのだ。

 

飛鳥(オレの事はどう思ってくれたって良い。この力で皆を守る。それが『能力者』としてのオレの役目だ!)

 

********************

 

 そして飛鳥は日菜に女子生徒の介抱を依頼し、自身は警察に通報して女子生徒を誘拐しようとした男たちの逮捕と、女子生徒の保護を依頼した。男たちは便意をどうにかすることで頭がいっぱいになり、飛鳥達の存在に気づかなかったのだ。

 

 その結果、男たちは逮捕され、女子生徒は無事に保護されたのだが…。

 

「くせえ!!」

「せめて処理させてくれ~!!!」

「脱糞して逮捕とか…」

「人生終わった…」

 

 結局男たちは漏らしてしまい、その状態で逮捕されて警察官もすごく嫌そうな顔をしていた。それを見ていた飛鳥は困惑していた。

 

日菜「くさーい」

「良く見たらパスパレの氷川日菜もおる!!」

「やっぱり悪い事なんてするもんじゃないわ~!!!!」

 

 アイドルにまで臭いと言われて男たちは絶望していた。ちなみに飛鳥の事は良く見えていなかった。

 

 結果的に少女を救い出したとして、飛鳥と日菜はともに表彰されることとなった。飛鳥としては何とか改ざんできないか考えたが、目撃者がいた為、どうする事も出来なかった。

 

********

 

 そして学園でも飛鳥と日菜は表彰されることになり、飛鳥はもう何も言わずに教師から表彰されていた。飛鳥とは対照的に日菜は誇らしげだった。

 

麻弥「ま、まさか一丈字さんと日菜さんが…」

薫「儚い…」

リサ「やっぱり飛鳥くん…。ただ者じゃないんじゃ…」

蘭「……」

 

千聖(飛鳥くん…)

モカ(やっぱりこうなっちゃうよねー…)

こころ「とても凄いわ!」

 

 千聖・モカは絶対バレるだろうなと思う中、こころだけは能天気だった。

 

**********

 

 全校集会が終わった後、生徒たちの飛鳥の見る目が変わった。というかコロコロ変わる為、飛鳥はもう何も言う事はなかった。

 

「おい! 一丈字!!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥が振り向くと、そこにはAたちの姿があった。今度は超能力でごまかしたりせずに、相手することにした。

 

飛鳥「何か御用でしょうか」

A「ちょっと面貸せ」

飛鳥「面?」

 

 飛鳥がそう言うと、Aの取り巻き達が飛鳥を連れて行こうと近づいたが、当然飛鳥はそのつもりはないため、即座にダッシュした。

 

「なっ!」

A「待てコラァ!!!!」

 

 こうして飛鳥とAたちの追いかけっこが始まった。

 

 2年2組の教室では日菜がクラスメイト達に囲まれていた。

 

日菜「やっぱり飛鳥くんは凄いなぁ…」

麻弥「なんか…日菜さんの言っていたことがなんとなくわかってきました」

薫「ミステリアスだね…彼は」

リサ「そう言われると…」

友希那「……」

 

 そんな時だった。

 

「おい! 一丈字がAたちに追いかけられてるぞ!」

日菜「えっ!?」

 

 

*******************

 

飛鳥「……」

「逃がさねーぞコラァ!!」

 

 飛鳥が取り巻き達を軽々とかわしていき、そのまま逃亡を図る。だが、その目は完全に能力者の目をしており、表情も好戦的だった。

 

リサ「す、すごい…! Aくん達が完全に歯が立ってないよ…!?」

 

 リサがそう言うと、日菜がすかさず教室を飛び出した。

 

麻弥「ひ、日菜さん!!」

 

 麻弥がそう呼びかけると、彼女も日菜の後を追いかけた。

 

*******

 

A「く、くそう!! 捕まりやがれクソ野郎が!!」

 

 Aも飛鳥を捕まえようとしたが、飛鳥の圧倒的なスピードについてこれなかった。そして取り巻き達は体力の限界を感じて、その場に座り込んだ。

 

「だ、だめだ…」

「あいつ速すぎる…」

A「チッ! 何お前らもへばってんだよ!!」

 

 Aが自暴自棄になって周りに当たり散らしていた。

 

A「くそう…絶対あいつだ…あいつが余計な事しなければ今頃オレが…」

 

 すると飛鳥は立ち止まってAの方を見つめていた。

 

A「…どこまでも余裕そうな面しやがって」

飛鳥「……!!」

A「そういう所がむかつくんだよてめーはぁ!!!!」

 

 Aがそう怒鳴ると、外まで来ていた日菜が思わず立ち止まるも、飛鳥は臆することなく、Aを見つめ続けた。

 

 

つづく

 



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第400話「飛鳥は明日も戦います」

 

 

 自暴自棄になったAは思いのたけを飛鳥にぶつけた。日菜、他の生徒たちが見守る中、飛鳥が出した言葉とは…。

 

**********************

 

A「そうやって無能のふりをして、ずっとオレ達を見下してたんだろ!! 本当は何でもできる癖に、出来ないふりをしてオレ達の事を馬鹿にしてたんだろ!! だからオレはてめーが許せねぇんだよ!! 馬鹿にしてやがる!!」

 

 そう言ってAがずっと叫び続けていたが。飛鳥は呆れたようにAを見つめた。

 

飛鳥「いや、知らんがな」

 

 飛鳥は一言でバッサリと片づけた。

 

飛鳥「あなたが私の事をどう思ってくれても構いませんよ。けど、人の事を追い掛け回したり、いちゃもんをつけたり、そういう事をしていい理由にはなりませんよね?」

 

 飛鳥が思ったほかハッキリと言い始めたので、皆が呆然としていた。

 

飛鳥「そもそもズルして日菜さん達と同じ班になろうとした人が人に対してそんな事言う資格はないと思うんですが」

A「う、うるさい!! お前は何もしなくても日菜ちゃん達と一緒にいられるし、主役だから…」

飛鳥「そんなの理由になりませんよ?」

 

 飛鳥はまたズバっと言い放った。

 

飛鳥「じゃあ主役として言わせてもらいますけど、なんであなたは正々堂々と勝負をしようとしないんですか?」

A「!」

飛鳥「どうして汚い手を使うんですか? 周りに汚い事ばかりやらせてどうして自分は高みの見物なんですか?」

 

 飛鳥の質問攻めにAは何とも言えなかった。

 

飛鳥「主役かどうか以前に、そんな汚い事ばかりしてる奴に女性がなびくわけないだろう! そんな奴に自分の人生を預けられるか!!」

 

 飛鳥の発言に皆が驚いた。

 

飛鳥「それから、あんたは主役が楽しなくても良い思いを出来るって思ってるかもしれないけど、そんな事ない! 人より多く理不尽な目には逢うし、助けてほしい時に誰も助けてくれないし、正直言って仲間のせいでかけなくてもいい苦労を懸けなきゃいけなくなる。大変だぜ。皆の事見ないといけないんだ。そういう事を乗り越えて人は初めて見てくれるんだぜ」

 

 飛鳥は完全に熱が入ってAに説教をしていた。

 

飛鳥「自分では何もせずに楽しようとしてる奴は幸せになれないよ。理由は簡単だ。世間はそういう奴に牙をむくんだ。本当に日菜先輩達と仲良くなりたいなら、振り向いてもらえるように努力しな」

 

 そう言って飛鳥は背を振り向いた。

 

飛鳥「アンタ達が何を言おうがね。オレはもう前を向いて歩いていくよ。立ち止まってられないからね」

 

 そう言い残して飛鳥はその場を後にすると、Aたちは何も言えずそのまま立ち尽くしていた。

 

飛鳥(あー…言いたい事言えてすっきりしたけど、多分このシリーズ打ち切りだな…)

 

 ある意味超能力者としてばらしてしまったようなものだし、飛鳥はもう自暴自棄になっていた。そして日菜と鉢合わせした。

 

飛鳥「まあ、そういう事ですので。お互い頑張りましょうね」

 

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

******************:::

 

 放課後

 

モカ「完全にやっちゃったねー」

飛鳥「全くだぜ…」

 

 いつもの中庭に飛鳥・モカ・こころ・千聖の4人がいた。

 

千聖「迫真の演技…といったらアレだけど、完全に役者顔向けの気迫ね」

飛鳥「よしてくださいよ」

モカ「でも今までで一番カッコよかったような気がするよ~。男らしくて」

飛鳥「ありがとう」

 

 飛鳥は皮肉気味に返事した。

 

飛鳥「思い切りメタ発言もしたし、これで打ち切りかな…」

こころ「そんなの寂しいわよ!」

モカ「いやあ、打ち切りになってもまたなんか再編成とかするんじゃなーい?」

千聖「そうよ。一応うちプロジェクトが7周年で、ガルパが5周年なのよ?」

飛鳥「まあ、確かにそうなんですがね…」

 

 その時だった。

 

「探したよ。飛鳥くん」

 

 日菜が現れると、飛鳥達は普通に日菜を見ていた。

 

飛鳥「これはこれは氷川先輩。どうされました?」

日菜「やっぱりね。アタシ思ったんだ」

飛鳥「え?」

日菜「飛鳥くん…物凄くるんってするって!」

 

 日菜の言葉に飛鳥は困惑した。

 

飛鳥「…どういう事ですか?」

千聖「興味を持たれてしまったようね…」

日菜「いやー。Aくん達にあそこまで堂々と言えるのもそうだったけど、掃除のときも結構気も座っててさ。本当に凄いなーって思ったんだ」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 日菜の発言を聞いて、飛鳥はとてつもなく嫌な予感がしていた。

 

日菜「飛鳥くんってさ…」

飛鳥「……」

 

 日菜が笑みを浮かべた。

 

日菜「エスパーだよね」

 

 日菜の発言に空気が止まると、飛鳥は何を言おうか考え、こころが変な事をしゃべらないように細工をした。

 

飛鳥「良く言われるのですが、違います」

日菜「そうなの? でもね千聖ちゃん。千聖ちゃんには申し訳ないんだけど…」

千聖「あら、どうしたの?」

 

 日菜の言葉に千聖も演技をしていたが、

 

日菜「ごめんね。スマホ見ちゃった」

千聖「は、はぁ!!? それじゃ最初から分かってて…」

 

 日菜の言葉に千聖が慌ててぼろを出してしまったが、日菜の後ろにある人物が現れて日菜の記憶を消し、そのまま退場させた。

 

「!!」

 

 古堂和哉である。

 

飛鳥「か、和哉さん!」

和哉「久しぶりだな」

 

 和哉の登場に千聖・モカも驚いていた。

 

こころ「和哉! 今日は一体どうしたのかしら!?」

和哉「こっちで仕事があって、ついでに顔を見に来たという訳だ」

 

 和哉の登場に千聖は困惑していた。

 

和哉「危うくバレる所だったな」

千聖「ご、ごめんなさい…」

和哉「報酬は既に貰っている。そいつを裏切る行為をしなければ何も言わん」

 

 和哉が飛鳥を見つめていた。

 

和哉「随分東京での生活を満喫しているようだな」

飛鳥「…もしかして、戻る必要が出来ましたか?」

和哉「その逆だ。お前には暫くここにいて貰う」

「!」

 

 和哉の発言に飛鳥達が驚いた。

 

和哉「何かと人手不足だからな。この世界も」

飛鳥「……」

和哉「だが、時間が出来たらまた島に戻ってくるがいい」

飛鳥「わ、分かりました…」

和哉「それではな」

 

 そう言って和哉は消えると、飛鳥達は呆然と見つめていた。

 

************************

 

 焼肉屋

 

千聖「ごめんなさい…私としたことが…」

飛鳥「いえ…。それは大丈夫なのですが…」

 

 自分のミスで正体がバレそうになってしまい、千聖はとてつもなく落ち込んでいた。

 

モカ「それにしても和哉さん…相変わらず風格があるというかなんというか…」

 

 モカは和哉の顔の怖さに辟易していた。もしもこれが蘭やひまり、巴だったら泣いて逃げ回っていただろうと考えていた。

 

飛鳥「…にしても、日菜先輩にバレなかったのは幸いでしたね」

 

 思った事を正直に話してしまう日菜の性格を知っていたため、彼女には何とか正体はバレたくなかった飛鳥であった。

 

千聖「まだまだ女優として未熟だわ…。頑張らないと…!」

 

 本当にどうなるんだろうと思いながら、飛鳥は静かに焼肉を食べた…。

 

飛鳥「えー…お陰様で400回目を迎えました。また次回もよろしくお願いします…。それから紗夜先輩、日菜先輩。お誕生日おめでとうございます」

 

 

おしまい

 



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第405話「彩、怒る」

 

 

 それはある日の事、彩が事務所で他のメンバー4人に対して正座をさせており、飛鳥は困惑した様子でそれを見守っていた。

 

彩「みんな。これはどういう事かな?」

日菜「いやー…それは、その…」

彩「私たちアイドルだよね? そうでしょ? 千聖ちゃん」

千聖「そ、そうね…」

 

 いつもは甘いものを隠れて食べては千聖に説教される彩だったが、今回は立場が逆で彩が黒い笑みを浮かべて千聖に説教していた。

 

彩「麻弥ちゃんもイヴちゃんも…。ふざけるにしてはもうちょっと判別できなかったのかな?」

麻弥「も、申し訳ありません…」

イヴ「ごめんなさい…」

 

 基本的に怒られることもなければ、自分にも優しい麻弥やイヴにも容赦がない彩だった。というのも…。

 

彩「一丈字くんに対して何セクハラしてんの!!!」

 

 簡単にまとめると日菜が飛鳥を脱がそうとしたのだった。理由は簡単でパスパレは基本的に女子に囲まれていて、男子に触れる機会はあまりなかったのだ。まあ、同じ学校に通っている男子たちに結構言い寄られるのだが、それはカウントされていない。

 

 で、当初は日菜の悪ふざけだけだったのだが、千聖も思ったほか乗り出して、事もあろうに麻弥やイヴも興味があったのか、悪ふざけに乗った。

 

日菜「いやー…飛鳥くんは信用できるからでありまして…」

彩「普段から同じクラスの子や別のクラスの子に対しては断ってるのに、これバレたら色々大変なことになるんだよ!?」

千聖「そ、そうね…だけど彩ちゃん」

彩「なに?」

 

 この期に及んで言い訳しようとする千聖に対して、彩がにらみを利かせた。

 

千聖「我慢できなかったのよ!!」

彩「うるせぇこのド変態!!!」

 

 千聖の言い訳に思わず彩の言葉遣いが崩壊した。それに対して飛鳥、麻弥、イヴが困惑した。

 

彩「あからさまに痴漢の台詞じゃん! 今まで私に対して説教してきたの何だったの!? それだったらもう二度と私に説教しないでね!?」

千聖「それはダメに決まってるじゃないの。あなたはすぐに私に隠れてお菓子食べるんだから」

彩「千聖ちゃん。私以上の事をしでかしたの分かってる?」

 

 千聖が真面目な顔で彩に言い放ったが、説得力なんて微塵もなく、彩に冷静に突っ込まれた。

 

日菜「まあまあ彩ちゃん。ここにいるのはアタシ達だけなんだし、絶対バレないって」

彩「……」

 

 そんな訳がなかった。

 

********************

 

「パスパレが一丈字を脱がそうとしたって!?」

「マジ!!?」

「嘘じゃないだろうな!!」

「エアバンド事件から折角立ち直ったのに、何やってんだよマジで!!」

 

 とまあ、少なくとも学園中に広まり、彩は両手で顔を覆った。

 

彩「もうおしまいや…」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は彩に対してどういう言葉をかければ良いか分からなかった。昔から夢見ていたアイドルの夢がこんな形で終わろうとしているのだから。被害者とはいえ、自分が丸く収めた所で他メンバー4人がそういう事をしたという事実は変わらないし、自分の超能力をもってしても、消すことは出来ない。というかそういう関係を持ってしまって、自分の運命もどうなるんだろうと思った。

 

彩「一丈字くん…。本当にごめんなさい…」

飛鳥「いや、私はもういいんですけど、これからの対策を考えましょう」

 

 そんな時だった。

 

「一丈字に対してそういう事をしてるんならもういいよなァ…?」

 

 とまあ、男子生徒の一人がゲスな笑みを浮かべて、言い放った。

 

「日菜ちゃん、千聖ちゃん、麻弥ちゃん、イヴちゃん」

「!」

 

 男子生徒が4人に対して声をかけると、

 

「僕も脱がしてくれよ。一丈字と同じように♡」

飛鳥(脱がされる方かよ…)

 

 ゲスな笑みを浮かべて自分の服を脱がすように頼む男子生徒だったが、客観的に見て気持ち悪すぎてドン引きした。

 

日菜「え? 普通にお断りなんだけど」

千聖「誰があなたなんかに!」

「そんな事言っていいのかな? もし断れば一丈字を脱がしたって、更に広めてやるけど? SNSに拡散も出来るしな」

 

 そう言って脅しをかけると麻弥とイヴが困惑したが、

 

日菜「じゃああたしはあなたからそういう脅しを受けたって皆に言いつけようかなー」

飛鳥(いや、悪いのあなた達なんですけどね?)

彩「日菜ちゃん…?」

 

 日菜がそうやって脅すが男子生徒はひるまなかった。

 

「分かった。それじゃあSNSに拡散するわ。お疲れ様。Pastel*Palettes」

 

 そう言って男子生徒がスマホであるボタンをタップしようとしたが、ファンの男子生徒たちに取り押さえられた。

 

「てめぇ!!」

「何勝手な事してんだよ」

「終わらせようとするな!!」

 

 そう言って男子生徒はボコボコにされたが、彩はもうどうすればいいか分からず悲鳴を上げた。

 

********

 

 

「…ちゃん。彩ちゃん!!」

「ハッ!!!」

 

 誰かに声をかけられて彩が目を覚ますと、そこは学園のカフェテリアだった。周りを見渡すと日菜・千聖・麻弥・イヴの4人がいて、その周りにはいろんな生徒がいた。

 

日菜「大丈夫―? なんか魘されてたけど」

彩「う、魘されてた…。良かった、夢だったんだー…」

 

 夢だと分かって安心する彩だったが寝ぼけていた。

 

千聖「一体どんな夢を見てたのよ…」

彩「いやね…。私以外のパスパレ4人が一丈字くんの服を脱がす夢で…」

 

 彩の発言に空気が止まった。千聖、麻弥、イヴは顔を真っ赤にしていたし、ファンの男子生徒たちは血眼になってパスパレをガン見していた。

 

日菜「え、どこまで脱がそうとしてたの?」

麻弥「日菜さん!!//////」

彩「んー…。千聖ちゃんの発言だと、全部脱がそうとしてたみたい…」

千聖「ちょっとぉ!! それじゃ私が本当に脱がそうとしてるみたいじゃない!!/////」

イヴ「ブ、ブシドー…?」

麻弥「イヴさん。ブシドーではありません!」

 

 そんな時だった。

 

「い、一丈字を全部脱がそうとしたぁ!?」

「パスパレ4人で!!?」

 

 男子生徒達…ヤラカシが騒ぐと千聖・麻弥・イヴが青ざめて、5人で男子生徒たちの方を向くと、

 

「オレ達も脱がしてぇえええええええええええええええええ♡♡♡♡♡」

千聖・麻弥「ギャアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」

彩「ふぇ?」

 

 この後、パスパレがどうなったかはご想像にお任せします。

 

 

 その頃の飛鳥…。

 

飛鳥「つけ麺屋でつけ麺食ってます」

 

 

おしまい

 



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第407話「お花見2022」

第407話

 

 それはある春の事だった。ちなみに4月である。

 

「お花見しよお花見!!」

 

 男子生徒たちが下心丸出しで、バンドガールズに言い放った。ちなみにここは1年1組で有咲や美咲が嫌そうな顔をしていた。

 

有咲「いや、男子だけでやって」

美咲「うちもパス…」

「こころちゃん!!!」

こころ「いいわねお花見! 皆で行きま…」

 

 こころが承諾しようとすると美咲が口を押さえた。

 

「いや、もう遅いから」

「こころちゃんOKしたから決定なー」

 

 と、こころのせい(?)で1年1組はお花見をすることになりました。

 

 1年2組

 

「お花見…」

蘭「絶対パス」

モカ「な~んか下心あるよね~」

ひまり「うーん…。親睦会って考えればいいと思うんだけど…」

巴「なんていうか…な」

つぐみ「い、いいんじゃないかな。行ってあげれば…」

「いよっしゃあああああ!!!」

 

 2年1組

「お花見行こうよ!!」

千聖「ごめんなさい。私用事が…」

彩「あれ? パスパレの仕事って今週入ってなかったよね?」

千聖「彩ちゃん?」

 

 千聖が黒い笑みを浮かべて彩を責めたが…。

 

「千聖ちゃん。そういうの良くないよ」

「そうそう」

「アイドルなんだからもうちょっと愛想良くやらなきゃ」

「という訳で決定ね。あ、ちなみに男子は任意だから、来たくない奴は来なくていいよ」

千聖「女子も任意でいいわよね?」

「良くねーに決まってんだろうがァ!」

 

 千聖の言葉に男子生徒Aがぐわっと目を大きく開いて激怒していた。

 

「同じこと何回も言わすな!!」

「え? もしかして千聖ちゃんって天然?」

「前からそういう噂は合ったけど…。それなら仕方ないか…」

 

 いつの間にか自分は天然キャラにされていたことに、千聖は激怒していた。

 

千聖「誰がそんな噂広めたのよ…!!」

 

 そして2年2組

 

「お花見行くよね?」

友希那「興味ないわ」

リサ「まあまあ。1回くらいこういう親睦会に参加してもいいと思うんだけど…」

「流石リサちゃん!」

「話分かるゥ!!」

「という訳だから女子は全員参加で、男子は任意な」

薫「全員で楽しもうじゃないか」

麻弥「そ、そうですねー…」

 

 とまあ、バンドガールズはそれぞれのクラスでお花見をすることになったが…。

 

 1年3組

 

飛鳥「あ、そんな予定は特にないです」

 

 イベントに対してとにかく消極的なクラスだったので、飛鳥は特にクラスメイトとお花見をする予定はなかった。

 

**********************:

 

 そんなこんなで飛鳥は次の休み、一人出かけていた。

 

飛鳥「どこもかしこも人がいっぱいいるなぁ…」

 

 せめて桜を見るくらいならと飛鳥は、近くの川沿いの桜並木を見に来たが、もう既にたくさん人がいて、お花見をしている人も沢山いたし、屋台も沢山出ていた。

 

飛鳥「見たところ、戸山さん達もいないみたいだし、ここでちょっと飯食べて帰るか」

 

 その時だった。

 

「ねえいいじゃん。オレ達とお花見しようよ」

飛鳥「……」

 

 どこからかイケメンボイスが聞こえたが、どう考えてもナンパをしているようで、飛鳥は嫌な予感がした。恐る恐る近づいてみると、そこにはGritter greenを含む3年1組の女子たちがお花見をしていて、イケメングループにナンパされていた。

 

飛鳥(あれは確か牛込さんのお姉さんと…3年生の人たちだ!)

 

 りみの姉であるゆりを含め、女子たちは皆嫌な顔をしていた。というのも、1年生や2年生があの手この手で女子達をお花見に連れていく中、このクラスは既に女子だけでお花見に行くという計画を立てていたのだ。去年結構男子がやらかしていたのである…。

 

飛鳥(ここは例の腹痛で…)

 

 飛鳥が超能力を遣おうとしたその時、グリグリのメンバーである二十騎ひなこが飛鳥に気づいた。

 

ひなこ「あっ! あそこにいるのりみちゃんのお友達じゃない?」

ゆり「え?」

飛鳥「!!?」

 

 ひなこが声をかけた事で注目が飛鳥に集まってしまい、超能力が使えなくなってしまった。

 

ゆり「一丈字くん!?」

飛鳥「あ、こ、こんにちは…」

 

 ゆりがそう言うと飛鳥は苦笑いしてあいさつしたが、イケメングループが飛鳥に気づいた。

 

飛鳥(とはいえ、注目をこっちに寄せることが出来た。仕方ない…)

 

「何? 君お友達なの? 君も可愛いね~」

「どっちかっていうと、美人系じゃね?」

「でもさっき、くんって言ってなかったか?」

「チッ、男かよ…」

 

 と、イケメングループがゴチャゴチャ話しているのを飛鳥は困惑しながら聞いていた。

 

「なあモブ男くん。オレ達は今からあの子達と遊ぶからさぁ。邪魔しないでくれるかなぁ?」

 

 そう言ってリーダー格が飛鳥に対して脅しをかけたが、飛鳥は困惑した。

 

飛鳥(いかにも漫画でありそうな絡み方だなぁ…)

 

 見たところそんなに強そうにも見えないし、飛鳥はどのように相手をしたらいいか分からなかった。

 

飛鳥「明らかに嫌がられてるの、分かっていないのですか…?」

リーダー「は?」

取り巻きA「てめぇ。黙って聞いてたら随分生意気な口を利くな」

取り巻きB「舐めてんのか」

 

 そう言って一斉に飛鳥に詰め寄ると、

 

「や、やめなさい! あなた達!!」

 

 グリグリのメンバーである鰐部七菜が止めようとするが、飛鳥は七菜の方を見ていた。

 

飛鳥「あ、私は大丈夫ですので、クラスの方々をお願いできますか?」

七菜「え?」

リーダー「舐めてんじゃねぇぞコラァ!!」

 

 リーダーが激怒して飛鳥に殴りかかったが、飛鳥は普通に受け止めて、そのままひねった。

 

リーダー「ああああああん!!! いったぁ~い!!!!!」

「!!」

 

 リーダーがとっても情けない声を出して痛がっていて、取り巻き達は恐れおののいていた。飛鳥としては「いや、そこまで強くやってないんだけど…」と困惑しながら取り巻き達を見ていた。

 

飛鳥「あのー…。私服警官がさっきパトロールをしているのを見たので、早く逃げた方がいいと思いますよ?」

取り巻きA「し、私服警官!?」

「私がその私服警官です」

 

 私服警官が現れて、リーダーたちは青ざめた。

 

警官「うら若き女子高生たちを全裸にして一列に並ばせて、ケツを一人ずつ叩こうとしていた愚か者共はこいつらか?」

飛鳥「そうだと思います」

取り巻きA「何なんだその変態的なプレイは!」

取り巻きB「それおっさんの趣味だろ!!」

リーダー「オレ達はただ単にセッ…」

 

 リーダーがそう言いかけると、空気が止まった。

 

警官「貴様らに人の心はないのか!!! さては、それに加えて壁に手をつかせたところを下からのぞき込んであの子たちの前の部分を…」

飛鳥「早く捕まえてくれませんかね」

 

 警官の言葉に飛鳥がツッコミを入れると、警官は仲間を呼んでリーダーたちを取り押さえた。

 

警官「オラァ! さっさと歩けこの変態共が!」

リーダー・取り巻きA・取り巻きB「それはあんただろーが!!!」

警官「ワシはもう40過ぎてるから、同じくらいの女がいい!!」

リーダー・取り巻きA・取り巻きB「聞いてねぇよそんな事!!」

 

 最後まで警官の変態ぶりに辟易する飛鳥とゆり達だったが、これで事件は解決した。

 

飛鳥「あ、お怪我はございませんか?」

ゆり「う、うん…。ありがとう…」

飛鳥「それでは私は失礼します」

 

 そう言って飛鳥はスーッといなくなった。

 

リィ「あれ!? いつの間にかいなくなってる!」

七菜「ほ、ほんとだ…」

 

 飛鳥が急にいなくなったことでゆり達は驚きを隠せなかった。

 

ひなこ「もしかしてあの子…エスパーだったりして」

ゆり「いや、それはないと思うけど…」

 

 それを聞いていた飛鳥は冷や汗をかいた。

 

飛鳥(あの人ただものじゃない…。ていうか、なんか雰囲気が孫さんに似てる…)

 

 しかし、ここから早く出ないと面倒なことになる為、飛鳥は早急に脱出した。

 

 その頃の香澄達

 

「ねえねえ、連絡先教えてよ~」

「食べさせてあげよっか!」

 

 男子たちがしつこく絡んできて、有咲や美咲はうんざりしていた。

 

たえ「グイグイくるね」

りみ「あ、あははは…」

 

 そんな中、香澄やこころやはぐみは普通に男子たちと仲良く歌っていたが、男子たちは普通ににおいを嗅いだりしていて、挙句の果てにはオスの本能を解き放っていた。どうなっているかは具体的に言わないが、有咲と美咲はその姿を見て、目を閉じて頬を染め、こう思っていた。

 

有咲・美咲(サイテー…!!/////)

 

**********************

 

 後日

 

ゆり「一丈字くん。此間は助けてくれてありがとう」

飛鳥「あ、いえ。あの後は大丈夫でしたか?」

七菜「お陰様で…」

 

 飛鳥はカフェテリアにいたが、グリッターグリーンに話しかけられて昨日の話をしていた。

 

ひなこ「でもあのまま残ってくれたら、ひなこちゃん的にポイント高かったんだけどなー」

リィ「あ、こいつのいう事気にしなくていいから。正直扱いにくいでしょ」

ひなこ「酷い!!」

 

 リィとひなこの会話を聞いて、飛鳥は苦笑いすると、

 

「あ、一丈字くん」

 

 沙綾やりみもやってきた。

 

飛鳥「山吹さんにりみさん。どうされたんですか?」

沙綾「いやー…。一丈字くんが先輩たちを助けたの、チスパも見ててたらしくて…」

飛鳥「あ、そうなんですか…」

りみ「ありがとうね?」

飛鳥「いえいえ」

 

 飛鳥が苦笑いすると、何かそわそわしていた。

 

ゆり「どうかしたの?」

ひなこ「おしっこ?」

飛鳥「ではなくてですね、そろそろ教室に戻らないとなんか大変なことになりそうな気がして…」

 

 飛鳥がそう言い放ったその時、3年1組の男子の一部が現れた。

 

飛鳥「ああ、来ちゃった」

「!」

 

「おぉい!! 聞いたぞ! 女子だけでお花見に行ったそうじゃないか!!」

「そういうの良くないよ!?」

「オレらなんかした!?」

グリグリ「した!」

 

 4人が一斉に突っ込むと、飛鳥・りみ・沙綾が顔を合わせた。

 

「それはまだいいよ! 結局一丈字がまた美味しい所持ってったじゃないか!!」

「そうだそうだ!!」

 

 とまあ、恒例の飛鳥に対するイチャモンがはじまった。

 

飛鳥「それで、先輩方は一番何をしたいんですか?」

「殴らせろ!!」

飛鳥「え、牛込先輩達とどこか遊びに行くのではなくて?」

「え!?」

「遊びに行かせてくれるの!?」

飛鳥「ですがもう私を殴る事に決定いたしました」

 

 そう言って飛鳥が前に出ると、そこに座り込んだ。

 

飛鳥「覚悟はできてます。さあ、煮るなり焼くなり好きにしてください!」

「潔い!!」

「でもこれ殴ったら殴ったで、余計に株下がる奴!!!」

 

 飛鳥の奇行に皆がツッコミを入れた。

 

「いや、もうお前殴るの良いから、ゆりちゃん達と遊びに行かせろよぉ!」

「1年や2年は十分に楽しんでたじゃねぇか!!」

「やっぱり滅茶苦茶良い匂いだったらしい…」

「3年生だけそんな美味しいイベントないなんて、ずるすぎる!!」

ゆり「いや、女の子の匂いの話されて、出かけたいなんて思わないんだけど…」

 

 ゆりの発言に飛鳥はごもっともと渋い顔をした。

 

ひなこ「ひなこちゃん的にはー。この子とお花見に行きたいなー」

飛鳥「光栄ですが、お気持ちだけ受け取っておきます」

リィ「あー。あいつらに気を遣わなくていいよ? 主役とかどうのこうの言ってたけど、セクハラしまくるからマジでないわ」

 

 とまあ、グリッターグリーンに気に入られる飛鳥であった。

 

飛鳥「あ、ちなみに1組のお花見どうでした?」

沙綾「有咲と美咲がもう嫌だって」

りみ「チョココロネ取られた…」

 

 

おしまい

 

 



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第409話「主役といえど」

 

 

 ある日のバンドリ学園。

 

リサ「うぅぅ…」

 

 リサは何か困っている様子で、飛鳥が通りかかった。

 

飛鳥「今井先輩。どうされました?」

リサ「あ、飛鳥く…」

 

 リサが飛鳥に話しかけようとしたその時だった。

 

「はいはいはいはいはい!! 悩みなら僕たちが聞くよ!?」

「てめぇ邪魔だ! あっち行け!!」

「リサちゃん! 悩みって何かな!?」

「僕に出来る事があったら何でもするよ!?」

 

 と、リサのファンたちの妨害があり、飛鳥は思いっきり突き飛ばされた。飛鳥は遠くからリサの様子を探ると、リサは飛鳥の事を心配しているようだった。飛鳥は男子生徒たちに怒る事はせず、その場からリサの名前を呼んだ。

 

飛鳥「あのー。今井先輩」

「あ!!? 何だよ!!」

 

 飛鳥がリサに呼びかけようとしたが、男子生徒たちが必死に妨害していた。

 

飛鳥「悩みがあるなら誰かに相談したほうがいいですよ」

「だからオレ達が乗るつってんだろ!」

「てめぇはあっち行け!!」

 

 と、男子生徒たちは飛鳥を無理やりに追い出した。

 

飛鳥(最近こういうの多いなぁ…)

 

************************

 

 その日の夜。飛鳥はリサの事が気になっていたが、千聖から電話がかかり、リサの事について聞き出すことに成功した。

 

千聖「…リサちゃんのご両親、今度の休み出張で家を空けるけど、リサちゃんが一人になるのよ」

飛鳥「そうなんですか…」

千聖「それだけならいいけど、最近リサちゃん達の家の周りに怪しい男がうろうろしてるって話があるらしいのよ」

飛鳥「ええ。私も存じ上げております」

千聖「そうなの!?」

飛鳥「さしずめ、湊先輩か今井先輩のどちらかが目当てだと思われます」

千聖「それで、犯人は捕まりそう?」

飛鳥「目星はついていますが、証拠がない状態なので…」

千聖「そう…」

 

 飛鳥の言葉に千聖が神妙な顔をした。

 

千聖「とにかくリサちゃんからヘルプがあったら、あなたは助けてあげて頂戴。あのバカ男子共に何かあったら、私がサポートするわ」

飛鳥「助かります」

 

 こうして千聖の協力も得て、飛鳥は引き続き調査を行う事になった。

 

**********************:

 

 そして金曜日。リサの両親が出張で家を空ける前日。

 

「リサちゃん! 土日ご両親が家にいないんだって!?」

「僕んちおいでよ!」

「いや、オレとお泊り会しようよ!」

「わしと…」

 

 とまあ、男子生徒達からのアプローチが凄かった。

 

リサ「あ、えっと…。一応友希那達Roseliaが泊まりに来てくれることになったから…」

友希那「というか普通に女子の家に泊めてくれって、どういう神経かしら?」

「こうでもしないと、距離縮めれないんだもん!!」

「はっ! Roseliaで泊まるつって、一丈字も来たりしないよな!?」

友希那「しないわよ。そもそも性別が違うのよ? 男子を泊める訳ないじゃない」

 

 友希那がそう言い放つが、男子生徒たちはまだ信用している様子はなかった。

 

「そ、そんな事言って、ボディーガードとかで…」

友希那「考えすぎよ」

リサ「し、心配してくれるのは嬉しいな…」

友希那「リサ。そうやって甘やかすから…」

 

 と、男子と女子の間で平衡状態になっていた。

 

 その頃飛鳥というと、自分の教室で大人しくしていた。というのも教室の外にはヤラカシが飛鳥が外に出ないように見張っていたからだった。

 

飛鳥(そこまでするかね…)

 

*************************

 

 そして土曜日。Roseliaメンバーがリサの家に集まっていた。

 

あこ「あこ、ずっと楽しみにしてたんだー!!」

リサ「そ、それは何より…」

 

 Roseliaでお泊り会が出来ることになってはしゃいでいるあこに対して、リサが苦笑いしていた。

 

リサ「それにしても皆ゴメンね。来てもらって…」

燐子「いえ…。やっぱり心細いと思います…」

リサ「とにかくゆっくりしてってねー」

 

 そんなこんなで夜になった。Roseliaメンバーは料理を作ったりして、それはもうまさにお泊り会そのものの事をしていた。

 

 そんな中…リサの家に近づこうとしている輩が一人…二人、そして沢山いた。

 

「ちょ、お前!!」

「何リサちゃん達の家に行こうとしてんだよ!」

「お前こそ!!」

 

 …Roseliaのファンである男子生徒達だった。理由は簡単である。怪しい男がいたら捕まえ、Roseliaからの好感度をアップさせる作戦だった。

 

 だが、考える事は同じで一斉に集まってしまったのだ。これでは男子生徒たちが不審者側であり、丁度いい時間にもなってきたので、もしこれが警察とかに見つかれば大事になりかねなかった。

 

「とにかくお前帰れよ!」

「お前が帰れ!」

 

「陰キャのくせに!」

「てめーも陰キャだろーが!!」

 

 とまあ、自分の事しか考えない輩が一同に集まったところで、どうにでも出来る訳がなく、案の定リサの家の近所の人たちが不審に思い、警察に通報した。

 

 そしてリサ達の家はどうなっているかというと…。

 

あこ「なんか外が騒がしいね」

友希那「どうせまた家を見に来たのでしょう。外から出ない方がいいわ」

燐子「な、何でそんな事に…!!」

友希那「Roseliaもそれなりに有名になった証拠よ」

リサ「…それもそうだし、友希那のお父さんも有名なミュージシャンだから」

 

 と、リサが苦笑いしたが男子生徒たちが脳裏をよぎった。

 

リサ(ま、まさかね…)

あこ「リサ姉?」

リサ「ううん! 何でもない!」

 

 しかし、残念なことにリサの思惑は的中し、通報された事によって大量の男子生徒たちが警察にしょっぴかれるという、前代未聞の事態が起きてしまった…。

 

Roselia「……!!」

 

 Roseliaも様子を見に外に出たが、まさか同じ学校の生徒たちが大量にしょっぴかれている姿を見て、唖然としていた。当然その夜は寝にくくなった。

 

********************

 

 ちなみにリサの家の近くをうろついていた犯人はというと…。

 

『一丈字様。ターゲットを捕らえました』

飛鳥「ありがとうございます」

 

 弦巻家の黒服たちによってとらえられ、飛鳥は自宅から黒服の報告を受けていた。

 

飛鳥「証拠も揃いましたし、これで何とかなりそうですね」

 

 ちなみにリサの家の前を十数人が押しかけて警察にしょっぴかれた事を後日知った際は、同じように真っ白になったという。

 

 

おしまい

 

 

 



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第418話「秘密のアーケードゲーム」

 

 それはある日の事だった。

 

飛鳥「暇つぶしにゲームセンターに来てみたは良いけど…なんか新しいのばっかりだなぁ」

 

 飛鳥は気分転換にゲームセンターに来てみたはいいが、プリクラやクレーンゲームばかりで、自分が得意とする格闘ゲームがあまりない事に困惑していた。

 

飛鳥「大阪にはレトロゲームのゲームセンターが沢山あるのになぁ…ん?」

 

 飛鳥がとあるアーケードゲームに目が行き、その台の前に止まった。

 

飛鳥「へー…NFOにアーケード版ってあったんだ。ちょっと面白そうだからやってみるか」

 

 今回の話はここから始まる…。

 

**************************

 

 後日…

 

「い、一丈字くん」

 

 Roseliaのキーボードである白金燐子が話しかけてきた。

 

飛鳥「白金先輩。どうされたんですか?」

 

 普段は接点がないため、話しかけてきたことに驚く飛鳥。あるとすればあこつながりであるが、今は特に話すことはなかった。

 

燐子「その…NFOの限定アーケード版をやったっていうのは本当なんですか…?」

飛鳥「え?」

 

 燐子の言葉に飛鳥は驚いた。

 

燐子「その…twitterに上がってて…」

飛鳥(ゲームしてて全然気づかなかった。誰が撮ったんだろう…)

 

 燐子に言われて飛鳥がtwitterを確認すると、確かに飛鳥がゲームしている姿を撮られていたが、案の定『盗撮だ』だの『いい年した高校生がこんな事して恥ずかしくないのか』など炎上していた。

 

飛鳥(うちの学校の生徒か…でも、炎上してる…)

燐子「そ、それで…クリアされたんですか…?」

飛鳥「え?」

 

 飛鳥が燐子の方を見た。

 

燐子「その…ア、アーケードのゲームは全て…」

飛鳥「ええ。ちょっと時間かかりましたけど、何とか…」

 

 その時だった。

 

「おい、一丈字ぃ!!」

 

 と、ヤラカシ軍団が現れて燐子は飛鳥の後ろに隠れた。

 

飛鳥「何か御用でしょうか」

「聞いたぞ! お前ゲームセンターでゲームしてたんだってな!」

「これは立派な規則違反だ!」

「だから罰として燐子ちゃん達と話しかけるなよ!」

「そういう訳だから燐子ちゃんをこっちによこせぇ!」

 

 そう言って言いがかりをつけてきたが、飛鳥は憐れんだ目でヤラカシ軍団を見ていた。

 

「な、何だその目は!!」

飛鳥「本当に私が規則違反をしているのであれば、そんないい方しなくても白金先輩達はあなた方につくと思いますよ?」

「けど、燐子ちゃんはそっちにいるじゃないか!」

「燐子ちゃんがお前の傍にいるからこう言ってんの!」

「そんな事も分からないのか!」

「とにかく、清く正しく生きてるオレ達が女の子と戯れる事が出来ないのはおかしい!」

飛鳥「もういい大人だろう…」

 

 とんでもない言いがかりに飛鳥は思わず本音が出ていた。そんな時だった。

 

「ここにいたのね。一丈字くん」

 

 氷川紗夜が現れた。

 

飛鳥「氷川先輩…」

「ほら見ろ! 紗夜ちゃんも怒ってるぞ!」

「これを機にたっぷり反省するんだな!」

「ざまあみろ!」

「行こうぜ」

 

 そう言ってヤラカシ達が去っていき、自分たちの勝利を確信した。

 

紗夜「あの人たちは何なのかしら」

飛鳥「言いがかりつけて白金先輩にセクハラしようとしてましたよ」

紗夜「やっぱりそうだったのね…感謝するわ」

 

 このやり取りを見て燐子はもうヤラカシ達に勝ち目はないと考えていた。

 

紗夜「それで一丈字くん」

飛鳥「何でしょう」

紗夜「ちょっと聞きたい事があるの。時間空いてるかしら」

飛鳥「あ、はい」

 

*********************

 

 空き教室

 

紗夜「聞いたのだけど…あのNFOのアーケード版をクリアしたそうね」

飛鳥「そうなんですよ。SNSに撮られたり、途中邪魔されたりしたんですけど、店員さんに助けられたり…」

紗夜「邪魔された?」

飛鳥「それがですね…」

 

 飛鳥がゲームをしていた時に同じ学校の生徒が数人やってきて、ウザがらみをしてきてゲームの邪魔をしてきたのだ。あまりにもしつこかったので超能力で何とかしようとしたが、屈強な店員が現れてその男子生徒たちを連れて行ったのだ…。

 

飛鳥「最近他の人がゲームしているのを邪魔するっていう迷惑行為が多発してたみたいで…」

燐子「何ですかそれ絶対に許せないです」

飛鳥・紗夜(珍しく怒ってる…!?)

 

 燐子の表情と声色を聞いて、飛鳥と紗夜が困惑していた。

 

燐子「世間は許しません」

紗夜「あ、あの。白金さん?」

 

 燐子の怒り具合に紗夜も流石に困惑していた。

 

**********************

 

 そんなこんなで…。

 

飛鳥「私がプレイしてたのはこの店だったんですね…」

 

 飛鳥は燐子、紗夜にせがまれてゲームをしていた場所へ案内した。燐子としては限定版のアーケードに対面できると思ってワクワクしていた。

 

 だが…。

 

「あーごめんねぇ。あのアーケード台は撤去することになったんだよ」

 

 アーケード台が置いてあった場所まで来たが、撤去されており店員に聞いてみたら、本当に無くなっていたのだ。

 

飛鳥(まさか…オレのせいか…?)

 

 SNSで拡散された事もあったのか、やはりそういう客が来ると迷惑なのかと飛鳥は思っていた。燐子はガッカリしていて、紗夜も顔には出さなかったがNFOのアーケード版でプレイできず、残念そうにしていた。

 

飛鳥「SNSで拡散されたからですかね…?」

「いや、あのアーケード台なんだけど、限定品だったみたいで、扱いをどうするか考えてる所なんだ。最近うちの店マナーの悪いお客さんが多くてねぇ…」

燐子「残すべきです!」

 

 燐子が叫び、飛鳥と紗夜が困惑していた。

 

燐子「確かにお客さんが迷惑かけてるかもしれませんが、ゲームに罪はありません。残すべきです!」

飛鳥(白金先輩…)

紗夜(自分がプレイしたいって言うのが見え見えよ…)

「うーん…」

 

 店員はかなり悩んでいた。

 

店員「まあ、残してほしいっていう声は君たちから来る前からもあってね。こっちとしても残したい所なんだが…。店長に掛け合ってみるよ」

 

 そんなこんなでNFOのアーケードは無事にそのゲームセンターの元で稼働されることとなったのだが…。

 

「一丈字が燐子ちゃんと紗夜ちゃんを連れてゲームセンターデート!!?」

「あのお堅い風紀委員の紗夜ちゃんまで!?」

「一体どんな手を使ったんだ!」

「やっぱり主人公補正…」

 

 …3人でゲームセンターに行ったのもバレた。

 

「オラァアアアアアアア!! 一丈字ぃいいいいいいい!!」

「燐子ちゃんと紗夜ちゃんとゲームした後はやっぱりエロい事したんだろぉ!!」

紗夜「そんな訳ないでしょう!!/////」

燐子「///////」

 

 進歩のないヤラカシ達に紗夜は激怒し、燐子は顔を真っ赤にした。そして飛鳥というと…。

 

飛鳥「ダメだこりゃ…」

 

 心底あきれ果てた。

 

 

おしまい

 

 



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第419話「バンドリ学園の七夕」

 

 

 今日は七夕。バンドリ学園でもそんなムードに…。

 

「今日は七夕だ! 皆はどんな願い事をした!?」

「オレは…うふふふ」

「お前、人前だぞぉ。言わすなよぉ」

「オレはねー…。やっぱりやめとこうかなぁ」

 

 とまあ、2組の男子たちが気持ち悪くなり始めた。

 

モカ「今はエアコンを直してほしいよー…」

蘭「ていうか、こんな時に壊れるなんて最悪…」

ひまり「もー。あっつーい」

 

 そう、バンドリ学園は今、エアコンが壊れてしまい、全員蒸し風呂のような暑さを体感していた。

 

「可愛い子の汗ってやっぱり良い匂いするなぁ…」

「ああ…メスの匂い…」

有咲・美咲「気持ち悪い!!!」

 

 1組では男子たちが露骨にセクハラ発言をしていたので、有咲と美咲が突っ込んでいた。

 

 また、2年生も同じで…

 

「なんで3組には誰もかわいい子がいないんじゃあ!!」

「オレ達にも分けてくれぇ~!!!」

 

 と、3組の男子たちが彩たちと同じ空間にいたいが為に1組と2組の教室に押しかけて来た。

 

「ちょ、やめろぉ!!」

「さわやかな空間が汚れる!!」

千聖(男子全員に出て行ってほしいのだけど…)

 

 そんなこんなでこの男はというと…。

 

飛鳥「あ、普通に教室にいますよ。暑いですね」

 

 …ちなみにこの男は超能力で体温調節も出来るし、自作のクーラーも作れるのだが、それをやってしまうと、また沢山の人間から嫌われてしまうという事から、そういう事はしなかったのだ。

 

飛鳥「やっぱりフェアじゃないとね」

「一丈字くん。誰と喋ってるの?」

飛鳥「あ、ごめんなさい」

 

******************

 

 1組

 

はぐみ「ねえこころん。こころんのおうちでエアコンを持ってくることって出来ないの?」

こころ「そうねー。やっぱりこのまま暑いと皆困るわよね」

 

 と、こころがエアコンを持ってくる空気になったが、ダメになった。

 

先生「エアコンがあるのは先生たちも助かるけど、少しは我慢することを覚えなさい!」

「え―――――――――――――――!!!?」

先生「こんな事したら弦巻財団に依存しちゃうでしょうが!!」

 

 とまあ、先生の言っている事もご尤もなので、生徒たちは泣く泣く諦めた。

 

*********

 

 そんなこんなで昼休憩

 

飛鳥「あー…夏真っ盛りだなぁ」

 

 飛鳥が廊下を歩いていたが、誰とも遭遇しなかった。購買部に行くと、見事にアイスや冷たい飲み物が全て売り切れだった。

 

飛鳥「やっぱり暑いもんなぁ」

 

 と、飛鳥が一人でたたずんでいると

 

「おーい! 飛鳥くーん」

飛鳥「ん?」

 

 声をかけられたので飛鳥が横を向くと、そこにはリサがいた。

 

飛鳥「今井先輩」

リサ「やっほー。飛鳥くんもアイス食べに来たの?」

飛鳥「いいえ。それにもう売り切れてまして…」

リサ「本当? それならアタシの分けてあげよっか?」

飛鳥「え?」

 

 リサの言葉に飛鳥は嫌な予感がした。

 

リサ「いやあ、どういう訳か男子たちがくれてさ…」

飛鳥(あー…それで売り切れてたのか…。気に入られるために…)

 

 何故冷たいものがなくなっていたのか、察した飛鳥だった。確かに購買部には争われたあとの形跡が残っていたので、確信していた。

 

リサ「流石にちょっと多いからさ。分けてあげるよ」

飛鳥「あー…」

 

 リサがそう言うと飛鳥は困惑していた。その時だった。

 

「ちょっと待った~~~~~~~~~!!!!」

飛鳥「ああ、来ちゃった…」

 

 と、ヤラカシ軍団が一斉に現れると、リサもぎょっとした。

 

「それだったらオレ達にも貰う権利があるぅ!!」

飛鳥「今井先輩。私はいいので、彼らに差し上げてください」

リサ「そ、そうしたいんだけど人数分あったかな…」

「それだったらオレ達も!!」

「オレ達もぉおおおおおおお!!!」

 

 どんどん人数が増えていき、飛鳥はげんなりしていた。リサも流石にドン引きしていた。

 

飛鳥(どうしてだろう。さっきまで暑かったのに、急に涼しくなった)

 

 それはヤラカシ達の気持ち悪さによる寒気と悪寒が原因だった。

 

飛鳥「…あの、今井先輩」

リサ「は、はい?」

飛鳥「申し訳ございませんが、その袋を渡して貰えませんか?」

リサ「え、でも…」

飛鳥「私の言うとおりにして頂けますか」

 

 そう言って飛鳥がリサから袋を受け取ろうとしたが、ヤラカシ達がそれを阻止しようと飛鳥を突き飛ばした。

 

「そうはさせるかよ!!」

「これはオレ達のもんだ!!」

「てめーはすっこんでろ!!」

 

 と、ヤラカシ達はそのまま奪い合いを始めたが、この時飛鳥はリサがヤラカシ達に襲われないように超能力で誘導し、そのまま退場させた。

 

リサ「だ、大丈夫!? 飛鳥くん!!」

飛鳥「ええ。私は大丈夫ですけど…」

 

 飛鳥がヤラカシ達の方を見た。

 

飛鳥「…あの人たちは大丈夫じゃなさそうですね」

リサ「そ、そうだね…」

 

 飛鳥とリサが同じ方向を見て呆れていると、

 

「どうしたの~?」

「!」

 

 Afterglowがやってきた。

 

飛鳥「ああ。これはこれは…」

つぐみ「何かあったの…?」

リサ「それがね…」

 

 リサが事情を説明すると、つぐみ以外の4人が呆れていた。

 

蘭「ハァ…これだから男は…」

ひまり「蘭。それじゃ一丈字くんも入っちゃうよ」

巴「それにしてもとんでもない奴らだな!」

飛鳥「何とか丸く収まったのが幸いですけどね…」

 

 と、飛鳥が苦笑いしていた。

 

巴「収まってないだろ! お前突き飛ばされてるんだから!」

蘭「先生に言った方がいいよ」

飛鳥「そうしても、結局同じことの繰り返しですし、私を突き飛ばしたのは他の方々も見ていますから、そうするまでもございませんよ」

 

 飛鳥がAfterglowの方を見て苦笑いした。

 

飛鳥「まあ、放課後どこかラーメンでも食べに行きましょうかね」

巴「ラーメンか! それだったらアタシも行っていいか!?」

飛鳥「あっ…」

 

 巴の言葉に飛鳥が困惑すると、またヤラカシ達が現れた。

 

「オレ達もぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は問答無用で超能力を使った。

 

*******************

 

飛鳥「七夕のお願い事ですか?」

 

 夜。飛鳥はAfterglow、リサと一緒にラーメン屋にいて、飛鳥は願い事を聞かれたのでそう答えた。

 

飛鳥「平和ですかね…」

リサ「まあ、気持ちはわかるよ…」

ひまり「お疲れ様…」

 

 リサとひまりもどんよりした。

 

蘭「なんかもっとお金持ちになりたいとか、テストの成績を上げたいっていう願いとかはないの?」

飛鳥「それはないですね」

モカ「どうして?」

飛鳥「それらは自分の力で叶えられるからです」

 

 飛鳥の言葉に皆の目が大きく開けた。

 

飛鳥「願うのは人の事ですね」

モカ「飛鳥くん。今のは冗談抜きでカッコよかったよ」

飛鳥「ありがとうございます」

リサ「いや、もうマジで凄いって思ったわ…」

蘭「それに比べてうちの男子共は…」

蘭・巴・ひまり・モカ「ハァ…」

 

 4人がため息をつくと、飛鳥もげんなりした。

 

 

おしまい

 



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第420話「苦労は続く」

 

 

 それはある日の事だった。

 

「ありがとうございます。荷物を持ってくださって…」

「いえいえ」

 

 飛鳥と紗夜が校舎の外を歩いていたが、飛鳥が重い荷物を持っていた。

 

飛鳥「これをどこに運べば良いですか?」

紗夜「もうすぐ着きます」

 

 そう喋っていたその時だった。

 

「きゃああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

 

 という、千聖の悲鳴が聞こえて飛鳥と紗夜が驚いたが、飛鳥は超能力で千聖の状況を感知した。

 

飛鳥(虫か…)

 

***************

 

イヴ「チ、チサトさん!!」

麻弥「はわわわわわ!! と、とても大きいっす!!」

千聖「は、早く…早くとってぇ…!!」

 

 麻弥とイヴも一緒にいたが、虫が思った以上に大きく、ためらっていた。千聖は涙目でその場で動けなくなっていた。

 

紗夜「白鷺さん!!」

 

 紗夜と飛鳥が登場するも、紗夜も虫の大きさに驚いていた。

 

飛鳥(ここは超能力で…)

 

 飛鳥が虫を操って千聖から遠ざけようとしたが、

 

千聖「飛鳥くん!! 早くとって頂戴!!」

飛鳥「!!?」

 

 千聖が飛鳥の名前を叫んでしまい、注目を集めてしまったため超能力が使えなくなってしまった。

 

飛鳥(仕方ないなぁ…)

 

 そう言って飛鳥が千聖の背中についていた虫を取って、そのまま解放してやった。

 

飛鳥「取りましたよ」

千聖「……!」

飛鳥「さて、早くこれを運びに行きましょうか」

紗夜「……」

 

 飛鳥が紗夜に話しかけると、紗夜は不思議そうに飛鳥を見た。

 

飛鳥「…どうしました?」

紗夜「あ、あなた…虫、平気なの…?」

飛鳥「種類によりますけどね」

 

 紗夜の言葉に飛鳥が苦笑いすると、飛鳥は荷物を抱えた。

 

飛鳥「それでは私はこれで失礼します。行きましょう」

紗夜「え、あ、はい…」

 

 そう言って飛鳥と紗夜が去っていくと、千聖、麻弥、イヴが2人を見つめていた。

 

********************

 

 暫くして…

 

「おいコラ一丈字出てこいやぁ!!」

「てめぇ、千聖ちゃんの体に触れたっていうのは本当かぁ!?」

 

 と、ヤラカシ達が飛鳥の教室に押しかけてきたが、飛鳥はもう既にいない状態だった。

 

 

飛鳥(あー。超能力があって本当に良かったなー)

 

 飛鳥はそう思いながら、校舎を脱出した。そんな中…。

 

イヴ「……」

 

 イヴが飛鳥の後ろを付け回していた。

 

「何やってるの。イヴちゃん」

イヴ「ひゃああああっ!!」

 

 千聖、紗夜、麻弥がイヴの後ろにいて千聖が話しかけるとイヴが驚いた。

 

麻弥「まあ、やろうとしている事は見当つきますが…」

イヴ「そ、その…これは…偵察です!」

千聖「イヴちゃん。一歩間違えたら『ストーカー』になるのよ。やめなさい」

イヴ「は、はい…」

 

****************

 

千聖「どうして付け回そうと思ったの」

イヴ「その…お昼にチサトさんの背中に大きな虫がついていた時にアスカさんは何のためらいもなく取ってましたよね」

麻弥「あれ、結構大きかったっすよね…」

イヴ「アスカさんには間違いなく『ブシドー』の心があると思うんです」

千聖「まあ、武士道かどうかは分からないけど、根性はあるわね…」

 

 このメンバーの中で唯一正体を知っているため、千聖は何とも言えない顔をしていた。

 

イヴ「そこで少しでも学ぼうとアスカさんを…」

千聖「事情は分かったわ。けど、付け回す行為は誤解を招くから今後はやめなさい」

イヴ「はい…」

 

 千聖に怒られてイヴはしゅんとした。

 

麻弥「それにしても本当に一丈字さんって不思議な人ですよね」

紗夜「そうね」

千聖「不思議な人って言うより…謎が多いわね」

 

 千聖がそう話すと紗夜が千聖の方を見た。

 

紗夜「そういえば白鷺さん」

千聖「何かしら?」

紗夜「あなた、最近一丈字くんとよく一緒にいるのを見るのだけど」

千聖「そうかしら? 至って普通だと思うけど…。まあ、イヴちゃんや麻弥ちゃんもお世話になった事あるからね」

麻弥「そういえばそうですよね。思えば一丈字さんに助けられる事も結構ありますね」

イヴ「……」

 

******************

 

 そんなある日の事

 

飛鳥「今日は何もないといいけどなぁ…」

 

 飛鳥がそう呟いていたその時だった。

 

「きゃああああああああああああああああ!!」

飛鳥「今度はなんだ…?」

 

 女子たちが一斉に悲鳴を上げたので、飛鳥が超能力で感知した。大量の虫が校舎の中に入ってきてパニック状態になったのだ。

 

飛鳥(あー…なんでこうなったか大体見当はついたぞ)

 

 その時だった。

 

「いた!! 飛鳥くん!!」

 

 千聖が飛鳥の所に走ってきたが、血相が代わっていた。

 

千聖『早く何とかして頂戴!!』

飛鳥『わ、分かりました…』

 

 テレパシーで会話をすると、飛鳥は超能力を使って虫を校舎の外に出した。

 

飛鳥(はー…)

 

***************

 

 そして飛鳥の想定通り、犯人はヤラカシ達で虫が女子達にくっつけば、合理的に女子の体に触れると思ったのだ。

 

「馬鹿じゃないの!!?」

「男同士で触ってなさいよ!!」

「この××××が!!」

「それは言ったらだめ!!」

 

 と、案の定女子たちの怒りを買って、当面は肩身の狭い思いをしましたとさ。

 

飛鳥「はー…」

 

 飛鳥は心の底からため息をつくと、千聖が飛鳥の肩を抱いた。イヴが言っていた通り、飛鳥には『ブシドー』の心があるのかもしれない。だが、何事にも限度というものがあるのだと…。

 

 そして有咲と美咲が陰からスタンバっていた。すると飛鳥が千聖の方を見た。

 

千聖「大丈夫よ。有咲ちゃんと美咲ちゃんならやってくれるわ!」

有咲「いや、勘弁してくださぁい!!」

美咲「もうこころだけで手一杯なんです!! 何なら薫さんやはぐみもいるんですぅ!」

千聖「じゃあ有咲ちゃん」

有咲「やだぁ~~~~~~!!!!!」

 

 飛鳥達の戦いは続く…。

 

 

おしまい

 

 

 

 



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第421話「あなたの事を」

 

 

 それはある夏の事だった。

 

「あっつーい…」

 

 上原ひまりが自分の教室で手をうちわのように仰いでいた。蘭、モカ、巴、つぐみも同じ状態だった。

 

つぐみ「エアコンが今日に限って緊急メンテナンスだなんて…」

モカ「溶けてアイスになっちゃうー」

蘭「いや、意味が分かんないから…」

 

 とにかく暑さに参っていた。

 

ひまり「こんな時はプールとかに行きたいねー」

 

 ひまりの言葉に他の男子生徒たちが反応した。そして耳をダンボのように大きくしている。

 

モカ「いいねー」

蘭「いや、練習どうするの」

モカ「練習は平日にやってるんだからさ~」

 

 と、その時だった。

 

「え? 何? クラスの皆でプール行く流れ?」

「マジ! オレも行く!」

 

 男子たちがあたかもごく自然の流れでAfterglowとプールに行こうとしていたが、その光景を見てAfterglowが困惑した。

 

モカ「…やっぱり練習しよっか」

巴・ひまり・蘭「異議なし」

「待て待て待て待て待て待て」

 

 モカたちの言葉に男子たちが待ったをかけた。

 

「折角なんだから行こうよ!」

「そうだよ!」

 

 そう言って男子たちがさわやかな笑顔で話しかけるが、下心満載だった。分かりやすいくらい下心丸出しだった。

 

モカ「いやー…プールに行くって、Afterglowのメンバー内だけだよ?」

蘭「空気読んでほしいんだけど」

「いや、確かにそれは申し訳ないと思うけどさ!」

「たまにはクラスみんなで…」

 

 その時だった。

 

「青葉さん」

「!」

 

 飛鳥が現れた。飛鳥が現れるなり男子生徒たちは不機嫌になり、Afterglowは助かったと言わんばかりの表情になった。

 

「ああ!? 何だてめー!!」

「モカちゃんに一体何の用だよ!!」

飛鳥「数学の教科書返してほしいんですけど…」

モカ「あ、ごめーん。忘れてたー」

 

 こうしてモカから教科書を返して貰った飛鳥は、そのまま教室に帰ろうとしたが…。

 

モカ「はい」

飛鳥「ありがとうございます」

「教科書返して貰ったらさっさと帰れよ!」

「そうだ! こっちは今度の休みにAfterglowをプールに誘うんだからよぉ!」

飛鳥「プール?」

 

 男子生徒たちの言葉に飛鳥が反応した。

 

ひまり「ああもう…本当に言わなきゃよかったぁ…」

巴「ひまりのせいじゃないって」

モカ「今度の休みにプールに行く予定だったんだけど、男子たちもついていくってしつこくて~」

飛鳥「…大変ですね」

 

 モカの言葉に飛鳥が困惑した。

 

モカ「え~。助けてくれないの~?」

飛鳥「助けると言っても…」

「とにかくお前は帰れよ!!」

「ていうかいつまでモカちゃんと話してるんだ!!」

 

 と、男子生徒たちが騒いでいたが、モカはまるっきり無視した。

 

モカ「そういえば飛鳥くんは今度の休み予定ある~?」

飛鳥「ありますよ」

モカ「誰かとどこかに出かけるの?」

飛鳥「広島にいる友達と会う約束をしてるんですよ」

つぐみ「そ、そうなんだ…」

 

 飛鳥の言葉につぐみが反応すると、飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「まあそういう訳ですので、どうぞごゆっくり」

 

 そう言って飛鳥は去っていくと、男子生徒たちが歓喜した。

 

「さあ! これで邪魔者もいなくなったし…」

 

 と、男子生徒たちが詰め寄ると、飛鳥が戻ってきてモカとアイコンタクトを取り、男子生徒たちの記憶を消した。

 

「…と、思ったけど無理に誘うのも良くないからやめとくわ」

「もし気が変わったら呼んでね!」

蘭「は、はあ…?」

 

 突然の気の変わりように蘭たちは驚いていた。

 

********************

 

 その夜…

 

モカ「いやー。本当に助かったよ~」

飛鳥「そりゃどうも…」

 

 飛鳥とモカは自宅で電話をしていた。モカがマイペースなのに対し、飛鳥は若干困惑していた。

 

飛鳥「そういやAfterglowは今度の休みどうすることにしたの?」

モカ「一旦保留になった~」

飛鳥「…そっか」

 

 本当にガールズバンドも大変なんだなと飛鳥は思った。

 

モカ「そういえば友達に会いに行く約束があるって言ってたけど、本当なの?」

飛鳥「それは本当だよ」

モカ「ふ~ん」

飛鳥「まあ、こっちの事は心配しないで」

 

 そう言って飛鳥はモカを安心させたわけだが…。

 

******************

 

 次の休み

 

モカ「応援に来たよ~」

飛鳥「……」

 

 飛鳥とモカはとある鉱山にいたが、モカの姿を見るなり飛鳥はぎょっとしていた。

 

モカ「なんかここでイベントやってるんだって~?」

飛鳥「…そうだけど、他の皆は?」

モカ「今日はあたし一人だけ~」

 

 そう話していると、

 

「飛鳥。誰と喋ってるんだ?」

 

 と、飛鳥の旧友たちがやってきた。

 

飛鳥「あっ…」

モカ「あ、こんにちはー」

「えええええっ!!? お、お前! 誰だよその女の子ぉ!」

 

 茶髪でイカ栗頭の志田省吾が驚いて話しかけた。飛鳥より2つ年上である。

 

飛鳥「ああ。バンドリ学園で仲良くなった青葉モカさんです」

モカ「初めまして~。青葉モカで~す」

「…確かAfterglowっていうバンドの子よね?」

 

 赤い髪の少女・大空未来が驚いたようにモカを見ていた。

 

モカ「はい、そうで~す」

未来「な、何かゆるいわね…」

省吾「それはそうとお前。なんかいろんな女の子達と仲良くなってるんだって!?」

飛鳥「そういう関係ではないんですがね…」

 

 省吾の問いかけに飛鳥が困惑していると、

 

『出場される方はこちらに起こしくださーい!』

 

 と、アナウンサーの声がしたので、飛鳥達はアナウンサーの方を見た。

 

飛鳥「あ、そろそろ出番ですので行ってきますね」

 

 そう言って飛鳥はアナウンサーの方に向かった。

 

モカ「頑張ってね~」

 

*********

 

 そして行われたトロッコレース。飛鳥のほかにも古堂孫、林幸生、白村悟士が出場していて、いずれも好成績を残していた。

 

モカ「…飛鳥くんだけじゃなかったんだ。凄いの」

省吾「へへっ。まーな」

未来「何で省吾くんが得意げなの…。出てないのに…」

 

 モカ、省吾、未来の3人は観客席で見学していたが、4人の身体能力にモカは少しだけ驚いていた。

 

モカ「いや~。なんか飛鳥くんの強さが垣間見れたような気がします~」

未来「そう…。そういえば、結構色々大変だって聞いたんだけど」

モカ「そうなんですよ~。此間もモカちゃん達を守ってくれたんですよ~」

未来「そうなの…」

 

 と、レースを見ながらモカ達は世間話を続けるのだった…。

 

*****

 

飛鳥「本当にお疲れさまでした」

悟士「ああ。久々にいい汗をかいたよ」

 

 孫たちが広島に帰ろうとしていたので、飛鳥とモカで見送りをしていた。

 

飛鳥「これで鉱石が手に入ったので、良い報告できますね」

幸生「そうだな。まあ、相変わらず孫のバカ力は想定外だったが…」

 

 結果としては優勝したのは孫であり、飛鳥が2位、悟士が3位、幸生が4位だった。

 

モカ「そういえば群を抜いてましたね。孫さん」

孫「そうか? まったくきづかなかった」

 

 モカの言葉に孫がケロッとしていて、モカはちょっと困っていた。

 

モカ(なんだろう…。こころちゃんと雰囲気が似てるような…)

 

 そんなこんなで孫たちは帰っていき、飛鳥とモカは二人きりになった。

 

モカ「なんか面白い人たちだったね~」

飛鳥「そう?」

モカ「飛鳥くんも面白かったけど~」

飛鳥「君も十分面白いよ」

モカ「どういう意味」

飛鳥「そういう意味」

 

 こういうやり取りがあったものの、モカは飛鳥の事をまた少しだけ知る事が出来て、嬉しそうにしていたという。

 

 

おしまい

 



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第422話「美咲の悲劇」

 

 

 今回の話は弦巻家から始まった。

 

こころ「そういえば黒服の人たちから面白いものを貰ったわ!」

 

 練習している最中、こころがある事を思い出してその面白いものを持ってきた。

 

はぐみ「こころん! なにそれ?」

こころ「ロシアンドリームキャンディといって、これを舐めるととても良い夢を見られるそうなんだけど、1個だけおかしな夢を見られるそうよ!」

美咲「…大丈夫なの。それ」

 

 美咲はキャンディの効果について、体に害がないか心配になり始めていた。

 

こころ「練習も数時間やったし、早速舐めてみましょうよ!」

はぐみ「さんせー!」

薫「フッ…」

花音「ふぇええ…大丈夫かなぁ…」

 

 まあ、舐めないとこの話が進まないので、とりあえず騙されたと思って美咲と花音は飴を食べてみた。

 

こころ「それじゃあ早速寝ましょう!」

美咲「ちょっと待って。寝るって夜寝るんじゃ…」

 

 美咲がそう言っている間にも黒服たちによって、寝る準備が進められ、弦巻家の最高技術によってすぐに眠りに落ちた。

 

美咲(なんてご都合主義…)

 

 美咲はそのまま眠りに落ちた。

 

**********************

 

 気が付くと美咲は全裸だった。

 

美咲「何この夢の始まり方!」

 

 そして周りはいろんな浴槽があった。そう、ここは温泉である。

 

美咲「あ、なんか日ごろの疲れをいやすためか…」

 

 そんな時だった。

 

「わー! とっても大きなお風呂ね!」

「そうだねこころん!」

 

 と、こころとはぐみの声がしたので、「あ、いつもと同じ展開か…」と思っていた。しかし…

 

「飛鳥! どのお風呂から入ろうかしら!」

 

 飛鳥の名前が出た瞬間、美咲はぎょっとして後ろを振り向くと、そこにはハロハピのメンバーと飛鳥がいた。飛鳥と花音はタオルで大事な部分が隠れている状態だったが、こころ、はぐみ、薫は全裸だった。

 

美咲「……!!!//////」

 

 異性の存在に美咲は顔が真っ赤になって目を大きく開いた。

 

薫「おや、子猫ちゃんは先に来ていたのか…」

美咲「な、なななななななんで一丈字くんがここにぃ!!?//////」

 

 美咲がしゃがみこんで胸と股間を必死に隠す。

 

はぐみ「え? 飛鳥くんと混浴したいって言ったのはみーくんだよ?」

美咲「」

 

 美咲はこの時確信した。はずれを引いたのは自分だと。そして一秒でも早く夢から覚めてほしいと思っていたが、肉体は完全に睡眠状態に陥り、覚めることが出来なかった。

 

こころ「そうよ美咲」

薫「私も確かに聞いた」

美咲(うっそ~ん…)

 

 美咲は飛鳥に裸を見られた恥ずかしさから頭がショートしそうになったが、ずっとこのままという訳にもいかなかった。

 

飛鳥「奥沢さん」

美咲「ア、ハイ。ナンデショウカ…」

飛鳥「バスタオルでしたら…」

花音「わ、私が持ってるよ…?」

 

 そう言って花音が美咲にバスタオルを渡すと、飛鳥に見ないように指示を出した。

 

**

 

美咲「スイマセン。コンナソマツナカラダヲミセテシマッテ…/////」

飛鳥「…いえ」

 

 美咲が赤面+涙目+しおらしくなっている姿を見て飛鳥はかける言葉が見つからなかった。

 

こころ「それにしても飛鳥ってやっぱり女の子みたいね」

飛鳥「良くいわれるよ」

美咲(それもそうだけど、なんで一丈字くんは平気なの!? こころやはぐみはともかく、薫さんの裸を見ても!)

 

こころ「それにしても沢山の温泉があるから迷うわ!」

はぐみ「そうだねこころん!」

こころ「あっ! 展望風呂というのがあるらしいわ!」

 

 と、高さ数十mはあるであろう展望風呂があったので、こころがそこに行こうと提案したが、高所恐怖症の薫は青ざめた。

 

はぐみ「おもしろそー!!」

薫「い、いや…。もっと別なのがいいんじゃないかな…?」

飛鳥「あれとかどうです?」

 

 飛鳥が指さした先は洞窟の温泉だった。

 

こころ「あそこも面白そうね! 行きましょう!」

はぐみ「うん!」

飛鳥「あ、走らないでください!」

 

 飛鳥が注意するも、こころ、はぐみ、薫が洞窟温泉に向かっていった。薫は本当に早歩きだった。

 

美咲「あ、あのう…一丈字くん…」

飛鳥「何でしょうか?」

美咲「その…どうして女の子の裸を見ても平然としてられるの?」

飛鳥「何でってそれは…」

 

 美咲の問いに飛鳥はこう答えた。

 

飛鳥「ハロー!ハッピーワールドの雰囲気ですかね?」

美咲「え?」

飛鳥「そういう事にしといてください」

 

 飛鳥が苦笑いすると、

 

こころ「飛鳥―! 美咲―! 花音―! はやくはやくー!」

はぐみ「とっても面白いよー!」

 

 と、こころとはぐみは手を上げて早く来るように催促する。全裸で…。

 

飛鳥「あ、はーい」

 

 そう言って飛鳥がこころ達の所に行くと、花音も美咲に対して自分たちも行こうと言い、美咲が口角を上げた。

 

 

美咲「って! やっぱりこころ達はタオル巻きなさーい!!!」

 

 

******************

 

美咲「はっ!!」

 

 美咲がそう突っ込むと目を覚ました。

 

美咲「あ~…なんて我ながら恥ずかしい夢を見たんだ…」

 

 と、美咲がそう呟きながら困惑していると、ふと既に目を覚ましている4人と目が合ったが、こころ以外顔を真っ赤にしていた。

 

美咲「…え、ど、どうしたの?」

こころ「美咲はあたし達や飛鳥と一緒にお風呂入ってる夢を見たのね!」

美咲「え、何でそれを知って…」

薫「君があまりにも目を覚ますのが遅いから、どういう夢を見ているのか見させてもらったんだ。そしたら…/////」

花音「あ、あははは…ご、ごめんね…/////」

 

 花音が苦笑いして視線を逸らすと、美咲がわなわなと震えた。

 

はぐみ「もー!! みーくん!! なんではぐみスッポンポンなの~!!!?/////」

こころ「あら。温泉に入る時は普通裸よね?」

花音「いや、男の子がいるから…///」

薫「全く。いけない子猫ちゃん達だ…/////」

美咲「……」

 

 自分が見た夢がメンバーにバレ、美咲も顔を真っ赤にして涙目になり、目はぐるぐる目になっていた。

 

美咲「い…い…いやぁあああああああああああ~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!////////」

 

 と、美咲の叫びが弦巻家中に響き渡った。

 

*****************

 

 そしてこの後どうなったかというと…。

 

飛鳥「道理で北沢さん達が私の顔を見て避けてたのか…」

花音「あの、気を悪くしないでね…? 恥ずかしがってるだけだから…//」

飛鳥「いえ、大丈夫です…」

 

 はぐみと美咲は暫く飛鳥の顔が見れなくなり、薫は平然と振舞おうとしていたが、やはり恥ずかしさから自然に飛鳥を避けていた。で、何があったかを調べる為にこころを問い詰めたところ、一緒にいた花音が白状したという形になったそうです。

 

 

おしまい

 



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第423話「ヤラカシの大逆転!?」

 

 今井リサです。今日はRoseliaのみんなとショッピングモールに来ています。

 

あこ「やっぱりショッピングモールはいろんなお店がありますねー!」

リサ「そうだねー」

 

 だけど、あんな事がおこるなんて、まだアタシ達は誰も気づかなかったんだ…。

 

**************

 

「…やっぱりRoseliaはここに来てたのか」

「盗み聞きしてて良かったぜェ~」

 

 と、バンドリ学園のヤラカシ達がつけてきたのだった。

 

「偶然を装ってRoseliaと買い物デート大作戦、決行だ!」

「おう!」

 

 そう言ってヤラカシ軍団はRoseliaをつけ狙った。

 

 だが…

 

「あれぇ~? Roseliaがいるじゃん」

 

 自分達よりもヤバそうな男たちがRoseliaの前に立ちはだかった。

 

友希那「何? あなた達…」

あこ「りんりん…」

 

 友希那が明らかに威嚇して、あこが怯えて燐子に近づいた。

 

リサ「ふ、二人とも落ち着いて。ファンの人たちかも…」

「そう。オレ達は君たちのファンなんだよ」

リサ「ほらね。でもサインは…」

「サインなんていらないんだ」

「え?」

 

 男たちはゲスな笑みを浮かべた。

 

「セックスさせてくれれば♡」

 

 男の発言にRoseliaは凍り付いた。そして近くで見ていたヤラカシ達も。

 

「な、なんだあいつ! オレ達がやりたい事を!」

「けどこのままだとRoseliaが寝取られるぞ!」

「あんなの見た目だけさ! オレ格闘技やってっから…」

 

 と、ヤラカシ達がゴチャゴチャ話し合っていると、

 

紗夜「あなた方の要求には応えられません!」

友希那「そうよ。どこかに行って頂だ…」

 

 友希那がそう言いかけると、主犯格が友希那と紗夜の胸ぐらをつかんだ。

 

リサ「友希那! 紗夜!」

「お前達に拒否権はないんだよ…。大人しくオレ達についてこいや」

 

 まさに絶体絶命だった。周りには誰もおらず、いたとしても見て見ぬふりをしている。

 

リサ「お、お願い! あたしがついていくから二人を離して!」

「ダメだ!」

「全員来なければこの2人をここから落とす!」

 

 そう、ここは2階で吹き抜けがあり、友希那と紗夜をこのまま1階に落とすことが出来るのだ。胸ぐらをつかんでいる主犯格は腕力があり、実際にやろうと思えばできるのだ。

 

燐子(誰か…誰か助けて…!)

 

「Roseliaが本当にピンチだ!」

「よし! オレ達が助けに行くぞ!」

「そうだな!」

 

 するとヤラカシ達が思い切って飛び出した。

 

「Roseliaを離せ!!」

「!」

 

 ヤラカシ軍団が現れて、男たちとRoseliaも彼らの方を向いた。

 

「おい、Roselia全員連れていけ」

「へい!」

 

 主犯格は無視してRoseliaを連れて行こうとした。するとリサがヤラカシ達に向かって逃げてと叫んだ。ヤラカシ達は見掛け倒しだけだと思い、果敢に助けに行こうとしたが、取り巻き達に取り押さえられた。

 

「弱すぎるだろ!!」

「もうちょっと頑張れや!!」

 

 Roseliaはこれから自分たちはどうなるんだろうと、不安で仕方なかった。

 

*****************

 

「あー…。ちょっと遠いけど日用品このモールの中にある店の方が安いんだよな」

 

 飛鳥が買い物の為にショッピングモールに来ていたが、駐車場で男たちがRoseliaを連れてどこかに行こうとしているのが目に見えた。無表情の男たちと、不安と絶望に満ちたRoseliaの顔を見て飛鳥はすぐに察して、超能力を放った。

 

飛鳥(まあ、ダメ押しに車も故障…はやり過ぎかな)

 

 飛鳥が超能力を放ったことで男たちは友希那達を離した。

 

Roselia「!?」

「やっぱやめだ…」

リサ「え?」

「おい、帰るぞ」

「へい」

 

 そう言って男たちはどこかに去っていった。

 

リサ「な、何だったの…?」

あこ「りんりん怖かったよ~!!!」

燐子「うん…うん…」

 

 すると友希那と紗夜は顔を合わせた。

 

友希那「…残念だけど、ショッピングは中止ね」

紗夜「そうね…」

 

 そう言って5人は徒歩で帰ろうとしたが、

 

リサ「ちょっと待って!? 確か中にAくん達が!」

紗夜「そういえば…!」

あこ「でもどうするの!? あの人たち滅茶苦茶強そうだったし…」

 

 と、話し合っているRoseliaを感知した飛鳥は弦巻家の黒服と連絡を取って、すぐにRoseliaを保護し、ヤラカシ達に絡んでいたチンピラたちを撃退した。

 

飛鳥(これで一件落着かな…。さて、面倒だけどちょっと時間帯を変えようかな。防犯カメラに姿映されたらややこしい事になりそうだし)

 

 そう言って飛鳥はその場から離れた。

 

*********************

 

 後日

 

リサ「あなた達大丈夫だった?」

「ま、まあね…」

 

 一応自分たちを助けに来てくれたとして、リサは律儀にヤラカシ達に声をかけた。ヤラカシ達は勿論テンションが高めである。

 

リサ「ほら、友希那も礼を言って!」

友希那「…感謝するわ」

 

 チンピラは倒せなかったものの、Roseliaからの評価が上がったヤラカシ達は心の底から歓喜した。

 

(これなら遊びに誘われるかも!)

(このまま勢い余って付き合えたりして!)

(あんな事やこんな事をするのはオレ…ぐへへへへ)

 

 とまあ、下心があまりにも漏れ出していて周りの人間は苦笑いするか、呆れるくらいしかなかった。

 

 勿論紗夜や燐子、あこからもお礼を言われたが、本当にそれだけで、この後も普通に話しかけようとしたが、リサは乗ってくれるものの、友希那や紗夜からは線引きされ、燐子からは怖がられた。

 

(なんでだよぉ!!)

(なんで一丈字みたいに行かないんだよぉ!!)

 

 と、ヤラカシ達は思ったほか中々うまくいかないことにいら立っていたが、この後も関係が変わる事はなかった。

 

******************

 

 その頃…

 

「やー。今回も大活躍だったねェ。飛鳥くん」

「何で当たり前のようにバレてんの」

 

 中庭のベンチ…はもうこの季節は暑いので、近くの木陰で2人が話していた。

 

モカ「湊さん達に打ち明けなくていいの? 弦巻財団に声をかけた事とか…」

飛鳥「分かって言ってるだろ。恩を売るもんじゃないよ。0から1にはなかなかならないけど、0からー1には簡単になっちまうんだ。失った信頼を取り戻すのは大変だよ」

モカ「だよねー」

 

 飛鳥とモカは空を見上げた。

 

飛鳥「バンドガールも色々大変だね」

モカ「まあ、それだけ夢に近づいたって事で良いんじゃないでしょうか~」

 

 と、モカの一言にセミたちが反応するようにめいっぱい鳴いた。

 

 

おしまい

 



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第424話「平凡こそ幸せ」

 

 

 刺激のある生活なんていらない。僕は平凡でいい。ただ普通で平和な日常を過ごせたらそれでいいんだ。

 

 …そう思って高校に進学したものの、本当に平凡で普通で平和で…クソつまんねぇ!!

 

******************

 

 そう嘆いている男の名前は檻主。特徴は一言でまとめるとラノベでよくいる主人公。黒髪でストレートだったり、なんか煮え切らなかったり、客観的に見て良さげなのにやたら自己肯定が低かったり、実際にいたら若干めんどくさい感じである。

 

 で、ラノベでよくある『自分は平凡で良いんだ』だの『オレはあいつみたいにキラキラにはなれない』だの、やたら劣等感を抱き、変化を望まない性格だ。

 

 そしてその言葉の通り、本当に何もなければ友達や彼女もできない、かといって虐められる事もない。本当にごく普通の生活を送っている。

 

 確かに平凡な生活が良いと言ったものの、何かしらの刺激は欲しい。というか毎日同じような生活でつまらなかったのだ。

 

*********

 

 そんな中、檻主にも遂に転機が訪れた。

 

「お姉ちゃん達。僕たちとどこかで××××しない?」

「ストレート!!」

 

 下校しようとすると、他校のDQNが学園のアイドルの丸山彩と松原花音に絡んでいた。

 

檻主(こんな分かりやすくナンパする奴いるかなぁ…?)

 

 そして檻主は「これ、自分が行かなきゃダメなの?」と思っていた。しかし、関わりたくないので避けて通ろうとすると、そのまま避けて通れた。

 

檻主(あれ? 避けて通れた…)

 

 不思議そうに檻主が後ろを振り向くと、ヤンキーは別の男子生徒にいちゃもんをつけていた。

 

ヤンキー「何ガン飛ばしてんだよテメェ!」

「あ、警察に通報しといたんで、今のうちに逃げた方がいいですよ?」

ヤンキー「はぁ!?」

ヤンキーB「何してくれてんだてめぇ!」

ヤンキーC「ぶっ飛ばしてやる! オラァ!」

 

 そう言ってヤンキーBとCが少年に襲い掛かったが、すぐに返り討ちにした。2人のヤンキーはものすごくおもしろい顔で伸びていたのに対し、少年はいたって普通だった。

 

ヤンキーA「ひ、ひぃ~~~~~~~!!!!!」

 

 ヤンキーAは仲間を置いて逃げ出すと、彩と花音は呆然としていた。

 

「さて、この二人だけでも引き渡しましょうかね」

 

 少年がやけにあっさりしていた為、周りの生徒は全員唖然としていた。

 

*************

 

「ご協力ありがとうございました!」

「いえいえ」

 

 BとCを警察に引き渡した少年は警官にお礼を言われ、警官はパトカーにBとCを載せて去っていった。

 

檻主(な、何て強い奴なんだ…。でも、あんなに強い奴がいるならオレの平凡な生活は維持できそうだな…)

 

 そう檻主が思っていると、いつの間にか少年はいなくなっていた。

 

檻主(あ、あれ!? あいつは!?)

彩「どこにもいない!」

花音「ふぇええ!!?」

 

********************

 

 翌日

 

檻主(相変わらず普通で平凡な日々だ)

 

 彩と花音を助けずに避けて通ったにも関わらず、何も言われなかった檻主。確かに自分が望んだ平凡な生活だったが、とても気持ち悪いものとなっていた。

 

 そして少年は檻主の3つ後ろの席に座っていて、教科書の確認をしていたが、どういう訳か誰も気づいていない。

 

 そんな時だった。

 

「あのー。すいません」

「!?」

 

 彩と花音、そして彼女たちの友人がやってきて、教室が若干驚いた。

 

檻主(昨日の先輩達に…友達もキラキラしてる人が多いなぁ。きっとオレじゃなくて助けた一丈字なんだろうなぁ)

 

彩「ここに一丈字くんっていう子はいるかな?」

檻主(やっぱりな)

 

 実際に自分が助けた訳でもないのに、当然の結果である。

 

「一丈字くん?」

「あれ? さっきまでそこにいたんですけど…」

「あの子突然いなくなったりするんだよね…」

「…そう」

 

 花音の友人である白鷺千聖が表情を曇らせた。

 

千聖「戻ってきたら私が探してたって言って貰える?」

「わ、分かりました…」

 

 そう言って千聖たちが去っていった。

 

檻主(オレじゃなくて一丈字が大変だったって事か。まあ、一丈字には悪いがオレは平凡ライフを満喫させてもらうよ)

 

*****************

 

 その後も檻主の平凡ライフは続いたが、時間が経つにつれて一丈字飛鳥は彩や花音、その友人たちと仲良くなっていった。

 

 そしてその年の臨海学校。飛鳥は都合により来られなくなってしまったのだ。

 

「一丈字がいないから気兼ねなく香澄ちゃん達と遊べるぜ!」

「あの野郎! 最近香澄ちゃん達と仲良くしてたからムカついてたんだぜ!」

「ああ!」

 

 と、飛鳥の事を快く思っていない連中もいたので檻主は呆れていた。

 

檻主(まあ、これで面倒な事が起こらなかったらいいんだけどな…)

 

 檻主がそう思いながら臨海学校が始まったが、本当に何も起こりませんでした。精々クラスの男子が香澄達にしつこく迫って、へそを曲げた蘭が怒って女子だけで遊んだくらいだった。ちなみに檻主はぽつんと一人で遊んでおり、誰も声をかけてくれることもなかったという。まあ、平凡な生活を崩されたくないからって、人付き合いをちゃんとしてなければそうなりますね。

 

 そして数日後、飛鳥が表彰されることになったのだ。檻主たちが臨海学校に行っている間に開催されていた『テクノロジーコンテスト』に見事優勝して、特別審査員賞も貰ったのだった。

 

モカ「流石だね~。飛鳥くん」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 食堂で飛鳥はバンドガールズと話をしていて、近くに檻主とヤラカシ達がいた。

 

飛鳥「臨海学校楽しめました?」

モカ「楽しかったけど、メインの海水浴がね~」

 

 モカが蘭の方を見ると、蘭はばつが悪そうに視線をそらした。

 

飛鳥「…お疲れ様です」

モカ「それで今度女子だけで仕切り直しをしようと思ってるんだよね~」

飛鳥「楽しんできてください」

 

 この流れは飛鳥を誘う流れだと確信したヤラカシ達が反応するも、檻主は「まあ、当然だろうな」と思っていた。だが、平凡ではないけど毎日刺激があって仲間に囲まれて、自分自身で道を切り開こうとする飛鳥の姿を見て、少しだけ羨ましいと思っていた。

 

香澄「あ! そうだ! 飛鳥くんも一緒に行かない!?」

有咲「ちょ、女子だけだつってんだろ!」

 

 有咲の発言にヤラカシが騒いだ。

 

「断れ一丈字!」

「お前だけいい思いするのは許さぬぅ!!」

飛鳥「お気持ちだけ受け取っておきます」

「よし!」

 

 飛鳥の言葉にヤラカシ達は喜んだが、

 

モカ「蘭やあいつらに気を遣わなくていいんだよ?」

蘭「ちょ、一緒にしないでよ…」

飛鳥「そういやその仕切り直しって弦巻財団の黒服たちの人が警備としてつくんですか?」

美咲「うーん…。そうした方が良いかも」

有咲「だな」

飛鳥「それなら安心ですね」

 

 飛鳥が笑みを浮かべると、有咲と美咲がぎょっとした。

 

飛鳥「それではゆっくり楽しんでください」

香澄「飛鳥くん!」

 

 そう言って飛鳥は去っていくと、モカは苦笑いした。

 

檻主(一丈字の奴…)

 

***

 

 ある時、飛鳥が帰ろうとすると目の前に檻主が現れた。

 

檻主「一丈字」

飛鳥「あれ? あなたは…」

檻主「檻主だ」

飛鳥「ああ。檻主さんですか。お疲れ様です」

 

 飛鳥が普通に話しかけると、檻主は飛鳥の顔をじっと見つめた。

 

飛鳥「私の顔に何かついてますか?」

檻主「一つ聞きたい事がある。どうして戸山たちの誘いを断ったんだ?」

飛鳥「誘いに乗ったらまたヤラカシ達が騒いで、またいろんな人に迷惑をかけるから…っていうのもそうですけど、女子だけだって言ったのに男子が行くとフェアじゃないでしょう」

檻主「は?」

飛鳥「まあ、声をかけて貰っただけでも勲章ものって事で。それでは」

 

 飛鳥がそう言って去ろうとすると、檻主は飛鳥の背中を見つめた。

 

************

 

 後日。飛鳥と檻主はまたそれぞれの日常を過ごしていた。飛鳥は沢山の人間に囲まれた賑やかで騒がしい毎日、檻主は独りぼっちだけど静かで平和な毎日。しかし、彼らにとっては充実していた…。

 

 

飛鳥(…なんかオチが弱い気がするけど、平和だからいっか)

 

 

おしまい

 

 

 



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第425話「これが現実なんだよオリ主さん」

 刺激のある生活なんていらない。僕は平凡でいい。ただ普通で平和な日常を過ごせたらそれでいいんだ。

 

 …そう思って高校に進学したものの、本当に平凡で普通で平和で…クソつまんねぇ!!

 

******************

 

 そう嘆いている男の名前は檻主。特徴は一言でまとめるとラノベでよくいる主人公。黒髪でストレートだったり、なんか煮え切らなかったり、客観的に見て良さげなのにやたら自己肯定が低かったり、実際にいたら若干めんどくさい感じである。

 

 で、ラノベでよくある『自分は平凡で良いんだ』だの『オレはあいつみたいにキラキラにはなれない』だの、やたら劣等感を抱き、変化を望まない性格だ。

 

 そしてその言葉の通り、本当に何もなければ友達や彼女もできない、かといって虐められる事もない。本当にごく普通の生活を送っている。

 

 確かに平凡な生活が良いと言ったものの、何かしらの刺激は欲しい。というか毎日同じような生活でつまらなかったのだ。

 

*********

 

 そして極めつけはこうである。

 

「飛鳥くん。今度行う舞台の読み合わせに付き合ってほしいのだけど」

「飛鳥く~ん。パン一緒にたべよ~」

「飛鳥! 何か楽しい事しましょう!?」

 

 クラスメイトの一丈字飛鳥が美少女たちにモテており、自分は本当にそういうウフフなイベントも起こらず、完全に脇役だった。

 

(確かに平凡な生活がいいって言ったけども! 劣等感は抱いてたけども!)

 

 心のどこかでなんかラノベの主人公のような展開になる事を期待していた檻主は目のあたりにした現実に絶望していた。

 

飛鳥「すいません。今度の休みに用事があって、その準備で忙しいんですよ」

モカ「パンを食べる事くらいはすぐに終わるよ?」

こころ「今度の休み何をするのかしら!?」

千聖「確かコンテストに出るのよね?」

飛鳥「ええ…って、ご存じだったんですか?」

千聖「当然よ」

 

 千聖の発言にクラスメイト達が驚いた。

 

「コンテストって一体何のコンテストに出るの!?」

「スポーツ系!?」

飛鳥「えっと…テクノロジー系のコンテストで、自作したロボットを戦わせるんですよ」

「な、なんか凄そう…」

 

 と、クラスメイト達の発言に檻主は表情をゆがませた。あんなの完全に陽キャじゃないか。陽キャにハーレムを作らせてどうするんだよと思いながらも、こういう展開があれば自分にも何かハーレムが出来るんじゃないかと期待していた。

 

「あ、檻主くん」

檻主「ん。なに?」

 

 女子から声をかけられて檻主は淡い期待をしたが…

 

「今日日直でしょ? 早くいかないと先生に怒られるよ?」

檻主「あ、うん…分かった…」

 

 本当に世の中甘くないと痛感する檻主であった。

 

**********

 

 そしてテクノロジーコンテストで優勝した。

 

「おめでとう一丈字くん!」

飛鳥「あ、どーもありがとうございますー」

 

 マスコミは大きく報じなかったものの、興味本位で観戦していたクラスメイトがすぐに皆に知らせたのだ。ちなみに檻主や一部の生徒には伝わっていない。

 

「試合見てたけど、本当に驚いたよ」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 そして…

 

香澄「飛鳥くん飛鳥くーん!」

 

 Poppin‘Partyの面々がやってきて、香澄が声をかけた。

 

香澄「聞いたよ!? なんか大会に優勝したんだって!? おめでとう!」

飛鳥「テクノロジーコンテストですね。ありがとうございます」

檻主「……」

 

 檻主は考えた。このまま結果を出したことで飛鳥は香澄達と仲良くなるのではないかと。自分が口を出す義理はないが、本来は自分がそうなっていてもおかしくはないと思っていた。

 

有咲「それにしてもお前、結構凄いよな…」

飛鳥「いえいえ。市ケ谷さんに比べたらそんな…」

有咲「謙遜すんなよ」

飛鳥「皆さんにものすごく愛されて」

有咲「マジで謙遜すんなよ?/////」

 

 飛鳥が煽ると有咲が第四の壁を超える勢いで飛鳥に迫った。

 

香澄「あ、そうだ! 優勝のお祝いしてあげる!」

飛鳥「あ、お気遣いなく」

沙綾「もしかして…やっぱりうちの男子?」

飛鳥「えっと、ほとんどのクラスですね」

「その通りだぁ!!」

 

 ヤラカシ達が現れると、飛鳥が困惑していた。

 

飛鳥「まあ、そう言う訳なので皆さんはファンの為にこれからもバンド活動を精進なさってください」

香澄「どうしてダメなの!?」

「えっ、ダメなのって…」

「香澄ちゃんに声をかけられた…♡」

 

 香澄の言葉にヤラカシ達が困惑したり、声をかけられたことを悦んでいた。

 

香澄「あ、そうだ! 皆で…」

有咲「あのな。それやっても一丈字と話す時間ほとんどないぞ?」

 

 有咲がガードをした。

 

「そんな事ないよ~」

「あ、そうだ。じゃあせめて有咲ちゃん1人でオレ達の相手して?」

有咲「なんでそうなるんだよ!!」

「今回は香澄ちゃん達4人は譲ってやるからさ」

有咲「アタシも譲れ!!/////」

 

 有咲の発言に空気が止まった。

 

有咲「お前~~~~~~~!!!!!///////」

沙綾「有咲落ち着いて!」

たえ「どんどん可愛くなってるよ!」

有咲「可愛い禁止!!////」

 

 とまあ、有咲が大暴れしたが沙綾とたえに取り押さえられていた。そんな状況を見て檻主は自分のぼっちさを嘆いていた。

 

****

 

 そして臨海学校がやってきたのだが…。

 

飛鳥「ごめんなさい。コンテストのインタビューと臨海学校がかぶっちゃって…」

 

 という事で飛鳥は不参加になった。

 

「よっしゃあ!」

「一丈字がいない今がチャンスだ!!」

 

 と、ヤラカシ達は張り切っていて、檻主もこの臨海学校なら何かあると期待をしていた。

 

 ところがどっこい…

 

「えー。最近男子が女子に対するセクハラが酷いので、レクリエーションや男女別々にします!」

「え~~~~~~~~~~~~!!!!?」

 

 と、行事を男女別々に分けられてしまい、1日目は男子は山登り、女子は海水浴という状況になってしまった。まあ、これが現実である。

 

 

檻主(オレにもハーレムをぉおおおおおおおおおおおおお!!!!)

 

 

 檻主はついに自白した。

 

 

 その頃飛鳥は、雑誌の記者とインタビューをしていたが、行事が男女別々になる事を事前に知っていたため、今頃どうなっているか心配だったという。

 

 

 

おしまい

 



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第433話「飛鳥のお仕事 ~スタントマン編~」

 

 

 一丈字飛鳥です。今日私はスタントマンのバイトをしています。

 

 まあ、バイトとはいっても『WONDER BOY』の仕事で、以前のお客さんからのリピーターなんですね。今回単発ドラマを作る事になったらしいんだけど、スタントマンが急用で来れなくなって、代役を探してたんだけど、ちょっとやそっとのレベルじゃダメらしくて、私に声がかかったんですね。

 

 一応高校生OKだし、暇だったので承諾しました。

 

 承諾したのは良いんですけど…。

 

「Pastel*Palettes入りまーす」

「宜しくお願いしまーす」

 

 …パスパレの人たちと一緒になっちゃったんですね。さて、ここからがスタートです。

 

***************************

 

 とあるスタジオ。今回は時代劇をベースとしたドラマの撮影をする事となったのだ。

 

イヴ「はぁ…あっちの衣装が良かったです」

千聖「イヴちゃん。文句言わないの」

 

 イヴが珍しく不満を漏らしていたのには理由があった。パスパレメンバーは姫役としてとっても高価な着物を着ていたのだが、共演者の男性たちは武士の着物を着ていたのだった。

 

彩「あはは…。イヴちゃんそういうの好きだからねー」

千聖「彩ちゃんもあまり気を抜きすぎないようにね」

彩「はーい」

 

 そして陰では飛鳥が隠れていた。

 

飛鳥(パスパレがいるのはちょっとまずいな…。千聖さんは良いとしても、日菜先輩が結構鋭いからな…)

 

 ちなみに上司の古堂和哉としては別に正体がバレても問題はなく、寧ろ隠している飛鳥に対して生温いと思っている。

 

 そして撮影が始まった。飛鳥はスタントマンとして陰からパスパレや他の役者の演技を見ていた。

 

飛鳥(こうしてみると本当に千聖さん達芸能人なんだなぁ…)

 

 普段は学校でしか見ない彼女達だが、仕事をしている姿は別人のように感じていた。

 

飛鳥(千聖さんも役者の仕事をずっと続けたいって言ってたし、とってもいい事だな)

 

 そう言って飛鳥がふっと笑った次の瞬間、主人公格の若い男性俳優がパスパレメンバーに近づいて、イヴの尻を触ろうしていたのだ。

 

飛鳥「!?」

 

 イヴのリアクションを見て演技でないと確信した飛鳥は困惑していた。

 

飛鳥(前にもこんな事あったな…)

 

 千聖にバレるきっかけになった京都の事件を思い出した。

 

飛鳥(まあ、パスパレもビッグになってきたし、仕方ないと言えば仕方ないのか…?)

 

 いったん撮影が終わると、千聖がその男性俳優に突っかかった。

 

千聖「すみません」

「あ? なんだよ」

千聖「その…。さっき台本通りにやってなかったと思うんですけど」

「あー。アレだよアレ。アドリブ」

千聖「は?」

「なんか緊張してるみたいだったから、ほぐしてやったの」

 

 と、男性俳優は悪びれた様子もなく、アドリブだと言って正当性を主張したのだ。勿論飛鳥も千聖も嘘だと見抜いていた。

 

千聖「そ、そうなんですか」

「そーそー。だからあんまり肩に力を入れないでやってくれたらいいよー」

千聖「お気遣いありがとうございます。ただ、吃驚するので今度からはもうちょっと別のやり方をお願いできませんか?」

「分かった分かった」

 

 そう言って男性俳優は鬱陶しそうに返事すると、その場を去っていったが、勿論理解していないし、またやる気だと飛鳥と千聖は確信した。

 

飛鳥(面倒な事になってきやがったな…)

 

 飛鳥は面倒な事にならないうちに男性俳優に対してパスパレにセクハラしないように暗示をかけた。

 

飛鳥(さて、後は自分の仕事に専念しましょう)

 

 ちなみに触られたイヴは少し驚いているようだったが、持ち前の明るさで何とか取り持った。

 

日菜「あの俳優さん。絶対チカンする気だったよね」

麻弥「ジブンも分かりました…」

彩「こ、今度やったらちゃんと言おうね!」

日菜「そうだ。ちゃんと証拠取っといたほうがいいんじゃない? マネージャーに頼んでみようよ」

 

 そう言って日菜たちはマネージャーに頼んで、承諾してもらったが、マネージャーはどこか様子がおかしかった。

 

千聖「……?」

飛鳥(…なんか手回しされてるんだな。仕方ない。こんな事もあろうかと持ってきたスパイロボを仕込むか)

 

 ちなみに依頼主である監督には許可を取っている。

 

 そして撮影はどんどんと進んでいき、パスパレの撮影は終わった。

 

『パスパレ上がられまーす』

「お疲れさまでしたー」

 

 パスパレは次の仕事があるので、その場を後にすると、飛鳥もようやく表に立つことが出来た。

 

飛鳥「よし。ここからはオレの出番だな…」

 

 そして飛鳥はスタントマンの仕事を果たした。2階から落ちるシーンや飛び乗るシーンなどがあったが、どれも1回でOKを出したのでスタッフから酷く驚かれた。

 

「な…!」

 

 この活躍ぶりは主役俳優も見ていて、驚きが隠せなかった。

 

飛鳥(もう丸山先輩達も無事だし、暗示を外そうか…いや、やめておこう)

 

「君、凄いね…」

「スタントマンの経験あるの?」

 

 スタッフたちは飛鳥の身体能力に辟易していたが、飛鳥はあっけらかんとしていた。

 

男性俳優(あ、あのやろ~!! あんなに活躍されたらオレの影が薄くなるだろうが! でもまあいい。こっちはあのパスパレと共演したからな~…って、あれ? よく考えたらパスパレとどういう演技したっけ? 確か普通に芝居してて…)

 

 と、男性俳優はパスパレ達にセクハラするのを忘れて内心ショックを受けていた。

 

男性俳優(オレとしたことが、イヴちゃんの尻を軽くたたくだけになっちゃった~!!!)

 

 激しいショックを受けるが、飛鳥としては一安心していた。

 

飛鳥(よし、この調子でやるぞ!)

 

 こうして、撮影は無事に終了して、ドラマは来月放送されることとなった。

 

*****************

 

 来月

 

彩「すごーい! いつ見ても凄いね!」

日菜「そうだねー。にしてもこの俳優さん最悪だったね」

千聖「ええ。しかもつい最近若い女の子に暴力振って逮捕されたみたいね」

イヴ「うううう…」

麻弥「いやー…。イヴさんが無事で本当に良かったっすよ」

 

 と、パスパレはバンドリ学園のカフェテリアで撮影した内容を見ていた。

 

日菜「でもあの後襲ってこなかったね」

千聖「それが妙なのよね…」

 

 千聖はこの時、飛鳥が来ていたのではないかと思い始めた。その時だった。

 

麻弥「こ、この人とてもすごいっすよ!」

千聖「え?」

 

 そこにはモブの戦闘シーンが映されていたが、一人だけあからさまに浮いているスタンドマンがいたのだ。

 

千聖(こ、これってもしかして…)

 

 顔は全部写されてないものの、見覚えのある後ろ姿に千聖はプルプル震えた。

 

 

おしまい

 



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第434話「おばけタワー3(前編)」

 

 とある夜。

 

美咲「さて、今回もこの企画がやってきました。『おばけタワー3』!」

 

 Poppin‘Partyのキーボード担当の市ヶ谷有咲と、ハロー、ハッピーワールド!のDJ担当ミッシェルの中の人である奥沢美咲がMCを務めていた。そしてひな壇席にはいつものメンバーがいたのだが、その中でもRoseliaの今井リサがもうガタガタ震えていた。

 

有咲「…リサさん」

リサ「いや!! 絶対に行かない!!」

 

 と、子供のように駄々をこねるリサ。

 

美咲「まあ、今までおばけタワーに2回も挑戦してきたわけですが…」

リサ「もうこれでまた行かせるって話になったらダシマ劇場でない!!」

友希那「リサ。我儘言うんじゃないの。後輩たちの前でみっともないわよ」

リサ「友希那にだけは絶対言われたくないんだけど…」

 

 というのも補習の話になると、後輩がいるというのに露骨に逃げようとしていたからである。

 

千聖「それはそうと有咲ちゃん。美咲ちゃん。どうしてあなた達がMCをしているのかしら?」

リサ「もしかして二人は免除なんて事ないよね!?」

有咲「いや、うちらは別におばけは…」

美咲「あー…。まあ、今回一丈字くんは強制参加みたいなので」

「は?」

 

 美咲の言葉に皆が驚いた。

 

有咲「何でも今回は『おばけタワー』という名前ですけど、おばけは出てこないみたいなんです」

美咲「いわば恐怖のタワーって所ですかね」

リサ「本当?」

あこ「あこ行きたーい!!」

こころ「あたしも行きたいわ!!」

リサ「ていうかもう行きたい子で行けばいいじゃん!!」

 

 リサがそう叫ぶが、有咲と美咲が困惑した。

 

有咲「まあ、確かにそれが一番良いんですが…」

美咲「こころとか怖いものなしだから…」

有咲「やっぱりリサさんみたいに怖がってくれる人がいるのが良いんじゃないですかね…」

リサ「それだったら有咲や美咲もリアクション出来るからさ」

千聖「まさか。先輩にやらせて自分たちは高みの見物なんて事はないわよね?」

美咲・有咲「ひっ!!」

 

 千聖が圧力をかけると、美咲と有咲が涙目でお互い抱き合った。

 

日菜「千聖ちゃんが一番こわーい」

千聖「日菜ちゃん!!」

 

******

 

有咲「えーと…気を取り直して、今回参加するメンバーは事前に票を集めているらしく、その中でも人気のあった7名に参加してもらいます」

友希那「人気…?」

美咲「えー…。選ばれてしまった方々の発表です」

 

 するとモニターが表示された。

 

第1位:今井リサ

第2位:白鷺千聖

第3位:市ヶ谷有咲

第4位:青葉モカ

第5位:松原花音

第6位:氷川紗夜

第7位:上原ひまり

 

 

 

リサ「え~~~~~~~~~~~~~~!!!?」

 

 2位と大量に差をつけて1位になったリサは青ざめ、涙目で叫んだ。

 

千聖「私2位!?」

有咲「はあ!? アタシ3位とか聞いてねーぞ!?」

花音「ふぇえ~!!? 私5位だぁ!!」

紗夜「……!?」

モカ「あ~。あたしも入ってる~」

ひまり「わ、私も…」

 

美咲「えー…。選ばれた7人と一丈字くんはクリアを目指して頑張ってください…」

リサ「嫌だぁ~~~~~~~~~~~~!!!!!!」

 

 ちなみに割合

 

ポピパ:有咲

アフグロ:モカ、ひまり

パスパレ:千聖

ロゼリア:リサ、紗夜

ハロハピ:花音

 

美咲(一応各バンドから1人ずつは出てるんだな…)

 

*******************

 

 そして7人が中に入ったが、いかにも気まずそうだった。

 

モカ「それじゃクリアを目指してがんばろ~」

千聖「飛鳥くん。一番前に行って頂戴」

飛鳥「はい」

 

 そう言って飛鳥を先頭に立たせると、その様子がモニターで映し出された。

 

あこ「リサ姉大丈夫かな…」

燐子「…絶対怒ってるよね」

 

 そして2階に上がったが、電気がついていて、特におばけがいる様子もなかった。

 

飛鳥「今回は本当におばけじゃないんですね」

リサ「……」

 

 リサはこれでもかという程警戒していて、紗夜の後ろに隠れていた。

 

紗夜「…歩きづらいのだけど」

リサ「そんな固い事言わないでぇ!」

 

日菜「あたしもおねーちゃんにひっつきたーい!!」

イヴ「ヒナさん! サヨさんの代わりになるか分かりませんが、ハグしましょう!」

 

***

 

 そしてテーブルには人数分のケーキが用意されていた。

 

有咲「ケーキ?」

 

 そして全員が近づくと、全部食べれば次の階に進めると書いてあった。

 

香澄「えー!! いいなぁー!!」

沙綾「あのケーキ誰が作ったんだろう…」

 

モカ「おほー。これは役得―」

千聖「ちょっと待って。毒が入ってるかもしれないわ」

飛鳥「毒って…」

千聖「飛鳥くん。毒味して頂戴」

飛鳥「はい」

 

 千聖に命令されて飛鳥があっさり毒味した。

 

飛鳥「普通に美味しいです」

千聖「どこも異常はない?」

飛鳥「ええ…。強いて言えばとても甘いですね」

モカ「どれどれ~?」

 

 そう言ってモカも普通にケーキを食べ始めた。

 

モカ「おほ~。つぐの家のケーキに匹敵する~」

 

つぐみ「そ、それは気になる…」

 

ひまり「うう…。今ダイエット中なのに…」

モカ「ひーちゃんのはモカちゃんが食べてあげるから~」

ひまり「……!」

 

蘭「…多分またダイエット失敗するね」

巴「だな…」

 

*********

 

 そして全部平らげて3階に進んだが、今度は違うタイプのケーキが出てきたがさっきよりも多かった。

 

飛鳥「これも全部食べれば次に進めるそうです」

花音「そ、そうなんだ…」

ひまり「ちょっと待って。これ、私達を太らせようとしてない!?」

 

 ひまりがおばけタワー3の内容に気づいて、皆が驚いた。

 

モカ「お~。そういう考え方も出来るね~」

ひまり「…分かるよ。だって沢山食べた後の体重計に乗るのは、女子にとって恐怖以外何者でもないの!!」

 

 ひまりの言葉に他の女子達が青ざめていた。

 

ひまり「そういう訳だから一丈字くん。モカ。これ、全部食べていいよ!」

飛鳥「あ、ありがとうございます…」

モカ「ひーちゃん太っ腹~」

ひまり「やめてよー!!」

 

 とまあ、そんなこんなでケーキにありつく飛鳥とモカだった。

 

リサ「なーんだ。これだったらアタシも楽勝だね!」

紗夜「全く…」

花音「あはははは…」

 

 しかし、これがとんでもない落とし穴だという事に気づいているのは一部の人間だけだった…。

 

 

つづく

 



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第435話「おばけタワー3(後編)」

 

 そんなこんなでおばけタワーを登っていく飛鳥一行。

 

 4階では数種類のお菓子が並んでいて、それを全部食べるというものだった。

 

モカ「皆さんも1個くらいならいいんじゃないですか~?」

花音「あ、うん…。1個だけなら貰おうかな」

紗夜「残すのはもったいないですし、青葉さんや一丈字くんばかりに負担をかけるのも良くないですしね」

リサ「ん! とっても美味しい! これ誰が作ったんだろ!!」

ひまり「うう…いいなぁ…」

 

 そして5階にたどり着くと、巨大なホールケーキが用意されていて、これは流石に全員で食べることにした。

 

飛鳥「こうやってのんびりとケーキが食べれるって、本当は凄く幸せな事なんですよね」

有咲「どうしたんだよ急に」

飛鳥「市ケ谷さんも私のように働ければお分かりいただけるかと」

有咲「お前の言う通りだわ。アタシすっごい幸せ」

 

 有咲の言葉に他の参加者も幸せをかみしめていた。

 

 そしてそんなこんなで最上階にたどり着いたが、他の階と変わらず電気がついていたが、そこには食べ物はなく…体重計があった。

 

有咲「やっぱりこれが目的か!!」

ひまり「う~…。私は怖いよ~…」

 

 そして全員がきちんと中に入りきると、ロックがかかった。

 

リサ「ひっ!!」

 

 電気がついているというのに、独りでにロックがかかった音を聞いてリサはビビっていた。

 

『ここまでお疲れさまでした』

 

 というアナウンスの声が聞こえてきて、リサは更に驚いた。

 

『さて、これより最後の関門に移りたいと思います』

紗夜「最後の関門…?」

 

『最後のミッションは男の子の前で体重計に乗って貰い、体重を公開する事です』

「!!?」

 

 まさかのとんでも内容に皆が酷く驚いた。

 

紗夜「ちょ、ちょっと待ってください!! それって一丈字くんに私たちの体重を教えろって事ですか!?」

『あなた達はこれまでケーキといったお菓子をたくさん食べて、現在体重が増えている筈です。そんな状態で体重計に乗ったら…分かりますね?』

ひまり「あああああ…。そうだよ…こんな状態で体重計のりたくなーい!!」

 

 ひまりが絶叫すると、他のメンバーも同じ気持ちだった。

 

紗夜「そうです! ワタシ達が体重計に乗っている間、一丈字くんには後ろを向いてもらいましょう」

『いや、それだと普通に終わってしまうでしょうが』

「!」

『ちなみに目を閉じたり後ろを向いたりした場合は、彼のメルアドに体重に関する文章を添付します』

有咲「一丈字。破壊しろ」

『その前にあなたの限界を破壊して差し上げましょう』

有咲「限界って何だよ!」

『次回からあのヤラカシ共の…』

有咲「ごめんなさい」

 

**

 

『制限時間は3分です! 今から3分以内に体重計に乗って、その男の子に体重を公開すれば無事に帰る事が出来ます。ただし、ギブアップや時間内に体重計に乗らなかった生徒はお仕置きが待っています』

リサ「お仕置き!? どんなの!?」

『地下室へ強制ワープされ、暗い地下で事故によって体の部分が欠けているという設定の人形たちと戯れながら帰って貰います』

 

 するとリサが即座に体重計に乗った。

 

『早い早い早い早い。ちなみにどんな感じの人形か、外にいるメンバーに見て貰いましょう』

 

 そう言ってアナウンサーが映像を公開したが…。

 

 ポピパ

 

香澄・沙綾「きゃああああああ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」

 

 香澄と沙綾が涙目で抱き合っていた。

 

 アフグロ

 

蘭・つぐみ「いやあああ――――ッ!!」

巴「うおあー!!!!」

 

 3人とも涙目で抱き合っていた。

 

 パスパレ

 

麻弥「ちょ、イヴさん! 落ち着いてください!!」

イヴ「悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散…」

日菜「イヴちゃんおもしろーい」

彩「面白くないよぉ!!」

 

 イヴが麻弥の懐に潜り込んでブツブツ唱えると、それを日菜が面白がっていた。

 

 ロゼリア

 

燐子「あこちゃんはまだ早いから見ちゃダメ!!」

あこ「えー!? なんでー!!?」

 

 燐子はビビりながらもあこの目をふさいでいた。

 

友希那「こんなのリサが見たら卒倒するわね」

リサ「真顔で怖い事言わないでぇ!!」

 

 ハロハピ

 

こころ「あら? どうしてこの子目玉と腕がないのかしら?」

薫「こころ。そこはあまり触れたらいけないよ…」

はぐみ「薫くん。顔色悪いけど大丈夫?」

薫「だ、大丈夫さ…」

 

 と、他の面々の反応を見てリサ達は震えていた。

 

『さて、それではシンキングタイムです。乙女の秘密を自らバラして帰るか、悲しき亡霊たちと戯れ、交通事故の凄惨さを痛感しながら帰るか、好きな方を選んでください!』

 

 そしてタイマーが表示された。

 

飛鳥「まあ、私は念のため後ろ向いて目を閉じてますね」

有咲「どうせハッタリだ!」

 

 そう言って有咲が体重計に乗ろうとしたが、リサがあっさり体重計に乗って体重が表示された。

 

有咲「体重表示されたままなのかよ!」

花音「そ、そういう仕掛けになってるんだ…」

有咲「おい一丈字! 絶対見るなよ!?」

飛鳥「あ、はい」

 

 ちなみに外からは体重がテロップで隠されている。

 

あこ「リサ姉…」

友希那「全く…」

 

 そして他のメンバーはというと、

 

モカ「あたしは別に知られても大丈夫だから~」

 

 と、あっさり体重計に乗って体重が表示された。

 

モカ「リサさんと…」

有咲「モカちゃん!!/////」

 

千聖「こうなったら仕方ないわ…。一丈字くん! 絶対こっち見たらダメよ!?」

飛鳥「はい」

千聖「花音も来て!」

 

 残りは有咲、紗夜、ひまりの3人だけになった。

 

ひまり「ど、どうしよう…」

有咲「どうしようたって…」

紗夜「一丈字くんが後ろを向いてくれていますし、私達も行きましょう!」

 

 こうして3人も体重計に乗ったが、

 

モカ「ひーちゃん…」

ひまり「言わないでっ!!/////」

 

 こうして全員免れる事が出来て、おばけタワー脱出となった。

 

 

*****:::::::::

 

美咲「えー。今回は何ともなくてよかったですね」

リサ「まあ、これくらいだったらアタシでも平気かなー」

モカ「じゃあもう一度1からやります?」

リサ「やめてよモカぁ~!!!」

 

 と、リサが情けない声を出すと皆が笑い出すと、飛鳥も苦笑いした。

 

**

 

 その夜…。

 

飛鳥「あー疲れたなぁ…」

 

 飛鳥が自室で休んでいると、スマホに通知が来た。

 

飛鳥「通知…?」

 

 飛鳥が思わず通知を開くと、おばけタワーの件に関する通知が届いて思わずメールを開いたが…。

 

飛鳥「」

 

 そこには有咲たちの体重が表記されていて、このメールを送った事を有咲たちにも知らされていた。

 

飛鳥「あー。今回そういうオチか。寝よ」

 

 そう言って飛鳥はスマホの電源を切ってそのまま眠りについた。

 

 

おしまい

 



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第436話「バレンタインデー2023 for.ハーメルン」

今回はpixivとハーメルンで同じ話を投稿しました。
ただ、結末だけは違います。


 

 

 バレンタイン。それは、女性が男性にチョコレートを渡す日である…のは日本だけで、海外では寧ろ男性が女性に愛を伝える日でもあります。

 

 さて、今年はどんなバレンタインになるのでしょうか?

 

******************

 

 物語は飛鳥の家から始まる。午前5時。いつもの時間に飛鳥は目を覚まして黙々と勉強をしていたが、今日はバレンタインデーだと知り、少し気が重くなる。

 

 本来であればもう友希那達は3年生で受験やら卒業を待つだけなので、自由登校となっているが、時系列は第1シーズンのままである。

 

 午前6時。飛鳥が朝食を済ませていたが…。

 

飛鳥(早く来たらチョコをせびってるって思われるかな…)

 

 と、ヤラカシ達の事を思い浮かべて少しブルーな気分になったので、今日は遅めに登校することにした。

 

飛鳥(まあ、肝心の女子達は女子同士で送りあうだろう。猪狩の時もそうだったしな…)

 

 とか言いながら、同級生の林日向からは中学3年間チョコを貰っていた男である。

 

 

*************

 

 そんな事はさておき、いよいよ登校する時がやってきた。飛鳥は様子見として超能力で存在感を消して、登校していたが…。

 

 露骨に女子からチョコを貰えるのを期待している男子がわんさかいた。わざとらしい口笛吹いたり、自分の机を何度ものぞき込んだり、正直気色悪い。

 

飛鳥(まあ、瀬田先輩あたりがモテるだろうから、あの人に任せて何とか今日はやり過ごすか…)

 

 その時だった。

 

「一丈字くん」

飛鳥「あれ?」

 

 クラスの女子生徒3人がやってきた。小柄の少女、ぽっちゃりの少女、のっぽで目が隠れている少女。他のクラスの男子からはブス呼ばわりされていた。

 

飛鳥「どうされました?」

萬部「此間のお礼と言っちゃなんだけど、はい。バレンタイン」

木茂田「あたしもあげる」

 

 いきなり3人の女子からチョコを貰って、飛鳥も周りの生徒達も驚いた。

 

飛鳥「え!? 本当によろしいんですか!?」

萬部「いいのいいの。本当に助かったし」

木茂田「一丈字がいたからスムーズに進んだ。ありがとう」

 

 木茂田がそう言うと、小築が頷いた。

 

飛鳥「ありがとうございます」

萬部「ホワイトデーは気にしなくていいからね。じゃ」

 

 そう言って3人が去っていったが、クラスメイト達は少し意味深な反応をしていた。正直ブスでも、やはり女子から貰うのは羨ましいと…。

 

 そんな時だった。

 

「飛鳥!!」

 

 こころがやってきた。

 

飛鳥「弦巻さん。おはようございます」

こころ「バレンタインね!」

飛鳥「そうですね」

こころ「飛鳥はチョコ貰ったのかしら!?」

飛鳥「ええ。先ほど3個貰いましたよ」

こころ「良かったわね!」

飛鳥「ええ」

 

 と、他愛のない話をしていたが、飛鳥は何かが起こりそうな予感がしていた。

 

こころ「そうだわ! あたしもチョコをあげるわ!」

飛鳥「え、本当ですか?」

こころ「そういやはぐみ達も飛鳥に渡したいって言ってたわね」

飛鳥「あ、そうですか…」

 

 その時だった。

 

「はい、ちょっと待ったー!!」

こころ「あら?」

飛鳥「……」

 

*****************

 

 食堂

 

「一丈字。お前が貰えるチョコは1人だけだ!」

「あとはオレ達に譲れ!」

飛鳥「じゃあ弦巻さん」

「あっさり!!」

 

 食堂に集められた飛鳥はヤラカシ軍団から、バンドガールから貰えるのは1人までというルールを設けられたが、正直1人に絞った所で、ヤラカシ達が他の24人から貰えるとは到底思ってもいなかったし、他の少女たちもあげるつもりはなかった。

 

飛鳥「これで良いですね?」

「お、おう…」

「まあ、こころちゃんは元々仲が良かったようだからくれてやるが、もう残りの子には手を出すなよ!?」

 

 ヤラカシの言葉に飛鳥は目を閉じて承諾したが…。

 

友希那「ちょっと待って。どうしてそういうのをあなた達が決めるの?」

蘭「一人に絞った所で、アタシ達があげると思ってる訳?」

「貰えないのはまあ仕方がない」

「!?」

「だがな…」

 

 ヤラカシが目をカッと見開いた。

 

「一丈字だけ可愛い女子から沢山貰うのが納得いかないんじゃーい!!」

「主人公だからってやり過ぎだろ!!」

「主人公だからだよね!? やっぱり主人公だからですよね!?」

「オレ達にも活躍させろぉ!!」

 

 と、一斉に不平不満を言い出したが、

 

モカ「そんな事言って、此間の大掃除ほっぽりだしてあたし達にやらせたの誰だったっけ~?」

 

 モカがそう言うと、2組の男子たちが視線をそらした。

 

蘭「あれだけの事しといて、チョコ貰えると思ってるの?」

巴「で、しかも結局アレ一丈字も手伝ってくれたんだぞ?」

つぐみ「モカちゃんが手伝わせたの間違いだけど…」

ひまり「とにかく、あなた達にはチョコはあげません!!」

 

 と、Afterglowには思い切り振られてしまった。

 

友希那「まあ、私達も言うまでもないわね」

紗夜「ええ」

 

 Roseliaからも拒絶され、他のバンドも同じだった。

 

飛鳥「まあ、後はゆっくり話し合ってください」

 

 そう言って飛鳥が去ろうとすると、

 

リサ「あ、ちょっと待って飛鳥くん!」

 

 香澄達が追いかけていった。

 

******************

 

 そしてどうなったかというと…。

 

リサ「はい! バレンタインチョコ!」

飛鳥「!?」

 

 リサがバレンタインチョコを作ってきて、飛鳥は驚いていた。そして周りには友希那、紗夜、燐子、そしてあこもいた。

 

飛鳥「用意してくださったんですか?」

リサ「うん。まあ、なんだかんだ言って飛鳥くんには今まで助けられてばかりだったからね…」

飛鳥「いえいえ…」

 

 リサの言葉に飛鳥が苦笑いしていた。

 

あこ「これだったらあこも何か用意すれば良かったかなー」

燐子「あ、あこちゃん…/////」

 

 義理だろうけど、思った他大胆な事をしようとするあこに燐子はドギマギしていた。

 

紗夜「風紀委員としてあまり男女間のチョコの譲渡は良く思いませんが…。Roseliaが一丈字さんにお世話になっているのは事実ですので、今回は大目に見ます」

飛鳥「あ、ありがとうございます…」

リサ「そういや、他にもチョコ貰った?」

飛鳥「ええ…。クラスの方から3個貰いました」

「3個も貰ったの!!?」

 

 飛鳥の言葉にあこが驚いた。

 

飛鳥「意外でしょう」

あこ「なんかね。チョコ貰えるだけで凄いんだって」

飛鳥「ええ…。普段は女子同士でチョコの交換をさせるものだと…」

リサ「アハハ…。でも、彼氏がいる子は彼氏にチョコ渡してるし、好きな男子がいる場合はその男子に送ったりしてるから…もしかしたら…」

飛鳥「そうですか…」

 

 飛鳥が一息ついた。

 

あこ「そうだ! あこもチョコあげたいから、放課後時間空けといて!」

飛鳥「え?」

紗夜「う、宇田川さん!!」

 

 その時、イヴ以外のパスパレ4人と、薫、花音がやってきた。

 

日菜「あ! ここにいた!」

紗夜「日菜。それに皆さんも…」

千聖「Roseliaと一緒だったのね。一丈字くん」

飛鳥「ええ…。今井先輩からチョコを貰いまして」

日菜「リサちーのチョコ美味しいもんねー」

あこ「あこもチョコあげたくなったから、放課後チョコ買いに行くの!」

日菜「いいねー! るんってしてきた!」

飛鳥「え…」

 

 日菜の言葉に飛鳥が驚いた。

 

飛鳥「そういえば今日はパスパレの仕事って…」

千聖「どういう訳かオフよ」

飛鳥「そ、そうですか…」

薫「これもきっとバレンタインの神が与えてくれたのだろう」

日菜「それじゃ皆でいこー!!」

飛鳥「お気をつけて…」

 

 飛鳥がそう言うと、あこと日菜が飛鳥を見つめた。

 

あこ「いや、飛鳥くんも行くんだよ?」

飛鳥「あ、これ。買い物に出かけるパターンだったんですか?」

日菜「おねーさん達が買ってあげるからねー」

飛鳥「有難いですが、本当によろしいのですか!?」

千聖「ええ。あの男子たちも懲らしめたいし」

友希那「身の程を弁えろと言いたいわね」

飛鳥「何があったんですか…」

 

 とまあ、色々不安はあったが、この後飛鳥は上級生組+あこと魅惑のショッピングをするのだった。当然目立った。

 

 

おしまい

 



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第437話「山吹家にお泊り!(前編)」

 それはある雨の日の事だった。

 

「参ったな…。急に雨が強くなりだしちゃった」

 

 飛鳥は夜食を買いにやまぶきベーカリーにやってきたのだが、雨が急激に強くなった上に風も大きな音を立てて吹いていた。やまぶきベーカリーの窓がガタガタと揺れている。

 

飛鳥(まあ、超能力があるから別にいいんだけどね)

 

 そう、この男は超能力を持っていて、その気になれば瞬間移動で一気に家に帰るなり、自分だけバリアを張って雨と風をしのぐこともできるのだ。

 

 だが…

 

「うーん…。雨がこんなに強いんじゃ外に出るのは危険だよ。雨宿りしていきなよ」

 

 そう言って店番をしていた山吹沙綾が話しかけると、飛鳥が困惑していた。だが、ここで強引に超能力を使って帰ろうとすれば、恐らく怪しまれるだろう。そう考えていた次の瞬間、ガシャーンという大きな音がした。

 

沙綾「な、なに!?」

飛鳥「……」

 

 飛鳥がこっそり超能力で感知すると、どこからか飛んできた看板が、やまぶきベーカリーの近くにあった家の窓ガラスに突き刺さったのだ。

 

飛鳥「…恐らくどこかの建物に看板とかが突っ込んだんじゃないですかね」

沙綾「え!? マジで!?」

 

 飛鳥の言葉に沙綾が少し怖がると、沙綾の妹である紗南が涙目で沙綾に縋りついてきた。

 

沙綾「あ、紗南。大丈夫よ」

 

 沙綾が宥めるが、紗南は沙綾の服に顔を埋めたままだった。そんな時、沙綾の弟である純もやってきた。

 

純「ねーちゃん! 今警報出てる!」

沙綾「暴風警報?」

純「暴風、大雨、洪水警報!」

 

 トリプルじゃねーかと飛鳥は思っていた。一応天気予報を確認して、この時間帯ならでかけても大丈夫だろうと思っていたのだが、全然大丈夫なかった。飛鳥は全く運がなかったのである。ちなみに客は飛鳥一人だけである。

 

沙綾「うーん…。警報解除しそう?」

純「明日の朝まで解けなさそうな上にさっき現場に出てたアナウンサーがテレビ局にいた司会者たちに文句言ってた」

飛鳥(現場に出ているアナウンサーの皆さん。お疲れ様です!!)

 

 恐らく純が見ていたテレビ局のアナウンサーだけでなく、他のテレビ局アナウンサーも現場に駆り出されているのだろう。

 

 ちなみにどうでも良いが、飛鳥が広島にいた頃に暴風警報で中継しているアナウンサーの護衛任務に当たった事があり、その時のアナウンサーはベテランで、若手にはまだ早いと言いながらも、パワハラ防止の為にたった一人で中継をしていた事があり、感動を巻き起こしていた。

 

飛鳥「まあ、今ならまだ何とかギリギリ帰れるかな…?」

沙綾「ダメだよ! 危ないよ!」

純「そうだよ! 泊まって行けよ兄ちゃん!」

 

 純の言葉に飛鳥はぎょっとした。というのも、もし沙綾の家に泊まっていたことが知られたら面倒な事になるだろうな~と思っていた。

 

沙綾「…うちのクラスの男子たちとか気にしなくていいからね?」

飛鳥「そうしたいのは山々なんですが」

 

 その時純はこう言った。

 

純「姉ちゃんの裸を見ても何も良い事ないぞ」

 

 純がそう言うと沙綾は無言で拳骨して、純は涙目で頭を抑えていた。

 

純「て~!! 何すんだよこのうんこ!」

沙綾「だからそれやめなさいって言ってるでしょ! 汚いなぁ!」

 

 沙綾と純が言い争いをすると、飛鳥は広島にいる親友とその姉を思い出していた。こんなケンカしてたなぁと。そう思い出していると、紗南が飛鳥の服を掴んだ。

 

飛鳥「…どうしたの?」

紗南「いっちゃだめ…」

 

 紗南がそう呟いたその時、また大きな音が外に響き、硝子が割れる音もはっきり聞こえた。

 

純「ひぃいいいいいい!!」

紗南「こわいよ~!!!」

飛鳥「大丈夫大丈夫。ちゃんとお姉さんたちの傍にいれば大丈夫…」

 

 純が青ざめて紗南が飛鳥の服を掴んで泣き出すと、飛鳥は紗南を宥めた。すると沙綾が困った顔をした。

 

沙綾「参ったな…。父さんも母さんもちょっと出かけてるのに…」

飛鳥「え、どうしてまた…」

沙綾「今日近くのスーパーでいつもはしないセールをしてたから、2人で買いに行ったんだよ。まさかこんなに雨と風が強くなるなんて…」

 

 と、沙綾がそう言うとやまぶきベーカリーの入り口の扉がガタガタ揺れていた。

 

沙綾「あ、そういえば店の前にボート置きっぱなしだった!」

飛鳥「あ、私が取ってきますね」

 

 そう言って飛鳥がすかさず外に出ると、物凄い風がしていて、一瞬看板や木が飛んできたのを三姉弟は見逃さなかった。

 

沙綾「ちょ、ちょっと一丈字くん! 無理しなくていいから! って、純と紗南は出ちゃダメ!!」

 

 沙綾が慌てて一声かけると、純と紗南が様子を見ようとしたので止める。

 

飛鳥(すっごい雨だな…。これじゃ外で歩くのは…)

 

 と、ボードを抱えて店に戻ろうとしたが、がれきやら店の商品が飛鳥にめがけて飛んできて、飛鳥はボードを盾にして店に戻ったが、ボードに傷がつくと弁償しないといけなくなるのでこっそり超能力でコーティングしていた。

 

 そして店に戻ってきたが、飛鳥はびしょぬれだった。その気になれば無傷で行けたのだが、それをやると山吹三姉弟に怪しまれるのでやらなかった。

 

飛鳥「結構飛ばされてました…」

沙綾「大丈夫!? 結構びしょぬれになってるけど…」

飛鳥「ああ、そうですね…」

沙綾「ちょっと拭くもの持ってくるから待ってて!」

 

 そう言って沙綾からタオルを貸して貰った飛鳥は髪の毛などを拭いていた。

 

飛鳥「参ったな…思った以上に雨と風が強いな…」

沙綾「一丈字くん。もし良かったら…っていうか、もう今日はうちに泊まっていきなさい」

飛鳥「やっぱりそうなりますよね…」

 

 沙綾の言葉に飛鳥は困惑していた。

 

純「え、うちじゃ嫌なのか?」

飛鳥「君のお姉さんのファンの男たちに嫌がらせされるのが嫌なんです」

純「えー!? 趣味わるー!!」

沙綾「純? 晩御飯抜きにされたいのかしら?」

純「ひ、卑怯だぞー!!」

飛鳥「二人とも落ち着いてください」

 

 と、結局飛鳥は山吹家にお泊りする事となったのだ。

 



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第438話「山吹家にお泊り!(中編)」

沙綾「…そうなんだ。父さんと母さんはスーパーで雨宿り? 分かった」

 

 沙綾は自分の両親と電話をしていた。

 

亘史「…沙綾たちは大丈夫か?」

沙綾「うん。純と紗南も家にいるんだけど、お客さんが店に取り残されちゃったの。前に話した一丈字くんって子なんだけど」

亘史「あの子か!」

 

 沙綾の言葉に父親は特に嫌がる様子もなく驚いていた。

 

沙綾「で、うちの店のボードが風に飛ばされてとってきてくれたんだけど、服がびしょぬれになっちゃって…。父さんの服貸してくれる?」

亘史「それは構わないが、一丈字くん怪我はしてないのか?」

沙綾「一丈字くん本人に聞いた所、大丈夫みたい。父さんと母さんも気を付けて!」

亘史「分かった。何かあったら連絡してくれ!」

 

 そう言って電話を切った。

 

***

 

沙綾「一丈字くんの服、明日までに乾かすから。それから悪いんだけど、父さんの服着てて」

飛鳥「ありがとうございます。お洋服は弁償させて頂きますので…」

沙綾「大丈夫だよ。寧ろ父さんも気を遣うから」

 

 と、飛鳥は山吹家にお泊りする事となったのだが…。

 

沙綾「そうだ。びしょぬれになったから先にお風呂入ってきたら?」

飛鳥「いえ、客人の私が先に入るなど…」

 

 遠慮する飛鳥に沙綾はわざとからかってみた。

 

沙綾「…もしかして飛鳥くんって、女の子が入った後にお風呂入りたいの?」

飛鳥「そういう訳ではありませんが…あっ」

 

 沙綾の言葉に飛鳥は普通に言い返したが、ある事を想いだして気まずそうに視線をそらした。

 

飛鳥「…そうですね。申し訳ございませんが入って来ます」

沙綾「宜しい」

 

 飛鳥の言葉に沙綾が反応すると、純と紗南は首を傾げた。

 

********

 

飛鳥「お風呂頂きました」

沙綾「はーい。それじゃ純入ってきて」

純「はーい」

 

 そう言って純が風呂に入ると、飛鳥は沙綾を見た。

 

飛鳥「あ、山吹さん」

沙綾「なあに?」

飛鳥「何かお手伝いする事あります?」

沙綾「そうだね…。私今料理してるから、紗南の事見ててくれる? まあ、一人でしてたら別にいいんだけど」

飛鳥「あ、はい。分かりました…」

 

 そう言って飛鳥は紗南の方を見たが、紗南は遊んでほしそうにしていて、料理が出来るまで紗南と遊んでいた。純が風呂から上がると今度は紗南が風呂に入り、純が飛鳥に遊んでもらっていた。勿論紗南よりやんちゃだったので、沙綾に時折釘を刺されていたが、

 

純「ところで兄ちゃんってねーちゃんと付き合ってんの?」

 

 純の言葉に飛鳥が少し驚いていたが、沙綾は頬を赤らめた。

 

沙綾「コラ! これ以上変な事を言うと本当にご飯抜きにするからね!?」

純「顔赤くなってるぞねーちゃん」

沙綾「純―!!!」

 

 と、また姉弟喧嘩が始まって飛鳥は苦笑いした。すると紗南がすぐにやってきて、

 

紗南「さーなをなかまはずれにしちゃダメ~!!!」

 半泣きでやってきて、すぐに飛鳥に抱っこされに行った。

 

***

 

 そして夕食、飛鳥が来ているのかどうかわからないが、この日はクリームシチューだった。

 

沙綾「一丈字くんってシチューにはご飯食べる人?」

飛鳥「いえ、お任せします…」

沙綾「あ、うちも特にそんなこだわりないから大丈夫だよ」

 

 山吹家は家がパン屋という事もあり、シチューにはフランスパンを食べるのだ…。

 

純「まあ、カレーは流石にご飯だけどね」

沙綾「まあ、それはそうね…。あ、おかわり沢山あるから沢山食べてね」

純・紗南「はーい!」

沙綾「一丈字くんもよ」

飛鳥「あ、はい…」

 

 そして食事を終えると…。

 

飛鳥「皿洗いましょうか?」

沙綾「そこまでしなくて大丈夫だよ。まあ、ちょっとお風呂入ってくるから弟たちの面倒見ててくれたら…あ、でも。覗かないでよ?」

飛鳥「ええ、それは勿論です」

 

 沙綾がわざとからかうと飛鳥は食い気味に答えた。理由はただ一つ、学園生活が終わるからだ。

 

純「ねーちゃんの裸を見て何もならないよ。それよりもゲームしようぜ!」

沙綾「コラ! 夜にゲームはダメだっていつも言ってるでしょ!」

純「えー。いいじゃんか今日くらい!」

沙綾「ダーメ」

純「ちぇー。じゃあ兄ちゃんに学校のねーちゃんの事聞くから」

沙綾「ぐっ…9時になったらちゃんとやめるのよ! いいわね!」

 

 そう言ってお姉ちゃんをしてる沙綾を見て飛鳥は少し新鮮味があると思っていた。

 

 そんなこんなで飛鳥達はテレビゲームで遊んだ。

 

飛鳥「純くん。紗南ちゃん」

純「なに?」

紗南「?」

飛鳥「お姉ちゃんは好きかい?」

 

 飛鳥の言葉に純が驚くと、紗南は満面の笑みを浮かべた。

 

紗南「さーな、おねーちゃんだいすき!」

飛鳥「そっか…。純くんは?」

純「ま、まあ…口うるさいけど嫌いじゃない…」

 

 と、照れくさそうにそう言うと飛鳥は苦笑いした。

 

飛鳥「そっか。おじさんは一人っ子だから、兄弟のお喋りとか新鮮なんだ」

純「いや、おじさんって…」

紗南「おにーちゃんは、おじさんじゃないと思うよ?」

飛鳥「ありがとう。たまに年齢聞かれるからもうそんなに老けて見られるのかなって思っただけ」

 

 純と紗南の言葉に飛鳥は苦笑いしていると、紗南は飛鳥に効いた。

 

紗南「飛鳥おにーちゃんは沙綾おねーちゃんのことすき?」

飛鳥「……」

 

 紗南の言葉に飛鳥は苦笑いした。

 

飛鳥「先に行っとくね。お嫁さんにしたいっていう意味の『好き』じゃなくて、普通に人として『好き』だよ。今日だっておじさんに色々気を遣ってくれたしね」

紗南「おにーちゃんはおじさんじゃないもん!」

飛鳥「分かった分かった」

 

 飛鳥が自分の事をおじさんと呼ぶのを気に入らない紗南はぷりぷり怒っていた。

 

飛鳥「お姉さんがバンドをやってるのを映像で見てるんだけど、とっても楽しそうにしているのが分かるよ」

純「そう?」

飛鳥「うん。まあ、お姉さんだけじゃなくて他のお姉さんたちもだけどね」

 

 飛鳥がフッと笑った。

 

飛鳥「まあ、そういう事で純くん。王手!」

純「あっ!!」

 

つづく



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第439話「山吹家にお泊り!(後編)」

 

沙綾「さあ純! もう9時になるわよ!」

純「分かったよ」

 

 そう言って沙綾が釘を刺すと純は電源を切ってゲーム機を片付けた。

 

飛鳥「もう就寝されるんですか?」

沙綾「うーん…。ちょっと早いんだけど、この天気じゃあね…。布団しかなきゃ」

飛鳥「あ、そう言えば私はどこで寝れば良いですか?」

純「川の字で寝ようぜ川の字!」

飛鳥「川の字って…」

純「オレと飛鳥にーちゃんと紗南!」

沙綾「コラ! 姉ちゃんを仲間外れにするんじゃない!!」

 

 沙綾の言葉に飛鳥は面食らった。

 

沙綾「なに? 飛鳥くんも仲間外れにする気だったの?」

飛鳥「いえ、てっきり男女別々だと思ってました…」

沙綾「まあ言いたい事は分かるけど、紗南もまだ小さいし、私だって一応…女の子だから…////」

 

 沙綾がちょっと照れくさそうにすると、純が複雑そうにしていた。

 

沙綾「何よ」

純「いや、女の顔になってる姉ちゃんってなんかやだなと思って…」

沙綾「安心して? 純は外で寝て貰うから」

純「何でだよぉ!」

飛鳥「二人とも落ち着いて」

紗南「仲良くしなきゃダメ―!」

 

 そんなこんなで4人で川の字で寝ることになった飛鳥達だったが、純、飛鳥、紗南、沙綾の順番だった。

 

紗南「おねーちゃんと飛鳥おにーちゃん、隣同士じゃなくていいの?」

沙綾「うん。大丈夫だよ」

飛鳥「隣同士じゃなくてもお姉ちゃんと仲良しだから心配しなくていいよ」

 

 まあ、もっとも沙綾の父親に殺されるので、隣同士で寝る訳には行かなかった。

 

沙綾「でも父さんたち、戻ってこれなかったんだ…。ちょっと電話しよう」

 

 と、沙綾が電話をかけようとしたら父親から電話が来た。

 

沙綾「あ、もしもし父さん?」

 

 純たちにも聞こえるようにスピーカーモードにした。

 

「おお、沙綾か! 父さんだ!」

沙綾「そっちは大丈夫!?」

「ああ。もう思った以上に酷くてスーパーの人たちが仮眠室を開けてくれたんだ。父さんたちは今夜そこで寝る」

沙綾「母さんは大丈夫なの!?」

亘史「ああ。母さんは父さんがついてるから安心してくれ!」

 

 沙綾の母である千紘は体が弱く、一人で家事をするのを沙綾がとめるほどであるため心配していた。

 

亘史「それよりもそっちは大丈夫か?」

沙綾「うん。純と紗南と一丈字くんと今日はリビングで寝ることにしたから…勿論変な意味じゃないからね!?///」

亘史「分かってる分かってる。純と紗南も良い子にしてるんだぞ」

純「うん」

紗南「はーい」

亘史「それから一丈字くん…」

飛鳥「ええ。本日はご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」

亘史「いや、それはいいんだ。君もゆっくり眠ってくれ」

飛鳥「ありがとうございます。ただ…」

「?」

 

 飛鳥が真剣な表情でこう言い放った。

 

飛鳥「今夜はもうずっと嵐に見舞われます。旦那様と奥様もお気を付けください」

沙綾「だ、旦那様って…」

 

 飛鳥の言葉に沙綾が苦笑いすると、

 

亘史「あ、お父さんって言ってくれても大丈夫だよ」

飛鳥「そ、そうですか…」

沙綾「うん。気にしなくていいからね…一応…///」

飛鳥「いえ、結構お父さんって言われるのに抵抗がある人がいらっしゃるんですよ」

 

 沙綾の顔を見て飛鳥が苦笑いすると、千紘が声をかけてきた。

 

千紘「一丈字くん。いつもうちの娘と仲良くしてくれてありがとう」

沙綾「か、母さん!」

飛鳥「いえ、沙綾さんもそうですが、純くんや紗南ちゃんにもお世話になりました。ですので…」

 

 飛鳥はまた真剣な表情で電話に向かってこう言った。

 

飛鳥「沙綾さん達は私が責任をもってお守りします」

 

 飛鳥の言葉に沙綾たちは目を開くと、亘史たちも流石に面食らった。

 

飛鳥「ですので、旦那様と奥様はご自身の身の安全を確保してお休みください。一晩お世話になります」

亘史「あ、ああ…」

千紘「…沙綾。火の元だけ気を付けて頂戴」

沙綾「分かった」

 

 千紘の言葉に沙綾が返事すると、

 

千紘「一丈字くん」

飛鳥「あ、はい…」

千紘「純と紗南もそうだけど…沙綾の事を特に宜しくお願いします」

沙綾「母さん。一丈字くんそういう意味で言ったわけじゃないから/////」

千紘「あと間違って抱き着いたりしたらダメよ?」

沙綾「もう切るからね!!! お休み!!//////」

 

 そう言って沙綾はガチャ切りすると、飛鳥の方を見た。

 

沙綾「…一丈字くん」

飛鳥「すみません。ただ、泊めて頂いたあなた方に万が一の事があれば、一生の恥になります故」

沙綾「何かお侍さんみたいだよ…?」

飛鳥「いえ、事実ですので…お父様に合わせる顔が」

沙綾「ごめん。やっぱり旦那様呼びにして貰っていいかな//////」

 

 お義父さんという響きが思わず恥ずかしくなってしまった沙綾であり、純と紗南がじーっと沙綾を見てきたので、強制的に眠らせようとしていた。

 

沙綾「とにかく電気消すよ! お休み!!」

 

 そう言って沙綾が電気を消して眠らせようとするが、勿論純と紗南は寝付けなかった。そして飛鳥はそれを察知していたのか、超能力でこっそり眠らせた。勿論沙綾もである。

 

飛鳥「おやすみなさい。3人とも…」

 

***********

 

 午前0時。飛鳥は起き上がった。というのも、見回りである。

 

飛鳥(まあ、流石に山吹さんの部屋に行くわけにはいかないから、部屋で大人しくしてるか…)

 

 飛鳥は沙綾たちが寝静まっているのを確認して、布団の上からでも出来る事をやった。明日の授業の事、格闘技のイメージトレーニング、超能力で1階を見回りするなど、出来る限りの事をやった。

 

 外は相変わらず雨の音と嵐の音がしていたが、寝る前と比べて弱まったような気もした。

 

飛鳥(ガラスが割れたところとか、看板が突っ込んだところとか大丈夫かな…)

 

***********

 

 午前7時…

 

「ん…」

 

 沙綾が目を覚まして起き上がって横を見ると、純と紗南がいたが飛鳥の姿はなく、布団はもうたたまれていた。

 

沙綾「一丈字くん!?」

 

 沙綾がそう叫ぶと、

 

「おはよう沙綾」

沙綾「!?」

 

 亘史と千紘が顔をのぞかせた。

 

沙綾「と、父さん母さん!」

千紘「よく眠れたようね。良かったわ」

沙綾「い、一丈字くんは!?」

亘史「彼ならもう帰ったよ」

沙綾「え!!?」

 

 沙綾が叫ぶと純と紗南も起きた。

 

 

*****************

 

 バンドリ学園。沙綾が飛鳥と接触できたのは1時間目が終わった後の休憩時間だった。

 

沙綾「昼休憩。時間空けて貰うからね」

飛鳥「ええ、それは構いませんが…」

 

 沙綾が有無を言わせない態度だったが、飛鳥は抵抗する様子はなかった。だが、どこか眠そうで両目には隈も見えていた。周りの生徒は一体何事かと見ていた。

 

沙綾「それもそうだけど、どうして一人で無茶したの!」

 

 沙綾は飛鳥にそう怒鳴ったが、飛鳥は予想通りだと言わんばかりの表情をしていた。

 

飛鳥「何を仰ってるんですか?」

沙綾「え?」

飛鳥「あなたには純くんや紗南ちゃんを守る義務がある筈ですよ。あの2人の為にも…あなたは元気でいなきゃいけないんです」

 

 純と紗南を盾にして、沙綾に何とか納得させようとしていた。

 

飛鳥「それに野暮な事を言うんじゃありませんよ」

沙綾「え!?」

飛鳥「山吹さん達も私も生きている。それで何よりじゃないですか」

 

 飛鳥の発言に沙綾はブチギレた。

 

***

 

 昼休憩。飛鳥とPoppin‘Partyは予約制のレストスペースにいた。畳が敷かれていて、10人くらいは余裕で入っていた。そんな中で飛鳥は沙綾に膝枕されていた。

 

飛鳥「山吹さん…」

沙綾「ダーメ! 反省しなさい!」

飛鳥「あ、はい…?」

 

 沙綾が何故膝枕をしているのか謎に思っていたが、それ以上に眠たかったので考える事をやめた。りみと有咲は頬を染めて、香澄とたえは興味津々に見ている。そして外にいたヤラカシは何とも言えないオーラを出していた。

 

飛鳥「ああ…。あのヤラカシ達の中に私をぶちこむんですね…」

沙綾「本当にそうしてあげよっか?」

飛鳥「多分放置されて山吹さん達に詰め寄るでしょうね。オレ達にも膝枕してくれって」

有咲「それもそうだけど、本当に寝てねーんだな…」

飛鳥「3時間は寝てました」

沙綾「その時間って布団で横になってただけでしょ?」

飛鳥「はい」

沙綾「~~~~!!!」

 

 飛鳥の言葉に沙綾は唸って両手で飛鳥の頬を掴んだ。結局こういったやり取りが当分続いたという。

 

 ちなみに紗南や純が寂しがっているという理由でたまに行くことになったのは別の話…。

 

 

おしまい

 



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第440話「パスパレ伝説」

 

 

『Pastel*Palettesがあのコントに挑戦!』

 

 

ロック伝説

 

 

千聖「昨日のライブも最高に盛り上がったけど、所々は極端に盛り下がって、最終的にはお通夜になったわ。なんで私たちのライブはいっつもそうなのよ!」

 

 千聖がそう怒鳴ると、彩、麻弥、イヴは気まずそうに俯いた。

 

日菜「そんなの決まってるよ。千聖ちゃんが悪いんじゃん」

千聖「何ですって!? 私が悪いって言うの!?」

麻弥「お、落ち着いてください千聖さん!」

日菜「だってそうじゃん。千聖ちゃん…ライブしてる時はあんなに偉そうにしてるのに、絵が凄く下手じゃん」

千聖「それライブ関係ある!? 違うわよ!!」

 

 日菜の言葉に千聖がものすごく慌てていた。画の下手さは本人も自覚していたため、どうしても認めたくなかったのだ。

 

日菜「此間の収録だって、ドラえもんを描いてくださいって言って、化物描いてたじゃん」

千聖「化物って何よ! 失礼ね!!」

日菜「スタッフさんに聞いたんだけど、あの放送思った以上に受けてて、ツイッターでもバズったから今後は絵を描く仕事を増やすって言ってたよ? 正直女優業よりそっちやって貰うかもって」

千聖「いやあああああ!! そんな話聞きたくなかったぁあああああ!!」

 

 日菜の言葉に千聖は涙目で頭を抱えた。確かに今まで女優としてやってきたのに、そんな事になったら間違いなくイメージダウンになるばかりか、完全に笑い者である。他のメンバー3人とも何とも言えない顔をしていた。

 

千聖「それを言うなら、日菜ちゃんにも原因はあるわよ!」

日菜「あたしー!? あたしちゃんとやってるよ!」

千聖「いいえ! 日菜ちゃんはMCやってる最中に全然話集中してないし、るんってしないっていう理由で曲変えちゃうし、正直お客さんも困ってるのよ!」

日菜「えー! だったら言ってよー!!」

千聖「…いちいち言わないといけなかったらこの世界やっていけないのよ!」

 

 日菜の自由奔放ぶりに千聖が困惑すると、他の3人も何とも言えなかった。

 

麻弥「まあまあ二人とも落ち着いてくださいよ…」

日菜「麻弥ちゃんだっておかしい所あるよ!?」

麻弥「え!? そ、そんな事ないですよ! ジブンはちゃんと…」

 

 日菜が言いがかりをつけてきたので、麻弥が否定しようとしたが千聖が気まずそうに腕を組んだ。

 

千聖「…そうね。麻弥ちゃん」

麻弥「な、何ですか!?」

千聖「激しく首を振るのやめなさい! パスパレそういうバンドじゃないのよ!!?」

麻弥「え!? そ、そんなに激しく振ってました!?」

日菜「うん。なんかX JAPANのYOSHIKIみたいだった」

千聖「日菜ちゃん。『さん』をつけなさい…」

麻弥「た、確かに首は振ってましたけど、そんなに激しく振ってないっすよ!?」

日菜「じゃあビデオで確認してみようよ」

 

 そう言って映像を見返したが、確かに他の4人が麻弥を見ていない所で首を激しく振っていた。

 

麻弥「……!」

日菜「ね?」

麻弥「ご、ごめんなさい…」

千聖「分かれば宜しい」

 

 何か納得いかなかったが、麻弥は素直に自分の非を認めることにした。

 

イヴ「も、もしかして私も変な所ありましたか!?」

千聖「イヴちゃんはちゃんとやってたわよ…」

日菜「んー…。まあ、強いて言うなら…」

「!?」

 

 日菜が考えた後、イヴの方を見つめた。

 

日菜「最近『ブシドー』が多すぎる事かな」

麻弥「あ、あー…」

千聖「言われてみれば確かに…」

日菜「何か『ブシドー』って言えばいいだろうみたいな感じがするから、ちょっと気を付けて?」

千聖「…それ、あなたの「るんっ」も同じじゃないかしら」

 

 自分の事を棚に上げたように言う日菜に対して、千聖は呆れていた。

 

彩「あ、あの…私は…?」

 

 彩がおずおずと聞くと4人は一瞬彩の方を向いたが、すぐに4人が向き合った。

 

日菜「まあ、彩ちゃんはいっぱいあるからもういいとして」

彩「もういい!!?」

千聖「とにかく日菜ちゃん。もうこれ以上勝手な真似はよしなさい」

日菜「それを言うなら千聖ちゃんこそ、これ以上変な絵をかいたらダメだよ? あと、麻弥ちゃんとイヴちゃんも」

麻弥・イヴ「は、はい…」

日菜「もしこのまま続いたら交代なんて事もあり得るからね?」

 

 日菜の言葉に皆が驚いた。

 

千聖「極論過ぎるのよ! そんな理由で脱退とか絶対嫌よ!?」

麻弥「ジブンだって!」

イヴ「あれ…? 私なんかキャラが迷子になりそうな気が…」

彩「と、とにかく皆一旦落ち着こう!? あと、私のダメだったところ一つでいいから教えて…」

 

 そんなこんなで、この話を陰で聞いていた事務所のスタッフが悪ふざけで、今度同じミスを起こしたらパスパレを交代させるという無茶としかいいようがない企画を立てた。

 

 一か月後…。

 

彩「まんまるお山に彩を! ボーカル担当、丸山彩でーす! そして!」

「ギター担当! 大澤! うーぃ!!!」

「パスパレのベース担当! 下坂! わっしょいわっしょい!!」

「ドラム担当上中。よろしくフォー!!!」

「キーボード担当、ジャッカルデース!」

 

 彩以外の4人は見事に交代になった。日菜は本番中にトイレに行き、千聖はバラエティ番組でNHKの某キャラクターを書こうとして放送事故レベルの化物を描き、麻弥は横に激しく首振りをし、イヴは我慢できなくなって思いっきりブシドーと叫んだためだった。

 

 そして代わりになったメンバーは、4人とも屈強な色黒の男性だった。これには観客たちもシーンとしていた。

 

彩「み…みんな帰ってきてぇ~~~~~~~~~~~!!!!!」

 

 そして客席では…。

 

千聖「もうこの事務所終わりだわ…」

飛鳥「……」

 

 飛鳥と千聖が観客として来ていたが、千聖が頭を抱えていて飛鳥は呆然としていた。

 

 

おしまい

 



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第465話「勉強させたい!」

 

 

 ある日のバンドリ学園。この日は全校集会が行われていたが…。

 

「えー。今度また定期テストがありますが、赤点を取ったクラスにはペナルティを与えます! 女子は今度の体育祭でブルマ着用、男子は上半身裸でやって貰います」

 

 という学園長の言葉に皆が驚いた。

 

「体罰だー!!!」

「今令和やぞ!!?」

「え、何をどうやってそんな風に決めたの?」

「尾道の先輩パパじゃねぇんだぞ!!」

 

 と、生徒達が文句を言い放ったが、理事長は笑顔でこう言った。

 

学園長「それでは、あなた達はどうしたら勉強してくれるんですか?」

 

 笑顔で言い放つ理事長に生徒たちは恐怖を感じた。

 

学園長「あれも嫌だ、これも嫌だ。そんなんで社会でやっていけるかっつーんだよ!! 甘えるな!! ごねたら周りの人間が何とかしてくれると思うなよ!!」

 

 学園長の言葉もそうだが、急にどうしたんだ…? と思う生徒達だった。

 

 という訳で理不尽なペナルティを与えられたまま、テストが行われることとなったのだが…。

 

*****

 

千聖「飛鳥くん。超能力で学園長をどうにかして頂戴」

飛鳥「あ、はい。分かりました」

 

 全校集会が終わってすぐに千聖が飛鳥を呼び出し、超能力で終わらせようとしていたが…。

 

 その後飛鳥は千聖と共に学園長に近づいて、事情を聴いてみることにした。何でもテストの成績がどんどん下がっており、どんなに催促しても生徒たちはやる気を見せなかったのだ。挙句の果てには、開き直っていい加減な事を言う生徒に堪忍袋の緒が切れたとの事だった。

 

 それを聞いた飛鳥と千聖は困惑しつつも、上半身裸とブルマはやり過ぎだと説得し、代替案を考えることにした。

 

学園長「本当にやる気なくて困るんだよぉ…」

飛鳥「少し荒療治ですが、私に考えがありますよ」

 

 飛鳥はある事を考えた。

 

千聖「どうするつもりなの? 飛鳥くん」

飛鳥「千聖さん。バンドやってる人たちを集めて貰っていいですか。彼女達にも協力して貰います」

千聖「な、何をする気?」

飛鳥「……」

 

 飛鳥が内容を説明すると、千聖と学園長が驚いた。

 

千聖「本気なの!?」

学園長「君にそこまで負担は…」

飛鳥「もういつもの事なので。時間もあんまりありませんし、もし戸山さん達がNGを出せばそれまでです。千聖さん、お願いします」

千聖「わ、分かったわ…」

 

 そして千聖が皆を集めて、飛鳥が作戦を説明した。

 

有咲「おまっ…本気で言ってんのか!?」

飛鳥「ええ。少し強引ですが、私を阻止する為に彼らも本気を出してくるでしょう。勿論妨害してきた方には制裁を受けて貰います」

蘭「……!」

 

 飛鳥の冷徹な態度に蘭が少し恐怖した。

 

彩「でもそれじゃ一丈字くん一人が悪者になっちゃうよ!」

飛鳥「日ごろから悪者扱いされてるので、特に問題ございませんよ。とにかく、テストの成績に関しては本当に深刻な問題で、このままだと学園の評判にも影響が出ます。進学や就職が不利になりますし、ましてやパスパレの皆さんに関しては、出身校が勉強もロクに出来ない学園では…後はお分かりですね?」

 

 飛鳥の言葉に日菜以外のパスパレメンバーが俯いた。

 

リサ「本当に大丈夫なの!?」

飛鳥「確証はございませんが…。人にやる気を出させるというのはかなり難しいので、これくらいやらないといけません」

 

 すると飛鳥が真剣な表情で正面を向いた。

 

*****

 

 そして翌日、全校集会で学園長は体育祭でのペナルティの撤回を宣言した。だが、そのようなペナルティを与えようとした事実は変わらず、生徒たちは動揺していたが、そんな中で飛鳥が壇上に立った。

 

「一丈字…?」

 

 生徒達が驚く中、飛鳥は自身の手でペナルティを撤回させた事、そしてバンドガールズ25人とテストで勝負をして、国数英理社の5教科で飛鳥より成績が悪かったバンドガールは飛鳥の言う事を1つだけ聞かないといけないというルールを設けた。

 

 当然この事を聞いて生徒たちは大騒ぎして、すぐにやめるように騒いだり、香澄達に声をかけたりしていた。

 

「こんなの無効だ!!」

「やっぱりそういう奴だったのか!!」

 

 と、騒ぐ生徒達だったが飛鳥は冷徹な態度を崩さなかった。

 

飛鳥「体育祭のペナルティをなしにしたんです。寧ろ感謝してほしいくらいなんですけどね?」

「!!?」

飛鳥「彼女達も納得した上で力を貸してくれたんです。文句を言われる筋合いはございませんよ」

「そんな事言って脅したんだろう!?」

飛鳥「芸能人や財団の娘相手にどうやって脅せという話ですし、Pastel*Palettesに関しては、事務所からは寧ろ大歓迎だと言われましたよ。ちなみにエビデンスもご用意してますよ」

 

 すると弦巻家の黒服がモニターに、学園長や香澄達、パスパレの事務所の社長のサインが入った誓約書を見せた。それを見てヤラカシ達は絶望していたし、他の生徒たちは飛鳥の冷徹な態度を見て恐怖していた。

 

飛鳥「とにかくこれはもう決まった事です。あなた方はお好きにお過ごしくださいな」

「……っ!!」

飛鳥「ちなみにですが、私を妨害しようとした場合はそれなりの処遇を受けて貰いますので、覚悟なさってくださいね」

 

 すると飛鳥が殺気を放つと、生徒たちは更に恐怖した。それを見て千聖は飛鳥の演技の上手さに感嘆していた。

 

*****

 

飛鳥「…さて、これで第一段階は終わりました。学園長には暫く生徒から遠ざかるように言いましたし」

 

 中庭のベンチで飛鳥が千聖、モカと話をしていた。

 

千聖「あ、あなた…」

飛鳥「本来の仕事もこんな調子でやっています。情けをかければこちらがやられますので」

 

 能力者としての顔を見せている飛鳥に千聖は辟易していたが、モカはいつも通りだった。

 

モカ「まあ、それで飛鳥くん。もしモカちゃん達にテストで勝ったらどんな命令するの?」

飛鳥「勉強するように命じる」

モカ「つまんなーい」

飛鳥「じゃあ君は1週間パン禁止とかにしとくね」

モカ「やめて」

 

 そしてテスト週間が始まった。ヤラカシ達が飛鳥の勉強を妨害しようとしたが、飛鳥はのらりくらりとかわしたし、強引に行けば弦巻財団の黒服に取り押さえられるという事態になった。

 

 結果的にどうなったかというと…。

 

飛鳥「全勝です」

 

 何という事だろう。飛鳥は全員倒してしまったのだ。ちなみにバンドガール25人の中で一番成績が良かったのは日菜だが、点数は僅か1点差だった。

 

日菜「あーあ。敗けちゃったー。凄いね飛鳥くん」

飛鳥「正直あなたと紗夜先輩には勝てるか最後まで分かりませんでした」

紗夜「……っ!」

 

 飛鳥の言葉に紗夜が握りこぶしを作って視線をそらした。

 

「おい! 本当にやんのかよ!!」

「実は嘘でしたとかじゃないよな!?」

 

 最後までヤラカシ達がごねていて、一般生徒達が心配そうに見つめていた。

 

飛鳥「本気です」

日菜「まあ、負けちゃったから仕方ないよねー」

飛鳥「それじゃ皆さん」

「!」

 

飛鳥「私と一緒に来てください?」

 

 そう言って飛鳥は香澄達をどこかに連れて行った。ヤラカシ達が止めようとしたが弦巻財団の黒服たちを取り押さえた。

 

「うわあああああああああああああああああああん!!」

「こんなんだったら上半身裸の方がマシじゃあアアアアアアアアア!!!」

 

 ちなみに女子に関してはモカ、沙綾、千聖、リサあたりが飛鳥の意図を事前に伝えていた為苦笑いするだけだった。

 

***

 

飛鳥「えー。皆さん大変お疲れさまでした」

有咲「お、おう…」

美咲「それはそうと一丈字くん。一体何をお願いする気?」

飛鳥「あ、もうお願いしましたよ」

「え?」

飛鳥「一緒に来てくださいって。なのでもうこれで終わりです」

「え~~~~~~~~~~~!!!?」

 

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

 

飛鳥「まあ、あの様子じゃ次回は真面目にやってくれるでしょうね。という訳で終わり! また次回!!」

美咲(…一丈字くんも結構自由よね)

 

 

おしまい

 



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第466話「主人公接待はもううんざりだ!」

第466話

 

 今回も今回とて林間学校…。

 

「ああんもう!! また主人公接待かよ!!!」

「もう引き立て役はうんざりや!!」

 

 …と、ヤラカシ達が文句を言い放った。まあ、気持ちは分からなくはないですが女の子に対するセクハラは自業自得ですね。

 

「やい! 一丈字!!」

 

 ヤラカシ達が3組の教室に行くが、皆不思議そうにきょとんとしていた。そして飛鳥はいなかった。

 

「…おい。一丈字はどこだ?」

「え? 一丈字くんなんて子、このクラスにはいないよ?」

「は!?」

 

 飛鳥がクラスにいないという事を知って、ヤラカシ達は驚いた。

 

「まさか外部から助けるってオチか!?」

「そうか! そうに違いない!!」

「汚い真似しやがって!!」

 

 飛鳥が卑怯な方法でまた女の子達を侍らせようと考えていると判断し、ヤラカシ達は激高した。

 

 で、あっという間に林間学校を迎えて、いつものようにバスに乗って目的地まで向かっていた。

 

「今回こそはオリエンテーリングや肝試しや野外炊飯で一緒に組もうね!!?」

蘭「いや、もうバンドで組むことにしてるから」

 

 蘭や美咲、有咲といったメンバーはいつものように嫌そうにしていた。

 

 オリエンテーリングが済んで夕方、風呂の時間になったが…。

 

「ごめんなさい!! 女湯が故障してしまったので、男子の後に女子入って貰えませんか!?」

「え~~~~~~~~~~~~~~~~!!!?」

 

 女風呂が故障してしまい、入れる風呂が一つしかなくなった。

 

「男子が入った後の風呂に入るなんて嫌!!」

 

 と、一部の女子が文句を言ったが…。

 

「じゃあお前らは今日風呂入るなよ?」

 

 先生のどす低い声に生徒が凍り付いた。原口という女性である。

 

原口「風呂があるだけ有難いと思え。贅沢言ってんじゃねぇよ(激怒)」ギロ

「ご、ごめんなさい…(涙目)」

 

 先生に睨みつけられて文句を言っていた女子達は萎縮すると、ヤラカシ達も今回ばかりはそうとしか言いようがなかった。

 

「ちなみに覗きをした奴らはこの後のイベント参加禁止だからな?」

「は、はい…」

 

 もうこんなに怒られて覗こうという気持ちにはなれなかった。

 

(ていうかあんな先生いたか!!?)

 

*********

 

 風呂から上がった後普通に食事をしていた。ヤラカシ達は香澄達を誘いたかったが、さっきの怖い先生の影響で誘えずにいた。こうしてみると、飛鳥は必要ないのである。

 

 そんなこんなで肝試し。

 

「肝試しの組み合わせはくじ引きにします!」

「え~~~~~~~~~~~~~~!!!?」

「自由にやらせると収拾つかなくなるから」

 

 教師・西口の言葉に誰も言い返せなかった。

 

(でもこれでバンドガールの子達と一緒のチームになれるチャンス…)

 

 そしてどうなったかというと…。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

 

 1組。巨漢の男子生徒が香澄、たえ、りみ、沙綾と同じチームに。

 

有咲(アタシだけ仲間外れ!!!)

 

「い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛」

 

 陰キャ2人組の男子生徒がこころ、美咲、有咲と同じペアに。

 

「う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛」

 

 真面目系チャラ男、彼女がいる男子生徒の2人がイヴ、はぐみと同じチームに。

 

「え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛」

 

 格闘技ヲタク系男子が蘭、モカ、巴、ひまりの4人とペアに。

 

ひまり「私は女の子だけのチームだけど…仲間外れは寂しいよ~!!!!」

 

 ヤラカシ達にとっては悲惨な事になっていた…。

 

「普通にオレらにもチャンスあるやんけぇええええええええええ!!!」

「しかもオレのチーム全員男だし!!」

「代わってくれよぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 だが、健闘空しくそのまま肝試しをする事となった…。

 

こころ「あら!? あんな所に変な光があるわ!?」

美咲「こころ!! 先に行っちゃダメぇ~~!!!!」

有咲(…香澄がいないだけまだマシかと思ったけど、そうでもなかった)

 

 そして肝試しが終わると、ヤラカシ達が香澄達と当たった男子たちに話を聞こうとしたが、原口がさっさと寝るように怒鳴った。

 

(ていうか本当に誰だよあの先生!!!)

 

**

 

 翌日。この日は野外炊飯だったが…。

 

「今回は班ごとで組むように!!」

 

 とあった。特に何のトラブルも起こる事なく普通に終わった。

 

「いや、普通に終わったら駄目やん!!」

「ここは女の子とのイベントがあってだな…」

 

 ヤラカシ達がそう騒いだが、女子の大半が見なかった事にして後片付けをテキパキ行っていた。

 

 そしてキャンプファイヤー。またしてもヤラカシ達は香澄達とお近づきになろうと考えていたが、香澄達は香澄達でバンドで固まっていた上に、先生達に目をつけられて近づけることはなかった。

 

「せめて告白位させてぇ!!」

「学生の青春を潰すんじゃありませんよ!!」

 

 とまあ、それっぽい事を言って自分の欲望を満たそうとするヤラカシの姿は本当にお笑いそのものだった。

 

 

**

 

 で、あっという間に最終日を迎えて何事もないまま帰ってきた一同。

 

「本当に何もなかった!!」

「ていうか一丈字がいないだけでどうしてこんなに何も起こらないの!?」

「そんなにか!! そんなにオレ達に女子と戯れさせたくないかぁ!!?」

 

 と、ヤラカシ達が涙目になったが…。

 

「そうだ○○くん! 今度どこか遊びに行こうよ!」

「!?」

 

 香澄が肝試しで一緒になった男子に声をかけていて、ヤラカシ達は驚いていた。そしてまた一方では…。

 

ひまり「ねーねー。私とも仲良くなろうよ! ××くん!」

「いや、オレ女には…」

 

 ひまり以外の4人と肝試しを組んだ男子がAfterglowに声をかけられていて、困っていた。

 

 飛鳥以外の男子が最終的に女子達と仲良くなるという、ヤラカシ達にとってある意味喜ばしい結果となったのだが…。

 

「だからこういうのじゃないんだよおおおおおおおおおお!!」

「確かに一丈字が香澄ちゃん達に囲まれなくて良かったけど!!」

「どうしてオレ達じゃないのおおおおおおおおおおおお!!?」

 

 下心があるからですね。はい、今回のお話は終わりです。ちなみにあの男が何をしていたかというと…。

 

***

 

飛鳥「ズルズルズル…」

 

 東京でナポリタンを食べていました。

 

飛鳥「美味しい」

 

 

おしまい

 



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第467話「おでん VS コース料理!」

 

 

 一丈字飛鳥です。今日も今日とて林間学校ですが、2日目の野外炊飯が大変な事になっていました。

 

「野外炊飯は2つのコースに分ける事にします!」

 

 野外炊飯は班ごとにやるのではなく、2つのチームに分かれてやる事となった。おでんチームとコース料理チームというものだった。場所もおでんチームは外で、コース料理チームは中でやるというものだった。

 

「どうする?」

「どう考えてもコース料理だろ」

「おでんって…こんな暑い時期に食えるかっつーの!」

 

 と、大抵の生徒がコース料理の方に行った。それは一部のバンドガールも例外ではない。

そんな様子を見守っていると…。

 

「おい」

飛鳥「?」

 

 知らない人が話しかけてきた。恐らくだが1組か2組の誰かだろう。言いたい事は分かる。

 

「お前、おでんコース行け」

飛鳥「最初からそのつもりですけど…」

「どうだか。まあ、同じコースに来ないならいいや」

 

 と、男子生徒は去っていった。ちょっと反応に困るんだけど…まあいいや、さっさと申請するか。

 

こころ「どちらがいいかしら!?」

はぐみ「どっちも美味しそうだけど、はぐみおでんがいいな!」

美咲「あー…。確かに一丈字くんもこっち来そうだし」

イヴ「オデンはニッポンのアジですね!」

 

香澄「こころんたちはおでんかー」

有咲「じゃあ一丈字もおでんだな。アタシあっち行ってくるわ」

香澄「えー。じゃあ私も」

沙綾「じゃあ私も」

たえ「私も」

りみ「わ、私も…」

 

ひまり「どうしよっか。暑いのは嫌だけど…」

蘭「一丈字と一緒にいた方が安全だよ」

モカ「どっち選ぶんだろ~」

巴「ていうか皆おでん選ぼうとしてるぞ」

つぐみ「あはは…」

 

 皆おでんの方に行こうとしていて、慌てた男子生徒達が飛鳥の所にやってきた。

 

「お前やっぱりフルコースにしろ」

飛鳥「えー」

「えーじゃねぇよ。決定事項な」

飛鳥「すっごい見られてますよ」

 

 飛鳥にそう言われてヤラカシ達が後ろを見ると、香澄達がジト目で見ていた。

 

モカ「飛鳥くんが選んだほうにしま~す」

「おい、ちょっと待てよ…」

「どうしてこいつばっかり…」

有咲・美咲「実績があるから」

 

 ヤラカシの文句を有咲と美咲がバッサリ斬った。

 

美咲「ていうかさぁ…。一丈字くんに言いがかりつけないといけない理由でもあるの?」

「あるさ! 一丈字ばっかり君たちと仲良くしているだろう!? でも、これは主人公だから成り立っている事だ!」

「オレ達にもチャンスがあってもいいだろう!」

モカ「でもやってる事完全に悪役なんだよね~」

「うんうん」

 

 女子達の容赦ない一言にヤラカシ達は沈みそうになった。すると教師がやってきた。

 

「おーい! 何やってるんだ!? 早くコースを決めろ!」

飛鳥「あ、はい…」

「畜生! こうなったらオレも同じコースにしてやる!」

「独りだけ良い思いさせてたまるか!」

 

 と、2人の男子生徒が飛鳥と同じコースにしようとしたが、

 

「あっ! ずるい!!」

「オレもオレも!!」

 

 他の男子生徒達も便乗し始めたので、遂に先生はたまらず希望していない生徒のコースを決めてしまった。

 

おでん:飛鳥、こころ、有咲

コース料理:それ以外

 

 ちなみに言いがかりをつけた男子2人もコース料理だった。

 

「真面目に料理して評価を上げる!」

「だから…変な扱い方しないでね?」

(もう…勝手にすればいい…)

 

***

 

 そんなこんなで野外炊飯開始。おでんチームは食材の買い出しに出かけていた。

 

こころ「とっても楽しみね!」

飛鳥「そうですね…」

美咲「こころ。今回はハロハピでやる訳じゃないから皆の言う事聞きな」

こころ「分かったわ!」

飛鳥「…そうですね。人の話をよく聞きましょうか」

 

 買い出しが終わり、いよいよ実習。

 

飛鳥「さて、あまり肩に力を入れる必要はありませんが、包丁や火を取り扱う時はふざけたり、他の事を考えながらやっていると大怪我につながります」

「はーい!」

飛鳥「あと、皆から笑顔が消えます」

「怖い事言わないで!!?」

美咲「あ、これはこころ用だから大丈夫」

こころ「お団子をこねればいいのよね? だから大丈夫よ!」

 

 ちなみにこころはもう火と包丁を扱わせると危ないと判断され、団子をこねる役を任された。

 

美咲「それもそうだし、ウロウロしないように」

こころ「大丈夫よ。さっき飛鳥にも言われたわ!」

 

 学園屈指の自由人であるこころがどこまで言いつけを守れるか不安だったが、調理は始まった。

 

 飛鳥がこころが退屈してウロウロしないように先に団子の原料を作ったが、かなり手際が良くて他の生徒が見ていた。

 

美咲「…一丈字くん。本当に上手よね」

飛鳥「恐縮です」

 

 その頃、コース料理コースはというと…。

 

「フルコースを頂いて貰うために、皆さんには野菜を切って貰います」

 

 と、黙々と野菜を切らされる参加者たち。勿論エプロンとバンダナをして衛生面は大丈夫なようにしている。

 

有咲(アタシの知ってる野外炊飯と違う)

 

 だが、この野菜を切るという単調な作業は多感な生徒達には退屈で、他の生徒に押し付ける者まで現れた。

 

ひまり(どうしてあっちじゃないのぉー!!!?)

蘭(本気で一丈字に勝つ気あんのかよ…!)

 

「コラァ! お前ら人にやらせるな!!」

「このままだとまた一丈字が美味しい思いするぞ!?」

 

 別のヤラカシが真面目にやるように催促したが、下心と見返りが丸見えで、更に呆れさせていた。

 

はぐみ「はぐみだけ仲間外れ…」

イヴ「私もです…」

 

 こころとはぐみがおでんコースに行ったのに、ハロハピだけ仲間外れにされて落ち込むはぐみ。そしてイヴはそんな彼女を励まそうとしていた。

 

******

 

 しばらく時間が経った後、

 

こころ「お団子いっぱいできたわ!」

飛鳥「お疲れ様です。こちらも他の具材の準備が完了しましたので、煮えにくいものから投入していきます」

「はーい」

 

 そう言って飛鳥は材料を次々と投入していく。

 

飛鳥「45分ほどで出来上がりますので、それまでゆっくりしててください」

「ほ、本当にありがとね一丈字くん…」

飛鳥「いえいえ」

「マジで一丈字くんがいてくれて良かった…」

 

 あまりにも感謝されるので飛鳥は困惑していると、美咲が飛鳥に近づいた。

 

美咲「ごめんね…。前にクラスの調理実習でカレーを作ったんだけど、こころが食材を自分の好きなタイミングで鍋に入れて…」

飛鳥「そ、そういう事だったんですか…」

 

 美咲の苦悶した表情を見て相当苦労したんだなと飛鳥は思ったが、こころは頭の上に「?」マークを浮かべていた。

 

***************

 

 そして完成の時。コース料理を選択した生徒たちは食事にありついたのだが…。

 

「ついでにテーブルマナーも覚えて貰います!!」

「一番きついのキター!!!!」

 

 コース料理にはかかせない『テーブルマナー』も覚えさせられる事となった。

 

「美味い…料理は凄く美味いんだけど…」

「テーブルマナーマジで余計」

「近くには香澄ちゃん達もいるのに…」

「何でこういう時の先生が妙に怖い先生なんだよ…」

 

 講師や担当教師が強面だったり、ふてぶてしかったりでどうもバカ騒ぎ出来る雰囲気ではない。

 

「絶対グループとかで仲間外れにされてそう…」

先生「それは偏見というものだよ」

 

 一方香澄達はというと、男子からのセクハラがなくて安心したが、それでもテーブルマナーをしっかり守らないといけなかった為、食べづらかったというのはあった。

 

香澄「飛鳥くん達がどうなってるかは気になるよね」

有咲「それはそうだな…」

 

 香澄と有咲がそう話していると、

 

「あ、おでんチームと通信が取れますので少々お待ちください」

「!?」

 

 そしておでんチームと中継がつながったが、丁度食べようとしていた所だった。

 

飛鳥『さあ、そろそろ頃合いですよ』

 

 飛鳥、こころ、美咲が並んでいたが、外で調理していた関係ですっかり汗だくになっていた。そして飛鳥がふたを開けると、とてもいい香りを漂わせながら、グツグツ煮えたおでんが姿を現した。

 

 そしてそれを全員分につぎわけた。

 

「いただきまーす」

 

 と、皆でそれぞれの具を食べると、飛鳥以外が目を光らせた。

 

「うっま~~~~~~~~~~~~~~~~~~い!!!!!」

 

 そう叫んで、飛鳥はきょとんとしていた。

 

こころ「とっても美味しいわ!!」

「こんな美味いおでん初めて食った!」

「やっぱり自分で作るのって美味いんだなー…」

「いや、こういう場所で作るから美味いんだよきっと!」

 

 と、皆おでんにご満悦だった。

 

美咲「美味い…」

 

 そんな中、美咲は目に涙を浮かべながら大根をかみしめていた。自由奔放なこころがいる中でこんなに美味いおでんが食べれるなんて思ってもいなかったのだろう。

 

 飛鳥としては少々オーバーすぎると思っていたが、結果的に皆喜んでくれたからいいかと思っていた。実はおでんのだしにちょっと秘密があるのは内緒だ。

 

「飲みだい!!!」

「ダメに決まってんだろ!!」

 

 酒好きの女性教諭が泣きじゃくったが、同僚にダメだと言われた。

 

「…確かに酒に間違いなく合うだろうが」

「ううう…。予想以上に美味いおでんだというのに、お酒が飲めないなんて…」

 

 女性教諭の言葉を飛鳥はわざと聞き流した。

 

こころ「飛鳥! とっても美味しいわ!」

飛鳥「あ、それは何よりです…」

「食材は皆で切ったからアレだけど、やっぱり最後に一丈字くんが出汁を作ってくれたのと、具材を入れるタイミングを知ってたって言うのがでかいよね」

「ホントホント。いつも家でやってるの?」

飛鳥「最近はしてないですね…」

 

 と、和気藹々としていた。

 

「やっぱり一丈字か…!」

「でも、あのおでん美味そう…」

「ていうか何よりも…」

「楽しそう…!」

 

 おでんチームの楽しそうな雰囲気に羨ましくなるヤラカシ達であった。

 

 

 

おしまい

 



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第468話「ポピパとハロウィンパーティー」

 

 

 ごちゃませハロウィン劇場

 

1. ポピパのハロウィンパーティー

 

有咲「でなー」

飛鳥「……」

 

 有咲と飛鳥が学園で会話をしていたが、有咲がメールが来た事に気づいた。

 

有咲「え!? いきなり蔵でハロウィンパーティー!?」

飛鳥「蔵って…市ヶ谷さんの家ですよね」

有咲「そうなんだよ。あたし以外の4人はもう集まってるって…」

飛鳥「…その様子だと本当に突然のようですね」

有咲「ホントだよ。付き合わされるこっちの身にもなって欲しいです」

飛鳥「ですが、行くのでしょう?」

有咲「…まあな」

 

 すると有咲がある事に気づいた。

 

有咲「そうだ。折角だからお前も来い」

飛鳥「え?」

 

 有咲の言葉に飛鳥は驚いた。

 

有咲「前にパーティしようとした時、男子共に邪魔されそうになったからさ…。お前何とか出来そうだから」

飛鳥「御冗談を…」

 

 とは言いつつも、周囲にはヤラカシ達がチャンスをうかがっていた。

 

飛鳥「…戸山さん達が良ければの話ですが」

有咲「分かった」

 

 有咲がそう言うと、飛鳥が指を動かして、ヤラカシ達が自分たちに声をかけられないようにした。

 

有咲「大歓迎だってさ」

飛鳥「そうですか。それでしたら合流するまでエスコートしますよ」

有咲「は、恥ずかしい言い方すんなぁ!!///////」

 

 そして…

 

沙綾「良かったねー。エスコートして貰ってwwww」

有咲「ちーがーうー!!!wwwwwwww」

香澄「いやー。有咲は今日も可愛いなぁ」

 

 

 

 

 

 

2. 1のハーレムルート

 

香澄「飛鳥くん! 有咲の家の蔵で私達とハロウィンパーティーしようよ!」

飛鳥「え?」

 

 ポピパに誘われる飛鳥。

 

飛鳥「まあ、お誘い頂けるのは嬉しいのですが…」

有咲「何だよ。嫌なのか?」

飛鳥「こういう時はいっつも…」

「はーい。一丈字くんはオレ達とハロウィンパーティーしようね~」

飛鳥「あ、普通に家帰りますんで」

「それはちょっと酷くない?」

 

 ヤラカシ達が飛鳥を止めようとしたが、飛鳥が自分達とハロウィンパーティーをやるのは遠回しに嫌がっていたので、ちょっと傷ついた。

 

有咲「酷いもクソもあるか! 毎回毎回呼んでもないのに行こうとしやがって!!」

飛鳥「…それはちょっと配慮が足りないのでは?」

「いや、そうなんだけどさー」

「オレ達が毎回誘ったり強引に行こうとしてんのに、一丈字は1回で行けるってズルくない?」

有咲「私達にも選ぶ権利あるんだけど…」

たえ「理性と性欲を押さえたらモテると思うよ」

有咲「おたえ?」

沙綾「とにかくがっつきすぎ!!」

りみ「ちょ、ちょっと怖い…」

 

 沙綾とりみにもダメだしされているのに、ヤラカシ達は思った他嬉しそうだった。困った飛鳥は…。

 

飛鳥「分かりました。ちょっと私に考えがあるので皆さんここで大人しくしててください」

「え?」

 

 10分くらい経った後。

 

飛鳥「はい、それでは皆さん。お召し上がりください」

有咲「お、おい…一丈字…これは」

飛鳥「私の手作りお菓子です。これを同じテーブルで食べてください」

「て、手作りお菓子!?」

 

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

 

「だ、誰がお前の菓子なんか…」

香澄「おいし~!!!」

「あ、ホントだ」

 

 香澄が人の話を聞かずに食べたが、ヤラカシの一人が香澄の隣で食べた。

 

香澄「美味しいよね!」

「ホントホント。やるじゃねぇか一丈字」

 

 そして残りのヤラカシ達は気づいた。香澄達と仲良く喋るチャンスを作ってくれているのだと。

 

「だ、誰がそんなものに屈するか!!」

「プライドを捨ててまでそんな…」

 

 するとたえや沙綾も手に取り、りみも遅れて取って食べた。

 

たえ「美味しい」

沙綾「ホント、ていうかこれいつ作ったの!?」

飛鳥「今朝ですね。こんな事もあろうかと仕込んでおきました」

りみ「おいひ~」

「本当に美味ぇよコレ」

たえ「そうだねー」

 

 と、ヤラカシの一人がポピパ4人に囲まれていた。

 

ヤラカシ「めちゃくちゃ華やか!!!」

「ああああああん!!? もう我慢できな~い!!!」

「ていうかズルいぞお前だけ!!」

「いや、待て!! まだ有咲ちゃんがいるぅ!!」

「有咲ちゃんが残りのおれ達全員を…」

有咲「んな訳あるかー!!!」

 

 そう言って有咲が菓子を1つ強奪して勢いよく食べたが、喉を詰まらせた。

 

「はい、ペットボトル」

 

 すると有咲がそのペットボトルの水を飲んだ。

 

有咲「ぷはー!! サンキューな」

「どういたしまして…」

 

 有咲とヤラカシ(後述A)が見つめあった。

 

有咲「…金渡すから、このペットボトルは譲れ//////」

A「いいよ。100円で売ってた」

 

 そう言って有咲はAに100円を渡したが…。

 

「その100円を寄越せぇえええええええええええ!!!」

A「やだああああああああああああああああああ!!!」

 

 残りのヤラカシ達がAを追いかけて、飛鳥とポピパだけになった。

 

飛鳥「大丈夫ですか?」

有咲「いや…。何でもねぇ」

飛鳥「私はここで退きましょうか?」

たえ「だーめ」

沙綾「あんな美味しいお菓子をご馳走されたら猶更逃がすわけにはいかないな~?」

 

 こうして飛鳥はたえと沙綾に連行されたという…。

 

A「え? ハロウィン姿見れなくて残念だったなって? 何言ってるんだ。有咲ちゃんの100円と照れた顔を間近で見れた。大収穫だよ」

「その100円を寄越せぇええええええええええええええ!!!!」

A「有咲ちゃんの100円は絶対に渡すものかぁぁああああああああああ!!!」

 

 

 ハロウィンは節度を保ち、周りの人間に不快な思いをさせないように楽しみましょうね!

 

 

 

おしまい

 



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第469話「明日に向かって」

イメージ主題歌
「明日に向かって」
歌:嵐


 

 

 ある日の事だった…。

 

「しつこいな~」

 

 Afterglowが学園で不良生徒達に絡まれていて、モカがうんざりしていた。

 

「いいじゃんか。オレ達に付き合えよ」

「楽しいからさ~」

 

 と、ゲスな笑みを浮かべる男子生徒達。ひまりが怯えていて、つぐみがひまりを守ろうとしていた。

 

つぐみ「それもそうだけど、どうして他校の生徒が…!?」

巴「蘭たちには指一本触れさせねーからな!!」

蘭「いい加減にしないと先生呼ぶよ? もしくは警察か…」

 

 蘭と巴の態度に上級生の男子たちは不機嫌そうな顔をして、横を向いてあごを上げた。すると仲間と思われる男たちがやってきたが、学園の生徒達ではない。

 

「やってみろ。その時は5人仲良く傷物になって貰うぜ?」

 

 いずれもガラの悪そうな男子生徒達に巴や蘭も流石に不利だと感じ、冷や汗をかいていた。

 

 その時、学園のインターホンが鳴った。

 

『えー。第1倉庫付近でAfterglowが他校の生徒に襲われています。繰り返し、第1倉庫付近でAfterglowが他校の生徒に襲われています。教職員の先生方は直ちに向かってください』

 

 というアナウンスが流れていて、モカは飛鳥がやったものだと確信していた。

 

「ど、どうしてバレてんだ!?」

「し、知るか!! こうなったら力づくだ!! やっちまえ!!」

「うおおーっ!!!」

 

 と、男子生徒達がAfterglowを捕えようとしたが、陰で見ていた飛鳥が超能力で男たちに金縛りを仕掛けた。

 

「な、何だ!?」

モカ「皆! 急いで!!」

 

 モカがひまりとつぐみの手を引っ張ると、蘭と巴も後に続いた。

 

「な、何がどうなってやがる」

「コラーッ!! お前達何をやってるんだー!!!」

「クソー!!!」

 

 男たちは教師たちに敢え無く御用となった。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥は陰で見ており、男たちが教師たちに捕まったのを確認すると、その場を離れた。

 

*****

 

 男たちは逮捕されたものの、他行の不良生徒達が学園に侵入して、襲われかけた事に関して皆がショックを受けていた。警備をしていた警備員は男たちにやられて病院で治療を受けるほどの傷を負っていた事もあり、数日は臨時休校という事になった。

 

ひまり「ひっく…ひっく…怖かったよぉ…」

 

 2組の教室でひまりが泣きじゃくると、つぐみが慰める。

 

蘭「仲間もあんなに呼んでたなんて…」

巴「…下手したらあたし達、本当に危なかったな」

 

 蘭と巴も当時の事を思い返してゾッとしていた。いくら気が強いとは言っても、20人あまりの屈強な男たちに囲まれたら怖いに決まっている。そんな中、モカは飛鳥の事が脳裏に浮かんでいた。

 

*************

 

「そうか…」

 

 その夜。飛鳥はモカ、千聖とリモート通話をしていた。

 

千聖「私達の所も皆怖がってたわ。仕事に影響が出なければいいのだけど…」

飛鳥「学校以外でも警備を強化する必要がございますね」

モカ「…飛鳥くん」

飛鳥「何?」

モカ「ありがとう。助けてくれて」

飛鳥「まあ、そりゃいいんだけどさ。本当はあって欲しくなかったけど…」

 

 こんな大規模な事件が起きた事で、広島に帰る日がまた遠のいてしまったと飛鳥も少し困ったが、仕事なのでキッチリやる事にした。

 

千聖「地元に帰らなくて大丈夫?」

飛鳥「ああ。それに関しては心配いりませんよ。その気になればいつでも帰れますので…。そういう意味で言えば飛行機が使えれば良かったのになぁ…」

 

 飛鳥は困惑していた。飛鳥の広島での地元は広島市なのだが、空港が広島市ではなく、遠く離れた三原市にあるのだ。その為、交通機関で帰ろうと思ったら新幹線で帰るしかないのだが、4時間かかるのだ。

 

飛鳥「まあ、それはさておき。Afterglowはこれからどうするの?」

モカ「…皆ショックが大きくて暫く家で大人しくするって。特にひーちゃんがショックが大きくて、バイトも休むって言ってた」

飛鳥「バイト先にもちょっと見張った方が良さそうですね」

千聖「ええ。報復してくる可能性もあるわ」

 

 千聖の言葉にモカも困惑していた。

 

飛鳥「モカはバイトどうするんだ?」

モカ「あたしは行くよ」

飛鳥「分かった。それで頼みがあるんだが…」

 

 飛鳥がモカにある事を頼んだ。

 

****************

 

 臨時休校になっている間、モカ以外の4人は家で大人しくしていた。ひまりの精神的ダメージが大きかったのもそうだが、バイト先から休むように指示があったのだ。巴は申し訳なさそうにしていた。また、つぐみの実家である羽沢珈琲店や蘭の家にも弦巻財閥の警備員が配置されることとなった。また、モカのバイト先でも弦巻財団の黒服たちが配置されていた。

 

モカ「そういう事だからリサさん。ちょっと窮屈かもしれないけど宜しくお願いしますね~」

リサ「わ、分かった…」

 

 コンビニかつ自分のバイト先に黒服がいるという何ともシュールな光景にリサも思わず辟易していた。

 

 飛鳥は家で待機していつでも行けるように準備していた。事前にモカや千聖とは打ち合わせを済ませていた。ちなみにこころが参加していないのは、無茶してややこしい事になるのを防ぐためで、弦巻財団に協力だけ求めた。

 

 暫くして、捕まった不良生徒の仲間らしき男たちがモカとリサのバイト先を襲撃しようとしたが、黒服たちを見てビビって逃走していった。巴とひまりのバイト先であるハンバーガーショップでも同じような事が起きていた。

 

 

モカ「黒服さん達を行くと逃げていったよ~」

飛鳥「分かった。それじゃ次の作戦だ。今井先輩は大丈夫そう?」

モカ「うん。今度のシフトはアタシだけだから~」

飛鳥「分かった。すまねぇが協力を頼む!」

モカ「勿論!」

 

 モカの力強い返事に飛鳥は思わず困惑していた。

 

千聖「うふふ。すっかり相棒ね」

飛鳥「千聖さん…」

千聖「私達の所も今のところ大丈夫よ。強いていうなら彩ちゃんと麻弥ちゃんとイヴちゃんが心配してるくらい」

飛鳥「分かりました。何か変化がありましたら仰ってください」

 

 そして…

 

「おい、今日はあのボディーガードいないぞ!!」

「しめた!!」

 

 男たちがまんまと引っかかってコンビニの中に入ると、モカ一人だった。

 

モカ「らっしゃーせー…」

「おい。お前Afterglowの青葉モカだな?」

「オレ達の仲間をよくもやってくれたな!!」

モカ「お客様~。警察呼びますよ~?」

「うるせぇ!!」

「その前にお前を引きずり出してやる!! こっち来い!!」

 

 そう言って男たちがモカの髪の毛を引っ張って自分たちの所に連れて行こうとしたが、

 

「あ、すみません。何されてるんですか?」

 

 一般客に変装してサングラスをかけた飛鳥が話しかけた。

 

「あ!? 今取り込み中なんだよ!!」

「生意気にチャラチャラしやがって。ぶん殴られてぇか。あ?」

飛鳥「ハハハハハ。どう考えても強そうには見えませんけどね?」

「何だとてめぇ!!」

 

 男が飛鳥に殴りかかったが、すぐに取り押さえると、モカがその場を離れた。

 

「いてててててて!!!」

「て、てめぇ!!」

 

 もう一人の男がモカを追いかけようとするが、飛鳥が超能力で足止めをした。この時金縛りではなく、何やらコードが足に引っかかったと錯覚させるようにした。理由はトリックが前と同じだと同一犯と探られてしまうからだ。

 

「な、何だ!? 足が…」

飛鳥「さて、お兄さんも無駄な抵抗はやめて大人しくしときなさいね」

「……!!」

 

*****

 

 暫くして警察が駆け付けると、男2人はあえなく逮捕された。飛鳥はこの時超能力で自分の存在感を失くして、とんずらしていた。

 

モカ「あたしを助けてくれた人。どこか行っちゃった~」

「え!? どんな感じの人だった!?」

モカ「えっとですね~」

 

 と、モカも変装した状態の飛鳥の特徴を教えたが、微妙に飛鳥だとバレないようにしていた。

 

 この事件をきっかけに、ガールズバンドを襲おうとすると正体不明の現象に襲われるし、不幸な目に遭うという事から、ガールズバンドにちょっかいをかける事は少なくなった。

 

 そして臨時休校が解けて、生徒達がまた登校した。

 

飛鳥「……」

 

 その生徒の中には飛鳥もいて、遥か前方にはAfterglowがいて、後ろには千聖と花音、彩がいた。男たちに怯えていたひまりたちだったが、メンバー同士で慰めあったり、好きな事をして何とか明るさを取り戻した。

 

飛鳥(超能力があってもどうにもならない事は沢山あるけど、だからって何もしない訳には行かんよね。また改めて頑張るか)

 

 そう言って飛鳥は屈伸した。

 

 

 

おしまい

 



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第472話「ポピパとおしゃべり!」

 

 

 ある日の事、Poppin‘Partyと昼食を取っていた飛鳥。勿論ヤラカシ軍団にすっごい睨まれていた。

 

香澄「そういえば飛鳥くんがこの学校に来た理由って何?」

飛鳥「え?」

有咲「いやお前…。一丈字は転校生だろ?」

 

 香澄が飛鳥にバンドリ学園に転入した理由を聞いたが、有咲が入学した理由のノリで聞くなと言わんばかりに突っ込んだ。

 

飛鳥「そうですね…。家から近かったからですかね」

沙綾「やっぱりそういう子いるんだね~」

飛鳥「皆さんは何か理由はありますか?」

香澄「楽しそうだったから!」

飛鳥「え」

 

 香澄の単純な理由に飛鳥が困惑すると、有咲が呆れたように額に手を当てた。

 

沙綾「制服が好きって言ってなかった?」

香澄「あ、それもあるよ! 文化祭にも来た事があるんだけど、いいな~って」

飛鳥「女の子が制服で決めるって言うのはよく聞きますね…」

香澄「そういえば飛鳥くんって今はブレザーだけど、中学って制服どうだったの?」

飛鳥「学ランですね。漫画でよくあるあの黒い奴です」

香澄「写真ある!?」

飛鳥「写真は…ちょっと待ってくださいね」

 

 そう言って飛鳥がスマホを操作して写真を操作した。ちなみに授業中使わなければスマホの使用はOKである。

 

飛鳥「こちらですね。入学したころなんですけど…」

香澄「おおー! すっごーい!!」

 

 と、香澄だけじゃなくて有咲たちも写真を見ていた。

 

有咲「…一丈字」

飛鳥「どうかしました?」

有咲「失礼な事を聞いてゴメンだけどさ。この時の一丈字って背が低かったのか?」

飛鳥「そうですね。入学したころは150cm程だったんですよ。もしかしてこの隣の女子が私より背が高かったから聞いたのですか?」

有咲「いや、男子より背が高い女子ってあんまいないからさ…」

飛鳥「そうですねー。この子は林日向って言って、当時は彼女の方が背が高かったです。今は私の方が高いですけど」

たえ「どれくらい伸びたの?」

飛鳥「20cmですね」

「20㎝!」

 

 20cmも伸びた事にポピパメンバーは驚いていた。

 

沙綾「男の子って背が高くなりやすくなるって聞いたけど…。じゃあ純もこうなるのかな…」

飛鳥「可能性はありますね」

香澄「えー。じゅんじゅんが大きくなったらどんな感じになるんだろうなー」

有咲「背が低いのも可愛らしくていいよな」

飛鳥「……」

 

 有咲の顔を見て飛鳥は困惑していた。

 

有咲「な、何だよ…」

飛鳥「…いや、市ヶ谷さんのそういう態度あんまり見た事ないもので」

たえ「純には割と態度でかいよ?」

香澄「かわいい弟みたいなもんだからねー」

 

 それを見てヤラカシ達が発狂した。

 

「オレもじゅんじゅんみたいになりたい~!!!」

「さーやちゃーん! オレ達も弟みたいに可愛がって~!」

「もしくは全員可!!」

「あと一丈字はいい加減どっか行け!!」

 

 と、騒いでいて飛鳥とポピパは困惑していた。

 

飛鳥「…如何ですか?」

有咲「ぜってーやだ!!!」

沙綾「あいつらはお姉ちゃんに対して一体どういうイメージ抱いてるんだろ…」

香澄「どうなの?」

飛鳥「…そうですね」

 

 香澄の問いに飛鳥は少々気まずそうにしていた。

 

有咲「何だよ。言えよ」

飛鳥「…そうですね。この写真のこの男子が姉がいるんですが、ケンカばっかりしてますね」

沙綾「うちもそうだよ。とにかくやんちゃで生意気なの」

飛鳥「恐らくですが、山吹さんと純くん姉弟と、私の友達姉弟は同じタイプですね…」

香澄「私も弟がいたらそんな感じになってたのかなぁ…」

りみ「うーん…。私もお姉ちゃんがいるけど、さーやちゃん所と同じタイプかなぁ…」

有咲「香澄の場合は弟を可愛がり過ぎて、ウザがられてそう」

たえ「有咲もじゃない?」

有咲「そんな事ねーから!!!」

香澄「いや、有咲もあり得るよ。盆栽メチャクチャかわいがってたもん。親ばかみたいに」

有咲「親ばかじゃねー!!!//////」

 

 と、ポピパメンバーが和気藹々としていた。

 

香澄「そういう意味で言ったらおたえは…」

有咲「おたえはマジでわからん」

たえ「どうして?」

 

 天然ボケでうさぎが大好きで20羽も買ってるたえにもし弟がいたら…と考えてみるが、イメージがわかなかった。

 

有咲「いや、だってさぁ…」

飛鳥「何というか普通というイメージがありますね」

たえ「普通って?」

飛鳥「ケンカはあまりしなさそうですよね」

有咲「まあ、それはあるな。あ、おたえの天然ぶりに振り回されたりして」

たえ「有咲も結構振り回してそう…」

有咲「あ? 喧嘩なら買うぞ?」

 

 たえの発言に有咲がツッコミを入れながらキレた。

 

沙綾「まあまあ落ち着いて」

香澄「じゃあ折角だからちょっと飛鳥くん。私の弟やってみて!」

飛鳥「無茶ぶりえぐくないですか?」

 

 飛鳥の発言にヤラカシ達が吠えた。

 

「僕が弟になるよ香澄ちゃん!」

「香澄おね~ちゃ~ん♡♡♡」

「わんわんわんっ!!」

 

 とまあ、男子たちの変態ぶりが惜しむことなく発揮された。

 

有咲「だーっ!! お前らはひっこめ―!!」

たえ「大人しくしないと私が飛鳥くんを膝枕させるよ」

 

 たえの言葉にヤラカシ達はスン…と大人しくなった。

 

飛鳥「…花園さん」

たえ「大人しくなった」

飛鳥「あの、良かったんですか…? そんな事言って…」

たえ「いいよ」

香澄「じゃあ私膝枕してあげるね! ほら、おいで♡」

 

 本当にやる流れになって飛鳥は絶体絶命になった。

 

飛鳥「…妹さんが嫉妬しませんかね」

香澄「だいじょーぶ! あっちゃんにも後でやってあげるから! ほら!」

飛鳥「そう言って本当にやろうとすると何かが起こりそうですが、本当に大丈夫なんですかね?」

有咲「いいからさっさとやれ!!」

飛鳥「分かりました。市ヶ谷さん、あとは頼みました!」

有咲「やめろォオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 こうして飛鳥は香澄に膝枕された。同級生の女子が好意的に膝枕しようとしてくれて、本当にしても尚嫌な顔をしない。一丈字飛鳥は男として大勝利を掴んだのだった!

 

飛鳥「えー。次回は恐らくですが市ヶ谷さ」

有咲「次回も頑張れ~!!!!!!!」

 

 そしてヤラカシ共が発狂した。

 

「じゃあ僕おたえちゃん!!」

「りみり~ん!!」

「さーや~!!」

「有咲はオレだ!!」

「いや、オレが膝枕して貰うんだ!!」

「オレオレオレオレ!!!」

「オレ! オレ! オレオレオレオレオレ…」

 

 

おしまい

 

 



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第473話「メガネのつどい」

 

1. メガネキャラ

 

 ある日の事。中庭のいつものベンチで飛鳥とモカが話をしていた。

 

飛鳥「青葉さん」

モカ「な~に~?」

飛鳥「美竹さんって眼鏡かけてたんですね」

モカ「あ~。そうは言っても勉強中や本を読むときにしかかけないよ~?」

飛鳥「…目が悪いという訳じゃないんですね。そういや牛込さんも眼鏡かけてたのを見ましたけど」

モカ「同じ理由だと思うよ~。目は良い方だったと思うから」

飛鳥「そうですか…」

モカ「…それを言うなら飛鳥くんも」

飛鳥「私は完全に伊達ですね」

モカ「ちょっと取ってみせてー」

飛鳥「え? あ、はい」

 

 そう言って飛鳥が眼鏡を取ってモカの目をじーっと見つめていたが、モカはちょっと恥ずかしくなった。

 

モカ「…女の子の目を見つめるのはマナー違反だよ~」

飛鳥「すいませんね」

 

 飛鳥がそう謝ると、モカ以外のAfterglowの4人が頬を赤らめて震えていた。

 

飛鳥「あ、こんにちは」

モカ「!!?」

 

**

 

2. メガネキャラ2

 

 飛鳥、蘭、麻弥、りみの4人が眼鏡をかけた状態で話し合う事にした。現在和室にいて、テーブルには鍋を食べる為の道具が並べられていた。

 

蘭「え、なにこれ…」

飛鳥「眼鏡をかけているという事で急遽お集まりいただいたんですけど、もうオチが読めてますね」

麻弥「そういえばずっと一丈字さんの眼鏡も気になってたんですよ」

飛鳥「え? そうですか? 私のは本当に…」

りみ「…結構高いイメージがあるんだけど」

 

 りみの言葉に飛鳥は少し困惑していた。飛鳥自身は元々目は2.0あって眼鏡をかける必要はないのだが、今みたいに潜入捜査をするにあたって正体を隠す必要があるので、目立たない一般男子生徒に扮する必要があるのだ(まあ、飛鳥自身もこのファッションを割と気に入っているというのもあるが…)

 

麻弥「どこで購入したんですか?」

飛鳥「え? 100円ショップ…」

麻弥「100円ショップにそのフレームは売ってませんよ。自慢じゃないですけど、ジブン100円ショップの眼鏡も網羅しているので」

 

 珍しく押されている飛鳥。いつもは自分達より個性が凄いメンバーの陰に隠れがちだが、自分達の得意分野だととにかく推しが強かった。飛鳥も観念したのか本当の事を話すことにした。

 

飛鳥「やはり誤魔化されませんか。オリバーです」

麻弥「やっぱりそうですよね!!」

蘭「…お金持ちじゃん!」

 

 これには蘭も流石に驚いていた。芸能人も御用達で有名なブランドだからである。

 

飛鳥「もうこの際だから言いますが、値段も結構しましてあまり口外しないようにしてるんですよ…。伊達とはいえそう簡単に買えませんからね」

りみ「え、買ったの?」

飛鳥「人から貰ったんですよ。伊達メガネを買おうとしたら、これを使ってみなさいって言われまして…」

蘭「…林グループの人?」

飛鳥「そうですね…」

麻弥「一丈字さん。大事に使いましょう」

飛鳥「勿論です」

「お待たせしましたー。この季節にぴったりの鍋です」

 

 そのまま4人が鍋を食べるのだが…。

 

麻弥「や、やっぱり曇りますよね…」

蘭「本当に前が見えない…」

りみ「困りますよね~」

飛鳥「ええ。曇り止めもありますけど、面倒ですよね」

 

 ちなみに飛鳥は超能力で3人が自分に気を遣わないようにし、飛鳥がずっと鍋を作っていた。

 

飛鳥(少なくとも大和さんに作って貰ったとなったら大変な事になりますしね…)

 

 勿論後日その事に気づかれて、2回目が行われることとなりましたとさ。めでたしめでたし。

 

 2回目

 

麻弥「ジブンが作りますので、一丈字さんは食べてください!」

飛鳥「えーっと…」

 

 とある和室で麻弥が鍋を作っていた。

 

蘭「あ、次アタシやるから。黙って食べる!」

りみ「そ、そうだよ…。あ、ごはんおかわりする?」

飛鳥「あ、すいません頂きます」

蘭「そこは遠慮しないんだ…」

飛鳥「いやあ、これ親戚の集まりとかでやると、母親から自分でやりなさいって注意されるんですけどね」

麻弥「まあ、確かにそうですけどね…。ですが、遠慮はいりませんよ」

蘭「麻弥さん。アタシがやりますので」

麻弥「も、もうちょっとだけ…」

 

 

3. そしてこうなります

 

「おい一丈字!!」

「お前蘭ちゃんやりみちゃんと同じメガネキャラという理由で色々良い思いをしているそうだな!!」

「しかもお前麻弥ちゃんに鍋作って貰ってたな!!」

 

 どこでその情報を手に入れたのか、と飛鳥は突っ込みたかった。

 

飛鳥「ええ。今回は私が悪うございますよ」

「開き直ってんじゃねぇよ!!」

「じゃあアレだな! 今度からは誘いがあっても断れよ!!」

飛鳥「それでしたら一つ聞きたい事があるんですけど…」

「何だよ」

飛鳥「クラスで食事に行ったりしないんですか?」

 

 飛鳥の言葉に空気が止まった。

 

飛鳥「クラスでなら行ってくれそうな気がするんですけどね」

「その手があった!!」

「教えてくれてありがとよ一丈字!!」

「これでモテモテのウハウハだー!!」

 

 と、ヤラカシ軍団が去っていった。

 

飛鳥(チョロすぎる…)

「おー、一丈字。どうしたんだ?」

飛鳥「宇田川さん」

巴「そういや聞いたぞ。お前蘭と鍋食ったみたいだな!」

飛鳥「牛込さんと大和先輩もいらっしゃったんですがね…」

巴「それも聞いてる。でも蘭がそういうのに参加するのは珍しいと思ってな」

飛鳥「そうなんですか?」

巴「いつもはあたし達Afterglowの5人っていうのが多かったんだけどな。そうだ、今日空いてるか?」

飛鳥「空いてますが…」

巴「ラーメン食いに行こうぜ!」

 

****

 

 そして放課後…。

 

「クラスで鍋食いに行こうと思うんだけど!!」

「勿論女子は無料で代金は男子で折半な!」

 

 と、1年2組の教室で男子たちがそう企画したが、Afterglowに本当に興味のない男子からしてみたらマジで得しなかった。

 

モカ「無料…」

ひまり「それは捨てがたい…」

蘭「いや、絶対罠だから」

つぐみ「巴ちゃんはどうする?」

巴「え? アタシ一丈字とラーメン食いに行く約束してるからムリ。じゃあな」

「は?」

 

 巴が去っていったが、飛鳥と2人きりでラーメンに行くことが発覚してクラスメイト達は大騒ぎしていた。勿論後日偉い事になったのは言うまでもない。

 

あこ「あ、飛鳥くんがあこのおにーちゃんになるの…?」

巴「あこ。マジでごめん。本当に違うから////」

 

 

 

おしまい

 



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第474話「バンドリごちゃまぜ劇場」

 

1. 飛行機はイヤ!!

 

 ある日の事。色々あって飛鳥とガールズバンド組が旅行をする事になりました。というのも、飛鳥が本当に疲れているという事もあり、こころ達が労おうと計画していた。だが、目的地が南の島という事もあり、飛行機を使う事となったのだが…。

 

香澄「飛行機はヤダ!!!」

 

 香澄が駄々をこねていた。

 

薫「子猫ちゃんがここまで嫌がっているし、たまには船もどうだろうか…?」

 

 飛行機は苦手ではないが、もう高い所自体ダメな薫も香澄に便乗する形でこころを説得しようとしていた。ちなみに千聖は薫の様子を見て呆れていた。

 

こころ「それもそうねー。でも、これは飛鳥を労う旅行だから、飛鳥に決めて貰いましょうか!」

飛鳥「え」

 

 こころが飛鳥に責任転嫁してきたので、飛鳥が声を漏らすと香澄と薫がこれでもかという程圧をかけてきた。

 

千聖「薫。一丈字くんに決めさせてあげなさい」

薫「千聖、何故私だけなんだ…」

香澄「飛鳥くんおねが~い!!!」

有咲「話聞いてた!?」

飛鳥「…それもそうですが戸山さん。飛行機駄目だったんですね」

香澄「うん! 此間乗ったんだけどやっぱり怖くて~…」

飛鳥「…あー。まあ、いいですよ」

有咲「ホントにいいのか!?」

飛鳥「特に飛行機が良いという理由はないので…。ですが目的地までどれくらいで着きそうですか?」

千聖「あの、それを言うなら私達パスパレの予定が…」

紗夜「それなら南の島は難しいわね」

ひまり「えっ…」

 

 実はちょっと行きたそうにしていたひまりだったが、巴やつぐみに抑えられていた。

 

こころ「大丈夫よ!」

「え?」

 

 そしてどうなったかというと…

 

こころ「この高速船を使えば半日くらいでつくわ!」

「ええええええええええええええええええええええええ!!!?」

 

 ご都合主義の塊の豪華客船が出てきて、飛鳥達は絶叫していた。

 

飛鳥「いやー。お金持ちのやる事はよくわかりません」

 

2. 着ぐるみ大戦

 

 ある日の事、飛鳥が商店街で買い物をしていたが、

 

飛鳥「そういや、あのウサギの着ぐるみって…」

はぐみ「ああ! マリーちゃんの事!?」

飛鳥「マリーちゃん?」

はぐみ「マリー・アンドロメダっていう名前があるんだよ!! 商店街のマスコットなんだ!」

飛鳥「へ、へえ…。ミッシェルとは関係ないんですね?」

はぐみ「あ、そういえばミッシェルとマリーちゃんって仲良しなのかな。今度聞いてみるよ!」

飛鳥(奥沢さん…すみません…)

 

 はぐみの言葉を聞いて、飛鳥は美咲が苦労する姿が脳裏に浮かんだ。

 

はぐみ「あ、ちなみにミッシェルって妹いるんだよ!」

飛鳥「へ、へえ…」

 

3. 猫好きはもう一人…

 

「ニュースです。Youtuber数名が子猫を川に投げ捨てたり、ボール代わりにして遊んでいる動画を投稿して炎上しています」

 

 昼休憩、皆が食堂で食事をしている時にこのニュースが流れていたが、このニュースと映像を見た友希那がとてつもなく激怒していた。瞳孔がかなり開かれていてめちゃくちゃ怖い。

 

リサ「友希那!! お願いだからその顔はやめて!! 怖い!!(涙目)」

 

 一緒にいたリサが涙目で止めていて、それをパスパレメンバーが見ていた。

 

彩「ど、どうしたんだろう…友希那ちゃん…」

日菜「なんか猫を川に投げ捨てたりボール代わりにしたり、捕獲してガスを嗅がせたりしてるYoutuberがいるみたいだね」

イヴ「ひ、酷いです!」

千聖「…あの、麻弥ちゃん」

麻弥「え? なんですか?」

 

 千聖がおそるおそる声をかけると、麻弥も友希那同様激怒していて、頬や額に青筋が立っていた。

 

麻弥「あ、大丈夫ですよ。ジブンそんなに怒ってないんで…え、そんなに怖いですか?」

彩「怖いってレベルじゃないよ!!!」

日菜「あの、麻弥ちゃん。ちょっと落ち着こ? ね?」

 

 あの日菜ですら完全にフォローに回る程だった。

 

麻弥「一体どこの誰なんですかねぇ…。そんなバカな事をする輩は…」

 

 その時だった。

 

「どうせ一丈字の仕業だ!!」

麻弥「あ゛!?」

友希那「彼がそんな事やってる訳ないでしょう。黙ってくれるかしら?」

 

 ヤラカシがいつものように飛鳥sageをしようとしたが、麻弥と友希那にガチで怒られて萎縮していた。

 

 そしてそれを遠くで飛鳥とモカが見ていた…。

 

モカ「犯人捕まえた方がいいんじゃない?」

飛鳥「そうだね…」

 

 この後、千聖からもSOSが来て仕方なしに飛鳥は犯人探しを行う事にしたのだが、性懲りもなく猫を虐待していたので全員やっつけたという。

 

飛鳥「あの、あなたは…」

「楽奈」

 

 中学1年生のあの彼女と遭遇したのは言うまでもない…。

 

4. 沙綾の悲劇

 

「山吹さん。ちょっと来て」

沙綾「え?」

「いいから!」

 

 知らない女子に呼び出されて沙綾が向かったが、そこにはゴキブリが数匹もいた。

 

沙綾「ひっ!!」

「ちょっと前に出て!!」

沙綾「何々!?」

 

 するとゴキブリが沙綾に反応したのか、その場から出ていった。

 

「あ、出てった」

「ありがとう山吹さん」

沙綾「え、ど、どういう事…?」

「いや、それはその…」

 

 沙綾が自分を呼び出そうとした理由を聞こうとすると、女子達は気まずそうにしていた。すると沙綾が察した。

 

沙綾「…私が動物に嫌われやすい体質だから?」

「え、えっと…」

「ゴメン!! どうしてもゴキブリに触れなくて山吹さんの体質で何とかできないかなって!!」

 

 と、両手を合わせて謝ったので沙綾は苦笑いした。

 

沙綾「な、なーんだ。そういう事なら仕方ないなー…」

 

 沙綾は苦笑いしたが…。

 

沙綾「ってならないからー!!! うわあああああああああああああああん!!!!」

「や、山吹さーん!!!!」

 

 自分が気にしてる事を利用された沙綾は泣きながら教室を飛び出した。実は沙綾は動物に嫌われやすい体質で、猫をなでようとすれば引っかかれるし、商店街で買っているよく喋る九官鳥も沙綾に対しては無視するという散々な扱いを受けていた。

 

 そしてこの出来事を知ったポピパメンバーは激怒した。

 

沙綾「ううっ…ひっく…」

香澄「さーやに謝って!!」

有咲「そして二度と同じことすんな!!」

「本当にごめんなさい!!」

 

 陰で飛鳥とモカが見ていたが…。

 

モカ「…飛鳥くんの能力で沢山のゴキブリをあの子達の体中に這わせる事って出来る?」

飛鳥「出来ない事はないけど、オレが犯罪者になっちまうよ…」

 

おしまい

 

5. もしも4のシナリオで皆腹黒かったら…。

 

 沙綾の嫌われ体質を利用してゴキブリを追い払った女子達だったが、沙綾をめちゃくちゃ傷つけた。

 

***

 

たえ「さーやを泣かしたからにはゴキブリと仲良くなって貰わないとね」

「ひ、ひぃいいいい~!!!!」

 

 弦巻財団が用意した瓶に女子達が閉じ込められていたが、ゴキブリも一緒に閉じ込められていた。

 

「本当に悪いと思ってるの!!」

香澄「さーやはどうなっても良かったんだよね?」

りみ「ここまでやって貰わないと割に合わないよ…」

有咲「ただで済むと思うなよ。さーやすっごく傷ついてたんだからな?」

「きゃあああああ!! 服に入ってきたぁ!!」

「本当に許して~!!!!」

 

 それを飛鳥、モカ、千聖が見ていたが、飛鳥と千聖は青ざめていた。

 

モカ「やまぶきベーカリーのパンが食べられなくなることを考えたら軽い方だよ~」

飛鳥「本当にギスギスしてますね…(白目)」

千聖「お願いだからあなたが頑張って頂戴!!!(涙目)」

飛鳥「いや、あの市ヶ谷さんだったらもう大丈夫でしょう…」

千聖「お願いだから~!!!!(泣)」

 

 

 そう言って千聖は飛鳥の身体を思い切り揺さぶった。

 

 

おしまい

 



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第481話「節分2024」

 

千聖「……!」

飛鳥「…大変ですね」

 

 中庭のベンチで飛鳥、千聖、モカが話をしていたが、千聖を含むパスパレが今度ラムちゃんのコスプレをする事となってしまったのだ。

 

千聖「あのセクハラ親父共…!!」

モカ「まー。男の子が見る雑誌ですもんねー」

飛鳥「こっちを見るんじゃありません」

 

 モカが飛鳥を見ながらそういうと、飛鳥は困惑しながら見つめたが、千聖に至っては中の日とて気にぴったりだと思っていた。

 

千聖「まあ、仕事自体は引き受けるけどこっちに事前に話せっつーの…!」

飛鳥「話したら引き受けない可能性があるからじゃないですかねぇ…」

モカ「言えてる~」

千聖「そういえば前回はよくも逃亡してくれたわねぇ?」

飛鳥「いつの話ですか」

 

※ 261話参照

 

千聖「本当の鬼は心の中にいる。だったわね?」

飛鳥「そういう事言うからじゃないですかねぇ…」

千聖「おだまり!! とにかく今回はアナタたちも巻き添えにしてやるわ!」

飛鳥「今度ヤラカシ達が私に嫌がらせをしてきたら、そうしましょうか?」

千聖「まあ、そうね…」

 

 こうして作戦を考えたが、ヤラカシ達が何故か大人しくしていた。

 

飛鳥「次行きましょう」

モカ「こうなると思った~」

千聖「ちょっと待ちなさーい!!」

 

2. だがやる。

 

こころ「話は聞かせて貰ったわ! 皆でやりましょう!」

飛鳥「それはいいけど、肌結構露出するから、皆結構嫌がるよ」

こころ「そうね…」

飛鳥「いったんここは作戦を立てましょう」

「おい! 何こそこそ話してんだよォ~!!」

 

 ヤラカシ軍団が現れた。

 

「オレ達も混ぜてくれよ~?」

「仲間外れは良くないなぁ~?」

飛鳥「次こうやって絡んできたら、弦巻さんと青葉さんと白鷺先輩が鬼娘の格好をするという作戦を考えていました。見事にやってくれましたね」

「な、何だとー!!?」

千聖「あら。あなたもよ?」

飛鳥「需要あります?」

こころ「飛鳥も一緒にやりましょう!」

 

 そして本当にやらかして、そのままライブをする事となった。

 

こころ「みんなー! 今日は臨時ライブに来てくれてありがとー!!」

 

 こころはボーカル、モカはギター、千聖はベース。そして飛鳥はドラムだが、ドラムは後ろにいる為目立たないという事で、挨拶の時だけ前に出る事となった。モカ、千聖がビキニタイプなのに対し、こころはワンピースタイプ、飛鳥は鬼のカツラを被り、赤のインナーを着て、ハーフパンツを穿いていた。

 

 香澄達も見に来ていて、コスプレバンドに目を輝かせていた。

 

蘭「モ、モカ…!!/////」

巴「いつの間にこんなバンドを…」

 

彩「千聖ちゃんもだけど、こころちゃんやモカちゃんまで…」

麻弥「一丈字さんもいますよ!」

 

 そして飛鳥も話しかける。

 

飛鳥『えー。今回は節分にちなんだ臨時バンドでお送りします。この度Pastel*Palettesの白鷺千聖さんが少年漫画雑誌の表紙を飾る事になったのですが、鬼の格好をするという事になりました。ですが、初めての事なのでどのように表現すればよいか考えた結果、その話を聞いていた私と青葉、弦巻の4人で簡単なライブをやってみる事と致しました。短い時間ではございますが、お楽しみください。あ、今日も冷えてまいりますので、防寒対策はきちんとなさってください』

 

 すると黒服たちがカイロと体をあっためるジンジャークッキーを見物客に配り始めていた。そこそこ高い。

 

こころ「それじゃ聞いて頂戴! えがおのオーケストラっ!」

 

 ライブ演奏が始まったが、ハロハピの時とは違ってアレンジをかけていて観客を驚かせていた。

 

有咲「思ったんだけど、いつ練習してるんだ…?」

香澄「私達もアレやろうよ!」

有咲「ア、アレってコスプレか…?」

たえ「有咲いい体してるし…」

有咲「しねー!!!」

 

 こうして数曲演奏して、ライブは大成功に終わった。

 

彩「まさかこんなライブをするなんて…」

千聖「まあ…今回は飛鳥くん達にも私達の気持ちを味わってもらおうと思って」

麻弥「あの…千聖さん」

 

 麻弥が気まずそうにしていた。

 

千聖「どうしたの?」

麻弥「大変言いにくい話なんですけど…。今度の表紙、あの格好をしなくても良くなりました…」

千聖「えーっ!!!?」

 

 麻弥の言葉に千聖が絶叫すると、飛鳥とモカは困惑した様子で顔を合わせた。

 

こころ「あら、どうしてかしら?」

麻弥「その…ジブン達の承諾を得ないでその鬼の格好をさせようとしたことが、問題になったみたいなんです。そんな会社とは仕事出来ないって…」

飛鳥「まあ、当然の結果ですね…。セクハラになりますし」

千聖「……」

 

 自分のやった事は何だったんだと千聖は呆然としていた。

 

イヴ「チサトさん…」

飛鳥「白鷺先輩。お気の毒ですが、今回は我々も一緒の筈です。気を落とすのやめてください」

モカ「そうですよ~」

 

 気を落とさないで下さいと気を遣うのではなくて、自分達も巻き込んでんだから無駄とか言うなよ。という感じで千聖に言い放った。

 

 すると千聖は飛鳥達の方を向いた。

 

千聖「本当にごめんなさい…」ズーン

飛鳥「打ち上げ行きましょう」

こころ「いいわね! パーティしましょう!」

飛鳥「パーティっていうテンションじゃないから、普通に食事会にしよう」

モカ「モカちゃんは楽しかったですよ~」

千聖「う…うぅうううう~~~~~~!!!!!(泣)」

 

 優しすぎる後輩たちに千聖は号泣していた。

 

 

 ちなみにヤラカシ達はというと…。

 

「一丈字は余計で、パスパレの撮影中止は残念だが、千聖ちゃんとモカちゃんとこころちゃんがやってくれたからOKだ!!」

「スマホで撮影しまくったもんね~!!!」

 

 とにかく気持ち悪かったが、まあ結果的に飛鳥がバンドガールと食事会に行くので、最終的にあいつが勝ちました。

 

モカ「モカちゃんの鬼娘姿に見惚れてたでしょ~」

飛鳥「え? なんでです?」

巴「モカ! あんまり困らせるんじゃない!」

つぐみ「と、とにかくお疲れ様…」

 

 

おしまい

 

 

 



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第482話「無理しないでね」

 

 

飛鳥「そういえば若宮さんって剣道部と茶道部と華道部に入ってるんですよね」

イヴ「はい!」

飛鳥「…大変じゃないですか?」

イヴ「確かにアルバイトやアイドルのお仕事もありますけど、とても楽しいですよ!」

飛鳥(こういうポジティブな姿勢は見習わないといけないなぁ…)

 

 仕事量は敗けてはいないが、こういう大変な時に対する姿勢に関しては真逆なので飛鳥はイヴを見習う事にした。

 

「イヴちゃん! 日本の文化を語る上で大事な事が1つだけ忘れてるぞ!」

イヴ「な、何でしょう!?」

飛鳥(まさかな…)

 

 すると男子たちはぐわっと目を開いた。

 

「それは日本の国技! 相撲だーっ!!」

イヴ「す、相撲…!」

「相撲なくして日本の文化は語れない!」

「さあ! 裸になってまわしをつけるんだ!」

飛鳥「若宮さん。女性はインナーの上にまわしをつけるので、ご安心ください」

 

 予想通りだったと飛鳥はイヴに対してツッコミを入れると、イヴが苦笑いしていた。

 

「それはそうと一丈字てめえ! 何イヴちゃんと二人きりで話をしてるんだよ!」

「何の話をしてたんだ!!」

飛鳥「いや、部活動3つ入ってて大変じゃないですかって話をしてましたよ。私はもう行きますので…」

イヴ「あ、そういえばアスカさんに聞きたい事があるんです!」

飛鳥「聞きたい事ですか?」

イヴ「アスカさんとっても足が速いですけど…ニンジャなんですか!?」

 

 イヴの言葉に飛鳥は困惑していた。

 

「いやいやイヴちゃん。こいつが忍者な訳ないでしょ」

「どう考えてもガリガリの陰キャだし」

「それはそうとイヴちゃんのくのいち姿、みてぇな…」

 

 そう言うと、

 

「貴女達」

「!」

 

 千聖を筆頭に彩、麻弥、日菜が現れた。

 

千聖「イヴちゃんに何をしているのかしら?」

「オ、オレたちじゃない! 一丈字だ!!」

イヴ「ア、アスカさんは何もしてませんよ!?」

飛鳥「色々やる事多くて大変じゃないですかって話してました」

千聖「そうだと思ったわ。ちょっと今度のお仕事の打ち合わせしたいから来て貰えるかしら?」

イヴ「は、はい! 失礼します!」

飛鳥「お気をつけて!」

 

 そう言ってイヴが千聖たちの元に向かうと、飛鳥も超能力で存在感を消してその場を離れた。するとイヴが異変に気付いて後ろを向くと、飛鳥がいない事に気づいた。

 

イヴ(アスカさんがもういなくなってる…! やっぱりニンジャです!!)

 

****

 

 それからというもの、イヴは仕事をこなしていたわけだが、そんなある日の事…・

 

彩「…イヴちゃん。顔色悪いよ」

イヴ「い、いえ…。そんな事ありません…」

 

 いつものように外でロケがあって終わったのだが、イヴが明らかに顔色が悪く、彩たちが異変に気付いた。

 

千聖「…やはり色々詰め込み過ぎたのよ。イヴちゃん、今日はまっすぐ帰りなさい」

麻弥「そ、その前に立てますか…?」

イヴ「だ、大丈夫です!」

日菜「なんか…顔が青白くてヤバい気がするんだけど」

 

 そんな中、飛鳥が通りかかった。

 

日菜「あっ、飛鳥くんだ!」

飛鳥「あ、お疲れ様です皆さん。どうされました?」

千聖「イヴちゃんがちょっと体調崩しちゃったみたいなのよ…。動くのもしんどそうで…」

イヴ「す、すみません…」

彩「救急車呼んだほうがいいんじゃ…」

イヴ「あの、ちょっと休ませてください…」

 

 すると千聖がある事を考えた。

 

千聖「飛鳥くん。あなたのおうち近かったわよね?」

飛鳥「近いというかもうすぐそこなんですけどね…」

日菜「近っ!!」

千聖「悪いんだけど、イヴちゃんを休ませて貰えないかしら」

飛鳥「分かりました。コンシェルジュさんに話せば部屋を貸してくれると思いますので」

イヴ「す、すみません…」

飛鳥「若宮さん。そこは『ありがとう』ですよ」

「!」

 

 飛鳥が口角を上げてそういうとパスパレの5人は驚いた。

 

飛鳥「仕事上ではすみませんって言わないといけない場合がありますけど、友達や仲間に対しては「ありがとう」って言った方が伝わりますよ」

イヴ「……!」

飛鳥「お話は後にしましょう」

 

 こうして飛鳥達は移動して、1階のゲストルームに通して貰った。

 

飛鳥「若宮さんは寝ててください」

イヴ「は、はい…」

飛鳥「若宮さん。今から軽食作りますので、それ食べてから帰ってくださいね」

「え?」

 

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

 

飛鳥「忙しかったのもそうですけど、モデルの仕事で食事制限したでしょう。それもあったから気分悪くなったんですよ」

イヴ「は、はい…」

彩「飛鳥くん。私達にも何かできる事ない?」

飛鳥「私の家から救急道具一式持ってきますので、後で熱を測ったりして貰えませんか?」

彩「わ、分かった!」

千聖「私はイヴちゃんのご両親に電話をかけるわ」

飛鳥「お願いします」

 

 そう言って飛鳥が材料を取りに行くと、千聖が電話でイヴの親に事情を説明した。

 

飛鳥「私、料理しますのでお願いします」

麻弥「任せてください!」

 

 飛鳥が料理してる間、イヴは体温を測っていた。

 

麻弥「…37.4度。ちょっと熱ありますね」

日菜「飛鳥くーん! 7度4分だってー!」

麻弥「ひ、日菜さん! 声大きいです!」

飛鳥「そうですか。明日の朝になって元気になってたら良いのですが、病院で見て貰った方が良さそうですね」

千聖「……!」

 

 この時千聖は飛鳥に対して超能力者としての顔を見たように感じた。

 

飛鳥「とにかく栄養を取って体を休ませることが先決ですね。食事が出来たら呼びますので、若宮さんはゆっくりお休みください」

イヴ「…分かりました」

 

 そう言ってイヴはベッドでゆっくり休むことにすると、彩たちは邪魔したらいけないと思い、寝室から離れた。

 

日菜「飛鳥くん。何作ってるの?」

飛鳥「ちゃんこ風の雑炊です」

「ちゃんこ風!?」

飛鳥「まあ、白米はインスタントの奴ですが…。あ、皆さんも折角ですので食べてってください」

麻弥「あ、ありがとうございます…」

彩「あの、本当に手伝う事ない…?」

飛鳥「その時にまたお願いしますので、ゆっくり休んでてください」

日菜「分かったー」

麻弥「ひ、日菜さん!(小声)」

 

 そう言って日菜はゴロゴロし始めた。

 

***

 

 そして雑炊が完成して麻弥にイヴを起こして貰い、6人で塩みぞれちゃんこ雑炊を食べた。

 

飛鳥「どうですか? 若宮さん」

イヴ「凄く美味しいです!」

麻弥「なんていうか、ほっこりしますねぇ…」

日菜「身体もあったまる感じ!」

千聖「生姜を入れたの?」

飛鳥「はい。体も温まりますが、熱も出してくれますので」

彩「おいしー」

 

 イヴは飛鳥を見つめた。

 

イヴ「あの、アスカさん…」

飛鳥「何でしょう」

イヴ「本当にここまでしてくれてありがとうございます」

飛鳥「いえいえ」

 

 イヴが頭を下げると飛鳥は苦笑いした。

 

飛鳥「少し寝て気分はどうですか?」

イヴ「す、少しだけですが楽になりました!」

飛鳥「そうですか。それでは家に帰ったらまたゆっくり体を休めてください」

イヴ「は、はい!」

日菜「それにしても飛鳥くん。料理上手なのもあるけど、熱計ってーとか指示出してたけど、結構慣れた感じだよね」

飛鳥「しょっちゅうありましたからね…」

 

 日菜の言葉に飛鳥は何か言いたそうに遠い顔をした。

 

飛鳥「まあ、今は若宮さんの体調が大事ですね」

麻弥「あ、ジブン食器洗いますよ!」

彩「わ、私も!」

飛鳥「宜しいですか?」

 

 飛鳥は遠慮する事はなく、麻弥と彩にお願いしようとしていた。遠慮しても麻弥たちも引き下がらないし、ヒートアップしてイヴに余計な負担をかけると判断したからだ。

 

 そして彩と麻弥が皿洗いをしていると、イヴの親が迎えに来た。

 

飛鳥「さて若宮さん。親御さんも迎えに来たので、家にお帰り下さい。あとは我々がやっておきますので」

イヴ「ア、アスカさん…」

飛鳥「お大事に」

 

 飛鳥が口角を上げると、イヴは目に涙を浮かべた。

 

イヴ「かたじけない…!!」

 

 武士風にお礼を言うと飛鳥や他のメンバーは少し苦笑いしながらも親と一緒に帰っていった。勿論親もお礼を言った。

 

*******

 

 その夜…

 

『本当にありがとう。飛鳥くん』

「いえいえ…。部屋にあげる訳じゃないので」

 

 飛鳥は千聖とテレビ通話をしていた。千聖も家に帰って自分の部屋で会話している。

 

千聖「…その、あの雑炊に何か細工でもしたの? なんか私も妙に元気になった気がするのだけど」

飛鳥「私の気をかけました。若宮さんの体力が少しでも元に戻るように」

千聖「そういう事も出来るのね…」

飛鳥「ええ。若宮さん風に言えば、修業の賜物ですね」

千聖「全く…。イヴちゃんもあなたも真面目なのはいいけど、無理はしないでほしいわ」

 

 千聖がまるでやんちゃな弟や妹を心配する姉のように振舞った。

 

*************

 

 翌日、イヴは元気よく学園に来ていて香澄達と話をしていた。

 

飛鳥「熱が下がって良かったですね」

千聖「ええ」

 

 飛鳥と千聖が廊下から様子を見ていた。するとイヴがやってきた。

 

イヴ「アスカさん! チサトさん! 昨日はありがとうございました!」

飛鳥「元気になって何よりです」

イヴ「はい…。食事制限する時のメニューを見直してみます!」

飛鳥「分かりました」

千聖「きちんと栄養バランスを考えるのよ?」

イヴ「それで…アスカさんにお願いがあるのですが?」

飛鳥「なんです?」

イヴ「私に料理を教えてください!!」

飛鳥「すみません。ちょっとそれはムリです…」

 

 イヴの言葉に飛鳥は困惑しながら返事した。

 

千聖「あら。やってあげればいいじゃない」

飛鳥「色々問題ありませんかね…。スキャンダルとか」

千聖「まあ、確かに些細な事でもニュースにしたがるものね…」

イヴ「や、やっぱりだめですか…?」ウルウル

 

 イヴが涙目+上目遣いをすると、飛鳥もこればっかりはどうしようもないので、困惑していた。

 

こころ「あら、どうしたのかしら?」

飛鳥「……」

 

***

 

 結局どうなったかというと…。

 

飛鳥「えー。それでは初めていきましょう」

イヴ「はい! よろしくお願いします!」

 

 弦巻家で料理教室を行う事となったらしい…。勿論材料なども弦巻家が負担してくれることとなった。

 

 この後、料理を学んだイヴが飛鳥に弁当を作ってきて、学園で大波乱が起こるのだが、長くなるので割愛します。

 

 

 

おしまい

 

 

 



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第483話「詰め合わせ20240315」

 

1. 紳士

 

 

 私の名前は一丈字飛鳥です。色々あってバンドリ学園に通っている高校1年生です。まあ、もう本家は2年進んで戸山さん達はもう3年生で、湊さん達はもう大学生ですけどこのまま進みます。イナズマイレブン方式で参ります。

 

 さて、私は今音楽室の前を通っていて、そこに白金先輩がいらっしゃったのですが…。

 

 ジャーン!!

 

 と、言わんばかりに白金先輩がポーズをとってました。まるで宇田川あこさんのようなポーズでした。まあ、ああいったポーズがあるとなんか締まりますよね。まあ、もし私がいたら気にするだろうと思うので帰ろうとしましたが目があいました。もう顔真っ赤ですね。

 

燐子「い、い…一丈字さん!? いらっしゃったんですか!?」

飛鳥「( ´_ゝ`)」

 

 私は無になりました。そして一礼するとスーッと立ち去りました。

 

飛鳥「============================( ´_ゝ`)」

燐子「あ、あの!! 待って!! 待ってくださいいいいいいいいいいいいいい!!!!/////////」

 

 白金先輩がなんか叫んでましたけど、私は聞こえないふりをしました。

 

 

2. これでも金髪美女

 

こころ「飛鳥! ちょっといいかしら!」

飛鳥「どうしました弦巻さん」

こころ「皆からびっくりする顔を教えて貰ったから、見てて頂戴!」

飛鳥「あ、はい。分かりました…」

 

 どんなんだろうと思いながらも、飛鳥は付き合ってあげることにした。

 

 そしたら普段の彼女から想像もできない程…ドS顔だった。

 

飛鳥「なんか妙にしっくり来る!!!」

 

 お嬢様にこういうタイプも割と多かったので、飛鳥は思わずそう突っ込んだ。

 

こころ「どうかしら飛鳥」

飛鳥「まあ、確かに驚きましたけど…」

 

 驚いたことは驚いたが、正直言って変な事になる前に何とかしようと思っていた。というか美咲の負担が絶対に増える事間違いなしだった。

 

飛鳥「私としてはいつもみたいにニコニコしてる方が好きですね」

こころ「あらそう!? そう言って貰えて嬉しいわ!」

 

 そう言ってこころはニコニコすると、飛鳥も苦笑いであるがニコニコした。そして遠くからハロハピメンバーが見つめていた。

 

美咲(…一丈字くん、やっぱり関西の人なんだなぁ。思った事をストレートに話す///)

 

 

3. 普通に強いぞ一丈字

 

「ねえ~ん。オレ達と××××してよ~」

友希那「ごめんなさい。急いでるの」

 

 帰宅途中。男たちにナンパされる友希那。やはり顔立ちは良いので声をかけられることも少なくない。

 

「そんな事言わずにさぁ」

 

 男が友希那の手首を掴んだその時だった。

 

「あのー。すいませーん」

「ああ!?」

 

 遠くから飛鳥が声をかけると、男たちがメンチを切りながら飛鳥の方を見た。すると飛鳥はスマホで撮影をしていた。

 

飛鳥「証拠抑えたんで、私の気が変わらないうちにその子を置いて立ち去りなさい」

 

 飛鳥がそう言うと男たちは憤慨した。

 

「しょ、証拠を消せ!!」

「こいつがどうなってもいいのかぁ!!!」

 

 と、男たちは友希那を人質に取り始めたが、飛鳥は取り乱さず後ろを見るようにジェスチャーをした。

 

「ヘッ。残念だがその手には乗らんぞ」

「とにかく証拠を消しててめえのスマホを渡しやがれ!!」

「あのー」

「何だよ!」

 

 男たちが後ろを振り向くと、警察官がいた。

 

警察A「警察ですけど」

警察B「こんな道のど真ん中で人質取るって、あんまり頭が良いと言えないなぁ」

「ハッ! 残念だがその手には乗らんぞ!」

「どうせコスプレ警察官だろ!!」

 

 男たちがそう言うと、警察官達は警察手帳を見せた。

 

警察A「こういう者ですが?」

「どうせロフトでメモ帳買って改造したんだろ!? 騙されねぇよばぁ~か!!」

 

 男たちが煽るに煽ると、警察Bは拳銃を向けた。

 

警察B「これ、本物の拳銃だけど撃たれてみる?」

 

 警察Bの言葉に男たちは青ざめると、飛鳥は呆れながらも超能力で友希那を解放した。

 

**

 

警察A「ご協力ありがとうございました!」

飛鳥「あんま無茶されないように…」

警察B「上級国民捕まえないからって、皆舐めてんだもん。やんなっちゃうよ」

 

 そんな事を言いながら警察官達は男たちをしょっぴいた。

 

飛鳥「大丈夫ですか?」

友希那「ええ。助かったわ…」

飛鳥「家まで送りましょうか?」

友希那「お願いするわ。だけど、あなたの家こっちだったかしら?」

飛鳥「あー。この辺に広島に住んでた頃に行ってた店のチェーン店が出来たんですよ。その帰りです」

友希那「それは何屋さんなの?」

飛鳥「ドーナツ屋です。名前は…」

 

 と、そのまま世間話をしたまま家まで送る飛鳥であった。

 

4. ラッキースケベ

 

友希那「どうしよう…。上だけ流されてしまったわ…/////」

 

 友希那が両手で胸を隠していたが、その時の顔は真っ赤になっていた…。

 

***

 

「っていう展開、本当になかったのか!?」

「……」

 

 飛鳥はヤラカシ軍団に絡まれていたが、ラッキースケベがなかったか聞かれていた。

 

飛鳥「ないです」

「嘘つくんじゃねぇ!!」

「25人もいてラッキースケベが起こらねぇ訳ねぇだろ!」

飛鳥「ご本人に聞けばいいじゃないですか」

「それが出来たら苦労しねぇんだよ」

 

 自分の手は汚さずに良い思いをしようとする。まさに社会人としてダメな見本を見せるヤラカシ軍団に飛鳥は手を焼きながらも、なんとかその場は逃げきった。

 

 

飛鳥(まあ、ラッキースケベじゃなくて白金さんのアレがあったんだけどね…)

 

 

 ちなみにあの後燐子とどうなったかというと…。

 

燐子「…内緒にしてください//////」

飛鳥「大丈夫ですよ。私の言う事なんて誰も信じませんし、言ったら言ったで「黙っとけ」って言われるのがおちなんで」

 

 

 普通に交渉していた。

 

 

 

おしまい

 



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第484話「ハロハピ! シアターマナー!」

 

 

 それはある日の事。飛鳥はハロハピと一緒に昼食を取っていた…。青空の下でビニールシートを広げて完全にピクニック気分だった。勿論準備は弦巻家の黒服がしている。

 

 なんでこうなったかというと、こころが飛鳥と一緒に食事をとりたがっていたというのもあったが、食堂に行くとトラブルになるし、この日は雲があんまりない程天気も良かったので、青空の下でランチを取る事となったのだ。バスケットに入ったサンドイッチなどがとても美味そうである。

 

こころ「そういえば飛鳥は此間の休みは何をしていたのかしら?」

飛鳥「映画を見に行ってました」

こころ「あら! 映画ならあたしの家でも見せてあげたのに」

飛鳥「それは有り難いんですけど…」

 

 こころの言葉に飛鳥は苦笑いした。というのも、実は飛鳥は最前列を予約していたのだが、フードも大量に買い込んで食べていたのだ…。勿論こころ達には教えられない。

 

こころ「映画という事は映画館という場所かしら!」

飛鳥「まあ、そうですね…」

こころ「あたしも今度行ってみたいわ! そうだ! 今度ハロハピと飛鳥で行きましょう!」

美咲「まあ、映画を見るのはいいけどこころ。マナーはちゃんと守りなさいよ」

こころ「マナー?」

飛鳥「まあ、皆さんが気持ちよく映画を見る為のルールみたいなものですね」

こころ「どんなのがあるのかしら」

美咲(高校生だし、バンドやってるからそれくらい知ってなさいよ…)

 

 美咲がこころに対して呆れていると、花音も美咲が何を考えているか分かって苦笑いした。薫とはぐみはいつも通りである。

 

飛鳥「まずはスマホや携帯電話の電源は切る事ですね」

こころ「それはあたしでも知ってるわよ」

飛鳥「どうしてもメールや電話をしたいときはロビーで!」

 

『NO SMART PHONE:スマートフォン、携帯電話の使用はお控えください』

 

飛鳥「他に何かあるか分かります?」

こころ「そうねー…」

美咲「いや、普通に考えなさいよ。お喋りもダメ」

こころ「どうして?」

美咲「いや、映画の世界に浸りたいのに話し声が聞こえたら台無しじゃない!」

花音「こころちゃんもバンドで演奏してる時は演奏聞いて欲しいでしょ?」

こころ「そうね」

 

『NO TALKING:上映中の私語はお控えください』

 

はぐみ「うーん…他に何があるかな。薫くん分かる?」

薫「火を使うのは良くないね」

飛鳥「そうですね」

美咲「そういう意味ではタバコもダメですよね。あたし達未成年だから吸わないけど」

 

 思った他正解を言って感心する飛鳥と美咲。だが…。

 

薫「もし私が映画に出るときがあれば…子猫ちゃん達がやけどしないか心配だね」

飛鳥「分かりました。そうならないように白鷺先輩に教えて貰ったあの言葉を…」

薫「あと、人が嫌がる事を言うのも良くないね!(汗)」

 

『NO SMOKING:場内は禁煙です』

 

こころ「後は何があるのかしら!」

飛鳥「何があると思います? 松原先輩」

花音「えっ…」

 

 話を振ってきたので花音が苦笑いしていた。

 

こころ「花音は知ってるのかしら!」

はぐみ「教えて教えて!!」

美咲(…高校生だし、もう知ってた方がいいと思うんだけどなー)

花音「え、えっと…。前の人の座席を蹴ったりするのは良くないね」

こころ「そうね!」

 

『NO KICKING:前の席をけるのはお控えください』

 

こころ「マナーって色々あるのね。あ、マナーと言えば思い出したことがあるわ!」

美咲「な、なに…?」

こころ「なんか頭がビデオカメラの男の人のポスターで『映画泥棒』? というのがあったわ! 泥棒も良くないわね!」

飛鳥「上映中にスマートフォンやカメラで撮影する事や、その撮影した映画をパソコンとかでアップロードする事ですね」

美咲「こころ。これはマナーというより犯罪だから、絶対にやらないでね。やったらバンド解散だから」

こころ「しないわよ!」

 

『NO SHOOT REC:上映中の映画を撮影、録音はマジでやめろよ』

 

美咲「何で命令口調!? まあ、大事だけど…」

 

**

 

飛鳥「まあ、色々説明しましたが、これらを守って初めて映画を楽しめる訳なんですね」

こころ「う~ん! 猶更行ってみたくなったわ!」

はぐみ「あ、こころん! 映画館はね! 映画のパンフレットやグッズもたくさん売ってるんだよ!」

こころ「そうなの!?」

飛鳥「そうですね。その時に上映している映画のグッズなどが販売されていて、ネットでもオンラインストアから購入が可能なんですよ」

 

『THE STORE:グッズで胸に残る思い出を』

 

飛鳥「また、長時間の映画のおともにフードやドリンクも販売していますよ!」

はぐみ「はぐみはコロッケがいいなー!」

飛鳥「…コロッケは売ってるかは分かりませんが」

美咲「あんまりないと思う…」

 

『CONSESSION:長時間の映画のおともに』

 

飛鳥「最近では色んなタイプの映画館がありますね」

こころ「どんな所!?」

飛鳥「劇場だと、映像もさながら音響にこだわっている劇場や、内装にこだわっている劇場、3面をぜいたくに使った劇場などがありますよ!」

美咲「あー。そういえば本当に増えたよねぇ。普通に見れるだけでも十分なのに…」

 

飛鳥「更にシートだとカップルが使える『2人用シート』、ふかふかで座り心地の良い『プレミアムシート』、あとシートによってはラウンジが使えるって所も…」

美咲「映画を見るのにそこまでやるの!?」

飛鳥「こだわる人はとことんこだわりますからねぇ…」

 

 飛鳥の説明にこころはプルプル震えていた。

 

こころ「もう待ちきれないわ!! 今すぐ行きましょう!!」

美咲「いや、流石に今はダメだってば!!!」

飛鳥「弦巻さん。学校が終わってからの楽しみにしましょう」

美咲「いや、今日行く前提なの!?」

飛鳥「まあ、もし無理でしたら私がお付き合いしますので…」

はぐみ「はぐみも空いてるよ!」

薫「私も今日は演劇部はお休みでね」

花音「わ、私も…」

 

 残りは美咲一人になった。

 

美咲(こ、これが同調圧力…!!)

 

 まあ、最終的に全員で行きましたとさ。

 

 

飛鳥「皆さまもマナーを守って楽しく上映してくださいね!」

美咲「にしても一丈字くん。あなた、意外と食いしん坊だったのね…」

飛鳥「アメリカにいた時の癖が出てしまってますね。通常サイズじゃ物足りないんですよ。バターもないし…」

 

 ちなみにアメリカの映画館はポップコーンにバターをかけ放題らしい…。

 

 

おしまい

 



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飛鳥 VS 悪徳オリ主編
第4話「一丈字飛鳥 VS 悪徳オリ主 リターンズ」


 

 チート無双とハーレム。通称「チーレム」を手に入れる為に、「BanG!Dream」の世界に転生してきたオリ主こと檻主太郎。

 

 神様に顔をイケメンにして貰う事、チートできる事、ハーレムをつけて貰う事をせがんで、意気揚々と「BanG!Dream」の世界にやって来た。

 

 だが、神様は嫌がらせとしてハーレムだけは与えなかった。

 

 その結果、オリ主はとてつもない屈辱を感じていた。

 

 というのも…。

 

「一丈字くん。此間はありがとう」

「あ、はい…」

「とっても助かりました~」

 

 一丈字飛鳥がPastel*Palettesの丸山彩とハロー、ハッピーワールド!の松原花音からお礼を言われていた。

 

 檻主はそれが面白くなかったのだ。なぜこうなるんだ。ああやって可愛い女子からチヤホヤされるのはあいつじゃなくて、自分の筈だ。こんなの間違っている。間違っているなら正さなければならない。

 

飛鳥「お二人ともご無事で何よりです」

 飛鳥が苦笑いしながら花音と彩に話した。

 

彩「いや、もう本当に一丈字くんがいて助かったよ!」

花音「とても怖くて…」

 

 飛鳥の言葉に彩と花音が涙ながらに語っていた。というのも、彩と花音はファーストフード店でアルバイトをしていたのだが、その帰りに4人組の男に襲われそうになった所を、偶然に通りかかった飛鳥が救出したのだ。飛鳥としては花音たちがいるファーストフード店はトラブルが多いと聞いていた為、花音と彩を見たときに状況をすぐに理解した。

 

 ちなみに檻主にはこういうヒロイン達とのトラブルは一切なく、あったとしても男やブスばかりである。美少女と美人以外は基本的に無視するため、檻主は学校中から嫌われている。ちなみに虐めを使用をしようものなら、これでもかという程叩き潰そうとするが、たまに飛鳥を巻き込んで、懲らしめられている。

 

 何故退学にならないかというと、これもまた神様からの嫌がらせで、『自分が手に入れる筈だったハーレムは別の人間が手に入れる事になり、負け犬の人生を一生送り続ける』という制裁を受けていたのだ。

 

 それだけ彼は神に嫌われ、傲慢で性欲があったのだ。

 

 そして彩と花音にチヤホヤされている飛鳥に対して憎悪の念を抱き、ついに我慢できなくなった。

 

「おい一丈字!!!」

「!!?」

 

 檻主が鼻息を荒くして飛鳥に近づくと、飛鳥が彩に合図を送って花音を避難させるように指示を出した。

 

飛鳥「何か御用でしょうか」

「ちょっとこっち来い!!」

 

 と、檻主が飛鳥を連れていこうとしたが、飛鳥は一歩も動かなかった。

 

「おい! 歩けや!!」

飛鳥「あ、丸山先輩。松原先輩を連れて早く逃げてください」

彩「でも!!」

飛鳥「早く!!」

 

 すると彩が花音の手を引っ張って逃げていった。

 

「てめぇ!! まるでオレが暴漢みたいじゃねーか!!!」

飛鳥「すみませんね。ちょっと彼女たちピリピリしてるんですよ。そっとして貰えませんかね」

「オレに指図するなぁ!!」

 と、檻主が飛鳥に攻撃を仕掛けようとしたが、飛鳥が攻撃を受け止めた。

 

「!!」

飛鳥「お前の攻撃は見切った。感情任せの拳は効かないよ」

「うるせぇうるせぇ!! てめぇのようなザコが気安く喋るな!!!」

 

 檻主は逆上した。そう、檻主はオリ主主義で自分はこの世界の主人公であり、周りにいる学校の生徒も彩たちも自分達の言う事を聞く奴隷でしかないのだ。だが、この一丈字飛鳥というイレギュラーが原因で、自分の野望が悉くうまくいかない。神様につけて貰った自慢のチートも飛鳥の前では何故か全く通用しない。檻主のいら立ちが募るだけだった。

 

「こらー!! 何やってるんだ!!」

 

 と、男性教諭がやって来た。

 

檻主「先生!! 一丈字が暴れてたんですよ!! そして僕が止めようとしたんです!!」

 すると周りの生徒達が騒いだ。

 

「嘘つけー!!!」

「よくそんな嘘が言えたわね!!」

「恥ずかしくないのかー!!」

 と、叫んだ。

 

先生「お前が一丈字に突っかかってる所を見たぞ!」

檻主「だから誤解なんですってば!!」

先生「五回も六回もあるか!! さっさと来い!!」

檻主「チッ!! どいつもこいつもどうしてオレを信じない!!」

先生「その口の利き方は何だ!!」

檻主「うるせぇええ!!!」

 と、檻主が先生を突きとばそうとすると、飛鳥が受け止めた。

 

「!!」

 そして飛鳥が背負い投げをして、身柄を取り押さえた。

 

檻主「は、離せぇ!!!」

飛鳥「大人しくしててもらうよ」

檻主(何でこいつにはオレのチート能力が効かないんだ!!? もしかしてこいつも…!!)

 

 そして飛鳥は何とか檻主を先生達に引き渡す事が出来たが、ぐったりしていた。

 

飛鳥(疲れた…)

 飛鳥は檻主のヒステリックぶりに困惑していた。

 

飛鳥(噂にゃ聞いてたけど、ありゃあ本物だぜ…)

 飛鳥が一息ついていると、

 

「おーい!! 飛鳥くーん!!」

飛鳥「?」

 

 飛鳥が振り向くと、Roseliaの今井リサがやって来た。

 

飛鳥「今井先輩」

リサ「そういや聞いたけど、彩と花音を今日も助けたんだって?」

飛鳥「違いますよ。丸山先輩が松原先輩を助けたんですよ」

リサ「でも彩が飛鳥くんが逃がしてくれたって…」

飛鳥「私は逃がしただけですよ」

 飛鳥が腕を組んで言い放つと、

リサ「いや、それを助けたって言うんだよ…」

飛鳥「ダメか…」

 

 飛鳥はぼそっと呟いた。

 

飛鳥「もしかして丸山先輩と松原先輩、何かありました?」

リサ「ううん。でね、今度改めてお礼がしたいって」

飛鳥「あ、それでしたらお願いしたい事があるので、丸山先輩たちにお願いしに行きます」リサ「何? お金貸してほしいとかは無しよ?」

飛鳥「いや、貸すとは言わずくれって言いますよ。そこは」

 飛鳥の言葉にリサが困惑した。

 

リサ「あのね。そうやっても好感度は下がらないわよ」

飛鳥「それでは質問します。今井先輩が私の立場だったらどうしますか? お礼を受け取りますか?」

リサ「…受け取れないかな」

 リサが視線をそらして苦笑いした。

飛鳥「そういう事ですよ。お礼しますって言って、あっさり承諾したら…」

リサ「ちょっと厚かましいかもね…」

飛鳥「そういう事です」

リサ「じゃあ今度セッティングするから話し合おうよ」

飛鳥「セッティング?」

リサ「明日の昼空いてる?」

飛鳥「特にありませんけど…」

リサ「それじゃ彩と花音呼ぶから」

飛鳥「あ、はい。分かりました…」

 

 断っても多分逃がしてはくれないだろうと悟った飛鳥は、ちゃんと話し合いをして解決しようと考えた。

 

 

 次の日

 

彩「今度お礼にハンバーガーご馳走してあげるね!!」

花音「そ、それで良いですか…?」

飛鳥「あ、いえ、お気遣いなく…」

 と、食堂で飛鳥が彩たちと談笑していて、それを檻主が陰から羨ましがっていた。

 

 

おしまい

 



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第43話「一丈字飛鳥 VS 悪徳オリ主 ~手柄編~」

 

「安心してくれ。敵はオレが倒した」

 

 と、一人の男子生徒が、全校生徒の前で言い放つ。男子生徒の数m先にはいかにも怪しげの男が倒れていた。

 

「オレは皆を…この学園の平和を脅かそうとする奴は絶対に許さない!! これからもオレが守ってみせる!!!」

 

 とか言ってるが、これが正しい。

 

「オレは皆(美少女たち)を…この学園の平和(とか言ってるけど美少女限定。男とNOT美少女は自分で何とかしろ)を脅かそうとする奴は絶対に許さない!! これからも(美少女たちは)オレが守ってみせる!!!」

 

 あからさまに美少女たちに対してのアピールだった。

飛鳥「いてててて…」

 

 一丈字飛鳥は転んでいて立ち上がって男子生徒を見た。実は先ほど倒れた男の相手をしていたのは飛鳥だったが、途中から男子生徒・檻主がやってきて突き飛ばされ、手柄を横取りされたのだ。

 

飛鳥(まあ、敵は倒されたし、いっか…)

 

 飛鳥は檻主の強引さにあきれていたが、結果的に皆助かった為良しとした。

 

 一瞬の静寂が起きると…ブーイングが鳴り響いた。

 

檻主「!?」

飛鳥「!?」

 

「ふざけるなー!!!」

「その子を突き飛ばしといて、何が守ってみせるよ!!!」

「どうせ女子達に良い恰好したいだけだろ!!」

「最低!!!」

 

 と、檻主は断罪された。

 

檻主「な、何でだよ!! あいつを倒したのはオレなのに!! 一丈字がオレの足を引っ張ったのに!!」

飛鳥「……」

 

 いや、普通に仲間を突き飛ばしている所を見て称賛する奴はいないだろ…と飛鳥は思った。実際に飛鳥の言う通り、自分達の為に一生懸命頑張ってくれていた人間を突き飛ばして、手柄を横取りした男を誰が称賛するだろうか。正直言ってバカとしか言いようがない。だが、この檻主は自分を中心に世界が回っていると信じており、自分の言う事は絶対。そして何をやっても許されると信じて疑わなかった。

 

 だが、この男はチート無双というものをはき違えていた。例え何でもできる力をいれたとして、それが何をやっても許されるという事にはならない。それを言うなら、チート無双ではなく、自分が何やっても許される世界と、転生する前に言うべきだった。自分が何をやっても許される事と、チートを手に入れてその世界で無双する事は似ているようで全く違う。だから檻主が今のように断罪されるのは間違ってはいないのだ。

 

 そして飛鳥も彼を見て呆れていた。本当のヒーローはわざわざ自分の手柄を見せびらかしたりはしないし、日頃から美少女には甘く、それ以外には厳しい彼の人柄を見て、誰が称賛するだろうか。今回の騒動であえて言うなら、『折角掴んだチャンスを知らないうちに自ら手放した』ようなものである。

 

 どんなに力を手に入れても奢ってはいけないという師匠の言葉を思い出した飛鳥は、改めて自分は檻主のようにはならないと誓うのだった。

 

 そして檻主は飛鳥を睨みつけると、

 

「飛鳥くーん!!!」

 と、香澄たちがやってきた。Poppin’party、Afterglow、Pastel*Palettes、Roselia、ハロー、ハッピーワールド!の5バンドメンバー全員だった。

 

飛鳥(いや、多っ!!!)

 

檻主「オレを讃えに来てくれたんだな。おーい!! オレは無事…」

 と、檻主が声を上げるが、香澄たちは檻主を通り過ぎて飛鳥の所に向かった。

 

香澄「飛鳥くん大丈夫!?!」

たえ「痛かったでしょ…」

飛鳥「あ、私は大丈夫ですよ」

 と、Poppin’partyに囲まれて飛鳥は立ち上がると、檻主が歪んだ顔で飛鳥を睨みつけた。

 

檻主「おい!! あのバケモノを倒したのはオレだぞ! 何でそいつの方に行くんだよ!」

蘭「うるさい!!」

モカ「飛鳥くんを突き飛ばしといて、女の子たちから褒められると思ってたの~? 考えが甘いんじゃな~い?」

ひまり「最低」

巴「一丈字を突き飛ばさなかったら、素直に認められたんだけどなぁ」

つぐみ「……」

 

 と、Afterglowが檻主を断罪した。

 

檻主「そいつが足手まといだったから…」

彩「足手まとい? あなたがいなくても一丈字くん一人で出来たんだよ!?」

日菜「そーだよ! 寧ろ飛鳥くんの邪魔して!」

麻弥「しかもケガさせるなんて…」

イヴ「ブシドーじゃありません!!」

 

 と、千聖以外のPastel*Palettesも憤慨した。

 

友希那「ま、助けてくれた事には感謝してるわ。ありがとう」

檻主「……!!」

 

 友希那が感謝の言葉を告げたが、心がこもっておらず、寧ろ皮肉気味に答えた。紗夜、リサ、燐子、あこも軽蔑した視線で檻主を見つめる。

 

友希那「行きましょ。バカがうつるわ」

 と、飛鳥を連れて退散させようとすると、

 

「待てよ!!」

 と、檻主が追いかけようとすると、飛鳥が前に出た。

 

こころ「飛鳥!!」

飛鳥「皆さんを連れて先に行ってください」

 

はぐみ「飛鳥くん!」

美咲「あいつの事なんかほっといて!」

飛鳥「いえ、あなた方が捕まる可能性があるので…」

檻主「何訳の分かんない事をゴチャゴチャ言ってやがるこのザコが!!」

 と、檻主が襲い掛かると、

 

花音「ふぇえええ!!」

薫「一丈字くん!!」

 

 飛鳥は檻主の動きを見抜いて、一瞬で地面に伏せさせた。

 

檻主「く、くそ…!! 離せ…!!!(何だ…!!? ち、力が出ない!!!)」

飛鳥「早く行ってください!!」

 

 飛鳥の言葉に香澄たちが離れた。離れたのを確認すると飛鳥が檻主から離れた。すると檻主は飛鳥をこれでもかという程睨みつけた。

 

檻主「てめぇえええええ」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は何も言う事は無かった。

 

檻主「ぶっ殺してやる!!」

 と、襲い掛かったが、飛鳥が一瞬で檻主を仕留め、気絶させた。

 

檻主「が…!!!」

 檻主はそのまま倒れて、動かなくなった。

 

飛鳥「ハァ…やっと終わった」

 飛鳥が汗をぬぐうと、倒れていた男を見た。

 

飛鳥「奴も回収しとかないとな…」

 

 その時、歓声と拍手が降り注いだ。

 

飛鳥「?」

 

「よくやったぞ一丈字―!!!」

「お前こそが真のヒーローだ!!」

「檻主めいい気味だ!!」

「もう一発…いや、百発ぶちこんでやれ!!」

 

 と、いつもは飛鳥の人気ぶりに嫉妬している男子生徒達も今回ばかりは飛鳥を絶賛していた。

 

飛鳥(まあ、オレも若干反則気味なもんだけどね…)

 飛鳥は苦笑いして、一礼した。

 

「お見事だったわ。一丈字くん」

飛鳥「白鷺先輩」

 

 千聖が現れた。そして24人のバンドガールズ達もいる。

 

飛鳥「お怪我はございませんか?」

千聖「ええ。あなたが本当の意味で守ってくれたもの。それにしても…」

 千聖が檻主を見つめた。

 

千聖「可哀想な男(ひと)。本当の強さを知らないで虚勢を張り続けても空しいだけなのに」

飛鳥「…いつか、分かる日がくればいいんですがね」

 

 飛鳥は叶いそうにもない願いをつぶやいた。

 

千聖「まあいいわ。帰りましょ。もうこんな所に用はないわ」

飛鳥「いえ、まだ後始末が…」

 こころがやって来た。

こころ「それは黒服の人たちがやってくれるわ。飛鳥がやる必要はないのよ?」

飛鳥「あ、そう?」

 すると黒服達が現れた。

 

「一丈字様。後始末は我々にお任せください」

「本当にお手数をおかけしました」

飛鳥「ありがとうございます。お気をつけて」

「はっ!」

飛鳥「あ、そうだ。檻主さんは…」

「…こちらで引き取ります。凄く嫌ですけど」

飛鳥(黒服の人たちにまで嫌われてる…)

 

千聖「もうゴミ捨て場にほっといて大丈夫ですよ?」

飛鳥「女優が何とんでもない事言ってくれてるんですか」

こころ「ダメよ! ゴミ回収業者の人が困るわ!!」

飛鳥「弦巻さん。あんなんでも一つの命だから」

千聖「とにかく帰りましょ。こんな薄汚い所からさっさと出たいの」

 と、千聖が飛鳥の手を引っ張ると、こころも飛鳥達についていった。

 

 

 その後、檻主は今回の騒動を盾にマウントを取ろうとしたが、全く相手にされなかったという。

 

 

おしまい

 



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第44話「一丈字飛鳥 VS 悪徳オリ主 完結編(前編)」

 檻主は一人部屋で憤慨していた。

 

 どうしてこんな事になった。こんな筈ではなかった。何でオレがこんな目に逢わなきゃいけないのか。

 

 学校に突如入ってきた不審者を倒したのはオレだ。

 

ヒーローであるオレの邪魔をしようとした一丈字が悪い。

 

彼女たちをつけ狙っていた不審者を倒したのなら、香澄たちはオレに礼を言うべきだし、オレをもてはやさなければならない。

 

 学校の連中もそうだ。何故不審者を倒したはずのオレを罵倒するのか。軽蔑するのか。何故そんな行動に走るのか理解できない。

 

 オレはヒーローの筈だ。オレはヒーローで今まで沢山の世界を救ってきた。チート無双もしてきた。ハーレムも作ってきた。だがこの世界では何もかもうまくいかない。

 

 一丈字飛鳥。奴のせいだ。

 

 あいつは「BanG Dream」にはいない存在だった筈。奴も転生者だとするなら話は分かる。奴も香澄たちを侍らせてハーレムを堪能したいに違っている。

 

 そうだ。オレは主人公なんだ。一丈字という悪者から操られている香澄たちを救う『ヒーロー』だったんだ。なあんだ。そういう事なら話が早い。それだったらさっさと一丈字をぶっ殺して香澄たちを救ってみせ、ハーレムを築き上げてみせる。なんてたってオレは…

 

 

「この世界を救うヒーローなのだから」

 

*****************

 

 …と檻主はそう言ってるが、彼はヒーローでも何でもなく、自己顕示欲と性欲に塗れた『屑』である。彼は今までいくつもの世界に転生し、チート無双とハーレムを堪能した。だが、あまりにもやり過ぎた行為は、転生の神の怒りを買い、遂に断罪の対象となった。

 

 この檻主に最後に待っているのは、かつての自分よりも惨めな『負け犬の生活』である。誰からも称賛される事もなく、女性からはずっと嫌われる生活を永遠に過ごす事になる。自殺も当然できず、寿命を迎えるまで寂しい生活を過ごす事となる。当然彼が一番の楽しみとしていた美少女キャラとのセックスはできる筈もなく、もう自分自身で性欲を発散させる事しか出来なくなってしまうのだ。

 

 そんな事もつゆ知らず、檻主はヒーローだのとのたまわっていた。

 

 そしてまだまだ彼の地獄は続く。

 

*******************

 

 バンドリ学園。

 

檻主「おはよう!」

 と、檻主がにこやかに挨拶したが、1組の生徒達は無視した。香澄たちも例外じゃない。人懐こかった香澄やこころ、はぐみですらもう檻主と話をしたくないと感じていた。

 

檻主「挨拶しろや!!」

 と、檻主が机を蹴ったが、

 

有咲「うっせーな!! 今まであんな事やっといてよく話しかけられたな!!」

 と、有咲が激怒した。

たえ「あのさ。クラスの雰囲気が悪くなるから喋らないでくれる?」

沙綾「何もしないだけでいいからさ」

りみ「……」

檻主「はぁ?」

 

 たえや沙綾の言葉が理解できず、悪態をつく檻主。

 

檻主「何でオレが黙ってなきゃいけねーんだよ」

美咲「皆あんたと喋りたくないのよ」

はぐみ「そーだよ! 飛鳥くんにあんな意地悪しといて! しかも謝ってないでしょ!」

こころ「飛鳥にちゃんと謝って」

檻主「何でオレがあいつに謝らないといけねーんだよ! あの不審者だってオレが…」

香澄「飛鳥くんに怪我をさせたでしょ。関係ないよ」

「!」

 香澄が言い放った。

 

香澄「そんなあなたに、キラキラドキドキなんてしないよ!」

イヴ「そうです! あなたのやってる事はブシドーなんかじゃありません!!」

 と、断罪すると…。

 

「なんでだよ…なんでだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 と、檻主が暴れ出した。

 

檻主「オレがヒーローなのに!!! オレがあいつを倒したのに!! 何でどいつもこいつもあいつばっかり見るんだ!!!」

 

 この時、余計な事をせずに飛鳥に突っかかっていればバレずに済んだが、自己顕示欲が高すぎるこの男は、とにかく称賛される事だけを考えていた。もうこの行為でクラスメイト達からの信頼はゼロである。

 

 遅れて飛鳥がやってきたが、1組の教室が騒がしい事に気づいた。

 

飛鳥「何だ?」

 

 するとAfterglowがやってきた。

 

ひまり「一丈字くん早く来て!!! 沙綾ちゃん達が大変なの!!」

飛鳥「!?」

 

 飛鳥がAfterglowを連れていくと、男子たちが気絶させられていて、女子達は怯えていた。

 

檻主「ったく、甘く見てやったらすぐコレだ。おい、これで分かっただろう」

香澄「だ、誰が…!!」

 香澄が人質に取られていた。

 

飛鳥「……」

 飛鳥がすぐさま超能力を使って、檻主を腹痛に刺せた。

 

檻主「…うっ…は、腹が…」

香澄「!!?」

檻主「だがこれで離すと思うなよ一丈字!! そこにいるんだろ!! チート能力でこのオレからハーレムを奪おうだなんていい気になるな!! いずれお前を…」

 飛鳥がこっそり指を動かすと、檻主の口が大きく口を開いた。

 

檻主「ああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 檻主の顎が外れると、檻主は顎を抑える為に香澄を離した。

 

有咲「香澄!!」

檻主「逃がさな…」

 飛鳥が超能力で檻主の動きを止めた。

 

檻主(金縛りか!!? ていうか何で出ねーんだよ!! チート能力!! さてはあいつの能力か…!!?)

 

 飛鳥の能力縛りは自前である。

 

こころ「飛鳥!! 助けて!!!」

檻主「あ、あいふひはほふは!! みんはばまされているんは!!(あ、あいつに構うな! 皆騙されてるんだ!)」

美咲「騙されてようがあんたよりかはずっとマシよ!!!」

はぐみ「こんなことして…あんたなんか大っ嫌い!!!」

こころ「あたしも嫌いよ!!!」

イヴ「キライです!!」

 と、はぐみ達から拒絶された檻主。顎を元に戻した檻主は唖然とした。

 

檻主「な、なんで…」

飛鳥「それ以上は喋ったらいけませんよ」

 

 飛鳥が現れた。

 

 

つづく

 



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第45話「一丈字飛鳥と悪徳オリ主 完結編(後編)」

有咲「一丈字!!」

檻主「てめぇ…!!!!」

飛鳥「用があるなら、私にどうぞ?」

檻主「一体どういうつもりだ!! お前もこの世界に転生して、ハーレムを手に入れようってか!!?」

 と、檻主が叫んだが、皆が困惑した。

たえ「ハーレム…?」

 

檻主「よくもオレの邪魔をしやがって!! 大体あの神は何やってやがるんだ!! オレ以外の転生者を入れるなんて!! 寄越せ!!! 今すぐオレにハーレムをよこせ!!」

 檻主が激怒してチート能力を使おうとしたが、出なかった。

 

檻主「あとオレの能力も返せよ!! どうせてめーの能力で封じ込めてんだろ!!! 返せよ!!!」

 と、檻主がぎゃんぎゃん叫んでいたが、飛鳥は動じず、香澄たちを見ていた。

 

飛鳥「戸山さん達は、負傷者のケアをお願いします」

香澄「わ、分かった」

檻主「聞いてんのか!!!」

飛鳥「聞いてますよ。詳しい事を聞きたかったら、私について来て貰えますか?」

檻主「はぁ!? 何でてめーの言う事なんか…」

飛鳥「じゃあ教えられませんね。じゃ、そう言う事で」

「待て!!」

 

 と、飛鳥が檻主を1組の教室から遠ざけさせた。

 

モカ「飛鳥くん!!」

 Afterglowのメンバーが飛鳥を見つめた。

 

香澄「皆! だいじょうぶ!!?」

「あ、ああ…」

 と、香澄たちが負傷した男子たちの様子を見た。

 

 

 そして人気のない場所。

 

飛鳥「……」

檻主「逃がさないぞ…覚悟しろやぁ!!!」

 と、檻主が完全に激昂したが、

 

「覚悟するのはお前の方だ。この愚か者め」

 と、飛鳥の背後から神様が現れた。

 

「て、てめぇは!!」

飛鳥「神様!!」

 

「檻主太郎…いや、武左幾太郎」

檻主「その名前で呼ぶなぁ!!」

 

 武左幾太郎。これが檻主の本名である。不細工で根暗で陰険な性格な為、友達は誰一人おらず、学校では常にいじめにあい、女子から気持ち悪がられていた。いつしか、学校全体を憎むようになったが、どうする事も出来ず、学校に絶望して自ら命を絶った。

 

 こういう経歴を持っていた為、天国行きが許され、平和に過ごしていたが、天国にできた『転生センター』との出会いが彼の運命を大きく狂わせてしまった。

 

 転生センターとは、ゲームセンターの転生版のようなもので、好きな世界に行く事が出来るものであり、とてつもなく大人気だった。

 

 もともとは一定時間だけその世界に入れたが、悪徳ユーザーの手によってずっとその世界に入り浸る事ができるようになり、転生センターから魂そのものを転生先の世界に行かせるというバグを作り出してしまい、センターの関係者の頭を悩ませていた。

 

 しかもそう言う事をしていたのが、檻主のような冴えない男性ユーザーが大半であり、飛鳥と檻主の前に現れた転生の神・羅城丸をはじめ、神様たちが呆れかえっていた。

 

 檻主に至っては、最初はマナーを守って転生センターで遊んでいたものの、転生先での活躍で気を良くし、違法チップ(これを使うと半永久的に転生できる)の話を知り、自己顕示欲と性欲に目がくらんで、今回のような事態を引き起こしてしまった。

 

 具体的に何をしたかというと、転生先で本来の男主人公を殺害し、ヒロインを寝取る。ましてやハーレムを作り上げる。ちゃんとマナーを守って遊んでいた転生者の世界に割り込んで、その転生者に攻撃し、そこでもヒロイン達を寝取る。まさにやりたい放題だった。

 

 これに頭を悩ませた羅城丸は、自分が責任者となっていた転生センターを閉鎖しようとしたが、上から圧力をかけられて閉鎖できず、頭を悩ませていた。

 

 そんな中、下界の様子を見ていて、転生の力に頼らないで強敵を倒す飛鳥の姿が見えた。すぐさま飛鳥の事を調べ上げ、転生世界にやっても問題ないと判断した羅城丸は飛鳥をスカウトして、飛鳥を生きた状態のまま「BanG Dream」の世界へ送り込んだのだ。

 

 目的はただ一つ。転生の力が無くてもちゃんとハーレムを築き上げる事が出来る事。どんなに偽者の力を着飾っても、本物には勝てないという事を悪徳ユーザーたちに思い知らしめる事だった。

 

 

檻主「それはそうとどういう事だじじぃ!! オレはハーレムも要求していた筈だ!!」

羅城丸「フン。誰が悪徳ユーザーにそんな良い思いをさせるか」

 羅城丸がそっぽを向いた。

 

檻主「てめぇえええ!!! オレをなめてるのかぁ!!」

羅城丸「ちなみにもうチート能力も使えんぞ」

檻主「え?」

羅城丸「嘘だと思うならやってみぃ」

 と、羅城丸に言われるがまま、檻主はいつものようにやっていた必殺技を繰り出そうとしたが、一切出なかった。

 

檻主「な、何してくれてんだよ!!! 今すぐ元に戻せ!!」

羅城丸「その必要はない。もうお前には必要が無いからな」

檻主「!!」

羅城丸「そしてもう顔も元に戻していいじゃろ」

 と、羅城丸が元に戻した。客観的に見てそんなに不細工ではないが、都合が悪いといつも人のせいにしてそうな顔だった。

飛鳥(どんな顔だよ)

 

檻主「戻せ!!!」

羅城丸「せめてもの情けとして、今日お前が起こした事は無かったことにしてやる」

「!!」

羅城丸「これでもうお前のチート無双ハーレム生活はおしまいじゃ。明日からは自分の力で頑張るがよい。女と交わる事のないこの世界で」

檻主「あ…ああ…!!」

 檻主が絶望した。

檻主「ふざけんなよぉ!!! チートやハーレムがないなら、この世界にいる意味がねぇじゃねぇか!!!」

羅城丸「あれだけ「BanG! Dream」の世界に行きたがってたじゃろう」

檻主「オレは完璧な姿で香澄たちに囲まれたかったんだ!! こんなんで相手にする訳ないだろう!!」

 と、檻主は羅城丸に泣き喚いていたが、羅城丸の態度は変わらない。

 

羅城丸「顔が醜いから相手にされないんじゃない。心が醜いから相手にされないんじゃ。自分が抱えている現実から目を背けるどころか誰かに当たり、何の努力もせん人間など、誰が相手するものか。自分自身に甘えすぎていたのがお前の最大の失敗じゃ」

 

 そして羅城丸は消えていく。

 

羅城丸「それじゃあな。本当の意味で『来世』を楽しめよ」

檻主「そんな…そんなぁ―――――――――――――――――――――ッ!!!!」

 

 羅城丸が消えていくと、檻主が泣き崩れると、飛鳥はそのまま歩き出した。

 

 その後、飛鳥は香澄たちと合流したが、檻主が破壊した教室は元に戻っていた。そして怪我をしていた男子生徒達は元に戻っていた。香澄たちに聞いてみたところ、特に変化はなかったとあり、飛鳥は一安心した。

 

 

「これで任務は終わりじゃ。飛鳥くん」

「ええ」

 

 飛鳥の部屋で、飛鳥と羅城丸が向き合った。

 

羅城丸「久しぶりの登場じゃ」

飛鳥「メタ発言やめてください」

 

 羅城丸の事を知りたい場合は「ダシマ式ラブライブ! ~転生者 一丈字飛鳥 ~」を参照ください。

 

羅城丸「さて、君はもう帰るんじゃろう」

飛鳥「ええ。名残惜しいですけど」

羅城丸「そうか。寂しくなるのう」

飛鳥「そうですね」

 飛鳥が苦笑いした。

 

羅城丸「あ、そうじゃ。ちょっと頼みがあるんじゃ」

飛鳥「何です?」

羅城丸「ちょっとこの世界で、お前さんは残しておきたいんじゃ」

飛鳥「この世界に残れって事ですか?」

羅城丸「違う違う。この世界は君も「BanG! Dream」の登場人物の1人という設定にしたいんじゃ」

飛鳥「いいんですか。そんなことして…」

羅城丸「問題ない!!」

飛鳥(著作権的に大問題だろ…)

 

 と、飛鳥は様々な疑問を抱きながら、元の世界に帰っていった。

 

 その後どうなったかというと、顔を元に戻され、チート能力が無くなった檻主は別人のように大人しくなった。当然友だちも出来ず、飛鳥への謝罪は最後までしなかった事から、香澄たちから避けられるようになってしまった。

 

 ちなみに香澄たちや女性を襲おうとすると、何かしらトラブルが発生して手を付けられないという呪いがついた。女性を抱けなくなった事から檻主は毎晩惨めな思いをしていた…。

 

 そして1か月あたりが過ぎたころ。飛鳥は羅城丸と再び出会った。

 

飛鳥「そういやあのバンドリの世界どうなりました?」

羅城丸「檻主は完全に負け犬になり下がったが、お前さんは凄いぞ。聞きたいか?」

飛鳥「いえ、結構です」

 飛鳥は嫌な予感がしたため、聞かない事にした。

 

羅城丸「女の子たちから求婚されとる」

飛鳥「まーたなんか主人公補正とか入れたんでしょ。やめてくださいよ恥ずかしい」

羅城丸「そう思うじゃろ。ガチじゃぞ」

 

 羅城丸が水晶玉から様子を見せていたが…。

 

こころ「飛鳥! あたしと結婚しましょ!!」

友希那「飛鳥と結婚するのは私よ」

蘭「一丈字…その…//////」モジモジ

彩「あの! 私アイドルだけど自分の気持ちに嘘はつけません!! 飛鳥くん! 好きです!!!//////」

香澄「飛鳥くん! 私と結婚しよ!」

飛鳥(転生)「……」

 

 飛鳥は真っ白になって唖然としていた。転生世界の飛鳥も困った顔をしている。

 

羅城丸「ワシもたまに様子を見ておったんじゃが…。お前さんが男らしすぎてこの子達メロメロになってしもうたわい」

飛鳥「だとしても、こうはならんやろ…」

羅城丸「メスの本能が目覚めてしまったようじゃ」

飛鳥「バンドリ関係の皆さんごめんなさい!!!!」

 

 皆さんも好きな子を振り向かせたいなら、それなりに努力しましょうね。

 

おしまい

 



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第55話「一丈字飛鳥 VS 悪徳オリ主Ⅱ」

第55話

 

 今回のお話は、アニメの主人公みたいにカッコつけたかったが、結局うまくいかなかったイタい男と、一丈字飛鳥の攻防戦(?)である…。

 

 ちなみにバンドガールズは全員飛鳥側。

 

飛鳥「下手なハーレム小説よりも酷い…」

モカ「いいんじゃない? ダシマ劇場ってギャグがメインなんでしょ?」

飛鳥「うん」

 

 そんなこんなで今回も物語が始まる…。

 

**********************

 

 

(オレは面倒な事が大嫌いだ。面倒な事を避けて平凡に生きていたい。それでいいんだ)

 

 …とか言ってるこの男の主人公は檻主次郎。先日、飛鳥に完全に打ちのめされて転生の神に元に戻されたエセチート・檻主太郎とは全く関係ない。

 

 こうやって最近のアニメの主人公みたいに、何やらブツブツ心の中で言ってるが、全くの嘘で、本当は超モテたいと思っている。ハーレムを作りたいと思っている。可愛い女の子大好き人間だ。もしも香澄たちの誰かが、「もし正直に話してくれたら、脱ぎたての靴下をあげる」という誘惑をしたら、もう完全に変態丸出しで食いつくほどである。顔はイケメンである。まあ、何か最近のテンプレ主人公を性欲丸出しにした感じである。とにかく女に飢えているのだ。

 

 だが、現実はこうである。

 

沙綾「一丈字くん。此間はありがとう。これ、お礼のパン」

飛鳥「え、宜しいんですか?」

沙綾「勿論」

モカ「あ、やまぶきベーカリーのパンだ~。モカにもちょうだ~い」

りみ(チョココロネ…)

 

 と、別のクラスの男子生徒である一丈字飛鳥が、同じクラスで美少女の1人である山吹沙綾と話をしていたが、パンを直接貰っていた。そしてパンが大好きな青葉モカと、沙綾と同じバンドグループの牛込りみがやってきて、ハーレム状態を作っていた。

 

(本当はそこにいるのはオレなのに!!)

 

 と、次郎は歪んだ表情で飛鳥を睨みつけていた。客観的に見てイケメンな彼だが、嫉妬している時の顔は完全に不細工丸出しであり、女子は完全に近寄らなくなった(彼の本性を知るまではイケメン扱いしていた)。彼女たちにとっては気の毒だが、これも社会勉強になっただろう。男だろうが女だろうが、人間は顔で決めてはいけないのである。

 

 そんな不細工丸出しにしてる彼に、沙綾をはじめとする美少女たちも近づくはずがない。ましてや、沙綾やりみは彼と同じクラスである筈なのに、近づかないとなればもう学校としての立ち位置も危うくなっているので、ハーレムとか言ってる場合ではない。だが、この男にとっては、自分が頂点に立つ事、すなわちこの学校のメスは全て自分を称賛しなければならないという危険思想を持っている。本来であればもう1回で退学にすればよいのだが、それはそれで話が面白くない。これは誰かが言っていたが、面白い話は誰かの不幸で成り立っている。人の不幸は蜜の味ともいう。なんて残酷だろう。

 

 だが、次郎がどれだけ飛鳥の事を嫉妬しても、女子達の評価は変わらない為、こうやって遠くから羨ましがる事しか出来なかった…。

 

 

****************:

 

 そんなある日のことだった。この学校の芸能人グループ「Pastel*Palettes」が今度全員でドラマに出演する事が決まったのだ。しかも撮影はこの学校で行われるため、大半の生徒達のテンションが高かった。

 

 それだけでなく、何とPastel*Palettesのメンバーはドラマに出演するにあたり、練習に付き合ってくれる男性を探しているという噂があったのだ。

 

次郎(これはオレが目立ち、Pastel*Palettesをハーレムにするチャンスだ!!)

 

 などと、どこかの戦闘民族が見ていたら、お前の姿はお笑いだったぜぇ? と言われるであろう。そりゃそうだ。人から嫌われている顔だけの人間が出しゃばるなんて、身の程を弁えろというのだ。

 

 そしてこの男は何をしたかというと…。

 

次郎「イヴ!」

イヴ「な、なんですか…?」

 

 次郎がPastel*Palettesのメンバーの1人であり、クラスメイトの若宮イヴに話しかけた。イヴは若干困惑気味である。イヴもまた、次郎の事はあまり好きじゃないのである。理由としてはただの女好きならまだ良いが、突然怖い顔をしたりするので、怖がっているのだ。以前、怖い顔をするのは飛鳥のせいだと次郎が弁明したが、飛鳥の事を信じ切り、実際に何回かパスパレを助けてくれた彼の事を悪く言う彼の姿に、流石のイヴも嫌になったのだ。

 

 そんな嫌な相手に話しかけられて、イヴは嫌な予感しかしなかった。

 

次郎「劇の相手探してるんだって? オレがやってあげてもいいけど」

 

 やってあげてもいいけど。こいつはどの口でそう言ってるんだろうか。相手は芸能人であり、学園のアイドルである。こんな態度で物事を言うなら、校舎裏に呼び出されてボコられるのがオチだ。どこまでも自分を過大評価し過ぎていた。

 

イヴ「ご、ごめんなさい…」

次郎「遠慮する事ないって。どうせまだ見つかってないんだろ?」

イヴ「いや、もう相手は…」

次郎「分かってるよ。オレだろ?」

 

 と、イヴを困らせる次郎の姿に、クラスメイト達は段々苛立ち始めていた。その時だった。

 

「おーい、イヴちゃーん」

 

 イヴと同じPastel*Palettesのメンバーである氷川日菜が現れた。イヴよりも1年上である。

 

イヴ「ヒナさん!!」

日菜「ドラマの練習相手、飛鳥くんがやってくれるって!」

イヴ「そうですか!!」

 

 日菜の言葉にイヴがぱあっと表情を輝かせたが、次郎は信じられなさそうにした。

 

次郎「ど、どうしてオレじゃなくてアイツなんですか!」

日菜「え? みんな飛鳥くんがいいって言ってるし、るんってするから。それじゃ、宜しくねー」

イヴ「はーい」

 

 と、日菜は去っていき、妙な空気になった。

 

次郎「なあ、イヴ! 考え直してくれよ!!」

有咲「いい加減にしろ!」

美咲「あんたしつこすぎ!!」

 

 しつこく迫る耳郎を、有咲と美咲がぶっ飛ばした。

 

次郎「ちくしょおおおおおおおお!!! 何でこうなるんだよぉおおおおお!!!」

 

 と、次郎は泣き喚くが、皆あきれるばかりだったという。

 

 

おしまい

 



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第56話「一丈字飛鳥 VS 悪徳オリ主Ⅱ・2」

 

 時間は少しさかのぼる…。

 

「…え?」

 

 食堂で飛鳥はイヴ以外の4人に呼び出されていて、千聖から告げられた言葉に声を漏らした。それも信じられなさそうに。

 

千聖「私達今度ドラマに出るんだけど、相手役をしてほしいの」

飛鳥「何故私なんですか?」

日菜「飛鳥くんじゃないとるんってしないの」

飛鳥「やりたい人がやるべきだと思いますけどねぇ。ファンサービスとして」

麻弥「確かにそれはそうなんですけど…」

 

 飛鳥の言葉に麻弥が苦笑いした。

 

千聖「誰でもいいという訳ではないの。そんなに時間がある訳でもないし、確実に相手をこなしてくれる人じゃなきゃ」

飛鳥(需要と供給が合わないなぁ)

 飛鳥が困惑していた。

彩「あのね。最初はクラスの皆にお願いしたんだけど、喧嘩になっちゃって…」

千聖「しかも下心丸出しだったのよ。どさくさに紛れて体を触られたらたまったもんじゃないわ」

飛鳥「あはははは…」

 

 彩のフォローに対し、千聖が凄く嫌な顔をすると、飛鳥は苦笑いした。まあ、言われてみれば普通にそうなるよな…と考えていた。ちなみにパスパレのメンバーは男子のクラスメイトをそんなに嫌っているわけではない。ただ、やはりどうしても芸能人として見られることも多く、下心で近づいてくる輩も多いのだ。

 

千聖「女子とかもそうよ。おこぼれを貰おうとしてるし。それで前に彩ちゃんが酷い目にあったんだから」

飛鳥「……」

 

 千聖の様子から見て、飛鳥は何が起きたか大体察した。彩も苦笑いはしているが、どこか辛そうである。

 

飛鳥「私も結構芸能人として見てる方なんですけどねぇ…」

千聖「そうなのよね。だけどあなたなら『何故か』任せられそうなのよ」

 千聖が飛鳥をじっと見つめると、飛鳥は真顔になった。

 

日菜「ねえ、飛鳥くんいいでしょ?」

 と、日菜が上目遣いでお願いしたが、飛鳥は変わらなかった。ここで大抵の男たちはやられるが…。

 

千聖「そういう所よ」

飛鳥「私の事をかなり評価してくださってるようですね…」

日菜「ねえ、飛鳥くんいいでしょ!?」

 と、日菜が身を乗り出した。

麻弥(ひ、日菜さん落ち着いて!! いつもみたいに強引に決めたりしたら、一丈字さん嫌になって引き受けなくなるっすよ!)

彩(お願い日菜ちゃん! こらえて!!)

 日菜が身を乗り出したのを見て、麻弥と彩が焦ったように日菜を見つめていた。そして飛鳥は悟った。

 

飛鳥「…本当に私で宜しいんですか?」

千聖「だったら最初から話しかけないわよ」

飛鳥「ですよね。それじゃ時間にもよるんですけど…」

日菜「ありがとー! イヴちゃんにも連絡してくるねー!!」

 と、日菜が強引に決めて、イヴに連絡しに行った。

 

飛鳥「……」

千聖「許してあげて。あれでも結構我慢してた方なのよ…」

 

 そして今に至る。

 

(くそお!! どうしてこうなるんだよ!! ここはオレが相手をする所だろう!!?)

 

 と、次郎は自分ではなく飛鳥を選んだことに対して、納得がいってなかった。

 

 

 ちなみに彼が思い描いていたシナリオは下記の通りです。

 

***********

 

千聖「次郎くん」

次郎「あ?」

千聖「あの…ドラマの相手役やって欲しいんだけど//////」

次郎「何でオレが」

 

 こんな事言ってるけど、本当はめっちゃやりたいと思っている。だが、あくまで上から目線である。理由としては「女優にお願いされているオレSUGEEEEEEEEEEEEE」という感じであり、他の一般生徒に対して優越感に浸りたいからである。

 

千聖「あなたじゃなきゃダメなの/////」

日菜「ねえ、おねが~い! 次郎くん!」

彩「私も次郎くんに相手して欲しいな~」

麻弥「ジブンもっす!」

イヴ「ジロウさん」

 

次郎「しょうがねぇ~な~。本当はめんどくさいけどやるか~。本当はやりたくないんだけどな~」

 

*******************

 

 というシナリオを思い描いていた。そんなにめんどくさけりゃ誰も声をかけないだろと思うかもしれないが、最近のラノベの主人公は、本当にやりたくないのに周りの人間が強引にやらせようとする。そこまで頼りにされる事に対して、憧れを持っているのだ。

 

 ちなみに一丈字さん。座長としてこの状況は如何ですか?

 

飛鳥「可愛い女の子から頼りにされて、それでいて自分が上の立場である事が大事なんでしょうね。ただ、現実はそんなに甘くないですよ」

 

 飛鳥は知っていた。男子の力なんか借りなくても、千聖たちは自分達の力で何とか出来るという事を。更に仰々しく言えば、本来このバンドリの世界でイレギュラーの自分に合わせてくれているという事を。

 

飛鳥「本来だったら全く相手にされませんからね。必要な時以外は身の程を弁えて行動しております」

 

 ちなみに飛鳥はどんなに結果を出しても優越感に浸る事はない。何故なら、結果を出す度に周りの人間から疎まれ、小学生の時は度々同級生と喧嘩をする日々を過ごしていた。孤立も経験している。いわば人に嫌われやすい体質で、優越感どころじゃなかったのだ。

 

飛鳥「もう今となっちゃあ自分の道を…って、私の話はもういいでしょう。続き行きましょ続き」

 

 そんなこんなで練習当日。

 

飛鳥「……」

 放課後、飛鳥が千聖から言われた場所に行こうと、廊下を出た。すると…。

 

「おい、待てよ!」

飛鳥「?」

 次郎がたちはだかった。次郎の後ろでイヴが困った顔をしている。

 

飛鳥「どうされました?」

次郎「お前、パスパレの練習に行くんだろ」

飛鳥「ええ、そうですが…」

次郎「させねぇ」

飛鳥「?」

 

 飛鳥が首を傾げた。これは嫌な予感がすると…。

 

次郎「オレと決闘しろ」

飛鳥「決闘?」

次郎「それで勝った方がパスパレの練習に付き合うんだ」

飛鳥「白鷺先輩に言ってください。私の権限じゃどうにもなりませんよ」

次郎「いいから勝負…」

飛鳥「まさか、白鷺先輩達には言えないから、私に諦めさせるように説得させるつもりだったんですか?」

 飛鳥の言葉に次郎が反応した。

 

飛鳥「そりゃあ白鷺先輩達に下手な事を言ったら、ただじゃ済みませんけど…こればっかりは私もどうにもならないんですよ。ですので、先輩達と話をしてください」

次郎「逃げるのか!?」

飛鳥「逃げますよ。逃げなくてもどうにもならないんですから」

次郎「男なら正々堂々と戦え!」

飛鳥「それでしたら正々堂々と、白鷺先輩達に進言してください」

 と、押し問答が続き、イヴが次郎の後ろに現れてオロオロしていた。

 

「どうしたの?」

 

 千聖、彩、麻弥、日菜が現れた。

 

イヴ「チ、チサトさ…」

 イヴが千聖たちの所に行こうとしたが、次郎に腕を掴まれた。

 

イヴ「!!」

「!!」

彩「イヴちゃん!」

次郎「いいから勝負しろよ!! もしくはオレに渡すか!!」

 と、次郎が叫んだが、飛鳥はいたって冷静だった。

 

飛鳥「白鷺先輩」

千聖「な、何?」

飛鳥「ファンクラブの人たちにこの事をお伝えください」

千聖「なんて?」

飛鳥「1年1組の檻主さんが若宮さんに痴漢行為をしたと」

「!!?」

次郎「お、おい!! 卑怯だぞ!!」

飛鳥「何とでも」

「!?」

 飛鳥が凛とした顔で次郎を見つめた。

 

飛鳥「若宮さんが無事でいる事の方がずっと大事だから」

 

 

飛鳥「それよりも早く逃げた方が良いよ」

「!?」

飛鳥「丁度後ろで撮影してた人がいたよ。若宮さんの手を引っ張った所を撮られたんじゃないかな。言っとくけど、警察沙汰に出来るからね」

次郎「な、何してくれてんだよ!!」

飛鳥「オレに言うなよ。それよりもどうする? 若宮さんを置いてさっさと逃げるか、謝るか、それとも…警察に捕まるか」

次郎「そんな事してみろ!! イヴもただじゃ済まさないぞ!!」

「おい」

次郎「ああ!!?」

 耳郎が後ろを見ると、強面の先輩達がいて、次郎が青ざめた。

 

「お前…誰に断ってイヴちゃんにそんな事してんの?」

「ちょっと裏来いや」

 

 と、先輩達が睨みつけると、次郎は口をモニョモニョと動かした。所詮こんなもんである。

すると飛鳥が近づいて、イヴを回収した。

 

「あっ!!」

「てめぇ!!」

 

飛鳥「ああ、安心してください」

 吠える先輩達を安心させると、飛鳥は彩を見つめた。

 

飛鳥「丸山先輩」

彩「!?」

 飛鳥がイヴを彩の前に連れ出した。

 

飛鳥「若宮さん。無事に保護しました。ケアをお願いいたします」

彩「う、うん…」

イヴ「……」

 イヴは涙目になると、彩は衝撃を受けた。

彩「イ、イヴちゃん!! 怖かったね! 頑張ったね!!」

 と、彩がイヴを抱きしめると、イヴは嗚咽した。そしてそんな姿を見て先輩達は次郎に激怒した。

 

「てめぇこの野郎!!」

「イヴちゃんを泣かせやがって!! 覚悟は出来てるんだろうなぁ!!」

次郎「ひ、ひぃいいいいい―――――――――――――――――っ!!!」

 次郎が逃げ出すと、強面の先輩達は追いかけていった。それを見て飛鳥が頭をかいた。

 

千聖「流石ね。一丈字くん」

飛鳥「あ、いえ…」

 飛鳥が千聖を見つめた。

 

飛鳥「若宮さん。お怪我はございませんか?」

イヴ「はい…」

 イヴが飛鳥を見つめた。

 

日菜「それにしてもカッコよかったよ!」

飛鳥「いや、ハッタリかけただけなんですけど…」

麻弥「だけど、結果的にイヴさんを救いだせたじゃないですか」

飛鳥(本当は超能力を使ってどうにかしたかったけど、白鷺先輩がいるからな…)

 

千聖(おかしいわね。何かしてるようには見えなかったし、思い違いかしら…)

 千聖は飛鳥が今回超能力を使うんじゃないかと踏んでいたが、一切使わなかった為、思い違いだと感じていた。

 

飛鳥「それはそうと練習は…」

千聖「…残念だけど、今回は延期ね」

イヴ「そ、そんな!!」

千聖「いいのよ。この落とし前はさっきの男子につけて貰うから」

「!!?」

千聖「私達が直々につけて欲しいって言えば本望でしょう」

日菜「あ、それだったらこのままカラオケ行かない!?」

麻弥「ちょ、日菜さん! また襲われたらどうするんですか!」

日菜「だいじょーぶだよ。飛鳥くんがいるし」

飛鳥「えっ」

 飛鳥が困惑したが、イヴがぎゅっと飛鳥の服を引っ張った。

 

飛鳥「…若宮さん?」

イヴ「…もう少し、一緒にいたいです」

 皆が驚いた。

 

千聖「あらあら。どうするの? このまま女の子を置いて帰る気?」

飛鳥「何でもいいですけど、白鷺先輩すっごい楽しそうですね」

日菜「そうだねー」

彩「ちょっと千聖ちゃん…」

千聖「だ、大丈夫よ。ちゃんとイヴちゃんの事は心配してるから…」

日菜「よーし、それじゃカラオケにいこー!」

麻弥「いや、カラオケは若い男の人が沢山いますし…」

日菜「じゃあ麻弥ちゃんち」

麻弥「カラオケ行きましょう///////」

 麻弥が頬を染めて言い放った。

 

日菜「どうして?」

麻弥「いや、その…男の子に部屋見られるの恥ずかしいっすから…//////」

 

 と、今回も飛鳥の大勝利で終わった。

 

 ちなみに、校舎を出てすぐの森林エリアに行くと、次郎が恥ずかしい目に遭っていた。

 

飛鳥「」

彩「きゃーっ!!!//////」

千聖「見ちゃダメよ。さっさと行きましょう//」

麻弥「そ、そこまでするっすか…////」

イヴ「?」 千聖に目を塞がれていた。

日菜「お父さん以外で見たなー。おち」

麻弥「日菜さんっ!!!//////」

 

 

おしまい

 



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第74話「飛鳥 VS 悪徳オリ主Ⅱ・オリジン」

 

 あの世

 

「あなたは死ん…」

「死んだって事はアレだろ!? 転生できるんだろ!!? だったらオレを「BanG Dream!」の世界に連れてってくれ!!」

 

 一人のある男が死んだが、とてもがめつく、男の目の前に現れた女神は呆れていた。

 

女神「あの、まだ何も言って…」

男「オレをイケメンにしろ! 女子にとってもモテるくらいの! それから最強にしろ! 誰にも負けないくらい! それから金持ちにしろ!!」

 

 と、どこまで欲張りなのだろうこの男は。昨今のライトノベルは転生チートものが多く、死ねば最強になって女にモテて、バラ色の人生を過ごせると信じてやまなかったこの男は、わざわざ自分から命を絶ったのだ。こんなの絶対にありえないので、皆は命を絶つ事はしないように。

 

女神「欲張りですねぇ」

男「早くしろ!! そのためにオレは死んだんだぞ!!」

女神「言っておきますが、自ら命を絶った人にそんな権限は…」

男「ふざけるなぁ!! だったら元の世界に戻せぇ!!」

 

 そう叫んで、男はみっともなく暴れ出したが、女神はある事を想いついた。

 

女神「あ、でも一つだけ方法がありますよ」

男「な、なんだ!!? 何でも言え!! 教えろぉ!!」

 女神が微笑んだ。

 

女神「あなたをバンドリの世界に連れていく方法はあります」

男「だったら早くしろぉ!!」

女神「だけど条件が…」

男「さっさと言え!!」

女神「無理やり押し込むので少々不具合が発生する場合がございます」

男「いいから早くしろ!!」

女神「はいはーい」

 

 と、女神は男を「バンドリ」の世界に送り込んだ。

 

女神「…あー気色悪。ついに自殺者まで出たよ。どんだけ楽して女にモテたいんだか」

 女神は苦虫を噛むような顔で頭をかいた。

 

女神「まあ、羅城丸様の所に送り込んだから大丈夫よね。楽して女にモテようとするなんて甘い甘い!」

 

 と、女神はどこかに去っていった。

 

*****************

 

 ここはバンドリ学園。花咲川女子高校と羽丘女子高校が統合し、男女共学になった学校である。

 

(これが女神の言っていた不具合か…。まあ、この方が香澄たちを攻略しやすい)

 

 と、男はぶっさいくな笑みを浮かべていた。彼は檻主次郎として転生した。成績優秀、スポーツ万能、おまけに金持ちで女子にモテモテというリクエスト通りの生活を送って、完全に有頂天になっていた。

 

(完璧だ…!! 中学まではまさに完璧だ!! この調子で高校もハーレムを作るぞ!!)

