カゲロウデイズ〜もしもの世界〜 (ルミナス)
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開幕前話
ステッププロローグ


こんにちは。駄作者のルミナスです。今回から始まるこの小説は、作者の私の趣味が大幅に入ります。そして、駄作駄文です。それでいい方はこれからもよろしくお願いします。それでは!どうぞ!


〜茜side〜

 

初めまして!私の名前は『雅 茜』といいます!

 

私はこれからお兄ちゃんと一緒にお出掛けです!とても楽しみです!私がどうして此処まで楽しみにしているかと言うと……。

 

〜回想〜

 

「え?お兄ちゃん、今度の休日、仕事休みなの?」

 

「ああ、そうだ」

 

「そっか……」

 

お兄ちゃんと久々に出掛けたいけど、折角の休日なのに私の我儘に付き合わせたくないな……今回は諦めよ。う。

 

「なんだったら、どっかに出掛けるか?」

 

「へ?え、で、でも!折角の休みなんだから家で休んだ方がいいよ!」

 

「いや、問題ない。それに、茜が俺と出掛けたいと思ってくれているように」

 

『ポンッ』と兄ちゃんの手が頭に置かれて、撫でられながら、

 

「俺も久々に茜と一緒に出掛けたいんだ。いいだろ?」

 

お兄ちゃんは笑顔でそう言ってくれました。

 

〜回想終了〜

 

こんな事言われて断れますか?

 

普段から仕事が忙しいお兄ちゃん。だから、お兄ちゃんがやりたいと言うなら、私が出来る範囲で叶えるつもりです!それが私の気持ちですから!

 

「おい、茜。準備出来たか?」

 

「問題ないよ!いつでも行けるよ!」

 

「そうか。なら、行くか!」

 

「うん!」

 

こうして、私達はこの日、外に出掛けました。その日の日付は1月24日。今でも、そして、これからも忘れない日付。だって、私達がこの日に出掛けなかったら、きっと、あの人達には会えなかったから……。

 

〜キドside〜

 

「おい誰だ?冷蔵庫の中に入れていたピザを食べたのは?」

 

俺はこの日、冷蔵庫の中に入れていたピザが失くなっていて、それを食べた犯人を探していた。

 

まあ、どうせ彼奴だがな。

 

「カノ、お前が食べただろ?」

 

「え?何のこと?」

 

今答えたのは、猫目で髪が茶髪の少し癖っ毛があり、服は黒いフードと半袖付きのパーカーを羽織っていて、その下に茶色のTシャツ。ジーンズをブーツに入れている男。こいつが『カノ』だ。

 

「だから、冷蔵庫の中に入れておいたピザを食べただろ」

 

「え、ちょっと待って!何の事?僕、知らないよ!」

 

此奴……。

 

「欺くのをやめたらどうだ?そうすれば答えが分かるがな」

 

「え?僕、欺いてなんかないけど?」

 

カノはそう言うが、一瞬だが『ギクッ』となっていたのを俺は見逃さなかった。

 

「ほう?そうか。ならサクラ姉さんにでも来てもらうか」

 

「へ?」

 

「サクラ姉さーん!ちょっと来て「ま、待って!ごめん!僕が悪かったから、サクラちゃんを呼ばないで!」そうか、なら……」

 

此奴は自分がやったと認めたからな。鉄拳制裁だ。

 

俺は容赦なく此奴の頭を殴ってやった。

 

「痛っ!痛いよキド!」

 

「あのピザは昼御飯用のピザだったんだぞ!!それを食べたお前が悪い!それに、あのピザが失くなったんだ。お前の所為で。昼御飯どうするんだ!」

 

「……あ、やば」

 

此奴、気付かなかった上に考えてもなかったのか。

 

「あれ?キド、どうしたんすか?」

 

「ああ、セト。大変なことになった」

 

今言った『セト』は、黒の髪をピンで止めていて、緑のフード付きのツナギを着た長身の男だ。

 

「?大変なことっすか?一体、何があったんすか」

 

「昼御飯がこのバカのせいで失くなった」

 

「ちょ!バカは酷……くないですね、はい。だからその挙げた腕を下ろしてください」

 

「え!?それは酷いっすよ、カノ!」

 

全く……。

 

「ということで、だ。昼御飯と夕食の材料を買って来るぞ、カノ、セト」

 

「えー、めんど……くさくないです。すっごく行きたい気分です。だからその拳を下げて下さい」

 

「了解っす!」

 

「さあ、任務開始だ」

 

……俺はこの日の事を忘れないだろう。

 

なにせ、彼奴らと初めて会った日だからな。




今回のプロローグいかがでしたか?最初に出てきたひとの服装及び性格は設定で書かせて頂きますが、この小説に出てくるオリキャラは多数なので、設定は何個かに分けます。ご了承下さい、それでは、ここまでお付き合いくださってありがとうございました!


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設定

今回は設定です。それでは!ゆっくり見て行ってね!

*ネタバレがあるので注意して読んでください(出てくるキャラなど)


雅 茜(みやび あかね) コードネーム:アカネ

 

性別 女

 

年齢 16歳

 

誕生日 5月17日

 

身長 167cm

 

体重 茜)言わないよね( ̄ー ̄) 主)……はい

 

容姿 赤色の長髪(腰ぐらいまでの長さ)をポニーテールにしている。目の色は黒。顔は東方projectの林之助を女体化させたような顔(メガネは掛けてない)。もしくは魔理沙。

黒のフード付き半袖のパーカーに問題児の耀が着ているようなズボン

 

概要 性格はとても活発でスポーツ少女。基本的には優しい。けれど、過去に色々あり現在は人間不信。そのため、人の前(蓮がいるなら別)では喋らないし話しかけない。

普段は一人で本(シリーズ物の小説や漫画など)を読んでいる。蓮の前以外ではあまり笑わない。

動物好きだけど一番は猫(特に黒猫)。頭も良い高校二年生。苦手なものは雷。自分の『ある事情』については何も知らない。そもそも、そんな事情があることすら知らない。

 

能力 「目を『創る』能力」

 

そのままの意味。能力も人格も食べ物も創る事が可能。行方不明なら人の命も創れる(死んでる人も出来るらしいが、そんな人が生きていたら可笑しいとの事でやっていない)。ただ、電子機器だけは創った際に必ず使う事が出来ないものが出来る

 

例 携帯を創る→携帯を創ったが電源が入らない

 

 

雅 蓮(みやび れん) コードネーム:レン

 

性別 男

 

年齢 19歳

 

誕生日 1月31日

 

身長 172cm

 

体重 57kg

 

容姿 赤色の髪で目の色は黒。顔は林之助に似ている(メガネは掛けてない)。

茜と同じ黒のパーカーでジーンズ

 

概要 とてもクールで冷静沈着。けど、ツッコミ属性。茜の『ある事情』により茜の事を誰よりも心配している。けど、シスコンではない。

基本的には優しい男性だが、現在は茜よりも人間不信(特に女性)のため他人に冷たい部分がある。にも関わらずに音楽活動(バンド)をしている。理由は「信頼できる親友からの頼みを断れと?」とのこと。本人は嫌々やっているわけではないとのこと。

動物好きだが一番は犬(特にゴールデン・レトリーバーなどの毛の量が多い犬)。頭は良く、運動神経も抜群。過去は茜よりも重いかも?

 

能力 「目を『創る』能力」

 

↑と同じだが少し劣っている。

人格は創れない。見たことのある物しか創れない。人の命を創る時は知っている人物なら可能だが、知らない人物の場合はその人の姿を知っている人に触れながら能力を使わなければならない(死んでる人も出来るらしいがしない。理由は茜と同様)

 

 

相模 龍斗(さがみ りゅうと) コードネーム・リュウ

 

性別 男

 

年齢 18歳

 

誕生日 2月13日

 

身長 177cm

 

体重 60kg

 

容姿 やや長い薄い茶髪でくせっ毛。

濃緑のパーカーを着ている。

雨でも晴れでも常に黒い傘を持っている。

 

概要 シンタローやアヤノの同級生かつ親友

普通にいい性格だが何処か一歩退いた印象

シンタローやアヤノ以外には必要以上に人を近寄らせない

雨が好き 雨の日は愛用の黒い傘でブラブラと散歩している

シンタローが引き籠りとなってからも部屋に遊びに行く程仲がいい モモとも面識アリ

子供を大切にしている 見ず知らずの子供でも命を張って助けようとする

原作におけるテロリスト襲撃を経てメカクシ団加入

シンタロー曰く『俺の命綱』

 

能力 『目が届く能力』

詳細 未来予知の能力

自分の意思で発動すると1時間後~最大24時間後までの未来が見える

ベストコンディションでMAX24時間後 体調不良や疲労 ストレスで減少していく

また 睡眠中などに予知夢を頻繁に見る

この場合はかなり未来の光景を見ているが制御はできない

『人の最期の光景』を見ることが多い(知り合い・知らない人含む)

 

 

木戸 桜(きど さくら) コードネーム:サクラ

 

性別 女

 

年齢 19歳

 

誕生日 4月2日

 

身長 176cm(高っ‼︎ by主)

 

体重 桜)・・・(無言の圧力)

 

容姿 顔はキドと似ていて、髪型はキドと一緒。

白のフード付きパーカーに翡翠色のロングスカート。

 

概要 木戸家の一番上の姉。キドと言葉遣いは似ているがスカートに抵抗はない。カノと付き合っている(キドは渋々公認)。

メカクシ団では一番上で、先生志望の為かよくセイヤの勉強をみている。また、家庭教師のバイトもしており、人に教える能力は高い。

大学での友好関係は良好。身体能力はそれなりに高い。頭脳は先生志望なだけあり高い。キドとは違い、怖い所も高い所も苦手ではない。寧ろ好き。理由は「怖がりな奴といると相手が怖がってくれて、それを見るのが楽しいから」とのこと。料理も可能だけどキドには劣っている。

 

能力 「目を『隠す』能力」

 

原作のキドと同じ

 

「目を『見抜く』能力」

 

相手の素性を知ることが出来る。後、キドとカノとセイヤの能力が効かない

 

 

鹿野 聖矢(かの せいや) コードネーム:セイヤ

 

性別 男

 

年齢 14歳

 

誕生日 11月1日

 

身長 156cm

 

体重 47kgぐらい

 

容姿 顔はカノと似ていて、髪型はカノと同じ。

黒のパーカー(カノと同じで前が開いているもの)に下は白のTシャツだけで後はカノと一緒(め、めんどくさかった訳じゃないからね‼︎ by主)

 

概要 カノの弟。カノとは違い、一人称は「俺」。

中学に行っており、よくサクラから勉強を教わっている。中学での友好関係は普通。身体能力は少し高い。頭脳も少し頭が良い。ただ、人の性格を見分ける能力に長けている(目の能力とは関係ない)。

実は、メカクシ団や実の兄のカノにも隠し事をしていることがあるが、サクラには隠し事がバレており、「何を隠しているのか」とよく問いただされている

 

能力 「目を『欺く』能力」

 

原作のカノと同じ

 

 

壇之浦 柚子(だんのうら ゆず) コードネーム・ユズ

 

性別 男

 

年齢 16歳

 

誕生日 11月22日

 

身長 170cm

 

体重 60kg

 

容姿 ボロボロな服を着ている 活発な性格だが目だけが暗い

黒い髪 真っ黒な髪

 

概要 友人思いで気持ちのいい性格をしている

ただ特殊な精神の持ち主で勝負事では何故か負けようとする

青少年らしく エロが好きだったり厨二病の気があったり喧嘩好きだったりする

カノに誘われてメカクシ団加入

カノが誘った理由としては「なんか入れとかないと不味い気がした」

コヨミとは昔からの仲

 

能力 『目で壊す能力』

 

破壊の能力。物だろうが概念だろうが念じれば破壊できる。ある意味ではレンやアカネの対極となる能力で最も危険な能力。

破壊する他、無に返すこともできる。

分かりやすく言えば『東方のフランドール・スカーレット+めだ箱の球磨川禊』といった感じの能力

 

 

瞬木 暦(またたき こよみ) コードネーム・コヨミ

 

性別 女

 

年齢 13歳

 

誕生日 3月4日

 

身長 155cm

 

体重 「言っちゃダメー!」

 

容姿 小柄でアホ毛がピョコンと立っている

ワンピースを着用 ライオンとサメのぬいぐるみを常に所持

 

概要 甘えん坊な性格で誰にでも慣れ慣れしい。

しかし時折怖い表情を見せる時もある。

甘いものが大好きでよくアジトに買ってきて差し入れをする。

ライオンのぬいぐるみは『ライ太』サメのぬいぐるみ『サーさん』と名付けている。

 

能力『目を取る能力』

 

睨み付けた相手の精神を支配する

能力を受けた相手は完全にコヨミの意思で動く操り人形と化す

解除されるか否かもコヨミ次第

操られている間 対象の意識は無い




どうでしたか?皆さんはカゲプロの曲は何が好きですか?カゲプロ知らない人は一度聞いてみて下さい。オススメはメカクシコードとカゲロウデイズと空想フォレストと如月アテンションと人造エネミーと夜咄ディセイブと少年ブレイブですかね。え、多いですか?うーん・・・。どれも、良い曲ですからね。まあ、暇な時にでも聞いてみて下さい!それでは!さようなら〜!


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束縛レジスタンス(Ⅰ)

今回から本編ですか、・・・何故こうなったorz

「そんなの」

「決まってるだろ?」

「「俺達(私達)の設定の所為だ(だよ)」」

・・・それでは、どうぞ

(題名は蓮くんの曲名です)


〜蓮side〜

 

俺は今、唯一の家族の茜と一緒に出掛けている。その茜はというと

 

「〜♪」

 

嬉しいそうだ。俺と出掛けることがそれほど嬉しいらしい。俺も、茜と一緒に出掛けるのは久しぶりだからな、出掛けれて、そして、茜と出掛けることができて嬉しい限りだ。

 

・・・いつも、寂しい想いばかりをさせているからな、茜の寂しい気持ちが少しでも薄れてくれるならいいが。

 

「お兄ちゃん!どこに行く?」

 

「別に、茜は行きたい所はあるか?」

 

「人が少ない所がいいけど、夕食用の食材も買わないといけないからな〜・・・」

 

「・・・」

 

俺達は、人が信じられない。人が大勢いる所には余り行きたくはない。だが、こういう時は仕方なく行く。

 

「・・・仕方ないだろ?まあ、食材を買うのは後にして、人が少ない道を選んで散歩するか」

 

「そうだね、そうしよう!」

 

こうして、俺達は人通りが少ない道を選んで散歩をする事にした。

 

そうして、暫く経った頃の事だ。

 

「でね!気付けばミーヤってば、ハジメと一緒に寝てたんだよ!やっぱり、あの二匹は仲がいいね!」

 

「そうだな。猫と犬が仲がいい光景は珍しいが、あの二匹の仲の良さは別格だな」

 

ミーヤとハジメというのは、家で飼っている猫と犬だ。ちなみに、ミーヤがメス猫でハジメがオス犬だ。

 

あの二匹、種族を超えて愛し合うとかドラマ的なことになってないよな?というか、ハジメは散歩に一緒に連れて来るべきだったな。失敗した。

 

「でね!・・・!」

 

「?どうした?茜。・・・!」

 

急に言葉を止めた茜を不思議に思って茜の方を向くと、目が赤くなっていた。これは、つまり、『能力』が発動したということだ。

 

(この場合は、『あいつ』だな)

 

「蓮、私達とは反対の方向から人が来ている。少し、避けるぞ(コソッ)」

 

「分かった、『紅』」

 

『紅』というのは、茜の数多ある人格の一つ。

 

能力も茜と同じのが使えるが、彼女が持っているのは『他の能力を無効化する能力』。つまりは、相手が茜に能力を使ってきても、紅が自動的に出てきて効かなくなる。

 

茜自身は、自分の能力で人格が作れると初めは思っていなかった。茜が人格を作れると最初に気付いたのが俺なのだから無理はない。・・・あの時の事は、一生忘れないだろうな。

 

・・・そんなことよりもだ。

 

「じゃあ、紅、頼む。俺には見えないからな」

 

「分かっている。任せろ」

 

俺達は小さな、自分達にだけ聞こえるぐらいに小さな声で話し合い、それが終わると、紅

は行動に移した

 

「お兄ちゃん!早く行こう!」

 

紅は、そんなに不思議に見えない様な行動をとって、俺には『見えない』人間から離れようとした。そして、俺もそれに乗る。

 

「分かってるから、そんなに焦るな」

 

「焦るよ!だって、お兄ちゃんと出掛けるの久しぶりなんだから!一杯、楽しまないと損なんだよ?だったら、早くしないと!」

 

「はいはい」

 

そして、多分、見えない人間から離れられたときだ。

 

「ねえ?そこの君?ちょっといいかな?」

 

茜の腕を掴んだ相手から、そう話しかけられた

 

その所為で、茜の意識が戻り、紅はまた中へと戻ってしまった

 

「・・・え?あ、あの、なんでしょうか?」

 

「・・・」

 

俺は、そいつ(特に女)を睨んだが、猫目の男はヘラヘラ笑っていた。

 

「おい、カノ!なに掴んでいるんだ!その所為で能力が解けたじゃないか!」

 

「どうしたんすか?カノ。急に、知らない人の腕なんか掴んで。その人に何かあるんすか?」

 

「うん、ちょっと確かめないと分からないけど、多分、合ってる」

 

こいつら、一体何の話をしている?・・・まあ、俺達には関係はない。さっさと離してもらうとするか。

 

「おい、茜の腕を離せ」

 

「お兄ちゃん・・・」

 

「ああ、ゴメンね!ちょっとこの子に聞きたいことがあるだけだから!」

 

「・・・聞きたいこと?」

 

「うん、そう!」

 

そう言って、カノとかいうやつは爆弾発言をしてくれた。

 

「ねえ、君、能力を持ってるよね」

 

〜茜side〜

 

(どうしよう!能力を持ってることがバレた!どうして!私は、フードを被ってた筈なのに!)

 

そう、私は相手から私の目が見えないぐらいには深く被っている。にも関わらず、バレた。

 

(どうしよう・・・)

 

「おい、どういうことだ!説明しろ、カノ!」

 

「そうっすよ!その人が能力を持ってるなんてどうして言えるんすか!」

 

「だって、この子、明らかに僕たちの方を向いてたよ?僕、見たからね^ ^」

 

「・・・!」

 

紅の能力が発動したときだ!失敗した!

 

「ねえ、君、能力有るんだよね?ちょっと僕達の話を聞いてくれないかな?」

 

・・・イヤだ。

 

イヤだ、イヤだ。

 

人間について行くなんて、イヤだ。

 

イヤだ、イヤだ、イヤ・・・

 

そう考えていると、誰かに強い力で腕を引っ張られた。こんな事をしてくれるのはいつも一人だけ。

 

「逃げるぞ!茜!」

 

「!うん!」

 

「あ!ちょっと、待って!」

 

「くそ!セト!頼む!」

 

「分かったっす!」

 

「カノも行くぞ!」

 

「分かってるよ!」

 

あの人達も追いかけてきた。てか、あの緑のツナギを着た人、早い!もう、追いつかれそう。

 

でも、こういう時も助けてくれるのも決まってる。

 

お兄ちゃんは、目を赤くして、緑のツナギを着た人とその仲間の人達の方を向いて、能力を使った。

 

「『俺達が見えなくなる迄、そこから動くな‼︎』」

 

「なっ!」

 

「うそ!」

 

「動けないっす!」

 

「今の内に行くぞ、茜!」

 

「うん!お兄ちゃん!」

 

こうして、私達は走って行った。

 

〜キドside〜

 

「・・・ようやく動ける様にはなったが」

 

「あちゃ〜、これは無理だね。もう追いつけないよ」

 

「あの茜さんっていう子のお兄さんも目の能力を持ってたんすね。分からなかったっす」

 

俺達は結局、あの男の能力で動けなくなっていた。そして、あの二人の姿が見えなくなって、ようやく動けた。

 

「それにしても・・・」

 

「?どうした?カノ」

 

「ん?いや、あの男の人、どっかで見たことある様な気がするんだよね〜」

 

「!本当か!思い出せ!カノ!」

 

「ちょ!揺らさないで!気持ち悪くなる!」

 

「キド、ちょっと落ち着くっすよ!カノが不味いことになるっす!」

 

「そ、そうか、分かった。で?どこで見たんだ?」

 

「うーん、何処だろう?・・・ダメだ。思い出せない」

 

「・・・そうか」

 

それにしても、気になる事がある。あいつは、初対面の俺達を睨みつけていた。特に、俺に向かってだ。

 

(一体、あいつらの過去に何があったんだ?)

 

だが、今の俺達に過去を知る方法はない。

 

(・・・次に会うかも知れないからな。また会ったときの為の作戦を考えておかないといけないな)

 

俺達は、そのまま買い出しに行くことにした。




はい、どうしてこうなったorz

「だから、お前が決めた俺達の設定の所為だろ。確実に」

「そうだね。理由は、それしかないね」

うっ・・・だ、だからって、初対面の人を睨むのはやり過ぎだと思います!

「仕方ないだろ?これが俺の設定なんだから諦めろ」

・・・こ、今回はここまで

「逃げたな」

「逃げたね」

あーあー!聞こえない!それでは!

「「「さようなら〜!」」」


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束縛レジスタンス(Ⅱ)

さあ、やって行きますよー!

「ようやく投稿したかと思えば」

「私たちの出番が少ないような・・・」

気にしたいで下さい!それでは!どうぞ!


〜蓮side〜

 

俺達は、あの変な三人組から逃げ切って、今は、普通に歩いているが・・・

 

「・・・」

 

「・・・」

 

・・・空気が重い。

 

まあ、俺も、そして茜も、なんとなく分かっている事があるからだ。だけど、この考えに自信を持って絶対なんて言えはしないが。

 

「・・・茜」

 

「・・・何?お兄ちゃん」

 

「今さっきあったことは一旦、忘れよう」

 

「え?」

 

「だから、一旦忘れて、散歩を楽しもう。さっきのことについては家に帰った後でも話し合おう」

 

「・・・分かった!それじゃあ、楽しもうか!」

 

「ああ!」

 

俺たちは、散歩を楽しむことにした。

 

〜キドside〜

 

俺達は、さっきの赤髪の兄弟に逃げられて、そのまま買い物をして、家に帰って来た。荷物持ちは、カノとセトだがな。

 

「た、ただいま〜・・・。疲れたよ〜・・・」

 

「お?帰って来たか。お帰り」

 

「セト!お帰りなさい‼︎」

 

「ただいまっす!マリー!」

 

「兄さん、お帰り。お疲れ様って言いたいけど、兄さんの自業自得だよ」

 

「ひどっ!サクラちゃーん!セイヤがひどいよ‼︎」

 

「いや、私も、今回の事はお前の自業自得だと思うが」

 

「ここに味方はいなかった‼︎」

 

この三人の紹介をしようか。

 

最初がサクラ姉さん。本名は木戸 桜。苗字の通り、俺の姉さんだ。

 

この中では一番年上で、大学生だ。まあ、姉さんの夢は教師だからな

(ちなみに、この時に桜さんがいるのはこの日が休日だからです by主)

 

二人目がマリー。人間とメデューサのクウォーターだ。人見知りの究極系な奴だが、人に慣れたらセトと同じ様な感じで接してくれる。

 

最後がセイヤ。本名は鹿野 聖矢。こっちも苗字の通り、カノの弟だ。

 

セイヤは中学生だが、来年には卒業することになっている。

 

ああ、ちなみに、三人の団員ナンバーは、サクラ姉さんがNo.2で、マリーがNo.6で、セイヤがNo.5だ。

(団員達のナンバーはずれます by主)

 

「それで?お昼ご飯はどうするんだ?」

 

「俺、もうお腹がペコペコなんだけど・・・」

 

「ああ、そこのバカのせいで「ひどい‼︎」ちょっと黙れ、バカノ。「だから、ヒドい・・・くないですね。だから、その拳を下ろして下さい」まあ、ともかく、今から作るから、待ってろ」

 

「分かった。じゃあ、私は、大学の方ででたレポートでも片付けくるとするか」

 

「じゃあ、俺も、学校の方ででた宿題を片付けてくるよ」

 

「分かった。昼飯が出来たら呼びに行く」

 

「「了解」」

 

そう言うと、サクラ姉さんとセイヤは部屋へと戻って行った。

 

さて、俺も昼飯の用意をしなくては・・・といっても、ピザを焼くだけなんだがな。

 

「・・・ねぇ、セト」

 

「なんすか?カノ」

 

「僕の扱いが酷いと思はない?」

 

「え?そうっすか?いつも通りと思うっすけど?」

 

「・・・ごめん、セトに聞いた僕が悪かったよ」

 

「??」

 

***

 

俺達は、昼飯を食べ終えて、俺達が会った奴らの事を姉さん達に話した。

 

「ふーん、兄さん、本当に見覚えが有るんだよね?」

 

「うん、でも、何処で見たのか思い出せなくて」

 

「・・・」

 

「ね、ねえ?セト」

 

「なんすか?マリー」

 

「あああ、新しい人達が来るの?」

 

「その予定っす」

 

「そ、そうなんだ」

 

「だがな・・・」

 

あの二人組の警戒心は異常だ。俺達の話を聞かないは、即刻逃げるは。・・・いや、アレが普通なのかもな。なんせ、彼方からしたら、イキナリ知らない奴から手を掴まれた挙句、変な集団からの勧誘。・・・うん、普通は逃げるな。

 

「・・・赤髪、ね」

 

「?サクラ姉さん?」

 

「カノ」

 

「なに?サクラちゃん」

 

「お前が見たことがあるというのが何なのか、なんとなくだが分かった」

 

「「「「「え!?」」」」」

 

ビックリした。え?だって、コレだけの情報なのに、分かったと言われたら驚くだろ?

