プリムローズが咲いた日 (かぼちゃの馬車)
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魔法使いになる前

「っ…ここどこだ」

目が覚めると見渡す限り、真っ白で誰もいないところに自分はいた。

 

???「やっと目覚めましたか。中々目を覚ましてくれないので手順を間違えたかと思いましたよ。その様子だと異常はないようですね。」

どこかで声がしたが、目の前が眩しすぎるせいか何も見えない。真っ白なままだ。

 

「あの…ここはどこですか、目がまだ慣れないのか何も見えなくて」

目覚めたばかりで目が慣れていないのだろう。そう思い、どこかにいるであるだろう人に問いかける。

 

???「これは失礼!…これで私の姿が見えますか?」

誰かの手が目元に触れた。瞬間、目の前に人が立っていた。…よく見ると、青く大きな翼が背中にあった。

 

「…え」

一瞬思考が止まった。ハロウィンか?いやなんだこの人。え?よくわからない。

 

???「おやおや、混乱させてしまいましたね。…私は大天使アズラエル。死の天使と呼ばれています。」

 

「はぁ…」

微笑んでる。優しそうだ。…いや絶対変質者!逃げなきゃ。

 

アズラエル「こら!逃げては行けません、変質者ではありませんよ。だいぶ記憶が飛んでいるようですね?死の自覚はありますか?」

目の前の翼を持った人は、思考を読んだかのように問いかけてきた。

 

…ん?死の自覚?

 

アズラエル「その様子だと、死んだことを忘れていたようですね。…まぁ、若い子達には稀にあります。」

 

…稀なのか。

「あの、ここはどこで、あなたは誰で、私は誰なんでしょうか。」

最後の一文は、馬鹿げた質問だと思うが、頼りは目の前の変質者しかいない。

 

アズラエル「ですから、私は変質者ではなく、大天使アズラエルです。そしてここは天界。あなたは自殺者ですので、転生の儀を担っている私の下へ来たのですよ。…最後の質問ですが、あなたの以前の名前は斎藤慧(サイトウケイ)ですよ。」

ちょっと怒ってしまったのか、溜息混じりで教えてくれた。

 

…サイトウケイ…自分はサイトウケイ

「…あ、自分死んだのか」

思い出した。全て。

 

アズラエル「やっと思い出したみたいですね。よかったよかった。」

また和かに微笑んでる。許してくれたみたいだ。よかったよかった。

 

慧「思い出しました…あなたは本物の大天使様?」

アズラエル「ええ、そうですよ。サイトウケイ…あなたのことですから、一応確認いたしますね。転生者、斎藤慧、11歳。男子小学生。特にこれといって秀でたものはなかったが、ハリーポッターの世界観に異常にのめり込む。11歳の誕生日ホグワーツからも、マホウトコロからも入学の知らせが届かず。薄々気付いていた現実が幼心に突きつけられ所詮はファンタジーだったのだと絶望し、11歳の誕生日の夜、母がケーキを切るために用意した料理包丁で、自身の腹と首を刺し自害する。…間違いないですね?」

 

…自分だ。とんでもなく阿呆な自分だ。

慧「はい、間違いなく自分です。」

 

アズラエル「先程も言いましたように、自殺者には転生の儀を行なっています。転生者の望む世界。ですから、貴方の望む世界…もちろんハリーポッターの世界でも物語ですが貴方が望めば転生ができます。」

…なに!?…いやでも

慧「…自殺をすることは罪だと聞いたことがあるのですが」

 

アズラエル「はい、以前までは大罪として即地獄行きだったのですが、近年増え続ける傾向になりましてね、地獄は亡者でいっぱいいっぱい……今は転生の処置をとり悔いのない安らかな死を迎えられるようにしています。そしてまた死を迎えた時、再審をしているのですよ。」

…なるほど。即地獄行きコースもあったのか。

慧「じゃあ、僕はその…ハリーポッターの世界に行きたいです。」

 

アズラエル「ええ、そうですよね。そうだろうと思っていましたよ。…ハリーポッターの世界に行くにあたって、貴方には天界からのギフトが5つつけられます。」

慧「ギフト…?」

なんじゃそりゃ…

 

アズラエル「ギフトはより転生先を幸福に過ごしていただけるよう天界からのサービスのようなものですね。貴方の場合は11歳という非常に若い年齢ですので5つまでつけられます。どんなものでも大丈夫ですよ。…ハリーポッターの世界なら、強い魔力が欲しいなんてのがありましたね。」

…そんなの、チートでしかない。

…ん?

慧「…ハリーポッターってやっぱり転生者いっぱいいるんですか。なるべく1人の世界がいいんですが。」

 

アズラエル「なるほど…それですと、性別が選べませんがよろしいですか?」

慧「…それしかないなら。…あ!でも記憶消してください。女になったら前世の記憶邪魔でしかないし。ハリーポッターの記憶と名前と…まぁ転生先で邪魔にならない程度に。」

 

アズラエル「…あー…もう1人転生者がいる世界線しかないのですが、それでもハリーポッターd」慧「それでも!ハリーポッターで!」

 

アズラエル「わかりました…あー…ギフトは何をつけますか?基本的にはなんでも大丈夫です。」 

 

んー…なんでもいいと言われると悩む…

慧「あ、さっきの記憶は産まれた時からある状態にしてほしいです…本読むだけで内容忘れないでいられるとかできます?」

アズラエル「ええ、もちろん可能です。絶対記憶力ですね。…おつけいたしましょう。」

…やった、ハーマイオニーにも勝てるやもしれんぞ!こりゃ!

 

慧「2つめ…んー…誰も文句言えんほどの綺麗な容姿…なんて?」

アズラエル「ふふ、容姿端麗のギフトですね?これはどの世界でも人気ですね。」

…あー、まぁ、そりゃそうか。

誰だって1度は美男美女になりたいよな。

 

アズラエル「3つめはいかがなさいます?」

慧「ありきたりだけど、やっぱり強い魔力が欲しいですね。…どうせならダンブルドア並の膨大な魔力が欲しいです。」

アズラエル「超膨大魔力…この世界では一番人気ですねこれ。…扱えるかどうかはわからないですが。」

…えっ。

慧「使えないかもってことですか?」

アズラエル「怠ければですよ。鍛えれば力は発揮できます。」

…怠けるつもりだった。まぁ、そんなうまい話はないよな。仕方ない。

 

アズラエル「4つめはいかがなさいますか?」

んー…もしあの大戦の中生き延びてたら、仕事しなきゃいけないからなぁ。…魔法生物系の仕事って楽しそうだよな…。

慧「あー、どんな生き物とも会話できるようになりますか?」

アズラエル「…全種言語力にしましょう。貴方が意識を向けたものの言葉が理解できます。話すことも。…ドリトルのようになりたいのならお勧めはしません。彼方から話しかけてくるので煩くて仕方がないと言っていましたからね。」

はぁ…なるほどな…それはそうだ。

アズラエル「因みにですが、転生先は英語圏になりますが、読み書きなど特に問題はないかと思います。…前世の記憶もあまりないので逆に日本語の方が話せなくなるかもしれませんが。それは全種言語力で理解ができます。」

…あー、その問題もあったか。でも、特に気にしなくてもいいなら…

慧「不便なく使えるなら、それで。」

 

アズラエル「さて、最後ですね。5つめは何をつけますか?」

慧「…特にもう浮かばないんですよね。…適当につけられますか?」

 

アズラエル「んー…ではとっておきを。…こちらへ」

アズラエルへ近づくと慧の額に優しく口付けた。

 

アズラエル「私から貴方への願いは、人生を寿命まで楽しんでほしいのです。

…口付けにより、身の危険から守られる守護を授けました。私の守護により自らの決断による死は迎えられません。」 

 

…なんだって!?自殺できないってことか!とんでもないやつをつけてくれましたね!

 

アズラエル「さて、転生の儀を行いますね?…」

アズラエルはそう言って目を閉じ祈りを始めた。

 

_______

 

???(どうなった?、アズラエル?)

???「ぅ…ぁ、」

自分から出た赤子の声に戸惑いながらも、状況を整理した。自分の手は明らかに以前より小さく、思うように動かない身体。

 

…転生してしまったと理解した。

 




大天使アズラエル
死の天使、誕生と死を記録する天使。すべての人間の名前が載ったリストを持っている。 
自殺者への転生の儀を担っている。
天界では自殺は罪とされてきたが、近年増え続けるようになり、自殺者には転生の処置をとり悔いのない安らかな死を迎えられるようにしている。


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魔法使いになる前 2

…どうやら無事に転生したらしい。

だが今の自分は赤子だ。

 

???「…あぃ……」

 

まだ話すこともできない。

視界もいまいちよく見えないから、おそらく産まれて間もないのかもしれない。

 

…困った。困ったぞ。

母親らしき姿が居ない。というか、ここは外だ。しかも夜なのか、とても暗い。

 

…自分は捨て子かもしれない。

悪い予感がした。

どうする。どうする。泣き叫んだところで、人攫いなんかに拾われても困る。

転生したのにすぐに死ぬなんてことないよな。

 

…いや、あり得る。

アズラエルからのギフトはだいぶ贅沢言ってしまったから、実は寿命が短いですなんてことはあり得てしまう。

 

とりあえず落ち着こう。

 

頭の中と状況を整理するんだ。

…てか、ここはどこで、いつなんだ!

情報がなさすぎて逆に混乱してきたぞ!

 

あー…まず以前の自分はサイトウケイ…

確か…11歳だった…

ハリーポッターの世界に転生した…はず。

アズラエルからギフトを5つ貰った。

確か……

絶対記憶力

容姿端麗

超膨大魔力

全種言語力

そして…大天使アズラエルの守護

 

なにか使えるようなもの…言葉話せないからまず全種言語力は無意味だし…容姿なんて赤ん坊には関係ないし

 

とりあえずは…転生の記憶があるから、絶対記憶力はちゃんと使えてるみたいだ。

 

んー、となると…

…超膨大魔力…使えるだろうか…赤ん坊だが。

 

どう使うかもわからないけど…やるだけやるか。いちかばちか…

 

“Repello Inimicum” (敵をさけよ)……

 

……なにも起こらないな、やっぱり

 

あー…どうする…どうする…

赤ん坊のまま死にたくないぞ…

 

くそ…

…まだ死にたくないっ!!

???「ぅあ…ぁ!!」

 

ゾクっとした瞬間、身体の底からなにか溢れるような感覚が駆け巡る。

 

???「っ!?、とても大きな魔力を感じた…だが、薄汚い赤ん坊しかいない…ルダは魔力を感じたのに…気のせいだったかもしれない…魔法使いの家に雇われたかったのに…ただの赤ん坊…」

ルダ?…人か?いや耳が尖って…屋敷しもべ妖精か!…人じゃないが誰かいただけでも安心だ。

 

???「ぅ…ぁあ」

拾ってくれるかもしれん。ここは無邪気な笑顔を見せつけよう。

 

ルダ「無害な赤ん坊…捨てられてしまった赤ん坊…可哀想な子だ…こんな…ノクターン横丁に捨てられるなんて…ルダは…ルダは…見なかった…赤ん坊など見なかった…」

 

なに!?、見なかったことにするのかよ!

てかここ、暗いと思ったらノクターン横丁か!やっぱりハリーポッターの世界に来たんだな!やった!…死ぬかもしれないけど。

 

いや…やっと望む世界にきたんだ…見なかったことになんてさせてたまるかっての

さっきの感覚を思い出せ…

???「ああ…!!」

またゾクっとした。

 

ルダ「…!?、こんな小さな赤ん坊が…とても大きな魔力を出している…見間違いじゃなかった…ルダは恐ろしい子を見つけてしまった…」

見なかったことにはしないみたいだな。よし。

 

ルダ「…小さな赤ん坊…恐ろしい子…この世界は例のあの人がいる…とても危険な場所だ…大きな魔力を持ってる赤ん坊…きっと狙われてしまうだろう…」

屋敷しもべ妖精ルダは、自分の瞳を真っ直ぐ見つめ、心を見つめてきた。

 

ルダ「っ…ぁぁ、なんと…赤ん坊は恐怖を知らない…でもここにいても行けない。」

何を言ってるかわからなかったが、ルダは何か紙と道端に咲いていた花を摘んで、自分の胸元に置いた。

 

視界が歪んだ。…ちょっと気持ち悪い感覚。姿現しみたいなことをしたのか。

…でここは?どこだ?

…海の匂いがする。ノクターン横丁ではないみたいだ。

 

ルダ「…吐かなかったのか…やはり強い子だ…とても強い子…なにか特別な子…マグルに渡したくはないが…魔法界より安全だ…恐らく…」

 

コンコンコン…

 

ルダがノックをした。

そして自分の頬をなで、地面に置いてかれた。ルダはどこかに行ってしまった。

 

???「まったくこんな夜中に…誰なの!」

女性の声がして、すぐに扉が開いた音がした。

 

???「っ…赤ん坊だわ…孤児院だからってこんな小さな子捨てていくなんて…」

女性の顔が覗き込む。

抱き上げられ、人の体温が心地よく感じた。 

 

…魔力使いすぎたか。凄い眠気が。

 

???「あら…なにかしらこれ…プリムローズだわ!綺麗ね…これは?…」

 

“1980.04.27. Urbach-Wiethe disease”

(1980年4月27日 ウルバッハビーテ病)

 

女性はメモを読み、はっとしたように孤児院の中に入り扉を閉める。

 

???「マリア!マリア!…すぐに医者を呼んで頂戴。この子病気みたいなのよ。…みて。」

マリアと呼ばれている女性にメモを見せる。

 

マリア「…!はい、すぐにお呼びします。院長」

 

院長「…ウルバッハビーテ病なんて聞いたことないわ。どんな病気なのかしら。」

 

 

_____1年後

 

“英国ヒルパー州 フェリック・スノー ペルレベ通り 2番地 オードルファス孤児院”

 

マリア「プリム?プリム?…どこに行ったのかしら」

 

プリムは自分の名前だ。プリム·ウルバッハ。

拾われた時、プリムローズとウルバッハビーテ病というメモ書きがあったらしい。

前はサイトウケイ…。男か女かわからないけど、今の自分は女だ。

 

プリム「マリア」

マリア「そこにいたのね?貴方はまだ小さいのだから、動きまわっては駄目よ?」

 

マリア·オードルファス。彼女はオードルファス孤児院の教育係で、院長シルビア·オードルファスの娘だ。

自分のことを凄く気にかけてくれる。

 

プリム「うん、わかった。」

???「プリムの成長相変わらずよね。この子1歳よ?よちよち歩きで話すのもできない筈じゃない普通。気味が悪いわ。」

ちょっと嫌味なこの人は、ペネロピ·ベネット。マリアと同じ教育係だ。ただ自分は嫌われてる。なんせ成長が早く気味が悪い。それに、病気持ちだって知ってるから余計だ。

 

でも院長よりはましだ。

 

マリア「そんなこと言わないで頂戴。子供の成長は個人差があるのよ。」

ペネロピ「そんなこと言ったって、プリムの見た目は3歳くらいだわ。…きっとあの病気のせいね。」

マリア「ちょっとペネロピ!」

 

自分の見た目や、異様なほど早い成長は、自分の魔力でやったものだ。赤ん坊の姿では言いたいことも言えない。話せるように声帯を変化できないかと思ったが、それには身体の成長が必要だった。

ギフトが役立った。コントロールはまだできないが。

 

プリム「大丈夫だよマリア。病気なのは本当のことだもん。」

院長「ウルバッハビーテ病。脳の病ですから、ちょっと変なのは確かだわ。」

プリム「院長、私の病気は、恐怖を感じないだけです。」

院長「黙りなさい!呪いがうつるわ!話しかけないで頂戴!」

プリム「」

 

院長は自分を呪われた子だと思ってる。

そりゃそうだ。奇妙すぎるもの。

まぁ、この見た目も本当に3歳になれば目立たなくなる。

 

マリア「…ほらプリム外へ出てみんなと遊んでなさい。」 

プリム「うん、またねマリア」

マリアは本当に優しいと思う。

ペネロピとかの反応が普通だと思う。

 

 

プリム「…誰かいないかなぁ、あ、小鳥さーん?」

???「ん?人間だ。人間が僕に話しかけてる?」

プリム「そうだよ。君に話しかけてるの。小鳥さん。」

???「僕はトト。小鳥さんじゃない。なんで話せるんだ?」

プリム「こんにちはトトさん。んー、なんでかなぁ。鳥なのかも。」

トト「!?鳥なわけない。君は人間だ。翼がない。」

プリム「わからないよ?翼がない、飛べない鳥かも。」

トト「は!翼のない飛べない鳥なんて、見たことも聞いたこともないよ!馬鹿な人間だ。」

そういってトトは羽ばたいてしまった。

 

???「おや?また病人が1人でブツブツ呟いてるぞ。」

???「話しかけるなよ、病気がうつるぞ。」

???「はは、病人は小鳥が友達なのか?」

 

…絵に描いたような、意地悪3人組。

背が高いのが、マイロ。

小太りなのが、ダルタン。

出っ歯で眼鏡をしてるのが、ルイス。 

同じ孤児院の6歳児だ。

 

プリム「少なくともあなた達とは友達じゃない。病人に話しかけるほど寂しかったの?」

ダルタン「なんだと!病人のくせに生意気だぞ!」

マイロ「あぁ、ダルタンやっちまおうぜ!」

ルイス「はは、病人なんか一捻りだ!」

プリム「病人で女の子の私相手に…3人も。とっても勇敢ね。」

ダルタン、マイロ、ルイス「…」

マリア「プリム?プリム?」

プリム「じゃあ、マリアが呼んでるから、またね」

この世界にきて思ったことがひとつ。

意地悪3人組はどこにでもいるんだなと思った。

 

プリム「ただいまマリア」

マリア「おかえりなさいプリム、外はどうだった?みんなと仲良くできた?」

プリム「んー、どうだろ。ダルタン達が話しかけてきて…」

マリア「ダルタン!またあの3人組ね!あとで叱っておくわ!なにをされたの!」

プリム「ふふ、なにもされてないよ。話してただけ。ありがとうマリア。」

マリア「そう?…なにもされてないならよかったわ。なにかされたらちゃんと言うのよ?」

プリム「うん、わかったよ、マリア。あ、もう部屋に戻るね。」

マリア「ええ、夕飯の時間になったら降りてくるのよ?」

 

______

さて…

魔法が使えるように鍛えておかなきゃ。

怠けたら駄目ってアズラエルに言われたからね。




ウルバッハビーテ症候群
恐怖を感じず好奇心を得る病気。

実の親は不明
捨てられた理由 マグルと魔女の間の子として生まれた為、闇陣営が猛威を奮っている中育てることは不可能だと考え捨てられる。産みの母は産後直ぐに死喰い人に見つかりマグルと交わったとして殺される。

院長 シルビア・オードルファス
海沿いの田舎の孤児院、オードルファス孤児院の院長。玄関前に置かれた赤子を拾う。メモ書きとプリムローズの花から、プリム・ウルバッハと名付ける。
プリムはブツブツと話す(鳥や蛇と話している)ので、不気味な子だと思っている。手が掛かるので早く手放したい。

教育係
マリア·オードルファス
院長シルビアの娘。プリムを懸命に育てる。プリムの孤児院での唯一の心の拠り所。

ペネロピ·ベネット
プリムの成長が早く気味が悪いと感じている。嫌いはするが、院長ほどではない。給料がいいとして働くが、そもそも子供があまり好きではない。

プリムローズの花言葉
運命を開く 永続する愛


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魔法使いになる前 3

プリム·ウルバッハになってから、3年が経った。

鍛錬を怠けずに…といっても魔法を使えばダンブルドア辺りがすっ飛んできそうだから、超膨大魔力はあまり使ってない。最初の成長だけだ。

 

でも3歳児にやっとなった。

これで歳相応だろう。もう魔力を使って成長なんてしてないしな。

 

ペネロピ「急に成長したと思うと、今度は急に成長が止まったわね。相変わらずの変人プリムちゃん。」

プリム「子供の成長はひとりひとり違うってマリアが言ってたよ。」

ペネロピ「どうかしらね。マリアはお優しいからそう言ってるのよ。」

…あー、急に成長が止まるのも異常なのか。

面倒くさい。みんなマリアと同じで寛容ならいいのに。

 

ペネロピ「そういえば今日、アメリカから養子をとりたいって方がくるらしいわよ。気にいられるといいわねプリム。手のかかる子供が1人減るから有難いわ。」

ペネロピは子供が嫌いだ。

給料がいいから働いてるらしい。

 

プリム「アメリカ?凄い遠くからくるんだね。」

ペネロピ「そうなのよ。変だと思って院長先生にどんな方なのか聞いたんだけど、わからないの一点張りなのよ。…て、あなたアメリカがどこにあるのかわかるの?」

プリム「んー、聞いたことないから、凄い遠いのかなぁって。3歳にわかるわけないよ。」

ペネロピ「…プリムならわかりそうだから、もう不思議には思わないわ。」

ペネロピは不思議なことにたいして、耐性がついたみたいだ。

 

マリア「プリム!アメリカから養子をとりたいって方がくるそうよ!楽しみね!」

プリム「ん、ペネロピに聞いたよ。」

マリア「えー!…びっくりさせたかったのに、ペネロピったら口が軽いんだから。」

ペネロピ「別に内緒にするようなことじゃないでしょ!…とにかく!御行儀よくねプリム!」

プリム「うん、わかった。」

 

御行儀よくって…なにしてたらいいんだ?

いつも動物とばっか話してるから何していいのかわからない。

 

プリム「とりあえず、本を読むか…」

本…3歳児が読むような本がないな。

困った。これじゃあ怪しまれる。

 

プリム「マリア、子供の本ない?」

マリア「子供の本?…プリムはそんなの読まないじゃない。どうして?」

プリム「あー…読んでみたいなって。1度も読んだことないから。」

マリア「んー…ちょっと待っててね。……あったあった。これなんかどう?」

“シンデレラ”

……3歳か?まぁいい。

プリム「ありがとうマリア。部屋で読んでくる。」

 

_________

部屋は私と5歳のクレアがいる

クレア「プリム…その本、プリムが読むの?」

プリム「うん、なんか変かな?」

クレア「変っていうか、それ子供が読む本じゃない。私達みたいな。…プリムいつも難しい本しか読まないから、興味ないんだと思ってた。」

プリム「これって何歳の子が読む本?」

クレア「んー、7歳?」

プリム「…」

クレア「あー、8歳かも」

プリム「…もう普通がわからないよ」

クレア「プリム、普通って言葉知ってたんだ。」

 

しばらくすると、院長先生と誰かが話してるのが聞こえてきた。

 

院長「…ここは5歳と3歳の子の部屋です。プリム?クレア?お客様です。入りますよ?」

プリム「はい、どうぞ」

院長「プリム、クレア。アメリカからいらしたクロウリー夫妻です。ご挨拶なさい。」

クレア「クレア·バーツです。5歳です。」

プリム「プリム·ウルバッハです。3歳です。」

レオナルド「これはこれは、礼儀正しい子達ですなオードルファス院長。私はレオナルド·クロウリー。そして私の妻のシルビアだ。」

 

シルビア「プリム、クレア。私はシルビア·クロウリーです。よろしくね?」

院長「クレアは絵の才能があって、とても優しく穏やかな性格の子です。クレアの描いた絵はこちらにございます。どうぞ見ていってください。」

院長とクレアと、レオナルドさんはクレアの絵が飾られた部屋に行ってしまった。

…養子になるのはまたの機会かな。

 

シルビア「…プリムは何が好きなの?」

シルビアさんと2人きりになった…

こういう状況は少し苦手だ…

プリム「えっと…本を読んだり…」

シルビア「まぁ!その歳で本が読めるのね!凄いことだわ!どんな本を読んでるの?」

しまった…墓穴を掘った…

今話していい本は”シンデレラ”しかない

プリム「…シンデレラを今日は読んでました」

シルビア「シンデレラ!どんな話だったかしら…よかったら普段読んでいる本を見せてくださる?」

プリム「……はい」

逃げ道がない。仕方なく本棚を見せた。

…あー、これでもう普通の子じゃないとバレてしまう。

シルビア「………」

シルビアさん固まってるぞ。

まぁ、無理もないだろ。

中学生くらいの知識がないと読めない本ばかりだ。

シルビア「…あ、えっと…レオとちょっと話してくるわ、プリム少し待ってて?」

 

________

しばらく経って、シルビアさんとレオナルドさんが来た。院長は後ろで様子を伺っている。

レオナルド「…オードルファス院長、少し3人で話してみたいのだが、よろしいですか?」

院長「ええ…構いませんよ。」

プリム御行儀よくね!と睨みつけられた。

 

プリム「あの…私…」

シルビア「見て!レオ!この本棚!彼女が普段読んでいる本よ!」

レオナルド「あー、プリムは3歳だったね?」

プリム「はい…」

レオナルド「…失礼プリム。僕の目を真っ直ぐ見つめて。」

言われたとおり、レオナルドさんの瞳を見つめた。瞬間、心の奥底、記憶、全て見られた気がした。

…開心術か。この人魔法使いか。

 

プリム「…なにしたの」

レオナルド「…プリム、君は…いったい何者なんだ。」

どこまで見たのか、わからない。

プリム「…どういう意味?」

シルビア「レオ?彼女の記憶を見たの?どうだった?」

レオナルド「あー、うん。…プリムは魔法が使えるようだ。

レオナルドさんがシルビアさんにだけ聞こえるように言ったみたいだけど。

なんとなく聞き取れた。

 

レオナルド「オードルファス院長と少し話そう…またねプリム」

シルビア「またくるわプリム」

シルビアさんは私を優しく抱き締めた。

高そうな香水の匂いがした。

 

______

その日クロウリー夫妻は、私を気に入ったらしく院長先生と私を養子に迎えるにあたっての話をしたそうだ。

 

クロウリー夫妻との面会を定期的に行った。

2人は私が魔法を使えると知ってから、沢山のことを教えてくれた。今まで、マリアやクレアが私をプリムとして見てくれたけど、2人といると、なんだか本当の家族のようで話す時間がとても楽しかった。

 

________1年後

 

私は4歳になった。

クロウリー夫妻は相変わらず会いにきてくれてる。

 

ダルタン「おい、プリム。今日はあのアメリカ人は会いに来なかったのか?」

プリム「ダルタン。今日はね。でもいつも来てくれるよ。」

ダルタン「お前を養子にするなんて、もの好きもいたんだな。サーカスにでも出すんじゃないのか。」

プリム「2人を悪く言わないでよ。」

ダルタン「…お前生意気なんだよ。いつも俺を下にみてるだろ!誰にも気に入られない問題児だって!」

プリム「そんなこと言ってないよ私。」

ダルタンは、マイロとルイスが先に養子に行ってから、問題を起こす常習犯になってた。

 

ダルタン「俺は出来損ないだ、頭も良くないし、運動もできない。お前は病気持ちなのに、いいとこに行く。…」

プリム「ダルタン…」

ダルタン「生意気なプリムめ…」

体格のいいダルタンに押され倒れる。

首をキツく締め付けられた。

 

プリム「っ…ぐ…ぁ」

苦しい…痛い。

必死にもがく。

 

プリム「っ、はな…し…て」

ダルタン「……」

ダルタンは正気じゃないみたいだ。

怒りで目の前が見えてない。

 

プリム「っ……」

意識が飛びそうだ。

…こんなとこで、死んでたまるかよ。

 

ゾクっとした。あの時と同じ感覚だ。

瞬間、周りの窓ガラスが全て割れて粉々になった。

 

院長「っ!なにをしてるのあなた達!」

ダルタン「っ!? …あ、俺…プリム…」

プリム「っがは…はぁ…っ、正気に戻ったかダルタン…はぁ…」

首がまだ痛い。声もガラガラだ。

ダルタンは逃げた。

院長「何事ですか!…プリム!その首はどうしたのですか!」

プリム「…大丈夫です、このくらいすぐ治りますから」

首には鬱血した痕があったみたいだ。

痛いけど、我慢できるからすぐ治るだろう。

 

マリアとペネロピが駆け寄る。

マリア「これはいったい…」

ペネロピ「…」

 

プリム「窓ガラスは私が割りました。ごめんなさい。」

院長「っ!? プリム…あなたは個部屋行きです。今すぐに。…クロウリー夫妻にも話します。」

プリム「…はい」

 

_________

マリア「プリム?入るわよ?」

プリム「どうぞ…」

マリア「プリム…首の調子はどう?」

プリム「あー、この通り。絶好調だよ。」

首をくねくね曲げる。

 

マリア「よかったわ、よくなって。…ダルタンも反省してるの。許してやってね。」

プリム「…うん、わかってるよ。」

ダルタンは正気じゃなかった。元々血が昇りやすいタイプだから、焦りとかが引き金になったんだと思う…。

でも、最近はダルタンのことを気に入ってくれた人がいた。その人は近くの漁師らしい。

 

マリア「あー、それでね、プリム。今日クロウリー夫妻がくるわ。個部屋になってから会うのは初めてね。…緊張する?」

プリム「んー…どうかな。不安はあるよ。問題を起こしたからね。」

マリア「きっと大丈夫よ、プリムは特別な子だもの。大丈夫。」

きつく抱き締められる。

プリム「うん、マリアに言われると安心するよ。ありがとう。」

 

_________

院長「プリム?クロウリー夫妻が来てくださいました。入りますよ?」

プリム「はい、どうぞ」

 

軋む音が鳴り、個部屋のドアが開く。

シルビア「プリム。久しぶりね?」

プリム「はい、お久しぶりです。」

レオナルド「怪我をしたらしいね。治ったのかい?」

プリム「はい、この通り。元気です。」

レオナルド「オードルファス院長、3人にしていただけますか?」

院長「ええ、問題を起こしてはダメよ?プリム。」

プリム「はい、院長先生」

 

扉が閉まり3人になる。

 

レオナルド「プリム、問題を起こしたらしいね?」

プリム「はい」

シルビア「レオ、もっと優しく言わないと」 

レオナルド「…あー、どんな問題を起こしたのかな?」

プリム「…ダルタンって子に首を締められて…無意識に窓ガラスを割りました。たぶん私が割りました。」

レオナルド「…プリム」

シルビア「……プリム、苦しい思いをしましたね。窓ガラスの件は私達もよくあることなの、だから気にしなくていいわ。」

プリム「え…そうなんですか?」

レオナルド「…私達魔法使いは、嫌なことや、怒ったりすると魔力が暴走することがあるんだよ。未成年はとくにね。」

プリム「…知らなかった」

…嘘だ、知ってた。

でもそこまで知識があるとバレてしまう。

ハリーポッターのことを知ってると。 

恐らく今はバレてない。

 

シルビア「だから、貴方を養子にとる話は進めるわ。大丈夫、安心して。」

優しく抱き締められる。

レオナルド「プリムはあれほど魔力があるのに制御できないなんて、やはりイルヴァーモーニーに通うべきだ。」

シルビア「あら。それはさきのことよ。レオは気が早いわ。」

プリム「イルヴァーモーニー?」

シルビア「アメリカの魔法使いが通う学校よ。私もレオもイルヴァーモーニー出身だから、プリムにもぜひ行ってほしいわ。」

……あれ、ホグワーツじゃないの。

……あれ?