 

 ちなみに小学校や中学まではハーレムを作っていたが、完全にやりたい放題で少女たちに点数をつけたりしたり、付き合っては振るという、傍若無人の振る舞いをしていた。まあ、この天下ももうすぐで終わるわけだが…。

 

 そしてバンドリ学園に転入し、1組に入った。そこにはPoppin’party、Pastel*Palettesの若宮イヴ、ハロー、ハッピーワールドの弦巻こころ、北沢はぐみ、奥沢美咲の3人がいた。

 

次郎(うっひょお!! 美少女だらけじゃねぇか!! でも男はいらねぇな…。排除しとくんだったぜ。ま、付き合ってる奴がいたら寝取ってやるけどな!!)

 

 この男としては、女子は完全に自分の所有物だと思っているらしく、自分以外の男が彼女を作ることなど許さないという、まさに屑中の屑だった。

 

 そして次郎はにこやかに挨拶した。今の自分はイケメンで女性が弱いとされている笑顔、通称ニコポ。これで堕ちない女はいないと思われたが、反応はいたって普通だった。

 

次郎(な、ななな…!!)

 

 次郎にとっては何が起きているか分からなかった。彼のビジョンでは、ここで自己紹介をした後、女子達からキャーキャー言われるものだと思っていた(ちなみに男子は絶望するか、羨望するかである)。

 

 だが、現実はどちらもない。女子達は普通によろしくーというだけであり、男子に至っても普通である。これは次郎にとってはありえない事だった。

 

次郎(そ、そんな馬鹿な!! これも不具合だと言うのか!! だとしたら全然話が違うじゃないか!!!)

 

 次郎は動揺の色を隠せなかった。

 

「お前の席はあそこだ。さっさと座れ」

「!」

 と、通された席は女子とは遠い席である。あからさまに女子から遠ざけようとしているのが見え見えだ。だが、ここで駄々をこねれば、好感度を下げてしまう可能性がある為、次郎は甘んじる事にした。

 

次郎(どうなってんだ…何がどうなってんだよ!!)

 と、次郎が心の中で憤慨していた。

 

 こうして、次郎の学校生活は始まったわけだが、結果は散々だった。

 

 成績優秀、スポーツ万能はそのままだったが、女子にモテなくなったのだ。だが、自分から女子に声をかける事はプライドが許さなかった為、話しかける事もしなかった。

 

 その結果…。

 

「飛鳥さん。昨日はありがとうございました」

「いえいえ」

「助かったよ」

 

 別のクラスの男子生徒である一丈字飛鳥が、バンドガールズと仲良くなっていたのだ。今はハロー、ハッピーワールドの松原花音と瀬田薫の二人と話をしていた。

 

次郎(な、何であいつ花音や薫と仲良くなってんだよ!! ここはオレのハーレムだろうが!!)

 と、次郎が陰から憤慨し、表情を歪ませていた。

 

 一丈字飛鳥、次郎の跡に転校してきた少年で、3組に転校してきた。次郎はまったく気にかけなかったが、普段から清く正しく生きていて、日頃から努力していた為、香澄たちが気にかけるようになった(というよりかは、香澄やこころに一方的に目をつけられて、それがバンドガールズ中に広まったのだった)。

 

薫「本当に君は…なんて儚いんだ…」

飛鳥「…かおちゃん先輩」

薫「やめて。本当にそれだけはやめて/////」

 

 しかも先輩相手に冗談も言える中になっていた。薫は特に怒る事もなく顔を真っ赤にして、花音は楽しそうに笑っていた。

 

「あー! 飛鳥くんだぁ!」

 と、Pastel*Palettesの氷川日菜を中心に上級生組がやってきた。

 

飛鳥「あ、皆さんお揃いで…」

日菜「何話してたのー?」

薫「こ、この二人と儚い話を…」

千聖「かおちゃんのお話ならもっとあるわよ」

薫「ち、ちーちゃん!!/////」

 そのまま2年生全員が飛鳥を囲んでいた。

 

次郎(何でだよおおおおおおおおおお!!! 何でオレじゃなくてあいつがハーレム作ってんだよぉ!! そこはオレの場所だぞぉ!!)

 

 

 さて、何が起きているのでしょう?

 

女神「ああ。女にモテるっていう機能はつけなかったのよ。イケメンと頭脳体力はチートにしてあげたけど、今までのままだと女に確実に嫌われるようにしたの。最近の男は根性ないわよね。顔が良ければいいって訳じゃないのにサ」

 

 ちなみに女神の旦那は不細工というよりデブだが、明るくて頼れるため、逆プロポーズしたという。

 

女神「まあ、精々女というものを知りなさい♪」

 

 

おしまい

 

 

 



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第80話「プライド」

 

 

 オレの名は檻主。漫画やアニメが趣味の陰キャだ。オレには悩みがある…。

 

「一丈字さん。ここはこうなんですよ…」

「すみません。ありがとうございます」

「とっても、ブシドーです!!」

「いや、武士道とは関係ない気が…」

 

 悩みが…ある…。

 

飛鳥「それにしてもすみません大和先輩。お忙しい中、ご教授頂いて」

麻弥「いえいえ! ジブン達こそ、一丈字さん達に助けられてますから!」

イヴ「そうですよ!」

 

 悩みが…。

 

イヴ「あ、そうです! 今度パスパレの皆でお出かけするんですけど、アスカさんもどうですか!?」

飛鳥「ファンの人たちに怒られるので、お気持ちだけ受け取っておきます」

麻弥「お気持ちは分かりますが、そこまで気を遣わなくても大丈夫っすよ? ましてジブンは…」

飛鳥「いや、そんな事ないので自信持ってくださいよ」

麻弥「…あ、ありがとうございます…/////」

 

 ……。

 

飛鳥「若宮さんもそう思いますよね?」

イヴ「そうですよ! あ、ち、ちなみに私は…/////」

飛鳥「若宮さんも同じです。自信持ってください」

イヴ「は、はい!!」

 

 うわああああああああああああああああああああ!!! 何でだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! ここはオレの所に美少女が寄って来るだろうがぁ!! 何で他の奴がハーレム作ってんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

 

 ******************

 

 …悪徳オリ主の語りはここまでにして、状況を説明しよう。悪徳オリ主は色々汚い真似をして「BanG Dream!」の世界に転生したわけだが、女にだけはモテず、一番やりたかったハーレムは別の男に取られていたのだ。

 

 そしてハーレムを作っている男の名前は一丈字飛鳥。檻主のような悪徳オリ主を懲らしめる為に派遣されていたのだが、彼はまだ生きている為ずっとその世界にいる訳にはいかず、神様の手によってコピーが作られたのだ…。

 

 で、そんな飛鳥は何をしていたかというと、調べものをしており、どうしても分からなかった為、その手に詳しい麻弥に相談したのだった。麻弥と一緒にいたイヴも興味津々でついていき、今に至る。

 

 オリ主に関しては転生チートを与えられている為、人に聞く必要なんてない。ましてや自分は完璧だと思い込んでいる為、人に聞くなんてありえない事だと思っている。おまけに女を完全に下に見ている為、女に聞くなど彼にとってはありえない事なのだ。

 

 以前、香澄たちに分からない事があったら教えてやると上から目線で言い放ったことがあったが、その態度が癇に障ったのか、相手にされる事はなかった。それに対して飛鳥は相手の努力の有無によって態度は変えるものの、面倒を見てくれる為、彼の方が人気だった。

おまけに彼自身が分からない事があると、会話も弾むのも理由の一つだ。

 

 要は人が寄るかは教える人間の『人柄』なのだ。どんなに仕事が出来る人間でも、貶したり、卑下にする人間は相手にされないのだ。

 

 だが、今のオリ主にとってはそんな事はどうでもよく、女に囲まれて、女に上からモノを教えて、女にちやほやされて、優越感に浸りたいのだ。完全に下心丸出しで、女に嫌われる典型的なパターンである。

 

 …まあ、もう差は歴然なのだが。

 

「……!!」

 

 麻弥とイヴに囲まれて勉強をしている飛鳥がとにかく面白くない檻主。いちゃもんをつけようとしたその時だった。

 

「あー! 飛鳥くんだぁ!」

 

 日菜、彩、千聖がやってきて、Pastel*Palletes全員が揃った。周りにいる生徒達も驚いている。

 

飛鳥「氷川先輩」

日菜「日菜!」

飛鳥「…日菜先輩」

 

 日菜が憤慨すると、飛鳥が困惑した。

 

彩「こんな所でなにやってるの?」

飛鳥「実は…」

 飛鳥が事情を説明した。

 

飛鳥「…という訳で、大和先輩にご教授頂いてた所です」

日菜「へー…」

彩「い、一丈字くんって結構真面目なんだね…」

飛鳥「いえいえ」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

千聖「それはいい事だけど、女子に勉強を教えて貰うのって抵抗とかないの?」

麻弥「ち、千聖さん!」

飛鳥「ありませんよ」

「!!?」

 

 皆が飛鳥を見た。

 

飛鳥「人に教えてもらうのに性別も年齢も関係ありませんから。そんな事言ったら私も、先輩方に教える事もございますし」

 

 飛鳥の言葉に千聖が目を閉じて笑みを浮かべた。

 

千聖「流石ね。それでこそ私が見込んだだけあるわ」

飛鳥「見込んだって…」

 

 千聖の言葉に飛鳥が困惑した。

 

千聖「で、分かりそうなの?」

飛鳥「あ、はい。大和先輩が丁寧に教えてくださったのでバッチリです」

麻弥「も、もー。褒め過ぎっすよ/////」

 

 飛鳥の言葉に麻弥が照れると、彩たちがヤキモチを焼いた。

 

日菜「あ、あたしだって飛鳥くんに勉強教えられるよ!?」

飛鳥「そうなんですか?」

日菜「他に分からない所とかある?」

 と、日菜がずいっと飛鳥に近づいた。

 

飛鳥「今はございませんので、またの機会にお願いします」

日菜「ホント?」

 日菜がジト目で見つめた。

 

千聖「それならちょっとお願いがあるんだけど」

飛鳥「何でしょうか?」

千聖「今度パスパレで勉強会やるんだけど、あなたも来なさい」

 

 千聖の言葉に皆が驚いた。

 

檻主(パ、パスパレと勉強会だとぉおおおおおおおおおお!!!?)

 これは檻主だけではなく、ファンの男子生徒達も衝撃を受けた。

 

飛鳥「他に誰が来られるんですか?」

千聖「あなたと私達だけよ。他に誰がいるの?」

飛鳥「いや、クラスの皆さんとかにお願いされないんですか?」

千聖「興味ないわ」

飛鳥「興味ないって…」

 

 千聖の言葉に飛鳥が口元を引きつらせた。

 

檻主「ふ、ふざけるなぁあああああああああああああああああ!!!」

 

 と、檻主が吠えて立ち上がった。その怒鳴り声にイヴが怯えて飛鳥の後ろに隠れた。

 

飛鳥「檻主さん」

千聖「またあなたなの?」

 

 檻主の登場に千聖と日菜が機嫌を悪くした。彩と麻弥は困った顔をしている。

 

檻主「一丈字! どんな汚い手を使ってパスパレを洗脳したんだ!!」

飛鳥「洗脳って…」

千聖「洗脳? 随分失礼な事を言うのね」

「!!」

千聖「まあ、仮に洗脳されてたとしても、あなたの相手をするよりかはずっとマシだわ」

檻主「なっ!!」

 

 千聖の言葉に檻主が反応した。

 

日菜「あたし達には関わらないでって前にも言ったよね? 相変わらずるんってしないし…。寧ろイラっとするよ」

檻主「な、何でだ!! 何でだああああああああああああああ!!!」

 と、檻主が暴れたが、

 

千聖「行きましょ。あんなの相手にしてたらキリがないわ」

飛鳥「えっ…」

檻主「ま、待て!!」

 千聖が飛鳥を連れていこうとすると、檻主が追いかけてきたので、飛鳥がやむを得ず、金縛りを使った。本当なら手刀を使って気絶させることも出来たが、それだと目立ってしまうので、行わなかった。

 

檻主「ま、待てぇ!! 待てや卑怯者ぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 と、檻主が叫んだが飛鳥とパスパレはそのまま去ってしまい、騒ぎを聞きつけた教師たちによって、取り押さえられた。

 

 

飛鳥(…やっぱり下心持ってると碌な事が無いな)

 

 

おしまい

 

 



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第95話「それでも譲れないものがある」

 

 

 オレは面倒な事が大嫌いだ。平凡がいい。だから、厄介ごとはオレに持ってくるな…。

 

 それなのに…どうしてだ…。

 

麻弥「飛鳥さん! その…今度一緒に機材見に行きませんか?//////」

花音「あ、あの。飛鳥くん。今度また一緒に水族館…行こうね…/////」

あこ「センパーイ。一緒にゲームしましょうよー」

つぐみ「あ、あの。飛鳥くん…//////」

飛鳥「……」

 

「いや、おかしいだろぉおおおおおおおおお!!!!!」

 

 と、悪徳オリ主、織主次郎が叫んだ。ここはバンドリ学園の食堂であり、生徒達が皆次郎を見ていた。

 

次郎「いや、ここはどう考えてもオレがハーレム作って、一丈字が悔しがる所だろ!! またこのパターンかよってあの人言うぞ!! もう飽きたって言われただろ!!!」

あこ「えー。そんな事言われても」

 

 次郎の言いがかりにあこが嫌そうにしていた。

 

あこ「えーと…なんて言うんだっけ…。あんたよりかはマシだって言う奴」

花音「…百歩?」

あこ「そうそれ! 百歩譲ってセンパイじゃなくても、あんたはない!!」

次郎「な、なんでだよ! オレの方がカッコいいだろうが! 一丈字もいい加減にしろよ! 本当に辞めてほしいなら辞めろっていうべきだろうが!」

あこ「言ってもあこ達がやめないから」

 

 あこが黒い笑みを浮かべた。

 

飛鳥「宇田川さん。急にどうしたんです?」

あこ「だってあこの出番少ないんだもん!!! 友希那さん達Roseliaがこの学校での出番がある時、いつもあこだけいないもん!! こうでもしないと出番ないんだもん!!」

 あこの言葉に飛鳥は困惑すると、麻弥、花音、つぐみが困惑した。

 

飛鳥「とはいえ、このシリーズじゃなくても…」

あこ「それに、あの人の言いなりになるの…」

花音「癪?」

あこ「そう! シャクだから! 行こセンパイ! あっちでゲームしよ!」

飛鳥「わっ! ちょっと…」

 と、あこが飛鳥を連れて行った。

 

次郎「またクレームが来るぞ!! クレームが来ても知らねぇからな!!」

あこ「うるさい!! クレームが来てもなんだかんだ言って見てくれてるの知ってるし、あんたのスキにはさせないんだから!!!」

 

 そう言ってあこ達はいなくなった。

 

次郎「クソがぁ!!! どうしてこうなるんだよ!! どいつもこいつも舐めやがって!!」

 と、次郎が地団駄を踏んだ。

 

********************

 

あこ「こうなったらとことんイチャコラしてやるんだから!!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥はこの後に起こりそうな展開に頭を痛めた。

 

飛鳥(本当にダシマがごめんなさい)

 

 一応麻弥、花音、つぐみもついてきていた。

 

あこ「あ、まやさん、つぐちん、かのん!」

「?」

 あこが3人を見た。

 

あこ「という訳で、飛鳥くんはあこが連れて行きます」

つぐみ「えーっ!!!?」

麻弥「そ、それはないっすよあこさん!!」

花音「そ、そうだよ…。ここはやっぱり話し合いを…」

あこ「そういえばかのんは飛鳥くんと何しようとしてたの?」

花音「え、えっとぅ…」

 

 あこの言葉に花音はモジモジしていた。

 

あこ「水族館は流石にお金かかりますよ?」

飛鳥(小さい水族館なら無料で入れるところがあるけどね…)

 

 飛鳥は何も言わない事にした。

 

花音「そ、その…公園でゆっくりお話しをしながらと…」

あこ「あー。それもいいねー。けど、あこが…」

つぐみ「あ、あこちゃん。独り占めは良くないよ」

 

 と、つぐみが諫めるがあこが驚いた様子を見せた。

 

あこ「あー…つぐもここまで来たんだなぁ…」

つぐみ「え、ど、どういう意味/////」

 

 あこの言葉につぐみが頬を染めた。

 

花音「ふぇえええ…」

麻弥「ま、まあ。気持ちはわかりますよ…///」

つぐみ「お、お二人まで!!」

 

 飛鳥が腕を組んで困惑していた。

 

麻弥「ま、まあでも。このままじゃ埒が明かないので、飛鳥くんに決め」

あこ・つぐみ・花音「ダメ!!!」

 と、3人が麻弥を連れだした。

 

あこ「そんなの絶対まやさんを選ぶに決まってるじゃん!!」

つぐみ「そうですよ!」

花音「…飛鳥くん。一番最初に誘った人を選ぶって千聖ちゃんが」

麻弥「…バレましたか」

 

 麻弥が視線をそらすと、飛鳥の携帯が鳴った。

 

飛鳥「あ、もしもし。一丈字です」

「!!?」

 飛鳥の発言に、4人は嫌な予感がした。こういう時は横やりが入って、結局うやむやになるからだった。

 

飛鳥「あ、山吹さん!? どうされました?」

麻弥(山吹さん!?)

つぐみ(沙綾ちゃん!)

あこ(ここでさあやちゃんが来たか…!!)

花音「ふぇええ…」

 

飛鳥「いえ。来てないですけど…。はい…はい…分かりました。それでは失礼します」

 飛鳥が電話を切った。

 

あこ「さあやちゃんなんて!?」

飛鳥「いや、戸山さんと市谷さん来なかったかって…」

あこ「なーんだ…」

 あこが一息つくと、すぐに思い出した。

 

あこ「あ、そうだ! で、結局飛鳥くんどうするの!?」

飛鳥「そうですね…。やっぱり」

 その時だった。

 

「飛鳥くぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!!!!」

 

 と、香澄が泣きながらやってきて、飛鳥に縋りついた。

 

飛鳥「一体どうされたんですか?」

香澄「助けてぇ~!!! 有咲に悪戯したら、有咲滅茶苦茶怒って、ヤバいことになっちゃったの~~~~!!!」

飛鳥(…もうこの状況で色々ヤバいことになってるけど)

 香澄の後ろには若干怒ってる4人がいた。

 

飛鳥(あー…これオレも共倒れになるパターンだな)

香澄「飛鳥くん。死ぬときは二人一緒だよ」

飛鳥「心の声読まないで」

あこ「大丈夫だよー。死ぬのは一人だけだからー」

飛鳥「私か…」

 

「香 澄 一 人 だ け だ」

 

 と、怒髪天の有咲が現れると、香澄が青ざめた。

 

有咲「よくもやってくれたなぁ…!!!」

香澄「ひ、ひぃいいいいいいいいいい!!」

飛鳥「戸山さん。一体何したんですか…!?」

香澄「ちょ、ちょーっと有咲のおっぱいを…」

有咲「恥かかせやがって…!!!///////」

 

 香澄が有咲の胸を思いっきり揉んだら、有咲が嬌声を思いっきり上げてしまったのだ。しかも男子たちに滅茶苦茶聞かれた。

 

香澄「あ、あの…落ち着こう有咲。本当に落ち着こう?」

有咲「落ち着いてるさぁ…。自分でも怖いくらいに…」

 

 と、有咲がじりじりと近づくと、香澄が涙目で怯えていた。

 

香澄「飛鳥くん助けてぇ~!!!」

飛鳥「ちゃんと謝りましょう。ほら」

 

 飛鳥に言われて有咲に謝った香澄だが。

 

有咲「許さん!!! お前も同じ目に遭えオラーッ!!!!」

香澄「ちょ、飛鳥くんの前はダメ…あんっ!!//////」

 だが、飛鳥はどこにもいなかった…。

 

「!!!?」

 

 そして通り過ぎた次郎がいた。

 

次郎(有咲が香澄の…オ、オッパイを揉んでるだとぅ!!? なんて貴重な映像なんだ!! ぜひ見ておかねば!!)

 

 と、次郎が無意識に香澄たちに近づいた。

 

有咲「オラァ檻主も見てるぞオラァー!!」

香澄「ひぎぃっ!!////// ご、ごめんなさ…いやぁあああああん♥///////」

 香澄の嬌声に次郎の股間もえらい事になった。

 

次郎「も、もう我慢できねぇ!! いただきまぁあああああああああす!!」

 と、香澄と有咲のもとに飛び込もうとしたが、飛鳥が超能力で檻主を浮かした。

 

次郎「ちょ、ちょっと待て!! どうする気だ!!! やめろ!! やめろ!!! ああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

そして、なぜか設置されていたガードレールの柱のような鉄棒に股間を激突させた。

 

 

次郎「」チーン

 

 

おしまい

 



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第129話「差」

 

 

「何でだ…なんでだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 悪徳オリ主こと、檻主次郎は吠えていた。そして檻主の目の前には日菜、紗夜、そして憎き一丈字飛鳥がいた。飛鳥は神妙な表情をし、紗夜と日菜は軽蔑した目で檻主を見つめていた。

 

「このオレの親切を無下にしやがって…!! こんなにもオレが考えてやってるのに…!!」

 

 と、ぶつぶつ喋っていたが、

 

紗夜「一丈字くん。行きましょう。もうこれ以上何を言っても無駄です」

日菜「そーだね。行こ行こ」

檻主「待てよお!!!」

 

 紗夜と日菜が連れて行こうとすると、檻主がぎゃんぎゃん吠え出した。

 

 なぜこうなったかというと、例のごとくこの学園でチーレム(チート+ハーレム)を作ろうと企んでいたが、肝心の女子から全く相手にされず、業を煮やした檻主は上から目線で日菜や紗夜を口説こうとしたが、これも全く相手にされないばかりか、飛鳥の方に懐く結果となり、一人でギャンギャン喚いていた。正直みっともないったらありゃしなかった。

 

 美少女は自分のいう事を聞くべきだ。女は男を立てるべきだというなんとも時代遅れの価値観を押し付けようとした結果である。で、結果的に上手くいかなかったから日菜と紗夜に対して無理やり性的暴行を加えようとしたが、飛鳥に返り討ちにされて今に至る。

 

飛鳥「あ、私が相手をしておきますのでお二人は行ってください」

日菜「えー。でも…」

紗夜「相手にすることないですよ」

飛鳥「いやー…お二人に何かあったらあれですし…」

日菜「そんな事言ったら飛鳥くんだって同じだし」

紗夜「そうです」

檻主「人の話を聞けー!!!」

 

 と、檻主が怒鳴ると、日菜と紗夜がうんざりした顔で檻主を睨んだ。

 

紗夜「まだいたの?」

日菜「ここはどっか行く所だよー?」

檻主「う、うるせぇうるせぇうるせぇ!!! なんでオレがお前らの言う事聞かなきゃいけねーんだ!! お前らがオレの言う事を聞かなきゃいけないんだよ!!」

日菜「何で? あたし達一応先輩だよ?」

紗夜「目上の人間に対する態度じゃないわね」

飛鳥「完全に女性を下に見てる証拠ですよ」

檻主「てめぇは黙れ!! もとはと言えばてめーのせいで!!」

 と、檻主が興奮して叫ぼうとすると、

 

日菜「飛鳥くんのせいにしないで!!」

紗夜「あなた、他の女子生徒にも同じような事をして嫌われているのよ。分かってるの?」

 

 日菜と紗夜が負けじと言い返すと、飛鳥が何も言わなかった。

 

檻主「くそ…!! 日菜と紗夜を味方につけやがって…。どんな汚い手を使ったんだ」

飛鳥「いや、汚い手って言われても…」

日菜「飛鳥くんはあなたと違って、女の子に乱暴な事しないし、見下したりしないもん!」

紗夜「あなたとくっつくくらいなら、日菜の相手をしてる方がマシです」

日菜「おねーちゃん。それあたしもディスってない?」

 

 紗夜の毒舌に日菜もちょっと傷ついた。檻主は冷静さを取り戻した。

 

檻主「おい…。もう一度だけチャンスをやる…」

日菜「結構でーす」

紗夜「あなたこそもう一度だけチャンスを差し上げます。こんな事やめなさい」

檻主「だからなんでオレがお前らの言う事聞かなきゃいけねーんだよ!!」

 

 と、憤慨すると日菜と紗夜が心底疲れ切った顔をしていた。

 

日菜「おねーちゃん…あいつ、全然話通じないよ…」

紗夜「ええ…。男の人って皆こんな感じなのかしら…」

檻主「一丈字だって例外じゃねぇよ!! 表では紳士ぶってるけど、裏ではお前らの事を女だと思って見下してんだよ!!」

日菜「それはない」

紗夜「そうです」

 

 日菜と紗夜がきっぱり否定すると、檻主は更に憤慨した。

 

飛鳥「…やっぱりここは私がやっときますよ」

日菜「そうして貰っていい?」

紗夜「ダメに決まってるでしょう!」

檻主「…さっきから私がやっとくからとか何様のつもり? 殺すぞ?」

飛鳥「それはあなたも同じでしょう。女の子に相手にされないのがそんなに悔しいですか?」

 飛鳥の言葉に日菜と紗夜が反応した。

 

日菜「ちょ、飛鳥くんwwww」

紗夜「…あなたも結構言うわね」

 

檻主「女に相手にされないって…誰が?」

飛鳥「あなたです」

檻主「ふ、ふざけるなぁああああああああああああああああ!!!! オレが女に相手にされないだと!!? ふざけた事言ってんじゃねぇ!! オレは完璧なんだ!! だから女は…」

日菜「だったら、あたしやおねーちゃんじゃなくてもいいじゃん」

飛鳥「いえ、女は全部自分のもので、男と一緒にいる女は全部寝取って一人占めってやつですよこれ」

紗夜「…な、なんて非人道的な!! 人のやる事ですか!!?」

檻主「おい!! そいつの言う事を真に受けるな!! 二人は騙されてる!!」

 

 檻主は焦ったように日菜と紗夜を説得しようとするが、日菜と紗夜の気持ちは変わらなかった。

 

日菜「えー。あなたと比べたら飛鳥くんに騙されてる方がるんってするよ」

紗夜「るんってするかどうかは別として、飛鳥さんに騙されてる方がずっとマシです」

檻主「ふんがぁあああああああああああああああああああ!!!」

 

 今度は地団駄を踏みだした。

 

飛鳥「今度は地団駄か…」

日菜「おねーちゃん。あいつ、あたまおかしいよ…」

紗夜「見ちゃダメです…」

 

檻主「何でオレじゃなくて一丈字なんだ!! 全部においてオレの方が優秀なんだ! どうして誰もオレに感謝し、称えないんだ! なんでこうも上手くいかねぇんだよ!!」

飛鳥「それが人生だからだよ」

 飛鳥がきっぱり言い放った。

 

飛鳥「どんなに完璧な奴だって、上手くいかないときは上手くいかないよ。ましてや自分の弱さから逃げ回って、威張ってばっかりいる奴なんかに誰もついてこないよ」

 飛鳥のこの発言に檻主はブチ切れて、咆哮をあげながら飛鳥に襲い掛かると、飛鳥はきつい一撃をお見舞いして、そのまま気絶させた。

 

飛鳥「いい加減目を覚ましなよ。皆、上手くいかない事や理不尽な事に折り合いつけて生きてんだ。それが分からない限り、お前に未来はない!!」

 

 

おしまい

 



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第141話「思い通りにいかない」

第141話

 

 今回の登場人物

 

一丈字 飛鳥

毎度おなじみ主人公。日菜と紗夜にアプローチをかけられている?

最近「超能力が使えること以外ごく普通の高校生」から「自称・ごく普通の高校生」になりつつある。今回は日菜と紗夜と同級生である。

 

氷川 日菜

人気バンド「Pastel*Palletes」のギター担当。人懐っこい性格で飛鳥にアプロ―チしまくっている。

 

氷川 紗夜

人気バンド「Roselia」のギター担当。生真面目でシャイな性格。

 

檻主 次郎

日菜と紗夜の同級生。この二人は自分の嫁になると確信しているが、二人からは嫌われている。

 

 それではゴー。

 

************************

 

 オレの名前は檻主次郎。ごく普通の高校生で、何のとりえもない陰キャだ。そんなオレの同級生には氷川紗夜と氷川日菜という双子の美少女がいて、男子共にモテモテだ。オレの(将来の)女に手を出しやがってあのクソ共が。

 

 だが、そんな高根の花である日菜と紗夜があんな男達を相手にする訳がない。学年トップで生徒会にも入っているんだ。やっぱりここはオレ以外には…。

 

「ねー飛鳥くーん。今度の休み遊ぼうよー」

「日菜。飛鳥さんは私の練習に付き合って貰うのよ」

 

 ……。

 

「…あの、紗夜さんはその日、Roseliaの練習がありませんでしたっけ?」

日菜「あ、そうだよー。リサちーもそんな事言ってた!」

紗夜「…く!」

 

 紗夜が歯ぎしりした。というのも、このままだと日菜を飛鳥に取られてしまう可能性があったからだ。

 

紗夜「と、とにかく男女の不純異性交遊は許しません!」

日菜「いや、おねーちゃんだってやろうとしてたじゃん」

紗夜「う、うるさいうるさい!!」

 

 日菜の言葉に紗夜が叫ぶと、ほかのメンバーも集まってきた。

 

リサ「どうしたの?」

燐子「け、喧嘩ですか…?」

日菜「違うよー。あたしが飛鳥くんを遊びに誘ったんだけど、どうしても2人きりにさせたくないみたいで…」

友希那「それはあなたが悪いわ」

日菜「えええええ!!?」

 

 友希那の言葉に日菜が驚き、紗夜が友希那に感心すると、

 

友希那「飛鳥とデートするのは私よ」

飛鳥「あの、湊さん?」

友希那「いい加減名前で呼んでくれないかしら」

飛鳥「それが出来ない相談なんですよ」

 

 理由は簡単。名前呼びをするとファン達が大暴れするからだった。

 

紗夜「湊さん。それは聞き捨てなりませんよ」

日菜「そーだよ! それならそうだって最初から言えばいいじゃん!!」

友希那「そうね。それは悪かったわ」

 

 日菜の言葉に友希那が素直に認めて謝罪した。

 

友希那「それで? あなたは今度の休み、誰とデートするのかしら?」

飛鳥「あー…。悪いんですけど、今度の休みは予定が入ってるんですよ」

日菜「どんな?」

飛鳥「メカノスアイランドまで部品の買い出しをしないといけないんですよ」

日菜「メカノスアイランド?」

 

 メカノスアイランドとは、機械に関する部品などが豊富に揃っている人工島であり、飛鳥や麻弥はそこを御用達としていた。

 

日菜「部品ってまた何か機械作るの!!?」

飛鳥「そういう訳じゃなくて、安売りしてるんだよ。そういう時にやった方がコストを抑えられるからね」

日菜「それだったらあたしもついていっていい!?」

飛鳥「すみません。ちょっとそれも…」

日菜「分かった。麻弥ちゃんと二人きりで行くんでしょ」

 日菜の言葉に飛鳥と麻弥が反応した。

 

日菜「やっぱりそうだ。だってこういう時、麻弥ちゃん反応するもん」

麻弥「うっ…」

飛鳥「ゆっくりお買い物したいそうです」

日菜「それじゃゆっくり買い物できるようにすればいいんだねー?」

 日菜が麻弥を見た。

麻弥「も、もうちょっと空気読んでほしいっす…」

日菜「やだ! 飛鳥くんを独り占めしようとするのはダメ!」

 日菜の言葉に麻弥が肩を落とした。

紗夜「まあ…二人きりじゃないみたいだから安心といえば安心だけど…」

友希那「買い物が済んだらちゃんと帰るのよね?」

飛鳥「ええ。食事はしますけど」

友希那「…そう」

 

 と、友希那が不機嫌そうにつぶやくと、飛鳥が頭をかいたが、その時檻主の気配を感じ、後ろを振り向くと、檻主が睨みつけていた。

 

日菜「どうしたの?」

飛鳥「いえ、なんでもございませんよ」

日菜「分かった。檻主くんが飛鳥くんを妬んでるんでしょ」

「誰が妬んでるだコラァ!! オレが誰に!!」

 と、檻主が現れた。

 

檻主「それはそうと一丈字テメェ…。随分楽しそうな話してんじゃねぇか。あ?」

飛鳥「ただ買い出しに行くだけですよ」

檻主「買い出しでも、オレ以外の男と日菜たちと買い物させる訳ねーだろ!!」

 檻主が憤慨していると、飛鳥が日菜の方を見た。

 

飛鳥「…もしかして、お付き合いされてるか何かですか?」

日菜「ううん!! いっつも嫌がる事してくるの!!」

紗夜「本当に懲りませんねぇ…」

檻主「おい!! オレの話を聞けぇ!! とにかく一丈字よりもオレと遊ぼうぜ?」

日菜「何で?」

紗夜「誰があなたなんかに…」

 

 日菜と紗夜の反抗的な態度に檻主が憤慨した。

 

檻主「おい!! オレのいう事聞かねーと、そいつと一緒にいるの週刊誌に売りつけるぞ!!」

日菜「どーぞお構いなーく。寧ろそうしてくれる?」

檻主「なっ!!」

紗夜「絶対にやめてください!! それを利用して自分が飛鳥さんとくっつこうとしてるんです!」

日菜「そんな事ないもん!! やるんだったらさっさとやって!!」

 

 と、日菜と紗夜の小競り合いを見て、檻主は発狂した。

 

「どうしてオレのいう事聞かねぇんだぁああああああああああ!!!」

 檻主の言葉に対して友希那が

 

友希那「当り前よ。口だけならともかく脅しをするような人に従いたくないわ。行きましょ」

飛鳥「え、ちょ…」

日菜「あーっ!! 友希那ちゃーん!!」

紗夜「卑劣です!!」

 

 友希那が飛鳥を連れ出そうとしたので、日菜と紗夜は追いかけていった。

 

 

 

 

 

おしまい

 



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第160話「悪徳オリ主2nd完結」

 

 

「く、くそぉ…!! こんなはずじゃ…こんなはずじゃなかった…!!」

「……」

 

 バンドリ学園。飛鳥の目の前で、一人の男子生徒が崩れ落ちた。飛鳥は冷徹な表情で男子生徒を見つめていた。

 

「オレは完璧なんだ…!! オレが…間違えるわけがない…!!」

 

 この男は異世界からやってきた転生者であるが、顔しか取り柄のなかった。今まで神様からもらったチート能力を貰って、色んな世界で好き勝手やっていたが、あまりのクズっぷりに神様からも見限られて、顔以外のチート能力を取り上げられてしまった。

 

 そして、飛鳥こと一丈字飛鳥は、元々生きている人間であるが、特殊な能力を持っている為、神様から直接この世界に連れられて、この男子生徒のような悪徳転生者を懲らしめるバイトをしていたのだった。

 

飛鳥「お前の負けだ」

「オ、オレは負けてねぇ!!」

飛鳥「…まあいいさ。もう何も出来やしないんだから」

「う、うるせぇ!! うるせぇうるせぇ!!」

 

 と、男子生徒…もとい悪徳転生者は首を横に振って逆切れした。

 

「お前さえいなければ!! お前さえいなければバンドリキャラのハーレムを作れたのに!!」

飛鳥「いやー、それはどうかな…」

 飛鳥は視線を逸らした。悪徳転生者・檻主次郎はバンドリの世界に入って、早速ハーレムを作ろうとしたが、悉くうまくいかなかった。

 

こころ「あなた誰?」

 

 こころには毎回名前を忘れられ。

 

薫「はっはっは!! 随分面白い子犬くんだ。けど私はそういう趣味はなくてねぇ」

 

 薫には冗談だとしか思われず。

 

はぐみ「えー。何か偉そう…」

 

 はぐみには嫌がられ。

 

花音「ふぇええええ…」

 

 花音には危ない奴と避けられ。

 

美咲「あーうん。そうだね…」

 

 美咲には全く相手にされなかった。

 

 今までは何もしなくてもヒロイン達が自分に近づいて、ハーレムを築き上げる事が出来ていた。しかし、これは神様が持っていた特典…すなわちチート能力があったから出来た事であり、現実はまあ…女の子が自分の事を好きになってくれる事なんてよほどの事がない限りありませんよね。

 

 ましてや、檻主が思い描いているハーレム物語なんて、いかにも「なろう系主人公」だったり、「キモヲタが思い描いた理想の自分」だの「いかにもキモヲタが考えそうな物語」だの、散々な言われようである。

 

よほど女性に縁がないのか、前世で嫌われていたのか…。まあ、顔がキモいという理由だったら、それは女性側に完全に非がある訳ではない。男性だってそう。まあ、早い話が男だろうが女だろうが、顔で判断する奴は痛い目に遭うので、そこは心配する必要はなく、それ以外の事で頑張ればいいのだ。

 

ましてや自分の事を「不細工」と言っている本当に不細工な男がいるが、仕事が出来て、思いやりがあればたとえ彼女が出来たり結婚する事が出来なくても、それなりに頼りにされるため、充実した生活を送る事が出来る。

 

ただ、檻主みたいに何の努力もせず、ただ楽して女にモテたい。人の上に立ちたいというのであれば、それは無理な話。この話を読んでいるあなたはどうでしょうか。こんな男の事を好きになりますか? 少なくとも不細工でDV気質のある男なんて、よっぽどのドMでなければお断りの案件です。

 

しかもこの檻主と来たら、自分が辛い目にあっていたら誰かが慰めてくれたり、同情されたりすると思っているだろう。実際今までの異世界での生活は甘えに甘えた生活を送っていた為、それは仕方のない事だがこの世界、そしてこれからの生活は違う。どんなにつらい目にあって、泣きわめいても自分の事は自分で何とかしないといけません。

 

相手だって相手の生活とかもありますし忙しいです。ましてやこんなクズ男の為に割く時間などある訳がございません。っていうか、あっても嫌です。本当に檻主の事を考えてくれる友達なら、やってくれるでしょうが、普通は縁を切ります。だって巻き込まれたくないですもの。

 

そして檻主の悪い所は、そうやって慰めたりしてくれる相手を選んでしまうという事。美少女以外の慰めや同情は突っぱねる。どうしようもない奴です。下心がこれでもかという程丸出し。こんなの相手も疲れますよね。

 

そして今の状況は飛鳥と檻主の2人だけ。檻主を慰めてくれる人は誰もいません。ましてやいたとしても、皆飛鳥に同情するでしょう。理由は簡単。ダメ男だって分かっているダメ男に不要不急の言いがかりをつけられて、お疲れ様としか言いようがないのだから。

 

原作組である香澄達はバンドの他にも部活をしたりアルバイトをしたりで、本来だったら滅茶苦茶忙しく、こんな男の相手をしてる暇などないのだ。学校でならまだあるだろうが、それでもライブの打ち合わせだったり、学生の性分である勉強があったりする。恋をして、恋人を作る事は悪い事ではないが、少なくともこんな奴の為に時間を取ろうとはみじんも思わないだろう。私も嫌です。

 

こんなはずじゃなかったと檻主はわめいているがそりゃそうだ。檻主は元々この世界にはいない筈の存在。無理やりねじ込もうとするというのが無理な話。原作に影響が出るし、その原作はまだまだ続いていて、これからも成長している。本当に彼女たちの事を考えているのであれば、身を引いてほしいものだ。

 

だが、美少女達にちやほやされる事と、ハーレムを築き上げる事しか考えていない上に、プライドがエベレスト並みに高い低能猿にそんな発想はない。ましてや、様々な異世界での生活ですっかり変な自信がついてしまったので猶更だ、成長しないというのではなく、出来ないと言ってあげた方が良いのでしょう。

 

 そんな事も分からなくなってしまった檻主はただ泣きわめくしかなかった。

 

飛鳥「オレはもう行く。残りの人生、今までひどい目に遭わせた人達に懺悔でもしながら生きるがいい」

「ま、待てぇ!! 逃げるな!! オレの日常を返せ!!」

飛鳥「逃げるなはこっちの台詞だよ」

 飛鳥が檻主の方を振り向くと、飛鳥の背後から羅城丸が現れた。

 

羅城丸「お前はもう終わりじゃ。無間地獄(※永遠に自分がモテる事がない人生をループする地獄)を生きるがよい」

 

 羅城丸がそう言うと、そのまま姿を消して飛鳥は背を向けて去っていった。檻主はそこで崩れ落ちてまた泣き喚いた。

 

 そして中庭まで行くと…。

 

「あっ、飛鳥―!!!」

飛鳥「?」

 飛鳥が後ろを振り向くと、そこにはハロハピのメンバーがいた。

 

こころ「お散歩? それだったらあたしもいいかしら!」

はぐみ「はぐみもはぐみもー!!」

 と、こころとはぐみが両隣を歩いた。

 

薫「ああ…こんな所で君と会えるなんて何て儚いんだ…」

飛鳥「相変わらずお元気ですね。かおちゃ」

薫「ゴ、ゴホン!!! あー、アレだ。今日は天気も良い。ティータイムとしゃれこもうではないか」

美咲「午後の授業もありますよ」

花音「ほ、放課後行こう? ね?」

はぐみ「さんせー!!」

 

 そのままハロハピのメンバーと話をしながらその場を後にした。

 

 

羅城丸『一丈字飛鳥の戦いはまだまだ続く』

飛鳥『…もう160話も来たよ』

こころ『飛鳥。そのおじいさんは誰かしら?』

飛鳥・羅城丸「!!!?」

 

 

おしまい

 

 

 



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第193話「転生者とバレンタイン」

 

 

 時はガールズバンド戦国時代。このバンドリ学園でも5組のガールズバンドが切磋琢磨していた。そして、容姿もトップクラスだった事から男女問わず人気があった。でも、男子達からの人気はとてつもなく高かった…。

 

『な、なんでこんな事に…』

 

 そう、鼻息を荒くしているのは檻主太郎。転生者である。元々は冴えない、アニヲタ、キモメンの陰キャだったのだが、ある日突然亡くなってしまった…。

 

「死んだんだからアニメの世界に行けるんだろ!? アニメの世界に行けるんだろ!!?」

 

 と、迎えに来た天使に激しく突っかかった。そう、彼がいた世界では異世界転生が流行っていて、どういう訳か死んだら本当に異世界に行けると信じていた。理由は言うまでもない。異世界ものでよくあるチート能力やハーレムを手にして、勝ち組の生活を送りたいからだった。

 

 だが、檻主にせがまれて天使は困惑していた。そりゃそうだ。自分としてはただ迎えに来ただけなのに、何を言ってるのか全然理解が出来ないからである。

 

おまけに、ただ顔が気持ち悪いだけならまだしも、中身も下心丸出しだった為、気持ち悪さが全面的に押し出されていた。もしも気持ち悪さのオリンピックがあったら、日本代表になれるだろう。知らんけど。

 

天使としてもこれ以上相手にしたくなかったのか、適当な理由をつけてオリ主を適当な世界に飛ばしてしまった。チート能力もハーレムもないまま…。

 

「チートもハーレムもないんじゃ、元の生活とそんなに変わんねぇじゃねぇか!! つけろよ!! オレにチートとハーレムをつけろよぉおおおおおおおおお!!」

 

 檻主が中庭で一人、醜い顔で涙を流しながら叫んでいた。だが、そんな彼の叫びは天使には届かなかった。

 

****************************

 

 そんなこんなでバレンタインデー。男子は女子からバレンタインデーを貰えるかドキドキしていた。まあ、最近はもう友チョコだったり、男子から女子にチョコを送ったり、クラスの女子が一気に男子に義理チョコを配ったりするのもあって、何でもありになってきていますが、今回はクラシックスタイルでいきます。

 

「はぁー…チョコ貰えないかな…チョコ貰えないかな…」

「チョ、チョコ? 別に気にしてねーし?」

「はぁ…何回机の中や下駄箱見てもバレンタインチョコがないよぉ…」

「チョコは貰えなくてもいいから、ブラジャーください…」

 

 男子達は普通に気にしてたり、気にしないふりをしていたり、露骨にバレンタインチョコを探したり、何かヤバい事を言ってる奴もいた。女子達はそんな男子達を見てゴミを見る目で見ていた。普通だったらからかったりするのだが、あまりにもキモすぎて引いていた。

 

(バレンタイン…チーレムさえあれば…!! チーレムさえあれば沢山貰えたのに…!!)

 

 檻主は頭を抱えていた。そりゃそうだ。本来だったら自分が美少女に囲まれてチョコを貰い、男子達から羨望や嫉妬の眼差しを受けて勝ち組になっている筈だった。しかしこの様である。チョコを貰えるどころか、女子は自分に関心を示さない。寧ろその姿を見て小ばかにしている。

 

 これだけならまだ良かったが…。

 

「はぁ…参りましたね」

「いいじゃないか。子猫ちゃん達から愛が詰まってるんだ」

「おねーちゃんとかおる、すごーい!!」

 

 3人の女子生徒が歩いてきたが、大量のチョコを貰っていた。一人はAfterglowのドラム・宇田川巴。男よりも男らしい性格から女子から沢山貰っていた(男子もちょっと貰っていて、その辺に関してはちょっと複雑だった)。もう一人はハロー、ハッピーワールド!のギター・瀬田薫。演劇部の花形で宝塚のキャラが女子に大受け。そしてもう一人は巴の妹のあこ。彼女は特に貰っていないが、姉にひっついていた。

 

「何で女子が貰えるんだよぉ…!!」

「しょうがねぇよ。薫様と巴姐さんだもん…」

「もうオレを抱いてほしい!!」

「股を開くのはオレのh」

「おい、やめろ馬鹿」

 

 男子生徒は女子の方がモテるという事実に嘆き過ぎて、自分がメスになろうとしていた。

 

 そんな中、一人の男子生徒が現れた。

 

あこ「あ! センパイ!」

巴「一丈字じゃないか」

 

 一丈字飛鳥。毎度おなじみの男だった。彼は普通に過ごしていたが、バレンタインの凄まじい雰囲気に困惑をしながら過ごしていた。巴たちのチョコの山を見て苦笑いしていた。

 

飛鳥「こんにちは。巴さんと瀬田先輩は凄く貰ってますね」

薫「ああ…。子猫ちゃん達の愛が詰まってるんだ。儚い…」

巴「一丈字はチョコ貰ったか?」

飛鳥「いいえ」

あこ「そうなの!? それじゃ、あこがあげよっか? 義理だけど…」

飛鳥「ありがとうございます。お気持ちだけ受け取っておきますよ」

 

 あこの言葉に飛鳥が苦笑いしたが、あこの義理チョコをあげる発言に男子生徒達がざわついた。それはそうだ。大人気ガールズバンド「Roselia」のドラムからチョコを貰えるという事は、男子達にとってステータスでしかなかったのだ。

 

飛鳥「そういうのは、本命の方に差し上げてください」

薫「紳士だね。それじゃ私から何か贈ろうか」

 

 薫の発言に今度は女子が動いた。女子達から人気のある薫のチョコは喉から出る程欲しがっていた。

 

飛鳥「あ、本当に気を遣わなくて結構ですよ」

巴「遠慮するなよ。アタシ達とお前の仲だろ?」

飛鳥「ファンの方に怒られてしまうので…」

 

 と、飛鳥がやんわり断ろうとすると巴とあこがムッとした。

 

あこ「あこ達のチョコ、そんなに嫌なの?」

飛鳥「嫌じゃないですよ。チョコを貰えること自体は嬉しいんですけど…」

 

 飛鳥が視線をそらした。

 

薫「その様子だと何かあるみたいだね。言ってごらん」

飛鳥「…昔、下剤入りのバレンタインチョコを渡されたことがありまして」

 

 飛鳥の発言に空気が止まった。飛鳥の発言に巴とあこがショックを受けていた。

 

飛鳥「クラスメイトから貰ったんですけど、それ以来、バレンタインチョコを貰うのが怖くなりまして…」

あこ「お、お腹壊したの!?」

飛鳥「いや、食べる前に別のクラスメイトに横取りされて、そいつが腹壊して判明したんです。そして全部私のせいにしたんですね。チョコを渡した人も、食べた人も、周りの奴らも。それで大ごとになったんですね」

 

 飛鳥の言葉を聞いていた檻主もショックを受けた。自分以上に可哀想な奴がいたと震えていた。飛鳥の言葉を聞いてあこ、巴、薫は固まっていた。飛鳥の発言から、何があったか大体想像がついたからだ。

 

飛鳥「ああ、巴さんや瀬田先輩にはないと思いますよ。私と違って皆さんから愛されてますし。大丈夫だと思います」

 

 飛鳥がそう言うと、少し寂しそうな顔をした。

 

飛鳥「…そういう訳ですので、お気持ちだけ受け取っておきます。ありがとうございました」

あこ「あっ…」

 

 そう言って飛鳥は去っていくと、あこが反応した。

 

檻主(え、ちょ…何この空気…)

 

 いつもと違う展開に檻主は困惑が隠せなかった。そりゃそうだ。いつもなら飛鳥が香澄達に囲まれて、オリ主が嫉妬したりやっかみをするが、今回は冗談抜きで自分からフラグをへし折りに来たのだから。そして残った重い空気にオリ主はどうしたらいいか分からなかった。ここでパっと現れて「あいつなんかよりオレにチョコくれよ」なんて空気の読めない発言をしようものなら、自殺行為に等しい。

 

 ただ、去っていく飛鳥の背中に哀愁が漂っていた。きっと自分を嫌っていた同級生たちの事を想いだしたのか、ずっと暗かった。

 

 そんな光景を見て、檻主はこう思った。

 

檻主(オレ…ちゃんと真っ当に生きよう…)

 

 と。彼の中でチートやハーレムに対する依存、そして陽キャ達への嫉妬や羨望が消えた。そして明るく見えて本当は闇を抱えている人間もいるという事を知り、このままではダメだと誓った。

 

 

 そして飛鳥はどうなったかというと…。

 

飛鳥「はぁ…」

 

 放課後、橋の上から黄昏ていた。

 

 

 

おしまい

 



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第317話「人生に王道はない」

 

 バンドリ学園。この学校はガールズバンドがとても有名な学校なのであるが…。

 

 

有咲「い、一丈字…その…//////」

美咲「一丈字くん。あのさ…//////」

友希那「飛鳥。Roseliaのクリスマスパーティに参加してほしいのだけど」

イヴ「アスカさん! クリスマスはパスパレと一緒にいてください!」

ひまり「い、一丈字くん!!」

 

 一丈字飛鳥という少年がそのガールズバンドにクリスマスパーティに誘われていた。こんな展開はフィクションでなければありえない話だった。

 

「な、なんでだ…!!」

 

 そんな中、一人の少年が驚きを隠せなかった。というのも、この少年はこの世界の人間ではなかったのだ。

 

*********************

 

 そう、この世界はアニメ「Bang! Dream」の世界であるのだが、諸事情により設定が異なっているのだ。元々バンドガールズは花咲川と羽丘の2校に分かれていたのだ。だが、ハーレムものを書くにあたり1校に統一されている。

 

 そしてこの男は『転生者』なのである。最近の漫画や小説でよくあるトラックにひかれたり、事故にあって死んでしまった奴が神様の力を借りて、新しい世界で生まれ変わったりして、いろいろ活躍する人間だ。

 

 だが…。

 

「まず女にモテるのはマストで、顔もイケメンにしてね。あと、体は屈強で。マッチョすぎず普通よりも筋肉質ね。あと頭もよくて金持ちで、家族だけど、男とブスはいらないから。そうだな。妹だな! とてもけなげで従順の。それから…」

 

 悲しいことにこの少年は死ねば異世界転生できると考えていて、創造と現実の区別がつけられていない悲しき陰キャである。これでは陽キャに馬鹿にされてもおかしくはなく、しゃべってる時もとても早口だった。話を聞いている老人が困惑するほどである。

 

「あのー…」

男「あ? なんだよ」

「異世界転生とかないから。普通にあの世に行ってください」

男「はぁ!!? なんでだよ!!」

 

 文句を言いたいのはこっちだと老人は思った。男は顔を真っ赤にして怒っていたが、その怒っている顔は本当に滑稽そのものだった。

 

男「死んだら異世界転生出来るんじゃねーのかよ!!」

老人「あのさ、嫌なことがあったからって、自分から命を絶った奴にそんな楽をさせると思うか?」

男「そんなことはどうだっていいんだよ! オレの願いかなえろや!」

老人「周りの奴も悪いかもだけど、結局お前も努力しなかったやん。それで楽して女にモテようとか馬鹿なの?」

男「うるせぇな! オレだってこんな顔じゃなかったらあんなことになってなかったんだよ!」

 

 男が地団駄を踏んだが、正直みっともないったらありゃしなかった。

 

老人「うるせぇ。さっさと行け」

 

 そういって老人が手をかざすと、男は消えた。

 

********************

 

 天国

 

老人「…なんでさえないやつ程、異世界転生したがるかなぁ」

 

 老人は同僚と話をしていたが、同僚もうんざりした顔をしていた。

 

同僚「それだけ現実の世界にうんざりしてたんだろう。男も女も考えることは一緒。自分を美形にしろ、最強にしろ、イケメンもしくは美人の恋人を用意しろ。環境には同情できなくはないけど、それでも少しは自分で努力しろって話だよな」

老人「それな」

 

 そういって老人は暇つぶしに下界が見える水晶玉で下界の様子を見ていたが、ひとりの少年が目に映った。その少年こそが一丈字飛鳥である。

 

老人「ええこと思いついた」

同僚「え?」

 

 そして老人は飛鳥をスカウトして、あの冴えない男たちに如何に努力している人間と努力してない人間に差があるかを思い知らせようとしていた。

 

*********************

 

飛鳥(だからってハーレムにせんでも…)

 

 飛鳥としてはただ悪徳転生者からヒロインたちを守るように指示を受けていたのだが、ヒロインたちが自分に恋心を寄せてしまったのだ。はっきり言ってちょっと帰りづらいと思っている。

 

転生者「な、なんでだよ! オレのほうが顔もよくて金持ちだし頭もよくて強いのに!!」

 

 転生者は憤慨していたが、飛鳥はそれを見て呆れていた。

 

飛鳥(…この人たちの中にもお金持ちがいて、皆がいいし、頭良い人いるし、強いよ)

 

 完全に自分さえ良ければいいと考えている転生者に対して、飛鳥は静かに目を閉じた。

 

麻弥「あの、一丈字さん。無理なお願いなのは承知なのですが…」

飛鳥「え、ええ…。一度に5グループもお誘いを受けているので、どうしようかと…」

 

 飛鳥がそう言い放ったその時、

 

転生者「おい!」

飛鳥「?」

 

 転生者がずがずがと飛鳥のところにやってきて、胸ぐらをつかんだ。

 

転生者「ちょっと面貸せ」

飛鳥「……」

 

 転生者の言葉に飛鳥が困惑すると、

 

紗夜「いきなりなんですか?」

日菜「邪魔しないでほしいんだけど」

 

 紗夜と日菜が割って入ると、転生者が青筋を立てた。

 

転生者「オレはこいつに用があるんだよ。いいから来い!!」

 

 転生者が飛鳥を連れて行こうとしたが、皆が転生者を冷めた目で見ていた。

 

転生者(くそう!! なんでだよ!! なんで皆オレをそんな目でにらみつけるんだよ!!)

 

 転生者としては、突然神様からアニメの世界に転生できるようになったので、そのテスト生を募集され、嬉々としながら応募して見事「バンドリ」の世界に入ることができた。

 

 だが、そこで待っていたのは過酷な現実で、イケメンにしてもらい、チート能力を手に入れたものの、女性にモテるという機能は供えられておらず、転生者が無駄にかっこつけたり、人を見下した態度をとり続けた結果、バンドリのヒロインたちはおろか、皆が離れて行ってしまったのだ。

 

 それとは逆に、飛鳥は分け隔てなく接して、顔がよかろうが悪かろうが、困っていれば人助けして、それを自分一人の手柄にせず、仲間と助け合ってきた結果、たくさんの人たちからの信頼を得ることができ、最終的にヒロインたちが好意を寄せるようになったのだ。

 

 これが神が言っていた『努力をせずに楽をし続けた人間』と、『苦労をしても努力をし続けた人間』の差である。

 

 未だに自分の非を認めようとしない転生者は、この先も誰からも愛されることのない人生を送ることになるのだった。

 

飛鳥(こっちもこっちでどうしようなんだけどね…)

 

 

 

おしまい

 




cast

一丈字 飛鳥

市ヶ谷 有咲
上原 ひまり
大和 麻弥
若宮 イヴ
湊 友希那
奥沢 美咲

転生者

神様


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第476話「努力は大事」

 

 

 今回の設定

 

・ 飛鳥がバンドリの世界に異世界転生もどきをしたという設定

・ 速い話がラブライブの転生シリーズをバンドリでやってみただけです。

・ クラス編成はこんな感じです。

・ ハ ー レ ム

 

2年1組:彩、千聖、燐子、紗夜、花音、転生者C

2年2組:麻弥、日菜、友希那、リサ、薫、転生者D

1年1組:ポピパ、イヴ、こころ、はぐみ、美咲、転生者A

1年2組:Afterglow、転生者B

1年3組:飛鳥

中3年2組:あこ、転生者E

 

・ 女子校で飛鳥のクラスメイト全員女子です。

 

***

 

 女子高だったバンドリ学園に6人の男子生徒達が転校してきた。しかし…。

 

「Aくんがぶつくさ独り言言ってました」

「BくんがAfterglowを付け回してました」

「Cくんが色んな所でニヤニヤしたりしてました」

「Dくんがストーカーしてました」

「Eくんが覗きをしようとしてました」

「ハッキリ言って、キモいです!!!」

 

 6人中5人が問題児だった事が発覚して、教師たちは絶望していた。

 

理事長「え、えっと…。1年3組の一丈字飛鳥くんはどうですか?」

「あ、彼は全く問題ないですよ! クラスメイトと仲良くやってますし、彼らに関するトラブルも解決してくれてますし、他の学年やクラスの関係も良好です!!」

「うわああああああああああああああん!!!」

 

 1年3組の担任である基山の言葉に他の女教師たちが泣き崩れた。

 

基山「あ、あの…皆さん…」

「不公平ですぅ!! 不公平ですぅ!!」

「私達が一体何をしたって言うのよ…」

 

 しかし、どうする事も出来ないまま職員会議が終わった。

 

「あの、Cくんと交換して貰う事って…」

基山「いや、学年違うじゃないですか」

「Dくんは…」

基山「1個上でしょう!」

 

****************

 

 こんなギスギスして学校生活はどうなってるでしょう?

 

 1年3組・教室

 

飛鳥「さて、今日も授業終わったし帰るか。夕飯何にしようかな…」

 

 飛鳥が帰ろうとすると、

 

「飛鳥くん!」

飛鳥「あれ? 上原さん」

 

 隣のクラスの上原ひまりが話しかけてきた。殆ど喋った事がないのだが、話しかけられてきたので応対する事にした。

 

飛鳥「どうされました?」

ひまり「今日空いてる?」

飛鳥「あ、すいません。夕飯の買い出しをしないといけなくて…」

ひまり「何にするの?」

飛鳥「うーん…。すき焼きにしようかなと思います」

 

ひまり「すき焼き! いいねー!」

 

 と、あたかも自分もすき焼きを食べようという流れになっているひまりを見て飛鳥は困惑していた。

 

飛鳥「…あの」

ひまり「あ、ゴメンゴメン。もし一丈字くんが良かったらだけどさ。今日一緒に夕飯を」

「ひーまーりー」

「ひーちゃーん」

「ひまりちゃん…」

ひまり「ひっ!!」

 

 ひまりが後ろを見ると、ひまりを除くAfterglowの4人が睨みつけていた。割とガチで睨んでいた。

 

モカ「やっぱり抜け駆けすると思ってたよー」

巴「それはやらないって約束だったよな?」

ひまり「ち、違うよ! ちゃんと皆も誘うつもりだったってば!!」

つぐみ「ホント?」

ひまり「ホントホント!」

蘭「ふうん…ならいいけど。で、一丈字はどうする?」

飛鳥「…ちなみにどこでやるおつもりでしょうか」

モカ「飛鳥くんちはダメ?」

飛鳥「すみませんが自宅はちょっと人を入れたくないんですよ。諸々の関係がございまして」

「えー」

 

 飛鳥が一息ついた。

 

飛鳥「皆さん晩御飯は大丈夫なんですか?」

蘭「言えば大丈夫だから」

巴「バンドの終わりとかでも普通にラーメン食ってるしな!」

つぐみ「あの、もし良かったらうちでも…」

飛鳥「それはご迷惑がかかりますので…そうですね、確かこの辺に1500円の食べ放題の店があったような…」

モカ「あ、知ってるよそこ」

飛鳥「あ、そうなんですか?」

巴「じゃあそこにしようぜ!」

飛鳥「6人行けるかな…」

 

 と、そのままAfterglowと共にすき焼き屋に行こうとしたが…。

 

「ちょっと待て~~~~~~~!!!!」

飛鳥「?」

アフグロ「……」

 

 1人の男子生徒が現れた。転生者Bである。Bが現れるなりAfterglowは不機嫌そうな顔をした。比較的人格者である巴やつぐみも例外ではなかった。

 

飛鳥「どうかしました?」

B「どうしてオレじゃなくてそいつの所に行くんだ!」

 

 飛鳥の言う事を無視してAfterglowに問いかけるB。

 

蘭「何でってまだ分かんないの?」

モカ「本当にしつこいな~」

ひまり「あまりしつこいとまた先生に言うよ?」

 

 蘭、モカ、ひまりが冷たくあしらうとBがまた憤慨した。

 

飛鳥「…何かあったんですか?」

つぐみ「えーと…」

巴「分かりやすくというとコイツアタシらにしつこく言い寄ってんだよ」

蘭「言い寄るどころかいやらしい目で見てた」

飛鳥「…そうですか」

 

 蘭と巴の態度を見て飛鳥は何があったのか察してしまった。

 

B「君たちはそんな陰キャよりもオレの相手をするべきなんだ! そいつに何を言われたか知らないけど、君たちの本当の相手はオレなんだよ!」

飛鳥(…完全に私物化してるな)

 

 実を言うと飛鳥もBも元々はこの世界の人間ではない。Bは一度死んで転生する事となったのだが、あまりにも強欲だったため神様からは女にだけはモテないという要素をつけられて転生させられたのだ。まあ、Bじゃなくて他の転生者もそうなんですけどね。

 

 それに対して飛鳥は死んでいないのだが、本物のチート能力を持っていた事から神様にスカウトされて、修業という目的で現世からやってきたのだ。この世界で死ねば普通にあの世行きだ。まあ、この転生者たちとは違って実力でバンドガールたちの信頼を掴み取り、惚れられてしまったようですね。ご都合主義? 人が恋に落ちるタイミングは神様も分かりません。

 

蘭「は? 勝手に決めないでよ」

モカ「キモーイ」

ひまり「とにかくもう近寄らないで! 行こ飛鳥くん」

飛鳥「え、あ、え?」

B「なんでだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 と、Bが泣きじゃくっていたが誰も相手にしたがらなかった。

 

飛鳥(…やっぱりある程度自分で頑張らないとダメって事ね)

 

 

おしまい

 



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第480話「まるやまチャンネルに物申す!」

 

 

 それはある日の事。バンドリ学園の食堂にて彩、千聖、そして飛鳥が座っていたがどうも重たい空気だった。彩は気まずそうに俯いていて、千聖はどうすればいいかとこめかみをおさえ、飛鳥はただ困惑していた。

 

千聖「…彩ちゃんらしいといえば彩ちゃんらしいけど、正直に言うわ」

彩「……」

 

 千聖が立ち上がって彩を見た。

 

千聖「いくらなんでもポンコツすぎよ!! あれ、地上波でやったらただの放送事故よ!?」

 

 千聖がそう吠えたのには理由があった。彩は実は某動画サイトのストリーマーをやっていて、それなりに人気はあるのだが、千聖としては所々過ごせない部分があったのだ。そして飛鳥はそれに巻き込まれたという形である。

 

千聖「青汁飲んで無反応っていじりづらいでしょうが! もうちょっとリアクション取りなさいよ!」

彩「ご、ごめん…。すっかり忘れてた…」

千聖「忘れてたって何!?」

飛鳥「その前にあの青汁って本物なんですか?」

彩「そうだよ?」

飛鳥(相当苦労してたんだなぁ…)

 

 青汁を飲み込める当たり、相当飲んできたんだろうなと飛鳥は思っていた。

 

千聖「他にも色々あるわよ! ラテアート作って貰ったのに映さなかったり、心霊スポットに行って結局行かなかったり、もう中途半端にもほどがあるわよ! ああああ! もう虫唾が走るぅ!」

 

 撮られることを生業としている千聖としてはあまりにも虫唾が走っていた。

 

彩「うーん…。どうすればいいのかなぁ…」

 

 と、彩が困惑していると

 

飛鳥「その、動画を拝見させて貰ったんですけど丸山先輩…いつも一人でやってらっしゃいますよね?」

彩「え、そうだね…」

飛鳥「一度他の方に見て貰ったらどうですか?」

彩「あ、そっか!」

飛鳥「とはいえ、人気が全くない訳じゃないので急にやり方を変えると『どうして変えてしまったんだ』とか『前の方が良かった』とかっていうコメントも来るので、一旦前置きを置きながらですが…」

千聖「一丈字くん。申し訳ないんだけど、ちょっと力を貸して頂戴」

 

 と、飛鳥は彩の動画制作に協力する事になった訳だが…。

 

**************

 

飛鳥「まあ、言い出しっぺの白鷺先輩は出て貰いましょう」

千聖「わ、私が出るの?」

飛鳥「ええ。それだけでも再生回数は稼げますし、ご本人がいた方が信憑性も高いでしょう」

千聖「い、言われてみればそうね…」

飛鳥「まあ、折角ですから青汁の企画をもう一度やってみましょう」

彩「え? うん…」

 

 そしてオンエアされたのがこれである…。

 

「まるやまチャンネル~!!!」

 

 といういつものタイトルコールから始まったが…。千聖がサプライズで出ることが15秒程流れた。ちなみに『生配信』である。

 

『白鷺千聖 まるやまチャンネル参戦!』

 

彩「こんにちは~! まんまるお山に彩を! 丸山彩と~!!」

千聖「白鷺千聖です」

彩「宜しくお願いしま~す!!」

 

 2人が動画に映っていた。

 

彩「今回は千聖ちゃんも出てくれるんだ! 嬉しいな~!」

千聖「まあそうなのだけど彩ちゃん」

彩「なに?」

千聖「今回何故私がこのまるやまチャンネルに出た理由が分かるかしら?」

彩「え? どうして?」

千聖「それは…」

 

 ここでワンクッション置かれる。『白鷺千聖がまるやまチャンネルに来た理由とは!?』

 

千聖「此間の青汁の企画あったじゃない。ちょっとリアクションが薄すぎると思ったのよ」

彩「え!? そんなに!?」

 

 ここで先日撮った青汁を一気飲みする動画が再生される。一気飲みはしたものの、特にリアクションすることなく終わってしまったのだ。ちなみに青汁一気飲みすげぇというコメントはあったのだが…。

 

千聖「彩ちゃんらしいといえば彩ちゃんらしいのだけど、あれ普通に放送事故だからね?」

彩「そ、そんなぁ~」

千聖「それもそうだし、彩ちゃんはもしかしたらゲデモノドリンクに耐性があるんじゃないかという事で、今回はそれを試していくわよ!」

彩「えーっ!!?」

千聖「激辛やきそばよりかはマシでしょう?」

彩「た、たしかにそうだけどぉ~」

 

 という事で飛鳥が用意したドリンクを適当に用意した。

 

・ 青汁

・ マムシドリンク

・ ブラックコーヒー

・ コーラ

・ 乾汁

 

彩が普通に青汁を一気飲みした。

 

千聖「…どうなの? 彩ちゃん」

彩「美味しいです!」

千聖「いや、そうじゃなくて…」

 

 彩が天然ボケをかますと千聖が困惑していたが、放送自体はウケていた。

 

飛鳥(やっぱりいつもの丸山先輩らしさが受けてるんだな…)

 

 飛鳥はそれこそADとして2人に指示を出していた。今度は千聖が手本を見せるようにと…。

 

千聖「え? 私が青汁!?」

彩「あ、そうだね! 千聖ちゃんにお手本を見せて欲しいなー」

千聖「い、いや私は…」

彩「あ、やっぱり嫌がってるのに無理やりやらせたらダメだよね」

 

 だが、コメント欄はやれ白鷺というコメントがいっぱい出ていた。ちなみに先日のロケでめんどくさい事を人任せにしてばかりいた為、ちょっと評判が悪かったのだ。

 

千聖「わ、分かったわよ。やるわよ」

 

 千聖が青汁に挑戦する事になった。ちなみに一気のみじゃなくてもOKであるが、それだと良い画は撮れないと判断したのか、一気飲みを決行した。

 

飛鳥(プロだな…)

 

千聖「ぶふぇっ!!」

彩「ち、千聖ちゃん大丈夫!?」

千聖「だ、大丈夫よ…」

 

 ブルブル震える千聖を見てコメントは大盛り上がりだった。

 

彩「そ、そう! あと、コーラとか乾汁? とかあるからこれもやってみようよ!」

千聖「ひっ…!」

 

 彩の屈託のない笑顔が悪魔の笑顔に見えて千聖は青ざめて怯えていた。勿論受けた。

プロ根性で飲み切ったものの顔は真っ青、涙を流しながら飲んでいて、客の千聖に対する反応が少し改まった気がする。

 

彩「千聖ちゃんすごーい!!」

 

 ちなみに彩は普通に飲んでいたのであまり受けなかった…。

 

 まあ、そんなこんなで生配信が終わった。

 

飛鳥「お、お疲れ様です…」

千聖「ゼェ…ゼェ…」

彩「動画めちゃくちゃ伸びてるよ! 流石千聖ちゃんだね!!」

千聖「……」

 

 千聖は誓った。もう人のやる事に口出しをするのはやめようと…。ちなみに飛鳥にドリンクを飲ませようとしたが、飛鳥が超能力を使って逃亡した。

 

 

飛鳥「いや、主役代わっちゃいますし」

 

 

 

おしまい

 



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間男・一丈字飛鳥
第7話「間男・一丈字飛鳥」


シリーズの説明

モブとAfterglowが幼稚園の頃からの幼馴染だが、
モブよりも飛鳥と仲良くなり、モブが嫉妬する話。


登場人物

タカシ
この物語の主人公。テンプレの陰キャを気取っているが、
実際は女の子大好きで、Afterglowを全員自分の女にしてハーレムを作りたい。
だが、Afterglow本人からは嫌われている。

Afterglow
ヒロイン。大体原作と同じだが、タカシとは幼稚園からの幼馴染。
しかし、彼のセクハラまがいの言動にうんざりして、
中学は意図的に女子校に行った。
高校が共学になり、タカシに付きまとわれる日々を過ごしていたが…。

一丈字 飛鳥
悪役。超能力者で
ハロー、ハッピーワールドの弦巻こころからの依頼で、
蘭たちバンドガールに付きまとう悪い虫をこっそり退治する為、
バンドリ学園に転入する。
転入してすぐにAfterglowを助けて仲良くなるも、タカシに目を付けられる。










 

 オレの名前はタカシ。どこにでもいる陰キャだ。だがオレには5人の幼馴染がいる。

 

 それは美竹蘭、青葉モカ、上原ひまり、宇田川巴、羽沢つぐみの5人だ。彼女たちとは幼稚園の頃からの幼馴染で、とても可愛く皆の人気者だ。小学校までは同級生で、中学は5人とも女子校にいっていたが、彼女たちが通っていた学校が男女共学になり、オレもその学校に通う事になった。

 

 何が言いたいかって?

 

 この高校生活であの5人の誰かを彼女、いや嫁にしてみせる!!! だって幼馴染だし有利だよね!!? 陰キャでもあんな幼馴染がいれば彼女が出来る筈!!

 

 そう思っていたのに…。

 

「ねー。飛鳥くーん。買い物付き合ってー」

「?」

「違うでしょ。ちょっといいかな」

 

 何で? 何でオレじゃなくて途中から転校してきたそいつになびいてるの? おかしくね? 幼稚園の頃からの幼馴染がいるのに。同じクラスのに。ねえ、何で? どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテ

 

 ここでタカシの語りは終わる。

 

飛鳥「どうしたんですか?」

蘭「此間助けてくれたでしょ。そのお礼がしたいんだけど」

飛鳥「お礼?」

 

 蘭の言葉に飛鳥は首を傾げた。

 

モカ「ほらー。つぐのお店で男の人に絡まれたじゃん。その時にモカちゃん達を守ってくれたよね?」

飛鳥「あれは守ったって言えますかね…。相手が自滅しただけですし…」

 

 事の顛末はこうだ。飛鳥が仮装大会で優勝し、Afterglowに強制的に羽沢珈琲店に連れていかれた時、つぐみ目当てで来ていた客がつぐみの両親に対して逆上してきて、ナイフを突き出したのだ。誰もが怯える中、飛鳥は取り乱さず、前に出て逃げるように指示を出した。

 

 そして男が襲おうとした瞬間にナイフの刃が突然外れ、男が腹を下してトイレにかけこもると、飛鳥は即座に警察に通報して、逮捕したのだ。

 

 飛鳥が直接相手を倒したという訳でもなく、ただ指示と通報をしただけなのだ。

 

巴「だけど、前に出て守ってくれただろう?」

飛鳥「まあ、そりゃそうなんですけどねぇ…」

モカ「もうそれでいいんだよー。ねえ、お礼したいからどこか遊びに行かない?」

飛鳥「生憎なんですが、今日ちょっと用事がありまして…」

 

 と、飛鳥と蘭たちが話をしていると、タカシは我慢できなくなり、飛鳥達の前に現れた。

 

「なんでだよ!!」

飛鳥「あなたは…」

蘭「またあんた?」

 

 飛鳥が少し驚いたのに対し、蘭、モカ、ひまり、巴は嫌そうな顔をしていた。つぐみだけは困った顔をしているが。そんな双方の様子を見て飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「…お知合いですか?」

タカシ「オレと蘭たちは幼稚園の頃からの幼馴染なんだ!! どうしてお前が話しかけてるんだ!!」

飛鳥「いや、彼女たちが話しかけてきたんですけど…。見た感じ、仲が良さそうには見えませんけど、何かあったんですか?」

 

 幼馴染とは思えない険悪ムードに飛鳥が困惑しながら言うと、巴がため息をついた。

 

巴「簡単に言うと、私達が一方的に嫌ってるだけだよ」

飛鳥「え、どういう事ですか?」

蘭「ていうか、こいつと幼馴染っていう事自体、私の人生の最大の汚点よ」

飛鳥「どんだけ嫌いなんですか…」

 

 蘭の辛辣な言葉に飛鳥は更に困惑していた。幼馴染と聞けば、身体の成長と共に男女はすれ違っていくものだと聞いたことがあるが、ここまですれ違っていると流石に心配せざるを得なかった。

 

タカシ「どうしてだ!? 小さい頃はあんなに仲が良かったじゃないか! どうしてそんなに嫌うんだよ!!」

巴「嫌うも何もあんた、小学校の時に幼馴染だって言いふらして皆を困らせてただろ! おまけに、アタシらが相手をしないからって、うちの妹にも手を出そうとしただろ!!」

モカ「しかも今だってひまりちゃんのおっぱいとかいやらしい目で見てるよね~?」

ひまり「やめて欲しいんだけど」

 

 ひまりが胸元を抑えて、切れ気味に喋ると、タカシが慌てた。

 

タカシ「ち、違う!! 綺麗になったなぁーって見てただけだ! それに胸なら他の奴だって見てるだろ!! そいつだって!!」

飛鳥「あの、すみません。その発言、胸を見てるって認めてませんか?」

ひまり「やめろって言ってるの分からない!?!」

 

 タカシの弁解に飛鳥が呆れると、ひまりが更に切れ気味になった。

 

モカ「それから、飛鳥くんならいいもーん」

ひまり「いや、そういう事じゃなくて…」

モカ「話を合わせて~」

ひまり「そ、そうよ!!//////」

蘭「いや、全部聞こえてるから」

 

 モカの発言に飛鳥は更に困惑し、ひまりが必死に話を合わせようとするが蘭がツッコミを入れた。

 

蘭「とにかく行こ。これ以上関わってもバカが移るだけだから」

タカシ「な、何を!! それだったらお前の小さいころの話とか喋ってやるからな!!」

蘭「ご自由に」

タカシ「それだったら幼稚園の肝試しの話とか…」

蘭「!!」

 タカシの発言に蘭が反応すると、飛鳥が超能力で口を塞いだ。当然この事は蘭たちも知らないが、モカだけは何かを察していた。

 

「!!?」

飛鳥「どうしました?」

タカシ「~~~~~!!! ~~~~~~!!!」

飛鳥「何だかよく分かりませんが、これ以上話す用がないなら…」

蘭「行こう。これ以上相手なんかしてられないよ」

 と、蘭が飛鳥を引っ張り出した。

 

モカ「あーあ。飛鳥くんが幼馴染だったら良かったのにな~」

ひまり「ホントよ」

 と、モカ達も蘭と飛鳥に続いた。

 

タカシ(ま、待て…!!!)

 と、追いかけようとしたが、

 

「おい」

「!!?」

 

 タカシが後ろを振り向くと、強面の先輩たちがいた。彼らは生粋のAfterglowの大ファンであり、演奏もさながら、幼馴染5人組の絆に魅かれている親衛隊でもあった。

 

「なぁに蘭ちゃん達にちょっかいかけてくれちゃってるんだぁ?」

「幼馴染だからって調子こいてんじゃねーぞ!!」

「ていうか折角のポジションを台無しにしたな。バカな奴め」

「ちょっと来いや」

 

 と、見事にしばかれ、Afterglowを寝取られましたとさ。

 

蘭「いや、寝取られたとかじゃないから!!!//////」

飛鳥「……」

モカ「いやー。美少女は大変だぁ」

飛鳥「毎回すみません…」

 

 

おしまい

 

 

 

 



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第8話「間男・一丈字飛鳥と林間学校・1」

 

 オレの名前はタカシ。どこにでもいる陰キャだ。だが、オレには5人の美人で美少女な幼馴染がいる。

 

 そんなオレと幼馴染は今日林間学校がある。

 

-------------------

 

 

 1年生たちが正門の前に集まって、バスに乗り込もうとした。

 

タカシ「楽しみだな。林間学校」

 と、タカシが馴れ馴れしく蘭たちに話しかけるが、いずれも嫌そうにして、モカが飛鳥に話しかけた。

 

モカ「飛鳥く~ん。楽しみだね~」

飛鳥「え? あ、はい…」

 

 モカが飛鳥に話しかけていたのでタカシが苛立っていた。

 

タカシ「モカ? 人が話してるのにその態度は無いんじゃないかなぁ?」

モカ「だってあなたとお話ししたくないんだも~ん」

「!!?」

 

 すると、他の4人も飛鳥の方に移動した。ちなみにつぐみは蘭に引っ張られた。

 

タカシ「なっ…!!」

蘭「もう幼馴染だったって事は忘れて。お願いだから」

巴「そうそう」

ひまり「そろそろそういう所直した方が良いよ…」

 

 そう言うと、2組の女子も冷ややかな目でタカシを見た。

 

タカシ「な、何でだよ!! オレは幼馴染として話しかけてるだけなのに!!」

蘭「今まで自分がやった事考えてよ!」

 タカシが地団駄を踏むと蘭が叫び、険悪なムードになった。

 

「そこ! 何をしてるんだ! さっさと並べ!」

 と、先生の言葉でクラスごとに並んだが、蘭たちはうんざりしていた。飛鳥は何も言わず自分のクラスに戻った。

 

 そしてクラスごとにバスに乗り込んだが、タカシとAfterglowがいる2組のバスはギスギスしていて、会話が全くなかった。

 

「くそっ、めんどくさい事しやがって…」

「皆あんたのせいだからね」

 

 と、タカシはクラスメイト達から責められた。

 

タカシ(くそっ!! 何でオレが責められるんだよ…!!)

 

 その頃3組はというと…。

 

飛鳥「あ、こちらが頼まれていたアップルパイです」

「おおーっ!!」

 と、飛鳥がクラスメイトにアップルパイを振る舞っていた。そして男子生徒がアップルパイを食べる。

 

飛鳥「どうですか?」

 すると男子生徒が涙を流した。

 

「これだ…。死んだ母ちゃんがよく作ってくれた味…」

飛鳥「やっぱりシナモンを入れてなかったんですね」

 

 事の顛末はこうである。クラスメイトの1人・富山(とみやま)が死んだ母が作ってくれたアップルパイが食べたくなり、レシピを参考にして、アップルパイを作ってみたが、どうしても同じ味にならずに悩んでいた。そんな中飛鳥が相談されて、どんな味だったかを聞くと、甘さ控えめだったという言葉を聞き、シナモンを入れていないアップルパイを作ったのだった。

 

 

富山「だけどどうして分かったの?」

飛鳥「中学の時に住んでた家のお隣さんがパン屋さんで、その店長からアップルパイはシナモンを入れるお店と入れないお店があるっていうのを聞いたことがあって、おそらく富山さんのお母様は、入れてなかったんじゃないかなって」

富山「そ、そうなんだ…」

飛鳥「まあ、元々シナモンが入ってるのが主流だそうなので、料理のレシピやお店は主流に乗っ取ったんだと思います。それに、元々アメリカのデザートとして食べられてましたし」

富山「そっか…。ありがとう一丈字くん」

飛鳥「いえいえ。解決できて良かったですね」

 

 と、飛鳥が苦笑いした。

 

「何かいい匂い…」

「何やってんの?」

 

 男子生徒達が寄ってきた。

 

飛鳥「あ、ごめんなさい。朝ごはんです」

「アップルパイ!!?」

「いや、富山食ってんじゃん!!」

「オレにもくれよ!!」

飛鳥「あ、一切れだけ…一切れだけ残してください!」

「うん、残すよ」

「流石に申し訳ないわ」

 

 と、一切れだけを残して男子生徒達が食べた。

 

「うっま!!」

「これマジで一丈字が作ったのか!!?」

飛鳥「残念ながら」

「いや、自信持って!!」

 

 男子生徒達が興奮していると、前で座っていた女子生徒達も反応した。

 

「え!? なに!? どうしたの!?」

「すっごくいい匂いだったけど…」

「アップルパイって言ってたよね!?」

 

 と、アップルパイで盛り上がった。

 

 暫くして、モカから電話が来た。

 

飛鳥「あ、すみません。失礼します」

 飛鳥が電話に出た。

 

飛鳥「もしもし…」

「あ、もしもし飛鳥く~ん。モカだよ~」

飛鳥「…どうされました?」

 

 出発する前の殺伐とした空気を感じていた飛鳥は、何故モカが電話をかけていたのか察した。

 

モカ「もうね~。2組のバスが殺伐としてるの~」

飛鳥「でしょうね…。ちなみにスピーカーモードとかにしてませんよね?」

モカ「してる~」

飛鳥「ちょ、何してくれてるんですか!!」

 

 飛鳥が突っ込んだ。

 

飛鳥「殺伐としていて、よく通話できましたね!! 切っていいですか!!?」

モカ「ダメ~。モカとお話しようよ~」

飛鳥「…美竹さん達とお話すればいいじゃないですか。もしかして席別々なんですか?」

モカ「ううん。一番後ろの5人席取ってる~」

飛鳥「ますます通話してくる意味が分かりません…」

 飛鳥が額を押さえた。

 

モカ「それはそうとそっちはどんな感じ~? 何か騒がしいけど~」

飛鳥「いやー。皆さんそれぞれ青春しています」

蘭「いや、それこそ意味わかんないよ…」

 と、蘭が突っ込んできた。

 

モカ「さては絶対面白い事あったでしょ~」

飛鳥「いやー。そんな事は…」

「一丈字がアップルパイ作ってくれた!」

「とっても美味かった!!」

飛鳥「大崎さん、牛田さん。そういう事言わなくて良いですから」

 と、男子2人に言われて飛鳥が困惑した。

 

モカ「アップルパイ!!?」

 モカが反応した。モカは無類のパン好きであるが、正直アップルパイはパンに入るのか入らないのか微妙な感じである。

 

飛鳥「パイ生地で作ったものが洋生菓子、パン生地で作ったものはパンに入るって聞いた事はありますけどね…」

 

 と、飛鳥が突っ込むと。

 

モカ「え~!! 何で作ったの!?」

飛鳥「それがですね…」

 飛鳥が事情を説明した。

 

モカ「えー。いいないいなー。今度モカちゃんにも作って~」

飛鳥「え、私ので宜しいんですか?」

 その時だった。

 

タカシ「アップルパイだったらオレが作るからお前は何もしなくて良」

モカ「お願いね~。必要なら材料費払うから~」

タカシ「おーい!!! 無視するなー!!!」

 

 ちなみにタカシはトラブルを起こしたので先生の横に座らされている。本当は蘭たちと割と近い席だったのだが…。

 

ひまり「うう…私も食べたいけど体重が…」

巴「運動しろよ」

ひまり「ねえ一丈字くん。ダイエットに効くパンってないかな…?」

飛鳥「えーと…よく噛んでください」

 

 と、ひまりの回答に困る飛鳥だった。

 

 そしてバスはこのまま目的地へと向かう…。

 

 

つづく

 



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第9話「間男・一丈字飛鳥と林間活動・2」

 あっという間に目的地にたどり着いた。

 

「ついたー!!」

「空気が美味しー!!」

 

 飛鳥達が来た場所は山の中にある自然の家である。

 

タカシ「ちょ、まだ何もしてないだろ!!」

「うるさい!!!」

 

 と、タカシが蘭たちに近づこうとしたがクラスメイトの男子生徒達が取り押さえていた。蘭、ひまり、巴がうんざりしていて、つぐみもちょっとうんざりしていた。モカはもう眼中にすらなかった。

 

 飛鳥達3組も遅れてやって来たが、話が盛り上がったのかずっと和気藹々としていた。

 

香澄「ねえ、何の話してたのー?」

こころ「とても楽しそうね!!」

 と、香澄とこころが飛鳥に話しかけるとモカも加わった。

 

 そして挨拶を済ませて生徒達は自分達の部屋へ。当然ながら飛鳥とタカシは男子のフロア、香澄たちは女子のフロアに移動した。男子は和室で女子は洋室だった。

 

飛鳥「あー。畳が落ち着きます…」

「おっさんか」

 

 そして午後からウォークラリーが始まり、班ごとに分かれて行動した。ちなみにタカシとAfterglowは別の班で、自由に組めた。

 

 3組は男女混合であり、飛鳥も他のチームメイトとそれなりに楽しんだ。男女分け隔てなく話をしていた為、好感度もそれなりに上がっていた。

 

 ウォークラリーも終わり夕方、入浴が行われた。

 

「ちなみに覗きをしたらそこで野外活動終了だからなー」

 と、先生が男子生徒達にくぎを刺すと、

 

「先生!! 女子が男子を覗いても同様ですか!!?」

 と、学年のお調子者がそう言うと、

「そ、そうだけどそんなもの好きな奴がいるのか…?」

「いや、ウェルカムですけどね!!」

「バカな事言ってないでさっさと風呂入ってこい!!」

 

 ちなみに2組

 

「絶対風呂覗くなよ」

 と、タカシに男子生徒達がくぎを刺したが、

タカシ「覗かないし、お前らこそ覗いたら殺すからな」

 幼馴染面してそういうが、

 

「んだとコラァ!!」

「ぶっ殺してやりてぇよ!!」

「陰キャの癖に生意気な!!!」

 そう殴り掛かると先生が怒鳴ってきて、タカシは逃げた。

 

 3組も普通だったが、皆飛鳥をじっと見ていた。

 

飛鳥「男ですよ」

 

 女性と間違われやすい顔と体つきだったのか、注意した。

 

飛鳥(そういやハーメルンでオレに似てる人がいたなぁ…。確か名前は黒…)

 と、飛鳥はシャンプーで頭を洗って、お湯で流した。

 

 そして何事もなく、生徒達は風呂から上がって食事を取るわけだが…。

 

 ちなみに食事を取るのは班ごとではなく、自由だった。タカシは飛鳥よりも先に蘭たちを見つけて共に食事をしようとしていたが、蘭たちが手をまわしていたのか、男子生徒達に取り押さえられていた。

 

タカシ「離せよ!! オレは蘭たちと飯食いたいんだよ!!」

「いい加減にしろ!!」

「美竹さん達が嫌がってんの分かんないのか!!」

タカシ「分かんねーよ!! 何であそこまで嫌がってんだ!! 流石に傷つくぞ!!」

 

 理由としては過去のセクハラと巴の妹であるあこに手を出そうとした事である。しかし、全く自覚がない上に、昔の話だと割り切っているのだ。

 

 そして遅れて飛鳥達が食堂に行こうと部屋を出ると、モカ達が待っていた。

 

飛鳥「あれ? どうされたんですか?」

蘭「い、いや…一緒に食事を取ろうと思ってさ…」

モカ「先に食堂に行くとあの子がいるからさ~」

飛鳥「…ああ」

 

 飛鳥は察した。昔されたことに対してまだ許してないんだなぁと考え、飛鳥は様子を見る形で蘭と行動を共にした。

 

飛鳥「…そんなに許せないんですか?」

巴「許せないね。妹が怖い思いをしたんだ。謝って反省しても絶対に許さない」

 巴が憤っていた。

蘭「しかも態度からして反省してるようには見えないしね」

 

 そして飛鳥達が食堂に行くと、タカシは先生達と食べさせられていた。それを見て飛鳥が困惑していた。

 

モカ「あ、先生と一緒なら安心だね」

蘭「いい気味。晩御飯食べよ」

 

 と、飛鳥はAfterglowと一緒に食事をする事になった。そしてそれをタカシが恨めし気に見て、飛鳥は困惑していた。

 

蘭「まだこっち見てるよ…」

ひまり「キモーい…」

 蘭とひまりはドン引きしていた。

 

飛鳥「…幼馴染っていい事ばかりじゃないんですね」

巴「全くだ」

モカ「どうしてあんな外れ引いちゃったんだろう…」

飛鳥(きっつ…)

 

 モカの毒舌に飛鳥が困惑した。

 

 食事も終わり、この日のメインイベントとなる肝試し大会。班ごとなので、蘭たちはAfterglowで肝試しをする事になった。ちなみにたかしの班は蘭たちよりも前に行く事になる。

 

飛鳥(凄くピリピリしてるな…)

 

 タカシはチームメイトが見張っている為、故意に蘭たちに近づく事が出来ない。

 

タカシ(舐めるなよ…!! 蘭と巴はビビりだから、絶対オレ達を追い越すに違いない!!)

 

 と、高をくくっていた。

 

 そして肝試しが行われたが、脅かし役の従業員達の完成度が高すぎて、生徒達は次々と悲鳴を上げてパニックを起こし、逃げていった。

 

 タカシたちはというと…。

 

「ウォオオオオオ!!!」

「ヒィ―――――――――――――――!!!」

 

 と、タカシ以外の男子生徒達が逃げ出した。実はタカシは幽霊を全然見ておらず、隙を見て蘭たちを待ち伏せる事にした。

 

「あっ!」

 

 タカシだけ逆走したことに気づいた脅かし役はタカシを追いかけた。

 

「待てぇえええええええええええええ!!!」

タカシ「しつけーんだよ!!! 黙って待ってろや!!!!」

 

 そう怒鳴って逃げたが、すぐに捕まった。

 

「こっちに来るんだ!!」

タカシ「離せよ!! どうしてオレだけこんなにしつこいんだ!!」

 

 と、タカシと脅かし役が揉めていると、他の班の生徒達がやってきて、タカシの顔を見るなりうんざりしていた。

 

 その結果、肝試しはいったん中断になった。

 

「いい加減にしろよお前!!!」

「しつこいのはお前だ!!」

 と、2組で揉めていた。蘭たちもうんざりしていた。

 

「お、おい…」

「もうヤバいんじゃないか? 2組の奴…」

 

 3組もざわついていると、飛鳥が前に出た。

 

「一丈字くん!?」

「おい、よせって!」

 

 と、皆が止めるが、飛鳥は2組の所に向かった。

 

飛鳥「あのー。すみません」

「!!」

タカシ「一丈字…!」

 タカシが飛鳥を睨みつけた。

 

タカシ「一体何しに来たんだ! お前の同情なんかいらない!! 蘭たちを返…」 

 

 次の瞬間だった。

 

 

 パン!!

 

 

 飛鳥はタカシを平手打ちした。その衝撃的な行動に皆が絶句した。

 

 

つづく

 



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第10話「間男・一丈字飛鳥と林間活動・3」

「え…?」

飛鳥「殴ってゴメンね」

 

 蘭たちも驚きが隠せなかった。

 

「一丈字!! 何やってるんだ!!」

 と、先生達が止めに入ると、飛鳥は先生達を見つめた。

 

飛鳥「先生」

「!?」

飛鳥「問題行動を起こせば、野外活動は即終了でしたよね」

「あ、ああ…」

飛鳥「お手数をおかけしますが、私を退場させて頂けないでしょうか」

「!!?」

 

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

 

「な、何を言っているんだ!」

飛鳥「私は今こうやって2組の生徒を叩きました。立派な問題行動ですよね?」

 飛鳥の言葉に教師たちが困った顔をした。

 

飛鳥「お願いします。退場させてください。そうしなければ2組の空気がずっと最悪なままですし、昨年退場された先輩方に申し訳ないです」

 

 教師は更に困った顔をすると、

 

「どうしてタカシを叩いたんだ?」

飛鳥「私が暴力を振るう事で、皆さんがもう怒らないようにする為です。実際に私が叩いた事で、2組の人たちは静まり返りました。で、申し訳ないのですが…美竹さん達とタカシさんに話をする機会を与えて貰えませんか?」

「!!?」

 

飛鳥「過去に何かあったようで、それが原因でずっといがみ合いを続けているんです。お互い碌に話もしていないようですし、ちゃんと話をして、お互い納得のいく結果を出させてください。お願いします」

 飛鳥が頭を下げた。

 

飛鳥「今回の騒ぎを収めるにはこうするしかなかったんです。お願いします…」

 

 飛鳥のお願いを聞いて、教師たちは困った顔をした。

 

飛鳥「タカシさん」

タカシ「?」

 飛鳥がタカシを見つめた。

 

飛鳥「殴って本当にごめんなさい。ただ、あなたが昔美竹さん達に迷惑をかけた事に対しては、ちゃんと謝ってください。たとえ許してくれなくても」

タカシ「そ、それはもう昔の話で…」

飛鳥「あなたの中では解決しても、彼女たちは何も解決してない」

「!」

 飛鳥の表情が真剣なものになった。

 

飛鳥「本当に幼馴染だというのなら、その立場に甘えないでしっかり向き合いなさい。あなたは彼女たちの事を何も分かっていない!」

タカシ「な、何でお前にそんな事言われなきゃいけないんだ!! お前に何がわかる!!」

飛鳥「あなたの事は分からなくても、彼女たちが傷ついていたっていう事は分かりますよ。そうでなきゃ、あなたの事を嫌ったりする訳がないんですから」

「!」

飛鳥「美竹さん達は理由もなしに人を嫌ったりする人たちじゃありません。他の方だってそうです。ちゃんと理由があるんです。それをあなたがちゃんと分からなければ、ずっとこのままですよ。それでいいんですか?」

「……」

 飛鳥の言葉にタカシは俯いた。

 

飛鳥「先生方。あとは宜しくお願いします。私は帰る準備をします」

蘭「ま、待ってよ…」

「一丈字」

 

 初老の男性教諭が呟いた。学年主任である。

 

「…残念だが、お前はここで終わりだ。学校に帰って反省文を書くように」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 飛鳥が笑みを浮かべた。

 

ひまり「そ、そんな!!」

飛鳥「美竹さん」

蘭「!」

飛鳥「それから、青葉さん達も」

モカ・ひまり・巴・つぐみ「!!」

 

 飛鳥が蘭たちを見た。

 

飛鳥「答えは変わらないでしょうけど、タカシさんの話を聞いて、向き合ってあげてください。ただ拒絶するだけじゃ、何も変わりませんよ」

「!!」

飛鳥「それでは、さよならです」

 

 そう言って飛鳥は去っていくと、生徒達は飛鳥を見つめる事しか出来なかった。

 

タカシ「……」

 

 この後、肝試しは中止になり、タカシとAfterglowは先生達立ち合いの元、話し合いが行われた。タカシが過去にした事を聞いて先生達は驚いて何とも言えなかったが、タカシにちゃんと反省するように促し、蘭たちの本音を聞いてようやく自分が間違っていた事に気づき、謝罪した。巴は自分の許可なしに妹に近づかない事を約束させて許すと、他の4人は巴の様子を見て、とりあえず許す事にした。

 

 そして飛鳥はというと、荷物を纏めて、学校行きのマイクロバスに乗ろうとしていた。

 

飛鳥「……」

 先ほど、飛鳥はちらっとタカシたちの様子を見ていたが、タカシが反省していた事に気づき、満足そうにしていた。

 

「一丈字…」

飛鳥「はい…って、何で泣いてるんですか」 

 

 運転手を務める生徒指導の桑田が号泣していた。

 

桑田「暴力はいけないが、身を挺して場を丸く収めようとしたお前に感動した…!!」

飛鳥「あ、ありがとうございます…」

 

 飛鳥が苦笑いしたその時だった。

 

「一丈字!!!」

「一丈字くん!!」

 

 と、3組の生徒や香澄たちがやって来た。

 

飛鳥「あれ?」

 飛鳥が驚いた。

 

飛鳥「どうしたの?」

「どうしたもこうしたもねーよ!!」

「一丈字くん! これでいいの!!?」

飛鳥「ええ。じゃなきゃこんな事しませんよ」

 飛鳥が笑みを浮かべた。

 

香澄「今からでも…」

はぐみ「そうだよ!! こころんに…」

飛鳥「それはダメですよ」

香澄・はぐみ「!!」

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

 

飛鳥「ルールですし、全部元に戻してしまったらいけないんです。2組の人たちが本当の意味で一つになるには、こうするしかないんです」

「!」

飛鳥「あ、そうだ。富山さん」

「?」

 飛鳥がポケットから紙を取り出した。

 

飛鳥「これ、アップルパイのメモです」

富山「……!!」

 富山がメモを受け取ると中身を確認した。確かにシナモンなしのアップルパイのレシピが書かれていた。

 

飛鳥「念のためにお渡ししておきますね。これでいつでもお母さんの思い出のアップルパイが食べれますね」

富山「一丈字くん…」

飛鳥「それでは、私はもう行きます」

「あっ…」

 飛鳥がマイクロバスに乗り込むと、すぐに扉が閉まった。退場者は飛鳥一人だった。

 

飛鳥「桑田先生。ご迷惑をおかけしますが、宜しくお願いします」

桑田「ああ」

 

 桑田がバスを動かして、飛鳥は遂に自然の家を後にする。

 

「一丈字!!」

「一丈字―!!!!」

 と、皆が叫んで追いかけると、Afterglowとタカシも出てきた。

 

蘭・巴「一丈字!!!」

ひまり・つぐみ「一丈字くん!!」

モカ・タカシ「……!!」

 

 蘭たちが叫ぶと飛鳥も気づいて、蘭たちに向かって右手を上げ、曲げて敬礼した。

 

「……!!」

 

 敬礼したまま飛鳥を乗せたマイクロバスは去っていった。

 

「一丈字――――――――――――――――――――っ!!!!!」

 

 

 生徒達が叫んだ。

 

 

飛鳥(めっちゃ目立ったな…)

 飛鳥が困惑しながら、母親に事の顛末をメールで報告した。

 

 

つづく

 



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第11話「間男・一丈字飛鳥と林間活動・完結編」

 それからというもの、飛鳥は学校に帰宅後、学校で退場者用の補習授業を一人で受けた。そして親にも連絡し、母・笑子が飛んできて笑子と共に学校に桑田に謝罪した。

 

 人を殴った事、桑田に迷惑をかけた事に関して、笑子に滅茶苦茶怒られたが、自分の身を挺して喧嘩を収めた事に関しては褒められた。実は彼女自身も学生時代に似たようなことを起こしていたというのは内緒だ。

 

 また、たかしも心を入れ替え、クラスメイトに見張られながらもちゃんと蘭たちに認められるように出来る限りの事を尽くした。登山、キャンプファイヤーもともに楽しんだが、飛鳥がいない寂しさを感じた。

 

 最終日。野外炊飯をする事になったが、その前に生徒達は体育館に集められた。

 

香澄「何だろ」

たえ「映画かな?」

 

 と、1組で香澄やたえが話をしていた。

 

たかし・アフグロ「……」

 たかしとアフグロは普通に何のことか分からず、きょとんとしていた。

 

「今から学校に中継します」

「!!?」

 

 すると教諭がモニターに映像を写すと、そこはバンドリ学園の応接室で、飛鳥と笑子が写っていた。

 

香澄「飛鳥くん!!!」

たえ「隣の人誰? 顔そっくりだけど…」

りみ「お姉さん…?」

 

「めっちゃ美人!!!」

「一丈字の奴、あんなかわいい妹がいたのか!?」

「姉!?」

 

笑子「あ、皆さんこんにちは。一丈字飛鳥の母です」

 空気が止まった。

 

「お母さん!!!?」

「わっか!!!」

「え!? 年いくつ!!?」

「ゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑ!!?」

 

 と、生徒達がざわついた。

 

笑子「あ、えっと。そんなに驚く事じゃないのよ?」

 

 笑子が慌てるが飛鳥は額を抑えた。

 

飛鳥「母さん。それよりも本題に入ろう」

笑子「そ、そうね…」

飛鳥「皆さんおはようございます。元気にしてましたか?」

「お、おう…」

 

 飛鳥の言葉に皆がそう言わざるを得なかった。

 

飛鳥「先日はご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」

 飛鳥が頭を下げて謝罪すると、笑子も一緒に頭を下げた。

飛鳥「2日目はずっと補習授業しておりまして、3日目に補習授業の前に中継ですが、皆さんに改めて謝罪をさせて頂きたく、お時間を頂きました」

笑子「本当に息子がご迷惑をおかけしました。ごめんなさい」

「あ、いえいえ…」

 

 笑子が謝罪をするが…。

 

(一丈字の母ちゃんも胸でけぇ…!!!)

 

 一部の男子生徒は笑子の乳に目が行っていた。たかしも例外ではなく、ごみを見る目で見られていた。

 

モカ「ひーちゃん以上かも…」

ひまり(ま、負けた…)

 

 すると笑子がキョロキョロ見渡した。

 

 

笑子「あ、たかしさんって誰かしら?」

タカシ「あ、は、はい…」

 たかしが立ち上がった。

 

笑子「本当にうちの子が叩いたりしてごめんなさい。ほら、あんたもちゃんと謝りなさい!」

飛鳥「すみませんでした。たかしさん」

タカシ「あ、もういいよ。こっちも今まで酷い事言ってごめん」

 

 タカシも頭を下げて謝ると、飛鳥とタカシも仲直りした。

 

香澄「ところで飛鳥くん! 今日飛鳥くん何するの!?」

有咲「いや、さっき言っただろ…」

 

 香澄の言葉に有咲が突っ込んだ。

 

飛鳥「ずーっと補習授業ですよ」

香澄「えーっ!!? つまんなくない!!?」

飛鳥「そんな事ありませんよ。慣れれば。あ、もうそろそろ時間ですね。それじゃ皆さん。最後まで林間学校楽しんでくださいね」

笑子「こんな息子だけど、これからも宜しくねー」

 と、飛鳥と笑子が手を振ると、通信が切れた。

 

「何で一丈字、あそこまで笑ってられたんだろう…」

「さあ…」

 

 3組の生徒達は不思議でしょうがなかった。他のクラスの人間、ましてや自分を嫌っていた人間の為に、自分の思い出を犠牲にして、止めようとしたその姿勢を。

 

 止めようとしたのは事実であるが、飛鳥自身この手のイベントに関しては、まともな思い出が無かった為、もうこのような行動を出ても何の抵抗もなかったのだ。

 

 

飛鳥「そういや今日帰るんだっけ…」

笑子「うん。また何かあったら呼んでもいいけど、もう先生に迷惑かけないでよ」

飛鳥「…分かった」

 

 呼ぶ用事は大体誰かに迷惑をかけている。そう思った飛鳥は返事に困った。

 

 

 色々あったが、飛鳥とタカシ、そしてタカシとAfterglowは無事に仲直りして、野外活動は終わった。

 

 

 その後、タカシとAfterglowは普通に話をするようになったが…。

 

 幼馴染によくある家まで来て起こしに来る。一緒に風呂に入る。ご飯を作って貰う、昔話をする。といった甘々の展開は一切なく、ただ単にクラスメイトとして話すだけ。

 

 しかし、今のタカシにとってはどうでも良かった。自分を嫌っていた理由も分かり、反省した事で彼女たちにまた受け入れて貰えたのだから。

 

 飛鳥もこっそりそんな彼らを見て満足そうにしていたが…。

 

 

飛鳥(結婚は絶対無理だろうなぁー)

 

 というのも、あこにタカシの事を聞いたのだが…。

 

あこ「無理無理無理!!! あいつが義兄になるなんて冗談じゃない!! だってあいつ昔おねーちゃんの赤いブラジャー盗もうとしてたし、つぐちんのパンチラ見ていやらしい顔してたし、 それからずーっとひーちゃんの写真があるんだけど、それでひーちゃんの写真でかくしておっぱい吸ってるの見たし、蘭ちゃんやモカちんでエッチな妄想してたし、ハーレムがどうこうとか言ってたんだよ!?」

 

 あこの言葉に飛鳥は真っ白になった。

 

飛鳥「…ちなみに美竹さん達は」

あこ「知らないし、教えてないよ?」

飛鳥「…それはどういう意味で」

あこ「そんなの決まってるよ」

 

 あこが黒い笑みを浮かべた。

 

あこ「この大魔王あこを穢そうとした行為は許されざるべき所業、天からの裁きがくだされるのだ…!!」

飛鳥「……」

 

 言ってる事はよく分からなかったが、やろうとしている事はもう完全に女の怖さ丸出しだった。未だに絶対に叶わない夢を思い描いているタカシに対して、飛鳥は心の底から同情し、その場を後にした。

 

 

おしまい

 



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第26話「間男・一丈字飛鳥と夜の学校」

 

 

 ある日の事だった。

 

「なあ、聞いたか?」

「最近この学校…幽霊が出るらしいぞ」

「何か3年生がそんな話してたな…」

「おー怖い怖い…」

 

 と、飛鳥が教室で聞いていたが、特に何もする事は無かった。

 

「そういや今日、メンテナンスのために早めに施錠されるんだろ?うちの学校オートセキュリティだから」

「取り残されたら一晩中幽霊に付きまとわれるかもな」

「おーこわ」

「あ、でもガードマンがいるって」

「そっか」

 

 それを聞いて飛鳥は安心していた。

 

 一方、2組では…。

 

ひまり「ねえねえ。今度の課題難しいから一緒に勉強会しない?」

モカ「いいね~。掃除…じゃなかった、勉強会」

蘭「ちゃんとやれよ?」

巴「まあ、今回のテスト難しいからな。乗った!」

つぐみ「それじゃうちに集まろうよ!」

 と、Afterglowが勉強会をする流れになった。

 

「……」

 そんな様子をAfterglowの幼馴染であるキヨシが見ていた。彼女たちとは幼稚園からの幼馴染であるが、あまりにも馴れ馴れしく、空気も読めず、いやらしい視線を送っていた為、距離を取られていた。

 

 当然勉強会にも自分は呼ばれると思っていたが…そんな事は無かった。

 

キヨシ「なんでだよ!!」

 当然事情を知っているクラスメイト達からも冷ややかな目で見られていた…。

 

 その夜、

 

飛鳥「ふぅ…。今日も何もない一日だったな…」

 と、飛鳥が部屋でくつろいでいると、電話が鳴った。

 

飛鳥「誰からだろ」

 飛鳥が電話を取った。

飛鳥「もしもし」

「あ、もしもし飛鳥!?」

 電話の相手はこころだった。

 

飛鳥「こころ。どうしたんだ?」

こころ「蘭たち知らない!?」

飛鳥「え?」

こころ「蘭たちがまだ学校から帰ってきてないって…」

飛鳥「え!?」

 飛鳥が驚いた。

 

こころ「さっきあこから電話があったのよ! Afterglow全員帰ってきてないって…」

飛鳥「5人全員が行きそうな場所とか調べましたか? 学校とか…」

こころ「学校…そうだわ! 今日確か早く施錠するって黒服の人たちが教えてくれたわ!」

飛鳥「もしかしたら学校に閉じ込められてる可能性が…。けど、羽沢さん生徒会の仕事をしてるから…あ、すぐに帰ろうとしたけど、閉じ込められた奴か」

こころ「警察の通報とかそういう手続きはあたしや黒服達の人がしておくわ! 飛鳥は学校に向かって頂戴!」

飛鳥「分かった!」

 

 飛鳥が存在感を消し、瞬間移動で学校に向かった。ちなみに行った事がある場所はいつでも行けるようになる。

 

 正門を過ぎた所に瞬間移動した飛鳥。正門は既に閉まっている。

 

飛鳥(誰か来てる痕跡もなさそうだな…)

 飛鳥が目を閉じて感知すると、蘭達を捕らえた。停電になり5人で固まっているが…。

 

飛鳥(…もう一人誰かいるな)

 飛鳥は異変に気付きながらも、超能力でカギのロックを解除すると、中に入った。

 

飛鳥「美竹さーん!!! 青葉さーん!!!」

 

 と、大声で叫んだ。

 

 その頃…

 

「うぅぅぅぅ…!!」

 Afterglowの5人は固まっていたが、キヨシもいた。モカ以外が怯えていた。

 

ひまり「ごめんねぇ…!! 私が参考書忘れたばっかりに…!!」

キヨシ「だ、大丈夫だ! オレがついてる!!」

 キヨシが声を震わせながらそう言ったが、モカは冷ややかな目で見ていて、やっぱり距離を取られていた。

モカ「そんな事言って、蘭たちが君に抱き着くと思ったら大間違いだよ?」

巴「ていうか何でお前がいるんだよ!!」

蘭「最悪…」

 

 実はAfterglowは夕方までつぐみの家で課題をしていたが、ひまりが参考書を忘れた事が判明し、5人で忘れ物を取りに行った。すぐに取りに帰る予定だったので、親には特に何も言わず、そのまま飛び出し学校へ。

 

 だが、その途中でキヨシに見つかってしまい、彼女たちをストーキングした。

 

 それに気づかないまま蘭たちは学校に入り、参考書は無事に見つけたが、その瞬間に施錠されてしまい、蘭たちは外から出られなくなってしまったのだ。おまけに最近幽霊がいると噂になっている為、すっかり怯え切った上にキヨシが現れた為、絶望でしかなかった。

 

つぐみ「怖い…」

モカ「つぐ泣かないで~。気持ちは分かるけど~」

蘭「……」

巴「もう明日でも良かったんじゃないかな…」

ひまり「私のせいだ…うぇええええええええええん!!!」

 ひまりが泣き崩れた。

 

つぐみ「ひ、ひまりちゃんのせいじゃないよ!!」

キヨシ「そうだよ! ひまりのせいじゃない!!」

巴「お前のせいだよ!!」

蘭「あーもー。何でよりによってこいつが…全然役に立たないし…」

 泣いてるつぐみをキヨシが慰めようとしたが、巴と蘭が激怒した。

 

モカ「そんなことよりも、本当にまずいよ」

「!」

 

 モカが険しい顔をしていた。

 

モカ「…『あいつ』がここを突き止めてきたら」

「もう突き止めたよ」

「!!?」

 

 その時、モカの首筋にスタンガンが当てられそうになったが、間一髪でかわして6人は避難したが、完全におびえ切っていた。目の前には狂気に満ちた表情した…。

 

 ガードマンの姿があったのだから。

 

 

モカ「……!!」

キヨシ「い、いぎぃーっ!!!」

 モカも今ので完全に青ざめてしまい、目に涙が浮かぶと、キヨシは情けない声を出した。

 

ガードマン「もう逃がさないよ。見られたからには、君達には大人しくて貰う」

蘭「な、な、何で…」

ひまり「いやぁああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 ひまりが泣き叫んでAfterglow5人が固まった。キヨシもどさくさに紛れて蘭に抱き着き、「おっふ、女子の身体柔らかいでゴザル//////」などと思っていた。

 

ガードマン「泣きわめこうが誰も来ないよ。そもそも下校時間過ぎた挙句、勝手に学校に入ってきた君たちが悪いんじゃないか。そういう事をするなら…やってもいいよね」

巴「な、何をだ…」

 巴がガードマンを睨むと、ガードマンが笑みを浮かべた。

 

ガードマン「生徒を一人ずつ…なぶり殺しさぁ!!!」

 

 ガードマンが鉄パイプで殴ろうとしたが、動きが止まった。

 

ガードマン「な、なんだ!? 体が…」

「!!」

 その時だった。

 

「はああああああああああああああああああ!!!!」

 

 飛鳥が廊下を走ってきた。真剣な権幕で叫び、そして飛んだ。

 

「!!」

ガードマン「!!」

 

飛鳥「どりゃぁああああああああああああああ!!!」

 

 飛鳥がガードマンの顔にめがけて飛び蹴りをした。

 

ガードマン「ぐわぁああああああああああああああ!!!!」

 と、ガードマンも悲鳴を上げて壁に叩きつけられそのまま気絶した。飛鳥は綺麗に着地をすると、一気に電気がつくと、飛鳥は存在感を消した。

 

「!!」

飛鳥(学校の給電システムが…)

 飛鳥が灯を見ながらそう呟くと、Afterglowを見つめた。

 

飛鳥「もうじき助けが来ます。そこで大人しくしててください」

 そう言って飛鳥がガードマンの身柄を拘束した。ちなみに蘭たちは声が聞こえていたものの、それが飛鳥だと認識できなかった。

 

「皆さま!!」

 弦巻家の黒服の人たちが現れて、蘭たちを保護した。

 

「ご無事ですか!!?」

ひまり「う…うぇええええええええええええええええん!! ごめんなさいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

 ひまりは号泣した。

キヨシ「皆無」

つぐみ「皆無事です!!」

モカ「こわかったぁああああああああああああああああああ」

 号泣したひまりに代わって、キヨシが報告しようとしたがつぐみにかぶせられた。つぐみも涙をポロポロ流した。モカも号泣し、蘭と巴は歯を食いしばって涙をこらえようとしていたが、涙があふれていた。

 

飛鳥「……」

 飛鳥は何も言わず、一足先にその場を後にすると、入れ替わるように黒服の男たちがガードマンを取り押さえた。ガードマンは無事に逮捕されたが、完全施錠を行う前に、本来作業をする筈だった作業員たちをスタンガンで気絶させていたことが分かり、おまけに1組で香澄たちの私物を漁っていた事も発覚。器物損壊、傷害、窃盗の疑いで実刑判決を食らった。

 

 蘭たちはというと、Afterglowについては親からこっぴどく叱られ、1週間外出禁止令が言い渡された。ちなみにキヨシがあたかも自分がAfterglowを守ったかのように振る舞ったが、これといって好感度が上がる事は無かった。というのも、校舎を回っている間、自分達を盾にしようとしたり、ビビってばかりで頼りにならなかったと親に話したためだった。ちなみに蘭の父親は若干怒っていた。

 

 こうして、幽霊騒動は、ガードマンが「幽霊」だったという事で幕を閉じた。

 

 そして後日…

 

「…聞いたか。幽霊の正体、ガードマンだったってよ」

「こわ…」

「今までで一番怖い話じゃねぇか」

 

 と、事件の事が伝わり、安全のため、1週間学校を閉鎖になる事になった。

 

飛鳥「……」

 

 無事に蘭たちを助け出す事が出来た為、飛鳥は何も言わなかった。

 

 キヨシは蘭たちから何かお礼が来るんじゃないかと期待していたが、最後まで何もなく、放課後しびれを切らし、2組の教室で話しかけた。

 

キヨシ「お、おい!」

蘭「何」

キヨシ「な、何か言う事があるんじゃないのか?」

モカ「ああ。夜の校舎でモカちゃん達を助けてくれた事? ありがとう」

キヨシ「全然気持ちがこもってない!!!」

 モカの投げやりな態度にキヨシが突っ込んだ。

 

蘭「ていうかあんた、何が言いたいわけ?」

巴「今回の件で助けたから、今までの事をチャラにしようっていうの」

キヨシ「そ、そういう訳じゃねぇよ。だけど幼馴染として…」

蘭「悪いけど却下。それによるの校舎だって、あんたビビってばっかりで役に立たなかったし、どさくさに紛れてあたしの身体触ったでしょ」

 蘭が睨みつけると、クラスメイト達が驚いた。

キヨシ「ひ、一人だけ仲間外れなんて冷たい事言うなよ!!」

 

「マジかよ…」

「最低…」

「もしかして、わざと体触る為に学校入ったんじゃね?」

「幼馴染って必ずしも仲がいいわけじゃないんだなぁ…」

 

 と、更にキヨシの評判が滅茶苦茶になった。

 

キヨシ「そ、そんな言いがかりつけるな!」

蘭「じゃあそんな言いがかりをつけない子と仲良くすれば?」

ひまり「それにずっと私の身体も見てたし…」

巴「あこに手を出そうとした事、忘れてないからね」

 と、5人は去っていった。

 

キヨシ「く、くそう!! どうしてこうなるんだよー!!!! オレが蘭たちと一緒にいたのに!! 助けようとしたのにー!!!」

 と、キヨシは地団駄を踏むと、飛鳥とこころが困った顔で覗き込んでいた。

 

 

こころ「残念だったわね」

飛鳥「仕方ないよ。あの様子じゃ余罪が多すぎたんだろう」

 

 と、飛鳥は泣き叫ぶキヨシを見て呆れていた。

 

 

おしまい

 



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第28話「IF:間男・一丈字飛鳥と青葉モカ」


 前回までのあらすじ

 参考書を取りに夜の学校に向かったAfterglow。だが、参考書を取りに行くと学校は施錠され閉じ込められてしまう。また、幼馴染であるもののそんなに仲良くない男子生徒・キヨシも一緒の上、快楽殺人をしようとするガードマンにも襲われて、絶体絶命に。

 そんな中、こころからの通報を受けた飛鳥は単身学校に乗り込み、ガードマンを撃退する。

 Afterglowもキヨシも救出されたものの、キヨシはAfterglowは自分が助けたと主張し、そんな彼の態度にクラスメイト達は愛想をつかしてしまう。

 そして飛鳥は真実を告げることなく、そのまま日常生活を送る事にした…。

 第26話のIFルートです。


 

 

 

 

 バンドリ学園。

 

こころ「キヨシ。まだ蘭たちに話しかけてるみたいよ」

飛鳥「そ、そう…」

 

 幼馴染であり、それも高校生である為バラ色の学校生活を送れると信じているキヨシだったが、全く相手にされない日々が続いたため、自分から声をかける事にしていた。だが、結果的に蘭たちからは鬱陶しがられていた。

 

 ちなみにつぐみの実家である羽沢珈琲店にもしょっちゅう顔を出したりしているのだが、つぐみの両親からしてみたら、キヨシの親にあまり良い思い出がない上に、キヨシもあまり良い印象が無かった。ましてや自分の娘を完全に嫁にしようとしているのが丸わかりであり、何とも言えない気持ちだった。

 

 そして飛鳥はこころとランチを食べていた。飛鳥としてはもう最近自重しなくなってきた。

 

こころ「一緒にご飯が食べられてうれしいわ!」

飛鳥「そりゃ光栄ですけど、北沢さん達と一緒じゃなくていいんですか?」

 ちなみに学校にいる時は敬語なのは変わらない。

こころ「いいのよ! はぐみ達もたまに他の子と一緒にご飯を食べたい時だってあるわ!」

飛鳥「そうですか」

 飛鳥がお茶を飲んだ。

こころ「今度はぐみ達ともご飯食べましょ!」

飛鳥「…機会がありましたらね」

 

 と、談笑していると、

 

「あ、おーい。こころちゃーん。飛鳥くーん」

 モカが現れた。

 

飛鳥「あ、青葉さん」

こころ「大丈夫?」

モカ「大丈夫だよ~。二人のお陰で~」

飛鳥「…二人?」

 モカが微笑んだ。

 

モカ「あのガードマンをやっつけてくれたの、飛鳥くんでしょ~? モカちゃんには分かってたよ~」

飛鳥「……」

 こころが青ざめた。

 

モカ「やっぱりそうなんだね~」

こころ「ち、違うわよ!!? あ、飛鳥じゃないわ!!」

 と、こころが慌てた。

モカ「ふ~ん。こころちゃんって、意外と嘘つきなんだね~」

こころ「う、嘘じゃないわ!! ホントよ!」

モカ「こころちゃんの嘘つき~」

こころ「う、嘘つきじゃないもん!!」

 こころの言葉に飛鳥は目を閉じて呆れた。

 

飛鳥「弦巻さん、もうやめましょう。完全にバレてます」

「!」

 飛鳥がモカを見つめた。

 

モカ「そして飛鳥くん。あなた…やっぱり普通の子じゃないでしょ」

飛鳥「……」

 飛鳥がモカを見つめた。

飛鳥「だったらどうするんです?」

モカ「大丈夫だよ。蘭たちには内緒にするから。喋ったらそれこそモカちゃん悪者だもん。ただね…」

 モカが考えた。

 

モカ「放課後、どっか話をしない? 3人で」

飛鳥「……」

 

 モカの言葉に飛鳥とこころは顔を合わせると、モカに従う事にした。

 

 放課後、3人はとある焼肉屋にいた。

 

モカ「ここなら流石に高校生は来ないでしょ~」

飛鳥「…個室にしてるんですから、そりゃあ来ない事を祈るばかりですよ」

 3人は個室にいた。

 

モカ「さて、改めて話をするけど…飛鳥くん、あなた」

飛鳥「…その通りですよ。私、超能力が使えるんです」

 飛鳥が指から光を出した。

 

モカ「そういう事も出来るんだ~」

飛鳥「ええ…」

 そして飛鳥は何故バンドリ学園に来たのかをモカに説明した。

 

モカ「そっか~。道理で飛鳥くんが来てからヤラカシ(マナーの悪いファン)が減ったと思ったんだ~」

飛鳥「……」

 飛鳥が俯いた。

 

モカ「そんなに落ち込まないで~」

飛鳥「あまりバレると、この学校にも居づらくなりますからね…」

モカ「じゃあ猶更言わない方が良いね~。折角ここまで飛鳥くんの事知ったから、モカちゃん、もっと仲良くなりたいな~」

 モカの言葉に飛鳥は苦笑いした。

 

モカ「そんなに照れなくても~」

飛鳥「…そういやあのキヨシさんって」

モカ「あ~。幼稚園の頃からの幼馴染なんだけどね~。事あるごとに絡んでくるんだけど、空気読めないんだよね~。モカちゃん達だけで遊びたかったのについてきたり、学校でもやたら絡んできて、鬱陶しかったんだよね~」

こころ「そうなの? 何か意地悪されたとかじゃなかったら…」

モカ「最近となっては、モカちゃん達の事、嫌らしい目で見てくるんだよ~。特にひーちゃん、おっぱい大きいから…あ、ひーちゃんって、上原ひまりね」

飛鳥「は、はあ…」

 飛鳥が困惑した。

 

モカ「ところで飛鳥くんって~。おっぱい大きい子好き~?」

飛鳥「普通ですね」

 飛鳥は即刻答えた。

 

飛鳥「それよりもなんか頼みませんか? お腹すきました」

モカ「やっぱりエッチな話は苦手だったりする~?」

飛鳥「苦手っていうか恐怖しかありませんね。いつ首取られるか分からないんで」

 と、答えた。

 

飛鳥「それに助けた人間の事をやらしい目で見てたら、格好もつかないでしょう」

モカ「それもそうだね~。あ、チーズフォンデュ頼んでいい~?」

飛鳥「…パンですね」

モカ「あ、お肉自由に頼んでいいからね~」

飛鳥「…払うの弦巻さんのおうちですけどね」

 飛鳥が困惑した。

 

モカ「あ、そうだ。もう敬語とかやめて。あと、名前もモカって呼んで~」

飛鳥「条件付きですけど」

モカ「それでもいいよ~」

 と、モカが微笑むと飛鳥は苦笑いした。

 

飛鳥「…そう。それじゃ宜しくね。モカ」

モカ「いきなり呼び捨てなんてだいた~ん」

飛鳥「あ、ごめんなさい。モカさん」

モカ「モカで~」

 

 と、モカと仲良くなった飛鳥であった。

 

 その頃…

 

蘭「ついてくんな!!」

キヨシ「なんでだよ! 幼馴染なんだからいいじゃないか!」

ひまり「もう嫌ぁ~!!!」

巴「何でこいつが幼馴染なんだよ!!」

つぐみ「……」

 

 モカ以外の4人はキヨシにつけまわされていたとさ。

 

飛鳥・こころ「……」

モカ「飛鳥くん。超能力でしばいていいからね」

飛鳥「えっ」

モカ「モカちゃんが許す!!」

 

 

おしまい

 



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第81話「もしも飛鳥とキヨシの立場が逆だったら」


 今回の設定。

・ 飛鳥とAfterglowが幼馴染。
・ オリ主ことキヨシが間男ポジション。
・ 飛鳥総受け。

それではゴー。


 

 

 

「なあ、聞いたか?」

「最近この学校…幽霊が出るらしいぞ」

「何か3年生がそんな話してたな…」

「おー怖い怖い…」

 

 と、飛鳥が教室で聞いていたが、特に何もする事は無かった。

 

「そういや今日、メンテナンスのために早めに施錠されるんだろ?うちの学校オートセキュリティだから」

「取り残されたら一晩中幽霊に付きまとわれるかもな」

「おーこわ」

「あ、でもガードマンがいるって」

「そっか」

 

 それを聞いて飛鳥は安心した。

 

 だが、それもつかの間…。

 

「ねえねえ。今度の課題難しいから一緒に勉強しない?」

 2組の教室で、上原ひまりが蘭、モカ、巴、つぐみに話しかけた。

 

モカ「いいね~。宿題の掃除…じゃなかった、勉強会」

蘭「…丸写ししないでよね」

モカ「しないよ~」

巴「まあ、今回のテストは難しいからな…乗った!」

つぐみ「それじゃうちに集まろう!」

 

 と、Afterglowが勉強会をする流れになった。そんな様子をキヨシが見ていた。この時自分は絶対に誘われると思っていた。何でかは知らないけど…。

 

モカ「あ、そうだ~」

キヨシ(来た!)

 

モカ「飛鳥くんも誘おうよ~」

ひまり「いいわね!」

 モカの発言にキヨシがずっこけた。

 

キヨシ「何でだよ!! そこは普通に考えてオレだろ!!」

 というキヨシの言葉に、Afterglowがゴミを見る目でキヨシを見た。

 

蘭「何で?」

モカ「痛いよー?」

ひまり「いや、そんなに仲良くないし…」

巴「そう言いきれるところは評価してやりたいが…」

つぐみ「……」

キヨシ「そ、それだったら7人でやろ!? な!?」

 と、キヨシがしつこく食い下がるが、女子達がガードした。

 

「キヨシくん。いい加減美竹さん達が困ってるのに気づいたら?」

「そうそう。空気読めなさすぎ」

「そういう所が引かれるの分かんないの?」

「正直うざいよ?」

 

 女子達の容赦ない口撃に他の男子たちも震えあがった。飛鳥は困惑していた。

 

飛鳥(一体何をしてるんだ…?)

 飛鳥が困惑した。

 

「あ、一丈字くん」

「!?」

 

 クラスメイトの1人が飛鳥に気づくと、皆が飛鳥の方を見た。

 

モカ「あれ~? どうしたの~?」

飛鳥「数学の教科書返して。次授業だから」

モカ「あ、そうだった~。ごめ~ん」

 と、モカが飛鳥に教科書を返した。

 

飛鳥「ありがとう…。で、どうかしたの?」

 

※ 本作の飛鳥はAfterglowにはため口で喋っています(ただ、能力者だという事は知りません)。

 

蘭「関係ないよ。それよりも今日空いてる?」

飛鳥「ゴメン。用事があるんだ」

モカ「用事? どんな?」

飛鳥「ちょっと出かけないといけないんだよ」

モカ「女の所に?」

 モカの発言に蘭たちが動揺した。

 

蘭「そ、そうなのか!?」

ひまり「う、うそでしょ…?」

巴「ど、どうなんだ! 飛鳥!!」

つぐみ「答えて!!」

飛鳥「……」

 

 4人のリアクションを見て、飛鳥は困惑した。

 

飛鳥「オレがそんなにモテる訳ないでしょ。人に会わないといけないというのは合ってるけど」

 飛鳥の言葉にAfterglowの5人はジト目で見つめた。

飛鳥「どうしたの?」

モカ「別にー」

飛鳥「オレがモテるとでも?」

モカ「教えてあげなーい」

飛鳥「そう。まあ、恋人いるからアレなんだけどね」

 飛鳥の発言に5人はショックを受けた。

 

キヨシ「い、一丈字が彼氏いるなら問題ないよな! 勉強会はオレとやろう!!」

飛鳥「勉強会?」

キヨシ「そ、そうだ! 蘭たちは羽沢珈琲店で勉強会をするんだ! 邪魔すんなよ!」

飛鳥「分かりました。あ、今日学校早く閉まるから忘れ物しないように…って、聞いちゃいねぇな」

 飛鳥が蘭たちの様子を見ると、ショックで放心していた。するとクラスメイトがおそるおそる話しかけた。

 

「ほ、本当に恋人がいるの?」

飛鳥「ええ。アルバイトという名の恋人が」

 空気が止まった。

 

飛鳥「そういう訳だからゴメンね」

 そう言って飛鳥は去っていった。2組から何やら絶叫が聞こえたが、飛鳥は知らないふりをした。

 

 そして放課後、飛鳥はAfterglowから逃げるようにその場を後にした。超能力を駆使して…。

 

飛鳥(超能力が無かったら間違いなく逃げられなかっただろうなー…感謝)

 

 また、Afterglowは予定通り勉強会を行っていたが、飛鳥が言っていたアルバイトの事が気になって手が付けられなかった。

 

蘭「飛鳥の奴~…!!」

ひまり「私達を苦しめて一体何が楽しいのよ!」

モカ「モカちゃんも流石にカチンときた~…」

 と、5人が怒っていた。

巴「我慢だ我慢…。飛鳥を拒絶したらキヨシがまとわりついてくるからな…」

つぐみ「…それにしても、どんなアルバイトをしてるんだろう」

 皆がつぐみを見た。

 

蘭「あたし達にも言えないって事は…」

巴「…危険なバイトをしてるんじゃないか?」

「!!?」

ひまり「い、いくらなんでも考えすぎだよ!」

モカ「どうかなー…。飛鳥くんなら十分にあり得ると思うよ~。だって10年前急にアメリカに行くくらいだもん」

「……」

 

 飛鳥とAfterglowは幼稚園の頃からの幼馴染だが、途中から飛鳥はアメリカに転校する事になり、高校生になるまで音信不通だったのだ…。

 

蘭「ちょっと飛鳥に聞いてみよう」

モカ「うーん。その方が良いかも~」

ひまり「けど、いまバイト中かもしれないんだよ!?」

巴「メールを送るくらいならいいだろ」

つぐみ「う、うん…!」

モカ「いや、ここは電話をかける」

 

 モカが電話をかけた。

 

「あ、もしもし。一丈字です」

モカ「もしもし飛鳥くん~? モカだよ~」

飛鳥「どうしたの?」

モカ「どーしたもこうしたもないよ~。やっぱりバイトの事教えて」

飛鳥「ああ。夜の学校の見回りだよ」

 空気が止まった。

 

「…え?」

 

飛鳥「ちょっと校長先生からお願いされてね…」

モカ「どうして飛鳥くんに?」

飛鳥「え、何かお前やれって言われたんだよ。で、当時予定もなかったし、バイト代も結構弾むから引き受けたの」

モカ「な~んだ。そういう事ならそうだって言ってよ~」

飛鳥「あー…。それなんだけどね、本当の事話したら自分もやりたいっていう人が出て来て危ないからさ」

「危ない!!?」

 皆が驚いた。

 

飛鳥「そうそう。見回りつっても何があるか分からないから、大人しくして貰ったって訳」

 その時だった。

 

「飛鳥。誰と話してるのかしら?」

 

 という声がした。

 

モカ「ちょっと待って。誰かと一緒にいるの?」

飛鳥「うん。手遅れになった弦巻さん」

「手遅れってどういう意味なの?」

 

 こころの声に空気が止まった5人。

 

飛鳥「ちなみに今回の事に関して苦情は一切受け付けま」

モカ「飛鳥くん」

飛鳥「なに?」

 モカが笑いながら怒った。

 

モカ「今度会ったら正座ね」

飛鳥「断る。それじゃ」

 飛鳥が一方的に電話を切った。

 

モカ「はー…本当に仕方ないなぁ。飛鳥くんはー」

蘭「全くだ!!」

ひまり「けど…」

巴「ああ…」

つぐみ「……」

 

 5人がうつぶせた。

 

アフグロ「そういう所が好きぃいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

 

 と、Afteglowの叫びが家中に響き渡り、その上空で飛鳥が「何でやねーん」と突っ込んでいた。

 

 

キヨシ「オレはー!!!!?」

 

 

おしまい

 

 



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香澄のドリームアドベンチャー
第12話「香澄の桃太郎・1」


 

 

 ある日のバンドリ学園。放課後、飛鳥達が食堂の特別スペースで集まっていた。バンドガール25人と飛鳥がいた。

 

こころ「黒服の人が面白いものを持ってきてくれたの!!」

 

 と、こころがいかにも怪しげな装置を持ってきた。大半の生徒が困惑していた。

 

はぐみ「こころん! それ、なーに?」

こころ「この装置を寝ている人の頭に嵌めて、ケーブルをテレビにつないだら、その人が見ている夢を見る事が出来るの!!」

「弦巻家一体何者!!?」

 

 こころの発言に大半の生徒が驚愕していた。

 

こころ「皆にも見せてみたいんだけど…」

美咲「いやあ、そんな都合よく寝てる人なんか…」

 

 と、美咲が苦笑いしながら横を見ると、香澄が爆睡していた。

 

「おったぁ!!!」

有咲「香澄の奴、夜更かししてたからなぁ…」

こころ「丁度いいわ!!」

美咲「いや、ちょ…」

有咲「人が話してる途中で寝てる香澄が悪いんだ」

 有咲も思った他ノリノリで、こころが香澄の頭に装置をはめ、いつの間にか用意していたモニターにケーブルを差し込むと、映像が映し出された。

 

 

 ――――

 

『昔々ある所に、おじいさんとおばあさんが住んでいました

 

『なんか昔話始まっちゃった!!!』

 

 ナレーションの言葉を聞いて、有咲達が突っ込むと、モニターにおじいさんとおばあさんが映し出された。おじいさんが有咲でおばあさんが香澄だった。

 

有咲「何で私がおじいさん役なんだよ!!」

沙綾「ていうか自分がおばあさん役って…」

たえ「じゃあ私とりみと沙綾がお供?」

りみ「あはは…」

たえ「そういやナレーションまりなさんだ」

 

 有咲が憤慨し、沙綾とりみは苦笑い。たえは冷静に分析していた。

 

ナレーション(まりな)「おじいさんは山へ芝刈りに」

 

有咲(夢)「何で私がこんな事を…」

 

 夢の中の有咲はめんどくさそうに山で芝刈りをしていた。

 

まりな(夢)「おばあさんは家で洗濯をしていました」

香澄(夢)「はー。楽ちーん」

有咲「ずるいぞ!!!」

 

 と、夢の中の香澄は自宅で洗濯機を回してゴロゴロしていて、有咲に突っ込まれていた。

 

有咲「おかしいだろ!! 何で昔話なのに洗濯機があるんだ!!! 電気代とかどうしてんだよ!!」

沙綾「まあ、香澄らしいと言えば香澄らしいね」

りみ「そ、そうだね…」

 

 有咲が抗議するが沙綾とりみは苦笑いするしかなかった。他のバンドグループも同様だった。

 

まりな(夢)「しばらくして、洗濯が終わりました」

香澄(夢)「よーし! 終わったら遊びにいこーっと!」

 

 と、香澄(夢)は洗濯物を適当に干して、出かけていった。

 

沙綾「ああもう本当に適当だし…」

有咲「嫁の貰い手あるかなー」

モカ「いそうな人を一人知ってるけど…どうなのかなー」

飛鳥(なんか嫌な予感がする…)

 

 場面が切り替わって、夢の中の香澄が川の水面に向かって石を投げて遊んでいた。

 

まりな(夢)「おばあさんが川で遊んでいると、川の上流からどんぶらこどんぶらこと…桃が流れるという事はなく、一人の少年が向かい側の道を歩いていました」

 

「いや、何でだよ!!!」

「いや、原作そのままにしたら色々マズい気が…」

「ていうかあの少年って一丈字くんじゃない!?」

飛鳥「あ、私モブですか…」

 

まりな(夢)「いいえ? あなたが桃太郎です」

「何で会話通じとんねん!!!」

 

 まりなの言葉に有咲達が突っ込んだ。そう、映像のナレーションと現実世界にいる人間が会話をするのはまずありえないのだが…。まあ、それは御愛嬌という事でお願いします。

 

まりな(夢)「そう。この一丈字飛鳥くんこそが今回の主人公「桃太郎」なのです!! 名前は飛鳥なのですが、彼の故郷で桃の大食い大会で38個食べた事から「桃太郎」という異名が付き、そしてそれが広まり、遂には本名を忘れられがちになってしまうという悲しい過去を持っているのです!!」

「いや、絶対後半の設定要らないよね!!?」

「桃太郎そういう話じゃないから!!!」

 

 と、バンドガールがツッコミを入れた。

 

沙綾「何か凄くまりなさんが自由過ぎて新鮮…」

たえ「前のシリーズ、最終回しか出番無かったからじゃない?」

 

まりな(夢)「たえちゃん。あまりそういう事言わないで…」

 

 ナレーションのまりなが苦しそうに言った。

 

まりな(夢)「そんな桃太郎とおばあさんが遭遇しましたが、特に話しかける事はなく、桃太郎はそのまま村の人たちを困らせるという鬼退治へ出かけていきました」

「あ、そういうストーリーなのね…」

 

 と、皆が納得した。

 

香澄(夢)「ええっ!!? 私の出番もう終わり!!? ねー!! ちょっと待ってよー!!!」

 

 香澄(夢)が声をかけると、飛鳥(夢)が逃亡した。

 

有咲「まあ、そうなるな…」

 

 

まりな(夢)「桃太郎は鬼退治に出かけるにあたって、お供を連れていくか悩みましたが、手に持っていた黍団子一つで仲間になるなんて今どきありえないと考えていたので、一人で行く事にしました」

「ええっ!!?」

「ちょっと飛鳥くん!!」

飛鳥「いや、私に言わないでくださいよ…」

 

 夢の中の自分の行動に責められる飛鳥。飛鳥としてもどうしろというのが本音である。

 

飛鳥「それでしたら、あなた達は黍団子一つで、命をかけて戦いますか?」

「戦わない」

飛鳥「ですよね」

 

まりな(夢)「そんな時、一匹の犬と出会いました」

 

 りみにそっくりな犬である。

 

りみ「も、もしかして私…?」

日菜「かわいいー!!!」

紗夜(かわいい…//////)

 

まりな(夢)「犬はとてもお腹を空かしていて、桃太郎は犬を見ました」

 

飛鳥(夢)(そういや…犬って黍団子食べるかな…)

 

 夢の中の飛鳥は現実的に考えた。

 

飛鳥(夢)(ドッグフードもなさそうだし、やっぱり骨とか生肉の方が良いのかな。黍団子じゃどうにもならないな…)

 

まりな(夢)「そう考えていると、桃太郎もおなかをすかしました」

飛鳥(夢)「そういやオレも全然食べてなかったな…。そういや次の村でパン屋があるからチョココロネでも食べるか…」

有咲「いや、何でだ!!!」

 

まりな(夢)「桃太郎が放ったチョココロネという単語に犬が反応し、桃太郎の前に立って尻尾をふりふり立てました」

 

りみ「……///////」カァァァ

 

 男性の前でおすわりをしていたので、りみは顔を真っ赤にして俯いた。

 

飛鳥(夢)「…チョココロネ。食べたいの?」

りみ(夢)「わんっ!」

 

りみ「み、見ないでぇ~!!!!///////」

 りみが飛鳥の前に立って飛鳥の両眼を塞いだ。

 

 

 

つづく

 



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第13話「香澄の桃太郎・2」

 前回までのあらすじ

 バンドリ学園の放課後、皆食堂の特別スペースに集まると、こころが人の夢を見る事が出来る機械を見せた。誰もが半信半疑だったが、こころは丁度寝ていた香澄の頭に装置をセットして、香澄の夢を見る事になったが、桃太郎の夢を見ていて、飛鳥が犬役のりみを仲間にするかどうかまで話が続いていた。

 さて、どうなる事やら…。




 

 

 

 桃太郎(演:一丈字飛鳥)が村にあるパン屋のチョココロネを食べようとしたが、犬(演:牛込りみ)が食べたそうにしていた。だが、犬にとってチョコレートは毒なので…。

 

飛鳥(夢)「いや、責任取れないから…」

りみ(夢)「……」ウルウル

飛鳥(夢)「そういう目で見てもダメ!」

 

 と、桃太郎と犬が揉めていた。そしてモニターからバンドガールが不思議そうに見ていた。

 

たえ「何か敬語を使わない一丈字くんって新鮮だね…」

沙綾「そうだね…」

飛鳥「……」

 飛鳥は超能力で細工したが、こころがじーっと見ていた。

 

飛鳥『バレるので』

こころ『あまりそういう事するのは感心しないわ』

飛鳥『今は辛抱の時ですよ』

 

 飛鳥がこころにテレパシーを送ると、こころが返事をしたがやっぱり叱られていた。ちなみにテレパシーの仕組みであるが、使用者が対象者に対して問いかけると、その時だけ対象者もテレパシーを使う事が出来る。要は電話の要領だが、テレパシーを切れるのは使用者のみで対象者が拒絶する事は能力者でない限り出来ない。

 

飛鳥(夢)(困ったな…。何で犬なのにチョココロネが好きなんだろう…)

 

 りみの好物がチョココロネだからである。

 

飛鳥(夢)(何とか諦めさせるか…)

 

 飛鳥(夢)がりみ(夢)をちらっと見た。

 

飛鳥(夢)「やっぱりパンはまた今度にしよ」

りみ(夢)「!!!」

 

 飛鳥の言葉にりみは涙目になった。

 

飛鳥(夢)「まあ、チョココロネは上げられないけど、これでも食べて」

まりな(夢)「そういって桃太郎は犬に黍団子をあげました。犬は当然不満そうにしていました」

飛鳥(夢)「それじゃあね!!」

 

 飛鳥(夢)は逃げるように去っていき、りみ(夢)はたたずんだ。

 

 

 現実世界

「……」ジトー

 

 たえ達はジト目で飛鳥を見た。

 

飛鳥「あの、紗夜先輩。質問したい事がございます」

紗夜「何でしょう」

飛鳥「犬にチョコレートをあげたらどうなります?」

紗夜「中毒を起こして死にますね」

飛鳥「私に人殺し…いや、犬殺しをしろと?」

紗夜「それとこれとは別です」

飛鳥「ああ。これはどうあがいても好感度下がるイベントですね。分かりました。それでは次行きましょう」

たえ「ごめんって」

 

 飛鳥が自暴自棄になったので、たえが突っ込んだ。

 

 

まりな(夢)「そんなこんなで犬から逃げてきた桃太郎は村につきました」

 

飛鳥(夢)「ナレーションまで辛らつだよ。まあいいや。いつもの事だし」

まりな(夢)「ごめんって」

 

有咲(何でもいいけど一丈字とまりなさんって接点あったっけ…!?)

 

 そして飛鳥(夢)はパン屋を見つけた。

 

飛鳥(夢)「ああ、一応パン屋はあったな」

 飛鳥(夢)が後ろを振り向くと、りみ(夢)の姿はなかった。

 

飛鳥(夢)「悪いことしたけど、動物虐待で訴えられたくはないからな…」

 その時、パン屋から雉が擬人化したっぽい沙綾が出てきた。

 

沙綾「私雉なんだ…」

たえ「じゃあ、私が猿?」

 

まりな(夢)「お店から雉が出てきました」

飛鳥(夢)(雉がパン屋さんやってるんだ…)

 

 飛鳥(夢)が驚いていると、沙綾(夢)が飛鳥(夢)を見た。

 

沙綾(夢)「雉がパン屋の娘だったらおかしい?」

飛鳥(夢)「いや、初めて見たので戸惑っております」

沙綾(夢)「折角だから見てってよ」

飛鳥(夢)「そういえば雉ってパン食べれるんですか?」

沙綾(夢)「食べれるわよ。私雉の能力を持った雉人間だもん」

飛鳥(夢)「雉人間」

 

 「雉人間」というパワーワードが出て来て、驚く飛鳥だった。

 

飛鳥(夢)「世の中って広いなぁ…」

沙綾(夢)「そうだね。そういえばあなた、この村じゃ見ない顔だけど、よそから来たの?」

飛鳥(夢)「あ、はい。猪狩村っていう小さな村の出身です」

沙綾(夢)「聞いた事ないわね…」

飛鳥(夢)「ずーっと西の方ですね」

沙綾(夢)「何しに来たの?」

飛鳥(夢)「鬼が島に行って鬼退治をしに行くんですよ」

沙綾(夢)「…鬼退治?」

 

 沙綾(夢)の形相が変わった。

 

飛鳥(夢)「どうかされました?」

沙綾(夢)「…悪い事は言わない。やめた方が良いよ」

飛鳥(夢)「とても強くて恐ろしいからですか?」

沙綾(夢)「う、うん…」

 

 沙綾(夢)が歯切れが悪くすると、飛鳥(夢)が笑みを浮かべる。

 

飛鳥(夢)「それでしたら、ずっと鬼たちの好きにさせて宜しいんですか?」

沙綾(夢)「いいわけない!!」

 

 沙綾(夢)が叫んだ。

 

沙綾(夢)「鬼たちのせいで沢山の人たちが苦しんでるんだ…」

 

 と、沙綾(夢)が仲間がやられる姿を思い出すと、それが映像になった。

 

麻弥(夢)「フヘヘヘヘヘ!!」

こころ(夢)「全財産取られたー!!!」

 

 鬼娘の格好をした麻弥(夢)がこころ(夢)の家の全財産を荷台に運んでいった。

 

麻弥「ジ、ジブンが出てるっす!!」

彩「という事は私達が鬼かー。やだなー…」

 

 麻弥が驚き、彩がちょっと嫌そうにした。

 

 そして

 

千聖(夢)「かおちゃんっ」

薫(夢)「……///////」

千聖(夢)「かおちゃんはとっても可愛いわね。かおちゃんとっても可愛いわ」

薫(夢)「マウントを取られたっ…!!//////」

千聖(夢)「かーおちゃんっ」

薫(夢)「もうやめてぇ~~~~!!!!!////////」

 

薫「み、見ないでくれ!! これは私じゃない!!//////」

千聖「そこまで否定しなくても…」

 

りみ・ひまり「……!!」

薫「……!!」

 

 ファンであるりみやひまりが驚き、薫は幻滅されると焦っていたが…。

 

りみ・ひまり「」

飛鳥「ああ…これは完全に目が行ってしまってますね。流石です」

 

 キュン死にして、意識が飛んでいった。

 

千聖「流石かおちゃんね」

飛鳥「そうですね…」

 飛鳥が困ったように笑うと、薫が涙目で飛鳥に詰め寄った。

 

飛鳥「落ち着いてください! 牛込さんと上原さんが死んでしまいますよ! 照れ顔の破壊力が凄すぎて!!」

千聖「逆にとどめ刺しちゃってるし、あなたずっとニコニコしてるわよ」

飛鳥「あ、牛込さん、上原さん。どうですか?」

 

りみ・ひまり「さ、最高ですぅ…♥♥♥」

有咲「鼻血も出てる―――――――――――――――――――!!!!」

 

 と、有咲が絶叫した。

 

まりな(夢)「おーい…まだ回想の途中なんですけど…」

 

 まりながボソッとつぶやいたが、薫(夢)が千聖(夢)にマウントを取られた映像で止まっていて、薫が慌てて止めさせたが、更にファンが増えたそうです。

 

 

つづく

 



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第14話「香澄の桃太郎・3」

前回までのあらすじ

 薫が可愛かった。以上。

薫「も、もうちょっとまともな紹介をしてくれないかな…」
千聖「いいじゃないの。かおちゃん」
リサ「そうだよー。可愛いよかおちゃん」
飛鳥「……」
薫「一丈字くん//////」


 

 沙綾(夢)と飛鳥(夢)の会話が続いた。

 

花音(夢)「ふぇええええ…写真撮られた~///////」

有咲「何か意味変わってね?」

 

 花音(夢)が彩(夢)に写真を撮られまくっていて、パニック状態になっていた。

 

 そして…

 

イヴ(夢)「ハグミさんを捕まえました!」

はぐみ(夢)「自由を取られたー!!」

 

 イヴ(夢)がはぐみ(夢)を捕まえて、美咲(夢)の前に突き出していたが、美咲(夢)が怒っていた。

 

美咲(夢)「ありがとう鬼さん。もう逃がさないわよはぐみ…」

はぐみ(夢)「ごめんなさ~~~~~~~い!!!!!」

 

 と、美咲(夢)がはぐみ(夢)を連れていった。

 

 

はぐみ「えー!!! はぐみだけカッコわるーい!!!」

薫「…十分良い方だと思うよ」

千聖「いい加減そのキャラやめたら?」

薫「そ、そういう訳にはいかないっ!!」

 

 そして回想が終わり、沙綾(夢)と飛鳥(夢)の姿になる。

 

沙綾(夢)「奴らはとても強いの…!!!」

飛鳥(夢)(全く伝わってこない)

 

 飛鳥(夢)は困惑した。

 

飛鳥(夢)(最初は分かるけど、2番目はただ幼馴染がイチャイチャしてるようにしか見えない上にかおちゃんが微笑ましいし、3番目は微妙だし、4番目は逆に鬼がいいことしてない?)

 

薫「……」

飛鳥「あのあだ名を呼んでいいのは白鷺先輩でしたね。分かりました」

 もうそろそろ怒りそうだと思った飛鳥は言わないようにした。

 

飛鳥(夢)「そうですか。分かりました」

沙綾(夢)「うん。そうしなよ…」

飛鳥(夢)「それじゃカレーパン買いますね」

 と、飛鳥(夢)がトングでカレーパンをトレーに置いた。

沙綾(夢)「ところで…さっきから外にいる子、知り合い?」

飛鳥(夢)「え?」

 飛鳥(夢)が後ろを見ると、りみ(夢)が覗き込んでいた。

 

飛鳥(夢)「まだ諦めてなかったのか…」

沙綾(夢)「どうしたの?」

飛鳥(夢)「それが…」

 

 と、飛鳥(夢)はチョココロネの事を沙綾(夢)に説明した。それを聞いて沙綾は少し驚いていたが、

 

沙綾(夢)「見た感じあの子も犬の能力を持った「犬人間」っぽいから、自己責任で食べる分には問題ないんじゃない?」

飛鳥(夢)「犬人間…」

 飛鳥(夢)がりみ(夢)を見ると、飛鳥(夢)が移動してチョココロネをトングで取った。

「!!」

 

飛鳥(夢)「二つで」

沙綾(夢)「はい。それじゃ300円ね」

 

有咲「いや、現代かよ!!」

たえ「しょうがないよ。香澄が昔のお金知ってると思う?」

有咲「いいや全然」

 

 と、きっぱり言うたえと有咲に皆が苦笑いした。

 

まりな(夢)「かくして、桃太郎は犬にチョココロネをあげる事にしたのであった」

 

飛鳥(夢)「はい、どうぞ」

りみ(夢)「あ、ありがとうございま…じゃなかった。わ、わんっ!!」

 

りみ「……//////」

 

 自分の声を聴いてわざと気を失ったままにしているりみだった。

 

薫「起きて、子猫ちゃん」

(巻き添えにする気だ!!!)

 

 薫がりみの耳元でささやくと、ドキーンとしながら立ち上がった。

ひまり「ああっ!! いいなぁ!! いいなぁ!!」

 

 りみの様子を見て、ひまりが羨ましそうにしていた。

 

 そしてりみ(夢)がチョココロネを頬張った。

 

りみ(夢)「おいし~」

飛鳥(夢)「それじゃ私はもう行きますね」

りみ(夢)「!!」

沙綾(夢)「あ、そっち鬼が島に行く方だよ!?」

飛鳥(夢)「折角なので他の所も見て回ります。帰るの面倒なので」

 と、飛鳥(夢)が移動しようとしたその時だった。

 

「きゃー!!!!」

 

 と、悲鳴がした。

 

モカ「あれ? 今の声…」

ひまり「私の声…」

 

まりな(夢)「町娘の悲鳴を聞いて、桃太郎、雉、犬が走ると、そこには鬼たちがいた」

 

 鬼娘の格好をした友希那(夢)、リサ(夢)、燐子(夢)が、着物姿のAfterglow(夢)に襲い掛かり、Afterglow(夢)は逃げ回っていた。

 

友希那「ちょ、ちょっと!!//////」

リサ「うわー…ラムちゃんだ…//」

燐子「……!!//////」

 飛鳥は両手で顔を覆っていた。

 

有咲「おい一丈字! 見るな…って、もう塞いでた」

 

飛鳥(夢)「鬼たちが悪さをしてる…」

沙綾(夢)「またあいつらね!!」

りみ(夢)「……!!」

 

 そして蘭(夢)が友希那(夢)に立ち向かったが敗北し、

 

友希那(夢)「私に勝つなんて100年早いわ」

蘭(夢)「うわーん!!」

 

 と、蘭(夢)は友希那(夢)の尻に敷かれていた。そしてリサ(夢)と燐子(夢)もモカ(夢)達を取り押さえていた。

 

リサ(夢)「ゴメンねー」

燐子(夢)「大人しくしててください…」

 

 

蘭「今すぐ香澄を起こす!!!」

モカ「えー。もうちょっとだけー」

蘭「離して!!!」

 

 蘭が香澄を叩き起こそうとしたが、モカが取り押さえた。

 

飛鳥(夢)「しょうがない。ここは魔法で…」

りみ(夢)「魔法!!?」

沙綾(夢)「剣で戦うんじゃないの!!?」

飛鳥(夢)「男だったら剣で容赦なくバラバラにするけど、女性にそれやったらいろんなところから怒られるからね…」

 

 と、話をしているうちに飛鳥(夢)が指揮棒のような杖を取り出した。

 

飛鳥(夢)「えーと…スタマックケイク」

 

 飛鳥(夢)が呪文を唱えると、友希那(夢)、リサ(夢)、燐子(夢)に異変が起きた。

 

友希那(夢)「うっ…!!」ギュルルルルル

リサ(夢)「お、お腹が…!!!」ギュルルルルル

燐子(夢)「……!!」ギュルルルルル

 

 友希那(夢)達が弱った途端、Afterglow(夢)達が形勢逆転した。

 

蘭(夢)「さっきはよくも尻に敷いてくれたわね」

友希那(夢)「お、お願い…トイレに行かせて…」

 飛鳥(夢)はスーッと去っていった。沙綾(夢)とりみ(夢)も続く。

 

蘭(夢)「ここがあんた達のトイレだよ」

 

 蘭(夢)が黒い笑みで浮かべると、友希那(夢)、リサ(夢)、燐子(夢)が青ざめた。

 

モカ「ら、蘭ドS~…」

巴「いくらなんでもそれは…」

蘭「ちが~~~~う!!!! 香澄の夢だから!!!」

 

 Afterglowのメンバーですらドン引きしていたので、蘭が叫んだ。

 

友希那「あ、あなた!! 私達に何てことさせるの!!」

リサ「まあ、うん。仕方ないといえば仕方ないんだけど…」

燐子「と、止めてください!! お、お嫁にいけなくなっちゃう…//////」

蘭「は、はい!! もういいよね!」

 

 その時、場面が飛鳥達に切り替わり、音声のみ聞いていた。

 

沙綾(夢)「ねえ、ちょっとやり過ぎじゃない?」

飛鳥(夢)「あの赤メッシュの人を尻に敷いた時点でもう終わってますよ…。様子を見て元に戻します」

 飛鳥(夢)が杖を取り出した。

 

友希那「早くしなさい!!!」

燐子「お願い!!!」

リサ「ちょ、ちょっと落ち着いて!! 夢の中の飛鳥くんを信じよう!!」

 

 友希那が飛鳥の体を激しく揺さぶり、燐子が涙目で懇願していた。リサが慌てて止めている。

 

 その時だった。

 

燐子(夢)「ごめんなさい!! 何でもいう事聞きますから、トイレに行かせてください!!!」

飛鳥(夢)「アンドゥ!」

 と、燐子(夢)が泣き叫ぶと、飛鳥(夢)が呪文を唱えて、友希那(夢)達の腹の調子を元に戻した。

 

蘭(夢)「本当?」

燐子(夢)「は、はい…って、あれ? お腹が…」

リサ(夢)「元に戻った…」

 

 と、驚いていた。

 

友希那(夢)「何だかよく分からないけど、よくも恥をかかしてくれたわね…!!」

蘭(夢)「何でもいう事聞くって、言ったわよね?」

 

 蘭(夢)が黒い笑みを浮かべる。

 

友希那(夢)「お腹の調子が戻った今、そんな必要は…」

 その時、蘭(夢)が友希那(夢)のビキニをわしづかみにして取った。映像では友希那が後ろ向きになっていて、蘭(夢)だけが丸見えになっているのを確認できた。

 

蘭(夢)「まだ自分の立場が分かってないようね?」

友希那(夢)「か、返しなさい!//////」

 友希那(夢)が片腕で胸元を隠して蘭を追いかけるが、蘭(夢)は捕まらない。

 

蘭(夢)「あ、言っとくけどそこの2人も…」

リサ(夢)「ひっ!!」

燐子(夢)「……!!」ガタガタガタガタガタガタ

 

 蘭(夢)がリサ(夢)と燐子(夢)の方を向いて目を光らせると、リサ(夢)と燐子(夢)は青ざめて身を寄せあった。

 

 

蘭(夢)「覚悟してね?」

リサ(夢)「いやぁあああああああああああああああ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」

 

まりな(夢)「鬼たちの断末魔を聞き届けた桃太郎、犬、雉は村を脱出しました」

 

 

飛鳥(夢)「女性の怖さを再認識できた」

沙綾(夢)「あれは同じ女性でも怖いよ…」

りみ(夢)「……」ガクガクブルブル

 

 飛鳥(夢)と沙綾(夢)がゲッソリしていると、りみ(夢)は涙目でずっと沙綾(夢)にしがみついていた。

 

 

友希那「今すぐ消しなさい!!!」

蘭「そうよ!!」

???「ダメです」

「!!?」

 

 友希那と蘭が装置を壊そうとしたが、神の遮る手が邪魔をした。

 

 

 

つづく

 



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第15話「香澄の桃太郎・4」

 前回までのあらすじ

 蘭が怖い&友希那達が可哀想だった。以上。

蘭「いや、あれ夢の話だから!! って、香澄もあたしの事なんだと思ってんだ!!!」
友希那「すべての元凶は…」
飛鳥「あ、続き行きましょう」


 

 

まりな(夢)「村を出た桃太郎たちは、鬼ヶ島へ向かう事にしたのだが…」

 

沙綾(夢)「あ、もしもし純? 悪いんだけど急な用事が出来たからちょっと店番代わってくれる? …分かってるわよ。じゃあ今月のお小遣い2倍にするから。これでいいでしょ?」

飛鳥(夢)・りみ(夢)「……」

 

まりな(夢)「雉が弟に仕事を押し付けていました。理由は…もう言う必要ありませんね」

 

蘭「沙綾…?」

沙綾「いや、それはですねーそのー…」

 

 蘭が沙綾を睨むと、沙綾は困惑して視線をそらしていた。

 

まりな(夢)「そんなこんなで桃太郎は犬と雉を仲間に迎えて鬼ヶ島に向かいました」

 

「ちょっとちょっとそこの桃太郎さん。誰か一匹お忘れではございませんか?」

「?」

 

まりな(夢)「桃太郎たちが振り向くと、そこには猿(演:花園たえ)がいた」

 

たえ「やっぱりね…」

 

飛鳥(夢)「あなたは?」

たえ(夢)「私は猿。プロゴルファーじゃないけど猿だよ」

 たえ(夢)の言葉にシーンとする飛鳥(夢)達。

 

あこ「プロゴルファー?」

飛鳥「プロゴルファー猿っていう漫画があって、それが元ネタですよ」

 

たえ(夢)「お腰に付けた黍団子をくださいな」

飛鳥(夢)「あ、はい…」

 

まりな(夢)「桃太郎は猿に黍団子を上げ、仲間にしました」

 

たえ(夢)「仲間にしてくれたお礼にこれを差し上げましょう」

飛鳥(夢)「?」

たえ(夢)「朽ちた剣と朽ちた盾です」

(ガラクタだ!!!)

 

 と、どこからか朽ちた剣と盾を取り出して飛鳥(夢)に渡した。

 

飛鳥(夢)「あ、ありがとう…」

 

 正直いらないと思ったが、剣と盾を見て何かを感じた飛鳥(夢)は受け取る事にした。

 

飛鳥(夢)「そういやこれ…どこで手に入れたの?」

たえ(夢)「この村のはずれにある森の中にほこらがあるんだけど、その近くに落ちてたから拾った」

飛鳥(夢)「あーこれ返しに行かないといけない奴で、このままだとオレ泥棒と間違われるわ…」

たえ(夢)「でも今は村に帰らない方が良いよ。蘭が凄く怒ってて、鬼たちが調教されてるから」

 

 空気が止まった。

 

リサ「ちょ、調教!!?」

友希那「美竹さん…!!」

蘭「いや、あたしのせいじゃ!!」

 

飛鳥(夢)(ああこれ…、聞いたらいかん奴だわ)

 

 飛鳥(夢)は心の中で悟り、剣と盾をザックに入れた。

 

たえ(夢)「半泣きでわんわんとかにゃーんって鳴いてて、すっごく可愛かった」

飛鳥(夢)「そ、そうですか…」

 

リサ「ええええ~~~~っ!!?」

燐子「はずかしい…//////」

 

 リサが驚いて燐子が頬を染めた。すると友希那が蘭を睨みつけた。

 

蘭「いや、だから…」

友希那「私は猫でしょうね!?」

蘭「そこ!!?」

 

たえ(夢)「で、蘭がずーっとニコニコしてて、巴の妹のあこがずっと巴にベッタリくっついて怯えてた」

飛鳥(夢)「そ、そうなんですね…」

沙綾(夢)「あの子も昔蘭に悪戯して、酷い目に逢ってるからね…」

 

蘭「沙綾、さっきから結構失礼な事言ってない?」

沙綾「だから私じゃないってばー!!!」

 

 蘭が沙綾をまた睨みつけると、沙綾は涙目で弁解し、飛鳥は沙綾に同情した。

 

 

まりな(夢)「こうして、猿を迎えた桃太郎は鬼ヶ島へと向かっていきました。幾多の試練を乗り越え、遂に鬼ヶ島へ到着しました」

 

 いかにも鬼がいそうな島の入り口に飛鳥(夢)達がいた。

 

たえ(夢)「いよいよだね…」

りみ(夢)「う、うん…」

沙綾(夢)「ここまで来たからには、もう引き返せないよね…」

飛鳥(夢)「……」

 

 皆が意気込む中、飛鳥(夢)だが困惑し、後ろを振り向いた。

 

飛鳥(夢)「…あの、何故おじいさんとおばあさんも」

香澄(夢)「もっと出番欲しーい!!」

有咲(夢)「はぁ…」

 

まりな(夢)「出番欲しさにおじいさんとおばあさんがついてきてしまいました」

 

有咲「私を巻き添えにするなー!!!」

美咲「どこまでも戸山さんらしいね…」

 

 憤慨する有咲に対して、美咲は苦笑いした。

 

まりな(夢)「仕方がないので、3人と3匹で鬼たちの所に向かいました。すると、4人の鬼が出迎えました」

 

 彩、麻弥、イヴ、千聖の4人が現れたが、後ろに沢山の宝があった。

 

彩(夢)「よく来たわね。桃太郎」

飛鳥(夢)「あ、ごめん。その後ろにある宝はどういう事かな?」

彩(夢)「お宝全部返すので、お腹痛くするのだけは勘弁してください」

「弱っ!!!!」

 

彩「えー!! カッコ悪―い!!!」

はぐみ「そーだよ!! 何でこういう扱いなのー!!?」

 

 と、彩とはぐみは文句を言っていた。

 

千聖(夢)「道の真ん中でお花を摘むのは、私のプライドが許さないのよ!!」

たえ(夢)「要はただの命乞いなのに、何でそんなに偉そうに出来るの?」

「たえが凄く毒舌!!」

 

千聖「…たえちゃん?」

たえ「ゆ、夢の話ですから…」

 

麻弥(夢)「ジブン、確かに見た目には自信はないですけど、さすがにその…」

りみ(夢)「そ、そんな事ないよ。自信持って」

 

麻弥「…ありがとうっす」

りみ「い、いえいえ…」

 

イヴ「ブシたるもの、仕方のない事ですが…流石にハズカシイです/////」

沙綾「大丈夫だよ。皆恥ずかしいから」

 

まりな(夢)「と、そんなこんなで鬼たちから宝を取り返しました」

 

日菜「ちょっと待って!!? あたしがいない!!」

リサ「そういや紗夜もいないわよね」

 

たえ(夢)「これで全部かな」

有咲(夢)「まさか隠し持ってるとかじゃないよな」

麻弥(夢)「ないっす!」

千聖(夢)「そうよ。少しは信じなさい」

有咲(夢)「いや、何でそんなに偉そうなんだ!!!」

 

 と、揉めていると…。

 

香澄(夢)「まだ1個だけあったよー」

彩(夢)「それは本当にダメなの!! そのツボは…」

有咲(夢)「何だ。あるじゃねーか! それも寄越…」

 と、香澄(夢)が古びたツボを持ってきて走ったが、転んで割ってしまった。

 

彩(夢)「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 彩(夢)は青ざめる。

 

たえ(夢)「大丈夫!?」

 たえ(夢)が香澄(夢)に声をかけたが、千聖(夢)、麻弥(夢)は割れたツボを見て青ざめた。

 

香澄(夢)「え? どうしたの?」

 

 すると、割れたツボから黒い煙が巻き起こって、巨大な紫色のモンスターが現れた。

 

まりな(夢)「何という事でしょう。割れたツボから、古代のモンスターが復活してしまいました!!」

「これ桃太郎だよね!!?」

 

 と、生徒達が突っ込んだ。

 

たえ「やっぱり簡単な話には裏があるんだねー」

有咲「感心してる場合か!!」

 

 たえが頷いて納得すると、有咲が突っ込んだ。

 

 

まりな(夢)「果たして、桃太郎一行の運命は!! 次回へ続く!!」

 

 

つづく

 



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第16話「香澄の桃太郎・完結編」

 

 

まりな(夢)「前回までのあらすじ! 鬼ヶ島に乗り込んだ桃太郎一行は、村の人々を困らせていた鬼たちを懲らしめようとしたけど、鬼たちはあっさり降参しました」

 

彩「本当にカッコ悪い…」

イヴ「でも外でウン」

麻弥「それ以上は言っちゃダメっす!!」

千聖「女性としての恥じらいを持ちなさい!!」

 

 まりな(夢)のナレーションに彩が項垂れ、イヴがアイドルとしてあるまじき発言(?)をしようとしたため、麻弥と千聖が止めた。

 

まりな(夢)「あっさり降参したことに桃太郎、犬、雉は全てを察して承諾、鬼たちが盗んだお宝も全部返してもらいました。荷物を積み終わった後、おばあさんは古いツボが残っていた事を知り、持ち帰ろうとしたのですが、転んで古いツボを割ってしまい、その中から紫色の煙が巻き起こり、狂暴そうなモンスターが出てきました。果たして、桃太郎たちの運命は!!」

 

 

 

 

 謎のモンスターが現れて、飛鳥(夢)達は驚いた。

 

(あれ? あのモンスター…どこかで見たような…)

(…ポケモンにいそうだな)

 

 

香澄(夢)「な、なに!? あのモンスター!!」

千聖(夢)「なんてことをしてくれたのよ!! あのモンスターは…」

 

 するとモンスターが衝撃波を放った。

 

「ひぇええええええええええええええええ!!!!」

 

 と、香澄(夢)は何とかかわしたが、物凄い衝撃を立てた。

 

有咲(夢)「ちょ、何だよあれぇ!!」

千聖(夢)「あのツボは遠い昔、ご先祖様が命を懸けて戦ったモンスターが封印されてたツボなのよ!!!」

「えええええええええええええええ!!!?」

彩(夢)「だからダメだって言ったのに~!!!」

香澄(夢)「ごめんなさーい!!!」

 

 彩(夢)が涙目で叫ぶと、香澄(夢)も涙目で謝った。

 

有咲「いや、これ桃太郎じゃなくね!!?」

たえ「やっぱり壮大なバトルはつきものなんだよ。分からないけど」

彩「やっぱり私の扱いひどーい」

 

香澄(夢)「何とか止める方法ないの!!」

千聖(夢)「無いわよ!!」

麻弥(夢)「昔調べたんすけど…」

「!?」

 

 麻弥(夢)が呟くと、皆が麻弥(夢)を見た。

 

麻弥(夢)「昔、一人の勇敢な戦士があの鬼と立ち向かった時、戦士の強い心に反応して、二匹の聖獣「サヨアン」と「ヒナゼンタ」が現れて、共に倒して封印したって聞いたけど…」

 

 空気が止まった。

 

友希那「サ、サヨアン?」

彩「ヒナゼンタ…?」

 

 皆がキョトンとした。

 

有咲「ポケモンじゃねーか!!! ザシアンとザマゼンタ!!」

 

※ ここからポケモンのネタ含みます。

 

 

日菜「えー!! あたしとおねーちゃん! ポケモンになっちゃうんだ! 早くみたーい!!」

紗夜「ポ、ポケモン?」

友希那(猫ポケモン…ニャース…ニューラ…)

 

 友希那は猫ポケモンを思い浮かべて、頬を染めていた。

 

彩「えー!! いいないいなー!!」

千聖(鬼よりもその役やりたかったわ…)

 彩と千聖は羨ましがっていた。

 

 

有咲(夢)「え、ええい桃太郎!! お前何とかできねぇのか!?」

飛鳥(夢)「え?」

有咲(夢)「お前なら何とか出来るだろアレ!! 桃太郎なんだし!!」

飛鳥(夢)「それでしたらちょっと考えがあるんですけど、いいですか?」

「!?」

 

 飛鳥(夢)の言葉に皆が驚く。

 

香澄(夢)「なに!!?」

飛鳥(夢)「皆さんは一旦船に乗って島から離れてください」

有咲(夢)「わ、分かった!!」

千聖(夢)「ちょっと待って。あなたはどうす」

飛鳥(夢)「早く!!!」

有咲(夢)「行くぞ!!」

 

 と、有咲(夢)達は出口に向かい、飛鳥(夢)は立ち止って杖を出した。

 

千聖(夢)「!!」

 唯一飛鳥(夢)の姿を確認した千聖(夢)は何かを感じた。

 

千聖(夢)「あなた、一体何を…」

飛鳥(夢)「ブレーンウォッシング!」

「!!」

 

まりな(夢)「桃太郎は犬たちを洗脳して、確実にここから出るように仕向けました。自分の命を犠牲にして…」

 

 皆が飛鳥を見た。

 

沙綾「危ないじゃない!!」

りみ「そ、そうです…!」

たえ「まあ、主人公らしいといえば主人公らしいけど…」

イヴ「1対1で戦う。まさにブシドーですけど…!!」

麻弥「一人で戦うなんて無茶っすよ!!」

彩「そうだよ!!」

 

 と、沙綾たちは飛鳥を責めたが、飛鳥本人からしたら「いや、そんな事オレに言われても…」っていう表情だった。

 

飛鳥(夢)「また会おう。生きてたら…」

 

まりな(夢)「そして桃太郎は単身、鬼退治ならぬ、モンスター退治を行う事になりました」

 

 ハイレベルな戦いが繰り広げられたが、途中から飛鳥(夢)の攻撃が効かなくなり、衝撃波で飛鳥(夢)が壁に叩きつけられ、吐血した。

 

「!!!」

 

飛鳥(夢)「く、くそ…!!」

 そして飛鳥(夢)の周りにはたえ(夢)から貰った朽ちた剣と朽ちた盾が散乱していた。飛鳥が背負っていた袋から零れ落ちたのである。

 

はぐみ「頑張って!! 頑張れー!!!」

巴「根性みせろー!!」

 

 と、一部のバンドガールが飛鳥(夢)を応援していた。

 

飛鳥(超能力で戸山さんの目覚まさせたろ)

黒服(無粋です)

 

 段々気まずくなってきた飛鳥は超能力で香澄の目を覚まさせようとしたが、こころの黒服に止められた。

 

 モンスターは最初に見たときよりも巨大化していた。

 

飛鳥(夢)(剣も魔法も全然効かない…どうすればいい…)

 

 と、飛鳥(夢)は真剣な表情でモンスターを睨んだ。

 

飛鳥(夢)(犬たちはちゃんと逃げ切れたかな…。でも、逃げ切れたとしてもここで奴を食い止めなきゃ…)

 

 飛鳥(夢)は目を閉じた。

 

飛鳥(夢)(何とか突破口はある筈だ)

 

「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

 モンスターが咆哮を上げた。

 

飛鳥「まだまだ諦めねェよ」

「!!!」

 

飛鳥(夢)「ここで諦めちゃあ皆死ぬし、オレがやらなきゃ誰がやる!!!」

 

 飛鳥がモンスターを見つめた。

 

飛鳥(夢)「勝負だ!!!」

 

 そう叫んだ次の瞬間、剣と盾が光りだした。

 

「!!?」

 

 飛鳥(夢)もそうだが、モニターで見ていた現実世界の飛鳥達も驚いた。

 

 そして上空から青い光と赤い光が鬼ヶ島の飛鳥とモンスターがいる所放たれ、光が解き放たれると、

 

「……!!」

 

 そこには二体の聖獣「サヨアン」と「ヒナゼンタ」がいた。

 (イメージとしては「ザシアン」と「ザマゼンタ」の体毛がライムグリーンになって表情がそれぞれ紗夜と日菜を彷彿させるものとなっている)

 

 

 二匹が遠吠えを上げた。そして剣と盾がひとりでに浮かび上がって重なると、サヨアンとヒナゼンタに向けて光を放つと、サヨアンは刀を加え、ヒナゼンタは頭に盾をはめていた。

飛鳥(夢)は驚いて二匹を見る事しか出来なかった。

 

サヨアン「ウルォート!!!」

ヒナゼンタ「ウルゥート!!!」

 そして二匹が遠吠えを上げた。

 

日菜「かっこいいー!!!」

紗夜「は、はずかしい…//////」

 

 日菜が目をキラキラ輝かせていたが、紗夜は恥ずかしがっていた。

 

友希那「じゃあ役代わりなさい」

紗夜「嫌です」

リサ「ちょっと! 一人だけずるいわよ!!」

 

 すると避難していた香澄(夢)達の洗脳が解けた。

 

「!!?」

 香澄(夢)達は舟を漕いでいたが、香澄たちが鬼ヶ島で何か光っているのが見えた。

 

香澄(夢)「な、何あれ!?」

たえ(夢)「あれ!? 桃太郎は!!?」

 

 

 そして飛鳥(夢)はサヨアンとヒナゼンタを見て驚いていた。

 

飛鳥(夢)「……!!」

『よくここまで戦いましたね。優れたる操り人よ』

飛鳥(夢)「!!?」

 サヨアンがテレパシーで話しかけてきた。

 

ヒナゼンタ『それにしてもおねーちゃん。またアイツが復活するなんてねー』

サヨアン『そうね。けど、この戦いは私達が勝つわ。さあ、立ち上がるのです。今ならあなたの攻撃もあのモンスター「ユメノアトノ」に通用します』

 

「ユメノアトノ…?」

(あっ…)

 

 モンスター名を聞いて、一部のメンバーが察した。

 

飛鳥(夢)「……!!」

サヨアン「自分の力を信じるのです」

ヒナゼンタ「そーだよ。あたしとおねーちゃんもついてるから、絶対に大丈夫!!」

 

 飛鳥(夢)がサヨアンとヒナゼンタを見つめた。

 

飛鳥(夢)「一緒に戦ってくれるのか…!!」

サヨアン「勿論です。さあ、行きますよ!!」

飛鳥(夢)「ああ!!」

 

 一人と二匹がユメノアトノを見つめ、そのまま激闘が繰り広げた。サヨアンの言った通り、飛鳥の攻撃も効くようになった。

 

「行けー!!!」

「頑張れー!!!!」

 

 と、バンドガール達からも、外で見ていたやじ馬たちも応援していた。ちなみにこんなに大声出してたら香澄が目が覚めんじゃね? とか思ってはいけない。

 

飛鳥(夢)「ヒナゼンタ!! きょじゅうだん!!」

ヒナゼンタ「まかせて!!!」

 

 と、飛鳥(夢)の指示でヒナゼンタがユメノアトノに攻撃した。

 

たえ「おー…完全にサトシだ」

 

 そしてユメノアトノに致命傷を与えると、飛鳥が持っていた剣に異変が起きた。

 

飛鳥(夢)「な、なんだ!?」

サヨアン「私達の力を与えました。その剣をユメノアトノに向けて念じるのです。それで、封印が出来ます」

飛鳥(夢)「!!?」

ヒナゼンタ「大丈夫!! やってみて!!」

飛鳥(夢)「……!!!」

 

 飛鳥(夢)が刀をユメノアトノに向けると、まばゆい光が剣を包み、剣から白い光線が出て、ユメノアトノを吸い込もうとした。そして飛鳥(夢)は引っ張られるのを感じた。

 

サヨアン「踏ん張って!!!」

ヒナゼンタ「綱引きをする感覚だよ!!!」

飛鳥(夢)「……!!」

 

 飛鳥(夢)がこれでもかという程力をいれると、瞳孔も開いた。そしてその顔がモニターで映し出されると。

 

(あれ…なんか男っぽい…)

(やっぱり男の子なんだなぁ…)

 

 と、何かちょっとだけドキッとするたえ達だった。

 

 そして何とか踏ん張ってついにユメノアトノを剣の中に封じ込める事に成功した。

 

「やったぁあああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

まりな(夢)「桃太郎はついに、モンスター『ユメノアトノ』を封印する事に成功したのだった!!」

 

たえ「あ、まりなさんだ…」

 

 

まりな(夢)「ユメノアトノとの戦いが終わり、桃太郎はしりもちをつきました」

 

飛鳥(夢)「終わった…」

 飛鳥(夢)はくたくただった。

 

ヒナゼンタ「お疲れ様―」

飛鳥(夢)「あ、うん…」

サヨアン「さて、私達はもう行きますね」

飛鳥(夢)「え?」

ヒナゼンタ「えー。もうちょっと休憩していこうよー」

サヨアン「そんな暇はないわ」

ヒナゼンタ「はーい。それじゃまたね」

「!!?」

 

 するとサヨアンとヒナゼンタは元の姿に戻った。

 

サヨアン「ちなみに持ってた剣と盾はちゃんと元の場所に返しとくように」

ヒナゼンタ「あのお猿さんに言っといてねー」

飛鳥(夢)「あ、うん。ありがとう!!」

 

 飛鳥(夢)がそう言うと、サヨアンとヒナゼンタは飛び去っていった。

 

飛鳥(夢)「さて、剣と盾を返しに行こうかな…」

 

 その時だった。

 

「桃太郎―!!!!」

 と、香澄(夢)達が現れた。

 

飛鳥(夢)「あ」

たえ(夢)「一体何が起きたの!?!」

りみ(夢)「あ、あのモンスターたちは…」

千聖(夢)「答えなさい!!」

飛鳥(夢)「ちょっと待ってね。その前に剣と盾を回収するから。あと、船の中でゆっくり話すよ」

 

 と、飛鳥は笑ってみせた。

 

まりな(夢)「こうして、桃太郎とその仲間たちの壮大な大冒険は幕を閉じた」

 

 そして音楽が流れた。

 

まりな(夢)「桃太郎たちが帰ってくると、村人たちととらわれた鬼たちが待っていて、お宝を返すと村人たちは大喜びしました」

 

まりな(夢)「そして鬼たちは降伏して、二度と悪さをしない事を約束しました」

 蘭に土下座をする鬼たちと、それを見て困惑する桃太郎一行が映像で映った。

 

友希那「癪だわ…!!」

千聖「そうね…!!」

蘭「いや、あたしを睨まないでくださいよ…」

 友希那と千聖が蘭を睨みつけると、蘭は視線を逸らした。

 

まりな(夢)「そしてバンドリ村の村長の娘であり、実質の権力者であるこころちゃんはこう言いました」

 

こころ(夢)「やっぱり人間も鬼も仲良くするべきだと思うの! だから今夜はパーティよ!!」

 

まりな(夢)「と、パーティが行われ、人間も鬼たちも仲良くなり、皆でずっと平和に暮らしましたとさ」

 

 と、やっと話が終わるかと思ったが、映像が桃太郎一行を映し出した。

 

沙綾(夢)「それにしても剣と盾を持ち出したことについて、厳重注意だけで良かったわね」

たえ(夢)「悪運が強かったのかなー」

沙綾(夢)「反省しなさい!」

たえ(夢)「はい…」

 

 沙綾(夢)に怒られてしゅんとするたえ(夢)だった。

 

りみ(夢)「と、ところで…」

「?」

 

りみ(夢)「…どうしてサヨアンさんとヒナゼンタさんがここに?」

 

 りみ(夢)の視線の先には、飛鳥(夢)とサヨアン、ヒナゼンタがいたが、飛鳥(夢)がヒナゼンタにフライドポテトを食べさせていた。

 

ヒナゼンタ「えー。皆楽しそうだったから。るんってしたの!」

飛鳥(夢)「るん…」

 

 ヒナゼンタから発せられた擬音に飛鳥が困惑すると、

 

ヒナゼンタ「あ、そうだ。いいものあげる!」

飛鳥(夢)「?」

 ヒナゼンタが前足でボールを飛鳥(夢)に渡した。

 

(モンスターボール!!!)

 モンスターボールとは、モンスターを捕まえて自分の友達にするボールの事である。

 

飛鳥(夢)「なにこれ」

ヒナゼンタ「えっとね…えいっ」

 ヒナゼンタがボールのボタン部分を押すと、ボールに吸い込まれていった。

 

「!!?」

 そしてちょっと動くと、動かなくなった。

 

飛鳥(夢)「え、ちょ、なにこれ…」

 するとヒナゼンタが出てきた。

 

ヒナゼンタ「これであたしはあなたのポケモンだよ!」

飛鳥(夢)「ど、どういうこと…?」

サヨアン「話は簡単よ。あなたが私達を封印から解き放った時から、あなたは私達のご主人様になる事が決まっていたの。前の勇者もそうだったわ」

 

紗夜「ご、ご主人様…//////」

 紗夜が顔を真っ赤にした。

 

飛鳥(夢)「別にそんなの気にしなくてもいいよ。自由に生きな」

ヒナゼンタ「えー。でもあたし、あなたの事気に入っちゃった。飛…桃太郎!」

飛鳥(夢)「本当にいいの?」

ヒナゼンタ「うん!!」

サヨアン「で、ですからその…/////」

 サヨアンもボールを転がした。

飛鳥(夢)「……」

サヨアン「わ、私をゲットしてください!!」

 

日菜「おねーちゃん!! 何やってるの!!」

紗夜「離して!!!」

日菜「えー!! もうすぐ終わるから!!」

紗夜「私の人生が今この瞬間終わろうとしてるのよ!!!」

友希那「いいわよ。もっとやって頂戴」

リサ「うんうん」

燐子「紗夜さんはまだいい方だと思います…」

紗夜「し、白金さんまで…」

 

 紗夜が無理やり香澄を起こそうとしたが、日菜が止めた、友希那達も乗っかったが、燐子の目が死んでいた。

 

まりな(夢)「そんなこんなでサヨアンもゲットした桃太郎」

 

香澄(夢)「あれやんなきゃあれ」

飛鳥(夢)「え?」

香澄(夢)「ほらー。声も似てるし…」

飛鳥(夢)「じゃあピカチュウやって」

香澄(夢)「いいよ」

 

有咲「何か世界観滅茶苦茶だな!!」

たえ「夢ってごっちゃになるよねー」

 

飛鳥(夢)「サヨアン、ヒナゼンタ。ゲットだぜ!!!」

香澄(夢)「ピッピカチュウ!!!」

 

まりな(夢)「こうして、サヨアン、ヒナゼンタを仲間に迎えた桃太郎。さて、これからどんな事が待っているのだろうか!!」

 

 そして場所が変わり…。

 

「へへへへ。この村の宝はオレ達が頂いたぁ!」

 

 と、村に盗賊たちが現れて、飛鳥(夢)が立ち向かっていた。

 

 

飛鳥(夢)「よし、ヒナゼンタ!! 君に…」

 飛鳥(夢)がヒナゼンタを取り出そうとすると、サヨアンが勝手に出てきた。

 

飛鳥(夢)「サヨアン…」

サヨアン「私を使ってください。ヒナゼンタはどうせめんどくさがります」

飛鳥(夢)「じゃあお前でいいよ…」

サヨアン「あの…」

飛鳥(夢)「?」

サヨアン「君に決めたって…//////」

飛鳥(夢)「よし、サヨアン!! 君に決め…」

 

 その瞬間、紗夜が香澄の装置を外して映像を見れなくした。

 

「あ―――――――――――――――――――っ!!!!」

たえ「まあ、こういうオチだったって事で」

 

紗夜「いい加減になさいっ!!!!////////」

 紗夜が顔を真っ赤にして憤慨すると、香澄が起き上がった。

 

香澄「ふぁー…よく寝たぁ」

 香澄が目をこすり、皆を見た。

 

香澄「あれ? 皆何してたのぉ?」

 

 香澄が話しかけると、皆が顔を合わせた。

 

蘭「何でもないよ」

彩「うん。何でもない」

友希那「何でもないわ」

こころ「何でもないのよ?」

 

香澄「えー!! 絶対何かあったでしょ!! 飛鳥くん!!」

 

飛鳥「何でも…ありませんよ?」

香澄「うわーん!! すっごい気になるよぉ~~~~~!!!!」

 

 と、香澄は泣き叫んだという。

 

 

おしまい

 



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第36話「うさぎの村のおたえちゃん(前編)」

誤字報告ありがとうございました。


 ある日のバンドリ学園。放課後、飛鳥達が食堂の特別スペースで集まっていた。

 

香澄「ねー!! 今度は私にも夢を見せてよー!!」

 

 と、香澄がせがんだ。大半の生徒が困惑していた。

 

はぐみ「あ、それて…」

こころ「この装置を寝ている人の頭に嵌めて、ケーブルをテレビにつないだら、その人が見ている夢を見る事が出来る装置よ!」

 

 と、一部のメンバーが苦い表情をした。

 

友希那「私は嫌よ」

蘭「あたしも…」

燐子「も、もう人前であんな事させないで…」

 

こころ「嫌がってる子もいるから、ここで上映するのはやめましょう」

 

 で、結果的に場所を変えて、弦巻家が所有する映画館で上映する事になったのだが…。

 

「誰の夢を見るの?」

 という内容だった。

 

有咲「一人いるぞ。寝てる奴」

 と、寝ていたのはたえだった。

 

りみ「ペットのウサギ達と遊んでて疲れたんだって…」

こころ「丁度いいわ!!」

美咲「いや、ちょ…」

有咲「何でもいいけど、嫌がってた割りには全員集まるんだな…」

飛鳥「私なんか檻に閉じ込められてるんですよ。ひどくないですか?」

 有咲も思った他ノリノリで、こころがたえの頭に装置をはめ、いつの間にか用意していたモニターにケーブルを差し込むと、映像が映し出された。

 

 ちなみに飛鳥は普通に出して貰えた。

 

香澄「いやー。楽しみだねー」

有咲「ポップコーンってお前…」

飛鳥「……」 

 飛鳥はポピパと一緒に見ていた。

 

 

 

夢まりな「ここはとある王国。皆仲良く暮らしていました。しかし、王様の手によってウサギに変えられてしまいました!!!」

 

夢蘭「な、なにこれ!!//////」

夢ひまり「いや~ん!!///////」

 と、Afterglowがウサギの姿になっていたが、もこもこの白いブラとパンツで、うさ耳が生えていた。当然Afterglowは顔を真っ赤にし、飛鳥は困惑していた。

 

蘭「わ―――――――――――!!!! 見るなぁ――――――――――――!!!////////」

 蘭が飛鳥の目を覆った。飛鳥は眼鏡をはずしていた為、蘭の手が直に来ていた。実は超能力で見ようと思えば見るのだが、見ない事にした。

 

モカ「蘭。お静かに~」

蘭「離してぇえええええええええええええええ!!!」

 

 そしてPastel*PalettesとRoselia(氷川姉妹除く)も同じ格好だった。

 

彩「まあ、私達はまだいいとして…」

千聖「いいわけないでしょ//////」

麻弥「ジ、ジブンにこういうのは…/////」

イヴ「可愛いです!!」

 

友希那「猫が良かったな…」

あこ「あこも黒いウサギの方が…」

リサ「いや、こだわる所そこじゃないでしょ!!///」

燐子「い、嫌な予感しかしません…」

 

日菜「あれー!? どうしてあたしとおねーちゃんがいないのー?」

紗夜「嫌な予感しかしません…」

日菜「おねーちゃんのウサギ姿みたかったのにー!! 見せてよー!!」

紗夜「絶対やめて!!!」

 

夢まりな「そんな怪奇現象が起きている「バンドリ村」でとある一行が訪れました。

 

 するとモニターに映ったのは桃太郎一行だった。

 

「前の奴じゃん!!(第12話~第16話参照)」

「使いまわし!!」

 

桃太郎:飛鳥

犬:りみ

猿:たえ

雉:沙綾

おじいさん:有咲

おばあさん:香澄

サヨアン:紗夜

ヒナゼンタ:日菜

 

日菜「あ、あたし達ポケモンだ」

紗夜(まあ、ウサギよりマシね…)

 

夢まりな「桃太郎たちです! だけど、桃太郎たちの様子が何かおかしいぞ?」

 

夢飛鳥「これ…絶対立ち入らない方が良いタイプだよな」

夢沙綾「うーん…」

夢りみ「……」

 

 夢の中の飛鳥、沙綾、りみは嫌な予感がしていた。

 

夢たえ「いや、見て」

夢飛鳥「え?」

 夢たえが気づいた。

 

夢たえ「あんな所にウサギの格好をした人たちがいるよ」

夢香澄「あ、ホントだ」

 皆がウサギの姿になった蘭たちを見つめた。

 

夢たえ「でも本物のウサギの方が可愛い」

夢飛鳥「…そうですか」

 

 するとウサギに変えられたメンバーがたえたちを睨んだ。

 

香澄・りみ「ひぃいいいいい!!」

有咲「おい、どうすんだよ!!」

沙綾「おたえに言ってよ…」

 飛鳥は困惑していた。

 

夢有咲「帰ろう」

「はーい」

「ちょっと待ったぁ!!」

 

 と、ウサギに変えられたメンバーが現れたが、飛鳥は背を向けていた。

 

夢蘭「何帰ろうとしてんの」

夢モカ「ここまで来たらやる事分かってるよね~」

夢ひまり「…元に戻すの手伝って欲しいんだけど」

 すると夢のたえが前に立った。

 

夢巴「な、なんだ」

夢つぐみ「?」

夢たえ「甘い!!」

 

 たえが叫んだ。

 

夢彩「え、な、なに?」

夢たえ「あなた達はウサギになり切れていない! それでオッちゃん達に勝てると思ってるの!?」

 と、突然切れだしたため、皆が困惑した。

 

夢蘭「な、何いきなり…」

夢たえ「今からウサギになり切る為に訓練をします!」

「あの、おさるさん?」

夢蘭「はぁ? 何でそんな事…」

夢たえ「ウサギになる意思を見せなければ、私はこの写真を桃太郎に見せる事になる…!」

夢蘭「な、何よそれ…」

夢モカ「あ、それ昔蘭が幼稚園の肝試しで…」

夢蘭「わーっ!!! 何で持ってるのー!!//////」

 夢蘭が頬を染めて慌て出した。

 

蘭「……!!!//////」

 どうやら本当の話だった。

 

夢蘭「わ、分かった分かった!! やればいいんでしょやればー!!」

 と、夢蘭が涙目で叫んだ。

 

(かわいい)

蘭「~~~~~!!!!!」

モカ「ほら蘭。大人しくしてなきゃダメでしょ~」

蘭「離してぇええええええええええええええ!!!!」

 

まりな「そんなこんなで、ウサギにされた村人たちは、猿によってウサギになる特訓をするのであった」

 

夢彩「まん丸お山に彩りを! 彩だぴょん!」

 

夢リサ「リ、リサだぴょーん!!」

 

夢巴「と、巴だ…ぴょん…/////」

 

あこ「おねーちゃん可愛い~~~」

巴「もうやめてくれぇええええええええ!!!///////」

 

 妹に冷やかされて巴はもう我慢の限界だった。

 

まりな「そしてそんな様子を桃太郎たちは見ていた」

 

夢飛鳥「…そろそろ行こうか」

ヒナゼンタ「あ、そうだ。桃太郎もあの格好したらどうなるかな」

 と、皆が飛鳥の姿を想像すると、バニー姿の飛鳥が映像に映し出された。映像と現実の世界ともに飛鳥は青ざめてげんなりした表情を見せた。

 

夢飛鳥「気色わりー!!」

飛鳥「気色悪い…」

 

 しかし、バカ受けだった。

 

千聖「あら、案外可愛いじゃない」

飛鳥「いや、あなたの方が可愛いですよ」

 

 千聖に冷やかされたその時だった。

 

夢千聖「……/////」

夢たえ「さあ、千聖さんも女優魂を見せて!!」

 

 夢千聖にカメラが回っていた。

 

夢千聖「ち…」

「!」

 

夢千聖「ち、千聖だぴょん!//////」

 

 空気が止まった。

 

飛鳥「ほら、私より可愛いじゃないですか。戸山さん達もそう思いませんか…イタイイタイイタイイタイ!!」

 千聖が頬を染めて飛鳥の頬をつねった。

 

薫「なんて儚いんだ…千聖」

千聖「次回はかおちゃん大活躍でーす」

薫「何を言ってるんだ。これで終わり…」

はぐみ「えー!! はぐみも出番ほしーい!!」

こころ「楽しみだわ!!」

千聖「頼むわよ」

薫「ちょ、ちーちゃん!!」

千聖「あ、ちなみにあなたも次回は沢山弄っていいわよ」

飛鳥「え」

薫「ちーちゃあああああああああああああああああん!!!!!」

 

 と、薫の悲鳴が響き渡った。

 

りみ・ひまり(か わ い い///////)

 りみとひまりは薫の可愛さに鼻血を出しそうだった。

 

 

 

おしまい

 

 

 



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第53話「あこの夢」

第53話

 

 ある日の事だった。

 

あこ「ねえこころ」

こころ「何かしら?」

あこ「またあの夢を見れる機会貸して貰えないかな?」

こころ「いいわよ!!」

あこ「やったぁ!!」

 

 あことこころが会話をしているが、あこは自分が見た夢を映像としてみてみたいのだ。

 

 で…。

 

あこ「…皆、別に集まらなくても良いのに」

香澄「えー。面白そうじゃん!」

蘭「それに、変な夢を見てたら即刻止める」

彩「読者も見てるから…」

友希那「全く。こんな事をしてる暇があるなら、練習なさい」

こころ「まあまあ。それじゃあこ。催眠術をかけるわね」

 と、黒服があこに催眠術をかけると、ぐっすり寝た。

 

飛鳥「催眠術…効きやすいんですね」

巴「ま、まあな…」

 

 すると、黒服達があこの頭に機械をはめて、あこの夢を映像化する準備をした。

 

香澄「どんな夢かなー」

有咲「私の出番が無かったらいいなー…」

たえ「今回はあこだから、Roseliaが主役かな…」

 

 そして、映像がつながった。

 

香澄「どんな夢かなー…」

有咲「エッチな夢なら即刻止める」

 

『ここはバンドリアイランド。皆が仲良く暮らしていました』

 

 と、まりなの声がすると、猫に囲まれてメロメロの友希那。ポテトを食べまくる紗夜。筑前煮を作っているリサ、部屋で黙々とゲームをしている燐子が映し出された。

 

友希那「わ、私あんな顔しないわ///////(羨ましい…)」

紗夜「わ、私だってあんな食べ方!!//////」

リサ「私は筑前煮を作ってるのね…」

燐子「あ、あこちゃん…/////」

 

『しかし、そんなバンドリアイランドで事件が起きました』

 

 すると、夢の巴が何者かに攫われたのだ。

 

巴「あ、私攫われるんだ…」

モカ「まあ、お姉ちゃんを助けたいっていうのは妹としてはよくあるよね~」

 

日菜「……」

紗夜「させないから」

日菜「えー!!!」

 

『巴ちゃんが何者かに攫われてしまったのです。巴ちゃんが攫われて皆パニックに』

 

 - 夢の会話 -

 

夢蘭「巴ちゃんは捕まえた…返して欲しければあたし達の下着(新品ではなく使用済)をよこせ!?」

夢モカ「ひーちゃん」

夢ひまり「…何で私の方を見るの?」

 夢モカが夢ひまりの方を見ると、皆が夢ひまりをみた。

 

夢モカ「またサイズが大きくなったって言ってたから、古いのを…」

夢ひまり「い、嫌よ!!!  どうして私が!!」

夢モカ「トモちんの命に代えられないよ」

夢ひまり「そ、それだったらモカの下着も献上してよ!! 私一人だけなんて嫌!! こういう時、いつも一緒だったじゃない!!」

夢つぐみ「わ、私の下着地味だから…」

 と、夢つぐみがそう言うと、

 

つぐみ「わーっ!! わーっ!!//////」

蘭「一丈字! 席外せ…って、いない」

モカ「いつの間に」

 

 蘭が飛鳥を追い出そうとしたが、飛鳥は既にいなかった。

 

蘭「止めよう!」

香澄「いや、すっごい気になるよ!!」

日菜「夢の中の巴ちゃんどうなるの!?」

 

夢蘭「下着をあげた所で、巴が帰ってくる保障あるの?」

「!!?」

夢ひまり「た、確かにそうだけど…」

 その時だった。

 

「助けに行こうよ!」

 

 夢あこがそう言った。

 

夢あこ「おねーちゃんを助けに行こうよ!!」

 と、言うと皆が夢あこを見つめた。

 

夢蘭「やっぱり下着を献上して、一回様子を見よう」

夢モカ「そうだね~」

夢ひまり「うんうん」

夢つぐみ「その方が良いかも…」

夢あこ「え、ちょっと!!?」

 夢あこが困惑した。

 

夢友希那「あなた、場所分かるの?」

夢あこ「住所なら手紙に…」

夢紗夜「住所まで行くのに、あこさんじゃ無理よ。それに、もしかしたら仲間がいるかもしれないわ」

夢あこ「うっ…」

夢リサ「確かに巴が心配なのも分かるし、私達も心配だわ。でもね」

夢燐子「焦らないで、相手の情報を引き出して作戦を立てましょう」

 

『と、友希那ちゃん達はあこちゃんを諭しました。そして、相手の要求通り、一回下着を送ってみる事にしたのですが…』

 

夢香澄「新品じゃなくて使用済だもんね…」

夢たえ「なかなかこだわるね…」

夢有咲「こだわるもあるか!! 気色悪い!!!」

夢沙綾「だけど下手に新品を渡して、巴の命が危ない事になったら元も子もないし…」

夢りみ「……」

 

『香澄たちは真剣に下着を選んでいた』

 

蘭「…もしかして、犯人って一丈字?」

モカ「あー…そういや飛鳥くん出てないね」

ひまり「そ、それだったらちょっと…」

つぐみ「ひまりちゃん…。それは流石に可哀想だよ…」

 

 シアターの外で佇んでいた飛鳥は悟った。あ、これ絶対オレの好感度下がる奴だと。

 

夢香澄「あ、これ有咲の? おっとな~」

夢有咲「勝手に触んな!!/////」

 

有咲「このくだりいる!!? このくだりいる!!?/////」

 夢の中の香澄が有咲の下着を見せびらかすように見ると、夢の中の有咲と現実の世界の有咲が突っ込んだ。

 

『そんなこんなで下着を選んだ香澄ちゃん達を、それを犯人の所に送り届けました』

 

 

 3日後。

 

夢友希那「帰ってこないわね…」

夢あこ「もう我慢できない!! あこ一人だけでも行く!!」

夢燐子「ま、待って…」

夢蘭「やっぱり行くしかないのか…」

 

『その時でした』

 

「おーい」

「!?」

 

『なんと、巴ちゃんが1人で帰ってきました』

 

夢あこ「おねーちゃん!!!」

 夢あこが夢巴に抱き着いた。

 

夢あこ「もー!! 心配したんだからぁ~!!!」

夢巴「ゴメンゴメン。心配かけて」

 他のメンバーもやってきた。

 

夢蘭「巴!」

夢巴「心配かけたな!」

夢ひまり「大丈夫!? エッチな事されてない!?」

夢巴「……」

 

『巴ちゃんは汚らわしそうに視線を逸らしました』

 

夢つぐみ「や、やっぱり…」

夢モカ「どんな事されたの~」

夢巴「…拘束されて、胸と尻を触られた」

 

 飛鳥の身の危険が感じられる。

 

夢ひまり「ほ、他には!!?」

夢巴「幽霊が出そうなところに、閉じ込められた…」

 

巴「……」

モカ「トモちんの弱点を正確についていくタイプですな~」

 

夢香澄「ほ、他には!!? 下着をよこせって言ってたくらいだから…」

夢巴「ああ…。下着をはぎ取られた…」

 

 空気が止まった。

 

蘭「一丈字てめぇコラァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

つぐみ「蘭ちゃん落ち着いて!! まだ一丈字くんだって決まったわけじゃないから!!」

モカ「こっちの飛鳥くんに当たってもしょうがないでしょ~」

 

 蘭が飛鳥に殴りかかろうとしたが、つぐみとモカが止める。ひまりと巴は何とも言えない顔をしていた。

 

夢あこ「そ、それじゃ裸にされたって事!?」

夢巴「…そうなるな//////」

夢モカ「ま、まさか初めても…」

夢巴「そ、それだけは死守した!!////」

 

 夢の巴がそっぽを向いた。

 

夢巴「…奴は私が直接穿いていた下着を奪い取るのが目的だったらしい」

夢蘭「な、なんて奴なの…」

 

 そう言うと、

 

夢彩「ちょ、ちょっと待って!? 私達、巴を助ける為に下着を送ったんだけど…」

夢巴「届いてたよ」

「!?」

 

夢巴「…奴の仲間が穿いてた」

 

「仲間?」

 これで飛鳥だという事が確定できなくなった。

 

夢こころ「一体どういうことなの?」

夢巴「説明してくれないかな」

 

『巴ちゃんは事の詳細を説明しました』

 

 と、映像が切り替わり、犯人が巴をさらうシーンから始まった。

 

巴「!!?」

モカ「あ、こいつ前にトモちんのパンツを盗んだ奴だ」

「ええっ!!?」

 

香澄「そんな事があったの!?」

巴「そういえばあこ、あいつの事怖がってたからな…」

モカ「無事に捕まったけど、やっぱり心の傷が癒えてないんだね~」

 

 そして、犯人は巴を裸にして、ブラジャーとパンツをはぎ取り(ちなみに巴の裸は映し出されていない)、自分がつけたり穿いていた。当然ドン引きである。ハロハピの3バカとも呼ばれているこころ、薫、はぐみですらドン引きしていた。

 

薫「み、醜い…」

こころ「お、女の子の下着を盗むのはいけない事だわ!!」

はぐみ「き、きもちわる~い…」

 

 寝ているあこも若干うなされていた。

 

蘭「ね、ねえ。そろそろ止めない?」

モカ「でも結局誰が助けてくれたんだろうね~」

蘭「どうせ一丈字でしょ!! もういいでしょ!!」

 と、蘭が止めようとした次の瞬間だった。

 

『バンドリアイランドの娘達が下着を送って来たぞ』

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 と、犯人とその仲間が香澄たちが送ってきた下着に手を突っ込んだ。

 

「オレ、蘭ちゃんの!!」

「友希那様のはオレのだァ!!」

「あ、ずるいぞお前!! 千聖ちゃんのはオレが狙ってたのに!!」

「オレだ!!」

「オレ!!」

 

香澄「あ!! 私とおたえが選んだ下着売れ残ってる!!」

たえ「これはこれで屈辱…」

有咲「対抗意識燃やしてる場合か!!!」

 りみは青ざめていた。

 

「これがさーやちゃんのか…」

「有咲の下着やっぱり大人…」

 

沙綾「気色悪い!!!!」

有咲「早く次行け!!」

 

 そんなこんなで…。

 

『侵入者です!!』

「すぐに捕らえろ!!」

 

 と、彼らのアジトに何者かが侵入し、男は牢屋に閉じ込めている巴の元に向かった。

 

「侵入者だ。恐らくバンドリアイランドの人間だろう。合わせてやる」

巴「……!!」

 

 鎖で縛られた巴(大事な所は隠れている)は、男を睨みつけてついに…。

 

『♪ 決戦! キャプテンクルール(「スーパードンキーコング2」より)』

 

 音楽が流れ、場面は飛行船の船内に切り替わった。巴からの視点になっていて、飛鳥が走ってきた。

 

「やっぱり!!」

夢モカ「うーん。やっぱり安定感あるよねー」

 

犯人「現れたな!!」

夢巴「……」

夢飛鳥「……」

 

 夢巴と夢飛鳥が見つめ合った。

 

夢飛鳥・夢巴(…だ、誰?)

 

『夢の中の飛鳥くんと巴ちゃんは全く接点がなく、何故お互いがこんな状況になっているのか、理解できませんでした』

 

 だが、一番の問題は…犯人が巴の下着をつけている事だった。ちょっと派手な赤の下着である。

 

巴「ぎゃあああああああああああああああ!!!」

 巴が悲鳴を上げた。

 

巴「ちょ、やめろぉ!!」

香澄「巴ちゃん!! 気持ちは分かるけど、もうここまで来たら!!」

はぐみ「夜眠れない奴だよ~!!!」

 巴が止めようとしたが、香澄とはぐみが止めた。

 

香澄「さーやの下着とちょっと似てるね」

沙綾「言わんで宜しい/////」

 

 犯人が巨大な銃を取り出して、鉄球を放ってきたが、飛鳥は瞬時に犯人の懐にもぐりこんで、強烈なアッパーカットを食らわせ、そのまま外へぶっ飛ばした。

 

モカ「ドンキーが最後にぶっ飛ばしたアレだね~。でも、どっちかっていうと飛鳥くんはディディーかな~?」

 

 犯人は海の中に沈み、数匹の鮫が寄ってきた。どうなったかは知らない。

 

 そして夢飛鳥は夢巴を救出した。

 

夢飛鳥「大丈夫ですか?」

夢巴「う、うん…」

 と、縄を解いた瞬間、巴の肌が見えた。

 

「!!//////」

蘭「お、おい一丈字!!」

巴「……//」

 

 すると夢飛鳥は普通にリュックから、バスタオルを取り出した。

 

夢飛鳥「あ、これよかったらどうぞ。一時的なものですが」

夢巴「あ、ありがとう…」

 

モカ「紳士~」

日菜「巴ちゃんのおっぱい見たらどんな反応するか見たかったけどなー」

紗夜「日菜!!/////」

巴「それは…日菜さんでやってください」

日菜「だよねー。そうするよ」

紗夜「日菜!!!////////」

 

 日菜の大胆過ぎる発言に紗夜が絶叫した。

 

『こうして、巴ちゃんは助かり、途中まで送って貰う事になりました。そしてバンドリアイランドに戻る』

 

 

夢あこ「助かってよかった~」

夢蘭「けど、助けて貰えるんなら下着送る必要なかったじゃん」

夢モカ「まあまあ。偶然助けて貰ったから、やってるに越したことないよ」

夢巴「…その事なんだけど」

「?」

 

『巴ちゃんは青ざめていた』

 

夢巴「アタシを助けてくれた人が言うには、あんた達の下着…。あいつの部下達が穿いてたらしいよ」

「」

 

『そう、飛鳥くんは犯人の男の部下達とも戦っていたのですが、その時皆の下着を穿いていたのです』

 

 海賊船の上:Poppin’party

 溶岩エリア:Afterglow(巴以外)

 沼地:Pastel*Palettes

 はちみつランド:ハロー、ハッピーワールド!

 森:Roselia

 

 そして5つのエリアで激闘を繰り広げていた。普通に蹴散らしたり、溶岩の中、剣に刺されそうになりながらも鉄球を投げつけたり、敵側が起こした地震で足場が悪くても爆弾を投げつけたり、巨大な蜂に刺されそうになったり、幽霊とも戦ったりしていた。しかも生身である。

 

「……!!」

 そんなダイジェストが流れて、香澄たちは絶句した。男たちの格好はどうであれ、戦いはハイレベルな物であり、それを飛鳥はこなして巴を救出したのだ。超能力を使わず生身で…。

 

 

 だが、そんな事は今はどうでもよく、送った下着がそんな事に使われていて、夢の中の香澄たちが青ざめていた。

 

夢あこ「これ…やっぱり助けに行った方が良かったよね?」

夢巴「まあ、気持ちは分からなくはないが…。皆が危険な目に逢うよりかはマシだ。これで良かったんだよ」

 

 

『と、若干モヤモヤは残るものの、巴が戻ってきて、再びバンドリアイランドに平和が戻りました。ちなみに飛鳥くんは何者だったのかというと…』

 

香澄「あ、それ気になる」

 

 映像が飛鳥に差し変わった。

 

 

夢飛鳥「…あー、もしもし。巴さんを無事に救出致しました。ただちに帰還します」

 

 と、茶屋で誰かに電話をしていた。

 

 

『凄腕の賞金稼ぎ(バウンティ・ハンター)だったそうです』

 

 

 こうして物語は終了した。

 

 

 そしてあこが目を覚ました。

 

あこ「ふぁあ…」

 あこが欠伸をした。

 

あこ「うーん…あんまりカッコいい夢じゃなかったなー」

こころ「気にする事はないわ! 次見れればいいのよ!!」

「……」

 

 夢の出来はともかく、あこの夢を見て、もし自分達が寝ている時にあの装置をつけられたら…と思うと、恐怖が止まらなかったそうです。

 

 

 

おしまい

 



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第116話「うさぎの村のおたえちゃん(中編)」

 

 前回までのあらすじ

 

 弦巻家が開発した機械で、たえの夢を見ている一同。

 

 夢の中の内容はハロハピ一味が、遊び半分で作った機械のせいでふもとに住んでたバンドリ村の住人たちがうさぎに変えられるというもので、通りかかった桃太郎一味が止めに行くというストーリーである。

 

夢たえ「はい、ワンツーワンツー!!」

夢彩「ぴょん! ぴょーん!!」

 

 夢たえが住人たちに鬼のような指導をしていた。ちなみに住人たちはAfterglow、日菜以外のパスパレ、紗夜以外のRoseliaの計13名だった。

 

夢リサ「ぴょーん!」

リサ「……!!!//////」

 

夢燐子「ぴょ、ぴょん…/////」

夢たえ「声が小さい!!」

夢燐子「ぴょん!!」

 

あこ「…りんりんやっぱりおっきいね」

燐子「い、言わないでー!!/////」

(夢よりも声が出てる…)

 

 燐子のある部分を見てあこがそういうと、燐子本人が顔を真っ赤にして叫んだ。

 

夢まりな「そんなこんなで、桃太郎一味は恐らく原因となっているであろう『ハロハピの塔』へ向かいました」

 

はぐみ「えー! はぐみ達が悪役なのー!?」

花音「し、仕方ないよ…此間はハロハピとRoseliaがしたんだから…」

 

 そして桃太郎(飛鳥)達が扉を開けると…。

 

「フフフ…。待っていたよ。子猫ちゃん達」

 

 最初に立ちはだかったのは薫だった。

 

夢香澄「え!? 薫先輩!?」

夢有咲「いや、世界観を守れって」

 

 夢香澄が本名を言った為、夢有咲に突っ込まれた。

 

夢薫「子猫ちゃん達には悪いが…ここを通すわけにはいかない。引き取りたまえ」

 と、夢薫は敵らしく追い返そうとしていた。すると夢飛鳥が前に出た。

 

夢薫「やる気かい? だけど血を流すのは私の性分ではないな」

夢飛鳥「いえ、そうではなくて、ちょっとあなたに見ていただきたいものがございまして」

 

 夢飛鳥は夢薫に近づいて、1枚の写真を見せた。すると夢薫は顔を真っ赤にした。

 

「!!?!」

「何見せたの!!?」

 

 そして夢飛鳥はスーッと逃げたが、夢薫はかなり焦っていた。

 

夢薫「その写真…どこで…!!//////」

夢飛鳥「あ、ここに来る途中に千聖さんっていう方から頂きました」

夢薫「千聖から!!?/////」

 

千聖「あ、あー…」

 千聖が反応すると、現実世界の薫もあせったような顔をして千聖を見た。

 

夢薫「も、もしかしてそれを楯にするつもりかい…?」

夢飛鳥「いえ、千聖さんから伝言を預かってまして、ここを通さないと、皆にあなたの事を「かおちゃん」って呼ばせると仰ってました」

夢薫「どうぞお通りください」

「弱っ!!」

「そんなに呼ばれるの嫌か!!!」

 

 夢薫の変わり身の早さに皆が突っ込んだ。

 

りみ・ひまり「……」

薫(終わった…)

 

 夢の中とはいえ、自身のファンに醜態をさらした事で薫は人生の終わりを感じた。

 

りみ「薫さん…」

ひまり「薫先輩…」

 

りみ・ひまり「こういう役もできるんだ!!!」

飛鳥・千聖・薫「」

 

 ポジティブな反応に飛鳥、千聖、薫の3人が困惑した。薫としては助かったのだが、不本意過ぎて素直に喜べなかった。

 

夢飛鳥「え、いいの?」

夢薫「いいんだ。よくよく考えたら子猫ちゃん達にそんな危害を加えるわけにはいかないからね」

夢飛鳥「あ、どうも」

夢薫「ちなみにその写真はこっちに渡してもらえないかな?」

夢飛鳥「あ、はい。どうぞ」

 夢飛鳥が夢薫に写真を渡した。

 

夢薫「ちなみに…」

「?」

 夢薫が夢飛鳥を見つめた。

 

夢薫「他にはもう写真渡されてないよね?」

夢飛鳥「渡されてませんよ」

夢薫「絶対渡されてるだろう!!?」

夢飛鳥「写真の他にもお話を聞きました」

夢薫「どんだけ喋ってんの!!!」

 

 夢薫がついにキャラを捨てて、素で突っ込んだ。

 

薫「……/////」

千聖「……」

 薫が千聖を睨みつけるが、千聖はわざと視線を逸らした。

 

夢薫「…と、とにかく。通っていいよ」

 と、夢薫は素で喋った。

夢飛鳥「そうですか。通らせて貰いますね」

夢有咲「何だ? さっきと随分キャラが変わったな…」

夢薫「う、うるさいなぁ!! 早く行ってよ!!」

 夢薫が叫んだ。

 

夢薫「…どうせ私なんて、いつまでも気の弱い「かおちゃん」なんだよ」

 

薫「こ、これは悪い夢のようだ。子猫ちゃん達を夢から解放させて上げないと」

千聖「落ち着きなさいよ」

薫「離してぇ!!」

 

 薫が止めようとしたが、千聖が薫を拘束した。

 

夢飛鳥「…かおちゃん?」

夢薫「小さいころは千聖からそう言われてたの。親同士が仲良かったから…。小さい頃の私は気が弱くて臆病だったんだ。だからそんな自分を変えたくて、キャラを変えてたんだ…」

 夢薫がそのまま座り込んだ。

 

夢薫「でももうそれも今日で終わり。どこへでも行ってよ。どうせあなたも私の事バカにしてるんでしょ!!」

夢飛鳥「バカにしてないよ」

夢薫「嘘だ!!」

夢飛鳥「してないよ」

 

 夢薫が振り向いて夢飛鳥を見つめたが、飛鳥の表情は真剣だった。

 

夢飛鳥「してないよ。オレも、千聖さんも」

「……!!」

 

夢飛鳥「それに、さっきのキャラが悪いとも思ってないしね」

夢薫「…嘘だ」

夢飛鳥「まあ、千聖さんに関しては、元のあなたの良い所を知っているから、無理にキャラを変える必要なんてないって言ってたけどね」

夢薫「……」

 夢薫はまた背を向けた。

 

夢薫「…それなら、あなたはどうなの?」

「!?」

 

夢飛鳥「オレ?」

夢薫「…あなたは千聖と違って、今出会ったばっかりだし。それなら、どうしてバカにしてないって言えるの?」

 

 夢薫の言葉に夢飛鳥は口をへの字にした。

 

夢飛鳥「そりゃあ確かに君とは出会ったばかりだけど、君がどういう人かは、今の君の態度や言葉で分かったよ。自分が弱い人間だって分かってる事も、自分の弱さを受け入れて、そんな自分を変えようと一生懸命もがいてる。そんな人間をバカにしたりしないよ。オレだけじゃない。ここにいる皆もそうさ」

 

 夢飛鳥の言葉に夢薫が目を開けた。

 

夢香澄「そ、そうだよ! とっても素敵な事じゃない!」

夢りみ「う、うん! さっきの薫さんはカッコいいけど、桃太郎の話を聞いてもっとカッコいいって思いました!」

夢沙綾「そうだね。とってもいい事だと思う」

夢有咲「そ、そうだな…」

 と、夢香澄たちも夢飛鳥に賛同した。

 

夢飛鳥「勿論、キャラを作ってるのが悪いとは言ってないよ」

夢薫「!」

夢飛鳥「さっき見てましたけど、気配りも出来てたし、無暗に人を傷つけようとはしなかった。そして何よりも気高い。それが、君が求めてる強さなんだろうね」

 夢飛鳥は目を閉じた。

 

夢飛鳥「要はね。あなたが人として尊敬できる人間だって言う事を、この短時間でしっかり理解できたから。これが答えだ」

夢薫「!!」

 夢飛鳥の言葉に夢薫は涙をぽろぽろ流した。

 

夢飛鳥「まあ、付け加えるなら…」

「?」

夢飛鳥「君みたいな人、オレは好きだよ」

 

 空気が止まった。

 

飛鳥「大胆だなー。夢の中のオレ…」

 飛鳥が困惑した。

 

夢薫「…ありがと/////」

 夢薫がぷいっと横を向いた。

 

夢飛鳥「結構長居したな。それじゃもう行くね。行こう」

夢香澄「うん!」

 そう言って夢飛鳥達は上の階に上っていった。

 

夢薫「……//////」

 夢薫の耳が真っ赤になっていた。

 

 そしてそれを見ていたバンドガールズの大半も真っ赤になっていた。

 

香澄「飛鳥くん…」

飛鳥「まあ、夢の中の話だからね。瀬田先輩もあまり相手にしないで…」

薫「ふふ。君も結構やるねぇ」

 と、薫がいつものよう振舞っていた。

飛鳥「……」

薫「この借りは必ず返さないといけないようだねぇ?」

千聖「気取ってないで素直に恥ずかしがったら? かおちゃん」

薫「はははは!! 全く昔のあだ名で呼ばないでくれたまえ?」

飛鳥(あ、壊れたな…)

 

 ちなみにこの後、トイレでめちゃくちゃ悶えたらしい。

 

 

つづく

 



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第117話「うさぎの村のおたえちゃん(後編)」

誤字報告ありがとうございました。


 

 前回までのあらすじ

 

 飛鳥がめちゃくちゃ主人公してた。

 

モカ「現実世界ではナンパ失敗したね~」

飛鳥「これが現実ですよ。私のような人間を相手にする訳がないんですから」

 

 モカの冷やかしに対して、飛鳥が苦笑いし、薫もいつも通りにしていたが…。

 

モカ(一人で悶えるタイプだろうな~)

薫(早く帰りたい)

 

 まだまだ続きます。

 

 夢薫を制し、2階へ上がる。

 

「ふっふっふ。ここから先は通さないよ~」

 

 と、今度ははぐみが現れた。

 

はぐみ「あ!! はぐみだ!!」

 

夢飛鳥「おやまあ」

夢はぐみ「ここから先は通さないんだからね!!」

夢香澄「あれ!? はぐ!?」

 夢香澄が名前を呼ぶと、夢はぐみが夢かすみが反応した。

 

夢はぐみ「あ! かーくん! 久しぶり~!!」

 と、香澄とはぐみが和気藹々とした。

 

夢飛鳥「…知り合い?」

夢香澄「そうなの! 小さいころからの友達なんだよ!」

夢飛鳥「え、じゃあ何でこんな事してんの?」

夢はぐみ「え?」

夢飛鳥「いや、村の人たちが皆うさぎになったって騒いでて…」

 

 と、夢飛鳥は事情を説明した。

 

夢はぐみ「あ、それはね。こころんが皆をうさぎにしてみたら楽しいかなーって言って、機械を作ったんだけど…。そういやスイッチを押した時から記憶が…」

 

 夢はぐみの言葉を聞いて、夢飛鳥達は驚いた。

 

夢飛鳥「…もしかして、さっきの薫さんも」

夢有咲「あーもー! 何か訳わかんなくなってきた!!!」

夢沙綾「よ、要ははぐみは今…正気って事で大丈夫なのよね?」

夢はぐみ「うん! ごめんねー。こんなことになるなんて思わなくて…。皆困ってるなら止めに行こう! 上にはかのちゃん先輩とみーくんがいるよ!」

夢香澄「行こう!!」

 

 と、夢はぐみもパーティに加わって、3階に上がった。

 

夢花音「ここから先は通しませんよ…!!」

 3階に上がると、花音が立ちはだかっていた。

 

夢飛鳥「恐らく正気を失ってるんでしょうね…」

夢沙綾「何かショックを与える発言をすれば元に戻るんじゃないか? 薫さんと北沢さんの事を考えたら…」

夢はぐみ「流石あーちゃん!!」

夢有咲「あーちゃん言うな!」

夢香澄「さすがだねぇ~。おじーさーん」

夢有咲「ひっつくな!!」

 

沙綾「これ…完全に夢の世界だっての、忘れてるよね」

飛鳥「ええ…」

りみ「あはははは…」

 

 沙綾と飛鳥が困惑していて、りみが苦笑いしていた。

 

夢飛鳥「うーん…」

夢香澄「どうしよう!? あ、ちなみに暴力はだめだよ!?」

夢飛鳥「分かりました。それでは砂漠に飛ばしましょう」

夢花音「ふ、ふぇええええええええええええ!!!?」

 夢飛鳥の言葉に夢花音が驚いた。

 

モカ「飛鳥くんもドS~」

飛鳥「あーはいはい…」

 

夢花音「ふぇえええええええ!!! 正気に戻りましたぁあああああああ!! ごめんなさいぃいいいいいいいいいい!!!!」

夢飛鳥「あ、それは何よりです」

夢はぐみ「確か次の階はみーくんだったよね!?」

夢花音「は、はい…」

 

 そして4階

 

「ここまで来たって事は、しくじったわね」

 夢美咲が現れたが、あからさまに顔つきが悪かった。

 

夢はぐみ「みーくん! 目を覚まして!!」

夢有咲「私はいたって本気よ!! ここで終わりにしてやるわ!! ミッシェル!!」

 

 夢有咲がミッシェルを召還したが、とてつもなくでかい。

 

「わああああああああああああ!!!?」

はぐみ「ミッシェル召喚できるんだ!! すごーい!!」

美咲「おいおい…」

 

 ミッシェルのでかさに夢飛鳥達も驚いていた。

 

夢美咲「やりなさい!!」

 と、ミッシェルに攻撃させると、サヨアンが攻撃を受け止めた。

 

ヒナゼンタ「おねーちゃん!!」

サヨアン「ここは私が引き受けます! 桃太郎たちは上の階に行ってください!」

 

友希那「何か紗夜だけずるくない?」

紗夜「な、何を言ってるのですか…」

リサ「ちょっとずるいかなー」

燐子「…ずるいです」

あこ「ずるくはないけど、あこにもカッコよく活躍させてよー!!」

 

ヒナゼンタ「あたしも!! ほら早く行って!!」

夢飛鳥「ありがとう!」

 

 そう言って夢飛鳥達は最上階に上がったが、そこには倒れている夢こころの姿があった。

 

夢飛鳥「!!」

夢はぐみ「こころん!!」

 夢はぐみが夢こころに駆け寄った。

 

夢はぐみ「こころん!! しっかりして!!」

夢こころ「…うーん?」

 

 夢こころが目を覚まして、起き上がると夢飛鳥達も近づいた。

 

夢こころ「…あら? いつの間にお昼寝してしまったのかしら?」

夢はぐみ「それはそうと大変だよ! あの機械のせいで村の皆が大変な事になってるって!!」

夢こころ「ええっ!!? それは大変だわ!! すぐに止めなきゃ!!」

 と、夢こころが機械を止めようとしたが、

 

「そうはさせないわよ!!!」

 

 どこからかチュチュが現れた。

 

「!!?」

 

夢香澄「チュチュちゃん!!?」

夢チュチュ「That’s right! この機械を戻したければ、ワタシ達『RAISE A SUIREN』をレギュラーに…」

 夢チュチュがそう言い放つと、夢飛鳥が杖に電気をためていた。

 

夢チュチュ「あの、ちょっと人の話聞いてる? まさかとは思うけど電撃攻撃しないわよね?」

夢飛鳥「あ、大丈夫ですよ。テレポート!」

 と、夢チュチュをどこかに飛ばした。

 

夢香澄「ど、どこに飛ばしたの!?」

夢有咲「まさか本当に砂漠じゃ…」

夢飛鳥「あ、バンドリ村です。さて、早く機械を止めてください?」

夢こころ「分かったわ!!」

 

 夢こころが機械を操作して止めた。

 

*********

 

 1階

 

夢こころ「ごめんなさい。あたしが間違ってたわ」

夢飛鳥「うん。そういうのは皆で話し合わないと」

 

 夢こころが頭を下げて謝ると、夢飛鳥達も承諾した。

 

夢香澄「まあまあ。誰も怪我しなかったんだからよかったじゃん!」

夢飛鳥「まあ、そうなんですけどね…」

夢沙綾「皆の所に戻りましょう」

 

 と、ハロハピメンバーと一緒にバンドリ村に戻っていった…。

 

夢飛鳥「お疲れ様」

サヨアン「え、ええ…。とても強かったです…」

 

 サヨアンとヒナゼンタは姉妹でミッシェルと激闘を繰り広げて、何とか勝利した。

 

ヒナゼンタ「疲れたー。ナデナデしてー」

 と、夢飛鳥がヒナゼンタの頭をなでると、サヨアンも撫でてほしそうにした。

 

紗夜(これくらいは我慢…!!)

 

夢まりな「こうして、皆無事に戻ってきて、バンドリ村に戻ってきました」

 

 映像がバンドリ村にさし変わった。

 

夢たえ「ああ。おかえりなさい」

夢飛鳥「ただいま…」

夢香澄「皆、どうなった?」

夢たえ「完璧。オッちゃん達にも負けない、立派なウサギになったよ!」

 と、夢たえが親指を立て、夢飛鳥達がその先を見つめると、完全にハイテンションでウサギの物まねをしているAfterglow、パスパレ、Roselia(氷川姉妹除く)の姿が…。

 

夢蘭「ぴょんっ♪」

夢モカ「ぴょーん」

夢ひまり「ぴょん♥」

夢巴「ぴょんぴょん!」

夢つぐみ「ピョン!」

夢彩「ぴょんぴょぴょぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん! ぴょんぴょぴょぴょんぴょーん!」

夢千聖「ぴょん♪」

夢麻弥「ぴょん!」

夢イヴ「ぴょん!」

夢友希那「ぴょん」

夢リサ「ぴょんぴょん☆」

夢燐子「ぴょん!」

夢あこ「ぴょーん!!」

 

 

(洗脳されてる――――――――――――――――――――!!!!!!)

 

 

 と、夢現実問わず大半のメンバーが突っ込んだ。

 

夢薫「ち、ちーちゃん…」

 変わり果てた夢千聖の姿に夢薫が青ざめた。

 

夢飛鳥「…どう? こんなちーちゃん」

夢薫「元に戻して!!! こんなのちーちゃんじゃない!!!」

夢千聖「何言ってるの? とっても可愛いぴょん?」

 夢千聖が近づいてきた。

 

夢千聖「かおちゃんもやるぴょん」

夢薫「ひっ!!」

 夢千聖が夢薫の手をつかむと、夢薫は更に青ざめた。完全に凛々しいいつもの彼女は見る影もなかった。りみとひまりは『可愛い』と悶えていたが…。

 

夢千聖「桃太郎さん。ありがとぴょ~ん。それじゃ、行くぴょん♪」

夢薫「いやあああああああ―――――――――――――――――――っ!!!!!」

 

 夢千聖は夢薫に連れていかれて、夢飛鳥は青ざめてある方向を見ると、村名が記載されてる看板があったが、バンドリ村ではなく、花園ランドに名前が変わっていた。

 

夢飛鳥(村が乗っ取られた―――――――――――――――――!!!!!)

 

 

夢まりな「こうして、バンドリ村はうさぎの村『花園ランド』に生まれ変わりましたとさ。めでたしめでたし」

 

「めでたくね―――――――――――――!!!」

たえ「…ん?」

 

 

おしまい

 

 



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第178話「一丈字家大混乱!(前編)」

元ネタ:イナズマイレブンGO


 ある日の事だった。

 

紗夜「うーん…うーん…」

 

 カフェテリアで紗夜がうなされていた。それをこころと日菜が発見した。

 

こころ「あら、紗夜が寝てるわ」

日菜「ホントだ。でも何かうなされてるみたい…。一体どんな夢を見てるのかな…」

 

 日菜がある事を想いついた。

 

日菜「そうだこころちゃん。夢を見る事が出来る機械があったでしょ。あれって出せる?」

 すると黒服が用意した。

こころ「どうするの?」

日菜「おねーちゃん。またストレス抱えてるかもしれないから、どういう夢を見てるかを見て、どうすれば良いか判断するの!」

 

 …というのは全くの嘘で、ただ単に紗夜の夢を見たいだけだった。

 

黒服「ちなみに前回のものよりパワーアップしてほんの数秒装着するだけで夢の一部始終をこの機械に録画することができます」

日菜「相変わらず凄いねー。それじゃ装着!」

 と、日菜が紗夜の頭に機械を装着すると、他のバンドガールもやってきた。

 

リサ「ちょ、何してんのヒナ」

日菜「おねーちゃんがうなされてるからどういう夢を見てるか調べるの」

燐子「や、やめといた方が…」

友希那「紗夜は結構一人で抱える事が多いから、良いかもしれないわね」

「えっ」

 すると機械の音がなった。

 

こころ「録画できたみたいね!」

日菜「よーし。これでおねーちゃんのストレスの原因を調べるぞー」

(絶対日菜だと思う…)

こころ「あ、そうだ。紗夜も悪い夢から起こしてあげなきゃ」

 と、こころが紗夜を起こすと日菜は機械を隠した。

 

紗夜「…はっ!!」

 紗夜が起き上がった。

こころ「どうしたの紗夜」

紗夜「つ、弦巻さん…それから皆も…」

友希那「紗夜。だいぶうなされてたわよ。どうしたの?」

紗夜「……」

 紗夜が友希那、リサ、燐子を見つめると、紗夜は頬を染めた。

紗夜「…な、何でもありません//////」

 

 こうして、こころ達は紗夜の夢について調べる事になった。

 

 

 

飛鳥(どうしたんだろ…)

 

 ちなみにこの男は本当に参加なし。

 

 

 弦巻家・シアター

友希那「早速調べましょう」

 

 参加メンバー

紗夜以外のバンドガール。

 

日菜「それじゃ、映像を再生するねー」

 と、日菜が映像を再生した。

 

******************************

 

 すると、そこには飛鳥のマンションが映し出されていた。

 

たえ「飛鳥くんのマンション?」

日菜「ホントだー。もしかして、付き合ってるの!!?」

「ええええええええええええええ!!!?」

 と、驚いたその時。

 

「紗夜。よく来てくれたわね」

 友希那の声がした。

 

夢紗夜「え? み、湊さん…?」

 夢の中の紗夜は何やら驚いている様子だった。それもそうだ。飛鳥のマンションの前なのに友希那がまるで自分の家のように振舞っていたからだ。

 

友希那「……?」

 

夢紗夜「よ、よく来てくれたってどういう意味ですか…?」

夢友希那「…あなたこそ何を言っているの?」

 すると夢の中の友希那はとんでもない事を言いだした。

 

夢友希那「ここが私の家だからよ?」

 

 空気が止まった。見ていたバンドガールズの反応は様々で、何を言っているのかわからないメンバーもいれば、察してしまったメンバーもいた。

 

夢紗夜「わ、私の家って…」

夢友希那「行きましょう。リサと燐子とあこも待ってるわ」

夢紗夜「今井さん達も来られてるんですか?」

 すると夢友希那が怪訝な表情を浮かべた。

 

夢友希那「…紗夜。あなた大丈夫?」

夢紗夜「えっ…?」

 すると夢友希那がまたとんでもない事を言いだした。

 

夢友希那「私、燐子、リサ、あこ。私達4人は飛鳥と結婚したのよ?」

 

「ええええええええええええええええええええええええ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!?」

 

 衝撃の発言に他のバンドから絶叫された。

 

友希那「……!?」

リサ「うそぉ!!?」

燐子「!!?」

あこ「あ、あこ達がセンパイと結婚!!?」

巴「ど、どういう事だぁ!!?」

 

 Roselia本人も驚きを隠せなかったが、一番驚いていたのがあこの姉の巴だった。

 

日菜「あー。うなされてたのはこれが原因だったんだね」

こころ「友希那達と飛鳥が結婚したのね! でも1人までじゃないの?」

リサ「いや、こころ? 突っ込むところそこじゃないと思うけど…えー…/////」

 

夢紗夜「け、結婚ん!!?」

夢友希那「あなた、結婚式でスピーチもしてくれたじゃない」

夢紗夜「け、結婚式…」

 その時、夢紗夜の脳裏に結婚式の様子が思い浮かんだ。

 

夢紗夜「……!///////」

 とてつもなく顔を真っ赤にした。

 

あこ「け、結婚式って事はあこ達…センパイとちゅーしたのかな…/////」

「!!?//////」

 

 あこの発言に皆が顔を真っ赤にした。

 

巴「……」

ひまり「ちょっと巴。どこ行くの」

巴「一丈字に話をつけに行ってくる」

ひまり「夢の話なのにどう話付けるのよ!!」

 

 巴が飛鳥に八つ当たりしようとしていたので、ひまりとつぐみが止めた。

 

燐子「ちゅ、ちゅー…//////」カァァァァ

リサ「け、結婚してるんだから…そ、そりゃしたんじゃないの…/////」

友希那「……/////」

 

 流石に気恥ずかしくなったのか3人とも顔を真っ赤にした。

 

モカ「あこちんは嫌なの~?」

あこ「い、嫌っていうよりその…はずかしい…/////」

 

 困った表情で指をツンツンするあこ。

 

友希那「と、とにかくこの映像は終わりで!」

日菜「えーっ! これからが面白そうなところなのに~」

リサ「ヒナは面白いかもしれないけど、アタシ達が恥ずかしいの!!/////」

香澄「あっ! 家に入った!」

「!!?」

 

 だが、映像は無情にも流れ続けた。

 

 

 

つづく

 



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第179話「一丈字家大混乱!(中編)」

 

夢リサ「おかえりなさ~い☆」

夢燐子「あ、紗夜さん。いらっしゃい…」

夢あこ「いらっしゃーい!」

 

 と、夢のリサ、燐子、あこが出迎えた。当然紗夜は驚きを隠せなかった…。本当にこの4人は結婚したんだと…。

 

夢友希那「ほら、早く上がって頂戴」

 夢友希那がそう急かす。

 

香澄「一丈字くんのおうちってあんな感じなんだ…」

日菜「なんかうちと全く同じな気がするけど…って、完全にうちじゃん!!」

沙綾「夢の中だから記憶があいまいになってるのね…」

 

 沙綾が苦笑いした。

 

夢紗夜「み、皆さん…」

夢リサ「どうしたの紗夜。顔色悪いよ?」

夢友希那「何か今日は記憶が曖昧になってるのよ…」

夢燐子「も、もしかして熱中症ですか?」

夢あこ「大変!」

夢紗夜「い、いえ。違うのよ…。最近色々忙しかったから、記憶が曖昧になっただけ…」

 

 と、何とか紗夜が誤魔化したが、リサも燐子もあこも本当に飛鳥の妻として振舞っていた為、驚きが隠せなかった。

 

夢友希那「しっかりして頂戴。そもそも今日ここでミーティングをしたいと言い出したのはあなたなのよ?」

夢紗夜「え゛っ」

 夢紗夜が驚きを隠せなかった。

 

夢あこ「そーだよ。ご馳走とかデザートとか用意してるんだよ?」

夢燐子「あ、あこちゃん…」

 

 と、確かにテーブルにはご馳走が並んでいた。

 

香澄「お、美味しそう…」

モカ「リサさんの料理は外れ無しだからね~」

リサ「あ、ありがとう…」

 リサが苦笑いした。

 

 すると紗夜がキョロキョロ向いた。

 

夢紗夜「そういえば一丈字さんは?」

あこ「ああセンパ…じゃなかった、飛鳥くんならもうすぐ帰ってくるよ」

夢紗夜「お仕事は…」

夢友希那「Roseliaのマネージャーの仕事よ。本当に休んだ方が良いんじゃないかしら?」

夢紗夜「!!?」

 

 これには他のメンバーも驚きを隠せなかった。

 

蘭「ろ、Roseliaのマネージャー…?」

モカ「えー」

 

夢紗夜「あ、そ、そうでしたね…」

 紗夜は何とか誤魔化すようにした。

 

夢リサ「それにしてもさ。飛鳥くんがマネージャーになってくれて本当によかったよね」

夢燐子「ええ…」

 と、飛鳥の事について話をしだした。

 

夢友希那「そうね。あの子がいる事で、Roseliaのパフォーマンスを最大限に引き出されるし、安心して働けるわ。音楽の方も経験者だから私達の悩みとかも理解してくれる」

夢あこ「特にライブの演出とかもアレですよね! もうなんていうかカッコいい!!」

夢友希那「此間美竹さんや玉井さんが見に来たけど、とても羨ましそうにしていたわね」

 

蘭「……」

リサ(夢の中でも張り合うなよ~~~~~~…)

 

 蘭が一気に不機嫌になった。ひまりやつぐみは蘭がこの場から帰らないか不安で仕方が無くなった。

 

夢リサ「プロガールズバンドランキングでも数年連続で1位だもんね!」

夢友希那「ええ。これも飛鳥のマネジメントのお陰ね」

夢リサ「そういえば此間、千聖が泣きながらうちのマネージャーと交換してって泣きついてたわね…」

 

千聖「!!?」

 

夢友希那「…白鷺さんには心の底から同情するわ」

夢リサ「もう私の女優人生お終いよ~って言ってたくらいだしね…」

夢あこ「此間テレビ見たけど、あこも恥ずかしいよ。あんな姿させられるの…」

「一体何をさせられたの!!?(大汗)」

 

千聖「…リサちゃん? 私、何か気に障るような事したかしら?」

リサ「紗夜に言ってよ~~~~~~!!!!!!」

 

 千聖がリサに対して殺気を放っていたので、リサが涙目で叫んだ。あこも燐子に抱き着いていた。

 

 その時だった。

 

「ただいま…」

「あっ! 帰ってきた!!」

 

 飛鳥の声がしたので、あこが出迎えた。

 

夢あこ「おかえりなさい! 紗夜さんもう来てるよ!」

夢飛鳥「そうか…」

夢あこ「あ、そうだ! 荷物持ってあげる!」

夢飛鳥「ありがとう」

 

 と、あこに対してため口になっていて、皆が驚いていた。

 

ひまり「完全に夫婦みたい…」

つぐみ「うん…」

巴「まだこの程度では認めんぞ…」

モカ「完全に小姑~」

 

 そして夢飛鳥が姿を現した。高そうなスーツを着ているものの、顔だけ写されていない状態だった。

 

夢紗夜「……!!」

夢飛鳥「紗夜さん。よく来てくださいました。ゆっくりしていってください」

 

 と、夢飛鳥が謙虚な姿勢を保った。

 

夢友希那「…社長になっても相変わらずね」

夢紗夜(社長…?)

 夢紗夜は心の中で喋るようにした。

 

夢飛鳥「そうですね…。今は社長と所属タレントみたいな感じですが、やはりプライベートに関しては学生の頃と変わらないので…」

 と、夢飛鳥は苦笑いした。

 

夢友希那「しかし妻相手に敬語で喋るのもどうなの?」

夢飛鳥「そういうご夫婦は結構いますよ」

夢あこ「あこはタメ口だよね?」

夢飛鳥「まあ、そうだね…。年下だし…」

夢燐子「…ずるいです」

夢飛鳥「え?」

 

燐子「!!?//////」

 本物の燐子はまた顔を真っ赤にした。

あこ「り、りんりん…」

友希那「分かるわ。女だものね」

燐子「ち、違います~!!!//////」

 

夢リサ「まあまあ。飛鳥くんも疲れたでしょう。お風呂入ってきたら?」

夢紗夜「お、お風呂…」

夢飛鳥「ああ。それなんですが、現場の近くに銭湯があったのでそこで入ってきました。ですが、着替えてきますね」

 そう言って夢飛鳥は去ろうとしたが、

 

夢飛鳥「あ、忘れるところでした」

「?」

 夢飛鳥が振り返った。

 

夢飛鳥「此間言ってたRoselia募金ですけど、予定通り私の故郷の医療従事者に寄付してきました」

夢紗夜(寄付?)

夢リサ「うん。分かったー」

夢あこ「1000万も寄付するなんてやっぱりかっこいいよね!」

夢リサ「飛鳥くんも憎い事するじゃない」

夢飛鳥「いえ、なんだかんだ言って育った故郷なので」

 

 と、夢飛鳥が苦笑いした。

 

香澄「そういえば飛鳥くんの地元ってどこだっけ? 広島?」

たえ「生まれた場所は大阪みたいだよ。そのあと転々としてたみたい」

香澄「へー…」

 

友希那「Roselia募金…」

リサ「これはいいアイデアじゃない?」

友希那「それにはもっと実力をつけないといけないわ…」

蘭(…Afterglow募金)

 

 

つづく



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第180話「一丈字家大混乱!(後編)」

 そして夢飛鳥が着替えて、食事が並べられた。

 

夢紗夜「す、すごい食事…」

夢友希那「食べれそう?」

夢紗夜「え、ええ。大丈夫ですよ」

 

 だが、量が多すぎる。

 

夢紗夜(いつもこれくらい作ってるのかしら…)

 と、夢紗夜は心の中でツッコミを入れた。だが、モニターで見ている皆としては何故重婚しているのかずっと気になっていた。

 

夢リサ「いやー。人数がこんなにも多いと作る量も多いよねー。ま、作り甲斐があるけど!」

夢友希那「そうね…。もし『適正婚姻法』がなかったらどうなっていたのかしらね…」

夢紗夜「…適正婚姻法?」

 紗夜が思わず声を漏らしていた。

夢友希那「あら、あなたが一番よく知っている筈だけど…」

夢燐子「や、やっぱりどこか具合が悪いんじゃ…」

夢飛鳥「最近ずっとバタバタしてましたもんね。ド忘れするのも仕方ございませんよ」

 夢飛鳥がフォローを入れた。

 

夢飛鳥「分からなかったら、素直に聞いてくださって大丈夫ですよ」

夢紗夜「あ、ありがとうございます…」

 

 すると他の4人が嫉妬しだした。

 

夢飛鳥「もう、それくらいで嫉妬しないでくださいよ」

夢友希那「別に…」

夢あこ「紗夜さんにだけは優しくなーい?」

夢飛鳥「気のせいだよ。それよりも適正婚姻法について説明しますね。まあ、早い話が男性の能力と適正によって複数の女性と結婚できるという法律です」

夢紗夜「そ、そんな法律が…!!」

 夢紗夜が驚きを隠せなかった。

 

夢友希那「ハーレムを作りたい国会議員が作った法律なのよ。しかもいい年した爺さん。ボケが来てるんじゃないかしら?」

夢燐子「ゆ、友希那さん…」

夢リサ「まあ、そのお陰で皆飛鳥くんと結婚できたことには感謝だけどねー。さ、早く食べよ食べよ!」

 

 と、食事にありついた。飛鳥と紗夜が隣同士で、他の4人が向かいの席に座っていた。

 

夢友希那「飛鳥。どう? ハンバーグを作ってみたの。美味しいかしら?」

夢リサ「野菜もちゃんと食べないとねー。リサ特製スペシャルサラダも食べてね☆」

夢燐子「あ、あの…スープ、作りました…」

夢あこ「あこはデザート買ってきたんだよ!? あとで一緒に食べようね!」

 

 ちなみにつけあわせのフライドポテトを出前で購入した。

 

夢紗夜「な、何か皆さん…優しいですね」

夢友希那「そうかしら?」

夢リサ「まあ、家でずっとぐーたらせずに、手伝ってくれるからね。こっちも尽くし甲斐があるってもんよ!」

夢燐子「…というより、飛鳥さんが全部やってくれるときもあります」

夢あこ「それはちょっとお嫁さんとしてどうかなーって思うんだ」

夢飛鳥「まあ、今はもう夫も家事育児に参加する時代ですし、出来る人がやればいいんですよ。何もしないというのは無しですが」

 紗夜が夢飛鳥に感心した。

 

モカ「道理でモテるわけだ~」

ひまり「女性への気遣いがちゃんと出来てるわね…」

巴「過剰に甘やかしすぎず…。もう少しで及第点だな」

つぐみ「と、巴ちゃん…」

 

夢あこ「あ、そうだ! ご飯食べ終わったらあこ、肩たたきしてあげる!」

「!」

夢燐子「それだったら私は足をマッサージ…」

夢リサ「そうだ。お小遣い足りてる? 言ってくれたら上げるよ?」

夢友希那「あら、欲しいものがあるなら私が買ってあげるわよ」

 

 と、超VIP待遇に驚く夢紗夜とバンドガールズ。

 

香澄「飛鳥くん。お小遣い制なんだ…」

有咲「いや、驚くところそこかよ!」

沙綾「まあ、浪費するよりかはずっといいけど…」

 

 沙綾がまた苦笑いした。

 

 そして食事が終わって、飛鳥が皿を洗おうとしたが、リサに止められて、あこと燐子に本当にマッサージされていた。

 

夢紗夜「ま、毎日こんな感じなの…?」

夢友希那「毎日じゃないわ。私達もそれほど暇じゃないけど…。あの子が頑張ってると、何かしてあげたくなっちゃうのよ。あなただって知ってるでしょう? この子の頑張りを…」

夢紗夜「……」

 

 この世界での飛鳥の事は全く知らないが、自分が知っている飛鳥も常に誰かの為に頑張ったので、友希那の言いたい事は理解できた。

 

夢紗夜「…そうですね」

 

*************************

 

 そして皿洗いが終わると、夢友希那、夢あこ、夢リサ、夢燐子の4人がテレビの前に立った。

 

夢紗夜「え、な、何が始まるの…?」

夢飛鳥「……」

 

夢リサ「それじゃあ今月も総選挙、やっちゃうわよ!」

 

 夢リサの発言にモニターがざわついた。

 

リサ「な、何よ総選挙って!!」

美咲「AKBじゃないですか…」

 

夢紗夜「そ、総選挙?」

夢友希那「ええ。毎月誰が飛鳥の妻としてのセンターにふさわしいか決めるのよ」

夢紗夜「そ、そんな事する必要がどこに…」

夢リサ「まあ、飛鳥くんも皆平等だって言ってくれてるんだけどね。だけどRoseliaはRoseliaらしく常にお互いを刺激していかないとって、4人で決めたの!」

夢紗夜「そ、そうなんですか…」

夢友希那「ちなみにセンターになったら…」

 皆が息をのんだ。

 

夢友希那「夫婦の営みが最優先されるわ」

 

 夢友希那の発言に衝撃が走った。

 

友希那「ちょ、ちょっと!!/////」

 友希那も流石にこの発言は恥ずかしかったのか、慌てている。

 

夢紗夜「ふ、夫婦の営み…//////」

 夢紗夜も顔を真っ赤にして、夢飛鳥は何も言わないでいる。

 

夢リサ「まあ、そういう事だね。本当は変わりばんこなんだけど、たまに色々あるからさ…」

夢燐子「で、ですが…センターに選ばれるという事はその、女性としてそれなりに意識されているので…////」

夢あこ「あこだってもうオトナだもん!」

夢紗夜「ち、ちなみに夫婦の営みって既に…」

夢友希那「何を言っているの。結婚してもうどれくらい経ったと思ってるの?」

夢リサ「そ、そうだねー…/////」

夢燐子「……」

夢あこ「りんりんはまだ一人じゃ恥ずかしいからあこと二人で…」

 

 と、結構生々しい話をしだした。この時美咲ははぐみの、黒服はこころの耳をふさいでいた。

 

リサ・燐子・あこ「……//////」

 当の3人は顔を真っ赤にして俯いていた。

 

ひまり「ちょ、巴!! 落ち着いて!!」

巴「殺してやる!! 一丈字殺してやる!! 純真なあこを返せぇええええええ!!」

つぐみ「ダメ~!!!」

 

 巴が暴れだしたのでひまりとつぐみが取り押さえていた。

 

夢友希那「さて飛鳥」

夢飛鳥「!」

 

夢リサ「誰をセンターにするか…」

 

 

夢友希那・夢リサ・夢燐子・夢あこ「選んで頂戴(ください)!!!」

 

 すると友希那がスイッチをOFFにした。

 

(で、ですよねー…)

 

*************************

 

 その夜

 

紗夜「遅いわね日菜…」

 紗夜が自宅で日菜の帰りを待っていた。すると日菜が帰ってきた。

 

紗夜「日菜。遅かったじゃない。一体何してたの?」

日菜「ご、ごめーん。ちょっと寄り道してた…あはははは…」

 日菜が露骨に視線を逸らした。

紗夜「?」

日菜「お、おねーちゃん。もうお風呂入った?」

紗夜「え、ええ…」

日菜「それじゃ入ってきまーす」

 と、逃げるように風呂に入った。

紗夜「…な、何なのかしら?」

 

 

 そして後日

紗夜「おはようございます。皆さん」

 と、紗夜が2年1組の教室にやって来るが、彩、千聖、燐子、花音が気まずそうに見ていた。

紗夜「な、何ですか…?」

花音「う、ううん!!? 何でもないよ!?」

燐子「そ、そうですよ…」

 と、燐子がそう言うがとても顔が赤かった。

紗夜「…白金さん?」

千聖「何でもないのよ?」

紗夜「え、でも…」

千聖「何でもないのよ?」

 

 千聖が圧力をかけると、紗夜は何か嫌な予感がした。

 

 2年2組

 

紗夜「おはようございます。少し宜しいですか?」

リサ「あ、お、おはよう紗夜…」

 と、リサが露骨に視線を逸らした。

紗夜「…見ました?」

「!?」

 紗夜の発言に麻弥、薫がぎょっとした。

友希那「見たって…夢の話かしら?」

リサ「ちょ、友希那ぁ!!」

紗夜「……!!!」

 

 

 その後…

飛鳥(最近紗夜先輩が学校に来てないけど、どうしたんだろ…)

 紗夜は数日間寝込んだ。

 

 

おしまい

 



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第243話「友希那の悪夢」

 

 

 それはある日のことだった。

 

こころ「何か面白いことはないかしら」

はぐみ「そうだねー」

 

 こころとはぐみがカフェテリアで会話をしていた。特にやることもなく、何か面白いことがないか考えていた。

 

こころ「あら?」

 

 こころが何かを発見した。

 

はぐみ「どうしたのこころん」

こころ「あんなところに友希那が寝てるわ」

 

 こころとはぐみがある方向を見ると、友希那がテーブルに突っ伏して寝ていたが、何やらうなされていた。

 

はぐみ「な、なんか苦しそうだよ…?」

こころ「一体どんな夢を見てるのかしら?」

 

 するとこころは装置を取り出して、友希那の頭にはめた。

 

はぐみ「こ、こころん!」

こころ「夢ってたまに覚えてないときがあるのよ。もし友希那が思い出せなかった時のために、ちゃんと解決させてあげる必要があるわ」

 

 そして夢を読み取ることができたのか、ブザーが鳴った。こころは装置を取り外し、友希那を起こした。

 

こころ「友希那! 友希那!」

はぐみ「しっかりして湊さん!」

友希那「はぅ!!」

 

 友希那が起き上がった。

 

こころ「どうしたの? だいぶうなされてたわよ?」

友希那「い、いえ…なんでもないわ…ごめんなさい…」

 

 そう言って友希那はフラフラと去っていったが、もうほぼ死にかけていて、今にも泣きそうだった。

 

はぐみ「ど、どうしたんだろう…湊さん」

こころ「とても心配だわ! この装置を…」

「どうしたの二人とも」

 

 友希那の幼馴染であるリサがやってきた。

 

はぐみ「リサさん!」

こころ「友希那がとても元気がなかったのよ」

リサ「え? 友希那が!?」

はぐみ「さっきまであそこで寝てたんだけど、とてもうなされてて…」

リサ「へ、へえ…」

こころ「あまりにもうなされてたから、黒服の人たちに作らせたこの夢の中を見る装置で友希那の夢を見てみるわ!」

リサ「いや、ちょっと待って! そんなのあるの!?」

こころ「あるわよ?」

 

 弦巻財閥のすさまじい力を垣間見たリサは何とも言えない気持ちになった。

 

リサ「そ、そう…。あたしもちょっと気になるから見せてもらってもいいかしら…」

こころ「いいわよ?」

「どうしたのどうしたの?」

 

 と、ほかのメンバーも勢ぞろいした。

 

********************:

 

 弦巻家のシアタールーム。そこには友希那以外のバンドガールが全員集まっていた。

 

リサ「こ、こんなに集まる必要あるかなぁ…?」

香澄「いや、だって友希那さんが元気ないって気になるじゃないですか!」

蘭(…その前に湊さんのプライバシーを覗くのはどうかと)

こころ「それじゃ、さっそく再生してみるわ…」

 

 こころが再生ボタンを押すと、モニターには友希那の通学路が映し出されていた。

 

たえ「いたって普通…」

 

 たえがつぶやいた次の瞬間、猫が移った。

 

りみ「あ、猫ちゃん…」

 

 友希那の目線で映像が映っているのか、映像は猫に向けられた。だが次の瞬間、

 

「う~~~~~~~~」

 

 猫は何やら唸り声をあげて威嚇をしていた。それに友希那がショックを受けたのか、視線が揺らいでいた。

 

リサ(あ、なんとなく察しがついた)

 

 友希那がうなされていた理由は、大好きな猫に嫌われる夢を見ていたからだったとリサは判断した。

 

 そしてその後も学園に行くために登校したが、その途中で何匹も猫と遭遇したが悉く猫に嫌われていた。

 

モカ(あ~。そりゃうなされるな~)

 

 モカも察しがついた。

 

 そして学校生活は普通だったが、猫にだけなぜか嫌われていて、会うなり逃げられるか唸られるかしていた。

 

(あ、そういうことか…)

 

 ほぼ全員が察しがついた。

 

あこ「友希那さんかわいそう…」

燐子「そ、そうだね…」

 

 そして友希那はとぼとぼと歩いて帰り、泣きそうになっていると、

 

「にゃーん♪」

 

 という猫の声がした。今までとは違ってとてもかわいらしい声である。

 

はぐみ「今の子はとても人懐っこいよ!?」

美咲「…なんか嫌な予感が」

 

 友希那はやっと自分は猫に嫌われていないと自信を持て、後ろを振り向いたが、猫は友希那を遠すぎて…。

 

「なんだ?」

 

 飛鳥の声がした。友希那が後ろを振り向くと、そこには猫に囲まれている飛鳥の姿があった。

 

飛鳥「エサなら持ってないよ」

「にゃーん♡」

「なーん♡」

 

 猫たちは飛鳥にメロメロになっていて、何かをずっとねだっていた。その光景を見て友希那は絶望した。

 

彩「な、なんかものすごい甘えっぷり…」

千聖「もしかしてあの猫たち…女の子かしら」

麻弥「え?」

 

友希那「あ、一丈字くん…」

 

 友希那が飛鳥に近づこうとすると、猫たちが友希那に対して一斉に威嚇し始めた。

 

リサ「やめたげて!! 友希那は悪い子じゃないの!!!」

 

 リサはいたたまれなくなったのか、映像に向かって叫びだした。

 

友希那「そ、そんな…」

 

 友希那が絶望していると

 

「湊さん」

 

 後ろから蘭の声がした。そして自分の声を聴いた蘭はものすごく嫌な予感がした。そして友希那が蘭の方を見ると、蘭はふっと笑って、

 

夢蘭「ドンマイ」

 

 そしてそこで映像が途絶えると、なんともまあ気まずい雰囲気になった。

 

 

モカ「蘭~」

ひまり「いくら湊先輩と張り合ってるからって…」

巴「さすがにひどいぞ…」

蘭「ちょっと待って!! これ夢の中のあたしだから!! どうしろっていうの!!? むしろ泣きたいのこっちなんだけど!!」

つぐみ「だ、大丈夫だよ蘭ちゃん。皆わかってるから…」

 

 蘭が涙目で弁解すると、つぐみが苦笑いした。

 

リサ「道理で友希那が元気がなくなるわけだ…」

 

 そう言ってリサは苦笑いしたが…。

 

**************

 

飛鳥「あの、湊先輩…」

友希那「……」

 

 飛鳥は友希那に詰め寄られていた。中庭で普通に遭遇しただけなのだが、自分よりもものすごく猫になつかれていてジェラシーを感じていた。とても詰め寄っているときの顔はとても怖かった。

 

 そしてこの後、壮絶な鬼ごっこが始まった。

 

 

おしまい

 



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飛鳥と何かがあったバンドガールズ
第17話「飛鳥と何かがあったRoselia」


『飛鳥と何かがあったRoselia』

 

 

 ある日のことだった。友希那、紗夜、リサ、燐子、あこの5人は飛鳥の家に遊びに行こうとしたが…。

 

「一丈字様は現在外出されております」

 

 エントランスホールでコンシェルジュに門前払いを食らっていた。飛鳥は色々な事情でホテル暮らしをしており、飛鳥に用がある時はこのコンシェルジュを通さないといけないのだが、大体いない事が多い。

 

 飛鳥がいないと分かった友希那達は仕方なしにホテルを出ることにした。

 

リサ「ホテルで暮らしたことがあるって事は聞いたことがあったけど…林グループのホテルに泊まってたんだね…」

あこ「お金持ちなんだねー…」

燐子「そ、それはそうと…。やっぱりちゃんと連絡を取ってから来たほうがよかったのでは…」

 

 と、燐子は困った顔をして他の4人に言うと、紗夜は確かに…と言わんばかりに目を閉じた。

 

友希那「朝目が覚めたら私たちが眠っていたというおいしいシチュエーションを自ら捨てるなんて、流石私が見込んだだけの事はあるわ…」

 

 友希那は飛鳥のことを恨めし気に思ったと同時に、ときめいていた。

 

 Roselia。実力派と名高いガールズバンドとして有名だったが、それがいつの間にか一丈字飛鳥という人間に魅かれていた。

 

あこ「DANDAN心魅かれてくって感じだね」

リサ「ふぃ、FIELD OF VIEW…」

 

 それからというもの、音楽一筋だったボーカルの湊友希那は完全にポンコツになってしまった。これが俗にいう「改悪」である。本当に申し訳ない。

 

 なので、『もしもRoseliaが同じ男を好きになったら』というシチュエーションでお楽しみください。

 

リサ「ところで飛鳥くんどこ行ったんだろ。まだ午前7時なのに」

友希那「電話するわ」

燐子「いや、メールのほうが…」

 

 燐子の忠告を無視して友希那は飛鳥に電話を掛けた。燐子は青ざめて、更にまずそうな顔をした。

 

『もしもし一丈字です』

 

 飛鳥と電話が繋がると友希那は不満そうにした。

 

友希那「もしもし。あなた今どこにいるの?」

飛鳥「メカノスアイランドです」

友希那「メカノスアイランド!?」

 

 メカノスアイランドとは、海辺にある人工島でアウトレットモール等がある。わかりやすく言えば兵庫県のポートアイランドみたいな場所である。

 

友希那「そこで何してるの?」

飛鳥「あ、今日ちょっとそこで買い物があるんですけど…どうされました?」

 

 飛鳥は友希那の状況を察した。

 

飛鳥「まさかとは思いますけど、私の家の前に来てます?」

友希那「流石ね。大当たりよ」

飛鳥「いや、こんな時間に何されてるんですか」

 

 確かに…と紗夜、リサ、燐子はそう思った。確かに言われてみればそりゃそうなるだろうなと思ったし、もし自分が飛鳥の立場だったら…普通に迷惑だとも思った。

 

友希那「それは…言わせるんじゃないわよ//////」

飛鳥「分かりました」

 

 すると紗夜がある事に気づいた。

 

紗夜「ちょ、ちょっと待ってください!! メカノスアイランドにいるんですか!?」

飛鳥「ええ…。あ、日菜さんですか?」

紗夜「!!」

 

 そう、実は日菜をはじめとする「Pastel*Pallets」がメカノスアイランドでライブをするのだ。

 

飛鳥「そういやダシマモールでライブやるって言ってましたね」

紗夜「ええ…。もしかしてダシマモールに行かれるのですか!?」

飛鳥「いいえ。ショッピングモールから遠く離れた場所に行くので、多分会うことはないと思います」

紗夜「…あの子の引きの良さは尋常じゃないんですよ」

 

 紗夜の言葉に飛鳥は苦笑いした。

 

飛鳥「考えすぎだと思いますよ。それにライブは結構早い時間ですし、ゆっくりしゃべる時間もないと思います」

友希那「その買い物はいつ終わるのかしら?」

飛鳥「分かりません」

友希那「出来るだけパスパレに会わないようにして頂戴」

飛鳥「それは何故ですか?」

友希那「な、何故って…女の子に言わせる気?」

飛鳥「言わせるつもりはございませんが、人にお願い事をする時は、それなりの理由が必要ですよ。湊先輩ほどの人でしたら、ご理解頂いていると思いますが」

友希那「友希那」

飛鳥「?」

 

友希那「私のことは友希那って呼んで頂戴」

飛鳥「まだ早いですね」

 

 飛鳥はやんわりと否定した。

 

飛鳥「Roseliaファンの方々から全然認めて頂いていないので」

友希那「Roselia本人が認めてるのよ」

飛鳥「そういう訳には…あ、もうそろそろ切りますね」

紗夜「もしかして日菜が近づいてきてるのですか!?」

飛鳥「全員ですね。ロケバスが何故かこっちに来てます」

友希那「早く逃げて!!」

飛鳥「あ、はい。それでは」

友希那「あ、電話は…」

 

 飛鳥が電話を切ると、ゆきな達はシーンとした。

 

友希那「全くあの子は…!!」

リサ「ま、飛鳥くんらしいけどね」

 

 リサが苦笑いするが、ゆきなが悶絶した。

 

友希那「そういう所が好きぃいいいいいいいいいいいいいいい」

 

 これを見ている友希那ファンの皆さん。誠に申し訳ございません。

 

 

 その頃の飛鳥

 

飛鳥「どうしてここが分かったんだろうな…。あ、そっか。まだ時間あるから見て回ってるんだな」

 と、飛鳥は陰に隠れて瞬間移動を行ったが、すぐに千聖から電話がかかった。

 

千聖「あなた、今どこにいるの?」

飛鳥「あー…メカノスアイランドです」

千聖「そこから一歩も動かないでね?」

飛鳥「お気遣いな」

千聖「動かないでね?」

飛鳥「お断りします」

 飛鳥が通話を切った。

 

千聖「あの子ったら…!!」

 

 千聖はロケバスの中で憤慨していた。ほかのパスパレのメンバーもいた。

 

日菜「多分おねーちゃんが近づかないように言ったんだな…」

麻弥「それもそうですけど、やっぱりジブン達に気を遣って…」

千聖「くっ…!! 芸能人というのが不利になるなんて…!」

 

 と、千聖が歯ぎしりした。

 

イヴ「寂しいデス…」

千聖「それだ」

麻弥「いや、やめたほうがいいですよ。一丈字さんそういうの鋭いですから…」

彩「やっぱりここは一番普通な私が…」

千聖「抜け駆けするなんてそれでもアイドルなの?」

彩「メンタル強くないと芸能界は生き残れないよっ!!」

 

 …パスパレもまた、何かがあって飛鳥に心魅かれていて、Roseliaとはすっかりライバルになってしまった。ましてや日菜と紗夜は双子の姉妹なので、なんかもういろいろやばいことになっている。

 

 

 そんな彼女たちの思いを知ってるのか知らないのか、この男は今日も我が道を行く。

 

 

飛鳥「こっちの意見を尊重してくれる人がいいかなぁ…」

 

 

おしまい

 

 

 



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第21話「飛鳥と何かがあった日菜」

 

 ある日の事だった。

 

「ねー飛鳥くーん! いいでしょー!」

 

 バンドリ学園の食堂で、Pastel*Palettesの氷川日菜と、超能力が使えること以外はごく普通の高校生の一丈字飛鳥がいたが、日菜が飛鳥に縋りついて、駄々をこねていた。飛鳥は困惑した表情を見せていた。まるでガルパピコ第24話で今の飛鳥と同様に日菜に駄々をこねられている紗夜のように…。

 

日菜「おねーちゃんだけずるい~!! あたしともプールに行こうよねえ~!!!」

飛鳥「いや、あなたアイドルでしょう。もう少し自分の立場を考えてくださいよ…」

日菜「おねーちゃんだってアイドルみたいなもんだよ? ていうかあたしより綺麗で可愛いもん! おねーちゃんだけずるいよ~!」

 

 と、ごねられていた。実は先日Roseliaの5人とトコナッツパークに遊びに行ったのだ。あこが飛鳥と仲良くしたいというのを口実に、メンバー全員が飛鳥とお近づきになろうという普通に考えてありえない状況になっていた。

 

 そして日菜も当時から行きたがっていたが、仕事が入っていて、その仕事が全くと言っていい程つまらないものだった。

 

 で、紗夜がプールから帰ってくると口には出さないものの、所々で優越感に浸っていて、こうやってせがんでいた。まるでスネ夫が自慢して羨ましがり、ドラえもんに頼るのび太のように…。

 

 

 ちなみに男子生徒達は「それだったらオレが!」と立候補しようとしたが、日菜本人がるんっってしないからと断っていた。

 

 

 

飛鳥「…そもそも、Pastel*Palettesって5人全員でオフ揃う事ってあるんですか? バイトしてるって聞いてますけど」

日菜「うん。だからあたし一人だけだよ」

飛鳥「わあ」

 

 日菜が当然のように言い放つと、飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「いやいや。流石にマズいでしょう」

日菜「大丈夫だよー。うちの事務所そういうの大丈夫だから」

飛鳥「ファンが大丈夫じゃないんですよ。そして私自身も…」

 

 どこまでもマイペースな日菜に飛鳥は困惑した。

 

日菜「とにかく行こーよー」

飛鳥「二人きりじゃなかったら考えますけど…」

日菜「あたしとデートするの、嫌なの?」

飛鳥「デートってカップルじゃないんですから…」

 飛鳥が困惑していると、

 

「どうしたの? こんな所で」

 千聖が現れた。

 

飛鳥「白鷺先輩」

千聖「こんな所で女の子を縋らせるなんて感心しないわね」

飛鳥「どうしてこうなってると思いますか?」

千聖「あなたがつれない事を言ったからでしょう」

日菜「そーなんだよ! あたしがプールに行こうって誘ってるのに飛鳥くんが…」

千聖「それはあなたが悪いわ」

日菜「ええっ!!」

 

 千聖の掌返しに日菜は驚きが隠せなかった。

 

飛鳥「だから言ったでしょう…。一人がスキャンダル起こすと…」

千聖「私を差し置いて何してるのかしら?」

飛鳥「あなたが何言ってるんですか」

 

 千聖の言葉に飛鳥が突っ込んだ。女優として同じPastel*Palettesのメンバーとして止めると思っていたのに、まさかの言葉がかえってきて、失望に近い感情を持っていた。

 

千聖「飛鳥くんとプールに行くのは私よ」

日菜「えーっ!! そんなのダメ!!」

飛鳥「……」

 

 千聖と日菜の言葉に飛鳥は困惑して二人を見つめた。一人の男を巡ってアイドルグループのメンバー同士が仲が悪くなんて最悪過ぎて言葉にできなかった。

 

飛鳥「そういや氷川先輩」

日菜「日菜!」

飛鳥「いつ頃行かれる予定なんですか?」

日菜「土曜日!」

千聖「ちょっと待って。私その日仕事があるのよ」

日菜「頑張って!」

千聖「頑張れじゃないわよ。頑張ろうにも頑張れないわよ。私が汗水流して仕事をしてる間、あなたは飛鳥くんとプールなんて、なんて罰ゲームよ」

日菜「早くプールに行きたいよー」

飛鳥「…そんなにプールに行きたいんですか?」

 飛鳥が困惑した。

 

日菜「うーん…別にプールじゃなくても、飛鳥くんと一緒ならいいんだ」

飛鳥「……」

日菜「でもあたしの水着。見たいでしょ?」

飛鳥「いや、別に見たいとは」

日菜「そこは空気を読むところだよ?」

飛鳥「すみません。ここで滅茶苦茶見たいです! なんて言ったらこの仕事降ろされるんで」

千聖「そうよ。その辺の男子と一緒じゃないの」

 飛鳥の言葉に千聖も便乗した。

日菜「いいもん。飛鳥くんなら」

飛鳥「心を開いてくださって何よりです」

 日菜の言葉に飛鳥は苦笑いした。

 

千聖「とにかく二人きりでプールにいくなんてダメ」

日菜「分かった。じゃあ彩ちゃんか麻弥ちゃんかイヴちゃんを誘うね!」

千聖「私一人だけ仲間外れにする気?」

日菜「じゃあ一人だけ」

千聖「仕方ないわ」

 千聖が一息ついた。

 

千聖「3人で行きましょう。日曜日なら空いてるわ」

飛鳥「あ、行くというのは変わらないんですね」

 飛鳥が困惑すると、

 

千聖「不満かしら?」

飛鳥「いえ、そんなに私とプールに行きたかったんだなーと思いまして」

千聖「……」

飛鳥「何ですか」

千聖「ちょっと自意識過剰ね」

飛鳥「ああ、そうですか…」

 

 千聖の言葉に対し、演技だと分かった飛鳥が困惑した。

 

千聖「あまり調子に乗ってはダメよ?」

飛鳥「ええ。それはもう」

日菜「千聖ちゃん。そんな意地悪ばっかり言ってると、周りの男子たちが自分にもチャンスがあるって思っちゃうよ?」

飛鳥「結構狙ってますね」

 日菜がいつも通りに注意し、飛鳥が見渡しながら喋ると、男子生徒達が獲物を狙うハンターのような目をしていた。

 

千聖「ごめんなさい。私が間違ってたわ」

飛鳥「そんなに嫌ですか…」

 千聖が即座に謝ると、飛鳥は困惑した。

 

日菜「それじゃ決まりだね! 日曜日はプール!!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は知っていた。朝テレビで見た天気予報で、日曜日は雨だと…。

 

 そしてどうなったかというと…。

 

飛鳥「雨だ…」

 飛鳥は家から窓の景色を見ると、天気が悪く雨が降っていた。

 

飛鳥(まあ、これで諦めるだろう…)

 そう思っていると、日菜から電話が来た。

 

飛鳥「はい、もしもし一丈字です」

日菜「あ、もしもし飛鳥くん?」

飛鳥「日菜先輩。雨降ってますけど…」

日菜「うん。だから場所変更! 水着持ってきてね!」

飛鳥「あ、はい…って、え?」

日菜「ちなみに集合場所は予定通りだよ!」

 

 結果的に遊ぶことに変わりはなかった飛鳥。どんな事が待っている事やら…。

 

 

 

つづく?

 



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第22話「飛鳥と何かがあった日菜と千聖」


 前回までのあらすじ

 姉・紗夜からめちゃくちゃ自慢された日菜は飛鳥をプールに連れ出そうとし、それが千聖にバレて3人で行く事に。
 
 当日、雨が降っていて、トコナッツパークへ行くのは絶望的だと思われたが、日菜はちゃんと手を打っていた…。


 

 

 

 

 集合場所。飛鳥は林グループが用意した専用のタクシーに乗って集合場所へ。何故タクシーを利用したかというと、遅れない為と、服を濡らさない為だった。本当は歩いても良かったのだが、先輩達よりも遅れる訳にはいかないという飛鳥の生真面目さがあった。

 

 約束の時間まで30分まである状態で飛鳥は来ていたが、日菜が既に来ていた。

 

飛鳥「おはようございます」

日菜「おはよー…って、タクシーで来たの!?」

飛鳥「ええ。何か問題でもございますか?」

 飛鳥が普通に話しかけた。

 

日菜「結構お金持ちなんだねぇ…」

飛鳥「そんな事ございませんよ。普段は節約してるもので。それよりも白鷺先輩はまだ来られてないんですか?」

日菜「来てないよ。あたし達が速すぎたんだよー。それにしても早かったけど、そんなに楽しみだった?」

飛鳥「というより、遅れる訳にもいきませんからね…」

日菜「そんな意地悪言わないよー。千聖ちゃんは厳しいけど」

「厳しくて悪かったわね」

 

 と、千聖が現れた。

 

日菜「ち、千聖ちゃん!!」

飛鳥「おはようございます」

千聖「ちなみに貴方達よりも15分前に来てたわよ」

飛鳥「…流石に早くないですか?」

日菜「それだけ飛鳥くんとプールに行くのが…」

千聖「ゴ、ゴホン! それよりも日菜ちゃん。トコナッツパークに代わるスポットはちゃんと用意してるのよね?」

日菜「もっちろん!!」

 

 と、3人が移動しようとしたが…

 

飛鳥「……」

日菜「どうしたの?」

飛鳥「いや、あそこに紗夜先輩が…」

日菜「えっ!!?」

 

 陰から紗夜が見張っていた。

 

日菜「おねーちゃん!!」

千聖「自分だって誘った癖に…」

飛鳥「どうします?」

日菜「大丈夫だよー。おねーちゃん今日Roseliaの練習があるから、見守るくらいだよー」

飛鳥「…だといいんですけどね」

 

 飛鳥は友希那達の自由奔放ぶりを知っていた為、本当にそれで済むかどうか不安で仕方なかった。

 

日菜「さ、行こう!」

飛鳥「うおっ」

 日菜が飛鳥の手を引っ張ると、千聖もついていった。

 

紗夜(日菜…! 絶対何かするに違いないわ!! だけどRoseliaの練習が…!!)

「中止にすべきね」

紗夜「み、湊さん!!」

友希那「こうなってしまっては一大事だわ。リサと燐子とあこには悪いけど、モヤモヤしたままでは練習にならないわ」

紗夜「……!」

友希那「リサたちには予定通り練習して貰いましょう。私は自分自身にプレッシャーをかけ、それを練習にぶつける事にするわ」

紗夜「湊さん…」

友希那「それじゃ、リサたちに宜しく」

紗夜「いや、待ってください」

 友希那が行こうとすると紗夜が止めた。

 

紗夜「何一人だけ抜け駆けしようとしてるんですか…!」

友希那「このまま飛鳥を取られるなんて黙ってみてられないわ。あなたこそいいの? 今度こそ日菜に取られるわよ?」

 この時、紗夜のトラウマが蘇った。

 

紗夜「そうですね。もう行くしかありません!」

「コラコラ―。何やってんの」

 リサが現れた。

 

リサ「急に来たら飛鳥くんびっくりしちゃうし、フェアじゃないでしょ」

 リサが友希那と紗夜を連れていった。

紗夜「は、離してください!!」

友希那「このままじゃ練習に集中できないわ!」

リサ「飛鳥くんは私みたいに、大人の対応が出来る子が好きみたいよ」

 空気が止まった。

友希那「…は?」

紗夜「それは聞き捨てなりませんね」

リサ「だってそうじゃないの」

 

 リサの言葉に友希那と紗夜が激怒し、リサが開き直るが…。

 

紗夜「私のどこが子供っぽいんですか!!? 湊さんはともかく何故私が!!」

リサ「そこ!!? てっきり私みたいにの所で怒ってたのかと思ってた!」

友希那「あなたの大人さは素直に認めるし、飛鳥が大人の対応が出来る女が好みだというのは、重々分かっているわ。だけど子供扱いする事ないでしょう!」

紗夜「そうです!! 子供っていう方が子供なんですよ!!」

リサ「えー…な、何かゴメン…」

 

 友希那と紗夜の反論(?)にリサは困惑しながら謝った。そしてそれを遠巻きに見る燐子とあこ。

 

あこ「…あこ、このRoseliaだったら解散してもいいと思う」

燐子「そ、そんな事言わないで…」

 

 目の前にいる友希那達のカッコ悪すぎる姿に、あこはすっかり呆れてしまい、燐子はフォローしつつも、ちょっと呆れていた。

 

あこ「練習できるかなぁ…」

燐子「……」

 

 あこの問いに燐子は更に困り果てた。で、結局練習は…しなかった。

 

友希那「こうなったら飛鳥達を追いかけるわよ!」

 

 その頃、飛鳥達は電車に乗っていた。

 

飛鳥「…紗夜先輩、来るんですかね」

日菜「絶対来るね」

千聖「でしょうね」

 

 と、話をしていた。

 

日菜「でもまあ、おねーちゃん達が来ても大丈夫だよ!」

飛鳥「なんでです?」

日菜「だって、おねーちゃんの事堂々と弄れるし」

飛鳥(あっ…)

千聖(この子の才能マンぶりがたまに憎い…)

 

 日菜の悪だくみに飛鳥と千聖は紗夜の完全敗北を予想した。

 

 そしてついた場所は雨湯ハウス。雨でも遊べる温泉ランドであり、プールも存在する。

 

飛鳥(…あま湯ハウス)

 今は閉店してしまったお店である。

 

日菜「さあ、プールに行こう!!」

 と、3人が移動すると、その数十分後にRoseliaがやってきた。

 

友希那「結局練習をサボってしまったわ」

紗夜「そうですね」

あこ「今のあこ達、何かザコキャラみたいでカッコ悪ーい」

リサ「ロケット団みがあるよねー…」

燐子「あ、あのう…」

友希那「ダメよ。飛鳥にアピールするつもりでしょう。自分達だけ好感度を上げるなんて許さないわ」

 

 あこと燐子は帰ろうとしたが、友希那に止められてしまった。ちなみにどさくさに紛れてリサもあこと燐子に便乗して帰ろうとしたが、すっかり思惑を見破られてしまった。

 

紗夜「そうです。それに、これはあくまで風紀を乱さない為に見張ってるだけで…」

 

 いや、全然説得力ないから。と他の4人はそう思った。

 

あこ(センパイが見破ってくれることを信じるしかないぞよ…)

燐子(信じてますよ…! 一丈字くん…!!)

 

 その頃の飛鳥は…

 

飛鳥(…大変だなぁ。白金さんと宇田川さんも)

 

 察していた。

 

 

つづく

 



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第23話「飛鳥と何かがあった日菜と千聖とRoselia」



 前回までのあらすじ

 日菜と千聖に連れられて温泉ランドにやって来た飛鳥。だが、飛鳥の独占を良しとしないRoseliaが追尾していた。こんな事したら飛鳥に嫌われるという事は分かっていたあこと燐子は、飛鳥が自分達の事を信じてくれると願っていたが、飛鳥はちゃんと分かっていた。

飛鳥「実は白金さんからメール来てた」

 さて、友希那達の運命は!!


 

 

 温泉ランドに入って、当初の目的だったプールに行こうとしたが…。

 

日菜「あ、そうだ! 折角だからまずカラオケ行こうよ!」

飛鳥「えっ…」

日菜「飛鳥くんの唄、聞きたいなー」

 と、飛鳥達はカラオケルームに移動した。

 

 その後にRoseliaがやってきて、

 

友希那「さて、プールに行くわよ」

紗夜「そうですね。日菜の事ですからすぐにプールに行くと思いま…」

 紗夜が気づいた。

リサ「ど、どうしたの?」

紗夜「いえ、あの子の事だから恐らくプール以外の所に行ってます。そういう子なので…」

友希那「そうね。私達を待ちぼうけさせるための作戦かしら」

リサ「そ、それじゃ行きそうなところは…」

 紗夜がパンフレットを見た。

 

紗夜「カラオケね」

「!!」

 

友希那「考えたわね。カラオケだと中に入り辛いわ」

紗夜「下手をすれば他の人に迷惑をかけてしまいます…」

リサ「だけどいつまでもカラオケにいたら、当初の目的のプールは…」

紗夜「その場合、また今度ってあっけらかんとするんですよ。そういう子ですから…」

 

燐子・あこ「……」

 すっごい時間の無駄な気がする…。と燐子とあこがそう思っていた。プールの時、凛々しい顔で行くアトラクションの順番を決めていた時の紗夜は一体どこに行ってしまったのかとも思っていた。

 

友希那「もしかしたら入れ違いになるかもしれないわね…」

あこ「あのー。それだったらゲームしてていいですか?」

リサ「…まあ、ここで無駄な時間を過ごすよりかはいいかもね。練習もキャンセルしちゃったし」

紗夜「仕方ありませんね。それでしたらここで勉強でもしましょう。湊さん」

友希那「興味ないわ」

紗夜「宇田川さんの手前、そういう事が言えますか?」

リサ「そうだね。ちょっとそろそろ勉強した方が…」

 

 と、友希那は勉強させられた。

 

 暫くして…

 

「おい! Pastel*Palettesの氷川日菜と白鷺千聖がいるぞ!!」

「マジか!!?」

「しかも宴会場でミニライブやるみたいだぞ!!」

 

 と、男性客が騒いでいで、大宴会場の方に向かっていた。それを見てRoseliaが驚いていた。

 

友希那「行きましょう!!」

紗夜「ええ! ですが、今言った所はちゃんとやってきてくださいね!」

リサ「チェックするからね!」

友希那「くっ…! わ、分かったわよ!!」

 

 そしてRoseliaが大宴会場に行こうとすると、宴会場の前に沢山の人だかりがいた。

 

リサ「どうしたのかしら」

紗夜「やはりアイドルなだけあって、入場制限があるのでしょうか…」

 すると友希那は構わず行こうとした。

リサ「ちょ、友希那!」

 

友希那「すみません」

「何…」

友希那「…通してくれませんか?」

 

 友希那が上目遣いで男性客に色仕掛けを使った。すると即座に道を譲った。

 

紗夜「なんて愚かな…」

リサ「まあ、女もイケメンに弱いし、お互い様って事で…」

紗夜「まあいいです。行きましょう」

 

 と、ちゃっかり紗夜たちも移動した。

 

 そして友希那達が飛鳥達を確認すると、飛鳥達は舞台の上に立っていた。

 

飛鳥「えー。本日は御招き頂きありがとうございます。バンドリ学園1年の一丈字飛鳥です。そして…」

日菜「Pastel*Palettesの氷川日菜と!」

千聖「白鷺千聖です」

 

 と、3人が挨拶をすると大歓声が上がった。席に座っていたのは強面のおっさん達ばかりだった。数人ほど女性がいる。

 

飛鳥「えー…。まさかここで再会するとは思いもしませんでしたが、皆さんお元気そうで何よりです」

 飛鳥が苦笑いした。実は宴会場にいるおっさん達は、飛鳥の師匠である古堂和哉の舎弟(押しかけ)が社長をしている会社の従業員達だった。

 

飛鳥「それでは一曲披露をしてほしいというリクエストにお応えいたします。曲は教育番組「天才てれびくんMAX」2009年度テーマソング「夢のチカラ」」

 

 と、飛鳥が用意されていたピアノの前に座り、日菜と千聖がマイクを持った。日菜と千聖の歌声は勿論、そんな二人の歌声を支える飛鳥の歌声は聞いていた人間たちを魅了した。

 

 パート

1番:日菜・千聖

2番:飛鳥

Cメロ:日菜・千聖 → 飛鳥

サビ:日菜・千聖

ラストサビ:3人

 

友希那「……」

 友希那は涙を流していた。

紗夜「…湊さん?」

友希那「ちゅき…」

紗夜「湊さん!!?」

 

 突然のキャラ崩壊に4人が驚いた。

 

リサ「ゆ、友希那が壊れた…!!」

あこ「今のは可愛かった」

燐子「……」モヤモヤ

 

 ライブは大成功し、オーディエンスからは惜しみない拍手が送られた。日菜と千聖が飛鳥に対して笑みを浮かべると、飛鳥も浮かべた。

 

 そしてRoseliaは嫉妬した。

 

 ライブが終わり、従業員達と別れた。

 

日菜「あー! 楽しかったー!!」

飛鳥「事務所的に大丈夫なんですか…?」

日菜「だいじょーぶだよ。お金を受け取ったわけじゃないし」

千聖「そうね」

 と、3人が歩いていると、

 

日菜「あ、そうそう」

「?」

 

日菜「いい加減出てきたら? おねーちゃん達」

飛鳥「……」

 

 すると、友希那達が現れた。

 

飛鳥「やはりいらしてたんですね…」

あこ「あこは止めようとしたんだよ!?」

飛鳥「ええ。ある方からメールは頂いてますよ。白金さんと宇田川さんが困ってたって」

 飛鳥の言葉に友希那、紗夜、リサが困惑した。

 

千聖「貴女達、今日練習があったんじゃないかしら?」

リサ「あ、あはははは…」

 千聖がジト目で見つめると、リサが苦笑いした。

 

友希那「貴方達こそ良いのかしら?」

日菜「何が?」

紗夜「丸山さん達に何も話してないでしょう」

日菜「大丈夫だよ。お土産買って帰るから」

「……」

 

 結果的にどうなったかというと…。

 

彩「…日菜ちゃん。それで私達のご機嫌が取れると思ったら、ちょーっと考えが甘いよ?」

日菜「は、はい…」

 

 後日、日菜と千聖は事務所で正座させられていた。麻弥とイヴも流石に呆れていた。彩は黒い笑みを浮かべていた。黙って飛鳥と温泉ランドに行った事に対して怒っていたのではなく、自分達に相談せずに、飛鳥と温泉ランドに行った事に怒っていた。まあ、大体同じなのである。

 

麻弥「言ってくれればスケジュール調整しましたよ…?」

イヴ「そうです。ブシドーに反してます!」

千聖「……」

 

 千聖も若干甘く見て貰えると思っていた為、何も言えずにいて、この後も彩の説教が続いた…。

 

 

飛鳥「あーあ…」

 

 コマの外で飛鳥も困惑した。

 

 

おしまい

 



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第24話「飛鳥と何かがあった日菜 延長戦」

 

 

※ 第21話~第23話とは別のお話です。

 

 ある日の事だった。

 

「ねー飛鳥くーん! いいでしょー!」

 

 バンドリ学園の食堂で、Pastel*Palettesの氷川日菜と、超能力が使えること以外はごく普通の高校生の一丈字飛鳥がいたが、日菜が飛鳥に縋りついて、駄々をこねていた。飛鳥は困惑した表情を見せていた。まるでガルパピコ第24話で今の飛鳥と同様に日菜に駄々をこねられている紗夜のように…。

 

日菜「おねーちゃんだけずるい~!! あたしともプールに行こうよねえ~!!!」

飛鳥「いや、あなたアイドルでしょう。もう少し自分の立場を考えてくださいよ…」

日菜「おねーちゃんだってアイドルみたいなもんだよ? ていうかあたしより綺麗で可愛いもん! おねーちゃんだけずるいよ~!」

 

 と、ごねられていた。ちなみに男子生徒達は「それだったらオレが!」と立候補しようとしたが、日菜本人がるんっってしないからと断っていた。

 

「いい加減にしなさい日菜!」

 

 と、紗夜が現れた。

 

日菜「お、おねーちゃん…」

飛鳥「紗夜先輩…」

紗夜「飛鳥さんが困ってるでしょう」

日菜「もしかして飛鳥くん。あたしよりもおねーちゃんの事が好きなの?」

飛鳥「あ、やっぱりそうなりますよね…」

 

 日菜の問いに飛鳥が苦笑いすると、

 

紗夜「な、何を言ってるの!! 大体そういうのはなんたらかんたら…」

 

 と、紗夜がブツブツ喋り始めた。

 

飛鳥「それはそうとPastel*Palettesって全員の予定合うんですか?」

日菜「ううん。あたし以外皆忙しいから、あたしだけだよ?」

飛鳥「わあ」

日菜「それに、一人だけ仲間外れを作ったら可哀想でしょ?」

飛鳥「それはそうですね…」

 

 揉めなきゃいいけどなぁ…と、飛鳥は思った。

 

紗夜「待ってください。男女でプールに行くなんて、この風紀委員が許しません!」

飛鳥「……」

日菜「おねーちゃん。それおねーちゃんにだけは絶対言われたくないよ」

紗夜「う、うるさい!////」

 

 日菜の言葉に紗夜はプイッと横を向いた。

 

日菜「それはそうと、此間おねーちゃんが見たエッチな夢に、あたしと飛鳥くんを出した事を」

紗夜「分かりました。3人で行きましょう」

日菜「えっ!!? そこは引き下が」

紗夜「そうすれば問題ないですよね!?」

飛鳥「とてつもなく大問題です」

 

 紗夜の言葉に飛鳥は淡々と突っ込んだ。

 

紗夜「な、何故ですか!?」

飛鳥「いや、引き留めるんじゃないんですか?」

日菜「おねーちゃん。なんだかんだ言ってせこい事所あるからねー。あたしには厳しいのに自分には甘いんだよ」

紗夜「そ、そんな事ないわ」

 

 と、姉妹喧嘩が始まった。

 

日菜「それじゃあ飛鳥くんに決めて貰おうよ!」

紗夜「いいわよ」

飛鳥「その前にいつ行かれるんですか?」

日菜「今週!」

紗夜「今週は無理よ。土日ともにRoseliaの練習があるわ…」

日菜「それじゃ金曜日に行くってのはどう?」

飛鳥「さらに早まっとるがな」

 

 飛鳥が関西弁で突っ込んだ。

 

紗夜「もしかして下校中に行くつもり?」

日菜「ううん。ちゃんと着替えていくよ。ナイトタイム」

飛鳥「それはそれで問題ですね…」

 

 飛鳥が困惑していたその時、

 

日菜「えー!! 来週まで待てないよー!」

紗夜「…別にプールじゃなくても良いじゃない」

日菜「あ、それもそっか。じゃあ今日の放課後デートしよ!」

飛鳥「あまりデートって言葉は使わない方が良いですよ…」

日菜「どーして?」

紗夜「あなたアイドルでしょう…」

 

 日菜の言葉に紗夜は呆れたが、ある事を思い出した。

 

紗夜「あ、今日はRoseliaの練習があるわ」

日菜「あ、そうなんだ。頑張ってね」

紗夜「話聞いてた?」

日菜「えー。そりゃあ3人でお出かけ出来たら楽しいけど、おねーちゃんもうちょっと我慢しなよー」

紗夜「わ、私は別に…」

 

 と、言い争いが絶えなかった。

 

日菜「あ、それじゃおねーちゃんはテレビ電話で参加するっていうのはどう? Roseliaの練習場所から」

紗夜「あなたと飛鳥くんを2人きりにさせるのが問題なのよ」

日菜「じゃあ3人以上だったらいいんだね?」

飛鳥「他にあてがいるんですか?」

日菜「いるよー」

紗夜「誰?」

 

 どうせ出まかせ言っているに違いない…と紗夜は日菜を軽く睨んだ。

 

日菜「パスパレの皆。誰かと一緒に行って貰う事にするから!」

紗夜「…そ、そう」

 紗夜が困惑した。

 

日菜「そういう訳だから決まり! おねーちゃんは練習頑張ってね! 飛鳥くんは放課後宜しく!」

 と、日菜は去っていき、飛鳥と紗夜が取り残された。

 

飛鳥・紗夜「……」

 

 そして放課後

 

日菜「さーてと。飛鳥くんの所に…」

友希那「日菜」

 

 日菜が飛鳥の教室に行こうとすると、友希那が呼び止めた。

 

日菜「なに?」

友希那「紗夜から聞いたんだけど、飛鳥とデートするつもりだって?」

日菜「そうだよ」

リサ「パ、パスパレの皆を誘うって話を聞いたんだけど…」

 

 日菜の歯に着せぬ言葉に友希那とリサは苛立ったと同時に、仲直りする前の紗夜の気持ちが嫌という程分かった。

 

日菜「ああ。千聖ちゃんはOKだったから、千聖ちゃんと3人で行くの! 彩ちゃんと麻弥ちゃんとイヴちゃんはバイトがあるから…」

友希那「そ、そう…」

リサ「楽しんできてね…」

日菜「うん。楽しんでくる!」

 

 そしてそんなこんなで飛鳥、日菜、千聖は温泉ランドで沢山遊んだが…。

 

飛鳥「不在着信がこんなに…」

 飛鳥のスマホは友希那を筆頭にRoseliaからの不在着信が来ていた。

日菜「あ、そうだ! いい事思いついた。

 

 日菜はどうしたかというと…。

 

日菜「今レストランで食事してまーす。はい、あーん」

「あああああああああああああああああああああああ!!!!」

飛鳥「…日菜先輩」

日菜「なあに?」

飛鳥「…あなた、良い根性してますね」

日菜「良く言われるんだよねー」

千聖「あなたも大概よ」

飛鳥「え」

 

紗夜「日菜! あなた何やってるの!!」

日菜「何って食べさせてるんだよ。もしかしておねーちゃん、しなかったの?」

紗夜「」

 紗夜の頬に青筋が立った。それを見てリサ、燐子、あこが青ざめた。

 

飛鳥「……」

千聖「日菜ちゃん。貴女の事は忘れないわ…」

 

 飛鳥が額を抑え、千聖も困惑した。

 

日菜「何の事―? あ、はい。あーん」

 飛鳥も普通に食べさせて貰った。

日菜「美味しい?」

飛鳥「そうですね。それじゃ私も食べさせましょうか」

日菜「うん! お願い!」

飛鳥「ちょっと目を閉じてください」

 

 飛鳥の言葉にRoseliaが絶句し、日菜が目を閉じると、飛鳥は寿司に山葵をつけた。そしてRoseliaに向けて人差し指を口につけたが、とてもエロかった。

 

飛鳥「はい、あーん…」

日菜「あーん」

 と、食べさせると、日菜に異変が起きた。

 

日菜「ひ~~~~~~~~~~~~っ!!!! わさびがぁ~~~~~~!!!!」

 と、日菜が悶絶した。

 

飛鳥「ちょっとつけすぎましたかね?」

千聖「あなた…」

 

 飛鳥の言葉に千聖が困惑した。というのも真意としては、飛鳥がわざと日菜に意地悪する事で、紗夜の怒りを日菜から自分に変えるというものだった。

 

紗夜「日菜に気を遣わなくて構いません。自業自得よ」

飛鳥「えっ」

日菜「ひど~い!!!」

 

 日菜が涙目で突っ込んだ。

日菜「あ、でも飛鳥くんにこういう事して貰えたって事は、それなりに仲良くなったって事だよね?」

飛鳥「うーん。少なくとも他の先輩には出来ませんね。わさびをつけて食べさせるなんて所業は」

千聖「それじゃあ私は食べさせてあげるわね」

飛鳥「ごめんなさい。私もすでに体験済みなんですよ」

千聖「…誰に?」

飛鳥「昔ロシアンルーレットで当てたことがあったんですけど、もう山葵の味しかしなくて…」

 と、飛鳥が懐かしんでいた。

 

飛鳥「それにこれ以上やったら、食べ物で遊んでると思われるのでやめておきましょう」

千聖「そ、そうね…。それじゃ普通に食べさせてあげるわ」

飛鳥「そうですか?」

日菜「それだったらあたしも食べさせてあげる!!」

飛鳥「何でもいいですけど、湊先輩達の顔が怖いんですけど」

日菜「あ、あたし達食事中だからもう切るね」

紗夜「いや、ちょっと日菜!!」

 

 と、日菜が電話を切ってしまった。この後戦争になったのは言うでもない…。

 

 

 後日

イヴ「アスカさん! 今度ワタシとデートしてください!」

飛鳥「!?」

 

 

おしまい

 



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第32話「飛鳥とヤンデレたひまりさん」

 

 

 一丈字飛鳥です。最近私は誰かに見られている気がするのです。大体こういう時は、弦巻さんの家の黒服の方々なのですが、今回は違うようです。

 

 私は家の前まで来ましたが…。

 

「本当に一丈字くんの許嫁なんです!!」

「そんな話は聞いてません。お引き取りください」

 

 …Afterglowの上原ひまりさんが、コンシェルジュの方とお話をされていますね。流れ的には家に帰ろうとしたら既にカギが開いていて、身の回りの世話をしていたという流れでしょうか…。

 

 でもこの家セキュリティ凄くて、住居者以外が入ろうとするとああやってストップかけられるんですよね。実はさっき電話来たんですよ。あなたの知り合いですかって。

 

 そうなんだけど、何か怪しい気配を放ってたから、家に入れないでくださいって言っておいたんですよ。え? フラグ壊すな? だって家荒らされたくないんですもん。

 

 だけどこれ以上、コンシェルジュの方に迷惑をかける訳にも行かないので、私は行く事にしました。これで私の語りは終わります。

 

 

 

 

飛鳥「上原さん」

ひまり「あ、一丈字くん!」

 ひまりが反応した。

 

飛鳥「急にどうしたというんですか」

ひまり「一丈字くんに相応しい女の子になる為に来たんですよ」

飛鳥「アポ取ってください」

ひまり「だって連絡先教えてくれないんだもん」

 そう言われると、飛鳥は困惑した。

 

飛鳥「…まさかとは思いますけど、合鍵とか作ろうとか思ってませんよね?」

ひまり「え? ダメ?」

飛鳥「合鍵なら作れませんよ。当の本人じゃないと」

ひまり「じゃあ作って!」

飛鳥「お断りします」

ひまり「一丈字くんの為だったら私…」

飛鳥「だったら1か月ほど私に会わないでください」

ひまり「それは絶対に嫌!!」

飛鳥「言う事聞く気ないじゃないですか…」

 飛鳥が困惑して首を横に振った。

 

ひまり「折角ご飯作ろうと思ったのにー」

飛鳥「……」

 その時だった。

 

「コラァアアアアアアアアアアアアアアア!!」

「一丈字!!」

 

 と、ひまりのファンらしき男子生徒達が現れた。

 

「誰に断ってひまりちゃんと…」

「ジャマヲスルナ」

「!?」

 

 ひまりの目のハイライトが消えた。

 

「キエロ。ジャマヲスルナ」

 ひまりの殺気に男子生徒は怯えた。

 

飛鳥「あ、引き取ってください」

ひまり「ちょっと一丈字くん!!」

「すいませんでしたぁあああああああああああああ!!!」

 と、退散していった。

 

飛鳥「何がしたかったんだろう…」

 と、飛鳥は困惑気味だった。

ひまり「さあ、これで邪魔者はいなくなったよ」

飛鳥(これじゃあもう広島に帰る日は近いかな?)