 

「それで!姉さん!一体、なんなんだ!」

 

「ああ、多分、これだろ?」

 

そういうと、姉さんはおもむろにテレビのチャンネルを取り、テレビの電源を点けた。そして、テレビのチャンネルを回していると・・・

 

「お、いた。こいつだろ?」

 

あるチャンネルで止めた。その番組は音楽系の番組だった。

 

そこには、男四人組のバンドが写っており、その中心には、俺達が見た男とよく似た・・・いや、同じ奴が映っていた。

 

「どうだ?カノ」

 

「あ!そうそう!テレビで見たことがあったんだ!・・・て」

 

「「「「「ええ〜〜〜〜〜‼︎」」」」」

 

「え?うそ!兄さん達、有名人と会ったの?え、マジで!」

 

「すごいね!セト!」

 

「そうっすね!マリー!」

 

「いや待て、お前ら!問題はそこじゃないだろ!」

 

「セイヤの言う通り、僕達、有名人と会ったって事だね」

 

「そう言うことだ」

 

マジか

 

「さて、お前達が会った奴らの情報は分かっただろ?で、どうするんだ?」

 

「どうするって・・・」

 

「勧誘するのか?」

 

「・・・ああ、する」

 

あいつらにも目の能力があった。ということは、今まで、苦しめられてきたはずだ。だから・・・

 

「勧誘する。絶対に」

 

「そうか、なら、犯罪者になるのか」

 

「え?」

 

「ど、どういうこと?サクラちゃん?」

 

「いや、勧誘するって事は誘拐するんだろ?」

 

「いや、違うっすよ!それは!」

 

「そうか、なら良かった」

 

そうか、俺達が有名人を勧誘するのは、一歩間違えれば犯罪か。気を付けて作戦を考えなければな。

 

「・・・ともかく、いつまた会えるか分からないからな。だが、会ったって時には俺達もあいつらと同じって事を知ってもらうぞ。いいな?お前ら」

 

「いいよ」

 

「もちろんだ」

 

「そのつもりっすよ!」

 

「うん、そのつもりだよ!」

 

「わ、分かった!」

 

こうして、俺達は、あいつらを勧誘するための作戦を考えた。




はい、どうでしたか?

「更新遅い」

「俺達の出番がなさすぎる」

いや、だって、仕方ないじゃないですか!蓮さんがどんな人なのか知ってもらうには必要なことでしょ?

「まあ、そうだが・・・」

「でも、あのキドって人達、今だに諦めてないんだね」

「そのようだな。まあ、もう会わないだろうが」

え?そんなことないですよ?

「「え?」」

いや、だって、貴方達にはメカクシ団の仲間になって貰わないと話が進まないじゃないですか

「・・・言っておくけど、早々なことがない限り、仲間になるつもりなんてないよ?」

「俺も同じだ」

まあ、それぐらい分かってますよ。だから、今後の展開を楽しみにしてて下さいね?まあ、今回はここまで!

「「「さようなら〜!」」」


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束縛レジスタンス(Ⅲ)

さあ、やっていきましょう!

「「だから、更新が遅い」」

ちゃんと、不定期と書いてます。ついでにこれは、今のところは趣味の範疇ですから仕方ありません

「・・・仕方ないか」

「そうだね」

それでは!どうぞ!

あ!セトさんが好きな方は本当にすみません!ごめんなさい!


〜蓮side〜

 

変な三人組に追いかけられて以来、約一ヶ月が経った。

 

俺は、休日の日である為、この日は茜と買い物をしている。勿論、顔を隠している。

 

こういうとナルシストみたいで自分を嫌いそうになるが、自分が有名人であることぐらい、自覚はある。

 

だが、こうやって顔を隠して茜との久々の買い物をしないといけないというのは辛い。

 

・・・まあ、こういうのは楽しんだ者勝ちってやつかな?

 

「それで?今日は何にするんだ?」

 

「ん?カレーだよ!」

 

「カレーか。なら、ジャガイモとか人参とか・・・」

 

俺たちは、カレーを作るのに必要な材料を籠の中に入れて行った

 

「コレで最後か?・・・ん?どうした?茜」

 

俺は、尋ねたのに返答を返さない茜を不審に思い、何かあったのか質問してみたが・・・

 

「・・・え?何もないよ?」

 

「そうか?ならいいが・・・」

 

・・・何かあったんだろう?茜。

 

まあ、本人が何もないと言うならそうしておくか。

 

俺たちは、そのまま代金を払い、買ったものを買い物袋の中に入れ終え、帰ろうとしたが・・・

 

「おい」

 

俺たちの前には、以前、俺たちを追いかけて来た三人組がいた。

 

・・・どうやら、まだ帰れそうにないらしい。

 

〜キドside〜

 

俺達は、夕食の買い物をしていた。

 

いつもならカノに任す所なんだが、いつあの二人に会うとも限らない為、唯一、あの二人とちゃんと会っている俺とセトも着いて行くことにした。

 

因みに、夕食はシチューだ。

 

「よし。これでいい」

 

結局、今回も会えなかった。そう思い、払いに行こうとしたが。

 

「あ!待った!キド!」

 

カノの奴が止めて来た。

 

「どうした?カノ」

 

「どうしたんすか?カノ。早く払いに行くっすよ?」

 

「いたんだよ!あの二人が!」

 

「な!?」

 

俺達はカノに連れられて、そいつ等がいる野菜売り場に来た。

 

「・・・ね?いるでしょ?」

 

「ああ。本当だな。でかした、カノ」

 

「どうするっすか?」

 

どうするか?そんなの・・・

 

「そんな事、決まってるだろ?メカクシ団に入れるぞ」

 

「けどさ、このままじゃこの前と同じ事になるだけだよ?」

 

そう、だがな、カノ。俺が何も考えてないと思っているのか?

 

「セト」

 

「?なんっすか?キド」

 

「お前には悪いとは思っているが、この中ではお前の方が分かりやすい」

 

「・・・能力っすか?」

 

「ああ。俺がこのまま『目を隠す』を使ってあいつらから一旦離れる」

 

「え?どうしてっすか?」

 

「コレがあったら話しにくいだろ?」

 

そう言って、俺はセトに材料が入った籠を見せた。

 

「成る程!それで、その後、どうするっすか?」

 

「その後、彼奴らが払い終えたら俺達は彼奴らが逃げない様に立つ。その時にセト。悪いが、彼奴らの考えを読んでくれないか?」

 

「分かったっす」

 

「それじゃあ、任務開始だ!」

 

俺達は、すぐにその場を離れた。

 

・・・ただ、俺には一つ奇妙に思うことがある。

 

あの茜という少女の能力は、俺達の能力が効かない、サクラ姉さんの様な能力だ。

 

そして、彼奴は俺達の方を凝視していたはずなのに、彼奴は兄の方に俺達のことを『何も』伝えてなかった。

 

どうして分かるかって?「何もないよ」って言葉が微かに聞こえたからだ。

 

前は普通に伝えていたのに・・・何故だ?

 

・・・まあ、いい。後でその事について聞くか。

 

そして、俺達はあの二人よりも先に払い、彼奴らのが来た所で姿を表した。勿論、他のお客さんからは見えていないも同然の状態にしてな。

 

といっても、声は聞こえるんだがな。

 

そして、俺は二人に声を掛けた。

 

「おい」

 

〜蓮side〜

 

(何でまた会うことになるんだ?)

 

俺は冷静に状況を把握していた。

 

前に二人。後ろに一人。

 

逃げるなら後ろの奴を倒すべきなんだろうが、生憎、後ろのやつはこの前、俺達を走って追いかけ、追いつかれそうになった緑のツナギを着た男だ。

 

俺一人なら別にどうにでもなったかもしれないが、妹もいるこの状況。どうするべきか・・・

 

「心配しなくても、俺達は何もしないっすよ」

 

そんな声が後ろから聞こえ、吃驚した。

 

あの男、俺の心を・・・?

 

・・・いや、これぐらいだったら状況を冷静に観察出来るやつなら分かることだ。

 

だが・・・彼奴の目が赤いということは、能力という可能性も・・・

 

「そうっすよ?俺の能力っす!」

 

「・・・そうか」

 

俺は、顔には出さず、内心でニヤリと笑った。

 

なんだ、なら、簡単に逃げれるじゃないか。

 

「俺達も、お前達と同じ様に能力を持っている。だから、信用してくれないか?」

 

緑の髪の女はそう言ってきた。が

 

「悪いな。俺は・・・嫌、俺達は、お前達を信用出来ない」

 

「な!?何でだ!?」

 

「教える義理もない。・・・ということで、帰らせてもらう」

 

俺は、能力を作り、ツナギを着た奴の能力を強めた。

 

半径50mぐらいの奴らの心の声が聞こえる様にした。

 

「‼︎な、何っすか、これ・・・うっ!嫌っす!」

 

「‼︎セト!」

 

「セト!大丈夫?しっかりしてよ!ねえ!」

 

あの二人は走って仲間の元に行った。俺はそれを見向きもせずに出口に向かった。

 

・・・茜は彼奴らに謝っていたがな。

 

俺は、もう、あの三人とマネージャー、そして、茜以外は信用しない。絶対に。

 

あんな思いは沢山だ。

 

〜キドside〜

 

「セト、大丈夫か?」

 

「はいっす。もう、大丈夫っすよ・・・」

 

そう言うセトは、まだ疲れているのが分かる。・・・話を聞く限り、結構、沢山の人間の心の声が聞こえたらしい。

 

・・・彼奴は、能力を二つ持ってるのか?

 

「兎に角、帰るぞ」

 

「「うん(はいっす)」」

 

俺達は、歩いて帰った。その間は終始無言だ。

 

・・・それにしても、あの茜とかいう奴、最後に謝ってきたな。

 

〜回想〜

 

「セト!しっかりしろ!能力を解け!」

 

「そ、それが、解けないんすよ!」

 

「え!?」

 

「くそっ‼︎どうすれば・・・」

 

「・・・ごめんなさい」

 

「え?」

 

〜回想終了〜

 

その後は、振り返らずにあの男の元まで走って行ったがな。

 

・・・一体、どういうことなんだ?

 

あの茜とかいう奴は、本当は、どう思ってるんだ?

 

疑問ばかりが残るまま、アジトについた。

 

その後、セトの様子を見た姉さん達が何があったのかと質問してきたから、全部答えて、一応、夕食も食べその日を終えた。

 

・・・謎は残ったままな。




はい!どうでしたか?

「・・・」

「・・・」

はい!どちらも無言!・・・流石にやり過ぎたことは自覚、ありますか?

「・・・ある。だが、ああする他なかった」

そうですか

茜さんは、ちょっと考え込んでいる様なのでこれで!

さようなら〜!


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アカネの交錯精神(Ⅰ)

さあ!今回もやっていきましょう!

「・・・彼奴らは、ストーカー集団か何かか?」

いえ、違いますからね!?

「だがな・・・」

そ、それでは!どうぞ!


〜蓮side〜

 

アレから数日が経った。

 

俺は、今から仕事の為に出ようとしていた。

 

今回の仕事場はそれなりに遠い、が、ギターを持っていく以上、バイクには乗れない・・・こういう時に、バイクじゃなくて車にしておけばよかったと後悔する。

 

「それじゃあ、行ってくるな。茜」

 

「うん!行ってらっしゃい!頑張ってきてね‼︎」

 

俺は家のドアを開けた。

 

そして、開けた時に見えたのが・・・

 

「やっほー!また会ったね‼︎」

 

・・・あの三人組だった。

 

〜キドside〜

 

俺達がどうやってこの兄弟の家を見つけたのかというとだな・・・追跡したんだ。

 

一週間前に、偶然にも男の方を見つけた為、俺の能力を使って後を追ったんだ。

 

・・・まあ、危なく、バレそうになった瞬間もあったがな。

 

「・・・」

 

そして、その男は、今、俺達を無言で睨みつけている。

 

女の方は俺達に驚いていたが、すぐに男に隠れる様に見える位置へと移動していた。

 

「・・・なんで、お前達が此処にいる?」

 

男は睨みつけたまま俺達に質問を投げかけてきた。

 

「一週間ぐらい前に、偶然にもお前を見つけたから、俺の能力を使ってお前の後を追っただけだ」

 

「・・・チッ、ストーカーかよ」

 

・・・まあ、ストーカー紛いの行動をしているからな、否定出来ないな。

 

「・・・蓮」

 

「・・・紅か」

 

すると、女の方が男の背中から堂々と出てきた。雰囲気も何か違う気がする。

 

それに、今、『紅』と言っていた。だが、女の名前は『茜』じゃなかったか?

 

そして、目が赤くなっている・・・能力特有の赤色に。

 

・・・能力の一端か?

 

「こいつらは私が追い出しておこう。だから、お前は仕事に行け。時間もないだろう?」

 

「・・・」

 

男は、女の方を睨みつけている。・・・というよりも、探っている感じか

 

「・・・まあ、いいか。紅の好きにしろ。だが、帰ったら何があったかを教えてもらうからな。いいな?」

 

「・・・ただ、追い出すだけなんだがな」

 

「・・・まあ、そういうことにしておこうか。それじゃあ、行ってくる」

 

そして、男の方は、最後まで俺達を睨みつけながら行った。

 

そして、後ろ姿が見えなくなるぐらいまで見送ると

 

「・・・さて、少し、話をしたい。中に入らないか?」

 

そう誘ってきた。

 

「・・・ああ。俺達も話をしたかったから。その誘いを受けよう」

 

俺達は、許可をもらったから、家に上がらせてもらった。

 

***

 

「そこに座って待っててくれ。お茶を用意する」

 

「いや、いい。そこまでしなくても・・・」

 

「形はどうであれ、お前達はお客だ。まあ、ともかく、貰っておけ」

 

「・・・分かった」

 

・・・それにしても

 

俺は、周りを見回して見た。

 

俺達が座っているの椅子も入れて、四つ。

 

ということは、四人で住んでいるのか?

 

後は、目新しい物は無かった。

 

少しの間、待っていると、帰ってきた。

 

そして、お茶を俺達の目の前に置くと、女は俺とカノとは反対の方に座った。

セトは、女と同じ方の椅子に座っている。

 

「さて、自己紹介をしておこうか。私の名前は、紅だ。茜と同一人物の様で違う。所謂、別の人格だ。私の能力は『目を無くす』。コレは、能力が効かない能力だ。よろしく」

 

「あ、ああ。よろしく」

 

「ふーん、てことは、初めて会った時に僕達を見たのは・・・」

 

「茜ではなくて私だ」

 

「そうだったんだ〜」

 

「気付かなかったっす・・・」

 

「初対面で気付けたならすごい才能だがな」

 

まだ、多少だが、警戒しているようだな。

 

だが・・・

 

「・・・どうして、今まで俺達から逃げ回っていたのに話す気になった?しかも、家にまで上げて」

 

そう、コレが俺の最大の疑問。普通、逃げ回ていた相手を家に上げるなんて、しないだろう?なのに、紅はした。どういうことだ?

 

「・・・私は、蓮と茜の為になると思うことをしているだけだ」

 

「茜と、蓮?蓮というのは、あの男か?」

 

「それ以外に誰かいるのか?」

 

「いや、すまない。気にするな。それで?」

 

「・・・見ての通り、そして、多少、勘付いているだろうが、彼奴らは人を信用していない。だが、私は、お前達は信用出来る奴らだと思って、こういう風に行動している」

 

「ああ、やっぱり、信用してなかったんだね」

 

「・・・どうして信用しなくなったのか、能力をどうやって手に入れたのか、教えてくれないか?紅」

 

「勿論、そのつもりだ」

 

紅は頷き、俺達に、過去を話してくれることとなった。




すみません。過去は次回となります。私が限界でして・・・

私の我儘ですみません

それでは!さようなら〜!


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アカネの交錯精神(Ⅱ)

ヤッホーーー!

「主、どうした?」

いえね!良いことがあったんですよ!

「・・・そうか」

それでは!テンションと違いシリアス展開ですが、どうぞ!


〜紅side〜

 

私は、今から茜の・・・私の主の過去を、この三人に話すこととなっている。

 

この三人なら、きっと、茜の事を救ってくれる気がするからだ。

 

「初めに言っておくが、茜と蓮には両親はいない」

 

「・・・え?」

 

「いないの?え、だって、椅子の数が・・・」

 

「四人分ある、だろ?それは、残してるだけだ。それ以外に意味はない」

 

「そ、そうなんだ。それで?」

 

「・・・茜がまだ子供の頃の話だ」

 

***

 

私という人格は、まだこの時には出来ていない。私が語れるのは、茜と記憶を共有しているからだ。

 

ん?なら、今のこの状態もバレているだろって?それはないから安心しろ。記憶を共有しているとはいえ、共有したくない記憶があるなら、その部分を見れなくすることが出来るからな。安心しろ。そして、今のこの状況も普段なら、茜も知ることが出来るのだが、茜には聞かれない様にしているから問題ない。

 

さて、話を進めよう。

 

茜が小さな子供、幼稚園児ぐらいの年の頃。

 

茜は、両親から虐待を受けていた。

 

勿論、茜だけではなく、蓮も、そして、その頃にはもう一人、姉がいたんだが、そいつもだ。

 

姉の名前は蓮菜。蓮の双子の妹だ。

 

蓮と蓮菜は、食べさせてもらえないだけだったんだが、茜はそれだけじゃなかった。

 

茜だけ、暴力も振るわれていたんだ。

 

ただ、その両親は馬鹿ではなかった。

 

茜の暴力の件については、ちゃんと手当をされていた。

 

育児放棄についても、一週間に一回は、ちゃんと食べさせていた。

 

だから、周りは気付かなかった。

 

茜の、この家で起こっていたこの問題に。

 

それから、数年が経ち、茜は小学六年生となった年のことだ。

 

茜に友達が出来た。

 

それまでは友達が出来なかったのかって?出来なかったよ。

 

手当をしているとはいえ、何時も怪我をしているは、服も同じのしか着てこないは・・・そんな奴がいたらお前達はどうする?無視するだろ?同じ服を着ているということは、お風呂に入ってないんじゃないかと思うからな。

 

だから、誰も茜に近付かなかったんだ。

 

教師については論外だ。

 

教師は見て見ぬ振りをしていたからな。

 

だが、その友は違った。

 

ちゃんと、茜を心配してくれた。

 

何があったのか聞こうとしてくれた。

 

それだけでも、茜は救われていた。

 

・・・だが、その友達に心配させたくない為に、何も言わなかった。

 

だが、それ以外では幸せな日々だった。

 

しかし、世界は残酷だった。

 

八月十五日。時間までは流石に分からなかったが、午後なのは確かだ。

 

その日、茜とその友達は一緒に帰っていた。

 

だが、この日はまずかった。

 

その日の前に、茜は深夜に両親に強制的に起こされての暴力を受けた。

 

だから、寝不足だったんだ。

 

そして、そのせいでフラフラだった茜は、信号は赤だったにも関わらず、渡ってしまったんだ。

 

友達は茜を元の位置に戻そうとしたが、無理だった。

 

その行動が遅かったんだ。

 

青だったせいでもあるんだが、トラックが突っ込んできていた。

 

それに気付いた友達は茜を守ろうとしたが、一緒に轢かれて死んだ・・・筈だった。

 

だが、気が付けば茜だけが生きており、友達は行方不明。

 

そして、茜はそれを聞き・・・意識がとんだ。

 

***

 

「意識が、とんだ?どういう意味だ?」

 

「そのままの意味だ。茜の意識がなくなったんだ」

 

「?えっと、要領を得ないんだけど・・・」

 

「・・・茜の能力は、蓮とは違い人格も創れる。だから、その時に能力を得たとして、どうすると思う?」

 

「・・・?」

 

「・・・茜は、無意識とはいえ、別の人格を創ったんだ」

 

「無意識とはいえ?え?どういうこと?紅ちゃんだけじゃないの?」

 

「私だけではない。他にも沢山いる。・・・私以外は全部、無意識だがな」

 

「そうか。それで?その後はどうなったんだ?その状態だと、両親が死んでいることに納得が出来ないぞ?それとも、それについては、蓮が関係しているのか?」

 

「いや、関係があるのは茜だ。詳しく言うなら、茜の人格だが」

 

***

 

茜の意識がとんだ後、その体を操ったのはその無意識に創られた人格だった。

 

その人格は、そのまま何事もなく家に戻ったが、この後が問題だった。

 

「・・・」

 

そいつは家に入り、リビングを覗いた。そこには父親がいた。

 

それを見て、そいつは、母親がキッチンにいると考えて、キッチンへと向かった。

 

そして、キッチンに着き、覗くと、予想通りいた。

 

そして、そいつは足音をワザとたたせて近づいた。

 

勿論、母親はそれに気付き、

 

「あら?帰ったの?だったら、さっさと部屋に戻りなさい。そこにいられると邪魔よ」

 

母親は、そう言うと、そいつから目を離した。

 

それがいけなかった。

 

そいつは、それを見届けると、周りを見渡した。そして、見付けた。

 

包丁を。

 

そして、それを手に取り・・・迷いなく母親の腹に刺した。

 

「・・・え?」

 

そして、その後、何度も刺した。

 

勿論、母親は悲鳴をあげたが、それに怯まずに、笑いながら刺していた。

 

何度も何度も何度も・・・

 

そして、母親は絶命した。

 

しかし、今度は父親が来た。

 

「凛!何があった!?・・・お前、何をした」

 

「何をした、か。・・・殺しただけだが?^ ^」

 

「こ、殺した、だと!?」

 

「ああ、だから、お前もさっさと死ね。害虫」

 

そいつは、その後、父親を刺そうとしたが、父親はギリギリで避けた。

 

それを目にしたそいつは・・・能力を使用したんだ。

 

すると、父親は『何か』に肉を切られた。

 

「う、うわあああああ!」

 

「気持ち悪い悲鳴だな。さっさと死んでくれ」

 

「や、やめてくれ!茜!殺さないでくれ!死にたくない‼︎」

 

「ほう?お前達が茜を傷付けたのに、死にそうになったら命乞いか・・・笑える冗談だな」

 

「は?な、何を言っている?じ、自分の事を茜って・・・」

 

「私は、茜に危害を加える奴を許さない。そんな奴は殺してやる。そして、お前達は茜を傷付けた。だから、私が殺す」

 

「や、やめてくれ・・・」

 

「ああ、冥土の土産に名前を教えておこう。私の名前は・・・闇倉だ。まあ、もう死ぬから聞く必要もなかったがな」

 

そして闇倉は、心臓を刺し、首を切った。

 

「・・・包丁をじゃあ無理だったか。包丁が折れてしまったな。まあ、いいだろう」

 

「・・・ただいま」

 

と、そんな時に蓮が帰ってきた。

 

「ん?茜?どうし・・・‼︎おい、茜、お前、何を・・・」

 

「ん?ああ、蓮か。安心しろ、お前は殺さない。お前が茜の味方である限りな」

 

「・・・お前、誰だ?」

 

「ふふ、闇倉だ。茜の能力によって創られた人格だ。まあ、茜はその事を知らないがな」

 

「・・・」

 

「そんなに警戒するな。言ったろ?お前が茜の味方である限り、お前を殺す事はない。それじゃあな」

 

そして、闇倉は戻り、すぐに茜の意識が戻った。

 

「ん?・・・え?なんで、服が赤くなって・・・え?・・・き、きゃああああ!」

 

「!茜!落ち着け!」

 

「ち、違うの!わ、わ、私は、こんな事・・・」

 

「大丈夫だ。分かってる」

 

「わ、私、こ、こんな事・・・」

 

「大丈夫だから、落ち着け」

 

***

 

「・・・それから、数分後、茜は落ち着き、蓮が警察に連絡した。ただ、茜の服は血みどろだったからな。血を落とす為に風呂に入り、服については洗濯した。そして、警察がきて、事情を聞かれたが、元々から合わせていた話で乗り切り、今に至る」

 

「「「・・・」」」

 

・・・まあ、黙るだろうな。こんな話は。

 

「・・・紅ちゃんは、何時創られたの?」

 

「私は、そのすぐ後、蓮が茜に話し、創られた」

 

「つまりは、闇倉と違い、意識的に創られたのか・・・」

 

「ああ。だから、闇倉と違い、茜とも話すことが出来る」

 

「なるほど」

 

「・・・さて、お前達は、どうする?」

 

「決まってるっす!」

 

「うん、そうだね」

 

「ああ。気持ちは変わらない」

 

「・・・何時、闇倉に襲われるか分からないぞ?それでもか?」

 

私は、三人組に最終確認として聞いてみた、が

 

「ああ、それでもだ」

 

意見は変わらなかった。

 

「・・・そうか」

 

私は、嬉しかった。茜を、蓮を救える可能性の奴らに出会えた。

 

・・・茜には後で話しておこう。私が信用出来るといえば、分かってくれるだろう。

 

ただ、問題は蓮だ。

 

あいつは、一応、仲間にはなるだろうが、信用はしないだろう。

 

一体、どうすれば・・・

 

「ねえ?紅ちゃん?」

 

「ん?なんだ?」

 

いきなり猫目の奴が話しかけてきた・・・そういえば、名前を聞いていなかったな。

 

まあ、入れば分かるだろう。

 

「茜ちゃんのお姉ちゃんは?最後の最後にも出なかったけど・・・」

 

「・・・私は知っているが、私から話すべきではないだろう。蓮にでも聞け」

 

まあ、話してくれるかどうかは知らんがな。

 

そして、私は、三人組を家から出し、帰ってきた蓮に事情を話した。

 

「・・・」

 

「許せ。だが、私は彼奴らは信用出来ると思ったからした。それだけだ」

 

「・・・はあ、分かった。入ることになるんだろうが、悪いが、俺は信用出来ない」

 

「ああ、入るだけでもいい。すまないな」

 

「謝るぐらいなら入らせるな」

 

そう言うと、蓮は部屋へと戻った。

 

さて、この体を茜へと返さなければいけないな。




さて!どうでしたか!