 

ええ……なんてこったい



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魔法使いになる前 4

 

________1年後

5歳になった。

そして今日は、クロウリー夫妻が迎えに来てくれる日だ。

5年もいた孤児院を去るのは寂しいものだ。

 

荷物はそんなにないけど、トランクに詰めてみると意外にもいっぱいになる。

 

クレア「寂しくなるわ。プリムがいないと。」

抱き締められる。

プリム「クレア。つまらない話ばかりしてごめんね?」

クレア「ほんとよ!プリムって子供らしいこと何もしないんだもの!…でもそれがプリムなのよね。」

プリム「ふふ、クレアしか私のことわかってくれる人いないわ。手紙書くわね。」

クレア「もちろんよ。手紙は毎週書いてね!」

もう一度抱き締めて部屋を出る。

 

プリム「ペネロピ。」

部屋を出るとペネロピが佇んでいた。

ペネロピ「…ちゃんと挨拶しないと、院長に怒られるのよ。」

プリム「ペネロピ、私ペネロピのこと好きよ。」

ペネロピ「っ!当たり前でしょ。私は子供に好かれるタイプなのよ。」

プリム「…ぇ。そうだったかな?」

ペネロピ「なによ…」

プリム「んーん、手紙書くねペネロピにも。」

ペネロピ「ちゃんと綺麗に書かないと読んであげないわよ。」

プリム「ふふ、わかった」

抱き締めて手を振った。

 

マリア「プリム!」

マリアが駆け寄り、まだ身体が小さな私を抱き上げた。

プリム「マリア!マリア…」

沢山感情が溢れてくる。

涙も溢れてくる。

マリア「プリム、泣いては駄目よ?クロウリー夫妻がご心配なさるわ?」

マリアは泣いている私の頭を優しく撫でる。

プリム「…うん。マリア、私のこと忘れないでね?…」

マリア「忘れないわ、プリムは私の娘みたいなものだもの。手紙の書き方はわかる?」

プリム「うん。私、頭がいいの。」

マリア「ふふ、そうだったわね。…さぁ、院長とクロウリー夫妻がお待ちだわ。いってらっしゃいプリム。」

抱き上げた私を下ろす。

プリム「うん…マリアまたね。また会いにくるからね。」

マリア「ええ…待ってるわプリム。」

マリアの熱を、マリアの香りを忘れないように強く抱き締めた。

涙を拭って、孤児院を出た。

 

プリム「お待たせしました。」

院長「遅いわよプリム。…忘れ物はない?あなたの私物を残されても困りますからね。」

プリム「はい、私の物は少ないので。これだけです。」

小さなトランクを片手に上げてみせる。

院長「手紙の書き方はわかりますね?」

プリム「え?あ、はい。わかります。」

院長「…マリア達が寂しがるのでね。」

院長は、前よりもだいぶ穏やかになった。

相変わらず嫌味っぽい口調だが。

 

シルビア「プリム!みんなに挨拶はしましたか?」

プリム「はい。シルビアさん。」

シルビア「あら、シルビアさんってずっと呼んでちゃ駄目よ?私はあなたのママになるんだから。」

プリム「あー……はい。母上?」

院長の前だ、ママなんて呼べない。

 

シルビア「んー…ちょっと違うけど…まぁ許すわ!」

レオナルド「…なんだ?2人とも何を話してたんだ?」

シルビア「プリムったら、私のことまだシルビアさんって呼んでたから、ママって呼んでって話してたのよ。」

レオナルド「じゃあ、私のことはパパと」

プリム「……あの、恥ずかしいので、父上で勘弁してください。」

レオナルド「…シルビアはママなのに!」

シルビア「ふふ、私も母上だったわよ。安心してレオ。」

レオナルドさんは、なんだそうなのかという表情をした。

院長は気まずいのか、咳払いをした。

シルビアさんがレオナルドさんの事を肘で突いている。

 

……そういえば、ここからどうやってアメリカまで行くのだろう。ほうきは、無理がある。飛行機?魔法使いが?

 

ちょっと歩くと海沿いに……ティーポット。

花柄のティーポットがある。

あー…なるほどポートキーか。

 

レオナルド「さぁ、これを見るのは初めてだね、プリム?」

プリム「ティーポットですね。見たことありますよ。」

シルビア「あら、ただのティーポットじゃないのよ?」

プリム「…?」

何を言ってるんだという表情をした。

演技は上手くないが、表情をつくるのは上手くなってきたんじゃないかと自負している。

 

シルビア「これは、ポートキーといってね。特定の位置に移動ができるのよ。これは私達の家と此処にね。」

レオナルド「最初は姿現しを使ってたけど、プリムには危険だからね。作っておいたんだ。」

姿現しって危険なのか。ルダ…。なんてことをしたんだ。

 

レオナルド「さぁ、ティーポットに触れて。我が家にプリムをご招待しよう。」

ティーポットに3人の手が触れ。

瞬間、景色がぐるぐると回った。

目が回りそうだ。

 

プリム「…うっ!」

地面に叩きつけられた。

柔らかい芝生だ。もう海の匂いがしない。

シルビア「あら、吐かなかったの?プリムはやっぱり強いこね。」

プリム「…これくらいは大丈夫です。」

2人は優雅にゆっくりと降りてきた。

初めて見たときからお金持ちそうな身なりだと思ってたが、目の前の光景が推測を確信に変える。

 

プリム「…っでかい」

生唾を飲んでしまった。おもわず。

凄い豪邸だ。ご貴族かな。クロウリー家って。

レオナルド「クロウリー家にようこそ。プリム。」

シルビア「プリム·ウルバッハ·クロウリー。あなたの新しい名前。そして由緒ある魔法使いクロウリー家の1人になるのよ。」

…ご貴族だ。絶対そうだ。

なんだかとても面倒くさそうだ。

 

 

 

_______1年後

 

クロウリー家の娘になってから、1年が経った。そして1年でいろいろあった。

 

シルビアさんは魔法動物学者で、今はドードー鳥の調査をしている。透明になれるから調査が長引くらしい。

レオナルドさんは、いつも魔法薬学の研究を家でしている。イルヴァーモーニーでたまに教えているらしい。

クロウリー家はご貴族か何かだと思っていたが、純血一族だったらしい。

とは言っても、シルビアさんとレオナルドさんは古典派な考え方はもっていない。

それは腑に落ちた。

古典派な考えなら私を養子にしない。

……そしてシルビアさんは、イルヴァーモーニーの創設者、イゾルトセイアの遠縁の血族にあたるらしい。

シルビアさんにはスリザリンの血筋を絶やす為の一族の呪いが出ており子供が出来ない身体だったのだが、周りの古い純血一族の圧力に耐えかね私を養子にとったのだそうだ。

純血一族なんてどこまでが本当に純血なのか定かでないなと思った。

 

私の見た目が2人に似ていたこともよかったが、開心術で私が生まれてまもないうちに強い魔力を放った姿を見て、魔女であることがわかった為、養子として迎えたという。

確かに、私の瞳はレオナルドさんに似た琥珀色だし、髪はシルビアさんに似た黒髪だ。

世間には実子として伝え愛情を沢山注いで育ててくれている。

とてもありがたい。

_________

 

 

プリム「母上…ちょっと庭で遊んできます。」

シルビア「ええ…プリムは肌が白いから、本を読んでばかりでは駄目よ?」

レオナルド「学者の君が言うのか?変な話だ。」

プリム「母上、肌が白くて綺麗だよね。」

シルビア「まぁ!褒めるのが上手ね。プリム。レオも見習って頂戴?」

レオナルド「僕はいつも君に愛を伝えてるからね。」

プリム「……」

気まずいから、隙をみて庭に出た。

 

さて…

プリム「誰と話そうかな。」

 

カサカサ…

 

…ん?…蛇か。んー、まぁいっか。

プリム「あなたは名前はなんて言うの?わたしはプリム。」

蛇「…蛇舌か?…珍しいやつ。」

プリム「…お名前は?」

蛇「ローナ…」

プリム「ローナ!綺麗な名前ね!」

ローナ「変なやつ…ローナなんて珍しい名前じゃないさ。」

 

シルビア「……プ、プリム…あなた蛇と」

プリム「…母上」

ローナ「…じゃあ、失礼するわよ」

 

蛇は去ってしまった…私とシルビアさんを残して。

 

________

その夜ヴォルデモートの子ではないかと2人で話していた。

 

もちろんギフトのせいである為、蛇舌ではない。

仕方なく蛇以外の動物と話せることをバラすことにした。

 

「……!!…っ!」

2人の話はよく聞こえないけど、だいたいはわかる。私のことだ。

 

ゆっくり扉を開けた。

 

プリム「…母上、父上。話をしてもいいですか?」

シルビア「…ええ、問題ないわ。今話が終わったところよ。」

プリム「私…蛇と話せます。それはもう知ってますよね?」 

レオナルド「…ああ、シルビアから聞いたよ。」

プリム「実は…蛇以外の動物とも話せます。信じてくれないと思って秘密にしてました。」

レオナルド「他の動物?例えばなんだ?」

プリム「今まで話したのは、小鳥とか。カエルとか。いろいろです。」

 

シルビア「…そんなことってありえるの?レオナルド」

レオナルド「わからない…でも魔法が影響しているのは間違いないと思う。」

プリム「…私やっぱり変な子なの?」

不安そうな表情をした。

ギフトだから話せてるだけで、そんな深い話じゃないんだけど。

 

シルビア「変な子なんかじゃないわ。プリムは魔法使いだもの。不思議なことが普通なのよ?」

優しく抱き締められた。

レオナルド「…恐らく、プリムが小さい時に大きな魔力を持っていたから、可能なことなのかもしれない。」

シルビア「もういいわ、レオナルド。プリムはプリムだもの。私達の娘。愛しい子。それに変わりはないわ。」

プリム「母上…」

強く抱き締めた。

シルビアさんが頭を撫でる。

レオナルド「…そうだな。プリムはプリムだ。私達の愛しい娘。」

レオナルドさんが私とシルビアさんを優しく抱き締めた。

 

疑惑はでたものの、2人は愛情を絶やすことなく変わらず育ててくれている。

私は2人が好きだ。血が繋がっていなくても、本当の家族だと思えるのは2人が愛情深く育ててくれたからだと思う。

 

_______ 4月27日

今日は6歳の誕生日だ。

クロウリー家に来てから初めての誕生日。

盛大に祝ってくれるらしいのだが、どうやら純血一族の集まりもあるらしい。

…面倒くさそうだ。

 

レオナルドさんによれば、私の顔を見たい人が沢山いると。

…前言撤回、絶対面倒くさい。

 

シルビアさんが選んでくれたドレスを着せられながら、孤児院のみんなからのバースデーカードを読んでいた。

プレゼントはみんなで選んでくれたらしい。

辞書みたいに分厚い本だ。

“子どもの心理と成長”

…センスがいいな。

 

“プリム!6歳の誕生日おめでとう!

びっくりするニュースを教えてあげるね。

なんと、プリムがアメリカに行った後、私も養子にとってくれる人が来たのよ!

絵のことを沢山褒めてくれたわ!

プリムもクロウリー夫妻と仲良くね!

 

あなたの親友 クレア”

 

“6歳の誕生日おめでとうプリム

あなた小さい時は可愛くなかったけど、成長したら可愛くなったのかしら?

写真くらいよこしなさいよ。

手紙ばかりじゃ面白くないわ。

 

ペネロピ”

 

“プリム、6歳の誕生日おめでとう。

私のかわいいプリム。もうあれから1年なのね。時が経つのは早いわね。あなたがいないと、とても寂しいわ。

クロウリー夫妻とは仲良くしていますか?

アメリカで友達は沢山できましたか?

動物とばかり話しては駄目よ?

 

マリア”

 

…写真撮らないとなぁ。

 

プリム「母上…家族写真を撮りたいのですが、いいですか?孤児院のみんなに送りたいのです。」

シルビア「ええ、もちろんよ!髪を整えたら3人で撮りましょう!」

 

_________

 

びっくりするほど人がいる。純血一族ってこんなにいるのか。どこにいたんだよ。

アメリカだけか?…マルフォイもいたりしてな。はは。

 

プリム「……」

シルビア「ふふ、緊張しているわねプリム」

プリム「…あ、いや、人が沢山いるから…」

…なにぶん本と動物がお友達だったので。

 

レオナルド「緊張することないぞ、私達の娘なのだから、堂々としていい。」

シルビア「それは女の子として品がないわ。レオナルド」

プリム「……父上と母上の側にいてもいい?」

シルビア「もちろんよ、あなたはまだ6歳だもの。…同じ歳くらいの子なんて、イギリスのマルフォイ家の子だけね。でも古典派だからあまり深く関わらない方がいいわ。」

…なに!?…マルフォイいたのか。イギリス代表みたいな純血一族だもんな。おかしくはないか。…推しだけど、ちょっと今は会いたくない。…貴族らしい振る舞いは身についてない。完璧な姿で会いたかったのに。

 

とかなんとかプチパニックになってたら。

悩みの種が目の前にいた。

 

プラチナブロンドがキラキラと視界に入った。黒いドレスローブを纏っていて威圧感があった。…マルフォイ家だ。

 

レオナルド「これはこれは…遠いところを来てくださるとは、ルシウス。娘のバースデーパーティーへようこそ。心より歓迎しよう。」

ルシウス「レオナルド…こちらこそお招きいただき感謝するよ。…ところでご息女にご挨拶したいのだが?どちらに…」

レオナルド「あー…失礼した。…プリム、ご挨拶なさい。こちらはルシウス·マルフォイ殿で遠方のイギリスから来てくださった。」

 

…レオナルドさんの後ろに隠れていたが、どうやらそうもいかんらしい。

 

プリム「…イギリスから…私の6歳の誕生日をお祝いに来てくださり、有り難う御座います。本日、6歳になりました。プリム·クロウリーです。」

よろしくお願いします。とゆっくりお辞儀をした。

 

…うまく挨拶できてなくても、子供だから、許してくれ。と願うことにした。

ルシウス「とても礼儀の正しいご息女だな、レオナルド。プリム殿、私はルシウス·マルフォイ。…そしてこちらは息子のドラコ。…ドラコ、ご挨拶を。」

ドラコ「…ドラコ·マルフォイです。プリム殿6歳の御誕生日おめでとう御座います。心よりお祝い申し上げます。」

お辞儀をして彼が顔を上げた。

スカイグレーの瞳が私を視界にいれた。

…プラチナブロンドがキラキラと輝いた。

会いたかった登場人物に会えたことが嬉しかった。凄く綺麗な子だと思った、見惚れてしまった。

 

ナルシッサ「子供同士で遊んできてはいかが?ドラコ」

シルビア「それがいいわ、プリム。ドラコと庭で遊んでらっしゃい。」

…しまった見惚れてボーッとしてしまった。

どんな会話をしていた?

プリム「あ…はい、母上。ドラコ殿…庭はこちらです。行きましょう。」

私は彼の細い手首を掴む。離れないように。

彼の手首は女の子みたいだった。

人混みを抜けて庭に出る。誰もいない。

2人だけだ。

 

プリム「パーティーは息苦しいね、ドラコ。」

私は彼の方を見て微笑みかけた。

 

ドラコ「…」

プリム「どうしたのドラコ?具合悪い?…あ、私のことはプリムって呼んでね。同い年?でしょ?」

ドラコ「具合は悪くない。それとまだ僕は6歳じゃない…6月に同じ歳になる。」

プリム「ふーん。じゃあ学年は一緒か。さて、何をしようか。庭で遊べなんて酷いよね、私の誕生日なのに。」

ドラコ「子供だから仕方ないさ。それに大人達は、プリムの顔を見たらそれで満足なんだよ。」

プリム「そうなの?どうして?」

ドラコ「君は由緒あるクロウリー家の子だ。顔を覚えてもらう為に挨拶をする。そして縁をつくる。それが目的だからな。挨拶が終われば君は普通の子供と変わりない。」

プリム「…酷いねそれ。一族の顔を見たのは、今日が初めてだったから知らなかった。ドラコは何度もご挨拶してるの?」

ドラコ「5歳の誕生日の時に挨拶したさ。…でもあれは縁作りの為。僕の為じゃないと気づいたね。」

…ドラコはやっぱり頭がいいし、勘が鋭い。

 

プリム「ねぇドラコ。ちょっと悪いことしない?」

ドラコ「…悪いこと?」

プリム「ふふ、ドラコも私と同じこと考えてると思って。」

ドラコ「…どういうことだ?」

プリム「大人達に、自分が居ないように人形のように扱われるのが嫌なんでしょ。」

ドラコ「…」

プリム「ドラコは箒に乗れる?」

ドラコ「…ああ、一応な。練習中だが。」

プリム「よかった。私乗れないから任せるね。」

ドラコ「待て!何をしようとしてるんだ。」

プリム「…大好きな父上の箒を盗んで、飛んでみようと思って。庭で遊べっていうんだから、間違ってないよね?」

ドラコ「…箒に乗るのは危ないんだぞ、大丈夫なのか?」

プリム「んー、それはドラコ次第。それに、しちゃいけないことをするのってドキドキしない?」

こっち!とレオナルドさんとシルビアさんの箒が置かれている小屋に案内する。

 

…鍵がかかってる。

 

ドラコ「…鍵がかかってるんじゃ、作戦失敗だな。杖がなきゃ魔法は使えない。」

プリム「私、杖がないって言った?」

ドラコ「っ!?あるのか?」

プリム「ない。」

ドラコ「……」

プリム「でも開け方ならわかるんだ。頭がいいから。」

ドラコ「…それ、自分で言うと信憑性がなくなるぞ。」

まぁ、みてなって。と腕をまくって。鍵穴に手をかざし、ゾクッとする感覚を思い出した。

 

“Alohomora”(開け)

 

ガチャッ

 

プリム「やった!成功した!」

ドラコ「…君いったい何者なんだ。」

プリム「名前忘れたの?プリムだよ?」

ドラコ「そうじゃない!杖がないのに魔法を使うなんて!ありえない!」

プリム「杖を使わない魔法使いもいるわよ。」

ドラコ「なに!? そうなのか、どこにいるんだ」

プリム「わたし」

ドラコ「……」

ドラコの視線がちょっと痛い。

 

プリム「さて!鍵が開いたし、ドラコ。あなたの出番よ。」

ドラコ「待て。練習中だと言っただろ。これは…クリーンスィープだ。僕はコメットに乗ってる。」

プリム「うん、だから?」

ドラコ「…箒が違うとどうなるかわからない。」

プリム「でもこれ、乗りやすいって言ってたから大丈夫だと思う」

ドラコ「…うまく乗れなくても笑うなよ?」

プリム「なんで笑うの?乗れるだけ凄いじゃない。わたし乗れないからドラコに頼ってるのに。」

ドラコ「…っ、」

 

ドラコは頬を染めて、箒に跨った。

やっぱり大人用だから、サイズは合ってないようにみえる。

 

地面を蹴ってフワッとドラコが浮かんだ。

10m…20m…

高く高く飛んでいる。

 

スピード感はないけど、安定して飛べているみたいだ。よかった。

 

しばらくしてドラコが空から降りてきた。

ドラコ「プリムも後ろに乗りなよ。たぶんこの箒なら乗せて飛べそうだ。」

プリム「えっ…いいの?でも…私、ほんとに乗ったことないの。危ないからって。」

ドラコ「おい、箒の楽しさを知らないなんて、魔法使いじゃないな?それに危ないことはドキドキするんだろ?」

プリム「そうだけど…」

ドラコ「僕は君の共犯者だ。乗らなきゃいけないよ。」

プリム「…わかったよ。」

私は箒に跨って、ドラコの背中に抱きついた。

汗とドラコの香水なのかムスクのような香りがした。引き寄せられるような気がした。

ドラコ「手を離すなよ?絶対に」

プリム「うん、わかってる」

ドラコは地面を蹴って、箒が浮かんだ。

 

…凄い。魔法使いみたいだ。

いや、魔法使いなのだが。

 

風が心地よく頬を撫でる、ドラコがゆっくり飛んでるからだ。ムスクの香りが強くなる。…スピードを出したらどうなるんだろう…どんな感じなんだろう…

 

プリム「ねぇ、ドラコ」

ドラコ「っ…なんだ?」

耳元で話しかけたから、ドラコの耳が赤くなった。

 

プリム「もっとスピード出せる?」

ドラコ「…しっかり捕まっておけ。」

 

ビュンッとさっきよりも数倍早いスピードだ。風がうるさい。

凄く早い。

プリム「ドラコ!箒って楽しいのね!」

ドラコ「やっと魔法使いになったな。」

 

…やっぱりドラコは箒に乗るのが上手い。

 

しばらくして、パーティーが終わって私達を探していたレオナルドさん達に見つかって、怒られてしまった。

でも凄い楽しい経験をしたから、満足だ。

やっぱり危険なことはドキドキする。

 

プリム「ドラコ凄いね、あんなに早いスピード出せるんだもの。クィディッチの選手になったら?」

ドラコ「…クィディッチの選手は僕より、もっと早くて凄いさ。」

プリム「そんなことないよ、私の中ではドラコが1番早い!」

ドラコ「それは…初めてだからだろ?」

プリム「でもまた乗りたい。乗せてくれる?」

ドラコ「どうだろうな、君のご両親の怒りが収まれば乗せてあげるよ。」

プリム「やった!約束よ?」

私はドラコを強く抱き締めて、またね?と別れた。

 

…それにしても、6歳でドラコに会うなんて思いもしなかったし最初は緊張したけど、いい思い出ができた。推しはやっぱり尊い。

 

ん?

…6歳?

…もう6歳!?

しまった。やりたいことを忘れていた。

 

_______

 

プリム「父上、母上…誕生日プレゼントの件なのですが。」

シルビア「ふふ、ええ、もう用意してるわ!」

 

ゴトゴト…

箱が動いている…

 

プリム「…」

…視線をレオナルドさんに向けたが、気づいてないふりをされた。

 

レオナルド「わたしは本人に好みを聞いてからの方がと言ったんだが、シルビアが聞かなくてね。」

 

…おそるおそる箱を開けた。

……鳥?

 

グァァ!!

 

シルビア「かわいいでしょ!オーグリーの子供よ!」

プリム「…ありがとうございます、母上」

さすが魔法動物学者というべきか。

…オーグリーがプレゼントなんて想像もしていなかった。

 

グァ!!

……確か不死鳥だよな。アイルランドの。

いいんだろうか、私のペットで。なつくだろうか。

 

首ら辺を優しく触ると気持ち良さそうに目を閉じている。案外かわいい。

 

プリム「ところで父上、父上からのプレゼントは?」

プレゼントは?なんて図々しく聞いたのは訳がある。

前の記憶の中で、やりたかった事があるのだ。

 

レオナルド「あー、オーグリーは気に入らなかったかい?」

プリム「いえ、オーグリーは母上からのプレゼントです。父上からではありません。」

レオナルド「…すまない、オーグリーは私達2人からのプレゼントだったのだが…」

プリム「では、お願いを聞いてくださいませんか?」

レオナルド「あー、いいよ、お願いってなんだい?なんでもいいなさい。誕生日なんだから。」

プリム「なんでもいいんですね?では…日本に行ってマホウトコロに通いたいです。」

レオナルド「……なんだって?」

プリム「日本に行ってマホウトコロに通わせてください。」

レオナルド「…」

シルビア「…」

オーグリー「グァッ!!」

 

静まった部屋にオーグリーの鳴き声が響いた。その日の夜は雨が降った。




米国純血一族 
父 魔法薬学研究者 レオナルド・クロウリー/ 母 魔法動物学者 シルビア・クロウリー(故イゾルトセイアの遠縁の血筋)
2人とも古典的な純血主義ではない。シルビアにはスリザリンの血筋を絶やす為の一族の呪いが出ており子が出来ない身体であるが、周りの純血一族の圧力に耐えかねプリムを養子に取る。プリムの見た目が2人に似ていたこともよかったが、開心術でプリムの生まれてまもないうちに強い魔力を放った姿を見て、魔女であることがわかった為、養子として迎える。世間には実子として伝え愛情を持って育てるが、ある日蛇と話す姿を見つけてしまいヴォルデモートの子ではないかと悩む。ギフトのせいである為、純粋な蛇舌ではない。疑惑はあったものの、2人は愛情を絶やすことなくプリムを育てる。共に、アメリカのイルヴァーモーニー出身。実子ではないがプリムはシルビアに似た髪、レオナルドに似た目の色をしている。


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マホウトコロの話

「日本に行って、マホウトコロに通わせてください。」

__________

 

わたしが、無理難題をクロウリー家で初めて開かれた誕生日の夜に突きつけた。

自分でも馬鹿げてると思うが、自分の為。

マホウトコロにはなんとしても行かなければならない。

 

シルビア「…えっと…プリム?私達今アメリカにいるのよ?」

プリム「はい、なので日本に行きたいです。」

レオナルド「…なんで、日本に?」

プリム「ですから、マホウトコロに通いたいのです。」

レオナルド「それはわかるんだが、何故だい。それも突然!」

プリム「父上の本棚の本を拝借しました。その本を読んで偶然ですが、見つけたのです。魔法使いの学校は、アメリカのイルヴァーモーニー以外にもあると。世界には195ヵ国も国があるのでこの記述は間違いではないと思います。」

レオナルドさんに読んでいた本を広げ、マホウトコロに関する欄を指してみせた。

プリム「そして何よりも、日本のマホウトコロに関しては記述が少ないので実際に学びに行きたいと思ったのです。…あの閉鎖的な国の魔法には…どんな秘密が隠されているのか…興味があります。」

本心だ。

興奮を隠すようにゆっくり話したが隠しきれてないだろう。まぁ、それでいい。

どうか子供の好奇心だと思ってくれ。

 

レオナルド「…それは…確かに僕も興味がある…」

シルビア「レオナルド!」

レオナルド「っ!…あー、興味があるが、駄目だ。閉鎖的な国で秘密にしている…きっと危険があるから隠すんだ。6歳のプリムを何も知らない国に通わせるわけにはいかないよ。」

プリム「ですが、マホウトコロは7歳からの入学なのです。私には今しかチャンスがないのです。…もし危険だと思ったら自分の身は、自分で守れます…こうやって。」

近くの石像に手を添えた。

 

ゾクッとする感覚を思い出す。

もうコントロールができる。

鍛錬を怠らずよかったと思った。

 

“Bombarda Maxima”(完全粉砕せよ)

 

石像は粉々になってしまった。

 

レオナルド「…どこでその魔法を…それに杖を使わず…」

シルビア「…」

2人とも引いている。それはそうだ。

プリム「魔法に関する本をずっと読んでいましたので…」

レオナルド「知識でどうにかなる話なのか?…」

シルビア「わたしは読書を楽しんでいるとばかり…」

プリム「楽しんでましたよ?もちろん。自分の知らない世界を学ぶのは楽しいことです。」

レオナルド「…わかったプリム…マホウトコロに通うことは許可するよ。」

シルビア「レオナルド!プリムを危険な目に合わせるつもりなの!?」

レオナルド「プリムは自分の力の強さを理解して、コントロールしないといけない。…成長すればもっと強くなるだろう。」

プリム「はい、父上。それは…なんとなく気がついていました。」

レオナルド「…許可はする。だが条件がある。」

プリム「条件って?」

レオナルド「1つは、マホウトコロに通って学んだことは、僕にも教えること。2つ、絶対に危険なことはしないこと。3つ、強い魔力があること、動物と話せることは僕達以外には話さないこと。これを守れるかい?」

プリム「はい、絶対守ります。」

シルビア「それと私は近くで見守らせていただきますよ?」

レオナルド「え…」

シルビア「え…じゃないの、近くにいないと我が子を守れないじゃない。」

レオナルド「まぁ、そうだけど、プリムはいいのかい?」

プリム「はい、大丈夫ですよ。近くに母上がいるなら安心です!」

シルビア「さ!そうと決まれば、マホウトコロに手紙を送りますね。それと日本へ引っ越す準備も。あー、やることがいっぱいだわ!」

シルビアさんはなんだかちょっと浮き足だっていた。目が爛々と輝いている。

 

……そうだ、孤児院のみんなに写真を送らなきゃいけないな。

 

“マリア、クレア、ペネロピ、それから院長先生。

みなさんお元気ですか?

わたしはレオナルドさんとシルビアさんがとても優しくしてくださるので、幸せに暮らせています。

急ですが、日本へ行くことになりました。

日本へ着いたらまた、手紙を書きます。

それから、本のプレゼントとても気にいりました。きっとクレアのセンスだよね?

 

写真は動いているけど、変に思わないでね。

 

プリム”

 

家族3人で撮った写真を手紙と一緒に送った。魔法界の写真だが、不思議には思わないだろう。不思議なことは散々してしまったから。

あ、ドラコにも書こう。

 

“親愛なるドラコ·マルフォイ殿

そちらはいかがお過ごしですか。

6歳の誕生日パーティーに来ていただきありがとうございました。

6月になればあなたも6歳になりますね。

ですがもうすぐ私は日本へ行かねばなりませんので、誠に残念なのですが、パーティーに参加できないでしょう…

 

日本へ着いたらまたすぐに手紙を書きます。

プリム”

 

…フクロウでいいのだろうか。まぁ、いいや。

________

 

……日本へ来た。ついに来てしまった。

サイトウケイ…たぶん名前からして前は日本人だったのだろう。懐かしい気もする。桜が咲いている。まぁ4月だしな。

だが、言葉は意識を集中しないと何を言ってるのかわからないし、読めない。

 

…?

なんで2人はペラペラ話せてるんだ?

 

プリム「父上、母上、日本語がわかるのですか?」

レオナルド「ああ…日本語はわからないよ、でもこれを貰ってね。」

レオナルドさんの指には普段ついていない細身の黒い石のついた指輪がついていた。

シルビア「この指輪が助けてくれるのよ、プリムの分もあるけど、必要かしら?」

プリム「…できれば欲しいです。」

そんな便利な道具あるなら言ってくれよ。

闇の代物とかじゃないだろうな。

マホウトコロで使えんぞ。

 

レオナルド「さて、ここがこれから暮らす日本の我が家だ。」

プリム「わぁ……」

相変わらずでかい。

レオナルドさんの趣味なんだろうか、無駄にでかい気がする。

でもこっちは、何というか。

 

シルビア「…日本って感じね。なんだか横に広いのね、日本の家って。」

プリム「うん、そうだね。ニンジャがいそう。」

レオナルド「あー…この家にはニンジャはいないよ、ごめんよプリム」

そうなのか…ちょっと残念だ。

 

床は板じゃない…畳というらしい。

変わってる。でもいい香りだ。

靴を脱いで部屋に入るのが日本の作法らしい。

変な感じだ。

 

全部が新鮮で面白味があった。異国ってこんな感じなのか。イギリスからアメリカに渡ったときには無い感覚だ。

自分の部屋に入ってトランクの荷物を整理した。

 

プリム「さて、そろそろ君には名前をつけないとな。というか名前はあるのか?」

じっと籠の中のオーグリーを見て、話しかける。

オーグリー「名前、名前…忘れた。」

あ…ちょっと抜けているやつらしかった。

プリム「じゃあ、君に名前をつけてもいいかい?」

オーグリー「うん、構わないよ。」

プリム「んんん…名付けた事ないからな…どうしようかなぁ」

本を読んでなにかないかとペラペラめくった。

プリム「てか、君って、雌?雄?」

オーグリー「見てわからないの?オスだよ、おバカ。」

プリム「…」

鳥のくせに生意気だ。

オーグリー「というか、プリムはずっと僕をオーグリーって呼んでたじゃないか。」

プリム「いや…それは名付けるのが難しくてな、君はオーグリーだから…オーグリーと。」

オーグリー「じゃあ僕はオーグリー?」

プリム「そうだけど、違うの!…もう!」

本を投げすて、畳に顔を伏せ、うーーんと唸った。

…あ。

パッと浮かんだ。

 

プリム「…ビーテ。私はウルバッハ、君はビーテでどうだい?」

ビーテ「いいんじゃない?僕はオーグリーがいいけどね。聞き慣れたし。」

プリム「それじゃあ、猫に猫って言ってるようなものだもの。ビーテ!ビーテよ!わかった?」

ビーテ「はいはい」

ビーテは雨が降るよ。と鳴いた。

 

____________

 

“マリア、クレア、ペネロピ、院長先生。

みなさんお元気ですか?

日本へやっと着きました。日本はアメリカと違うことが沢山あって、新しい文化を日々学んでいます。閉鎖的な国だと聞いていたけど、とても素敵な場所です。

まだ来たばかりだけど、イギリスが恋しいです。

 

プリム”

 

“親愛なるドラコ·マルフォイ殿

 

こちらは無事に日本へ渡りました。

日本はアメリカと違うことが沢山あるので、新しい文化に触れるのが楽しいです。

日本には桜という綺麗な花があります。

4月に着いたときに肩に落ちた桜の花びらを魔法をかけ押し花にしましたので、一緒に送りますね。

 

プリム”

 

しばらく経ったある日の早朝、窓にはフクロウがいた。…たぶんドラコかな。

 

“親愛なるプリム·クロウリー殿

日本へ着いたらすぐに手紙が来ると思ったのに、もう6月だ。君と同じ歳になった。フクロウは時間がかかる。そのくらい離れてしまったのだな。友が離れた場所にいるというのは少し寂しいものだ。なにか方法がないか父上に聞こうと思うよ。

そして、君が送ってくれた桜の花はとても綺麗だな。ありがとう。

 

ドラコ·マルフォイ”

 

時間ロスは確かにそうだ。何か方法はないか。どうせ学び舎に行くんだ、それも調べよう。

 

シルビア「プリム?孤児院の方々からお手紙よ?」

プリム「ありがとうございます。母上」

 

“プリムへ

家族写真ありがとう。

とても幸せそうでよかったわ。

クレアとペネロピがちょうど横で奪い合ってるところよ。

こちらも平和に過ごしているわ。クレアはたまに会いに来てくれるの。プリムがいつか来てくれるって言ってるわ。

私も寂しいけど、私達のことは二の次三の次に考えなさいね?