 ここまで出来るならもうここにいる必要なくね? と飛鳥は思っていた。

 

ひまり「あ、そうそう一丈字くん」

飛鳥「何です?」

ひまり「…他の女の子とお話、してないよね?」

飛鳥「してたらどうします?」

ひまり「あなたを殺して私も死ぬ」

飛鳥「ほー、中々いい根性だ。警察呼んでください」

ひまり「警察も殺す」

飛鳥「やってみなさい」

 

 そして…

 

ひまり「一丈字くん!! 一丈字くぅううううううううううううううううん!!!」

飛鳥「はー…」

「ほら! きびきび動け!!」

「国家権力も舐められたものだな…」

 ひまりは警察に連行されていった。

 

 

飛鳥「皆も人に迷惑をかけるのはやめようね」

 

 

 

 

ひまり「ちょっとなにこれぇえええええええええええええええ!!!!」

 ひまりが絶叫していた。そう、今までのやり取りは虚空の世界だった。ひまりの他には飛鳥とモカもいる。

 

モカ「もしもひーちゃんがヤンデレになったらってお話~。お相手は飛鳥くん~」

飛鳥「…中々強烈でしたね」

ひまり「いや、一丈字くん違うの!! 私こんなんじゃないからぁ!!!」

飛鳥「ええ。それは勿論存じ上げておりますよ…」

 

 ひまりが涙目で弁解すると、飛鳥が苦笑いした。

 

ひまり「それだったらモカもヤンデレやってみてよ!!」

モカ「え~。モカちゃんどう見てもそんなタイプじゃないでしょ~」

ひまり「そうだけど!! 私一人だけなんてずるい!!」

 

 と、ひまりとモカが揉めているのを飛鳥はじっと見ているだけだった…。

 

 

飛鳥(こういう時は何も言わないのが花ですよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

おしまい

 



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第34話「飛鳥と何かがあったRoselia ~カフェ編~

 

 ある日の事、飛鳥はとあるカフェでアイスティーを飲んでいた。特に理由はない。

 

飛鳥「たまにこういう日だってあるよ」

 

 その時だった。

 

「あ、センパイだ! センパーイ!!」

 

 と、Roseliaのあこがやってきた。

 

飛鳥「宇田川さん」

あこ「こんにちはー! こんな所で会うなんて偶然だね!」

飛鳥「そうですね。おひとりですか?」

あこ「そうだよ! あ、そうだ! ここの席座って良い?」

飛鳥「どうぞ」

あこ「それじゃ飲み物買ってくるから待っててねー!!」

 

 と、あこが去っていった。

 

飛鳥「……」

 その時だった。

 

「あら、飛鳥じゃない」

飛鳥「?」

 

 と、友希那、リサ、紗夜、燐子がやってきた。

 

飛鳥「あれ? 皆さん…」

友希那「…何かしら?」

飛鳥「いや、先ほど宇田川さんが声をかけてきたので…」

 飛鳥が頭をかくと、

 

あこ「お待たせー…あっ」

 あこが鉢合わせした。

 

飛鳥「練習だったんですか?」

あこ「ううん違う違う!! 4人とも一緒なんて偶然なんだよ!?」

友希那「確かに偶然ではあるけれど…あこ、抜け駆けは感心しないわね」

飛鳥「それ、本人の前で言って大丈夫なんですか?」

あこ「う、うーん…」

 あこが困った顔をした。

 

飛鳥「で、皆さんこれからどこかに行かれるんですか?」

友希那「丁度このカフェでお茶しようと思ってたのよ。隣いいかしら」

飛鳥「あ、こっちの席で宜しければどうぞ」

紗夜「…そちらは?」

飛鳥「宇田川さんが先約ですね」

 

 驚く紗夜、リサ、燐子。

 

紗夜「ちょっと待ってください。それでしたらちゃんと話し合うべきです」

リサ「そうだねー。あこはもうしょうがないとして、友希那は…」

友希那「先に声をかけたのは私よ。飛鳥の言う通りにするなら、私を優先するべきよ。そうでしょう? 飛鳥」

飛鳥「そうですね…」

燐子「……」

 燐子はあえて何も言わなかった。これ以上食い下がると飛鳥の好感度が下がる可能性がある事を知っていた為だった。

 

友希那「飛鳥もこう言ってるんだから文句言わない」

紗夜「うっ…」

リサ「しょうがないなー。じゃあ次からはそういうルールね」

燐子「…そうですね」

 

 と、Roseliaとお茶する事になった。

 

飛鳥(ファンからしてみたら夢の時間なんだろうなぁ)

 

 

 暫くして、

 

あこ「美味しー!」

 と、あこがシュークリームを食べていたが、口元にクリームがついていた。

 

飛鳥「宇田川さん。クリームがついてますよ」

あこ「えっ…あっ!!」

 あこが気づいたが、

あこ「え、えっと…センパイ。取って貰えませんか?」

飛鳥「私で宜しいんですか?」

 と、あこがアプローチをかけたので、

 

紗夜「宇田川さん。自分で拭きなさい」

リサ「そうだよ。それはちょっと甘えすぎ」

燐子「困らせちゃダメよ」

 と、3人があこを諫める。

 

友希那「いいじゃない。拭いて貰えば」

「!!」

 友希那の言葉に皆が驚いた。

リサ「そんな事言って友希那。あとで自分もやって貰おうなんて考えてないよね?」

友希那「その通りだけど何か問題ある?」

紗夜「大ありです!!!」

リサ「友希那そういうキャラだったっけ!!?」

燐子「だ、大胆過ぎます…//////」

 

 そんな事をしてる間に飛鳥は紙ナプキンであこの口元を拭いてあげた。

 

紗夜「い、一丈字くん!!」

飛鳥「宇田川さんって結構甘えん坊さんなんですね」

あこ「…セ、センパイだけだもん//////」

 飛鳥があこを見た。

 

飛鳥「そうなんですか?」

あこ「そ、そうだよ!!///// えっと…お、女の子にこういう事言わせないで!////」

 実は好感度を下げようとしていた。こういう時大体鈍感で気づかない事はあるが、飛鳥は流石に分かっていた。

 

飛鳥(本業もあるし…泣く泣くって所ですね)

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

友希那・紗夜・リサ・燐子「……」

 当然他の4人は面白くなかった。というかヤキモチを焼いている。

 

飛鳥(思えばRoseliaって同級生いないんだよなぁ…)

 

 飛鳥がそう考えていた。

 

飛鳥「あ、それはそうと皆さん」

友希那「…何かしら」

飛鳥(うわ、機嫌悪っ)

 

 友希那の声のトーンが低かったため、飛鳥はすぐに機嫌が悪い事を察知した。

 

飛鳥「最近調子どうですか?」

友希那「あなたがあこに変な冷やかしをするまでは良かったわ」

飛鳥「そうですか」

 と、普通に答えた。

 

飛鳥「さて、私はそろそろ退かないといけないようですね」

友希那「この状態で帰るの?」

飛鳥「ええ。今よりも状況が悪くなりそうなもので」

あこ「どういう意味?」

飛鳥「ファンに嗅ぎつけられてますね」

「!!?」

 

 するとファンの男子生徒達が現れた。

 

「こらぁああああああああ!! 一丈字い!!」

「毎回毎回いい加減にしろやぁ!!」

 

 と、憤慨すると友希那が立ち上がった。

 

飛鳥「そういう訳ですので、失礼します」

友希那「ちょっと待って」

飛鳥「?」

 すると友希那が立ち上がると、飛鳥にくっついた。

 

「!!?」

 

友希那「私の飛鳥に何か用かしら?」

飛鳥「あなたそういうキャラでしたっけ…」

友希那「うるさいわよ」

 と、友希那が飛鳥の脇腹をつねったが、飛鳥は特に痛みを感じなかった。

 

「ああああああああああああああああ!!!」

「一丈字テメェ!!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は困惑した。

 

「友希那さんめっちゃいいにおいするか!?」

「どんな匂いだぁ!!」

「教えろ!!」

「香水とか使ってるのか!!?」

 

飛鳥「……」

 飛鳥はコメントに困った。飛鳥だけではなく友希那以外の4人もドン引きしていた。

 

紗夜「な、何なんですか…」

リサ「そ、それはちょっと流石に…」

あこ「キモーイ…」

 燐子も青ざめていた。

 

「ぐっはぁ!!」

「キモイ頂きました!!」

「ありがとうございます!!」

「で、どんな匂いだァ!!」

 

飛鳥「秘密です」

 すると友希那が飛鳥に耳打ちした。

 

飛鳥「とことん攻めますね」

紗夜「み、湊さん!! 一体何を耳打ちしたのですか!!//////」

 

「ぐああああああああああああ!!!」

「どんな匂いか気になるぅううウウウウウウ!!!」

「教えろよぉおおおおおお!! 女子の香り!!!」

「いい匂いするんだろう!!?」

 

 と、匂いフェチの男子生徒達に絡まれて、飛鳥はよりいっそう任務に励むことを誓うのだった。

 

飛鳥(大変だなぁ。ガールズバンドって…)

 

 

おしまい

 



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第35話「飛鳥と何かがあった1年生と友希那」

 ある日の事だった。

 

ひまり「はぁ~あ…」

 ひまりは落ち込んでいた。というのも、夏だしAfterglowの4人と海に行こうと誘おうとしたら…。

 

蘭「無理。バイトあるし」

モカ「日焼けしたくな~い」

巴「今度の祭の打ち合わせが…」

つぐみ「課題なかなか終わらなくて…」

 

 と、4人から断られてしまった。

 

ひまり「海に行きたかったなぁ…」

 そう呟いていると、飛鳥が目の前に現れた。

ひまり「!」

飛鳥「あ、上原さん。こんにちは」

ひまり「ねえ一丈字くん! 今度海に行かない!?」

飛鳥「え?」

 

「待て待て待て待て待て!!!」

 蘭・巴・つぐみ・モカが現れた。

 

ひまり「なーに?」

蘭「いや、何でよりによって一丈字なんだよ!」

モカ「一人で行けばいいじゃーん」

ひまり「一人で行っても楽しくないわよ!」

飛鳥「…何があったんです?」

 

 ひまりが事情を説明した。

 

ひまり「という訳なの。一緒に行ってくれる人がいなくて…」

飛鳥「他のバンドグループの方とかは…」

ひまり「それもあるけど…ダメかな」

飛鳥「ダメっていうか美竹さん達の圧が凄いんですけど…」

モカ「ダメだよー。飛鳥くんはモカちゃんとデートしたいって言ってたんだからー(※第31話)浮気しちゃダメー」

ひまり「ヤキモチ?」

モカ「ち、違うもーん」

ひまり「じゃあいいじゃない。デートしたいって言っただけだし」

蘭「他の奴誘いなよ」

飛鳥「上原さん。美竹さん達の言う通りにした方が良いと思いますよ。スキャンダルにもなりますし」

ひまり「いや、私達アイドルじゃないから」

「アイドルみたいなもんだぁああああああああ!!!」

 

 と、ファンの男子生徒達がエンカウントした。

 

「ひまりちゃん!! 海に行くならオレが!!」

「いやオレだ!!」

「オレだ!!!」

「オレ!!」

 

 そう言ってせがんだ。

 

ひまり「い、嫌よ!! 知ってる人と行きたいの!!」

飛鳥「仕方ない…。ちょっと弦巻さんに相談しましょう」

蘭「え? こころ?」

飛鳥「ええ」

 

 1組の教室

 

こころ「それならあたしとも行きましょ!」

はぐみ「はぐみも行きたーい!!」

美咲「……」

 と、皆が話し合った。

 

ひまり「これで文句ないでしょ?」

蘭・巴・つぐみ「……」

 そう言うと、

 

モカ「じゃあモカも行くー」

 と、モカが言い放った。

ひまり「む、無理しなくていいわよ」

モカ「だってひーちゃんずっと飛鳥くん独占しそうなんだもーん」

飛鳥「それ…本人の前で言って大丈夫?」

 

香澄「え!? 何々!? 皆で海に行くの!?」

こころ「それじゃ南の島に行きましょ!」

美咲「いや、ちょっと流石にそれは遠くない…?」

 美咲もなんやかんやで行く気満々だった。そして1年生だけで海に行く話になり、蘭・巴・つぐみが取り残されてしまった。

 

ひまり「そう言う事だから蘭たちはバイト頑張ってね」

蘭「私も行く」

ひまり「え?」

 蘭が睨みつけた。

蘭「私も行く」

巴「…しょうがない。私もちょっと調整する」

つぐみ「じゃ、じゃあ私も…」

ひまり「もー!! 皆飛鳥くんが行くって分かった途端に」

蘭「わーわー!!!//////」

巴「余計な事言うな!!//////」

つぐみ「……//////」

 

 1組の空気が殺伐とした。

 

飛鳥(あ、オレ完全に死んだわ)

 1組男子からの視線が突き刺さっていた。

 

香澄「そうだ! 友希那先輩達も…」

有咲「バカ! 2年生はテストがあるだろ!」

「行くわ」

 

 友希那が現れた。

 

有咲「ゆ、友希那先輩…」

友希那「私も海、行くわ」

有咲「いや、テストがあるでしょうが!!」

飛鳥「そうですよ」

友希那「…私と一緒にいるの嫌?」

飛鳥「嫌ではありませんが、テスト勉強してください」

友希那「1年生だけ不公平よ」

 と、睨みつけると、皆がひまりを見た。

 

蘭「ひまりが海に行きたいなんて言うから…」

ひまり「うう…ゆ、友希那さんが一人占めしなきゃいいけど…」

蘭「テスト勉強してください。一丈字の事は私に任せて」

友希那「…は?」

飛鳥「分かりました。間を取って私が湊先輩の勉強を見ます」

「間!!?」

 

ひまり「ええええ!! 一丈字くんいなくなったら蘭たち来ないんだけど!!」

蘭「大丈夫よ。悪いんだけどひまりをお願いできる?」

香澄「あ、う、うん…」

巴「これはひまり以外の全員と飛鳥で湊さんと勉強会だな」

ひまり「ちょ、ちょっと待ってよ!! 何で私だけ仲間外れにするの!!?」

つぐみ「あ、あはははは…」

 と、収拾がつかなくなった。

 

こころ「うーん。それじゃこうしましょ! テストが終わったら皆で海に行きましょう!」

飛鳥「いや、予定が合わないから…」

 飛鳥が考えた。

 

飛鳥「そうだ。上原さん、湊さん」

ひまり「なに?」

友希那「何か考えたのかしら?」

飛鳥「それから弦巻さん。この3人は今度の休み空いてますか?」

こころ「空いてるわ!」

ひまり「勿論!」

友希那「ええ。紗夜が練習禁止にしたから空いてるわ」

(相当勉強しないんだなぁ…)

 と、1年生たちは思った。

 

飛鳥「で、弦巻さんはこの学校の近くに別荘ってある?」

こころ「あるわよ!」

飛鳥「じゃあそこで湊さんはテスト勉強してください」

友希那「あなたが勉強見てくれるの?」

飛鳥「私で宜しいんですか?」

友希那「寧ろあなたじゃないとしないわ」

飛鳥「…まあいいでしょう。で、海で遊びたい方は海で遊んでください」

ひまり「あ、ありがとう…ここまでしてくれて」

飛鳥「まあ、提案を出してみただけなので。これで上原さんのリクエストはクリアできましたね」

 

ひまり「で、結局蘭たちは来るの?」

 

蘭「行く」

モカ「行くよ~」

巴「仕方ない…」

つぐみ「わ、私も課題そこで終わらせようかな…」

 

 結局1年生+友希那で行く事になりました。で、巴から聞きつけたあこも行く事になった。

 

巴「ごめん。あこも行きたいって…」

こころ「大歓迎よ!!」

友希那「飛鳥は私と勉強会やるから」

あこ「えっ」

 

 ちなみにこの後、友希那を除く2年生たちから怒られるのは言うまでもなかった…。

 

 

おしまい

 



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第38話「飛鳥と何かがあったバンドガールズ ~燐子の誕生日編~」

 

 

 オレは面倒が嫌いだ。平凡でありたくて、刺激のある生活なんていらない。人間関係も面倒だし、ぼっちでもいいや。面倒だし。

 

 

香澄「飛鳥く~ん♥」

たえ「飛鳥くん。オッちゃん達が会いたがってるから、家に来ない?」

りみ「あ、あのう…一丈字くん…/////」

沙綾「一丈字くん。その…弟たちがまた会いたがってるんだけど…/////」

有咲「その…一丈字…/////」

 

蘭「あの、今度ライブやるんだけど…////」

モカ「飛鳥く~ん。モテモテだね~」

ひまり「一丈字くん。放課後空いてる…?////」

巴「一丈字、ラーメン食べに行こうぜ」

つぐみ「い、一丈字くんっ!!/////」

 

彩「あの、一丈字くんっ。今度イベントあるんだけど…////」

日菜「飛鳥く~ん。放課後遊ぼ~♥」

千聖「一丈字くん。放課後付き合って欲しいんだけど」

麻弥「あ、あの、一丈字さん…/////」

イヴ「ヤマトダマシイを教えて欲しいです!」

 

友希那「飛鳥。今日も練習付き合ってくれるわよね?」

紗夜「あの、飛…一丈字さん…//////」

リサ「飛鳥くん。今日付き合って貰えないかな?」

燐子「え、えっと…」

あこ「センパイ。あことりんりんとゲームしようよ!」

 

薫「子犬くん。また演劇をやるんだが見に来てくれないかい?」

はぐみ「飛鳥くん。あそぼー」

花音「ふ、ふぇええ…////」

美咲「一丈字くん。勉強教えて欲しいんだけど…」

飛鳥「……」 ← 一丈字くん、飛鳥くん、

 

 ……

 

こころ「ダメよみんな! 飛鳥を困らせたら!!」

はぐみ「こころん」

こころ「飛鳥はあたしが連れてきたんだから!!」

香澄「ずるいよ!!」

蘭「そうだよ」

彩「わ、私達にもチャンスを!!」

友希那「それじゃ皆を笑顔に出来ないわよ」

 

 うがあああああああああああああああああああ!!! 隣の奴らがとってもうるせぇええええええええええええええええええ!!! 他所でやれや!!! 

 

***********

 

 とは言いつつも、語っていたこの男子生徒・太郎は本当はハーレムを作りたいと思っていた。何であんな事言ったかって? そりゃあ自分が作る筈だったハーレムを他の奴に取られた挙句、しかもその男が自分の席の隣でイチャイチャしてるもんですから、そりゃあもう叫びたくもなりますわな。

 

飛鳥(ファンの人たちに申し訳ない)

 

 面倒な事は確かに嫌いではあるが、こういう美少女関連の事は大歓迎だし、平凡で満足するわけがない。願わくはチート無双をしたい。老若男女に絶賛されなくてもいいから、美少女たちにチヤホヤされたい。という願望があったのだ。

 

 それがこの始末。はてさて、この先どうなります事やら…。

 

 1年3組の教室

 

「一丈字くん。相変わらずモテモテだね…」

飛鳥「そうですかね…」

 

 と、クラスメイト達に話しかけられた。

 

「中学の時もモテてた?」

飛鳥「いえ、さっぱりですね」

「嘘つけ!!」

「どうせ彼女とかいたんだろ!?」

飛鳥「いないですよ」

「彼女欲しいとか思ってる?」

飛鳥「いえ、色々バタバタしてるので。皆さんもご存じの通り」

「……」

 

 飛鳥の言葉にクラスメイト達が困惑した。

 

「でも一丈字くんって、作業をしてる時の真剣な顔、とってもカッコいいもんね」

飛鳥「恐縮です」

「それにいざって時に頼りになるし」

飛鳥「恐縮です」

「今考えたら、能ある鷹は爪を隠すを感じだよね」

飛鳥「恐縮です」

 飛鳥は同じ言葉を繰り返していた。

 

************

 

リサ「飛鳥くん!」

飛鳥「今井先輩」

 リサが飛鳥に話しかけた。

リサ「…リサでいいのよ?」

飛鳥「そういう訳に行きませんよ。何でしょうか?」

リサ「今度私達のライブ見に来てよ」

飛鳥「学内のライブですか?」

リサ「ううん。学外。これ、チケット!」

 リサからチケットを受け取った。

 

飛鳥「この日は…」

リサ「そ。その日は燐子の誕生日だから飛鳥くんにもお祝いして欲しいと思ってさ」

飛鳥「そういう事ですか。分かりました。急用が無ければお邪魔させて頂きます」

リサ「お願いね」

 

 と、リサは去ろうとした。

 

太郎(リサさんからチケットを貰っただとう…!!?)

 太郎が陰から憤慨していた。

 

太郎(本来貰うのはオレの筈だったのに!! こうなったら横取りしてやる!!)

リサ「あ、そうそう」

「?」

 リサが飛鳥の方を振り向いた。

 

リサ「チケット失くしたらいつでも連絡して。入れるように手配しておくから。横取りしようとする奴がいたら、確認次第出禁にするから」

飛鳥「あ、ありがとうございます…」

太郎(対策済みかよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!)

 

 太郎が頭を抱えた。お分かりの方もいらっしゃるでしょうが、自ら面倒な事に首を突っ込もうとしています。

 

飛鳥「……」

 

 あっという間にライブ当日になった。

 

「一丈字さんですね。お待ちしておりました」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 飛鳥が関係者席に通された。

 

太郎(どうしてあいつが…!!)

 太郎が陰から飛鳥を見ていた。

 

 そしてライブが始まった。

 

友希那「最高の音楽を聞かせてあげるわ」

 

 友希那の言葉にライブハウスは大盛り上がりになった。

 

飛鳥(やっぱり人気あるんだなぁ…)

 観客の熱狂ぶりを見て、飛鳥はRoseliaの人気を再認識した。

 

 そしてライブは見事に大成功。

 

飛鳥(はー…凄いなー。湊先輩の歌声もそうだけど、氷川先輩達の演奏も技術が高い。流石本格派バンドって言われるだけのことはあるなぁ…)

 

 飛鳥はRoseliaの実力を素直に認めていた。

 

 そしてライブ終了後…

 

友希那「さて、早く脱出するわよ」

飛鳥「え」

紗夜「そうですね」

あこ「ファンの人たちに囲まれるからだよー。今日はりんりんの誕生日パーティーをするからね」

 と、Roseliaと合流した後、飛鳥達はライブハウスを脱出しようとした。

 

飛鳥「そういや差し入れとかプレゼントとかどうするんですか?」

燐子「後日取りに行くという事で…」

リサ「まあ、それだけ有名になって嬉しいけどね」

 

 ライブハウスを出ようとするが、ファン達が囲んでいた。

 

飛鳥「完全に囲まれましたね」

友希那「ここでパーティをするというのはどうかしら」

飛鳥「いやいや…」

燐子「わ、私は別に…。友希那さん達や…あ、飛鳥さんがいてくれたら…/////」

 燐子が頬を染めた。

 

あこ「ケーキやジュースが無いのは寂しいなー」

紗夜「我儘言わないの」

 その時、飛鳥の携帯が鳴った。

 

飛鳥「失礼します」

 飛鳥の携帯が鳴った。

 

飛鳥「もしもし」

『あ、もしもし飛鳥!? こころよ!』

飛鳥「弦巻さん?」

 飛鳥の言葉にRoseliaが反応した。

 

友希那「ちょっと貸して」

飛鳥「わっ」

 友希那が飛鳥の携帯を強奪した。

 

友希那「どういうつもり?」

こころ「あたしもライブハウスに来てたんだけど、今出られなくて困ってるでしょ? 黒服の人たちに道を開けて貰ってるから、そこから脱出して!」

友希那「余計なお世話よ」

リサ「ちょ、ちょっと友希那!」

こころ「確かにそうかもしれないけど、でも今日って燐子の誕生日でしょ? それだったらちゃんとお祝いしてあげた方が良いと思うの!」

燐子「弦巻さん…」

飛鳥「……」

 

こころ「あ、そういやこれ燐子にも聞こえてる?」

燐子「は、はい…」

こころ「お誕生日おめでとう! 今日も良い演奏だったわ!」

燐子「あ、ありがとうございます…」

こころ「黒服の人たちが案内してくれるから。飛鳥、しっかり守ってあげるのよ!」

飛鳥「了解」

 

 と、こころが電話を切った。

 

友希那(な、何かしらこの敗北感…!!)

紗夜(弦巻さんの正妻感が凄い…!)

リサ(好感度爆上がりだろうなぁー)

あこ(さ、流石お金持ち…)

 

 と、4人は敗北に打ちひしがれていると、黒服がやってきた。

 

「一丈字様。Roselia様。準備が整いました」

飛鳥「ありがとうございます。それでは行きましょうか」

燐子「はい…」

飛鳥「!!?」

 燐子が飛鳥の隣にくっついた。

 

友希那・紗夜・リサ・あこ「!!?」

飛鳥「…白金先輩?」

 飛鳥が困惑した。

燐子「あ、えっと…メイワクでしたか…?/////」

飛鳥「いえ、突然横に来たので吃驚しただけですよ。参りましょうか」

燐子「は、はい…」

 と、2人は去っていった。

 

友希那「ちょ、ちょっと燐子!」

紗夜「破廉恥です!!////」

リサ「まあまあ、今日は燐子に譲ってあげようよ」

あこ「りんりんも大胆になったなぁー」

燐子「あ、あこちゃんっ!!//////」

 

 この後、Roseliaと誕生日パーティーを行った飛鳥であった。

 

 

太郎「オレはー!!!?」

 

 忘れてた。

 

 

おしまい

 



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第39話「飛鳥と何かがあったPastel*Palettes」

 

 

 それはある日のことだった。

 

飛鳥「…すみません。今、何て言いました?」

 

千聖「私達Pastel*Palettesのマネージャーになって欲しいの」

飛鳥「ごめんなさい」

「えーっ!!!?」

 

 バンドリ学園の食堂で飛鳥はPastel*Palettes全員からマネージャー就任の要請が出た。

 

千聖「それなりに報酬は弾むわよ? 待遇だって破格にさせるし」

飛鳥「フリーでいたいんですよ。業務提携ならまだ分かりますが」

彩「いや、部活とか入ってないし、いいかなって思ったんだけど…」

飛鳥「こう見えて色々やってるんですよ」

日菜「どんな事?」

飛鳥「賞金稼ぎとか、技術のスキルアップとか、鍛錬とかいろいろです」

麻弥「…色々やってるんスね」

飛鳥「まあ、若宮さんで言う所の武者修行という奴ですね」

イヴ「ムシャシュギョー!! た、確かにマネージャーをやっている暇はありませんね…」

千聖「それじゃシフトでいいわ」

飛鳥「そういう訳にも行きませんよ。今やあなた達も売れっ子なんですから」

 

 と、飛鳥は毅然とした態度で断った。

 

彩(千聖ちゃんが言ったとおりだ…)

日菜(飛鳥くん。真面目だからな~。でもこのままだと…)

千聖(他のグループに取られてしまうわ。Roseliaやこころちゃんに)

麻弥(一丈字さんの気持ちも分からなくはないっすけど…)

イヴ「アスカさん」

 

 イヴが口を開いた。

 

飛鳥「何ですか?」

イヴ「今日空いてますか?」

飛鳥「どうされました?」

イヴ「ヤマトダマシイについて、教えて欲しいです!」

「!!?」

 

飛鳥「大和魂?」

イヴ「アスカさんにはそれがひしひしと伝わります!」

飛鳥「…そんな大したものではございませんよ。剣道だってちゃんとしたルールも知りませんし」

 と、話をし始めると、他の4人がヤキモチを妬いた。

 

日菜「イヴちゃんだけずるいよー! あたしともお話ししよ!?」

彩「私ともお話しようよ!」

麻弥「一丈字さん、機械に詳しいって聞きましたよ!」

千聖「……」

 と、飛鳥はPastel*Palettesとずっと話をしていた。

 

「一丈字の野郎…!!」

「パスパレとあんな親しげに…」

「羨ましい~~~~~~~~~!!!!!」

「ファンをやめたいっていうけど、やっぱり可愛いんだよ~~~~~~~~!!!!」

 

 男子生徒達の嫉妬を買って、飛鳥はげんなりしていた。

 

千聖「ほっときなさい。言わせておけばいいのよ」

飛鳥「!!?」

彩「確かにファンの人たちには申し訳ないと思ってるんだけど…」

日菜「飛鳥くんとお話しできなくなるなんて嫌!」

麻弥「まあ…ジブンはそんなに可愛い方ではないので…」

イヴ「そんな事ないですよ!」

 

 と、遠回しにファンを否定していて飛鳥は困惑していた。

 

 

******************

 

 そんなある日の事だった。

 

日菜「飛鳥くん!」

 日菜が飛鳥の教室を訪ねてきた。

 

飛鳥「どうされました? 氷川先輩」

日菜「日菜!!」

飛鳥「いや、他の人もいますし」

日菜「今度パスパレで打ち上げがあるんだけど、飛鳥くんも来て!」

飛鳥「…いつですか?」

日菜「今度の土曜日!」

飛鳥「土曜日か…」

 飛鳥が困惑した。

日菜「都合悪いの?」

飛鳥「勉強会があるんですよ。あこさんが赤点取ったらしくて、このままだとバンド禁止になる可能性があって助けて欲しいって」

日菜「あ、それだったらあたしも行っていい?」

飛鳥「打ち上げどうするんですか」

日菜「休む!」

飛鳥「いや、アイドルとしてどうなんですか!」

 

 どこまでもマイペースな日菜に飛鳥は思わずツッコミを入れた。

 

日菜「そんな事言って勉強会が終わったら遊ぶんでしょ」

飛鳥「ありませんよ。本当にRoseliaのバンド活動がかかってるので、白金先輩も今回は心を鬼にすると言ってました」

日菜「飛鳥くんがいればやる気出るってあこちゃんが言ったんでしょ」

飛鳥「……」

 飛鳥が困惑する。

 

飛鳥「まあ、そういう訳なので打ち上げは参加できません」

日菜「じゃあ明日あたしと…」

「日菜ちゃん?」

日菜「!!?」

 

 日菜が後ろを振り向くと、千聖たちがいた。

 

千聖「何一人だけ抜け駆けしようとしてるのかしら?」

飛鳥「いや、本人の目の前で何言ってるんですか」

日菜「えー。千聖ちゃんだってしようとしてたくせに」

千聖「……」ピキィ

 

 日菜の言葉に千聖の額に青筋が立った。彩、麻弥、イヴが青ざめる。

 

千聖「でも安心して。打ち上げだけど日曜日に延期になったから」

飛鳥「えっ」

日菜「それじゃ飛鳥くん来れるね!」

飛鳥「そりゃあ来れますけど…」

千聖「お休みしたいなら、私に考えがあるわ」

飛鳥「え?」

千聖「私が膝枕してあげるわ。そこで寝なさい」

飛鳥「何かありました?」

 千聖の言葉に飛鳥が突っ込むと、皆が驚いた。

 

「あ、あの白鷺千聖が膝枕…」

「やって貰おうと思えば数十万は払わないといけないとされる…」

飛鳥「すみません。流石にお金は…」

千聖「取ってないし、タダよ」

「!!?」

 

 飛鳥が更に驚いた。

 

千聖「アイドルが膝枕するのよ?」

飛鳥「ファンに刺されそうですね…」

彩「うーん…」

 彩が苦笑いした。

 

「待てーい!!!」

 

 と、毎度おなじみファン軍団が現れた。

 

飛鳥「思ったんですけど、パスパレってそういうファンサービスとかは…」

彩「流石にしてないよ」

麻弥「ええ…」

 

「千聖ちゃんの膝枕だとぉ!!?」

「一体何をしたらそうして貰えるんだぁ!!」

飛鳥「なんででしょうね…」

千聖「思いだして。あなた今まで私達を助けてくれたじゃない」

 

「そんなのご都合主義だろうが!!」

「お前の力があったらオレだって!!!」

 

千聖「それはどうかしら?」

「!!」

千聖「仮に彼と同じ能力があったとしても、殺されるかもしれないという恐怖に勝てるかしら?」

 千聖の言葉にファンが驚いた。

 

千聖「確かに能力は凄いかもしれないけど、彼の凄い所はそれだけじゃないの。犯罪者に立ち向かう勇気と、恐怖に対して屈する事が無い精神力、そして前に出過ぎず常に人を思いやる謙虚さ、優しさ。それでいて現状に満足することなく成長し続けようとする姿勢。貴方達にはそれがあるかしら?」

 

 千聖の言葉にファンたちは何も言えなかった。

 

千聖「それに、何も知らないで人の事を悪く言ってるあなた達とこの子じゃ扱いも違うわよ。行きましょ」

飛鳥「いや、あのどこに…」

日菜「あー!!!」

 

 千聖が飛鳥をどこかに連れていこうとすると、日菜達も続いた。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!」

 

 ファン達は泣きわめいた。

 

 

 

おしまい

 



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第76話「飛鳥と何かがあったAfterglow」

 

『飛鳥と何かがあったAfterglow』

 

 私達は幼稚園の頃からの幼馴染。そう、5人はいつも一緒だった。

 

 そう、これからもずっと…。

 

「…しばかれる時まで5人一緒って、やめてくださいよ」

 

 ここはバンドリ学園の中庭。飛鳥の目の前には、5人纏めてつるされているAfterglowがいた。彼女たちは中学の時からバンドをやっていて、王道ガールズバンドとして、結構人気も高い。

 

 だが、どういう訳か今はこんな有様。王道ガールズバンドとしての凛々しい姿は微塵もなかった。

 

飛鳥(原作ファンと女性読者からのバッシングすごそうだなぁ)

 

 と、飛鳥は嘆いていた。

 

「あの、一丈字くん」

 上原ひまりが飛鳥を見て言った。

 

飛鳥「何でしょう」

ひまり「私達が問題起こしといていうのもアレだけど…。もうちょっと女の子に優しくできない?」

モカ「そうだそうだー」

飛鳥「これでも凄い優しい方ですよ。本来なら即刻警察に行って貰わないといけないです。最も…」

「?」

 

飛鳥「親御さんを呼び出さないだけまだマシ」

「すいません。仰る通りです」

 

 ましてや蘭に至っては、父親がバンドをやっている事を良しとしない為、知られたら即刻辞めさせられるだろう。そうなればAfterglowもおしまいである。

 

飛鳥「それにしても、何で人んちの前で暴れたりしたんですか」

 

蘭「だってひまりが…」

モカ「ひーちゃんが…」

巴「ひまりが…」

つぐみ「…ひ、ひまりちゃんが」

ひまり「ちょっと何で皆私のせいにしようとしてんのよ!! 私止めた方よ!!?」

 

 4人がひまりのせいにしようとしていたので、ひまりが突っ込んだ。

 

モカ「それはそうと、どうしておうちに入れてくれないの~?」

飛鳥「昔から、こういうトラブルがよくあったんですよ。本当に残念です」

 飛鳥が俯くと、Afterglowが気まずそうにした。

 

巴「その…何だ。迷惑かけた事に関しては済まないと思ってる」

飛鳥「妹さんいるんですから、あなたは特にしっかりしてくださいよ」

あこ「そーだよ。おねーちゃんカッコ悪い」

飛鳥「…どうしてあこさんはここにいるんですか?」

あこ「いや、おねーちゃんがつるされてるって聞いたから」

 

 あこにも呆れられて、巴はばつが悪そうにしていた。飛鳥は苦笑いしていた。

 

蘭「その、一丈字…」

飛鳥「お父さんの事ですよね。それについては黙っててあげます」

「!!」

飛鳥「そんな理由でAfterglowが解散されると、こちらも都合が悪いので…」

 飛鳥が視線を逸らした。

 

ひまり「一丈字くん…!」

モカ「分かる子だと思ったよー」

 と、ひまりとモカが反応するが、

 

あこ「じゃないでしょ! 反省して!!」

 あこが突っ込むと、Afterglowは落ち込んだ。

 

飛鳥「というかそもそも吊るす必要ありました?」

こころ「小説を面白くする為よ!」

飛鳥「メタ発言やめて」

 

 飛鳥がこころを見ると、こころがにこやかに話をした。

 

あこ「それにしてもこころがこんな事をするなんて意外ね…」

こころ「本当にその人を考えてるなら、悪い事は悪い事だって叱ってあげないといけないわ! 飛鳥がそう教えてくれたのよ!」

 

 こころが険しい表情をした。いつもは笑顔を絶やさなくて天真爛漫な彼女だったが、今日はいつになく真剣だった。

 

飛鳥「ありがとうございます。ですが、ここまでしなくても…」

こころ「そうはいかないわ!」

飛鳥「まさかとは思いますけど、このまま樹海に連れていくとか…」

「じゅ、樹海!!?」

 

 飛鳥の言葉に蘭、巴が青ざめた。

 

こころ「樹海って山の中よね?」

飛鳥「そこでいわくつきの所に…」

つぐみ「いや~~~~~~~~~~~~~!!!!!!」

ひまり「ごめんなさい!! 本当にごめんなさい!!!」

 

 飛鳥の物騒な冗談にひまりとつぐみが涙目で叫んだ。

 

飛鳥「という事はありませんけど」

モカ「あったら大問題だよ~」

こころ「だけど、ちゃんと反省するのよ!」

アフグロ「はい…」

 

 と、そんなこんなでAfterglowは解放されたが…。

 

飛鳥(オレ、完全に悪役だろうなぁー)

 

 と、飛鳥は目を閉じて頷いた。

 

 だが、問題はここからだった。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥はカフェテリアでこころやあこと談笑していたが、モカ以外のAfterglowがずーっと見ていた事を。

 

蘭「…こころだけずるい」

ひまり「ホントだよね…」

巴「やっぱりちゃんと正々堂々と誘えばよかったんだ」

つぐみ「そ、そうだよね…。迷惑かけちゃったし…」

 ちなみにモカはバイトで不在だった。

 

こころ「どうしたの?」

飛鳥「いえ…」

あこ「もしかしておねーちゃん達がいるの!?」

飛鳥「そうですね…」

 飛鳥がある方向を見ると、こころとあこも同じ方向を見た。

 

あこ「もー! そういう事するからあんな事になるんでしょ!!」

こころ「もう怒ってないから、出て来なさい! 反省してくれたらいいのよ?」

 

 と、こころはいつもの感じで話しかけて、蘭たちが近づいてきて、そのまま談笑した。

 

 ここまでは良かったのだが…。

 

 その夜。飛鳥は自室にいたが、モカから電話が来た。

 

飛鳥「もしもし…」

モカ「あ、もしもし飛鳥くん~? 昨日はごめんね~」

飛鳥「あ、うん。もういいけど…何か企んでない?」

モカ「まさか~」

 モカが首を横に振った。

 

モカ「…ただ、一言だけ飛鳥くんに言いたい事があって」

飛鳥「なに?」

 するとモカはこう言った。

 

モカ「モカちゃん。本気だから」

 

 いつになく真剣な声で飛鳥にそう言って、電話を切った。

 

飛鳥「……」

 飛鳥は窓から月を見た。

 

飛鳥「生きて広島に帰れるだろうか」

 

 後日

 

モカ「飛鳥くーん」

 飛鳥が家の前にいると、モカがいた。すると飛鳥が困惑した顔をした。

 

モカ「そんな顔しないでよ~。ちゃんと大人しく待ってたんだから~」

飛鳥「…そう」

モカ「じゃ、学校に行こー」

 と、モカと飛鳥が学校を歩いていったが、その後ろから車が通ってきた。

 

「飛鳥!!」

飛鳥「こころ」

モカ「こころちゃん」

こころ「おはよう! あれ! モカも一緒だったの!?」

モカ「ああ。ちゃんと大人しく待ってたよ~」

飛鳥「コンシェルジュの人が証人になってたよ」

こころ「そうなの。あ、ここで降りるわ!」

 と、こころが車から降りてきた。

 

飛鳥「!」

こころ「折角だから一緒に登校しましょ!」

飛鳥「あ、うん…」

モカ「おっほー。こころちゃんも意外に大胆だね~」

こころ「あたしは飛鳥が笑顔でいてくれたらそれでいいのよ?」

 こころがモカを普通に見ていた。

 

こころ「さ! いきましょ!」

飛鳥「ちょ、こころ!」

モカ「待ってよー」

 

 と、3人で仲良く登校したが…。

 

 

蘭「…モカの奴」

ひまり「やっぱりせこいよね…」

巴「ああ…」

つぐみ「ずるい…」

 

 他の4人が陰から飛鳥達を見ていたのは言うまでもなかった。

 

 

おしまい

 



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第78話「飛鳥と何かがあったAfterglow・2」

 

 

 これは、ずっと一緒だった幼馴染5人が、ある事を理由に仲が悪くなってしまった「もしも」の物語…。

 

****************

 

ひまり「お助けください!! お助けください!!」

 

 ひまりは縄で縛られていた。そしてひまりの前には般若の形相をした蘭・モカ・巴・つぐみの姿があった。

 

モカ「ポットの準備は出来たよ~」

蘭「そのポットを握りつぶすのは?」

巴「私。せめてもの情けだ。私の手で引導を渡してやる!!」

ひまり「ちょっと何でこんな事になったのよ~~~~~!!!!」

 

 と、ひまりが泣き叫んだがつぐみが黒い笑みを浮かべて近づいた。

 

つぐみ「それはこっちの台詞だよ? ひまりちゃん」

ひまり「ひっ!!」

 

 つぐみのドスの利いた声色にひまりが怯えた。

 

つぐみ「此間飛鳥くんと一緒に歩いてたでしょ」

ひまり「あれはたまたま一緒になっただけだって言ってるでしょ!!?」

 

モカ「でもその「たまたま」が多すぎるんだよね~。これで何回目?」

巴「完全に狙ってるとしか思えないな」

ひまり「そ、そんなぁ~!!」

 

 実際の所、モカ達の言う通りであり、ひまりは偶然を装って飛鳥に会っていたのだ。そう、所謂「抜け駆け」である。

 

つぐみ「抜け駆けは重罪だって、5人で話し合ったよね?」

ひまり「つぐ。貴女は落ち着こう。本当に落ち着こう?」

 つぐみはずっと笑っているが、正直恐怖でしかない。ひまりはガタガタ青ざめる。

 

ひまり「み、皆落ち着いて! よーく考えて!?」

蘭「ひまり。今更見苦しいよ」

ひまり「こんな事したら…一丈字くんに嫌われちゃうよ!!?」

 

 一丈字飛鳥。全ての元凶である。

 

蘭「い、一丈字の名前を出すなんて…」

巴「卑怯だぞ!!」

モカ「……」

つぐみ「ひまりちゃんが約束破って抜け駆けしなかったら、私達だってこんな事しなかったんだよ?」

蘭・巴「そうだそうだ!」

ひまり「だから誤解なんだってば~!!!」

 

 と、ひまりが涙目で叫ぶと、

 

「おーい」

「!?」

 

 蘭たちは声がした方を見ると、飛鳥とこころがいた。

 

飛鳥「何されてるんです?」

「あっ…」

 

 飛鳥が困った顔で蘭たちを見つめると、

 

ひまり「一丈字くん助けてぇ!! 蘭たちが誤解してるみたいなのよ!!」

蘭「誤解もなにも、何度もわざと一丈字に会ってたでしょ!!」

巴「すまん一丈字。ひまりが迷惑かけたみたいで…」

つぐみ「ごめんね?」

 

 蘭たちが弁解するが、縄で縛ってるあたり普通ではないと感じていた飛鳥。

 

こころ「縄で縛るのはやりすぎよ! 喧嘩は良くないわ!」

モカ「そうだそうだー」

蘭・巴「モカァ!!!」

つぐみ「モカちゃん!!!」

 

 モカがいつの間にか飛鳥側にいたので、蘭・巴・つぐみの3人が吠えた。

 

こころ「さあ、ひまりに謝るのよ!」

 

 ひまりは解放されて、Afterglowは飛鳥、こころの立ち合いの元仲直りさせられた。

 

蘭「ごめん…」

巴「ごめんな…」

つぐみ「ごめんねひまりちゃん」

ひまり「あ、うん。いいのよ…」

 

 絶対反省してないなこいつ等。と、ひまりは思ったが、これはチャンスと考えていた。

 

モカ「ごめんよひーちゃん」

ひまり「あ、うん…」

 

 モカも謝ったので、ひまりも許す事にしたが、ひまり達は感づいていた。モカはこういう時謝らず、うやむやにすることが多いが、あえてすぐに謝ったという事は、完全に飛鳥に対する点数稼ぎをしているのだと。

 

 ただ、飛鳥もそれを肌で感じ取っていた。

 

飛鳥(あぁ…。昔椿のけんかの仲裁をしてた時こんな感じだったなぁ)

 

 中学時代、女子同士のけんかの仲裁をした事があったが、仲直りさせるのにとても苦労したという。

 

こころ「これで仲直りね!」

 と、こころがそう言うが、

 

モカ「ところでこころちゃんは飛鳥くんとどうして一緒にいたの?」

こころ「あら! いけないかしら?」

 こころはいつも通りの反応だった。

 

蘭「いや、いけなくはないけど…」

ひまり「よくよく考えたら何でいつも一緒なのかな~って…」

巴「ずっと気になってたんだ」

つぐみ「…もしかして、付き合ってるとか?」

飛鳥「いいえ?」

こころ「付き合ってないわよ?」

 

 飛鳥はきっぱり否定すると、こころもあっけらかんとしていた。

 

モカ「あんまり飛鳥くんと一緒にいると、ハロハピの皆が寂しがると思うな~」

こころ「大丈夫よ! はぐみはソフトボールがあるし、薫は演劇、花音はアルバイトで、美咲には羊毛フェルトがあるわ。あたし以外にもお友達がいるから、ちっとも寂しくなんて無いわ?」

アフグロ(グッハァ!!!)

 

 こころがいつも通り過ぎて、アフグロはその眩しさにやられそうだった。

 

蘭(弦巻さん…めっちゃ大人…!!)

モカ(くぅ…。こころちゃんの方が一枚上手だったか…)

ひまり(ただのお金持ちじゃなかったのね…)

巴(そうか…。道理で一丈字がずっとそばに置いてるわけだ…)

つぐみ(……)

 

こころ「さて、そろそろあたし達はお暇するわ!」

蘭「ど、どこ行くの!?」

こころ「これから飛鳥と賞金稼ぎをするのよ!」

「!!!?」

飛鳥「失礼します」

 飛鳥がこころを連れて去っていった。

 

「……」

 

 その日の夕方。

 

『さあ! アマチュアテニストーナメント! ダシマカップもいよいよファイナルとなりました!』

 

 ここはとあるテニスコート。テニスのトーナメントが行われた。

 

実況『それでは選手の入場です!! バンドリ学園高等部1年生コンビ! 一丈字飛鳥・弦巻こころペア!!』

 

 スポーツウェアに着替えた飛鳥とこころが登場した。こころは髪を結んでいる。

 

こころ「優勝するわよ! 飛鳥!」

飛鳥「勿論」

 

 そしてその様子を観客席からアフグロが見ていた…。

 

蘭「ずるい…こんなのずるい…」

モカ(モカちゃんだって、飛鳥くんの秘密知ってるのに~)

ひまり「テニスなら私テニス部なのに!!」

巴「ラーメンの大食いなら…」

つぐみ「いいなぁ…!!!」

 

 と、皆こころを羨ましがり、その邪念を飛鳥が感じ取っていた。

 

飛鳥(本当に好きだなぁ…)

 

 だが、見に来ていたのはアフグロだけではなかった…。

 

飛鳥「さあ、優勝するぜ!!」

こころ「ええ!!」

 

 飛鳥はもう細かい事を気にするのはやめて、目の前の試合に集中する事にした。

 

 

 

おしまい

 



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第111話「飛鳥と何かがあったAfterglow ~プール編~・1」

 

 

 それはある日の事だった。

 

「あっつーい…」

 

 モカは教室でもたれていた。

 

モカ「溶けてアイスになっちゃうー」

蘭「いや、意味わかんないから」

 

 モカの発言に蘭が困惑し、ひまり、巴、つぐみが苦笑いした。

 

巴「まあでも、これくらい暑い方が夏らしくていいけどな」

蘭「…その発言でさらに暑苦しくなってきたよ」

ひまり「それにしてもなんでうちのクラスだけエアコン壊れちゃったのー。もー」

 ひまりが嘆いていた。実際Afterglowは汗をかいていて、それが男子生徒達の下劣を招いていた。

 

ひまり「そうだ。折角だから今度の休み、海かプール行こうよ」

巴「それいいな! 今週はこの辺のスタジオいっぱいらしいからな…」

蘭「…まあ、たまにはいいかもね」

モカ「さんせー。でもモカちゃんプールがいいな~」

蘭「私も」

 と、Afterglowでプールに行く話になっていた。

 

(週末はアフグロはプール!!)

(確かこの辺のプールは…)

 男子たちは偶然を装って、アフグロの水着姿を見ようと計画を立てていた。すると一人の陽キャ男子が蘭達に近づいてきた。

 

「それ」

モカ「折角だから飛鳥くんも誘おうよ~」

「!!?」

ひまり「いいわねそれ!」

巴「賛成だな!」

 モカの発言に皆が驚き、ひまりと巴が賛同した。だが、陽キャ男子は引き下がらなかった。

 

「あ、飛鳥って一丈字の事? あんな奴よりもオレ達と遊ぼうよ」

蘭「何で?」

 蘭が陽キャ男子を睨みつけた。

 

「そ、そりゃああいつよりオレ達と遊んだほうが楽しいし、あいつ陰キャじゃねーか」

 と、苦しい言い訳をしていた。

巴「そういうの感心しないな」

モカ「そーだよ。自分は陽キャだから許されると思ってるの~?」

 モカと巴が諫めると、陽キャが歯ぎしりした。

蘭「悪いけど、あたし達はあんたと遊ぶつもりないから」

「ど、どうしてオレはダメで一丈字は良いんだよ!!」

 陽キャが激怒すると、モカと蘭が顔を合わせると、再び陽キャ男子を見た。

 

モカ「え~。もうそういう態度取る時点で無理だし~」

蘭「どう考えても下心が丸見え」

モカ「女の子が自分の言う事聞かないと気が済まない性格でしょ~。何かDV気質あるんだよね~」

蘭「そうそう。ちょっと顔がいいからって調子に乗りすぎ」

 と、モカがそういうと陽キャが歯ぎしりした。

 

「く、くそが!」

 陽キャ男子が椅子を蹴った。

 

「ここまで恥をかかしといてただじゃおかねーからな!!」

 と、捨て台詞を吐いて出ていった。するとモカがポケットからスマホを取り出して、ボイスレコーダーアプリの停止ボタンを押した。

 

モカ「…ま、ボイスレコーダーで証拠は取ってるから、どうぞご自由にって感じだね~」

ひまり「先生に見せとこうよ」

モカ「りょーかーい」

 

 女子怖っ!! と他の男子たちはそう思った。

 

モカ「さあ、飛鳥くんを誘いに行こー」

「おーっ!!」

 

 3組の教室

 

飛鳥「プール?」

 飛鳥が驚いていた。

 

つぐみ「そ、そうなの。もし良かったら来てくれるかな?」

モカ「いこーよー。暇でしょ~?」

 

 と、別のクラスの美少女5人組に誘われている飛鳥を見て、3組の男子たちは驚きを隠せなかった。

 

飛鳥「それっていつですかね…」

つぐみ「今度の土日なんだけど…」

飛鳥「…あー。今週は無理ですね。バイト入ってるんで」

モカ「え~」

飛鳥「まあ、また誘ってください」

 

 まあ、誘われる事はないだろうけど…と飛鳥は思っていた次の瞬間だった。

 

「一丈字がバイト入ってるんじゃ仕方ないなぁ」

 

 と、さっきの陽キャが現れた。

 

蘭「何か用?」

「一丈字が空いてないから、代わりにオレが行ってあげるよ!」

蘭「いや、いいし」

「そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃん」

モカ「いや、あなたと一緒に行くこと自体が恥ずかしいんだけど~」

飛鳥「青葉さん」

 

 モカの毒舌ぶりに飛鳥が困惑した。

 

「一丈字は空いてないんだろ?」

ひまり「空いてないけど、あなたとはぜーったいに行かないんだから!」

巴「そうだそうだ! さっき自分から勝手に出て行って何なんだ!」

「それは言葉の綾で、やっぱり相手がいないだろうからオレが…」

蘭「そもそも一丈字がいなくても、あたし達5人で十分だし」

 と、蘭が強がった。

 

「じゃ、じゃあ一丈字抜きで5人で行けよ!」

モカ「え~。なんでそんな事あなたに言われなきゃいけないの~?」

巴「ほっとこうぜ。一丈字に妬いてるんだよ」

 巴の言葉にカチンときた陽キャ。

 

「おい、オレが誰に妬いてるって?」

モカ「あ、言っとくけどさっきの暴言、録音したから変な事しない方が良いよ~」

 モカの発言に陽キャが焦った。

「ぼ、暴言ってそんな大げさな…」

モカ「でも、女子にしつこく迫ってたよね~? それでも十分注意対象になると思うんだけど~」

蘭「ていうかいい加減しつこすぎ。そんなに女子とプールに行きたいなら、他当たれば?」

モカ「いやいや。モカちゃん達みたいな美少女じゃないと、ステータスが上がらないんだよ~」

「だ、誰がお前らみたいなブス!!」

モカ「お? ブスって言ったね~? それじゃあ飛鳥くんとプールに行っても問題ないよね~。ブスなんだし~」

ひまり「最低」

巴「こればっかりは擁護できないな」

つぐみ「……」

 良心だったつぐみですら、困った顔をしていた。

 

「く、くそがくそが!!! 女は黙ってオレの言う通りにしてればいいんだよ!!」

 と、陽キャは憤慨したが、飛鳥はじーっと陽キャを見つめる。そして陽キャも飛鳥の方を見ると、胸ぐらをつかんだ。

 

「何だよその目は…!!」

飛鳥「ご存じですか?」

「?」

 飛鳥は陽キャの目をじっと見つめた。

 

飛鳥「最近の女性は、本当に尊敬でき、なおかつ信頼できる男性にしかなびかないそうですよ。あなたはどちらとも当てはまっておりますか?」

 飛鳥の言葉に陽キャは

陽キャ「うるせぇええええええええええええ!!!」

 と、飛鳥の顔を殴った。女子たちは悲鳴を上げる。

 

飛鳥「さて、これで逃げられませんよ。青葉さん、しっかり証拠は取ってくださいましたか?」

モカ「勿論だよ~。バカだね~」

 と、モカがスマホを見せた。

 

「ちょ、消せよ!!」

 陽キャが飛鳥を離して、モカのスマホを奪おうとしたが、飛鳥が陽キャに関節技を仕掛け、そのまま床に叩きつけて取り押さえた。

 

「てぇ!!!」

飛鳥「あなたがどなたかはご存じありませんが、これ以上この教室での横暴な行為は許しませんよ」

「……!!」

 飛鳥の技を見て、蘭達は驚いた。

 

飛鳥「拘束させて貰います。大人しくしときなさいね」

 

 

つづく

 



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第112話「飛鳥と何かがあったAfterglow ~プール編~・2」



 前回までのあらすじ

 ひまり達Afterglowはプールに行く計画を立て、飛鳥を誘おうとしたが2組の陽キャ男子がこれでもかという程邪魔をしてきた。最終的に飛鳥に喧嘩を売って返り討ちにされた。

 そして飛鳥はその陽キャの身柄を先生に引き渡した。

飛鳥「宜しくお願いします」
「ふざけんじゃねぇぞ一丈字! このままアフグロとプールに行ったら殺すからな!」
飛鳥「普通に犯罪だからね」

 引き渡されても尚見苦しくわめく陽キャに飛鳥はあきれ果てた。まあ、この後陽キャは『喧嘩を売った挙句返り討ちに遭ったクソダサい男』として、学校中の笑われ者になるのだが、また別の話…。

****************


 

 

 2週間後

 

飛鳥「いやーありがとうございますー。2週間も空けてくださって」

 

 トコナッツパーク前に飛鳥とAfterglowが現れた。

 

つぐみ「ううん。誘ったのはこっちだから…」

モカ「2週間も待ってたから思い切り楽しむよ~」

巴「そうだな!」

 と、巴とモカは既にはしゃいでいた。

 

飛鳥「ですが、私の事は気にしなくても良かったんですよ?」

ひまり「皆、一丈字くんと一緒に遊びたいから」

蘭「…そういう事。だから細かいこと気にしないで」

飛鳥「そうですか?」

モカ「それじゃ中に入ろう~」

 

 と、6人が中に入っていった。当然ファンや男子生徒達もいるわけで…。

 

「一丈字とアフグロが本当に中に入ったぞ…」

「そりゃそうだろうな…」

「く~!! なんであいつばっか!」

「オレ、Roseliaに頼んだけど断られたぞ!!」

 

 そういう会話がちらほら聞こえて、飛鳥は困惑した。

 

モカ「気にしない気にしない」

飛鳥「……」

 

 そしてそれぞれ更衣室で着替えて、集合場所で合流した。

 

モカ「飛鳥くん…ダイビングスーツなんだね~」

飛鳥「ええ。諸般の事情で…」

 と、飛鳥は首から下まで全部黒のダイビングスーツだった。

 

つぐみ「それにしても開園したばかりなのに、こんなに人が多いんだね…」

飛鳥「そうですね。今日は30度超えるらしいので、プール日和ですね」

巴「それにしても、一丈字がチケット持っててよかったよ。あのままカウンターに並んでたら、熱中症になりかねなかったからな!」

 

 先週のアルバイトで予想以上の仕事を果した為、責任者からトコナッツパークの無料チケットを6人分も貰ったのだった。

 

飛鳥(なんてご都合主義)

 

モカ「やっぱり持ってるんだね~。飛鳥くんって」

飛鳥「……」

 飛鳥は何とも言えない感じになっていた。

 

蘭「それにしてもすごい人…。気を抜いたらすぐにはぐれちゃうかも」

モカ「ひーちゃん。迷子になったら迷子センターに行くんだよ?

ひまり「もー!! 私の事なんだと思ってるの~!?」

 

 と、ひまりが叫ぶと笑いが生まれた。

 

飛鳥「…移動しますか?」

モカ「そうだね~。あ、その前に飛鳥くん」

飛鳥「何です?」

モカ「どう? この水着」

飛鳥「ああ。似合ってますよ」

モカ「え~普通~」

飛鳥「…すみませんね。あまり気の利いたコメントできなくて」

 モカの言葉に飛鳥が苦笑いした。

モカ「じゃあ具体的にどういう所が似合ってるか言ってみて~」

 と、更に困らせる。

飛鳥「そうですね…」

 飛鳥は具体的に説明した。

 

飛鳥「…という感じで、青葉さんの個性が出てると思います」

モカ「お、おお…随分理系的だね…」

飛鳥「どういう意味です?」

 飛鳥が困惑した。

 

つぐみ「あ、そういえば蘭ちゃんの水着も新作なの? 凄く可愛いよ!」

蘭「あ、ありがとう…」

ひまり「私が選んだんだよ!」

 と、水着の話で盛り上がった。

飛鳥(どこの地域に行っても、こういう話が好きなんだねぇ。若い女の子って)

 

 しばらくして…

つぐみ「あっ! いけないもうこんな時間だ! ごめんね一丈字くん!」

飛鳥「いえ、楽しそうで何よりです」

 話がすっかり長くなり、飛鳥を待たせてしまったことに対し、謝るつぐみ。

 

巴「本当か?」

飛鳥「これくらいでしたら、苦ではございませんよ。それよりも、どこに行かれます?」

 飛鳥が蘭達に問いただした。

 

巴「やっぱりウォータースライダーにはいきたいな!」

飛鳥「それでしたら、先に優先パスを取りに行きましょうか」

ひまり「よ、良く知ってるね…」

飛鳥「いや、このゲートに取る前に、ウォータースライダーは優先パスを取った方が得だっていう張り紙を見ましてね」

 

 ひまりの言葉に飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「他に行かれたい所ってございますか?」

モカ「あたしは温泉プールがいいな~。あそこ人あんまりいなさそうだし、のんびりできるから~」

蘭「…モカってそういうの本当に好きだよね」

飛鳥「それでは、優先パスだけ取得して、その後は随時決めていきましょうか…」

 

 と、飛鳥達は優先パスを取得して、元の場所に戻ってきた。

 

モカ「あ、そういえばオイル塗ってなかった~」

蘭「本当だ」

ひまり「ごめん一丈字くん。ちょっと待って貰っていい?」

飛鳥「あ、構いませんよ」

 飛鳥が反応した。

 

巴「悪いな。待たせてばっかで…」

飛鳥「待つのにはもう慣れてますよ。ごゆっくり」

モカ「じゃあこうしよう~」

「?」

 

モカ「飛鳥くん。この中から1人だけオイルを塗ってもいいよ~」

飛鳥「わあ、一気に窮地に立たされました」

 飛鳥が驚いた。

 

蘭「ちょ、ちょっとモカ!!/////」

ひまり「お、男の子にオイルを塗ってもらうなんて…/////」

つぐみ「その…/////」

飛鳥「まあ、他の皆さん嫌がってますし、青葉さん一択になりますよ?」

巴「べ、別に嫌がってはないぞ!?」

ひまり「ただ、恥ずかしいだけで…/////」

モカ「じゃあ、アタシの背中塗って~」

飛鳥「…最初からそう言えば良かったんちゃいますかねぇ」

 蘭達をからかうモカに対して、飛鳥が困惑した。

 

 で、本当にモカにオイルを塗る事になった飛鳥。

 

飛鳥「本当によろしいんですね?」

モカ「宜しく~」

 

 モカがうつぶせになって、ブラを外して背中が丸見えになっていた。飛鳥は無表情でオイルを手で慣らしていた。そんなモカと飛鳥に対して、4人が顔を赤くしていた。

 

飛鳥「それでは行きますね」

モカ「はーい」

 と、飛鳥がモカの背中に触れた。

 

モカ「あんっ♪」

飛鳥「声出さないでください」

モカ「は~い♪」

 飛鳥は慣れた手つきでモカの背中にオイルを塗った。そんな様子を他の4人の少女たちは顔を真っ赤にして信じられなさそうな顔で見ていた。

 

飛鳥(気持ちは分かる)

 

 完全に飛鳥はクビ覚悟だった。モカに対して同意は得ており、もしいちゃもんをつけてきても、読者が証人になってくれるとはいえ、他所の作品の女の子に対してこんな事をしているのだから。

 

飛鳥「どうですか?」

モカ「えへへ~。気持ちいいよ~」

 と、モカは蕩けていた。

 

ひまり「あ、あの…一丈字さん?//////」

飛鳥「何でしょう」

ひまり「その…触り方といい、オイルの塗り方といい、心得てらっしゃるようですが…////」

飛鳥「昔そういうバイトをしてたんですよ」

「どんなバイトだよ!!!」

 

 飛鳥の言葉に蘭達が突っ込んだ。

 

モカ「蘭達もやってもらったら~? すごく気持ちいいよ~?」

ひまり「い、いやよ!! 恥ずかしい!!//////」

つぐみ「わ、私もちょっと恥ずかしい…/////」

巴「その前に男子に背中を見せれるモカを素直に尊敬するよ…////」

蘭「ていうか一丈字…。堂々と女子の背中触るとかどうなの?/////」

モカ「そういう事言っちゃだめだよ蘭~。そんな事言ったら蘭は狙えるって、周りにいる男子たちがロックオンしちゃうから~」

 

 と、周りに男子たちがロックオンしていた。

 

蘭「そ、それとこれとは別!!」

飛鳥「あ、我々の事は気にしないでオイル塗ってください」

 

 ちなみに周りにいた男子たちは心の底から飛鳥を羨ましがっていたという。

 

 

つづく

 



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第113話「飛鳥と何かがあったAfterglow ~プール編~・3」



 前回までのあらすじ

 一丈字飛鳥。モカにオイルを塗る。

モカ「飛鳥くんのエッチ~」
飛鳥「皆さん。これが昨今の男女関係です」
モカ「ごめんて」

******************


 

 

 オイルを塗り終えたモカたち。ちなみにモカ以外は自分たちでやった。

 

飛鳥「どこから行きます?」

ひまり「あ、ごめん。ちょっとショッピングコーナーみたいんだけど…いいかな?」

飛鳥「あ、どうぞどうぞ。お構いなく」

 飛鳥があっけらかんと言い放つと、蘭と目が合った。

 

飛鳥「どうされました?」

蘭「いや、あんたって女子の言う事ホイホイ聞くタイプなのかなって…」

飛鳥「いけない事をしようとする時は止めますよ?」

蘭「そ、そう…」

 飛鳥がそう返事をすると、蘭はこれ以上聞かない事にした。

モカ「じわじわ主導権握るタイプだよね~。頭いいし」

飛鳥「ご冗談を…行きましょう」

 

 と、6人がショッピングコーナーに向かった。

 

モカ「いやー。何でも取り揃えられてるね~」

飛鳥「そうですね。水着にタオルに水鉄砲にビーチボールがありますね」

 モカと飛鳥が会話をしていると、巴が何かを見つけ出した。

 

巴「この水鉄砲中々かっこいいな!」

蘭「男子小学生みたいだね…相変わらず…」

巴「そうか? 女子でもこういうの好きでもいいと思うんだ」

 と、巴が蘭に絡み、つぐみはひまりと話をしていた。

 

つぐみ「ひまりちゃんは何か買いたいものでもあった?」

ひまり「えーとね…あった!」

 と、ひまりが取り出したのはサングラスだった。

つぐみ「…サングラス? 確かに日差し強いもんね!」

ひまり「それもそうだけど、さっき背の高い女の人がサングラスしてたの! どう? 似合うかな!」

 そう言って、ひまりが頭にサングラスをのっけた。

つぐみ「うん。とっても似合ってるよ!」

 と、つぐみが相槌を打つとそのままキャピキャピ買い物をつづけた。

飛鳥「……」

 そんな中飛鳥は感知していた。負の念を…。

 

「うぉぉぉぉぉぉ!! どうしてあんな美女5人の中にオレはいないんじゃあ!!」

「憎い…!! 一丈字が憎い…!!」

「座長権限使いやがって…!!」

「また読者に飽きたってコメント送られろ…!!!」

 

 と、とにかく雑念が凄かった。

 

飛鳥(もう美竹さん達だけでいい気がするんだよなぁ…)

 

 そんなこんなで元の場所に戻ってきた6人。

 

モカ「いいよいいよ~」

 と、モカがカメラでひまりを撮影していた。ビーチチェアに座り、ドリンクを持ちながらひまりはポーズをとっていた。身長こそは少し足りないものの、彼女のバストがカバーしていた。

 

蘭「モカ。やらしい」

つぐみ「あははははは…」

飛鳥「……」

巴「一丈字。空を見上げなくて良いぞ」

飛鳥「いや、何か上原さん見てると、美竹さんに怒られそうなので」

蘭「見るなとは言ってないよ…」

 蘭が視線を逸らした。

 

飛鳥「まあ、それはそうと…」

モカ「ひーちゃんおっぱいでかい?」

飛鳥「ではなくて、やはり見られてますね…」

 飛鳥が周りを見渡すと、ひまりを凝視する輩と、飛鳥に殺意を抱いている輩がいた。

 

ひまり「もー。そうなのよ。中学の時からずっとこんな風に見られてて…。やっぱりおっぱいが大きいのがいけないのかなぁ」

飛鳥「……」

 飛鳥は何も答えなかった。

モカ「そうだよ~。ひーちゃんまた育ってな~い?」

ひまり「えーそうかなぁ」

モカ「そうだよ~。あんだけ沢山食べてたら…」

ひまり「やっぱりそうなのかな~」

蘭「二人とも。男子がいるからそういう話はしない!!/////」

 蘭が突っ込んだが、飛鳥は紙飛行機を飛ばすポーズをしていた。

 

蘭「…で、一丈字は何してるの?」

飛鳥「冤罪防止」

巴「か、考えすぎだよ…」

 

 ちなみにモカやひまりが「おっぱい」を連呼していた為、男子生徒達や男性客の大半がひまり達をガン見だった。

 

 そしてトークもたけなわにして、サーフィンコーナーへとやってきて、サーフィンに挑戦する事にしたのだが…。

 

巴「いやっほー!!」

モカ「いえーい」

飛鳥「……」

 

 なんという事でしょう。巴、モカ、飛鳥が3人並んで高い波を乗りこなしてるではありませんか。

 

蘭・ひまり・つぐみ「……!!!!」

 

 蘭、ひまり、つぐみの3人は疲れて休憩したが、巴やモカが高い波でサーフィンをしていた事に驚いていたが、飛鳥の身体能力の高さに絶句していた。

 

つぐみ「す、すごい…!!」

ひまり「前々から思ってたけど、一丈字くんって結構運動神経高いよね…!?」

蘭「う、うん…」

 

 飛鳥はボートに乗りながらある事を考えていた。

 

飛鳥(…中学の時、超能力をコントロールするためにサーフィンやったっけなぁ)

 

 おかげで足腰が鍛えられ、足で超能力を使うときにある程度コントロールできるようになったのだ。

 

飛鳥(超能力で作った竜巻に乗ったり、水上を走ったり…。ためになったねぇ)

 

 巴とモカも飛鳥を見ていた。

 

巴(一丈字すご…!!)

モカ(超能力なくてもやるじゃ~ん)

 

 そしてフードコードで食事をしていた。

 

ひまり「一丈字くん凄いじゃん!! まさかあそこまで乗りこなせるなんて…」

飛鳥「いえ、青葉さんや宇田川さんに比べたら…」

巴「…いや、アタシら以上だったと思うんだけど」

モカ「むむむー…。ちょっと妬けちゃうなぁ」

飛鳥「ご冗談を」

 

 飛鳥が苦笑いしながらアフグロと話をしていたが、当然嫉妬の念が凄かった。

 

飛鳥(あー…どこ行っても嫉妬だぜ。そりゃ仕方ないんだけどさ。まあ、手を出してこないだけましか)

 

 そう言って飛鳥はフライドチキンを食べていた。

 

ひまり「そういえばウォータースライダーが載れるようになるんだよね!?」

モカ「そうだね~。そういや6人まで乗れるって言ってたし~」

蘭「…え? 6人?」

 と、蘭が驚きの声を上げていた。

飛鳥「何言ってるんですか。私1人であなた方5人に決まって…」

モカ「飛鳥くんこそ何言ってるの~? 6人で乗るんだよ~?」

飛鳥「あ、それでは多数決取ります。私が一緒でもいい人―」

モカ「はーい」

 と、蘭以外の4人が手を上げた。

 

飛鳥「Oops」

蘭「マ、マジで…!!?」

モカ「という訳だからけってーい」

 

 そんなこんなで飛鳥はAfterglowとウォータースライダーに乗る事になった。

 

 ちなみに賛成した理由

モカ「そんなの飛鳥くんがいた方が面白いからに決まってるじゃ~ん」

ひまり「いやー…流石に一人だけ仲間はずれなのは可哀そうかなって…」

つぐみ「そうだよね…」

巴「アタシは構わないぞ!」

 

飛鳥「約一名のぞいて、めっちゃいい人たち」

モカ「分かってないな~。飛鳥くんの事嫌いだったら手を上げなかったよ~?」

 

 そんなこんなでウォータースライダーに乗る事になったが、何かが違っていた。

 

ひまり「あれ? ウォータースライダーってこんな感じだったかな?」

巴「アタシが前に見たときはもっと普通だったんだけど…」

モカ「普通の奴と期間限定のウォータースライダーがあるみたいだから、期間限定のが載れる分のファストパス買ったよ~」

飛鳥「ちなみにどんな感じの…?」

 

 すると看板にはこう書いてあった。

 

『お化け屋敷 × ウォータースライダー ゴーストMADMAX ~ ウォータースライダーをお化け屋敷風にしてみました~』

 

 パイプが2つあり、片方はどうみても物騒なもので、蘭と巴が固まった。

 

モカ「さあ、行こー」

蘭「ちょ、ちょっと待ってぇええええええええええええええ!!!」

巴「アタシら普通の乗りたいんだけど!!!」

モカ「そんな大したことないと思うよー。精々お化け屋敷風に塗装したとかそんなんでしょー」

蘭・巴「あああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 蘭と巴の悲鳴が響き渡った。

 

 そんなこんなで6人はウォータースライダーに乗る事になったが、いかにも嫌な予感がしなかった。飛鳥たち以外誰もいない。

 

「おい…あっちめちゃくちゃ怖いって評判なのに…」

「女の子たちだけで凄いね…」

「ああっ!! これ一丈字いい思いする奴やんけ!!!」

「チビって嫌われろ!!!」

 

 と、普通のウォータースライダーに並んでいたギャラリーが話をしていた。

 

蘭「……」

巴「……」

 本当は駄々をこねたいが、ここで駄々をこねたらAfterglowと自分のイメージを下げるため、何も言えなかった。

モカ「それじゃ、しゅっぱーつ」

 

 この時、モカに対して殺意が沸いたとの事だった…。

 

 順番

<前>

モカ・蘭・飛鳥

つぐみ・ひまり・巴

 

「それではいってらっしゃーい」

『フハハハハハハハハ』

 と、飛鳥達がウォータースライダーに入れられた瞬間、謎の声がした。

 

蘭・巴「ひぃいいっ!!!」

飛鳥「あー…そんなに大したことないと思いますよ」

ひまり「どこがよぉ!!! 何かパイプのイラストが凄く悪趣味なんですけどぉ!!」

 

 と、両サイドの絵は肌の白い女性が書かれていたが、めちゃくちゃ怖かった。

 

蘭・巴・ひまり「いやぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 と、3人がパニックになっていた。

つぐみ「……!!」

 つぐみも絵の怖さに涙目になっていた。

 

巴「あああああああああああああ!!! ああああああああああああ!!!」

 巴が悲鳴を上げていて、蘭は目を閉じてブツブツつぶやいていた。

 

モカ「どうやって書いたんだろうねー」

飛鳥「印刷とかですかね」

ひまり「ちょっと何二人は冷静になって…」

 その時、スピードが速くなった。

 

「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!!」

 と、6人を乗せたボートはそのまま左右に揺れていった。

 

巴「ひぃいいいいい!!! 顔が!! 顔が近づいてくるぅ!!!」

蘭「無理無理無理無理ぃ!!!」

ひまり「うわ~ん!!!」

 すると正面にEXITという赤文字が書かれていて、その直下は出口の急降下台だった。

 

飛鳥「皆さん! もうすぐ出口ですよ!!! しっかり捕まってください!!」

 飛鳥の号令で6人全員が必死にしがみつくと、急降下して、大きな水しぶきを上げた。

 

 そして6人は上がってきたが、飛鳥とモカ以外は放心状態だった。

 

飛鳥「…大丈夫ですか?」

蘭「大丈夫に見える…?」

飛鳥「見えないです…」

ひまり「もー怖かったぁ~!! あんなの趣味が悪すぎるよー!!!」

つぐみ「夜トイレに行けるかな…」

モカ「あ、そういえば写真撮ってくれてるんだって~。見てみようよ~」

 

 と、6人が写真の販売所を訪れた。写真は最初当たり、中間、そして最後の所の3か所を取ってくれているが…。

 

蘭・巴・ひまり「!!!///////」

 

 蘭、巴、ひまりに至っては終始驚いたり、怖がったり、情けない顔をしていた。つぐみに至っては3枚とも目をつぶっていた。それに対して飛鳥とモカはカメラ目線で親指立てたり、ピースしたりしていた。

 

つぐみ「私3枚とも目をつぶってる…」

モカ「いやー。どの写真を買って帰ろうかな~」

ひまり「買って帰る気!!? ダメ!!!////// もう1回乗ろう!」

モカ「駄目だよー。トモちんと蘭は絶対乗ってくれないよ~。ね~?」

 

 モカが巴と蘭を見ると、巴と蘭が顔を真っ赤にして俯いていた。というのも、ウォータースライダーに乗ってる時に、女の子らしい部分を飛鳥に見せてしまったからである。そして1回目の写真に蘭と巴が涙目で驚いているのに対し、飛鳥が苦笑いしている様子が映っていたからだった。

 

モカ「……」

 モカは2人の心情を察して、飛鳥を見た。

 

モカ「飛鳥く~ん」

飛鳥「何でしょう」

蘭・巴「!!!//////」

モカ「トモちんと蘭どうだった~?」

飛鳥「え? そうですね…」

蘭「喋らなくていい!!/////」

巴「そ、そうだ!!//////」

 と、蘭と巴が必死に止めた。

 

飛鳥「まあ、ご本人が嫌がってる様子なので」

モカ「まあ、大体わかるけどね~」

 モカがニヤニヤしていた。

ひまり「え? どんなふうに考えてたの?」

モカ「トモちんも蘭も、女の子らしくて可愛らしかっt」

蘭・巴「ああああああああああああああああああああああ!!!!////////」

 モカがそういうと、蘭と巴が悲鳴を上げた。

 

飛鳥「青葉さん。冷やかしが過ぎますよ」

モカ「いや、めっちゃ顔笑ってるじゃん。笑ってるね? その心笑ってるね?」

 すると、蘭と巴が飛鳥を睨みつけた。

 

飛鳥「落ち着きましょう。いったん落ち着きましょう」

蘭「これが落ち着いていられるか…!!!//////」

巴「いや、本当に違うからな。違うからな!?///////」

飛鳥「あ、はい」

蘭「もぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!//////」

 

 こんな事もありましたが、なんだかんだ言って楽しい1日になりましたとさ。

 

 

モカ「めでたしめでたし」

蘭・巴「めでたくな―――――――――――――――――――い!!!!//////」

飛鳥・ひまり・つぐみ「……」

 

 

おしまい

 



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第161話「飛鳥と何かがあった日菜とサッカー」


 今回の設定

・ 飛鳥 ← バンドガールズ
・ 早い話が修羅場です。

テーマ『用事があるから、構ってほしい妹を突っぱねたら自分の好きな人とデートしてて、それどころじゃなくなった件』

ゴー。


 

 

 

 

 ある日の事だった。

 

「おねぇちゃぁーん!!!」

 

 氷川家で日菜が紗夜の太ももに縋りついていた。紗夜は日菜を引き離そうと必死になっていた。

 

日菜「今日おひさまがピカーってしてて気持ちいいよ!? どこか遊びに行こうよねぇー!!」

紗夜「今日はライブの練習があるって前から言ってあるでしょ!?」

日菜「えー! お休みなのにー!!」

 

 …早い話、日菜は紗夜に構ってほしいのだった。

 

紗夜「とにかく! 今日はライブの練習があるから、他の子と遊びなさい!」

日菜「はーい…」

 

 そう言って紗夜は去っていった。

 

日菜「ざーんねん」

 

 そして日菜はどうしたかというと…。

 

日菜「そういう訳だから構ってー」

「……」

 

 なんという事だろう。丁度ジャージ姿でランニングしていた一丈字飛鳥と遭遇していた。

 

飛鳥「すみません。私もちょっと走らないといけなくて…」

日菜「どうして?」

飛鳥「…運動不足が祟りまして」

 

 というのは嘘で、飛鳥は超能力者としての勘を鈍らせないために修業をしていたのだ。まあ、流石に街の中で超能力を使うと大騒ぎになるので、ランニングといった運動で何とか体を鍛えているわけだが、日菜が来た事で「Pastel*Palletes」のスキャンダルを作らないようにするという目的が増えた。

 

日菜「運動かー…。たまにはいいかも! るんってした!」

飛鳥「あのー」

 

 だが、日菜にとってはお構いなしだった。自分がやりたい事を本能のままにやる。それが彼女・氷川日菜だった。

 

日菜「それじゃあたしも一緒に運動していい!?」

飛鳥「いや、どう見てもその格好は運動には向いてない気が…」

日菜「じゃあ、ジャージ持ってくるから待ってて!!」

 と、日菜が去っていった。

 

飛鳥(なんてこった。パンナコッタ)

 

*****************

 

日菜「おひさまピカーってしてて気持ちいいね!」

飛鳥「…そうですね」

 ジャージ姿に着替えた日菜は飛鳥と一緒に河川敷を歩いていた。こんな姿を誰かに見られたら多分命はないだろうと飛鳥は思っていた。

 

 そんな時、河川敷の下のサッカーグラウンドを見ると、何やら不良たちが小学生たちを脅していた。

 

飛鳥「あれは…」

日菜「喧嘩かな? 止めないと!」

飛鳥「ええ」

 

 飛鳥と日菜が下に降りてグラウンドに近づいた。

 

「なんなんだよおまえら!」

「お前らこそ、誰に断ってこのグラウンド使ってんの?」

 

 と、不良生徒は5人いて小学生たちを脅迫していた。

 

「こ、このグラウンドはお前たちのものじゃないだろ」

「そうだそうだ!!」

 小学生たちが言い返すと、不良生徒達は小学生に近づいた。

 

「ほーう。そんな生意気な口を利く奴には教育してやらないとなぁ?」

 不良たちが小学生たちを痛めつけようとすると、

 

「コラー!! やめなさーい!!」

 と、日菜と飛鳥がやってきた。

 

「あ?」

「!」

 皆が飛鳥と日菜を見た。

 

「誰だお前?」

「おい! あれってパスパレの氷川日菜じゃね!?」

「ホントだ!!」

「で、隣の奴は誰だ?」

 

 日菜の姿を見て不良たちが騒ぎ出した。

 

日菜「小学生相手に大人げないと思わないの!?」

 すると不良の主犯格がニヤって笑った。

 

リーダー「そうだなー。あんたがデートしてくれるって言うなら、引いてやっても良いぜ?」

不良A「勿論、全員とな!」

リーダー「あ? 何言ってんだお前」

不良A「お前だけズルイぞ!!」

不良B「そうだそうだ!!」

 

 と、不良たちが仲間割れを始めた。

 

飛鳥「あー…君達は遠く離れてて。この人たちはおじさん達で何とかしとくから」

日菜「って事はあたしおばさん!!?」

飛鳥「いいえ? そんな事よりもあの人たちをどうにかしましょう」

 すると不良たちが飛鳥を睨みつけた。

 

「それはそうと誰なんだよてめぇ!!」

飛鳥「こちらの氷川日菜さんの学校の後輩です」

 すると不良のリーダーがまたニヤッと笑った。

 

飛鳥「スキャンダルとして情報売られたくなかったらいう事を聞け」

「!!?」

飛鳥「何て言っても無駄ですよ。その辺の対策も実施済みなので」

不良A「舐めやがって…」

不良B「どうやら殺されたいようだなぁ…!!」

 と、不良たちが激昂すると、不良Cが目の前にあったサッカーボールを目につけた。

 

不良C「死にさらせ!!!」

 と、不良Cがボールを蹴ったが、思ったほど強くなく、飛鳥の元へ転がっていった。

 

飛鳥「……」

日菜「ヘタクソだね」

不良C「はぐあっ!!」

 

 日菜の言葉に不良Cはショックを受けた。そして止めに飛鳥がボールをトラップして、そのままリフティングを始めた。プロ顔負けで日菜も小学生たちも目を輝かせていた。

 

日菜「すごーい!」

小学生「すげー!!」

飛鳥「やば、こんなことしてる場合じゃなかった。そらよ!」

 

 飛鳥が不良たちに向かってボールを蹴り返したが、そのフォームもまあそれは奇麗なもので…。

 

リーダー「く、くそぉおおおお!!」

不良A「余裕ぶりやがって…」

不良B「もう許さねぇ!!」 

 と、不良たちはバットとか刃物を持って脅しをかけたが…。

 

「コラー!! そこでなにやってるんだー!!」

「げっ!!」

 

 いかつい顔のおっさんが現れた。

 

「生徒指導のゴリ松だ!!!」

「逃げろー!!!」

 そう言って不良たちは逃げていったが、ゴリ松は物凄い勢いで追いかけていった。

 

飛鳥「何とか助かったみたいですね…」

 飛鳥が一息ついて、日菜を見ると、日菜は目を輝かせていたので、飛鳥は困惑していた。

 

飛鳥「ど、どうされました…?」

日菜「飛鳥くんサッカーしてたの!?」

飛鳥「いや、中学の時の友達がサッカー部で、練習によく付き合ってただけですよ…」

 飛鳥がそう言うと、小学生たちが集まってきた。

 

「お姉ちゃんすごーい!!」

「さっきのどうやったのー!?」

「教えてー!!」

飛鳥「あ、オレお兄ちゃんだよ…」

 

 と、このままサッカーをする事になった…。

 

 その夜

 

紗夜「はぁ…日菜には今度埋め合わせでもしようかしら」

 紗夜が家に帰ってきた。

 

紗夜「ただいま…」

日菜「あ、おかえりおねーちゃん」

 と、泥だらけの日菜を見て驚いていた。

 

紗夜「あ、あなたどうしたの!? その格好!!」

日菜「えっとねー。今日飛鳥くんと近所の子供達でサッカーしてたの! 河川敷で」

紗夜「は!?」

日菜「飛鳥くん凄く上手だったんだよー。あたしも負けてないけどね! あ、先にお風呂入るから待っててー」

 そう言って日菜が風呂に入りに行った。

 

紗夜「……!!」

 

 日菜への嫉妬が再燃したのは言うまでもなかった。

 

 その頃、飛鳥の家では…。

 

飛鳥(日菜先輩…。やっぱり上手だなぁ。ありゃFW向きだ)

 と、飛鳥は風呂に入りながらそう考えていた。

 

 

おしまい

 



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第162話「飛鳥と何かがあったRoseliaとサッカー」

 前回までのあらすじ

 紗夜に構ってほしい日菜は遊んでほしいと言ったが、紗夜はRoseliaの練習がある為、他の人と遊ぶように断ってしまう。日菜は一緒に遊ぶ人間を探すために、皆のアイドル(?)、一丈字飛鳥に交渉をかける。

 飛鳥としては超能力者としてのトレーニングの為にランニングをしていたが、日菜もそれに乗っかり、一緒に運動することに。

 河川敷まで走ると不良たちが小学生たちにいちゃもんをつけていた為、飛鳥はサッカーテクニックを見せつけて撃退させる。

 その後は日菜と共に小学生たちとサッカーを日が暮れるまで楽しんだ。

 そしてこれが今回の騒動の引き金になりました。



 

 

 

************************

 

 翌日

 

「一丈字くん」

飛鳥「あっ…」

 

 紗夜が登校しようとしていた飛鳥の前に立ちはだかった。

 

飛鳥「氷川先輩。おはようございます…」

紗夜「おはようございます。少し宜しいですか?」

飛鳥「昨日の件ですよね…」

 

 紗夜の様子を見て大体何が言いたいかを察した飛鳥。そう、紗夜が畏まって話しかけてくるときは大体日菜が関連しているからだったのだ。

 

 カフェテリア。朝なのであまり人がいない。

 

紗夜「昨日は妹がご迷惑をおかけしました」

飛鳥「いえ、気分転換になったそうで何よりです」

 飛鳥が困惑した。

 

紗夜「元々は私と遊びたいと言ったんですが、私がRoseliaの練習があるからと断ったばかりに…」

飛鳥「それは日菜先輩ご本人からお伺いしております」

紗夜「そうですか…」

 と、沈黙が起きた。

 

飛鳥「私の事はお気になさらず」

紗夜「お、お気遣いありがとうございます…/////」

 

 紗夜は何かもじもじしていた。それに対して飛鳥は何かを感じ取ったが、

 

飛鳥「…私はこれで失礼しますね」

紗夜「あの」

飛鳥「?」

 飛鳥が紗夜を見つめた。

 

紗夜「その…も、もし宜しければ…その…/////」

飛鳥「そこまで気を遣って頂かなくて結構ですよ」

紗夜「……」

 

 飛鳥としては紗夜とも何かをすればRoseliaファンに殺されかねない上に、すでにパスパレファンからも何か報復があるんじゃないかと考えていた為、これ以上騒動を大きくしたくなかった。普通に考えたらスキャンダルである。

 

「女の子に言わせるなんて感心しないわね」

 

 と、友希那、リサ、燐子が現れた。

 

飛鳥「先輩方…」

紗夜「み、湊さん…」

あこ「あこもいますよ!!」

 あこも燐子の後ろからひょいっと顔を出した。

 

友希那「別にいいじゃない。紗夜と遊んだって」

飛鳥「そうは言いましてもねぇ…」

 飛鳥が困惑した。

 

紗夜「…やっぱり私じゃ役不足ですか?」

飛鳥「そうじゃなくて、同じクラスの男子達と遊んだりしないんですか?」

友希那「遊ぶわけないじゃない。そんなに仲も良くないのに」

リサ「そんなハッキリ言わなくても…」

 リサが苦笑いした。

 

友希那「それにしてもあなた、サッカーできたのね」

飛鳥「…もしかして、日菜先輩からお伺いしてますか?」

友希那「そうね」

燐子「…中学の時サッカー部だったんですか?」

飛鳥「いえ、中学の時の友達がサッカー部で、よく練習相手をしてたんですよ」

あこ「ポジションはどこが得意なの?」

飛鳥「ディフェンダーですね」

紗夜「一丈字くんは足が速いから確かに向いてますね…」

 

 と、サッカーに関する話をしていた。

 

紗夜「その…一丈字くん」

飛鳥「何ですか?」

紗夜「その…」

 紗夜が迷っていた。

 

友希那「紗夜。悩んでるようなら私が誘うわよ」

飛鳥「え?」

友希那「今度の休み、運動に付き合って頂戴」

「え…えー――――――――――――っ!!!?」

 友希那の言葉に皆が驚いた。

 

リサ「ゆ、友希那が運動!!?」

あこ「音楽以外全く興味のない友希那さんが…!?」

燐子「ど、どうして…」

紗夜「どうされたんですか!?」

友希那「私を何だと思ってるのよ…」

 

 4人の反応を見て友希那がむすっとすると、飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「えーと…。私で宜しいんですか?」

友希那「じゃなかったら声をかけないわよ。いいわね?」

飛鳥「それは構いませんが…」

紗夜「あ、あの! 私も来ても良いですか!?」

 紗夜が話しかけた。

 

飛鳥「…あ、はい。どうぞ」

 そう困惑しながら返事をする飛鳥だったが、正直命はないと思っていた。

 

 そして飛鳥の嫌な予感は的中した。

 

「一丈字はどこだ!!」

「出てこい!! 話がある!!」

 

 サッカー部に絡まれた。成績は対して悪くはないが、やっぱりファンが多い。

 

「おい! サッカー部とあの1年がRoseliaをかけて決闘するらしいぞ!!」

「マジか!!?」

 

 話に尾びれがついてしまい、学校全体を騒がしてしまった。

 

 グラウンド

 

「おい、誰に断ってRoseliaにちょっかいをかけてるんだ。あ!?」

飛鳥「かけた覚えないんですけどね…」

 

 飛鳥は友希那とリサのクラスメイト達にいちゃもんをつけられていた。ちなみに2年2組にサッカー部のキャプテンがいる。

 

「Roseliaとサッカーするのはオレ達だ!!」

「お前はすっこんでろ!!」

飛鳥「本人達に言ってください」

「な、なんて生意気な奴だ!!」

「こんな奴のどこがいいんだ…」

飛鳥(それはオレが一番思ってるよ…)

 飛鳥が困惑していた。

 

「と、とにかくRoseliaをかけてオレ達と勝負しろ!!」

「負けたらRoseliaとの約束を取り消せ!!」

飛鳥「それは本人に言って貰わないと困るんですけど…まあいいや」

 飛鳥は困惑した。

 

 ルールは簡単。制限時間内にゴールを割ったら飛鳥の勝ち。割れなかったらサッカー部の勝ちだった。しかし、人数が多すぎてどう見てもサッカー部が有利だった。

 

「完全にサッカー部が有利じゃねぇか!!」

「そこまでして勝ちたいのかよ…」

「まあ、気持ちは分かるけどさ…」

「さすがの一丈字も11人相手は無理だろ…。何だかんだうちのサッカー部強いし」

 

飛鳥(ここで負けたらすむ話なんだろうけどねぇ…)

 飛鳥がボールを右足で押さえつけながら、ベンチで見ているRoseliaを見た。

 

あこ「センパーイ!! がんばってー!!!」

友希那「負けたら燐子のスリーサイズを公開するわよ」

燐子「勝ってくださーい!!!!///////」

 

飛鳥(本当にやりかねなさそうだから、早く終わらせたろ)

 

 そして笛が鳴った。

 

「さあ来い…さあ!!」

 と、サッカー部が不敵な笑みを浮かべたが、飛鳥はボールを上げた。

 

「!!?」

 そしてそこからロングシュートを放ち、あっという間にゴールを割った。

 

「…え?」

 サッカー部だけではなく、見ていた人間達も唖然としていた。

 

飛鳥「これで勝負は終わりですね」

「……!!」

 飛鳥が背を向けた。

 

飛鳥「交渉は各自でお願いします」

 そう言って飛鳥はRoseliaの元に向かった。

 

飛鳥「あ、白金先輩。もうご心配はいりませんよ」

燐子「……!」

 飛鳥が燐子に声をかけたが、燐子は驚いたように飛鳥を見ていた。

 

友希那「流石ね。飛鳥」

飛鳥「いえいえ…」

あこ「センパイかっこいいー!! サッカー超得意じゃん!!」

飛鳥「いやー。もう流石にさび付いてたと思ったんですけど、案外何とかなりましたね…」

 飛鳥が視線を逸らした。

リサ「いやいや! さび付いてるどころか、凄く慣れた感じじゃん!!」

 と、和気藹々としていた。

 

友希那「そういう事だから予定通り、今度の休みは予定空けて頂戴ね」

飛鳥「あ、はい…」

 

 友希那の言葉に飛鳥が返事をすると、

 

「お、おい!!」

飛鳥「?」

「誰が1回勝負つったよ!!」

「今の練習だ!!」

 

 と、負け惜しみを言い放ったが、完全なる負けフラグだった。

 

飛鳥「…行ってきまーす」

 

 結局、飛鳥が負けるまで続いたがあまりの見苦しさにサッカー部はしばらくの間、肩身の狭い思いをしたとかどうとか…。

 

 

おしまい

 



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第244話「飛鳥と何かがあったPastel*Palletesと用心棒」


 今回の設定

・ 飛鳥 ← パスパレ
・ パスパレの用心棒として現場に同行することに。

****************


 

 

 

『完全にぶっ壊れたパスパレ』

 

 私の名前は一丈字飛鳥。バンドリ学園に通う高校1年生。いろいろあってこの高校に通っていたのですが…。

 

「…あの、白鷺先輩」

「千聖って呼んでくれるかしら?」

 

 同じ学校に通っている大人気アイドルバンド「Pastel*Palletes」のメンバーの仕事に同行することになり、そして今メンバーの白鷺千聖先輩に抱き着かれています。ここで、私の語りは終わります。

 

飛鳥「私を消そうとしているのでしょうか」

千聖「そんな訳ないじゃない。寧ろ消そうとする輩を消してやるわ?」

飛鳥「あなたによって消されそうになっているのですが」

 

 そんな時だった。

 

「あーっ! 千聖ちゃんだけずるいよ~」

飛鳥「丸山先輩。アイドルが何を仰ってるんですか…」

日菜「次あたしね!」

彩「日菜ちゃん!」

飛鳥「私の話聞いてました?」

 

 メンバーに囲まれているというより、自分の話を聞いてくれないメンバーに飛鳥は困惑していた。

 

麻弥「み、皆さん! 一丈字さん困ってるじゃないですか」

飛鳥「大和先輩…」

 

 麻弥が助け舟を出してくれ、千聖たちが離すと飛鳥は一安心した。

 

イヴ「大丈夫ですか?」

飛鳥「大丈夫ですよ…」

千聖「それはそうと飛鳥くん。そろそろ敬語使うのやめてもらえるかしら?」

飛鳥「先輩ですよ」

日菜「あ、それあたしも思った」

彩「ちょ、ちょっと余所余所しいかなーって…」

飛鳥「線引きは大事だと思いませんか?」

 

 日菜、彩の言葉に飛鳥が困惑した。

 

麻弥「確かにそうですけど、プライベートはもうちょっと肩の力を抜いたほうが…」

イヴ「少なくとも私は同級生ですよ?」

千聖「イヴちゃん。抜け駆けはだめよ?」

日菜「あ、それだったら先輩命令で!」

飛鳥「日菜先輩。あまり無茶苦茶なこと言いますと、紗夜先輩から…」

日菜「え!? おねーちゃんの名前を出すのは卑怯だよ!!」

 

 飛鳥の言葉に日菜が慌てた。

 

千聖「本当にまじめね…」

飛鳥「お気持ちはありがたいのですが、誰が見てるかわかりませんしね。ファンの怖さはあなたが一番ご存じのはずです」

千聖「それもそうね…」

 

 その時だった。

 

「パスパレのみなさーん! そろそろお願いしまーす!」

「はーい」

 

 パスパレは午前から仕事が入っていて、飛鳥はその見学…もとい、撮影の邪魔をする輩の排除を任せられていた。

 

「いやー…。ごめんね一丈字くん。うちのタレントが…」

飛鳥「いえ、うちの社長からも承諾を得ているので…」

 

 飛鳥は日菜たちの事務所のお偉いさんと話をしていた。

 

 撮影は滞りなく進み、昼食の時間となったのだが…。

 

「何ぃ!? 手違いで弁当が注文できていなかった!!?」

「す、すみません…」

「ばっかもーん!!!」

 

 スタッフの手違いで用意されるはずだったロケ弁が注文されておらず、全員昼食が食べられない状態になっていた。

 

飛鳥「あらまあ…」

千聖「…ごめんなさい。いつもの事なのよ」

 

 飛鳥が困惑していると、千聖が申し訳なさそうにしていた。

 

日菜「そんなー…。おなかペコペコだよ…」

麻弥「そういやこの辺、コンビニとかありましたっけ…」

彩「なかったよ。ましてやスーパーもなかった気が…」

イヴ「武士は食わねど高楊枝です…!」

 

 イヴがそういったその時、イヴの腹から大きな音がなった。

 

イヴ「……!!//////」

 

 イヴは恥ずかしさから顔を真っ赤にして涙目になり、飛鳥を見たが、飛鳥はスマホで何かを探していた。

 

飛鳥「そういやここに来る途中、うどん屋が見たような…」

「!!」

 

 飛鳥がそうつぶやくと、皆が飛鳥を見た。

 

*******************

 

 そして、スタッフ一同でそのうどん屋にやってきたが、全員分はふるまえないといわれた。すると飛鳥は超能力を使って存在感を消した。演者であるパスパレ、女性スタッフ、お偉いさん、男性スタッフ、飛鳥という優先順位を付けたが、結局女性陣とお偉いさんしかうどんにありつくことはできなかった。

 

「腹減った…」

 

 取り残された男性スタッフは困惑していると、飛鳥がやってきた。

 

飛鳥「あのー…」

「?」

飛鳥「これ、ひそかに私が持ち込んでたお菓子なんですけど、食べます?」

 

 飛鳥が黒い球体みたいなのを取り出した。

 

「何これ?」

飛鳥「兵糧丸っていう、昔のカロリーメイトみたいなものです」

「そ、そう…」

「でももう腹減ってるから…」

「いただきます!」

 

 そう言って男性スタッフたちが兵糧丸を食べた。すると…。

 

「…うんまぁああああああああああああああい!!!!」

「まいう~」

 

 それはそれはとても大好評だった。

 

 一方、パスパレはというと、飛鳥の手柄でうどんにありつけたが、飛鳥が男性スタッフたちに兵糧丸を渡した瞬間に術が解けた。

 

彩「はっ! 飛鳥くんは!?」

日菜「気が付いたらいない!!」

千聖(あの子…っ!!)

 

 5人が慌てて外に出ると、飛鳥と男性スタッフが和気あいあいしているのを見た。

 

「やるなあんた!」

「家で料理すんのかい!」

 

 その光景を見て、パスパレは唖然としていた。

 

千聖「あ、飛鳥くん?」

飛鳥「あ、はい。なんでしょう」

千聖「どうしてあなた、ここにいるの?」

飛鳥「え? 男性スタッフの方々はないという事なので」

彩「そ、そうなんだ…」

 

 そんな事しなくても私たちが食べさせてあげるのに! と5人は思ったが、スタッフがいる手前何も言えなかった。

 

千聖「それはそうと何をはしゃいでたの?」

日菜「教えて!!」

「いやあ、この子が作った兵糧丸っていう菓子が美味いんだ!」

「量は少ないけど、とても元気が出るよ!」

 

彩・日菜・千聖・麻弥「この子が作った!!?」

イヴ「兵糧丸!!?」

 

 パスパレが驚くと、すぐさま黒い笑みを浮かべた。

 

千聖「飛鳥くん。どういう事かしら?」

飛鳥「こういう事です」

日菜「どうして教えてくれなかったの!?」

飛鳥「聞かれなかったからです」

 

 飛鳥が淡々と答えた。

 

彩「そもそも兵糧丸って何?」

イヴ「兵糧丸はニンジゃの携帯食なのです! アスカさん、あなたやっぱりニンジャなのでは…?」

飛鳥「あ、忍者マニアの知人から作り方教えてもらっただけですよ。美味しかったし、食べやすかったので、持ってきました」

麻弥「それもそうですけど、飛鳥さんの手料理…うらやましいです…!」

飛鳥「え、そうですか?」

千聖「わかってて聞いてるでしょ…!!」

 

 飛鳥の言葉に千聖が目を閉じて拳を握った。

 

飛鳥「まあ、皆さんには午後からもカメラの前で元気でいてもらわないといけないので、より栄養のあるものを食べていただかないと」

日菜「そっち食べたかったよ!!!」

彩「もー!!」

飛鳥「ははははははは」

 

 と、飛鳥は何とか笑ってごまかしたという。

 

イヴ「今度作ってください!!」

飛鳥「……」

 

おしまい

 

 



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第281話「飛鳥と何かがあったPoppin'Partyとラブコメ」

 

 

『ラブコメ的な飛鳥 × ポピパ』

 

 

 それはある朝のことだった。

 

「おっはよー!! 飛鳥くん!!」

「……」

 

 一丈字飛鳥がマンションから出てくると、大人気ガールズバンド「Poppin’party」のメンバー5人が待っていた。

 

飛鳥「あ、おはようございます…」

 

 飛鳥は少し困惑したように挨拶をした。

 

飛鳥「一体どうされたんですか?」

香澄「早く飛鳥くんに会いたくなって!」

飛鳥「今午前6時なんですけどね…」

 

 そう、今は午前6時であり、学校なんて空いてるわけがなかった。

 

有咲「いや、お前もお前でなんでこんな朝早く学校に登校するんだよ!」

飛鳥「なんとなく」

 

 有咲の疑問に対し、飛鳥はあっけらかんと言い放つと、ほかのメンバーは困惑していた。

 

りみ「あ、ご、ごめんなさい。いきなり押しかけて…迷惑だったよね…」

飛鳥「次からはアポ取ってください」

 

 飛鳥はきっぱりと言い放つと、りみがうつむく。

 

香澄「次からは気を付けるからさ…」

沙綾「全くもう…」

飛鳥「いや、山吹さん。全くもうって言ってますけど、他人事だと思わないでください」

沙綾「はい、反省してます…」

 

 飛鳥がそういうと、沙綾もうつむいた。

 

飛鳥「それはそうと、こんな朝早くで歩いて大丈夫なんですか?」

たえ「大丈夫だよ。あさっぱから練習することなんてよくあるし」

飛鳥「そうなんですか…」

 

 たえの言葉に飛鳥は苦笑いした。

 

香澄「それじゃ学校いこっか!!」

 

 飛鳥の家から学校まで徒歩で5分だが、つかの間の登校を楽しんだ。

 

香澄「ところで飛鳥くん。一人暮らしなんだよね?」

飛鳥「ええ、まあ…」

有咲「掃除とかちゃんしてるのか?」

飛鳥「してますよ。いざっていうときはハウスクリーニングの方が掃除をしてくださいます」

 

 飛鳥の言葉に5人が驚いた。

 

香澄「ハ、ハウスクリーニング…?」

飛鳥「ええ。掃除代行サービスですよ。ご存じないですか?」

有咲「い、一丈字…。お前んち、金持ちなのか?」

飛鳥「ああ。あのマンションのサービスみたいなものですよ」

たえ「いや、あのマンションも結構高いよね…」

りみ「うん…」

飛鳥「そうですかね…」

 

 実際はというと、飛鳥の家はちょっとだけお金持ちである。母親は警察官、父親は一般会社員だが、父方の祖父が中小企業の社長で、母方の親族は警察関係が多い。

 

 そして本人も昔から賞金の出るコンテストなどに参加しては、賞金をゲットしたりしている。

 

 ちなみにこのマンションは飛鳥の友人の祖父が経営をしているグループが所有するマンションであり、友人ということで特別に貸してもらっている。いろいろあるのだ。

 

たえ「ハウスクリーニングってことは、やっぱりエッチな本とかおいてないの?」

有咲「お、おたえ!!/////」

 

 たえの発言に皆が驚いた。

 

飛鳥「デリカシーって言葉を知ってます?」

たえ「まあ、そうなんだけどね…。あ、大丈夫だよ。飛鳥くんなら」

飛鳥「そ、それはどうも…」

 

 たえの言葉に飛鳥は困惑していた。たえはつかみどころのない性格で、メンバーですら彼女の真意に気づくのに結構手間がかかっている。

 

香澄「え、男の子ってエッチな本を隠したりとかしないの?」

飛鳥「人によりますよ」

有咲「そんなこと言ってオマエ、隠し持ってたりしないだろうな?」

飛鳥「仮にそうだったとしても、女子の前でそういう事話すと思いますか?」

たえ「ふつうはしないね」

飛鳥「そうでしょう?」

たえ「でも、飛鳥くんならいいよ」

 

 たえの言葉に飛鳥はさらに困惑した。

 

飛鳥「…もしかして、私に気が合ったりします?」

たえ「そうだよ」

 

 衝撃の事実に飛鳥が困惑した。

 

有咲「お、お前なあ!! しかもおたえも何言いだしてるんだ!//////」

 

 たえの衝撃の告白にほかの4人が困惑した。

 

たえ「本気だよ」

飛鳥「そ、そうですか…。ですが」

たえ「わかってるよ。いろんな人から聞いたもの。彼女を作る気はないって」

 

 たえがそう言い放った。

 

たえ「でも今は諦めないから」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 飛鳥の言葉に香澄が慌てた。

 

香澄「わ、私だって飛鳥くんのことが好きなんだから!!/////」

有咲「か、香澄!!/////」

 

 香澄も飛鳥に告白すると、有咲が慌てた。

 

たえ「ハウスクリーニングなんかに頼らなくても、私が掃除しに行くのに」

飛鳥「光栄な限りですが…」

香澄「そういや、どうして誰も家に入れてくれないの?」

飛鳥「私生活とかあまり見られたくないんですよ。マンションの中にある食堂やゲストルームならいいですけど…」

「……」

 

 飛鳥の発言に皆が驚いた。

 

たえ「…やっぱりお金持ちなんだね」

飛鳥「そうでしょうか」

たえ「あ、言っとくけどお金があるから好きになったんじゃないよ。一目ぼれ」

飛鳥「お、おお…」

 

 たえが思ったほか積極的で飛鳥は驚きを隠せなかった。

 

香澄「わ、私はその…最初は友達だと思ってたんだけど、ずっと一緒にいてライブとかしてるうちに…/////」

飛鳥「あのー。お気持ちはうれしいのですが、道の真ん中でそういう話をするのはちょっと、マナー違反ではないでしょうか」

「!?」

 

 6人が見渡すと、そこには朝練をしていた生徒たちが嫉妬のまなざしで飛鳥を睨みつけたり、早朝の散歩をしていたおばさんがニヤニヤしてたり、ジョギングしていた兄ちゃんが何事かと見つめていた。

 

有咲「な、なにしてくれてんだお前ら!! さっさと行くぞ!!」

 

 そう言って有咲は飛鳥の手を引っ張って校舎の中に入っていった。

 

香澄「有咲―!!」

たえ「好きって言えばいいのに…」

 

****************

 

 そんなこんなで…。

 

「おい、一丈字てめぇ…」

「……

 

 飛鳥はファンの男子生徒たちに絡まれていた。

 

「オレたちはお前の踏み台じゃねーんだよ!!」

「いいよなお前ばっかり、可愛い女の子たちに囲まれてよ!!」

「いい加減にしろよおらぁ!!」

 

 男子生徒たちは騒いで、飛鳥は何とも言えない顔で見つめていた。

 

「お前あれか…」

飛鳥「?」

「お前、ひょっとして香澄ちゃんたちとエッチしたのかぁ!!」

飛鳥「してませんし、そういう所ですよ」

「あんだとコラァ!!」

「上からモノを言いやがって!!」

 

 とにかく暴走が止まらない男子生徒たちに飛鳥は静観した。

 

「オレだって香澄ちゃんをペットにして、可愛がりてぇよ! 全裸のままあの屈託のない笑みでオレに笑いかけてほしい」

「オレは有咲ちゃんを従順な女にして、あの大きな乳を好き放題したい!」

「僕はりみちゃんを脅迫して怖がらせて、言うことを聞かせて、あの華奢な体で「ワンワン」って言ってほしい!」

「オレはおたえちゃんをとにかくめちゃくちゃにしたい!! ていうかお前みたいにぐいぐいせめてきてぇ~!!!」

「オレはさーやちゃんにお姉ちゃんお姉ちゃんって甘えさせてほしい! ああ!! おねーちゃん!! おねーちゃん!!」

 

飛鳥(性癖が独特すぎるし、最低なこと言ってるし、わざと嫌われてるようにしか思えないんですが)

 

 

 とにかく男子生徒たちが気持ち悪すぎて、飛鳥は真っ白になった。

 

 

飛鳥「もうやめさせてもらうわ!!!」

 

 

おしまい

 



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第282話「飛鳥と何かがあったPastel*Palettes ~労い編~」

 

 

『一人の男を取り合うPastel*Palletes』

 

 ある日の事、飛鳥は帰ろうとしていた。

 

飛鳥「さて、帰るか…」

 

 飛鳥が帰ろうとすると、日菜が現れた。

 

日菜「やっほー! 飛鳥くん今日暇!?」

飛鳥「ごめんなさい。予定があります」

日菜「えー!! 今日も!!?」

飛鳥「今週いっぱいはちょっと…」

日菜「じゃあ! 来週は!?」

飛鳥「来週なら時間取れると思います。多分…」

 

 日菜が飛鳥を遊びに誘おうとしたが、予定が入っていた為断っていた。

 

日菜「思ったんだけど、飛鳥くん何か予定があるの? 女の子とデート?」

飛鳥「…だとしたらどうします?」

 

 飛鳥がそう聞くと、日菜がむすっとした。

 

日菜「かわいい女の子ならここにいるんだけどなー」

飛鳥「あなた、アイドルでしょう…」

 

 アイドルとしてあるまじき発言をする日菜に飛鳥だけでなく、クラスメイト達も困惑していた。前から日菜はマイペースで周りを困惑させることはあったが、今回はとびきり困惑させていた。

 

飛鳥「そういうわけですので、失礼します」

 

 そう言って飛鳥が教室を去っていった。

 

 そして飛鳥が自宅のマンションに帰ってきて、郵便受けを見ると、一枚の大きな封筒が届いていた。

 

飛鳥「あっ、これは…」

 

 飛鳥が家に帰って確認すると、合格証書が届いていた。

 

飛鳥「よっしゃ!」

 

 先日、飛鳥は技術系の試験を受験しており、かなり難しい試験だったが、最低ラインよりも少し余裕を持たせて合格した。

 

飛鳥「この調子でコンテストも優勝だ!」

 

 そう、飛鳥は今度テクノロジーコンテストに出場する予定だったのだ。その為の練習もあり、人と遊ぶ時間もなかったのだ。また、このことを誰にも教えてなかったのだ。

 

*******************:

 

 その結果…。

 

「一丈字くん。テクノロジーコンテスト優勝、おめでとう!」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 飛鳥はコンテストに優勝して、全校集会で全校生徒の前で表彰された。これには全校生徒全員が驚いた。

 

飛鳥(学校に報告しなきゃいけないの、すっかり忘れてたな…。まあいいや)

 

 さて、ここからが本題である。

 

*****************:

 

日菜「飛鳥くん。優勝おめでとう」

飛鳥「ありがとうございます…」

 

 全校集会終了後、飛鳥は日菜に呼び出された。日菜が怒っていたので、飛鳥が困惑していた。日菜だけでなく麻弥、千聖も集まっており、彩やイヴも何事かと3人に合流し、パスパレに絡まれるという、ファンにとってはうらやましい状態になっていた。

 

麻弥「あのテクノロジーコンテストって、上級者向けの大会っすよね!? 一丈字さん、機械に強かったんですか!?」

飛鳥「いや、音楽関係はあまり…。バリバリの工業系です」

麻弥「そ、そうなんすか…」

千聖「確かおじいさまが船を造る会社の…」

飛鳥「その関係もございますね」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

日菜「それはそうとさ! 今日は絶対空いてるよね!?」

飛鳥「何も起こらなければ…」

日菜「それだったら今日ちょっとたくさん話しよ! めちゃくちゃるんってしてるから!」

飛鳥「事務所的は大丈夫なんですか?」

千聖「大丈夫よ。あなたのことはある程度話してあるから」

飛鳥「えっ…」

 

 千聖の発言に飛鳥が困惑した。

 

「パ、パスパレにあんなに…!!」

「何の特徴もない陰キャだと思ってたのに…」

「あそこまでの実力があるならある程度認めるしか…」

「でもパスパレはアイドルだぞ!! それ以上の関係になるわけが…」

 

 パスパレの積極的ぶりにファンの男子生徒たちは動揺して、飛鳥はさらに困り果てた。

 

千聖「ほっときなさい。大した努力もしないでやっかんでたのが悪いのよ」

飛鳥「えぇぇぇ…」

 

 千聖は本当にシビアだったため、飛鳥は何も言えずにいた。

 

************************:

 

 そして放課後、飛鳥はワゴン車に乗せられた。

 

飛鳥「なんか思ってたのと違うのですが」

 

 飛鳥は最後列に座らされ、麻弥と日菜の間に挟まれていた。隣に座れなかったイヴ・彩・千聖は不満そうにしていた。

 

日菜「まあ、それよりもそのコンテストのことについて聞きたいな!」

麻弥「それから試験のことも!」

飛鳥「あ、はい…。実は…」

 

 飛鳥がコンテストに出場する経緯と、試験を受験した経緯について説明した。

 

麻弥「す、凄いですね…」

飛鳥「やらないと腕も鈍りますしね」

日菜「おねーちゃんみたい…」

飛鳥「そうですか…」

 

 と、ある程度話が終わった。

 

千聖「それはそうとあなた、いろいろ大変じゃない? 男子たちにウザ絡みもされるし…」

飛鳥「もう慣れましたよ」

 

 千聖の言葉に飛鳥は苦笑いした。

 

千聖「だけど心配だわ。あなたの事観察してたけど、本当に無理をするし…」

飛鳥「人生そんなもんですよ」

千聖「…あなた、年いくつ?」

日菜「おじさんみたーい」

飛鳥「否定はしませんよ」

 

 日菜の言葉に飛鳥は苦笑いした。

 

飛鳥「それはそうと、あなた方程ではございません。いつも芸能活動お疲れ様です」

麻弥「いやいや! 一丈字さんこそ…」

 

 その時だった。

 

日菜「えーいっ!」

 

 日菜が飛鳥を抱き寄せた。

 

麻弥「ひ、日菜さんっ!!?/////」

千聖「ちょ、ちょっと何やってるの!!?/////」

飛鳥「私を消そうとしてますね…」

日菜「違うよー。疲れてるから、ご褒美を上げようと思って!」

飛鳥「あげる相手間違ってませんか?」

 

 日菜の言葉に飛鳥は困惑していた。

 

彩「日菜ちゃん!!/////」

イヴ「ダ、ダイタンです!!/////」

日菜「どう飛鳥くん。気持ちいい?」

飛鳥「気持ちいいって何がですか…?」

日菜「なにってあたしの…おっ・ぱい♡」

飛鳥「ごめんなさい。何やらなんか背筋が凍ってきました…」

日菜「なんで!!?」

 

 飛鳥の言葉に日菜が驚いた。

 

飛鳥「なんか怨念みたいなのが…」

イヴ「オ、オンネン!!?」

飛鳥「日菜先輩のファンから…」

麻弥「…日菜さん。離してあげてください」

 

 パスパレとの談笑はまだまだ続くのだった。

 

飛鳥「…で、このバスはいったいどこに向かってるんですか? 事務所ですか?」

千聖「いえ? 私たちこれから仕事があるんだけど、あなたも来て頂戴」

飛鳥「なんですかそのホラー映画みたいな展開」

千聖「どうせ暇でしょ?」

飛鳥「暇ですけど」

千聖「で、それが終わったらあなたの合格祝いをしようと考えてるの」

飛鳥「いや、そこまでしていただかなくても…」

千聖「安心して。お金は事務所が出すから」

飛鳥「…なんか嬉しそうですね」

千聖「ええ、そうね。思いっきり使ってやるわ」

飛鳥「…いやあ、本当にお疲れ様です」

 

 と、そのままバスは次の現場へと駆け抜けていきましたとさ。めでたしめでたし。

 

 

おしまい

 



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第288話「飛鳥と何かがあったバンドガールズと海水浴のお誘い」

 

 

 今回の設定

 

・ 飛鳥 ← バンドガールズ

 

****************

 

 ある日の事、飛鳥が一人でカフェテリアにいた時の事だった。

 

「飛鳥くーん!!」

「?」

 

 Poppin’Partyがやってきた。

 

飛鳥「戸山さん。それに皆さんも」

香澄「今度の休み暇?」

飛鳥「暇ですけど、どうされました?」

香澄「海行かない?」

飛鳥「え?」

 

 香澄の発言に飛鳥と食堂にいた男子生徒たちが反応した。

 

飛鳥「何人で行くんですか?」

香澄「私たちと飛鳥くんの6人だよ」

飛鳥「お、おー…」

 

 香澄の言葉に飛鳥が驚くと、有咲が表情を曇らせた。

 

有咲「なんだよ。嫌なのか?」

飛鳥「嫌じゃないですけど、このまま無事に週末を迎えられるかなーって」

 

 飛鳥の言葉に男子生徒たちが発狂した。

 

「ふざけんな!!」

「そんなの絶対に許さない!!」

「主役の権限悪用してんじゃねーぞ!!」

「オリ主風情が香澄ちゃん達と海水浴なんて1万光年早いんだよ!!」

 

 どうあっても飛鳥と香澄達との海水浴を防ぎたいのでメタ発言などお構いなしだ。

 

飛鳥(でも気持ちもわかるんだよな…。確かにそりゃあ面白くないわ)

 

 飛鳥は男子生徒たちの気持ちを理解していた為、なんとも言えない気持ちだった。

 

有咲「とにかくこっち来い!」

 

 有咲が飛鳥の腕を掴んで移動すると、他の4人も続いた。去っていく中でも発狂が収まらなかった。

 

****************:

 

香澄「…で、ちょっと大騒ぎになったけど、一緒に来てくれる?」

飛鳥「週末まで何もなかったらね…」

 

 その時だった。

 

「飛鳥」

 

 友希那、リサ、紗夜、燐子の4人が現れた。

 

「あこもいるよ!」

 

 あこが遅れてやってきた。

 

飛鳥「Roseliaの皆さん」

友希那「今度の休み空いてるかしら?」

飛鳥「すみません。Poppin’Partyと海水浴に行くことになりまして…」

友希那「…そう」

 

 

 飛鳥の言葉に友希那が苛立った表情を見せると、

 

紗夜「認めません」

飛鳥「え?」

紗夜「風紀委員として、男女で海水浴に行くことを認めません!!」

香澄「ええええええええええええ!!?」

たえ「そんな事言って、Roseliaも誘うつもりだったんじゃないですか?」

 

 たえの言葉に紗夜が困惑した。

 

リサ「いやー…その、どうせなら皆で行かない?」

あこ「あこも飛鳥くん達と一緒に海水浴行きたいよー」

燐子「……」

 

 飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「…私の権限ではどうにも」

香澄「いいですよ?」

「!!?」

 

 香澄が口を開いた。

 

有咲「香澄!?」

香澄「皆で行った方が楽しいですもんね!」

たえ「多分断っても、ついてきそうな気がするしね」

沙綾「おたえ!! シーッ!!」

友希那「よく分かってるじゃない」

「えぇぇぇぇ…」

 

 友希那の正直さに飛鳥、沙綾、有咲が困惑した。

 

 その時だった。

 

「飛鳥く~ん」

 

 Afterglowがやってきた。

 

飛鳥「青葉さん」

モカ「今度の休み暇~? 暇だったらモカちゃんたちの練習に付き合ってほしいんだけど~」

友希那「悪いけど、飛鳥は週末私たちと海水浴に行くのよ」

蘭「…は?」

 

 友希那の言葉に蘭が反応した。

 

友希那「練習頑張って」

(なんかマウント取ってるようにしか見えない!!)

 

 言葉の足りなさと態度のせいで、完全に喧嘩を売ってるようにしか見えなかった。蘭はマジ切れだったが、他の4人もちょっとだけ蘭の気持ちが理解できた。

 

蘭「一丈字」

飛鳥「なんです?」

蘭「海水浴ってRoseliaと行くの?」

飛鳥「Roseliaとポピパですね」

蘭「行く」

飛鳥「え?」

 

 飛鳥が反応した。

 

蘭「アタシたちも行く」

「!!?」

 

 蘭の言葉に皆が驚いた。

 

友希那「練習があるんでしょ? 練習すべきよ」

蘭「大丈夫です。遅れた分は集中してやりますので」

 

 ギスギスし始めた。

 

香澄「な、なんか大変なことになっちゃった…」

有咲「だから内緒にしろって言ったのに!」

リサ「それは抜け駆けじゃないの?」

あこ「そーだよ!」

飛鳥(抜け駆け…?)

 

 抜け駆けという言葉を聞いて、飛鳥は嫌な予感がした。

 

 その時だった。

 

「飛鳥!」

 

 こころ達ハロハピがやってきた。

 

飛鳥「どうしたの?」

こころ「今度の休みは空いてるかしら?」

飛鳥「ううん。海水浴に行くことになってるんだ」

こころ「いいわね! 誰と行くの?」

友希那「私たちとよ」

はぐみ「いいなー。はぐみ達も海水浴に行きたいなー」

 

 はぐみが目で訴えてきた。

 

飛鳥「ハロハピもバンドの練習ですか?」

こころ「その予定だったけど、あたし達も行きたいわ! 混ぜて頂戴!」

「!!?」

 

 こころの言葉に皆が驚いた。友希那や蘭は反対しようとしたが、こころが相手なので相手に困っていた。

 

飛鳥「ポピパやアフグロも来るし、いいんじゃないですか?」

香澄「そうだね。皆で行こう!!」

 

 香澄は内心取られるか心配だったが、ここで邪険にするのもかわいそうだと思ったので、認めた。

 

飛鳥「となると、あとはパスパレ…」

紗夜「パスパレは今週仕事が入ってますよ」

飛鳥「そ、そうなんですか?」

紗夜「ええ。という訳でこの21人で行きましょうか」

飛鳥「え、さっきまで反対してたのでは…」

紗夜「これだけ人数がいれば、心配いらないわ」

 

 紗夜が何もなかったかのように言い放つと、飛鳥とポピパはなんか腑に落ちなさそうな顔をしていた。

 

たえ「なんだかんだ言って、一番行きたがってるの紗夜先輩ですよね」

紗夜「」

有咲「おたえ!!!!」

 

 たえの正論に有咲が慌て、紗夜が困惑した。

 

香澄「それじゃこのメンバーで海水浴に行こう!!」

「おーっ!!」

「あのー…」

 

 香澄たちが意気込んでいたその時、声をかけられて、そっちの方を見るとパスパレがいたが、日菜以外の4人が気まずそうにしていた。

 

彩「本当に行くの…?」

友希那「ええ。私たちも毎日暇じゃないから」

モカ「お土産買ってきますので~」

日菜「えーっ!! あたしも行きたい~!!!!」

 

 日菜が駄々をこねだした。

 

紗夜「日菜、わがまま言わないの!」

日菜「だって週末の仕事とってもつまんないんだよ!? トライアスロンさせられるの!」

紗夜「健康的でいいじゃない」

蘭「頑張ってください」

千聖「どうしてうちのスタッフもこうも使えないのかしら…!!」

 

 千聖が拳を握らせた。

 

日菜「あ、でもよく考えたら来週あたしたちが飛鳥くんを誘えばいいんだ」

友希那「は?」

蘭「それはダメですよ」

飛鳥「すみません。来週は空いてなくて…」

 

 飛鳥が困惑した。

 

日菜「どうして?」

飛鳥「用事があるんですよ」

友希那「用事って何よ」

飛鳥「ゲームの大会に出るので」

「ゲームの大会?」

 

 飛鳥の言葉に皆が驚いたが、友希那がにらみを利かせた。

 

友希那「まさかとは思うけど、燐子とあこが関係してないでしょうね?」

 

 友希那の言葉に燐子とあこが滝のような汗を流していた。

 

飛鳥「…何か、問題ありました?」

友希那「どうして私を誘ってくれなかったのかしら?」

飛鳥「え、何も聞いていないんですか?」

リサ「ゲームの大会には出るって聞いてたけど…」

紗夜「飛鳥くんと出るとまでは聞いてないわ!」

 

 皆が燐子とあこを見たが、友希那と紗夜が燐子とあこを睨みつけた。

 

あこ「ごめんなさ~い!!!」

燐子「レ、レアアイテムが欲しくて、それで飛鳥くんにお願いしたいんです…」

リサ「ていうか飛鳥くん。ゲームしてるの?」

飛鳥「ネットゲームはあまりやらないんですけど…」

あこ「飛鳥くん作戦立てるの凄く上手で、頭もいいから…」

 

 あこが指をつんつんして言い放った。

 

飛鳥「まあ、そういう訳ですので海水浴楽しみにしてますね!」

友希那「今日ちょっと話があるわ。来なさい。拒否権はないわよ」

飛鳥「……」

 

 その日の放課後、皆でファミレスに行った。

 

 

おしまい

 



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第303話「飛鳥と何かがあったAfterglowとお出かけ」

 

 

『久々の何かがあったシリーズ』

 

飛鳥「はー…疲れたぜ…」

 

 飛鳥はくたくたになりながら、街を歩いていた。というのも…。

 

*******************

 

「本当に! 本当になんてお礼を言えばいいのか…」

「うえ~ん!!!」

 

 車に突っ込まれそうになった子供を間一髪で助けたのだった。飛鳥は警察と救急車を手配し、車を運転していた老人がちゃんと保護されたことを確認し、あとの事を任せてそのまま帰ってきたのだった。

 

**********************

 

飛鳥「全く油断も隙も無いな…」

 

 飛鳥が頭をかいていると、

 

「飛鳥くーん」

飛鳥「ん?」

 

 飛鳥が後ろを振り返ると、モカがいた。

 

飛鳥「ああ…。モカか」

モカ「モカちゃんです」

 

 するとモカは笑みを浮かべた。

 

モカ「それよりさー。飛鳥くん、さっき子供を助けてたよね」

飛鳥「見てたの?」

モカ「前みたいに隠さないんだねー」

飛鳥「もうその必要もなくなったからね」

 

 モカは飛鳥の正体を知っている人物の一人だった。飛鳥がバンドリ学園に転校してすぐに林間学校があったのだが、その肝試しでモカの幼馴染である羽沢つぐみが迷子になり、飛鳥が超能力で救出したものの、モカは飛鳥から何かを感じ取り、その後色々あって正体が明らかになったという訳だ。

 

モカ「いっつも大変だねー」

飛鳥「まあね。けど仕事でもあるから」

 

 飛鳥がそう苦笑いすると、モカが何か笑みを浮かべた。

 

モカ「あ、そうだ~。今度の休み暇?」

飛鳥「今は空いてるけど…」

モカ「今度どっか出かけようよ~」

 

 モカの言葉に飛鳥は面食らった。というのも、モカの後ろには蘭・ひまり・巴・つぐみの4人がいて、全員怒っていたからだった。

 

飛鳥「あー…。辞めといた方がいいと思いますよ」

モカ「もしかして~。今こうやって会話してるのを男子に聞かれてるから~?」

飛鳥「いや、男子よりももっとヤバい人達が…。後ろ」

モカ「?」

 

 モカが振り向くと、4人の幼馴染を見て青ざめた。

 

ひまり「ごめんねー一丈字くん。モカが迷惑かけなかった?」

飛鳥「いえいえ」

巴「モカとどこか出かけるって話してたけど、どうすんだ?」

飛鳥「謹んで辞退させていただきます」

モカ「えー。一緒に行こうよー」

飛鳥「いや、この状況でまだ誘うつもりなんですか?」

 

 飛鳥が困惑した。

 

つぐみ「あ、そ、それだったら皆で行かない!?」

飛鳥(羽沢さん…。一見打開策を出してるようだけど、完全に本心が見えてるから)

蘭「とにかく二人きりになんてさせないから」

飛鳥(もう少し隠す努力をしましょう)

 

 Agterglowが揉めだしたので、飛鳥が困惑した。

 

モカ「それはそうとねー」

蘭「話をそらさないで」

モカ「最近飛鳥くんが大変な思いをしてるから、労ってあげようと思っただけなんだよー」

巴「じゃあ猶更皆で労おうぜ!」

つぐみ「そ、そうだよ!」

 

 なんか話が妙な方向になり始めて、飛鳥はさらに困り果てた。

 

モカ「まあ、皆がそう言うんだったらそうするけど、飛鳥くんはどうしたい~?」

飛鳥「言いたいことは沢山あるけど、まず一番言いたいのは、労う必要はございません」

つぐみ「そ、そうはいっても…」

蘭「そういや前から気になってたんだけどさ」

 

 蘭が口を開いた。

 

蘭「何かモカと凄く仲良くない?」

飛鳥「そうですかね」

ひまり「中庭でたまに一緒にいる所を見るんだけど…」

巴「ま、まさか付き合ってるとかじゃないよな!?」

飛鳥「いえいえ」

モカ「そうだったらいいんだけどなー」ボソ

 

 飛鳥はモカの発言が思い切り聞こえていたが、聞こえないふりをした。

 

つぐみ「どうしてそんなに仲良くなったの?」

飛鳥「まあ、林間学校であなたを助けた時に、彼女に色々話しかけられましてね…」

 

 飛鳥がそういうと、皆が林間学校の事を思い出した。

 

モカ「今となっては良い関係なのですよ~」

飛鳥「…言い方に語弊はございますが」

 

 この2人のやり取りを見て、蘭たちは更に嫉妬した。

 

飛鳥「それに休日にあなた方と外出したとなれば、ファンの方々が黙ってないでしょうし」

蘭「そんなの気にしなきゃいいでしょ」

ひまり「もしかして、私達の見てないところでいじめにあってるとか!?」

モカ「いや、見てる所でも十分にいじめられてるでしょ~」

蘭「…そう言われればそうだね」

ひまり「せめてセクハラだけでもやめてくれればなぁ」

飛鳥(仰る通りです)

 

 一個の上の白鷺千聖からも色々愚痴を聞かされて、飛鳥は静かに目を閉じた。

 

蘭「今別の人の事考えたでしょ」

飛鳥「貴方の事だけ考えれば宜しいのですか?」

 

 飛鳥の言葉に蘭が耳まで真っ赤にした。

 

モカ「蘭―。そういうめんどくさい子って、飛鳥くん嫌いだよー?」

ひまり「今のは蘭が悪いかな」

巴「困らせたらダメだろー」

飛鳥(嫉妬のオーラがすげェ)

 

 飛鳥はモカ達から出る嫉妬のオーラを肌で感じ取っていた。つぐみはただ単に羨ましがっていた。

 

*******************:

 

蘭「…話を戻すけど、とにかく出かけるなら全員で行こう」

モカ「蘭が意思表示するなんて珍しいね~」

巴「そういう事できまりな! 一丈字もそれでいいか?」

飛鳥「私は構いませんけど…」

 

 飛鳥が困惑した。

 

蘭「なに?」

飛鳥「いや、何かが起こりそうだなと思いまして」

モカ「こーんなに可愛い女の子5人と出かけるんだから、何も起こらないわけないでしょー」

飛鳥「ですよねー」

 

 飛鳥が否定しなかったので、5人が少し困惑した。

 

蘭「あ、あのさ…」

飛鳥「何です?」

蘭「…否定しないの?」

飛鳥「あなた方が可愛いって事ですか?」

 

 飛鳥は普通に言い返した。

 

飛鳥「否定しませんよ。だってその通りですもの」

「!!?/////」

 

 モカ以外の4人が照れた。

 

モカ「どういう所が~?」

蘭「ど、どうせ顔とかでしょ…」

飛鳥「いいえ? 私が見る限り、5人とも素直で良い子だからですよ」

蘭「す、素直で良い子…」

モカ「…飛鳥くんの同級生、イジワルする子ばかりだったもんね~」

飛鳥「まあ、そういう事もあって、あなた方をずっと見てきていて、昔のような事がございませんでしたし、寧ろ夢に向かって一生懸命切磋琢磨されている姿はとても素敵です」

 

 飛鳥に滅茶苦茶褒められて、蘭たちはとにかく恥ずかしがった。

 

飛鳥「私も精進しなければなりませんね」

蘭「も、もういい!! やめて!!/////」

飛鳥「あ、はい」

モカ「まあ、精進する為にも休みは宜しくね~」

 

 この後、飛鳥は本当に休みの日にAfterglowと出かけたのだが、それはまた別の話…。

 

 

おしまい

 



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第305話「飛鳥と何かがあったハロー、ハッピーワールド!」

『こんな展開』

 

 それはある日の事、ハロー、ハッピーワールドはCiRCLEで練習をしていたが、弦巻こころがどこか元気なかった。

 

薫「どうしたんだい? こころ」

花音「こころちゃん…?」

はぐみ「元気ないね。どうしたの?」

 

 珍しく元気のない様子を見て、薫たちが声をかけた。

 

美咲(こころでもこうなる事ってあるんだ…)

 

 ミッシェルの着ぐるみを着ている美咲も例外ではなかったが、どちらかというとこころの心情に驚いていた。

 

こころ「ううん。最近飛鳥の事を考えると、胸が苦しくなるの」

「あー…」

 

 こころの発言に薫たちはすぐに理解できた。

 

こころ「どうしたらいいのかしら。お医者さんに見て貰ったんだけど、それは恋だって言うの」

ミッシェル「あ、知ってたんだ…」

こころ「でもいけないわ。飛鳥には日向や椿がいるもの。お友達の好きな子に手は出せないわ」

ミッシェル(なんか初めてこころを見直した気がする…)

 

 ちなみに日向と椿というのは、こころの小さいころからの友達であり、飛鳥の中学時代の同級生である。ちなみに好意を寄せているかどうかは不明であるが…。

 

ミッシェル「まあそうだね。私も聞いたことあるけど、一丈字くんってその子達と仲良しだもんね」

こころ「うん…」

ミッシェル「でもこころ」

こころ「?」

 

 こころがミッシェルを見た。

 

ミッシェル「一丈字くんの事を好きな子って他にもたくさんいると思うし、そうやって遠慮するのは日向さん達にとっても良くない事なんじゃないかな」

こころ「どういう事?」

ミッシェル「友達なら遠慮しないで、ちゃんと向き合うべきだと思うんだよね」

こころ「!」

 

 ミッシェルの言葉にこころは目を大きく開いた。

 

ミッシェル「確かに一人の男の人をめぐって、友達っていう関係が壊れるかもしれないけどさ、言いたいことをちゃんと言えずに、そのまま気まずくなって口もきけなかったら、それこそ友達って言えないじゃん」

こころ「ミ、ミッシェル…」

ミッシェル「まあ、それでも一丈字くんの気持ちが一番大事だけどね」

 

 こころが笑みを浮かべた。

 

こころ「…そうね。きっと日向と椿も分かってくれると思うわ! あたし、これからは飛鳥にアタックしてみるわね!」

 

 ミッシェルがそう付け加えると、そう言ってこころが去っていくと、

 

薫「待つんだこころ!」

はぐみ「はぐみも行くー!!!」

 

 薫とはぐみも追いかけていき、薫と美咲が残された。

 

美咲「はぁ…」

花音「美咲ちゃん…」

 

 花音が美咲に話しかけた。

 

美咲「…こころにはあんな偉そうな事言ったけど、本当に遠慮してるのはあたしの方かも」

 

 美咲が自嘲気味にそう呟いた。

 

美咲「あたし、恋愛では損するタイプかもしれませんねー」

 

続けて自重するが、花音は目を閉じて首を横に振った。

 

花音「ううん。だって私にはちゃんと気持ちを伝えてくれてるじゃない。大丈夫だよ」

美咲「花音先輩…」

 

 美咲が花音を見つめた。

 

花音「お互い頑張ろうね」

 

****************************:

 

 ある日の事だった。

 

飛鳥「それで…」

 

 飛鳥が教室でクラスメイトに勉強を教えていると、

 

「飛鳥!」

飛鳥「ん?」

 

 こころが教室にやってきた。

 

飛鳥「どうしたんですか?」

こころ「貴方とお話がしたいの!」

飛鳥「ごめん。今クラスの子に勉強教えてるから…」

「あ、一丈字くん。もう大丈夫だよ」

「丁度聞きたいところ聞けたし」

飛鳥「遠慮する事ないですよ?」

「いいからいいから」

「ありがとね」

 

 そう言ってクラスメイト達はその場を離れた。

 

こころ「それじゃ飛鳥! 行きましょう!」

飛鳥「どうしたんです? 急に…」

 

 飛鳥がそう呟きながらこころに教室の外に出されると、クラスメイト達はその様子を見守っていた。

 

「一丈字くんって本当に不思議な子だよね…」

「うん…」

 

*********************

 

 そしてカフェテリアに移動させられたが、

 

「やあ、待ってたよこころ。一丈字くん」

飛鳥「瀬田先輩」

 

 ハロハピのメンバーが集まっていた。

 

薫「気軽に薫と呼んでくれたまえ」

飛鳥「あ」

薫「ゴッホン! 一緒にランチでもどうだい?」

飛鳥(あ、ダメなんだな…)

 

 昔の仇名を言おうとしたと思ったのか、薫はすぐさまけん制した。そんな時、男子生徒たちがいつものようにけん制しようとしたが、

 

「ちょっとアンタ!!」

 

 今回は女子生徒たちがエンカウントした。

 

飛鳥「自主退学しようかなぁ…」

美咲「あ、あー。薫さん? 多分薫さんのファンだから、薫さんが責任もって面倒見てね?」

薫「えっ…」

美咲「じゃ、一丈字くんはあっちであたしと一緒にお弁当食べましょうか」

飛鳥「えっ…」

花音「ふ、ふぇええ!!?」

こころ「皆で一緒に食べたらどうかしら?」

薫(流石こころ! よく言ってくれた!!)

「オレもオレも!!!」

「僕も!」

「あちきも!!」

「わしも!!」

 

 そんなこんなで皆でご飯を食べることになったのだが、

 

こころ「飛鳥の隣がいいわ!」

はぐみ「はぐみも!」

花音「え、えっと…」

美咲「ていうか男子はこっち行ってよ!」

 

 結局飛鳥をハロハピが囲む形になり、薫サイドには女子生徒たちが座り、その反対側に男子生徒たちが座る事になった。

 

飛鳥(なんやこれ…)

 

 ただ一人事情を知らない飛鳥は困惑するしかなかったという。

 

おしまい

 



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第306話「飛鳥と何かがあったりみと働くバンドガールズ」

 

 

 それはある日の事だった。

 

飛鳥「うわー…。やまぶきベーカリーが今日も大盛況だわ」

 

 飛鳥が商店街を歩いていると、やまぶきベーカリーが長蛇の列になってなっていた。

 

「うぅ…。チョココロネぇ…」

 

 飛鳥の横には牛込りみがいたが、チョココロネが買えなくなり、涙目になっていた。

 

飛鳥「…牛込さん」

りみ「あっ、一丈字くん。こんにちは」

飛鳥「こんにちは。大盛況ですね。やまぶきベーカリー…」

りみ「うん…。でもチョココロネが買えなくなっちゃって…」

飛鳥「ああ…」

 

 こんだけ客が来るなら、そうなってもおかしくはないと飛鳥は困惑した。

 

りみ「学校に行くときはさーやちゃんが持ってきてくれるんだけど…」

飛鳥「まあ、他にも食べたい人がいると思いますし、欲しいなら並ぶしかありませんけどね…」

 

 だが、どう考えてもチョココロネが残ってるわけがなかったが、

 

「おい、チョココロネだけは残しとけよ!」

「分かってる!」

 

 その時だった。

 

「あ、りみちゃん!!」

 

 しらないおっさんが話しかけてくると、飛鳥とりみは警戒した。

 

りみ「え、えっと…」

「ライブ見てたよ! これ、差し入れ!」

りみ「あ、ありがとうございます…」

「ああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 おっさんからチョココロネを貰ったが、素直に喜べないりみだった。そして並んでた男たちが発狂していた。

 

飛鳥(今回も大変な一日になりそうだな…)

 

 飛鳥が静かに首を横に振った。

 

「ところで…君は誰?」

 

 おっさんが飛鳥に話しかけた。

 

飛鳥「私は偶然出会った同級生ですよ」

「そうか…。くれぐれもりみちゃんに変な事するなよ」

飛鳥(初対面なのに失礼だなー)

 

 おっさんの横柄な態度に飛鳥は呆れながらも、何とか笑って過ごすことにした。

 

飛鳥「まあ、私はこれで失礼しますよ」

りみ「あ、待って一丈字くん」

飛鳥「?」

 

 りみが声をかけてきたので、飛鳥が困惑した。

 

りみ「せ、せっかくだからもう少しお話しませんか!?」

 

 りみの言葉に飛鳥も男たちも驚いた。

 

飛鳥「そうですね。場所を変えてお話ししましょうか」

りみ「は、はい!」

 

 そう言ってこっそり超能力を使って、男たちを興奮させないようにその場から離れたが、この時沙綾が店の中から飛鳥とりみを見ていたのは言うまでもなく、目を大きく見開いていた。

 

純「ねーちゃん! 手が止まってる!!」

沙綾「あ、ゴ、ゴメン!!」

 

*************************

 

りみ「ご、ごめんね一丈字くん…」

飛鳥「牛込さんが謝る必要はございませんよ。謝ってほしいのはあのおっさんです」

 

 飛鳥が思った他容赦なかったので、りみは困惑した。

 

飛鳥「羽沢珈琲店にでも行きます?」

りみ「えっと…」

 

 羽沢珈琲店には恋敵の一人でもある羽沢つぐみがいるので、極力行きたくなかったりみだったが…。

 

 羽沢珈琲店も長蛇の列が並んでいた。

 

飛鳥「看板娘の影響って大きいですね」

りみ「…SNSでも取り上げられてたからね」

飛鳥「他行きましょうか」

 

 そう言って飛鳥とりみが背を向けて離れようとしたその時、店からつぐみとイヴが出てきた。すると2人の後姿を見て目を大きく見開いていた。

 

イヴ「あ、あれはアスカさんとリミさん…!!?」

つぐみ「うそ…」

 

 完全に付き合ってると勘違いした2人は真っ白になっていた。

 

「うおおおおお!! イヴちゃんだ!!」

「本当にここでバイトしてたのか!!」

「つぐみちゃんもいるぞぉ!!?」

 

 ファンたちが騒ぎ立てたが、その喧噪すらも聞こえていなかった。

 

************************:

 

 北沢精肉店にも来てみたが、案の定長蛇の列になっており、はぐみとその父親が接客に追われていた。飛鳥とりみが変な気を遣わせないようにその場を去ろうとしたが、はぐみが2人に気づいて叫んだが、飛鳥とりみは完全に逃亡していた。

 

はぐみ「飛鳥くんとりみりん、付き合ってたんだ…。そんなぁ…」

 

 有咲の家の近くまで通ったが、そこにもファンがいて…。

 

「やっぱり有咲ちゃんは可愛い!!」

「有咲ちんマジ可愛い!!」

「可愛い!! 有咲可愛い!!」

「KAWAII!!」

有咲「可愛いって言うなぁ~!!!!!///////」

 

 有咲の叫びが聞こえた飛鳥とりみはそのまま何も言わずに通り過ぎた。

 

有咲「クソ―!! 覚えてろー!!!」

 

 モカとリサのバイト先であるコンビニでも大量の男性客が押しかけてきた。むさぐるしい。

 

リサ「ひぃいいいい――!!!!」

モカ「…あっ、飛鳥くんとりみりん」

リサ「えっ!!?」

 

********************

 

 そして極めつけは彩・花音・巴・ひまりのバイト先のファーストフード店まで来ていたが、4人が同じ日に重なり…。考えられないほどの行列が出来ていた。

 

花音「ふぇええええ~~~~~!!!!!」

 

 花音が客を誘導していたが、あまりの客の多さに絶望していた。

 

飛鳥・りみ「……」

 

 飛鳥とりみはその光景を見て絶句していた。

 

巴「花音先輩! お客様はあとどれくらい…うおおおおおおお!!!」

ひまり「なんでこんなに多いのおおおおおおおおおおお!!?」

 

 巴、ひまり、彩が様子を見に来たが、自分たちの予想を軽く超えていて、発狂していた。

 

彩「と、とにかく頑張ろう…って、あれ?」

花音「どうしたの?」

彩「…あそこにいるの、一丈字くんとりみちゃんじゃない?」

「!!?」

 

 4人が飛鳥とりみに気づくと、飛鳥とりみも4人に気づいて、そそくさと去っていった。

 

巴「い、一丈字とりみ…」

ひまり「もしかしてあの2人付き合ってたの…?」

彩「そ、そんな…」

花音「ふぇええ…」

 

*****************************

 

飛鳥「はー…。なんか大盛況ですね」

りみ「そ、そうだね…」

 

 結局近くの公園で話をしていた。

 

飛鳥「皆さんのバンドがそれぞれ有名になった証拠ですね」

りみ「それは嬉しいけど…」

 

 りみは別の心配をしていた。

 

りみ(どうしよう…。学校行くのがとっても怖い…)

 

 半ば抜け駆けみたいになってしまった上に、とても忙しい状況の中完全に見せつける形となってしまい、それぞれの勤務先が今どんな状況なのか、考えたくなかったりみであった。

 

 

*********************

 

 で、後日こうなりました。

 

りみ「あ、あの…おはようございま…」

 

 りみが1組の教室にやってくると、

 

沙綾「おはようりみ。チョココロネあるよ?」

有咲「おはよう」

 

 沙綾と有咲が挨拶してきたが、やたらニコニコしていてりみは青ざめた。

 

はぐみ「りみりん! 飛鳥くんと付き合ってるの!?」

りみ「う、ううん!!? 全然付き合ってないよ!? 偶然一緒になっただけで…」

沙綾「大丈夫だよりみ。私たちはちゃんと分かってるから。でもね…」

 

 沙綾が黒い笑みを浮かべた。

 

沙綾「死に物狂いで働いてる中、あの光景を見るのはきつかったなぁ」

有咲「まあ、全部一丈字が悪いんだけどな」

 

 飛鳥の好感度が下がって、男子生徒たちは『ビッグチャーンス!!!』と心の中で思っていた。

 

イヴ「本当にお付き合いしてないんですね!?」

りみ「そ、そうだよぉ…」

有咲「さて、それが分かった所で、この騒動を引き起こした張本人を…」

「有咲ちゃん! 僕も手伝うよ!」

「オレも!!」

「わしも!!」

「あちきも!!」

 

 飛鳥を失脚できるチャンスが出来て、男子生徒たちは躍起になっていたが、有咲たちは冷めた目で見ていた。

 

 ちなみに飛鳥はというと…。

 

飛鳥「そんなに言うなら分かりました」

 

 蘭以外のAfterglowに問い詰められていたが、飛鳥はいたって冷静だった。

 

飛鳥「今後はもう牛込さんとだけ遊ぶようにします」

つぐみ「えっ…」

巴「いや、アタシ達は別に怒ってるわけじゃ…」

ひまり「ごめん。言い方が悪かった。他の女の子と遊ぶなとは言わないから」

 

 思った他毅然な態度を取って、逆につぐみ達を困らせていた。

 

飛鳥「美竹さんも心配しますし」

モカ「じゃあ、今度あたしとデートして?」

「!?」

 

飛鳥「デートって恋人同士がやるものでしょう」

モカ「じゃあ一緒に出掛けて? モカちゃんは寛容だから~」

 

 ちなみにこの話のモカも飛鳥が能力者だという事を知っている。

 

巴「ちょ、ずるいぞモカ!!」

ひまり「私達を出汁にしないで!!」

つぐみ「み、皆でいこ?」

 

 とまあ、こんな感じであしらったというが、りみは頬を膨らませていた。

 

男子生徒(けどこれで一丈字の好感度は下がった!! ザマーミロ!!)

 

 と、男子生徒たちは思っていたが、数日後一夫多妻制になって余計にややこしい事になったという。

 

 

おしまい

 



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第309話「飛鳥と何かがあったポピパとアフグロ」

 

 

 ある日のバンドリ学園…。

 

香澄・たえ・沙綾・有咲「」

 

 香澄、たえ、沙綾、有咲が絶句していた。というのも…。

 

りみ「此間偶然飛鳥くんと会って、お昼一緒に食べたんだ~。めっちゃ楽しかった~」

 

 昨日、りみが飛鳥と遭遇して一緒に食事をしていたのだが、とても楽しそうに語っていた。地元が同じ関西だったという事もあり、話も盛り上がったという。

 

香澄「えー!!? 何それずるい!!」

たえ「そんなの初耳なんだけど…」

沙綾「抜け駆けじゃん!」

有咲「べ、別に羨ましくねーし…/////」

 

 何かどうなっているのか、Poppin’partyは全員飛鳥の事を好いていたのだ。勿論バンドリ関係者には申し訳ないと思っています。まあ、ポピパがもし好きな男が全員一緒だったらというコントとしてお楽しみください。

 

香澄「そうだ! 私も飛鳥くんと何かしなきゃ…」

有咲「いや、何かってなんだよ! そういや盆栽とか興味あるかな…」

沙綾「…サナ達にちょっと協力してもらおうかな」

たえ「あ、オッちゃん達にまだ逢わせてないや」

 

 ポピパが飛鳥とのデートの計画をしていたが、それを近くで聞いていた男子生徒たちは血の涙を流していた。

 

*********************

 

「一丈字飛鳥をバンドリ学園から抹消する会を結成…」

教師「はーい。変な事しないで、ちゃんと正々堂々と女の子を振り向かせましょうねー」

「神様は不公平だあああああああああああああああああああああ!!!」

 

************************

 

 そんなある日の事だった。

 

飛鳥「最近は平和になりつつあるなぁ…」

 

 昼休憩、飛鳥がカフェテリアの近くを一人歩きながらそう呟いていた。たまにはカフェテリアのランチを食べようと思ったが、視線を感じたのでやめた。

 

飛鳥(なんか足ひっかけられそう)

 

 その時だった。

 

「あ、一丈字くん!」

 

 沙綾がやってきた。

 

飛鳥「山吹さん」

沙綾「丁度良かった。まだお昼食べてない?」

飛鳥「えーと…」

 

 飛鳥が『食べてない』と言おうとしたが、更に圧が凄くなった。

 

飛鳥「食べてないんですけど、食欲ないんですよ…」

沙綾「食べないのは良くないよ?」

飛鳥「まあ、そうなんですけどね…」

沙綾「そうだ。良かったらちょっと一緒に来てくれない? 話したいことがあるの」

飛鳥「まあ、それなら…」

 

 飛鳥の言葉に沙綾と陰から隠れていた香澄、りみ、有咲、たえがガッツポーズをしたが、

 

「あー。ごめんねー」

「!?」

 

 男子生徒たちが割り込んできて、飛鳥をそのまま連れ去った。

 

「一丈字くんちょっと予定があるんだよー」

「また今度ねー」

沙綾「……」

 

 飛鳥が複数の男子生徒たちに運ばれ、沙綾は無表情になった。それを見た一般生徒たちは『知らんぞー』という顔をしていた。

 

「あ、もし良かったら僕たちと一緒に食べようよ」

「その方がいいよ」

「うんうん」

 

 一般生徒たちは思った。『死んだな、あいつら』と。

 

**************************

 

「オラァ!!」

 

 男子生徒たちが飛鳥を乱暴に投げ飛ばすが、飛鳥は受け身を取った。

 

「昼休憩はカフェテリアに近づくんじゃない!!」

「教室かトイレで飯食ってろ陰キャが!!」

飛鳥「えー…」

 

 あまりにも理不尽すぎる発言に、飛鳥は頭をかいて呆れていた。

 

「主人公だからって、可愛い女の子とキャッキャウフフ出来ると思ったら大間違いだぞ!」

「そうだそうだ!!」

飛鳥「あのー。それなら一つ宜しいでしょうか」

「話は聞かん!」

「ハーレム小説の主人公の言う事は大体意見が通らない!! 諦めろ!!」

飛鳥「ホント嫌なシステムですよね。それに至っては」

「これ以上オレたちを逆なでしないでもらえますかねぇー?」

 

 このままじゃらちが明かないと思った飛鳥は超能力を使って暗示をかけ、その場を離れた。

 

「こうなったら仕方ない。お前には消えて貰う!」

「うふふふふ…」

 

 複数の女子生徒たちがやってきた。この女子生徒たちは男子生徒たちに金で雇われて、飛鳥に冤罪を仕掛けようとしていた。だが、肝心の飛鳥がいない為、どうする事できなかった。

 

飛鳥(そんな作戦思いつくなら、もうちょっと人の役に立つ事に使えよ…)

 

**********************

 

 昼休憩、結局飛鳥は昼ご飯を食べる事が出来ず、午後の授業に臨むことにした。

 

飛鳥(腹減ったぜ…)

 

**********************:

 

 そして放課後、

 

飛鳥「今日はがっつりラーメンでも食べようかなぁ」

 

 飛鳥がそういうと、2組からAfterglowの宇田川巴が現れた。

 

巴「今ラーメンって言った?」

飛鳥「言いましたけど…」

巴「そうかそうか! 丁度良かった! アタシもこれからラーメン食べに行こうかと思ってたんだ! 一緒に食べに行こうぜ!」

飛鳥「何も起こらなければいいのですが…」

巴「だいじょーぶだって!」

 

 巴が飛鳥の手を引っ張って、教室の外に連れ出すと、

 

『巴!!』

 

 さっそく何かが起きた。巴以外の4人が怒っていた。

 

ひまり「もー! 何一人だけ抜け駆けしてんの!?」

飛鳥(本人の前で言う事じゃないよ…)

モカ「皆で行こうよ~」

巴「あ、あー。そうだったそうだった。あはははは…」

蘭「全く…」

 

 蘭が憤慨していたが、内心は蘭も飛鳥とラーメンに食べに行きたがっていた。

 

巴「よーし! それじゃ行こう!」

 

 巴がそう言い放ったその時、

 

「あー!!!」

 

 ポピパがやってきた。

 

蘭「ポピパ…」

香澄「もしかして蘭ちゃん達も飛鳥くんを誘いに来たの!?」

巴「ごめん。アタシがもう誘った」

香澄「そんなぁ~!!」

沙綾「あのさ、私達昼に約束してたんだけど、男子達に邪魔されて…」

モカ「知ってるよ~。災難だったね~」

 

 実は結構噂はすぐに広まって、実行犯はめちゃくちゃ叩かれた。

 

有咲「ど、どこに行くんだよ」

巴「何ってラーメン屋だよ。一丈字も食べたがってたし」

飛鳥「ああ、また食欲がなくなってきました…」

沙綾「お昼食べてないんでしょ?」

飛鳥「食べてませんけど、また来るんじゃないですかね…」

巴「そうなる前にさっさと突っ切るぞ! じゃーな!!」

 

 巴が飛鳥の手を引っ張って去っていった。

 

香澄「まってー!! どうせなら11人で行こうよー!!」

 

 そう言って2組と飛鳥は去っていった。

 

「モォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!」

「主人公補正やめろよぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 主人公じゃなくても下心がある奴は相手にされない。女子たちはそう言いたかったが、関わりたくないのでやめた。

 

おしまい

 



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第311話「飛鳥と何かがあったRoseliaとライブ」

 

 

 今回の設定

 

・ ストーリーは310話の続きだが、バンドガールズは皆飛鳥に好意を持っている。

 

*****************************

 

 一丈字飛鳥です。私は今、今井先輩、白金先輩、あこさんと共に正座させられています。湊先輩と紗夜先輩に…。しかも公衆の面前で…。

 

友希那「あなた達…。何故正座させられてるのか分かってるわね?」

飛鳥「はい、先日4人でライブをしたことです」

紗夜「いきさつを説明してもらえるかしら?」

リサ「あ、えっと。ここはアタシが説明するね」

飛鳥「今井先輩…」

リサ「まあ、アタシが年上な所もあるから…。えっとね…」

 

 リサが事情を説明した。当初男子生徒たちのセクハラに対して燐子、あこと3人で話していた所、飛鳥が通りかかったのだ。だが、飛鳥も男子生徒たちからの嫌がらせに悩んでおり、4人で話した結果、突然バンドをやっている所を見せて友希那と紗夜を怒らせて、怒られている所を男子達に見て貰って、憂さ晴らしをさせてやろうという作戦を思いついたのだ。

 

 まあ、リサ・燐子・あことしては飛鳥とバンドが出来る上に一緒にいる時間が長くなるので、メリットしかなかったのだが…。

 

リサ「という感じです」

友希那「なるほど。確かに私と紗夜はとても怒ってるわよ」

あこ「うぅぅぅ…」

 

 友希那と紗夜が鬼のような顔をしていたので、あこが怯えていた。ちなみに男子生徒たちはというと、飛鳥の事を盛大に笑ってやりたかったが、友希那や紗夜が本気で怒っていたので何も言えなかったが、友希那たちのいないところで盛大に笑ってやろうと思っていたのだった。

 

友希那「私も飛鳥とライブしたかった!!(泣)」

飛鳥(泣いていう事かなぁ!?)

 

 友希那が目に涙を浮かべて叫ぶと、飛鳥が困惑したが紗夜も涙目になった。

 

紗夜「ひどいじゃないですか…! 私と湊さんは男子の変態トークを遠くから聞かされて嫌な思いをしたのに、今井さんと宇田川さんと白金さんは一丈字さんとライブをするなんて…。Roseliaってこんな格差があるバンドではなかったじゃないですか!!」

リサ「紗夜。それに関しては本当にごめんなさい」

 

 紗夜の切実な言葉に飛鳥たちは本当に申し訳なさそうにしていた。後からクラスメイトとかに聞いたが、本当に聞いてられなく、ライブできてた事が本当に幸せだと感じていた。

 

友希那「とにかく不公平よ! 私と紗夜ともライブする権利を要求するわ!」

飛鳥「私でよろしいんですか? プロとかじゃないんですが…」

友希那「愚問よ。もう少し自分に自信を持ちなさい」

紗夜「確かにプロとは言えないかもしれませんが…、ちゃんと個性が出ていました。凄く大事な事だと思います。さあ、やりましょう!」

飛鳥(めちゃくちゃやる気だな…)

 

 飛鳥がそう思っていたその時、

 

「ちょっと待ってください」

 

 そう言い放ったのは、Afterglowの美竹蘭だったが、友希那が間に入った。

 

友希那「今回は私たちのターンよ!! 絶対に邪魔をさせないわ!!」

「必死か!!」

リサ「友希那落ち着いて! キャラ崩壊しかけてる!」

飛鳥「いや、もうキャラ崩壊してますけどね!!」

 

蘭「Roseliaは1回ライブをしたんですから、次はうちに譲るべきです」

友希那「私と紗夜は1度もしてないわ。だからRoseliaではないの」

蘭「屁理屈はやめてください。アタシ達は出番すらなかったんですから」

飛鳥「メタ発言はよしてください」

 

 飛鳥が冷静にツッコミを入れた。

 

友希那「それはそうと何なの。急に割り込んできて」

蘭「こうでもしないと、出番が回ってこないんです。とにかく飛鳥と次にライブするのはうちですから」

飛鳥「ライブする前提なんですね…」

 

 すると蘭が飛鳥を睨みつけた。

 

蘭「何、不満なの?」

飛鳥「私は不満じゃないけど…」

 

 飛鳥が男子生徒たちの方を見た。

 

「ちょ、オレたちのせいにするなよ!」

「男らしくないぞ!!」

「お前そういうとこだぞ!!」

「はぁ!? 人のせいにするとかお前本当に人間終わってんな!!」

 

蘭「無視していいから。大体ひまり達にセクハラしてる癖によくそんな事言えるね」

(キッツー!!!)

 

 蘭の容赦ない言葉に男子生徒たちは撃沈していたが、

 

「それでも好きだ!!///////」

 

 例外もいた。

 

****************:

 

蘭「とにかく次はAfterglowがやるので」

友希那「そんなのダメよ」

 

 その時だった。

 

香澄「うちも飛鳥くんとライブしたいんだけど…」

こころ「ハロハピもやりたいわ!」

 

 ポピパとハロハピも名乗り出た。

 

蘭「うちが先だからね」

友希那「いや、私と紗夜が…」

 

日菜「はいはーい! パスパレもやりたいでーす!」

「パスパレはダメ!!!」

日菜「えーっ!?」

 

 何故かパスパレだけはっきりとダメだと言われて、日菜が驚いた。ちなみに気が付いたら25人のバンドガールが集まっていた。

 

千聖「納得のいく説明をしてもらえるかしら?」

蘭「じゃあ納得のいく説明をしますね。アイドルだからです」

友希那「自分たちの立場を考えなさい」

日菜「それくらい大丈夫だよー」

紗夜「ファンが大丈夫じゃないの」

友希那「今度こそ終わりよ。パスパレ」

 

 と、なかなか収拾がつかなくなった。

 

こころ「そうだわ! それじゃ飛鳥にはっきり決めて貰いましょうよ!」

飛鳥「え?」

 

 皆が一斉に飛鳥を見た。ここで『自分たちを選ばなかったらどうなるか分かってるだろうな…』という顔はしなかった。

 

「しなかったのかよ!」

友希那「だって飛鳥そういう子嫌いだもの。口きいてもらえないなんて耐えられないわ…」

飛鳥(確かに嫌いだけど、そんなに怯えなくても…)

 

 飛鳥ははっきり言う性格で、理不尽な事が大嫌いなので、自分に冷たい相手には冷たいのだった。だが、それが結果的に周りに流されず、まっすぐな男として評価されたのだ。

 

蘭「誰を選ぶの?」

飛鳥「そうですね…。一番最初としては湊先輩と紗夜先輩ですね」

「!」

友希那「ほら見なさい」

蘭「それじゃもし…あたし達が一番最初に約束してたらどうだった?」

飛鳥「Afterglowですね」

 

 そう、基本的には約束した順に相手するのだった。

 

彩「って! 結果的にうち最後じゃん!!」

友希那「いや、あなた達はアイドルだから無理でしょう。まあ、これで決まりね」

蘭「……っ!」

モカ「まあ、飛鳥くんがそう言うんだったら仕方ないよね~」

 

 と、このまま解決するかと思われたが…。

 

「湊さん。補習です」

友希那「興味ないわ」

「興味ないとかじゃないの!!」

 

 なんと、友希那が補習になってしまったのだが、友希那は補習を受ける気がなかった。

 

紗夜「湊さん! ちゃんと補習を受けてください!」

飛鳥「……」

 

 そんな時だった。

 

蘭「紗夜先輩」

紗夜「なんですか?」

蘭「補習受けないならライブの件…。うちが優先でもいいですよね?」

紗夜「はぁ!?」

友希那「5秒で終わらせるわ」

「5秒は無理でしょ…」

 

 飛鳥は暫く忙しくなりそうだと感じたのだった。

 

「一丈字くん」

飛鳥「あ、はい。なんでしょう」

 

 偉そうな中年男性教師が突然やってきた。

 

「君、今日限りで退学だから。荷物纏めて出てってね」

飛鳥「え」

こころ「あら、出ていくのはあなたよ?」

「」

飛鳥「何なのこれ!!」

 

 ちなみに男性教諭は本当にクビになった。

 

 

おしまい

 



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第320話「飛鳥と何かがあったハンバーガーショップ組」



 それはある日の事だった。

飛鳥「……」

 飛鳥はひまり、巴、彩、花音のバイト先の近くまで通りかかったが、相変わらず人が多かった。

飛鳥「儲かって店は万々歳なんだろうけどなぁ…」

 普段の学校の男子生徒たちの様子を見るあたり、きっと苦労はしているんだと飛鳥は感じていた。超能力で中の様子を探っていたが…。

「彩ちゃんだせ!!」
「ですから、うちはそういう商売をしていなくて…」

 迷惑客が彩を出せとレジの店員にイチャモンをつけていた。

飛鳥(ありゃあちょっとまずいぞ…)

 止めた方が良いと考えた飛鳥は超能力を使って、誰にも気づかれないように店の中に潜伏した。

「とにかく彩ちゃん来るまで動かねーからな!」
「おい! 邪魔なんだよ! 注文しねーならさっさとどけや!」
「うるせぇ! どうせお前も彩ちゃん目当てのくせに偉そうな口きいてんじゃねーよ!!」
「なに~!!?」

 と、客同士が喧嘩を始めたその時、飛鳥が超能力を使って喧嘩をしていた男性客を外へ誘導した。

「つ、次のお客様…?」

 店員は何が起きたか理解できていない状態だったが、後ろがつっかえているので、後の客の接客をすることにした。

飛鳥「はー…。あのハンバーガーショップだけファンが滅茶苦茶多いなぁ…」

 飛鳥は頭をかきながら、河川敷で夕陽を見つめていた。

飛鳥「これじゃ広島に帰れるのは当分先だな…」

 という訳で、今回は『もしも飛鳥がこんな状態のハンバーガーショップで働いている4人に好意を持たれたら』をお送りします。

飛鳥「え、今回そういう始まり方!?」

**************************


 

 

 そんなこんなである日の事だった。

 

飛鳥(事情知ってるから気まずくて仕方ない…)

 

 飛鳥はとにかく彩、巴、ひまり、花音を避けることにした。理由は簡単だ。とにかく事情を知っているからである。

 

 今は昼休憩で飛鳥は本当に人気のない場所で食事をしていた。

 

飛鳥(少なくとも丸山先輩はアイドルだしなぁ…。でもまあ、少なくとも仕事はちゃんとするだろう)

 

 そんなこんなで飛鳥が教室に帰ってくると…。

 

「あ、一丈字くん…」

飛鳥「何でしょう」

「2組の宇田川さんと上原さんが探してたよ」

「こっちは松原先輩」

「パスパレの彩ちゃんも…」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 飛鳥は困惑していた。これが何か落とし物をしたとかだったらものすごくいいのだが、クラスメイト達の顔を見る限り、どう考えてもそんな感じではなかった。

 

飛鳥(ちょっと様子を見るか…)

 

**************:

 

 放課後、飛鳥が帰ろうとすると…。

 

「よっ! 一丈字!」

「いたー!!」

 

 巴とひまりがやってきた。

 

飛鳥「あ、こんにちは。すみませんね、昼休憩いなくて」

巴「いや、いいんだ。急に押しかけてきたアタシたちが悪いんだし」

ひまり「でもまだ教室に残っててよかったー」

飛鳥「…それで、何か御用でしょうか」

巴「いや、そういえば一丈字ってうちの店に来てくれたことあったっけ?」

飛鳥「通りかかるだけで、あんまりないですね」

ひまり「あ、やっぱりそうだよね」

 

 ひまりの言葉に飛鳥が困惑した。

 

ひまり「…どうしたの?」

飛鳥「あ、ごめんなさい。それでご用件を教えていただけないでしょうか」

巴「まあ、なんつーか、折角だから一度店に来てほしいかなーなんて…」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 巴の言葉に飛鳥がまた困惑した。

 

ひまり「…どうしたの?」

巴「ハンバーガー嫌いなのか?」

飛鳥「そうじゃなくて、多分私は店に行かない方がいいと思うんですよ」

ひまり「どうして…って、あっ」

 

 飛鳥の言葉にひまりは理由を聞こうとしたが、巴と共にすぐに理由が分かった。

 

巴「あー…もしかしてアレだろ。彩さんや花音さんのファンに絡まれるから?」

飛鳥「あなた方のファンにも絡まれるからです」

ひまり「まあ、少なくとも彩さんのファンはちょっと気を付けないといけないね…」

 

 飛鳥の言葉にひまりが苦笑いした。

 

飛鳥「それに、宇田川さんや上原さんがバイトしてる日って人が多いじゃないですか…」

巴「まー…そうだな」

ひまり「お店は儲かってるし、時給も増えてるから有難いんだけどね…」

飛鳥「まあ、お気持ちだけ受け取っておきます」

巴「あ、店がダメだったらさ、今度の休み時間取れないか?」

飛鳥「休み?」

 

 その時だった。

 

「何をやっているんだぁ~~~~~~~~~~~~~~!!!!」

 

 男子生徒軍団がエンカウントしてきた。

 

飛鳥「ちょっと廊下に出ますね」

 

 クラスメイト達に迷惑をかけない為、廊下に出た飛鳥は男子生徒軍団が向き合った。

 

飛鳥「何か御用でしょうか」

「貴様! 巴ちゃんとひまりちゃんと遊ぶ用事を立てようとしてるな!?」

飛鳥「休み時間取れないかって言われただけなんですけどね」

「こういう時は遊ぶって相場は決まってるんだよォ!」

「ゆるせーん!! オレだって遊びたいのにぃ!!」

 

 とまあ、騒ぎ立てる男子生徒たちに飛鳥はかつて見た客同士のけんかを重ね合わせた。

 

飛鳥(椿の言葉を借りるなら…本当に男って愚かやねぇ)

 

 旧友・林椿の言葉を思い出して飛鳥は遠い顔をした。

 

飛鳥「ところで宇田川さん達には誘ったんですか?」

「誘ったけど断られた!」

巴「いや、今みたいに下心丸出しで来られても…」

ひまり「ねー」

 

 巴とひまりが嫌そうな顔をすると、一部の男子生徒が興奮した。

 

「と、とにかく! 遊ぶなんて許さないし、3人で休み何かするならオレ達も誘えぇ!!」

「そうだそうだ!!」

 

 とまあ、発狂するが飛鳥達としては、たいして仲良くもない人たちと遊んで一体何が楽しいんだと思った。ましてやここで巴とひまりが抜けるとなったらこの話はなしになるだろう。

 

「どうしたの?」

 

 彩と花音がやってきた。

 

飛鳥「ああ、丸山先輩。松原先輩」

彩「どうしてこんなことになってるの?」

飛鳥「それが…」

 

 飛鳥が事情を説明すると、彩と花音がジト目で巴とひまりを見た。巴とひまりは視線をそらしていたが、男子生徒たちは彩と花音のジト目にもだえ苦しんでいた。

 

彩「巴ちゃん、ひまりちゃん。どういう事…?」

花音「2人だけ誘うなんて…」

巴「い、いやー…。彩さんはアイドルだし、一人だけ仲間外れにしても可哀そうだなーと思いまして…」

ひまり「そ、そうですよ!」

 

 巴とひまりが必死に弁解した。

 

「ま、まさかこの流れは花音ちゃんと彩ちゃんも遊びに行く流れでは…!」

「少なくとも彩ちゃんはダメだぁ~!!」

「パスパレを壊さないでくれぇ~!!!」

 

 と、そこそこ正論を言い放った。彩はアイドルであるため、異性と一緒に行動するのは宜しくないのだが、この男子生徒軍団の場合、ただ単に自分以外の男と一緒に歩いてほしくないどころか、アイドルと休みに遊びに行くというおいしい展開を持って行ってほしくないだけだった。

 

彩「う…」

巴「こうなったら一丈字に決めてもらおうぜ!」

飛鳥「お気持ちだけ受け取っておきます」

ひまり「いや、ハッキリしすぎ!!」

 

 飛鳥がきっぱりと決断したので、ひまりが突っ込んだ。

 

「そうだそうだ!」

「お前なんかが一緒に遊んでいい相手じゃないんだよ!」

「ひっこめ!!」

 

 断った飛鳥を罵倒する男子生徒たち。

 

飛鳥「そういう訳ですので失礼します」

巴「逃げるのか?」

飛鳥「ええ。逃げます!」

 

 飛鳥がきっぱりと言い放った。これを言ってしまえば周りの人間の信頼を失うことになるが、飛鳥は本来の目的を果たさなけれならないので、距離を置くことを選んだ。

 

ひまり「そ、そんな堂々と言わなくても…」

彩「あ、やっぱり私に気を遣ってる?」

飛鳥「丸山先輩だけでなく、ここにいる全員です」

「!」

 

飛鳥「それでは失礼します」

 

 そう言って飛鳥は去っていくと、皆が唖然としていた。

 

**********************

 

 河川敷

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥は一人見つめて考え事をしていた。

 

飛鳥(…そりゃあ事情を知っているからなぁ)

 

 巴、ひまり、花音、彩の4人があからさまに自分に好意を寄せている。というシチュエーションを直で体験している為、何とも言えない飛鳥であった。

 

飛鳥「何が正解なんだろ…」

 

 飛鳥がそう呟いたが、そのつぶやきに誰も答えることはなかったという。

 

 

おしまい

 



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第322話「飛鳥と何かがあった幼馴染のAfterglow」

第322話

 

 今回の設定

 

・ 飛鳥とAfterglowが幼馴染

・ Afterglow → 飛鳥

・ 孫たちとは出会わなかった?

 

*************************

 

 私の名前は一丈字飛鳥。色々あってバンドリ学園に転入しました。で、その学校には私のかつての幼馴染達が通っていて、今一緒に登校しています…。

 

モカ「まさか飛鳥くんがこっちに来るなんてね~」

飛鳥「…まあね」

 

 幼馴染達は「Afterglow」というバンドを組んでいて、そのバンドが今大人気になっている。

 

 口下手だけど本当は仲間思いなボーカル・美竹蘭

 

 ゆるふわ系大食い女子のギター・青葉モカ

 

 今時系ベース・上原ひまり

 

 男気溢れる豪快系女子・宇田川巴

 

 縁の下の力持ち・羽沢つぐみ。

 

 幼馴染という事もあって息もピッタリ、ビジュアルも抜群。久々に会ったけど、随分女の子らしくなったなぁ。

 

 だけど問題が一つだけ…。

 

モカ「これもきっと何かの縁だよ~。付き合っちゃう?」

 

 これだ。後々聞いたことなんだが、彼女たちはずっと前から私の事が好きだったらしい。それはとても光栄だが、今の私にはそんな余裕がない。

 

 というのも、私は超能力を持っていて、これまでずっといろんな敵と戦ってきたのだ。ひったくり犯から、町一つぶっ飛ばすほどの凶悪犯まで。当然の事であるが、彼女たちを巻き込むわけにはいかない。というか、巻き込んでなんかあったら責任とれない。

 

 それがなかったら、そういう事も考えていいんだけどねぇ…。

 

蘭「何を言ってるの? 飛鳥はアタシのものだから」

飛鳥「アタシのものって…」

巴「いや、アタシのだ」

 

 モカだけならまだしも、蘭や巴も私に好意を抱いている。巴はまあイメージは沸くけど、蘭はこんなキャラだったかな…?

 

つぐみ「ま、まあまあ。そんな事言ってると飛鳥くん困っちゃうよ」

 

 つぐみ。お前は昔から優しい子だけど、心の中で漁夫の利にならないかなって思ってるの、バレてますよ。

 

巴「そ、そっか…悪い…」

蘭「でも飛鳥もはっきり決めてよ」

飛鳥「ごめん。今は誰とも付き合うつもりはないよ」

 

 はっきり断ってやった。

 

モカ「本当につれないな~」

 

 モカがそういうとほかのメンバーも不満そうにした。本当にありがたい話だが、能力者としての話をするわけにはいかない。どうしたらいいものか。

 

 いったんここで私の語りは終わります。

 

*************************

 

「一丈字めぇ…!!」

 

 飛鳥に対して嫉妬の炎を燃やす男子生徒たちは。彼らは1年2組、飛鳥の隣のクラスの生徒たちだ。なぜここまで嫉妬の炎をもやしているかというと、彼らが所属する1年2組にはAfterglow全員がいるからで、彼女たちは2組にとってのマドンナ的な存在だったのだ。ちなみに彼女たち以外の女子たちに対して眼中なしで総スカンを食らっては、時折妨害されている。

 

「幼馴染かなんだか知らねーけど、蘭ちゃん達と仲良くしやがって…!」

「許せねぇ!」

「ぶっ潰してやる!!」

 

 とまあ、敵意むき出しだった。

 

「まあマテお前ら」

「!?」

 

 クラスメイトの一人が声を出した。

 

「もうすぐ臨海学校だ」

「!」

「臨海学校となれば、クラスでの行動が多くなる!」

「成程!」

「そこで一丈字にクラスメイトとそうじゃない奴の格差を見せつけるんだ!」

「そうか! そうだな!」

「これを機に5人全員、カップルにしてやるぜ…」

 

 とまあ、そんな邪なことを考えていたが、飛鳥は彼らの顔を見るなり、考えていることを見破った。

 

飛鳥(ガールズバンドって大変なんだな…)

 

************************

 

 ところがどっこい、臨海学校直前…

 

ひまり「ねえ飛鳥!」

飛鳥「どうしたの?」

 

 ひまりが突然飛鳥の教室にやってきた。

 

ひまり「今度の休み暇?」

飛鳥「ごめん。ちょっと買い出しをしないといけないんだ。買いだめしときたいものがあるから…」

ひまり「どこに行くつもりなの?」

飛鳥「え? イ〇ンだけど…」

ひまり「それだったら私も行っていい?」

飛鳥「ひまりもなんか買い物があるの?」

ひまり「水着買おうと思ってるんだ」

飛鳥「臨海学校の?」

ひまり「うん。それで飛鳥にもちょっと見てもらいたくて…」

飛鳥「オレに?」

ひまり「そ、そういう事だから!」

 

 その時だった。

 

「コラーっ!! ひまりー!!!」

 

 巴が怒鳴りながらやってくると、蘭、モカ、つぐみが続いた。

 

ひまり「と、巴! それに皆も!」

蘭「…抜け駆けしないって約束だったよね?」

モカ「ひーちゃんはスタイルいいから、それで飛鳥くんを悩殺しようとしてたんだ~」

つぐみ「ひ、ひまりちゃん…。そういうの良くないよ…」

ひまり「う…」

 

 4人に責められて、ひまりはばつが悪そうにした。

 

モカ「でもそれだったらモカちゃんも水着選んでもらおうかな~」

ひまり「え゛」

巴「そうだな。ひまりだけ不公平だもんな」

蘭「同じく」

 

 と、自分たちも参加しようとしていたのでひまりは慌てていた。

 

飛鳥「うーん…」

モカ「飛鳥くん。ひーちゃんに気を使わなくていいよ」

蘭「そうだよ。こういうのは皆一緒でいいから」

巴「そうだな」

ひまり「皆私の立場だったらすごく嫌がるくせに~!!!」

 

 と、完全に自分に好意むき出しだったので、その辺は大丈夫なのかと思う飛鳥であった。

 

つぐみ「あ、飛鳥くんはどうかな…? 迷惑じゃない…?」

飛鳥「迷惑じゃないけど、5人とも?」

蘭「そうだけど、文句ある?」

 

 蘭が有無を言わせないようににらみを利かせたが、

 

飛鳥「いや、着てくる水着が分かると、当日新鮮味がないからその辺大丈夫かなって…」

 

 飛鳥の言葉に空気が止まった。

 

モカ「なかなかやりますな~」

飛鳥「何が」

蘭「…エッチ」

飛鳥「はいはい」

 

 蘭の言葉を飛鳥が簡単にあしらったが、

 

「コラァアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 5人の男子生徒たちがやってきた。飛鳥をにらみつけていた男子生徒たちである。

 

飛鳥「あなた方は…」

「お前いい加減にしろよ!!」

「誰に断ってAfterglowとデートの約束取り付けようとしとんじゃい!!」

「オレ達に変われぇ!!」

 

 男子生徒たちの顔を見るなり、つぐみ以外のAfterglowは嫌そうな顔をした。

 

飛鳥「…知り合い?」

蘭「クラスメイト。アタシ達にアプローチしまくっててうざいの」

モカ「ごめんなさいって断ったんだけどねぇ~」

巴「しつこい男子はモテないぞ?」

「う、うるさぁい!!」

 

 と、男子生徒たちは駄々をこねた。

 

「とにかく水着を買いに行くのは許さないからな!」

飛鳥「……」

 

 どうすればよいものかと、飛鳥は静かに目を閉じるのだった。

 

 

おしまい

 



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第325話「飛鳥と何かがあったPastel*Palettes ~カオス編~」

 

 

 ある日の事。飛鳥はPastel*Palettesの目の前で悪党を倒してしまった。それはまだ良いのだが、パスパレメンバーがなんかべたぼれしてるのが、肌で感じ取れて、飛鳥は人生終了を悟った。

 

飛鳥(あぁ…今までの事が走馬灯のように駆け巡ってくる…)

 

 飛鳥の脳裏にははなP∞「宝物~卒業の春~」が流れていた。

 

***********************

 

 そして飛鳥は今学園にいるわけだが、案の定パスパレに声をかけられたし、千聖に逃げるなと釘を刺され、飛鳥の退路は断たれたはずなのだが、男子生徒たちがいい感じに邪魔をしてくれたので、飛鳥は何とかなっていた。

 

飛鳥(何とかなっていたって雑だけど、結果的に助かってるしまあいいか)

 

 いつもはいちゃもんをつけてきて迷惑だが、こういう時は本当に助かる為、特に邪険にしない一丈字飛鳥。考え方によっては女の敵と言われてもおかしくはない。

 

飛鳥(うん、自覚はあるけど、仕事でこっちに来たんだもん)

 

 けど、これだと話が盛り上がらないし進まないので、結局パスパレに捕まった。

 

飛鳥「ちゃんとストーリー練ってる!?」

 

************************

 

 そして気が付いたらロケバスの中に入れられることになったのだが、誰が飛鳥の隣に座るか5人が争っていた。正直アイドルとしてあるまじき姿である。

 

飛鳥(紗夜先輩と白金先輩の声優さんが心配だ…)

 

 間違いなくこの作品を見ていないかもしれませんが、どうかお体をお大事に。

 

日菜「え~っ!!!」

イヴ「そ、そんなぁ…」

 

 日菜とイヴが負けた。

 

彩「う、恨みっこなしだよ…千聖ちゃん、麻弥ちゃん」

千聖「彩ちゃんこそ…」

麻弥「さいしょはグー!!」

 

 3人がじゃんけんをすると、彩が負けた。

 

彩「嘘やろ…」

 

 期待の裏切らなさに思わず関西弁になる彩だった。

 

千聖「さ、行きましょうか♪」

麻弥「それでは一緒に来てくださいっす」

飛鳥「これ、本当に大丈夫なんですか…?」

千聖「大丈夫よ。エアバンドもしてるからもう今更よ」

飛鳥「その発言プロとして大丈夫じゃないですよね!?」

 

 千聖のまさかの発言に飛鳥が困惑した。

 

 そんなこんなでロケバスで事務所に移動した。飛鳥、千聖、麻弥は3列目、日菜、彩、イヴは2列目に座っていたが、日菜たちはずっと後ろを見ていた。

 

日菜「ねー。そろそろ代わってよー」

麻弥「ひ、日菜さん…」

千聖「事務所までそんなに時間かからないし、まだ5分も経ってないわよ」

 

 飛鳥としては本当にどうしてこうなったと思った。人助けをしただけで普通こんなことにはならないが、フィクションというのは夢を描くものです。

 

飛鳥(確かに可愛い女の子達から丁重にもてなされるのは夢があっていいけど…。オレはその分悪夢が待ってるからな…)

 

 そう。嫉妬した男子生徒たちのやっかみと、広島にいる仲間たちがこの事を知ったらどう思うか。対応がとてつもなくめんどくさいので、飛鳥は素直に喜べなかった。正直ハーレム系主人公に向いてないような気もするが、お喋りが出来るのでこの地位を獲得した。

 

飛鳥(孫さんとか鉄馬とかが喋れないからな…)

 

*********************

 

 そんなこんなで飛鳥は事務所まで連れていかれて、そこのお偉いさんからお礼を言われた。

 

「本当にありがとう。君のおかげで助かった」

飛鳥「いえいえ…」

 

 お偉いさんの言葉に飛鳥が苦笑いした。

 

「お礼と言ってはなんだが、何がいい?」

飛鳥「今はまだ考えてないので、また思いついたら連絡します」

 

 ここでお礼はいらないと言うと、向こうも食い下がる可能性があり、ここでお礼を貰おうとすれば意外とがめついイメージを持ち、距離を持とうとするだろうと飛鳥は判断した。

 

千聖「本当に遠慮しなくていいのよ?」

飛鳥「まあ、いつか使う時が来るまで、取っておきたいと思います」

麻弥「とても謙虚なんですね」

イヴ「ブシドー!!」

「そうだな。まあ、いつでも言ってくれたまえ。今やパスパレは大事な稼ぎ頭! 何かあってもらっては困る!」

 

 そういってお偉いさんは満足そうにしていると、飛鳥が苦笑いした。そろそろ超能力で暗示をかけて、逃亡を図ろうとしたが…。

 

千聖「……」

 

 千聖がさっきから自分を見てきて、超能力を放てずにいた。そう、千聖のみ正体を知っているのである。

 

飛鳥(なんだかよくわからないことになってきたぞー?)

 

 そんなこんなでお偉いさんとのあいさつも終わり…。

 

*************************

 

彩「あ、そうだ!」

飛鳥「どうされました?」

 

 事務所を出るやいなや、彩がある事を思いついて、飛鳥が反応した。

 

彩「今度の休み、このメンバーでどこか出かけようと思うんだけど…」

飛鳥「え」

日菜「さんせー!!」

千聖「良い案だと思うわ」

 

 いつも彩に厳しい千聖ですら満面の笑みを浮かべて賛成していた。

 

麻弥「一丈字さんは大丈夫ですかね?」

飛鳥「ファンが大丈夫じゃないですね」

 

 そう、完全にスキャンダルになる事間違いなしだったが…。

 

千聖「それに関しては心配いらないわよ。もうあなたの記事出てるから」

 

 そういって千聖が自分のスマホを見せると、飛鳥がパスパレを救出した旨が報道されていて、飛鳥が目を大きく開いた。そう、完全に退路を断たれてしまったのだ。

 

千聖「だから私たちとあなたが一緒に出掛けても、何も不自然なことはないって訳よ」

飛鳥「それでもファンは納得しないと思いますけどねぇ…?」

千聖「まあそれはそれ、これはこれよ」

 

 千聖らしくもない雑な終わらせ方だった。

 

日菜「あ、そうだ! 飛鳥くんの家に行きたい!」

飛鳥「ごめんなさい。家はちょっと…」

 

 飛鳥がそう言うと、5人が一斉に期待を込めた目で見ていた。

 

飛鳥「…すいません。本当にダメなので、1階のロビーだけなら」

彩「ロビーはいいんだ…」

日菜「まあいいや。それじゃ飛鳥くんの家のロビーに遊びに行くからね!」

 

 そんなこんなで本当にパスパレがロビーに遊びに来たのだが、そこでひと悶着があったのは別の話…。

 

 

 ちなみに…。

 

和哉『ああ。白鷺千聖が連絡してきた』

飛鳥「やっぱり…」

 

 千聖が和哉と何かしらの連絡を取っていたと判断したので、飛鳥が困惑していて、

 

省吾『パスパレのサイン貰う事ってできない?』

飛鳥「……」

 

 2つ上の友人の志田省吾は相変わらずで、

 

日向『お、お疲れ様…』

飛鳥「ありがとう」

 

 元同級生の林日向からも連絡が来たが…。

 

さくら『あんたうちの子もいるのに…』

日向『お、お母さん!!///// 本当に違うから!!/////』

 

 と、茶々を入れてこれからどう収拾つけようか迷う飛鳥であった。

 

 

おしまい

 



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第326話「飛鳥と何かがあったPoppin’Partyと自宅訪問」

 

 

 今回の設定

・ 自宅も普通に入れる

・ 女の子たちはみ~んな飛鳥が好き。

 

 

 ある日の休日。一丈字飛鳥は今日も今日とて自宅でテレワークをしていた。というのも、飛鳥は半ば社会人という事もあり、バンドリ学園関連の任務がある時以外は、能力者としての仕事をしているのだ。その為、人を入れることはない。

 

 そんな彼がもしも人を入れて、その人が飛鳥の事がめっちゃ好きだったらどうなるだろう?

 

飛鳥「需要あるかなぁ?」

 

******************************

 

『Poppin‘Party編』

 

「おっはよー!!」

「おはようございます戸山さん」

 

 香澄がいきなり家に現れると、飛鳥はデスクワークをしていた。

飛鳥「いきなり家に入らないでください」

香澄「えへへー。どうしても飛鳥くんに早く会いたくて!」

飛鳥「そりゃあ有難いですが、親しき中にも礼儀ありですよ」

 

 飛鳥はとにかく冷徹に言い放った。基本的にちゃんとしない奴には冷たいのだ。

 

りみ「ご、ごめんなさい…。突然押しかけて、やっぱり迷惑でしたよね…?」

飛鳥「迷惑というか困ります」

 

 飛鳥は本当に容赦のない性格だった。関西生まれのアメリカ育ちなのでめちゃくちゃはっきり言う性格で、今まで敵が多い人生だった。

 

飛鳥「一人暮らしをしてるとはいえ、ずがずが入られたら色々厄介なことになるんですよ」

たえ「例えば?」

飛鳥「え? 私があなた方を家に連れ込んでるとか言われます」

たえ「連れ込んでるんじゃなくて、私たちが飛鳥くんの家に押しかけてるんだよ?」

飛鳥「自覚あるなら、少しは自重なさい」

 

 たえの天然ぶりに飛鳥が困惑した。

 

有咲「それはそうと何してたんだ?」

飛鳥「来週の宿題ですけど」

香澄「しゅ、宿題!?」

 

 飛鳥の言葉に香澄が驚くと、飛鳥は目を光らせた。

 

飛鳥「あ、そうだ。折角ですから勉強会でもします?」

香澄「そ、そうやって私を帰らせようとしてもそうはいかないんだから!! そ、それはそうと部屋奇麗にしてるんだねぇー」

飛鳥「露骨に話を逸らすんじゃありませんよ」

有咲「香澄の部屋より綺麗」

香澄「あ、有咲ぁ!!//////」

 

 有咲がぼそっと言うと、香澄も流石に恥ずかしいのか頬を染めて叫んだ。

 

有咲「けどこれじゃ掃除のしようがないなぁ…」

飛鳥「ハウスキーパーさんに掃除してもらってますので」

「ハウスキーパーさん!?」

飛鳥「このマンションのサービスらしいんです」

沙綾「へ、へえ…」

 

 しかし、どこか掃除をしたそうにしていた有咲は残念そうにしていて、飛鳥はそれを察知した。

 

飛鳥「市ケ谷さんに掃除して頂きたい方はほかにもいらっしゃるんじゃないですか?」

有咲「べ、別にそんな事ねーし/////」

 

 飛鳥の言葉に有咲がぷいっと横を向いた。かわいい。

 

有咲「可愛いって言うなぁ!!/////」

香澄「いや、有咲は可愛い」

有咲「香澄ぃ~!!!/////」

沙綾「私も可愛いと思う」

有咲「さーや!!」

りみ「わ、私も可愛いと思うよ…?」

有咲「りみまで乗るな!」

たえ「귀여운」

有咲「ハングルで『可愛い』って言ってるの分かるからな!!////」

 

 すると有咲は飛鳥の方を見た。

 

飛鳥(かわいい)

有咲「あああああああああああああああああああああ///////////////////」

飛鳥「ちょ、叫ばないでください。流石に近所迷惑です」

 

************************

 

たえ「それはそうと、エロ本とかないの?」

飛鳥「仮にあったところで同級生の女の子にそんな事を言うとお思いですか?」

 

 たえの言葉に飛鳥が困惑した。

 

有咲「まあ…お前も男だもんな…////」

りみ「だ、大丈夫だよ…? 別に…」

飛鳥「うん。ある前提で話をするの漫画でよくあるけど、本当にないんですよ」

 

 有咲とりみの言葉に飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「それはそうと一つ疑問に思ったんですけど」

たえ「なに?」

飛鳥「同じクラスの男子たちとは遊ばないんですか?」

 

 飛鳥の言葉にポピパの5人が露骨に視線をそらした。

 

飛鳥「な、なんかあったんですか…?」

たえ「あったも何もあいつら最悪だよ…」

 

 たえが露骨に怒ってて飛鳥が困惑した。

 

りみ「チョココロネをバカにしたあの人たちを絶対に許さない…」

飛鳥(チョココロネをバカにした!?)

沙綾「もううちの店出禁にしたいよ…。正直な話」

飛鳥「一体何したんです?」

有咲「そりゃあお前、女の口から言わせようってのか?」

飛鳥「あ、いいです」

有咲「オッパイじろじろ見やがって」

飛鳥「じゃあなんで男子の家に来たの!!?」

香澄「何より一番許せないのは…飛鳥くんの悪口を言ってたからなんだよっ!」

飛鳥「今をときめくガールズバンドの子たちがごそって構ってたら、そりゃ嫌われますわ」

 

 自分の事に関しては無頓着な飛鳥に、香澄達はキッとにらみつけた。

 

飛鳥「うん、本当にいいんですよ」

香澄「良くないもん!」

飛鳥「というか家に突然押しかけられるのも、どっこいどっこいなので」

沙綾「うん、本当にごめん。今度からはちゃんとインターホン鳴らすから」

飛鳥「アポ取ってください」

有咲「ていうか大体お前いないし、家にあげてくれないだろ!」

飛鳥「あんまり家の中見られたくないんですよ」

 

 とまあ、結構本音が出だした。

 

*****************:

 

香澄「で、話変わるけど…今日は何して遊ぶ?」

飛鳥「勉強して遊びましょう」

香澄「勉強はダメだってばぁ!!」

有咲「あ、それいいな。じゃあ香澄は別の遊びでもしてなー」

沙綾「私も勉強して遊ぼうかな」

たえ「私も」

りみ「わ、私も…」

香澄「も、もぉ~~~~~~~~~~~~~!!!」

 

 こうして、6人は飛鳥の家で勉強して遊びましたとさ。

 

 

飛鳥(ブシロードさん。本当にごめんなさい)

 

 

おしまい

 



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第366話「何かがあった日菜と何かがあった紗夜と壊れた飛鳥」

 

それはある日の事だった。

 

日菜「飛鳥くん!」

紗夜「一丈字くん!」

 

 日菜と紗夜が同時に飛鳥に話しかけてきた。

 

飛鳥「どうかされました?」

日菜「明日パスパレのロケに来て!」

紗夜「ロゼリアの練習に付き合って頂戴」

 

 双子が同時に飛鳥にお願いすると、日菜と紗夜が向き合った。

 

日菜「…おねーちゃん。Roseliaの練習はいつでもできるよね?」

紗夜「日菜こそ、アイドルなのに殿方をロケに連れて行くなんてどういう了見なの?」

日菜「いや、飛鳥くんがいる方がるんってするし、おねーちゃんこそどうして飛鳥くんを?」

紗夜「一丈字くんは演奏できるし、第三者の観点から色々教えてくれた方がRoseliaのレベルアップに繋がるからよ」

日菜「それだったら今度パスパレもそうしようかなー」

紗夜「まあ、日菜の話は置いといて一丈字くん。お願いできるわね?」

日菜「いや、パスパレだよね!? なんか千聖ちゃんとも仲が良いみたいだし!」

 

 そう言って日菜と紗夜に迫られる飛鳥。ある意味で究極の選択である。

 

飛鳥「選ばれなかった方はちゃんと諦めますね?」

紗夜「え、ええ…」

日菜「勿論!」

 

 紗夜と日菜の言葉を聞いて、飛鳥が答えようとした次の瞬間だった。

 

「何やる前提で話を進めとんじゃクラァ~~!!!!!」

 

 ロケット団の如く男子生徒軍団が現れた。ポケモン初代におけるポッポやコラッタばりのエンカウント率である。男子生徒たちが現れた事で紗夜と日菜の目のハイライトが消えたし無表情になった。

 

「紗夜ちゃんと日菜ちゃんの氷の目…」

「ぷっひょー! たまんねー!!」

「ああン…♥」

 

 冷たい視線に興奮している一部の男子生徒に飛鳥も無表情になった。

 

「てめーは無表情になってんじゃねぇや!!」

「モテ男ぶりやがって!!」

飛鳥「…あの、何か御用でしょうか?」

「御用でしょうかじゃねぇんだよおめーは!!」

「何ロゼリアやパスパレと宜しくやろうとしてんだ!」

「ぜってーさせねー!!」

 

 と、男子生徒たちが騒いでいたが、

 

紗夜「邪魔しないで頂戴」

日菜「そうだよ。邪魔しないで」

 

 いつになくキレていた。

 

「ありがとうございます!!」

「邪魔しないでと言われても僕たちは紗夜ちゃん達の事を思って…!!」

 

紗夜「日菜。皆心配してるわよ。今のうちにやめなさい」

日菜「それはおねーちゃんもだよ。ロゼリアも人気があるんだから影響力高いよ」

 

 そう言ってお互いがお互いに対して諦めさせようとしていた。

 

「一丈字も少しは遠慮しろ!」

飛鳥「いつも遠慮してたんですけど、ちゃんと見てました?」

「見てたけど、結局一緒にやっとるやんけ!」

飛鳥「というかそれだったら紗夜先輩たちに言った方が早くないですか?」

「まっ! 女の子のせいにするとかそれでも座長か!」

「そうだ! 男らしくないぞ!!」

紗夜「そうね。今回ばかりは彼らの言うとおりだわ」

日菜「女の子のせいにするなんて…」

 

 そう言って皆が飛鳥を責めると、飛鳥は無表情になり皆が流石に困惑した。

 

飛鳥「あーあ。もうやる気なくした。決めてたけどもうやめだやめだ。そんなに言うならもうあなた方で好きにすればいいじゃないですか」

 

 そして飛鳥はもう完全にやる気をなくしたそぶりを見せた。

 

飛鳥「何ならあなた方とパスパレとロゼリアでセッティングしましょうか?」

「え?」

飛鳥「勿論変な事すれば、弦巻家の黒服の人たちに社会的に抹殺されますけど」

 

 飛鳥の発言に皆が流石に違和感を感じ始めた。

 

日菜「あ、飛鳥くん…?」

飛鳥「日菜先輩、紗夜先輩。申し訳ございませんが、そこまで言われちゃあ私も限界ですわ」

 

 飛鳥が疲れ切った顔で言い放った。

 

飛鳥「もう365回もやってるし、そろそろ潮時ですかね」

日菜「いやいやいやいやいやいや!! ちょっと待って!!」

紗夜「落ち着いて頂戴!!」

 

 やさぐれた飛鳥を見て、日菜と紗夜が慌てて飛鳥を止めると、男子生徒たちもいつもと違う飛鳥に唖然とした。

 

飛鳥「オレの直の後輩とか、何ならイケメンご紹介しましょうか?」

日菜「いや、もう本当にごめんってば!!」

紗夜「言い過ぎました…」

 

 飛鳥の目は完全に死んでいて、完全に続行不可能となった。

 

 

日菜「飛鳥く~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!!!」

 

 

 

おしまい

 



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第367話「それでも明日はやってくるけど、やっぱ辛い」

 

 一丈字飛鳥です。前回の話は遂に心が折れてしまいましたが、今日からまた頑張ります。にしても、心が折れると本当に何もやる気が起こらなくなるんですね…。

 

******************************

 

日菜「飛鳥くん!」

紗夜「一丈字くん!」

 

 日菜と紗夜が同時に飛鳥に話しかけてきた。

 

飛鳥「どうかされました?」

日菜「明日パスパレのロケに来て!」

紗夜「ロゼリアの練習に付き合って頂戴」

 

 双子が同時に飛鳥にお願いすると、日菜と紗夜が向き合った。

 

日菜「…おねーちゃん。Roseliaの練習はいつでもできるよね?」

紗夜「日菜こそ、アイドルなのに殿方をロケに連れて行くなんてどういう了見なの?」

日菜「いや、飛鳥くんがいる方がるんってするし、おねーちゃんこそどうして飛鳥くんを?」

紗夜「一丈字くんは演奏できるし、第三者の観点から色々教えてくれた方がRoseliaのレベルアップに繋がるからよ」

日菜「それだったら今度パスパレもそうしようかなー」

紗夜「まあ、日菜の話は置いといて一丈字くん。お願いできるわね?」

日菜「いや、パスパレだよね!? なんか千聖ちゃんとも仲が良いみたいだし!」

 

 そう言って日菜と紗夜に迫られる飛鳥。ある意味で究極の選択である。

 

飛鳥「選ばれなかった方はちゃんと諦めますね?」

紗夜「え、ええ…」

日菜「勿論!」

 

 紗夜と日菜の言葉を聞いて、飛鳥が答えようとした次の瞬間だった。

 

「何やる前提で話を進めとんじゃクラァ~~!!!!!」

 

 ロケット団の如く男子生徒軍団が現れた。ポケモン初代におけるポッポやコラッタばりのエンカウント率である。男子生徒たちが現れた事で紗夜と日菜の目のハイライトが消えたし無表情になった。

 

「紗夜ちゃんと日菜ちゃんの氷の目…」

「ぷっひょー! たまんねー!!」

「ああン…♥」

 

 冷たい視線に興奮している一部の男子生徒に飛鳥も無表情になった。

 

「てめーは無表情になってんじゃねぇや!!」

「モテ男ぶりやがって!!」

飛鳥「…あの、何か御用でしょうか?」

「御用でしょうかじゃねぇんだよおめーは!!」

「何ロゼリアやパスパレと宜しくやろうとしてんだ!」

「ぜってーさせねー!!」

 

 と、男子生徒たちが騒いでいたが、

 

紗夜「邪魔しないで頂戴」

日菜「そうだよ。邪魔しないで」

 

 いつになくキレていた。

 

「ありがとうございます!!」

「邪魔しないでと言われても僕たちは紗夜ちゃん達の事を思って…!!」

 

紗夜「日菜。皆心配してるわよ。今のうちにやめなさい」

日菜「それはおねーちゃんもだよ。ロゼリアも人気があるんだから影響力高いよ」

 

 そう言ってお互いがお互いに対して諦めさせようとしていた。

 

「一丈字も少しは遠慮しろ!」

飛鳥「いつも遠慮してたんですけど、ちゃんと見てました?」

「見てたけど、結局一緒にやっとるやんけ!」

飛鳥「それでしたら、今回は私じゃなくてあなた方とパスパレとロゼリアのイベントにしましょうか」

 

 飛鳥は同じ過ちを繰り返すことはなかった。

 

飛鳥「これで上手くいかなくても、一切文句は言わせませんよ?」

 

 飛鳥がそう言って黒い笑みを浮かべて、圧をかけた。

 

紗夜「普通に嫌なんですけど」

日菜「あたし達は飛鳥くんに来てほしーの!!」

飛鳥「光栄ですが…彼らを大人しくさせるにはこれしか思いつかなくて…」

日菜「分かった。パスパレの名前を使って社会的抹殺…」

「待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て」

 

 日菜の言葉に皆が困惑した。

 

飛鳥「アイドルが何してるんですか」

日菜「だってー」

紗夜「……」

飛鳥「紗夜先輩も何か言ってくださいよ」

紗夜「ロゼリアの名前も使って…」

飛鳥「ああ、また心が折れそうだ…」

 

 紗夜もボケにまわってしまったので、飛鳥は遠い顔をした。

 

「ぐ…ひ、卑怯だぞ一丈字!」

「日菜ちゃんと紗夜ちゃんにこんな事を言わせるなんて!」

飛鳥「もうそんな気がしてきました。私もうこの学校にいない方がいいのかもしれないですね」

日菜「いや、この学校にいない方がいいのはこの人たちだから大丈夫だよ?」

「日菜ちゃん!!?」

紗夜「そうね。さっきから嫌がってるのに気づいてない上に、しつこいのよ」

「ああっ…なんか初期の紗夜ちゃんや…」

「懐かしい…」

 

日菜「それはそうと飛鳥くん」

紗夜「結局どっちにするのかしら?」

 

 そう言って2人が圧をかけてきた。

 

飛鳥「ロゼリアです」

 

 飛鳥がはっきりと言い放った。

 

日菜「あ、分かったー。アイドルだから選ばなかったんでしょ?」

飛鳥「はい」

日菜「じゃあしょうがない。あたし個人と」

「余計にダメだろ!!!」

「なんで主人公って言うだけでこんなにモテるの!?」

 

 男子生徒たちの言葉に飛鳥がスッと手を上げた。

 

飛鳥「その分敵も多いし、助けてほしい時に誰も助けてくれませんよ?」

「うるせぇよ!!」

「ていうかもうさり気にモテる事認めやがったな!!?」

「じゃあオレ達もお前の事助けねーよ!!」

「ずっと心が折れてたら良かったのに…!」

 

 と、男子生徒たちはわなわな震えていた。

 

紗夜「けど、Roseliaって一丈字くんが直接決めたからRoseliaで決定ね」

日菜「そ、そんなぁ~!!!」

 

 その時、パスパレの4人が現れると飛鳥が困惑した。また嫌な予感がすると…。

 

イヴ「アスカさん…信じてましたのに…」

麻弥「残念です…」

千聖「……」

彩「私たちを選ぶと思ってたのに…」

 

 そう言って4人が言い放つと、

 

飛鳥「すみませんね。影響力でかすぎるんで、私では捌ききれません」

「いや、絶対嘘だよね!?」

 

 飛鳥の言葉に皆が突っ込んだ。

 

「一丈字の代わりにオレ達が!!」

紗夜「だそうですよ」

彩「いや、あの…」

千聖「あらそう? それじゃ一丈字くんをこっちに来るように説得してくれたら、考えてもいいわ?」

「悪女!!」

「完全に悪女の発想やん!!」

「用が済んだら切り捨てるつもりやろ!!」

 

 千聖の発言に皆が困惑した。

 

「それでも構わん!!」

「寧ろ切り捨てられたい~!!!」

「オレは日菜ちゃんに切り捨てられたい!」

「僕は麻弥ちゃん!」

「僕、イヴちゃん!」

 

 ドMぶりを発揮している男子生徒たちを見て飛鳥は思った。もうこの学校はダメだと。

 

 

飛鳥(良い子はマネしないでね)

 

 

おしまい

 



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第394話「飛鳥と何かがあったPastel*Palettes ~ 買い物編 ~」

 

 

『飛鳥と何かがあったPastel*Palettes』

 

 今回の設定

 

・ 飛鳥 ← パスパレ

 

***********************

 

 それはある日の事だった。

 

千聖「飛鳥くん」

飛鳥「……」

 

 飛鳥はバンドリ学園で千聖に話しかけられていた。パスパレは用事がない限り、飛鳥とずっと一緒にいるようになってしまったのだ。

 

飛鳥「これじゃ男子生徒の方々に文句を言われても仕方ありませんわね」

千聖「いいのよ。大した努力もせずに人を馬鹿にするような人たちが何をほざいても、私たちには響かないわ」

(滅茶苦茶辛辣…)

 

 千聖が本当に辛辣になったため、周りにいた生徒たちは困惑していた。

 

飛鳥「あの、白鷺先輩…」

千聖「千聖って呼んで頂戴」

飛鳥「そういう訳にはいきませんよ」

千聖「どうして?」

飛鳥「此間そう呼んだら、あなたのファンに闇討ちされかけました」

千聖「え、何でそれ言ってくれなかったの?」

 

 飛鳥の言葉に千聖が困惑した様子で飛鳥の顔を見ながら言い放った。

 

飛鳥「あなた方が放送できないような顔をされてましたので…」

千聖「そ、そんなに酷くないわよ!!」

 

 飛鳥の言葉に千聖が困惑していた。

 

飛鳥「それはそうと私は飲み物を買ってきますね」

千聖「私が行ってくるわ。何が欲しいの?」

飛鳥「白鷺先輩。やはり私を消すつもりでしょう」

千聖「どうしてそうなるのよ!」

飛鳥「考えてみてくださいよ。パスパレの白鷺千聖をパシリにさせる男子生徒って構造が生まれますよ」

千聖「…全く、ひねくれた考え方をする人たちも困ったものね」

 

 飛鳥の言葉に千聖が他人事のようにため息をついて呆れていたが、飛鳥としてはあんたに言ってんだけどなぁ…と思っていた。

 

 そんな時だった。

 

「千聖ちゃん!!」

 

 同じパスパレのメンバーである丸山彩がやってくると、千聖が苦笑いした。

 

千聖「あ、彩ちゃん…」

彩「あれだけ飛鳥くんの所には行かないように言ってたくせに!」

千聖「あ、彩ちゃんは行く回数が多すぎるから…」

彩「理由になってないよ?」

 

 彩がびしっと突っ込むと、いつもと立場が逆になっていると飛鳥と周りの生徒たちは困惑していた。

 

彩「それはそうと飲み物買いに行くんだよね? 私が行くよ?」

飛鳥「いえ、お気持ちだけ受け取っておきます…」

彩「飛鳥くん。先輩の気持ちはちゃんと受け取っておくべきだよ?」

 

 彩はそう言って飛鳥に注意をするが、

 

飛鳥「そうしたいのは山々なんですけど、あなたのファンが私を闇討ちしようとするので、自分で行きます」

彩「大丈夫だよ」

飛鳥「え?」

彩「パスパレのファンはそんな事しないよ」

飛鳥「丸山先輩…」

 

 彩の発言に飛鳥は感心していた。アイドルを志しているだけあってファンにも優しいと飛鳥は思っていたのだが…。

 

彩「そんな酷い事をする人たちが、パスパレのファンな訳がないよ」

飛鳥「丸山先輩…?」

千聖「そうね。飛鳥くんを闇討ちする奴はパスパレのファンじゃないわ」

飛鳥(なんか意味が違ってた!!)

 

 過激なファンにも優しいのではなく、過激なファンはもうファンではないと切り捨てていて、アイドルの黒い部分を見て飛鳥はショックを受けていた。

 

飛鳥「分かりました。それでは一緒に行きましょう」

彩「いや、飛鳥くんはここに残ってて」

飛鳥「あ、やっぱり私と一緒に歩くのは嫌ですよね…」

 

 飛鳥はそう言って落ち込む演技を見せた。そう、この熱心ぶりを逆手に取ったのだ。案の定彩はものすごく慌てていた。まるで収録中に台詞が飛んでしまって、どうすれば良いか慌てていた時と同じように。

 

飛鳥「たとえが分かりづらいよ!!」

 

千聖「彩ちゃん。今後飛鳥くんに接近禁止ね」

飛鳥「罰が重すぎる!!」

彩「違うのぉ!! 本当に誤解だってばぁ!!」

 

 千聖の発言に彩が泣きながら謝っていた。飛鳥としては完全にあり得ない状況に白目になっていた。

 

飛鳥(バンドリ関係者の皆さん、本当に申し訳ございません…)

 

 無名のオリキャラが超有名なキャラクターより立場が完全に上になっていることに、飛鳥は息の根が止まりそうだった。『もしもパスパレの好きな人が同じ人物で修羅場だったら』というシチュエーションでお楽しみください。飛鳥はもうただの相手役という事で…。

 

飛鳥「済めばいいなぁ~!!」

 

****

 

千聖「とはいえ、飛鳥くんが怪我とかしたら大変だわ」

飛鳥「心はしょっちゅう大怪我ですけどね」

彩・千聖「え」

 

 飛鳥の発言に彩と千聖は飛鳥の方をじっと見ると、飛鳥はスーッと消えた。

 

飛鳥「さて、カフェオーレ買いに行こ」

 

 飛鳥がそう言ってカフェオーレを買いに行ったが、彩と千聖は飛鳥が急にいなくなったので騒いでいた。

 

*****

 

 学園のコンビニに行くと、日菜、麻弥、イヴが既に来ていて、飛鳥は嫌な予感がしていた。

 

飛鳥(なんでだろう。なんか良く分かんないけど、コンビニに行ってはいけないような気がする)

 

 飛鳥がそう考えていると、日菜たちが飛鳥に気づいて、すぐに近づいた。

 

日菜「飛鳥くー…」

 

 その時、男子生徒たちがブロックした。飛鳥からは日菜たちが見えなくなっていて、ブロックしている男子生徒2名があっち行け! と飛鳥を威嚇していて、飛鳥は困惑していた。そこまでやるかと…。

 

「日菜ちゃんに麻弥ちゃんにイヴちゃん!」

「相手なら僕たちがするよ!!」

 

 男子生徒たちの言葉に飛鳥は禍々しいオーラが放たれていることに気づいた。

 

飛鳥(あ、これいかん方がええわ)

 

 飛鳥は身の危険を感じて逃げようとしたが、逃げようとしてもきっと彩や千聖が来るんだろうなと思ったので、逃げないことにした。

 

千聖「いや、ここは逃げましょう飛鳥くん」

彩「うん。ここは日菜ちゃん達に任せましょう」

飛鳥「え」

 

 飛鳥の予想通り千聖と彩が現れたが、飛鳥を安全な場所に逃がそうとしたが、日菜・麻弥・イヴが追いかけてきて、そのまま鬼ごっこに突入しましたとさ。

 

 ちなみにカフェオーレは鬼ごっこが終わってから全員で飲んだ。

 

 

おしまい

 

 

 



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第403話「飛鳥と何かがあったパスパレ ~女優の仕事編~」

 

 

 今回の設定

 

・ 飛鳥 ← パスパレ

 

***********************

 

 一丈字飛鳥です。今日は千聖さんの女優の仕事に同行することになりましたが、千聖さんの相手の男がとんでもない奴だったので…。事前に調査をして相手の悪事の証拠をつかみ、当日に御用にしました。

 

「は、離せぇ!! まだ千聖ちゃんとキス…キッスしてないんだぁ!!」

「何で言い直したんだ!!」

「高校生とキスしたいって、お前いい大人だろ!!」

 

 男は警察官に取り押さえられてなお大暴れしていたが、とにかく千聖さんとキスがしたいと叫んでいた。学校の中でも外でもこんな奴っているんですね。

 

「せめてチューさせてくれぇ~!!!」

「言い方直しただけやん!!」

「てか、もう諦めろ!! 連れていけ!!」

「千聖ちゃああああああああああああああああああああああん」

 

 …頭痛くなってきた。で、問題なのはここからである。

 

千聖「彼がいなくなった事で代役を探す必要がありますね」

監督「そうだな」

 

 千聖さんが食い気味に監督にそう言い放つと、私はもうこの時点で超能力を使った。嫌な予感がするからである。

 

千聖「本日中に仕上げる必要があるので、この中の誰かにやって貰いましょう」

監督「誰がいい?」

千聖「それは…」

 

 千聖さんが周りの男を見渡した。私は超能力で存在感を消してるので、気づかれていません。多分…。まあ、指名される訳ないんですけど、そうやって高をくくっていると当たってしまうのが、ギャグ小説のお約束なんですね。

 

千聖「……」

 

 千聖さん。早く選んでください?

 

「白鷺。皆さんを困らせないの」

 

 そう言って、パスパレの事務所の女性スタッフさんが声をかけてきた。20代後半で仕事が出来る人だけど、持ってくる仕事がいつも変なものばかりだと千聖さんが不満に思っていて、無茶ぶりもさせるのである意味天敵である。

 

監督「よし分かった。それじゃああなたが千聖ちゃんの相手役やって!」

「は?」

 

 監督の言葉に千聖さんとスタッフさんが同じ反応をした。似た者同士なのかなぁ…。

 

千聖「ちょ、ちょっと待ってください! 彼女は素人で…」

監督「大丈夫。このキスシーンだけだから。それに知ってる人なら千聖ちゃんも安心できるでしょ」

「わ、分かりました…。やります…/////」

 

 スタッフさんは恥ずかしそうにしながらもやる気満々で、千聖さんは絶対嫌そうにしてたけど、これ以上駄々をこねると自分のキャリアとイメージに傷をつけかねないので、やる事にしたが…。

 

千聖「……」

スタッフ「……//////」

 

 なんだかとてもシュールだった…。知ってる人同士がこんなことしてるって、演技とはいえちょっと複雑な気分…。この時、私は超能力を解いて、他のスタッフの方々と一緒に演技を見ていたが、皆ガン見していた。

 

監督「よーしOK!! いいよ!!」

千聖「あ、ありがとうございました…」

スタッフ「……/////」

 

 監督さんの声で何とか撮影を終わったが、千聖さんとスタッフさんはなんか気まずそうだった。

 

 で、事務所に帰ろうとしたが…。

 

千聖「……」

 

 バスの中で案の定千聖さんに睨まれました。私は悪くございません。

 

千聖「飛鳥くん?」

飛鳥「いや、あなたアイドルでしょう…」

千聖「今時こんな言い方すると怒られるかもしれないけど、あなた男の子でしょう? 私がやりますって言うものでしょう?」

飛鳥「千聖さん。そういう時に限って相手が決まったり、やらせて貰えないのが鉄則なんですよ」

 

 そう、漫画のお約束でやる気のない主人公は無理やり戦わされるが、やる気のある主人公は中々戦わせてもらえないのだ。早い話、主人公の思い通りになったら面白くないのである。

 

千聖「じゃあ面白くないじゃないのよこのお話!」

飛鳥「面白くないかもしれませんが、一応「主人公も人間」というテーマでやらせていただいておりま…」

千聖「そんな言い訳が通用すると思って…」

スタッフ「白鷺。わがまま言わない! 大人げないわよ!」

千聖「うっ…」

 

 スタッフさんに怒られて千聖さんは大人しくしたが、耳まで真っ赤にしていた。

 

スタッフ「…まだカレシとこういう事した事もないのに/////」

 

 本当にごめんなさい。ありがとうございました。

 

*********************

 

 そんなこんなで事務所に戻ってきたが…。

 

日菜「あー! おかえり千聖ちゃん! 飛鳥くん!」

 

 そう言って日菜さんは私に抱き着いてきた。この人たちアイドルですよね?

 

飛鳥「只今戻りました…っていうか、あなたアイドルでしょう」

麻弥「例のドラマの件、丸く収まったそうですね!」

千聖「え、ええ…。一応ね…」

 

 千聖さんが複雑そうに返事をする。多分これどこかで仕返しされるパターンかな? でもそんな事したら…。

 

『仕返しされたい~!!!』

『ていうか一丈字てめー。何パスパレの事務所に行ってんだよ!』

『ま、まさかキス…いや、キッスしたのか!?』

『オレも千聖ちゃんとキッス…いや、ベロチュー…』

 

 …ああ、なんか星が見たくなっちゃったなぁ。

 

日菜「飛鳥くん天体観測に興味あるの!?」

飛鳥「ちゃいますよ。ただもう空を見上げて、ぼーっとしたいだけですわ」

 

 日菜さんが何故か私の考えていたことが理解できていたようですが、もう突っ込む体力もございません。

 

千聖「全く…。あのスタッフさんとキスシーンをやる事になってしまって、うんざりよ。ここは誰かさんが自分がやりますって言ってくれたら良かったのに」

 

 そう言って千聖さんが私の方を見てきましたが…。

 

麻弥「いや、それは千聖さんが悪いですよ」

日菜「そーだよ。飛鳥くん素人だし、普通に抜け駆けじゃん」

彩「私にはあんなに厳しいくせに…」

イヴ「そーです! ブシドーじゃないですよ! チサトさん!」

 

 とまあ、日菜さん達に怒られて、流石の千聖さんも黙ったそうです。

 

*******************

 

 そして迎えたドラマ放送日当日。女性スタッフさんの演技が思ったほか良かったのか、スタッフさんがインタビューされてました。

 

飛鳥「危ないところだったぜ…」

 

 私がカフェテリアでそのインタビュー映像を見ていると、千聖さんがやってきた。

 

千聖「ドラマに出てみたいとか思わなかったの?」

飛鳥「千聖さん。私の本業をお忘れですか?」

千聖「決まってるわ。能力者だものね」

 

 千聖さんはわざと聞こえるように若干大きな声で言い放った。当然周りの生徒にも聞こえているので…。

 

飛鳥「その通りですよ」

 

 その時、男子生徒たちがやってきた。

 

「能力者ってどういう事だ!?」

「一丈字! やっぱり千聖ちゃんを操っていたのか!!」

「ゆ、ゆるせーん!!」

 

 そう言って男子生徒たちは私に突撃してきて、千聖さんから遠ざけた。

 

千聖「ちょ、ちょっと!!」

 

 その時だった。

 

「能力者…?」

「え、白鷺さん。どうしちゃったの…?」

「やっぱり疲れてるんじゃ…」

「最近忙しかったものね…」

 

 能力者なんてのは漫画の中だけでしか存在しない為、それを堂々と言い放ったことで、千聖さんは『痛い子』になってしまいました。

 

千聖「……!!」ゴゴゴゴゴゴゴ

 

 皆さん。生きてたらまたお会いしましょう。さようなら。男子生徒たちの件に関しては、自力で何とかします。

 

おしまい

 



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第404話「飛鳥と何かがあった演劇部とその他諸々」

 

 

 今回の設定

 

・ 飛鳥 ← バンドガールズ

 

********************

 

 一丈字飛鳥です。さて、今回のお話は瀬田先輩、大和先輩が所属する演劇部のお話です。

 

バンドリ学園にも演劇部が存在していて、その中でも瀬田先輩は『不動のセンター』と呼ばれています。定期的に劇とかも行われるのですが、大体瀬田先輩が主役です。まあ、皆さんも分かりますように瀬田先輩は女性のファンが多く、その中にはPoppin‘Partyの牛込さんや、Afterglowの上原さんもファンです。

 

 そんな演劇部ですが、部員は男子と女子同じくらいいます。千聖さんから聞いた話によると、瀬田先輩はともかくとして、大和先輩目当てで入部希望してる人たちが結構いたそうですが、そこは演劇部の上級生の方々がしっかりガードしてるそうです。まあ、なんか仕事は一応できるみたいだけど、やっぱり下心がありすぎるという事で、入部には至らなかったそうですね。

 

 さて、私の語りはここまでにして、お話に参りましょう。

 

**************

 

 ある日のバンドリ学園。

 

薫「一丈字くん。劇をやってみないか?」

飛鳥「あ、遠慮しておきます」

 

***************

 

 さて、私は今カフェテリアにいるのですが、瀬田先輩から劇をやってみないかというお誘いを受けました。はい、皆さんもお分かりの通り、瀬田先輩は『ハロー、ハッピーワールド!』のギターをしていて、当然ファンも多いんですね。男子からも女子からも支持されている瀬田先輩。そんな人に声をかけられてみましょう。こうなります。

 

*****************

 

「イィイイイイイイイイイイイイン!!?」

「か、薫先輩が一丈字をスカウトぉ!!?」

「な、何かの間違いだ!!」

「薫様!!?」

 

*****************

 

 いつもは男子生徒だけなのですが、今回は女子生徒もいますね。あれ? よく見たら牛込さんと上原さんもいる…。はっはーん…。どうやらこれは市ケ谷さんと奥沢さんの出番ですな?

 

*******************

 

有咲「あ、あー! すみません瀬田先輩! こいつちょっとアタシ達と用事があるんですよ~!!」

美咲「すみませーん!」

 

 そう言って市ケ谷さんと奥沢さんが私を退場させてくれた。

 

りみ「あ、有咲ちゃん…?」

ひまり「い、いったい何の用事なの!?」

薫「フフ…」

 

 あー。なんかこれ嫌な予感がするぞぉ。でもまあいいや。

 

******************

 

飛鳥「いやー。助かりました」

 

 場所は変わって、私は市ケ谷さんと奥沢さんの3人だけになりました。市ケ谷さんと奥沢さんは私を運んで息を切らしています。

 

有咲「こ、これで貸しは一つ作ったからな…!」

美咲「そうだね…」

飛鳥「はい。私が出来る範囲でしたら、お答えさせて頂きますよ」

 

 私がそう言うと、奥沢さんと市ケ谷さんが目を光らせた。この二人こういうキャラだったかな?

 

有咲「本当にいいんだな?」

飛鳥「ええ。私が出来る範囲ですけどね」

美咲「それだったらー…」

 

有咲・美咲「今度の休み、私たちとデートしろ(して)!」

飛鳥「お出かけですね?」

 

 デートとは恋人同士がするものです。

 

有咲「…この鈍感///」

 

 すみませんね鈍感で。ですが、立場上あまり深く入れないのですよ。

 

美咲「ま、まあそういう事にしといてあげる」

有咲「アタシ達を労え!」

 

 まあ、そんな事を言っていた時だった。

 

 

「フフ。抜け駆けなんて中々儚い事をしてくれるじゃないか」

 

 

 何という事でしょう。瀬田先輩、牛込さん、上原さん、そして演劇部つながりなのか大和先輩も現れた。

 

有咲「ゲッ…! りみとひまりちゃんに…麻弥さんまで!」

薫「子猫ちゃん達の気持ちは分かるが、私も譲れないのでね。彼を引き渡して貰えないだろうか?」

美咲「いや、一丈字くん断りましたよね?」

 

 そう言って私をめぐっての言い争いになった。一番恐れていたことが現実に。超能力を遣えば一発なんだけど、あまりこういうやり方も良くない気がする。

 

りみ「有咲ちゃん。薫さんのお願いなんだよ…?」

ひまり「聞いてもらえないかなー…」

大和「ていうかそもそも、演劇部の話だった筈ですよ?」

 

 そうですね。もとはと言えば私が市ケ谷さんと奥沢さんの名前を出したことで、こうなってますね。

 

有咲「いや、今回は正しい」

美咲「あやうく演劇部に入れられるところだったよ? 一丈字くん」

 

 ああ、それでしたらありがとうございますお二人さん。本当に助かりました。

 

有咲「そ、そんなに褒めんなよ/////」

美咲「そ、そうだよ。アタシ達…ツッコミ仲間じゃん////」

 

 それは初めて聞きましたが…ああ、なんか瀬田先輩たちが真っ黒な感情に、ここは可愛くやきもちやいてくれたらいいのになーって思うけど、やっぱそういう訳には行きませんよね。怒るのすっごい分かります。

 

ひまり「もう! 有咲ちゃんも美咲ちゃんもずるいよ! 私だって一丈字くんに構ってほしいのにぃ!」

りみ「え、えっと…/////」

 

 あれー? なんか聞こえてたんですかね?

 

麻弥「そ、そうですよ! 劇をやってほしいのだって、もっと一丈字さんと仲良く…/////」

 

 大和先輩。あなたはアイドルですよ。もうちょっとプロ意識持ちましょう。

 

薫「ああ…なんて罪づくりなんだ。この子犬くんは…」

 

 かおちゃんって呼んだらどうなるんだろう。

 

薫「…怒るよ?///」

 

 まあ、かおちゃんって呼んでいいのは白鷺先輩だし、呼んでも何ってなるだけだから、心の中だけにしとこう。

 

薫「心の中もダメ!/////」

美咲(なんだろう。薫さんがいつもより可愛い…)

 

 素の性格に戻り始めている瀬田先輩に奥沢さんがときめき始めていた。本当に罪づくりなのはあなたの方ですね。瀬田先輩♪

 

薫「~~~~~~~~っ!!/////」

 

 かおちゃんって言ってないのに、顔を真っ赤にしている。

 

ひまり「ちょ、ちょっと一丈字くん! やめてあげてよ!!」

飛鳥「!」

 

 上原さん。なんで鼻血出してるの?

 

ひまり「こういう時の薫先輩、滅茶苦茶破壊力凄くて鼻血が止まらないんだからぁ!!///////」

りみ「萌えぇぇぇ…//////」

 

 それに至っては同感です。あ、また瀬田先輩が顔を真っ赤にして両手で顔を覆い、何とも言えない状況になっていた。

 

麻弥「あのー…一丈字さん」

飛鳥「何でしょう」

麻弥「薫さんをこんな風にした責任を取っていただきたいので、演劇部の方に…」

飛鳥「大丈夫ですよ。彼女はきっと乗り越えます。それでは!」

 

 そう言って私は逃げた。え? 男としてどうなんだって? もう人から嫌われまくってますし、今更ですよ。

 

 

おしまい

 



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第431話「飛鳥と何かがあったAfterglowと勉強会」

 

 

 私の名前は一丈字飛鳥。超能力が使えること以外はごく普通の男子高校生です。え? 超能力が使える時点でごく普通じゃない? いや、めっちゃイケてる高校生とか自分で言うの嫌なんですよ。なので、ごく普通という事にしておいてください。

 

「飛鳥くーん」

 

 ここで私の語りは終わります。

 

***************

 

「皆! 大丈夫だった!?」

 

 飛鳥達は今林間学校に来ていた。だが、違うクラスの女子5人組、通称『Afterglow』が遭難してしまい、皆が捜索していたが、飛鳥の活躍によって無事に合流する事が出来た。

 

 そして飛鳥は何も言わず、一般生徒に紛れて保護されたAfterglowを見つめ、満足そうにその場を去った。

 

*****

 

 そして現在…。

 

モカ「飛鳥くーん」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は中庭のベンチで空を見ていたが、後ろからモカが話しかけてきた。

 

飛鳥「…ああ。青葉さん」

モカ「わざとやってる~? あたしの事は『モカ』って呼んでって言ってるよね~?」

飛鳥「君らのファンがうるさいからそういう訳には行かんのよ」

 

 飛鳥とモカがそう話をしていると、

 

「モカ!」

 

 蘭、ひまり、巴、つぐみの4人がやってきた。彼女達とモカの5人こそAfterglowで今巷でも有名なガールズバンドの一組である。

 

モカ「あ、みんな~」

蘭「また一人で抜け駆けして…」

巴「そうだぞ!」

蘭「わ、私だって…/////」

 

 蘭がモジモジして視線をそらした。

 

モカ「もー。蘭は奥手なんだよー」

ひまり「それはそうと飛鳥くん。モカに何かされてない?」

モカ「え~。逆だし、ひーちゃんの方がしてるじゃ~ん」

 

 とまあ、Afterglowが一人の男を取り合っているという事態になり、当事者である飛鳥は本当に困り果てていた。

 

 だが、飛鳥は彼女たちを助けたのは林間学校だけではない。彼女たちはバンドをしていて有名になり、ファンがついたのだが、その中には悪質なファンもいて、一人で下校していると数人がかりで絡んできたり、撃退してもご褒美ととらえて更に悪化したり、色々頭がおかしいのだ。これを『ヤラカシ』といい、そのヤラカシから飛鳥は毎回助けていたのだ。

 

 飛鳥は事を大きくしないように最善を尽くしたが、あまりにも事案が多すぎて、遂に彼女たちにバレてしまった。

 

 まあ、これだけなら恩に感じるだけなのだが、バレるまでの間、飛鳥はいろんな分野でも活躍していて、彼女たちはその姿も見ており、人として尊敬できるという事から…こうなりました。

 

******************

 

 話は戻ります。

 

モカ「あ、話は戻るけど飛鳥くん」

飛鳥「…なに?」

モカ「今日時間空いてる?」

飛鳥「……」

 

 モカの言葉に飛鳥は言葉を濁すと、

 

蘭「モカ?」

ひまり「私の話聞いてた!?」

巴「それだったら全員だからな!?」

つぐみ「ち、ちなみに何するの…?」

モカ「勉強会。今度テストでしょ?」

 

 モカの言葉に巴とつぐみが視線をそらしたが、

 

モカ「トモちんとひーちゃんは今日バイトじゃない?」

ひまり「あー!! 言われてみればそうじゃん!!」

巴「モ、モカ! 日程改めろ!」

モカ「そうはいっても5人で集まれるのって…土日くらいしかなくない?」

蘭「じゃあ土日で良いじゃん」

モカ「蘭が参加するなら、蘭の家で勉強会だね~」

蘭「な、なんで!?」

 

 蘭の言葉に飛鳥が困ったように視線をそらした。

 

蘭「な、なに…」

飛鳥「いえ、蘭さんと勉強会をするときは私の家に来なさいって前にお父様が…」

蘭「はぁ!!? そんな話いつしたの!!?/////」

 

 飛鳥の言葉に蘭が顔を真っ赤にして突っ込むと、他の4人がむすっとしていた。

 

モカ「蘭~」

ひまり「抜け駆け~」

蘭「いや、アタシ何もしてないし!」

巴「それはそうと今日じゃなくて明日にしろ!」

つぐみ「明日は私が店番あるから…」

モカ「じゃあ明日はつぐの家で勉強会しよっか~」

つぐみ「いや、モカちゃん…。それ私、見てるだけになっちゃうから…」

 

 とまあ、いつ勉強会をするかで言い争っているのを見て、飛鳥は何とも言えなさそうにしていた。

 

 そんな時だった。

 

「おい、一丈字!!」

飛鳥「?」

 

 誰かに声をかけられたので、飛鳥がその方向を振り向くと、如何にも何かしでかしそうな男子生徒とその取り巻きが現れた。

 

蘭「あ、あんた達は…」

飛鳥「お知合いですか?」

蘭「同じクラス…って、あたしにも敬語になってる」

巴「飛鳥に何か用か?」

「ああそうだ。大人しくこっちに引き渡せ」

モカ「そんな事言って、女の子達に囲まれてるのが気に入らないから、あたし達のいない所でいちゃもんつけようとしてるんじゃないの~?」

 

 モカにそう言われて男子生徒たちは歯ぎしりした。

 

モカ「ほ~らね~」

蘭「少なくともあんた達はゴメンだから」

「な、なんでだよ! どうしてそんな陰キャ野郎なんかに…」

モカ「逆に聞くけど、君自分の事陽キャだと思ってるの?」

 

 モカの言葉に飛鳥はぎょっとしたし、男子生徒は石化した。

 

「そ、そんなの…」

モカ「陽キャって人を見下したりしないと思うんだけどなぁ~」

巴「それは同感だな」

ひまり「大体、君女子の間でもあまり評判良くないよ? 女子でも扱いの差が違うって言ってたし」

蘭「どうしようもないね」

つぐみ「……」

 

 Afterglowにボロカス言われて、男子生徒は顔を真っ赤にした。

 

「な、何だぁ! 少しバンドで成功してるからって調子に乗りやがって! 行くぞ!」

 

 そう言って男子生徒は取り巻き達を連れて去っていったが、

 

モカ「二度と来ないでね~」

 

 と、モカは追い打ちをかけたが、飛鳥は果たしてどうなるのか分からずにいたが、とりあえず仕掛けてきたら、ぶちのめそうと思っていた。

 

モカ「全く。もう少し大人になって欲しいよね~」

蘭「…それは同感」

 

 そしてモカの発言を聞いて『やっぱ女子って怖ェな』と思う飛鳥であった。

 

 

おしまい

 



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第432話「飛鳥と何かがあったRoseliaと勉強会」

 

 それはある日の学園の事。飛鳥がカフェテリアで食事をしていると紗夜がやってきた。

 

「一丈字くん。少しいいかしら」

「氷川先輩」

 

 紗夜が飛鳥に話しかけてきたが、飛鳥は特に彼女に対して何かした訳でもないので、声をかけた事を不思議に思っていた。

 

飛鳥「どうかされましたか?」

紗夜「試験勉強はきちんとしていますか?」

 

 紗夜の言葉に飛鳥はまたしても不思議に思った。確かにそれなりに喋るようにはなったが、学年も違うのでそこまで距離が近いという訳ではない。

 

飛鳥「ええ…していますよ」

 

 飛鳥が苦笑いして答えると、紗夜は一息ついた。

 

紗夜「そう…」

 

 一応納得はしてくれた様子だったが、これで話が終わる様子がなかったので、飛鳥は不思議に思っていた。

 

飛鳥「あの、何かあったんですか…?」

紗夜「勉強しましょう」

飛鳥「え?」

紗夜「ですから…試験勉強、一緒にやりましょう」

 

 紗夜の言葉に飛鳥は面食らったし、周りの人間も面食らっていた。

 

飛鳥「あの、そもそも学年が違うので…」

紗夜「一緒の空間で勉強位は出来るでしょう?」

飛鳥「あ、そ、そういう事ですか…」

 

 飛鳥はようやく紗夜の言いたい事は分かったが、何故自分なんだろうと思っていた。

 

飛鳥「あの…何かあったんですか?」

紗夜「特にありませんが、あなたがちゃんと勉強していないという話を聞きましてね」

飛鳥(あー…)

 

 飛鳥は一応学年でトップを狙えるほどの学力はあるのだが、普段から人に嫌われているので、トップの成績を出せば余計に嫌われる可能性があったのだ。

 

 とはいえ、飛鳥もいざとなればもう返り討ちにするつもりである為、手を抜くなんて事はしないが…。

 

飛鳥(ていうか勉強できてなきゃそういう事も出来んしなぁ…)

紗夜「そういう事なので、あなたがちゃんと勉強するように見ます」

飛鳥(まあ、ちゃんとしたら納得するだろうけど…自分の勉強は大丈夫かな?)

 

 飛鳥がそう考えていると、

 

「くどいわよ紗夜」

「!?」

 

 友希那の声がしたので飛鳥と紗夜が友希那のリサと燐子を見たが、

 

「あこもいるよ!!」

 

 中等部のあこも何故かいて、燐子の後ろからひょこっと現れた。

 

紗夜「み、皆さんどうしてここに…」

友希那「あなたにしては随分強引ね。飛鳥と一緒にいる時間を作る為にそこまでするかしら?」

紗夜「そ、そんな事は…//////」

 

 友希那の言葉に紗夜が頬を染めて横を向くと、飛鳥は困った顔をしていた。

 

あこ「それだったらあこも飛鳥くんに勉強教えて欲しいよ!」

 

 あこの言葉に飛鳥はぎょっとした。

 

リサ「ていうか紗夜があこの勉強見ればいいんじゃないの?」

紗夜「そうではなくて、一丈字くんがテストで手を抜いてるという疑惑があるので、きちんと勉強しているか…」

友希那「それはあなた一人じゃなくても出来る事じゃない?」

 

 紗夜が必死に弁明するが、友希那の一言に沈んだ。

 

紗夜「いや、宇田川さんの勉強に関しては白金さんでも…」

燐子「あの、私も一丈字くんと勉強会したいです…」

 

 燐子の発言に皆が驚いたが、飛鳥が一番驚いていた。

 

友希那「観念しなさい。抜け駆けなんてさせないわよ」

飛鳥(いや、それ本人の前で言う事じゃないだろ…)

 

 こうしてRoseliaメンバーと勉強会をする流れになったが…。

 

「おい、待てよ!」

「!」

 

 男子生徒たちがやってくると、飛鳥は困惑していた。

 

紗夜「誰ですか?」

「いや、同じクラスメイトだよ!!」

「せめて顔と名前は憶えて!!」

友希那「で、何の用かしら?」

「どうしてその陰キャがRoseliaと勉強会するんだよ!」

「それならオレ達も混ぜろ!」

「いいよなぁ? 一丈字」

 

 と、男子生徒たちが圧力をかけてきたが、飛鳥は呆れていたし、Roseliaはゴミを見る目で男子生徒達を見ていた。

 

友希那「嫌よ。飛鳥に嫌がらせするのも私たちにセクハラするのも目に見えてるし」

リサ「アタシもちょっと嫌かな…」

あこ「そうだよ! 飛鳥くんにイジワルするの分かってるもん!」

燐子「…あの、あまり男の人はちょっと」

紗夜「そもそも、それが仲間に入れて貰う態度ですか!」

 

 と、きっぱり断ったが、

 

「分かった! よーし分かった!」

 

 突然そう言い始めた。

 

「それじゃあせめて一人までにしてくれ!!」

「流石に全員は嫌だ!!」

 

 とまあ、男子生徒たちがごね始めたが、Roseliaメンバーは誰も言い返さなかった。

 

飛鳥「あの、皆さん…?」

友希那「それは一理あるわね」

「え?」

友希那「飛鳥」

 

 飛鳥とRoseliaが向き合った。

 

友希那「私達の中から一人選んで頂戴」

飛鳥「選ばなかった方はキッパリ諦めるんですね?」

 

 友希那の言葉に飛鳥はすかさず言い返して、Roseliaがぎょっとした。

 

紗夜「そ、そうね…」

飛鳥「それから、ないと思いますが念のため言いますね。選んだからってそのまま付き合うなんてのも無しです」

リサ「け、結構しっかりしてるんだね…」

「おい! お前まさか本気で友希那ちゃん達と釣り合うと思ってんのかよ!」

飛鳥「いいえ?」

 

 男子生徒の言葉に飛鳥が返事をすると、Roseliaはむっとした。

 

友希那「どういう意味かしら」

飛鳥「私はそこまで自惚れる事は出来ませんし、湊先輩。逆に聞きますけど、釣り合うって言ったらあなたはどうしますか?」

友希那「そんなの決まってるわ。付き合って結婚してあなたの子供を産むわ!!」

飛鳥「いや、FWFに出て頂点になりなさいよ」

 

 友希那の態度に飛鳥がツッコミを入れた。

 

「ちなみに誰を選ぶんだ!」

飛鳥「紗夜先輩」

「あっさり!!」

「ていうか紗夜先輩!?」

 

 あっさり紗夜を選んだので他の4人がショックを受けていたが、

 

リサ「あの、飛鳥くん」

飛鳥「何でしょう」

リサ「紗夜を選んだのって、最初に声をかけたからだよね?」

飛鳥「そうですね」

「そうですねって!」

「何でこんな奴がモテんの!!?」

「いや、主人公補正だから…」

「いや、主人公じゃなくてもこいつ別のシリーズで…」

 

****

 

「まあ、そういう訳で選ばれなかった4人は♡」

「僕たちと勉強会しましょうね♡」

「こっちも丁度4人だし♡」

「勉強教えてあげるよ~…特に保健体育♡」

 

リサ「ちょ、そういう話じゃないでしょ!」

あこ「そうだよ!」

燐子「た、助けて…」

友希那「そうよ飛鳥!」

「大丈夫大丈夫。ちょーっと一列になって四つん這いになって貰う事はあると思うけど…♡」

 

 すると飛鳥はスッとスマホを取り出して、弦巻家の黒服たちに身柄を拘束させた。

 

飛鳥「あー…今日も疲れた」

友希那「それじゃ帰りにどこかで休憩しましょう」

飛鳥「どこ行くんです?」

友希那「……」

 

 

 

おしまい

 



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第441話「飛鳥と何かがあったバンドガールズとフランスパン」

 

 

 それはある日のバンドリ学園。カフェテリアで巴と沙綾が楽しそうに喋っていて、飛鳥とこころが通りかかった。

 

こころ「あら! 沙綾に巴じゃない! 楽しそうね!」

沙綾「あ、こころ」

こころ「何の話してたの!?」

沙綾「いや、特に楽しい話ではないけど…」

巴「いやー。ラーメンにパンが合うかなって話をしてたんだけど…」

沙綾「お米の方が合うって話をしていたの」

 

 巴と沙綾の会話に飛鳥も乗った。

 

飛鳥「そういや昔テレビで、フランスパンに一番合うスープは何かってやってましたね」

沙綾「まあ、スープだけなら合うんじゃないかな」

巴「で、一番合うのは何だったんだ?」

飛鳥「日清カップヌードル・しおです」

巴「塩!?」

沙綾「どうして?」

飛鳥「審査をしてたのがフランス人のトップシェフの方々だったんですけど、塩味がフランスのスープに一番味が近かったんですね。醤油と味噌は味が複雑すぎてパンの良さを消してしまうそうで…」

こころ「とっても面白そうね! 是非やってみたいわ!」

 

 と、こころが何か閃いてしまったので飛鳥は嫌な予感がした。

 

こころ「そうだわ! 今日早速フランスパンに色んなスープで試してみましょう! 飛鳥、選んでほしいから今夜うちに来て頂戴!」

飛鳥「え」

巴・沙綾「えっ!!?」

 

 このまま行けば飛鳥はこころと一つ屋根の下。そんな事は許せなかった。

 

巴「あ、それだったらアタシも行きたい!」

沙綾「私もパン屋の娘だから見過ごせないなー…なんて」

こころ「いいわよ!」

 

 とまあ、4人はこころの家にお泊りする事となった。はい、飛鳥の死亡フラグが立ちましたね。

 

飛鳥(せやな)

 

****

 

こころ「飛鳥に早速10種類のカップラーメンを用意して貰ったわ!」

 

 と、大食堂には10種類のラーメンスープが用意されていた。

 

飛鳥「そういや弦巻さんってカップラーメン食べた事あります?」

こころ「言われてみればないわね…」

沙綾「あったら逆にビックリね…。はい、フランスパンうちから持ってきたよ」

こころ「助かるわ! それじゃ早速試してみましょう!」

 

 こうしてこころ達は10種類試してみることにした。

 

1品目:一平ちゃん しょうゆ味

 

巴「一平ちゃんか…。麺があればもっと美味しいんだけどなぁ…」

沙綾「今回はフランスパンだから。食べてみましょうか」

 

 そう言って4人が食べた。

 

飛鳥「まあまあいい感じですね」

沙綾「うん。ちょっと味が濃いけどいいんじゃない?」

巴「フランスパンにラーメンスープか…。良い発見をしたぜ」

 

2品目:カップヌードル しお

 

沙綾「あ! 確かにさっぱりしてて美味しい!」

飛鳥「野菜も入ってますので体にも良いですね」

こころ「凄い発見だわ!」

巴「あっさりしてるな」

 

3品目:麺づくり 合わせみそ

 

巴「うーん…」

こころ「なんか変な感じがするわね」

沙綾「やっぱり味噌とパンは合わないのかも…」

飛鳥「いや、北海道や群馬では普通の味噌パンが売ってるんですが、やっぱりフランスパンと相性が…」

 

4品目:スーパーカップ みそ

 

巴「味噌はやっぱり米だよな!」

こころ「ラーメンのスープって奥が深いのね…」

沙綾「まあ、合う合わないは食材にもあるって事だよ」

 

5品目:スーパーカップ しょうゆ

 

飛鳥「ちょっと濃いめですけどアリですね」

沙綾「まあ、さっきの味噌よりかはいいかも…」

こころ「でも、さっきの塩の方が美味しかったわね」

巴「そうか? でもまあ、言われてみればそうだな…」

 

6品目:麺職人 しょうゆ

 

飛鳥「これも似たような感じですね」

巴「醤油って言っても色んなタイプがあるからなー」

こころ「面白いわね。ラーメンのスープ」

沙綾「面白いって言えることが凄いと思うなぁ…」

 

 こころの前向きな姿勢に対して沙綾は本当に凄いと思っていた。

 

7品目:麺づくり 鶏ガラ醤油

 

飛鳥「…うん。味がどんどん複雑化してますね」

こころ「しおの方がシンプルね」

巴「これが米だったらなー…」

沙綾「フランスパンだから」

 

8品目:カップヌードル カレー

 

巴「カレーは中々期待できるんじゃないか!」

飛鳥「ここに来てカレーが来ましたね」

 

 さっきから醤油が続いていて、新しい味が来たのでテンションが高めの巴と飛鳥。

 

飛鳥「美味しい」

巴「やっぱカレーは安定してるな」

沙綾「ホントだ」

こころ「美味しいわね!」

 

9品目:カップヌードル シーフード

 

飛鳥「…これも中々ですね」

巴「やっぱり醤油は味が濃いんだなぁ」

沙綾「そもそもフランスパンも結構塩気があるから…」

こころ「勉強になるわね」

 

10品目:カップヌードル

 

飛鳥「あ、これはもう塩かカレーですね」

巴「ホントだ。さっきのカレー美味かったもんな」

沙綾「…食べる順番とかも関係してたり?」

こころ「でもカレーが美味しかったわ!」

 

 そんなこんなで10種類食べ終わった。

 

巴「カレーだな」

沙綾「塩も良かったよ…?」

 

 カレーか塩で別れていた。

 

飛鳥「あっさりなら塩、濃いめが好きならカレーって所ですかね…」

巴「飛鳥はどっちだ?」

飛鳥「そうですね。カレーが美味しかったですね」

こころ「あたしもカレー!」

 

 こうして飛鳥達が選んだ中では日清カップヌードル カレーで決定した!!

 

 

***

 

飛鳥「…というのが報告です」

 

 後日、バンドリ学園にて飛鳥、巴、こころ、沙綾は正座させられていた。目の前には千聖をはじめとする関係者たちがいた。

 

千聖「そう。で、この後何をしたのか教えて貰ってもいいかしら?」

こころ「枕投げをしたわ!」

巴「スープとフランスパンを食べ過ぎたし、食後の運動という事で…」

千聖「随分楽しそうだったのね? 一丈字くん?」

飛鳥「……」

 

 千聖の言葉に飛鳥は視線をそらした。

 

モカ「モカちゃんも連れてって欲しかったなー」

飛鳥「…中々賭けの大きい実験だったもんで」

千聖「勿論第2回はあるのよね?」

こころ「他にも面白いのがあるのかしら?」

飛鳥「冷や飯に一番似合うカップラーメンを決める奴がありましたが…マジっすか」

千聖「勿論よ?」

 

 と、千聖は有無を言わせない笑みを浮かべると飛鳥はまた一息ついたが、沙綾と巴は震えていた。

 

こころ「それじゃあ今日やりましょう!」

千聖「あの、こころちゃん? 私達今日仕事があって…」

こころ「それじゃ報告してあげるわね!」

千聖「あの、こころちゃん。人の話を…」

 

 千聖がこころに説明しようとしたが、美咲が肩を抱いて首を横に振った。

 

 

 

おしまい

 



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IF編
第27話「もしもAfterglowを助けたのがバレてたら」


第25話「一丈字飛鳥という男」を参照。


 

 

 サイコパスガードマンからAfterglowを守った飛鳥。しかし、彼女たちには何も言わなかった…。

 

飛鳥「いや、恩売るのダサいし」

こころ「謙虚なのはいい事なのよね」

 

 しかし、今回はバレてしまった時のお話である…。

 

飛鳥「……」

こころ「そりゃそうなるわよ」

 

 

 

 ある日のバンドリ学園。

 

モカ「飛鳥く~ん。モカちゃんにはちゃんと分かってたよ~。あのガードマンからモカちゃん達を助けてくれたのは飛鳥くんだって~」

飛鳥「……」

 

 飛鳥はモカから呼び出しを食らっていたが、呼び出された先にはAfterglowが待っていた。そして罰が悪そうに俯くこころの姿もあった。

 

飛鳥「助けたのは…」

巴「こころには悪いけど、全部喋って貰ったよ」

モカ「まあ、こころちゃん嘘つくの下手だから~」

こころ「ご、ごめんなさい飛鳥…」

飛鳥「……」

 飛鳥が目を閉じた。

 

飛鳥「バレちゃあ仕方ありませんね。あなた方の親御さんが気を遣うといけないから、黙っていたのですが…」

蘭「いいよ。そんな気を遣わなくても。元々あたし達が悪いんだし」

ひまり「違うの!! 悪いのは参考書を忘れた私で…」

巴「こうなったらもう全員の責任だよ。ひまり」

ひまり「うぅ…」

 ひまりが俯いた。

 

飛鳥「まあ、親御さんに心配をかけさせたことについては反省してください。それだけです」

 飛鳥がそう言うと、モカがじーっと飛鳥を見ていたが、飛鳥は察した。

飛鳥「…どうされました?」

モカ「いーや? あ、それでね~。今度お礼をしようかな~って」

飛鳥「お礼はいいので、反省してください」

 飛鳥が冷徹に言い放った。

 

モカ「そんな事言っても、好感度下がらないよ~」

飛鳥「…今井先輩にも同じこと言われましたよ」

 モカの言葉に飛鳥は困惑した。

 

巴「一丈字。お前の気持ちは分かるが、それじゃこっちの気が済まないんだ。お前だってそうだろう?」

飛鳥「そりゃそうですけど…」

モカ「えっちなお願い事でもいいよ?」

つぐみ「ええええ!!?/////」

蘭「モ、モカァ!!!//////」

 

 モカの爆弾発言につぐみと蘭が顔を真っ赤にした。

 

巴「その…何だ。応相談で…/////」

飛鳥「いや、人助けしたらそういう事をさせてくれると思われるので結構です」

モカ「こう見えて皆うぶだから~」

蘭「殴るよ?」

 

つぐみ「あ、えっと…本当に遠慮しなくて良いよ?」

飛鳥「それを言うんだったら、弦巻さんにお礼を言ってくださいよ」

こころ「え、あたし?」

飛鳥「元々は弦巻さんからの通報で動いた訳ですから」

こころ「そんな事ないわ! 最終的に助けたのは飛鳥だから、飛鳥もお礼を言われてもいいのよ!?」

モカ「じゃあこうしようー。今日空いてる?」

飛鳥「…外出禁止令出されてませんでした?」

モカ「明日からだよー。で、ちょっと行きたい所があるんだけどー」

 

 と、放課後飛鳥達が向かったのは…。

 

 お化け屋敷だった。しかもとてつもなく怖い奴である。

 

モカ「蘭たちにはちょっと克服して貰わないとね~」

蘭「~~~~~~~~~!!!! ~~~~~~~~~~~~~~!!!!」

 蘭がモカを揺さぶった。

 

巴「何でよりによってお化け屋敷なんだ!!!」

ひまり「一丈字くん。水着姿で勘弁してもらえないかな…。あ、下着姿までだったら…」

飛鳥「落ち着いてください。青葉さん…」

モカ「じゃあ、飛鳥くんにぎゅーって抱き着いた人は免除ね~」

 ひまり、巴、蘭が飛鳥に抱き着いた。

 

飛鳥「あの、皆さん…」

蘭「お化け屋敷はもう無理!!」

巴「す、すまない! でもお化け屋敷だけは勘弁してくれ~!!」

ひまり「もうあんな思いするのいやぁ!!」

 

 つぐみは困っていた。

 

モカ「つぐはどうする~?」

つぐみ「ど、どうするって…/////」

 

 蘭、巴、ひまりに比べてまだ正常な判断ができたつぐみは抱き着くのを恥ずかしがっていた。普通はそうである。

 

モカ「このままだとつぐ一人で行って貰」

つぐみ「いやああああああ~~~~~~!!!」

 つぐみが飛鳥に抱き着いた。これで360度4人の少女に抱き着かれ、おっぱいが当たっていた。それを男性客たちがガン見していた(そのうち女性客と一緒に来ていた男性客は頭を叩かれていた)。

 

飛鳥「羽沢さん…」

つぐみ「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。一人で行きたくないです!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

 と、こうして4人は免除になった。

 

モカ「それじゃ飛鳥くん。一緒に行こう~」

飛鳥「え?」

モカ「いいからいいから。こういうの大丈夫でしょ?」

飛鳥「まあ、そうですね…」

こころ「あたしも行きたいわ!」

モカ「そうだね~。丁度いいや。じゃあいってきま~す」

 と、3人はお化け屋敷の中に入っていった。

 

巴「…怖いもの知らずだな。モカ」

蘭「無神経っていうか…」

ひまり「スタンガン当てられそうになったのに…」

つぐみ「本当に凄いよ…」

 だが、この後飛鳥に抱き着いた事で皆が顔を真っ赤にした。

 

モカ「役得だね~」

飛鳥「…これでよかったのだろうか」

 と、飛鳥は外にいる4人を感知して、何とも言えない顔をしていた。

 

モカ「…それはそうと、ありがとね。飛鳥くん」

飛鳥「……」

 モカが飛鳥にお礼を言った。

 

モカ「それにしても驚いたな。飛鳥くんが本当にエスパーだったなんて」

 

 モカがそう言うと、飛鳥は何も言わず、こころは俯いた。

 

飛鳥「もうそろそろバレると思ってましたよ。あと、白鷺先輩あたりも」

モカ「あ、そうそう。蘭のお父さんも飛鳥くんが怪しいんじゃないかって」

飛鳥「…そうですか」

 

 確かにそんな感じがするなぁ…と思う飛鳥だった。

 

こころ「ごめんなさい飛鳥。喋るつもりはなかったの!」

モカ「こころちゃん、嘘つくの下手だもんね~。でもそれが良い所だけど~」

飛鳥「……」

 飛鳥は困惑した。

 

モカ「大丈夫。蘭たちには内緒にしとくから」

飛鳥「!」

モカ「それがモカちゃんから飛鳥くんへ送るお礼だよっ」

飛鳥「青葉さん…」

 飛鳥がモカを見た。

 

モカ「あ、でもこころちゃんみたいにモカも名前で呼んでほしいな~。あと敬語もなしで」

飛鳥「条件付きですけどね」

モカ「それでもいいよ。今なら大丈夫だよね?」

飛鳥「ええ…」

モカ「それじゃあ改めて宜しくね。飛鳥くん」

 飛鳥が笑みを浮かべた。

 

飛鳥「ありがとう。こちらこそ宜しくな。モカさん」

モカ「あ、モカで。こころちゃんも呼び捨てでしょ?」

飛鳥「……」

 

 

 そして帰ってきた。

 

モカ「たっだいま~」

こころ「とっても面白かったわ!!」

 と、3人とも帰ってきた。

 

巴「本当にすげぇな…」

モカ「じゃあ次は4人のば」

蘭・巴・ひまり「絶対乗らないっ!!」

つぐみ「いじわる~!!!!」

 

 

 なんだかんだで、モカ達と仲良くなった飛鳥であった。

 

 

 

 

飛鳥「でも結果的にバレてないから…」

こころ「そうね」

「残念。もう気づいてま~す」

飛鳥・こころ「!!?」

 

 飛鳥とこころの後ろにはモカがいた。

 

モカ「じゃあ、これからはため口と名前呼びで宜しく~」

飛鳥「なかなかの強者だ…」

モカ「いや、それ飛鳥くんもだから」

 

 

おしまい

 



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第37話「もしも香澄たちが全員彼氏持ちだったら」

設定

飛鳥が超能力者だと知っているのはこころだけです。


 

 

 ここはバンドリ学園。この学校は5つのバンドが有名だったが、全員彼氏持ちだった。

 

「まあ、あの顔で彼氏いない方がおかしいよね…」

「畜生!! オレ狙ってたのに!!」

「ていうかパスパレは普通に問題じゃね…?」

「アイドルなんてそんなもんよ」

 

 そしてこの物語は彼氏持ちな彼女たちと、一丈字飛鳥の物語である。

 

****************

 

 いつも通り、こころの依頼通りマナーの悪いファンの排除を行っていた飛鳥。ちなみにこころの彼氏も飛鳥の事が能力者だとは知らないものの、「業者」だと思っている。

 

 飛鳥もまた香澄たちが彼氏持ちだという事を知っている為、特に会話する事もなく仕事に全うした。

 

飛鳥(ていうか彼氏がいるなら、オレがこっちに来る必要ない気がするんだよな…)

 

 依頼理由も彼とこころの共通の友人である林日向と材椿の話を聞いて、一時的にこっちに来て貰うというものだったが、さすがに彼氏がいるという事もあり、特に踏み入れる事も無かった。

 

 だが、彼氏がいてもなお、香澄たちは大人気だった。特に長く活動しているAfterglowや、演奏技術が高いRoselia、芸能人であるPastel*Palettesは特にそうである。Poppin’partyやハロー、ハッピーワールド!も我が道を進んでいて、それがお客さんに受け入れられた。

 

 だって美少女だからである。

 

飛鳥(下手すりゃこっちもストーカーって勘違いされそうだなぁ…)

 

 飛鳥は自分の立場と彼女たちの立場を考えて行動した。だが、色々あって彼女たちと話す機会が増えたが、当然彼氏が良い顔をする筈が無い為、飛鳥は避けていた。

 

香澄「飛鳥くん。何で避けるの?」

飛鳥「いや、彼氏さんがいるでしょうに…」

香澄「大丈夫だよ。彼氏くんだって飛鳥くんの演奏凄かったって!」

飛鳥「そりゃああなたの前ならそう言いますよ…」

 

 と、香澄たちと話す機会もあったが、当然彼氏たちは自分の彼女が他の男と話すなんて事はいい気持ちがしない。それは飛鳥自身も同じだった為、出来るだけ避けようとしたが、それでも彼女たちはグイグイ来る。

 

飛鳥(オレのせいで破局になったなんて言われても困るしなぁ…)

 

 飛鳥は本当に悩んでいた。

 

 そんなある日の事だった。

 

「あれ!? あれパスパレの丸山彩じゃね!?」

「しかも氷川日菜もいる!」

「千聖ちゃん!?」

「大和麻弥だ!」

「イヴちゃん!!」

「男とデートしてる!!!」

 

 何という事だろう。パスパレが全員彼氏と集団デートをしていて、飛鳥もそれを見かけていた。

 

飛鳥(芸能人…だよね?)

 

「彩ちゃんその男誰?」

「彼氏?」

「アイドルが彼氏持ちなんて…」

「沢山貢いだのに!!」

「許せねぇ!!」

 

 と、ファン達が激怒して、彩たちに襲い掛かろうとする。彼氏達は前に立って彩たちを助けようとした。

 

彩彼氏「彼女たちは悪くない!!」

日菜彼氏「そうだ!! 悪いのはオレ達だ!!」

千聖彼氏「オレ達が声をかけたんだ!!」

麻弥彼氏「今のうちににげて!!」

イヴ彼氏「そうそう!!」

 

 と、彼氏達は身を張って彩たちを逃がそうとした。彩たちは驚いていた。

 

「うるせえ!! アイドルと付き合っておいて何偉そうなこと言ってんだ!!」

 と、ファンの1人が彩の彼氏を殴った。

 

彩彼氏「彼氏くん!!」

 すると飛鳥は存在感を消して、ファンの男達を超能力で痛めつけた。

 

「ぐ、ぐわあぁああああああああああああ!!!」

「は、腹が…」

「ち…ちきしょう…」

「カ、カメラはばっちり抑えてる…。ただで済むと思うなよ!!!」

 

 と、ファン達は退散していった。

 

彩「大丈夫!!?」

彩彼氏「へ、平気さ…」

 飛鳥が目を閉じて笑みを浮かべると、その場を去っていった。

 

日菜「皆カッコよかったよ!」

千聖「ありがとう…」

 

 そしてその後も、飛鳥はヤラカシを討伐していったが、彼氏達は特に逃げ出す事もなく、香澄たちを守っていた。

 

 そして時間が過ぎて…。

 

飛鳥「ヤラカシの数は完全に減ったね」

こころ「本当にありがとう。あなたのお陰よ」

 

 こころの家で飛鳥とこころが話をしていた。

 

飛鳥「さて、予定通り、今月末に広島に帰る事にするよ」

こころ「寂しくなるわね」

飛鳥「ありがとう。でも、彼氏さんがいるから寂しくないでしょ」

こころ「も、もう/////」

 

 任務が終わり、飛鳥は今月末に広島に帰る事になった。こころは送別会を開こうと考えていたが、超能力者であることがバレる事、彼氏達がいい顔をしない事を納得するように説得して、こころとこころの彼氏の3人だけで送別会をする事になった。

 

こころ彼氏「本当にありがとう。一丈字さん」

飛鳥「いえ、こちらこそありがとうございました」

 

 飛鳥とこころの彼氏が握手すると、こころが微笑んだ。

 

 だが、転校の数日前、香澄たちに知られてしまった。

 

香澄「飛鳥くん!! 転校するって本当なの!!?」

飛鳥「ええ。親の仕事の都合で、地元に帰らないといけなくなったんですよ」

香澄「それだったらどうして言ってくれなかったの!?」

飛鳥「戸山さん達が優しいから、気を遣わせてしまうと思いまして」

 飛鳥が苦笑いした。

 

有咲「で、いつ転校するんだよ…」

飛鳥「今週の金曜日が最後ですね」

香澄「えっ…」

 香澄たちが驚いた。

 

飛鳥「もしかして彼氏さんとデートですか?」

香澄「そ、そうだけど…」

飛鳥「それならそっちを優先してください。彼氏でもない男と必要以上に喋るのは感心しませんよ」

モカ「……」

 モカは険しい表情をしたが、飛鳥は全く気にしなかった。例えモカに嫌われても、彼氏でもなければ、もういなくなる為、どうもしなかった。

 

香澄「でも!!」

飛鳥「戸山さん」

 飛鳥が香澄たちを見た。

 

飛鳥「…私に気を遣ってくれてありがとうございます。ですが、前を向いてください。もう二度と会えないわけではございません。生きてる限り、またどこかで会えます」

モカ「飛鳥くん」

飛鳥「何です?」

モカ「…それで、皆納得すると思ってるの?」

飛鳥「思いません」

 飛鳥がモカを見つめる。

 

飛鳥「私の事を一生許さなくても構いません。ですが、本当にバンドとして頂点を目指すのであれば、このまま前に進んでください」

モカ「……!」

飛鳥「それにあなた方には、支えてくれるパートナーがいる筈です」

 飛鳥の言葉に香澄たちが反応した。

 

飛鳥「まあ、要するにこれからも頑張ってくださいって事です」

 

 

 こうして、飛鳥は広島に帰っていった。香澄たちには本当に惜しまれつつ、帰っていった。

香澄たちの彼氏は全員把握していたわけではなかったが、飛鳥が知っている限り悪い人物ではなかった為、何も心配する事はなかった。

 

 

「…まあ、娘がお嫁にいく感じだったね」

「何それ」

 

 広島にある猪狩学園。そこで飛鳥は同級生の日向や椿と話していた。飛鳥の言葉に椿が突っ込んだ。

 

飛鳥「彼氏さん達もいい人たちだったから、心配いらないよ」

日向「そ、そうなんだ…」

飛鳥「にしても…」

 飛鳥が困惑して、バンドリ学園の広報を見ていた。香澄たちのバンドの事も書いてあったが、その中の特集で飛鳥の事が書かれていて、苦笑いした。

 

 

飛鳥(頑張れ。彼氏さん達)

 

 

 

おしまい

 




イメージエンディングテーマ

「バトンタッチ」

歌:JULEPS


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第49話「もしも一夫多妻制になったら ~ Poppin'party編 ~

 

 

 

 それは突然の事だった。

 

 

『本日より、一夫多妻制が可決されました』

 

 

 女性側からしてみたら「ふざけんな」の一言であるが、一夫多妻制が可決されてしまった。結婚相手が増えれば増える程国が保証してくれるというものであるが、男性の功績などによって結婚できる人数が決められているのだ。

 

 そしてこの男はというと…。

 

飛鳥「……」

 

 滝のような汗を流していた。紙に書かれていた内容は

 

『保留』

 

 とあった。

 

飛鳥(保留ってなに!!?)

 

 今回のお話は「一夫多妻制」をテーマにした物語である。

 

****************

 

 バンドリ学園

 

「聞いたか? 一夫多妻制の話。お前何人だった?」

「オレ? 1人だよ」

「オレも1人」

「ていうか高校生大体1人じゃねーか!! 経済力もねーのによ!!」

「いや、芸能人とかだと5~6人いるらしいぜ。オレらの年で…」

「畜生!! イケメン至上主義かよ!!!」

 

 と、男子生徒達が話をしているのを、飛鳥は静かに通り過ぎた。

 

飛鳥(今日は誰ともかかわるのをやめよう)

 

 だが、そうはいかないのが物語である。

 

香澄「飛鳥くん!! 飛鳥くんは何人と結婚できるの!?」

飛鳥「よくもまあデリケートな問題を!!」

 

 休憩時間。Poppin’partyが飛鳥の教室にやってきた。

 

有咲「どうせアレだろ。お前、5人くらいとか…////」

飛鳥「あー。それくらいですかね」

 飛鳥が悟られないように言い放った。

 

たえ「…やっぱり上限まで結婚するつもりなの?」

飛鳥「いや、結婚はまだ考えてないんですよ」

りみ「そうなんだ…」

飛鳥「ええ。将来の事とかも考えなきゃいけないので」

 と、飛鳥は話を濁そうとした。

 

飛鳥「ぶっちゃけ、女性側としてはどうですか?」

有咲「ありえねーし! 女を子供をつくる為の道具だとしか思ってねーんじゃねーか!?」

飛鳥「そりゃそうなりますよね…」

 

 有咲が憤慨すると、飛鳥が困惑した。

 

飛鳥(まあ…この人たちはその手に興味なさそうだし、心配ないかな…)

 

たえ「あ、でも…」

 たえが考えた。

「?」

 

 たえがとんでもない事を言いだした。

 

たえ「もし仮に私達と飛鳥くんが結婚したらどうなるかな?」

飛鳥「わあ」

 

 空気が止まった。

 

有咲「い、いきなり何言いだすんだよ!!」

りみ「け、けっこん…//////」

飛鳥(逃げられない)

 

 飛鳥は危機を感じていた。

 

香澄「どうなるんだろう。飛鳥くんは5人も奥さんがいるって事になるんだよね」

飛鳥「想像がつきませんね。市ヶ谷さんはどうですか?」

有咲「あ、ありえねーし!! こんな事言っちゃあ悪いけど、どうして一丈字と結婚しなきゃなんねーんだよ!!//////」

飛鳥「仰る通りです」

たえ「たとえ話だよー。顔真っ赤にし過ぎー」

香澄「かわいい」

有咲「可愛くなーい!!」

 有咲が絶叫した。

 

香澄「でも有咲がお嫁さんだったらどんな感じになるかな?」

たえ「どんな感じだろう」

飛鳥(やった。若干オレから逸れたぞ)

有咲「いや、いいよ…/////」

 

たえ「仕事から家に帰って出迎えとかはしなさそうだよね」

有咲「どういう意味だ」

沙綾「まあ、出迎えはしなくてもちゃんと家事はしてそうだよね」

有咲「そ、そんな事ねーし…」

 有咲がそっぽを向いた。

 

香澄「で、普段はこうやってツンツンしてるけど、甘えてくるときは甘えて来そう!」

たえ「エッチの時とかしおらしくなってそ」

有咲「おたえー。お口―。お口チャックしようなー…って、男子の前で何喋ってくれてんだコラァ!!!//////」

 有咲が顔を真っ赤にして香澄とたえに拳骨した。

 

香澄「いたーい!」

たえ「いった…」

有咲「そんなに言うんだったら、お前らがこいつの嫁だったらどうなってんだよ!」

たえ「私? 多分結婚してもウサギを飼ってるかなー。あ、そういやウサギとか大丈夫?」

飛鳥「ええ…」

たえ「良かったー。結婚するなら、ウサギ飼っても大丈夫な人がいいなー」

 と、たえが微笑んだ。

(あれ? 何かめっちゃいい感じになってね?)

 クラスメイト達はそう思っていた。

 

香澄「私はどんな感じかなー…?」

有咲「家事出来なくて、一丈字がやってそうだな」

香澄「ちょっ、有咲ひどーい!!」

 有咲が仕返しと言わんばかりに嫌味を言うと、香澄が抱き着いてきた。

 

たえ「香澄と有咲が結婚してそうなイメージもあるよね」

有咲「何でだよ!!」

たえ「いや、しんちゃんと風間くんっぽいし」

有咲「だからどういう意味!!?」

香澄「え!? 私どっち!?」

有咲「どう考えてもしんのすけだろ。ここで風間くんって答える奴なんかいるか!」

 と、夫婦漫才が行われた。

 

たえ「沙綾はどう?」

沙綾「わ、私? 私は…」

 沙綾が飛鳥を見つめた。

飛鳥「あ、別に私でなくても、普通に結婚したらって」

有咲「いや、どうせなら全員やろうぜ」

たえ「沙綾は子供沢山作ってそうだよね」

有咲「沙綾ゴメン。私が悪かった」

 有咲が沙綾に謝った。

沙綾「そ、それって兄弟が多いから? 3人しかいないんだけど…」

たえ「いや、小さい子の面倒とか得意そうだし…。何か子作りに積極的そう」

有咲「おーい。もうお前天然っていうか、サイコパスになってきてんぞー」

沙綾「あと、男子の前で子作りとか言わない!!!//////」

 

 飛鳥以外の3組の男子たちはドギマギしていた。だってあのPoppin’partyがエッチな話をしているのだから。

 

有咲「殺して」

飛鳥「まあ、話は戻しまして、結婚はまだ当分先の話という事で」

香澄「そう?」

飛鳥「ええ」

 と、強制的に話を終わらせて、Poppin’partyが自分達の教室に帰っていった。

 

有咲(私…そんなうぶじゃねーし…///////)

沙綾(子作りに積極的…。そういう風に思われてたのか…/////)

たえ(ウサギ飼ってもいい人って、どれくらいいるのかなー)

香澄(有咲の言ってた通り、家事も出来ないとね!)

りみ「……」

 

 りみは一人、落ち込んでいた。

 

りみ(私…触れて貰えなかった…)

香澄・たえ・有咲・沙綾「!!!!!」

 

 

 

おしまい

 



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第72話「もしも第71話で何かあったら」

 

 

 10月30日。この日はハロウィン前日であるが、飛鳥は家でハロウィンの事を思い出していた。

 

飛鳥(この日は戸山さん達大忙しだろうな…)

 

 というのも、ハロウィンに向けてライブをすると聞いていた為である。飛鳥は邪魔しないように、気にかけていたのだが…。

 

飛鳥(まあ、オレ未だに出入り禁止食らってるから入れないんだけどね)

 

 …そう。嫌がらせで学内のライブに出入りできないのだ。そのせいで学内のライブに足を踏み入れた事はない。学外のライブは問題なくいけるのだが、行く機会がない。

 

飛鳥(ま、遠くから成功する事を願ってるよ。頑張って)

 

 そう言って飛鳥は家を出た。

 

 学校につくと、そこにはいつも通りの光景があった。

 

「今日の合同ライブ楽しみだな!」

「ああ! 香澄ちゃん達が仮装するんだろ!?」

「エロい恰好かな? エロい恰好かな?」

「バカ! キュ~トなのもいいだろう!!?」

「いやいや、やっぱりセクシーだろ」

 

 と、男子生徒達も興奮気味で、飛鳥は存在感を消していた。

 

「けどな…」

飛鳥「?」

 

「問題はあの一丈字だ」

「そうだ! あいつが結局美味しい所を持っていくんだ」

「オレ達にも分けろっつーんだよ」

「ああいうのは皆で楽しまないと!」

飛鳥(だったら出入り禁止解禁してくれ)

 

 そう思いながら、飛鳥は去っていった。

 

「やっぱり手を出してるのかな?」

飛鳥(どんだけだよ…)

 

 その後、飛鳥は普通に教室で過ごして、何も問題を起こさないようにベストを尽くした。

 

飛鳥(学校が終わったら即刻帰るか…)

 

 そんでもって放課後。ライブの時が来た。

 

飛鳥(帰るか…)

 飛鳥が存在感を消して…そのまま帰っていった。

 

飛鳥(こういう時都合よく事件が起きるけど、何も起こらないのが一番いいよ)

 

飛鳥(…とは言ったものの、それはそれでこの後の展開どうするんだって話しだよな。戸山さん達はいないし)

 

 商店街を歩きながら、オリ主の弱みを痛感していた。原作組がいないのであれば、読者が楽しめないのだ。というかもう、バンドリじゃなくても良いわけだ。

 

 飛鳥がふと横に貼ってあったポスターを見ていた。そこには仮装をしている香澄、蘭、彩、友希那、こころが写っていた。

 

飛鳥(御愛嬌って事で勘弁してもらうか…)

 

 と、飛鳥はとぼとぼと歩いていった。だからといって事件が起ころうものなら、確かに出番はあるものの、香澄たちのライブが台無しになってしまうからだった。

 

 その頃、香澄たちは順調にライブを行っていたが…。

 

「トリック・オア・トリート! お菓子をくれないと…悪戯しちゃうわよ?」

「お菓子持ってないから悪戯してくれぇええええええええええええええええ」

 

 …男性客の大半がドM思考であり、一部のバンドガールと女性客はドン引きだった。もしもここに飛鳥がいたら…。

 

飛鳥「あー。間違いなく一緒にされるだろうから、行かない方が良いねこれね」

 

 と、投げやりな態度を取っていた。

 

有咲「…キモッ」

沙綾「最近の男子って皆こうなのかな…」

モカ「まー。モカちゃん達みたいな美少女に何かされたいっていう気持ちは分かるよ~」

 

 舞台袖で見ていたバンドガールズは思い思いの感想を述べた。現在Roseliaがライブをしている為、友希那達は不在である。

 

麻弥「それにしても一丈字さんまだ出入り禁止解けてなかったんスか…?」

千聖「どこまでも考える事は姑息ね…」

こころ「……」

 

 飛鳥に対する仕打ちに麻弥と千聖が不満そうにしていたが、こころは特に気にする事はなかった。

 

はぐみ「こころん…」

こころ「飛鳥なら心配いらないわ」

「!?」

 

 こころの言葉に皆が驚いた。

 

彩「ど、どういう事?」

こころ「いつか皆で一緒にライブが見れるように、飛鳥も頑張ってるから」

ひまり「頑張る?」

巴「一丈字何もしてねぇだろ」

こころ「…あたしも最初はそう言ったわ。けど飛鳥は、みんなに気を遣ってライブに来ないのよ。何も結果を出してない自分が、あたし達と一緒にいるのが気に食わないんだって」

香澄「そ、そんな…」

 こころが正面を向いた。

 

こころ「でもね。飛鳥なら絶対に出来るって信じてるわ」

モカ「……」

 モカが笑みを浮かべた。

 

モカ「そうだね~。飛鳥くんなら出来そうな気がする~」

巴「モ、モカまで…」

こころ「だから皆も飛鳥を信じましょう!!」

 

 と、こころがそう言うと、バンドガールズは気持ちを新たにライブに挑むのだった。

 

 

 その頃、飛鳥はというと…。

 

「本当に! なんてお礼を申し上げればよいか…」

「うえ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は商店街でお礼を言われていて、困惑していた。というのも、飛鳥が商店街を歩いていると、チンピラ3人が親子にカツアゲをしようとしていたのだ。父親は辞めるように言ったが、チンピラが父親の顔を殴り、子供がやめるように言ったが突き飛ばした。

 

 飛鳥が超能力で撃退しようとしたが、周りにいた老人たちが飛鳥に助けを求めた為、やむなく自分自身で解決する事となった。

 

 当然チンピラたちも黙ってる訳なく、飛鳥に殴りかかろうとしたが、返り討ちに遭った。その時、超能力でチンピラたちが親子に近づかないように暗示をした。

 

飛鳥「さて、トリック・オア・トリートといこうか」

「!?」

飛鳥「大人しく引き下がらないと…即刻警察に突き出すぞ」

「ひ、ひぃいいいいいいいいいいい!!!」

「す、すいませんでしたぁああああああ!!」

「あ、あれ!? 足が…足が動かない!!」

 

 と、3人のチンピラは逃げ出そうとしたが、飛鳥の超能力により、体が動かなかった。

 

飛鳥「あ、おまわりさん。こいつらです」

「分かった!!」

「逮捕する!!」

「人の形をした獣め!!」

 

 警察官がチンピラを捕まえるのを確認すると、飛鳥は即刻逃げようとしたが、まっさきに親子に礼を言われてこの通りだった。

 

 周りの人たちは大歓声をあげて、飛鳥を讃えたが、飛鳥は正直困っていた。

 

飛鳥(絶対バレるだろうなぁ…)

 

 しかも飛鳥が解放されたのは、一時間後である…。

 

 

 

おしまい

 



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第79話「もしも2年生に進級したら」

 こんにちは。一丈字飛鳥です。バンドリ学園に転入してからというもの、かなり時間が経って、気が付けば2年生に進級していました。広島にいる仲間とはちょくちょく連絡は取ってあったりしてるんで、特に変わりはないのですが…。

 

 今日はクラス替えが行われる日。何でも2年と3年はクラスが変わらないんだそうです。私もクラスが表示されている紙を見に来た訳ですが…。

 

「あ、おーい! 飛鳥くーん!」

 Poppin’partyと出会ったが、沙綾、りみ、有咲が気まずそうにしていた。

 

飛鳥「戸山さん。それから…どうされたんですか?」

たえ「クラス表もう見た?」

飛鳥「いえ、まだですが…」

香澄「私達と同じクラスだよ!!」

飛鳥「あ、そうですか…」

 

 香澄のテンションがやたら高いので、特に驚きはしなかった飛鳥。だが、どうしても沙綾、有咲、りみのテンションがおかしかった。

 

飛鳥「山吹さん、牛込さん、市ヶ谷さん」

沙綾・りみ・有咲「?」

飛鳥「分かりますよ。私と同じクラスになるのって物凄い嫌ですよね…」

りみ「ち、違うよっ!?」

沙綾「そうそう!」

有咲「一丈字」

 

 有咲が目を閉じた。

 

飛鳥「どうされたんです?」

有咲「ちょっとクラス表見てこい。お前は3組だ」

飛鳥「……」

 

 有咲の言葉にかなり嫌な予感がした飛鳥だったが、言われた通り3組のクラス票を見て見た。すると…。

 

<3組女子>

 

青葉モカ

市ヶ谷有咲

上原ひまり

宇田川巴

牛込りみ

奥沢美咲

北沢はぐみ

弦巻こころ

戸山香澄

羽沢つぐみ

花園たえ

美竹蘭

山吹沙綾

若宮イヴ

 

 何という事でしょう。同級生のバンドガールズの名前が全員分あるではありませんか。

 

飛鳥「ええええええ~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!?」

 

 飛鳥は目玉が飛び出る勢いで叫んだ。そう、まるでスマブラでキングクルールが参戦すると分かった時のドンキーコングとディディーコングのように…。

 

「やーやー。クラスを確認したようだね飛鳥く~ん」

 

 と、Afterglowが現れた。

 

飛鳥「……」

モカ「これから1年間宜しくね~」

蘭「よ、宜しく…」

ひまり「宜しくね」

つぐみ「よ、宜しくね?」

巴「宜しく!」

飛鳥「あ、はい…」

 

 飛鳥が困惑していた。

 

「飛鳥!!」

 

 こころ、はぐみ、美咲が現れた。

 

飛鳥「あの、弦巻さん…」

美咲「弦巻家のせいだと思うでしょ? 残念だけど違うみたいよ」

飛鳥「えっ」

こころ「バンドやってる子はみーんな同じクラスにしましょうって先生達が言ってたわ!」

美咲「で、あなたの功績も認められたから同じクラスにしようって…」

はぐみ「はぐみは飛鳥くんと同じクラスになれてうれしいよ!?」

飛鳥「……」

 飛鳥が額を抑えた。

 

イヴ「どうしたんですか? アスカさん?」

有咲「分かるよ」

美咲「ええ…」

 イヴの問いかけに有咲と美咲が困惑して、ある方向を見た。そこには嫉妬の炎に包まれた男子生徒達の姿があった。有咲と美咲が心の底から飛鳥に同情した。

 

飛鳥「あー…多分これ私が裏で賄賂とか送ってるとか思われてるな…」

こころ「そうなの?」

飛鳥「ええ。有名人でバンドやってる別嬪さん達が集まるクラスですもの。そりゃあ誰だってクラスに入りたいですよ」

「べ、べっぴ…/////」

 

 一部の女子が照れた。

 

有咲「そ、そういう恥ずかしい事言うんじゃねーよ!!/////」

飛鳥「おや、すみません」

香澄「有咲顔真っ赤―」

有咲「う、うるさ~い!!!//////」

 

 有咲が憤慨すると、男子生徒達がもだえ苦しんだ。

 

「香澄ちゃんと有咲ちゃんの夫婦漫才…」

「萌え…」

「3組羨ましい…」

「一丈字殺す…」

 

 と、もだえ苦しんでいたが、女子生徒達は泣き叫んでいた。

 

「嫌よお!! こんな変態たちとひとくくりにされるのォ!!」

「うわああああああああああああん!!!」

「私も3組にいれてぇええええええええええええ!!!」

「ていうかどうしてこの学校のイケメン変態が多いのぉおおおおおおおおお!!!」

飛鳥(全員が全員そうじゃないのに…)

 

 結構カオスな状態になっていて、泣き叫ぶ女子達に対して飛鳥は困惑していた。

 

飛鳥(これら全部オレのせいだよな…。合ってるけど)

 

 飛鳥は自分が持っている『ご都合主義』や『主人公補正』を心から呪った。

 

モカ「いやいや。そんなの無くても飛鳥くんは自然に成り上がるって~」

巴「そうそう」

飛鳥「あ、どうも…」

 

 モカ、巴に褒められて飛鳥も思わずびっくりした。

 

こころ「そうよ!」

飛鳥「?」

こころ「飛鳥がこの1年間、皆のために頑張った事、あたし達は知ってるわ!」

飛鳥「……」

 飛鳥は慈しむ表情をした。

 

飛鳥「あぁ…。思えば長い戦いだった…」

蘭「おーい。一人で振り返るなー」

イヴ「タタカイ!? それでしたらワタシにもスケダチさせてください!」

飛鳥「ありがとうございます。ですが、第一にアイドルの活動頑張ってください」

 

 ちなみに男子もいる事はいるが、殆ど元3組の生徒で、元1組、元2組の陰キャ組だった。

 

「あ、どーもー」

「モブです…」

 

 そして…

 

「うわぁああああああああああああああああん!! こんなんだったら特進クラスを希望するんじゃなかった!!」

「今まで一生懸命頑張ったのにぃいいいいいいいいいいい!!!」

 と、1組の特進クラスの男子たちは泣き喚いていた。女子達はゴミを見る目で見ていたが…。

 

モカ「…ここだけの話、モカちゃん達が特進クラスに入ると思ってたんだよ」

蘭「まあ、これでふるいはかけられたね」

飛鳥「えー…」

 

 飛鳥は困惑した。

 

有咲「冗談じゃねぇよ。いっつもいっつも人の身体ジロジロ見やがって!//」

飛鳥(プレッシャーかかる~)

 

こころ「そういう訳だから宜しく頼むわよ! 飛鳥!」

飛鳥「あ、はい…こちらこそ…」

 飛鳥のテンションは低めだったが、そのまま香澄たちに連行されていった。

 

 その後…

 

香澄「紹介するね! 妹の明日香だよ!」

明日香「いつも姉がお世話になってます…」

飛鳥「あ、これはどうもご丁寧に…」

 

 と、進級した香澄の妹・戸山明日香と、宇田川あこがやってきた。

 

あこ「あこと明日香も3組なんだよ!」

飛鳥「そうなんですか…」

巴「あ、そういえば湊先輩達も皆3組に纏められてたな」

飛鳥「えっ!!?」

 

 その後

 

「一丈字くん。本当にありがとう」

「君のお陰だ!」

飛鳥「え、あ、は、はい…」

 

 3年3組の男子生徒達に物凄く感謝された事は言うまでもなかった。

 

 

おしまい

 




クラス編成

飛鳥、バンドガールズ、全員3組。


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第82話「もしもバンドガールズがヤンデレになったら」

 

 

※ 飛鳥のクラスメイトが嫌な奴ばっかりです。

 

 

 皆さんこんにちは。私の名前は一丈字飛鳥です。バンドリ学園に通う高校1年生です。さて、私の身に起きた事をありのままに話しますね。

 

 本日家庭科の授業があったのですが、色々ありまして私は女子とペアを組むことになったんですね。そうなんです。ハブられたんです。もうね、人数的にも余る人数だったので、もうちょっと応用効かせて欲しいと先生に直訴したんですけど、全く取り合ってくれなかったんですね。人数同じにする必要あります?