「・・・テンションが変わってないね」

「だな」

だって、アニメですよ!メカクシティアクターズが放送されたんですよ!OP最高です!

「ああ、そうか」

キドさん!カッコ良かった!カノ君!愛してるよ!原作と違ってセト君もいたけど、それがまた良い!マリーちゃんの電気アンマアタック、マジ面白いwww

「・・・ウザすぎるから、これで締めよう。じゃあな」


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束縛レジスタンス(Ⅳ)

さあ!やって行きましょう!

「はあ、俺的には憂鬱だ・・・」

茜さんの為でしょう!?頑張って下さい!

それでは!どうぞ!


〜蓮side〜

 

「・・・」

 

「・・・」

 

俺と紅は朝から睨み合っている。

 

・・・いや、俺が一方的に睨みつけているだけか。

 

「・・・本当に、どうして彼奴らの所に行かなければならない様にした?紅。理由を言え」

 

「信用出来るからだ」

 

「その理由は?」

 

「彼奴らは、お前が能力を使っていたのに、引かなかった」

 

「そんなの、彼奴らも能力を持ってるからだろ?」

 

「それだけじゃない。この前の一件で溝が出来てもおかしくないことをお前は仕出かしたのに、彼奴らはまた現れた。だから、信用出来ると判断した」

 

「・・・」

 

紅の言ってることは当たっている。

 

実際、俺がこの前、彼奴らにしたことは溝が出来てもおかしくない。にも関わらず現れた。

 

その行動は、信用出来る奴に値するかもしれないが

 

「演技かもしれないぞ?」

 

「それはない。演技だとしたら上手すぎる。それに、アレだけしたんだ。人なら誰しも、またやられるかもしれないという考えが浮かんでくるだろう」

 

「・・・そうかもな」

 

「だろ?なら、もうこの話は終わりだ。もうそろそろ来る時間だろう」

 

「・・・」

 

「私は戻る。茜の準備はあっても私の準備はないからな」

 

そう言うと、紅は部屋へと戻っていった。

 

・・・仕方ない。茜も行くと言うなら行かないとな。

 

***

 

ピーンポーン

 

チャイムの音が響き、俺達は玄関へと向かった。

 

・・・ハジメ達には先に話している。分かってくれたから安心したよ。

 

そして、玄関を開くと猫目の男と、緑髪は同じだが、身長が違う女がいた。多分、姉妹なんだろう。

 

「・・・誰だ?」

 

「私は木戸 桜だ。昨日、此処に来た私と同じ緑髪の女の子の姉だ。よろしく」

 

「ああ、よろしく」

 

「僕の自己紹介はアジトでやるよ!それじゃあ行こうか!」

 

そう言うと、猫目の男が歩き始めた。

 

それを見た緑髪の姉も歩き始めた。

 

(・・・仕方ない)

 

俺達も、それを見て歩き始めた。

 

***

 

家から歩き始めて数分後。

 

猫目の男は、路地裏に入り始めた。

 

その路地裏は、入り組んでいて離れればアウトだろう。

 

・・・此処でワザと離れてもいいが、此処から出るのも一苦労するだろうからやめておく。

 

「ほら、着いたよ!此処が僕達のアジトだよ‼︎」

 

ようやく着いたらしい。

 

そのアジト(イタいな)のドア番号は107とあった。

 

・・・なんで107なんだ?他に無かったのか?

 

そして、猫目の男がドアを開けて入る。

 

それに続き、俺達も入っていった。

 

「帰ったか、カノ、サクラ姉さん」

 

「ああ」

 

「帰ったよー!」

 

「おかえり、兄さん。その二人がこの前から言ってた人?」

 

「うん!そうだよ!セイヤ」

 

今見ただけでこのアジトに住んでいる奴を数えると5人。

 

その中の一人がいないが、どうでもいいな。

 

「よく来てくれた。兎に角、そこに座ってくれ」

 

そう促された俺と茜はそのソファへと座った。

 

「さて、自己紹介をしていなかったな。俺はメカクシ団団員NO.1。団長のキドだ。よろしくな」

 

「改めて自己紹介をしよう。団員NO.2の木戸桜だ。よろしく」

 

「そして僕が団員NO.4の鹿野修哉だよ!カノって呼んでね!よろしくね!」

 

「俺は団員NO.5の鹿野聖矢。よろしく」

 

そう自己紹介された。No.が空いているが、それは昨日いたあの緑のツナギの男だろうな。

 

「本当は、昨日お前達が会った男の他にもう一人いるが・・・」

 

そう言うと、緑髪の女はすぐ近くにあるドアを見た。それに釣られて俺達も見たら。

 

「・・・」

 

白髪で髪がフワッフワした不思議の国のアリスのような服装の女の子がいた。

 

そいつは、ドアに身を隠す様にしてガクガクと震えていた。

 

そして、俺達が見ると

 

「・・・!」(バタンッ!)

 

・・・ドアを思いっきり閉めてしまった。

 

なんなんだ?あいつ。人見知りか?

 

「すまない。あいつは人見知りの究極系の様な奴なんだ。ちょっと待ってろ」

 

緑髪の女がそう言うと、あの白髪の女の子がいる部屋のドアを開け、そこで話していた。

 

多分、説得だろう。

 

そして、どうやら説得に成功したらしい。その女の子が出てきた。

 

だが、体はガクガクと震えたままだがな。

 

茜はその様子を見て苦笑している。

 

俺は睨みつけていたがな。

 

「ヒッ‼︎」

 

そんな俺を見て、悲鳴をあげていた。

 

・・・多少、罪悪感は感じるがそれを見て見ぬ振りをする。

 

「言ったろ?こいつは人見知りの究極系だと。だから、睨むのはやめてやれ」

 

「・・・お前達の事情なんて知ったことじゃないな」

 

「お前な・・・」

 

「俺は、茜が入ってみたいというから入るだけだ。だから知らん」

 

まあ、その答えを出させた元を辿れば紅の発言だがな。

 

「・・・」

 

緑髪の女は睨んできたが知らん。

 

「ま、まあまあ、落ち着いて下さい。お兄ちゃんも、睨むのはやめてあげて、ね?」

 

そんな剣呑な空気の中で、茜が割って入ってきた。

 

「・・・茜」

 

「ね?」

 

「・・・はあ、分かった」

 

茜に言われてしまえば仕方ない。

 

俺は、睨むのをやめた、が

 

「・・・何時の間に倒れたんだ?」

 

「お前が妹と話している時だ」

 

その女の子は気絶していた。

 

どうやら、本当に人見知りが激しすぎる子らしい。

 

まあ、対応を変えるつもりもないし、仲良しごっこをやるつもりもないからな、睨むのを辞める以外は気にしないでいいだろう。

 

「あ、そうそう、君達、ここの秘密を聞いたからもう返すことが出来ないよ?」

 

「だろうな。茜、どうする?お前が決めていい」

 

「え!?私が?」

 

「ああ。お前が決めた方に俺も従おう」

 

「・・・じ、じゃあ、入らせてもらいます」

 

「じゃあ、俺も入ろう」

 

「了解!それじゃあ、明日からでいいから此処に来てね!今日はもう帰っていいよ〜!」

 

「俺は仕事で来れない時の方が多いがな」

 

「それでもいいから、時々来てね!待ってるよ」

 

俺達は、その後、家へと戻った。

 

・・・これで、茜が幸せになるならいいんだがな。




それで、どうでしたか?

「なんか、俺がシスコンに感じるんだが?」

違います。シスコンではありません。ただ、茜さんの幸せを願ってるだけですから!

「いや、俺自身の事だから俺は大丈夫だ」

ならいいです。それでは!さようなら〜!


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アカネの交錯精神(Ⅲ)

*元は番外編にしていた茜さんの話です。内容は変わってません。

此方の身勝手で本当に申し訳ありません。

それでは!どうぞ!


〜茜side〜

 

私達がメカクシ団に入ってから二日後。

 

今は家で住んでいる訳ではなく、メカクシ団アジトに住んでいる。

 

もちろん、何時家に戻ってもいい様に、時々戻って掃除もしている。

 

ハジメやミーヤ、そしてラピ(ウサギ)とルリちゃん(小鳥)はアジトへと移した。

 

ハジメ以外は全員同じ態度だったけど、ハジメだけは違った。

 

ハジメは団長さんと小桜さん、桜さんと聖矢君には懐いているのですが、鹿野さんと瀬戸さんには懐きません。

 

ハジメが懐かないのは嘘つきだけなのですが・・・

 

「う〜ん・・・」

 

「どうしたんすか?アカネさん」

 

私がハジメの事で悩んでいると瀬戸さんが話しかけてきました。

 

・・・私は皆さんの事を信用しようとしているのに、今だに身構えてしまいます。

 

そんな自分を嫌いになりそうです・・・。

 

「瀬戸さん、実は・・・」

 

私は、ハジメの事で悩んでいることを話した。

 

・・・何故か、私は瀬戸さんが一番話しやすく感じます。

 

悩みとかはお兄ちゃんと瀬戸さんに聞いてもらっています(昨日も瀬戸さんに聞きました)。

 

お兄ちゃんを除けば、一番話してるのは瀬戸さんですね。

 

「はは、確かに俺はハジメに嫌われてるっすね!」

 

「本当にすみません・・・でも、何で嫌ってるのかが分からないんです。それを解決したいんですけど・・・」

 

「俺も、ハジメと仲良くなりたいっすからね・・・」

 

私達は一緒に考えました。

 

「・・・あ!いい事思い付いたっす!」

 

「!本当ですか!」

 

「はいっす!」

 

そして、瀬戸さんのいい考えとは・・・

 

「一緒に散歩に行くっすよ!」

 

「・・・え?」

 

・・・まさかの散歩でした。

 

***

 

「ハジメ!行くっすよ!」

 

「ワン!ワン!」

 

今は、瀬戸さんと一緒にハジメの散歩に来ています。

 

そして、瀬戸さんはフリスビーをしています。

 

私はベンチに座って待ってます。

 

「おー!ハジメはいい子っすね〜!」(ナデナデ)

 

「ワンッ!ヘッヘッヘッ」

 

「あの〜、休憩しませんか?瀬戸さん」

 

「そうっすね!ずっと遊んでたっすから流石に疲れたっすね!ハジメ!」

 

まさかの自分じゃなくてハジメですか・・・(汗

 

・・・本当に、動物が大好きなんですね。

 

そして、私達は休憩を取ることにした。

 

「はい、どうぞ。お水です」

 

「あ、ありがとうっす!」

 

瀬戸さんは爽やかな笑顔を私に向けてくれました。

 

私も笑顔を向けます。

 

「!?そ、その、お水のお礼は・・・」

 

?何故か瀬戸さんの顔が赤くなってしまっています。どうしたでしょう?

 

「お礼ですか?必要ありませんよ。ハジメと遊んでくれるだけで有難いんですから」

 

・・・これで、ハジメも瀬戸さんと仲良くしてくれれば嬉しいんですがね。

 

***

 

「ウーッ!ワンッワンッ!」

 

「ハジメ、餌をあげるだけっすよ・・・」

 

「・・・」

 

・・・ハジメと瀬戸さんの距離は、縮まってませんでした。残念です。



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束縛レジスタンス(Ⅴ)

色々と読者様にご迷惑をお掛けしまして申し訳ありません。

ちょっとずつ、書いて行こうと思います!

でも、早くデパートテロの所を書きたいよ(一話は書いてるけどね)

それでは!どうぞ!


〜蓮side〜

 

俺は、仕事の為にテレビ局に来ていた。

 

「でさ〜・・・」

 

「マジかよ!?」

 

「マジもんみたいだな・・・」

 

「ヘェ〜、なら・・・」

 

俺達は雑談している。本番前の緊張感をほぐす為に。

 

・・・本当に、この三人はいい奴らだよ。

 

「あ、あの〜、れ、蓮さんですか?」

 

「ん?・・・ああ、そうだが、君は桃だっけ?」

 

「‼︎は、はい!如月桃です!15歳です!よろしくお願いします!」

 

モモは顔を赤くしながら俺にそう挨拶してきた・・・はぁ、面倒臭い。

 

「そうか、で?何の様だ?」

 

「は、はい!じ、じ、実はですね・・・」

 

と、今度はモジモジしながら何かを言おうとしているが切り出せないでいるみたいだ。

 

「・・・サインか?」

 

「は、はい!あ、その、皆さんの!」

 

「お!俺達も?」

 

「OK!いいよ!サインしてあげるよ!」

 

「俺、モモちゃんの大ファンなんだよな〜!いや〜、会えてよかったよ!」

 

「い、いや〜、大袈裟ですよ・・・ね?」

 

モモはそう言うと俺に同意を求めてきた・・・仕方ないか。

 

「いや、大袈裟でもないと思うがな」

 

「れ、蓮さん!?」

 

ちなみに、コレは本心だ。ただ、俺達兄妹は除くと付くがな。

 

「ファンの奴は会えただけでも嬉しいものだと思うぞ?」

 

「そ、そうですね!」

 

モモの顔は明らかに変わった。

 

普通の顔から赤みがかった顔に。

 

(・・・本当に面倒臭いな。俺は好きじゃないのに)

 

俺は鈍感というわけじゃない。こういう風に歌手活動をする前は普通に恋愛をしていた。

 

・・・どれもいい恋愛じゃなかったがな。

 

それ以来、俺は極力人を、特に女を信用しない様にしている。

 

信用した時に何されるか分からないからな。

 

「おーい!モモちゃん達!時間だよ!早くスタジオに入って‼︎」

 

「あ、ハーイ!それでは!行きましょう!皆さん!ほら、蓮さん!」

 

と言って、俺に手を差し出してくるモモ。

 

「・・・行こう」

 

俺は差し出された手を取らずに先に向かった。

 

・・・三人がモモの奴をフォローしてる声が聞こえる。

 

その中に『あいつはシャイなんだ』ってのもあったが、俺はシャイじゃないからな?

 

***

 

そして、俺はバイクに乗ってアジト近くまで帰ってきて、歩きでアジトに帰ってきた。

 

「・・・ん?」

 

俺は、あとちょっと先にある何時もの路地裏から出てくる猫目を見た。

 

「・・・ほっとくか」

 

俺には関係のないことだ。踏み入るべき問題じゃないだろう。

 

俺はそのまま路地裏に入り、アジトに戻って来た。

 

「ただいま」

 

「ああ、おかえり」

 

「・・・」

 

俺は緑髪の団長を無視した。

 

「お前、返事ぐらい・・・」

 

「ちゃんと言ったと思うが?最初に」

 

「・・・それもそうだな」

 

何か言いたそうな顔をしていたが、口には出さなかったようだ。

 

「ワンワンッ!」

 

「おかえり〜!お兄ちゃん!」

 

奥からハジメと茜が出てきた。

 

そして、ハジメは俺に飛び込んで来て顔を舐め始めた。

 

「おい、ハジメ!やめ、はは!分かった分かった!だから舐めるのを一旦止めろ、ハジメ!」

 

「ワンッ!」

 

ハジメは、俺の言うことをちゃんと聞いてくれた。でも、尻尾が振られているままなのは素直に嬉しいな。

 

俺は、ハジメの頭を撫でた。ハジメの顔は嬉しそうに見えた。

 

「はあ、たく。で?夕食は食べたのか?」

 

「・・・いや、食べていない」

 

折角のハジメとの時間を・・・

 

まあ、仕方ないか。夕食が冷めてしまうからな。

 

・・・本来は茜のを食べたい所だが、まあいいだろう。

 

そして、俺達は奥へと戻って行った。



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閑話1

今回は、カノ君の方の話をします

皆さんからしたら余り意味が無いように感じるでしょうが、まあ、読んで行って下さい

それでは!どうぞ!


カノは、アジトがある路地とはまた別の場所で、『夜咄ディセイブ』とスプレーで書かれた壁を背にして顔を下に向けて座り込んでいた。

 

そして、カノに近付く影が一つ。

 

黒のローブのような膝くらいまであるフード付きマントを着て、目をまるで見せないように目深に被り、キドの様に長い茶髪の前髪(横の部分だけ)を出した小学三年生ぐらいの背をした子供がいた。

 

「・・・ん?やあ!また来てくれたんだね!」

 

「・・・ハァ、ええ。その通りよ」

 

今の会話の通り、この二人は初対面ではないのだ。

 

その子は、カノの隣に、いつも通り座り込んだ。

 

「それで?今回はどうしたの?」

 

その女の子はカノにそう問いた。

 

「・・・みんな、本当の僕を見てくれてるのかなって思っちゃって。それで、あの場に居ずらくて・・・」

 

「・・・」

 

女の子は、カノの悩みを聞くと、少し考え込み、こう答えた。

 

「・・・人は人の事を分からないよ」

 

「・・・」

 

「カノにとっての『本当』と、その人達にとっての『本当』は違う可能性があるよ。現に、皆分かってないかもって貴方は思ってるしね」

 

「いや、そういうわけじゃ・・・」

 

「ああ、カノが言ってる『能力』が関係してるの?」

 

「ああ、なんだ!あの法螺噺を信じてくれてたんだ!」

 

カノは驚きの表情を隠し、笑顔に欺いた。

 

「ええ。まあね」

 

そして、その女の子はそれに気付かずに話を続けた。

 

「だったら、貴方の能力を看板出来る人がいるんでしょ?そして、カノはその人の事が大好きなんでしょ?それなのに、どうしてそんな風に悩むわけ?悩みどころなんて見つからないけれど・・・」

 

女の子は、カノが以前話してくれた内容を言った。

 

「うん、そうだけど・・・」

 

「・・・信じられない?」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

数秒の沈黙。そして、それを破ったのは

 

「・・・ハァ、カノは馬鹿だね」

 

その女の子だった。

 

「え?ば、馬鹿!?僕、馬鹿じゃないよ!?」

 

カノは自分は馬鹿じゃないと否定するが無駄である。

 

「いや、馬鹿だよ。その人の能力の内容を、私はカノから聞いてるだけで直接聞いていない。だから私は信じないっていうなら分かるけど、その能力を直接見たであろうカノが信じなくてどうするわけ?本当に一人になるよ?」

 

「・・・」

 

「それに、思い出して見たら?その人の行動、その人との会話を」

 

「・・・あ」

 

カノは、仲間であり、彼女でもあるサクラとの会話などを思い出し、何かに気付いた。

 

「・・・ね?」

 

「うん、本当に馬鹿だね。僕は。こんな事にも気付かないなんて。僕、彼女の彼氏、失格かもね」

 

「かもね。でも、だったら、合格になるまで頑張ればいいよ」

 

「そうだね!僕、頑張るよ!ありがとう!・・・あ、ねえ、前から名前を聞いても答えてくれなかったけどさ、今回は答えてくれるかな?」

 

「・・・ごめん。教えれない」

 

「・・・そっか。分かったよ」

 

カノは、その答えを聞くと、悲しそうな顔になった。

 

「‼︎・・・」

 

その女の子は、その顔を見ると、何かに耐える様な顔をした。

 

「・・・それじゃあ、もういいよね?カノ」

 

「うん。もう大丈夫だよ。ありがとうね!」

 

カノはそう言うと、その場から去って行った。

 

「・・・はあ、なんで欺くの?驚きの表情を笑顔に欺いたりさ・・・そんな事しても、自分が傷付くだけなんだよ?分かってるの?」

 

・・・どうやら、女の子は、欺いていた事に気付いていたようだ。

 

そして、その女の子も立ち上がり、女の子が来た道とは逆の方向へと歩き始め、その場から消えてしまった。

 

まるで、夜の闇に溶けたかの様に。




さて、皆さんどうでしたか?

カノ君が出て行っていた時のカノくんのお話でした

そして、多分、疑問を持つ方もいるでしょうが、今回出た少女は一体誰なのか?

これについては、話が先に進めば分かります

・・・まあ、正体が分かるまでまだまだ時間が掛かりますがね

それでは!さようなら〜!


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アカネの交錯精神(Ⅳ)

〜茜side〜

 

「茜、コレ」

 

私は、お兄ちゃんから呼ばれたため、お兄ちゃんの部屋にいる

 

それで、今貰ったものだけど

 

「あ!ライブチケット!しかも、お兄ちゃんの!」

 

そう。お兄ちゃんが出演するライブチケットを私は貰ったのだ

 

「え?本当にいいの?」

 

「はは!茜は何時もそう聞くけど俺は別に構わない。むしろ、見ていてくれた方がやる気がでる。『失敗出来ない!』って気持ちになってさ」

 

「あ、ありがとう!お兄ちゃん!」

 

私がそう言うと、お兄ちゃんは一度、笑顔で此方を見てから近くにあったギターを持ち、ギターを持って練習しようとしていた

 

そして、私はルンルン気分で帰ろう・・・として、あることに気が付き、お兄ちゃんに聞いてみた

 

「ねえ、お兄ちゃん」

 

その声を聞いたお兄ちゃんは顔を上げてくれました

 

「ん?なんだ?茜」

 

「団長さん達にもチケット渡してあげないの?」

 

「・・・」

 

私がそう言うと、お兄ちゃんの顔は途端に嫌そうになりました

 

・・・お兄ちゃんは私以上に皆さんの事を信用していません

 

だから、こういう風にチケットを上げるのも私一人だけです

 

「・・・やるわけないだろ。なんで彼奴らなんかに」

 

「・・・そっか。ねえ、お兄ちゃん」

 

「?」

 

「チケット余ってないかな?私が直接渡して来るから」

 

「・・・」

 

「お願い」

 

お兄ちゃんは私のお願いを聞き届けてあげるべきかを悩んでいるみたいです

 

・・・お願い、お兄ちゃん

 

「・・・はあ、分かったよ」

 

「!お兄ちゃん!」

 

「ただし、今日はもうそれ一枚しかないから明日だ。いいな?」

 

「うん!ありがとう!お兄ちゃん!」

 

私は嬉しさの余り、お兄ちゃんに抱きつきました

 

「はあ、茜の頼みを余り無下にしたくないからな」

 

お兄ちゃんはそういいながら、私の頭を撫でてくれていました

 

私は抱き着くのをやめて、お兄ちゃんから離れました

 

「じゃあ、私、皆に言ってくるね!」

 

「ああ」

 

私は走りたい衝動を抑えて歩いて出ました

 

微かに見えたお兄ちゃんの様子は、ギターを抱えて練習している姿でした

 

***

 

私は、団長さん達にさっきの事を話しました

 

「ひ、人が一杯の所に行くの?セト」

 

「そういうことになるっすね、マリー」

 

小桜さんは人見知りが激しすぎる方なので、やはり、人が一杯いる所は苦手なようです。少し、悪いことをしてしまったような気がします

 

「ほお?私も、あのバンドの曲は好きだからな。行ってみたいな」

 

「ええ!サクラちゃん、僕は?ねえ!」

 

「いや、安心しろカノ。私はあくまで『曲』と『バンド四人組』が好きなだけで、『個人』の彼奴らを好きというわけじゃない。それに、私が男として好きなのはカノだけだ」

 

「さ、サクラちゃーーん!」

 

「うわぁ!その体制から飛びついてくるな!て、こら!何をしようとして、ん!」

 

・・・え、え〜っとですね、すみせん。皆さんが集まっているこの状態で、桜さんと鹿野さんが普通に、一目も憚らずにキスしています

 

こ、これ、私はどう反応すればいいんでしょうか?