日本でも幸せにね。

 

マリア”

 

…人と別れることは寂しいものだ。イギリスへ行きたい。

_______

 

日本に来て1年が経って、私は7歳になった。

今日はマホウトコロへの入学の日だ。

 

マホウトコロへは、ウミツバメという鳥の背に乗って登下校をするらしい。

 

シルビア「とうとうマホウトコロに行くのね、娘の成長って早いわ。」

私のローブを着せてくれた。

 

プリム「でも下級生は寮じゃないから、帰ってくるよ?」

シルビア「わかってるけど…寂しいわ」

レオナルド「あれ?でも君…昨日魔法動物の特別講師になったって…」

シルビア「レオナルド!内緒にしてたのに!」

プリム「とっても近くで見守ってくれるんだね。安心安心。」

じーっと見つめて置いた。特に意味はない。特にね。

 

プリム「じゃあ、いってくるね。母上は学校で?」

シルビア「ふふ…そうね…」

2人を抱き締めた後、ウミツバメの背に乗った。

 

……あれがマホウトコロか。

なんか想像してたよりずっと綺麗だ。

白翡翠?とかが使われているせいか。

 

あ、ホグワーツの寮の組み分けみたいなやつってあるのかな。

あーワクワクしかないな。

 

と、沢山の期待を膨らませて、いつの間にやらマホウトコロに着いた。

ウミツバメって凄い。

 

???「ねぇ、君って外国の人?」

肩を叩かれた。

プリム「ええ、アメリカから来たばかりよ。」

???「わぁ、僕、外国の人って初めてだ。僕の名前は五領 恭史郎(ゴリョウ キョウシロウ」

プリム「私はプリム。プリム·クロウリー、プリムって呼んでね。」

恭史郎「アメリカから来たばかりってことは、マホウトコロのことあまり知らない?」

プリム「ええ、ほとんど知らないわ。」

恭史郎「えっとマホウトコロはね、4つの寮があるんだよ。青龍、白虎、朱雀、玄武。まぁこれは四神の名前なんだけど、それぞれ特徴があるんだよ。青龍は力を求めてる人が基本的に集まるかな、それと名家の人が多い気がする。白虎は青龍とは正反対の寮だよ。仲が悪いらしいけど、内情は知らないな。でも金色のローブの生徒が多いって。それから朱雀はね、白色のローブが1人も出たことないんだ。だから魔法使い生まれじゃない人も多いね。玄武は、知識を求めてる人が多いかな。頭がいいから成績が優秀だって聞くよ。」

なるほど、つまりは…

青龍はスリザリン。白虎はグリフィンドール。朱雀はハッフルパフ。玄武はレイブンクローか。

 

プリム「んー…じゃあわたしは、青龍か、白虎かな。たぶん。」

恭史郎「え!プリムって…名家の子?」

プリム「まぁ…家はね。でもここは日本だし関係ないかな」

恭史郎「へぇ…僕も家はそうなんだ。五領家は代々続いてる陰陽師の家で、僕はまぁ優秀じゃないから期待されてないけど。」

プリム「そうなんだ、でもせっかく友達になれたし、あなたと一緒がいいな。」

恭史郎「…っ、うん!そうだね!」

プリム「どうやって寮は分けられるの?」

恭史郎「あー、それはね、おみくじって知ってる?」

プリム「んーん、わからないわ。」

恭史郎「まぁいわゆる、くじ引きさ。紙を引いてそれを蝋燭の火であぶると、その人にあった寮が炙り出されるらしいよ。」

プリム「…なんかちょっとドキドキするね、それ。」

恭史郎「ああ…僕もちょっと不安なんだ。」

 

恭史郎にいろいろ聞いていると、どうやら組み分けが始まるらしい。

 

きよ「新入生のみなさん、こちらへ集まって。今日皆さんがマホウトコロの生徒としてご入学されたことを心より歓迎致します。私は、蜂谷きよ。この学校の教頭です。では、初めに組み分けを行います。青龍、白虎、朱雀、玄武。自分に適正のある寮が組み分けられます。…良い行いをすれば寮の得点となり、規則を破ったりすれば、減点されます。

学年末には最高得点の寮に優勝カップが渡されます。では名前を呼ばれたら前へ出て、くじを引いた後、蝋燭の火に紙をかざしてください。…安倍 龍」

 

恭史郎「いよいよ始まったね…」

プリム「うん…ねぇ…離れても友達でいてくれる?」

恭史郎「っ!それは…もちろんだよ!」

 

…クロウリー プリム

あ、なるほど…ファミリーネームが最初だもんね。五領より後だと思ってた。

 

プリム「……」

…恭史郎と同じ寮。同じ寮。

友達作りは苦手なんだよ。離れたくない。

 

紙を掴んだ手が震えて、思わず火がつくところだった。危ない危ない。

 

…青龍ですね。

 

プリム「……喜んでいいのかわからんな。」

とりあえず青龍の寮のところに座った。

 

…五領 恭史郎

…どの寮だろうか。

 

恭史郎の名前が呼ばれて、なんだか不安になったから、なるべく見ないことにした。

 

「プリム…プリム…」

肩を叩かれる。

隣を振り向くと、恭史郎がいた。

恭史郎「プリム、僕プリムと同じ寮がいいってくじを引いたら青龍だったよ!一緒にいられるね!」

プリム「うん!ふふ、改めてよろしくね?」

心底ほっとした。

のも束の間だった。

 

???「やだ、同じ寮に外人がいるわ。青龍って混血も入れる寮だったかしら。」

???「隣にいるのは、五領の端くれだな。優秀な青龍の寮には入ってきてほしくなかったね。」

…外人って…まぁ外人だけどさ!

わざと耳に入るように言ってるのがムカつくな。構ってちゃんか。

 

プリム「名前も名乗らずに他人のことを話すなんて、礼儀って知らないの?あの2人」

恭史郎「プリム!…っ、あの2人凄い家の子達だ。何も言わない方がいいよ。」

プリム「…名家ってことね、知ってるの?」

恭史郎「知ってるもなにも…女の子の方は賀茂 明星(かもの めいせい)。男の子の方は…安倍 龍(あべの りゅう)。2人とも平安時代に絶大な力を奮ってた陰陽師の末裔だよ。」

僕の家なんか…比べものにもならない。なんて青ざめてるから、ちょっとかわいそうだと思って、今は何も言い返さなかった。今はね。

 

六堂「あー、青龍寮に組み分けされた新入生の諸君、ようこそ偉大なる青龍へ。僕は青龍寮の監督を努めている六堂 要(ろくどう かなめ)わからないことがあったら僕に聞くといい。暇でなければ話を聞くよ。さて、ついて来て。新入生はウミツバメでしばらく登下校をするが、青龍寮の広間で談笑したり勉学に励むこともできる。…因みにそこの階段を登って右は男子寮、左は女子寮だ。上級生がいる、皆面倒見がいいから気軽に頼るといい。…さて、今日の新入生の授業は変化術学だね。まぁ…楽しい授業だ。さ、準備して遅刻しては駄目だよ。」

_________

 

……あー。

日本の校長の話ってすこぶる長い。

途中寝そうだった。

てかほとんどどうでもいいことだったし!

 

…そういえばシルビアさんの紹介は美人だからか、ざわざわしてたな。

 

恭史郎「校長先生、話長かったよね。アメリカとは違う?それとも同じ?」

プリム「んー、わからないわ。アメリカは11歳から入学するの。でも長いから寝そうだった。」

寮のソファーに座って、恭史郎と校長先生の愚痴を話した。青龍の寮は和モダン?ってやつだ。洋式の部屋と似てるから居心地がいい。

 

???「ちょっとそこ退いてくださる?本を読みたいの。」

プリム「え、他の所で読めば?座るところならほら…沢山あるし」

プリム!と脇腹を恭史郎に突かれる。なんだよ痛いじゃないか。

……あ、こいつ!

プリム「君の名前、賀茂明星だろ?私はプリム。プリム·クロウリー。さっき私のこと外人やら混血やらって差別してたけど、他人の悪口言う前に名乗るべきじゃない?」

ああ…終わったぁ…と恭史郎が頭を抱えた。

明星「あら、失礼?私に礼儀知らずって言いたいの?」

プリム「申し訳ないけど、私からしたら礼儀知らずにみえるね。」

明星「礼儀作法はちゃんと学んでるわ。それにあなたには本当のことを言っただけじゃない。外人さん。」

プリム「…確かに私は外国から来たけど、それは差別用語だ。品がないね。高貴な方が品のない言葉を使うのはよろしくないんじゃないの。」

明星「…あとで痛い目みるわよ。プリム·クロウリー。」

明星は睨みつけて奥の席に消えた。

 

恭史郎「僕…プリムと一緒にいるには、心臓2つ必要かも。」

プリム「男の子でしょ?言う時には言わないと駄目よ。女々しいな。」

恭史郎「でも言う前にプリムが言ってるからね。僕はプリムを制御する方にまわるよ。」

プリム「いい?友達を守りたいから言うのよ?自分も強くなりなさい。お馬鹿。」

 

…てか変化術学ってなんだ

________

 

八岐「八岐大吾(やまと だいご)だ、変化術学で講師を務める!さて、変化術とは、どんなものかわかるか?陰陽術ができる家柄の育ちのものはわかるだろう…賀茂!軽く説明できるか?」

賀茂「敵の目を欺く為に使う術です。忍者が昔は使っていたとされています。使用者は実際に大きさや形を変えることができ、動物や無機物に変化することができます。イメージがうまくできないと失敗します。」

…うわ、ドヤ顔された。

でも変身術と似てるんだな。

 

八岐「うむ、その通りだ。青龍に10点。さて、その変化術を今日は行うがこの授業で杖は使用しない。杖を使うのを楽しみにしていたのなら残念だったな。変化術はイメージ力と印を結ぶ、そしてイメージしたものを術名の後に呼ぶ。これだけだ。基本中の基本だからな、簡単だろ?」

んー…魔法っていろいろあるのな。

 

八岐「さて、印を結ぶということを知らないやつもいるだろう。印を結ぶとは…仏、菩薩等の悟りの内容を真言行者が観念する時、その表徴として、手指をいろいろの形に組む。 それが印を結ぶということだ。…まぁ実際に見た方が早いだろう。」

八岐先生は指を素早く組み、変化の術…大蛇!と叫ぶ…

 

次の瞬間…先生がいた場所には大きな蛇がいた…

 

八岐「どうだ!初めて見たものは驚いただろう!」

しばらくして先生は元に戻る。

…凄い…アニメーガスみたいだ。

 

八岐「じゃあ、ほれ。隣同士組みになって変化術の練習をはじめなさい」

 

恭史郎「プリムは変化術を見たことある?」

プリム「ないよ、似たようなことは知ってるけど、たぶんできないね。難しいから。」

恭史郎「僕はしたことあるんだけど、あんまりうまくいかないんだ。…じゃあ僕が最初にやるね。」

五領が印を結んで、変化の術…犬!と叫ぶと…犬?恭史郎?え?

プリム「あー…恭史郎…犬だけどさ。その…」

賀茂「あら、犬人間ね。その姿。」

安倍「イメージ力が足らないのだろう。出来損ない。」

プリム「ちょっと!」

恭史郎「プリム!大丈夫だから。僕言っただろう?うまくいかないって。」

プリム「じゃあうまくいかない原因を考えなきゃ。…どうイメージしたの?」

恭史郎「えっと…もふもふってして、家で飼ってる柴犬をイメージしたんだけど…たぶん散歩してること考えたから、それかな?」

プリム「じゃあ、柴犬だけのイメージを具体的にするのよ。印はちゃんと結んでたからたぶん問題はそこね。」

うん…わかった。とまた恭史郎が変化した。

 

恭史郎「どうかな?うまくいった?」

尻尾を追うようにクルクルまわる犬がいる。

プリム「わ!恭史郎あなた犬だわ!成功ね!」

恭史郎は元に戻って、プリムのおかげだよ、ありがとうと抱き締められた。

プリム「じゃあ…次はわたしね。初めてだから失敗しても笑わないでね?」

恭史郎「ふふ、僕が笑う資格ないよ。大丈夫、どんな姿でも笑わない。」

…イメージ…イメージ…

犬は恭史郎が既にやったからつまらない。

なにかイメージしやすいのはないか…

…あ、ビーテならいつも見てるからうまくいくかな。

プリム「…変化の術…オーグリー!」

…身体が変な感じがする。

プリム「…どう?」

恭史郎「わぁ…すごいや…たぶん成功してるんじゃないかな?目の色は君の色だけど」

プリム「ほんと?よかったー。」

変化をとく。

恭史郎「なんのイメージしたの?妖怪?」

プリム「妖怪?なにそれ?私がイメージしたのはオーグリーよ。アイルランドの不死鳥。知らない?」

恭史郎「し、知らないよ!僕日本のことしか!…あ、でもクィディッチのことなら知ってるよ、日本も強くて有名なの知ってる?」

プリム「んー…私クィディッチはあまり知らないな。」

そうなんだ…とちょっと残念そうにしてしまった。ごめんよ、恭史郎。

________

 

 

変化術はわりと面白かった。知らないことだったしな。

…そうだ。予習復習しなきゃな。

 

プリム「明日ってなんの授業だっけ?」

恭史郎「えっとね…魔法動物飼育学、式神学、飛行訓練かな。」

式神は知らない…知識があるのは飛行訓練と魔法動物だけだな。

プリム「今から勉強するよ恭史郎」

恭史郎「ええ…僕ちょっと疲れたのに…ほぼプリムのせいで!」

プリム「…なんのことかさっぱりだな。」

 

_________

 

よし、ちゃんと準備したから、これで明日の授業はとりあえず大丈夫かな。疲れた…安眠できそう…。

 

プリム「ただいま帰りました!母上、父上…友達ができました!」

シルビア、レオナルド「なに!/ なんですって!」

 




五領 恭史郎(ごりょう きょうしろう)
マホウトコロの青龍寮生。プリムがマホウトコロで最も心を許している存在。表情が表にでないプリムの駄目なところをすぐに見つける、勘が鋭い。


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マホウトコロの話 2

 

 

プリム「…あ、手紙送る方法調べるの忘れてた…」

恭史郎「え?手紙?」

プリム「あぁ…遠くに友達がいてね、不便なんだよ。時間がかかって。」

恭史郎「へぇ、何で送ってるの?まさかカラス?」

プリム「カラス?いや、フクロウだよ。」

恭史郎「フクロウを使って、日本からどこまで?」

プリム「あー…イギリスまで」

恭史郎「…プリムってたまにお馬鹿だよね。」

んー、否定はできない。

恭史郎「たしか遠方に送る方法はあったと思うよ。僕もいまいちわからないから、授業の後に図書室へ行こう。」

 

…えっと最初の授業は…魔法動物飼育学…

…シルビアさんか、緊張するな。

 

__________

シルビア「ええ…おはようございます皆さん。私はシルビア·クロウリー。魔法動物飼育学で特別講師を務めます。」

 

恭史郎「ねぇ…シルビアさんって、プリムのお母さん?」

プリム「ええ、そうよ。どうして?」

恭史郎「なんか似てるなぁって、あと名前も一緒だしね。…人気だよねシルビアさん。美人だから。」

プリム「へぇ…確かに母上は美人かもね。自慢の母上よ。」

 

シルビア「さてと、今日はニフラーについて学ぼうと思うわ。皆さんはニフラーについてご存知かしら?…知ってる方は?」

…イギリスの魔法動物だからか、みんな知らないみたいだ。

 

シルビア「プリム?わからない?」

プリム「あ…えっと。まず、ニフラーはイギリスの魔法動物で、無害な動物です。ニフラーは輝くものが好きで宝物を探したりするのにもってこいですが、室内を荒らすので放し飼いには向いていません。」

シルビア「ええ、正解よ。青龍に10点あげるわ。プリムが言った通り、ニフラーは温厚で無害な生き物ですが、光り物を探して家を荒らすこともあります。…」

…そう言って大量のコインが入った箱を出す。本物か?だとしたら凄いな。

 

シルビア「そしてこの子がそのニフラー。」

籠に入った2匹のニフラーだ。鼻をひくひくさせている。ふわふわで、かわいい。

「…かわいい」

みんなも同じことを思ったみたいだ。

シルビアさんが…籠をあける。え、大丈夫か?

瞬間…ニフラーが一目散に光り物に向かっていく。1匹は目の前のコインに。

 

賀茂「え…ちょ、」

だがもう1匹は明星のキラキラとした腕輪が気に入ったようだ。腹の袋に入れている。

シルビア「あら、駄目よ。もう…」

シルビアさんがニフラーを捕まえて袋から腕輪をだす。このニフラーはなかなかの悪戯っ子だ。

シルビア「ごめんなさいね?はいどうぞ。今は隠しておいた方がいいわ。…皆さんも光るものはしまってね。」

賀茂「…先に言いなさいよ」

 

シルビア「さて、ニフラーの腹の袋には見た目以上に物が入ります。検知不可能拡大呪文に似てるわね。…こんなふうに。」

コインを沢山詰めて満足そうな二フラーの腹をくすぐると、ジャラジャラと大量のコインが出てきた。それはもう大量に。

 

シルビア「だからまぁ…かわいいニフラーを飼いたいときは、大事なものは厳重に隠すか。荒らされてもいい部屋を用意した方がいいわね。…さ、皆さんもっと近くで見ていいわよ。」

 

シルビアさんの授業は面白かった。

かわいいニフラーとも触れ合うことができたし。

シルビア「プリム!授業はどうだった?」

プリム「面白かったよ!、でも魔法動物飼育学って新入生に教えていい科目なの?」

シルビア「あー、それね、危険がなければ優秀な生徒しかいないから構わないって。そんなことを言われたわ。はっきり許可するって言ってないところが日本らしいわよね。」

…まぁ、楽しいし、シルビアさんが近くにいるのは有難い。

 

恭史郎「プリム!…休み時間、何をするかわかってるね?」

プリム「え?なに。悪巧み?いいよ、大賛成。」

恭史郎「違うよ!手紙!まさか君が言ったのに忘れたの?」

プリム「…そのまさかかなぁ」

 

_______

 

図書室はいろんな人がいる。割と人気な場所みたいだ。だいぶ資料が豊富だ。…これから自分の記憶にどれだけ入るかな。

 

プリム「本もあるし、なんか細長いのもあるね。これはなに?」

恭史郎「これは巻物だね。古い歴史とかはこれに書かれてることが多いかな。」

プリム「ふーん。…おお」

ちょっと開くと1枚の紙だ。長い。

恭史郎「あー…それ戻すのめんどくさいんだよ。プリムの探してるやつはたぶんそっちの棚だ。」

私の開いた巻物を戻してくれてる。ごめんよ。こういうとこはポンコツなんだ。

 

プリム「恭史郎って優しいよね。日本人はみんなそんなに親切なの?」

恭史郎「んーまぁ、人によるかな。まぁ、僕は友達には優しいんだ。」

プリム「へぇ…それは私と同じかもね。身内には優しくしたい。」

 

…お、みっけ。この本だ。

プリム「ねぇこれだよね。」

“遠方連絡手段”

恭史郎「たぶんこれだね。」

 

 

プリム「……」

恭史郎「……」

行き詰まっている。遠方への連絡には20歳以上の高度な魔力が必要なものばかりだった。

…つまり子供は親に頼めと。無理。

プリム「ええい!考えていても仕方ない!やってみるしかないだろ!」

恭史郎「え!待って20歳以上ってことは、危険も伴うってことだよ?駄目だよ、むやみやたらに使うのは!」

プリム「……正論突きつけるなよ」

 

…んー、1番危険が少なく確実なのは…式神。

プリム「次の授業ってさ、式神学?」

恭史郎「あ、うん。そうだよ。…まさか…式神にするの?」

プリム「そのまさか。」

 

_________

 

神寺「こんにちは新入生の皆さん。私は神寺たまお(かみじ たまお)式神学の講師です。式神は使い方次第では危険を伴うもの。決してふざけた行為はしないこと。ですが、うまく使えれば、自分の力を引き出し強く偉大な魔法使いになれるでしょう。」

 

…机の上には紙がある。

何をするのだろうか、楽しみだ。

 

神寺「式神については、安倍くんがよくご存知でしょう。説明できますね?」

安倍「はい。式神または式鬼は、陰陽師が使う鬼のことです。陰陽師、魔法使いの目には見えますが、魔法を使えないものには見えません。式神は和紙札におさめられ、必要な時に呼び出せます。」

神寺「はい、その通りです。青龍に10点。」

…ふーん、性質は魔法動物みたいだな。

 

神寺「和紙札、式札から現れる式神はさまざまな形に変化します。異形のものや鳥獣などに変身し、術者の指示に従います。術者と式神は密接な関係にあり、古来より災いや呪いに使ったり、雑用に使われてきました。または身代わりにも。ただし身代わりには術者の魔力と生命力が糧になり闇の魔術として扱われていますので、優秀な方は絶対に使わないでしょう。」

…なるほど、ものによっては危険で死ぬこともあるってことか。

神寺「では新入生のみなさんには、危険のない式神術を学んでいただきます。杖を札にあて詠唱します。”我に従い、我に仕えよ”」

先生が杖をあてた札には字のような何かが浮き出た。

…先生が札を手にし息を吹きかけると、白い狐のようなものが現れた。

神寺「生徒に危険がないよう見ていて。」

すると監視するようにくるくると上空を舞う。

 

…ほぅ、これは研究しがいがあるな。実に興味深い魔法だ。

 

神寺「これは思業式神という思念で生み出される式神です。術者の指示通りに使役します。さぁ、みなさんも同じように。式札は、机の上の和紙を使ってください。」

…杖。

私の杖は、日本に来てから買ったものだ。

まだこれといって特別なことには、使ったことがない。

基本的な魔法は問題なくつかえた。

長さは25センチくらい、金木犀の木でできている。芯は天狗の羽だ。まぁ、本当に、特にこれと言って特別なことはない。

 

プリム「…我に従い、我に仕えよ」

ぐわんっと浮かぶ文字。読めないから記号かもしれない。その辺はわからない。

 

…ふぅっと息を吹きかける。

 

恭史郎「…プリム…それ…」

思ったよりでかいなにか。

カバ?サイズは犬くらいだ。眠そうな目をしてる。

 

神寺「…クロウリーさん…あなた、夢喰いを呼んだの?…驚いたわ。自分の使役神にしたのね?とても高度な技術なのに。」

…はて?なんのことだ。言われた通りにやっただけなのに。

 

神寺「…あなた何をやったかわからない様子ね。それは夢喰い獏…恐らく魔力を多く与えすぎたことで喰いついてきたのでしょう。…悪夢を食べてくれる妖怪です。」

プリム「あの…使役神ってなんですか。思業式神じゃ…」

神寺「…使役神とは、思業式神とは違い、意思を持ち自分に忠実に仕えてくれる式神。…ですが力が弱くなれば逆に襲われることもあります。」

…とんでもないな。

神尾「その式札は大事になさい。」

プリム「は、はい。」

恭史郎「プリム…凄いね…使役神を仕えさすせるなんて」

プリム「…え、危険になっただけじゃ?」

恭史郎「陰陽師にとっては名誉なことだよ。それに使役神っていろいろ使えるんだ。」

プリム「ほぅ…でも陰陽師になりたいわけじゃないしな。」

 

_________

 

休み時間、恭史郎とまた図書室に来ていた。

使役神…使役神…

…あった

 

恭史郎「ああ…その本、僕達にはまだ難しいと思うよ。」

プリム「まぁ…知識だけ。知識だけでもね。」

悪業罰示式神。…過去に悪業を行った霊、妖怪の類いを術者の力で封じ、自分の使役神とした式神。陰陽師として突出した能力を持っていた安倍晴明は、幾人もの次元が高い霊を術でねじ伏せ、たくさんの悪業罰示式神を使役していた。

 

プリム「…私って、式神術の授業でとんでもないことした?」

恭史郎「はい。ご理解いただけたようですね、プリム嬢。」

プリム「…もしかして、もしかしたらだけど、ヤバい奴みたいな扱いされる?」

恭史郎「まぁ。僕はしないけど、賀茂あたりは噛み付いてきそうだよね。」

…っーーー、もっとコントロールしなきゃ。鍛錬だ!鍛錬!

 

恭史郎「ところでプリム。また手紙のことほったらかしだね。」

プリム「……あ。」

恭史郎「僕がいないとプリムってダメダメな気がするんだけど、気のせい?」

プリム「……頼りになる友達がいて幸せだよ。」

はぁ…と溜息をつかれた。なんてこったい。

 

恭史郎「まぁ、夢喰いが出たし、たぶん手紙を送るくらいなら大丈夫だと思うよ。…でも魔力の込めすぎは注意だね。何が出てくるかたまったもんじゃない。」

プリム「わ、わかってるよ…」

…てか、手紙まだ書いてないや。

手紙を書き始めると、隣から恭史郎がまだ書いてなかったの!と母のような怒り方をしている。

“親愛なるドラコ·マルフォイ殿

 

手紙を書くのが遅くなってしまい、ごめんなさい。実は今マホウトコロで魔法を学んでいます。今は、休み時間で、次の時間は飛行訓練があるの。ドラコが乗せてくれたこと覚えている?それからまた厳しくなって、乗れてなかったから、たぶんうまく乗れないと思うわ。でもまたドラコが後ろに乗せてくれるって約束したでしょ?楽しみにしてるわね。

それから、遠方への連絡手段を見つけたから、この手紙でそれを試してみるわね。うまくいったらいいのだけれど。

 

プリム”

 

恭史郎「どぅ…ら…なんて読むんだ?」

プリム「ドラコ。ドラコ·マルフォイって子よ。イギリスにいるの。」

恭史郎「ドラコ?女の子?」

プリム「男の子よ、同い年の。」

恭史郎「ふーん。」

つまらないといった表情をしている。

子供らしくてかわいいものだ。

 

プリム「よし…えっと…式札に通行料として、術者の血を垂らす。…あとはさっきと同じね。…確かイメージするんだよね?」

恭史郎「そそ、鳥とかがいいだろうね。」

プリム「…我に従い、我に仕えよ」

血を垂らした札に杖をあて詠唱する。

…ふぅっと息を吹きかける。

 

白いカラスだ。

プリム「できた!できたよ恭史郎!」

思わず恭史郎に抱きつく。

恭史郎「うん。でもまだだ、ちゃんと指示をあげないと。」

プリム「ああ…そっか…」

咳払いをした。

プリム「えっと…これをドラコ·マルフォイに届けて。もし、ドラコも手紙を書いてたら私に届けて。」

カァ!!

開いた窓から飛び立った。

 

プリム「うまくいったかな…」

恭史郎「さぁ、でもこれ通行料に血を垂らすなんてね!そりゃ、新入生の僕達にはできないわけだ!いや、プリムはやったけど。」

 

________

 

…さて、今は飛行訓練の時間だ。

1番と言っていい。苦手だ。

まず体力に自信がない。ギフトでそんなのついてないしな。これは、実力勝負ってことだ。

 

鳩谷「こんにちはみなさん。僕は鳩谷久次(はとや きゅうじ)知ってる人は知ってるかもしれないね。クィディッチ日本チームのシーカーをしている。今日は特別講師で呼ばれてね。普段は、羅蝶先生が担当しているよ。」

恭史郎「凄い…鳩谷さんだ。」

プリム「有名人?」

恭史郎「クィディッチの選手だよ、それもシーカーだ。有名も有名さ。ワールドカップにも出てるんだよ。」

熱く語られてるが、なるほど。著名人ってやつね。

 

鳩谷「新入生のみんなは知らないかもしれないけど、マホウトコロはクィディッチの強豪校だ。そしてもちろん、ワールドカップに出るほどの力が日本にはある。つまり怠けなければ、君達もいつかクィディッチの選手になれるかもね。今日はその第一歩だ。魔法使いたるもの、箒に乗れなきゃね。」

…さて、箒は初心者もいいところだ。どんなふうになるかね。

 

鳩谷「まず、箒の横に立って。箒の上に手かざす。そして上がれと言うんだ。すると手に箒が上がってくる筈だよ。…さぁ、やってみて!」

恭史郎「上がれ!…おお、みてプリム!」

恭史郎の箒はすぐに手に収まったらしい。

もしかして…才能ある人か?

プリム「上がれ!…上がれ。…上がれー。」

案の定だな。箒は苦手だ。

プリム「上がれって…ッゔ」

顔面目掛けて上がることないだろ。

これじゃあ、ロンみたいだ。

 

鳩谷「さて、みんな手に箒を持ったみたいだね。次は、箒に跨がって、地面を蹴る。そうすれば飛べる筈だからね。危険があれば僕が助けるから、じゃあまずは、1番前の列の5人。笛をふいたらやってみて。」

鳩谷先生は、ピーッと笛を吹いた。

 

順々に飛んで、危ない生徒がいたら鳩谷先生が指導をしている。

 

私と恭史郎の列になった。

先生がまた笛を吹いた。

 

プリム「…あれぇ。」

地面を蹴ってるのに飛ばないぞ。

プリム「…いらいらしてきた。」

みんな飛んでるのに、私だけ置いてけぼりだ。

プリム「っ、このおんぼろめ。」

思わず箒を蹴った。

鳩谷「…っクロウリーさん!」

 

ビュンッ!

風がうるさい。

 

プリム「っ…速すぎだ!」

恭史郎「プリム!」

隣に並列して飛んでいる。恭史郎。

え…恭史郎?