 

 で、仕方なしにチームを組むことになったんですけど…。

 

香澄「えー!! 私達には一度も料理作ってくれた事にないのにー!!」

たえ「やっぱりクラスが違うからだよ…。っていうか、チームハブられてたの分かっててキモいってどういう事?」

りみ「そうです…3組だけずるいです…。あと、キモいっていうのは聞き捨てなりません」

沙綾「そうだよ。そんな事言うなら1組に頂戴よ」

有咲「ああ…。喧嘩売ってんのか?」

蘭「本当にどういうつもり?」

モカ「フェアじゃないよね~」

ひまり「私も一丈字くんが作った料理食べたいなー」

巴「ああ」

つぐみ「そうだね」

イヴ「ブシドーだと思います!!」

こころ「この際だから飛鳥をあたし達と同じクラスにしましょう!」

はぐみ「さんせー!!」

美咲「まあ、その方が良いかもね」

 

 戸山さん達が色々喋ってくれたんですけど、色々ツッコミどころがあるんですね。奥沢さん。あなたがツッコミを放棄したらハロハピ崩壊するから。

 

千聖「とりあえず、飛鳥くんと同じ班になった雌豚を始末しましょう」

飛鳥「女優が何言ってるんですか」

 

 飛鳥が突っ込んだ。

 

飛鳥「始末するなら私をハブにした男子たちと、頑なに認めなかった先生達でしょう」

男子生徒達「あの、一丈字くん!!?」

先生「すまん!! 本当にすまんって!!」

 

 3組の体育。飛鳥は色々あって見学していたが、それをよしとしなかった男子生徒達が雑用などを飛鳥に押し付けようとしていたが…。

 

「……」

 

 授業中だというのに、香澄たちが無表情で見つめていた。

 

「ひ、卑怯だぞ!!」

「女に助けて貰うなんて!!」

 と、男子生徒達が悪態をついたが、この後色々しばかれたのは言うまでもなかった。

 

 そして昼休憩になると、香澄達がやってきた。で、3組の男子は香澄達の大ファンである。理由は顔が可愛いからである。そして、飛鳥はどうするかというと、いつの間にか消えて一人でぼっち飯です。

 

飛鳥「どうしてこうなった」

 

 放課後、飛鳥は帰ろうとしたが、着信が鳴った。

 

飛鳥「…白鷺さんから?」

 

 飛鳥が電話に出た。

 

飛鳥「もしもし」

千聖「もしもし飛鳥くん? 今からあなたのおうちに行ってもいいかしら?」

飛鳥「もしかしてコンシェルジュに締め出されました?」

千聖「……」

 飛鳥の問いに千聖が黙った。

 

飛鳥「もー、私の家はあれほどダメだって言ったでしょう。セキュリティ厳しいんですよ」

千聖「聞いていい? ヤンデレでお約束の自宅侵入が出来ないってどういう事よ」

飛鳥「自分でヤンデレだって認めてる時点でヤバいですよ…」

千聖「私が飛鳥くんの事が心配なのよ!」

飛鳥「白鷺さん…」

 

 飛鳥が目を閉じた。

 

飛鳥「そうですか…。そこまで私の事を心配してくれてたんですね。ありがとうございます」

千聖「分かればいいのよ。分かったら…」

飛鳥「ええ」

 

 一時間後

 

千聖「え」

飛鳥「ちゃんと病院に見て貰いましょう」

 

 と、千聖は黄色い救急車に運ばれていった。

 

千聖「ちょっとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

飛鳥「またお会いしましょう~」

 

 叫ぶ千聖をよそに飛鳥はハンカチを振って別れを告げた。

 

飛鳥「ええ。私は何やってんだって思ってるでしょう。かといって貞操を奪われたかありませんよ」

 

 

 やめよう。迷惑行為。

 

 

 

おしまい

 



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第83話「もしもバンドリの世界が男性優位社会だったら」

 

 

 年を重ねる事に、男性の数が減ってきていた。原因は分からないが、とにかく男性が減っている。そこで政府は少子化対策の為に、男性優位の社会を作った。

 

「男性優位という事は、女子達に好き勝手していいって事だな!!」

「ひゃっほう!!」

「それじゃオレだけのハーレムを作ってやるぜぇ!!」

 

 …限度はあるが。

 

「それを早く言えよぉ!!」

「オレ、複数の女から慰謝料と損害賠償を請求されちまったよ!!」

「ちっとも男性優位じゃねーじゃねーか!!」

 

 こんな男達の事はほっといて、弦巻こころの依頼で、ヤラカシ退治の為にバンドリ学園に転入してきた一丈字飛鳥。これまで数々のヤラカシを退治してきたが…。

 

 社会が変わってしまい、とってもややこしい事になってしまった。

 

*****************

 

飛鳥「……」

 

 とある昼休憩、飛鳥は休憩スペースで横になっていたが、魂が抜けかけていた。

 

「あ、あれ? 一丈字くん?」

 

 りみが飛鳥を見かけたが、飛鳥の魂の抜けっぷりに困惑していた。その時、りみが腕を掴まれた。

 

りみ「!!?」

「黙ってこっちこい!!」

「男は希少価値なんだ。丁重に扱ってくれないと困るなぁ」

 

 と、あからさまにDQN2人組に絡まれてりみが震えていたが、飛鳥が遠くから超能力を飛ばして、気絶させた。りみは何が起きたか分からない状態だった。

 

飛鳥(もうおちおち休んでられないよ…)

 

 飛鳥が起き上がってりみの方を見ると、りみと目が合ったが、飛鳥は気づかないふりをしてそのまま横になった。

 

 ちなみに男性優位とあるが、勿論犯罪行為などを犯せば処罰される。だが、処罰されるにも刑務所に服役するとかではなく、少子化対策の為に強制労働させられ、いわばモルモット扱いされるものだった。だが、現在はあえてその労働につこうと考えている志望者たちが後を絶たないが、大抵女性に縁がない冴えない男達ばかりであり、対応に追われている。

 

 結果的にめんどくさい事に変わりはないのだ。

 

飛鳥(少子化対策って言っても、ただ子供を産めば良いって訳じゃないしなぁ…。ちゃんと育てられる環境が整ってないと…)

 

 そして放課後。香澄たちバンドガールズはいつも通り、学内で定期ライブを行っていた。

 

飛鳥(そういや大丈夫かな…)

 念のため、黒服達に香澄たちに異常がないかを見張らせていた飛鳥。

 

 だが、案の定事件が起きた。

 

飛鳥「Pastel*Palletesか…」

 飛鳥が瞬時に、パスパレのライブ会場に移動すると、何やら揉めていた。

 

「てめぇ!!」

「お客様の言う事が聞けないっていうのか!?」

「男に逆らうな!!」

 

 と、法律制度が変わってすっかり調子に乗ったDQN3人組がステージに乗り込んで、氷川日菜に絡んでいた。

 

彩「ちょ、ちょっとやめてください!」

千聖「ライブ中にステージに立つのはマナー違反よ」

「うるせぇ!」

「偉そうに指図すんな!」

「言っとくが全員が対象だからな。終わったらオレ達と一緒に来い」

 

 と、DQN達がニヤニヤした。観客たちは誰も助ける様子はない。下手をすれば巻き添えを食らうし、ターゲットが自分達に変わってしまうからだ。

 

飛鳥「うわー…。随分荒れてるな」

 飛鳥が陰から潜入していた。

 

黒服A「いかが致しましょう」

飛鳥「同じ男性の言葉なら今まで通りだと思うので、証拠を集めてください。ターゲットは私が始末します」

 

 と、飛鳥は超能力でDQN達を腹痛にさせた。

 

「ぐ、ぐぁああああああああああああ!!」

「は、腹が…」

「ぐぉぉぉぉぉ…」

 

 3人が腹を抑えた。

 

黒服B「一丈字様。証拠が取れました」

飛鳥「ありがとうございます」

 

麻弥「な、なんなんすか!?」

イヴ「!?」

 

 DQN達が腹を抑えていた。

 

「て、てめぇら…一体何しやがった」

「こんなことしてタダで済むと思ってんのか…!!」

 その時だった。

 

「コラー!! 何をしている!!」

 と、男性教諭がやってくると、DQN達が青ざめた。

 

「や、やべぇ! 逃げろ…」

「くそう…」

 DQN達が逃げようとしたが、漏れそうになってしまい、思うように動けなかった。

 

飛鳥「あとは証拠を叩きつけて終わりですね」

黒服C「ありがとうございます」

飛鳥「いえいえ。ご協力ありがとうございました」

 

 飛鳥は陰から香澄たちを守っていた。

 

 そして…

 

こころ「飛鳥! いつもお疲れ様!」

飛鳥「ありがとう…」

 

 夜、こころと一緒に自宅のマンションの1階にある食堂で食事をしていた。

 

こころ「どうかしら?」

飛鳥「いやー。仕事が一気に増えましたね。しかもやり辛いのなんの」

 飛鳥が困惑した。

 

こころ「だけど飛鳥達の活躍もあって、悪い膿を取り除くことが出来ているらしいわ!」

飛鳥「膿?」

こころ「今は男の人が優遇されてるでしょ?」

飛鳥「うん」

こころ「けど、性犯罪は今まで以上に重罰されてるじゃない?」

飛鳥「そうですね」

こころ「最近男性からの性犯罪が多いから、あえて男性に優遇されるように一時的に法律を改定して、性犯罪者をあぶりだそうっていう考えが生まれたじゃない?」

飛鳥「……」

 

 こころの言葉に飛鳥は口元をへの字にした。

 

こころ「大成功よ!」

飛鳥「犯罪が起きたんじゃ大成功も何もないよ…」

こころ「そうね。犯罪が起こらないのが一番いいけど、今まではギリギリだったのがアウトになったのよ?」

飛鳥「まあ、そりゃそうだね…」

 

 飛鳥が困惑した。

 

こころ「でも、あなたも疲れたでしょう」

飛鳥「そりゃあもう。まあ、仕事だから仕方ないんだけどね」

 

 と、飛鳥が苦笑いしたその時だった。

 

こころ「それじゃあ今度旅行に行きましょう!」

飛鳥「え」

 

 今度の休み

香澄「飛鳥くん! 旅行楽しもうねー!!」

モカ「ハーレムですな~」

飛鳥「……」

 

 飛鳥はバンドガールズ25人と一緒に旅行に行く事になった。

 

 

飛鳥(…男性優位な社会も、弦巻家には敵わないという事か)

 

こころ「それじゃ、行くわよ飛鳥!!」

飛鳥「ああああああああああああああああああああああ」

 

 

おしまい

 



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第96話「どいつもこいつも狂ってやがる文化祭・1」

 

 

 今回の設定

 

・ 3組のクラスメイトが若干嫌な感じです。

 

それではゴー。

 

*******************

 

 

 ある日のバンドリ学園。

 

「えー。3組の出し物について話し合いたいと思います」

 と、文化祭のだしものについて決めていた。

 

「はーい! メイド喫茶がいいでーす!」

「オレもオレも!」

 

 調子のよい男子生徒達がそう言い放つと、女子たちが嫌そうな顔をした。

 

「えー。それ男子が楽したいだけじゃん」

「男子がホストやればいいでしょ」

 

 と、拮抗した状態だった。

 

「あー。時間内に決められなかったらこっちで決めるから」

 

 担任はかなりいい加減な性格で、特に加わろうとしなかった。その時、1人のDQNがそう言った。

 

「しょーがない。それじゃホストクラブやるよ」

 

 と、陽キャ男子が言い放った。

 

「流石陽キャくん!!」

「女子の味方―」

 

 女子生徒達は陽キャを称賛した。

 

 ところがどっこい。

 

「そういう訳だから、やっといてね。陰キャくんたち」

「え…」

 

 なんという事だろう。陽キャは男子を集めて、仕事を押し付けたのだ。当然、我らが主人公。一丈字飛鳥も含まれていた。

 

「おいおい、やめとけってー」

「かわいそうだろー」

 

 と、取り巻きが止めるが、本当に止める様子がなかった。

 

「あ、ちなみにだけど…」

 陽キャがにらみを利かせた。

 

「逃げたらどうなるか分かってるよなぁ?」

飛鳥「どうなるんです?」

 

 飛鳥が言い返した。

 

「は? 何お前」

飛鳥「どうなるかって聞いてるんですが」

「そんなのボコすに決まってんじゃん」

飛鳥「そうですか。分かりました」

「は? さっきから何舐めた口利いてんの? 殺すよ?」

 と、陽キャが飛鳥に脅しをかけたが、飛鳥は動じなかった。

 

飛鳥「またまた面白いご冗談を。分かりました。引き受けましょう」

「!」

飛鳥「ただ、どういうホストクラブにするかはこちらで決めさせて貰いますので」

「ほ、ほーん…」

「そこまで言うならやって貰おうじゃねーか!」

 

 と、陽キャたちも強気になり、飛鳥達がホストクラブをやる事になった。

 

*****************

 

「一丈字くん」

 

 飛鳥と押し付けられた陰キャたちで話をする事にした。

 

飛鳥「ああ。ご心配はいりませんよ。皆さんあまりお話しされないタイプでしょう」

「う、うん…」

飛鳥「高校生ですからホストクラブなんて言われても、そこまで期待しませんよ。そもそも大人のお店ですし。人生相談に乗るパターンで行きましょう」

「人生相談…」

 飛鳥の言葉に他の生徒は困惑した。

 

飛鳥「失敗したくない、恥をかきたくないって思ってませんか?」

「そ、そりゃそうさ!」

飛鳥「それは他のクラスの生徒達も同じです。ましてや1組と2組はコスプレ喫茶ですよ。しかも担当は女子!」

「……」

飛鳥「そりゃあ、やりたくない事は誰でもやりたくはありませんよ。けど、誰かがやらないといけないんです。私もそう」

 飛鳥が仲間を見た。

 

飛鳥「こうなったのも何かの縁です。私に力を貸していただけませんか」

 

 と、飛鳥は仲間に協力を求めた。

 

「あの…そうじゃなくて」

飛鳥「?」

 クラスメイトの一人が頬を染めた。

 

「オレ…好きな人がいるんだ。2組に…。だからホストクラブなんてのは…////」

 その言葉に皆が驚いた。

 

飛鳥「詳しく…聞かせて貰えませんか?」

 

*********************

 

 そして文化祭前日。準備が進む中、1年3組は何の準備もしてなかった。精々机といすをどけただけである。

 

飛鳥「これでよし」

「……」

 

 他の陰キャたちは特に驚く様子がなかった。これには他のクラスメイト達も困惑気味だった。

 

「あ、あの…一丈字くん…」

「これで準備終わりなの…?」

飛鳥「そうですが何か?」

 

 飛鳥はあっけらかんとしていた。

 

飛鳥「こちらも色々忙しいんで。それじゃ」

 と、帰ろうとすると、

 

「おい、待てよ」

 陽キャが止めた。

 

飛鳥「どうされました?」

「文化祭やるんだったらちゃんとやれよ」

飛鳥「何が言いたいんですか?」

 陽キャが正義の味方ぶって飛鳥に注意をしたが、飛鳥はそれを見透かしたかのように言い返した。

 

飛鳥「あ、それとも教室の飾りつけ、やってくださるんですか?」

「そうじゃねぇよ!!」

「前々から思ってたけど、何なんだよお前!!」

 

 と、陽キャたちが激怒した。

 

飛鳥「何なんだ? そりゃあこっちの台詞ですが」

「!?」

飛鳥「人に仕事を押し付けておいて、その上自分の手は汚さないように監視はする。顔が良いとここまで卑怯な性格になるんですねー」

「…おい、いい加減切れるぞ」

飛鳥「切れる? もう切れてるじゃないですか」

 飛鳥の言葉に陰キャたちが青ざめた。

 

「ざけんなよてめぇ!!」

 と、陽キャが飛鳥を殴り飛ばした。

 

「きゃああああああああああ!!!」

 そして馬乗りになって、飛鳥を殴り続けた。

 

「黙って聞いてれば!!! 陰キャは黙ってオレたちの言う通りにすればいーんだよ!!!」

 飛鳥は笑みを浮かべた。

 

「何がおかしい!!」

飛鳥「これで…」

「!!」

 

飛鳥「これで、正当防衛は成立ですね」

「!!」

 飛鳥は陽キャの腹に思いっきり裏拳をお見舞いした。すると、陽キャは言葉を失ってそのまま気を失った。失う直前に飛鳥は横に移動して、陽キャと体を重ねないようにした。

 

 そして陰キャたちの方を見た。

 

飛鳥「予定通り、証人をお願いします」

「あ、ああ…」

飛鳥「彼は保健室に連れて行きますので。これで解散。もし当日私が来れなかったら、来れなかった時のパターンで」

「わ、分かった!」

飛鳥「よいしょっと…」

 飛鳥が陽キャをおぶって、保健室に移動した。

 

「……」

 その時、黒服達が現れた。

 

「参りましょうか」

 と、黒服達が陰キャ4人を連れて行き、それ以外の生徒は茫然と佇んでいた。

 

 そしてこの後、飛鳥組と陽キャ組で事情聴取を行ったが、飛鳥が事情聴取で陽キャ組や先生の悪事の証拠を提出したため、余裕で飛鳥組の勝利になった。

 

 だが、問題はここからだった…。

 

『学校でいじめを受けているそうだな』

飛鳥「いや、いじめを受けてるわけではありませんし、返り討ちにしましたので…」

『どっちみちお前に用がある。明日そっちに行く』

飛鳥「……」

 

 飛鳥は滝のような汗を流した。

 

 

 

つづく

 



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第97話「どいつもこいつも狂ってやがる文化祭・2」

 

 

 文化祭当日…。学園は出し物なのでにぎわっていた。ちなみに香澄たちはバンドをするのかというと、大勢の客が来てトラブルが起きる可能性が非常に高いと判断され、今回はなしという事になった(友希那や蘭は非常に不満げだった)。

 

 1年3組・教室

 

飛鳥「本日は遠路はるばるお越しいただき、ありがとうございます…」

 

 と、飛鳥が腰を低くしていた。飛鳥の目の前にはいかつい格好をした大人の女性たちが沢山いた。

 

「いえ、頭の命令となれば」

 

 飛鳥と喋っているこの女性は、和哉の学生時代の舎弟が社長をしている製造会社の社員であり、社員全体が和哉に絶対服従となっているのだ。ちなみに何を作っているかというと、虹島の地元の名産品やグッズである。ちなみに元々はヤンキーや受刑者といったゴロツキ達を和哉や社長が拾って面倒を見ているという訳だ。ちなみにこの女性は中卒だが、大卒以上の仕事をきっちりこなして、今はとあるチームのリーダーをしている。

 

 ちなみに「頭」とは和哉の事であるが、詳細についてはまた次の機会に…。

 

「それもそうじゃけど、一日お休み貰えるけぇ~」

「こら!」

 

 と、小柄の女性が茶目っ気に言うと、長身の女性が諫めた。彼女たちも製造会社の社員であり、元ヤンである。和哉より年上も結構多い。

 

「まあ、ホストクラブって…兄さんたちまだ高校生でしょ」

飛鳥「ええ…。無理があるのでコンセプトは「高校生がやるホストクラブ」っていう事で、グレードダウンしてるんですよ」

「んー。こんなこと言うのあれだけど、確かにホスト向きじゃないね~」

「だからそういう事言わんの!!」

「……」

 

 キャラ紹介

 

梅子 … リーダー格の女性。

蓮子 … 緩やかな喋り方をする小柄の女性。

萩子 … 長身の女性。

薺子 … 無口。

 

「あの…」

飛鳥「あ、何でしょうか。薺子(なずなこ)さん」

薺子「…クラスの子。どうなったの?」

 

 薺子の言葉に飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「ホストクラブに出る私たち以外、特別教室で1日中授業ですね…。先生は教育委員会から事情聴取を受けてます」

 

 その頃のクラスメイト達。

 

「どーしてオレたちまで!!」

「そうよ!!」

「うるさい。内申点ゼロにされたくなかったら黙ってろ」

 

 と、鬼の形相をした教師が生徒達を睨みつけると、生徒達は黙った。そしてまた先生は教育委員会と校長からの追及に涙目になっていた。

 

「僕は悪くないんです!! 悪いのは生徒達で…」

「やかましい!!」

「この期に及んでまだ生徒のせいにするとか、頭大丈夫か!?」

「言っとくが、他の生徒達からも苦情が来てるんだ。ただですむと思うなよ…」

「ひ、ひぎィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」

 

 

 飛鳥は頭を押さえた。

飛鳥「やりすぎるなって言ったのに…」

「しょうがないよ。それが頭だ」

飛鳥「……」

 

 そんなこんなで、文化祭が始まった。香澄たちバンドガールズの当番はそれぞれ違っていたが…。

 

「ふぇえええ…」

「これは凄いね」

 

 ハロー、ハッピーワールドの瀬田薫と松原花音が1年3組の教室に来ていたが、すでに梅子達が並んでいた。

 

「おい、あのお姉さんたち綺麗じゃね?」

「ああ…」

「おっぱいもでかいし…」

「でも3組って確か…」

 

 と、周りにいた男子生徒達がひそひそ話をしていた。

 

花音「ど、どうしてあんな人たちが…」

薫「きっと、彼の知り合いなのだろう」

「何?」

 

 花音と薫が話していると、梅子が話しかけた。

花音「ふぇええ!!?」

薫「すみません。つかぬ事をお伺いしたいのですが、一丈字飛鳥くんのお知合いですか?」

梅子「そうだけど何? 彼女?」

薫「残念ながら違いますね」

 

 と、薫がいつもの様子で苦笑いすると、

 

「んー…」

 蓮子が薫を見つめた。

 

薫「どうされました? 私の顔に何か…」

蓮子「あなた、瀬田薫さん?」

薫「ええ。そうですよ。覚えてくださって光栄です」

蓮子「あー…。かおちゃんってあなたの事だったんだねー」

薫「…もしかして、彼から聞きました?/////」

蓮子「聞いとるよー。照れたら超可愛いってのも聞いとるけど、本当に可愛い♥」

薫「あ、ありがとうございます…////」

 

 と、いつものように振舞ったが、顔が真っ赤だった。そして他の女性社員たちもキュンとしていた。

 

花音(かわいい)

薫「そ、それでしたら、彼女の事もご存じですか?」

蓮子「聞いてるよー。松原花音ちゃんでしょ。海月姫」

花音「く、海月姫!?」

薫「何故彼が知ってるんだ…?」

 

 花音は実際にクラスメイト達から『海月姫』という愛称がついていたのだ。

 

蓮子「あー。林グループっていう大きな会社の社員さんが教えてくれたのー」

薫「林グループ…?」

蓮子「うちの会社、林グループと提携しとるんよー。だから知っとんの」

花音「そ、そうなんですか…」

 

 その時だった。

 

飛鳥「大変長らくお待たせしましたー…あ、瀬田先輩。松原先輩。こんにちは」

花音「こ、こんにちは…」

薫「こんにちは。一つ聞いてもいいかな?」

飛鳥「あ、もしかして昔のあだ名の事ですか? 私ではございませんよ」

蓮子「ああそうそう。林グループの人から聞いたよー。そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫大丈夫―」

萩子「そうじゃないよ。昔のあだ名を呼ばれる事自体恥ずかしいけん、この人も困っとったんよ」

薫(あ、わかってくれた人いた…)

 と、薫は萩子に対して感謝していた。

 

蓮子「でも恥ずかしがってるの、めっちゃ可愛えよね?」

萩子「まあ、それはそうじゃけど…」

薫「///////」

飛鳥「あの、彼女困ってるのでその辺にしてあげてください」

蓮子「はーい」

 

 と、このままホストクラブが行われる事になった。飛鳥はいつものごとく、他の陰キャたちも最初はたどたどしかったが、蓮子たちがアドバイスをしたおかげか、少しずつ上達していった。ちなみに1回終わったらまた並ぶという行為をしていたが、売り上げを出すことが目的なので、特に何も言われる事はなかった。

 

 ちなみにホスト役は3人で、他の2人が誘導係をしていた。ちなみに飛鳥はずっとホスト係をやらされている。

 

「いや、だって一丈字くんの方が顔利くし…」

 

 という理由である。

 

 

飛鳥「ちなみにホストクラブって行ったことあります?」

梅子「ないよ。男共の相手は仕事だけで十分だ!」

飛鳥「ですよね…」

 

 飛鳥が梅子に対して申し訳なく思った。

 

 時間がたつにつれ、お客さんが多くなっていった。

 

「ねえ、あそこのホストクラブ行った?」

「喋りが凄く上手い子がいるんだって!」

「それもそうだけど、他の子も何か可愛くて面倒見がいがあるんだって!」

 

 と、口コミから長蛇の列になった。高校生がやるホストと言う事で、元々期待はされない。だがらこそ、変にプレッシャーになる事はなく、飛鳥達ものびのびやる事が出来た。

 

 

飛鳥(まあ、膿も取り除けたしね)

 

 

つづく

 

 



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第98話「どいつもこいつも狂ってやがる文化祭・3」

 

 

 文化祭が始まって1時間後…。

 

「皆楽しそうにしてるのにオレ達だけなんで普通に勉強してんだよー!!」

「わーん!!! オレ達もホストクラブさせてください!!」

「ちょっと!! 何自分たちだけ逃げようとしてんのよ!!」

「でも、こうなるならメイド喫茶にすればよかった…」

 

 と、3組のクラスメイト達は無様に特別教室で勉強させられていた。正直地獄でしかない。

 

 だが、無情にも教師が入ってきた。

 

「先生! 一丈字達にはちゃんと謝りますから文化祭…」

「おう。その一丈字達の様子を見せてやろうと思ってな」

 

 と、教師はプロジェクターで飛鳥達の様子を映し出したが、Pastel*Palletesのメンバーと王様ゲームをしていた。

 

「はあああああああああああああああああ!!!?」

「何あいつらパスパレと王様ゲームしてんだよぉおおおおおおおおおお!!!」

「わーん!!! オレ大ファンなのにぃいいいいいいいい!!!」

「ていうか、一丈字くん良く見たら美形…!!」

「いや、それは気のせいでしょ」

 

『王様だーれだ!』

飛鳥「あ、私ですね」

 

「しかもお前が王様かィイイイイイイイイイイイイイ!!!!」

 

日菜「じゃあ王様! 命令をどうぞ! あ、エッチな命令は応相談ね」

飛鳥「しませんから」

 

 日菜の冷やかしに飛鳥が困惑して突っ込むと、

 

「はぃいいいいいいいいいいい!!?」

「てめぇ一丈字それでも男かぁ!!」

「チャンスを投げ出すなんて!!」

「お前やっぱり女…御免、そんなごみを見る目で見ないで」

 

 男子生徒達が騒いでいたが、女子生徒達がごみを見る目で見つめていた。

 

飛鳥「そうですね。それでは1番が2番に可愛いってほめまくってください」

 すると…。

 

日菜「あ! 1番あたしだ!」

千聖「!!!」 ← 2番。

 

飛鳥「それではどうぞ」

日菜「千聖ちゃん。可愛いよ! とーっても可愛い!」

千聖「や、辞めて頂戴…//////」

 

 皆が見てるまえで屈託のない笑顔で褒められるので、千聖も思わず照れてしまった。

 

日菜「かわいいかわいい! とーっても可愛い!!」

千聖「……/////」

(か・わ・い・い)

 

 王様ゲーム参加者も、3組の生徒達も皆そう思った。そして飛鳥はカメラで写真を撮っていた。

 

千聖「ちょ、ちょっと!! 何写真撮ってるのよ!!! 盗撮よ!!?/////」

飛鳥「あ、大丈夫です。事前に許可は頂いたので」

千聖「誰に!!?」

飛鳥「パスパレのマネージャーさんに」

「いつの間に!!?」

 

日菜「ほらほら千聖ちゃん。こっち向いて」

千聖「!」

 

 日菜が千聖の方を向かせた。

 

日菜「うん。やっぱりるんっとしてるね♪」

 千聖の顔が更に赤く染まった。

 

「また読者にいちゃこらしてるって言われろぉおおおおおおおおお!!!」

「わーん!!! 飽きられてもいいから、今度はオレと日菜ちゃん達をいちゃこらさせてください!!」

「ていうかもう男子変態過ぎ!!」

「もうやだ…このクラス…」

 

 そしてまた…。

 

飛鳥「あ、また私が王様ですね」

 ちなみに他のメンバーも王様になって命令はしたが、飛鳥は一度も当たらなかった。

 

飛鳥「それじゃ3番が4番の人に愛の言葉をささやいてください」

日菜「あたし3番だ。4番だれ?」

「……!!」

 

 2組の女子が好きだと言っていた男子・ケンジだった。

 

飛鳥「あらまぁ。だけど大丈夫でしょう。どうぞ」

日菜「あなたお名前は?」

ケンジ「…ケンジです」

日菜「ケンジくんね!」

 

 特別教室にいる3組の男子たちは大騒ぎしていたが、日菜は構わず愛の言葉をささやいた。ケンジは日菜にときめきそうだったが、好きな子の為、一生懸命耐えた。そして飛鳥が何かを感じ取った。

 

飛鳥「はい、ありがとうございましたー」

日菜「うふふ。顔真っ赤」

ケンジ「あ、いえ…//////」

 

 と、ケンジは照れていた。

 

(ケンジ殺す)

 

 特別教室にいる3組の男子生徒達が血の涙を流してそう思っていた。その時だった。

 

「ちょーっと待った!!」

「!!?」

 

 と、女子生徒達が割り込んできた。一人は堂々としていて、もう一人が恥ずかしそうにしていた。

 

彩「!!?」

飛鳥「お待ちしておりましたよ」

「!!?」

 飛鳥は堂々としていた。

 

飛鳥「ケンジさんに御用があるんですよね?」

ケンジ「!!?」

 

 そう、この恥ずかしがっている女子生徒こそがケンジの想い人であるサトミだった。

 

「そうよ! ほら、サトミ!」

サトミ「え、えっとぉ…//////」

 サトミが恥ずかしがっていたが、ケンジが意を決した。

 

ケンジ「すみません。ちょっと失礼します」

飛鳥「いいよ」

ケンジ「モモさんすみません。少しだけ彼女とお話をさせてください」

日菜「え、もしかして告白!?」

麻弥「ちょ、日菜さん!!!//////」

 

 日菜のKY発言に飛鳥は困惑すると、

 

モモ「ケンジ。もうここで決めちゃいなさい」

ケンジ「いや、皆さんいらっしゃいますし、断れない空気…」

モモ「それなら心配いらないわよ」

ケンジ「えっ!!?」

 ケンジが驚くと、サトミがモジモジした。

 

彩・麻弥・イヴ「……!!!//////」

 彩、麻弥、イヴが身を寄せ合って興奮し、千聖は苦笑いした。

 

ケンジ「あの、サトミさん…」

サトミ「ひゃ、ひゃい!! 私でよろしければ!!/////」

モモ「先に言っちゃダメ!!」

 サトミがテンパって返事をしてしまい、モモが止めた。するとサトミは更に顔を真っ赤にした。

 

サトミ「ご、ごめんなさい…/////」

ケンジ「いえ、返事が先に聞けて安心しました。ですが…」

サトミ「え?」

 ケンジがサトミを見た。

 

ケンジ「ちゃんと告白をさせてください。僕は…オレは、あなたが好きです」

 

 と、思い切って告白をした。

 

ケンジ「その…結婚を前提にお付き合い」

サトミ「は、はい!! 喜んで!!//////」

モモ「だから早いってば!! てか、あんたも固すぎ!!!」

 

 モモのツッコミはさておき、これでカップルが成立した。彩と麻弥、イヴがキャーキャーブシドーです!と騒いでいた。

 

日菜「あーあ。振られちゃった」

千聖「ひ、日菜ちゃん…」

ケンジ「…えっと」

日菜「でもまあ、あたしよりもその人を選んだって事は、よっぽどいい人なんだよね?」

ケンジ「はい。正直僕には勿体ないくらいの」

サトミ「ソンナコトナイ。ヤメテ。ヤメテ///////」

 ケンジがそういうと、サトミがケンジの服の裾を引っ張ってつぶやいていた。耳まで真っ赤である。

 

日菜「ちゃんと幸せにしてあげるんだよ?」

ケンジ「は、はい! ありがとうございました!」

 と、ケンジが頭を下げた。

 

飛鳥「まあ、おめでたいけれど…ケンジさん。申し訳ありませんが、あなたは只今をもちまして、クビです」

「!!?」

 

 飛鳥がそう言い放つと、皆が驚いた。

 

彩「ど、どうして!?」

千聖「そんなの決まってるわ」

「え?」

 皆が千聖を見た。

 

飛鳥「ええ。彼女持ちの男にホストをやらせる訳にはいかないので」

ケンジ「そ、そんな…」

飛鳥「いいんですよ。あなたとサトミさんがくっついた事で、元以上は取れましたから」

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「あ、それからケンジさん。これ」

 飛鳥がその場を離れ、再び戻ってくると、封筒をケンジに渡した。

 

ケンジ「!?」

飛鳥「皆からの気持ちです。サトミさんと上手くいった時に、お祝いで渡そうと思っていたものです。受け取ってください」

 と、飛鳥がケンジに封筒を押し付け、ケンジが封筒を開けた。すると2人分のお守りが入っていた。

 

「!!」

飛鳥「とても御利益のある神社で購入したお守りです。本当はお金と行きたい所ですが、問題があってもアレですし、ケンジさんならご自身でなんとかできると信じています」

ケンジ「一丈字さん…それに、皆さんも…」

 ケンジとサトミが涙を流した。

 

モモ「ありがとう。一丈字くん」

「!!」

 モモが飛鳥に話しかけた。

 

モモ「ちょっとケンジくんとサトミは私の方で引き取らせて貰ってもいいかな?」

飛鳥「どうぞ」

モモ「ありがとう。行くわよ」

ケンジ「は、はい…」

サトミ「あ、ちょっと待って!」

 サトミが涙を拭いて、飛鳥達を見た。

 

サトミ「あ、あの。本当にありがとうございました! ケンジくんの事も…」

飛鳥「あー。それならいいんですよ。寧ろお礼を言うのはこちらの方です」

サトミ「え?」

飛鳥「私が色々強引に話を推し進めたんですけど、彼は腐らず今日までついてきてくれたんです。まあ、彼だけではなく、後ろにいる3人もそうです」

サトミ「……!!」

飛鳥「本当は文化祭が終わった後にお礼を言おうと思ったんですけど、もうここで言いますね。ケンジさん。本当に今日までありがとう。感謝してる」

 

 飛鳥が頭を下げると、ケンジとサトミがまた涙を流した。

 

飛鳥「3人もありがとう」

「い、いや!」

「そんな事言ったら、お礼を言うのはこっちだよ!」

「一丈字くんも今日までありがとう!!」

飛鳥「いえいえ」

 

 と、普通に話していると、モモが笑みを浮かべる。

 

モモ「…行くわよ。ケンジ、サトミ」

「!」

モモ「ここまで気を遣ってもらって空気読めない事しないの! ほら、さっさと行く!」

 と、モモが2人の背中を押した。

 

飛鳥「あ、もう時間過ぎてますね。あの、皆さん。申し訳ないんですけど…って、うわっ!!」

 

 飛鳥がパスパレの方を見ると、5人とも号泣していた。

 

飛鳥「凄く号泣されてますね…」

彩「だってぇ~~~」

イヴ「とってもブシドーじゃないですか…!!」

日菜「めっちゃるんってきてうるってきた…!!」

飛鳥「まあ、ずっと片思いだったらしいですからね…」

 

 と、飛鳥が困惑していると、

 

麻弥「ケンジさん達もそうっすけど、一丈字さんも粋な事するじゃないっすか…」

千聖「うちのクラスの男子と交換して」

飛鳥「白鷺先輩」

 

 千聖の言葉に飛鳥が突っ込んだ。

 

 そして特別教室は言うと…。

 

「え…オレ達本当に何してたの…?」

「バカみたいじゃんかよぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

「陽キャ!! てめーのせいだぞコラァ!!!」

「何がイケメンだよ!! 顔がいいからって調子に乗りやがって!!!」

 

 と、一斉に陽キャを責めたが、

 

「全員の責任だ!!」

 教師がそう怒鳴ってテレビを消した。

 

 

 つづく

 



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第99話「どいつもこいつも狂ってやがる文化祭・4」

 

 

 文化祭が昼頃になり、もうすぐ休憩に差し掛かっていた。

 

モカ「お腹いっぱーい」

ひまり「うぅ…どうしてこんなに食べてるのに太らないの…」

 

 と、Afterglowが中庭を歩いていた。屋台の食べ物をたくさん食べているモカに対して、ひまりが羨ましそうにしていた。それを聞いて蘭、巴、つぐみが苦笑いしていた。

 

 その時、前から私服姿の和哉が歩いてきて、Afterglowがゾッとしたが、和哉は特に話しかけることなく通り過ぎて行った。

 

蘭「な、何あの人…」

ひまり「怖…」

 蘭、ひまり、つぐみの3人が怖がり、巴が冷や汗をかいていた。モカも神妙な表情をする。

 

 和哉の特徴は黒髪で短髪ストレート。グレーのシャツに黒いジャケット、黒いズボンで黒の靴を履いていたが、一番の特徴はハイライトがない黒目と大きな隈である。外見的に生気が感じられない為、見ている者を恐怖に陥れていた。

 

 当の本人は全く気にしてないどころか、それを良い事に気に入らない人間(悪党)を恐怖に陥れてるとかなんとか…。

 

 そして人込みを歩けば、その顔の怖さに皆が振り向いていた。だが、和哉は全く気にせず、飛鳥の教室に向かっている。

 

「な、何あの人…」

「怖…」

「どうやったらあんま隈ができるの…?」

 

 と、言われ放題だったが、和哉は全く気にしなかった。

 

 そして飛鳥の教室にたどり着いた。

 

和哉「ここにいたか」

飛鳥「か、和哉さん!!」

「!!?」

 

 丁度休憩にしようとしていた時に、和哉が現れて飛鳥が驚いた。他の3人の男子生徒は驚きが隠せなかった。

 

和哉「話は聞いたぞ。かなり売れたそうだな」

飛鳥「そ、それはそうですけど…何も梅子さん達を呼ばなくても」

和哉「そうだな」

 

 飛鳥の言葉に和哉が返事をすると目を閉じた。

 

「お前ならオレ達の力を借りずともなんとかできた。だが」

 

 和哉がカッと目を見開くと、男子生徒達は恐怖を感じていた。

 

和哉「お前を陥れた奴らの面が気に入らなかった。虫唾が走る」

飛鳥「……」

 

 和哉の殺気に飛鳥が目を閉じて困惑すると、男子生徒達は震えあがっていた。

 

飛鳥「あの、他の人もいるので…」

和哉「…そうだったな。驚かせて悪かったな。君たち」

「い、いえ…」

和哉「弟子が世話になっているな」

「!!?」

 和哉の言葉に3人が驚いた。

 

和哉「そういえばもう一人いた筈だが…」

飛鳥「彼女ができて、今はデート中です」

和哉「そうか」

 和哉が返事をした。

 

飛鳥「それはそうと和哉さん。私に用があると仰ってましたが…」

和哉「ああ。その件についてだがもういい。孫にやらせる」

飛鳥「!!?」

和哉「精々楽しむんだな。文化祭」

飛鳥「それはそうと和哉さん」

和哉「何だ?」

飛鳥「…彼ら以外のクラスメイトが特別教室に監禁されていると聞きましたが」

和哉「ああ。オレがやった」

「!!?」

 

 和哉が飛鳥を見た。

 

和哉「お前としてはやり過ぎだ。と思うだろう」

飛鳥「そ、それは…」

和哉「だが、オレとしては目障りだ。身の程を弁えろと言いたい」

飛鳥「和哉さん。あの、ちょっと外で話しましょう。彼らが死んでしまいます」

 

 和哉が瞳孔を開くと、3人の男子生徒が心の底から恐怖した。

 

和哉「…それもそうだな。悪いが少し借りるぞ」

「ひゃ、ひゃい!!」

「お好きな通りに!!!」

 

 と、和哉は飛鳥を連れて行った。

 

 校舎を出てすぐのベンチに腰掛けた。

 

和哉「……」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は困惑していた。

 

和哉「慣れろ。顔の怖さで人を判断する奴らがどうかしてるんだ」

飛鳥「そ、そうですね…」

 

 絶対それだけじゃない。と飛鳥は思っていた。

 

 

 そんなときだった。

 

「ちょっと離してください!!」

 

 というリサの声がした。

 

飛鳥(なんでこんな時に!!!!)

和哉「…喧嘩か」

 

 和哉が立ち上がった。

 

飛鳥「あ、あの…和哉さん…」

和哉「分かっている。手加減はするさ」

 和哉がスーッと移動すると、飛鳥もついていった。

 

 少し移動すると、あこ以外のRoseliaが絡まれていた。

 

「いいじゃん。ちょっと遊ぼうよ」

「メイド喫茶やる前にちょっとつまみ食いさせてよ」

 と、下品な大学生たち4人組が友希那たちに絡んでいて、友希那たちが困っていた。

 

飛鳥「湊先輩たち…」

和哉「さて、お前ならどうする?」

飛鳥「そんなの超能力で…」

 その時だった。

 

リサ「あ、飛鳥くん!!!」

紗夜「逃げてください!!」

 と、気づかれてしまった。

 

和哉「さて、気づかれたぞ。どうする?」

飛鳥「…助けに行きます」

和哉「いいだろう」

 

 飛鳥が前に出た。

 

「あ? なんだお前」

「ヒーローのつもりかよ?」

飛鳥「私がヒーローなら、あなた方は悪役になってくれるんですか?」

「何だと?」

「かっこいいなぁ!!」

 と、DQN2人が絡んできた。

 

「舐めてんじゃねぇぞ!!」

 と、DQNの1人が飛鳥に殴りかかろうとするが、飛鳥が拳を受け止めて、そのまま投げ飛ばした。

 

「!!?」

「て、てめぇ!!」

 と、もう一人の男が持っていたビール瓶を飛鳥の頭にめがけてぶつけようとしたが、飛鳥がハイキックで気絶させた。

 

「!!?」

飛鳥(やべ! やり過ぎた!)

和哉「少しも衰えていないようだな」

「!?」

 

 和哉が喋ると、皆が和哉を見た。すると残りのDQNは

 

「う、動くな!!」

飛鳥「!?」

 

「こ、これ以上動いたらこいつらがどうなってもいいのか!!」

 と、完全に慌てて友希那たちを人質に取ろうとしていた。

 

和哉「どうなるって?」

 和哉が前に出た。

 

「動くなって言ってるだろ!!」

「ほ、本気だぞ!! 本気で…」

和哉「何故お前らの言う事を聞かなければならねェ」

「!!」

 

 和哉が殺気を出すと、飛鳥以外の全員が恐怖した。

 

和哉「それならば、お前らこそこれ以上オレの癇に障る事をしたらどうなるか教えてやる」

 和哉が更に殺気を放った。

 

和哉「明日から普通の生活を送れないように徹底的に潰す」

「……!!!」

 和哉が放つ殺気にDQN2人は心の底から恐怖して友希那たちを離していた。

 

和哉『行け』

飛鳥「!!?」

 和哉が飛鳥にテレパシーを送った。

 

和哉『何度も言わせるな。この状況で動けるのはお前だけだ』

飛鳥『は、はい!』

 

 と、飛鳥は友希那達をDQN達から引き離した。

 

和哉「さて、これで邪魔者はいなくなった」

 和哉がDQN2人に近づいた。

 

「ひぎぃ!!!」

「ゆ、許してくれぇ!!! まだオレ達は手を出してないじゃないか!!」

和哉「オレには歯向かっただし、言っただろう」

 和哉が更に殺気を放つと、DQN2人は気絶寸前だった。

 

和哉「オレに歯向かえば徹底的に潰すと」

 

 和哉がそう言いかけた次の瞬間、DQN2人は音を立てて糞尿を漏らした。見ていたギャラリーはDQN達に心の底から同情した。

 

「頭!!!」

 

 と、梅子たちが現れたが、いずれもいかつい連中ばかり。

 

和哉「悪いな。行儀の悪い奴らがいたものだから、少々注意していただけだ」

「締め上げましょう」

「そいつら、女を襲ったんですよね?」

和哉「そうだな。強姦しようとしていた。好きにするがいい。だが、こいつら2人は男にやらせた方が良い。失禁しているからな」

梅子「ええ。それはもう」

「ええー!!!」

蓮子「四の五の言わない!!」

 と、梅子たちがDQN達を連れて行ったが、DQN2人はまだ意識があった。

 

「ひぎィいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

「イヤダァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 梅子達に拘束され、連れていかれそうだった。

 

和哉「オレに喧嘩を売ったのが運の尽きだ。死ぬまで後悔しろ。連れていけ」

「へい」

「分かりやした」

DQN「わぁあああああああああああああああああああん!!!」

DQN「ママ―――――――――――っ!! ママぁあああああああああああああ!!!」

 

 恐怖のあまり、幼児退行してしまったDQNの悲鳴が学校中に響き渡った。その悲鳴は楽しかった文化祭の雰囲気を一気にぶち壊した。

 

飛鳥(完全に終わった…)

 

 飛鳥は静かに目を閉じた。

 

 

つづく

 



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第100話「どいつもこいつも狂ってやがる文化祭・完結編」

 

 前回までのあらすじ

 

 飛鳥の師匠・古堂和哉が色々やらかして、史上最大のピンチである。

 

飛鳥「後始末に困る!!!」

 

 果たして、飛鳥の運命は…。

 

********************

 

 和哉が友希那達に絡んでいたDQN達をぶちのめしたものの、あまりの恐怖に皆がドン引きだった。

 

飛鳥(オレも引いてる)

 

 しかし、飛鳥は友希那達を見つめる事にした。

 

飛鳥(多分今回の事で距離を置かれてるだろう。声をかけて駄目だったら、もう距離を置こう)

 飛鳥が前に出た。

 

飛鳥「先輩方。大丈夫ですか…」

 飛鳥が友希那達に近づこうとすると、友希那達は身を寄せ合って飛鳥を避けた。

 

飛鳥「そうですよね」

「!」

飛鳥「…残念ですが、もうここまでのようです。本当にすみませんでした」

「あっ…」

 その時だった。

 

「どうしたんだ!?」

「友希那ちゃん!!」

 と、男子生徒達がやってきた。

 

「一丈字!!」

「お前まさか!!」

飛鳥「安心してください。手は出してませんので」

「!!」

飛鳥「先輩たちをお願いします」

「えっ…」

 飛鳥が友希那達を見つめた。

 

飛鳥「失礼します」

「!!」

 そう言って飛鳥は走っていった。

 

 そして午後の時間がやって来た。飛鳥達はいつも通りホストの接客をしていた。友希那達に拒絶された事は傷ついたものの、飛鳥は最後までやり通した。ちなみに香澄たちは午後から当番に回っていた為、飛鳥のところに来ることはなかった。

 

 程なくして、文化祭は終わった。

 

飛鳥「……」

 机を元に戻すだけだったので、後片付けはすぐに終わった。

 

「あの、一丈字くん…」

飛鳥「皆さん。お疲れさまでした」

 飛鳥が4人の男子生徒を見つめた。

 

飛鳥「私は失礼させて貰いますね」

「う、うん…」

 そう言って、飛鳥は去っていった。

 

「……」

 

 5分後、

 

「あの…」

「?」

 

 友希那、紗夜、リサ、燐子が3組の教室に現れた。

 

友希那「一丈字くんは…」

「も、もう帰りましたよ…」

 男子生徒の声を聞いて、4人が顔を合わせた。

 

 その頃飛鳥はバスに乗っていた。

 

飛鳥(湊先輩たちは悪くない。いずれああなる運命だったんだ)

 飛鳥がバスに揺られて目を閉じていた。だが、脳裏におびえていた友希那達の姿が思い浮かんだ。

 

飛鳥(怖かっただろうなー。和哉さん…)

 その時、バスの動きがおかしい事に気づいた飛鳥。

 

飛鳥「!!?」

 

 その時、バスが道路から脱線し、そのまま横転した。

 

 

 その頃、友希那達は学校で落ち込んでいた。他のバンドガールもいた。

 

リサ「飛鳥くん…電話に出てくれないなんて…」

紗夜「やっぱり怒ってるんでしょうね…」

 と、Roseliaの4人が罰が悪そうにしていた。

あこ「そ、そんな事ないですよ! センパイ忙しいみたいですし、忘れてるだけですよ!」

 あこが必死にフォローすると、こころの携帯が鳴った。

 

こころ「携帯が鳴ったわ」

 こころが電話に出ると、

こころ「…えっ!!? 飛鳥が!!?」

 こころが衝撃を受けていると、他のメンバーも反応した。

 

こころ「場所はどこ!!? どこの病院に搬送されたの!!?」

 病院という言葉に、友希那達は青ざめた。

 

こころ「ダシマ病院ね! 分かったわ! すぐに車を出して頂戴!!」

 と、こころが電話を切った。

 

香澄「飛鳥くんどうしたの!!?」

こころ「バスに乗ってたみたいなんだけど、運転手さんが居眠りしてたせいで、バスが道から外れて転がって、大怪我して病院に運ばれたみたいなの!!」

 こころの言葉に皆が慄然とした。

 

友希那「……!!!」

リサ「友希那!!」

こころ「待って!!」

 

 友希那が走り出すと、リサとこころが止めた。

 

友希那「離して!!」

リサ「気持ちはわかるけど、病院の場所分かるの!!?」

友希那「……」

こころ「病院にはあたしが連れてってあげるわ!! だから落ち着くのよ!」

 

 と、皆で病院に行くことになった。

 

リサ「いや、ちょっと人数多い!!!」

香澄「だって気になるんですもん!!」

たえ「25人も載せられるって流石だよね」

有咲「そんな事言ってる場合か!!!」

美咲「まあ、こういう時頼りになるけどね…」

こころ「そんな事よりも飛鳥よ! 頭から血を流してたって言ってたから、きっと危ない状況よ…」

 

 こころが真剣にそういうと、紗夜が震えていた。

 

紗夜「私のせいよ…。私があの時避けたりしなかったら…」

日菜「お、おねーちゃん!! そんな事ないよ!!」

 

 ブツブツ言う紗夜に対して日菜が宥めた。

 

燐子「一丈字さんは助けてくれたのに…なんてことを…」

あこ「り、りんりんも落ち着いて!!」

友希那「……」

 友希那は俯いたままだった。

 

友希那「紗夜、リサ、燐子。そしてあこ」

「!!」

 と、友希那がメンバーの名前を言い放った。

 

友希那「もう慌てても仕方ないわ。飛鳥の無事を祈りましょう」

リサ「友希那…」

蘭「……」

 

 友希那は正面を向いて言い放つと、他のメンバーも何も言えなくなっていた。

 

 ダシマ病院

 

こころ「飛鳥はどこ!!?」

美咲「ちょ、こころ! 病院は静かにしなさい!!」

 

 25人が一斉に押し掛けると、患者や医者たちは何事かと見ていた。

 

「どうされました?」

こころ「飛鳥はどこ!?」

美咲「あ! ごめんなさい! ここに一丈字飛鳥っていう男の子が搬送されたって聞いたんですけど、ご存じないですか!?」

「一丈字飛鳥? あー。そういえばさっき来たねぇ」

美咲「病室どこですか?」

「今、面会謝絶なんだよ」

 

 医者の言葉に皆が青ざめた。

 

彩「そ、そんなに酷いんだ…」

紗夜「……」

日菜「お、おねーちゃん!!」

彩「ご、ごめん!!」

 

 彩の言葉に紗夜が過呼吸になると日菜と彩が慌てた。

 

「いや、彼のお見舞いに来ていた人達が、人を入れないでほしいと…」

 するとリサが気づいた。

 

リサ「もしかして、とても目つきの悪い男の人がいませんでしたか!?」

「ああ、そういやいたねぇ。他の患者さんが怖がるから早く帰ってほしいんだけど…」

「誰が怖いって?」

「ひきィ!!?」

 和哉が医者の肩を置くと、医者は驚いて飛び跳ねた。

 

友希那・リサ・紗夜・燐子「!!!」

アフグロ「!!!」

 和哉の登場に友希那達は震えると、和哉が友希那達を見つめた。そしてAfterglowも驚きを隠せなかった。

 

和哉「また会ったな。そして…後ろにいる5人組も。確かバンド名はAfterglowだったな」

蘭「あ、あんた…!!」

 蘭達も改めて和哉の異質さに震えていた。

 

こころ「和哉!!」

「!!?」

 こころの言葉に皆が驚いた。

美咲「こ、こころ知り合いなの!!?」

こころ「あっ…」

和哉「弦巻財閥で仕事をしていたことがあって、それからの付き合いだ」

 和哉がバンドガールズを見つめた。

 

こころ「そ、それよりも飛鳥はどこ!!? 怪我は!?」

和哉「心配は無用だ。全身を強打して、頭から出血はしたが命に別状はない」

「めっちゃ重傷やん!!!」

 皆が突っ込むと、友希那が前に出た。

 

友希那「ごめんなさい!」

「!!」

 友希那が涙声で頭を下げた。

 

友希那「私達が彼を避けたせいで…」

和哉「何を言っている」

友希那「!?」

和哉「あいつがお前たちを避けたからこうなったんだ。くだらねェ心配をしたもんだ」

「!!」

 

紗夜「く、くだらないって…!!」

和哉「恐怖を抱いていたのは、その時だけだろう」

リサ「え、ええ…」

和哉「それをあいつは完全に拒絶したと勘違いしていた。自業自得だ」

 と、和哉は厳しくばっさり切り捨てた。

和哉「とはいえ、最初から開き直っているようなら、お前たちもあの不良共と同じように始末してやる所だったがな」

 和哉が殺気を放つと、Roseliaは完全に硬直し、他のバンドメンバーも恐怖した。こころを除いて…。

 

こころ「和哉! そんな意地悪言わないの!」

美咲「お願い辞めて!!! あれだよね!!? この人完全にあれだよね!!?」

 

 こころの言葉に美咲が涙目で止めた。

 

香澄「そ、それだったらどうして面会謝絶にしてるんですか!?」

和哉「うるさい鼠共が嗅ぎつけてくるからな…」

(言葉選びがいちいち怖い!!!)

 

たえ「この病院…そんなに鼠が多いんですか?」

有咲「本気で黙って!! お願いだから!!」

 

 たえの天然がさく裂して有咲が突っ込んだ。

 

和哉「ああ。多いぜ。一匹一匹始末するのも大変だ。まるで人間みたいにでかいのもいるからな…」

有咲「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 和哉が目を開いてそういうと、有咲がブツブツ言いながら土下座して謝った。しかも涙目だった。

 

「和哉さん!! 何やってるんですか!!」

香澄「飛鳥く…」

 

 飛鳥の声がしたので、香澄が声をかけようとしたが、包帯だらけの飛鳥がやって来た。右目と、左頬にガーゼを張っている。

 

飛鳥「あれ? 皆さん。こんな所で何してるんですか?」

「……!!」

 

 飛鳥の痛々しい姿にバンドガールズは言葉を失っていた。

 

飛鳥「あ、湊先輩、氷川先輩、今井先輩、白金先輩。本当に申し訳ございませんでした」

 飛鳥が頭を下げて謝ったが、友希那達が震えていた。

 

飛鳥「私が全部悪かったんですよ。ちゃんと湊さん達の事を信じなかったばかりに、こうなってしまったんです」 

 その時だった。

 

リサ「そんな事ない!!!」

飛鳥「!」

 リサが叫んだ。

リサ「本当にごめん!! あたし達のせいで…」

飛鳥「今井先輩…」

紗夜「そうです。元はといえば…」

飛鳥「……」

 飛鳥が口角を下げた。

友希那「そうね。けじめをつけなきゃRoseliaの名が廃るわ。あなたが望むなら…解散も受け入れるわ」

「!!?」

あこ「ゆ、友希那さん!!」

友希那「そうなったらあこ、悪いけど他のバンドを探して頂戴。他のバンドに示しがつかないわ」

 友希那の言葉に蘭が険しい表情をした。

 

友希那「4人で話し合って決めたのよ。何でも言って頂戴」

飛鳥「それだったらお願いしたいことがございます」

友希那「何かしら」

 

 飛鳥はこう言った。

 

飛鳥「漫才やってください」

 

 飛鳥の発言に空気が止まった。

 

「…は?」

飛鳥「それが出来なければ、別にいいです」

リサ「いや、ちょっと待って。何で漫才?」

飛鳥「やって頂けたら分かります」

 4人が顔を合わせた。

あこ「あ、それだったらあこもやる!! あこもRoseliaの一員だもん!!」

 

リサ「そ、そんな事急に言われても…」

和哉「……」

リサ「是非やらせて戴きます」

 

******************

 

飛鳥「それでは、ダシマ式BanG! Dream「全バンド一貫! バンドリ学園 エンドレス」100回目を記念して、Roseliaによるグループ漫才です。どうぞ!」

 

 と、とある一室でRoseliaの漫才が行われる事になった。ちなみに和哉は帰った。

 

リサ「どーもー。Roseliaでーす」

あこ「Roseliaでーす!」

 5人全員が出てきた。リサとあこが盛り上げようとするが、友希那、紗夜はクールに、燐子は少したどたどしく出てきた。

 

リサ「えーいつもバンドやってるRoseliaだけど、たまには趣向を変えて漫才でもしようかなーと思ってるんですけどもねー」

友希那「リサ」

リサ「何?」

友希那「バンドしたいのだけど」

リサ「アタシの話聞いてた? 漫才しようって言ってるのにバンドやりたいって話の流れおかしいでしょ」

紗夜「今井さん」

リサ「なに?」

紗夜「湊さんがこう言ってるんですよ。バンドをやりましょう」

リサ「いやいや、楽器ないのにどうやってバンドすんの。準備するの時間かかるし、お客さん待たせちゃうよ!?」

あこ「じゃあエアバンド!!」

リサ「それ練習にならないと思うよー」

友希那「……」

リサ「何でそこで真剣に考えるの? バンドやれたらエアでもいいの?」

友希那「…ないわね」

リサ「いやいや。ちゃんと漫才やろうよ。燐子も何かしゃべって!」

燐子「は、はい…」

 燐子が困惑した。

 

リサ「そうだ! それじゃ折角だから話を振るよ。いやー、秋真っ盛りというか、秋と言えばスポーツの秋、食欲の秋、スポーツの秋だね~」

友希那「2回言ってるわ」

紗夜「芸術の秋です」

燐子「読書の秋です…」

あこ「なんでやねん!!」

リサ「バラバラ!!!」

 

 リサのツッコミに観客たちが大笑いした。

 

リサ「あの、ツッコミは正しいけど、一つに統一して!」

あこ「あ、あこボケやりたーい!!」

リサ「私達4人で突っ込めばいいのね。分かったわ」

あこ「えっと…。我が名は宇田川あこ。またの名を…ダークアルティメットダイヤモンドダスト!!」

友希那・紗夜・リサ・燐子「……」

あこ「突っ込んで!!!」

 4人が同じ方向を見て視線をそらすと、あこが突っ込んだ。

 

あこ「突っ込んでよー!!」

友希那「そのノリにはついていけないわ」

紗夜「ダークアルティメットダイヤモンドダストって何ですか」

リサ「好きだねー」

燐子「な…な…なんでやねん!!/////」

あこ「突っ込んだ!!」

 

 と、数分くらい漫才をやった。

 

飛鳥「えー。本当にありがとうございました」

モカ「飛鳥くん本当に大丈夫~?」

飛鳥「大丈夫」

 

 

おしまい

 



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第104話「もしもバンドリ学園にとてつもないイケメン達がいたら」

 

 

『VS イケメン軍団』

 

 ここはバンドリ学園。花咲川女子学園と羽丘女子学園が統合し、男女共学になった学校である。決して原作通りにやると、片方の学校を選ぶと偏りがちになるから統合させちまおうと考えたわけではない。

 

 そしてこの学園にはイケメンが5人いた。いずれも絵にかいた王子様という感じだった。

 

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」

「ちょ、長い長い!!!」

「どこで息継ぎしてんの!!?」

 

 食堂で、女子の黄色い歓声が鳴り響いていた。そしてその中心人物には…。

 

「オレらモッテモテだな!」

「調子に乗んな」

「……」

 

 5人の男子生徒達がいた。

 

「おい、あいつら…」

「ああ。オレらと同じで一般公募で来た奴らだろ…」

「あんな顔がいい奴が来るなんて聞いてねーよ…」

「他所行けや他所…」

 

 と、一般男子生徒達は僻んでいた。

 

 ちなみに登場人物紹介

 

年土 麒麟(としづち きりん) … 無口。

春木 青龍(はるき せいりゅう) … ストイックで厳格な性格。

夏火 朱雀(なつび すざく)  … 長髪でクールタイプ。青龍の側近的存在。

秋金 白虎(あきがね びゃっこ) … ムードメーカーでお調子者。

冬水 玄武(ふゆみ げんぶ) … ツッコミ体質。

 

 麒麟が3年生、それ以外が2年生。

 

「…あの人たち、すごく人気ですね」

「そうね!」

 

 飛鳥とこころが人だかりを見ていた。

 

こころ「きっとすごい人たちなのでしょうね!」

飛鳥「…そうじゃなきゃ、ああやって集まったりしませんもんね」

 

 と、特に話しかけたりもせずに去ろうとした。

 

飛鳥「まあ、今回はいちゃこらしてるとか言われそうにもないね」

「いや、いちゃこらしてるだろーが!!」

「こころちゃん!!!」

飛鳥「……」

こころ「いちゃこらって何かしら?」

飛鳥「イチャイチャは分かります?」

こころ「イチャイチャって恋人同士がする事でしょ? あたしと飛鳥は付き合ってないわ?」

飛鳥「ほら、こう言ってるので心配する必要は何一つございませんよ」

「いや、お前はお前でそれでいいの!?」

飛鳥「え? なんか問題でも?」

 と、飛鳥が首を傾げた。

 

こころ「でもイチャイチャってとっても楽しい事なのよね!」

飛鳥「楽しいかもだけど、そんな理由で人とお付き合いしちゃダメですよ。さあ行きましょ」

 と、飛鳥が強制的に話を終わらせた。

 

「……」

 

 黄龍達は飛鳥とこころを見つめていて、飛鳥も察知していた。

 

飛鳥(……?)

 

 放課後。飛鳥は即座に教室を出た。ちなみに校舎は4階建てであり、4階が1年生の教室、3階が2年生の教室、2階が3年生の教室になっている。

 

飛鳥(嫌な予感がする。早く帰ろう)

 と、飛鳥が存在感を消して、階段を下りて行ったその時だった。

 

「てめぇふざけんなよ!!」

 

 という男子生徒の怒声が聞こえた。

 

飛鳥(あんたがふざけんなって話だな)

 飛鳥は超能力で何が起きているか感知した。どうやら男子生徒達が青龍達にいちゃもんをつけていたのだが、女子生徒達にボコボコにされていた。

 

「あんたがふざけんじゃないわよ!!」

「顔だけじゃなくて中身も不細工なら救いようがないわ!!」

「この学校で彼女が出来ると思わない事ね!!」

「うわーん!! こんなのありかよ~~~~~!!!!」

 

 飛鳥は静かに目を閉じた。

 

飛鳥(完全に女の人が強い時代となったな…)

 

 そう思いながら飛鳥は去っていった。

 

 この後もイケメン軍団の無双は続いていき、飛鳥は完全に片隅に追いやられていた。

 

飛鳥(仕事が増えた)

 イケメン軍団の登場により、友希那達に彼氏が出来たんじゃないかという外部のヤラカシが色々やらかしたのもそうだが、イケメン軍団目当てに他校から出待ちの女子生徒達が来るようになった。

 

モカ「男の子も女の子も考える事が一緒だってよく分かったね~」

飛鳥「そうだね。弦巻さん」

こころ「なにかしら?」

飛鳥「悪いんだけど、ちょっと弦巻家の人に何とかしてもらえるように頼んでくれない?」

こころ「任せて!!」

 

 と、ある程度何とかなった。

 

モカ「えー。それでいいのー?」

飛鳥「いいよ。もし仮にオレの立場だったらどうする?」

モカ「同じことしてる~」

飛鳥「だよね」

 

 モカの言葉に飛鳥は静かに目を閉じた。

 

飛鳥「それはそうと、モカたちはああいうイケメンに興味ないの?」

モカ「興味ないし、蘭がライバル意識燃やしちゃって…」

飛鳥「ああ…」

 

 何となく想像できた飛鳥は苦笑いした。

 

おしまい

 



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第128話「もしも飛鳥が羽丘に転校してきたら」

 

 

飛鳥「遂に恐れていたことが現実に」

 

 飛鳥は羽丘女子高校に転入することになった。理由としては、羽丘女子高校も男女共学の話が出ていて、ちょーっとお試しで男子を入学させたいので、手伝ってくれませんか? という依頼だった。ちなみにこころとはこの時顔なじみではないが、いずれ知る事になる。

 

 ちなみに羽丘の生徒

2年A組:リサ、日菜、薫

2年B組:友希那、麻弥

1年A組:蘭

1年B組:モカ、ひまり、巴、つぐみ

中等部:あこ

 

 

 はて、どうなります事やら…。

飛鳥(オレが一番思ってるよ)

 

***************

 

 ちなみに転校してくるのは飛鳥だけではなく、転入してくるのは飛鳥を含めて6人の生徒だった。他の男子生徒達はバンドガールズがいるクラスに配属されたが、飛鳥は1年C組に転入させられていた。

 

飛鳥(C組なんて原作にあったかな…?)

 

 元々羽丘の女子生徒はレベルが高いという事で、バンドガールと同じクラスになった男子生徒達はウハウハのムホムホだった。まあ、そんなこんなでいつかはハーレムを作ろうとしていて、他の男子生徒は皆ライバルで、いかに蹴落とそうか考えていた。

 

飛鳥(死亡フラグ立てまくり)

 

 ちなみに配属先

 

2年A組:男子生徒A

2年B組:男子生徒B

1年A組:男子生徒C

1年B組:男子生徒D

中等部:男子生徒E

 

A(オレはこの学校でハーレムを作ってみせる!)

B(まず手始めに両手に華だ…)

C(一人しかいねぇが、親密度を上げれば他の4人も釣れる!!)

D(4人とこっちが多めだ!)

E(中等部の生徒はオレが全部頂いた!!)

 

 などと、下心丸出しで股間が何か反応していたのは言うまでもない。もちろんバンドガールがいない飛鳥の事は眼中に…

 

A(あいつには気を付けなければ!!)

B(油断してたらこいつがハーレムを奪ってしまう!!)

C(もう引き立て役は嫌だ!!)

D(確かモカちゃんと仲が良かったから、モカちゃんを引き留めないと!)

E(中等部の生徒はオレが全部頂く!!)

 

 めっちゃ目の敵にされていた。

 

飛鳥(完全に女性をものとして見てやがるな…。強制わいせつをしようとしてる時以外は、スルーで行こうかな…)

 と、飛鳥はノータッチで行く事にした。

 

****************

 

 そんなこんなで学校生活が始まり、飛鳥以外の男子生徒は予定通り友希那達にアプローチをかけることにして、飛鳥はノータッチだった(クラスメイトとはある程度交流を取っている)。

 

飛鳥(まあ、自分たちの事で忙しいだろうし、湊先輩たちが良いならそれで良いんだ。ていうか、それを見守るのがオレの役割だしな…)

 と、飛鳥が静かに目を閉じて、黙々と本を読んでいた。

 

 1週間後。

 

A「そういう事があったんだよー」

リサ「へー」

 と、A達はリサたちと仲良くなり始めたが、飛鳥はそれでもまだ動く様子はなかった。

飛鳥「何もしてないからね」

 飛鳥はいつも通り、黙々と本を読んでいた。クラスメイト達との関係は悪くはないのだが、飛鳥は自分からは喋らない為、ある程度の距離は保っていた。

 

 

 だが、やっぱり事件は起きるのだった…。

 

「ちょっとやめてってば!」

「そんな事言わないで。ね?」

 

 蘭と男子生徒Cが揉めていた。

 

C「今度の休み、どこかに行こうっていっただけじゃん」

蘭「だからアンタとは行かないって言ってるでしょ!」

 

 事の顛末はこうだ。転入してからCは蘭にアプローチをかけてきたのだが、あまりにもしつこく迫っていた為、蘭は鬱陶しがっていたのだ。ただアプローチをかけてくるならまだしも、Afterglowの事よりも自分の事を優先するように言ってきたのだ。バンド活動をしたい蘭にとっては出来ない案件で、自分の事は諦めるようにCに言い聞かせたのだが、粘着してきたのだ。

 

C「そんな事言わないでさあ。1回だけでいいから! ね?」

蘭「……」

 

 全く諦めないどころか、誘ってくる様子に狂気を感じ、蘭は泣きそうになっていた。そしてそれを飛鳥が通りかかった。

 

飛鳥「!?」

蘭「!!」

 飛鳥が異変に気付いて、蘭とCに近づいた。

 

飛鳥「何されてるんですか?」

蘭「!」

C「てめぇ! 邪魔すんじゃねーよ!! こいつはオレのもんだ!! てめぇはその辺の女の相手してろ!!」

 と、Cが吠えた。

 

飛鳥「いや、まだ何も言ってないじゃないですか…」

 飛鳥が困惑した。

C「いっつもいっつも蘭達といちゃこらしやがって…」

飛鳥「ただ世間話してるだけなんですけどねぇ…。それよりも美竹さん、嫌がってませんか?」

C「うるせぇ! お前は黙ってろ!!!」

 Cが叫んだ次の瞬間、蘭が走り出した。

C「あっ!!」

 そして蘭は飛鳥の手を引っ張ってそのまま逃げだした。

 

C「待てぇコラ!!」

 Cが追いかけてきた。

 

蘭「しつこい…!!!」

飛鳥「……」

 蘭と飛鳥がCを横目で見ると、飛鳥は真剣な顔つきになった。

 

 そして校舎を出たが、Cは相変わらず追いかけてきていた。

 

蘭「追いつかれる…!!」

飛鳥「美竹さん」

蘭「?」

 すると、飛鳥が強く引っ張って蘭を持ち上げるとそのままお姫様抱っこをした。

 

蘭「!!?//////」

飛鳥「しっかり捕まっててください」

 と、飛鳥が猛スピードで走った。

「!!?」

C「ま、まてぇ…」

 Cも流石に追いつけなくなったのか、苦しそうにしていた。

 

 そして曲がり角で曲がると、蘭を降した。

 

飛鳥「すみませんね」

 すると飛鳥がスマホを操作した。

蘭「……」

飛鳥「このまま走って逃げてください。私があいつを足止めしておきますので。頼みましたよ」

蘭「ちょっ…!!」

 

 飛鳥がそのまま去っていき、Cの前に姿を現した。

 

C「て、てめぇ…!!」

飛鳥「強引なやり方はよくありませんよ」

C「うるせぇ!!! またそうやって蘭達の好感度を上げていちゃこらすんのか!!」

飛鳥「ご冗談を。もうあれは男性が苦手になってもおかしくありません」

 飛鳥が首を横に振った。

飛鳥「色々言ってくれますけど、世の中そんなに甘くありませんよ」

C「うるせぇ…うるせぇうるせぇうるせぇ!!!」

 と、Cが叫んだ。

 

飛鳥「それに、私があなたと同じように美竹さんを誘っても、結果は同じですよ」

C「そんな筈はねぇ!!」

飛鳥「いいえ。そんな筈はあるんです。美竹さんは友達を大切にする人ですから」

「!!」

飛鳥「そして同じように、Afterglowとして頂点に立つという夢も持っている。それを邪魔しちゃいけませんよ」

C「そ、そんなきれいごとを…!!」

飛鳥「口で言っても聞きそうにないのでこれ以上は言いませんけど、また同じ事をするようであれば、全てを失いますよ」

 飛鳥が周りを見渡すと、女子生徒達が見ていたが、そのまなざしはCを軽蔑したり、失望したりする眼差しだった。

 

飛鳥「これ以上は何もいう事はございません。それでは」

 そう言って飛鳥は去っていくと、Cは崩れ落ちた。

 

*****************

 

モカ「聞いたよ~。蘭を助けてくれたんだって~?」

飛鳥「……」

 

 蘭だけではなく、モカ、ひまり、巴、つぐみとも仲良くなっていた。

 

モカ「ちなみにDくんなんだけどね~。モカちゃん達のグループにやたら入ってこようとして、皆から顰蹙買ってたよ~」

飛鳥「…そうですか」

ひまり「それに…私の胸、嫌らしい目で見てたし」

飛鳥「……」

巴「まあ、女子校だから仕方がないとしても…な」

つぐみ「うーん…」

 飛鳥が額を抑えた。というのも、教室の外でCとDが悔し涙を流していた。

 

C「一丈字の奴~!!!」

D「結局こういうオチかよ~!!!!」

 

蘭「ほっとけばいいのよ。あんな奴ら」

飛鳥「……」

 

 蘭がばっさり言い放つと、飛鳥は静かに目を閉じた。

 

 

おしまい

 



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第134話「BANG DREAM GT」

 

 

 究極の〇ラゴンボールで子供の姿になってしまった飛鳥。

 

『願いはかなえた。それでは、さらばじゃ!!』

「ま、待て!! こいつを子供にしたらコテンパンに出来るって言っただけで、実際に子供にしてほしいわけじゃ…」

『さらばじゃー!!!』

 

 そう言って赤い龍は消えて、7つのボールはどこかに飛んでいった。

 

「ゆ、友希那ちゃん達にモテモテになるっていうオレ達の夢が…!」

 男子生徒達が膝から崩れ落ちて、目の前にいた飛鳥は困惑していた。

 

「ま、待て! こんな姿じゃモテないぞ!!」

「背が小さい男は恋愛対象にならないって言うしな!!」

「そうだな!!」

「そうか!! へへーんだ!! ざまーみろ一丈字!!」

飛鳥「……」

 

 どんだけ戸山さん達にモテたいんだよ…と、飛鳥は困惑した。

 

飛鳥(その前に皆、オレだって信じて貰えるかな…)

 

*************

 

「大変だったね。一丈字くん…」

飛鳥「そうなんですよ」

 

 3組の教室で飛鳥がクラスメイトと普通に話をしていた。3組の生徒は最初は驚いていたものの、今までの事があるからあまり驚かなかったが、ついにここまで来たか…と思っていた。

 

 そんなときだった。

 

「ねえねえ!! 飛鳥くんが小さくなったって本当!!?」

 

 香澄を筆頭にPoppin’partyが現れた。

 

飛鳥「あ、戸山さん」

香澄「……!!」

 

 飛鳥の姿を見て、香澄達は衝撃を受けた。

 

飛鳥「体が小さくなったせいで、声も高くなってしまったんですよ…」

香澄「か…」

飛鳥「?」

香澄「かわいい~~~~~!!!!」

 

 香澄が飛鳥に詰め寄った。

 

香澄「本当に飛鳥くん!!? とっても可愛い~!!」

飛鳥「あ、そうですか…。戸山さんの方が可愛いですよ」

香澄「もー! お上手なんだからー!」

 

 飛鳥が助けてと言わんばかりに有咲たちを見ると、たえは無表情、りみは頬を染めてオロオロしていて、沙綾は苦笑いして、有咲が呆れていた。

 

飛鳥「どうされました?」

有咲「お前…小さくなっても相変わらずだな」

飛鳥「え? 戸山さんに可愛いって言われたいんですか?」

有咲「そうじゃねーし!!///////」

香澄「大丈夫だよ~。有咲も可愛いから~」

有咲「か、可愛いって言うなーッ!/////」

 

 香澄が可愛いというと、有咲が顔を真っ赤にした。

 

沙綾「可愛いよ有咲」

りみ「かわいい…」

たえ「예뻐요」

有咲「韓国語にしてもダメ!!!////// ていうかよく知ってたな!!!///////」

 沙綾、りみ、たえが続けて言うと、有咲が両手をぶんぶん回した。3組の生徒も言葉には出さなかったものの、有咲の事を可愛いと思っていた。

 

(かわいい)

 

有咲「そ、そんな事よりも一丈字だろ!! 元に戻りそうなのか!!?」

飛鳥「うーん…。この話の流れだと、ボールを7個集めないといけないみたい」

 

 その時だった。

 

「一丈字さんっ!!」

 

 紗夜が血相を変えて現れた。

 

香澄「紗夜さん!」

たえ「そういや最近出番多いですよね」

紗夜「そんな事は今はいいです!! それよりも早くボールを探しますよ!!」

飛鳥「え、何かあったんですか?」

紗夜「あのボールは今日中に7つ全部集めないと、何故かRoseliaのスリーサイズをバラされるんですよ!!」

飛鳥「えー…」

 

 紗夜の言葉に飛鳥が困惑した。

 

紗夜「どうして私たちが…」

たえ「紗夜先輩がそうやって良いリアクションをしてくれるからじゃないですか?」

 紗夜がたえを見た。

有咲「出番が多いのもひょっとして…」

紗夜「と、とにかく行きますよ!!」

香澄「あ、それはそうと小さくなった飛鳥くん。どう思いますか?」

紗夜「!?」

 

 紗夜が飛鳥を見た。

 

飛鳥「戸山さん。別に何とも思いませんよ」

紗夜「……!!」

 

 紗夜が小さくなった飛鳥の姿を見て、小さい頃の日菜を思い出した。そして、劣等感から妹を避けていた時の事を想いだした。

 

飛鳥「…紗夜先輩?」

紗夜「い、今は日菜の事はいいんです! 早く行きますよ!」

飛鳥「うおっ!!」

 と、紗夜が飛鳥を連れ出した。

 

飛鳥「そういや他の人たちはこの事を知ってるんですか!?」

紗夜「知ってます! 湊さんや今井さん、白金さんにも探すのを手伝ってもらってます! Pastel*Palletesは今日仕事でいないので…」

 

 

 そしてなんやかんやで7つ全部集めて、グラウンドに21人が集まった。

 

モカ「わ~。飛鳥くん本当に子どもになっちゃってるね~」

飛鳥「そうなんですよー…って、何か随分嬉しそうですね」

モカ「よしよーし」

 モカが飛鳥の頭をなでると、横目で羨ましそうに男子生徒達が見ていた。

 

飛鳥「だいぶ羨ましがってますね…」

モカ「じゃあ抱っこもしちゃう?」

飛鳥「煽るスタイル!!」

蘭「モカ!!」

 

 あえて男子生徒達を煽ろうとするモカに対して、飛鳥がツッコミを入れると、蘭も諫めた。

 

巴「それにしてもあこを見てるようだな…」

飛鳥「そうですか?」

あこ「あこの方が背が高いね!」

飛鳥「そうですね」

はぐみ「かわいー!」

 と、あことはぐみに冷やかされると…。

 

「オレもあこちゃんやはぐみちゃんにあんな風に言われてぇよぉおおおおおおおお!!!」

「いいなぁああああああ!! 一丈字いいなぁあああああああ!!!」

 

 男子生徒達が血の涙を流していると、飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「それで、ボールを元に戻せばいいんですよね。どこにしまうんですか?」

紗夜「先生に預けてきます」

 

 その時だった。

 

「おーっと!! そうはいかないぜ!!」

 

 と、男子生徒達が立ちはだかった。

 

「!?」

「そのボールはオレ達が預からせてもらう!!」

こころ「どうして?」

「氷川さんのスリーサイズを知りたいから」

こころ「ボールを元に戻さないと飛鳥が元に戻らないのよ?」

モカ「そうだよ。本人に聞けばいいじゃん」

紗夜「絶対に教えません!!//////」

美咲「ボールは黒服の人に預ければいいんじゃない?」

こころ「それもそうね!」

 と、こころが黒服にボールを預けようとしたが、男子生徒達が強奪しようとしたが、更に多数の黒服が現れて、全員取り押さえられた。

 

「ちくしょー!!」

「せめて氷川さんのおっぱい触りたい…」

紗夜「破廉恥です!!!!//////」

 

 そんなこんなでボール問題は解決したが、飛鳥は元に戻らなかった。

 

飛鳥「…あれ?」

 

 飛鳥は困惑した。

 

飛鳥「これ、どうやったら元に戻るの?」

モカ「うーん…これはやっぱりお願いして元に戻してもらうしかないねー」

飛鳥「……」

紗夜「し、仕方ないですね。また一緒に探してくださいよ!」

飛鳥「あ、はい」

 

 と、弦巻家で龍を呼び出して元に戻してもらいましたとさ。

 

飛鳥「弦巻家でボールを探すことになったけどね!!!」

はぐみ「広すぎて見つからないよ~!!!」

紗夜「皆さん!! 急いでください!!!」

 

 時間が来たので、紗夜のスリーサイズは上から…

 

紗夜「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 

 おしまい

 

 



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第164話「もしもPastel*Palletesがチョロかったら」

 

 

 一丈字飛鳥です。私は今、『Pastel*Palletes』というアイドルバンドグループの握手会の会場にいます。散歩してただけなんですけど、近くで握手会をやってたんですね。握手会なんてあまり見た事ないから、興味本位で行ってみました。入場料もただだったので…。

 

 ですが、それが運の尽きだったのか、早速事件が起きたんですね。一人のおっさんがベースを務めている白鷺千聖さんという方といつまでも話してるんですね。警備員さん…というかはがしの方がそのおっさんを取り押さえるんだけど、格闘技の経験があるのかそれはもう見事な裏拳で大人しくさせるんですよ。で、何事もなかったかのように話しかけるので、皆怖がってるんですね。

 

 誰かが叫んで注意しても無視だし、皆どうすればわからないんですね。

 

 ここは早い所超能力で…。

 

「おい!! いい加減にしろこの税金泥棒!!!」

「…あ?

 

 私の隣にいた爺さんが叫ぶと、おっさんがこっちを睨みつけてきた。税金泥棒?

 

「…って、この子がいっとったぞ!!」

 

 これを見ている高齢者の皆さん。若者を労わって下さい。

 

「何だとこのクソガキ…私を誰だと思っている!!」

 

 まあ、これで白鷺さんから完全に離れて私に突っかかってきたので、これがチャンスですね。爺さんいつの間にか逃げてるし。

 

飛鳥「そんな事は言ってませんけど、他の皆さんに迷惑なのでやめて頂けないか…」

 

 私がそう言いかけた時、やっぱりおっさんは攻撃を仕掛けてきた。私も格闘技経験者なので、それを簡単に受け止めて、おっさんが振りかけてきた拳を離さない。

 

「!!」

 

 そして私は様子を見て、動けそうな人を探した。

 

飛鳥「あ、すいません」

「!?」

飛鳥「あそこにうずくまってる警備員さんを介抱して貰えませんか?」

「はぁ!? なんでオレが…」

「いいからさっさとやらんか!! 近頃の若いもんは!!」

 

 爺さん、色々突っ込みたいけどグッジョブ。

 

「ぐっ…離せぇ!!」

飛鳥「そういう訳にはいきませんよ」

「そうじゃ!! そのまましっかり取り押さえておけ!! わしが警察に通報する!! そう、このわしが!!」

飛鳥「……」

「フン…。私は国会議員だぞ。逮捕などできるものか!!」

 

 数十分後

 

「離せぇ!! 私は政治家だぞ!!」

「うるさい!!」

「あ、大臣がお前クビだって」

 

 おっさんは警察官にあっさり捕まっていた。国会議員は国会議員でも、そんなに偉い人じゃなかったのね…。

 

「だーはははは!! 正義は必ず勝つのじゃあ!!」

「じーさん! また人に迷惑をかけて!」

 

 ぬか喜びする爺さんを、奥さんらしき女性が叱っていた…。多分ずっと苦労してたんだろうな…。

 

 さて、騒ぎになる前に皆と合流しないと。存在感も消しとこう…。

 

「おお、そうじゃ!! そこのお前!!」

「?」

 

 爺さんが私に話しかけてきた。そうですよね。超能力で逃げてたらお話になりませんもんね…。

 

「若いのに大したもんじゃ! まあ、わしがけしかけたけどな!!」

「爺さん!!」

 

 するとおばあさんが私の顔を見て申し訳なさそうにした。いや、そんなに申し訳なさそうにされると、こっちも申し訳なくなります…。

 

「…ごめんなさいねぇ。うちの主人が」

飛鳥「いえいえ。最終的にあの人たちも助かったみたいですし、私はここで失礼させていただきますね」

「あ、あの!!」

 

 おっと、パスパレの人たちもやってきた。

 

「助けて頂いてありがとうございました…」

 

 白鷺さんが頭を下げた。

 

飛鳥「あ、いえ。お気になさらず」

「わしが声をかけたんじゃ。わしにも…」

「爺さん。これ以上年寄りのイメージを下げるんじゃない! さっきの政治家と同じじゃないか!」

 

 …確かにこの爺さんが声をかけなかったら、超能力で何とかしてたんだけど、うーん…。

 

飛鳥「それではここで失礼させていただきますね」

 

 私は逃げるように去ろうとした。

 

「待たんか!!」

「あ、えっと。お名前だけでも!!」

 

 ボーカルの丸山彩さんが私に話しかけてきた。まあ、ここで黙っていなくなるのも失礼なので、一言だけ言って帰ろう。振り向いて…。

 

飛鳥「ごめんなさい。名前は名乗れません」

「!」

飛鳥「私の事は忘れて、前に進んでください。それでは!」

 

 何とかそれっぽい事を言って、その場を後にした。今頃何だったんやあいつみたいになってるだろう。まあ、それが良いよね! だって、アイドルと仲良くなっちゃったら色々大変だし…。あ、私の語りはここで終わります。

 

「……」

 

 飛鳥がその場を後にすると、皆が唖然としていた。

 

「何だったんじゃあいつは…」

「私からみたら爺さんが一番何なんですか。あなた達も大丈夫…」

 

 老婆がパスパレを見つめると、メンバー全員の顔が赤かった。

 

それに対して老婆は赤い理由に気づいてほっこりしていた。爺さんも気づいて…。

 

「あの男…若い頃のわしにそっくりじゃ」

「若いころから爺さんの事を知ってますけど、真逆よ」

 

飛鳥「ふぅ…」

 

**************************

 

 時は流れて…。

 

飛鳥(同じ学校の先輩と同級生だったんだ…)

 飛鳥は学校でパスパレ全員を見かけてぎょっとしたが、当時かけていなかった眼鏡をかけて髪型も多少変えて地味な感じにし、ダメ押しで自身の印象も超能力で調節している為、パスパレに気づかれないだろうと思っていた。

 

 気づかれはしなかったものの、困った事になっていた。

 

「なにぃ!!?」

 クラスメイトがパスパレが表紙を飾っている雑誌を見つめた。

 

「どうしたんだよ」

「パスパレに好きな人がいますかっていう質問で、全員此間の握手会で助けてくれた男の人って答えてたんだよぉ!?」

「何だとぉ!!?」

 

 あ、これオレかなと思ったが、ワンチャン別の会場の握手会で全く同じことが起きた可能性があるので、希望を捨ててはいけないと自分に言い聞かせて飛鳥は本を読んでいた。

 

「どこの握手会だよ」

「〇〇公園!!」

 

 …間違いなくオレや。と飛鳥は思った。

 

「くっそ~!! どこのどいつだぁ!!?」

「ていうかアイドルが好きな人公開していいの…?」

「良くないけど、それでも可愛いんだよちくしょ~!! どこのどいつだぁ!!?」

飛鳥「……」

 

 

 絶対に黙っとこ。と飛鳥はそう思い、また本に目を通し始めた。

 

 

 

おしまい

 

 



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第165話「もしもPastel*Palletesがチョロかったら・2」

 

 

 一丈字飛鳥です。超能力が使えること以外はごく普通の高校生なんですが、最近色々と何か無理があるんじゃね? という事で『自称:ごく普通の高校生』になりつつあります。

 

 さて、先日握手会で白鷺さんに痴漢行為をしていた国会議員を捕まえた訳ですが…ちなみに、あの国会議員は本当にクビになってました。上の人が本当に切り捨てていたあたり、仕事ぶりも良くなかったんでしょうね。

 

 そんな事よりも、パスパレの皆さんは先輩と同級生でした。で、暫く警戒しながら学校生活を送っていたわけですが…バレました。

 

 で、どうなったかと言いますと…こうなりました。

 

***********************

 

飛鳥「…はい?」

 

 カフェテリアでメンバー全員と向き合って座っています。そりゃあ超人気アイドルグループが全員で男子生徒と向き合っているわけですから目立ちますね。そして殺気と嫉妬も凄いです。で、ギターの担当をしている氷川日菜さんがとんでもない事を言いだしました。

 

日菜「今度5分くらいのショートドラマをやることになったんだけど、飛鳥くんに相手をしてほしいな!」

飛鳥「お断りします」

日菜「えー!!!」

 

 …一応僕、超能力者ですしメディアに出たら非常にまずいんですよ。

 

千聖「ギャラはそれなりに出るわよ?」

飛鳥「ギャラの問題ではなくて、メディアに出たくないんですよ」

麻弥「あー…その気持ちは理解できなくはないですねぇ」

 

 ドラム担当の大和麻弥さんが苦笑いした。何でも元々はスタジオミュージシャンらしかったのですが、大和先輩の素質を見抜いた白鷺先輩がスカウトしたんだとか…。

 

飛鳥「こっちの顔出しをしないで、氷川先輩達だけを写す形式だったら、まだ何とかなるんですけどね…」

イヴ「どういう事ですか?」

飛鳥「えっとですね…」

 と、飛鳥が説明した。

 

麻弥「あー。確かにそういうドラマありますよね」

千聖「相手の男性とかの誹謗中傷とかもあるし…悪くないわね」

日菜「それじゃあ引き受けてくれるんだね!?」

飛鳥「いいえ?」

 飛鳥がキョトンとした。

 

彩「そこを何とか!!」

飛鳥「何故私にお願いしたいんですか?」

彩「えっ、そ、それはその…//////」

 彩が頬を染めると、他のメンバーも頬を染めた。飛鳥はとてつもなく嫌な予感がした。そしてこう言った。

 

飛鳥「私、彼女がいるんですよ」

「えっ…」

 飛鳥のその発言にパスパレ全員が絶望した顔をした。

 

彩「え、か、彼女いたんだ…」

飛鳥「嘘ですけど」

 

 飛鳥が真顔で嘘をついたので、5人がずっこけた。

 

日菜「飛鳥くん…今のはるんってしないよ…」

飛鳥「ごめんなさい」

千聖「お詫びとして参加しなさい!! いいわね!!?」

飛鳥「それもごめんなさい」

麻弥「て、手ごわいっすね…」

イヴ「……」

 

 飛鳥はそろそろ諦めるだろうと思っていた。

 

「そいつが嫌がってんだからもういいだろ?」

「!!?」

 

 と、一人の陽キャがやってきた。

 

「オレにしときなよ」

千聖「ああいうのがいるから、あなたにお願いしてるの」

飛鳥「そもそも素人に頼んで大丈夫なんですか? そんな事…。そういうのって俳優さんとか…」

日菜「んー。何かるんってしなくて」

千聖「さっきのやり取りもそうだけどあなた…そういうの上手そうだから」

飛鳥「!」

 千聖が飛鳥の方をじっと見ると、飛鳥は何かを感じ取った。

 

「おい、オレに…」

千聖「そういう訳だから頼んだわよ。じゃ、行きましょう」

彩「えっ!? 本当にやってくれるの!?」

飛鳥「ええ。変な闇討ちとかがなければの話ですけど…」

「!?」

 

千聖「あら、それは心配いらないわよ。そんな事したらうちだけじゃなくて、他のバンドグループのライブも当面自粛しないといけないから、そんな馬鹿な事はしないわよ」

飛鳥(そこまでは知らないけど…)

 

 と、陽キャに牽制をするように千聖が言い放つと、その場で解散した。

 

「な、何であんな奴が…」

「パスパレとショートドラマ…」

「羨ましい…」

「……」

 

飛鳥(さて、ここからが大変だな…)

 

**************

 

 下校中

 

飛鳥「……」

 飛鳥が一人で下校しようとすると、

 

陽キャ「おい、待ってよそこの陰キャくーん♪」

飛鳥「?」

 

 飛鳥が後ろを振り向くと、そこには声をかけてきた陽キャとパスパレのファンらしき男子生徒が7,8名いたが、陽キャがバットを振り上げた。

 

陽キャ「死ね♪」

 と、飛鳥の後頭部の死角を狙ってパンチをしてきたが、あっさりかわした。

 

飛鳥「こっわ!」

陽キャ「チッ! 避けんなよ! おい、取り押さえろ!」

 と、男子生徒達が飛鳥を捕まえようとしたが、飛鳥がダッシュで逃げた。

 

「コラァ!!」

「待ちやがれ!!!」

飛鳥(困ったもんだねー…。何とか音声は録れたし、データ送っとこ。ありゃ多分パスパレのストーカーになるな)

 と、飛鳥は音声をどこかに送った。

 

飛鳥(瞬間移動で家に帰るか)

 人目のつかない所に隠れて飛鳥はテレポートをして、自宅に帰った。

 

飛鳥「超能力が使えて良かった。もし使えてなかったら体力勝負になってる所だったよ。それにしても、死角を狙ってきたあたりガチだな…」

 

陽キャ「くそう!! どこ行きやがったあの陰キャ!!」

「どこにもいないぞ!!」

陽キャ「さっさと探せ!! チクられたら面倒だ!!」

 

 この後、見ていた近隣住民から学校に連絡があり、陽キャたちの悪行がバレた。1年生相手に大人数でリンチをしようとした挙句、まんまと逃げられた屑野郎として後ろ指をさされるだけでなく、パスパレの学内ライブにも出入り禁止が決まったという。ましてやクラスの女子から「アンタ、自分の事カッコ良くてクラスの中心人物って思ってるみたいだけど、女子の間では『自分の事カッコ良くてクラスの中心人物と思ってる勘違い男』としか思ってないから、いい加減直した方が良いよ?」だの「後輩相手に大人数で突っかかるなんて、流石カッコ悪い男はやる事が違うわね」だの散々言われて、すっかり陽キャの面影はなくなりました。

 

飛鳥(いや、天罰下り過ぎじゃない!!!?)

 

 そんなこんなで飛鳥は今、撮影の為に事務所にいた。

 

「あっ! 飛鳥くん!」

飛鳥「丸山先輩」

彩「も~。名前で呼んでいいんだよ?」

飛鳥「そういう訳にはいきませんよ」

彩「まあいいか。それじゃ行きましょ!」

 

 と、彩の案内でミーティングルームに向かう事になったが、腕に抱き着いてきた。

 

飛鳥「アイドルですよね?」

彩「れ、練習…」

飛鳥「せめて人のいない所でやってくださいよ…」

彩(せ、せめてアピールできれば…//////)

 

 

 果たして、飛鳥の運命や如何に。

 

 

おしまい

 

 



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第166話「もしもPastel*Palletesがチョロかったら・3」

 

 前回までのあらすじ

 

 Pastel*Palletesが出演するショートドラマに相手役として出演する羽目になった飛鳥。一応飛鳥の希望通り、顔出しはしない方向で行く事になった(ちなみにパスパレ側もライバルを増やさない意味でこれを承諾)。

 

 嫌がらせをくくりぬけて、撮影当日。飛鳥は彩と共にミーティングルームに向かった。ちなみに飛鳥の出迎え役はじゃんけんで決めており、彩が勝った。

 

日菜「もー!! 何でこんな時に限って負けるのー!! いつもは勝つのにー!!」

千聖「やっぱり彩ちゃんだけじゃ心配だわ。私もついていきます。ていうか、私が行きます」

麻弥「千聖さん。流石にそれはダメっすよ…」

イヴ「そうです! ブシドーじゃありません!!」

 

 けど、麻弥とイヴも本当は超行きたくて、飛鳥と二人きりになった。

 

飛鳥『苦情は受け付けます』

 

 さて、どうなる事やら…。

 

***********************

 

 ミーティングルーム前

 

飛鳥「丸山先輩。ここからは離れてください」

彩「あ、分かった…」

 

 と、彩が飛鳥から離れると二人ともミーティングルームに入った。

 

飛鳥「こんにちは」

「こんにちはー」

 

 そこには確かにパスパレのメンバーとマネージャーらしき人物がいたが、飛鳥と彩の距離があまりにも近いので、日菜たちはそっちの方に目が行っていた。

 

飛鳥「私の顔に何かついてます?」

麻弥「あ、いいえ何も…」

彩「それじゃこっちに座ってね」

飛鳥「あ、はい…」

日菜「あーっ!!!」

千聖「彩ちゃん?」

 

 と、飛鳥が座らせた所は確実に彩だけが隣になれる席だった。

 

麻弥「ちょ、彩さん…」

イヴ「ブシドーではありません!!」

彩「ちょっと皆落ち着いて。飛鳥くんが困ってるでしょ!」

飛鳥「…あの、お話を進めて頂いてもよろしいでしょうか」

 

 飛鳥は困惑しながら、彩の無事を祈った。

 

**********************

 

 事務所の社員からドラマの流れを聞いた飛鳥。聞いているしぐさや相槌はいかにも「出来る人」の風格を醸し出しており、彩たちは飛鳥を見ていた。すると飛鳥もその視線に気づいたのか、彩を見た。

 

飛鳥「丸山さん。どうかしましたか?」

彩「あ、ううん!? 何でもないよ!?/////」

飛鳥「何か私の方ばっかり見てたので…」

彩「え、えっと…//////」

 飛鳥がそう言うと彩が顔を真っ赤にした。そして飛鳥は察した。

 

飛鳥(このお話をご覧頂いている皆さん。もうこのシリーズの評価、0にして頂いて結構です。シリーズの削除は無理ですが、もうゲージは青色にして頂いて構いません)

 

日菜「飛鳥くーん。なんで彩ちゃんばっかり見てるのかなー?」

飛鳥「気のせいですよ」

千聖「気のせいじゃないわ。彩ちゃんに何されたの?」

飛鳥「白鷺さんならお気づきになられるかと。すみません、お話を続けてください」

 飛鳥が真顔で言い放った。

 

「…それで、一丈字さんにはこの子たちに甘い台詞を囁いてくれたら」

飛鳥「甘い台詞?」

 飛鳥の言葉に彩達は頬を染めた。

 

「何かキュンとするような言葉をお願いします」

飛鳥「えー…結構難しいですねそれ…」

 飛鳥が困惑した。

 

日菜「そんなに難しく考えなくていいよー。いくらでもテイクは撮れるから」

飛鳥「スタッフの方々が困りますよねそれ…」

千聖「そうよ。それにそんなの見せられて、スタッフはどういう気持ちで撮影すればいいか分からなくなるわ」

 

 千聖が咳払いした。

 

千聖「まあ、飛鳥くんは素人だから…時間をかけてもいいのだけど…//////」チラッ

飛鳥「…シチュエーションによりますよね。それ」

イヴ「あの、アスカさん!」

飛鳥「はい?」

 キーボード担当の若宮イヴが話しかけた。

 

イヴ「あの、ワタシの場合はブシドーをお願いします!」

飛鳥「ブシドー?」

 飛鳥が困惑した。

日菜「ああ、イヴちゃんね。フィンランドの人で剣道とか、習ってるんだよ」

飛鳥「そうなんですか…。もしかして留学とかされてるんですか?」

イヴ「いいえ! 父が日本人で母がフィンランドのハーフです!」

飛鳥「あ、そうなんですか。もし留学とかだったら、元気づける言葉でもかけようかなと思ったんですけどね…って、脚本あるんでした」

イヴ「それでお願いします!!」

飛鳥「えっ」

 飛鳥がイヴを見ると、イヴが鼻息を荒くしてそう言った。

 

 そんなこんなで撮影が始まった。イヴからである。設定としてはフィンランドから留学してきたという設定で、飛鳥が彼女の世話役をする事になったという設定。奥様は魔女的ならぬ、彼女はフィンランド人といった感じだ。本当はハーフだけど。

 

 そしてその様子をイヴ以外の4人が見つめている。

 

飛鳥「日本に来てどれくらい経ったっけ」

 

 飛鳥も演技をしていた。ちなみにイヴの希望で敬語ではなくため口だった。

 

イヴ「三か月です!」

飛鳥「そっか。それじゃ結構経ってるんだな」

 と、飛鳥が空を見上げた。カメラは飛鳥の後姿を取っていた。

 

飛鳥「もう日本には慣れた…って言っても、慣れてるよな」

イヴ「はい! ブシドーです!」

飛鳥「…相変わらずそのブシドーはよく分からないけど、イヴが楽しそうでよかった」

 飛鳥が笑ってみせた。

 

彩「…飛鳥くん。演技上手」

麻弥「そうっすね…」

 

飛鳥「…そうか。もう数か月も経ったんだな」

イヴ「はい」

飛鳥「初めてイヴと出会った日が昨日のようだ」

イヴ「私もです」

 

 と、いい感じになっていた。4人は演技だと分っていても嫉妬していた。

 

イヴ「…本当にアスカさんと出会って良かったです」

飛鳥「……」

 

 イヴの言葉に飛鳥は何も言わなかった。

 

飛鳥「イヴ」

イヴ「?」

 イヴが飛鳥の方を向いた。

 

飛鳥「本当にそう思ってる?」

イヴ「も、勿論です」

 飛鳥が俯く。彩たちは何事か何事かとドギマギしていた。ちなみにほぼ即興だった。

 

飛鳥「そう」

イヴ「ど、どうしたんですか…?」

飛鳥「ちょっと言っておきたいことがあって」

 

 飛鳥が真剣な顔をした。

 

飛鳥「今日までイヴの事をずっと見てきてね。これからもずっと一緒にいたいって思ったんだ」

イヴ「え…//////」

 

 すると飛鳥はイヴの顔を見てこう言った。

 

飛鳥「要はね、イヴの事が好きなんだ」

 

 飛鳥が堂々と言い放つと、イヴが顔を真っ赤にした。他のメンバーも顔を真っ赤にした。

 

彩・日菜・麻弥「えええええええええええええええええええええええ!!!?」

 

「カットカット!!!」

 

 彩たちの声が入ってしまった為、なしになってしまった。

 

「折角良い所だったのにー」

千聖(ナイスよ! これ以上は見てられなかったわ…嫉妬で)

 千聖が握りこぶしを握った。

 

イヴ「あ…う…//////」

 イヴが顔を真っ赤にして言葉が発せずにいた。

飛鳥「若宮さん。落ち着いて」

イヴ「え、えっと…ふ、不束者ですが…!/////」

飛鳥「本当に落ち着いて」

 

「それじゃ告白する所からもう一度!!」

「無理っすよ。だってあんなリアクション演技でどうにもなる訳が…」

「ギャグ路線にします?」

 

イヴ「あ、あの!! 頑張るので続きからさせてください!!!///////」

 

 と、こうして何とかやり切った…。

 

イヴ「ウー…//////」

 イヴは顔がほてったままだった。飛鳥は困惑した様子でイヴを見つめていた。

 

飛鳥「…そんなに恥ずかしがらなくても」

イヴ「ご、ごめんなさい…//////」

 

千聖「さて、飛鳥くん。次は私よ」

飛鳥「えっ、次は大和先輩じゃ…」

千聖「あの3人は最初のテイクを邪魔した罰として、相手役が他の俳優に変わったから」

飛鳥「あ、そうなんですか…」

 

千聖「さて、あなたの演技力を私にも感じさせて頂戴」

飛鳥「あの、先輩。手を引っ張らないでください」

イヴ「あっ…」

 

 と、千聖が飛鳥を強制的に連れて行った。

 

イヴ「…私だって負けません//////」プクー

飛鳥(バンドリ関係者の皆さん。本当にゴメンなさい)

 

 そして彩たちはというと…。

 

日菜「るんってしなーい!!!」

 

 日菜、彩、麻弥の3人はイケメンADが相手役だったが、終始不満そうだった。

 

 

飛鳥(か、かわいそう…)

 

 

おしまい

 

 



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第167話「もしもPastel*Palletesがチョロかったら・一旦完結」


 前回までのあらすじ

 飛鳥がドラマに本当に挑戦し、イヴに直球で告白した。ただ、返事をする前に彩、麻弥、日菜の3人が叫んでしまい、あえなくカット。罰として同じ事務所に所属しているイケメンADに変更させられてしまった…。

飛鳥(ADさんが滅茶苦茶可哀想)

************************:


 

 

 

 そして撮影が全部終わったが、ここからが問題だった。

 

彩「千聖ちゃん!! 何てことをしてくれたのよ~!!!」

千聖「あら。イヴちゃんの撮影の邪魔をするのが悪いんじゃない」

日菜「だからって飛鳥くんからADに相手を変えさせるなんてー!!」

麻弥「ジブンも飛鳥さんが良かったっす…」

 

 日菜が憤慨し、麻弥は涙目だった。

 

千聖「当然の結果よ。皆一番いい所で邪魔されたんだから」

日菜「でも千聖ちゃん。あたし達がいなくなったのをいい事に、撮影の時間滅茶苦茶取ったよね?」ジトー

麻弥「そうっすよ」ジトー

彩「千聖ちゃんって前からそういうせこい事するよね…」ジトー

千聖「そ、そんな事ないわよ。私の分はすぐに撮り終えたわよ」

彩「じゃああの撮影は何!?」

飛鳥「時間が余ったから、おまけで白鷺さんと若宮さんが私を取り合うドラマを…」

 

彩・日菜・麻弥「はぁああああああああああああああああああ!!!?」

 

 飛鳥の発言に彩、日菜、麻弥が絶叫した。

 

彩「ちょっと何で!! なんでぇ!!?」

飛鳥「監督さんが『時間余ってるからやってみない?』と…」

日菜「あたし達がいなくなったのをいい事に完全に遊んでるじゃーん!!!」

麻弥「そんなのあんまりっすよ~!!!!」

 

 と、彩、日菜、麻弥が涙目で迫った。

 

飛鳥(大丈夫かな…。これ、3VS2の構図が出来たような気がするんだけど…)

 

彩「ちなみにどんなドラマだったの!?」

千聖「それは…」

 千聖が困惑していた。

 

イヴ「ワタシとチサトさんがアスカさんに迫るんですけど、アスカさんははっきりとワタシを選んでくれて、チサトさんがアスカさんを振り向かせるために頑張るドラマです」

 

 空気が止まった。

 

彩「ありがとうイヴちゃん。今ので機嫌が良くなったよ」

日菜「あたし達を追い出しといて振られてんの…ぷぷっ」

麻弥「ちょ、笑ったらだめっすよ…」

千聖「あなた達…!!!」

 

 ちなみにこんなドラマである。

 

飛鳥「……」

イヴ「アスカさん!!」

千聖「飛鳥くん!!」

 

イヴ・千聖「どっちがいいかはっきり決めてください(頂戴)!!」

飛鳥「じゃあ若宮さんで」

千聖「ちょ、ちょーっと待って頂戴。そこは迷う所でしょう!!」

飛鳥「いえ、迷っても失礼なので。どちらかとお付き合いしなければならないのでしたら、若宮さんです」

イヴ「嬉しいです!! そ、それじゃあ本当に…」

千聖「ちょーっと待ちなさい!!」

 

 と、千聖が飛鳥とイヴをくっつけるのを何が何でも阻止するというギャグドラマである。千聖のツッコミがさえていて、スタッフたちは大満足だったが、当の千聖は普段のキャラと全く違う為、不満だった。

 

イヴ「もしチサトさんを選んでしまったら、私は何も出来ずに佇んでしまいます…」

千聖「諦めが肝心よ」

日菜「はーい。負け犬さんは大人しくしようねー」

 日菜の言葉に千聖が殺意の波動を放った。飛鳥としてはさっさと帰りたかった。

 

 だが、そんなこんなで飛鳥はプロデューサーから給料を貰った。

 

「本当にありがとう! オンエア楽しみにしててね!」

飛鳥「あ、はい」

 

 飛鳥が苦笑いして、そのまま帰ろうとした。

 

彩「あ、待って飛鳥くん」

飛鳥「何でしょう」

彩「今度、撮影の打ち上げやろうと思ってるんだ」

飛鳥「そうなんですか」

彩「それで…飛鳥くんのお家で出来ないかな~なんて…」

 皆が期待の眼差しで飛鳥を見た。

 

飛鳥「ごめんなさい。家は無理です」

日菜「どーして?」

飛鳥「あまり人を家に入れたくないんですよ。セキュリティ厳しいので…」

千聖「マンション?」

飛鳥「そうですね」

 

 と、困った顔で飛鳥がそう言い放った。

 

飛鳥「また今度お願いしますね」

彩「あ、それだったら考えとくから、考えたら電話するね」

飛鳥「はーい」

 

 そう言って撮影は完全に終わった。

 

飛鳥(オレの人生も終わった)

 

***********************

 

 後日、パスパレと飛鳥が出演してるショートドラマが無事にオンエアされたが、一番反響があったのはイヴだった。

 

 演技はともかく、照れたイヴの破壊力がとてつもなくツイッターとかでも話題になっていた。そして、飛鳥は顔出しをしていなかったものの、声と演技が評価されたのか「若宮イヴと白鷺千聖の相手役は一体誰だ!?」という声が上がったが、事務所もそこをちゃんと約束してくれたのか、飛鳥の名前を出すことはなかった。

 

 ただ、知人達からは声で分かってしまったらしい…。

 

飛鳥「そうだよ。オレだよ…」

 

 そう告げる飛鳥の目はとてつもなく死んでいた。

 

**********************

 

 で、バンドリ学園。

 

「飛鳥。パスパレのショートドラマを見させて貰ったわよ」

 

 カフェテリアで飛鳥はあこ以外のRoselia4人に捕まっていた。実はパスパレ以外のグループとも仲が良かったのであるが、彼女たちもまた飛鳥に助けられてコロッと恋に落ちてしまったのだ。今回は「チョロい」がテーマなので、あまり細かい事は突っ込まないでください。

 

飛鳥(声優さんがこのシリーズを見ていない事を祈るしかない)

 

 そして今、Roseliaのボーカルである湊友希那に話しかけられていた。

 

飛鳥「よく私だって分かりましたね…」

友希那「声と後姿がどう考えてもあなただもの。どうして何も言わなかったのかしら?」

飛鳥「聞かれなかったからです」

 空気が止まった。

 

紗夜「…確かに理由にはなってますけど」

リサ「あははははは…」

 

 飛鳥が腕を組んだ。

 

友希那「それにしても、私達というものがありながらパスパレに浮気かしら?」

飛鳥「ヤキモチですか?」

友希那「っ!!//////」

紗夜「一丈字くん…あなたという人は…!」

 飛鳥が真顔で言い放ったので、友希那が頬を染めた。

 

飛鳥「もう次はございませんよ。一度だけならあれで良かったですけど、流石に二度目になると…」

友希那「そうね」

 その時だった。

 

「おーい! 飛鳥くーん!!」

 と、日菜がやってきた。

 

紗夜「日菜!」

日菜「あ! おねーちゃん!」

友希那「どうしたのかしら?」

日菜「えっとね。此間の撮影会の打ち上げの日程が決まったから教えに来たんだよ。今度の日曜日はどう?」

飛鳥「あ、はい。分かりました…」

紗夜「……」

友希那「それって一般参加は可能かしら?」

 と、友希那は参加する気満々だった。

 

日菜「ゴメーン。その日は事務所の人たちも来るから…」

友希那「それなら仕方ないわね」

日菜「で、その前日って空いてる?」

飛鳥「どうされたんですか?」

日菜「ちょっと撮りたい内容があるからまた来てくれほしいって言われてるんだけど…」

紗夜「まさかとは思うけど、此間の撮影会で自分は一丈字くんと撮れなかったから、二人きりでデートするつもりじゃないでしょうね」

日菜「ソ、ソンナコトナイヨー…」

 日菜が視線を逸らした。

 

友希那「却下よ。撮影できなかったとはいえ、一緒にいられたから十分でしょ」

日菜「えー!! そんなの腑に落ちなーい!!」

紗夜「日菜。我儘言うと一丈字くんに嫌われるわよ?」

飛鳥(完全にオレを出汁にしてる…)

日菜「そ、そういうおねーちゃんこそ、どさくさに紛れて飛鳥くんに近づくなんて事したらダメだよ!?」

紗夜「わ、私はそんな事しないわよ!!」

 

 と、飛鳥の取り合いが始まった。

 

 

飛鳥(もうやめさせてもらうわ)

 

 

おしまい

 



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第196話「もしもバンドリ学園が部活強制だったら」

 

 

※ 今回の設定。

 

・ 飛鳥は最初からバンドリ学園の生徒として登場。

・ 孫たちとは出会わなかった世界線。

・ でも超能力者。

 

 それではゴー。

 

**********************

 

 私の名前は一丈字飛鳥。この春から高校生になります。新しい場所で頑張ってみたかったので、広島から東京の学校に進学する事にしました。親は反対しなかったのかというと、快く引き受けてくれました。ちなみに貧乏か裕福かっていえば、お金はある方です。私も稼いでいるので…。

 

 で、入学して問題が発生しました。

 

『えー。突然ですが、全校生徒の皆さんには部活動をやって貰います!』

 

 入学して早々、先生から部活動をやるようにと言われた。当然生徒達は突然過ぎると言ってブーイングをしたが、結果は覆らず、どこかの部活に入部する事になったのですが…。

 

『勿論1人で創部をしても可能です。部費は出ませんが、申請さえすればOKですよ?』

 

 一体この学校は何がしたいんだろうと、私は少しだけ後悔しましたが、1人だけでも良いというのなら、適当に創部をする事にしました。

 

 ていうかよくよく考えたら、先生達も顧問の仕事大変だろうなぁ…。

 

飛鳥「これでお願いします」

 

 私は『超能力研究会』という部活をすることにしました。先生達はオカルトチックだと苦笑いしていましたが、一応申請書に関する必要事項をびっしり書いたので、何とか申請が通りました。まあ、顧問がいなきゃいけないんだったら、すでにある部活に入ろうか迷ったけど、いなくていいならね。

 

 こうして、超能力研究会の会長(部長)となった私。こんなマイナーで妖しい研究会なんて誰も来ないと思ってました。だけど…。

 

「超能力研究会って面白そうね! 入部したいわ!」

「るんってした!!」

 

 入部希望者が来ました。しかも何かとても男子にモテそうな女子生徒が2名…。私の教室に来るや否や、入部を希望してきて皆さんが驚いていました。私も来るとは思ってなかったのでびっくりしたし、特に入部希望のポスターも作って掲示したわけではないので、知っていたこと自体に驚いていた。

 

飛鳥「え、え~と…」

日菜「あなた、部長の一丈字飛鳥くんでしょ? あたし、氷川日菜! あなたの1個先輩だよ!?」

飛鳥「は、はあ…」

 

 そう話しかけてきたのは氷川日菜さん。2年生で芸能人らしいが、テレビは料理番組やニュースしか見ないから、あまり良く知らないんです。ただ、見た感じやっぱり芸能人というだけあって明るい。

 

「あたしは弦巻こころよ! 宜しく頼むわね!」

 

 この人は弦巻こころさん。違うクラスの子で全く面識がない。

 

こころ「あ、そうだ! あなた、日向と椿のお友達でしょう!」

飛鳥「え?」

 

 何と言う事だろう、弦巻さんは私が中学時代の同級生の事を知っていたようだった。

 

飛鳥「え? あの二人をご存じなんですか?

こころ「ええ! 日向と椿は小さい頃からのお友達なのよ!」

飛鳥「…そういえばパーティーの時に一緒に遊んだ子がいるっていう話は聞いたことがあったけど」

こころ「多分あたしよ!」

日菜「で、入部させてくれるの!?」

 

 氷川先輩に詰め寄られて、私は困惑した。人数が増えると色々面倒な事になる。そもそも1人で自由に動くために創部したのに、これじゃ全く意味がないし…ましてや芸能人に本当に能力者だってバレたら大変な事になりかねない。

 

飛鳥「あー…質問なんですが、うちの研究会って何をするかご存じでしょうか」

日菜「超能力を極めるのもそうだけど、何か賞金稼ぎみたいなことするんでしょ!?」

飛鳥「そうですね。人の限界を極めるというのをテーマに部活動を行う、ある意味ハードな部活です」

 

 もう説明すること自体がハードだ。一般の人からしてみたら何を言ってるのか理解は出来ないだろう。だが、そうすることで人が来ないからそれでいい。そう思ってたのに…。

 

日菜「それが面白そう! ぜひ入れて!」

こころ「楽しい事を極めてみたいわ!」

飛鳥「」

 

 そんなこんなで3人で部活を行う事になったが、そりゃあもう有名になった。弦巻財団の令嬢と、大人気アイドル「Pastel*Palletes」のメンバーを部員に引き入れたのだから。しかも顔が良いもんだから、新しく部員が来る可能性がある。

 

飛鳥(超能力部に改名したろ)

 

 超能力部に改名したら、そのダサさに皆が私から距離を置くようにあった。そりゃそうだ。完全におかしな奴だからである。ましてや弦巻さんも中学時代は「異空間」と呼ばれていて、日菜さんも才能マンで色々浮いた発言をしていたから…。

 

 あれ、何だろう。似たような人が集まってない?

 

*******************

 

 そんなこんなで部活動が行われる事になった。どうせすぐに飽きるだろうと私もたかをくくり、何も言わずにいた。そして私は部活動らしく、手始めにゲームの大会に出る事にしたが…。

 

日菜「おもしろそー!! やろうやろう!!」

こころ「皆で参加した方が楽しいわ!!」

 

 と、3人で参加しました。その結果…。

 

「優勝!! バンドリ学園超能力研究会!!!」

 

 優勝しました。そのゲームは格闘ゲームで360度自由に移動できるもので、チームバトルを行いました。氷川先輩と弦巻さんが縦横無尽に動いて貰い、私がサポートをするという姿勢を取る事で無双しました。

 

 氷川さんだけじゃなくて、弦巻さんもなかなかの才能マンぶりでした。

 

 後日、3人揃って全校朝会で表彰されました。ああもう、全校生徒からの視線が痛い…。まあ、弦巻さんと氷川先輩は美少女だしなぁ。

 

日菜「やったね飛鳥くん!」

こころ「飛鳥のお陰よ!!」

飛鳥「あ、あはははは…」

 

 3人で廊下を歩いていると、男子生徒達の嫉妬の視線が凄かった。だろうねとしかいいようがないのですが、

 

 そして、学校の知名度を上げたので、部室が与えられました。弦巻財閥が何かしたとしか思えない程、部室が広かった…。

 

飛鳥「はぁ…」

 

 私がソファーに腰かけてため息をついていると、一人の女子生徒が入ってきました。

 

飛鳥「どうされました?」

こころ「あら、燐子じゃない!」

日菜「燐子ちゃんだ! どーしたの!?」

燐子「あ、あの…」

 

 すると燐子さんという方は、あるものを取り出した。入部届である。

 

燐子「わ、私もこの部活に入部させてくださいっ!!」

 

 …どうですか? こんなバンドリ。

 

 

おしまい

 



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第220話「もしも飛鳥と千聖が幼馴染でともに元子役だったら(スタンダードルート)」


『もしも飛鳥が元子役だったら』

 簡単な登場人物

一丈字 飛鳥 
主人公。高校1年生。元は子役でドラマや映画にも出演していたが、色々あって芸能界を引退し、現在はごく普通の高校生。超能力が使えるという点を除いては…。
人気女優・白鷺千聖と昔出演したドラマ『オムラム・ルール』で共演して以来、仲が良かったが…。

白鷺 千聖
メインヒロイン。高校2年生。元天才子役にして、人気女優。
その傍ら、人気ガールズバンド「Pastel*Palletes」のベースを担当している。
飛鳥とは昔共演してからというもの、ずっと好意を寄せているが、飛鳥は全く気付く様子がない上に、飛鳥を狙ってる子がいっぱいいる為、ドギマギしている。

*****************************


 

 ここはバンドリ学園。ごく普通の学校であるが…。

 

「……!?」

 

 仕事の都合で中々学校に来れず、久々に登校した白鷺千聖は、ファンの男子生徒達に囲まれて、愛想笑いをしていたが、1人の男子生徒を見つけて、目の色を変える。

 

千聖「…飛鳥くん?」

 

 千聖は少年の名前を口にすると、そのまま走り出した。

 

千聖「飛鳥くん!!」

飛鳥「…?」

 

 飛鳥こと、一丈字飛鳥は千聖の方を振り向いた。

 

千聖「あなた…やっぱり一丈字飛鳥くんよね!?」

飛鳥「……」

 

 飛鳥が驚いた様子を見せると、見ていた生徒はざわざわし始めた。

 

「一丈字飛鳥…?」

「そういや聞いた事あるぞ…」

「昔、オムラム・ルールっていうドラマに出てた…」

「確か千聖ちゃんがヒロインで、あいつは脇役だった!!」

 

 すぐさま大騒ぎになったが、飛鳥は困惑した様子で周りを見ていた。

 

飛鳥「お久しぶりです。白鷺先輩」

千聖「!!」

 

 飛鳥の言葉に千聖がショックを受けた。

 

千聖「ど、どうして敬語なのよ!! しかも昔は「千聖ちゃん」って…」

 

 千聖の言葉に飛鳥は静かに目を閉じた。

 

飛鳥「学校なので先輩ってお呼びしないと。それに、他の生徒達の目もあるでしょう?」

千聖「そ、そうだけど…」

飛鳥「機会があればお話ししましょう。それでは」

 

 そう言って飛鳥は去っていったが、千聖はとても悲しそうな顔をしていた。

 

**************************

 

 白鷺千聖は天才子役として名をはせていた。勿論、本人が演技に対して熱心に研究していた事もあるが、彼女の演技は見ている者を魅了した。勿論、容姿も端麗である為男女問わず、近づいてくる者も多い。

 

 大して一丈字飛鳥という少年は、それほど有名ではなく、千聖と共演した事や、そのドラマ自体が大ヒットしたから少し注目されたくらいだ。そして、彼自身もそのことを理解して、千聖とは距離を置こうと考えていた。

 

****************************

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥は自分の教室で大人しくしていると、クラスメイトに話しかけられた。

 

「一丈字くん。そういえば昔、あのドラマに出てたよね?」

飛鳥「オムラム・ルールですか?」

「そうそう」

「そういや、今芸能活動ってどうしてるの?」

 

 と、飛鳥の周りに人が集まったが…。

 

飛鳥「もう辞めたんですよ。子役」

「えっ…?」

飛鳥「役者の仕事は楽しかったんですけど、いろんな事がやってみたくなりまして」

「そ、そうなんだ…」

 

 飛鳥がそう言うと、男子生徒は残念そうにした。

 

「あ、そういえば1個上に千聖ちゃんがいるの知ってる!?」

飛鳥「先ほどお会いしましたよ」

「と、特に話とかしなかったの?」

飛鳥「ええ。昔共演したからって、あまりでかい顔するのもよろしくありませんもの。幻滅させたなら、ごめんなさいね」

 

 飛鳥が苦笑いしてそう言うと、クラスメイト達は飛鳥と千聖は本当は仲が悪いのかと誤解していた。

 

「あ、それはそうとさ!」

飛鳥「?」

 

 女子生徒がまだ粘ろうとする。

 

「千聖ちゃん、どうだった!? 最近会ってなかったんでしょ!?」

飛鳥「ええ。そりゃあもう綺麗になりましたねぇ」

 

 飛鳥がそう言うと、クラスメイト達が沸き上がった。

 

「ま、まさかとは思うけど、付き合ったりとかは…」

飛鳥「それはございませんね」

 

 飛鳥がきっぱりと断った。

 

「どうして?」

飛鳥「だって彼女、今アイドルやってるんですよね? だったらスキャンダルを作ったらまずいじゃないですか。それに、私もこれからの身の振り方について色々考えないといけませんし」

 

 そう言って、飛鳥はその場を離れると、クラスメイトはシーンとしていた。

 

**********************

 

 放課後

 

千聖(確かに今の私はアイドルだけど、あそこまでよそよそしくする必要なんかないじゃない)

 

 千聖は教室にいたが、休憩時間に飛鳥に素っ気なくされたことで、不機嫌そうにしていた。女子のクラスメイトもそのことを察したのか、何も言う事はなかった。

 

 そんな時だった。

 

「白鷺さん大変!!」

 

 クラスメイトが慌てて教室にやってきた。

 

千聖「どうしたの?」

「イヴちゃんが別の学校の男子達に連れていかれそうになってるの!」

千聖「何ですって!!?」

 

 そう言って慌てて外に出ると、イヴと彩が複数の男子生徒に絡まれ、つれていかれそうになっていた。あまりにも柄が悪そうだったので、男子生徒達は助けられずにいた。

 

千聖「彩ちゃん! イヴちゃん!!」

 

 千聖が叫ぶと、彩達が千聖の存在に気づいた。

 

彩「千聖ちゃん! 来ちゃダメ!」

「あいつ、白鷺千聖じゃね?」

「あいつも連れて行こうぜ」

「多い方がいいしな」

 

 と、男子生徒達は彩とイヴを人質に取った。

 

千聖「!」

「君、白鷺千聖ちゃんだよね?」

「オレ達と遊ぼうよ」

千聖「彩ちゃんとイヴちゃんを離しなさい!」

「一緒に来てくれるなら、離してあげるよ?」

 

 千聖の説得にも全く応えようとしないばかりか、男2人が千聖に近づいて捕まえようとしていた。

 

彩「千聖ちゃん! 逃げて!」

イヴ「チサトさん!!」

 

 誰もが千聖が連れていかれそうになったその時、

 

「ぐっ…ぐああああああああああああああああ!!!!」

 

 突如男達が腹痛になった。

 

千聖「!!?」

「は、腹が…」

「何でだ…」

 

 とても強烈な痛みなのか、男たちは彩とイヴを捕まえられず、離してしまった。

 

彩・イヴ「!?」

千聖「彩ちゃん! イヴちゃん!」

 

 千聖が彩とイヴに近づいてその場から避難させると、麻弥と日菜が遅れてやってきた。

 

麻弥「彩さん! イヴさん!」

日菜「大丈夫!?」

彩「う、うん!」

 

「く、くそぉ…!!」

 男子生徒達は腹を抑えていると、

 

「コラー!! お前達何をしてるんだぁ!!」

 

 バンドリ学園の男性教諭たちが怒鳴ってやってくると、男子生徒達は命ガラガラ逃げ出していった。千聖たちはその様子をじっと見守っていた。

 

千聖「これでやっといなくなったわね…」

イヴ「チサトさん…怖かったです~!!!」

 

 イヴが千聖に抱き着くと、千聖がイヴの頭を撫でた。

 

千聖「よしよし、怖かったわね」

彩「私も怖かったよ~!!」

 

 そう言って5人が抱きしめあうと、それを飛鳥が陰で見つめていた。

 

飛鳥(任務完了)

 

 飛鳥は静かに目を閉じてその場を後にした。

 

 

 

おしまい

 



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第221話「もしも飛鳥と千聖が幼馴染でともに元子役だったら(ヒーロールート)」

 

 

 前の話で、もしも飛鳥が直接助けて居たら…。

 

 途中までは前の話と同じです。

 

*********************

 

 

**************************

 

 白鷺千聖は天才子役として名をはせていた。勿論、本人が演技に対して熱心に研究していた事もあるが、彼女の演技は見ている者を魅了した。勿論、容姿も端麗である為男女問わず、近づいてくる者も多い。

 

 大して一丈字飛鳥という少年は、それほど有名ではなく、千聖と共演した事や、そのドラマ自体が大ヒットしたから少し注目されたくらいだ。そして、彼自身もそのことを理解して、千聖とは距離を置こうと考えていた。

 

****************************

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥は自分の教室で大人しくしていると、クラスメイトに話しかけられた。

 

「一丈字くん。そういえば昔、あのドラマに出てたよね?」

飛鳥「オムラム・ルールですか?」

「そうそう」

「そういや、今芸能活動ってどうしてるの?」

 

 と、飛鳥の周りに人が集まったが…。

 

飛鳥「もう辞めたんですよ。子役」

「えっ…?」

飛鳥「役者の仕事は楽しかったんですけど、いろんな事がやってみたくなりまして」

「そ、そうなんだ…」

 

 飛鳥がそう言うと、男子生徒は残念そうにした。

 

「あ、そういえば1個上に千聖ちゃんがいるの知ってる!?」

飛鳥「先ほどお会いしましたよ」

「と、特に話とかしなかったの?」

飛鳥「ええ。昔共演したからって、あまりでかい顔するのもよろしくありませんもの。幻滅させたなら、ごめんなさいね」

 

 飛鳥が苦笑いしてそう言うと、クラスメイト達は飛鳥と千聖は本当は仲が悪いのかと誤解していた。

 

「あ、それはそうとさ!」

飛鳥「?」

 

 女子生徒がまだ粘ろうとする。

 

「千聖ちゃん、どうだった!? 最近会ってなかったんでしょ!?」

飛鳥「ええ。そりゃあもう綺麗になりましたねぇ」

 

 飛鳥がそう言うと、クラスメイト達が沸き上がった。

 

「ま、まさかとは思うけど、付き合ったりとかは…」

飛鳥「それはございませんね」

 

 飛鳥がきっぱりと断った。

 

「どうして?」

飛鳥「だって彼女、今アイドルやってるんですよね? だったらスキャンダルを作ったらまずいじゃないですか。それに、私もこれからの身の振り方について色々考えないといけませんし」

 

 そう言って、飛鳥はその場を離れると、クラスメイトはシーンとしていた。

 

**********************

 

 放課後

 

千聖(確かに今の私はアイドルだけど、あそこまでよそよそしくする必要なんかないじゃない)

 

 千聖は教室にいたが、休憩時間に飛鳥に素っ気なくされたことで、不機嫌そうにしていた。女子のクラスメイトもそのことを察したのか、何も言う事はなかった。

 

 そんな時だった。

 

「白鷺さん大変!!」

 

 クラスメイトが慌てて教室にやってきた。

 

千聖「どうしたの?」

「イヴちゃんが別の学校の男子達に連れていかれそうになってるの!」

千聖「何ですって!!?」

 

 そう言って慌てて外に出ると、イヴと彩が複数の男子生徒に絡まれ、つれていかれそうになっていた。あまりにも柄が悪そうだったので、男子生徒達は助けられずにいた。

 

千聖「彩ちゃん! イヴちゃん!!」

 

 千聖が叫ぶと、彩達が千聖の存在に気づいた。

 

彩「千聖ちゃん! 来ちゃダメ!」

「あいつ、白鷺千聖じゃね?」

「あいつも連れて行こうぜ」

「多い方がいいしな」

 

 と、男子生徒達は彩とイヴを人質に取った。

 

千聖「!」

「君、白鷺千聖ちゃんだよね?」

「オレ達と遊ぼうよ」

千聖「彩ちゃんとイヴちゃんを離しなさい!」

「一緒に来てくれるなら、離してあげるよ?」

 

 千聖の説得にも全く応えようとしないばかりか、男2人が千聖に近づいて捕まえようとしていた。

 

彩「千聖ちゃん! 逃げて!」

イヴ「チサトさん!!」

 

 誰もが千聖が連れていかれそうになったその時、飛鳥が普通に近づいた。

 

「!?」

 

「あ? 何だテメェ」

「誰だよ」

 

 男子生徒達が飛鳥にメンチを切ったが、飛鳥は動じなかった。

 

飛鳥「ちょっとそちらの二人に用があるので離してもらえませんかね」

「用?」

「何だお前。お前もこの2人狙ってんのかよ」

飛鳥「いや、先生が呼んで来いって」

 

 飛鳥が普通に言い放つと、千聖が近づこうとしたが、後からやってきた麻弥に止められた。

 

麻弥「千聖さん! 危ないっすよ!」

千聖「離して! 彩ちゃんとイヴちゃんが!」

日菜「あれ? あの子どこかで見たような…」

 

 千聖たちが話している間に、男子生徒達が飛鳥に近づいた。

 

「オレ達はこの子達と遊ぶの。だからモブはどっか行ってろ…よッ!!」

「!!」

 

 男子生徒の一人が飛鳥に殴りかかったが、飛鳥は普通に拳を手で受け止めた。それを見て皆が驚いていた。

 

「な、何…!!?」

飛鳥「こちらとしても早く呼ばないといけないんですわ。退いて貰えます?」

「ふ、ふざけやがって!!」

「やっちまえ!!」

 

 2人がかりで飛鳥を倒そうとしたが、返り討ちにされ宙を舞った。

 

「……!!」

 

 驚く生徒達をよそに飛鳥は彩とイヴを捕まえている男子生徒達を見つめた。男子生徒達は飛鳥の気迫に息をのんだ。

 

飛鳥「さて、引き渡して戴きましょうか」

「!」

飛鳥「どちらが宜しいですか?」

 

 飛鳥の雰囲気が変わり、恐ろしいものになった。

 

飛鳥「大人しく引き渡すか、二度と太陽の元で人生が送れなくなるか」

 

 飛鳥の気迫に男子生徒達は気おされそうになったが、

 

「た、ただのモブが何だ!!」

「これでもくらえ!!」

 

 残りの男子生徒達が、彩とイヴを離して飛鳥に襲い掛かったが、飛鳥は瞬時に男子生徒達の後ろに回り込んで、一撃を食らわせて気絶させた。それを見て周りの生徒達は更に驚く。

 

千聖「……!!」

 

 千聖が一番驚いていた。自分が知っている飛鳥は格闘技をやるイメージが全くなかったからだった。

 

 そして飛鳥はそんな千聖の思いを無視するかのようにのびた男子生徒達を見つめていた。

 

「おーい!! 一体何があったー!!」

 

 教諭が数名遅れてやって来ると、飛鳥は事情を説明し、女性教諭に彩とイヴを保護するように指示を出し、男性教諭には自分と一緒に男子生徒達を拘束するように命じた。それを千聖たちは不思議そうに見つめていた。

 

千聖(飛鳥くん…)

 

 飛鳥の様子からきっと自分と離れている間に何かあったのだろうと判断した。

 

日菜「あの子、とっても強いね!」

千聖「え? そ、そうね…」

麻弥「だけどあの顔…どこかで見た事があるような…」

千聖「そうね…」

 

 麻弥や日菜と話しているうちに、飛鳥はいつの間にか男性教諭と共にいなくなっていた。

 

**************************

 

 後日…

 

「おい、聞いたかよ…」

「昨日他校の男子が乗り込んできて、彩ちゃんとイヴちゃんが絡まれたらしいぞ」

「だけど、1年の奴が助けたって…」

「名前は確か…」

 

 飛鳥が他校の男子を退け、彩やイヴを助け出した事が話題になっていた。

 

「あのー。一丈字くんいるかしら?」

 

 千聖、彩、イヴが教室を訪ねたが、飛鳥の姿はどこにもなかった…訳ではなく、超能力で存在感を消して、気づかれないようにしていた。

 

飛鳥(…超能力が使えなかった頃の癖で、ついつい前に出過ぎちゃった。気を付けないと)

 

 

おしまい

 

 

 

 

 



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第259話「もしもバンドリ学園が全寮制だったら」

 

 

『もしもバンドリ学園が全寮制だったら』

 

 ある日の事。バンドリ学園が全寮制になった。

 

飛鳥(あらまあ…)

 

 ガス水道電機は全部学校が負担。クラスごとに寮を立てるのだ。

 

 そして寮が経った。

 

「香澄ちゃんたちと一つ屋根の下!!」

「Afterglowと同じ寮!! 夢みたいだ!!」

「ウヒョー!! 紗夜ちゃんたちと同じ寮!」

「日菜ちゃんたちと一緒だ!!」

 

 バンドガールズのクラスメイト達は大興奮だった。

 

「畜生!! どうしてオレは3組なんだ!!」

「かわれ畜生!!」

「うちのクラスブスばっか!!」

 

 と、そうではないクラスの男子生徒たちは泣いて悔しがっていた。

 

「でもまあ…」

「?」

 

 すると男子生徒たちは一人の少年を見ていた。一丈字飛鳥である。

 

「ダーハハハハ!! 残念だったな一丈字!!」

「これでお前のハーレム生活もおしまいだ!!」

「香澄ちゃんたちはオレたちがおいしくいただく!!」

「指をくわえてみてるんだな!!」

 

 そう言って男子生徒たちは爆笑していたが、飛鳥は既にいなくなっていた。

 

「いない!?」

「一丈字くんならもう寮の中に入ったよ」

 

 見かねた女子生徒が教えると、男子生徒たちは腹立つ顔で頷いた。

 

「分かる分かる」

「仲が良かった女子たちと離れ離れになるのはつらいなあ」

「失ってから気付くんだよな」

「でも安心しろ。オレたちがしっかり可愛がってやるからな」

 

(あー…なんでこいつらと同じクラスなんだろ…)

(一丈字くんも大変よね…。こんな馬鹿どもの相手させられて)

 

 そう女子生徒たちは困惑していた。

 

*******************

 

 そのころ飛鳥はというと、最低限の荷物だけ持って部屋にいた。持ってきたものは段ボールと衣服一式、仕事に使う電子機器だけだった。

 

飛鳥「さて、今回はオレの出番はなさそうだな…」

 

 その時、スマホが鳴って飛鳥が電話に出た。

 

飛鳥「あ、はい。もしもし」

有咲「もしもし一丈字か!? まさかとは思うけど、あたしらに押し付けるつもりじゃねぇだろうな!!?」

飛鳥「…まだあのネタを」

 

 詳しくは第256話を参照。

 

美咲「折角こころの無茶ぶりが少なくなって一息つけるのに、冗談じゃないわよ!!」

飛鳥「ちなみに1組のようすはどうですか?」

有咲「ダメだ…。すっかり舞い上がっちまってるよ。共同スペースもあるから…」

飛鳥「そうですか…」

 

 有咲の言葉に飛鳥が困惑しながら、これから起こりそうなことを想像した。

 

飛鳥「黒服の人たちには声を掛けましたか?」

美咲「あたしが依頼した。けど…」

飛鳥「けど?」

 

有咲「お前だけ楽してるのなんかズルい!!!」

美咲「それ!! お願いだから頑張って!!」

 

 そんなこんなで通話は切れた。

 

*************************

 

 ちなみに寮内はエアコン、トイレ、冷蔵庫、クローゼット、洗濯機、風呂も全部ついてたりとめちゃくちゃ豪華。風呂と洗濯は共同という声もあったが、色々都合もあるのか、個別という事になった。

 

飛鳥「わあ、凄い」

 

 そんなこんなで、飛鳥たちの寮生活が始まった。

 

 1年1組・談話室

 

香澄「あっちゃんに会えないのは寂しいけど、有咲たちがいるのはいいね!」

有咲「ちょ、抱き着くなぁ!」

 

 談話室に香澄たちが集まっていて、香澄が有咲に抱き着いていた。そしてそれを遠巻きに見ていた男子生徒たちが感涙していた。

 

「わ、わしゃあ幸せじゃあ…!」

「女子たちの私服…」

「これを一生の思い出にするんだ!」

 

 1年2組・談話室

 

モカ「なんか毎日がお泊り会みたいだね~」

ひまり「そうだねー」

つぐみ「そ、それはいいけど…私、実家の手伝いしないといけないのに…」

巴「そういやイヴも困ってたな。どうして急に全寮制にしたんだろうな」

蘭「さあ…」

 

 2年1組・女子寮入り口前

 

「千聖ちゃあん!! 出てきてぇ!!」

「せめて誰でもいいから1人だけでも~!!!」

「男子うっさい!!」

「もうなんでこんなことになったんだか…」

 

 男子たちが千聖たちに会いたそうにしていたが、女子たちがブロックしていた。

 

 

 千聖の部屋

 

千聖「全く…学校も困ったことをしてくれるわね…」

彩「あははは…」

紗夜「私なんて、日菜から毎日電話がかかってくるんですよ」

燐子(学校のネットに見張られててネットゲームができない…)

花音「み、みんな一緒だから…まだいいんじゃないかな…」

 

 2年2組・日菜の部屋

 

日菜「あーあ。おねーちゃんと離れ離れになるなんて、全然るんってしないよ…」

 

 日菜はぷーたれていて、薫、麻弥、友希那、リサも集まっていた。

 

リサ「あははは…。ヒナは本当に紗夜の事好きだよねー」

友希那「それはそうと、男子たちが鬱陶しくして仕方ないわ」

薫「儚い…」

麻弥「儚いんですかね…」

 

 薫の言葉に麻弥が苦笑いすると、

 

日菜「あ、そうだ。千聖ちゃんから麻弥ちゃんに伝言があった」

麻弥「へ?」

日菜「寮生活になったらジャージ禁止だって」

麻弥「ええっ!!? 寝巻これしかないんですよ!?」

日菜「ないなら即刻買いに行くって。アイドルがジャージなんて着てたら、パスパレのイメージが悪くなるからって」

麻弥「そ、そんなぁ~!!!!」

 

 やっぱり寮生活なんて嫌だと思う麻弥だった。

 

 2年3組・3年生

 

「かわいい女の子が欲しい…」

「あたしらもかっこいい男子が欲しいよ」

 

 こんな感じで寮生活が行われていて、学校が終わって寮にいる間は飛鳥はのんびりしていた。

 

飛鳥「まあ、黒服の人たちがみはってるから大丈夫でしょ」

 

 その頃、有咲と美咲はというと…。

 

「ちょっと見るくらいいいじゃないか!!」

有咲「見すぎなんだよ!!」

美咲「はー…最悪。なんで共同スペースは男女一緒なんだろ…」

「クラスメイトなんだからいいじゃないか!!」

「そうだよ!!」

 

 と、全く反省のない色を見せないどころか、むしろお前らに非があると言わんばかりの態度で詰め寄る男子生徒たちに有咲と美咲は困惑していた。

 

 2組もまた…。

 

ひまり「もーやだぁ!! いやらしい目で見すぎ~!!!」

モカ「飛鳥くん今頃のんびりしてるだろうなぁ~」

蘭「何それ。許せない」

つぐみ「いや、許せないって…」

 

「なんでだよぉ!! 仲良くしようよぉ!!」

「同じクラスメイトじゃんかぁ!!」

巴「あたしらとそれ以外の女子で態度変えすぎなんだよ!」

「そうよそうよ!!」

 

 そして3組はというと…。

 

「一丈字くん。いつもお疲れ様」

飛鳥「あ、ありがとうございます…」

 

 飛鳥はクラスの男子達からねぎらわれていた。

 

「いやー。一丈字くんがうちのクラスで良かったわー」

「他のクラスの子大変みたいだよ」

「いつもありがとう」

飛鳥「ああ、今までの苦労が取れていく…」

 

 全身の疲れが取り除かれたという。

 

飛鳥「また次回から頑張れそうです」

「あの、すみません…」

飛鳥「!?」

 

 飛鳥が横を向くと、有咲と美咲ががいた。

 

飛鳥「い、市ヶ谷さんと奥沢さん…」

「ど、どうしたの…?」

 

 すると2人が飛鳥に泣きついた。

 

美咲「今から頑張ってぇええええええええええええええ!!!!」

有咲「もうやだぁああああああああああ!!!」

飛鳥「…よく頑張りましたね。あとは任せてください」

「一丈字くん。私たちも手伝うわ」

飛鳥「ありがとうございます…」

 

 

おしまい

 

 



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第260話「もしも全寮制で振り分け方がベタだったら」

 

 

『もしもバンドリ学園が全寮制だったら』

 

 ある日の事。バンドリ学園が全寮制になった。

 

飛鳥(あらまあ…)

 

 ガス水道電機は全部学校が負担。クラスごとに寮を立てるのだ。

 

 そして寮が立ったが…。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥とバンドガールズは学園に色んな影響を及ぼすという無茶苦茶な理由で同じ寮にさせられていた。

 

「はぁああああああああああああああああああああああ!!?」

「座長権限悪用してんじゃねぇよクソ丈字!!」

「エロ丈字!!」

「生まれてきたことを謝れ!!」

 

 当然のごとく、男子生徒たちからはとてつもないブーイングだったが、あからさまに下心丸出しだったため、女子生徒たちからはごみを見る目で見られていた。自分が飛鳥の立場だったら、そのままあやかるつもりなんだろうと、目で訴えていた。

 

飛鳥「ああ、面白くないからか」

 

 飛鳥はなぜこうなったのかすぐに察知した。

 

モカ「おお~。これは楽しそうなことになるね~」

こころ「そうね! 飛鳥も一緒なら楽しいわ!」

 

 事情を知っているモカとこころは好意的だったが、

 

紗夜「女子の中に男子がいるというのは…」

有咲「じょ、冗談じゃねぇよ!」

蘭「あり得ない」

彩「私たちアイドルだから…」

 

 と、中には消極的な意見もあった。飛鳥は考えた。

 

飛鳥「かくなる上は…」

「かくなる上は?」

 

飛鳥「自主退学しまs」

「待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て」

 

 飛鳥の発言に有咲と美咲が突っ込みを入れた。

 

飛鳥「え、私だって怒られたくありませんし、冤罪かけられるためにわざわざ広島から来たわけではございませんよ」

有咲「それ絶対私と奥沢さんに負担かかるやつー」

美咲「お願い。怒らないので残ってください」

飛鳥「大丈夫ですよ。紗夜先輩達もいらっしゃいますから」

モカ「3人とも死亡フラグたてちゃったね~」

紗夜・蘭・彩「ごめんなさい。取り消すので勘弁してください」

(下手に出た!!!)

 

 露骨に下手に出たため、皆が突っ込みを入れた。

 

「先生!! こんなことが合っていいんですか!!」

「女子の中に男子が入るなんて!!」

「そうですよ!!」

「自分たちが一丈字の立場だったら何も言わんのだろう?」

 

 男性教諭の正論すぎる発言に、誰も言い返せなかった。

 

「とりあえずもう決まったことだ。潔く諦めるんだな」

「あああああああああああああああああん!!!」

 

 泣き崩れる男子生徒たちを飛鳥が困惑しながら見ていると、後ろから千聖が話しかけた。

 

千聖「行きましょう。あなたの事を見込まれての結果よ」

飛鳥「あ、はい…」

 

*********************

 

 こうして25人が中に入った。

 

あこ「あこも遊びに来てるよ!!」

千聖「見た感じ、普通の寮ね」

香澄「ソファーやテレビがありますよ!」

日菜「ここで皆とおしゃべりしたりするの、るんってするね!」

 

 学年もクラスも違う人間がこうして集められて、いったい何をするつもりなんだろうと蘭や友希那は疑問に思っていた。

 

沙綾「それはそうと、部屋割りどうする?」

 

 沙綾がそういうと、飛鳥は下を向いた。

 

あこ「あこだったら一番上にするかなー」

友希那「そうね。頂点を目指す者としては…」

リサ「もしかしてバンドごと?」

紗夜「いえ、部屋は1フロアにつき4部屋あったので…」

 

 ちなみにフロアは5階建てで、住居は2階から8階。部屋は1フロア4部屋ずつあった

 

蘭「そ、それだったら私も…」

モカ「蘭~。そこでマウント取らなくても~」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は黙っていると、紗夜が飛鳥を見た。

 

紗夜「…それはそうと、男子が女子の部屋の近くをうろつくのは、あまり感心できませんね」

飛鳥「あ、いざとなれば寮の外で生活しますので、いつでも仰ってください」

紗夜「一丈字くん。それはそれで別の問題が発生しますので…」

有咲「ていうか、寮の外で寝れるのかよ」

飛鳥「寝ようと思えば寝れます」

 

 飛鳥の言葉に皆が困惑した。

 

飛鳥「…皆さんの不安がひしひしと伝わりますので、こちらとしても」

つぐみ「い、一丈字くん。そこまで気を遣わなくていいよ」

モカ「それじゃあ、モカちゃんが飛鳥くんを見張ってるね~」

「!!?」

千聖「それなら一丈字くん。悪いんだけどあなたは201号室を使って頂戴。そこならよほどの事がない限り上の階に行くことはないわ」

モカ「じゃあモカちゃんは202号室使うね~」

飛鳥「……」

 

 明らかに能力者としての対策を立てている事に気づいた飛鳥は特に反対することはなかった。

 

千聖「私は203号室を使わせてもらうわね」

 

 と、次々と部屋が決まっていった。

 

部屋割りはこうなった

 

201号室:一丈字飛鳥

202号室:青葉モカ

203号室:白鷺千聖

204号室:弦巻こころ

 

301号室:瀬田薫

302号室:北沢はぐみ

303号室:松原花音

304号室:奥沢美咲

 

401号室:丸山彩

402号室:大和麻弥

403号室:若宮イヴ

404号室:山吹沙綾

 

501号室:戸山香澄

502号室:市ヶ谷有咲

503号室:花園たえ

504号室:牛込りみ

 

601号室:上原ひまり

602号室:宇田川巴

603号室:羽沢つぐみ

604号室:空き室

 

701号室:氷川紗夜

702号室:氷川日菜

703号室:白金燐子

704号室:空き室

 

801号室:美竹蘭

802号室:湊友希那

803号室:今井リサ

804号室:空き室

 

*********************

 

モカ「これが1フロア5部屋だったらもっと大変なことになってただろうね~」

リサ「うーん…」

 

香澄「とりあえず荷物おいてさ! パーティ的な事しようよ!」

こころ「いいわね!」

美咲「コラコラ。皆忙しいんだから」

有咲「それにしても、一丈字がいる事の安心感は何だろう…」

飛鳥「死亡フラグですよ」

有咲「死ぬな」

美咲「そうだよ。とっても頼りにしてるんだから」

 

 有咲と美咲は飛鳥に詰め寄った。結果的にパーティは数日後に延期になった。

 

******************

 

 そして2階…。

 

モカ「今日からお隣さん~。よろしく~」

飛鳥「よろしく…」

モカ「そういや今日の晩御飯どうするの~?」

飛鳥「学園から弁当が支給されるって聞いたから、弁当食べるよ」

モカ「それで足りるの~?」

飛鳥「……」

 

 その夜

 

モカ「おいし~」

千聖「お料理できるのね…」

こころ「とっても美味しいわ!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥の部屋でモカ、千聖、こころにチャーハンをご馳走していたが、皆満足していた。

 

飛鳥「何日持つだろうか…」

モカ「大丈夫だよ~。モカちゃんたちがしっかり守ってあげるから~」

こころ「そうよ? 心配する事なんて何一つないわ?」

千聖「あなたが間違いを起こさなければね?」

飛鳥「これは迂闊に動けない状態ですね」

 

 そう言いながら食卓を囲んで、数分後。

 

香澄「飛鳥くーん!! チャーハンちょーだーい!!」

飛鳥「ああ、やっぱこうなると思ったわ」

リサ「ごめんね。手伝うから…」

 

 1階にある共同のキッチンで、飛鳥はリサたちの協力を得ながら、チャーハンをふるまった。

 

はぐみ「おいしー!!」

日菜「るんってする!!」

紗夜(…美味しい)

 

 そしてその歓声が1階で響き渡り、寮の外では男子生徒たちが血の涙を流していた。

 

「畜生…一丈字の奴…」

「自分だけハーレムを堪能しやがって…」

「冤罪で消されろ…!!」

「コラー!! 何をしとるかあ!!」

 

 とてもきつい男性教諭がやってきた。

 

「ああああああああああああん!!!」

「オレにもハーレムをぉおおおおおおおおお!!!」

「ていうかあいつはいいの!!? あいつはいいの!!?」

「学校が決めた事だ。仕方あるまい!」

「理不尽だぁああああああああああ!!!!」

 

 という男子生徒たちの叫びが夜空に響き渡った。

 

おしまい

 



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第261話「没ネタ」



 今回の設定

・ 飛鳥の依頼人はバンドリ学園学園長(都築詩船)
・ 正体を知っているバンドガールはいない(ただしこころと日向と椿は幼馴染)


 

 

 

 201X年。ガールズバンドは戦国時代を迎えていた…というのは大げさかもしれないが、東京では5つのガールズバンドが注目されていた。

 

花咲川女子高校の生徒5人で結成された新米バンド『Poppin’Party』

 

幼馴染5人で結成された王道ロックバンド『Afterglow』

 

芸能事務所所属5人で結成されたアイドルバンド『Pastel*Palettes』

 

プロからも注目されている本格派ロックバンド『Roselia』

 

大富豪の娘率いる異色派バンド『ハロー、ハッピーワールド!』

 

 東京はおろか、日本の男たちは大抵彼女たちにメロメロだった。そしてそんな彼女たちを自分のものにしようと、犯罪行為やら迷惑行為やらを繰り返す輩も現れた。

 

 そんな男達から彼女たちを守るために、一人の男が立ち上がった!!

 

「護衛対象となっている女子生徒が所属しているバンドリ学園に行ってこい」

「……」

 

***************

 

 そして月日が流れ…。

 

『優勝! 1年3組!』

 

 飛鳥のクラスはクラス対抗の仮装大会で優勝していた。

 

蘭「……っ」

モカ「まさか間奏にAfterglowの曲を入れてくるなんてね~」

ひまり「しかも暗譜な上に、目を閉じてたよね…」

つぐみ「す、凄いピアノ技術…」

巴「ああ…」

 

 隣のクラスのAfterglowは悔しがっていた。

 

『代表者、前へ!』

「へへへ…」

 

 その時、一人の金髪のDQNが前に出ようとしたが、ブーイングが起こった。

 

「お前じゃないだろ!!」

「あのピアノ弾いてた奴だろうが!!」

 

 という声が上がっていたが、DQNは無視して壇上に上がった。すると表彰する教師がDQNの前に立ったが、

 

「表彰、1年3組…」

 

 そのまま表彰すると生徒たちからブーイングが鳴りやまなかった。取り巻き達もあまりのブーイングと、周囲から睨みつけられて恐れをなしていた。

 

「な、なんだてめぇらよぉ!! やんのかぁ!!?」

 

 取り巻きの一人が吠えるが、

 

「えー、静かにしなさい」

「!!」

 

 すると、教諭がDQNと取り巻き達の名前が呼んだ。

 

「君たちが副賞を手にすることはない」

「!!?」

「これが終わり次第、職員室に来なさい。今まで君たちがほかの生徒たちにかけてきた迷惑行為について、話がある!」

 

 教諭がそういうと、生徒たちから歓声が上がった。

 

「……」

 

 その様子を一人の少年が見つめた。

 

************************

 

 1年3組・教室

 

「いやー。あいつら退学決定だってよ」

「いなくなって清々するぜ!」

 

 DQNと取り巻き達は退学が決まり、ほかの生徒たちが安心していた。

 

「それにしても…」

 

 生徒たちが少年を見つめていた。

 

「一丈字くん。君、本当にすごいね…」

飛鳥「いえ、遊びレベルなので」

 

 黒髪のストレートに黒い縁の眼鏡をかけている少年・一丈字飛鳥に話しかけた。

 

「もしかして、ピアノ習ってたの?」

飛鳥「独学です」

「そ、それは何のために…?」

飛鳥「いや、暇つぶしに…」

「暇つぶしに!!?」

飛鳥「極めた結果がこれですね」

 

 飛鳥の発言に皆が困惑した。DQNにステージに出るように命令された時もやたらひょうひょうとしていたし、肝が据わりすぎていると思っていた。

 

飛鳥(昔からだしな。ああいうの…)

 

「それにしてもあのAfterglowを破るなんて凄いよなー」

「うん」

 

 

*******************

 

 放課後、事件が起きた。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥は遠くから自分の教室の前の廊下を見つめていた。というのも、Afterglowをはじめとするガールズバンドの女子生徒たちがいたからだ。

 

蘭「ねえ、ピアノ弾いてた奴どこ?」

「い、一丈字くん…?」

モカ「一丈字くんか~…」

巴「変わった苗字だな」

 

 蘭たちが自分を探していることで、困惑していた飛鳥だった。

 

蘭「……」

 

 蘭は不機嫌だった。

 

モカ「蘭~。確かにボロ負けだったけど~」

蘭「それもそうだけど…。どうしてほかのグループも」

友希那「決まってるわ。私たちも彼に興味があるのよ」

 

 2年生の湊友希那が返事した。

 

千聖「彼…まだ本気を出してないようにも見えるのよ」

はぐみ「こころん。あの人の事を調べる事ってできないかな?」

こころ「黒服さん達にお願いしようかしら」

美咲「いやあ、普通に迷惑だからやめときな…」

 

 飛鳥はこっそり超能力を使って、自分の関心を徐々に薄れさせるように香澄たちを暗示をかけた。

 

飛鳥「帰ろう」

 

 飛鳥はその場を後にした。

 

***************************

 

 だが、このまま終わっては話が面白くない。

 

 翌日、飛鳥が普通に学校生活を過ごしていたが…。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥がぼーっとしていると、背後から誰かが現れたのに気付いたのか、すぐに飛びのいた。

 

「すごーい! あなた物凄い身体能力なんだね!」

 

飛鳥(この人たちは…)

 

 Pastel*Palettesだった。

 

飛鳥(一番厄介なのに目をつけられたな…)

 

千聖「こんにちは。一丈字飛鳥くんだったかしら?」

飛鳥「ええ」

千聖「私は白鷺千聖。Pastel*Palettesのベースで、女優もしてるの。ご存じかしら?」

飛鳥「名前は存じておりますよ」

 

 飛鳥が普通に返事した。

 

日菜「あたし氷川日菜! ギターをしてるよ!」

飛鳥「どうも…」

 

 テンションの高い日菜を見ても、飛鳥は困惑するばかりで、千聖は飛鳥がやはり只者じゃないと感づいていた。

 

彩「あ、私も紹介しなきゃ! まんまるお山に彩を! 丸山彩でーす!」

飛鳥「あ、はい…。よろしくお願いします…」

千聖(間違いない。この子やっぱり何かあるわ)

 

 飛鳥の反応があからさまにほかの男子生徒たちを反応が違う為、千聖は確信した。そして麻弥とイヴも自己紹介をした。

 

千聖「さて、本題に入るけど…あなたのピアノ、凄かったわ」

飛鳥「ありがとうございます…」

日菜「るんってした!」

飛鳥「…るん?」

千聖「気にしないで頂戴」

 

 飛鳥が困惑すると、千聖が突っ込みを入れた。

 

千聖「それはそうと一丈字くん。あなた、部活は何かしているかしら?」

飛鳥「部活はしてませんが、課外活動をしてますね」

日菜「なんの?」

飛鳥「賞金稼ぎです」

 

 飛鳥の発言に空気が止まった。

 

千聖(普通じゃない…というか、隠す気あるのかしら…)

 

 割と堂々としていて、千聖が困惑していた。

 

麻弥「賞金稼ぎ!!?」

日菜「どんなことしてるの!?」

飛鳥「資格取ったりとかですね。英検とか…」

千聖「ちなみに何級取ったの?」

飛鳥「1級です」

日菜「じゃあじゃあ!」

 

 日菜が英語でしゃべり始めると、飛鳥が英語で返した。そして数分間英語でしゃべっていた。

 

日菜「すごーい!! 飛鳥くん本当にすごい!!」

彩「あ、あの…私たちは何をしゃべてるのか全然わからなかったんだけど…」

麻弥「なんて言ってたんですか…?」

日菜「えっとね。昔アメリカに数年間留学してて、日本に来た後も英語を忘れないように、本を読んだり、外国人向けのイベントとかにも積極的に参加してたんだって!」

麻弥「日菜先輩もよくわかりましたね…」

千聖「ご、ごほん!!」

 

 日菜のマイペースぶりに翻弄されそうになる千聖だったが、何とか体勢を立て直した。

 

千聖「ま、まああなたのポテンシャルはよくわかったわ。これからよろしくね」

飛鳥「は、はあ…」

 

 そう言ってPastel*Palettesと仲良くなった飛鳥だったが…。

 

「あいつ、千聖ちゃんたちとあんな仲良く…」

「オレもピアノ始めよう…」

「じゃあオレは英語!!」

 

 これが、すべての始まりだという事はまだ誰も知る由がなかった…。

 

おしまい

 

 

 



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第262話「飛鳥にアプローチしたいが男子生徒たちに邪魔されるバンドガールズ」



 今回の設定

・ バンドリ学園に来るまでにバンドガールズを色々助けまくっていた飛鳥のお話。


 

 

***************************

 

 一丈字飛鳥です。私は今、大変なことになっております。

 

日菜「飛鳥くん。今日の放課後暇?」

飛鳥「用事があります」

日菜「うちの事務所に来てほしいんだけど!」

飛鳥「用事があります」

日菜「そこでゆっくりお話とかしたいなー」

飛鳥「ごめんなさい。用事があります」

日菜「積もる話もあるし」

飛鳥「行かないと話が進みませんもんね。分かります」

 

 Pastel*Palettesというアイドルグループの方々から、事務所に来るように言われてます。

 

千聖「そんなこといって逃げようとしても無駄よ? 大体何の用事なの?」

飛鳥「郵便局まで荷物取りにいかないといけないんですよ」

千聖「じゃあそれが済んでからでいいわ」

飛鳥「あ、はい。分か…」

 

 その時だった。

 

「ダメだぁー!!!」

 

 するとファンの男子生徒たちがやってきて、飛鳥を突き飛ばした。

 

「千聖ちゃん!! 何を考えてるんだ!!」

「日菜ちゃん!! 早まらないで!!」

「オラァ!! さっさと郵便局行けこのゴミ虫が!!」

「お前ごときが千聖ちゃんたちと話をするなど、10000光年早いんだよ!!」

 

 男子生徒たちにブロックされて、飛鳥はその場を去った。

 

飛鳥(逆に…ありがとうございます)

 

 飛鳥は困惑しながらも、男子生徒にお礼を言ったが、

 

「……」

 

 邪魔されたPastel*Palettesは激怒していた。

 

「な、何をそんなに怒ってるの…?」

「怒ってる顔も可愛い!!」

「ぶたれたい!!」

「オレをもっと睨みつけてぇ~♡」

 

 そして、ファンの男子生徒たちはドMだったので全く効果がなく、不毛な時間が流れていた。

 

千聖(私の専属マネージャーにしたいのに…!!!)

彩(千聖ちゃん。パスパレのマネージャーでしょ!!)

日菜「るんってしないし、イライラする…!!」

麻弥「日菜さん。声に出てます。気持ちは分かりますが」

イヴ「切腹してください」

麻弥「イヴさんは落ち着いてください!!」

 

飛鳥「郵便局行くか…」

 

 飛鳥は郵便局に行って、荷物を受け取った。

 

****************************

 

 そしてまたある日の事。飛鳥は昼食を取ろうとしたが、思ったほか腹が減っていなかったので、そのまま歩き回っていた。

 

飛鳥(そういやこの学校屋上が解放されてるけど…考えることは皆同じだなぁ)

 

 飛鳥が屋上の様子を見に行くと、そこにはたくさんの生徒でにぎわっていた。アニメとかで屋上がよく解放されていた為、それにあこがれたのか、皆ここにきている。ちなみに自殺対策も万全であり、柵は鉄格子になっている。

 

 そして飛鳥が立ち入ろうとすると、何か気配を感じて飛びのいた。

 

飛鳥「…何してるんです?」

「折角後ろからぎゅーってしてあげようと思ったのに~」

 

 そこにはAfterglowがいて、モカが話しかけてきた。

 

飛鳥「Afterglowのスキャンダルになりますよ」

モカ「モカちゃんたちはアイドルじゃないので大丈夫~」

ひまり「それはそうとモカだけずるいよ~」

モカ「早いもの勝ちでーす」

 

 ひまりとモカのやり取りを見て、飛鳥は頭をかいた。その時だった。

 

「あっ!! あんな所にAfterglowがいるぞ!!」

「本当だ!!」

「そして一丈字もいる!!」

「一丈字からAfterglowを守れぇえええええええええええええ!!!」

 

 そう言って男子生徒たちがAfterglowを囲み、飛鳥を下の階まで運んで放り投げた。

 

「アフグロに近づくなカス!!」

「生んでくれた親に謝れ!!」

 

 しかし、結果的に人助けをしてるようにしか思えなかった飛鳥は、また男子生徒たちにお礼を言って…。

 

「……」

 

 Afterglowは激怒していた。しかも温厚のはずの羽沢つぐみや、のんびりとしている青葉モカも例外ではなく、本気で切れてた。この後どうなったかはご想像にお任せします。

 

*********************

 

 放課後、

 

飛鳥「帰ろう」

 

 飛鳥が帰ろうとしたその時だった。

 

「探したわよ。一丈字くん」

飛鳥「!!?」

 

 飛鳥の目の前に千聖が現れた。

 

飛鳥「あ、白鷺先輩。お疲れ様です」

千聖「お疲れ様。今から帰りかしら」

飛鳥「そんなところですね」

千聖「ちょっと時間取れるかしら」

飛鳥「えーと…」

 

 飛鳥が困惑していると、

 

千聖「なに? 私じゃ不満だというの?」

飛鳥「いえ、あなたのファンがスタンバってます」

千聖「!?」

 

 千聖が周りを見渡すと、そこには千聖ファンの男子生徒たちが取り囲んでいた。

 

「突撃―!!!」

 

 すると一斉に取り囲み、飛鳥が一瞬にして正門の外まで放り投げだされた。

 

「本当に懲りねぇ野郎だな!!」

「千聖ちゃんのおっぱいはオレのもんだ!!」

「いや、オレのものだ!!」

「僕のだよぉ!!」

 

飛鳥(な、なんかよくわからないけど…、アイドルってやっぱり大変なんだなぁ…)

 

 そして飛鳥が帰った後、彩たちがやってきた。

 

彩「どうしたの!?」

千聖「それが…」

 

 千聖が事情を説明した。

 

彩「それは千聖ちゃんが悪い」

日菜「あたし達には厳しいくせに、いつもせこい事ばっかりしてるよねー」

麻弥「反省してください」

 

 同情してもらえるかと思ったら、くそみそに怒られて千聖は沈んだ。

 

イヴ「切腹してください」

麻弥「それはやりすぎです」

日菜「そうだ。今度やったら、千聖ちゃんの絵、公開しようよ」

千聖「や、やめてぇ!! あんなの見られたら私の女優人生終わっちゃう!!」

彩「あと、薫さんなんていうかなー」

千聖「薫にまで馬鹿にされたら、末代まで恥よ!!」

麻弥「いや、千聖さんの中の薫さんってどんな感じなんですか」

 

 あまりにも薫の扱いがひどいため、麻弥が突っ込みを入れた。

 

日菜「ところで何の相談があったの?」

千聖「今度のドラマでキスシーンがあるんだけど、そこだけは一丈字くんにお願いできないかと…」

彩「千聖ちゃん。お仕事だよ」

日菜「そうそう。女優が廃るよ」

麻弥「そういうのはよくないと思います…」

イヴ「切腹してください」

麻弥「あの、イヴさん?」

 

「千聖ちゃんのキスシーン!!」

「うぁあああああああああああああああ!!! 悪魔の時間だぁああああああああああ!!」

「僕以外の男とキッスするなんてぇえええええええ!!」

「のぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 今日もバンドリ学園は平和…ではなかった。

 

 

飛鳥「オレいらなくね?」

 

 そう言いながら、飛鳥はつけ麺屋で、つけ麺を食べていた。

 

 

おしまい

 



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第264話「もしも飛鳥が本気でキレたら」

顔すら公開できないスーパーキレネンコ。


 ある朝の事だった。

 

飛鳥「ああ…」

 

 度重なる男子生徒たちからの言いがかり、変態さにストレスがたまっていた飛鳥。また、一部の女子生徒からも理不尽な仕打ちを受けて、結構ボロボロになっていた。

 

飛鳥(学校終わったら、また弦巻家にお世話になろう。そろそろまずいな…)

 

 飛鳥はとにかくイライラしていた。だけど、こういう時全くと言っていいほど、トラブルに見舞われるのだ。多分これ絶対怒り爆発させるんだろうなと考えると、更にイライラした。

 

飛鳥(ですよね。面白くないですもんね。僕、もうゴールしていいですよね…)

 

********************

 

 そして飛鳥は今日も学校に登校したが…。

 

「おい、あいつ来てるぞ…」

「本当に学校来ないでほしいよなぁ…」

「あいつが学校に来てから毎日が楽しくない」

「ほんとにいなくなればいいのに…」

 

 校舎を歩くと男子生徒たちからの嫌味やら雑言が聞こえてきた。そして女子生徒たちはひそひそと噂をしていた。

 

飛鳥(あぁ、完全につぶしに来てるな。分かりますよ)

 

 飛鳥が教室に入ると、クラスメイト達が微妙な顔をした。

 

飛鳥(なんか…はめられた感じだな)

 

 飛鳥は何かを察しながらクラスメイトを見た。

 

飛鳥「あ、なんかありました?」

「あの、一丈字くん…」

「落ち着いて聞いて…」

飛鳥「はい」

 

 クラスメイトから事の顛末を聞いた。

 

飛鳥「ああ、そうですか…」

 

 どうやら自分にぬれぎぬを着せた生徒がいたのだ。飛鳥はもう限界寸前だった。

 

 その時だった。

 

「おい、一丈字!!」

 

 女子生徒が激怒してやってきたが、飛鳥は振り返ることはなかった。

 

「お前か!! あたし達の着替えを覗いた上に、下着を盗んだのは!! こっち来い!!」

 

 女子生徒が激怒して飛鳥を引っ張り出そうとしたが、飛鳥はびくともしなかった。すると、飛鳥の顔を見ていた生徒たちは顔面蒼白になっていた。

 

「こっちこいって言ってんだろ! おい!! 聞いてんのか…」

 

 女子生徒が怒鳴ったその時、飛鳥が振り向くと完全にブチぎれた顔をしていて、人間とは思えない顔をしていた。恐ろしすぎて漫画では公開できない顔だった。普通なら鼻から上だけだが、もう顔全体真っ黒で塗りつぶされていた。

 

「ご、ごめんなしゃい…」

 

 さっきまで激怒していた女子生徒も飛鳥の顔を見て、半泣きで謝っていた。そして飛鳥は女子生徒を通り過ぎて教室を出ていった。なんか人間とは思えないような唸り声を漏らし、とてつもない殺気を放っていた。廊下からは生徒たちの悲鳴が聞こえた。

 

「な、なんかわたし…よけいなこといっちゃった…?」

「……」

 

 女子生徒が涙目で飛鳥のクラスメイトに聞くと、皆気まずそうに視線をそらした。

 

 飛鳥はある場所に向かっていた。全校放送が行われる場所だった。そして扉を開けると、生徒がいたが…。

 

「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 飛鳥の顔を見るなり悲鳴を上げて、腰を抜かしてそのまま動けなくなった。飛鳥はお構いなしにマイクに近づいて、超能力で全校放送できるようにした。

 

******************

 

 1年3組・教室

 

「ど、どうなったんだろう…」

 

 飛鳥がどうなったか不安になったクラスメイト達。すると、

 

 

「おい!! なにやってんだオマエ!!」

「馬鹿よせ!! 死にたいのか!!!」

 

 スピーカーから放送委員の声が聞こえたのだが、発言の内容が更に3組の生徒たちを恐怖に陥れた。

 

「…えー。1年3組の一丈字飛鳥です」

 

 飛鳥の声がしたが、あきらかに怒っていた。

 

「突然の放送失礼します。残念なことに、女子バレー部の部員の方々の着替えを覗いて、私物が盗まれた事件があったのですが、それを私に擦り付けようとした方がいます。しかも私のロッカーに盗まれた私物を置いて。動機は言うまでもございません」

 

 飛鳥の声が聞こえて、バンドガールズも反応したが、一部のメンバーは飛鳥が本気で切れていることを察した。

 

飛鳥「もう前から言おうと思っていましたが安心してください。私と彼女たちはあなた方が思っているような関係になる事はもうありません。今ここで呼びかけているのも、私自身の退学を賭けています。というかもうやめるつもりです。こんな事をしては、もう学校にいられませんので」

「!」

飛鳥「私はもう思ったことを口にして、物事をはっきりさせないと気が済まない性格です。そのせいで今まで沢山の敵を作りました。そして今もそう。直そうとも考えましたが、直しても敵は増えていくばかりでした。もう疲れました」

 

 飛鳥の本音を聞いて、生徒たちは反応した。

 

飛鳥「そういう訳で最後の通告です。私を陥れようとしている犯人へ。今すぐ自分たちがやったと正直に話してください。そうでなければ、こちらも出るところ出ます。もうそれを最後に、私はこの学校を去ることにします」

 

 さっきまでビビっていた放送委員も真面目に話を聞き、飛鳥の顔を見た。

 

飛鳥「以上です。さようなら」

 

 そう言って飛鳥は電源を切り、黙って放送室を後にした。

 

***************************

 

 そして誰にも気づかれないように、教室に戻ってきた。

 

「あっ…」

 

 飛鳥とクラスメイト達が顔を合わせた。

 

「い、一丈字くん…」

「あの、ご、ごめんなさい…」

飛鳥「大丈夫ですよ。ご理解していただけて何よりです。バレー部の方々にもよろしくお願いします」

 

 飛鳥がそう言って席に座ると、担任がやってきた。そして飛鳥は指を動かした。

 

「一丈字」

飛鳥「はい」

「荷物を持って、職員室に来なさい。他の生徒は自習にする」

飛鳥「分かりました」

「!!?」

 

 先生の言葉に飛鳥が席から立ち上がると、荷物を持って廊下に出た。

 

「ま、待っ…」

 

 生徒の一人が何か言いかけようとすると、飛鳥が指を動かした。先生には聞こえていなかったのだろうか、飛鳥はそのまま先生と職員室に出た。1組と2組の廊下の前を通らないで、下の階に降りた。

 

 結果として犯人は見つかったものの、今回の件で飛鳥と生徒たちの仲は修復できないと判断し、飛鳥は広島に帰ることになった。

 

************************

 

飛鳥(やっぱり本気で切れると、シリーズが終わるんだよなぁ…)

 

 飛鳥は腕を組んで困惑していた。

 

 

おしまい

 

 




おまけ ~本気でキレて殺気を出してる飛鳥をもしも見た時のリアクション~

香澄:青ざめて涙が出る。
たえ:冷や汗をかく
りみ:号泣
沙綾:青ざめる
有咲:顔面蒼白

蘭:謝り倒す
モカ:冷や汗をかく
ひまり:号泣
巴:青ざめる
つぐみ:青ざめる

彩:号泣
日菜:絶句
千聖:冷や汗をかく → 一人になった時めちゃくちゃビビる
麻弥:眼鏡が割れる
イヴ:失神

友希那:冷や汗をかく
紗夜:青ざめる
リサ:号泣して絶叫
燐子:号泣
あこ:号泣(誰かに抱き着く)

こころ:困惑(こころが怒らせた場合)/止める(誰かが怒らせた場合)
薫:青ざめつつも気丈にふるまう → 一人になった時号泣
はぐみ:号泣
花音:絶句
美咲:顔面蒼白

レイ:冷や汗をかく
ますき:絶句
ロック:顔面蒼白
パレオ:絶句
チュチュ:涙目でビビる

ましろ:人生の終わりを感じる
つくし:涙目でビビる
七深:絶句
透子:絶句
瑠唯:冷や汗をかく


飛鳥:キレている自分の映像を見て、怒りがすっと消え、
   絶対こうならないように自分に言い聞かせる。



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第267話「もしも飛鳥がお姫様抱っこしたら」

 

 

『もしも飛鳥がバンドガールをなんやかんやでお姫様抱っこしたら』

 

『香澄』

 

飛鳥「大丈夫ですか? 戸山さん」

香澄「えへへへ。ゴメーン」

 

 香澄がドジやって落下しようとしたところを受け止めた飛鳥。

 

飛鳥「気を付けてくださいね」

香澄「はーい」

 

結果:特に何もない。

 

『たえ』

 

飛鳥「花園さん。大丈夫ですか?」

たえ「あ、一丈字くん…」

 

 たえが飛鳥の方をじっと見る。

 

飛鳥「気を付けてくださいね」

たえ「あ、うん。ありがとう」

 

結果:マイペース

 

『りみ』

 

飛鳥「牛込さん。お怪我はありませんか?」

りみ「……!!///////」

 

 男子にお姫様抱っこされているのを見て、りみは顔を真っ赤にした。

 

りみ「ご、ごめんなしゃい…お、重いよね…//////」

飛鳥「そんな事ございませんよ」

「一丈字くん」

飛鳥「?」

 

 りみの姉・ゆりが現れた。

 

ゆり「妹をよろしくね」

飛鳥「え?」

りみ「おねーちゃんっ!!!///////」

 

結果:姉に冷やかされる。

 

『沙綾』

 

飛鳥「大丈夫ですか?」

沙綾「う、うん…。ごめん…」

 

 家のリフォームを手伝っていて、お姫様抱っこされた。

 

紗南「……」

 

 沙綾の妹、紗南がじーっと二人を見つめていた。

 

沙綾「あっ! い、一丈字くん! おろして…」

純「紗南。見たらいけません」

沙綾「ちょ、どういう意味よ純!! コラァ~!!!」

 

 弟の純が紗南の目を手で覆って退場すると、沙綾が突っ込んだ。

 

結果:この後めちゃくちゃ姉弟喧嘩した。

 

『有咲』

 

飛鳥「市ヶ谷さん。大丈夫ですか?」

有咲「はわわわわわわ…!!//////」

 

 大勢の面前、しかも男子にお姫様抱っこされて顔を真っ赤にする有咲。

 

有咲「わー!! 何やってんだよお前!! はなせぇ~!!!!//////」

飛鳥「暴れないでください。おろしますから」

 

 じたばた暴れる有咲を諫める飛鳥だった。

 

香澄(かわいい)

りみ(かわいい…//////)

沙綾(かわいいなぁ)

たえ「かわいい」

有咲「うわーん!! もう明日から学校行かない!!!//////」

 

結論:かわいい

 

有咲「かわいくなーい!!!!//////」

香澄「いや、もうこの可愛さ反則きゅ」

 

『蘭』

 

飛鳥「大丈夫ですか?」

蘭「な…なぁああ!!//////」

 

 蘭が顔を真っ赤にした。

 

蘭「は、離してぇ!!/////」

飛鳥「あ、はい」

 

 後日

 

蘭父「まあ、そんなに固くならないでリラックスしたまえ」

蘭母「ごめんなさいねー。うちの主人が」

飛鳥「……」

蘭「もういや!!!///////」

 

結果:父親に呼び出されて、そのまま食事会へ。

 

『モカ』

 

飛鳥「大丈夫?」

モカ「流石飛鳥くんだねぇ~」

飛鳥「気を付けて」

 

結論:いつも通り

 

モカ「ありがと♪」

 

 モカは飛鳥のほっぺにキスした。それを見ていた男子生徒は石化し、Afterglowは赤面した。

 

蘭「なっ…!!/////」

ひまり「ちょ、モカァ!!////」

巴「マジか…////」

つぐみ「!?!?!?//////」

飛鳥「ああ、ついに恐れていた事が現実に」

 

 学園のアイドルの一人からほっぺにキスされたことにより、もう命はないと確信した飛鳥だった。

 

結論:さらば、一丈字飛鳥。

 

『ひまり』

 

飛鳥「大丈夫ですか?」

ひまり「あ、ありがとう…。一丈字くん」

 

 飛鳥がひまりをお姫様抱っこしていたが、ひまりはあることに気づいた。

 

ひまり「あっ!! い、一丈字くん!! 重くない!!?」

飛鳥「全然!」

ひまり「……」

 

 その後…。

 

ひまり「もう今度こそ減量する!!」

モカ「えー。今日ケーキバイキング行こうって話してたんだけどな~」

巴「しょうがない。仲間はずれにするのもかわいそうだし、延期にするか」

ひまり「あ…あああ…!!」

 

結果:ダイエット不可避。

 

『巴』

 

飛鳥「大丈夫ですか?」

巴「あ、ああ…悪いな一丈字」

 

 飛鳥が巴をお姫様抱っこすると、巴が飛鳥に普通に謝罪した。そして巴を下した。

 

巴「そうだ! 今度ラーメンおごるよ!」

飛鳥「お構いなく」

巴「いや! あたしの気が済まないんだ!!」

飛鳥「……」

モカ「チューしてあげたら?」

巴「いや、あたしのじゃ…////」

飛鳥「青葉さん。困らせたらダメですよ」

巴「ア、アタシじゃ…ダメか?」

飛鳥「そんな事はございませんが、そういうのは、本当に好きな人の為に取っておきなさい」

 

 その後

 

巴「腹を括った! キスさせてくれ!!」

飛鳥「ラーメンでお願いします」

巴「やっぱりアタシじゃダメなんだろ!?」

飛鳥「そんな事ございませんよ」

巴「じゃあほっぺにキスさせてくれ!」

飛鳥「あ、はい」

 

結果:キスまではいわないけど、巴が真面目過ぎる。

 

『つぐみ』

 

飛鳥「大丈夫ですか?」

つぐみ「あ、ハ、ハイ…/////」

 

 飛鳥がつぐみをお姫様抱っこして、すぐに下した。

 

飛鳥「それでは、私はこれで…」

つぐみ「あ、い、一丈字くん! 今度コーヒーご馳走するから来てね!」

飛鳥「はーい」

 

 その後、普通に羽沢珈琲店に来た。

 

つぐみ母「今後とも、うちの娘をよろしくね。ふふふふふ」

飛鳥「……」

つぐみ「お母さん!!!///////」

 

結果:普通にやってもこうなる。

 

『彩』

 

飛鳥「大丈夫ですか? 丸山先輩」

彩「あ、う、うん…。ありがとう一丈字くん…」

 

 飛鳥が彩をお姫様抱っこしていた。

 

彩「それはそうと、一丈字くんこそ怪我してない? 大丈夫?」

飛鳥「あ、はい」

彩「よかった…」

 

 飛鳥が彩を下した。

 

飛鳥「それでは、私はこれで失礼します」

彩「あ、待って! お礼したいから…」

飛鳥「お礼ならもう頂きましたよ」

彩「え?」

日菜「ありがとうって言葉でしょ?」

飛鳥「はい」

 

 空気が止まった。

 

飛鳥「それに、人に恩を売るものじゃないと教えられているもので。それでは!」

 

 飛鳥がその場を後にした。

 

結論:なにもなかった

 

彩「いや、私ちゃんとお礼しようとしたんだけど!!?」

日菜「ダメだよー。こういうのはもっとぐいぐい行かないと。巴ちゃんみたいに」

 

巴「恥ずかしい…/////」

 

『日菜』

 

飛鳥「…大丈夫ですか?」

日菜「うん。ありがとー!」

 

 日菜がそういうと、飛鳥は即座に下した。

 

飛鳥「では、失礼しま…」

日菜「ハイ、逃げない逃げない」

 

 日菜が飛鳥の肩をつかんだ。

 

飛鳥「思ったけど、男子生徒の皆さん。襲い掛かってきませんね…」

 

 その時だった。

 

「貴様ぁああああああああ!!」

「これ以上美味しい思いはさせんぞぉ!!」

「日菜ちゃんは僕が守るゥ!!?」

 

 そう言って男子生徒たちは飛鳥を連れ去ろうとしたが、

 

日菜「そういうの、るんっとしないなぁ」

 

 日菜の一言で皆が黙った。

 

飛鳥(…あ、日菜先輩に任せれば大丈夫だわ)

 

 飛鳥がそう思ったその時、

 

「一丈字くん」

 

 紗夜が現れた。

 

飛鳥「あれ? 紗夜先輩」

日菜「おねーちゃん!」

紗夜「妹を助けてくれてありがとう。で、ちょっとお話があるので来てもらえるかしら」

飛鳥(あ、今考えた事か…)

 

 紗夜が飛鳥を連れて行こうとすると、

 

日菜「あ、待っておねーちゃん。あたしが飛鳥くんに助けられたから…」

紗夜「大丈夫よ日菜」

 

 紗夜が日菜に微笑んだ。

 

紗夜「ちょっと、お話をするだけだから」

飛鳥(皆さんさようなら。またいつかお会いしましょう)

日菜「おねーちゃーん!!!」

 

 

 この後どうなったかというと、ファミレスでポテトをごちそうになった。

 

紗夜「遠慮しないでたくさん食べてください」

飛鳥「……」

 

結果:姉が現れてお礼を横取りされる。

 

日菜「おねーちゃーん!!!」

 

 

おしまい

 



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第268話「もしも飛鳥が割と本気出したら」

 

 

『もしも飛鳥が喧嘩が強いことが学園内に知れ渡ったら』

 

 バンドリ学園。今日この日、事件が起きた。

 

「ひ、ひぃ…!!!」

「……」

 

 飛鳥はいつものように絡まれていたが、今回はファンの男子生徒たちではなく、不良生徒たちだった。陰キャだのガリ勉だの馬鹿にしていたが、遂に飛鳥も堪忍袋の緒が切れたのか、不良生徒の一人を返り討ちにした。

 

 だが、一撃で気絶させた為、見ていた人間全員が慄いていた。

 

飛鳥「あまり大したことございませんね」

 

 飛鳥が不良生徒たちを見つめると、不良生徒たちはまた慄く。

 

飛鳥「これで終わりですか?」

 

 飛鳥がそう問いかけるが目は完全に笑っていない。目で殺す勢いだった。

 

飛鳥「これで終わりなら、あの女子生徒の方々にもお伝えいただけますか?」

「!?」

飛鳥「次はないと」

 

 飛鳥の発言に生徒たちは凍り付いた。

 

飛鳥「それでは失礼します」

 

 そう言って飛鳥は去っていくと、不良生徒たちはおろかその場にいた生徒たちは呆然と立ち尽くすしかなかった。

 

***********************

 

 その後、飛鳥は誰からもちょっかいをかけられる事はなくなったのだが…。

 

飛鳥「おはようございます」

「お、おはよう…」

 

 飛鳥が教室に入ってきて挨拶をすると、クラスメイト達は少し驚いたように返事をした。それを見て飛鳥は少し苦笑いした。

 

飛鳥(まあ、そうなるわな…)

 

 そして廊下を歩くと、皆飛鳥の方を見てひそひそ話をしている。

 

飛鳥(久しぶりに派手に暴れたもんなー…)

 

 事もあろうに…。

 

「一丈字の奴、喧嘩めちゃくちゃ強いって聞いたぞ」

「マジかよ!!」

「くそう! このままPoppin’Partyはあいつのものになってしまうのか!!」

「でもボコられたくない…」

 

 飛鳥が不良生徒をぶちのめしたことで、トラブルは一切なくなってしまった。これにより、飛鳥がバンドリ学園にいる理由もなくなってしまったのである。

 

飛鳥「……」

 

 だが、飛鳥はとても嬉しそうだった。聞けば女子生徒にセクハラしようとすると、飛鳥が暴れるといううわさも耳に入っていて、抑制力になっていたのだった。

 

***********************:

 

 そして帰り道、彩たちのバイト先に偶然近づくと、そこには長蛇の列が並んでいた。

 

飛鳥(誰かバイトしてんのかな…)

 

 飛鳥が列を見ていると、列を並んでいた同じ学校の生徒が飛鳥に気づいて、慌てだした。

 

飛鳥「……」

 

 モカ達のバイト先ややまぶきベーカリー、羽沢珈琲店も見て回ったが、皆自分に警戒してファンが大人しくなったのである。

 

 その結果…。

 

飛鳥「分かりました。残念ですが、広島に帰ります」

 

 携帯で和哉から問題ないと判断され、契約終了となった。バンドリ学園に残ってもよいという話も出ていたが、仕事の為に来ており、いずれ何らかの理由で学校を離れなければならなくなった。いざとなれば弦巻家の黒服たちからがいるので、飛鳥も問題はないと判断し、受け入れた。

 

 電話を切った後、飛鳥は部屋を見渡した。

 

飛鳥「…さて、荷物を片付けるか」

 

**************************:

 

 翌日、飛鳥が何気なく自分の教室でゆっくりしていると、

 

「飛鳥くん!!!」

 

 香澄たちが慌てて教室にやってきた。

 

飛鳥「ど、どうしたんですか急に…」

香澄「転校するって本当!!?」

 

 香澄の発言にクラスメイト達が驚いた。

 

「ええっ!!?」

「そうなの!? 一丈字くん!!」

飛鳥「え、ええ…。残念ながら…」

 

 クラスメイト達からの問い合わせに、飛鳥が苦笑いして説明した。

 

有咲「お、おい…冗談だよな。お前がいなくなったら、誰があいつらを…」

飛鳥「心配しないでください。弦巻さん家の黒服の方々に引き継ぎをお願いしました。市ヶ谷さんや奥沢さんは心配することは何一つございませんよ」

 

 飛鳥が有咲に対して安心させるように言い放った。

 

美咲「一丈字くん…。まさかとは思うけど、此間の事件が原因で…」

飛鳥「それはないです」

 

 とか言いながら、ある意味間違ってはいなかったので、飛鳥は複雑な気持ちになっていた。まさかあんな簡単に任務が終わるとも思ってもいなかったからである。

 

たえ「それで…いつ転校するの?」

飛鳥「今月末です」

香澄「今月末って…今日で最後じゃん!!」

 

 香澄の発言に皆が驚いた。

 

飛鳥「本当は帰りのHRで発表する予定だったんですよ」

「いやいやいやいや!!」

「急にも程があるって!!」

飛鳥「すみませんね。いきなりこんな事になって」

 

 と、何とかのらりくらりかわしながら、飛鳥はその場をやり過ごして、超能力でほかの生徒たちが気にしないようにした。

 

 4時間目・休憩時間

 

飛鳥「まさかこんな大ごとになるなんてな…。モカ達にも一応連絡したけど」

 

 飛鳥が考えていたが、思った以上に大騒ぎになって困っていた。

 

 その時、メールを確認すると着信履歴がいっぱい来ていた。

飛鳥「こんなに…!?」

 

 飛鳥がメールを確認すると、各バンドから昼休憩時間が取れないかというものだった。飛鳥は気を遣わなくてよいし、ちょっとした騒ぎになるので遠慮した。

 

 だが、昼休憩

 

「一丈字はいるか!!」

「出てこい!! 話がある!!」

 

 男子生徒たちが押しかけてきたが、飛鳥は既にいなくなっていた。

 

「そこはいる所だろ!!」

「ていうか、いつの間にいなくなってる…」

 

 飛鳥は中庭にいた。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥が一人で空を見上げていると…。

 

「やっぱりここにいたのね。一丈字くん」

飛鳥「……」

 

 飛鳥が横を見ると、千聖・モカ・こころがいた。

 

飛鳥「千聖さん。それにモカやこころも…」

モカ「いや~。水臭いにも程があるよ~。何も言わずにいこうとするなんて~」

飛鳥「ごめん」

 

 モカの言葉に飛鳥は何も言い訳することはなかった。

 

こころ「でも、これで日向や椿たちの所に帰れるわね!」

飛鳥「まあ、それだけじゃないけどね…」

千聖「……」

 

 千聖が飛鳥を見つめた。

 

千聖「一丈字くん」

飛鳥「なんですか?」

千聖「本当にありがとう。何回も助けてくれて」

飛鳥「……」

 

 千聖の言葉に飛鳥はうつむいて笑みを浮かべた。

 

飛鳥「いいえ。自分のやる事をやっただけですので」

千聖「本当に謙虚ね」

飛鳥「そんな事はございませんよ」

 

 千聖が悲しそうに見つめた。

 

千聖「まだあなたには返さなきゃいけない恩があったのに…」

飛鳥「それらに使う活力はあなたの夢を叶えるために使ってください」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「短い間でしたが、とても楽しかったです」

こころ「でもやっぱり寂しくなるわね」

飛鳥「…そうだな。賑やかだったし。でもまた賑やかになるよ。諦めないだろうから」

千聖「それは諦めてほしいのだけど…」

飛鳥「人気者の運命ですよ。でも、これからはいろんな人が力になってくれます」

 

 飛鳥がそう言うと、3人を見つめた。

 

飛鳥「千聖さん、モカ、こころ」

「!」

飛鳥「他の人達にも言わなきゃいけないけど、まず3人へ」

 

 飛鳥が頭を下げた。

 

飛鳥「短い間でしたが、お世話になりました」

 

 飛鳥の姿を見て、

 

千聖「こちらこそ、お世話になりました」

モカ「なりました~」

こころ「……」

 

 こころだけは何も言わず、頭を下げなかった。そして飛鳥は頭を上げた。

 

飛鳥「これで完全にさよならではないので、またいつかお会いしましょう」

モカ「って、まだ完全に帰る訳じゃないでしょ?」

飛鳥「そうなんだけどね」

 

 その時だった。

 

「飛鳥くん!!!」

「!!?」

 

 香澄たちや男子生徒たちがやってきた。

 

飛鳥「これはこれは…」

香澄「その…飛鳥くん。本当に行っちゃうんだね…」

飛鳥「ええ」

 

 香澄の言葉に飛鳥が頷いた。

 

「おい、一丈字!!」

飛鳥「?」

 

 いつもは香澄たちの事でいがみ合っていた男子生徒たち。だが、いつもと様子が違った。

 

「香澄ちゃんたちをこんなに泣かせやがって!!」

「やっぱりてめーだけは許せねぇ!!」

「一発殴らせろ!!」

「何も学校辞める事ないだろ!!!」

 

 男子生徒たちも寂しいのか、涙ぐんでいた。これに関しては飛鳥も驚きを隠せなかった。なんだかんだ言って彼らも寂しいのである。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥は困惑していた。まさかここまで大ごとになるとは思ってもいなかったからである。

 

香澄「あ、そうだ! 今日送別会…」

沙綾「あ、ごめん。店番が…」

有咲「あたしも…」

モカ「モカちゃんもシフト入ってる…」

ひまり「あ、私も」

巴「あたしもだ…」

つぐみ「私も…」

 

 そう言って皆用事が入っていたのだった。

 

飛鳥「もうお気持ちだけで十分ですし、これでさよならではありません」

「!」

飛鳥「生きてれば、またどこかで会えます」

香澄「飛鳥くん…」

飛鳥「本当にありがとうございました!」

 

 

 こうして、飛鳥は本当に転校し、数日後には広島に帰っていった。

 

************************

 

 暫くたって…

 

「飛鳥くん。これ見て」

「ん?」

 

 広島の猪狩学園に帰ってきた飛鳥は普通の高校生活を送っており、教室で事績に座ってぼーっとしていると、同級生の林日向がある雑誌を持ってきていた。

 

飛鳥「ガールズバンドの雑誌か…」

日向「このページ!」

京「どれどれ?」

 

 日向が飛鳥にあるページを見せると、そこにはバンドリ学園のガールズバンドについての記事が書かれていた。香澄たちがとても輝いている表情で演奏している写真が載っていた。同じく同級生の奈良川京も雑誌を見ていた。

 

飛鳥「とても輝いてるな」

 

 そう言って飛鳥が微笑んだ。

 

飛鳥「ありがとう。見せてくれて」

日向「うん」

 

 飛鳥が窓側に移動して、空を見上げた。

 

 

飛鳥(夢を叶えてくれよ、皆!)

 

 

おしまい

 

 

 

 

 






飛鳥(…やっぱり終わるんだなぁ)


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第269話「もしも女子生徒たちが急に水着姿に変えられたら」

 

 

 

 ここはバンドリ学園。ガールズバンドが盛んな事以外ごく普通の学校だったが…。

 

「きゃーーー―――――――――――――――――――っ!!!!///////」

 

 女子生徒たちがビキニ姿に変えられた。

 

「うひょー!!」

「ぶひょー!!」

 

 そして女子生徒のビキニ姿を見て、男子生徒たちが興奮した。

 

有咲「ちょ、何がどうなってんだよー!!//////」

りみ「見ないでぇ~!!!//////」

 

 ビキニ姿に変えられた有咲たちは男子生徒たちにじろじろ見られて顔を真っ赤にしていた。

 

香澄「うわあっ!! いきなりビキニ姿になっちゃった!!」

たえ「何があったんだろ」

沙綾「ちょ、ちょっと二人とも堂々としすぎよ!!!/////」

 

 1年2組はというと…

 

「やっぱり上原でけー!!」

「ほんとだ!!」

「やっぱり体重そっちに行ってるんだって…」

「寄せて!! もうちょっと寄せて!!」

 

ひまり「みないでぇ~!!!!!///////」

巴「本当にどうなってるんだ!!?/////」

蘭「……//////」

 

 蘭は涙目だった。

 

 そして2年1組は…

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」

「白金でけぇえええええええ!!!」

 

 男子生徒たちが興奮していて、燐子は泣きそうになっていた。

 

彩「こ、これ! 何がどうなってるの!!?」

紗夜「こ、こんな非科学的な根拠、あり得ません!!」

千聖「……!!」

花音「ふぇえええええ…///////」

 

 とまあ、学園中がパニックになっていた。千聖が何かを思いついたように電話をかけようとしたその時、

 

『…ハハハハハ!! どうだね。私からのプレゼントは』

 

千聖「だ、誰なの!!?」

「誰でもいいだろう。女子生徒たちを水着姿にしてやったぞ。嬉しいだろう」

「ありがとうございます!!」

「死ね!!」

 

 男子生徒たちが勢いよく頭を下げると、女子生徒たちが激怒した。

 

千聖「どうしてこんな事をしたのよ!!」

「まさかあれか!!? 一丈字をヒーローにするためか!!?」

「なんて奴だ!!」

「千聖ちゃん。目を覚ますんだ!! やはりあいつらに…」

 

『…誰だそいつは?』

「とぼけるな!!!」

「どうせ一丈字が犯人なんだろう!!」

「ちょっと一丈字探してくる!!」

 

 そう言って男子生徒たちは、一丈字飛鳥の姿を脳裏に浮かべて1年3組の教室に訪れたが…。

 

「おい、一丈字はいるか!!?」

「え…?」

 

 3組の生徒たちが驚いて男子生徒たちを見た。

 

「い、一丈字…?」

「そうだよ!! この事件の真犯人は一丈字だ!!」

「どこにいるんだ!!?」

 

 すると3組の生徒たちは驚いた。

 

「そんな子、うちのクラスにはいないけど…」

「はぁ!?」

 

 3組の生徒の言葉に皆が驚いた。

 

「そんなわけあるか!!」

「一丈字をかばおうとしてるんだろ!!」

「吐け!!!」

「だ、だからいないって…」

 

 男子生徒たちが3組の生徒を問い詰めようとすると、担任がやってきた。

 

「何をしてるんだ!!」

「あ、先生!!」

「一丈字はどこですか!?!」

「一丈字? 誰だそいつは」

 

 教師の言葉に皆が驚いた。

 

「一丈字は1年3組の生徒だったはずですよ!!」

「いや、うちのクラスにそんな奴はいない。今までだっていた事ないんだ」

「え…?」

 

 教師の言葉に男子生徒たちは驚いた。

 

「とにかくそいつを離しなさい」

「は、はい…」

 

『…話を進めていいかね?』

 

 という声がした。

 

「それはそうと、どうして女子たちを水着姿にしたんだ!!」

 

 男子生徒の一人が声を上げた。

 

「なあに、今のうちに天国を見せてあげようと思ってね」

「はぁ?」

「天国?」

 

 その時だった。

 

『君たちにはここで死んでもらうよ』

 

 という言葉が放たれたその時、どこからか爆発音が聞こえた。

 

「な、なんだ!?」

「体育館の方からだ!!」

 

 体育館が爆発したのだった。これを教室から見ていた生徒たちや教師は悲鳴を上げて、パニック状態になっていた。

 

「きゃああああああああああああああああっ!!!」

「皆落ち着いて!!」

「校舎の外に出るのよ!!」

 

 そう言って教師が生徒たちを誘導して運動場に集まった。

 

『ククク…出てきたようだなぁ』

 

 というアナウンスの声がした。男性教諭が放送室を確認したが、誰もおらず学校のどこかに潜伏しているという事が分かった。生徒たちはもう自分たちの格好を忘れて、爆発に怯え切っていた。

 

『だったら面白いものを見せてやろう』

 

 そう言って、次々とバンドリ学園の建物を爆破していった。

 

「きゃああああああああああああっ!!!!」

 

 崩れ行く建物、大きすぎる爆発音、炎に包まれる母校に生徒も教師も恐れおののいていた。

 

はぐみ「みーくん~…」

美咲「な、何が起きてるのよ…。こころ!」

こころ「一体どういうつもりなの!? なんでこんな事を…」

 

 こころの言葉に男子生徒たちは

 

「おい! いい加減にしろ一丈字!!」

「いくら何でもやりすぎだ!!」

「香澄ちゃん達怖がってるじゃねぇかよ!!」

 

 そう叫んだが、

 

『だから、さっきから誰なんだよ一丈字って!!』

 

「とぼけるな!!」

「だったらお前は誰なんだよ!!!」

「そこまでしてヒーローになりてぇのかよ!!」

 

『ああもううざってぇ!! おい!!』

 

 半グレ集団が突如現れた。いかにもガラの悪そうな連中で、普通の高校生ならビビっていた。

 

「へへへへ…」

「ガキ1人で1万円か…こりゃあいいバイトだ」

「女は傷物にしていいのか…」

「いや、ここは思い切り殺そうぜぇ」

 

 とまあ、そろいにもそろってぶっ飛んでいた。

 

「ひ、ひぃ…」

「本気で殺そうとしてる…」

 

 生徒や教師が震えていると、香澄が

 

香澄「誰か…誰か助けてぇ――――――――――――――――!!!!」

 

 と、叫んだその時だった。

 

「待て!!」

「!!?」

 

 誰かの声がした。だが、一丈字飛鳥の声ではないばかりか、大人数で現れた。

 

「だ、誰だ!!?」

 

「座右の銘は大丈夫! イケメンマン1号!」

「人の為にイケメンの為に! イケメンマン2号!」

「戦わなければ生き残れない! イケメンマン3号!」

「夢はないけど、イケメンを守る! イケメンマン4号!」

「イケメンと戦い、勝って見せる! イケメンマン5号!」

「鍛えてますから。イケメンマン6号!」

「天の道を往き、総てをつかさどるイケメン。イケメンマン7号!」

「イケメン、参上。イケメンマン8号」

「よっしゃ! イケメっていくぜ! イケメンマン9号!」

「通りすがりのイケメン。イケメンマン10号」

「イケメンの罪を数えろ。イケメンマン11号」

「後悔したくないからイケメンを伸ばす。イケメンマン12号」

「イケメンキター! イケメンマン13号!」

「ショータイムだ! イケメンマン14号!」

「ここからはイケメンのステージだ! イケメンマン15号!」

「イケメン細胞がトップギアだぜ! イケメンマン16号!」

「イケメン燃やすぜ! イケメンマン17号!」

「イケメンの運命はオレが帰る! イケメンマン18号!」

「イケメンの法則は決まった! イケメンマン19号!」

「オレはイケメンの王になる! イケメンマン20号!!」

 

 20人ものイケメン達が現れた。

 

「誰!!!?」

「ていうかよく聞いたら、決め台詞が全部仮面ライダーじゃねぇか!! 平成の奴!!」

 

 ちなみにダシマは仮面ライダーの知識が全くございません。初代が藤岡弘、くらいしか知りません。世代的にはクウガかアギトですが、クウガのEDがちょっと耳に残ってるくらいです。

 

 イケメン達は変身をしてるわけでもなく、素顔のままである。

 

「か、かっこいい…♡」

 

 なんという事だろう。女子たちはメロメロになっていた。香澄たちはそうでもないが…。

 

「香澄ちゃんたちを守れぇ!!」

「イケメンを見せるなぁ!!!」

 

 ファンの男子生徒たちが香澄たちをガードして、状況がカオスになっていた。

 

『おのれイケメンマン!!』

「ディケイド!? ディケイドですよねそれ!!」

 

 よくネットで聞きますが、詳しくはしりません。

 

 そしてイケメンマン達とハングレ集団が戦い、イケメンマン達が勝ちました。

 

「いや、雑か!!」

 

『く、くそおお~!!! 覚えてろよ~!!!』

 

 黒幕は消えた。結局あいつは誰だったんだろう。

 

***************************

 

 だが、黒幕が消えた事で、女子たちの姿が元に戻った。

 

「これで、一件落着だな」

 

 イケメンマン達が帰ろうとすると、

 

「おい、ちょっと待てよ!!」

「ん?」

 

 男子生徒の一人が前に出た。

 

「お前ら、一丈字の知り合いか!? 何がどうなってんだよ!!」

 

 そう言うと、イケメンマン達が顔を合わせた。

 

「知ってるか?」

「変わった苗字だな…」

「悪いな。知らない」

 

 そう言われると、言葉を失う男子生徒。

 

千聖「あの…」

 

 千聖が話しかけた。

 

「な、なに? 千聖ちゃ」

 

 すると千聖の口から衝撃的な言葉が放たれた。

 

千聖「…さっきからその、一丈字くんって誰なの?」

 

 千聖の言葉に男子生徒たちが驚いた。

 

「えええええええええええ!!!?」

「ち、千聖ちゃん! いくらなんでもそれは…」

 

 その時だった。

 

日菜「あたしもしらなーい。誰?」

麻弥「そんな人、この学園にいましたかね…?」

イヴ「私も知りません…」

彩「誰かと間違えてない?」

 

 パスパレのメンバーがそういうと、他のバンドもそうだった。

 

モカ「モカちゃんも知らな~い」

こころ「そんな子いたかしら?」

 

 特に仲が良かったはずのモカとこころですら、知らないと言っていた為、男子生徒たちは唖然とした。

 

こころ「そんな事よりもあなた達、かっこよかったわよ!」

モカ「うんうん~」

 

 そう言うと、女子生徒たちが一気にイケメンマン達のもとに駆け寄った。

 

「名前はアレだけど、本当にイケメンね!」

「彼女いますか!?」

「私と付き合ってー!!」

「年収どれくらい?」

 

 男子生徒たちは本当の意味で置いてけぼりになっていた。香澄たちですらイケメンマンに夢中になっていた為、完全にフォローしようがなかった。

 

「なんだよぉおおおおおおお!! 結局女は顔で選ぶのかよぉおおおおおおお!!!」

「顔とお金!!」

「猶更最低じゃねぇか!!!」

「わーん!! 一丈字戻ってきてくれえ~~!!!」

 

 これは一丈字飛鳥という男が存在せず、イケメンが20人もいるもしもの物語…。

 

 

飛鳥『ファイトだよ』

 

 

おしまい

 



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第270話「メタ発言を使いすぎるとこうなる」

 

 

・ 今回は微妙に設定が違います。

 

****************

 

 

 ここはバンドリ学園。今日も生徒たちが元気に登校…。

 

「フヘヘヘヘヘ!!! お前の下着をよこせぇ~!!!」

「ふぇええええええええええええ~~~~~~~」

 

 怪人が花音に襲い掛かっていた。花音は涙目で逃げる。

 

「か、花音ちゃんが危ない!!」

「オレが助けるぅ!!」

「いや、オレが!!」

「僕!!」

「オレに行かせろよ!! 一丈字にまた手柄取られるだろ!!」

「お前が遠慮しろよ!!」

「おれにいかせろお!!」

 

 なんという事だろう。この期に及んで男子生徒たちは手柄の奪い合いをした。

 

「お前ら!! 喧嘩してる場合じゃないだろう!!」

「うっせぇ!!」

「そうやって手柄を横取りしようたってそうはいかんぞ!!」

「まず、オレたち全員で立ち向かって、怪人を倒す! まずはそこからだ!!」

「くっ…仕方ない…」

 

 一人の男子生徒の言葉に皆が納得したが…。

 

(これでオレのポイント上がった☆)

(とか思ってんだろうな~!!!!)

 

 まあ、なんだかんだいって男子生徒たちが、怪人を倒そうとしたが既に怪人と花音はいなくなっていた。

 

「い、いない!!?」

「あのー」

「!?」

 

 男子生徒たちが後ろを振り向くと、女子生徒たちが呆れた目で見ていた。

 

「怪人呆れてどっか行っちゃったんだけど…」

「ていうか松原さんも既に中だし…」

「やーね男って」

 

 そう言うと、男子生徒の一人がスマホを再生させた。

 

「イケメンマ~ン♡ あたしに×××してぇ♡」

「あたし!!」

「私にもして~!!!」

「イケメン以外の男は皆滅べ!!!」

 

 それは女子生徒たちの痴態だった。

 

「女も大概やぞ」

「フェミニスト団体に訴えてやる!!」

「フェミニスト団体も呆れる案件じゃボケェ!!!」

「あの、お前らみたいな自分勝手な女たちの為にある訳じゃないからね!? あの団体!!」

 

 とまあ、醜い言い争いをしていた。

 

「ていうか、デート中に人助けした彼氏振るとか最低すぎるだろ!!!」

 

*********************

 

 食堂

 

飛鳥「…またですか」

花音「くすっ…くすっ…」

 

 花音がまたセクハラに遭って泣きじゃくっていた。そして千聖は激おこだった。

 

千聖「一丈字くん。聞いていい? なんで花音ばっかりセクハラに遭うの?」

飛鳥「私に聞かれても困ります」

モカ「ふぇえ~って言ってるからじゃないですかね~」

飛鳥「それもそうですし、千聖さん。その犯人をどうするつもりですか?」

千聖「そんなの決まってるわ。死刑」

飛鳥「千聖さんの過激な発言もありますねぇ」

花音「アイドルがそんな事言ったらだめだよ~」

 

 泣きじゃくっていた花音も思わず突っ込んだ。そんな中、彩がどんよりしていた。

 

飛鳥「…どうされたんですか、丸山先輩」

彩「あのね。花音ちゃんには申し訳ないんだけど、どうしても一言いいたいことがあるの…」

花音「な、なに…?」

彩「パスパレで私だけそういう被害に遭ってない!!」

千聖「彩ちゃん。そういう所よ?」

 

 彩が涙目で訴えるが、千聖が一蹴した。

 

彩「此間私も怪人に遭遇したけど、私の顔見た瞬間逃げたもん!! なんで!!?」

千聖「だからそういう所よ」

花音「彩ちゃん。申し訳ないんだけど…狙われないようにするにはどうしたらいいの?」

彩「…目立ちたいって、思う事かな」

花音「ふぇええええええええ!!! 彩ちゃああああああん!!!!」

 

 彩が真っ白になると、花音が慌てた。

 

千聖「要するに気を強く持つのよ花音。そうすれば狙われないわ!」

花音「あ、あの…彩ちゃんが…」

千聖「逞しいから、ほっといても大丈夫よ」

彩「ひどい!!!」

 

 その時だった。

 

「丸山さん。あなたはまだいい方よ…」

「え?」

 

 紗夜がどんよりしながら現れた。日菜が気まずそうに笑っていた。

 

飛鳥「ど、どうされたんですか…」

紗夜「私たちの所にも怪人が来たのよ。でも、日菜の下着だけ盗んでいって…」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 飛鳥だけではなく、他のメンバーも嫌な予感がした。

 

紗夜「日菜がいいの!!? そんなに日菜がいいの!!? 男はそんなに日菜がいいの!!? アイドルだから!!? 発育がいいから!!? 答えなさい!!」

飛鳥「やめてください紗夜先輩!!」

日菜「おねーちゃん落ち着いて!!」

 

 紗夜が飛鳥を揺さぶると、揺さぶられた飛鳥と日菜は慌てていた。

 

彩「紗夜ちゃん…その気持ちわかるよ…」

紗夜「!」

 

 彩がゆらりと立ち上がった。

 

彩「盗まれない方がいいって分かってるけど、なんか癪だよね!!!」

紗夜「丸山さん…!!」

 

 彩と紗夜が仲良くなり、飛鳥たちは困惑していた。

 

 そんな時だった。

 

「あ! 皆いた!!」

 

 あこの声がして、皆があこの方を見たが燐子もいた。だが、燐子は泣きじゃくっていた。

 

飛鳥「どうされたんですか?」

あこ「聞いて! りんりんも悪い怪人に下着盗まれちゃったの!」

「え~!!!?」

 

 あこの発言に皆が驚いた。

 

「おい! いくらなんでもやりすぎだぞ一丈字!!」

「こんなネタばっかりやりやがって!!」

「そんなにヒーローになりたいのか!!」

「皆目を覚ますんだ!」

 

 そう言って男子生徒たちはギャーギャー言っていたが…。

 

モカ「それはそうと~。その怪人って普段どこに出没するのかな~」

巴「分からん…」

「あれ!? 無視されてる!!?」

「あの!! 根本的な原因、そこにいるんだけど!!」

「ていうかもう、普通にバンドやるだけで良くね!!?」

千聖「あら、それだったらあなた達もファンとしてちゃんと落ち着いてくれるのかしら?」

 

 千聖の言葉に皆が驚いた。

 

千聖「学校内でちょっかいかけない、振られたからって迫らない、こっちが嫌だと言ったらもう話しかけない。それが守れるの?」

「そ、それは…」

日菜「ていうかさー。燐子ちゃんたちの下着を盗まれたのは、少なくとも飛鳥くんのせいじゃないよねー」

モカ「そうそう~。飛鳥くんのせいにして追い出すのはいいけど、その後釜を狙ってるのが見え見えだよね~」

 

 日菜とモカの言葉に何も言い返せない男子生徒たちだった。

 

飛鳥「まあ、私は引退しても構いませんけど…」

千聖「そうなると、またあの時みたいにイケメン達が女の子をメロメロにするけど、それでいいの?」

「ど、どうしてあいつらが!!」

モカ「そんなの簡単だよ~。あなた達みたいな人達の思い通りにさせるの、面白くないも~ん」

千聖「行きましょ。こんな人たちに付き合ってる暇はないわ。それを言うんだったら、飛鳥くんにはどんなに命を懸けても、責任を取ってもらう必要があるし」

 

 そう言って飛鳥とバンドガールズは去っていった。

 

飛鳥「すみません白金先輩…」

あこ「飛鳥くんのせいじゃないよ」

モカ「そうだよ~。なんだかんだ言って飛鳥くんも怪我とかしてるし~」

飛鳥「……」

 

 

おしまい

 



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第300話「もしも飛鳥の正体が皆にバレたら」

 

 

『もしも現段階で、飛鳥が能力者だと全員に知られたら』

 

 

「飛鳥くん…!!」

 

 ここはバンドリ学園の近くのオフィス街。だが、一件のビルで大規模な火災があり、消防隊が駆け付けるも、対応が間に合わなかった。

 

 絶体絶命の状況に、飛鳥は意を決して人前で超能力を使って炎を消した。

 

 そして逃げ遅れた人物がビルから顔を出し、消防車のはしごを使っても全く届かず、飛鳥は空を飛んで、その人物の周りにあった炎を超能力で消して、脱出口を作るなどして、尽力を尽くした。

 

 火は何とか消し止められたものの、香澄たちの前で超能力を使った飛鳥は、そのまま香澄たちと向き合っていた。

 

**************************

 

香澄「あ、飛鳥くん…?」

飛鳥「……」

 

 香澄がそう呟くと、飛鳥は視線をそらしていた。香澄だけではなく、事情を知らないメンバーは驚きが隠せなかった。千聖とモカは心配そうに飛鳥を見つめる。

 

有咲「い、いったいどういう事なんだよ! お前…何をしたんだ…?」

飛鳥「その件については、後日お話します。今まで黙っていて申し訳ございませんでした」

 

 飛鳥は長い事炎にあたっていた事で、肌は完全にボロボロになり、所々焼けただれていた。しかし、自分の事はお構いなしに頭を下げる姿を見て、香澄たちは何とも言えなくなっていた。

 

千聖「それよりも、まず手当てを受けましょう」

こころ「そうね! 黒服さん!」

 

 そう言って黒服たちが現れて、飛鳥を担架で運んだ。そして香澄達だけ取り残された。

 

香澄「飛鳥くん…あんな事できたなんて…」

たえ「前々から不思議な子だとは思ってたけど…」

有咲「見間違いじゃないよな…?」

 

 目の前に超能力がいて、実際に超能力を使っている姿を見て驚きが隠せなかった。

 

千聖(飛鳥くん…)

 

*******************

 

 弦巻家御用達の救急車に運ばれた飛鳥は、あおむけになりながら今までの事を思い出していた。記憶を消そうにも、Youtubeなどで今頃動画などが拡散されており、もう隠し通せなくなり、これから自分はどうなってしまうのかと思っていた。

 

飛鳥(いずれこうなる運命とはいえ、いったいどうなるのだろう)

 

 そう思いながら、飛鳥はやけただれた自分の肌に触れると、痛みが生じた。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥は広島にいる仲間たち、こころ、モカ、千聖、そして香澄たちの事を思い浮かべた。

 

**********************

 

 後日、バンドリ学園でも飛鳥が超能力者だった事が広まっていた。

 

「おい、聞いたか? 一丈字の奴…」

「ああ…」

「あいつ、超能力者らしいぞ」

「マジかよ…」

 

 いつも飛鳥をひがんでいた男子生徒軍団も飛鳥の話をしていた。

 

「まさか一丈字くんが…」

「どこか遠慮がちだったけど…」

「もしかして超能力者だという事を隠すために…」

 

 飛鳥のクラスメイト達も信じられなさそうにしていた。

 

 とにかく飛鳥が超能力者だという事を知って、皆動揺が隠せない状態だった。

 

 

香澄「それにしても飛鳥くんがあんな凄い力を持ってたなんて…」

たえ「うん」

りみ「それはそうと、怪我大丈夫かな…」

有咲「無理もねぇさ。あいつ、中にも入ったもんな」

沙綾「何ともなければいいけど…」

 

 香澄たちも飛鳥の事を心配していたが、

 

「なーんだ。それだったら今までのは全部インチキだったのか」

 

 と、クラスメイトの男子生徒がそう言い放った。

 

「超能力が使えるって事は、全部超能力を使ってズルしてたんだな」

「それしか考えられねーよ」

「テストだって体育祭のリレーだってそう! あんなの普通はありえねーよ」

 

 香澄達にも聞こえるようにわざと言い放った。

 

こころ「あら、飛鳥はそんな事しないわよ?」

 

 こころが話に割って入るが、皆何とも言えない顔をしていた。

 

「なんでそう言えるんだよ」

こころ「そんなズルをしなくても、飛鳥は強いわ?」

「それはそうと、一丈字と仲良かったよな」

「何か知ってるんじゃねぇか?」

 

 男子生徒たちの言葉にこころが驚いた。

 

はぐみ「こころんどういう事?」

美咲「そういえば、一丈字くんが超能力者だって、こころは知ってたの?」

こころ「……」

 

 はぐみ達の言葉にこころはうつむいた。

 

香澄「こころちゃん…」

こころ「知ってたわ」

「!!」

 

 こころの言葉に皆が驚いた。

 

こころ「でも話さないように言われてたの」

美咲「誰に?」

こころ「飛鳥の保護者よ」

 

 こころがそういうと、さらに衝撃が走った。

 

こころ「それはそうと、飛鳥はインチキなんかしないわ!」

「だって…」

「あんなに勉強やスポーツも出来てたら、そう思うしかねーじゃねーか!」

「もしかして、香澄ちゃん達に声をかけようとすると、腹が急に痛くなってたのって…」

「一丈字の仕業だ!」

 

 男子生徒たちは怒りに震えていた。

 

美咲「ねえこころ」

こころ「何かしら?」

美咲「一丈字くんって本当に何者なの!? 一丈字くんは何しにこの学校に…」

 

 美咲がそういうと、先生がやってきた。

 

「席につけ」

 

 そう言われて1組の生徒はしぶしぶ席に着いた。

 

「先生! 3組の一丈字はどうなったんですか!?」

「超能力が使えるって言ってましたけど!」

先生「ああ…実は一丈字の事で、皆に話さないといけない事がある」

「……」

 

 先生がそう言うと、皆が注目した。

 

先生「一丈字は近いうちに広島に帰るそうだ」

「!!」

 

 先生の言葉に生徒たちは驚いた。

 

香澄「飛鳥くんが広島に帰るって…」

先生「今回の一件で学校に迷惑がかかる事は間違いないからと、一丈字が自主退学を申し出たんだ」

「!!」

 

 先生の言葉に香澄たちは驚きを隠せなかった。

 

「やっぱり逃げるのかよ」

「インチキだってバレたもんな」

「あー恥ずかしい」

 

 そう言っていた男子生徒たちだったが、教師が激怒してにらみつけると、生徒たちはおびえた。

 

「素性がどうであれ沢山の人々の為に傷つきながらも人命救助を行った一丈字と、大した努力もしないで人の頑張りに対してそのような口を利くお前達、どっちが恥ずかしい!」

「!!」

 

 教師の言葉に皆が黙った。

 

「それにあの火災で逃げ遅れた人々の中に、私の娘がいたのだ」

「!」

「超能力者だろうが、素人だろうが、一丈字は娘の恩人だ! 悪口は絶対に許さんぞ!!」

 

 教師の剣幕に男子生徒たちはバツが悪そうに視線をそらした。

 

「…わしとしても大変惜しいが、一丈字の怪我が重いのもある」

香澄「えっ!!?」

 

 飛鳥のけがを聞いて香澄たちは驚いたが、こころは特に驚かずに教師の話を真面目に聞いている。

 

たえ「それで一丈字くんは…学校に来れるんですか?」

「もう来れないと聞いている」

「!」

「本当は3組の生徒たちとちゃんと顔を合わせて、広島に帰りたかったとの事だが、色々都合が悪いそうだ。後で手紙を書くと言っていた」

「……」

 

 重たい空気のまま、HRは終わった。

 

*******************************

 

 HRが終わり、こころは弦巻家にバンドガールズを集めた。

 

こころ「皆揃ったわね」

「……」

 

 いつもは皆が家に来て満面の笑みを浮かべて出迎えるのだが、今回は最初から真剣な表情でこころはしゃべっていた。そんな様子を見て美咲も何とも言えなさそうにする。

 

友希那「どういう事か説明してもらえるかしら」

蘭「一丈字が超能力者ってどういう事なの?」

 

 友希那と蘭の言葉にこころは静かに目を閉じた。

 

モカ「こころちゃん」

こころ「?」

 

 モカが口を開いた。

 

モカ「超能力者うんぬんよりも、飛鳥くんがどうしてこの学校に来たのか、説明した方がいいよ」

こころ「そうね」

ひまり「モカ…?」

 

 モカがあたかも最初から知っていたかのようにふるまっていたので、蘭たちも驚いていた。

 

こころ「詳しい事は言えないけど、飛鳥は生まれつき超能力が使えるの」

「……」

 

 超能力なんてSF漫画でしか見た事ないと思っていた香澄たちは困惑するしかなかったが、目の前で飛鳥が超能力を使って火を消したり、空を飛んだりしたので、信じるしかなかった。

 

こころ「どうしてこの学校に来たのかというとね、あたしたちの為なの」

「え…?」

 

 こころの言葉に皆が反応すると、千聖が皆を見渡した。

 

千聖「最近バンドリ学園の内外でヤラカシが多発してたじゃない?」

彩「う、うん…」

千聖「あまりにも人数が多いし、手口も多彩化してたから、飛鳥くんにも力を貸してもらってたのよ。丁度こころちゃんが飛鳥くんに興味を持ってたというのもあって」

美咲「興味?」

千聖「前に話してたと思うけど、こころちゃんの小さいころからの幼馴染が、飛鳥くんの中学時代の同級生なの。その縁があったのよ」

日菜「ちょっと待って!? 千聖ちゃん知ってたの!?」

ひまり「モカも…」

 

 日菜とひまりにそう言われると、モカとひまりが顔を合わせて、皆の方を向いた。

 

モカ「うん。つぐを助けた時からそうなんじゃないかって思ってたんだ」

千聖「ごめんなさい。私もよ」

「ええええええええええええええええええええ!!?」

 

 モカと千聖の言葉に皆が驚いた。

 

巴「どうしてそんな大事な事を言ってくれなかったんだよ!」

あこ「そーだよ!」

千聖「巴ちゃん、あこちゃん」

巴・あこ「!」

 

千聖「確かにあなた達の言う通りよ。あなた達にはちゃんと伝えておくべきだった。でもね…」

モカ「普通に超能力者だって言っても信じる訳ないし、それこそ飛鳥くんに対して恩を仇で返すようなもんんだよ~。今もこうやって大騒ぎになってるのに」

つぐみ「モカちゃん…」

 

 つぐみの言葉に紗夜が気づいた。

 

紗夜「もしかして一丈字くん。私たちの知らないところでずっと陰で…」

モカ・千聖「……」

 

 紗夜の言葉にモカと千聖は何も言えなかった。

 

友希那「…間違いないわね。青葉さん達の反応を見たら」

こころ「その通りよ」

「!」

こころ「飛鳥はね、今まで皆が笑顔で過ごせるように裏で頑張ってたの」

千聖「彩ちゃん」

彩「?」

 

 千聖が彩を見つめた。

 

千聖「京都での撮影覚えてる?」

彩「う、うん…」

千聖「副監督さんにあなたは必要な人間だって言われたでしょう」

彩「え、でもあの時…」

千聖「あれは飛鳥くんが超能力で作り出した分身で、あの副監督は飛鳥くんの変装だったの。だから、あなたにあの言葉をかけたのは飛鳥くんよ」

彩「……!」

 

 千聖の言葉に彩は目を大きく開いて、涙を流した。

 

モカ「トモちん、ひーちゃん」

巴・ひまり「!?」

モカ「トモちんたちのアルバイト先、火をつけられそうになってたでしょ」

ひまり「あ、うん…」

モカ「あれも飛鳥くんが超能力を使って止めてくれてたんだよ。しかも張り込みまでして」

巴・ひまり「!!」

 

 モカの言葉に巴とひまりが驚いた。

 

友希那「それじゃリサがストーカーにあっていた時も…」

千聖「飛鳥くんが裏で動いてくれてたのよ。弦巻家の黒服の皆さんのお陰でもあるけど」

 

 裏で飛鳥がずっと助けてくれていた事に、香澄たちは衝撃を受けていた。

 

千聖「本当に彼には色々助けられてばかりだったわ」

香澄「そ、そんな! 何とかならないんですか!?」

千聖「ならないも何も、飛鳥くんはずっとバンドリ学園にいる訳じゃなくて、いずれ元の学校に帰るつもりだったの」

日菜「こんなのってないよ! あたし達に恩を返させないなんて!」

千聖「恩を返す方法はただ一つよ」

「!」

 

 千聖が皆を見渡した。

 

千聖「私たちがそれぞれのバンドで成功する事。これが飛鳥くんのただ一つの願いなの」

「……!!」

 

 千聖がそう言い放つと、更に真剣な表情をした。

 

千聖「ここまでしてもらったからには、私たちはその思いを背負う義務があるの」

麻弥「千聖さん…」

 

 千聖の言葉に麻弥は涙を流していた。飛鳥の想いもそうだが、最初は自分が成功する事しか考えていなかった千聖が、ここまで人の事を思いやれるようになった事にも涙していた。

 

香澄「こころちゃん…」

こころ「…何かしら」

香澄「飛鳥くんと一度話がしたい」

 

 香澄がそういうと、皆が香澄を見た。

 

こころ「ダメよ」

香澄「どうして!?」

こころ「今バンドリ学園の子達と話をしたら、マスコミがその子を狙ってくるわ。これ以上事を大きくしないために、飛鳥はもう誰にも会わないで広島に帰るのよ」

香澄「!」

友希那「…確かにその方が賢明ね」

はぐみ「で、でも! 話をするくらいなら!」

美咲「そんなのダメに決まってるでしょ」

はぐみ「どうして!?」

 

 美咲がそういうと、はぐみが美咲を見つめた。

 

美咲「皆一丈字くんと話したいし…一丈字くんと話をしたってなったら、それこそマスコミが嗅ぎつけるでしょ」

はぐみ「あ、そ、そっか…」

千聖「今はつらいかもしれないけど、飛鳥くんの為にも我慢して頂戴。今は飛鳥くんと話すよりも、この騒動を収める方が先なの。彼もそれを望んでる」

 

 千聖の言葉に香澄は歯ぎしりした。

 

******************************

 

 その頃、飛鳥は搬送先の病室のベッドであおむけになっていた。火傷は残り、顔面は訪台だらけだった。

 

飛鳥「ついにバレちまったな…」

『ダガ、十分ニ東京デノ生活ハ楽シメタダロウ』

飛鳥「まあ、そうなんだけどさ…」

 

 飛鳥は自分の体に憑依している怪物と話をしていた。

 

飛鳥「ハァ…。皆オレの事インチキ野郎とか思ってんだろうな」

『ソンナモノヒネリ潰セ』

飛鳥「お咎めがなけりゃそうしてもいいんだがねぇ…」

 

 飛鳥は香澄たちの事を思い浮かんでいた。

 

飛鳥「まあ、広島に帰れるのは良いんだけど、受け入れてくれるかなぁ」

『スグウケイレル気ニナル』

飛鳥「変な事だけはするなよ。オレたちは前科があるんだから」

 

************************

 

 その翌日、香澄はどうしても我慢が出来なくなり、飛鳥のマンションの前に来ていた。

 

香澄「……」

 

 香澄は意を決して中に入ろうとすると、

 

「何をしてるの?」

 

 後ろに千聖がいた。

 

香澄「ち、千聖先輩…」

千聖「香澄ちゃんなら絶対そうするだろうと思ってたわ」

 

 千聖がふぅと一息ついた。

 

香澄「…止めないでください」

千聖「飛鳥くんならもういないわよ」

香澄「え…?」

 

 香澄が千聖を見つめた。

 

千聖「もう広島に帰ったの。退学手続きも済ませたらしいわよ」

香澄「……」

 

 本当に自分たちに何も言わないで帰ったことに、香澄は信じられなさそうにした。

 

香澄「どうして…」

千聖「……」

香澄「どうしてそこまでして…!! 私に頼ってくれないんですか…!」

 

 香澄の目から大量の涙があふれていた。

 

千聖「そんなの決まってるわよ。あなたやおたえちゃん達と仲良くすれば、あの男子達がつっかかってきてトラブルの原因になる。そうなると、本来の仕事にも支障が出るから、あなたや私にはまったく頼れなかったのよ」

 

 千聖が震えていた。

 

千聖「香澄ちゃん」

香澄「……!」

千聖「私だって悔しいのよ」

 

 香澄ほどではないが、千聖の目から涙が浮かんでいた。

 

千聖「本当に無茶ばっかりして…! こうなったら意地でもパスパレとして成功してやるんだから…!!」

香澄「千聖先輩…」

 

 千聖の想いを知って、香澄も更に涙が止まらなくなった。

 

千聖「香澄ちゃん…」

香澄「……」

 

 千聖と香澄が見つめ合った。

 

千聖「だからあなたも頑張りなさい。Poppin’Partyとして…」

香澄「はい…はい…!!」

 

 千聖の言葉に香澄はただ返事をする事しかできなかった。

 

*************************::

 

 暫くして…。

 

「…大分収まってきたなぁ」

 

 広島の家でテレビや新聞を確認する飛鳥。

 

「それはそうと大変だったなぁ飛鳥」

飛鳥「叔父さん…」

 

 飛鳥の叔父である一丈字元造が話しかけてきた。飛鳥が今住んでいる家は彼の家であり、彼の家の方が飛鳥の元いた学校に近かったので、ここから通わせてもらっていた。

 

飛鳥「そうですね」

元造「それにしても、こころちゃん達にはちゃんと別れなくてよかったのか?」

飛鳥「その件は大丈夫ですよ」

元造「どうしてだ?」

 

 元造の問いに飛鳥は苦笑いした。

 

飛鳥「会える日はそんなに近くないと思ってますから」

 

*********************

 

 そしてバンドリ学園。飛鳥がいなくなったことで、バンドリ学園は少し静かになった。相変わらずヤラカシ達が香澄達にセクハラを仕掛けてくるが、彼女たち自身でも対処するようになり、今は他の女子達や弦巻家の黒服たちにも頼っているので、迂闊に手が出せなくなっていた。

 

 そして、香澄たちは今日もバンドの上に立つ。

 

香澄(飛鳥くん…。私たち、もっと輝いて見せるから。そしてまたいつか…!!)

 

 一人の少年との出会いによって、少女たちの夢はまた一つ増え、その夢を叶えるために今日もバンドに青春をささげるのだった。

 

 

 

 

 

************************:

 

モカ「…っていう感じになるだろうね~」

千聖「とても長い妄想ね…」

 

 モカ、千聖、飛鳥、こころの4人がトマト鍋を食べていた。

 

こころ「そういえばもう300回ね!」

飛鳥「本当にありがたい話です」

モカ「にしても300回やって、飛鳥くんの正体を知っているのはこの3人だけか~」

飛鳥「本当は1人に抑えたかったんですけどね…」

こころ「いやー。だってモカちゃん天才だからー」

千聖「今となっては本当に事情が知れて良かったわ。これ以上貸しを作ってたとなったら、私のプライドがズタズタになるもの」

 

 千聖の言葉に飛鳥が困惑した。

 

モカ「正直セクハラはやめてほしいけど、それやったらこのシリーズ成り立たないもんね~」

千聖「いや、他に方法あるでしょう」

モカ「それこそ千聖さんや有咲ちゃんやみさきちに頑張ってもらう話とか~」

千聖「モカちゃん?」

モカ「さーせーん」

 

 千聖が黒い笑みを浮かべると、モカが困惑した。

 

こころ「まあ、これからも皆を笑顔にできるように頑張るわ!」

飛鳥「……」

モカ「それじゃ座長。最後のコール!」

飛鳥「ああ。えーと、ダシマ式バンドリ第6シリーズは如何だったでしょうか。また次回もお楽しみください」

モカ「モカちゃんの武勇伝はまだまだ続くのだ~」

千聖「ありがとうございましたー」

こころ「バイバーイ!」

 

 

おしまい

 



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第301話「テコ入れ?」

 

 

 時はガールズバンド戦国時代。あまたのガールズバンドがしのぎを削って日々奮闘していた。

 

 そしてこのバンドリ学園にも、5つのバンドが存在していた!

 

 王道的ガールズバンド・Afterglow!

 

 芸能アイドルバンド・Pastel*Palettes!

 

 本格派ガールズバンド・Roselia!

 

 異色派ガールズバンド・ハロー、ハッピーワールド!

 

 清楚的ガールズバンド・Poppin’Party!

 

 彼女たちもまた、自分たちが目指す『夢』に向かって奮闘していた!

 

 この物語は、夢に向かって頑張る少女たちが愛と勇気と誇りをもって戦う物語である!

 

有咲「いや、FIELD OF VIEW!!?」

たえ「確かドラゴンボールGTだよね…」

 

************************

 

 

「香澄ちゃーん!!」

「おたえちゃーん!!」

「りみりーん!!」

「さーやちゃ~ん!!」

「有咲~!!!」

「美竹さ~ん!!」

「モカちゃ~ん!!」

「ひまりちゃ~ん!!!」

「巴ねえさ~ん!!」

「つぐみちゃ~ん!!」

「ヒナちゃ~ん!!」

「千聖さーん!!」

「マヤちゃ~ん!!」

「イヴちゃ~ん!!」

「友希那様~!!!」

「紗夜様~!!」

「リサちゃ~ん!!」

「燐子ちゃ~ん!!」

「あこちゃ~ん!!」

「こころちゃ~ん!!」

「薫さまぁあああああああああ!!!」

「はぐみちゃ~ん!!」

「花音ちゃ~ん!!」

「美咲ちゃ~ん!!!」

 

 香澄たちは男子生徒たちに猛アタックを受けていた。

 

有咲「いや、多い多い!!!」

美咲(あれ!? アタシバレてる!!?)

彩「あの、ごめん!! なんか私呼ばれてない気がするんだけど!!?」

 

 ここはバンドリ学園のカフェテリア。女子24人と男子が24人以上というまさに暑苦しい状態だった。

 

あこ「あこもいるよ!!?」

友希那「いや、あなた中等部に戻るの大変でしょ」

リサ「結構距離あるよ?」

 

有咲「ええい!! お前ら本当に懲りねーな!!」

「いやあ、ガールズバンドやってる運命だよ有咲ちゃん」

「うんうん」

 

 有咲の言葉に男子生徒たちがそう答えた。

 

「ていうか有咲ちゃんが可愛いのがいけないんだ!」

「そうだ! しかもセクシーボディだし!」

「褒められるとすぐ照れる!」

「これで声をかけない方がおかしい!」

 

 男子生徒たちが有咲をほめちぎるので、有咲が顔を真っ赤にした。

 

香澄「そうだよね! 有咲可愛いよね!!」

有咲「お、お前も余計な事言うなぁ!!」

「ほら! そういう所!!」

「はあん!! もう可愛いッ!!」

有咲「可愛いって言うなぁ~!!!!///////」

 

 有咲がむきになって叫ぶと、他のメンバーも可愛いと思い始めた。

 

有咲「そ、それはそうと一丈字はどこだよ!!」

香澄「あれ? そういや今日見てないね」

あこ「あっ!! あれ!!」

 

 するとテレビに飛鳥が映っていたが、飛鳥は広島にいて、何やら演奏しようとしていた。

 

こころ「あら? 広島にいるわね」

たえ「今日はバンドリ学園の生徒じゃないんだね…」

 

 たえがそう言ったその時だった。

 

『一丈字飛鳥さんは、バンドリ学園の生徒だったはずですが…』

 

 というインタビュアーの質問に対し、

 

飛鳥「あー…。実は急遽降板になっちゃったんですよ」

 

 飛鳥から告げられた言葉に皆が絶叫した。

 

有咲「はぁああああああああああああ!!?」

香澄「降板ってなに?」

沙綾「…まあ、分かりやすく言うと飛鳥くん、もう広島に帰って私たちと共演しないって事」

香澄「ええっ!!? なんで!!? そんなの聞いてないよ!!」

 

 飛鳥が急遽降板になったという事で、男子生徒たちはチャンスだと思った。

 

有咲「ちょ、ちょっと待てよ!! どうしてこんな事に…」

美咲「市ヶ谷さん。市ヶ谷さん」

 

 有咲も困惑していたが、美咲が後ろから話しかけて…。

 

有咲「な、なに…」

美咲「…もしかしてアタシと市ヶ谷さんにこいつらを押し付けようとしてるんじゃ」

 

 美咲の言葉に有咲が憤慨した。

 

有咲「ぜってー連れ戻す!!」

沙綾「まあまあ落ち着いて」

 

 沙綾が困惑した。

 

沙綾「…その、一丈字くんだってもう300回もやってきて、こいつらの相手するの疲れたみたいだし」

有咲「いや、アタシらはどうなんの!!?」

たえ「ここは原作組の意地を見せるしかないよ」

有咲「原作組とか言わない!!」

 

 そう話していると、千聖がため息をついた。

 

千聖「仕方ないわね。彼にも休養が必要だもの。あなた達!!」

「あ、それはそうと千聖ちゃん! 此間の生放送…」

千聖「……」

 

 男子生徒の一人が生放送の話をすると、千聖がこわばった。

 

「とっても面白かったよ!!」

「絵が本当に独特的だった!」

「まるであの歌のお姉さんのようだった!!」

「神回!!」

 

千聖「こころちゃん。即刻飛鳥くんを連れ戻して頂戴」

「いやいやいやいやいや!!」

「一丈字だって忙しいんだから!!」

 

有咲「あーそういう事か。あえて一丈字が降板になったという事で、アタシや奥沢さんにツッコミをさせるという訳ですか。あーはいはい」

 

 有咲が納得した。

 

「そうだよ!!」

「こういう時はもう帰ってこなくていいって言うんだ!!」

有咲「帰ってこない事には、アタシの負担がでかくなるって事だろうがァ!」

(けど、これで市ヶ谷さんからの好感度は爆下がりだ!!)

(こんなに嫌われてるなら帰ってきてもいいかも…)

(自分で蒔いた種だ! ざまーみろ一丈字!!)

 

『ところで一丈字さん。降板したらこれからどうするんですか?』

 

 と、インタビュアーが飛鳥に聞いていた。

 

飛鳥『そうですね。降板したのは良いんですけど、特にやる事ないんでこれからは一読者としてバンドリ学園の様子を見させてもらおうかなと思います』

『そうですか。ところで後ろにいる方は…』

飛鳥『ああ、僕の事務所の後輩です。『SCHOOL FIGHTER』っていうんですけど…』

 

 飛鳥が後ろを見ると、そこには楽器を演奏しようとしている4人の男女がいた。

 

日菜「あっ!! 鉄馬くんだ!!」

千聖「一緒にいる子は同級生かしら…」

 

飛鳥『…まあ、そろそろ私だけじゃなくて、事務所の後輩たちにもスポットライトを当てないといけませんしね』

 

 

 事務所の後輩とは、ダシマ作品における先輩作品と後輩作品の事である。飛鳥の出身作である『WONDER BOY』と鉄馬が出ている「SCHOOL FIGHTER」は先輩後輩にあたるのだ。オリジナル作品はpixivで公開されている。

 

飛鳥「全く更新されてないんだけどね…」

「ちょ、一丈字くん…」

 

 飛鳥がそう突っ込むと、皆が突っ込んだ。

 

「ほら、鉄馬も何か一言いいなさいよ」

「……」

 

 ギターを演奏しようとしている縹鉄馬が話を振られてカメラを見た。

 

鉄馬「えー…今回は顔だけ見せに来ただけで、当面は一丈字メインですのでよろしくお願いします」

飛鳥「お前なぁ…」

 

 鉄馬の様子に飛鳥が呆れていると、香澄たちが驚いていた。

 

香澄「…思ったけど、飛鳥くん結局敬語やめてくれなかったよね」

 

『それでは最後にバンドリ学園の皆さんに向かって、一言お願いします』

飛鳥「えー、300回という長い間お世話になりました。本当にありがとうございました」

 

 飛鳥が一礼したが、

 

『それでは? 市ヶ谷さんと奥沢さんに向けて一言お願いします』

飛鳥「強く生きてください」

 

 

***************************

 

 後日、広島にて…。

 

美咲「ごめんね奈良川くん、日向さん、椿さん。ちょっとまた一丈字くん借りるね?」

京・日向・椿「あ、はい…」

飛鳥「行ってきまーす…」

 

 飛鳥は弦巻家によって、強制的に東京に連れていかれた。

 

有咲「ふふふふふ…逃がさねーぞ一丈字ィ…」

飛鳥「私が帰ってきてもこなくても、もうあの扱いは変わりませ」

有咲「うるさい!!!///////」

 

 ダシマ式バンドリ第7シリーズ、始まります。

 

 

 

おしまい

 

 



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第307話「いつもと違うダシマ式バンドリ!」

 

 

 今回はいつもと違う設定です。

 

************************:

 

 こんにちは。私の名前は一丈字飛鳥です…って、もう300回もやっているので、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、ある日散歩をしていたらライブハウスが騒がしかったので、超能力で仲を確認していました。すると男が大暴れしていて、取り押さえようとした警備員を返り討ちにして気絶させていました。

 

飛鳥「危ない奴だな…」

 

 そんな時だった。

 

「オ、オレが助けに行けば香澄ちゃんが…!」

「オレが助けに行く!」

「いや、僕が!」

「私だ」

 

 ファンの男たちは自分たちが行くと言わんばかりに、邪魔ばかりしていた。

 

飛鳥(警察はなにやってんだろ…)

 

 警察が来る様子もなかったので、飛鳥は超能力を使って中に潜入して、男に近づいた。

 

 男が立てこもっていたのは、ライブハウスでも大きな場所で、そこには十数人の少女たちが怯えていた。

 

「死にたくなければ抱かせろ」

 

 男がそういうが、

 

紗夜「誰があなたのような方に!!」

男「そうか。そんなに死にたいようだな」

 

 男が包丁を取り出して、見た目もとてもいかついのもあり、バンドガールズは恐怖した。

 

あこ「り、りんりん…」

燐子「だ、大丈夫よあこちゃん…」

 

 一番年下のあこが怯えると、燐子があこを抱き寄せた。そして陰から飛鳥がそれを見ていた。

 

男「そうだ。殺してその死体を抱くのもいいなぁ…」

 

 男がそう言って笑みを浮かべると、あこたちは更に青ざめた。

 

男「誰を殺そうかなぁ…」

 

 男の発言を聞いて、飛鳥は目を光らせると、男の脳に暗示をかけてそのまま眠らせた。

 

「!!?」

 

 男はいびきをかいてそのまま眠っていた。

 

香澄「な、なにがあったの…?」

有咲「分からねぇ…」

友希那「とにかく今のうちに脱出するわよ!」

 

 そう言って友希那たちは男の目を盗んでスタジオから離れた。

 

飛鳥(こっちに来る!)

 

 飛鳥が上手く隠れて友希那たちが外に出られるように見守っていた。香澄たちが外に出たその時、

 

「おいおい。どこに行こうとしてるんだ?」

 

 男の仲間が現れて、出口をふさいだ。

 

「!!」

「死にたくなかったらスタジオに戻れ。さあ!」

 

 男Bが改造銃を向けると、隠れていた飛鳥が超能力を放って、男3人を眠らせた。

 

香澄「ま、また突然倒れたよ!?」

有咲「一体何が起きてるんだ!?」

リサ「も、もしかしてここ…呪われてるとかじゃないよね!?」

 

 リサが涙目になった。

 

紗夜「もしかしたらまだ仲間がいるかもしれないわね…」

友希那「早くここから脱出するわよ!」

あこ「はい!!」

 

 こうして香澄たちは出口まで駆け出したが、これ以上犯人の仲間と遭遇することはなかった。

 

**************::

 

巴「あこ!!」

あこ「うわぁーん!! 怖かったよぉー!!!」

 

 練習していたのはポピパ、ロゼリアの2組で、ライブハウスの前には騒ぎを聞きつけたアフグロとハロハピの一部のメンバーがいた。パスパレは仕事でいなかった…。

 

 あこが実姉である巴に泣きついた。

 

花音「皆大丈夫!?」

紗夜「ええ…」

薫「日菜たちも心配していたよ…」

紗夜「そうね…」

 

はぐみ「それはそうと、皆無事でよかったよ!」

美咲「でもどうやって脱出できたんですか!?」

友希那「分からないの…」

「え?」

 

 友希那の言葉に皆が驚いた。

 

香澄「なんか男の人達が私たちに刃物や銃を向けてきたんだけど、その瞬間に急に眠りだして…」

美咲「は?」

友希那「信じられないかもしれないけど、私達も急に眠る瞬間を見たのよ」

リサ「もしかしたら、おばけかも…」

 

 リサの言葉に蘭と巴も青ざめた。

 

ひまり「と、とにかく皆無事でよかったよ!!」

巴「そ、そうだよな! あはははは…」

 

 そしてこの後、香澄たちは警察から事情聴取を受け、犯人たちは無事に捕まった。

 

飛鳥(さて、他に人質はいないから早急にこの場を去るか…)

 

 飛鳥も役目を果たしたのか、超能力でその場を後にした。

 

飛鳥(変な噂が立たなきゃいいけど、立てこもりが起きて騒ぎが大きくなったら、無理だろうな)

 

*********************::

 

 それからしばらく時間が経ち…。

 

「はー…」

 

 男子生徒がため息をついた。

 

「何か急にヒーローになれる展開ないかなー」

飛鳥「……」

 

 違うクラスの男子達がカフェテリアで話をしていて、飛鳥は存在感を消してその場を通り過ぎようとした。

 

「ヒーローになって、香澄ちゃん達をメロメロに出来ねぇかな」

「出来たらいいけどな」

「その前に凶悪犯と戦うなりしないといけないだろ。出来るのか?」

「できないけどー。でも、悪い奴をばったばった倒したら、メロメロになるのかなー」

 

 その男子生徒の言葉に飛鳥は静かに目を閉じた。

 

飛鳥(ないない。試合以外で人を殴ったら怖がられるだし、人を殴る奴をかっこいいなんて思わないよ)

 

漫画の見過ぎだと飛鳥はそう思いながら昔の事を思い出して、意気消沈した。

 

 

飛鳥(結局超能力があったって、全てが順調にいくわけじゃないし、やるべき事をやらない奴にチャンスなんて訪れないんだよな)

 

 

おしまい

 



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第308話「どうあがいても」

 

 

 一丈字飛鳥です。私としたことがやっちまいました。

 

「」

 

 経緯はこうなります。ある日の休日に戸山さん達が合同ライブをやる事になり、私も誘われて会場に向かったんですけど、案の定彼女たちのファンにつまみ出されて、どうしようか迷っていた所、ファンの一部が暴走して、戸山さん達に近づいたんですね。警備員たちが取り押さえようとしたんだけど、返り討ちにあって、気絶しちゃったんですね。ファンがあまりにも強い事から、戸山さん達もお客さん達も恐れをなしてしまって…。

 

 で、超能力を使おうとしたその時でした。

 

「!!?」

 

 偶然犯人グループと私の目が合ったんですけど、向こうが私の顔を見るなり驚いたんですね。

 

「あ、あいつは!!」

「!?」

 

 彼らはいったい何を怯えているのでしょう。皆注目が私の方に向けられて、本当にぶっ潰してやろうと思いました。

 

「や、やっぱりあの気迫…間違いない!!」

「ああ…! 間違いない…!!」

「逃げろォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 そう言って犯人たちは私の顔を見るなり、逃げ出しました。

 

 そして私は追いかけました。

 

「いやぁあああああああああああああああああああああああ!!!」

「ゆるしてぇえええええええええええええええええええええ!!!!」

 

 犯人たちは泣きわめいていた。許さねぇよ。人をさらし者にした落とし前はきっちりつけて貰うぜ!

 

「か、勘弁してくれやァ!! ほんの出来心だったんじゃ!!」

飛鳥「!?」

 

 主犯格の男がしりもちをついて、私に命乞いをしてきた。あれ、この顔…。

 

「出所して再就職できるように努力したけど、どうにもならんかったんじゃ!」

「せめて広島では迷惑かけんように遠くまで引っ越したけど…」

「勘弁してくれ! もうあの男の所に行くのはイヤじゃあ!!」

 

 …ああ、数年前に私と仲間が捕まえた窃盗犯でした。性懲りもなく悪さしてたのか…。

 

飛鳥「ああ…思い出してきた…」

「体はすっかりでかくなったけど、顔に見覚えがある!」

「命だけは取らんでくれぇ!!」

「あ、あの二人は元気ですか? なんちゃってー…」

飛鳥「…もういい。とにかく今すぐ自首したら、和哉さんからは見逃すから」

 

 そんなこんなで私は男たちを警察に引き渡しました。

 

「絶対だぞ!? 絶対だからな!!?」

飛鳥「もうさっさと警察行ってくれ…」

 

 男たちがパトカーに乗せられて、その場を走り去った後、私は途方に暮れた。完全に顔を覚えられてしまったからである。

 

飛鳥(平穏な生活を過ごしたいとは言わないけど…。少々面倒な事になったな)

 

 そもそも私が何故ここに来たかというと、簡単に言えば護衛である。

 

 昨今ではガールズバンドが大盛況で、今は戦国時代とも言われている。その中でも5つの人気バンドを要する『バンドリ学園』では、人気は高いものの、彼女たちに関するトラブルが後を絶たないのだ。正門前に出待ちがいたり、バイトの勤務先とかでの迷惑行為。そしてバンドガールに対する性的嫌がらせ。数えきればキリがない。

 

そこで超能力を使って、手間のかかる仕事をサクっと終わらせるために広島から東京まで派遣されました。高校1年生です。ちなみに私の語りはここで終わります。

 

飛鳥(さっきの女の子達がもうすぐこっちに来る。存在感を消そう)

 

**************************

 

香澄「あれー? おかしいなぁ」

 

 香澄達は飛鳥を探していた。

 

たえ「まっすぐ走ってれば、ここにたどりつくけど、別のルート行っちゃったのかな…」

りみ「そ、それはそうとあの人いったい何者なんだろうね…」

香澄「分かんない…。見た目はただの女の子なのにね」

沙綾「でも、助けて貰ったんだし、お礼を言わないと…」

有咲「まあ、それはそうだな…」

 

 そう言ってPoppin’Partyは飛鳥を探し続けた。

 

飛鳥(…やっぱり女に見えるんだなぁ)

 

 黒髪ストレートで青い瞳が特徴だが、一番特徴なのは中性的な顔立ちだった。

 

飛鳥(年を重ねるにつれて、母さんに似てきてるって言われるんだよな。ちょっと複雑)

 

 飛鳥はこれからどうするべきか悩んだが、

 

飛鳥(バンドリ学園でまた会う事になるし、ここはいったん退散しよう)

 

 そう言って飛鳥は香澄たちに気づかれないように去っていった。そしてこの後飛鳥の身に出来事は…もちろん言うまでもない。

 

 

おしまい

 

 

 

 



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第313話「パスパレDISHに一丈字飛鳥が(前編)」

 ある日の事だった。

 

千聖「ねえ、一丈字くん」

飛鳥「何でしょう」

 

 飛鳥はPastel*Palettesに呼び出されていた。

 

千聖「いつも思うんだけど、たまにエンディングで歌を歌ってるとき、打ち合わせでもしてるの?」

飛鳥「えーっとですね。モルフォニカとRASはこっちのシリーズでは出番ないので、裏方として働いて頂いてます」

日菜「たまにレイヤちゃんがベースに集中してる時とかもあるよね」

飛鳥「ええ。我ながら図々しく思ってます」

麻弥「モルフォニカとコラボしたときは、ましろちゃんとダブルボーカルもやってますよね」

飛鳥「そうなんですね。本当にダシマは何を考えているのでしょうか」

彩「いや、そこまで言わなくても…」

 

 飛鳥の言葉に彩が苦笑いした。

 

飛鳥「…で、お話というのは」

日菜「千聖ちゃんがね。自分達ばっかり酷い目にあってるのに、飛鳥くんはエンディングで歌を歌ってるからずるいって」

千聖「ずるいとは言ってないわよ!! 不公平って言ったけど!!」

飛鳥「そうですねー…」

千聖「今、意味殆ど一緒だろって思ったでしょ」

飛鳥「はい」

 

 飛鳥の言葉に千聖がずっこけた。

 

日菜「あははははは!! 飛鳥くんおもしろーい!」

イヴ「ブシドー!!」

飛鳥「ではないんですけどね」

千聖「と、とにかくあなたには一緒に苦労してもらうわよ」

飛鳥「ほぼ毎回苦労してますよ。私2回も逮捕されたり、しょっちゅう信頼なくなったり、ギャグ小説じゃなかったら人間不信になってますよ」

彩「う、うん…。本当に毎回頑張ってるね…」

 

 でも、なんやかんやでパスパレのロケに参加する事に…。

 

飛鳥「一般人が参加しても大丈夫なの?」

 

**************************

 

 とある無人島

 

彩「究極のオムライスを、作りたーい!!!」

 

『THE パスパレ DISH!!』

 

飛鳥(これ鉄腕D〇SHじゃん!!)

 

 飛鳥が心の中でツッコミを入れた。

 

飛鳥(まあ、確かにあのグループと同じアイドルバンドだけど…)

 

 でも、彼女たちもプロなので自分が出る幕がないと飛鳥はタカを括っていた。

 

 ところがどっこい…。

 

麻弥「という訳で、何から作りますか?」

飛鳥「あの、待ってください」

 

 とある和室に飛鳥とパスパレがいたが、同じ格好をしていた。

 

千聖「どうしたのかしら」

飛鳥「何故私も同じ格好を?」

千聖「そんなのあなたもやるからに決まってるからでしょ」

飛鳥「裏方として手伝うにしても、格好まで…」

千聖「あなたもテレビに出るのよ?」

 

 千聖の言葉に飛鳥が驚いた。

 

飛鳥「なんでですか?」

千聖「うふふ。いいじゃない。たまにはこういう回があっても」

飛鳥(相当根に持ってんなぁ…)

 

 千聖の考えていることが分かり、飛鳥が困惑した。

 

日菜「やっぱりお米でしょ!」

イヴ「いいですね! ニッポンの心です!」

 

 日菜の言葉で米を作る事になった。

 

飛鳥(まあ、ここは黙っておくか…)

 

 自分の喋ってるパートは需要がないと思ったのか、飛鳥は黙っていた。

 

千聖「一丈字くんはどう思う?」

飛鳥「え? いいとは思いますけど、半年はかかりますよ…?」

 

 千聖が自分に話を振ってきて困惑していた。

 

彩「半年かー…」

飛鳥「ほうれん草とかの葉っぱ系の野菜なら、1か月から2か月で出来ますけど…」

日菜「いいや! ここはお米を作ろう!」

イヴ「ブシドーの精神で半年頑張ります!」

飛鳥(オレ、それまでの間どうなるんだろう…)

 

 飛鳥が本業である能力者の仕事の事を考えていたが、のちに緊急時以外は好きにしていいと上司の古堂和哉から連絡があったそうです。

 

千聖「そうね…まずは土から作りましょう!!」

彩「土から!?」

飛鳥「随分本格的ですね…」

千聖「いくら撮影とはいえ、手抜きは許されないわ…!!」

飛鳥「それはそうかもしれないですが…」

麻弥「千聖さんの女優魂に火がつきましたね」

飛鳥「頑張ってください…」

千聖「何言ってるの? あなたもやるのよ?」

飛鳥「やっていいものなんですか?」

日菜「うん! 飛鳥くんがいた方が面白いし!」

飛鳥「こういうのって5人でやるものでは…ああ、そうか。映さなければいいのか」

千聖「映すわよ?」

飛鳥「本当に何があったんですか…」

 

 そんなこんなで、飛鳥とパスパレはお米作りをすることになりました!

 

千聖「ちなみに一丈字くんは離れの家で寝て頂戴」

飛鳥「あ、はい」

 

 そうは言っているが、出かける直前に打ち合わせはしている。

 

***********************:

 

彩「ふぇえええ…」

 

 日照りの中、彩はばてていた。

 

飛鳥「皆さん大丈夫ですか?」

彩「い、一丈字くんは大丈夫…?」

飛鳥「私は平気ですよ。肌荒れが心配ですけど…」

 

 そう言って飛鳥はハイペースで土を耕していた。

 

日菜「飛鳥くん凄いねー」

飛鳥「そうですか?」

日菜「よーし! 負けてられないぞー!! それーっ!!」

飛鳥「あ、そんなにペースを無理にあげなくても…」

 

 そして雨の日も風の日も、畑を耕し続けました。

 

飛鳥「やっぱり太陽がない日がやりやすいなぁ」

麻弥「そ、そうなんですか…」

イヴ「ブシドーです!!」

飛鳥「あ、そういや日照りとかも心配なので、何か木槽みたいなの作りましょうか?」

麻弥「…出来るんですか?」

飛鳥「簡単な奴ですが」

麻弥「…お任せします」

 

***********************

 

 そしてそこそこ土づくりも行われて…。

 

彩「そういやどうやって良い感じになったか判断するんだろう」

麻弥「言われてみれば…」

日菜「あ! そういやテレビで土を食べて判断してたよー!!」

飛鳥「…それは熟練した人じゃないと分からないと思いますね」

 

 飛鳥が困惑した。

 

千聖「よし一丈字くん。食べて頂戴」

飛鳥「白鷺先輩。なんか今日はいつもより面白いですね」

千聖「いつもより…?」

飛鳥「あ、すいません。いっつも面白いです!」

千聖「そうじゃないでしょ!!」

日菜「あっははははははははははははwwwww」

千聖「日菜ちゃん!!!」

 

 飛鳥のボケに千聖がツッコミを入れると、日菜が指をさして大笑いした。

 

彩「い、一丈字くんって冗談も言えるんだ…」

麻弥「しかも千聖さん相手に…」

イヴ「ブシドー…」

 

 見慣れない光景に3人は驚きを隠せなかった。

 

*************************

 

飛鳥「まあ、冗談はさておき、土を食べるのはお勧めできません。病気になりますので、やるならちゃんと有識者の方に立ち会っていただく必要がございますね」

日菜「じゃあどうすればいいの?」

飛鳥「土は柔らかくて水はけが程よい感じが良いとされてます。良すぎても肥料分や水を蓄えられないので、良い土にはなりません。良すぎると思ったら粘土を加えたりして調整します」

彩「そ、そうなんだ…」

飛鳥「土を触ってみてください。どんな感じですか?」

 

 飛鳥にそう言われて千聖が土を触った。

 

千聖「…結構柔らかいわね」

飛鳥「分かりました。それでは水をかけてどれくらいはけてるか判断してみましょうか」

 

 そう言って飛鳥が土に水をかけて、はけ具合を見た。土はちょっと時間がたつとはけた。

 

飛鳥「皆さんはどう思いますか?」

彩「い、一丈字くん的にはどう…?」

飛鳥「うまい具合にはけてますね」

日菜「でも飛鳥くん。どうして知ってるの?」

飛鳥「ネットで調べたのと、実際に農家の方に教えていただいたんですよ」

千聖「教えて頂いたって…」

麻弥「そういや…ご出身はどちらでしたっけ?」

飛鳥「生まれは大阪ですけど、つい最近まで広島に住んでたんです。その時に教えて貰いました」

日菜「あ、広島って結構田んぼ多いの?」

飛鳥「そうですねー…。私が住んでた場所は結構ありましたね」

 

 飛鳥が昔の事を思い出した。

 

飛鳥「まあ、私の話はここまでにして、続けましょう」

日菜「えー。もっと聞きたーい」

飛鳥(バレるからなぁ…)

 

 飛鳥は超能力を使ってでも、何とかごまかそうとした。

 

 

つづく

 



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第314話「パスパレDISHに一丈字飛鳥が(後編)」

 そして稲を植える事になったが…。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥は慣れた手つきで稲を植え続けた。パスパレはそれを見て驚きを隠せなかった。

 

飛鳥「…あ、すいません。これだと画が取れないですね」

 

 飛鳥は5人の視線に気づいて、手を止めた。

 

日菜「飛鳥くん本当にすごーい!!」

飛鳥「え? あ、そうですか?」

日菜「ねえねえ! どっちが沢山稲植えられるか競争しようよ!」

飛鳥「画はいりますか?」

千聖「いいんじゃない? やっちゃいなさい!」

飛鳥「えー…」

 

 そんなこんなで勝負をしたわけだが、才能マンと才能ウーマンの戦いぶりはとてつもなくハイレベルですぐに終わってしまった…。

 

彩・麻弥「……!!」

イヴ「とてもきれいに並べられてます!!」

日菜「ふー。楽しかったねー!!」

飛鳥(オレが出しゃばって大丈夫かなぁ…)

 

日菜「これならいいお米が作れるねー!!」

千聖「そうね」

 

*************************

 

 ところが…

 

イヴ「み、水が…」

 

 日照りが続いて水がすぐに乾いてしまった。

 

彩「このままじゃ…」

日菜「これは雨ごいをするしかないね!」

「雨ごい!?」

飛鳥「あ、ごめんなさい。出しゃばって申し訳ないのですが、ちょっとよろしいでしょうか」

 

 飛鳥が手を上げた。

 

日菜「どうしたの?」

飛鳥「ちょっと見せたいものがあるので、待っててください」

 

 そう言って飛鳥はその場を離れた。

 

彩「何だろう…」

 

 そして帰ってくると、木の樽を台車に運んで持ってきた。

 

飛鳥「簡単な奴ですが、自作の木槽です」

 

 飛鳥の言葉に彩、麻弥、千聖の3人が絶句した。

 

日菜「すごーい!! 木槽作ったの!!?」

イヴ「モクソウ?」

飛鳥「貯水タンクってご存じですか?」

イヴ「はい! 知っています!」

飛鳥「簡単に言うと木で作った貯水タンクですね。3つ作りました」

麻弥「3つ作ったんですか!?」

 

 飛鳥の発言に麻弥が叫んだ。

 

飛鳥「まあ、小さい奴なんですが、これで一度に大量の水を田んぼに送る事が出来る筈です」

千聖「…それも、教えて貰ったの?」

飛鳥「あ、はい。私が住んでたところはため池がなかったので、入れ物に水を入れて流してたんですね。その時は樽だったのですが、時間もそんなにないので、枡みたいなのしか作れませんでした…」

彩「いや、十分だと思うんだけど…」

飛鳥「という訳で、地道に水と肥料をコントロールしながら作りましょう!」

 

 飛鳥の号令で干からびた田んぼに水を入れる作業が行われた。飛鳥、麻弥、イヴの3人が木槽の水を家の水道から入れる作業を行い、日菜、千聖、彩の3人が田んぼに水を入れる作業を行った。

 

麻弥「あの、一丈字さん…」

飛鳥「何でしょう」

麻弥「その…いつ作ってたんですか?」

飛鳥「ずっと作ってましたよ。皆さんが寝てらっしゃる間とか」

麻弥「ええっ!?」

飛鳥「私離れの家で寝泊まりしてるじゃないですか。あそこをラボにしてました」

 

イヴ「どうしてそこまで…」

飛鳥「いやあ、農作業を経験した者として…少し力添えをしたかったのです」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「ただ、何でもかんでもやってしまっては番組にならないので、肝心なところは大和先輩達に頑張って頂こうと」

麻弥「一丈字さん…」

 

 飛鳥の言葉に麻弥とイヴが感動していた。

 

飛鳥「まあ、大和先輩達を驚かせたかったというのもありますが…」

麻弥「完全にしてやられました」

イヴ「マジックです!」

飛鳥「いやー。木を伐採して良いというのは助かりました」

麻弥「ちゃんと許可取っててくれて良かったですよ」

飛鳥「…伐採届を出さないと、森林法に引っかかって罰金ですし、番組が成り立たないと思います」

麻弥「ですよねー」

 

*************************

 

 そんなこんなで水の配給も完了した。

 

彩「本当に助けられたよー…。ありがとう」

飛鳥「いえいえ」

千聖「それはそうと一丈字くん」

飛鳥「何です?」

千聖「あなた、この木槽をどこで作ったの?」

飛鳥「私の寝室とその外で作りました」

千聖「見せて頂戴」

飛鳥「はい」

 

 そう言って飛鳥が寝泊まりしている離れの家に向かうと、すっかり工場みたいになっていて、唖然としていた。

 

飛鳥「こんな感じですね」

彩「す、凄すぎる…」

飛鳥「いえいえ」

 

 そんなこんなで米作りは終盤に差し掛かったが…。

 

千聖「台風ね…」

彩「そ、そんな…」

 

 嵐がやってきて、外は雨だった。

 

彩「このままだと稲が…」

麻弥「あ、彩さん!」

イヴ「危ないです!!」

彩「で、でもこのままじゃ!」

日菜「そうだ! こういう時はこれでしょ!!」

 

 日菜がギターを取り出した。

 

彩「ギ、ギター…?」

日菜「雨ごいならぬ晴ごい!!」

麻弥「や、やってみる価値はありそうですね!」

 

 こうして5人は晴れる事を祈って演奏をした。そして飛鳥はこっそり田んぼに近づいて、超能力でガードをした。

 

飛鳥(こういう時便利だよな…)

 

**************************

 

 暫くして、外は晴れて虹も出ていた。そしてやっと白米を食べる事が出来た。

 

5人「おいしー!!」

飛鳥「……」

 

 パスパレの5人が食べている姿を見て飛鳥は安心したが…。

 

飛鳥(やっぱりオレ、いらなくね…?)

 

 そう思っていた。しかも結局半年間も一緒にやってきたので、これが滑ったら色々シャレにならないと感じていた。

 

飛鳥(ていうかオムライス作るまで、ずっとこれやるの!!?)

 

 自分の将来が本当に不安になる飛鳥であった…。

 

 

おしまい

 



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第334話「勢いで書いたLBX小説」

今回は別作品の小型ロボットが出てきます。


 

 

 ある日の事だった…。

 

「飛鳥くん!」

「?

 

 バンドリ学園のカフェテリアで日菜が飛鳥に話しかけた。飛鳥はウロウロしていただけだが…。

 

飛鳥「日菜先輩。どうされました?」

日菜「今日はアタシ達パスパレの事務所に来てくれない?」

飛鳥「あ、あー…」

 

 日菜の言葉に飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「ごめんなさい。今日は用事があるんですよ」

日菜「何の用事?」

飛鳥「アルバイトです」

日菜「…いつ終わるの?」

 

 日菜がジト目で飛鳥を見つめると、飛鳥は困惑しつつも毅然な態度をとった。

 

飛鳥「夜までかかりますね。学校が終わったら即刻移動しなければなりませんので」

 

 そう言って飛鳥は日菜を見つめて口角を上げたが、日菜はまだ疑っていた。

 

飛鳥「失礼します」

日菜「あっ!」

 

 飛鳥が去っていった。日菜は一瞬あっけにとられたが、日菜も笑みを浮かべた。

 

日菜「あたしは諦めないもんね…」

 

 日菜がぼそっと呟くと、男子生徒たちがやってきた。

 

「あの、日菜ちゃん。オレでよかったら…」

「いや、僕が!!」

 

 男子生徒達が寄ってきたが、日菜は無視をした。

 

********************

 

 その日の夜

 

イヴ「はぁ…」

彩「イヴちゃん。気にする事ないよ」

日菜「でも飛鳥くんにも来て欲しかったなー」

 

 Pastel*Palletesはとあるゲーム大会の公式サポーターとしての仕事があり、応援席にいた。

 

千聖「事務所が勝手に仕事を取ってきたけど、全く知らないのよね…」

日菜「何か楽しそうでるんってするけどね!」

 

 5人がわちゃわちゃと喋っていたその時、大歓声が上がった。MCの挨拶、ゲームの主題歌を担当しているバンドの演奏が始まった。そしてパスパレの紹介もあり、パスパレがある程度挨拶をする。

 

 そして大会が始まった。

 

日菜「そういやおねーちゃんも用事なんだよねー」

 

*************************

 

「それでは1回戦第1試合! 出場ペアの入場です!!」

 

 アナウンサーがそう言うと、両チームが出てきたのだが、片方のチームはなんと飛鳥と紗夜だった。

 

日菜「お、おねーちゃん!!? それに飛鳥くんも!!」

「ええええええええええ!!!?」

 

 日菜だけではなく、パスパレメンバーが驚きを隠せなかった。

 

飛鳥「ついに本選まで来てしまいましたね…」

紗夜「ええ。ですが目指すは優勝のみです」

飛鳥「勿論です」

 

 優勝を目指してはりきる飛鳥と紗夜をよそに、パスパレは唖然としていた。

 

「果たしてこのLBX大会を優勝するのは誰だー!!!」

 

 LBXとはゲーム『ダンボール戦機』に出てくる手のひらサイズの小型ロボットであり、それを戦わせたりすることが出来る。飛鳥と紗夜はそのLBX大会に出場していたのだ。え? なんでLBXかって? まあ、色々あったんですわ…。詳しく知りたい方はwikipediaで調べてください。

 

 そして1回戦を順調に勝ち進んだ。

 

飛鳥「やりましたね」

紗夜「この調子でいきましょう」

 

 そう言って飛鳥と紗夜はとてもいい感じになっていた。

 

彩「さ、紗夜ちゃんも一丈字くんもLBXできたんだ…」

 

 彩が唖然としていると、

 

麻弥「どーしてパートナーが自分じゃなかったんスか!! 自分LBX触れますのにぃ!!」

 

 これでもLBXのメカニックとしても活躍していた麻弥は涙目で突っ込んでいた。

 

千聖「こんな話一言も聞いてなかったわね…」

 

 千聖やイヴも嫉妬する中、日菜は震えていた。

 

日菜「もー!! おねーちゃんとペアを組むのもずるいし、飛鳥くんとペアを組むのもずるいよー!!」

彩「ちょ、ちょっとみんな! 今仕事中だから!!!」

 

 と、彩が慌て始めた。

 

 そしてその後も飛鳥と紗夜ペアは順調に勝ち進み、決勝戦も勝って優勝した。

 

飛鳥「いや、展開雑っ!!」

 

 そう思うだろう。だが、本題はここからなのである…。

 

*******************

 

 優勝して飛鳥と紗夜が見つめあう。

 

紗夜「やりましたね。飛鳥くん」

飛鳥「え、ええ…」

 

 なんだかんだ言って決勝戦の相手も強敵で、何とか勝つことが出来て安堵する飛鳥。そして2人一緒に表彰式でトロフィーやら賞状を受け取るのだが、パスパレが睨んでいた。

 

飛鳥(めっちゃ怒ってるよ…)

紗夜「……」

 

 飛鳥が困惑する中、紗夜はわざと視線をそらした。

 

*******************

 

 そしてどうなったかというと…。

 

千聖「飛鳥くん、紗夜ちゃん。優勝おめでとう。そしてどういう事かしら?」

 

 閉会式が終わるや否や、パスパレは飛鳥に対して会場に残るようにくぎを残した。

 

飛鳥「はじめは私がソロで出る予定だったんですが…」

紗夜「ええ。私がダブルスで出てみないかと言ったんです」

日菜「えー!! そんなのずるいよー!!」

紗夜「あなたたちはアイドルでしょう?」

 

 日菜の言葉に紗夜が首を傾げた。

 

麻弥「ま、まさか飛鳥さんもLBXをしていたとは…」

飛鳥「ま、まあそうですね…」

 

 麻弥の言葉に飛鳥が苦笑いした。

 

千聖「あなた今まで有名なプレイヤーを倒してきてるでしょう。アメリカでも」

飛鳥「……」

 

 千聖の言葉に飛鳥が視線をそらした。

 

日菜「おねーちゃんがLBXをやるなんて全然聞いたことないんだけど…」

紗夜「少し勉強してみたかったのよ」

麻弥「け、けどそれは自分のポジションでは…」

イヴ「ワタシもLBXしてみたいです!」

日菜「あ、そうだね。飛鳥くんが教えるべきだと思うんだ」

紗夜「あなたがいるから必要ないでしょう?」

日菜「それもそうだけど、今度は3人で出ようよ!」

彩「ちょ、ちょっと日菜ちゃん!!」

 

 と、このまま取り合いになっていて、飛鳥は困惑していた。

 

 

飛鳥(ナニコレ)

 

 

おしまい

 



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第335話「紗夜ハーレム」


 ある日の事だった。

「あーあ。一丈字の奴、今回もモテてやがるよ…」

 男子生徒たちがうんざりした様子で飛鳥を遠くから見ていたが、周りにはモカ、こころ、千聖がいた。

「オレもあんな風になってみたいもんだな…」
「それかせめて、あいつが女の子達に嫌われねーかなー」

 という訳で、今回はお望み通り、飛鳥とバンドガールズが喧嘩するお話です。


************************


 

 

 

「一丈字くん。どういう事かしら?」

「……」

 

 バンドリ学園のカフェテリアで事件は起きた。そこに飛鳥とRoselia、日菜がいたが、紗夜以外のバンドガールが飛鳥をにらみつけていた。

 

飛鳥「あなた方が考えているような事は決してございませんよ。そうですよね? 紗夜先輩」

紗夜「そ、その通りです!」

 

 飛鳥と紗夜がそう言うが、友希那達は飛鳥をにらみ続けている。

 

友希那「一丈字くん。私たちはあなたを許すことは出来ないわ」

飛鳥「そうですか…」

 

 友希那達が怒るのも理解していた飛鳥は、許してもらおうとも思っていなかった。

 

友希那「とにかく許されざる行為よ」

紗夜「み、湊さん…」

友希那「止めないで紗夜。これはRoseliaにとっても死活問題なのよ」

日菜「そうだよ! 見損なったよ飛鳥くん!」

飛鳥「……」

友希那「一丈字くん…あなたよくも…よくも…!!」

 

 友希那は目を閉じて拳を強く握って、こう言い放った。

 

 

友希那「紗夜と二人きりで勉強会したわね!!」

 

 友希那が指をさしながらそう叫ぶ姿に、飛鳥は困惑して紗夜の方を見た。『湊先輩ってこんな感じの人でしたっけ?』と言わんばかりに…。それに対して紗夜は困惑するしかなかった。『こっちが聞きたい』と言わんばかりに。

 

リサ「飛鳥く~ん…。今度からはアタシにちゃんと断ってほしいな~…☆」

 

 リサは一応大人の対応を取っていたが、正直嫉妬しているのが丸見えだった。

 

飛鳥「あ、多分もうないと思いますので…」

リサ「それでもだよ~」

飛鳥「あ、はい。わかりました…」

燐子「ずるいです…」

 

 燐子からも思ったほか責められて、飛鳥は頭をかいていた。

 

あこ「紗夜さん紗夜さん! あこにも勉強を教えてください!!」

「!!?」

 

 あこの言葉に皆が驚いた。普段は自分から勉強しようとしないあこが勉強しようとしていたので、驚きを隠せなかった。ちなみに最近巴はあこが紗夜の話ばかりするので、ちょっといじけている。

 

紗夜「し、白金さんに教えて貰えば…」

燐子「わ、私も氷川さんに…教えてもらいたいです…」

紗夜「え、でもあなた…」

リサ「それだけ紗夜が頼りになるって事だよ~。アタシも教えてほしいかな☆」

 

 興味が飛鳥から紗夜に向けられたことで、飛鳥は超能力で存在感を消した。

 

友希那「ちょっと待って頂戴。それだったら私も…」

日菜「あたしもおねーちゃんに勉強教えてほしーい!!」

紗夜「…あなたは必要ないわよね?」

日菜「おねーちゃんに教えてもらう事に意味があるのー!!!」

 

 そう言って皆が一斉に自分を頼りにし始めたので、紗夜は困惑するしかなかったが、飛鳥はスーッと離脱して、その場を離れた。

 

モカ「こんな事していいの~?」

飛鳥「いいんだよ。支障が出る」

 

 待ち伏せしていたのかどうかは不明だが、モカがいて突っ込まれたが、飛鳥は普通に言い返した。

 

飛鳥「しかし、いつの間にかモテるようになったんだな…紗夜先輩」

モカ「そうだね~」

 

 そしてまた男子生徒たちは…。

 

「い、一丈字が確かにぞんさいに扱われていたな…」

「ああ…」

 

 驚きを隠せず、そして目の前の紗夜ハーレムを堪能していた。

 

「やっぱりバンドリはこうでなきゃ!」

「ひなさよ! ゆきさよ! リサさよ! あこさよ! りんさよ! ごっつあんです!!」

 

 百合百合しい展開を見てご満悦だったが、紗夜はたった一人だけ不満そうにしていた。

 

紗夜(ど、どうしてこんなことに…)

 

******************************

 

 またある日の事。紗夜がとあるハンバーガーショップの前にいた。

 

紗夜「……!」

 

 限定のポテトが販売されていたのだが、これを買うにはカップルで来店しないといけなかったのだ。早い話がおひとり様はお断りだったのだ。

 

紗夜(こんな商売の仕方じゃ売れないわよ!!!)

 

 そう心の中で悪態をついたが、内心はのどからダルシムの手が出るほど欲しかった。そんな時だった。

 

「やっぱりいた~」

紗夜「!?」

 

 そこにはガラの悪そうな男子生徒5人がいた。

 

「君、氷川紗夜ちゃんだよね?」

紗夜「え、ええ…」

 

「やっぱりポテトが好きだって噂は本当だったんだな~」

 

 ニヤニヤと近づく男たちに紗夜は恐怖していた。

 

「ねえ、オレ達とポテト食べようよ。店の外でだけど」

紗夜「ど、どうして店の外で…」

「空の下で食べるポテトもいいじゃん…」

「オレのポ…」

「やめろ。オレ達まで食欲失せる」

 

 とまあ、あからさまに下心丸出しの男子生徒達に紗夜は恐怖していた。人間予想外の事態が起きたときには、本当に動けなくなってしまうのだ。

 

 だが、そんな心配もすぐになくなる。

 

「あなた達…」

「!!?」

 

 友希那の声がしたので、紗夜も男子生徒たちも友希那達の方を向いた。友希那のほかにもRoseliaメンバーや日菜がいたが、怒髪天だった。男子生徒たちは恐怖したし、紗夜も言葉を失っていた。Roseliaは一体これからどうなるのかも不安になるくらいに…。

 

友希那「誰に断って紗夜に手を出そうとしてるのかしら…?」

リサ「ちょっとやめて貰えないかな~…いや、ホントに」

燐子「…氷川さんに近づかないでください」

あこ「こいつらやっちゃいましょうよ」

日菜「おねーちゃんに手を出したら、社会的に抹殺するから」

 

 少なくとも日菜はアイドルだというのに、一番物騒なことを言い放ってたし、今まで自分が劣等感から散々当たり散らしていた相手とは思えなかった。というか、この日菜に当たり散らしたら間違いなく返り討ちにされそうになり、紗夜は泣きそうになった。

 

「ひ、ひィィィィィィ!!」

 

 男子生徒たちは萎縮していたが、

 

「な、何を萎縮しているんだ! Roseliaのメンバーが全員そろっているうえに、あの日菜ちゃんまでいる! もはや天国じゃないか!!」

友希那「いいえ。あなた達が行くのは地獄よ…」

「!!」

 

 その時だった。

 

「あのー…」

「!!?」

 

 飛鳥が現れた。丁度店で食事をしていたのだが、友希那達が暴力行為に励もうとしたので、止めに入ったのだ。

 

「お、お前は!!」

友希那「一丈字くん…?」

飛鳥「警察呼んだんで、逃げるならさっさと逃げてください」

 

 飛鳥が男子生徒たちにそう言うと、

 

「ハッ! そんなのハッタリだ!」

「ていうか事実なら、何してくれてんだよぉ! ぶち殺…」

「事実だし、はったりでもないんだなぁ」

「!!?」

 

 警察官が10数人も現れた。

 

「ちょっと署まで来てもらおうか!」

「そこの君たちも!!」

 

 そう言って警察官は男たちと紗夜たちを連れて行った。紗夜たちは事情聴取だけで何とか済んだが、男たちは完全に捕まった。

 

飛鳥「ふー…」

 

 飛鳥は一息ついて、店に戻った。

 

モカ「お疲れちゃーん」

飛鳥「結局出番はなくならない訳ね…」

千聖「多分明日あたりがフィナーレになるわね」

飛鳥「……」

 

*********************

 

 翌日

 

紗夜「あの、一丈字くん…」

飛鳥「あ、はい。なんでしょ…」

 

 飛鳥が廊下を歩いていると紗夜に声をかけられたので、振り向いた。すると紗夜だけではなく友希那、燐子、リサ、日菜がいた。

 

あこ「あこもテレビ電話で参加してるよ!!」

 

 あこが燐子のスマホから映像で参加していた。

 

友希那「昨日は紗夜を助けてくれてありがとう。お陰で暴力を振るわずにすんだわ」

飛鳥「それはどうも…」

友希那「けど、紗夜を独り占めは絶対にさせないわ」

飛鳥「そりゃあ勿論です」

 

 あんな友希那達を見て、誰が独占しようと考えるのか飛鳥は困惑した。

 

飛鳥「ところでご用件は何でしょう」

友希那「紗夜がどうしてもお礼がしたいそうなの。勿論私たちも同伴だけど」

飛鳥「あ、お気持ちだけで結構です」

友希那「あなたに拒否権はないわ。というか…紗夜の頼みが聞けないって言うの?」

 

 友希那がこれでもかという程にらみつけてきた。

 

リサ「飛鳥くーん。お願いできないかなぁ…」

燐子「お願いできないでしょうか…」

飛鳥(なんか本音が駄々洩れ何ですけど!!)

 

 本当は飛鳥のいう通りお礼なんていいし、紗夜からお礼なんてそんなうらやましい事独り占めさせてたまるものかという、リサと燐子の意志が感知できた飛鳥はどうしたらいいのか分かりませんでした。

 

紗夜「あ、あの…やはり迷惑でしょうか…」

飛鳥「迷惑ではないですよ。迷惑では」

あこ「じゃあなんでダメなの!?」

飛鳥「湊先輩たちが怖すぎます」

 

 飛鳥がはっきり言うと、聞いていた周りの生徒たちは困惑した。

 

日菜「飛鳥くーん…。もしかしてあたしたちに喧嘩売ってる?」

飛鳥「そんなに心配しなくても取りませんし、取れませんよ」

「!!」

飛鳥「紗夜先輩はもう今や皆さんのアイドルですから」

 

 飛鳥の言葉に紗夜が顔を真っ赤にした。

 

飛鳥「私も何かと忙しいので、独り占めなんか出来ませんよ」

紗夜「……//////」

 

 アイドル扱いされた紗夜は飛鳥をキッとにらみつけた。

 

飛鳥「では、これで失礼します」

紗夜「ま、待ちなさい!!/////」

 

 飛鳥が早急に去ろうとすると、紗夜が呼び止めた。

 

飛鳥「何でしょう」

紗夜「や、やっぱりお礼をさせてください…/////」

 

 飛鳥はスーッと姿を消して超能力で記憶を改ざんさせ、その場から離れた。

 

飛鳥「はー…」

こころ「いつ見てもすごいわね!」

飛鳥「ありがとよ…」

モカ「主人公らしく口説いてどうするのさー」

飛鳥「口説いてないから」

千聖(…けど、この子素質あるのよね)

 

 とまあ、色々言われたが、飛鳥の今回の仕事は終わった。

 

「な、なんだかよく分からないけど…」

「Roseliaと日菜ちゃんは一丈字を快く思っていない!」

 

 自分にもチャンスがあると思った男子生徒二人は即座に友希那達に声を懸けにいった。

 

「あ、あのーーーー」

紗夜「!」

 

 紗夜がいち早く気づくと、友希那達が不機嫌オーラを放って男子生徒たちに詰め寄った。

 

 

 この後どうなったかはご想像にお任せします。

 

 

おしまい

 

 



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第342話「正々堂々と」

 

 

 一丈字飛鳥です。バンドリ学園に通う高校1年生です。この学園には、明るくて自信化なイケメンの先輩が通っているのですが、今回はそんなはお話です。

 

 

 バンドリ学園

 

「おはよ」

「おはよー!!」

「今日もかっこいい~♥」

 

 女子生徒からの黄色い声援を浴びせられている男の名前はDQN。高校2年生である。成績優秀、スポーツ万能、イケメンといったまさに完璧超人である。

 

「くっ…! DQNの奴、今日も女子に囲まれてるぞ…」

「くっ…!」

DQN「……」

 

 ただし、男子生徒に対してはとてつもなく冷たく、見下していた。

 

 彼はサッカー部に所属していて、キャプテンもしていたがとにかく後輩や気に入らないチームメイトにはきつく当たり散らしており、取り巻きもおこぼれを貰おうと彼にへこへ越していた。ちなみにサッカー部をやめようとすれば、汚いやり方で報復することも辞さなかった。

 

 そして事もあろうに、彼は生徒会長となって取り巻き達も生徒会に入っていた。

 

 バンドリ学園はまさに彼の支配下になろうとしていたが、そんな彼らが築き上げた帝国を無意識に壊そうとしていた少年が一人。

 

************************

 

 一丈字飛鳥である。仕事の為に広島から引っ越してきて、弦巻家の協力をありながらバンドリ学園に通っている。

 

 その頃、DQNは美少女バンドと名高い、5つのバンドに所属している少女たちを自分の者にしようと考えていた。

 

DQN「彼女たちがオレのものになれば無敵だ…」

 

 なんて言っているが、皆さんもお察しの通りこころとか実家もすごいし、パスパレもアイドルだし、薫は女性人気がすごいので、そんな事しようものなら、いくら信頼も実力もあるイケメンでもひとたまりもない。

 

 だが、妙に自信があったDQNは生徒会長の権限でこんな事を考案した。

 

*************************

 

 全校生徒を対象とした肝試し大会だった。クラスにこだわらず学年ごとでもチームを組むことが出来るのだが、勿論DQNは香澄達を自分のものにする為、自分とその取り巻き達が彼女たちと同じチームになるように仕向けたのだ。ちなみに本命は芸能人であるパステルパレットだった。このパステルパレットを取り込むことで、モデルやアイドルも食おうというものだった。

 

 ちなみに飛鳥はというと、モブとしてか認識されておらず、同じクラスメイトの男子たちとチームを組んでいた。全員男子である。

 

飛鳥「宜しくお願いします」

「宜しく」

 

 こうして肝試し大会が始まったわけだが…。

 

DQN「皆! オレに頼っていいからね!」

 

 と、明るく笑顔で愛想良くした。純粋な彩とイヴは安心していたが、千聖はDQNの事を信用していなかった。

 

千聖「…宜しく頼むわね」

DQN(こいつ、オレの事信用してないって顔だな。まあいいさ、すぐにオレの忠実なメスにしてやる)

 

 そう下心を持っていたが、千聖はそのことをしっかり見抜いていた。

 

千聖「イヴちゃん。私の傍にいて頂戴」

イヴ「は、はい…」

 

 暫くしてお化けが現れ、イヴが悲鳴を上げた。

 

イヴ「きゃーっ!!! きゃーっ!!」

 

 イヴが案の定悲鳴を上げて暴れだした。

 

DQN「イ、イヴちゃん! 大丈夫だよ! 心配しないで…」

 

 DQNがイヴをなだめようとしていたが、内心うるさいと思っていた。

 

DQN(騒いでないでオレに抱き着けよ! 気が利かねぇな!!)

 

 DQNのわずかな表情の動きから、内心を読み取って千聖は不快感を示していた。

 

日菜「そーだよイヴちゃん。思った以上に怖くないよね。まるでなんか意図的にレベルが下がってるような気も…」

「!!」

 

 才能マンならぬ才能ガールの日菜が気づき始めた。そう、自分たちはカッコ悪いところを見せないように自分たちが来た時だけ、仕掛けのレベルが下がっているのだ。そのくせ他のチームが来たときはとてつもなく怖い仕掛けを出している。

 

彩「そ、そう?」

日菜「そうだよ。だって前のチームとかすごく悲鳴上げてたのに、これ見てそうなるかなーって」

千聖「私もそう思ったわ」

麻弥「そう言われれば…」

 

 と、気づき始めたのでDQNは笑ってごまかして、話題をすり替えようとした。

 

DQN「た、ただの偶然だよ! 次行こうつ…」

 

 その時だった。

 

「おんどりゃああああああああ!!!!」

「!!?」

 

 すると、知らない男たちがいきなりやってきた。

 

「な、なんだ!?」

「!?」

 

 如何にもガラが悪そうな男たちで、DQNとパスパレにいちゃもんをつけた。

 

DQN(だ、誰だ!? こんな奴プログラムには呼んでないぞ!?)

 

「お前ら誰に断ってここで騒いどんじゃボケェ!」

「キャンプの邪魔や!!」

「キャ、キャンプ!?」

 

 男たちはキャンプをしていたが、ここはキャンプ禁止の場所だった。

 

DQN「こ、ここはキャンプをしていい場所では…」

「じゃかわしわオラァ!!!」

「てめーには聞いてねーんだよ!!」

 

 DQNが穏便に済ませようとしたが、男たちはいちゃもんをつけてきた。強面の男2人に怒鳴られて普通はビビッて逃げ出すところだが、DQNは逃げ出さなかった。

 

 寧ろこの自分に向かってそんな口をきいていいのと思ってるのか、この社会の負け犬どもと思っていた。

 

DQN「こ、ここは僕に任せて早く!!」

千聖「分かったわ。行きましょう」

 

 そう言って千聖は他の4人を連れてあっさり行こうとすると、男たちも別に止める様子もなかった。

 

「…さて、ゆっくり話をしようか。兄ちゃん♪」

DQN「…え?」

 

 なんか思ってたんと違うとDQNは困惑したその時、飛鳥達がやってきた。

 

飛鳥「あれ? あれは…」

DQN「!?」

「ああん!!?」

 

 男たちが飛鳥達ににらみを利かせたが、飛鳥の顔を見るなり面白いくらい青ざめた。

 

「あ、兄貴…あいつ…!!」

「ま、間違いない…! 古堂孫と一緒にいた奴だ…!!」

 

 青ざめた男たちを見てDQNは困惑したが、何とか助かりそうだと感じていた。そして案の定、男たちはDQNを置いて逃亡した。

 

飛鳥(まあいいや。黒服さん達が捕まえてくれるから…)

 

 そう言って飛鳥がDQNを見つめた。

 

飛鳥「あの、大丈夫ですか?」

DQN「ああ大丈夫さ。だがもう安心したまえ! 僕は先に行かせた子たちと合流するから。それじゃ!」

 

 そう言ってDQNはお礼を言わずにその場を後にした。それを見て飛鳥はとてつもなく嫌な予感がしながらも、仲間たちと共にゴールを目指した。

 

 そしてゴールまでたどり着いたが、先に到着していた生徒達の間で何やら不穏な空気が流れていた。DQNをはじめ取り巻き達はうなだれていて、それを見ている生徒たちは失望や軽蔑のまなざしを向けていた。

 

飛鳥(やっぱりバレたんだな…)

 

 そう、DQNをはじめとする生徒会が自分たちが有利になるように仕組んでいたことがバレ、その上友希那達を完全に虜にしようとしていたこともバレたのだ。結果的に女を選定していた事が明らかとなり、DQNに熱い視線を送っていた女子たちは『やっぱり男に碌な奴はいない』『白馬の王子様なんていなかった』と、DQN達を軽蔑するようになった。

 

飛鳥(ま、ズルすればそうなるよな)

 

 そう言って飛鳥は静かに目を閉じた。DQNは千聖たちに泣きすがっていたが、千聖、日菜がNGを出したためどうにもならなかったという。

 

 

おしまい

 



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第343話「もしもそこそこ強い格闘少女がバンドリ学園にいたら」

第343話

 

 一丈字飛鳥です。ガールズバンドや学園に迷惑行為を起こしている悪質なファン『ヤラカシ』を陰から排除する為に、広島から東京のバンドリ学園にやってきました。

 

 こういう場合って警察に任せれば良いと思う方もいらっしゃいますが、流石に学内では警察の目も届きにくく、すぐさま対応できるというものでもございません。

 

 また、生徒同士などのもめごととかもあります。そういう意味で高校生であり、超能力が使える私が適任だという事で、バンドリ学園に派遣されました。

 

**********************

 

 さて、今回のお話はというと…。

 

「ち、ちくしょー! 覚えてろー!!」

「フン。弱いわね」

 

 …学園に来てみたはいいけど、ものすごく強い女子生徒がいて、その女子生徒がガールズバンドにまとわりつく男子生徒たちを撃退していました。これ、私いらない気が…。

 

 とはいえ、今の様子を見る限りだと結構自分の力を過信しているところがあるから…うーん、こういうタイプが一番厄介なんだよな。運が悪けりゃ人の話を聞こうとすらしないから。

 

 そんなある日の事。彼女が所属している空手部では今日も練習が行われていたが、彼女のうわさを聞き付けた男子生徒たちが見学に来ていた。

 

飛鳥(…まあいいや。帰ろ)

 

 あまりこういうのは関わらない方が良いと、飛鳥は超能力を使って存在感を消して、帰ろうとした。

 

「空手なんて面白そうね!」

 

 と、弦巻こころが仲間を連れてやってきたが、飛鳥は普通に無視して帰った。こういう場合、こころに強引に連れていかれるのだが、それだとワンパターンなので、普通に帰った。

 

飛鳥(まあ、いざという時は黒服の人たちもいるしな…)

 

**********************

 

 翌日、飛鳥が学園に登校すると何やら男子生徒たちがヒィヒィ言っていた…。

 

飛鳥(…ああ、あの女子生徒にコテンパンにやられたんだな)

 

 超能力を使わずとも、飛鳥は男子生徒たちが女子生徒とお近づきになろうとしたが、自分より強い男じゃないとダメみたいな事を言ったんだと判断した。

 

 そんな時だった。

 

「そこのあなた」

 

 女子生徒が声をかけた瞬間に、飛鳥は超能力を使って存在感を消した。すると女子生徒は急に飛鳥が消えたと困惑していた。

 

飛鳥(あー…これこころが喋ったんだなー。そういうパターンかー)

 

 そう、見学に来ていたこころが女子生徒と話をして、飛鳥も強いみたいな事を話してしまったのだ。そして興味を持った女子生徒は飛鳥を探していたのだが、冗談抜きで面倒くさい事になりそうだと飛鳥は超能力を使い、おまけに女子生徒の記憶から自分の事に関する記憶を消した。

 

*********************

 

 だが、あまりにも何もないと話が成り立たないので、結局話をすることになった。

 

飛鳥「ですよねー」

 

 今ならこころにいつも振り回される美咲の気持ちが嫌という程理解できる飛鳥であった。カフェテリアで話をしていて、周りの生徒たちも飛鳥と女子生徒を見ていた。

 

女子生徒「あなたが一丈字くんね」

飛鳥「あ、はい。如何にも」

 

 とりあえず話だけでも聞いてみようとしたが、女子生徒は妙に自信満々で、飛鳥は更にげんなりした。

 

飛鳥(うん、とにかく無茶しそうな人だというのは良く分かった)

 

女子生徒「1組の弦巻さんから話を聞いたんだけど、格闘技をたしなんでるんだって?」

飛鳥「今はもう完全に現役を退いてます」

女子生徒「そう…」

 

 すると女子生徒は飛鳥に攻撃を仕掛けようとしたが、飛鳥はそのまま直で食らってそのままぶっ飛んでそのまま気絶した。

 

「…え?」

 

 予想外の事態に皆が困惑した。飛鳥はうつぶせで倒れていて動かなかったが、飛鳥は演技をしてそのまま様子をうかがう事にした。

 

こころ「あら?」

 

 こころも首をかしげていた。

 

美咲「ちょ、ちょっと一丈字くん! 大丈夫!!?」

 

 美咲が飛鳥に駆け寄ると、飛鳥が女子生徒の方を見た。

 

飛鳥「いきなり何するんですか!!」

女子生徒「……」

 

 飛鳥が女子生徒にそう怒鳴る(演技)をすると、女子生徒が困惑した。こころが話していた内容と全然違ったからだ。

 

女子生徒「…ちょっと弦巻さん。話が違うわよ?」

こころ「おかしいわね。飛鳥、あなた格闘技出来るはずよね?」

飛鳥「もう昔の話だよ」

 

 嘘をつくのがものすごく下手なこころを見て、飛鳥は結構ヤバい状況に置かされていた。このまま戦っても良いのだが、この女子生徒はなんか人の話を聞かなさそうなので、結構ややこしい事になりそうだと感じた。

 

女子生徒「どうやら期待外れだったようね」

 

 そう言って女子生徒が立ち去って行くと、飛鳥が一息ついた。すると男子生徒たちも飛鳥の醜態を見て、上機嫌になりながらその場を去っていった。恐らく友希那達に女子に負けたと話すつもりなのだろう。

 

 だが、飛鳥にとってはそんな事はどうでもよく、寧ろここを去りやすくなったと味を占めた。

 

*********************

 

 その後、飛鳥は『女子に負けたひ弱な男』というレッテルを張られながら、学園生活を送っていたが、本当に気にしてなかった。

 

「おっ、あんな所に女子に負けた奴がいるぞー」

 

 と、男子生徒たちが馬鹿にすると、

 

「あ、どうもこんにちは。女子に負けた一丈字です」

 

 そう言い返して、男子生徒たちを困らせた。負けて恥をかいたというのに、平気な飛鳥に皆違和感を感じていた。

 

飛鳥(まあ、ヤラカシの被害も減ってきてるし、そろそろ頃合いだな…)

 

 飛鳥としてはあの女子生徒がいる事もあり、ヤラカシが減ってきていて、広島に帰れそうだった為、特に気にしていなかった。

 

****************

 

 だが、事件が起きた。いつものように女子生徒が男子生徒たちを懲らしめようとしていたが、罠にはめられて捕らえられてしまった。

 

飛鳥「場所を特定したので、弦巻家の皆さん。突入よろしくお願いしまーす」

 

 飛鳥は直接出ることはせず、弦巻家の特殊部隊を派遣させて、女子生徒を救出させた。そしてこれがまた拍車をかけて、完全に被害がなくなった。

 

 そして飛鳥は任務終了で、広島に帰る事になった。

 

モカ「飛鳥くん。本当にこれで良かったの?」

飛鳥「確かに主人公としての活躍は少なかったですけど、自分の事は後回しですよ」

千聖「そ、それはそうかもしれないけど…」

 

 あまりにも飛鳥が仕事をしていない為、モカと千聖は困り顔だった。言っていることは正しいが、主人公としては流石にどうなのかと思っていた。

 

こころ「そうよ。結局飛鳥は弱いって誤解されたままじゃない」

 

 こころも不満そうにしていたが、

 

飛鳥「こころ。強さや力は人に見せびらかすものじゃないよ。オレもいつまでもここにいる訳じゃないし、皆が無事だったことを喜ぶべきじゃないかな」

 

 飛鳥の言葉にこころが考えると、

 

こころ「良く分からないけど…。飛鳥がそう言うなら、そうなのかもしれないわね」

飛鳥「済まないね」

 

 そう言ってこころ達に見送られ、飛鳥は広島に帰っていった。

 

**********************

 

 そして飛鳥の母校『猪狩学園高等部』

 

飛鳥「……」

 

 広島に帰ってくるなり、飛鳥は格闘大会に出場することになったが、見事に優勝した。

 

京「お前…」

飛鳥「何も言うな。自分の身を守る為さ」

椿「そ、それもそうね…」

 

 椿も鬱陶しい奴の相手をするのは嫌だったので、今回ばかりは飛鳥に同感した。

 

日向「その先輩やこころちゃん達から何か言われなきゃいいけど…」

飛鳥「まあ、任務も終わったし、相手してもいいけどね…」

 

 この後、本当に相手をさせられることになって、色々ややこしくなったのはまた別の話…。

 

 

おしまい

 



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第358話「もしも空気の読めない陰キャがクラスメイトにいたら(前編)」

 

 一丈字飛鳥です。私のクラスには緑山というスケ番がいます。

 

先生「また遅刻か!?」

緑山「は? 遅れたところで皆に迷惑かけてないだろ?」ギロ

 

 緑山の女子生徒はそう言って睨みつけると、先生を萎縮させた。遅刻じゃなくてそうやって睨みつける所は困ってるよ。

 

 そんなこんなで休憩時間に緑山が一人でたたずんでいたが、

 

「緑山」

 

 クラスメイトの男子生徒が話しかけた。自分の事を陰キャと呼んでいるが、顔立ちはそれなりに良い。

 

緑山「…何」

陰キャ「よく遅刻するけど、何かあったの?」

緑山「お前に教える事はねぇよ」

 

 そう言って緑山はそう言ったが、

 

陰キャ「そうは言っても気になるじゃないか。何かあってもいけないし…」

緑山「…あのさ」

 

 陰キャの言葉に緑山が困惑した。

 

緑山「あんた、もしかして自分の事かっこいいと思ってる?」

(女子に言われるとキツイ奴―!!!!)

 

 緑山の言葉に飛鳥だけでなく他の男子生徒もそう思っていたが、陰キャは首を傾げた。

 

陰キャ「そんな事はないさ。普通に心配してるだけだぞ?」

緑山「もし仮に何かあったとしても、少なくとも男子には話さないし、あんた…なんか人の気持ちとか分からなさそうなんだよね」

陰キャ「そんな事ない! なんでそんな事言うんだ!?」

 

 陰キャは不細工ではないが、特別イケメンという訳ではない。

 

飛鳥(…手を差し伸べてやらなきゃいけない時と、見守らなきゃいけない時の区別がついてないんだな)

 

 飛鳥としては緑山に同情していた。確かに何も知らないくせに偉そうな事を言われるのは腹が立つのだ。

 

飛鳥(かといって、何も言わないであんな事言われるのもなぁ…)

 

 飛鳥が緑山をじっと見つめていると、緑山が飛鳥の方を見た。

緑山「それはそうと、あんたも何見てんだよ」

 

 緑山の言葉に飛鳥は横を向いた。

 

緑山「お前だよお前! そこの陰キャメガネ!!」

 

 緑山の言葉に飛鳥はまた別の方向を向いた。

 

緑山「ああんもぉおおお!!!」

 

 飛鳥の態度に緑山が頭をかきむしった。

 

陰キャ「彼は一丈字くんって言うんだ」

緑山「そうかよ! おい! 一丈字!」

飛鳥「あ、はい。何でしょう」

緑山「お前、さっきからアタシの事見てたよな?」

飛鳥「見てませんけど」

緑山「いや、絶対見てた!」

飛鳥「お金が欲しいなら、ちゃんと真面目に働いて稼ぎなさい」

緑山「お前…アタシを舐めてんのか!?」

 

 緑山が飛鳥に突っかかるが、陰キャが止めた。

 

緑山「!」

陰キャ「やめろ。ここは教室だ」

 

 陰キャがかっこつけて緑山を見つめるが、緑山だけじゃなくて他の生徒も身震いした。

 

(く、くさすぎ~~~~!!!!)

(絶対かっこつけてるよ!)

(陰キャくん…こんな人だったんだ…)

(偉そう)

 

 周りの人間の陰キャに対する評価が下がったことで、飛鳥は陰キャに対してものすごく申し訳ない気持ちになった。

 

陰キャ「それから一丈字くんも、どうして緑山を見てたんだ?」

飛鳥「そこは私がそんな事するはずないって言ってほしかったですね」

 

 陰キャの言葉に飛鳥が冷徹にツッコミを入れた。

 

緑山「いや、絶対見てたろう!」

飛鳥「そんなに見てたというんですね」

緑山「あ、ああ!!」

飛鳥「分かりました。黙ってあげようかと思ってましたけど、そんな事仰るんでしたら、私が説明しますね。あなたがどうしてそんなに突っ張っているかを」

緑山「や、やめろ!!」

 

 そう言って緑山が飛鳥を引っ張り出した。

 

「緑山さん!」

陰キャ「オレも行く!」

 

 そう言って陰キャも行こうとしたが、女子たちが止めた。

 

陰キャ「な、なにすんだよ! 離せよ!」

「私が行くから陰キャくんはそこで待ってて!」

 

 一人の女子生徒が飛鳥と緑山の後を追いかけていった。

 

**********************:

 

 人気のない場所

 

緑山「あんた…どこまで知ってるの?」

飛鳥「あなたは私たちに話すことなど何もないのでしょう? それなら、私もあなたに話すことなど何もありませんよ」

 

 緑山と飛鳥が向き合い、飛鳥がしらばっくれた。

 

緑山「てめえ…! とにかく喋ったら殺すからな!」

飛鳥「分かりました」

 

 そう言って緑山が去っていくと、飛鳥は彼女の背中を見つめた。そして入れ替わるように女子生徒がやってきた。

 

「一丈字くん!」

飛鳥「Aさん」

 

 Aがやってきて理由を聞こうとすると、

 

緑山「おい!!」

 

 緑山が戻ってきて、Aはおびえたが飛鳥は動じなかった。

 

緑山「喋ったらどうなるか分かるよな…!?」

A「ヤ、緑山さん…」

 

 すると飛鳥が笑みを浮かべた。

 

飛鳥「ごめんなさい。あれは嘘です」

緑山「は?」

A「え?」

飛鳥「何かあったかかどうかだけ調べる為に、ハッタリをかましたんですよ」

緑山「ぐ…!」

 

 飛鳥の言葉に緑山が歯ぎしりした。

 

飛鳥「ですがもう何があったかまではもう聞きませんよ。私もプライベートの事に関してしつこく聞かれるの嫌な性分なんです」

緑山「……!」

 

 飛鳥の言葉に緑山が目を大きく開いた。

 

飛鳥「ですが、本当に困ったときは誰かに必ず相談してください。それだけです。行きましょうAさん。これ以上は聞かないで上げてください」

A「う、うん…」

 

 そう言って飛鳥はAを連れてその場を去ると、緑山は一人取り残された。

 

 そして教室に戻り、飛鳥ははったりをかましていたことを告白した。

 

飛鳥「まあ、今は見守ってあげた方が良いかと思います」

「そ、そう…」

陰キャ「いや、やっぱり心配だ!」

飛鳥「心配なのは分かりますが見守る事も…」

陰キャ「それでもし彼女に何かあったらどうするんだ!」

 

 そう言って陰キャが力説すると、女子たちは「本当に分かってねーなコイツ」という顔をした。それを見て飛鳥は静かに目を閉じて天を仰いだ。「本当に話聞かねーなコイツ」と。

 

 正義感があって人を心配するのは素晴らしい事なのだが、いまいち空気が読めてないし、デリカシーもないのだ。

 

 

つづく



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第359話「もしも空気の読めない陰キャがクラスメイトにいたら(後編)」

 翌日、1時間目の授業が行われようとしたが、緑山と陰キャが来ていなかった。

 

飛鳥(まさか…)

 

 緑山はまだいいとして、此間まで普通に登校してた陰キャまでいないとなり、飛鳥はとてつもなく嫌な予感がした。

 

 数十分後、陰キャと緑山が一緒に登校してきて、飛鳥はやっぱりと思ったが、これで上手くいけば一応オーライで済まそうとした。

 

 だが…。

 

「緑山に続いて陰キャも遅刻か!」

陰キャ「すいません」

 

 そう言って陰キャは謝ると、緑山が困惑した。

 

「どうして遅刻したんだ?」

緑山「別に文句ないでしょ?」

陰キャ「緑山さんは仕事で忙しいお母さんに代わって妹さんを幼稚園に連れて行ってたんですよ」

飛鳥(!!)

 

 陰キャの言葉に飛鳥は青ざめ、緑山も震えていた。

 

「妹さんを…?」

陰キャ「僕はそれに付き合って遅れました!」

 

 そう言って陰キャは堂々と報告し、クラスメイト達は緑山への態度を改めた。今まで遅刻ばっかりしていたが、本当は妹さんのためだったんだと。陰キャは「これでもう君の誤解は解けた」と言わんばかりの満足そうな表情で、緑山を見つめた。

 

先生「緑山…」

緑山「……」

 

 先生は緑山に言葉を発した。

 

先生「それならそうだって連絡しなさい!!!」

 

 緑山をほめるという事はせず、ちゃんとやるべき事はやるように注意した。

 

先生「何も連絡がないから、先生たちもお前が何かあったと思うじゃないか!」

緑山「……っ!」

 

 すると生徒たちも

 

「あ、あの。緑山さん…」

緑山「!」

 

 緑山が生徒を見つめた。

 

「本当にごめん! 緑山さんの事を誤解してた!」

「ごめんなさい!」

 

 そう言って皆が謝った。

 

陰キャ「そういう事だ緑山。もうこれでお前を誤解する奴は…」

「…て」

「え?」

 

 すると緑山が叫んだ。

 

緑山「いい加減にして!!!!」

 

 緑山が怒鳴ると、他のクラスも驚いて顔を出した。

 

緑山「誤解を解いてくれって一回でも頼んだ!!? こんな事されたら皆アタシに気を遣って、対等じゃなくなるでしょうが!! だから人の気持ちが分からないって言ったんだよ!!」

 

 緑山が涙ながらにそう叫ぶと、陰キャも自分のやった事の重さをようやく理解した。結局自分のエゴでしかなかったのだと。飛鳥は静かに目を閉じる。

 

緑山「アタシ帰る」

「!」

緑山「もう学校に行かないから」

 

 そう言って緑山がその場を去ろうとすると、陰キャが緑山の手をつかもうとしたが、飛鳥が超能力で陰キャの動きを止めた。

 

陰キャ「っ!」

 

 そして飛鳥はテレパシーで待機していた弦巻家の黒服たちに緑山の監視を依頼した。

 

陰キャ「ど、どうして体が…」

先生「緑山さんは先生に任せて、皆は教室で待ってなさい!」

陰キャ「先生! 僕も行きます!」

先生「待ってなさい!!」

 

 そう言って先生が追いかけていくと、生徒だけになり、陰キャは悔しそうに足を動かそうとしたが動かず、クラスメイト達は呆然と立ち尽くしていた。

 

**************************

 

 そしてその授業が終わり、陰キャは早速緑山を探し回ったが、飛鳥は黒服たちから緑山の居場所を聞いていた。母親にバレないように家と母の職場、妹の幼稚園から離れたにいると。

 

飛鳥『分かりました。そのまま監視を続けてください』

 

 飛鳥はテレパシーで黒服たちに指示を出したが、これからどうしようか迷っていた。こういう時は必ず不良達が暴れるのが定番だったからだ。まあ、不良達が暴れても黒服たちがしばいてくれるので問題ないが、一番問題なのは陰キャだった。

 

飛鳥(ああ…。なんか孫さんっぽいけど、孫さんは一応空気読めるからな…)

 

 飛鳥が兄貴分である古堂孫を思い出した。彼もハチャメチャではあるが、関わったらいけない時は関わったらいけないという気遣いが出来るのだ。

 

 ちなみに次の授業が開始するとき、陰キャは先生たちに教室に連れ戻されていた。ここまでくれば、一人の為にここまで一生懸命になれる良い奴なのだが、飛鳥と一緒にいたAは彼に対して不信感を抱いていた。

 

 そして飛鳥はクラスの雰囲気が悪くなる前に何とか手を打たなければならないと考えていた。

 

飛鳥(…とにかくAさんは落ち着かせよう)

 

 暫くして、黒服たちから緑山が他校の生徒に絡まれていた事が報告され、結果的に黒服たちが撃退した。緑山は逃げたが、母親に連絡して片を付けるとの事だった。

 

飛鳥(まあ、弦巻財団がやったって言ったらね…)

 

*************************

 

 そして緑山が戻ってくることなく、放課後を迎えた。飛鳥は何とも言えない気持ちで下校していると、緑山とその母親と遭遇した。

 

飛鳥「!」

緑山「お、お前…」

 

 飛鳥はこの役を陰キャに渡そうかと思ったが、

 

緑山母「もしかしてこの子があなたの言ってたストーカー!?」

緑山「ちげーよ!」

飛鳥(ストーカーって…)

 

 飛鳥は陰キャに少し同情した。

 

緑山「と、とにかく一緒に来てくれ!」

飛鳥「あ、はい。分かりました…」

 

 緑山の言葉に飛鳥は仕方なく付き合う事にしたが、ややこしい事にならないように超能力で他のクラスメイトと出会わないように裏工作を仕掛けた。

 

**********************

 

 喫茶店

 

緑山母「本当にうちの娘がありがとうございました…」

飛鳥「いえ、私は別に…」

 

 緑山母の言葉に飛鳥は本当に困惑した。

 

緑山「…本当は知ってたんだろ。妹の送り迎えの事」

飛鳥「いや、本当に知らないんですよ。ハッタリで…」

緑山「謙遜するな。だとしてもアタシに気を遣って、余計なことを言わなかっただろ」

飛鳥(まあ、本当に知らないからな…)

 

 と、飛鳥は困惑するしかなかった。もし仮に知っていたら多分陰キャがしつこく聞きまわっていただろう。正義の味方面して。

 

 

飛鳥「…それはそうと、学校には来られますか?」

緑山母「行かせます」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 緑山母の力強い発言に飛鳥は困惑するしかなかった。

 

緑山母「私の仕事が忙しかったばかりに、子供の事をちゃんと見ていませんでした。その結果、この子にはつらい思いを…」

緑山「……」

 

 後に緑山のバックには弦巻財団がいるという事が広まり、喧嘩を売らなくなるのは別の話だ。

 

緑山「…それでさ、母さんの職場が変わる事になったんだ」

飛鳥「え?」

緑山「そこは今よりも給料良くて、無理して働く必要もなくなる。だから、送り迎えもアタシがしなくて良くなったんだ」

飛鳥「そうですか」

緑山母「一丈字さんもそうですけど、クラスの皆さんも…」

 

 そう言って緑山母はハンカチで涙をぬぐうと、緑山も泣きそうになった。そして飛鳥はこれ以上は何も言う事はしなかった。

 

***********************:

 

 後日、緑山は教室にやってきて、クラスメイトに謝罪した。

 

緑山「本当にごめんなさい」

「緑山さん…」

 

 するとクラスメイト達が笑みを浮かべた。

 

「ううん。いいんだ」

「学校に来てくれてありがとう」

「本当にごめんね」

 

 そう言って皆が笑いあうと、緑山もうれしそうな顔をした。

 

飛鳥(やっと終わった…)

 

 飛鳥はひと段落したと安心していた。

 

陰キャ「緑山」

 

 陰キャもその場にいたが、緑山は凍り付いていた。陰キャも安心してほほ笑んでいたが、彼女は完全にトラウマになっていた。

 

緑山「あ、えっと…あんたも迷惑かけたね…ごめん…」

陰キャ「いいんだ」

 

 陰キャがふっと笑った。

 

陰キャ「オレも皆と同じで、緑山が学校に来てくれて嬉しい」

 

 陰キャの言葉に緑山は震えあがっていた。

 

飛鳥(心配してたのは分かるけど、悪気もなく通学路で待ち伏せされたり、家の事とか堂々とバラされたりしたら色々怖いわな…)

 

 飛鳥は緑山に対して心の底から同情した。

 

緑山「そ、そう…」

陰キャ「どうして目をそらすんだ?」

 

 こういう時、ヒロインが主人公にべたぼれして慌てふためくが、真逆だった。すると男子生徒の一人が

 

「もしかして、陰キャに惚れたんじゃね?」

 

 と、ツッコミを入れた。ここで緑山が顔を真っ赤にして否定すればラブコメの出来上がりだが、真っ青だったし涙目だった。

 

 

緑山「勘弁して!!!!」

 

 理由はもう言うまでもない。

 

緑山「お母さんも困ってたし、妹の幼稚園もこいつの事怖がってるのよ! 私の妹をだしにして、他の園児の子たちを狙ってるんじゃないかって!!」

陰キャ「えっ!?」

 

 すると皆が陰キャを見つめた。

 

陰キャ「い、いやオレは…」

A「あのさ」

 

 Aが呆れたように陰キャに言い放った。

 

A「確かに緑山さんの事を心配してたのは分かるけど、やりすぎだよ」

陰キャ「や、やりすぎって…」

A「おうちの事とか言えるわけないし、なんかもうここまでくると人助けしてる自分に酔いしれてるように見えない」

陰キャ「オ、オレは酔いしれてなんか!」

A「そんなつもりはなくても、私や緑山さんはそう見えるの! 大体…」

 

 そう言ってAは烈火のごとく陰キャに説教した。陰キャも納得してなさそうだったが、Aが烈火のごとく怒っているため、話を聞くことにした。

 

飛鳥(市ケ谷さん…奥沢さん…私はもう冗談抜きでダメかもしれない…)

 

 飛鳥がそう考えていると、有咲と美咲がやってきて、飛鳥に檄を入れた。

 

有咲「傷は浅いぞ一丈字!!」

美咲「分かるわよ!! 人の話を聞かない奴の相手するのめっちゃつらいよね!!」

 

 と、有咲と美咲が乱入したことで3組の教室はカオスになりましたとさ。

 

飛鳥「もしくは2年1組…」

千聖「一丈字くん!! 燐子ちゃんと花音が泣きながら怯えてるからやめて頂戴!!」

飛鳥「じゃあ白鷺先輩だけ」

千聖「分かったわ。じゃあ私と彩ちゃん」

彩「千聖ちゃああああああああああああああああん!!!」

 

 

 

おしまい



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第371話「もしも置き去りにされたのが紗夜だったら」


 今回の設定

・ 飛鳥は友希那達と同い年。

****************************


 

 

 一丈字飛鳥です。今回の私は上級生組で林間学校に来ております。1組には紗夜さん達、2組には日菜さん達で、3組は私です。学園からバスに乗って自然の家について、そこでオリエンテーリングをやったり、風呂に入ったり、夕食を取ったりして、最後は肝試しをしました。3組、2組、1組の順番で…。

 

 で、そこで事件が起きてしまったわけですね。それではどうぞ。

 

***************************

 

「はぁ!!? 紗夜を置いてきた!!?」

 

 どこからか怒鳴り声が聞こえた。というのも1組の男子たちがお化けに怖がってそのまま逃げだし、一緒に組んでいた紗夜を置いてけぼりにしてしまったのだ。

 

 そのことに紗夜と同じバンドメンバーであるリサ、友希那。クラスメイトである千聖、そして紗夜の実の妹である日菜が激怒した。

 

千聖「だからあなた達と組ませるの嫌だったのよ…!」

友希那「どう責任とるつもりなの?」

日菜「信じられない!!」

 

 千聖、友希那、日菜は特に怒っていて、彩、花音、燐子は何も言えなくて慌てていた。リサもちょっと怒っていた。

 

薫「皆、気持ちは分かるが落ち着くんだ」

麻弥「そうですよ…」

日菜「これが落ち着いてられる訳ないでしょ!!」

 

 薫と麻弥が止めようとするが、日菜は泣きながら怒鳴った。その怒鳴り声は飛鳥も聞いており、すかさず超能力で紗夜を探知した。すると肝試しの正規ルートから外れた場所に紗夜がいたが、足をくじいたのか動けない状態だった。

 

飛鳥(場所は分かったけど、問題はどうやって気づかせるかだな…)

 

 飛鳥が誰に気づかせるか考えていると、

 

日菜「あたし探しに行ってくる!」

麻弥「ひ、日菜さん! 流石に無茶ですよ!」

彩「そ、そうだよ! いくら何でもそれは…」

日菜「離して!! このままだとおねーちゃんが!!」

 

 日菜が紗夜を探しに行こうとするが、彩、千聖、麻弥の3人が止めに入り、皆がどうすればいいか分からなくなっていた。

 

飛鳥(まあ、近くにいる先生たちに対して上手く説明するか…)

 

 飛鳥が作戦を考えたその時だった。

 

「おーい! どうしたんだー?」

 

 と、知らないおじさんが話しかけてきて、皆がおじさんの方を見たが、飛鳥はおじさんに見覚えがあったのか、困惑した。

 

「あれ?」

 

おじさんも飛鳥に気づいた。

 

「あれ? もしかして君…飛鳥くん!?」

飛鳥「あ、あははは…。ご無沙汰しております…」

 

 飛鳥は誤魔化す事も出来ず、愛想笑いをした。

 

おじさん「どうしたんだい?」

飛鳥「それが…」

 

 飛鳥が事情を説明した。

 

おじさん「成程。事情は良く分かった」

飛鳥「それでちょっと心当たりがありそうな場所がありまして…」

 

 飛鳥がそう話そうとすると、日菜が彩たちを振り切って飛鳥の所に行こうとしたが、飛鳥が超能力を使って阻止しようとした。だが、日菜の気持ちが強すぎてはじかれてしまった。

 

飛鳥(何!?)