 

「ああ、気にするなアカネ。アレは何時もの事だ」

 

「そうっすね。何時もカノがああやってるっすよ。だから、何時ものことっす」

 

本当に何時もの事のようで、団長さんと瀬戸さんと聖矢君の態度は変わりませんでした。ただ・・・

 

「ふふ、サクカノ、カノサク、ふふ、ふふふふふふふふ」

 

「ま、小桜さん?」

 

「ああ、マリーの事も気にしなくていいから、大丈夫。むしろ、アレが無かったらちょっと異常だから」

 

「え?いや、でも・・・」

 

「アカネ、マリーは腐女子なんだ」

 

「あ・・・(察)」

 

なるほど、なら、この対応は頷けますね。でも、腐女子って私のイメージですが、○Lとか○Lとかが好きなんじゃあ・・・(ちなみに、コレは私のイメージでもあります by主)

 

「まあ、兎も角だ。本当にそのライブに連れて行って貰ってもいいんだな?」

 

「あ、はい。大丈夫です」

 

「・・・そうか」

 

団長さんは最後に何か言いたそうにしていましたが、諦めたのかは分かりませんが何も言ってきませんでした

 

・・・団長さんが言おうとした内容は分かっています

 

敬語を外せ。団長さんは、これを言いたかったのでしょうね。けど

 

(まだ、私もちゃんとは信用出来ないでいるみたいなんです。我慢して下さい。団長さん)

 

こうして、その日は終わった



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番外編〜シンタローの誕生日〜

はい!今日はシンタローさんの誕生日ということで!今回、番外編として書かせて頂きます!

まあ、活動報告欄でも良かったのですが書きたくなりましたので

あ、ちなみに、今出ている人(モモやシンタローやエネあり、ヒビヤ、コノハ、ヒヨリなし)でやらせて頂きますのでご了承下さい

それでは!どうぞ!


今、茜達はシンタローの誕生日を祝う為に、色々と準備をしていた

 

「ねえ、キド。ケーキは出来た?」

 

「ああ、準備出来ている」

 

「ほらほら、モモ達が来るまでに飾り付けも終わらせるぞ」

 

「ぷ、プレゼントってこれで良いのかな?セト」

 

「うん!大丈夫っすよ!マリー!シンタローさんも喜んでくれるっす!」

 

「ほ、本当に?良かった〜」

 

「ねえねえ、サクラちゃん。この飾りは此処でいいの?」

 

「あ、こっちも合ってる?」

 

「ああ、両方合っている」

 

そして、準備すること約十分

 

これだけ掛かった理由の半分はマリーが転けて、飾りが取れたりなどのハプニングである

 

「さて、後はシンタロー達が来るのを待つだけだな」

 

「そうだな」

 

すると、玄関の方からがチャッと音がしたと同時に話し声も聞こえてきた

 

「だーかーらー!もっとちゃんと歩いてよ、お兄ちゃん!全く。此処まで歩いて来るだけでなんでそんなにゼーゼー言ってるわけ?」

 

「本当ですよ!ご主人!本当に気持ち悪いですね、ご主人は」

 

「お前ら、俺を虐めてそんなに楽しいのか!?ニートの心は硝子の様に壊れやすいんだぞ!?」

 

「いいから!さっさと入ってよ!」

 

「全く、なんでこんなに急いでるんだよ・・・」

 

そして、茜達がいる部屋にシンタローが入ってきた瞬間!

 

パパン!パパン!

 

「「「「「「「「誕生日、おめでとうー!」」」」」」」」

 

「・・・え?」

 

茜達はクラッカーを鳴らし、シンタローの誕生日を祝った

 

「いや〜、驚いた?シンタロー君の為に誕生日パーティーを開いてあげたんだよ?感謝して・・・ぐえ!」

 

カノが余計な事を言おうとしたのを一早く察知したサクラは、カノにアイアンクローをした

 

「・・・兄さん」

 

その様子を見ていた弟の聖矢はそれはそれは哀れんだ目をしていたとか

 

「し、シンタロー、これ」

 

マリーはシンタローに自分が編んだマフラーを渡してあげた・・・赤色の

 

「・・・これ」

 

「わ、私が頑張って編んだものだよ。どうかな?」

 

マリーはとても心配そうな顔をしていた

 

「・・・いや、ありがとな。マリー」

 

「!セト!喜んで貰えたよ!」

 

「良かったっすね!マリー!」

 

「セトの言う通りだったね!」

 

マリーは喜びをセトに伝えていた

 

「よし、プレゼントは後で渡してやれ。今はご飯を食べるぞ。冷めると美味しくないからな」

 

「そうだね!よし!食べよう!」

 

こうして、シンタローの誕生日パーティーは、ちょっと騒がしいながらも幕を閉じました

 

***

 

シンタローの部屋

 

そこには、今日貰ったプレゼントばかりが置いてありましたが、その中の一つをシンタローは手に持って眺めていた

 

勿論、赤色のマフラーだ

 

「・・・この時期にマフラーか。あいつ、暑くなかったのか?」

 

シンタローは、ある一人の少女との、もう戻らない日常に思いを馳せていた

 

「・・・なあ、お前は暑くなかったのか?アヤノ」

 

その声は、誰にも聞こえず、部屋の中で消えてしまった

 

・・・いや、一人は聞いていましたね

 

「・・・ご主人」

 

シンタローのパソコンに住むエネミーことエネが

 

こうして、この日は本当に終わったとさ



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アカネの交錯精神(Ⅴ)

前回、茜さん達はライブに行くような描写をしましたが、その時の話を飛ばします

ですが、描写は少ししましたので、多分、大丈夫かと・・・

それでは!どうぞ!


〜茜side〜

 

ライブを見に行ってから三日後の今日

 

私は団長さんからある話を聞いていました

 

「誕生日?鹿野さんの?」

 

「ああ、そうだ。でだ、俺達は鹿野の誕生日パーティーをしようと思っているんだ。アカネ達も参加してくれ」

 

団長さんは私にそう言いました

 

「私は良いけど、お兄ちゃんにはその事を言ったんですか?」

 

「え?あ、ああ、いや、まだだが・・・」

 

団長さんは少し顔を赤くしてそう言いました

 

・・・実は、この前のライブの時に聞いて、そして見たお兄ちゃんに、団長さんは恋してしまったようです

 

まあ、気持ちは分かる気がしますがね

 

でも、お兄ちゃんの事ですから、きっと気付いているんでしょう

 

お兄ちゃんには早く心を開いて欲しいですし、『過去』の恋愛は捨てる・・・と言えば良いのでしょうか?まあ兎に角、今の恋愛をしてほしいですね

 

あ、そうそう、そのライブの帰り道でも団長さんは積極的にお兄ちゃんに話しかけていましたよ。お兄ちゃんの態度も満更ではなさそうでしたから、きっと大丈夫・・・ですよね?

 

・・・いや、きっと、自分の心に嘘を付くんでしょうね、お兄ちゃんなら

 

「アカネ?どうした?」

 

「・・・へ?あ、いや、ごめんなさい。ボーッとしてしまいました」

 

「・・・そうか。でだな、まあ、レンには俺から話しておこうと思うが、彼奴はいつ帰ってくるか、アカネは知らないか?」

 

ああ、そういうことか。まあ、お兄ちゃんは今だに教えていませんから、仕方ありませんね

 

「夜遅くにはなるって言ってましたよ?明確な時間まではちょっと・・・」

 

「そうか、分かった」

 

団長さんはそう言うと、一度、自分の部屋へと戻りました

 

私は、何をしましょうかね?

 

「ニャー」

 

「あ、ミーヤ」

 

いつの間にか、ミーヤが私の足元に来ていました

 

そういえば、ちゃんと説明はしたことありませんでしたね

 

ミーヤは、黒猫で、何時も私がミーヤの毛を櫛で梳かしています

 

だから、毛並みは何時も整ってますよ

 

「ニャーオ、ゴロゴロ」

 

ミーヤは喉を鳴らして足にすり寄って来ました。これは

 

「お腹が空いたの?ミーヤ」

 

私はミーヤを抱き上げて、そう言うと、ミーヤは肯定するかのように鳴きました

 

「うーん、でも、まだご飯の時間じゃないからな・・・」

 

あ、でも、お菓子は良いんでしたか

 

「よし、それなら」

 

私は、猫用のお菓子を出して、ミーヤに少しあげました

 

「ニャーオ」

 

「ふふ♪美味しい?ミーヤ」

 

「ニャーオ」

 

ミーヤの頭を撫でると、ミーヤは気持ち良さそうに目を瞑りました

 

私がミーヤを撫でていると、ドアの方からガチャっと聞こえた為、そちらを向くと、瀬戸さんと小桜さんがいました

 

「瀬戸さん?小桜さん?」

 

「あ、アカネだ!あと、ミーヤも!」

 

小桜さんはとても嬉しそうな顔をしてミーヤに近付くと、ミーヤを撫で始めました

 

私は、瀬戸さんに顔を向けて

 

「瀬戸さんもどうですか?ミーヤを撫でていいですよ?」

 

と、言いました

 

「え?良いんすか?」

 

「はい!勿論です!」

 

私は、瀬戸さんに笑顔を向けて肯定すると、瀬戸さんの顔が少し赤くなりました

 

・・・いえ、まさかですね。となると

 

「瀬戸さん?どうしました?顔が赤い様ですが・・・」

 

私は少し瀬戸さんに近付いて聞くと

 

「‼︎いや、大丈夫っすよ!そう、全然!それよりも、ミーヤを触らせてもらうっすね!」

 

瀬戸さんはそう言うと、少し足早に私の横を通り過ぎて、ミーヤの元に行きました

 

・・・何故か、胸がちくっととしましたが、病気でしょうか?

 

あ、そうそう。ミーヤはハジメとは違い、私やお兄ちゃんを除けると、比較的良好です

 

まあ、皆に同じ態度で接してますからそう見えるだけかもしれませんがね

 

さて、鹿野さんの誕生日プレゼント、どうしましょうか?

 




さて、今回はどうでしたか?

あ、カノ君の誕生日は番外編扱いで書かせて頂きます!

それでは!さようなら〜!


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番外編〜カノの誕生日〜

シンタローの誕生日から余り時間が経っていないけれど、カノ君の誕生日だから仕方ないね!

ということで!カノ君の誕生日を祝う為に書きました!どうぞ!


〜茜side〜

 

翌日の朝

 

私達は密かに準備をしています

 

朝、カノさんが降りて来ましたが、私達の様子を見た後、何かに落胆していたのが気になりますが、今は準備に集中しましょう

 

団長さんが折角、カノさんに買い物を頼んで追い出したのに、準備をしている途中に帰って来られたら元も子もないです!

 

「団長さん、飾りは此処でいいでしょうか?」

 

「ああ、そこでいい」

 

「ワン、ワン」

 

ハジメが団長さんに何かを伝える為に吠えていました。よく見ると、ハジメの足元に壁に掛ける沢山のリボンが入った箱がありました

 

「おお、ハジメ。その飾り付け用の道具を茜の元に持って行ってやってくれ。頼む」

 

「ワン!」

 

ハジメはそれに「了解!」と言うかのように吠えて、私の元にその箱を持って・・・いえ、箱を押しながら持って来てくれました

 

「ハジメ、ありがとう!」

 

私は、ハジメの頭を撫でて、お礼を言いました

 

ハジメはとても気持ち良さそうな顔で撫でられていました

 

そんな時に、部屋のドアが開き

 

「ん?何しているんだ?」

 

お兄ちゃんが帰宅して来ました

 

「あ!お兄ちゃん!」

 

「レン、帰ったか。ほら、昨日話した・・・」

 

「・・・ああ、あれか。じゃあ、手伝うか」

 

・・・え?

 

「お、お兄ちゃん、今なんて・・・」

 

私は、お兄ちゃんが言ったことが信じられず、もう一度聞き返してしまいました

 

だって、私以上に人間不信なお兄ちゃんがああ言うとは思っていなくて、つい・・・

 

「あのな、自分の身になって考えて、この行動を決めたんだ。だから、そこまで驚くことじゃないだろ」

 

私の言葉と反応を見たお兄ちゃんは、若干、呆れながらそう言いました

 

「ご、ごめんね、お兄ちゃん・・・」

 

「いや、怒ってないからしょぼくれるな」

 

お兄ちゃんは、私の様子を見て、頭を撫でてくれました

 

・・・が、その所為なのか、少し、眠たく、なって・・・

 

私の意識は、そこで完全に途切れました

 

〜カノside〜

 

「ハァ・・・」

 

僕は、キドに頼まれたものを買って帰ろうとしたけど、キドからはゆっくりしてこいと言われ、サクラちゃんにも同じ事を言われて、ちょっと憂鬱な気分である

 

「・・・誰も僕の誕生日を覚えてないのかな〜」

 

そう、今日は僕の誕生日。だから、皆からの反応を楽しみにリビングに入ったのに・・・

 

〜回想〜

 

「おっはよー!皆!」

 

「ん?ああ、ようやく起きたか、カノ」

 

キドは今日がどんな日なのか分かっていないかのような反応で僕に挨拶した

 

「ーーーえ?ね、ねぇ、キド」

 

僕は楽しみにしていた反応とは違ったことに動揺してしまい、欺くことすら忘れて、キドに聞こうとしたら、サクラちゃんが来た

 

「お、カノ、起きたか。おはよう」

 

・・・でも、こっちも普通の対応だった

 

「ね、ねえ?サクラちゃん」

 

「ん?なんだ?カノ」

 

サクラちゃんは可愛らしく首を傾げて聞いてきた

 

いつもの僕なら「可愛すぎる!」と言って抱きつくけど、今の僕はそんな気分じゃないから無理だ

 

「サクラちゃんは、今日が何の日か、知ってる?」

 

僕はサクラちゃんに聞いてみたすると・・・

 

「今日?何かをあったか?」

 

無慈悲な答えが返ってきた

 

〜回想終了〜

 

あの後、僕はキドに買い物を頼まれて今の状態にあるわけだけど・・・今の気分じゃ帰りたくない。だって・・・

 

「僕の居場所、ないんだよね・・・」

 

そう。会って間もないアカネちゃんやレン君なら兎も角、子供の頃から一緒のキドや、彼女であるサクラちゃん。その上、血の繋がった弟の聖矢にさえ「知らない」って言われたんだ

 

帰りたくもなくなるでしょ?

 

「・・・あ」

 

僕は、いつの間にやら何時も『あの子』と会う路地裏に来ていた

 

「・・・来るわけないだろうけど」

 

僕は、何時もの様に座り込んだ

 

そして、それから数分して・・・

 

「珍しいね。カノが昼間からここに来るなんて」

 

何時もの服装で、何時も通り、僕に顔を見せない様に顔を覆うぐらいのフードを被った『あの子』が来た

 

「・・・」

 

「・・・何か、訳ありみたいだね」

 

そう言うと、その子は僕の隣に座って

 

「悩みがあるなら聞くよ?何があったの?」

 

と、その子は聞いてくれた

 

「・・・ねぇ、君は僕の誕生日を知ってる?」

 

「知ってるよ。今日でしょ?カノから聞いたからね。それがどうしたの?」

 

彼女は僕の顔を隣で見ながら聞いてきた。僕からは見えないのが残念だけどね

 

「・・・君以外の皆が僕の誕生日を忘れてるんだ」

 

「・・・」

 

僕は、その子にさっきまであった事を全部話した

 

そして、最後まで黙って聞いていてくれたその子は、少しの間沈黙していた

 

・・・いや、考えていたんだろうね

 

少ししてから、僕に言ってきた

 

「ねえ、カノ。もう夕方だし、帰ったら?」

 

「・・・でも、彼処にはもう、僕の居場所は」

 

「大丈夫だよ。居場所はまだ残ってる。だから、もう帰りなよ。きっと良いことが起こるから。ね?」

 

彼女はそう言うと、そのまま立ち上がり、僕に手を振りながら「またね」っと言って帰ってしまった

 

「・・・良いこと、か」

 

僕は、その言葉に期待したくて、アジトに帰ってみた

 

そして、リビングの扉を開くと、それと同時に何かの破裂音が聞こて、僕の目の前には大量の紙吹雪と紙テープが舞っている光景が目に飛び込んで来た

 

「・・・え?」

 

「「「「「「カノ(猫目)、誕生日おめでとう!」」」」」」

 

「え?え?皆、覚えてたの?」

 

僕は、驚きの余り、また欺くのを忘れてしまっていた

 

「当然だろ?お前の誕生日を忘れるわけがないだろ。何年一緒だと思ってるんだ」

 

キドが僕にそう言ってくれた

 

「そうだよ、兄さん。第一、僕は兄さんの血の繋がった弟だよ?それこそ、忘れるわけがないよ」

 

聖矢が僕にそう言っくれた

 

「そうっすよ!俺だって同じっす!忘れるわけがないっすよ!」

 

セトが爽やかな笑顔を僕に向けながらそう言ってくれた

 

「私はお前の彼女であり、お前達にとっては姉だぞ?忘れるわけがないだら」

 

サクラちゃんが呆れた顔でそう言ってくれた

 

「・・・皆、そうだね!」

 

僕は、皆を信じ切れてなかったんだね。だから・・・

 

「あれ?でも、レン君は何で分かったの?それに、こういう事には参加しなさそうだけど・・・」

 

僕は一つの疑問をレン君にぶつけてみた。すると・・・

 

「ああ、キドから聞いた。それに、俺自身がされて嬉しいことをしないわけにはいかないだろ?」

 

レン君は腕を組みながら僕にそう言ってきた

 

「そうだったんだ!ありがとう!・・・それで?アカネちゃんは?」

 

僕は、この中で一人だけ居ないアカネちゃんの存在が気になって聞いてみた。すると

 

「・・・彼処だ」

 

レン君が僕から見て左を指差したから、そっちを見て見ると

 

「ん〜?皆〜?どうしたの?あ!誰々!その人!」

 

「・・・え?あ、アカネちゃん?」

 

性格が全く違うアカネちゃんがそこにいた

 

「あ、アカネちゃん?どうしたのかな〜?何か、全然性格が違うんだけど?」

 

僕は動揺しながらも欺いて、笑顔を見せた。けど、アカネちゃんは首を傾げながら

 

「アカネ?誰それ?私は『楓』だよ!よろしくね!猫ちゃん!」

 

「え?ね、猫ちゃん?」

 

アカネちゃん、もとい楓ちゃんは僕の事を『猫ちゃん』と言った・・・え?なんで?

 

「・・・お前がなに考えてるかは何と無く分かるから答えておこう。多分、お前が猫目だから、それからきてるんだろう」

 

「ああ、なるほど」

 

その後は、誕生日パーティーをして、ケーキやプレゼントも貰って、其の後のこと

 

僕とサクラちゃんは僕の部屋にいる

 

というか、僕が無理矢理連れてきた

 

「カノ?どうし「今は二人きりだから其の呼び名は辞めて」分かった、修哉。それで?どうしたんだ?」

 

サクラちゃんは、首を傾げながらそう聞いてきた。この状況でも分からないんだね、サクラちゃん

 

「ねえ、今日でしょは僕の誕生日でしょう?」

 

「?何を当然な事を、て、まさか!?」

 

お?サクラちゃんはようやく気付いたみたいだね!

 

「そ!ということで、プレゼント、貰うね!」

 

僕はそう言うと、そのままサクラちゃんにキスした

 

其の後の展開は、みんなで想像してね!




さて、今回は長くなってしまいましたがどうでしたか?

私は、正直、折角のカノ君の誕生日での話を駄文にしてしまった気がしてなりません。いや、真面目に

カノ君!ごめんなさい!(DOGEZA☆)

それでは!さようなら〜!


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アカネの交錯精神(Ⅵ)

〜茜side〜

 

私は、自分の部屋のベッドに座って考え事をしています。

 

何を考えているのかと言うと、先日の鹿野さんのパーティーの事です。

 

私は、準備の時に眠気に勝てずに寝てしまったはずなのに、気が付いたら皆さんと一緒にパーティーをしていました。

 

・・・時々あった事ですが、流石に今回のはおかしすぎます。

 

だから、それについて考えていますが、一向に答えが出ません。

 

明日からは学校ですから、どうすればいいのか・・・。

 

そう考えていると、扉を誰かがノックする音が聞こえてきました。

 

「どうぞ」

 

私が許可すると、瀬戸さんが入ってきました。

 

「失礼するっす。どうしたんすか?朝の時もそうっすけど、元気が無いっすよ?」

 

瀬戸さんはそう言いながら私に近付き、私の隣に座りました。

 

「いえ、少し気になることがありまして・・・」

 

私は、自分が考えていたことを瀬戸さんにも話しました。

 

(・・・あれ?どうして私は瀬戸さんに話してるの?)

 

私は、ふと疑問に思いました。

 

確かに、瀬戸さんは私にとってはとても話しやすい人です。でも、それだけだったのなら、私は自分の考えていたことを話すなんてことしません。

 

なのに、私はどうして話しているのでしょうか?

 

・・・私は、瀬戸さんの事を信じているのでしょうか?

 

だったら、私は一歩進めたことになりますが・・・、自分では分かりませんね。

 

「・・・ということなのですが」

 

「ああ、その事っすか」

 

「え?瀬戸さん、何か知ってるんですか!?」

 

私は瀬戸さんの腕を掴むと、少し揺すりました

 

「お願いします!教えて下さい!」

 

「ちょちょ!まま、待つっす!待って下さいっす!///」

 

「あ!す、すみません・・・」

 

瀬戸さんが困っているのを見たからなのか、冷静になることが出来ました。

 

「・・・」

 

私は、瀬戸さんの方を少し見ると・・・

 

「・・・///」

 

「?」

 

瀬戸さんは顔を赤くしていました。どうしたのでしょうか?

 

「瀬戸さん?」

 

「は、はいっす!」

 

「あの、どうしました?顔が赤いようですが・・・」

 

「あ、だだ、大丈夫っす!そそ、それで、さっきの事っすけど・・・」

 

そう言うと、瀬戸さんは何か考え始め・・・

 

「・・・分かったっす」

 

「!本当「ただし!」・・・」

 

「アカネさんにとってはもしかしたら受け入れられないことかもしれないっすよ?この事はレンさんや紅さんにも言わないよう口止めされてたことっすから」

 

と、言ってきました。

 

「・・・やっぱり、お兄ちゃんと紅が口止めしてたんですね」

 

「!気付いてたんっすか!?」

 

それは勿論の事です。ただ、私が気付けたのはそれだけで、お兄ちゃんや紅が何を隠しているのかまでは分かりません。だから・・・

 

「はい。でも、それでも、お願いします」

 

「・・・分かったっす」

 

瀬戸さんは私の『お願い』を了承すると、私に話してくれました。

 

お兄ちゃんや紅が私に隠していた『真実』を・・・



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アカネの交錯精神(Ⅶ)

お久しぶりです。ルミナスです

生きてましたよ!失踪もしてませんでしたよ!

それでは!どうぞ!


〜蓮side〜

 

俺はリビングで推理小説を読んでいる。

 

恋愛系の小説は合わないが……他のはまあ、読める。

 

で、その中で一番あったのが推理小説で、それ以来、暇な時は推理小説を読むか、ギターの練習するか、昼寝をするかのどれかだな。

 

「……なあ、蓮」

 

「……」

 

後ろから緑髮の団長の声が聞こえたため、仕方なく振り向いた。

 

「なんだ?俺に何か用か?」

 

「いや、聞きたいことがあるんだ」

 

聞きたいこと?