 

恭史郎「捕まって!僕の後ろに乗って!」

プリム「…っ!」

恭史郎の手に捕まり、後ろに乗った。

 

箒はよっぽど帰りたかったのか、箒置き場に戻っていった。

 

プリム「ありがとう、恭史郎…」

恭史郎「無茶しすぎだよ、プリム」

いや、したくてしたんじゃ…

 

鳩谷「クロウリーさん、箒を蹴ったら危険ってことは、身をもってわかったね?それと恭史郎くん、君は箒の才能があるみたいだ、あれほどの加速は新入生にしてはなかなかだよ。」

恭史郎「あ、ありがとうございます。」

プリム「よかったね、褒められて。」

 

やっぱり箒は苦手だ。魔力でどうにかならんしな。これは。クィディッチもたぶんセンスってやつだ。

________

 

プリム「恭史郎、箒に乗るの上手だね」

恭史郎「え…あ、そうかな。ふふ、ありがとう。」

プリム「うん、私の中で2番目に上手いよ」

恭史郎「え、1番は?」

プリム「んー、ハリーもうまいけど、ドラコかな。私の中ではね。」

恭史郎「…僕、ドラコってやつに会ったことないけど、嫌いになりそう。」

プリム「え?なんで?いい子だよ?」

恭史郎「…みててプリム、僕は箒で、そのドラコってやつより上手くなるよ。」

プリム「あー…うん?」

恭史郎の闘争心に火をつけたみたいだ。

 

 

いつものようにウミツバメに乗って帰宅する。

プリム「ただいま帰りました。」

レオナルド「おかえりプリム」

シルビア「ただいま。」

レオナルド「おかえりシルビア。」

プリム「あ、母上もこの時間でご帰宅なんですね。」

シルビア「そうよ?特別講師だもの。ずっといるわけじゃないわ。」

プリム「あ、そっか」

シルビア「それよりプリム、あなた式神術でとんでもないことしたって聞いたわよ?」

レオナルド「なに!悪いことか!駄目だぞプリム!」

シルビア「違うわよ、レオ。優秀だって褒められたわ。」

プリム「あー…それは…なんというか…コントロール不足みたいな」

シルビア「え?どういうこと?」

レオナルド「…てか式神術って?」

シルビア「日本の授業は陰陽術に長けてるのよ。式神術も陰陽術のひとつらしいわ。」

レオナルド「ほぅ…興味深いな。どんなことを学んできたんだ?僕にも教えてくれプリム」

プリム「あー…まぁ、」

かくかくしかじかでして…と大雑把に伝えた。

レオナルド「なるほど…やはり閉鎖的な国には、高度な魔法があるみたいだな。面白い。」

プリム「それでまぁ、式神術ではちょっと魔力のコントロールを誤りまして、使役神っていうのを出してしまったんですよ。…こうやって」

札に杖をあて詠唱する。”我に従い、我に仕えよ”

…息を吹きかける。

 

…夢喰いがでた。

はな?をひくひくさせている。

レオナルド「…魔法動物?」

シルビア「…見たことない生き物だわ」

プリム「夢喰い獏っていう妖怪です。」

 

獏「2度も呼び出しおって、夢も喰えんようじゃし、わしは見せ物じゃないぞ!」

プリム「しゃ、喋った!」

レオナルド「会話するのか!」

シルビア「とても奇妙だわ!面白いわね!」

獏「わしは妖怪じゃ、会話できないでどうする!そんなことも知らないのか、未熟者め!」

プリム「…だって最初は話さなかったじゃない」

獏「あの時は寝るところだったんじゃ!」

プリム「…」

レオナルド「あー、君はプリムの使役神だよね?上下関係はないの?」

獏「ないな、そこのプリムとやらの魔力が旨そうで喰ってしまってな、その力はもちろんプリムが上じゃから、使役神になったわけじゃ。それがなんじゃ、こんなちっこい娘じゃないか!…小娘の使役神なんぞになったとバレたら他の妖怪に馬鹿にされる!」

シルビア「あー、契約はしたけど。プライドが許さないってやつね。」

プリム「じゃあ私、強くなる。獏が馬鹿にされないように強くなったら、そしたら許してくれる?」

獏「…さぁな、しらん。強くなればだな。強くなれば使役神として仕えよう。」

プリム「あと、あなたのことについて少し教えて?」

獏「…わしは、夢喰い。人間の悪夢を喰う妖怪だ。良い夢を喰って悪夢を見させたこともある。だがなんせ良い夢は味が薄くての、わしは好みじゃない。」

プリム「美食家なんだね。」

獏「そうかもしれんの。味にはうるさい。…で悪夢は食べさせてくれるのかの?」

プリム「私は…夢見ないのよね。」

レオナルド「あ、僕は最近うなされるんだよ、夢喰いさんがよければだけど、僕の悪夢を食べてくれる?」

獏「…まぁ、よかろう。では、夢の中での。」

スゥッと獏が消えてく。札はないから、どこかへ行ったのだろう。

 

シルビア「とっても興味深いわね、妖怪に、式神…面白いわ!」

シルビアさんの目が爛々と輝いてる。

レオナルド「また、学んだことは教えてくれプリム!凄く興味深いよ!」

レオナルドさんもだ。

 

もしかして、この2人には日本って毒なんじゃ。いや、考えなかったことにしよう。

さて、明日の授業も頑張らないとな。

 

自分の部屋へ入ると、ビーテが待っていた。

籠が小さくなったように思える。

 

ビーテ「おかえりプリム、窓に白い鳥が来ていたよ。そいつね、なんかプリムと似た匂いがする。」

プリム「あ、私の式神だわ。たぶん。」

窓を開けた。

 

カァ!!

白いカラスは手紙を渡すと、式札に戻った。

 

プリム「やった!成功したのね!ドラコからの手紙だわ!」

 

“親愛なるプリム·クロウリー殿

 

マホウトコロに通ってるって本当かい?

僕は、ホグワーツかダームストラングに通うと思う。でもどっちも11歳からの入学だから待ち遠しいよ。マホウトコロは7歳からの入学だからいろいろ学ぶことも多いだろう。異国で学ぶことは大変だと思うが、応援している。飛行訓練はどうだった?うまく乗れなかったら、僕が教えてあげよう。昔より上達した姿を見せたい。

ちゃんと手紙届いたぞ、ただ白だと目立つ。

 

ドラコ”

 

ドラコが箒を教えてくれるって?なんて優しいんだ。毒がないな。ドラコらしくない。ハリーにだけなのか?

まぁ…考えるのはやめよう。

…白は目立つか、確かにな。いいことを教えてもらった。

 

ビーテ「プリムがにやけてる。」

プリム「え、にやけてたか?…なんでかな」

ビーテ「いいことが書いてあった?」

プリム「いいこと…まぁ、いいことかな。」

 

“親愛なるドラコ·マルフォイ殿

 

ドラコはホグワーツがいいと思う。ダームストラングってちょっとドラコらしくない気がするの。まぁ、ドラコが決めることだけど。

学業の方は、ぼちぼちついていけてるわ。式神術では優秀だって褒められたの。

飛行訓練は、たぶんあなたの想像通りね。散々だったわ。ドラコが教えてくれたら上達するかしら。でも、あなたの後ろに乗る方が楽しいような気もするわ。

 

プリム”

 

さて…えっと黒ね黒いイメージ…血を垂らす。杖をあてる。詠唱。”我に従い、我に仕えよ”

 

カァ!!

お、黒い…よし。

 

プリム「ドラコ·マルフォイに手紙を届けて。ドラコから返事を受け取ったら私の元に届けて。」

 

カァ!!

窓を開けて飛び立ったのを見送る。

 

んー…あの手紙、最後の文いらなかったかな。…まぁ、いっか。

 



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マホウトコロの話 3

 

________1988年12月25日

マホウトコロに入学してから1年ちょっとが経った。私は8歳になり、桃色だったローブは2年生になり青っぽくなった。

 

マホウトコロの魔術は古くからの教えを大事にしている。半分は陰陽術に関すること、これはお国柄だろう。

 

在学している生徒の大半は陰陽師の血筋のものだ。将来的にも家業を継ぐか、優秀な人は日本国魔法省などに就くらしい。まぁ、だいたいだが。他は研究者やいろいろ。

 

ホグワーツとは違うことが学べる、それが面白い。自分はギフトで絶対記憶力があるから、知らない知識もスポンジのように吸収している。

…そういえば、友達は1人増えた。

 

賀茂「プリム、次の授業は結界術学よ?復習はした?あなたの勉強してる姿ってあまり見たことがないのだけど、大丈夫なの?」

 

賀茂 明星。そう…こいつの第一印象は最悪だった。未だになぜ仲良くなったかはっきりと理由はわからん。賀茂が言うには、「わたし気づいたの。プリムあなたと敵対しても寮は一緒だから自分になんも利益がないって。だから私達仲直りしましょう?…もう差別なんてしないわ。」ちょっとこれには驚いた。凄く。

 

賀茂「プリム?聞いてる?」

プリム「ああ、ちょっと考えごとをしてた」

賀茂「結界術のこと?」

プリム「え?違うよ?明星のこと」

賀茂「…悪口でしょ、きっと」

プリム「まさか、お母さんみたいだなんて考えてないよ。」

賀茂「あら?お母さんになったつもりないわよ?」

恭史郎「ちょっと、2人だけでなんの話?」

賀茂と教室へ向かっていると、恭史郎が後ろから合流する。

 

プリム「ガールズトークだよ。私にはお母さんが3人いるってね。」

恭史郎「それのどこがガールズトーク?」

プリム「男の子にはわからないからガールズトークなんだよ、恭史郎」

…そういえば今日

プリム「ところで2人ともメリークリスマス」

きょとんとした2人の視線

賀茂/恭史郎「メリークリスマス、プリム」

 

___________

鶴橋つきお先生の教える結界術学は、とても興味深い結界術を教えてくれる。

防護壁とも似ているがちょっと違う。

 

鶴橋「さて、今日の授業は魔法陣型結界について教えるよ。魔法陣型結界とは、文字通り魔法陣を書いた場所に結界を張れる。普通の結界と何が違うか。わかる人はいるかな?」

 

プリム「通常、結界は妖怪、悪霊の類を封じ込めるために瞬時に出現し、また解を唱えれば瞬時に解かれます。強度は術者の魔力に応じます。対して魔法陣型結界は、術者によって魔法陣が消されない限り絶対に破られない結界で、古来では罠として使われ、今は歴史的建造物を守る為に多く使われています。ですが、魔法陣を書く際は魔力を消費する為大きなものには数人掛かりになる危険のある魔法です。」

 

鶴橋「そう、その通り。よく勉強しているね。青龍に10点。」

なんだ勉強してたのね?と賀茂に脇腹を突かれた。チート使ったんだよ、なんて言えない。

 

鶴橋「今日は小さな魔法陣型結界をみんなに今から作ってもらうよ。机の上には和紙があるかい?」

折り紙くらいのサイズの和紙がある。

鶴橋「よし、ではその和紙にはこうやって…魔法陣を正確に書いてね。」

先生は筆で魔法陣を書いていく。私の筆の扱いはまだよくない。特訓中だ。

 

鶴橋「そしたら、僕が用意した式神をとじここめるよ。この式神には中で暴れるように指示してるから、柔い結界は壊されるから注意してね。」

そう言って先生は、スライムのような式神を出した、式神は魔法陣の中心に移動すると結界が張られた。…瞬間暴れ始める。先生の結界は破られない。

鶴橋「うまくいけば、こうなる。では、みんな実際にやってみよう。」

プリム「先生、これは紙を破れば結界が解かれますよね?…大きな結界、建造物などの結界はどう解くのですか?」

鶴橋「いい質問だね。」

先生は紙を破る。すると結界が解かれ、中にいた式神は式札に戻る。

 

鶴橋「大きな結界、建造物などの結界を解くには、自分の血を結界にかけるんだ。すると結界は解かれる。血には大きな魔力がある。それは呪いを弾いたり、逆に呪いをかけたり。血を使う魔法や儀式はとても強力だが、それと共に危険だ。…みんなもそれを頭の隅に置いておくといいよ。」 

先生は笑顔で言うが、さらりと凄いことを言ってる。

 

 

 

恭史郎「僕、鶴橋先生苦手だなぁ」

賀茂「え?どうして?優しいじゃない」

プリム「私も苦手」

恭史郎「笑顔が不気味」

賀茂「そんなことないわ。素敵な笑顔よ。」

プリム「明星って面食いだよね。安倍龍も好きだっただろ。」

賀茂「なんのことよ!龍のことは関係ないじゃない!」

プリム「龍って呼んでるのね…」

恭史郎「えぇ…安倍が好みかよ。明星。」

賀茂「違うわよ!」

次の授業遅れるわよ!と早足になる賀茂。心なしか、後ろから覗く耳は赤く見えた。

からかいすぎたかな。

 

_________

 

魔法薬学の授業は日本にもある。

 

スネイプ先生とは違う雰囲気の先生。神宮寺七先生。先生はなんというか、色香のある先生だ。ホグワーツにはいないタイプ。

 

神宮寺「2年生のみなさん、こんにちは。魔法薬学の授業は今年からですね。さて、私の授業では、杖は必要ありません。しまっていただいて結構ですよ。」

机の上には大鍋やら薬瓶やらが置いてある。

 

神宮寺「本日、調合していただくのは、長髪薬です。これは平安より貴族の間で主流に使われていたものです。髪を美しく綺麗に伸ばす薬です。日本では長く美しい髪は美人の象徴とされていました。美を求める女性が常に1瓶は持っていたとされています。…さて、教科書236ページを開いて。」

なるほど…だから昔の日本人はあんなに髪が長かったわけだ。この薬のおかげってわけか。

恭史郎「長い髪って洗うの大変そうだよね。」

恭史郎は、ぼそっと呟いた。

プリム「貴族で流行ったらしいから、使用人とかが手伝ったって変じゃない。」

恭史郎「そこまでする?」

賀茂「女性は美に対して貪欲なのよ。」

…僕には理解できないな。と恭史郎は考えることを放棄したみたいだ。

 

青龍の寮で、うまく調合できたのは、賀茂と安倍。白虎の寮では、呂久って人と芦川って人だった。どちらの寮にも20点加点された。これは簡単そうで、調合は難しい。たぶん混ぜる速度とかだろう。教科書には”亀の速さ、時計回りに3回かき混ぜる”という記述だ。分かりづらい。

 

恭史郎「神宮寺先生って上級生には人気らしいよ、なんか色気があるんだって。」

プリム「…調合の仕草とかは、大人の色香があったかもしれない。」

賀茂「そう?ゆっくり調合するから寝そうだったわ。」

プリム「明星にはまだわからないな。」

賀茂「わかるわよ!色気っていうのは、そう…フェロモンね!」

プリム「まぁ、当たってはいるけど」

恭史郎「でも僕には神宮寺先生は高嶺の花っていうか…」

プリム「その様子だと、恭史郎のタイプとは違うみたいだな」

恭史郎「まぁ…」

チラチラと顔を見る恭史郎はかわいい。わかりやすいな。

 

__________

 

プリム「ただいま帰りました。」

シルビア「おかえりなさいプリム、友達からのクリスマスプレゼント、ツリーの下に置いてあるわよ!」

友達といっても数えるほどしかいないのだが。

 

レオナルド「おかえりプリム…あー…んん、!」

レオナルドさんは咳払いをした。あ、はいはいとシルビアさんは別室へ行くと、大きな箱を持ってきた。

プリム「父上、母上…」

レオナルド/シルビア「メリークリスマス、プリム!」

プリム「め、メリークリスマス父上、母上」

早く開けてというように、目を爛々とさせた2人に圧倒された。

シルビア「さぁさぁ、開けてみて!」

プリム「…」

箱を開けてみると、日本の着物が入っていた。桜が舞い散っているような柄だ。

プリム「わぁ、綺麗…ありがとうございます!父上、母上!」

シルビア「せっかくだから、ちょっと着てみましょうプリム」

レオナルド「ああ、僕達も着替えて写真を撮ろう」

シルビア「いいわね!そうしましょう」

プリム「父上と母上も着物が?」

シルビア「ええ、正装の時や、パーティーでも着れるようにね。プリムはわたしが着付けてあげるから、後でわたしの部屋にいらっしゃい。」

プリム「はい、母上」

 

 

ビーテ「おかえりプリム、」

プリム「ただいまビーテ、メリークリスマス」

ビーテ「わぁ、もうそんな季節?プレゼントは貰えた?プリム友達少ないからなー」

プリム「…余計なお世話だ」

友達から…と言っても、恭史郎、明星、ドラコに、クレア達からだ。

 

プリム「…これはなかなか、センスがいいな。」

恭史郎からは”プリムの琥珀色の瞳に似ていたから、おもわず手にとってしまったよ、気に入ってくれたらうれしいな。メリークリスマス”とカードに書いてある。

自分の目の色に似た小さい宝石のついたペンダントだ。綺麗だ。恭史郎のクリスマスプレゼントには、自動で書き込みされるスケジュール管理のできる手帳を渡した。わたしの分も書いてくれてるらしいスケジュール管理にうるさいから、恐らく空白がもうないだろうと思ったのだ。喜んでくれただろうか。

 

プリム「…これは、賀茂だな。」

賀茂からは、ガラスペンと瑠璃色のインクだ。透明なガラスペンはとても綺麗だ。上には小さなスノードームが付いている。今は雪が降っているが、四季でコロコロと風景が変わるというから素敵だ。女の子らしいプレゼントだな。自分は賀茂にいつもつけている腕輪に似合うようなかんざしをプレゼントした。何も魔法はかかってないが、長い髪を纏めるときに使ってくれたら嬉しいなと思った。

 

プリム「…ふふ、これはなかなか感動するな」

クレア達からはアルバムを貰った。わたしと一緒にいる写真や、最近の写真だろう。院長と3人が揃った写真もあった。イギリスに戻りたい、会いたい気持ちが高まってしまった。寂しい…そう思った。でも、極力大事な人は作りたくないのだ。イギリスでは特に。これから、自分の弱点になるだろうから。…だから日本では自由に楽しもうと思ったが、元々友達作りは上手くないから、この結果だ。クレア達には、マフラーをプレゼントした、日本には柄や色が様々あり選ぶのが楽しかった。寒いイギリスでは大活躍するだろうと思う。

 

プリム「最後は、ドラコか…」

ドラコからのプレゼントは闇の代物かなぁ…と思ったが、意外なものがそこにあった。

青と橙色の宝石が綺麗に並んだコンパクトがあった。凄く綺麗だ。

“女の子の好みがわからないから、母上と選んだ。日本は身嗜みには厳しいと聞いた。これをいつも持ち歩くといい。メリークリスマス。”とカードが添えられていた。

…闇の魔法はかかっていないみたいだ。ちょっと残念。

ドラコには、箒をもっと楽しめるように、スニッチの模型をプレゼントした。本物ではないが、クィディッチの練習に最適らしい。

 

みんな素敵なプレゼントをくれた。とても幸せなクリスマスになった。

 

シルビア「プリム?そろそろこちらへいらっしゃい?」

プリム「はい!母上!」

急いでシルビアさんのいる部屋に入る。

シルビアさんはもう着物を着ていた。

プリム「母上…とても綺麗」

シルビア「ふふ、ありがとう。プリム着替えなきゃね。」

そういうとシルビアさんは、手際よく着付けてくれた。ふわふわとした赤い帯が金魚のようでとても可愛らしい。

プリム「わぁ…やっぱりとてもかわいいわ!金魚みたい!」

レオナルド「シルビア、プリム?もう着替えたかい?」

プリム「父上!見てください!金魚になったのようです。」

くるくると回りレオナルドさんに抱きつく。

レオナルド「本当だ!僕の娘はマーメイドだったみたいだね。」

レオナルドさんは私を抱き上げた。

シルビア「あまりはしゃいでは駄目よ?せっかく着付けたのに、崩れてしまうわ。」

レオナルド「じゃあ、早く写真を撮らなきゃな、ふふ」

__________

 

プリム「ドラコと恭史郎、明星とクレア達に写真を届けたら戻ってきて。」

式神に指示し、家族写真を送った。

カァ!!

 

窓から飛び立つのを見届けた後、すぐに眠りについた。

 

翌日の早朝

窓の外に式神がいた。

プリム「…ドラコかな。」

手紙を受け取ると案の定、ドラコからだ。

カァ!!

式神は式札に戻る。

 

“親愛なるプリム殿

 

家族写真ありがとう、君からのクリスマスプレゼントも気に入ったよ。スニッチなんて貰ったら、僕は箒の練習を怠ってはいけないね。君を後ろに乗せる約束もしてるから、新しい箒が欲しいと父上に頼んだけど、曖昧な返事しかこないから、新しい箒を手に入れるのは先になりそうだ。ところで、最近の学校生活は順調か?

 

ドラコ”

 

プリム「最近の学校生活ねぇ…」

“親愛なるドラコ殿

 

プレゼント気に入ってくれて嬉しいわ。

箒の練習で沢山使ってね。

最近の学校生活は、楽しく過ごしているわ。

友達もできたの。由緒ある家柄の子よ。

1人は頭がよくて、わたしの勉強にも付き合ってくれるわ。

もう1人は箒を乗るのが上手なの。日本はクィディッチの強豪校らしいから、いつか友達が選手として選ばれたら誇りに思うわ。

でも、わたしはドラコが乗せてくれる箒が1番好きよ。

 

プリム”

 

もう一度式神に届けさせた。

式神は生き物じゃないから便利だ。

罪悪感もない。

 

さて今日は、学校が休みだから、鍛錬と研究をしよう。

 

プリム「母上、ちょっと山へ行ってきます。」

シルビア「わかったわ、気をつけてねプリム」

プリム「はい母上、いってきます。」 

レオナルドさんは早朝から魔法薬学の研究をしている。そのへんは似たのかなと思った。

 

“我に従い、我に支えよ”

通学に使っているウミツバメのような大きな鳥が出てくる。

 

プリム「裏山まで連れてって」

わたしを背に乗せ裏山へと飛び立つ。

 

 

 

プリム「さてと…ひさびさだから、全力がわからない。確認しなきゃな。」

杖を持ち近くの巨大な岩に近づく。

“Reducto”(粉々)

 

岩だけにかけたつもりが、周りにそびえる木にも呪文がかかり、粉々だ。

プリム「…レダクトでこれか。もっとコントロールしなきゃな。まぁ、順調に力はついてるみたいだ。」

自分の力量はわかったが、もっと強く出せるような気がした。…杖については何も考えてなかったからもしかしたら何かあるのかもしれない。…問題なく使えるから今はこれで十分だ。

 

 

家に帰って、結界術の研究を始めた。

習いたてだが、研究しがいのある魔法だ。

 

プリム「えっと…魔法陣型結界は、術者によって魔法陣が消されない限り絶対に破られない結界…この記述ってそもそもなんで絶対っていいきれるんだ」

どさっと図書室から拝借した本と歴史が書いてあるらしい巻物を机の上に広げた。

答えは巻物の方に書いてあった。

 

プリム「…魔法陣型結界の歴史は比較的新しく江戸時代、土御門家考案の魔法である。土御門家は安倍晴明の子孫であり、一度は衰退した陰陽師の歴史を復活させるべく考案されたのが魔法陣型結界。この結界は術者でなければ解くことができない強力な魔法である。」

…やってみなくちゃわからないな。

 

わたしはまた式神に乗り古い建物を探した。人が周りにいない方がいい。

海辺の近くに良さそうな古いビルがあった。

 

プリム「ここで降ろして。」

式神は私を降ろし、式札に戻る。

プリム「さてと…やりますか」

 

 

…ビル屋上に魔法陣を書いた。

プリム「…もう、力つきそう…」

魔法陣型結界の難点として、大きな結界には相応の魔力がいる。つまり今はへとへとだ。

 

プリム「…式神イメージする力もないわ。」

ポケットに常に持ち歩いている式札をだす。

“我に従い、我に支えよ”

息を吹きかけると夢喰いが呼び出された。

獏「なんじゃ、ヘロヘロになりおって、喰うてしまうぞ?」

プリム「今は…ちょっと、大それた実験をしていまして。夢喰いに協力してほしいんだ。」

獏「実験?…ああ、なんじゃ嫌な感じがすると思ったら、魔法陣の上じゃないか。わしを閉じ込める気か、小娘!」

プリム「違う違う…あ、間違いではないけど、ちょっと本当に絶対壊れない魔法なのか気になってね。」

獏「これは魔法陣型結界じゃろ?土御門がそこら中にばら撒いて、妖怪を一網打尽にした術じゃ。」

プリム「あれ?知ってるの?」

獏「知ってるとも、わしは逃げ延びたがの。この結界は術者の血をかけねば解けない魔法じゃ。絶対にの。」

プリム「その絶対って信用できないんだよ、実体験しなきゃね。」

獏「…つまり、わしを仮に閉じ込めて、わしが出られない様子を見て楽しみたいと?」

プリム「…悪い言い方するね、夢喰いさん」

獏「わしを使うとは、よっぽど力に自信があるようじゃな小娘。…式神を使え!!馬鹿者!!」

プリム「…封魔結界、大魔法陣の術」

杖を振るうと、バチバチと火花が飛び散りビル全体を結界が覆う。

プリム「おお…」

獏「プリム、お主も結界の中じゃぞ。」

プリム「…失敗した。陣からでなきゃ駄目だよな。そりゃ。」

獏「まぁ、まて。これは実験じゃろ?魔法を使ってみてはどうじゃ?」

なるほど、暴走気味だが、ちょうどいい機会だな。

プリム「じゃあ、ちょっと離れてて、今疲れてて制御できないから。」

“Bombarda Maxima”(完全粉砕せよ)

 

バチバチと火花が散ったが、何も起こってない。

プリム「おお、凄い。絶対壊れないって本当だったのか。」

獏「プリム、お主…魔力が強くなってないか?」

プリム「ああ…たぶん鍛錬したからね、でもうまく全力が出せてなくて…だからちょっと困っててね。」

獏「…お主、わしよりももっと強い妖怪を使役させられるかもしれんぞ」

プリム「んー、今はいいかな。夢喰いがいるし。」

獏「…プリム、お主に忠誠を誓おう。お主の力見縊っておった。」

プリム「よしてよ…今まで通りじゃないと調子が狂う。」

獏「そうかの…」

プリム「ああ…それよりこっからでなきゃ。…えっと血ね。血。」

ナイフを手に取って、左の腕を浅く切った。

流れた血を結界にかけると、溶け出すように結界が解かれる。

プリム「…成功かな。」

腕にはレオナルドさんの調合した、ハナハッカをかけた。

プリム「さて、今日は帰ろうか…」

夢喰いを式札に戻し、鳥の式神を出し背に乗り飛び立つ。

_________

 

プリム「ただいま帰りました。」

シルビア「おかえりプリム」

プリム「母上ちょっと勉強をしたいので部屋に篭りますが、気にしないでください。」 

シルビア「そう?夕飯の時間にはでてくるのよ?」

プリム「はい、母上」

 

 

ビーテ「おかえりプリム…また山へ行ったでしょ、木の匂いがする」

プリム「ビーテ、鍛錬は大事なことだ。」

ビーテ「ほどほどにしなね」

手紙が届いてるよ。とビーテが鳴く

 

“親愛なるプリム殿

 

箒が得意な友達とは気になるな。

僕も一度会ってみたい。

僕もいつか、クィディッチの選手に選ばれたら一緒に試合してみたいものだ。

きっといい友人、いや、ライバルになれるだろう。

もしそいつに勝ったら僕を誇りに思ってくれるかい?

 

ドラコ”

 

プリム「恭史郎のことしか書いてないわ…わたしへの手紙なのに…」

 

“親愛なるドラコ殿

 

箒が得意な子は、五領恭史郎って名前の子よ。陰陽師の家系の子らしいわ。

男の子だから、ドラコとは仲良くなれるんじゃないかしら?

クィディッチも好きみたいだったわ。

わたしにはよくわからなかったけど。

箒を乗るのが好き同士きっといい友達になれるわ。

 

プリム”

 

プリム「わたし…もっとドラコと話したいのに、ドラコは違うのかしら」

 

式神に手紙を渡した。

 

プリム「…結界の研究しよう」

気を紛れさせるように本を読んだ。

 

 

 

 

プリム「…あれは妖怪の類を封じ込めたり、建物を守るためのものだけど、攻撃から守るだけじゃなくて、透明機能みたいなのがあればもっと便利なのに。」

あ…

本を漁り、ペラペラとめくる。

プリム「あった!…えっと…目くらまし術…対象を周囲の色や質感と同化させて、見えなくするための魔法。存在を隠すのに使われる。…もともとは確かヒッポグリフとかをマグルから隠すために使われたんだっけ…いけるかもしれない…これなら…ここをこう書き加えて…」

その日は徹夜をした。




賀茂明星(かもの めいせい)
マホウトコロの青龍寮生。プリムを見た目を貶したり敵対していたが、同じ寮生として仲良くし始める。マホウトコロでは女子で唯一の友人になる。陰陽師賀茂家の跡取り。

安倍 龍(あべの りゅう)
マホウトコロの青龍寮生。プライドが高く群れることを好まない性格。賀茂が密かに好意を寄せている…かもしれない。なよなよしい恭史郎を毛嫌いしている。陰陽師安倍家の跡取り。


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マホウトコロの話 4

 

_________1989年4月27日

1年間研究やら鍛錬やらを続け、今日わたしは9歳を迎えた。マホウトコロでは3年生になり、青色のローブは緑色になった。

 

知識も格段に増えている、ギフトのおかげだが、知識だけでいえばもう図書室へ通わなくてもいいくらいだろう。

 

レオナルド「プリム、ちょっときなさい。少し話がある…」

レオナルドさんは少し暗い顔をしていた。

シルビア「プリム…マホウトコロはどう?」

プリム「どう…というと?学校生活は充実していますよ。友人もいますし、勉強も楽しいです。」

シルビア「そう…やっぱり、そうよね」

レオナルド「プリム…今から言うことは、そんなに深く考えなくていい、プリムの素直な気持ちを聞きたいからね。」

プリム「…どうしたんですか?」

シルビア「私の仕事については、分かるわよね?」

プリム「はい、魔法生物学者です。」

シルビア「…ドードー鳥の調査をしていると知ってるわね?」

プリム「はい、知ってます。」

2人は伝えたいことを言いづらそうにしている。

シルビア「…ドードー鳥がイギリスで目撃された情報があってね、学者としては今すぐに飛んで行きたいの。でも、ドードー鳥の調査は長期になるわ。…だから、プリムはイギリスへ行きたい?」

私の様子を伺うように見つめている。

これはもしや…ホグワーツへ行けるのか?