 

 飛鳥も超能力が破られると思わなかったのか、困惑していた。

 

日菜「心当たりがありそうな場所って何!? 教えて!!?」

飛鳥「そこに必ずいるとは限らないんですけどねぇ…」

 

 というのは大嘘で確実にいます。だが、こんな堂々と言い切ってしまっては色々面倒なので飛鳥は謙虚気味に答える。

 

日菜「いいから教えて!!」

飛鳥「分かりました」

 

 日菜の気迫に押されたのか、飛鳥は教えることにした。

 

飛鳥「早い話が、肝試しのルートから外れた道を行ってしまった可能性があります」

日菜「それは分かるよ」

飛鳥「で、外れたルートに行きやすい場所はどこか分かります?」

日菜「あっ! 第3エリア! あそこ2つの道があったから…」

飛鳥「可能性が高いのは正規ルートとはもう一つのルートを行ってしまった可能性がありますが、それだけならすぐに見つけられるはずです」

日菜「うん…」

 

 飛鳥の推理を聞きに千聖たちもやってきた。飛鳥はこの時超能力で追い返そうと考えたが、みだりに使っても怪しまれる可能性があった為、やめた。日菜が鋭いと肌で感じたのも理由の一つである。

 

飛鳥「あの…」

千聖「続けて頂戴」

飛鳥「はい。で、これで見つからないとなれば、2つの可能性が考えられます?」

麻弥「2つの可能性?」

飛鳥「1つ目は何らかの理由で見つかりにくい場所にいる。2つ目はその女子生徒が言葉をしゃべる事が出来ない状態にあるか」

 

 飛鳥の言葉に一部のメンバーが嫌な予感がした。

 

千聖「…紗夜ちゃんが怪我をしている可能性がある。そう言いたいのね?」

飛鳥「最悪の場合、それ以上の事も考えられます」

日菜「そ、そんな! それだったら猶更…」

おじさん「それならそこを中心に救助部隊を手配しよう」

「!」

 

 おじさんの言葉に皆が驚いた。

 

日菜「おじさん…?」

おじさん「私はこの自然の家の経営者で、今回は視察に来ていたんだがこのような事になっていたとは…。おい」

「はっ!」

 

 おじさんは傍にいた部下に命令し、救助部隊を手配するように指示を出した。

 

おじさん「一丈字くんは私と一緒に現場まで来てくれ。詳細を知りたい」

飛鳥「分かりました」

日菜「ま、待って! それだったらあたしも行きたい!!」

千聖「日菜ちゃん!」

飛鳥「あなたはここで待っていてください」

日菜「でも…」

飛鳥「その女子生徒の方とあなたがどのような関係かは存じませんが、彼女が見つかった時にあなたがちゃんとここで待ってあげるべきだと私は思います」

 

 飛鳥が真剣な表情で言い放つと日菜たちは驚いたが、千聖もこの時飛鳥が普通の人間ではないと感じ取っていた。

 

飛鳥「さて、行きましょうか」

おじさん「ああ」

 

 そう言って飛鳥がおじさんと一緒に現地に乗り込もうとすると、

 

日菜「あ、あの!」

飛鳥「?」

 

 飛鳥が日菜の方を振り向いた。

 

日菜「絶対におねーちゃんを助けてね?」

飛鳥「……」

 

 日菜の言葉に飛鳥は笑みを浮かべると、そのまま何も言わずに背を向けていった。

 

 この後紗夜は無事に救出されたが、色々飛鳥の周りが騒がしくなったのは言うまでもない。

 

 

飛鳥「はー…」

 

 

おしまい

 



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第376話「(飛鳥以外は)絶対に大丈夫」



 第194話の停学ルート…。

*****************************

 ある日の事。Afterglowが教室で大喧嘩をし、その放課後に蘭が一人でいたところを他校の生徒が数名取り囲んでどこかに連れ去ろうとしたところ、それに気づいた飛鳥とモカ、つぐみ、巴、ひまりが駆け付け、逆上した男子生徒たちがモカたちに襲い掛かったが、飛鳥はやむを得ず男子生徒たちを格闘技でボコボコにしてしまう。

 幸い蘭は無事で、ひまりの涙の説教やモカの説得もあり何とかAfterglowは仲直りできたが…。

***************************


 

 

 翌日、飛鳥は学園長室に呼び出され、教師と一緒に出てきた。そして心配してきたAfterglowや他のバンドガールズがやってきた。

 

ひまり「い、一丈字くん! どうだった…?」

 

 ひまりの言葉に飛鳥は苦笑いした。

 

飛鳥「向こう側が先に手を出してきたことと、数人がかりで美竹さんに乱暴行為を働こうとしたことで、何とか損害賠償と慰謝料、治療費の支払いは免除になりましたが…」

「…それでも殴られた先方の生徒の怪我が酷くてな。今週いっぱいは停学だ」

「!!」

 

 飛鳥が今週いっぱい停学になってしまい、Afterglowが慄然とした。

 

つぐみ「そ、そんな…!」

飛鳥「……」

 

 つぐみがショックを隠せずにいると、飛鳥はばつが悪そうに視線をそらした。

 

巴「た、確かに怪我をさせたかもしれねーけど、一丈字は…」

飛鳥「宇田川さん。いいんですよ」

巴「けど!!」

飛鳥「相手の様子を聞いたんですけど、あれは停学になっても仕方がありませんよ。ちゃんと加減はしたつもりだったんですけどね…」

 

 飛鳥が頭をかいた。

 

ひまり「て、停学の間一丈字くんはどうなるの!?」

飛鳥「自宅で謹慎して外出も禁止ですね。そしてずっと缶詰ですね」

 

 飛鳥の言葉にモカは口角を下げた。モカ自身もこの結果に納得がいっていなかったが、飛鳥一人が不幸な結果を迎えることが一番納得いかなかった。

 

 そして蘭も納得いってなかった。

 

蘭「先生」

「ん?」

蘭「どうして一丈字だけなんですか」

飛鳥「!」

蘭「あたしが問題を起こしたようなものなのに、どうして一丈字だけ…」

飛鳥「手を出したからですよ」

「!」

 

 飛鳥が普通に言い放つと、蘭が飛鳥を見た。

 

飛鳥「どんな理由があろうと暴力はあってはなりません。それも怪我をさせたなら猶更です」

蘭「一丈字…」

飛鳥「とはいえ、仮に美竹さんが手を出していたとしても、恐らくお咎めはなかったでしょう」

蘭「ど、どうして?」

飛鳥「あなた自身を罰するより、私により厳しい罰を与える方が、あなたにとって一番いい薬になるからです」

 

 飛鳥がそう言って目を閉じると、蘭はショックを隠せなかった。

 

香澄「こ、こころん! 何とかできないの!?」

こころ「そ、そうよ! 飛鳥は蘭を助けようとして…」

飛鳥「助けようとしても、結局ケガさせたんだ。それに弦巻家の力を使って助かるのは一番良くないんだよ」

こころ「どうして!?」

 

 こころの言葉に飛鳥が困惑した。

 

美咲「最近一部の大金持ちが自分たちの権力を盾に好き放題してるのが問題になってるでしょ? 確かに一丈字くんが悪くないと思うけど、弦巻家の力を使って一丈字くんがお咎めなしになったら、この先一丈字くんが問題を起こしても弦巻家が助けてくれるって思われて、一丈字くんと皆の間に溝が出来ちゃうの。そうなったら一丈字くんもこの学園にいづらくなるの」

 

 美咲の言葉にこころは理解できなさそうにしていた。

 

飛鳥「そういう訳ですので、しばらくは家で大人しくしときます。ご迷惑をおかけしました」

 

 そう言って飛鳥は去っていくと、皆困った顔をしていたが、そんな中巴、モカと蘭は悔しさで震えあがっていた。

 

*********************

 

 その夜…。

 

飛鳥「はぁーあ…。課題もう終わっちゃったし、これからどうしようかな…」

 

 本当に外に出ることが出来ない為、飛鳥は1週間何しようか考えていた。そんな中、モカから電話がかかってきた。

 

飛鳥「どうしたんだろ」

 

 飛鳥が電話に出た。

 

飛鳥「もしもし…」

「もしもし…」

 

 モカから電話がかかったが、元気がなかった。

 

飛鳥「どうしたんだ? 随分元気がないじゃないか」

モカ「飛鳥くんこそ、いつもより元気じゃん…」

 

 モカの声色を聞いて飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「何でかなぁ。誰かさんが落ち込んでるから、こっちも落ち込んでたら話が出来なさそうだなって思って」

モカ「…いじわる」

 

 飛鳥の言葉にモカがそう言うと、飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「まあね。オレの事は気にしなくても大丈夫って言いたいけど…気にしてくれるの?」

モカ「当たり前だよ」

 

 モカの目が潤んだ。

 

モカ「それもそうだけどあたし…こんなに泣き虫だったかな…」

 

 モカの涙声を聞いて飛鳥は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 

飛鳥「いや、本当にごめんね」

モカ「謝らないで」

 

 するとモカは涙を拭いた。

 

モカ「…明日からずっと家にいるんだよね」

飛鳥「いるよ。まあ、明日はちょっと親が来るから電話出れないけど」

モカ「そうなんだ…」

飛鳥「ああ。ちょっと色々話をしないといけないからさ」

モカ「…広島に帰ったりしないよね」

飛鳥「帰らないよ。というか今の状態で帰ったら、本当にイメージ悪いから」

 

 モカの言葉に飛鳥が困惑したように突っ込んだ。

 

飛鳥「まあそういう事だからさ。明日も早いだろ。もうここまでな」

モカ「……」

 

 飛鳥の言葉にモカは不安になった。

 

飛鳥「大丈夫」

モカ「!」

飛鳥「それじゃ、またな」

 

 そう言って飛鳥は電話を切ると、モカはそのまま体育座りしてしゃがみこんだ。

 

 その後も飛鳥の謹慎生活は続いたが、毎日のようにバンドガールズからメールや電話が来ていた。

 

飛鳥「有難い話だなぁ」

 

 飛鳥は時間が空いているときにメールを返したが、中でもAfterglowは毎日連絡してくれていた。

 

 そして学園では飛鳥が停学になった事で、チャンスと言わんばかりに男子生徒がバンドガールズにアプローチをかけた訳だが、当然そんな気持ちにもなれなかった。そして飛鳥の悪口を言おうものなら、本気でキレて黙らせることもあった。

 

****************

 

 そんな調子で1週間過ぎた後、飛鳥は復学した。

 

飛鳥「お陰様で無事戻ってこられました」

「おかえりなさい」

 

 クラスメイト達から温かく迎えられた飛鳥は困惑していた。

 

飛鳥「ああ…。やっぱり今までの環境が間違ってたんだなぁ…」

 

 と、かつて自分を虐げた小学校の時の同級生たちを思い出した。

 

「ホントだよ。おかえり~」

 

 飛鳥が振り向くと、バンドガールズがいた。

 

飛鳥「無事に戻ってまいりました」

ひまり「本当に良かったよぉ~!!!」

巴「本当にごめんな」

飛鳥「いえいえ」

 

 とまあ、これで何もかも元通りになって一件落着になったかと思われたが…。

 

*****

 

「何かあっては危険だ!」

「僕が守るぅ!!」

 

 と、バンドガールの周りを男子生徒たちが警備していたが、鬱陶しがられていた。

 

飛鳥「…私がいない間に何が」

モカ「飛鳥くんのまねごとをして、女の子達からチヤホヤされようって訳…」

飛鳥「ハァ…」

 

 本当に進歩がないなと、飛鳥は男子生徒たちに呆れるしかなかったという。

 

 

おしまい

 



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第388話「もしもNo.1スクールガールズバンドが飛鳥の知人だったら」

 

 時は令和。日本ではガールズバンド戦国時代を迎えていた。数多のガールズバンドがしのぎを削り、勝った者は栄光を手に入れ、負けたものは挫折を味わい、去っていく。

 

 まさに弱肉強食の世代。

 

「勝ったらファンの男どもの餌ね」

「いいわよ。同じ条件でやってあげるわ!!」

 

「勝ったわよ! さあ、男たち! そいつらを好きになさい!!」

「い、いやぁ~~~~~~~!!!! せめてにんにく臭いの何とかしてぇ~~~!!!」

 

 …なんて事は流石に無いが。

 

 ここ、東京のどこかにあるバンドリ学園でも同じだった。この学園に至ってはガールズバンドが沢山いたからだった!

 

 仲良し5人組が集まったフレッシュ系ガールズバンド「Poppin‘Party」

 

 幼馴染5人が集まった王道ガールズバンド「Afterglow」

 

 芸能人5人で構成されたアイドルバンド「Pastel*Palettes」

 

 プロも一目置く本格派ガールズバンド「Roselia」

 

 弦巻こころ率いる異色系ガールズバンド「ハロー、ハッピーワールド!」

 

 そして、最上級生で構成された4人組のガールズバンド「Glitter*Green」

 

 バンドの腕もさながら、その顔立ちに学園の男子生徒たちはメロメロ状態だった。

 

「××××してぇええええええええええ!!」

「遺伝子残させて!!」

「オレはあの子と結婚して子供を産むんだ…」

「子供は何人くらいほしいかな…?」

 

 メロメロになりすぎてキモかった。

 

 まあ、今回もそんな物語であるが、今回の設定はもしも『スクールガールズバンドの頂点が飛鳥と同じ中学の人間だったら』というお話でお送りいたします。

 

**********************

 

 ある日のバンドリ学園。2年2組の教室でRoseliaのリーダーである湊友希那は珍しく頭を悩ませていた。

 

リサ「どうしたの友希那、珍しく本を見て頭を悩ませちゃってさ」

友希那「紗夜…」

 

 幼馴染であるリサが話しかけると、日菜、麻弥、薫もやってきて、男子生徒たちも集まってきた。

 

日菜「いや、集まりすぎだよ!」

「いいじゃないかこれくらい!!」

「そうだよ!」

「仲間外れなんて良くないと思うなぁ」

 

 正直ガールズバンドがいるクラスはいつもこんな感じなので、飛鳥に絡む必要はあまりないような気もするが、友希那達バンドガール以外の女子たちはゴミを見る目で男子生徒たちを見ていた。

 

薫「それで、どうしたんだい?」

友希那「スクールガールズバンドの人気投票がこの雑誌で行われてたのよ」

リサ「あー…。そういやこの雑誌の人気投票が、今のガールズバンドの順位を現してるからね。それで、うちは何位?」

友希那「4位よ…」

 

 そこそこの順位だった。

 

「へえ、4位か…」

「良い感じじゃん」

 

 とまあ、友希那をほめて点数を稼ごうとする男子生徒達だったが、勿論友希那は1位を目指しているので、そんな言葉をかけられてもうれしい筈もなかった。

 

友希那「Roseliaは頂点…1位を目指してるのよ。良くないわ」

「うっ…」

日菜「もう。友希那ちゃんに気に入られようとしてるのが見え見えだよ」

 

 とまあ、女子に言われるとわりときつい言葉を躊躇もなくかけられていた。

 

友希那「でもそれはまだいいわ。上には上がいる事くらい、私にも分かるわ。けど…」

麻弥「けど?」

友希那「1位のバンドがまた同じなのよ」

麻弥「1位ってまさか…」

友希那「そう。この「maple」というバンドよ」

 

 友希那がそう言って麻弥に雑誌を見せると、そこには5人組のガールズバンド「maple」が映し出されていたが、5人ともブスである。

 

麻弥「そういやプロの事務所からも続々と声をかけられてるって噂っすよ!」

薫「私も聞いたことある。彼女たちの音楽はとてもまっすぐで、こちらも勇気づけられるような儚い音楽だよ…」

 

 麻弥や薫も絶賛していた。

 

友希那「儚いかは分からないけど、私もそう思うわ。他のバンドとは明らかに違うの。彼女たちの葛藤する気持ちと、その気持ちを打ち消そうとする勇敢さ。聞いていて元気が湧いてくるの…」

 

 友希那がここまで絶賛するとリサや男子生徒たちが驚いた。

 

「け、けど。友希那ちゃん達だって負けてないよ!」

「そうだよ!」

友希那「ありがとう。だけど、そんな気休めはいらないわ」

「!」

 

 Mapleの名前を出すと友希那は更に意気込んでいた。

 

友希那「頂点を目指すなら、mapleも越えなければならないのよ」

 

 友希那がそう言うと、クラスメイト達が友希那達を見た。

 

リサ「…そういえばこのmapleって広島出身だよね」

友希那「それがどうかしたの?」

リサ「飛鳥くんも知ってるかな。広島にいたって言ってたし」

友希那「知ってると思うわ。これだけ有名なガールズバンドだもの」

リサ「だよねー」

 

 と、友希那達の会話はそこで終わった。

 

***************

 

 その頃、飛鳥は自分の教室でいつも通り過ごしていた。そう、本当に何事もなく過ごしていた。

 

 そして昼休憩、飛鳥がカフェテリアの近くに通ると、mapleがテレビに映っていて、友希那達2年2組も食事をしながらテレビを見ていた。

 

「スクールガールズバンド1位、おめでとうございます」

「ありがとうございます」

 

 アナウンサーの言葉にmapleメンバーは答えた。

 

「また更新しましたね!」

ボーカル「いやー。本当に夢にも思いませんでしたよ」

 

 そう言ってボーカルがそう言った。女版のび太と言われているほどひょろひょろの眼鏡だった。他のメンバーもデブだったり、ガリガリだったり、正直ビジュアル的にはお世辞にも美人とは言えないが、その外見とは裏腹にプロ顔負けのパフォーマンスを見せ、ギャップを見せた事で受け要られたのだ。

 

「ズバリ! 頂点にいられる秘訣って何ですか!?」

ボーカル「自分たちの音楽をする事はもちろん大事ですけど、自分やメンバーを信じる事、そして感謝の気持ちを忘れない事ですね」

 

 ボーカルの言葉に飛鳥もうれしそうにした。

 

「そういえばmapleがここまで来れた事を話すのに、どうしても欠かせない人たちがいると聞いたのですが…」

ボーカル「あー…」

 

 アナウンサーの質問の内容に飛鳥は嫌な予感がした。

 

ボーカル「そうですね。私達を奮い立たせてくれた子たちがいるんです。その子たちのお陰で私たちは今もバンドが出来ていますね」

 

 ボーカルが苦笑いすると、飛鳥は変な事をしゃべらないか不安だった。というのも、その奮い立たせた人物というのが彼自身だったからである。

 

 それは中学の時に同級生たちと学校を歩いていて、演奏の練習をして馬鹿にされているmapleのメンバーを見かけ、止めたのだ。

 

 話を聞いて『ブスにバンドは無理だ』だの『見てるだけで吐き気がする』だの言われ続けていたのだ。そこで飛鳥は同級生たちと考えて、実際に音楽に詳しい人たちに彼女たちの演奏を聴いてもらう事を決意した。

 

 その結果、予想以上に食いつきがよく、彼女たちはそこから1年間指導を受けたのちに、高等部1年生から本格的にトップガールズバンドとして君臨したのだった。

 

 だが、今は自分も能力者としての仕事があり、自分の事を語られると本当に困るのだ。飛鳥は彼女たちが自分の事をしゃべらないことを祈っていた…。

 

「その子たちについて詳しく教えてくれませんか?」

ボーカル「私たちが中学3年生だった時の1個下の後輩たちです。私たちが最初に出会ったときは3人いて、後から1人手伝ってくれたんですよ」

 

 ボーカルの言葉に飛鳥は滝のような汗を流していた。そしてボーカルは自分たちが馬鹿にされてきたことや、飛鳥達が人助けといって自分たちの為にいろんな人に声をかけてくれたことなどを話した。

 

 それを聞いた友希那達は驚いて目を大きく開いていて、mapleのボーカルの話を真剣に聞いていた。

 

ボーカル「という訳なんです。ですので、皆さんも自信を持つことも大事ですけど、バンド演奏をしてる子たちが周りにいたら協力してあげてください!」

「よろしくお願いします!」

 

 そう言ってmapleがお願いして、インタビューが終わり、飛鳥も自分の事をばらされずに安心し、その場を後にした。

 

友希那「…そんなに素敵な仲間に恵まれていたのね」

リサ「そうだねぇ…」

 

 Mapleとその後輩たちの絆の強さに感動した友希那達は、自分たちも負けてられないと奮起するのだった。

 

 だが…。

 

麻弥「それにしてもその後輩達って誰なんでしょうねぇ」

日菜「すごく気になるねー…」

 

 麻弥たちがそんな会話をしていると、広島出身、後輩という単語からある人物の姿が思い浮かんだ。

 

(まさか…ね)

 

 

おしまい

 

 



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第410話「もしもバンドリ学園に転校してきたのが飛鳥と幸生の2人だったら」

 

 今回の設定

 

・ 2年3組:林幸生、1年3組:一丈字飛鳥

 

*********************

 

 一丈字飛鳥です。弦巻財団からマナーの悪い『ヤラカシ』退治を手伝ってほしいと依頼されて、広島から東京の『バンドリ学園』に転校してきたわけですが、パートナーとして小学生からの友達である林幸生さんと一緒に転校してきました。

 

 転校してきたわけなのですが…。

 

「キャー!! 林くんこっち向いてー!!」

「やだ! マジでイケメン!!」

「こんなイケメンいたの!?」

「写メとっとこ!!」

 

 …幸生さんはお金持ちでワイルド系のイケメンだった為、すぐさまバンドリ学園の女子生徒から大人気になりました。まあ、小学校のころからモテモテだったので、分かってましたけどね。

 

モカ「もしかして焼きもち~?」

飛鳥「まさか。寧ろ幸生さん大変だなって思うくらいだよ…」

 

 そして今私に話しかけてきたのはガールズバンド『Afterglow』のギターをしている青葉モカさん。隣のクラスの生徒なんですが、彼女の友達を助けた時に仲良くなりましたが…超能力者だという事を見破られました。

 

飛鳥「まあ、どうなるんかね…今回のお話」

 

*****************

 

 幸生が転校してきてから、女子の人気をすっかり総なめしてしまったので、勿論男子生徒たちは面白い訳がなかった。

 

「くぅぅ~!!! ただでさえ一丈字が友希那ちゃん達の興味を持って行ってるのに!」

「あの林とかいう奴も、それ以外の女子を持って行ったりして許せん!!」

「せめて一人は譲れよ!!」

 

 学園のカフェテリアで飛鳥と幸生に対して愚痴をこぼす男子生徒達。

 

「神様は不公平だ!!」

「そうだそうだ!!」

「少なくとも林は3組だったな…おい」

「ああ」

 

******

 

 ある日の事だった。

 

「おい、林」

幸生「何だ」

 

 男子生徒たちが幸生に話しかけると、

 

「今度の休みクラスの皆で遊びに行くんだけど、女子誘いたいからお前強制参加な」

幸生「悪いが今週末は…」

「おい皆! 今度の休み林も遊びに行くってよ!」

 

 と、幸生の話を聞かないで男子たちが強制的に話を終わらせると、幸生はうんざりした表情をした。聞いていた女子達も困惑していた。

 

「え? 林くん今週末は予定あるって言ってなかった?」

幸生「あるよ。それをこいつらが…」

「あったみたいだけど、急に行けるようになったんだ!」

「そうそう! だから女子も…」

 

 男子生徒たちの言葉に女子たちがイライラしていた。

 

「あのさ、あんた達じゃなくて林くんに聞いてるんだけど!」

「ていうか何で林くんが喋ろうとしてる時に遮るわけ!?」

「ていうか、林くんに嫌がらせするのやめなよ。みっともない」

「湊さん達に相手にされないの、そういう所だよ?」

 

 とまあ、案の定ボコボコにされる男子生徒達。漫画だと自分たちの言う事に女子達も乗って盛り上がって、断れない雰囲気を出して幸生を困らせようという作戦だったのだが、男子生徒たちの信頼が元からないせいか、失敗に終わった。

 

 それを見て幸生も呆れていた。

 

*************

 

 昼休憩

 

幸生「…思った以上だな」

飛鳥「でしょう…」

 

 男子生徒たちの嫌がらせを体感した幸生はうんざりしながら、飛鳥と一緒に昼食を取っていた。

 

飛鳥「もうヤラカシ以外の一般生徒の皆さんが、理解してくださっていることが救いですよ…」

幸生「全くだ…」

 

 そんな時だった。

 

「ねえ~ん!! 一緒にお昼ご飯食べようよぉ~!!」

 

 と、今度はまた別の男子生徒たちがRoseliaに食い下がっていた。可愛らしい系の男子数人だったが、友希那にまるっきり相手にされていなかった。

 

幸生「あいつら何年生だ…?」

飛鳥「この校舎にいるあたり、高等部だと思いますが…」

 

友希那「私たちはこのメンバーで食事したいの。他をあたって頂戴」

「どうしてもだめ…?」

 

 友希那の言葉に男子生徒たちは子犬のような目でおねだりしていたが、飛鳥と幸生はもう見てられなさそうな顔で呆れていた。そして友希那以外の3人は困っていて、遠くからヤラカシ軍団がその事態に気づいていた。

 

リサ「う、うーん…」

 

 リサの心が揺らいでいたその時、

 

「あ、あー!! ごめーん! 友希那ちゃん!!」

「!!?」

 

 と、ヤラカシ達が子犬系男子たちをブロックした。

 

「こいつらちょっと用事があるんだよ!」

「そうそう! おい!」

「な、なにすんだよお!!」

「うるせぇ!」

 

 そう言ってヤラカシが子犬系男子たちを退場させた。子犬系男子たちは抵抗したが、パワーがない為抵抗むなしく退場させられて、飛鳥と幸生は困惑した様子でその様子を見ていた。そして飛鳥は指を動かして残りのヤラカシ達もそのまま退場させると、友希那達は一息ついた。

 

リサ「あ、危なかったぁ…」

友希那「気を付けて。ああいうのは自分の価値を分かってやるのよ。プライドないのかしら」

飛鳥(きっつ)

 

 友希那の発言に飛鳥が困惑すると、再び幸生と共に食事をした。ちなみに超能力で誰も近づかないようにしている。

 

 ちょっとして4人が席に座ると、

 

リサ「あ、そういえばあの林くんって凄く人気だよね。2年3組の」

「!」

 

 丁度幸生の話になって、飛鳥と幸生も反応した。

 

燐子「そ、そうですね…。うちのクラスの女子も何人か彼のお話をします…」

友希那「興味ないわ」

 

 友希那の言葉に幸生は特に反応することもなかった。何しろ幸生も友希那達に興味がなかったからだ。

 

紗夜「彼のどこが良いのかしら…?」

リサ「顔だと思うよ? ほら、なんかモデルにいそうな顔だし」

 

 リサがそう説明するが、友希那・紗夜・燐子はそういう系に疎いためどのように説明すればよいか困惑していた。

 

友希那「そういう意味で言ったら、まだ実際に楽器を演奏して見せた一丈字くんの方が興味あるわね」

燐子「そ、そうですか…」

 

 友希那の発言に幸生が飛鳥の方を見た。

 

リサ「そういえば飛鳥くんと仲良しだったよね。どういう関係なんだろう」

友希那「さあ」

 

 と、このままやり過ごそうと決めた飛鳥と幸生だったが…。

 

「あら! 飛鳥と幸生じゃない!」

飛鳥・幸生「!?」

 

 スコープを使って居場所を突き止めたこころのせいで、台無しになった。

 

飛鳥「つ、弦巻さん…」

幸生(スコープ使ってやがる…!)

 

 こころがつけているスコープは飛鳥の超能力をある程度無効化させる力を持っており、早い話存在感を消す能力を無効化させてしまうのだ…。ちなみに黒服たちはこころの命令が第一なのである。そしてRoseliaもこころの声を聴いて、飛鳥達の存在に気づいた。

 

飛鳥「どうしたんです?」

こころ「2人とも丁度お昼かしら?」

飛鳥「もうすぐで終わりますね」

幸生「……」

 

 幸生からしてみてこころは妹の友達くらいだとしか思っていなかったが、この学園に来てからこころの天真爛漫さに振り回されていた。

 

こころ「そういえばどんなお話してたの?」

飛鳥「そうですね…。やっぱりRoseliaの皆さんは凄いなーって話をしてました…」

 

 飛鳥は笑ってごまかすと、友希那達も飛鳥達の方をずっと見ていた。

 

こころ「そうね! 友希那達って凄いわね!」

 

 と、こころも褒めるので紗夜や燐子が恥ずかしそうにすると、飛鳥はチャンスだと思った。

 

「おい! さっきから何の話をしているんだ!」

「友希那ちゃん達は凄いに決まっているだろう!!」

「はっ! まさかその流れでRoseliaと放課後遊びに行こうってんじゃないだろうな!?」

「そんな事させんぞ!」

 

 また別の男子生徒達がやってきて、飛鳥達にいちゃもんをつけようとすると、

 

飛鳥「まさか。ちなみにRoseliaの凄い所って具体的にどんな所ですか?」

「何を言っているんだお前。まずRoseliaは…」

「いや、Roseliaは…」

「馬鹿! Roseliaだな…」

「素人か!! Roseliaっていうのは…」

 

 と、男子生徒たちがRoseliaの事を語り始めては滅茶苦茶褒め始めた。それを聞いて友希那以外の3人が照れくさそうにしていた。

 

飛鳥「幸生さん。仕込みはOKです」

幸生「ああ。今のうちに逃げるぞ」

こころ「逃げる?」

飛鳥「お前もRoseliaについて語り合ってな」

 

 そう言って飛鳥と幸生は即座にその場から逃亡した。

 

 

おしまい

 



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第417話「もしも飛鳥と千聖が幼馴染だったら ~ヒーロールード2~

 白鷺千聖は天才子役として名をはせていた。勿論、本人が演技に対して熱心に研究していた事もあるが、彼女の演技は見ている者を魅了した。勿論、容姿も端麗である為男女問わず、近づいてくる者も多い。

 

 対して一丈字飛鳥という少年は、それほど有名ではなく、千聖と共演した事や、そのドラマ自体が大ヒットしたから少し注目されたくらいだ。そして、彼自身もそのことを理解して、千聖とは距離を置こうと考えていた。

 

 

 しかし、ある事件をきっかけに二人の運命は大きく変わった。

 

********************

 

 バンドリ学園

 

「……」

 

 飛鳥は遂に千聖と話をすることとなった。先日、他校生が学園に侵入して千聖のバンド仲間である「Pastel*Palettes」のメンバーに手を出そうとしたところを飛鳥が救出したのだが、飛鳥は千聖たちがお礼を言う前に姿を消したのだ。

 

 暫くの間、超能力を使って存在感を消して見つからないようにしていたが、遂に隠しきれなくなったので、姿を現すことにした。

 

千聖「そこまで壁を作らなくても良いのよ?」

飛鳥「そういう訳には行きませんよ」

 

 千聖の言葉に飛鳥は苦笑いしたが、千聖はずっと睨み続けており、飛鳥はそんな彼女の真意が手に取るように理解していたため、どのように切り抜けるか考えていた。

 

「それにしても君強いんだねー」

飛鳥「あなたは…」

 

 飛鳥は千聖のバンド仲間である氷川日菜を見つめた。

 

日菜「あたし、氷川日菜! 千聖ちゃんと同じバンドのメンバーなんだ!」

飛鳥「ああ。よろしくお願いします…」

麻弥「ジブン、大和麻弥です。ドラムやってます」

飛鳥「初めまして。一丈字です」

イヴ「若宮イヴです! 先日は助けて頂いてありがとうございました!」

飛鳥「お気になさらないでください」

 

 他のパスパレメンバーとも普通に話をする飛鳥に、千聖は更に不機嫌になっていた。

 

千聖「それで…」

飛鳥「何でしょう」

千聖「いつまでよそよそしくしてるつもりなのかしら?」

飛鳥「それはあなたが良く分かってるでしょう」

 

 飛鳥がそう言うと、周りを見渡した。そこには露骨に嫉妬している男子生徒たちの姿があった。

 

飛鳥「ご自分の影響力を考えてください」

千聖「あら、そんな事言ったらあなただって『元天才子役』じゃないの」

飛鳥「天才かどうかは分かりませんがね」

 

 ずっと敬語で話す飛鳥に日菜が困惑した。

 

日菜「そういえば君と千聖ちゃんって幼馴染なんだよね?」

飛鳥「ええ。一つ年上ですが…」

日菜「どうしてそんなによそよそしいの?」

飛鳥「昔みたいに馴れ馴れしく言えませんよ」

千聖「どうして?」

飛鳥「え? そりゃあもう周りの方々を見れば分かりますよ」

麻弥「あー…」

 

 飛鳥の発言に麻弥は何となく理解した。確かに飛鳥の立場からしてみたらあまり馴れ馴れしくするのは良くないと麻弥も判断するのだった。

 

飛鳥「まあ、そう言う訳なので学校では程よくしましょう」

千聖「……」

 

 飛鳥がそう提案するが、千聖は不満そうにしていた。

 

飛鳥「ご自身の立場を考えてくださいよ」

日菜「もしかして千聖ちゃん…」

 

 日菜が千聖の顔を見た。

 

千聖「何かしら?」

日菜「飛鳥くんの事好きなの?」

 

 日菜の言葉に空気が止まった。

 

千聖「いや、そうじゃないわよ。ただ単に私に気を遣いすぎって言うだけだから」

日菜「じゃあアタシが飛鳥くん貰っていい?」

麻弥「ああああ! 日菜さんもうそれ以上はぁ!」

 

 日菜の発言に男子生徒達…ヤラカシの嫉妬の炎に火がついた。

 

「オラァアアアアアアアア!!」

「てめぇ何パスパレと仲良く世間話なんかしてんだコラァ!」

 

 ヤラカシ達が騒ぎ立てるが、飛鳥は冷静に千聖の方を向いた。

 

飛鳥「千聖ちゃん」

千聖「!」

飛鳥「オレが時間を稼ぐから、氷川先輩達を安全な場所に連れてって」

 

 飛鳥の言葉に千聖は目を大きく開くと、飛鳥は前に出た。

 

飛鳥「さあ、お話なら私がお相手しますよ」

「て、てめぇ! さっき千聖ちゃんの事を『千聖ちゃん』って呼んだな!?」

「幼馴染面しやがって!!」

飛鳥「安心してください。もう最初で最後ですよ」

「!」

 

 飛鳥が笑みを浮かべた。

 

飛鳥「彼女にはこれからアイドルや女優として、突っ走って貰いたいので」

千聖「飛鳥くん…」

飛鳥「さあ、パスパレの皆さんは早く行ってください」

「な、なにヒーロー気取りになってんだよォ!」

「このままパスパレ5人のハートをゲットしようなんて考えてんじゃねーぞ!?」

 

 そう言って飛鳥と男子生徒たちが一触即発になろうとしていたが、

 

「コラー! 何をしとるかぁ!!」

 

 男性教諭たちが数人でやってきて、なんとか収まった。

 

************************

 

 放課後

 

飛鳥「はー…。何とか解放された…」

 

 結局厳重注意だけで済んだ飛鳥は、無事に教室に戻ってきて残りの授業を受け、HRが終わった途端に超能力で存在感を消して自宅に帰ってきた。

 

飛鳥「今日はもう一日中家に籠ってよ…」

 

 飛鳥がそう言って家の中に入っていった同じころ、パスパレは飛鳥を探していた。

 

千聖「本当にあの子ったら…!!」

日菜「でも飛鳥くんっておもしろーい! るんってきた!」

麻弥「まあ…色々大変そうではありますよね」

イヴ「そういえばまだお礼してません!」

千聖「それもあるから、必ず探し出すわよ!」

 

 とまあ、その日は飛鳥は既に家にいた為、見つかる事はなかったが、パスパレが5人で飛鳥を探していたことで、学園がちょっとした騒ぎになったのは言うまでもない。

 

 

 

おしまい

 

 



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第470話「もしもAfterglowを助けたのがバレたら」

 

『もしも469話でAfterglowを救ったのがバレたら』

 

 一丈字飛鳥です。私は最大の危機を迎えています。

 

巴「一丈字!! お前があたし達を救ってくれたのか!?」

飛鳥「どうしてそう思うんですか?」

蘭「そんなのどうでもいいでしょ。その、ありがと…」

 

 蘭が少し照れくさそうにお礼を言うと、飛鳥はどうしたもんかと困惑した。

 

飛鳥「…まあ、皆さん大丈夫ですか? 男の人が怖くなったとかそういうのは」

つぐみ「あ、それは大丈夫…」

ひまり「あの、一丈字くん。そこまで気を使わなくて大丈夫だよ?」

 

 飛鳥はあからさまに気を使っていて、逆につぐみやひまりに気を使われる事態になっていた。彼女達は先ほどまで学園に侵入してきた他校の不良生徒に絡まれて、要求を断った所、忍び込ませていた仲間を引き連れて再び自分たちの要求に応じるように脅しをかけてきたのだ。

 

 それを感知した飛鳥は直ちに現場近くまで来て、超能力でスピーカーを操って、Afterglowが襲われているというアナウンスをしたのだ。

 

 それによって教師達が駆け付け、一部の教師が警察に通報した事で蘭たちは無事だったという訳なのだが、どうしてバレてしまったのかは飛鳥も理解できないでいた。ちなみに放送室の機器に対してクラッキングを仕掛けた事にした。

 

巴「何かお礼をしないといけないな…」

飛鳥「あ、それでしたらあなた方のクラスメイトが言いがかりをつけてくる可能性がございますので、何とかうまい事言っといて貰えますか」

ひまり「それはいいけど…」

巴「そんなのはもう当たり前だろ!!」

飛鳥「お気持ちは分かるのですが、まだこれで事件が解決したわけではございませんよ」

「え?」

 

 飛鳥が腕を組んだ。

 

飛鳥「ああいう奴らは変な所でしつこいですからねぇ。あなた方のバイト先に突然押しかけるなんて事も…」

蘭「あ、ありうる…」

ひまり「えー! そんな事されると凄く困るんだけど!!」

飛鳥「なので、弦巻財団にあなた方のバイト先に警備に来て貰えないか、ちょっと聞いてきますね」

モカ「よろしくー」

巴「いや、よろしくーじゃねぇよ! おい! 一丈字も…って、もういない!!」

 

 巴の言葉に蘭が不思議そうにしていた。

 

モカ「どうしたの蘭」

蘭「…あのさ。ずっと前から思ってたんだけど、一丈字って本当に何者なの?」

 

 蘭の言葉に皆が反応した。

 

ひまり「それ私も思った。何ていうか前から謎が多い子だとは思ってたけど…」

つぐみ「普通の高校生にしては何でも出来過ぎてるような気が…」

巴「それもそうだし何よりも…モカ」

モカ「なーにー?」

巴「お前、何か知ってるだろ。一丈字の事」

モカ「知ってるよー」

蘭「何。教えて?」

モカ「飛鳥くんねー」

「……」

 

 モカが笑みを浮かべた。

 

モカ「昔からこういう事があったんだって」

「…は?」

モカ「こころちゃんの友達って知ってる? 日向ちゃんと椿ちゃん」

蘭「ああ…。そういや名前は聞いたことある…」

 

 と、モカは日向と椿を利用して蘭たちを上手く誤魔化した。結論として飛鳥と幸生が昔から仲が良くて、幸生の妹である日向と椿が一緒の中学になり、特にクラスが一緒だった日向は男子から結構モテモテだったので、その悪い虫がつかないように日向をガードするようにと幸生が飛鳥に無茶ぶりをして、飛鳥は頭脳を活かして何とか対処してきて今に至るという風に伝えた。

 

モカ「使えるものは何でも利用する。らしいよ」

巴「まあ、一丈字らしいといえば一丈字らしいな…」

ひまり「…昔から苦労してるんだなぁ。一丈字くん」

 

 モカの言葉に巴やひまりは納得し、蘭とつぐみもかつて助けて貰った事があるが、モカの話を聞く限りそのような節が見受けられたので、完全にではないが納得はした。

 

モカ「まあ、アタシ達が怪我とかしたらあの男子たちが飛鳥くんを責めるしね~」

「……」

 

****

 

 その夜、飛鳥は千聖、モカ、こころの4人でリモート会議をしていた。

 

飛鳥「…そうか」

モカ「うん。まあ、飛鳥くんが助けに来てくれたから4人ともある程度は大丈夫だよ」

飛鳥「まあ、とはいえ少し警備を強化した方が良さそうだな」

千聖「その方がいいわ。先生達も気を付けるとは言ったけど、夜遅くまで警備なんてめんどくさいって言ってやらないわよ」

 

 千聖の言葉に飛鳥は辟易していた。

 

飛鳥「まあ、その気持ちは分からんでもないですけどね。とにかくAfterglowのバイト先には暫く黒服の人たちに警備に入って貰いましょうか」

こころ「任せて頂戴!」

飛鳥「特に危ないのが宇田川さんと上原さんがバイトしてるあのハンバーガーショップだな…」

千聖「ええ。あそこには彩ちゃんと花音もいるのよ。手を出すなんてそんな事絶対許さないんだから。こころちゃん、よろしく頼むわね!」

こころ「分かったわ!」

飛鳥「あ、それからモカ」

モカ「分かってる。蘭たちには上手い事誤魔化しとくよ」

飛鳥「まあ、それもそうだけど美竹さん達がそう簡単に納得するとは思えない。何かあったらすぐ言ってくれ」

モカ「うん」

 

 飛鳥の言葉にモカが口角を上げた。

 

飛鳥「それでは夜も遅いのでもう寝ましょう」

 

 こうして飛鳥達は作戦の実行に移った。結果としては大成功で、警備している黒服たちもそうだが、実際に手を出そうとした店で男たちが金縛りの現象にあった事から、手を出すことはめっきりなくなったのだ。

 

飛鳥「ふー…。これでひと段落」

 

***

 

 そしてどうなったかというと…。Afterglowも元気に登校して飛鳥はそんな彼女たちに対して静かに見守るのだったが…。

 

「今度は僕がAfterglowを守るぅ!」

「いや、オレだ!!」

「オレオレ!」

「いや、もうここは…皆で守ろう!!」

 

 と、2組の男子たちがAfterglowを守るために徒党を組んだ。正直下心が見え見えだったので、女子達は冷ややかな目で見ていたという。

 

 

飛鳥「あーあ…」

千聖「下心どうにかしなさいってのに…」

こころ「?」

 

 遠巻きに飛鳥と千聖とこころが見ていたが、こころだけは状況が良く分かっていなかった。

 

こころ「それはそうと飛鳥! 今日はお疲れ様会をしましょう!」

飛鳥「急ですね」

こころ「薫たちも呼んで…」

千聖「こころちゃん。それだとバレるでしょう?」

 

 と、3人がこそこそ話をしているのをAfterglowが発見した。

 

巴「千聖さん! 一体何の話をしてたんですか?」

千聖「え?」

こころ「飛鳥がAfterglowのみんなを助けたでしょ? だからあたしが飛鳥を労う為にお疲れ様会をするの!」

つぐみ「こころちゃん。それやらないといけないの私達…」

飛鳥「皆さんのお手を煩わせるまでもございません!」

 

 飛鳥が待ったをかけると、

 

「その通りだ一丈字…!」

「お前、このまま女の子達と食事にありつけると思うなよ…?」

「どうしても行くって言うならオレ達も行くからな…?」

 

 と、ヤラカシ軍団がガードしてきた。

 

飛鳥「まあ、そういう事なんで」

蘭「こころ。こいつら黒服さん達に取り押さえて貰う事って出来る?」

モカ「そーそー。モカちゃん達のストーカーなの」

こころ「それはいけないわ! 黒服のみんなー!!」

 

 そう言って黒服たちがヤラカシ達を全員取り押さえた。それを見て飛鳥は思った。

 

 

飛鳥(オレ…いらなくね?)

 

 ちなみにその日の晩。みんなを呼んですき焼きを食べたという…。

 

 

おしまい

 

 



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第475話「もしも普通に超能力使ってたら」

第475話

 

『もしも飛鳥が普通に超能力使ってたら』

 

・ 飛鳥の正体は千聖、こころ、モカも知らない設定です

 

****

 

 それはある日の事。一丈字飛鳥が街を歩いていると、人だかりが出来ていた。

 

「大変だ! ナイフを持った男たちが立てこもったらしいぞ」

「マジかよ…」

「しかも中には女の子達が…」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は静かに目を閉じて、男が立てこもっているであろう建物の中を透視した。すると少女たちが人質に取られていた。

 

飛鳥(警察はまだっぽいな…)

 

 すると飛鳥はスーッと存在感を消して建物の中に入った。

 

********

 

「うううう…」

 

 少女たちは刃物を持った男たちに怯えていた。

 

「変な事するなよ。一歩でも動いたら殺してやるからな?」

 

 と、男たちは不敵な笑みを浮かべていた。

 

「あなた達の目的は何なの!?」

 

 Pastel*Palettesのベースである白鷺千聖がそう言うと、男は口角を上げた。

 

「決まってんだろ。お前らみたいな奴らがムカつくからに決まってんだろーがよォ!!!」

 

 狂ったかのようにキレだす男に少女たちは怯えていた。

 

「お前のような奴の顔に傷をつけて見たかったんだ。ヒヒヒヒヒ…」

 

 本当に人間とは思えない狂気ぶりに少女たちは半泣き状態になったが、飛鳥は近くまで来ていた。見張りをしていた男たちは超能力で壁に叩きつけていた。

 

飛鳥(あそこか。えい)

 

 飛鳥が超能力を使うと、男たちが宙に浮いた。少女たちは何事かと怯えている。

 

「な、何だ!?」

「身動きが取れない…」

飛鳥「これで全員かな?」

 

 飛鳥が全員宙に浮かせたことを確認すると、そのまま部屋の外に出した。

 

「い、一体何がどうなってるんだ!!」

「助けてくれええええええええええええええ!!!!」

 

 そして飛鳥は遠くから超能力で男たちをくっつけて、手のひらから黒い霧のようなものを出して縄状にし、そのまま男たちを縛りつけた。

 

飛鳥(姿見られるのアレだから扉は開けれないようにしとくか)

 

 飛鳥は超能力で扉を閉めて外に出れないようにすると、男たちを縄でしばったまま、外に放り出した。

 

「え!? 人が出て来たぞ!?」

「誰が一体投げ捨てたんだ!?」

 

**

 

香澄「あれ!? 扉が開かないよ!?」

りみ「それもそうだけど、どうしてあの人達宙に浮いたんだろ…」

たえ「本物のおばけだったりして…」

香澄・ひまり・彩「ひえ~~~~~~~~~~~~!!!!!」

イヴ「あ、悪霊退散!! 悪霊退散!!」

千聖「イヴちゃん! 落ち着いて!! ひぃいいいい~~~~~~~~!!!」

 

 これはこれで大騒ぎになり、飛鳥が困惑していた。

 

飛鳥「帰ろ」

 

 この後、飛鳥が犯人だという事が分かったのは数日後だった。めっちゃ怒られたし、めっちゃ感謝された。

 

『もしも飛鳥が普通にボコったりしたら』

 

 バンドガールズを人質に男たちが立てこもったが、飛鳥が単身助けに行った。まあ、本当は警察に頼るのが一番いいんですけど、それじゃ話が盛り上がらんもんで。

 

飛鳥「残るはあんただけだぜ」

「……!」

 

 飛鳥と犯人が対峙し、香澄達が見守っていたが、飛鳥が思った以上にえげつない音を立てて男の仲間を倒したので怖がっていた。

 

犯人「あの…」

飛鳥「うん。言いたい事は分かるよ。だから早く降参してくれ。これ終わったら自分の部屋で一人で泣くことにしてるんだ。さもなくばお前もあんな感じにして次回の話はあの人とあの人にツッコミ頑張って貰う」

有咲「誰か大体分かるよ!?」

美咲「ゴメン。もう何も言わないから早く倒して」

犯人「え、あ、その…」

飛鳥「2階から蹴落とされるのと、一発で顎粉砕するのどっちがいい?」

香澄「こわいよ!!!」

「ぎゃああああああああああ!!! 助けてくれぇえええええええええええ!!!」

飛鳥「助けて欲しいのこっちの台詞なんだけどね!!?」

 

 頑張れ主人公。敗けるな主人公。迷子でも進め!

 

飛鳥「漫画だと敵を倒したら周りの人が称賛するのをよく見るけど、世の中そんなに甘くはないよ。自分や仲間たちの事で頭がいっぱいさ!!」

有咲「いつもお疲れ様…」

 

***

 

『飛鳥がこっそり敵を倒してバンドガールズを救っていたのがバレたら』

 

香澄「助けてくれてありがとう! 飛鳥くん!」

飛鳥「いえいえ…」

 

 香澄を筆頭にお礼を言われて飛鳥は何とも言えない顔をしていた。

 

あこ「それにしても怖かったー…」

友希那「一時はどうなるかと思ったけど、助かったわ」

紗夜「とはいえ、あなたも無茶してはいけませんよ!」

飛鳥「あ、はい。気を付けます…」

 

 超能力が使えれば、とんずら出来たが今回はシュミレーションものなので出来ず、飛鳥はどうしたらいいか困惑していた。

 

あこ「それはそうと飛鳥くんって滅茶苦茶強かったんだね! 何か格闘技やってたの!?」

飛鳥「…独学でマーシャルアーツを」

 

 飛鳥は早く次の話題に行ってほしいと思っていた。

 

『見返り…』

 

友希那「助けてくれたお礼をしなければならないわね」

飛鳥「あ、それについてはお気持ちだけで十分です」

リサ「それじゃこっちの気が済まないよ」

飛鳥「そうは言いましてもね…」

 

 飛鳥がお礼を受けたくない理由、それは…。

 

「チョーっと待った!!」

 

 と、ヤラカシ軍団が現れた。

 

飛鳥「来ましたね」

「おい! 超能力が使えるなんて聞いてないぞ!!」

「ズルいじゃないか!!」

「もしかして今までの事も全部超能力を使ってたんだな!?」

「この卑怯者め!! 香澄ちゃん達に近づくな!!」

 

 そうヤラカシ軍団が吠えていたが、友希那達は首を横に振っていた。

 

千聖「彼は今まで超能力が使える事を鼻にかけてなかったのよ?」

「フン! どうだか」

「超能力使って女子更衣室とか女湯とか覗いてたんじゃないのか!?」

飛鳥「それよく言われるんですよ」

あこ「…で、実際どうなの?」

飛鳥「するわけないじゃないですか。ですが、皆信じてくれないばかりか、本当に覗きをしたと思う人が多くて…」

「そうだろう!」

「そうとしか思えない!!」

飛鳥「そうとしか思えなくても、一人くらいは信じてくれてもいいんじゃないですかね」

 

 飛鳥が腕を組んでヤラカシ軍団にそう言い放った。

 

飛鳥「おまけに恩を仇て返されることもよくありましたし…。超能力を使うとしたら女子更衣室を覗く事じゃなくて、私を信じない人たちに落とし前をつけさせてますよ? ていうかまず、あなた方を大人しくさせてますし」

 

 飛鳥の言葉に皆が何とも言えない顔をした。

 

飛鳥「超能力があってもどうにもならない事だらけですよ。まあ、そういう訳でまた次回」

千聖「いや、なんなのこの終わり方!!」

 

おしまい

 



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第479話「もしも全寮制で雪かきを行ったら」

 

 もしもバンドリ学園が全寮制だったら。

 

*************

 

 とある雪の日。バンドリ学園の寮にはこれでもかという程雪が積もっていた。

 

「普通に除雪車呼べよ!!」

「これ生徒にやらせるにあたって限界にも程がある!!」

 

 生徒達も思わず突っ込むほどだった。で、建物もクラスごとだったのでクラスごとに雪かきをする事となった。

 

「雄英高校!? ここ雄英高校なの!?」

「妙に凝ってるなぁ~」

 

 と、言いながらも雪かきを始めることとなった。

 

飛鳥(まあ、一人だけ超能力使うのズルいから、地道にやるか…)

 

**

 

 1年1組

 

有咲「ううう~!! どうして雪かきなんかやらなきゃいけねぇんだよお~!!」

 

 インドア派の有咲はブルブル震わせていた。

 

有咲「こういうの弦巻財団で何とかできねーのか?」

たえ「話がすぐ終わっちゃうでしょ」

有咲「…ゴメン。アタシが悪かったわ。もう言わない」

 

 たえがメタ発言をしたので、有咲はもう余計な事を言わないことにした。そして香澄やこころ、はぐみが雪合戦して遊んでいた。

 

有咲「ちょ、お前ら遊ぶなー!」

美咲「…いや、あれはあれで雪減るからいいんじゃないかな」

 

 1年2組

 

モカ「じゃ、ひーちゃん。がんばれ」

ひまり「いやいやいやいやいや!」

蘭「モカも働く!」

モカ「え~。普通にさむーい」

巴「そんなの身体動かせば暖かくなるだろ!」

蘭「…ブレないね」

 

 巴の暑苦しい発想に蘭たちは思わず辟易していた。

 

 2年1組

 

千聖「彩ちゃん。折角の運動する機会を逃しちゃダメよ」

紗夜「白鷺さん。あなたもやりなさい」

 

 紗夜に普通に怒られて千聖は視線をそらしていた。彼女の運動嫌いは皆知っていたので、紗夜に本心を見抜かれてしまった。

 

花音「と、とにかくやろう!」

燐子(レイトボスあったのに…(泣))

 

 2年2組

 

日菜「えー。こんなに沢山出来ないよー」

友希那「興味ないわ」

リサ「皆真面目にやってるんだから、2人もちゃんとやる!」

 

 リサが珍しく取り仕切っていた。

 

薫「ああ…白銀の世界…。実に儚い…」

麻弥「とにかく真面目にやってたらすぐ終わりますよ。頑張りましょう!」

 

 中等部3年1組

 

あこ「よーし! 頑張るぞー! 我が力を引き出す時…」

「宇田川さん。口よりも手を動かしてね」

あこ「はい…って! なんであこだけ普通に怒られてるのー!!」

 

 そんなこんなで雪かきが行われたが、飛鳥のクラスがダントツで早かった。

 

「い、一丈字くん。凄くなれてるね…」

飛鳥「私が住んでた地域も結構雪積もってたんですよ」

「本当に一丈字くんいて良かったわー」

 

 持ち前の知識と経験で、超能力がなくても普通に終わらせることが出来ました。やったね! そして先生からもOKを貰ったが…。

 

「よく知ってたね…」

 

 と、驚かれていた。こうして1年3組は晴れて自由の身となった。

 

飛鳥(他のクラスはまだやってるみたいだな…。まあ、行くと煙たがられるから大人しくするか…)

 

 その時だった。

 

「飛鳥く~ん」

 

 日菜の声がしたので飛鳥が振り向いた。

 

飛鳥「日菜先輩」

日菜「もう雪かき終わった?」

飛鳥「あ、はい。終わりました…」

日菜「やっぱりそうだと思った! ねえねえ! うちのクラス手伝ってよ!」

飛鳥「え」

日菜「いいからいいから!」

 

 そう言って飛鳥は日菜に連れ去られてしまった。

 

***

 

日菜「助っ人連れてきたよー」

リサ「えっ!? 飛鳥くん!!?」

友希那「た、助かったわ…」

 

 友希那はもうクタクタになっていた。

 

飛鳥「湊先輩!」

麻弥「…その、湊さんが思った以上に体力なくて、すみません…」

 

 真面目にやってはいたものの、友希那は美貌と歌唱力に全振りした女と呼ばれていて、体力は全くなかったのだ。そして力尽きてしまった。

 

日菜「そういう訳でお願い。力を貸して!」

飛鳥「それは構いませんけど、まず状況を教えて貰えますか?」

麻弥「はい…」

 

 麻弥から状況を聞くと飛鳥はすぐに判断した。

 

飛鳥「分かりました。それでしたら…」

 

 と、飛鳥はリサ達に指示を出した。流石にプライベートな部分に入る事は出来ないので、それ以外の力仕事を行う事にした。

 

 飛鳥が元々体力があった事で雪かきはスムーズに進んでいった。

 

「やっぱり体力のある男の子がいると助かるわー」

「それもそうだけど、一丈字くん経験者なんだって」

「あー。それで早いのか…」

 

 と、女子達は感心していたが…。

 

リサ「はいはい! 皆も手を動かして! 飛鳥くんが凄くても一人は大変だよ!」

 

 暫くして…。

 

「あっ!! 一丈字テメエ! 何2組の雪かきやってんだよ!!」

 

 と、ヤラカシ達がやってきて騒いでいたが、飛鳥は聞こえないふりをしていた。

 

「無視してんじゃねーぞ!!」

「やい! 一丈…」

「お前らは何を騒いでいるんだ…!」

 

 強面の男性教諭がやってきて、ヤラカシ達は即刻退散した。

 

強面「一丈字ももう自分の所は終わったのか!?」

飛鳥「あ、はい! 終わりました!」

強面「そ、そうか…。それはご苦労だったな…。まさか氷川が!?」

飛鳥「そ、そうですね…」

強面「氷川ァ!!」

 

 と、男性教諭は日菜を探しに行った。

 

******

 

飛鳥「やっと終わりましたね…」

リサ「飛鳥くん本当にありがとう! 正直助かった!」

飛鳥「いえいえ…」

 

 リサ、友希那、麻弥、薫と合流した飛鳥だったが、日菜だけいなかった。

 

飛鳥「あれ? 日菜先輩は…」

リサ「……」

 

 次の瞬間だった。

 

強面「お前にももう少し仕事を与えてやる! 来い!」

日菜「ひ~ん!!! やだよぉ~!! たすけてぇ~!!!」

 

 と、強面に縄で縛られて連行されていった。

 

リサ「…まあ、今回はヒナが悪いって事で」

飛鳥「……」

 

 皆も仕事は人任せにしないで、自分でやろうね!

 

 

おしまい

 



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虹の導き ~もしも飛鳥とPastel*Palettesの初対面が違っていたら~
第57話「雨上がり」


設定

・ 飛鳥は中3でPastel*Palettesと会っている。
・ パスパレは本編開始前の1年前からバンドを組んでいる。
・ パスパレブレイクのきっかけは飛鳥。



第57話

 

『もしも飛鳥とPastel*Palettesの初対面が違っていたら』

 

 それは昔の話。飛鳥はWONDER BOYの仕事で東京まで来ていた。超能力を駆使して普通の人間では対処が困難、もしくは不可能な仕事をこなすのがWONDER BOY。

 

 飛鳥は超能力だけではなく、頭脳や技術も常人離れしていた為、結構仕事が多かった。

 

飛鳥(最近流行りのチートだって言われるけど、私の場合は何の努力もしてないという訳ではございません。ちゃんとやる事やって、それを応用として活かしてます)

 

 いわばリアルチートである。

 

 さて、そんな事はさておき、仕事の帰りにとある場所に立ち寄った。

 

飛鳥(ん?)

 

 飛鳥は5人組の少女が雨の中、傘を差さずにチケットを配っていた。この5人組の少女が「Pastel*Palettes(通称:パスパレ)」である。

 

「おねがいしまーす!!」

「おねがいしまーす!!」

 

 と、配っていたが誰も興味を示さない。

 

飛鳥(…地下アイドルかな?)

 飛鳥はそう思ってスルーしようとしたが、一人の男がパスパレに近づいた。

 

「おい、お前らパスパレだよな?」

「!?」

 

 男は悪態をつくようにパスパレに近づいた。

 

「そ、そうですけど…」

 リーダーの丸山彩がそう言うと、チケットを強奪してばらまいた。

 

「!!」

「インチキアイドルが、こんな事してんじゃねーよ!!!」

 と、叫んで去っていった。彩はショックを受けていた。

 

「あ、彩ちゃん…」

「……」

 と、他のメンバーが彩を見ていると、飛鳥がすぐにチケットを拾った。

 

「!!?」

飛鳥「早く拾わないと地面にくっつきますよ」

 飛鳥がチケットを拾いながら、彩に話しかけた。

 

飛鳥「何があったかは分かりませんが、こうやって地道に努力してる事は必ずどこかで活かされます。気長に行きましょう」

 と、飛鳥は普通に話しかけると、彩も慌ててチケットを拾い始めた。

 

 そしてチケットを拾い終えると…。

 

彩「あの、ありがとうございました!」

飛鳥「いえいえ」

 

 彩が頭を下げた。

 

飛鳥「あの、何があったんですか?」

彩「そ、それは…」

「その前にあたし達の事知らないの?」

「ちょ、ちょっと日菜さん!!」

 日菜が話しかけると、麻弥が慌てた。初対面の人間に対して馴れ馴れしすぎるので慌てていたのである。

 

飛鳥「すみません。あまりアイドルには詳しくないもので…」

彩「あ、えっと。私達「Pastel*Palettes」っていうアイドルグループなんですけど…」

「事務所の意向でバンドをやらされたのよ」

 と、白鷺千聖が話しかけた。とてもふでふでしい。

 

飛鳥「バンド?」

千聖「無理だって言ったのに、事務所の連中が初ライブはエアバンドでごまかすって言ったのよ。で、結果的に音響トラブルが発生して、エアバンドであることがバレて、大バッシング。こうやって雨の中でのチケット配りに泣く泣く甘んじてるのよ」

 千聖はそう言った。

 

飛鳥「だからさっきの人がインチキって言ったんですね」

彩「ごめんなさい…折角チケットを拾ってもらったのに…」

飛鳥「それは別に構いませんよ。さっきの人の態度が鼻についたのでこっちもつい」

 飛鳥が彩を見つめた。

 

飛鳥「それはそうと…バンド活動は続けられるんですか?」

麻弥「そうするしかないっす…。じゃないと、汚名も返上できないので」

千聖「…このままプラスになるとは思えないけどね」

麻弥「ち、千聖さん!!」

 千聖が悪態をつくと、飛鳥は千聖を見つめた。

 

千聖「な、何よ」

飛鳥「お言葉ですけど、プラスにするしかありませんよ」

「!!?」

千聖「どういう意味かしら?」

飛鳥「事務所の無茶振りには同情しますが、1回逃げた仕事はずっとついて回るって、此間ドキュメンタリー番組でやってましてね。今の仕事を続けたいなら、ちゃんと向き合ったらどうですか?」

千聖「あなたに何が分かるのよ!」

彩「ち、千聖ちゃん!!」

飛鳥「分かりませんよ。初めて会ったのに」

 飛鳥が口角を下げる。

 

飛鳥「だけどこのまま逃げてちゃ負け犬ですし、勿体ないですよ」

「!?」

千聖「どういう意味?」

飛鳥「できる事が増えれば増える分だけ仕事が来る。寧ろ今の状況でバンドが上達すれば、ちゃんと認めてくれますよ。知名度もあって、出来ていなかったからこそ。ある意味これはチャンスですよ」

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

 

飛鳥「まあ、折角恵まれたチャンスを活かせないようでは…少し厳しいんじゃないんですかね。少なくとも金髪のあなたは」

千聖「……っ!」

 千聖が口をへの字にした。

 

飛鳥「やるのか、やらないのか、どっちですか? 二つに一つですよ」

千聖「ず、随分舐めてくれるじゃない…!」

飛鳥「その発言から、やるんですね?」

千聖「…ああもう! 分かったわよ! やればいいんでしょやれば!」

飛鳥「そうですか。それでは、今後の活躍にご期待しております。それでは」

 そう言って飛鳥が去ろうとすると、

 

千聖「待ちなさい! あなたチケットは!?」

麻弥「ち、千聖さん! 素が出てます!!」

飛鳥「申し訳ないんですけど、私行けないんですよ。これから広島に帰らないといけないので」

「えーっ!!?」

 飛鳥の発言に皆が絶叫したが、

 

飛鳥「でも大丈夫ですよ」

「?」

 飛鳥が周りを見渡した。

 

飛鳥「チケットを買ってくれそうなお客さん。沢山いますから」

 

 と、5人が見渡すと確かにチケットを欲しそうにしている人たちがいた。

 

飛鳥「それじゃ、頑張って」

 飛鳥が親指を立てると、そのまま去っていった。

 

彩「……」

 その時だった。

 

「あの…」

彩「!」

「チケット、貰えませんか?」

「オレも!」

「あちきも!」

「なんだかんだ言って可愛いもんね!」

「ぶっちゃけオレ。ああいうトラブルも好きだ!!!」

 

 と、ファンが押し寄せた。

 

彩「は、はい! はい!! ありがとうございます!!」

 と、彩が涙ぐみながらチケットを配っていた。

 

 そしてそんな人だかりを見て飛鳥は…。

 

飛鳥(…めっちゃ都合よすぎない?)

 

 あまりにも上手く行き過ぎた為、困惑していたが、いつの間にか雨がやんで、空に虹がかかっていた。

 

 

飛鳥(…けどまあ、こんな展開ならいいかもね)

 

 

 これが一丈字飛鳥。中3の夏だった…。

 

 そして半年後。飛鳥はまたWONDER BOYの依頼で、バンドリ学園に行く事になった。

 

飛鳥「今回の依頼は、バンドガールズに近づくヤラカシの始末で、これがバンドガールズのリストか…」

 

 飛鳥が新幹線の中でリストを見つめると、そこにはPastel*Palettesの写真があった。

 

 

飛鳥(あっ…)

 

 

おしまい

 

 



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第58話「イヴとの再会(前編)」

 

 前回までのあらすじ

 

 半年前、飛鳥は仕事の帰りにチケットを手配りしていたアイドルバンド「Pastel*Palettes」と出会う。男が投げ散らかしたチケットを回収し、一声をかけてその場を去っていった。

 そして現在、飛鳥はある目的のために、Pastel*Palettesのいるバンドリ学園へと足を運ぶことになった。果たして…。

 

 バンドリ学園。

 

「今日からこの学校に転校してきた一丈字飛鳥くんだ」

飛鳥「宜しくお願いします」

 

 飛鳥は1年3組の教室に配属されて、そこそこ歓迎されていた。黒髪に黒い大縁の眼鏡をかけて、目立たないようにしていた。

 

飛鳥(反応はますますだな…)

 

 と、何とか潜入する事に成功したと感じる飛鳥であった。

 

飛鳥(そういや1組と2組にターゲットがいるんだったな。まあ、無理にかかわる必要もないか…)

 

 飛鳥はそう考えて、休憩時間はずっと教室にいた。クラスメイト達と適当に話をして、時間をやり過ごした。

 

 そしてあっという間に昼休憩がやってきた。飛鳥は声をかけられないように静かにその場を去った。

 

飛鳥(そういやあっちは1組と2組だったな…。ちょっとだけ様子見とくか)

 

 と、飛鳥は1組の教室の前を通った。すると…。

 

「……!?」

 

 Pastel*Palettesのメンバーである若宮イヴが飛鳥に気づいた。

 

こころ「どうしたの? イヴ」

イヴ「ご、ごめんなさい! ちょっと用事が!!」

 と、イヴが廊下を出ていき、飛鳥を追いかけていったが、飛鳥は瞬時に隠れた。

 

飛鳥(…どうしたんだろう)

 

 飛鳥は思わず困惑した。

 

イヴ「おかしいな…確かこの辺にいたはずなのに…」

 イヴがキョロキョロ見渡していた。

 

イヴ「半年前…私達を助けてくれたヒト…」

飛鳥(オレを探してたのか…)

 

 飛鳥は驚いていた。

 

飛鳥(…どうしようかな。顔出そうかな。けど)

 その時だった。

 

「イーヴちゃん」

 と、男子生徒達が現れた。いかにも何か女に手を出してそうなチャラ男である。

 

イヴ「あ、あなた達は…?」

「こんな所で何してんの?」

イヴ「えっと、人を探してたんです!」

「人?」

「もしかしてオレ達?」

イヴ「いや、違いま…」

「まあ、そんな事よりもさ。オレ達と飯食わね?」

イヴ「え、えっと…」

「いーからいーから」

 と、男子生徒の1人がイヴの腕を強引に引っ張った。

 

イヴ「は、離してください!!」

「そんなに嫌がらなくてもいいじゃん」

「何? パスパレそういう事すんの?」

 

飛鳥(あ、これ訴訟案件だな)

 飛鳥が存在感を消して、スマホで撮影して、超能力で男子生徒達を腹痛にさせた。

 

「ぐ、ぐあああああああああああああああああ!!!」ゴロゴロ

「は、腹が…」ゴロゴロ

「漏れるぅ…」ゴロゴロ

 

 と、突然腹痛になりだした男子生徒達に対して、イヴが不思議がっていた。

 

イヴ「だ、大丈夫ですか?」

「心配してくれるの? ありがとう…」

「ま、また今度ね…」

「おい、早くしないともれる…」

 

 と、男子生徒達が去っていった。イヴは何が起きているのか全く分からなかった。

 

飛鳥「……」

 飛鳥が笑みを浮かべて、その場を後にした。

 

 その後、飛鳥は普通に教室に帰ってきて、そのまま5時間目を受けた。その間イヴは飛鳥の事が気になって仕方なかった。

 

イヴ(あの顔…間違いない。私達を助けてくれたあの人だ…)

 イヴは5時間目の間、ずっと飛鳥の事を考えていて、授業が全く頭に入らなかった。

 

 5時間目終了後、イヴは教室を出て飛鳥を探した。

 

イヴ(もしかしたら近くにいるかも…!!)

 と、イヴが2組、3組の教室を見て回ると、3組の教室に飛鳥がいた。

 

イヴ(いた!!)

 その時だった。

 

イヴ「あ、あの!!」

 イヴが思い切って声をかけると、皆がイヴを見た。飛鳥もイヴの方を見る。そしてイヴは飛鳥に近づいた。

 

イヴ「も、もしかして…半年前に私達に声をかけてくれませんでしたか!?」

 と、イヴがそう言うと飛鳥は目を閉じた。

 

飛鳥「いえ」

イヴ「……!」

 飛鳥がそう言うと、イヴは俯いた。

 

イヴ「そ、そうですか…。ごめんなさい」

飛鳥「いえ」

 そう言ってイヴは落ち込んで帰っていった。

 

飛鳥「……」

 飛鳥は口をへの字にした。

 

「い、一丈字くん…」

「もしかして、若宮さんと知り合いなの?」

飛鳥「いいえ。全く知りませんよ」

 飛鳥がそう言い放つと、クラスメイトの女子が。

 

「…あのさ」

飛鳥「?」

「もしかして半年前、〇〇駅にいた?」

飛鳥「〇〇駅?」

「そこで丸山先輩にチケット渡してなかった?」

飛鳥「チケット?」

「…あの時の映像、拡散されてるの知ってた?」

飛鳥「……」

 飛鳥は何も答えなかった。

 

「答えて。あなたでしょ!!」

飛鳥「ええ。その通りですよ」

「!!?」

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

 

「どうして嘘ついたの!!?」

「イヴちゃん可哀そうだよ!!」

飛鳥「そうですね。彼女には酷な事はしましたが、今は黙っていた方が良いかと思います」

「どうして?」

飛鳥「今、大事な時でしょう。それなのに男の影があったら大変ですよ。それに、あそこで名乗り出たら売名行為だと思われますしね。恩を売る為にあんな事をしたわけではございません」

 飛鳥の言葉にクラスメイト達が黙った。

 

「ね、ねえ…」

飛鳥「?」

「もしかして半年間、パスパレのCDとか買ったりした?」

飛鳥「いいえ全く。色々バタバタしてたもので」

「えっ」

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

 

飛鳥「まあ、彼女たちが元気そうで何よりですよ」

 と、飛鳥は強制的に話を終わらせてしまった。

 

 1組

イヴ「……」

 イヴは落ち込んで帰ってきた。

 

香澄「イヴちゃんどうしたの?」

イヴ「私が探してた人…。人違いでした…」

沙綾「人違い?」

りみ「もしかして、半年前Pastel*Palettesを助けてくれた人?」

イヴ「はい…。顔も声もそっくりだったから、本人かと思ってたんですけど…」

沙綾「ちなみにどんな感じ?」

イヴ「こんな感じです」

 と、イヴが飛鳥の似顔絵を描いたが、飛鳥にそっくりだった。

 

こころ「飛鳥!!?」

 こころが叫ぶと、皆がこころを見た。

 

こころ「…あっ!!」

 こころが青ざめた。

 

イヴ「ココロさん!! 何か知ってるんですか!?」

 イヴがこころに詰め寄ると。

こころ「し、知らないわ!!? 飛鳥の事なんて全然知らないわ!!」

美咲「いや、嘘つくの下手すぎ!!!」

 

 こころが必死にごまかそうとしたが、物凄く焦っていて顔に出ていた為、美咲に突っ込まれた。

 

イヴ「ココロさん!!!」

こころ「……!!」

 

 案の定、バレました。

 

 

おしまい

 



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第59話「イヴとの再会(後編)」

 前回までのあらすじ

 こころの依頼でバンドリ学園に潜入した一丈字飛鳥。Pastel*Palettesのメンバーである若宮イヴと再会したものの、彼女たちの事を考え、名乗らずに身を引く事にした。

 …が、協力者であるこころが嘘をつくのが下手すぎて、バレてしまった…。




 

 

 1年3組。

 

「一丈字くん!!」

「!!?」

 

 と、香澄、たえ、りみ、沙綾、有咲、イヴ、こころ、はぐみ、美咲が一斉に3組の教室に押し掛けてきた。こころは申し訳なさそうに項垂れていた。こころの様子を見て、飛鳥は何が起きているのか察した。

 

飛鳥「……」

香澄「半年前にイヴちゃん達を助けた人ってあなたでしょ!?」

たえ「言っとくけど、こころが全部喋ったよ」

飛鳥「全部というのは?」

 飛鳥の発言にイヴが困ったような顔をし、こころは更にうなだれた。

 

有咲「お前がこころの知り合いだという事、イヴたちを半年前に助けた事だよ」

飛鳥(…能力者であることはバレてないようだな。まあ、信じようにも信じれないからな)

 飛鳥が有咲を見つめた。

 

こころ「ごめんなさい。飛鳥…」

飛鳥「仕方がございませんよ。SNSで拡散されていたんですから、いずれは気づくと思っていました」

 頭を下げて謝るこころに対し、飛鳥は特に怒りもせず慰めた。

 

イヴ「…やっぱりあなただったんですね」

飛鳥「ええ。お久しぶりですね。若宮イヴさん」

 飛鳥がイヴを見つめた。

 

飛鳥「ご活躍されていて何よりです」

イヴ「どうしてあの時嘘をついたんですか!?」

飛鳥「その質問に答える前に、私からひとつ質問がございます。若宮さん…昨今の日本の芸能事情をご存じでしょうか?」

イヴ「ゲイノウジジョー…?」

飛鳥「必要以上にアイドルと接触すると、ファンの男が暴走する傾向があるんですよ。それを抑える為に、あなたから遠ざかっていたんですね」

「!!?」

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

 

飛鳥「それに、あなたはもう立派なアイドル。こんな男の事は忘れて前に進んでください」

イヴ「……」

 イヴが涙を流した。

 

飛鳥「…話なら聞きますよ」

イヴ「私達は…」

「?」

 

イヴ「私達は…あなたのお陰でここまで来れたのです!」

「!?」

飛鳥「それは違いますよ。貴方達がちゃんとご自身で…」

イヴ「あなたがいなくなった後、テレビ局の偉い人が声をかけてくれたんです。番組に出て見ないかって…」

「!?」

 

イヴ「そこで私達はバラエティ番組に出て、その番組がきっかけで沢山お仕事を貰えるようになったんです」

飛鳥「いや、それあなた方が…」

有咲「お前がきっかけになったって事だよ。そうだよな?」

イヴ「はい。あなたがチケットを拾ってくれたのを知って、そこでブレイクしたら面白いって言われて…」

飛鳥(…面白い?)

 

 言いたい事はよく分かったが、面白いという言葉に飛鳥は困惑した。ああ、やっぱりそういう所は現金主義なんだなとも思い、業界の人間に対して少し渋い顔をした。

 

イヴ「沢山お仕事を貰えるようになったのはあなたのお陰です。本当にありがとうございました!」

飛鳥「いえいえ…」

 

 飛鳥としては、本当に自分達の頑張り次第だったのに、何でお礼を言われるんだろうなーと思っており、不思議でしょうがなかった。

 

飛鳥「まあ、これからが大事なので、油断せずに頑張ってくださいね」

イヴ「はい!」

 と、イヴが反応すると、飛鳥はこれで終わると思っていた。

 

イヴ「あ、そうです!」

飛鳥「?」

イヴ「アヤさん達にも是非アスカさんと会わせたいんですけど…」

飛鳥「その件ですが、様子を見ましょう」

香澄「どうして!?」

飛鳥「学園全体が混乱するからです」

美咲「あー…」

 

 飛鳥の言葉に美咲が何となく察した。

 

美咲「確かにその方が良いかも…Pastel*Palettesにそんな知り合いがいるって分かったら…」

有咲「これは…確かにそうだな。一丈字の言う通りかも…」

 

 と、有咲も同意した。

 

イヴ「で、でも…」

飛鳥「若宮さん。気持ちは分かりますけど、焦らないで」

「!!?」

飛鳥「他の方ともいずれちゃんとお話しします。それまで待っていてください」

イヴ「は、はい…」

たえ「あ、そうそう」

 たえが口をはさんだ。

 

たえ「そういや一丈字くんって、私達がバンドやってるの知ってる?」

飛鳥「ええ。お伺いしておりますが…」

たえ「此間合同ライブやったんだけどさ。パスパレが圧倒的1位だったんだよ。男子はもう殆どパスパレで」

飛鳥「そ、そうなんですか…」

 

 たえの言葉に飛鳥が困惑した。いや、そこは分散するんじゃないの? と思っていた。実際バンドをやっている少女たちはいずれも美少女と呼ばれる方で、普通であれば人気が分散するのだが、やはり芸能人だから人気も高いのかと飛鳥は考えていた。

 

たえ「もう完全に私達、おまけみたいな感じだったんだよねー…。最下位だったし」

有咲「やめろ。悲しくなるから」

 

 ちなみに大体は「5バンドとも良かったんだけど、やっぱり投票するならパスパレかなー」という感じである。ちなみに2位はこころ率いる「ハロー、ハッピーワールド!」。理由は女性に1番人気のある瀬田薫という少女がいるからである。

 

たえ「パスパレの快進撃の裏には何かあると考えていたけど…」

有咲「いや、どう考えてもこいつだろ」

飛鳥「若宮さん達がちゃんと自分達で…」

香澄「そうだ! 私達とも仲良くなろうよ!」

飛鳥「そうして頂くのは大変光栄ですけど、ファンを何とかしないと…」

たえ「あー、大丈夫だよ。男子大体パスパレファンだし、私達全く見向きされてないから」

有咲「だからそう言う事言うんじゃねぇよ!! 実際そうだけど!!」

飛鳥「まっさかー」

 飛鳥が苦笑いした。

 

イヴ「わ、私! アスカさんともっと仲良くなりたいです!」

飛鳥「ちなみに事務所としてはその辺どうなんです?」

イヴ「いえ、全くそういうのは…」

飛鳥「まあ、こんだけあれば次第にNGになるでしょうね…」

香澄「私達とも仲良くしよー!!」

 

 と、飛鳥は1組女子(香澄、たえ、りみ、沙綾、有咲、イヴ、はぐみ、こころ、美咲)と仲良くなった。

 

(あ、あいつ…)

(い、一丈字の奴…1組女子と仲良くなりやがった…)

(う、羨ましい…)

(え、えぇ…)

(お、お…おっぱい…//)

 

 

おしまい

 



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第60話「彩・麻弥・日菜との再会」

 前回までのあらすじ

 

 1組女子と仲良くなった飛鳥。

 

********************

 

 ある日のことだった。もうすぐ林間学校があるとの事だった…。

 

飛鳥(えっ)

 

 今まで何回も林間学校ネタをやって来た飛鳥にとっては、「また?」と思っていたが、仕方がない。思いついたネタ順にやる。これがダシマ劇場(ダシマが書く小説)なのである。

 

 そして昼休憩…

 

香澄「飛鳥くーん! 一緒にご飯食べよー!!」

 と、香澄がやって来た。沙綾、イヴもいる。それを見て飛鳥もクラスメイト達も驚いていた。

 

飛鳥「え? 私ですか?」

イヴ「ダメ…ですか?」

香澄「だいじょーぶだよ。二人きりじゃなかったらいいんでしょ? ほらほら!」

 と、香澄が飛鳥を強引に連れていった。

 

 そして食堂(カフェテリア)に行くと、沢山人がいた。

 

飛鳥「人が多いですね…」

沙綾「あ、私パン作って来たんだけど、良かったら食べる?」

飛鳥「え?」

香澄「わー! さーやのパンとっても美味しいんだよ!」

イヴ「いいんですか!?」

香澄「うん」

 その時だった。

 

「わー。とてもいい匂いがするー」

 と、誰かの声がした。

 

香澄「あ! モカちゃん! それにAfterglowの皆!」

モカ「やほー」

 

 と、モカ達が現れた。

 

飛鳥「お知り合いですか?」

香澄「うん! モカちゃん達は2組なんだけどね」

モカ「あれー? 何か見た事ない人がいるー。誰かの彼氏?」

香澄「違うよ? あ、紹介するね! 一丈字飛鳥くんって言って、半年前にイヴちゃん達を助けてくれた人なんだよ!!」

飛鳥(どういう説明の仕方してんだ!!)

 

 香澄の言葉に飛鳥は思わず心の中で突っ込んだ。

 

モカ「あ、確かに言われてみればツイッターで映ってた人と似てるー」

蘭「…つい最近まではいなかったけど」

飛鳥「最近転校してきたんですよ。宜しくお願いします」

蘭「よ、宜しく…」

 

 飛鳥が普通に挨拶すると、蘭は警戒していた。

 

モカ「ごめんねー。この子美竹蘭って言うんだけど、人見知りが激しくて…」

蘭「いや、激しくなんかないし…」

モカ「あたし、青葉モカー。宜しくー」

ひまり「上原ひまりよ!」

巴「宇田川巴だ。宜しくな」

つぐみ「は、羽沢つぐみです!」

香澄「ちなみにイヴちゃんはこのつぐのお店でアルバイトしてるんだよ!」

飛鳥「アルバイト?」

つぐみ「私の家珈琲店やってて…。良かったら来てね」

飛鳥「あ、はい」

 と、飛鳥は普通に返事した。

 

蘭「そういえばあんた、クラスは?」

飛鳥「1年3組です」

モカ「あー…知り合いがいないクラスだねぇー」

 

 と、Afterglowとも仲良くなったが、男子生徒達の嫉妬の眼差しが凄かった。

 

飛鳥「……」

モカ「あー。やっぱりこうなっちゃうよねー」

飛鳥「当分はソーシャルディスタンスを取った方が良さそうですね」

香澄「えー!!」

 

 その時、イヴが誰かに気づいた。

 

「あっ、アヤさん!」

「え?」

 皆が彩の方を見ると、彩と同じパスパレのメンバーである大和麻弥、氷川日菜がいた。彩は飛鳥の顔を見て驚いている。

 

飛鳥(あっ)

彩「あ、あ、あなたもしかして…!!」

日菜「あーっ!! 半年前チケットを拾ってくれた人だー!!」

麻弥「お、同じ学校だったんスね…!!」

 

 しまった。と飛鳥は思ったが、今更誤魔化せそうにもないし、周りの生徒達も自分達を見ている事に気づいた。

 

彩「あ、あの!! もしかしてチケットを拾ってくれた人ですか!?」

日菜「いや、絶対そうだって!」

麻弥「ひ、日菜さん!」

 

 飛鳥は口をへの字した。

 

飛鳥「ええ。その通りですよ」

彩「……!!」

 彩は涙を流した。飛鳥としては「オレ、そんな大したことしてないんだけどなぁ~?」と思っていた。何故こんなにも仰々しいのだろうと思っていた。

 

飛鳥「ただ…」

「?」

飛鳥「これ以上関わるとファンの皆さんを刺激させてしまうので、当面は会うのは控えましょう」

日菜「いや、イヴちゃんとは一緒にいるじゃん!!」

飛鳥「若宮さんではなくて、戸山さんに誘われたんですよ」

 

 と、飛鳥はこのようにして好感度を下げる作戦に出た。飛鳥は人から嫌われるのは慣れている為、特に気にしはしなかったが、万が一の事で皆を危険な目に合わせてしまえば、責任が取れないからだった。

 

沙綾「一丈字くん。イヴや日菜先輩達に気を遣って、関わらないようにしてるんですよ」

香澄「気にする事なんてないのにねー」

日菜「そーだよ!」

 日菜も突っかかった。

 

飛鳥「あなた方が気にしなくても、ファンの人たちは気にするんですよ。周りをよく見てください」

 と、周りを見渡すと、男子たちは必死にごまかそうとしていたがバレバレである。

 

麻弥(あ、あぁ…)

沙綾(何となく分かった…)

 

 麻弥と沙綾は察した。

 

飛鳥「お変わりありませんか?」

彩「本当に…本当にあなたのお陰で…」

 と、彩は泣いていた。

 

飛鳥「確か私がいなくなった後、声をかけられて上手くいったと…」

彩「本当にあなたのお陰です。ありがとうございました!」

飛鳥「良かったですね」

 飛鳥は普通に返事した。

 

香澄「あれ? そういえば千聖先輩は?」

日菜「あー。千聖ちゃんは今日仕事だよ。覚えてる? 千聖ちゃん」

飛鳥「ああ…あの金髪の方ですね…」

麻弥「まあ…ここで立ち話もなんですから、ゆっくりお話ししませんか?」

 

 と、下記のメンバーで話をする事になった。

 

・ 一丈字飛鳥

・ 戸山香澄

・ 山吹沙綾

・ 美竹蘭

・ 青葉モカ

・ 上原ひまり

・ 宇田川巴

・ 羽沢つぐみ

・ 若宮イヴ

・ 丸山彩

・ 氷川日菜

・ 大和麻弥

 

男1人、女11人とまさにハーレムだった。

 

モカ「どう~?」

飛鳥「いやー。生きてここから出られますかねぇ」

「ネガティブ!!!」

 

 飛鳥の言葉に皆が突っ込んだ。実際に男子生徒達は血の涙を流していた。

 

飛鳥「で、皆さんご活躍されていて、何よりです」

麻弥「本当にあなたのお陰っすよ」

飛鳥「いえいえ…」

彩「それで、あなたも何かなかった? SNSに拡散されてたけど…」

飛鳥「そんな大したことはございませんでしたよ」

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「まあ、次の登校日にクラスメイト達から色々言われましたけど…」

日菜「例えば?」

飛鳥「お前を殺してやるって言われました」

 空気が止まった。

飛鳥「私はこう言い返しました。やれるもんならやってみろって」

「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!!」

 

 と、皆が突っ込んだ。

 

飛鳥「まあ、皆さんの事について詳しく教えて頂きましたね。例えば若宮さんは元々はモデルだったとか、氷川先輩がオーディションで加入したとか、今はここにいない白鷺先輩が女優さんだったとか」

香澄「え? 飛鳥くん、千聖先輩が女優さんだって事も知らなかったの?」

飛鳥「あまりテレビ見ないので…」

 飛鳥が苦笑いしていたが、WONDER BOYの仕事でそれどころじゃなかったのだ。

 

飛鳥「まあ、皆さんがご活躍されて何よりです」

麻弥「いやあ、本当にありがとうございました」

 そう話をしたが、飛鳥としてはもう話す事はなかった。何しろ本当に彩たちが今もアイドルとして活躍できているので、それで満足していたからである。

 

飛鳥(まあ、後はフェードアウトするだけだな…)

 

 そんな中、モカは飛鳥をじーっと見つめていた。

 

 

おしまい

 

 



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第61話「千聖との再会」

 

 前回までのあらすじ

 

 Pastel*Palettesのメンバー4人と再会した飛鳥。残るは損得勘定していた女優の白鷺千聖だけである…。

 

******************

 

 カフェテリアでの談笑はまだまだ続いていた。

 

日菜「本当に感謝してるんだよー。飛鳥くんには」

 日菜が口を開いた。

 

飛鳥「いや、それは…」

日菜「千聖ちゃんっていたでしょ?」

飛鳥「……」

 千聖の名前が出てくると、飛鳥が困惑していた。チケットを配っていた時、一人だけ乗り気じゃなく、自分の得にならないからやめようとしていたのだ。

 

日菜「千聖ちゃん、Pastel*Palettesを組んだ時からやる気なくて、事務所のみんなの言う事も聞かなかったの」

麻弥「ま、まあ…元々は女優さんで、本当にやりたい事ではなかったっすからね…」

 麻弥がフォローを入れた。

 

日菜「でね。飛鳥くんが初めてなんだよ。千聖ちゃんにあそこまで言えたの」

 飛鳥が頭をかいた。

 

飛鳥「…いや、自分だけ逃げようとしてたので、つい」

日菜「そうなんだよね。麻弥ちゃんなんか、千聖ちゃんが誘ったからパスパレのメンバーに入ったんだよ」

飛鳥「え?」

 日菜の言葉に飛鳥が信じられなさそうにすると、麻弥が苦笑いした。

麻弥「まあ、今はジブンが好きでやってるんですよ。フヘヘ…」

 麻弥がそう言うと、飛鳥が頭をかいた。

 

飛鳥「…それでしたら、本当に辞めなくて良かったですね。もしやめてたら完全に痛い目に遭ってましたよ」

香澄「そうなの?」

飛鳥「ええ。その人が仲間を見捨てるって分かったら、誰も助けてくれませんよ。何もしないならまだいいですけど、それで自分が命の危機に立たされたらたまったものじゃありませんよ」

 飛鳥が厳しい言葉を香澄に向けた。

 

麻弥「…まあ、ジブン達がちょっと甘かった部分もあったんスけど千聖さん。一丈字さんに言われてから、少しずつ変わったんですよ」

モカ「日菜先輩がバラエティ番組とかで色々千聖さんを煽ってー。その漫才みたいなやり取りが受けたんですよねー」

彩「まあ…千聖ちゃんって結構負けず嫌いだから…」

 彩が苦笑いした。

 

モカ「それで日菜先輩と千聖さんがブレイクした後に、彩さんと麻弥先輩、イヴも個性を発揮して、5人のキャラが皆に浸透して大ブレイク。まるで女版「SMAP」って感じだねー」

香澄「バンドやってるから「TOKIO」じゃない?」

 と、モカと香澄が話をし始めた。

 

麻弥「だから本当にありがとう。一丈字さん」

飛鳥「いえいえ…」

 飛鳥が苦笑いすると、彩のスマホが鳴った。

 

彩「あ、ごめんね。ちょっと電話に出るね」

 彩が電話に出た。

彩「あ、もしもし? 千聖ちゃん!?」

 電話の相手は千聖だった。

 

彩「え? 明日のレッスンはいつも通り? 分かった! あ、そう言えばね…。あの子が見つかったの!」

 彩の言葉に飛鳥はぎょっとした。

 

彩「今いるよ! 待ってて!」

 すると彩が飛鳥に向かった。

彩「一丈字くん。千聖ちゃんとお話してくれる?」

飛鳥「あ、はい…」

 と、彩がスマホを見せると千聖が写っていた。

 

飛鳥「あ、お疲れ様です」

千聖「あなた…」

飛鳥「あ、覚えてないですよね。私の事…」

千聖「覚えてるわよ」

 千聖が微笑んだ。

 

千聖「忘れもしないわ。半年間、ずっとあなたを見返すために頑張って来たもの…」

飛鳥(なんかめっちゃ喧嘩売られてるー…)

 

 千聖の笑顔を見て、飛鳥が困惑した。

 

麻弥「ダメっすよ千聖さん! そんな態度取ったら!」

日菜「そーだよ!」

飛鳥「…あの、顔近いですけど、大丈夫ですか?」

 

 飛鳥の両サイドから麻弥と日菜が寄ってきて、飛鳥が冷静に突っ込んだ。周りの男子生徒達が騒いでいた。

 

「てめぇこの野郎!!」

「生きてここから出られる思うなよ!!」

「オレも麻弥ちゃんと日菜ちゃんにはさまれてぇ~!!!」

「出来ればおっぱいも挟…」

 

飛鳥「氷川さんから色々お話は伺いました」

千聖「…そう」

飛鳥「またいつかお会いできる日を楽しみにしております」

千聖「私もよ。ところで、私が女優だって知ってた?」

飛鳥「あ、はい。ドラマを1本だけ拝見させて頂きました」

千聖「…ちなみに、何のドラマ?」

飛鳥「『ママはロボット』っていうドラマなんですけど…」

千聖「…何でよりによって、そのドラマを?」

 千聖の頬が赤くなっていた。

 

飛鳥「勧められたんですよ。名演技でしたよ」

千聖「出来れば早く忘れて欲しいのだけど…」

日菜「えー! とっても可愛かったよあのドラマ!!」

麻弥「そ、そうっすね…」

飛鳥「流石天才子役と呼ばれていただけありますね」

千聖「もー!! そういうのは良いから忘れて! あれは私の黒歴史なの!!//////」

 と、千聖が頬を染めて叫んだ。

 

香澄「今度見てみようかなー。普段ドラマ見ないけど」

千聖「香澄ちゃん、人の話聞いてた?」

イヴ「とっても、ヤマトナデシコでしたよ?」

千聖「イヴちゃん。本当に恥ずかしいからやめて」

日菜「千聖ちゃん顔真っ赤~」

千聖「いや、本当にやめてってば!//////」

日菜「じゃあ次で最後にするね」

千聖「いや、もうその時点でやめ…」

日菜「飛鳥くん。千聖ちゃんどう思う?」

飛鳥「最初はクールな人だなって思ってましたけど、今はすっごいキュートですね」

千聖「うるさいバカァ!!!!///////」

 と、千聖が電話を切った。

 

モカ「流石だね~」

飛鳥「そうですかね…」

蘭「千聖さんにそこまで言えるあたり、そう思うよ…」

モカ「飛鳥くんってもしかしてドS?」

飛鳥「Mではないのは確かですね」

 

 飛鳥が困惑した。

 

香澄「飛鳥くんおもしろ~い」

飛鳥「そうですか?」

モカ「確かに面白いよ~。日菜先輩達がずっと話してるの分かる~」

飛鳥「……」

 

 と、すっかりバンドガールズ達に懐かれ、男子生徒達を敵に回してしまった飛鳥。まだまだ続く…。

 

 

おしまい

 



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第62話「野外活動・1」

 

 

 ある日の事。飛鳥達は林間学校に行く事となった。

 

飛鳥(食傷気味だと思いますが、ご了承ください)

 

 ちなみにバスはクラスごとであり、飛鳥は3組だった為、香澄たちや蘭たちとは別のバスだった。1組と2組の男子たちはここぞとばかりに香澄たちに猛アプローチしていたが、有咲、美咲、蘭がガードしていた。

 

モカ「モカちゃんとお話しよ~」

飛鳥「……」

 

 飛鳥はゆっくりできると思ったが、スマホでモカが話しかけてきた。

 

飛鳥「…クラスの人たちと話さなくて大丈夫?」

モカ「大丈夫だよ~。蘭たちが頑張ってくれるから~」

蘭「ずるいんだけど!!」

 蘭が突っ込んだ。

 

 と、なんやかんやでモカと喋っていた。

 

 そしてあっという間に自然の家に到着した。

 

香澄・はぐみ「ついたーっ!!!」

 と、香澄とはぐみが叫び、他のメンバーもバスから降りた。

 

「さあ、バスから降りたら体育館に集合だ!」

 先生にそう言われて全生徒は体育館に集まり、諸注意を受けてそのまま部屋に向かった。当たり前だが、飛鳥はクラスメイトの男子と同じ部屋である。

 

飛鳥「宜しくお願いします」

「あ、うん…」

 

 そして午後はオリエンテーションが行われて、あっという間に風呂の時間になった。

 

「さて、女湯はここ。男湯は100m歩いた先にある!!」

「ええーっ!!」

「いくら覗かせたくないからって遠すぎない!!?」

 と、男子生徒達は文句を言った。

 

「つべこべ言うんじゃないッ! 早く行け!!」

 と、先生が男湯の方向を見たが、80m先に飛鳥が1人でいる事に気づいた。それを見て他の生徒達も困惑していた。

 

「…あそこにいるの、一丈字くんだよね?」

「いつの間に…」

「そんなにお風呂入りたかったのかな…」

 

 と、皆が困惑していたが、

 

「分かったぞ!! さてはアイツ、先に風呂に入って、女湯を覗こうとしてるんだな!!」

 一人の男子生徒が言い放った。1組である。

 

「マジかよ!?」

「いや、いくらなんでもそれは…」

 

 男子生徒達が色々話す中、香澄たちも顔を合わせて話していた。

 

香澄「飛鳥くんがそんな事する訳ないよね!?」

有咲「ていうか普通に考えて無理だろ…。先生もいるのに…」

 りみが困惑した。

 

こころ(信じてるわよ! 飛鳥!!)

 

 で、飛鳥は風呂に入ったわけだが…。

 

 風呂から出た後、飛鳥は一番最初に出てきた男子生徒の後ろについていって、自分の部屋に戻ろうとしていた。

 

「……」

 飛鳥の前を歩いていた男子生徒二人は不思議そうにしていたが、飛鳥は全く気にせず歩いていた。二人が足を止めると、飛鳥はそのまま歩いていった。

 

「な、なんだあいつ…」

「さあ…」

 

 飛鳥が元の場所に戻ってくると、Afterglowと鉢合わせした。

 

飛鳥「あ、また会いましたね」

モカ「飛鳥くん。まさかとは思うけど女湯覗いたりとかしてないよね?」

飛鳥「勿論ですよ。で、一人で歩くと疑われるので、あの人たちが来るまで脱衣所の外で待って、ずっと後ろを歩いてました」

「そういう事だったのか!!!」

 

 と、二人の男子生徒が突っ込んだ。

 

ひまり「な、何もそこまでしなくても…」

飛鳥「いやー。もう自分の身は自分で守らなきゃダメですからね。それでは」

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

蘭「モカ…」

モカ「ゴメ~ン…」

 すると後ろからイヴが現れた。

イヴ「どうしたんですか?」

巴「あ、イヴ。実は…」

 巴が事情を説明した。

 

イヴ「アスカさんがそんな事する訳がありません!!」

つぐみ「そ、そうだよね…」

 つぐみが苦笑いした。

 

蘭「モカ。後でちゃんと謝っときなよ」

モカ「分かったよ~」

 蘭の言葉にモカが唇を尖らせた。

 

 そして夕食。食事はバイキングだった。香澄たちに見つからないように、飛鳥は3組男子の近くの席で食べている。だが、会話をする事はなく、一人で黙々と食べていた。

 

蘭「……」

イヴ「……」

 蘭たちやイヴが声をかけようにも微妙な立ち位置だった為、迂闊に声がかけれなかった。

 

 飛鳥は食事を取りに行く事はなく、存在感を消して、食器を片付けてその場を去っていった。

 

香澄「あれ!? 飛鳥くんがもういない!!」

たえ「食べるの早いんだね…」

こころ・イヴ「……!!」

 

 香澄とたえが暢気な事を言っていたが、こころとイヴが驚いた。

 

モカ「…メールには『気にしないでください』って書いてるけど」

巴「きっとうちの男子たちに気を遣ってるんだな」

蘭「そんなに気にしなくてもいいのに…」

 

 モカ達は心配していた。

 

ひまり「…ねえ、やっぱり一丈字くん。何かあったんじゃない?」

つぐみ「え?」

 皆がひまりを見た。

 

ひまり「昔の事を話したがらないし、もしかして虐められてたんじゃ…」

巴「確かに言われてみれば、アタシ達に気を遣いすぎる所があるからな…」

 ひまりの言葉に巴も同意した。

モカ「……」

 

 そして食事が終わり、肝試しになった。飛鳥はいたって普通そうにしていた。

 

「回るのは班ごとで、順番はこれから決める! ちなみにクラスは1組、3組、2組の順番だ!!」

 

 と、早速肝試しが始まった。ちなみに班は男女混合で、香澄たちバンドガールズと一緒の班の男子の大半はウハウハだった。そりゃあもう幽霊が出た時に女子が抱き着いてくると思っていた…。

 

蘭(絶対にやらない!! 絶対にやらない!!)

巴(女子同士で固まればいいんだ…うん…)

 ちなみにAfterglowは見事にバラバラだった。

 

 そして肝試しが行われた。やっぱり脅かし役はとてつもなく怖く、生徒の大半を恐怖に陥れた(飛鳥はいつも通りだったが…)

 

 やっぱり事件は起きるのだった…。

 

「イヴちゃんと同じ班の男子が全員行方不明!!?」

 

 何という事だろう。イヴと一緒に組んでいた男子たちが行方不明になってしまったのだ。そして飛鳥が目を閉じて、超能力で感知して、場所を見つけた。

 

飛鳥(いた!! コースから外れたんだ!!!)

 

 飛鳥が目を開いた。

 

イヴ「ど、どうしよう…」

 イヴが困った顔をしていると、飛鳥とこころが顔を合わせて頷くと、飛鳥は存在感を消してそのまま走っていった。

 

「気にする事ないよ。イヴちゃん」

 と、男子がやってきた。

 

「こういう時、一丈字が何とかしてくれるだろ。おい、お前が行けよな。いっつも女子も助けてるんだから、男子も平等に…」

 と、男子が飛鳥に話しかけるが、もう既にいなかった。ちなみにこの男子は面倒事を押し付けたいのと、飛鳥の好感度を下げる為に、メタ発言をしたのだ。

 

こころ「飛鳥ならもう助けに行ったわ!!」

イヴ「ええっ!!?」

 イヴが驚いた。

 

「そ、それならいいんだ!」

 と、男子生徒は開き直るが、周りの視線が冷たかった。

 

「それならいいんだじゃねぇだろ…」

「何言ってんの…?」

「こんな非常事態に…」

「言い方ってもんがあるだろ…」

 

 という周りの生徒達のクレームで男子生徒は大人しくなった。

 

 

こころ(頼んだわよ…飛鳥!!)

 

 

つづく

 



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第63話「野外活動・2」


 前回までのあらすじ

 今回の遭難者はモブ男子4人だけど、飛鳥はお構いなしに助ける。

飛鳥「うん。女子だけしか助けないって完全にアレですもんね」
こころ「きっと心細いに決まってるわ!! 助けてあげて!!」
飛鳥「行ってきまーす」




 

 

 飛鳥は超能力で導き出した結果をもとに、男子たちの所にたどり着いた。

 

飛鳥「大丈夫ですかー!!!!」

 

 そして少し歩いたけど、飛鳥は無事に救出できた。ちなみに先生達には、こころを介して連絡して貰っていた。

 

 だが、帰る直前にトラブルが発生した。

 

「いいか! お前に助けて貰ったって言うと、オレ達のメンツがないから、オレ達は先に帰って来たという事にするからな!!」

飛鳥「お好きにどうぞ」

 

 先生達と帰る直前、男子生徒達が駄々をごねだしたのだ。飛鳥としては想定通りだった為、特に何も気にする事はなかった。

 

 そして飛鳥がそう言うと、男子生徒達が他の生徒達と合流していったが、飛鳥が陰からじっと見ていた。イヴを置いて置き去りした事に関して、有咲や美咲にこってり絞られた上に、飛鳥がいない事に関して色々言い訳したのか、更に怒らせていた。

 

飛鳥(あーあ…)

 飛鳥が頭をかきながらも、普通に帰ってきて合流した。

 

香澄「あっ! 飛鳥くん!!」

 と、皆が飛鳥を見ると、こころが飛鳥を出迎えた。そしてバンドガールズも飛鳥に続く。

 

こころ「おかえりなさい! お疲れ様!!」

飛鳥「あ、はい…」

美咲「でも、どうしてあなたが?」

飛鳥「遭難しそうな場所で心当たりがありまして…。それが当たりました」

 飛鳥が何とか誤魔化した。

 

香澄「それにしても、本当にお疲れ様」

たえ「疲れたでしょ」

飛鳥「いえいえ…」

 それを見て、男子生徒達が苛立っていた。

 

飛鳥「さて、そろそろ私は退かせて貰いましょうかね」

蘭「思ったけど、別に気にする必要なんてないよ」

飛鳥「そういう訳にも行きませんよ。皆さん人気者ですから」

「!」

飛鳥「では、失礼します」

 そう言って飛鳥は3組に合流していき、クラスメイトと話をしていた。

 

香澄「飛鳥くん…」

モカ「……」

 モカが険しい表情をしていると、イヴも険しい表情をしていた。

 

 こうして妙な空気のまま、肝試しは幕を閉じた。

 

 解散後、男子たちはイヴに近づこうとしたが、有咲や美咲がガードした。

 

「ちょ、邪魔すんなよ」

「オレはイヴちゃんに…」

美咲「一丈字くんにちゃんとお礼は言ったの?」

 という美咲の言葉に男子生徒達は苦笑いしながら、

 

「い、言ったさ…」

有咲「まあ、どっちにしろもう今日はイヴに近づくな」

「な、何でだよ!!」

有咲「何でだよって分かんねーのか!」

美咲「若宮さんを置き去りした上に、一丈字くんにお礼を言わずに、あんな仕打ちをしてよく近づけたわね!!」

 と、有咲と美咲が激怒すると、男子生徒達は怯んだ。こころ達もどうしたらいいか分からず、困惑していた。

 

 だが、飛鳥は何も言わずその場を後にした。

 

 飛鳥の部屋

 

飛鳥「すみませんね。お騒がせしました」

「あ、うん…」

「お疲れ様…」

飛鳥「それでは私はもう寝ます。おやすみなさい」

 

 飛鳥は布団に入って就寝すると、チームメイトたちはお互い顔を合わせた。この後香澄たちが訪ねてきたが、飛鳥に気を遣って追い返した。とってもいい人たちである。

 

 イヴの部屋。こころ・はぐみ・美咲と一緒だった。

 

こころ「大丈夫よイヴ。飛鳥なら…」

イヴ「はい…」

 イヴはずっと元気がなかった。

美咲「……」

はぐみ「みーくん。そんなにイライラしないで…」

美咲「だって! あまりにも一丈字くんが浮かばれないじゃない!!」

 と、美咲は男子生徒達が飛鳥にした仕打ちと理不尽さに激怒していた。

 

こころ「それは大丈夫よ」

美咲「どうしてよ」

こころ「飛鳥はあたしが笑顔にしてあげるわ!」

はぐみ「はぐみもはぐみもー!!」

 と、はぐみも同意すると美咲がある事を想いついた。

美咲「そうだ。皆ちょっと耳貸して。作戦思いついたわ」

 

 美咲はこころ、イヴ、はぐみを集めて作戦内容を伝えた。

 

こころ「いいわね! 任せて頂戴!」

はぐみ「さんせー!!」

イヴ「が、頑張ります!!」

 

 翌日。

 

飛鳥(こころから食堂前に来るように言われたけど、何かやる気だな…)

 飛鳥はこころからのメールで、食堂前に集まるように言われていて、向かっていた。

 

美咲「ちょっとどきなさいよ!!」

「一丈字の所に行く気だろ!!」

「嫌だ!!」

「行かせないからな!!」

 

 と、美咲達は来る途中で待ち伏せしてた男子たちに捕まって、飛鳥から引き離されていた。だが、黒服達に身柄を拘束された。

 

「く、くそー!!」

「離せー!!!」

 と、男子生徒達は叫んでいたが、どっからどうみても男子生徒達が悪い為、他の生徒は同情しなかった。そればっかりか、女子生徒達の評判はとてつもなく下がる。

 

 そして飛鳥は食堂前に来ていたが、Afterglowも一緒だった。

 

飛鳥「私に構わず行ってください」

モカ「面白そうだからモカもここにいる~」

飛鳥「いや、気にしなくていいので…」

 ちなみに女湯の件はちゃんと謝っている。

 

こころ「ごめん飛鳥!! 遅れたわ!!」

飛鳥「おはようございます」

 こころ、イヴ、はぐみ、美咲がやって来た。

 

飛鳥「何かありました」

美咲「もう最悪!! あいつら待ち伏せして、付きまとってたのよ!!」

はぐみ「なかなか離れてくれなかったの…」

こころ「でも黒服の人たちが追い払ってくれたわ!!」

飛鳥「でしょうね…」

 飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「それで何か御用ですか?」

こころ「一緒に朝ごはん食べましょ!」

飛鳥「えっ」

はぐみ「はぐみも飛鳥くんと一緒に朝ごはん食べたーい!」

イヴ「ご、ご一緒しても宜しいですか?」

飛鳥「少なくとも若宮さんは、事務所は大丈夫なんですか?」

イヴ「大丈夫ですよ?」

 イヴが首を傾げると、飛鳥が目を閉じた。

飛鳥「そうですか…」

こころ「それじゃ、食べましょう!」

モカ「あたし達も~」

 

 と、10人で食べる事になった。当然めっちゃ見られていた。

 

ひまり「や、やっぱり見られてるね…」

モカ「そりゃあ飛鳥くんハーレムだも~ん」

飛鳥「申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 

 中には血の涙を流している男子生徒達もいた。

 

飛鳥(まあ、いつまでもいる訳じゃないし、ちょっとだけ我慢して貰おう)

モカ(……)

 

 

つづく

 



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第64話「野外活動・3」



 前回までのあらすじ

 イヴ、Afterglow、ハロハピと食事をする事になった飛鳥。滅茶苦茶沢山の人に見られて、男子生徒達から嫉妬された。




 

モカ「どう~? 美少女たちに囲まれて食べる朝ごはんは~」

飛鳥「周りから突き刺さる視線さえなければ、極上なんですけどね」

 

 モカの言葉に対し、飛鳥の言葉に生気がなかった。今この瞬間も、彼女たちのファンである男子生徒達から嫉妬の眼差しを向けられていた。飛鳥としてもその気持ちは分かっていた。確かに好きな女が知らない男と一緒にいたら、気分も悪いし、気が気じゃない。だが、彼女たちはお構いなしに自分に構ってくる。

 

 ちなみに席順

 

美咲 こころ 飛鳥 イヴ はぐみ

蘭  ひまり モカ 巴  つぐみ

 

 完全に女子に囲まれていて、この状況であればハーレムと呼ばれてもおかしくはなかった。180度見渡しても美少女…もとい異性がいる。年頃の男子高校生にとってはたまらないシチュエーションであったが、飛鳥は割とそういうのに耐性があった為、いたって普通だった。

 

モカ「モカちゃん達の目もしっかり見れてるもんね~」

飛鳥「ええ、そうですね」

モカ「何で?」

飛鳥「何でって…」

 

 モカの唐突な質問に飛鳥が困った。

 

巴「もしかして妹がいるのか?」

 

 と、モカの質問に対し、巴が分かりやすいようにフォローを加えた。それを聞いて飛鳥は一安心した。

 

飛鳥「えーと…妹じゃなくて、女の従妹がいるんですよ」

モカ「中学時代とかモテたでしょ」

飛鳥「いいえ全く。寧ろ嫌われてましたよ」

 

 飛鳥の発言にひまりと巴が衝撃を受けた。昨晩、飛鳥はもしかして虐められてるんじゃないかと話をしていたが、事実そうだったので固まっていた。

 

モカ「トモちーん。ひーちゃーん。顔が面白い事になってるよー」

はぐみ「も、もしかして…お友達がいなかったの?」

飛鳥「いる事はいますよ。ただ敵が多かっただけの話ですから。今は…」

 飛鳥が周りを見渡したが、やっぱり嫉妬の視線を向けられていた。

 

飛鳥「…そんな事なさそうですけどね」

美咲「一丈字くん。困ったことがあったらいつでも言って。本当に大丈夫だから。寧ろ昨日あなたにお礼を言わなかったあいつらに、また怒りが湧いてきそうなんだけど」

 

 奥沢美咲。ハロー、ハッピーワールドのメンバーであり、ライブ時はミッシェルという着ぐるみに着替えてDJを担当している。ちなみにハロハピで正体を知っているのは、松原花音のみである…。彼女もこころ達のマイペースぶりに手を焼いていて、色々苦労している為、飛鳥の気持ちが物凄く分かっていた。

 

飛鳥「ありがとうございます。奥沢さん。もうその気持ちだけで十分です」

こころ「飛鳥! 皆に気を遣わせたくないのは分かるけど、無茶したらダメよ!」

飛鳥「大丈夫ですよ。言われなくても無茶はしませんよ。何もなかったら」

「無茶する気満々やん!!!」

 

 飛鳥の言葉に皆が突っ込んだ。

 

ひまり「あの、一丈字くん。本当に誰かに相談してね?」

巴「同じクラスで相談できる奴っていないのか?」

飛鳥「ああ。皆さん話は聞いてくださるので大丈夫ですよ」

 

 ちなみにクラスメイト達とは、ちょっと話す程度でそこまで仲良くはない。まあ、解決させたり、一緒に何かをしてくれなくても、話くらいは聞いてくれるだろうと飛鳥は信じていた。

 

ひまり「それなら安心ね…」

モカ「……」

 

 そんな中、モカはじーっと飛鳥を見つめていた。

 

飛鳥「どうされました?」

モカ「いやー。飛鳥くんって本当に不思議だなーと思って」

飛鳥「そうですか?」

モカ「うん。なんかまるでエスパーみたーい」

 

 モカの言葉に飛鳥とこころが反応したが、飛鳥がバレないようにこころに暗示をかけてバレないように仕向けた。

 

飛鳥(なかなか鋭いな…)

 

 飛鳥はモカを見つめた。

 

飛鳥「エスパーですか…」

モカ「もしかして本当に超能力者だったりしてー」

飛鳥「まさか」

蘭「モカ。からかわないの」

 

 と、蘭がモカを諫めた。飛鳥とこころとしては「美竹さん(蘭)ナイス!!!」と思っていた。

 

モカ「はーい」

 

 と、モカも蘭に言われてその場は退いた。

 

飛鳥(危ない所だった…)

こころ(ま、また問い詰められたりしないかしら…)

 

 こころは嘘をつくのが苦手だった為、正体を聞かれないか不安だった。

 

 ちなみにPoppin’partyはというと、皆夜更かしをしていたせいで寝坊していた。

 

香澄「うわ~ん!! もう食べる時間がないよ~!!」

有咲「だからあれほど言ったんだよ!!」

りみ「おなかすいた…」

 

 そして朝食が終わると、野外炊飯が行われた。

 

飛鳥(そういやこのシリーズで野外炊飯初めてだな…)

 

 飛鳥がそう考えていた。

 

飛鳥(ま、皆で作るんだし、特にトラブルもないか…)

 

 ところがどっこい。

 

「普通にカレーを作ったんじゃ面白くないから、食材を適当に作って、適当に作れ!!」

「そんな野外炊飯があるか!!!」

 

 料理は特に指定はなく、ある食材で野外炊飯をするようにとの事だった。しかも無駄に食材がある。

 

飛鳥(余った食材どうするんだろう…)

 

「ちなみに班は自由に組んでいいぞー。クラス問わず」

飛鳥(自由過ぎない?)

 

 その時、男子生徒達が一斉に香澄たちに押し掛けてきた。

 

「香澄ちゃん!! オレと組もう!!」

「おたえちゃん!! オレと組もう!!」

「りみちゃん!! オレと組もう!!」

「沙綾ちゃん!! オレと組もう!!」

「有咲ちゃん!! オレと組もう!!」

「蘭ちゃん!! オレと組もう!!」

「モカちゃん!! オレと組もう!!」

「巴ちゃん!! オレと組もう!!」

「ひまりちゃん!! オレと組もう!!」

「つぐみちゃん!! オレと組もう!!」

「イヴちゃん!! オレと組もう!!」

「こころちゃん!! オレと組もう!!」

「はぐみちゃん!! オレと組もう!!」

「美咲ちゃん!! オレと組もう!!」

 

 と、猛アタックしていて、飛鳥が困惑した。

 

「ちなみに一丈字は近づくなよ!!!」

「お前は朝良い思いをしたんだから!!」

飛鳥「あ、はい。それはもう…」

 飛鳥が食材に手を取ったが、先生に見られた。

 

「そこ!」

飛鳥(やっぱり1人はダメか…)

 

 先生に声をかけられたので、飛鳥は困惑した。それと同時に何で「おひとりさま」への風当たりがこんなにも冷たいのだろうと思った。日頃、協力し合う事が大切だと言うが、やる気のない奴の面倒を見るのは御免であると考えていた。そもそも何で言い出しっぺの先生は他人事なんだろうとも思っていた。

 

「1人でやるのはいいけど、他の人もいるから時間かけ過ぎないように!」

飛鳥「あ、はい! 分かりました!」

バンドガールズ「一緒にやろう!!!!」

 

 飛鳥の言葉にバンドガールズが思わず突っ込んだ。

 

 

おしまい

 



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第65話「野外学校・4」


 前回までのあらすじ

 野外炊飯をやる事になった飛鳥達だが、特にチームを組んでやる必要もなかったた為、飛鳥は一人でやる事にした。

 Q.ちなみにどうしてチームごとじゃないんですか?

先生「私も学生時代、グループワークを強制的にやらされたことがあってね。誰も仲間に入れてくれなかったんだよ。そんでもって当時の教師がこれがまた偉そうでね。協調性も大事だが、生徒の個性を重視したいと考えた!」

 ちなみにその先生は数年後痴漢で捕まって、大きくガッツポーズしたそうです。それも何度も…。

生徒達「すっごいどうでもいい情報!!!!」

 始まります。


 

 結局、飛鳥は一人でやる事にした。香澄たちが誘ってくれたが、男子生徒達の妨害があった為である。

 

飛鳥「さてと…簡単なの作りましょうかね」

 飛鳥はチャーハンを作ろうとし、白米をたいた。その間にナガネギなどの具を包丁で切ったが、もう手つきが完全にアレである。プロの中華料理人と同じだった。

 

飛鳥「炎はこれくらいでいいか…」

「……!!」

 

 器用に炎の調節をして、用意してあった中華鍋に卵を入れてお玉でかき混ぜた。その後に準備しておいた具、白米を投入してプロと同じようにかき混ぜて、フライ返しをしたが、それもまた上手だった為、生徒達を驚かせた。

 

こころ「凄いわね飛鳥!!」

 

 いつの間にか抜け出してきたこころが話しかけてきた。

 

飛鳥「普通ですよ」

こころ「もしかしておうちで料理とかしてるの!?」

飛鳥「最近はしてませんけどね」

 飛鳥が塩を入れて、またかき混ぜたが、これがまた慣れた手つきをしていて、生徒達をより驚かせた。

 

香澄「す、すごい…」

たえ「おうち…中華料理屋さんなのかな…」

 

 と、香澄たちが素直に驚いていた。

 

ひまり「…あれだけ凄かったら、皆嫉妬しちゃうよね」

巴「ああ…」

蘭「何か…日菜さんを見てるみたい」

ひまり「ああ…」

 

 ちなみに氷川日菜は何でもできる才能マンであり、大抵の事はちょっとやれば人並みに出来るのだ。だが飛鳥の場合は、ちょっとやれば出来るというものではなく、普通にやったら普通に出来るというタイプである。日菜の方が上達が早い。

 

こころ「そうだわ! あたし達、カレーライスを作ろうと思うんだけど、手伝ってくれるかしら!?」

飛鳥「え? 私で宜しいんですか?」

こころ「勿論よ! 飛鳥とお料理したいし、やっぱりこういうのは皆でやった方が楽しいわ!」

飛鳥「そりゃそうですね」

 と、飛鳥がチャーハンを盛り付けた。

 

飛鳥「ただ、このチャーハンはどうしようかな」

こころ「ちょっと食べてもいいかしら?」

飛鳥「どうぞ」

 こころがチャーハンを食べた。

 

こころ「とっても美味しいわ! うちのコックさんと同じくらい!!」

飛鳥「そりゃあ褒め過ぎですね」

こころ「そんな事ないわ! とっても美味しいわよ! あ、お鍋あたしが洗ってあげるわ!」

飛鳥「いいですよ。そこまでして貰わなくても」

こころ「させて頂戴!」

飛鳥「…そうですか? ありがとうございます」

 

 と、こころの言葉に飛鳥は苦笑いして、答えると他の生徒達は驚いた。

 

はぐみ「はぐみも飛鳥くんとお料理したーい!!」

美咲(今のうちに…)

 はぐみと美咲も抜け出して飛鳥とこころの二人と合流した。

 

イヴ「……!」

 そんな中、イヴは飛鳥の姿を見て、最初に出会った時の事を想いだしていた。

 

イヴ(あの時と全く変わらない…。弱きものを助け、強きものを挫く、まさにブシドー…)

 イヴも意を決して飛鳥達の所に向かった。

 

「畜生!! 結局こうなるのかよ!!」

「いや、待て!!」

「ハロハピとイヴちゃんは全滅だが、まだポピパとアフグロがいる!!」

「まだチャンスは…!!」

 

 と、男子生徒達が香澄たちを見つめたが、

 

有咲「さー。ポピパで料理始めるぞー」

 

蘭「あ、もうアフグロでチーム組んだから」

 

 有咲と蘭が露骨に断った。

 

「畜生!!」

「もうこの際普通の女子でもいい!!」

 

 と、普通の女子で妥協しようとしたが、当然誰も組んでくれるわけがなく、結局男子のみでやる事になった。

 

 飛鳥チーム

 

美咲「…一丈字くん。本当に料理上手だね」

飛鳥「恐縮です」

 

 飛鳥が器用に野菜を切ったり、向いているのを見て、美咲が驚いていた。

 

イヴ「あ、あの…何かお手伝いできることございませんか?」

飛鳥「今はございませんよ」

イヴ「そ、そうですか…」

 イヴがしゅんとした。

飛鳥「料理した後で、皿洗いなどがありますので、そちらをメインにお願いします」

イヴ「は、はい! 分かりました!!」

 と、イヴが嬉しそうな顔をしていて、飛鳥は不思議そうにしていた。

 

イヴ「ど、どうしましたか?」

飛鳥「いや、何か凄く嬉しそうだなと思いまして…」

イヴ「そ、それは…アスカさんと一緒にいるからですよ!」

 

 イヴの発言に空気が止まった。飛鳥は苦笑いし、美咲は頬を染めた。他の生徒達も驚いた顔をしていた。

 

「イ、 イヴちゃん…」

「もしかして一丈字の事を…」

「う、嘘だァ!!」

「そんなの認めない!!」

 

 男子生徒達は阿鼻叫喚だった。

 

飛鳥「私と一緒に?」

イヴ「はい! あの時、助けてくれたアスカさんと一緒にこうやって何か出来ると考えたら嬉しくて…」

 

 イヴの発言に男子生徒達は安心した。

 

「良かったー…」

「そ、そりゃアイドルだもんな」

「オ、オレは信じてたぞ!」

「嘘つけ!」

 

 ちなみに、女子生徒達はゴミを見る目で男子生徒達を見つめているか、無視して野外炊飯を進めていた。

 

 そして思い思いに料理を作って、野外炊飯を楽しんだ。楽しんだのだが…。

 

美咲「……!!!」

 美咲が絶句していた。

 

こころ「飛鳥って本当にお料理が上手なのね!!」

飛鳥「そんな事ないけど…器が」

 

 と、飛鳥チームだけ食器が豪勢で、他のチームの生徒達も見ていた。

 

美咲(こころの家が何かしたからとかじゃなくて、本当に美味しそうなのよね…!!)

はぐみ「早く食べよー!!」

 

 と、5人がそのまま食事にありついた。

 

こころ「うーん! 皆で作るとやっぱり美味しいわね!」

美咲(いや、殆ど一丈字くんが作ってたし、滅茶苦茶美味い…!! 本当に何者なの!? 一丈字くん…)

 

 美咲が飛鳥を見ると、飛鳥も美咲を見つめていた。

 

飛鳥「あ、お味は如何ですか?」

美咲「お、美味しいわ…」

飛鳥「そうですか。それは何よりです」

 と、飛鳥が妖艶な笑みを浮かべると、思わず美咲は頬を染めてしまった。

 

はぐみ「このマグロ団子もおいしー!!」

飛鳥「団子はそれだけですけど、カレーはまだあるので、沢山食べてくださいね」

こころ・はぐみ「はーい!!」

 そんな中、イヴは飛鳥を見つめていると、飛鳥はイヴを見た。

 

飛鳥「若宮さんも如何ですか?」

イヴ「は、はい! 頂きます…」

 イヴがカレーを食べた。

 

イヴ「とても美味しいです!」

飛鳥「そうですか」

イヴ「……」

 イヴが飛鳥を見つめた。

 

飛鳥「どうされました?」

イヴ「その…あの時助けてくれたのもそうですし、カレーの時もそうですし、アスカさんはどうしてこんなに凄いのですか?」

飛鳥「そんな大したものではございませんよ」

 飛鳥は即座に言い返す。

 

イヴ「もしかして、ブシドーを極めているのですか!?」

飛鳥「…武士道?」

 飛鳥が困惑した。

美咲「えっと、イヴちゃんね…」

 と、美咲が事情を説明した。イヴは元々「自分の意思を貫く強さ」や「仲間を思う心」を大切にしており、その信条と「ブシドー」の精神が一致していた為憧れを抱くようになった。

 

飛鳥(おお…いかにも外国人が日本人に抱くイメージだな…)

 

 飛鳥が困惑した。

イヴ「違うのですか?」

飛鳥「ちょっと違いますね」

 飛鳥は答えた。

 

飛鳥「私はどっちかっていうと、浪花節ですね」

イヴ「ナニワブシ?」

飛鳥「義理と人情を重んじてますね。まあ、社会のルールを守るという事と、まあ…思いやりですね。仲間だけでなく、人に対して」

 イヴは衝撃を受けた。

 

美咲「…何で浪花なの?」

こころ「飛鳥は大阪生まれなのよ!」

美咲「そうだったの!!?」

はぐみ「関西弁喋らないから、ずっと東京の人だと思ってた!!」

 

 こころの言葉に美咲とはぐみが驚いていた。飛鳥としてはそんなに驚く事かな…と思って、美咲とはぐみを見ていた。

 

はぐみ「やっぱり、何でやねんとか言ったりするの!?」

飛鳥「言わないですよ。寧ろそのイメージがまさになんでやねん」

美咲「関西人だ!! れっきとした関西人だ!!」

 

 と、飛鳥チームは大盛り上がりになった。

 

イヴ「ナニワブシ…ブシドーとはまた違うブシドー…興味深いです!!」

 イヴも大興奮だった。

 

 そしてそんな5人を見て…。

 

「滅茶苦茶楽しそう…」

「ていうか、一丈字もう自重してなくね?」

「オレもあんな風にお喋りしたかったぁ~!!」

「おのれ一丈字~!!!」

 

 と、男子生徒達は嫉妬していた。

 

香澄「おーい! 私達も仲間に入れて~!!!」

 

 

 なんだかんだで楽しい林間学校だったそうです。

 

 

おしまい

 



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男子生徒達の妄想シリーズ
第41話「Pastel*Palettesと♥」


 ある日のバンドリ学園。食堂で男子生徒達は嘆いていた。

 

「ちくしょう!! どうしてあいつばっかり!!」

 

 憧れのバンドガールズが飛鳥ばかりに懐く為、男子生徒達は面白くなかった。彼らは飛鳥がくる以前から彼女たちのファンでライブにも足を運んでいた。

 

 学校も同じという事もあり、何度もお近づきになろうとしたが、一部のバンドガールがしっかりガードしていた為、上手くいかなかった。

 

 しかし、ある日突然転校してきた一丈字飛鳥はそれを難なくクリアするどころか、バンドガールから声をかけられていた。勿論嫉妬するものの、不思議でしょうがなかった。

 

 だが、度重なるバンドリ学園のトラブルを解決したのも事実であり、実力は認めているものの…。

 

「やっぱり不公平だ!!」

「オレ、プレミア会員にも入ったのに!!」

「こんな事があっていいのか!!?」

「どうしてあいつばかり!! 主人公だからか!!? 主人公だからか!!?」

 

 なんて言い出す始末。

 

「も、もしかして…!!」

「どうした!?」

「もしかして、一丈字に脅迫されてるとか…」

 

 もしここに飛鳥がいたらこう言うだろう。「いや、そうはならんやろ」と。「もし脅迫してるなら湊先輩とか白鷺先輩とかあんな態度取らんやろ」と突っ込むだろう。

 

「そ、そうなのか!!?」

「オレもそうだと思っていたんだ!!」

 

 と、男子生徒達が考えた。

 

「も、もし脅迫しているとするなら、一丈字は千聖ちゃん達を侍らせているんだろうな…」

「あ、ああ…」

「例えば…」

 

 

 ここからは男子生徒達の妄想です。

 

**********

 

飛鳥「事務所に来てみたはいいけど、どういう事なんだろう」

 

 飛鳥はPastel*Palettesの事務所に来ていた。

 

「一丈字様ですね。お待ちしておりました。こちらにどうぞ」

飛鳥「あ、はい。ありがとうございます」

 

 と、飛鳥は受付に案内されてPastel*Palettesがいる部屋に通された。

 

 受付がノックすると、

 

「あ、ちょっと待ってくださーい!!//////」

 と、彩が叫んだ。

 

「あれ!? 飛鳥くんもう来たんだ! どーぞ!」

「いや、良くないわよ!! 私達着替えてるのに!!//////」

「そうっすよ!!//////」

「さ、流石に恥ずかしいです…/////」

 

 と、日菜の言葉に千聖、麻弥、イヴが恥ずかしそうに叫んだ。それを見て飛鳥は困惑していた。

 

日菜「えー。だって飛鳥くん此間あたし達の下着姿を見たのに、無反応だったもん」

 

***********

 

「し、下着を見ただとぉ!!?」

「何で見られた前提で妄想してんだよ」

「いや、あいつ見てそうだったから…」

 

************

 

 妄想に戻り、仕方がないので彩たちが着替え終わるまで待つ事にした飛鳥。ソファーに腰を掛けて、スマホでヤフーニュースを見ていた。

 

 そして部屋に入れたのが20分後である。

 

飛鳥「本日は御招き頂きありがとうございます」

日菜「固いよー。もうちょっとリラックスして!」

 

 飛鳥とPastel*Palettesが向かい合っていた。

 

飛鳥「何か御用でしょうか」

彩「あ、えっとね。此間助けて貰ったから、何かお礼をしようと思って」

飛鳥「あ、それでしたら丸山先輩にちょっと聞きたい事がありまして」

彩「な、なに?」

飛鳥「まん丸お山に彩りを…って、あれどういう意味でしょうか」

 空気が止まった。

彩「え、えっとぉ…」

日菜「あたしも若干変だと思ったんだ」

彩「ちょっと日菜ちゃん!! 飛鳥くんも変だと思ってたの!!?」

飛鳥「いや、そうじゃなくて…どういう意味なのかなって」

彩「そのままだよ。私、丸山彩って名前だから」

飛鳥「あ、理解できました」

 飛鳥が納得した。

 

飛鳥「ありがとうございます」

千聖「まさかこれで終わりだと思ってる?」

飛鳥「はい」

日菜「飛鳥くんのそういう所るんってするけど、それだけの為に皆集まるのはるんってしないよ~」

彩「あの、日菜ちゃん?」

 彩が黒い笑みを浮かべる。

 

日菜「助けて貰ったから、何だっけ…ご奉仕してあげようかなと思って!」

飛鳥「ご奉仕?」

千聖「私達が誠心誠意をこめておもてなしをしようと思うの」

飛鳥「何か申し訳ないですわ」

 飛鳥が困惑した。

麻弥「遠慮なさらないでください」

イヴ「そうですよ!」

飛鳥「いや、そういう事されると、他の方が皆さんにそういうおもてなしをされたいが為に、新たなトラブルを起こす可能性が…」

日菜「考えすぎだよー」

飛鳥「ファンの怖さをなめてはいけませんよ」

 飛鳥が首を横に振った。

 

飛鳥「というか、こうやって世間話をするだけでも、大サービスみたいなもんじゃないですか」

千聖「まあ、自分で言うのもあれだけど芸能人だからよ。人の厚意は素直に受け取っておくものよ?」

日菜「そうそう! で、何して欲しい!?」

飛鳥「日菜先輩と白鷺先輩で漫才してください」

千聖「」

日菜「おもしろそー!! やろうやろう!!」

千聖「え、ちょ日菜ちゃ…」

 

 飛鳥のリクエストで日菜と千聖が漫才をやる事になった。

 

日菜「はいどーもー!! ヒナチサトです!!」

千聖「よ、宜しくお願いします…」

 

 彩、麻弥、イヴと共に観戦していた。

 

日菜「ねえねえ千聖ちゃん」

千聖「何かしら日菜ちゃん」

日菜「漫才って初めてやってみたけど、るんってするねー」

千聖「…私はやりたくなかったのだけど」

日菜「えー。そんな事言わないでー」

 

 と、漫才にはなっていた。

 

日菜「あ、そうだ! 漫才って言ったらあたしやってみたい事があるんだけど、見て貰ってもいい?」

千聖「な、なに?」

日菜「別嬪さん、別嬪さん、一つ飛ばして別嬪さん! で千聖ちゃん突っ込んで!」

千聖「え、ちょっと待って。わた」

日菜「それじゃ行くよ! 別嬪さん! 別嬪さん!!」

 麻弥とイヴを指さして、次が飛鳥だった。

日菜「別嬪さん!!」

千聖「一つ飛ばしてないじゃないの!!」

彩「ていうか日菜ちゃんさっきから、私に喧嘩売ってる!!?」

 彩も突っ込むと、麻弥とイヴが大笑いした。

 

日菜「喧嘩売ってないよー。彩ちゃんならいいツッコミしてくれると信じてたよ♪」

彩「な、何か全然嬉しくない…」

千聖「あの日菜ちゃん!? 相方私よね!!?」

日菜「千聖ちゃん! 漫才に参加してくれたね!!」

千聖「うっ…/////」

 千聖がツッコミをした事で日菜が喜び、千聖が思わず照れた。

 

日菜「これも彩ちゃんのお陰だよ! ありがとー!!」

彩「え、あ、そ、そう…?」

 と、彩も思わず照れた。

 

飛鳥(平和だ)

麻弥(やっぱり日菜さん…才能マン、いや才能ウーマンですね…)

イヴ(ブシドーを感じました)

 

 

******************

 

「うわあああああああああああああ!!! 何だこの羨ましい空間!!」

「オレもパスパレと世間話してぇええええええええええええ!!!」

 と、男子生徒達が騒いでいるのを遠くから、飛鳥とPastel*Palettesの5人が見ていた。

 

 

飛鳥「……」

 飛鳥は何とも言えない感じだった。

 

日菜「千聖ちゃん!」

千聖「しないわよ」

日菜「いや、肩に糸くずついてるよ」

彩「あ、ホントだ」

千聖「ありがとう!!!」

麻弥「漫才になってるっすね…あ、ごめんなさい」

 麻弥が苦笑いすると千聖が睨みつけた。

 

イヴ「ブシドーを感じました!!」

 

 

おしまい

 



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第50話「全員と♥」

 ある日のバンドリ学園。食堂で男子生徒達は嘆いていた。

 

「ちくしょう!! どうしてあいつばっかり!!」

 

 憧れのバンドガールズが飛鳥ばかりに懐く為、男子生徒達は面白くなかった。彼らは飛鳥がくる以前から彼女たちのファンでライブにも足を運んでいた。

 

 学校も同じという事もあり、何度もお近づきになろうとしたが、一部のバンドガールがしっかりガードしていた為、上手くいかなかった。

 

 しかし、ある日突然転校してきた一丈字飛鳥はそれを難なくクリアするどころか、バンドガールから声をかけられていた。勿論嫉妬するものの、不思議でしょうがなかった。

 

 だが、度重なるバンドリ学園のトラブルを解決したのも事実であり、実力は認めているものの…。

 

「やっぱり不公平だ!!」

「オレ、毎回ライブにもいってたのに!!」

「こんな事があっていいのか!!?」

「どうしてあいつばかり!! 主人公だからか!!? 主人公だからか!!?」

 

 なんて言い出す始末。

 

「も、もしかして…!!」

「どうした!?」

「もしかして、一丈字に脅迫されてるとか…」

 

 もしここに飛鳥がいたらこう言うだろう。「いや、そうはならんやろ」と。「もし脅迫してるなら湊先輩とか白鷺先輩とかあんな態度取らんやろ」と突っ込むだろう。

 

「そ、そうなのか!!?」

「オレもそうだと思っていたんだ!!」

 

 と、男子生徒達が考えた。

 

「も、もし脅迫しているとするなら、一丈字は友希那ちゃん達を侍らせているんだろうな…」

「あ、ああ…」

「例えば…」

 

 皆が男子生徒Aを見た。

 

「こんな事をやっているのではないだろうか…!!」

 

 ここからは男子生徒達の妄想です。

 

******

 

「(飛鳥の呼び名)!! 私と付き合って!!」

「……」

 

 飛鳥はバンドガールズ達から告白されていた。

 

飛鳥「いや、彼女いるんで」

「いいよ」

「!?」

 

 すると一人の少女が飛鳥の横に立った。宇田川あこ。Roseliaのドラムである。

 

あこ「側室で良かったらね! 正妻はあこだよ!」

 

*******

 

「ちょっと待って。何で宇田川妹?」

A「あの子独占欲強そうだから…」

「てか一夫多妻制!!?」

「それもそうだけど、側室って言葉良く知ってたなぁ…」

 

***********

 

こころ「いいわよ! あたしはそれでも!」

日菜「側室でも飛鳥くんと付き合えるんだよね!? いーよ!!」

紗夜「ちょ、ちょっと日菜!!//////」

 

 何という事でしょう。バンドガールズが次々と飛鳥に告白をしては、彼女になろうとしているではありませんか。

 

飛鳥(目を閉じれば、何とも言えない顔をしているバンドリ関係者の方々が見える)

 飛鳥は静かに目を閉じていた。

 

蘭「……」

飛鳥「…どうしたんです?」

あこ「だ、だって最初に告白したのあこだもん!! 蘭ちゃんでも譲らないもん!」

蘭「いいし。本妻の座、奪ってみせるから」

飛鳥「…と、言いますと?」

蘭「い、言わせないでよ//////」

 蘭がそっぽを向いた。

あこ「いやー。蘭ちゃんは華道関係でいい人見つかるんじゃ…」

蘭「同い年の子はいるけど、タイプじゃないよ」

 

 と、蘭も側室になった。なんてこった。

 

麻弥「せ、正妻じゃないのは残念ですが、側室ならジ、ジブンにもまだチャンスが…フヘヘ…」

あこ「パスパレはイケメン俳優とか狙えるんじゃないの?」

日菜「えー。全然るんってしない」

麻弥「苦手っす…」

 日菜と麻弥が嫌そうにした。

日菜「あこちゃんこそ、中等部でモテたりしないの?」

あこ「モテるけど、センパ…じゃなかった、飛鳥くんがいーの!」

 と、あこが飛鳥にくっついた。

 

ひまり「それだったら私も…」

あこ「ひーちゃんはダメ」

ひまり「何で!!?」

あこ「だっておっぱい大きいんだもん!! それで飛鳥くんを誘惑するつもりなんでしょ!!」

ひまり「ちょっと私の存在価値胸だけみたいな感じで喋るのやめて!!」

日菜「あたしと麻弥ちゃんだって…」

麻弥「あの、やめてください。ジブンそんな大層な物持ってないので//////」

蘭(わ、私だって…/////)

 

燐子「そ、それじゃ私は…」

あこ「……」

 あこが燐子を見つめていた。

 

あこ「…うーん」

 あこが真剣に悩むと、飛鳥が困惑した。

あこ「りんりんは…まあ、ギリOK」

ひまり「私もギリOKにして!! おねーちゃんの友達!!」

日菜「別にさー。おっぱい大きくてもいいんじゃない?」

あこ「ダメ!」

日菜「大きい子と小さい子で飛鳥くんに夜のご奉仕を…」

飛鳥「……」

 飛鳥は何も言わなかった。

日菜「飛鳥くん。何を想像してたのかな~?」

飛鳥「日菜先輩をしめあげる想像をしてました」

紗夜「そうね。両耳をつねって50m走」

日菜「痛いよ!!!」

 

 物騒な考えをしていたので日菜は耳を手で押さえた。

 

沙綾「……」

 沙綾は考えていた。

あこ「もしかしてさあやちゃんも…!?」

飛鳥「それはないでしょ。弟くんや妹さんがいるのに…」

沙綾「いや、寧ろ家族の理解は得てるわ」

飛鳥「小さい子に何を教えてるんですか?」

あこ「流石にそれはドン引きだよ…」

 沙綾の爆弾発言に飛鳥とあこが引いた。

 

有咲「……」

香澄「あれ? もしかして有咲も飛鳥くんの…なんだっけ」

たえ「側近」

りみ「…側室だよ」

香澄「になりたいの?」

有咲「そ、そんなんじゃねーし」

あこ「有咲先輩は香澄先輩と結婚すればいいじゃないですかー」

有咲「おーい。私達の性別理解できてるのかなー?」

香澄「え!? 私どっちやればいいの!!?」

有咲「あ、すいませーん。次回からこいつ出番なしで」

香澄「何で!!? それだったら有咲より先に飛鳥くんの側室になっちゃうもんね!!」

「いや、側室そんなノリでなるもんじゃねーから!!!」

 

 飛鳥が額を抑えた。

 

飛鳥「ていうか本命もいるのに何でこんな事に…」

あこ「飛鳥くんが魅力的なのが悪いんだよ」

「そうだそうだ!!」

飛鳥「えー…」

 

 と、バンドガールズ達に不満を言われて飛鳥が困惑していた。

 

 

*********************

 

「なんて事に…」

「うわあああああああああああああああああああああ!!!」

「一丈字の奴、どんだけ上から目線なんだぁ!!」

「自分はイケメンで天才だから余裕だってかぁああああああああ!!?」

 

 と、男子生徒達が興奮しまくっているのを遠くから、飛鳥と25人の少女たちが見ていた。

 

飛鳥(節目の回にやる話じゃねーだろ…)

 バンドガールズと共にドン引きしていた。

 

香澄「あ、50回目だね!」

飛鳥「ええ…」

香澄「そうだ! 今日はお祝いしようよ! 有咲の家の蔵で!」

有咲「いや、26人も入らねーから!!!!」

 

 

おしまい

 



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第73話「ハロハピと!」

 

 

 ある日のバンドリ学園。カフェテリアで男子生徒達は嘆いていた。

 

「ちくしょう!! どうしてあいつばっかり!!」

 

 憧れのバンドガールズが飛鳥ばかりに懐く為、男子生徒達は面白くなかった。彼らは飛鳥がくる以前から彼女たちのファンでライブにも足を運んでいた。

 

 学校も同じという事もあり、何度もお近づきになろうとしたが、一部のバンドガールがしっかりガードしていた為、上手くいかなかった。

 

 しかし、ある日突然転校してきた一丈字飛鳥はそれを難なくクリアするどころか、バンドガールから声をかけられていた。勿論嫉妬するものの、不思議でしょうがなかった。

 

 だが、度重なるバンドリ学園のトラブルを解決したのも事実であり、実力は認めているものの…。

 

「やっぱり不公平だ!!」

「こんな事があっていいのか!!?」

「どうしてあいつばかり!! 主人公だからか!!? 主人公だからか!!?」

「だけど、結果的にあの子たちの笑顔は癒しなんだよ!!」

 

 なんて言い出す始末。

 

「も、もしかして…」

「どうした!?」

「もしかして、仲が良いという事は、あれもしているのか!?」

「あ、あれって…」

 

 一人の男子生徒が皆を見た。

 

「性教育もしているのか!!?」

 

 もしここに飛鳥がいたらこう言うだろう。「いや、そうはならんやろ」と。

 

「な、なんだとぅ!!?」

「いや、何で性教育なんだよ…」

「オレもそうだと思っていたんだ!!」

 

 と、男子生徒達が考えた。

 

「純真なこころちゃん達を奴は穢そうとしているんだ…」

「どんな風に?」

「例えば…」

 

 ここからは男子生徒達の妄想です。

 

――

 

こころ「飛鳥! ちょっといいかしら」

飛鳥「あ、はい。何でしょう」

こころ「××××ってなにかしら!?」

 

 こころの発言に飛鳥は真顔になった。

 

飛鳥「…保健の授業で習わなかった?」

こころ「習ってないわ?」

 

 こころ率いるガールズバンド『ハロー、ハッピーワールド』は屈指の変人ばかりが揃っていて、ライブも毎回奇想天外なものばかり、特にこころは超大金持ちの娘で、やる事もスケールがでかすぎる為、『バンドリ学園の異空間』とも呼ばれていた。

 

飛鳥「それを異性に聞くあたり、流石だとしか言いようがないんだけど…」

こころ「飛鳥は知ってるの? ××××」

飛鳥「そりゃあ保健の授業で性教育あったからね…」

 

 飛鳥が困惑した。下手な事を言えば黒服に消される可能性もあり、最悪の場合自分の同級生である日向と椿に知られる可能性がある。そうなると滅茶苦茶めんどくさい事になる。孤立するならまだいい。それ以上の事になると収拾がつかなくなる。しかもこころ自身が純粋無垢で悪気がないのもまた質が悪い。

 

こころ「教えて頂戴!」

飛鳥「…ごめん。知ってる事は知ってるけど、異性が教えてはいけないんだよ」

 飛鳥は何とか誤魔化した。

こころ「どうして?」

 こころの問いに、飛鳥は何とか納得がいくように説明した。

 

こころ「そうなのね…。××××ってそういうルールがあるのね…」

飛鳥「他の人に聞いてみたらどうですか?」

こころ「分かったわ!!」

 

 と、こころが去っていったが…。これがまた大変な事になった。

 

こころ「薫」

薫「こころじゃないか。どうしたんだい…」

こころ「××××ってなーに?」

薫「!!?///////」

 

こころ「花音―」

花音「ど、どうしたんですか?」

こころ「××××ってなーに?」

花音「ふぇえええええ!!?///////」

 

こころ「美咲―」

美咲「な、何よ。また何か企んで…」

こころ「××××ってなにかしら?」

美咲「はぁ!!?//////」

 

 ハロハピメンバーに聞いて回ったのだ。薫と花音は耐性がなく、飛鳥と同じようにごまかしたが、美咲はこのままだと他のバンドグループに迷惑がかかると考えた為、何とか食い止めた。ちなみにはぐみには聞いていなかった。

 

美咲「あのね…××××っていうのはね…」

こころ「ふんふん…」

 

 

 そして…

 

こころ「という訳で、今日は性教育について勉強するわよ!!」

美咲「もうやだぁ~!!! 何でこうなるのぉ~!!!!」

 

 まさかの性教育について講習する事になり、こころとはぐみ以外のメンバーのテンションが最底辺になっていた。美咲は涙目だった。

 

はぐみ「勉強は苦手だけど、××××についてしりたーい」

薫「こ、これは夢だ…」

 

 薫はガタガタ震えていて、花音は顔を真っ赤にしてモジモジしていた。そりゃそうだ。

 

美咲「ち、ちなみにこころ? 性教育って具体的にどんな事を勉強するのかしら?」

こころ「そうね! まずこの本でも見て、どういう事をしてるか見てみましょう」

美咲「いや、保健の教科書じゃないんかい!!」

 

 だが、本当の悲劇はここからだった。良く見たらエロ本である。

 

美咲「こ、こころ…。それ、どこから仕入れて…」

こころ「以前、性教育を勉強するならこれがいいって、〇〇(1組男子)が教えてくれたわ?」

美咲「〇〇~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!」

 

 美咲が激怒してその男子生徒の名前を叫んだ。この後黒服たちにメッタメタにされたが、女性だった為、ご褒美でしかなかったという。

 

美咲「とにかくペッしなさいペッ!!!」

こころ「どうして?」

美咲「何でも!! とにかくそういう本は18歳未満は読んじゃダメ!!!」

はぐみ「どうして?」

美咲「うっ…」

 

 こころとはぐみの純粋無垢な目に美咲は困惑した。薫は死にかけていて、花音は「美咲ちゃん頑張って!!」という顔をしていた。

 

こころ「どうして?」

はぐみ「どうして?」

こころ・はぐみ「どーして?」

 

美咲「そ、そんなの私にも分かんないわよ~!!! うわ~~~~~ん!!!」

 

 と、美咲が泣き叫んだ。

 

 

**************

 

「…これ、奥沢さんが可愛いっていうだけの妄想じゃね?」

「一丈字途中からどこ行ったんだよ…」

「こういうシチュエーション…イイ!!」

「お前の願望かい!!!」

 

 そしてそれを遠くから飛鳥とハロハピメンバーが見ていた。

 

美咲「……」

 美咲が激怒していて、花音とはぐみが飛鳥の後ろに隠れていた。

 

こころ「美咲? 何を怒ってるのかしら?」

飛鳥「今は黙っていなさい」

薫「は、儚くない…」

 すると美咲は飛鳥達の方を見た。笑顔ではあるものの、青筋が立っていた。

 

美咲「ねえ、皆」

はぐみ・花音「は、はいぃぃぃぃっ!!!」

飛鳥「どうされました?」

 

 花音とはぐみが怯える中、飛鳥は困惑していた。

 

美咲「そんなに言うなら…お望み通り性教育しましょうか?」

 

 美咲の言葉にハロハピメンバーと飛鳥が驚いた。

 

飛鳥「一体どうしたというんですか」

薫「考え直すんだ。子猫ちゃん…」

花音「ふ、ふぇええええ…//////」

 

 美咲のまさかの発言に飛鳥、薫、花音が慌てた。

 

美咲「どうしてもあの男子(バカ)どもに一矢報いてやらないと気が済まないんですよ。そこまで言うならハロハピで一丈字くんにご奉仕してあげましょう!」

飛鳥「奥沢さん。落ち着いてください。本当に落ち着いてください」

こころ「ご奉仕?」

美咲「そうよー。性教育をするのにとっても大切な事なの」

こころ「それは興味深いわ! それじゃ今度ハロハピと飛鳥で性教育について勉強しましょう!!」

飛鳥(あ、オレ今度こそ終わったわ)

 

 こころの発言に飛鳥は人生終了のお知らせを感じとった。

 

「い、一丈字とハロハピが性教育だとぅ!!?」

「何それ!! めっちゃご褒美やん!!!」

「オレも混ぜてくれぇええええええええええ!!!」

 と、男子たちは嘆いていたが、美咲は笑顔でこう言った。

 

美咲「それじゃ、精々ハロハピと一丈字くんが性教育をしているのを想像しながら、1人で惨めにエッチな妄想でもしてなさいな。好きなだけ♪ 行きましょ」

 美咲は飛鳥の肩を組んで去っていくと、他のメンバーも去っていった。

 

「くぅ~!! 奥沢さんの罵声とあの蔑んだ目、たまんねぇ~!!!!」

「妄想がはかどるぜぇ…!!!」

 

 と、男子たちは皆懲りてなかった。

 

 

 で、どうなったかというと…。

 

美咲「男なんて皆馬鹿よ!! 馬鹿よ!! 馬鹿よ!!!」

 

 と、飛鳥と花音と共にゲームセンターにいたが、サンドバックをひたすら殴り続けていた。それを見て飛鳥と花音は苦笑いするしかなかった。

 

 

おしまい

 



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第77話「沙綾と!」

 ある日のバンドリ学園。食堂で男子生徒達は嘆いていた。

 

「ちくしょう!! どうしてあいつばっかり!!」

 

 憧れのバンドガールズが飛鳥ばかりに懐く為、男子生徒達は面白くなかった。彼らは飛鳥がくる以前から彼女たちのファンでライブにも足を運んでいた。

 

 学校も同じという事もあり、何度もお近づきになろうとしたが、一部のバンドガールがしっかりガードしていた為、上手くいかなかった。

 

 しかし、ある日突然転校してきた一丈字飛鳥はそれを難なくクリアするどころか、バンドガールから声をかけられていた。勿論嫉妬するものの、不思議でしょうがなかった。

 

 だが、度重なるバンドリ学園のトラブルを解決したのも事実であり、実力は認めているものの…。

 

「やっぱり不公平だ!!」

「オレ、毎日やまぶきベーカリーに出入りしてるのに!!」

「いや、パン買えよ」

「こんな事があっていいのか!!?」

「どうしてあいつばかり!! 主人公だからか!!? 主人公だからか!!?」

 

 なんて言い出す始末。

 

「そういえば…!!」

「どうした!?」

 男子生徒Aがある事を想いだすと、生徒達が反応した。

 

A「あいつ、山吹沙綾の妹と仲が良かったよな…」

「お、おう…」

 何か嫌な予感がし始める男子生徒達。

 

A「もしかして、こう言う事が起きているのかもしれない!!!」

 

 ここからは男子生徒達の妄想です。

 

――

 

 やまぶきベーカリー。なんやかんやで遊びに来ていた飛鳥。帰ろうとした矢先、紗南が突然飛鳥と沙綾の3人で風呂に入りたいと言いだした。

 

沙綾「…どうして?」

紗南「ふたりとも、だいすきだから…」

飛鳥「純お兄ちゃんは?」

紗南「……」

 

 *******

 

「待て待て。純お兄ちゃん可哀想だろ」

A「いや、こんなもんだぞ。うちの妹なんかオレの事いない事にしてたからな。その人間性が原因で彼氏に振られた。ざまーみろ!!!」

「…よ、良かったね」

「人間性っていうあたり、よっぽど恨んでたんだなぁ…」

A「しかももったいないくらいの有望株」

 

 ********

 

飛鳥「いや、流石にそれは…」

沙綾「いいわよ」

飛鳥「え」

 飛鳥が沙綾を見た。

 

沙綾「勿論バスタオルは巻くわ! 流石にスッポンポンは恥ずかしいから…/////」

飛鳥「あ、はい…」

 

 と、仕方なしに飛鳥は混浴する事となった。

 

飛鳥「一緒に風呂入るなら、私が服を着たまま紗南ちゃんの髪洗いましょうか?」

沙綾「それもいいけど…」

紗南「いっしょにゆぶねにつかりたい」

飛鳥「……」

 

 

 で、結局一緒に入る事になりました。

 

沙綾「先に入ってて。あなたが先に入った後で、私達はいるから」

飛鳥「あ、はい…」

 

 と、飛鳥は本当に服を脱いで山吹家の浴場へ。普通に大問題である。

 

飛鳥(妄想とはいえ、クビになるだろうなー)

 妄想内でもメタ発言は忘れない。

 

 飛鳥は適当に髪とか洗っていた。脱衣所では沙綾や紗南が服を脱いだりしているが、全く見向きもしなかった。そりゃそうだ。沙綾ならともかく紗南が脱いでる所をガン見しようものなら、犯罪者である。

 

 *******

 

「…なんか一丈字が覗くイメージ全くねぇ」

A「だからだよ~。そうやって紳士的に見せかけて、ここぞって時にオスの本能を出して、メスをメスにしていくんだよ」

「名誉棄損で訴えられないようにな…」

 

 *******

 

 飛鳥が髪と体を洗った後、沙綾と紗南が入ってきた。沙綾はバスタオルを巻いているが、紗南は巻いていない。

 

飛鳥「あ、もう髪と体は洗ったので、どうぞ」

沙綾「ありがとう」

 と、飛鳥は湯船に入っていったが、その時沙綾は飛鳥の方を見る事はなかった。

 

沙綾「紗南。髪洗うから」

紗南「うん」

 と、沙綾が紗南の髪と体を洗ったが、まさにシュールだった。

 

飛鳥(あまりしゃべった事のない同級生の家で混浴って…。完全に漫画だなぁ…)

沙綾(我ながら大胆過ぎた。どうしよう、何話せばいいかな…)

 

 飛鳥は沙綾や紗南と同じ方向を見て、極力彼女たちの裸を見ないようにした。

 

 そして洗い終わると…。

 

沙綾「紗南入れてくれる?」

飛鳥「あ、はい」

 飛鳥、沙綾の身体を見ないように移動すると、紗南が湯船が入ってきた。

飛鳥「肩まで浸かろうね」

紗南「うん」

 

 沙綾が髪を洗っている間、飛鳥と紗南が湯船に浸かっていた。

 

沙綾(ちょ、ちょっとくらいならいいよね…/////)

 沙綾が体を洗うために、ちょっとだけバスタオルをめくったが、飛鳥は全く気にせず、沙綾の方を見ないまま紗南と話をしていた。

 

沙綾「……」

 

 もうちょっと意識してよ。と心の中で思いながらも体を洗ったが、飛鳥は全く動じなかった。

 

 その時だった。

 

紗南「おにいちゃん」

飛鳥「なに?」

 すると、紗南がある事を言いだした。

 

紗南「どうしておとこのこには、おちんちんがついてるの?」

 

 紗南の言葉に沙綾がぎょっとした。

 

沙綾「コ、コラ! なんてこと聞いてるの!?///////」

飛鳥「よくある質問ですよ」

沙綾「で、でも!!/////」

 沙綾が振り向いて紗南を注意するが、飛鳥は沙綾の方を見る事はなかった。振り向いてる事は分かったが、ちらっと見る事もしなかった。

 

紗南「おねえちゃんは分かる?」

沙綾「分かんないよ…。お姉ちゃんだって女だもん」

紗南「どうして?」

 と、紗南が飛鳥の方を見た。

 

飛鳥「おじさんも分かんないな」

紗南「そうなんだ…」

「昔の偉い人が、ちんちんがある方を男だって決めたんじゃない?」

紗南「あっ…」

 紗南が納得した。

 

飛鳥「紗南ちゃんは男の子になりたいの?」

紗南「ううん。おんなのこがいい…//////」

 紗南がモジモジすると、沙綾が苦笑いした。

 

沙綾(やっぱり紗南も気になるのね…。男の子の身体の事)

 妹が成長して嬉しいやら、複雑な気持ちだった。

 

紗南「あ、そうだ。ききたいこともうひとつあるの」

飛鳥「なに?」

 すると紗南は飛鳥の方を見た。

 

紗南「おんなのひとはどうしておっぱいがふくらむの?」

 

 空気が止まった。飛鳥としては「そんなのオレに聞かれても…」と思っていた。

 

沙綾「コ、コラ! 飛鳥お兄ちゃん困ってるでしょ!///」

紗南「沙綾おねえちゃん、すごくふくらんでるの…」

沙綾「そういう事言わんでいい!!/////」

紗南「もしかしてびょうきなの?」

沙綾「びょ、病気じゃないわよ!」

紗南「どうして?」

 紗南が沙綾を見ると、沙綾は困り果てた。ここで怒鳴ってしまえば空気が悪くなるし、紗南も納得するはずがない。困っていた。

 

飛鳥「ああ、そう言えば昔おじさんのお母さんから聞いた話なんだけど…」

沙綾「!!」

飛鳥「女の人の胸が膨らむのは…」

 

 

**************

 

A「…なんて事になったりして!!」

「幼女と性教育か!!」

「そしてその後は実技!!」

「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 男子生徒が滅茶苦茶騒いでいると、飛鳥と沙綾が遠くから見ていた。

 

飛鳥「…あんな事言ってますけど」

沙綾「纏めてオーブンにぶち込めないかな」

飛鳥「死にますよ」

沙綾「死ねとは言わないけど…黒焦げになっちゃえばいいのよ!!!」

 

 と、沙綾は憤慨していた。

 

「そしてちらっと沙綾ちゃんの身体を見たりして…」

「そこでビンタ!!」

沙綾「やめろっての!!!///////」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は静かに目を閉じて、額を抑えた。

 

 

おしまい

 



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第144話「Afterglowと!」

 ある日のバンドリ学園。食堂で男子生徒達は嘆いていた。

 

「ちくしょう!! どうしてあいつばっかり!!」

 

 憧れのバンドガールズが飛鳥ばかりに懐く為、男子生徒達は面白くなかった。彼らは飛鳥がくる以前から彼女たちのファンでライブにも足を運んでいた。

 

 学校も同じという事もあり、何度もお近づきになろうとしたが、一部のバンドガールがしっかりガードしていた為、上手くいかなかった。

 

 しかし、ある日突然転校してきた一丈字飛鳥はそれを難なくクリアするどころか、バンドガールから声をかけられていた。勿論嫉妬するものの、不思議でしょうがなかった。

 

 だが、度重なるバンドリ学園のトラブルを解決したのも事実であり、実力は認めているものの…。

 

「やっぱり不公平だ!!」

「チャンスがあるって言ってるけど、上手くいかないじゃないか!!」

「こんな事があっていいのか!!?」

「どうしてあいつばかり!! 主人公だからか!!? 主人公だからか!!?」

 

 なんて言い出す始末。

 

「も、もしかして…!!」

「どうした!?」

「もしかして、一丈字が圧力かけてるとか…」

 

 もしここに飛鳥がいたらこう言うだろう。「いや、そうはならんやろ」と。「もし圧力かけてるなら湊先輩とか白鷺先輩とかあんな態度取らんやろ」と突っ込むだろう。

 

「そ、そうなのか!!?」

「オレもそうだと思っていたんだ!!」

 

 と、男子生徒達が考えた。

 

「も、もし圧力しているとするなら、一丈字は蘭ちゃん達を侍らせているんだろうな…」

「あ、ああ…」

「例えば…」

 

 

 ここからは男子生徒達の妄想です。

 

――

 

 とあるホテル

 

モカ「という訳で、モカちゃん達は飛鳥くんと一緒のベッドで寝たいで~す」

飛鳥「わあ、妄想の世界とはいえ、遂にやらかしたか」

 

 妄想の世界だというのに、飛鳥達は割とフリーダムだった。

 

飛鳥「圧力をかけるって言われても、かけられるのは寧ろこっちの方だよね」

モカ「損害賠償とか払わされるかも~」

飛鳥「そうなったらお終いだ」

 

 モカの発言に飛鳥がげんなりした。

 

飛鳥「それだったら妄想通りにしなくても良いんじゃない?」

モカ「まあ、それはそうなんだけどね~」

 

*************

 

「一丈字。本当に男か…?」

「フラグ壊し過ぎだろ…」

「フラグ壊し過ぎて、逆にモテなさそうなんだけど…」

 

 飛鳥のフラグクラッシャーぶりに、男子生徒達は困惑した。飛鳥本人からしてみたら、勝手に妄想されて、好き勝手言われている為、いい迷惑である。

 

「いや、妄想力を高めるのだ!!」

「……」

 

 

**************

 

 一丈字飛鳥です。そんなこんなで私と一緒に寝る権利をAfterglowの皆さんで競い合って貰っています。ブシロードさん。本当にごめんなさい。

 

モカ「で、どうやって決めよっか」

巴「そうだなー…」

蘭・ひまり・つぐみ「……」

 

 5人で話し合っています。美竹さん、上原さん、羽沢さんはあまり乗り気ではないようです。そりゃそうだ。こんな訳の分からない男と一緒に寝るなんて事…。

 

つぐみ「そ、そうじゃないよ!?」

ひまり「や、やっぱり恥ずかしいというか…////」

蘭「てか、なんでこんな事に…」

飛鳥「私も同じ気持ちです」

 

 蘭の言葉に飛鳥が困惑しながら突っ込んだ。

 

モカ「じゃあ、モカちゃんとトモちんが一緒に寝るから、3人は隣の部屋で寝てね~」

ひまり「え、あ、そ、そう…?」

つぐみ「本当にいいの?」

巴「まあ…流れ的にそうするしかないだろ」

飛鳥「んー…」

 飛鳥が考えた。

 

モカ「どうしたの~?」

蘭「まさかモカや巴が嫌という訳じゃないよね?」

飛鳥「とんでもない。一先ず、美竹さん、上原さん、羽沢さんは隣の部屋でお休みください」

蘭「……」

飛鳥(信用されてないな。そりゃそうか。友達が襲われそうになってるもんな)

 

 飛鳥が別の部屋で寝かそうとした事に対して、蘭が疑うような視線を送ると、飛鳥は欄がそう思うのは当然とばかりに目を閉じた。

 

モカ「それだったら蘭が一緒に寝たら~?」

蘭「い、いや…」

 すると蘭がある事に気づいた。

 

蘭「…わ、分かった」

飛鳥「?」

蘭「その…あたし一人で寝る」

「!!?」

飛鳥「その代わり、モカ達には一切手を出さないで。ですか?」

蘭「!!?」

 

 蘭が言おうとした言葉を飛鳥が喋ると、蘭が驚いたように飛鳥を見た。

 

飛鳥「問題ございませんよ」

蘭「……!!」

 

つぐみ「い、いや蘭ちゃん。それは…」

モカ「それでいいんじゃな~い?」

「!!?」

モカ「それじゃ、あたし達は隣の部屋でねよ~」

 

 そう言ってモカ、ひまり、巴、つぐみは別の部屋に移動し、飛鳥と蘭が取り残された。

 

飛鳥「それでは先に寝てくださいな」

蘭「……」

飛鳥「寝ている間に私が襲ってくると?」

蘭「こ、心を読まないで!!」

飛鳥「表情を見れば大体わかりますよ」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「分かりました。そう仰るのであれば、言う通りにしましょう」

 飛鳥が先にベッドにもぐりこむと、そのまま眠りについた。

蘭「…寝るの早」

 

 5分も経ってないうちに眠ってしまったので、蘭が驚いた。

蘭「……」

 蘭は色々迷ったものの、隣の部屋に移動する事にした。

 

飛鳥「……」

 飛鳥がふと目を開けた。

 

飛鳥(よーし。美竹さんもあっちの部屋に寝たな。さて、これで思いっきり寝れるぞー)

 そう言って飛鳥はぐっすり眠った。ちなみにAfterglowが1回だけ様子を見に来たが、完全に寝てる飛鳥を見て驚いていた。

 

 

*****************

 

「…って、ちょっと待て!! 全然妄想できてねぇじゃねぇか!!」

「くそう!! どうなってんだぁ!!?」

 

 と、男子生徒達があまりエッチな妄想が出来ない事に対して騒いでいた。当然周りの生徒達はドン引き。まともな男子生徒は困惑していたが、女子生徒はゴミを見る目で見ていた。

 

 そしてこの男は…。

 

飛鳥(超能力を使わせていただきました)

 

 陰から様子を見て、超能力を使って男たちの妄想をある程度健全なものへ書き換えていた。

 

飛鳥「やれやれだぜ」

 

 

おしまい

 



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第145話「Afterglowと!(変態編)

この話は下ネタ多めです。ご注意ください。


 ある日のバンドリ学園。食堂で男子生徒達は嘆いていた。

 

「ちくしょう!! どうしてあいつばっかり!!」

 

 憧れのバンドガールズが飛鳥ばかりに懐く為、男子生徒達は面白くなかった。彼らは飛鳥がくる以前から彼女たちのファンでライブにも足を運んでいた。

 

 学校も同じという事もあり、何度もお近づきになろうとしたが、一部のバンドガールがしっかりガードしていた為、上手くいかなかった。

 

 しかし、ある日突然転校してきた一丈字飛鳥はそれを難なくクリアするどころか、バンドガールから声をかけられていた。勿論嫉妬するものの、不思議でしょうがなかった。

 

 だが、度重なるバンドリ学園のトラブルを解決したのも事実であり、実力は認めているものの…。

 

「やっぱり不公平だ!!」

「チャンスがあるって言ってるけど、上手くいかないじゃないか!!」

「こんな事があっていいのか!!?」

「どうしてあいつばかり!! 主人公だからか!!? 主人公だからか!!?」

 

 なんて言い出す始末。

 

「もう我慢ならぬぅ!!」

 と、一人の男子生徒・毛宗太郎(もうそうたろう)が立ち上がった。

 

「毛!?」

宗太郎「主人公の座は自分でつかみ取る!! 妄想するのだ…Afterglowがオレを奪い合う姿を!! うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

***********

 

モカ「モカちゃん達、宗太郎くんと一緒に寝たいで~す」

 と、5人が一斉にそろって宗太郎に言うと、

 

宗太郎「それは嬉しい限りだね。でも6人もベッドに入らないよ」

 と、宗太郎がカッコつけていた。

 

モカ「そうだね~。それじゃ勝った2人が宗太郎くんと一緒のベッドで寝るっていうのはど~お?」

蘭「いいよ。それで」

ひまり「う、うん!」

巴「恨みっこなしだからな!」

つぐみ「わ、私だって負けないよ!」

 

 妄想通り、宗太郎を巡ってAfterglowが取り合っていた。それを宗太郎にとっては眼福そのものだった。その証拠に股間が元気になっていた。詳しくは言わない。

 

モカ「…あ~。宗太郎くん。アソコが元気になってるよ~」

「!!?」

 モカが宗太郎のあそこを見てニヤニヤしていた。アソコがどこなのかは言わない。それを見て他の4人も宗太郎のあそこを見た。アソコがどこなのかご想像にお任せします。

 

蘭「…ふ、ふ~ん。あたし達でそんな気持ちになってるんだ…/////」

ひまり「も~。宗太郎くんったら////」

巴「まあ、年頃の男子だから仕方ないな」

つぐみ「あ、あははは…////」

 

******************

 

「な、なかなかいい妄想じゃね?」

「やべ、オレも元気になってきた」

 宗太郎の妄想が思ったほか良かったのか、聞いていた男子生徒達が前かがみになって股間を抑えた。どうして抑えるかは言わない。

 

「つ、続き続き!」

宗太郎「ああ…」

 

 宗太郎もなかなかやばい顔つきになっていた。

 

 *********************

 

モカ「それじゃじゃんけんね~」

蘭「うん」

ひまり「シンプルだけど、それがいいよね!」

巴「負けても恨みっこなしだからな!」

つぐみ「う、うん…」

 

 と、幼馴染5人が宗太郎と一緒に寝る権利を巡ってじゃんけんをしようとしていた。宗太郎はその光景を見守っていた。

 

「ジャンケン…ポン!!」

 5人が一斉にじゃんけんをすると、モカとひまりが勝った。

 

ひまり「やったあ!! 勝った勝ったー!!」

モカ「ふっふっふ~」

 じゃんけんに勝ったモカとひまりが喜んでいたが、

 

蘭「ちょっとまって。ひまり後出ししてなかった?」

巴「そうだな。ひまり後出ししてたな」

つぐみ「……」

ひまり「せめてモカにもいちゃもんつけてくれない!!?」

 

 一斉に自分だけ言いがかりをつけられたことに対して、ひまりが激怒した。

 

ひまり「ふ、ふーんだ。そんな意地悪を言うと宗太郎くんに嫌われるよーだ」

蘭・巴・つぐみ「うっ…」

ひまり「宗太郎くん。これで決まりだよね!?」

宗太郎「そうだなー…」

 ひまりに話しかけられて宗太郎は返事をしたが、宗太郎はひまりの胸をガン見していた。最低以外何物でもない。

 

ひまり「…あっ!! もー! やっぱりおっぱい見てる!!//////」

宗太郎「いやー。だって大きいんだもん」

 

 ひまりが照れながら胸元を手で隠して喋ると、宗太郎が開き直った。するとモカも胸を強調しだした。

 

モカ「モカちゃんだって結構おっぱい大きいほうだよ~?」

宗太郎「そうだなぁー」

 

 すると蘭、巴、つぐみが険しい表情をした。

 

ひまり「はいはい。3人は負けたんだから別の部屋で寝なさい」

モカ「そーそー」

 と、ひまりとモカが3人を部屋から追い出した。

 

ひまり「それじゃ一緒に寝ましょ♪」

宗太郎「そうだな」

 

 と、ひまりとモカの間に挟まれて宗太郎は眠ったが、胸が当たっていた。

 

宗太郎「あー…気持ちいい」

モカ「おっぱい?」

宗太郎「とっても柔らかいし、二人ともいいにおいする」

ひまり「シャンプーの匂いかな?」

モカ「違うよー。女の子特有のにおいだよ。宗太郎くんのへんた~い」

 

 とか言うが、モカは嬉しそうだった。そして言葉を続ける。

 

モカ「やっぱりここも大きくなってるでしょ~」

宗太郎「あ、あんっ♥」

 

 と、モカは宗太郎の大事な部分をツンっと触った。どういう部分かは言わない。

 

ひまり「男の人は大きくしたり小さくできたりできるんだよね~。いいなぁ~」

モカ「ねー。大きいなら大きいで肩凝るしぃー…」 

 ひまりとモカは耳元でささやいていて、それが更に宗太郎を興奮させていた。

 

モカ「そうだ」

「?」

 モカが妖艶な笑みで宗太郎を見た。

 

モカ「見せて? 宗太郎くん…お・ち…」

 

******************

 

「ダメだぁ~~~!!!!!」

「これ以上はダメ!!!」

 男子生徒達が興奮した。

 

「えーっ!!?」

「せめてモカちゃんが「×××××」って言うの聞きたかった!!」

「確かに女の子が「×××××」とか「×××」っていうの凄く興奮するけど、これ以上はダメだぁ!!?」

宗太郎「いい妄想だったでしょ?」

「それはもう!!」

「次回からコレで行こう!!」

 

 と、男子生徒達が大興奮していたが、女子生徒は完全に殺意が沸いていた。

 

 そして飛鳥はというと…。

 

飛鳥(だめだこりゃ…)

 あまりの変態ぶりに石化し、その場を去ろうとしたその時…。

 

「飛鳥く~ん」

飛鳥「……」

 

 モカの声がしたため、飛鳥が横を見るとAfterglowがいたが、蘭が激怒していて、モカはいつも通り、ひまりは蘭にビビっていて、巴が呆れていて、つぐみは苦笑いしていた。

 

飛鳥「心中お察しします」

モカ「今度の休み空いてる~?」

飛鳥「…どうされたんです?」

モカ「蘭がパジャマパーティーやろうって~」

飛鳥「えっ」

蘭「あいつらを悔しがらせるためだよ…!!!」

飛鳥「……」

 

 蘭の気迫に飛鳥も何も言えずにいた。

 

 

おしまい

 



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第241話「友希那と蘭と!」

 

 

 

 ある日のバンドリ学園。食堂で男子生徒達は嘆いていた。

 

「ちくしょう!! どうしてあいつばっかり!!」

 

 憧れのバンドガールズが飛鳥ばかりに懐く為、男子生徒達は面白くなかった。彼らは飛鳥がくる以前から彼女たちのファンでライブにも足を運んでいた。

 

 学校も同じという事もあり、何度もお近づきになろうとしたが、一部のバンドガールがしっかりガードしていた為、上手くいかなかった。

 

 しかし、ある日突然転校してきた一丈字飛鳥はそれを難なくクリアするどころか、バンドガールから声をかけられていた。勿論嫉妬するものの、不思議でしょうがなかった。

 

 だが、度重なるバンドリ学園のトラブルを解決したのも事実であり、実力は認めているものの…。

 

「やっぱり不公平だ!!」

「オレ、プレミア会員にも入ったのに!!」

「こんな事があっていいのか!!?」

「どうしてあいつばかり!! 主人公だからか!!? 主人公だからか!!?」

 

 なんて言い出す始末。

 

「も、もしかして…!!」

「どうした!?」

「もしかして、一丈字に脅迫されてるとか…」

 

 もしここに飛鳥がいたらこう言うだろう。「いや、そうはならんやろ」と。「もし脅迫してるなら湊先輩とか白鷺先輩とかあんな態度取らんやろ」と突っ込むだろう。

 

「そ、そうなのか!!?」

「オレもそうだと思っていたんだ!!」

 

 と、男子生徒達が考えた。

 

「思ったんだけどさ、友希那ちゃんと蘭ちゃんって仲悪いよな」

「仲悪いって言うよりかは…」

「もしもだぞ。もしも友希那ちゃんと蘭ちゃんが一丈字を取り合っていたら…。

 

 ここからは男子生徒達の妄想です。

 

――

 

 飛鳥の家。飛鳥はとてつもなく困っていた。というのも自分の家で友希那と蘭がバチバチ火花をぶつけあっていたからだった。家主である飛鳥にとっては迷惑以外何物でもない。

 

蘭「湊さん。飛鳥の私物を毎回盗むのはやめてください。迷惑です」

友希那「あら、この私がそんな事する訳ないわ。美竹さんこそ飛鳥の私物を盗んでるんじゃないかしら?」

蘭「湊さんと一緒にしないでください」

飛鳥「どっちもやめてください」

 

 友希那と蘭の言葉に飛鳥はきっぱりと言い放った。飛鳥は割とハッキリ言う性格だった為、こういう事も黙って見過ごせなかったのだ…。

 

 また、友希那と蘭はというと仲が悪いという訳ではなく、寧ろお互いを認め合っているのだが、お互い不器用で言葉足らず、負けず嫌いという事もあり、周りはおろか本人たちでも誤解が生まれているのだ。

 

 そして想い人が同じ人間なので、それはもう…飛鳥はご愁傷さまとしか言いようがなかった。

 

友希那「流石ね飛鳥。私が見込んだだけの事はあるわ」

蘭「何偉そうな事言ってるんですか。迷惑してるでしょう」

飛鳥「あなたもですよ」

 

********************

 

「ちょっと待て? 一丈字堂々と言い過ぎじゃね?」

「いや、あいつ実際そうじゃん」

「ああいう奴キラーイ。何上から目線で話しとん」

「それな」

 

*******************

 

蘭「とにかくです。湊さんは帰って貰えますか? あたしは飛鳥とイチャイチャしたいんです」

友希那「何を言ってるの。イチャイチャするのは私よ。美竹さんこそ帰って頂戴」

飛鳥「あのー…」

蘭・友希那「黙ってて」

飛鳥「黙りません!」

 

 飛鳥はまたしてもきっぱりと言い放った。

 

飛鳥「せめてアポ取ってください」

蘭「アタシ入れたよね?」

飛鳥「いれてません」

友希那「メール送ったはずなのだけど」

飛鳥「届いてないです」

 

 飛鳥の言葉に蘭と友希那は向き合った。

 

友希那「ごめんなさい。次からはそうするわ」

飛鳥「……」

蘭「あたしもごめん。次はそうする」

 

 絶対先に謝った方が好感度を上げられると思ってるんだろうなぁ…と飛鳥は思った。

 

飛鳥「次同じ事したらお父様にご連絡させて頂きますね」

友希那「お父さんに!?」

蘭「い、いくら何でも早いよ…」

飛鳥「バンドガール生命も短くなりますよ」

 

 飛鳥としてはこの二人の恋心に気づいているのだが、正直彼女を作る気は全くなく、むしろ色々忙しかったのだ。そう、色々と。

 

友希那「まあ、それは置いといて…何かしてほしい事はあるかしら?」

飛鳥「ちょっとあそこに座っててもらえませんか? 美竹さんも」

 

 そう言って飛鳥は友希那と蘭を座らせて、飛鳥はお茶を出した。

 

飛鳥「どうぞ」

蘭「あ、ありがとう…」

友希那「ありがとう」

 

 とにかくゆっくり話をさせるために、飛鳥は2人を座らせた。

 

飛鳥「それで…。今日は一体どのようなご用件で?」

友希那「飛鳥。あなたは私にご奉仕してほしいのよね」

飛鳥「今井先輩に連れて帰って貰いますね」

友希那「ま、待ちなさい!!」

蘭「……」

 

 飛鳥がリサに連絡を取り、自分を連れて帰らせようとしたので友希那は慌てた。そんな状態で蘭はだんまりを決めれば、自分が飛鳥を独占できると思って何も言わなかったが、完全にどや顔していた。

 

友希那「美竹さん。何をどや顔してるのかしら?」

蘭「…してませんよ」

飛鳥(美竹さんのどや顔初めて見た…)

 

 飛鳥も飛鳥で余計な事は言わないようにした。

 

友希那「飛鳥。私では不満だというの?」

飛鳥「急に言われても困ります」

蘭「そうですよ。飛鳥はガツガツした女の人は苦手なんですよ」

友希那「そ、そうだったの…」

 

 普段からは想像できない程落ち込む友希那を見て、飛鳥は少し可哀そうだなと感じた。だけど、横にいる蘭を見て、女の人って容赦ないなぁ…と思っていた。

 

友希那「でもこのまま美竹さんに取られるのは我慢できないの。チャンスをくれないかしら」

飛鳥「正直!!」

 

 友希那って好きな人には一直線なんだなぁと飛鳥はひそかに見直した。よくよく考えたらRoseliaのメンバーには割と友好的にしていて、自分も最初は「一丈字くん」と他人行儀で、仲良くなったらいつの間にか「飛鳥」と名前で呼ばれていた。そういう所は評価はしていた。

 

友希那「何でもするわよ。身の回りの事とか、あわよくば性的な事とか…////」

飛鳥「それなら一つやって欲しい事があります」

蘭「飛鳥!?」

友希那「なに?」

飛鳥「美竹さんと仲良くしてください」

友希那「……」

 

 飛鳥の言葉に友希那と蘭が嫌そうにした。飛鳥としてはあまりにも手を出さな過ぎて嫌気がさし、友希那と蘭が仲良くなってそのまま自分の家を去っていくというシナリオを想定していた。まあ、仲の悪かった女2人が急に仲良くなるのは大抵、男をしめあげる時だと相場は決まっていたからだった。

 

友希那「流石飛鳥。手ごわいわね…」

飛鳥「感心しないでください」

蘭「飛鳥」

飛鳥「な、何ですか?」

 

 蘭が飛鳥の服を引っ張った。

 

蘭「さっきから湊さんの相手ばかりしてる…。あたしにも構って…/////」

飛鳥「……」

 

********************:

 

「うぉおおおおおおおおおおおお!!!」

「一丈字の奴なんてことを!!」

「そこ代われぇ!!」

「やっぱりあいつ許さん!!」

 

 

 と、男子生徒達は勝手に妄想をしては、飛鳥に八つ当たりしていた。そしてそれを飛鳥、友希那、蘭が見ていた。

 

 

飛鳥「あんな事言ってますよ」

蘭「死ねばいいのに…」

友希那「今回ばかりは同感だわ」

飛鳥「お二人とも、お気持ちは分かりますが、突き指までにしておきなさいな。死んだら元も子もありません」

 

 男子生徒達のお陰で二人が少しだけ分かり合えた事に飛鳥は安心したが、自分への心労は凄い事になるんだろうなぁと感じた。

 

 

おしまい

 



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第263話「イヴと!」

 

 

 ある日のバンドリ学園。食堂で男子生徒達は嘆いていた。

 

「ちくしょう!! どうしてあいつばっかり!!」

 

 憧れのバンドガールズが飛鳥ばかりに懐く為、男子生徒達は面白くなかった。彼らは飛鳥がくる以前から彼女たちのファンでライブにも足を運んでいた。

 

 学校も同じという事もあり、何度もお近づきになろうとしたが、一部のバンドガールがしっかりガードしていた為、上手くいかなかった。

 

 しかし、ある日突然転校してきた一丈字飛鳥はそれを難なくクリアするどころか、バンドガールから声をかけられていた。勿論嫉妬するものの、不思議でしょうがなかった。

 

 だが、度重なるバンドリ学園のトラブルを解決したのも事実であり、実力は認めているものの…。

 

「やっぱり不公平だ!!」

「オレ、ファンクラブにも入ったのに!!」

「こんな事があっていいのか!!?」

「どうしてあいつばかり!! 主人公だからか!!? 主人公だからか!!?」

 

 なんて言い出す始末。

 

「も、もしかして…!!」

「どうした!?」

「もしかして、一丈字に脅迫されてるとか…」

 

 もしここに飛鳥がいたらこう言うだろう。「いや、そうはならんやろ」と。「もし脅迫してるなら湊先輩とか白鷺先輩とかあんな態度取らんやろ」と突っ込むだろう。

 

「そ、そうなのか!!?」

「オレもそうだと思っていたんだ!!」

 

 と、男子生徒達が考えた。

 

「も、もし脅迫しているとするなら、一丈字は友希那ちゃん達を侍らせているんだろうな…」

「あ、ああ…」

「そういや、最近イヴちゃんと話をしているのを見たぞ!!」

「まさか…」

 

 ここからは男子生徒達の妄想です。

 

――

 

飛鳥「……」

イヴ「本日よりこの家で居候させていただきます!」

飛鳥「私を消そうとしてるのなら、出るところ出ますよ?」

イヴ「ち、違います!!」

 

******************

 

「待て待て。一丈字の奴完全に嬉しそうじゃねぇだろ」

「いや、そうやって冷たくすることでイヴちゃんを従順に仕立て上げるつもりなんだ!」

「おのれ一丈字~!!!」

 

********************

 

飛鳥「聞きましょう。どうして私の家に?」

イヴ「そ、それは…最近誰かにつけられてる気がして…」

飛鳥「事務所に相談しましたか?」

イヴ「ア、アスカさんの所に行けって…」

飛鳥「嘘ついたら打ち首ですよ?」

イヴ「ごめんなさい!! アスカさんの所に行きたかったからです!」

飛鳥「正直でよろしい」

 

 飛鳥が若干脅しを入れて口を割らせた。

 

飛鳥「ていうか、アイドルがそんなこと言って大丈夫なんですか?」

イヴ「うちの事務所恋愛OKなので…」

飛鳥「ファンはNGですよ。すぐに事務所に相談しましょう」

 

 飛鳥に言われるがまま、イヴは電話した。ちなみに飛鳥にも聞こえるようにスピーカーモードにした。

 

『一丈字くんのところにいる!! それは願ってもないチャンスだ!! ハニートラップでも何でも使って、一丈字くんをうちに…』

飛鳥「こんばんは。一丈字です」

 

 タレントに犯罪行為を唆そうとしたスタッフに飛鳥が怒りを込めて喋った。

 

 そのあと、なんやかんやで…。

 

『…あの、お願いします。若宮の面倒を見て頂けませんか…。報酬は弾みますし、何かあったらこちらで何とかします』

飛鳥(えぇぇぇぇ…)

 

 このご時世、男女二人が同じ家にいて、なにもなかったなんて信じるわけがないのに、男女二人で止めさせようとするスタッフにあきれて言葉が出なかった。

 

飛鳥「…あの、すみません。ちょっといいですか」

『な、なんですか?』

飛鳥「……」

 

 飛鳥はマンションにゲストルームがあるので、そこを使うように指示を出した。

 

飛鳥「これだったら構いませんよ?」

『わ、分かりました…』

飛鳥「はい」

 

 飛鳥が電話を切った。

 

飛鳥「そういう訳ですので、申し訳ございませんがゲストルームを使ってください」

イヴ「は、はい…」

 

*********************:

 

「なんやこいつぅううううううううううううううう!!!!」

「余裕ぶりやがってぇ!!」

 

 自分たちに妄想しといて、飛鳥にやり場のない怒りをぶつけていた。飛鳥本人からしてみたら「どないしたらええねん」と関西弁で突っ込むだろう。

 

「いちいち鼻につくやつだな!!」

「そんなんだからクラスメイトや教師に嫌われるんだよ!!」

「日本人が一番嫌いなタイプや!!」

「アメリカでずっと暮らしてればよかったのに…」

 

「いや、待てよ…」

「!」

「こんな奴だから、きっと…」

 

 男子生徒たちは元に戻った。

 

************************

 

 とにかくもう色々あってイヴを居候させることにした飛鳥。もう女の子一人にすると危ないという理由で。

 

イヴ「アスカさんが喜ぶことなら何でもします!」

飛鳥「今度から事前に相談してね…」

 

 飛鳥は困惑した様子でいると、イヴが慌てた。

 

イヴ「あ、え、えっと…。それだったら、お詫びにハグします!」

飛鳥「お気持ちだけ受け取ります」

イヴ「あ、や、やっぱり嫌でしたか…?」

 

 イヴが涙目で上目遣いをした。

 

飛鳥「嫌じゃないけど、アイドルでしょ」

イヴ「!」

飛鳥「もしもハグをしてるところを写真に撮られて、若宮さんの将来が潰れたら責任取れませんしね」

 

 飛鳥が窓を見つめた。

 

イヴ「ア、アイドルじゃなかったら…ハグをしてくれるんですか?」

飛鳥「…今はやめないほうがいいですよ。パスパレ」

イヴ「!」

飛鳥「エアバンドに続いて、またスキャンダルを起こしたら、皆さん完全に終わりです。丸山先輩達の為にも…」

 

 飛鳥の言葉にイヴが俯いた。

 

イヴ「そ、それだったら…。一番何をすれば喜んでくれるんですか!!?」

飛鳥「アイドルとしての義務を果たすことですね」

 

 飛鳥が振り向いてイヴを見つめる。

 

飛鳥「今のあなたを必要としてる人が沢山いるんです。私のような男とつるんでる暇なんかありませんよ」

イヴ「……」

 

 イヴが息をのんだ。

 

イヴ「あの、アスカさん…」

飛鳥「なんでしょうか」

 

 イヴが頬を赤らめて、目を閉じた。

 

イヴ「そういう所を、好きになってしまったのです…//////」

 

**********************

 

 

「ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

「イヴちゃんマジ天使ぃいいいいいいいいいいいい!!!」

「そして死ね一丈字!!」

「人類の敵!!!」

 

 と、勝手に妄想して勝手に飛鳥に敵対意識を燃やす男子生徒たちだった。

 

 

 そしてそれを飛鳥とPastel*Palettesが見つめていたが、反応は様々だった。

 

彩・麻弥:困惑している

日菜・千聖:うんざりしている

イヴ:恥ずかしがっている

飛鳥:死にそう

 

 

「それでなんだかんだ言って一緒にふろに入るんだ…」

「うん」

「まさか!!」

 

「イヴちゃんのおっぱいをスポンジ代わりに一丈字の背中を洗うんだ!!」

「うわぁあああああああああああ!!!!」

 

イヴ「そ、そんな事しませ~ん!!!///////」

千聖「麻弥ちゃん。日本刀持ってない? もしくは鉄パイプ」

麻弥「ち、千聖さん落ち着いてください!!」

 

 イヴが顔を真っ赤にして否定すると、千聖が麻弥に対して黒い笑みで話しかけた。

 

 

 飛鳥は静かに目を閉じた。

 

 

おしまい

 



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第310話「色んな人と!」

 

 

 ある日のバンドリ学園。食堂で男子生徒達は嘆いていた。

 

 

 

「ちくしょう!! どうしてあいつばっかり!!」

 

 

 

 憧れのバンドガールズが飛鳥ばかりに懐く為、男子生徒達は面白くなかった。彼らは飛鳥がくる以前から彼女たちのファンでライブにも足を運んでいた。

 

 

 

 学校も同じという事もあり、何度もお近づきになろうとしたが、一部のバンドガールがしっかりガードしていた為、上手くいかなかった。

 

 

 

 しかし、ある日突然転校してきた一丈字飛鳥はそれを難なくクリアするどころか、バンドガールから声をかけられていた。勿論嫉妬するものの、不思議でしょうがなかった。

 

 

 

 だが、度重なるバンドリ学園のトラブルを解決したのも事実であり、実力は認めているものの…。

 

 

 

「やっぱり不公平だ!!」

 

「オレ、ファンクラブにも入ったのに!!」

 

「こんな事があっていいのか!!?」

 

「どうしてあいつばかり!! 主人公だからか!!? 主人公だからか!!?」

 

 

 

 なんて言い出す始末。

 

 

 

「も、もしかして…!!」

 

「どうした!?」

 

「もしかして、一丈字に脅迫されてるとか…」

 

 

 

 もしここに飛鳥がいたらこう言うだろう。「いや、そうはならんやろ」と。「もし脅迫してるなら湊先輩とか白鷺先輩とかあんな態度取らんやろ」と突っ込むだろう。

 

 

 

「そ、そうなのか!!?」

 

「オレもそうだと思っていたんだ!!」

 

 

 

 と、男子生徒達が考えた。

 

 

 

「も、もし脅迫しているとするなら、一丈字は友希那ちゃん達を侍らせているんだろうな…」

 

「あ、ああ…」

 

「そういや、最近イヴちゃんと話をしているのを見たぞ!!」

 

「まさか…」

 

 

 

 ここからは男子生徒達の妄想です。

 

*************************:

 

 25人のバンドガールがオレに愛情を注いでいた。だいぶ前から続いているが…まあ、嫌ではない♡

 

沙綾「はい、あーん♡」

「あーん♡」

香澄「あ~ん♡」

「あ~ん♡」

沙綾「どう? おいしい?」

「うん、おいちい♡」

 

*************************:

 

「気色悪!!!!」

「気色悪いってなんだよ!!」

 

 あまりの気色悪さに他の男子生徒たちが叫ぶと、妄想をしたAが突っ込んだ。

 

「ハァー…そういう気色悪い妄想をする当たり、相当たまってんなぁ」

A「お前はどうなんだよ!」

B「オレか? オレはな…」

 

 Bが妄想しだした。

 

******************

 

紗夜「Bさん。そろそろ寝ましょう」

B「どうしてオレの家にいるのかな?」

紗夜「そ、そんなの…あなたの妻だからに決まってるじゃないですか/////」

B「そうだったー☆」

紗夜「そうです。という訳で一緒に寝ましょう。というか寧ろ…抱いてください////」

B「おっしゃあ!! 今日は抱き着くしてやるゥ!!」

 

********************::

 

「紗夜ちゃんに何言わせとんじゃあああああああああああああ!!!」

B「お前らだってそういう妄想するやん!! お前らだってそういう妄想するやん!!」

 

 本人が絶対に言いそうにもない事を妄想して、周りから非難されるB。

 

「くぅ~!! なかなかのキモい妄想!!」

B「それだったらCはどうなんだよ!!」

 

******************

 

友希那「C? 此間紗夜と一緒に寝たというのは本当なの?」

C「うん、そうだけど?」

B『オレの妄想取るなよ!!』

A『このそうだけどがうぜぇ…』

 

 Cの妄想にBとAが途中で突っ込んだ。

 

C「紗夜がさぁ…」

友希那「同じバンドメンバーとはいえ、私以外の女の名前を出すなんて…」

C「え? ヤキモチ?」

友希那「そ、そうよ!/////」

C「友希那は可愛いなぁ」

 

******************:

 

A・B「殴っていい?」

C「まだ妄想終わってないのに!!」

「うるせぇ!! これ以上聞いてられっか!!」

「殴る…殴る…殴る…殴る…」

 

D「はい! オレの妄想聞いてください!」

「挙手制なの!?」

「まあ、聞いてやるよ…」

 

**************************:

 

D「花音ちゃん!! 君のドラムテクでオレのケツをぶっ叩いてくだs」

「花音ちゃんに何やらせようとしとんじゃあああああああああああああああああああ!!!!」

 

 全裸のDが花音に向けて四つん這いに向けて、ケツを向けてしかも振っていたので、皆が一斉に止めた。ちなみに花音がどういう顔をしていたかは明らかになっていない。

 

D「お前らも叩かれたいだろ!?」

「そりゃあ叩かれたいけど…」

「花音ちゃんに汚いもん見せるな!!」

D「お前らだってついてるだろ!! 気の弱そうな女の子に恥ずかしい所全部見られて、その上あれでドSだったらヘブンじゃねぇか!!」

「もうやべぇこいつ!!」

「流石にこいつと同類にされたくない!!」

 

「はい! 今度はオレ!」

「もう流石にまともなの頼むぞ!」

 

*************************

 

紗夜「兄さん♡」フリフリ

日菜「おにーちゃん♡」フリフリ

 

E「姉妹ど」

「コラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 更にヤバい妄想をして、皆が強制終了された。

 

「あああああ!! どんどん日菜ちゃん達が汚されていくぅ!!」

「仕方ないじゃないか!! 可愛いんだもん!!」

「メスを支配したいと思うのがオスだもん!!」

「でもこれ全年齢向け!!」

 

 と、色々話をしていたが…。

 

「あのう…」

「?」

 

 今まで話題に出ていた香澄・沙綾・日菜・友希那・紗夜・花音がやってきたが、いずれもドン引きしていた。温厚な香澄や花音ですら苦笑いするだけで何とも言えない状態だった。

 

友希那「そういう事を公衆の面前で話している時点で…ダメだと思いますよ?」

 

 友希那が敬語で話すと、大半の男子生徒たちは青ざめていたが、Dは興奮して体をくねくねさせていた。

 

「もう誰か病院連れていけ!!」

 

 何とも言えない空気になっていると、

 

「そういや一丈字がいないぞ!?」

「ホントだ!?」

 

 その時カフェテリアのモニターに、飛鳥、リサ、燐子、あこの4人が映っていて、友希那と紗夜が驚愕していた。飛鳥がボーカルとギターをしていた。

 

 実を言うと飛鳥もリサたちから相談を持ち掛けられており、友希那と紗夜の性格を知っていた飛鳥は3人にバンド演奏を持ち掛ける。リサと燐子は困惑していたが、あこは飛鳥とバンド出来るのならと承諾。暫く困惑したのち、リサは男子達に同情できる場面もあったのか承諾すると、燐子も皆に続いて承諾。

 

 4人は男子生徒たちの目の前で友希那と紗夜に怒られるのを覚悟して、ライブに臨んだのだ。

 

『それでは今日のエンディングテーマは一丈字飛鳥・今井リサ・白金燐子・宇田川あこの4名で、スピッツ『正夢』!』

 

 そして4人が演奏をすると、香澄たちは皆演奏と飛鳥の歌声に魅入っていた。

 

香澄「飛鳥くんやっぱり歌上手…!!」

日菜「おまけに声がポケモンのサトシに似てるもんね…」

花音「ふぇええ…」

沙綾「それもそうだし、いつの間に練習してたの…?」

友希那・紗夜「……!!」

 

 友希那と紗夜は固まっていた。そして男子生徒たちがどさくさに紛れて友希那と紗夜に近づいて、ペンライトを振るそぶりを見せた。近づけるチャンスだと思ったのか…。

 

**************************:

 

飛鳥「えー…。これが今回のオチだったんですよ…」

リサ「ゴメーン…」

 

 後日、飛鳥たち4人は友希那と紗夜に並んで正座させられていた。

 

「一丈字の奴、正座させられてザマーミロなんだけど…」

「これがリサちゃん達と一緒じゃなかったらなぁー!!」

「寧ろ同じ穴のムジナというのを見せつけて腹立つ!!」

「オレたちもリサちゃん達とライブしてぇよぉおおおおおおおお!!!」

 

 

おしまい

 



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第321話「日菜、リサと!」

 

 それはある日の事だった。

 

「あぁ…やっぱりパスパレはええのう…」

 

 バンドリ学園のとある教室で男子生徒たちがパスパレの雑誌を見ていた。

 

「パスパレもいいけど、ロゼリアもいい」

「せやな」

「この学校の女子可愛い子はとことん可愛いからな…」

「よその学校の男子共がうらやましがってたぜ…」

 

 とまあ、そんなことを言うものだから、クラスの女子たちは冷ややかな目で見ていた。

 

「どうせイケメンがいたらしっぽを振りまくから気にしません」

女子一同「また一丈字くんにやられてしまえ!!」

 

 女子たちが飛鳥の名前を出したとたんに男子生徒たちははっとなった。

 

「そういえば一丈字の奴…!」

「ど、どうしたんだ?」

 

 男子生徒・Aがわなわなと震えると、ほかの男子生徒たちが困惑した。

 

A「思えばリサちゃんと仲が良かったような気がする…!」

「!」

B「そういえば何気に日菜ちゃんとも仲が良い!!」

「!!」

C「そういえば千聖ちゃんも…オレ達に比べたら普通に話をしてる気がする」

「!!!」

 

 この会話で男子生徒たちの頭の中で一つの仮説が出来上がった。

 

「もしかして一丈字…千聖ちゃん達とあんなことやこんなことを!!?」

 

※ ここからは男子生徒たちの妄想です。ご覧ください。

 

*********************:

 

 私の名前は一丈字飛鳥。バンドリ学園に通う高校1年生です。今日も今日とて学校に向かって登校しています。

 

「あっ、飛鳥くーん!」

飛鳥「!」

 

 声がしたので振り返ると、今井先輩がいた。

 

飛鳥「今井先輩」

リサ「もー。リサって呼んでって言ってるでしょ?」

飛鳥「いやあ、そんな事言われましても…」

リサ「してくれないと…こうだっ!!」

 

 そう言って今井先輩は私に抱き着いてきました。なんていうか昔母さんがこういう事をしてきたのを思い出す。

 

********************

 

A「リサちゃんのおっぱいを感じてるのか…ゆるせーん!!!」

 

 許されないのはどっちだと女子たちは思っていた。

 

*********************

 

 ここで飛鳥の語りも終わりにして、リサが飛鳥に抱き着いたので周りの視線が突き刺さった。

 

飛鳥「Roseliaの活動に悪影響与えますよ」

リサ「大丈夫だよー。パスパレと違ってアイドルとかじゃないから」

飛鳥「アイドルみたいなもんですけどねぇ…」

 

 飛鳥がそう言うと、

 

「あっ! おーい! 飛鳥くーん! リサちー!」

 

 今度は日菜がやってきた。

 

リサ「ヒナ!」

飛鳥「おはようございます」

日菜「おはよー。それじゃ学校行こっ!」

 

 こうして日菜とリサに挟まれるように飛鳥は登校したが、やっぱり視線が突き刺さった。飛鳥は困惑するしかなかった。

 

日菜「どうしたの?」

飛鳥「やっぱり見られてますね…」

リサ「ヒナ。アイドル的には大丈夫なの?」

日菜「だいじょーぶだよー。二人きりとかじゃないし、飛鳥くんとならるんってするし」

飛鳥(私はゾワっとしてますよ。ファンや事務所に刺されそう)

 

 そんなこんなで3人は一緒に登校していた。

 

****************

 

B「余裕ぶりやがって一丈字がぁああああ…」

 

 日菜とリサと一緒に登校している図を思い浮かべて、男子生徒たちは勝手に嫉妬していた。飛鳥からしてみれば『どないせぇ言うんや』と突っ込むだろう。そして女子たちは飛鳥に心の底から同情した。

 

****************

 

日菜「あ、そういえばちらっと見たけど、さっきリサちー。飛鳥くんに抱き着いてたよね?」

リサ「あ、バレてた?」

 

 すると、日菜も飛鳥に抱き着くと、飛鳥は今までの人生が走馬灯のように駆け巡った。

 

リサ「ヒ、ヒナ!?」

日菜「あたしも結構大きい方なんだよ?」

 

 日菜がそう言って飛鳥を見つめるが、飛鳥は困惑した表情を見せていた。

 

飛鳥「アイドル…ですよね?」

日菜「アイドルだよ」

飛鳥「アイドルですよね!?」

 

 アイドルとしてあるまじき行為を堂々としただけでなく、わかっていてやったことに飛鳥が驚いていた。

 

日菜「あっはははは!! 飛鳥くんおもしろーい!」

飛鳥「日菜先輩の方がもっと面白いですけどね…」

日菜「いやー。やっぱり普通の男の子と違うね」

飛鳥「それはよく言われます」

 

 日菜の言葉に飛鳥が困惑した。

 

日菜「だって普通だったら顔真っ赤にすると思うよ? それもアイドルのおっぱいを当てられたら」

飛鳥「普通ならそうなる所ですが、ファンや事務所の方々が脳裏に浮かんでプラマイゼロですね」

 

 完全に飛鳥と日菜が2人きりで話をして、蚊帳の外にされたリサは焼きもちを焼いた。

 

リサ「飛鳥くん」

飛鳥「あ、はい。なんでしょ…」

 

 飛鳥が反応すると、リサも飛鳥に抱き着いた。

 

飛鳥「あの、TPOって言葉をご存じでしょうか…」

日菜「まあまあ」

リサ「それは十分に理解してるけど、アタシのおっぱいと日菜のおっぱい。どっちが気持ちいい?」

飛鳥「ノーコメントで」

日菜「えー。はっきり決めてよー」

リサ「そうだねー。どっち?」

 

 と、ぐいぐい攻めるリサと日菜に飛鳥が困惑した。

 

**********************:

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 そしてそんな妄想した男子生徒たちは発狂した。

 

「一丈字めぇえええええええええええええええええ!!!」

「リサちゃんのおっぱいと日菜ちゃんのおっぱいを堪能しておいて、何透かしてんだコラァアアアアアああああ!!」

「もうちょっと嬉しそうにしろやオラァ!!」

「どうせ一人になった時に…」

 

 と、騒ぎ立てていたのを廊下から本人たちが見ていた。

 

飛鳥「どないせぇ言うんや…」

日菜「あ、本当に言った」

リサ「いくら飛鳥くんと喋るからって、そこまでしないよ…」

 

 リサもいつもなら苦笑いするが、男子生徒たちに引いていた。

 

日菜「いやー。リサちーは皆に優しいからさー」

リサ「そういう日菜だって人懐っこいじゃん」

飛鳥(超能力使って有耶無耶にしたろ)

 

 そして飛鳥が超能力を使って、リサと日菜から自分の認識を遠ざけて、ただひたすらに男子生徒たちに対して引くように誘導した。

 

 

おしまい

 




おまけ ~ もしもAが飛鳥の立場だったら ~

リサ「ぎゅっ♡」

 リサがAに抱き着いた。

A(ふぉおおおおおおおおおおお!!! リサちゃんが抱き着いてきた!! おっぱいも当たってるし、とっても良い匂いだし、女子が抱き着くなんて…わしゃあ今死んでも構わん!!)

 可愛い女子のぬくもりと感触にAは完全にオスの顔丸出しになっていた。股間も偉い事になっている。

 そんな状態で日菜も抱き着いた。

日菜「ぎゅーっ♡」
A(ああ…♡ もうこれで耳ふーされたら…♡」

 両方から女子の感触とぬくもりを感じて、Aはヘブン状態だった。

B「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
C「悪夢の時間やぁ!!}
「一丈字~!!! 戻ってきてくれぇ~!!!!」

 ほかの男子生徒たちはもだえ苦しんでいた。

A(もうダメ…リサちゃんと日菜ちゃんといろんなことしてぇえええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!)


*****************

 その頃飛鳥はというと…。

飛鳥「今井先輩と日菜先輩は今のところ相手がいるみたいなので心配ないと思いますが…。はい、引き続き任務を続行します」

 飛鳥は自分の部屋で仕事を続けていた。


おしまい


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飛鳥総受け編
第84話「北九州編・1」


設定

・ 飛鳥は神様によってつくられた仮の存在(第75話参照)
・ 飛鳥 ← バンドガールズ。



 

 天界・羅城丸の部屋

 

羅城丸「はー…暇じゃわい」

 

 転生の神・羅城丸は自室のソファーにもたれかかっていた。

 

羅城丸「ダシマ式ラブライブの更新はしないのかのう。すっかり暇じゃ…」

 と、羅城丸がぼやいでいると、ある事を考えた。

 

羅城丸「あ、そうじゃ。いい事思いついた」

 羅城丸は水晶玉を取り出した。

 

羅城丸「此間「バンドリ」の世界に飛鳥くんを作り出して住人にしてみたんじゃが、あれどうなったんじゃろ」

 

※ 詳しくは第45話を参照。

 

羅城丸「ちょっと水晶玉で覗いてみようかの」

 

 と、羅城丸が水晶玉から様子を見る事にした。

 

 

『もしも自分に好意を抱いている少女たちと旅行に行く事になったら』

 

 

 こんにちは。私の名前は一丈字飛鳥です。マナーの悪いファン、通称ヤラカシを懲らしめる為に、バンドリ学園に転校してきましたが、あまりにもヤラカシが多すぎてそろそろ疲れてきました。で、そういう事を依頼人の弦巻さんに話したら…。

 

こころ「それじゃ旅行に行きましょう!!」

 

 と、言ったんですね。さて、ここからは語りじゃなくてナレーションでお願いします。

 

 

飛鳥「旅行?」

こころ「そうよ。あたしと飛鳥の二人で旅行に行くの!」

飛鳥「ハロハピの活動大丈夫?」

こころ「問題ないわ!」

「いや、大ありだから」

 と、ハロハピのメンバーが現れて、美咲が話しかけてきた。

 

こころ「美咲! それに皆も!」

はぐみ「はぐみも飛鳥くんと旅行にいきたーい!!」

薫「こころ。私達に気を遣ってくれたんだね。だけど、遠慮する程の仲じゃないだろう?」

花音「そ、そうですよ!」

美咲「いつもは妙な事に巻き込む癖に…」

 美咲が首を横に振った。

 

こころ「そうね! 皆と一緒の方が楽しいわ! それじゃ…」

 

「それなら私達も混ぜてくれるかしら?」

 と、友希那が現れたが、それ以外のバンドガールも全員現れた。

 

美咲「いや、多い多い多い!!!」

香澄「私達だって飛鳥くんと旅行に行きたいよー!!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は困り顔だった。

 

有咲「な、なんだよその顔…」

飛鳥「いや、戸山さんの顔で思い出した事が…」

香澄「なあに?」

 

 飛鳥がこころを見た。

 

飛鳥「そういやもうすぐテストでしたよね?」

 

 飛鳥の言葉に空気が止まった。

 

美咲「あー。そういやそうだったね」

有咲「よし、赤点取った奴留守番な」

「異議なし」

 

香澄「えーっ!!」

はぐみ「ひど~い!!!」

 香澄とはぐみが叫んだ。

 

あこ「センパイ。勉強教えて?」

飛鳥「え」

香澄「あ!! それだったら私だって!」

はぐみ「はぐみもー!!」

有咲「コラコラ。それじゃ留守番にする意味ないだろー」

美咲「私達が教えるから!」

巴「あこ。迷惑かけるんじゃないぞ」

香澄・はぐみ・あこ「あああああああああああああああああああ」

 

 と、そんなこんなで勉強をする事になった。

 

リサ「そういや、パスパレは仕事大丈夫なの?」

日菜「大丈夫だよー。うん、大丈夫」

紗夜「どこに向かって話をしてるの」

千聖「まさかうちだけ仲間外れなんて…ねぇ?」

リサ「カメラに向かって話さない!!」

 

 どうしてカメラに向かって話をしていたかはお察しください。

 

 

飛鳥(どうなるかなぁ…)

 

 こうなった。

 

有咲「は? え、ちょ…」

香澄「いえーい! 有咲に勝ったー!!」

 

 何という事でしょう。香澄は赤点回避したどころか、有咲に勝っていた。

 

有咲「ここで主人公補正使うなぁー!!!」

香澄「えー。ちゃんと私努力したしー。ねえ? おたえ、さーや」

沙綾「う、うん…」

たえ「ちゃんと私達にも聞きに来てたよー」

有咲「何か腑に落ちねぇ~!!!」

 有咲が涙目になって叫んでいたが、りみが苦笑いしてなだめた。

 

はぐみ「はぐみもクリアできた~」

こころ「よく頑張ったわ!」

 

あこ「何とか赤点免れた~」

リサ「お疲れさん」

 

 そしてパスパレはというと…。

 

彩「オフにして貰ったよ~」

千聖「本当に飛鳥くんのお陰ね。今まで飛鳥くんへの貸しを盾にしたらすんなり言う事聞いてくれたわ」

飛鳥「いや、何してんすか」

 

 千聖の力技に対して、飛鳥が突っ込んだ。

 

香澄「これで皆行けるね!!」

 

 こうして、26人は旅行に行く事になった。行先は九州である。

 

 だが、ここでも問題が起きた。

 

「一丈字飛鳥!!」

 

 ファン軍団が現れた。

 

飛鳥「まあ、そうなりますよね…」

「貴様…25人全員と旅行なんてどういう了見だ!!」

「お前みたいなオリ主がいるから迷惑してるんだよ!!」

 

 と、いちゃもんをつけてきたが…。

 

千聖「あら、それじゃああなた達は女の子に話しかけられなくても良いという事になるけれど?」

「!!」

友希那「そうね。女子と話をする価値がないって聞こえるわね」

蘭「湊先輩に同意です。悔しいですけど…」

「ち、ちがう…」

「そう言ってるんじゃない…」

 と、ファン軍団はしどろもどろになっていると、飛鳥が助け舟を出した。

 

飛鳥「そういえばクラスの人たちで出かけたりとかしないんですか?」

友希那「しないわ。したとしても下心丸出しにするのが見えてるもの」

千聖「そうね」

 と、千聖と友希那が辛らつに言い返した。

 

「と、とにかく旅行なんて許しません!!」

「行ったらお前らの評判下げてやるからな!」

蘭「何とでもいいなよ。音楽で振り向かせてみせるから」

 と、蘭が強気な態度を見せた。

モカ「少なくともあたし達そんなに有名じゃないから大丈夫~」

ひまり「いや、それフォローになってない気が…」

モカ「だから行こう飛鳥く~ん」

 モカが飛鳥にくっつくと、ファン達が叫んだが、それ以上にバンドガールが叫んでいた。

 

ひまり「ちょ、ちょっとモカ!!」

巴「人前でくっつくなってあれほど言っただろ!!」

つぐみ「そ、そうだよ!!」

モカ「えーだってー」

 と、モカが言うと蘭がモカを睨みつけていた。

 

モカ「蘭も羨ましいなら素直にくっつけばいいのに~」

蘭「い、いや…そう言う事じゃ…」

 すると、友希那がくっついた。

 

飛鳥「あの、湊先輩?」

友希那「行きましょ。あの人たち女子に興味がないみたいだし、これでもう誘ってくることもないわね」

モカ「そうだね~。けど、モカちゃんと湊さんのおっぱいが当たってるから、羨ましがってるんじゃないかな~」

 

 実際、めっちゃ羨ましそうにしてるし、ガン見していたが、友希那とモカはお構いなしに飛鳥を連行していった。

 

 

 

つづく?

 



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第85話「北九州編・2」

 

 

 旅行当日。とあるバス停の駅前で集合していた。

 

飛鳥「あ、おはようございます」

「おはよー」

 

 飛鳥が集合場所に行くと、既に何人か到着し、そしてあっという間に全員揃った。

 

こころ「こっちよ!」

 こころが先導すると、何という事でしょう。弦巻家専用のバスがあるではございませんか。

 

(さ、流石大金持ち…!!)

 

 あまりのスケールのでかさに他のメンバーは言葉を失っていた。

 

香澄「うわー!! すごーい!!」

はぐみ「流石こころんのおうちだね!」

有咲「いや、もうちょっと遠慮しろ…」

美咲「何も起きないよね? 何も起きないよね?」

 

こころ「このバスに乗って空港に行くわよ! そこからジェット機で福岡まで行くわ!!」

(いや、もうマジでスケールでかすぎ…)

 

 弦巻家のスケールのでかさに驚いていると、

こころ「さあ、行きましょ飛鳥!」

飛鳥「うおっ」

 と、こころが飛鳥の手を引っ張ると、他の少女たちが反応した。

 

はぐみ「あー! はぐみもはぐみもー!!」

彩「待って~!!」

 と、皆が乗り込んでいった。

 

有咲「…なんか、大変な旅になりそう」

美咲「うん…」

 

 有咲と美咲がそんな話をしていた。

 

 バスの中では早速どんちゃん騒ぎが行われていたが…。

 

紗夜「皆さん! ちゃんとシートベルトは締めるんですよ!」

日菜「もー。おねーちゃんったら固いんだからー」

麻弥「いや、義務化ですから…」

 

 ちなみに高速バスでもシートベルトの着用は義務化されているので、皆さんも高速バスに乗る時はしっかりシートベルトを着用しましょう。

 

 で、飛鳥はこころと隣同士だった。

 

こころ「とっても楽しみだわ!!」

飛鳥「そ、そうですね…」

 飛鳥が困惑した。周りをどう見渡しても女の子なのである。

 

モカ「うふふー。飛鳥くんハーレムだね~」

飛鳥「そのようですね」

 モカが楽しそうに笑うと、飛鳥が困惑した。ちなみにバスは4列となっており、一番前が飛鳥とこころ、隣に座ってるのが香澄と有咲。そして飛鳥とこころの後ろにモカと蘭が座っていた。

 

 ちなみにペア

1. 香澄・有咲

2. たえ・沙綾

3. 蘭・モカ

4. ひまり・つぐみ

5. 巴・あこ

6. 彩・千聖

7. 麻弥・イヴ

8. 日菜・紗夜

9. 友希那・リサ

10. 燐子・りみ

11. 薫・花音

12. はぐみ・美咲

13. 飛鳥・こころ

 

はぐみ「いやー。はぐみ楽しみ過ぎてあまり眠れなかったなー」

美咲「どれくらい寝てないの?」

はぐみ「うーん…6時間くらいしか寝てないよー」

美咲「十分寝てる方ね」

 と、美咲が困惑した。

 

こころ「それにしても、ミッシェルも来られれば良かったわね」

美咲「あー…。ミッシェルはミッシェルでほら、忙しいんだよ」

飛鳥「……」

 

 飛鳥はミッシェルの正体について知っていたが、気づかないこころ達に関しても凄いなと思っていた。

 

 そんなこんなで空港にたどり着いた。

 

こころ「早速空港に乗り込みたい所だけど、ちょっと疲れただろうから休憩にするわ! 30分後にまたここに集合ね!」

「はーい」

 と、こころの先導の元、飛鳥達は休憩する事になった。

 

飛鳥(そういや弦巻家のプライベートジェットって言ってたな…。どんな感じだろう)

 

 その時だった。

「あ、あのう…」

飛鳥「?」

 りみがやってきた。

 

飛鳥「牛込さん。如何されましたか?」

りみ「も、もしよかったらこれ…一緒に食べませんか…?」

飛鳥「…チョココロネ?」

 

 りみが飛鳥にチョココロネを渡した。

 

りみ「沙綾ちゃんのおうちのパンなの。美味しいよ?」

飛鳥「頂いていいんですか?」

りみ「う、うん…////」

飛鳥「ありがとうございます。それでは頂きますね」

 

 飛鳥がりみからチョココロネを受け取り、そのまま一緒に食べた。

 

「飛鳥くん」

 紗夜がやってきた。

 

飛鳥「紗夜先輩…」

りみ「?」

紗夜「何を食べてるのですか?」

飛鳥「チョココロネです」

紗夜「そ、そうですか…」

 紗夜が少し困った様子だった。

飛鳥「どうされました?」

紗夜「い、いえ。何でもありません。失礼します…」

 と、紗夜が去っていき、飛鳥とりみが首をかしげると、入れ違いで日菜がやって来た。

 

日菜「おーい! 飛鳥くーん」

紗夜「!?」

 日菜の声がしたので、紗夜が思わず振り向いた。

 

飛鳥「日菜先輩…どうされました?」

日菜「じゃーん! この空港限定のお菓子を見つけたんだけど、一緒に食べよ!」

飛鳥「…チョコ菓子ですか」

日菜「あ、よかったらりみちゃんもどーぞ!」

りみ「あ、ありがとうございます…」

 

 と、3人で和気藹々とチョコ菓子を食べると、紗夜が歯を食いしばった。

 

友希那「素直になりなさいよ」

紗夜「!!!///////」

 

 そして30分後、ジェット機に乗り込んだが…。

 

(やっぱ弦巻家パネェ…)

 

 豪華すぎる内装を見て、香澄たちが驚いていた。

 

有咲「これ…料金でないよな?」

美咲「分かるわよ…。お金を取らない方がどうかしてるって、いつも思うもの…」

 

 と、有咲と美咲が震えていた。

 

日菜「席は自由に座っていいの?」

こころ「いいわよ!」

日菜「それじゃ行こっ! 飛鳥くん!」

飛鳥「……」

 日菜が飛鳥を連れていった。

こころ「あら? 今回は日菜と一緒なの?」

日菜「そーだよ! あたしが一番最初に誘ったから!」

こころ「そうなの。それじゃ楽しんでらっしゃい」

 こころの言葉に皆が驚いた。

 

美咲「え、ど、どういう事…?」

こころ「どういう事って?」

有咲「てっきり一丈字の事、独占するかと思った…」

こころ「そんな事しないわよ! だって皆飛鳥の事が大好きでしょ?」

 こころの言葉に大半が頬を染めた。

 

飛鳥(本当に怖いもの知らずだな…)

 

紗夜「つ、弦巻さんっ!! な、何を言っているのですかっ!!//////」

こころ「それなら、あたしだけ一人占めするのは良くないわ」

美咲「いや、確かにそうだけどさ…」

こころ「それに…」

 こころが正面を向いた。

 

こころ「飛鳥は皆のヒーローだし、そういう子が嫌いだって知ってるから」

「!」

 

 こころが笑みを浮かべた。

 

こころ「だからあたしだけじゃなくて、皆と仲良くして欲しいわ!」

 こころの言葉に大半のバンドガールが崩れ落ちた。

 

(か、勝てる気しねぇ…!!)

(ただの金持ちじゃなかった…!!)

(流石弦巻家…)

(ちゃんと教育されてらっしゃる…!!)

 

こころ「でも近くの席ならいいわよね?」

飛鳥「あ、うん…」

日菜「いやー。流石こころちゃん! 太っ腹!!」

こころ「あたしそんなにお腹出てないわよ?」

飛鳥「……」

 

 どうなる。26人旅!!!

 

 

つづく

 



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第86話「北九州編・3」

 

 

 飛行機が飛んでちょっと過ぎたころ…。

 

日菜「ねー飛鳥くーん」

飛鳥「……」

 

 隣でずっと日菜が話しかけていて、飛鳥が何とも言えない顔をしていた。

 

こころ「どうしたの?」

飛鳥「いや、今考えたら隣にアイドルがいるって物凄い光景ですね」

日菜「えー? そんな事ないよー」

紗夜「日菜。他の人に迷惑がかかるでしょ。静かにしなさい」

日菜「これ、プライベート機だからちょっと騒いでも大丈夫じゃないの?」

飛鳥「まあ、寝てる人もいるから…」

 

 だが、誰も寝ていない。ちなみに座席は2人1組であり、紗夜はこころと一緒に座っている。

 

日菜「あ、もしかしておねーちゃん。羨ましいの?」

紗夜「なっ!!/////」

飛鳥「日菜先輩。喧嘩になるから静かにしなさい」

日菜「はーい(まあ、おねーちゃんの顔真っ赤になってる所が見れたからいっか♪)」

紗夜「な、何をバカな事を言っているのですか!! わ、私がそんなよこしまな事なんて…」

飛鳥「え、ええ…存じ上げておりますよ」

 飛鳥が苦笑いすると、インターホンを鳴らした。するとキャビンアテンダントがやってきた。

 

「如何なされましたか?」

飛鳥「あ、すいません。グルコのカフェオーレ1つ下さい」

日菜「あたしもー!!」

 

 と、飛鳥は何とか話を逸らしたが、紗夜が羨ましがっていたのは事実だった…。

 

香澄「ちょっと見て有咲! 機内食のメニュー凄いよ! 見て見て!」

有咲「ちょ、恥ずかしいからやめろって!!」

りみ「おいひ~」

 りみはチョコ菓子をバクバク食べていた。

 

 そんなこんなで福岡空港についた。

 

「ついたーっ!!」

こころ「バスから博多駅に移動するわよ!」

 

 専用のバスで移動したが、今度は紗夜が隣だった。

 

飛鳥「宜しくお願いしますね」

紗夜「よ、宜しくお願いします…//////」

 

 飛鳥が話しかけると紗夜は恥ずかしそうに答えた。

 

日菜「うふふー。おねーちゃんかわいー」

紗夜「ひ、日菜!!/////」

こころ「紗夜も飛鳥と仲良くなりたいのよね!」

紗夜「う、うぅ…/////」

 

 紗夜はうつむいてしまった。

 

飛鳥「紗夜先輩」

紗夜「?」

 紗夜が飛鳥を見た。

飛鳥「チョコ食べますか?」

紗夜「い、頂きます…/////」

 

 と、和やかな空気になり、バスで移動中、飛鳥と紗夜は普通に話をしていたが、日菜がチャチャを入れて紗夜が憤慨していた。

 

 そして博多駅に到着した。

 

こころ「さあ、今から自由行動よ! 15時までにはちゃんとここに帰って来るのよ!」

「はーい」

「ちなみに場所を把握するために、皆さんこちらをお持ちください」

 と、黒服が香澄たちにバッジを渡した。

 

「こちらのバッジから緊急信号を出す事ができますので、すぐに私どもが駆け付けます」

有咲「あ、ありがとうございます…」

美咲「…本当に凄いわね」

「それでは、快適な旅を」

 

 そう言って黒服達が去っていき、自由時間になった。飛鳥は移動しようとしたが、

 

「飛鳥くん!」

「一丈字!」

「飛鳥くん」

「飛鳥」

「飛鳥!」

 

 各バンドのボーカルたちに声をかけられた。そしてこれはある意味全員に声をかけられるようなものだった。

 

飛鳥(うわー。何か凄い事になってきたー)

 

香澄「一緒に回ろうよ!!」

蘭「いや、うちと回ろうよ…」

彩「その…私達も飛鳥くんと回りたいんだけど…ダメかな?」

友希那「私達を選んでくれるわよね?」

こころ「はぐみ達が一緒に回りたいって言ってるわ!」

 

 と、お互い譲る様子もない。気のせいかモカがニヤニヤしていた。

 

飛鳥「どれか1組選べばいいんですね?」

友希那「そうね」

飛鳥「じゃあ、最初に声をかけてくれたPoppin’partyで」

香澄「やったぁ!」

 香澄たちポピパは喜んだが、他のグループは残念そうにしたり、怒っていた。

 

飛鳥(これでええんや)

 飛鳥はキッパリと覚悟を決めていた。

 

友希那「じゃあ聞いていいかしら」

飛鳥「何ですか?」

リサ「ちょ、ちょっと友希那!!」

友希那「もしPoppin’party以外だったら?」

 友希那の言いたい事が分かり、蘭がしまった!という顔をした。

 

飛鳥「…Roselia」

友希那「そう。ならいいわ」

 友希那が蘭の方を見た。

蘭「あのー…何でこっちの方を見るんですか?」

飛鳥「あ、戸山さん」

香澄「なに?」

飛鳥「ちょっと寄りたい所があるんですけど、いいですか?」

香澄「勿論いいよ!? どこ?」

飛鳥「銀行…」

有咲「ああ。それならさっさと行こう」

 

 と、飛鳥とポピパはそそくさと後にした。

 

ひまり「ちょ、蘭と友希那先輩をこんな状態にしたまま行かないでぇ~!!!!」

 

 こうして、博多の旅が始まった。

 

飛鳥(パスパレが一番心配だけど…。まあ、黒服の人たちがいるから大丈夫だよね)

 

 と、飛鳥は香澄たちと移動していた。

 

香澄「いやー。嬉しいなー。こうやっておたえ達や飛鳥くんと博多回れるの!」

飛鳥「そりゃどうも…」

 香澄が飛鳥にくっつくと、周りの視線が気になった。

 

有咲「お、おい! 人が沢山いるんだぞ!」

 有咲が止めようとしたその時…。

 

「…あの金髪のおねーちゃん、おっぱい大きいな」

「ああ…。Dはあるな」

有咲「……っ!!/////」

 有咲が頬を染めて胸元を両手で抑えると、飛鳥の後ろに隠れた。

 

たえ「あららー」

りみ「……」

沙綾「まさかとは思うけど、地元の人じゃないよね…?」

 

 たえ達が苦笑いした。

 

飛鳥「戸山さん。ちょっと反対側回って貰えますか?」

香澄「はーい。それじゃ有咲。こっちに隠れていいよ」

有咲「…あ、ありがとう/////」

 

 と、有咲が照れると香澄がニヤニヤしていた。

 

有咲「おい、必要以上にニヤニヤすんな」

香澄「いや、だって有咲めっちゃ可愛いんだも~ん。あいらしか~」

有咲「博多弁にすなっ!!!//////」

 

たえ「あいらしか~」

りみ「あ、あいらしか…//////」

沙綾「あいらしか…」

有咲「お前らも同調すな!!!」

 

香澄「じゃあ飛鳥くんも!」

有咲「やめろ!! 本当にやめろ!! 男子はシャレにならねぇから!!/////」

 と、有咲が顔を真っ赤にした。

飛鳥「そう?」

有咲「……」

 飛鳥がそう言うと、有咲がちょっと寂しそうにした。

飛鳥「まあ、私関西人ですしね」

有咲「そ、そうは言ってないだろ…」

飛鳥「じゃあ言っても良いですか?」

有咲「ダ、ダメ!!/////」

 有咲が照れた。

飛鳥「貴女んそげな所、あいらしか」

有咲「////////」

 有咲がポーっと顔を真っ赤にした。

 

有咲「う、う、うるさいバカ―ッ!!!!///////」

香澄・たえ・りみ・沙綾(あ・い・ら・し・か///////)

 有咲の可愛さに他の4人がもだえ苦しみ、有咲は飛鳥をポカポカ叩いた。

 

有咲「ちょ、ちょっとやめろお前ら!! お、お前らも見るなー!! 見るなよー!!//////」

 

 この後、有咲は物凄くへそを曲げて、機嫌を直すのに時間がかかった。

 

 

つづく

 



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第87話「北九州編・4」

 

 

 買い物を一通り楽しんだ一行。

 

 そして午後3時。

 

こころ「全員揃ったわね! 楽しめたかしら!?」

「はーい」

こころ「それじゃバスに乗り込むわよ!」

 と、皆がバスに乗り込んだ。

 

 そして飛鳥の隣の席には、ずっと話したがっていたはぐみが座っていた。

 

有咲「……」

 そんな様子を見て、有咲は表情を曇らせていた。

 

香澄「ヤキモチ?」

有咲「ちげーよ/////」

香澄「ちょ、やめて…苦しい…」

 

 香澄の冷やかしに有咲が香澄にアイアンクローを仕掛けた。

 

たえ「めんごい…」

有咲「山形弁にしてもダメ!!!/////」

 

はぐみ「そんでね! いろんなところを回って楽しかったんだよ!」

飛鳥「そりゃあ良かったですね」

 と、はぐみの話を聞いている飛鳥。

はぐみ「飛鳥くん達は何をしてたの?」

飛鳥「私達も似たような感じですね。福岡のお菓子を食べたり、ラーメン食べたり、それから…」

 飛鳥がふと有咲の方を見ると、有咲が頬を染めて睨みつけていた。

 

飛鳥「…街を歩いて回りました」

はぐみ「本当にはぐみ達と同じだー」

 

 その時、彩がスマホを見て青ざめていた。

 

千聖「…彩ちゃん。こんな時くらいエゴサーチは」

彩「違うの。見てこれ」

千聖「?」

 

 千聖が彩のスマホに顔を覗き込むと、そこにはツイッターで有咲が顔を真っ赤にしてポカポカ飛鳥を殴ってるシーンがあった。そして書き込みには…。

 

【目撃情報】 Poppin’partyが1人の男と歩いていて、男の子が有咲ちゃんに対して口説いたのか、有咲ちゃんが顔を真っ赤にして男の子をポカポカ叩いていた。 あ い ら し か

(画像:有咲が飛鳥に対してポカポカ殴ってるシーン)

 

彩・千聖「……」

 千聖の表情が沈んで、彩と共に飛鳥を見た。

 

飛鳥(あー…オレは生きて帰れるのだろうか)

 飛鳥は察しがついて、そのような事を考えていた。

 

 そして2時間後。一行は大分の湯布院に到着した。

 

香澄「温泉街だー!!」

 と、香澄達は湯布院の景色を見て興奮していた。有咲も少しだけ機嫌が直っていた。

 

 そして旅館に到着した。

 

「ようこそおいでくださいました」

 

 女将が出迎えると、26人が挨拶をした。

 

「さて、お部屋にご案内いたします」

 

 と、女将が用意した部屋は何という事だろう。一部屋だった。

 

飛鳥「あ、私は外で寝ろって事ですね。了解しました」

こころ「何を言ってるの? 飛鳥も一緒よ?」

飛鳥「…Pardon?」

たえ「何で英語なの?」

 

 飛鳥が不思議そうにした。

 

友希那「ここまで来て何を考えてるの?」

蘭「そうだよ」

飛鳥「湊先輩、美竹先輩。やっぱりおかしいですよね…」

 飛鳥が反応すると、

 

友希那「あなたに言ってるのよ。ちなみに今夜は」

蘭「あたしと一緒に寝て。一丈字。他の子に手を出さないか見張るから」

 と、蘭が割り込んだ。

 

飛鳥「美竹さん…あなたそういう人だったのですか…」

蘭「ち、違うから!!/////」

友希那「違わないわ。私が先に申し込んだのに割り込みをするあたり、どう考えても確信犯だわ」

蘭「わ、私が先に言おうとしましたから…」

 と、小競り合いをした。

 

友希那「そう。それならお風呂も一緒に入るのよね?」

 空気が止まった。

蘭「そ、それは…/////」

友希那「勿論バスタオルは無しよ。それが出来たら大人しく退いてあげるわ?」

蘭「っ!!/////」

リサ「ちょ、ちょっと友希那。そういうのは…」

 リサが慌てて止めた。

モカ「じゃあモカちゃんが代わりに犠牲になりましょう」

「!!?」

 モカが前に出たが、

 

飛鳥「皆さん。落ち着きましょう。本当に落ち着きましょう」

友希那「あなたはどうしたいの?」

飛鳥「色々怖いんで、男女別々に入りたいです」

 飛鳥がそう言うと、友希那がため息をついた。

 

友希那「あなた、それでも男なの?」

飛鳥「聞いていいですか。その台詞、同じクラスの方に言えますか?」

友希那「言えないわ。あなただから言ってるのよ」

飛鳥「そこまで心を開いて頂いて何よりです」

 飛鳥が目を閉じた。

 

蘭「そ、そんなに言うなら湊さんは出来るんですか?」

友希那「出来るわよ?」

 空気が止まった。

 

友希那「Roseliaは頂点を目指してるの。スッポンポンになることくらい、造作もないわ」

紗夜「は、破廉恥です!!/////」

リサ「友希那? あたし等全員がそう思われるからその発言はやめて///////」

燐子「……//////」

あこ「あ、あこも流石に恥ずかしい…/////」

 

 と、友希那以外は頬を染めてモジモジしていた。

 

モカ「こっちは2人。湊さん、残念ながら軍配はこっちにあがりましたね」

蘭「そ、そうです!」

モカ「それじゃあ、飛鳥くんと一緒にお風呂に入る権利はAfterglowが貰います」

飛鳥「ごめんなさい。そういう話でしたっけ?」

モカ「あ、ごめん。違ったね~。それじゃついでに、Afterglowが一緒に寝まーす」

「コラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 と、皆が突っ込んだ。

 

彩「いくらなんでもずるいよ!! 私達まだ一丈字くんと何も出来てないんだよ!?」

千聖「そうよ!」

モカ「日菜さんが座席隣だったりしたじゃないですか~。それに麻弥さんも話しかけてましたし~」

麻弥「いや、確かにそうなんですけど…」

 その時だった。

 

こころ「それじゃこうしましょ!」

「?」

 

こころ「お風呂は一緒に入りたい人だけ入りましょ!?」

飛鳥「すみません。この宿って男湯と女湯に分かれてないんですか?」

こころ「混浴風呂があるわよ!」

飛鳥「わあ」

 飛鳥が驚いた。

 

友希那「諦めて腹を括るのね」

飛鳥「いやー。百歩譲って混浴するにしても、話しておかないといけない事がございましてね」

「なに?」

飛鳥「さっきダシマ劇場本部から電話があって、風呂入る時は水着を着るように言われたんですね。着なかった場合は強制的に着用させられると…」

「!!?」

 皆が驚いた。

 

香澄「どうして?」

飛鳥「いやー。男性の股間についてるブツを皆さんに見せてはいけないと…」

香澄「おちんちん?」

飛鳥「私が隠した意味」

 

 香澄の言葉に一部のメンバーが頬を染めた。

 

飛鳥「という訳ですので、諦めてください」

こころ「それでもいいわよ?」

飛鳥「え」

 飛鳥が驚いた。

 

友希那「そうね。そういう事なら、女体を楽しむといいわ」

飛鳥「その言葉をあなたの他のクラスメイトが聞いていたらどうなったでしょう」

友希那「一人寂しくいやらしい妄想をするでしょうね」

飛鳥「ごめんなさい。Roseliaって…」

「ちーがーいーまーすぅー!!!!」

 

 そんなこんなで、風呂に入る事になったが、飛鳥が大浴場の前に行くと、男湯が閉鎖されていた。

 

飛鳥「……」

「一丈字様。どうぞこちらをお使いください」

「ご安心ください。こちらを」

 飛鳥が黒服から「誓約書」を渡された。

 

友希那「これで安心してお風呂に入れるわね?」

こころ「行きましょ飛鳥!!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は静かに目を閉じた。

 

 

つづく

 



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第88話「北九州編・5」

 

 

 お風呂から上がった26人。

 

香澄「いいお湯だったねー!」

蘭「そ、そうだね…/////」

モカ「もー。蘭ってば見栄貼り過ぎー」

日菜「るんって来ちゃった! またはいろーね!」

友希那「いいお湯だったわ」

こころ「そうね!」

 

飛鳥「……」

 香澄達と一緒に出てきた飛鳥は真顔だった。

 

香澄「どうしたの?」

飛鳥「最近の女子高生は怖いもの知らずだなーと…」

友希那「あなたも大概よ」

 

 ちなみに入らなかった他の19人はというと…

 

彩「いや、普通に恥ずかしい…/////」

たえ「そういやボーカル組でいなかったの、彩先輩だけでしたね」

彩「や、やっぱり行った方が良かった…?」

千聖「大丈夫よ。日菜ちゃんが頑張ってくれたから…」

 千聖が視線を逸らした。

 

 そして寝室。和室である。

 

飛鳥「というか何でこんなに横長いんです?」

こころ「こうやって一度皆で雑魚寝っていうのをやってみたかったの!」

「お前の願望かい!!」

 

 と、突っ込んだ。

 

飛鳥「異物が混入してるけど、大丈夫ですか?」

友希那「大丈夫よ。その異物は私が面倒を見るわ」

蘭「湊先輩。一丈字はAfterglowが面倒を見ると言った筈ですよ」

友希那「そんなの無効よ。大体あなたじゃなくて青葉さんが頑張ったんじゃない」

 と、小競り合いが始まった。

 

モカ「こうなったら、宿の定番。卓球で勝負だね!!」

 

 友希那と蘭が卓球で勝負する事になったが、友希那が体力無い為、蘭の勝利で終わった。

 

蘭「湊さん。約束ですよ」

友希那「ぐっ…」

モカ「わー。蘭めっちゃ嬉しそう」

ひまり「黙ってなさい!!」

 

 確かにモカの言っていた通り、蘭はとてつもなく嬉しそうな顔をしていた。

 

友希那「まさかとは思うけど…飛鳥と同じ布団で寝るのは」

蘭「寝ませんよ!!//////」

友希那「流石のあなたもそこまでは無理なようね…」

リサ「友希那。それ負け惜しみのつもりならやめて。色々笑えないから」

蘭「……/////」

リサ「蘭も落ち着いて。ホント落ち着いて」

 

 と、リサが慌てて止めたが、飛鳥は腕を組んで困惑していた。

 

モカ「いやー。モテモテだね~」

飛鳥「そうですね。恐怖しか感じなくなりましたね」

 

 飛鳥も結構投げやりになっていた。

 

 そんなこんなで夕食。和室で懐石料理が出されていた。

 

「うわーっ!!」

「おいしそー!!」

 

 と、完全に女子高生たちには場違いの料理の数々が出ていて、有咲と美咲、飛鳥は絶句した。

 

有咲「…もう何も突っ込まねぇ」

美咲「うん…」

飛鳥「楽しみましょう」

 

 その時だった。

 

あこ「ねーセンパーイ。あこ達と一緒に食べようよー」

 と、あこに誘われてRoseliaと一緒に食事をする事になった。そこで友希那達Roseliaがナイスと思っていたのは言うまでもなかった。

 

 そして食事を一緒にしていると…。

 

飛鳥「あ、お酌しないと」

 飛鳥が何か思いだしたかのようにお酌をしようとすると、

「あ、あのう…」

 燐子がすでに瓶を持っていて、飛鳥にお酌しようとしていた。

 

燐子「お、お酌します…/////」

飛鳥「え!? あ、私がしないといけないのに…」

燐子「い、いえ…/////」

友希那「させてあげなさい」

飛鳥「は、はい…」

 と、燐子にお酌をして貰った飛鳥。

あこ「あー! 次はあこがやるー!」

友希那「その次は私よ」

飛鳥(グラス空けづらい…)

 

 と、困惑しながらも、飛鳥は食事を楽しんだ。

 

日菜「そういやカラオケとかもあるんだねー」

 と、日菜達がカラオケを見た。

 

日菜「ここにギターとかもあれば…」

麻弥「流石にバンド演奏はうるさいっすよ…」

千聖「そうそう」

日菜「あ、そうだ!」

 日菜がある事を考えて、飛鳥が移動した。

 

日菜「ねえねえ飛鳥くん!」

飛鳥「あ、はい。何ですか?」

日菜「デュエットしようよ!」

 

 空気が止まった。

 

飛鳥「デュエットですか?」

日菜「そう! あのカラオケボックスで!」

飛鳥「はあ…」

 すると他のメンバーも目を光らせた。

 

飛鳥(あ、これは超能力使った方がええわね)

 

 と、飛鳥は超能力を使おうとしたが、黒服達に見張られていた。

 

飛鳥「いいですけど、何歌うんですか?」

日菜「えっとー…」

 日菜が考えた。

紗夜「考えてから誘いなさい」

日菜「飛鳥くん。何歌いたい?」

飛鳥「そう言われましても…」

 飛鳥が考えると、

日菜「やっぱポケモン!?」

飛鳥「声似てるから言うと思いましたよ」

 すると、黒服が三味線を取り出した。

 

友希那「三味線?」

飛鳥「……」

 

 飛鳥が気まずそうにした。

 

日菜「もしかして三味線弾けるの!?」

飛鳥「いや、もう昔の話ですね…」

日菜「すごーい! ちょっとやってみせてよ!」

飛鳥「いや、ゆっくり飯食べたい人もい…」

日菜「ねー! みんなー! 飛鳥くんが三味線弾いてくれるってー!!」

「えー!!?」

飛鳥(失敗したら好感度爆下がりするやーつ!!!)

 

 飛鳥が驚くと、紗夜が額を抑えた。

 

 そしてステージの上に立って、飛鳥が演奏する事になった。目の前には25人の少女たち。

 

飛鳥(本職の方々にライブ演奏するってどういうこっちゃ…)

 

 まさかの展開に飛鳥は思わずメタ発言をした。

 

飛鳥「えー、それでは引語りメドレーでお送りいたします。鬼滅の刃より「紅蓮華」、おジャ魔女どれみ「おジャ魔女カーニバル」、他1曲。

 

 と、飛鳥がそう言うと、皆が拍手をして1コーラスずつ披露した。2曲目の「おジャ魔女カーニバル」が終わると、

 

彩「あっ!!」

千聖「この曲…」

飛鳥「~♪」

 

 三味線にアレンジしたPastel*Palletesの曲「しゅわりん☆どり~みん」だった。

 

日菜「すごーい!!」

紗夜「……!!」

 

 日菜が素直に感心しているが、紗夜は絶句していた。

 

千聖(歌ってる人が違うだけでこんなに違うの…!!?)

彩(か、かっこいい…//////)

 

 そしてライブが終わると、正大な拍手が送られた。

 

飛鳥「ありがとうございました。ちなみに最後の曲はリクエストをくれた氷川日菜さんへのサプライズです」

 飛鳥が堂々とした笑みでMCを行った。

 

日菜「あたしの為にだって!! ねえねえねえ!!」

 すると友希那が飛鳥の所に向かった。

リサ「ちょ、ちょっと友希那!」

蘭「!」

 

飛鳥「どうされました?」

友希那「私とデュエットしましょう。いいわよね?」

飛鳥「え? しゅわりん☆どり~みんをですか?」

友希那「違うわよ/////」

日菜「えー!! 聞きたーい!!」

 と、日菜が変に煽ったせいで、歌わざるを得ない空気に。

 

飛鳥「ちなみに歌は知ってます?」

友希那「し、知らないわ/////」

 友希那はプイッと横を向いたが、絶対知っている。

 

日菜「えー。それじゃ蘭ちゃんが歌う事になるけどいいのー?」

蘭「え゛っ」

モカ「この際だから2人で歌ったら~?」

友希那・蘭「絶対嫌!!!///////」

 

 2人がハモると笑いが生まれて、飛鳥はニコニコしていた。

 

 

 そして食事が終わって…。

 

「それー!!」

「わー!!」

 と、香澄達が枕投げをしていたが、飛鳥は超能力を使って存在感を消して、眠りについていた。

 

飛鳥(長い間ご清聴ありがとうございました)

 

 翌日、ちょっと観光して帰りましたとさ。

 

おしまい

 

 



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第154話「南の島編」


 今回の設定

 飛鳥 ← バンドガールズ

*************************


 

 

 

 一丈字飛鳥です。私は今、南の島にいます。そして目の前には水着姿のバンドガールズがいます。

 

 どうしてこんな事になったのかと言いますと…

 

 数日前

 

こころ「とっても寒いわ!」

飛鳥「寒波が来てるからね…」

 

 バンドリ学園でこころとこういう話をしてたんですね。

 

こころ「どうやったら寒くならないかしら…」

飛鳥「家の中で暖房付けるくらいしかないと思うよ」

こころ「そうだわ! 南の島に行きましょう!」

飛鳥「え?」

こころ「そうすればきっと寒くないわ!」

飛鳥「オレの話聞いてた?」

こころ「それに…」

 

 その時、こころは私を見ました。

 

こころ「飛鳥もよく頑張ったから、たまには休まないと!」

 

 …

 

 そういう訳で今、こころに連れられて南の島に来ています。皆さん楽しそうで何よりです。

さて、これをファンの人たちが知ったら私の命はないでしょうね。

 

 一応、合宿という名目で25人全員(ポピパ、アフグロ、パスパレ、ロゼリア、ハロハピ)を連れて来ました。あ、ここで一旦私の語りは終わります。

 

香澄「折角海に来たんだから遊びたーい!!」

はぐみ「そーだよ!!」

 と、元気っ子組が南の島に来て早々遊びたいと言い出した。

 

紗夜「ダメです。ここに何しに来たんですか?」

千聖「そうよ」

 真面目組の紗夜と千聖が反対した。

 

 ちなみにこんな感じ

 

<遊びたい>

香澄・モカ・ひまり(こっそり)・彩(こっそり)・日菜・友希那・あこ・こころ・はぐみ

 

<練習したい>

有咲・蘭・千聖・紗夜

 

<どっちでもいい>

たえ・りみ・沙綾・巴・つぐみ・麻弥・イヴ・リサ・燐子・薫・花音・美咲

 

友希那「飛鳥はどっちがいいと思う?」

飛鳥「練習しましょう」

「え~~~~~~~~!!!!?」

 香澄達が叫んだ。

 

紗夜「見なさい。飛鳥さんもこう言ってるでしょう」

 その時だった。

 

日菜「ねー飛鳥くーん。おねがーい」

 と、日菜が飛鳥に抱き着くと、飛鳥が困惑した。

 

紗夜「コ、コラ!!//////」

香澄「あ、それだったら私もー!!!」

有咲「やめろバカタレ!!!//////」

 

 香澄も飛鳥に抱き着こうとしたが、有咲に止められた。

 

飛鳥「あ、ちなみに練習したいって方はどれくらいいますか?」

 紗夜、千聖、蘭、有咲が手を上げた。

 

飛鳥「分かりました。それでは皆さんが遊んでる間に、その4名の方は私と練習しましょうか?」

「え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!?」

 皆が更に驚いた。

 

香澄「飛鳥くんも練習に参加するの!?」

飛鳥「ええ」

はぐみ「えー! 飛鳥くんとも遊びたいのにー!!」

飛鳥「ちゃんと遊びますよ。午後から」

こころ「それならあたしも練習するわ!」

 と、こころがそう言うと皆が便乗した。

 

千聖「あら、遊んでていいのよ?」

紗夜「そうです」

蘭「ちゃんとやらないの目に見えてる…」

友希那「どや顔止めてくれるかしら」

 

 と、千聖たちは飛鳥がこっち側について超強気な態度を取った。

 

有咲「5人で練習しようぜー」

香澄「ちょ、有咲ぁ~!!!!」

沙綾「まあまあ、皆やる気になったし練習しよう。で、海で遊ぶのは午後のお楽しみって事で」

 

 沙綾が上手い事を纏めて、何とか事なきを得た。千聖たちは飛鳥を独占できなくて残念そうにしていたが、一応グループで練習するという目的は果たせた為、それ以上は何も言わなかった。

 

 その間、飛鳥はメンバーを見て回った。ライブの経験も楽器に関する知識もそんなにある訳ではないが、技術は確かなものだったので、それなりに頼りにはされた。

 

 そして11時半、皆思ったほかちゃんと真面目に練習していた為、紗夜たちからOKサインが出てようやく海で遊ぶことが出来て…今に至る。

 

*********************

 

 飛鳥は海をじっと見ている。

 

美咲「ごめんねー。こころが連れまわして」

飛鳥「いえ…」

 

 隣には美咲がいて、こころの件について謝っていた。

 

美咲「そういやあなたが来てからこころ、あなたによく構うようになったのよね」

飛鳥「…そうですか?」

美咲「ええ。あなたが来る前はあたしにベッタリだったのに」

 美咲が寂しそうにした。

 

飛鳥「…寂しいんですか?」

美咲「いや、そういう事じゃないわよ。あたしの名前全然憶えなかったのに、あなたはあっさり覚えたから何か腑に落ちなくて…」

飛鳥「あー…」

 

 こころの性格上あり得そうだな…と飛鳥は思った。

 

 その時、

 

「飛鳥くーん!!」

 香澄達Poppin’partyがやってきた。当たり前だが皆水着姿である。

 

香澄「飛鳥くんも一緒に遊ぼうよ!」

飛鳥「……」

 香澄が飛鳥に顔を近づけると、飛鳥は困惑した。ちなみに香澄は前かがみになってる為、胸元から少し谷間が見えていた。

 

美咲「あ、あの…戸山さん?/////」

香澄「なに?」

 香澄が美咲の方を見ると、美咲が頬を染めた。

 

美咲「同じ年の男の子にいきなりそういう姿勢を見せるのは如何なものかなーと思います…/////」

香澄「え?」

 香澄は気づいていなかった。

飛鳥「顔が近いです」

香澄「あ、そういう事か! そんなに恥ずかしがる事ないのにー」

 と、香澄は笑った。

飛鳥「戸山さん。結構モテるでしょ」

香澄「そんな事ないよ。どうして?」

飛鳥「いやー。男女分け隔てなく接する人ってモテやすいらしいですよ」

香澄「そ、そうなんだー」

 飛鳥の言葉に香澄はやや苦笑いした。

 

香澄「でも、興味ないかなー」

飛鳥「そうですか」

 飛鳥と香澄が話しているのをたえ達は黙って聞いていた。

 

たえ「それはそうと飛鳥くん」

飛鳥「何です?」

たえ「興奮してる?」

飛鳥「ドストレートに聞きますね。少なくとも今興奮じゃなくて、身の危険を感じてますよ」

 

 たえの爆弾発言に飛鳥は思わず困惑した。りみ、沙綾、有咲、美咲が頬を染めた。

 

香澄「水着、夏に買ったんだけどどうかな!?」

飛鳥「似合ってると思いますよ」

香澄「そう? 興奮してもいいんだよ?」

飛鳥「心を開いてくれて何よりです」

 

 飛鳥が困惑しながらツッコミを入れた。

 

沙綾「あ、そうそう。お腹空いてない? お腹空いてたら丁度パン持ってきたから、お昼にしようと思うんだけど」

香澄「わー!! さーやの家のパンだー!!」

りみ「チョココロネある…?」

沙綾「あるよー」

 

 と、そのままランチタイムになったという。

 

香澄「良かったら美咲ちゃんもどーぞ!」

美咲「あ、ありがとう…」

 

 そして他のメンバーも集まってきたのは言うまでもなかった…。

 

 

おしまい

 



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第155話「南の島編・2」

 

 

 前回までのあらすじ

 

 Poppin’party、美咲と昼食を共にした飛鳥。

 

沙綾「お代わりいっぱいあるからねー」

有咲「それにしてもよくパンを持ち込んでたな…」

 有咲が困惑していた。

沙綾「りみとモカからのリクエストで…。あ、モカの分はちゃんと残してるから」

有咲「そ、そうか…」

 

 そして香澄はというと、

香澄「飛鳥くん。食べさせてあげよっか?」

飛鳥「遠慮しときます」

香澄「遠慮しないでー。ほら…」

飛鳥「私が食べさせる分には問題ございませんが」

 

 飛鳥の言葉に空気が止まった。

 

飛鳥「どうします?」

香澄「じゃあお願いしようかなー」

飛鳥(あ、通じないタイプだったわ)

 

 しかし、これで沢山の人間から食べさせて腹をこわすというオチは回避できたので、飛鳥は一安心した。

 

飛鳥「はい、それじゃあーん」

香澄「あ~ん♥」

 

 と、飛鳥は香澄にちぎったパンを食べさせた。その光景はまるで親鳥がひな鳥にえさを与えるかのようだった。それをたえ達がじっと見つめている。

 

香澄「はむ…」

飛鳥「美味しいですか?」

香澄「おいし~♥♥♥」

 

 香澄はご満悦だった。そんな香澄を見て飛鳥は一安心していたが、たえ達からの視線がとてつもなく痛かった。

 

飛鳥(強制送還は覚悟できている)

 

 そんなときだった。

 

たえ「飛鳥くん」

飛鳥「何です?」

 飛鳥がたえを見ると、たえがうさぎの真似をしだした。

 

たえ「私はうさぎだよ」

飛鳥「食べさせてほしいんですか…?」

 

 飛鳥は困惑するように質問すると、たえが頬を染めた。

 

たえ「…だから、エサを食べさせなきゃダメ/////」

飛鳥「……」

 

 たえの言葉に飛鳥は困惑した。うさぎの真似をする必要はあったのかと。ずっと困惑していたが、たえがじーっと見つめてきたため、餌を上げてみる事にした。香澄同様ご満悦だったそうな。

 

飛鳥(あ、良かった…)

 

 沙綾と美咲は苦笑いして見ている様子だったが、りみは羨ましがり、有咲は興味がないふりをしてチラチラ見ていた。

 

 その時である。

 

「あなた達」

「!」

 

 友希那、リサ、燐子がやってきて、そのうち紗夜が話しかけた。

 

香澄「紗夜先輩! それに友希那さんと燐子先輩も!」

紗夜「他に人がいないとはいえ、羽目を外し過ぎないように」

「はーい」

 と、皆が返事をした。

 

友希那「ところで飛鳥」

飛鳥「はい」

友希那「あなたはこの後どうする予定なのかしら?」

香澄「私達と一緒に遊びます!」

 香澄が堂々と言い放った。

 

紗夜「そ、そう…」

友希那「ちょっと待ちなさい。お昼も一緒だったのに、まだ飛鳥を独占するつもりなの?」

香澄「あ、それでしたら友希那さん達も一緒に遊びませんか?」

友希那「……」

燐子「ゆ、友希那さん…」

 燐子が困った様子で友希那に話しかけた。

 

友希那「…仕方ないわね」

香澄「そうしましょう!」

 

 と、特に修羅場になる事もなく、事を収めた。

 

友希那「その前に飛鳥。お願いしたい事があるの」

飛鳥「何です?」

友希那「日焼け止めを塗ってくれるかしら」

 

 友希那の言葉に空気が止まった。

 

飛鳥「日焼け止め?」

紗夜「み、みみみみみみ湊さん!!?//////」

友希那「日焼け止めを塗るのを忘れたのよ。いいかしら?」

飛鳥「…今井先輩とかにお願いできなかったんですか?」

友希那「あなたに塗ってもらいたいのよ」

燐子「!!!?////////」

 

 友希那の爆弾発言に燐子は顔を真っ赤にした。

 

飛鳥「大胆ですね」

友希那「Roseliaは頂点を目指すの。これくらい当然よ」

燐子「いや、その…友希那さん…/////」

紗夜「破廉恥です!!!/////」

有咲「ていうか、自分たちで言った事を自分たちで破ってるし…」

  

 と、友希那の大胆さに皆が困惑していた。

 

飛鳥「この状況でオイル塗ったら、絶対ただで済みませんよね」

紗夜「一丈字さん。湊さんの相手をしなくて結構です////」

友希那「紗夜も塗って貰えばいいじゃない。日菜よりもリード出来るわよ」

 

 友希那の言葉で紗夜のスイッチが入った。

 

紗夜「…仕方ないですね。他のメンバーに手出しをさせない為ですし、一丈字さんもそれなりのお年頃」

飛鳥「白金先輩。日菜先輩連れてきてもらえませんか?」

紗夜「な、何でですか!!? 私よりも日菜の方が良いと!!? 確かにあの子の方が発育も良いですし…」

飛鳥「あなたを止める為ですよ。あと、湊さんも」

友希那「意気地がないのね」

飛鳥「その手には乗りませんよ」

 と、飛鳥が言い放った。

 

友希那「分かったわ。それじゃ燐子もつけてあげるから、オイル塗りなさい」

燐子「ふぁっ!!?///////」

飛鳥「どうやったら無事で済むのかなーコレ…」

 飛鳥が困惑した。

 

友希那「塗ってもいいんでしょう?」

飛鳥「良いですけど」

友希那「じゃあいいじゃない」

飛鳥「分かりました」

有咲「わかっちゃうのかよ!!!」

 

 こうして飛鳥はオイルを塗る事になりました。友希那が水着の上を抜いて、レジャーシートの上でうつぶせになっていた。

 

飛鳥「それじゃ行きますよー」

友希那「……」

 

 飛鳥は慣れた手つきで友希那の背中に日焼け止めを塗った。

 

友希那「!!///////」ビクン

飛鳥「動かないでください」

 

 飛鳥は淡々と背中を塗っていくが、友希那は背中を触られて…お察しください。当然ながら見ていたバンドガールズは顔を真っ赤にしてました。

 

飛鳥「湊先輩」

友希那「そろそろ友希那って呼んで頂戴」

飛鳥「それはまだですが…。美竹さんにマウントを取らないようにしてください」

友希那「…分かったわ」

美咲「その美竹さん…もの凄い顔でこっち見てますけど」

飛鳥「そうですか」

 

 蘭はAfterglowの5人でビーチバレーをしていたが、飛鳥が友希那にオイルを塗っているのを見て目を大きく開いていた。

 

 そして…

 

飛鳥「これで完了ですね」

友希那「背中だけしか塗ってないわ」

飛鳥「え」

友希那「…もうちょっと下もやって頂戴///」

 尻の部分だった。

 

飛鳥「水着をずらせと?」

友希那「…あなたがそうしたいなら////」

紗夜「交代!!! 交代です!!!///////」

 紗夜が割って入った。

 

飛鳥「交代ってアナタ…」

友希那「紗夜もやって貰いたいんじゃないの」

紗夜「ち、違います!! 私は他のメンバーにこれ以上手出しをさせないという意味で…」

飛鳥「私、悪者ですね」

友希那「ひどいわね」

紗夜「っ!!」

 

 飛鳥と友希那の言葉に紗夜がはっとした。

 

飛鳥「強制送還してほしいんですね」

紗夜「あの、そこまでは言ってな…ああもう分かりました!! 私にもオイル塗ってくださいっ!!!///////」

飛鳥「え、宜しいんですか?」

紗夜「早くやってくださいっ!!//////」

 

 耳まで真っ赤にした紗夜に対して、飛鳥は苦笑いしながら日焼け止めを塗った。

 

紗夜「いいですか! 触っていいのは背中だけですからね!? それ以外の所を触ったら…責任を取って貰います////」

飛鳥「分かりました。気を付けます」

 と、飛鳥がオイルを塗った。

 

紗夜「っ!!/////」ビクッ

飛鳥「はい、動かないでください」

 

 飛鳥は淡々とオイルを塗り続けた。

 

美咲「…思ったけど、なんでそんなにオイル塗るの慣れてるの?」

飛鳥「しょっちゅうやらされてましたよ」

友希那「誰に?」

飛鳥「母親とかに」

 空気が止まった。

 

友希那「そ、そう…」

飛鳥「そうですよ」

 その時だった。

 

「あーっ!! おねーちゃん何やってるのー!!?」

 

 日菜が飛んできた。

 

紗夜「ひ、日菜!!」

飛鳥「さて、紗夜さんが塗ってほしいと頼んだという事を信じてくれるだろうか」

日菜「おねーちゃん、オイル塗ってないならあたしが塗ったのにー!!」

飛鳥(あ、これ行けるタイプだわ)

 

 自分に興味がないと悟った飛鳥は心の中でガッツポーズを取った。

 

日菜「でも、飛鳥くんに塗ってもらいたかったなら仕方ないよね」

飛鳥「……」

日菜「あ、そうだ! あたしにも塗ってよ!」

飛鳥「ごめんなさい。パスパレはある程度距離を保つようにと釘を刺されてまして…」

日菜「マネージャーさんに言われたの? 大丈夫だよー。それくらいで人気が落ちるようならそれまでだって千聖ちゃんがいつも言ってるしー」

(えぇぇぇぇ…)

 

 それはそれで問題だろう。と皆が思った。

 

友希那「紗夜、分かってるとは思うけど日菜と張り合わないように」

紗夜「い、言われなくとも…」

日菜「飛鳥くん。あたしはおねーちゃん以上に触らせてあげるよ?」

飛鳥「湊先輩の話聞いてました?」

 すると紗夜はむっとして…。

 

紗夜「…一丈字さん。申し訳ないんですが、足の方も塗って貰えますか?」

飛鳥「言ってる傍から!!」

友希那「マウント取るならお尻の方が良いんじゃない?」

日菜「お尻は流石にあたしも恥ずかしいな…//////」

飛鳥「私と紗夜先輩をどうしたいんですか…って、紗夜先輩も考えない!!!」

 

 と、先輩たちに振り回される飛鳥であった。

 

 

おしまい

 



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ラブライブ編
第91話「襲来」


 

 

 今回の設定

 

・ 飛鳥は2年生で、皆進級しています。

 

 

*******************

 

 

 ある日の事だった。飛鳥はある人物を見て唖然としていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…にっこにこにー! あなたのハートににっこにこにー! 笑顔届ける矢澤にこにこー。にこにーって覚えてニコッ♥」

 

 

 飛鳥が見ているある人物は独特の自己紹介をしていた。飛鳥の他にも香澄、彩、蘭、こころ、友希那の5人がいたが、蘭、彩は唖然とし、友希那は無表情だった。香澄とこころは歓迎ムードである。

 

飛鳥「…まさかこんな形で再会するとは思いませんでしたよ。矢澤さん」

「あんたん所の作者が今までバンドリばっかり書いてたからでしょーが!!!」

 

 この少女の名前は矢澤にこ。『ラブライブ!』の登場人物であり、音ノ木坂学院のスクールアイドルである。ちなみにスクールアイドルとは、やる事は芸能人のアイドルとほぼ同じであるが、違いは芸能人として扱われる事はなく、アイドル活動にかかる費用はほぼ自分たちで出すというものである。

 

飛鳥「えー。今回のゲストは矢澤にこさんです!」

にこ「よろしくにこー」

香澄「わ~!!!」

こころ「よろしくね!」

にこ「あのー。一応にこが年上なの知ってる?」

 

 ちなみに学年

3年生:にこ、友希那、彩

2年生:飛鳥、香澄、蘭、こころ

 

蘭「で、その矢澤さんが一体何の用ですか?」

友希那「知らないわよ」

にこ「ちょ、あんたら…(何か真姫ちゃんみたいな子ね)」

 

 と、蘭と友希那のドライな態度ににこが口元を引きつらせると、彩が慌てていた。

 

にこ「そうね。あえて用があるとすれば…」

 にこが彩を見た。

 

彩「え?」

にこ「そう! あんたよ!」

 

 にこが彩に対して指をさした。

 

こころ「彩がどうしたの? にこ」

にこ「あの、ちょっとあんたは馴れ馴れしくない?」

飛鳥「……」 

 にこの言葉に飛鳥が気まずそうに視線を逸らした。

 

にこ「ま、まあいいわ! で、あんたなんだけど…」

彩「わ、私がどうかしたの…?」

 

 他所のキャラとかではなく、普通に心配になる彩だった。

 

にこ「そういやあんたの自己紹介。何だっけ?」

彩「え、えっと…。ま、真ん丸お山に彩りを! 丸山彩でーす!」

にこ「普通!!!」

 

 この時飛鳥は思った。確かに芸歴ではにこの方が先輩であるが、立場としては彩の方が圧倒的に上であり、世間的に見て素人同然のスクールアイドルが芸能人にダメ出しをしているという何ともシュールだと。だが、自分が一番下の立場なので、何も言わない事にした。

 

にこ「Pastel*Palletesの事は隅から隅まで調べさせてもらったわ」

彩「あ、ありがとう…」

にこ「だけどあんた…。他の4人に比べてやっぱり地味よ。他の4人はそんな自己紹介しなくても、個性でまくりだし」

こころ「そんな事ないわ! 普通も立派な個性よ!」

彩「ありがとうこころちゃん! でも、出来れば普通以外の個性が欲しいです!!」

にこ(結構恐ろしい感じがするわねこの子…)

 

 こころの言葉に彩が涙目になり、にこが何か恐怖を感じていた。

 

こころ「彩のそういう所を好きになってくれる人は必ずいるから、胸を張っていいのよ!?」

彩「あ、うん。ありがとう。何か泣けてきた…」

 彩は涙を流していた。

にこ「で、何であんたは黙ってんのよ」

飛鳥「いえ、ここは私が喋るべきではないと思いまして…」

こころ「飛鳥もそう思うわよね!?」

飛鳥「そうですね。寧ろ他の4名を纏められていますし、そういう意味では普通以外にもリーダーとしての資質も…」

 

 飛鳥の言葉に彩の涙腺が崩壊した。

 

彩「うぇええええええええええええええええええん!!! ありがとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

飛鳥「……」

 

 号泣している彩を見て飛鳥が困惑した。オレ、そんな大したこと言ったかな…と。

 

こころ「いいのよ。そういう繊細なところも彩の良い所だわ」

 と、こころが彩を抱きしめて頭をなでると、にこが飛鳥のところにやってきた。

 

にこ「…ねえ。何あの子」

飛鳥「…弦巻こころさんって言って、超大金持ちの娘さんですよ。あそこにボディガードの方たちもいます」

にこ「!!」

 飛鳥が指をさした先には3名の黒服達がいて、にこがぎょっとした。

 

飛鳥「お金持ちなのですが、弦巻さん自身のスペックも高いです。かなりマイペースですけど…」

にこ「……」

 

 飛鳥の言葉ににこが困惑していたが、にこはこころの胸元を見た。

 

にこ「しかもスタイルまで良いじゃないのよ…!!!」

飛鳥「……」

 

 にこの言葉に飛鳥はあえて答えなかった。

 

*************

 

にこ「…まあ、言いたいことはあったけど、もういいわ」

飛鳥「そうですか…」

 

 彩にアイドルとは何ぞやというものを教えたかったが、こころが話をまとめてしまったため、不発に終わった。蘭と友希那は退屈そうにしている。

 

にこ「で、それはそうとあんた達、さっきから感じ悪くない?」

蘭「そんな事ないですよ」

友希那「そうよ。というか私たち関係なくない?」

 するとにこは飛鳥を見ると、飛鳥がテレパシーでにこに蘭と友希那について紹介する事にした。

 

飛鳥『赤いメッシュの方が美竹蘭さんで、髪の長い方が湊友希那さんです。それぞれ別のバンドでボーカルをされているのですが…』

にこ『それで? まさか真姫(※にこと同じアイドルグループのメンバー)ちゃんみたいなタイプ?』

飛鳥『はい』

にこ『あー…納得。分かったわ』

 

 飛鳥が目を閉じて返事すると、にこも承諾したが、蘭と友希那が飛鳥を見た。

 

友希那「一丈字くん。何か今失礼な事考えなかった?」

飛鳥「滅相もございません」

蘭「じゃああたしたちの事、この人に紹介してよ」

にこ「にこ!!」

飛鳥「えっと。こちらの赤いメッシュの方は美竹蘭さんと言いまして、ガールズバンド「Afterglow」のボーカルです。で、その隣にいらっしゃるのがガールズバンド「Roselia」のボーカル、湊友希那さんです」

 飛鳥がそう言い切った。

 

飛鳥「お二人とも。改めてご挨拶をお願いします」

蘭「…美竹蘭です」

友希那「湊友希那よ」

にこ「よ、よろしく…」

 

 と、にこは改めて同じグループメンバーの真姫に似ていると思うのだった。

 

***************

 

にこ「まあ、そろそろ帰る事にするわ」

飛鳥「あ、はい」

にこ「またちゃんと顔出しなさいよ。それから迷惑かけないように」

飛鳥「ええ。それはもちろん」

にこ「じゃあね」

「あ、ちょっと待って!!」

 

 香澄が叫んだ。

 

にこ「どうしたのよ」

香澄「私全然出番ないからもうちょっとだけ喋ってください!!」

 香澄が反応するとにこは香澄の顔を見た。

 

香澄「ど、どうしたんですか…?」

にこ(やっぱり穂乃果(※ラブライブの主人公)に似てるわ~~~~~~~~~~~)

 

 と、香澄の顔を見てにこがけげんな表情を浮かべたのだった。

 

にこ「ま、まあしょうがないわね! そこまで言うならこの宇宙No.1アイドル、矢澤にこ様の武勇伝を聞かせてあげるわ!」

蘭・友希那「宇宙No.1アイドル…?」

飛鳥「自称ですが」

にこ「こらそこ!! 今回一番の毒舌を吐くんじゃないわよ!!」

飛鳥「矢澤さん。アイドルがしていい顔ではございませんよ」

にこ「はっ! に、にこー♪」

友希那「今更キャラ作っても白々しいだけよ」

にこ「うるさいにこー♪」

蘭「あの、アイドルって皆あんな感じなんですか?」

彩「えっ…」

にこ「黙れにこー♪」

 

 この後、にこは滅茶苦茶いじられ続けたのだった…。

 

 

おしまい

 



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第124話「ラブアローシュート」

 ある日の事。飛鳥はギター組(たえ・紗夜・日菜・モカ・薫)と会話をしていた。

 

たえ「そういえば皆さんの部活って何でしたっけ」

モカ「それ今更聞いちゃうー? まあ、モカは帰宅部だけどー」

日菜「あたし、天文学部だよ! 星を見たりするの!」

薫「私は演劇部だね」

紗夜「弓道部です」 

 飛鳥が紗夜の言葉を聞いて、ある事を想いだした。

飛鳥(生真面目で弓道部といえば…)

 そして飛鳥の脳裏には一人の少女が浮かんだ。

 

(みんなのハートを撃ち抜くぞー! ラブアローシュート!!)

 

飛鳥(忘れよう。作品が違う)

 と、飛鳥は話を切り替えてたえ達の話を真面目に聞いた。

 

たえ「ラブアローシュートってなに?」

飛鳥「こちらの話です」

日菜「あ! ラブライブ!でしょ!!」

飛鳥「そうなんですよ。紗夜先輩のような方がもう一人いまして…」

紗夜「私みたいな人が?」

飛鳥「あそこで私の事を睨んでる人です」

 と、5人が飛鳥の後ろを見ると、怒髪天で飛鳥の事を睨みつけていた。

 

飛鳥「物理的に撃ち抜かれそうですね」

紗夜「怖い事言わないでください」

日菜「こうやるんでしょ!? みんなのハートを撃ち抜くぞー! ラブアローシュート!!」

「ばぁあああああああああああああああああああああああああん!!!!」

飛鳥「どういう悲鳴の上げ方してるんですか…」

 

 10分後

 

飛鳥「えー。今回のゲストは園田海未さんです」

海未「…宜しくお願いします」

 

 飛鳥が司会進行をしたが盛大に殴られていた。

 

飛鳥「一言ございますか?」

海未「あなたは最低です!」

飛鳥「そうですね」

モカ「えー。肯定しちゃうんだー」

飛鳥「こんなんだから、毎日不審者と遭遇するんでしょうね…」

海未「…そ、そこまで言う事ないじゃないですか」

 

 飛鳥のネガティブ発言に海未も困惑した。

 

 ちなみに学年

 

3年:紗夜、日菜、薫

2年:飛鳥、海未、たえ、モカ

 

日菜「ラブライブ! 面白かったよ!」

紗夜「日菜。言葉を選びなさい」

 

 日菜の言葉に紗夜は困惑していた。ちなみにラブライブは2011年、バンドリは2015年開始である。

 

飛鳥「園田さんと紗夜先輩は共通点が多いんですね」

モカ「確かに言われてみれば真面目そうだよね~。あ、あたし青葉モカ~。宜しく~」

海未「よ、宜しくお願いします…。園田海未です」

飛鳥「こちらの方は、それぞれのバンドでギターをされてるんですよ」

海未「ギターを?」

飛鳥「ええ。こちらの青葉さんは「Afterglow」っていうバンドのギターをしています」

 

 と、飛鳥が紹介をすると…。

 

モカ「そういえば飛鳥くんって、ラブライブの子たちにも敬語なの~?」

飛鳥「そうですね。諸々の事情で」

 飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「メタ的に言いますと、こちらは『共演させて貰ってる側』ですので…」

モカ「まあ、そうだよね~。そういやいつも舞台裏であたし達とかにお茶とかだしてくれたりするけど、ラブライブもそうなの~?」

海未「あ、私達の所はもうやめて貰ってるんですよ」

日菜「なんで?」

 

 日菜の言葉に海未が視線を逸らした。

 

海未(穂乃果とかがだらけるからなんて言えない…)

 

 穂乃果、凛、にこが本当にこきつかってて、μ’sのイメージも悪くなるし、穂乃果達がだらけるからという理由でやめて貰っている。ちなみにAqoursはそういう事を最初からしてなく、後輩たちに示しがつかない為でもある。

 

海未「まあ、やっぱりアイドルですから、そういう事させるのはあまり良くないと皆で話し合ったんです…」

たえ・モカ・紗夜・薫(やっぱりメンバーがだらけるんだな…)

 

 海未の表情で嘘だという事が日菜以外は理解できた。

 

日菜「そういえばラブライブでの飛鳥くんってどんな感じなの?」

海未「えーと…。マネージャーとしていつも頑張ってくれてますよ?」

日菜「マネージャー? もしかしてドリンクとか用意する部活のマネージャーとか?」

海未「いえ、仕事を取ってくる方のマネージャーです」

 

 海未の言葉にギター組は一斉に飛鳥を見た。

 

飛鳥「スケジュール管理とかしてますね」

日菜「えーっ!! それだったらうちのマネージャー出来るじゃん!!」

飛鳥「パスパレは芸能人ですので、そうなってくると少し事情が…」

日菜「いや、飛鳥くんなら絶対できる」

モカ「そうだね~。そういやそっちの世界でもモテるでしょ」

海未「そ、そうですね…」

飛鳥「そんな事ございませんよ。ねえ?」

 飛鳥がある方向を見て話しかけると、そこには黒いスーツを着た飛鳥が現れた。

 

紗夜「!!?」

日菜「飛鳥くんが2人!!?」

飛鳥「あれ、ダシマ式ラブライブの私です」

L飛鳥「どうも。『ダシマ式ラブライブ!』の一丈字飛鳥です」

 と、ラブライブ世界の飛鳥(通称:L飛鳥)が会釈した。

 

飛鳥「基本的にパラレルワールドなんですよ。あ、私は「ダシマ式バンドリ」の一丈字飛鳥です」

たえ「へ、へぇ…」

薫「儚い…」

海未「私も最初は驚いたんですけどね…」

 と、困惑した。

 

飛鳥「パラレルワールドってご存じですか?」

たえ「知ってるよ。私達もいろんな世界の私達もいるんですよね?」

飛鳥「ええ。花園さんですと、ギター以外の楽器を担当してる世界もあれば、好物がハンバーグじゃない世界も存在します」

たえ「じゃあ、花園ランドを建設してる世界もあるの?」

飛鳥「ありますよ。まあ、その話は一旦置いといて、園田さんから見て花園さん達は如何でしょうか」

海未「そ、そうですね…。私たちは歌とダンスをしていますが、皆さんは楽器を演奏されたりして、刺激にはなりますね」

日菜「コメントもおねーちゃんと同じで真面目だー」

紗夜「日菜!」

 と、諫めた。

 

日菜「あ! 海未ちゃん見てある事思いついた! おねーちゃんもアイドルの格好して踊ろうよ!」

紗夜「い、嫌よ!! どうしてそんな事しなきゃいけないの!?」

日菜「やってくれないと、あの事を海未ちゃんに話しちゃうかも…」

紗夜「させないわよ」

日菜「いたたたたたた!! いたいいたい!! 冗談だよおねーちゃん!!」

 紗夜が日菜の耳をつねると、日菜は涙目で叫んだ。

 

海未「……」

モカ「ところで~ラブアローシュートって」

海未「あーあー!! 聞こえませーん!!」

薫「儚い…」

 と、収拾がつかなくなった所で、飛鳥とたえが見つめた。

 

たえ「今度パラレルワールドに連れて行ってくれる事ってできる?」

飛鳥「……」

 

 

おしまい

 




おまけ

紗夜「……」
 中庭のはずれで紗夜は一人佇んでいた。
   
紗夜「…み」
 紗夜は口を開いた。

紗夜「みんなのハートを打ち抜くぞ撃ち抜くぞー! ラブアローシュート! ばーん!!」
 と、海未の物まねをした。

紗夜「な、何をやっているの私は!! こ、こんな破廉恥な事…//////」
 紗夜は首を大きく横に振って悶えていたが、飛鳥が陰で見ていた。


飛鳥(律儀にやらなくても…)
 そう考えていると、紗夜が振り向いて目が合った。

飛鳥「」
紗夜「……!!!////////」

 まるで全裸を見られたかの如く、紗夜の顔は茹蛸のように真っ赤になり、悲鳴を上げ、飛鳥は逃亡した。


飛鳥(生きてたらまた会いましょう。さようなら)


おしまい



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バンドリ学園 2nd Season(仮)
第102話「新章突入!?」



 設定

・ 進級しています。

 
 それではゴー。


 

 

 

 一丈字飛鳥です。バンドリ学園に転入してから時間が経ち、気が付けば2年生に進級していました。広島にいる仲間には時折連絡を入れています。

 

 さて、進級したのですが、別の学校の生徒がこの学校に吸収されたということで、一気にクラスが多くなりました。一体どうなってんだこの学校…。

 

 今回はそんなお話です。

 

****************

 

 バンドリ学園・2年生校舎前

 

「あ! 飛鳥くーん!!」

「?」

 

 香澄を筆頭にPoppin’partyがやってきた。

 

飛鳥「戸山さん。おはようございます」

香澄「おはよー! あ、クラス一緒だったよ!」

 香澄の言葉に飛鳥がぎょっとした。

 

飛鳥「そ、そうですか…」

香澄「え、なんでそんな顔してるの?」

飛鳥「あなたのファンに刺されそうなもので」

 

 飛鳥の言葉に有咲、沙綾、りみが困惑した。

 

有咲「一丈字」

飛鳥「?」

有咲「その…。クラス表ちょっと見てこい。お前7組だから」

飛鳥「え、皆さん国際クラスを選択したんですか?」

 

 今年から制度が変わり、クラスは下記の通りになっている。

 

2・3年生

 

1組:特進クラス

2組・3組:文理クラス

4組~6組:文系クラス

7組:国際クラス

 

 そして言われた通り、7組のクラス表を確認すると、同級生のバンドガールが全員7組で、飛鳥の目玉が飛び出た。まるで「スーパードンキーコング2」シリーズのボス戦で、ボスを見たときのディディーとディクシーのように…。

 

「やー。どうやらクラスを確認したみたいだね~」

 と、Afterglowが現れて、モカが話しかけてきた。

 

飛鳥「…青葉さん」

モカ「これからよろしくね~。もうクラス替えがないから、最大2年間か~」

巴「よろしくな」

飛鳥「あ、はい…」

 

 モカと巴があいさつしたが、飛鳥は困惑していた。そう、ファンの男子生徒達からの嫉妬がとてつもなく凄かったからだ…。

 

飛鳥「そういえば何故国際クラスを…」

モカ「飛鳥くんがいるから~」

飛鳥「……」

 

 先日、飛鳥が国際クラスを選択するとモカに話してしまったのだ…。

 

飛鳥「…他の皆さんは?」

ひまり「え、えーっと…」

巴「モカが国際クラスに行くって聞いて」

モカ「まあ、理系や文系だとクラスバラバラになっちゃうし、特進は成績良くないといけないしね~」

 飛鳥が困惑した。

 

「あ! 飛鳥―!!」

 と、こころ、はぐみ、美咲、イヴが現れた。

 

飛鳥「弦巻さん…」

こころ「皆同じクラスみたいね!!」

飛鳥「そ、そうですね…」

 飛鳥が困惑すると、美咲が困惑した。

 

美咲「…気持ちはわかるわ。私達とクラス一緒なのもそうだけど、男子…あなただけだものね」

飛鳥「弦巻さん。何かやったでしょ」

こころ「あたしは何もしてないわよ!?」

 すると黒服達が現れた。

 

「一丈字様」

飛鳥「?」

 飛鳥が黒服の方を見た。

 

飛鳥「黒服さん。これは一体どういうことですか!?」

「私たちが手に入れた情報によれば、国際クラスを選択された男性は…一丈字様だけでした」

飛鳥「!!?」

 飛鳥が驚愕した。

 

飛鳥「いやいや、そんな筈は…」

美咲「まあ、急に国際クラスって言われてもねー」

飛鳥「え、じゃあなんで奥沢さんは…」

美咲「そりゃあ…皆国際選ぶっていうから」

 美咲が視線を逸らした。

 

モカ「そもそもイヴちゃんがフィンランドの人だから、国際選ぶかもしれなかったのに、選ばなかったのが悪いんだよ~」

飛鳥「にしても、国際に行くこと、クラスの人にお話しされなかったんですか?」

蘭「話すわけないでしょ。ストーカーと2年間も一緒になるなんて嫌」

飛鳥「いや、言い方!!」

 

 蘭の言葉に飛鳥が突っ込むと、男子生徒達が嘆いていた。

 

「ふざけんなよぉ!! ついにバンドガール独占かよぉ!!」

「しかもハーレムだし!!」

「本当好きだな!!!」

「わーん!!! オレも国際クラスに移籍させてください!!」

 

 ちなみに3年生に進級する時、再び希望を取るらしいが、国際クラスは対象外である。もしもバンドガールが来ないとわかっていたら、ずっとクラスが違うままだった。ちなみに修学旅行先も違う。

 

モカ「そういや、飛鳥くんこそクラスの子に話さなかったの~?」

飛鳥「ええ。聞かれなかったので…」

 

 モカの問いに飛鳥が頭をかいた。

 

香澄「まあ、皆一緒でよかったじゃん!!」

「その皆の中にオレ達入ってないんですけど!!?」

「最悪だ! うちのクラスブスばっか!!」

「あっそ。この学校で彼女出来ると思わない事ね」

「いい気味よ!!!」

 

 男子生徒達が嘆いていると、女子生徒達が心の底から罵倒して、収拾がつかなくなっていき、飛鳥は困惑していた。

 

 その時だった。

 

「ふふふ…。ようやく会えたわね」

 

 と、誰かの声がして飛鳥達が声をした方向を見ると、赤色のロングヘアーにネコミミをした小柄の少女と、カラフルな髪をした長身の少女がそこにいた。

 

飛鳥(もしかして新しく来た人かな…?)

 飛鳥が考えていた。

 

「長かったわ…。本当に長かった…」

 と、少女が叫んでいた。

 

飛鳥「えーと…」

「おっと。自己紹介が遅れたわね。私はチュチュよ!」

飛鳥「あ、よろしくお願いします。ちなみにご出身は…」

 すると横からたえが現れた。

 

たえ「日本人だよ。本名は珠手ちゆ」

チュチュ「ちょ、本名で呼ばないでハナゾノ!!」

 と、チュチュが止めた。

 

チュチュ「遂にワタシ達も出れたわ…」

モカ「また当分出ないと思うけどね~」

チュチュ「何でよ!!」

モカ「いや~。ただでさえ25人もいるからね~」

チュチュ「そういう事情で今まで出れなかったの!!?」

 チュチュの言葉に飛鳥が視線を逸らした。

 

チュチュ「ま、まあいいわ。あなたの事も知っているのよ? ネス」

「!!」

 

 衝撃を受けた。

 

飛鳥「珠手さん」

チュチュ「チュチュ!」

飛鳥「残念ですが…また当面は出番なしです」

チュチュ「何でよー!!! ネスって言ったから!? ネスって言ったから!!?」

香澄「ネス?」

飛鳥「いや、オチで」

チュチュ「ワタシをオチ要員にするなぁー!!!」

「チュチュ様…。おいたわしや…」

 と、チュチュと同じバンドメンバーのパレオこと鳰原 令王那がハンカチで涙をぬぐっていた。パスパレの大ファンである。

 

モカ「そういう訳で出番があったらまた宜しくね~」

チュチュ「こらー!! レギュラー出演させろ~~~~~~!!!!!!」

 

 

「あーあ…」

「……」

 と、陰から同じメンバーのマスキングが呆れ、レイヤ、ロックが困惑した様子で見ていた。

 

 

おしまい

 



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第140話「永遠より続くように」

 

 

 とあるスタジオ。

 

香澄「何かな」

 25人のバンドガールが集まっていた。飛鳥も不在していた。

 

友希那「無事に帰ってこれたのね…」

彩「こわかった…」

 恐怖の館から無事に帰ってきたPastel*Palletes。実は飛鳥があの後、和哉から通報を受けて助けに行った事は内緒だ。

 

まりな「今回の企画は口に水を含んで最後まで耐えられるか、挑戦してもらうわよ!」

友希那「…帰っていいですか?」

 

 まりなの発言に友希那、千聖、蘭が嫌そうな顔をした。

 

まりな「まあまあ。座って頂戴」

 と、渋々まりなの言う通りにする一同。横一列になって牛乳を口に含んだ。友希那達は少量であるが…。

 

まりな「それじゃ始めるわよ! ちなみに吹いたら罰ゲームね」

 

 まりながそういうと、会場が暗くなり、閉じられていた幕が開かれると、音楽が鳴りだして、10人の少女が現れたがいずれも奇抜な格好をしていた。一気に11人噴出した。

 

・ 花園たえ

・ 牛込りみ

・ 宇田川巴

・ 丸山彩

・ 白鷺千聖

・ 若宮イヴ

・ 湊友希那

・ 氷川紗夜

・ 今井リサ

・ 白金燐子

・ 宇田川あこ

 

Roseliaが全員脱落した。Poppin’partyは香澄は目をキラキラさせて、有咲はツッコミの顔になり、沙綾は「何してんのこの子たち…」という顔をしていた。

 

 Afterglowはモカ以外驚いている様子があり、パスパレは噴出してない組は表情を輝かせていた。ハロハピはいつも通りである。

 

『♪ 永遠よりつづくように OKL48』

 

 踊っているのはRAISE A SUIRENことRASと、Morfonicaである。そして学年も1つ繰り上がっている。

 

たえ「え、ちょ…レイ、何やってんの…」

りみ「す、すごい…」

巴「…すげぇ」

 

彩「アイドルは私たちの専売特許なのにー!!」

千聖「いや、そんな事言ってる場合じゃないわ…。私とした事が…」

 千聖は水を吹き出してしまったことを恥じた。

 

千聖(私はバラエティ女優としてやっていくつもりはないのよ…!!!!)

 千聖は頭を抱えた。

 

友希那「な、なんてこと…!!」

紗夜「私とした事が…」

リサ「いやー…まさかRoselia全員脱落なんて…」

 

 友希那と紗夜が脱落してしまったことを悔い、リサが誤魔化すように苦笑いしていた。するとあこがある事に気づいた。

 

あこ「あ、蘭ちゃんがどや顔してる」

友希那「……!!」

燐子「み、湊さん。落ち着いて…」

 

 蘭にどや顔されて怒りに震える友希那を燐子が宥めた。

 

 そして曲はサビに入ろうとしていた。

 

「♪自分なりの幸せの意味作り上げて行く」

 と、両ボーカルの倉田ましろと和奏レイが舞台からはけていき、飛鳥も連れて行ったが、飛鳥も衣装に着替えていて、ほぼ全員が噴出した。

 

 脱落者

・ 山吹沙綾

・ 市ヶ谷有咲

・ 美竹蘭

・ 上原ひまり

・ 羽沢つぐみ

・ 大和麻弥

・ 松原花音

・ 奥沢美咲

 

 

「♪そしてやっとたどり着いた 夢物語より大切な事」

 

 サビに入る所で飛鳥が前に出てきて、踊りだしたが、ダンスがキレキレでにこやかに笑顔だったので、香澄、日菜、はぐみが噴出した。そしてRASとモルフォニカ(以下モニカ)との連携とバッチリだった為、更に友希那達を驚かせた。

 

 そしてあっという間に曲が終わり、11人が最後のポーズを取ったが、飛鳥が完全にセンターだった。

 

まりな「えー。RAS、モニカ、飛鳥くん。ありがとー!!」

 

 まりながそういうと、11人はやり切ってそのまま舞台に立った。

 

飛鳥「ありがとうございます。そして皆さん。長い事練習お疲れ様でした。今までで一番良いパフォーマンスでした!」

つくし「いえ! 一丈字先輩もお見事でした!」

ましろ「うえ~ん」」

 

 つくしが激励し返すと、ましろは感極まって号泣した。そしてそれを隣にいたパレオが抱きしめる。

 

飛鳥「あ、月島さん。あとはお願いしま」

千聖「待ちなさい」

 千聖がツッコミを入れた。

 

飛鳥「お久しぶりです白鷺先輩」

千聖「ええ。お久しぶり…で、これは一体どういうことなのかしら?」

飛鳥「今回はRASとモニカの皆さんが白鷺先輩たちにドッキリを仕掛けるというお話です」

千聖「それはそうと、どうしてあなたも一枚かんでる訳!?」

チュチュ「Shit! いつも出番があるYou達にギャフンと言わせてやるためよ!」

たえ「ギャフンって言ってないよ?」

 

 たえの言葉に空気が止まった。

 

レイ「…あのね。そういう事じゃないの」

たえ「それにしてもレイ。そんな恰好をしてるなんて…」

レイ「…本当は嫌だったんだけど、チュチュの命令で/////」

 レイが少し恥ずかしそうにしていた。ちなみに格好は本家OKL48と同じで、レモンの被り物にそれぞれあだ名が表記されていた。

 

ちゆ:チュチュ

令王那:パレオ

ますき:マスキング

六花:ロック

レイ:レイヤ

 

ましろ:シロ

透子:トーコ

七深:広町

つくし:委員長

瑠唯:るい

 

飛鳥:(表記なし)

 

有咲「ていうか一丈字まで…」

飛鳥「私も初めてですよ。被り物してダンスしたの。しかも本家と違って私も彼女たちと同じ格好ですよ」

 ちなみに衣装はオフショルダーでレモンのショートパンツらしきもの、そして黄色のブーツだった。

 

有咲「いや、恥ずかしくないのか…?」

飛鳥「もうPixivの方でAqoursのコスプレやってますからね。慣れましたよ」

たえ「青空Jumping heart…」

香澄「とっても可愛いー!!」

飛鳥「ありがとうございます」

彩「いや、それはそうと一丈字くん。脚とっても綺麗…」

 

 彩が飛鳥の脚を見て驚いていた。

 

飛鳥「ありがとうございます。さて、そろそろ彼女たちにもお話を伺ってみましょう。モルフォニカの皆さんは如何でしたか?」

ましろ「いや、まさかの初登場がこのライブだと思いませんでした…」

透子「アタシは面白かったけどな!」

 ましろが困惑していると、透子は笑い飛ばした。

七深「広町的には~今度はあまり運動しない奴がいいな~」

ましろ「とても楽しかったですが、今度はバンドをやりたいですね!」

瑠唯「…そうね」

飛鳥「倉田さんも仰っていた通り、モルフォニカは今回初登場です。宜しくお願いしますね」

「宜しくお願いしまーす!」

チュチュ「ってネス! そろそろワタシ達RASをレギュラーにしなさいよ!!」

 

 と、チュチュが吠えると、香澄が驚いた。

 

香澄「そういや前々から思ってたんだけど、ネスって何なの?」

飛鳥あー。それなんですけど…時間が来てしまったので、また次の機会でお願いします」

たえ「簡単に説明してよ」

飛鳥「アメリカにいたときのニックネームですよ」

「え?」

飛鳥「それではまた次回~」

有咲「って! 一番気になる所で終わらせようとするなー!!!」

香澄「凄く気になるう~!!!」

まりな「あ、ちなみに噴出した人は罰ゲームね☆」

「」

 

 

おしまい

 



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第151話「新年一発目の収録(前編)」

 

 とあるスタジオ。そこには着物を着た一丈字飛鳥と月島まりながいた。

 

飛鳥「皆さま。新年あけましておめでとうございます。2021年も「ダシマ式Bang! Dream」を宜しくお願い致します…って、これ私が言っていいんですか?」

まりな「いいんじゃない? あ、昨年は皆さんには大変お世話になりました。今年もまた宜しくお願いします。さて、行きますか!」

飛鳥「はい」

 飛鳥とまりながカメラの方を見た。

 

飛鳥・まりな「ダシマ式Bang! Dream」第4シリーズ始まります!」

 

*********************

 

 そして大きなスタジオに飛鳥とまりなが移動すると、そこには既にバンドガールズが待っていた。

 

飛鳥「あけましておめでとうございます」

「おめでとうございまーす」

 

 と、一斉にあいさつした。

 

飛鳥「えー。それでは早速ですが只今より、新春バンド対抗我慢大会を開催します!」

 飛鳥が開会宣言をした。

 

友希那「…何なの? 我慢大会って」

リサ「また水含む奴?」

飛鳥「はい」

「はいって!!」

 

蘭「…お正月にやる事じゃないでしょ」

飛鳥「えーそうは言いますが美竹さん。今回は一味違いますよ」

蘭「は?」

飛鳥「優勝チームには今年一発目に飾るのに相応しいバンド演奏をして貰います!」

「おおーっ!!」

 と、別のステージには楽器が用意されていた。

 

飛鳥「そして最下位のチームには罰ゲームが存在します!」

友希那「どんなの?」

紗夜「まさかとは思いますけど…いやらしい内容ではございませんよね?」

飛鳥「これなんですけど、チームによって違うんですね」

「は?」

飛鳥「モニターをご覧ください」

 すると皆がモニターで確認した。

 

飛鳥「まず通常の場合はこの4つから選んでもらいます」

 

1. スタジオの外を10周

 

たえ「シンプルにきつい奴だ…」

りみ「外すっごい寒いよね…」

 

2. 一発ギャグ(1人でも複数でもいいけど、全員必ず1回はやる事)

 

モカ「蘭が絶対ごねる奴だ~」

蘭「ご、ごねないし…」

モカ「じゃあ一人で出来る~?」

蘭「な、何で一人限定なの!?」

 

3. 1位のチームに土下座

 

千聖「これもある意味きついわね…」

紗夜(日菜には絶対土下座したくない…)

 友希那と蘭も向き合っていた。

 

4. 一般生徒の尻を1分間鞭で叩く。

 

(やる方も何か嫌だ!!!!)

 と、バンドガールズの大半がドン引きした。

 

「バッチコーイ!!!」

 しかも男子生徒達が数名スタンバイしていた。

 

蘭「キ、キモ…!!」

有咲「一丈字!! どういう事だよ!!」

飛鳥「…ええ。お気持ちは分かりますよ」

 飛鳥が遠い顔をした。

 

飛鳥「先日、こういうお仕事がありますが如何ですかという事で、冗談半分で募集をかけてみたんですよ。そしたら定員の4倍がございまして…」

千聖「世も末だわ」

飛鳥「ちなみに女子生徒からも応募がございました」

麻弥「薫さんっすね…」

薫「困った子猫ちゃんだ…」

 薫がフッと笑ったが、

 

飛鳥「ちなみに大和先輩もご指名がございました」

麻弥「ええええええっ!!?」

彩「よく見たら一人だけ女子生徒だよ!!?」

花音「ふぇえええええ!!?」

 

飛鳥「私としては、1番と3番以外をお勧めします。3番はすぐに終わりますし、自分以外誰も傷つきません」

有咲「何かお前の発言に闇を感じるんだけど…」

 飛鳥の発言に有咲がツッコミを入れた。

 

飛鳥「で、ちなみに例外ルールもございます。えーと、まずは戸山さん、北沢さん、あこさん」

香澄・はぐみ・あこ「!!?」

 

飛鳥「こちらの3名は冬休みの宿題を本日ここで終わらせていただきます」

香澄・はぐみ「え~~~~~~~~~~~っ!!!?」

 飛鳥の発言に香澄とはぐみが青ざめて絶叫した。

飛鳥「何でも常習犯だそうですね…」

香澄「そ、そんなの横暴だよ!!」

はぐみ「そーだよ!」

あこ「ちょっと待って!! あこ、ちゃんと宿題やったもん!!」

飛鳥「こちらなんですが、確かに宿題をやっている事は確認できましたが…」

紗夜「間違いが多すぎるわ」

巴「あー…」

飛鳥「という訳です」

あこ「紗夜さんのオニー!!」

紗夜「鬼で結構」

飛鳥「安心してください。他の4名はもっと過酷ですよ」

「え」

 

飛鳥「ちなみにRoseliaが最下位だった場合は、パスパレの格好をして撮影会をして貰います」

リサ「えーっ!!?」

紗夜「な、何でですか!!?」

友希那「あなた、そういう趣味が…」

飛鳥「いえ、男子生徒の皆さんからの要望ですね。あと…」

 飛鳥が日菜の方を見た。

飛鳥「何でもないです」

紗夜「今、日菜の方見ましたよね? 日菜が絡んでいるんでしょう!」

飛鳥「さあ、それでは早速参りましょう」

紗夜「話を聞きなさーい!!!」

あこ「ぶっwwwww」

 あこが噴き出すと、紗夜が睨みつけた。

 

チュチュ「今こそRASの実力を見せつけるのよ!」

パレオ「はい! チュチュ様!」

マスキング「面白ぇ。やってやるぜ!」

 

ましろ「み、皆頑張ろうね!」

つくし「1番を目指そう」

瑠唯「……」

 

 こうして7チームの火ぶたが切られた。

 

まりな「チスパとグリグリは残念だったね」

飛鳥「仕方ありませんよ…。Glitter*Greenは全員3年生ですし、Chispaもそれぞれ予定があるようです」

 

 そして35人が口に牛乳を含んで、椅子に座ったが。

 

飛鳥「皆さん準備は出来ましたね」

 飛鳥は全員が口に牛乳を含んだことを確認した。

飛鳥「ルールは簡単。制限時間までにちゃんと牛乳を含んでたらOKですが、それまでの間色々噴出させるために私やまりなさんが色々やります。制限時間は15分です。それではスタート!」

 

 音が鳴った。

 

飛鳥「えー。それではどうぞこちらです!」

 すると白いボディスーツを着た男子生徒達がぞくぞくと現れて、椅子に座っている香澄達の前に地べたで座った。

 

飛鳥「言い忘れていましたが、盛大に噴出した場合、噴き出した牛乳がこちらの方にかかってしまう場合がございます。ただ、ご安心ください。こちらの方はあえて戸山さん達から牛乳をぶっかけられに来た…ちょっと頭がおかしい人たちです」

 

 その一言で数名噴出した。

 

まりな「はい、10名脱落でーす」

 まりなが笑顔で言い放った。

 

 ちなみに脱落者

 

・ 牛込りみ

・ 山吹沙綾

・ 羽沢つぐみ

・ 今井リサ

・ 奥澤美咲

・ マスキング

・ レイヤ

・ ロック

・ 倉田ましろ

 

 

 

つづく

 

 

 



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第152話「新年一発目の収録(後編)」

 

 

 前回までのあらすじ

 

 バンド対抗で我慢大会を行う事になったが、一気に10人脱落になった。

 

******************

 

 不意に噴出した為、男子生徒(一部は女子生徒)の身体に牛乳が噴出された。中には口を開けて噴出した牛乳を飲んでいるつわものもいた。よい子はマネしないでください。

 

りみ「……!!」

沙綾「ちょっと何やってんのよー!!!」

「なんとでも言えぇ!!」

「美少女が口を含んだ牛乳飲めるなら本望じゃあい!!」

 

 飛鳥は天井を見上げた。

 

飛鳥(オレ…今年1年生きられるかな)

 

つぐみ「ああっ!! ご、ごめんなさいっ!!」

「大丈夫だよつぐみちゃん。ありがとう」

飛鳥「羽沢さん。怒っても問題ございませんよ。ご褒美になりますけど」

 

 パスパレは誰も吐き出さなかった。流石現役アイドルと褒めたい所だったが、イヴと日菜以外は噴出しそうだった。

 

千聖(じょ、冗談じゃないわ!! 誰が牛乳を吹き出すもんですか!!)

彩(これもアイドルの運命…これもアイドルの運命…!!)

麻弥(これがアイドルの道…。険しいというか…危なっかしいというか…)

 

 ちなみにRoseliaはリサが吹き出してしまい、友希那と紗夜が睨みつけた。

 

リサ「ご、ごめ~ん…」

 リサは申し訳なさそうにした。

 

美咲「……」

 美咲は目の前にいた男子生徒をさげすむ目で見ていた。

 

「悔いはない」

美咲「そう…」

 

チュチュ「……!!」

 一気に3人も噴出した事に対して、チュチュは激怒していた。

マスキング「ごめんって」

レイヤ「ビーフジャーキーご馳走するから…」

ロック「りみさんと沙綾さんが…」

マスキング「もしかして飲みたいのか?」

 マスキングの発言に有咲が噴出した。この時、男子生徒の顔にかけないように顔を上げて噴出したが、男子生徒はそれを察知して顔がかかるようにした。なんて気持ちの悪い男だろう。

 

飛鳥「市ヶ谷さん。脱落です」

有咲「マスキングー!!!!」

マスキング「あ、ごめん」

 

 有咲が激怒するとマスキングはちょっと気まずそうに謝った。

 

飛鳥「さて、これで11人も脱落になりましたね」

 飛鳥がステージに立った。

飛鳥「えーと…残りの時間は私が一発ギャグとかして、皆さんを笑わせる予定だったんですけど、11人も噴出してるので、もういいかな…」

チュチュ「んーっ!!! んーっ!!!」

 チュチュが立ち上がって、飛鳥に指さした。

 

飛鳥「え? このままだとRASが最下位になるから何とかしろこのニューハーフ?」

 飛鳥の発言にモカと日菜が噴出した。

 

「あぁ…日菜ちゃんが口に含んだ牛乳…♥♥」

 男子生徒はうっとりしていた。

パレオ「……」

飛鳥「鳰原さん。こわい」

 

 パスパレの大ファンであるパレオにとって、パスパレが口に含んだ牛乳は聖水そのものであり、それをぶっかけられた男子生徒の事が羨ましいと同時に殺意が沸いた。ファンとしても女としても、両方の意味であり色んな思いが交差している。

 

 そして何と言っても隣に座っているチュチュがパレオの変顔に牛乳を吹き出しそうになっている。だが、ふと横眼で見た彩が吹き出してしまった。

 

飛鳥「丸山先輩。脱落です」

千聖「……」ギロッ

彩「ごめんなさ~い」

飛鳥「後で死ぬほど謝りましょうね」

 飛鳥の毒あるツッコミにつくし、七深が噴出したほか、千聖が飛鳥に睨みつけたが、視線を逸らして、

飛鳥「さあ、このままRASはキープできるのか!?」

チュチュ(あんた分かっててやってるでしょ!!!)

 

 チュチュは心の中でツッコミを入れた。

 

飛鳥「さてと、まだ10分もあるよ…。何しようかな」

 飛鳥が椅子から立ち上がると、舞台からはけた。

 

「?」

 

 そして飛鳥が戻ってきたが、テーブルを持ってきていて、また戻り、今度はお湯を入れたカップ焼きそばと、スープの素が入った器を持ってきた。そして椅子にどっかり座って、何もしなかった。

 

有咲「い、一丈字…」

飛鳥「もう自分から笑わせる必要もなさそうなので、自由にやる事にします」

有咲「自由過ぎるだろ!! お前そんなキャラだったっけか!?」

美咲「それもそうだけど、メンタル強すぎでしょ…」

 

 飛鳥の自由ぶりに美咲と有咲がツッコミを入れた。

 

飛鳥「それはそうと、今のところPoppin’partyかRASのどちらかが最下位候補…どっちが先か…」

 飛鳥が香澄達とチュチュ達を見つめていた。

 

飛鳥「Afterglowが3人で、それ以外は4人…」

日菜「皆頑張ってー」

飛鳥「そうですね。頑張ってほしいですねー」

日菜「それはそうと飛鳥くん。本当に何もしないのー?」

飛鳥「ええ。今はカップ焼きそばが出来るのを待って、このお湯でスープを作ります。それともその間、ここで紗夜先輩の自慢話でもしますか?」

日菜「いいの!!?」

 日菜がそういうと、紗夜が慌てだした。

 

飛鳥「ええ。先日、あこさんとのお姉ちゃん談義をしていたと思いますが、まだまだ言い足りないでしょう」

 巴が噴出した。

 

日菜「うん! とっても言い足りない!!」

飛鳥「いやー。あの時は凄かったなぁ。あこさんの巴さん自慢に対して、早口で沢山自慢しまくったの」

 紗夜が噴出そうとした。

 

モカ「ちなみにどんな感じだった~?」

飛鳥「こんな感じでしたね」

 飛鳥が咳払いして、息を吸い込んだ。

 

飛鳥「うちのおねーちゃんはー…ギターが上手くて勉強が出来て生徒会役員でロゼリアで笑うと可愛くてマメで努力家で優しくてポテトが大好きなのー!!!!」

 紗夜は盛大に噴出した。そして相手役の男子生徒は紗夜が噴出した牛乳をしっかり口でキャッチした。無駄な才能である。

 

飛鳥「…っていう感じでした」

 透子が噴出した。

ましろ「と、透子ちゃん!!!」

紗夜「……!!///////」

 そして紗夜が顔を真っ赤にして震えていた。

 

あこ「あ、あこだってまだおねーちゃんの自慢まだあるもん!!」

飛鳥「牛乳飲みこみましたね」

あこ「あ」

 

飛鳥「まあ、日菜さんもあこさんもお姉さんの事が大好きで何よりです」

 飛鳥が苦笑いしたが、巴と紗夜は心の底から飛鳥を殴りたいと思った。恥ずかしさで。

 

飛鳥「そういえば、明日香さんはどうですか?」

香澄「!?」

 

明日香「いえ、全くありません」

 香澄が噴出した。

 

香澄「ちょ、そこにあっちゃんいるの!?」

飛鳥「はい」

香澄「あっちゃん酷いよー!! ガルパピコでは沢山自慢してくれたのにー!!」

明日香「そ、それはその…//////」

香澄「それだったら私があっちゃんの自慢しちゃうもんね! 飛鳥くん聞いて! あっちゃんはね…」

明日香「ダメ~~~~!!!!!//////」

 明日香が現れて香澄の口をふさごうとした。

 

香澄「と、止めないであっちゃん!! 飛鳥くんにあっちゃんの魅力を…」

明日香「もう!! そういう事するから嫌なの~!!!!//////」

 と、姉妹喧嘩を始めてしまい、たえが噴出した。

 

香澄・明日香「!!!?」

 

飛鳥「終了~!!!」

 Poppin’partyが全員脱落した為、終了となった。

 

飛鳥「という訳で順位は以下の通りです」

 

 

 

 

優勝:ハロー、ハッピーワールド!