 

「何だ?聞きたいことっていうのは」

 

「茜の事だ」

 

「……」

 

まさかのそっちか。まあ良いんだが。

 

「茜は、紅と話が出来るんだったな?」

 

茜が紅と会話が出来る理由は至極単純だ。

 

あいつが、意識して作ったからだ。

 

だが……

 

「……ああ。それが何だ?」

 

俺は顔を顰めながら聞くと、あっちも俺の目をちゃんと見ながら聞いてきた。

 

「なら、闇倉とも会話は出来ないのか?」

 

……やっぱり、そういうことか。

 

「出来ない。紅が茜の過去を話したと思うが、闇倉は茜の無意識によって作られた人格だ。紅のように意識して作られたなら兎も角、無意識なら無理だ。そもそも、会話をするためには『そういう存在がいる』と認識……というより、意識する他ないんだ」

 

「……そうか。すまない、ありがとう」

 

「礼を言われるような事はしてないつもりだが?」

 

「それでもだ。さて、食器を洗ってくるか」

 

「……」

 

そのままキ……緑髪の団長は去って行った。

 

……はあ、自覚したくもなかったんだがな。

 

〜茜side〜

 

「そう……ですか」

 

私は瀬戸さんからお兄ちゃんと紅が隠していた『事実』を聞きました。

 

……私が、お母さんやお父さんを殺していたんですね。

 

「……」

 

「アカネさん。やっぱり、聞きたくなかったっすよね」

 

「!い、いえ!聞かせてくださって、ありがとうございました!」

 

瀬戸さんのそんな一言を聞いた瞬間、すぐに立ち上がって頭を下げながらお礼を言いました。

 

……確かに、この事実は私にとって受け入れがたい物ですが、『知りたい』と言ったのは私ですから、後悔はありません。

 

「……あの」

 

「?はい、なんでしょう?」

 

私が頭を上げたとほぼ同時に、瀬戸さんが話しかけてきました。

 

「いつ迄俺達に敬語を使ってるんすか?」

 

「……」

 

「……やっぱり、信じ切れてないからっすか?」

 

「!そ、そんな事は……」

 

……え?

 

今、どうして、私は『否定』したんでしょうか?

 

だって、事実ですから。私が瀬戸さん達の事を信じ切れていないのは事実なんですから。

 

だったら、どうして?

 

……いえ、まさかですね。

 

「……」

 

「?アカネさん?どうかしたっすか?」

 

「あ、いえ……。そうですね。事実です」

 

「……やっぱりっすか」

 

瀬戸さんはとても悲しそうな顔をしていました。

 

私はその顔を見た瞬間、

 

「!……」

 

「……え?アカネさん?」

 

何故か、瀬戸さんに抱きついてしまいました。

 

いえ、だって、さっきの瀬戸さんの顔を見たくなかったですから。

 

悲しそうな顔なんて、見たくなかったから。

 

だから……

 

「そんな……悲しそうな顔……しないで……」

 

「あ、アカネさん?」

 

……結局、敬語が外れちゃったな。まあ、嫌な気分でもないから良いんだけど。

 

「瀬戸さん……いや、セト」

 

「!アカネさん、敬語が……」

 

「ありがとう……教えてくれて……」

 

「って、またお礼っすか」

 

セトは苦笑していた。まあ、そうだよね。うん。

 

でも、さっき迄分かってなかった私の心は、今なら分かる。

 

だから、さっさと言ってしまおう。当たって砕けろだ!

 

「セト」

 

「?どうしたんすか?」

 

「好きです」

 

「……え?」

 

「セトの事が大好きなの」

 

「……」

 

あー、やっぱり、駄目だったかな。

 

でも、私の気持ちを言えたから、私に思い残すことは「俺もっすよ」ないって……

 

「え?」

 

「俺もアカネさんの事が好きっす」

 

「え、ど、どうして……」

 

「最初は笑顔を見た時っすけど、動物に優しいところや、皆に馴染もうとする努力を見てたら、どんどんと好きになっていってたっす」

 

「……私も、セトの優しい所に惹かれて……それで……」

 

「あはは!似たような理由っすね!」

 

「そうだね!」

 

私達はその後、キスをして、下に一度降りて、報告しました。

 

皆、祝福してくれましたが、お兄ちゃんがセトに……

 

「茜の心を開かせてくれたのは有難いが、もし悲しませるような事があったら、正当な理由でない限り、俺はお前を許さないからな」

 

殺気を向けながらそう言ってました。

 

さて、私の話は此処で終わりです。後は、お兄ちゃんが幸せになる番だよ?




はい、何だか最後の最後で一気に気力を持ってかれました……。

「キス」という二文字を書くだけだったのに、すっごく躊躇いました。

……恋愛書くの苦手ですから仕方ないかも。

さて!話の中でも言ったように、次回は蓮さんの話です!

もしかしたら、それで原作前の話は終わるかもです。

それでは!さようなら〜!


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束縛レジスタンス(Ⅵ)

すみませんが、今回から此方も三人称にさせていただきます

一人称が良かったと言う方は言ってください。戻します

今回は途中から一人称になってる部分がありますので、ご注意下さい

それでは!どうぞ!


蓮は自室で頭を抱えていた。

 

そもそも、こんな状況に陥ったのは、彼からしたら団長であるキドの所為と言いたくなる事を彼女はしてきた。

 

その事で、蓮は頭を悩ませている。

 

「……はぁ、多分、彼奴が今までしてきた事は茜とかの助言もあるんだろうな」

 

蓮はそう言いながら、自室の天井を見た。

 

実はつい先日、蓮が仕事を終え、帰ろうとすると、雨が降っていたのだ。

 

その時はバイクに乗って来ていたために傘なんて持ってきていなかった。

 

濡れること覚悟でバイクに乗って帰ろうとしたが、ギターの事もありどうするべきかと考えていると、足音が聞こえた。

 

そちらの方に目を向けると、見慣れた緑髪が歩いて来ていた。

 

「……」

 

「そんなに睨むな。ほら、お前の傘だ」

 

そう言って、キドが渡したのは黒地の傘。確かに蓮の傘である。

 

「……お前、本当にストーカー化してないか?」

 

「違う。それを渡して来たのはアカネだ」

 

実際の所、買い物に行くついでに蓮に傘を届けようとしていたキドが、茜に頼った結果の傘なのだから、違うと言わざるおえない。

 

「……そうか、茜が」

 

「ああ。それじゃあ、俺はもう帰るぞ」

 

そう言って帰ろうとしたキドだが、それを蓮が腕を掴むことで制止させた。

 

「な⁉︎///」

 

「待て、買い物袋は俺が持つ。というか、バイクに載せる」

 

「だ、だがな……ギターはどうするんだ?」

 

「それは肩に担ぐから大丈夫だ。ちゃんとずり落ちない様に工夫もしているしな」

 

「しかし……」

 

「良いから、任せろ」

 

そう言って、キドから買い物袋を貰うと、バイクの籠へと載せた。

 

「すまない」

 

「謝られる事じゃない」

 

そんな会話をしていると、ふと、何でこんなに会話をしているのかと疑問を持った蓮。

 

そして、現在に至るのである。

 

「……はぁ、駄目だ。絶対に認めたら駄目だ。彼奴の気持ちは分かってる。が、俺がそれを認めたら終わりだ」

 

蓮はうわ言の様にそう呟く。すると、ドアをノックする音が聞こえてきた。

 

「誰だ?」

 

「俺だ」

 

蓮はその声で誰なのか判別でき、入るなと言おうとしたが、相手は許可無しに入ってきた。

 

「……俺は許可を出した覚えはないが?」

 

「ああ、お前はしてない。だが、お前はするつもりすらなかっただろ」

 

「チッ」

 

蓮は舌打ちすると、キドを睨んだ。

 

「で?俺に何の用だ?」

 

「もうそろそろ、お前の過去を聞かせてくれても良いんじゃないか?」

 

「お断りだ。お前らに俺の過去を話す理由がない」

 

「俺達は仲間だ。それじゃ駄目か?」

 

「俺は茜以外を仲間だと思っていない。赤の他人だ。俺達は強制的に此処に入らされただけだ」

 

「……」

 

そう言って頑固に話そうとしない蓮に、キドは困った顔をした。

 

その顔を見て少し揺らぎそうになるが、蓮はそれを何とか振り払った。

 

そして、数秒の沈黙の後、キドが蓮に近付き、隣に座った。

 

「……何の真似だ」

 

蓮はキドをまた睨むが、キドはそれに怯まず、答えた。

 

「お前が話してくれるまで此処を動くつもりがないという意思表示だ。あ、アカネの所に避難しようとしても無駄だ。今回はアカネも協力してくれている」

 

それを聞いて、本日二度目の舌打ちをした蓮。

 

そして、少しの間、黙りを決め込むが、キドの目を見ると、溜息を吐いた。

 

「……仕方ない。分かった、話してやるよ。それで気が済むならな」

 

そして、蓮は話し出した。

 

自分の過去を。

 

***

 

俺達の家族構成はもう既に聞いてるだろ?なら、その辺の話は省いて話す。

 

俺が中三の頃、この頃までは蓮菜もまだ居たんだ。けど、俺達の周りには友人が居なかった。

 

理由は茜と同じさ。で、避けられてた。

 

そして八月十五日、俺達は倒れた。

 

理由は過度の栄養不足だ。だから、倒れた。

 

そして、そんな時に運悪くトラックが通って、死んだ。

 

……だが、何故か俺は生きていて、病院側の人からも驚かれた。

 

けど、そこに蓮菜は居なかった。

 

だから、聞いたんだ。『蓮菜は何処だ⁉︎』ってな。

 

けど、医者の奴らも検討がつかないらしい。というか、そもそも俺一人しか発見されなかったらしい。

 

それを聞いて一消沈した俺だが、アカネがまだ居る。だから、帰ると決断して、病院側から強引に引退して、家に帰ったんだ。そして……お前の考えてる通りだ。

 

そして、此処からがお前達が知らない過去だ。

 

俺が高校に入って少しした頃、俺のこの能力の事も暴露て、虐められてた頃だ。

 

俺に彼女が出来た。名前は鈴。

 

俺は確かに彼女の事が好きだったが、直ぐに別れる結果となった。

 

理由は、あっちが俺を更に虐める為のネタを探しに俺に近付いただけだったからだ。

 

だから、俺は別れた。

 

その次にまた俺に告白してきた奴がいた。けど、俺はその告白を断った。

 

何故なら、そいつが鈴の仲間だったからだ。

 

俺はそれに直ぐに気付いて、だから断った。

 

そして、家のお金が危なくなってバイトを始めた頃の事。

 

また俺に彼女が出来た。……そいつが、俺にとって、もう二度と忘れる事が出来ない事をしたんだ。

 

そいつの名前は『岡田 菫』。本当に綺麗な奴だったんだ。

 

俺はその時は花屋でバイトをしててな、そいつも其処で一緒にバイトをしてたんだ。

 

俺が先輩で菫が後輩。最初はそんな関係だった。けど、それが続いた時にあっちから告白されたんだ。

 

俺も菫に好意を持ってたから、だからその告白を受け入れた。

 

……けど、それも直ぐに終わったんだ。

 

俺が彼奴の部屋に行った時、見たんだ。

 

彼奴が俺を隠し撮りした写真を。

 

それが怖くてな、俺はその日から日を明けてから別れた。

 

……けど、それで終わりじゃなかった。

 

その日から、俺は視線を感じる様になった。

 

家に帰っても、彼奴からの手紙が何枚も送られてくる毎日だった。

 

それは俺の部屋に入っても同じで、部屋を探してみれば盗聴器や盗撮カメラが何個も見つかった。

 

だから、俺は彼奴に真っ正面から言ったんだ。

 

『もう頼むからこんな事はしないでくれ‼︎』って。

 

……彼奴は、それを聞くと泣きながらどっか行った。けど、俺はその後を追うほどの心の余裕は、もう何処にも無かった。

 

それから、夏になって、蓮菜の墓参りに行った日の事だ。

 

菫からメールが届いた。

 

俺は恐る恐るだったがそのメールを読んで……直ぐに菫がいる場所へと走った。

 

其処は菫の家だった。

 

菫にはな、家族は居ないんだ。だから、一人暮らしだった。

 

だから、彼奴は二人を誘拐した。

 

その二人っていうのが、俺を虐める為に付き合おうとしていた鈴とその友人だ。

 

菫は俺が来たのを見たとき……とても歪んだ笑みを俺に見せたんだ。

 

「あぁ、漸く来てくれた。蓮」

 

「はぁ……はぁ……、菫……やめろ……」

 

「蓮、ああ、愛しの蓮。こいつらは貴方を傷付けた。もうちゃんと調査済み。貴方の事なら貴方の汚い妹よりも知ってる。だから、こいつらが貴方に何をしたか、何をしてきたかを知ってるわ。ねえ?私は貴方を愛してる。だから、こいつらが許せない。私の愛しの蓮を傷付けた塵を許せない。ただの塵が蓮を傷付けたのが許せない。許せない許せない許せない許せない許せないユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイ‼︎」

 

「⁉︎」

 

俺はその時の狂気に恐怖して、一歩下がってしまったんだ。

 

「あら?何で私から離れるの?蓮。ああ、そういうこと。この子達にまた虐められると思ってるのね?大丈夫よ。私がちゃんと、掃除シテアゲルカラ」

 

菫はそう言うと、手にずっと持ってたであろう包丁を、彼奴らに向けた。

 

「「⁉︎」」

 

「や、やめろ‼︎」

 

その時、俺は菫にやめるよう声を掛けた。だが、遅かった。

 

菫は容赦無く、鈴達の心臓を刺した。

 

……もう想像がつくだろうが、その場は血の海と化したんだ。

 

「うっ」

 

俺はそれに耐えきれず、戻してしまった。

 

「うわ、塵の血なんて汚いじゃない。はぁ、塵の分際で」

 

菫はそう言うと、今度は鈴の頭を刺した。

 

それも、何度も、何度も、何度も、続けてな。

 

「汚しやがって、塵の分際で汚しやがって、死ね、死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ」

 

「うっ、もう……やめてくれ……菫」

 

俺が菫の名前を呼ぶと、彼奴は花が咲いたかの様な笑みを俺に向けたんだ。

 

「蓮……私の名前を呼んでくれた?ああ、貴方から呼ばれる名前は何て美しい名前……そう、貴方の隣に立つ私に相応しい。ああ、お母さん、私は今日以上に貴女に感謝した覚えがないわ。ああ、何て良い名前」

 

菫はそう言葉にすると、俺に近寄って来た。

 

俺はそれが怖くて、後ろに下がったんだ。

 

すると、彼奴も歩みを止めた。

 

「……何で私から遠ざかるの?蓮」

 

「菫、頼む、近寄らないでくれ」

 

俺はその時、強く拒絶した。そしたら、彼奴の顔は悲しみにくれた。

 

「ねえ?何で遠ざかるの?蓮。私の事を愛してくれてるんじゃないの?愛してくれるって言ったじゃない。なのに、何で私から離れたの?この子達の所為なんじゃないの?この子達が虐めたからじゃないの?」

 

「確かに、そいつらは俺を虐めてたが、もうそれも終わってる。だから、お前がそんな事をしなくても良かったんだ」

 

「あら?そうだったの?まあ、蓮を虐めた時点で死に値するのだけど」

 

そう言いながら死んだ鈴達の死体を塵でも見るかの様な目で一慶してから、今度は狂気に満ちた目を俺に向けた。

 

「⁉︎」

 

「……ねえ?蓮。蓮は私の事、好き?」

 

「……前までは好きだったが、今は嫌いだ」

 

俺がまた拒絶すると、彼奴は笑みを浮かべて言ったんだ。

 

「そう、私は蓮の事が大好きよ。私は貴方を誰の目にも映させたくない。特に女性に。だから……私と一緒に、永遠に一緒になりましょう?」

 

菫はそう言うと、俺に包丁を向けながら近付いて来たんだ。

 

「なっ⁉︎や、やめろ‼︎」

 

俺は刺されない様に必死に抵抗して……菫を刺してしまった。

 

「ぁ……」

 

「ふ、ふふ……」

 

……菫は自分が死ぬと分かっていながら、笑って言った。

 

「コレで……貴方から……私が消えることはない。貴方の中を、私が独り占め出来る。ふふ、ふふふふふふ…………」

 

「す、菫……?」

 

俺は菫が本当に死んだのを見て、死んだ瞬間を見て、叫んだ。

 

其の後、菫の家の近所の人が騒ぎに気付いて、警察に連絡したが……俺以外の全員死亡。

 

俺が最初は疑われたが、俺の説明と証拠が俺の無実を語ってくれた。

 

俺は正当防衛と言うことで解放されたが……俺が殺したことに変わりはない。

 

……俺はその日以降から女を警戒する様になった。

 

もう、あんな目には合いたくないんだ……。

 

これで、俺の過去は終わりだ。




中途半端に終わってしまって申し訳ないです。

けど、コレで蓮君の過去は分かっていただけたと思います

それでは!さようなら〜!


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束縛レジスタンス(Ⅶ)

お久しぶりです、ルミナスです‼︎

いや、本当にごめんなさい。筆が進まなかったんです‼︎

で、この前、第三者視点からやりましたけど、書きにくかったので元の方式に戻しますね

それでは!どうぞ!


〜蓮side〜

 

「ーーーコレが俺の過去だ」

 

俺は緑髪の団長に俺の過去を話した。

 

全部とは言わないが、ある程度は話した。

 

……話した事に後悔はない。もう俺の中では行動は決まってるんだ。

 

「……レン、話してくれて有難うな」

 

「……」

 

俺は緑髪の団長の顔を見なかった。見れなかった。

 

正直、今は見たくない。

 

「だが、俺は、俺達はどんな過去を持っていようとお前の味方だ」

 

「……味方、ね」

 

「?レン?」

 

俺は其処で緑髪の団長の顔を見た。

 

睨み付けながら。

 

「⁉︎レ、レン?」

 

「……お前達、俺達にまだ重要な事を話してないだろ」

 

「⁉︎そ、それは……」

 

「……やっぱりな」

 

信用出来ないわけじゃ無いんだろうが、言っていい事か迷ってたって所だろうな。

 

だが、悪いがそれを利用させてもらう。

 

「なら容赦無く言わせてもらう。俺はお前達が大嫌いだ」

 

「⁉︎」

 

「俺の何が分かる?俺が過去を語ったから、心を開いたとでも思ったか?そんな訳がないだろ。こんな風に、大事何かを隠すような連中の何処を好きになれと言うんだ?巫山戯るなよ。お戯れも此処までだ。それじゃあな」

 

俺はそう言うと、そのまま部屋から出て行った。

 

後ろから緑髪の団長の俺を呼び止める声が聞こえるが無視だ。

 

「?お兄ちゃん?何処に……」

 

「元の家に帰るんだ」

 

「え、ちょ、イキナリ過ぎるっすよ‼︎」

 

二人もまた止めようとするが、無視だ。

 

「茜、ハジメ達を頼む」

 

「え、待って、お兄ちゃん‼︎」

 

茜のそんな声も無視して、俺はアジトから出て行った。

 

……コレでいい。これ以上は本当に無理だった。

 

あれ以上、キド達を巻き込みたくない。

 

〜キドside〜

 

俺はレンを追ってすぐに部屋を出たが、どうやらもう出て行ったらしい。

 

「ごめん、セト。ちょっと話を聞いてくる‼︎」

 

「え、アカネ⁉︎」

 

セトが止める声をアカネは振り切り、レンの後を追って行った。

 

……俺は、彼奴を追い詰めたのか?

 

俺がレンに『あのこと』を話さなかったから、だから、こんな事になったのか?

 

「……つぼみ」

 

「……サクラ姉さん」

 

俺が涙を必死で堪えていると、サクラ姉さんが俺のすぐ近くまでやって来た。

 

そして、俺の目線に合わせると、その指で俺の涙を拭ってくれた。

 

「兎に角、さっきまで話してた内容を言ってくれるか?私達に。状況を把握したいんだ」

 

その言葉を受けた俺は、さっきまでの事を伝えると、サクラ姉さんは考えるポーズをしていた。

 

「それは……キドだけじゃなくて俺達も悪いっすよ」

 

「……」

 

……そうかもしれない。

 

俺達が『あのこと』を言わなかったから。

 

でも、それを決めたのは俺だ。なら、俺が悪いんじゃないか。

 

「……多分、それはレンの過去にも問題があると思うぞ」

 

「え……」

 

「サクラさん?どういう事っすか?」

 

「まあ、仮説だがな……」

 

そう言って、サクラ姉さんは腰に手を当てて話し始めた。

 

自分の仮説を。

 

「過去を話したのには二重の理由があると私は思うぞ」

 

「二重の……」

 

「理由……?」

 

俺とセトがそう言うと、サクラ姉さんは頷いた。

 

「ああ。一つは私達を自分から離すため」

 

「……」

 

俺はそれを聞いて悲しくなって、顔を下に向けてしまった。

 

そんなに、俺達が信用ならないのか?レン……。

 

「もう一つが、私達を信用して、だ」

 

「……え」

 

だけど、サクラ姉さんからその言葉を聞いて、俺は直ぐに顔を上げた。

 

信用……してるから?

 

「サクラさん、それ本当っすか⁉︎」

 

「いや、これ仮説だからな?」

 

サクラ姉さんがそんな事を言ってる声が聞こえてきたが、俺には今は聞こえてこない。

 

レンが……信用してくれてる?俺達を?

 

「……なら、何で離れようと」

 

俺のそれを小さな声で言ったが、サクラ姉さんにはそれが聞こえていたらしい。

 

「……信用してるから怖いんだろうな、レンは。信用した人から裏切られるのが」

 

「……だから、俺達を離そうと」

 

……だったら。

 

「行こうとか思ってないよな?キド」

 

俺は行こうとしたが、それをサクラ姉さんに先回りされ、止められてしまった。

 

「何で……」

 

「そんな状態なら、確かに行った方が良いかもしれない。けどな、今は駄目だ」

 

「何でッ⁉︎」

 

「今行っても逆効果だからだ」

 

逆効果……その言葉の意味ぐらい、俺にも分かる。

 

だからこそ、それを聞いて、何も出来ない悔しさが俺の中を占めた。

 

「……だから、今は駄目だ。せめて彼奴が此処に来れるぐらい、またはアカネが此処に来た時にアカネに確認しろ。彼奴ならずっと一緒に居たんだ。どの線で大丈夫なのか、判断が着くはずだ」

 

サクラ姉さんはそれを言うと、俺の顔を見てきた。

 

その顔からは、頷く以外は認めない、是以外は認めないと語っていた。

 

「……分かった、サクラ姉さん」

 

俺は頷くしかなかった。

 

そんな空気の時、扉が開く音がした。

 

「ただいま〜‼︎サクラちゃん‼︎……あれ?」

 

「ただいま帰ったよ……ん?どうしたの?この空気」

 

馬鹿とセイヤが帰ってきたらしい……が、何故か二人分ぐらい足音が多い。

 

「誰か連れて帰ってきたのか?」

 

俺がそう聞くと、カノは笑顔になった。

 

「そう!僕達の新しい仲間だよ‼︎どうぞ‼︎入って入って‼︎」

 

カノのその合図によって入ってきたのは、二人の男女だった。



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束縛レジスタンス(Ⅷ)

〜茜side〜

 

「待って、お兄ちゃん‼︎」

 

「……」

 

お兄ちゃんは私の声に耳を貸さないでスタスタと歩いていく。

 

何時ものお兄ちゃんなら、私が呼んだら止まって振り向いてくれるのに……。

 

どうして?キドと何があったの?

 

そんな事を考えていると、いつの間にか、私達の家に着いていた。

 

お兄ちゃんはそのまま無言でドアを開けて、中に入っていく。

 

……鍵を掛けた音が聞こえないということは、私の存在には気付いていたみたい。

 

私はそのまま家に入り、鍵を掛けてから、お兄ちゃんがいるであろうお兄ちゃんの自室へと向かった。

 

そして、ドアの前に立って、ノックをしようとした。

 

……けど、躊躇した。

 

今は放って置くべきじゃないかと思ったからだ。

 

「……」

 

(どうした?『茜』。開けないのか?)

 

(……『紅』)

 

……相談、してみよう。『紅』に。

 

(『紅』、今はお兄ちゃんをそっとして置くべきかな?)