 

プリム「…マホウトコロはとてもいい学校です。日本という国も、そこまで悪くないです。」

レオナルド「…シルビア、やはり諦めよう。学者としての探究心はわかるが…」

プリム「ちょっと待ってください、全てを話してません。…確かにマホウトコロはいい学校です。でも、私は母上の探究心も理解しています。それに私にはイギリスに会いたい人がいますし…ホグワーツにも興味があります。」

シルビア「…無理していない?」

プリム「友人がいるので寂しくはなりますが、何かを得る為には何かを犠牲にしなくてはいけません。イギリスへ行きたいのは本心です。」

シルビアさんが、ごめんなさいねと言って私を抱き締めた。

プリム「でも、ひとつ条件があります。…ホグワーツには卒業までいたいのです。」

 

____________

 

 

その日の学校は騒がしかった。

先ず、誕生日を祝う言葉をかけられ、プレゼントもたくさん貰った。それはいい。嬉しいから。

 

日本を近いうちに離れると思うと伝えた。それが騒ぎの原因である。

 

恭史郎は泣いている。男の子なのに、情けないぞと言いたい。

恭史郎「プリム…僕達、っ卒業ま、で一緒だと、思ってたのに…」

泣きながら話すから聞き取りづらい。

賀茂「寂しくなるわ…いつ頃離れるの」

プリム「わからない…聞いてないけど、来年…それより前かもね、魔法生物の調査に行くんだ。」

そう遠くないわね…と明星は気が沈んでいる。

プリム「2人とも、暗くならないでよ。」

恭史郎「プリム…さ、びしく、ないの?」

寂しくない、訳じゃない。2人とも何の隔たりもなくできた友達だ。日本は物語に関わりが少ないから自分勝手にやれた。でも、目的がある…自分にも。だから…これは好機なことだ。

プリム「2人が私の分も悲しんでくれてるからね、私はもう平気。」

2人を強く抱き締めた。

賀茂「私、離れても忘れてあげないわ。あなたは私のライバルで、親友だもの。」

プリム「そうだね、私のライバルは明星で女の子の親友は君だけだ。」

恭史郎「僕だって…忘れないし、手紙も送るから!」

プリム「手紙は私が送るわ?…その方が安全でしょ?」

そうだね…と恭史郎は泣き止んでいた。

プリム「それと、恭史郎にはお願いがあるの。」

恭史郎「え?僕に?…な、なに?」

プリム「…恭史郎は、箒の才能があるわ。だからいつか選手になってくれたら…そしたらワールドカップとかで観戦できるかなって」

ちょっとした思いつきだ。もし選手になってくれたらまた、会えるかもしれない。

恭史郎「わかった…僕頑張るよ!」

ポートキーで会えると思いついたこともあったが、それは利用されたら2人も危険になると気付いたのでこれは論外だった。

 

 

 

 

 

____________1990年8月

 

ドードー鳥の情報が出てから、シルビアさんは慎重に、信憑性のある情報かとかイギリスへ行く準備とかでなんだかんだ1年ちょっとが過ぎた。

 

レオナルド「プリム!準備はできたかい?今回はポートキーを使えないんだ、マグルの移動手段で行くよ。乗り遅れてはいけない。さぁ、急いで!」

シルビア「魔法ってほんとに便利よね、プリムに言われたからポートキーは使えないけど、マグルの移動手段も珍妙で面白いわ!」 

私達は飛行機に乗っている。

2人にはポートキーはなるべく使わないで欲しいと言った。マグルが使ったり、悪巧みをしている人が使ったりして友人を危険に晒したくないと伝えておいた。嘘ではない。

 

プリム「…もう、走れん。」

私の欠点として、体力がない。運動はめっぽう駄目だ。かと言って食べるわけでもないので、肉付きはよくない。

 

倒れ込むように席についた。

 

シルビア「まぁ…こんなに汗をかいて、ふふ」

シルビアさんが優しく汗を拭いてくれる。

レオナルド「プリムは体力がないな、運動しなきゃ駄目だぞ?貧弱者は虐めの対象になってしまう。」

シルビア「レオ!プリムは虐められないわよ、他国でも友達のできる子なのよ?」

…2人だけだが。

プリム「運動は無理のないようにします…」

ホグワーツに行ったら、友達は作るべきなのだろうか…自分の弱点が増えてしまうだけではないだろうか…そう答えのでない疑問を沸々と考えていた。

 

 

____________

 

イギリスの自宅は、海沿いだった。

懐かしい気がした。

 

プリム「懐かしい感じがする…」

レオナルド「プリムは海沿いの孤児院にいたからね、この場所にしたんだ。」

家は相変わらず大きく立派だった。

 

ビーテ「プリム、僕は前より、こっちの家の方がすき。」

プリム「ビーテはアイルランドの不死鳥だからね」

大きく成長したビーテは、検知不可能拡大呪文がかかったトランクから出て飛び立つ。

ニュートスキャマンダーより素晴らしいトランクではないが、ビーテが窮屈しない大きさの空間はある。

 

シルビア「プリム、実はプレゼントがあるの。10歳の誕生日、私達忙しくて祝ってあげられなかったでしょ?だから特別なのを用意したわ。」

…砂浜に古びた本。まさか…。

プリム「これ、ポートキー?…どこに繋がるんです?作ったら駄目って言ったのに。」

レオナルド「ああ…だからこれは、一回使ったら破壊するさ。場所はお楽しみ。」

…3人でポートキーに触れた。

 

グワンと視界が歪む。

…今度は絶対地面に強打してたまるものかともがいたが、無駄だった。

 

プリム「っう、」

砂浜だ。ちょっと口に砂が入った。

2人は優雅に着地していた。

羨ましい。私も優雅に着地したいのに。

 

プリム「…どこだここ。」

懐かしい匂いだ。

もしかして…もしかして。

 

シルビア「プリム!気をつけるのよ!あなた走るのは苦手なんだから…」

シルビアさんの心配する声がした。

でも、振り向いて応答する時間も惜しかった。

 

プリム「っ、やっぱり…」

”オードルファス孤児院”

見たことのある看板だ。

見たことのある施設。

 

マリア「……プリム?」

2階の窓が空いて、懐かしい人の声が聞こえた。

プリム「っ、マリア!」

思わず大声でその人の名前を叫んだ。

ずっと会いたかった人、早く触れたくて、早くあの温もりに抱き締められたくて、勢いよくドアを開けた。

廊下の先にマリアがいた。

 

マリア「そんな…ほんとに、プリムなの?」

駆け寄って強く抱きついた。

変わらない温かさに包まれた。

プリム「マリア…会いたかった…」

マリア「ああ、プリム…私もよ。あなたにどれほど会いたかったか。…大きくなったわね?いくつになったの?」

プリム「10歳だよマリア。ペネロピはいるの?」

マリア「ええ、もちろんよ。呼んでくるわね?」

そう言って奥の部屋へ行った。

シルビアさんとレオナルドさんはすぐ後に孤児院へ入った。

シルビア「プリム、プレゼント気に入ってくれた?」

プリム「もちろんです!今までで最高のプレゼントです。ありがとうございます、父上、母上。」

レオナルド「シルビアが考えたんだ。僕が家を建てた後にそれならってね。プリムの喜ぶ顔が見れて嬉しいよ。」

 

ドタバタと階段を降りてくる音がする。

クレア「プリムが来たってほんと?」

プリム「本当だよ。クレア」

クレアが勢いよく抱きついてくる。

クレア「私、ずっとあなたを待ってたのよ、いつか来てくれるって」

プリム「うん、待っててくれてありがとうクレア。」

 

ペネロピ「…もう、嘘でしょ?日本に行ったのよ?」

マリア「本当よ、ほら。」

話しながらマリアがペネロピを連れてくる。

プリム「やぁ、ペネロピ。」

ペネロピ「…」

開いた口が塞がらないとはこういうことだな。

 

院長「なんの騒ぎですか一体…」

騒ぎを聞きつけて院長先生が来た。

レオナルド「オードルファス院長、お久しぶりです。連絡をせずに突然押し掛けてしまい申し訳ございません。イギリスに住むことになりましたので、立ち寄らせていただきました。」

シルビア「ずっとプリムも皆さんに会いたがっていましたから…」

院長「…ご連絡をくだされば、此方も歓迎の準備をしましたのに。紅茶とクッキーをお出し致しますので、ゆっくりしていってください。」

シルビア「ありがとうございます。プリム、皆さんきっとあなたと話したいことがいっぱいあるわ。ゆっくり話してらっしゃい。」

プリム「…はい!」

 

 

 

クレア「でね、ペネロピってば、プリムのことばかり話すのよ。あの子だったらもっと物わかりがよかったとか、日本でうまく過ごしているかしらとか。」

ペネロピ「ちょっと!それはクレアもでしょ?クレアはね、プリムに会いたくて週末は必ず泊まりに来るんだから。近所なんだから来なくてもいいのに!」

プリム「ふふ、みんな元気そうでよかった。手紙あまり送れなくてごめんね?」

ペネロピ「いいのよ、きっと日本が楽しくて私達のことなんか忘れてたんでしょ?」

プリム「忘れたことなんてないよ、日本が楽しいのは間違いではないけど。」

マリア「プリムは、今どこに住んでいるの?近く?」

プリム「んー…海沿いだけど、たぶん景色が違うから離れてると思う。」

マリア「そうなのね…」

クレア「近くなら会いに行けたのに。」

 

 

昔のこと、最近のこと日が暮れるまでずっと話していた。

 

レオナルド「…プリム、そろそろ帰らないといけないよ。」

プリム「はい、父上…」

クレアが強く抱きつく。

クレア「また、来てくれるわよね?」

プリム「…どうだろう、わからない。」

きっとこれから危険になる。巻き込みたくはない。

マリア「プリムを困らせては駄目よ、クレア。…会えるときに会いに来ればいいわ。でしょ?」

プリム「うん…」

ペネロピ「…手紙は時々寄越すのよ?」

プリム「ん、わかった」

みんなを抱き締め孤児院を離れた。

 

 

シルビア「プリム…別れるのは、寂しい?」

プリム「はい…でも、これから魔法の世界に深く関わります。マリア達には危険ですから。」

シルビア「そうね…」

レオナルド「別れはつらい。…でもこれから出会いも増えるだろう。」

プリム「はい…父上」

 

ポートキーで家に戻り

使えないように破壊した。

 

プリム「父上、そういえば思ったのですが、私はホグワーツに通えるのでしょうか?」

レオナルド「それについては話してあるよ、何も問題はない。元より君は孤児院で魔法を使っただろ?ホグワーツには間違いなく通えるよ。」

ああ…魔法を使うと名前が登録される、みたいなことがあったような。それか。

プリム「そうだったのですね、なら、よかったです。ドラコに手紙を出したいので、フクロウをお借りしますね。」

レオナルド「ああ、構わないよ。自由に使いなさい。」

我が家のフクロウはアルファというメガネフクロウだ。

 

“親愛なるドラコ·マルフォイ殿

 

10歳の誕生日お祝いできず申し訳ございません。

実は、日本から離れイギリスへ来ました。

母上の、ドードー鳥の調査で来ることになりました。モーリシャス島にいるドードー鳥がイギリスでも見られることがわかれば大発見です。

ドラコはホグワーツに通うの?私はホグワーツに通うことになったわ。もし、一緒なら嬉しいな。

 

プリム”

 

プリム「アルファ、ドラコに届けて」

アルファ「かしこまりました。」

 

アルファが飛び立つ。

 

さて…

部屋に鍵をかけ、変身術に関する本を開く。

 

プリム「…動物もどき。」

過去の記憶から、やってみたいことがひとつあった。アニメーガスになること。

これは難しい魔法でジェームズポッター達も習得に数年かかったものだ。

 

プリム「杖も呪文も必要ない。これは使いこなせれば便利だ。…どうせなら人を守れるような力強い動物がいいんだけど。守護霊みたいなものなのかしら。」

牡鹿や、犬、ネズミ。姿にはいろいろあるみたいだから、特に縛りはないのだろう。

 

プリム「…なりたいもの。具体的に。」

生物の図鑑を広げて考えていた。

何になりたいかと考えていると、アルファが窓をつついた。

 

プリム「…早いな。ドラコの家は近いのかな。」

アルファ「返事を授かりました。」

プリム「ありがとう、アルファ」

 

“親愛なるプリム·クロウリー殿

 

イギリスへ来たって本当かい?

今はどこに住んでいるんだ?

君の母上の調査は難しそうだな、応援している。

それと、僕もホグワーツに通う予定だ。

同じ学校に通えると思うと楽しみだよ。

 

誕生日については、6月に僕と君の11歳の誕生日を我が家で祝わないか?父上にはもう話したから、近くに招待状が届くだろう。

 

ドラコ”

 

ま、マルフォイ家に…ご招待された…

 

プリム「ち、父上!母上!大変です!」

シルビア/レオナルド「何事なの!?/何事だ!?」

 

 

 

_________1991年5月

 

私は11歳を迎えた。そして無事ホグワーツから入学許可証も4月に届いたのだが、今はそれよりクロウリー家には大事なことがあった。

 

シルビア「もう、マルフォイ家も自由気儘よね。私達の方が身分としては上なのに。あ、これは差別じゃないのよ?ただマルフォイ家が余りにも自分勝手だから身分を出したの。」

レオナルド「まぁ、我々もドラコの誕生日をお祝いできていないんだ、お互い様だろう。」

プリム「私は、ドラコに会えるなら嬉しいですよ。」

シルビア「女の子は準備に時間がかかるのよ!好きな子に会うなら尚更ね!」

プリム「好きな子ではないですよ。母上」

シルビア「あら?ふふ、誤魔化しても駄目よ?女の勘は当たるんだから。」

 

そう、マルフォイ家から11歳の誕生日パーティーに招待され、今はドレスを仕立てにきている。ドレスはマグルの方が綺麗に仕立ててくれると、母上が一番気に入っている仕立て屋に来た。

 

仕立て屋「お嬢ちゃんは、色白で髪が黒いから、この青いドレスが映えるだろうね。」

そう言って青いドレスを合わせる。

悪くない、光にあたると金にも見える。綺麗だ。刺繍も細やかに施されていて、本当に綺麗なドレスだ。

プリム「…綺麗だけど、私には合わないわ。」

シルビア「いいえ!プリムにぴったりな綺麗なドレスよ。私はこれが気に入ったわ。」

プリム「もっと地味な方が私は好きです。」

シルビア「駄目よ!地味なドレスなんて、あなた11歳になったのよ?5歳や6歳とは違うの、綺麗な姿を見せなくてはもったいないわ。」

プリム「…でも、こんな綺麗なドレス」

シルビア「これにするわ!このドレス以外は買ってあげませんからね。」

プリム「…では、父上にも見せてからで。」

シルビア「いいわ、そうしましょう。レオ!どう?プリムのドレス」

シルビアさんはネクタイを見ていたレオナルドさんを連れてくる。

レオナルド「…僕は、ドレスについてはあまりわからないけど、プリムに似合っているよ。」

シルビア「ね?レオもこう言ってるわ?」

プリム「…そうですね、なら、これにします。」

綺麗だけど、もったいないと思った。私が着るより、もっと綺麗な子が着た方が映えるだろうに。

 

 

 

 

 

_________1991年6月

 

シルビア「プリム?ドレスは着れた?」

プリム「はい、母上」

シルビア「まぁ…やっぱりプリムにぴったりだわ、そのドレス」

プリム「そう…かな」

シルビア「ふふ、きなさい。髪を結ってあげるわ。」

シルビアさんは杖を使って髪を編んでいく。

プリム「母上は、久しぶりに会う友人に、どういう顔を見せますか?」

シルビア「そうね…とっても仲のいい子なら、きっと抱きついてしまうかもね。でも貴族なら、挨拶をして、昔の話や最近の話をして笑いあうんじゃないかしら?」

プリム「私は、ドラコにどんな顔を見せればいいのかわかりません。」

シルビア「あら、ふふ、緊張しているのね?大丈夫よ、あなたは賢くて強くて優しい子だもの。それにとってもかわいい!だから、あなたらしく、そのままでいればいいのよ?」

プリム「…嫌われないでしょうか、何年も会ってないのに」

シルビア「心配ないわ、縁とは不思議なものでね、何年も会ってなくても、つい最近のことのように感じるものよ。」

シルビアさんは、見てプリム、あなたとってもかわいいわ。と鏡を見せた。

プリム「…別人みたい。」

シルビア「それと、これで仕上げね。」

シルビアさんは、ジュエリーケースを出して、イヤリングとネックレスを私に付けた。

シルビア「これはね、私がちょうどあなたくらいの時に付けたの。魔法がかかってるから、今も綺麗なままでしょ?」

プリム「…とっても綺麗」

ダイヤモンドがキラキラとひかり、ネックレスは中央に黒い宝石が輝いていた。

プリム「母上の髪と同じ色ですね。」

シルビア「そうね?あなたとも同じだわ。」

コンコンと部屋をノックする音が鳴る。

レオナルド「レディー達、準備はできたかい?」

シルビア「ええ、今出るわ。」

ドアを開け、レオナルドさんの前でくるりと回った。

プリム「父上…どうですか?」

レオナルド「プリム、とても似合っているよ、今日は一段とかわいい。」

私は少し照れ臭くなった。

シルビア「レオ、私のことは?」

レオナルド「ああ、君は僕の眼にしか映したくないほど綺麗だよ。マルフォイ家の眼に入るのがもったいない。」

ふふ、ありがとうとシルビアさんも照れている。

レオナルド「さぁ、レディー達、マルフォイ家を待たせてはいけない。そろそろ出よう。マルフォイ家がポートキーを作ったみたいだから、そこへ向かうよ。…どうやら盛大にしたらしい。純血一族らしいね。まったく。」

レオナルドさんは、自分が派手なことをするのは好きだが、他人の事は違うみたいだ。

 

街中へ出て、路地裏へ入ると、割れた手鏡の前で止まった。恐らくこれだろう。

 

レオナルド「プリム、僕と手を繋いで。ドレス姿で転んではいけないからね。」

それは、ごもっともだ。お言葉に甘えよう。

 

手を繋ぎポートキーに触れる。

グワンと視界が歪む。もう慣れた感覚だ。

 

プリム「…マルフォイ家様だな。ほんと。」

でかい屋敷が目の前にあった。映画より綺麗で大きい気がする。

シルビア「私達の家より広いみたいね。」

レオナルド「…帰ったら家を大きくしよう。」

プリム「え、父上、もう十分では?」

レオナルド「いや、クロウリー家としては、マルフォイ家に負けていられない。」

勝ち負けなのか?これは。

 

マルフォイ家の門を潜り、玄関をノックすると、ドビーが迎えてくれた。

プリム「こんばんわ、招待されたのだけど、わかるかしら?クロウリー家よ。」

ドビー「く、クロウリー様ですね、クロウリー様が来たら、ドビーはすぐにご主人様にお伝えしなければいけません。」

パチンと指を鳴らして消えてしまった。

奥の広間には沢山の人が集まっている。

玄関で待っていていいのだろうか。

レオナルドさんを見つめた。

レオナルド「ルシウスが来るだろうから、待っていよう。」

シルビア「玄関で待たせるなんて…」

 

ルシウス「…広間にお通しするのが先だ、使えないやつめ。」

ドビー「申し訳ございません!」

うぅっ!とドビーが呻いていた。屋敷しもべから自由になるのはちょっとあとだ。今はつらいと思うが、ハリーが助ける。

ルシウス「私の屋敷しもべが無礼をしてしまい、申し訳ない。…クロウリー家のみなさん、歓迎します。息子の誕生日パーティーに来てくださりとても嬉しい限りだ。」

ナルシッサ「…広間には皆さん集まっていますわ。どうぞゆっくり楽しんでくださいな。」

レオナルド「屋敷しもべの無礼は気にしてないよ、ルシウス。娘プリムも11歳だ、一緒に祝えてこちらも嬉しいよ。」

プリム「ご招待くださり有り難う御座います。ドラコ殿の11歳の誕生日心よりお祝い致します。」

シルビア「ドラコ殿は、ホグワーツにご入学だそうですね、娘もホグワーツなの。仲良くできたら嬉しいわ。」

ナルシッサ「ええ、ぜひ。ささ、広間へどうぞ。」

プリム「あの、ドラコは…」

ルシウス「ああ、ドラコは後から来るよ。プリム殿と一緒に広間へ来るように伝えている。」

…目立つ!すこぶる目立つぞそれは!

プリム「では、ドラコを待ちますので、みなさんはお先に。」

レオナルド「ああ、では広間で待っているよ、プリム。」

 

 

沢山の人が広間へ入っていく。階段下で待ってると、足音がした。

ドラコ「…プリム?」

プリム「やぁ、ドラコ。11歳の誕生日おめでとう。」

ドラコは黒いドレスローブ姿をしていた。マルフォイ家って黒好きだよね。まだ幼い顔立ちだけど、似合っている。

ドラコ「ああ…待たせてすまない。君こそ、誕生日おめでとう、プリム。」

プリム「ありがとう、黒いドレスローブ似合うね?」

ドラコ「…君も、綺麗だ。」

ハリーには毒を吐くのに。なんか毒が抜けたドラコには調子が狂う。

プリム「あ、ありがとう。そういえば、ホグワーツに通うんでしょ?」

ドラコ「ああ、プリムもだろう?」

プリム「そうよ、入学許可証が届いたの。」

ドラコ「僕も今朝届いた。ホグワーツでは、寮をわけるのは知ってるかい?」

プリム「ええ、あなたはスリザリン?それともレイブンクロー?」

ドラコ「スリザリンだろうね。父上もそうだから。」

プリム「私はどこだろう。日本では青龍だったわ、でも友達と一緒がいいって望んだの。だからだと思うわ。」

ドラコ「…じゃあ、ホグワーツでもそうしたらいいさ。僕と…いや、なんでもない。」

プリム「…そうね、ドラコと一緒ならいいな。」

 

ドラコ「もう行かないといけないな、父上と母上を待たせている。」

そういって、ドラコが手を出してエスコートしてくれた。

 

 

 

 

プリム「…やっぱり苦手だ、人が多いのは。部屋に篭りたい。」

純血一族の集まりなんてろくなもんじゃない。ましてや、純血主義を高々に掲げているマルフォイ家贔屓の家ばかりだ。きちんと挨拶をしないといけないし、気を張ってばかりだ。

これからスリザリンになる人もちらほらいた。ドラコの周りにはビンセントクラッブ、グレゴリーゴイル、あと少し離れたところにはセオドールノットがいた。

私とさっきまで話していたのは、パンジーパーキンソン。パンジーは今はダフネグリーングラスと話している。私の記憶は映画の知識がほとんどで小説の方はそんなにない。どうやら、11歳には読みづらかったらしい。つまり小説よりの世界なら、不安しかない。

 

プリム「…にしても、ほんとに知った名前ばかりだな。」

???「知った名前?知り合いが多いの?」

独り言を聞かれて驚いた。人気のない壁に寄ってたから気づかなかった。

プリム「…あなた誰。」

ブレーズ「僕はブレーズ·ザビニ。ブレーズって呼んでくれ。プリム。」

プリム「私あなたに名前言ったかしら。」

ブレーズ「いや?でも知らない人はいないだろ。このパーティーの準主役だしね。それにクロウリー家って有名だろ?」

プリム「さぁ、自分の家のことはあまり知らないの。」

ブレーズ「ところで、知った名前が多いって聞いたけど、君イギリスは初めてだろう?なんで知ってるんだい?」

しまった。あまり聞かれてはいけないことだ。

プリム「ドラコが教えてくれたのよ、名前や家柄は覚えておくべきってね」

ブレーズ「ああ…ドラコね。あいつなんでも話すからな。」

うまく逃げられたか。よかった。

ブレーズ「プリム、僕は君に少し興味がある、もっと君について聞かせてくれないか?」

プリム「え…あ、いいけど、話すことなんて何もないわよ?」

ブレーズ「日本へ行ったそうじゃないか、その話をぜひ聞きたいな。」

プリム「な、なんで知ってるのよ。」

ブレーズ「ドラコが話してるのを聞いた。」

プリム「…」

 

 

 

 

ブレーズ「日本ってなんだか珍妙だな。」

プリム「そう?礼儀正しくて私は好きよ。」

ブレーズ「そうなのか?僕のイメージと違うな。」

プリム「あなたのイメージはわからないけど、私は実際行ったからわかるわ。」

ブレーズ「今、日本の魔法使える?」

プリム「使えるけど、未成年は使えないでしょ?」

ブレーズ「大丈夫だよ、マルフォイ家は特別だから。」

プリム「特別って?」

ドラコ「魔法を使ってもいいことになってる。父上が使った魔法として処理されるんだ。」

ドラコが後ろから聞こえるように話しかけてきた。

ブレーズ「やぁ、ドラコ。せっかくプリムと話してたのに割って入らないでくれないかな。」

ドラコ「僕の誕生日パーティーだ。僕と話すべきじゃないか、ブレーズ。」

わぁ…一触即発って感じかな。

プリム「ドラコ、魔法を使えるの?」

ドラコ「ああ、使っても大丈夫だ。日本の魔法を見せてくれるのか?」

ブレーズ「ドラコはプリムと仲がいいから、もちろん見たことあるんだろ?」

ドラコ「…ない」

プリム「ああ…その、大したことないけど、簡単なやつなら見せるわ。」

 

“変化の術…大蛇”

プリム「どうかしら?…」

 

ブレーズ「プリム、君動物もどき?」

ドラコ「大きな…蛇だ」

 

プリム「よかった、成功して。」

変化を解く。

プリム「これは変化の術。動物もどきじゃないわ。変身術と似てるかもね。でも杖は使わないの。言葉も話せるわ。」

ブレーズ「でも、似てるな。動物もどきと。」

ブレーズは、あまり面白くないといった感じの顔だ。

プリム「…んー、じゃあ、式神術は?ドラコは知ってると思うけど。」

ドラコ「ああ…手紙のやつか?でもどんな魔法かはわからない。」

 

“我に従い、我に仕えよ”

夢喰い獏を出す。

 

獏「プリム、ここはどこじゃ?日本ではないな?」

プリム「ここはイギリスだよ」

 

ドラコ「…カバ?」

ブレーズ「魔法生物が、突然現れた?」

プリム「違うよ、私が呼び出したの。」

 

獏を式札に戻す。

プリム「元はこの式札。」

 

ドラコ「奇妙な魔法だな。」

ブレーズ「な?日本って珍妙だ。」

プリム「さっきのは夢喰いって言って、夢を喰う妖怪。私が使役してるから、だいたいのことは言う通り動いてくれる。」

ブレーズ「プリムといると楽しいことが起こりそうなのはわかった。」

ドラコ「…プリムは優秀だからな。」

 

プリム「あ、そうだ。ブレーズちょっとドラコと2人で話したいんだけどいいかな?」

ブレーズ「…構わないよ。」

ドラコと庭に出た。

 

ドラコ「どうしたプリム、話したいことって?」

プリム「ドラコ、約束。覚えてるよね?」

ドラコ「約束?…」

プリム「忘れたの?箒!乗せてくれるでしょ?」

ドラコ「ああ!…もちろんだ。ちょっと待ってろ、箒持ってくるから。」

 

 

 

プリム「これが、ドラコの箒?かっこいいね?」

ドラコ「…そうか?普通の箒だぞ?」

プリム「さ!乗せてくれるんでしょ?ずっと楽しみにしてたんだから!」

ドラコ「ああ…ほら、後ろに乗れよ。」

ドラコが箒を跨ぎ手を引く

抱きつくとき背中が広く感じた。

プリム「…ドラコ成長したね、前より背が伸びた?」

ドラコ「当たり前だろ、君を乗せたのは何年も前だ。」

捕まってろ、と言って飛び立つ。

風が頬を撫でる。

ムスクの香りが鼻をくすぐる。

あの時と同じだ。

プリム「私、恭史郎にも後ろに乗せてもらったことあるの。」

ドラコ「…ああ、日本の箒が得意だってやつだろ?僕よりも上手いのか?」

プリム「さぁ。クィディッチとかのことならわからないよ。でも、私はドラコの箒の方が好きだなぁ。なんか、心地がいいんだ。」

ドラコ「そうか…ならいい。」

プリム「ねぇ、もっとスピード出して?」

ドラコ「…落ちるなよ?」

 

ビュンと風が強くあたる。

鼻先が冷たく感じる。

 

プリム「すごい速いよ!ドラコ上手くなったね?」

ドラコ「君からスニッチをもらったからな。」

 

ドラコと初めて会った時、綺麗だと思った。

たぶんこれは…この感情は…

でもドラコは、パンジーやアストリアと一緒にならないといけない。知ってるのは、そういう話だ。

私はこれ以上、深く関われない。水面下で守らないといけない。

…そのときまで。時が来るまでこのひと時を楽しみたい。

プリム「…ずっとドラコと箒に乗っていたい。」

小さく吐いた言葉。

ドラコ「?…なんか言ったか?」

プリム「ドラコと箒に乗るの楽しいって言ったの」

ドラコ「それは光栄だなプリム嬢」

まだ幼いドラコには、私の抱いている気持ちなどわからないだろう。

どうか、気づかれずに散れますように。



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ダイアゴン横丁

 

 

マルフォイ家のパーティーは盛大に終わった。知り合いも少し増えた。ほとんどが確かスリザリンになる人だが。

 

プリム「またねドラコ、ホグワーツで。」

ドラコ「そうだな、ホグワーツで。」

軽く抱き締め別れた。

 

 

 

シルビア「はぁ、少し気疲れしたわ。久々の純血一族の集まりだったから。」

レオナルド「そうだな、プリムも着替えたらゆっくり休みなさい。」

プリム「はい、父上」

レオナルド「僕は家を大きくすることを考えてから寝るよ。」

シルビア「あら、考え終わったら、プリムの学用品について考えてくださいね?」

今は6月で、ハリーは7月31日が誕生日だ。あと1か月くらいか。ホグワーツの入学は9月1日。

プリム「父上ゆっくり考えてください。学用品は7月頃に買えれば問題ないですから。」

レオナルド「これはクロウリー家の問題だからね、お言葉に甘えるよ。」

シルビアさんは呆れた顔をしていた。

 

 

 

_________1991年7月31日

 

今日はハリーポッターの誕生日だ。

ハリーは今日、人生で最高の日になるだろう。

 

レオナルド「プリム!おいで」

レオナルドさんに呼ばれ部屋を出る。

プリム「父上、どうしましたか?」

レオナルド「ふふ、今までで最高の家を作ったよ。見てくれ!」

プリム「…」

シルビア「もう、なんの騒ぎなの…」

プリム「母上…これ、父上が…」

シルビア「…」

レオナルドさんは、マルフォイ家を見てから感化され、家を大きくし始めた。コテージが付いたり、ダンスホールの広間…もうこれは、レオナルドさんの性分なのだろう。

だが、見せられたのは、2棟目の建物。

 

シルビア「レオナルド…家を大きくしたのはいいけど、2棟も家を作ってどうするの!」

レオナルド「え?…立派だろう?君の研究室も大きくとったし、僕の魔法薬も沢山あるからね、もちろんこれから増えるし、それと魔法の練習部屋も作ったよ、プリムは魔法の練習をしているみたいだからね?」

プリム「父上…これは、やりすぎじゃ」

レオナルド「え?…やりすぎた?」

シルビア「クロウリー家の尽きない財産はあなたが使ってくださるから、心配ないわね!」

呆れているシルビアさんをレオナルドさんが宥めてる。まぁ、これはレオナルドさんが悪いかな。

プリム「ん?…練習部屋?」

というか魔法の練習バレてたのか。

まぁ、そうか。レオナルドさんが使った魔法になるんだもんな。身に覚えのない魔法が使ったことになってたら気付く。

プリム「父上、練習部屋を作ってくださったのですか?」

レオナルド「ああ!おいで、きっとプリムも気にいるよ」

部屋に案内され入ると、競技場みたいな広間と別室には魔法に関する本や薬瓶。

プリム「これ、結界術…」

床には魔法陣が書いてあった。

レオナルド「ああ、プリムから聞いて研究したんだ。プリムが魔法を使っても壊れないよ。」

プリム「すごい…父上ありがとうございます!」

レオナルド「プリムなら気に入ってくれると思ったよ!な?シルビア」

シルビア「…プリムが気に入ったなら、仕方ないわ。管理はレオナルドがしてくださいね!」

プリム「…父上、ひとつやってみたいことがあるのですが。」

レオナルド「どんなことだい?」

プリム「此方の離れに結界術をかけてもいいですか?…私が研究して、目眩しの術を施した結界なのですが。」

レオナルド「ほぅ…とても興味深いね。まぁ、家はもう1つあるんだ。幸運なことにね。」

プリム「ただ少し、難点がありまして…結界をかけた建物に関して建物について知らないものに口外すると苦しみながら息絶えます。」

レオナルド「そ…それはつまり、闇の魔術も加えたのかな?」

プリム「はい、強力になりましたが、同時に危険になりました。でも、この離れを使うのは私達だけでしょう?問題ありません。」

レオナルド「いや…しかし、危険だ。駄目だ、プリム。」

シルビア「そうよ、思わず話してしまったら死ぬなんて。」

プリム「でも、もし危険が迫ったとき強力な隠れ家になりますよ?」

レオナルド「…必要がないとわかれば、すぐに解くと約束できるかい?」

プリム「はい、もちろんです。」

シルビア「レオナルド!私達が危険になるのよ?」

レオナルド「でも、闇から守ってくれる。最強の隠れ家になる。」

シルビア「…闇の帝王は滅びたわ。」

生き残った男の子が第二の帝王になるかもしれない。と私には聞こえないように2人で話し合っている。

 

 

 

レオナルド「プリム…結界をかけてもいいよ。ただし、必要がなければすぐに解く。いいね?」

プリム「はい、父上」

シルビア「ああ…私しばらく人と話せないわ。」

 

 

式神を出し、屋根の上に魔法陣を書いた。

プリム「これで、みんなを守ってあげられる。」

危険な魔法を使ったのに、嬉しくて口元がにやけた。

プリム「これで、この離れは誰にも見つからないです。私が術者なので私が許した人のみ入れます。…どうぞ。」

玄関を開けて2人が入る。

シルビア「マルフォイ家より危険な場所になったわね、ここ。」

レオナルド「でも、闇の代物は置いてないぞ?…建物そのものに闇の魔術をかけてしまったが。」

プリム「大丈夫ですよ、口外しなければ危険ではないです。」

シルビア「…あ!そうだわ、プリム。明日学用品を買いに行きましょう。家ももう完成したでしょう?ねぇ、レオ?」

レオナルド「ああ…これだけ豪華にすればクロウリー家の上に立つものはいないだろう。」

プリム「父上…あまりプライドが高いと世の中渡りづらいですよ。」

シルビア「プリム!あなたもあなたで、引き篭もって研究ばかりしては駄目よ!」

プリム「は…はい」

シルビア「はぁ…2人とも世話がやけるわ…さ!明日はダイアゴン横丁に行きますよ!」

…明日は8月1日じゃないか?ハリーポッターの買い物の日とかぶったな…会わないようにしなきゃ。

 

 

 

___________ 1991年8月1日 ダイアゴン横丁

 

“1年生は以下のものを準備すること。

 

制服

普段着のローブ三着(黒)

普段着の三角帽(黒)一個 昼用

安全手袋(ドラゴンの革またはそれに類するもの)一組

冬用マント一着(黒、銀ボタン)

衣類には名前をつけておくこと

 

教科書

全生徒は次の教科書を各一冊準備すること

「基本呪文集(一学年用)」 ミランダ・ゴスホーク著

「魔法史」 バチルダ・バグショット著

「魔法論」 アドルバード・ワフリング著

「変身術入門」 エメリック・スィッチ著

「薬草ときのこ千種」 フィリダ・スポア著

「魔法薬調合法」 アージニウス・ジガー著

「幻の動物とその生息地」 ニュート・スキャマンダー著

「闇の力―護身術入門」 クエンティン・トリンブル著

 