2位:Pastel*Palletes、モルフォニカ

3位:Afterglow、Roselia

4位:RAISE A SUIREN

最下位:Poppin’party

 

まりな「という訳で優勝はハロー、ハッピーワールド!」

こころ「やったわ!!」

はぐみ「わーい!! はぐみ達が優勝だー!!」

薫「ふっ…当然の結果さ」

 と、こころ達は喜んだ。

 

千聖「……」

彩「あの、本当にすいませんでした…」

日菜「ごめんちゃい」

千聖「いいわよ。それから一丈字くん」

飛鳥「分かりました。収録が終わったら聞きましょう」

 

蘭・友希那「……」

 蘭と友希那は向き合った。

巴「あこ。一体何を話したんだ?」

あこ「えっとね…」

 

チュチュ「あんた達…!!」

マスキング「ごめんて」

レイヤ「面目ないわ…」

ロック「す、すみません…」

 

香澄「もー!! あっちゃんが何ともないなんて言うからー!!」

明日香「だ、だってぇ…」

有咲「…とりあえずもう土下座な。簡単だから」

りみ「う、うん…」

 

 こうして香澄以外の4人はハロハピに土下座して、一件落着に思われたが…。

 

香澄「わ~ん!!!」

はぐみ「はぐみ優勝したのに~!!!!」

 

 香澄とはぐみは結局勉強させられることになった。

 

あこ「何であこまで~!!!」

巴「大丈夫だ。優しいおねーちゃんが面倒見てやっから。ちなみに香澄とはぐみも逃げんなよ?」

香澄・はぐみ「助けて――――――――――――――!!!!!!」

 

 と、香澄とはぐみの悲鳴が響き渡った。

 

 

飛鳥「えー。ダシマ式Bang! Dream第4シリーズ、始まります」

千聖「一丈字くん?」

飛鳥「あーはい。今行きまーす」

 

 

おしまい

 



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第173話「GOODキター!」

『GOODキター! コンテスト』

 

 ルール

 

「大丈夫! 心配すんな!」

「その思いやりが」

「胸にしみて!」

「グ~ッド?」

 

 メンバー4人がT-pistonz+KMCの楽曲「GOODキター!」の最後のサビを歌い、最後にメンバーの1人が

 

「キター♪」

 

 と、返せばOK。全チームのやり取りを見て、一番点数が高かったら優勝。

 

 

飛鳥「これ、イナズマイレブン知らない人から見たら、なんのこっちゃって話だよな…」

まりな「それもそうだし、pixivじゃ出来ないよね。歌詞乗せるの…。

 

使用楽曲

「GOODキター!」

歌:T-pistonz+KMC

(イナズマイレブン OP)

 

***********************

 

 

1. モルフォニカ

 

「ましろ!」

ましろ「?」

 

 透子、七深、つくし、瑠唯がましろの元に向かって、透子がましろの名前を呼んだ。

 

ましろ「え、ど、どうしたの…?」

 

透子「大丈夫! 心配すんな♪」

ましろ「え!?」

つくし「その思いやりが♪」

瑠唯「胸にしみて…」

七深「グ~ッド?」

 

ましろ「え、ちょ、え…?」

 

まりな『あーっと!! 倉田さん対応しきれなかったー!! 実況は月島まりな! 解説は一丈字くんで実況席からお送りしております!』

飛鳥『当り前ですけど、これが普通のリアクションですね』

 

 ちなみに最後に叫ぶのはボーカルで、他の4人は仕掛け人である。その様子を実況席からまりなと飛鳥がアナウンスしていた。

 

ましろ「え…なにこれ…」

瑠唯「ドッキリよ」

ましろ「な、何それぇ!!」

 

2. Afterglow

 

モカ「蘭~」

蘭「?」

 モカ、ひまり、巴、つぐみがやってきた。

蘭「なに?」

 

ひまり「大丈夫! 心配すんな♪」

蘭「?」

巴「その思いやりが♪」

つぐみ「胸にしみて!」

モカ「グ~ッド?」

 

蘭「…え、なに?」

 蘭が不発だった。

 

まりな「あーっと!! Afterglow!! 状況が読み込めず、不発に終わったー!!」

飛鳥「まあ、美竹さんのリアクションが一番正しいんですけどね」

 

モカ「蘭」

蘭「…なに?」

モカ「…これで湊さんが「キター!」って言ったら、うちの負けだよ…」

蘭「は、はぁ!!? どういう事!!?」

 

3. Pastel*Palletes

 

千聖「ねえ、本気でやるの…」

日菜「面白そうじゃん!」

 

 と、メンバーが彩の所にやって来た。

 

彩「な、なに?」

 

 メンバー4人が一斉に自分の方を見て驚く彩。そして日菜は彩にお構いなしに前に出た。

 

日菜「大丈夫! 心配すんな♪」

彩「え? え?」

麻弥「その思いやりが♪」

千聖「胸にしみて!」

イヴ「グ~ッド?」

 

彩「…え、な、なに? どうしたの?」

 

まりな「あーっと!! 丸山選手も対応しきれなかったー!!!」

飛鳥「元々アドリブなどに弱いとの情報がありましたが、今回も戸惑ってしまいましたね」

 

 慌てふためく彩をよそに4人が黙り、日菜がふっと一息ついて、そのまま去っていった。

 

彩「え、ちょ、ちょっと!! なんだかよく分からないけどもう一回やらせてぇええええええええええええええええええええええ!!!!」

 

 

4. Roselia

 

リサ「友希那乗ってくれるかな?」

紗夜「多分無理だと思います…」

あこ「その前にイナズマイレブン知ってるかな?」

燐子「……」

 

 友希那が乗ってくれるかをよそに、友希那の前に現れた。友希那はかしこまって並ぶ4人に対して疑問の目を向けていた。

 

友希那「何なの…?」

 するとリサが歌いだした。

 

リサ「大丈夫! 心配すんな♪」

友希那「……」

燐子「その思いやりが♪」

紗夜「胸にしみて…」

あこ「グ~ッド?」

 

友希那「キター…」

 

まりな「おーっと!! 湊選手一応反応はしたー!!」

飛鳥「やはりテンション高めで歌い上げる事に抵抗があったのか、声が小さめですね」

 

あこ「乗った!!!」

リサ「えっと…イナズマイレブン知ってたんだ…」

友希那「前に燐子とあこと一丈字くんがやってたのを見たのよ。で、その時に流れてた曲…」

燐子・あこ「あっ…」

 

5. ハロー! ハッピーワールド!

 

はぐみ「こころん!」

こころ「何かしら?」

 はぐみが声をかける。薫、花音、美咲もいて、こころが振り向いてはぐみを見た。

 

 

はぐみ「大丈夫! 心配すんな♪」

こころ「!」

花音「その思いやりが♪」

薫「胸にしみて…」

美咲「グ~ッド?」

 

こころ「来たわ!!」

 

まりな「あーっと惜しいー!!! キターではなく、普通に返してしまったー!!」

飛鳥「にこやかな表情はとても彼女らしく、ちゃんと決まっていれば言う事はありませんでしたね」

 

こころ「どうしたのかしら急に!?」

はぐみ「いやあ、はぐみ達が急に歌いだしたらこころんが乗ってくれるかなっていうドッキリを…」

こころ「あたし全然知らなかったわ! どうして教えてくれなかったの!!?」

美咲「教えたらドッキリにならないでしょ…」

 

 

******************

 

まりな「以上、全5組が出そろいました。それでは審査員の方々。宜しくお願いします」

 審査員:RASとPoppin’party

 

チュチュ「Wait!! 完全に準レギュラー扱いじゃないのよ!!」

香澄「ていうか私たちもやりたかった~!!!」

有咲「…新年会のアレで最下位だったもんな。うちら」

沙綾「アハハハ…」

 

飛鳥「それではジャッジをどうぞ!」

 

 満場一致でハロー、ハッピーワールドだった。

 

飛鳥「優勝! ハロー、ハッピーワールド!!」

こころ「やったわ!!」

はぐみ「やったー!!」

薫「儚い…」

美咲「えっ!!? いいの!!?」

飛鳥「審査員のジャッジが絶対です」

 

ましろ「そ、そんなドッキリなんて聞いてませんよ~」

透子「その前に…イナズマイレブン知ってた?」

 

モカ「あー。湊さんちゃんと答えてたんだー」

蘭「……」

 

彩「…私、完全にやらかした?」

日菜「今年は暇になりそうだねー」

彩「やめてぇ!!!」

 

友希那「ちゃんとキターって言ったわよ?」

リサ「声が小さいし、テンション低かったもん…」

あこ「あこだったら優勝狙えたのになー」

 

飛鳥「優勝賞品ですが、ここで一曲披露できます」

「嘘ぉ!!?」

 

こころ「それじゃ飛鳥! 一緒に歌いましょ!」

飛鳥「え?」

こころ「曲は勿論「GOODキター!」!」

 

 と、飛鳥はハロハピの演奏で一緒に歌った…。

 

こころ「グ~~~~ッド?」

飛鳥「キタァ―――――――――――――ッ!!!!!!」

 

 

 

おしまい

 



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第218話「DancE Dream!」

 ある日のこと、香澄たちは体育館に呼び出された。体育館に行くとそこには飛鳥とダンス部のリサ、巴、あこ、はぐみが待っていた。

 

香澄「飛鳥くん!? それにダンス部の皆も…」

千聖「私たちを呼んでどうするつもり? しかもRASやモルフォニカの子たちまで…」

飛鳥「突然お招きして申し訳ございません。実は、今回はダンス部の持ち込み企画で皆さんにあることをしてもらいます」

「あること?」

千聖「ま、まさかとは思うけど…このメンバーでダンスをしようっていうわけじゃないでしょうね…」

 

 千聖は思わず嫌な顔をした。というのも、千聖は運動が得意ではなく、あまりかっこ悪いところは人に見られたくなかったのだ。

 

飛鳥「口で説明するよりも、映像を見てもらったほうがよさそうですね。北沢さん、映像の再生をお願いします」

はぐみ「はーい!」

 

 そういってはぐみは嬉々としてDVDを再生した。すると、アニメ「忍たま乱太郎」のエンディングテーマである「今だ!」の映像が映し出された。そして全部見終わると…。

 

飛鳥「映像の後半に出てきた学年別ダンスをこの7グループでやってもらいます」

「!!?」

 

 飛鳥の言葉に飛鳥とダンス部以外のメンバーが驚いた。

 

飛鳥「ちなみに1番最初の水色の人たちが一番簡単で、最後の緑色の人たちが1番難しいダンスです」

紗夜「ちょっと待ってください。こんなことをしていったい何になるというのです」

はぐみ「えっと。せっかくだから皆で踊ったほうが楽しいかなって…」

 

 紗夜の言葉にはぐみが困った顔をしながら言い放つと、こころも嬉々とした。

 

こころ「いいわね! とっても楽しそう」

花音「ふ、ふぇえええ…!?」

美咲「あたしはどっちで出たらいいんだろう…。着ぐるみでダンスとか暑すぎて嫌なんだけど…」

 

 こころの言葉にそれほどダンスが得意じゃない美咲と、バンドの時は着ぐるみのミッシェルで出ている美咲は困惑した。

 

瑠唯「……」

 

 モルフォニカのバイオリン担当の八潮瑠唯は露骨に嫌そうにした。

 

つくし「る、瑠唯さん…」

七深「いいじゃーん。面白そうだし~」

ましろ「い、一番最初のやつだったら…」

 

チュチュ「まあ、当然ワタシ達は一番最後のパートよね!」

ロック「え、ええ…!!?」

 

 チュチュの言葉にロックが驚いていたが、友希那と蘭が反応した。

 

友希那「…興味ないけど、Roseliaは頂点を目指すの。一番最後のパートは私たちがやるわ」

蘭「待ってください。それだったらうちもやりたいです」

モカ「あー・・・」

リサ「こうなると思った…」

飛鳥「グループの代表者がじゃんけんして、勝った人から順番を自由に決めるというのはどうですか?」

リサ「そのほうがいいかもね…」

 

 その結果、こうなりました。

 

1年生:Afterglow

2年生:モルフォニカ

3年生:Pastel*Palletes

くノ一:RAS

4年生:Roselia

5年生:Poppin*Party

6年生:ハロー、ハッピーワールド!

 

花音「ふ、ふぇえええええええええええええええええええ!!!?」

美咲「無理無理無理無理!!! 死ぬ!!! 絶対死ぬぅ!!!」

 

 よりにもよって、一番難しいパートをやることになってしまい、美咲と花音が絶叫した。

 

香澄「一番最後やりたかったなー」

有咲「いや、結構難しいパート来たぞ!! どうすんだこれぇ!!」

 

 悔しがる香澄だったが、有咲はそんなに運動に自信があるというわけではなかったので、困惑していた。沙綾は苦笑いし、りみが困惑し、たえは普通だった。

 

友希那「……」

リサ「ドンマイドンマイ」

燐子(け、結構簡単そうなので良かった…)

あこ「これだったらりんりんも出来るね!」

 

 一番最後のパートでなくて悔しがる友希那だったが、リサとしては身体能力的に難しいだろうなと感じていた。その点、燐子は簡単そうなパートだったので、安心していた。

 

チュチュ「くっ…!」

ロック(よ、よかった…振付簡単そう…)

マスキング「まあまあ。小松田さんのパートやらせてやるから」

 

 そういってマスキングはチュチュを励ました。

 

千聖「結構難しいじゃない…」

彩「千聖ちゃん。気持ちはわかるけど、私たちアイドルだから」

麻弥「ジャンプしてタイミングよく決めポーズをするだけですよ?」

 

 動作が1年生や2年生よりも若干難しいため、千聖は困惑していたが、ほかの4人の説得により、やることになった。

 

ましろ「左右に揺れるだけだね」

瑠唯「映像は4人だけだったから、1人抜けたほうがいいと思うの」

つくし「駄目だよ瑠唯さん。こういうのもちゃんとやらないと」

 

蘭「……」

つくし「ら、蘭ちゃん…」

モカ「一人だけ負けちゃったもんね~」

 

 と、各々の思惑を胸にダンスの練習が行われることになったが…。

 

こころ「せっかくだから飛鳥も一緒に踊りましょ!」

飛鳥「え?」

はぐみ「そうだね! あっ、でもうちはミッシェルがいるよこころん!」

こころ「そうだったわ!」

美咲「ごめん。ミッシェル来れないみたいよ」

こころ「それじゃ美咲と飛鳥が代わりに入って!」

美咲「あー…そうなりますよね」

花音「そうだよ。美咲ちゃん」

 

 自分だけ逃げないで。と花音が目で訴えた。

 

こころ「それじゃあたし達と飛鳥は6年生のパートをやるわよ!」

はぐみ「おー!!!」

 

 

 と、ダンスの練習を行った。どういうダンスになったかは皆さんのご想像にお任せします。

 

 

おしまい

 



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第250話「飛鳥とRASとモルフォニカに幸あらんことを!!!」

 

 ある日の事だった。

 

「Hey! ネス!! いい加減にして頂戴」

飛鳥「あ、珠手さん」

「チュチュよ!!」

 

***********************

 

 飛鳥の家のマンションのエントランスホールに「RAISE A SUIREN」のDJ、珠手ちゆがやってきた。そしてほかのRASのメンバーやモルフォニカもやってきた。

 

チュチュ「ワタシ達全然出番ないじゃないのよ!!」

マスキング「まあ、既に25人もいるしな…」

ロック「私は一応中等部の生徒にいましたけど…」

 

飛鳥「そんな皆様に朗報です」

チュチュ「何よ」

飛鳥「皆さんがメインで出ている2NDシリーズが独立します」

 

 飛鳥の言葉に空気が止まった。

 

チュチュ「ど、どういう意味よ」

飛鳥「早い話が、別チャンネルになりますが、皆さんのレギュラー出演が決定しました」

 

 空気が止まった。

 

パレオ「そ、それじゃパレオもパスパレの皆さんとあんなことやこんなことやそんなことも!?」

飛鳥「常識の範囲なら可能です」

パレオ「やったあ!!」

チュチュ「Wait! それは本当なの!?」

飛鳥「実はPVが送られてきたんですよ。私もまだ見てないので、どんなのかは知らないんですけど」

 

 すると飛鳥がビデオを再生した。

 

七深「なんですかそれ?」

飛鳥「ビデオテープです。あ、やっぱりご存じないんですね…」

七深「し、知ってます知ってます!! 広町普通の子なので!!」

ましろ「…全然普通じゃないよ」

七深「あー! しろちゃんすぐそういう事言うー!!」

つくし「コラー! ケンカしないの!」

 

 七深の言葉にましろがボソッと突っ込むと、七深が反応した。

 

************************

 

『ガールズバンド戦国時代は更に加熱する!!』

 

 というまりなのナレーションで始まった。

 

『バンドリ学園に吹き荒れる2つの嵐!!』

 

チュチュ「ついにワタシ達の時代がやってきたわ!!」

 

『RAISE A SUIREN!!』

『Morfonica』

 

『総勢35名によるガールズバンドパーティ!!』

 

「あれ!? うちの学校にあんなかわいい子いたか!?」

「ヒャッホイ! この学校にいて良かった!!」

 

 レイヤとマスキングに男子生徒たちが見とれていた。

 

『そして既にいる5つのガールズバンド(とあの男)は次のステージへ!!』

 

香澄「皆同じクラスだね!!」

有咲「一丈字。このクラスを選んだ男子…お前だけだぞ」

飛鳥「!!!?」

 

『そんな彼らに、試練が立ちはだかる!!』

 

「一丈字てめぇえええええ!!!」

「3年生はオレたちが貰うかんな!! オレたちが貰うかんな!!」

「1年生は絶対に渡さーん!!」

「やっぱあれか!? 女子っていい匂…」

 

『変態達(ヤラカシ)との終わりなき戦い!!』

 

紗夜「ピーマンを残さず食べなさい!!」

あこ「人参りんりんに食べさせた癖に!!」

 

 ファミレスでしょうもない喧嘩をする紗夜とあこ。

 

『仲間との対立!』

 

ましろ「瑠唯さん。どうして…!!」

瑠唯「ごめんなさい。あなた達4人でやって頂戴」

 

 瑠唯がましろ達を見下していた。

 

『仲間の裏切り!!』

 

『でも…』

『やっぱり友情!!』

 

巴「ズルルルルルル…!!」

マスキング「ズルルルルルル…!!」

 

 ラーメンの大食い対決をする巴とマスキング。

 

レイヤ「やっぱり変わらないね。花ちゃん」

たえ「うん…」

 

 河川敷で談笑するレイヤとたえ。

 

パレオ「そ、そんな麻弥さんの膝枕なんて神々しすぎて…」

チュチュ「パレオ。落ち着きなさい」

 

 パスパレに興奮するパレオにあきれるチュチュ。

 

『これは、バンドに青春をかけた少女たちと自称ごく普通の男子高校生の物語!!』

 

香澄「バンドさいこー!!!」

 

『ダシマ式BanG Dream エンドレス! 2nd season!』

 

「流石に中学生に手を出すのは…」

「あこちゃんだって中学生だったんだ。問題ない!!」

 

***************:

 

飛鳥「とまあ、突っ込みどころ満載のPVだった訳だけど…なんかごめんなさいね」

マスキング「ついにハーレム完成だな」

飛鳥「あ、直談判していただければほかの方に変えていただくことも出来ますよ」

レイヤ「いや、そこまでは…」

 

 飛鳥の言葉にレイヤが苦笑いした。

 

七深「それはそうと、るいるいの裏切りが気になるんだけど…」

つくし「ねえ、どういう事なの!?」

瑠唯「教えられないわ。でも安心して、ほかのバンドに行くわけじゃないから」

透子「シロは何か知らねーのか?」

ましろ「し、知らない…」

透子「知らないって…」

飛鳥「ああ。八潮さんには事前に何するか伝えてるんですよ」

 

 飛鳥がしゃべると、皆が驚いた。

 

飛鳥「さて、それはそうと250回に到達いたしました」

マスキング「よく続いたな…」

飛鳥「ええ。ブシロードや関係者の皆様にいつ怒られるんだろうと怯えながら」

「そうだったの!!?」

 

 飛鳥の言葉に皆が困惑した。

 

マスキング「そういや、今までやってきたシリーズはどうするんだよ」

飛鳥「これまで通り継続します。その時は準レギュラー扱いになりますが…」

チュチュ「このワタシを準レギュラーなんて、いい度胸してるじゃないのよ!」

マスキング「けど、あっちが25人でこっちが10人だから、目立ててたじゃないか」

レイヤ「しかもなんか生き生きしてた…」

チュチュ「…そ、そんな事ないわよ!」

 

 マスキングとレイヤの言葉にチュチュはむきになって反論した。

 

七深「それはそうと、ハーレムっていう割にはなかなか恋愛に発展しませんよね」

飛鳥「ああ。恋愛的な意味ではなく、普通に女子と一緒にいるっていう感じなので」

つくし「ふ、風紀的によくないと思います!!」

飛鳥「おっしゃる通りです」

七深「だめだよつーちゃん。そんなこと言ったら~。男子たちが自分にもチャンスがあるって思っちゃうよ~?」

 

 モニターが映った。

 

「なんかあの二葉つくしって子、一丈字を嫌ってそうだから狙えそうじゃね?」

「でも小学生に手を出すのはなぁ…」

「オレ、むしろ好みなんだけど…赤いランドセル背負わせてそれから…」

「おまわりさーん!!!」

 

 その光景に、ほぼ全員がドン引きした。

 

飛鳥「…私は私でこの変態ぶりに内臓とかやられまくってんですよ」

透子「だったらやめればいいじゃねーか…」

七深「それじゃ面白くないよ。いちごがないスポンジケーキみたいなもんだよ~」

飛鳥「あ、倉田さん…」

ましろ「は、はい…」

 

 飛鳥がましろを見た。

 

飛鳥「あなた、結構気が弱いってお伺いしてますが、大丈夫ですよ」

ましろ「!」

飛鳥「あなたよりも更にひどい環境にいるやつがここにいますので、こいつに比べれば自分は全然大したことないって思えますから」

透子「それもそうだし、一丈字先輩が守ってくれるから大丈夫だよ~」

 

 皆が透子を見た。

 

透子「…え、普通そう思うでしょ?」

飛鳥「桐ヶ谷さん…」

 

 飛鳥はスーッと気持ちが晴れた。

 

チュチュ「それはいいとして、バンドする機会はあるんでしょうね!?」

飛鳥「あることはありますけど」

マスキング「ガルパピコ的なノリじゃね?」

 

 マスキングの言葉に空気が止まった。

 

飛鳥「それはそうと時間ですね。それでは皆さん、第5シリーズもありがとうございました。このチャンネルは引き続き継続しますが、新チャンネルもよろしくお願いします」

チュチュ「Bye!」

 

 飛鳥がチュチュを見つめた。

 

パレオ「あ! それだったらパレオ、パスパレの皆さんを守る忠犬やります!」

チュチュ「ちょ、パレオ抜け駆けするんじゃないわよ!!」

透子「あたしはえーと…」

 

 

おしまい

 



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ヤンデレ編
第120話「飛鳥とヤンデルお姉さん達」


 

 

 ある日の事。飛鳥は息を切らして…逃げ回っていなかった。

 

飛鳥「え? 何があったんですかって? 見ていただければわかりますよ」

 

 そう言って、飛鳥は余裕で道を歩いていた。

 

「どこ行ったんだ…一丈字の奴」

 

 と、Afterglowのボーカルである美竹蘭がキョロキョロ見渡して、飛鳥を探していた。何故かスタンガンを持っていて、目のハイライトが消えている。

 

飛鳥「こりゃあ、お父さんに連絡するしかないな」

 

 飛鳥がスタスタと去っていき、蘭の父親に連絡を入れた。実を言うと、此間デパートで遠方にいる両親にギフトを買っていた所遭遇し、ある程度仲良くなったので連絡先を貰っていた。

 

 そして飛鳥が家に帰ろうとすると、マンションの前で日菜と紗夜がガードマンに取り押さえられていた。

 

飛鳥「何やってんだかあの人達…」

 

 飛鳥は呆れた様子で人目のつかない所で瞬間移動をした。

 

飛鳥「はー…。防犯対策に林グループが所有するマンションを借りて良かったけど、まさかバンドガール達が犯人になるとはなぁ…」

 と、飛鳥が扉を開けると誰もいなかった。

 

飛鳥(いてたまるか)

 すると飛鳥が荷物を置いて、椅子に座るとスマホを確認した。

 

飛鳥「もうこんなに着信とか来てるよ…。まあ、歩きスマホとかしなくて安心だけどね」

 ちなみに音楽を聴くときはウォークマンを使っている。

 

飛鳥(まあ、ガン無視しても怖いから、出てあげるか)

 その時、丁度こころから電話がかかってきた。依頼人であり、何の偶然か分からないと感じていたが、飛鳥はそのまま電話に出る事にした。

 

飛鳥「もしもし…」

こころ「あ、もしもし飛鳥!? あたしよ! 今おうち!?」

飛鳥「そうだよ」

こころ「遊びに行ってもいいかしら?」

飛鳥「マンションの前にいる?」

こころ「ううん? おうちよ?」

飛鳥「そう…。これでマンションの前にいるとか言ったら、今後の付き合い方を考えないといけなかったんだけどね」

こころ「そんな怒らせるような事しないわよー」

 

 と、こころが苦笑いしながら言ったが。

 

こころ「だって、飛鳥が笑顔じゃなくなるような事したくないもの」

飛鳥(この子も病んでいる)

 こころの声色で飛鳥は静かに目を閉じた。

 

飛鳥「…そう。まあ、お願いだから犯罪はやめてね」

こころ「分かったわ。で、遊びに行ってもいいかしら?」

飛鳥「ゴメン。今日はもう疲れて、一人になりたいんだ」

こころ「そうなの? あ、何かリラックスできる道具とか今度持っていこうか?」

飛鳥「ありがとう。でも、かえって気を遣って疲れるから」

 と、飛鳥は何とか言葉巧みにこころを懐柔している。まるでブウを言い聞かせるミスター・サタンのように…。

 

飛鳥(いや、ドラゴンボール知らない人からしてみたら、何の話か分からないから)

 

 ちなみに日菜と紗夜は親からこってり絞られたという。

 

*****************

 

 またある日の事。

 

飛鳥「……」

 飛鳥は千聖と薫に絡まれていた。

 

千聖「飛鳥くん」

飛鳥「何でしょう」

千聖「あなた、何で電話とメールに出てくれないの?」

飛鳥「いろんな人からかかってきて、対応しきれてないからです」

「馬鹿正直!!!」

 

 飛鳥の言葉に皆が困惑した。

 

薫「そういうのは感心しないなぁ」

飛鳥「そうですね。それはすみません」

千聖「で、私以外の女とどんな話をしてるのかしら?」

飛鳥「ヤキモチですか?」

 飛鳥の挑発的な言葉に千聖は…。

 

千聖「ええそうよ。あなたが私以外の女と話すなんて腸が煮えくり返るわ」

飛鳥「あなたアイドルですよね?」

 

 ここまで来て、お察しの方はいらっしゃると思いますがはい、バンドガールズが全員ヤンデレになっているというお話です。ですが、飛鳥も日頃から頭のおかしい奴を相手にしている為、全く動じません。

 

飛鳥(ここでオレが白鷺先輩たちに好き放題されたら面白いんだろうけど、ごめんなさい。こんな形で死にたくないです)

 

千聖「昨日は誰と話していたの?」

飛鳥「弦巻さんです」

千聖「そういえば…あなた、こころちゃんととても仲が良いわね?」

飛鳥「そうですか?」

薫「こころと仲良くしてくれるのは有り難いが…私とも仲良くしてくれると有難いな」

飛鳥「それじゃあ、今度から『かおちゃん』って呼んでいいですか?」

薫「それはやめて//////」

 

 薫も若干病んではいたものの、昔のあだ名である「かおちゃん」って呼ぶと正気に戻る。

 

千聖「そうだ。今度薫の恥ずかしい秘密教えてあげるから、時間を取ってくれる?」

薫「ちーちゃん!!//// そんな事しても飛鳥くんに嫌われるだけだよ!!/////」

飛鳥(素なら「くん」付けなんだ…)

 

 飛鳥の関心は完全に薫に言っていた。

 

千聖「嫌う? 飛鳥が私を?」

飛鳥「まあ、瀬田先輩の事はともかく、迷惑行為をする人は嫌いですね」

千聖「迷惑だったかしら?」ウルウル

 千聖が演技で涙目になると、周りにいる男子生徒達がキュンとした。

 

飛鳥「…何がですか?」

千聖「…それ、女の子に言わせる?」

飛鳥「すみません。私こういう事に関しては疎いので…」

「千聖ちゃん!! こんな奴なんかよりオレと!!」

「いや、オレ!!」

「そういうの分かるよ!!」

 

 と、千聖の親衛隊らしき男子生徒達が割って入り、

 

「どけよお前!!」

 男子生徒達は飛鳥をどかした。すると千聖と薫の目のハイライトが消えた。

 

飛鳥(死んだな…)

 

千聖「あなた達…」

「は、はいっ!!」

千聖「飛鳥くんに何をしてくれるのかしら…!?」

薫「儚くないね…」

 

 千聖と薫は怒髪天だった。飛鳥は面倒な事になったなぁ…と、遠くから見ていたが燐子が話しかけてきた。

 

飛鳥「え? 白金先輩」

燐子「ここにいては危険です。行きましょう」

飛鳥「えっ」

薫「あっ!!」

千聖「こらー!!! 待ちなさーい!!!!」

 

 と、今日も飛鳥の争奪戦になっていたとさ。

 

 

飛鳥「とさじゃねぇよ」

 

おしまい

 



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第121話「飛鳥とヤンデル麻弥」

 

 

 午前5時。

 

飛鳥「ふぁああ…」

 

 飛鳥は自室のベッドで起床した。

 

飛鳥「さてと…起きるか」

 飛鳥が起き上がって、ベッドから出た。

 

飛鳥「こういう時、誰かが抱き着いてたりしてるけれど、普通に考えてホラーだし…。流石にそんな事はさせられませんよ」

 

 と、飛鳥がメタ発言をしだした。ハーレム小説とはいえ、やはり敬意を払わなければならない所はならないのである。

 

 その時、携帯電話が鳴り、飛鳥が電話に出た。

 

飛鳥「もしもし。一丈字です」

「あ、一丈字さんっすか!? 大和っす!!」

飛鳥「大和先輩…」 

 

 電話の相手は大人気アイドルグループ「Pastel*Pallettes」のドラム担当、大和麻弥である。

 

飛鳥「どうされたんですか? こんな朝早くに」

麻弥「すみません…。この時間にいつも起きてらっしゃるとお聞きしてまして」

飛鳥「起きたばかりですし、何かあったんですか?」

麻弥「え、えっと…」

 

 飛鳥の問いに麻弥が困った顔をした。

 

飛鳥「…さしずめ、この時間に電話をかけないと、他の人に先を越される。とかですか?」

麻弥「…うっ」

飛鳥「他の皆さんにも言ってるんですけど、もうちょっと配慮が欲しいですね」

麻弥「す、すみません…」

 

 飛鳥の容赦ない言葉に、麻弥が謝った。

 

飛鳥「それで、何か御用ですか?」

麻弥「あの…。きょ、今日空いてないですか?」

飛鳥「いつ頃ですか?」

麻弥「その…放課後…」

飛鳥「すみません。今日の放課後は、メカノスアイランドに行く予定なんですよ」

麻弥「メカノスアイランド!!? 一体何しに行くんすか!?」

 

 飛鳥の言葉に麻弥が目を輝かせた。というのも、メカノスアイランドとは人工島で、機械などがとても豊富な島であり、技術者たちの聖地と呼ばれている。

 

飛鳥「ちょっとしたバイトですね」

麻弥「あー…バイトですか。それなら仕方ないっすね。何時までですか?」

飛鳥「21時までです」

麻弥「あー…」

 

 完全にデートを誘う機会がなくなってしまったと麻弥は察してがっかりした。

 

飛鳥「そういう訳ですので」

麻弥「その…メカノスアイランドにはしょっちゅう行くんすか?」

飛鳥「たまに行きますね」

麻弥「そうっすか…。それなら、今度機材を見てほしいんですけど、どうっすか?」

飛鳥「白鷺先輩から釘刺されてるんですよ。パスパレのメンバーを連れ出すなって」

麻弥「あー気にしなくていいっすよ。そんな事言って千聖さん。自分だけ抜け駆けしたじゃないっすかー」

 

 麻弥が笑い飛ばしながらそう言ったが、目は笑ってないだろうな…と飛鳥は思っていた。

 

飛鳥「出かけるのは事務所的には大丈夫なんですか?」

麻弥「勿論大丈夫っすよ! 寧ろ飛鳥さんをうちの事務所に欲しいって言ってるくらいですから!」

飛鳥「…そうですか」

 

 全く身に覚えがなくて飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「そんな事してパスパレ仲悪くなったりしませんか?」

麻弥「あー…。まあ、その辺は皆プロですので、その辺はちゃんとしっかりしてますよ!」

飛鳥「……」

 

 仲が悪いパスパレを想像して、飛鳥は頭が痛くなっていた。

 

飛鳥「…そうですか」

麻弥「そういう訳ですので、気にしなくて大丈夫っすよ?」

飛鳥「それは構いませんけど、そういう時って必ずと言っていい程、他の人が来たりしますけど…」

麻弥「来ませんよ」

飛鳥「その根拠は?」

麻弥「飛鳥さんに嫌われるような事する筈がないじゃないっすかー」

飛鳥「よくよく考えたらすごい会話してますよねコレ」

 

 バンドをやっていて美少女でスクールカーストの最上位に立っている少女たちに好かれているという漫画みたいな展開の中にいる飛鳥は、困惑していた。

 

飛鳥(まあ、オレも超能力者だし、ある程度の事は覚悟してたけどこんな事になるとは…)

 

麻弥「あ、折角ですから途中まで一緒に行きませんか!?」

飛鳥「え?」

麻弥「その…バイトするまでの間だけでもいいので、直接お話しできませんか? 二人きりで…」

飛鳥「大和先輩…」

麻弥「…あ、えっと。出来れば麻弥って呼んでください」

飛鳥「白鷺先輩に言ってください。それじゃ、宜しくお願いしますね」

麻弥「はーい」

 

 と、約束を取り付ける事になったが、これが初めてではない。

 

飛鳥「毎朝電話かかってきて、断ろうとするとあの手この手なんだよね。脅しをかける人は即刻断るけど」

 

 そんなこんなで登校すると、案の定詰め寄られた。麻弥以外のパスパレのメンバーに。

 

彩「飛鳥くん。どういう事?」

飛鳥「何でしょう」

日菜「麻弥ちゃんとデートってどういう事!!?」

飛鳥「あ、大和先輩がそういう風に自慢したんですか?」

麻弥「し、してないっすよ!!」

 麻弥が慌てふためていた。

千聖「してたわね」

イヴ「してましたね」

彩「してた」

日菜「してたねー」

 

 と、4人が口裏合わせそういうが、飛鳥は一息ついた。

 

飛鳥「…あの、私そういうの分かるって前にいましたよね?」

「!!」

 飛鳥が腕を組んだ。

飛鳥「前々から思ってたんですけど、私のどこがいいんですか?」

「それ本人が言う!!?」

「前々から思ってたけど、ぶっ殺すぞお前!!」

「バ、バカ!!!」

 

 男子生徒の「ぶっ殺す」という言葉に、目のハイライトがオフになるパスパレ。

 

彩「飛鳥くんにぶっ殺す?」

日菜「イラっとしたー」

千聖「どの面下げて言ってるのかしら」

イヴ「武士道に反してます」

飛鳥(片言じゃなくなってる…)

 

 ハイライトがなくなったパスパレメンバーよりも、片言じゃなくなってるイヴに飛鳥は注目が行っていた。

 

飛鳥「それはそうと、あまりファンの皆さんの前でこういう事言うの宜しくないですよ」

千聖「あなたの事は度々話題に出してるから大丈夫よ?」

飛鳥「ええ。今となってはそんな事をしていて、何故干されないのか不思議でしょうがないんですよ」

彩「それなら心配ないよ? ちゃんと仕事してるから」

日菜「バンドだってちゃんとやってるしねー。で、麻弥ちゃんとデートってどういう事?」

飛鳥「デートではございませんよ」

麻弥「そうっすよ。飛鳥さんがバイトがあるから、それまで一緒にいましょうって言っただけです」

 

彩「結局一人占めじゃん!!」

日菜「はーい! それならあたしも一緒に行きたいでーす!!」

千聖「そうね。デートじゃないなら問題ないものね」

イヴ「こういう時は5人一緒です」

飛鳥「若宮さん。片言じゃないけど大丈夫?」

 

 そんなこんなで、放課後飛鳥とパスパレはメカノスアイランドに向かう為に電車に乗ったが…。

 

麻弥「何で私が一番端っこなんですかー!!!」

千聖「一人占めしようとした罰よ」

イヴ「チサトさんだけそんなにくっついてずるいです!!」

彩「あのう…。なんで私も端っこなの…?」

日菜「え? 何かそんな感じがするから」

彩「飛鳥くーん!! 日菜ちゃんがいじめるー!!」

飛鳥「皆さん。電車の中なので静かにしてください」

 

 という会話が電車の中で行われていたという。

 

 

おしまい

 



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第158話「ヤンデル若宮イヴ」

 

 

 ある日の事だった…。

 

「アスカさん!」

 

 バンドリ学園のカフェテリアでイヴが飛鳥に話しかけた。飛鳥はウロウロしていただけだが…。

 

飛鳥「若宮さん。どうされました?」

イヴ「今日は私達パスパレの事務所に来ていただけませんか!?」

飛鳥「あ、あー…」

 

 飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「ごめんなさい。今日は用事があるんですよ」

イヴ「…何の用事ですか?」

飛鳥「アルバイトです」

イヴ「いつ終わりますか?」

飛鳥「夜までかかりますね。学校が終わったら即刻移動しなければなりませんので」

 

 そう言って飛鳥はイヴを見つめて口角を上げた。

 

飛鳥「それでは! 御免!」

イヴ「あっ!」

 

 飛鳥が去っていった。イヴは一瞬あっけにとられたが、イヴも笑みを浮かべた。

 

イヴ「ワタシは諦めませんよ…。まっすぐ自分の言葉は曲げません。それがワタシのブシドーです!!」

「あの、イヴちゃん。オレでよかったら…」

「いや、僕が!!」

 

 と、男子生徒達が寄ってきたが、イヴは無視をした。

 

 

********************

 

 その日の夜

 

イヴ「はぁ…」

彩「イヴちゃん。気にする事ないよ」

日菜「でも飛鳥くんにも来て欲しかったなー」

 

 Pastel*Palletesはとあるゲーム大会の公式サポーターとしての仕事があり、応援席にいた。

 

千聖「事務所が勝手に仕事を取ってきたけど、全く知らないのよね…」

日菜「何か楽しそうでるんってするけどね!」

 

 5人がわちゃわちゃと喋っていたその時だった。

 

『これより! ファイブレベル杯『ダンボールファイターズ』トーナメントを行います!!』

 

 と、大歓声が上がった。MCの挨拶、ゲームの主題歌を担当しているバンドの演奏が始まった。そしてパスパレの紹介もあり、パスパレがある程度挨拶をする。

 

 そして大会が始まった。

 

『第1回戦第1試合!! チーム・ARIA VS ドサンコーズの戦いです!!』

「!!」

 

『まずはチームARIAの紹介です!!』

 

 するとスポットライトが充てられたが、そこには飛鳥、あこ、燐子がいた。

 

「」

 パスパレの5人は目を大きく開いた。

 

あこ「りんりん!! 飛鳥くん!! 頑張ろうね!!」

飛鳥「ええ」

燐子「き、緊張してきましたけど…飛鳥さんがいるから!」

あこ「うん! 飛鳥くんがいるなら百人力だね!」

飛鳥「……」

 

 そして試合が始まった。このゲームは「XBL」という小型ロボットを駆使し、それをカスタマイズして敵のXBLと戦い、戦闘不能にしたら勝ちというものだった。

 

『勝者! チーム・ARIA!!』

 

 飛鳥と燐子の連係プレイで1勝を収めた。

 

あこ「やったやったー!!!」

燐子「やりましたね!」

飛鳥「……」

 

 1勝を収めて、3人がハイタッチした。

 

彩「い、一丈字くん…このゲームしてたんだ…」

 彩が普通に驚いていたが、日菜や千聖はイライラしていた。

 

千聖「そんな話聞いてないわよ…」

日菜「全然るんってしないよ」

麻弥「ふ、二人とも…仕事中ですから!!」

イヴ「アスカさん…。私以外の女性と…こんなのブシドーじゃありません!!」

麻弥「ちょっとイヴさん!!? 確かにそうですけど!!」

 

 どう考えても仕事を放棄している日菜、千聖、イヴに対して彩と麻弥が慌てた。となりにいる関係者が不思議そうに見ていた。

 

 そしてこの後も、2回戦、3回戦と勝ち上がっていったが…。

 

飛鳥「行きますよ白金先輩!!」

燐子「はい!!」

 

 飛鳥と燐子のコンビネーションで試合が決まる事が多かったが(あこは相手の動きを止めたりするサブ的な事をして、二人へパスをしている)、当然その分飛鳥と燐子がイチャイチャ(?)しているので、パスパレは当然面白いわけがなかった。

 

彩「私達…完全に見せつけられてるよね…」

日菜「本当にるんってしないよ…」

千聖「だからアイドルなんて嫌だったのよ…!!」

麻弥「千聖さん。その発言は女優としてもアウトです」

イヴ「……!!」

 

 燐子、あこと仲良く戯れている飛鳥を見て、イヴは泣きそうになっていた。

 

イヴ「私もアスカさんとゲームしたいです~~~!!!!」

 

 そんなこんなで決勝戦。相手のチームもなかなか強力で、燐子が戦闘不能になった。

 

あこ「りんりん!!」

燐子「ご、ごめんなさい…!!」

飛鳥「狙われてましたね。あとは任せてください!」

 

 飛鳥とあこが2人で3人と立ち向かった。しかし、健闘空しくあこが戦闘不能になった。

 

彩「ああっ!!?」

千聖「このままだと飛鳥くんが負けてしまうわ!!」

日菜「飛鳥くーん!! 頑張ってー!!!」

麻弥「って!! 片方のチームに肩入れはダメっすよ!!」

イヴ「……!!」

 

 その後、飛鳥は苦戦を強いられるも2人を下し、1対1になった。

 

「中々やるな…!!」

飛鳥「そちらこそ」

 

 対戦相手の男と見つめ合い、そこから激しい攻防を繰り広げた。飛鳥はゲームの音で相手がどこから攻撃を仕掛けてくるか判断して、そこからは集中力を高めてキーボードを打ち込んで攻撃や移動を繰り返した。

 

あこ「あ、飛鳥くん…!!」

燐子「やっぱり凄いです…!!」

 

 そして、お互いのXBLが満身創痍になった。

 

「次の攻撃で、決着をつける!!」

 

 お互いのXBLが必殺技を繰り出す。相手は光線を繰り出した。

 

彩「ああっ!! 光線が飛鳥くんの機体に!!」

イヴ「アスカさん!!」

 

飛鳥「必殺!!」

 

 すると刀に力を入れて、光線を撃ち返そうとする。

 

飛鳥「カウンターストライク!!!!」

 

 飛鳥がそう叫ぶと、光線ははねかえり相手のXBLを飲み込んだ。そして、相手が全員戦闘不能になったとモニターで表示された。

 

『勝負あり!! 優勝はチーム・ARIA!!!』

 

 アナウンサーが高らかにそう言い放つと、大歓声が上がった。

 

彩・日菜「やったやったー!!!」

千聖「当然ね」

イヴ「ブシドー!!」

麻弥「いや、あの…飛鳥さん!! おめでとうございまぁす!!」

 

 麻弥はやけくそになった。ちなみにこの時、「パスパレ特定のチームしか応援してないけど、面白いからいっか」という声が配信番組であがっていた…。

 

千聖「…けど、燐子ちゃんやあこちゃんとチームを組んでこんな事をしてる事に関しては、後で聞きだす必要があるわね」

日菜「うん」

 

 だが、不幸は続くもので…。

 

あこ「やったやったー!!! 飛鳥くんすごーい!!!!」

 あこが飛鳥に抱き着いたのだ。これに対してパスパレは般若のような顔をした。

 

飛鳥「う、宇田川さん…」

あこ「だってあこ達、本当に優勝したんだよ!!? ねえりんりん!!」

燐子「ええ…。本当に飛鳥さんのお陰です。本当にありがとうございます」

飛鳥「……」

 

 燐子の顔を見て、飛鳥は苦笑いした。

 

 そして表彰式。飛鳥、燐子、あこが立たされ、賞状はリーダーであるあこが受け取った。パスパレも陰から拍手をしていたが…。

 

彩(燐子ちゃんあこちゃん! 近すぎるよ!!)

日菜(今度ゲーム誘おーっと…)

千聖(燐子ちゃんにあそこまでデレデレして…。もしかして巨乳が好みなのかしら…)

麻弥(確かこのゲーム、カスタマイズしがいがありますから…今度聞いてみようっと)

イヴ「……」

 

 そして飛鳥側もパスパレの存在に気づいていたが…。

 

飛鳥(絶対怒ってるだろうな…)

燐子(絶対怒ってるな…)

あこ(絶対怒ってるよぉ~!!!)

 

 パスパレの気迫に辟易していた。

 

 そして後日、バンドリ学園にて…。

 

千聖「飛鳥くん。優勝おめでとう」

飛鳥「ありがとうございます…」

 

 千聖たちに呼び出された飛鳥と燐子。ちなみに逃げられないように千聖以外のメンバーがテーブルを囲んでいた。

 

千聖「あなた、ゲームやってたのね」

飛鳥「えーと…」

燐子「わ、私とあこちゃんが誘ったんです…」

 飛鳥が困惑した。

 

千聖「でしょうね」

イヴ「それならそうだってどうして教えてくれなかったんですか!?」

 イヴが飛鳥に迫ると、

 

飛鳥「サプライズだって宇田川さんが…」

燐子「え、ええ…」

 

 と、困惑していた。

 

イヴ「それはそうとアスカさん!」

飛鳥「何です?」

イヴ「今日は予定空いてますよね!?」

千聖「そうね。騒がせたんだから罰として何か欲しいわね」

飛鳥「あまりそういう事言わない方が良いですよ」

千聖「何でよ」

飛鳥「……」

 

 すると、男子生徒達が現れた。

 

「罰ならこのオレにぃ!!」

「いや、オレが!!」

「オレオレ!!」

「一丈字ひっこめ~!!!」

 

 と、男子生徒達が騒いだ。

 

飛鳥「こうなりますので」

燐子「あの、飛鳥さんの事は私が責任を持って面倒を見ますので…」

飛鳥「そういう事ではございません」

 

日菜「燐子ちゃんばっかりずるいよ」

千聖「そうよ。あなたらしくないわ」

イヴ「アスカさんもこんなのブシドーではありません」

 虚ろな目で飛鳥と燐子を見つめると、

 

飛鳥「皆さん。パスパレの皆さんこんな感じになってますけど、如何ですか?」

「それでも愛す!!」

「彩ちゃんはオレが面倒みる!!」

「じゃあオレは日菜ちゃん!!」

「僕、千聖ちゃん!!」

「麻弥ちゃん!!」

「イヴちゃん!!」

 

燐子「飛鳥さん! 危ないです!!」

飛鳥「!!?」

 

 燐子が飛鳥の手を引っ張ってその場を避難させると、パスパレが男子生徒達にもみくちゃにされた。

 

千聖「こ、こらぁ!!! 待ちなさーい!!!!」

イヴ「アスカさ~ん!!!!」

 

 

おしまい

 



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第159話「優勝してからの僕たち」

 

 

 前回までのあらすじ

 

 飛鳥はイヴから事務所に来るように誘われていたが、飛鳥は予定があるから無理だと断った。実際は燐子・あこと共にゲームの大会に出場していて…!!?

 

*******************

 

「優勝おめでとうございます」

 

 大きな大会に優勝したという事で、飛鳥、燐子は高等部で、あこは中等部で表彰され、「ARIA」の名は学園中に広まった。

 

 そして当然それを快く思っていないのが…。

 

 飛鳥は表彰式が終わって…

 

香澄「飛鳥くんいつの間に大会に出てたの!!?」

飛鳥「あこさんと白金先輩に誘われて…」

 

 終わってすぐにPoppin’partyが3組の教室にやってきて、香澄が飛鳥に問い詰めた。

 

たえ「そういえば仲間がいなくてどうとかって言ってたね」

飛鳥「ええ…。丁度あのゲームやってましたし、面白そうだったので参加しました」

りみ「へ、へえ…」

 すると沙綾がある事に気づいた。

 

沙綾「そういえば、友希那さん達は大会に参加するの知ってたの?」

飛鳥「ええ」

有咲「…何か言われなかったか?」

飛鳥「言われましたよ。まあ、話せば長くなるので省略しますけど…」

香澄「是非教えて!! 昼休憩時間取れる!?」

飛鳥「取れればいいですけどね…」

 

 飛鳥が視線を逸らした。

 

たえ「分かった。友希那さん達も強引だもんねぇ」

飛鳥「何もなければ、昼休憩どこかで話をしましょうか」

「あら、随分人聞きが悪いわね」

 

 と、友希那、紗夜、リサの3人が現れた。

 

香澄「友希那さん!」

飛鳥「これはこれは…」

友希那「昼休憩だけど、時間空いてるかしら」

飛鳥「あいにく、先客がいらっしゃいます」

友希那「ならPoppin’partyも一緒でいいわ」

飛鳥「……」

 

 友希那の言葉に飛鳥が困惑した。

 

友希那「あこと燐子ばかり不公平だわ。私達にも構うべきよ」

飛鳥「え? 私に構ってほしいんですか?」

友希那「…それ、女の子に言わせる気? 感心しないわね」

飛鳥「このように気が利かない男ですよ?」

友希那「…意地悪」

飛鳥「おまけに、性格もあまり宜しくありません」

 

 飛鳥は静かに目を閉じる。

 

友希那「だけどそういう所に魅かれたわ」

飛鳥「……」

 

 友希那の言葉に飛鳥は視線を下にやると、香澄達は頬を染めた。

 

飛鳥「そりゃあおかしな話ですね」

友希那「そりゃそうよ。今の貴方には理解できないでしょうね」

紗夜「あの、湊さん。そういう話をしにここに来たわけではないでしょう/////」

友希那「あら、ごめんなさい」

 

 紗夜が思わず突っ込むと、友希那も反応した。

 

友希那「そういう訳だから昼休憩来て頂戴。燐子やあこ、あなたのこれからの件について話し合いたいの」

飛鳥「ARIAの話なら…」

友希那「燐子とあこだけあなたとああいう事してるなんてずるいわ」

飛鳥「……」

 

 友希那の言葉に飛鳥が困惑した。

 

香澄「そーだよ! わたしだって飛鳥くんと何かした…あ、そうだ! また『ミュージック

アワー」歌おうよ!」

飛鳥「懐かしいですね…」

 

 と、そうやって話をしていると、

 

「飛鳥くん。ちょっといいかしら?」

 Pastel*Palletesがやってきたが、千聖が黒い笑みを浮かべていた。

 

千聖「燐子ちゃんにも話をつけてるから昼休憩、カフェテリアに来てくれるわね?」

飛鳥「……」

友希那「悪いけど、私達が先…」

千聖「ごめんなさい。ちょっと急用があるのよ」

 と、千聖が有無を言わせない態度で突っぱねた。

 

 そして、昼休憩パスパレは男子生徒達にもみくちゃにされて、燐子が飛鳥を避難させた。

 

**************

 

リサ「さて、飛鳥くん、あこ、燐子! 優勝おめでとう!! 乾杯!!」

「かんぱーい!!」

「ありがとうございまーす」

 

 ライブハウス『CiRCLE』の隣のカフェテリアで打ち上げが行われていた。Roselia以外にも他のグループが参加していた。

 

こころ「とっても楽しい大会だったわ!」

飛鳥「ありがとう。応援に来てくれて…」

友希那「あら、私達も応援に来てたのよ?」

飛鳥「その節はどうも…」

 

 そう、実は友希那達もこっそり応援に来ていたのだった。最初はゲームに興味がないからとあこと燐子からの誘いを断っていた友希那・紗夜・リサだったが、飛鳥がゲームの大会に参加すると知ると、すぐさま態度を急変させて3人のサポートをしたのだ。そして最終的に応援に駆けつけてくれたのだ。

 

飛鳥「大会当日までのサポート、本当に感謝しております」

香澄「何したの?」

あこ「リサ姉はクッキーを作ってくれたんだよ!」

香澄「いいなー」

飛鳥「とても美味しかったです」

紗夜「私はマッサージをしましたね」

飛鳥「あ、そうですね…」

あこ「でも飛鳥くんだけなんだよ」

紗夜「宇田川さん?」

 

友希那「私は…応援したわ」

リサ「いや、それ皆もだから!」

紗夜「湊さんは何もしてなかったじゃないですか…」

 

飛鳥「…と、まあ。今井先輩たちのご支援もありました」

 飛鳥が苦笑いしながらそう言うと、

 

千聖「優勝したのはおめでたい事だけど、せめて一言欲しかったわね」

飛鳥「すみません」

千聖「まあいいわ。で、これからどうするの?」

飛鳥「あの大会は終わりましたし、またフリーに戻ります。まあ、またあこさんの勉強を見る為に3人で集まるかもですが」

千聖「そう。それならパスパレの仕事を任せても大丈夫よね?」

飛鳥「大丈夫ではございません」

千聖「何でよ」

 千聖が睨みを聞かせた。

 

日菜「燐子ちゃんとあこちゃんを贔屓するのは良くないなー」

友希那「あこと燐子を贔屓したんだから、次は私達よ」

千聖「いや、その発想はおかしいわ。あなた達応援もしたんでしょ?」

 と、Roseliaとパスパレが言い争いを始めてしまった。

 

モカ「飛鳥くん人気者だね~」

飛鳥「そのようですね…」

 モカに話しかけられて飛鳥は困惑した。

 

こころ「とても良い事じゃない! あたしも飛鳥ともっといろんな事したいわ!?」

飛鳥「ありがとう」

千聖「こころちゃん。悪いんだけど私たちが先よ」

友希那「私達だって…」

こころ「でも一番大事なのは、飛鳥が一番やりたい事をやらせてあげるべきだと思うわ?」

香澄「飛鳥くんが今一番やりたい事ってなに?」

飛鳥「自由になりたいです」

千聖・友希那「それ以外で!」

飛鳥「そうですね…」

 飛鳥が考えた。

 

飛鳥「あこさんに抜き打ちテストしたいですね」

 

 飛鳥は冗談のつもりで言ったが…。

 

あこ「大丈夫だよ! あこ、最近ずっと絶好調なんだから!」

飛鳥「そりゃあ楽しみです」

あこ「でも…もし良い点とったら、飛鳥くんいなくなっちゃったりしない?」

 

 あこが心配そうな顔をした。

 

飛鳥「いなくなりませんよ。かまってあげられる時間はほぼ無くなりますけど」

あこ「そんなの嫌ぁ!!」

飛鳥「まあ、勉強の合宿なら事情は変わりますが」

あこ「合宿!! やりたいやりたい!!」

燐子「是非やりましょう! あこちゃんもやる気になってるので…」

こころ「それじゃ合宿の場所を用意してあげるわね!」

あこ「え!? こころも来るの!?」

こころ「皆で勉強した方が楽しいわよ?」

友希那「弦巻さんの言う通りよ」

リサ「あの、友希那も一応勉強するのよ…? そうなると」

友希那「構わないわ。飛鳥に教えてもらうから」

紗夜「先輩としてのプライドを持ってください! 仕方ありません…私が教えますので」

 すると…。

 

日菜「おねーちゃんも行くの!? あたしも行きたーい!」

イヴ「行きたいです!!」

 と、次々と参加者が増え始めて…。

 

 

 最終的にこうなりました。

 

飛鳥「えー。それでは25人全員で抜き打ちテストを行います。はじめ!!!」

 

 旅館を貸し切って、飛鳥達は合宿を行いましたとさ。めでたしめでたし。

 

 

飛鳥「…めでたいのか?」

 

 

おしまい

 



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第217話「ゲッダウト、ヤンデレワールド!」

 今回の設定

 

・ バンドガールがヤンデレですが、飛鳥はものともしません。

・ 飛鳥の入学理由は通常編とは別の理由です。

 

*******************

 

 私の名前は一丈字飛鳥。色々あってバンドリ学園に入学した高校1年生です。バンドリ学園は男女共学で、そこそこ大きい学校です。まあ、元々は花咲川女子学園と羽丘女子学園が合併して、そこに男子を募集したそうなので、そりゃ大きいですわね。

 

 そんなこんなで、私はそこに通う事になったのですが…。

 

「…え?」

「私の彼氏になって」

 

 奥沢美咲さんという方に告白されました。彼女はバンド「ハロー、ハッピーワールド!」のメンバーで、ライブ時にはミッシェルという熊の着ぐるみを着てDJをしています。入学してすぐに彼女と同じバンドメンバーである弦巻こころさんと仲良くなり、その過程で彼女とも仲良くなったのですが、まさか奥沢さんに告白されるとは…。

 

飛鳥「お気持ちは有り難いのですが、ごめんなさい」

 

 気持ちは嬉しいけど、知り合ってそんなに長いわけでもないし、超能力者としての仕事もあるので私は断りました。こういう時、女子のネットワークを使われでもしたら厄介なのだが、知った事じゃない。こちらにも選ぶ権利はある。

 

「どうして!? あたしのどこがいけないの!? やっぱりこころがいいの!?」

 

 奥沢さんは叫ぶ。確かに奥沢さんは一緒にいて、しっかりしてるし信頼も出来る。でも…。

 

飛鳥「弦巻さんが良いとかじゃなくて、今は彼女を作るつもりはないんですよ」

美咲「どうして? 彼女がいた方が楽しいじゃない」

 

 どう考えても諦めるつもりはないので、私は彼女に背を向けた。

 

飛鳥「…奥沢さんに教えたかどうかは分からないんですが、私は広島から進学してるんです」

美咲「それは知ってる…」

飛鳥「何の為に進学したかと言いますとね、少し自分を見つめなおしたくなったんです」

美咲「え?」

飛鳥「中学時代にちょっと色々やらかしましてね、そこで新しい環境でもう一度やり直したくなったんですよ。その為にはいろんな事をしようと考えています。ハロハピのマネージャーを断ったのもそう。自由になりたいんですよ」

美咲「……」

 

 飛鳥の言葉に美咲は何とも言えなくなった。

 

飛鳥「そういう訳なので、期待には答えられません」

美咲「ま、待って!」

 

 飛鳥が去ろうとすると、美咲が止めたが、飛鳥はスーッといなくなり、美咲は一人取り残された。

 

美咲「…私は諦めない。諦めないから」

 

 そして美咲が不敵な笑みを浮かべた。

 

 飛鳥は美咲の様子を陰から見ていた。

 

飛鳥(日向と椿に根回ししとこ)

 

 そう言って飛鳥は誰かに会わないうちに中学時代の同級生である日向と椿に連絡を入れた。最悪の事態を防ぐために…。

 

*************************

 

 だが、飛鳥の苦難はここから始まったばかりだった。

 

花音「ねえ飛鳥くん。今度私の家に来ない? ハァハァ…//////」

飛鳥「お気持ちだけ受け取っておきます」

 

薫「姫。お迎えに来たよ」

飛鳥「何ですか。かおちゃん」

薫「それはやめて///////」

 

 美咲だけではなく、花音や薫も飛鳥にアプローチをしてきた。花音に至ってはあまりにも変態になってしまったので、飛鳥は人の変わる姿を生々しく見てしまい、落胆した。

 

はぐみ「飛鳥くん!」

飛鳥(今度は北沢さんか…)

はぐみ「あ、あのね? え、えっと…その…/////」

 

 はぐみは何かを言おうとしていたがモジモジしていた。

 

はぐみ「や、やっぱり何でもなーい!!/////」

 

 そう言ってはぐみは恥ずかしがって逃げようとしていた。

 

飛鳥(…チャックかな?)

 

 飛鳥がズボンのチャックを確認したが、ちゃんと閉まっていた。

 

飛鳥(だとすれば…。彼女にはずっとあのままでいて欲しい)

 

 はぐみが冗談抜きでピュアだった為、飛鳥は癒しになっていた。

 

「飛鳥くん?」

 

 後ろから美咲がハイライトを消して話しかけてきた。

 

飛鳥「浮気とでも?」

美咲「そうは言ってないけど、はぐみには随分優しいのね」

飛鳥「そうですかね?」

美咲「そうだよ! あたしには全然素っ気ないのに!」

飛鳥「そうやってすぐにキレるんだもの。萎縮しちゃうよ」

美咲「そ、そうだったのね…。気を付けるわ…。でも他の子とあまり仲良くしないで!」

飛鳥「同じバンドメンバーでも?」

美咲「こころとか薫さんとか押しが強いもの!」

飛鳥「そうですね。そろそろ気を付けないと…」

 

 そして飛鳥の思惑が当たり、飛鳥がマンションに帰ってくると、誰かがいたのが分かった為、そのまま家に帰らず、放置してみた。

 

*********************

 

飛鳥「弦巻さん。こういう時、何ていうかご存じでしょうか」

こころ「ごめんなさい…」

 

 黒服の説得で飛鳥はマンションに戻り、こころを正座させた。こころも飛鳥が怒っていることが分かって、流石に反省していた。

 

飛鳥「いくら弦巻財団が金持ちつっても、勝手に人んちに入るのは犯罪だよ」

こころ「そ、そうね…」

 

 飛鳥が思った以上に怒っていた為、こころはあまり言い返せなかった。

 

飛鳥「そもそも何でこんな事したの?」

こころ「飛鳥をあたしのものにしたかったからなの」

飛鳥「…どういう事?」

 

 飛鳥は嫌な予感がした。超能力を遣わずともこころの事が感知できたためである。

 

こころ「それはそうと飛鳥。あたし以外にも告白された?」

飛鳥「ずっと前に奥沢さんに告白された」

こころ「美咲に!?」

 

 飛鳥が正直に喋った事と、自分のバンドメンバーが先に告白していたことを知って、こころは驚きを隠せなかった。

 

こころ「そ、それでどうしたの!?」

飛鳥「断ったよ。彼女を作る気はないから」

こころ「断ってくれたのは良かったけど、どうして彼女を作る気はないのかしら?」

飛鳥「自由になりたかったから」

 

 全てを楽観的に考えてるこころに対して真面目に話しても、どうにもならなさそうと判断した飛鳥は、ざっくりと説明した。

 

飛鳥「彼女がいるとどうしても気を遣うし、それに…」

こころ「?」

飛鳥「まだまだやらなきゃいけない事がある。どうしても彼女をそっちのけにしていかないといけないんだよ」

こころ「それだったらあたしが…」

飛鳥「悪いね。それはお金とかの問題じゃない。オレ自身の問題なんだ。その問題に対して、納得がいく答えを見つけたい。それが解決するには何年かかるか分からないしね」

 

 飛鳥がこころを見つめた。

 

飛鳥「そういう訳だからごめんなさい。今日は引き取って貰えるかな」

こころ「……」

黒服「こころ様。これ以上は得策ではありません。退散しましょう」

 

 黒服の説得により、こころは家に帰る事にしたが、

 

こころ「…あたしはアキラメナイワヨ。アスカ」

飛鳥「ちなみに日向と椿には根回ししといたから…あとは分かるね?」

こころ「日向と椿に!?」

飛鳥「で、状況によっては広島に帰るから」

こころ「そ、そんなの絶対嫌!!」

飛鳥「それだったら、ちゃんと大人しくして」

 

 飛鳥は冷徹に言い放った。本来であれば少女たちに思うがままにされるのがお約束であるが、この男はそんな事は絶対にしなかった。

 

飛鳥(そういうことをされて喜ぶのは、よっぽど幸せな人生を送ってきた人だよ)

 

 で、どうなったかというと…。

 

こころ「あたし達5人で分け合えば済めばいいのよ!」

 

 学校で飛鳥はハロハピに侍らされていた。当然注目の的になっている。

 

飛鳥「あのー…」

美咲「なに? 歩きにくいとか言わないわよね?」

飛鳥「近すぎないですか?」

こころ「そんな事ないわ! これくらい普通よ!」

薫「そうだね。私たちの距離はいつもこんなものだろう? 飛鳥」

飛鳥「かおちゃん…」

薫「だからそれやめてってば///////」

 

 とはいえ、内心まんざらでもない薫だった。

 

 そんなときだった。

 

「そこ! 風紀が乱れてます!」

 

 と、花音のクラスメイトである氷川紗夜がやってきた。

 

花音「さ、紗夜ちゃん!! 風紀なんて乱れてないよ! 飛鳥くんは合法だよ!」

飛鳥「松原先輩…こんな事言いたくなかったんですけど、貴女は違法です」

花音「花音って呼んで」

飛鳥「あの先輩を怒らせたいんですか?」

 

「そこの男子生徒! 複数の女子生徒を侍らせてどういうつもりですか!!」

飛鳥「ああ、やっぱり男が悪いって事なんですね。分かりました。転校します!!!」

 

 飛鳥がそう言いかけた瞬間、全員に掴まれた。

 

薫「随分冗談がキツイジャナイカ」

はぐみ「そんなのやだ!!」

花音「ふぇえええ…イカナイデェ…」

美咲「ハナサナイ。ゼッタイニハナサイカラ」

 

 飛鳥はこの学校に来たのを物凄く後悔はしたが、これも修業になるだろうとも思った。

 

こころ「別にいいわよ。日向と椿の所に帰るんでしょ?」

「!!?」

美咲「日向、椿!!? 誰よその女たち!!」

飛鳥「同級生」

こころ「あたしも猪狩に転校するわ!!」

飛鳥「ハロハピどうすんの」

こころ「転校しても出来るわよ。楽器さえあれば」

美咲「ちょっと! 一人だけ転校するなら解散よ解散!!」

薫「こころ。独り占めは良くないな」

はぐみ「うぅ~!! と、とにかく転校しないでぇ~!!」

花音「そうだよ。飛鳥くんがいなくなったら私、ふぇえええ…」

飛鳥「とりあえず松原先輩はちょっと病院行きましょうか」

 

 ハロハピがごちゃごちゃ話していると、

 

紗夜「私の話を聞きなさーい!!!」

 

 と、怒鳴ったが花音は。

 

花音「そ、そんな事言って紗夜ちゃんだって飛鳥くんの事狙ってるの知ってるんだからね!?」

紗夜「な、なななな! 何を言ってるのかしら…//////」

薫「同じことを考えている者同士、分かるよ」

 

 花音と薫に指摘されて、紗夜は顔を真っ赤にした。

 

美咲「なんだかんだ言って、紗夜先輩が飛鳥くんを独り占めしようとしてますよね?」

紗夜「そ、そんな事ありません!!/////」

こころ「じゃああたし達が飛鳥とこういうことをしても文句ないでしょ?」

 

 と、こころは飛鳥の腕におっぱいを押し付けたが、飛鳥は無表情だった。

 

紗夜「つ、弦巻さん!! 神聖なる教育の場でなんて破廉恥な事を!! 一丈字くんも何か言いなさいっ!!//////」

飛鳥「広島に帰ります」

 

 

 この後、色々大騒ぎになりましたが、この後の展開はご想像にお任せいたします。

 

 

おしまい

 



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第271話「女の子たちがヤンデレになったけど、ものともしない一丈字飛鳥」

 

 

 

 

 

 こんにちは。私の名前は一丈字飛鳥です。夜、買い物があったので、コンビニまで買い物に出かけたのですが…。

 

「飛鳥くん。私言ったよね? 外出る時は誰かと一緒じゃないとって」

飛鳥「あ、もしもし。山吹さんのお宅ですか?」

「やめてぇ!!!」

 

 どういう訳か、山吹さんがいたので電話をかけることにした。

 

********************:

 

飛鳥「全くもう。お姉さんなんだからしっかりしなさいよ」

沙綾「うぅぅぅ…」

 

 飛鳥は仕方なしにやまぶきベーカリーまで送ることになった。

 

「ごめんなさいね一丈字くん…沙綾!!」

沙綾「ご、ごめんなさい…」

「これあげるから、是非また来てほしい」

飛鳥「い、いえ…」

 

 沙綾の両親から謝られ、沙綾の父親から割引券をもらった。

 

 沙綾から恨まれたが、飛鳥は普通に家路についた。

 

**********************

 

 買いたいものを買い、家に帰ると…。

 

飛鳥「いると思ったよ。こころ」

 

 エントランスホールにはこころがいた。

 

こころ「飛鳥。どういう事かしら?」

飛鳥「コンビニもダメなの?」

こころ「あたし言ったわよね? 家に出る時は誰かと一緒じゃないとって」

飛鳥「言ったけど、普通に監禁だから」

こころ「……」

 

 飛鳥の言葉にこころが睨みつける。

 

飛鳥「そんな顔してると幸せが逃げるよ。お前らしくもない」

こころ「あたしだって怒るわよ」

飛鳥「それは少し安心したよ」

 

 飛鳥がフッと笑った。

 

飛鳥「どうせオレは最低な男さ。さっさとほかの男に乗り換えちまいな」

こころ「その必要はないわ。あたしがお仕置きをしてあげるから」

飛鳥「生憎だがそんな趣味はないんで、他をあたってくれ。うちの学校にゃゴロゴロいるだろう?」

 

 と、お互い引かない状態だった。

 

飛鳥「まあ、帰らないならオレの話に付き合ってくれよ。せっかく来てくれたんだ」

こころ「…分かったわ」

 

*********************

 

 ゲストルーム。飛鳥とこころはそこで話をしていた。お互い缶ジュースを持っている。

 

飛鳥「話は戻すぜ。外出するときに誰かと一緒じゃないといけないというのは無理だ。WONER BOYの仕事もあるしな」

こころ「……」

 

 飛鳥の言葉にこころは口角を下げた。

 

飛鳥「それに、こんな夜道に女の子を連れ出すなんて危ないだろう? そう思わないか?」

こころ「飛鳥も危ないわ!」

飛鳥「悲しいことにな。椿には『男なんだから一人でも大丈夫でしょ』ってあしらわれたよ」

こころ「今度お説教が必要ね」

飛鳥「やめとけ。あいつも負けず嫌いだ。日向が大変だし、しまいにゃ林グループと弦巻財団が争いなんてしたら、この国がめちゃくちゃになる」

こころ「そこまでしないわよ!」

 

 飛鳥の言葉にこころが突っ込みを入れた。いつもと立場が逆である。

 

*************************

 

こころ「…分かったわ。いったん考えるわね」

飛鳥「そうして」

こころ「それじゃ、あたしが飛鳥のマンションに引っ越すわ! それならいつでも一緒にいられるわよ!!」

飛鳥「他の子が黙ってないし、林グループにはある程度事情を伝えてるから…あとは分かるね?」

 

 飛鳥がくぎを刺した。

 

こころ「意地悪ね」

飛鳥「意地悪で結構。悪いけど、こんな事で人生棒に振るわされちゃあたまらんよ」

 

 こころの言葉に飛鳥が悪態をついた。

 

飛鳥「こころ。悪いがオレはお前たちが思ってるほど善良な人間じゃないよ。ましてやヒーローでもない」

こころ「いいえ。ヒーローみたいなものよ」

 

 飛鳥の言葉にこころが首を横に振った。

 

こころ「日向と椿が言っていた通り、あなたは紛れもないヒーローだわ。今回の学園生活どうだってそう、つぐみ達や皆を助けてくれたわ」

飛鳥「……」

こころ「だからこそ怖いの」

飛鳥「?」

こころ「あたし達をいつも守ってくれる飛鳥が、あたし達の知らないところで傷つくのが」

飛鳥「でももうちょっとやり方あったでしょ。スタンガンとか睡眠薬って完全に殺しにかかってんじゃん」

 

 こころのアピールに一刀両断する飛鳥だった。はっきりモノ申す男である。こういう所が同級生に嫌われる要因だったりするのだが、もう飛鳥は気にしなかった。

 

飛鳥「まあ、甘やかさないって言うのは評価できるけど、何でもかんでもやっていいわけじゃないよ」

こころ「そ、そうよね…」

 

 飛鳥の言葉にこころは困惑した。

 

飛鳥「さて、結構話し込んだな。そろそろ寝るか」

こころ「あ、それだったらあたしが子守唄歌ってあげるわ!」

飛鳥「え? オレが歌おうと思ってたのに。らーららー…」

 

 飛鳥の歌声にこころは眠りだした。超能力を使ったのである。

 

飛鳥「お休みこころ」

 

 飛鳥が毛布を掛けると、後ろを見た。

 

飛鳥「黒服さん。野暮な真似はよしてくださいよ」

「…ええ。存じております。ただ」

飛鳥「?」

 

 飛鳥と黒服の女性は顔を合わせた。

 

黒服「…今後とも、仲良くしてあげてください」

飛鳥「ええ。それは勿論です。ですが…」

「?」

飛鳥「その前にやる事が一つ残ってます」

 

***********************

 

 翌朝、エントランスホールにバンドガールズがあらわれていて、飛鳥が椅子から立ち上がった。

 

飛鳥「お待ちしておりましたよ。皆さん」

巴「一丈字。こころと一晩いたそうだな」

はぐみ「そーだよ! ズルいよ!!」

香澄「まさか、こころちゃんを選んだの!?」

 

 と、皆が大騒ぎした。

 

飛鳥「もしそうだとしたら、どうしますか?」

日菜「そんなのダメだよー。飛鳥くんはあたしと一緒にいるんだから…」

イヴ「そうです…。私たちも同じようにするべきです…」

蘭「こころよりもあたしの方がいいって」

沙綾「あたしは昨日めちゃくちゃ怒られたのに不公平よ…」

 

 沙綾がそういうと、

 

有咲「いや沙綾、それはお前が悪い」

たえ「そうだね。あれはさーやが悪い」

りみ「そうだよ」

沙綾「ちょっと何この扱い!!」

 

 同じバンドメンバーからボロカス言われて涙目になった。

 

香澄「お姉ちゃんなんだからしっかりしなよ」

沙綾「うわーん!! 香澄にも言われた~!!!!」

 

 だが…。

 

蘭「あ、そうだ。よくよく考えたら沙綾抜け駆けしたんだった」

彩「ダメだよ沙綾ちゃん。そんな事したら~」

友希那「ペナルティが必要ね」

沙綾「ひっ…いやあああああああああああああああああああ!!!!」

 

 なぜか沙綾がお仕置きを受けることになった。まあ、理由は言うまでもなく、飛鳥が超能力で細工をしたからだった。

 

飛鳥(正当防衛や。異論は認めん)

 

 とっても黒い笑みをしていた。なんだかんだこいつが一番病んでいる。

 

 

おしまい

 



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第471話「ヤンデレ詰め合わせ」

 

『バンドリ ヤンデレパーティ』

 

飛鳥「嫌なパーティ…」

 

************************

 

1. 友希那と

 

友希那「飛鳥。私に全てを懸ける覚悟はあるわよね?」

飛鳥「せめてRoseliaって言ってくださいよそこは」

 

 友希那が飛鳥に愛を確かめていた。目のハイライトは消え、頬を赤らめて飛鳥を見つめるが、飛鳥は呆れていた。

 

飛鳥「…それと言いにくいんですが湊先輩」

友希那「友希那って呼んで頂戴」

飛鳥「補習行ってください」

 

 ここはバンドリ学園の廊下。飛鳥は友希那に補習に行くように促した。

 

友希那「興味ないわ。今は飛鳥だけ…」

飛鳥「そうですか。それなら私にも考えがあります」

友希那「どうするつもりかしら?」

 

飛鳥「私が補習を受けます」

友希那「ちょっと待ちなさい!」

 

 飛鳥が2年生の補習を受けようとしていたので、友希那も思わず突っ込んだ。

 

リサ「じゃあアタシが飛鳥くんの隣行くねー」

紗夜「湊さん。子供みたいな事を言わないでください」

燐子「……」

友希那「燐子はともかく紗夜はさり気に左隣行くのやめなさい!」

 

 リサがすかさず飛鳥の右隣に座り、紗夜が左隣の席に座った。燐子は無言で後ろの席に座っていた。こうなるともう前の席しか空いていなかったが、もう別の生徒が座っていた。

 

あこ「あーっ!! 皆何してるの~!!」

 

 中等部のあこがやってきた。勿論飛鳥に会いに来たのだが、教室に飛鳥だけでなく自分以外のRoseliaメンバーもいたので驚いていた。

 

「あ、あのう…。あなた達は補習の対象じゃ…」

飛鳥「申し訳ございません。湊先輩を勉強させたいので…」

リサ「飛鳥くん。ちょっと机寄せて良い?」

飛鳥「あ、どうぞ…あの、机じゃなくて先輩が近いんですが」

 

 リサが飛鳥に凄く迫っていると、友希那は激昂した。

 

友希那「リサ。勉強するから交代して頂戴」

リサ「……」

友希那「紗夜!」

紗夜「ま、まだ席は空いてるじゃないですか」

友希那「燐子…」

燐子「ごめんなさい…嫌です…」

 

 リサ、紗夜、燐子が交代もとい飛鳥の元を離れるのを嫌がっているので、友希那は口元をひきつらせると、先生は呆れた。

 

先生「…もういいわ。湊さん、こうなったらあなたの代わりに受けて貰うわ。あなたはもう帰っていいわよ」

 

 そう言うと友希那は空いてる席に渋々座ったが、あこも座った。

 

飛鳥「皆さん。湊先輩に勉強させたいので私語は控えてください」

リサ「オッケー」

紗夜「当然です」

 

 こうして友希那に何とか勉強させることに成功した飛鳥だったが…。

 

友希那「飛鳥。勉強するわよ」

飛鳥「えっ…」

リサ「はーい。勉強ならRoselia全員でやろうねー」

 

 友希那が勉強を目的に飛鳥にアプローチをかけようとしたが、リサや蘭に悉く阻止されまくったという。

 

2. 飛鳥と燐子

 

燐子「見つけましたよ。一丈字さん…♡」

飛鳥「どうかしました?」

 

 そう言って飛鳥が燐子を見つめると、燐子はどんどん顔が赤くなっていった。

 

燐子「え、えっと…あ、あの…な、なんでもないでしゅ…//////」

飛鳥「そうですか…」

 

 燐子は元々人見知りが激しく男性も苦手だったので、飛鳥のような人間に対しては耐性がなかったという。

 

3. 沙綾と合鍵

 

沙綾「ねえ、飛鳥の家ってマンションなんでしょ?」

飛鳥「あ、はい」

 

 やまぶきベーカリーにやってきた飛鳥だったが、沙綾から自宅のマンションについて聞かれた。

 

沙綾「合鍵欲しいな♡」

飛鳥「だそうですよお母さん」

沙綾「え」

 

 飛鳥が振り向くと、そこには沙綾の母親・千紘が現れた。

 

千紘「沙綾。あまり心臓に良くない事を言わないで頂戴。あと、一丈字さんに迷惑かけないの」

沙綾「ご、ごめんなさい…」

純「ねーちゃんのスケベ!!」

沙綾「あんたは黙れ!!(激怒)」

 

 ヤンデレになっても、弟である純の前ではちゃんと元のお姉ちゃんに戻るんだなぁと飛鳥は少し感心していたが、付き合い方をもう少し考えるべきだと思った。

 

4. ヤンデレになった香澄

 

香澄「ねえ飛鳥くん」

飛鳥「何でしょう」

 

 学園で香澄が飛鳥に話しかけると、飛鳥も香澄の方を見たが香澄の目にハイライトがなかった。

 

香澄「私にキラキラドキドキな気持ち、してない?」

飛鳥「普通ですね」

香澄「どうしてしてないの?」

「オレはしてるよ!!」

「そいつよりもオレと…」

 

 香澄が飛鳥にそう聞こうとしたが、ヤラカシ軍団が空気を読まずに現れた。

 

香澄「ごめんね。今飛鳥くんに聞いてるんだ。喋らないでくれる?」

「やだ!!」

「一丈字に話しかける限りしゃべり続ける!!」

香澄「…チッ」

 

 ヤラカシの言葉に香澄は思わず苛立って舌打ちをしたが、

 

「あああ…。その舌打ちたまんねぇ…♡」

「もっとだ…もっとオレを蔑んでくれぇええええええええええええ!!!」

 

 香澄のヤンデレにも全く動じないヤラカシ達を見て、飛鳥は一瞬周りが魔界に見えた。

 

飛鳥(違う意味でオレも病みそう)

 

5. リサの嫉妬

 

 学園の庭。友希那と飛鳥が話をしていたのを遠くから聞いていたリサ。暫くして友希那が離れると、リサが飛鳥に近づいた。

 

リサ「飛鳥くーん」

飛鳥「今井先輩」

リサ「もー。リサって呼んでよー。友希那と何話してたの?」

飛鳥「そんな大した話じゃないんですけど…」

 

 飛鳥がそう言うと、リサが飛鳥の両肩を掴んだ。

 

リサ「友希那とどんな話をしたかって聞いてんだけど」

 

 リサの目のハイライトは消えていて、どす黒かった。しかし飛鳥は可愛そうな目でリサを見つめた。

 

飛鳥「…聞かない方が良いですよ」

リサ「教えて」

飛鳥「今度またお化け屋敷に行くって話になりまして」

リサ「もうやめてよおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!(泣)」

 

 パラレルワールドとはいえ、このダシマ式バンドリで数回もお化け屋敷に行かされたリサはトラウマが蘇ってヤンデレ化が解けた。そして飛鳥の胸ぐらをつかんで揺さぶっていた。

 

飛鳥「あ、大丈夫ですよ。行くのは私と湊先輩の2人だけで…」

リサ「断って!!!」

飛鳥「多分オチで行かされるので…」

 

 時は流れて…

 

友希那「リサ。ドロップアウト出来るわよ?」

リサ「やだ! 絶対友希那が独り占めする気でしょ!」

飛鳥「……」

 

 3人でおばけタワーに入ったのだが、今回は友希那とリサが取り合いをしまくったそうです。まあ、紗夜、燐子、あこにバレて本当の恐怖が待っているのは言うまでもないんですけどね。

 

 

飛鳥(…もうやめさせてもらうわ)

 

 

おしまい

 



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オムニバス偏
第176話「ちょっとだけストーリー集」


第176話

 

1. サンタクロース(飛鳥 × ひまり × 蘭)

 

ひまり「ねえねえ。蘭って何歳までサンタ信じてた?」

 

 飛鳥は食堂で偶然蘭とひまりの2人と一緒になったため、食事をとる事に。当然飛鳥は嫉妬の眼差しを向けられた。

 

蘭「別に。最初から信じてないし」

ひまり「嘘ばっかり~。小さい頃大きな靴下飾ってたでしょ~」

蘭「か、飾ってないし!!」

 

 蘭が照れているのを見て飛鳥は苦笑いした。

 

ひまり「一丈字くんは何歳まで信じてた?」

飛鳥「まあ、小学生の途中くらいまでですね」

ひまり「これが普通だよね~」

蘭「う、うっさい…//////」

 

 と、蘭とひまりのやり取りを見て飛鳥は昔の事を想いだした。

 

 

『…おまえがいるとつまんないんだよ』

『あーあ。なんであいつがっこうにきてんだろ』

『一丈字くんってきみがわるいよね』

『なんでこのオレがあいつの担任なんですか!! あいつは…』

 

飛鳥(本当にサンタさんがいれば良かったのにな…)

 

 自分をなぜか嫌う人間達をどうにかしてほしいとお願いしていた自分を思い出して、静かに苦笑いした。

 

 

2. おみくじ(飛鳥 × 蘭 × モカ)

 

神社で初詣に来ていた飛鳥だったが、蘭とモカと一緒になった。

 

モカ「そうだ~。折角だからおみくじ引こうよ~」

「おみくじ?」

モカ「蘭っていつも中吉だよね~」

飛鳥「いつも?」

モカ「数年もだよね~」

飛鳥「…それ、逆に凄くないですか?」

蘭「まあ、ある意味大吉かもね…」

 

 と、3人はおみくじを引く事になった。

 

蘭「やっぱり中吉…一丈字は?」

飛鳥「大吉ですね」

蘭「へ、へえ…」

 蘭は少し複雑そうな顔をしていた。

 

飛鳥「いいじゃないですか。今年も一年安全に過ごせそうですよ?」

蘭「…で、モカは?」

モカ「およよ~。大凶…」

 空気が止まった。

 

蘭「大凶ってあるんだ。この神社…」

モカ「いいなぁ~。飛鳥くんと蘭いいなぁ~」

 

 と、モカは涙目だった。すると飛鳥は…。

 

飛鳥「そうだ。青葉さんのおみくじ頂けます?」

モカ「え?」

飛鳥「いいから」

モカ「交換してくれるの~?」

飛鳥「そうですね。はい」

 飛鳥がモカに自分のおみくじをあげて、モカから大凶のおみくじを受け取った。

 

蘭「どうする気なの? あげてもモカが引いたことには…」

飛鳥「幸せのおすそ分けですよ」

「!!?」

飛鳥「気休め程度にしかならないかもしれませんけどね」

 と、飛鳥が苦笑いした。

蘭・モカ「……」

 蘭とモカが顔を合わせた。

 

モカ「は~。こりゃあうちのクラスの男子達が勝てない訳だ~」

飛鳥「そんな事はありませんよ」

蘭「いや、そればっかりはモカと同感。こういう気づかいしてほしいよね」

飛鳥(頑張って。2組の男子)

 

3. イメージトレーニング(飛鳥 × はぐみ × 蘭)

 

はぐみ「うーん…」

 中庭ではぐみが考え事をしていた。それを飛鳥と蘭が目撃する。

 

蘭「どうしたのはぐみ」

はぐみ「あっ! はぐみ今イメージトレーニングをしてたんだ。いざって時のダッシュ!」

蘭「へ、へえ…」

飛鳥「ソフトボールの試合ですか?」

はぐみ「んー。それもそうなんだけど…」

 

 その時、野球のボールがはぐみ達の方に飛んできて、飛鳥が片手でキャッチして投げ返した。

 

蘭・はぐみ「……!!」

飛鳥「こういう時の為ですか?」

 飛鳥は何事もなかったかのように言い放った。

 

飛鳥「あ、いけない。ちょっと用事思い出した。私はここで失礼しますね」

 と、飛鳥が逃げるように去っていった。

 

はぐみ「す、すごい…」

蘭「…何者なの?」

 

飛鳥(あいつら、さっきオレの方をめがけてやりやがったけど、美竹さんと北沢さんがいなかったのに気付いてなかったな…。危ない危ない…)

 

 そう思いながら、飛鳥は教室に戻っていった。

 

 

おしまい

 

 



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第246話「バンドリ詰め合わせ」

 

 

1. オシャレ

 

あこ「リサ姉!! 雪降ってる時くらいコート着なよ!!」

燐子「風邪をひいてしまいます…」

リサ「そ、そうしたいんだけど、何か嫌というかなんというか…」

 

 Roseliaで買い物に出かけてきたが、急に雪が降り始め気温が大幅に下がっていた。唯一薄着だったリサは凍え死にそうだった。

 

紗夜「そ、そこまでして着飾る必要は…」

友希那「……」

 

 その時だった。

 

「ちょっとモカ…。さすがに厚着しすぎじゃない…?」

「だって寒いんだも~ん」

 

 と、Afterglowもやってきたが、リサとは対照的にモカがこれでもかという程厚着していた。

 

リサ「ああああ…いいなぁ…!!」

あこ「リサ姉!!」

紗夜「上着貸すから着なさい!!!」

 

 

***************************

 

2.この流れで寒さガマン大会

 

「鬼畜!!」

 

「えー。今回のMCは我々男子生徒一同やらせていただきます!!」

「ぶおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 10人がスクール水着なのに対し、男子生徒たちは厚着をしていた。

 

友希那「そこまでして一丈字くんに花を持たせたいのね…!!」

紗夜「は、破廉恥です!!/////」

リサ「あ、流石に今回ばかりは殺意わいたー…」

燐子(はずかしい…/////)

あこ「ちょ、見たらだめー!!」

 

 あこが恥ずかしがる燐子の前に立って叫んだ。

 

「あこちゃんもまた良し!!」

巴「おいコラァ!! 何人の妹に色目使ってんだ!! ああ!!?」

 

 巴があこの前に立つと、蘭・モカ・ひまり・つぐみが何とも言えなさそうにした。

 

「さあ、AfterglowとRoselia。勝つのはどっちか!?」

「寒さガマン大会、スタート!!」

 

 とにかくまあ、友希那たちの水着姿を男子生徒たちがガン見しまくっていましたとさ。

 

(ありがてぇ…!!!)

 

*********************

 

3.妹

 

明日香「もー。お姉ちゃんったらー」

香澄「ごめんあっちゃーん」

 

 香澄と明日香が家にいたが、明日香が香澄の宿題を手伝っていた。

 

明日香「ほらお姉ちゃん。口元ケチャップがついてる」

香澄「ありがとー」

 

 一緒に食事をしていて、香澄の口元にケチャップがついていたので、明日香はティッシュで口元を拭いてあげた。

 

香澄「あっちゃーん♡」

明日香「ちょ、お願いだからくっつかないでー!!!/////」

 

 香澄が明日香に抱き着くと、明日香は恥ずかしがった。

 

 

飛鳥(…あれ? なんかどこかで見た事があるような)

 

 飛鳥はふと、とある姉妹の事を思い出したが、どんな姉妹だったか記憶が霞んだ状態だった。姉はオレンジ色の髪のサイドテールで、妹はボブカットだった…。

 

「よくも扉開けやがったな。大福つまみ食いしたことばらしてやる」

「雪穂~!!! やめてぇ~!!!」

 

**************************

 

4. そんなこんなでお姉ちゃん

 

有咲「なんつーかもう、お前の方が妹だよな」

香澄「えっ? そう…」

 

 香澄が明日香を見つめた。

 

明日香「な、なに…?」

 

 その時だった。

 

香澄「明日香おねーちゃんっ♡」

明日香「!!」

 

 香澄の言葉に明日香は身の毛がよだつ思いをした。

 

明日香「や、やめて気持ち悪い!!!」

香澄「えー。ひどいよおねーちゃん」

明日香「ひい~~~~~~~っ!!!」

 

 と、明日香は首を横に振った。そしてすぐ近くで飛鳥はそばを食べていた!

 

モカ「飛鳥くんも同じ名前だから、飛鳥くんもおねーちゃんだね~」

飛鳥「オレの性別わかってて言ってる?」

 

5. バンドリ学園の生徒会

 

 バンドリ学園の生徒会は全員陽キャである。そして、スクールカースト最上位だが、とにかく陰キャを見下す典型的なジョッキ体質。そんな彼らは進級したころには卒業&クビになるわけだが…。

 

 もしも飛鳥達が進級したらどうなるだろうか?

 

 こうなります。

 

生徒会長:白金燐子

生徒会副会長:氷川紗夜(風紀委員長も兼任)、氷川日菜

書記:市ヶ谷有咲

会計:羽沢つぐみ

 

 他に数名いるかもしれない。

 

チュチュ「って!! その前にワタシ達にも出番よこしなさいよー!!!」

マスキング「でもなんだかんだ言って目立ってないか?」

チュチュ「……」

 

6. 太らない男

 

ひまり「う~…また体重が増えたぁ…」

 

 2組の教室でひまりが涙目になっていて、蘭・モカ・巴・つぐみがその話を聞いて困惑していた。

 

モカ「だからいつも言ってるじゃ~ん…」

ひまり「分かってるのよ~。でも聞いていい!? なんでモカは私以上に食べてるはずなのに太らないの!? おかしくない!?」

巴「ま、まあ…体質にもよるって聞いたことあるけど…」

蘭「ひまりは食べすぎなんだよ。それを抜いても…」

つぐみ「ちゃ、ちゃんとよく噛んで食べた?」

ひまり「……」

 

 すると飛鳥が廊下を歩いていて、そのまま通り過ぎた。

 

ひまり「…思ったけど、一丈字くんも結構痩せてない?」

モカ「飛鳥くんは痩せやすい体質なんだよ~。ひーちゃんとは逆で」

ひまり「!!!」

飛鳥「!!?」

 

 飛鳥は何やら不穏な空気を察知して、後ろを振り向いた。

 

7.そして犠牲者はもう一人

 

彩「……」

千聖「……」

 

 2年1組の教室で千聖に黒い笑みを浮かべられて、彩は滝のような汗を流した。

 

千聖「彩ちゃん」

彩「ハイ」

 

 それを見ていた燐子、紗夜、花音は困惑していた。

 

千聖「花音から全部聞いたわよ。私に隠れて盗み食いしたそうね」

彩「え、えっと…」

千聖「あれほど気をつけろって言ったわよね?」

彩「ハ、ハイ…」

 

 彩の言葉に千聖がため息をついた。

 

千聖「本当に残念だわ彩ちゃん。私は信じてたのに…」

彩「ううう…」

千聖「まあいいわ。彩ちゃんがそのつもりなら、私にも考えがあります」

彩「?」

 

 

千聖「一丈字くん。この写真をあなたにあげるわ。大事に持ってて頂戴ね」

飛鳥「え…?」

 

 飛鳥は予告もなく、千聖から写真が入った封筒を渡された。

 

彩「ちょ、ちょっと千聖ちゃん!! いったい何を渡したの!!?」

千聖「写真よ? あなたが寝相を悪くして私の顔にけりを入れた時の…」

彩「キャハハァ―――――――――――――――――――ッ!!!!///////」

 

 千聖の言葉に彩は顔を真っ赤にして奇声を上げた。

 

彩「ダ、ダメ!! ダメぇ!! あんな恥ずかしい写真見られたら私アイドルどころかお嫁にいけなくなっちゃうぅぅぅ!!!/////」

千聖「大丈夫よ。彩ちゃんならいけるわ。さあ、行くのよ! 飛鳥くん!」

飛鳥「え…」

 

 飛鳥が困惑していたその時、日菜が飛鳥の手を引っ張った。

 

彩「日菜ちゃん!!」

日菜「悪く思わないでねー」

彩「もぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!///////」

 

 ちなみに写真は本物のであり…。

 

「写真をよこせぇえええええええええええ!!!!」

飛鳥「ひぃいいいいいいいいいいいいい!!!!」

 

 飛鳥もなんだかんだで被害にあったという。

 

 

おしまい

 



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美味しんぼ編
第181話「うどんの腰」


元ネタ:美味しんぼ アニメ第23話「うどんの腰」


 

 

 一丈字飛鳥です。今日も今日とて、ヤラカシ退治です…。

 

「てめぇこの野郎!!」

「花音ちゃんのパンツ盗もうとしやがって!!」

「ひぇえええ…すみませーん!!!」

 

 …いつもこんな感じです。

 

 あまりにも変態が多すぎて流石に参り始めたころ、町内会の福引で相撲観戦のチケットが当たったため、気分転換に見に行く事になりました。で、当日…。

 

「楽しみね!」

「モカちゃん達の事は気にせずー」

 

 どういう訳か、こころとモカがついてきました。まあ、別にいいんだけどチケットを当てた経緯をどうやって知ったのかだけ知りたい。

 

 相撲の事はあまり詳しくはないけど、片方の横綱の全勝優勝がかかっていて、お客さんは超満員でした。私とこころとモカは一緒の所に座っていて観戦していたのですが、試合が始まると二人ともヒートアップして…。

 

こころ「がんばってー!!」

モカ「がんばれー!!」

飛鳥「……」

 

 私にくっついていました。近くにいたおっさん達は力士じゃなくて私達の方を見て羨ましそうにしていました。で、隣にいたであろう奥さんに怒られてました。

 

 結果としては横綱の全勝優勝で、会場は大盛り上がり。

 

こころ「やったやったー!!」

 と、こころは相変わらず私にくっつくし、モカはそれを見てニヤニヤしてるし、おっさんはおっさん達で懲りずにまだこっちを見てるし…オレ、ここに何しに来たんだろう。

 

 さて、今回のお話は相撲観戦が終わった後から始まります…。

 

************************

 

こころ「とっても楽しかったわね!!」

飛鳥「そ、そうだね…」

 

 飛鳥は困惑していた。

 

モカ「それにしても飛鳥く~ん。女の子からくっつかれてどうだった~?」

飛鳥「生きた心地がしなかった」

こころ「え? どうしてかしら?」

飛鳥「もうね。相撲観戦ってテレビ中継されるから、万が一アレ見られたらどうすんの」

こころ「飛鳥は嫌なの?」

飛鳥「こころは嫌じゃないの?」

こころ「別に? 喜びを分かち合ってるんだし、アメリカじゃハグは普通でしょ?」

飛鳥「ここは日本だよ…」

 

 こころのマイペースぶりに飛鳥は呆れるとともに、いつも面倒を見ている美咲に対して同情した。

 

飛鳥「さて、相撲観戦も終わったし、解散しよっか」

モカ「え~」

飛鳥「え~って何よ…」

 

 モカの反応に対して飛鳥が困惑した。

 

こころ「そういえば飛鳥は晩御飯どうするのかしら?」

飛鳥「近くにうどん屋あるから、そこで食べて帰るよ」

モカ「うどん? 食べたい!」

こころ「あたしも食べたいわ!」

飛鳥「…言っとくけど割り勘だからね」

 

 モカとこころの様子を見て飛鳥が困惑した。

 

モカ「え~。ケチ~」

飛鳥「親しき仲にも礼儀あり。誕生日やお祝い事以外は割り勘だよ」

こころ「あら。それだったらあたしの家でご馳走してあげるわよ?」

飛鳥「…ありがたいけど、払うのこころじゃないでしょ」

 

 飛鳥が困惑した。

 

モカ「流石こころちゃ~ん」

飛鳥「…ハイハイ。ケチで悪うござんした。オレはもう行くからな」

モカ「待ってよ~」

 

 と、結局3人でうどんを食べに行く事になった。歩いて10分した所で到着した。

 

飛鳥「あれ? おかしいな…」

こころ「どうしたの?」

飛鳥「此間来たときはもうちょっと綺麗だったのに、何か小汚いぞ…」

モカ「こういうお店程美味しいんだよ~」

飛鳥「……」

 飛鳥が何かを感じ取った。

 

こころ「…どうしたの?」

飛鳥「場所を変えよう」

モカ「え? どうして?」

飛鳥「ヤバい奴らが来てるみたいだ。関わると碌な事がないぞ」

「誰が碌な事がないって?」

「!!」

 

 飛鳥達が横を見ると、そこにはガラの悪いチンピラがいた。

 

こころ「あなた達は一体誰なの?」

「あ? 誰でもいいだろうが」

「それよりもお嬢ちゃん達、碌でもないって言うのは聞き捨てならないな」

「どういう事だ?」

 

飛鳥「こころ、モカを連れてここから離れるんだ」

こころ「えっ?」

飛鳥「いいから」

 飛鳥が前に出た。

 

飛鳥「アンタ達…この店に対して悪さをしてるだろ」

「!」

飛鳥「数人がかりで店に来ては、店員に暴力を振るったり、ここに来た客に対してイチャモンをつけたりしてる。そうだろう?」

「あ!?」

「舐めてんのかねーちゃん!!」

「ちょっと教育する必要があるなぁ…」

「よく見たらねーちゃんも、なかなかいい顔してるなぁ…。体は貧相だけど」

 と、チンピラが飛鳥達に近づいた。

 

飛鳥「こころ、早くしな!」

こころ「!!」

 すると男性の黒服達が現れて、チンピラたちを捕らえた。

 

飛鳥「平三さん!」

「な、何をしやがる!!」

「離せぇ!!」

 

平三「こころお嬢様に危害を加えるこの愚か者共に地獄を見せてやるのだ!!」

「はっ!!」

「は、離せぇ!! 離せぇえええええええええええ!!!」

 

 と、どこかに連れていかれた。

 

モカ「おー…」

飛鳥「ありがとうございました」

平三「いえ、こころお嬢様とそのご友人方をお守りするのが我々の使命ですので。失礼します」

 と、平三たちは去っていき、また3人だけになった。

 

飛鳥「……」

モカ「あのおじさん達もバカだよね~。こころちゃんに手を出そうとするなんて~」

飛鳥「…そうだね」

 飛鳥が苦笑いすると、店から老人が出てきた。

 

「騒がしいけど、何かあったんかいな?」

飛鳥「えっとですね…」

 飛鳥が事情を説明した。

 

********************

 

「本当にありがとう。あのチンピラどもには前から嫌がらせをされていて困っていたんだ」

飛鳥「そうだったんですか…」

 飛鳥、モカ、こころの3人はご馳走になっていた。飛鳥としては話をしただけで信じてくれるかどうか怪しかったが、平三が証拠のデータを送ってくれたため、証明できた。

 

「お礼と言っちゃあ何だが、好きなだけ食べて行ってくれ!」

飛鳥「えっ!? いいんですか!?」

 飛鳥が驚いた顔をした。

 

「勿論。どうせお客さんは来ないし、あのチンピラどもがやられたのを知ってスカッとした。さあ、どんどん食べてくれ! トッピングもおまけするよ」

モカ「わーい」

こころ「嬉しいわ! おじさん!」

 

 と、大盤振る舞いに飛鳥は困惑し、こころとモカは大喜びした。

 

飛鳥「いいのかな…」

モカ「飛鳥くんは結構気にし過ぎだよ~」

飛鳥「…職業病って奴かな」

 飛鳥は首を横に振った。

 

 

おしまい

 



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第182話「うどんの腰・完結」

誤字報告ありがとうございました。


 

「いやー。くったくったー」

 

 と、橋の上を飛鳥、こころ、モカの3人が食べていた。

 

飛鳥「本当によく食べたね…」

モカ「飛鳥くんもでしょ~」

飛鳥「やっぱり遠慮しとくべきだったな…。店主さん凄く驚いてたし…」

 

 店主の言葉を失った姿を思い出して、飛鳥は罰が悪そうにしていた。そんな時、こころがあるものを見つけた。

 

こころ「あら!? お相撲さんだわ!」

モカ「あ、ホントだ~」

飛鳥「……」

 

 3人が前方に力士がいる事を発見するが、何やら様子がおかしい事に気づいた。

 

モカ「あれ~? 何か元気ないね~」

飛鳥「……!」

 

 すると、力士が履物を穿いておらず、しかも力士の背後に遺書らしきものが置かれていたので超能力で止めた。

 

飛鳥「飛び降り自殺をする気だ! 力士の後ろに下駄と遺書がある!」

モカ「えっ!?」

こころ「本当だ!!」

 

「な、何だ!? 体が…」

こころ「お相撲さーん!!! 自殺はやめなさーい!!」

飛鳥「……」

 

 ストレートに自殺という言葉を使っていて、飛鳥は唖然とした。

 

***********************

 

 とある喫茶店

 

「ううう…」

 力士は両手で顔を覆っていた。

 

こころ「自殺なんてしたらダメよ。何があったの?」

「そ、それは…」

 すると飛鳥は力士の顔を見て、ある事を想いだした。

 

飛鳥「あなた確か金剛部屋の高谷関では…」

「!!」

モカ「金剛部屋って今日優勝した…」

「…はい。わしはそこで10年相撲をやっておりますが、結果は出せずにおるんです」

こころ「だからって死ぬのはダメよ!」

「…すんません」

 と、高谷は頭を下げた。

 

高谷「…ちゃんこ番としての腕は買われ、何とか部屋には置いて貰っているものの、後から来た力士にドンドン追い越されていき、わしは存在価値を失ってしまったんですばい」

モカ「ちゃんこ番~?」

こころ「飛鳥。ちゃんこ番って何かしら?」

飛鳥「力士の料理を作る当番の事なんだけど…。もしかしてずっとちゃんこ番としてやってたんですか?」

高谷「はい。もう相撲の方は出世の見込みがないので、ずっとちゃんこを作っておりました。ちゃんこの腕に関しては親方も認めてくださってるくらいで…」

こころ「じゃあそれでもいいじゃない。誰かの役に立ってるんだから」

モカ「そうだよ~。もしかしたら、今日の試合で吉葉若が優勝できたのだって、もしかしたら高谷関のちゃんこのおかげかもしれないよ~?」

高谷「そう言ってくれるのは有り難いけど、わしは相撲取り。相撲で結果を出せなければお終いなんじゃ」

飛鳥「…勝負の世界だからなぁ」

 飛鳥が腕を組むと、テレビに吉葉若が映っていた。

 

『優勝の決め手は何ですか?』

吉葉若『そうですねー。日頃の練習もそうですけど、やっぱりちゃ…』

 と、おっさんがチャンネルを変えてしまった。

 

飛鳥「ちなみに、今相撲を止めたらあてってあるんですか?」

高谷「ありません…」

こころ「だったらうちのちゃんこ番をすればいいのよ!」

 と、こころがとんでもないことを言いだした。

モカ「えー…」

飛鳥「言うと思った」

高谷「も、もしかしてお嬢ちゃんの家って料理屋をしているのかい?」

こころ「そうねー…。確かやってたわね」

飛鳥「あ、この子弦巻財団の一人娘なんですよ…」

高谷「つ、弦巻財団!!? あの弦巻財団の!!?」

飛鳥「はい、あの弦巻財団です」

 

 とてつもなく驚く高谷に対して、飛鳥が苦笑いした。

 

高谷「いえいえっ!! わしのような素人が弦巻財団で働くなんてそんな…!!」

 

 と、高谷が恐れおののくと、モカがある事を想いだした。

 

モカ「あ、それもいいけど~。さっきのうどん屋さんで働くのはどうかな~」

飛鳥「あ、そっか」

高谷「?」

 モカと飛鳥の会話に高谷は頭に「?」マークを浮かべた。

 

********************

 

 後日、リキ屋…。

 

飛鳥「…という訳です」

「まさか働き手まで紹介してくれるとは!!」

高谷「今、親方やおかみさんと話をしている最中ですが、もし雇っていただけるなら身を粉にして働きます!」

 

 と、飛鳥、モカ、こころの紹介で高谷をリキ屋で働かせるようにした。

 

飛鳥「こんな大男がいれば、チンピラも恐れおののいて店に来ませんよ」

「そうだと良いんだがね…」

 店主は不安そうにした。

飛鳥「大丈夫です。奴らはまた報復しにこちらに来ると伺いますが、我々で作戦を考えております」

「え?」

飛鳥「少しばかりお騒がせしますが…」

 飛鳥が苦笑いした。

 

**********************

 

 その夜。チンピラたちがリキ屋の前に現れ、店の中に入った。

 

「おいコラぁ親父!! 酒や酒!!」

「はよもってこんかーい!!」

 と、チンピラたちが暴れだすと、どっかりと一つのテーブルの椅子に座り始めた。

 

「美味いもん持ってこんと店の中メッタメタにしてまうど!!」

 チンピラがそう言うが、誰も返事しなかった。

 

「おいコラ聞いとんのかぁー!!?」

「お客様~」

「ああん!!?」

 

 高谷が現れた。

 

高谷「お店の中で暴れんといてください」

「ああん!?」

「舐めてんのかこのデブ!!」

「あの親父だせやオラァ!!」

 と、チンピラの一人が高谷の胸ぐらをつかんだが、高谷は豪快にチンピラを投げ飛ばした。

 

「ぐわあああああっ!!」

「ヤス!!」

「てめぇオラァ!!!」

 と、仲間のチンピラが暴れたが、高谷一人になすすべもなかった。10年も幕下だったとはいえ、一般人相手にはほぼ無敵状態だった。

 

「く、くそう!!」

 チンピラたちは逃げ出そうとするが、

 

「そこまでだ!!!」

「!!」

 

 と、松永たち警察官が出そろっていて、チンピラたちはうろたえていた。

 

松永「器物破損、および脅迫の容疑で現行犯逮捕だ!!」

「く、くそぉおおおおおお!!!」

 チンピラたちが凶器を取り出そうとしたその時、陰で隠れていた飛鳥が超能力で動きを止めた。

 

「か、体が…」

松永「かかれぇええええええええええ!!!」

 

 松永の号令によって警察官が一斉に突撃し、チンピラ達を取り押さえて現行犯逮捕した。

「く、くそォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

飛鳥「…よし!」

店主「バンザーイ! バンザーイ!!」

 飛鳥は店主、高谷と共にチンピラが連行される様子を目の当たりにした。すると飛鳥はスマホからグループ通話を開いた。安全の為、自宅待機をさせているモカとこころに対してだった。

 

飛鳥「作戦成功だ。チンピラ達は予想通り襲撃したけど、高谷さんが追い払ってくれたよ」

こころ「それは良かったわ!」

モカ「それじゃ明日はモカちゃん達の出番だね~」

飛鳥「ああ。宜しく頼むぜ!」

モカ「りょーかーい」

こころ「任せといて!!」

 

*******************

 

 後日…。

 

「中々大盛況だな!!」

「そうだね」

 

 Afterglowと飛鳥、こころ、松永がリキ屋にやってきていたが、飛鳥たち以外にもお客さんが沢山来ていた。

 

飛鳥「あのチンピラ達によって離れていた客も、どんどん戻ってきたみたいですね」

モカ「そうだねー」

 その時だった。

 

「お待たせしましたー」

 と、鍋の材料と土鍋を持った高谷がやってきた。

 

飛鳥「高谷さん!」

モカ「調子はどう~?」

高谷「へへへへへ。お陰様で順調ですわ! うどんの方はまだまだ親方には遠く及びませんが、筋が良いと褒められとるんですよ!」

飛鳥「そりゃあ良かったですね」

高谷「へへへ。これも一丈字さんや青葉さん、弦巻さんのお陰ですわ!」

飛鳥「そんな事はございませんよ。高谷さん自身の努力の賜物です」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

高谷「へへへ…。まあ、あの時はもう相撲しか生きる道がないと思っていたもので、一生懸命だったんですわ。相撲でうまくいかなかった分、せめてこっちでは横綱ばりの活躍をして、いつかのれん分けをして貰うのが夢なんです」

飛鳥「そうですか」

松永「その意気だ! 頑張れよ!」

高谷「はい! お巡りさんもあの時はありがとうございました!」

 と、高谷が頭を下げると、周りにいた客たちも拍手した。

 

「頑張れよー!!」

「応援してるからね!!」

「ちゃんこの横綱目指せ!!」

 

 皆から賞賛されて高谷は照れたが…。誰かが入ってきた。

 

高谷「!!」

「高谷さん」

 

 と、そこには飛鳥達が数日前に千秋楽で見た横綱・吉葉若がいた。高谷より年上で先輩だった。

 

高谷「よ、吉葉若関!!」

「!!」

 

 突如横綱が現れた為、店は騒然としていた。

 

高谷「ど、どうしてこのような所に…」

吉葉若「君がここで働いていると聞いて、顔を出しに来たんだ」

高谷「ど、どうしてですか? わしのような幕下が、横綱に何か…」

吉葉若「ちゃんこだよ」

高谷「え?」

 吉葉若が苦笑いした。

 

吉葉若「…言いにくい話だが、君が辞めてからちゃんこの味が大幅に落ちてしまっていて、今まで誰が作っていたか親方に聞いたんだ。そしたら君だって」

高谷「……」

吉葉若「高谷さん。私がこの一年で優勝できたのは、あなたが作ったちゃんこのお陰だと言ってもいい。具材のバランスが良く、栄養価も申し分ない」

 吉葉若の言葉に高谷は目が潤み始めたが、吉葉若は次のような行動に出た。

 

吉葉若「本当にありがとう。感謝してる」

「!!」

 

 なんと横綱が大勢の前で幕下に頭を下げたのだ。これには高谷も涙が止まらなかった。

 

高谷「何て恐れ多い!! 顔を上げてください! 吉葉若関!! あんたはわしのような人間に頭を下げるべき人間なんかじゃない!!」

吉葉若「そうは言うが、おかみさんが言っていただろう」

「!」

吉葉若「どんな立場になっても、飯を作る人間には感謝の気持ちを忘れるなと。だから身分も関係もない。本当にありがとう」

高谷「吉葉若関…」

 

 と、店はそのまま暖かい空気に包まれた。

 

*************************

 

 そして吉葉若関が帰り、高谷が仕事に戻ると、飛鳥達も鍋にありついたが…。

 

ひまり「美味し~!!」

蘭「…ひまり。もうちょっと落ち着いて食べなよ」

 ひまりの食べるペースが速かった。

ひまり「だって、どれもこれも美味しいんだもん…」

巴「食べ過ぎると関取みたいになるぞ」

ひまり「」

 巴の言葉にひまりが石化した。

モカ「最近は女相撲も盛んだから~」

蘭「…そうなると、Afterglowの活動もちょっと考えて貰わないといけなくなるかも」

ひまり「ちょ、ちょっと皆やめてよ~!!! 男の子もいるのに~!!!/////」

 と、ひまりが慌てると、皆が笑いだした。

 

 

おしまい

 



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上級生・一丈字飛鳥編
第188話「上級生組と野外活動!」


 今回の設定

・ 飛鳥は友希那達と同級生。




 こんにちは。一丈字飛鳥です。超能力が使えること以外はごく普通の高校2年生です。さて、私は学校の行事で林間学校に来ております。

 

1組:彩、千聖、紗夜、燐子、花音

2組:麻弥、日菜、友希那、リサ、薫

3組:飛鳥

 

 …まあ、私のクラスは結構おとなしい方が集まってるクラスで、通称「陰キャクラス」と呼ばれていますが、居心地は良いです。

 

 集合場所の学校から数時間移動して、目的地の自然の家に到着しました。そこで先生から諸注意を受けて、それぞれ部屋に向かいました。まあ、当たり前ですが男女別々です。

 

「夜、女子の部屋に遊びにいこーぜ!」

「いいな! オレ千聖ちゃん達の部屋!」

「こっちはリサちゃん達の部屋に行こうぜ!!」

 

 という声が聞こえますが、私の組はそういうのには縁がないです。寧ろ…。

 

「フンッ! フンッ!!」

「ボリボリボリ…」

「ふっ…」

 

 筋トレをするなり、お菓子を食べるなり、恋愛ごとには全く興味がなさそうなスポーツマンの方々ばかりです。ていうか体格が私より一回りでかい。いいなぁ…。

 

「あっ、悪いね」

 私がじーっと見ていると、プロレス研究会の高馬さんが話しかけてきた。190㎝を超えている大男で、研究会でもエースと呼ばれている。どうやら試合が近いのか練習をしていたらしい。

 

飛鳥「気にしなくて大丈夫ですよ。もうすぐ試合ですもんね」

高馬「ああ。だが、いつでも言ってくれ」

「それにしてもあんた凄いなぁ。エースと呼ばれてて…」

 

 と、話しかけてきたのは相撲部の高谷さん。

 

高谷「わしなんか1年に追い越されて…」

「気にする事ないさ。そういうのはスポーツやってればよくある事さ。寧ろ後輩が自分より出来るという事は安心できるだろう」

 

 そうやって大丸さんを慰めるのは柔道部の高山さん。彼も主将を務めている。

 

高谷「そんな事言ったってぇ…」

高馬「まあ、勝負の世界は厳しいが焦らず行こう」

高山「そうさ。オレ達だって最初から上手く行ったわけじゃない」

 

 と、2人が高谷さんを慰めていた。こういうのいいなぁ…。本当に小学生時代の同級生に爪の垢を煎じて飲ませたい。

 

 まあ、そんな事を考えてるうちに午後はオリエンテーリングで軽く散歩。そして風呂の時間がやってきた。

 

「男湯はあっち、女湯はあっちね」

「めっちゃ距離ある!!!」

「覗き防止」

「ちぇー」

「いや、ちぇーって」

 

 …まあ、こちらとしても大助かりだよ。冤罪ふっかけてくる奴とかいるもんなー。迷惑な話だ。ちなみに男湯は銭湯みたいな感じだった。まあ、特に派手という訳じゃなかったという事をお伝えしましょう。

 

 そんなこんなで食事の時間。食事をとるメンバーは自由らしい。だから…。

 

「……」

 

 大人気といわれている湊さん達の周りに男子生徒達が群がっていた。どこの学園天国だろうと言いたい所だが、私は特に気にせず料理を取って、一人で食べた。ちなみにバイキング形式である。

 

 変にボロを出すわけにもいかないので、超能力で存在感を消している。高山さん達は3人で固まって食べていた。流石スポーツやっているだけあって滅茶苦茶食べる。流石だ。ちなみにうどん屋でもやっていけそうな気がする。

 

 そして食事が終わると、肝試しがあるので皆外に出た。ここで私の語りは終わります。

 

********************

 

「えー。前から話していた通り、肝試しを行う!」

 

 教師からの諸注意を飛鳥達は聞いていた。

 

「ちなみに一緒に回る班だが、こちらの電光掲示板でルーレットで決める!」

飛鳥(結構大がかりだな…)

 

 どこからか取り出された電光掲示板に飛鳥は辟易した。他の生徒達も驚いている。

 

日菜「すっごーい! 大がかりだ!!」

麻弥「こ、ここまでするんすかね…」

 と、日菜と麻弥もリアクションをしていた。

 

「このルーレットで決まったチームで行くように!」

 

 男子達はお目当ての女子と一緒になれるかどうかドキドキしていた。飛鳥はクラスが違う為、何も言わないでいた。

 

 そしてルーレットで決まると、案の定飛鳥は男子だけのチームで構成されて、友希那達はそれぞれクラスで固まっていた。

 

「何だよぉ!!」

「女子だけで構成されてるじゃねーか!!」

「もう1回!! もう1回!!」

 

 と、男子達は不満を言っていたが、通らずこのままやる事になった。

 

 ちなみにだが、この時はまだ飛鳥は男子生徒達から敵視もされていないし、友希那達ともそんなに仲が良い訳ではない。通常の世界では飛鳥が弾き語りをした事がきっかけで仲良くなったが、今回はそれが無い為である。

 

 飛鳥は高山達とは違う陰キャ男子達とチームを組むことになった。

 

飛鳥「宜しくお願いします」

「よ、宜しく…」

 

 そして肝試しをしたが、飛鳥は何ともなかった。

 

飛鳥(実際こういうのより怖いの見てるからなぁ…)

 陰キャ男子達は怖がって飛鳥の後ろに隠れていた。

 

 暫く突き進むと、女性教諭たちが何やら慌てていた。

 

飛鳥「あれ? どうしたんだろう…」

 

 飛鳥達が女性教諭たちに話しかけた。

 

飛鳥「どうされたんですか?」

「ああ。君は確か3組の…」

「2組の大和さん達見なかった?」

飛鳥「いえ、見てませんけど…」

「おかしいわね…」

「やっぱりコースを外れたんじゃ…」

 

 と、女性教諭たちが話しているのを聞いて、飛鳥が静かに目を閉じて麻弥達を探した。すると、麻弥、日菜、薫、友希那、リサの5人が道に迷っていて、リサが泣きべそをかいていた。

 

飛鳥「!!?」

 飛鳥が反応をした。

 

飛鳥「コースを外れたって…」

「…あっ、あなた達はとにかくちゃんと普通の道を通っていくのよ? 分かった」

「はい…」

 

 そう言って飛鳥達はその場から離れると、飛鳥は超能力であるものを作り出した。

 

飛鳥『大和さん達の所に行って、照らしておくれ』

 と、飛鳥は超能力で作った小型発行虫を飛ばした。ちなみに虫なのは小さくてバレないからである。

 

*********************

 

 そして…

 

リサ「うぅぅぅぅ…」

友希那「リサ。歩きにくいわ」

 

 リサは泣きべそをかきながら友希那の背中にくっついていた。

 

日菜「リサちー。何かミノタウロスみたいだよー?」

麻弥「そんな暢気な事言ってる場合ですか!!」

薫「……」

 

 薫も幽霊が苦手なのか、顔色が悪かった。

 

麻弥「…あの、薫さん。大丈夫ですか?」

薫「大したことはないよ。スリリングがあっていいじゃないか…」

友希那「…暗くてもわかるくらい真っ青よ」

日菜「んー。本当にわからないなぁ。どっちに行けばいいんだろ」

麻弥「あの、大人しくここで待ちませんか?」

リサ「ええっ!!?」

薫「!!?」

友希那「…そうね。夜が明けるのを待ちましょう。迂闊に動くのは危険だわ」

リサ「こ、こんな所でぇ…?」

 

 リサが涙目になる。

 

薫「だが、一人ではない。さあ、私の胸に飛び込んでくるのだ…」

 

 と、その時突然ライトアップされた。

 

リサ・薫「きゃああああああああああ!!!」

 リサと薫が涙目で抱き合った。

友希那「な、なに!?」

日菜「まぶし~!!!」

 

 集合場所。

 

「先生!! あそこで何か光ってます!!」

「何だ!!?」

 

 集合場所にいた生徒達や教師たちも発光している場所が気になっていた。

 

「あそこに麻弥ちゃん達が!!」

「行ってきます!!」

「いや、待てオレが!!」

「オレオレオレ!!」

 

 と、男子生徒達が我先にと発光している場所に向かった。

 

飛鳥(先生達が気づいてそこに行ってくれるか、湊さん達が自力で脱出できるか、今はそれに懸けよう。もしそれがダメだったらその時は…)

 

 飛鳥は超能力を使いながら歩いていた。非常事態になり幽霊役もいなくなっていた為、負担はかからなかったが、他のメンバーが飛鳥から離れなかった。

 

 

麻弥「あっ! 皆さん!! 出口が見えましたよ!!」

「!!」

友希那「結構近くまで来てたのね…」

リサ「助かったぁ~」

 

 と、リサと薫が心の底から安心すると、

 

「お~い!!!」

「!!」

 

 男子生徒達が迎えに来た。

 

(うへへへへ…。これで友希那ちゃん達はオレにメロメロだ!!)

(くそっ!! こいつらがついてこなかったら今頃リサちゃん達はオレにメロメロだったのに…)

(考える事は皆同じだけど、こいつら邪魔なんだよ!!)

 

 …だが、下心が見え見えでお互いけん制しあっており、誰かが前に行こうとすると、誰かが止めていた為友希那達は呆れていた。

 

 まあ、なんだかんだ言って心配して助けに来てくれたので、何も言わない事にした。

 

 そして麻弥達が無事にゴール地点までたどりつき、彩達も駆け寄った。リサは安心しきっていたのか号泣していた。そんな様子を飛鳥は一瞬だけ見て背を向けて笑みを浮かべた。

 

*********************

 

 …ところがどっこい翌日。

 

リサ「もう!! だから適当にやったらダメって言ったじゃん!!」

友希那「下手糞」

 

 男子生徒達はお礼として野外炊飯を一緒にやる事になったのだが、良い所を見せようと張り切り過ぎたせいで大失敗。食材がダメになった為、リサたちから大顰蹙を買った。

 

飛鳥(ダメだこりゃ…)

 飛鳥も男子生徒達に呆れながら、慣れた手つきで野菜を切るのだった。

 

 

おしまい

 



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第189話「野外炊飯(前編)」

 

 

 こんにちは。一丈字飛鳥です。超能力が使えること以外はごく普通の高校2年生です。さて、私は学校の行事で林間学校に来ております。

 

 …まあ、私のクラスは結構おとなしい方が集まってるクラスで、通称「陰キャクラス」と呼ばれていますが、居心地は良いです。

 

 集合場所の学校から数時間移動して、目的地の自然の家に到着しました。そこで先生から諸注意を受けて、それぞれ部屋に向かいました。まあ、当たり前ですが男女別々です。

 

中には異性の部屋に遊びに行こうという声が聞こえますが、私の組はそういうのには縁がないです。私の部屋に至っては、筋トレをするなり、お菓子を食べるなり、恋愛ごとには全く興味がなさそうなスポーツマンの方々ばかりです。ていうか体格が私より一回りでかい。いいなぁ…。

 

 まあ、そんな事を考えてるうちに午後はオリエンテーリングで軽く散歩。そして風呂の時間がやってきた。男女別々でしかも距離があるので、冤罪をかけられそうになくて大助かりです。ちなみに男湯は銭湯みたいな感じでした。まあ、特に派手という訳じゃなかったという事をお伝えしましょう。

 

 そんなこんなで食事の時間。食事をとるメンバーは自由らしい。その為、大人気といわれている湊さん達の周りに男子生徒達が群がっていた。どこの学園天国だろうと言いたい所だが、私は特に気にせず料理を取って、一人で食べた。ちなみにバイキング形式である。

 

 変にボロを出すわけにもいかないので、超能力で存在感を消している。高山さん達は3人で固まって食べていた。流石スポーツやっているだけあって滅茶苦茶食べる。流石だ。ちなみにうどん屋でもやっていけそうな気がする。

 

 そして食事が終わると、肝試しがあり、トラブルがありましたが何とか超能力で何とかしました。で、結果的に皆仲良くなってめでたしめでたしなんですけど…。

 

「もう!! だから適当にやったらダメって言ったじゃん!!」

「下手糞ね」

 

 次の日の野外炊飯。1組・2組の男子がとんでもない大失敗をしてしまって、大変な事になってますね…。ここからお話が始まります。

 

************************

 

 林間学校2日目。飛鳥達は野外炊飯をしていたが…。

 

リサ「もうっ!! どうするのよコレ!!」

友希那「ハァ…」

 

 友希那達はクラスの男子達と野外炊飯をしていたが、良い所を見せようと色々カッコつけた男子達が大失敗して、材料を台無しにしてしまったのだ…。

 

麻弥「ま、まあ材料はまだありますし…」

薫「気にすることはない。失敗は誰にでもあるさ」

 

 麻弥と薫がフォローを入れて、男子達は安堵するが、友希那は不機嫌だった。

 

リサ「そうは言っても勿体ないじゃん…」

友希那「やっぱり最初からリサがやればよかったのよ…」

リサ「いや、皆でやろうよ。林間学校なんだし…」

 

 人任せにしようとする友希那に対してリサが呆れた。

 

(ダメだこりゃ…)

 

 友希那達のやりとりを陰で聞いていた飛鳥は呆れたように野菜を切っていたが、あまりの器用ぶりに他の生徒達が見入っていた。

 

飛鳥(何かすっごい見られてるなぁ…。やっぱり包丁を叩く音がうるさいのかな…)

 

 それもそのはず、飛鳥は野菜を超高速で切り刻んでいる為、ものすごい音がするのだ。ただ、生徒としては慣れた手つきで料理をしている飛鳥本人に対して驚いていたのだ。

 

飛鳥(だけどこうでもしないと、ちゃんと上手く切れないしな…。ちょっと我慢してもらおう)

 

 と、飛鳥は一応気を遣いながら野菜を切っていると、日菜がじーっと飛鳥を見ていたが、無視した。

 

日菜「ねーそれ、何作ってるの?」

飛鳥「蒸し鍋です」

日菜「蒸し鍋!?」

飛鳥「ええ。今はそのための下準備です」

 

 ちなみに飛鳥は一人で野外炊飯をしている。というのもグループに分かれてやる必要がなく、各自自由なのだ。ちなみに担当している教師が学生の頃、グループワークに対して苦い思い出があるからだというのは内緒である。

 

 元々飛鳥もグループワークは好きではなかった為、一人で調理していたというのだ。

 

日菜「一人でやってるの?」

飛鳥「ええ。一人でやっても大丈夫だというので、一人でやってます」

日菜「えー!! それってるんってしないよ! 皆でやった方が楽しいよ!?」

飛鳥「皆でやるのも確かに楽しいですけど…」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「…そう思わない人もいますよ。だから強制的にグループワークにしてないんだと思います」

日菜「……」

 

 飛鳥が日菜を見た。

 

飛鳥「戻らなくていいんですか? 自分のクラスに」

日菜「戻らないといけないけど、もっとあなたとお話ししたいな。そうだ! あたしと一緒にやろうよ!」

飛鳥「ありがとうございます。ですがもうそろそろ完成するんですよね…」

日菜「そうなの!?」

飛鳥「ええ…これで最後なんです」

 

 と、飛鳥が土鍋に大量の刻み野菜を敷き詰めていた。

 

日菜「うわー!! 凄いカラフルだねー!!」

 

 れんこん、ニンジン、さつまいも、パプリカなど沢山の野菜が入っていた。

 

飛鳥「野菜だけだとアレなので、ささみも要れてます」

日菜「そういえばタレは?」

飛鳥「ごま油で」

日菜「へー」

 

 と、飛鳥が火にかけて蒸した。

 

飛鳥「これで暫く待ては出来上がりですね」

日菜「すごーい!! ねえ、後でちょっとだけ味見してもいい?」

飛鳥「それは構いませんけど…」

 

 その時だった。

 

「一丈字」

 と、高馬、高山、高谷がやってきた。

 

飛鳥「あ、皆さん」

日菜「うわー。おっきいねー」

高山「高谷を中心にちゃんこ鍋作ったんだ。良かったら一緒に食べないか?」

高谷「ほっぺが落ちるでごわす」

飛鳥「えっ、いいんですか?」

高馬「その代わりと言っちゃあなんだが…、オレ達にもその蒸し鍋を食べさせてくれないか?」

飛鳥「そりゃあいいですけど…本当に良いんですか?」

高馬「勿論だとも! 同室だしな!」

 

 と、高馬がニカっと笑った。

 

高谷「それから蒸し鍋を作るなら、言ってくれたら手伝ったど!?」

飛鳥「え、そうだったんですか?」

高山「勿論だとも」

高谷「それにしても、なして蒸し鍋を…」

飛鳥「いやー…。正直な所最近野菜食べてなくて、かといってスープに浸すと暑いし、かといって生って気分じゃなかったし、蒸したらいいんじゃないかって」

日菜「それ、あなたが考えたの?」

飛鳥「いや、料理番組でやってました」

 

 飛鳥が普通に言い放つと、日菜はまた面白がった。

 

 

 

つづく

 



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第190話「野外炊飯(後編)」

日菜「へー…。あなた面白くてるんってするね! お名前は?」

飛鳥「え? 私ですか?」

日菜「うん。君」

飛鳥「一丈字飛鳥です」

日菜「一丈字…変わった苗字だね」

飛鳥「よく言われます」

高山「そういや出身地は?」

飛鳥「大阪です」

「大阪!?」

 

 飛鳥が出身地を言うと、皆が驚いた。

 

日菜「え!? やっぱりアレ!? なんでやねんとか言うの!?」

飛鳥「その発言に対してまさに「なんでやねん」なんやけどね」

「関西弁!!」

「ツッコミスキル割と高かった!!」

飛鳥「関西出身って言うと皆面白い事言うだろうなーってイメージがありますけど、大きな間違いですよ。私みたいな暗くて乗りの悪い陰キャもいます」

日菜「いや、見る限りノリ良さそうに見えるんだけど…」

 

 と、日菜はどんどん飛鳥に興味を持ち始めた。

 

 

日菜「いやー。飛鳥くんって本当にるんってするね…」

飛鳥「るん?」

日菜「るんはるんだよ!」

 

 その時だった。

 

「日菜! 何をしてるの!」

 

 と、日菜にそっくりの少女・氷川紗夜が現れた。

 

日菜「あ、おねーちゃん!」

飛鳥「おねーちゃん?」

日菜「うん! あたしの双子のおねーちゃんなの!」

紗夜「…氷川紗夜です。妹がご迷惑をおかけしました」

飛鳥「あ、いえ。お構いなく…」

 

 紗夜が謝ると飛鳥が困った様子を見せた。

 

紗夜「日菜。相手の方が困ってるじゃないの」

日菜「はーい。それじゃまた後でねー」

 と、日菜は紗夜と共に去ろうとしたが、友希那とリサがやってきた。

 

飛鳥(また増えた…)

 飛鳥が困惑すると、リサが飛鳥の作った鍋を見た。

 

リサ「これ、君が作ったの?」

飛鳥「え、ええ…」

リサ「す、すごい…サツマイモとか牛蒡が入ってて、栄養バランスもいい…」

 

 と、リサがお世辞抜きで驚いていた。

 

飛鳥「…そんなに驚く事ですかね」

リサ「だって男の子でこんなに料理できるなんてすごいよ!」

友希那「私達と組んだあの男子達とは大違いね」

「グハァ!!」

リサ「友希那!!」

 

 友希那の辛らつな発言に男子生徒達は吐血し、リサがそれは言い過ぎといわんばかりにツッコミを入れた。

 

友希那「そうだわ。この人のグループに入れて貰いましょう」

リサ「いや、友希那。流石にそれはダメだよ…」

飛鳥「もうそんなに時間もないですし、簡単な料理でも作った方が良いんじゃないでしょうか」

リサ「それもそうね。ありがとう」

 

 と、リサが日菜たちを連れて戻ると、方針を男子達に伝えた。男子達は悔しそうにしていたが、これ以上リサたちに迷惑をかけるわけにはいかなかった為、大人しく従った。飛鳥はその様子を苦笑いしてみていた。

 

飛鳥「あ、出来上がったみたいだな」

 

*********************

 

高馬「とても美味いじゃないか!! 蒸し鍋! わさびを入れるとこんなに美味いんだな!」

飛鳥「ちゃんこ鍋も美味しいですよ。スープも肉と野菜の旨味が取れてますね」

 

 と、飛鳥達は一足先に料理を食べていたが、あまりのクオリティの高さに他の生徒達も遠くから見ていた。

 

高谷「へへへへ。しめはうどんがあるとよ!」

飛鳥「いいですね」

 

 そうやって4人で食べていると、日菜がやってきた。

 

飛鳥「あ、氷川さん」

日菜「日菜」

飛鳥「え?」

日菜「おねーちゃんと被るから。あたしにもお鍋頂戴!」

飛鳥「そちらの野外炊飯は終わったんですか?」

日菜「うん。リサちーが余った食材で、野菜スティック作った! まやちゃんが好きだから!」

飛鳥「野菜スティック…」

 

友希那「ハァ…」

リサ「文句言わない! ね?」

「うぅぅぅぅ…」

麻弥「アハハハハ…」

薫「これも一つの儚い思い出…」

 

 友希那達は野菜スティック地獄に見舞われていた。

 

飛鳥「そういえば野菜スティックのソースって…」

日菜「マヨネーズだよ?」

飛鳥「そ、そうですか…」

日菜「それよりもお鍋ちょーだい!」

飛鳥「あーはい…」

 

 と、飛鳥が蒸し野菜を器に入れて日菜に渡して食べさせた。

 

日菜「おいしーい!!」

飛鳥「そうですか…」

日菜「とっても美味しい!! るんってするよ!!」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 日菜の「るん」とする発言に苦笑いする飛鳥。

 

日菜「そっちのお鍋も貰っていい?」

高谷「どうぞどうぞ」

 

 と、高谷がよそおうと、

 

日菜「こっちも美味しい! なんていうお鍋?」

高谷「ちゃんこ鍋でごわす」

日菜「ああ! お相撲さんが食べるお鍋だね!」

高谷「へへへ。わしは相撲部でごわすので」

日菜「そうなんだー。やっぱり体も大きいねー」

 

 日菜はすっかりその場になじんでおり、飛鳥は苦笑いしながらその場をやり過ごそうとしたが、

 

日菜「どっちも美味しいよ!」

飛鳥「それは何よりです…」

高谷「しめにはうどんもあるでごわすよ!」

日菜「すごーい!!」

 

 と、完全に友希那達をすっぽかしてこっち側に来ている日菜に対して、飛鳥は気まずそうにしていた。

 

飛鳥「…日菜さん」

日菜「なあに?」

飛鳥「戻らなくていんですか?」

日菜「だいじょーぶだよー。後は野菜スティックを乗せたお皿を洗うだけだし、自由だもん! それに…」

 日菜が飛鳥を見つめた。

 

日菜「君ともっと仲良くなりたいしね?」

 と、日菜が妖艶な笑みで飛鳥に迫ったが、飛鳥はじーっと見つめていた。

 

日菜「…どうしたの?」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「いえ、少々昔の事を想いだしただけですよ。忘れてください」

日菜「えー!! 何なのー!? 気になるー!!」

 

 と、すっかり日菜と仲良くなっていた。

 

彩「ひ、日菜ちゃん…」

紗夜「あの子ったら…」

千聖「気持ちは分かるわ…」

 

 1組のテーブルから彩達が見ていたが、日菜の様子に苦笑いするか呆れていた。

 

友希那「やっぱりあの子の所に入れて貰いましょう」

リサ「ちょ、それはダメだって!」

友希那「リサの分まで蒸し鍋食べてくるわ」

 

 

 この後、ちゃっかりありついたのは言うまでもなく…。

 

飛鳥「……」

リサ「ごめんね。手伝うから…」

飛鳥「いえ…」

 

 追加の鍋を作る羽目になった飛鳥であった。

 

おしまい

 



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第372話「何度でも野外炊飯!」

 

 

 今回の設定

 

・ 飛鳥は友希那達と同い年です。

・ 前の話とは微妙に設定が違います。

 

**************************

 

 一丈字飛鳥です。私は今林間学校でとある自然の家に来ていて、野外炊飯が行われています。私のグループは大人しい男子だけのメンバーとなっていて、周りからは「はずれ組」と馬鹿にされていますが、私としては大当たりですね。

 

「あのクソ陽キャ共が…!!」

「黙って聞いてたらいい気になりやがって…!!」

「見てくれだけのイキり野郎がよ…!」

「いつかギタギタにしてやらァ…!」

 

 そうでもありませんでした。でもこの人たち見る限り、マジですね。ちなみに馬鹿にしてきた陽キャ軍団というのは、1組と2組の方でそちらの方は…バンドやってる方たちと組んでるようですね。

 

友希那「どうして女子だけで組むのはダメなのかしら…」

リサ「まー…それはね?」

 

 後から聞いた話ですが、当初2組の湊さん達は女子だけで組む予定だったのですが、男子たちに却下された上に、先生からも男女で壁を作りすぎだから男女混合でやるようにしなさいと言われ、このようになったそうです。

 

 ちなみに肝試しは普通に終わりました。

 

 まあ、そんなこんなで野外炊飯が始まり、私たちのチームも料理を作る事になりました。ですが、作るものは基本的に自由で、作るものもそこで決めないといけなかったんですね。

 

「もう普通にカレーで良くね?」

「おっけ」

 

 カレーに決定して、それぞれ担当も分けられた。

 

飛鳥「私材料切りましょうか?」

「お願い」

 

 そう言って私は材料を切っていったわけですが、皆さんがこっち見てますけど、気にしないでおきましょう。

 

「な、なんだアイツ…!」

「すげぇ…!!」

「料理屋さんでアルバイトでもしてるのかな…」

「真剣にやってる所…ちょっとカッコいいかも…///」

 

 何か聞こえていますが、気にしないでおきましょう。

 

飛鳥「野菜切り終わりましたよ」

「あ、ありがとう…」

 

 そして作業もスムーズに進んで、あっという間にカレーが出来上がりました。

 

飛鳥「野菜も炒めましょうか?」

「え? 炒める?」

飛鳥「炒めないと野菜の中に水分が残ってるんで、水っぽくなるんですよ。水っぽい方がお好きですか?」

「え、えっと…。それじゃ任せるよ…」

飛鳥「分かりました」

 

 そう言って私は野菜を炒めました。しかし、なんでか知らないけど皆こっちを見てるんですよね。まあ、すぐに野菜を鍋の中に入れて煮るってイメージがあるとは思うんですけど、ちゃんと料理の本にも書いてあったりするんですね。

 

 そして野菜を炒めたら今度こそ鍋の中へ。ご飯も炊いてあるので、後は完成するのを待つだけです。まあ、絡まれてもアレなので超能力で存在感を消しときましょうかね。

 

 他の班はまだやってるみたいですが…。

 

リサ「もー!! そうじゃないって言ってるでしょ!」

「こ、これくらい…」

 

 2組で何かもめてるようですね。あの人は確かRoseliaの今井リサさん…。

 

リサ「こういう下準備しないと煮崩れしちゃうの!」

友希那「良く分からないけど、リサがそう言うならそうよ」

リサ「…友希那? それあんまりカッコよくないよ?」

 

 そしてまた1組では…。

 

「うわあっ!! こぼしちゃった!」

花音「ふぇええ~!!!」

千聖「ちょっと何やってんのよ!!」

 

 男子が何やら材料をこぼしてしまったようだ。大変だなぁ…。

 

 で、そんな大変な状況になっていますが、それでも私たちは既に完成しました。

 

飛鳥「食べましょうか」

「うん」

 

 味はまあ普通でした。特に高級食材を使っているわけでもなければ、テクニックも個人差があります。こんなもんですね。

 

「…そういや、まだ時間あるな」

「ああ…」

飛鳥「思った以上に早く終わりましたね」

「ああ…」

「それもそうだけど…」

 

 すると皆さんがこっちを見てきました。

 

「一丈字くん。もしかして料理結構したりする?」

飛鳥「最近はしてないですね」

「それにしても結構なれた手つきだったよね」

飛鳥「そうでしょうか」

「うん、そうだよ」

 

 何か私の話になりそう。ここは何とか話を逸らすしか…。

 

飛鳥「時間もありますし、もう一品作りましょうか?」

「え?」

飛鳥「デザートとか如何でしょう」

「ほ、本当に作ってくれるの?」

飛鳥「ええ。折角ですので。ただ、ちょっと一口だけ…」

「いや、ゆっくり食べていいよ」

飛鳥「はい」

 

 そう言って私はカレーを1杯食べた後、デザートを作りました。なんでだろう、何課滅茶苦茶見られてる気がする…。ホットケーキミックス粉を使っていろんなの作りました。結構便利ですよね…。あと、皆さんが卵とか生クリームが大丈夫でよかったです。

 

リサ「ちょ、何よこの良い匂い!!」

麻弥「3組の方からですよ!」

日菜「あたしちょっと行ってくる!」

 

 来ないでください。色々厄介なので…。

 

**

 

 さて、超能力で来させないようにしたあと、適当に生クリームやチョコレートを持ってきて、各自で好きな味を楽しんでもらうようにしました。

 

「デザートめっちゃうっま!!」

「すげー!!」

「ホットケーキミックスでここまで出来るんだ!」

「美味しいよ一丈字くん!」

飛鳥「喜んでいただけて何よりです」

 

 そう言って私は笑った。ここまで言ってくれるのは正直言って嬉しい。小学校の同級生もこんな感じで喜んでくれてたらなぁ…。あいつら人にさんざんやらせといて嫌味ばっかり言ってたからな。

 

 ちなみに今更ですが、他の班への手助けとかは禁止されているので、私たちが他の班に手を貸すことはできません。

 

(一丈字くんがあんなスイーツ作れたなんて…)

(一丈字くんと組めば良かった…)

(羨ましい…)

 

 …なんでこんなにも見られるんだろう。

 

日菜「もー! あたしが作った方が早いってば!」

「ま、待って…」

麻弥「まあ、だけどそれだと日菜さん一人でやっちゃうことになるから…」

薫「儚い…」

 

彩「あーッ! 焦がしちゃったあ!!」

花音「ふぇえええ~!!!」

千聖「ああもう…!!」

「だ、大丈夫! オレがついてるからね!?」

千聖「そう言って何回失敗したと思ってるの! もう何もしないで頂戴!」

 

 とまあ、バンドガールの皆さんも大変そうです。頑張ってください…。

 

「い、一丈字くん…?」

飛鳥「何でもありません。きっと後でいい思い出になる筈です。カレーとスイーツを食べましょ」

 

 

 

 おしまい

 



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第373話「もしも林間学校で紗夜を助けたら ~後日の朝食編~」

 

 一丈字飛鳥です。私は今林間学校…そうですね、最近林間学校のネタが多いですね。というかこのシリーズ、結構林間学校やってますね。まあ、ダシマが思いついたネタから順次に作って言ってるという状態なので、もし宜しければこのままご覧ください。まあ、私のような無名の男が大手の人気アニメの方々に対して色々やってるという点で、あまり宜しくないのですが…ご愛嬌という事で。

 

 さて、私の現在の状況なのですが、やる事は変わらず悪質なファン『ヤラカシ』を退治して、ガールズバンドを取り巻く環境を裏から良くしていくという任務は継続しております。

 

 この林間学校は学校行事であって、彼女たちが危険な目に遭いやすいという事から、依頼主である弦巻財団と連携を取って、監視しているという状態です。

 

 なのですが、どういう訳か1組で女子生徒の置き去りがあり、私が救出することになったのですが…これ、よくよく考えたら弦巻財団の人が何とかしてくれそうな気もしますが…。

 

 まあ、それは一旦置いといて何とか救出は成功しました。さっき弦巻財団の人が何とかしてくれそうな気もするって言ってましたけど、見つかりにくい場所にいたし救助するにもちょっと時間がかかりそうだったので、私が行って正解だったのかもしれません。普通の人がやるには難しい仕事を代わりにやるのが『能力者』の仕事ですからね。

 

 結果的に1組の氷川紗夜さんを救出して、皆の所に戻ってきました。今回のお話はそこから始まります…。

 

*******************************

 

「おねーーーーーーーーーーーーちゃー―――――――――――――――ん!!!」

 

 飛鳥が紗夜をおぶって帰ってくると、日菜が紗夜に向かって思いっきり飛んできた。そして飛鳥は紗夜をゆっくりおろして、立ち上がらせると、そのまま存在感を消してその場を離れた。

 

日菜「あ~~~~~~~~ん!!!! 無事で良かったよぉ~~~~~~~~~!!!」

紗夜「ちょっと日菜…」

 

 日菜が滅茶苦茶くっついているので、紗夜が困惑していた。

 

リサ「紗夜! 無事だったのね!」

紗夜「無事というかなんというか…」

 

 すると友希那が紗夜の足元を見た。

 

友希那「いや、無事ではないわね」

「え?」

燐子「あ、足…怪我してます…」

 

 燐子の一言に空気が止まった。

 

紗夜「ああ、これは…」

「そ、その…紗夜ちゃん…」

 

 紗夜が言いかけたとき、置き去りにした男子生徒たちがやってきたが、紗夜たちがこれでもかという程にらみつけてきて…あとはお察しください。

 

飛鳥(オレ、しーらない)

 

*****************

 

 こうして何とか超能力でいろいろ誤魔化して、飛鳥は自分の部屋にたどり着いた。ちなみにおじさんに話しかけられたことも超能力で改ざんした。

 

飛鳥(色んな意味で疲れた…)

 

 

 翌朝、飛鳥は5時半に起床した。起床時間まで1時間も時間がある。

 

飛鳥「勉強でもするか…」

 

 こうして飛鳥は空いた時間を使って学校の勉強をしていた。主人公が努力するシーンが省略されがちだが、飛鳥はこうして空いた時間によく勉強をしている。

 

飛鳥「10分でも真面目にやれば効果は絶大ですよ」

 

 そして起床時間。ルームメイトが起きると、既に身支度が完了している飛鳥に驚いていた。

 

「い、一丈字くん!?」

飛鳥「おはようございます」

「お、おはよう…」

飛鳥「お先に朝食行かせていただきますね」

「あ、ああ…」

 

 そう言って飛鳥は部屋を出て行くと、ルームメイトたちは顔を合わせた。

 

「…本当に何者なんだろう。一丈字くん」

「さあ…」

 

 飛鳥そのまま外に出て食堂に向かおうとしたが、飛鳥は超能力で存在感を消し、紗夜たちに声をかけられないようにし、何とか食堂までたどり着いた。来る頃には丁度食堂が空いていて、飛鳥は朝食にありついた。

 

飛鳥「おはようございます」

先生「おお、おはよう! 一番乗りだな!」

飛鳥「いえ…」

 

 そう言って飛鳥はナポリタンとメニューを数品取ってまた存在感を消した。

 

****

 

 その頃…

 

日菜「えーっ!!? もう行っちゃったの!!?」

「う、うん…」

 

 Roseliaメンバーと日菜、千聖が飛鳥の部屋を訪ねたが、既に飛鳥がいなくなっている事を教えて貰って、日菜がショックを受けていた。彩、麻弥、薫、花音は先に席を取りに別行動をしている。

 

千聖「恐らくこうなる事が分かって…」

紗夜「……」

日菜「急いで追いかけなきゃ! ありがとね!」

「う、うん…」

 

 そう言って日菜たちは追いかけていった。

 

 そして食堂の前まで来たわけだが…。

 

「紗夜ちゃん!!」

「!!」

 

 紗夜を置き去りにした男子生徒たちがたちはだかったが、彼らを見て一気に機嫌が悪くなった。

 

友希那「朝から何の用かしら?」

「本当に昨日はごめん!」

紗夜「いや、もうそれはいいですけど…」

「仲直りのしるしに、一緒に朝食食べよ? ねっ?」

 

 と、陽キャは勘違いイケメンスマイルを繰り出したが、それがまた彼女たちを怒らせた…。

 

日菜「あの、あなた達に構ってる暇はないからどいてくれないかな?」

「もしかして昨日助けた3組の奴の所に行くつもりだろ!?」

千聖「それが分かってて、どうして声をかけるのかしら?」

 

 千聖が黒い笑みを浮かべて圧力をかけたが、男子生徒たちは土下座し始めた。

 

「お願いします!」

「どうかあの男にいかないでくだしゃいぃ!」

「○○様ぁ!!」

 

 とまあ、何とも情けない格好になってしまった。そこまでして美少女と関係を持ちたいのかと周りの人間が呆れていて、紗夜たちもドン引きした。どうしたらいいんだと。

 

「コラァアアアアアアアアア!!」

「お前らぁああああああああ!!」

 

 すると他のファンもやってきて、陽キャ軍団を止めに入る。

 

「いい加減にしろ!!」

「お前らにもう紗夜ちゃん達と関わる資格はない!!」

「うるせぇ! モブのお前らにどうしてそんな権限があるんだ!!」

 

 とまあ、更に醜い争いになって紗夜たちは気分が悪くなったのか、何も言わずにその場を後にしようとしたが、一部のファンが空気を読まずに声をかけてきた。正直地獄絵図であった…。

 

 

おしまい

 



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第374話「もしも林間学校で紗夜を助けたら ~野外炊飯編~」

 こんな状態で続きに行きましょう。

 

****************

 

 一丈字飛鳥です。林間学校2日目、なんだか騒がしいので、急いで食事を終わらせて様子を見に行ったら…。

 

「紗夜ちゃん! 見捨てないでぇ!!」

「千聖ちゃん! 踏んでぇ!」

「燐子ちゃん! におい嗅がせてぇ!!」

「友希那様!  蔑んでぇ!」

「日菜ちゃん! 一緒に朝ご飯食べよう!?」

「リサちゃん! 一緒にいてぇ~!!」

 

 中々カオスになっていた。紗夜さん達はドン引きしてるし、周りの人間もドン引きしてるし、便乗してる奴らもいるし、何をどうやったらこんな事になるのだろう。

 

 あとガルパ、もうすぐ5周年ですね。おめでとうございます。そしてごめんなさい。

 

 …ここで飛鳥の語りが終わり、飛鳥は何とかしようと超能力で消そうとしたが、突如存在感が出てくるようになった!

 

飛鳥「こんな事されたらもう防ぎようがないんだけど!!?」

 

 すると注目は一気に飛鳥の方に集まった。

 

日菜「あーっ!! 昨日おねーちゃんを助けてくれた人!」

飛鳥「おはようございます。これは…どうなってるんですか?」

 

 飛鳥はすっとぼけたが、大体の原因は自分にあると理解していた。

 

「て、てめぇは近寄るな!」

飛鳥「なぜですか?」

 

 陽キャが飛鳥に近づいた。

 

陽キャ「紗夜ちゃんを助けたからっていい気になるな!」

取り巻きA「そ、そうだ!」

取り巻きB「紗夜ちゃん達はオレ達のクラスメイトだし、お前のような陰キャが一緒にいていい相手じゃない」

飛鳥「そうですか」

 

 飛鳥は一息ついてそう言い放った。

 

飛鳥「あの、私もう食べ終わったんで部屋に戻りたいんですよ。どいてもらってもいいですか?」

 

 飛鳥は紗夜たちを助ける様子はなく、部屋に帰ろうとしていた。

 

陽キャ「あぁ!?」

千聖「ちょっと待って。私たちを助けてくれないの?」

飛鳥「私が出るまでもございませんよ。もう彼らに勝ち目はありません」

 

 飛鳥がそう言うと、

 

陽キャ「てめぇ…オレ達をバカにしてるのか!?」

取り巻きA「舐めやがって!!」

 

 と、男子生徒たちが吠えたが、

 

「いい加減にしろお前ら!!」

「紗夜ちゃん達を見捨てて、よくそんな言葉が吐けるな!!」

「最低!!」

「少しは自分たちの立場を考えろ!!」

 

 周りにいた他の生徒たちが吠えると、陽キャたちは罰が悪そうにした。

 

飛鳥「それとも…」

「?」

 

 飛鳥が陽キャたちの目を見つめた。

 

飛鳥「また私に華を持たせてくれるのですか?」

陽キャ「!!」

 

 飛鳥がそう煽ると陽キャは頭に血が上った。

 

陽キャ「そんな訳ねーだろ!! ぶがあああああああああああああ!!」

 

 そう言って陽キャが襲い掛かってきたが、飛鳥は足を引っかけて陽キャを転倒させた。

 

陽キャ「ぶがっ!」

飛鳥「安心してくださいな。彼女たちのような別嬪さんが陰キャである私の相手をすると本気で思いますか?」

 

 飛鳥の言葉に紗夜たちがまた驚いた。

 

飛鳥「それに夢に向かって頑張っているとも聞いています。男と遊んでる暇なんてないと思いますよ。それも陰キャなら猶更」

 

 そう言って飛鳥が取り巻き達の間を通ると、振り向いた。

 

飛鳥「それでは失礼します」

 

 飛鳥が去っていくと、皆が唖然としたが、飛鳥は全然気にしなかった。

 

飛鳥(ここまでカッコつければ、誰もカッコいいなんて思わんだろ。あー、我ながらイキってたな)

 

 皆が唖然とすると、

 

「おい、お前ら…」

「!!」

 

 教師の言葉に陽キャ軍団は青ざめて教師の方を見たが、青筋がたてられていた。

 

「お前たちはどこまで落ちぶれば気が済むんだ…?」

「ひ、ひぎィ!!」

「覚悟しろ! お前たちは今日1日ワシと補習授業だー!!!」

「そ、そんなぁ~!!!」

 

 …ちなみに何もなければ紗夜たちと一緒に同じ選択授業を受ける予定だったのだ。

 

彩「み、皆大丈夫!?」

花音「すごく騒がしかったけど…」

 

 彩、花音、薫、麻弥も駆けつけて千聖たちを心配していた。

 

千聖「だ、大丈夫だけど…」

リサ「まさかここまでとは…」

友希那「ハァ…」

 

 皆がうんざりした様子だったが、日菜が飛鳥がいないことに気づいた。

 

日菜「あっ!! あの子がいない!!」

「!!」

 

******

 

 そして朝食後に迎え、野外炊飯が行われることになったが、飛鳥がいなかった。

 

「い、一丈字くん…」

「まあ、陽キャを転倒させたしな…」

 

 喧嘩に巻き込まれたとはいえ、陽キャを転倒させたことを容認されなかったのか、飛鳥も処罰の対象となった。

 

日菜「先生! 3組のあの子はどこですか!?」

「あの子って…もしかして一丈字くん?」

日菜「そうです!」

「あの子もちょっと怪我させたからねぇ…」

 

 と、女性教諭が困った顔で言い放つと、紗夜たちもやってきて、飛鳥がいないことを知ると皆心配した。

 

**************:

 

 一時間後、飛鳥が戻ってきた。

 

「一丈字くん!!?」

「!!」

 

 飛鳥が戻ってくるなり、皆が飛鳥の方にやってきた。

 

「大丈夫だった!?」

「何かペナルティとかは…」

飛鳥「あー…。今回の野外炊飯は見学になりました」

「え!?」

飛鳥「それを伝えにこちらにやってまいりました」

「そ、そんな…」

「一丈字くん何も悪い事してないじゃん!」

飛鳥「いや、転倒させたので…」

 

 そうクラスメイト達と話し合っていると、日菜たちも飛鳥に気づいて、日菜ほっぽりだした。

 

麻弥「ちょ、日菜さん!」

 

日菜「ねえそこの君!!」

飛鳥「?」

 

 飛鳥が日菜の方を見た。

 

飛鳥「これはこれは…」

日菜「大丈夫だった!? 先生たちに何もされてない!?」

飛鳥「あ、今回の野外炊飯はもう見学という事になりまして、次の選択授業から復帰という形になりました」

 

 飛鳥が笑いながらそう言うと、日菜がショックを受けた。そしてそのやり取りを遠くから見た紗夜たちもクラスメイト達に任せて、飛鳥と日菜のもとに向かった。

 

紗夜「あ、あの…」

飛鳥「えーと…。あなたは氷川紗夜さんですね?」

紗夜「そ、そうです…」

飛鳥「怪我の具合は如何ですか?」

紗夜「…お陰で良くなりました」

飛鳥「そうですか」

 

 そう言って飛鳥は微笑んだ。

 

友希那「それはそうと、何故私たちを遠ざけるのかしら?」

飛鳥「それはあなたの方が理解されている筈です」

千聖「それじゃ分からないわ。説明してくれる?」

飛鳥「そんな筈はありません。分かっていて、私の口から言わせようだなんて…」

 

 と、友希那や千聖の猛攻撃に飛鳥は毅然とした態度を取る。

 

リサ「ま、まあまあ落ち着いて。あの、紗夜を助けてくれてありがとう」

飛鳥「いえ、もうお気になさらないでください」

 

 飛鳥がリサの方を見つめた。

 

紗夜「その、ごめんなさい…。私のせいでこんな事に…」

飛鳥「私自身が勝手にしたことなので。もうそろそろ時間ですね」

「!」

 

 飛鳥が笑みを浮かべた。

 

飛鳥「私これから自然の家で手伝いをしなきゃならないんですよ。ペナルティとして」

「え!?」

飛鳥「もうすぐその時間ですね」

日菜「そ、それじゃあなたも罰を受けてるようなもんじゃん!」

飛鳥「仕方ないですよ。結局手を出したんですから。それじゃ失礼します」

 

 そう言って飛鳥は平然としながらその場を去っていったが、千聖は飛鳥の態度に違和感を感じていた。

 

千聖(…怪しいわ。普通は不満そうにするのに完全に割り切ってる。まるでもう慣れてるかのようだわ。もしかしてあの子…)

 

 後に千聖に正体を見破られるのだが、それはまた別の話…。

 

おしまい

 



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第395話「もしも立場が入れ替わったら」

 

 

 ある日のバンドリ学園。

 

「あー…。せめて女の子達と言わんから、バンドガール達の入浴シーンが欲しい」

 

 男子生徒たちが妄想垂れていて、周りのまともな生徒たちは「またか…」という顔をしていた。

 

「いや、待てよ! そんな事を考えていると…」

「そうだった…」

 

 男子生徒たちがまた飛鳥に対して、いちゃもんをつけようとすると、飛鳥は陰から困惑していた。

 

飛鳥(もうそろそろ…ダシマ式ラブライブ!形式にしようかな…?)

 

 あまりにも自分への誹謗中傷が酷いので、飛鳥は座長権限でストーリーの形式を変えようとしていた。

 

 ラブライブでは主人公のアイドルグループ「ミューズ」のマネージャーとなって、仕事を取ってきたり、スクールアイドルたちのマネジメントをしていたのだ。ちなみに他のグループとはそれなりに交流を広めながら、コラボとかの話を取り付けたりしていたのだ…。

 

飛鳥(今回は弦巻家から依頼を受けてるから、ハロハピのマネージャーになるのかな…? けど、奥沢さんがいるからな…)

 

 ちなみにいちゃもんをつけてくる男子生徒たちはほぼいなかったのだ。

 

飛鳥(というか最近、最初のパターンが同じだし…。もう潮時か)

 

 飛鳥がそう考えていると、男子生徒たちが近づいて飛鳥を捕まえようとしたが、簡単にかわした。

 

******************:

 

「あれだけオレ達に散々な思いさせといて、ポイ捨てか!!?」

飛鳥「……」

 

 学園の外で飛鳥と男子生徒たちが対立していた。

 

「今までどれだけお前の引き立て役をやってやったと思ったんだ!?」

飛鳥「やってやったって…」

「オレ達だって努力したのに、友希那ちゃん達に振り向いてもらえなかったんだぞ?」

飛鳥「どんな努力したんですか?」

「勇気出して友希那ちゃんに告白したさ! 罵ってくださいって!」

飛鳥「で、どうなりました?」

「気持ち悪いって言われたよ! けど、それはそれでご褒美だった!」

飛鳥「じゃあ良かったんじゃないか!!!」

 

 結果的にハッピーエンドになっているので、飛鳥がツッコミを入れた。

 

「いや、違う! オレ達はこういう事を言わされたりやらされたりしてるんだ! お前を引き立てる為に!!」

飛鳥「いや、本当に引き立てたとしても、私も結構ボロボロになってますよ…」

「そんなわけあるか!!」

「あんな可愛い女の子達に囲まれて、心がぼろぼろになるわけがないだろう!」

飛鳥「いえ、誹謗中傷でボロボロになっとるんですよ。現在進行形で」

 

 飛鳥が困惑した。

 

「可愛い女の子達に囲まれてるんだから、それくらいで文句言うな!!」

「そうだそうだ!!」

「オレ達はお前のポジションを狙ってるんだぞ!!」

 

 そう言って騒ぎ出す男子生徒達だったが、

 

飛鳥「仮に聞きますが」

「何だよ!」

飛鳥「もし今、私と立場が交代できるとすれば、なりたいですか?」

「なりたいに決まってるだろ!!」

「だったら今すぐ代われ!」

飛鳥「…そうですか」

 

 飛鳥が一息ついた。

 

**************************

 

 こうして、男子生徒達と飛鳥の立場が入れ替わった。バンドガールズは男子生徒達と仲良くなり、飛鳥はぼっちだった。こころとも何の面識もない状態だった。

 

「遂にオレ達が主役だ!」

「これであの子と…」

「オレはあの子達と…」

「うふふ…」

「ぐへへ…」

 

 飛鳥に突っかかってきた5人の男子生徒たちはゲスな笑みを浮かべていた。推しているガールズバンドもそれぞれ違っていたため、自分たちがそれぞれのバンドガールズを独占できると心躍らせていた。

 

飛鳥「オレ広島に帰っていいのかな?」

 

 こころとの関りがなくなった為、飛鳥はバンドリ学園にいる必要がなくなってしまったのだ。すると上司の古堂和哉から電話がかかった。

 

**

 

 そして男子生徒たちのハーレム創設作戦が始まったが…。

 

A(推し:ポピパ)

 

A(ポピパと仲良くなれるチャンスが到来したぜ…!)

 

 Aはポピパと仲良くなろうと、一緒に出掛けようと提案した。

 

有咲「は? なんでお前と?」

 

 案の定有咲から難色を示されていた。他の4人はそうでもなかったが…。

 

A(な、なんでだよ! 主人公になったから無条件で仲良くしてくれるんじゃねぇのかよ!?)

 

 解説の一丈字飛鳥さん。お願いします。

 

飛鳥「えーと…。そんな訳ないですね。確かに市ケ谷さんとは結構お話はされますが、特に一緒に遊んだことはないですし、男子と一緒に遊ぶことに対して抵抗がありそうな子だったので、最低限の付き合いで済ませてたんですね。一緒に遊ぶとすれば戸山さんや山吹さんを介さないと多分難しいんじゃないでしょうか」

 

 そして…

 

「おいてめぇ! 何自分だけポピパと一緒に遊ぼうとしてんだよ!」

「オレも誘え!!」

 

 そう言って他の1組の男子たちも話に入ってきた。

 

A(慌てるな…。こういう時いつもポピパのメンバーが庇ってくれてるんだ…)

 

 Aは飛鳥の今までの行動を見て、何も言わずとも自滅すると考えていた。

 

有咲「いや、ちょっと待て! アタシ達はまだ…」

香澄「皆で何して遊ぶの?」

 

 香澄は優しいので、皆で遊ぼうとする。この時飛鳥は超能力を使って有耶無耶にしていたのだが、Aはそのことを知る由もない。

 

A「いや、お前ら何いきなり割って入ってきてんだよ!」

「うっせ!!」

「お前ひとりだけいい思いさせると思ってんのか!!」

 

 そう言って大騒ぎになり、結局有咲が怒って遊ぶ話はなしになった。他の男子生徒達も結果はほぼ同じで。アプローチをすると他の男子生徒たちが全力で邪魔をし、最終的に機嫌を損ねたバンドガールによって、おしゃんになるというものだった。

 

飛鳥「まあ、遊ぶとすれば既に正体を知っている人たちの間だけで遊んだり、男子生徒の皆さんがやらかした時に、制裁という口実で遊んだりしてますね…。やれやれ…」

 

 

 結局立場が入れ替わっても、結果は同じだったことに飛鳥は呆れていた。

 

 

おしまい

 

 

 



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友達と一緒に転入してきた一丈字飛鳥編
第191話「始まり」


 

 

 今回の設定

 

・ 飛鳥、京、日向、椿と香澄達が同じ学校です。

 

*******************

 

 一丈字飛鳥です。色々あってバンドリ学園に転校してきたのですが…。

 

椿「何であたしたちまで…」

京「そんな事言うんだったら、お前だけ残れば良かったじゃねーか」

椿「そ、そうは言ってないでしょ!」

日向「二人とも落ち着いて…」

 

 どういう訳か中学時代からの友達である京、日向、椿もこっちについてきたんですよね。一度に4人も転校してきたらバレるって…。

 

「日向! 椿! あなた達と同じ学校に通えるなんて嬉しいわ!!」

 

 依頼人である弦巻こころさんからとも顔合わせをしたのですが、何と日向と椿は顔なじみだったらしい。

 

こころ「困ったことがあったら何でも言って頂戴ね!」

飛鳥「ど、どうも…」

 

*********************

 

 そんなある日の事だった。

 

「えー。今度この学校の行事で行われる仮装大会だが、立候補者はいるか」

 と、HRで担任が飛鳥達に聞いてきた。ちなみに4人とも同じクラスである。だが、誰も手を上げない。

 

「先生~」

 と、陽キャが手を上げた。

 

「一丈字くんがいいと思いま~す」

飛鳥「えっ?」

 

 飛鳥が普通に驚いた。

 

京「おい待てよ! どうして飛鳥なんだ!?」

 と、京が突っかかると陽キャががんを飛ばしてきた。

陽キャ「あ? 何。文句あんの?」

京「あるに決まってんだろ!! お前がやればいいじゃねーかよ!!」

飛鳥「落ち着け京」

「!」

 

 飛鳥が教師を見た。

 

飛鳥「私で良ければ立候補させて頂きます」

「そ、そうか…」

京「飛鳥!」

陽キャ「ハハハハ! 頑張れよー」

 と、陽キャ軍団はバカにするように笑った。

 

***************

 

椿「ちょっと飛鳥! 大丈夫なの!?」

飛鳥「まあ、最悪漫談で済ませるけど…。何も起こらなかったらいいなぁ。問題はそこだ」

京「お前なぁ…」

 

 京が呆れると日向も困ったようにした。

 

日向「あ、飛鳥くん。何か手伝う事はないかな?」

飛鳥「じゃあ舞台に出て」

日向「ええっ!!?」

飛鳥「オレに考えがある」

 

 陥れる為に立候補させたのに、飛鳥が全然応えてなくて陽キャたちは表情を歪ませていた。

 

椿「…あいつらこっち睨んでるけど」

飛鳥「自分たちが予想してたリアクションと全然違うからだよ。それから舞台が始まる前に、ちょっと下準備しないとな」

椿「え?」

飛鳥「それは放課後話す」

 

 と、飛鳥はその夜、当日までに陽キャたちが嫌がらせをしてくる可能性があると日向達に話したうえで、見えない所から見守るようにと話していた。結果としては嫌味を言って来るだけで済み、何とか当日を迎える事が出来た。

 

*********************

 

 そして当日…。

 

「1年2組の皆さん、ありがとうございましたー」

 

 と、前のクラスの出し物が終わった。

 

「くぅ~!! やっぱりAfterglowは最高だったなぁ!!」

「ああ…」

「そういや次何組だっけ。3組?」

「何やるの?」

 

 そう言って観客たちはざわざわしていた。

 

「一丈字くん、大丈夫かな…」

「うん…」

 

 と、心配していると

 

「ハハハハ! どんなお遊戯会をしてくれるのか楽しみだなぁ!!」

「精々笑ってやろうぜ」

 

 そう言って陽キャたちは笑い飛ばしていた。

 

 そして舞台が始まると、飛鳥が学ランで出てきた。耳にはイヤホンマイクをつけている。

 

「学ラン!?」

 

 ちなみにバンドリ学園は男子はブレザー、女子はセーラー服だった。

 

「おい一丈字何してくれるんだー!?」

 と、陽キャたちがヤジを飛ばしてきた。

 

飛鳥「えー皆さんこんにちは。1年3組の一丈字飛鳥です。今回は仮装大会という事で、何か仮装をしてこないといけないという事なので、中学時代の制服を着てきました」

 

 飛鳥が流ちょうに喋ったので、皆が驚いていた。

 

飛鳥「さて、今回私どもの方で行うのは『コント』でございます。数分間という短いお時間ですが、どうか次の演目までのブレークタイムと言う事でお楽しみください。あ、お手洗いに行かれるなら今がチャンスですよ?」

 

 と、飛鳥は全く緊張していない為、陽キャ達も驚いていた。

 

飛鳥「それでは始めさせていただきます。コント『音楽室内で陰キャが繰り広げるRPG』」

 

 すると飛鳥が芝居を始めた。

 

飛鳥「あーそういや音楽室に早く来ちゃったなー。授業までまだあるし何しよう」

 と、飛鳥が迷っていた。

 

飛鳥「あ、そうだ。折角だからピアノでも演奏しようかな」

 

 そう言って飛鳥がピアノを演奏しだした。

 

『♪ RPG / SEKAI NO OWARI』

 

「すげぇ…!!」

「一丈字くん。ピアノ弾けたんだ…」

「……!!」

 

 予想とは違っていたので、皆が驚いていた。

 

 Aメロまで弾くと、日向と椿がやってきた。彼女たちも中学時代の制服を着ていた。

 

椿「ア、アンタ何してんのよ…」

飛鳥「ピアノ弾いてたの」

日向「す、すごいね…」

 

 と、日向と椿と少しの間やり取りしていた。飛鳥が席から立ち上がろうとすると、

 

日向「あ、私に気を遣わないで弾いてていいよ」

飛鳥「それはそうと日向もピアノ弾いてみる?」

日向「ええ!?」

飛鳥「そうだなー…。そうだ、オレがドラム叩くから」

椿「何でドラムなのよ…」

飛鳥「そうだ。椿歌ってよ」

椿「は、はぁ!! 嫌よ!! お姉ちゃんとアンタの二人でやってよ!!」

 

 飛鳥に言われるがまま、日向もピアノを弾いたが彼女もまた上手だった。

 

「す、すごい…」

 

 サビに入る前まで弾くと、京がやってきて演奏を止めた。

 

京「な、何やってんだお前ら」

飛鳥「京」

日向「京くん」

飛鳥「何って演奏」

京「相変わらずすげぇな…」

飛鳥「あ、折角だから久々にドラムやってみる? オレベースやるから」

椿「ベースってどこにあんのよ」

 

 椿がそう言うと飛鳥が舞台袖からベースを持ってきた。

 

飛鳥「じゃあ、演奏してみましょうか」

 

 そしてサビを3人で演奏した。演奏はAfterglowほどではないが、ストーリー性があって、生徒達は見入っていた。

 

こころ「凄いわ!!」

美咲「それもそうだけど、あの黒髪の子、さっきから全部やってない…?」

はぐみ「ピアノもドラムもベースも出来るなんてすごーい!!!」

美咲「という事は…」

 

 と、ハロハピが話していると飛鳥がベースを椿に渡した。

 

飛鳥「椿もやってみる?」

椿「え、わ、私は…」

飛鳥「後はお前がやってくれたらフィナーレを飾れるんだけどな」

椿「!」

飛鳥「頼んだぜ」

 飛鳥がベースを押し付けて、飛鳥が舞台袖からギターを持ってきて、皆が所定の位置についた。

 

飛鳥「それじゃ最後のBメロから最後までやっていこうか」

日向「分かった!」

椿「分かったわ!」

京「任せろ!」

飛鳥「きらめきのような~♪」

 

 飛鳥が歌いだすと、皆が演奏をしだした。演奏はAfterglowではなかったものの、バンドでメインとされている4楽器とボーカルが揃った事で、バンドの完成を表し、生徒達を驚かせた。

 

 そして大サビの前のサビで飛鳥はスイッチが入って真剣な表情をした。これによって、強大な敵に立ち向かっていく主人公パーティの風格を醸し出していた。大サビは一番盛り上がる所で、飛鳥達は全力で演奏をした。

 

 演奏が終わり、じゃーんって言う音を出すと、

 

飛鳥「続いては2年生の仮装大会です! お楽しみに!!」

 そう飛鳥がアナウンスして終わると、大歓声が上がった。

 

「……」

 陽キャ軍団も心配していた3組のクラスメイト達も唖然としていた。

 

********************

 

 そして…

 

「えー。最優秀クラスは…」

 ドラムロールが流れた。

 

「1年3組です」

飛鳥「え?」

京「いよっしゃー!!!」

椿「あーあ…」

日向「アハハハ…」

 

 と、4人の反応はバラバラだった。

 

「えー。それでは劇に出ていた一丈字くん、奈良川くん、林日向さん、材椿さん。前へ」

 

 教師からそう呼ばれて飛鳥が困惑していると、

 

京「ほら、前に出るぞ!」

飛鳥「あ、ああ…」

椿「まさか優勝するなんて…」

 

 4人が舞台に出て、陽キャたちは表情を歪めていた。

 

「優勝おめでとう」

飛鳥「あ、ありがとうございます…」

 

 校長から表彰状を受け取った飛鳥。とても困った顔をしていた。

 

「ちなみに2位は1年2組でした…」

 

ひまり「くやし~!!!!」

蘭「……」

モカ「仕方ないよ~。面白かったし~。でも、あの子面白いね~」

つぐみ「あの子って?」

モカ「一丈字くんって子~」

 

『さて、副賞ですが…』

飛鳥「え?」

 

「優勝した1年3組には副賞として、好きなガールズバンドのライブの特等席がゲットできます。どのバンドにしますか?」

「えっ…」

 4人が顔を合わせると、陽キャが

 

「おいお前ら!! パスパレにしろ!!」

「いや、Roseliaだろうが!!」

「ハロハピ!!」

「ちょっと、あんた達どういう事!?」

「アタシ達がいるのに!!」

 

 と、3組の陽キャたちが喧嘩をしだした。

 

飛鳥「……」

椿「ほっときなさいよ。人にやらせといてご褒美だけ横取りするとかマジないわ」

飛鳥「あ、すいません。辞退します」

 

「ええええええええええええええ!!!?」

 飛鳥の発言に皆が驚いた。

 

京「おいおい! 確か日向と椿の幼馴染がいるんじゃなかったか!?」

飛鳥「大丈夫だよ。そんな事で弦巻さんは怒ったりしないし、こういうのはフェアじゃないと。それでは失礼します」

 

 そう言って飛鳥達は自分たちの席に戻ってきた。陽キャたちは飛鳥を睨みつけてきたが、飛鳥達は視線で突っぱねた。

 

*******************

 

「おい、一丈字!!」

「?」

 

 3組の教室、陽キャたちが飛鳥にいちゃもんをつけに来た。

 

飛鳥「何か御用ですか?」

 すると陽キャの一人が飛鳥の胸ぐらをつかんだ。

 

「てめぇふざけんなよ!!」

「あれだけの事が出来るなら、何で言わなかったんだ!!」

飛鳥「聞かないんですもん」

 

 飛鳥が悪びれもなく言い放った。

 

京「おい! やめろよ!!」

椿「そうよ! アンタ達こそ面倒な事を人にやらせてどういうつもりよ!」

「うるせぇ!!」

「お前らも余計な事しやがって!!」

「こいつ一人を笑いものにするつもりだったのに!!」

 

 と、陽キャたちが切れていると教師がやってきた。

 

「おい、うるさいぞ。席に着け!」

 そう言うと、

椿「先生! こいつらが…」

「喧嘩両成敗! お前らも反省しろ!!」

 と、聞く耳を持たなかったので椿がブチ切れた。

 

飛鳥(あーあ…)

京(あの先生、死んだな…)

 椿の切れっぷりに飛鳥と京が困惑した。だが、飛鳥も超能力でスマホを起動して音声を録音していたのだ。

 

 その場は収まったが…。

 

椿「という事があったのよ」

こころ「まあ! なんて酷い先生なのかしら!」

椿「このままだと皆が笑顔じゃなくなるわ」

こころ「代えて貰いましょう!!」

日向「だめぇ~!!!!!!」

 

 椿がこころに密告して、日向が慌てて止めていた。

 

飛鳥「ハァ…」

京「すぐコレだよ…」

 飛鳥と京が呆れていると、はぐみと美咲がやってきた。

 

はぐみ「ねーねー。君達凄かったね!」

飛鳥「え?」

はぐみ「あ、北沢はぐみ! 1組だよ!」

美咲「奥沢美咲。こころのクラスメイトだよ。宜しく」

飛鳥「一丈字飛鳥です」

京「オレ、奈良川京! 宜しくな!!」

 

 

 と、飛鳥達がこころ達と仲良くなるはじまりの物語だった…。

 

 

おしまい

 



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第336話「Afterglowと勉強会!」

第191話と設定が違います。ご注意ください。



 

 ある日のバンドリ学園。来週から定期テストが行われることとなった。

 

飛鳥(まあ、心配ないと思うけど、ちゃんとやっとくか)

 

 飛鳥がそう考えていたが、

 

京「定期テストかよ…」

 

 飛鳥の親友である奈良川京が困惑した。というのも、あまり勉強は得意ではない。

 

飛鳥(一応京や日向もいるし、この2人にくっつけば角は立たないかな…)

 

 なんて考えていた飛鳥だったが、

 

「飛鳥く~ん」

飛鳥「?」

 

 飛鳥が声がした方を向くと、そこにはモカがいて、モカ以外にも蘭、巴、ひまり、つぐみもいた。

 

飛鳥「青葉さん」

モカ「来週のテストに向けて皆で勉強しようと思うんだけど、一緒にやらな~い?」

飛鳥「……」

 

 モカの言葉に飛鳥が考えると、

 

飛鳥「あ、すみません。実は京や日向を誘ってやるつもりなんだ…」

モカ「じゃあ奈良川くん達も来ていいよ~」

飛鳥「……」

 

 ちなみにモカは既に飛鳥の正体を知っているのだ…。

 

日向「本当にいいんですか?」

モカ「もっちろん~」

 

 こうして、飛鳥達はAfterglowと一緒に勉強会をすることになったわけだが…。

 

「一丈字と奈良川がAfterglowと勉強会するんだってよ!!?」

「マジか!!?」

「一丈字や奈良川がいいなら、オレ達も勉強会に参加したい!!」

「オレもオレも!!」

 

 と、男子生徒たちが騒ぎ始めたので、モカが飛鳥にアイコンタクトを送って超能力で大人しくさせた。

 

椿(…毎回大変ね。飛鳥も青葉さん達も)

 

 ちなみに椿は2組である。

 

*****************************

 

 そんなこんなで羽沢珈琲店で勉強会をすることになったのだが、男2人、女7人という状態に皆がガン見していた。

 

京「な、なんかすごく見られてるぞ…」

飛鳥「見当はつくけどね…」

 

 落ち着かない京に対し、飛鳥はすごく冷静だった。

 

「い、一丈字とあともう一人の奴…7人の美少女に囲まれて勉強大だとぉ…!?」

「良い匂いするんだろうなぁ…」

「畜生…! うらやましいぞぉ…!!」

「匂い嗅いでみたい…」

 

 遠巻きに男子生徒たちが遠くから見ていたが、匂いの話ばっかりしていた。すると椿が飛鳥の方を見て、アイコンタクトを送り、飛鳥がテレパシー回線を開いた。ちなみにこの回線を開くと飛鳥が意図した相手にテレパシーを送り、そのまま会話が出来る。ちなみに現在は椿のみである。

 

椿『何なのよこいつら…!!』

飛鳥『まあ…アレだな。ドラえもんでいうジャイアンとスネ夫のポジションだ。何もないならないでつまらないしな…』

椿『音楽アニメなんだから音楽で勝負しなさいよ!!』

飛鳥『いや、音楽関係ならこういう迷惑なファンもつきものだし、pixivは歌詞のせると怒られるから、色々難しいのよ…』

モカ「……」

 

 モカは飛鳥と椿がテレパシーで会話をしているのを悟り、飛鳥に対してアイコンタクトをした。

 

飛鳥『…どうしたの?』

モカ『いやー。本当に超能力って便利だな~と思って』

椿『あんたも大変よね…。こいつのトラブルに付き合わされて』

モカ『いやいや~。確かに大変なところもあるけど、原作では見られない蘭たちの可愛い一面が見られるから~』

飛鳥『原作とか言わない』

 

 そんなこんなで勉強会が進む中、ひまりが煮詰まっていた。

 

ひまり「う~ん…分からないなぁ」

飛鳥「どうされました?」

 

 ひまりの言葉に飛鳥が即座に反応した。

 

ひまり「あ、えっとね。ここ分かんないんだけど、分かる…?」

飛鳥「見してください」

 

 飛鳥はひまりから分からない問題を教えてもらった。

 

飛鳥「ああ、この問題はこの公式を使うんですよ…」

ひまり「ちょ、ちょっと待って!」

飛鳥「あ、はい」

 

 こうして飛鳥は淡々と問題の解説をしていったが、蘭・巴・つぐみは驚いたように見ていて、元から知っている京・日向・椿・モカの4人は安心したように見ていた。

 

飛鳥「といった感じですね」

ひまり「あ、分かった! ありがとう一丈字くん!」

飛鳥「いえいえ。もしかしたら出てくる可能性があるので、時間をおいて復習してみた方がいいかもしれませんね」

ひまり「うん!」

 

 そう言ってひまりは再び問題集に目を通すと、巴が不思議そうに飛鳥を見た。

 

巴「一丈字」

飛鳥「何です?」

巴「もしかして勉強得意なのか?」

飛鳥「普通ですね」

 

 飛鳥の言葉に椿は『嘘つけ』という顔をしたが、本当の事を話すと正体がバレるかもしれないので、あえて何も言わなかった。

 

飛鳥「頭いいのはこっちの2人ですよ」

日向「そ、そんな事は…」

椿「アンタ、あたしより成績良かったじゃない!! しかも学年トップだし!」

飛鳥「えー…」

 

 椿があっさりばらしたので、飛鳥は困惑すると、蘭たちは『やっぱりな』という顔をした。

 

モカ「で、ちなみに奈良川くんは~?」

京「話の流れからして聞かなくても分かるだろう。中の下だよ」

椿「いや、下の上ね」

京「いや、そこまで悪くねーよ!!」

 

 とまあ、男2人女7人がわちゃわちゃしているので、これがより男子生徒たちの劣情を誘った…。

 

「ゆ、ゆるさーん!!」

 

 男子生徒たちが騒ごうしたその時、モカと椿が飛鳥にアイコンタクトを送ると、飛鳥は困惑した様子で超能力を使い、男子生徒たちを大人しくさせた。

 

飛鳥『最近よく超能力使ってるなぁ…』

椿『いいのよ。これで』

モカ『まあ、ケーキとか食べてるときに、下ネタ聞きたくないしね~』

椿『…は?』

飛鳥『…そうだな』

 

 飛鳥がため息をつくと、椿が困惑していた。

 

椿『し、下ネタってどういう事よ?』

モカ『じゃあ明日聞いてみる~?』

椿『やっぱいい…』

 

 しかし、オチをつける為に聞くことにした。

 

********************

 

 翌日、バンドリ学園にて。

 

「一丈字! 奈良川! お前らAfterglowと可愛い姉妹と勉強したんだってな!」

「正直に吐けよ…。お前ら勉強会の後、あんな事やこんな事したんだろ!」

「座長権限とかで一緒に風呂入って、匂い嗅ぎまくったり、裸を見まくったんだろ!?」

「素っ裸でムカデ競争とかしたんだろ!? 体密着させて!! どうだった!! どうだたんだぁ!?」

 

 とまあ、公衆の面前だというのに男子生徒たちがそう騒ぎだして、椿はげんなりしていた。椿だけじゃなくて蘭、ひまり、巴、京も完全にドン引きしてたし、穏健な日向やつぐみですら、ちょっと引いていた。

 

モカ「いっつもこんな調子なんだよ…」

 

 モカも流石に気持ち悪くて、ドン引きした様子で椿に話しかけると、椿はもう何も言わなかった。

 

椿(これ…音楽アニメよね?)

 

 

おしまい

 



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第387話「水泳の授業が男女混合になった」

 

 

 それはある夏の事。バンドリ学園にも水泳の授業は存在していたのだが…。

 

「えー、今年の水泳の授業は男女混合です」

「おっしゃああああああああああああああああああああああ」

 

 1年2組の教室で男子たちが歓喜を上げて、女子が絶望した。

 

蘭「はぁ!? なんでよ!!」

ひまり「ちょっとこころちゃんに相談しよう!」

「あ、ちなみに弦巻も『皆一緒の方が楽しいわ』って言ってたぞ」

ひまり「そんなぁー!!!!!」

 

 蘭・ひまりを筆頭に女子たちは阿鼻叫喚だった。

 

椿「うそでしょ…」

モカ「あらまー」

 

*******

 

 一方、3組はというと…。

 

飛鳥「……」

京「まあ、オレ達は元から男女混合だったもんな」

日向「うん…」

 

 丁度近くの席だった3人が話をしていて、京の言葉に日向が相槌を打った。

 

飛鳥「日向は嫌じゃないの?」

日向「うーん…。飛鳥くんや京くんもいるから、特に嫌じゃないけど…」

 

 日向の言葉に飛鳥と京が困惑した。

 

飛鳥「ありがとう…」

京「椿はすごく嫌がるのにな…。あと、姉ちゃんも嫌がってた」

 

***************

 

 そんなこんなでカフェテリア。飛鳥達とAfterglowが会話をしていた。

 

蘭「最悪…」

ひまり「どうして男子なんかと…」

 

 嫌そうにしている蘭とひまりを見て、飛鳥と京は困惑していた。

 

つぐみ「ら、蘭ちゃん! ひまりちゃんも!」

巴「一丈字と奈良川が気を悪くしてるだろ! ごめんな2人とも」

 

 つぐみと巴が飛鳥と京に謝り、蘭とひまりを諫めた。

 

飛鳥「いや、美竹さんと上原さんのお気持ちは良く分かりますよ…」

京「やっぱり男子と一緒は嫌だよなぁ…」

椿「そりゃそうよ。ジロジロ見てくる男子がいるもん」

 

 椿は蘭とひまりの味方をした。

 

飛鳥「もうせめてね、そういう事をしない男子もいるって事も忘れないでほしいな」

京「そうだぜ」

椿「分かったわよ」

蘭「ホントに?」

 

 蘭がそう疑うと、

 

モカ「蘭。あんまりそう言う事言ってると、またお化け屋敷に連れていかれるよ~?」

蘭「ごめんなさい」

飛鳥「美竹さん!!?」

蘭「もうお化け屋敷は勘弁して頂けないでしょうか」

京「そ、そんなに嫌なのか…。気持ちは分かるけど」

 

 蘭の言葉に京が困惑した。

 

モカ「そういえば奈良川くんって、お化け屋敷はどうなの~?」

京「え、そ、そりゃあ…普通」

椿「結構ビビりよ」

京「そ、そんな事ねーし! お前程じゃねーよ!」

椿「はぁ!? 女子に対してそんな事言っていいと思ってんの!?」

飛鳥「やめろ二人とも! 他の生徒さんもいるんだぞ!」

 

 飛鳥がピシャリと注意すると、Afterglowの面々が驚き、飛鳥はそれに気づいたのか蘭たちを見て誤魔化すように笑った。

 

飛鳥「あ、すみません。つい昔の癖が…」

蘭「いや、一丈字って敬語しか喋らないイメージがあったから…」

ひまり「そういや中学からの同級生なんだよね…」

飛鳥「そうですね…」

 

 ひまりの言葉に飛鳥が苦笑いしたが、

 

椿「最初はアタシ達にも敬語だったのよ」

京「そういやそうだったな…」

飛鳥「…まあ、色々ありまして、ため口はもう相手を選んでます。かなりきつい喋り方だそうなので」

 

 そんな時だった。

 

「あら! 飛鳥達じゃないの!」

 

 こころ率いるハロー、ハッピーワールドがやってきた。

 

椿「げっ…」

日向「椿」

 

 椿はこころの事が若干苦手だったが、日向に諫められていた。

 

こころ「何の話をしてたの?」

飛鳥「えっとですね…」

こころ「あら、あたしにもそろそろため口で喋ってほしいわ?」

飛鳥「……」

 

 こころの言葉に飛鳥は困ったように視線をそらした。

 

日向「え、えっとね」

 

 日向が事情を説明した。

 

はぐみ「そうなんだ。はぐみもちょっと恥ずかしくて…////」

 

 はぐみも男子たちの前で水着姿になるのを恥ずかしがっていた。

 

花音「私もです…」

薫「私たちが魅力的だからそうなっても仕方ないと思うがね…」

 

 実を言うと薫もちょっと恥ずかしがっていた。

 

美咲「まあ、元々女子の出席率が悪いから別々にしてたけど、よく考えたらなんで授業ちゃんと出てない奴に合わせなきゃいけないんだって、元通りになっちゃったんですよね」

モカ「まあ、そう言われちゃうとこっちも何も言えないよね~」

 

 美咲の言葉にモカが苦笑いすると、今度はパスパレがやってきた。

 

彩「何の話してたの?」

モカ「いやー。今年の水泳の授業は男女混合だって話です」

彩「あー。そういやそうだね…」

千聖「うちの男子たちが盛り上がってたわ…」

日菜「2組もー」

麻弥「…そういや3組はなんか泣いてましたね。1組と2組が羨ましいって」

 

 麻弥の言葉に飛鳥は何とも言えない顔をしていた。

 

千聖「それはそうといい迷惑だわ。こっちも高校生なのだから配慮してほしいわよ」

彩「…でも、去年男女別々になって、3年生が色々やっちゃったよね」

千聖「ホントそれよ…!」

 

 千聖がこぶしを握って憤ると、飛鳥、京、日向の3人は何があったんだろうと困惑していた。

 

「どうしたの? 皆集まって」

 

 友希那、紗夜、リサ、燐子の4人がやってきた。

 

あこ『あこも電話で参加してるよー!!』

 

 燐子のスマホからあこの声が聞こえた。

 

あこ「そういや今年から男女混合になったんだよね!?」

モカ「あ、そういや中等部も?」

あこ「うん! 男子がすごく喜んでた…」

 

 あこの言葉に何とも言えない空気になっていて、飛鳥と京はいたたまれなくなった。

 

飛鳥「ああ、今年も何もなかったらいいなぁ」

「今年もって何!!?」

 

 その時だった。

 

「おーい! みんなー!!」

 

 ポピパがやってきたが、有咲だけ元気がなかった。

 

日向「ど、どうしたんですか? 市ケ谷さん」

有咲「いや…」

たえ「今年から水泳が男女一緒になったから、男子がいやらしい目で見てくるんじゃないか心配なんだって」

飛鳥「……」

 

 たえの言葉に飛鳥はどんよりした。

 

沙綾「…どうしたの?」

飛鳥「いえ、私もそろそろ対策を立てる必要が…」

「対策?」

飛鳥「冤罪対策」

 

 飛鳥の言葉に京、日向もどんよりすると、椿は静かに目を閉じた。

 

京「良く考えたらオレもそうだわ…」

椿「こんだけ女子に囲まれたら、そうね…」

 

 京や椿の言葉に皆が困惑した。

 

香澄「ど、どうしたの?」

飛鳥「中学の時に冤罪かけられそうになったんですよ。水泳中に女子の私物を盗んだんじゃないかって」

「え!?」

飛鳥「その時は鑑識の方にも来てもらって事なきを得たんですけど、これが普通だったら詰んでましたね」

 

 まず鑑識が来ることに対して突っ込みたいと思う一同だった。

 

京「日向と椿んちがすっごい顔利いてて良かったなぁ…」

飛鳥「全くだぜ…」

 

 飛鳥と京がどんよりすると、香澄達がいたたまれなくなった。彼女たちも見る限り、飛鳥は男子生徒達…自分たちのファンからいちゃもんをつけられていて、昔の話を聞いてさらに可哀そうだと思った。

 

飛鳥「私はもう敵が多いんですね。ワンピースのニコ・ロビン並みに」

「めっちゃ敵多いやん!!!」

 

 飛鳥の言葉に蘭やひまりは文句を言うのをやめようと決意した。

 

モカ「生きたい?」

飛鳥「生きたい」

「そこはざっくり!!」

 

 

 ちなみに予定通り水泳は男女混合だったという。

 

「……」

椿「コラ男子!! こっち見てんじゃないわよ!!」

「ゴメン。無理」

「こんなん見ない方が無理やろ!!!」

「お前らこそ、オレ達の方見てるじゃねーか!!」

「あ、言われてみればそうだ! だったら僕たちも見る権利があると思いまーす!」

 

 とまあ、男子たちの頭のおかしい態度を見て、椿はちょっと半泣きになりそうだった。

 

モカ「…飛鳥くんは毎回こんな事言われてるんだよ」

 

 そう言ってモカは椿の肩を抱いた。

 

 

おしまい

 



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第426話「Afterglowとプール!・1」



『友達とプール』

設定

2組:椿
3組:飛鳥、京、日向

*************************


 

 

 とある夏の事だった。

 

「いやー。あっついなー」

 

 京が教室でそう呟くと、近くの席にいた飛鳥と日向が反応した。

 

飛鳥「東京も関西とあまり変わんないんだな…」

日向「そ、そうだね…」

京「こういう時はどっか泳ぎに行きたいけど…」

飛鳥「この辺プールあったっけ?」

日向「確かトコナッツパークっていうテーマパークがあったよ?」

飛鳥「そうなんだ…」

 

 日向の言葉に飛鳥がそう反応すると、沈黙が起きた。

 

京「じゃあ今度そこ行こうぜ!」

飛鳥「日向はどうする?」

日向「私も行っていいの?」

飛鳥「うん」

京「決まりだな! それじゃ椿も誘おうぜ!」

日向「あの子には私から声をかけとくね」

 

 と、飛鳥達はプールに行くことにした。

 

*******************

 

 日向は椿にメールでプールに誘おうとしたが…。

 

椿『ゴメン。Afterglowの皆から遊びに誘われちゃってて…』

 

 と、返事が返ってきた。

 

日向「椿。Afterglowの皆と遊びに出かけるって…」

飛鳥「へー」

京「あいつもクラスにちゃんと馴染めてるんだなぁ」

日向「うん。そう言う訳だから3人で楽しんできてって」

飛鳥「そっか」

 

 その時だった。

 

「おーい。飛鳥く~ん」

 

 モカを筆頭にAfterglowと椿がやってきた。

 

飛鳥「青葉さん。それから椿も…」

椿「……」

 

 椿はちょっと困惑した表情だった。

 

飛鳥「まさか…」

モカ「そのまさかだよ~。今度の休み一緒に遊ばない~?」

飛鳥・京・日向「えっ」

 

 モカの言葉に3人が驚いた。

 

巴「急に押しかけて悪いな。まあ、3人が良かったらなんだけど…」

ひまり「モカが一丈字くん達も誘ったらどうかな~なんて…」

飛鳥「どうする?」

日向「わ、私はいいけど…」

京「どこで遊ぶんだよ?」

モカ「え? プールに決まってるじゃ~ん」

飛鳥・京・日向「!?」

 

 モカの言葉に3人が驚いた。

 

蘭「…元々ショッピングに出かける予定だったんだけど」

飛鳥「美竹さん。嫌がってませんか…?」

蘭「い、嫌がってないから…」

モカ「まあ、椿ちゃんとちゃんと仲良くなりたいって言うのもあるけど、どうせなら飛鳥くん達も一緒にいた方がいいかな~って」

 

 モカの言葉に飛鳥はモカなりに仲良くさせようと考えているのが感じ取れた。

 

飛鳥「…椿はどうするんだ?」

椿「いや、アタシは別にいいわよ。美竹さんが…」

蘭「ア、アタシも構わないよ…?」

飛鳥・モカ(思ったけどこの2人、本当に似た者同士だなぁ…)

椿「飛鳥?」

蘭「モカ…」

飛鳥・モカ(ホントそっくり)

椿「やめなさいよ!!」

蘭「何考えてるか分かってるんだよ!?」

巴「蘭も椿も落ち着けよ」

 

 こうして9人で出かけることになったのだが…。

 

「一丈字と奈良川が美女7人とプール&ショッピングだと!?」

「けしからん! 実にけしからん!!」

「邪魔してやるぅ~!!!!」

 

 とまあ、どこからか聞きつけたヤラカシ共が飛鳥達の妨害をしようとしたが、弦巻財団に阻止された。

 

飛鳥「…いつもすいません」

平三「いえ。これが我々の使命なので…」

 

 弦巻財団の黒服のチーフ的存在・平三に飛鳥は頭を下げた。

 

**************************

 

 そんなこんなで当日。トコナッツパーク付近に集合した飛鳥組とAfterglow。

 

京(じょ、女子が7人もいる…////)

 

 女子が7人もいる事に京は若干緊張していた。しかも私服も中々ハイレベルなものなので仕方がないのだが、飛鳥は平然としていた。

 

モカ「どう~? 可愛い女の子が7人もいて~」

飛鳥「どう?」

京「いや、お前に聞いてんだろ!/////」

モカ「二人に聞いてるんだよ~」

 

 モカは京を見て『可愛い』と思っていた。

 

椿「何よ。デレデレしちゃって」

飛鳥「そう見える?」

椿「見えるわよ」

飛鳥「そっか…」

つぐみ「ま、まあまあ。早く行こうよ」

 

 こうして9人はその場を移動したが、

 

「おいおい…Afterglowが男と一緒にいるぞ?」

「女7人って言ってたよなぁ? それじゃあ残りは男…」

「あんなガキどもにはもったいねぇ。オレ達が横取りしてやる!」

「何を横取りするって?」

「え…ぎゃああああああああああああああああ!!」

 

 飛鳥は隠れてみていたチャラ男達と警察を遠巻きに見て、呆れていた。

 

モカ「あ、やっぱりモカちゃん達を狙ってる男いた?」

飛鳥「ああ。いたよ…」

 

 飛鳥は困惑した様子で言い放つと、他のメンバーも心配そうにしていた。

 

飛鳥「あ、私が守りますので皆さんは楽しんでください」

京「も、勿論オレも守るぜ!?」

モカ「ありがと~」

椿「じゃあお言葉に甘えさせてもらうわね」

飛鳥「そうしてくれ。多分幸生さんから連絡来るだろうから」

椿「なんで!!?」

日向「椿。余計な事を言うのはやめなさい…」

 

*********************

 

 そんなこんなで男女に分かれて、水着に着替えた。

 

京「お前、ダイビングスーツなんだなぁ…」

飛鳥「肌がボロボロになるからね。でも最近の子供たちって上も着るんだなぁ」

京「それはオレも驚いたよ」

飛鳥「紫外線とかもあるもんね」

 

 そして飛鳥と京が一足先に出てきた。

 

飛鳥「これで何も起こらなきゃいいんだけどね…」

京「縁起でもない事言うなよ」

 

 数分後

 

「お待たせー」

飛鳥・京「!」

 

 女子たちがやってきて飛鳥と京が振り向くと、そこには水着姿のAfterglowと林姉妹がいた。

 

京「……/////」

飛鳥(あぁ…。なんか周りの男がジロジロ見てるわ…)

 

 京が同級生女子7人の水着姿にドギマギしていると、飛鳥は彼女たちの後ろにいる男たちがとてつもなくいやらしい目で見ていることに辟易していた。

 

日向「ど、どうしたの飛鳥くん?」

椿「まさか似合ってないとか言わないわよね?」

飛鳥「似合ってるけど、後ろを見てみな」

「え?」

 

 女子たちが後ろを向くと、いやらしい目で見ていた男子たちは約一名を除いていっせいに視線をそらした。

 

(普段は子連ればかりなのに、若い娘が7人も…たまんねぇ~!!!!)

 

 そんな感じで、女子たちは辟易していた。

 

蘭「こっち見てる…」

椿「気持ち悪いんだけど~!!!」

飛鳥「……」

 

 本当にこのプールは大丈夫なのかと飛鳥は不安に思っていた。

 

つづく

 



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第427話「Afterglowとプール・2」

 Afterglowとトコナッツパークに行くことになった飛鳥達。果たして、どんな事が待ち受けている事やら…。

 

「あのピンクのおねーちゃん。おっぱいでかい…」

「あの青い髪の子もだ…」

「ていうか美女が8人もいる…」

「あの茶髪は一体何者なんだ…!?」

 

飛鳥「こんな事が待ち受けてます」

椿「ちょっと待って。アンタも女と思われてるわよ」

飛鳥「もういいよ。いざとなれば全部京に任せるさ」

京「やけくそになるなぁ!!」

 

***********

 

ひまり「あ、そうだ! 泳ぐ前に写真撮ろうよ! SNSには上げないからさ!」

巴「おっ! いいな!」

飛鳥「あ、それでしたら私写真撮りましょうか?」

巴「じゃあ交代交代な!」

 

 と、9人で写真を撮る事となったが…。

 

飛鳥「はーい。笑って笑ってー」

 

 飛鳥が最初写真を撮る事となったのだが、京と女子7人で撮る事となり、ハーレム状態だった。京はガチガチになっていた。

 

椿「ちょっと! 何照れてんのよ!///」

京「て、照れてねーし!////」

モカ「分かるよ~。だって全員美少女だも~ん」

飛鳥「はーい。撮りますよ~」

 

 と、飛鳥が写真を撮ったが、京はガチガチのままだった。

 

日向「今度は私が撮るね」

飛鳥「ありがとう」

 

 飛鳥がそう言うと、Afterglowが不思議そうにしていた。

 

モカ「…日向ちゃんにはため口なんだね~」

飛鳥「そうですね」

モカ「奈良川くんがため口なんだから良いんじゃない?」

飛鳥「結構荒っぽいって言われるんですよ」

椿「二人とも。カメラ見て!」

モカ「はーい」

 

 と、写真を撮ったその時だった。

 

「ねえお姉ちゃん。オレ達とも写真撮ろうよ」

 

 如何にもチャラそうな男二人が日向に迫ってきたが、飛鳥が超能力を使ってすぐに追い払った。

 

椿『…良かったの?』

飛鳥『良いんだよ。幸生さんに殺されるんだぞ。そしてお前にもな』

椿『そうだけど…』

飛鳥『じゃあ猶更だよ』

 

 そしてその様子をモカが苦笑いしてみていた。

 

**************

 

モカ「あ、そうそう~。日焼け止め塗らなきゃ~」

つぐみ「あ、言われてみれば…」

日向「今日日差しが強いもんね…ごめん飛鳥くん、京くん。ちょっと待って貰っていい?」

飛鳥「いいけど…」

椿「ていうかあんた達は塗らなくても大丈夫なの…って、大丈夫か」

京「いや、どういう意味だよ」

モカ「あ、そうだ~。折角だから日焼け止め塗ってみる~?」

飛鳥「どのメーカーを使ってるんですか?」

モカ「おー。引っかからなかったね~」

飛鳥「そうだろうと思いましたよ」

日向「え、どういう事?」

飛鳥「いや。日焼け止め塗ってみるってオレと京に聞いたじゃん。これ聞いて日向はオレと京のどちらかが青葉さんに日焼け止めを塗るっていう話に聞こえた?」

日向「あ、言われてみれば聞こえた…」

飛鳥「で、ここでオレが青葉さんに日焼け止めを塗ってもいいの? って聞いたら…後は分かるよね?」

モカ「うふふ~。モカちゃんジョークでーす」

飛鳥「もう勘弁してくださいよ。これ以上敵増えるの嫌ですよ私」

 

 飛鳥が困惑しながらツッコミを入れると、つぐみや日向が苦笑いした。

 

 そして女子たちは日焼け止めを塗った。

 

京「お前凄いな…」

飛鳥「もう慣れたよ。相変わらず心臓に悪いけど」

モカ「ごめんて」

 

********

 

モカ「さて、オイルを塗ったしアトラクションまわろっか~」

つぐみ「確かここアトラクションすごく多かったよね…」

飛鳥「人気のあるアトラクションに乗るんだったら、今のうちに優先パスを取っといた方がいいかもしれませんね」

京「え、そんなのがあるのか!?」

飛鳥「パンフレットにはそう書いてあったけど…」

つぐみ「うん。確かにあるよ! ウォータースライダーとかは優先パスがあるって!」

巴「それだったら早速買いに行こうぜ! アタシどうしても乗りたいんだよ!」

 

 そう言って巴が急かそうとする。

 

飛鳥「そんなに好きなんですか?」

巴「というより、此間家族と言ったときには乗れなくてさ…」

飛鳥「あ、そういう事でしたか」

つぐみ「他に行きたい所はある?」

モカ「モカちゃんは温泉プールとかがいいな~」

ひまり「モカってそういうの好きだよね…」

飛鳥「まあ、温水だからあまり人もいなさそうだし、空いてる時間に行けば良いのではないでしょうか」

「さんせー!!」

 

 と、こうして本格的にプールで遊ぶこととなったのだが…。

 

***************

 

ひまり「あ、その前にショッピングコーナー見て回ろうよ!」

京「か、買い物?」

モカ「京くん。女の子は買い物が大好きなんだよ~」

ひまり「あ、ご、ごめんね!?」

京「いや、別にいいんだけど、確かに買い物好きだよな…」

巴「まあ、沢山あった方が色々遊べるからな! 行こうぜ!」

 

 こうして9人がショッピングコーナーに移動しようとしたが、飛鳥と日向が一番後ろを歩いていた。

 

日向「…飛鳥くん」

飛鳥「分かってる。結構な数だ。場合によれば…」

モカ「何の話してるの~?」

飛鳥「!?」

日向「ひゃっ!」

 

 モカが突然話しかけてきた。

 

モカ「もしかして例の打ち合わせ~?」

飛鳥「…に近い感じだな」

モカ「モカちゃんにも説明して~。人数は多い方がいいでしょ?」

日向「……」

 

*****************

 

 ショッピングコーナー。滅茶苦茶盛り上がっていた。

 

巴「この水鉄砲! カッコ良くないか!?」

京「お、おう…」

 

 巴が水鉄砲を見せると、京が驚いていた。

 

巴「どうした?」

モカ「いやー。トモちんが思った以上に男らしくてびっくりしてるんだよ~」

京「いやー。何というか…珍しいななんて…」

椿「まあ、確かに宇田川さんみたいな人ってうちにはあんまりいないしねー」

飛鳥「……」

 

 椿の言葉に飛鳥はある人物を思い浮かべた。

 

『え、ショッピング? 必要な時に買いに行けばいいでしょ? 早く泳ぎに行きましょ!』

 

飛鳥(いたよ…一人…)

 

 年上の幼馴染である大空未来の事を思い出した飛鳥だったが、彼女もどっちかというと志向が男子よりだったので、困惑していた。

 

巴「そんなに珍しいか?」

モカ「まあ、そんなトモちんにも可愛い所があってだね」

巴「待てモカ。何を言うつもりだ」

モカ「実はオバケが…」

巴「わー!! そういう事言わなくていいんだよー!!!」

 

 巴が思わずモカの口をふさいだが、飛鳥達は何を言おうとしていたのかハッキリと分かってしまった。

 

ひまり「まあ、それはそうとこのサングラスとかどうかな? 大人っぽく感じるんじゃない?」

 

 と、ひまりがサングラスを見せた。

 

ひまり「デッキチェアに座って写真撮ったら十分大人っぽく見えない?」

つぐみ「見える見える!」

ひまり「あとで写真また撮ろう!」

 

 と、女子たちが買い物で大いに盛り上がっていた。

 

京「本当に買い物好きだよなぁ…女子って」

飛鳥「逆もまた然りだよ」

 

 

 買い物が好きな女子もいれば、そうでもない女子もいる。世界の広さに飛鳥は何も言えずにいた。

 

 

つづく

 



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第428話「Afterglowとプール・3」

 

 そんなこんなで買い物が終わり、写真撮影が行われた。

 

「おねーちゃん達、今ヒマ? ヒマだよね?」

 

 案の定チャラ男軍団がやってきて、写真撮影していたモカやひまりに話しかけた。どう見ても女にだらしなさそうな男数人である。

 

「うっひょー。おっぱいでけぇ!」

「中々の上玉じゃん」

「ねえねえ。オレ達と遊ぼうよぉ」

 

 すると飛鳥と日向がアイコンタクトを取った。

 

ひまり「な、何ですかあなた達!」

モカ「ナンパですか~? でももう間に合ってますんで~」

 

「ああ。もしかしてあの茶髪の男?」

「あんなクソガキよりオレ達にしなって!」

「おい陰キャくん。オレ達がこの子達遊ぶから帰ってくれよ」

「帰らないと…どうなるか分かってるよなぁ?」

 

 と、陽キャ軍団が京に対して襲い掛かろうとしたが、京は動じなかった。

 

京「オレは陰キャじゃねーし! モカ達が嫌がってるだろ!」

「あぁ!?」

「てめぇ、殴られてぇようだな?」

「陰キャがでかい顔してんじゃねーよ!!」

 

 と、チャラ男達が京に因縁をつけようとしたが飛鳥が前に出た。

 

「な、何だよ!」

飛鳥「私たちはあなた達よりも彼と遊びたいんです。お引き取り願えますか?」

 

 飛鳥が笑顔でそう話しかけると、

 

「そう言うなよ姉ちゃん」

「そんなクソガキよりもオレ達と遊んだほうが楽しいぜ?」

 

 そう言ってチャラ男たちは飛鳥に対して近づいたが、飛鳥の体に触れると股間がオスの状態になっていた。だが、飛鳥は全く動じることはなかった。

 

飛鳥「いやいや、初対面の人間に対してクソガキ呼ばわりするような常識のない人と遊びたくないですよ。こっちも常識がないと思われちゃうじゃないですか~」

 

 飛鳥は女になりきってチャラ男達を馬鹿にすると、蘭やモカあたりが噴出した。

 

「な、何だと!?」

「女だからって調子に乗りやがって!」

「この野郎!」

 

 そう言ってチャラ男の人が飛鳥に殴りかかろうとするが、飛鳥は簡単に受け止めた。

 

「!」

飛鳥「見た感じ、格闘技やってそうな感じですが…。この程度の攻撃、なんてことはありませんよ?」

「こ、このお!!」

 

 チャラ男がケリを入れようとしたが、それも簡単に受け止めた。

 

飛鳥「これ以上何もしない事をお勧めしますよ」

「な、何だと!?」

「女にここまでなめられて、引き下がれるか!!」

飛鳥「ほう。このご時世に女を見下すとは中々良い根性してますね。ですが後ろをごらんなさい?」

チャラ男「な、何!?」

 

 チャラ男達が後ろを振り向くと、そこには何事かと集まったギャラリーがいて、老若男女問わずいた。

 

飛鳥「さて、ここで手を出せば一気に犯罪者の仲間入りですよ。如何なされますか? お兄さんたち」

「ぐ、ぐう…!!」

「チッ! 覚えてろよ! 行こうぜ!」

 

 そう言ってチャラ男達が去ろうとしたが、

 

「じゃあお兄さんたち。ちょっと署まで来てね」

「は!?」

 

 突如頭の悪そうな男性が現れて、チャラ男達を捕まえようとした。

 

「なんだてめえ!」

「やんのか!」

「やるも何も僕は市民の安全を守る警察官ですよ? 逆らうなら公務執行妨害で逮捕しますよ?」

「ひ、ひぃいいいい~~~~~~~~!!!」

 

 と、チャラ男達は警察官に連行されていき、飛鳥達は唖然としていた。

 

飛鳥「日向。一応あれは取っといて…」

日向「う、うん…」

 

******************

 

飛鳥「まあ、ウォータースライダーの時間までサーフィンで遊ぶことになりましたが…」

モカ「飛鳥くん上手~」

飛鳥「君もね…」

巴「やっぱ楽しいな!」

 

 飛鳥、巴、モカが見事にサーフィンを成功させていた。

 

飛鳥(そういや中学の時にエアライドを完成させるために、サーフィンの修業したっけ…)

 

 エアライド。飛鳥の超能力の一種であり、風で作ったボートに乗って、上空を自由に駆け巡れるのだ。ちなみに普通に空も飛べるが、全身を使うためエアライドを使った方が両手を自由に使えるのだ。

 

ひまり「巴は分かってたけど、モカと一丈字くんも凄いね~」

椿「まあ、飛鳥は天才だからね…」

モカ「モカちゃんも天才で~す」

蘭「あーはいはい…」

 

 京、日向、椿、蘭、ひまり、つぐみの6人が見守っていたが、京は女子5人に囲まれていて、また緊張していた。

 

飛鳥(なんか凄い光景だな…)

モカ(飛鳥くんはその凄い光景にいつもいるでしょ~?)

飛鳥(まあね…って、心を読むんじゃないよ)

 

***************

 

 そんなこんなでお昼の時間になった。

 

蘭「巴…プールに来てもとんこつラーメン食べるの…?」

巴「え? おかしいか?」

京「割と暑いぞ…?」

 

 巴が豚骨ラーメンを頼んだので皆が驚いていた。

 

モカ「ま~いつもと違う所で食べるのはまた別のおいしさがあるんだよ~」

ひまり「モカもパン食べてるし…」

蘭「でも何といっても一番ツッコミどころがあるのは…」

 

 蘭が飛鳥の焼きそばを見たが、どう考えても量が多すぎるのだ。

 

飛鳥「あ、すいません。結構サービスしてくれたみたいで…」

ひまり「一丈字くんって結構大食いなの…?」

椿「そうよ。見た目の割に結構食べるのよ」

ひまり「でも、結構体細くない…?」

 

 ひまりがじっと飛鳥の体を見たが…。

 

蘭「ひまり。ちょっと目つきがやらしいよ」

モカ「逆セクハラ~」

ひまり「うええっ!!? そ、そういうつもりじゃないってば!!」

飛鳥「あー…気にしないでください」

 

 ひまりがものすごく慌てていると、飛鳥が苦笑いした。

 

モカ「じゃあ飛鳥くんもひーちゃんの体をじっくり…」

飛鳥「あなたは私を社会的に抹殺するおつもりですか」

椿「見たらいいじゃない」

ひまり「ダメだから!!//////」

日向「椿!!」

 

 と、冗談を言い合いながら食事を進めていった。

 

「あ、あれ一丈字とAfterglowじゃね…?」

「ホントだ!」

「許せねぇ!!」

 

 

つづく

 



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第429話「Afterglowとプール・4」

 

 

 いよいよウォータースライダーの時間がやってきた。

 

つぐみ「あ、そういえば9人いるから二手に分かれないと…」

 

 そう、ウォータースライダーの定員は5名までなのだ。

 

京「まあ、Afterglowとオレ達で分ければ簡単に済むと思うけど…」

モカ「え~。折角だからバラバラにしてみようよ」

ひまり「さんせー!」

飛鳥「本当によろしいんですか? 男子がいるのはやっぱり嫌とかありません?」

蘭「そこまで気を遣わなくていいから…」

日向「椿」

椿「いや、別に嫌って言ってないでしょ!!」

ひまり「3グループで予約したから、くじで決めよう!」

 

 こうしてくじ引きの結果…

 

Aグループ:京、つぐみ、椿

 

つぐみ「よ、宜しくね…」

京「宜しくな!」

椿「鼻の下伸ばすんじゃないわよ」

京「だから伸ばさねーって言ってんだろ!」

 

Bグループ:モカ、ひまり、巴

 

モカ「おー。いつものメンバーだ」

ひまり「という事は…」

 

Cグループ:飛鳥、日向、蘭

 

飛鳥「よろしくお願いします」

日向「よ、宜しくね?」

蘭「う、うん…宜しく…」

巴「蘭―。ちゃんと仲良くやれよー」

蘭「わ、分かってる!」

 

 そんなこんなでウォータースライダーを愉しんだ9人。

 

 Aグループ

 

京「おわああああ~!!!」

椿・つぐみ「きゃー!!!」

 

 Aグループは普通に楽しみ…。

 

 Bグループ

 

ひまり「もうやだぁ~!!」

巴「ちょ、ひまり! くっつくなぁ!」

モカ「いつもの風景~」

 

 そしてCグループ

 

飛鳥「美竹さん! 大丈夫ですか!?」

蘭「あ、あたしは大丈夫…」

日向「でも最後急降下だって!」

蘭「えっ…」

飛鳥「日向! 美竹さんを頼む!」

日向「分かった!」

蘭「えっ…きゃああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 と、こんな感じだった。

 

**********************

 

ひまり「いや~! 楽しかった! あと3回くらいは回りたいかも!」

 

 全員が合流してひまりがウォータースライダーの感想を述べていた。

 

巴「良く言うよ。あんだけアタシに泣きついてたくせに…」

ひまり「いや、あれはなんというかその…1回やったら慣れちゃったっていうか!」

 

 と、ひまりが誤魔化すように笑った。

 

モカ「つぐの所はどうだった~?」

つぐみ「えっと…私は何もできなかったかな」

京「もう3人でずっと騒いでたよ」

椿「全くもう。あんたはしっかりしなさいよね!」

京「へーへー。1番騒いでたくせに」

椿「何ですって!!」

日向「やめなさい椿!」

椿「なんであたしだけ…」

飛鳥「まあ、落ち着けよ」

 

 飛鳥がそう言うと、蘭がじっと飛鳥を見つめていた。

 

飛鳥「どうされました?」

モカ「あ、そういや蘭はどうだった?」

蘭「いや…最後日向さんにあたしの事を頼むって言ってたの、なんでだろうって」

飛鳥「ああ。アレですか?」

 

 蘭の言葉に飛鳥が苦笑いした。

 

ひまり「え、何かあったの?」

モカ「蘭、ちょっと怖かったんじゃない?」

蘭「そ、そんな事ないから…」

飛鳥「どうやら下世話だったようですね。申し訳ございません」

蘭「それはいいとして、どうして人にやらせたの?」

飛鳥「同じ女性の方がいいかなって思っただけですよ。それとも、もし本当の事を話していたら、私にエスコートさせて頂けたんですか?」

 

 飛鳥の言葉に蘭が顔を真っ赤にした。

 

蘭「…ダメ。絶対にさせないから//////」

飛鳥「そうですか」

 

 飛鳥が苦笑いすると、他の女子達も頬を染めていた。

 

飛鳥「私…何か変な事言いましたか?」

椿「アンタねぇ…そういう恥ずかしい事を急に言うのやめろって前にも言ったでしょ!/////」

飛鳥「え、そんなに恥ずかしかった?」

巴「いや、エスコートって言葉…こんな所で出るとは思ってなかったからさ…////」

ひまり「な、何かちょっと照れくさいなーって…あははは…」

 

 日向とつぐみも苦笑いしていると、飛鳥も困惑した。

 

飛鳥(まあ、好感度下がったっぽいけど、非常事態に大人しく距離を取ってくれそうだから、まあそれはそれでいいかな)

 

 そんな時だった。

 

「それだったらオレ達にもエスコートさせてくれよぉ」

「!?」

 

 何と言う事だろう。バンドリ学園の男子生徒たちがやってきたが、如何にも問題を起こしそうな面々ばかりだった。

 

飛鳥「あれ…?」

モカ「うちの学校の人たちだ」

椿「さてはつけてきたわね!」

「違うよぉ。偶然ここに遊びに来てた奴が教えてくれて、来てやっただけの話だよ!」

飛鳥「え、そこまでやります…?」

椿「何というか下心見え見えで、本当に女子にモテる気あるの?」

「う、うるさぁい!!」

「とにかく一丈字と奈良川は、女子を置いてとっとと帰れ!」

京「なっ! 何無茶苦茶な事言ってんだよ!」

「黙れ! 先輩の言う事が逆らえないのか!」

「従わないと、今度の登校日酷い目に遭わせるぞ!」

飛鳥「あー。私たちがいない間に女子の私物をカバンの中に入れて、冤罪ふっかけるとか?」

「それでもいいんだぞ?」

飛鳥「って、そういう事周りの人間にバラしてどうすんだ」

モカ「私物ってもしかして、モカちゃん達Afterglowの誰かの下着とかじゃないよね~?」

ひまり「モ、モカ!」

「それはない!」

「一丈字のカバンに入れるくらいなら、オレ達が持ち帰る!!」

「えぇぇぇえ…」

 

 偉そうに言うヤラカシに対し、飛鳥達はドン引きしていた。何故そう言う事を自信満々に言えるのか謎で仕方なかったからだ。

 

 だが、この時モカが録音していたため、勝ちは確定するのだが…。

 

「とにかく一丈字と奈良川は帰れよ!!」

 

 と、無理やり飛鳥と京を返そうとして、飛鳥の体に触れると

 

飛鳥「キャー! 痴漢よー!!」

「!!?」

 

 飛鳥が女言葉で叫ぶと、周囲の人間が振り向いた。

 

「何だと!? 痴漢!!?」

「ヤダー…」

「ママー。痴漢ってなーにー?」

「見ちゃいけません!!」

 

 と、2組のクラスメイト達が青ざめた。

 

「て、てめぇ! なんてことしてくれたんだよ!!」

「今すぐ取り消せ!!」

 

 するとプールの監視員がやってきたが、とてつもなく屈強だった。

 

「どうされました?」

「い、いや! 何でもないんですよ!」

「このオカマがふざけて…」

 

 するとモカが無言で録音したボイスを再生させた。

 

『私物ってもしかして、モカちゃん達Afterglowの誰かの下着とかじゃないよね~?」

『モ、モカ!』

『それはない!」

『一丈字のカバンに入れるくらいなら、オレ達が持ち帰る!!」

 

 再生させたボイスにクラスメイト達は青ざめた。

 

モカ「この人たち、あたし達の下着を盗もうとしてました~」

「なあっ!」

「モカちゃん!!」

 

「な、何て卑劣な犯罪を…! おい!!」

「おう!!」

「この不届き者を連れて行くのだ!!」

「ちょ、ちょっと待って…あああああああああああああああああああ!!!!」

「一丈字と奈良川ばっかりずるいぞぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「オレ達にも美少女との戯れをぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「おっぱい見たい…」

 

 と、クラスメイト達は連行されていった。

 

飛鳥「青葉さん…」

モカ「それはそうと飛鳥くん…。さっきの女言葉…wwwww」

飛鳥「もー。何も言いません」

 

 

つづく

 



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第430話「Afterglowとプール!・完結」

 

 前回までのあらすじ

 

 2組のクラスメイト達が飛鳥達の邪魔をしようとしたが、飛鳥とモカの容赦ない連係プレーにより撃退された。

 

椿「アンタ達…」

飛鳥「オレ一人だったら、まだまともなやり方でやってたんだけどね…」

モカ「どうせすぐに帰ってくるでしょ~?」

蘭「もう帰ってこなくていいんだけど…」

つぐみ「……」

 

***********

 

 そしてこの後もプール遊びを楽しんだ飛鳥達。

 

『ついに決勝戦! モカちゃんずの登場でーす!』

 

 京・日向・モカ・巴・ひまりが5人1組でチームを組んで、マリンスポーツを行ったり…。

 

椿「ていうかモカちゃんずって何」

飛鳥「ドラえもんズみたい…」

つぐみ「そういえば昔あったね…」

蘭「全く…」

 

 ちなみに飛鳥は椿たちをガードしないといけない為、不参加だった。実際に観客席に移動した時も椿たちに声をかけようと男たちが近づこうとしていたが、飛鳥が超能力でガードしていた。

 

(クソッ! あの女子4人組はどこ行った!)

(あのダイビングスーツ着てる子がタイプなのに!)

(ていうか女子4人とペア組んでるあの茶髪の男一体何者だよ!)

(あんなクソガキにも負けてるのかオレはぁ…!)

 

飛鳥「……」

 

 色々言いたい事はあったが、飛鳥は何とか平和にやり過ごすのに必死だった。

 

 一方、京はというと…

 

「死ねぇー!!!」

「女子4人とペア組みやがってー!!」

京「なんかオレばっかり狙われてるんだけど!!!」

 

 対戦相手の男子たちから執拗に狙われていた…。

 

椿「コラー!! しっかりしろー!!!」

 

 椿が応援すると、つぐみは苦笑いして飛鳥と蘭が困惑していた。

 

日向「ひまりさん! 巴さん! モカさん! 皆京くんを狙ってるから…」

モカ「オッケー。その隙を狙っちゃおう!」

ひまり「ありがとう奈良川くん!」

 

 京のアシスト(?)によって、優勝した。

 

「ああぁぁぁぁぁん♥」

「もっとかけてぇえええ♥」

 

 対戦相手がものすごくドMで飛鳥達がドン引きしていたが…。

 

椿「本当に何なのよ…」

飛鳥「まあ…それだけ青葉さん達が魅力的って事で良いんじゃないかな…」

蘭「だから恥ずかしい事言うの禁止!!/////」

飛鳥「あ、すいません」

 

******************

 

 そして夜のステージ…

 

ひまり「いやー! 今日は沢山遊び通したね~!」

巴「そうだな!」

 

 水上ステージが見えるレストランで9人が食事をしていて、ひまりや巴は満足そうにしていた。

 

蘭「途中邪魔が入ったのはアレだけど…」

モカ「まあまあ~。結局飛鳥くん達が何とかしてくれたからいいじゃ~ん」

 

 モカの言葉に飛鳥達は苦笑いしたが、飛鳥がある事を思い出した。

 

飛鳥「そういえばショッピングは良かったんですか?」

モカ「また今度~。あ、でもまたボディガードお願いしようかな~」

巴「モカ! 流石に迷惑だろ!」

椿「いいわよ。どうせ暇だし」

飛鳥「暇ではないんだけどね…」

 

 そんな時、ステージがはじまった。

 

ひまり「うわ~!! 綺麗~!!!」

つぐみ「そうだね…!」

 

 水のステージに皆心を奪われていた。飛鳥はそんな彼女を見て、やっと自分の仕事が終わると一安心した。

 

日向「お疲れ様。飛鳥くん」

飛鳥「ありがとう…」

 

 しかし、まだ仕事は終わらなかった。

 

飛鳥・日向「え」

 

*****************

 

「本日の特別ステージなのですが、ボーカルが急遽来られなくなったため、カラオケ大会に変更いたします!」

飛鳥「……」

 

 かなり苦しい事になっていた。

 

「さあ! どなたかいらっしゃいませんか!」

 

 なんて急に言われてもいる筈がなかった。

 

椿「…今こそAfterglowの出番じゃないの?」

蘭「えっ、そんな急に言われても…」

ひまり「楽器持ってないよ?」

モカ「……」

 

 するとモカが飛鳥の方をじっと見ていた。

 

飛鳥「どうしたんですか?」

モカ「いやあ、ここはもうびしっと決めるしかないでしょー」

飛鳥「え、私が行くんですか?」

 

 しかし、他の客は誰も手を上げず、係員は困っていた。

 

飛鳥「えー。じゃあ行きましょうか」

モカ「おー」

 

 そう言って飛鳥が手を上げた。

 

「おっ! いましたぁ! どうぞおあがりください! 皆さま! 大きな拍手をお送りください!!」

 

 と、周りの客も拍手をしたが、飛鳥がある事に気づいた。

 

「お名前は!?」

飛鳥「あ、一丈字飛鳥と申します」

「一丈字さんですか。変わった苗字ですね!」

飛鳥「良く言われます。少しお伺いしたい事があるのですが、後ろにあるピアノは…」

「ああ。実は今回の特別ステージで使う予定だったのですが…。もしかしてピアノを演奏して頂けるのですか!?」

飛鳥「え、弾かせて頂けるんですか?」

「勿論! 何なら他の楽器もありますよ!? ギターとかベースとかドラムとかキーボートとか…」

 

 司会の言葉に飛鳥は一瞬モカの方を見た。

 

飛鳥(これ…Afterglowでも良かったんじゃ…)

モカ(頑張って~)

 

飛鳥「あ、トランペットありますか?」

司会「ありますけど…」

「あるの!!? その前にあるの!!?」

飛鳥「ありがとうございます。トランペットとピアノをお借りします」

 

****************

 

飛鳥「えー。という訳で皆さん改めましてこんばんは。素敵な夜をお過ごしでしょうか」

 

 飛鳥が流ちょうな喋りで観客に問いかける。

 

蘭「な、何か凄い手慣れてない…?」

椿「こういう事、今まで結構やってきたのよ…」

 

飛鳥「一緒に来ていた友人から背中を押され、ステージに立たせて頂きました私が披露するのはトランペットとピアノを同時に演奏するというパフォーマンスですね。まあ、ご存じの方はご存じかと思いますが、プロの芸人さんにいらっしゃいますね。今回はそのアレンジです。それでは早速始めさせていただきます」

 

 すると飛鳥が右手でピアノを演奏し始めた。

 

ひまり「夏祭り!!」

京「来るぞ…」

巴・つぐみ「え?」

 

飛鳥「夏祭りを楽しむ、ルパン三世、ガールズバンド『Afterglow』、そして…ゲゲゲの鬼太郎」

アフグロ「!!?」

 

 そして飛鳥がトランペットも演奏し始めると、一気に演奏が盛り上がって、ルパン三世のテーマも演奏し始めた。これを聞いてモカ以外のアフグロメンバーが絶句していた。京、日向、椿はそんな彼女たちを見て苦笑いしていた。

 

 そしてサビに入ると、Afterglowの曲を演奏し始めた。

 

つぐみ「Hey-day狂騒曲!!?」

蘭「ウソでしょ!!?」

巴「道理で春の仮装大会で負ける訳だ…」

ひまり「こんなの勝てる訳ないよ~!!!」

 

 ひまりがそう叫ぶと、

 

京「しかもあの時のシナリオ考えたの、飛鳥なんだぜ…」

椿「多分あいつ一人でいいんじゃないかしら…」

 

 パフォーマンスが終わると、大歓声が上がった。

 

司会「いやー。凄かったです!」

飛鳥「ありがとうございます」

司会「ですがまだお時間はたっぷりありますよ?」

 

 何と言う事だろう。司会者が飛鳥に無茶ぶりをお願いしたのだ。

 

飛鳥「え? まだあるんですか? お客さんが飽きてなければ良いのですが…」

 

 すると大歓声が上がった。

 

飛鳥「あ、大丈夫だそうですね。それじゃ次は『ダイヤモンドを探しに行くビートルズ、ウルフルズ、秋川雅史』

 

 そしてまた飛鳥が演奏を始め、そのままリサイタルが行われた。

 

*********************

 

「本当に申し訳ございませんお客様。こちらの不手際なのに…」

飛鳥「あ、いえいえ…」

 

 終了後、トコナッツパークのお偉いさんから謝罪が来たのだ。というのも、ボーカリストが来れなくなったのは担当者の連絡ミスによるものだったのだ。頭を下げられた飛鳥は困惑していた。

 

「お詫びと言っては何ですが、こちらをお受け取り下さい」

飛鳥「フリーパス!!?」

 

 なんと、8月末まで無料で遊べるフリーパスを全員分貰った。

 

「お食事などは流石に別料金ですが…。8月末までこちらのトコナッツパークで自由にお楽しみいただけます」

飛鳥「いや、いいんですか!?」

「構いませんとも! 実は上からお客様たちに対して、丁寧なお礼をするように厳命を受け、逃げられるようなことがあれば私の次のボーナスが飛んでしまうのです!」

飛鳥「あ、ああ…。そういう事だったんですね…」

 

 確かにこの支配人の事を考えたら受け取らないと可哀そうだと飛鳥は思った。

 

「貴様らは罰として給料半分カットだ!」

「そ、そんなぁ!!」

「当たり前だ!! 一歩間違えればトコナッツパークの運営にも関わっていたんだぞ! 寧ろこれくらいで済んだだけ有難いと思え!!」

 

 とまあ、半ば修羅場になったが無事に一日を終えた。

 

*******************

 

モカ「いや~。楽しかったね~」

飛鳥「そうだね…」

 

 電車の中でモカが飛鳥にそう話しかけると、飛鳥は困惑していた。というのも、飛鳥が数曲披露した後、対抗意識を燃やした蘭がモカ達を連れてAfterglowのミニライブを披露していたのだが、時間が来るまで飛鳥との紅白歌合戦みたいな感じになってしまったのだ(お客さんには大受けした)。

 

飛鳥「お客さんがノリ良かったのが一番の救いだったなぁ…。一歩間違えたらオレのパートは放送事故だよ」

日向「そ、そんな事ないよ…」

飛鳥「しかし…京達はすっかり寝ちまったなぁ」

日向「そうだね…」

モカ「うふふふふwwwwwww」

 

 というのも、京が椿、蘭に挟まれて眠っていたのだ。そして向かいでは巴、ひまり、つぐみが寝ていた。

 

飛鳥「これ起きたらどうなるんだろう…」

日向「う、うーん…/////」

モカ「いいんじゃなーい? うふふふふwwwww」

飛鳥「楽しそうだね…」

 

 モカがこれでもかというほどニヤニヤしていたので、飛鳥が困惑していた。

 

飛鳥「まあ、何ともなくて良かったけど…疲れた」

日向「お、お疲れ様…」

 

 こうして、飛鳥一行とAfterglowのプール遊びは幕を閉じた。

 

 

 後日…

 

「聞いたぞ一丈字!! お前Afterglowとプール行っただけじゃなくて、ライブもしたんだってなぁ!」

「いい加減にしろぉ!!」

「あと奈良川は蘭ちゃんと椿ちゃんと電車で身を寄せ合って寝たそうじゃないか!!」

「はーひふへほぉおおおおおおおおおおおおおん!!?」

 

京「うわあああああああああああああああああ!!!//////」

椿「ちょっとぉ!! 何で知ってるのよぉ!!!//////」

蘭「あいつどこ行ったの!!?//////」

 

 その頃の飛鳥…

 

 

飛鳥「おそらきれい」

 

 現実逃避していた…。

 

 

おしまい

 



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こちら超能力研究会! 本編
第197話「こちら超能力研究会!」


今回の設定

・ 飛鳥は最初からバンドリ学園の生徒。
・ 入学の理由は任務ではなく、普通に東京で学校生活を送るために変更。
・ 原作キャラの設定を一部変更。



 

 

 一丈字飛鳥です。新しい所で頑張ろうと東京のバンドリ学園に進学しました。

 

 ですが、入学早々学校の方針が変わり、全員部活動をしなければならないという校則が出来ました。突然そんな事言われてもという事で、一応1人だけの部活、顧問無しの部活もOKとなりました(5人以上いないと部費は出ず、作業報告書を書かなければなりませんが…)。

 

 私としてはあまり体育会系のノリとかは苦手なので、創部しました。その名も『超能力研究会』。人の限界を極めるをモットーに、色んなことに挑戦する部活です。

 

 部活名からして胡散臭いので、学校中から白い目で見られていますが、私は元から人から好かれるタイプではないので、全く気にしていません。

 

 そんなこんなで創部届を出して、高校生活が始まろうとしてた矢先、2人の女子生徒が入部希望をしてきました。

 

 一人は先輩で、芸能人の氷川日菜さん。もう一人が私の同級生の古くからの友達だという弦巻こころさん。本当は色々面倒な事になりそうだったので、丁重にお断りしたかったのですが、どうせすぐに飽きるだろうと思い、入部を認めました。ぶっちゃけサークルみたいなものだったので、やろうがやるまいが、あまり気にしない方向でいきました。

 

 そうは言っても、なんだかんだ言って実績を出す必要があったので、手始めにゲームの大会に参加しようとすると、氷川先輩と弦巻さんに知られて3人でチームを組んで出場することに。2人とも高スペックで、指示もちゃんと聞いてくれるので楽々と優勝出来ました。というか2人とも滅茶苦茶才能マンならぬ才能ウーマン過ぎる…。

 

 この大会がきっかけで、超能力研究会の知名度はそれなりに広まった。部員は来なかったけど、やりたい事じゃないと入部しても無駄ですからね。

 

 これで変わったのは部室が与えられた事ですね。バンドリ学園の生徒が大きな大会で優勝したという功績があるので…。

 

 物語はここから始まります。私の語りもここで終わりにしましょう。

 

************************

 

こころ「ゲームって楽しいわね!」

日菜「うん! しかもこころちゃんと飛鳥くんと一緒にやってると、強い敵も簡単に倒せてるんってする!!」

飛鳥「……」

 

 部室でこころと日菜が楽しそうに話しているのを飛鳥は苦笑いしながら見つめていた。本来は個人戦で出るつもりだったが、日菜とこころの要望でチーム戦で出場する事になり、不安に思ったものの、日菜とこころが才能ウーマンぶりを発揮し、飛鳥がそれを支える形で優勝に持ち込んだ。

 

 一気に知名度が上がったのは良い事だが、これで新入部員が増えるのを恐れていた。

 

飛鳥(能力者の件もあるからなぁ…。出来ればトラブルは避けたいんだけど)

 

 すると日菜とこころが飛鳥を見た。

 

こころ「それも飛鳥のお陰ね!」

日菜「うん! それはそうと決勝戦カッコ良かった!」

飛鳥「え?」

 

 日菜の言葉に飛鳥が困惑した。

 

こころ「ほら、あたしと日菜がやられちゃって、飛鳥が一人になっちゃったでしょ? 相手が三人いて…」

飛鳥「ああ…」

 

 飛鳥が決勝戦の事を想いだした。相手の作戦により、日菜とこころが戦闘不能になり、飛鳥が一人で戦う事になった。客観的に見て飛鳥チームが不利で、相手チームは自分たちの勝利を確信していた。

 

 だが、飛鳥は臆する事はなく真剣な顔つきになる。そして3対1で立ち向かっていくと、2人を撃破した。

 

「!!?」

 

 そして残りの1人と1対1で戦った。相手が必殺技を使いまくる中、飛鳥は防御に徹し、一瞬の隙をついて相手にカウンター攻撃を仕掛け、そのまま戦闘不能に追い込んだのだ。

 

 その時の飛鳥の表情は歴戦の戦士そのものだった。

 

日菜「もしかしてゲームになると、性格変わるタイプなの?」

飛鳥「そういう訳ではないと思うんですけど、相手が強かったんで思わず熱くなりましたね」

こころ「何ていうか目力が凄かったわね。とても活き活きとしてて、まるでヒーローみたいだったわ!」

飛鳥「気のせいだと思いますよ…」

 

 こころの言葉に飛鳥が苦笑いすると日菜がある事に気づいた。

 

日菜「そういえば思ったんだけどさ、飛鳥くんってどうして前髪かくして眼鏡欠けてるの?」

飛鳥「わざとこうしてるんですよ。学校ではあまり目立ちたくないんで…」

こころ「どうして?」

飛鳥「色々あったんですよ。あまり人から理解されないタイプなんです」

日菜「分かる。あたしもそうなんだ」

 

 飛鳥が日菜を見た。

 

日菜「あたしも皆から『何を考えてるか分からない』って言われるんだ。どうしてか分かんないけど。でも、だからといって皆と合わせようとは思わないんだよね。るんってしないし」

飛鳥「氷川先輩…」

こころ「飛鳥も日菜も今のままがとても素敵よ!」

 

 飛鳥と日菜がこころを見た。

 

こころ「人から理解されないのも、何を考えてるのか分からないのは困るけど、でもあたしから見たら飛鳥と日菜も自分自身を持ってるわ! それはとても素敵な事だと思うの!」

日菜「そう? 嬉しいな」

飛鳥「…日本人は少数派には厳しいですからね」

 

 こころの言葉に日菜が喜ぶと、飛鳥がまた落ち込んだ。

 

こころ「それはそうと飛鳥」

飛鳥「何です?」

こころ「そろそろ敬語を止めて欲しいわ」

飛鳥「え?」

 

 こころの発言に飛鳥が困惑した。飛鳥は親しい人間以外には敬語で喋るようにしていたからである。

 

こころ「日向と椿には敬語を使ってないでしょ? だったらあたしにも同じようにしてほしいわ?」

飛鳥「あー…」

 

 こころの言葉に飛鳥が困惑すると、日菜もこころに同調していた。

 

日菜「あ、それあたしも思った! 決勝戦とか「行くぜ!」とか男らしい喋り方してたの、あれ凄くるんってしたよ!?」

飛鳥「結構喋り方がきついって言われるんですよね…」

 

 日菜の言葉に飛鳥が苦笑いするが、こころが憤慨していた。

 

こころ「そんな事ないわよ。寧ろあの時みたいに堂々としてほしいわ」

日菜「そーだよ。だから今度からは敬語なしね」

飛鳥「あ、はい…」

 

 日菜とこころが強引に推し進めると、飛鳥はただ苦笑いするしかなかった。

 

 そんな時、部室に誰かが入ってきた。

 

「!」

 

 とても大人しそうな女子生徒だった。

 

 

おしまい

 



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第198話「4人目」



 設定

・ Afterglow、Pastel*Palletes、Roseliaは原作と同じ。
・ Poppin’partyが不明。
・ ハロー、ハッピーワールドはこころが超能力部に入部した為、不透明。




 

 

 超能力研究会で3人が雑談をしていると、1人の女子生徒がやってきた。

 

日菜「あ、燐子ちゃん!」

飛鳥「お知合いですか?」

日菜「うん。おねーちゃんと同じバンドの子なんだ!」

飛鳥「そうなんですか」

 

 飛鳥は特に聞く事はせず、燐子が来たのも自分ではなく日菜に用があるものだと思っていた。

 

日菜「どうしたの? こんな所で」

燐子「あの、部長さんはどこですか…?」

飛鳥「え?」

 

 燐子の言葉に飛鳥が反応すると、日菜が飛鳥を見た。

 

日菜「部長はこの子だよ。ほら、飛鳥くん。相手してあげて!」

 

 と、日菜に促されて飛鳥が燐子に近づいた。だが、燐子はどこか怯えている。

 

飛鳥「部長は私ですが、何か御用でしょうか…」

燐子「だ、男性の方だったんですね…」

飛鳥「ええ。残念ですが」

 

 燐子が飛鳥を男性だと知るや否や、残念そうにしていた。飛鳥に至っては女性だと思ってたんだなぁと残念そうにしていた。

 

飛鳥「それで…何か御用でしょうか」

燐子「そ、その…」

 

 飛鳥の言葉に燐子がモジモジしていた。何か言いづらそうにしていて、返答をするのに時間はかかった。飛鳥は苛立つ様子もなく、ずっと待ち続けていた。

 

燐子「その…」

飛鳥「何でしょう?」

 

 すると燐子は意を決して、あるものを飛鳥に差し出した。

 

燐子「この研究会に入部させてくださいっ!!」

 

 燐子が飛鳥に差し出したものは入部届だった。顧問がいない為、部長の飛鳥に渡す事になっていたのだ。飛鳥は困惑していた。

 

飛鳥「あ、それでは少し面談をしましょうか」

燐子「め、面談ですか…?」

飛鳥「入ってから違うなーってならないようにしましょう」

 

 飛鳥と燐子はデスクに向かい合った。日菜とこころも様子を見ている。

 

飛鳥「入部しようと思ったきっかけは何ですか?」

燐子「その…氷川さん達がゲームの大会に出てるのを見てて…」

飛鳥「この部活に入れば、合法的にゲームが出来ると思ったという事ですか?」

燐子「ち、違うんですか…? 部活動の名前で参加されてたからてっきり…」

日菜「えっとね。活動内容はゲームだけじゃないんだよ」

燐子「えっ…」

 

 日菜の言葉に燐子が驚いた。

 

日菜「何て言うのかなー。とにかく自分の好きな事をとことん突き詰めてやるって感じかな?」

飛鳥「ありがとうございます。ただそれだと抽象的なので、私がご説明しますね」

 

 日菜の言葉に飛鳥が苦笑いすると、そのまま燐子の顔を見て言い放った。

 

飛鳥「この部活動は『人の力を極める』というのをモットーに、色んな事に挑戦する部活動です」

燐子「いろんなことを…」

飛鳥「…まあ、元々は私が一人で部活動をする為に創部したんですよ。元からあるような集団でやる部活動ってあまり馴染めなくて。1人でも創部OK、顧問無しでもOKという事だったので、創部したんですね」

 

 飛鳥の言葉に燐子が関心を示していた。

 

飛鳥「先日出場したゲームの大会もその一環です。どんな事でも良いので、努力をして結果を出す。ゲームで培った判断力や経験などをあの大会で発揮することで、心身を鍛えるものとしていたんですよ。まあ、本当はソロで出場するつもりだったんですけどね…」

日菜「皆でやる事で協調性とか団結力も生まれるんだよ!? バンドみたいに!」

こころ「そうよ! 皆でやった方が楽しいわ!?」

 

 飛鳥の言葉に対し、日菜とこころが続けると燐子が更に驚いた。

 

飛鳥「氷川さんや弦巻さんがよく働いてくださったので、優勝する事が出来ました」

日菜「チームプレイもいいでしょ?」

飛鳥「良いですけど、どっちかっていうとお二人のスペックが分からなかったものですので…」

こころ「あまりゲームはやらないけど、とても楽しいわね!」

飛鳥「こういう部活です。ゲームだけをやるという訳ではない事はお伝えいたします。今後の予定としましては、定期テストでトップを目指すとかそんな感じですね」

日菜「あたしいつもトップだから期待していいよ?」

こころ「あたしも頑張ってみるわ!」

飛鳥「なので、本当に入部されるかどうか、今一度お考え下さい」

 

 飛鳥の言葉に対し、燐子は苦笑いした。

 

燐子「あの、一つ質問しても良いですか?」

飛鳥「はい」

燐子「どうして部活の名前が超能力研究会なんですか?」

飛鳥「あー…」

 

 燐子の質問に飛鳥が考えた。

 

飛鳥「ただ単に胡散臭い名前にして、人が来ないようにそういう名前にしてたんです」

燐子「え…?」

 

 飛鳥の言葉に燐子の目が点になったが、日菜がにっこり笑った。

 

日菜「でもその胡散臭い名前がるんって来たので、入部しました!」

こころ「あたしも超能力について研究したかったから入ったのよ!」

飛鳥「見事に失敗しました」

 

 飛鳥が困ったように突っ込むと、燐子がくすっと笑った。それに対し飛鳥が驚いていると、

 

燐子「部活の名前はどうであれ、一丈字さん達のプレイを見て、私も一緒に部活を楽しみたいと思いました。その、今後もゲームをする機会ってあるんですか?」

飛鳥「ソロで極めても構いませんし、有志を集めてチームで極めても結構です。ご自由にやってください」

日菜「それじゃ、今度は4人で大会に出ようよ!!」

こころ「そうね! きっと楽しいわ!」

燐子「はい。その…入れてくれますか?」

 

 燐子が入部届を飛鳥に差し出すと、飛鳥は静かに目を閉じた。

 

飛鳥「分かりました。受理させていただきます」

燐子「ありがとうございます」

 

 こうして4人目が加わった。

 

日菜「これだったら、皆を誘った方が良いんじゃないかな?」

こころ「そうね! その方が楽しいわよ!」

 

 日菜とこころは沢山スカウトする気だったが、飛鳥と燐子が困っていた。

 

飛鳥「私は少数派がいいですね…。一度に来られても捌ききれないので…」

燐子「それに…。今はこのメンバーで部活動がやりたいです…」

日菜「そっかー。燐子ちゃん人見知り激しいもんね」

こころ「それなら仕方ないわ。燐子が楽しくなくなっちゃったら、あたしまで楽しくなくなっちゃうわ。4人で何かやりましょう!」

 

 新たに白金燐子を加え、4人で始動する事になった!!

 

日菜「そういえば部室にお菓子とか置けないかな。漫画とか…」

飛鳥「家じゃないんですから…」

 

 

おしまい

 

 



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第199話「次なるステップ(前編)」

これを投稿せずに200話を投稿してました。
申し訳ございません。


 

 

 白金燐子を加えた超能力研究会は、次なるステップを踏みこもうとしていたが…。

 

飛鳥「そういえば皆さん。掛け持ちとかあるんですよね?」

 

 部室で4人が話をしていたが、飛鳥が3人に話をした。

 

日菜「うん。あたしはアイドルバンドをやってるんだ。燐子ちゃんは違うバンド」

燐子「は、はい…。『Roselia』っていうバンドです」

飛鳥「そうなんですか。こころは?」

 

 こころに対してはすっかりため口で話すようになった。

 

こころ「そうねー。バンドも面白そうね! きっと皆を笑顔に出来るわ!」

日菜「笑顔に出来るかどうかは、バンドの方向性によるけど、ギターとか楽しいよ! キーボードはどう?」

燐子「そ、そうですね…。楽しいです…」

 

 3人が談笑しているのを飛鳥は静かに見ていた。

 

日菜「そう言えば飛鳥くんは楽器って出来るの?」

飛鳥「まあ、お二人ほどではないのですが…」

日菜「えー!! ちょっとやってみせてやってみせて!! あ、そうだ! 今回は『楽器』をテーマにしようよ! るんってした!」

飛鳥「えっ…」

 

***************************

 

 そんなこんなで、ライブハウス『CiRCLE』にやって来た。

 

「いらっしゃいませー」

 

 従業員の月島まりなが接客をする。

 

燐子「4名です」

まりな「はーい…って、あれ? なんかメンバーが違うわね」

燐子「え、ええ…」

まりな「しかも男の子が一人もいて…」

燐子「ち、違いますっ!!//////」

 

 まりなの冷やかしに燐子が頬を赤く染めると、飛鳥は苦笑いした。

 

まりな「冗談よ。1番のスタジオを使っていいよ」

燐子「あ、ありがとうございます…//////」

 

 そして、4人がスタジオに入った。

 

日菜「さてと、早速だけど飛鳥くん! 演奏して!」

飛鳥「あ、はい」

 

 と、日菜からレンタル用のギターを渡されて飛鳥がギター演奏した。そこそこ出来ていて、日菜たちは驚いていた。

 

日菜「結構やるじゃん!!」

燐子「いや、普通に上手です…」

こころ「凄いわ飛鳥!」

飛鳥「あ、そうですか…?」

日菜「それじゃ次は歌聞きたいな! マイクあるから!!」

飛鳥「は、はあ…」

 

 日菜に言われるがまま、飛鳥がマイクスタンド前に立って、歌う事にした。

 

飛鳥「何歌えばいいですか?」

日菜「何でもいーよ!」

飛鳥「分かりました。それでは河村隆一「BEAT」」

 

 飛鳥がギターを演奏しながら生歌を演奏したが、日菜たちは衝撃を受けていた。2番が終わった後のサビから歌い、心を込めて歌っていた。

 

 そして弾き語りが終わり、飛鳥3人の顔を見るが、固まっている3人を見た。

 

飛鳥「…そんなに下手ですか」

日菜「いや、逆に上手すぎて固まった。何かキリっとしたるんなんだよね」

飛鳥「そ、そうですか…」

燐子「や、やっぱり男の人が歌うととても力強いですね…」

飛鳥「そうでしょうか…」

こころ「そうだわ! この4人でバンドをしてみるというのはどうかしら!」

日菜「それ賛成!!」

 

 こころの言葉に日菜が乗っかると、飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「いや、大丈夫なんですか?」

日菜「大丈夫だよ。燐子ちゃんはどう?」

燐子「あ、わ、私も大丈夫です…」

 

 燐子の発言は飛鳥は本当かどうか不安になった。燐子は大人しくてオドオドしている為、周りに合わせてるんじゃないかと思っていた。

 

飛鳥「え、本当ですか? 無理しない方が…」

燐子「大丈夫です。やらせてください!」

 

 思惑とは裏腹に、燐子のやる気に満ちた目を見て飛鳥は驚いていた。

 

日菜「飛鳥くんが折角いい声をしてみるから、やり甲斐があるよね!」

こころ「でもギターが2人になっちゃうわね…」

飛鳥「それじゃベースやろうか?」

日菜「え!? 飛鳥くんベースも出来るの?」

 

 飛鳥の発言に日菜が驚いた。

 

飛鳥「やった事ないですけど、本当にバンドやるならやりますよ。作業報告書にも書けますし」

こころ「それじゃあたしは…そうだわ! ドラムやろうかしら!」

飛鳥「今こそ、人の限界に挑戦する時だな…」

 

 その日から、飛鳥とこころがそれぞれベースとドラムを頑張る事になったが…。

 

 翌日。

 

飛鳥「出来ました」

こころ「こんな感じでどうかしら?」

 

 ライブハウスで飛鳥とこころが演奏すると、燐子は絶句した。

 

日菜「すごいすごーい!!!」

 

 日菜は飛鳥とこころに感心していたが、覚えるスピードがあまりにも早すぎる為、燐子は言葉を失っていた。

 

燐子(こ、この子たち…滅茶苦茶凄い…)

 

 もしもこれを『Roselia』のメンバーを知ったらどうなるだろうと燐子は思った。

 

日菜「あたしも家で練習したから、やってみよー!!」

燐子「えっ…」

 

 と、いきなり4人で音合わせをしたが燐子以外の3人の息が合っていた。

 

燐子(す、すごい…。即席で作ったバンドなのに、こんなにも息がぴったり…。わ、私も頑張らなきゃ…)

 

 燐子が横から飛鳥達を見ていて、才能に驚きを隠せずにいた。特に日菜を見ていた。

 

燐子(双子のお姉さんの紗夜さんから聞いてはいたけど、日菜さん…本当に凄いなぁ…)

 

 燐子が息をのんだ。

 

燐子(私も頑張らないと!!)

 

 そう燐子が意気込むと、飛鳥達は燐子を見た。燐子はそれに気づいて驚いた。

 

燐子「ど、どうされましたか?」

こころ「燐子。表情が固いわよ。楽しまないと!」

日菜「そーだよ。固くなり過ぎたら、お客さんだって楽しくないよ!」

飛鳥「えっと…。何か至らない点でもございましたか?」

 

 マイペースに燐子を注意する日菜、こころをよそに飛鳥がフォローを入れた。それに対して燐子は苦笑いした。

 

燐子「だ、大丈夫です。それにしても…一丈字さんも弦巻さんもよくここまで…」

飛鳥「ええ。この日の為に徹底的に練習してきました」

こころ「絶対にライブを成功させるわよ!」

飛鳥「…え? ライブ?」

 

 こころの発言に飛鳥と燐子が驚きを隠せなかった。

 

こころ「バンドをやるならライブをするべきよ! どこでライブすればいいかしら! やっぱり学校がいいわね!!」

 

 

 そしてこの後、こころが学校で屋内ライブをやりたいと申請を出し、弦巻財閥の圧力を恐れた教員たちがOKを出した。

 

こころ「という訳でライブは一週間後よ! よろしく頼むわね!」

飛鳥「マジかよ…」

 

 

 こころの行動力の速さに飛鳥と燐子は唖然としていた。

 

 

つづく

 



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第200話「次なるステップ(後編)」

 

 前回までのあらすじ

 

 新たに白金燐子が加わり、4人で何か出来ないか考えた所、こころは4人でバンドが出来ないかと考案した。日菜と燐子が承諾したため、飛鳥も承諾した。

 

 本番のライブに向けて、皆一生懸命に練習をしたが、飛鳥、こころ、日菜の上達がかなり早く、燐子は辟易した…。

 

*********************

 

 そして迎えたライブ当日。

 

飛鳥「……」

 

 バンドリ学園には、文化祭でライブなどに使う特設ステージがあり、そこでライブを行われる事になったが、予想以上に客が集まっていた。

 

飛鳥「まあ、そうなりますわね…」

こころ「お客さんがいっぱいよ!!」

燐子「こ、こんなにいっぱい…」

日菜「るんってするね!!」

 

 飛鳥達は舞台袖から満員になってる客を見ていた。目的は日菜か燐子が目的だろうと飛鳥は考えていた。

 

こころ「さあ! 演奏で皆を笑顔にするわよ!!」

日菜「おー!!!」

飛鳥「お、おー…?」

 

 選曲的にはお客さんを笑顔に出来るか飛鳥は微妙だった。どっちかという勘当である。燐子も少し困惑していた。

 

飛鳥「さて、時間になりましたので行きますね」

 

 すると飛鳥がステージの前に出てくると、歓声が上がった。

 

飛鳥「えー。ご来場の皆さま。本日はお忙しい中お越し頂き、ありがとうございます」

 

 飛鳥がマイクで挨拶をすると、男子達が騒いでいた。

 

「早く日菜ちゃんを出せー!!」

「白金さんを出せー!!」

 

 とてつもなくマナーの悪い客だった。ライブをすると言う事は事前に伝えられていたが、メンバーが男1人だった為、飛鳥に嫉妬をしていた。

 

飛鳥「ええ、そうですね…。私みたいな陰キャよりも、やっぱり可愛くて美人な女の子達が見たいですよね。分かります」

 

 飛鳥が冗談交じりにそう言うと、燐子が頬を染めて照れていた。

 

日菜「飛鳥くんってお上手なんだからー」

燐子「は、はずかしいです…//////」

こころ「飛鳥も可愛いと思うのよね?」

 

飛鳥「それでは彼女達にもご登場いただきましょう。どうぞ!」

日菜「こんにちはー」

 

 日菜、燐子、こころが出てくると、飛鳥が出てきた時よりも盛り上がった。

 

飛鳥「おーおー…。やっぱり盛り上がりますねぇ」

 

 飛鳥も思わず苦笑いだった。そりゃあ確かにアイドル、美少女、トップガールズバンドグループのメンバーが出てくればそうなるだろうと自分に納得させた。

 

飛鳥「えー…。皆さんも彼女達の事をご存じだと思いますが、今回は超能力研究会のメンバーとして、私と一緒にライブをして貰います。それでは早速参りましょう。1曲目は1997年に作曲され、第30回日本有線大賞「最多歌手リクエスト賞」にも輝き、曲のPVのパロディとして作られた作品はもはや伝説となっている、河村隆一の『BEAT』」

 

 飛鳥がそう言うと、4人が演奏して飛鳥が歌いだした。燐子はリラックスして、日菜とこころは楽しそうに演奏していたが、飛鳥の歌声に観客が衝撃を受けていた。

 

 サビ以外は飛鳥がソロで歌っていたが、サビは隣でギターを弾いていた日菜とユニゾンを行った。とても綺麗だったのでそれがまた観客に衝撃を与えていた。

 

燐子(…一丈字くんの歌声、とても落ち着く)

こころ(なんだかとても嬉しくなっちゃうわ!)

日菜(るんって来た!!)

 

 一緒に演奏をしていた3人も穏やかな気持ちになっていた。演奏する前は燐子はとても緊張していたが、飛鳥の歌声と演奏を聴いて、落ち着きを取り戻した。

 

 ちなみに飛鳥の歌声に関して、超能力を使っているのかというと、自分の意志とは関係なしに出ているのだ。飛鳥の超能力は念じる事で力を発揮するのだが、歌を歌うときは心を込めて歌う必要がある為、歌っている時、超能力が歌声になって響き渡っているのだ。

 

 この「BEAT」という曲は穏やかな曲である為、聞いている側の人間も穏やかな気持ちになるというものだ。まあ、飛鳥の声自身が凛々しい感じなので、それも関係してるのかもしれないが…。

 

「……」

 

 演奏を聴いていた人間の中に涙を流す生徒もいた。その中でも水色の髪の少女・松原花音はこころを見て、口元を抑えて泣いていた。

 

 彼女はドラムをしているのだが、どうしても上手くいかなくなり、やめようとしていた。だが、こころが楽しそうに演奏をしているのを見て、ドラムが楽しいと言う事を想いだし、その音に涙をしていた。隣にいた紫色の髪の少女が花音を慰めていた。

 

 そしてあっという間に演奏が終わり、鳴らし終えると大歓声が上がった。

 

飛鳥「ありがとうございました」

こころ「こんなに笑顔になってるわ! とっても楽しいわね!」

飛鳥「そ、そうだね…」

 

 こころの言葉に飛鳥は困惑した。どっちかっていうと泣いてない? と飛鳥は思っていた。

 

飛鳥(流石氷川さんと白金さんだ。演奏で人を感動をさせるなんて…)

 

 一番の手柄は自分だとは絶対に思わなかった飛鳥。そりゃそうだ。自分の手柄なんて思うものなら絶対に違いし、ただのうぬぼれになってしまう。そんなダサい男になりたくはなかった。

 

「ねえ、友希那…」

「ええ…」

 

 どこからか3人の少女が見ていた。一人は小柄でクールな女子・港友希那、一人は茶髪で派手な女子・今井リサ、もう一人は日菜の双子の姉、氷川紗夜である。

 

「燐子、とっても楽しそうだったね」

「ええ。初めて見たわ…」

 

 友希那は飛鳥をじっと見ていた。

 

友希那(彼は一体何者なのかしら…)

紗夜「……」

 

 紗夜は日菜を見つめてると、表情を歪ませていた。

 

友希那「紗夜」

紗夜「…す、すみません」

 

 友希那に諭されて紗夜が俯いた。

 

飛鳥「それじゃ2曲目に行きましょうか」

こころ「そうね! それじゃ交代よ!」

飛鳥「ああ」

 

 と、飛鳥とこころがポジションチェンジをした。こころがボーカル&ベースで飛鳥がドラムだった。

 

リサ「ポジションチェンジ!?」

友希那「しっかり聞きなさい」

紗夜「湊さん…」

 

 紗夜が友希那を見つめると、友希那が目を細めて、飛鳥達を見つめた。

 

飛鳥「えー、それでは2曲目はスキマスイッチ「全力少年」どうぞ!」

 

 飛鳥がアナウンスをすると、演奏を始まった。飛鳥は普通にドラムをたたいていた。そしてアレンジまでやってのけた。

 

「あ、あの子たち凄くない!?」

「ああ…」

 

 中学の時からガールズバンドを組んでいた「Afterglow」の5人が飛鳥とこころを見て驚いていた。演奏していた燐子も驚きが隠せずにいた。さっきまで違う楽器を演奏していたのに、何の違和感もなく演奏していたからである。日菜はマイペースに楽しんでいる。

 

 こころの歌声も元気いっぱいで可愛らしく、男子達をメロメロにさせていた。

 

「なあ、あの子可愛くない?」

「ああ…」

 

 そんなこんなでライブの演奏は大成功に終わった。大きな爪痕を残して…。

 

 

飛鳥(第4シリーズもありがとうございました!!)

 

 

 おしまい

 



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第201話「ファーストライブの反響」

 

 新しい挑戦の為に、東京の学校に入学した一丈字飛鳥だったが、強制的に部活動をするように言われる。色々あって仲間が4人になり、こころの提案でライブを行う事になった。

 

 このライブで飛鳥が部長を務める『超能力部(超能力研究会)』の運命を大きく変えた…。

 

************************

 

 ライブ終了後、とてつもない大歓声が上がり、幕を閉じた。

 

飛鳥(こんなにも上手く行くとは思わなかった…。顔見たらわかるもん)

 

 こういう時、ラノベは観客が一人もいなかったり、演奏が下手だったりでブーイングが来ると思われたが、最初からクライマックスだった。特に最後に演奏した「めざせポケモンマスター」の大盛況ぶりが凄かった。声が歌ってる人と声が似ているのが一番の要因だが…。

 

飛鳥(まあ、氷川さん達のお陰だわ。これからも謙虚に生きていくことにしましょう)

 

************************

 

 そして、こうなりました。

 

日菜「いや、飛鳥くんめっちゃ凄いわ」

飛鳥「そんな事はございませんよ。いや、もう本当に…」

燐子「いえ、特に最後なんかとても力強くて…。まるで私のバンドのボーカルみたいでした」

こころ「後ろから見てたけど、とても堂々としててカッコ良かったわ!」

飛鳥「あ、ありがとう…」

 

 ライブ終了後、舞台裏で日菜、燐子、こころに褒められて飛鳥は困惑した。あまりにもうまく行き過ぎている為、信じられなかったのだ。

 

「いやあ、とっても良かったっすよ。一丈字さん」

飛鳥「えっと…」

 

 女子生徒が飛鳥に話しかけてきた。

 

日菜「あ、紹介するね! うちのバンドのドラムの大和麻弥ちゃん! 2年生だよ!」

麻弥「どうも、上から読んでも下から読んでも大和麻弥です。宜しくお願いします」

飛鳥「あ、こちらこそ…」

 

 飛鳥は少しキョトンとしたようにあいさつした。

 

大和「一丈字さん。ベースだけじゃなくてドラムも出来たんですね!」

日菜「ライブではやらなかったけど、ギターやピアノも一応出来るんだよ!」

大和「えっ!!?」

飛鳥「Pastel*Palletesの皆さん程ではございませんが、一応経験はございます」

 

 日菜の言葉に大和が驚くと、飛鳥が苦笑いした。お願いだからこれ以上騒ぎを大きくしないでと、日菜に対して願っていた。

 

麻弥「も、もしかして…バンドとかされてたんですか?」

飛鳥「いえ、中学の時にかくし芸とか合唱コンクールとかで楽器を演奏する機会があったので…」

 

 麻弥の発言に飛鳥が苦笑いすると…。

 

こころ「そういえば中学の時、ピアノを弾きながらトランペットを吹いてたわよね?」

飛鳥「誰から聞いたの?」

 

 余計な事言いやがって…と飛鳥は思った。恐らく中学時代の同級生である材椿から聞いたんだろうと飛鳥は思った。

 

麻弥「あっ、知ってますよ! 確かお笑い芸人でそう言う方いらっしゃいましたね!」

飛鳥「え、ええ…オマージュというかなんというか…」

 

 麻弥のリアクションに飛鳥は視線を逸らした。

 

*********************

 

 十数分ほど喋った後、飛鳥達は帰る準備をする為に、それぞれ控室にいた。

 

こころ「さあ! 一緒に帰りましょ!!」

 

 飛鳥は1人で帰ろうとしたが、こころに捕まって4人で帰ろうとすると、1人の教師が現れた。

 

「ちょっといいかね。超能力研究会」

飛鳥「あ、はい…」

 

**************************

 

 翌日の事だった。飛鳥達のライブは全校生徒に知れ渡り、校内新聞にも大きく載せられた。

研究会メンバーが校内新聞を見ていた。

 

こころ「見て飛鳥! でっかく乗ってるわ!!」

飛鳥「そ、そうだな…」

 

 飛鳥としては、ここまで話が大きくなるとは思ってもいなかった為、困惑するしかなかった。燐子も驚いて、日菜もはしゃいでいたが、飛鳥が新聞の下の部分を見て青ざめていた。

 

 というのも、校内新聞の真下にAfterglowとRoseliaの記事があったが、小さく書かれていたのだった。まるでおまけみたいに…。

 

飛鳥(Oops)

 

 少なくとも、隣にいる燐子もRoseliaのメンバーなんだからもうちょっと気を遣えよと思っていた。

 

「燐子」

 

 その時、誰かが燐子に対して話しかけて、燐子が横を見ると友希那がいた。紗夜、リサもいる。

 

燐子「ゆ、友希那さん…」

日菜「おねーちゃん! リサちー」

リサ「でっかく新聞に載ってるねー…」

日菜「そうなの!」

 

 日菜の歯に着せぬ発言に紗夜が反応した。

 

友希那「それはそうと…そこのあなた」

飛鳥「……」

 

 友希那が飛鳥に話しかけたが、自分に話しかけられてると思っていないのか、後ろを向いた。

 

友希那「あなたよあなた」

日菜「あ、もしかして飛鳥くん?」

友希那「そうよ。飛鳥くん」

飛鳥「え?」

 

 飛鳥が友希那の方を見ると、周りにいた生徒達も驚きを隠せなかった。

 

友希那「あなたの演奏、とても素晴らしかったわ。ましてやボーカルだけではなく様々な楽器も演奏をしていたけど、非の打ちどころがなかった」

飛鳥「え、えっと…ありがとうございます…?」

 

 友希那の言葉に飛鳥は困惑していた。

 

友希那「気のせいか燐子もRoseliaでやっている時よりも楽しそうに演奏をしていたけど、一体何をしたのかしら?」

飛鳥「特に何も言ってませんけど…」

こころ「失敗とか気にしないで楽しく演奏をしなさいって言ったわ!」

 

 飛鳥の言葉にこころがツッコミを入れると、友希那達が飛鳥を見た。

 

友希那「それは本当?」

飛鳥「それは言いました」

リサ「じゃあ何かしてるんじゃない」

 

 リサの言葉に飛鳥はばつが悪そうにした。

 

飛鳥「…まあ、なんて言いますかね。Roseliaの時はそりゃあもう皆さん凄い人達ですから、真剣にやらなきゃいけないと思うんですけど、このバンドの時は肩の力を抜いてリラックスしてくださいって言ったんですね。Roseliaで演奏するための練習だとして」

友希那「それであんな素晴らしい演奏されたら、私達の立場がないわよ」

飛鳥「ご冗談を」

 

 友希那の言葉に飛鳥が苦笑いすると、友希那が睨みつけた。

 

こころ「飛鳥。いくら何でも謙遜し過ぎよ」

飛鳥「じゃあ聞いていい? やっぱりオレ達凄いでしょ見たいなこと言ってみたらどうなる?」

こころ「凄いんだから当たり前じゃない!」

日菜「そうだよ!」

飛鳥「喧嘩売ってるようにしか思えないんだけどなー」

 

 飛鳥の言葉にリサと紗夜が困惑し、飛鳥も苦労しているんだなと察知した。

 

友希那「それで…次のライブはいつやるのかしら?」

飛鳥「次のライブの予定はないですね」

「えっ?」

 

 飛鳥の発言に皆が驚いた。

 

こころ「どうして? やりましょうよ」

飛鳥「いやあ、氷川先輩も白金先輩も忙しいし、テストがあるでしょ」

こころ「あ、そっか」

 

 飛鳥とこころの言葉に友希那が表情を曇らせた。

 

飛鳥「それに、ライブだけじゃなくて他の事もやりたいし」

日菜「あー。それなら分かるなー」

紗夜「……」

 

 日菜の言葉に紗夜がムスッとすると、飛鳥とこころが紗夜に気づいた。

 

飛鳥「そういう訳ですので、失礼します」

 そう言って飛鳥はスーッと去っていった。

 

友希那(本当に何者なの…彼…)

 

 と、友希那は飛鳥の後姿をじっと見ていた。

 

 

飛鳥(第5シリーズ、始まります)

 

 

おしまい

 



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第202話「部活は本格的に(前編)」

 テストが近づいてきた頃…。

 

***********************

 

「なあ、オレ達も超能力研究会に入れてくれよ」

「……」

 

 3組の教室に入ってきて、飛鳥に話しかけたのはいかにも何かチャラそうな陽キャ3人組だった。そんな陽キャ達を見て飛鳥は困惑していた。どうせ日菜たちに手を出そうと考えているのが見え見えだった。飛鳥は興味なさそうにスマホを弄っていたが、話を聞くためにやめた。

 

飛鳥「…入部の志望動機は何ですか?」

「あ? そんなの決まってんだろ。可愛い女子がいるからだよ」

「お前の陰キャにハーレムを満喫させると思ったら大間違いだぞ」

「入部させてくれるな。なぁ?」

 

 脅しをかけるように陽キャたちが飛鳥に悪態をついたが、飛鳥は呆れたように一息ついた。

 

飛鳥「…そんな態度で入部を認めるわけがないでしょう」

「は?」

 

 飛鳥がNOと答えた為、陽キャたちは青筋を立てた。

 

飛鳥「ですが、あなた方の事は一応お話しさせていただきます。私だけの裁量で決められないので」

「何でだよ。お前部長だろ」

「そんなの部長権限で決めればいいだろうが」

「ていうか舐めてんの? お前」

 

 陽キャたちがメンチを切ったが飛鳥は動じないばかりか、呆れていた。

 

飛鳥「…それ、かっこいいと思ってやってるんですか?」

「!?」

飛鳥「うちの中学にもそういう奴いましたけどね、ハッキリ言ってダサいですよ。しかも数人がかりでメンチ切るって如何にも弱い奴のやる事じゃないですか」

「何だとぉ!!」

「ふざけやがって!!」

 

 陽キャたちが数人がかりで飛鳥を捕まえて、人気のない所に連れて行こうとしたが、飛鳥の力が強すぎてビクともしなかった。

 

「ぐっ…重い…!!」

飛鳥「やめましょうよこんな事。そんなに振り向かせたいなら、ちゃんと自分の力で…」

「うるせぇ!!」

 

 不良の一人が飛鳥の頬を殴った。それを見てクラスメイト達が悲鳴を上げた。

 

飛鳥「いたた…」

「へっ! オレ達に逆らうからこうなるんだよ!」

「こっち来いや!! じゃないとまた痛い目に遭わすぞ!!」

 

 不良たちが飛鳥を連れ出そうとしたが、やはりビクともしなかった。

 

「動けや!!」

 

 そう叫んだその時、飛鳥は瞬時に自分をつかんでいた男子生徒を振り下ろして逃げると、その拳は男子生徒の鼻に直撃して、鼻血が出た。

 

飛鳥「大丈夫ですか?」

「て、てめぇ! よけんなよ!!」

「最初から暴力を振るわなければ良かっただけの話でしょう」

「いてぇぇよ~!!! わ~~~~ん!!!!」

 

 あまりの痛さに殴られた男子生徒は泣き出した。

 

「く、くそう!! てめぇ!! ただで済むと思うなよ!!」

 

 陽キャたちが退散していった。

 

飛鳥「またオレのせいにされるのかねぇ…全部」

 

 飛鳥がクラスメイトを見つめると、飛鳥に対して言葉を失っていた。

 

飛鳥「ああ。お騒がせしてすみませんね。どうぞごゆっくり…」

 

 そう言って飛鳥は教室を出ていった。

 

**************************

 

 放課後、HRが終わり飛鳥が帰ろうとしたが、

 

「一丈字。職員室に来い」

「!」

 

 中年男性教諭が飛鳥を呼び出した。大体検討がついていた飛鳥は教師についていく事になった。

 

 飛鳥は生徒指導室に連れていかれた。

 

「お前が2年生に暴力を振るったと話しているんだが、本当か?」

飛鳥「先輩方がそう仰ったんですか?」

 

 飛鳥は真剣な顔で話をしていた。というのも、話している教諭は飛鳥の味方ではなさそうだったからだ。

 

飛鳥「それならちゃんと証拠もございますよ。こんな事もあろうかと、証拠も作成しました」

 

 飛鳥がスマホのボイスレコーダーを見せようとすると、

 

「スマートフォンは持ち込み禁止の筈だ!」

飛鳥「ちゃんと申請書は出しましたよ?」

「うるさい! 口答えするな!! とにかくスマホで撮った証拠など認めん!」

 

 と、教諭が机をたたいた。飛鳥はうんざりした顔で教諭を見ていた。確かにスマホを使うために申請書も提出してるというのに、どんだけ人の話に聞く耳を持たないんだと感じていた。

 

飛鳥「まあ、一応聞いてほしいので再生しますね」

「貴様!! 教師に向かってその態度はなんだ!!?」

 

 教師の言葉に飛鳥は無視してスマホのボイスレコーダーを再生すると、確かに2年生の陽キャたちが飛鳥に対して脅しをかけている発言をしていた。そして飛鳥は再生を切って、なにやら操作した。

 

飛鳥「これが証拠です。どう考えてもあの先輩方の声ですよね?」

「うるさい!! お前の性根を叩きなおしてやる!! 帰れると思うなよ!!」

飛鳥「失礼します」

 

 飛鳥が席から立ち上がると、

 

「いいのか。このまま帰ったらお前の内申点を下げて、進学できなくさせてやるぞ」

飛鳥「?」

 

 飛鳥が振り返って教師を見ると、教師はにらみを利かせたが飛鳥の態度は変わらなかった。

 

「そうすればお前はずっと留年だ。それが分かったらここに座れ」

 

 すると飛鳥はスマホを取り出した。

 

飛鳥「…だそうですよ。校長先生」

「!?」

 

 飛鳥の言葉に中年教師が青ざめた。すると飛鳥は教師を見つめた。

 

飛鳥「そういう訳ですので、失礼します」

 

 そう言って飛鳥が言い放つと、そのまま生徒指導室を出たが、教諭が発狂した。

 

飛鳥(まあ、嘘だけどね)

 

 飛鳥のスマホは最初から電源が入っていなかったのだ。

 

飛鳥(普通なら萎縮する所も、あんだけ堂々とやっていたら信じざるを得ないからな…)

 

 すると教諭も生徒指導室を出て飛鳥を追いかけてきた。

 

飛鳥「!!」

「待てぇー!!!! 貴様、絶対に許さんぞ!!!」

 

 そう言って飛鳥と教諭の追いかけっこが始まった。見ていた生徒達は何事かと飛鳥と教諭を見ていた。

 

「え!? 一丈字くん帰っちゃったの!?」

「何か生徒指導室に呼ばれて…」

「そっか…」

 

 5人の少女とこころが3組の教室に現れたが、飛鳥がいない事で真ん中にいた女子生徒・戸山香澄はガッカリしていた。

 

こころ「どこに行ったのかしら」

 

 こころがそう考えていると、

 

「おい! あの超能力研究会の奴が五味山に追いかけられてるぞ!!」

「あいつも五味山の餌食になるのか…」

「あいつ、権力を盾にして好き勝手やるからなぁ…」

 

 生徒達が騒いでると、香澄達が窓から様子を見た。飛鳥と中年教諭・五味山が追いかけられていた。

 

こころ「飛鳥!!」

 

 

つづく

 



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第203話「部活は本格的に(後編)」

飛鳥「逃げられなくなってしまった…」

 

 飛鳥は端っこまで来ていた。

 

五味山「もう逃げられんぞ一丈字…」

飛鳥「……」

五味山「さあ、校長に話してお前の悪戯だったと話すんだ!!」

 

 五味山が脅しをかけるが、飛鳥は動じなかった。

 

五味山「話せ!! さもないとこの学校にいられなくしてやる!!」

飛鳥「何とでも」

「!?」

 

 飛鳥が笑みを浮かべた。

 

飛鳥「少なくとも私は、自分で何とかできますので」

 

 飛鳥がそう余裕そうにしていると、五味山がゲスな笑みを浮かべた。

 

五味山「だったら白金と氷川、弦巻だ」

飛鳥「!」

五味山「あいつらの内申点を下げてやる。そうすればお前のせいであいつらの人生が滅茶苦茶になるぞ」

飛鳥「そんなに弱い人たちじゃないですよ。あの人たちは」

五味山「うるさい!! 生徒が教師様に口答えするな!! 生徒は黙って教師の言う事を…」

「五味山先生」

「!」

 

 飛鳥と五味山が声がした方を振り向くと、この学園の一番偉い人である都築詩船が現れた。本作ではライブハウス『SPACE』のオーナーをしているが、今回は校長をしている。

 

五味山「こ、校長先生!!」

飛鳥「……」

都築「これは一体どういうことだい? 私情で生徒の内申点を下げているというのは…」

五味山「ち、違うんですよ。こいつが悪戯で校長に電話を…」

都築「電話? 電話なんて受け取っちゃいないよ? その子に完全にしてやられたようだね」

 

 都築の言葉に五味山は飛鳥を睨みつけると、五味山は弁解するように都築を見た。

 

五味山「聞いてください! この一丈字という生徒は教師をバカにした態度を取るんです!」

都築「生徒にバカにされるような事をしてきたのはどこの誰だい?」

「!」

 

都築「五味山先生。他の生徒達からもアンタの酷評は聞いている。あたしがいないのをいい事に、生徒達の内申点を下げたり、脅迫じみたパワハラをしている事もね。この子があんたに舐めた態度とやらを取らずとも、アタシはあんたを断罪するつもりだったんだよ」

 

 都築の言葉に五味山は憔悴したが、

 

五味山「な、何故この生徒の肩を持つのです!! 私は今まで生徒の為を想って厳しく接してきた!!」

都築「だとしても度が過ぎてるんだよ。ましてや長時間も拘束して説教なんて時間の無駄だと思わないかい? そういう事はやり切る以前にやって欲しくないね」

 

 都築にばっさり切り捨てられた。

 

都築「それに…」

「!」

 

 すると都築がこう言った。

 

都築「この子にあんたを嵌めるように命令したのはあたしなんだよ。超能力研究会の顧問としてね」

五味山「!!?」

 

 都築の発言に五味山が驚くと、飛鳥は真剣なまなざしで都築を見た。

 

*****************:

 

 それはファーストライブ終了後、帰ろうとしていた飛鳥を別の男性教師が呼び止めて、校長室に行くように指示を出した。

 

 そこで都築と出会ったのである。

 

「あんたが一丈字飛鳥だね」

飛鳥「え…」

「あたしは都築詩船。あんたがいた猪狩学園の学園長とはちょっとした知り合いでね。アンタの事も聞いてるよ。不思議な力を持っているんだって?」

飛鳥「!!!」

 

 都築の言葉に飛鳥は衝撃が隠せなかった。飛鳥はエスパーであるのだが、普段はそれを隠して生活をしていて、正体を知られるといつもドキッとする。

 

飛鳥「…どうしてそのことを」

都築「あんた、同級生や教師に結構悩まされてきたんだってね。その事で託されたんだよ。入学式の時、電報も送られてきただろう? たった一人の生徒の為に送るなんて相当見込まれてる証拠じゃないか」

 

 都築の毅然としたな態度を見て、飛鳥が困惑していた。

 

都築「さて、本題だ。あんたの『超能力部』だっけ? 中々面白いじゃないか」

飛鳥「あ、ありがとうございます…」

都築「白金さんが入部した時、陰で聞いてたよ」

飛鳥「えっ」

 

 都築の言葉に飛鳥が更に困り果てた。燐子と話していて全く気付かなかったのだ。

 

都築「しかも部員は美少女ばかり…ハーレムじゃないか」

飛鳥「ええ。お陰でもう男子生徒からの視線が…」

 

 都築の言葉に飛鳥がげんなりしていた。

 

都築「そうだね。で、その事で話がある」

飛鳥「?」

都築「実はあのライブをPastel*Palletesの関係者が見ていたそうで、問い合わせがあったんだ」

飛鳥「そ、そうだったんですか? やっぱり芸能人としてまずかったのか…」

都築「ではなくて、このままだと男子が入部してくる可能性があるから、出来るだけ男子はシャットアウトしてくれというお達しが来てるんだよ」

飛鳥「あ、あー…」

都築「こちらとしても何か必要な事があれば、力を貸すとも言っていたね」

飛鳥(たった1回のライブでこんな事になるなんて…)

 

 飛鳥は事の重大さを理解して、困惑した

 

都築「今はそれよりもお願いしたい事があるんだ」

飛鳥「……」

 

都築「あんたの力を使って、この学校や周辺で悪さをしている輩を懲らしめてほしいんだよ。最近苦情が多くてね」

飛鳥「わ、分かりました…」

都築「あの古堂和哉という子に話はつけておいたから、安心しな」

飛鳥(そこまで!!?)

 

 都築が和哉と接触していた事に飛鳥は驚きが隠せなかった。

 

都築「それから…」

飛鳥「?」

都築「アタシ、超能力研究会の顧問になる事にしたから宜しく」

飛鳥「えっ!!?」

都築「協力者は近くにいた方が良いだろう」

飛鳥「そ、そりゃそうですけど…」

都築「安心しな。こっちからゴチャゴチャ言うような事はしないよ。よほどの事が無ければね」

 

 そのよほどの事が起こりそうで飛鳥は怖かったが、都築が顧問を務める事になった。

 

飛鳥「その前に校長先生が顧問って出来るものなんですか…?」

都築「決めるのはアタシだよ」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

***************************

 

五味山「そ、そんなの聞いてない!」

都築「そりゃそうさ。この学校を去る人間にわざわざ伝える必要はないからね」

五味山「え!?」

都築「五味山先生。今月末を持ってあんたはクビだよ。それまでに荷物を纏めておきな! 行くよ!」

飛鳥「あ、はい…」

 

 都築が飛鳥を連れ出していくと、五味山はその場に崩れ落ちた。すると学校から大歓声が上がっていた。

 

飛鳥「!?」

都築「久々だね…歓声を上げられるのは」

 

 学校の生徒達からは飛鳥と都築を称える声が上がっていた。

 

「校長先生かっこいいー!!」

「ざまーみろ五味山!! 清々したぜ!!」

「ありがとう一丈字くん!!」

 

 と、様々な声が上がっていた。その中にはこころや日菜、燐子も自分の教室から見ていた。

 

飛鳥(Oops)

都築「オーディエンスの声援にはちゃんと答えてやるもんだよ」

飛鳥「オーディエンス…」

 

 そんなこんなで飛鳥とクソ教師の激闘は終わった。

 

*******************

 

 そしてあの陽キャたちはどうなったかというと…。

 

都築「部活に入りたいなら、まずその服装をどうにかするんだね! それからあんた達は赤点を取ってるから云々…」

 

 都築が堂々と説教をしたため、諦めがついたそうです。

 

ちなみに本当に男子の入部が禁止になり、研究会に入るには都築の入部テストを行うという事で話はついたそうです。同じ理由でハーレムを崩そうとしたり、燐子たちに手を出そうとしていた男子達は不満そうにしていたが、陽キャ達の暴挙を出されると納得せざるを得なかった。

 

ちなみにその陽キャたちは同じ事を考えていた男子生徒達に相当恨まれたようで、すっかりスクールカーストも最下位になりました。

 

******************

 

都築「さて、あんた達が入部希望者だね?」

「……」

 

 部室では都築と5人の少女が向かい合っていた。飛鳥、こころ、日菜、燐子の4人が見守っていた。

 

 

都築「それじゃ始めようかね。アンタ達がやりきれるかを!!」

 

 

おしまい

 



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第204話「人の為に命を懸ける」

 

 

 前回までのあらすじ

 

 入部希望者が5人現れたが、都築が入部テストを行う事になった。

 

*************************

 

都築「今度の定期テストで赤点を取らない事。これが合格条件だ」

「…え?」

 

 超能力研究会・部室。戸山香澄をはじめとする女子生徒5人が入部テストを受けようとしたが、都築から定期テストで赤点を取らなければ合格と言い渡された。

 

都築「そして、その為の努力をやり切る事。これが入部条件だ」

「……!!」

 

********************

 

 それからというもの…。

 

「うわぁ~ん。全然分かんないよぉ~」

 

 1年1組の教室・戸山香澄が涙目になりながら仲間と一緒に勉強会をしていた。

 

「あの部活に入りたいって言いだしたのはお前だろ! 何ならあたしら5人で部活を立ち上げて…」

香澄「だって、あの部活とっても面白そうだったもん。演奏してた人、皆キラキラしてたし…」

 

 香澄が入部しようとしている理由は、飛鳥達がライブをしていた事もそうだったが、何よりも飛鳥達が楽しそうにしていたのが決め手となった。そこで香澄は、バンド仲間である花園たえ、牛込りみ、山吹沙綾、市ヶ谷有咲も誘って入部しようとしたが、新しく顧問になった都築にテストでやり切れるかどうか証明するように言われた。

 

たえ「まあ、これで合格できなかったら、この学校でバンドが出来なくなるようなもんだからね」

香澄「はぐ!!」

 

 たえの言葉に香澄がショックを受けていると、

 

「呼んだ?」

香澄「はぐ…」

 

 クラスメイトの北沢はぐみがやってきた。香澄とは小さい頃からの幼馴染であるが、昔一緒に遊んでいた公園が取り壊しになり、会う機会が無く、入学してから再会したのだった。

 

はぐみ「勉強? 凄いなー」

香澄「うーん…。あの研究会に入りたいから…」

はぐみ「研究会? もしかしてこころんがいる研究会?」

香澄「そうなんだ。とってもキラキラしてて楽しそうだったんだよね」

はぐみ「分かる分かる! はぐみもなんか楽しそうだなーって思ってたんだ! まあ、はぐみはダンス部があるけど…」

たえ「確か掛け持ちOKって言ってなかったっけ…」

香澄「そうだ! はぐも一緒の部活に入ろうよ!」

有咲「って、おい! うちらのバンドはどうすんだよ!」

香澄「まあ、それはそれ。これはこれで…」

はぐみ「それは考えとくねー」

 

 そう言って談笑していると、

 

有咲「そんな事よりも勉強に集中しろ! 香澄だけ赤点取っても知らねーからな!」

香澄「ひ~ん!!」

はぐみ「頑張ってー…」

有咲「って、北沢さんも勉強しねぇと赤点取るぞ。寝てばっかりだし…」

はぐみ「うーん…」

 

 有咲にそう言われると、はぐみはばつが悪そうにした。

 

 

****************

 

 こうして皆がテストに向かって勉強をしていたが、またしても事件が起きる。

 

「おい、聞いたか…」

「ああ。1組の女子5人があの研究会に入ろうとしてるぞ! しかもいずれも美少女!!」

「何ぃ!? あの通称ハーレム部に!!?」

「ゆ、ゆるせーん!!」

 

 嫉妬に怒り狂った男子生徒達が1年3組に突撃したが、飛鳥は既にいなかった…。

 

飛鳥(これじゃおちおち勉強も出来ないよ…)

 

 飛鳥は超能力を使って、存在を消して静かにその場を去っていった。

 

*********************

 

 ある日の事…。

 

こころ「勉強するスペースを作ってあげたわ!!」

飛鳥「あ、ありがとう…」

 

 こころの計らいで、放課後勉強できるスペースが作られた。図書室のテーブルを1つ貸切っていて、そこには飛鳥、こころ、はぐみ、Poppin’Party(香澄、たえ、りみ、沙綾、有咲)がいた。男1人女7人という超ハーレム状態になり、飛鳥はげんなりしていた。

 

 そしてその周りを弦巻家の黒服がガードしているという状態だった。

 

はぐみ「こころんのおうちって本当にお金持ちだねー」

こころ「これで飛鳥も集中して勉強できるわ!」

飛鳥「そ、そうだね…」

 

 これが飛鳥一人だと、男子生徒達がいちゃもんをつけてきて勉強の邪魔をするのだ。そしてどういう訳か図書委員からも見て見ぬふりをされるのは目に見えていた。実際、図書委員の男子生徒は羨ましそうに飛鳥を睨みつけていた。ちなみに陰キャである。

 

 そして黙々と勉強をしていたが、香澄とはぐみがだれた。

 

香澄「も、もう無理…」

はぐみ「はぐみも…体を動かしたいよー」

有咲「コ、コラ!」

 

 香澄とはぐみがだれているのを見て、有咲が諫めた。すると飛鳥は困惑していた。

 

有咲「そんなんじゃ、一丈字に入れて貰えねーぞ!」

香澄「うーん…。そんな事言ったって…」

飛鳥「音楽をやりたいなら戸山さん達で創部をすれば…」

香澄「確かにそうなんだけど、飛鳥くん達も楽しそうだなって思ったんだ。ライブを見て…」

 

 香澄の言葉に飛鳥が反応した。

 

こころ「そうよ! 飛鳥と一緒にライブをしたらとっても楽しかったわ! だから一緒に頑張りましょうよ!」

香澄「うー…」

 

 香澄はどうしても勉強をやりたがらなかった。

 

飛鳥「それでしたら…ここでやめますか?」

「えっ?」

 

 皆が飛鳥を見た。

 

飛鳥「ここでやめればもう無理に勉強をする必要はなくなりますよ。やめますか?」

有咲「ちょ、お前何てことを…」

 

 有咲がツッコミを入れると、こころが有咲の手を握った。有咲がこころを見ると、そのままこころは目を閉じて口角を上げ、首を横に振った。

 

飛鳥「まあ、時には楽しくない事もしなければなりませんが、それを乗り越えたら楽しい事が沢山できますよ」

香澄「飛鳥くん…」

飛鳥「最も、乗り越えられる人に来て欲しいですね。うちの部活はそういう部活なので。もうここまで来て諦めるのは、正直勿体ないですから」

香澄「え…?」

飛鳥「そりゃそうじゃないですか。入部テストを受けてから、様子は拝見させて貰っています。毎日嫌々ながらも勉強する姿勢を見せています。惜しい所まで来てるんですよ。これで途中で投げ出していたら、校長先生はそこで不合格にしています。あともう少しなんですよ」

「……!」

 

 飛鳥の言葉に香澄の目の輝きが戻った。

 

飛鳥「ここで最後までやり切れば合格したも同然ですよ。本当にうちに来たいのなら、やり切って下さい」

 

 飛鳥の言葉に香澄の闘志が燃え上がると、そのまま勉強する姿勢を見せた。

 

有咲「……!」

こころ「その意気よ香澄!!」

 

 驚く有咲をよそにこころは飛鳥ならやってくれると信じてたという顔をしながら、香澄を応援した。

 

はぐみ「は、はぐみも頑張らなきゃ…えーと…」

飛鳥「北沢さん」

はぐみ「?」

飛鳥「焦らないで。分からない事があれば聞いてくださって大丈夫ですので、そのやる気を維持し続けてください」

 

 そう言ってはぐみにも促した。

 

こころ「さあ! このまま赤点を突破して皆で入部するわよ!」

「おーっ!!」

飛鳥「図書室だから静かにね…」

 

 こうして、香澄達は定期テストに向けて勉強を頑張った。

 

日菜「あたしと燐子ちゃんも勉強頑張ってるよ!」

飛鳥「そうですか…」

燐子「当日はお互い頑張ろうね…」

 

 

************************

 

 そして結果発表

 

香澄「やったー!! 赤点なかったよー!!」

はぐみ「はぐみもー!!」

 

 赤点が無かったことに、香澄とはぐみは感涙していた。だがギリギリだった…。

 

有咲「あまり喜んでいいとは言えないけどな」

たえ「最後までちゃんとやり切った結果だねー」

沙綾「うんうん」

 

 有咲たちが納得していると、こころがやってきた。

 

はぐみ「あ! こころん! はぐみ達皆赤点なかったよ!」

こころ「それは凄いわ! おめでとう!!」

香澄「これで皆研究会に入れるね!!」

はぐみ「うん!!」

有咲「って、あれ? 北沢さんも?」

はぐみ「こころんから一緒にベースやらないかって誘われたんだ。面白そうだからやる事にする! 掛け持ちOKだって言ってたし!」

 

 そう言ってはぐみも仲間になった。

 

はぐみ「こころんはどうだった?」

こころ「あたしも赤点なかったわよ! ほら!!」

 

 そう言ってこころは結果の用紙を皆に見せたが、学年で2位だったので有咲が驚いていた。

 

有咲「弦巻さん2位なの!!?」

こころ「そうよ? 超能力研究会としてやり切ったわ!!」

有咲「って事は1位は…」

 

*********************

 

飛鳥「白金先輩。無事に1位でした」

燐子「良かった…」

日菜「すごーいっ!」

 

 飛鳥が日菜、燐子に結果を報告すると燐子がほっとした。実は飛鳥、学年で10位以内に入らなければ、燐子が撮影会を行う事になっていたのだ。だが、写真を撮られるのが嫌な燐子は物凄く嫌がり、飛鳥に課題をクリアすることを促し、飛鳥自身も全力を出し切らざるを得ない状況だった。

 

日菜「だけど、Roseliaも撮影とかあるんじゃないの?」

燐子「そ、それとこれとは別です…」

日菜「1枚撮らせて。るんってするから♪」

燐子「や、やだぁ!!///////」

飛鳥「……」

 

*************************

 

 そして…。

 

都築「確かに、6人とも赤点を取らなかったようだね」

 

 Poppin’partyとはぐみが部室にいて、都築の前で立たされていた。

 

都築「そしてあんた達が一緒に勉強している所も見守らせて貰ったよ。他の子たちも勉強はしていたが、なかでも熱心にやっていたのはあんた達だ。顧問として鼻が高いよ」

 

 都築が口角を上げて、香澄達を見つめた。

 

都築「これなら文句ないよ! 全員合格だ!!」

「やったぁああああああああああああああああああ!!!!」

 

 都築の言葉に香澄やはぐみが歓声を上げた。他のメンバーは苦笑いしていた。

 

都築「これからもやり切るように。以上!」

 

 そう言って都築は去っていった。

 

香澄「やったよ!! 飛鳥くん!!」

飛鳥「おめでとうございま…」

香澄「これも飛鳥くんのお陰だよ! 本当にありがとーっ!!」

 

 何と言う事だろう。香澄が飛鳥に抱き着いた。燐子、りみ、沙綾、有咲、はぐみが顔を真っ赤にした。そりゃそうだ。高校生の男女が抱き合っているのだから、そりゃあそうなりますわな。こころは自分もやりたそうにして、日菜がニマニマしていた。

 

飛鳥「戸山さん。私、男性なのですが…」

香澄「…あっ!!//////

 

 飛鳥に言われて香澄が頬を染めたが、

 

こころ「あら? 嬉しい時にハグをするのは普通よ? アメリカでもそうだったでしょ?」

飛鳥「ここは日本だよ」

香澄「あ、い、いっけな~い…。あはははは…//////」

 

 香澄は照れたように笑ったが、顔が真っ赤だった。

 

有咲「こうやって男子を勘違いさせるんだから気をつけろよな…/////」

沙綾「あ、あははは…//////」

たえ「大胆」

りみ「お、おたえちゃん//////」

 

香澄「さあ! 無事に入部も出来たし、明日も頑張るぞーっ!!」

「おーっ!!」

 

 部室の外から5人組の少女が見ていた。

 

「ねえ、超能力研究会はやってくれてるよ!? 皆もやってよ!!」

「え~…」

 

 そんな中、赤メッシュの少女・美竹蘭は部室を睨んでいた。

 

「どうした? 蘭」

蘭「別に…」

 

 そう言って蘭は足早に去っていった。

 

 

************************

 

 そして、男1人、女9人となった超能力研究会。学校で誰もが知るハーレム部となった。そして5人以上揃った事で、研究会は本格的に部活動として認められることになったが、校長先生が贔屓しているんじゃないかという疑惑を消すために、今は辞退していた。

 

飛鳥「今は地道に努力するしかないね」

はぐみ「運動ならはぐみも得意だよ!!」

飛鳥「そういやソフトボールやってるんだっけ」

はぐみ「うん! キャプテン!!」

 

 飛鳥とはぐみがフルマラソンに参加して、香澄達が応援に駆けつけていた。

 

はぐみ「あ、そうだ。今度研究会でソフトボールやりたいな!」

飛鳥「……」

 

 ちなみに結果は2人とも入賞した。

 

 

 

おしまい

 



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こちら超能力研究会! 永瀬ケイ編
第208話「超能力研究会にあの人が!」



 今回の設定

・ 特別編でゲストありです。


 

 

 

 こんにちは。一丈字飛鳥です。バンドリ学園に通う1年生です。新しい場所で頑張ろうと単身東京まで来ました。

 

 来たのは良いんですが、入学していきなり校則が追加されて、全校生徒部活動をする事になりました。まあ、3年生の受験の都合もあって、顧問無し、1人部活OKという内容なので、苦ではございませんが。

 

 団体行動があまり好きではない私は、如何にも何か人が来なさそうな『超能力研究会』というのを立ち上げました。表向きは全身全霊をかけていろんな事に挑戦するという内容で、こんな胡散臭い部活に誰も来ないだろうなと思っていました。というか色々面倒な事になるので、来て欲しくなかったです。

 

 ですが、来ないなら来ないで話にならないのか、ご都合主義なのか、2人入部希望者が来ました。

 

 1人目は弦巻こころさん。私の中学時代の同級生の幼馴染だそうで、弦巻財団のお嬢様です。うん、これ色んな意味で断れないタイプだね。

 

 2人目は氷川日菜さん。芸能人でアイドルやってます。これも色んな意味で断れませんね。

 

 そして2人に共通するのはとにかくぶっ飛んでる事ですね。私も人の事が言えないので、やっぱり似たような人が集まるんですね。そう言い聞かせてます。

 

 で、部員が3人になって、部活動として何か結果を残さないといけないので、手始めにゲームの大会に出る事にしました。で、興味を持った2人も一緒に参加する事になり、結果は優勝。まあ、初戦突破出来たら上出来かなーって思ったんですけど、氷川先輩と弦巻さんが中々の才能ウーマンぶりを発揮しました…。

 

 そして大きな大会で優勝したという事もあって、全校集会で表彰されました。3人揃って…。

 

 で、そんなこんなで部室も与えられました。

 

こころ「部室も与えられたから、ここでいろんなことが出来るわね!」

日菜「後、冷蔵庫とか欲しいなー。お菓子とかジュースとか…」

飛鳥「家じゃないんですから…」

 

 …そんなこんなで、超能力研究会は後に引けない状態になりました。ここで語りは終わります。

 

******************

 

 ある日の事。

 

こころ「ねえ飛鳥! 今度はどんな事をするのかしら!?」

飛鳥「活動は個人に任せてるから」

日菜「そんな事言って、また飛鳥くんだけ何か面白い事しようとしてるんでしょ!!」

 

 部室で3人がソファーで座っていた。

 

飛鳥「…その前にお二人とも、ちょっと近いです」

こころ「飛鳥。敬語はやめてって前に言ったわよね?」

飛鳥「先輩と同級生が一緒だから、微妙なんだよ」

日菜「じゃあ、あたしもため口でいいよ?」

飛鳥「そういう訳にはいきませんよ。出やすい質なんですわ」

日菜「そんな感じそんな感じ!」

 

 飛鳥の発言に日菜が楽しそうにすると、飛鳥がキョロキョロ見渡した。

 

飛鳥「…それにしてもこころ、随分私物置いたなぁ」

こころ「あら。部活動をやるのにぜーんぶ必要なものよ?」

飛鳥「…そう。だったらいいけどさ」

 

 飛鳥がそう呟いたその時、何かに気づいた。

 

日菜「どうしたの?」

飛鳥「あっちから人の気配が…」

こころ「入部希望者かしら?」

 

 こころがソファーから起き上がって、扉を開けると一人の女子生徒と、一人の男子生徒が現れた。だが、女子生徒の方は何か気まずそうにしていた。

 

日菜「あ! 燐子ちゃん!」

飛鳥「お知合いですか?」

日菜「うん。おねーちゃんのバンドの子なんだ! 白金燐子ちゃん!」

燐子「こ、こんにちは…」

 

 黒髪のロングヘアーの大人しそうな女子生徒・白金燐子が挨拶をした。

 

日菜「どうしたの?」

燐子「え、えっと…」

 

 日菜がそう言うと、燐子が視線を逸らした。

 

こころ「で、そっちの男の人は誰かしら?」

「あ、3年1組の永瀬ケイです。入部希望です」

「!!?」

 

 永瀬ケイという男子生徒が入部届を持ってやってきたので、飛鳥は驚きを隠せなかった。

 

飛鳥「にゅ、入部希望の方ですか…?」

ケイ「あ、はい。この部活、ゲームをするみたいなので…」

飛鳥「あ、あー…。特にゲームをする部活ではないんですけど…」

燐子「えっ…」

 

 飛鳥の言葉に燐子がショックを受けていたが、日菜が割って入った。

 

日菜「まーまー。折角だから一緒にお話しよーよ!」

飛鳥「永瀬さんは、少し面談しましょうか。ミスマッチを防ぐためにも」

ケイ「宜しくお願いします」

日菜「燐子ちゃんも入部希望でしょ」

燐子「えっ!!?」

 

 日菜の言葉に燐子が驚きを隠せなかった。

 

 

 5人で面談を行う事になった。

 

飛鳥「えーと…。簡単に質問します。入部の志望動機は?」

ケイ「ゲームを極めたいと思ったからです。昔からゲームが好きで、一丈字部長たちが研究会でゲームの大会に出た事を知ってこの部活の事を知り、研究会の紹介記事を見て、この部活でゲームを極めたいと思ったので、志望しました」

飛鳥(志望動機がしっかりしてる…)

 

 ケイのしっかりした志望動機に飛鳥は舌を巻いた。

 

飛鳥「…そちらの白金先輩は如何でしょうか」

燐子「は、はい…あの…//////」

 

 飛鳥の言葉に燐子が頬を染めた。

 

燐子「そ、その…。実は私もゲームが趣味で…。それと、この部活動以外で入りたいという部活がないので…//////」

 

日菜「要するに2人ともゲームが目的で、入りたいんだね」

ケイ「そ、そうなりますね…」

燐子「ダメでしょうか…」

日菜「ううん。ぜーんぜん? 寧ろゲームはあたしも好きだから、いいんじゃない? るんってするし」

こころ「そうね! 一緒にゲームが出来る仲間が沢山いると楽しいわ!」

日菜「で、どうするの部長?」

飛鳥「うーん…」

 

 飛鳥が考えながらケイと燐子を見つめた。

 

飛鳥「…まず、永瀬先輩ですが、この部活動に入りたいという理由が明確かつ妥当だと判断できました」

ケイ「ありがとうございます!」

飛鳥「白金先輩ですが…」

燐子「……」

 

 飛鳥の言葉に燐子が困った顔をした。

 

飛鳥「ここ以外に入りたい部活がない。これですが、私も入りたい部活が無かったので、気持ちが凄く分かります」

日菜「で、どうなの?」

 

 日菜が聞くと、飛鳥が改めてケイと燐子を見た。

 

飛鳥「お二人に最終確認です。ゲームを極めて頂くのは問題ございませんが、部活動ですので、定期的に活動の報告をして頂いたり、実績を上げて貰う必要がございます。それでも宜しければ、そちらの入部届を受理させていただきます」

ケイ「勿論! 宜しくお願いします!」

燐子「わ、私も…」

 

 こうして、超能力研究会に新たな仲間が2人も加わった。

 

**********************

 

 後日

 

飛鳥「えー。部員が5人になったので、部費が出る事になりました」

こころ・日菜「わー!!」

 

 飛鳥の言葉にこころ・日菜が歓声を上げると、燐子とケイも拍手した。

 

飛鳥「そしてゲーム機の持ち込みですが、持込許可証を提出するようにし、ゲームをするのはこの部室内のみとの事です。破れば没収されます」

「はーい」

飛鳥「という訳ですので、今日も部活動を行いましょう」

 

 と、5人での活動が始まった。

 

日菜「ところで飛鳥くんはそのパソコンで何を作ってるの?」

飛鳥「ただのプログラミングですよ」

 

 

 

おしまい

 



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第209話「メイドインアスカ」

 

 

 新たな仲間を加えた超能力研究会は今日も部活動に勤しんでいた。

 

飛鳥「……」

 

 部室には5人全員が集まっていたが、飛鳥は黙々とパソコンで何かを作っていた。そんな飛鳥を4人は見ていて、こころと日菜が横から覗き込んでいた。

 

こころ「何を作ってるの?」

飛鳥「この研究会のホームページ」

日菜「ホームページ!!? そういう事言ってよ~!!」

飛鳥「まあ、土台だけは先に作って、デザインはちゃんと皆さんで話し合いますよ」

こころ「けど、どうしてホームページを作ろうとしたの?」

飛鳥「校長先生から作れって指示があったから」

「!!?」

 

 飛鳥がカタカタキーボードを入力した。

 

飛鳥「この研究会での活動内容をWeb上で見れるようにするためにね。数時間もあればパパっと出来るよ」

日菜「へー…」

飛鳥「あ、そういえば氷川先輩」

日菜「日菜!」

飛鳥「…日菜先輩。写真ってOKでしたっけ」

日菜「あ! あの大会の写真はOKだって!」

飛鳥「分かりました。今のところでは目玉にしようとしてますので…」

 

 飛鳥が真剣なまなざしでキーボードを打ち続ける。

 

こころ「それはそうとどんなホームページにするつもりなのかしら?」

日菜「なんかるんってするのがいいな!」

飛鳥「個人のページを設けるつもりなので、リクエストはそちらでお願いします」

「!!?」

 

 飛鳥の言葉にケイと燐子も反応した。

 

ケイ「…そういえば一丈字部長って、パソコン得意なんですか?」

飛鳥「ちょっと齧ったくらいですよ。あ、私1年なのでお気遣いなく」

ケイ「いえいえ、この部室では私の方が後輩なので…」

 

 と、お互い謙遜しあっているのを日菜や燐子が不思議そうに見ていた。

 

飛鳥「あ、お気遣いなくそれぞれ活動をどうぞ」

 

 そして下校時間になり…。

 

飛鳥「土台を何とか完成した」

日菜「見せて見せてー。おお! ちゃんと画面も遷移出来てるよ!」

こころ「凄いわね飛鳥!!」

飛鳥「ちなみにスマートフォンからでも対応可能」

ケイ「…ちょっと待って? いつから作ってたの?」

飛鳥「数日前からですね。ソースコードとかも一から書いてたので、いやー大変でした」

 

 飛鳥の言葉にケイや燐子が驚いていた。

 

飛鳥「さて、此間の大会の事をアップロードしたら完成だ」

日菜「ねえ! プログラミングやってみたい!」

飛鳥「それは構いませんが…。大規模なものを作ると物凄く時間がかかるので…」

日菜「小さな奴だよ。何か簡単に動く奴」

飛鳥「それなら構いませんが…」

こころ「あたしもやってみたいわ!!」

 

 と、後日全員でやってみる事にした。

 

******************

 

 その結果、こころと日菜はやっぱり天才的な成果を発揮した。

 

飛鳥「わあ」

ケイ「凄いですね…。氷川さんと弦巻さん」

燐子「す、すごい…」

 

こころ「見てみて飛鳥! プログラミングって楽しいわね!」

 

 と、こころが簡単な猫のアニメーションを作り出していた。

 

日菜「るんってする!!」

 

 日菜も日菜で自分と姉のアニメーションを作っていた。

 

飛鳥「それでは作ったものは成果物としてファイルに保存しましょう」

 

 と、飛鳥達は成果物を所定のフォルダに格納した。

 

飛鳥「これでホームページらしくなってきたぞ…」

 

***************

 

 そして超能力研究会のホームページがある程度様になってきた。

 

飛鳥「いやあ、皆さんデザイン案を出して戴いたので、はかどりました。あと永瀬先輩、手伝って頂いてありがとうございました」

 

 それぞれのページに自己紹介とやろうとしているジャンルを紙に書いて、飛鳥がテキストを入力していったのだ。

 

 ちなみに以下が各ページの内容である。

 

一丈字 飛鳥

 

※ 赤を基調とした忍者っぽいページ(ボタンなどが巻物であり、文字も若干それっぽい)

 

名前:一丈字 飛鳥(いちじょうじ あすか)

学年:1年3組です。

特技:特技と言えるものはございませんが、広く浅くやってます。

自慢:此間ゲームの大会で優勝しました。

趣味:最近は仰向けになって色んなことを考えるのがブームですね…。

活動のジャンル:全般(運動系、文化系問わず、やりたい事をやる)

ひと言:超能力研究会の部長を務めています。宜しくお願いします。

 

名前:弦巻 こころ(つるまき こころ)

 

※ 黄色を基調としたファンシーあふれる壁紙

 

学年:1年1組よ!