 

(……)

 

(お兄ちゃんが私の声に気付いていながら振り向かないほどの事なら、そっとして置くべきなのかな?)

 

私のその問いに、『紅』は少ししてから答えてくれた。

 

けど、それは私が求めた答えとは違っていた。

 

(……それはお前が決める事だ。『茜』)

 

(……私じゃ決めれないから、『紅』に選んでもらおうと……)

 

(それは私の『考え』であって、お前のしたい行動じゃないだろ?……『茜』、お前はどうしたい?私はお前だ。お前が最もしたい行動が、私がしたい行動だ)

 

(……私と『紅』の考えてる事が違うように、したい事だって違うかも……)

 

(私はお前にもう二度と、後悔してほしくない。……身勝手かもしれないが、お前が決めたなら、お前は後悔しないだろ?だから、お前が決めろ、『茜』)

 

そこで『紅』の声が聞こえなくなった。

 

「……」

 

私は少し考え、扉をノックした。

 

「……お兄ちゃん、入って良い?」

 

中に入ってる筈のお兄ちゃんに声を掛けてみたけど、やっぱりと言うべきか返事はない。

 

「……ごめん、入るよ」

 

そのまま入ってみると、お兄ちゃんはベットに座って顔を俯かせていた。

 

「……そんなに後悔するなら、仲直りして来ればいいのに」

 

「……彼奴らに迷惑を掛けれない」

 

私はそれを聞いて溜息を吐いた。

 

そして、そのまま黙って、お兄ちゃんの隣に座った。

 

「……寧ろ、何の事情も話さずにこうする方がよっぽど迷惑だと私は思うよ?」

 

「……」

 

「だから、何があったか、話してくれる?」

 

私はお兄ちゃんの目を見ながらそう問い掛けると、お兄ちゃんは顔を俯かせたけど、話してくれた。

 

過去を話した事、キドの好意に気付いていながらそれを無視して、突き放した事。

 

私はそれを聞いて、少しお兄ちゃんに怒りを覚えた。

 

「……何で、そんな事をしたの?」

 

「……言っただろ?迷惑を掛けたくない。これ以上、俺の事情に巻き込みたくない」

 

「……事情って、菫さんが生きてるかもしれないってこと?」

 

「……ああ」

 

お兄ちゃんの過去には続きがある。

 

確かに菫さんの遺体もあって、お兄ちゃんは正当防衛となった。

 

……けど、それ以降もお兄ちゃんに好意を持つ女性はいた。

 

お兄ちゃんは勿論、警戒して相手をしていなかったけど、それでも、その人達はお兄ちゃんに告白した。

 

……その翌日、その人達は人体が切り刻まれた状態でゴミ捨場で見つかった。

 

それは刃物で切られた後だと聞いたけど、凶器は見つかっていないし、犯人も検討がつかない。

 

……お兄ちゃんが考えてる事は分かる。

 

菫さんが亡くなった日は……私達が一度死んだ筈の日と同じ。

 

でも、菫さんは遺体が見つかったのだから、死んだ筈なのだ。

 

「……そんなの、あり得ないよ」

 

「俺達が持ってる能力も、通常は『あり得ない』に入るんだ。その言葉は俺達にはもう、意味をなさない」

 

「……」

 

その言葉に、私は反論が出来なかった。

 

だって、普通なら異常な言葉だけど、私達の様な『異常』を持った者からしたら、正論だから……。

 

「……分かっただろ?……俺は彼奴のことが好きだ。だからこそ、死んでほしくないんだ」

 

「……」

 

「一、二回なら偶然と言ってもいいかもしれない。だが、もう何回も起きてるんだ。……だから、離れるしか、無かったんだ」

 

「……」

 

その言葉を口にしたお兄ちゃんの顔は、酷く悲しそうだった。

 

〜カノside〜

 

新しい団員を連れて来た僕は、その後、アジトで起こった事を聞いてから外に出て、何時もあの子と会う路地裏に来て、座り込んでいた。

 

……どうしても、話したかったから。

 

「……また来てたのね。物好きなカノ」

 

「……どうしても、君に意見を求めたくてね」

 

「……そう」

 

「?」

 

この子、今日は何処か疲れてる?

 

「どうしたの?疲れてるみたいだけど」

 

「私の馬鹿な知り合いが暴走して、それを友達と一生懸命止めてたの。もう本当に疲れた」

 

そう言葉にする彼女は、溜息を吐いた。

 

うわぁ、本当に大変だったみたい。

 

「……それで?意見を求めるって事は相談でしょ?どうしたの?」

 

「あ、うん。実はね、うちの団員が一人、アジトから出て行っちゃってね、原因が何なのかも分からないからどうしようかと考えててね」

 

「……それ、もう答え決まってない?」

 

彼女の言葉には確信が込められていた。

 

まあ、当たりだけど。

 

「うん。明日にでも、その人の家に行く事にしたんだ。僕と、キドと、セトの初めてあった時の三人でね」

 

「相談した意味は?」

 

「あまり無いね〜、あはは」

 

僕はそう言って笑うと、彼女は小さく溜息を吐いた。

 

……まあ、本当は行かないけどね。

 

「……つまり、相談は無くて、単純に私と話したかっただけって事?私の自惚れた考えならそう言って欲しいけど」

 

「うん、自惚れじゃないよ」

 

「……はぁ」

 

あ、これ絶対に呆れられた。

 

「……でも、僕としてはそっとして置くべきじゃないかとも思うんだ」

 

その言葉で、顔は見えないけど、多分、真剣な顔をしたんだと思う。

 

だって、空気が変わったから。

 

「ああいう時には一度、自分で考える時間が必要だと思ってるんだけど、どう思う?」

 

僕のその言葉に、彼女は顎らしき所に手を当てて考え始めた。

 

……関係ないけど、手、小さいな〜。身長もだけど。

 

「……一つ聞くけど、その人は一人っ子?」

 

「いや?妹が一人いるよ」

 

「……なら、その妹さんからの連絡が来るまで待ってみれば良いと思うよ、私は」

 

彼女は僕の相談にそう答えた。

 

「なんで?」

 

「これがもし一人っ子だったなら、行った方が良いと言うけど、妹が一人いるなら、その子がある程度、心をケアしてくれると思うよ、私は」

 

「……」

 

「それに、ずっと一緒に育ってきた妹なら、どこら辺でもう来ていいとかの線引きは分かると思うよ」

 

「……そうだね」

 

サクラちゃんと同じ意見、か。

 

「うん、ありがとう」

 

「どう致しまして。さ、帰ったら?心配する人がいるでしょ?」

 

「それは君もじゃないかな?」

 

その言葉に、彼女は少し笑った気がした。

 

「今日は有難う!話せて良かったよ!また話そうね〜!」

 

「はいはい」

 

彼女はそう言って、手を振り返してくれた。

 

「……幸せを実感しててね、カノ。一年後のあの日の悲劇は、回避出来ないのだから……」

 

その言葉は、すでに離れていた僕には聞こえていなかった。



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束縛レジスタンス(Ⅸ)

三人称視点の方が最近、違和感がなくなってきましたので、三人称視点で書いていきます

ご了承ください

それでは!どうぞ!


*本編では既にアカネさんは誕生日を迎えてるので、アカネさんの歳は17歳です


蓮がアジトを去ってから一ヶ月経った。

 

季節は夏から秋へと移行してる最中の休日、アカネが久し振りにアジトへとやって来た。

 

「……本当に久し振りだね、ここに来るのも」

 

そして扉を開けると、まずやって来たのは見知らぬ二人。

 

「?誰?」

 

その内の一人である金髪で細い体をした男が話し始めた。

 

「俺は『壇ノ浦 柚子』だ。此処では『ユズ』って呼ばれてる。よろしくな、アカ子」

 

「あ、アカ子……?」

 

ユズから出た自分の呼び名に少し頬を引きつらせていると、急に体に衝撃が走った。

 

何事かと思い顔を下に向けてみると、先程までユズの隣にいた小さな女の子がアカネに抱きついていた。

 

「……えっと?」

 

「初めましてアカネお姉ちゃん!私、『瞬木 暦』!『コヨミ』って呼んで!」

 

「う、うん、分かった、コヨミちゃん」

 

アカネはタジタジながらも挨拶をすると、コヨミはアカネの隣に立ち、その手を握り、アカネに笑顔を向けた。

 

それを見てアカネも顔が少し緩む。

 

すると、奥から足音が此方に向かってくる音が聞こえ、ユズの後ろにある扉に顔を向けてみると、其処にはキドがいた。

 

キドはアカネの顔を見ると、直ぐに近寄り、顔を近付けた。

 

「⁉︎き、キド……顔近い……」

 

「アカネ‼︎レンは……レンの様子はもう大丈夫なのか‼︎」

 

「それを話す為に来たの‼︎だから一旦落ち着いて、そして顔を離して‼︎」

 

その反応にハッと我に返ったキドは少し顔を赤らめて顔を離した。

 

「こ、コホンッ。すまない……」

 

「大丈夫だよ……で、話だね。全員集めてもらってもいいかな?」

 

「ああ。分かった。ユズ、コヨミ。呼びに行ってくれ」

 

キドのその頼みに二人は頷くと、手を繋いで二階へと向かって行った。

 

「……あの二人、新団員だね」

 

「……ああ。お前とレンが出て行ったあの日に来たんだ」

 

「……そっか」

 

それを聞いてから、アカネは目を瞑る。

 

「キド、私、何方かというと説明下手だから、紅に変わるね。良い?」

 

「ああ、分かった」

 

キドの了承の言葉を聞くと、アカネは紅と意識を交代する。

 

そして紅が目を開けると、その目は赤色へと変わっていた。

 

それを見てからキドは一緒にリビングへと向かい、ソファに座って皆んなを待つ。

 

それから少しして、全員が降りて来たのを見ると、紅は話し始める。

 

「結論から言うと、まだレンは此処には来れない」

 

「……それは、仕事の事情だけじゃなく、か?」

 

「ああ。まだ、心が安定していないんだ。……別にお前の所為じゃ無いからな?キド」

 

アカネは少し顔を俯かせているキドを見てからそうフォローを入れると、続ける。

 

「キドから聞いてるという前提で話を続けるが、実は、まだある問題が残ってて、その問題からキド、お前を守る為にレンは離れたんだ」

 

「……問題?」

 

セイヤが顔を顰めてそう聞く。

 

「ああ……レンには以前、ヤンデレな彼女を持ってしまったわけだが、其奴は死んだ。だから、何の問題も無いと思うだろうが……その後から、レンに告白した女性は全員、無残に殺され、ゴミ置場に投棄される」

 

「……偶然じゃないのか?」

 

「同じ偶然が何度も起こると思うのか?」

 

紅のその問いに全員口を噤んでしまった。

 

コヨミに至っては既に涙目である。

 

「……でも、その人はもう死んでるんだよね?菫さん、だっけ?に家族は?」

 

セイヤの質問に紅は首を横に振った。

 

「……全員、亡くなってる。トラックとの衝突事故だったそうだ。これはレンが本人から一度聞かされた話らしい」

 

「そう……」

 

セイヤはそれを聞くと、顎に手を付け、思考を始める。

 

「……だが、死んだ奴がこの世界で犯罪が出来るのか?……其奴の遺体は見つかってるんだろ?」

 

「ああ。だが、起こってる事実は覆しようがない。……菫の所為だと断定する事も出来ないが、犯人らしき奴に心当たりもない」

 

その言葉を聞いて、全員イキナリ壁に当たってしまった。

 

レンを仲間に入れる為には、その障害を壊す他ないのだが、その方法が無い。

 

「……どうするべきか」

 

サクラが溜息を吐くと、紅がボソリと呟く。

 

「……手が無いわけじゃい」

 

「……今、なんて言った?」

 

その呟かれた言葉にキドが反応を示す。

 

それで紅は話し出す。

 

「……手が無いわけじゃないんだ。が、相当危険で、間違えば一人死ぬ」

 

「……その方法は?」

 

カノがそう問い返すと、紅は言う。

 

「キド、レンに告白しろ」

 

「……え」

 

その紅の言葉にキドは真顔で返すのだった。



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束縛レジスタンス(X)

アカネ達の話し合いからまた数週間後。

 

レンはその日、仕事が休みなのを利用してアカネと休日を過ごそうとしたのだが、アカネからある場所に来て欲しいと頼み事をされ、それを断ることも出来ずにバイクで一人、高台へとやって来た。

 

「……何で彼奴、夕方に来いって言ったんだか……」

 

レンはバイクから降りながら一人呟き、夕陽が見える所まで来て、その理由がようやく分かった。

 

「……キド」

 

「レン。話がある」

 

「告白なら受け取らないぞ」

 

「理由なら知っている。アカネ……じゃない、紅から聞いた」

 

そのキドの言葉に思わず舌打ちをすると、レンはキドを睨み付ける。

 

「それでも諦めないと。お前、死にたがりか?」

 

「違うな。俺達はお前を一人にさせたくないから行動してる。それと同時に俺の気持ちも聞いてほしいからな」

 

「……同じ事が続いてる今、アレはもう『偶然』と呼べない。分かってるのか?」

 

「ああ。分かってる。分かっていても、俺はお前の事が……」

 

その先を続けようとしたキドだが、不意に視界が変わる。

 

先程までレンが視界の真ん中にあったにもかかわらず、その視界からレンが消え、サクラへと変わってる。

 

キドはサクラに押し倒され、地面に伏しているのである。

 

「‼︎サクラ姉さ……」

 

「キド!立て‼︎今すぐに‼︎」

 

サクラの焦った声に一瞬動きが止まると、今度は誰かが強引に二人の腕を引いた。

 

その誰かを見ると、それはレンだった。

 

「レン!」

 

キドはレンを見上げるが、そのレンは何処か暗い。

 

「……レン?」

 

キドがレンの様子に心配になるが、その理由は直ぐに明白となる。

 

「……蓮」

 

その声がした方に顔を向ければ、黒髪で黒服の長袖ワンピースを来た女性がその場に立っていた。

 

その顔はとても美人ながら、しかしその瞳に光はなく、その手に持っているのは鉈である。

 

その女性はレンを視界に入れると、とても嬉しそうに笑う。

 

「ああ、私の蓮。久し振りに会えた。会いたくて会いたくて本当に仕方なかった。貴方と会えない毎日は私にとって地獄だったわ。貴方がいないと私は死人も同じ。貴方がいるだけで私はもう天国にいるみたいに気分は有頂天よ‼︎ああ!本当に愛しい人。なんて素敵な人。私をこんな気分にさせてくれるのは世界を探しても貴方だけよ‼︎貴方と初めて会った日ほど、(ゴミ)に感謝したことは無いわ‼︎貴方がいないならこんな世界に意味はない!貴方がいるからこの世界は意味がある!ああ、本当になんて素敵な人。とても愛しい人。……なのに」

 

そこで菫の顔は狂気の笑顔から憎悪の顔へと変わる。

 

「其処にいていいのは私なのに、どうして特別でも何でもないどうでもいい奴がいるの?どうして必要もないゴミがいるの?蓮と一緒の空気を吸ってるの?どうして口を利いてるの?どうして話してるの?どうして笑いあってるの?どうして?どうして?ドウシテ?」

 

「……菫」

 

レンが菫の名を呼ぶと、相手はまた狂気の笑みを浮かべる。

 

「ああ!貴方に呼ばれる私の名前‼︎なんて綺麗なの‼︎なんて美しいの‼︎ああ!貴方から出てくる言葉は何て綺麗なものなのかしら‼︎そこらの雑草とは違う綺麗な声、美しい言葉‼︎貴方から出てくる言葉は全てそう‼︎どんな暴言罵倒も全て美しいものへと変わる‼︎貴方は本当に特別な人‼︎」

 

「……菫、どうしてお前がここに。お前はあの時、死んだ筈……」

 

その言葉に更に狂喜乱舞してる菫は容易く口にする。

 

「私は確かにあの時死んだわ。貴方に殺されて。それで私は嬉しかった‼︎貴方の心にずっと残るから‼︎私が一生、貴方の一番となれるから‼︎でも、その後に更に嬉しいことが起こったのよ。ある女が私の『魂』を捕まえ、この作り物の体に入れてくれたの。『これで私はまた貴方と会える‼︎』……あの時は本当にそう思ってたのに……」

 

其処からまた表情が180度代わり、憎悪の顔へと変わる。

 

「なのにその女、私になんて言ったと思う?『貴女は死んだから出て行かせれない』。そう言われたわ‼︎私は即座に彼奴を殺そうとしたわ‼︎貴方と会うための壁なら全て壊す‼︎雑草なら根そのものを残らず抜き取る‼︎だから私は行動したのに、彼奴は私を拘束した後、放置した‼︎ゴミの分際で‼︎ゴミの分際で‼︎」

 

「……」

 

レンは菫の終わらない言葉を黙って聞くしかなく、それに口を挟まずに聞いている。

 

「でも、ゴミも仕事をしてくれた。レンの行動をずっと見せてくれたの‼︎私に‼︎そして、その声も私に聞かせてくれた‼︎レンに告白したゴミを掃除させてくれた‼︎その点の感謝は今までしてたけど……その女の時だけはさせてくれなかった」

 

菫はそう言って、憎しみの色しかない瞳をキドに向ける。

 

「私がどれだけその女の掃除をしたいと言っても、あの女は行かせてくれなかった」

 

そこでまた狂った表情を浮かべる。

 

「だから……あの空間から強引に抜け出してきたの」

 

「抜け、出した……?」

 

「そう。あの空間にいる三人の誰かが外に出た時に私も抜け出す。そうして抜け出して、私は機会を伺ってたの。愛しの蓮を汚されないために」

 

菫はそう言うと、ゆらりと一歩近寄る。

 

それを見てレンがキド達の前に立つと、菫はピタリと動きを立ち止まる。

 

「……蓮、どうしてそんな雑草を守るの?」

 

「……菫、此奴らの事が大事だから、守るんだ」

 

「レン……」

 

それを聞いて、キドは少し嬉しそうな顔をしたのと逆に、菫は憎悪の色を濃くする。

 

「……なんで?なんで?何で?何で?ナンで?ナンデ?ナンデ、ナンデ、ドウシテ、ナンデ、ドウシテ、ナンデ、ドウシテ、ナンデ、ドウシテ、ナンデ、ドウシテ、ナンデ、ドウシテ、ナンデ、ドウシテ」

 

そんな風に呟く菫を見て、その場にいる三人は恐怖を抱いた。

 

そんな三人など知らないとばかりに菫は呟き続けるが、それがピタリと止むと、歪に笑う。

 

「……そっか。其処の女の所為ね」

 

「……え」

 

「菫、違っ」

 

「その女が、いえ、その女の仲間達が貴方を脅して守らせてるのね。そんな心にもないことまで言わせて……」

 

「菫、落ち着け」

 

「ああ、大丈夫よ、蓮。貴方の妹には手を出さないから。貴方の妹もきっと此奴らに脅されたから言う事を聞いただけ。なら悪いのは此奴ら。大丈夫、二人ともちゃんと私がスクッテアゲル」

 

そう言って菫はまた近き始める。

 

レンが二人の腕を掴んで逃げる為に後ろを向いた瞬間。

 

「キャァァァァ!」

 

菫の叫び声と『ベチャ』と地面に落ちる音。

 

レンはそれが何なのか、直ぐに分かってしまう。

 

その経験を、自身でもしてしまったから。

 

直ぐに後ろを振り向けば、予想通り、菫が切り刻まれた状態で血沼に倒れてる姿が見えた。

 

「菫!」

 

そう叫び、近付こうとしたが、それをサクラが止めた。

 

「レン、近付くと危険だ」

 

「……」

 

それに対し、悔しそうながらも納得してしまったレンは、こんな事をした犯人をその目に入れる。

 

「どうしてこんなことした、『闇倉』」

 

そんなレンの問いに対し、アカネの人格の一人である『闇倉』は答える。

 

「簡単だ。アカネを泣かせる可能性がある奴を排除しただけだ。それの何がいけない?」

 

「やり過ぎだ!」

 

「やり過ぎ?此奴はもう既に死人だ。死人を地獄に返したのにやり過ぎと言われる理由が分からない」

 

闇倉はそう言うと、菫の切り刻まれた体に容赦無く蹴りを入れる。

 

「でもまさか、私と同じ『目で殺す』能力を持つ奴とは……まあ、茜は知らずに作ったし、こっちがコピー、此奴がオリジナルって所か」

 

そう言いながら闇倉は何度も蹴りを入れ続ける。

 

そして反応が無いことが面白くないのか鼻を鳴らすとそのままレン達に近付く。

 

「一つ言っておく。私はお前が傷付こうが何だろうがどうでも良い。死のうが何だろうが関係ない。ただ、お前が傷付けば茜が泣く。それは明白だ。だから、今回は手伝ってやった。まあ、お前達の予定だと彼奴は『殺さず』だったんだろうが、生憎と私は茜の味方であってお前達の味方じゃない。茜を傷付けることが明白の奴に手加減するつもりもない。だから」

 

『殺した』

 

その一言にキドとサクラの顔の色が白くなる。

 

対してレンは怒った表情を向けるが、それに対しても風のように受け流す。

 

「おいおい、言ったろ?私はあくまで『茜』の味方だ。お前達の考えなんて私にとってはどうでも良い。お前達が生きてるのだって、あくまで茜の『味方』だからだ。『味方』だから助ける、何てこともない。お前達は茜の次いでだ。それぐらい分かっとけ」

 

闇倉はそれだけを言うと目を瞑り、意識が紅へと変わる。

 

その紅はというと、どこか居ずらそうな顔をしていた。

 

「……すまない」

 

「……紅、もしかして……」

 

「サクラの考えてる通り、元からこうするつもりだった」

 

それに対して文句を言おうとしたサクラだが、紅の後ろに黒い空間が出来たのを目にして口を噤んだ。

 

それに対して不思議そうな顔をしてサクラの視線がある方へと目を向けると、全員が驚いた表情をする。

 

「なっ……」

 

「なんだ、アレ……」

 

「分からない……」

 

「……」

 

全員が呆然としていると、その暗闇から出て来たのは一人の黒ローブ。

 

そのフードからは黒髪の長髪が少し見える。

 

キドと同じぐらいの身長をしているその黒ローブは、死んだ菫の元まで近寄り、その姿をジッと見下ろしていた。

 

そして少ししてから口を開く。

 

「……哀れな奴。折角生かしてあげたのに……」

 

その女性のような声と口調から四人は女性と判断した。

 

そして、その女性が死んだ菫の体に触ると、その体は『消え去った』。

 

それに驚く四人だが、そんな四人を無視して黒い空間に顔を向ける。

 

そして、その中から出て来たのは、どこか機械の様な顔をした真っ黒の男。

 

「……『クロナ』、殺したのか?」

 

その男は悲しそうに顔を歪めるが、その女性は首を振る。

 

「いえ、どうやら其処の『創る』蛇が作った人格の一人が殺したみたい。哀れな女よね。同じ能力を持った人格に殺されたんだから」

 

「あの女の蛇は……」

 

「触って回収したわ。間違っても消してないから安心して」

 

「なら良いが」

 

そう言って男は漸く四人の方に顔を向けると、『クロナ』と呼ばれた女性に顔を向ける。

 

「……あの四人はどうするんだ?」

 

その言葉に四人は警戒するが、クロナは首を振る。

 

「私がなんとかするから、『クロハ』は戻って。自分の居場所に」

 

「……分かった」

 

『クロハ』と呼ばれた男はそう言って戻っていく。

 

対してクロナは四人の方に顔を向けると、そのフードを取って、四人にその赤い目を向ける。

 

「……貴方達の『記憶』、消させてもらいます」

 

その言葉を耳にしながら、四人は意識を失うのだった。




前書きにも書いた通り、この小説内のクロハさんはゲスじゃないです。むしろ優しいです

『ゲスじゃないと嫌!』という方

私も同じだけどクロハさんが優しい設定を書きたかったんです‼︎だから許して!

それでは!さようなら〜!


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束縛レジスタンス(XⅠ)

今回の話で原作前の話は終わりです!

長かったです‼︎とても長かったです‼︎

では!どうぞ!


アカネが意識を取り戻し、最初に見たのは見慣れたアジトの天井。

 

それに少しばかり驚くと、お腹に重みを感じた。

 

お腹の辺りに顔を向けてみれば、セトがスヤスヤと寝ている姿がそこにはあった。

 

「……えっと……何があったんだったっけ?」

 

アカネはまずこの状況を知る為に記憶を遡ることから始めた。

 

(多分、日にちは変わってないはず……だから仮定として今日は確か、お兄ちゃんの幸せの壁となる人を見つけて、その人に説得する為にまずは隠れて……でも、その後から紅とのリングを一度切られて……)

 

結論として、結局は『分からない』ということ。

 

(……紅しか分からないし、紅に聞こう)

 

そう考えて、アカネは紅へと意識を向ける。

 

(紅、今大丈夫?)