その他学用品

杖(一)

大鍋(錫製、標準、2型)

ガラス製またはクリスタル製の薬瓶(一組)

望遠鏡(一)

真鍮製はかり(一組)

 

ふくろう、または猫、またはヒキガエルを持ってきてもよい

一年生は個人用箒の持参は許されないことを、保護者はご確認ください。”

 

…多いな。えっと、教科書は全部家にあるな。杖以外の学用品も…あるな。

 

プリム「制服と、杖が必要みたいですね。他は教科書等準備しなきゃいけないみたいですが、全部家にあります。」

レオナルド「どれどれ…うん、そうみたいだね。ん?杖は日本で買っただろ?」

プリム「あー…ちょっと調子が悪いので、見てもらった方がいいかもしれません。」

レオナルド「なに!?調子が悪いまま使っていたのかい?そういうことは早く言いなさい。」

そういうとオリバンダーの店に引っ張られる。

プリム「あ、父上ちょっと待って…」

シルビアさんは動物をキラキラした眼差しで眺めている。

ハリーと鉢合わせるとまずい!ゆっくり慎重に行きたいのに!…

カランカランとドアの鈴がなる。

レオナルド「失礼。…店主殿。娘の杖を見て頂きたいのだが。」

ああ…来てしまった。

恐る恐る辺りを見渡す。

プリム「よかった…まだいないみたいね。」

オリバンダー「ポッターさんは、まだ来られませんよ、お嬢さん。」

プリム「っ!…」

…あー、そうか。オリバンダーさんは不思議なキャラだったな。

レオナルド「…プリム?杖をお見せなさい。」

プリム「あ…はい、父上」

使っていた杖をカウンターの上に乗せる。

オリバンダー「…ふむ、長さは25センチ。金木犀の木でできている。芯は天狗の羽。これは…日本で買ったものかな?」

プリム「はい。ですが、自分の力を上手く出せなくて。」

オリバンダー「…どんな杖をお望みかな?この杖は君に忠誠を誓っている。…自信は失っているようじゃが。使えないわけではない。」

プリム「あー…まぁ、確かに使えないわけではないです。ただちょっと、自分がしたいように出来ないというか。理解していないというか。」

オリバンダー「あぁ…ではこれは、いかがかな?マツの木にユニコーンの毛、長さは25センチ」

渡された杖を使って近くの本に浮遊呪文をかける。

ペラペラとページがめくれ千切れるようにページが舞い散る。

オリバンダー「あー、いかんいかん、これは合わなかったようだ。」

オリバンダーさんは奥の棚へ行き、別の杖を持ってくる。

オリバンダー「それでは…こちらかな?ブナの木にドラゴンの心臓の琴線、長さは28センチ」

もう一度同じように振るうが、今度は本が弾け飛んでしまった。

オリバンダー「これもだめじゃな、はぁ…難しいお嬢さんだ。」

プリム「父上…時間がかかるみたいですから、母上と待っていてください。制服も自分で買います。」

レオナルド「そうかい?なにかあったらすぐに呼ぶんだよ?…足りないといけないから持っていなさい。」

レオナルドさんが自分のポケットに金貨を入れる音がした。…こういうのは人前では困る。

オリバンダーさんは奥で、あれでもないこれでもないと、ガサゴソしていた。

見られていなくてちょっと安心した。

オリバンダー「は!…これなら、きっと合うかもしれん」

埃をかぶったオリバンダーさんから杖を受け取る。…しっくりくる感覚だ。

 

“Reparo”(直れ)

 

本に魔法をかけると、破れた本は新品のように直った。

オリバンダー「…これはこれは。その杖は少し他と違っている。扱いには気をつけるのだよ。」

プリム「何が違うんですか?」

オリバンダー「その杖は先端がアカシア、柄の部分はスギの木を使っている。芯はユニコーンの毛、長さは25センチ。アカシアの木を使っているのはその杖だけじゃ、選ばれる魔法使いは少ないからの。…君はきっと優秀な魔法使いになれるだろう。」

カランカランと鈴の音がなる。

次のお客さんがきたのだろう。

 

プリム「あ、これで足りますか?」

7ガリオンをカウンターに置く。

オリバンダー「ああ、ちょうどだ。また合わなくなったら来ておくれ。」

杖を受け取り店を後にした。

次のお客さんは女の子だった。

顔見知りじゃないから、マグル生まれかもしれない。綺麗なブロンドだ。

 

さてと、次は制服ね。ハリーとドラコが確かここで初めて会うのよね。…でも、だいぶ時間は経ってるから、鉢合わせはないかな。

窓から中の様子を見た。誰かいる。それはそうか。

ゆっくり店に入った。

誰かが採寸している。男の子だ。

ブレーズ「そんなに見つめるほど、僕の顔は綺麗か?プリム」

プリム「っ!ブレーズ…あなただったのね。」

ブレーズ「僕に似てるやつにでもあったのか?」

プリム「いえ…ちょっと、会いたくない人がいたのよ」

仕立て屋「おや、お嬢さんも新入生だね?女の子はこっちだよ。おいでな。」

店の奥に入って採寸される。

ほぅ、女の子だと話と違うのか。知らなかったな、ハリーのことしかわからないのも不便かもな。

 

 

ブレーズは先に出てしまった。

男の子は早く終わっていいな。

ちょうど測り終わり全て揃った頃、次に来た子はハーマイオニーだった。

ハーマイオニー「こんにちは、私ハーマイオニー·グレンジャー。あなたも新入生?」

プリム「ええ。私はプリム·クロウリー。よろしくね。」

ハーマイオニーはハリーとまだ会わないから、物語に影響はないだろう。たぶん。

ハーマイオニー「あなたはもう魔法を試したりした?私、魔法使いの生まれじゃないから、自分が魔法使いだって知ったら嬉しくて、教科書を何度も読んで暗記したわ。もう簡単な呪文はできるようになったから、みんなに追いつければいいんだけど。」

なるほどな。息継ぎをしないで話すって本当だったのか。これがマシンガントークだな。

 

プリム「私は魔法使いの生まれだから、基本的な呪文はできるわ。…それと、魔法使いの生まれじゃないってことはあまり人に話さない方がいいかも。純血主義者の耳に入ったら目をつけられるよ。」

ハーマイオニー「そうなの?…知らなかった。私、魔法の世界のこともっと勉強しなきゃいけないわ。…無知は罪よね。純血主義ってプリムもそうなの?」

プリム「…純血主義なんて古い考えだ。生まれについてこだわっていたら、優秀な魔法使いは生まれないと思う。確かに純血であれば魔法の力は強いけど、魔法の世界の発展には広い視野を持つべきだと私は思うよ。」

ハーマイオニー「そうね、プリムって物事を深く考えているのね?自分の意見をはっきり言えるのは素晴らしいことだわ。」

プリム「ありがとう、ハーマイオニー。では、またホグワーツでね。」

仕立てた制服の代金を支払い店を出た。

 

 

 

 

プリム「父上、母上…お待たせしました。」

レオナルド「プリム!ちゃんと買えたかい?」

プリム「はい、父上。」

シルビア「プリム、入学祝いにね、フクロウか猫かヒキガエルを買ってあげましょうってレオと話してたの。…気に入った子いるかしら?」

プリム「え、いいんですか?」

シルビア「もちろんよ!ね?レオ」

レオナルド「ああ、でもヒキガエルはあまりお勧めしないな。今は流行りじゃない。」

プリム「…んー、アルファがいるから、フクロウはもういいかな。」

シルビア「じゃあ、やっぱり猫ね?もふもふでかわいいし」

シルビアさんはもふもふした可愛い動物が好きだ。ニフラーはシルビアさんのお気に入りだ。

プリム「猫…」

いろんな種類がいる。綺麗系、短足の可愛い猫、鼻が潰れたブサイクな猫。ニールズのハーフもいる。

明らかに肥満体な猫が目に入る。ニールズの血が入った猫みたいだ。

プリム「あなた、運動不足よ?そこの猫さん」

猫「!魔女が俺に話しかけてきた…何者だお前」

プリム「ただの魔女よ。動物と話せるの。」

猫「動物と話せるのはただの魔女じゃないね。」

プリム「あら?頭がいいわね。やっぱりあなたにするわ。名前はあるの?」

猫「ないさ、お前の名前は?」

プリム「プリムよ。じゃあ…シャルマン。あなたはシャルマンよ?いい?」

シャルマン「洒落た名前だな。気に入った。」

プリム「父上、母上…この子にします。」

レオナルド「…いいのかい?少々大きいみたいだが」

シルビア「あら?かわいいじゃない、ムチムチしてるわ。」

プリム「名前も決めました、シャルマンです。」

レオナルド「…プリムがいいなら、この子にしようか。」

鳥は散々触れ合ってきたが、猫は初めて飼う。胸が高なった。

シルビア/レオナルド「入学おめでとうプリム」

プリム「ありがとうございます、父上、母上。」

シャルマンを抱き上げた。

プリム「お、重い。…ごめん、シャルマン自分で歩いて。」

シャルマン「…貧弱なやつめ。もっと筋肉つけたらどうだ?」

プリム「シャルマンに言われたくないね。」

 

 

帰宅してから、手紙を書いた。

 

“親愛なる五領恭史郎殿、賀茂明星殿

 

学校生活はいかがお過ごしですか。

こちらはイギリスのホグワーツに入学が決まりました。

日本とはまた違う環境になりますので、不安なことが沢山あります。優秀な魔法使いになれるかな…

2人のような友達ができるように頑張ります。

 

プリム”

 

式札に血を垂らす。

プリム「我に従い、我に仕えよ」 

カァ!!

黒いカラスを出して、手紙を渡す。

プリム「日本の五領恭史郎か、賀茂明星に手紙を届けて。返事があれば私のもとへ届けて。」

カァ!!と一声鳴くと飛びたった。

 

 

次の日の夜遅く、ふと思い出しベッドから起き上がった。

ビーテとシャルマンが驚いてしまった。

…ごめんって

 

プリム「自殺できないことまだ試してないや。忘れてた。」

シャルマンに話しかけるように言った。

独り言だったけど。

シャルマン「…自殺?」

プリム「わたし自殺では死なないの。」

シャルマン「そんな馬鹿な話あるか」

プリム「まぁ、大天使様が嘘つきでなければね。」

シャルマンは興味が無さそうに廊下に出てしまった。

 

…見つかっても面倒くさくない自殺方法を考えていると、窓には式神が来ていた。返事がきたんだろう。

手紙を受け取ると式札に戻った。

 

“親愛なるプリム殿

 

ホグワーツ入学おめでとうプリム。

プリムは会話の能力が低いから、読書よりも、人と話すことが大事だよ。君は十分優秀だから、それができれば友達は沢山できるよ。こちらは、プリムがいないので寂しいですが僕は箒を頑張ってるし、賀茂は僕に勉強を教えてくれてる。あいつプリムより口うるさいんだ。プリムもホグワーツで頑張ってね。

 

恭史郎”

 

…会話力…恭史郎そんなことを思っていたのか。でも確かにそうだ。…言葉数を増やすと感情が出てしまいそうで話せない。その点、2人は話しかけてくれるから嬉しかった。…甘えてはいけないな、うん

 

感情…?

あれ……ホグワーツ行くのに、閉心術習得してないじゃないか!!

そんなのダンブルドアに、わたし転生してきたから、これから起こることわかるし、分霊箱の場所もわかるよ!って言ってしまうようなものだ!!

プリム「わたし、恭史郎居ないとだめだめなんじゃ…」

 

絶対記憶力って覚えてるだけで、記憶掘り起こすのはちょっと別枠な作業だからな。なんか先が不安しかない。

 

9月までに全てやるべきことはできるだろうか…今日も寝てられんな…

 



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ホグワーツ特急

 

 

____________ 1991年9月1日

 

ホグワーツへ行く日が来た。

 

閉心術はたぶん習得できた…でも開心術を経験していないから、本当に通用するか定かではない。そこが不安だけど、うまくいけばダンブルドアには接触せずに1年を越せるかもしれない。…うまくいけばだが。

 

…自殺方法として、さまざまな方法を考えたが、もし本当に自殺できないなら複数回使える方法で、見つかっても寝ているかと思うような綺麗な死に方ができる方法を考えた。…毒薬だ。でも単なる毒薬ではない、超がつくほどの猛毒で一瞬で天に召される。わたし特製で作ったものだ、そうこれは、名付けて…自殺専用超猛毒薬!!

でもこれは、他人に渡れば危険であることに変わりないので、どう隠すかは模索中。今は手持ちトランクの中だ。少女が猛毒を持ち歩いてるなんて誰も思わないだろう。

 

プリム「どれも試してないから不安しかないな…」

トランクを握りしめながら呟いた。

そうだ。どちらも効くのかどうか試してない。

プリム「…まぁ、これからホグワーツへ行くから、必要の部屋で試せば問題ないな。」

シルビア「ホグワーツがどうかしたの?」

プリム「あ…ホグワーツ楽しみだなぁと。」

シルビア「ホグワーツはニュートスキャマンダーの母校よ、きっと素晴らしい学校だわ。」

レオナルド「それにダンブルドアが校長だからね、楽しい学校生活になるだろう。」

ええ…まぁ、それ悩みの種でもあるんだけどね。

 

レオナルド「さ、乗り遅れてしまうよ。柱を潜らないとね。トランクはしっかり持ってるかい?シャルマンは?」

プリム「はい、大丈夫ですよ、父上」

手持ちのトランク以外にカートには荷物とシルビアさんとシャルマンが一緒にいる。

 

シルビア「シャルマンはムチムチで手放したくないわね。…でもプリムのことよろしくね?」

抱かれたシャルマンは一鳴きし、どっちつかずな返事をしていた。

 

レオナルドさんと一緒に柱を潜ると目の前には、憧れていた光景が広がっていた。

プリム「わぁ…」

思わず感動した。前世の記憶が鮮明になった気がした。

後ろから、シルビアさんと一緒にシャルマンも来た。

 

プリム「あ、荷物先に預けてきますね。」

レオナルド「ああ、待っているから、迷うんじゃないよ?」

プリム「ふふ、大丈夫ですよ」

列車の後方に行き荷物を預けた。

手持ちのトランクはやめておいた。毒薬入りだし。制服もある。

 

ドラコ「プリム!」

プリム「やぁ、ドラコ。私達今日からホグワーツ生ね、ドキドキするなぁ。」

ドラコ「君と同じ学び舎で学べるのが、僕は嬉しいよ。」

プリム「本当?わたしもそう思うよ。」

ドラコ「プリムは席はもう取ったか?」

プリム「ああ…まだ」

ドラコ「じゃあ、僕のところに来るといい。」

うーん…それはちょっとまずいかもしれん。話には席について出てこないけど、ドラコと一緒にいるとわたしもチラつく可能性が高い。

プリム「あー…そうだね、空いてなかったらそうするよ。」

これがたぶんベストな返事じゃないか?

ドラコはそうかといった表情だ。よし。

プリム「そうだ、わたしドラコのご両親に挨拶しなきゃ。」

ドラコ「父上と母上ならこっちだ。」

ドラコがわたしの手を引いて導いてくれる。

まだ幼い手だ。心なしか少し汗ばんでるような気もした。

 

プリム「…父上、母上」

ドラコ「君のご両親も一緒みたいだな」

マルフォイ家とクロウリー家が集って会話しているとそこは社交界のような空気が漂っていた。

プリム「ルシウス殿、ナルシッサ殿、お久しぶりでございます。今日から、ご子息様と同じ学び舎で学べること、心より嬉しく思います。」

ナルシッサ「あら、もうそんなに固くならなくていいのよ?一族の集まりでもないし、何より、ドラコのご友人でしょ?」

え…いいの?という視線をドラコに向けた。

ドラコ「母上が言うなら大丈夫だぞ、プリム」

プリム「ドラコのお母さん好きだな。」

ドラコ「僕の母上は素晴らしいからな。」

あらあらと満面の笑みを浮かべるナルシッサさん。綺麗な人だ。

シルビア「ドラコも、プリムと仲良くしてくださるなら、自然体でいいのよ?ね?レオ?」

レオナルド「ああ、もちろんだ」

ドラコ「プリムは…僕と友達でいいのか?…いや、僕と友人になったんだ誇りに思えよ。」

プリム「…ふはっ、うん…わたしはドラコと友達になれて嬉しいし、誇りに思ってるよ。」

思わず笑みが溢れた。ドラコらしい言葉だ。

おい!笑うなと脇腹を突かれる。

ルシウス「どうか、ドラコのそばにいて頂けると嬉しいよ。プリム殿。」

プリム「はい、もちろんです。」

ドラコ「プリム、そろそろ汽車に乗ろう。席も取れなくなるぞ。」

プリム「ああ、うん、そうだった。…父上、母上、行ってきます。」

ドラコとわたしは両親に別れのハグをした。

 

______________

 

 

ドラコ「ほら、プリムが早くしないから席がないぞ。」

プリム「ドラコは取ってあるじゃないか、座ってなよ。シャルマンおいで!」

にゃおと気怠そうに返事をしながらも着いてくるシャルマン。

ドラコ「いや、君の席を見つけるまで座らない。僕のとこはクラッブとゴイルがいるから大丈夫だ。」

ああ…それはいいけど。わたしがよくないんだ!!

 

 

プリム「あ!ここは、この子だけみたい。ここにするわ。ほら!見つかったよドラコ」

ドラコ「ふん、待て。魔法使いの生まれじゃないと僕は許さないぞ。」

プリム「そんなの、こだわってたら席なんてないよ。」

ドラコ「じゃあ、僕のところに来ればいいじゃないか。」

プリム「空いてるここの席に座ってもいいじゃない。」

ドラコ「なんで僕のところの席じゃ駄目なんだ!」

プリム「駄目って言ってないわ!空いてる席があったんだから、ドラコのところじゃなくてもいいでしょって言ってるの!」

あ…感情的になってしまった。と気づいた時にはドラコは勝手にしろ!と自分のコンパートメントに行ってしまった。

 

???「あなたパーキンソン?それともグリーングラス?」

中にいた子が話しかけてきた。ブロンドの綺麗な子だ。…オリバンダーの店で見かけたな?

プリム「あー…どっちでもないわ。わたしはプリム。プリム·クロウリー。騒がしくしてごめんなさい。さっきの子はドラコよ。わたしの友人なの。」

???「クロウリー?聞いたことないな…もしかして…」

わたしの肩を掴み座らせ、扉を閉めた。

シャルマンも続いて中に入る。

???「もしかしたらだけど、あなたって前世の記憶とかある?」

…な、なんで知ってる。

聞かれたらまずい話だ。

 

“Muffliato”(耳塞ぎ)

 

杖を振って魔法をかけた。

???「ああ…やっぱり、あなた第二の転生者ね?」

プリム「…なんで転生者ってわかるの」

杖を相手に向けた。

???「待って待って!あれ?アズラエルから聞いてない?この世界は私が最初に転生先として来たんだけど、もう1人いるの、そうあなたもこの世界に転生されたんでしょ?」

プリム「…もっと細かく話して。」

アリエッタ「ああ…まず、私はアリエッタ·ロリス。マグル生まれで、あなたと同じ転生者よ。転生前は加藤めい、22歳で自殺したの。パワハラが…酷くてね…。ギフトは2つ貰ったわ、容姿端麗と体力強化。」

私は杖をおろした。同じ転生者であることは間違いない。

プリム「で、なんでわたしが、転生者だと?」

アリエッタ「んー…まず、ドラコは今の時期知り合いは多くないの。だからクラッブとゴイルと常に一緒にいる。女の子と絡むのは3年あたりね。だからパーキンソンかグリーングラスだと思ったけど、違かった。まぁ…映画ではだけど。」

あー…まぁ、そこはドラコがしつこく着いて来たのが悪い。

アリエッタ「あと、魔法ね!それが決定打よ。マフリアートはスネイプ先生が考えた呪文だから、半純血のプリンス蔵書を読まないと知らない魔法なの。まぁ新入生が使えるのも変だけど。」

な、なに!?…そうだったのか…映画と小説かじった記憶しかないから、わからなかった。気をつけておこう。

プリム「…あなたのことはわかった。私はプリム·クロウリー。改めてよろしく。」

やっと落ち着いたなというように、シャルマンが膝の上に乗る。

アリエッタ「…それだけ!?私のこといっぱい話したじゃない!プリムのことも教えてくれなきゃ納得できないわ!」

プリム「ああ…えっと、私はアメリカの純血一族の家系で育ったわ。生まれはわからない、産まれてすぐ捨てられたの。孤児院で育ったわ。転生前の記憶は…名前はサイトウケイ…年齢は11歳、あとこの世界の記憶ね。それだけよ。あまり覚えてないの。ギフトは5つよ。」

アリエッタ「待って待って、情報が多いな。えっと…生まれはわからないってことは、マグル生まれかもってこと?」

プリム「まぁ、可能性のある話ね。」

アリエッタ「え?でも純血一族の家系なの?」

プリム「引き取られたの。養子として。でも実子ってことになってるから、秘密よ?」

アリエッタ「随分と大きな秘密ね。…前は男?女?」

プリム「あー…わからないわ。今は女だから、女じゃないかしら。」

アリエッタ「男かもしれないってことね…」

プリム「可能性はあるわ。」

アリエッタ「え、じゃあ記憶そんなにないの?ハリーポッターの記憶は?」

プリム「あるわよ?まぁ…映画と小説を少しだけど。」

アリエッタ「あー…詰んだな。2人いるから大丈夫だと思ったのに。私も映画の知識しかない。」

プリム「じゃあ、お互いを合わせても小説の話になれば意味がないってことね。」

アリエッタ「そうね…詰んだわ。これ。」

待てよ?とアリエッタが考え始める。

アリエッタ「…ギフト5つって言った?」

プリム「ええ、そう言ったわ。」

アリエッタ「ほんと!?どんなギフト?」

プリム「ええと…絶対記憶力、容姿端麗、超膨大魔力、全種言語力、大天使アズラエルの守護…の5つね。」

アリエッタ「……チートじゃん。そんなん。わたしなんかクィディッチしたいから体力上げたのに!でもブスは嫌だし容姿は絶対だっていっぱい悩んだのに!」

プリム「お、落ちついてよ。あー…11歳で死んだからアズラエルがつけてくれたのよ。」

アリエッタ「そ、それは…なんか、ごめん。」

プリム「いえ、大丈夫よ。死んだ時のことはもう覚えてないし。」

アリエッタ「ところで、アズラエルの守護って何?」

プリム「ああ…それは、アズラエルが勝手につけたんだけど…自殺で迎えた死は許可されないの。まぁ、試してないから本当かはわからないけどね。」

アリエッタ「それってありえるの?てか、それ不死身ってこと?」

プリム「不死身じゃないわ。自殺ができないってこと。…なんなら試してみる?死んだら寝てるって言えばいいわ。」

アリエッタ「え、待って。どんな風に自殺するの?ナイフとかは辞めてね。」

プリム「それは…これを使ってね。これは私特製の毒薬。名付けて、自殺専用超猛毒薬。」

膝の上のシャルマンを撫でながら、トランクの中の薬瓶を1瓶出す。

 

プリム「これを飲めば瞬時に天に召されます。…たぶん。」

アリエッタ「毒薬持ち歩いてるって…あなた本当に11歳?」

プリム「それはよく聞かれる。…まぁ、アズラエルに聞きたいこともあるし、飲むから、誰か来たら寝てるって言ってね。」

ええ…と嫌そうな表情のアリエッタをよそに、一瓶飲み干した。

 

 

_______________

 

アズラエル「やぁ。ケイ。いや今はプリムだね。」

目が覚めるとアズラエルがいた。天界ってこんな感じだったのか。忘れていたな。

アズラエル「ところでどうしたのかな?どうして自殺を?」

どうせ聞かれることはわかってる上で聞いてるな。

 

プリム「世界線について尋ねたくて、アズラエル。」

アズラエル「どんなことでも力になるよ。君の為なら。」

にこにことアズラエルが微笑みを浮かべる。

 

プリム「この世界は私達の知ってるハリーポッターか?」

そう、私達2人がいる時点で違うのではないかと気づいた。

 

アズラエル「んー、その質問は…そうでもあるし、違うともいえる。」

プリム「…私達に、2人に与えられた世界だ。そうだろ。」

アズラエル「そうだね、それが一番妥当な答えだ。」

…やっぱりそうか。薄々気づいていた。どうもうまく事が進むしな。決定的なのはマホウトコロを卒業できなくなった時だ。元々ホグワーツに行くようなルートだったのだろう。

 

 

アズラエル「ハリーポッターにはいくつも世界線がある。転生者の要求が多くてね、魔法使いの世界は魅力的なんだろう。君達のいる世界は、知ってる世界なようで、違う世界だよ。私が君達に与えた世界だからね。」

プリム「与えた世界…じゃあ未来はどうなる?」

アズラエル「未来?まぁ、君達の行動次第。君達が望む世界になるんじゃないかな。」

プリム「物語が変わってしまうんじゃ?」

アズラエル「いや、そもそも物語じゃない。言っただろう?私が与えた世界だ。君達に与えた生きる為の世界。変わるんじゃない。物語なんて始まってないからね。君達の人生だ。」

プリム「じゃあ好きに生きて構わないと?」

アズラエル「ああ。もちろん。その為に私が作ったんだから。後悔のないように生きなさい。」

 

 

__________

 

アリエッタ「プリム!プリム!」

プリム「ああ…起きたよ、どうした?」

シャルマンが心配そうに鳴きながら腹の上に乗っている。重いぞシャルマン…

アリエッタ「…本当に死んだかと」

プリム「死んだよ、アズラエルに会った。聞きたいことも聞いた。」

アリエッタ「聞きたいことって?」

プリム「…それは、ホグワーツについてから話そう。必要の部屋はわかる?」

アリエッタ「うん、わかるよ。…そこで話すのね?」

プリム「ああ…その通り。組み分けが終わって、寮の説明が終わったら落ち合おう。」

アリエッタ「わかったわ。」

プリム「…ところで、誰か来た?」

アリエッタ「ああ…ドラコが来たの。でも、寝てるって言った。それでそのあと私の生まれについて聞かれて、マグル生まれって言ったら、君はプリムに相応しくないって言われたよ。」

プリム「…ドラコはそういうやつだから、許してやってよ。」

アリエッタ「わかってるよ、てか、私以上にプリムと友達になれる人なんていないよ!同じ転生者なんだから!」

プリム「まぁ…それは、そうだね。」 

 

“Finite”(終われ)

重要な話は終わったので、マフリアートを解いた。

アリエッタ「プリムは魔法どのくらい使えるの?」

プリム「…無言呪文はまだできないよ。」

アリエッタ「それはそうだろ。…それアニメーガスの本だね。まさか…もうできるの?」

アリエッタは私の横にある本を指差した。

プリム「いや、まだできない。だけど習得するつもりだよ。」

アリエッタ「わたし、プリムに勉強教えて貰おう…」

プリム「…他力本願というのを知ってるか?」

 

トランクの中の制服に着替えて到着を待った。

 

しばらくすると、ドアをノックされた。

ハーマイオニー「ねぇ、ヒキガエルを見なかった?ネビルの蛙が逃げたの。」

プリム「やぁ、ハーマイオニー。蛙は見てないよ。…シャルマンがいるから、ここには来ないのだろう。」

アリエッタ「は…ハーマイオニーだ。」

アリエッタは口をだらしなく開けていた。

 

ハーマイオニー「あら!プリムね!久しぶりに会えて嬉しいわ!私、あれからもっと勉強したの。ホグワーツの歴史も実に興味深くてね、知ってる?広間の天井は魔法がかかっていて、空のように見えるのよ。それにホグワーツでは四つの寮に組み分けられるらしいわ。方法はよくわからないけど、もし魔法の試験でも、私暗記を沢山したから自信があるの。…ところで、あなたは?」

…頭の回転が早いハーマイオニーだからできる会話だな。久しぶりのマシンガントークだ。

目の前で唖然としたアリエッタの膝を叩く。

アリエッタ「あ…えっと、わたしアリエッタ。アリエッタ·ロリス。」

ハーマイオニー「よろしくねアリエッタ?…あれ?さっきわたしの名前知ってた?」

…さっき呼んでたな。

アリエッタ「あー…それは、えっと…」

アリエッタが助けてという視線を寄越す。

あー、つまりは無意識に呼んだんだな。…全く。

プリム「わたしが教えたのよ。アリエッタはマグル生まれだから、私にもマグル生まれの知り合いがいるって。ハーマイオニーのことをね。」

ハーマイオニー「あら、そうだったのね。アリエッタもマグル生まれなのね?仲良くできたら嬉しいわ!」

アリエッタ「あ、うん!もちろん!」

握手をするハーマイオニーとアリエッタ。

友情が生まれる瞬間とは実に感動的だ。

 

ハーマイオニー「あ!わたしネビルの蛙を探さないと…じゃあまたホグワーツでね?」

プリム「ええ、ホグワーツで」

アリエッタ「またねハーマイオニー!」

 

 

わぁ…とニヤニヤしているアリエッタ。

アリエッタ「わたしハーマイオニーと話しちゃった…てか、プリムと知り合いだったの?」

プリム「…制服を作るときに少し話しただけだよ。」

アリエッタ「ハリーとも会った?」

プリム「いえ、まさか。下手に会って話を変えたくなかったもの。」

それはそうね。とアリエッタが椅子に深く腰をかけた。

 

その後は到着を待ちながらお菓子を食べていた。アリエッタは百味ビーンズを一気に食べるという馬鹿な事をしたので、しばらく気持ち悪そうだった。…映画だと学校までボートだったな。アリエッタが吐かないことを祈っておこう。



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組み分け帽子

組み分け帽子の名前の順番は、映画の順番になっています。



 

 

列車が止まり汽笛がなった。

ホグワーツに着いたのだろう。

 

プリム「着いたわね。ついに。…シャルマン、着いてきて。」

シャルマンは背伸びをし、後について降りる。

アリエッタ「…ちょっと吐きそう。」

プリム「百味ビーンズの一気食いをしたら、そうなるわよ。」

アリエッタは青白い顔をしていた。

 

ハグリッド「よっく来た、イッチ年生!こっちだぞ!ほらほらぐずぐずせんと、急いだ急いだ。ほら。」

ハグリッドが案内をしている。…ハグリッドってやっぱり大きい。…おっと、そばにいる眼鏡の子はハリーだな。ロンと一緒だ。…無事に進んでいるみたいだな。

 

ハグリッド「おっと!嬢ちゃん、動物はこっちで預かるぞ。ちゃんと部屋に届けるから安心せえ。」

プリム「ああ…頼んだよ。」

よく見ると、スキャバーズやヘドウィグも預けられてる。

 

アリエッタ「…ところで、プリムは寮どこに入りたいの?」

プリム「スリザリンね。…ドラコのそばにいる。」

アリエッタ「そうなんだ。思ったんだけど、プリムは、ドラコが推し?」

プリム「そうね。…推しって考えならスネイプ先生もかな。」

アリエッタ「スネイプ先生ねぇ。まぁ、永遠の愛は素敵だもんね。」

プリム「アリエッタは?」

アリエッタ「推しはセドリックね!だからハッフルパフを強請るつもり。」

プリム「…セドリック」

アリエッタ「ちょっと悲観的にならないでよ。…わかってるわ。起こることなんて。」

 

ボートだ。アリエッタの方を見ると、まだ気持ち悪そうだ。

プリム「吐かないでね、アリエッタ」

アリエッタ「あー、美少女として最善は尽くすよ。」

プリム「まぁ…アリエッタは確かに綺麗よね…髪もブロンドで羨ましいわ。」

アリエッタ「え?…プリムも美少女よ?あなた、鏡見たことある?」

プリム「…でも幽霊みたいじゃない?容姿端麗は望んだけど、成長しないと顔立ちなんてよくわからないし。」

引き篭りがちな私の見た目は、肌が白く髪は黒く長い。綺麗なブロンドと褐色で元気そうなアリエッタとは正反対だ。…目の色だってアリエッタは透き通るようなブルーで、私は琥珀色の特に珍しい色でもない。

アリエッタ「プリムわかってないわね、私とあなたの見た目は違うけど、確実に綺麗な顔立ちよ。絶対ね。」

 

ボートには、アリエッタと私。セオドールノットと、ブレーズザビニ。この4人が一緒に乗った。

 