特技: 楽しいことを沢山考えられるわ!

自慢: 最近、飛鳥や日菜とゲームの大会に出て優勝したの! 楽しかったわ!

趣味: 楽しいことを沢山探す事よ!

活動のジャンル:楽しい事なら何でもするわ!

ひと言:ハッピー! ラッキー! スマイル! イエーイ!!

 

名前:氷川 日菜(ひかわ ひな)

 

※ 水色を基調としたクーリッシュな壁紙

 

学年:2年2組でーす!

特技: ちょっとやれば何でもできるよ!

自慢: アイドルバンド「Pastel*Palletes」のギターをやってます!

趣味: アロマオイルを作る事かな?

活動のジャンル:るんってする事!

ひと言:Pastel*Palletesも応援よろしくねー!

 

名前:永瀬 ケイ(ながせ けい)

 

※ 黒を基調とした機械的なページ

 

学年:3年1組です

特技: ゲームが得意です

自慢: ゲームにかける情熱は部長よりも自信があります

趣味: やっぱりゲームですね。

活動のジャンル:ゲーム

ひと言:1年間しかありませんが、部活動をしっかり楽しみたいと思います。

 

名前:白金 燐子(しろかね りんこ)

 

※ 群青色を基調とした落ち着いた壁紙

 

学年:2年1組です…

特技: ピアノが弾けます…

自慢: 自慢と呼べるものはありません…

趣味: ゲームです…。

活動のジャンル:ゲーム、ピアノ

ひと言:皆さんの足を引っ張らないように頑張りたいです…。

 

***********************

 

日菜「ホームページっぽくなってきたね~」

飛鳥「そうですね。これで後は活動内容を増やしていくだけですね」

日菜「何かこういうのがあると、るんってするね!」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 るんの意味が分からず、飛鳥は苦笑いした。

 

こころ「さて! どんどん楽しいことを見つけていくわよ!」

日菜「おー!!」

飛鳥「お、おー…?」

 

 と、日菜とこころのノリに飛鳥は若干ついていけなかったが、飛鳥がある事に気づいた。

 

飛鳥「そういえば白金先輩はピアノって書いてましたけど…」

燐子「あ、やっぱりRoseliaの活動もあるから…」

日菜「あたしもギターがあるからねー」

飛鳥「BGMを作ってみるというのもよさそうですけど…」

こころ「それよりもライブがしてみたいわ!!」

「!!」

 

 その後、飛鳥達がライブをする事になるのだが、また別の話である…。

 

 

おしまい

 



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第210話「ゲームがメインになりつつある」

 

 

 超能力研究会は破竹の勢いで名を広めていった…。

 

「本当に凄いよ! 中等部でも名前が広まってるんだから!!」

 

 燐子の親友であり、同じバンドの宇田川あこと燐子、ケイは3人で話をしていた。

 

燐子「そ、そうなんだ…」

ケイ「まあ、凄いのはあの3人だけどね…」

 

 ケイ達が飛鳥、こころ、日菜を見ると、飛鳥はパソコンで入力していて、日菜とこころはそれを見ていた。

 

こころ「飛鳥。何作ってるの?」

飛鳥「学校に報告する用のプログラムだよ」

日菜「プログラミングも出来るの!?」

飛鳥「まあ、それなりに…」

 

 日菜が驚くと飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「まあ、これは時間をかけてぼちぼち作るつもりです」

こころ「とっても楽しみだわ!!」

飛鳥「それはどうも…」

 

 こころの言葉に飛鳥が苦笑いすると、あこが興味深そうに見ていた。

 

あこ「…たしかあの人だよね。部長さんって」

燐子「うん…。一丈字飛鳥くんって言って、凄い子なんだよ」

 

 すると飛鳥もあこに気づいた。

 

飛鳥「あれ? そちらの方は…」

日菜「あっ! あこちゃん!!」

 

 そして6人で会話をする事になった。

 

あこ「初めまして! 中等部3年2組の宇田川あこです! 宜しくお願いしまーす!」

飛鳥「宜しくお願いします。超能力研究部の一丈字飛鳥です」

 

 飛鳥とあこが挨拶をした。

 

あこ「ゲームの大会見てました! とってもカッコ良かったです!」

飛鳥「え? あ、そうなんですか?」

 

 会場まで燐子を応援に来てくれてたのかと思い、飛鳥は驚いていた。

 

あこ「あこ、今はダンス部にいるんですけど、この部活動も面白そうだなーって思いました!」

飛鳥「それはどうも…」

 

 あこの言葉に飛鳥は苦笑いした。

 

あこ「そう言えば今度もゲームの大会に出るの?」

飛鳥「それはまだ未定です」

日菜「あ! そういや今度ミリタリー系のゲームがあるみたいだから、一緒に出ようよ!」

ケイ「ミリタリーゲームだったら、僕得意だよ」

飛鳥「…ちなみにチームの出場制限とかは?」

日菜「3人1組だって」

あこ「それだったら丁度6人いるし、2組ずつで出ようよ!」

こころ「面白そうね!」

飛鳥「それはいいですけど…白金さんと宇田川さんはバンド大丈夫ですか?」

燐子「だ、大丈夫です…」

あこ「うん。確かこの日は何もなかったよね」

 

 と、今度はミリタリー系のゲームに出場する事になった。日菜もアイドルの仕事がなかった為、出場が出来た。

 

飛鳥「…結構忙しそうなイメージがあったけど」

日菜「出れなかったらお話にならないもんね」

飛鳥「メタ発言やめてください」

 

 そんなこんなで飛鳥達は出場した。飛鳥、日菜、燐子チーム。ケイ、こころ、あこチームに分かれて出場したが…。

 

*********************

 

ケイ「一丈字部長、日菜ちゃん、燐子ちゃん。優勝おめでとう」

 

 大会終了後、ケーキバイキングに来ていた。結果として飛鳥達が優勝して、ケイ達は8位だった。

 

あこ「ひなちんと飛鳥くんの最強コンビが…。勿論りんりんのサポートもあったけど」

ケイ「部長もなんだかんだ言って、やるよね…」

飛鳥「いやー…あはははは…」

 

 あこやケイの言葉に飛鳥が苦笑いしたが、

 

飛鳥(リアルの戦闘でもあんな感じだなんて言っても、信じて貰えないかもな…)

 

 中学時代、飛鳥は超能力者として犯罪者と戦っていたが、その時から仲間のサポートに徹していた。その経験がゲームにも活かされたのだろう。

 

飛鳥(ましてや日菜さんが孫さん(※飛鳥の友人で超能力者)みたいだからなぁ…)

 

 と、日菜を見てかつての友人の姿を思い出した。

 

燐子「ほ、本当にお強いです…」

日菜「とってもるんってした!」

飛鳥「それにしても日菜さん。芸能人がゲームの大会とかに出ても大丈夫なんですか?」

日菜「うん。うちの事務所大丈夫だし、どんどん出場してくれって。あ、そういえば近いうちに飛鳥くんに会いたいって言ってたよ」

飛鳥(なんてこった)

 

 日菜の言葉に飛鳥が固まった。

 

あこ「それはそうと、とっても面白かったなー。あこも高校に入学したらこの部活入ろうかなー」

 

 と、あこがそう呟くと、飛鳥は何も言えずにいた。

 

***********************

 

 そしてまた、学校でも表彰される事になり、美少女に囲まれてゲームの大会に出場した飛鳥とケイは色んな意味で注目の的となった。

 

「一丈字くん。ちょっといいかな」

 

 飛鳥が先生に呼び出されて、教室を出ていくと廊下で男子生徒達が飛鳥を睨みつけていた。

 

「おい、あいつだろ…」

「ゲームの大会で何度も優勝してる…」

「日菜ちゃんと一緒にゲームやりやがって」

 

 と、悪態をついていたのが飛鳥にも聞こえて困惑していた。

 

飛鳥(あーあ…恐れてた事が現実に)

 

 そしてまたケイはというと…。

 

「おい、永瀬!」

ケイ「な、なに?」

 

 ケイも男子生徒達に詰め寄られていた。

 

「お前、日菜ちゃんや燐子ちゃんと同じ部活なんだろ!?」

「教えろよ。普段どんな事をしてるんだ?」

ケイ「ゲームをしてるだけだけど…」

 

 そんなときだった。

 

「なあ、オレ達も超能力研究部に入れてくれよ」

「!?」

 

 いかにも何かヤラカシそうな陽キャ3人がやってきた。

 

ケイ「い、一体何のためだ…」

「あー? そんなの決まってるだろ」

「選び放題だからに決まってんじゃん。それ以外に何があるんだよ」

「オレ達、女遊びを極めたいでーす」

 

 そういうが、ケイはため息をついていた。

 

ケイ「悪いけど、そういう部活じゃ…」

 

 ケイがそう言うと、陽キャの一人がケイの胸ぐらをつかんだ。

 

「ああ? オレ達に逆らうの?」

「陰キャの分際で生意気なんだよ」

「そうだそうだ! 陰キャは黙ってオレ達の言う事を聞いてればいいんだよ」

「あのー」

「?」

 

 飛鳥が現れた。

 

ケイ「一丈字部長!」

飛鳥「あ、ケイさん。ちょっと宜しいですか?」

「お、お前は…」

 

 3年1組の生徒達が飛鳥を見ていると、陽キャがケイを離して飛鳥に近づいた。

 

「お前が部長だな」

飛鳥「何でしょう」

「オレ達を超能力研究部に入れてくれねぇかな?」

飛鳥「生憎ですが、本日から男子の受け入れが禁止になったんですよ」

「はぁ!!?」

 

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

 

「な、何でだよ!!」

飛鳥「理由は大きく分けて2つございまして、1つ目は氷川さんの事務所の方が極力男子を入れないで欲しいと依頼があったんです」

「!!?」

飛鳥「そしてもう1つは、学園長先生が超能力研究部の顧問を務める事になりまして…」

ケイ「学園長先生が!?」

 

 飛鳥の言葉にケイが驚いた。この学園の学園長・都築詩船はクールな性格で、厳しい事でも有名である。飛鳥達の活躍を知った都築が興味を持ち、先程飛鳥と面談を行って、飛鳥を気に入ったのか、顧問を務める事になったのだ。

 

「あ、あのババアかよ…」

 

 都築が顧問になったことを知って、陽キャ達はげんなりしていた。

 

飛鳥(まあ、男子を入れないとは言ってないから、厳しい入学条件をクリアすればいいだけなんだけど…こりゃあ諦めるな)

 

 陽キャ達の顔を見て飛鳥は安心していた。

 

「そ、そんなの不公平だ!!」

「陰キャの分際で可愛い女子達と囲まれていいと思ってんのかよ!!」

 

 と、飛鳥に悪態をついたが、

 

飛鳥「それでしたら、このクラスの先輩方は可愛くないとでも?」

「そうは言ってねぇだろ!」

「そう言ってるように聞こえるんですけど?」

 

 陽キャ達が後ろを振り向くと、1組の女子達がジト目で見つめていた。

 

飛鳥「あ、でも先輩なので美人さんって言った方が良いですね。失礼しました」

ケイ「全く、失礼な奴らだ…」

「おまえも便乗するな!!」

 

 と、陽キャ達が切れたが、女子達はそれ以上キレた。

 

「うっさいわね!!」

「本当に後輩の女子のお尻ばっかり追いかけててうざいのよ!!」

「一応このクラスにもバンドやってる子いるんですけど!!?」

「そういう所よ!!」

 

 女子達が一斉に怒鳴ると、陽キャ達が退散していった。

 

飛鳥「あ、氷川先輩達には私からお伝えしますので失礼します」

ケイ「あ、はい…」

「これからも頑張ってねー」

「応援してるよー」

飛鳥「ありがとうございまーす。それではー」

 

 飛鳥が愛想良く振りまいて、その場を後にした。

 

ケイ(危ない危ない。部長がいなかったら危うくハチの巣にする所だったぜ…)

 

 と、ケイがひそかに持っていたおもちゃのガンを手に持って、危機感を感じていた。

 

 

おしまい

 

 

 



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第223話「お花見ィ」

 

 

 それはある春の事だった。

 

「この学園、桜がとても綺麗ですね」

「そうなんですよ。桜の名所とも呼ばれてまして…」

 

 部室の窓から飛鳥とケイが桜を見ながら話をしていた。ケイのほうが2つ年上だが、フランクに話している。

 

「とてもきれいな桜ね!」

 

 こころも話しかけてきた。

 

こころ「そうだわ! お花見しましょ!!」

飛鳥・ケイ「!?」

 

 これが全ての始まりだった…。

 

**************

 

 バンドリ学園では名物が誕生していた。昨今ではガールズバンドは戦国時代に突入しており、その中でもアイドルバンド「Pastel*Palletes」、プロも注目している本格派バンド「Roselia」、王道ガールズバンド「Afterglow」の3つがこの学園に所属している事もあって、男子達は彼女たちをお花見に誘い、お近づきになり、あわよくば男と女からオスとメスになろうとしているのだ。

 

 飛鳥は勿論興味ないし、めんどくさいのでノータッチで行こうとしたが、

 

日菜「お花見!!? やろうやろう!!」

 

 Pastel*Palletesのメンバーである氷川日菜と、Roseliaの白金燐子が部員だった為、そういう訳にもいかなかった…。

 

こころ「超能力研究会でお花見! 楽しみだわ!」

 

 まあ、お花見は1日だけとは限らないので、クラスでとか部活でとかも考えられるので、飛鳥はそれほど深くは考えなかった。

 

 だが、それが大きな間違いなのである。

 

飛鳥「間違いって言うか、話が盛り上がらないだけでしょうが」

 

*************************

 

 そんなこんなで学園内でお花見をしてよいという事になったが、もう男子生徒達はバンドガールズをお花見に誘う事に熱心になっていた。そりゃあバンドガールズ以外にも可愛い女子とか沢山いたりするけど、やっぱり有名人という事もあって、お近づきになりたかったのだ。

 

ケイ「どうします部長」

飛鳥「…何がです?」

ケイ「不届き者をしめあげますか?」

飛鳥「その必要はございませんよ。勝手に堕ちていきますから」

 

 飛鳥としては超能力研究会として1回お花見が出来ればそれで良いと考えていた。クラスではそんなに仲が良い方ではない為、誘われる事もないと考えていた。

 

日菜「飛鳥くん!」

飛鳥「何です?」

日菜「超能力研究会のお花見なんだけどさ、うちのメンバー連れてきていい?」

飛鳥「えっ」

 

 日菜の言葉に飛鳥が驚いた。日菜の言っているメンバーとは、Pastel*Palletesの事であり、メンバー全員来ようものなら大変な事になると飛鳥は考えていた。

 

飛鳥「…事務所的に大丈夫なんですか?」

日菜「大丈夫だよー。皆も飛鳥くんと話がしてみたいって言ってたし!」

飛鳥「えっ」

 

*************

 

 そんなこんなでお花見当日。桜は満開で沢山の生徒達がビニールシートを敷いて、お花見を楽しんでいた。流石に屋台は出店しない事から、飲食物は持込だったが…。

 

日菜「さて、それでは超能力研究会のお花見を始めたいと思います!」

 

 飛鳥、ケイ、燐子、日菜、あこ、パスパレの10人が集まっていた。ちなみにあこは燐子が話したところ、自分も行きたいとあったので来た。Roseliaの残りの3人は都合が悪くて欠席である。

 

 ちなみに、遠くから生徒達が驚いたように見ていたり、羨望や嫉妬の眼差しで見ていた。

 

日菜「それじゃ部長! 挨拶!」

飛鳥「あ、はい」

 

 飛鳥が立ち上がった。

 

飛鳥「えー。皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます。この超能力研究会、私個人で活動する予定だったのですが、4名の方が入部してくださり、合計5名で活動させて頂いております。また、今回は部員の関係者の方々もお越しくださっています。この研究会の活動の事をご存じ頂く必要はございません。ただ、交流を深めればと思います。短い間ではございますが、どうかお楽しみください。以上です」

 

 飛鳥が流ちょうに喋ると、皆が拍手した。

 

彩「す、すごい…私よりも喋れてる…」

イヴ「ブシドーです!」

 

 そんなこんなでお花見が始まり、皆がわいわい楽しんでいた。ケイは燐子、あことゲームの話をして、飛鳥はこころと共にパスパレと話をしていた。

 

 だが…。

 

「あのさぁ」

「?」

 

 突如イケメン風の男子3人がやってきて、皆が振り向いた。

 

こころ「あら、あなた達は誰かしら?」

「誰だっていいじゃん。それよりもさ、オレ達と一緒に花見しようよ」

「そうそう。こんな地味な二人よりもオレ達と遊んだほうが楽しいよ?」

 

 地味な二人とは飛鳥とケイの事だったが、飛鳥は全く気にしてなかった。というか「やっぱりな…」という表情をしていた。

 

千聖「結構です」

「そんなつれない事言わないでさぁ」

 

 千聖が断ろうとするが、チャラ男たちは退かなかった。そりゃそうだ。ここで退いたら本当に何しに来たんだという話になる。

 

「おい、何ぼーっと座ってんだよ」

「邪魔なんだよ。帰れよオラ!」

 

 そう言ってチャラ男達は飛鳥とケイを蹴ると、飛鳥とケイが立ち上がった。

 

「何だよ。やるのか?」

「オレ達格闘技やってるんだぜ?」

 

 と、チャラ男たちは拳を鳴らしたが、飛鳥は無視してケイに話した。

 

飛鳥「ケイさんはこころ達をお願いします」

ケイ「分かりました」

 

 飛鳥が後ろを振り向いた。

 

飛鳥「皆さん一塊になってください。危ないので」

「!!」

「てめぇ。かっこつけてんじゃねぇ…よ!!」

 

 チャラ男の一人が飛鳥に殴りかかったが、飛鳥は見ないで拳を受け止めた。

 

「!!?」

飛鳥「ケイさん。お願いします」

ケイ「あ、はい…」

 

 そう言ってケイはこころ達の前に立ってガードした。

 

ケイ「この場から離れて」

「えっ…」

ケイ「いいから」

 

 ケイの言葉に迷う彩達だったが…。

 

こころ「飛鳥なら大丈夫よ。行きましょ!」

「!」

千聖「そうね。ここは彼に任せましょう」

 

 そう言ってバンドガールズとケイは避難した。

 

「てめぇ…!!」

「モブのくせに調子に乗りやがって!」

飛鳥「私がモブなら、あなた方はモブをひきたたせてくれる悪役ですか?」

「!」

 

 飛鳥の発言に日菜と千聖が噴出し、チャラ男たちが顔を真っ赤にした。

 

「許さねぇ!!」

「この野郎!!」

 

 そう言って全員で飛鳥に殴りかかろうとしたが、飛鳥は攻撃をすべてかわし、後ろに回り込んだ。

 

飛鳥「こっちですよ」

「てめぇ!!」

 

 チャラ男たちは怒りに身を任せて飛鳥に襲い掛かるが、一向に攻撃が当たらず、まして飛鳥はバク転までやらムーンサルトまで披露した。そして周りの生徒達が一気に注目しだした。

 

「く、くっそぉおおおおお!!!」

飛鳥「まだやりますか?」

 

 飛鳥は余裕な笑みを浮かべる。まるで別のシリーズで変態たちに手を焼かされている事に対しての鬱憤を晴らしているようにも思えた…。チャラ男たちは数人がかりで1人の人間を捕まえられない所を、他の生徒達にも見られてイライラが最高潮していた。

 

「おい! オレ達の目的はこいつじゃない! 日菜ちゃん達だ!」

「そうだった!!」

「何としても捕まえて…」

 

飛鳥「させませんよ」

「!」

 

 飛鳥が指を鳴らすと、弦巻家の黒服達が現れたが、いずれも筋骨隆々の男達だった。

 

飛鳥「ショーは終わりです。ご退場願いましょうか」

 

 すると筋骨隆々の男たちが一斉にチャラ男たちに襲い掛かり、捕らえ、そのまま連行していった。

 

「は、離せ!!」

「どうしてオレがこんな目に~!!」

「た、助けて!! 助けてくれぇ~!!!」

 

 黒服に取り押さえられるチャラ男たちは何ともまあ無様だった。

 

飛鳥「あ、もうそろそろ大丈夫ですよ」

 

 飛鳥がケイ達に話しかけると、ケイ達が出てきた。

 

ケイ「流石部長です」

飛鳥「いえいえ」

 

 飛鳥が口角を上げた。

 

飛鳥「皆さん。ご無事ですか?」

彩「あ、うん…」

 

 飛鳥の言葉にパスパレのボーカル担当・丸山彩が返事をした。

 

飛鳥「さて、これで花見の続きは…できますかね?」

「一丈字様」

 

 黒服の女性が現れた。

 

飛鳥「あ、はい」

「これからは我々が警備に当たりますので、ごゆっくりお楽しみください」

飛鳥「そうですか。ありがとうございます」

 

 飛鳥が凛とした表情で黒服の女性にお礼を言った。

 

飛鳥「…最も、丸山さん達の状況次第ですが」

彩「あ、ううん! 私達の事は気にしないで!」

麻弥「そうっすよ!」

日菜「それよりも飛鳥くん! とってもカッコ良かったよ!」

飛鳥「恐縮です」

 

 と、まあこんな感じでパスパレと仲良くなった超能力研究会。

 

イヴ「イチジョウジさんは、ニンジャなんですか!?」

飛鳥「違います」

 

 イヴが興奮気味に話すと飛鳥が困惑していた。

 

こころ「そうだわ! 折角だから何か歌いましょ!」

千聖「歌うって何を…」

こころ「何がいいかしら? 飛鳥、何かいい歌ない?」

飛鳥「やっぱり春の歌がいいよね。TOKIOの花唄とか。あ、知ってる?」

こころ「聞いた事あるわ! それじゃそれにしましょ!」

 

 そして飛鳥がギターを演奏して、ケイ、こころ、日菜、あこと共に歌った。5人とも気持ちよさそうに歌っていたが、歌がそれなりに上手かった為、聞いていた彩、千聖、麻弥、イヴ、燐子も気持ちよさそうに聞いていた。

 

 最も、その様子を男子生徒達が嫉妬の眼差しで見つめていたが…。

 

麻弥(一丈字さん…歌が上手いっす…)

燐子(一丈字さんの声…どこかで聞いたことがあるような…)

彩(なんかポケモンの主人公の声に似てるような…)

 

 そんなこんなで楽しいお花見となりました。

 

**********

 

 翌日、日菜と燐子はそれぞれのバンドでお花見をする事になり、部室には飛鳥、ケイ、こころの3人がいた。

 

飛鳥「はぁ…」

ケイ「部長」

こころ「大活躍ね!!」

 

 校内新聞にチャラ男たちを撃退したことが堂々と乗ってしまったのだ。それならまだしも、そのせいで同じく新聞に載っていたAfterglowや白鷺千聖の扱いが雑になっていたのだ。

 

飛鳥「…まあいいや」

 

 飛鳥が困惑しながら、パソコンを操作していた。

 

こころ「それはそうと何をしてるの?」

飛鳥「報告書の作成だよ。定期的に提出しないといけないから…」

こころ「ふーん…」

 

 飛鳥の言葉にこころが口をへの字にした。

 

こころ「そういえば、これからどうするのかしら?」

飛鳥「まあ、来月はテストがあるから、それを頑張らないとね」

こころ「テスト…。お勉強はあまり好きじゃないわ」

飛鳥「いい点とればとる程先生が笑顔になるよ」

こころ「そう言われたらそうね」

飛鳥「まあ、それが終わったらまた何かゲームの大会にでも出ようかな。ITの勉強も兼ねて」

こころ「いいわね! ゲームがあんなにたくさんの人を笑顔にするなんて知らなかったわ!」

飛鳥「笑顔にする方法何ていくらでもあるさ」

ケイ「部長。僭越ながら私もご協力させて頂きます!」

飛鳥「それは構いませんが…。受験の方は大丈夫ですか?」

ケイ「はい! もう既にとある専門学校から合格を貰ってるので、受験の心配はありません!!」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 超能力研究会の活躍はまだまだ続く…。

 

おしまい

 

 



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こちら超能力研究会! 桐谷キリト編
第211話「飛鳥と謎の少年」


 

 

 

 こんにちは。一丈字飛鳥です。バンドリ学園に通う1年生です。新しい場所で頑張ろうと単身東京まで来ました。

 

 来たのは良いんですが、入学していきなり校則が追加されて、全校生徒部活動をする事になりました。まあ、3年生の受験の都合もあって、顧問無し、1人部活OKという内容なので、苦ではございませんが。

 

 団体行動があまり好きではない私は、如何にも何か人が来なさそうな『超能力研究会』というのを立ち上げました。表向きは全身全霊をかけていろんな事に挑戦するという内容で、こんな胡散臭い部活に誰も来ないだろうなと思っていました。というか色々面倒な事になるので、来て欲しくなかったです。

 

 ですが、来ないなら来ないで話にならないのか、ご都合主義なのか、2人入部希望者が来ました。

 

 1人目は弦巻こころさん。私の中学時代の同級生の幼馴染だそうで、弦巻財団のお嬢様です。うん、これ色んな意味で断れないタイプだね。

 

 2人目は氷川日菜さん。芸能人でアイドルやってます。これも色んな意味で断れませんね。

 

 そして2人に共通するのはとにかくぶっ飛んでる事ですね。私も人の事が言えないので、やっぱり似たような人が集まるんですね。そう言い聞かせてます。

 

 で、部員が3人になって、部活動として何か結果を残さないといけないので、手始めにゲームの大会に出る事にしました。で、興味を持った2人も一緒に参加する事になり、結果は優勝。まあ、初戦突破出来たら上出来かなーって思ったんですけど、氷川先輩と弦巻さんが中々の才能ウーマンぶりを発揮しました…。

 

 そして大きな大会で優勝したという事もあって、全校集会で表彰されました。3人揃って…。

 

 で、そんなこんなで部室も与えられました。

 

こころ「部室も与えられたから、ここでいろんなことが出来るわね!」

日菜「後、冷蔵庫とか欲しいなー。お菓子とかジュースとか…」

飛鳥「家じゃないんですから…」

 

 そしてこの後、ゲームを極めたいという事で2年1組の白金燐子先輩も入部しました。

 

 そんなこんなで、超能力研究会は後に引けない状態になりました。ここで語りは終わります。

 

******************

 

 ある日のバンドリ学園。飛鳥は廊下を歩いていたが…。

 

「おい、あいつだろ…?」

「ああ…。美女3人を侍らせている…」

飛鳥(なんて言い草だよ)

 

 男子生徒達から羨望と嫉妬の眼差しを向けられた上での発言に、飛鳥は困惑していた。

 

「何であんな1年が…」

「ちょーっとゲームが出来るくらいだろ…」

「アイドルやお嬢様を侍らせやがって…」

飛鳥(恐れてた事が現実に…。まあいいけどね)

 

 飛鳥が諦めたように目を閉じると、後ろからただならぬ気配を感じた。

 

飛鳥「!?」

 

*******************

 

「えー…。分かっているとは思うが、今度林間学校がある」

 

 1年3組の教室でHRが行われていたが、林間学校の話をしていた。

 

「班ではあるが、ここで決めようと思う。好きに組みなさい」

 

 飛鳥は誰と組むか考えたが、特に仲の良いクラスメイトも悪いクラスメイトもいなかった為、余ったところに入れて貰う事にした。

 

 その結果、飛鳥は男子5人組でチームを組むことになったが、飛鳥は特に動ずることはなかった。

 

飛鳥「宜しくお願いします」

「宜しく!」

 

 相手は大男が3人と、飛鳥と同じくらいの体格の男子が1人だったが、飛鳥はその男子に違和感を感じていた。

 

***********************

 

 そんなこんなで林間学校。何と全学年だった。

 

飛鳥(なんてご都合主義!! 学年ごとじゃないの!!?)

 

 何という事だろう。全学年全クラスが同じ場所で林間学校を行う事となったのだ。1年3組は大人しい生徒が殆どだった為、静かだった。

 

飛鳥(まあ、凄いやすいっちゃ過ごしやすいけど…。此間のあの気配は一体何だったんだろうな…)

 

 そして目的地に到着し、先生達の諸注意を受けると生徒達はそれぞれ自分の部屋に荷物を置いた。

 

「この林間学校では各自の部屋で風呂に入るらしいぞ」

「それもそうだな」

「わしらが一緒だと湯船が空っぽになってしまうからのう」

 

 飛鳥のルームメイトの高谷、高山、高馬が会話をしていた。それぞれスポーツをやっている。それを飛鳥は静かに見守っていた。

 

 そして午後は学年ごとにレクリエーションを行い、風呂に入り、食事の時間になった。食事はビュッフェ形式で生徒達のテンションも高まっていたが…。

 

「日菜ちゃん!! 僕と一緒にご飯食べよう!!」

「千聖ちゃん!! オレと!!」

「麻弥ちゃん!!」

 

 日菜や燐子をはじめとしたバンドガール達は男子生徒達にモテモテで、囲まれていた。

 

飛鳥(すっごい人気だなぁ。分かってたけど)

 

 飛鳥が超能力で存在感を消しながら、日菜たちを見つめると、何事もないかのように食べるものを皿に載せていった。

 

飛鳥(早い所ここから出てしまおう。トラブルのもとになるし…そういう時って先生は頼りにならないしなぁ)

 

 飛鳥は諦めるように目を閉じると、席に移動したが、

 

「飛鳥―。飛鳥はどこかしら?」

 

 こころが飛鳥を探していた。

 

飛鳥(あー。多分これダメな奴だ。そうだよね、何もなかったらお話になりませんもんね。分かります)

 

 そして弦巻家の黒服達がスコープで自分の存在を見破っていたことを察したが、特に超能力を解いた。するとこころが飛鳥に気づいて、近づいた。

 

こころ「ここにいたのね飛鳥! 一緒に食べましょ!」

飛鳥「そりゃいいけど、1…

 

 飛鳥が話している最中に、日菜が抜け出してきて近づいてきた。

 

日菜「あたしも混ぜてー!」

飛鳥「!?」

 

 そして同じく抜け出してきた燐子も慌てて飛鳥達の所にやって来た。

 

飛鳥「白金先輩」

燐子「わ、私も混ぜてください…」

飛鳥「皆さん…。それぞれのクラスで食べなくて良いんですか?」

燐子「え、えっと…」

日菜「あ、そうだ! 麻弥ちゃん達にも飛鳥くんの事紹介したいから一緒に来て!」

こころ「あ、それだったらあたしのクラスの子にも紹介したいわ!」

飛鳥(なんか話が妙な方向に…)

 

 飛鳥が困惑していたその時だった。

 

「何でだよぉ~」

「?」

「何でオレよりもあいつなんだよぉ~。ねえ頼むよ~」

 

 と、一人の男子生徒が一人の女子生徒に泣きついていた。

 

日菜「あ、千聖ちゃんだ」

飛鳥「…お知合いですか?」

日菜「パスパレのメンバーで、女優さんもやってるの。知らない?」

飛鳥「すみません。テレビはあまり見ないんで…」

 

 飛鳥の発言に皆が飛鳥を見た。

 

飛鳥(あ、何かマズイ事言ったわ)

 

 その時だった。

 

「ふざけるなぁー!!! おい!!  一丈字!!」

「!!?」

 

 男子生徒達が飛鳥に突っかかってきた。

 

「お前、パスパレも知らないくせになんで日菜ちゃん達と一緒にいるんだよ!!」

飛鳥「同じ部活の仲間なので…」

「そうか。そうだったな。それだったら、オレ達もその何とか研究部に入れてくれよ」

飛鳥「え?」

「そうすればオレ達も仲間で、日菜ちゃん達と一緒にいて良いだろ?」

「部活は多い方が良いだろ」

「なあ?」

 

 恐らく上級生と思われる男子生徒達が脅すように飛鳥を脅迫していた。

 

 すると、一人の男子生徒…飛鳥のルームメイトがやってきた。

 

「一丈字くん」

飛鳥「桐谷さん…」

 

 桐谷キリトが飛鳥に話しかけてきた。

 

 

つづく

 



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第212話「共闘 飛鳥とキリト」

 

 

 1日目の夕食、飛鳥と男子生徒達が揉めていると、飛鳥のクラスメイト・桐谷キリトが割って入った。

 

「あ? なんだテメエ」

「おまえも入部希望者かよ」

「だが、お前みたいなやつに用はねーんだよ」

 

 と、悪態をついたが、キリトは無視して飛鳥に話しかけた。

 

キリト「こんな奴らの相手なんかしなくていいよ」

飛鳥「してませんけど…」

「してないのかよ!!」

 

 飛鳥が困惑した顔で男子生徒達を見つめる。

 

飛鳥「お伺いしますが、入部の志望動機は…」

「そんなの決まってるだろ! 可愛い女子が沢山いるからだよ!!」

「お前みたいな陰キャにハーレムを作らせると思ってんのか!」

「ていうか、先輩に対してその態度は何? 殺すよ?」

 

 男子生徒達は飛鳥に悪態をついたが、飛鳥は動じず、日菜たちの方を見た。

 

飛鳥「どうします?」

 飛鳥が確認すると、燐子は男子生徒に怯えていた。

 

日菜「るんってしないし、燐子ちゃんが怖がってるからダメ」

こころ「それに飛鳥に意地悪してるもの。楽しくないわ」

 

「そ、そんな事は…」

飛鳥「じゃあ仮に、今ここで弦巻さん達が超能力研究会を退部したら、入りますか?」

「入る訳ねーだろうが!!」

「おちょくってんのかてめぇ!!」

「可愛い女子がいねーなら、入る価値ねーんだよ!!」

 

 男子生徒達がギャーギャー騒いでいると、キリトが激昂した。

 

キリト「いい加減にし…」

飛鳥「桐谷さん。怒鳴るのはダメですよ」

 

 キリトが怒鳴ろうとすると、飛鳥が止めた。

 

飛鳥「お気持ちは分かりますが、他の皆もいます。冷静に行きましょう」

キリト「い、一丈字…」

 

 飛鳥が正面を向いた。

 

飛鳥「さて、皆さん。周りをよく見渡してください」

「ああ!?」

飛鳥「いいですから」

 

 男子生徒達が周りを見渡すと、一部の女子生徒達が睨みつけていた。

 

飛鳥「私の事はどうこう言ってくれても構いませんが、不純な動機で白金先輩や氷川先輩、弦巻さんに近づこうとした事は皆さんも存じ上げており、とても気持ちの良いものではございません」

「ぐっ…!!」

飛鳥「どちらが宜しいですか? 大人しく引き下がるか、女子生徒の皆さんに嫌われて、肩身の狭い思いをするか。お好きな方をお選びください」

 

 飛鳥の言葉に男子生徒達がたじろくと。

 

「そうよそうよ!!」

「かわいい子ばっかり目を向けちゃって!!」

「相手にされてないの分かんないの!?」

「最低!!」

 

 と、女子生徒達も騒ぎ出した。

 

「ち、ちくしょ~!!」

「オレ達だって…オレ達だって可愛い女の子達とキャッキャウフフしてぇよぉ~!!!」

「何でお前ばっかり!!」

「主人公だからって美味しい思いをしてんじゃねぇぞ!!」

飛鳥(美味しい思いをしてるかもしれないけど、その分大変だよ…。胃に穴が開きそう…)

 

 男子生徒達が泣き崩れると、飛鳥はげんなりしながら男子生徒達を見つめていた。しかし、男子生徒の一人は諦めなかった。

 

「こ、こうなったらオレと勝負しろ!!」

飛鳥「!!?」

「この自然の家には武道場がある! そこで剣道で勝負だ! オレが勝ったら、入部を認め、お前は出ていけ!!」

飛鳥「私が出ていく分には問題ないですけど、白金さん達に性的暴行を加えるのでしたら、辞めといた方が良いですよ」

日菜「それだったらあたしもやめるー」

こころ「あたしも」

燐子「わ、私も…」

「全員が辞めたら意味ないでしょうが!」

「止めるのは一丈字だけで十分なんだよ!」

 

 そう男子生徒達が困惑していた。

 

日菜「それに、剣道をそんな事に使ってたら、イヴちゃんが怒るよ?」

飛鳥(…誰だろう)

 

 その時だった。

 

「センパイ!」

 

 若宮イヴらしき女子生徒がやってきた。

 

「イ、 イヴちゃん!」

「剣道をそんな事に使うなんてブシドーじゃありません!」

 

 イヴがぷんすか怒ってる姿に、男子生徒達はなごんでいると、

 

 

キリト「しかも、エッチな事をしようとしてるんじゃ…どうしようもないですね」

イヴ「そ、そんな事私がさせません!!」

「ち、違う!! 誤解だ!!」

「おいてめぇ!! 言いがかりつけてんじゃねぇよ!!」

 

 と、揉めていると、

 

「コラー!! 何やってるんだ!!」

 

 先生が怒鳴ってきて、男子生徒達は一目散に去っていった。飛鳥達は取り残される。

 

「一体何をしていたんだ」

飛鳥「申し訳ございません」

キリト「剣道部の先輩方がこの人たちにセクハラしてました」

「!!?」

「なにぃ!? 剣道部!! 全員来い!!!」

 

 キリトの言葉に男性教諭が激怒して、剣道部を招集させた。飛鳥と燐子はまずそうにしたが、日菜とこころはいつも通りだった。

 

 剣道部の女子部員が暴露し、男性教諭が激怒すると…。

 

「食事が終わったら肝試しだが、お前たちは抜きだ!! 剣道部全員、体育館で走り込みじゃー!!!」

「ええぇぇええええええええ~~~~~~~~~~~~!!!!?」

 

 教諭の言葉に剣道部のほぼ全員が悲鳴を上げると、飛鳥達は困惑した。

 

「そ、そんなぁ~!!!」

「やかましい!! 逃げ出したら明日もやらせるからな!!」

 

 その様子を飛鳥達が呆然としながら見ていた。

 

飛鳥「剣道部全員…」

キリト「巻き込まれた人には気の毒だけど、自業自得だよ」

 

 飛鳥がキリトを見つめた。

 

飛鳥「あ、それはそうと…ありがとうございました。フォローして頂いて」

キリト「気にしないで。ああいうの見てるとほっとけなくてさ」

 

 飛鳥が礼を言うと、キリトが苦笑いした。すると女子生徒達が拍手をした。

 

飛鳥・キリト「?」

 

「カッコ良かったわよー!」

「流石、超能力研究部部長!!」

「ありがとー!!」

「一緒にいる子も良かったわよー!!」

 

 そう言うと、飛鳥は苦笑いして、キリトは照れた。

 

日菜「って! イヴちゃん肝試しに参加できないの!?」

飛鳥「まあ、そうなりますね…」

こころ「それはいけないわ。イヴが参加できるようにして貰わなきゃ!」

飛鳥「あの様子じゃ無理だと思うけどなぁ…」

 

*************:

 

こころ「連れて来たわよ!」

イヴ「このご恩! 忘れません!」

飛鳥「それは弦巻さんに言ってくださいね…」

キリト「すげー…」

 

 と、弦巻財団の力を使ってイヴを連れてくることに成功した。飛鳥とキリトは弦巻財団には敵わなさそうだなぁと感じた。

 

 

おしまい

 



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第213話「肝試し」

 

 

 なんやかんやで肝試しの時間になりました。剣道部はトラブルを起こしたとして全員走り込みをやらされましたが、イヴは弦巻家が忖度させたため、免れました。

 

飛鳥(このご時世に良い度胸してんなぁ…)

 

 と、思いつつもイヴは何も悪い事をしていない為、飛鳥は余計な事を言わないようにした。

 

*******************

 

 そして肝試しの時間。全学年いるので、色々ややこしい。

 

「えー。これより肝試しを行うが、今回は怖さを難易度に分ける事にする」

「?」

 

 説明役の先生がそう言うが、生徒達は理解できなかった。

 

「今回は人数も多いという事で、肝試しは5コース分ける事にする。1から5まであり、レベル5が一番怖い。レベル5に挑む者は相当の覚悟をしておけ!」

飛鳥(いや、何をしようとしてるんだ!!?)

 

 飛鳥が困惑していたが、2,3年生が困惑していた。

 

「オレ、去年レベル2だったけど、十分に怖かったぞ…」

「去年、陽キャ達がカッコつけてレベル5言ったけど、チビって帰ってきたからな…」

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥の視線はレベル5の案内役をしようとしている教諭の方に向いていた。

 

飛鳥(でもまあ、今回は超能力関係ないし、レベル1でもいっか)

 

 と、大半の生徒が行こうとしているレベル1の方に視線を向けると、

 

りみ「や、やっぱり皆レベル1に行っちゃうんだね…」

有咲「悪いりみ。悪いけど今回は1人で行ってくれ!」

りみ「いや、私も流石に1人は…」

 

モカ「皆やっぱりレベル1~?」

蘭「当たり前だし…」

巴「あこもいないし…いいよな?」

 

 と、バンドガールが沢山いるレベル1に殆ど集まっていた。

 

飛鳥(あっちにはいかない方が良さそうだ。かといってレベル5は目立つしな…。それ以外で…)

 

 その時だった。

 

「飛鳥!」

 

 こころが話しかけてきた。

 

飛鳥「どうしたの?」

こころ「飛鳥はどこに行くか決めた?」

飛鳥「こころは?」

こころ「あたしは皆が一緒にいるレベル1に行くつもりよ!」

飛鳥「そっか。オレはレベル5に行くつもりだから」

 

 飛鳥としては、何か面倒な事になりそうだと感じた為、直球で決めた。

 

飛鳥(まあ、失敗したら失敗したで笑い話になるからいっか)

こころ「それじゃああたしもレベル5に行くわ!」

飛鳥「え?」

 

 こころの言葉に飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「レベル1に行くんじゃないの?」

こころ「飛鳥がレベル5に行くならレベル5でもいいわよ。それに、一人でしょ?」

飛鳥「あ、確かに一人だ…」

 

 レベル5の挑戦者が一人もいなかった。

 

こころ「ね! 一人より二人の方がいいでしょ!?」

飛鳥「……」

 

 飛鳥がこころを見つめると、

 

飛鳥「まあ、それはこころに任せるけど…」

こころ「それじゃ行きましょ!」

 

 そう言って飛鳥とこころはレベル5のゲート前に立つと、生徒達が驚きを隠せなかった。

 

「あ、あいつら正気か…?」

「カッコつけてるだけだ。どうせ失敗する」

「本当に頭がおかしいぜ…」

 

 レベル1にいた日菜や紗夜も驚いてみていた。ちなみに日菜は紗夜やパスパレメンバーと一緒に回る約束をしていて、燐子はロゼリアのメンバーと一緒に回る約束をしていた為、レベル1だった。というか、バンドガールズのほぼ全員がレベル1を選択していた。理由は各グループにおばけや怖いものが苦手なメンバーがいたからだった。

 

キリト「一丈字くん…」

 キリトはレベル3を選択していた。

 

 そして、それぞれのステージでの肝試しが始まった。

 

「ヴァアアアア――――――――ッ!!!」

「……」

 

 レベル1を選んだ生徒達は人数も多かった為、それほど怖くはなかった。作り物のお化けを見ても、クオリティが低い為、それほど驚かなかった。

 

香澄「はぁ…皆いるし、おばけも全然怖くないや」

有咲「おい…くっつき過ぎなんだけど」

香澄「うぅぅぅ…」

 Poppin‘Partyの戸山香澄が涙目で同じメンバーの市ヶ谷有咲に抱き着いていた。有咲は人目もあったので恥ずかしがっていた。

 

モカ「ひーちゃん、キョロキョロし過ぎ~」

ひまり「だってぇ~…」

 

 同じガールズバンドのAfterglowも同様だった。青葉モカは有咲みたいに迷惑がってはいなかったが、少し呆れていた。

 

モカ「もー。うちのバンドはモカちゃん以外おばけダメだから困るよ~」

つぐみ「ご、ごめん…」

 

 すると男子生徒達が詰め寄った。

 

「それだったらオレが!!」

「いや、オレが!」

「オレ!!」

 

モカ「男子達は懲りないし~…そういや、レベル5に行ったあの2人どうなったんだろう~?」

 

 そしてパスパレとロゼリアは一緒にいた。

 

日菜「おねーちゃんと一緒だ♪」

紗夜「…あんまりひっつかないで頂戴」

 

 日菜が双子の姉の紗夜にくっついていた。紗夜は若干恥ずかしそうにしている。

 

「目の保養じゃ…」

「やっぱり双子揃って可愛い…」

 

 男子生徒達は感涙しており、彼女たちの周りにはファンが付きまとっていた。

 

友希那「そういえば、あの2人と一緒じゃなくて良かったの?」

燐子「は、はい…。流石にちょっと…」

リサ「分かるよー。だっておばけ怖いもん…」

友希那「……」

 

 友希那は飛鳥とこころを思い浮かべていた。

 

 そして…。

薫「私の胸に思いっきり飛び込んできたまえ」

「薫様~!!!」

 

 2年2組の瀬田薫が王子様っぽく振舞うと、女子生徒達がメロメロになった。

 

「それじゃ是非~!!!」

 

 と、男子生徒が飛び込もうとすれば、薫のファンに闇討ちされた。

 

はぐみ「みーくんみーくん」

美咲「え、あたし? みーくんって…」

はぐみ「こころんレベル5に行っちゃったけど、大丈夫かな?」

美咲「大丈夫じゃない? あの子逞しそうだし…」

 

 美咲が悪態をつくと、脳裏に楽しそうに部活をしているこころの姿があった。

 

******************

 

 レベル3

 

「ヴォオオオ――――――――――――ッ!!!」

「いやあああああああ―――――っ!!!」

「で、出たぁ―――――――――!!!」

 

 と、幽霊が飛び出してくると、生徒達は驚いて逃げ出した。

 

キリト「…普通だな。それはそうと、一丈字くん達は大丈夫だろうか?」

 

 レベル5

 

飛鳥「……」

こころ「おばけはどこかしら?」

飛鳥「どこだろうね」

 

 飛鳥とこころが2人で歩いていると、遠方から誰かが見ていた。

 

飛鳥「あそこに誰かいる」

こころ「えっ?」

 

 その時だった、遠方にいた何かは猛スピードで飛鳥達に近づいたが、走っている様子がなかった。

 

飛鳥・こころ「!?」

 

 そして飛鳥達の目の前に現れて、口を大きく開けて奇声をあげた。飛鳥は少し困惑したが、

こころは違う意味で驚いていた。

 

こころ「凄いわ!! 大きなお口ね!! あなたはどこから来たのかしら!?」

 

 と、感心していた。

 

飛鳥「これはホログラムだよ」

こころ「ホログラム?」

飛鳥「簡単に言うと本物のおばけじゃないって事。映像だよ。ほら」

 

 飛鳥が幽霊に触れると、幽霊の身体が貫通された。

 

「グァアアアアアアアアアアアアア!!!」

飛鳥「…まあ、こんだけ完成度が高かったらそりゃ逃げだすわな」

 

 と、飛鳥は困惑していた。

 

こころ「とっても凄いわね! でも、本物のおばけはいないのかしら?」

飛鳥「いてたまるかよ。悪い幽霊だったら死人が出るわ」

 

 飛鳥は呆れながら懐中電灯を前に向けてこころと共に進んでいった。

 

 

 その頃…

 

「なにぃ!!? わしの最高傑作をものともしないとは…」

 

 先生達はモニターで各レベルの様子を見ていたが、飛鳥達が幽霊にものともしなかったので、脅かし役の教師は驚いていた。

 

「この子達確か超能力研究会の…」

「肝も据わってるんだなぁ…」

 

********************

 

 そんなこんなで…。

 

「えー。レベル5の達成者が2人現れました! 皆拍手!!」

 

 と、無事にレベル5をクリアした飛鳥とこころは皆に表彰された。ちなみにレベル2以上はリタイアが可能だったが、飛鳥とこころはリタイアしなかった。

 

「お、おい見ろよ…」

「レベル5から帰って来たってのに余裕そうにしてるぞ…」

「じ、次元が違う…」

「でも、女の子達と一緒に囲まれてたから言う事はない!!」

「くそう! 弦巻さんはくれてやるが、他の女子にはもう手を出させないぞ!!」

 

 男子達はそう騒いでいたが、飛鳥は静かに目を閉じた。

 

飛鳥(手を出した記憶すらないよ)

こころ「とっても楽しかったわね飛鳥!!」

飛鳥「そ、そうだね…」

 

 飛鳥とこころが会話をすると、男子生徒達が囃し立てた。

 

「ヒューヒュー!!」

(もうこれで弦巻さん以外の女子には手を出せまい!!)

(ざまあみろ一丈字!!)

(最後に勝つのはオレ達だ!!)

 

 と、男子生徒達はこころ以外の女子に触れさせないようにしていたのを飛鳥は察知した。

 

飛鳥(…まあ、いっか)

 

********************

 

 肝試し終了後…。

 

「凄いじゃないか一丈字くん!!」

 

 飛鳥の周りにはクラスメイト達が囲んでいた。

 

飛鳥「大したことは…」

「オレ、レベル1だったけど、十分に怖かったぜ。それなのにレベル5に行ってぴんぴんしてるなんて…」

「一体どんな仕掛けだったんだ!?」

 

 と、質問攻めに逢っていた。そんな飛鳥を他のクラスの男子は苛立った目で見ていた。

 

飛鳥(ですよね)

 

 飛鳥は諦めるように苦笑いすると、クラスメイト達の質問に答えようとしていた。

 

飛鳥「ホログラムという映像を使って、幽霊をあたかも本物のように映し出してたんです」

「ホログラム!?」

飛鳥「そして遠くにいた幽霊の映像を一気に近くまで高速移動させて、音声を再生させて奇声を上げさせたんですね」

 

 飛鳥が冷静に説明したが、他のクラスメイト達は驚いていた。

 

キリト「…本当に冷静だね。怖くなかったの?」

飛鳥「まあ、確かに最初はびっくりしましたけど、横に弦巻さんがいたので、頭は無意識に彼女を守る事に専念していたので、後はもうさっぱりでしたね」

「弦巻さんはどうだったの?」

「やっぱり抱き着かれた?」

飛鳥「いえ、彼女は面白がってたので、心配するまでもありませんでしたね」

 

 飛鳥が苦笑いしていると、

 

「でも、とってもカッコ良かったわ!!」

 

 こころが現れた。そしてこころだけでなく、日菜、燐子といった知人もそろってやって来た。

 

こころ「本当にヒーローみたいだったわ!」

飛鳥「そりゃあ大げさだよ」

こころ「ううん。そんな事ないわ。あたしが危ない目に遭わないように色々気を遣ってくれたり、守ってくれたもの!」

日菜「凄いじゃん飛鳥くん」

燐子「す、すごいです…」

飛鳥「そうですか?」

 

 日菜と燐子が褒めるので、飛鳥が苦笑いした。

 

友希那「正直うちのクラスの男子と交換してほしいくらいだわ。うるさすぎて守られてる気がしなかったわ」

リサ「あ、あたしは賑やかだったから全然怖くなくて良かったな~…」

友希那「けど、どさくさに紛れてボディタッチを狙ってたわよね?」

リサ「……」

 

 友希那とリサの会話を聞いて、飛鳥は困惑していた。

 

日菜「そうだ! 今度あたしとお化け屋敷に行こうよ!」

「!!?」

飛鳥「…アイドルですよね?」

日菜「確かにそうだけど、一緒に回ってみたいと思ったもん」

飛鳥「そ、そうですか…」

「ダメだ!! お前にはもう弦巻さんがいるだろ!!」

「そうだ!! この浮気者!!」

 

 と、男子生徒達が騒ぎ出した。

 

日菜「え? こころちゃんと付き合ってるの!?」

友希那「そんな訳ないでしょ。あなたと一丈字くんをお化け屋敷に行かせない為の口実よ」

 

 日菜の言葉に友希那が呆れた。

 

飛鳥「…というか、皆さんは日菜先輩達と一緒に回れたはずじゃ」

「二人きりじゃなかったら意味ないんだよ!!」

「ライバル多すぎ!! お前ら遠慮しろよ!!」

「てめーが遠慮しろよ!!!」

 

 男子生徒達がまた言い争いを始めると、飛鳥が呆れていた。

 

友希那「…あきれてものが言えないわ。私は寮に戻るわ」

飛鳥「あ、お疲れ様でした」

友希那「それから…」

飛鳥「?」

 

 友希那が飛鳥を見つめた。

 

友希那「燐子の事、宜しく頼むわね。一丈字部長」

飛鳥「あ、はい!」

 

 そう言って友希那はリサと共に去っていった。

 

飛鳥「…さて、オレも帰るか。じゃあなこころ」

こころ「うん! また明日ね!」

 

 そう言って飛鳥は去っていくと、キリトたちとそのまま話を続けた。

 

 

 

つづく

 



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第214話「一夜明けて」

 

 

 肝試しで大活躍を果した飛鳥。

 

*********************

 

高馬「いやあ、大したもんだよ」

飛鳥「いえいえ…」

 

 部屋に戻って飛鳥はキリト、高馬、高谷、高山と話をしていた。

 

高谷「わしなんか、レベル1でもギリギリだったでごわす」

高山「レベル1は先生達の軽い変装だったんだろ? レベル2はもっとメイクとか凝ってたなぁ」

飛鳥「そ、そうなんですか…」

 

 高山達の話に飛鳥が苦笑いした。レベル5はホログラムを使ってのガチだったので、レベルの違いが確かに判っていた。

 

 一方、こころはというと…。

 

はぐみ「こころんすごーい!! レベル5をクリアするなんて!」

イヴ「ブシドーです!!」

美咲「……」

 

 ルームメイトの北沢はぐみ、若宮イヴ、奥沢美咲と話をしていた。

 

こころ「とっても楽しかったわ!」

美咲「はぁ…楽しかったって言えるあたり、流石ね…」

 

 すると美咲がある事に気づいた。

 

美咲「そういえばあの一丈字くんって子、一体どんな子なの?」

こころ「飛鳥は飛鳥よ!」

美咲「…そ、そう」

 

 これ以上聞いても無駄だと思った美咲は何も聞かないことにした。

 

はぐみ「一丈字くんもお化けを怖がったりしなかったの?」

こころ「ええ! あたしが怪我しないように守ってくれたり、前を歩いて誘導してくれたわ! とっても頼りになるのよ!?」

美咲「あー…それを聞きたかったんだけど、あたしの聞き方が悪かったんだね。ごめんごめん」

 

 美咲は拗ねるようにツッコミを入れた。

 

イヴ「とってもブシドーです!!」

 

 飛鳥の行動を聞いたイヴがとても興奮すると、こころとはぐみも興奮して、美咲はげんなりしていた。

 

美咲(なじめねー…)

 

**********************

 

 そんなこんなで翌日、肝試しの件ですっかり英雄となった飛鳥は…。男子生徒達からにらまれていた。

 

飛鳥「ああ…予想通りだ…」

大馬「全く、困ったもんだな…」

キリト「そうだな…」

 

 飛鳥はキリトたちに頼んで、一緒に朝ご飯を食べて貰うようにしたが、それでも睨まれていた為、困惑していた。

 

「おい、一丈字の奴…」

「今日は同じ部屋の奴と飯を食べるみたいだ!!」

「いいぞ!!」

「オレ達はその間に〇〇ちゃん(推しバンドガール)と…」

 

飛鳥「まあ、肝試しをクリアしたくらいで女子達が来るとは思えませんが、弦巻さんがいるので…」

キリト「わ、分かった…」

飛鳥「あそこに座りましょう」

キリト「オレが場所を取るよ」

 

 割と近くにあった5人用のテーブルに座る事にし、キリトが場所を取った。

 

「飛鳥―!!」

 

 こころがやってきた。

 

飛鳥「おはよう。今日も元気だね」

こころ「あたしはとっても元気よ! ねえ、一緒に朝ご飯食べましょ!?」

飛鳥「悪いんだけど、同じ部屋の人たちと食べる事になってるから…」

こころ「それじゃ、あたしの部屋の子たちとも一緒に食べましょ?」

飛鳥「…そういえば同じ班って」

こころ「はぐみと美咲とイヴよ!」

飛鳥(イヴって確か日菜先輩と同じバンドメンバーの…)

 

 飛鳥がそう考えたその時だった。

 

「イヴちゃん! オレと朝飯!!」

「オレと!!」

「あんな奴よりオレと!!」

 

 と、イヴの周りを男子生徒達が囲んだ。

 

「あ、良かったら北沢さんと奥沢さんもどう!?」

「二人とも可愛いし!」

「オレ達の林間学校に彩を!!」

 

 男子生徒達のウザがらみに飛鳥達は困惑した。

 

美咲「あーはいはい…。あたし達、同じ班で食べるから」

「そう言わずに」

「だったら皆で食べよう。ね?」

 

 と、美咲がその場から離れようとするが、男子生徒達は行く手をふさぐ。美咲は苛立ち、はぐみとイヴが困っていた。

 

キリト「あいつら…!!」

飛鳥「……」

 

 飛鳥が指を動かすと、迫ってくる男子生徒達の脳内に暗示をかけた。

 

美咲「なんとかすり抜けた! はぐみ、若宮さん。行くよ!」

はぐみ「う、うん…」

イヴ「ふー…」

 

 はぐみとイヴも何とか切り抜けて、こころと合流した。

 

 今更であるが、こころ、薫、はぐみ、花音、美咲(ミッシェル)の「ハロー、ハッピーワールド!」は今作ではまだ結成されていない為、はぐみや美咲の知名度はそんなにない。

 

飛鳥(ハロハピファンの皆さん。すみません)

 

 そして飛鳥達とも合流し…。

 

こころ「一緒に朝ごはん食べましょ!」

飛鳥「うーん…」

 

 こころからの誘いに飛鳥が困惑していた。というのも、男子生徒達からの圧が凄かったからだった。

 

美咲「こころ。一丈字くん困ってるでしょ」

こころ「困ってるの?」

飛鳥「困ってるよ。弦巻さん達と食事を取ると、男子生徒の皆さんが嫉妬しちゃいますもの」

こころ「どうして?」

飛鳥「可愛いから」

 

 飛鳥は堂々と言い切った。照れたりせずに堂々と言い切った為、はぐみが顔を真っ赤にした。

飛鳥「そう思うでしょ?」

こころ「ええ!! はぐみもイヴも美咲もとっても可愛いわ!!」

 

 こころがにこやかに話すと、

 

飛鳥「だから嫉妬するんですよ。学園のアイドルのような方々と一緒に食事をするなんて…そう思いませんか?」

こころ「そうね…。そう言われてみれば…」

美咲「ちょ、ちょっとやめてよ! 恥ずかしい!!/////」

はぐみ「そ、そーだよ…/////」

 

 飛鳥とこころのやり取りに美咲とはぐみが恥ずかしがると、イヴは飛鳥を見ていた。

 

飛鳥「どうしました?」

イヴ「イチジョウジさん…」

飛鳥「?」

 

 イヴがきっと睨みつけた。

 

イヴ「イチジョウジさんは、女タラシなのですか!?」

 

 そう言い放つと、他の男子生徒達も便乗して騒いでいた。すると飛鳥は不敵な笑みを浮かべた。

 

飛鳥「…だとしたら、どうしますか?」

イヴ「……」

 

 飛鳥の言葉にイヴは口角を下げる。

 

イヴ「…いえ、あなたは女タラシではありません。本物のニンジャの心を持っています」

飛鳥「…忍?」

イヴ「いえ、自分を下げる事で私達から遠ざけ、また事あるごとに陰から助ける。自分が嫌われる事を厭わない、そうニンジャです!」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 飛鳥が困惑していると、イヴの視線が軽蔑のものから興味津々といったものに変わっていき、マズい事になった。

 

イヴ「そのシノビの心、私にも教えて頂けますか!?」

飛鳥「それよりもあなたにはするべき事がある」

イヴ「!!?」

 

 飛鳥が男子生徒達を見つめた。

 

飛鳥「あそこにいる方々にアイドルとして、平等に接するという仕事が」

イヴ「!」

飛鳥「そういう訳ですので失礼します」

 

 そう言って飛鳥は去っていったが、席がすぐに近くの為、飛鳥は背を向けるように椅子に座ったると、はぐみ・美咲・イヴは唖然としたように飛鳥を見つめた。

 

 

つづく

 



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第215話「野外炊飯! コールドサイド」

 

 

 食事が終わり…。

 

「えー、今日は予定通り野外炊飯を行う!」

 

 全校生徒を集めて、野外炊飯を行う事になった。

 

「チームは事前に決めた者同士だ! それでは始め!!」

 

 野外炊飯が始まったが、飛鳥はメンバーが変わっていなかった。

 

飛鳥(まあ、野外炊飯だし、そこまでトラブルになる事はないだろ…)

 

 飛鳥がそう安心しながら、キリトたちと何を作るか話をしていた。

 

飛鳥「何を作りますか?」

高山「そうだな。何がいい?」

高谷「わしはやっぱりちゃんこ鍋がいいでごわすなぁ」

高馬「ちゃんこねぇ…。どっちかっていうと焼肉の気分だけど、それじゃ野外炊飯にならねぇしな。乗った!」

 

 高馬、高山、高谷が合意すると、キリトが苦笑いした。

 

キリト「この暑さに熱いちゃんこ鍋か…」

飛鳥「冷やしちゃんこ鍋にしてみるってのはどうでしょうか」

キリト・高山・高馬・高谷「冷やしちゃんこ鍋!?」

 

 5人が飛鳥を見た。

 

高馬「ちゃんこに冷やしなんてあるのか…?」

飛鳥「ええ。具材とスープを別々に調理する必要があったりと、手間はあるのですが…」

高谷「是非興味深いでごわす! それにするでごわすよ!」

飛鳥「承知しました。それでは私の指示で動いていただけますか?」

「おう!!」

 

 と、5人は冷やしちゃんこ鍋を作る事にした。肝試しで最高ランクをクリアしただけあって、飛鳥は4人の信頼を得る事に成功した。

 

 そして飛鳥の指示で野外炊飯が行われたが…。

 

キリト「…多すぎない?」

飛鳥「そう?」

 

 材料とスープの量の多さにキリトが驚いていたが、飛鳥は平然としていた。

 

高谷「ああ。わしらが沢山食べるから…」

キリト「あ、お、お相撲さんだもんね…」

高馬「プロレスも同じくらいだな」

高山「柔道もだ」

キリト「そ、そう…」

 

 飛鳥がスープづくり、他の4人が野菜を洗ったり切ったりしていた。

 

高馬「へえ、やるもんだな」

キリト「料理は割と好きな方なんだ」

 

 手際よく野菜を切っていくキリトを見て高馬がそう言うと、キリトが苦笑いした。

 

高谷「一丈字どん。こっちは終わったでごわす」

飛鳥「ありがとうございます。それでは他の方を手伝ってあげてください」

 

 男5人、ましてや一番ボロい炊飯場だというのに、全くものともしない姿にクラスメイト達は驚きを隠せなかった。しかも材料が置いてある場所から一番遠い。

 

飛鳥「冷やしちゃんこの一番の肝は冷やし加減なんです。冷やし過ぎてもスープが薄いし、冷やしが足りないと野菜は熱が残ったままなので、普通の鍋と変わりません」

 

 と、飛鳥が氷でスープと野菜を冷やしていた。

 

飛鳥「さて、失敗した時の為に何か作りましょうか」

 

 そう言って飛鳥は余った材料で蒸し鶏のさっぱりサラダを5人分作った。ドレッシングはレモンをベースとしたさわやかな味わいのものである。

 

 ちょっと時間が経ち、野菜やスープがほどよく冷えてきて、料理が完成した。

 

飛鳥「これで完成!」

「おおーっ!!」

 

 飛鳥がそう言うと、大谷達が反応したが、キリトが苦笑いした。

 

キリト「…こ、こんなにたくさん」

飛鳥「まあまあ…」

 

 飛鳥が何かを感じ取ったように言い放つと、そのまま盛りつけた。

 

飛鳥「パクチーはお好みでお願いします」

高馬「おう! 嫌いな奴もいるからな…」

 

 5人がテーブルに並んで座ると、食事にありついた。

 

「いただきます!!」

 

 と、5人が一斉に食べるが、高馬、高谷、高山の食べっぷりが凄く、キリトが驚いていた。

 

キリト「や、やっぱり食べるんだなぁ…」

飛鳥「スポーツやってる方は皆こんな感じですよ」

高馬「とっても美味い!!」

高谷「体の中にある熱がどんどん外に出されている感じがするでごわす!!」

高山「いやあ、冷やしちゃんこ鍋。いいんじゃないか?」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 3人から褒められて飛鳥が苦笑いすると、隣に座っていたキリトも飛鳥を見ていた。

 

キリト「もしかして、料理も得意だったりする?」

飛鳥「料理は結構好きな方ですよ。出来る分に越したことはありません」

 

 その時だった。

 

「飛鳥―!」

飛鳥「来たな…」

 

 こころの声がした為、飛鳥が椅子から立ち上がってこころを見た。

 

飛鳥「どうしたの?」

こころ「飛鳥達は何を作ったのかしら?」

飛鳥「冷やしちゃんこ鍋」

こころ「お鍋を作ったの?」

飛鳥「うん。そっちは?」

こころ「カレーよ!」

飛鳥「そう…」

 

 こころが楽しそうに喋っていたが、その後ろで不機嫌そうにしている美咲とばつが悪そうにしているはぐみとイヴを見て、飛鳥は全てを悟った。

 

飛鳥「…とりあえず、奥沢さんに謝ろうか」

こころ「謝ったわ?」

美咲「もうちょっと反省しなさーい!!!」

 

******************

 

飛鳥「成程…。カレーを作ってたけど、こころ達が調子に乗ってカレーにいろんなものを入れてしまって、味が悪くなってしまったと…」

美咲「カレーにりんごを入れると隠し味になるってあるじゃん? それでいろんなものを入れたらよりおいしくなるって…」

 

 美咲の言葉に飛鳥は静かに目を閉じた。

 

はぐみ「ごめんなさーい…」

美咲「…で、一丈字くんなら何とかしてくれるんじゃないかって、こころが」

飛鳥「こころも料理できるんじゃなかったっけ?」

こころ「料理は出来るけど、時間もそんなにないわ?」

飛鳥「まあ、あるっちゃあるけど…」

 

 飛鳥が考えると、飛鳥がある事に気づいた。

 

飛鳥「そういえばこころの班って男子いるの?」

美咲「安心して。うちのクラスは男女別々だから」

飛鳥「分かりました。それでは知恵を…」

こころ「どうせなら一緒に料理しましょ!」

美咲「コラ! 流石に迷惑でしょ!」

飛鳥「…この様子だと、ちょっと見てた方がよさそうですね。すみませんが、ちょっと留守にします」

キリト「あ、うん…」

飛鳥「行きましょう」

 

 そう言って飛鳥はこころ達の所に向かったが…。

 

*********************

 

飛鳥「…見事にお亡くなりになられてますね」

美咲「はぁ…」

 

 飛鳥が変わり果てたカレーを見て困惑していた。

 

はぐみ「そ、それじゃカレーは食べられないの?」

飛鳥「料理を変えるしかありませんね…」

美咲「誰のせいでこうなったと思ってんのよ。誰のせいで!」

 

 美咲が睨みつけると、はぐみが委縮した。

 

飛鳥「まあまあ奥沢さん落ち着いて。怒ってもカレーは元に戻りませんよ。もう野菜を煮込む時間はないので、具なしカレーというのはどうでしょうか」

「具なしカレー?」

飛鳥「幸い、米と福神漬けは生きてますので…」

はぐみ「具無しカレーかぁ…」

美咲「……」

はぐみ「そんなに怒らないで~!!!」

 

 まるで誰かのせいで失敗したかのように文句を言うはぐみに大して美咲が睨みつけると、はぐみが涙目でツッコミを入れた。そんな二人をよそに飛鳥は何とか代わりの品を作ってのけた。

 

飛鳥「これでいいですか?」

こころ・はぐみ「おおーっ!!!」

 

 飛鳥の料理を見て、こころ達は感心していたが、

 

美咲「…いやー。ごめんね一丈字くん。無駄な仕事させて」

飛鳥「どうって事ございませんけど…」

 

 1組の男子達からにらまれる飛鳥であった。

 

美咲「あれはほっといていいわよ。どんだけ若宮さんの気を引きたいんだか…」

飛鳥「若宮さんだけじゃないと思いますよ」

美咲「じゃあ、こころやはぐみも?」

飛鳥「あなたもですよ」

美咲「そ、そんな事ないし…//////」

 

 飛鳥の言葉に美咲が照れると、

 

こころ「そんな事あるわよ! 美咲だって可愛いもの!」

美咲「んなっ!!/////」

はぐみ「そ、そうだよ! みーくんだって可愛いもん!!」

イヴ「そうです! ミサキさんだって可愛いですよ!」

美咲「や、やめてよ! 恥ずかしいから!!////」

 

 こころ達も続けて可愛いと褒め、美咲が頬を染めると男子達も囃し立てた。

 

「そうだぞ! 奥沢さんも可愛いぞー!!」

「付き合ってくれ~!!」

「オレ達と食事してくれ~!!」

「お尻触らせt」

 

 この喧騒に美咲は顔を真っ赤にすると、飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「さて、私はもう行きますね」

美咲「えっ!!?」

こころ「そうね。ありがとう飛鳥! 助かったわ!!」

飛鳥「今度からあんま無茶せんようにね。じゃ」

美咲「あ、ちょ、ちょっとぉ~!!!/////」

 

 そう言って飛鳥が去っていくと、美咲が慌てた。そして周りは男子達がずっと自分をほめまくっていた…。

 

美咲「もうやめてよぉ~~~~!!!!!//////」

 

 

 そして飛鳥が帰って来ると…。

 

飛鳥「ただいま」

キリト「お、お帰り…」

飛鳥「何も言わないで」

 

 なんだかんだ言って楽しい林間学校になりましたとさ。

 

 

 

おしまい

 

 

 



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白鷺千聖加入編
第233話「千聖が仲間になった!」


 

 

 白鷺千聖に正体がバレてからというもの、飛鳥の日常生活は普通に戻りつつあった…。

 

「彩ちゃん! 変なストーカーが襲ってこないように僕が守ってあげるゥ!!」

彩「い、いやああああああ!!!」

 

 彩が早速ストーカーに執着されていて、飛鳥が超能力でストーカーを腹痛にした。

 

ストーカー「あばばばばばばばばばばば!!!」

「てめぇこの野郎!!」

「彩ちゃんに手を出しやがって!! 尊厳を壊してやる!!」

 

 と、ここぞとばかりに彩のファン達がストーカーを一方的に暴行した。完全に彩に良い所を見せようとしているが、彩としては恐怖で動けなくなっていた。

 

「彩ちゃん大丈夫? けがは…」

「てめぇ何出しゃばってんだよ!!」

「オレが彩ちゃんを…」

「ざけんな!!」

 

 男子生徒達は醜い手柄の取り合いをしていて、飛鳥が合図を送って弦巻家の黒服達に彩を保護させた。

 

千聖「…いつもこういう事してたのね」

飛鳥「ええ…。表に出たら出たで嫉妬とかも凄いんです」

 

 千聖が後ろから話しかけると、飛鳥が疲れ切った様子で千聖の方を見て話した。モカも一緒にいる。

 

こころ「飛鳥、千聖、モカ!」

 

 こころがやってきた。

 

こころ「行きましょ!」

 

 そう言われて、飛鳥達は弦巻家の車に乗ってどこかに移動した。飛鳥としては、この面子でバレないかと不安になったが、黒服達が何とか裏工作をしてくれていた事を知り、安心した。

 

***************

 

 車の中…

 

千聖「…改めて聞くけど、本当に濃い人生を送ってたのね。あなた」

飛鳥「ええ」

 

 飛鳥の過去を聞いて千聖が困惑していると、飛鳥が苦笑いした。

 

千聖「それを聞いて今までの行動に全部納得いったわ…。モカちゃんはよく分かったわね…」

モカ「いや~。つぐを助けた時から、飛鳥くん普通の子と顔つきが違うって思ってましたから~」

飛鳥「え?」

 

 モカの言葉に飛鳥が困惑していた。

 

モカ「だって、つぐを助けた時の顔、伝説のヒーローみたいな顔をしてたから~」

飛鳥「伝説のヒーローって…」

千聖「そうね。此間の撮影で彩ちゃんを助けた時もまさにそうだったわね」

こころ「日向や椿からも聞いたけど、本当にヒーローみたいなのよ!」

 

 と、女子3人が自分の事を褒めるので、飛鳥はかなり困惑していた。

 

モカ「何飛鳥くん。照れてる?」

飛鳥「いや、こんなに褒められることってあまりないから、困ってるんだよ…。昔は何やってもぼろくそ言われてたし」

 

 小学生時代の苦い思い出が蘇っていたからである。

 

千聖「…あなた、意外に繊細なのね」

飛鳥「意外じゃありませんよ。結構繊細ですよ」

モカ「いやいや、これが戦闘モードになったりすると…」

千聖「ギャップ萌えって奴かしら?」

飛鳥「違うと思います」

 

 と、そのまま4人が談笑していた。

 

千聖「ところで、これからどうするつもりなのかしら?」

飛鳥「まだ広島に戻れという連絡は受けていないので、ここにいるつもりですよ」

モカ「飛鳥くんがいなくなったら、静かになると思うよ~」

飛鳥「うん。自分でもそう思うよ。中学もそうだったもん」

 

 モカの言葉に飛鳥が苦笑いしていた。中学時代も今と同じようにトラブルが起きまくり、その度に沢山の関係者に迷惑をかけた為、飛鳥はばつが悪そうにしていた。

 

モカ「にぎやかだから、いてくれたら嬉しいな~」

飛鳥「…ありがとう」

 

 モカの言葉に飛鳥は皮肉気味にお礼を言った。

 

千聖「それはそうと、今正体を明かせばヒーローになれるかもしれないわよ?」

飛鳥「それはないですよ」

 

 千聖の発言に飛鳥はきっぱりと断った。

 

こころ「どうして?」

飛鳥「考えてみろよ。一瞬のうちに9人も殺した殺人犯をぶっ倒した奴がこの学校にいるって分かったら皆パニックになるよ。今度は自分たちが同じ目に遭うんじゃないかってね」

千聖「……」

飛鳥「しかも、今までの事であなた方と仲良くなったと知れば、やっかみが増えます。世の中そんなに甘くないよ」

 

 そういうと、飛鳥は一息ついた。

 

モカ「まー…。ハイリスクハイリターンだよね。そういうのって」

飛鳥「リスクがあるなら、ノーリスクノーリターンの方がいいよ。死んだら取り返しがつかないんだから」

千聖「……」

 

 飛鳥の言葉に千聖を見つめた。

 

飛鳥「白鷺先輩、これが私の現状です。能力者同士の争いに、あなた方を巻き込んでしまった事、誠に申し訳ございません」

千聖「……」

 

 飛鳥が頭を下げると千聖は険しい表情をした。

 

千聖「顔を上げなさい」

飛鳥「……」

 

 千聖の言葉に飛鳥は顔を上げると、千聖が怒っているのを確認した。

 

千聖「あなたのやった事は全てが許される訳じゃない。だけど、あなたがいたから私たちは救われたの。頭なんか下げないで」

飛鳥「……」

 

 千聖の言葉に飛鳥は静かに目を閉じると、こころが困った顔をしたがモカが大丈夫だとこころを諭した。

 

千聖「…和哉さんからこう言われたのよ。あなたを守って欲しいと」

飛鳥「!」

 

*****************

 

 撮影終了後、千聖は宿泊先のホテルで一人佇み、飛鳥の事を調べようとした矢先、和哉がいた。

 

千聖「!!」

和哉「また会ったな」

 

 和哉が睨みと聞かせると、千聖が腰を抜かした。

 

和哉「安心しろ。お前を殺しに来た訳じゃない。取引をしに来たんだ」

千聖「取引…?」

和哉「一丈字飛鳥の件についてだ」

 

 和哉の言葉に千聖が驚いた。

 

千聖「一丈字くんの事を知ってるの!?」

和哉「知っているとも」

千聖「教えて! 彼は一体何者なの!?」

和哉「それを教えてほしければ、オレの要求にこたえて貰おうか」

千聖「!」

 

 和哉の言葉に千聖は嫌な予感がした。

 

千聖「…もしかして、私を好きにさせろと言いたいんじゃないでしょうね?」

和哉「ほざけ。ガキに興味はない」

 

 和哉の言葉に千聖はカチンときたが、

 

和哉「高校生がませた事を言うもんじゃねェよ」

千聖「…で、で? 要求は?」

和哉「お前のコネクションを提供してもらおうか」

千聖「コネクション?」

和哉「天才子役と呼ばれていれば、コネクションもそれなりにあると思ってな。どうだ?」

千聖「…ない事はないわ。いいでしょう」

 

 千聖の言葉に和哉は笑みを浮かべた。

 

和哉「交渉は成立だ」

千聖「さあ、約束通り教えて頂戴。あの子は一体何者なの?」

和哉「一言でいえば、あいつは超能力者とでも言っておこうか」

 

 和哉の発言に千聖が神妙な表情をした。

 

和哉「…驚かないんだな」

千聖「ええ。もう覚悟はできてます」

和哉「流石、周りの大人たちにいいようにされてどん底に突き落とされただけ、タフになっているな」

千聖「私の事はいいですから、彼の事を教えてください」

和哉「そうだな…」

 

 そう言って和哉は飛鳥の事について千聖に教えると、千聖はショックを受けた。

 

和哉「そういう訳だ。オレもあいつも普通の人間として生きていく事はほぼ不可能に近い。だからこのような仕事をしているのだ。あいつには、学生の立場を利用して学校に潜入してもらい、悪の能力者の討伐をやって貰っている」

千聖「……」

和哉「そういう訳だ。今後あいつと付き合うかどうかはお前の自由、正体をバラすのもお前の自由だ」

千聖「えっ?」

和哉「正体をバラされようが問題はない。そうしようものなら、こちらが手を出さずとも、お前は消される」

 

 和哉の気迫に千聖は息をのんだ。

 

和哉「オレ達の世界も芸能界とほぼ同じだ。ガキだろうが女だろうが、弱い奴は消され、力を持った者だけが生き残る」

 

 恐れおののいた千聖をよそに、和哉は一息ついた。

 

和哉「理解してもらえたかな?」

千聖「え、ええ…。しかし、何故それを私に…?」

和哉「お前の事は観察させて貰った」

千聖「えっ!?」

和哉「何度も飛鳥の正体を見破っていたからな。その度にあいつが記憶を消したりしたそうだが…。そして、今回の騒動でお前が信頼できると判断できた。お前、あいつの為に何かしてやりたいと考えているだろう」

千聖「……」

 

 和哉の言葉に千聖は俯いた。今まで自分達を陰から救い出してくれた事に恩を感じていたと同時に、このまま何も出来ずにただ守られている事に耐えられなかったからだった。

 

和哉「これがただの好奇心や私欲だったら、記憶を根こそぎ消させて貰ったが、その必要はもうない」

千聖「……!」

 

 和哉が千聖を見つめた。

 

和哉「話は終わりだ。お前のこれからの行動に期待させて貰おう」

 

 そう言って和哉は消えていった。

 

************************

 

飛鳥「…そんな事が」

千聖「よい師匠に巡り合えたわね」

飛鳥「!」

 

 飛鳥が千聖を見つめた。

 

千聖「本当にありがとう。あなた達のお陰で本当に助かったわ」

飛鳥「白鷺先輩…」

 

 千聖が頭を下げると、飛鳥が驚いた。

 

こころ「これで飛鳥も千聖も本当の意味でお友達になれたのね!」

飛鳥「それはちょっと意味が違うと思うよ…」

千聖「あら、不満かしら?」

飛鳥「不満ではないですけど、白鷺先輩は嫌じゃないんですか?」

千聖「まさか。なんならこれからは千聖さんって呼んでもいいのよ?」

飛鳥「おお、かなりフレンドリーになってますね…」

モカ「多分男子にそう呼ばせるのも初めてなんじゃないですか~?」

千聖「ふふ。そうね」

 

 モカの言葉に千聖はくすっと笑った。

 

千聖「そういう訳だから、これからは飛鳥くんって呼ばせて貰うわね」

飛鳥「……」

 

 女優とこうやって仲良くなろうとは夢にも思わなかった飛鳥だった。

 

飛鳥「ところでこの車どこに向かってるの?」

こころ「イタリアンレストランよ! 丁度イタリアンが食べたいと思ってたの!」

飛鳥「あ、そう…」

 

 

おしまい

 



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第234話「アスファルトに咲く花のように」

私は高校生超能力者、一丈字飛鳥。
中学の同級生の親友である弦巻こころの依頼で、
バンドリ学園に転入してきた高校一年生。

仕事内容は、バンドリ学園で活躍するガールズバンド達に
群がる悪い虫「ヤラカシ」を退治する事。

超能力者だと知られたら、色々面倒な事になるので、
正体を隠して学校生活を送っているが、
超能力者だと知っているのはこの3人だ。

異色系ガールズバンド「ハロー、ハッピーワールド!」ボーカルにして依頼人の弦巻こころ。

王道ガールズバンド「Afterglow」のギター担当、青葉モカ。

アイドルガールズバンド「Pastel*Palletes」のベース担当にして天才女優・白鷺千聖。


あ、弦巻家の皆さんも入れておきましょう。

彼女たちの協力も得て、今日もヤラカシ退治に精を出す。

少しだけ振り向きたくなる時もあるけど、愛と勇気と誇りを持って戦う。
その名は、一丈字飛鳥!

飛鳥「…何でコナン風なの?」


 

 

「おかしい」

「やっぱりどう考えてもおかしい」

 

 バンドリ学園のとある一室で、男子生徒達が話し合っていた。彼らはバンドリ学園のガールズバンドの熱狂的大ファンなのであるが、いつも飛鳥に邪魔されるか、彼女たちに相手にされないという可哀そうな人たちだ。

 

「やっぱり一丈字はおかしい!」

「ああ。香澄ちゃん達がピンチになると、タイミングよく奴が現れて…」

「やっぱりな…」

「ああ、オレもそう思っていた…」

 

 今までの事は飛鳥の自作自演なのでは? と思い始めた。

 

飛鳥「……」

 

 そしてそれを陰で飛鳥は見つめて困惑していた。そんな訳ないだろと。本当に自作自演だとするなら、準備するの凄くめんどくさいぞと思っていた。

 

飛鳥(相変わらずだなぁ…)

 

 そう落胆して、一人で帰宅しようとしていると、

 

「飛鳥―!」

飛鳥「?」

 

 こころがやって来た。

 

飛鳥「弦巻さん」

こころ「今空いてるかしら」

飛鳥「……」

 

 こころの問いに飛鳥は困惑した。

 

飛鳥「ごめん。ちょっと今日は…」

こころ「どうしたの?」

飛鳥「いや…」

こころ「一人で悩みを抱えるのは良くないわ?」

飛鳥「ちょっと一服したいから…」

こころ「一服?」

 

 数分後、飛鳥は校内のコンビニでグルコのカフェオーレ(300ml)を飲んで黄昏ていた。それを見ていたこころは首をかしげていたが、同じようにカフェオーレを持っていた。

 

飛鳥「ハァ…」

こころ「一体どうしたの?」

飛鳥「今日も疲れたんだぜ…」

 

 飛鳥がゲッソリしていた。実は男子生徒達からイチャモンをつけられただけではなく、昼頃に2年生の花音の体操服が知らない男に盗まれて、超能力を駆使して取り返したが、男があまりにも変態だったので、ゲッソリしていた。

 

『か、花音ちゃんのおっぱい!! ブラジャー…』

 

 思い出すだけで飛鳥は更に元気をなくした。これを本人に説明したら泣き崩れるだろう。というかもう自分も泣きたい気持ちだった。犯人の男があまりにも情けなさ過ぎるからだ。

 

飛鳥「一服しないとやってられないよ…」

 

 そんな時だった。

 

「一服って、サラリーマンじゃないんだから」

 

 千聖とモカが現れた。

 

飛鳥「あ、白鷺先輩、青葉さん…。お疲れ様です」

モカ「お疲れー…って、本当にお疲れだね…」

飛鳥「今日も飛び切りの変態の相手をしたもんで…。一服してた所です」

千聖「一服って…」

飛鳥「この一服があれば明日もまた強く生きれます。アスファルトに咲く花のように」

千聖「岡本真夜!!?」

 

 飛鳥の変なボケに千聖が思わずツッコミを入れた。

 

モカ「風に揺れている花ともいうね~」

千聖「いや、モカちゃん…」

 

飛鳥「それはそうと、松原先輩いかがでした?」

千聖「…かける言葉が見つからなかったわ」

飛鳥「でしょうね…」

 

 飛鳥と千聖が困惑していると、

 

こころ「あ、そうだ! カラオケ行きたいわ!」

飛鳥「え」

 

 こころの提案に飛鳥、モカ、千聖がこころを見た。

 

 

 そしてカラオケボックスに行く事になったが、VIPルームに通された。

 

飛鳥(ああ。完全に弦巻家の力だ…)

 

 4人で使うには『ちょっと』広すぎるルームに飛鳥が困惑した。

 

こころ「さあ、歌いましょ!!」

飛鳥「あ、うん…」

モカ「さあ、あの曲を歌おう~」

飛鳥「……」

 

 トップバッターで飛鳥が岡本真夜の「TOMORROW」を歌った。

 

モカ(歌は上手いけど、哀愁が漂ってる…)

千聖(相当疲れてるわね…。というか、ミュージカルでもやってたのかしら…)

 

 そして歌い終わると、モカたちが拍手した。

 

こころ「やっぱりすごいわ飛鳥は!!」

飛鳥「ありがとう」

こころ「でもなんか胸がキューってするの…」

飛鳥「そうかもしれないね」

 飛鳥が苦笑いした。

 

こころ「次は楽しい曲を歌いましょう!」

飛鳥「あ、うん…」

 

 思いっきり「TOMORROW」を歌ったことで、少しだけスッキリした飛鳥。

 

モカ「それじゃ次モカちゃんいきま~す」

 

 と、モカ、こころ、千聖も歌を歌い始めた。

 

飛鳥「あ、休憩されたいなら構いませんので…」

黒服A「お、お気遣いありがとうございます」

こころ「折角だから皆で歌いましょ!」

黒服B「えっ…」

 

 飛鳥とこころが黒服達に話しかけたりして、楽しいカラオケ大会になった。

 

 

 日が暮れたころ、店から出た飛鳥達

 

こころ「今日はとっても楽しかったわ!!」

飛鳥「そりゃあ良かった」

 

 こころが満足そうにしていると、飛鳥が苦笑いした。

 

千聖「それはそうと、気分転換になったかしら?」

飛鳥「ええ。それはもう」

モカ「アスファルトに咲く花のようになれそう~?」

飛鳥「うん。多分なれそう」

 

 モカの問いに飛鳥は少し間をおいて答えた。

 

こころ「また行きましょうね!」

モカ「うん~」

千聖「そうね」

こころ「あ、折角だから送っていくわね」

 

 飛鳥達はこころの車に乗せられて、自宅に帰りついた。

 

 

 翌日

香澄「飛鳥くん!! 昨日こころちゃん達とカラオケ行ったでしょ!!」

飛鳥「……」

 

 香澄が3組の教室にやってきて、飛鳥を問い詰めていた。実はこころが登校してすぐに飛鳥とカラオケに行った事を自慢したのだった。香澄の後ろにはたえ、りみ、沙綾、有咲、はぐみ、美咲、イヴもいた。

 

飛鳥「ええ。行きましたけどそれが何か?」

有咲「もう完全に開き直ってるな…」

香澄「ねえ、私達とも行こうよー」

飛鳥「え」

 

 香澄の発言に飛鳥が驚いた。

 

香澄「こころちゃんだけずるーい!」

はぐみ「そーだよ! はぐみも飛鳥くんとカラオケに行きたーい!!」

 

 香澄とはぐみが騒いだが、

 

飛鳥「まあ、行くとしても当分先ですね…」

香澄「え、何で!!?」

飛鳥「もうすぐテストですよ」

 

 飛鳥の言葉に香澄とはぐみが石化した。

 

香澄「ああああああああああああああああああああ!!! そうだったぁあああああああああああああああああああ!!!」

はぐみ「テストいやぁああああああああああああああああ」

 

 香澄とはぐみは頭を抱えて叫んだ。

 

香澄「そ、それじゃ最後の晩餐という意味で…」

飛鳥「平均60以上取れたら一緒に行きましょうか」

香澄「オニー!!」

はぐみ「そーだよ!! 鬼畜だよ!!」

たえ「ちなみに取れなかったらどうする?」

飛鳥「取れなかったら…」

有咲「確か補習あったから…。補習行ってる間に残ったメンバーでカラオケ」

香澄「うわーん!!! 有咲酷いよー!!!」

はぐみ「友達いなくなるよー!!?」

有咲「うっせぇ!! ちゃんと勉強すればいいだけの話だろうが!!」

 

 ギャーギャー揉めているのを飛鳥は苦笑いして見つめる事しか出来なかった。

 

 

おしまい

 



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第235話「バーベキュー ~パスパレ編~」

 

 

私は高校生超能力者、一丈字飛鳥。

中学の同級生の親友である弦巻こころの依頼で、

バンドリ学園に転入してきた高校一年生。

 

仕事内容は、バンドリ学園で活躍するガールズバンド達に

群がる悪い虫「ヤラカシ」を退治する事。

 

超能力者だと知られたら、色々面倒な事になるので、

正体を隠して学校生活を送っているが、

超能力者だと知っているのはこの3人だ。

 

異色系ガールズバンド「ハロー、ハッピーワールド!」ボーカルにして依頼人の弦巻こころ。

 

王道ガールズバンド「Afterglow」のギター担当、青葉モカ。

 

アイドルガールズバンド「Pastel*Palletes」のベース担当にして天才女優・白鷺千聖。

 

 

あ、弦巻家の皆さんも入れておきましょう。

 

彼女たちの協力も得て、今日もヤラカシ退治に精を出す。

 

少しだけ振り向きたくなる時もあるけど、愛と勇気と誇りを持って戦う。

その名は、一丈字飛鳥!

 

モカ「真実は、いつも一つ~!!」

飛鳥「おいおい…」

 

*****************************

 

 

 

『モニタリング:もしも一丈字飛鳥と25人のバンドガールズがバーベキューをやったらどうなるか』

 

 ある日の事。飛鳥はこころに誘われて、弦巻家の庭でバーベキューをする事になったが、それはもう凄い凄い。春になれば軽く花見も出来て、しかもその見物客の中には日本でもトップの人がきたりする。なんと総理大臣も来た事もあるらしい。

 

 そんな立派な庭で女子高生たちがバーベキューをしているのだ。

 

飛鳥(現実じゃそんなの殆どあり得無いから、夢があっていいよね…)

 

 唯一の男子メンバーである飛鳥は困惑していた。見渡せば女の子ばかり。

 

日菜「飛鳥くん。女の子ばかりで嬉しい?」

飛鳥「普通ですね」

日菜「そこは嘘でも嬉しいって言わなきゃー」

飛鳥「いやー。言ったらそっち系の人間と思われますし」

日菜「そっち系ってどっち系?」

飛鳥「女の子に目がない輩」

 

 飛鳥が腕を組みながら言うと、皆がしーんとした。すると黒服を見て、

 

飛鳥「つまみ出される覚悟はできてます」

香澄「ちょ、悲しい事言わないでよ!!」

 

 飛鳥が平然と言うと、香澄が突っ込んだ。

 

飛鳥「下心を持つと碌な事がないのですよ…それはそうと日菜先輩」

日菜「なーに?」

飛鳥「相変わらずクラスの人とどこか出かけたりしないんですか?」

日菜「うーん。ないかなー。あんまりるんってしないし」

千聖「相変わらず下心があるもの。燐子ちゃんや花音の事をいやらしい目で見てくるし」

 

 千聖が冷徹に言い放つと、飛鳥は困惑した。

 

リサ「…飛鳥くん。あまり気を遣わなくていいからね。大丈夫だから」

麻弥「あの時は、友希那さんや薫さんが見られてたっすね…」

薫「それは仕方のない事だよ。私が儚いから…」

 

 薫が喋ると飛鳥が露骨に視線を逸らした。

 

薫「どうしたんだい? 子犬くん」

飛鳥「あ、いえ。何も…」

千聖「……」

 

 飛鳥が千聖の方を見ると、薫は嫌な予感がした。

 

***********

 

 なんやかんやでバーベキューが始まった。グループごとに分かれていたが、飛鳥はグループの代表者がじゃんけんして、彩が勝ったため、パスパレに入れて貰った。

 

 

飛鳥「あ、私が焼くのでどんどん食べてください」

日菜「ありがとー!!」

 

 飛鳥がトングを持って食材を焼いていた。

 

麻弥「あ、ジブンが交代しますよ」

飛鳥「ありがとうございます。ですが、今は大丈夫ですので」

麻弥「いやいやいやいや…」

 

 麻弥と雑用の取り合いをしていた。するとこころがやってきて、

 

こころ「お肉沢山あるからどんどん食べていいわよ!」

飛鳥「そういややっぱりこの食材って良い所使ってますよね…」

こころ「お肉はね。神戸牛を使ってるわよ!」

飛鳥「おっふ」

麻弥「贅沢の極みっすね…」

 

 こころの言葉に飛鳥と麻弥が困惑していた。

 

彩「あ、味わって食べないとね…」

イヴ「そ、そうですね…」

千聖「彩ちゃんは食べ過ぎ注意ね」

彩「わ、分かってるよぉ!」

飛鳥(良く噛んで食べましょうって言ったら余計だよね…)

 

 飛鳥は女性の先輩に対してそういう事を言うのは失礼だと考えて、何も言わなかった。

 

千聖「良く噛んで食べなさい」

飛鳥「……!」

 

 千聖の言葉に飛鳥が千聖を見ると、日菜が笑った。

 

日菜「千聖ちゃんお母さんみたーい」

千聖「どういう意味かしら?//」

 

 

 そしてバーベキューが進んでいき、食材を焼く役はほぼ全員でローテーションしていた。日菜は食べてばっかりいて、紗夜に注意されていた。

 

 ちなみに他のグループではこんな状態だ。

 

<Afterglow>

 

巴「モカ。肉ばっかり食べてないで野菜も食べろ」

モカ「食べてるよ~。サンチュと一緒に~」

蘭「いや、そういう問題じゃないから…」

つぐみ「あははは…」

 

 モカのマイペースぶりに蘭が呆れていた。

 

<Poppin‘party>

 

香澄「りみりんお茶~」

りみ「は、はい」

有咲「自分で注げ!!」

 

 香澄がだらけて、りみに色々命令していたので、有咲に怒られていた。

 

<Roselia>

 

紗夜「宇田川さん。ちゃんと野菜も食べなさい」

あこ「はーい…」

 

 紗夜が肉ばっかり食べていたあこに注意したが、

 

日菜「おねーちゃんだって、ポテトばっかり食べてるじゃん」

紗夜「そ、そんな事ないわよ!!/////」

 

 だが事実であり、紗夜は肉が焼けるまでの間、軽くつまめるように用意したフライドポテトを滅茶苦茶食べていた。

 

<ハロー、ハッピーワールド!>

 

花音「ふ…ふぇええええ…」

 

 花音は困惑していた。というのも、こころ、薫、はぐみの食べるスピードが速すぎて全然肉が取れないのだ。そして美咲が何とか注意して何とかなった。

 

 

千聖「どうかしら。楽しめてる?」

飛鳥「ええ…」

 

 千聖が話しかけてくると、飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥(思えば今までずっとバタバタしてきたからなぁ…)

 

 飛鳥は男子生徒達にずっと絡まれていた日々を思い出していた。

 

飛鳥(でも、皆さん元気そうだからいっか…)

 

 飛鳥は蘭たちを見渡していた。

 

千聖「あ、そうだ飛鳥くん。食べさせてあげよっか?」

飛鳥「え、どうされたんですか?」

千聖「ご不満かしら?」

飛鳥「不満じゃないですけど、私、食べさせる方が好きなんですよ」

 

 飛鳥がそう言うと、皆が飛鳥と千聖を見た。

 

日菜「えっ!? 飛鳥くんが千聖ちゃんにあーんするの!?」

彩「ええええっ!!?/////」

飛鳥「冗談ですよ。今度こそぶち殺されます」

千聖「そうね。少々おふざけが過ぎたわね」

日菜「千聖ちゃん変わったよね」

千聖「え?」

 

 日菜の言葉に千聖が驚いた。

 

日菜「おふざけするようになるなんてね~」

千聖「あの、日菜ちゃん?/////」

 

 日菜の冷やかしに千聖が頬を染めると、

 

薫「いやあ、とても素晴らしい事だと思うよ。千聖」

千聖「ありがとう。かおちゃん」

薫「あの、それはやめてください////」

千聖「一丈字くん。今後もかおちゃんって呼んであげて頂戴」

飛鳥「あ、はい」

薫「ち、ちーちゃん!!/////」

 

 千聖が飛鳥を使ってからかうと、薫が更に慌てた。ファンであるりみとひまりは尊過ぎて吐血した。

 

香澄「りみりーん!!」

蘭「あーもー。しょうがないんだから…」

 

 

 

 なんだかんだいって楽しいバーベキューになりました。

 

 

おしまい

 



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第236話「千聖さんと打ち解けてからの海水浴」

 

 

 ある日のバンドリ学園。

 

「あぁ~~~!! どうして千聖ちゃん達は相手にしてくれないんじゃあ!!」

 

 男子生徒達は嘆いていた。というのも、お目当ての美少女達が自分の相手をしてくれないからだ。季節は夏、この季節は色んなことがある夏であわよくば、水着姿の女子達を見て、普通のクラスメイトから恋人になりたがっていた。でも一番やりたいのはエッチである。

 

「バンド活動が忙しいからって言ってたけど絶対違うよね…」

「アルバイトをしてる子も沢山いるし…」

「やっぱりオレらじゃ釣り合わないのか…!?」

 

 色々嘆いてたが、一番の原因は『下心が見え見え』という事である。ちなみに女子達の間で情報が共有されていて、上手い事避けられている事を男子たちは知らない。

 

「それにしてももうすぐ夏だぞ…」

「ああ…」

「あの子たちと一緒に海で泳ぎたいよな…」

「あと出来れば5バンド全員で…」

 

 男子生徒達の脳裏に焼き付くのは、ビーチサイトで広がる沢山の女体。それもとびっきり顔立ちの良い美少女の女体だ。

 

 しかも彼女たちは水着姿で、制服姿じゃ見られない肌の露出、そして個性のでる体つき。芸術ともいえる肢体。そしてなんといっても女性にしか醸し出せない「色気」。25人もいるのだから、より取り見取りであり、それはまさに楽園と行っても良いだろう。

 

 もしもお金を払っていけるのであれば、全財産払っても行きたい。というか行かせてください、行かせてぇええええええという気持ちであった。

 

「でも流石に25人全員が同時に休みが空いてるなんて無いよなぁ」

「そうそう。パスパレはアイドルだし、バイトしてる子もいるからなぁ…」

「全グループがダメでも、せめて1グループくらいなら…」

 

 そういう話で盛り上がりながら、香澄達の水着姿を思い浮かべていた。

 

「…けど」

「?」

 

 男子生徒の1人が頭を抱えた。

 

「…一丈字なら出来そうなんだよなぁ」

「え?」

「ほら、あいつってこころちゃんと仲良いだろ? だから…」

「そうなのか!!?」

 

 皆が驚いた。一丈字飛鳥、この物語の主人公にして、弦巻こころとはある程度つながりを持っている。そのつながりを持っているという時点で勝ち組になる事は約束されていた為、男子生徒達の怒りの矛先が飛鳥に向けられた。

 

「一丈字の奴~!!!」

「そうか…弦巻家に何とか取り入ったんだな」

「道理であんな良い思いが出来る訳だ…」

「なんて卑劣な!!」

 

 それを陰から飛鳥、千聖、モカが見ていた。

 

千聖「相手にしちゃダメよ。一丈字くん」

飛鳥「あ、はい…」

モカ「飛鳥くんはちゃんと努力してるもんね~」

飛鳥「恐縮です」

千聖「全く、何もしないあの人たちと、色々してくれる一丈字くんとで扱いが同じなわけないでしょう」

 

 千聖とモカに励まされるも、苦笑いするしかなかった飛鳥。

 

モカ「でもいい事思いついちゃった~」

飛鳥・千聖「え?」

 

 モカはとんでもないことを思いついた。

 

 グループLINE(バンドガール+飛鳥)

 

モカ:飛鳥くん海に連れていきたいんだけど、参加できる人~。ちなみにスケジュールはモカちゃん基準です

千聖:モカちゃん?

飛鳥:あ、無視して頂いて大丈夫ですので。

モカ:ちなみに飛鳥くんと千聖さんは確定ですので~。

 

 その結果…

 

「夏だ!! 海だーっ!!」

 

 何という事でしょう。25人全員が集まりました。全員が集まれるという事に飛鳥は困惑するしかなかった。

 

千聖「分かるわよ。奇跡としか言いようがないわ…。日帰りとはいえ」

モカ「これも飛鳥くんの人望の賜物だね~」

飛鳥(…欠席者がいると、誰がいないかがややこしくなるからじゃないよな)

 

 飛鳥が考えていると、モカが友希那を見つめた。

 

モカ「それにしても湊さんも来るなんて意外ですね~」

友希那「他のバンドとの交流を深めた方が良いと判断しただけよ」

 

 モカの言葉に友希那は当然とばかりに言い返すると、リサが苦笑いした。

 

香澄「よーし! それじゃ着替えるぞー!!」

はぐみ・日菜「おー!!」

 

 香澄たちは着替えにいき、他のメンバーもそれに続いて水着に着替えた。

 

 そして…

 

「それーっ!!」

「きゃーっ!!」

 

 バンドガールズ達は海水を掛け合いっこして遊んでいたが、飛鳥はビーチパラソルの下にずっといた。

 

千聖「平和ね」

飛鳥「そうですね…」

 

 千聖が飛鳥に話しかけた。千聖も肌が荒れるからとあまり海で遊びたがらず、パラソルの下にいた。

 

飛鳥「Pastel*Palettesの予定は大丈夫だったんですか?」

千聖「ええ。何とかスケジュールを調整して貰ったわ。和哉さんが収集してくれたうちのスタッフの失敗を盾にしたらあっさりいう事を聞いてくれたわ?」

飛鳥「…いつの間にそんな事を」

 

 いつの間に和哉と連絡を取っていたんだと飛鳥は困惑していたが、和哉と千聖が手を組んだら何かとてつもなく恐ろしい事になっているとも感じた。

 

千聖「あなたには感謝してるのよ」

飛鳥「え?」

千聖「あの事件もそう。あなたが助けてくれたお陰で、彩ちゃんも自信を取り戻したしね」

飛鳥「改善されて何よりです…」

 

 飛鳥はこれ以上は何も言わない事にしておこうと思った。理由としては、余計な事を離してしまえば千聖が更にヒートアップする可能性が高まるからだ。

 

 そんな時だった。

 

「飛鳥くーん!」

 

 香澄がやってきた。

 

飛鳥「戸山さん」

香澄「飛鳥くんも一緒に遊ぼうよ!」

飛鳥「それは構いませんけど…」

 飛鳥が立ち上がって横を見ると、水着姿のこころ、はぐみ、モカが手を振っていた。

 

飛鳥「何だか別世界ですね…」

千聖「うちのクラスの男子だったら泣いて喜ぶでしょうね」

飛鳥「そして私を殺しにくるでしょうね…」

 

 飛鳥が千聖を見つめた。

 

千聖「それにしてもあなた、25人の女の子が水着になってあなたに迫ってるのに、あまりリアクションがないというのもどうなの?」

飛鳥「一周回ってるんですよ」

 

 飛鳥が困惑した。

 

香澄「じゃあ千聖ちゃんはどう思う?」

飛鳥「妖精さんみたいですね」

千聖「どういう意味?」

飛鳥「そういう意味ですよ。戸山さん。行きましょうか」

香澄「え!? 私も聞きたい! どういう事!?」

千聖「説明してもらおうかしら?」

 

 香澄と千聖が詰め寄る。

 

飛鳥「いやー。そんなに大したことは言ってないと思うんですけど、戸山さんは白鷺先輩の水着姿どう思います?」

千聖「とってもキラキラしてるよ!」

飛鳥「戸山さんも言っているように、幻想的ってイメージなんですね。だから妖精です」

千聖「そ、そう…」

 

 千聖が若干納得してなさそうだったが、飛鳥は普通にしていたので、何も言わない事にした。

 

香澄「あ、でも飛鳥くん。ここは可愛いって言ってあげないと!」

千聖「べ、別にいいわよ」

飛鳥「いや、白鷺先輩は可愛いというより綺麗じゃないですかね」

千聖「!!?//////」

 

 飛鳥がごく自然に言い放つので、千聖は恥ずかしくなった。

 

香澄「あ、分かる。千聖先輩ドラマとかで見てもずっとカッコイイ感じだもんね。うーん…でもお人形さんみたいで可愛いというのもあるんだよねー」

飛鳥「綺麗と可愛いのダブルコンボですね」

香澄「あ、それそれ!!」

千聖「あ、あなた達…もうその辺にして頂戴…」

 

 飛鳥と香澄のダブル天然ジゴロに千聖はどんどん頬が赤く染まった。

 

飛鳥「あ、すみません」

香澄「赤くなってる…」

 

 その時、千聖が飛鳥と香澄の頬をつねった。

 

飛鳥「いたたたた!! 何なんですか!! ちゃんと謝ったじゃないですか!!」

香澄「ごめんなさ~い!!」

千聖「……!!」

 

 なんだかんだ言って、楽しい海水浴になりましたとさ。

 

 

おしまい

 



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第239話「Afterglow救出大作戦!」

 

 

 ある日の事だった。

 

「なあ、聞いたか?」

「最近この学校…幽霊が出るらしいぞ」

「何か3年生がそんな話してたな…」

「おー怖い怖い…」

 

 クラスの男子生徒達が学校に関するうわさ話をしていて、飛鳥が近くで聞いていた。

 

「そういや今日、メンテナンスのために早めに施錠されるんだろ?うちの学校オートセキュリティだから」

「取り残されたら一晩中幽霊に付きまとわれるかもな」

「おーこわ」

「あ、でもガードマンがいるって」

「そっか」

 

 飛鳥は特に何もリアクションをする事なく、そのまま本を読んでいた。

 

 

 その夜、飛鳥は暢気に部屋でくつろいでいた。

 

飛鳥「ふぅ…。今日も何もない一日だったな…」

 

 飛鳥がそう呟いていると、緊急用の電話が鳴った。

 

飛鳥「な、何だ!?」

 

 飛鳥は少し慌てて電話に出た。電話の相手はこころである。

 

飛鳥「もしもし」

「あ、もしもし飛鳥!?」

 

 電話の相手はこころだった。

 

飛鳥「こころ。どうしたんだ?」

こころ「蘭たち見てないかしら?」

飛鳥「え?」

こころ「蘭たちがまだ学校から帰ってきてないのよ」

飛鳥「え!?」

 

 飛鳥が驚いた。というのも、時間はもう午後10時を回っていた。バイトや塾などに通っていたら9時以降も出歩いている事は特に問題はないが、蘭達は同じバイトをしてるわけでも、塾に通ってるわけでもない。仮にそうだったとしても女5人だけで夜道を歩くのは危険すぎた。

 

こころ「さっきあこから電話があったのよ。Afterglow全員帰ってきてないって…」

飛鳥「5人全員が行きそうな場所とか調べた? 学校とか…」

こころ「学校…そうだわ! 今日確か早く施錠するって黒服の人たちが教えてくれたわ!」

飛鳥「もしかしたら学校に閉じ込められてる可能性が…」

 

 こころから電話がかかってきたという事は、黒服達でも見つけられなかったという事を意味していた。施錠がかかっているという事は黒服の人たちでも調べる事は難しい。飛鳥はそう判断した。

 

飛鳥「何か忘れ物をしてすぐに帰ろうとしたけど、閉じ込められた奴か」

こころ「警察の通報とかそういう手続きはあたしや黒服達の人がしておくわ! 飛鳥は学校に向かって頂戴!」

飛鳥「分かった!」

 

 飛鳥が存在感を消し、瞬間移動で学校に向かった。ちなみに行った事がある場所はいつでも行けるようになる。そして瞬間移動をしたとき、人に気づかれないように存在感を消した。

 

 正門を過ぎた所に瞬間移動した飛鳥。正門は既に閉まっている。

 

飛鳥(誰か来てる痕跡もなさそうだな…)

 

 飛鳥が目を閉じて感知すると、蘭達を捕らえた。停電になり5人で固まっている。

 

飛鳥(いた!)

 飛鳥は超能力でカギのロックを解除すると、中に入った。

 

飛鳥(驚かせるといけないから、近くまで行ったら名前を呼ぼう)

 

 その頃…

 

「うぅぅぅぅ…!!」

 

 Afterglowの5人は固まっていた。モカ以外の4人はすっかり怯えていた。

 

ひまり「ごめんねぇ…!! 私がノート忘れたばっかりに…!!」

巴「そ、それはもういいんだよ…でも…」

蘭「怖い…!!」

 

 実はAfterglowは夕方までつぐみの家で課題をしていたが、ひまりがノートを忘れた事が判明し、5人で忘れ物を取りに行った。すぐに取りに帰る予定だったので、親には特に何も言わず、そのまま飛び出し学校へ。

 

 参考書は無事に見つかったものの、その瞬間に施錠されてしまい、蘭たちは外から出られなくなってしまったのだ。おまけに最近幽霊がいると噂になっている為、すっかり怯え切っていた。

 

つぐみ「どうしよう…鍵が完全にかかって出られない…」

モカ「ここまでセキュリティが凄いとは…こりゃ噂になる訳だ~」

蘭「…バンド禁止される」

巴「私もあこに何て言われるか…」

ひまり「うぇええええええええええん!!! 私のせいだぁ~!!」

 

 ひまりが泣き崩れた。

 

つぐみ「ひ、ひまりちゃんのせいじゃないよ!!」

巴「ちょ、やめろよ! そういうの…」

蘭「そ、そうだよ…!!」

 

 つぐみ、巴、蘭も涙ぐんだ。

 

モカ「そんなことよりも、本当にまずいよ」

「!」

 

 モカが険しい顔をしていた。

 

モカ「…『あいつ』がここを突き止めてきたら」

「もう突き止めたよ」

「!!?」

 

 その時、蘭の首筋にスタンガンが当てられそうになったが、モカが瞬時に蘭を押し倒して、間一髪でかわした。5人は避難したものの、完全におびえ切っていた。目の前には狂気に満ちた表情したガードマンの姿があったのだから。

 

 

モカ「……!!」

 モカも今ので完全に青ざめてしまい、目に涙が浮かんだ。

 

ガードマン「もう逃がさないよ。見られたからには、君達には死んで貰う」

蘭「な、な、何で…」

ひまり「いやぁああああああああああああああああああああああ!!!!」

ガードマン「泣きわめこうが誰も来ないよ。そもそも下校時間過ぎた挙句、勝手に学校に入ってきた君たちが悪いんじゃないか。そういう事をするなら…やってもいいよね」

巴「な、何をだ…」

 

 ガードマンが笑みを浮かべた。

 

ガードマン「生徒を一人ずつ…なぶり殺しさぁ!!!」

 

 ガードマンが鉄パイプで殴ろうとしたが、動きが止まった。

 

ガードマン「な、なんだ!? 体が…」

「!!」

 

 その時だった。

 

「はああああああああああああああああああ!!!!」

 

 飛鳥が廊下を走ってきた。真剣な権幕で叫び、そして飛んだ。

 

「!!」

ガードマン「!!」

 

飛鳥「どりゃぁああああああああああああああ!!!」

 

 飛鳥がガードマンの顔にめがけて飛び蹴りをすると、

 

ガードマン「ぐわぁああああああああああああああ!!!!」

 と、ガードマンも悲鳴を上げて壁に叩きつけられそのまま気絶した。飛鳥は綺麗に着地をすると、一気に電気がつくと、飛鳥は存在感を消した。

 

「!!」

飛鳥(学校の給電システムが…)

 飛鳥が灯を見ながらそう呟くと、ガードマンを取り押さえ、Afterglowを見つめた。

 

「皆さま!!」

 弦巻家の黒服の人たちが現れて、蘭たちを保護した。

 

「ご無事ですか!!?」

ひまり「う…うぇええええええええええええええええん!! ごめんなさいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

 

 ひまりは号泣した。

 

つぐみ「は、はい! 無事です!!」

ひまり「こわかったぁああああああああああああああああああ」

 

 号泣したひまりに代わってつぐみがそういうが、つぐみも涙をポロポロ流した。蘭と巴は歯を食いしばって涙をこらえようとしていたが、涙があふれていた。モカもちょっと涙目だった。

 

飛鳥「……」

 飛鳥は何も言わず、ガードマンを黒服の男に引き渡すと、その場を後にした。

 

 その後、ガードマンは無事に逮捕されたが、完全施錠を行う前に、本来作業をする筈だった作業員たちをスタンガンで気絶させていたことが分かり、おまけに1組で香澄たちの私物を漁っていた事も発覚。器物損壊、傷害、窃盗の疑いで実刑判決を食らった。

 

 蘭たちはというと、校舎に勝手に入った事、連絡をしなかった事について、保護者達からこっぴどく怒られた。

 

ちなみに施錠されている間、電波が圏外になっていたのだが、連絡できなかった理由にはならなかった。

 

 

 こうして、幽霊騒動は、ガードマンが「幽霊」だったという事で幕を閉じた。

 

 

 後日、中庭に飛鳥とこころ、そして千聖がいた。

 

千聖「大活躍ね。飛鳥くん」

飛鳥「えーと…」

 

 千聖にはとても楽しそうに笑っていて、飛鳥は困惑気味だった。

 

こころ「それにしても飛鳥」

飛鳥「なに?」

こころ「本当に蘭たちには何も言わなくていいのかしら?」

飛鳥「いいよ。本当の事を喋ったら美竹さん達が気を遣うし、人助けをして褒めて貰うってのは行儀悪いよ」

 

 こころの問いに飛鳥は諭すように返事した。

 

飛鳥「美竹さん達が無事ならもうそれで終わりさ」

こころ「……」

 

 飛鳥の言葉に千聖とこころは少し腑に落ちなさそうに飛鳥を見つめていた。

 

千聖「あなたって本当に謙虚よね」

飛鳥「仮に尋ねますが、もし私がグイグイ恩を売るような輩だったらどうします? 美竹さん達の事を助けたって自分から他の生徒達に言うような…」

千聖「品がないし、軽蔑するわ。そんな人に助けて貰った自分が情けないとも思いますわ」

飛鳥「そう思われるなら猶更ですよ」

 

 飛鳥がそう言った次の瞬間、メールが届いた。

 

飛鳥「誰からだろ…」

 

 飛鳥がスマホを確認すると、モカからだった。

 

モカ『昨日は助けてくれてありがと。落ち着いたらお礼させてね。勿論蘭達には内緒にするから~』

 

 こころと千聖もメールを見ていて、飛鳥は困ったように2人を見渡していた。

 

千聖「バレてるじゃない…」

飛鳥「どういう訳か見破られるんですよね。彼女には…」

 

 飛鳥は困惑しつつも、モカに「ありがとう」と返信した。

 

おしまい

 



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第247話「バッドエンド(前編)」

 

「いい加減にして!!」

 

 

 ある日のバンドリ学園。廊下でPastel*Palettesの氷川日菜の怒声が響き渡った。

 

 

「てめぇこそ何なんだよ!!」

 

 一人の男子生徒が日菜につかみかかった。

 

「オレはこの学校でもトップの男だぞ!! 勉強もスポーツも何もかも上だ!! あいつなんかよりもオレの方が相応しい!! オレこそが真のヒーローなんだよ!!」

 

 鼻息を荒くして男子生徒は掴みかかり、日菜は痛そうにした。

 

「なのに何でお前はオレを見ようとしない!! 何故だ!! なぜおまえはオレじゃなくていちいち鼻につく一丈字ばかり見やがる!! オレが正しいんだよ!! あいつじゃない!!」

 

 すると日菜が男子生徒を睨みつけた。

 

日菜「誰が正しいかなんてどうでもいい」

「!!」

日菜「これ以上飛鳥くんの悪口を言わないで!!!」

「この女ァ!!!」

 

 男子生徒が日菜を殴った。

 

「女だと思って大人しくしてれば!!」

日菜「いたい!! いたい!! やめてよお!!」

 

 日菜はちょっとやれば何でもできたが、男子生徒の狂気に怯えていた事と、男子生徒がそれなりに強かったことから、反撃する事が出来なかった。

 

「オレは特別な男だ!! ヒーローなんだ!! そうだ! オレはヒーローの筈だぞ!! なのに何で皆オレを嫌うんだよ!!」

日菜「そういう性格だから…」

「口答えするな!! 歯向かうな!! オレに意見するなぁああああああああ!!!」

 

 まるで目の前でウロウロする虫を退治するかの如く、男は日菜を殴った。

 

「お前らは黙ってオレの言う事聞いてればいいんだ。そして、お前のようなメスはオレに全てを…」

 

 その時だった。

 

「うっ…な、なんだ…!! ぐぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 男子生徒が腹を抑えた、日菜を離したその時だった。

 

「氷川先輩!!!」

 

 飛鳥が現れた。

 

「て、てめぇ!! 一丈字!!」

日菜「飛鳥くん!!」

 

 日菜が飛鳥の所に行こうとしたが、男子生徒が日菜の手を掴もうとすると、飛鳥が懐からトランプを1枚取り出して、手裏剣の要領で投げて男を怯ませると、飛鳥は日菜の手を引っ張って、その場を離れた。

 

「ま、まてぇ…!! ぐぁああああああああああああああああ!!!!」

 飛鳥が超能力を使って、更に腹痛を酷くさせた。

 

 そして、人気のいない場所。

 

飛鳥「日菜先輩。大丈夫ですか!?」

日菜「……」

 

 飛鳥が日菜の顔を見ると、目や頬や腫れあがっていた。

 

日菜「えへへ…大丈夫だよ。助けてくれたから」

 

 日菜は笑っていたが飛鳥は分かっていた。本当は声を上げて泣き出したいのだと。だけど後輩の前だからそれをしないのだと。

 

飛鳥「保健室に行きましょう。そこで手当てを…」

 その時だった。

 

「日菜ちゃん!? それに一丈字くんもどうしたの!?」

 

 彩が慌てた。

 

飛鳥「丸山先輩!」

日菜「彩ちゃん…」

彩「きゃああああっ!!!」

 

 日菜の顔を見て彩が青ざめていた。

 

飛鳥「男子生徒に襲われたみたいなんです。詳しくは保健室で…」

彩「わ、分かった!」

飛鳥「そういえば日菜先輩、今日仕事は?」

日菜「ないよ」

飛鳥「そうですか…」

彩「あっても、仕事じゃないよ!!」

 

 飛鳥と彩が日菜を連れて保健室に移動した。

 

**********************

 

「随分派手にやられたわね…」

 

 保健室の女医の先生も渋い顔をしていた。

 

飛鳥「私は少しのあいだだけ席を外します」

彩「え、何で?」

飛鳥「言う通りにしてください。すぐに分かりますので」

彩「!」

 

 飛鳥が悲しそうに呟くと、そのまま出ていった。

 

彩「日菜ちゃん…」

 

 彩が日菜の方を見ると、日菜はぽろぽろ涙を流した。

 

日菜「…うわあああああああああああん!!! こわかったよぉおおおおおおおおお!!!」

 

 日菜が号泣すると、彩は気づいてすぐに日菜を抱きしめた。

 

彩「怖かったね!! 日菜ちゃん!! よく頑張ったよ!!」

 

 彩も貰い泣きして元気づけると、飛鳥はそのまま廊下で待っていた。その時だった。

 

ひまり「あれ? 一丈字くん。何してるの?」

 

 Afterglowが現れて、ひまりが話しかけてきた。

 

飛鳥「保健室に人が入らないように見張ってるんですよ」

蘭「何で?」

飛鳥「後で説明します。今は入らないでください」

 

 飛鳥の表情に巴は何かを感じた。

 

蘭「説明してくれなきゃ…」

巴「一丈字の言う通りにしよう」

「!!」

巴「その代わり、ちゃんと説明しろよ」

飛鳥「ええ。皆さんはお帰りになられるんですか?」

ひまり「そ、そのつもりだけど…」

飛鳥「申し訳ございませんが、ちょっと今は帰らないでください」

蘭「どういう事? うちらライブの練習しようと…」

巴「もしかして…保健室に入れない事と、関係があるのか?」

飛鳥「はい。今、暴漢がこの学校をうろついているとの情報が入ったそうです」

「えええええっ!!?」

 

 飛鳥の言葉に蘭たちが驚いた。

 

蘭「ぼ、暴漢って!!」

モカ「…もしかして、うちの男子?」

飛鳥「ええ…」

 

 飛鳥の言葉に蘭たちがショックを受けた。暴漢がいるだけでもショックを受けていたが、その正体が身内なので猶更ショックだった。

 

蘭「ちょ、ちょっと待って。それじゃ保健室に入るなっていうのは…」

飛鳥「もうそろそろ大丈夫だと思うんですけど…」

 

 飛鳥が困惑すると、彩が入ってきた。

 

彩「もう大丈夫だよ一丈字くん。日菜ちゃん落ち着いたから…」

飛鳥「そうですか。あ、もし宜しければ中にお入りください。そこで説明します」

 

 そして飛鳥は全ての経緯を説明した。

 

飛鳥「今、弦巻さんの黒服の人たちに犯人を捜索をさせていますので、もうしばらくお待ち頂けますか」

つぐみ「う、うん…」

 

 飛鳥が困った表情で話すと、つぐみも困りながら頷いた。

 

蘭「それにしても女子の顔を殴るなんて…」

巴「許せねぇ!!」

モカ「同じ目にあわせてやりたいくらいだね~」

 

 その時、平三が現れた。

 

飛鳥「平三さん」

黒服「一丈字様。例の男子生徒を捕らえました。如何なさいますか」

飛鳥「状況はどのような状態ですか」

黒服「暴れておりましたが、手刀で大人しくさせました」

飛鳥「…そうですか。それでは彼の親御さんと学校に連絡をして、日菜先輩達から隔離させてください」

黒服「承知しました」

 

 飛鳥の要求を承諾すると、平三が消えていった。

 

***************

 

 暫くして、

 

紗夜「日菜!!!」

 

 彩から連絡を受けた紗夜が血相を変えて保健室に現れた。

 

日菜「あ、おねーちゃ…」

紗夜「……!!」

 

 変わり果てた日菜の姿を見て、紗夜はショックを受けた。

 

飛鳥「申し訳ございません。私が駆け付けた時には…」

紗夜「……!!」

 

殴られたところは腫れあがったり、痣が出来ていたりと、その痛々しい姿に紗夜は言葉にできず、そのまま涙を流し、過呼吸を起こした。

 

彩「さ、紗夜ちゃん! 落ち着いて!!」

日菜「おねーちゃん!! あたしは大丈夫だよ!!」

 

 そんな紗夜の姿を見て、飛鳥は目を閉じ無念そうにし、モカは飛鳥を見つめていた。

 

巴「くそっ!!」

 

 巴が壁を殴った。

 

巴「こんな目に逢わせるなんて…」

ひまり「巴。落ち着いて…」

巴「これが落ち着いていられるかってんだ!」

ひまり「それはそうだけど…」

蘭「犯人は捕まったんでしょ?」

モカ「分かんないよ。仲間がいるかもしれないし」

 

 蘭の言葉にモカがきっぱりと言い放った。紗夜を落ち着かせた後、日菜は飛鳥を見た。

 

日菜「あ、そうだ。飛鳥くん」

飛鳥「あ、親御さんに連絡して迎えに…」

日菜「ううん。助けてくれてありがとう」

飛鳥「いえ。お礼を言われる資格はございません」

日菜「ううん! そんな事ない!! そんな事ないもん!!」

 

 日菜がまた泣きそうになった。

 

日菜「そんな事ないもん…」

 

 か細い声を聴いて飛鳥は更に困り果てた。

 

モカ「飛鳥くん。ちゃんと受け取ってあげなよ」

飛鳥「……!」

モカ「日菜先輩をちゃんと守れなかったのは悔しいかもしれないけど、飛鳥くんがいなかったら、日菜先輩はもっと危ない目に逢ってたかもしれないんだよ」

 

 モカの言葉に飛鳥は静かにうつむいた。

 

飛鳥「…それもそうですね」

モカ「かといって、まったく気にしないのは論外だけど、飛鳥くんは気にしすぎだよ~」

 

 飛鳥はモカを見つめると、紗夜が立ち上がった。

 

紗夜「一丈字くん…」

飛鳥「!」

 

 飛鳥が紗夜の方を見ると、紗夜は目に涙を浮かべていた。

 

飛鳥「……!」

紗夜「私からもお礼を言わせてください。妹を助けてくれてありがとうございました…!!」

 

******************

 

 その夜

 

飛鳥「ハァ…」

 飛鳥は一人自室で落ち込んでいた。

 

飛鳥(もしもあの時来るのが早かったら…)

 親に迎えに来て貰った日菜と紗夜を思い出した飛鳥。モカ達には気にしないように言われたが、立場上そういう訳にはいかなかった。

 

飛鳥(あんまりこういう事が続くと、この学校に来てる意味がなくなる…。気を付けないと…)

 

 その時、飛鳥に一通のメールが来た。

 

飛鳥(千聖さんからだ)

 

メールの相手は千聖であり、その内容に目を大きく開いた。

 

************************

 

 その後、男子生徒は傷害容疑で逮捕され、退学になった。男子生徒は確かに成績優秀でスポーツ万能だったが、女子にはモテず、自分よりも下だと思っていた人間に次々と恋人が出来た事が、凶行へ走らせるきっかけとなってしまった。

 

 日菜に至っては幸い大事にはいたらず、数日分の仕事をキャンセルした程度で済んだ。また、キャンセルしたことで発生した違約金などは男子生徒の親が支払う事になったという。

 

 こうして一連の騒動は収まったが、目の前で日菜にけがを負わせてしまった事は、飛鳥にとって暗い影を落とす結果になった。

 

 

つづく

 



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第248話「バッドエンド(後編)」

 前回までのあらすじ

 飛鳥は廊下を歩いていると、男子生徒に殴られている日菜を目撃した。すぐに追い払ったが、顔は腫れあがっており、すぐさま保健室に運んだ。

 大事にはならずにすんだものの、日菜を救いだせなかった事、紗夜と日菜を泣かせてしまった事、そして最悪の事態になっていたかもしれないという恐怖から、飛鳥は一人、自分を責めた。

 今回はそんなお話である。


 

 

 

 

 

 

 翌日、飛鳥はいつも通り学校に向かった。本当は気が引ける思いだったが、千聖から直接話したいことがあると言われ、日菜もいつも通り学校に来ると知らされていた為、自分が逃げるわけにはいかなかった。

 

 飛鳥がマンションを出たその時だった。

 

「飛鳥くん!」

 

 日菜の声がして、飛鳥が後ろを振り向くと、日菜と紗夜がいた。

 

飛鳥「日菜先輩…。それに、紗夜先輩も」

 

 飛鳥が困った顔をした。というのも、日菜の顔には絆創膏とガーゼが貼られていて、とても痛々しい姿だった。

 

日菜「おはよう!」

飛鳥「…おはようございます」

 

 日菜は明るく振る舞っていたが、飛鳥には分かっていた。皆に気を遣わせまいと気丈に振る舞っているのだと。そして紗夜も困った顔をしていた。

 

飛鳥「紗夜先輩もおはようございます」

紗夜「…おはようございます」

日菜「二人ともどうして暗い顔してるの? あたしは大丈夫だよ」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 飛鳥は困った顔をしていた。

 

日菜「もしかして誰かに虐められてるの?」

飛鳥「いえ」

日菜「本当に…?」

 

 飛鳥の言葉に日菜はジト目で見つめる。

 

飛鳥「まだいじめられていません」

日菜「まだってどういう事?」

 

 日菜の言葉に飛鳥は目を閉じた。

 

飛鳥「日菜先輩がケガをした事、おそらく私のせいになるでしょう」

日菜「な、何で!!?」

 

 日菜の問いに飛鳥が目を開けた。

 

飛鳥「早い話が嫌われてるからですよ。まあ、嫌われてることに関してはもうどうでもいいんですけどね」

日菜「どうでもよくないよ!! あたしがケガしたのが、どうして飛鳥くんのせいになるの!?」

飛鳥「普段からこうやってお話をしてる上に、犯人の男はもうこの学校にはいません。そうなると、怒りは私に向けるしかありません」

 

 飛鳥が再び困った顔をした。

 

飛鳥「最悪の事態は免れましたけど、こうして怪我をされてしまった事にかわりはございません。仕方ありませんよ」

 

 飛鳥の言葉に日菜が困った顔をした。

 

飛鳥「それはそうと、もう学校に登校されて大丈夫なんですか?」

紗夜「私も止めたんですけど、聞かなくて。一丈字くん。あなたが虐められる可能性があるというのは私も同感です。私のクラスでもあなたの事を快く思っていない方が数人います」

飛鳥「でしょうね…」

 

 紗夜の言葉に飛鳥が首を横に振った。

 

日菜「そ、そんなのやだよ!! どうしてあたしがケガをして、飛鳥くんが虐められないといけないの!!?」

飛鳥「あくまで想定の話なので、何もない事を祈りましょう」

紗夜・日菜「……」

 

 飛鳥がいつも通りの表情で紗夜と日菜を見た。

 

飛鳥「行きましょう。また途中からになりますが、学校まで送ります」

 

 そして飛鳥は紗夜と日菜と一緒に登校した。

 

 それからというもの。飛鳥は普通に自分の教室で過ごしていたが、遠巻きに見ている男子生徒達の「悪意」を感じ取っていた。

 

(おい、あいつ…)

(日菜ちゃんにけがをさせて、何で一緒にいるんだ?)

(日菜ちゃんの顔に傷をつけやがって…!!)

(許せん!)

 

 飛鳥の想定通り、怒りの矛先が自分に気付いている事に気づいたが、飛鳥は気にしないことにした。

 

日菜「…飛鳥くん?」

飛鳥「!?」

 飛鳥が日菜を見つめた。

 

飛鳥「い、いつの間に…」

日菜「どうしたの? やっぱり虐められてるの?」

飛鳥「いや。虐められているのではなく、不思議がられてましたね」

日菜「不思議がられていた?」

飛鳥「ええ。そんな感じがしていますね」

 

 何故不思議がられているかはあえて言わなかった飛鳥だったが、日菜は気づいていた。

 

***********************

 

 そして、昼休憩…。

 

千聖「…来たわね」

 

 飛鳥は千聖から呼び出された場所に向かうと、すでに千聖が到着していたが、モカとこころがいた。

 

飛鳥「!?」

モカ「やほー」

こころ「話は全部聞いたわ」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は静かに目を閉じた。

 

千聖「…これで全員揃ったわね。話をしましょうか」

 

**************:

 

千聖「まずはありがとう。日菜ちゃんを助けてくれて。Pastel*Palettesのメンバーとしてお礼を言うわ」

飛鳥「……」

 

 千聖の言葉に飛鳥は何も言わず目を閉じた。

 

千聖「モカちゃんにも言われたと思うけど、少し謙虚すぎるんじゃないかしら?」

飛鳥「ありがとうございます。ですが、これくらい謙虚でなければなりません」

 

 千聖の言葉に飛鳥は首を横に振った。

 

飛鳥「職業柄、常に最悪の事態を想定しておかないといけないのです」

千聖「そ、そう…」

飛鳥「中学の頃は頻繁に起きていたのですが、高校に入り、ましてやこの学園に来てからあんな事はありませんでしたので、気が抜けていたようです」

 

 飛鳥の言葉にこころが難しい表情をした。

 

こころ「…な、なんか飛鳥。とっても怖いわよ?」

飛鳥「そりゃそうさ。人を守ることは楽しい事じゃないからだよ」

こころ「!」

 

 飛鳥の言葉にこころ達は反応した。

 

飛鳥「もしもあの時遅れていたら、もしもあの時、あの場所を通らなかったら、日菜さんはどうなっていたんだろうと。人の死もこの目で何度も見てきた。悪いがいつもみたいに笑顔になれないよ」

 

 飛鳥が一息つくと、こころとモカは表情を曇らせた。

 

千聖「分かったわ。そこまで日菜ちゃんの事を考えてくれてたのね。ありがとう」

飛鳥「いえ…」

千聖「でも、いつまでもそういう訳にはいかないでしょ?」

飛鳥「ええ。数日様子を見て、日菜先輩がちゃんと無事に過ごせていたら、もう気にするのはやめます」

 

 飛鳥の言葉に千聖たちは反応した。

 

飛鳥「依頼人である弦巻財団から報酬は頂いているので、頂いた分の仕事は致します」

千聖「そう…」

 

 飛鳥の表情を見て、千聖は悲しそうな顔をした。

 

飛鳥「そんな顔をしないでください。当然の事ですから」

千聖「……!!」

 

 この時、千聖は飛鳥の人間性を垣間見た。飛鳥が能力者だと気づいていなかった間、自分たちの為に飛鳥は人知れず傷ついて戦ってくれていた事に。そして気づいていた。仕事だからと言っているが、本当にその人の事を考えて行動をしていることにも。

 

実際に自分も芸能人として働いている為、その気持ちが痛いほどわかっていた。仕事だからとただやるだけではなく、他人を意識すること、工夫すること、そして自分で考えることをしなければ上手くいかないのだと。

 

 今後も彼は誰かのために今みたいに身を粉にして戦い続け、うまくいかなければ落ち込むだろうと。

 

 そんな人間に対して知らん顔をする事は、今の彼女の選択肢にはなかった。

 

 それはモカとこころも同じだった。

 

**************************

 

 放課後

 

飛鳥「帰るか…」

 

 飛鳥が帰ろうとしたその時、男子生徒たちが3組の教室に乗り込んできた。飛鳥は乗り込んだ理由をすぐに察した。

 

飛鳥「何か御用でしょうか」

「ちょっと面貸せ」

飛鳥「氷川先輩の事でしょうか」

「いいから面貸せって言ってんだよ!!」

 

 男子生徒の一人が飛鳥の腕を強引に引っ張ろうとしたが、

 

「ぐあああああああああ!!!」

「!!?」

 

 男子生徒たちが屈強な黒服たちに取り押さえられていて、飛鳥が驚いた。

 

「くっ…!! ひ、卑怯だぞ!! 弦巻財団に泣きつくなんて!!」

「日菜ちゃんを守れなかったくせに!!」

「くそう!! どこまでも卑怯な手を使いやがって!!」

「お前がボコボコにされればよかったんだ!!」

 

 男子生徒たちが悪態をついて飛鳥が困惑していると、こころ達がやってきた。

 

こころ「飛鳥! 帰るわよ!」

飛鳥「!?」

モカ「いいからいいから~」

千聖「あまり待たせないで頂戴」

 

 そう言って飛鳥に荷物を持たせて、その場から避難させたこころ達だった。

 

飛鳥「ど、どうして…」

千聖「日菜ちゃんをエスコートして頂戴」

飛鳥「え?」

千聖「和哉さんには許可を取ったわ。ほどほりが冷めるまでよろしくね」

飛鳥「!!?」

 

 千聖の行動力に飛鳥は心の底から驚いていた。

 

********************

 

 その頃、虹島では…。

 

和哉「……」

 

 和哉は自宅にいて、リビングを歩いていた。すると弟の友人である大空未来と遭遇した。遊びに来たのである。

 

未来「和哉さん。どなたからの電話だったんですか?」

和哉「白鷺千聖という女だ」

未来「えっ!!? 白鷺千聖ってあの女優さん!!?」

 

 和哉の言葉に未来が驚いた。

 

和哉「ああ。協力者だ」

未来「協力者ってまさか…」

和哉「ああ。オレたちの正体を知っている」

未来「えーっ!!!?」

 

 驚く未来をよそに和哉は不敵な笑みを浮かべた。

 

和哉「中々のたらしぶりだったぜ。あいつが無茶をしないように、時折Pastel*Palettesと一緒に仕事させてくれと来た」

未来「えぇぇ…」

 

おしまい

 



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第249話「千聖とショッピング」

 

 

『もしも千聖からデートに誘われたら』

 

 ある日のことだった。飛鳥が教室の自席でぼーっとしていると…。

 

「一丈字くん」

 

 Pastel*Palettesのベース担当である白鷺千聖がやって来た。千聖の登場にクラスメイト達は勿論、廊下にいた男子生徒達は驚いていた。

 

飛鳥「あれ? 白鷺先輩…」

 

 飛鳥も千聖の姿を見て驚き、席から立ち上がった。

 

飛鳥「どうされました?」

千聖「今日の放課後暇?」

飛鳥「ええ。特に予定はございませんが…どうされたんですか?」

千聖「ちょっと買い物に付き合って欲しいんだけど」

 

 千聖の言葉に皆が驚いた。飛鳥は首を傾げた。

 

飛鳥「私ですか?」

千聖「あなた以外に誰がいるのよ」

飛鳥「Pastel*Palettesの皆さん」

千聖「そうね…。だけど、ちょっと男性の意見も聞きたいのよ」

飛鳥「それでしたら私以外にも適任者が沢山いる筈では…」

「そうだよ!! 僕達がいるじゃないか!!」

 

 飛鳥の言葉に千聖のファン軍団が現れた。

 

飛鳥「何かご不満でも?」

千聖「あなたにお願いしたいの」

飛鳥「…そんなにですか?」

 

 千聖に超能力者だという事を知られてから、二人の間でテレパシーが送られていた。

 

千聖『買い物もそうだし、用心棒もお願いしたいの』

飛鳥『そ、そういう事ですか…』

 

 千聖の言葉に飛鳥が反応すると、ファンの男子たちが騒いだが、聞きつけた先生達に取り押さえられていた。

 

 結果としてはそのまま千聖とショッピングをすることになった。

 

飛鳥「お待たせしました」

千聖「…ええ」

 

 そんなこんなで千聖の用事に付き合う事になった飛鳥。タクシーで移動していた。

 

飛鳥「タクシーなんて豪勢ですね」

千聖「仕方ないわよ。この時間帯、電車やバスなんかに乗ったら混乱するわよ」

飛鳥「ですよね」

 

 千聖は飛鳥を見た。

 

飛鳥「…なんでしょうか」

千聖「いいえ。こうやってあなたとゆっくりお話しできる日が来るなんて思ってもいなかったわ」

飛鳥「私も同じことを考えていましたよ」

 

 千聖の言葉に飛鳥は困惑するように返事した。

 

千聖(本当に不思議な子。麻弥ちゃんとまた違う意味で輝くものがあるわ)

 

 千聖が飛鳥をじっと見つめていた。千聖の周りには自分と同じ男の子役や、俳優もいたが、飛鳥のような人間はいなかった。

 

 ちなみに麻弥は元々プロのスタジオミュージシャンとして働いていたが、千聖に素顔を見られた事で、素質を見出されてメンバー入りを果たしたのだ。結構人を見る目があるのだ。

 

 そして目的地に到着して、飛鳥と千聖はタクシーから降りて、そこからちょっと歩き、買い物を済ませた。飛鳥は周りにヤラカシがいないか細心の注意を払いながら、共に行動をした。

 

 ちなみに問題ないのかというと、千聖が所属している事務所の社長にはすでに飛鳥達の事を知っている為、黙認状態となっている。

 

******************

 

千聖「さて、ちょっとカフェでお茶でもしましょうか」

飛鳥「…問題ないんですか?」

千聖「用心棒だと言えば問題ないわよ。それに、あなた地元では結構有名人だし」

飛鳥「流石ですね」

 

 肝が据わりすぎている千聖に飛鳥が困惑しつつも、カフェの方に向かって歩いていたが。だが、既にカップルがいっぱいいた。

 

飛鳥「…見事にカップルが多いですね」

千里「ええ、そうね」

 

 飛鳥と千聖が一緒に並ぶことになったが、飛鳥はいたって平然としていて、千聖がちょっと複雑そうにしていた。

 

千聖「ねえ、一丈字くん」

飛鳥「何ですか?」

 

 飛鳥が千聖を見た。

 

千聖「…あまり自分で言いたくはないのだけど、私、女優よ?」

飛鳥「ええ、存じておりますが」

千聖「もう少し緊張とかしないのかしら?」

飛鳥「そりゃあ緊張してますよ」

千聖「全くそのようには見えないんだけど…」

飛鳥「いやあ、緊張しすぎてもう周りにいる人たちが、急に襲い掛かって来るんじゃないかって」

 

 飛鳥が周りを見渡すと、千聖はあっけにとられて、クスッと笑った。

 

飛鳥「何か面白い事言いました?」

千聖「いや、あなたって本当に面白いわね」

飛鳥「何故か言われるんですよねー。なんででしょう」

 

 千聖の言葉に飛鳥が不思議そうにしていた。

 

 暫くして、店内に入る事が出来た飛鳥と千聖。

 

飛鳥「やっと入る事が出来ましたね」

千聖「ええ。そうね」

 

 飛鳥と千聖はそのまま普通にお茶をして過ごすことになったが、

 

「当店のおすすめはカップル限定のタワーケーキですが、いかがでしょうか」

 

 店員がカップル限定メニューを進めてきた。一応男性と認識されて安心する飛鳥だったが、相手が売れっ子女優だったため、素直に喜べなかった。というか寧ろこの店員は千聖の事を知っているのかどうか不安になっていた。

 

千聖「どうする? 飛鳥くん」

飛鳥「頼んじゃいます?」

千聖「あなたに任せるわ?」

飛鳥「じゃあ頼みません」

 

 飛鳥がキッパリと断り、ふつうにドリンクを頼んだ。

 

千聖「…頼んでもよかったのよ?」

飛鳥「バレたら、完全に逃げられなくなりますよ」

千聖「ふふ、そうね」

 

 飛鳥の言葉に千聖はくすっと笑うと、飛鳥は困惑していた。

 

千聖「どうしたのかしら?」

飛鳥「なんでもございません」

千聖「もしかして、照れた?」

飛鳥「そうではなくて…最初に出会ったころに比べて、良い意味で変わったなと思いまして」

千聖「どういう意味かしら?」

 

 千聖の表情が曇ると、飛鳥は考えた。

 

飛鳥「最初の頃はやはり女優さんという事もあるのか、表面上は穏やかにしてても、どこか距離を取られてる感じがしたんですよね」

千聖「それはあなたもじゃない」

飛鳥「まあ、そうなんですけどね。ですが、今となっては距離を置いてる感じがしないんですよね。今回の買い物だって誘ってくださりましたし…」

千聖「…まあ、同世代の男子とこうやってお茶をするのは、アイドルとしてはご法度ね」

飛鳥「それだったら…」

 

 飛鳥の言葉に対し、千聖はじっと飛鳥を見つめた。

 

千聖「だけど、恩に背いで活動するなんて事はもっと出来ないわ。あなたにも、和哉さんにも…」

飛鳥「……」

 

 京都での事件を思い出す千聖。和哉から飛鳥の今までの行動を教えてもらい、陰からずっと自分たちを守っていた事を知った事もそうだが、自分よりもさらにひどい環境にいた事にショックを受けていた。

 

 そしてそんな状態でも、彩たちと同じように前を向いて先に進もうとしている姿に心を打たれたのだ。

 

千聖「…今までは自分の事ばかり考えていたから、そんな事全く考えなかったわ。きっと、パスパレにいたせいかしら」

飛鳥「白鷺先輩…」

千聖「千聖」

飛鳥「!」

 

 飛鳥が反応した。

 

千聖「プライベートの時は名前で呼んで頂戴。モカちゃんやこころちゃんもそうでしょ?」

飛鳥「……」

 

************************

 

飛鳥「…ごちそうさまでした」

千聖「いいわよ。私が年上なんだし、ショッピングに付き合ってくれたお礼よ」

 

 カフェから出た飛鳥と千聖はそれぞれの家に帰ることになった。

 

飛鳥「家まで送りましょうか?」

千聖「それじゃ、お願いしようかしら」

 

 ぐいぐい来る千聖に飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「ぐいぐい来ますね」

千聖「ふふ。あなたの困ってる顔が見たいからかしら?」

飛鳥「ほかの方が聞いたらうらやましがるでしょうね…」

千聖「…ごめんなさい。やっぱり聞かなかったことにして。頭痛くなってきたわ」

飛鳥「そうしてください」

 

 

 とまあ、なんだかんだ言いつつも千聖と仲良くなった飛鳥なのでした。

 

 

おしまい

 



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第255話「走れ! 一丈字飛鳥!」

 

 

 今日も今日とて、バンドガールズはバンド活動に精を出していた。

 

香澄「イエーイ!」

「わあああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 定期的に行われる学内ライブは毎回大盛況であり、香澄たちの人気も不動のものになっていた。

 

「……」

 そんな中、飛鳥はというと、肉体労働のバイトをしていた。時折日雇いでアルバイトをしている。

 

「いやー。一丈字くんは5人分の仕事をしてくれるから助かるよ!」

「しかも完璧!」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 バイト先の親方に褒められていた。

 

飛鳥(それぞれのステージがそれぞれ頑張ってる。それはとても良いことじゃないか)

 

 そして黒服達から、ヤラカシ達の様子も定期的に聞いていた。

 

飛鳥「そうですね…。今度はそのハンバーガーショップを重点的に取り締まりましょうか。それでは」

 

 飛鳥が通話を切って、ソファーに腰がけた。

 

飛鳥「モカや千聖さんからも最近問題ないって言われてるから、この調子がずっと続けばいいんだよな…」

 

 飛鳥がそう呟くと、笑みをこぼした。

 

飛鳥「余裕が出てきたし、ちょっと本気でやってみるか」

 

 そして飛鳥は努力を重ねつづけた。学業の勉強を通じて知識を増やしていき、バイトを通じて技術を身に着け、そしてまたはイベントや仕事で、実力を発揮する。それを続けてきた。

 

 その結果…。

 

「一丈字くん。ウルトラマラソン走破おめでとう」

 

 飛鳥は100㎞もあるウルトラマラソンに挑戦して見事走破し、全校生徒の前で表彰されて、生徒達が驚いていた。

 

「はい、ざわざわしない!!」

 

 教師が生徒達を静かにさせようとしたが、教師たちも内心驚きが隠せなかった。

 

 教室に帰ってくると…。

 

「一丈字くん。いつから練習してたの?」

飛鳥「日頃から筋トレとかしてますよ」

 

 飛鳥はクラスメイト達から質問攻めにあっていた。

 

「でもどうしてマラソン?」

飛鳥「走りたくなったから」

「いやいやいやいや…」

 

 そんな理由で100㎞を8時間で走れないだろとクラスメイト達が思った。

 

「体育館で体育の授業を受けてるのは見た事あるけど…」

「そこまで運動神経良いなんて知らなかった…」

飛鳥「そんな事はございませんよ」

 

 飛鳥は謙遜していたが、マラソンを100㎞走破した今、謙遜なんてまったく意味がなかった。

 

 そんな時、香澄を筆頭にPoppin’partyが現れた。

 

香澄「飛鳥くん!」

飛鳥「どうかされました?」

香澄「マラソン100㎞も走ったって本当なの!?」

飛鳥「ええ」

「ええええええええええええ!!!?」

 

 飛鳥の言葉に香澄たちが驚いた。

 

たえ「簡単に言うなんて凄いね」

有咲「驚くところそこじゃないだろ…」

りみ「……!」

 

 困惑する有咲とりみだったが、有咲はどっちかっていうと、驚くところを間違えているたえに困っていた。

 

沙綾「それはそうと、急にどうしたの…?」

飛鳥「いやあ。山吹さん達がバンド活動がんばってるのを見て、私も頑張らなきゃって思っただけですよ」

有咲「いや、どう考えてもお前の方が頑張ってるだろ!!! ホントにどうしたんだ!!?」

 

 飛鳥があっけらかんに言うと、有咲が慌てて突っ込んだ。

 

飛鳥「まあ、足がちょっとパンパンになってしまったんですがね」

ポピパ「……」

 

 飛鳥が普通に言うと、香澄たちは言葉を失っていた。

 

 そして昼休憩。

 

飛鳥「?」

 

 飛鳥が教室を出ようとすると、友希那からメールが来た。

 

飛鳥「話したいことがあるから、食堂に来なさい」

 

 飛鳥が考えたが、断りのメールを入れて、どこかに行った。

 

飛鳥(まあ、ファンの男子たちが待ち伏せしてるだろうしな…)

 

 同じころ、友希那、紗夜、リサ、燐子が食堂で待っていたが、断りのメールが来ていたことがわかり、友希那が苛立っていた。

 

友希那「来させるわ」

紗夜「…どう考えても避けてますね」

リサ「でも、急にどうしたんだろう…。飛鳥くん…」

友希那「遂に化けの皮がはがれたようね」

 

 友希那が正面を向くと、ファンの男子生徒達が待ち伏せていた。

 

友希那「断りを入れた理由が分かったわ」

紗夜「そうですね…」

 

 友希那の言葉に紗夜が同意すると、リサと燐子が困惑した。

 

************************

 

 そして飛鳥は中庭の公園に一人たたずんでいた。

 

飛鳥「……」

 

 この時、バンドガールズから不在着信がたくさん来ていたが、飛鳥は教室に帰ってから程よく返信した。

 

 放課後、飛鳥が帰ろうとすると黒服達が待ち構えていた。

 

飛鳥「どうされました?」

「こころお嬢様がお呼びです。ご同行願います」

飛鳥「分かりました」

 

 飛鳥が黒服達に連れられて、こころと合流したが、ほかのバンドメンバーたちもいた。

 

飛鳥「これはこれは…」

千聖「随分大活躍したみたいね。一丈字くん」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 千聖がにらみを利かせたが、飛鳥は動じなかった。

 

千聖「早速本題に入っていいかしら?」

飛鳥「はい」

千聖「どうして今日、私たちを避けてたの?」

飛鳥「ちょっと喋っただけで、周りからイチャイチャしてると思われるからです」

 

 飛鳥の発言に空気が止まった。質問した千聖も唖然としていた。

 

香澄「飛鳥くんは私たちとお喋りするのが嫌なの!?」

飛鳥「とんでもない。楽しいですし。ですが、色々あるんですよ」

 

 香澄の言葉にも飛鳥は堂々としていた。

 

モカ「まあ、何はともあれ~」

飛鳥「?」

モカ「頑張った人はちゃんと報われるし、頑張らない人は何もないのですよ~。努力して結果を出したら、可愛い女の子たちに囲まれる。すごく夢があると思うな~」

 

 モカの言葉に飛鳥が困惑した。

 

「それだったらオレ達も努力したら、一丈字と同じように扱ってくれますか!!?」

 

 ファンの男子生徒達が現れた。

 

モカ「ゼロではないね~」

「いよっしゃあああああああああああああああああああ!!!」

「やってやるぅ!!」

 

 男子生徒達が興奮して去っていった。

 

ひまり「ちょ、ちょっとモカぁ!!」

巴「本当にいいのか!?」

モカ「大丈夫だよー」

「?」

モカ「ちゃんと選択する権利があるからー」

 

 モカの言葉に皆が驚いた。

 

モカ「そういうわけで男子諸君。モテたかったら、楽しないでね~」

飛鳥「誰に言ってるんですか」

千聖「……」

 

 どこまでもマイペースなモカに飛鳥が困惑すると、千聖が飛鳥をじっと見つめていた。

 

*********************:

 

 帰宅後、飛鳥が部屋でゆっくりしていると、プライベート用の携帯が鳴った。

 

飛鳥「誰からだ…?」

 

 飛鳥がスマホを確認すると千聖とモカ、そして弦巻家の黒服から来ていた。

 

千聖『今後、何かしら相談させてもらうから宜しくね』

モカ『飛鳥くんってやっぱり面白いね~。今後ともよろしくね~』

黒服『一丈字様。今後ともこころお嬢様と仲良くしてください』

 

 千聖たちの言葉に飛鳥は何となく嫌な予感がしていた。

 

 

飛鳥「腐らずやるもんだなぁ」

 

 

おしまい

 



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第283話「おばけを調査せよ!(前編)」

 

 とある夜。モカが学校に大事な参考書を忘れてしまい、Afterglowの5人が夜の校舎に取りに行った。

 

「……」

「ゴメ~ン…」

 

 蘭が半ギレだった。これが夜の学校でなければ、まあしょうがないなという感じで済ませたが、彼女はお化けが苦手だったので、モカにあたっていた。

 

つぐみ「ま、まあまあ…」

巴「困ったときはお互い様だ。でも、出来るだけ気を付けてくれ…」

 

 つぐみがなだめ、巴も言葉をつづけたが、巴も結構お化けが苦手だったりする。

 

モカ「今度は本当に幽霊出たりするのかなぁ~」

蘭「モカ」

モカ「はい」

 

 蘭が本当に切れていた為、モカはこれ以上何も言わない事にした。

 

 十数分後、モカは参考書を回収した。

 

モカ「あった~」

ひまり「あった!!?」

蘭「よし! すぐに帰ろう! 今すぐ帰ろう!」

モカ「落ち着こうよ~」

 

 その時だった…。

 

「…レ」

 

 謎の声がした。

 

蘭「な、何!?」

巴「モカ! やっていい冗談と悪い冗談があるぞ!!」

蘭「……!!!」

モカ「え~。どう考えてもあたしの声じゃないでしょ~」

 

 5人がキョロキョロ見渡したが、つぐみとひまりが青ざめていた。

 

つぐみ「これって…」

ひまり「やっぱり…」

 

「タチサレ…タチサレ…」

 

 という5人の誰でもない低い声がして、モカ以外の4人が青ざめ、5人が同じ方向を向いた。するとそこには…

 

 白目で薄笑いをし、浮いている黒い物体が存在した。

 

「タチサレ!!!!」

 

 幽霊の姿を見た瞬間、モカ以外の4人が悲鳴を上げて教室を飛び出したが、巴がモカを抱えていた。

 

「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 という、Afterglowの悲鳴が学園内に響き渡った。

 

********************

 

 翌日…

 

モカ「という訳で~。幽霊退治をお願いしたいんだよ~」

 

 モカは飛鳥、こころ、千聖を屋外のカフェテリアに呼び出して相談をしていた。モカだけ平然としていた為、飛鳥は困惑していた。

 

こころ「幽霊なんて面白そうね!」

飛鳥「私から見たら、あなたが一番面白いけどね…」

モカ「いやいや、飛鳥くんも面白いよ~」

千聖「あなたも面白いわよ?」

飛鳥「いや、何ですかこの会話」

 

 飛鳥が突っ込んだ。確かに全員面白い。

 

飛鳥「普通にお祓いをすれば良さそうだけどね」

 飛鳥が苦笑いした。

 

モカ「とにかく呪われたらモカちゃんのせいにされて~。蘭が口きいてくれないの~」

千聖「…そう」

 

 何となく蘭の様子を察することが出来た飛鳥と千聖は何とも言えない顔をした。

 

飛鳥「そういや美竹さん達が目撃する前にも、幽霊って出てきたの?」

モカ「それが聞いてみたらあったみたいだよ~。モカちゃん達は何も知らないまま幽霊がいるところに来ちゃったみた~い」

飛鳥「……」

 

 飛鳥はへの字にした。

 

飛鳥「分かった。調べてみるよ」

モカ「お~」

こころ「そうだわ! 実際に学校に行ってみましょう!」

飛鳥「そうですね。ただ…」

「?」

 

 3人が飛鳥を見た。

 

飛鳥「事前に調べておいた方が良さそうですね。こんな騒動になっている上に、時間帯を考えたら先生たちが何も知らない訳がございませんし」

 

 その時だった。一匹の子猫が迷い込んできた。

 

「あおんあおん」

 

こころ「まあ、子猫ちゃんがいるわ!」

モカ「あー。そういやあの子猫。最近ずっとこの学校をウロウロしてるんだよねー。人間が近づくと逃げるけど」

飛鳥「そうですか…」

 

 飛鳥が猫を見た瞬間、とてつもない寒気を感じた。

 

飛鳥「!!!」

千聖「!!?」

 

 飛鳥の脳裏には子猫と母猫が男子生徒達に襲われて、そのうち母猫がとらえられてしまった。子猫はそのまま逃げたのだが…。

 

飛鳥「……」

 飛鳥が冷や汗をかいた。

 

モカ「どうしたのー?」

千聖「もしかして、何か分かったの?」

飛鳥「…ええ。本当に調べた方が良さそうですね。夜間滞在許可証を貰ってきます」

こころ「あたしも行くわ!」

飛鳥「それはやめといた方が良い」

こころ「あたしは幽霊怖くないわよ!?」

飛鳥「確かに耐性ありそうだけど、どうやら今回は本当に幽霊がいそうだな…」

モカ「え、どういう事?」

飛鳥「ここで話すのはアレなので、人のいない場所でもう一度話そう」

モカ「じゃあ、許可証4人分貰ってきてね~」

飛鳥「え?」

モカ「え? って、そんなのあたしも行くからに決まってるでしょ~」

飛鳥「……」

 

 そして飛鳥は4人分の許可証を貰いに職員室に行ったわけだが…。

 

「ああ。実はあの幽霊って理科の松田先生が趣味でやってる発明品から作り出したものなんだよ。最近どれだけ言っても帰らない生徒が多いから」

飛鳥「そのことなんですが…」

黒服A「本物の幽霊がいるという情報をつかみました」

「いやいや、まさか…」

こころ「本当よ!?」

黒服B「こころお嬢様の仰ってることが嘘だと?」

黒服C「弦巻財閥にたてつくおつもりですか?」

 

 黒服達が強引に許可証を作成させた。

 

飛鳥(こういう時は本当に頼りになるなぁ…)

 

 職員室を出ると、

 

「一丈字くん。弦巻さんも」

飛鳥「あ、氷川先輩」

こころ「紗夜!」

 

 偶然紗夜と遭遇した。紗夜は弦巻家の黒服が一緒にいるあたりただ事ではないと感じていた。

 

紗夜「どうされたんですか? 黒服の方を引きつれて」

飛鳥「いやあ、ちょっと先日のトラブルの件で説明をしてたんですよ…」

 

 飛鳥が誤魔化した。

 

紗夜「そうなの? 弦巻さん」

こころ「そ、そうよ! 先日トラブルがあったのよ!」

飛鳥(へたくそ…)

 

 こころが必死に誤魔化そうとしていたが、まだ目が泳いでいた為、飛鳥が困惑した。

 

紗夜「…そうですか」

飛鳥(絶対バレてる~~~~~!!!)

 

 飛鳥は黒服達とアイコンタクトを送った。

 

飛鳥「そ、そういう訳ですので失礼しますね!!」

 

 飛鳥が強引に連れ去っていった。

 

こころ「とても嘘をつくのは難しいわ!!」

飛鳥「君がものすごい正直者だからだよ…。いい事だけど」

 

 中庭で涙目になるこころに対し、飛鳥はげんなりしていた。ちなみにこころは黒服と一緒に練習をしていたが、あまり発揮できなかったようだ。

 

(こころお嬢様…)

(おいたわしや…)

 

**********************

 

 そんなこんなで作戦決行の時が来た。

 

飛鳥「…本当に来たんだね」

モカ「そりゃそうですよ~」

 

 校舎前に飛鳥、こころ、モカ、千聖の4人が現れた。

 

飛鳥「松田先生にも確認して、夜間滞在許可証が出されてる日はあの幽霊は出さないみたいなので、残りは本物の幽霊を調査する必要がございます」

モカ「あれ、昼間でも出せたからびっくりしたよ~」

 

 放課後に飛鳥たちは松田のところを訪ねて、幽霊を見せてもらったのだ。ちなみに松田はとても気だるげで、無精ひげの生えた30代前半のおっさんである。結婚には全く興味なしだが、実は良い所のボンボンで、兄が家業を継いでいる。

 

飛鳥「それにしても、千聖さんは大丈夫なんですか?」

千聖「問題ないわ。行きましょう」

飛鳥「そうですか…さて、行きましょうか」

こころ「ええ!」

モカ「うん」

 

 4人が校舎の中に入ろうとすると、

 

「待ちなさい!」

「!!」

 

 3人が横を見ると、そこには紗夜の姿があった。

 

 

つづく

 



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第284話「おばけを調査せよ!(後編)」

 

 

飛鳥「氷川先輩!」

千聖「ら、こんばんは」

モカ「こんなところで何をしてるんですか~?」

 

 飛鳥たちは気づかれないように、普通にふるまうが紗夜の態度は変わらなかった。

 

紗夜「それはこちらの台詞です。弦巻さんがなにか怪しいと思ったら…」

飛鳥(黒服の人たちは止めてくれなかったのか…。まあ、止めようとしたらこころが嫌われるもんな)

 

 紗夜の言葉に飛鳥が考えた。

 

飛鳥「少しばかり、忘れ物を取りに来ただけですよ」

紗夜「…忘れ物を取りに行くのに、許可証が必要ですか?」

飛鳥「私個人の忘れ物ではございませんよ」

モカ「まあ、何か本物の幽霊がいるっぽいので、調べてくれって頼まれたらしいんですよ~。飛鳥くんが」

紗夜「は?」

飛鳥「で、他の方に話すと無茶されるだろうし、信じないので内密にするおつもりだったのですが…」

こころ「あたしとモカと千聖が付き添うわ! だから心配いらないわよ!?」

 

 こころの言葉に紗夜は少し理解に苦しんだが…。

 

紗夜「こんな事もあろうかと、私も申請書を出しました」

「!!?」

紗夜「もしあなた方の言ってる事が本当なら、風紀委員として見過ごすわけにはいきません!」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 飛鳥がそう言い放ったその時、こころの背後から黒服Aが現れて、こころの目を隠し、黒服BとCで紗夜を気絶させた。そして黒服Aが手を離すと紗夜は気を失っていた。

 

こころ「紗夜!!?」

黒服A「氷川様は幽霊に取りつかれてしまったようです」

 

 黒服Aの言葉に飛鳥、千聖、モカは苦笑いした。

 

黒服B「一丈字様。氷川様の事は我々に任せて先に進んでください」

黒服C「必ずや幽霊の調査をお願いします」

飛鳥「あ、ありがとうございます…。行こう…」

こころ「紗夜にこんなひどい事をするなんて許せないわ!!」

モカ(ひどい事したの黒服さんだけどね~)

千聖(本当にやる事が斜め上を行くわね…)

 

 4人が学校の中に入った。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥が目を閉じて、感知した。

 

千聖「飛鳥くん。いそう?」

飛鳥「すみません。少しお静かに…」

こころ「分かったわ!」

 

 すると飛鳥が幽霊の居場所を突き止めた。

 

飛鳥「いました。森林エリアの方です」

モカ「ええー。あそこって確か人が来ないんじゃ…」

飛鳥「そうだよ。だからここからはオレ一人で行く。モカ達は…」

モカ「そんな言われ方したら行くしかないじゃな~い」

千聖「それとも、女の子を置いていくつもり?」

飛鳥「いえ、入口まで送ります…」

こころ「ここまで来たら皆で行きましょう!」

 

***********************

 

 バンドリ学園・奥地森林エリア

 

飛鳥「さあ、来たぜ…」

こころ「ええ…」

モカ「覚悟は出来てるよ…。蘭達の仇!!」

飛鳥「いや、違うから」

千聖「ほぼあなたのせいじゃない」

 

 4人が森の中に進んでいくと、そこには子猫がいた。

 

飛鳥「あの猫…」

こころ「子猫ちゃんがいるわ!」

モカ「でもまだ何かを探してるみたい…」

千聖「……」

 

 その時、飛鳥は意を決して子猫に近づいた。

 

こころ「飛鳥!!」

飛鳥「3人はそこを動かないで」

モカ「!?」

 

 そして子猫を捕まえようとすると、ピリッとした悪寒が飛鳥に襲い掛かった。

 

千聖「飛鳥くん!!」

飛鳥「…やっぱりそうか」

 

 千聖が叫ぶと、飛鳥が正面を向いた。そこには黒い影のようなものがあり、千聖が驚いた。

 

モカ「今、猫のような影が見えた…」

こころ「え? 分からないわ! あ、そうだ! 黒服の人たちにスコープを作らせたんだわ! これで見てみましょう!」

 

 こころがスコープを幽霊の方に向けると、幽霊がくっきりと見えた。そこには猫の幽霊が見えた。

 

こころ「猫の幽霊だわ!!」

千聖「!!?」

モカ「見せて見せて~」

 

 モカがスコープで確認すると、確かに猫の幽霊がいた。

 

飛鳥『…聞いてくれ。オレ達はこの子にひどい事をしに来たんじゃない』

「……」

 

 飛鳥がテレパシーで猫の幽霊に語りかけた。

 

飛鳥『見ててくれ』

 

 すると飛鳥が子猫を捕まえると、子猫は震えていて、優しくなでた。すると子猫はとても気持ちよさそうにして、涙を流していた。

 

千聖・こころ・モカ「……!」

 

飛鳥『可哀そうに…。お前がいなくなってから、この子はずっとお前の温もりを求めていたんだろう。本当はもっと一緒にいたかっただろうな。この子もお前も』

「……」

 

 飛鳥の言葉に母猫の幽霊は俯いた。

 

飛鳥『だけどお前はもう行くべき場所へ行かなきゃいけない。それがこの子の為でもあるんだ』

 

 その時だった。母猫の魂が白く輝いた。スコープで見ていたモカもそれに気づいた。

 

「!?」

 

 そして子猫が飛鳥から離れて母猫に近づいた。そして母猫と子猫が体をくっつけようとした瞬間、母猫の魂は消えた。

 

モカ「消えた…」

千聖「えっ!!?」

飛鳥「きっと、成仏したんだよ思うよ。この子の為に」

 

 飛鳥の言葉にモカ達が反応し、3人は幽霊がいたであろう場所をずっと見つめていた。

 

飛鳥「こころ」

こころ「…なにかしら?」

 

 飛鳥の言葉にこころが反応すると、飛鳥がこころを見つめた。

 

飛鳥「…この子の里親を探してくれないか。大切にしてくれる里親を」

こころ「勿論よ!!」

 

 ******************

 

 翌日

 

こころ「あの子は黒服さんが引き取って、その人の家にお母さんのお墓も作らせてもらったわ!」

飛鳥「ありがとう」

 

 カフェテリアでまた飛鳥、こころ、モカ、千聖が話をしていた。

 

飛鳥「…で、紗夜先輩」

 

 飛鳥が苦笑いしながら、横にいた紗夜を見たが、ムスッとしていた。

 

飛鳥「…本当に申し訳ございませんでした」

紗夜「いいえ。無事に解決できて何よりです」

 

 この後、4人で紗夜のご機嫌取りをしたのは言うまでもなかった。

 

紗夜「それはそうと白鷺さんとも仲良くなったんですね?」

千聖「え、ええ…そうよ…」

 

 紗夜に睨まれて、千聖は少しバツが悪そうにすると、飛鳥やモカは千聖が押されている所を見て少し驚いていた。

 

おしまい

 



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第286話「雨に濡れるアイドル達」

 

 

 今回の設定

 

・ 千聖のみ正体を知っている。

 

**********************

 

「あーん!! もう最悪~!!!!」

 

 Pastel*Palletesのボーカル担当の丸山彩が叫んだ。彩だけではなく、メンバー全員がいる。彼女達は外出をしていたのだが、突然雨に降られてしまった。

 

麻弥「うう…とても冷たいっす…」

イヴ「風邪引いちゃいますね…」

 

 麻弥とイヴが寒さで震えていると、

 

日菜「へっくち!!」

 

 日菜がくしゃみした。

 

千聖「大丈夫? 日菜ちゃん」

日菜「へーきへーき」

 

 日菜が返事をすると、千聖が嫌そうな顔をした。

 

千聖「それにしてもだいぶ濡れてしまったわ…」

日菜「そうだねー。服もスケスケ。ブラも丸見えだよー」

千聖「そういう事言わなくていいから/////」

 

 どこまでもマイペースな日菜に千聖が困惑した。その時だった。

 

「おい、見ろよ。あれ、パスパレじゃね?」

「ホントだ」

「何か濡れてるぞ!」

 

 同じ学校の男子生徒5人がやってきた。

 

彩「!!」

千聖「あいつらは…」

 

 千聖の予想通り、男子生徒達が近づいた。

 

「そんな所でどうしたの?」

「濡れてるじゃん。風邪ひくよ?」

 

 優しく声をかけてくるが、顔が完全に下心丸出しだった。能天気な日菜や、純粋無垢なイヴでも分かった。

 

 これは完全にヤバい奴だと。

 

イヴ「うう…」

 

 男子生徒の気味悪さにイヴがしり込みすると、

 

「そんなに怖がらなくてもいいじゃん」

「オレ達はただ心配してるんだよ?」

 

 必要以上にイヴと距離を縮めようとする男子生徒達。それを千聖が遮る。

 

千聖「ありがとう。けど、心配は無用よ?」

(うほっ、結構丸見え…)

(うひょー。こりゃついてる)

 

 男子生徒達は千聖の濡れた姿と透けた下着を見て、興奮していた。

 

「とにかくオレ達と行こうよ」

「駅までさ」

千聖「お生憎様。迎えに来させてるので」

「どうせ一丈字だろ?」

「大丈夫だって。オレ達が送るから」

「無理やりこさせたら悪いよ」

 

 男子生徒達も引かないどころか、千聖の手を無理やりつかんだ。

 

千聖「!!」

麻弥「千聖さん!!」

 

「ゴッホン!!」

「!!?」

 

 という咳払いが聞こえたので、皆が同じ方向を見ると、

 

「あー。女の子が襲われてるって通報があったんだが?」

「君たち、ちょっと署まで来てくれるかな」

 

「ひ、ひぃいいいいいいいいいい!!!」

「待て!!」

「警察官から逃げられると思ってんのか!!」

 

 男子生徒達が退散すると警察官が追いかけて行った。

 

彩「な、なんだったんだろう…」

麻弥「よく分かりませんが…助かりました」

 

 彩と麻弥が安心していると、日菜がある事に気づいた。

 

日菜「あ!! 飛鳥くんだ!!」

 

 日菜が指さした先には飛鳥がいたが、肉まんを食べていた。

 

日菜「おーい!! 飛鳥くーん!!!」

 

 日菜が飛鳥に向かって叫んだが、飛鳥は気づいてないのか、そのまま去っていった。

 

日菜「電話かけよ」

 日菜が電話をかけた。

 

**********************:

 

 数分後

 

飛鳥「通報してませんよ?」

日菜「うっそだー」

飛鳥「それでしたら履歴見ます?」

千聖「履歴って消せるから証拠にならないわよ?」

飛鳥「それでは証拠になるものは何でしょうか」

千聖「私に聞かないで」

 

 飛鳥の言葉に千聖が困惑した。

 

飛鳥「私本当に何もしてないんですよ。で、何もしてなくてお礼などをされて、後で違った時に色々言われるの嫌です」

千聖「…正直でよろしい」

 

 飛鳥の言葉に千聖が困惑しながら突っ込んだ。

 

日菜「えー。本当に飛鳥くんじゃないのー?」

飛鳥「ええ。残念ですが。それよりも早く風呂に入った方が良いですよ」

千聖「それが出来たら苦労しないわよ」

飛鳥「いや、後ろの店、銭湯なので、風呂入れますよ?」

 

 飛鳥の言葉に5人が後ろ、確かに温泉ハウスと書いてあり、服や下着も売っている旨が書いてあった。

 

飛鳥「そういう訳ですので、これにて失礼いたします」

 飛鳥が去ろうとすると、日菜が飛鳥をつかんだ。

 

飛鳥「何でしょうか」

日菜「あたし達がお風呂あがるまで待ってて」

飛鳥「ごめんなさい。私ちょっと用事がございまして…」

千聖「用事って何?」

 千聖がジト目で見つめる。

 

飛鳥「銀行に行かないといけないんですよ。キャッシュがもうなくて…」

麻弥「た、確かに用事っすね…」

飛鳥「そういう訳ですので」

日菜「それじゃ、お金下ろしたらまた戻ってきて! 待ってるから!」

飛鳥「よろしいんですか?」

日菜「うん!」

飛鳥「あ、はい」

 

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

 30分後、飛鳥が戻ってくると、パスパレが待っていた。

 

飛鳥「お待たせしました」

日菜「そうだ! 折角だからご飯食べに行こうよ!」

飛鳥「事務所的には大丈夫なんですか?」

千聖「大丈夫よ」

 

 千聖が飛鳥を見ると、飛鳥も千聖を見た。

 

千聖『うちの事務所の社長、あなたの事を知っているから…』

飛鳥『和哉さんですね…』

 

 飛鳥が苦笑いすると、先ほどの警察官がやってきた。

 

日菜「あ、さっきのおまわりさんだ」

「!」

日菜「あのー! すみませーん!」

「ん?」

 

 日菜の声に反応した警官2人が日菜たちを見た。

 

「あ、さっきの…」

日菜「さっきの男の子たちどうなりました?」

「ああ。あまりにも舐めた口を利いてたから、警察署にしょっぴいたよ」

「今頃親御さんに怒られてるだろうな」

飛鳥・麻弥(そこまでするか)

 

 飛鳥と麻弥が心の中で突っ込んだ。

 

千聖「すみません」

「何ですか?」

千聖「先ほどは助けていただいてありがとうございました」

 

 千聖が頭を下げると、彩、イヴ、麻弥も頭を下げた。

 

千聖「どなたかが通報されたのですか?」

日菜「この子が通報したんですか?」

「いやいや、今日はこの子じゃないよ」

「そうそう。パトロール中に…」

千聖「今日『は』?」

 

 警官の言葉に千聖たちが引っ掛かり、飛鳥を見ると飛鳥は横を向いた。

 

千聖「顔向けなさい。何かあったんでしょ」

麻弥「え、彼…通報したことがあるんですか?」

「通報というよりかは…」

「3日前。女子高生を付け回してたストーカーをつかまえてくれた事があってね」

日菜「3日前に付け回してたって…女の人の特徴は?」

「そうだな…。君とそっくりだったな」

日菜「やっぱり! おねーちゃん、前に知らない男の人につけられたって言ってたけど、3日前から見なくなったって言ってた!!」

 

 日菜たちも飛鳥を見たが、飛鳥も千聖たちを見た。

 

飛鳥「私、何か間違ったことしましたか?」

彩「いや、なに一つ間違ってないよ」

千聖「その態度は大間違いよ」

 

 千聖が腕を組んだ。

 

飛鳥「あ、日菜先輩。もちろんお分かりですよね」

日菜「おねーちゃんに喋らないでって事でしょ?」

飛鳥「違います。紗夜先輩が気を遣うので、喋らないでください」

日菜「だいじょーぶだよー。じゃあ電話するねー」

 

 日菜は紗夜に電話をかけると、飛鳥は静かに目を閉じた。

 

********************::

 

 その夜

 

「好きなだけ食べてね」

飛鳥「……!!」

 

 氷川家のおごりでちょっと高めの中華料理屋にパスパレ、紗夜、紗夜の母ともに来たが、スケールのでかさに飛鳥は驚きが隠せなかった。

 

日菜「あ、イセエビのチリソース頼む?」

飛鳥「いや、そういう問題では…」

千聖「遠慮しなくていいのよ?」

飛鳥「えええええ…」

 

 

 

おしまい

 



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こちら超能力研究会! 飛キリケイ編
第266話「3人寄らばなんとやら」


 

 

 もしも、飛鳥とケイとキリトが共演したら(※ 話の都合で全員同級生です)

 

*********************

 

 バンドリ学園に入学した一丈字飛鳥。だが、入学した矢先、いきなり全校生徒は部活動に入るように命じられる。

 

都築「顧問なしOK、1人OK、とにかく部活動をやりなさい」

 

 何ともまあご都合主義としか言いようがないが、飛鳥はむしろチャンスだと思っていた。

 

飛鳥「この部活でお願いしまーす」

 

 飛鳥が担任に創部届を提出した。その名も『超能力研究会』である。あからさまにオカルトっぽい部活動に担任も困り顔だったが、特にNGという訳ではないので、OKした。

 

 飛鳥はクラスでは目立たない方だったので、何の部活に入ったのかは聞かれなかった。

 

飛鳥(完璧だ)

 

 そしてまた二人の生徒はどうするか迷っていた。

 

ケイ(部活動しようかな…)

キリト(めんどくさ)

 

*************************:

 

 部活動をやるからには何かしら作業報告をしなければならないというルールも設けられたが、飛鳥はむしろやる気に満ち溢れていた。

 

飛鳥(学園でしか見れないブログも創設したし、手始めにこの大会に出てみるか…)

 

 そう言って、飛鳥はゲームの大会に出場した。結果は優勝し…。

 

「表彰、超能力研究会…」

 

 飛鳥は全校集会で表彰された。入学してから1か月も経たないうちに割と大きな大会で優勝したことから、注目を集めた。

 

 飛鳥は表彰を辞退したかったが、優勝したというニュースが学校に伝わってしまい、断るに断れない状態だった。

 

 バンドガールズも驚きを隠せなかった。

 

モカ「凄いね~。1か月も経たないうちにあんな結果出せて~」

蘭「…あたしたちはあたしたちだよ」

 

燐子「……」

 燐子は飛鳥をじーっと見ていた。

 

ケイ「ゲームやる部活だったんだ…」

キリト「……」

 

**********************

 

 教室に帰ってきた。

 

「一丈字くん凄いじゃん!!」

「ネットで調べたけど、結構大きな大会じゃん!!」

「プロゲーマーを破ったんだって!?」

「賞金100万だって!!?」

 

 飛鳥が教室に帰ってくると、クラスメイト達から質問攻めにあっていた。飛鳥は苦笑いしていた。

 

「でも、いったい何のために?」

飛鳥「部活の活動実績を出すのと、気分転換ですね」

「気分転換で優勝って…」

 

 飛鳥の言葉にクラスメイト達は困惑していた。

 

「それで…次はいつ出るの?」

飛鳥「当面は予定ないですね」

「え?」

飛鳥「あの大会は開催日がすぐで飛び入り参加もOKでしたし…。来月は定期テストがあるので、それに向けて勉強しないといけませんね」

「あああああああああああ!!!」

「そうだったぁ!!」

 

 飛鳥の言葉にクラスメイト達は悶絶した。

 

ケイ・キリト「……」

 

 ケイとキリトは自分の席から飛鳥をじっと見つめていた。

 

**********************

 

 だが、定期テストの前に1年生は林間学校があった…。クラスごとにバスに乗り込み、目的地へ向かった。

 

 飛鳥はケイと隣同士になった。

 

ケイ「…あの」

飛鳥「なんです?」

 

 ケイが飛鳥に話しかけた。

 

ケイ「一丈字くんってゲームとかするの?」

飛鳥「たまにしますね」

ケイ「たまに…?」

 

 いつもやってるのかと思いきや、大してそんなにやらない事に驚くケイだった。

 

飛鳥「もしかしてあの大会の事ですか?」

ケイ「あ、いや、それもそうだけど、ゲーム好きなのかなって…」

飛鳥「好きですけど、そこまではしませんね」

 

 ケイの言葉に飛鳥が苦笑いした。

 

ケイ「じゃ、じゃあなんであの大会に…」

飛鳥「あのゲームは頭を使う大会で、そういう頭を使うゲームって結構好きなんですよ」

 

 そのあと、飛鳥はずっとケイとゲームの話をしていて、それをキリトが横から聞いていた。ちなみに部屋が一緒である。

 

ケイ「そういや一丈字くん」

飛鳥「なんです?」

ケイ「あの部活って…ほかに人入ってきた?」

飛鳥「入ってきてないですね。まあ、そもそも募集してないので」

ケイ「ど、どうして…?」

飛鳥「自分のペースでやりたいんですよ。他に人がいると、気を遣わないといけませんし…。いろいろ人間関係とかもアレなので…」

ケイ「そ、そうだよね…」

 

 飛鳥の言葉にケイが俯いた。

 

飛鳥「永瀬さんはどこか部活に入ってるんですか?」

ケイ「…迷ってるんだ」

飛鳥「まだいっぱい時間はありますので、ゆっくり考えてください」

キリト「……」

 

 そんなこんなで目的地にたどり着いた。そんな中…。

 

「う~っ。可愛い女子と2泊3日かぁ!」

「テンションあがるゥ!!」

「この学校で良かった!!」

 

 1組と2組の男子たちがテンション高かった。というのも、1組と2組の女子はアイドルと言われてもおかしくないほど美少女ぞろいだった。しかも陽キャが多い。

 

 それに比べて、飛鳥たちがいる3組の女子は見た目が地味な陰キャがおおめだった。

 

「それに比べて3組は…プッ」

「可哀想だなー」

「まあ、3組の男も陰キャばっかりだしな」

「此間優勝した一丈字も陰キャだし…ヲタクだしな」

 

 3組の生徒を馬鹿にしていたが、飛鳥は全く気にする様子はなかった。

 

*******************

 

 そして飛鳥はケイ、キリトと共に同じ部屋に向かった。

 

ケイ「全くバカにしてくれちゃって…」

 

 ケイがつぶやくと、キリトが隅であぐらをかいていた。

 

飛鳥「いいじゃないですか。ああいうのは何もしなくても勝手に自滅しますよ」

キリト「結構言うなお前…」

 

 キリトが口を開いた。

 

飛鳥「えっと…桐ケ谷くんだったね」

キリト「宜しく。それはそうと、優勝したのに馬鹿にするとか頭おかしいんじゃないか…」

飛鳥「そんなもんですよ。全く知らない陰キャが大会で優勝する事よりも、可愛い女子と同じクラスである事の方があの人たちにとってメリットなんですから」

 

 キリトの言葉に苦笑いする飛鳥だった。実際に自分があの生徒たちの立場になって考えてみれば、確かに納得できると自分に言い聞かせていた。

 

飛鳥「まあ、気長に生きましょう」

 

 そう言って飛鳥は部屋を後にすると、ケイとキリトは顔を合わせた。

 

********************:

 

 風呂や夕食も済んだ後、レクリエーションとして肝試しが行われることになった。

 

「肝試しをするのは3人1組、クラスごとでランダムで決める!」

 

 その結果、飛鳥はケイとキリトとペアを組むことになった!

 

飛鳥「あらまあ」

ケイ「ま、また一緒だね」

キリト「……」

 

 飛鳥達のペアが決まった瞬間、1組と2組の男子の一部が噴き出した。

 

「あいつらの班全員男だぞ!」

「カワイソー」

「折角の思い出も台無しになったな」

「言葉にできねー」

 

 飛鳥たちを馬鹿にしたが、飛鳥はまったく気にしなかった。

 

飛鳥「すごくバカにされてますね」

キリト「哀れだな…」

ケイ「……」

 

 ちなみに馬鹿にしてた生徒たちは女子とペアを組んでいたが…。いい顔はしてなかった。そりゃそうだ。一緒にペアを組む男子が人間的に問題があれば恥ずかしいに決まっている。途中で教師が諫めて肝試しが始まった。1組、2組、3組という順番で始まった…。

 

飛鳥「……」

ケイ「……」

 

 ケイが震えていた。

 

飛鳥「永瀬さん…。もしかして幽霊ダメなんですか…?」

ケイ「う、うん…ごめん…」

飛鳥「いや、謝らなくていいんですけど…」

キリト「なんか人面馬みたいになってんぞ…」

 

 ケイが飛鳥の背中に顔をうずめて歩いていた為、人面馬みたいになっていた。その時、脅かし役が現れると、

 

飛鳥「わあ」

キリト「道理で前からめちゃくちゃ悲鳴が聞こえるわけだ…」

 

 飛鳥とキリトがケイを守りながら、前に進んでいた。

 

 しばらくして、道が二つに分かれていた。

 

飛鳥「あれ、道が二つに分かれてる」

キリト「なんか看板が倒れてねぇか…?」

 

 キリトが看板が倒れていることに気づいた。

 

飛鳥「多分幽霊に驚いて看板を倒したんじゃないですかね…」

キリト「だろうな…」

ケイ「……」

 

 ケイがめちゃくちゃ震えていた。

 

飛鳥「振動が凄いですね…」

 

 飛鳥がそうつぶやいたその時、飛鳥は何かを感じ取った。

 

キリト「どうした?」

ケイ「えっ!!? 何かいるの!? 何かいるの!?」

飛鳥「…まさかとは思いますけど、あっちのコースに間違って行ってしまった生徒がいるような気が」

キリト「マジかよ…」

飛鳥「すみませんが桐ケ谷さん。私ちょっと様子見てくるので、永瀬さんお願いできますか」

キリト「何も大げさな…」

飛鳥「いや、こういう時大体いるんですよ。お願いしますね!」

 

 そう言って飛鳥は違うコースを走っていった。

 

飛鳥「誰かいますかー!!!」

 

 飛鳥がそう叫ぶと、

 

「ここでーす!!」

飛鳥(あ、いた…)

 

 幽霊じゃないと判断した飛鳥は隠し持っていた小型の懐中電灯で、目の前を照らすと、下から声がしたのが分かった。

 

飛鳥「大丈夫ですか?」

 

 飛鳥が崖の所まで近づいてうつぶせになり、懐中電灯を照らすとそこには2組の羽沢つぐみがいた。

 

「あ、あなたは…」

飛鳥「嫌な予感がしてきてみたらやはり…ほかには誰かいますか?」

つぐみ「う、ううん…私一人だけ」

飛鳥「怪我とかしてます?」

つぐみ「……」

 

 飛鳥の言葉につぐみは何も言えなかった。

 

飛鳥「分かりました。今から先生呼んできま…」

 

 その時、

 

「一丈字」

 

 キリトとケイがやってきた。

 

飛鳥「桐ケ谷さん、永瀬さん」

キリト「誰かいたのか」

飛鳥「ええ。一人崖から落ちてけがをしたみたいです」

キリト「マジかよ…」

飛鳥「桐ケ谷さん。申し訳ないんですけど、先生を呼んできてもらえませんか?」

キリト「分かった」

飛鳥「永瀬さんは私と一緒に見てもらえませんか」

ケイ「う、うん」

飛鳥「幽霊の件なら心配いりませんよ。私がいますので」

ケイ「!」

飛鳥「それよりも、下にいる人にこれ以上何もないように最善を尽くしましょう」

つぐみ「あ、ありがとうございます…」

 

 飛鳥が懐中電灯でつぐみの周りを照らすと、一本道があることが分かった。

 

飛鳥「あの道をまっすぐ歩けば、帰れますね」

ケイ「う、うん…」

飛鳥「動けますか?」

つぐみ「う、うん…」

 

 つぐみが立ち上がろうとしたが、右足を引きずって歩いていた。

 

飛鳥「永瀬さん。そのまま懐中電灯を照らしてください。私が下まで迎えに行きます」

ケイ「う、うん…」

 

 ケイは背後に幽霊が襲い掛かってこないか不安になったが、飛鳥とキリトがここまで頑張ってくれているのを感じて、勇気を出して懐中電灯を照らし続けた。

 

 そして飛鳥がつぐみのところまでやってきた。

 

飛鳥「歩けます?」

つぐみ「う、うん…大丈夫…」

 

 つぐみがそう言いかけた時、右足に激痛が走った。

 

つぐみ「いたぁい!!」

 

 つぐみは涙声で叫んで、しゃがんでいた。飛鳥は痛みが引くのを待っていた。超能力で一発で直してしまえばよかったのだが、ここで超能力を使って痛みを直すのはあまりにも不自然だったからだ。

 

 

飛鳥「あの」

つぐみ「……?」

飛鳥「私の背中に乗ってください」

 

 飛鳥がつぐみに背を向けてしゃがんだ。

 

飛鳥「ここから坂を上らないといけないので…」

つぐみ「……」

 

 つぐみが涙目で痛みを抑えた。ここで遠慮すると逆に飛鳥を困らせることになると判断したのだ。

 

 そして飛鳥がつぐみを背負った。

 

つぐみ「あ、あの…重くないですか…?」

飛鳥「全然!」

 

 ケイが飛鳥とつぐみの前を懐中電灯で照らして誘導した。

 

 数分後、飛鳥はケイの元に戻ってきた。

 

飛鳥「ありがとうございます」

ケイ「ううん。お疲れ様」

つぐみ「あ、あの…二人ともありがとうございます」

飛鳥「気にしないでください。それよりも…」

 

 飛鳥がそう言いかけたその時だった。

 

「おーい!!!」

「!!?」

 

 キリトが教諭2名を連れて戻ってきた。

 

「お前たち大丈夫か!?」

「羽沢さん!!」

 

 教師たちが飛鳥たちを心配していた。

 

飛鳥「もう心配はございませんよ」

つぐみ「……!!」

 

 無事に教師たちとも合流できたことにつぐみは涙が止まらなかった。

 

飛鳥「さて、早いところここから脱出しましょう。皆さんも今頃ご心配されてるはずです」

 

 こうして飛鳥達は元来た道を戻って皆と合流した。

 

*******************

 

 その頃…。

 

「つぐみを置いて逃げてきたぁ!!?」

 

 集合場所で2組の生徒たちがもめていた。

 

巴「てめぇふざけんなこの野郎!!」

ひまり「巴! 落ち着いて!!」

蘭「だから男女別々にしようって言ったんだよ!」

モカ「…こうなるくらいならね~」

 

 巴が一緒にペアを組んでいた陽キャたちに殴りかかろうとすると、ひまりが慌てて止めた。蘭とモカが悪態をついていた。

 

「ち、違う!! オレたちは逃げたんじゃない!!」

「羽沢さんが急にいなくなって…」

 

巴「まだ言うか!! お前らが2人で走って逃げてたのほかの奴らも目撃してるんだぞ!!」

モカ「さいて~」

蘭「とにかくつぐに何かあったら許さないから」

 

 他の女子たちも怒っていて、2組は修羅場になっていた。そしてそれを遠くから飛鳥達が見ていた。

 

ケイ「恐ろしいことになってる…!!」

飛鳥「結局幽霊よりも生きてる人間の方が恐ろしいって事ですね」

キリト「見てらんないよ…」

 

 その時、誰かが飛鳥たちに気づいた。

 

「あっ!! つぐみちゃんが帰ってきた!!」

「ほんとだ!!」

 

 皆が飛鳥たちの方を見ると、

 

ひまり「つぐ!!」

「!」

 

 Afterglowの4人がつぐみのもとに駆け寄った。

 

つぐみ「み、みんな!」

ひまり「よかったぁ~!! つぐ~!!」

 

 つぐみの顔を見るなり、ひまりが号泣した。そして巴が飛鳥を見た。

 

巴「もしかして…お前がつぐみを助けてくれたのか?」

飛鳥「こちらのふた」

キリト「一丈字がこいつを見つけた」

ケイ「一丈字くんが…」

つぐみ「この人が最初に見つけて、この2人も協力してくれたんだ」

 

 空気が止まった。

 

飛鳥「助けたって自分言うのなんか思い上がってませんか?」

モカ「まあ、そりゃそうだけど~」

巴「とにかく3人で、つぐを助けてくれたんだな。ありがとう!」

 

 巴が頭を下げると、飛鳥が困惑し、ケイが照れた。キリトはいつも通りだったが…。

 

ひまり「ありがとう!!」

モカ「ありがと~」

蘭「…ありがとう」

飛鳥「いえいえ…」

 

 Afterglowからお礼を言われて、飛鳥が苦笑いした。というのも、男子生徒たちから嫉妬のまなざしで睨まれていたからだった。

 

飛鳥(…羽沢さんを背負ってるからかな?)

 

 飛鳥がそう思っていると、キリトが睨みつけた。

 

キリト「なんだ。オレたちに喧嘩売ってんのか?」

 

 キリトがそういうと、Afterglowも反応したが、つぐみ以外の4人はマジ切れだった。そして飛鳥とケイは何かが終わったことを察した。

 

 この後、つぐみを病院に連れていき、捻挫だと判断された。おいて逃げた男子生徒たちはつぐみに謝罪に訪れ、つぐみは許したがほかの4人は絶対に許さず、接見禁止を言い渡された。そればかりか2組の女子生徒全員に避けられるようになったという。

 

飛鳥「天罰下りすぎだろ…」

キリト「女子一人置いて、自分たちだけ逃げたんだ。当然の結果だろう」

飛鳥「下手したら、我々がこうなってた可能性があったって事ですね…」

ケイ「う、うーん…」

 

**********************

 

 これは翌日の話。つぐみを助けた飛鳥、ケイ、キリトの3人はすっかりヒーロー扱いになり…。

 

 3人で一緒に朝食を取ろうと、食堂の前に行こうとすると、

 

「本当に懲りてねぇな…!!」

「本当に悪かったから!! あいつらの所に行かないでくれぇえええええええ!!!」

 

 Afterglowは自分たちを待っていたのか、食堂の前で待ち伏せをしていたが、ファンらしき男子生徒たちに足止めされていた。最初の頃に馬鹿にしていた時とは比べ物にならないほど惨めだった。

 

キリト「無様なもんだ…」

ケイ「助けた方がいいと思うな…」

飛鳥「必要ないと思いますけど、そうしますか?」

 

 飛鳥がそういうと、皆が3人に気づいた。

 

「い、一丈字!!」

「永瀬に桐ケ谷も!!」

 

 3人が現れた事で、男子生徒たちは慌てて警戒した。

 

飛鳥「おはようございます」

「つぐみちゃんを助けたくらいで、お近づきになれると思うなよ!!」

「近づくな!!」

 

 男子生徒たちが身を寄せ合ってAfterglowをガードしている。

 

飛鳥「お近づきはともかく、羽沢さん達にも選ぶ権利はございます」

「うるせぇ!! 余裕ぶりやがって!!」

「いちいち鼻につくんだよ!!」

 

 男子生徒たちが飛鳥に文句を言うと、キリトとケイが憤った。

 

ケイ「撃ち殺しましょうか?」

キリト「いや、ザクっと…」

飛鳥「殺生はいけませんよ」

 

 飛鳥が2人を諫める。

 

飛鳥「それよりも羽沢さん」

つぐみ「な、なに?」

飛鳥「足は大丈夫ですか?」

つぐみ「う、うん…。お陰様で」

モカ「でも今日のイベント、参加できないんだよ~」

飛鳥「そうなんですか…」

 

 飛鳥がそう世間話をすると、

 

「何をやってるお前たち!!」

 

 強面の男性教師がやってきた。

 

飛鳥「あっ…」

 

モカ「朝ごはんじゃなくてモカちゃん達を食べようとしてま~す」

「ちょおおおおおおおおおおおお!!!!」

「お前らこっち来い!!」

 

 そう言って男子生徒たちは教師に連れていかれ、飛鳥・ケイ・キリトが困惑していた。するとAfterglowが飛鳥たちに近づいた。

 

モカ「それじゃ一緒に朝ごはん一緒に食べよう~」

飛鳥「……」

 

 

 この後、それぞれの理由でキリトとケイ、バンドガールズが超能力研究会に入部することになるのは言うまでもないが、それはまた別の話…。

 

 

おしまい

 

 

 

 

 



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第280話「SHAKING NIGHT」



 今回の設定

・ 飛鳥、ケイ、キリトが2年生で友希那たちと同じ学年。
・ 林間学校です。

********************


 

 

 今日は2年生たちは林間学校。もう何度もやってますが、思いついたのでやります。

 

 1組、2組はアイドル並みに可愛い&本物のアイドルがいるので、男子たちが大盛り上がりでしたが、陽キャが侍らせようとしてそれぞれガードしてました。

 

 そして3組はというと、結構じみ目の女子が多いのか、皆普通だった。

 

飛鳥・ケイ・キリト「……」

 

 3人もそれぞれバスで過ごしていた。

 

**********************:

 

 そんなこんなで目的地にたどり着いた。

 

日菜「ついたーっ!!」

麻弥「日菜さん。声が大きいですよ!」

 

 日菜がはしゃぐと麻弥が諫めて、別のクラスの双子の姉である紗夜はため息をついた。

 

(まさかアイドルと一緒に林間学校に行けるとはな…)

(この林間学校でお近づきになって、他の男どもにマウントを取ってやる)

(片っ端から食い散らかしてやる…)

(ブラジャー欲しい。そしてつけたい)

 

 あからさまに下心丸出しの一部の男子生徒たちを見て、女子生徒たちはドン引きした。

 

「その視線もイイ!!!」

「誰か助けてぇええええええええええ!!!!!」

「チョットマッテテー」

「いや、それ作品が違う!!」

 

 ごちゃごちゃ話している間に、生徒たちはそれぞれの部屋に移動することになった。飛鳥はキリト、ケイと同室である。

 

ケイ「宜しくお願いします」

飛鳥「あ、こちらこそ」

キリト「宜しく」

 

 そしてお約束の入浴シーンである。なんという事だろう、男湯と女湯の柵があるではないか。

 

「ちょっとどういう事ですか!!?」

「これじゃどうぞ覗いてくださいって言ってるようなもんじゃないですか!!!」

 

 女子生徒たちがブーブー文句を言っていたが、

 

「そんな事言って、お前らがオレたちの風呂覗くつもりじゃないでしょうね!?」

「キャーやらしい!!」

「しないわよ!!」

「いや、うちの中学女子が覗きしてて怒られてた…」

 

 3組の生徒たちは無視して風呂に入りに行った。ちなみにクラスごとではない。

 

飛鳥・キリト・ケイ(とりあえずさっと洗ってさっと戻ろう)

 

 なんという事だろう。3人とも同じことを考えていて、それが入浴後に気づいた。

 

飛鳥「あ、もしかしてお二人さんも…」

キリト「それ以外に理由はねぇよ」

ケイ「うん…」

飛鳥「いやー…困りますよね。冤罪」

(なんか物騒な話してる!!!)

 

 そんな時だった。

 

千聖「ちょっと麻弥ちゃん。何隙間にいるの!?」

麻弥「いやあ…つい…」

 

 という女子の会話が聞こえた。一部の男子は耳をダンボにしていた。飛鳥は嫌な予感がしたので超能力を使って自分だけ逃げた。

 

日菜「それにしても麻弥ちゃん、やっぱりおっぱい大きいー!!」

千聖「ちょ、日菜ちゃん!!/////」

麻弥「男子に聞こえるっす!!///////」

日菜「いや、だっておっぱいが隙間に挟まってエロ…」

 

 千聖が日菜の口元を抑えた。

 

「挟まってなんじゃあい!!」

「わざとか!!? わざとやってんだろ女子!!」

「オレたちを陥れてお小遣い稼ぎか!!? JKビジネスなのかぁ!!?」

「慰謝料としておっぱい見せろやぁ!!」

 

 麻弥のおっぱいの話が出て、男子生徒たちが興奮した。

 

キリト「どっちもどっちなんだよなぁ…」

ケイ「…巻き込まれる前に逃げよう」

キリト「そうだな…って、一丈字がいねぇ!!」

 

 キリトが飛鳥がいないことに気づいた次の瞬間だった、

 

「コラー!! 何をしとるかぁ!!」

 

 男性教諭が男湯にやってきたが、男子は特に何もしていない。

 

「先生!! こんなの生殺しだってぇ!!」

「女子がエロい話ばっかりするんです!!」

「オスの本能が出そうなんです!!」

「魅力のあるメスに魅かれるのは摂理だと思うんです!!」

 

「よく先生にそんな発言できたなぁ!!」

 

 普通はセクハラで訴えられるか、捕まるので絶対にまねしないでください。

 

「バカモン!! それくらい我慢できなくてどうする!!」

「いや、止めろよ!!!」

 

 男性教諭の発言に女子たちが女湯から突っ込んだ。そのすきにキリトとケイが逃亡した

 

 

*****************

 

キリト「…一人だけ逃げるなんてずるいぞ」

飛鳥「いやー…ハハハハ」

ケイ「あいつら頭がおかしい。もしここに銃があれば…」

キリト「オレも剣持ってくればよかった…」

飛鳥「銃刀法ってご存じですか?」

 

 そんなこんなで夕食の時間になったが、それはもう気まずい。男子と女子ではなく、完全にオスとメスになっていた。

 

 そんな中、この3人はバクバク飯を食べていた。

 

飛鳥「すっかり気まずくなってますね」

キリト「ほっとけ」

ケイ「そういやこの後肝試しだったよね…」

 

 ケイの言葉に男子生徒たちが反応した。

 

「そうだった!!」

「この後は肝試し!!」

「女子とあんな事やこんな事…」

 

 男子たちは興奮したが、女子生徒たちにとっては、セクハラ発言から恐怖でしかなかった。

 

 だが、雨が降り出して中止になり、男子生徒たちは絶望していた。

 

リサ「よかった~」

薫(ホッ…)

日菜「えー。つまんなーい」

 

 そして飛鳥たちはすぐさま、自分の部屋に戻った。

 

飛鳥「そろそろ寝ます?」

ケイ「寝よう。あーよかったぁ~」

キリト「ああ。そうさせてもらうぜ。あーあ、ゴミ掃除もしなくて清々するぜ」

飛鳥「ハハハ…。まあ、これで角が立つこともないから、無事に終わりそうだ」

 

 そう言って3人は就寝し、飛鳥は無事にこの話が終わる事を確信していた。

 

******************

 

 だが、そんな訳がないのである…。次の日も雨が降ってしまい、フィールドワークは中止になった。

 

「という訳で、この自然の家で補習授業だ!!」

「え――――――――――――!!!!?」

 

 教師の言葉に皆が絶叫したが。飛鳥たちは動じなかった。

 

「授業は好きな授業を選ばせてやる」

「えー…」

 

 皆はめんどくさそうにしていたが、飛鳥たちは顔を合わせた。

 

ケイ「どうする?」

飛鳥「一番人が少ない授業に行きたいですね。集中できるから…」

キリト「オレも。うるさいの嫌」

 

 その時だった。

 

「そこの3人!」

飛鳥・キリト・ケイ「!!」

「そんなに人が少ない授業に行きたいなら、このわしが面倒を見てやろう」

 

 一番怖いと言われている鬼教師・鬼山が前に出た。

 

飛鳥「他に人はいないんですか?」

キリト「逆に助かります」

ケイ「え、ええ…」

 

 飛鳥とキリトが嫌な顔をしないので、ケイが困惑した。

 

「いい度胸だ。みっちり鍛えてやるから覚悟しておけ!!」

(一丈字くん達、頭いいからなぁ…)

 

 教師の言葉にクラスメイト達は困惑すると、

 

日菜「はーい!! あたしも飛鳥くん達と同じ所がいいでーす!!」

飛鳥「!!?」

 

 日菜の言葉に飛鳥が驚いた。

 

麻弥「ひ、日菜さん!!?」

日菜「だって飛鳥くん達、いつも面白そうな事ばかりしてるんだもん。多分また何かるんってするような事するんだよ」

飛鳥「しませんよ」

キリト「頼むから、他の男子どもの相手をしてやってくれ」

ケイ「お、お姉さんと一緒じゃなくていいの…?」

 

 3人が遠回しに拒否すると、

 

日菜「そうだ! おねーちゃんも一緒に授業受けようよ!」

紗夜「えっ!!?」

 

 日菜の言葉に紗夜が驚いた。

 

飛鳥「紗夜さん困ってますよ」

キリト「やめとけ」

「そうだな。一丈字達にはたくさん課題を与えるから、やめといた方がいいな」

日菜「えー!!? そうなの!!?」

紗夜「!!」

 

 日菜が驚くと、紗夜が反応した。

 

日菜「じゃ、じゃあやめとくねー…」

紗夜「参加させてください」

飛鳥・キリト・ケイ「えっ」

 

 量が多いと聞いたとたんに紗夜が参加しだした。

 

飛鳥・キリト・ケイ(姉としてのプライドだ…)

「氷川。本気か?」

紗夜「はい」

キリト「Roseliaと一緒じゃなくてもいいのか?」

ケイ「1組の人達と…」

紗夜「大丈夫ですよ。それとも、私がいたらお邪魔ですか?」

飛鳥「邪魔ではないですけど、あなたのファンから嫉妬されるんですよ。オレたちのアイドルを奪うなって」

 

 飛鳥の言葉に紗夜が赤面した。

 

紗夜「な、なななな何を言ってるのですかっ!!//////」

飛鳥「そうですよね?」

 

 飛鳥が男子生徒たちに確認すると、

 

「そうだ!!」

「オレたちの紗夜ちゃんを奪うんじゃない!!」

「紗夜ちゃんの貞操はオレのもんだ!!」

「ひっこめ一丈字!!」

 

飛鳥「…まあ、一部危ない発言が出ましたが、そういう訳ですので」

紗夜「その手には乗りませんよ」

 

 紗夜が汗をかきながら飛鳥を睨みつけた。

 

紗夜「とにかく、私も鬼山先生の授業に参加します! いいですね!!?」

鬼山「お、おう…」

 

 鬼山も驚いた。

 

日菜「えー!!? おねーちゃん参加するの!!? じゃああたしもー!!」

紗夜「あなたはパスパレの皆と授業受けなさい」

日菜「やーだーやーだー!!」

千聖「それじゃあ私も鬼山先生の授業に行こうかしら」

「!!?」

 

 その結果…。

 

金山「喜べ。男子3人、女子10人だ!」

飛鳥「すべてのファンにぶち殺されるというオチですね。了解しました」

キリト「返り討ちにしてやる」

ケイ「ちょ、ちょっと二人ともぉ!!!」

 

 こうして、お化け屋敷よりも最悪な結果となりました。めでたしめでたし。

 

男子生徒「めでたくねぇええええええええええ!!!」

女子生徒「帰りたい…(一丈字くん達頑張って)」

 

 

おしまい

 

 



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転生者・一丈字飛鳥編
第285話「飛鳥 VS 悪徳転生者達!」


 

「キャー!!」

「こっち向いてー!!」

「ははははは」

 

「私が先に誘ったんだよ!!?」

「私!!」

「おいおい、喧嘩しなくてもオレは皆を平等に愛するぜ?」

 

「オレは凄いんだ!」

「うんうん!!」

「凄い凄い!!」

 

 なんという事だろう。バンドリのキャラクターがイケメン達をほめたたえていた。

 

*************************:

 

「残念だが、夢から覚める時が来た」

「嫌だぁ!!」

「早く元に戻してくれよお!!!」

「返せ!! オレのパラダイスを返せ!!」

 

 とある空間。1人の老人が3人のブ男に対して映像を見せていた。さっきバンドリのキャラクターたちから称賛されていたイケメンの本当の姿である。

 

*************************

 

 そして映像を見せられていた男たちは、実を言うと転生者なのだ。元々はアニメやゲームが大好きなステレオタイプの陰キャヲタクなのだが、それに加えて内向的で友達も一人もいなければ、皆から嫌われている奴もいる。

 

 そんな彼らだが、事故で突然死んでしまうのだが、転生したら異世界に転生している物語が流行っているせいで、死んで異世界転生できると信じこんでおり、天国の関係者に遭遇するなり、異世界転生させてチートとハーレムをつけろと頼み込んだのだ。

 

 だが、実際の天国はそんなものがある訳がなく、否定すると喚き散らすという迷惑行為をしでかしたが、地獄に落とすと一言脅すと黙るという醜態もさらした。

 

 天国で不自由ない生活を送っていたが、天国でも顔や性格も変わらなかったせいか、女にモテることが出来ず、くすぶっていた。

 

 だが、そんな彼らの夢を叶える施設『転生センター』が出来た。そこは一時的だがアニメの世界に行くことが出来て、彼らの言っていた異世界ハーレムも一時的だが、体験することが出来る(ただし課金しないといけない)。

 

 そこで異世界ハーレムを楽しんでいたが、考えることは皆一緒で、転生センターのマシーンを独り占めする輩が出てきたり、悪い奴が暴力で物を解決したりしたのだ。

 

 極めつけは違法ツールを使って、半永久的にその世界に入り浸り、やりたい放題するという事態になってしまった。この事を受けて管理者は転生センターを閉鎖しようとしたが、猛反対と上からの圧力をかけられて、閉鎖できない状態になっている。

 

 そしてこの3人の転生者もその違法ツールを使って、色んな世界に異世界転生をしてはやりたい放題やっていた。主人公を殺してヒロインを寝取る事は当たり前で、他の転生者がいるシマに侵入してはその転生者を無理やり追い出して、今まで築いたものを全部横取りするという暴挙を繰り返した。

 

 また、彼らが異世界転生した『BanG! Dream』も例外ではなく、バンドに青春をかけた数十人の少女たちを自分たちのやりたい放題にやろうとしていた。

 

 だが、悪徳転生者に危惧を抱いていた神・羅城丸によって阻止していた。

 

*******************

 

羅城丸「全く、死んでも性格は治らんか…」

A「うるせぇな!!」

B「オレだって顔が良かったら、顔が良かったら…!!」

C「とにかく戻せや!!」

 

 自分の境遇もわきまえず、わめき散らす男たち。

 

羅城丸「…まあいい。そんなに言うなら元に戻してやる」

A「分かればいいんだよ!!」

B「顔も元に戻せ!!」

C「あとチートとハーレムをオレにつけろやぁ!!」

 

 そう言って鼻息を荒くして羅城丸に言い放つと、羅城丸が指を鳴らして3人は消えた。

 

 そう、悪徳転生者『フォー』の新たな転生ライフである…。

 

*************************

 

 今回の設定

 

・ バンドリ学園は女子高。

・ 男子は飛鳥、悪徳転生者3名のみ。

・ ぶっちゃけ前に書いたラブライブと設定がほぼ同じ。

・ 飛鳥、ガチハーレムだが和哉や孫たちとは出会わなかった世界で、転校してきた設定。

 

3年:転生者C

2年:転生者B

1年:飛鳥、転生者A

 

***************************

 

 バンドリ学園。今日も今日とて…。

 

飛鳥「え?」

 

 羅城丸の依頼により、バンドリの世界に飛ばされた一丈字飛鳥はRoseliaの湊友希那、氷川紗夜、今井リサ、白金燐子とカフェテリアで話をしていたが、友希那から告げられた言葉に片眉を上げた。

 

リサ「今度の休み一緒にお出かけしない?」

 

 飛鳥が反応すると、リサは友希那が言ったことを繰り返した。

 

飛鳥「メンバーってどなたですか?」

友希那「私たちRoseliaとあなたよ」

飛鳥「ファンの人達とか大丈夫ですか?」

友希那「パスパレじゃないのよ」

 

 飛鳥の言葉に友希那がジト目で見つめた。

 

飛鳥「でもどうして急に?」

友希那「あなた色々頑張ってくれたじゃない。燐子に付きまとっていた痴漢を撃退したり、日菜と紗夜をかばって怪我したり」

飛鳥「そんな事もありましたねぇ」

 

 友希那の言葉に飛鳥が苦笑いした。

 

燐子「そ、それに…。私とあこちゃんと3人で出場した大会の祝賀会もまだ出来てないです…」

 燐子の言葉に友希那、紗夜がイラっとして、リサが表情をひきつらせた。

 

飛鳥「そういややるって言って、ずっとやってないですね…」

友希那「私とも何かするべきだと思うわ」

紗夜「同じくです」

飛鳥「え、そんなに私の事を?」

 

 飛鳥が冗談交じりにそういうと、友希那と紗夜が頬を染めた。この時の飛鳥の心情としては、自分が違う世界から来ている事もあり、もし本当にそういう事になりそうなら、どんなに小さな可能性も潰しておかないといけなかった。アニメやゲームの世界とはいえ、その登場人物は、その世界でアニメを見ている人間と同じように生きているのだ。

 

 神様の手によって作り出された異世界は幻の世界でもあり、現実の世界でもあるのだ。

 

 

紗夜「そ、そんな事…ある訳ないじゃないですか!!/////」

友希那「流石ね。私が見込んだだけの事はあるわ//」

飛鳥「……」

 

 普通なら激昂するところだが、満更でもなさそうにしていた為、飛鳥は困惑していた。しかも友希那と紗夜はバンドリでも屈指のクールキャラで他人とはあまり関わろうとしないので、この2人がここまで心を許しているという事は自分はいずれまともな死に方はしないだろうと考えていた。

 

 そしてそんなやり取りを陰から悪徳転生者たちは見ていたが…。

 

A「な、なんだよ!! 何も変わってないじゃないか!!」

B「そうか!! 一丈字を消してくれって頼めばよかった!!」

C「だけど、オレたちもイケメンに戻してもらったんだ。行ける!」

 

 そう言って悪徳転生者たちがやってきた。

 

「おい、一丈字!!」

飛鳥「……」

 

 悪徳転生者たちが現れたとたん、飛鳥が困惑し、Roseliaの4人はごみを見る目で悪徳転生者達を睨みつけた。友希那やリサはともかく、人のあたりの良いリサや温厚な燐子ですらゴミを見る目で見つめているのだから、怖い怖い。

 

 その異質な様子を見た悪徳転生者たちも困惑していた。

 

A「一丈字が洗脳したんだ!!」

B「そうか!!」

C「一丈字!! 友希那たちを洗脳してもそうはいかないぞ!!」

 

 悪徳転生者の言葉に飛鳥は脱力した。羅城丸から事情を聞いていて、まだ自分たちにもチャンスがあると思っている事におめでたい奴と感じたと同時にあきれて言葉が出なかった。

 

友希那「洗脳?」

紗夜「遂に頭がおかしくなったのかしら」

 

 洗脳呼ばわりしたことに友希那と紗夜が青筋を立てた。

 

リサ「まーまー。ここは洗脳されたって事にしとけばいいんじゃない?」

燐子「え?」

 

 するとリサが飛鳥の左腕に抱き着いた。

 

燐子「!!?/////」

紗夜「い、今井さん!!?/////」

飛鳥「今井先輩…?」

 

 飛鳥が困惑しながらリサを見つめると、悪徳転生者が発狂した。

 

A「ファアアアアアアアアアアアアアン!!」

B「リ、リサのおっぱい…」

C「おのれ一丈字ぃいいいいいい!!! いったいどんな手を使ったんだ!! どんな能力で…」

 

 

 Cの言葉に飛鳥は静かに目を閉じてこう思った。

 

 

 夢の世界から逃げても結局楽な道はないので、現実の世界で頑張るしかないと。

 

 

飛鳥『神様。これはやりすぎでは?』

羅城丸『そう思うじゃろ? 抱き着いたのは君の人柄じゃよ。あと出番もっと欲しい』

 

 

おしまい

 



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SWAP編
第297話「孫たちとバンドリ学園」


『もしもバンドリ学園にこの5人がいたら』

 

 新しい登場人物

 

古堂  孫(こどう そん)  … 野生児(古堂数の実弟)

大空 未来(おおぞら みく) … 紅一点

志田 省吾(しだ しょうご) … お調子者

林 幸生(はやし こうせい) … イケメン

白村 悟士(しろむら さとし)… でかい

 

 全員飛鳥より1つ上で友希那たちと同級生。孫は学校に通っていない。

 グループ名は『SWAP』

 

飛鳥(原作では2つ上なんですけどね…)

 

*********************

 

 バンドリ学園…。

 

香澄「みんな、ありがとー!!!」

「ワァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 Poppin’Partyが学内で定期ライブをしていた。Poppin’Partyだけでなく、他の4バンドも有名で、バンドリ学園の名物となっていた。

 

 そしてある日の事…。

 

「く~!!! 生ライブ最高だったぜぇ!!」

 

 そう叫ぶのは志田省吾。お調子者で可愛い子に目がない今どきの男子生徒だった。そんな彼は幼稚園の頃からの幼馴染である白村悟士と、小学校からの同級生である林幸生とランチをしていた。

 

悟士「そ、そうだな…」

省吾「まあ、ポピパだけじゃなくて、ロゼリアやアフターグロウ、ハロハピもいるけど、パスパレもいるもんな~!! いやー、すげーなこの学校!!」

幸生「ミーハーにも程があるだろ…」

 

 幸生が困惑しながら突っ込みを入れると、悟士も困った表情を浮かべた。

 

悟士「…東京でも凄い人気だな。幸生」

幸生「言わないでくれ…」

 

 というのも、3人の周りを女子生徒が遠くからキャーキャー言いながら見ていたのだ。幸生は青髪の短髪で、長身、目つきが若干鋭いワイルドタイプのイケメンだったのだ。そのイケメンぶりから『虹島のキムタク』と呼ばれていた。

 

省吾「オレを見てるんだろ!? オレを見てるんだと言ってくれ!!」

 

 省吾が立ち上がって、アピールするが女子達から「どけぇ!!」と言われて意気消沈し、幸生と悟士がため息をついた。

 

「それにしてもあんなイケメンがこの学園に転校してくるなんて…」

「あとの2人はいらないけど…」

「この学園の男子達って湊さん達のお尻ばっかり追いかけてる、馬鹿どもだしねー」

「これで少しは私たちにも還元されたっぽいねー」

 

 そう、女子生徒たちが男子生徒の陰口を言い放っていた。幸生はそれを聞き逃さず警戒していた。

 

 そんな中、あこ以外のRoseliaが食堂に訪れた。

 

あこ『あこ、いつになったら高等部に進学できるのかなー』

燐子「そ、そう言わないで…」

 

 あこも電話で参加していた…。それに省吾たちが気づいた。

 

省吾「あ、RoseliaだRoselia!!」

悟士「やめろ。恥ずかしいだろ」

 

 あからさまにミーハーな反応をする省吾を悟士が諫めると、幸生と友希那の目が合ったが、お互い何も言わなかった。

 

省吾「サインくれねーかなー…」

悟士「いい加減にしろ!」

 

 そんな時だった。

 

「あ、みんなー!」

 

 未来と孫が現れたが、孫は制服ではなく作業着を着ていた。

 

幸生「!」

省吾「おう! ここだ!」

 

 友希那たちも孫と未来を見た。

 

未来「ごめん待たせて!」

悟士「もう大丈夫なのか?」

未来「うん。孫くんにも手伝ってもらったから…」

 

 そう言って5人が席に座ると、女子生徒たちが未来を睨みつけた。

 

孫「?」

省吾「どうした? 孫」

孫「なんかみんながおこってるぞ」

省吾「は?!」

 

 5人とRoseliaが様子を見渡すと、女子生徒が視線をそらしていた。

 

省吾「怒ってねーじゃねーか!」

未来「…いや、なんとなく視線は感じてたわ」

悟士「まあ、幸生の人気がここまでだったらな…」

省吾「え? もしかして気づいてないのオレだけ? オレだけ?」

 

 省吾がキョロキョロ見渡していると、

 

「それもそうだが…お前らーっ!!!」

 

 例のごとく、男子生徒軍団が現れた。

 

未来「これが飛鳥ちゃんが言ってた…」

リサ「え? 飛鳥ちゃん?」

未来「やだいけない! 飛鳥くん!」

孫「なんだオマエらは!」

 

 孫が立ち上がった。

 

「お前らこそなんだ! いきなり出てきて友希那ちゃん達に手を出そうとしやがって!!」

孫「ボウリョクふるってないぞ?」

 

 孫の発言に空気が止まった。

 

孫「なぐってないよな?」

友希那「え、ええ…」

未来「孫くん! ちょっとこっち来なさい! 幸生くん! あと宜しく!」

幸生「チッ、仕方ねぇな…」

 

 幸生はめんどくさがっていたが、孫に必要以上にしゃべらせると、話が進まないので買って出ることにした。

 

幸生「こっちは手を出していない」

「嘘つけ!!」

「一緒に友希那ちゃん達と一緒にいるじゃないか!」

リサ「あ、たまたま近くにいただけで…」

 

 リサがそう言いかけると、

 

友希那「そうよ。変な言いがかりをつけないで頂戴」

「友希那ちゃん達、そんな奴らよりもオレたちと昼食食べようぜ?」

「そうだよ」

友希那「嫌よ」

 

 友希那がそっぽをむいた。

 

「チッ! 下手に出てればいいきになりやがって!」

 

 すると男子生徒の一人が前に出た。いかにも頭の悪そうなDQNである。

 

「いいか! オレは林エレクトロニクスの役員の息子だぞ! これ以上オレに逆らうってんなら、どうなるか分かってんだろうな!?」

友希那「どうなるのかしら」

「親父に頼んで、Roseliaの活動の邪魔をしてやるからな。ガールズバンドも手掛けてるんだ」

幸生「ほう。うちの会社でそんな事をしようとはいい度胸だな」

「!!?」

 

 幸生が前に出ると、皆が反応した。

 

「な、なんだオマエ…!!」

幸生「それはこっちのセリフだ。うちの会社で何をしようとしているのか聞いてるんだ」

 

 幸生が男子生徒を睨みつけていた。

 

「う、うちの会社って…」

省吾「こいつのじいちゃんは林グループの社長だぞ!」

「!!?」

 

 省吾の言葉に皆が驚くと、幸生は鬱陶しそうに省吾を見た。

 

幸生「お前…!!」

省吾「しょーがねーだろ! こうでも言わねーとこういうタイプはひかねーぞ!」

「は、林グループの社長が何だ!! オ、オレは林エレクトロンクスの…」

幸生「林エレクトロニクスはうちの子会社だが?」

 

 親会社の社長の息子が目の前にいる事で、その男子生徒は慌てだしたが、幸生は更に問い詰める。

 

幸生「さて、話を戻すぞ。あまり同じことを言わせるなよ」

「!!」

 

 幸生が男子生徒たちに睨みを利かせた。

 

幸生「うちの会社で何をするつもりだ?」

 

*************************:

 

「いやー。それにしても中々カッコ良かったぜー」

「…うるせ」

 

 事が終わり、未来、省吾、幸生、悟士の4人は教室に戻ってきたが、省吾が幸生をからかっていた。

 

未来「でも幸生くんのお陰で助かったわ。ありがとね」

悟士「そうだな。ありがとう」

幸生「……」

省吾「それにしても、あいつらの顔傑作だったよなー。結局何も言えずに逃げ出したし」

未来「まあ、問題なのはここからね…」

幸生「ハァ…」

 

 これから自分たちの学校生活はどうなるのか、不安になる幸生だった。

 

 

 その頃の飛鳥。

 

飛鳥「あ、僕たちは校外学習です」

こころ「飛鳥! 美味しいわね!」

飛鳥「そうだね」

 

 1年生は校外学習でお菓子の社会見学に来ていたが、林グループの会社だった…。

 

 

おしまい

 



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男子生徒たちの発明品編
第327話「Roseliaのキャラが崩壊した」


 

 ある日のバンドリ学園。

 

「ふふふ…ついに…ついに完成したぞ…」

 

 理科室で白衣を着た男子生徒たちが何やら怪しい薬を完成していた。

 

「これでRoseliaはオレのものだ…」

「いや、オレのものだって」

「オレだってば」

「オレに決まってんだろ!!」

「もうめんどくせぇし、話進まねぇからオレ達にしろよ」

 

 男子生徒たちは笑みを浮かべて、薬を見つめていた。

 

「見てろ一丈字! これでお前のハーレム生活も終わりだ!!」

 

 飛鳥からしてみたら、Roseliaを自分たちのものにしたいのか、オレに嫌がらせしたいのかどっちだと思うだろう。そもそもハーレム生活を作った覚えもないし、友希那達が誰かと付き合おうが自由だし、そもそもそういう関係じゃないし、どうしたら良いか分からなかった。

 

 そんなこんなで男子生徒たちはRoseliaが全員集まっているところを見計らって、薬をガス状に変えて、匂いをかがせた。

 

*****************************

 

 その結果…。

 

友希那「ねこちゃ~ん♡♡ かわいいでちゅねぇ~♡♡♡」

 

 友希那が満面の笑みで猫を愛でていた(ちなみに猫はとてつもなく嫌がっている)。

 

紗夜「もぐもぐもぐもぐ…」

 

 紗夜はフライドポテトをめちゃくちゃ汚い食べ方をしていた。

 

リサ「なんかこっちの方が落ち着く…」

 

 リサは派手な格好をやめて、とても地味な格好をしていた。

 

燐子「いやー最近はもうオンラインゲームじゃなくてアウトドアでしょ。ね、あこちゃんもそう思うでしょ?」

あこ「そ、そうだね…」

 

 燐子のテンションが滅茶苦茶高くなり、あこはとても冷静になっていた。

 

(どうしよ…)

 

 Roseliaの性格がめちゃくちゃ変わってしまい、男子生徒たちは困惑し、どうすればよいか分からなくなっていた。

 

「おい、どうすんだよこれェ!!」

「Roseliaを忠実な下僕にするって話だったろ!」

「下僕じゃない! 従順だ!」

「どっちでもいいよ! そんなの!」

「良くねぇよ! あと下僕じゃなくて…えっと、なんだっけ…」

「思いついてから喋れや!」

 

 とまあ、男子生徒たちが揉めていた。

 

「だが、なんだかんだ言ってRoseliaの性格を変える事には成功してるんだ! あとはオレ色に…」

「キモ」

「聞こえねぇな! ね、ねえ友希那ちゃん…」

 

 男子生徒Aが友希那に話しかけるが、友希那はゴミを見る目でAをにらんだ。

 

友希那「何。話しかけないで頂戴」

(ツンツンしてる所は変わってねぇ!)

(でもちょっと安心した!!)

 

友希那「とにかくRoseliaと猫さえあればそれでいいの」

「良かった! 一丈字入ってなかった!!」

「それだけでも大収穫だ!!」

友希那「一丈字くん…?」

 

 友希那が飛鳥の名前を出した。

 

「お、おいやべぇぞ!」

友希那「ああ…そんな子いたわね」

「それは流石に可哀想!!!」

「やめたげてそういう事言うの!!」

「そういう事言っていいのオレ達だけだから!!」

 

 友希那のまさかの発言に男子生徒たちは困惑した。

 

「にゃーん」

友希那「あらあらどうちたの猫ちゃん。ごめんね~もしかして抱っこあきた~?」

 

 とまあ、友希那は本当に猫以外興味を示さなかった。紗夜はそんな様子をポテトを食べながら見つめていた。

 

「さ、紗夜ちゃん…」

紗夜「なんでふは、はなひはへはひへふははい」

「食べながらしゃべるのは行儀悪いよ…」

 

 いつもの紗夜からは想像もつかない姿を見て、男子生徒たちは困惑した。これはこれで可愛いけど、こんなの紗夜ちゃん達じゃない。オレ達はいつもの紗夜ちゃん達が好きなんだと男子生徒たちは思った。

 

「な、なあ…。もう元に戻そうぜ…」

「そうだな…」

 

 男子生徒たちも流石に罪悪感が生まれたのか、Roseliaを元に戻すことに決めた。

 

燐子「どうしたんですか皆さん。そんな暗い顔して」

「!」

 

 燐子が男子生徒たちに話しかけてきたが、普段からは想像できないほど明るくて笑顔だった。とっても可愛いし、男子生徒たちをメロメロにするには十分だった。

 

燐子「そういえばいつも応援ありがとうございます。とっても嬉しいです」

「ひゃ、ひゃい…/////」

 

 燐子の言葉と笑顔に男子生徒たちは語彙力をなくしていた。

 

リサ「あ、そうそう。いつも応援ありがとね」

 

 地味目の格好をしているリサだったが、中身はほぼ変わらなかった。

 

あこ「そうですね。いつもRoseliaの事を応援してくれてありがとうございます」

 

 あこも礼儀正しくお礼を言った。

 

紗夜「ありはほおほはひはふ」

友希那「感謝してるわ」

 

 友希那と紗夜は塩対応だったし、紗夜はずっとポテトを食べてるし、友希那は猫を愛でていた。

 

燐子「そうだ! いつも応援してくれる皆さんにお礼をしないと…」

「……!」

 

 燐子のお礼という言葉に、男子生徒たちはドキッとした。そして燐子は男子たちを誘惑するようにかがんで谷間を強調した。

 

燐子「私たちと、一緒に遊びませんか?」

「んはぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!//////」

 

 燐子の誘惑に男子生徒たちは興奮した。こういう時、誰か一人くらいはこんなのダメだって言って止めるのだが、残念なことに誰も止めようとする奴もいなければ、止める気すらなかった。その証拠に…

 

 ガチャガチャガチャ…

 

 興奮した男子生徒たちがズボンのベルトを外し始めた。

 

「もう我慢できない♡」

「燐子ちゃ~ん♡♡」

「ついに…ついにこの時が来たァ!!!」

「こういう時ヘタれるけどオレ達は違う!! 喜んでRoseliaを貪り食ってやるぜぇえええええええええええ!!」

 

 と、パンツに手を突っ込んで最悪の事態を引き起こそうとしたその時、飛鳥が超能力でRoseliaも男子生徒達も気絶させた。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥、千聖、モカがやってきたが、男子生徒たちの醜態にドン引きしていた。

 

千聖「男なんて皆馬鹿よ…!!」

モカ「本当にキモ~イ…」

 

 千聖、モカの言葉に飛鳥は静かに目を閉じた。

 

***************************

 

「あああああああああああああああああああああああああああ!!///////」

 

 飛鳥は一応記憶は消したものの、Roseliaのキャラ崩壊ぶりは目撃されてしまい、写真にも撮られてしまったのだ。流石の飛鳥や黒服たちも特定は難しく、Roseliaは当面の間、好奇の目にさらされることとなり、中でも紗夜が発狂していた。

 

あこ「りんりん! 出てきて~!!」

燐子「やだ…」

 

 燐子は女子トイレに引きこもってしまい、あこが説得に応じた。

 

友希那「あいつら絶対に許さないわ…!」

リサ「そうだねー…!」

 

 友希那とリサが激怒していて、飛鳥・モカ・千聖は何とも言えない顔をしていた。

 

 

飛鳥「ハァ…」

 

 少なくとも友希那と紗夜は当面の間は不機嫌だろうなと思い、飛鳥はため息をついた。

 

おしまい

 



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第363話「猫になったRoselia」

ある日のバンドリ学園。

 

 

 

「ふふふ…ついに…ついに完成したぞ…」

 

 

 

 理科室で白衣を着た男子生徒たちが何やら怪しい薬を完成していた。

 

 

 

「これでRoseliaはオレのものだ…」

 

「いや、オレのものだって」

 

「オレだってば」

 

「オレに決まってんだろ!!」

 

「もうめんどくせぇし、話進まねぇからオレ達にしろよ」

 

 

 

 男子生徒たちは笑みを浮かべて、薬を見つめていた。

 

「見てろ一丈字! これでお前のハーレム生活も終わりだ!!」

 

 飛鳥からしてみたら、Roseliaを自分たちのものにしたいのか、オレに嫌がらせしたいのかどっちだと思うだろう。そもそもハーレム生活を作った覚えもないし、友希那達が誰かと付き合おうが自由だし、そもそもそういう関係じゃないし、どうしたら良いか分からなかった。

 

 そんなこんなで男子生徒たちはRoseliaが全員集まっているところを見計らって、薬をガス状に変えて、匂いをかがせた。

 

*****************************

 

「…え?」

 

 何という事だろう。Roseliaは猫になってしまった。

 

紗夜「な、ナニコレぇええええええええええええ!!」

リサ「アタシ達猫になってるぅ!!?」

 

 自分や仲間が猫になったのを見て、紗夜とリサは驚きを隠せなかった。

 

あこ「うわー!! すっごーい!!」

燐子「で、でもどうして…」

友希那「…おそらくだけど、さっきのガスのせいよ」

「!」

 

 友希那は何か嫌な予感がすると察知していた。

 

紗夜「それはそうとどうするんですか! このままだと私たち教室に帰れませんよ!?」

あこ「あ、そうだ! 猫だからドラムのスティックも持てない!!」

燐子「…ゲームもできない」

リサ「今日アタシバイトのシフトなのに~!!!!!」

 

 紗夜たちも自分たちの置かされている状況がかなり危ういものだと知って、焦り始めた。

 

 その時、捕縛布が友希那達を囲んだ。

 

友希那「な、ナニコレ!?」

あこ「動けないよ~!!!」

 

「よーし、捕まえたぞ…」

 

 そう言って男子生徒たちが現れた。

 

紗夜「あ、あなた達は!!」

リサ「うちのクラスからもいるよ…」

紗夜「こんなにたくさん…」

 

 男子生徒たちは10数人以上もいた。顔はそれなりに良い方だったが、友希那に全く相手にされていなかったのだ。

 

友希那「あなた達…!! こんなことしてタダで済むと思ってるの…!?」

 

 友希那がそうにらみつけてきたが、猫の言葉でしゃべっているため、男子生徒達には分からなかった。

 

「この泥棒猫め!」

「え…?」

 

 男子生徒たちの言葉に友希那達は驚いた。いつもみたいに自分たちに媚びを売るわけでも、気持ち悪く接するわけでもなく、憤っていた。

 

「もう逃がさないからな」

「覚悟しろ!!」

 

紗夜「え…ちょ…」

あこ「もしかしてあこ達の事、他の猫と間違えてるんじゃ…」

燐子「こ、こわい…」

 

 燐子はおびえていた。

 

「とにかく全員捕まえたからな! 今日という今日はたっぷり躾けてやる!!」

 

 そう言って男子生徒たちが網を引っ張り、友希那達を連れて行こうとすると、突如男子生徒たちが大人しくなり始めた。

 

「…って、思ったけどやめた」

「!?」

 

 すると男子生徒たちが網をほどいた。

 

「ほら、どこでも行けよ」

「もうここに来るなよ」

「行こうぜ」

 

 そう言って男子生徒たちは去っていった。

 

あこ「な、なんだったのかな…」

燐子「さ、さあ…」

 

 それを陰から飛鳥、千聖、モカが見ていた。

 

飛鳥「千聖さん。お願いします」

千聖「ええ」

 

 そう言って千聖がRoseliaに近づいた。

 

千聖「あら、こんなところに5匹の猫ちゃんがいるわね」

「!?」

 

 Roseliaも千聖の存在に気づいて、目を輝かせた。

 

あこ「千聖さん!!」

リサ「千聖! 気づいて!! 私たちよ!!」

 

 そう言って5人が一斉に千聖を見つめては、助けを呼んだ。

 

千聖(…本当にこんな事ってあるのね)

 

 飛鳥の事を知らなければ、きっと見過ごしていただろうと千聖は困惑しながらも、5人を保護することにした。

 

千聖「弦巻家の人たちから話は聞いてるわ。大変だったわね」

友希那「!!」

千聖「今、解毒薬を作ってるらしいから、それまで待っ…」

 

 その時、Roseliaが急に元に戻った。

 

千聖・Roselia「へ?」

 

勿論猫になった時に服がすり抜けたので、全裸である。飛鳥は一瞬だけ見えてしまい、すぐに隠れた。

 

モカ「飛鳥くんのえっち~」

 

 モカがそうやってからかうと、

 

飛鳥「次回から宜しくな」

モカ「ごめんなさい」

 

 と一言謝った。

 

友希那「ちょ、ちょっと!!/////」

紗夜「なんで裸なの!!?//////」

リサ「きゃーっ!!!/////」

燐子「!?!?!?!?/////」

あこ「やばいよぉ! こんなの男子に見られたら…/////」

 

 全裸になり5人とも恥ずかしがって体を隠すと、すぐさま弦巻家の黒服たちがやってきて、数十人がかりでガードした。そしてそれを察知した飛鳥は顔を出して黒服とアイコンタクトをとると、超能力で上からも見えないようにガードした。勿論Roseliaは弦巻家の技術だと思っている。

 

リサ「す、すごいね…」

千聖「さあ、早く着替えて頂戴! 黒服さん達が時間を稼ぐから!」

友希那「わ、分かったわ!」

 

 こうして、Roseliaはピンチを乗り切ったのだった。

 

リサ「ほ、本当にみられてないよね…?/////」

燐子「お嫁にいけない…/////」

紗夜「それにしてもどうしてこんなことに…」

友希那「弦巻家にこのまま調べてもらいましょう」

あこ「そうしましょうそうしましょう!!」

 

 とまあ、犯人探しも見つかって…。

 

****************************

 

 後日、飛鳥はテレビ通話でモカと話をしていた。

 

モカ「どうなったの~?」

飛鳥「…聞かない方がいいよ」

 

 飛鳥はげっそりしていた。というのも、犯人たちがどうなったかを聞かされて、飛鳥は情けない気持ちでいっぱいになっていた。

 

モカ「それにしても飛鳥く~ん」

飛鳥「なに?」

 

 飛鳥の言葉にモカがニヤニヤしていた。

 

モカ「良かったね~」

飛鳥「何が言いたい…」

 

 モカの言いたい事を理解した飛鳥は口元をひきつらせた。

 

 

 ちなみに千聖はというと…。

 

千聖(燐子ちゃん…意外と…)

 

 

おしまい

 



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第389話「バンドリ幼稚園!」

 

 

『バンドリ幼稚園』

 

 男子生徒たちの発明品のせいで香澄達バンドガール25人が幼稚園児になってしまった!

 

「何とも言えないカオス展開!!」

 

ヤラカシA「香澄ちゃん達が幼稚園児になってしまったんじゃアレだなぁ!!」

ヤラカシB「これはお世話するしかない!」

ヤラカシC「お兄さんたちが遊んであげまちゅよ~?」

ヤラカシD「あと、お着替えやおトイレやお風呂…」

 

 そしてそれを陰で見ていた飛鳥は黒服と相談して容赦なく警察に通報した。

 

ヤラカシA「ちょ、ガチで通報すんなよぉおおおおお!!」

ヤラカシB「オレ達まだ高校生だぞ!!」

ヤラカシC「え? これ本当に逮捕されるの!?」

ヤラカシD「私女なんだけどぉ!!?」

 

 ヤラカシの中には女性もいたが、容赦なく逮捕された。

 

飛鳥「さて、早く戸山さん達を元に戻しましょう」

黒服「はっ!」

 

 こうして飛鳥は超能力を使って香澄達を元に戻した。

 

香澄「あれ? 私たち…」

たえ「元に戻ったみたい…」

 

 幼児化した時の記憶はちゃんと残っていたが、幸いにもまだ大ダメージを食らう前だったので、皆何ともなかった。

 

飛鳥(まあ、これで話が終わったら面白くないかもだけど…。それでも大惨事になるよりかはマシだからな)

 

 飛鳥は物語の面白さよりも、自身の身の安全を選んだ。

 

飛鳥(自身だけじゃなくて周りの人間の安全もだ!)

 

 そんなこんなで話は終わるかと思われたが…。

 

こころ「でも皆が幼稚園の頃の姿になるなんて楽しいわね!」

薫「いや、こころ。もうこのまま話を終わらせよう…/////」

 

 『かおちゃん』だった頃の姿に戻された薫は大ダメージを受けていた。

 

日菜「さんせー! おねーちゃん可愛かったから!!」

紗夜「日菜!!/////」

 

 日菜もこころの提案に乗ろうとすると、紗夜が止めに入った。

 

巴「なんか昔に戻ったみたいで懐かしかったな!」

ひまり「ま、まあそれはそうなんだけど…」

蘭「あ、あたしはもういい…////」

 

 蘭はスレる前の姿に戻されて、ちょっと恥ずかしがっていた。

 

 とまあ、また幼稚園児の姿になるかどうかで皆で揉めていた。

 

飛鳥(まあ、これでオレはお役御免かな…)

 

 飛鳥がそう言って帰ろうとしたが、

 

「はいはーい!」

「オレ達も幼稚園児化したいでーす!」

 

 とまあ、ヤラカシ達が性懲りもなくやってきた。理由は言うまでもない。幼稚園児の権限を悪用するに決まっていた。

 

こころ「あら? あなた達も?」

美咲「こころ! こいつらの話に耳を傾けちゃダメ! 絶対悪さするつもりだから!」

 

 美咲がそう言うと、飛鳥は指を鳴らして男子生徒を操り、そのまま退散させた。

 

こころ「あら? 帰っていったわね」

千聖(飛鳥くんね…)

 

 千聖が飛鳥の方を見つめると、千聖と飛鳥がアイコンタクトを送っていた。

 

香澄「あ、そうだ! 幼稚園児の姿でライブとかやったら面白そう!」

こころ「いいわねそれ!」

 

 香澄とこころの提案に皆が驚いた。

 

友希那「…Roseliaのイメージに合わないわね」

蘭「うちも…」

 

 友希那と蘭が難色を示したが、

 

モカ「じゃあRoseliaとAfterglowは保護者枠で~」

蘭・友希那「え?」

 

 という訳で!!

 

************************:

 

『バンドリ幼稚園・改!』

 

蘭「改!!?」

ひまり「なんかすっごい嫌な予感がする!!」

 

 ポピパ、パスパレ、ハロハピが幼稚園児化したので、アフグロとロゼリアはお世話をしてください。

 

蘭「はぁ!? なんでそうなるの!?」

ひまり「ちょっと一丈字くん呼んできて!!」

 

 するとモカが飛鳥を連れてきた。

 

モカ「連れてきたよ」

飛鳥「ああ、今回はそういうパターンなのね…」

 

 そんなこんなで飛鳥達は幼稚園児化した15人と遊ぶことになりました。

 

蘭「じゃあ一丈字。後宜しく」

友希那「頼んだわよ」

飛鳥「あ、はい…」

 

 蘭と友希那が押し付けようとしたが、

 

「うわーん! いくじほうきされたー!!」

「!?」

 

 と、誰かが泣き叫ぶと、他の子どもたちも泣き始めた。

 

飛鳥(その前に育児放棄を何で知ってるんだろう…)

 

 そして泣き叫ぶと周りにいた一般生徒たちは、逃げようとした蘭と友希那をジト目で見つめたので、2人ともばつが悪そうにした。

 

飛鳥「皆。そういう事言っちゃダメだよ。あのお姉さんたちは今忙しくて、一緒に遊べないんだ」

蘭(一丈字…)

友希那(……!)

 

 自分たちを庇ってくれた飛鳥に蘭と友希那は目を大きく開いた。

 

飛鳥「暫くしたら、一緒に遊んでくれると思うから」

「本当…?」

飛鳥「本当だとも。ねっ」

 

 そう言って飛鳥は友希那と蘭の方を見た。

 

蘭「え、えっと…」

友希那「そうね。ちょっとだけ待って貰えるかしら」

「!」

 

 蘭が怯んだのをいいことに、友希那は空気を読んで承諾すると、蘭もそれに続いた。

 

飛鳥「それまで良い子にして待ってようね」

「はーい!」

リサ(飛鳥くんありがとう…!!)

 

 飛鳥のフォローにリサが感涙した。

 

モカ「じゃあそれまでの間はお姉さんたちと一緒に遊びましょうね~」

 

 とまあ、モカもやる気になってそのまま相手をしたわけなのだが…。

 

ひまり「いたいいたいいたいいたい!!」

 

 案の定ひまりがおもちゃにされていた。はぐみとこころに対しておうまさんごっこをしていたのだが、ほっぺたをつねられていた。

 

香澄「そういえばおねーちゃん。おっぱいおっきいねー」

ひまり「コ、コラ!//// おっぱいの話をしてはいけません!////」

 

 ひまりと香澄がおっぱいの話をしていたが、飛鳥はひまりの方を振り向かなかった。振り向いたら色々面倒だからだ。

 

蘭「…スケベ」

飛鳥「美竹先生。子供たちの前でそういう言葉を使ってはいけませんよ」

蘭「誰が美竹先生だ!///」

 

 その時だった。

 

「ねー美竹先生もいっしょにあそぼーよー」

蘭「なっ…」

「いいからいいから」

 

 そう言って蘭は子供たちになつかれていた。

 

モカ「蘭の意外な一面とっとこ~」

蘭「モカァ!!」

飛鳥「美竹先生。大声出さないでください。子供たちがビックリしますよ」

「美竹せんせー。声でかーい」

「どうしたらそんなにおっきいこえだせるのー?」

 

 とまあ、ずっと囲まれている状態で、それを飛鳥とモカが見つめていた。

 

 そしてこの後も続いて…。

 

日菜「ダメー! おねーちゃんはひなのー!!」

紗夜「ちゃんと皆と仲良くしなさいっ!」

つぐみ「まあまあ紗夜先せ…じゃなかった、紗夜さん」

 

 日菜が紗夜を独占しようとして皆を困らせていたり、

 

千聖「せんせーはちーちゃんと結婚するのー!」

薫「違う。かおちゃんと結婚するの!」

飛鳥(この二人こんなキャラだったっけ…?)

 

 飛鳥が千聖と薫に取り合いされていたり、

 

ひまり「ちょ、ギブ…子どもの体力凄すぎ…」

はぐみ「それじゃひまり先生をこちょこちょしちゃおー!」

香澄「おー!」

ひまり「ちょ、やめ…あはははははははは…あんっ//////」

 

 ひまりが滅茶苦茶おもちゃにされたり、

 

「美竹せんせー。おうたうまーい!!」

「もっとうたってー」

蘭(は、早く元に戻してほしい…////)

 蘭が思ったほか子供たちに大人気で、それをさみしそうに友希那が見つめていた。

 

リサ「…もっと笑顔の練習しようか」

友希那「どうせ私は不愛想よ」

 

***********************

 

 そんなこんなで皆元の姿に戻りました。

 

こころ「楽しかったわ!!」

 

 こころは満足そうだったが、一部のメンバーが顔を真っ赤にして俯いていた。

 

有咲「……////」

美咲「……//////」

 

 幼少時になった時の記憶は残っていて、飛鳥達に不器用な甘え方をしていて有咲と美咲は顔を真っ赤にしていた。

 

日菜「いやー。おねーちゃんにすごく甘えられて、あたしは大満足です」

紗夜「~~~~~!!!/////」

 

 紗夜が顔を真っ赤にしているのは日菜の事もそうだが、日菜が飛鳥の目の前で自分の事を大好きだと言って顔を真っ赤にしていたのを、ニコニコした顔で見られたからだった。

 

千聖「……///」

薫「……/////」

 

 おままごととはいえ、滅茶苦茶飛鳥を取り合っていて、千聖と薫は顔を真っ赤にしていた。

 

モカ「取り合われた気持ちはどう~?」

飛鳥「光栄ですけど、ご本人たちの意思を尊重して忘れてあげましょう」

 

 こうして幼稚園児化の話が終わったわけだが…。

 

千聖「写真消して!!」

日菜「絶対いやー!!!」

 

 …撮影していた人間がいたらしく、消すか消さないかで暫くもめたという。

 

ひまり(でも小さい頃の薫先輩可愛かった…)

モカ「ひーちゃんの写真もあるよー」

ひまり「変なのばっかり!!」

 

 

おしまい

 



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第406話「シミュレーションマシン」

 

 

「突然だがこんなものを作ったぜ!」

 

 バンドリ学園のとある研究室。男子生徒Aが何かを作ると、仲の良いBとCが反応した。

 

B「なにそれ?」

A「シミュレーションだ!」

C「シュミレーションマシーン?」

B「何すんの。それで」

A「これであの一丈字が本当に女に興味があるという事を証明して、色々でっちあげてやるんだよぉ…」

B・C「意味わからん」

 

 この男子生徒Aは2年3組の生徒であり、同級生のバンドガールとはクラスが違うため、中々接点が持てずにいた。だが、自分と同じ状況だというのに、次々と美少女たちと仲良くなる一丈字が憎くて仕方なかったのだ。

 

A「一丈字も女の子からの色香攻撃には弱い筈だ。このシミュレーションで、こいつの痴態を取り上げて、近づかないように脅迫してやる!」

B「それ作る暇あったら、話しかける方が簡単じゃね?」

A「そうなんだけどォ~」

C「これが全然相手にされないんだよな…。良くても愛想笑いであしらわれるし」

A「その通りだ! それじゃあ早速…そうだ。まずは手始めにイヴちゃんと居候したらどうなるんだというシュミレーションを試してやる!!」

 

 そう言って男子生徒Aが再生するが、飛鳥とイヴの名前を聞いた男子生徒たちが次々と入ってきた。

 

***********************

 

イヴ「私今日から、一丈字さんの家でお世話になる事になりました!」

 

 映像には飛鳥とイヴ、そして飛鳥の家の玄関前が映し出されていた。

 

B「めっちゃいい出来じゃん」

C「ていうかこの技術力…。もっと別の方向に活かせなかったのか?」

A「黙ってみてろ」

 

 イヴが自分の荷物を持ってやってきたが、飛鳥は困惑していた。

 

飛鳥「…初耳なのですが」

 

 飛鳥はあまり乗り気じゃなかった。

 

A「くぅ~!! この憎たらしい顔! 本当は嬉しいんだろ!!」

B「いや、なんか本当に嫌そうに見えるぞ…」

C「なんか謎が多いんだよなアイツ…」

 

 映像を見てAたちがツッコミを入れていた。飛鳥は能力者であるがゆえに秘密主義で、あまり自分のプライベートを曝け出したくないのだ。というか部屋に能力者関連の私物を置いてるため、普通にバレる可能性があるからだ。

 

イヴ「実は私の親がしばらく家を空けることになってしまい、独りなのです!」

飛鳥「事務所にはちゃんと相談はしましたか?」

イヴ「しました。そしたら一丈字さんの家に行くのが一番いいと! とても強いですし!」

飛鳥「…恐らくその連絡がこっちに来てないという事になりますね」

 

 飛鳥としてはこの時、千聖からうちの事務所のスタッフは無能という言葉を聞いていたが、まさにその通りだと感じていた。

 

イヴ「そ、そうだったんですか…?」

飛鳥「今からでも遅くないですし…。そうだ、白鷺先輩にちょっと相談してみたらどうですか?」

イヴ「恐らく千聖さんもこっちに来ます!」

飛鳥「何でですか?」

イヴ「そ、それは…言えません!///」

 

 イヴが頬を染めてきっぱり否定すると、飛鳥は何となくだが察した。

 

飛鳥「まあ、とりあえず私一人の判断ではどうにもならないので…」

 

 飛鳥が電話をかけようとするが、イヴが制止した。

 

イヴ「アスカさん…。やっぱり迷惑ですか…?」

飛鳥「迷惑じゃないけど、自分の影響力を考えなさい」

 

 イヴが涙目+上目遣いで飛鳥に問いただしたが、飛鳥が毅然とした態度でイヴに言い放った。

 

飛鳥「あなた達の仕事はお客様やたくさんの人たちがいて成り立っている筈です。その人たちの思いを裏切る事は決してやってはなりません」

「えらい!!」

 

 飛鳥が思ったほか真面目に諭しているのを見て、一部の男子生徒たちが驚いていた。

 

B「…ちょっと見直したわ」

C「ちゃんとファンの事考えてるんだな」

A「いや、これはあくまでシミュレーションだ! そんな事言ってイヴちゃんのハートを…」

 

イヴ「…流石アスカさんですね」

飛鳥「分かっていただけましたか…。せめて事務所には…」

 

 飛鳥が電話をかけようとしたが、イヴの目がとろーんとしていた。

 

イヴ「そういう所がまた、ブシドーにのっとっていて、好きです…♡」

(惚れたァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!)

 

 シミュレーションの中とはいえ、イヴが飛鳥に惚れる所を見て、男子生徒たちは発狂していた。

 

「でもこれ裏を返せば、こういうやり方だったらイヴちゃん惚れるって事だよね!?」

「おっしゃあ、今度真似したろ!!」

「メモらなきゃ!!」

 

 とまあ、男子生徒たちが色々興奮していたが、これはあくまでシミュレーションなので、必ずしもその通りになれるとは限らない。

 

飛鳥「という訳で電話かけますね」

 

 そう言って飛鳥は電話をかけたが、

 

『本当に申し訳ございません! 寮はもういっぱいで、若宮には一丈字さんにお世話になるように言ってしまって…。謝礼金は出させて頂きますので、どうか…』

飛鳥「本当にお願いしますよ。彼女も今大事な時期ですし、私も急にそういう事を言われると困ります」

 

 飛鳥は容赦なしにスタッフに文句を言っていた。

 

飛鳥「もし何かあった場合にそちらできちんと事情を説明することと、あとで証明書を送ってください。この2点を守っていただけるなら引き受けましょう」

『申し訳ございません…。よろしくお願いします』

 

 そう言って飛鳥は電話を切った。

 

B「なんか…パスパレのマネージャーよりマネージャーしてね…?」

C「なんかすっごい慣れてるような…」

A「くぅ~!! 透かしやがってぇ~!!!」

 

 そんなAの嘆きをよそに、映像の中の飛鳥はため息をついた。

 

飛鳥「仕方ありませんね…。中にお入りください」

 

 そう言って飛鳥はイヴを部屋の中に入れた。

 

イヴ「…これで彩さん達より一歩リード出来ました」

飛鳥(いや、後退してるよ…)

 

 イヴの独り言をちゃんと聞いていた飛鳥は口には出さないものの、イメージダウンはしていたが、男子生徒たちはブーイングを上げた。

 

「やっぱりこいついけすかん!!」

「女の子が家に入ってきてるんだから少しは喜べよ!!」

「こいつまさか…」

「それでも男か!!」

 

 とまあ、騒いでいた。

 

イヴ「アスカさん」

飛鳥「何ですか?」

 

 飛鳥は困った様子でイヴの方を見ていたが、イヴは飛鳥の都合など知らずにニコニコしていた。

 

イヴ「本当にありがとうございます。家に入れて頂いて」

飛鳥「事務所の方々に言われたら仕方ありませんよ」

イヴ「勿論お礼はさせていただきます!」

飛鳥「お礼?」

イヴ「アスカさんの喜ぶことならなんでも!」

 

 イヴの発言に男子生徒たちが血眼になった。

 

「喜ぶことなんでも…?」

「ま、まさか…」

「ゆ、ゆるさーん!!!」

「どんなことをするつもりだぁ~!!!?」

 

 しかし、飛鳥の態度は変わらなかった。

 

飛鳥「何もしなくて結構ですよ」

「!?」

 

 そう冷たく言い放った。

 

イヴ「ど、どうしてですか?」

飛鳥「先ほども言ったでしょう。ご自身の影響力を考えろって。パスパレのメンバーであるあなたにそういう事をさせたら、ファンの人たちがやっかみますし、いくらプライベートとはいえ、あなたはアイドルなんです」

 

 あくまで自分の事をアイドルしてしか見ていないと意思表示する飛鳥に、イヴは悲しむ表情を一瞬見せそうだったが、自分の仕事の事や将来の事をちゃんと理解し、自分の事を思って言ってくれている事を理解できていたので、悲しげに笑った。

 

イヴ「…分かりました」

 

 イヴの発言に男子生徒たちが発狂した。

 

「一丈字てめぇー!!」

「イヴちゃんにそういう顔させやがって!!」

「やっぱりこいつは殺すべきだ!!」

「ていうかもう学校から追い出すべき…」

「ちょっと?」

「!!?」

 

 後ろから扉が開かれて、誰かが声をかけると皆が後ろを振り向いた。そこにはパスパレ本人の姿があった。

 

千聖「これ、いったいどういう事なの?」

「ち、千聖ちゃん…!」

 

 本人にバレて、青ざめる男子生徒達。

 

彩「イヴちゃん。飛鳥くんのおうちに行ったの?」

イヴ「い、行ってないです!! 何なのですかこの映像!!?」

麻弥「一丈字さんの家って確かもうちょっとお高めのマンションでしたよね?」

日菜「なんかおうちの中ボロくない?」

麻弥「いや、日菜さん…」

 

 その時、場面が風呂に切り替わった。

 

飛鳥「はー…。一体どうしたもんかね…」

 

 飛鳥がゆっくり湯船に浸かっていると、

 

「アスカさん?」

飛鳥「何かありました?」

 

 イヴの声がした。

 

「やっぱりお背中お流ししようかと思います」

飛鳥「あ、私もう湯船に浸かっているので結構です」

「いえ! せめてこれだけでもさせて頂けないでしょうか!」

飛鳥「うーん…。それやられると一番まずいので、ちょっと考え…」

 

 飛鳥がそう言ったその時、イヴ(映像)が扉を開けた。何という事だろう。全裸だった。勿論大事な部分は隠れて…いなかった。正座しながら扉を開けていて、前にかがんで谷間は強調され、乳首も丸見え。股間は両方の太ももに隠れていて見えなかったが、それでも並の男を悩殺するには十分すぎた。

 

彩・千聖・麻弥「」

日菜「うわ、イヴちゃん。やっぱりおっぱいおっきいねー」

イヴ「……!!!///////」

 

 彩、千聖、麻弥が真っ白になり、日菜がいつも通りに振舞うが、イヴは顔を真っ赤にして涙目で震えていた。そして男子生徒たちの反応は様々で両目を大きく広げて、イヴ(映像)の裸体をガン見していたり、変な奇声を上げていたり、猿みたいになっていたり…もうそれは地獄絵図だった。

 

 そして我に返ったイヴは涙目でこう叫んだ。

 

イヴ「キャ~~~~~~~~~~~~!!!! 消してくださ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~い!!!!!/////////」

日菜「あ、そこはブシドーじゃないんだ」

麻弥「ひ、日菜さん!! そんな事言ってる場合ですか!!!」

彩「え、ちょっとこれ、どうなってるの!!?」

千聖「早くこの映像を消しなさ―――――――――――――――――い!!!!!」

 

 この後、飛鳥の力を借りて男子生徒達と彩・イヴ・麻弥・日菜の記憶を消すことに成功した。ちなみに千聖は次こういう事が起こらないように対策を立てる為、記憶をそのままにした。

 

 

 そしてどうなったかというと…。

 

千聖「うぅ…うぅぅぅ~~~~~~!!!!!」

モカ「モカちゃんの胸の中で泣いてくださいな千聖さ~ん」

 

 飛鳥、千聖、モカ、こころの4人が弦巻家に集まったが、千聖はやり場のない怒りをぶつけられず、モカの胸の中で泣いた。

 

飛鳥「ああいうのつくれるなら、なんで…」

こころ「千聖を泣かせるのは許せないわね! 懲らしめなきゃ!」

飛鳥「出来るだけスケールは小さくね…」

千聖「いや、こころちゃん」

「?」

 

 千聖が涙目でキッと飛鳥とこころを睨みつけた。

 

千聖「徹底的にやりましょう」

飛鳥「いや、落ち着いてください…」

千聖「あいつらの×××××を徹底的に小さくすればいいのよ!」

飛鳥「女の子がそんな事を言ったらいけません!!!」

 

 

おしまい

 



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紗夜愛され編
第337話「飛鳥と紗夜とビーチバレー」


第337話

 今回の設定

・ 紗夜 ← Roselia + 日菜
・ 早い話が紗夜愛されで、飛鳥は巻き込まれている。

**************************


 

 

 それはある日の事だった。

 

「い、一丈字さ…一丈字くんっ」

「?」

 

 飛鳥が廊下を歩いていると、紗夜に話しかけられたがモジモジしていた。

 

飛鳥「どうかしましたか? 氷川先輩」

紗夜「い、今いいかしら…?////」

飛鳥「はい」

 

 飛鳥が不思議そうに紗夜を見つめていた。

 

紗夜「そ、その…今度、温水プールに一緒に行ってもらえませんか…?」

飛鳥「温水プール?」

 

 紗夜の言葉に飛鳥は不思議に思っていた。生真面目な紗夜が異性と一緒にプールに行くなんて考えにくいので、何かあったのではないかと考えていた。

 

飛鳥「何かありました?」

紗夜「え、えっと…何もないわよ」

「いや、ありまくりよ」

紗夜「うわあっ!!!」

 

 友希那が飛鳥と紗夜の間に割って入ったので、紗夜が滅茶苦茶驚いていた。

 

リサ「紗夜。どういう事?」

燐子「詳しく説明してください…」

 

 リサと燐子が紗夜に事情を聴こうとしたが、目にハイライトがなかったようなあったような。ちなみにあこは燐子のスマホからテレビ通話で参加している。

 

あこ『あこ知ってますよ。最近できたダシマ温水プールで、ビーチバレー大会があって、優勝するとポテト食べ放題券が手に入るんですよね』

紗夜「!!//////」

 

 あこの言葉に紗夜が頬を染めた。

 

リサ「なんだー。言ってくれればアタシが組むよ? わざわざ飛鳥くんに頼まなくても…」

あこ「けどこれ、男女ペアじゃないとダメらしいんですよ…」

友希那「今は同性カップルもいるのよ。遅れてないかしら?」

 

 いちゃもんをつける友希那に飛鳥はどうすればよいか考えていた。参加したい理由は分かり、そういう事であれば協力は惜しまないが、友希那達が絶対にOKするわけがない。紗夜の判断に任せることにした。

 

友希那「その食べ放題券が欲しいなら弦巻さん達にお願いすれば…」

飛鳥「いや、流石にそれはダメですよ…」

 

 飛鳥が困惑すると、友希那がキッと飛鳥をにらみつけた。

 

友希那「紗夜は渡さないわ」

飛鳥「いえ、奪おうなんて考えておりませんよ」

 

 友希那だけでなく、リサや燐子も何かしら目が笑ってないので飛鳥は困惑した。紗夜の顔を見るが、何とかポテト食べ放題券を手に入れられないか考えていた。

 

飛鳥(…これじゃ、他の男子に頼んでも結果は同じだろうな)

 

 すると飛鳥は友希那達の悪意を逆手にとって、超能力を発動し、何とか記憶を改ざんした。

 

飛鳥(強い意志があれば洗脳は弾けるけど、その強い意志とこっちの超能力を同調させれば洗脳は出来る。けど、この調節が難しいんだよな…)

 

 そして操れる時間は限られているので、そこで何とか約束を取り付けることにした。

 

友希那「…とはいうものの、流石に首を突っ込むのはかわいそうね」

紗夜「!」

リサ「そうだねー。頑張ってー」

 

 そう言って友希那達を退場させた。

 

飛鳥「ど、どうしたんでしょう…」

 

 飛鳥は演技をしてみせ、紗夜に話しかけた。

 

紗夜「え、ええ…。あ、そ、それはそうと一丈字くん…」

飛鳥「ビーチバレーの件ですよね。私は構いませんよ」

 

 飛鳥は何とか約束を取り付けて、当日のビーチバレーに臨むのだった…。

 

**********************

 

 当日。双子の妹である日菜は仕事で、Roseliaも運よくオフだった(というかオフにした)。飛鳥は温水プール前で紗夜と待ち合わせし、そのままエントリーを済ませた。

 

 エントリーを済ませたその時、飛鳥の洗脳が解けた。

 

友希那「はっ!!」

リサ「!」

燐子「!!」

あこ「かっあ!!」

日菜「!」

 

 5人は飛鳥と紗夜がビーチバレー大会に出ることを思い出して、慌てて紗夜に電話をかけた。

 

 その頃…

 

飛鳥「……」

紗夜「ど、どうでしょうか…/////」

 

 飛鳥と紗夜は水着姿で鉢合わせをしていたが、飛鳥が全身黒のダイビングスーツなのに対し、紗夜はパステルブルーのビキニを着ていた。

 

飛鳥「お似合いですよ」

紗夜「そ、そう…」

飛鳥「それでは参りましょう」

 

 こうしてビーチバレー大会が開催された。飛鳥・紗夜ペアのほかにも15組参加していた。

 

飛鳥「この人たちもカップルですかねぇ…」

紗夜「…だと思います」

 

 そして友希那達が会場に駆け付けたころには、ビーチバレー大会は決勝戦を迎えていた。

 

友希那「紗夜!!」

 

 友希那達が会場に入るや否や、水着姿の飛鳥と紗夜がコートの上に立っていた。

 

リサ「さ、紗夜の水着姿…!」

燐子「とっても可愛いです…」

 

 紗夜の水着姿にリサと燐子はメロメロになっていたが、すぐさまペアを組んでいる飛鳥に対しては殺意が沸いていた。

 

あこ「うぅ~!! いいなぁ~!!!」

日菜「おねーちゃんとペア組まないでー!!!」

 

 あこと日菜が露骨に嫉妬して叫ぶと、飛鳥と紗夜がその声援が聞こえたのか、困惑していた。

 

飛鳥「すぐにカタをつけましょう」

紗夜「そ、そうね…」

 

 そして決勝戦が始まったが、紗夜が穴だと相手チームに判断されたのか、紗夜に対して集中攻撃が行われた。

 

友希那「あの相手チームぶっ殺してやろうかしら…」

リサ「友希那。殺しちゃダメだよ」

日菜「おねーちゃんばっかり狙うなんて…」

 

 友希那達は相手チームに対して殺意を抱いていたが、飛鳥がアシストをして紗夜に点を入れさせ、地道に点を取っていった。そのうち、相手も体力がなくなってペースが落ちて、何とかそのまま優勝した。

 

飛鳥「お疲れさまでした」

紗夜「ええ…。本当にありがとうございます」

 

 飛鳥と紗夜がハイタッチをすると、友希那達は無表情になった。

 

紗夜「…そしてすみません」

飛鳥「いえ、何とか言い訳を考えましょう」

 

 そして表彰式。飛鳥と紗夜はトロフィーとポテト食べ放題券を受け取って、そのまま幕を閉じた訳だが…。

 

*************************

 

 大会終了後

 

友希那「優勝おめでとう。流石紗夜ね」

紗夜「み、湊さん…」

 

 激おこの友希那達を見て、飛鳥と紗夜は困惑していた。

 

リサ「それで、ポテト食べ放題券はちゃんと手に入れた」

紗夜「え、ええ…」

燐子「そうですか…」

 

 友希那達の様子を見て飛鳥は困惑した。この人たちこんなキャラだったっけと言わんばかりに…。

 

友希那「さて、それはそうと…」

 

 一気に視線は飛鳥に向けられた。

 

飛鳥「ええ。言い訳はしませんよ」

友希那「潔いわね。さて、誰に断って紗夜とペアを組んだのかしら?」

飛鳥「紗夜先輩です」

 

 友希那が圧をかけて飛鳥に話したが、飛鳥は動じなかった。

 

紗夜「あ、あの湊さん。私が声をかけたので…」

リサ「分かってるよ。でもね…」

飛鳥「その分紗夜先輩とビーチバレーをしてあげたら良いと思います」

「!!?」

 

 飛鳥の言葉に紗夜が驚いた。

 

飛鳥「もうペアを組むことはないと思います」

友希那「そんなこと言ってこれからもあるんでしょう」

飛鳥「思いますなので、分かりません」

燐子「で、出来れば組まないでほしいです…」

あこ「あこも紗夜さんとビーチバレーしたいよ!!」

飛鳥「だそうなので」

紗夜「……」

 

 そんなこんなで飛鳥の任務は終わった。

 

***************************

 

 ところがどっこい…。

 

紗夜「皆さん。これは一体どういうことですか?」

「……」

 

 ある日のバンドリ学園。紗夜は激おこで、友希那達に説教していた。

 

リサ「いや、その…」

紗夜「私の隠し撮り写真を交換していたなんて…日菜!!」

日菜「ご、ごめんなさ~い!!」

 

 日菜の言葉に紗夜がため息をつくと、

 

紗夜「私も本気で怒りました」

燐子「ま、まさか…」

あこ「Roseliaをやめるとか言わないですよね!?」

友希那「そ、それだけは嫌!!!」

 

 皆がRoseliaをやめようとしていると思い、友希那達は慌てだした。日菜は姉妹だから大丈夫だと思わず、一緒になって慌てている。

 

紗夜「一丈字くんとポテト食べに行ってきます」

 

 紗夜の発言に空気が止まった。

 

リサ「さ、紗夜? 流石に飛鳥くんも迷惑だと思うよ…?」ダラダラ

あこ「そ、そうですよ!」ダラダラ

紗夜「それなら心配いりませんよ」

日菜「ど、どうして!?」

 

 紗夜が冷めた目で日菜たちを見つめた。

 

紗夜「先日のビーチバレーが学園から評価されているので、これから彼と色々ペアを組むことが増えるでしょうね」

日菜「そ、そんなぁ!! おねーちゃん!!」

友希那「ごめんなさい!! お願いだから私とペアを組んで頂戴!!」

リサ「いや、アタシと!!」

 

 と、5人が一斉に紗夜に縋りつくと、紗夜も流石に困惑し、遠くからモカ、千聖が困った顔で見つめていたが、飛鳥は完全に知らん顔だった。

 

千聖「…止めなくていいの?」

飛鳥「もうわやです。手に負えません」

 

 飛鳥は完全にツッコミを放棄した。

 

 

おしまい

 

 

 



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第338話「大会で勝っても」



 一丈字飛鳥です。バンドリ学園に通っている高校1年生です。

 表向きは普通の高校生ですが、超能力者でもあって、人知れず超能力者の仕事もしているわけですね。

 超能力者の仕事はどんなものかと言いますと、いつも皆さんが見ている通り、ストーカーの撃退や超能力を使った害虫駆除、皆さんの生活の中で対処するのに中々手間のかかる仕事を超能力を使ってやっている訳ですね。まあ、知識はある方なのでたまに超能力なしでやる場合もございますが。

 基本的にこういう仕事をするのですが、ごく稀に賞レースに出ることもあるんですね。賞品を代わりに取ってくるミッションだったり、ライバルを潰したりしています。高校生という立場だからこそ出来る仕事をやっていますね。

 で、今回はその賞レースに出て優勝した後のお話です。




 

 

 ある日のバンドリ学園。

 

「一丈字くん。優勝おめでとう」

 

 飛鳥は全校生徒の前で表彰されていた。飛鳥としては全校集会で表彰されないためにいろいろ工夫をしていたのだが、結局学校にバレてしまい、事情聴取を受けたのち表彰されることとなった。

 

 これには男子生徒たちもバンドガールズも驚いていた。

 

 全校集会が終わり、皆が教室に帰ってくるとクラスメイト達が飛鳥に話しかけようとしたが、飛鳥が超能力を使って存在感を消していた為、話しかけられなかった。

 

飛鳥(前にクラスメイトに囲まれたことがあったけど、馴染めないんだよな…)

 

 授業中に先生から大会の話をされた際には、ちゃんと受け答えしていたが、結果的にそれで授業が全部潰れた教科があった。

 

飛鳥(いや、授業しろよ!!)

 

 そして昼休憩。飛鳥は逃げるように教室から脱走して、事前に準備していたおにぎりをもって、いつもの中庭のベンチに座っていた。もはや飛鳥の特等席となっていた。

 

飛鳥「はー…」

 

 飛鳥が一人でくつろいでいると、

 

「一丈字くん」

 

 紗夜が現れた。

 

飛鳥「氷川先輩」

紗夜「ここで何をしているのですか?」

飛鳥「ぼっち飯です」

紗夜「はい?」

飛鳥「あ、何でもないです。昼食です」

 

 飛鳥はボケてみたが紗夜は『何言ってんだコイツ』みたいな顔をしてきたので、即座に辞めた。

 

紗夜「ぼっち飯というのは何ですか?」

飛鳥「本当に何でもないです」

紗夜「教えてください」

飛鳥「えっとですね。ぼっち飯というのは…」

 

 飛鳥がぼっち飯を紗夜に教えた。

 

飛鳥「まあ、早い話が一人でご飯を食べる事ですね」

紗夜「そ、そうなんですか…」

 

 飛鳥の言葉に紗夜は少し心配した。

 

紗夜「クラスで浮いている…という訳ではないの?」

飛鳥「いいえ。皆さんは親切にしてくださりますが、一人の時間も欲しいんです」

紗夜「そ、そう…」

 

 飛鳥の言葉に紗夜は困惑していた。カフェテリアで一人で食べるならまだしも、学校から距離のあって人の来ない場所に一人で食事をするのは、何かあるとしか思えない上に、風紀委員としてほっとけないからだった。

 

飛鳥「氷川先輩はこちらにはどのようなご用件で?」

紗夜「あなたがここに向かうのを見かけたから、追いかけてきたのよ」

飛鳥(あ、これ嫌な予感がする奴だ)

 

 そう、紗夜はいろんな人たちから愛されており、いわばアイドルみたいなものだった。今まで紗夜に手を出そうとして社会的に抹殺とか闇討ちされた男子生徒は数知れず。飛鳥も最近はちょっと目の敵にされ始めている。

 

 飛鳥としては紗夜と一緒にバンドを組んでいる友希那達も怖いし、双子の妹である日菜も怖いし、能力者としての仕事に支障をきたすため、出来れば敬遠したい相手だった。

 

 だが、紗夜自身は悪い人物ではないのでそういう訳にもいかないのも事実だった。

 

飛鳥「そうですか。ご迷惑をおかけしました」

紗夜「あなたが何もなければそれでいいのだけど…。それはそうと一丈字くん」

飛鳥「何です?」

紗夜「先日の大会の優勝、おめでとうございます」

飛鳥「ああ、ありがとうございます」

 

 紗夜が律儀にお祝いの言葉を言ってきたので、飛鳥は丁寧に答えた。

 

紗夜「あなたああいうのは得意なの?」

飛鳥「得意というかなんというか…。中学でそういうの学習する機会がありまして、ちょっとおもしろそうだなって」

 

 実際は優勝賞品が欲しいというクライアントの依頼で参加したのである。

 

紗夜「そ、そうですか…」

飛鳥「それから気分転換というのもありますかね」

 

 飛鳥がそう言い放つと、紗夜は複雑そうにしていた。

 

飛鳥(…日菜さんの事を)

 

 紗夜の双子の妹である氷川日菜はちょっと学習すればすぐに上達する『才能マン』であり、紗夜はそんな優秀な妹にずっと劣等感を抱いており、他人に心を開かない時期があったのだ。そして今の自分が日菜と重なって見えているのだろうと、飛鳥は紗夜の顔を見て判断した。

 

飛鳥(だが、勝負の世界は甘くはない。紗夜さんの気持ちは分かるけど…)

 

紗夜「流石ですね」

飛鳥「え?」

 

 紗夜が苦笑いしながら飛鳥を見た。

 

紗夜「前々からあなたの事は注目していたのですが、やはりそれだけの力があったようですね」

飛鳥「氷川先輩…」

紗夜「私も負けてられませんね」

 

 そう言う紗夜の姿にかつての劣等感を抱いている姿はなかった。自分の弱さとちゃんと向き合い、前に向かって成長していこうという姿が感じ取れた。

 

紗夜「ちなみに、また賞レースに出るつもりなの?」

飛鳥「当面はないですね。テストもありますし」

紗夜「それもそうね」

 

 紗夜がそう言うと、飛鳥は紗夜の近くにある木の陰から友希那達が嫉妬のまなざしでこっちを見ている事に気づいた。

 

飛鳥(いつも一緒にいるから心配いらないと思うんだけどなぁ…)

 

 飛鳥はそう考えて難しい顔をした。

 

紗夜「どうしたの?」

飛鳥「いえ、何でもございません」

紗夜「何でもないことないじゃない。言いなさい!」

飛鳥「湊先輩たちがずっとこっちを見てます」

紗夜「えっ!!?」

 

 紗夜が後ろを振り向くと、監視していたことに気づいたのか友希那達が出てきた。

 

リサ「あ、あははー。ゴメンねー。どんな話をしてるか気になっちゃって…」

友希那「話は全部聞かせて貰ったわ」

紗夜「ちょ、み、皆さん…」

飛鳥「氷川先輩に何かあったんじゃないかって、ご心配されていたそうですね」

 

 飛鳥は何とか話を穏便に済ませようとした。

 

日菜「飛鳥くん。優勝したからと言って、おねーちゃんと二人きりになっていい訳じゃないんだよ?」

飛鳥「ご安心ください。そういう関係にはなれませんよ」

紗夜「え?」

 

 紗夜の言葉に飛鳥を見つめた。

 

飛鳥「これから忙しくなりますし、それに…」

「?」

 

 すると飛鳥はこう言った。

 

飛鳥「紗夜先輩は皆さんのアイドルですから。独り占めなんて出来ませんよ」

 

 飛鳥の言葉に紗夜が顔を真っ赤にした。

 

飛鳥「それでは、失礼します」

 

 そう言って飛鳥はスーッとそのまま去っていった。

 

紗夜「……!!///////」

友希那「紗夜。大丈夫? 一丈字くんに何かされてない?」

 

 友希那達が紗夜に近づいたが、紗夜の顔はリンゴのように真っ赤だった。

 

燐子「さ、紗夜さん…?」

あこ「顔が真っ赤だけど熱があるんじゃ…」

紗夜「だ…」

「?」

 

 紗夜が顔を覆った。

 

紗夜「誰がアイドルですか…っ!!//////」

 

 そう言って紗夜がプルプル震えると、友希那達も尊死した。

 

******************

 

 その後

 

千聖「…あの後、紗夜ちゃんと燐子ちゃんがずっと様子が変だったのよ」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 飛鳥は自宅で千聖と電話をしていたが、紗夜と燐子の様子を聞かされて困惑した。

 

 

おしまい

 



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第339話「紗夜はアイドル的存在」

 

 ある日のバンドリ学園。紗夜は飛鳥をにらみつけており、飛鳥は視線をそらしていた。

 

紗夜「一丈字くん。断言します。私はアイドルではありません」

飛鳥「そ、そうですねぇ…」

 

 先日、紗夜と二人きりで話していた時に、Roseliaと日菜に絡まれて、男女の仲を指摘された時に飛鳥は『紗夜は皆のアイドルなので手を出せない』という発言をして、紗夜を辱めたのだ。

 

飛鳥「あ、紗夜先輩」

紗夜「言い訳は聞きません」

飛鳥「言い訳ではありません。意見」

紗夜「意見も聞きません」

飛鳥「何言ってもダメなんですか?」

紗夜「何も聞きません」

飛鳥「スカートにシールがついてます」

紗夜「!!?」

 

 飛鳥の発言に紗夜がスカートを見ると、確かにシールがついていて、紗夜は慌てて取った。

 

紗夜「ゴホン! これに関してはご指摘ありがとうございます」

飛鳥「あ、はい…」

 

 怒っていても、人に何かしてもらったら律儀にお礼をいう所は紗夜らしいなと飛鳥は思った。

 

紗夜「さて、本題に入ります! 私は…」

「アイドルよ。紗夜」

 

 友希那、リサ、燐子、日菜が現れた。

 

あこ「あこも電話で参加してるよ!!」

 

 と、あこも燐子のスマホから参加していた。

 

飛鳥「み、皆さん…」

友希那「一丈字くん。あなた、どれだけ紗夜と会話すれば気が済むのかしら?」

飛鳥「あ、もうこれで私のミッションは終わりますので、後は皆さんでごゆっくり…」

紗夜「絶対逃がしません」

 

 飛鳥が逃げようとすると、紗夜が食らいついた。

 

飛鳥「紗夜先輩。そんな事するから湊先輩たちがあなたの事をアイドル扱いするのですよ?」

紗夜「そ、そんな訳ないでしょう!!/////」

リサ「いや紗夜。紗夜はアイドルみたいなもんだよ?」

紗夜「は、はぁ!!?/////」

 

 リサの発言に紗夜が驚くと、飛鳥がスーッと逃げようとしたが、紗夜がそれに気づいて止めた。

 

燐子「そ、そうです…。氷川さん。とても綺麗だし…」

日菜「そーだよ! おねーちゃんが可愛いのがいけないんだよ!」

紗夜「一丈字くん。何とかして頂戴。あなた出来そうだわ」

 

 燐子と日菜の発言に紗夜は飛鳥に無茶ぶりを頼み始めた。

 

飛鳥「その前にどうして私と絡むのかを説明したほうが…」

紗夜「そんなのあなたのやっている事が心配だからよ。学園から離れたところで一人でご飯を食べてたりとか…」

リサ「え、そんなことしてるの?」

飛鳥「いつもじゃないですよ。一人になりたいときもあります」

友希那「クラスに仲の良い子とかいないの?」

飛鳥「特に仲が良いという訳ではありませんが…」

 

 飛鳥の言葉に紗夜が困惑した。

 

あこ「と、とにかく紗夜さんと二人きりで食事するのはなんかズルいからダメ!」

日菜「そーだよ! あたしだっておねーちゃんと二人きりで食事したいのに!」

友希那「いや日菜。あなたは姉妹だから家でも出来るでしょ?」

日菜「そうだけどー」

 

 そう言って自分を取り合う友希那の姿を見て、紗夜は頬を染め始めた。そして飛鳥は『やっぱりアイドルだな…』という顔をしたので、紗夜は飛鳥の頬をつねろうとした。

 

飛鳥「ちょ、なんですか!?」

紗夜「今私の事アイドルだって思ったでしょう!」

飛鳥「アイドルだって思ってませんよ。愛されてるなーって思っただけです」

「同じやん!!」

 

 飛鳥の言葉に皆が突っ込んだ。

 

友希那「やるわね…。紗夜は中々のツッコミ気質だから、一丈字くんみたいに色々ボケるタイプには反応せずにはいられないのよ…」

紗夜「湊さん。あなたそういうキャラじゃないでしょ…」

リサ「と、とにかくさ。ここで話すのもあれだから…」

 

 とまあ、収拾がつかないまま次の授業を迎えることになった。

 

飛鳥(ちょっと当面は大人しくしていた方が良さそうだな…)

 

 飛鳥は千聖、モカ、こころに協力を求めて、紗夜と自分を引き合わせないようにした。

 

千聖「ぜひそうして頂戴。白金さんがなんか不機嫌なのよ…」

飛鳥「ご迷惑をおかけしてすみません」

 

 こうして作戦が行われた。飛鳥が超能力で存在感を消したことで、紗夜は飛鳥に気づくことなく、Roseliaや日菜も紗夜に構ってもらえてご満悦。学園は平和そのものだった。

 

 だが、ここまで平和だと面白くないので、事件はやはり起きる。

 

********************

 

「オレも紗夜ちゃんと仲良くしたい!」

「そうそう!!」

 

 事もあろうに、紗夜のファンの男子生徒がRoseliaと日菜にウザ絡みしてきたのだ。当然友希那達は不機嫌になった。

 

紗夜「な、仲良くしたいって…」

友希那「紗夜。目を合わせちゃダメよ」

「おいおい。Roseliaってこういう事するんだなー」

「がっかりだなー」

 

 とまあ、完全に舐め切った態度で友希那達に挑発する男子生徒達。

 

リサ「ごめんねー。紗夜も嫌がってるから」

「嫌がってるなんて事はないだろう!」

「それでプロになれると思ってんの?」

燐子「ど、どういう意味ですか…?」

 

 燐子の言葉に男子生徒たちは暗く笑った。

 

「言葉の通りだよ!」

「お前らの今の姿をSNSで流して、評判悪くしてやる!」

 

 そう言う男子生徒達だったが、飛鳥が陰に隠れて撮影し、学園中に公開した。生徒たちの反応があったのを確認すると、超能力で男子生徒たちを洗脳して紗夜たちと引き離した。

 

紗夜「な、なんだったのでしょうか…」

友希那「あなたが無事ならそれでいいわ。ここから離れましょう」

紗夜「え、ええ…」

 

 急に男子生徒たちが大人しく引き下がったのを不審に思いながらも、紗夜は友希那達と共にその場を後にした。

 

*************************

 

 それからというもの、飛鳥達の日常は相変わらずで、飛鳥はRoseliaや日菜と距離を置いて学園生活を過ごしていた。最近は友希那達の影響もあってか、トラブルもなくなりつつあった。

 

飛鳥(これならもう広島に帰れそうだな…)

 

 と、考えていたその時だった。

 

「い、一丈字くん」

飛鳥「!」

 

 飛鳥が振り返るとそこには紗夜がいた。

 

飛鳥「氷川先輩。何か御用でしょうか」

紗夜「その…あなたにお願いしたい事があるのだけど…/////」

 

 紗夜がもじもじしながらお願いするのを見て、当分は帰れないと悟る飛鳥だった。

 

 

おしまい

 

 

 



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飛鳥と最強陰キャと2人の最強不良娘編
第351話「最強陰キャと2人の不良娘」


 

 

 

 ある日の事だった。

 

「お前やっぱり生意気なんだよ」

「なんだって?」

 

 2組で授業が行われていたが、不良娘である赤星と青山が喧嘩を始めていた。その間には例の男子生徒である黒中がいたが、彼は静かに黙っていた。

 

赤星「やっぱりここは白黒つける必要がありそうだな…」

青山「へえ、面白そうじゃん」

 

 と、赤星と青山が揉めそうになっていると、黒中が2人を睨みつけた。

 

黒中「さっきからうるさいんだよ」

赤星・青山「あ!?」

 

 黒中の言葉に赤星と青山がピリついた。

 

黒中「オレは静かに授業を受けたいんだ。やるんだったら外でやってくれ」

赤星「中々いい度胸してるじゃないか」

青山「まずお前からぶちのめしてやんよ!」

 

 そう言って青山が殴りかかるが、黒木が受け止めた。

 

青山「!」

黒中「赤星はかかってこないのか?」

赤星「……」

 

 赤星は冷静になった。

 

赤星「いいや、やめておこう。この状態で拳を振ってもお前は受け止めるだろうからな」

黒中「……」

 

 こうして喧嘩は収まったが、クラスメイト達はとても落ち着かない状態が続いていた。

 

****************

 

ひまり「もぉー!! 赤星さん達が怖くて授業に集中できないよぉ!」

巴「とはいえ、喧嘩で勝てそうにないしなぁ…」

 

 3人の不良生徒にAfterglowは困り果てていた。

 

***************************:

 

モカ「そういう訳でー。2組には2人の不良娘と、とても強い男子生徒が1人いるんだよね~」

 

  私の名前は一丈字飛鳥。バンドリ学園に通う高校1年生です。

隣のクラスで協力者である青葉モカと家でテレビ通話をしていましたが、隣のクラスがなんか面白い事になっていました。

 

飛鳥「そうなんだ…」

モカ「まあ、モカちゃんはどうでもいいんだけどね~」

 

 モカは飛鳥をじっと見ていた。

 

飛鳥「…そっか」

 

*************

 

 昼休憩の事。飛鳥がカフェテリアの近くに通りかかると、赤星と青山が舎弟を連れてもめていた。そこにはAfterglowもいる。

 

赤星「このテーブルはアタシ達が使うんだ。どけ」

青山「何言ってるんだ? アタシ達が使うにきまってるだろう」

 

 テーブルは何の変哲もない普通のテーブルだったのだが、相手に譲りたくないというプライドのぶつかりあいがあった。

 

飛鳥(…あれがモカの言ってた不良達かな)

 

 飛鳥が困惑していると、黒中がやってきた。

 

黒中「おい、何やってるんだ?」

赤星「黒中…」

黒中「皆が困っているだろう。やめてやれよ」

 

 黒中の言葉に青山はふっと笑った。

 

青山「そんな事言われてやめると思ってるのか?」

赤星「口挟まないでほしいんだけど」

黒中「やれやれ。血の気が多いな…」

 

 黒中がふっと笑うと、それを見ていた男子生徒たちは何やら悪寒を覚えた。

 

(な、なんだこの陰キャの妄想を絵にかいた奴…)

 

 何やら見ていて恥ずかしくなってきた。

 

赤星「とにかくぶっ飛ばさないと分からないようだな…!」

 

 そう言って赤星が黒中をぶっ飛ばそうと近づくと、

 

蘭「ちょ…」

つぐみ「け、喧嘩はダメ…」

 

 つぐみがそう言いかけたが、赤星は黒中に攻撃を仕掛けたが黒中はすべてかわす。

 

「……!」

 

 飛鳥もそうだが、その場にいた生徒たちは驚いていた。

 

赤星「あ、あたしの攻撃が効かないなんて…」

黒中「もうおしまいか?」

青山「それだったら今度はアタシが相手をしよう」

 

 そう言って青山が黒中に攻撃を仕掛けるが、これもすべてかわす。

 

飛鳥(あ、これはオレの出番いらなさそうだな。兎に角モカ達の安全が先だ)

 

 そう言って飛鳥が超能力で、モカたちが怪我をしないように目に見えないシールドを張った。

 

黒中「とにかくもう落ち着けよ。皆お昼ご飯食べたいんだから」

赤星「く、くそう…!」

青山「それはそうと、どうして攻撃してこないんだ?」

 

 青山の問いに黒中はふっと笑った。

 

黒中「オレは女には手を出さない主義なんだ」

 

 黒中がそうやってかっこを付けたが、赤星と青山は一気に機嫌悪くなった。

 

赤星「は?」

青山「それってバカにしてるのか?」

黒中「馬鹿になんかしてないさ。男は女を守るもので、傷つけるものじゃないだろ?」

 

 そう言って黒中は目を閉じてかっこつけながら言うと、そのまま去っていこうとした。

 

黒中「お前達も馬鹿なことしてないで早く昼ごはん食べないと、昼休憩終わるぜ。じゃあな」

 

 そう言って黒中は去っていったが、皆がシーンとしていた。

 

赤星「な、なんだあいつ…」

青山「ああ…」

 

 赤星と青山が黒中の背中を見つめ、舎弟たちは自分たちの姉貴分を見た。2人の顔は…

 

 

 とってもひきつっていた。

 

赤星・青山「気持ち悪ぅ~~~~~~~~~~~!!!!!!!」

 

 赤星と青山だけでなく、舎弟たちもドン引きしていて、飛鳥は静かに目を閉じた。

 

赤星「あれ、かっこいいと思って言ってんのか!?」

青山「あり得ん…」

赤星「なんかところどころかっこつけてる感あったし…」

青山「あんな軟派な男に負けたと思うと、自分に腹が立って仕方ない!」

赤星「そうだな!」

 

 赤星と青山が仲良くなり始めると、飛鳥は目を開けて2人をじっと見つめていたが、赤星と青山が飛鳥に気づいた。

 

赤星「何見てんだよてめー!」

 

 赤星が飛鳥に突っかかろうとすると、

 

ひまり「い、一丈字くん!!」

つぐみ「ダメ!!」

 

 ひまりとつぐみが止めようとすると、モカが制止して首を横に振った。

 

青山「お前も黒中のように…」

飛鳥「そういう訳ではないのですが、一点だけお話したい事が」

赤星「な、なんだよ…」

 

 飛鳥が赤星と青山が見つめていた。

 

飛鳥「授業中に喧嘩してるそうですね」

赤星「そ、それがどうしたんだ! お前には関係ないだろ!」

飛鳥「ないかもしれないんですけど、青葉さん達が困ってたみたいなので、やめてあげて貰っていいですか?」

 

 飛鳥の言葉に赤星と青山が反応した。

 

青山「私は不良だぞ。はい、そうですかで済むと思っているのか?」

飛鳥「済ませた方がいいと思いますよ」

赤星「どうしてだ?」

飛鳥「さっきの彼がまた止めに来て…」

 

 飛鳥がそう言いかけると、赤星と青山が青ざめた。

 

飛鳥「仲裁をしたりして」

赤星「…それもそうだな」

青山「ああ。もうあいつの気持ち悪い発言は聞きたくない…」

 

 赤星と青山の言葉を聞いて、飛鳥は少し困惑した。そんなに気持ち悪かったのかと。

 

飛鳥「…そうですか」

赤星「ああ。もうすっかり興ざめだ。場所を変えるぞ」

青山「こっちもだ。無駄な時間を過ごしてしまった」

 

 そう言って赤星と青山は舎弟を引き連れて去っていくと、飛鳥はそれを見送った後、自分も超能力を使って存在感を消して、その場を後にした。

 

*************************

 

 その後…

 

飛鳥「そうですか…」

 

 放課後、飛鳥はモカに呼び出されていつもの中庭のベンチにいたが、モカだけでなく蘭、ひまり、巴、つぐみの4人がいた。

 

モカ「一応喧嘩は収まったけど、黒中くんに関わるのをやめたみたい」

飛鳥「そこまで気持ち悪がってたんですね」

蘭「なんていうか…あいつ、結構上から目線な所あったよね…」

巴「喋り方とか、まるで薫先輩を見てるようだったな…」

ひまり「巴。薫先輩と比べるなんて失礼だから。次言ったら本気で怒るよ?」

巴「わ、悪かったって!!」

 

 ひまりが今までにないくらい怒ってたので、巴が慌てて謝った。

 

つぐみ「それはそうと一丈字くんは大丈夫だった?」

飛鳥「私は大丈夫ですよ」

 

 つぐみの言葉に飛鳥が苦笑いした。

 

飛鳥「まあ、問題はこれからですね…」

モカ「そうなんだよね~。ここまでくると黒中くんが変なこと言わなきゃいいんだけど~」

 

**************

 

 この後の2組はというと、赤星と青山は教室内でケンカしなくなり、黒中も平和な学校生活が戻ってきたと満足そうにしていたが、赤星や青山に対して言い放った発言と、どこか上から目線で人の気持ちを理解してないKY発言が原因で、クラスメイト達から必要な時以外は話しかけられなくなってしまった。本人も最初は満足そうにしていたが、自分に声をかけられることが本当に無いため、どうすればよいか模索中だった。

 

 そしてまた、赤星と青山は蘭たちに迷惑かけていたことを謝罪して、仲良くなった。

 

飛鳥「…コミュニケーション能力って本当に大事だね」

モカ「そうだね~。仕事できても人に嫌な気持ちをさせたら全く意味ないも~ん。あ、ダシマ式バンドリ第8シリーズはじまりま~す」

 

 

おしまい

 



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第352話「林間学校・1」

 

 

 今回の設定

 

・ 正体を知っているバンドガールはこころのみ

・ 第351話で出てきたゲストが登場している。

 

 

*************************:

 

 

 今日は林間学校。ダシマ式バンドリではもう定番のコントとなっていた。

 

飛鳥「コントとか言わない!!」

 

 1組・2組はバンドガールがいるので、一部を除く男子たちは大盛り上がりだったが、飛鳥がいる3組は割と普通だった。

 

飛鳥「……」

 

 ちなみにこの時、バンドガールで親しくして、正体を知っているのはこころのみである。

 

 2組のバスでは不良娘2人が律儀に参加していて、緊迫に包まれていた。

 

(なんで普通に参加してんだよ…)

(普段授業来ないのに修学旅行だけは行きたいって奴か…?)

(せっかくAfterglowがいるのに…)

 

 2組の一部の男子は不良娘の赤星と青山がいる事で、迂闊にAfterglowに手を出せずにいた。ある意味女子に対しての抑止力になっていたのだが、そのAfterglowからも怖がられていた。

 

ひまり「や、やっぱり赤星さんと青山さんって怖い…」

つぐみ「ひ、ひまりちゃん。怖いって言ったら可哀そうだよ」

巴「まあ、怖いはともかくオーラはあるよな…」

 

 Afterglowは一番後ろの席に座っていて、そう喋っていると血の気が多い赤星が睨みつけてきて、ひまりがビビった。

 

**************************

 

 そんなこんなで自然の家について、オリエンテーリングを行い、夕方には風呂に入った。

 

「女湯覗きてぇけど…」

 

 2組のDQN男子たちが言い放ったが、赤星と青山の存在が目についた。

 

「バレたら絶対半殺しじゃすまないだろうな…」

「ああ。歯の二、三本はやられそう…」

「けどあんな美人に殴られるなら本望なので、この○○! 前進いたす!!」

 

 とまあエロ男子がそう言い放ったが、

 

「あ、男湯と女湯100m程離れてるから。覗き対策で」

「ノォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!」

 

 先生の言葉にエロ男子がもだえ苦しむと、黒中は心の中でエロ男子たちを軽蔑しながら男湯に進んでいった。

 

 ちなみに飛鳥も普通に風呂に入ったが、普通に入ると何故かじろじろ見られるので、超能力で存在感を隠していた。

 

*************************

 

 そして食事。ビュッフェ形式で生徒たちが集まっており、男子たちはバンドガールとお近づきになろうと近づいていたが、飛鳥と黒中はそれぞれ別々の場所で食べていた。

 

飛鳥(まあ、いざとなりゃ弦巻家の黒服の人たちもいるから、様子見にするか…)

黒中(本当に好きだな。あいつらも)

 

 だが、赤星と青山が揉めていた。

 

赤星「この席はあたしが先に狙ってたんだ。どけ」

青山「何を言っている。どくのはお前だ」

 

 そう言って赤星と青山が揉めると緊迫した空気になり、黒中がやれやれと言わんばかりに止めようとしたが、飛鳥が超能力ですぐに大人しくさせた。

 

赤星「…まあいいさ」

青山「そうだな。こんな所で喧嘩なんかしても馬鹿みたいだしな」

黒中(なんだ? 急に大人しくなったぞ…?)