 

(私はお前の人格だ。用事が出来るわけがない)

 

(あ、確かに)

 

そんな会話をしただけでもアカネは嬉しいのか少しだけ笑みを浮かべる。

 

(ねえ、私とのリングを切った後、何があったの?)

 

(蓮の障害となる者を見つけて、それから……殺した)

 

(……それは紅が?それとも、紅達が隠してた人格が?)

 

(後者だ)

 

(……そっか)

 

紅との会話はそれで終わり、セトの頭を優しく撫で始める。

 

すると、セトは薄く目を開けた。

 

「あっ……」

 

アカネがしまったとでもいう様な顔でセトを見るが、セトはアカネを視界に収めると勢いよく起き上がり、アカネを抱き締めた。

 

「⁉︎せ、セト⁉︎」

 

「良かった……無事で良かったっす!」

 

「せ、セト……心配させたのは悪いと思うけど、く、くるしい……」

 

アカネは本当に苦しそうな表情でセトに訴えかける。

 

事実、アカネの顔色は少し青白くなっている。

 

「あっ!ご、ごめんなさいっす!」

 

「いや、心配してくれのは有り難いけど、抱き締める力が強過ぎて……」

 

アカネは一度深呼吸をして息を整え、セトに質問を投げかける。

 

「ねえ、セト。私がこんな状況になってから日にちって経った?」

 

「いや、経ってないっす」

 

「そっか。じゃあ、此処まで連れてきてくれたのは誰?」

 

「レンさんっす。キドとサクラ姉さんは意識があったっすから。……で、アカネさん、何があったんすか?どうしてアカネさんが意識を落とすような事態に?」

 

セトがそう説明を求めるも、アカネは口を開こうとしない。

 

ただ、理由は『説明したくない』わけじゃなく、説明すれば曖昧になるのが目に見えてるからだ。

 

(あの時、意識があったのは紅とまだ会話したこと無い人格。或いは何方か。何方にしろ、私に説明は出来ないし……紅に代わってもらおう)

 

アカネはそう決めると、一度目を閉じ、紅と交代した。

 

「……で、説明だったな」

 

「そうっす。お願いするっす、紅さん」

 

「……まず、蓮の障害となる者が現れて、それがやはり菫だったから、問題なく闇倉に消してもらった。その後に……」

 

紅は其処まで説明した後、首を傾げる。

 

「?どうしたんすか?」

 

「……何があった?」

 

「え……覚えてないんすか?」

 

「ああ、全く。その後の記憶が無い……」

 

紅はもう一度記憶を思い出そうとするが、その時に酷い痛みを感じ、頭を抑える。

 

「うっ……」

 

「紅さん⁉︎大丈夫っすか⁉︎ち、ちょっと待ってて下さい‼︎今キド達を呼んでくるっす‼︎」

 

そう言ってセトが慌ただしく部屋から出て行くのを見て、紅は闇倉に話し掛ける。

 

(闇倉、お前は知らないか?あの後、何があったのか)

 

(残念ながら私も覚えてないな。ただ……誰かと会った……気がする)

 

(『誰か』、か……その『誰か』の所為で私達の記憶の一部が無くなってる、ということか)

 

(あくまで『気がする』だから、会ったかどうかも不明瞭。私の気のせいかもしれないしな)

 

そんな会話をしていると、ドタドタと慌ただしく階段を駆け上ってくる足音が聞こえ始める。

 

(……会話は此処で終了だな)

 

(そうみたいだな。ま、説明頑張れよ〜。私達の人格纏め役さん?)

 

(皮肉か)

 

その会話を最後に、その部屋の扉が開き、キド達が全員押しかけたのだった。

 

***

 

そこからまた数分経つと、キドとレンはレンの部屋で二人きり状態となっていた。

 

「……しかし、あの後、本当に何があったんだ?」

 

「さあな。俺にも分からない。菫が闇倉に殺されて、その後にそれが紅の考え通りだったって聞かされた以降から空白だからな……」

 

レンは天井を見ながらそう言うと、キドもそれに同意するように頷く。

 

そして、何かを思案するような顔をすると、レンの隣に座った。

 

「……レン」

 

「……何だ?キド」

 

「……不謹慎なのは分かってる。だが、もう……大丈夫な筈だろ?だから……」

 

「……なら、男のプライドを保つ為に、させてもらうな」

 

「え……」

 

そんなレンからの言葉に驚いた表情をするキドの視界は、部屋とレンの顔から一転、天井とレンの顔へと変わってしまった。

 

つまり、押し倒されてるのだ。ベッドに。

 

「⁉︎れ、レン⁉︎」

 

流石に顔を紅くするキドにレンは少し嬉しそうに笑顔を浮かべる。

 

「キド……お前はお前が好きだ」

 

「……」

 

「なんというか、オカン属性というか……」

 

「オカン属性とか言うな‼︎」

 

「それは流石に冗談だが、全員に優しい所とか、俺の冷たい対応に根気強く接してくれてたし、何より、俺の問題を解決しようと考えてくれたのもお前だろ?」

 

「……結局は、人を殺させてしまったが」

 

「アレは紅が勝手に考えてたことだからな。キド達にも知らせてなかったようだし……兎も角、俺はそういうお前が好きだよ、キド」

 

「レン……」

 

そうしてキドが目を瞑ろうとした瞬間、レンはキドから離れた。

 

「……え」

 

「いや、何期待してるんだ?俺19歳、お前まだ15、16ぐらいだろ?大の大人がそんな中高生襲うとか、事件じゃないか」

 

レンの最もな言葉にキドは項垂れるが、しかしその頭をレンは優しく撫でる。

 

「まあだが、この続きはお前がちゃんと大人になったらだ。二十歳前後ぐらいだな。その時までお預けだ。良いな?」

 

「あ、ああ……」

 

その言葉を聞いて、顔を紅くするキドだった。




まず最初に宣言しておきます。

オリキャラはまだまだ出てきます‼︎

東方キャラのあの二人も出てきます‼︎(ちゃんとタグも出てきた時に作る)

そして、終わり方もオリジナル‼︎独自解釈もありますので‼︎

あ、独自解釈はちゃんとタグにしておきますね

それでは!さようなら〜!


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プロローグ
人造エネミー(Ⅰ)


前話でも言った通り、今回から原作の話です‼︎

勿論、オリキャラもいます‼︎

それでは!どうぞ!


ーーーー

ある世界での話。

現実の世界は既に八月を迎えてる。

そして、この世界はずっと同じ日の夏で時間が止まっている。

青空と赤い標識ばかりのその世界、暑さのせいでアスファルトの地面に陽炎が揺らいでいる。

そんな世界に一人、暑苦しい姿をした黒ローブが、ビルの屋上にあるフェンスに乗ったその状態で、両手で頬杖をついたその状態で、下を見ている。

その下で起こっているのは、酷い惨劇。

一人の少女が黒猫を追いかけ、もう一人の少年がその少女を追い掛ける。

そして少年はその少女に近付くトラックを見つけ、急いで注意をしようとするが遅く、少女はトラックに跳ねられる。

少年はそれを見て泣き叫ぶが、しかしその光景を見ても、黒ローブの眉は動かない。

一ミリたりとも動かない。

何故なら、既にその光景を見慣れてしまっているのだから。


8月14日のこの日、ある家でけたたましいサイレンの音が鳴り響く。

 

その音が鳴っている部屋の主はそのサイレン音に驚き、ベッドから転げ落ちてしまった。

 

「……ッ!」

 

その主は右脛を抑えて、激痛を我慢する様な顔をしている。

 

どうやら、右の脛を大きく打ってしまった様だ。

 

その主は痛みと爆音への恐怖で涙目になりながらも、雪崩れ落ちた布団を手繰り寄せ体に巻きつける。

 

すると、サイレンの音が止み、代わりに一人の少女の声が聞こえてきた。

 

『おはようゴザイマス!ご主人』

 

その青いツインテールの笑いをこらえている少女『エネ』は、パソコンの中から部屋の主である、黒髪でひょろい体をしたパンツ一丁の男『如月 伸太郎』に和かに挨拶をする。

 

「エネ……お前……」

 

シンタローはパソコンの中にいる少女に文句を言おうとするが、しかしそれよりも早くその部屋に聞こえたのは、扉を勢いよく開いた音。

 

そして、次に響いたのは、母親の怒声。

 

「シンタロー‼︎あんた、アレだけ大きな音は近所迷惑になるって言ったはずなのに、何でまたするの‼︎」

 

「いや、違っ‼︎お、俺じゃねえ‼︎犯人はこっちの……」

 

シンタローはパソコンを指差しながら画面を見るが、その中には誰もいない。

 

(逃げやがったな‼︎彼奴!)

 

「兎に角!もう二度とするんじゃないよ!分かったわね!」

 

そう言って出て行く母親。

 

シンタローはそれを見て、服を着てからパソコンの前にある椅子にノロノロと座る。

 

そして溜息を一つ吐こうとした直後、また扉がイキナリ開く。

 

それにビクッとしたシンタローは直後に椅子ごと倒れ、頭を打つ。

 

「痛え……イキナリ入ってこないでくれよ、母さん……」

 

「ああ、そうね。ごめんなさいね。でも、あんたに伝え忘れてたことがあってね」

 

「伝え忘れた事?」

 

シンタローはそれに首を傾げると、母親は伝える。

 

「幼馴染の『龍斗』君が来てるわよ」

 

それに対して、シンタローは少しだけ嬉しそうな顔をする。

 

「お、そうなのか?なら、ちょっと降りるか」

 

「あんたが下の階に降りるなんて、お風呂とか、ご飯とか、龍斗君が来るときぐらいよね〜」

 

「うっ……」

 

シンタローは母親から『事実』を突きつけられ、少し呻く。

 

その後は無言で階段を下り、玄関まで向かうと、やや長い薄い茶髪で特徴的な癖っ毛、濃緑のパーカーを着て、外は快晴なのにも関わらず黒の傘を持った青年がその場に立っていた。

 

「『リュウ』!来てくれたのか」

 

「ああ。で、上がっていいのか?」

 

「ああ、こっちだ」

 

シンタローは嬉しそうな顔を必死に抑えてリュウを自身の部屋まで連れて行くと、パソコンの中からエネの声が聞こえてきた。

 

『ご主人が急に何処かへ行ったと思ったら、リュウさんでしたか‼︎』

 

エネが嬉しそうな笑顔を浮かべてそう言うと、リュウも頷く。

 

「俺だ、エネ。期待外れか?」

 

『いえ!期待通りです‼︎ご主人が下の階に降りるときなんて、お風呂とかご飯とか、リュウさんを出迎える時ぐらいしかないですからね〜』

 

「母さんと同じこと言うなよ……」

 

シンタローはそう言いながらもパソコン前に座り、何かの作業に入るシンタロー。

 

暫くの間、部屋の中ではキーボードを叩く音しか無かったが、しかし、リュウが急に口を開く。

 

「……なあ、シンタロー。『アカネ』とは連絡取ってるか?」

 

それに対して、シンタローはキーボードを叩く指を止めずに答える。

 

「……メールでのやり取りだけだ。直接会って会話した事はない」

 

「……そうか」

 

リュウはそう言って外を見る。

 

外は未だに快晴である。

 

「……雨、降らないかな?」

 

「本当にリュウは雨好きだな〜」

 

「まあな」

 

そんな会話の後に、シンタローの指が止まる。

 

そうして自分の耳に持っていたヘッドホンを当てると、そこから音が流れ出した。

 

その音を暫く聞いていると、シンタローはカッと目を見開く。

 

「これは……売れるッ‼︎」

 

そう叫ぶシンタローの背中に、少し呆れの視線を向けるリュウ。

 

そんな視線など気にせずに作曲作業を続けるシンタロー。

 

しかし、そのパソコンの中では、エネがその作業を故意に邪魔する。

 

『今日はかなり猛暑日だそうてすよ。うわっ!都心で予想最高気温35℃ですって!わわっ。もう都内だけで十人くらい熱中症で搬送されてるみたいですよ。ご主人も外出時にはしっかりと対策しないと駄目ですね!』

 

「俺には関係ねぇよ。外なんて出ないんだから」

 

「流石ヒキニート」

 

「違う。自宅警備員だ」

 

そんな会話の最中も作業を続けているシンタローだが、急にエネに話し掛ける。

 

「っつーかお前さぁ……俺のログインパス変えたろ」

 

『おお!流石ご主人、反応が早くて嬉しい限りです!』

 

「戻せよ……今すぐ……」

 

『まぁまぁそう焦らずとも。というわけでこんなものをご用意いたしました!』

 

その声とほぼ同時に画面に現れたのは『保存しますか?』の問い。

 

それをエネは勝手に『NO』を押し、ディスプレイに表示されていた全てのウィンドウが瞬時に閉じられた。

 

それに驚いた表情を見せるリュウと、絶望の顔を見せるシンタロー。

 

そのすぐ後にシンタローは叫ぶが、その叫びを意に返さずに画面に四択クイズが表情さ!た。

 

『そんな訳で第一問!これに正解すると一つ目のパスワードを……」

 

「お前は馬鹿なのか⁉︎死ぬのか⁉︎これ‼︎曲‼︎これ‼︎」

 

そうして暫く言い合いを続けていると、シンタローの肘がパソコン近くに置いてあったコーラに当たり、その中身の液体は外に溢れた。

 

それを見て絶望した顔をするシンタローだが、エネとリュウはそんなシンタローに大声で呼び掛ける。

 

その声に反応したシンタローは直ぐにティッシュでキーボードとマウスを拭う。

 

その作業から少しして、ある程度綺麗になってからキーボードの文字を叩いてみる。

 

すると、打てる文字が『t』『r』『o』のみ。

 

「……おお。これは……『トトロ』って打てるな」

 

『他にも『トロロ』とも打てますね……』

 

そんな会話をするエネとリュウはチラッとシンタローを見ると、死にそうな顔となっていた。

 

「……俺、パソコンがないと生きていけねえ……」

 

「あ〜、パソコンを買い換えるしかないんだろうが……」

 

リュウはそう言ってエネとアイコンタクトを交わすと、エネは画面上に色々な店の情報を開く。

 

『やはり、何処もお盆休暇で頼んでもくるのが二日後ですね……』

 

「……二日?」

 

シンタローはそう呟くと、ますます死にそうな顔をした。

 

それを見て暫く黙っていたリュウは、一息つくと、シンタローの肩に手を置く。

 

そんなリュウの行動に視点が合わない目で見返すシンタロー。

 

そんな状態のシンタローを気にせずに、リュウは考えを言う。

 

「仕方ない、買いに出るぞ」

 

「……」

 

シンタローはその言葉に目を見開き、エネは嬉しそうな顔をする。

 

その後、一度エネとシンタローが口論したが、『パソコンが無いと死ぬ』シンタローが結局折れ、外へと出ることにした。

 

シンタローは溜息を吐きながらタンスの中を調べてみると、そこにあったのは赤いジャージ。

 

猛暑であるにもかかわらずにシンタローはそのジャージを羽織ると、携帯を持ってリュウと共に外に出るのだった。



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人造エネミー(II)

こんな作品、忘れてる方の方が多いでしょうが……私は!帰ってきたぞ!

というわけで、始まりの話、どうぞ!

ーーーー

黒ローブはまた暑い炎天下の中、ビルの屋上の柵に腰を下ろし、下を見下ろしていた。

其処には、公園から女の子の手を引き出てきた男の子の姿が見えた。

しかし、その歩いている方向にあるのは建設途中の建物。

其処にあるパイプ菅の束を纏めていた紐がなんの前触れもなく千切れ、ちょうど真下にいた二人に降り注ぐ。

それに気付いた女の子は男の子の背を押し、自分を犠牲にした。

男の子が血まみれで死んだ女の子の名を呼ぶ。

しかし、女の子は何処か嬉しそうな顔をして絶命しているだけ。

それにすら眉を動かさない黒ローブ。

そして、世界はまた、繰り返すーーー。


「……暑い」

 

『外に出て一言目がそれですか。本当にヒキニートですね〜』

 

暑い炎天下、熱中症を起こした人が何人も出たその日、パソコンを買うためだけに外に出てきたシンタローと、その付添人のリュウとエネ。

 

そのシンタローは外に出た瞬間には目が死んでおり、もう既にフラフラ状態。体力0が丸わかりである。

 

そんな幼馴染であり、親友の状態に呆れた様子で肩を竦めるリュウは、自分の傘を差し出す。

 

「なんだったら、これを日傘にするか?」

 

「……それ、雨様だろ?それに、お前のお気に入りなんだから、別に良いよ」

 

「そうか」

 

そんな会話をしながら公園を通り抜けようとしていたが、その公園をシンタローは視界の端に見たために、一度歩みを止めた。

 

「……しかし、この世界はなんだか……違和感があるんだよな」

 

「違和感?」

 

「ああ。まるで、別の誰かに、この世界が作り変えられてるような……」

 

そのシンタローの言葉に、エネは答える。

 

『それはそうでしょう。此処最近、近代開発が進められていますから』

 

「でも、名残も残ってるだろ?例えば、此処の公園とか」

 

エネに続いてリュウも答えると、シンタローは頷く。

 

「そうだな……」

 

その受け答えをした後に歩みを進める。

 

『あ!ご主人!次の角を曲がれば目的地ですよ!』

 

その案内のもと、角を曲がれば、大きなビルが聳え立っていた。

 

「うわ……こんなのが出来てたのか……」

 

「そうだ。俺も、何か用がない時なんかは此処に来ないが、今回のように機械が壊れた時なんかはよく此処にきてるぞ」

 

「へ〜」

 

『此処は『最先端』の設備とかあるそうですが、来年になったら『最先端』ではなくなるのですかね?』

 

「お前、中々エグいことをいうよな……」

 

そんな会話をしている間、リュウは静かにしていたが、ふと何かを感じたのか、斜め後ろを見た。

 

「?リュウ、どうした?」

 

「……いや、誰かに見られていたような気がしたんだが……多分、気のせいだな」

 

「そうか。とりあえず、入ろうぜ!此処でずっと立ってるのは無理だ!限界だ!」

 

シンタローはそう言って、そのヒキニート生活の何処にあったのかもわからないなけなしの体力を振り絞り、走って中へと入っていってしまう。

 

「……シンタローの奴、コーラを飲みに行ったな」

 

そんな親友の奇行にまた肩を竦めるだけの仕草をした後、リュウも入っていく。

 

……そんな彼らの後ろから、また別の集団がやって来た。

 

「ねえねえ!此処であってるん?」

 

「ああ、此処のはずだが……というか、テンション高すぎないか?」

 

「仕方ないね!此処に来たの初めてだし!初めてのみんなでの旅行だし!」

 

「……そのみんなでの初めての旅行で、誰が携帯を水没させると思ったか……」

 

「うぐっ……『黒羽』に言われると、胸にグサッとくる……」

 

「まあまあ、皆んなでの折角の旅行だし、こういうアクシデントもあって良いと思うわよ!楽しいから!」

 

「そうね。でも、そんな中でも、『蓮子』がいつも通りに時間に遅刻するとは思わなかったけれどね」

 

「め、『メリー』……」

 

「……はぁ、此処で話してても仕方ない。入ろう」

 

「そうだな。ほら、行くぞ」

 

『黒羽』と呼ばれた青年の後を追うように、金髪の髪の少女が二人と、黒髪の少女、水色の髪の少女が中へと入っていった。

 

ーーーこれから起こる不思議な出来事など、知らないままに。




京都弁難しい……翻訳機能使ってはいるのですが……

すみません、京都在住の方、京都民の方、寛容な御心でお許しください。

それでは!さようなら〜!


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人造エネミー(Ⅲ)

三度目の暑い炎天下の中、また黒ローブはビルの柵の上に腰掛け、下を見下ろしていた。

今度は少年がまた少女の手を引っ張り、走って先ほど少女が『死んだ』場所を駆け抜けて行くところだった。

一度目はトラックに跳ねられ、二度目はパイプ菅に貫かれて死んだ。

もうその死ぬ場面を見たくないからこそなのだろう。

しかし、それに対して黒ローブは溜息を吐き、小さく呟く。

ーーー逃げても無駄、と。

その一言を呟いている間に、少年達は歩道橋の階段を駆け上がる。

しかし、その瞬間、少女は踏み外してしまった。

少年は少女を引き上げようとしたが、少女は既に少年から手を離していた。

そのまま階段の一番下まで落ちていき、笑みを湛えたまま地面に頭をぶつけ、其処から血をドクドクと流し続ける。

少年はそれで悟った。

また、少女は死んだのだと。

少年の絶叫と共に、黒ローブは静かに、ゆっくりと目を閉じる。

ーーーそうして世界は、繰り返す。


シンタローが体力回復目的でコーラを素早く買い、それをまるで完走しきった後のマラソン選手の様な飲みっぷりを周囲に見せ(周囲はまるで変人を見る様な目だった)たあと、遅ればせながらついてきたリュウと共にエレベーターに乗り、電機売り場の階にやって来た。

 

「ひ、人が多過ぎる……」

 

「だな……はぁ」

 

シンタローとリュウは降りて直ぐに溜息を吐いた。

 

両方共、人付き合いが上手い人間ではないのだ。

 

すると、その後ろから、微かにチリン、と鈴が鳴る音が聞こえた。

 

それに気付き、後ろを振り向いてみると、五人の集団がいた。

 

一人男、残り四人は女性という、誰が見ても羨ましい場面である。

 

そのうちの一人である、水色の髪をポニーテールにしている女性が高らかに叫ぶ。

 

「つきやしたー!」

 

「漸くか……人多過ぎだろ」

 

「全くだ」

 

その水色の女性の後ろから、金髪でつり目の女性と、黒髪の高身長の男が息を吐く。

 

その男のベルト通しの所から、小さいが透明な鈴が見えた。

 

先ほどの音の正体であると気付くと、シンタローとリュウは先を急ごうとする。

 

しかし、会話は続いていた。

 

「ねえ皆んな!此処で買い物が終わったら、最上階にある遊園地に遊びに行かない?」

 

「お!良いねメリー!その案採用!遊びに行きましょう!」

 

「お前達二人は私たちよりも上のはずじゃなかったか?」

 

そんな五人の会話も、五人で移動し始めたために聞こえなくなっていった。

 

……が、その会話を聞いていたものが一人。

 

『ご主人!今の会話を聞きましたか!?上に遊園地というものがあるらしいですよ!行きましょう!』

 

「嫌だ」

 

エネの頼みをシンタローは至極面倒くさそうに断るも、エネは引かない。

 

『良いじゃないですか!遊園地ぐらい!ほら!遊びに行きましょうよ!』

 

「何でだよ!?大体、俺とリュウの男二人でとか、むさ苦しいだけだろ!」

 

その言葉を聞いたエネの顔が険しくなる。

 

『ご主人?どうして其処に私が入ってないのですか?』

 

その質問の答えに、このあとエネは激怒する事になる。

 

「はあ?だってお前、遊べねえじゃん。外に出て。それなのに遊園地に行って遊んで、何が楽しいんだよ」

 

『っ!ご主人は本当にサイテーです!デリカシーの欠片もないです!もう知りません!』

 

エネの突然の大声についイヤホンを外すが、それでも聞こえ、そして携帯の電源が落ちてしまった。

 

「お、おいエネ!?」

 

シンタローは慌てた様に携帯の様子を見るが、其処からエネが出てくる様子はなく、真っ暗な画面だけだった。

 

「彼奴、一体どうしたってんだよ……」

 

「いや、今のはお前が悪いな、シンタロー」

 

シンタローが訳が分からないという様に首を傾げるが、リュウはその様子にまた溜息を吐くだけ。

 

そして、説明を求めようとシンタローは口を開こうとするが、其処で急に人とぶつかった。

 

「うわっ!?す、すみません!」

 

シンタローが後ろを振り向くと、綺麗な笑顔の店員さんがいた。

 

「申し訳ございません!お客様。お怪我はございませんか?」

 

「ぁ、ぇっ……っっ……!」

 

「お客様は、どちらの品をお探しなのでしょうか?」

 

シンタローはそれに何とか笑顔で返した。

 

「その、あの、大丈夫です……」

 

「?すみません、もう一度よろしいでしょうか?」

 