ブレーズ「やぁ、プリム。」

プリム「…やぁ、ブレーズ。」

セオドール「…あの、僕セオドール·ノット。プリムと会ったことあるんだけど、覚えてるかな?」

プリム「もちろん。ホグワーツでもよろしくセオドール。」

ブレーズ「ところで、そちらのレディーは?」

プリム「彼女はアリエッタ。列車で同じコンパートメントになったの。」

アリエッタ「アリエッタ·ロリスです。アリエッタって呼んでね。」

ブレーズ「ロリス…聞いたことないな。」

セオドール「生まれはどこなの?アリエッタ」

アリエッタ「…わたし、マグル生まれよ。」

ブレーズとセオドールは固まった。私を見つめられたが、本気か?ってことだろう。

プリム「マグルの話を聞いたけど、とても興味深い話だったわ。」

ブレーズ「プリム…君、血を裏切るのか?」

プリム「いえ?研究者としての考えを言ったのよ。」

セオドール「プリムの両親は魔法薬学と魔法生物の学者さんだっけ?…探究心があるのは仕方ないんじゃない?」

ブレーズ「ノット…そうは言っても、クロウリー家を汚れた血と関わりを持たせるのは…」

アリエッタ「あの…わたしそこまでプリムと仲良くないから、大丈夫よ。」

…苦笑いを浮かべるアリエッタ。気を遣わせてしまったな。…アリエッタを庇えばクロウリー家が疑われる。

プリム「…この話はよしましょう。もうホグワーツに着いたわ。」

これが今言える言葉だった。

 

_____________

 

ホグワーツ城へ入ると、マクゴナガル先生が待ち侘びていた。

マクゴナガル「ようこそ、ホグワーツへ。

さて、今からこの扉をくぐり、上級生と合流しますがその前にまず、皆さんがどの寮に入るか組み分けをします。

グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、そしてスリザリン。学校にいる間は寮があなた方の家です。良い行いをすれば寮の得点となり、規則を破ったりすれば、減点されます。学年末には最高得点の寮に優勝カップが渡されます。」

 

…記憶と変わりないな。規則とかはマホウトコロとも似てる。まぁ、学校なんてそんなものか。

 

ふと階段に目を向けるとヒキガエルがいる。あー、これは、あれね。

ネビル「トレバー!!…あ、僕…ごめんなさい」

やっぱり…ネビルのカエルか。

 

マクゴナガル「…ええ、間もなく組み分けの儀式を始めます。」

マクゴナガル先生は広間の方に行った。

ドラコ「本当なんだ?汽車で聞いた話。ハリーポッターがホグワーツに来たって。」

ネビル「え…ハリーポッター?」

ドラコが声高々に話すと、周りが騒つく。

…あー、私はここでは目立たないようにしよう。

 

アリエッタ「ねぇ…あのシーンね?ドラコのこと助けないの?」

耳元でアリエッタに話しかけられる。

プリム「何もしない。あまり話が変わるのは都合が悪い。」

そうだ。知らない話になれば身動きが取れない。今は何もしないことが最善だ。

 

ドラコ「こいつはクラッブ、ゴイルだ。僕はマルフォイ、ドラコ·マルフォイだ。」

ロン「っふは。」

ドラコ「僕の名がおかしいか?君の名前は聞くまでも無いな。赤毛に、このお下がりのローブ。ウィーズリーの家の子だろう?魔法族にも家柄の良いのと、そうでないのがいるんだ。…付き合う友達は選んだ方がいいよ。…僕が教えてあげよう。」

ハリー「ありがとう…でも、いいよ。友達なら自分で選べる。」

 

…これで、ドラコとハリーの関係はできたな。良くも悪くもうまく進んでいる。

 

ドラコの後ろには既にマクゴナガル先生が立っていて、肩を叩いてドラコが注意されていた。

マクゴナガル「準備は出来ました。来なさい。」

広間に入ると憧れの場所が目の前にあった。

天井も空のようになっている。

ハーマイオニー「空じゃなくて天井よ。魔法で夜空みたいに見えるだけ。ホグワーツの歴史という本に書いてあったわ。」

ハーマイオニーが自信満々に解説をしている声が近くから聞こえた。

 

 

マクゴナガル「はい、ここでお待ちなさい。

では、儀式を始める前にダンブルドア校長からお言葉があります。」

 

…青い目の老人。ビー玉のような綺麗な瞳だ。引き寄せられそうだったので意識的に床を見た。

ダンブルドア「まず始めに、注意事項を言っておこうかの。1年生の諸君、暗黒の森は立ち入り禁止じゃ。生徒は決して入ってはならぬ。それから、管理人のミスター・フィルチからも注意事項がある。右側の3階の廊下には近寄らぬこと。そこには恐ろしい苦しみと…死が待っている。…以上だ。」

ホグワーツってダンブルドアがいないと、やっぱり1番危険な場所だよな。…いや、危険だから安全なのか。

 

マクゴナガル「名前を呼ばれた生徒は前に出てきなさい。この組み分け帽子を頭にのせます。帽子が寮を決めてくれます。…ハーマイオニー·グレンジャー。」

 

ハーマイオニー「どうしよう…大丈夫、リラックス。」

ロン「変な子だよな、あいつって。」

ロンの話し声が聞こえた。…ハーマイオニーと無事コンパートメントで話したのだろう。順調に進んでいる。この順番なら映画の話なのだろうか。…いや、いつ変わるかわからないな、行動は慎重に…油断はできない。

 

 

組分帽子「ああ、そうだな…ん~、よろしい、決まった。グリフィンドール!」

パーシー「よく頑張ったな。やったな。」

ハーマイオニーがグリフィンドール生に歓迎されている。…目があって、手を振られてしまった。私は、ぎこちなく振り返した。

アリエッタ「プリムは、ハーマイオニーと仲良くするの?」

プリム「もちろんよ。」

アリエッタ「じゃあ、ドラコが黙ってないね。」

プリム「…バレないように仲良くするわ。」

アリエッタ「えぇ…うまくいきっこないよ。」

 

マクゴナガル「ドラコ·マルフォイ。」

組分帽子「スリザリン!」

ドラコはやっぱりスリザリンだった。

アリエッタ「やっぱりスリザリンね、ドラコ。」

プリム「ドラコはスリザリンだよ。絶対ね。」

ロン「悪の道に落ちた魔法使いはみんなスリザリンだった。」

…ロンの考えは偏っている。歴史上最も有名な魔法使いのマーリンはスリザリンだ。優秀な魔法使いの寮とも言えるのに。…言えば目をつけられるので辞めた。

 

 

マクゴナガル「スーザン·ボーンズ。」

ハリー「痛っ。」

ロン「ハリー、どうかした?」

ハリー「別に…。何でもないよ。」

傷が痛んだのだろう。ハリーは額の傷を摩っている。

 

組分帽子「んー…よろしい、ハッフルパフ!」

マクゴナガル「ロナルド・ウィーズリー。」

ロンが帽子を被ると、帽子が騒がしくなる。

組分帽子「っはあ!またウィーズリー家の子だな。君はもう、決まっておる。グリフィンドール!」

ロン「…ふぅ。」

 

 

マクゴナガル「ハリー・ポッター」

組分帽子「んん、難しい、こいつは難しい。勇気に溢れておる。頭も悪くない。才能もある。そして…自分の力を発揮したいと願っておる。…さてどこに入れたものか。」

ハリー「…スリザリンはダメ。…スリザリンはダメ。」

組分帽子「おぉ、スリザリンは嫌なのか。いいのかね?君は偉大になれる。その素質は十分に備わっておる。スリザリンに入れば、間違いなく偉大になる者への道が開けるのだが、嫌かね?」

ハリー「お願い…どうか…スリザリンじゃないところにして。スリザリンだけは!」

組分帽子「それでも嫌と言うなら…それならば、グリフィンドール!」

ハリーもやっぱりグリフィンドールだった。

…変わらないことがとても嬉しく感じた。

 

マクゴナガル「アリエッタ·ロリス」

アリエッタは本当にハッフルパフだろうか…少しこちらもドキドキした。

組分帽子「んー…これは…珍妙な。…なるほど」

アリエッタ「ハッフルパフにして。ハッフルパフじゃないと燃やすわよ?」

…なんて脅しをしてるんだ!アリエッタ!

組分帽子「君はスリザリンとグリフィンドールの素質がある。どちらかの寮に入れば君の力を発揮できるのだが。…いいのかね?」

アリエッタ「ハッフルパフでも力を発揮するわよ。」

組分帽子「よかろう…ならば、その可能性を信じて…ハッフルパフ!」

 

アリエッタはハッフルパフになった。脅しの台詞が聞こえた気がしたが空耳にしておこう。会話の内容はよく聞こえなかった。

 

マクゴナガル「プリム·クロウリー」

…あれ、閉心術使うべきか?いや、アリエッタは使えない筈だ。じゃあ全部見られたのか。…ダンブルドアに転生がバレるのも時間の問題か。…ん?まてよ。閉心術はまだ試してない。…使えるかどうか確認させて貰おう。

組分帽子「んー?…閉心術を使っているな?…心を見られては困るのか?」

プリム「まぁ…少しね。でももういいわ。」

閉心術は使えるみたいだ。よし。

組分帽子「おお…これは、また珍妙な。…難しいな、さっきの娘と似ているが…」

だろうな。同じ転生者だ。

プリム「スリザリンよ。絶対に。」

組分帽子「んー…なるほど、その選択をするのか、スリザリンにもまことの友がいる。…偉大なる者への可能性を祈って…スリザリン!」

 

私の後にも数名呼ばれて新入生全員が無事組み分けられた。

 

ダンブルドア「では、宴を始めよう。」

ダンブルドアが手を叩くと豪華なご馳走が目の前に出てきた。これも魔法を熟知するとできるのだろうか。…やってみたい。

 

パンジー「ねぇ、あなたプリムでしょ?久しぶりね。同じ寮で嬉しいわ!」

向かいの席にいたパンジー·パーキンソンに話しかけられた。

プリム「久しぶりねパンジー。私も同じ寮で嬉しいわ。仲良くしてね。」

パンジーとはドラコのパーティーで面識があったが、すぐに私が気疲れして休んでいたので、あまり仲は深くない。正直、過去の記憶からするとあまりいい印象ではない。

ダフネ「私は、ダフネ·グリーングラスです。パーティーでは、あまりお話し出来なかったので覚えていませんよね?」

プリム「覚えていますよ。ドラコが覚えろと煩かったので、ね?ドラコ」

隣でローストビーフを食べているドラコを見つめた。

ドラコ「っ、ああ。覚えていてよかっただろう?」

プリム「そうね。…仲良くしてくださいね、ダフネ。」

 

ドラコはグリフィンドールのシェーマスフィネガンにも負けないくらいに、自分の家柄はもちろん、私のことも声高々に自慢していた。

ドラコ「僕の家、マルフォイ家はイギリスでは1番と言っていいほど由緒ある一族だ。クロウリー家はアメリカの純血一族でね、僕の父上が言うにはホグワーツの創始者サラザールスリザリンの血筋かもしれないらしい。それほどの名家のご息女様がプリムだよ。僕は5歳からの知り合いでね。…」

とまぁ…私からは一言も話してないが、ドラコによって身元がバレた。ドラコは誇らしげだ。

 

__________

 

ジェマ「おめでとう!私は監督生のジェマ・ファーレイ、スリザリン寮に心から歓迎するわ。スリザリンの紋章は生物の中でも最も賢い蛇、寮の色はエメラルドグリーンと銀、談話室は地下牢の隠された入り口の奥よ。

さて、スリザリンについて知っておくべきことがいくつかと、忘れるべきことがいくつかあります。

まず、いくつかの誤解を解いておきましょう。もしかするとスリザリン寮に関する噂を聞いたことがあるかもしれないわね。たとえば、全員闇の魔術にのめり込んでいるとか、ひいおじいさんが有名な魔法使いでないと口をきいてもらえないとか、その手のやつよ。確かに、スリザリンが闇の魔法使いを出したことは否定しないけど、それは他の 3 つの寮だって同じこと。他の寮はそれを認めないだけなの。それに、伝統的に代々魔法使いの家系の生徒を多く取ってきたのも本当だけど、最近では片親がマグルという生徒も大勢いるのよ。」

 

監督生のジェマはとても賢いのだろう。考え方に偏りがなく新入生に正しく判断できるよう教えてくれた。とても頼もしい人だ。

 

ジェマ「他の 3 つの寮があまり触れたがらない、あまり知られていない事実を教えてあげる。マーリンはスリザリン生だったの。そう、かのマーリン、史上最も有名な魔法使いが! マーリンは知識のすべてをこの寮で学んだのよ! マーリンの足跡に続きたいと思わない?」

マーリンのことは私も同じ寮になれたことが誇らしく思えた。

 

 

ジェマ「スリザリンが何であるか、つまり学校の先端をいく素晴らしい寮だということについて話しましょう。私たちは常に勝利を目指している。なぜなら、スリザリンの名誉と伝統を重んじるから。

それに、スリザリンは他の生徒から尊敬されているわ。確かに、闇の魔法にまつわる評判のせいで尊敬の中には恐怖が混じっていることは否めない。でも知ってる? ワルっぽい評判というのもときとして楽しいものよ。ありとあらゆる呪いの呪文を知っていると思わせるような態度を取れば、誰がスリザリン生の筆箱を盗もうなんて思うかしら?

でも私たちは悪人ではないわ。私たちは紋章と同じ、蛇なの。洗練されていて、強くて、そして誤解されやすい。

たとえば、スリザリンは仲間の面倒を見るけど、これはレイブンクローだったら考えられないことね。連中は信じられないようなガリ勉集団というだけでなく、自分の成績を良くするために互いを蹴落とすことで知られているわ。逆に、スリザリンでは皆兄弟よ。ホグワーツの廊下では不用心な生徒を驚かせるようなことも起きるけど、スリザリンが仲間なら安心して校内を歩き回れるわ。私たちからすれば、あなたが蛇になったということは、私たちの一員になったということ。つまりエリートの一員よ。」

スリザリンを望んだが、正直不安なところもあった。でも今はスリザリンであることに胸を張れる。団体行動を好むスリザリンの監督生。何人もの意思を纏めるジェマはとても優秀だ。

 

 

ジェマ「談話室に入る合言葉は 2 週間ごとに変わるわ。だから掲示板に気を配ること。他の寮の生徒を連れてきてはいけないし、合言葉を教えるのも禁止。談話室には、7 世紀以上も部外者が立ち入っていないのよ。

まあ、こんなところかしら。私たちの部屋はきっと気にいるわ。夜、湖の水が窓に打ち寄せるのを聞いているととても落ち着くの。」

 

___________

 

プリム「ドラコ少し話したいんだけど、いいかな」

私はソファーで寛ぐドラコの肩を叩いた。

ドラコ「構わないよ、どうした?」

プリム「えっと…列車でのこと、謝ろうと思って。ごめんね、ドラコ。」

ドラコ「なんだそんなことか。…別にいいさ、僕も我儘だった。」

プリム「許してくれる?」

ドラコ「許すも何も、気にしてない。」

プリム「よかった。…ずっと私気にしてたの。」

ドラコ「そうなのか?…でも、一緒になったやつとは連むなよ?ブレーズから聞いたぞ、マグル生まれと仲良くなったそうじゃないか。君はクロウリー家だ。」

プリム「…でも、いいこだよ?」

ドラコ「駄目だ。プリムはもっと自分が由緒ある家柄の子だと自覚した方がいい。」

プリム「わたしは、友達に家柄は求めないわ。スリザリンだって、片親がマグルって子は沢山いるってジェマが言ったわ。」

ドラコ「それはスリザリンだからいいさ、たしかアリエッタ?だっけ。そいつはハッフルパフだ。劣等生の集まりだぞ?」

プリム「彼女なりの目的があって選んだのよ。」

ドラコ「なに?寮が選べるのか?」

プリム「私も選んだわ。ドラコのいる寮がいいって。だってそう言ったでしょ?ドラコがそう望めって。」

ドラコ「あ、あれは…友達の君と一緒なら楽しいと思って。」

プリム「だから望んだのよ?」

ドラコ「それは…その、ありがとう」

ドラコの頬が染まる。

ドラコ「でも、とにかく!そいつとは連むな。」

プリム「嫌よ。」

ドラコ「なんで君はいつも頑固なんだ?」

プリム「あら?我儘な坊っちゃんに言われたくないわ?」

ドラコ「……じゃあ、こうしよう。アリエッタと話してみる。それでプリムに相応しくないと思ったら連むのを辞めるか?」

プリム「ええ、いいわ。…この後少し約束があるの。明日の昼休みにアリエッタと話しましょう。」

 

 

 

 

自分の部屋に入るとジェマの言った通り素敵な部屋づくりだと思った。…可愛らしいものが好きな女の子には少し嫌な部屋かもしれないが。…なんせ湖の底だ、じめっとしていて太陽の日は差さない。私はこういう部屋は好きだ。レオナルドさんの薬瓶室や、研究室と似ている。

シャルマンがベッドの上で一鳴きした。

プリム「シャルマン、そこにいたのね!」

シャルマン「ここはジメジメしてるな、屋敷と似てる。」

プリム「スリザリンを望んで正解ね、居心地がいいわ。」

 

???「その子、あなたの猫?とっても大きい子ね。この子はわたしの猫のノアール、黒い毛が綺麗でしょ?」

同室の大きな子に話しかけられた。

この子はドラコのパーティーに居なかったな。

プリム「素敵な毛並みね。私の猫はシャルマンよ。ニールズの血筋なの。…ところであなたの名前は?」

ミリセント「私ミリセント·ブルストロード。あなたはプリムよね?仲良くしてね?」

プリム「もちろんよ。同じ部屋を使うんだもの。」

少し大きな手に戸惑ったが握手した。

 

パンジー「ねぇ、私達もいるんだけど、忘れてない?ここ4人部屋よ?」

パンジーとダフネがベッドから見つめる。

プリム「忘れてないよ、パンジー、ダフネ。」

ダフネ「…プリムの猫、触ってみてもいいかしら?」

プリム「いいよ、シャルマンは耳の裏を撫でられるのが好きだよ。」

パンジー「あ!わたしも!ミリセントの猫触ってもいい?」

もちろんよ。とミリセントが言うとパンジーがノアールの背中を撫でていた。

記憶からはいい印象がなかったが、実際のところはスリザリン生には優しいのかもしれない。

__________

 

 

アリエッタ「プリム?…プリム?いる?」

必要の部屋でアリエッタを待っていた。

プリム「ええ、ここよ。」

アリエッタ「アズラエルのこと、話してくれるんでしょ?」

プリム「…この世界について知りたい?」




次回の話では、呪いの子のネタバレ要素がありますので、ご注意ください。


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私達は狡猾に

アリエッタのプロフィールを後書きにて記載しました。


 

プリム「…この世界について知りたい?」

 

アリエッタ「この世界…?、ハリーポッターでしょ?…何を言ってるの?」

 

必要の部屋はアリエッタと話をする為に開いた。そこは物が乱雑していたり、ダンブルドア軍団のように訓練できる場所ではなく、談話室のような場所になった。

 

プリム「アズラエルに聞いたの。…どうも不可思議に事がうまく進むから。この世界がどんな世界なのか気になったの。そして何より、私達の存在がどう影響するのか。」

アリエッタ「そう…それで?どんな世界だったの?」

アリエッタがテーブルに置かれたマドレーヌを頬張りながら話を聞く。

 

プリム「アズラエルはこう言ってた。ハリーポッターにはいくつも世界線がある。私達のいる世界は、知ってる世界なようで、違う世界。アズラエルが私達に与えた世界だと。」

アリエッタ「んー…?、じゃあハリーポッターじゃないの?でも知ってることが起こってるし、ハリーもいる。…んー、考えるほど、わからなくなるなあ。」

プリム「つまりは…アズラエルが与えた私達の世界、私達が生きる為の世界、だとわかりやすいかな。」

アリエッタ「じゃあやっぱり知ってる世界とは違うの?」

プリム「そうじゃないと思う。恐らく、私達の記憶の範囲で世界はできてる。だから知ってる世界にはなるだろうね…でも、私達の行動次第で未来が変わるとも言ってた。」

アリエッタ「…それじゃあ、セドリックも救える?」

セドリックは、セドリックの最後は知っていた。記憶の通り進むなら、そうなる。何もしなければ。

プリム「実は…救う方法を知ってるわ。」

そうだ。私は知ってる。死の呪いを避ける方法を。

プリム「…私は、ホグワーツに来る前に、マホウトコロに通っていたの。数年だけど、ギフトで日本の魔法の知識ならほとんど記憶してきたわ。」

アリエッタ「ん?…マホウトコロって何?」

プリム「あー…日本の魔法学校よ。知らない?」

アリエッタ「うん。わたしホグワーツしか知らない。…あ!あとダームストラングと、ボーバトン!…わたし映画の知識しかないの。」

ごめんね?と申し訳なさそうにされたが、私も似たようなものだ。

プリム「大丈夫よ、私も映画と…少しの…+αな記憶しかない。…あー、そうか。なるほどな。」

話している内にあることに気づいた。

アリエッタ「どうしたの?」

プリム「あー…いや、後で話すよ。まずは、セドリックを救う方法ね。」

これよ。と式札を出した。それは人形に切り取られたものだ。

アリエッタ「…んー、で?」

プリム「日本の魔法は陰陽術に長けているの。…これは式札。普通に使うなら危険はないわ。でも、今から教えるのは闇の魔術よ。だからとても危険。」

アリエッタ「それ使って大丈夫なの?」

プリム「イギリスで使っても何の魔法かわからないわ。たぶんね。」

アリエッタ「まぁ、禁じられた魔法を使って授業もしてるしね。」

そうね。と相槌をうった。

プリム「今から教えるのは、式神術。…そしてこれは死の呪いを避ける、身代わり式札。」

アリエッタ「身代わり…」

プリム「身代わり式札は術者の魔力と、生命力を使うの。それを糧に呪いや、災いを避ける。もちろん死の呪いも。」

説明しながら、式札に術を書く。

プリム「これは身代わり、つまりその人の分身のようになる。だから悪用されたらとても危険。…どうしてかわかる?」

アリエッタ「…どうして?」

つまりはね?と式札に自分の名前を書いて血を垂らし、杖をあて詠唱した。

“我の名の下に身代わりとなれ”

 

プリム「その人に起きたことは式札が代わりに受ける。逆に式札に起きたことも少なからずその人に影響する。…こんなふうに。」

式札に水をかけると、私の頭上には雨雲ができ、雨が降り出しびしょ濡れになる。

アリエッタ「じゃあ…それ破いたら、身体が…」

プリム「ふふ、それはないわ。破いたら使えなくなるのよ。」

アリエッタの目の前で式札を破いた。

 

アリエッタ「すごい…これでセドリックを救えるかもしれない!」

アリエッタは興奮してわたしの肩を揺さぶる。

プリム「アリエッタ…揺さぶるのはやめてくれ。」

あ、ごめんね?と動きが止まる。服を乾かした。

プリム「ああ…聞きたいことがあるの。アリエッタって閉心術か開心術使える?」

アリエッタ「まさか。使えないよ。」

あー、やっぱりか。

プリム「これからは使えないとまずいと思う。…だから、頻繁に落ち合いたいんだ。いいかな?」

アリエッタ「そうだね。ダンブルドアとかに覗かれたらまずいね、確かに…。プリムは使えるの?」

プリム「閉心術はね。開心術はまだ使えない。」

アリエッタ「プリムって優秀すぎて怖い。そりゃギフトのせいだけど。」

プリム「…そうだ、私のことアリエッタには全部知っていてほしい。」

アリエッタ「全部?…そんなに抱えきれないよ。」

プリム「いや、これから共に大それた事をするんだ。共犯者には全て知っていてもらわないと。…それに早く閉心術を使えるようにならないといけなくなるしね。」

アリエッタ「おい、最後の本心でしょ!」

なんのことだ?と肩を竦めておいた。

 

プリム「私の名前はプリム·ウルバッハ·クロウリー。ウルバッハビーテ症候群を患っているの。恐怖を感じず好奇心を得る病気よ。」

アリエッタ「ウルバッハ…ビーテ…」

プリム「そして私の杖は二本あるの。ひとつは日本で買ったものよ。」

杖を二本並べた。片方の杖を手にとる。

プリム「金木犀の木に天狗の羽。日本では珍しいものじゃないわ。至って普通。…でもこれは自信をなくしていてあまり力を出せない。わたしがしたいことを理解してくれないの。…問題なく使えるけどね。授業にはだいたいこっちを使う予定だわ。」

杖をしまい、もう片方の杖を手にとる。

プリム「これはオリバンダーの店で買ったの。…そういえばアリエッタと店で会ったわね?」

アリエッタ「そうだっけ?」

まぁ…いいわ。と話を続けた。

プリム「この杖は、先端がアカシア後端はスギの木を使ってるの。芯はユニコーンの毛。アカシアの木はこれだけらしいわ。だから、扱いには気をつけろって言われたの。でも…私を理解してる。」

アリエッタ「そうなんだ…アカシアって確かに、オリバンダーの店にはあまり置いてないって記憶があるな。」

私の杖は…とアリエッタが杖を出す。

アリエッタ「レッドオークの木にドラゴンの心臓の琴線。別に特別ではないかな?」

プリム「そう…」

アリエッタ「運動神経がいい人を好むって言われたけど、ギフトのおかげだから複雑だなぁ。」

プリム「…じゃあ…最後にね、私の家についてなんだけど。クロウリー家は元を辿るとスリザリンの血筋なの。アメリカのイルヴァーモーニーは知ってるわね?創始者のイゾルトセイヤの血筋が母上。でも、母上には血を絶やす呪いが出ていて子供ができない身体なの。…それで私を養子にとったのよ。愛情深く育ててもらえたわ。」

アリエッタ「…プリムは凄い人生経験してるね。」

プリム「そうね、だいたいはこれで全部かしら…じゃあ…セドリックの話に戻るわね?」

アリエッタ「…うん。」

プリム「あー…その、言いにくいことなんだけど、少し問題があるわ。」

そう、魔法は完璧だが、問題があった。

 

アリエッタ「問題って?」

プリム「この世界は、私達の知ってる範囲で進んでる。そう言ったでしょ?」

アリエッタ「うん。」

プリム「私、映画以外にも記憶があるの。…それもちょっとややこしいのが。まぁ、物語としては面白い展開だと思ってたけど。私達の世界ではたぶん余計な知識ね。」

アリエッタ「…それって、小説かじってたってやつ?」

プリム「…呪いの子の話を少し知ってるのよ。」

アリエッタ「アルバスとスコーピウスの話だっけ?それがどうしたの?」

プリム「アリエッタも知ってる話?」

アリエッタ「いや?内容は知らないよ?呪いの子の本があるのは知ってるけど」

プリム「私も…深くは知らないけど」

アリエッタ「もう!早く言ってよ、もったいぶらないで!」

プリム「…アルバスとスコーピウスは、逆転時計を使って過去に行くの。親が学生だったときにね。それで未来が変わってく話だったわ。…その話には闇の帝王とベラトリックスの娘デルフィーが裏で動いているの。エイモスディゴリーの姪に扮していたと思うわ、確か。そもそもはセドリックを救う為に逆転時計を使うらしいんだけど、デルフィーのせいで悪い方向にばかり進むの。」

アリエッタ「…てことは、えっと」

プリム「わからないわ。わからないけど…セドリックを下手に救うと未来は良くも悪くも変わるし、そもそも…この世界にアルバス達が来るのかもわからない。」

部屋は静かになった。どれくらい時間が経ったかわからない。

 

アリエッタ「…ならデルフィーが生まれるのを防ぐ、だからベラトリックスを殺さなきゃ。」

アリエッタが沈黙を破った。

 

プリム「そうね…でもそれって…いつ?どこで?」

アリエッタ「1番自然なのはシリウスが倒されたときかなぁ…でも、ベラトリックスを殺したらどう変わる?」

プリム「さぁ…わからない。…ドビーが生き残るかもね。あとはデルフィーが生まれないから、呪いの子の話がなくなるかも。なくなりはしなくても変わるだろう。あくまでも推測だけど。話が変われば…動きづらくなる。」

アリエッタ「そうね…」

話を変えると知らない世界になる。でも、私達の望む世界にするには変えないといけない。

 

 

プリム「…ドビーは死ななきゃ。たぶん、あれは重要な場面だ。」

アリエッタ「じゃあその時に、ベラトリックスを殺すの?」

プリム「いや…そのすぐ後にしよう。1998年頃だデルフィーが生まれるのは。ドビーが死ぬのも1998年だった。確かね。」

アリエッタ「それじゃあ駄目ね、生まれてるかもしれない。…赤ん坊を殺す程の勇気はないわ。」

プリム「じゃあ、スネイプ先生がダンブルドアを殺すとき。その時はたしか1997年だわ。」

アリエッタ「うん…悪くないかもしれない。ドビーがどうなるかわからないけど、しばらくはその路線でいこう。…また何か変化があれば考えなおす。」

計画通りになるかもわからない。でも考えて置くことは重要だ。私達の為に。

…アリエッタは、考えすぎた。と甘いものを頬張る。こちらは見ているだけで満腹だ。

 

 

アリエッタ「そうだ!そういえばさ、プリムって、スネイプ先生を助けてあげるんでしょ?」

プリム「そうだね、できればそうしたい。」

でも、そうすれば、確実に私達の知ってる話じゃなくなる。大きく変わる。

 

プリム「でもそうしたら…アルバスが生まれなくなるかもしれない。スコーピウスも。」

アリエッタ「それを覚悟で私達は変えるの。大事な人を自分の為に救うの。」

プリム「それって…わがままで欲望まみれだ。身勝手すぎる。」

アリエッタ「そうよ?でもこの世界は、私達の為に作られた。私達の為に与えられたの。そう言ったでしょ?じゃあ、好きに生きるべきじゃない?私はセドリックを助ける。あなたはスネイプ先生とドラコのことも、もちろん助けるんでしょ?これは許されることよ。」

プリム「…どうなるかわからない。それが怖い。」

アリエッタ「あなたが?怖い?恐怖を感じないプリムが笑えるね。」

プリム「…アリエッタってスリザリンって言われなかった?」

アリエッタ「ご名答。でもハッフルパフを望んだ。脅したけど。」

プリム「…組み分け帽子も大概だな。」

アリエッタ「で、どうする?私達がやろうとしてることは、大きなことよ。…もちろん共犯者になってくれるでしょ?」

…そんなこと決まってる。

 

プリム「私達はスリザリンだ。狡猾に自分の為に動くよ。」

アリエッタ「そうでなきゃね。」

プリム「アルバス達が来るかどうかわかるのは炎のゴブレットあたりだと思う。…ごめん、ほんとにかじっただけの記憶だから定かではない。」

アリエッタ「いや、それだけでも十分。いつ動くべきかわかったね?」

 

____________

 

 

翌日、最初の授業はマクゴナガル先生の変身術だ。

 

スリザリン生はある程度のグループになり教室に向かった。

パンジー「プリムって日本のマホウトコロに通ってたって本当?」

プリム「え…あー、まぁ。数年だけど通ってたよ。…どこで聞いたの?」

ダフネ「今朝ドラコが談話室で話してたわ。もうプリムは、変身術もできるのでしょう?」

…ドラコには少し注意しておかないと私の話をペラペラと話されるのは、都合が悪いし、何よりあまり気持ちが良くない。

 

プリム「変身術はできないよ。習ったことがないから。…似たようなことができるだけ。」

 

席について待っていると、グリフィンドール生が遅れて入ってきた。

 

ハリー「ロン、速く!」

どうやら、ロンとハリーが寝坊したようだ。あー、この授業だったのか。

 

ロン「ふう、間に合った。遅刻したらマクゴナガルがどんな顔するか…。」

机の上で猫になって待っていたマクゴナガル先生をよそに安堵している。…束の間、マクゴナガル先生が変身を解いたので青ざめる2人。

ロン「あー…変身…お見事でした。」

マクゴナガル「お褒めの言葉、ありがとう、ウィーズリー。あなたとポッターを懐中時計に変身させましょうか。そうすれば、遅刻しないでしょう。」

ハリー「僕達、道に迷って…」

マクゴナガル「では、地図にしますか。地図無しでも席はわかりますね。」

ドラコ達…いや、スリザリン生のほとんどがクスクスと笑った。

 

 

マクゴナガル「変身術は、ホグワーツで学ぶ魔法の中で最も複雑で危険な物の一つです。いい加減な態度で授業を受ける者には出て行ってもらいますし、二度とこの教室には入れませんから、私の授業では、よく聞きよく学ぶことを大切に。」

 

マクゴナガル先生は挨拶が終わると、目の前の机に魔法をかけ豚に変えてみせた。

それを見たスリザリン生もグリフィンドール生も、全員が試したいとソワソワしている。

 

パンジー「変身術って凄いわね。私もできるかしら。」

ダフネ「教科書にはイメージ力が大事って書いてあるわ。…難しそうね。」

ミリセント「私達はスリザリンだもの、グリフィンドールよりは上手くできるわよ。」

プリム「…」

 

パンジー達がコソコソと話していたが、それよりも今は授業に集中すべきだろう。マクゴナガル先生って確かグリフィンドール贔屓だ。下手に機嫌を損ねさせてはいけないと、マクゴナガル先生が黒板に書いた事をノートに書いていく。

 

マクゴナガル「では、机の上にあるマッチ棒を変身術で針に変えてみましょう。」

マクゴナガル先生はマッチに呪文をかけ鋭い針に変えた。

マクゴナガル「さぁ、皆さんも、針に変えてみてください。」

 

グリフィンドールでは、ハーマイオニーがいち早くマッチを針に変えたみたいだ。

 

マクゴナガル「なんとまあ、ミスグレンジャーが綺麗な針に変えてみせましたよ。おみごとです!グリフィンドールに10点。さあ、みなさんもミスグレンジャーに負けないように頑張ってください」

 

パンジー「あー…全然うまくいかないわ。」

パンジーのマッチ棒は針というより、シルバーのマッチ棒だ。

プリム「教科書にも書いてあるでしょ?イメージが大事よ。」

パンジー「やってるんだけど、できないわ。」

ミリセント「私のはマッチ棒のままだわ。」

ダフネ「プリムはできた?」

プリム「あー…今やってみる。」

金木犀の杖を使って呪文をかけた。

…随分と立派な針が出来た。やっぱりこの杖は私のことを理解していない。

パンジー「わぁ、凄いわプリム、綺麗な針ね!」

少し大きな声でパンジーが叫ぶので、マクゴナガル先生が私の席に近づいてくる。

点数が貰えるだろうか。…まて…確かハーマイオニーだけだ。ここで成功したのって。…もしかして、まずいのではないか。

マクゴナガル先生があと数歩で席に辿りつく。

……”Finito”(終われ)

マクゴナガル「…ミスクロウリー、針には変えられなかったのですか?」

プリム「はい、イメージが散漫になったみたいです。」

マッチ棒に戻し、何も変わってない様子をみたマクゴナガル先生はすぐ別の席を回る。

ギリギリだった。

 

パンジー「プリム、なんでマッチ棒に戻したの?」

ミリセント「そうよ、スリザリンにも点が入ったのに。」

プリム「…出来がよくなかったから、納得いかなくて。」

ダフネ「…まぁ、グレンジャーより綺麗じゃないと嫌だものね。」

そうね。とみんな納得してくれたみたいだ。

 

_____________

 

昼食後の昼休み、私はアリエッタを探していた。

プリム「…アリエッタどこにいるんだ。」

ごちゃごちゃとしたホグワーツの生徒から探すのは難しかった。人酔いしそう。

 

プリム「とりあえず…ハッフルパフの人に聞くか。」

あの…と話しかけようとすると、逃げられる。…なぜ?