 

**********************:

 

 そして食事が終われば肝試し大会が行われ…。

 

「オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」

「きゃあああああああああああああああああ!!」

 

 男女混合でチームを組み、森の中に進んでいったが、従業員たちの渾身のメイクと演技で次々と恐怖に陥れた。

 

 そして飛鳥も男子のみのチームで進んでいったが、

 

飛鳥「見事に置いてけぼりにされちゃった…」

 

 飛鳥以外の全員が先に行ってしまい、飛鳥だけ取り残されてしまった。

 

飛鳥「まあいいや。ゆっくり行こう」

 

 そう言って飛鳥がゆっくり進んでいくと、二つの分かれ道があった。

 

飛鳥「あれ? これどっちに行けばいいんだ?」

 

 飛鳥がどっちに行けばいいか迷っていると、看板が倒されていて、飛鳥が看板を起こした。すると右に行けとあった。

 

飛鳥「右か…」

 

 飛鳥が右の方に行こうとしたが、看板が倒れていたという事は、看板を見ずに左の方に進んだ生徒がいる可能性があると見た。

 

飛鳥「まさか…」

 

 すると飛鳥が左の方に進もうとすると、

 

「君! そっちじゃないよ!!」

 

 と、従業員の人が現れて飛鳥を引き戻そうとすると、飛鳥は超能力で左側に行った生徒がいないか探知した。すると羽沢つぐみが崖から落ちて動けなくなっているのが分かった。

 

飛鳥「…あの、すみません。人を呼んでもらえますか?」

「え?」

飛鳥「あっちの方から人の気配がするんです。看板も倒されてるから…」

「そ、そっか!」

飛鳥「お願いしますね」

 

 そう言って飛鳥は脱兎の如く左のルートに行った。

 

「き、君!!」

「どうした!?」

 

 他の従業員たちもやってきて、飛鳥に声をかけた従業員はすぐに相談をして、対応を行った。

 

飛鳥「誰かいますかー!!?」

 

 真下につぐみがいる状況で飛鳥が叫んだ。するとつぐみが飛鳥の声に気づいて、上を向いた。

 

つぐみ「ここでーす!!」

飛鳥「!?」

 

 飛鳥が持っていたスマホでライトをつけると、つぐみの姿を確認した。

 

飛鳥「大丈夫ですか!?」

つぐみ「う、うん…」

 

 すると飛鳥はライトをつぐみの左右に向けて、道がないか確認した。するとつぐみがいる所からまっすぐ歩いて、坂を上っていけば飛鳥がいる位置まで戻れることが判明した。

 

飛鳥「えっと、今助けを呼んでいるのでそれまで待ってもらえますか!」

つぐみ「わ、分かりました!」

 

 本当は超能力を使って自分の正体を隠したいところだが、独りぼっちだとつぐみも心細いだろうと思ってやめた。

 

「おーい!!!」

 

 そして従業員たちも合流した。

 

飛鳥「皆さん!」

「けが人はいたかい!?」

飛鳥「一人だけで、真下にいます!」

「!」

 

 従業員たちもつぐみの様子に気づいた。

 

飛鳥「えっと、女性の方は…」

 

 飛鳥が従業員たちを見渡すが、男性しかいなかった。それを見た飛鳥はつぐみを見た。

 

飛鳥「あの、すいません」

つぐみ「な、なんですか?」

飛鳥「今からあなたを救出したいのですが、男性しかいないんですよ。私がそっちに行っても大丈夫ですか?」

「!!?」

 

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。

 

つぐみ「あ、わ、私は構いません!」

飛鳥「分かりました。皆さんライトは持ってますか?」

「あ、ああ…」

飛鳥「それでしたら、今からあっちの方を照らしていただけますか? あそこから彼女まで行く道はあるので、そこから彼女の方に向かいます」

 

 こうして飛鳥の指示のもと、つぐみの救出活動が行われ、飛鳥は無事につぐみの所にたどり着いた。

 

 

つづく

 



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第353話「林間学校・2」

飛鳥「お待たせしてすみません」

つぐみ「あ、いえ…」

飛鳥「で、今から上に上がろうと思いますが…動けそうですか?」

つぐみ「だ、大丈夫です…」

 

 つぐみが行こうとしたが、足に激痛が走った。

 

つぐみ「っ!!」

飛鳥「やっぱり…」

 

 つぐみが苦しそうに足を抑えると、飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「すみません」

つぐみ「!」

飛鳥「もしあなたが差し支えなければ、あなたを背負って行こうと思うのですが、宜しいですか?」

つぐみ「えっ!?/////」

 

 飛鳥の言葉につぐみが頬を染めた。

 

飛鳥「まあ、男子に背負われるの嫌だとは思いますが、私としてはそれが一番運びやすいので、如何でしょうか」

つぐみ「あ、あの…」

 

 つぐみがモジモジした。

 

つぐみ「…匂ったりしたらごめんなさい////」

飛鳥「そんな事ないですよ。行きましょう」

 

 そう言って飛鳥がつぐみをおんぶした。

 

つぐみ「え、えっと…重くないですか?//////」

飛鳥「全然!」

 

 飛鳥が堂々と言い切ると、上の方を見た。

 

飛鳥「ライトアップお願いします!」

 

 こうして飛鳥は無事につぐみを元の場所まで運び出し、入り口まで戻っていった。

 

********************

 

飛鳥「さて、ここで降ろしますよ」

 

 飛鳥がつぐみを丁寧に下した。

 

飛鳥「流石に人前に出たら噂になりますもんね」

つぐみ「あ、えっと…その、ありがとうございました/////」

 

 つぐみは飛鳥にお礼を言ったが、男子に背負われた恥ずかしさが残っていた。

 

飛鳥「いえいえ。ご無事で何よりです。さて、皆さんの戻りましょうか」

 

 そう言ってつぐみを先頭に行かせて、飛鳥もそれに続いたが注目を浴びないように存在感を消した。

 

**********************

 

「つぐ~~~~~~~~~~~~~!!!!」

 

 つぐみの顔を見るなり、ひまりが泣きながらつぐみに抱き着いた。

 

つぐみ「ひ、ひまりちゃん!」

ひまり「うえ~~~~ん!!! 良かったよぉ~~~~~!!!」

蘭「つぐ。どこも怪我してない!?」

つぐみ「ちょ、ちょっと転んじゃったけど…」

 

 つぐみがそう言うと、ひまり達が足を見た。

 

巴「いや、思いっきり足くじいてないか!?」

ひまり「そ、そうだよ!」

モカ「何かあったのか教えて~」

つぐみ「そ、そのう…」

 

 つぐみが視線を逸らすと、蘭と巴がつぐみのチームメイトだったDQN達をこれでもかという程にらみつけたが、巴は特に鬼の形相になっていた。

 

ひまり「とにかくもう皆心配したんだからね!?」

つぐみ「ご、ごめんね…」

ひまり「赤星さんと青山さんもつぐが置いてけぼりにされたって聞いて、すぐに助けに行こうとしたんだよ!?」

つぐみ「そ、そうなの!?」

ひまり「あと、黒中くんもだけど…」

つぐみ「3人はちゃんといるの!?」

ひまり「大丈夫。先生たちがしっかり止めてくれたから」

 

 つぐみは黒中たちを見つめた。

 

つぐみ「あ、え、えっと…ご心配をおかけしました」

赤星「ああ」

青山「とにかく無事ならいいさ」

黒中「気にするな。それよりも、何があったんだ?」

つぐみ「そ、それが…」

 

 つぐみが今までの経緯を説明した。

 

つぐみ「そういう訳で、別のクラスの子が助けてくれたの!」

モカ「へー。助けてくれた子ってどの子?」

つぐみ「えっと…あれ?」

 

 つぐみが飛鳥を探したが、飛鳥の姿がなかった。

 

飛鳥(名前教えなくて良かったー。あ、オレだってバレないように細工しとこ)

 

 そう言って飛鳥は超能力で細工をした。

 

蘭「でもまあ、つぐみが無事でよかったよ!」

巴「そうだな!」

 

 こうして、飛鳥は何とかやりきった。

 

飛鳥(バレたら偉い事になりそうだしな…)

 

 バレないことを祈りながら、飛鳥はその場を後にした。

 

**********************

 

 翌朝、飛鳥は一人で食堂に行こうとしたが、超能力で存在感を消して素通りをしようとしていた。食堂の前にはAfterglowが飛鳥を探していた。

 

ひまり「一丈字くんまだかなぁ…」

つぐみ「……」

 

 飛鳥はつぐみの様子が心配だったので、超能力を解いて姿を現した。

 

「!」

 

 するとAfterglowは飛鳥に気づいた。

 

つぐみ「あ、えっと…」

飛鳥「おはようございます。具合は如何ですか?」

つぐみ「う、うん…。手当てしてもらったから…。昨日はありがとう!」

飛鳥「いえいえ。ご無事で何よりです」

 

 そう言って昨日と同じことを言う飛鳥。

 

巴「アタシからもありがとう! えっと、そういや名前は…」

飛鳥「名乗るほどのものではございませんので」

モカ「3組の一丈字飛鳥くんでしょ~?」

飛鳥「はい」

 

 飛鳥は普通に言い放った。

 

ひまり「あ、そ、そうだ! もし良かったら一緒に朝ご飯食べない!?」

飛鳥「お気持ちだけ受け取っておきます」

蘭「何? 嫌なの?」

飛鳥「あなた方のファンを怒らせるのが嫌なんですよ」

 

 そう言って飛鳥が遠慮気味に言い放ったが、

 

「おい」

飛鳥「?」

 

 赤星と青山がやってきた。

 

飛鳥「何か御用でしょうか」

赤星「ちょっと面貸せ」

飛鳥「ご用件を申し上げて頂けないでしょうか」

青山「昨日の件で少し話がある。だから面貸せ」

飛鳥「彼女の事ですか?」

 

 飛鳥がつぐみの方を見た。

 

赤星「いちいち言わせるんじゃないよ!」

飛鳥「それはこちらのセリフですよ」

「!!?」

 

 一触即発の空気になり、黒中が近くまでやってきて、喧嘩になりそうなのを感じ取って止めようとした。

 

つぐみ「あ、あの…」

 

 つぐみが慌てて止めようとすると、

 

「一体どうしたんだ」

 

 黒中が割って入った。

 

飛鳥「野暮な事聞くんじゃありませんよ」

「!?」

 

 飛鳥が赤星と青山を見つめる。

 

飛鳥「皆生きてる。それで何よりです」

 

 飛鳥の言葉に空気が止まり、皆固まっていたが飛鳥はお構いなしだった。

 

飛鳥「それでは、失礼します」

 

 そう言って飛鳥はそのまま食堂の入り口に入っていった。飛鳥は精々「変な奴」とか思ってくれていたら良いと思っていた。

 

蘭「み、皆生きてるって…」

モカ「おもしろ~い」

 

 蘭が呆れ、モカが飛鳥の事を面白がった。

 

ひまり「面白い…?」

巴「いや、あいつ結構カッコよかったぞ…」

赤星・青山「……」

 

 赤星と青山は飛鳥に興味を持ち始めたが、黒中は完全に空気になっていた。

 

 

 

つづく

 



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第354話「林間学校・完結」

 

 

 前回までのあらすじ

 

 肝試しではぐれたつぐみを救出した飛鳥。それがきっかけでつぐみが所属するバンド『Afterglow』と仲良くなったわけだが…。

 

**************************

 

 食堂。飛鳥は一人で食事をとっていた。昨日つぐみを助けた事は鼻にかけず、目立たないように超能力を使って大人しくしていた。後からやってきた蘭たちも飛鳥の事を気にかけることなく、食事を始めたが、

 

「あ、あの…つぐみちゃ…」

 

 つぐみを置き去りにしたDQN軍団が近づいてきたが、蘭や巴が狂犬の如くうなるが、赤星と青山も加勢して、完全に近づけない状態だった。

 

黒中「女を置き去りにした奴が一体何の用だ?」

 

 黒中も加勢をしたのだが…。

 

DQN「ごめん。せめてそいつだけでも追い出してくれませんか?」

取り巻き「もうそれさえやってくれたら、諦めますんで」

 

 陰キャの妄想を絵にかいたようなイキりぶりにDQN達は思わず拒絶反応が出た。

 

赤星「分かったよ」

青山「黒中。お前もあっち行っててくれ」

黒中「お前達だけで大丈夫か?」

赤星「うん。もう大丈夫だから」

 

 黒中の見た目は黒髪のストレートにそこそこ顔立ちが整っているように、まさに漫画の中に出てくる陰キャそのものだったが、若干上から目線な態度や漫画の中にしか出てきそうにない気障な台詞に、皆辟易していた。

 

飛鳥(やっぱり気障な台詞言わないとダメかなぁ…)

 

 飛鳥は困惑しながらその様子を見守っていたが、こいつが気障なことを言うとなんか負けたような気持ちになるそうです。

 

***************************

 

 そんなこんなで朝食が終わり、野外炊飯が行われることとなった。

 

「えー。班ですが自由です。一人でもOKです」

「一人でもOKなんですか!?」

「はい。先生は学生時代ぼっちで、ぼっちを絶対に許さない団体行動が許せないからです!」

(よくこんなんで教師になれたな…)

「ぼっちで何が悪い!!!」

「悪くないですけど、教師がそんなこと言うのは悪いと思います!!」

 

 そんなこんなで自由に野外炊飯をやる事になりました。当然の如く男子生徒たちはバンドガールや女子と一緒にやる事を望んだが、昨日あんな事があって男子たちに近づくわけもなく、玉砕していた。

 

 飛鳥と黒中も人と一緒にやる事に興味がないのか、一人でやろうとしていた。

 

 飛鳥は生野菜を適当に選び、大根を洗って食べやすい大きさに切った。大根を切る時の手際がよい上に、真剣な表情で切っていた事もあって、皆の注目を集めていた。

 

飛鳥(そこまで見る事なくない…?)

 

 そんなこんなで飛鳥はすぐに料理を完成させた。

 

飛鳥「さて、頂きましょうかね」

「飛鳥。それはどういう料理なのかしら?」

 

 1組の弦巻こころが話しかけてきた。飛鳥がバンドリ学園に来ることになったきっかけを作った張本人であり、唯一の協力者であった。

 

飛鳥「大根の生け作りですよ」

こころ「大根の生け作り? お魚の生け作りは知ってるけど、野菜は初めてだわ!?」

飛鳥「盛り付けが魚の生け作りみたいでしょう」

こころ「言われてみればそうね!」

 

 そう言うと、Afterglowや赤星、青山も近づいてきて、飛鳥は困惑した。

 

ひまり「だ、大根を切っただけなのになんかおいしそう…」

巴「どうしてこれを作ろうと思ったんだ?」

飛鳥「簡単ですので」

 

 Afterglowが近づいてきたことにより、男子生徒たちの嫉妬を肌で感じ取った。

 

飛鳥(そういや黒中さんは…)

 

 黒中を探していると黙々と料理をしていた。彼の方が結構豪華な料理を作っていて、彼の方も人が集まっていて、それなりにクラスメイトと打ち解けていった。

 

**********************:

 

 そして飛鳥の料理はすぐに出来上がった。

 

こころ「頂くわね!」

飛鳥「どうぞ」

 

 こころ達が大根を醤油につけて食べた。

 

こころ「おいしいわ!」

つぐみ「おいしいのもそうだけど、大根も甘い!」

モカ「水水しいね~」

飛鳥「さっき畑から取ってきたそうなので、鮮度は抜群ですよ」

 

 おいしそうに食べるこころ達を見て、飛鳥が笑いながら言った。

 

ひまり「いや、本当においしい! これならいくらでもいける!」

モカ「ひーちゃん。野菜だからって食べ過ぎだよー」

ひまり「そ、そんな事ないわよ!」

飛鳥「トマトも取れたてが美味しいですよ」

巴「おいしいけど…これは料理って言えるのか?」

飛鳥「魚の刺身も料理なら、これも立派な料理です」

 

 飛鳥がそう言うと、赤星と青山が飛鳥を見た。

 

赤星「アンタ、なかなか面白いじゃん」

青山「そうだな」

飛鳥「そうですか?」

 

 飛鳥がすっとぼけた。

 

飛鳥「それはそうと、黒中さんも何か美味しそうなのを作っていますね」

こころ「それもそうね!」

 

 こころは黒中の所に向かった。

 

飛鳥「…行かれなくていいんですか?」

赤星「ああ。寧ろあんたに興味が沸いた」

飛鳥「興味?」

青山「昨晩単身で羽沢を助けただろう。色々聞きたい事がある」

飛鳥「特にお話しすることはございませんよ」

 

 飛鳥がそう言い放った。

 

蘭「どうして?」

飛鳥「そろそろ交代の時間が来たようです」

「交代?」

 

 蘭たちがそう言うと、

 

「いつまで独占してんだよ!」

「オレ達だって蘭ちゃん達と話したいんだぞ!」

「どけ!!」

 

 そう言って男子生徒たちがいちゃもんをつけたが、

 

赤星「なんだって?」

青山「本当に懲りてないようだな…」

 

 赤星と青山がメンチを切った。

 

「な、なんとでも言えぇ!」

「寧ろこんな美人に殴られるなら本望じゃあ!!」

「蘭ちゃん達をあいつから守れぇええええ…って、いない!!」

 

 飛鳥は一瞬の隙をついて、その場から離れた。

 

つぐみ「い、いつの間にかいなくなってる!!」

モカ「……」

 

 そして飛鳥は陰に隠れた。

 

飛鳥「これから忙しくなりそうだなぁ」

 

 

 と、軽くため息をついてトマトを食べた。

 

飛鳥「うんま」

 

 

おしまい

 



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縹鉄馬外伝
第364話「型破りの高校生現る!」


 キャラクター紹介

縹 鉄馬(はなだ てつま)
出身作品:『SCHOOL FIGHTER』

身長177㎝ 体重80㎏

『出身作品の設定』
高校1年生。
元々は明るく正義感のある元気な少年だったが、周囲の人間に恵まれず、自身の不幸体質に耐え切れず堕落してしまった。
中学3年生の時に起こしたトラブルがきっかけで、福岡の高校に入学することとなる。

『バンドリ学園での設定』
入学先が福岡の高校ではなく、バンドリ学園に入学し、そこでバンドガールズと出会う。




 

 

 ある日の事。鉄馬は教室で一人過ごしていた。そして周りの生徒も鉄馬に話しかけることはなかった。

 

 入学当日にクラス全員が自己紹介をすることになったのだが、

 

鉄馬「縹鉄馬です。名前だけ覚えてくれれば結構です」

 

 無表情でそう一言だけ言い放つと、皆がシーンとした。

 

「そ、その縹くん…。他に言う事は…?」

鉄馬「ありません」

 

 そう目を閉じて言い放ち、ずっとそのままだった。クラスメイト達は鉄馬の事を「怖い」だの「かっこつけてる」と思っていたが、鉄馬は170以上あって、筋肉質でガタイも良かったため、変に喧嘩を売ると暴力を振るわれると思い、誰も話しかけなかった。

 

 そんな日々が続いて、クラスメイトの親睦を深める為に林間学校が行われたが、そこで鉄馬はひと悶着があった。

 

**********************

 

鉄馬「どうしても行かなきゃダメかい?」

「そうですね…」

 

 理事長室。鉄馬は理事長と話をしていた。

 

鉄馬「あんたが責任取るなら行くぜ」

「分かった! 取ろう!」

鉄馬「……」

 

 実を言うと鉄馬は裏口入学だったのだ。中学3年生の時にバンドリ学園の理事長の孫娘を悪党たちから助けた事があったのだ(ちなみにその孫娘は20代で既婚者)。

 

 そこから理事長は鉄馬に興味を持ったのだが、色々過去を調べる中で彼をどうにかしたいと思い、バンドリ学園に入学させたのだ。もっとも鉄馬は中学を卒業したら就職するつもりだったのだが…。

 

********************

 

 こうして林間学校に行くことになった鉄馬だったが、結局クラスメイト達との溝は埋まらないまま、林間学校を迎えた。

 

 1組や2組が盛り上がる中、3組は盛り上がっていなかった。鉄馬がいるというのもそうだが、元々大人しい生徒達で構成されていたからだった。

 

「いやー。1組は可愛い子が沢山いてよかったwwwww」

「それに比べて3組は…プッ、かわいそーwwww」

 

 と、他のクラスの男子たちが3組を見下していて、3組は嫌な思いをしていた。鉄馬は逆に男子生徒たちを憐れんだ目で見ていた。

 

「あ?」

「何お前」

 

 それに気づいた男子生徒たちも鉄馬に突っかかった。それを見てクラスメイト達が青ざめた。すると鉄馬は後ろを向いた。

 

「てめぇだよてめぇ!!」

「この木偶の坊が!!」

 

 そう言って男子生徒の一人が鉄馬の胸ぐらをつかんだ。

 

「おい、陰キャごときがオレ様に向かって舐めた態度取ってんじゃねーぞ」

「分かったら身の程を弁えろ」

 

 男子生徒…DQN2人がそう言い放つと、異変に気付いた2組の女子たちが反応した。

 

巴「やめろお前ら!」

 

 宇田川巴がそう言い放った次の瞬間、鉄馬は何も言わずに男子生徒の胸ぐらをつかみ返した。それも物凄い力で引き寄せる。

 

「!!」

鉄馬「……」

巴「2人がかりで卑怯だろ!」

「だってこいつが…」

 

 その時鉄馬は何か言いたそうにしたが、めんどくさそうなのでやめた。

 

「おい、今何か言おうとしただろ」

「何よ?」

 

 そう言って男子生徒たちがにらみを利かせると、鉄馬は巴を見た。

 

鉄馬「そこの赤い髪の姉ちゃん」

巴「ア、アタシか?」

鉄馬「ああ。こいつらの知り合いか?」

巴「クラスメイトだよ…」

鉄馬「そうかい。だったら一つ聞きたい事があるんだ」

巴「なんだ?」

鉄馬「こいつら…。クラスの女子からモテてるのか?」

巴「は?」

 

 鉄馬の言葉に巴だけでなく、他のメンバーもキョトンとしていた。

 

鉄馬「ここまで人に対して偉そうな事が言えるんだから、クラスの女子からモテてるんだろうなと思ってな。あんたもこいつらのどっちかにホの字かい?」

巴「そ、そんな訳ねーだろ!」

鉄馬「他の女子もか?」

巴「それは知らない…」

 

 すると巴の幼馴染である青葉モカが口を開いた。

 

モカ「ぜーんぜん? 寧ろ辺に声かけてきて困ってるんだ~」

ひまり「いやらしい目で見てくるし…」

蘭「正直こういう事されて、同じクラスメイトとして恥ずかしいんだけど」

つぐみ「え、えっと…喧嘩は良くないよ…?」

 

 と、他の女子たちも2人のDQNに対して消極的だった。

 

鉄馬「そうかい」

DQNA「て、てめぇ!!」

鉄馬「そういう事はせめてクラスの女子にモテてから言ってほしいもんだな」

DQNB「ふざけやがって!」

 

 すると鉄馬が自分の胸ぐらをつかんだDQNAの胸ぐらを離すと、その場を離れる。

 

鉄馬「もう林間学校も始まるんだ。あんま無茶すんなよ」

DQNA「ま、待て!」

DQNB「話はまだ終わってねぇぞ!」

鉄馬「オレに言われた事で、焦って移動中のバスの中で女子を襲ったりするなよ」

 

 鉄馬の発言に2組のメンバーが驚くと、鉄馬はあざ笑うようにDQN2人を見つめた。

 

鉄馬「他の連中がしっかり見ててやらないといけねぇんじゃねぇかな。あばよ」

 

 そう言って鉄馬はそう言い切ってバスの中に乗り込んでいき、他の生徒たちは唖然としていた。

 

DQNA「な、なんだアイツ…!」

DQNB「チッ! あんな事言っても所詮陰キャは陰キャだ! オレ達はオレ達で楽しく…」

 

 そう言ってDQN達は巴たちを見ていたが、皆白い目で見ていた。

 

DQNA「な、なんだよ…」

蘭「男子は後ろに行ってもらうから。で、女子は前ね」

DQNB「お、おいおい! オレ達よりもあいつのいう事信じるのかよ!」

モカ「胸ぐら掴んで偉そうな事言うんだから、そうするしかないよね~」

「そ、そんなぁ…」

 

 こうして、DQN2人は女子たちから隔離されたのであった。

 

「……」

 

 移動中。3組ではクラスメイト達が前に座っている鉄馬を見ていたが、鉄馬は全く動じる様子はなく、窓の景色を見ていた。隣には誰もいなかった。

 

 鉄馬の学園生活は始まったばかり。果たしてどうなる事やら…。

 

 

おしまい

 




イメージエンディングテーマ
『死ぬまで離さない』
歌:A-TLES

(アニメ『見ると強くなる 痛快!横綱アニメ ああ播磨灘」エンディングテーマ』


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鍋編
第386話「Poppin’Partyと鍋!」


 

 とある鍋屋

 

飛鳥「えー、皆さんこんにちは。本日は趣向を変更して、企画ものでございます。司会・進行を務めさせていただきますのは、一丈字飛鳥です」

モカ「アシスタントの青葉モカです」

 

 飛鳥とモカがモニタリングルームからアナウンスしていた。

 

飛鳥「さて、今回の企画ですが、プロジェクト7周年、ガルパ5周年を迎えた「BanG! Dream」。長年ずっとやってきたグループのメンバー同士で鍋を囲って頂きます」

モカ「これには何か意味があるんですか?」

飛鳥「あります。どんな鍋を食べるか、どのように仕切るかを自分たちで考えてやって貰いますが、こういう鍋や焼肉は結構食べる人の性格とかも出てきて、酷い場合だと喧嘩になります」

モカ「そういえば、他の作品よりも喧嘩してますからね~。バンドリは」

飛鳥「先日のガルパピコでもネタにされてましたね。さて、それでは参りましょう! 今回のグループは『Poppin’party』です!」

 

 するとモニターに鍋の一室が映し出され、香澄、たえ、りみ、沙綾、有咲の5人がいた。

 

香澄「はーい! こんにちはー!」

有咲「……」

 

 有咲はもうこの時点で嫌な予感がしていた。

 

有咲「…あのさ、一丈字」

飛鳥「何でしょう」

有咲「これ、私にツッコミとかさせる為に企画したわけじゃないよな?」

飛鳥「いえ、そんな事はございませんよ」

モカ「それだったらハロハピもやらなきゃいけなくなっちゃうよ~?」

 

 ちなみに美咲のコメント

 

美咲「いや、こころ達の事だからもう…」

 

 こころが滅茶苦茶な事をし、薫とはぐみが乗ってしまい、自分は花音と一緒に困惑するというオチが見えていた為、げんなりしていた。

 

 

飛鳥「まあ、今井先輩が結構頑張ってくださったので…」

有咲「あー…。確かにそうだな。特におばけタワーとかで…」

モカ「とっても面白かったよ~。最後エレベーターで「ふざけんなー」って言ったの~」

有咲「…確かにああいうリサさん。本家であんまり見れないなぁ」

 

 当時のリサを思い出して有咲が困惑した。

 

モカ「有咲も面白かったでしょ?」

有咲「ま、まあ…面白かったけど…」

飛鳥「えっと…それではそろそろ始めましょうかね」

 

 有咲の言葉を飛鳥がちょっと気まずそうに遮った。

 

有咲「え、何その反応。アタシなんか変な事言った?」

モカ「それではスタートです!」

有咲「教えろー!!!」

 

***************************

 

香澄「さて、どんな鍋にする?」

有咲「あの、ちょっとさっきの事が気になって鍋どころじゃねーんだけど…」

沙綾「まあ、こういうのって最後らへんにちゃんと教えてくれるんじゃない?」

有咲「ま、まさかとは思うけどリサさんが聞いてたとかじゃないよな…!?」

 

 有咲が青ざめた。

 

たえ「あ、私ハンバーグ食べたいんだけど」

有咲「アタシの話聞いてた!? ていうか鍋にハンバーグって!!」

香澄「え? ハンバーグって普通に鍋の具にあるよ? トマト鍋とか…」

沙綾「あー…。そういや豆腐ハンバーグもあるからね」

 

 香澄と沙綾の言葉に有咲は言葉を失っていた。

 

香澄「有咲。一旦落ち着こ」

有咲「あの、一丈字さん。聞こえてますか?」

飛鳥『はい、何でしょう』

 

 飛鳥の声がスピーカーから聞こえた。弦巻家が開発した最高級のスピーカーで飛鳥の音声がしっかりと聞こえている。

 

有咲「え、これアタシがずっと弄られるパターンですか?」

飛鳥『そんな事はございませんよ』

モカ「そういえば『ダシマ式ラブライブ!』ではこんな感じじゃなかった?」

 

 モカが『ダシマ式ラブライブ!』の話をした。

 

飛鳥『あー…。私が出てないときはそんな感じでしたね。園田さんが高坂さんに色々確認するんですけど、高坂さんはちゃんとやってて園田さんは…そういや、今の市ケ谷さんと戸山さんみたいな感じですね』

モカ『まあ、公式と同じことしても仕方ないもんね~』

有咲「あの、すいません。たえやりみや沙綾は我慢するので、香澄だけは勘弁して頂けないでしょうか」

香澄「えーっ!! そんな事言うと、もーっと私にコテンパンにされるよ?」

有咲「主人公がコテンパンとか言うんじゃないよ!」

 

 香澄の言葉に有咲がツッコミを入れたが、飛鳥とモカは感嘆した。

 

有咲「な、なんだよ…」

飛鳥「いやあ、流石ですね」

モカ「有咲のツッコミ、安定してるね~」

有咲「ちょあっ!!?/////」

 

 飛鳥とモカが褒めるので有咲が頬を染めると、沙綾とりみも苦笑いした。

 

有咲「な、何言いだしてんだよ!!/////」

飛鳥「それはそうと、早く注文してあげた方がいいと思いますよ?」

有咲「え?」

たえ「ハンバーグ食べたいから、トマト鍋にしていい?」

有咲「他の皆は?」

沙綾「私はいいよ」

りみ「私も…」

香澄「じゃあトマト鍋で決定!!」

 

 こうしてPoppin‘Partyはトマト鍋で決定した。

 

香澄「サイドメニュー何か頼もっか」

沙綾「何がある?」

りみ「……」

たえ「あ、りみ。多分チョココロネはないと思う…」

りみ「あ、うん。分かってるよ…?」

 

 タブレットをじっと見つめていたりみに対して、たえが困惑した様子で言い放つと、りみも困惑した。

 

香澄「あっ、チョココロネあるよ?」

有咲「あるの!!?」

沙綾「そういえば、どこかの和食チェーン店ではカレーパンが食べ放題だったね…」

 

 香澄の発言にりみがとても嬉しそうにしていたが、

 

有咲「けどまあ、鍋をある程度食べてからだな…」

りみ「そ、それはそうだけど…」

 

 そこまでチョココロネに目がないと思われていた事に対して、りみは困惑していた。

 

香澄「凄いよ。チョココロネだけじゃなくて、普通のパンもある」

沙綾「まあ、トマト鍋と相性良いからね…」

 

 こうしてポピパはトマト鍋を楽しんだ。

 

香澄「チーズ滅茶苦茶入れたいんだけどダメかな?」

有咲「どんだけ入れるつもりだよ」

 

 有咲はすっかりリサの事を忘れてトマト鍋を楽しみ、たえはハンバーグを食べまくっていた。

 

沙綾「おたえ…」

たえ「いやあ、食べ放題っていいよね」

 

 そんなこんなで最後はりみがデザートでチョココロネを食べて、食事が終了した。

 

******

 

飛鳥「いかがでしたか?」

有咲「なんて言うかすごく平和な時間だった」

飛鳥「そうですか」

有咲「ところで飯食う前に何か困った様子だったけど、何があったんだよ」

 

 有咲がこのタイミングで思い出して、飛鳥に問い詰めた。

 

沙綾「やっぱりリサさんが聞いてたとか?」

飛鳥「そうですね」

有咲「やっぱりそうかよ!!」

飛鳥「そしてご本人に登場して頂きましょう! 今井リサさんです!」

 

 するとリサが思いっきりふすまを開くと、有咲がビビった。

 

有咲「あ、ですよね。知ってました」

 

 有咲はすべてをあきらめた顔をしていると、リサが近づいてきた。

 

リサ「有咲」

有咲「はい、生意気な事言ってすいませんでした」

リサ「ううん。寧ろ有咲は凄いなって思うんだ」

有咲「え?」

 

 リサが有咲をほめたが、飛鳥とモカはリサの真意を悟って気まずい顔をしていた。

 

リサ「今の会話を聞いてたけど、あたしじゃまだまだ有咲には敵わないな」

有咲「あの、リサさん?」

 

 リサの言葉に有咲も何が言いたいか察した次の瞬間、リサが有咲の肩を叩いた。

 

リサ「今後もよろしくっ!」

有咲「いや、完全にツッコミの仕事押し付ける気満々ですよね!!?」

 

 リサがそう言って去ろうとすると、有咲が突っ込んだ。

 

リサ「いや、あたしもう2回もお化け屋敷言ったんだし、寧ろ有咲休み過ぎだと思うんだ」

有咲「お化け屋敷はそうかもしれないですけど、こっちには香澄が…」

香澄「有咲」

有咲「な、なんだよ」

 

 有咲が香澄の方を見た。

 

香澄「リサさんがここまで頑張ってるんだから、有咲ももうちょっと頑張ろうよ」

有咲「うん。お前が変なことしなかったら頑張るわ」

 

 とまあ、こんな感じでまとまったのだった。

 

モカ「うーん。でもこれじゃオチが弱いなぁ」

有咲「これでいい!! 平和が1番!! 変な火種は起こしちゃダメ!!!」

リサ「そうだよ! 憎しみからは何も生み出さないんだよ!!」

飛鳥「……」

 

 完全にお化け屋敷の話に持っていこうとしていており、リサと有咲が全力で止めているのを見て、飛鳥は何とも言えない顔をするのだった。

 

 

おしまい

 




キャスト

 戸山 香澄
 花園 たえ
 牛込 りみ
 山吹 沙綾
市ヶ谷 有咲

一丈字 飛鳥
 青葉 モカ

 今井 リサ


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WONDER BOYオールスター編
第401話「オールスター?」


 202×年。日本ではガールズバンド戦国時代を迎えていた。数多のガールズバンドがしのぎを削り、勝った者は栄光を手に入れ、負けたものは挫折を味わい、去っていく。

 まさに弱肉強食の世代。

 そしてここにも、東京のどこかにあるバンドリ学園でも同じだった。この学園に至ってはガールズバンドが沢山いたからだった!

 仲良し5人組が集まったフレッシュ系ガールズバンド「Poppin‘Party」

 幼馴染5人が集まった王道ガールズバンド「Afterglow」

 芸能人5人で構成されたアイドルバンド「Pastel*Palettes」
 
 プロも一目置く本格派ガールズバンド「Roselia」

 弦巻こころ率いる異色系ガールズバンド「ハロー、ハッピーワールド!」

 そして、最上級生で構成された4人組のガールズバンド「Glitter*Green」

 バンドの腕もさながら、その顔立ちに学園の男子生徒たちはメロメロ状態だった。

だが、ガールズバンドも人気になってきたはいいが、問題も抱えていた。

 それはファンの迷惑行為である。彼女たちが所属する学校で出待ちを行ったり、近隣に住む住人たちに迷惑行為を起こしたりしている。中にはバンドを禁じられた学園もいて、中でも激戦区である東京は特に深刻化していた。

 学園内では対処に限界も出てきてしまい、どうすれば良いか迷っていた所、ハロー、ハッピーワールドのリーダーである弦巻こころは自分の古くからの友人から、不思議な力を持った少年の事を聞かされており、その少年に力を貸してもらおうと考えた。

 そしてその少年こそが、一丈字飛鳥であり、この物語は不思議な力を持ったこの少年の愛と勇気と誇りをもって戦い抜く物語である…。

 なのだが…。

「お邪魔しまーす」

 今回は『WONDER BOY』メンバー。総登場である…。

飛鳥「どうなるんだろう…」

2年3組:未来、省吾、幸生、悟士
1年3組:飛鳥、京、日向、椿

社会人:和哉、孫

**********************


 

 

 

 

 ある日のバンドリ学園。男子生徒たちはとてつもなくイライラしていた。

 

「相変わらず香澄ちゃん達はオレ達に振り向いてくれない…」

「振り向いてくれないならまだしも…」

 

 というのも、原因は周りにいた女子生徒たちがある男に夢中になっていた。そう、WONDER BOYでも屈指のイケメンキャラである林幸生の存在だった。

 

幸生「……」

 

 幸生は180くらいあり、青髪のショートストレート、釣り目、見た目でいうとワイルドな風格で、それでいて御曹司。女性にモテる要素ありまくりで、本当に女子生徒たちがメロメロになっていた。

 

「薫様もいいけど、やっぱり本物の男もいいわよね…♡」

「一丈字くんにあんなイケメンの友達がいるなんて知らなかった!」

「やっぱイケメンはええわ…♡」

「女子にもこういうイケメンを供給するべきよ!」

 

 どうやら飛鳥はイケメンとして認識されていなかった。

 

「それがせめてもの救い!!!」

「救いだけど、やっぱなんか面白くねぇ!!」

「これだと余計にオレ達の方に振り向いてもらえなくなるだろうがァ!!」

 

 男子がそう騒ぐと、女子生徒たちがキッと睨みつけた。

 

女子A「うるさい不細工共!」

女子B「ピーピーうるさいのよ!」

女子C「そんな事ばっかり言ってるから相手にされないのよ!」

女子D「一丈字くんカワイソー」

男子A「やかましい!!」

男子B「そういうお前らこそイケメンが相手にすると本気で思ってるんですかァ~?」

男子C「自分は優遇されるべきだと思ってる奴はなァ、幸せになれねーんだよ!!」

男子D「思いやりが大事です!!」

 

 とまあ、中々のカオスぶりを見せていました。

 

******************

 

 1年3組

 

飛鳥「あー…。喧騒がここまで聞こえてくるよ…」

 

 座長・一丈字飛鳥は廊下から聞こえてくる喧騒にげんなりしていた。これ絶対自分のせいにされるんだろうなと思ったのと、実際漫画でもこういうトラブルが起きると主人公のせいにされるという事を理解していたからだった。

 

京「なんていうかその…お前も大変だな」

飛鳥「そうだよ」

 

 親友の奈良川京に言われて、飛鳥はそう返事すると、一緒にいた林日向と林椿も困った顔をしていた。

 

椿「なんていうか男子が凄くキモいんだけど…」

飛鳥「おう。キモいって言葉を使うと、逆に喜ぶからあまり使わない方がいいよ。ていうか寧ろ狙われるからな」

椿「ね、狙われるって…」

飛鳥「Afterglowの美竹さんと、パスパレの白鷺先輩がまさに狙われてるからな…」

 

 そうは言いつつも、実際に何回か椿がこのシリーズに登場した際、椿もなかなかの素質があると男子生徒たちが話していたと情報を耳にしたが、何も言わないことにしたが、幸生が現れた。

 

幸生「その話詳しく聞かせろ」

飛鳥「幸生さん。ここでトラブル起こすのやめてください。林グループと弦巻財団の2大組織がいて、学校の先生方のストレスが凄い事になってるんですから」

 

 とは言いつつも、幸生が退く様子がないので、場所を移動して話をすることにしたが…。

 

「ちょっと、しつこいんだけど」

「いいじゃんかよォ!!」

 

 Afterglowが男子生徒たちに絡まれていた。

 

「ただでさぇいぃぃぃぃぃぃぃちじょうじだけでも厄介なのに、あの青くぅぅぅぅぅぅヵみも現れて、オレ達の存在感が薄くなるんだよぉ!!」

モカ「いや、そんなの知らないし~」

ひまり「巻き舌の癖が凄い!!」

 

 すると飛鳥は普通に超能力を使って、男子生徒たちを腹痛にさせた。

 

「ぐああっ!! は、腹がぁ!!」

「へっ! だけど今日のオレ達は一味違うぜ!!」

「漏らしてもいいように、紙おむつを穿いてきてるからなぁ!?」

「それ何の自慢!!?」

 

 男子生徒たちは腹痛対策に紙おむつを穿いてきたが、飛鳥達からしてみたら結局漏らすことに変わりはなかった。

 

幸生「おい…」

椿「本当にキモいんだけど~!!」

 

 男子生徒たちのキモさを見て、幸生と椿は顔を真っ青にしながらドン引きしていた。飛鳥・京・日向は同じ表情で唖然としていた。

 

飛鳥「…このまま漏らさせたらどうなるんだろう」

椿「そんなの絶対嫌!! あんたが何とかしなさいよ~!!」

飛鳥「分かった分かった!!」

 

 そう言って椿が飛鳥の背中を押した。

 

飛鳥「あのー」

「ああん!!?」

「!!」

 

 飛鳥が男子生徒達とAfterglowの前に姿を現した。

 

「なんだてめぇ!」

「遂にヒーローのおでましって訳か!?」

飛鳥「本当にそう思ってます?」

 

 飛鳥が呆れたように男子生徒たちに話しかけた。

 

飛鳥「美竹さん達嫌がってるんで、離して貰えませんかねぇ?」

「な~に分け分かんねぇ事言ってんだ。お前はとにかくすっこんでろ…よっ!」

 

 男子の一人が飛鳥に対して殴りかかったが、飛鳥は簡単にかわして足払いを食らわせると、男子…ヤラカシAは転倒した。

 

ヤラカシA「ぎゃん!!」

 

ヤラカシB「A!」

ヤラカシC「この野郎!! 暴力をふるわせたとして先生に言いつけてやるからな!!」

 

 そう言って飛鳥はスッと自分のスマホを取り出して、再生するとそこには自身がAfterglowに迫っている声と、嫌がっている蘭たちの声が再生された。

 

飛鳥「自白するようなものですのでお勧めはしませんよ。観念したらどうですか?」

「っ!」

飛鳥「あと、後ろにいる青い髪のお兄さんいますよね?」

幸生「!?」

 

 自分が引き合いに出されて幸生が驚いた。

 

ヤラカシB「そ、そのイケメンがどうしたんだよ!」

飛鳥「女子生徒の皆さんを敵に回しますし、彼…林グループの御曹司なんですよ」

ヤラカシC「だ、だからどうしたんだ!」

飛鳥「分かりませんかね? この現場に彼も居合わせたとなれば、運が悪けりゃあなた方は林グループに喧嘩を売ったとして、世界中のお偉いさんを敵に回すようなものですよ?」

 

 飛鳥の発言にヤラカシ達の顔が真っ青になったり緑色になった。まるで毒を飲んだと思い込んだ毛利小五郎のように…。

 

飛鳥「どちらがいいですか? 大人しくここを去るか、明日から普通の生活が送れない人生を送るか、二つに一つです」

「ひ、ひぎぃぃいいいいいいいいいいい~~~~~~~~~~~~~!!!!」

 

 飛鳥が笑顔で脅しをかけると、ヤラカシ達が逃げていった。だが、この時京たちも蘭たちも飛鳥の怖さに言葉を失っていた。

 

京(いっつも思うけど、飛鳥に勝てると思う事自体が間違いなんだよな…)

日向(どんどん和哉さんに似てきてるような…)

 

 飛鳥と付き合いの長い京と日向は飛鳥の姿を見て困惑していた。すると飛鳥が苦笑いしながら、蘭たちを見た。

 

飛鳥「大丈夫ですか?」

蘭「え、あ、うん…」

 

 飛鳥のいつもと違う風格にモカ以外の4人は何も言えなくなっていて、それを見て飛鳥はまた苦笑いした。

 

モカ「いや~。流石飛鳥くんだね。助けてくれてありがとう」

 

 だが、モカだけは違い、いつも通りに接していた。

 

飛鳥「またなんかあったら言ってください。行こう」

 

 そう言って飛鳥が去っていくと、日向たちも後に続いた。

 

モカ(なんかまた面白い事になってきたなぁ~)

 

 とまあ、この後我に返った巴やつぐみからお礼をさせてほしいとせがまれたのは別の話…。

 

 その頃、2年3組の教室では…。

 

省吾「いや、隣の教室に行くだけだってば!!」

未来「ダメ!!」

悟士「大人しくしてろ!!」

 

 省吾が2組にいる日菜たちに会いに行こうとしたが、未来と悟士が止めていた。理由は簡単だ。省吾に至っては、男子生徒達とあまり変わらなかったからだ…。

 

 で、孫はどうしてるかというと…。

 

孫「おわりました」

まりな「ありがとう孫くん。いやー、男の子いると助かるわー」

 

 飛鳥達が学校に行っている間、ライブハウス「CiRCLE」で主に力仕事をしていた。

 

まりな(…でも、孫くんのお兄ちゃん、めっちゃ怖い)

 

 孫がサークルでバイトするときに、孫の兄である和哉も同席をしていたのだが、目にハイライトがなく、両目に大きな隈があって目つきも悪かった為、まりなは忘れられずにいた。

 

 そんなこんなでダシマ式バンドリの新しい日常が始まる…。

 

飛鳥「あ、次回からまたいつも通りです」

省吾「何でだよ! オレにも出番…」

未来「省吾くんはダメ!」

悟士「…パスパレに見惚れて迷惑かけただろう」

 

 ダシマ式バンドリ! 第9シリーズ始まります。

 

 

おしまい

 



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第402話「対談! 林家と弦巻家」

 

 

 

 

 とあるスタジオ。

 

飛鳥「えー。今回は趣向を変更しまして、トーク回です。司会は一丈字飛鳥がお送りいたしまして、今回のゲストはこちらの方々です!」

 

 ゲスト

 

・ 弦巻こころ

・ 林幸生

・ 林日向

・ 林椿

 

こころ「幸生たちとこうやってお話しできて嬉しいわ!」

椿「……」

 

 こころは喜んでいたが、椿はちょっと嫌そうな顔をしていて日向が無言で諫めた。

 

飛鳥「ちなみに『WONDER BOY』メンバーと「BanG Dream!」のコラボをやるにあたり、当初は誰とも繋がりを持たないという設定にしようとしましたが、林グループと弦巻財団がお互いすっごい金持ちなので、お互いの事を良く知らないというのは無理がある為、弦巻家だけはつながりがあるようにしたというのは、裏設定です」

椿「裏設定話す必要ある!?」

幸生「そもそもオレら無名じゃねぇか…」

飛鳥「まあ、ダシマも数年間小説を投稿して、ある程度自分の実力も分かってきたので、もう開き直って自分のやりたい事をとことんやっていこうという事で、こういう話し方をしております」

日向「は、早く本題に行こう!?」

飛鳥「それでは参りましょう」

 

 飛鳥のブラックジョーク(?)に林三兄妹がツッコミを入れると、本題に入った。ちなみにこの時こころは「飛鳥は何を言っているのかしら?」と頭の上に「?」マークを浮かべていた。

 

飛鳥「さて、弦巻こころさんのプロフィールには弦巻家の事について、詳しく記載されていますが、ちなみにこれが林家でもそうなのかというのを検証していきたいと思います! それではひとつずつ参りましょう」

 

『家がとても広い』

 

飛鳥「まあ、私も行った事はありますけど、広いですよね?」

椿「あたしとお姉ちゃんとお母さんが住んでる家は普通だけどね」

飛鳥「それでも結構立派な一軒家だよね…」

こころ「今度行ってみたいわ!」

椿「狭いと思うわよ」

こころ「それでも行きたいのよ!」

 

 こころが屈託のない笑みを浮かべると、椿はちょっと困った顔をしていた。ちなみに構成としては妹と妹の友達がじゃれあっているように見えている。

 

『その家はお城のような感じ』

 

椿「いや、ないから!」

飛鳥「そういや林グループは…」

幸生「うちは日本家屋だな。社長の嗜好で…」

飛鳥「あー…。そういえば旦那様も奥様もどっちかっていうと『和』の方が好きですもんねー」

こころ「今度またおじい様やおばあ様にも会いたいわ!」

 

『自宅の庭には桜が咲いていて、庭でお花見が出来る』

 

飛鳥「まあ、少なくとも旦那様の家は出来そうな感じは…」

幸生「出来なくはないが、弦巻家程じゃない」

こころ「そういえば今度みんなでお花見したいわね!」

飛鳥「そうなると、色々考えないといけないね…」

 

 そう言って飛鳥はいろんなことを張り巡らせると、日向は『苦労してるんだなぁ…』と困惑していた。

 

『バンドに必要なものが一通りそろっている(DJセットや、バンド以外の楽器)』

 

椿「いや、バンドしないから」

飛鳥「けど、揃えようと思ったら揃えられるよね?」

椿「ま、まあそうだけど…お母さんが許してくれないわよ」

飛鳥「まあ、リーダーはね」

 

 椿の言葉に飛鳥が苦笑いしたが、幸生や祖父である根性に頼めば、すぐに用意してもらえることを飛鳥は知っていた。ちなみに幸生たちの母であるさくらはれっきとした庶民であり、金銭感覚は庶民と同じで、日向と椿に対してはちゃんと金銭感覚が常識を逸脱しないように教育をしている。

 

こころ「そういえば椿たちも楽器弾けるのよね!?」

椿「アンタ達程じゃないわよ。本格的にやってるわけでもないし」

こころ「それでも構わないわ! 今度一緒にライブしましょうよ!」

椿「いや、それはちょっと…」

飛鳥「いいんじゃない? やってあげれば」

こころ「あら? 飛鳥もよ?」

飛鳥「え」

 

 まさか自分も入っているとは思わず、飛鳥は困惑した。

 

『自分専用の豪華客船を持っていて、それはもうカジノやギフトショップ、シアターホールまで持っている』

 

椿「いや、ないないないない!!! どこの金持ちよ!!」

飛鳥「でも旦那様主導の家族旅行って大体海外で高級ホテル泊まってるんでしょ?」

日向「うーん…」

 

 飛鳥の言葉に日向が苦笑いした。

 

飛鳥「その辺どうなんですか? 次期総帥候補」

幸生「その言い方やめろ。まあ、少なくとも日向と椿の為なら作れそうだな…」

飛鳥「林グループもそれだけの財力があるって事ですね」

 

『友達の誕生日プレゼントは施設』

 

飛鳥「そういや北沢さんへの誕生日プレゼントは、ソフトボール専用のバッティングセンターだったとか…」

椿「はぁ!?」

こころ「そうよ? はぐみはソフトボールをするから、あげたのよ!?」

飛鳥「僕たちそういうプレゼントは貰った事ないなぁ…」

こころ「あら、そうなの?」

日向「う、うん…。あまり高すぎるものをあげても、かえって気を遣わせるから…」

 

 こころの言葉に日向が苦笑いすると、

 

飛鳥(うちはともかく、京の家のおばちゃんが腰抜かしてたからなぁ…。パン屋のリフォーム代全部負担してもらって)

 

『誕生日パーティーで大臣がお祝いに来る』

 

飛鳥「これはどうなの?」

日向「わ、私は特に…」

椿「ていうかここ近年はあんたと京にお祝いしてもらったくらいよ」

飛鳥「誕生日パーティーとかは特にしてないの?」

椿「してないわよ。というかもう恥ずかしいし…////」

 

 そう言って椿は照れてしまった。

 

幸生「…そもそもうちの社長がよその人間を入れたパーティーがあまり好きじゃないからな」

飛鳥「そうなんですか…」

こころ「あら? 皆一緒の方が楽しいわよ?」

飛鳥「まあ、考え方も人それぞれって事ですね」

こころ「あ、そういえば飛鳥の誕生日っていつなの?」

飛鳥「え? えーっとそれはぁ…」

 

『全国チェーン店のファーストフード店で自分が考えたオモチャをセットで売り込むことが出来る』

 

椿「いや、ていうか寧ろ弦巻家そんな事やってるの!!?」

飛鳥「ミッシェルグッズを全国チェーン店で販売してるよ」

幸生「いや、流石にそこまでやらねぇよ…」

 

 弦巻家のスケールのでかさに幸生も呆れていた。

 

***************

 

飛鳥「さて、そろそろ時間が来てしまったようですね」

こころ「あら、そうなの? 楽しい時間はすぐに過ぎてしまうのね」

飛鳥「まあ、結論から言いますと、林グループも弦巻財団も同じくらいの財力があるという事でよろしいですね?」

幸生「まあ、そうだな…」

飛鳥「以上、ダシマ式バンドリトークコーナーでした!」

椿「ところで飛鳥」

飛鳥「なに?」

 

 飛鳥が椿の方を見ると、椿が呆れる様子だった。

 

椿「アンタさ…ハーレムネタやっててどんな気持ち?」

飛鳥「地元に帰りにくいし、何なら次回椿やってみる?」

椿「ごめん。アタシが悪かったわ」

幸生「させると思ってんのか…!?」

飛鳥「ちなみに幸生さんは、女子生徒の皆さんからレギュラーになってほしいそうです」

幸生「……」

 

 

おしまい

 



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能力者・一丈字飛鳥編
第408話「ベーシストの亡霊!?」


第408話

 

 今回の設定

 

・ 能力者だという事が全員に知られた。

 

*************************

 

 こんにちは。私の名前は一丈字飛鳥です。バンドリ学園に通う高校1年生ですが…。超能力者でもあります。そして今回のお話は能力者だという事が学園の皆さんに知られてしまったというパターンです。それではどうぞ…。

 

 

 ある日の事だった。

 

「うーん…」

 

 バンドリ学園のカフェテリアでRoseliaのベージスト・今井リサは悩んでいた。リサの他にも友希那、紗夜、燐子が同席していた。

 

友希那「どうしたの。リサ」

リサ「いや…。最近妙な噂を聞いてね…」

友希那「妙な噂?」

リサ「その…」

 

 友希那の言葉にリサが気まずそうに答えた。

 

リサ「最近、スタジオハウスにベージストの幽霊が出るって…」

「えっ!!?」

 

 リサの言葉に3人が驚いたが、周りにいた男子生徒達も反応した。

 

リサ「いや、反応しすぎ!!」

紗夜「幽霊よりも周りにいる男子の方が怖いわ…」

友希那「そんな事よりも、それがどうかしたの?」

リサ「いや、もし出てきたら怖いなーと思ってさ…」

 

 リサが怖そうにしていると、

 

「リサちゃん! それじゃ今日から僕が付き添ってあげるゥ!」

「僕が!」

「いや、オレが!!」

「僕も僕も!!」

 

 とまあ、男子生徒がしつこく絡んできて友希那達はうんざりしていた。そしてそれを飛鳥も遠くから聞いていたが、どうせ大したことではないだろうと思い、その場を後にした。

 

********************

 

 放課後。中等部にいたあこと合流してスタジオに向かうが…。

 

友希那「まあ、リサの事情は分かったけど、練習に穴をあける訳には行かないわ」

リサ「そ、そうだよね…」

 

 友希那の言葉にリサが困った顔をすると、

 

あこ「そういえばあこもその話聞いたことがあるけど、確かにその幽霊ってベーシストの家までついていくって…」

リサ「ヒ、ヒィイイイイイイイイイイイ!!!」

紗夜「逆に怖がらせてどうするの!」

 

 あこの発言にリサが青ざめて怯えると、紗夜があこを叱った。

 

リサ「ただでさえ今夜アタシ一人なのにぃ~…」

あこ「え、そうなの?」

友希那「まあ、いざとなれば私の家に来ればいいわよ」

紗夜「しかし、そのベーシストの幽霊は気になりますね…」

 

 そう言って5人が悩んでいると、

 

「だから僕たちがつくってば!」

「!」

 

 カフェテリアで迫ってきた男子生徒たちがついてきていた。

 

紗夜「あ、あなた達!!」

「遠慮しなくていいんだよぉ?」

「そうそう」

「家だってオレ達が泊まり込んでやるからさぁ…」

「いひひひ…」

 

 とまあ、何を血迷っているのか同級生の女子に対してとんでもない事を言う男子生徒達。

 

あこ「り、りんりん…」

燐子「……!」

 

 男子生徒たちの異様さにあこと燐子は怯え、友希那、リサ、紗夜も困った顔をすると、男子生徒たちに異変が起きた。

 

「…と、思ったけどやっぱやめた」

「帰ろうぜ」

 

 そう言って男子生徒たちは退散していった。

 

あこ「あれ!? 急に帰っていった…」

紗夜「これって…」

 

 男子生徒たちが退散する姿を見て友希那以外の4人が不思議そうにすると、友希那が毅然とした表情である人物を探した。

 

友希那「飛鳥。どこにいるの? 出てきて頂戴」

 

 友希那がそう言い放つと、飛鳥が陰から出てきた。

 

あこ「飛鳥くん!」

飛鳥「こんにちは。大丈夫ですか?」

 

 あこが飛鳥の名前を呼ぶと、飛鳥は笑ってごまかしていた。

 

飛鳥「下世話でしたかね」

友希那「いいえ。助かったわ」

飛鳥「それよりも、これから練習ですか?」

友希那「そうよ。あなたも来て頂戴。時間あるかしら?」

「えっ!!?」

 

 友希那の言葉に飛鳥や紗夜たちが驚いた。

 

飛鳥「時間はありますが…」

友希那「私たちを守るのがあなたの『仕事』でしょう?」

飛鳥「……」

 

 友希那の言葉に飛鳥はまた苦笑いした。

 

*****************************

 

飛鳥「そういう事があったんですか…」

 

 サークルで飛鳥はRoseliaから幽霊の話を聞かされていた。

 

友希那「あなたの力で何とかならないかしら?」

飛鳥「まあ、その幽霊が出たスタジオが分かれば、ゼロではございませんが…」

リサ「ごめん。そこまでは聞いてないわ…」

飛鳥「そうですか…」

 

 飛鳥がリサの方を見つめた。

 

リサ「…どうしたの? もしかしてもう取りついてるとか!?」

 

 リサが青ざめて叫ぶと、あこや燐子も驚いた。

 

飛鳥「いえ、そうではなくて…。その、幽霊の特徴ってどんな感じかもう一度教えて貰えますか?」

あこ「えっとねー。髪が長くて、赤い服を着てる女の人!」

飛鳥「髪の色とか見た目とかは分かりますかね…」

リサ「そういえば茶髪で派手な格好をしてるって…」

飛鳥「……」

 

 リサの言葉を聞いて飛鳥は困惑し、紗夜と燐子も何かに気づき始めた。

 

飛鳥「…あの、今井先輩」

リサ「な、なに?」

飛鳥「最近ですが、赤い服って着られました?」

リサ「え?」

紗夜「そう言えば今井さん…。前に赤い服を着てましたね…」

燐子「しかもその時はお客さんも結構いて、あの時はいつもより照明を暗くしていたので…」

リサ「ま、まさか…」

 

 紗夜と燐子の言葉を聞いてリサが口元をひきつらせた。

 

飛鳥「幽霊の正体は今井先輩。あなたの可能性が高いです」

 

 飛鳥の言葉にリサが苦笑いした。

 

リサ「あ、あははは…!」

友希那「良かったわね。幽霊じゃなくて」

リサ「ホントだよぉ~。でも、怖がらせた子達には申し訳ないな~…」

 

 友希那の言葉にリサは申し訳なさそうにしていた。

 

飛鳥「これで事件解決ですかね」

リサ「うん。ありがとう飛鳥くん」

あこ「名推理だったよ!」

飛鳥「いや、そこまではいかないと思いますけど…。これで練習できますかね」

リサ「うん!」

 

 そんなこんなでRoseliaは練習を始めたが、飛鳥はずっと練習に付き合っていた…。

 

*********************

 

 そして練習が終わり…。

 

あこ「リサ姉。本当に今晩大丈夫?」

リサ「うん。いざとなれば友希那もいるから」

 

 片づけを終えて解散しようとするが、あこはリサの事を心配していた。

 

友希那「もし本当に幽霊がいたら、一丈字くんにお祓いしてもらうというのも手ね」

あこ「え、出来るの!?」

飛鳥「…場合によりますけどね」

 

 あこの言葉に飛鳥は気まずそうに答えた。というのも、今までは正体を隠してきたが本当にバレたんだと実感したからである。

 

あこ「それにしても飛鳥くんって本当にエスパーなんだね! 今も何かを感じ取れたりしてるの!?」

飛鳥「…えーと、そうですね」

 

 あこの言葉に飛鳥が気まずそうに答えると、リサが青ざめた。

 

リサ「も、もしかして幽霊とか!?」

紗夜「変な冗談はやめて頂戴!」

飛鳥「いえ、幽霊とかじゃなくて…」

「え?」

 

飛鳥「Roseliaの皆さんと一緒に入った私への『怨念』です…」

友希那「これはあなたの力で追い払ってもらう必要があるわね」

飛鳥「そうなりますね…」

 

 能力者だという事が知られて、飛鳥の心労は更に増えるのだった。

 

 

 

おしまい

 



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Afterglow VS Roselia編
第411話「Afterglow VS Roselia ナース編(前編)」


 

 

 それはある日の事だった。

 

「AfterglowとRoseliaってどっちが頭いいんだろう」

 

 カフェテリアで女子生徒たちがそう言う話をした。というのも、彼女たちは2組のバンドがお互いを高めあうライバル関係だという事を知っていたからである。

 

 だが、どっちが勉強できるのかというのはほんの興味本位だった。大した意味はなかったのだが…。

 

友希那「そんなものRoseliaに決まってるわ」

 

 当の本人たちが近くで聞いていたのが運の尽きだった。Roseliaのリーダーである湊友希那が女子生徒たちにそう言い放つと、

 

「ちょっと待ってください。確かに年上かもしれませんけど、Afterglowだって負けてませんよ」

 

 と、Afterglowのボーカルである美竹蘭が友希那に反論した。そう、蘭と友希那はよく衝突するのだ。仲が悪いわけではない。ただ、お互い負けず嫌いな上に、口下手で誤解を生みやすいが為に、色々めんどくさいのだ。

 

 実際に蘭が友希那に突っかかっている姿を見て、モカは「やってしまった」と言わんばかりのリアクションをし、ひまり、つぐみが困惑していた。

 

友希那「こっちには紗夜や燐子がいるのよ」

リサ「友希那。せめて自分でも頑張ろうよ…」

蘭「湊先輩に勝つ自信、ありますよ?」

モカ「蘭~。せめてそこは全員行こうよ~」

ひまり「モカも乗せないで!!」

 

 とまあ、最終的にはいつも2組が対決をすることになるのだ…。

 

****************

 

「えー。ちなみに罰ゲームは下記の中から選んでいただきます」

 

 特設会場にてAfterglowとRoseliaが対決をすることになったのだが、司会を務める男子生徒が罰ゲームの内容を発表した。

 

1. 敗北チームは勝者チームに土下座

 

ひまり「これが一番シンプルだけど…」

巴「妹に土下座ってマジで格好がつかないよ…」

 

2. お化け屋敷

 

リサ「絶対嫌!!!」

巴「毎回お化け屋敷入れるのやめてくれ!!」

蘭「でも、土下座も嫌だ…!!」

 

3. 敗北チーム全員で一丈字飛鳥を突き落とす

 

「メンバーはダメージ受けないけど、バンドのイメージが落ちる!!」

「ていうか何で一丈字くん!!?」

 

4. ナース服姿で1日好きな相手をご奉仕♡

 

「これが一番意味わからん!!」

「でも、今までに比べたらマシかも…」

「相手選べるし…」

 

司会「さて、どうしますか?」

リサ「4番にしよう! 負けてもナース服可愛いし、相手も自由に選べるよ!」

紗夜「ま、まあ…他のに比べたら…」

 

モカ「どうする~?」

ひまり「4番にしようよ! 他のはちょっと…」

つぐみ「そ、そうだね…」

 

 そんなこんなで負けたチームはナース服姿で1日ご奉仕という事に決まった。

 

 その結果…。

 

司会「えー。国数英理社、各20点で合計100点のテストをして頂きました。範囲は中学2年生までに習う問題ですので、きちんと勉強してれば全員100点は取れる筈です。それでは発表します!」

 

 司会の言葉に皆が神に祈った。そしてモニターに点数が表示される。

 

 Afterglow:343点

 Roselia:325点

 

友希那「」

紗夜「!!?」

リサ「あちゃー…」

燐子「……」

あこ「あ~!!!」

 

司会「343対325でAfterglowの勝ちです!」

 

 司会がそう言うと、大歓声が上がった。ちなみに観客席にはファンの男子生徒や、普通の一般生徒も来ていた。

 

蘭「よし」

ひまり「やったね!」

巴「何とか姉としての威厳は保てた…」

つぐみ「皆お疲れ様」

モカ「ちなみにAfterglowの比率はどうなってるの~?」

蘭「表示しなくていいから!!」

司会「えー。こうなってます」

 

 と、Afterglowの点数を発表したが、順番はモカ、巴、つぐみ、ひまり、蘭の順番だった。

 

蘭「……」

モカ「もうちょっと頑張ろうよ~」

蘭「うっさい!」

 

司会「えー。負けてしまったRoseliaですが…」

リサ「…多分友希那だよね」

あこ「あこも多分…」

司会「湊さんと宇田川さんですが、30ありませんでした」

 

 司会の発言にあこが机につっふしたが、友希那は興味なさそうだった。だが、それを紗夜とリサがジト目で見つめていた。

 

友希那「紗夜たちの点数はどうだったのかしら?」

司会「10人の中では紗夜さんが1位でした。あと、白金さんが2位で、今井さんが4位です」

友希那「それなのになぜ…」

司会「あなたと宇田川さんが足を引っ張っていたからです」

あこ「うぇええええええええええええええええん!!」

 

 司会の容赦ない発言にあこは号泣した。

 

司会「という訳でRoseliaの皆さんには罰ゲームです」

リサ「仕方ない…。ほらあこ。いつまでも落ち込んでないで」

紗夜「罰ゲームが終わったら補習ね」

あこ「はい…」

 

 紗夜の発言にあこも今回ばかりは何も言い返さなかった。

 

友希那「興味ないわ」

リサ「友希那はもっと反省して!!」

紗夜「誰のせいで負けたと思ってるんですか!!」

燐子「あ、あのう…。それを言うとあこちゃんが…」

 

 とまあ、そんなこんなで罰ゲームを決めることになった。

 

*******************:

 

司会「ちなみに奉仕する相手ですが自由に選ぶことが出来ます」

リサ「誰にする…?」

あこ「うーん…」

 

 と、Roseliaが話をすると男子生徒たちが一斉に手を挙げた。

 

「はいはいはいはいはいはい!!」

「オレに奉仕してください!!」

「せめてナース服姿見せてぇ~!!!!」

「オレ、股間が色々やばいので見てください♡」

 

 とまあ、本当にヤバかった。

 

友希那「黄色い救急車呼んだ方がいいかしら」

リサ「友希那~。なんでそういう事は知ってるの~」

紗夜「…その知識をもっとあのテストに向けてくださいよ」

 

 無駄な知識を知っていた友希那にリサと紗夜は落胆していた。

 

あこ「あこはおねーちゃんかな」

巴「!?」

リサ「まあ、そう言うと思ったけど…」

友希那「待って頂戴。宇田川さんだと…」

 

 巴に奉仕するとなると、必然的に蘭にも見られる可能性が高かった。そう、自分がナース姿になって巴に奉仕をしているところを蘭に見られるのは屈辱以外何物でもなかった。まあ、それが罰ゲームなのだが…。

 

紗夜「それだったら誰がいいんですか…って、湊さんにそれを決める権利ありますか?」

友希那「あるわよ」

リサ「それを言い切るあたり流石友希那だよ」

 

 長年の友人の開き直った態度を見て、リサは素直に感心した。そんな時だった。

 

モカ「トモちんもいいけど、飛鳥くんにしてみたら~?」

「!!?」

 

 何と言う事だろう。モカが余計な事を言って、ブーイングが怒った。

 

「や、やめてくれー!!」

「折角あいつがいないのに!!」

「何であいつなんだよ!!」

「モカちゃん? 冗談だよね? 冗談だと言ってくれぇえええええ!!!」

「あ、僕一丈字飛鳥です!!」

 

 とまあ、何とも見苦しい感じで叫びまくるヤラカシ達。

 

紗夜「い、一丈字さんは殿方なんですよ!?」

モカ「あー…やっぱり無理ですよね」

友希那「無理じゃないわ。やってやるわよ」

「!?」

 

 すると友希那は司会に言い放った。

 

友希那「奉仕する相手は一丈字飛鳥くんよ」

司会「あ、はーい」

あこ「飛鳥くんかー…」

 

 あこは特に反対する様子もなく、このまま飛鳥に決定してしまった。

 

「なんでやあああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 そしてこの男も。

 

飛鳥「えっ!!?」

 

 

つづく

 

 

 



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第412話「Afterglow VS Roselia ナース編(後編)」

 

 

 一丈字飛鳥です。私は今、病室にいます。

 

飛鳥「ものすごく健康なんですけどね!!」

 

 皆さんもお察しの通り、先日AfterglowとRoseliaがまた対決をしたらしく、Roseliaが負けてしまい、罰ゲームとして好きな人物を1日ナース服姿で面倒を見るという話になったそうだ。

 

 そして指名をしたのが私だそうです…。弦巻家協力の元、スタンダードな病室を用意されて、私は今ベッドの上でゆっくりしています。9時から罰ゲームがスタートだそうで、何かあったらナースコールで好きなメンバーを呼び出せるとの事ですが、正直呼ぶ必要ないんだよなぁ~!!!!

 

 しかし、このまま誰も呼ばないとなれば話としては盛り上がらないので、呼ぶ必要はあるのだが…。なんかやっかみも出てきそうだから、呼ぶのやめとこう。

 

********

 

 1時間後、誰かがノックをしてきました。

 

飛鳥「どうぞ」

 

 私がそう言うと現れたのは…。

 

「飛鳥くん! 具合はどう~?」

「あ、あこちゃん…」

 

 宇田川さんと白金さんでした。スタンダートタイプのナース服だった。最近はズボンが多くなったが、2人ともスカートタイプである。

 

飛鳥「宇田川さん、白金さんも…」

 

 私は普通に接することにしました。理由は簡単です。変にきょどったりすると、向こうも心配するからです。特に白金先輩が…。

 

あこ「暇だから来ちゃった!」

飛鳥「暇だからって…。やっぱりナースコール呼ばないと何もないんですか?」

あこ「うん。これ着てる間はゲームしたらいけないし、色々大変なんだ」

燐子「…ある意味罰ゲームですね」

 

 ああ、少なくとも白金さんは休みの日は大体ネットゲームをしてるって言ってたので、ある意味不毛な時間ですよね。

 

あこ「そういえば飛鳥くんはさっきまで何してたの?」

飛鳥「特に何もせずにゆっくりしてましたね。最近は色々疲れる事もありましたし…」

 

 私が窓の方を見て遠い顔をすると、宇田川さんと白金さんが心配そうにした。おっといけないいけない。

 

あこ「…やっぱり、男子たちの言いがかりに困ってるの?」

飛鳥「それもありますけどね」

あこ「多分ここにいたら、りんりんの事すっごくいやらしい目で見ると思うんだよね」

燐子「あ、あこちゃん…//////」

飛鳥「…それは白金先輩だけではないと思いますね」

あこ「友希那さんも紗夜さんもリサ姉も人気だもんね~」

飛鳥「あなたもですけどね」

あこ「あ、あこも!?」

飛鳥「聞きましたよ。中等部の方々から結構言い寄られてるそうですね」

あこ「そ、そうなんだけど、あこ今はドラム叩いたり、ゲームしてる方が楽しいかなー」

 

 宇田川さんがそう言うと、白金さんが元気を取り戻した。

 

飛鳥「そうですか」

あこ「そういえば病院ってゲームしてもいいのかな?」

飛鳥「病院によりますので、まずは許可を取った方がいいですね」

あこ「そうなんだ。詳しいね」

飛鳥「ずっと昔に入院した事があるので…」

あこ「え、いつ?」

飛鳥「いつ頃でしたかねぇ…」

 

 とまあ、昼が来るまで宇田川さん、白金さんと世間話をしてました。結構楽しかったです。

 

******

 

 11時ごろになって、今井先輩がやってきました…。

 

リサ「飛鳥くーん。お昼ご飯だけど何食べたい?」

 

 ナース服姿の今井先輩がやってきたが、違和感なさ過ぎて宇田川さんも驚いていた。

 

あこ「リサ姉…やっぱり本物の看護婦さんみたい…」

リサ「そ、そう~?」

飛鳥「本物の病院にもこんな感じの人がいましたね…」

 

 とまあ、当たり障りのない事を言ってみた。

 

リサ「飛鳥くん。お昼ご飯なんだけど何食べたい?」

飛鳥「何食べたいってどういう意味ですか?」

リサ「お昼はアタシが作る事になってるんだ」

飛鳥「え、そうなんですか!?」

 

 私は思わず驚いてしまった。こんな形で今井先輩の手料理を食べる事になるとは。また嫉妬されるかもなぁ…。

 

リサ「そんなに驚かなくても」

飛鳥「いや、流石にそこまでしてもらうのは…」

リサ「いいのいいの。たまにはこういうのも良いし、日ごろからお世話になってるから、たまには先輩に甘えなさい?」

 

 そう言って今井先輩は私に言い聞かせた。思えばこういう事を言われたのは久々かもしれない。

 

リサ「ほら、答えて!」

飛鳥「そうですね…」

 

 このまま遠慮するのもかえって悪い気がしたので、遠慮なく答えることにした。

 

飛鳥「…焼売」

 

 私はそう答えると、今井先輩たちは驚いた。

 

リサ「オッケー。それじゃメインは焼売にしてあとはアタシがバランスよく考えとくね」

飛鳥「ありがとうございます。あ、所で氷川先輩と湊先輩ってどうされてますか?」

 

 私がそう言うと今井先輩が苦笑いし、それを見て私も察した。

 

リサ「…今、みっちり補習受けてるよ。ナース服姿で」

 

 それを聞いてあこが気まずそうに視線をそらした。

 

*****:

 

飛鳥「…恐らく昼食時に連れ戻す可能性がありますね」

あこ「う~…終わるまで補習なんてやだぁ~」

 

 宇田川さんは氷川先輩が怖いのか、勉強が嫌なのかずっと困った顔をしていた。白金先輩は困った顔をしつつ、自分では止められないのでどうしようか考えていた。

 

飛鳥「…まあ、お昼までちょっと勉強しますか? 私が見ますので」

あこ「え?」

飛鳥「ただの悪あがきにしかならないと思いますが…」

 

 そんなこんなでお昼になるまで、私は白金さん、宇田川さんと勉強会をした。患者がナースに勉強を教えるなんてこれまたシュールな光景だ。

 

*****

 

 そして12時すぎになり、今井先輩が私たちを呼びに来て食事の時間となった。病室で食べるのではなく、隣の部屋にあるテーブルで食べることとなるのだが、ここで初めてナース服姿の湊先輩と氷川先輩を目撃した。だが、湊先輩はずっと勉強漬けだったのが、ちょっとゲッソリしていた。

 

飛鳥「お疲れ様です」

友希那「…どうしてナースコールをかけてくれなかったのかしら?」

飛鳥「いえ、皆さまの手を煩わせるまでもないと思ったからです」

あこ「そうだろうと思ったから、あことりんりんが来たんだよー?」

 

 とまあ、宇田川さんが憤慨していたが、

 

友希那「あこ。午後はあなたが紗夜と勉強会よ」

あこ「えー!!」

紗夜「宇田川さん。ここは病院なのよ。静かにしなさい」

リサ「いや、病院と言ってもここ本物の病院じゃないよ…?」

 

 こうしてみるといつものRoseliaであるが、全員ナース服を着ているというのはなんともシュールだった。まあ、病人服を着ている私が言うのもアレだが。

 

 そんな時、ふと氷川先輩と目が合って、氷川先輩は頬を染めた。

 

紗夜「そ、そんなに見つめないでください////」

飛鳥「見つめたつもりはないんですがね…」

 

 気恥ずかしいのか、私と目を合わせるなりプイっと横を向いた氷川先輩。恐らくだが男性患者から人気でそう。

 

リサ「今日のお昼は飛鳥くんのリクエストの焼売をメインに、中華風の病人食を作ってみたよー」

あこ「リサ姉すごーい!」

 

 確かに宇田川さんの言う通り、女子高生が作ったにしてはレベルが高い病人食が我々の目の前にあった。流石です。

 

 そして6人で一緒に食べたが、そこはもう学園と変わらない風景で、それなりに私も楽しい時間を過ごすことが出来た。

 

******

 

 午後

 

友希那「選手交代よ」

紗夜「……」

 

 今井先輩と白金先輩、宇田川先輩が後片付けをしている間、湊先輩と氷川先輩が相手をしてくれることになった。

 

飛鳥「よろしくお願いします…」

紗夜「一丈字くん。具合はどうですか?」

飛鳥「めっちゃ元気です…」

 

 氷川先輩。一応これコントみたいなものなのですが…流石ですね。

 

友希那「本当かしら」

飛鳥「あ、はい」

友希那「そういえばナースって何をするのかしら」

紗夜「血圧を測ったり、先ほどの今井さんみたいに患者さんの食事を作ったりしますね」

友希那「そう…」

 

 まあ、急にナースをやれと言われても何したらいいか分かりませんよね。

 

友希那「しかし、何故ナースの格好をして1日お世話をしないといけないのかしら?」

 

 御尤もです。

 

紗夜「それは…どうせ女子にコスプレさせたいのでしょう。全く男子というのは…分かりません」

 

 まあ、女子が男子にコスプレをさせたいというのはあまり聞きませんもんね。

 

友希那「とはいえ、一丈字くんをお世話すればいいのよね」

紗夜「そ、それはそうですが…」

友希那「という事だから一丈字くん。何かしてほしい事はないかしら」

飛鳥「そ、そうですね…」

 

 そう来ましたか。そう言われるとかなりつらいような…」

 

紗夜「ちなみにですが、いかがわしいお願いは却下します」

飛鳥「分かりました。それでは氷川先輩にお願いしたい事があります」

紗夜「な、何ですか?」

飛鳥「ニコーって笑ってみてください」

紗夜「却下です!!/////」

 

 まあ、そうですよね。

 

友希那「紗夜。笑顔で患者を安心させるのもナースの仕事だと思うわ」

紗夜「そ、それを言うなら湊さんだって…」

友希那「大丈夫。紗夜なら出来るわ」

 

 ああ…多分これは数時間も不当に勉強させた仕返しだろうなぁ…。まあ、氷川先輩も湊さんの言う事に一理あると思ったのだろうか、私に対して頑張ってニコーっと笑って見せた。顔は真っ赤で汗はダラダラで、表情はひきつっている。

 

 だけど、そんな氷川先輩が可愛らしく思えました。

 

紗夜「~~~~!!!!!///////」

 

 氷川さん。患者を叩くなんてタブーですよ…イタイイタイイタイ!!

 

 とまあ、こんな感じでRoseliaの皆さんの1日ナース体験は終了いたしました。

 

*******

 

司会「お疲れさまでした。どうでしたか?」

飛鳥「とても良い貴重体験をさせていただきました」

あこ「紗夜さんがとても可愛かった」

紗夜「宇田川さん!!//////」

 

 ちなみにこの後、戸山さん達にもオンエアされることとなり…。

 

日菜「おねーちゃん」

紗夜「絶対嫌!!///////」

日菜「な~ん~でぇ~~~~~~~~!!!!」

 

 日菜先輩は紗夜先輩にナース服をせがむようになりました。

 

「うわあああああああああああああ!!」

「一丈字めぇえええええええええええ!!!」

「Roseliaにご奉仕されるなんて羨ましいぃ~~~!!!」

「な~ん~でぇ~~~~~~~~!!!!」

 

 男子生徒たちは血の涙を流してめちゃくちゃ吠えてました。正直見苦しかったです。

 

「そういえば患者をお風呂に入れたり排泄を手伝ったりするんだよね! そのシーンはないの!?」

「はっ!! もしかしてその逆をしたんじゃないだろうな!?」

「誰をお風呂に入れたんだ! 誰の排泄を…」

飛鳥「あ、もしもし。パトカーと黄色い救急車をお願いします」

 

 

おしまい

 



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第413話「総受け:負けるが勝ち・1」

第413話

 

 今回の設定

 

・ 飛鳥総受け。

 

 

 それはある日の事。AfterglowとRoseliaがまたしょうもない喧嘩をしていた。

 

「しょうもないって言うのやめて!!!」

 

 で、最終的に他の生徒たちを巻き込んでの対決となったのだが、Afterglowが勝利した。

 

司会「さて、負けたRoseliaには罰ゲームです」

 

 司会の男子生徒がそう言い放つと、Roseliaが気まずそうにしていた。

 

司会「4つの中から1つ選択して頂きます」

リサ「4つも選択肢があるの?」

司会「はい。それではいきます」

 

1. お化け屋敷

 

リサ「それは絶対嫌!!!」

 

2. Afterglowに土下座

 

友希那「美竹さんに土下座するくらいなら、腹を切るわ」

蘭「じゃあ切ってください」

ひまり「蘭!!」

 

3. 一丈字飛鳥を突き落とす

 

リサ「メンバーは傷つかないけど、バンドのイメージが落ちる!!」

 

 そして次の4番目が今回の騒動の始まりだった…。

 

4.1日ナース服を着て、好きな相手にご奉仕(笑)

 

リサ「一番ツッコミどころが多い!!」

友希那「これにしましょう」

 

 友希那が選んだので皆が驚いた。

 

リサ「ゆ、友希那? 誰を奉仕するの…?」

友希那「そんなの飛鳥に決まってるじゃない」

 

 友希那のこの発言に空気が止まった。Afterglowも飛鳥を狙っているし、ヤラカシは飛鳥を憎んでいるし、一般生徒はまた面倒なことになりそうだと感じていた。

 

 そして案の定大騒ぎになった。

 

「ウソダドンドコドーン!!!」

「オレは認めない!!」

「なんでそうなんねん!!」

「嫌だあ!! オレにしてくれぇ!!」

 

 と、ヤラカシ達は思い切り騒いでいて、近くにいた一般女子生徒たちはゴミを見る目でヤラカシを見ていた。

 

蘭「ちょっと待ってください。こんなの罰ゲームじゃないですか」

友希那「飛鳥に1日奉仕するのよ。そして主導権も飛鳥が握っている。このRoseliaの主導権を握るのよ?」

 

 とまあ、友希那が猛プッシュをしていた。こんな湊さん見たくなかったという方は、もっと酷くなるのでバックをお願いします。

 

友希那「ましてや恥ずかしい事も命令しようと思えば…」

リサ「友希那。これ以上は飛鳥くんの命が危ないからその辺にしよ?」

 

 もしも飛鳥がここにいたらきっとこういうだろう。リアルで入院することになりそうだと。

 

有咲「やめてください!!」

美咲「こっち3人もいるから!! 本当にやめて!!」

 

 そんなこんなで今度の休み1日、飛鳥にナース服でご奉仕することになりました。

 

 ちなみに飛鳥がそれを知ったのはその夜だった。

 

飛鳥「はい!!?」

 

**************************

 

 当日。弦巻家が用意した病院っぽい建物の中の一室に飛鳥が病人服でたたずんでいた。

 

飛鳥「どうしてこうなった」

 

 飛鳥がそう呟いていると、

 

「飛鳥くーん!」

 

 Roseliaメンバーが一斉に現れた。皆ナース服を着ていた。

 

飛鳥「あ、お疲れ様です」

リサ「ゴメンねー。いきなりこんな事になって」

飛鳥「それは構わないんですけど、何故にナース服…」

友希那「そんなの決まってるわ。あなたを奉仕するためよ」

飛鳥「は、はあ…」

 

 正直意味が分からなかったが、友希那の様子を見る限り、これ以上は何も突っ込まない方が良さそうだと飛鳥は判断した。

 

 ちなみにモニタールームではRoselia以外のバンドメンバーが様子を確認していた。

 

蘭「納得いかない…」

モカ「まーまー。飛鳥くんが少しでも弱みを見せたら…」

ひまり「モカ腹黒い!!」

巴「あこ大丈夫か…?」

 

 とまあ、皆興味本位で見守っていた。

 

********************

 

 そして午前9時からスタートすることになり、ナースコールで好きなメンバーを呼び出すことが出来るが、開始してまもなく友希那がやってきた。

 

友希那「検診の時間よ」

飛鳥「検診もやるんですか…?」

 

 モニタールームでは早速蘭が反応していた。

 

蘭「は? 負けた癖に何勝手な事してるの? 負けた癖に」

(こっわ)

 

 負けた癖にを2回も言うあたり、友希那に対して本当にイラっとしている蘭だった。

 

友希那「そうよ。それじゃ…」

 

 友希那が何か言おうとしたが、検診で何をするのか分かっていなかったのか、言葉が止まっていた。

 

友希那「心音を測るわよ」

飛鳥「器具は?」

友希那「そんなもの必要ないわ」

 

 すると友希那が飛鳥にひっついて、モニタールームでは衝撃が走った。そして飛鳥はバンドリ関係者に心の中で謝罪した。

 

蘭「……!!!」

 

 しかし、そんな中で蘭はわなわな震えていた。そりゃそうだ。勝ったのは自分たちのはずなのに、友希那の方がやりたい放題やっている上に、自分がやりたかった事をやっているのだ。当然他のメンバーも黙っているわけがなかった。

 

飛鳥「……」

 

 しかし、女性に抱き着かれることに関して飛鳥は耐性があったのか、取り乱さなかった。

 

有咲「一丈字の奴はなんで取り乱さねーんだよ…!」

たえ「アメリカってハグは普通だから耐性あるんじゃない?」

香澄「それだったら、今度私もやってみようかなー」

有咲「いや、ここ日本だから!/////」

 

友希那「…心音数は普通ね」

飛鳥「そうですか…」

友希那「それじゃ飛鳥。今度は私を抱きしめ返して頂戴」

飛鳥「すいません。事務所からNG出されてるんですよ」

 

 友希那がぶっ飛んだことを言い出したので、飛鳥は完全にメタ発言を出した。そりゃあ二次創作とはいえ、有名な方々にそんな事は…ねぇ。

 

蘭「そんなのやったら許さないから」

モカ(…まあ、あたしは正体知ってるから、一歩リードしてるけどね)

 

友希那「意気地がないのね」

飛鳥「ええ。後ろで氷川先輩が見ていらっしゃいますので猶更ですね」

友希那「あら、紗夜」

紗夜「一体何をしているのですか湊さん」

 

 紗夜が激怒した状態で出てきたが、ナース服と怒っている姿が様になっていて、飛鳥も驚いていた。

 

紗夜「な、なにを見てるんですか…」

飛鳥「いや、とても似合ってますね」

紗夜「!!!//////」

 

 この発言が更にややこしい事になるとはまだ誰も気づかなかった…。

 

 

つづく

 

 



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第414話「総受け:負けるが勝ち・2」

 

 前回までのあらすじ

 

 Afterglowとの勝負に負けたRoseliaだったが、罰ゲームを利用して意中の相手・一丈字飛鳥にやりたい放題する友希那だった…。

 

飛鳥「バンドリ関係者の皆さん、本当にうちの作者がすみません!!!」

 

*****************:

 

 紗夜が現れていったん収まったが、飛鳥が紗夜に対して似合うと言っていたので、どぎまぎしていた。

 

紗夜「に、似合うって…どういう所ですか…?////」

飛鳥「騒いでる患者さんを叱ってる所とか、しっくり来ます」

 

 飛鳥がそう言うと紗夜が複雑そうにしていて、モニタールームにいたバンドガールズも微妙そうな顔をした。

 

友希那「普通に綺麗とか言ってあげたらどうかしら」

紗夜「ちょ、湊さん…!////」

飛鳥「まあ、そうなんですけど、それを言ってしまうと、氷川先輩が凄く照れてしまうかもしれないので…」

 

 飛鳥の言葉に紗夜が顔を真っ赤にした。

 

友希那「流石ね。紗夜の性格を分かっていてあえて言わなかったのね」

飛鳥「そんな所ですかね」

紗夜「あ、あの…」

飛鳥「何でしょう」

 

 飛鳥が紗夜の方を見つめると、紗夜がモジモジしていた。

 

紗夜「その、本当に綺麗だと思ってますか…?」

飛鳥「そりゃあ勿論。綺麗ですよ」

 

 飛鳥がストレートに言い放つと、紗夜はさっきよりも顔を真っ赤にして視線を下に向けた。

 

日菜「飛鳥くん…後でちょっとお話しないといけないね」

千聖「やめなさい」

日菜「いや、だっておねーちゃんがあんな顔するの、飛鳥くんだけだもん!!」

麻弥「アメリカにいる人って、気持ちを結構ストレートに伝えるって言いますし…////」

彩「おまけに関西の子だから…////」

イヴ「ブ、ブシドーです…////」

 

 そしてAfterglowは面白くなさそうに見つめていた。

 

紗夜「そ、そうですか…/////」

飛鳥「ええ。そうですよ」

友希那「なら私はどうかしら」

飛鳥「湊さんも綺麗ですよ」

友希那「あなた、女性に対して誰にでもそういう事言ってるんじゃないでしょうね?」

飛鳥「残念ですが私はそこまで紳士ではございません」

 

 友希那の発言に飛鳥は声のトーンを下げた。

 

飛鳥「小ばかにする奴にはそこそこ厳しい事を言っています」

友希那「例えば?」

飛鳥「その恰好に合うような発言をしなさいとか、勿体ないとか、外見はいいのにどうしてそういう事を言うんだとか」

(け、結構言うなぁ…)

 

 飛鳥の容赦のなさにバンドガールズは困惑していた。しかし、もしも飛鳥の立場だったら恐らくそれ以上の事を言うだろうと一部のメンバーは思っていた。

 

***

 

紗夜「ま、まあそれはそうと仕事しますよ」

友希那「仕事って何をするのかしら」

紗夜「そ、それは勿論検診です」

友希那「それは今私がしているわ」

紗夜「!?」

友希那「そう言う訳だから紗夜は掃除でもやって頂戴」

紗夜「ちょ、ちょっと待ってください。検診って具体的に何をするつもりなのですか?」

 

 案の定どっちが検診をするかでもめだした友希那と紗夜。

 

蘭「ねえ、あたしたちは一体何を見せられてるの?」

ひまり「ていうか勝ったの私たちだよね…?」

 

**

 

友希那「飛鳥に密着することで心音を測ったわ」

紗夜「そ、そんな測り方がありますかっ!!//////」

 

 友希那が馬鹿正直に言い放つと、紗夜が顔を真っ赤にした。

 

紗夜「とにかく残りの検診は私がしますので、湊さんは掃除をしていてください!」

友希那「嫌よ」

紗夜「嫌ではありません。掃除も立派な奉仕の一つです」

友希那「そんな事言って、飛鳥とエッチな事をするつもりでしょう」

紗夜「湊さんと一緒にしないでください!」

 

 仲間からきつい一撃を言われたが、友希那は全く答えなかった。

 

 まあ、そんなこんなで友希那は渋々掃除をすることにしたが、始まったばかりなので特に掃除することはなかったが…。

 

紗夜「飛鳥さん。熱を測りましょう」

飛鳥「あ、はい」

 

 紗夜はそこそこ真面目にやっていて、飛鳥の体温を測っていた。そして検温が終わった。

 

飛鳥「35.6度ですね」

紗夜「体温が低いのですね…」

飛鳥「まあ、平均体温が36度後半なので、低めですね」

紗夜「分かりました。それじゃ今度は健康診断をしましょう」

 

 そう言って紗夜は真面目に飛鳥に対して体調についてヒアリングをしていて、まさにナースそのものだった。

 

日菜「いいなぁ~!!」

麻弥「…どっちに対して羨ましがってるんですか?」

日菜「両方! おねーちゃんに看病してほしいし、あたしも飛鳥くんを看病したい!」

 

 そんな中、友希那はぽつんと掃除をしていて、蘭の機嫌が少しだけ良くなった。

 

******

 

 11時ごろ。

 

「みんなー」

 

 リサがやってきた。勿論ナース姿である。あの後飛鳥は友希那、紗夜と一緒に世間話をしていたが、しびれを切らしたあこが燐子を連れてやってきて、結果的に全員で病室にいるという状態になっていたが、リサだけは昼食の準備があったので、別行動をとっていた。

 

飛鳥「今井先輩」

リサ「もー。いい加減名前で呼んでよ」

飛鳥「……」

リサ「まあいいや。今日のお昼なんだけど、飛鳥くんの食べたいものを作ろうかなって思ってるんだ」

飛鳥「え、そこまでしていただかなくても…」

リサ「いいのいいの。アタシがやりたいの。寧ろやらせて」

 

 リサの言葉に飛鳥は困っていた。

 

リサ「何がいい?」

飛鳥「えーと…」

 

 リサが食べたいものを聞くと、飛鳥が困惑した。

 

飛鳥「焼鳥」

リサ「焼き鳥!? OK。それじゃそれをベースにした病院食作るね!」

 

 そう言ってリサがその場を離れると、紗夜も友希那達に釘を刺して手伝いに行った。

 

あこ「そうだ飛鳥くん! 疲れてない?」

飛鳥「今は疲れてませんよ。ですが、久しぶりにゆっくりしたかもしれませんね…」

 

 そう言って飛鳥が窓を見つめて、遠い顔をしていた。

 

燐子「あ、あのう…」

飛鳥「何でしょう」

燐子「…その、耳かきとか、どうですか?」

「!!?」

 

 燐子の発言に皆が驚いた。

 

友希那「燐子。あなた意外に大胆ね」

燐子「め、迷惑でしょうか…」

飛鳥「迷惑ではございませんが、これをファンの人たちが聞きつけて暴れないかが心配ですね」

友希那「大丈夫よ。耳かきは私がやるわ」

燐子「えっ…」

 

 友希那の発言に燐子が驚いた。

 

あこ「ゆ、友希那さん。それはちょっと…」

友希那「分かるわあこ。正直自分でも大人げないと思ってるわ。でも私の言い分を聞いて頂戴」

 

 と、友希那の発言に飛鳥・燐子・あこは困惑した。

 

友希那「燐子。耳かきって勿論膝枕よね」

燐子「そ、そのう…」

あこ「え、膝枕の何がいけないんですか?」

友希那「飛鳥が見上げると、燐子のおっぱいがあるわ」

飛鳥「湊先輩。デリカシーって言葉をご存じでしょうか」

 

 友希那のトンデモ発言に飛鳥がツッコミを入れた。案の定燐子が頬を染めて胸元を隠した。

 

友希那「反則だと思うの」

あこ「ゆ、友希那さんも結構気にしてたんですね…」

友希那「飛鳥。あなたは貧乳派かしら」

飛鳥「座長故、ノーコメントでお願いします」

 

 結局3人が交代交代で耳かきをすることになったが、座りながらやる事になった…。

 

 

つづく

 



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第415話「総受け:負けるが勝ち・3」

 

 

 燐子のお色気攻撃(?)を無事乗り越えた飛鳥。

 

モカ「やって貰えば良かったのに~」

蘭「…モカあたりにからかわれると思ったんじゃないの?」

モカ「そりゃあ蘭だって悪態つくでしょ~」

 

 蘭とモカは滅茶苦茶嫉妬していたが、理不尽に飛鳥に当たると、好感度がゼロになるのが分かっていたため押さえていたが、イライラがたまっていた。

 

ひまり「燐子さん…やっぱりスタイル良いよねー…」

巴「そうだな」

モカ「ひーちゃんも結構スタイル良い方だと思うよ~」

ひまり「そ、そう?」

モカ「…お腹周りも」

ひまり「モカァ!!//////」

 

******************

 

 そんなこんなで昼になり、飛鳥の病室の隣のテーブルで食事をとっていた。

 

リサ「病人食を作ってみたよ」

 

 そこには飛鳥のリクエストである焼き鳥をおかずにご飯と味噌汁、そして野菜といったまさに正統派の病人食が並べられていた。

 

飛鳥「ありがとうございます」

リサ「ううん。気にしないで。さ、食べて食べて」

友希那「そうね。確か病人に食べさせるのも仕事だったわね」

 

 友希那の言葉に空気が止まった。

 

飛鳥「お気遣いいりませんよ」

友希那「そういう訳には行かないわ。ナースとしてご奉仕する必要があるもの」

燐子「……」

 

 結果的に膝枕を阻止されて燐子もリードしようとしていた。

 

リサ「まあ、飛鳥くん本当の病気じゃないから…」

飛鳥「私、どっちかというと食べさせたい方なんですよ」

「!!」

 

 飛鳥がわざと冗談を言い放って、牽制をかけた。これで友希那も怯むだろうと思っていたが、

 

友希那「分かったわ。あなたがそうしたいのなら食べさせて貰うわ」

飛鳥「思ったほかノリノリだった!!!」

 

 友希那はどこまでもブレなくて、飛鳥が困惑していた。

 

飛鳥「じゃあ席変わった方がいいですかね…」

紗夜「いけません! ちゃんと自分で食べるようにしてください!」

 

 飛鳥の言葉に紗夜が待ったをかけた。

 

あこ「飛鳥くんが食べさせるなら、飛鳥くんに食べさせてもいいよね?」

飛鳥「あー…やっぱりそうなりますか…」

紗夜「そんなの認めません!」

友希那「紗夜。そんな事言ってあなたも本当はやりたいんでしょう」

紗夜「そ、そんな事は…」

リサ「じゃあ皆公平に1回ずつ! これでいいでしょ?」

 

 とまあ、飛鳥とRoseliaで食べさせあいっこが行われたが、やってみて食べる時間がめちゃくちゃかかったという。

 

蘭「……!!!」

 

 そしてその映像を見て蘭はとてつもなくイライラしていて、限界寸前だったが、巴も飛鳥があこに食べさせて貰っているのを見て、シスコンモードが発動した。

 

 食事が終わり…

 

飛鳥「皿洗いは私が…」

リサ「ダメ。飛鳥くんは一応患者さんなんだから」

友希那「午後も私が奉仕するわ」

リサ「で、一応皿洗いはじゃんけんで決めよ! 公平に!」

 

 そう言ってRoseliaでジャンケンをしたが、燐子とあこが勝って、残りの3人が後片付けをすることになった。

 

****

 

 病室

 

燐子「あ、あのう…飛鳥さん…」

飛鳥「…どうしました?」

燐子「その…」

 

 飛鳥が燐子に話しかけられたが、膝枕の件があったので苦笑いしていた。

 

燐子「…先ほどの件なんですけど」

飛鳥「ああ、気にしないでください」

あこ「やっぱり男の子って、おっぱいが大きい子が好きなの?」

 

 あこの発言に飛鳥は更に困惑した。これがモニタールームで他のバンドメンバーも見ているのを知っていたため、発言を間違えると本当に取り返しのつかないことになるからだ。

 

飛鳥「市ケ谷さんと奥沢さんに強制的に選手交代になりますね」

有咲・美咲「やめろォ!!!」

 

飛鳥「人によりますね」

あこ「やっぱりりんりんを見て、いいなぁって思うんだ」

燐子「あ、あこちゃん…!//////」

 

 異性の前で胸の話をし始めたので、燐子は恥ずかしさで顔が真っ赤になっていたが、それでも飛鳥の気が引けるならと滅茶苦茶頑張ったのだ。

 

飛鳥「…私の場合は、あまりそういうのは気にしてないですね」

あこ「ホントに?」

飛鳥「人間関係で苦労してきた方なので、中身ですね。どんなに見た目が良くても合わなかったり、攻撃的な人を見るともう…はぁ…」

 

 飛鳥がげんなりし始めた為、皆が困惑し始めた。

 

燐子「ご、ごめんなさい…嫌な事を思い出させて…!」

飛鳥「いえいえ。宇田川さんもですけど、あまり気にしなくて大丈夫ですよ」

あこ「そ、そう…?」

飛鳥「ええ。そうですよ」

 

 そう言って飛鳥は笑みを浮かべたが、燐子は何かやりたそうにしていて、飛鳥はそれを察して困惑していた。

 

 モニタールーム

 

モカ「モカちゃんが後でやってあげますか~」

蘭「いや、普通に抜け駆けだから」

巴「まさかあこの奴…一丈字に膝枕しないよな…?」

 

****

 

あこ「じゃあそれだったら、あこが膝枕しても問題ないよね!?」

飛鳥「あー。やっぱりそうなっちゃいますか」

燐子「あ、あこちゃん…?」

 

 あこがそう言いだすと、飛鳥と燐子が驚いた。

 

飛鳥「私に膝枕されてくれるのなら、お願いしましょうかね」

 

 飛鳥はまたしても牽制をかけたが、案の定失敗してあこを膝枕させた。

 

飛鳥「病人がナースを膝枕って現場では絶対あり得ませんよね…」

燐子「う、うーん…」

あこ「おねーちゃんに前にしてもらった事あるけど、やっぱり違うんだね…」

 

 モニタールームでは巴が目を大きく開いていて、隣にいたつぐみが驚いていた。

 

飛鳥「やっぱり硬い?」

あこ「ううん。でもなんか不思議な感じ…///」

燐子「……////」

 

 なんか妙な空気になると、巴が飛鳥の病室に突撃しようとしてひまりとつぐみが取り押さえていた。

 

つぐみ「巴ちゃん落ち着いて!!」

巴「止めるなつぐみ!! これが落ち着いていられるかってんだ!! うぉおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーー―――――――――ッ!!!」

ひまり「誰か止めるの手伝ってー!!!」

 

 とまあ、Afterglowは修羅場状態だった…。

 

 

つづく

 



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第416話「総受け:負けるが勝ち・完結」

 

 

 前回までのあらすじ

 

 あこに膝枕した。

 

あこ「あ、あこに膝枕したんだから次はあこが飛鳥くんを膝枕…」

「何をしているのかしら」

「」

 

 友希那、紗夜、リサに見つかってしまった…。

 

**************************

 

友希那「飛鳥。よくもうちのあこに膝枕してくれたわね」

飛鳥「ええ。座長を降板してもおかしくはありません」

 

 飛鳥が真顔でそう言い放ったが、有咲と美咲がモニタールームからやめてくれと叫んでいた。理由は簡単。負担が増えるからである。

 

友希那「私にもするべきだと思うわ」

紗夜「湊さん。あなたはもう喋らないでください」

 

 喋れば喋るほどポンコツになる友希那に紗夜が厳しいツッコミを入れた。勿論膝枕なんてしようものなら、今度は蘭が暴れるに違いない。

 

リサ「まあまあ。そもそもどうしてこうなったの?」

飛鳥「えっとですね…」

 

 飛鳥は何とかうまい事誤魔化して事情を説明したが…。

 

友希那「燐子がスタイル良いのがそもそもの発端なのよ。反則だわ」

 

 友希那が思ったほかブレず、燐子が恥ずかしそうにしていた。

 

リサ「ま、まあ燐子がスタイル良いのはあたしも知ってたけど…」

友希那「膝枕して見上げたら下乳が目の前にって、不公平だわ」

リサ「友希那。男の子の前で話す内容を少し考えようね」

紗夜「は、破廉恥です!!/////」

 

 友希那の発言にリサと紗夜がツッコミを入れた。

 

燐子「あ、あのう…」

「?」

燐子「私…そんなにスタイル良くないです…」

友希那「分かったわ。それじゃ紗夜にちょっと膝枕して頂戴」

「え」

 

 そんなこんなで燐子は友希那に言われた通り、紗夜を膝枕したが紗夜が下から燐子の下乳を見るなり、目が死んでいた。

 

リサ「さ、紗夜…?」

紗夜「これは完全に白金さんが悪いですね」

燐子「ええっ!!?」

友希那「自分の身体を利用して飛鳥を誘惑するという大胆な手を使うという事に対しては、成長を認めるわ。だけど不公平よ」

飛鳥(オレは一体どうしたらいいのだろう)

 

 飛鳥は完全に自分はどうすれば良いか分からなかった。いつものように超能力を使って存在感を消せば済む話なのだろうが、今回はカメラが完全に回っているため、下手したらバレるのでそういう訳にもいかなかった。

 

飛鳥「それはそうと残り数時間ですが…」

友希那「そうね。ナース姿での奉仕は終わるけど、あなたが望むなら…今日からしてあげるわ?」

飛鳥「夢に向かって頑張ってください」

 

 飛鳥はあくまでもRoseliaの夢をかなえてほしいと思っていた。だが、この罰ゲームがあと数時間もやらないといけないという事もあり、どうすれば良いか考えた。

 

飛鳥(ゲームは流石に全員出来ないしなぁ…)

 

あこ「まあ、それはそうとさ」

「?」

あこ「今日はゆっくりしようよ」

 

 あこが急にゆっくりしようと言い出した。

 

紗夜「ゆっくりって…」

あこ「ナース服を着ているという点を覗いては、いつもと同じなんですし、ゆっくりしましょう」

 

 あこがそう言うとリサと燐子、飛鳥も賛同した。

 

 結果的にどうなったかというと、病室でまったりと過ごしていた。あこと燐子は持ってきたゲーム機でゲームをし、紗夜はギターの練習、リサはおやつ作り、飛鳥は本を読んでいたが、隣に友希那がいた。

 

 そして3時になると…。

 

リサ「みんなー。おやつ出来たよー」

 

 とまあ、完全にプライベートだった。

 

 勿論モニタールームでは完全に飛鳥とRoseliaが団らんしているところをずっと見せられていて、蘭はげんなりしていた。

 

************************

 

 そして17時半。時間が着て1日奉仕は終了となったのだが…。

 

蘭「納得いかない!!」

 

 飛鳥とRoseliaが他のバンドメンバーと合流していたが、蘭が開口一番言い放った。

 

友希那「何を言っているのかしら。私たちは罰ゲームで飛鳥に奉仕したのよ?」

蘭「いや、そもそも飛鳥を選べること自体がおかしいです」

モカ「今回ばかりは蘭に同感ですね~。で、飛鳥くんは楽しかった?」

飛鳥「楽しかったけど…結構拗ねてるね」

モカ「うん。拗ねてるよ」

 

 モカが思った以上に正直に言い放っていて、飛鳥が困惑していた。

 

巴「それはそうと飛鳥くん。うちの妹に膝枕した事についてはどう弁解するのかな?」

飛鳥「言い訳はしません。殴りたいのならお好きにどうぞ」

「男らしい!!!」

 

 飛鳥が堂々と殴られる覚悟を持っていたのか、巴はふっと笑った。

 

巴「流石だぜ飛鳥。それでこそアタシの見込んだ男…。よし、今晩ちょっと付き合え」

飛鳥「ラーメンですか?」

ひまり「ちょ、巴!! それは抜け駆けだよ!」

モカ「勿論モカちゃんもいきまーす」

つぐみ「あまり夜遅くならないようにしないと…」

 

 とまあ、Afterglowとディナーをする流れになっていたが、

 

香澄「それだったら私たちも!!」

日菜「それはそうと飛鳥くん」

飛鳥「何です?」

 

 飛鳥が嫌な予感しながら日菜の方を見たが、日菜が笑みを浮かべていたが一切目が笑っていない。

 

日菜「…おねーちゃんに看病してもらった感想は?」

飛鳥「とても丁寧でしたよ」

日菜「あたしもおねーちゃんに看病してもらいたいよぉ~!!」

紗夜「飛鳥さん。日菜の言う事は気にしなくて大丈夫ですから」

飛鳥「……」

 

 とまあ、中々収拾がつかなくなってしまったそうで、最終的には弦巻家主導でラーメンパーティになったとか。

 

 

****************:

 

 後日

 

「お前ぇ!! あこちゃんに膝枕したそうだな!!」

「ああ…ついにやっちまったか…」

「聖域を汚しやがって…覚悟はできてるだろうなぁ!!」

「ちなみにどんな匂いだった!?」

 

 あこに膝枕した事が学園中に広まって、いつものように絡まれたが…。

 

友希那「今度私が飛鳥に膝枕するわ」

蘭「いや、あたしですから」

 

 とまあ友希那と蘭が張り合って、ややこしい事になりました。

 

おしまい

 



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甘やかされる一丈字飛鳥編(原作:薮椿)
第442話「飛鳥 VS Poppin’Party」



このシリーズは薮椿さんの「ガールズバンドの子たちに甘やかされる日常」
(https://syosetu.org/novel/186595/)

をベースに書いています。
(許可は既に取ってあります)

このシチュエーションで書いてみたかったので、申請いたしました。

主人公である秋人は残念ながら登場しません(機会があれば出るかもしれないですね)。

薮椿さん。ありがとうございます。ご迷惑をおかけしないようにしますので、どうぞ宜しくお願いいたします。

 本家との相違点

・ アバターが違う。
・ 花咲川と羽丘が合併


元ネタ:https://syosetu.org/novel/186595/1.html


 

 

 私の名前は一丈字飛鳥。超能力が使えること以外はごく普通の高校生だ。今私は自宅にいるのですが、凄く暇です。

 

「おっはよーーーーーーーーー!!!」

 

 いきなり5人の女の子達がやってきました。中でも猫耳のような髪をした戸山香澄さんが叫んでいた。

 

飛鳥「不法侵入ですよ皆さん」

香澄「ごめんごめん。早く飛鳥くんに会いたくなっちゃって!」

飛鳥「それは光栄ですが事前に連絡してください」

 

 戸山さん達はガールズバンド『Poppin‘Party』を組んでいて、滅茶苦茶人気のあるバンドなんですね。そんな子達に会いたくなっちゃってと言われたら、そりゃあ男としては鼻が高いかもしれませんが、それとこれとは別です。親しき中にも礼儀あり。これがきちんと分かってる人がいいですね。

 

りみ「ごめんなさい飛鳥くん。いきなり押しかけて吃驚しちゃったよね…?」

飛鳥「今後は事前に連絡を入れてください」

沙綾「香澄が連絡を入れたって言ったみたいなんだけど…サプライズがしたかったのかな?」

飛鳥「確かにサプライズにはなりましたが、突然来られても困ります」

 

 …ここからは飛鳥に代わりナレーションが語ります。飛鳥は筋を通さない奴は嫌いなのである。

 

「おい、一丈字!」

飛鳥「何ですか市ヶ谷さん」

有咲「お前部屋がすっごい綺麗じゃねーか! 洗濯物とかはどうしてんだよ!」

飛鳥「昨晩乾燥機で乾かしてもう畳みました」

 

 飛鳥の言葉に空気が止まった。有咲としてはどさくさに紛れて飛鳥の面倒を見て、気を引こうと考えたのだが、見事に玉砕した。

 

飛鳥「市ヶ谷さんはツッコミに専念してください」

有咲「嫌なんだけど!!?」

たえ「でもこれだとやる事ないよ」

 

 たえが不満そうにすると、飛鳥は困惑した表情を浮かべていた。甲斐甲斐しく面倒を見てくれるのは有り難いが、正直そんなに時間ないよな? と思っていた。

 

飛鳥「皆さんの手を煩わせるまでもございません」

たえ「聞いていい飛鳥くん」

飛鳥「何でしょう」

たえ「一丈字くんって…女の子に興味ないの?」

飛鳥「今はそれどころじゃないですね」

 

 飛鳥が腕を組んでそう言い放ったのは理由があった。たえ達の事もそうだが、超能力が使える関係で色々バタバタしているのだ。半分高校生で半分社会人。女の子関係はハニートラップとかもあるので、何かあったらややこしい事になるし、遂には先日pixivにて読者から有給休暇が必要ではないかと言われたくらいだった。

 

香澄「言ってくれれば、私が相手するよ~?」

飛鳥「バンドに専念してください」

 

 香澄が悪い顔を浮かべながら飛鳥の両肩に手を置くが、飛鳥は困惑しながらツッコミをしていた。香澄からは女の子特有のいい匂いがしていたが、飛鳥は主人公補正がかかっているのか、何ともなかった。

 

飛鳥「これで鼻の下を伸ばしてたら、座長(二次創作の主役)は出来ないんですよ」

たえ「じゃあ、これはどう?」

 

 次の瞬間、たえが飛鳥の耳をかじった。髪の毛で耳は隠れていたが、正確にかじった。

 

飛鳥「あー。需要と供給が合わないなぁ」

 

 バンドの映像を見る限りはとても輝いていて、音楽に真摯に向き合っている清純な乙女たちなのに、自分の前だとこうなってしまう。

 

飛鳥「関係者の皆さん、本当にすいません!!!」

香澄「誰と話してるの?」

 

**

 

 次の瞬間、後ろから抱きつかれた。

 

飛鳥「何されてるんですか」

沙綾「私の胸、気持ちいいでしょ?」

飛鳥「これを純くんが見たらどう思うかなぁ」

 

 飛鳥が沙綾の弟である純の名前を出した。

 

沙綾「大丈夫。変な事言ったら小遣い減らすから」

飛鳥「まさかのお小遣い事情!!!(大汗)」

 

*****

 

 そんなこんなで昼が近くなった。

 

沙綾「おたえ。私達はお昼ご飯をつくろっか」

たえ「うん。私頑張る。飛鳥の服欲しいし」

飛鳥「服が消えてるなって思ったら、あなたの仕業だったんですね…」

 

 飛鳥の言葉に沙綾とたえが気まずそうにしていた。

 

飛鳥「ご家族に連絡しますね」

沙綾「やめて!!?」

たえ「本当に靡かないね」

飛鳥「…いや、靡いたら収拾つかなくなるでしょうが」

 

 ちなみに飛鳥は彼女達から生活必需品を貰っている。服は勿論、食品や飲料、漫画やゲーム。頼めば何でも買ってくれるが、飛鳥は殆ど頼る事がないし、バンドに専念してほしいというものがあった。

 

香澄「あ、そうだ飛鳥くん!」

飛鳥「何ですか?」

香澄「私達此間海に行ったんだけど、写真見てくれた?」

飛鳥「ええ、見ましたよ」

 

 香澄の言葉に飛鳥は困惑しながら返事をした。というのも、送られてきた写真の中に、どう考えてもきわどいポーズの写真があったのだ。肩ひもの片方を外したり、オイルを塗るのに、上半身裸になってみたり、普通の男なら何か大変な事になっていた。

 

 飛鳥はその写真を見るなり、すぐに嫌な予感が察してそっとしまいこんだ。最近の女の子は進んでるなぁ…と思いながら。

 

 そんな時、香澄が飛鳥の耳に息を吹きかけた。

 

飛鳥「どうしたんですか」

香澄「飛鳥くんって耳強いんだね」

飛鳥「そりゃあ分かりませんけど…」

香澄「それでさ飛鳥くん」

飛鳥「何です?」

香澄「私達の写真を見て興奮した?」

 

 香澄の言葉に飛鳥は困惑していた。

 

飛鳥「ごめんなさい。こんな時どんな顔をしたら分かりません」

たえ「笑えばいいと思うよ」

飛鳥「笑ったら多分人生終わるでしょうね」

 

 飛鳥の言葉に香澄が苦笑いした。

 

香澄「もっと素直になって。飛鳥くんに興奮してほしくて水着写真を撮ったんだから」

飛鳥「…これは、喜ぶべきなのか?」

 

 そもそもなぜこんな事になったのかというと、元々飛鳥は超能力を使った仕事をしていて、ある日悪質なファン『ヤラカシ』がガールズバンドに迷惑行為をかけているという事で、調査と討伐任務にあたっていたのだ。そして飛鳥は数えきれないほどヤラカシを倒して、ガールズバンドを救ってきた。飛鳥としてはあくまで仕事なので、気にしないように伝えていたのだが、彼女たちの気が済まなかった…。

 

りみ「あ、あの…私も抱きしめていいかな?」

飛鳥「牛込さん?」

りみ「えっと…。ダ、ダメ…?」

 

 りみが上目遣いで飛鳥に頼むと、

 

飛鳥「ダメです」

香澄「えー!! そこは断るべきところじゃないでしょ!!」

飛鳥「前から思ってたんですけど、あなた方のクラスメイト達に今の姿を見せて差し上げたいですね…」

 

 そう言って飛鳥は香澄達のクラスメイトの事を思い出した。香澄達と仲良くなってからは目の敵にされている。

 

有咲「やめろ! あいつらの話なんか!!」

沙綾「本当に飛鳥くんが同じクラスだったら良かったのに…」

 

 有咲たちは男子生徒達の話題になって嫌そうな顔をしていた。

 

飛鳥「まあ、とりあえず皆さん」

「!」

 

 飛鳥はポピパを見つめて静かに目を閉じた。

 

 

 

飛鳥「バンド、しましょう…」

 

 

 

 

おしまい

 



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第443話「飛鳥 VS Roselia」

 

 

 私の名前は一丈字飛鳥。

 

「あら、早いのね飛鳥」

「…湊先輩」

 

 早朝。湊先輩が部屋に来ていた。早朝である。

 

飛鳥「不法侵入ですよ」

友希那「添い寝しようと思っていたのに」

飛鳥「…話、聞いてます?」

 

 この湊友希那さんという方は、先日のPoppin‘Partyとはまた別のバンド「Roselia」というガールズバンドのリーダーである。大規模な大会「FUTURE WORLD FES」の出場を目指しているそうなのですが…大丈夫か? これで。

 

友希那「あなたを起床から睡眠までサポートするのが私の役目だから、あなたは何も気にせずに私に身をゆだねればいいのよ」

飛鳥「FWFはどうしたんですか。お父様泣きますよ?」

友希那「その辺も抜かりはないわ」

 

 本当だろうか。先日電話が来て娘が迷惑かけて申し訳ないと謝られたんだけど…。

 

「友希那。飛鳥くんが困ってるでしょ」

 

 そう言って幼馴染の今井先輩が現れた。あの、家に勝手に入らないで貰えませんかね…。

 

友希那「リサ…」

リサ「それにサポートするのは私じゃなくて私達でしょ?」

飛鳥「不法侵入ですよ?」

リサ「ごめんごめん。今度から気を付けるからさ」

 

 …前にもこんな事があったような。もう語りはここで終わります。

 

「あ、あのう…」

飛鳥「白金先輩…」

 

 燐子がいつのまにか傍にいたので飛鳥が少し驚いた。

 

飛鳥「どうされました?」

燐子「…何かする事はございませんか? 着替えも済ませちゃったし」

飛鳥「いや、自分で着替えれますので」

 

 その時、Roseliaのギターである氷川紗夜とドラムの宇田川あこが現れた。

 

「一丈字さん」

飛鳥「氷川先輩?」

紗夜「どの部屋も綺麗です。自分でやりましたね?」

飛鳥「そもそも使ってないんですよ」

あこ「えー! それじゃあこ達は何をすればいいの!?」

飛鳥「スタジオでバンドの練習をしててください。貴方たちはFWFに出るんでしょう?」

友希那「本当にあなたは人に頼る事をしないのね」

飛鳥「来る際に事前にアポを取って頂けるなら、少しは頼れるかもしれないですね」

 

 少なくとも不法侵入をする奴は信用しないのが飛鳥だった。

 

飛鳥「というかそもそも、一人の男の世話を焼くなんて事する必要はないじゃないですか」

友希那「違うわ。あなただからやっているのよ」

飛鳥「?」

友希那「忘れた訳じゃないでしょう。今までずっと私達を助けてくれていた事。そして少なくとも…私は父を助けられたわ」

 

 友希那の言葉に飛鳥が口角を下げた。

 

友希那「そしてその時に貴方は大怪我をしてまで、父の為に戦ってくれた。あそこまでしてくれて何もしない訳には行かないのよ」

飛鳥「そうですか…」

 

 友希那の言葉に飛鳥は納得した。

 

友希那「分かってくれたかしら」

飛鳥「けど、家に勝手に入るのはやめて貰っていいですか。普通に怖いです」

リサ「ま、まあそりゃそうだよね…」

 

 飛鳥の言葉にリサが苦笑いすると、紗夜、燐子、あこも気まずそうに視線をそらした。

 

***

 

リサ「まあ、お詫びと言ったらアレだけど、朝食作るから…」

飛鳥「いや、そこまでして貰わなくても…」

リサ「いいからいいから」

 

 と、リサが半ば強引に押し切った。しかし、こうなると他の4人はもうやる事がなかった。

 

あこ「何かする事なーい?」

飛鳥「勉強でもしますか?」

あこ「…イジワル」

 

 飛鳥の言葉にあこが若干涙目になると、

 

紗夜「それはいいアイデアですね。ならあちらの部屋で私としましょうか」

飛鳥「分かりました」

あこ「えー!!? そんなのずるいー!!!」

燐子「わ、私も…」

友希那「…本当につれないわね」

 

 だが、そういう所も良いと思う友希那であった。いわば惚れた弱みである。

 

***

 

 あとはオーブンのタイマーが止まれば完成という事でリサもやってきたのだが…。

 

リサ「ところで飛鳥くん」

飛鳥「何ですか?」

リサ「…少し変な質問するけど」

飛鳥「変な質問ならご遠慮願います」

 

 飛鳥が待ったをかけた。邪魔するでと言われて邪魔すんねやったらかえってー。という関西人のお約束の要領である。だが、リサ達は関東の人間なので通用しなかった。どうでもいい余談だが、りみの姉であるゆりは乗ってくれる。

 

リサ「女の子に興味がないの?」

飛鳥「まあ、恋人にするなら女性の方が良いですけど…」

友希那「ならエッチするなら?」

飛鳥「セクハラですよ」

 

 友希那の発言に飛鳥がツッコミを入れた。

 

飛鳥「氷川先輩もこういう時こそ突っ込まなきゃ!」

紗夜「え、あ、そうですね…」

 

 紗夜も興味津々だったので飛鳥に何も言えなかった。

 

友希那「無駄よ。紗夜って結構むっつりだもの」

紗夜「だ、誰がむっつりですか!!//////」

 

 友希那の言葉に紗夜が頬を赤らめてムキになったが、飛鳥としては言い訳出来ないと思っていた。で、リサはさっきからギリギリのラインまでスカートをめくって誘惑するが、全く効果がなかった。

 

リサ「女の子に全く興味がない訳じゃないんだ」

飛鳥「全く興味がない訳じゃないですよ。ただ…今はもう身の振り方を真剣に考えないといけないので」

 

 飛鳥がそう言うと、友希那達が一息ついた。

 

友希那「…あなたは本当に真面目ね」

飛鳥「人の命も関わるので。あ、そういえば学園の皆さんは元気にしていますか?」

 

 飛鳥がそう言うと、Roseliaのテンションがガタ落ちになった。

 

リサ「まあ、元気だよ…。相変わらずと言えば相変わらずだけど」

友希那「ハァ…」

紗夜「注意しても喜ぶばかりで…。どうしたらいいのよ…」

 

 友希那、紗夜、リサはガチで悩んでいた。ある意味こういう事があるから飛鳥に甘えに来てるのかもしれない。

 

あこ「聞いてよ! りんりんの事すっごいいやらしい目で見てくるんだよ!?」

飛鳥「白金先輩大人しいですからね…」

燐子「いえ…」

飛鳥「え?」

 

 すると燐子が自分の胸元を押さえた。

 

燐子「…おっぱいが大きいからだと思います」

飛鳥「そうですか…」

 

 燐子の発言を飛鳥は簡単にスルーした。

 

友希那「やっぱりおっぱいがいいのかしら」

リサ「まあ、母性を求めてるのかな。赤ちゃんは皆おっぱい飲むから」

紗夜「…ほ、本当にお…胸が好きだなんて…/////」

あこ「確かにりんりんのおっぱいおっきいけど、見過ぎだと思うんだよね!」

 

 友希那の父親の事件を機に学園を辞めた飛鳥。今は別の組織に彼女たちの護衛を任せているが、それでも大変そうだなと思っていた。

 

リサ「そういえば飛鳥くんは…おっきい子が好き? 小さい子が好き?」

飛鳥「ノーコメントで」

 

 

おしまい

 

 



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第444話「飛鳥 VS パスパレ!」

 

 

 簡単な自己紹介

 

【名前】一丈字飛鳥(いちじょうじ あすか)

【職業】高校生/サラリーマン

【性格】S(自分に冷たい相手には容赦ない)

【特技】いっぱい

【口癖】不法侵入です

 

***

 

 それはある日の事。飛鳥が家から出ようとしたが出られなかった。

 

飛鳥「あー。これなんかやったな。防犯カメラもついてるし。えい」

 

 そう言って飛鳥は瞬間移動を使って外に脱出した。

 

***

 

「どこへ行ってたのかしら? 飛鳥くん」

 

 暫くして、Pastel*Palettesというガールズバンドのベースにして元天才子役の白鷺千聖に説教されていた飛鳥だったが、臆することなく毅然とした態度を取っていた。

 

飛鳥「コンビニですが?」

千聖「行ってくれれば私が行ったのよ?」

「そ、そうだよ!」

 

 千聖だけではなくボーカルの丸山彩もいた。

 

彩「勝手に外出しようとするなんてダメだよ」

飛鳥「いや、部屋の鍵変えたり防犯カメラを仕掛ける方がずっとダメだと思うんですg」

千聖「何はともあれ、皆あなたの事を心配してるのよ?」

飛鳥「私からしてみたらあなた方が心配だよ…」

 

 千聖の言葉に飛鳥は額を押さえていた。どう考えても度が過ぎているからである。

 

飛鳥「そもそもあの防犯カメラ誰がつけたんですか?」

千聖「麻弥ちゃんよ」

飛鳥「…一体何の意味が」

彩「それはね。飛鳥くんを盗撮…じゃなくて勝手に外出しないように監視するためだよ!」

飛鳥「……」

 

***

 

飛鳥「もしもし。○○事務所(※パスパレの事務所)ですか? 一丈字です」

千聖「コラァ!! やめなさーい!!」

彩「飛鳥くーん!!!」

 

 飛鳥がバリアを張ってひそかに持っていたスマホで事務所に電話をかけると、彩と千聖がバリアを破ろうと必死に叩いていたが全く効果がない。ちなみに飛鳥が超能力を使えるという事はガールズバンド皆が知っている。だからもう遠慮しなくなったのだ。

 

**

 

 5分後

 

「申し訳ございません一丈字さん…」

 

 事務所のスタッフがやってきて、平謝りしていた。千聖と彩は拳骨されていて、頭にたんこぶが出来ていた。

 

飛鳥「教育をよろしくお願いしますね…」

「勿論です。他のメンバーも来させないようにしますので」

飛鳥「急用の時だけでお願いします」

 

 こうしてスタッフが彩と千聖を連れて帰ると、飛鳥は深いため息をついた。

 

飛鳥(どうしてこうなっちゃったんだろう…)

 

***

 

 後日

 

千聖「此間はよくもやってくれたわね…!!」

飛鳥「……」スッ

彩「あの、お願い!! ちょっと話を聞いて!!?」

飛鳥「売れっ子アイドルがやすやすと男の家に行くなんて危機管理が足りてないと思いませんか?」

千聖「あの、飛鳥くん…。これでも私は皆に正体がバレる前までずっと一緒にやって来たわよね?」

飛鳥「だからこそ残念に思っているんですよ。今となっては丸山先輩達と一緒になって犯罪まがいな事を…」

「本当に千聖ちゃんだけズルいよ」

 

 日菜が隣に現れて、飛鳥はスマホをポケットに入れた。

 

日菜「飛鳥くん。もしかして今録音してるでしょ」

飛鳥「流石ですね。そうですよ」

彩「全く信用されてない!!」

飛鳥「丸山先輩。私だって本当はこんな事したくはありませんでした。ですが、ご自身が去れたことを思い返してみてください。性別が逆だったら問答無用でアウトですからね?」

 

 飛鳥がそう言うと彩が気まずそうにしていた。

 

日菜「あ、そういや話聞いてたけど、どうして外に出ようとしたの?」

飛鳥「外に出たらいけませんか?」

千聖「質問の答えになってないわよ?」

飛鳥「ハァ…」

 

 千聖の言葉に飛鳥はため息をついた。この期に及んで何でそんな態度を取れると思ってるんだろうと。

 

日菜「飛鳥くんがしてほしい事は全部あたし達がやってあげるんだよ?」

飛鳥「してほしい事?」

日菜「うん」

飛鳥「本当にやってくれるんですね?」

 

 飛鳥が釘を刺すと、

 

日菜「あ、家にもう来ないでほしいとか、お世話をしなくていいとかそんなのなしだからね?」

飛鳥「分かりました。1か月ほど無人島でロケしてきてください」

彩「それ遠回しに家に来ないでって事だよね!!?」

千聖「却下よ却下!!!」

 

 飛鳥の言葉に彩と千聖がツッコミを入れると、

 

「落ち着いてください皆さん!」

 

 麻弥とイヴが現れたが、飛鳥がジト目で麻弥を見つめていた。

 

麻弥「…あの、そんな目で見ないでくださいよ」

飛鳥「弦巻財団から借りてるマンションとはいえ、家主の許可なしに防犯カメラの設置は頂けませんね」

 

 飛鳥の言葉にイヴが困惑していた。本当に怒っていたからだった。

 

イヴ「あ、あの…。アスカさんが心配だから」

飛鳥「言い訳は武士道に反しますよ。若宮さん」

「!」

飛鳥「そういうのは相手に聞かれて初めて答えるものですし、一言目は謝罪ですよ」

 

 飛鳥が毅然な態度で接する。

 

日菜「んー…。まあ、防犯カメラと鍵はちょっとやり過ぎたね。ごめん」

飛鳥「…他の方にももうやらないようにお伝えください」

 

 日菜の言葉に飛鳥は困惑していた。

 

日菜「にしても飛鳥くんって本当に真面目だよね。こんなに可愛い女の子がお世話しようとしても全く靡かないもん」

飛鳥「急に家に来られたら誰だろうと怖いですよ」

 

 日菜の言葉に飛鳥が困惑していた。

 

日菜「これだけ女の子が揃ってるのに何もしないんだもん」

飛鳥「その台詞をあなた方のクラスメイトにお聞かせしたいですね」

 

 飛鳥の言葉に日菜以外の4人が気まずそうにしていた。

 

飛鳥「…なんかありました?」

千聖「あなたがいなくなってから随分調子に乗り始めたのよ…」

麻弥「…弦巻財団の黒服の方々が止めに入ってくれるから何とかなっていますが」

彩「アイドルとしては嬉しい限りなんだけど…」

イヴ「ちょっと目が怖いです…」

 

 千聖たちの発言を聞いて、飛鳥もあまり良い感情は芽生えなかった。

 

日菜「なんかお預けをずっと喰らってて、理性きかなくなってる気がするんだよね」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 大丈夫かあの学校…と、飛鳥は思っていた。

 

麻弥「あ、でももし気が変わったらいつでも言ってください! 撮影機材を用意してお好きな女の子をお好きなだけ撮って頂くように手配しますので!」

飛鳥「あー。その事なんですけど大和先輩」

麻弥「な、何でしょう?」

飛鳥「今度ソロで写真集出すって本当なんですか?」

麻弥「は?」

 

 飛鳥の言葉に麻弥が驚いたが、他のメンバーも驚いた。

 

彩「え、もしかして麻弥ちゃんに気があるの?」

飛鳥「というより…。何も聞いていらっしゃらないんですか?」

麻弥「は、初耳です…。ていうか写真集ってどういう事ですか!?」

 

 すると飛鳥のスマホがなった。

 

飛鳥「ちょっと失礼。はい、一丈字です」

「あ、もしもし一丈字くん? 私」

飛鳥「あ、スタッフさん! お世話になってます」

 

 電話の相手はパスパレの事務所のスタッフだった。

 

飛鳥「あ、5人ともいらっしゃいますね…。どうかされました?」

千聖「代わって頂戴」

飛鳥「ちょっとスピーカーモードにしますね」

 

 そう言って飛鳥はスピーカーモードにした。

 

『もしもし。貴方達…また一丈字さんの家に行ったそうね』

日菜「いやー…あはははは」

麻弥「そ、それはそうと写真集の話って本当なんですか!?」

「ええ本当よ。それも一流のカメラマンに撮って貰う事になったから」

麻弥「えええええ…」

 

 一人だけな上に腕の良いカメラマンに撮影してもらうとなり、麻弥はテンパっていた。

 

「あとそれから、また新しい仕事が入ったから明日事務所に来て頂戴」

「?」

 

*****************

 

 後日

 

『あなた達には一か月、無人島生活を送って貰います!』

彩「え~!!!!」

千聖「アイドルの仕事じゃないでしょこれぇ!!!」

「黙れ小娘!!」

麻弥「中途半端な物真似やめてください!!」

イヴ「ブ、ブシドー!!?」

日菜「えー!! おねーちゃんや飛鳥くんに会えないじゃん! やだよ~!!!!」

 

 パスパレは本当に無人島生活を送る羽目になった…。

 

 そして飛鳥は自宅でコーヒーを飲んでパスパレがどうしてるか考えた。

 

 

飛鳥(まあ、強く生きてくださいな…)

 

 

おしまい

 



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第445話「飛鳥 VS アフグロ!」

 

 

 パスパレが無人島に行ってから数日経ったある日、飛鳥とAfterglowはピンチになっていた。

 

つぐみ「雨と風が強くて外から出られないよ…」

 

 どういう訳か台風レベルの雨が降ってきて外から出られる状態ではなく、6人はショッピングモールで雨宿りしていた。

 

ひまり「飛鳥くんの超能力で何とかできない?」

巴「ひまり。他に人がいるんだぞ」

飛鳥「…あと、あまり口外しないで頂けないでしょうか。誰が聞いてるか分からないので」

 

 色んな意味で困った事になった飛鳥だった。

 

蘭「…もう今夜は外に出ない方が良いって」

ひまり「え~!!?」

 

 すると近くにあったモニターからアナウンサーが中継していたが、確かに雨と風が酷かった。

 

「皆さんは絶対外に出ないでください!! 死にます!! ていうか絶対に死ぬから!! あああああああああああ~~~~~~~!!!!!」

 

 風があまりにも強すぎて立っていられる状態ではなく、飛鳥は困惑していた。

 

飛鳥(…これ、多分オレの出番が来そうだな)

 

 飛鳥がそう考えていると、モカが飛鳥を見つめた。

 

ひまり「もしかしてショッピングモールで寝泊まりとか…?」

巴「まあ、仕方ないと言えば仕方ないけどな…」

蘭「最悪…」

 

 ショッピングモールで寝泊まりをしなきゃいけない事に対して、蘭は少し困惑気味だった。というのも知らない男に声をかけられる可能性もあるし、風呂にも入れないので匂いがする可能性も出てくるからだ。それを察したのか、飛鳥はAfterglowの方を見た。

 

飛鳥「皆さん、少し宜しいでしょうか」

「なに?」

飛鳥「こうなってくると外に出るのは難しいので、隣接してあるホテルで宿泊しましょう」

 

 飛鳥の言葉に蘭たちは驚いた。このショッピングモールの隣にはホテルがあり、そこで一泊しようというのだ。

 

蘭「…ホテル?」

飛鳥「ええ。手続きはこちらでしますので…」

 

 そう言って飛鳥は5人を宿泊させる為、一緒にホテルに向かった。そして飛鳥はつぐみの両親に連絡して、親権者の同意を得る為に連絡した。

 

飛鳥「…そういう訳ですので、娘さん達をホテルに宿泊させたいんです」

「それは構わないが…君はどうするんだ?」

飛鳥「別の部屋を取って、ちょっと離して貰います。美竹さん達の親御さんたちにも連絡お願いできますか?」

「わ、分かった…」

 

 こうして親権者の同意を得たので飛鳥は宿泊させようとしたが…。

 

「すみません。女性専用の部屋しか残ってなくて…」

飛鳥「あ、大丈夫です。彼女達が泊まれればそれでいいし、寧ろ女性専用の部屋にして頂けると助かります」

 

 飛鳥は超能力を使ってAfterglowを大人しくさせた状態で、ごり押しする形で泊まらせた。ちなみに女性専用の部屋があるフロアに関しては、男性は立ち入り禁止である。

 

 部屋に案内された彼女達を見届けた後、飛鳥は一息ついた。

 

飛鳥(…声で洗脳させる技を覚えといて良かった)

 

 実はAfterglowに呼びかける際に飛鳥は自分の声を聴くことで洗脳させるように仕向けていたのだ。

 

飛鳥「そうだ。一応念には念を入れて…」

 

 飛鳥は今のうちに蘭たちの両親と意識合わせをする事にした。

 

*****

 

 飛鳥は超能力で自宅に戻り、ゆっくりしていたがスマホを確認すると、Afterglowから夥しいほどのメールと不在着信が来ていた。どんなに弁明しようが納得しないだろうと判断したのか、飛鳥はスマホで一言だけ『私は生きています』とだけ返した。

 

 そして雨が止むと、Afterglowがすぐに飛鳥の家にやってきた。

 

「飛鳥くん!!」

飛鳥「不法侵入ですよ皆さん」

 

 慌てているAfterglowとは対照的に飛鳥は冷静だった。

 

巴「お前、超能力使っただろ!!」

飛鳥「使いました」

つぐみ「あ、あっさり認めるんだ…」

飛鳥「女子高生5人が野宿なんてしたら、男が絡んできますよ」

モカ「まあ、確かにそうだね~」

 

 飛鳥の言葉にモカが納得したが、他の4人は納得してる様子を見せなかった。

 

飛鳥「此間のソロキャンプの事件もあったでしょう」

ひまり「確かにそうだけどぉ~」

蘭「…アタシの所、父さんから滅茶苦茶メールや電話来たんだけど」

飛鳥「そりゃ心配でしょう。ただでさえ得体の知れない男と一緒にいた訳なんですから」

つぐみ「え、得体の知れないって…」

 

 飛鳥の言葉につぐみが困惑していたが、特に巴は納得していなかった。

 

巴「だけどこれじゃまた一丈字に助けられたじゃねーか!」

飛鳥「宇田川さん。皆さん。よく考えてみてください」

巴「な、何だよ…」

飛鳥「仮にですよ。もしあの時ホテルがなくて、6人でショッピングモールに寝泊まりになんて事になったらどうなってたと思いますか?」

蘭「ど、どうって…」

ひまり「そのまま6人で泊まるんじゃないの?」

飛鳥「少なくとも美竹さんのお父さんはショッピングモールに向かう予定だったそうです」

蘭「はぁ!!?」

飛鳥「そりゃ一人娘なんですから当然ですって」

 

 蘭の言葉に飛鳥が腕を組みながら突っ込んだ。

 

飛鳥「それはそうと、その荷物はどうしたんですか?」

巴「そんなの決まってんだろ。今日一日、お前の世話をするんだよ! 礼もこめて!」

飛鳥「やめといたほうがいいですよ」

蘭「何? また何かしたの?」

 

 蘭がそう睨みつけると、飛鳥は蘭を見た。

 

飛鳥「少なくとも美竹さん。あなたはご両親にこの事はお伝えしたんですか?」

蘭「飛鳥の家に泊まるって伝えた」

飛鳥「…何も言われませんでした?」

蘭「母さんに言ったから…って、父さんにチクっても無駄だから。帰らない」

飛鳥「いや、そうじゃなくて…」

蘭「なに?」

 

***

 

 その夜…

 

蘭父「私も泊まりに来た」

飛鳥「こうなるから…」

蘭「ちょ、何してんの!? 帰ってよ!!」

 

 何という事でしょう。蘭の父親も泊まりに来たのだった。

 

蘭父「お前が帰らないのなら私も帰る義理はないだろう?」

モカ「蘭。帰ってあげなよ」

巴「そうそう…」

蘭「いや、何友達売ろうとしてんの!!? それだったら巴達の家にも電話かけるから!」

 

 とまあ、その日は蘭の父親も泊まる事になった。

 

蘭父「君たちの親御さんから釘を刺されていてね。どうしても一丈字くんと寝たいのなら私とも寝て貰おうか?」

蘭「ちょっと本気でやめてくんない!!?」

 

 娘の友達と寝るというめっちゃヤバい展開になって蘭がガチで怒っていた。

 

モカ「今日はもう雑魚寝にしよっか」

巴「そうだな…」

 

 ちなみに今回の事件をきっかけにAfterglowの保護者達はZoomで会話をするようになったらしい…。

 

飛鳥(まあ、親としては当然だわな…)

 

 

おしまい

 



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第446話「飛鳥 VS ハロハピ!」

 

 それはある日の事だった。

 

「ねえ飛鳥! ××××ってなにかしら!?」

「あああ!! もう初っ端から絶体絶命だよ!!!」

 

 今日はハロハピ…もとい弦巻こころが遊びに来たのだが、とんでもない事を言いだして飛鳥は身の危険を感じていた。

 

飛鳥「どうしたの急に…」

こころ「皆が飛鳥と××××したいって言ってたのだけど、よく知らないし、皆がするならあたしもしてみたいわ!」

飛鳥「黒服さーん!!! 助けてー!!」

 

 飛鳥がそう叫んだが、黒服たちは現れなかった。

 

飛鳥「…次のボーナスカットにして貰うようにするか」

「ごめんなさい!!!」

 

 飛鳥の言葉に黒服の女性たちが慌ててやってくると、その隙に超能力でこころの記憶から××××に関する興味を取り除いた。

 

***

 

「こころーん!」

「あら、はぐみじゃない!」

「そもそも不法侵入なんですけど…」

 

 ハロハピのペースである北沢はぐみがやってきた。

 

はぐみ「あのねあのね! これ、はぐみのにーちゃんが持ってた本なんだけど、これ何やってるのか教えて!!」

飛鳥(ああああああああああああああああああああああ!!!! やめたげてえええええええええええええええええええ!!!!)

 

 はぐみが持ってきたのはエロ本だった。飛鳥ははぐみの兄に心底同情した。

 

こころ「あら。この本に載ってる人達、皆裸ね。何してるのかしら?」

はぐみ「でもなんか気持ちよさそうだねー」

 

 こころとはぐみがエロ本を読んでいると、後ろで青ざめていた飛鳥と黒服が顔を合わせた。飛鳥が超能力で記憶を消すと、黒服たちはエロ本をはぐみの家に返してきた。

 

はぐみ「あれ? はぐみ何してたんだっけ」

こころ「思い出せないわね?」

飛鳥(ヤラカシ達とはまた別の意味で手間がかかる…)

 

 この時飛鳥はDJをやっているミッシェルこと美咲の苦労が分かった。

 

「おやおや。子犬くんに子猫ちゃん達じゃないか」

 

 ギター担当の瀬田薫もやってきたのだが、飛鳥としてはもう突っ込むのも面倒になったのか、困惑していた。

 

こころ「薫!」

薫「一体何をしていたんだい?」

こころ「何をしてたのかしら?」

はぐみ「はぐみもすっかり忘れちゃった」

薫「おやおや…」

 

 そう言って薫が相槌を打つと飛鳥の方を見た。

 

飛鳥『聞かない方がいいですよ』

薫『そ、そうか…』

 

 と、飛鳥がテレパシーを使って薫に伝えると、薫もそう言うのなら聞かない方が良いんだろうなと思って、何も言わなかった。

 

こころ「あ、そうだわ! 確か××××について話をしようとしてたのよ!」

 

 こころの発言に空気が止まった。飛鳥としてはなんで思い出したんだと思っていた。

 

はぐみ「××××?」

 

 はぐみがそう口にすると、薫は思わず顔を真っ赤にした。普段は宝塚風にイケメン女子を気取っているのだが、実際は気が弱くて繊細な女の子だった。オバケが苦手だったり高い所が苦手だったり、昔のあだ名を言われるとつい素が出て女の子らしくなる。かわいい。

 

こころ「ねえ! 薫は何か知っているかしら? ××××!」

薫「い、いや…私にも分からないねぇ…」

 

 と、笑ってごまかしていたが、

 

はぐみ「あー! さては薫くん知ってるでしょ!」

こころ「そうなのね薫! 教えて欲しいわ!」

薫「いや、その…」

 

 薫は涙目になって飛鳥に助けを求めると、飛鳥はまた超能力で記憶を改ざんした。

 

****

 

 そんな時、花音と美咲が現れた。

 

花音「か、薫さん…。凄く顔赤いけどどうしたの…?」

飛鳥「聞かないであげてください…」

美咲「…うん。まあ、話聞こえてたから大体は察せたよ」

 

 美咲が苦笑いしながら飛鳥にそう言ったと同時に、性癖をばらされたはぐみの兄に心底同情した。

 

美咲「まあ、こころやはぐみがいるからその話はまた今度にしよっか」

飛鳥「フラグ立てないでください」

美咲「でもさ一丈字くん。あたし達がいるのに手を出さないって言うのもどうかと思うのだけど」

飛鳥「あなたもすっかり彼女達と同類になりましたね」

美咲「殴っていい?」

飛鳥「そんな事言う人には絶対手を出しません」

 

 と、皮肉を言い合っていて、花音が慌てて止めた。

 

***

 

こころ「今日はよくもの忘れをするわね…」

はぐみ「はぐみも…。あー!!」

 

 はぐみが飛鳥の方を見た。

 

はぐみ「飛鳥くん! 超能力使ったでしょ!」

飛鳥「ええ。使いましたよ」

美咲「…一丈字くんも一丈字くんで開き直るのね」

 

 飛鳥の言葉に美咲が思わず困惑した。

 

はぐみ「もー!! 何話そうとしたのか忘れちゃったじゃん!」

こころ「あたし達は一体何を話そうとしていたの!?」

飛鳥「とてつもなくエッチな事ですね」

 

 飛鳥がそう口を開いた。

 

こころ「えっちな事? それは何かしら?」

飛鳥「セクハラになるので言えないんですよ」

美咲「教えてあげたら?」

飛鳥「詳しくは奥沢さんに聞いてください」

美咲「それもセクハラ!!」

飛鳥「私席外してますので」

美咲「いや、逃げんな!!」

 

 と、飛鳥と美咲が小競り合いを始めた。

 

はぐみ「あ! 思い出した! 確か薫くんも知ってた筈だよね!?」

こころ「そうなの薫!」

 

 はぐみとこころの言葉に薫が青ざめた。まさかここで自分に流れ弾がくるなんて思いもしなかったからだ。

 

美咲「あ、あー。アタシ達よりも薫さんの方が詳しいと思うな…」

薫「いや、美咲。待ってくれ…」

 

 薫が心底焦り始めた。こころとはぐみの注目は完全に自分に来ていて絶体絶命だった。

 

花音「え、えっちな事って一体何なの!?」

美咲「やっぱりここは一丈字くんに説明してもらいましょう」

こころ「飛鳥! 一体何の話をしていたの!?」

はぐみ「教えて!」

薫「……」

 

 5人の注目が飛鳥に集まると、飛鳥は上を見た。

 

飛鳥「次回もお楽しみに!!!」

 

 

おしまい

 

 

 



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第447話「巨乳組 VS 男子生徒!」

 

 

 飛鳥が学園を去ってからというもの、バンドリ学園においては男子生徒達が果敢に告白をしていたが、一向に上手く行かない状態だった。

 

「ああああ!! なんでこうも上手く行かないんじゃあ!!」

「オレはサッカー部のキャプテンになったのに!!」

「此間の保健体育で1位になったのに!!」

「高い靴を貢ごうとしたのに!!」

「ブラが透けてたから教えてあげたのに!!」

「いや、それはお前が悪い」

 

 男子生徒たちは発狂していたが、約一名どう考えても自業自得だったので、それに対して皆ツッコミを入れた。

 

「ちなみに誰で何色だった?」

「リサちゃんで赤色…」

「そういう所なんだよなぁー」

 

 と、リサ、ひまり、燐子、有咲の4人がやってきた。リサが青筋を立てながら言い、有咲はゴミを見る目で睨み、ひまりと燐子はドン引きしていた。

 

「どうしてもそんなに一丈字がええんか!!」

「あんなつまらん男に!!」

「やっぱり主人公はオレ達みたいなちょっとスケベだけど、やる時はやる男みたいなのが…」

有咲「どうしようもない位スケベだし、今までやって来た事ほぼアウトじゃねーか!!」

 

 男子生徒達の言葉に有咲がツッコミを入れた。

 

ひまり「有咲ちゃん。こういうのは無視だよ無視」

有咲「…そ、そうだな。相手にするからいけないんだ」

 

 ひまりの言葉に有咲は冷静さを取り戻した。結構カッとなりやすい性格の有咲だが、いい加減落ち着こうと考えていた。

 

リサ「とにかくもうそんなセクハラはやめてよ。皆怖がってるし、嫌がってるよ?」

「まあ、それは善処するけど、こっちにも言い分があります!」

ひまり「な、なに…?」

「一丈字の家に入り浸ってるって噂を聞いた!!」

 

 男子生徒の言葉にリサ達は困惑していた。

 

「少なくともパスパレはダメでしょ!?」

「アイドルだよね!?」

「お金貰ってるんでしょ!?」

「身内だからって甘やかすのはなしだからね!?」

 

 それを言われると確かに痛かった。お客さんがいてこそ成り立つアイドルという仕事をやっている彼女たちが、いくら学校の元同級生または元後輩とはいえ、入り浸るのは流石にマズい。少なくとも部屋の鍵をいじった上に防犯カメラまで仕掛けた事がバレたらもう一巻の終わりである。

 

リサ「まあ、それはアタシ達も思うけどさぁ…」

「でしょう!?」

「それは同じガールズバンドとして注意するべきだと思うな!」

 

 たまに男子生徒達も正論を言うので、本当に手ごわいと思っていた。だが、ここで下手に出ると間違いなく調子に乗る。というかもはや少しでも人の悪い所を見て自分をあげようとする姿があまりにもダサすぎた。

 

「で?」

有咲「でってなんだよ…」

「家に入り浸って何をしてるの?」

有咲「あのさ。デリカシーって言葉を知ってる?」

ひまり「女の子にそういう事聞くからモテないんだよ…。ていうか振り向かせる気あるの?」

リサ「飛鳥くんに限らず、男の子って普通そういう所気を遣うもんだよ?」

「やっぱり後ろめたい事をしてるんだな!!」

 

 と、男子生徒達が騒ぐとリサ達は少しイラっとした。本当に自分の事しか考えてないと思ったと同時に、飛鳥も大変だったんだなと有咲は目を閉じて涙を浮かべた。

 

「もしかして…」

「?」

「一緒に風呂に入って、その豊満なおっぱいで誘惑とかしてたんだろ!」

 

 男子生徒の言葉にリサ達はドン引きした。もう完全に白目になっていたし、その男子生徒達の事を頭がおかしいと思っていた。

 

「一緒の浴場で体を洗いながら、スタイルとか比べあってそれを一丈字が聞いてるんだろ!」

「で、あいつはあいつでハーレム漫画の主人公気取って、色々カッコつけてんだろ!」

「ていうか本当にカッコイイと思ってんのか!!」

「フラグを悉く壊すつまらん男の癖に!!」

 

 この会話を聞いてリサ達は顔を合わせて、有咲がスマホで通報しようとした。

 

「ちょ、何をしてるんだ!!」

有咲「近づくんじゃねぇー!! これ以上近づいたら本当に通報すんぞ!!!」

「それなら家で何をしてるか教えろよ!!」

ひまり「嫌だって言ってるでしょ!」

「やっぱり後ろめたい事をしてるんだ!」

 

 と、会話を元に戻して粘ろうとする男子生徒。訪問販売で一度家に入れたら商品を購入するまで帰ろうとしないセールスマンばりに悪質だった。

 

有咲「とにかく通報だ通報!!」

「待て!!」

 

 有咲が通報しようとしたので、男子生徒達が止めようとした次の瞬間。

 

「何をされてるんですか?」

「!?」

 

 声がしたのでその方向を見ると、困惑した様子の飛鳥がいた。

 

「い、一丈字!!」

「今更何しに来た!!」

飛鳥「ちょっと用事がございましてね。で、市ヶ谷さん達にセクハラですか?」

「いや、ちょっと待ってくれよ!!」

「どう考えても納得いかねーんだよ!!」

「仮にオレ達が本当に変態でスケベでどうしようもない奴だとしても、お前みたいな奴がモテるなんて納得できねーって!!」

飛鳥「いや、そんなん知りませんよ」

 

 男子生徒達の言葉を飛鳥が一刀両断した。言われる側からしてみたら本当にどうしたらいいんだという話であるし、そもそも開きなおって逆切れしたり、女子達に性懲りもなくセクハラをしてる時点で、自分がいなくても何も良い事なんて起こる訳もなかった。

 

飛鳥「それに、元々今井先輩達もバンドや部活動で色々忙しい筈ですから、男と遊んでる暇なんかありませんよ」

「けど、お前の家には入り浸ってるじゃないか!!」

飛鳥「入り浸ってはいませんよ」

「しかもとっかえひっかえ!」

飛鳥「まあ、それはありましたけど、もうそれも無くなりますよ」

「え?」

 

 飛鳥の言葉にリサ達が青ざめた。

 

飛鳥「親御さんたちの間でも話題になっていて、制限がかけられるそうです」

ひまり「もしかして私たちのお父さんとお母さんたちが話したんじゃ…」

燐子「そ、そんな…」

 

 飛鳥が困った顔をして腕を組んだが、男子生徒たちは喜んでいた。

 

「よっしゃああ!」

「ざまーみろ一丈字!」

「もうこれでリサちゃん達とは縁がなくなるな!」

「それともう学校くんなよ!」

飛鳥「ハァ…。まあ、私はもうこれで失礼します。頑張ってくださいね」

 

 飛鳥がそう言って去っていくと男子生徒たちは飛鳥が見えなくなるまで、小ばかにし続けた。当然リサ達は唖然としたままだったが…。

 

「さあ、そういう訳だからあんなつまらん男の事は忘れてオレ達と…」

「遊べると思っているのか」

「!?」

 

 男子生徒達が振り向くと、そこには屈強の男たちがいた。

 

「今井様達にセクハラ行為を仕掛けたそうだな。それに関して我々と話をしようか」

「ひゃ、ひゃい…」

 

 こうして騒動は幕を閉じたのだが…。

 

***

 

 その夜

 

有咲「一丈字! アタシ納得してねーからな!!」

飛鳥「私に言わないでください」

 

 飛鳥は有咲たちとリモート会話をしていたが、有咲たちは納得していない様子で、飛鳥は何とかなだめようとしていた。

 

ひまり「一丈字くん! 本当に一人で大丈夫なの!?」

飛鳥「大丈夫ですよ」

リサ「何かあったらすぐにアタシに言うんだよ!」

飛鳥「あ、はい…」

燐子「あ、あの…恥ずかしいですけど、本当にお風呂も…」

飛鳥「お気遣いなく」

 

 たとえつまらん男と言われても、平和を望む飛鳥なのであった。

 

 

 

おしまい

 



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第448話「蘭 VS 友希那 VS ダークラ…飛鳥」


 呼称一覧(能力者だとバレる前)

【飛鳥くん】
香澄、たえ、モカ、日菜、千聖(プライベート)、リサ、あこ、はぐみ

【一丈字くん】
りみ、沙綾、ひまり、つぐみ、彩、千聖(人前)、友希那、紗夜、薫、花音、美咲

【一丈字】
有咲、蘭、巴、

【一丈字さん】
麻弥、イヴ、燐子

【飛鳥】
こころ

 呼称一覧(現在)

【飛鳥くん】
香澄、たえ、りみ、
モカ、ひまり、つぐみ
彩、日菜、千聖
紗夜(プライベート)、リサ、あこ
薫、はぐみ、花音

【飛鳥】
沙綾、有咲、蘭、巴、友希那、こころ

【飛鳥さん】
麻弥、燐子

【アスカさん】
イヴ

【一丈字くん】
紗夜(人前)、美咲


 

 

 

 一丈字飛鳥は極力家から出るなと言われている。だが、人間外に出ないと体に害なのだ。

そんな話はさておき、飛鳥の家では緊張感が走っていた。

 

「湊さん。それ、飛鳥の歯ブラシですよね? それを持ってどこに行くつもりなんですか?」

「決まってるじゃない。飛鳥の歯を見上げてあげようとしてるのよ」

「私もう磨きましたけど」

 

 蘭と友希那が口喧嘩をする中、飛鳥がツッコミを入れた。

 

蘭「リサさんも言ってましたよ。家に行くと飛鳥の私物らしきものがあるって」

友希那「飛鳥と同じものを買ったのよ。人の趣味に対してとやかく言うなんて感心しないわね」

 

 物凄くギスギスしていた。お互い嫌ってはいないものの、人付き合いもあまりなければ話も上手なわけでもない。何よりも不器用な性格の為、誤解を招くことが多々あり、周りからしてみたら喧嘩をしているようにしか見えない。

 

 そんな2人がなぜ一緒のタイミングで家にいるかというと、早い話抜け駆けしようとしたのだ。抜け駆けしようとした結果がコレであり、家主である飛鳥を困らせるという事態になっていた。ただでさえ音楽で張り合ってきた2人が、今度は好きな人で張り合っている。すこぶるめんどくさい事になっていた。そしてあまりにも修羅場すぎて、いつも制止してくれるリサやモカですら匙を投げた。

 

リサ『ゴメン。友希那と蘭が飛鳥くんを取り合ってる所を止めるのはアタシでもきついかも…』

 

 と、以前そう言われてから飛鳥はリサに頼るのを止めた。

 

リサ『いや、ちょっと待って!! 見捨てないで~!!!』

 

 

蘭「湊さん。今ならアタシも何も言いません。引き取ってください」

友希那「お断りよ。今日は飛鳥のご奉仕役なのよ。邪魔しないで貰えるかしら」

蘭「湊さんこそ何言ってるんですか? そもそも無断でここに来るのルール違反ですよ?」

友希那「私はちゃんと連絡を入れたわ」

蘭「アタシも入れました」

 

 すると飛鳥はスーッとその場を離れようとした。

 

友希那「あなたはあなたでどこに行こうとしてるのかしら?」

蘭「逃げるの?」

 

 こういう時だけ仲が良いのはお約束であるが、この男は臆することはなかった。

 

飛鳥「違いますよ」

友希那「納得のいく理由があるんでしょうね」

飛鳥「双方のお父様に連絡させて貰いますね」

友希那「ちょっと待ちなさい!!」

 

 そう言って飛鳥がバリアを張ると、スマホを操作し始めて蘭と友希那が慌ててバリアを叩いた。

 

 で、結果的に蘭の父がすぐに飛んできて謝罪したのち蘭を連れて帰った。友希那は父親からは何もなかったが、蘭の父が睨みを利かしてきたので渋々帰った。

 

 そんなこんなで女子2人から取り合われるというシチュエーションを自らぶっ壊した飛鳥。

 

飛鳥「はっきりしない方が後々大変な事になるし、ダメなものはダメだって言うべきだよ。ってか少なくともRoseliaはこんな男と遊んでる場合じゃないでしょ」

 

************

 

 後日…

 

「飛鳥くん。うちの娘が本当に申し訳なかった」

「……」

 

 飛鳥は友希那父から直接話をしたいと言われ、近くの喫茶店にやってきた。やってくると、友希那父と拳骨されたのか頭にたんこぶが出来ている友希那もいた。それを見て飛鳥は困惑していた。

 

友希那父「飛鳥くん。うちの娘が迷惑をかけたね。本当に済まない」

飛鳥「いえいえ…」

友希那父「君の家からこっそり取ったものも返却させて貰うよ」

 

 そう言って友希那の父が小さなカバンを飛鳥に渡した。中身を確認すると失くしたと思っていた私物が沢山入っていた。

 

飛鳥「確かに私のですね…」

友希那父「…本当に申し訳ない」

 

 飛鳥がそう呟くと、友希那父は本当に申し訳なさそうに頭を抱えて謝っていた。

 

友希那父「友希那。お前も謝りなさい」

友希那「…ごめんなさい」

 

 父親に促されて友希那は渋々謝ると、飛鳥は苦笑いするしかなかった。

 

友希那父「まさかこんな事になるなんて…」

飛鳥「あの、そんなに気を落とさないでください」

友希那「そうよ」

友希那父「友希那。次やったらバンド辞めさせるからな」

 

 友希那父の言葉に友希那はばつが悪そうに視線をそらしたし、飛鳥は本当に困惑するしなかった。

 

************

 

 そんなこんなで蘭と友希那の事件は解決したのだが、飛鳥は本当にこの家にいるべきなのか考えた。何と言うか、どんどんダメな方向に進んでいっているような気がしてならなかった。

 

飛鳥「バンドに集中してないよなぁ…」

 

 で、どうなったかというと…。

 

*****

 

飛鳥「へ?」

 

 後日、千聖から連絡があったのだが、RoseliaとAfterglowは最低一週間飛鳥の家に行くのが禁止になったのだ。理由としては蘭、友希那の両親からそれぞれ申し出があり、バンドに集中させるとの事だった。そもそも2人とも抜け駆けしていたので同情の余地は全くなく、バンドメンバーからも凄く怒られたとの事だった。

 

千聖「それとね。リサちゃんがごめんって伝えといてって…」

飛鳥「わ、分かりました…」

 

 千聖も流石に今回ばかりは能力者だとバレる前の状態に戻って、普通に飛鳥に接していた。パスパレは盗聴器を仕掛けたという前科がある為、これ以上変な事をするともう本当に終わりだと思ったからだ。

 

 そして飛鳥は飛鳥で、メンバーに凄く怒られている蘭と友希那を想像して、頭が痛くなったという。

 

 で、最終的に蘭と友希那がどうなったかというと、訪問禁止期間は外出する際は父親が同伴するというある意味きつい状態になり、それからの事は…お察しください。

 

 

おしまい

 



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第449話「英雄(前編)」

 一丈字飛鳥です。私はまたしても大変な事になってます。

 

「飛鳥くん助けて!! 追試になっちゃったよぉ~!!!」

 

 香澄がいきなり部屋に現れた。鍵をかけていたので勝手に入るという事はなくなったが、インターホンを何度も鳴らすという迷惑行為をおこなっていた。

 

飛鳥「出禁になりますね」

香澄「そんなイジワル言わないでよぉ~!! 本当に緊急事態なのぉ!!」

 

 香澄が涙目で縋りつくと、飛鳥は仕方なしに事情を説明することにした。

 

飛鳥「…成程。市ヶ谷さんに勉強を見て貰おうとしたけれど、たまには自分でやれと突っぱねられたと」

香澄「数学に英語、日本史に化学! 国語に世界史に日本史に…もうどれから手を付ければいいの~!!?」

飛鳥「一旦落ち着きましょう」

 

 全部じゃねーかと飛鳥は突っ込みたかったが、まず香澄を落ち着かせる事にした。

 

飛鳥「とりあえず市ヶ谷さんは次回(450話)の主役にしましょうかね」

有咲「ちょっと待てぇ!! 何するつもりだぁ!!?」

 

 飛鳥の言葉に有咲が急に現れたが、とてつもなく焦っていた。

 

飛鳥「大丈夫ですよ。私はもう一瞬だけ登場するので…」

有咲「絶対アタシをかわいいとか弄りまくるんだろ~? 分かるよ」

飛鳥「いえ、本当の本当に主役回ですよ」

有咲「とにかく嫌な予感しかしねーから却下だ却下!!!」

 

***

 

飛鳥「まあ、市ヶ谷さんが勉強を見てくれるそうなので」

香澄「…飛鳥くんは見てくれないの?」

 

 そう言って香澄は涙目で頬を膨らませて怒っていた。

 

飛鳥「RoseliaとAfterglowみたいになりたいですか?」

有咲「なりたくねーけど、あ、これ絶対何が何でも次回アタシを主役にするつもりだよな? 何が欲しい? 何が欲しいんだ。金か? 金なのか? それともア、アタシの身体を…////」

飛鳥「連れて帰って頂ければ、何もしませんよ」

有咲「お邪魔しましたー。帰るぞ香澄」

香澄「飛鳥く~ん!!!!」

 

 有咲が香澄を連れて帰ろうとしたその時、

 

「飛鳥くうううううううううううううううううううん!!!」

 

 ハロハピのはぐみが現れた。

 

飛鳥「不法侵入ですよ北沢さん」

はぐみ「ゴメン! でも大変なのぉ!! はぐみ追試になっちゃったよぉ~!!」

飛鳥「今度から赤点取ったメンバーがいるバンドを出入り禁止にした方が良さそうですね」

はぐみ「え~!!!?」

 

 飛鳥の言葉にはぐみがまた絶望した表情を浮かべていたが、有咲としては香澄の成績を考えたら確かにそうした方が良さそうだと考えていた。だが、結果的に自分の負担が激しくなるのは確かだった。

 

飛鳥「…で、何教科なんですか?」

はぐみ「3教科!!」

香澄「はぐはまだ凄いよ! 私全部だよ!?」

飛鳥「ポピパは当面出入り禁止で」

香澄「え~~~~~~~~!!!?」

有咲「…そうする」

香澄「ちょっと有咲ぁ~~~~~~~~~!!!!」

 

 何も言い返せなくなった有咲に香澄が涙目で突っ込んだが、

 

有咲「泣きたいのはこっちだよ!!!」

飛鳥(ですよね…)

 

香澄「ねえ飛鳥くん! 勉強見てよ!」

はぐみ「はぐみもはぐみも!」

飛鳥「市ヶ谷さんや奥沢さんじゃダメなんですか…?」

香澄「そうじゃないけど、有咲ケチだもん…」

有咲「お前なぁ…」

 

 自分の事を棚に上げている上に、全教科で赤点を取っても尚開き直る香澄に有咲は心底疲れていた。

 

香澄「勉強教えてくれる代わりに、1教科につき1回抱きしめてあげる!」

はぐみ「はぐみもはぐみも!」

飛鳥「勉強してください」

 

 香澄とはぐみの言葉を飛鳥がバッサリ否定した。

 

有咲「…フォローするつもりじゃねぇけど、本当に手を出さないよな?」

飛鳥「そんな事言いますけど市ヶ谷さん。手を出そうとしたらしたで、『私の好きなあなたはこんな人じゃなかった』とかって言われるんですよ。蛙化現象ってご存じですか?」

有咲「まあ、確かにあるけど…」

はぐみ「カエル? 飛鳥くんカエルになっちゃうの?」

飛鳥「…ええ。そうなったらもうあとは市ヶ谷さんに」

有咲「にーげーるーなぁー!!!!」

 

 有咲がそう叫びながら後ろから飛鳥をはかいじめにしたが、飛鳥は困惑していた。

 

香澄「あー!! 有咲ズルい!! 私もするー!!」

はぐみ「はぐみもー!!」

 

 と、香澄とはぐみが抱き着こうとしたその時だった。

 

「飛鳥くん!!」

 

 彩がやってきて、飛鳥は困惑していた。

 

飛鳥「…どうされました?」

彩「大変なの! 私追試になっちゃって…」

飛鳥「学年違うんですけど…」

彩「…飛鳥くんなら何とか出来るんじゃないかなって」

 

 彩の態度を見て恐らく千聖から逃げてきたんだろうなと飛鳥は思ったが、後ろに千聖が現れた。

 

千聖「彩ちゃん?」

彩「ヒッ!!」

飛鳥「お疲れ様です」

千聖「お疲れ様飛鳥くん。あら…」

 

 千聖は飛鳥の姿を見たが、後ろから有咲に抱き着かれている状態だった。

 

千聖「…有咲ちゃん? いったい何をしてるのかしら?」

有咲「わ、私!?」

 

 千聖は有咲に黒い笑みを浮かべた。決して飛鳥を甘やかしているという訳ではないのだが、飛鳥にケンカを売るとまた無人島に行かされる可能性があったからである。

 

 ちなみに本当に無人島に行かされ、暫くそこで過ごしたのだが彩が虫を追い払うために木刀を振り回したり、日菜が自由に探索したせいで蜂の巣をおっこどして蜂に追いかけられたり、夜中に目を覚ましてトイレに行こうとしたら、隙間が大好きな麻弥が隙間に挟まっていて、その上彼女も目が覚め、目が合って失禁しそうになったり、また別の日に日菜がイヴを脅かしたせいで、イヴが半狂乱になって木刀を振り回したりしていた。

 

 千聖は軽くトラウマになってしまい、事の発端となった飛鳥にだけは絶対にケンカを売りたくなかったのだ。特に麻弥が一番怖かったし、その日の翌日、滅茶苦茶説教した。

 

 そして飛鳥達もその様子をテレビで見ていて、大変だろうなと思ったし、飛鳥は察した。

 

飛鳥「市ヶ谷さん…。離れてください」

有咲「あ、ああ…」

千聖「ありがとう。で、彩ちゃんは一体どういうつもりかしら?」

彩「いや、その…。勉強を見て貰おうと思って…」

千聖「私が怖いからでしょ?」

 

 千聖がそう言うと彩が滝のような汗を流して視線を逸らすと、千聖は怒る元気もなくなったのか座り込んだ。

 

彩「ち、千聖ちゃん?」

飛鳥「…お茶、淹れますね」

 

 飛鳥も察したのか特に何も言う事なく、お茶を淹れることにした。

 

 

つづく

 



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第450話「英雄(後編)」

 

 

 千聖が何やら憔悴状態だったので、飛鳥は一旦皆をリビングに集めて話をする事にした。

 

飛鳥「お茶です」

千聖「ありがとう…」

 

 そう言って千聖はお茶を飲むと落ち着いた様子を見せた。

 

飛鳥「落ち着きましたか?」

千聖「…ええ。少しだけ」

 

 千聖が飛鳥を見つめると、何やら目に涙を浮かべていた。

 

飛鳥「相当疲れてますね…」

千聖「全くよ…」

 

 すると千聖は涙を流し始めた。それを見て香澄達も慌てる。

 

彩「ち、千聖ちゃん。確かに悪いと思ってるけど、泣かなくても…」

千聖「貴女の事もあるけど、学校の雰囲気の事もあるのよ…」

彩「えぇぇ…」

 

 自分の事を否定しなかった事に彩はなんでやと思ったが、学校の雰囲気と聞いて彩も困惑していた。彩だけじゃなくて有咲も気まずそうに視線をそらしていた。

 

飛鳥「…あれからどうですか?」

千聖「RoseliaとAfterglowが一週間以上出入り禁止になってから、すっかりギスギスしてるわよ。紗夜ちゃんがすっごい機嫌悪いの」

彩「それもそうだし、友希那ちゃんと蘭ちゃんは本当に皆から怒られてるって感じ…」

 

 千聖と彩の言葉を聞いて、飛鳥は嫌という程想像できたのか、げんなりしていた。

 

有咲「…アタシも此間2組の様子見たけど、蘭ちゃんマジで肩身が狭そうにしてた」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 ちなみにAfterglowとRoseliaは通話も禁止で大事な要件がある時は他のメンバーから伝えるようにルールが制定された。勿論蘭と友希那の父親2人も立ち会っている。

 

千聖「…まだいいわよ。友希那ちゃんは所々開き直ってる所があって、その度にリサちゃんに怒られてるわ」

 

 千聖の言葉に飛鳥は目を閉じて眉間にしわを寄せた。本当にどうしてこんな事になってしまったんだと。そしてAfterglowとRoseliaはマジで大丈夫なのかと思い始めた。

 

飛鳥「…そうですか」

 

 飛鳥は返事に困った。もう自分は学園を辞めた身であるので、あまり首を突っ込めないのだ。突っ込めた所であの変態共が頭のおかしい事を言いだすので、どうしようか考えていた。

 

千聖「で、ここからが重要よ」

飛鳥「あ、はい」

千聖「そんな状態でもあのバカ男子共が余計な事を言ってね…」

飛鳥「…どうなったんですか?」

 

 千聖が目を閉じて悲しそうにしていた。

 

千聖「紗夜ちゃんが泣いちゃったのよ…」

 

 千聖の言葉を聞いて飛鳥、有咲が青ざめた。香澄とはぐみは普通に驚いていたが、飛鳥と有咲は事の重大さを理解していたのだ。

 

千聖「…後はお察しの通りよ。日菜ちゃんがブチギレたのよ。『誰? おねーちゃん泣かしたの』って。それはもう低い声で…」

 

 飛鳥と有咲は日菜が怒っている所を想像して血の気が引いていた。あの才能マンならぬ才能ガールを怒らせたらもうただじゃ済まないだろうと思っていたからだ。

 

千聖「その後はもう…ごめんなさい。自分で言っといてアレだけど、もうこれ以上は…」

彩「日菜ちゃんがあんなに怖いなんて思わなかった…怖い…怖いよぉ…」

 

 彩もその場に立ち会っていたのか、涙目で震えていた。それを見て飛鳥と有咲は絶句した。

 

飛鳥「…お話は分かりました」

千聖「ごめんなさい。こんな話をして…」

飛鳥「それは構いませんが、当面はきちんとバンドに集中しましょうか」

千聖「そうしたいのだけど…」

 

 千聖が飛鳥を見つめた。

 

千聖「そんな事言って貴方、広島に帰ったりしないわよね?」

 

 千聖の言葉に皆が驚いた。

 

飛鳥「…上からの命令がない限り、こちらも動けないので」

千聖「それなら良いのだけど、今回の事が原因で帰るのだけはやめて頂戴」

飛鳥「はい」

 

 すると飛鳥が頭をかいた。

 

飛鳥「…にしても、もう私の答えは決まっているのに」

千聖「そうだとしても、皆あなたの事が心配だし、何よりも…命を懸けて私達を守ってくれたじゃない」

 

 千聖の言葉に飛鳥は視線をそらした。

 

千聖「仕事だったからっていうのもあるかもしれないけど、私たちの事をいつも考えてくれてた。林間学校でつぐみちゃんを助けた時も、変な噂が立たないように助けた後は名乗り出ずに大人しくしてたし、リサちゃん達がストーカーに襲われそうになった時も、色んな人に協力を求めて助けてくれたし、本当に私たちを守ろうとしていたのが伝わったの。そしてあの友希那ちゃんのお父さんも件もそう。自分を犠牲にしてまで悪い能力者…私達パスパレの元マネージャーをやっていたあいつと戦ってくれた。何かせずにいられないのよ」

 

 千聖の言葉に飛鳥は俯いた。

 

香澄「そうだよ! 友希那さんのお父さんの件なんか、死んじゃったと思ったんだから!」

はぐみ「はぐみ達の見てない所でずっと守ってくれてたんだって…」

有咲「……」

 

 香澄達の言葉を聞いて飛鳥は一息ついた。

 

飛鳥「…千聖さん」

「!」

 

 飛鳥が千聖の事を名前で呼んだので皆が驚いた。

 

飛鳥「何度も言っていますが、私もやる事があって答えも変わらず、貴方達の想いには答えられません」

千聖「…分かってるわ」

飛鳥「本当ならもう家にも来ないでほしいんです。あなた方が元々持っていた夢をかなえて欲しいから…」

千聖「助けた意味もなくなるから。そうでしょう?」

 

 千聖の言葉に飛鳥が目を開いた。

 

千聖「あなたの意志が堅い事は皆分かってるわ。そうじゃなきゃ今までやってこれなかったし、そういう所を好きになったもの。けどね」

飛鳥「……」

千聖「今はあなたの事を好きでいさせて。お願い」

 

 千聖の言葉を聞いて飛鳥は静かに目を閉じて承諾した。

 

千聖「ごめんなさい。色々話が長くなったわね」

飛鳥「いえいえ…。ですが、紗夜先輩が心配ですね」

千聖「…紗夜ちゃんだけ?」

飛鳥「…そんなに深刻なんですか?」

 

 自分の事を心配してくれない事に拗ねる千聖だったが、飛鳥は彼女の強さを信頼していたのだ。だが、千聖の様子を見て飛鳥はもうダメそうだと考えていた。

 

有咲「正直言うな。戻ってきてください」

はぐみ「そうだよ! 飛鳥くんがいたら学校楽しいもん!」

千聖「今となっては日菜ちゃんのフォローもしないといけないし、もう限界なの!! お仕事出来ない!!」

 

 千聖もフォローに疲れ始めたのか、幼児退行し始めた。これを見て飛鳥は学園がかなり深刻な状態になっているんだと思ったと同時に、学園や生徒の将来が心配になった。かといって自分がいなくても何も問題がないのなら、広島に帰った方が良さそうとも思っていた。

 

飛鳥(ドラえもんものび太くんが最初から自分の力で何とかしようとしてたら話成り立たんもんなぁ…)

 

 飛鳥は一息ついた。

 

飛鳥「戸山さん」

香澄「!」

飛鳥「それから北沢さん、丸山先輩」

はぐみ「なあに?」

彩「どうしたの?」

飛鳥「…もう何も言わずに勉強しましょう。まずそこからです」

 

 そう言って飛鳥は香澄達に勉強をさせるのだった。紗夜たちの負担を避けるためにも…。

 

飛鳥「第9シリーズもありがとうございました。気のすむまで続きますので、見たい人だけ見てください」

千聖「そういえばあこちゃんも今猛勉強させられてるみたいよ。泣きながら」

有咲「そういや今度赤点取ったら殺されるみたいな事言ってた」

飛鳥「……」

 

 

おしまい

 



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第451話「飛鳥 VS 氷川姉妹!?」

第451話

 

 それはある日の事だった。

 

「飛鳥くん。一緒にお出かけしよ」

「……」

 

 いきなり部屋にやってきた日菜にそう言われて飛鳥は困惑していた。そして日菜の後ろには紗夜がいたがやっぱり元気がなかった。

 

 というのも、先日友希那と蘭が無断で飛鳥の家に押しかけて色々やらかしたせいで、RoseliaとAfterglowは一週間出入り禁止になったのだが、会えないイライラと、男子共のKY発言により遂に紗夜が人前で泣いてしまったのだ。

 

 そしてそんな紗夜を泣かせた男子共に日菜がマジ切れし、学園は今恐怖と闇に包まれていた。ぶっちゃけ飛鳥が最後の希望となっていた。

 

『一丈字ィ~!!! オレ達が悪かった~!!!』

『戻ってきてくれぇ~!!!!』

 

 …と、男子生徒達が学園で泣き叫んでいたという話も聞いて、本格的にヤバいと思い始めていた。

 

 で、日菜は日菜で紗夜を元気づける為に飛鳥とデートを取り付けることにした。勿論快く思っていないメンバーもいたのだが、

 

『おねーちゃんと飛鳥くんを困らせる奴が一番るんってしないんだ。あとは分かるよね?』

 

 と、日菜が今までにない黒いオーラを放ってきた上に、この才能ガールを敵に回すと本当にどうなるか分かったものじゃないので、デートは承諾した。他のパスパレ4人はマジで涙目だったし、騒ぎを起こした友希那と蘭はばつが悪そうにしていた。

 

 そんな状況で最後の希望となった飛鳥。

 

「日菜。飛鳥くんに迷惑かけちゃダメよ…」

 

 紗夜がそう小さな声で注意しているのを見て、本当に憔悴していると飛鳥は判断した。

 

飛鳥「まあ、上がってください。疲れたでしょう」

 

***

 

 リビングにて飛鳥がお茶を日菜と紗夜にそれぞれ差し出して、紗夜がお茶を飲むと自然と涙が出ていた。

 

飛鳥「お疲れ様です」

 

 飛鳥がそう声をかけると、紗夜はあふれる涙が止まらなかった。本当にしんどかったんだろうなと飛鳥は思った。

 

飛鳥「白鷺先輩達から所々お話は伺っておりましたが…」

日菜「そうなんだよ。本当におねーちゃんを泣かせるなんてねー。推薦取れないようにしてあげよっかなー」

飛鳥「ある意味きついですね」

 

 受験生にとって推薦があるという事はかなり大きいので、これがなくなれば間違いなくしんどいだろうなと思っていた。

 

**

 

紗夜「…すみません。お見苦しい所をお見せしました」

飛鳥「落ち着かれたようで何よりです」

 

 暫くして紗夜が落ち着きを取り戻すと、飛鳥は余計な事を言わずに紗夜の身を案じた。

 

日菜「おねーちゃんも落ち着いたし、本題に移ろうか。あたしとおねーちゃんと飛鳥くんでデートするよ!」

 

 日菜の言葉に飛鳥は困惑していた。

 

飛鳥「デートはともかく、3人でですか…?」

日菜「そうだよ。飛鳥くんにずっと会えなくておねーちゃんずっと元気がなかったんだから」

紗夜「ひ、日菜!!/////」

 

 日菜の言葉に紗夜が頬を赤らめた。実際訪問期間が禁止されている間、紗夜はずっと部屋でブツブツ呟いていて、日菜が声をかけようとすると気丈に振舞うのだが元気がなかった。そんな彼女を見て日菜も元気がなくなったのだ。

 

 そして最終的に男子生徒達が紗夜を泣かせるという事態になり、日菜がブチ切れたのだ。

 

日菜「…あたしも元気なかったよ。というか、こんなに人に対してイライラしたのも初めてだし、もうおねーちゃんを泣かしたあいつらマジで許さん」

飛鳥「落ち着いてください日菜先輩…」

 

 イライラしすぎてキャラ崩壊しかけている日菜を飛鳥が慌てて止めた。

 

日菜「そういえば男の子ってお尻に棒を入れると女の子みたいになるって聞いたことあるんだけど、本当なの?」

飛鳥「分からないですし、本当に落ち着きましょう」

紗夜「日菜。本当にやめなさい」

 

 日菜が本当にイライラしすぎてて紗夜も慌てていた。そして以前自分が日菜に対する劣等感から当たり散らしていた時の事を思い出し、自分もこんな感じだったんだなと反省した。

 

日菜「でも飛鳥くんには男の子のままでいて欲しいなー」

飛鳥「私も男のままがいいですね」

紗夜「日菜。やめないとまた泣くわよ」

 

***

 

日菜「じゃ、デートしよっか!」

飛鳥「いつですか?」

日菜「そんなの今からに決まってるじゃん!」

飛鳥「…まあ、予定は空けてありますのでお出かけは出来ますが」

紗夜「飛鳥くん。本当によろしいのですか?」

飛鳥「構いませんよ。もう近いうちに来るんじゃないかと思ってたので」

 

 そんなこんなで3人で出かける事となった。

 

日菜「あ、そうそう! おねーちゃん今日は珍しくスカートなんだよ!」

飛鳥「そういえば…」

 

 制服ではスカートをはくものの、プライベートの時は殆どスカートをはくことがない紗夜。彼女なりにおめかしをしてきたのだろうか…。

 

日菜「どう? 似合うでしょ?」

 

 ここで下手な事を言ったら命はないだろうなと飛鳥は思ったが、露骨に媚を売ると見抜かれることは間違いないので正直に話すことにした。

 

飛鳥「似合ってはいますが…珍しいですね」

 

 と、話を繋げてみることにした。すると紗夜が頬を赤らめた。

 

紗夜「その…。いつもはズボンですし…たまには違う格好をしてみるのもいいかなって…////」

飛鳥「良い事だと思いますよ」

 

 飛鳥が苦笑いすると、紗夜は照れくさそうに視線をそらしたが元気が戻ってきていた。

 

日菜「おねーちゃんね。飛鳥くんの家に行くって事になって、1人でずっとファッションショーをやってたんだよ」

紗夜「!!?///////」

 

 見られていたと思っていなかった紗夜は思わず顔を真っ赤にしていて、飛鳥は愛らしいと思っていた。

 

紗夜「み、見てたの…?/////」

日菜「もうね。鼻血が出そうだった」

紗夜「や、やめなさい!! いや、その…違うんですよ!? 失礼のないようにしようとしていただけで…////」

飛鳥「そうですか。お気遣いありがとうございます」

 

 と、飛鳥がニコニコしながら答えると、紗夜がまた顔を赤くして無言で飛鳥を小突いた。

 

日菜「え、おねーちゃん可愛すぎ。死ぬ」

紗夜「日菜!!//////」

 

 そんなこんなで3人のお出かけが始まるのだった。

 

飛鳥「第10シリーズ始まります」

 

 

つづく

 

 



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第452話「飛鳥 VS 氷川姉妹!」

第452話

 

紗夜「いいですか飛鳥さん。もし外の空気を吸って体調が悪くなったり、疲れる事があればすぐ私と日菜に言ってください」

飛鳥「すっかり元に戻りましたねぇ」

 

 外を歩く3人。紗夜はまるで引率者のように飛鳥に言い放っていた。ちなみにこの3人の中で飛鳥が一番年下である。

 

紗夜「早急に弦巻家系列の病院に連絡を入れ、予約が入っていようとも優先して気に診察を…」

飛鳥「私と病院の為にもやめてください。今はそういうのすっごい厳しいんですよ」

 

 これがしょうもない理由で診察を優先して貰ったなんて事になったら、バッシングが凄い事になる事は間違いなかった。しかもお金持ち特有の圧力で何とかしようにもこのご時世完全に揉み消すことなど不可能だ。今は文明が発達して誰でも気軽に情報を扱えるのだ。というか寧ろさっきまで元気がなかった奴の言うセリフじゃないし、心配されるのはアンタだと飛鳥は思った。

 

紗夜「そうですか…。日菜、あまり飛鳥くんの負担になるような行動は避けないようにしなさい」

飛鳥「突然家に来るのやめてください。吃驚するんで」

 

 飛鳥も飛鳥で強かだった。客観的に見てこんな奴のどこに惚れるんだと思うだろう。何ででしょうね。

 

****

 

 町へ繰り出した3人。ショッピングモールがあり、若者がいっぱいいた。というか日菜に関してはアイドルだからすぐに気づかれるのではないだろうかと飛鳥は心配していたが、飛鳥も飛鳥で超能力が使えるので、それで気づかれないようにカモフラージュした。

 

日菜「あ、そうだ飛鳥くん! このゲームって面白いの?」

飛鳥「え?」

 

 とあるゲームショップのゲームに目が留まった日菜は飛鳥に聞いた。

 

日菜「CMや雑誌でよく宣伝してるから気になってるんだよね。飛鳥くんゲームしてるから知ってるかなって」

飛鳥「ああ…。知ってますよ」

 

 知ってるも何も飛鳥はそのゲームを持っていた。というのも、先日能力者の仕事でゲーム大会の副賞をとってきてほしいという依頼があり、飛鳥はこっそり出場し、見事に獲得したのだ。

 

紗夜「その前にその大会に出てませんでした?」

飛鳥「出てました…」

日菜「えーっ!!?」

 

 紗夜の言葉に飛鳥が気まずそうに答えると、日菜が驚いていた。

 

日菜「どうしてそれ言ってくれなかったの!?」

飛鳥「前にゲームの大会があるのでそれに出ますって言ったんですけどね…」

紗夜「…恐らく日菜にはきちんと伝わってないですね」

飛鳥「そうですか…」

日菜「どうして出てたの!?」

飛鳥「能力者の仕事で、大会の副賞が欲しいっていう依頼があったので、出場したんですよ」

日菜「それで手に入ったの?」

飛鳥「はい。無事に」

 

 飛鳥が苦笑いすると日菜がむーっとしていた。

 

日菜「今度大会がある時はあたしと出ようよ」

飛鳥「…その事なんですけど、白金先輩やあこさんにもう声をかけられてまして」

日菜「じゃ、じゃあ何か部活みたいなの作ろうよ! ゲーム部とか!」

飛鳥「バンドに集中してほしいんですけどね…」

 

 日菜の言葉に飛鳥が困惑していると、

 

紗夜「戦いに出ない分良いと思うのですが…」

飛鳥「!?」

 

 紗夜も思った他前向きな姿勢だったので、飛鳥が驚いていた。

 

日菜「あ、もしかしてあの顔の怖い人に頼まないといけないんでしょ?」

飛鳥「…和哉さんの事ですか?」

日菜「そうだよ」

 

 顔の怖い人発言に飛鳥はぎょっとした。和哉こと古堂和哉は飛鳥の超能力の師匠であり

、所属している組織のリーダーである。能力者としても戦士としても滅茶苦茶強いのだが、一番特徴なのは顔の怖さだった。目にハイライトはなく両目の下に大きな隈が出来ていて不愛想なため、夜に遭遇したくない。ちなみに彼を怖がらない人物は純真な心を持った人物だと言われている。

 

紗夜「……」

 

 日菜とは対照的に紗夜は少し和哉の事を怖がっていた。それはさておき…。

 

「あれ!? 飛鳥くん!?」

「ん?」

 

 3人が振り向くと、そこには燐子とあこがいて、2人とも驚いていた。

 

飛鳥「白金先輩。宇田川さん…」

あこ「どうして3人でお出かけしてるの…あっ」

 

 あこが出かけている理由について聞こうとしたがすぐに察した。

 

飛鳥「ええ。お察しの通りです」

日菜「ごめんねー。ちょっとおねーちゃんが元気ないから、今日は相手できないんだ」

 

 と、日菜がにらみを利かせると燐子やあこが萎縮し、紗夜がまずいと判断したのか日菜を止める。

 

紗夜「そ、そこまでしなくていいわよ」

日菜「でも…」

紗夜「白金さんと宇田川さんもお出かけですか?」

あこ「うん。ちょっとゲームソフトを見に来たんだ」

飛鳥「そうですか…」

 

 と、その場で話は終わった。

 

燐子「こ、これから…どこに行かれるんですか…?」

飛鳥「まあ、紗夜先輩がお疲れになっているので、ゆっくりできる場所ですかね…」

日菜「ラブホテルとか?」

飛鳥「私を殺す気ですか」

日菜「冗談だよー」

 

 飛鳥がにらみを利かせると日菜が苦笑いした。

 

紗夜「そ、そういえば白金さん、宇田川さん」

あこ「な、何ですか?」

紗夜「その…。ゲームの大会に関してですが一丈字くんに声をかけたというのは本当ですか?」

あこ「え? あ、あははは…」

燐子「は、はい…。少しでもお役に立てないかと…」

飛鳥「バンドに集中して頂ければと思います」

あこ「バンドもやるけど! それだけじゃ足りないよ!」

飛鳥「じゃあテストの点数を…」

あこ「うぅぅぅ~!! イジワルだよぉ~!!!」

 

 飛鳥の言葉にあこが涙目で憤慨していたが、先日のテストも何とかギリギリだったので、何も言い返せなかった。

 

日菜「でもあこちゃん。テストの成績が悪いままだとヤバいでしょ?」

あこ「そ、それはそうだけど…」

日菜「で、もしこのままテストの成績が悪いままだったら、ゲーム関連はあたしとおねーちゃんが手伝う事にするから」

あこ「え!!?」

燐子「!?」

 

 日菜の発言に皆が驚いた。

 

飛鳥「いや、あの日菜先輩…」

紗夜「日菜! あなた何を言って…」

日菜「じゃああたしだけにするね」

紗夜「そうは言ってないでしょ!」

あこ「そ、そんなのダメだよ!」

燐子「それは日菜さんでも聞き捨てなりません…」

 

 日菜の挑発にあこと燐子が憤慨していて、紗夜としては板挟みになるので困惑していた。

 

日菜「まあ、あこちゃんがテストの成績上げればいいだけだから。今度またテストあるよね?」

あこ「そうだけど絶対あげるもん!」

日菜「もしまた追試なんて事になったらー。あたしと飛鳥くんで部活作るから」

 

 日菜の言葉にまた全員驚いた。

 

紗夜「日菜!!」

飛鳥「あの、日菜先輩。どういうつもりで…」

紗夜「どうして私が入ってないの!」

飛鳥「いや、紗夜先輩…」

日菜「じゃああたしとおねーちゃんと飛鳥くんの3人ね」

あこ「う、うぅぅぅ…。絶対やるもん!! りんりん! ゲームはまた今度にしてテスト勉強しよ!」

燐子「あ、あこちゃん…!?」

 

 こうしてあこは家に帰って行くと、燐子も追いかけていった。

 

飛鳥「何してくれてるんですか!!」

日菜「大丈夫大丈夫。今のあこちゃんなら」

飛鳥・紗夜「え?」

 

 

 後日…

 

あこ「あこ赤点なかったし、平均60点以上あるよ!!」

飛鳥「頑張りましたねぇ!!!」

 

 いつもはテストの平均が30から40なあこが大幅に上げてきて飛鳥と紗夜は驚いていた。燐子もつきっきりだったのだが、氷川姉妹に独占されるのを防ぐためか、一生懸命あこの勉強を見ていた。

 

日菜「すごいすごーい!」

あこ「こ、これで部活の件はなしだよね!?」

日菜「残念だけどまた今度だね」

燐子「そもそもどうして部活の話を…?」

日菜「えっとね」

 

 日菜が事情を説明すると、燐子とあこが驚いていた。

 

あこ「そ、それだったら作ろうよ!」

飛鳥「私もいつまでここにいるか分かりませんので…」

燐子「お金の心配ならしなくていいですよね?」

あこ「そうだよ! 瞬間移動使えるんでしょ!?」

飛鳥「まあ、そうなんですけど…」

紗夜「少なくともRoseliaにはFWFに出るという目的があるのよ? まずバンドに集中するのが先決よ」

 

 紗夜がすっかり元気になって飛鳥と日菜は一安心したが…。

 

飛鳥「そういえば湊先輩と今井先輩はお元気ですか…?」

 

 飛鳥が友希那とリサの事を聞くと、紗夜、燐子、あこが気まずそうに視線をそらしていた。

 

紗夜「…湊さんは元気よ」

あこ「リサ姉が元気なくなってる気がする…」

燐子「あと、お父さんが今も来られてるんですけど…」

飛鳥「……」

 

 飛鳥はリサの無事を祈った。

 

 

おしまい

 



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第453話「飛鳥 VS ヤンデレ!」

 

 

 ある日の事だった。性懲りもなく千聖が遊びに来ていた。

 

飛鳥「不法侵入ですよ」

千聖「アポを取ろうとしても入れてくれないじゃない」

飛鳥「自分の影響力考えてくださいよ。また無人島に行かされたいんですか?」

千聖「今度はあなたを連れて行って貰えるように検討してるわ」

飛鳥「ファンを大事にしないと芸能人生終わりますよ」

 

 と、普通に世間話をしていた。

 

千聖「それを言うなら私一応アイドルで女優なのだけど」

飛鳥「すいませんね。もう大企業の総帥のお孫さんで耐性着きました」

千聖「…林グループね」

 

 林グループとは弦巻財団と同じくらいの金持ちであり、そこの総帥の孫と飛鳥は仲良しなのだ。孫は3人いて、長男、長女、次女なのだが、長女と次女がこころの幼馴染であり、飛鳥の中学の同級生でもあるのだ。その為、林グループとも何かしら付き合いがある。

 

千聖「そういえばあそこのお嬢様とはそういう関係じゃないのよね?」

飛鳥「ええ」

 

 千聖の言葉に飛鳥は困惑しながら答えた。

 

「にしても驚いたよね。まさか林グループのお嬢様とも仲良しだったなんて」

飛鳥「奥沢さん…」

 

 美咲もいつの間にか現れていた。

 

飛鳥「もう弦巻さんの事言えなくなりましたね」

美咲「謝るから表現変えて」

 

***

 

美咲「そういや一丈字くん。クッション壊れてなかった?」

飛鳥「買い換えました」

 

 美咲の言葉に飛鳥がそう言い切ると、話がそこで終わった。

 

美咲「…一丈字くん。これじゃ話が続かないよ」

飛鳥「何をしようとしてるか分かるから終わらせてるんですよ。普通のじゃないんでしょう?」

 

 飛鳥の言葉に美咲が視線をそらした。

 

飛鳥「弦巻さんに説教して貰いましょうかね…」

美咲「一丈字くん。本当に謝るからマジでやめて。こころに説教されるなんて屈辱以外何物でもないんだけど」

千聖「そういう意味では飛鳥くんも本当に強かよね…」

飛鳥「じゃなきゃこの仕事は出来ません」

 

 千聖の言葉に飛鳥はバッサリ断言した。能力者の仕事というのは悪い敵と戦うだけではなく、話をしないといけない事も多いので、苦労が多かった。

 

飛鳥「病院でいうと、聞き分けの悪い患者の相手をするようなもんですね…」

美咲「確かにいるよね。かまってちゃんとか」

千聖「そういう意味じゃあのバカ男子共もあんな感じよね…」

飛鳥「そうですね…」

 

 すると3人がどんよりしていた。元々ツッコミ気質だったせいか、思い出してすっかりテンションが低くなった。

 

美咲「もう嫌。慰めて」

飛鳥「くっつく相手間違ってます」

 

 美咲が飛鳥に抱き着くと、飛鳥は突っ込んだ。

 

千聖「何よ! こういう時は黙って抱きしめるもんでしょうが!」

飛鳥「アイドルですよね?」

 

 千聖も抱き着いてきたので飛鳥は困惑した。この状況を誰かに見られたらもう命はないだろう。

 

飛鳥「脅して来たらその人に全責任負わそ」

美咲「…思ったけど、一丈字くんが一番病んでるよね」

飛鳥「もう嫌ですよ。怒られるの」

千聖「…そうね」

 

「どんどん話が暗くなってるよー」

 

 と、沙綾がエプロン姿でやってきた。

 

飛鳥「不法侵入ですよ山吹さん」

沙綾「ま、まあそれは…その…」

飛鳥「弟さんに弄られますよ」

沙綾「腕によりをかけるから黙ってて…」

飛鳥「ていうかよく考えたらAfterglowとRoseliaの二の舞になりますよ」

千聖「大丈夫よ。そうよね。沙綾ちゃん、美咲ちゃん」

美咲「そうそう。アタシ達は仲良くするから」

沙綾「そうそう」

 

 3人がそう言うが、そもそも不法侵入してる時点でアウトな気もするが、まあ運命に任せることにした。

 

***

 

 暫くしてカレーが出来上がって、4人で食べた。

 

沙綾「美味しい?」

飛鳥「美味しいですけど、よく4人分作れましたね…?」

沙綾「ああ。それに関しては多めに作ってるから」

飛鳥「どうしてです?」

沙綾「良く食べるって聞いてるから」

 

 沙綾の言葉に飛鳥は『上手くかわしたな…』と思っていた。さしずめ、自分が誰と会っていて、誰と話していたとかも事前に分かっているのだろうと。

 

沙綾「千聖先輩と美咲もどうぞ」

美咲「ありがとう」

千聖「それじゃ頂くわね」

 

 と、4人で食事をした。カレーは特に問題もなく美味しかった。

 

美咲「それにしてもこのメンツで集まる事ないですよね」

千聖「そうね。バンドも担当も違うものね」

沙綾「まあ、同じだとすれば…」

 

 3人が一斉に飛鳥を見たが、飛鳥はスルーしていた。

 

飛鳥「そういえば最近調子はどうですか?」

美咲「まあ、相変わらずかな…」

沙綾「そうだね…」

千聖「私の専属マネージャーにならない?」

飛鳥「フラグ立ててきましたね」

 

 千聖の言葉に飛鳥がツッコミを入れると、沙綾と美咲が千聖を睨んだ。

 

千聖「冗談よ」

美咲「いや、ちょっと勘弁してくださいよ。アタシ達も我慢してるのに」

沙綾「そうですよ」

千聖「まあ、それはそうと飛鳥くん。私のカレーを食べてくれるかしら?」

飛鳥「どういう意味ですか?」

千聖「分かってるでしょう?」

飛鳥「白鷺先輩が先に食べてくれるならいいですよ」

 

 飛鳥がそう言って牽制をかけた。

 

千聖「…やるわね。流石私が見込んだだけの事はあるわ。いいわよ」

飛鳥「いいんですか」

 

 すると飛鳥が新しいスプーンを取り出すと、

 

千聖「あら、飛鳥が咥えてた奴でいいのよ」

飛鳥「変態みたいな事言わないでくださいよ」

千聖「なっ! し、失礼ね!」

 

 飛鳥の言葉に千聖が憤慨すると、沙綾と美咲も憤慨した。

 

美咲「そうだよ一丈字くん。今のは失言だよ」

沙綾「デリカシーがあると思ってたのに」

飛鳥「私と白鷺先輩との仲だと思ってたんですがね。分かりました。次からは気を付けます」

千聖「え、そ、それってどういう…」

飛鳥「自分で考えてくださいな」

 

 そう言って飛鳥が指を鳴らして、忘れさせた。

 

***

 

 そして食事を終えた4人。

 

飛鳥「ご馳走様でした」

沙綾「うん。それはそうと食後のデザートはなにがいい?」

飛鳥「お気になさらず」

千聖「まあ、思春期の男の子のデザートって言えば女の子よね?」

飛鳥「その台詞あの男子生徒の皆さんたちに聞かせてあげたいですねぇ」

沙綾・千聖・美咲「やめて!!?」

 

 その時、飛鳥のスマホがなった。

 

飛鳥「誰からだろ…」

千聖「私たち以外の女なら切って頂戴」

飛鳥「無茶言わないでくださいよ…あれ? スタッフさん?」

 

 飛鳥の言葉に千聖は嫌な予感がした。

 

飛鳥「あ、はい。もしもし一丈字です」

『あ、もしもし一丈字くん? 白鷺そっち行ってる?』

飛鳥「……」

 

 この後パスパレはまた遠く飛ばされたという…。

 

 

おしまい

 



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第454話「飛鳥 VS バンドガールズ!」

 

 一丈字です。最近皆さんがまた荒ぶりはじめましたね。混浴やら婚約届やらを送りつけようとしていた事が判明して、本当にこのまま東京にいていいのだろうかと考え始めました。

 

 もうこんな事言いたくはなかったのですが、男子生徒達と変わりません。勿論中にはちゃんとしてくれる人もいますよ。好意を寄せてくれることも甲斐甲斐しく世話をしてくれるのも勿論嬉しいですよ。

 

 嬉しいんですけど、なんか違うんですよ。私としてはきちんと前を向いてバンドに専念してほしいのに、あの人たちは私の事ばかり気にかけてるんですね。こんな事をさせる為に私は今まで助けてきたわけじゃないんですよ。

 

 やはりもうここは心を鬼にするしかないようですね…。語りを終わります。

 

***

 

 寝たふりをして少し泳がせてみる事にしました。

 

「おーい飛鳥―…って、何だよ。寝てんのか」

 

 市ヶ谷さんがやってきました。両手にスーパーの袋を持ってるあたり、料理でもしてくれるんでしょうか。元々そんな事をする子じゃなかったって、前に市ヶ谷さんのおばあさんが言ってたな…。

 

有咲「そういや最近疲れてるって言ってたな…。まあいいや。寝かせてやろう」

 

 ここまではいたって普通だな…。って思ってたけど、市ヶ谷さんが私に顔を近づけてきた。

 

有咲「…やっぱり寝てるよな。うん」

 

 あ、これ絶対なんかやらかす気だ。場合によっては戸山さんに報告する事も検討しなくては。

 

 次の瞬間、市ヶ谷さんは私のベッドの匂いを嗅いだ。

 

有咲「前から思ってたけど一丈字ってそこそこいい匂いするんだよなー。多分洗剤だろうけど、香澄やおたえも飛鳥の私物を勝手に持ち帰る理由も分かる気がするよ~」

 

 衝撃の事実発覚。これはもう親に報告だな。

 

有咲「そうだ。もうここまで世話してやってるんだ。あたしも何か貰ってもいいだろ…」

飛鳥「……」

 

 ここで語りを終わります。

 

****

 

飛鳥「ポピパは暫く出入り禁止です」

香澄「えええええ~~~~~~~~~~~!!!!?」

 

 後日、飛鳥はグループチャットで報告すると、香澄が驚いていた。

 

有咲「ちょ、ちょっと待てよ一丈字! アタシ結局何も取らなかっただろうが!」

飛鳥「取らなかったとしても、戸山さんと花園さんがアウトなので連帯責任です」

 

 ちなみに後日…。

 

沙綾「好きなだけ写真撮ってください」

りみ「……」

「うぉおおおおおおおおおおおお!!?」

「い、一体どうしたんだ!?」

「ありがたやありがたやぁ!!」

 

 学園にて香澄達はヤラカシ達の餌にされた。勿論お触りは禁止であり、しようとすると弦巻家の黒服たちに連行されます。

 

「なんだかよく分かんないけど、写真撮らせて貰いまぁす!!」

「香澄ちゃん! おたえちゃん! 有咲ちゃん! スカートたくし上げて!」

有咲「やるかっ!!!//////」

 

***

 

 一丈字です。また別の日に奥沢さんがやってきました。

 

美咲「一丈字くん。寝てるんだよね…?」

 

 不法侵入ですよ。ていうか、奥沢さん結構したたかになってきた上に、もう弦巻さんの事言えなくなってますね。

 

美咲「…背が高いけど、寝てる時は凄く可愛いね。食べてしまいたい」

 

 奥沢さん。あんたそういうキャラじゃなかったろう。ていうかもうこれなら奥沢さんに任せても大丈夫そうだな…。

 

美咲「何か嫌な予感がするから先に言っとくね。やめて」

 

 すると美咲が舌なめずりをした。

 

美咲「…もう我慢できないや。どうせ寝てるんだし、いいよね?」

 

 そう言って唇を近づけようとしていたが、

 

飛鳥「そこまでです」

 

 私は目を開いてそうけん制するも、奥沢さんが慌てることはなかった。

 

美咲「やっぱり起きてたんだね」

飛鳥「よくご存じで」

美咲「まあね。あたし、飛鳥のストーキング…じゃなかった、何でも分かるから」

飛鳥「それではこの後私がどうするか分かりますね?」

美咲「分かってるよ。あたしと…」

飛鳥「親御さんに連絡です」

 

 また私の語りは終わります…。

 

**

 

 そして後日、

 

美咲「も、もう許してぇ…//////」

こころ「ダメよ! 一人だけ飛鳥の家に行った罰よ! 反省しなさい!」

 

 美咲は一人でコスプレショーをさせられていた。もし拒否をすればハロハピはもう出入り禁止になってしまうのだ。こころも珍しく心を鬼にして美咲に説教していた。こころだけにね!!

 

(おもんな)

 

***

 

 3人目。この日は友希那がやってきた。

 

友希那「飛鳥が寝てるわね。こうなったらお持ち帰りしないといけないわね。とりあえず抵抗されないうちにこのロープで手足を縛って」

飛鳥「Roseliaも出入り禁止!!!」

 

***

 

 そして4人目…。

 

飛鳥「…小説ってさあ。本当に書けばいいってもんじゃないよね」

モカ「メタ発言はやめようよー」

 

 飛鳥はこの日、モカと2人でおでん屋で食事をしていた。飛鳥はグラスを片手にモカに弱音を吐いていて、モカはいつも通りにおでんをもっしゃもっしゃ食べていた。

 

飛鳥「親父! この列全部!!」

モカ「おおー。良い食べっぷりだねー。じゃああたしも~」

 

 

 今回の話でポピパ、ハロハピ、Roseliaが出入り禁止になった。え? あの後友希那はどうなったかって? 聞かない方が良いですよ。

 

 知りたい?

 

 

リサ「ごめんなさい。おじさん…」

友希那父「いいんだ。だけど…どうしてあんな事に…」

 

 

 リサと友希那父がこれでもかという程絶望していた。

 

おしまい

 



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第455話「飛鳥 VS 媚薬! / 飛鳥 VS ビーチ!」

今回は二本立てです。


 

 

『飛鳥 VS 媚薬』

 

 それはある日の事だった。

 

「飛鳥! 今日はこれで遊びましょう!」

「黒服さん達がアポを取ってくれてたけど、今度からは自分で取ってね」

 

 こころがまた遊びに来ていたのだが、事前に弦巻家の黒服たちがこころが遊びに来るので時間を空けるようにとあったのだ。飛鳥としてはたまたま手が空いていたため承諾した。ちなみにこれは初めてではなく、その度に報酬を貰っていたりする。そして税金の手続きもきちんとしている。

 

飛鳥「これ、アロマオイルだよね?」

こころ「早速開けてみましょう!」

 

 そう言ってこころはアロマオイルの瓶をあけたが、部屋中に甘い香りが広がっていて、飛鳥はこれ絶対何かあるなと悟った。

 

 そして案の定こころの頬が赤くなって目がとろんとしていた。明るくて元気いっぱいな彼女が妙に色っぽかった。意外とスタイルも良いのでその辺の男は簡単に悩殺できるのだが、この男は違った。

 

こころ「飛鳥ぁ~♪」

飛鳥「黒服さーん」

 

 こころが飛鳥を抱きしめようとしたが、飛鳥は玄関口にいるであろう黒服の方を向いた。するとガスマスクをつけた黒服が現れた。

 

「お嬢様は今発情しております」

飛鳥「分かりました。旦那様に報告しますね」

「勘弁してください」

 

 飛鳥がスマホを取り出してこころの父に連絡しようとすると、黒服たちが慌てだした。

 

飛鳥「このアロマオイルどうなってるんですか!?」

「このアロマは女性の理性を煽り、恋焦がれる男性に対する母性と性欲を高める代物なのです」

飛鳥「そんな都合の良いアロマオイルあるんですか!?」

「ええ。これもお嬢様と飛鳥さまの仲を接近させる為、お嬢様がもうアピールしているというのに、飛鳥さまは今だに童…」

飛鳥「あ、お疲れ様です。一丈字ですけど」

「やめてええええええええええええええええええええええ!!!!!」

「クビならまだしも、藻屑になるぅうううううううううううう!!!!」

「マジでしゃあないんですって!!」

 

 飛鳥がこころの父に本当に電話した上に超能力でバリアをはり、止めれないようにしたので黒服たちがガチで慌てだした。

 

***

 

こころ「飛鳥。相変わらず可愛いわね」

飛鳥「君の方が可愛いけどね」

 

 飛鳥が皮肉気味に突っ込むと、こころが本当に照れてた。

 

こころ「あらやだ。お上手なのね」

飛鳥「その辺はしっかりお嬢様なのね…」

 

 飛鳥は早急に元に戻そうとしたが、何かあった時の証拠を掴むために泳がせることにした。黒服たちは絶対飛鳥が何か企んでると思い、青ざめていた。同じ女性だからアロマオイルの匂いが聞いているはずなのに、こころの父と話していた事で自分たちがどうなるか分からず、恐怖で震えていた。

 

こころ「それはそうと何か体がムズムズしてきたわ」

飛鳥「じゃあ元に戻しましょうね」

こころ「触って…」

飛鳥「お断りします!!」

 

 そう言って飛鳥は超能力で元に戻した。この時黒服たちは『ヘタレ』と思っていたが、それを言ったら今度こそ命はないと思った。

 

飛鳥「そうやって煽るから望まない妊娠なんてものがあるんですよ?」

「そ、そうですね…」

 

***

 

『飛鳥 VS ビーチ!』

 

 ここはとあるビーチ。このビーチに一人の少年と二五人の少女がいた。少なくとも少女たちは美少女やら美女ぞろいでもし男たちがいたら間違いなくオスになるだろう。

 

 そんな少女たちを独占し、優越感に浸れるはずの少年のテンションは低かった。

 

飛鳥「どこからともなく現れたりしてましたからねぇ。今までの経験上」

 

 そう言って少年はカメラに向かってそう言った。

 

 一応名目上はバンドに関する合宿であるのだ。先日氷川姉妹が飛鳥と出かけていて、なんだかんだ言って皆羨ましがり、最終的には香澄の合宿をやろうの一言で今回の話になった。

 

 勿論飛鳥も誘われたわけだが、性別違うし親も許可しないだろうと言ったのだが、問題を起こせば即強制送還という条件で行われることになった(ちなみに飛鳥は無条件で最後まで参加)。

 

 で、結果的に弦巻家が所有しているビーチで海水浴をする事となったのだが、飛鳥達以外誰もいないので寂しい。

 

飛鳥(これはこれで少しなじめないなぁ…)

 

 飛鳥も一応庶民として育ってきたので、人気のないビーチに違和感があった。ちなみに超能力を使って逃げようとする事も出来るのではないかと思うだろうが、弦巻家が開発した特殊なスコープで飛鳥の居場所を探る事が出来るので、超能力を使った事がすぐにバレる。

 

飛鳥(もうオレいらないんじゃないかな…)

 

 なんてずっと頭の中で考えていると、香澄達がやってきた。

 

「飛鳥くん! そんな所にいないで一緒に遊ぼうよ!」

飛鳥「…ああ。そうですね」

 

 そう言って飛鳥が立ち上がって空を見上げた。空は雲一つない晴天である。

 

沙綾「…そういや日差し大丈夫? 肌がすぐにボロボロになるって聞いてるけど」

飛鳥「長時間いなかったら大丈夫ですよ。あと、氷で体を冷やせば元に戻ります」

 

 飛鳥はポピパメンバーと普通に接していた。普通の男なら香澄達の水着姿に釘付けになってもおかしくはないのだが、飛鳥は全く違った。

 

沙綾「そう。あ、そうそう。今朝うちで作ってきたパンも持ってきたから食べて」

飛鳥「ありがとうございます」

りみ「チョココロネがいっぱい…♡」

 

 チョココロネが沢山入っているバスケットを見てりみがウットリしていた。

 

香澄「じゃあ、遊んでからお腹を空かせよう!」

 

 と、普通に飛鳥はポピパと遊んでいた。女子相手に本気を出すのは宜しくないと思ったのか、飛鳥はそこそこ手加減をした。

 

有咲「いや…左右ずっと走らせるとか鬼か…」

香澄「砂浜だから自由に走れないよう…」

 

 ビーチバレーをしていたのだが、飛鳥は空いているスペースにボールを打ち込んで有咲たちを走らせてクタクタにさせていた。

 

たえ「凄いね」

飛鳥「いえいえ…」

 

 そんなこんなでお昼は皆でパンを食べた。

 

飛鳥「あぁ…。なんか凄く平和…」

 

 いつもは変態共が突っかかってきたり、香澄達の誰かが変な事をしてきたりで、飛鳥は大忙しだったが今回は何事もなかったので平和だった。

 

飛鳥(でも平和なら平和でここにいる理由ないしな…)

 

 と、考えて飛鳥は少し複雑そうにするのだった。

 

 

 

おしまい

 



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第456話「語る」

 

 

 皆と海で遊んだ飛鳥。その日の夜飛鳥達は海辺の旅館に宿泊する事となったのだが…。

 

蘭父「私達も宿泊させて貰う事にしたから宜しく」

 

 蘭父と友希那父が来ていて、蘭と友希那が白目になっていた。

 

リサ「お、おじさん…」

友希那父「…済まないね。だが、もう友希那の事があるから」

蘭父「そもそも未成年だけで宿泊するのは親としては看過できないのでね。悪く思わないでくれ」

 

 そう言われるとそうである。いくらハーレム小説とはいえ、そう易々と自分の娘を同級生の男と宿泊させるなんてあってはならない事だし、寧ろ大問題だ。

 

 ちなみに沙綾も先ほど弟から『襲うなよ』と一言揶揄われたという。

 

 まあ、そんなこんなで夕飯は皆で嗜み、各々部屋に戻った訳だが、飛鳥は2人の父親と一緒だった。

 

蘭父「すまないが私達と一緒に寝て貰うぞ」

飛鳥「分かりました…」

 

 恐らく自分の娘が飛鳥を襲うのを避けるつもりだと飛鳥は確信した。ほぼ自由人である友希那やこころも流石に他所の父親に注意されれば大人しく帰るからだ。

 

友希那父「風呂だけど、部屋の奴を使った方が良いよ…」

飛鳥「…分かりました」

 

 友希那父の発言には何か意味が深いものがあった。

 

蘭父「それにしても、蘭があそこまで君に夢中になるとは思わなかったよ」

友希那父「そうですねぇ。うちも娘が興味を持つなんて事は…」

 

 と、父親2人がそう言うと飛鳥は何やらばつが悪そうにしていた。というのも、今まで能力者という事を隠していた上に、仕事の内容上娘である蘭や友希那を危険にさらす可能性もあった為、間違いなく印象は良くないだろうと思っていた。

 

飛鳥「…美竹さん。湊さん」

友希那父「…うん、分かっているよ。友希那に気を遣わなくていい」

蘭父「その通りだ。人に迷惑をかけているわけじゃあるまい。自分の道は自分で決めなさい」

 

 蘭父と友希那父にそう言われて飛鳥は2人を見つめた。

 

友希那父「…飛鳥くん。本当に娘が世話になったね。ありがとう」

飛鳥「いや、そんな事は…」

友希那父「Roseliaが人気が出始めて、確実に夢をかなえていっている事が分かって嬉しい反面、バンドには悪質なファンがつきものだ。友希那だけじゃなくてリサちゃん達にも迷惑行為が行われて、本格的にどう対応するか考えていた所、君が現れてくれた」

蘭父「…困った事に、蘭目的で華道を始める輩もいるのだが、同じ男として恥ずかしい限りだ。思い通りにならないとすぐにやめる!」

 

 蘭父が憤慨すると、友希那父と飛鳥が苦笑いした。

 

友希那父「そしてあの事件の事も感謝してる。僕を助けてくれた事もそうだけど、Roseliaを…友希那を守ってくれた。父親として感謝しても仕切れない」

 

 友希那父の言葉に飛鳥は事件の事を思い出した。というのも、パスパレの事務所にいた男がかつてパスパレが起こしたエアバンド事件の責任を取らされてクビになり、そこから仕事を転々としていたが上手く行かず、最終的にはRoseliaのボーカルである友希那の引き抜きを試みたが、これも失敗してあっさり切り捨てられて絶望していた所を、悪の能力者に洗脳されて超能力者となり、パスパレとRoseliaを崩壊させるために友希那の父親を誘拐したのだ。

 

 父親が命の危機に晒されて友希那はショックで気を失い、元スタッフが大事件を引き起こしたことでパスパレやその事務所もパニック状態になっていた。

 

 そんな中で飛鳥は男と対峙する事となり戦ったのだが、戦っていた場所が街で大技を使う事が出来ない上に派手に建物を壊すと二次被害が出てしまう可能性もあり、本気を出せずにいた。体術だけで何とか男を倒し、友希那父を救出したのだが、そこで能力者だという事がバレてしまったのだ…。

 

飛鳥「…友希那さんの夢が叶うには、あなたが生きている必要があったからです」

友希那父「…そうか」

 

 友希那父としては、たとえ自分がいなくなったとしても友希那には仲間と共にFWFに出て欲しいという気持ちはあったが、友希那がそこまで自分の事を想ってくれていると感じて、言葉を詰まらせた。

 

蘭父「…そういう意味では、蘭も世話になったね」

飛鳥「!」

 

 飛鳥が蘭父を見た。

 

蘭父「私は元々バンドに対しては快く思っていなかったんだ。蘭には華道をしてほしいという気持ちもあったのだが、バンドをやっている男どもが気に入らなかったんだ」

 

 蘭父の言葉に飛鳥と友希那父は苦笑いした。蘭父の性格上確かにバンドマンは良く思われないだろうと思っていた。

 

蘭父「勿論全員が全員そうではないのは理解している。だが、女にだらしないのは違うだろう?」

友希那父「バンドをやってると女性にモテやすいんですよ」

蘭父「やはりそうか…」

 

 友希那父の言葉に蘭父が俯いた。やはり女性にモテたかったからバンドをやる上に、女性に声をかけるのかと憤慨していた。

 

蘭父「君ももう高校生だ。父親ではないが私の言っている事の少しは理解してくれているだろう。それだけ蘭は目に入れても痛くない程の娘なのだ。もしそんな娘に悪い男が近づいてきたらと考えると…」

飛鳥「そうですねぇ…」

友希那父「僕も娘を持つ父親なので分かりますよ。まあ、うちの子は自分で何とか出来そうな気もしますが…」

 

 友希那父が何か言いたそうにそう呟くと、飛鳥も思い当たる節があり困惑していた。

 

蘭父「華道の事も勉強するという条件でバンドは続けさせているものの、やはり悩みはつきないのだよ。だが、そんな中で陰で蘭や他の子を守ってくれていた事には父親として感謝している。ありがとう一丈字くん」

飛鳥「美竹さん…」

 

 蘭父の言葉に飛鳥が困惑していた。

 

蘭父「…まあ、少なくとも君なら蘭の事を任せられなくもないが…いや、まだ嫁には早い!!」

友希那父「あははは…。まあ、僕も飛鳥くんが息子になるのは良いけど…」

 

 友希那父が困惑していた。

 

友希那父「…いや、別の意味で早いかな」

「どういう意味」

 

 友希那が入ってきたが、他の子もいて蘭は特に顔を真っ赤にしていた。

 

友希那父「今はもう女性が家事をやるものではないけれど、最低限自分の事は出来るようにならないとね…」

友希那「出来るわよ。あと最近は飛鳥へのご奉仕も」

友希那父「やっぱり友希那を連れて帰ります」

リサ「もー!! いい加減反省してよ友希那ぁー!!!」

 

 と、賑やかな夜になったという。

 

蘭父「蘭…。頼むからお前はああなってくれるなよ…」

蘭「しないから!!//////」

飛鳥「……」

 

 蘭と蘭父を見て飛鳥はニコニコしていた。

 

 

 

おしまい

 



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第457話「飛鳥 VS おっぱい!」

第458話

 

 一丈字飛鳥です。遂に恐れていたことが現実になりました。

 

飛鳥「下着が落ちてる…」

 

 そうなんです。家のとある一室にて水色のブラジャーが落ちていたんですね。まあ、それだけならまだ良いのかもしれないんですが、結構大きめなんですね。

 

飛鳥「……」

 

 あの人たちの性格上、見られたら困るようなものを堂々と落とすわけがない。だとすれば私は試されてるのでしょう。何故なら落ちている場所は陰からでも見れるからです。さしずめ私がブラジャーを拾ってる光景を突き止めて、脅そうって魂胆だ。しかもこれが大きめの奴であれば…。

 

飛鳥「広島に帰る準備するか…」

「いや、なんでだよ!!」

 

 すると市ヶ谷さんが出てきました…。ここで語りは終わります。

 

***

 

飛鳥「市ヶ谷さん。この下着誰のか分かりますか?」

有咲「私のだけど…」

飛鳥「ツッコミではなくボケに転向されたんですかね」

有咲「そうじゃねー!!」

 

 良かった。ツッコミのキレは健在だったが、市ヶ谷さんの性格上ブラジャーを床に落とすなんて考えられない。で、このシリーズの市ヶ谷さんはちょっと強気なので…もう確定ですね。

 

飛鳥「それにしてもどうしてこんな所に落としたんですか?」

有咲「そりゃアレだよ。お前も男だから? おっぱいに興味があるのかって…」

 

 一旦語りは終わります。

 

飛鳥「今はもう特に興味ないですね」

有咲「他の奴には言わねーから正直に答えろよ」

飛鳥「もう今まで何度も異性でトラブル起きてるんで…」

 

 飛鳥の言葉に空気が重くなった。

 

飛鳥「学園にいた時なんか、いつ消されるかって不安になりながら過ごしてたもんで…」

有咲「お、おお…。それに関しては済まなかった」

 

***

 

飛鳥「まあ、正直に言うなら、嫌いな奴の胸はサイズ関係なしに嫌いです」

有咲「もしかして…アレか。存在自体嫌いなパターンだろ」

飛鳥「そうなりますね…」

有咲「結構闇抱えすぎだろ」

飛鳥「主役なんてそんなもんです」

 

 そんな話をしていると、

 

「あ、あの…飛鳥くん…」

 

 りみが現れた。

 

飛鳥「不法侵入ですよ牛込さん」

りみ「ご、ごめんね? えっと、ちょっとどうしても聞きたい事があって…」

飛鳥「聞きたい事?」

りみ「その…。胸が小さくても問題ない?////」

 

 りみが恥ずかしそうにそう言うと、飛鳥が驚いていた。

 

有咲「ほら、答えてやれよ」

飛鳥「そうですね…。サイズは気にしてないですよ」

りみ「そ、そうなんだ…。良かった…」

 

 飛鳥の言葉にりみが安心すると、

 

有咲「けど一丈字。たまに私のおっぱい見てるよな?」

飛鳥「次回市ヶ谷さんをメインに1本活躍してみますか?」

有咲「ごめんなさい」

りみ「そ、そうなの!?」

飛鳥「もしそうなら今頃強制送還喰らってますし、学園にいた頃から言いがかりつけられてたんですよ。胸を見てたんじゃないかって。で、そんな時に誰も助けてくれなくて…推薦取れないようにしてやろうかなぁ?」

有咲「飛鳥落ち着け。マジで落ち着け」

 

 飛鳥が思った他ヤバい事を言いだしたのでりみと有咲が慌てて止めた。飛鳥は自分に冷たい相手にはとことん容赦しない性格だった。

 

飛鳥「元々短気で喧嘩っ早いんですわ。納得のいかない事はとことん追求しますし…」

有咲「分かるぜその気持ち…」

 

***

 

りみ「と、とにかく飛鳥くん」

飛鳥「何です?」

りみ「私…頑張るからね?////」

飛鳥「何をですか…?」

 

 りみの態度を見て飛鳥が困惑していた。

 

有咲「あー。りみって結構ムッツリだから」

りみ「そ、そうじゃないもん!!/////」

 

 有咲の言葉にりみが顔を赤くしてツッコミを入れた。

 

りみ「そ、その…やっぱり男の子を振り向かせるにはその…そういう事をしないといけないのかなって//////」

飛鳥「牛込さん。そういう事を好むのは犯罪まがいな事をする男なので、参考にしてはいけませんよ」

 

 りみが危ない方向に行きそうだったので、飛鳥が困惑して突っ込むように諭した。

 

「だけど巨乳は憎い」

飛鳥「…花園さん」

 

 いきなり現れたたえがそう言うと、飛鳥だけではなくりみや有咲も困惑した。

 

有咲「…おたえは背が高いからまだいいじゃねぇか」

りみ「そうだよ。足が長いから羨ましくていいなぁ…」

たえ「良く言われるけど…。有咲こそ本当にでかいよね。此間一緒にお風呂に入った時とか、皆ガン見してたもん」

有咲「は、恥ずかしい事を言うなぁ!!/////」

 

 たえの発言に有咲が恥ずかしがると、飛鳥は半ば説得力がないと思いながら聞いていた。

 

有咲「と、とにかく次ガン見したら金取るからな!!」

飛鳥「……」

 

 この時飛鳥は思った。これを男子達に言ったら、多分金を持ってくるだろうと。

 

たえ「多分あの男子たちは札束叩きつけて「見せろ」って言ってきそう」

有咲「何となく想像つくけど、気色悪い事を言うなぁ!!」

 

 そう言って有咲は胸元を両手で隠した。

 

たえ「まあ、それはそうと飛鳥くん」

飛鳥「何です?」

たえ「お風呂入ろ?」

 

 たえの言葉に衝撃が走った。

 

飛鳥「すみません。私これから湯豆腐食べる所なんで…」

有咲「何で湯豆腐なんだ!?」

たえ「分かった。それにしてからにしよう」

飛鳥(あとで記憶消したろ)

 

 そんなこんなで4人でしゃぶしゃぶをした。

 

飛鳥「そういえば、風呂と食事、どっちが先かって話題になった事があるんですが、皆さんの家はどうですか?」

たえ「あー…」

 

 と、世間話をしながら食事をしていたが、3人とも汗だくだった。

 

有咲「ところでこんなに汗かかせて…後で匂いを嗅ごうってんじゃないだろうな?」

飛鳥「市ヶ谷さん」

有咲「何だよ」

飛鳥「そんなに広島に帰って欲しいですか…」

有咲「ちげーよ!!」

たえ「男子と似たような事を言ってるよ」

有咲「いや、私たちはいいだろ! 当事者なんだから!」

りみ「…でも、まだ匂いを嗅がれるのは恥ずかしいかな//////」

たえ「飛鳥くん」

飛鳥「?」

 

 するとたえが右腕を思いっきり上げた。服の隙間から脇を見えていた。

 

たえ「はい。嗅いでいいよ」

 

 たえの言葉に飛鳥は口角を上げて、超能力を放ってバンドの話ばかりさせるように仕向けた。

 

 

おしまい

 

 

 



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第458話「飛鳥 VS アロマオイル!」

第459話

 

 ある日の事。弦巻家の黒服たちが話があるという事で、飛鳥は家で待っていた。今回は不法侵入じゃないだけまだマシなのだが…。

 

「突然の御訪問申し訳ございません。本日は一丈字様を実験台…ではなく、日ごろの感謝の気持ちとして弦巻財団の新製品をお届けに参りました」

飛鳥「ありがとうございます。旦那様に今度の慰安旅行ニュージーランドから近所の格安ホテルに変えて貰うように進言しときますね」

「やめて!!?」

「ニュージーランドに行くって言っちゃったよ!!」

「あと此間のボーナスの下りも割と真剣に考えてて死ぬかと思った!!」

 

 飛鳥の発言に黒服たちが慌て始めた。

 

飛鳥「勘弁してくださいよ。ただでさえこのご時世お金持ちがやらかすと、庶民からの反感も凄いんですよ?」

 

 思った他堂々と言う飛鳥に黒服たちは肝が据わっていると思った。

 

「…話は戻しますが、お嬢様が日々笑顔でいられるのはあなたのお陰でもあるのです」

飛鳥「……」

「そんなあなたの為に我が弦巻財団は予算数億をつぎ込んだ新製品を開発したのです」

飛鳥「もうそのお金を保育士さんや介護士さん達のお給料にしてほしいくらいですね」

「安心してください。我が弦巻財団が経営している保育園、介護施設については環境を整えており、今は応募が殺到している位です」

 

 そう、今弦巻財団が関わっている保育園や介護施設においては、今保育園や介護施設が抱えている「人員が足りない」「給料が労働と見合っていない」「環境が整っていない」という問題を全てクリアしており、その仕事をしている社員は他の社員よりも給料が高くなるというシステムを導入した。その結果、働いている社員の給料は高くなり、利用者も安心して子供や親を預ける事が出来るというwin-winの関係となったのだ。

 

 勿論一番大事な労働者の教育も徹底している。

 

 これも飛鳥がこころに冗談のつもりで言ったのが全ての始まりだったのだが、飛鳥自身はまさか自分の発言でこんな事になっているとは思いもしなかった。

 

「さて、話が逸れましたが私達が贈呈するのはこのアロマミストです」

飛鳥「……」

 

 アロマミストが渡されて飛鳥は無表情になった。

 

飛鳥「またなんか仕込んでるでしょう」

「いえいえ、今回は安眠効果のあるアロマです」

飛鳥「…そうですか」

 

 飛鳥は此間した事を忘れてはいなかった。先日もアロマを炊いてこころが母性たっぷりになって襲われそうになった事を。

 

 まあ、いざとなれば超能力があるし、これでまたやらかしたら慰安旅行をニュージーランドから近所の格安ホテルに変えて貰おうと思っていた。

 

***

 

 そんなこんなでアロマオイルを貰った飛鳥だったが、結局使う事がなさそうでどうするか迷っていたある日、

 

「大丈夫ですか!? 松原先輩!」

「飛鳥くん…」

「チッ!!」

 

 花音が自宅付近でストーカーに遭い、それを感知した飛鳥がすぐに駆け付けてストーカーから花音を守った。フードを被った男は舌打ちをしてそのまま逃亡した。

 

花音「あっ…」

飛鳥「後追いは不要です。それよりもうちに来てください」

 

 飛鳥が花音を自宅のマンションに連れて行くと、飛鳥は関係者に連絡することにした。

 

飛鳥「…まず、親御さんに連絡しないと」

花音「あ、今うちの家族いないの…」

飛鳥「メール位は出来るでしょう」

花音「あ、そ、そうだね…」

 

 すると花音は親にストーカー被害に遭った事を連絡すると、すぐに親から連絡が来た。

 

花音「あ、も、もしもし…」

 

 花音は親と電話をした。親はかなり心配している様子だったが、今から帰ろうにも明日までかかるとの事だった。飛鳥はとてつもなく嫌な予感がした。

 

 そして飛鳥の家にいる事を告げると、父親の方は少し困惑していたが、母親が飛鳥と話をさせて欲しいと言ってきたので、飛鳥に代わる事にした。

 

飛鳥「お電話代わりました。一丈字です…」

 

 そして飛鳥は花音の両親と電話をする事になった。父親からは今まで花音の事を助けてくれた事に関しては感謝しているが、寝室は極力別々にしてほしいなどと釘を刺され、母親からは妊娠させたら責任を取って貰うと言われた。

 

飛鳥「その件に関しましてはご心配は不要ですし、緊急事態なので娘さんの事をもっと心配してください。凶器を持ってたかもしれないんですよ」

「ご、ごめんなさい…」

 

 この後、ハロハピと学園の関係者に一通り連絡すると、

 

こころ「それは心配だわ! 今からそっちに行くわね!」

飛鳥「こころ」

こころ「何かしら?」

飛鳥「良かった。その事なんだけど自分の家にいてくれる?」

こころ「あら、どうしてかしら?」

飛鳥「弦巻財団がいるから大丈夫だと思うんだけど、犯人がうろついてて危ないし、何かあったらオレが怒られるから」

 

 飛鳥がそう説明すると、

 

花音「こころちゃん。飛鳥くんちょっと他の皆にも連絡してて今忙しいの」

こころ「そうなのね。分かったわ」

飛鳥「とにかく今回は大まじめだし、犯人が捕まったとしても、犯人が一人とは限らないからね。一応警察にも連絡してパトロールを強化してもらうようには頼むけど、もしダメなら弦巻財団に頼む」

こころ「あら、うちの人たちを使えばいいじゃない」

飛鳥「…なんかあった時がややこしいからさ」

 

 と、飛鳥は色々警察のめんどくささに頭を悩ませていたが、一旦こころには納得してもらった。

 

 そしてそのまま花音は泊まる事となったのだが…。

 

『紛らわしい事をしないでください』

 

『きょう未明、迷子の少女を救出した男性に対して吐き捨てたこの警察官に対し、○○警察署は謝罪文を表明することにしました』

 

 飛鳥と花音はニュース番組を見ながら食事をしていたが、SNSで誰かが取った警察官の暴言についてニュースされていた。迷子になっていた子供を男性が助けたのだが、子供の両親が誘拐と勘違いして通報し、警察に通報した。周りの人によって誤解は解けたが、両親はそそくさと逃げ出し、警察官も男性に対して注意していた。

 

花音「ひ、酷いね…」

飛鳥「もうすっごい迷惑です」

 

 花音が警察官の対応のひどさに対してコメントすると、飛鳥がすっごい嫌そうな顔をしながらそう言った。

 

飛鳥「親も親で最近行儀悪い人多いからなぁ…」

花音「……」

 

 子供を盾にSNS上で吠えまくる親に対して飛鳥はげんなりしていた。どこもかしこも不平不満を漏らす日本人に対し、飛鳥はこの国は果たして大丈夫なのかと思い始めた。

 

飛鳥「まあ、それだけこの国が平和だって事ですね」

 

 と、自分に言い聞かせるようにつぶやくと、花音は飛鳥も似たような事があったんだなぁ…と困惑していた。

 

飛鳥「あ、それはそうと料理どうですか?」

花音「うん! 凄く美味しい!」

 

 夕食は飛鳥が作っていたのだが、メニューは下記の通りだった。

 

・ 魚の煮つけ(中華風)

・ ライス

・ 玉子スープ

・ エビチリ

・ 特製点心

 

飛鳥「それは良かったです」

花音「でも、ごめんね。料理作って貰っちゃって…」

飛鳥「いえいえ。それよりもこういう時こそ食事を取らないといけませんのでね」

 

 飛鳥の言葉に花音が反応した。

 

飛鳥「あ、一応デザートも作ったので良ければ」

花音「デ、デザートも!? ふぇええ…」

 

 と、そのまま食事にありついたが、花音は飛鳥の技術力の高さに驚いていた。

 

 そんなこんなでデザートであるカップケーキを食べながらゆっくりしていると、飛鳥のスマホがなった。

 

飛鳥「…千聖さんだ」

花音「え?」

 

 飛鳥が電話に出た。

 

飛鳥「もしも…」

『もしもし飛鳥くん!!? 花音がストーカーに遭ったって本当なの!?』

飛鳥「ええ。私の家の近くで起きてまして、今保護している最中です」

千聖「花音も一緒なのね!? ちょっとテレビ通話にして頂戴!!」

飛鳥「あ、ちょっと待ってくださいね…」

 

 そう言って飛鳥が機材を操作すると、テレビに千聖の顔が映ったが、他のパスパレメンバーもいた。

 

飛鳥「お疲れ様です…って、パスパレ全員いらっしゃったんですか!?」

麻弥「丁度仕事終わりだったんス…」

イヴ「カノンさん! 大丈夫ですか!?」

花音「う、うん…大丈夫だよ…」

 

 イヴが心配そうにしていたので、花音が苦笑いしながら答えた。そして飛鳥は現在の状況をパスパレメンバーに説明した。

 

飛鳥「…警察や弦巻財団の人に犯人捜索をお願いしておりまして、松原先輩のご家族が今遠くに外出しておりまして、戻られるのに明日かかるそうです。その為、一晩泊める事となりました」

千聖「それは良く分かったわ。非常事態だものね」

飛鳥「ええ…」

 

 千聖の言葉に飛鳥が相槌を打つと、

 

日菜「ところで晩御飯ってどうしたの?」

飛鳥「私が丁度残ってた食材で作りました」

日菜「飛鳥くんが作ったの!?」

飛鳥「え、ええ…。そうですが…」

 

 思った以上に驚かれたので、困惑する飛鳥だった。

 

彩「それで味はどうだったの!? 花音ちゃん!」

花音「とっても美味しかったよ。カップケーキも作ってくれたし…」

 

 花音の言葉にパスパレは飛鳥の方を見た。

 

彩「さ、最近の男の子って本当に料理が出来るんだね…」

千聖「今は男は仕事、女は家庭って時代じゃないもの。とはいえ、これはちょっとマズいわね…」

 

 流石に女として何か負けたくないと思っていた彩と千聖だった。

 

日菜「えー。いいなー。今からそっち行っていい?」

麻弥「日菜さん!!」

飛鳥「非常事態なもんで…」

 

 飛鳥が遠回しに断りを入れると、

 

日菜「じゃあ今度料理作ってよ。材料費出すから」

飛鳥「えっ」

千聖「それはいいアイデアね」

 

 と、パスパレメンバーが乗り気になっていると、

 

「その事だけど、当面はずっとロケだから家行ってる暇ないよ?」

パスパレ「えっ…」

 

 外からマネージャーの声が聞こえてきて、5人が絶句した。

 

「あ、ごめんなさいね一丈字さん。そういう事なので気にしないでください」

 

 そう言ってマネージャーは通話を切ると、電話を切られるのを見て飛鳥と花音は恐らく千聖が文句を言ってそうだと想像して困惑していた。

 

 そしていよいよ就寝時間がやってきた。

 

飛鳥「そろそろ寝ましょうか」

花音「う、うん…」

飛鳥「部屋は別々にしましょうか」

花音「一緒じゃないの?」

 

 花音の言葉に飛鳥は一瞬言葉を詰まらせた。

 

飛鳥「男性側から一緒に寝ましょうって言ったらセクハラになるもんで」

花音「大丈夫だよ。私そんな事しないよ?」

飛鳥「まあ、最悪皆から縁を切られますけど、今まで私がやってた事を全部やって貰うので泣いて貰います」

花音「うん。本当に大丈夫だよ…」

 

 もしかしたら一番ヤバいのは飛鳥かもしれないという事態に花音は青ざめていた。

 

**

 

 そんなこんなで一緒の部屋で寝る事となった飛鳥と花音。

 

飛鳥「川の字になって寝ましょうか。2人ですけど」

花音「ありがとう…」

 

 こうして2人で就寝する事となったが、花音が飛鳥の布団に自分の布団をくっつけようとしていた。

 

飛鳥「…松原先輩」

花音「あ、え、えっと…////」

飛鳥「少なくともですね。万が一の事が起きて私に冷たい態度を取った奴らは泣きを見て貰いたいですね」

花音「…そ、そう」

飛鳥「松原先輩。私は先輩が思ってるような強い人間ではございません」

花音「も、もう寝よう? 私が傍にいるから大丈夫だよ…」

 

 そう言って飛鳥と花音が一緒に寝る事となったのだが、飛鳥は超能力ですぐに花音を眠らせた。

 

飛鳥「おやすみなさい。松原先輩」

 

 そう言って飛鳥がリビングに戻ると、黒服たちがいた。

 

飛鳥「不法侵入ですよ」

「いえ、今回は大まじめな話があるのです一丈字様。お座りください」

飛鳥「…分かりました」

 

 そして飛鳥は黒服たちの話を聞いたのだが、犯人が捕まったというのだ。

 

「ずっとマンションをウロウロしてましてね。簡単に捕まえられました」

飛鳥「…動機は?」

「ええ。やはり花音様たちを狙っていたようです。もしかしたら他の方々が来られるかもしれないと思い、ターゲットを変えたとの事でした」

 

 黒服たちの言葉を聞いて飛鳥は困惑していたが、それでも事件解決に尽力してくれた黒服たちにお礼を言った。

 

飛鳥「ありがとうございます」

「いえいえ。お礼なら…」

「……」

 

「あのアロマオイルを使ってください」

飛鳥「それよりもニュージーランド行きを築地行きに変えて貰うように進言しときますね」

「ごめんなさい」

「築地も良い所ですけど、ニュージーランド行きたいです」

 

 こうして犯人は捕まり、翌朝花音の家族が迎えに来て無事に引き取られた。だが、花音としてはすぐに眠ってしまったので、飛鳥が超能力を使ったと判断して軽く睨みつけたが、飛鳥は視線をそらした。

 

 

飛鳥「今日もいい仕事をしたぜ…」

 

 飛鳥はあの後一人で寝ずの番をしていて、寝不足気味だった。

 

 

飛鳥「寝よう…」

 

 

おしまい

 



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第459話「飛鳥 VS RAS!」

 

 

 それはある日の事だった。

 

「Hello。ネス! よく来たわね!」

「……」

 

 飛鳥は今日、とある高級マンションの最上階に来ていたのだが、ここにはガールズバンド「RAISE A SUILEN」のスタジオが存在している。そして目の前にはRAISE A SUILENのプロデューサー兼リーダーである珠手ちゆことチュチュがいた。

 

「申し訳ございませんネス様。チュチュ様がどうしても本日ネス様にお会いしたいとの事で…」

 

 と、チュチュの子分的存在でRASのキーボード担当であるパレオが申し訳なさそうにしていた。

 

飛鳥「まあ、アポを取ってくれただけまだいいんだけどね…。これが強引に埒なんて事になったらパスパレに報告…」

パレオ「だ か ら で す」

 

 飛鳥の言葉にパレオがものすごい剣幕かつ滝のような汗を流して言い放った。パレオはパスパレの大ファンであり、此間生で遭遇したら死にかけた。

 

パレオ「パスパレちゃんに嫌われた時の事を考えただけでパレオは…」

飛鳥「……」

チュチュ「戻ってきなさい!」

 

 深く絶望するパレオを見て飛鳥はどこかで見た事があるなあと思っていたが、チュチュは自分抜きで話をしていたのが気に食わないのか吠えた。

 

チュチュ「さて、本題に戻るけどネス! 今日は私たちのスキルアップを手伝ってもらうわ!」

飛鳥「私で良いんですか?」

チュチュ「愚の骨頂よ。あなたの実力は前から知っているわ」

 

 チュチュの言葉に飛鳥は困惑していた。

 

チュチュ「音楽の知識や技術もそうだけど、あなたには女の魅力を上げる能力が備わっている。ガールズバンドとして舞台に上がる以上、その姿が大衆の目にさらされるのは逃れられない。だから女としての魅力を磨く必要があるのよ」

飛鳥「まあ、それは一理ありますね」

チュチュ「だから…身体接触が必要となるわ!」

飛鳥「それは理解できないですね」

 

 チュチュの理論に理解できる部分と理解できない部分があり、飛鳥は腕を組んで困っていた。

 

飛鳥「年頃の娘がべたべた異性にくっつくものではありませんよ」

チュチュ「年寄りみたいなことを言うのね」

飛鳥「それを言うのであれば、あんまりくっついてると悪質なファンが自分も行けるだろうと思って付き纏いますよ? プロデューサーをやっているあなたならそういうファンの事も知っている筈ですが…」

チュチュ「…確かにそうね」

パレオ「現にパスパレちゃんに近づく輩が数えきれないほど…」

 

 パレオの言葉を聞いて飛鳥は学園内にいた悪質な変態共を思い出した。もし彼らの話をしたらパレオはどうなるのか気になる所だが、リスクは負いたくないので話さないことにした。

 

チュチュ「って! そんな話はどうでもいいのよ! そもそもあなた、こんなに可愛い女の子達と触れ合えるってのに、喜ばない訳!?」

飛鳥「その分変態達も絡んでくるし、訳の分からない言いがかりつけてくるし、運が悪いと誰も助けてくれないし、申し訳ないんですけど正直マイナスなんですよ…。まるでランボーになった気分です」

 

 飛鳥の言葉に空気が止まると、すっかり空気が重くなってしまった。

 

パレオ「なんてかわいそうなネス様…」

飛鳥「何も知らない人間が適当な事を言うと、人の人生を狂わせることがある。だから勉強って必要なんですよね…」

チュチュ「戻って来なさい!!」

 

 飛鳥はもう相当疲れているのだと思い、チュチュは困惑していた。そんな中、他のメンバーがやってきた。

 

「こんにちは飛鳥」

飛鳥「あ、こんにちは和奏さん…」

「ど、どうしたんだ飛鳥」

「元気がないようですが…」

飛鳥「まあ、色々ありましてね…」

チュチュ「パレオ。今回の企画の趣旨を説明しなさい!」

パレオ「はい、チュチュ様!」

 

 良く分からない状況にレイヤ、マスキング、ロックは首を傾げたが、企画を説明するとともに飛鳥に関する事情を説明した。

 

チュチュ「ちなみにネス。報酬は払うつもりよ?」

飛鳥「あ、そうですか…」

チュチュ「…元気出しなさいよ」

レイヤ「花ちゃんから聞いてたけど…相当大変だったんだね…」

ロック「私も一度被害に遭いましたけど、そこまで酷かったなんて…」

 

 本当に元気のない飛鳥を見てチュチュたちは困惑していた。

 

チュチュ「まあ、私たちの体に触れる際、あなたの好きなシチュエーションで触れさせてあげるわ」

飛鳥「あなたを椅子にする事も可能ですか?」

チュチュ「やめて?」

 

 飛鳥の言葉にチュチュが思わずツッコミを入れた。

 

飛鳥「そもそもそんなはしたない事を言うもんじゃありませんよ」

マスキング「まあ、それはそうとお前…本当に女に興味ないのか?」

飛鳥「ない訳じゃないですよ。結婚するなら女性が良いですし」

 

 飛鳥の言葉に皆が驚いた。それなりに意識はしてるんだなと。

 

飛鳥「ただもう今はそれ所じゃないんです。今はもうランボーになった気分で…」

チュチュ「ランボーから離れなさいよ!!」

飛鳥「空港で迫害した奴ら全員戦場にぶちこんで…」

「怖い怖い怖い怖い!!!」

 

 飛鳥の言葉にRASがツッコミを入れた。皆映画の内容を知っているのか慌てていた。

 

マスキング「そ、相当疲れてるみてぇだな…」

レイヤ「そ、そうだね…」

チュチュ「こ、こうなったら強硬手段よ! 皆…」

 

 チュチュが何かしようとした次の瞬間、飛鳥のスマホがなった。

 

飛鳥「もしもし…」

日菜『あ、もしもし飛鳥くん!?』

 

 電話の相手は日菜でパレオがとてつもなく緊張していた。

 

飛鳥「どうかしました?」

日菜『あのさー。今日ロケやってるんだけど、彩ちゃん以外の下着が誰かに盗まれちゃって…』

飛鳥「警察に相談しましょう」

パレオ「パ、パスパレちゃんの下着を盗んだですってェエエエエエエエエエエエ!!!?」

 

 日菜の言葉に飛鳥が呆れると、パレオが発狂していた。

 

日菜『あれ? この声パレオちゃん?』

飛鳥「今RASのスタジオにいまして…」

日菜「あ、そっかー。取り込み中だったんだね。ごめ…」

パレオ「いえ、パスパレちゃんの尊い下着が盗まれたのであれば、早速捜査する必要があります! ネス様行きましょう!」

飛鳥「え…」

チュチュ「ちょ、ちょっとぉ!?」

パレオ「大丈夫ですよチュチュ様。ネス様は…パレオが癒しておきますので」

チュチュ「いや、そういう事じゃないのよ! RAS全体がレベル上がらなくて意味がなくて、あんただけレベルが上がっても仕方ないのよ!!!」

 

 しかし、パレオは飛鳥を連れていってしまった…。

 

 ちなみに彩以外の下着は強風により洗濯ばさみから外れて飛んで行ってしまった事が判明し、

 

「なんだか良く分からないけど女の子の下着が飛んできた!」

「いやっほう!!」

「この下着絶対可愛い女の子がつけてそう!」

「良い匂いもするし!!」

 

 近くにいた別の学校の男子生徒達が拾って興奮していたという。

 

 

飛鳥「…そもそもなんで干してたんですか?」

日菜「いやー。今日は川でロケをしてたんだけど、皆びしょぬれになっちゃってー」

麻弥「ていうか飛鳥さん! ここまで来てくれたんですか!?」

飛鳥「ええ、まあ…」

 

 そう言って飛鳥は隣で尊死しているパレオを見つめた。

 

おしまい

 



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第460話「飛鳥 VS ××××」

 

 それはある日の事。中等部にて明日香、あこ、ロックが弁当を食べていた時の事だった。

 

明日香「…そのドリンクどうしたの?」

あこ「間違えて買っちゃったんだよー」

 

 弁当を食べる前、あこが飲み物を買ってくるという事で自動販売機でジュースを買おうとしたが、間違えて熱いお茶を買ってきてしまったのだ。

 

あこ「あこいらないからロック飲んでいいよ」

ロック「え? い、いいんですか…?」

明日香「あんたねぇ…」

 

 ロックがあこからお茶を受け取ろうとしたが、カンだったのか、とても熱く…。

 

ロック「ひゃああ!! ちんちん!!」

 

 と、大声で『ちんちん』と叫んだことで、クラスメイト達が一気にロックたちの方を見た。男子生徒たちはこれでもかという程ガン見していた。

 

明日香「え? ロ、ロック…?」

あこ「もー!! いくら何でもはしたないよ!?」

ロック「え? ど、どういう事ですか…?」

 

 あこが頬を赤らめて注意すると、ロックが困惑していた。

 

「え? 朝日さん。ちんちんがどうかしたの?」

「何がちんちんだって?」

「ちんちんに興味あるの?」

「僕のちんちん見る?」

明日香「すいません一丈字さん。ちょっと緊急事態なので来て頂いても宜しいでしょうか。お金払いますんで」

飛鳥『は、はぁ…』

 

 そんなこんなで飛鳥が何とかした。

 

***

 

飛鳥「岐阜の美濃という地方では『凄く熱い』っていう意味だったんですね…」

ロック「は、はい…//////」

 

 飛鳥はロック、あこ、明日香に事情聴取を行うと、ロックは凄く恥ずかしそうに顔を真っ赤にして俯いていた。

 

あこ「びっくりしたよー。ちん…」

明日香「あこ!」

 

 あこが言おうとしたので明日香が止めた。

 

明日香「まあ、方言だってのは分かったけど、今後は学校で使わない事! 分かった!?」

ロック「は、はい…」

 

 明日香に注意されてロックが俯くと、飛鳥が苦笑いした。

 

明日香「それにしても男子たちがあんなに変態だったなんて…」

 

 明日香が額を押さえていると、飛鳥も静かに目を閉じた。

 

あこ「そういえば聞いたことあるよ。女の子がえっちな言葉を言うと、男の子が興奮するって」

飛鳥「人に寄りますね」

 

 飛鳥がものすごく遠い顔をした。

 

あこ「飛鳥くんは違うの?」

飛鳥「何ていえばいいんでしょうね。もし例えばあなた方が今その卑猥な言葉を言えば、変態達が現れるので…」

明日香「ああ…」

 

 飛鳥の言葉に明日香は察した。

 

明日香「いつもお疲れ様です…」

飛鳥「ありがとうございます」

ロック「と、とにかく今度からは言わないようにします!」

「何を?」

ロック「ちんち…え?」

 

 ロックが声がした方を振り向くと、そこにはヤラカシ達がいて、飛鳥の目が死んだ。

 

ロック「ふぁあああー!!?」

明日香「一丈字さん!!」

飛鳥「もう通報しましょうか」

あこ「ヘ、ヘンタイだぁー!!!!」

 

 あこがそう叫ぶと、巴がどこからか現れた。

 

巴「オラァアアアアアーッ!!! 人の妹に手を出そうとしてる奴は誰だぁ―――――!!!」

 

 物凄く怒った様子でやってきたが、

 

「オレ達でーす!!!」

「あと、出来れば巴ちゃんも…」

「姉妹ど…」

 

 飛鳥は容赦なく超能力…もとい気弾を放つとヤラカシ達がぶっ飛んだ。それを見てあこ達は絶句した。

 

飛鳥「大丈夫ですよ。ギャグパートなので死にません」

 

****

 

飛鳥「もう勘弁してくださいよ」

「だってお前ばっかりずるいんだもん!!」

 

 飛鳥の言葉にヤラカシ軍団は泣き落としをし始めた。

 

明日香「だとしても、女の子に卑猥な言葉を言わせようとするとかありえない!」

巴「ましてや人の妹に言わせようとするあたり、同情の余地はないな」

あこ「そーだよ! ヘンタイだよ!」

 

 と、明日香達は怒っていたが…。

 

「もう一度言ってみろ…」

「え?」

 

 するとヤラカシ軍団の一人が興奮した様子であこ達を見た。

 

「もっとオレを蔑む顔で、ヘンタイって言ってみろよーッ!!!」

 

 この後、ヤラカシ軍団は連行された…。

 

飛鳥「…ガールズバンドって大変ですね」

巴「…そうだな」

明日香「安易に有名人になろうとしても碌な事がないってこういう事なのね…」

 

 飛鳥達は遠い顔をしながら、この後ラーメン屋でお互いを慰めあったという。

 

 

おしまい

 



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第461話「飛鳥 VS 開かない部屋」

 

 

 突然だが、飛鳥とバンドガールは部屋に閉じ込められ、ある事をしないと部屋から出る事が出来なかった!!

 

『奥沢美咲:キスをしないと出られない部屋』

 

美咲「成程。だったらしよっか」

飛鳥「躊躇がありませんねぇ」

 

 美咲が飛鳥の顔を近づけてくる。

 

美咲「飛鳥はあたしとキスしたくないの?」

飛鳥「そうですね…投げキッスして貰っていいですか?」

美咲「え? うん」

 

 そう言って美咲が投げキッスをすると扉が開いて、美咲が絶句した。

 

飛鳥「こういうのってなんやかんやでキスできないものなのですよ。それでは」

 

 飛鳥はスーッと去っていった。

 

『白鷺千聖の場合:混浴しないと出られない部屋』

 

千聖「……」

飛鳥「千聖さん。私の性別をご存じで?」

 

 千聖が脱ごうとし始めたので飛鳥がツッコミに回った。

 

千聖「私、この後ドラマの撮影があるのよ。だから一刻も早く部屋から出たいのよ」

飛鳥「それなら良い方法がありますよ」

千聖「え?」

 

 飛鳥の指示で飛鳥と千聖の2人が同時に湯船に手を付けた。すると扉が開いた。

 

飛鳥「今は手湯というものも全国に広まっているのですよ。それではドラマの撮影頑張ってください」

千聖「いや、ちょっと待って!? こんなの納得…」

「白鷺」

千聖「!」

 

 扉の向こうにはパスパレの事務所のスタッフが待っていた。

 

「行くで。とっとと来い」

千聖「……!!」

 

【弦巻こころ:××××しないと出られない部屋】

 

こころ「××××!?」

 

 こころの言葉を聞いて飛鳥は超能力を使ってドアを破壊した。

 

こころ「あら! どうしたの飛鳥」

飛鳥「いやあ、こうするのがお約束なんだよ」

 

 飛鳥が黒い笑みを浮かべてこころにそう言うと、こころは何故か納得した。最近もう超能力を使ってモノを壊したり、人をブッ飛ばしたりしているが飛鳥は気にしなかった。

 

飛鳥「取り返しのつかないことになるよりかはずっとマシだよ!!」

 

 まあ、そうは言っても尺が余り過ぎているので、ここからはオリジナルです。

 

【戸山香澄:勉強させないと出られない部屋】

 

香澄「飛鳥くん! 保健体育…」

飛鳥「分かりました。スポーツに関する歴史を教えて差し上げましょうね…」

 

 この後飛鳥はスパルタモードで香澄にみっちり勉強を教えたが、すぐ飽きる香澄を言葉巧みに誘導して勉強させた。ある意味きつかったという。

 

【花園たえ:たこ焼きパーティーしないと出られない部屋】

 

飛鳥「普通…」

たえ「飛鳥くん。たこ焼き焼くの上手だね」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 飛鳥が普通にエプロンとタオルを巻いて、たえにたこ焼きをふるまっていた。

 

【牛込りみ:プロレスをしないと出られない部屋】

 

りみ「プ、プロレス…? 私わかんない…」

飛鳥「まあ、簡単にチョップをするだけで大丈夫だと思いますよ」

りみ「飛鳥くんがチョップするの…?」

飛鳥「私を犯罪者にさせるつもりですか?」

りみ「で、でも…」

 

 人を殴るのを躊躇うりみに対して、飛鳥はある事を考えた。

 

飛鳥「それでしたらいい方法がありますよ」

りみ「え?」

 

 飛鳥がりみをお姫様抱っこした。

 

飛鳥「失礼しますね」

りみ「ふぁああっ!!?/////」

 

 飛鳥に持ち上げられてりみは顔を真っ赤にした。

 

りみ「あ、え、えっと…飛鳥くん…重くない…?//////」

飛鳥「全然!! で、ちょっと回しますね」

りみ「ふぁっ!?////」

飛鳥「必殺・プリンセスローリング」

 

 そう言って飛鳥が軽く回ると、扉が開いた。

 

飛鳥「あ、これでもう大丈夫そうですね。お怪我はございませんか?」

りみ「ひゃ、ひゃい…/////」

飛鳥「それでは失礼します」

 

 そう言って飛鳥は去っていき、りみは呆然としていた。ちなみにこの後チョココロネは暫く控えて、姉のゆりから滅茶苦茶揶揄われたという。

 

【山吹沙綾:1分経たないと出られない部屋】

 

飛鳥「あ、1分経ったら本当に扉開きましたね」

沙綾「いや、りみやおたえとの扱いの差酷すぎない!!?」

 

【市ヶ谷有咲:有咲に可愛いって30回くらい言わないと出られない部屋】

 

飛鳥「分かりました。市ヶ谷さん」

有咲「やーめーろーぉー!!!!//////」

 

 有咲もこの時ばかりは原作と変わらずツッコミ体質になり、顔を真っ赤にしていた。

 

【美竹蘭:食べさせあいっこしないと出られない部屋】

 

蘭「はい、飛鳥。あーん…」

飛鳥「……」

 

 蘭が差し出したドーナツを飛鳥は普通に食べた。

 

蘭「ど、どう?/////」

飛鳥「美味しいですね。それではこちらの番ですね」

蘭「う、うん…/////」

 

【青葉モカ:くっつかないと出られない部屋】

 

モカ「蘭と凄く仲良くしてたよね~?」

飛鳥「ヤキモチ?」

モカ「そんな所かな~~~~~」

 

 モカは飛鳥を後ろから強く抱きしめると、飛鳥は困惑していた。

 

【上原ひまり:飛鳥のスリーサイズを測らないと出られない部屋】

 

ひまり「飛鳥くん。結構腰細いんだね…」

飛鳥「良く言われますね」

 

 普通に扉が開いた。

 

飛鳥「これで出れますね…」

ひまり「飛鳥くん」

飛鳥「どうかしました?」

ひまり「その…。私のスリーサイズも測っていいよ…/////」

飛鳥「後ろに皆さんがいらっしゃいますので、お気持ちだけ受け取っておきます」

ひまり「え」

 

 蘭とモカが待っていた。

 

ひまり「な、なんでモカと蘭がいるの!!?」

モカ「はい、色仕掛け禁止―」

蘭「一丈字も早く行く」

ひまり「そ、そんなのずるいよ~~!!!!!!」

 

【宇田川巴:お互いに微笑まないと出られない部屋】

 

飛鳥「……」

巴「う…/////」

 

 飛鳥がニコニコとしていたが、巴はどこかぎこちなかったし、恥ずかしそうに視線をそらしていた。

 

巴「いや、その…もう勘弁してくれ…/////」

飛鳥「部屋から出られないですよ」

巴「わ、分かってるよ!!/////」

 

 この後、巴の好きな話をする事で微笑ませ、飛鳥も微笑むと扉が開いたが、結構時間がかかったという…。

 

【羽沢つぐみ:飛鳥が『バカ』って言わないと出られない部屋】

 

飛鳥「馬鹿正直」

 

 扉が開いた。

 

つぐみ「え!? こ、これで終わり!?」

飛鳥「扉が開いたしいいんじゃないですか?」

つぐみ「…バカ」

飛鳥「……」

 

 つぐみがぼそっと呟くと飛鳥は何も言わなかった。

 

***

 

モカ「ばーかばーか」

飛鳥「はいはい」

 

 この後、モカにも言われたが飛鳥はもう敢えて受け流すことにした。

 

 

 

おしまい

 



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第462話「飛鳥 VS Morfonica!」

 

 

 ある日の事。

 

「飛鳥さん。あ~ん…」

 

 この日飛鳥は、ガールズバンド「Morfonica」のボーカル・倉田ましろからビーフシチューを食べさせられていた。だが、ペースが異様に速い。Morfonicaもまた飛鳥の家に遊びに来ては、部屋の掃除をしてくれたりと至れりつくせりの状況の筈だが、飛鳥が日ごろからきれいにしていた為、特にやる事はなかった。何とかして見つけた仕事がこれである。

 

「シロってば、飛鳥さんに手料理をふるまいたくてずっと楽しみにしてたんですよ」

「と、透子ちゃん…」

 

 ギター担当の桐ケ谷透子が茶々を入れると、ましろは頬を染めた。このましろという少女はネガティブ志向で何事にも消極的だったが、色々あって飛鳥と仲良くなって…あとはお察しください。

 

ましろ「それは言わないでって言ったのに…」

透子「ごめんごめん。あまりにもシロが嬉しそうにしてたからつい」

ましろ「うん…。頑張って練習した…」

 

 すると透子がある事を思い出した。

 

透子「あ、そうだ飛鳥さん」

飛鳥「何ですか?」

透子「飛鳥さんってファッションとか興味ないですか?」

飛鳥「そうですねぇ…。あまり興味ないですね。すぐに汚すので」

 

 というのも、飛鳥は今まで能力者の仕事もある上に、人助けすることが多く、機能性を重視しているので服にはあまり興味を持っていなかったのだ。

 

透子「汚すって…?」

飛鳥「もうお気づきかもしれませんが、裏の仕事です」

 

 飛鳥の言葉にましろと透子は察した。

 

透子「よ、よくわかんないですけど大変ですね…」

ましろ「分からないのに…?」

 

 矛盾じみた言葉を放つ透子にましろは困惑していた。

 

透子「それはそうと、今はその裏の仕事ってないんですか?」

飛鳥「ないですねぇ。Roseliaの事件があってからは、上もある程度気を遣ってくれているのか、夜出歩くことはなくなりました」

ましろ「よ、夜出歩くって…?」

飛鳥「お客さんの情報があるので、詳しくは言えませんが人をしばいたりしてます」

 

 飛鳥の言葉にましろが青ざめた。

 

飛鳥「そういう訳なので、あなた方の親御さんの事もあるので極力家に上がらないで頂きたいと…」

「それに関しては心配いりませんよ」

 

 と、バイオリン担当である八潮瑠唯がやってきた。高校生とは思えない大人の雰囲気である。

 

飛鳥「八潮さん…」

瑠唯「皆、あなたに命を救われたもの。多少の危険なんて怖くないですわ」

飛鳥「なんかあった時に責任取らされるんですよ」

瑠唯「なら説得するまでです」

 

 いつになく強気な態度の瑠唯にましろと透子が固まっていた。

 

透子「…ルイ、なんかいつになく強気だな」

ましろ「う、うん…」

 

飛鳥「そういえばあれからどうですか? 学園の方は」

瑠唯「ええ。あなたのお陰で皆安心していますわ。学園も警備を強化してくださいましたし」

透子「それもそうだけど、チンピラたちを瞬殺したの凄かったなー」

飛鳥「…もうSNSに上げるのはご遠慮いただきたいんですがね」

透子「分かってますって!」

 

 飛鳥の言葉に透子が気まずそうに苦笑いした。

 

「さっきから楽しそうですなー」

飛鳥「広町さん」

 

 Morfonicaのベース担当、広町七深がやってきた。

 

七深「飛鳥さんの事はもう有名になってますよー」

飛鳥「そうなんですか?」

七深「バケモノみたいに強い人がいるって」

飛鳥「…まあ、バケモノなんですけどね」

 

 七深の言葉に飛鳥は困惑した。

 

「ちょっと皆! 掃除はどうしたの!?」

 

 と、Morfonicaのリーダーでドラム担当の二葉つくしがやってきた。

 

つくし「それに飛鳥さんも女の子を侍らせて…」

飛鳥「……」

つくし「…ごめんなさい」

七深「うん。謝れて偉いよつーちゃん」

つくし「な、何か納得いかない…」

 

 飛鳥に謝ったのに七深に許されて腑に落ちないつくしだったが、他の3人は特に擁護する様子もなかった。

 

つくし「と、とにかく皆掃除!!」

透子「いや、アタシも見てみたけど特に掃除するところなかったよ…?」

ましろ「というか、他のガールズバンドの人たちも来てるし…」

瑠唯「普通に会いに行けばいいだけの話だと思うわ」

つくし「うっ…それを言われると言い返せない…」

 

 瑠唯が正論を言い放つと、つくしは気まずそうに視線をそらした。

 

****

 

透子「まあ、やる事ほとんどないし…こうなったら皆でお風呂に入りますか!」

飛鳥「ごゆっくり」

 

 透子の言葉に飛鳥がそう言うと皆が飛鳥を見た。

 

飛鳥「何ですか」

透子「飛鳥さんも一緒ですよ?」

飛鳥「最近の女の子って進んでるなぁ…」

 

 透子の言葉に飛鳥は遠い顔をした。

 

七深「そんな事言って、他の先輩達とは入ってるんでしょ~?」

飛鳥「白鷺さんとは手湯をしましたけどね」

透子「まあ、アタシ達は全身って事で」

飛鳥「抵抗はないんですか?」

ましろ「ありません。私の身体で飛鳥さんを洗いたいので…」

飛鳥「勇気の出しどころ間違ってますよ倉田さん」

 

 ましろが大胆な発言をしたので飛鳥は困惑していた。

 

透子「飛鳥さんは勇気出さなきゃ!」

飛鳥「勇気出したら年齢制限超えます」

 

 とまあ、何とかフラグはへし折った飛鳥であった。

 

飛鳥「え? 女の子との混浴を断るなんてそれでも男かって? 甘い誘惑に載ったら駄目なのは危険ドラッグとおなじですよ」

 

 

おしまい

 



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第463話「さよならは言わない」

 

 

 それはある日の事だった。飛鳥は能力者の仕事をしていた…。

 

「こ、こんなガキに…!!」

飛鳥「こんなガキに負けるようじゃ、どっちみちアンタの野望は敵わないさ」

 

 飛鳥が冷徹した表情で右手に力を入れるとバチバチと音を鳴らしながら紫色に光った。

 

飛鳥「さよならだ」

 

 

*****

 

 一丈字飛鳥は超能力が使えること以外はごく普通の高校生。先日、またしても悪の能力者が現れたという事で戦いに向かったのだが…。

 

 ガールズバンドの皆さんに説教を食らっていた。

 

飛鳥「言い訳はしません」

千聖「それは潔いわね。けれど…どうして何も言ってくれなかったの?」

飛鳥「いや、連絡しましたよ? ちょっと仕事してきますって」

「分かんないよ!!!」

 

 飛鳥の言葉に皆がツッコミを入れた。

 

飛鳥「あ、ちなみに多数決で押し通そうとしても無駄ですからね」

「本当に反省してる!!?」

「毎回思ったけど、飛鳥くんいい根性してるね!?」

飛鳥「じゃなきゃこの仕事務まりませんよ」

「確かにそうかもしれないけど!!!」

 

 思った他強かな飛鳥にガールズバンドはまたしても呆れた。

 

モカ「まあ、何はともあれ飛鳥くん。お疲れ様」

飛鳥「ありがとうモカ」

 

 飛鳥がモカにそう言い放つと、皆が不機嫌そうにしていた。

 

飛鳥「言い訳はしません」

香澄「思ったんだけど、モカちゃんやこころちゃんは名前で呼ぶのに、私達には呼んでくれないんだね…」

飛鳥「呼べないんですよ」

蘭「どうして?」

飛鳥「一度ついた癖ってなかなか取れなくて…」

友希那「頑張りなさいよ」

 

 飛鳥の言葉に友希那が冷たくツッコミをしたが、飛鳥としては好感度が下がってようがもうどうでも良かったし、マジでランボーになってる気分だった。

 

飛鳥「そんな事よりも皆さんお怪我は…」

千聖「そんな事よりも?」

飛鳥「ええ。そんな事よりもです」

 

 千聖の言葉を突っ切ろうとすると、更にヘイトが集まる。

 

飛鳥「もう嫌われるのも仕事なので」

千聖「開き直らないで」

 

 千聖が厳しい態度で飛鳥に言い放つ。

 

千聖「皆がどれだけ貴方の事を心配したと思ってるの?」

飛鳥「そりゃあ有難いお話ですよ千聖さん。ただ、それとこれとは話は別です」

 

 飛鳥が毅然とした態度を取るが、ヘイトが集まっていた。

 

千聖「とにかくこのまま大怪我をした以上、こちらも黙ってるわけにはいかないわ。こうなったら…」

「ここにいたか。飛鳥」

 

 と、目つきの悪い青年が現れた。

 

飛鳥「和哉さん!!」

「!?」

 

 とても人相の悪い男の登場に一部のメンバーがのけぞった。

 

和哉「随分とやられたな」

飛鳥「ええ…」

千聖「あの、和哉さん? すみませんけど、今取り込み中で…」

和哉「なら用件だけ伝える。今すぐ広島に戻れ。任務は終わりだ」

「!!?」

 

 和哉の言葉に飛鳥達が驚いた。

 

香澄「ど、どうしてですか!?」

和哉「理由は簡単だ。飛鳥もお前達も本業に支障をきたしているからだ。現にPastel*Palettesの事務所からもクレームが来ている」

 

 和哉の言葉にパスパレメンバーが気まずそうにしていた。

 

モカ「まるで乙姫と彦星みたいですね~」

和哉「まあ、そんな所だな」

「です…」

 

 すると香澄が叫んだ。

 

香澄「そんなの嫌です! 飛鳥くんと離れ離れなんて!!」

 

 すると和哉は静かに目を閉じて超能力を放った。

 

和哉「帰るぞ。飛鳥」

飛鳥「和哉さん…」

和哉「それともハーレム生活が惜しいか?」

飛鳥「…いえ。ただ彼女達には」

和哉「ああ。それに関しては心配ない」

飛鳥「え?」

和哉「織姫と彦星と同じだ。行くぞ」

 

 そう言って和哉と飛鳥はその場を後にし、飛鳥は広島に帰った。

 

****

 

 そして飛鳥は元の学校に戻ってきたわけだが、心あらずという状態だった。

 

「飛鳥の奴、やっぱり元気ないな…」

「うん…」

 

 飛鳥の元の学校である猪狩学園の中庭にあるベンチで飛鳥は座り込んでいて、それを近くから親友である奈良川京、林椿、林日向の3人が見ていた。

 

飛鳥「なに?」

京・日向・椿「!?」

 

 飛鳥が京達の方を向いたので、3人が驚いて出てきた。

 

京「分かってたのかよ…」

飛鳥「それくらい分かるよ。あの人たちの事でしょ?」

椿「いつまで気にしてんのよ。アンタらしくもない」

飛鳥「いやね…。絶対に納得しないし、今度会ったらまた同じことになりそうな人が何人かいてね。どうしようか考えてたところだけど、もうやめだ」

 

 飛鳥が一息ついた。

 

飛鳥「今はもう一から修業をやり直さなきゃ。相当身体が鈍ってたし」

日向「飛鳥くん…」

飛鳥「甘やかしてくれるのは有り難いけど、甘やかされ過ぎるとお互いダメになっちまう。何事もやり過ぎは良くないって事だな」

椿「そりゃそうよ。それにそんなのアンタらしくないし」

飛鳥「ちげぇねェ。自分でもガラじゃないと思ったよ」

 

 こうして飛鳥は再び能力者として立ち上がるのだった。

 

***

 

 それからしばらくして…

 

飛鳥「……!」

 

 飛鳥はガールズバンドの雑誌を見て驚いていた。なんと香澄達が記載されていて、どのバンドもトップクラスにのし上がっていたのだ。

 

椿「へー。頑張ってるじゃない」

 

 椿の言葉に飛鳥が嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

京「どうしたんだよ」

飛鳥「こういうのを見たかったんだよ」

椿「まあ、そりゃそうよね。にしても…」

 

 椿がハロハピの記事を見たが、こころの顔写真を見るなり困惑していた。

 

椿「本当に相変わらずね。あの子…」

 

 その時だった。

 

日向「飛鳥くん…」

 

 日向が困った様子でやってくると、飛鳥達が驚いた。

 

飛鳥「どうしたんだ椿?」

日向「えっとね…。こころちゃんが今度の土日会えないかって…」

飛鳥「えっ」

 

 そして今度の休み。飛鳥は日向達と一緒に待ち合わせ場所に向かったが…。そこには35人がいた。

 

飛鳥「お久しぶりです。皆さん」

香澄「久しぶり」

 

 いつもの元気な香澄ではなく、真剣だった。恐らく勝手にいなくなったことに対して怒っているのだろうと飛鳥は判断した。

 

飛鳥「急にいなくなったことには申し訳なく思っていますが、私の答えは変わりません」

香澄「違う」

飛鳥「?」

 

 飛鳥がそう言うと、香澄はこう言った。

 

香澄「私達の演奏を聴いてほしいの」

飛鳥「…分かりました」

 

 こうして飛鳥達は香澄達の演奏を全曲聞いた。7バンドいる為曲は1曲ずつであったが、その1曲に彼女たちの想いや魂が込められていて、飛鳥達は心を揺さぶられた。

 

 そしてトリのPoppin’Partyの演奏が終わった。

 

香澄「どうだった? 私達の演奏」

 

 香澄の問いに飛鳥が口角を上げた。

 

飛鳥「ええ。文句のつけようがない…素晴らしい演奏でした」

 

 飛鳥の言葉に他のバンドのメンバーも舞台袖から飛び出して喜ぶと、飛鳥がいかに愛されてたんだなと京達は驚きを隠せなかった。

 

*****

 

千聖「まあ、それはそれ。これはこれとして飛鳥くん」

飛鳥「なんです?」

 

 すると千聖が飛鳥に対して平手打ちをしようとしたが、受け止めた。

 

千聖「こういう時は素直に受け取るべきでしょう…?」

飛鳥「嫌ですよ」

 

 飛鳥が思った他男らしくない態度を取ったので、皆が困惑していた。

 

飛鳥「毎回殴られなきゃいけなくなりますし、そんな趣味ないですよ」

千聖「あなたは本当にもう…!!」

 

 千聖は飛鳥にイライラしていたが、だがブレない態度に少し安心していたのか一息ついた。

 

モカ「もうこれくらいでイライラしてたら、飛鳥くんのお嫁さんは務まりませんよー」

千聖「モカちゃん…」

 

 モカが千聖を諫めるが、お嫁さんという単語が出てきて京達は本当に飛鳥がモテていると思った。

 

モカ「それはそうと飛鳥くんも元気そうで良かった」

飛鳥「モカもね」

モカ「そういえば今トレーニングしてるんだっけ」

飛鳥「うん。一人で組み手をする時もあれば、孫さんと組み手をする時もあるよ」

モカ「孫さんってあの和哉さんの弟さんだよね」

飛鳥「そう」

 

 モカと飛鳥が普通に話しているのを見て、蘭たちはとてつもなく嫉妬していた。

 

モカ「そっか。飛鳥くんも頑張ってるんだねー」

飛鳥「まあね」

蘭「ねえ、やっぱりモカだけすっごく仲良くない?」

飛鳥「そうですか?」

ひまり「絶対そうだよ! どうして私たちは名前で呼んでくれないの!?」

飛鳥「いや、もう名前で呼びにくい…」

友希那「頑張りなさいよ」

 

 友希那がまた同じツッコミをした。

 

つぐみ「そういえば思ったけど、モカちゃんはどうして名前で呼ぶようになったの?」

飛鳥「え? 正体がバレて名前で呼んでくれって言われたから」

「じゃあ大丈夫じゃん!!」

飛鳥「いやー。何か呼びにくいし、あの時は学校に通ってたからこれでもかという程角が立つし…」

「これでもかという程…」

 

 飛鳥が思った他言うので皆困惑していた。

 

飛鳥「それもそうですけど、呼ばれたいですか?」

「呼ばれたい!!」

アフグロ「少なくともうちは格差を感じる!!」

 

 飛鳥が考えた。

 

飛鳥「まあ、思えばもう超能力の事もバレてるし、超能力を人にぶっ放したし…もういいか」

 

 飛鳥が35人を見つめた。

 

飛鳥「それでは今度からは極力名前で呼ぶようにしますね」

香澄「あと、敬語もやめてね!」

飛鳥「おう分かったぜ香澄」

 

 飛鳥の言葉に皆がまた固まった。

 

飛鳥「だから言ったでしょう」

有咲「いや、いくら何でも口悪すぎだろ!!」

飛鳥「市ヶ谷さんは…」

有咲「名前で呼べつってんだろ!!」

飛鳥「名前で呼んでほしいの?」

有咲「いや、もうそうだよ!!/////」

 

 有咲が頬を染めて叫ぶと、

 

香澄「やっぱり有咲は可愛かった…」

有咲「いや、ちょっとやめろ! 恥ずかしいだろ!」

沙綾「そうだね。有咲は可愛いね」

有咲「さーや!」

りみ「あ、えっと…可愛いよ?」

有咲「りみ!!」

たえ「bonitinho」

有咲「ポルトガル語でもダメ! って! 結局アタシこういう扱いかよー!!!」

 

 とまあ、こんな感じで飛鳥が甘やかされる日々は幕を閉じましたが、香澄達と凄く仲良くなれましたとさ。

 

千聖「もうむしろこれからは厳しく行くから。甘えないで頂戴」

飛鳥「あ、それはそうと千聖さん」

千聖「なに? また事務所に泣きついたの?」

飛鳥「後ろ…」

千聖「え?」

 

 千聖が振り向くと、パスパレのスタッフがいた。

 

彩「スタッフさん!?」

麻弥「まさか…」

 

 スタッフが微笑んだ。

 

スタッフ「もう時間だ。帰るぞ」

 

 そう言って5人を連行していき、飛鳥は手を振った。

 

彩「私達も最後の最後までこんな扱いだよ~!!!!!」

イヴ「あ~れ~!!!!」

千聖「覚えてなさいよー!!!!」

 

 

おしまい

 



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バンドリ! ブッシュ&カミリア!(原案:薮椿)
第464話「人の良心につけこまれたら気をつけろ」


元ネタ:https://syosetu.org/novel/48125/195.html


 

 

 それはある日の事だった。飛鳥が休日に街をフラフラしていると、そこには泥棒の格好をしている紗夜の姿があった。

 

飛鳥「…氷川先輩?」

紗夜「!!?」

 

 飛鳥に声をかけられて紗夜が驚いて後ろを振り向くと、

 

紗夜「い、一丈字さんですか…。こんな所でお会いするなんて奇遇ですね」

飛鳥「そうですね。しかし…どうかされたんですか?」

紗夜「ど、どうもしてないわ。決して最近できたアニマルカフェに行こうとは考えないわよ?」

飛鳥「…そうですか」

 

 思い切り用件バラしちゃってる紗夜に対し、飛鳥は何とも言えない顔になっていたが、敢えて何も突っ込まないことにした。

 

紗夜「そ、そういう一丈字くんはこれから何をしに行くの?」

飛鳥「いえ、私はただ散歩をしていただけですので…」

紗夜「そ、そう…」

 

 この時飛鳥は察した。本当はアニマル喫茶に行きたいのだが、一人だと勇気が出ないし、かといって知り合いだと自分のイメージが崩れると考えていたので、どうすれば良いか迷っていた。

 

飛鳥「そういえばそのアニマルカフェって何ですか?」

紗夜「さ、最近出来たらしいのよ。そこには色んな種類の犬や猫がいるらしくて…」

「猫?」

 

 友希那が現れると、飛鳥と紗夜が驚いた。友希那は屈指の猫好きであり、本人は否定しているものの、周囲にはバレバレだし今に至っては完全に隠す気もない。

 

飛鳥「…湊先輩」

友希那「アニマルカフェに行くのかしら?」

紗夜「わ、私は別に…」

飛鳥「いえ、私も…」

 

 と、2人とも否定したので沈黙が起きていた。友希那もアニマルカフェに行きたそうにしていたが、行きたいなんて言えないし、かといって今から行こうと思ったら自分以外の人間をどこかに行かさないといけないし、結構困っていた。

 

飛鳥(そして私が誘えばあの人たちが飛んでくる可能性もありますしね…)

 

 飛鳥は静かに目を閉じた。

 

友希那「Roseliaにとって新たな刺激が出てくるかもしれないわ。行ってみましょう」

飛鳥(そう来たか)

 

 アニマルカフェからどうやってRoseliaの活動に活かすんだと飛鳥は言いたかったが、もう余計な事は言わないようにした。

 

紗夜「そ、そうですね。Roseliaの活動の事を考えれば、アニマルカフェも悪くないかもしれません」

飛鳥「そ、そうですか…。ごゆっくり…」

友希那「何を言っているの。あなたも行くのよ?」

飛鳥「逆に私が行っても大丈夫なんですかね」

紗夜「問題ないと思うわ。二人きりではない分…」

 

 そんなこんなで友希那と紗夜に連行される形でアニマルカフェに向かったのだった。ちなみに男子生徒達が妨害しようとしたが、飛鳥としてはもうこれ以上火種を増やしたくなかったので、容赦なく超能力を使った。

 

飛鳥(此間パラレルでラブライブの話があったけど、あっちはマジで平和だった…)

 

***

 

 そんなこんなでたどり着いたアニマル喫茶。

 

「おかえりなさいませ! ご主人様♡」

 

 思ってたのと違う喫茶に友希那と紗夜は固まっていた。まさか店員が肩を露出させた和服に白いエプロン、頭には動物のカチューシャがつけられていたのだ。

 

紗夜「な、何ですか! この破廉恥なお店は…」

飛鳥「紗夜先輩。そんな事言ったら怒られますよ!」

「ご主人様はこのお店は初めてですか?」

飛鳥「え? あ、はい。そうなんですよ。すみません失礼な事を言いまして…」

 

 飛鳥が笑ってごまかしたが、店員たちは怒る様子はなかった。

 

「大丈夫ですよ。私達も最初はそうでしたから。3名様ですね。どうぞこちらへ!」

 

 と、3人はテーブル席に座らされた。友希那と紗夜は思っていたのと違ってテンションが低かったが、子犬と子猫がやってきて、即落ちだった。

 

友希那(かわいい…なんてかわいいのかしら…//////)

紗夜(……/////)

 

 露骨に愛でる友希那と遠慮しがちに愛でる紗夜。そんな2人を見て飛鳥も思わずニコニコした。

 

友希那「な、何よ…/////」

飛鳥「すいません。本当に猫が好きなんですね」

友希那「ふ、普通よ」

飛鳥「そうですか」

 

 飛鳥がそう言うと、友希那は照れくさそうに視線をそらした。

 

紗夜「わ、私も普通ですよ/////」

飛鳥「分かりました」

 

 そうは言うが、絶対大の犬好きだと思ってるし、大人の対応を取られて、こっちが年上だと紗夜は思わずムキになりそうだった。

 

 そんな中だった。

 

「あ、おねーちゃんだ!」

「!!?」

 

 聞き覚えのある声がしたので、飛鳥達がその方向を見ると、店員たちと同じようにケモミミカチューシャと和服エプロンを着たパスパレメンバーがいた。

 

紗夜「日菜!?」

友希那「パスパレ!?」

飛鳥「おや…」

 

 日菜たちが飛鳥たちに近づいた。

 

日菜「おねーちゃん達が来てくれるなんて、やっぱりるんってするなあ!」

紗夜「あ、あなた収録じゃなかったの!?」

日菜「収録だよ? このお店で1日お忍びでバイトするの!」

飛鳥「…どうやらお邪魔だったようですね」

友希那「客を入れてるなら問題ない筈よ?」

 

 友希那がそう言うが、猫を膝にのせていて、飛鳥や紗夜、千聖が困惑していた。

 

飛鳥「…大変ですね」

彩「ま、まあそうだけど頑張るよ」

イヴ「そうです!」

 

***

 

 そんなこんなでパスパレが見守る中、飛鳥達はアニマル喫茶を楽しむこととなったのだが…。

 

日菜「注文決まった?」

飛鳥「友達感覚!!」

 

 日菜が思った他自由に接してきた。一応接客のマニュアルはあった筈だろうが、日菜には全く意味をなさなかった。

 

飛鳥「そうですね…。私はアイスコーヒー…」

紗夜「そうね」

友希那「私もそうしようかしら」

日菜「アイスコーヒー3つね。あ、でもこういうのもあるよ?」

飛鳥「え?」

 

 すると日菜がメニューを見せてきた。

 

飛鳥「…和風オムレツwithアニマルメイドさんからのメッセージ入りと、ご主人様への愛を囁きながら最初の一口あ~んサービス」

日菜「今ならパスパレもやってあげるよ?」

飛鳥「でも1980円か…」

 

 飛鳥が困惑しながら値段を見ていた。

 

紗夜「一丈字くん。無駄遣いはいけませんよ」

日菜「ちなみにATMならあそこにあるよ?」

飛鳥「ATMあるんですか!? この店!!」

日菜「結構お客さんが使い過ぎて支払い足りない場合があるんだって」

飛鳥「…大丈夫なんですかね。その人たち」

日菜「分かんない」

 

 飛鳥の言葉に日菜が困惑していた。

 

日菜「注文してくれたら、番組も盛り上がるんだけどなー」

飛鳥「私の寿命は縮まりそうですが…。まあ、1回くらいならいいでしょう」

紗夜「飛鳥さん!」

飛鳥「まあ、こうやって店員さんの口車に乗せられてATMに行くんでしょうねぇ」

日菜「毎度アリ~。ちなみにメイドさんは指名できるよ? 誰にする?」

飛鳥「じゃあ貴女で」

 

 飛鳥が思った他カウンターを返してきたが、日菜は全く動じなかった。

 

日菜「はーい。それじゃ楽しみにしててねー」

 

 そう言って日菜は去っていった。

 

紗夜「一丈字くん! 大丈夫なの!?」

飛鳥「もう本当に1回だけですよ…」

友希那「その前にお金持ってるの?」

飛鳥「あ、それはきちんとありますよ…」

 

 ちなみにこの時まだ店は暇だった…。

 

 暫くして…。

 

日菜「お待たせー。オムレツだよー」

飛鳥「ありがとうございます」

 

 するとオムレツにはこう書いてあった。『飛鳥くん♡』と。

 

飛鳥「お、おお…」

 

 飛鳥は本当にコスプレ喫茶に来たんだなと困惑していた。

 

日菜「それじゃあーんしてあげるね」

飛鳥「あ、はい…」

 

 飛鳥は思った他抵抗はしなかった。まあ、抵抗なんてしたらじゃあなんで注文したんだという話になるし、なんだかんだ言って飛鳥は真面目だったからだ。

 

日菜「あ、そうだ。囁かないといけないんだよね」

紗夜「……/////」

 

 身内が女になっている所を見なければいけないのかと紗夜がドギマギしていた。

 

日菜「飛鳥くん。あたしを選んでくれてありがとね。大好きだよ♡ はい、あーん」

飛鳥「……」

 

 日菜の言葉に飛鳥は無言で食べようとすると、日菜がスプーンをひっこめた。

 

日菜「あーんって言わないとダメ! やり直し!」

飛鳥「敵いませんねぇ。分かりました」

 

 日菜の言葉に飛鳥は苦笑いし、もう一度やり直した。

 

日菜「はい、あーん」

飛鳥「あーん…」

 

 そう言って食べた。

 

日菜「美味しい?」

飛鳥「あ、はい。美味しゅうございます」

日菜「あははは! 面白―い。また来るねー」

 

 そう言って日菜は去っていき、3人だけになった。

 

友希那「あなたも日菜にはたじたじなのね」

飛鳥「たじたじというより…まあ、ペースは狂わされますね」

紗夜「本当にすみません…」

 

 飛鳥の言葉に紗夜が謝罪した。

 

紗夜「そういえばそのオムレツは美味しそうね…」

飛鳥「食べますか?」

紗夜「え、ええ…」

友希那「食べさせるのかしら?」

飛鳥「え? 私が紗夜先輩に出すか?」

紗夜「どうしてそうなるの!?/////」

飛鳥「冗談ですよ」

日菜「ダメ―!!」

 

 日菜がまたやってきて、飛鳥達が面食らった。友希那の膝にいた犬や猫たちは驚いて逃げ出してしまった。

 

日菜「そんなのダメぇ! あたしもした事ないのにー!」

飛鳥「日菜先輩。大声出したら動物たちが…」

紗夜「全くあなたは…」

 

 日菜の失態に紗夜は額を押さえた。他の店員さん達も少し怒っている様子だった。

 

千聖「ちょっと日菜ちゃん! ダメじゃないの大声出しちゃ!」

日菜「だ、だってぇ…」

 

 千聖たちもやってきて、千聖が小声で注意した。

 

飛鳥「日菜先輩。冗談ですから」

日菜「ホント?」

飛鳥「ホントですよ。ですので、安心してバイトなさってください」

 

 と、何とかなだめて、持ち場に戻って貰った。

 

飛鳥「…動物たちには悪い事しちゃったな」

紗夜「そ、そうですね…」

友希那「こんな時は餌で釣るのが一番よ」

 

 そう言って友希那がインターホンを鳴らすと、店員を連れてきた。

 

友希那「この『またたびプロトン』を1つ!」

飛鳥「え、それ2000円…」

友希那「関係ないわ」

 

 そんなこんなでまたたびプロトンを使うと、猫たちがやってきた。

 

友希那「はわわぁ…♡♡」

飛鳥・紗夜(か、完全に隠す気なくなってる…)

 

 友希那は猫に囲まれパラダイス状態になっていた。そして紗夜は猫に囲まれている友希那が羨ましくなったのか、犬を呼び寄せる『ドッグプロトン』を注文して、犬を呼び寄せた。

 

紗夜「……♡」

 

 紗夜もパラダイス状態になっていて、飛鳥は黙々とオムレツを食べていた。

 

千聖「すっかり独りぼっちね」

飛鳥「いえいえ。湊先輩も紗夜先輩も幸せそうで何よりですよ」

 

 通りかかった千聖に話しかけられて飛鳥がそう答えると、二匹の白猫がやってきて飛鳥の両肩に乗った。

 

千聖「あら、そうでもなかったわね」

飛鳥「そうですね」

 

 すると片方の大きな猫が飛鳥の頬にすりすりしてきた。

 

飛鳥「あはは。どうしたの?」

 

 飛鳥が嬉しそうにすると、千聖は思わずときめいた。するともう片方の小さい猫もすりすりすると、飛鳥が困ったような笑顔を見せた。

 

 そんなこんなで3人はアニマルカフェを満喫した。次第にお客さんが増え始めて、パスパレがいるという事で大騒ぎとなった。

 

飛鳥「すっかり大忙しになりましたね」

紗夜「そうですね」

 

 と、飛鳥達はそろそろ帰る事にしたが…。

 

紗夜「…湊さん。名残惜しいですけど帰りますよ」

友希那「にゃーんちゃん…」

 

 その時だった。

 

「それでね。おねーちゃんが今日来てるんだ。あそこにいるのがおねーちゃん!」

「そっくり!!」

 

 と、日菜が紗夜の事を紹介し始めた。

 

日菜「それでおねーちゃんって凄いんだよ!」

 

 日菜が紗夜の事を語り始めたので、紗夜はそそくさと会計を済まして…。

 

 

***

 

 近くのファミレス

 

紗夜「一丈字さん。あーんしてあげますね♪」

飛鳥「フ、フライドポテトは中々レベルが高い…」

紗夜「ディップしてあげます♪」

 

 と、日菜が悔しがることをやってのけた紗夜であった…。ちなみに日菜は数日後に知ってこれでもかという程せがんだらしい。

 

おしまい

 



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通常回(MyGO!!!!!同級生Ver)
第477話「楽奈遅刻防止大作戦!」



 このシリーズの設定

・ MyGO!!!!!が飛鳥達と同級生

1年1組:ポピパ、イヴ、ハロハピ三人組、立希、そよ
1年2組:アフグロ、燈、愛音
1年3組:飛鳥

中等部3年1組:楽奈、明日香
中等部3年2組:あこ


 

 

 

 ある日の事だった。

 

「ハァ…」

 

 ある日の事、CiRCLEでMyGO!!!!!が練習をしていたのだが、ため息をついていた。今スタジオには燈、立希、そよ、愛音、そして練習に付き合わされている飛鳥の5人がいた。付き合わされている理由は他のバンドに1回以上練習に付き合った事があるという事で、愛音が無理やり連れてきた。

 

 まあ、それはさておき立希がため息をついていた。

 

立希「あの野良猫…マジで何とかならないのか…?」

そよ「いっそクビにするとか?」

愛音「また弄られるよ?」

そよ「愛音ちゃん?」

 

 そよが物騒な事を言い始めたが、愛音は何か言いたそうにするとそよが睨みつけていた。それを見て飛鳥と燈は困惑していた。

 

立希「とにかく! そもそもあいつが一番年下なのに、完全に私たちの事を舐めてる!」

そよ「年齢は関係ないと思うけど…ちょっと甘やかしすぎたな」

愛音「飛鳥くんは何かいいアイデアない? 楽奈ちゃんを時間通りに連れてくる方法。ていうかあるよね?」

飛鳥「皆さんの協力が必要ですが…」

立希「何?」

飛鳥「……」

 

 飛鳥が4人に作戦を伝えた。

 

立希「…言われてみれば、私なんで今まであいつにパフェ奢ってたんだろう。普通にそうすれば良かった」

そよ「やってみたらいいんじゃない?」

愛音「そよりん他人事だね~」

そよ「フラグ立てないで」

立希「…一丈字。悪いけどちょっと暫く付き合って貰える?」

飛鳥「分かりました」

 

 こうして飛鳥達の作戦が始まった。

 

***

 

1日目

 

立希・そよ「!!?」

 

 この日も練習があり立希とそよが先に来ていた。勿論時間は楽奈にも伝えてあったのだが…。

 

「遅い」

 

 楽奈が1番最初に来ていたのだ。

 

立希「の、野良猫!!?」

そよ「今日は早いんだね~」

楽奈「待ってた」

 

 楽奈の言葉に立希とそよは顔を合わせると、立希が楽奈を見た。

 

立希「…もしかしてあの会話、聞いてたのか?」

楽奈「何の話?」

立希「…ま、まあ早く来た事は認める」

 

 で、その後全員がやってきて練習を始めたのだが、楽奈の演奏が格段に上がっていて、4人が驚いていた。

 

立希「野良猫お前マジでどうした!!?」

楽奈「いつも通り。それよりリッキー、リズムがズレてる」

立希「お、おう…」

 

 なんか突然覚醒し始めた楽奈に他のメンバーは驚きを隠せずにいて、飛鳥は困惑していた。

 

***

 

2日目。この日も1番最初に楽奈が来ていた。

 

燈「ら、楽奈ちゃん…早いね」

立希「ともりが遅いだけ。待ってた」

燈「ご、ごめんなさい…」

 

 そしてこの日も練習が行われていたが、楽奈の演奏が絶好調だった。これには立希とそよも顔を合わせて確信していた。

 

 絶対あの作戦聞いていると。

 

**

 

立希「野良猫。お前やっぱりあの話聞いてるよな?」

楽奈「だから何の話?」

そよ「あなたが最後に遅刻した日、あなた以外の5人で話し合った事だよ?」

楽奈「ふーん。仲間外れにしてたんだ」

 

 楽奈がジト目で見つめると、立希が少し憤慨した。またしてもギスギスしそうな感じになっていた。

 

愛音「まあ、でも遅刻癖治って良かったじゃん」

立希「これがいつまで続くかな…」

楽奈「じゃあ、今から1週間遅刻しなかったら、リッキーとそよとあのんで罰ゲーム」

立希・愛音・そよ「は?」

楽奈「仲間外れは良くないし、リッキーが謝らない。だから罰ゲーム」

 

 そして1週間後

 

飛鳥「1回も遅刻しませんでしたね…」

燈「しかもほぼ全部1番乗り…」

立希「ちょっと待て~~~!!」

そよ「なんで断る間を与えてくれなかったの!?」

愛音「そよりん。絶対それ気に入ってるよね…?」

そよ「!!」

 

 愛音に指摘されてそよが青ざめた。

 

立希「なし!! 罰ゲームはなし!!」

そよ「おかしい!!」

楽奈「見苦しい。なら謝るべき」

 

 楽奈の言葉に立希は歯ぎしりした。確かに1回も遅刻しなかった上に1番演奏も出来ていたので、どう考えても楽奈に分があった。

 

そよ「立希ちゃん謝ってよ!!」

立希「やだ!! こいつに謝ったら絶対調子乗るもん!!」

愛音「…ところで楽奈ちゃん。私達3人に何させる気? ドロンボー?」

そよ「それ前に嫌だって言ったよね!!?」

立希「マジでいい加減に…」

楽奈「トリオ漫才」

「は?」

 

 楽奈の言葉に空気が止まった。

 

************:

 

楽奈「3人なら大丈夫。ほら、行く」

???『えー…。お待たせしました。MyGO!!!!!の長崎そよ、椎名立希、千早愛音の『迷子三人娘』によるトリオ漫才です』

立希「しかも名前ダサッ!!!」

愛音「せめて私に命名権頂戴!!」

そよ「あなたにだけは…ああああああああああああ!!!」

 

 と、3人はステージの上に立たされた。観客席は全校生徒がいて、その中には香澄達もいた。

 

愛音「ど、どーもー! 迷子三人娘でーす! 今日も元気に漫才をやっていきたいなと思いまして!」

 

 愛音が元気よく挨拶したが、立希とそよの目が完全に死んでいた。

 

愛音「私がMyGO!!!!!のギター・千早愛音です!」

立希「…ドラムの椎名立希です」

そよ「ベ、ベースの長崎そよでーす…」

 

 立希とそよも最後の力を振り絞って喋ったが、有咲と美咲は2人に心底同情し、涙していた。

 

愛音「ねえねえリッキー、そよりん」

立希「何? ブス」

愛音「ちょっ!! ブスはやめようよ!!」

そよ「愛音ちゃん。私今凄く機嫌が悪いの。やるなら二人でやって頂戴?」

立希「おい! 自分だけ逃げようなんてずるいぞ!!」

愛音「ちゃんと漫才になってるね」

立希「うるせーよ!!」

そよ「うるさい!!!」

 

 愛音の言葉に立希とそよが全く同じタイミングで突っ込むと、笑いが生まれた。それに対して立希とそよも逃げる訳にはいかなくなり、本当に迷子になっていた。

 

楽奈「飛鳥」

飛鳥「何です?」

楽奈「結局何を隠してたの?」

飛鳥「あなたが遅刻したら、私特製の抹茶料理を他のメンバーに振舞うというものだったんですね」

楽奈「1回も遅刻してない。だから貰う権利がある。つくって」

飛鳥「……」

楽奈「いいから」

 

 そう言って楽奈は飛鳥を連れて行ってしまい、燈は青ざめた。

 

燈「あ、あの…」

楽奈「ともりならやれる。迷子でも進め」

燈「……!」

 

 楽奈の言葉に燈は衝撃を受けて、口角を上げたが。

 

燈「無理」

飛鳥「無理って!!」

立希『そうだ! この際だから野良猫たちも立たせよう! おい! 野良猫! 一丈字!! おーい!!!』

『要さんが一丈字さんを連れ出しましたよ』

そよ『何で一丈字くん連れ出したのよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

愛音「まー。楽奈ちゃんらしいというかなんというか、あと数分頑張ろ? ね?」

立希・そよ「もういやああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

おしまい

 



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第478話「MyGO!!!!!といつもの林間学校」

 

 この日は林間学校だった。1組と2組は美少女ぞろいで男子たちのテンションは高かったのだが、3組は地味で大人しめの子が多かった。

 

 そして我らが一丈字飛鳥は3組だったが、特に気にする事はなかった。

 

「なんだかよく分かんないけど、女子が2人増えてラッキー!!」

立希「…燈とクラス違うなんて」

そよ「……」

 

 新たに加わった立希とそよは男子達のテンションについていけなかった。

 

 また、2組はというと…。高松が男子を怖がっていて、愛音がガードしていた。

 

燈「……」

愛音「はいはい。ともりんはちょっと恥ずかしがり屋さんだから、相手なら私がするよー」

「あ、大丈夫です」

愛音「なんでやねん!!」

 

 ヤラカシからは何故か相手にされない愛音。立希とそよがちょっと噴出していたのは内緒だ。

 

愛音「あー!! 人の事笑ったな!! また三バカやらされるよ!!?」

立希「すいません。マジでそれは勘弁してください」

そよ「ごめんなさい」

愛音「すんなり謝られるのもイヤだなぁ…」

 

 とまあ、新しい仲間を加えて林間学校へ。1組や2組は騒がしいのに対し、3組は大人しく、飛鳥はリラックスしていた。

 

 で、自然の家につくやいなやオリエンテーリングをやって夕方。

 

愛音「そう言えばお風呂どうなってるのかなー?」

立希「燈の裸を見た男子は全員殺す」

そよ「殺すはやり過ぎだよ~。精々全部の指を突き指させるとか?」

愛音「えぐいよ!!」

 

 そよの発言に愛音が突っ込むと、燈が青ざめてガタガタ震えていた。

 

「男湯は地下、女湯は1階ね」

 

 フロアは分けられてしっかり覗き対策が行われていた。

 

「ちぇー」

立希「いや、ちぇーじゃないから。何覗こうとしてんだよ」

「何言ってんだよ。お前らがどんな漫才するか楽しみにしてたのに!!」

「そうだそうだ!!」

「また愛音ちゃんに弄られるんだろリッキー!」

立希「誰がリッキーだ!!!」

 

 立希がツッコミを入れると、有咲と美咲がやってきた。

 

有咲「あいつらのペースに乗せられるな!!」

美咲「分かるよ。突っ込みたくなるの」

立希「ハッ!!」

 

 有咲と美咲に言われて、とうとうMyGO!!!!!のツッコミ担当になってしまい、立希は青ざめた。

 

そよ「まあ、頑張ってね」

有咲「あとお前も他人事じゃないからな?」

美咲「あなたも結構適正ありそう…」

そよ「やめてくださる?」

「いや、リッキーだけじゃ大変でしょそよりん」

そよ「アナタたちにそよりんって言われたくないんだけど!!?」

「じゃあそよのすけ」

「そよンジョ」

「そよ・ザ・デンジャラス」

そよ「…どれもこれも聞き覚えのあるあだ名なんだけど…?」

 

 男子の煽りにそよが額と頬に青筋を立ててツッコミを入れた。

 

「春日か」

そよ「だからそれやめてって言ってるでしょお!!?」

「やめねーよ!!」

「ちったぁ反省しろ!!」

 

 と、もめにもめたが、飛鳥はそそくさと男湯に入っていった。

 

「た、大変だなぁ…。1組と2組」

飛鳥「そうですね。頑張って貰いましょう」

 

***

 

 そして入浴を済ませたのだが、そよと立希は完全に不機嫌になった。だが、それを見たヤラカシ達は興奮していた。

 

飛鳥(うわぁ…。完全に不機嫌になってるなあの2人)

 

 飛鳥もそよと立希を見て完全にかかわらない方が良いと考え、超能力で存在感を消して食事を済ませた。

 

**

 

 こうしてレクリエーションの肝試し大会。基本的に1組5~6人である。

 

「ねえ、オレ達と…」

立希「あ?」

そよ「悪いけど女子だけで組むから」

「いいぞ…その塩対応…////」

「もっとオレ達を罵ってくれぇ~!!!!//////」

 

 そう言うと立希がキレそうになったが、有咲と美咲が止めた。

 

有咲「ああいうのは無視した方がいいんだよ!!」

美咲「突っ込んだらダメ!! もう本当に頭がおかしいから!!」

 

 ちなみに2組はというと…。

 

愛音「私達も女子で組みますから」

「せめて燈ちゃんだけでも!!」

愛音「何で私入ってないの!!?」

立希「お前らいい加減にしないと全部の指つめるぞ…」

 

 とにかくギスギスしていて、飛鳥達3組は困惑していた。

 

飛鳥(まあ、今回は特に事件起こらなさそうだな…)

 

 と、飛鳥は安心していたのだが…。

 

****************

 

「ともりんが迷子になっちゃった~!!!」

 

 3組が行こうとした際、愛音から燈がいなくなってしまった事が明かされて、皆が大騒ぎになった。

 

立希「はあ!!? どうして一緒にいなかったんだよ!!」

そよ「立希ちゃん落ち着いて!」

愛音「私が最後に見た時は後ろにいたんだよ!?」

 

 立希が怒りの形相で愛音に問い詰めると、愛音は泣きじゃくっていた。そよが慌てて立希を落ち着かせるが、立希の怒りが収まらない。

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥は静かに目を閉じて超能力で燈の居場所を感知した。どうやらおばけに驚いた拍子にコースから外れてしまったのだ。しかも足をひねって動けなくなっている。

 

立希「とにかく探しに行かなきゃ!!」

そよ「ダメ!!」

立希「離せよ!!!」

 

 興奮状態の立希を落ち着かせる必要もあったので、飛鳥は歩を進めた。

 

「!?」

「一丈字くん!?」

 

 興味を自分に退かせていた。

 

「おい! どこに行くんだよ!」

「まさか助けに行くとか言わねーよな!」

「カッコつけてんじゃねーよ!!」

 

 と、ここで空気の読めない発言をしていた。

 

飛鳥「先生方って山の中で探してるんですかね?」

「いや、ここにいるぞ! とにかく山の中に入ったら駄目だ!!」

 

 先生が生徒達に山の中に入らないように注意喚起するが、

 

立希「そんな訳には行かない! 燈は私の友達なんだよ!!!」

 

 と、立希が吠えると、飛鳥は冷静に教師と話を続ける。

 

飛鳥「そういえばどの辺を探してるんですか?」

「え? まあ、コースに沿って探してる…」

飛鳥「コースの外は探してないんですか?」

「ど、どうしてだ?」

飛鳥「おばけに驚いてコースの外から大きく外れてる可能性もあると思うんですよ。もしくは見つかりにくい場所にいるか…」

 

 飛鳥がそう推理すると、教師は飛鳥が只者じゃないと思い始めた。

 

「…分かった。その辺も探してみるが、君もちょっと来てくれないか?」

「!?」

「君…心当たりがあるんじゃないか?」

飛鳥「心当たりというか、私も遭難した事あるので。もしかしたらそうなんじゃないかなって」

 

 飛鳥が苦笑いした。

 

「私についてきてくれたまえ」

飛鳥「はい」

 

 そう言って飛鳥が教師に連れられて中に入ろうとすると、

 

「おい! ずるいぞ!!」

「オレも中に行く!」

 

 2組の男子生徒達が中に入ろうとするが、

 

「コラー!! 何をしている!!」

 

 と、強面の男性教諭が邪魔をしてきたが、男子生徒達は強引に中に入ろうとしたが、男性教諭にゲートを閉められた。

 

「さあ、行こうか」

飛鳥「あ、はい…」

 

 閉めるゲートあったんだ…と飛鳥は困惑していた。2組の男子がギャーギャー騒いでいたが、飛鳥は無視する事にした。

 

 暫くして飛鳥は燈を見つけ出した。

 

飛鳥「ここにいましたね」

燈「!!」

飛鳥「他の先生方を呼んできてもらえますか。出来れば女性の方を」

「わ、分かった!!」

 

 10分ほどして燈は救出された。

 

「…擦りむいた程度で良かったわ」

燈「は、はい…」

 

 暗闇の中で怖くて震えていた燈は女性教諭の顔を見て涙ぐんでいた。飛鳥は超能力で存在感を消し、そのまま下山した。

 

*****************

 

「ともり~ん!!! ごめんねぇ~!!!!」

 

 燈が戻ってくるなり、愛音が泣きながら抱き着いて謝った。

 

燈「あ、愛音ちゃん…苦しい…」

立希「燈。怪我はない?」

燈「ちょ、ちょっと擦りむいただけだよ…」

立希「もう今度からは私が組む」

そよ「…クラスが違うんだから、困らせたらダメだよ」

 

 そよは立希を落ち着かせるが、そよ自身も燈が無事でよかったと思っていた。飛鳥はそれを見届けた後超能力を放ち、自分の事をまったく気にしないように皆に暗示をかけた。

 

 翌日、飛鳥が朝食バイキング会場に向かうと…。

 

「おい、面貸せ」

 

 立希、そよ、愛音、燈の4人が待ち構えていたが、飛鳥は自分の事じゃないと思い、スルーした。

 

立希「おい!」

そよ「立希ちゃん。名前言わないとダメだよ」

愛音「ねー! ともりんを助けてくれた君! 待って!」

飛鳥「どうかしました?」

 

 飛鳥は何事もなかったかのように接した。

 

愛音「ともりんがどうしてもお礼が言いたいんだって!」

燈「あ、あの…。ありがとうございました…」

飛鳥「いえいえ。怪我もそんなに大したことがなくて何よりです」

立希「……」

 

 飛鳥の言葉に立希がむすっとして飛鳥を見つめたが、飛鳥はスルーした。

 

立希「お前…。まさかこれで燈と仲良くできると思ってるんじゃないだろうな?」

飛鳥「どうしてですか?」

 

 立希の質問に飛鳥がそう返すと皆不思議そうにしていた。

 

飛鳥「かえって気を遣わせるだけですし、彼女自身が決める事だと思います」

「……!」

飛鳥「彼女が生きてる。それで何よりじゃないですか」

 

 そう言って飛鳥は去っていったが、燈は飛鳥の後ろ姿をじっと見つめ続けていた。

 

**

 

 そして…

 

愛音「あれー? あの子どこ行っちゃったんだろ。もっと知りたいのに」

立希「もういいだろ。あいつ自身ももういいって言ってるんだから」

 

 愛音が飛鳥を探していて、飛鳥は困惑していた。立希とそよは心底興味なさそうにしていたが、燈が心配だし2人で固まっているとヤラカシ共に声をかけられるため、一緒にいる。

 

燈「…私ももっと知りたい」

「!!?」

 

 燈の発言に3人が驚いていた。

 

愛音「なーに? あの子に惚れちゃった?」

燈「ち、ちがっ…///// そういうつもりじゃなくて…/////」

立希「ゆるさーん!!! そんなの私が絶対に認めないぞ!!//////」

そよ「燈ちゃんのお父さん?」

 

 と、大事になってしまったので飛鳥はこれからどうしようか考えていた。

 

 

飛鳥(超能力使えて良かったなー)

 

 

おしまい

 



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