「だ、大、じょうぶです!ありがとう、ございます!」

 

シンタローはそうお礼を言うと、店員さんから離れ、リュウの元に戻ってくる。

 

「……シンタロー、大丈夫か?」

 

「あ、ああ……俺、普通に人と話せた!笑って話せたぞ!」

 

そのシンタローの嬉しそうな言葉に、リュウは一度目はパチクリと瞼を瞬きすると、一度シンタローから視線を逸らした。

 

「……ぁあ……その、シンタローが嬉しい方に、撮ってる様でよかった……」

 

「?どうした?リュウ」

 

「いや、何も……!?」

 

と、其処でまた後ろから人にぶつかり、今度はリュわが素早く前を向くと、今度は灰色のパーカーを着た人間が其処にいた。

 

「っ、す、すまない……」

 

リュウは咄嗟に謝り、シンタローは土下座でもしそうな勢いで腰を綺麗に曲げ、頭を下げていた。

 

「すみませんでしたー!」

 

シンタローのその謝罪を、まるでゴミでも見る様な冷たい目(に見える)で見下ろすと、その人は呟く。

 

「……いいよ、別に。……こちらこそ、悪かったね」

 

その謝罪を聞き、改めてぶつかった人物を見ようと頭を上げたが、すでに其処には人がいなかった。

 

「……いないな」

 

「……ああ、そうだな」

 

二人が先程ぶつかった人物を探す様にキョロキョロしていると、ようやく待ちに待った声が聞こえてきた。

 

『………ご主人、リュウさん、大丈夫ですかー?』

 

「「エネ!」」

 

エネは二人の声を聞くと、ジロリとシンタローを睨む。

 

それにシンタローは不満そうな顔をするが、リュウが隣から肘で突いてくるため、謝る事にした。

 

「あー、エネ?その、さっきはごめんな。代わりと言っちゃ何だが、後でちゃんと遊園地連れて行ってやるよ」

 

その言葉のあとにエネを見やれば、エネの顔は輝いていた。

 

『ほ、本当ですか!?約束ですよ!私、アレ、あれ乗ってみたいです!上に行ったり下にいったりするの!』

 

シンタローはそれを見て、ようやく理解をする。

 

エネもまた、外に驚いている事に。

 

『後で服屋にも行きましょう!』

 

「何でだよ、行かねーよ」

 

シンタローはエネの心境にいたり、先程とは違った雰囲気での会話に、リュウは少し笑みを浮かべた。

 

ーーーしかし、その笑みはすぐに消え去った。

 

突如として、そのフロアで爆発音が響いた。

 

「なっ!?」

 

『ご、ご主人!?リュウさん!?今のは何の音ですか!?』

 

リュウも、シンタローも、エネもパニックになるなか、シンタローとリュウは見てしまった。

 

腕を怪我した女性。

 

そして、その近くにいた、武装集団を。

 

その集団の真ん中にいた、リーダーらしき男が口を開く。

 

「さぁて、始めるか」

 

シンタローはこの時、思った。

 

『自分にこんなことが起こるのは、今回が最初で最後である』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、呟くものが一人。

 

ーー女王の元に、今再び、蛇が集うーー

 

しかしその呟きは、他の誰にも、聞こえる事はなかった。



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人造エネミー(Ⅳ)

世界が何度も何度も繰り返され、何度も何度も少女の死を見続けた少年は既に窶れていた。

好いている少女の死を目の前で何度も見続ければこうなってしまうのも仕方ない。

しかし、それを同じく何度も見続けた黒フードはそれに冷めた視線を向けていた。

黒フードは知っている。この後にこの少年が起こす行動を。

少女に予定調和の様に迫るトラックを少年は見ることもなく、轢かれる筈だった少女の手を引き、そのまま自分と少女を入れ替える様にして少年が道路に飛び出した。

それに少女は目を見開いたが、少年はそれすら目に入らないのか、空に向けて一言、「ザマァみろ」とだけ呟くと、トラックに轢かれ……姿を消した。

その場に残った少女は泣き始める。泣き叫び始める。

しかし黒フードはそこまで見ると静かに黒しかない世界へと戻る。

昨日と今日の間で会った、あの特徴的な赤いジャージの青年を思い出しながらーーー。


シンタローとリュウは銃を所持する集団の一人に脅されながら両手を体の前に縛られ、他 抵抗出来ない状態で同じように捕まっている集団の中に座らされた。

 

そして、少しすると腕時計を見ていた男が無精髭を生やした男に時間を告げる。

 

「13時、時間です」

 

「よし」

 

男はそれを聞き、男が渡してきた携帯を使い、外に放送を流し始めた。

 

『あー、テステス。お、聞こえてるな』

 

(ふざけてんのか彼奴っ!)

 

シンタローは内心で怒りをあらわにするが、男の声は携帯からスピーカーで流れ続ける。

 

『えー、警察の諸君、お務めご苦労。一度しか言わないのでよく聞くように。簡潔に言うと要求は一つ。今から30分以内に10億円を用意しろ!』

 

それを聞いていた全員は、その要求が叶うはずがないと考えた。

 

当たり前である。たった30分で10億円など、例え用意が出来ようと、その頃には全員の命は散ってしまっているだろう。

 

『受け渡しは30分後。この棟の最上階で行う。此方からはもう既に受け取りを待機させてるんでヘリから落としてくれ。偽札だの発信機だの、そこらへんは無駄だからやめるように。……あとまぁ、分かってるとは思うが、準備が出来ないだの人質解放が優先だの言った場合ーーー』

 

ここまできて仕舞えば、誰でも分かる。

 

その先の言葉が。

 

『ーーーここにいる奴らは全員、殺す』

 

(なっ!?そんな要求通る訳がないだろ……!!)

 

シンタローは焦り始め、いつもの頭の回転の良さが使えなくなってしまっている。

 

しかし、そのシンタローを落ち着かせるものが三人。

 

『ご主人、大丈夫ですよ!気を確かに!』

 

一人目はエネ。

 

「シンタロー、落ち着け。……俺たちは此処ではまだ死なない」

 

二人目はリュウ。

 

そして、三人目は後ろからシンタローの背中に手を付け、優しく語りかける。

 

「貴方、落ち着いて……大丈夫、きっと助かる。まずは落ち着く事が大事おす」

 

その少女の声は、とても優しく、確かに心を落ち着かせてくれる力があった。

 

(エネやリュウは兎も角、他人なのに……)

 

シンタローはそんなことを冷静に考える事が出来るようになった事を自覚すると、まずは思考を始めた。

 

(奴らの人数はこのフロアに9人程。それに受け取り役が一人、他にもう一人、操作している奴がいる)

 

ー何が最先端なコンピュータで安全が保たれてるだ……瓦解しまくってるじゃねーか!ー

 

この立て篭り班達は、最先端のコンピュータを逆手に取るほどの実力ある集団であると少しは理解したシンタロー。

 

(せめてシャッターが開いてくれれば……ん?)

 

そこでシンタローはある事を思いつく。

 

……しかし、それを実行するには、まずは色々と必要な手立てがある。

 

(まず、最初はこの手の拘束を解かねーと……いや、それ以上に、何かきっかけがあれば……!)

 

と、その時、リーダー格らしき無精髭の男がいきなり頭を押さえ、痛みを訴えた。

 

「っ!おいテメェ!誰の頭殴ってんだよ!!オイ!!」

 

「え、ちょ……私じゃありま……うぐっ!!」

 

その光景は余りにもおかしなものである。

 

何故なら、誰も、無精髭の男を殴ってなどいないのだから。

 

その光景にポカーンとなるシンタロー。

 

「くくっ」

 

そんなシンタローを現実に戻したのは、普通は笑える状況であるはずもないのに、笑う男の存在である。

 

「……え?」

 

その男は黒いフードを被った茶髪猫目の男で、しかし同じように捕まっている。

 

それなのにも関わらず、余裕があるのか笑ったのだ。

 

その男はしかし、シンタローとリュウの視線に気付き、謝罪をする。

 

「いや、ごめんごめん。あんまりおかしかったもんだからつい……ね」

 

「おかしいって、何が……」

 

「え?まあ、色々とね……それよりも君」

 

そこで猫目の男はシンタローの目を見ながら言う。

 

「さっきから、随分と面白い『目』をしてるね」

 

「……へ?」

 

「何かしてやろうかな〜、でもチャンスがないな〜……みたいな感じの」

 

「な、なんでそんな事を……」

 

「いや、まあなんとなくなんだけど」

 

その一言に、シンタローの後ろにいた黒髪の男と金髪の少女が呆れたように嘆息した。

 

「でも、実際はどうなの?」

 

「えっ?」

 

「秘策あり、って感じ?」

 

猫目の男の問いに、シンタローは筒抜けであると分かると、答えた。

 

「……30秒。この手が自由になって30秒あれば、確実に、こいつらの目を丸くしてやれる!」

 

「へ〜?そりゃ凄い。まあ、嘘って感じはしないなぁ」

 

「そうだな……反応もないしな」

 

猫目とシンタローが会話をしている所に、金髪の釣り目の少女が割り込むようにして呟いた。

 

「おや?君も嘘が分かるの?」

 

「……ああ」

 

「へ〜?面白い『目』を持ってるね……あ、所で、勝率は何パーセント?」

 

と、此処で猫目が本題に戻した。

 

シンタローもまた、それに乗る。

 

「悔しいけど……100%」

 

「「……」」

 

猫目と少女がその一言に目を丸くする。

 

「プッ」

 

しかし、すぐに猫目の方が噴き出し笑いをした。

 

「別に信じなくてもいいよ……まあ、これ解けないだろうし、キッカケもないし……」

 

「いやいや、ごめんごめん」

 

猫目は目に涙を浮かべながら続ける。

 

「本当に確信してる感じだったからさ。君の言うことは信じてるよ」

 

「……」

 

その一言にシンタローもリュウも信じられないような視線を猫目少年に向けた。

 

「キッカケかぁ……そうだなぁ」

 

しかし、猫目少年はそれに気付かないのか、はたまたそれが演技なのか、考える素振りを少ししてから、

 

「多分だけど……彼奴またアナウンス流すと思うんだ」

 

「……お前は何を言ってるんだ?」

 

流石にリュウが問い掛けるが、しかし質問の答えは返ってこず、勿論、リュウ自身も返ってくる事を期待していたわけでもないので、話の続きを聞く。

 

「まあ、その時に『確実に』隙が出来るから、あとは君に任せるよ」

 

「はぁ?どういう意味だよ。そもそもまずコレが取れねぇって……」

 

そこまで話していると、無精髭の男が怒鳴りだし、仲間の男にもう一回話すため、スピーカーから鳴らすように言った。

 

それにシンタローは驚いた表情を見せるが、無精髭の動きは止まらない。

 

『あー……聞こえてるな?金を準備する時間を10分短縮する。よって、残りあと10分だ』

 

シンタローはその一言にそれはもう驚いた表情を見せた。

 

『間に合わねぇと言おうもんなら、先ずこいつらの半分を殺す。いいな?』

 

その言葉に今度は絶望の顔を見せるが、しかしまだ無精髭の話は終わらない。

 

『それと、今の内に言っておくが……金の受け渡しのあと、俺たちはヘリでここから去る。追跡などは止めたほうがいい。落とせば相当な規模で街が消し飛ぶだろう爆弾を積んである。少しでも追跡だのの気配があれば、その瞬間にそれを街に落とす』

 

無精髭の言葉に、流石に他のお客達も動揺の色を出した。

 

しかし、シンタローは逆に怒りが先に来ていた。

 

(俺の家だって余裕で射程圏内だ……いや、俺の家だけじゃない。『アカネ』や『メグ』の家も……)

 

そこまで考え、さらに怒りが増幅しだしたシンタロー。

 

「くっそ、マジでいい加減に……」

 

「大丈夫」

 

その言葉に、流石にシンタローは切れてしまった。

 

「そんなのんびりしてる場合かよ!!俺の家族や友人が死ぬかもしれないんだぞ!?」

 

シンタローは思わず立ち上がり、大声で叫ぶ。

 

しかし、それは逆に悪目立ちしてしまった。

 

「あらら……」

 

「テメェはなんなんだよ。ウルセェな……」

 

(ヤバイ!?)

 

ここまで来ると危険を感じ、恐怖が戻ってきたのか、シンタローの体は震え始めた。

 

無精髭の男はそれを見ると、シンタローの髪を引っ張り、自身の顔が見えるようにした。

 

「おいおい、震えてんじゃねえか……」

 

「!!」

 

「さっきの威勢はどうしたよ!?ああっ!!?」

 

「ひぃ!!」

 

「随分と貧弱そうだしよぉ……普段、外にも出てねえんじゃねえのか!?てめぇみたいな貧弱クズだったら、誰も死んでも困らねぇよな?……そうだろ!オイ!」

 

無精髭の男は賛同を得る為か、後ろの仲間に声を掛ける。

 

その声に仲間達は笑いー一人笑いながらも頷く男がいたがーーお客達も心配そうな声を上げる。

 

しかし、シンタローは、それを片耳でしか聞いていなかった。

 

「……よろ……」

 

「あぁ?何か言ったかよ。よく聞こえねぇなぁ?」

 

そこで、シンタローは……ついに切れた。

 

「お前みたいなクソ野郎こそ、一生牢屋に引き篭もってろよ!!」

 

それを猫目は聞き、笑みを浮かべる。

 

「やっぱ君、面白いよ……!最高!」

 

その瞬間、テレビ置き場にあったテレビが大きな音を立てて倒れた。

 

「おい!!何だこりゃ……」

 

「ガッ!」

 

「何で勝手に物が倒れるんだよ!!」

 

そのテレビの倒れ方は、自然と倒れるにしては不自然であり、それはまるでーーー目を『奪っている』様だった。

 

「くっ!!バカにしやがって!!オイ!そこに誰かいるのか!?」

 

無精髭の男は混乱しながらもしかししっかりとテレビが倒れた方に銃口を向ける。

 

しかし、それは無駄に終わる。

 

「おい、応えろ……!!」

 

男がそこまで言うと、その男の背にあった棚が倒れ始め、叫び声をあげながらも男は棚に潰されてしまった。

 

そして、その瞬間、シンタローはパソコン売り場を見つけた。

 

(よしっ!!あとはこの手が自由になれば!!)

 

そこまで考えると、その瞬間に手を縛る感触がなくなった。

 

それはリュウも同じであり、二人して見合わせる。

 

「ね?出来たでしょ、隙が」

 

そんな二人に声を掛けたのは猫目の少年。

 

「お前、いつの間に!」

 

「それじゃあ、よろしくね〜?期待してるよ〜」

 

猫目の少年はシンタローの質問に答えず去っていく。

 

シンタローもまた、其処でやるべき事を思い出し、直ぐに立ち上がり走り出した。

 

棚に埋もれた男さえ踏みつけ、目指すはパソコン売り場。

 

「なっ!?……おい、動くな!!」

 

「危ない!」

 

そんな声達さえ、今のシンタローには聞こえない。

 

シンタローは携帯のコードを取り出し、パソコンと接続した。

 

「頼んだぞーーーエネ!」

 

シンタローの一言に、エネは笑みを浮かべながら答える。

 

「終わったら、遊園地ですからね!!」

 

そのままエネは去っていく。

 

その去っていく姿を見て、シンタローは安堵した……その瞬間。

 

パンっ!という音とシャッターが開く音と共に、シンタローは腹部ら辺に痛みを感じた。

 

そして、シンタローは倒れ、目を瞑るその前に見えたのは、複数の人の姿だった。

 

***

 

『……起きて』

 

シンタローは目を覚ます。

 

その目を覚ました場所は、とても真っ暗な世界。

 

その世界に普通は動揺するものだが、しかしシンタローは冷静だった。

 

なぜなら、本人はそれが『夢』であると自覚しているからだ。

 

『……ようやく起きた』

 

「……俺は死んだのか」

 

『貴方はまだ死んでない。死なせないーーー貴方にもまだ、残ってもらわないといけないのだから』

 

シンタローは其処でこれが少女の声である事を漸く理解した。

 

そして、少女の言葉を理解しようとするが、少女は待たない。

 

『貴方は元の世界に戻れば、此処を忘れる……だから、余計な事を考えず、元の場所に戻って……そして、今度こそ死なないで。ーーー私が殺しに行くまでは』

 

その言葉を最後に、シンタローの意識は遠のいた。

 

***

 

シンタローが目を覚ますと、見知らぬ天井が見えた。

 

「……俺、なんか、夢を見てた気が……どんな夢だっけ?」

 

シンタローはそう呟き、思考に耽ろうとするが、しかしさっきからある腹部にかかる重みの正体を見てみた。

 

其処には、二人いた。

 

一人は水色の髪の少女。とても安らかに寝ていた。

 

もう一人は白髪の少女。こちらも同じ様に寝ていた。

 

「……やべ、起こしにくい」

 

シンタローがそう呟いたのとほぼ同時に白髪の少女が目を覚まし……。

 

「ひっ!!」

 

怯えられた。

 

「き、キドーーー!」

 

そして逃げられた。

 

「……何だったんだ?」

 

シンタローがまた呟くと、今度は複数人の足音が聞こえだし、その足音が部屋の前で止まると、扉が開いた。

 

「……漸く起きたか」

 

「……え?」

 

シンタローは其処で驚きの声を上げた。

 

なぜなら、見知らぬ少年少女の中に、あの猫目と涙目の妹、その妹が持つ自分の携帯、その中にいるエネ(遊園地に行こうと叫んでいるがシンタローはそれどころではない)、そして……。

 

「シンタロー!?大丈夫!?怪我してたのに、もう起きて平気なの!?」

 

「……アカネ?」

 

忘れるはずもない、友の一人である『雅 茜』が涙を流しながらそこにいた。



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メカクシコード(Ⅰ)

本来は如月アテンションがあるのですが、今回はそこを省いています。やらない曲ですね。

そして、これから多数に原作と違う部分が出てきます。これはタグにオリジナル展開とでも載せておきますね。

それから、クリスマス編の話は消しています。
理由としては、ヒントとして出した話が答えになってしまう可能性が出てきたからです。

それでは、メカクシコード。スタートです!


***


キドは、ある夢を見る事が度々あった。

それは孤児院の夢。

まだもう一人の姉がいた頃の夢。

キドはカノ、セイヤ、まだ人見知りが激しかった頃のセト、サクラと共にヒーローごっこをしていた。

この時の悪役はいつも父親であり、孤児院に迎え入れてくれた人だ。

「見よ!ヒーロー達よ!此奴が見えるか〜!」

そう言いながら抱え上げたのは怖がるどころか楽しそうに笑っているーーーだった。

(……まて…………ーーーって、誰だ?)




シンタローが目を覚まし、見た光景は、あまりにも日常を普通とは言いがたくも謳歌してきたシンタローから見たら、どうにも常識からかけ離れている光景だった。

 

「な、なんでアカネがこんなヘンテコ軍団に……?いや、それ以上に何でモモが……」

 

そんな呆然とした状態で呟くシンタローだったが、しかしその呟きは突然のモモの抱き着き攻撃によって阻止されることとなった。

 

「お兄ちゃん!!」

 

「グヘェ!」

 

モモのその抱き着きは、シンタローからしてみればやはり攻撃でしかなく、もう一度意識を失いかけたが、しかしそれはアカネと同じ赤髪の男性に引き剥がされたお陰で阻止された。

 

「モモ、落ち着け。お前の兄がもう一度昇天しかけてたぞ?」

 

「はっ!!ご、ごめんね、お兄ちゃん!!」

 

「い、いや、気にすんな……」

 

シンタローが青い顔のまま、もう一度集団を見渡すが、やはり奇妙としか言えなかった。

 

「……で、モモ。お前、なんでこんな変な連中と一緒にいるんだ?てか、アカネは兎も角、他は誰だ?」

 

「よくぞ聞いてくれたね!シンタロー君!」

 

シンタローの疑問にテンション高く答えたのは、テロの時に出会った、あの猫目の少年。

 

「僕はメカクシ団No.4のカノでーす!よろしくね!僕たちはメカクシ団と言って、活動としては今のとこ、警察の目を『盗んで』やばい施設に入って、色々と拝借してるぐらいだね!」

 

「……『ぐらい』で済まないとツッコミを入れたら負けか?」

 

リュウのその呟きはあのテロ事件の時に会った釣り目の金髪少女と、同じく金髪で、しかし此方は優しい印象の少女が頷いていた。

 

「そして!僕らメカクシ団の団長であるNo.1がこの緑髪のキド!No.2はその隣にいるキドより背が高い女性で、キドのお姉さんである……」

 

「木戸桜だ。サクラと呼んでくれ」

 

「そして、俺がNo.3のセトっす!よろしくっす!」

 

「兄さんは良いから、次は僕だね。僕は鹿野聖矢。No.5だよ。よろしくね、モモさんのお兄さん」

 

「そして、今現在、セトの後ろに隠れてる白い子がNo.6であるマリーで」

 

「No.7が私。皆んなからはアカネって呼ばれてるから、今までと同じ呼び名だね」

 

「モモが来る前は俺が最後だったが、No.8。茜の兄の蓮だ」

 

此処まで一気に自己紹介をされたが、流石の情報処理速度が速いシンタローは、全員の名前を覚えてしまった。

 

「い、いや、メカクシ団ってなんだよ!?というか、あの後からどうしてこうなってんだ!?」

 

シンタローのその一言に、一度その場がシンッ……と静まる。

 

「……え?」

 

「……やはり、さすがに覚えていないか……」

 

キドがパーカーのポケットに手を突っ込んだまま呟く。

 

シンタローの疑問には、シンタローが横になっていた布団で寝ていた水色の髪の少女が答えた。

 

しかし、その言葉は、今のシンタローでは到底、現実味が帯びないものだった。

 

「貴方は知らあらへんだろうけど……貴方、銃で腹部を撃たれて死に掛けてたんおす?」

 

「……は?」

 

***

 

此処で時間を巻き戻し、メカクシ団一行がデパートに来ていた理由を話そう。

 

8月14日、13時前のこと。

 

「それで?キド。新入りさんは何処にいるのかな?」

 

黒いフードを頭に被り、路地裏をキドより前を歩いていたアカネが、その後ろにいたメカクシ団団長のキドに体ごと向けて聞いた。

 

「……彼奴じゃないか?」

 

キドさんが指差す方向にアカネは体を向けてみると、確かにその場に座り込むピンクのフードを被った人が一人いた。

 

だがしかし、その時点でアカネはその人に見覚えがあり、しかし思い出せずに首を傾げた。

 

「……行くぞ」

 

「あ、うん……」

 

キドの声により現実に思考を戻したアカネは、キドと共にその座り込む人に近付いた。勿論、キドの能力を使いながら。

 

そして、近くにくればその座り込んでいる人物の状態も分かることになる。

 

(……え?なんで泣いてるの?)

 

すると、その座り込んでいた人は気配を感じたのかは判断しかねるが、キド達の方に向き……。

 

「うっ……うああああッ!」

 

盛大に叫んだ。

 

しかし、その場には誰もいなかったのにも関わらず、突如として人が現れれば、誰でも驚くものだろう。

 

「あ、ごめんね?私達、驚かせようと思ったわけじゃないんだけど……」

 

アカネは尻餅をついてしまっている人に手を差し伸べながらそう言った。

 

「……へ?」

 

その人はアカネの言葉が聞こえたらしく、アカネ達の方に顔を向けた。

 

そのお陰で、その人の顔も確認する事ができた。

 

(やっぱりこの子、アイドルやってる子じゃん……)

 

アカネはモモの引っ張り起こしながらレンから伝え聞いたことを思い返す。

 

如月 桃。十五歳の少女で、アイドルをやってること。

 

アカネは勿論、レンから話を聞くまで『モモ』というアイドルの存在を知らなかったが、モモの事が宣伝されていた紙ぐらいならチラッと見ていた。しかしそれも、思い出すことが出来ない程だが。

 

「さっきのアレ……見させてもらった。ずいぶんとまた派手にやったもんだな」

 

アカネがそんな風に考えていると、キドはいつの間にかモモと目を合わせながら話していた。

 

そして、キドとモモが少し話すと……、

 

「わたつわ、私もうお仕事辞めたので……!も……もう追いかけるのは止めてください!!え、えぇっと、サインとかくらいならいいですけど……」

 

と、言った。

 

アカネはその言葉に素直に驚いた。

 

何故なら、兄であるレンからそんな話を聞いていないからだ。

 

アカネがそのことでまた考え事をしていると、キドが戻ると伝えてきた為、それに頷き、アジトへとモモを連れて帰っていく。

 

……一つの可能性を考えながら。



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