プリム「…あ、あの人セドリックかな。」

セドリックは人望がありいつも周りに人がいるから、見つけやすい。

プリム「あの…セドリック?話があるんだけど今いいかな?」

セドリック「え?僕に?…別にいいよ。どうしたの?」

プリム「アリエッタがどこにいるか知らない?アリエッタロリス。」

セドリック「アリエッタ?…あー、あの子ならクィディッチの競技場にいるよ。練習が見たいってさっき案内したんだ。」

プリム「そうだったのね…ありがとうセドリック。」

セドリック「礼なんていいよ、役に立てたみたいで、よかった。」

プリム「ところで…ハッフルパフの人は私のこと嫌いなの?」

セドリック「え?…あー、違うよ。スリザリンってこともあるけど、1年生はマルフォイと仲がいい君が怖いんだ。…でも上級生は気にしてないよ。」

プリム「そうだったの…話しかけてしまってごめんなさい。迷惑をかけてしまったわね。」

セドリック「いや、僕は話しかけくれて嬉しいよ。話さないと君のこと知らないままだったし。プリムはきっといい子だ。」

プリム「そうかしら?うわべだけかも」

セドリック「はは、スリザリン生らしいね」

セドリックはとても好青年だった。人望があるのも頷ける。アリエッタの為にも必ず救いたい。

 

 

 

プリム「アリエッタ!」

競技場の練習を見ているアリエッタに声をかける。

アリエッタ「プリム?どうしたのこんなところで」

プリム「ちょっと、話があって」

アリエッタ「話って?」

プリム「ドラコがあなたと話したいって」

アリエッタ「え?なんで?…え?わたし?」

 

_____________

 

ドラコ「君がアリエッタかい?」

アリエッタ「うん、私はアリエッタ。アリエッタ·ロリスよ。あなたは?」

ドラコ「僕はドラコマルフォイだ。」

廊下で2人が警戒しながら話している。

プリム「ドラコはクィディッチが好きでしょ?アリエッタも好きなの。」

ドラコ「ふーん、マグル生まれなのにか?」

アリエッタ「クィディッチのことは最近知ったけど、とっても興味があるわ。まだ箒の授業がないから、上手く乗れるかわからないけど。」

ドラコ「少し知識があっても箒は乗れないぞ。プリムだって苦手なんだ。君はきっと乗れないね。」

嫌味なドラコ。やっぱり考え方を変えるのは無理なのだろうか。

 

プリム「ちょっと!仲良くしてって言ったでしょ!…それに今は乗れるわよ。」

ドラコ「僕はマグル生まれと仲良くできない!」

プリム「大丈夫よ、好きなことも一緒じゃない!きっと仲良くなれるわ。」

アリエッタ「ドラコがよかったらだけど、仲良くしたいな。」

ドラコ「…僕達は純血一族だ。本来なら君のようなマグル生まれと仲良くなんてしたらいけないんだ。」

ドラコがアリエッタの横にいた私の腕を引き寄せる。

 

アリエッタ「それってドラコのお父さんとかに言われたの?」

ドラコ「そうだ、父上の言うことはいつも正しい。」

アリエッタ「ドラコは?ドラコの考えはどう思うの?」

ドラコ「…」

アリエッタ「ここは学校だし、学ぶことができる場所だよ?自分で考えてみるのもいいんじゃないかな。」

ドラコ「…プリムは、なんでアリエッタと一緒にいたいんだ?」

プリム「それはドラコと一緒にいる理由と同じよ?アリエッタも友達だから。」

ドラコ「…僕は、アリエッタに対してマグル生まれってこと以外は嫌だと思ってない。」

アリエッタ「それじゃあ、仲良くしてくれる?」

ドラコ「さぁな。もっと話さないとわからないだろ。」

プリム「やった!ドラコありがとう」

ドラコの考え方が少し変わりつつある。そう思っておもわず抱き着いた。

ドラコ「お、おい!仲良くするとは言ってないぞプリム!」

アリエッタ「…お熱いな」

 

 

_____________

 

その日の授業は魔法薬学が最初だった。

無数の薬瓶の棚。薬草の匂い。ジメジメした日の差さない教室。私にとっては最高の場所だ。

 

バタンッと勢いよくドアが開きスネイプ先生が入る。憧れのスネイプ先生が目の前にいる。にやける口元を教科書で隠した。

 

スネイプ「この授業では杖を振ったり、ばかげた呪文を唱えたりしない。いいかな。魔法薬調合の微妙な科学と芸術的な技を諸君が理解できるとは期待していない。」

私は理解できますよスネイプ先生。と心中で会話した。

 

スネイプ「…だが、一部の素質のある選ばれた者には伝授してやろう。…人の心を操り感覚を惑わせる技を。…名声を瓶の中に詰め栄光を醸造し死にすら蓋をする、そういう技を。」

スリザリン生はスネイプ先生の言葉を熱心に、いや、魅了されるかのように聞き入っていた。ドラコもワクワクとした表情だ。

 

 

スネイプ「…ところで。諸君の中には自信過剰の者がいるようだ。すでにホグワーツに来る前に力を持っているから授業など聞かなくてもいいというわけか。…ミスター・ポッター。その名も高き…ミスター・ポッター。」

何か書いていたハリーが指名される。

 

スネイプ「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを加えると何になる?」

ハーマイオニーが勢いよく手を挙げた。

しかし視界に入ってるのに無視するスネイプ先生。

 

ハリーは首を横に振った。

スネイプ「…わからんかね?」

 

スネイプ「…では、もう1問。ベゾアール石を見つけるにはどこを探せばいい?」

ハーマイオニーはさっきより高々と手を挙げた。

ハリー「わかりません。」

スネイプ「では、モンクスフードとウルフスべーンの違いは?」

ハーマイオニーはもう立ち上がりそうだ。

少し面白い。

ハリー「…わかりません。」

スネイプ「…まったく…情けない。名前ばかり有名でも仕方ない。…そう思わんか、ポッター。」

 

 

スネイプ先生はその後、クラスの生徒を 2 人ずつのペアに分け、おできを治すための簡単な魔法薬を調合するように指示した。

 

…なんだっけ。何か忘れてるな。たんまりとある記憶を掘り起こすのも大変だ。

 

パンジー「プリム、もうすぐで完成ね」

プリム「あ、うん。」

なんだったかな。絶対この授業な筈。

沸々と考えふけっていると、グリフィンドールの方から爆発音がした。

 

 

スネイプ「バカ者!」

 

スネイプ先生がネビルを怒鳴る声がした。スリザリン生は劣等生のネビルを蔑みの視線をぶつけながら嘲笑う。

 

スネイプ「おおかた、大鍋を火から降ろさないうちに、山嵐の針をいれたな!グリフィンドール、10点減点!」

 

プリム「あ…これか。」

ネビルの周りは大惨事だった。幸いネビルからは遠く離れた席だったので何も起こらなかった。

 

プリム「…別に気にする程でもなかったか。」

パンジー「なんか言った?」

プリム「いや?…ほら、もう完成だよ。ネビルのような失敗が無くてよかった。」

パンジー「ロングボトムなんかと一緒にしないでよプリム。」

プリム「パンジーは肌が綺麗だから薬がかかっていたらと思うとね。」

パンジー「あら!嬉しいこと言うのね!」

プリム「本心だよ。パンジーが羨ましい。」

パンジー「そんなに褒めても何もあげないわよ?」

提出用の薬瓶に完成した薬を入れた。




アリエッタ·ロリス
同じ転生者。転生前は加藤めい(22)自殺理由は職場でのパワハラ。22歳での転生でプリムより自殺の境遇は並な為、ギフトは2つ。過去の記憶も残している。ハリーポッターの世界が大好きでなるべくモブで平和に見守りたいと思っている。ハッフルパフ。長い金髪に青目、ほどよい褐色の肌。ギフト以外には特別なことはないが、セドリックを守りたいという思いが強く、自身を強くする糧になる。杖はレッドオークの木にドラゴンの心臓の琴線。


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地下室のトロール

 

 

シェーマス「兎の目、ハープの音色、この水をラム酒に変えよ!兎の目、ハープの音色…」

グリフィンドールの席で、シェーマスフィネガンが水をラム酒に変えようと奮闘している。

 

ハリー「シェーマスはあの水をどうしたいわけ?」

ロン「ラム酒に変えるのさ。昨日はお茶に変わったけど…」

シェーマスは杖を乱暴に振ると爆発する。

記憶通りだったので、動物もどきの本に視線を戻した。

 

パンジー「プリムっていつも難しい本ばかり読んでるわね。」

私が読む本を覗きながら隣に座るパンジー。

プリム「知識があれば力にもなる。そう思うよ私は。」

パンジー「レイブンクローみたいね。勉強熱心なのはいいけど、身嗜みにも気をつけなさい?」

パンジーはブラシでとかしただけの私の髪に指を通した。

ダフネ「知識ねぇ…グレンジャーも同じようなことを言ってたわ。」

パンジー「プリムはグレンジャーとは違うわよ。」

プリム「…私、身嗜みには気をつけてるつもりなんだけど…」

パンジーの言葉が気になりだして、ドラコからプレゼントされたコンパクトを見た。

 

ダフネ「そのコンパクト、とても綺麗ね!」

パンジー「ほんとだ!どこで買ったの?」

プリム「ドラコからプレゼントされた。」

ミリセント「ほんと!?その話よく聞かせて!」

どこから聞いていたのか、ミリセントがパンジーと挟むように座る。その後ガールズトークになったのは言うまでもない。

 

「郵便が来た!」

誰かがフクロウに気づいた。

 

頭上から乱雑に落とされる郵便物。

グリフィンドールでは着地が下手なフクロウがいた。…たぶんロンのフクロウだ。

家のフクロウのアルファは目の前に降りてきちんと渡す。丁寧な仕事ぶりだ。

プリム「ありがとう、アルファ」

アルファ「勿体なきお言葉。感謝します。」

郵便物は新聞と、シルビアさんからの手紙…ルシウスさんからの手紙だった。

 

“プリムへ

ホグワーツでの学校生活はいかがですか?

マホウトコロとは違うと思いますが、沢山の学友に恵まれること祈っております。

魔法薬学の授業では、良い評価をされたと聞きました。プリムならそうでしょう。レオナルドにそっくりですから。…ホグワーツのスネイプ先生はレオナルドとちょっとした知り合いですから、挨拶しておくことです。

スリザリン入寮おめでとうプリム。

 

シルビア”

 

プリム「え…知り合いなの。」

改めてクロウリー家の人脈の広さに驚いた。

広すぎて動きづらい…挨拶か。スネイプ先生に…。腰が重く感じた。

 

“プリム·クロウリー殿

 

スリザリン入寮おめでとうございます。

私の息子ドラコとも是非親しくして頂けると嬉しいです。

プリム殿は、魔法薬学の授業では優秀だと聞きました。ドラコも得意な授業ですので、よき学友となりお互いの成長になればと思います。箒の授業ではドラコがきっと活躍するでしょう。プリム殿をサポートするように伝えていますので、ご安心ください。

よき学校生活を。

 

ルシウス·マルフォイ”

 

挨拶の手紙だった。ふとドラコに視線をやると気まずそうに視線を逸らされた。私のサポートをするように手紙が届いたんだろう。…勘違いするな私は頼んでないぞ。と心中で伝えた。

 

 

「おい、ネビル。それ、思い出し玉?」

グリフィンドールが少しざわざわしていた。

どうやらネビルに思い出し玉が届いたみたいだ。

ハーマイオニー「本で読んだ事ある。中の煙が赤くなるのは何か忘れてる時よ。」

ネビル「でも、何を忘れたのか、それも思い出せないんだ…」

ハリー「ねぇ、ロン。グリンゴッツに強盗が入った。ほら…闇の魔法使いまたは魔女の仕業と思われるが何も盗まれてはいないとグリンゴッツのゴブリンは主張している。713番の金庫はその日、事件の前に空になっていたらしい。…変だな。僕とハグリッドが行った金庫だ。」

 

ハリーの会話が聞こえ、届いた新聞を見ると同じ記事が載っていた。

賢者の石…ね。

 

_____________

 

 

フーチ「こんにちは、皆さん。」

「こんにちは、フーチ先生!」

フーチ「アマンダも皆もこんにちは。今日はいよいよ飛行訓練です。さぁ、ぼーとしていないで、全員箒の左側に立ちなさい。…急いで!…右手を箒の上に出して、はいっ上がれ!」

「上がれ!」

生徒が一斉に声をあげる。

ハリー「わぁお。」

ハリーはいち早く箒を手中に納めたみたいだ。やっぱりハリーには才能がある。

 

ドラコ「上がれ。」

続いてドラコも手中に納めた。得意気な顔を見せる。スリザリンの1年生ではドラコが1番才能があるだろう。

 

フーチ「真剣に!」

プリム「…上がれ。」

マホウトコロでは時間がかかりはしたが、乗れるようになった。…ホグワーツの箒は少し癖があるのか?びくともしないぞ。…振り出しに戻ったみたいでイライラし始めた。

 

ハーマイオニー「上がれ、上がれ、上がれ!」

ハーマイオニーも苦戦している。…せめてロンより早く上がらんと燃やすと脅しを込めて、静かに低く声をあげる。

プリム「……上がれ。」

ゆっくりながらも手中に納めた。うまくいった。

ロン「上がれー!うぅっ!…笑うなよ。」

…同じ事を経験した身からすると、箒の柄は痛い。かなり痛い。

 

 

フーチ「では、箒を手につかんだら、またがりなさい。柄をしっかり握って。落ちないように。笛で合図したら皆一斉に地面を強く蹴ること。箒は常に真っ直ぐに。しばらく浮いてそれから前かがみになって降りてきます。行きますよ!1・2…」

ピーッと笛の音がなると同時に、ネビルが浮かぶ。…ネビルだけ。

 

ネビル「うぁ…ぅぅ…」

フーチ「ミスターロングボトム!ネビル、落ち着きなさい。…ネビルロングボトム!ネビルロングボトム…どこに行くつもりなんです!今すぐ戻ってらっしゃい!」

コントロールできないから無理だろう。…ホグワーツの箒は癖があるみたいだし。

 

ネビル「うわぁ、うわあぁー!うぅっ、うっ、うぅ。助けてー!」

…助けた方がいいのか?…フーチ先生とネビルが医務室に行けばいい。結果的にだと。

…助けておくか。借りを作るのも悪くない。

 

みんなの視線がネビルに集まるだろう、落ちる瞬間を見て魔法をかけた。…なるべく聞こえないように。

 

“Aresto momentum”(動きよ、止まれ)

 

ネビル「わぁあ!…っ、あれ?」

地面に打ちつけられる直前止まるネビルの身体。うまくいった。

 

フーチ「ミスターロングボトム…みんな、どいて!手首をひねったようですね…ほら、大丈夫よ。大事がなくてよかった…」

プリム「…助けても怪我するのか」

ドジっ子すぎるネビルに同情した。

 

フーチ「全員、地面に足をつけて待ってなさい。この子を医務室に連れて行きますから。いいですね?箒一本でも飛ばしたらクィディッチのクの字を言う前にホグワーツから出て行ってもらいます!」

…まぁ、結果的にはうまくいったかな。

 

ドラコ「はっ、見たか、あの顔?この思い出し玉を握れば尻餅のつき方を思い出したろうに。」

ドラコはネビルが落とした思い出し玉を手にする。…ドラコは嫌味な台詞のセンスがいい。絶妙にグリフィンドールを苛つかせる。

 

ハリー「返せよ、マルフォイ!」

勇敢なハリーが前に出る。

 

ドラコ「嫌だね。ロングボトム自身に見つけさせる。…屋根に置こうか、どうした、ポッター?ついて来られないのか?」

ドラコが空に浮かぶ。

 

ハーマイオニー「ハリー!飛んじゃダメ!先生に言われたでしょ?それに、飛び方も知らないくせに。」

プリム「…飛ばなきゃ男じゃないね。」

ハリーを煽るように言った。一応だ。わざと煽る。…ビュンッとハリーが空を飛ぶ。

 

ハーマイオニー「…男の子って…何てバカなの。」

ハーマイオニーに睨みつけられたが、知らぬ顔をしておく。

 

 

ハリー「それを返さないと箒から叩き落すぞ、マルフォイ!」

ドラコ「出来るかな?取れるものなら取ってみろ。」

思い出し玉を投げるドラコ。それを見てハリーが加速する。実際ハリーの箒を見ると、凄く速い。…センスの塊だな。

 

思い出し玉を手にしたハリーが降りてくると、グリフィンドール生が歓喜する。スリザリン生はポッターのくせに…などと思い通りにいかず悔し気だ。

「やったぞ、ハリー!すごかったぞ!」

 

 

マクゴナガル「ハリーポッター。…来なさい。」

ハリーがマクゴナガル先生に連れて行かれた。

ドラコ「はは、ポッターは退学だな。」

プリム「ドラコも箒に乗ったから、どうかな。」

それを聞いたドラコは青ざめていた。

…まぁ、退学なんて、そんなことはないだろうけど。

__________

 

私はスネイプ先生の教室の前に居た。

プリム「…ああ、挨拶なんて…なんで悩みのひとつに自ら足を踏み入れる?馬鹿なのか?…家の為だプリム、たかがスネイプ先生!…いや、されどスネイプ先生だな。」

意を決してノックしようとすると、ドアが開いた。

 

スネイプ「そこで何をブツブツと言っているのかね?ミスクロウリー。独り言が趣味なのかね?」

プリム「えっ…と、母上から聞いたのですが、父上と知り合いだと聞いて挨拶に来ました。…レオナルドクロウリー、ご存知ですか?」

スネイプ先生の眉間のシワが深くなる。

スネイプ「入りたまえ…」

 

教室に入ると、レオナルドさんの研究室と似ているなと思った。

スネイプ「レオナルドクロウリーが君の父親かね?」

プリム「はい、そうです。」

スネイプ「…レオナルドは、仕事上付き合いがある。魔法薬学の優秀な研究者の1人だ。」

プリム「…そうだったんですね」

なるほど、知り合う機会があるわけだ。

 

スネイプ「ミスクロウリー、レオナルドにそっくりだ。いともたやすく、見事な魔法薬を作り出す。…アメリカに居た筈のクロウリーが、何故イギリスに来たのかね?」

プリム「母上の研究で。」

スネイプ「ほぅ…母親…魔法動物の学者だったか?」

プリム「はい、そうです。」

スネイプ「…君の父親と母親によろしく言っておいてくれ。…それと、もうシワ消し薬は寄越すなと。」

…そんなん送りつけてたんですか!父上!

プリム「は、はい…」

 

__________

 

外へ出てパンジー達と談笑していると、興味深い話が聞こえてきた。

ニック「聞きましたか?ハリーがグリフィンドールのシーカーになったそうです。あの子ならやると思ってました!」

首無しニックが声高々と自慢している。…マクゴナガル先生はやっぱりオリバーに紹介したみたいだ。

 

ロン「シーカー?でも1年生がチームに入ったこともないのに。ハリー、君最年少だよ!何年ぶりかな?」

ハリー「あ、先生が100年ぶりだって。」

ハリーも嬉しそうな顔をしている。後ろに居たドラコは眉間にシワがより悔しくて堪らないようだ。…箒好きだもんな。

 

パンジー「ポッターがシーカー?…なんでドラコも乗れるのにポッターだけなわけ?」

プリム「マクゴナガル先生が見つけたからね。」

ダフネ「…スネイプ先生ならきっとドラコがシーカーだったわね。」

パンジー「スネイプ先生がスリザリン贔屓なら、マクゴナガル先生はグリフィンドール贔屓ね」

プリム「調和はとれてるんじゃないか?」

でも悔しいとパンジーは苛立ちを隠せていなかった。

 

ハーマイオニー「あの…プリム?、ちょっと話したいんだけど。…今いい?」

プリム「ええ、いいわよ?」

ハーマイオニーが分厚い本を抱えて話しかけてきた。…なんだろうか。何かしたか?

 

パンジー「ちょっとプリムは私達と話してるの。あなたと話してる暇はないわ。」

ダフネ「急用なの?」

ハーマイオニー「そうね、すぐに知りたいことだわ。」

 

 

人気のない廊下の壁際に寄りかかる。

プリム「で、話って?」

ハーマイオニー「ネビルが箒から落ちた時、魔法を使った?」

…ああ、ハーマイオニーはこういうとき、勘が鋭い。

プリム「使ったよ、何故?助けては駄目だった?」

ハーマイオニー「いえ、ネビルを助けてくれたんでしょう?ありがとう」

…ありがとう?それだけ?

プリム「…大事に至らなくてよかった。ネビルの手首はどう?」

ハーマイオニー「すぐに良くなったみたいよ、後でプリムに礼を言うように言っておくわ。」

プリム「いや、別にいいよ。」

ハーマイオニー「いえ、言っておかないと。スリザリンがグリフィンドールを助けたんだもの。」

プリム「…勘違いしないで、大怪我をして箒が中止になったら嫌だったからよ。だから、礼を言われるのは困る。」

嘘だ。大怪我をしてもどっちでもよかった。結果が変わらなければ。

 

ハーマイオニー「アレストモメンタム、私には使えない魔法だったわ。プリムは優秀ね、とっても。」

プリム「グリフィンドールの才女に言われるなんて、光栄だよ。ありがとう。」

ハーマイオニー「プリムは…プリムは私の友達?」

プリム「どうだろうね、グリフィンドールとスリザリンだから…」

ハーマイオニー「そう…やっぱりそうよね。あなたは純血だし。」

ハーマイオニーがいいなら友達だ。と言うつもりだったが遮られた。

プリム「ハーマイオニー…?」

ハーマイオニー「もう行くわね。友達と話してたのにごめんなさい。」

ハーマイオニーはハリー達のところへ行ってしまった。

ハーマイオニーの表情が暗くて不安になった。…不安になった?そこまで仲を深めたか?

 

______________

 

フリットウィック「魔法使いの最も基本的な技術、それは浮遊の術。そう、すなわち物を浮かせて飛ばすことです。」

レイブンクローのフリットウィック先生はわかりやすく指導してくれることで有名だ。

 

フリットウィック「さぁ、羽は持ってきてるね?おぉぅ。では、練習した手首の動きを忘れないように。ん?さっ、ビューンと来てヒョイです。みんなで!ハイ。」

「ビューン、ヒョイッ。」

…そうだな。マグルの生まれであっても、勉強をしていなくてもわかるように指導しているみたいだ。

 

 

フリットウィック「よろしい。呪文を正確に。ウィンガーディアム・レヴィオーサ。やってご覧。」

「ウィンガーディアム・レヴィオーサ。」

…この授業、ハーマイオニーが目立つんだよな。また。

私はこの呪文出来てしまうし、動きだけしておくか。…金木犀の杖を持つ。

プリム「…」

ビューン、ヒョイッとすると、浮かびそうになる羽根…っ!?駄目だ駄目だ、何故浮く!

羽根を本の下に押しつけた。

 

ミリセント「プリム?何やってるの?」

プリム「え?なんでもないよ。ミリセントはできた?」

金木犀の杖はもう使わない。絶対。

ミリセント「全然…私って運動なら得意なんだけど」

 

ロン「ウィンガーディアム・レヴィオサー!」

グリフィンドールに目をやると、ロンがぶんぶんと杖を乱暴に振る。

ハーマイ「ちょぉっと待って、ストップ、ストップ!…そんなに振り回したら危ないでしょ?それに、発音も違ってる。いい?…レヴィオーサ。あなたのはレヴィオサー!」

ロン「そんなに言うなら自分でやってみろよ。ほら、どうぞ?」

ハーマイオニー「ウィンガーディアム・レヴィオーサ!」

ハーマイオニーが羽根を高く高く浮かべる。

 

フリットウィック「おぉ、よく出来ました!皆見たかね?ミス・グレンジャーがやりました。わぁ、素晴らしい。」

シェーマス「ウィンガード・レヴィオーサー。」

フリットウィック「よく出来ましたぁ…ああぁ!」

ボゥッという爆発の後、丸焦げの羽根。丸焦げのシェーマスが現れた。

ハリー「先生、新しい羽が必要みたいです。」

 

 

______________

 

ハロウィンの飾りが施された大広間。

各寮の机には大量のお菓子の山。

プリム「誰がこんなに食べるんだ?」

ふと視線を外すとクラッブとゴイルが大量のお菓子を頬張っていた。

ドラコも甘いものは好きなようで、チョコレートを食べている。

 

パンジー「プリムは甘いの嫌い?」

プリム「…嫌いじゃないけど、食べなくても死なないかなって。」

パンジー「何それ?変なこと考えるのね」

プリム「果物は好きだ。程よく甘くて。」

ダフネ「お菓子は子供のうちに食べておくのよ、大人になったら甘いものなんて食べられないわ。太るもの。」

ミリセント「そうよ!それにプリムってば細すぎるわ。…ほら、いっぱい食べて!」

大量のお菓子を盛り付けるミリセント。

お菓子は栄養にはならないんじゃないか。

プリム「あ、ありがとう…」

 

バタンッと勢いよく広間の扉が開く。

クィレル「トロールが!地下室に!あぁっ!トロールが入り込みました!お知らせしま…」

「あぁぁぁ!!!」

全生徒が叫ぶ為、私は逆に冷静になってしまった。…トロール。ハーマイオニーが危ないじゃないか。

 

ダンブルドア「しーずーまーれーーー!みな、静かに。うろたえるでない。さぁ、監督生は皆を連れて寮に戻りなさい。先生方は、わしと地下室へ。」

はやく…はやく助けに。…助け?何故?ハーマイオニーを?…助けなくてもいい。事が進めばトロールは退治される。

 

 

ジェマ「スリザリンの皆、集まって、静かに。さぁ、急いで、皆気をつけて進んで。」

 

パンジー「プリム?大丈夫?顔色が悪いわ」

ミリセント「トロールがいるのよ?当たり前じゃない。」

何か話していたが、耳に入ってこない。ハリーは?ハリーはどこだ。

 

ロン「どうやって入ったのかな?バカだから、自分で入れる訳が無い。誰かが悪戯したんだ。あっ、何?」

ハリー「ハーマイオニーは?このことを知らないよ!」

ハリー達の会話が聞こえた。やっぱりハーマイオニーはトイレにいる。

 

アリエッタ「プリム、ハーマイオニーを助けに行こう。」

列を外れてアリエッタがスリザリンの列にいた私の腕を引っ張る。

パンジー「ちょっと、あなた誰よ。ハッフルパフはあっちでしょ?」

プリム「ちょっと黙っててくれパンジー。」

パンジー「プリム?…」

 

プリム「ハーマイオニーは助けなくても、大丈夫だ、ハリー達がいる。」

アリエッタ「そんなのわからないわ。私達の世界では。」

プリム「大丈夫よ、何故そんなに話に触れたがる。」

アリエッタ「…あなたハーマイオニーが心配なんでしょ?…青白いもの。」

プリム「心配?…何故?」

アリエッタ「プリムの中で、もうハーマイオニーは友達だからよ。決まってるでしょ?」

…友達?…何故?いつからだ?…あんなに関わりは最小限にと行動していたのに。

アリエッタ「うまく進んでいたら、何もしなければいいわ。」

プリム「…話の進みを見るだけよ。」

 

 

 

「きゃああぁ!!」

トイレへ行くと叫び声が聞こえた。トロールに襲われたハーマイオニーが叫んだんだろう。

プリム「ハーマイオニー…!」

 

ハリー「ハーマイオニー、逃げろ!」

ハーマイオニー「助けてぇ!助けてぇ!」

ハリー達の声も聞こえた。

 

アリエッタ「どうする?…中入る?」

入り口付近の壁際に寄りかかっていた。

プリム「…ロンが呪文を使うのを見届けよう。失敗したら、助ける。」

 

ロン「おーい!ノロマ!」

ハーマイオニー「きゃーー!助けて!」

ハリー「うわぁ!何かやれ!」

中を覗くと、ハリーがトロールに捕まっていた。

ロン「何を!?」

ハリー「何でもいい!早く!」

ハーマイオニー「ビューン、ヒョイよ!」

ロン「ウィンガーディアム・レヴィオーサ!」

ロンの呪文が棍棒にあたり、宙に浮く。

そしてトロールの頭に落ちて、トロールが気絶した。

 

ロン「やったぞ!」

 

ハーマイオニー「…これ、死んだの?」

ハリー「そうじゃない、気絶しただけだよ。うえぇ、トロールの鼻くそだ。」

…なんだ、やっぱり助けなくても大丈夫だった。

 

アリエッタ「…プ、プリム。あれ。」

帰ろうと視線を廊下にやると、アリエッタが後ろを指さす。

プリム「…な、なんで。」

もう一体のトロールが居た。

 

ハリー達が私達の存在に気付いたと同時に、もう一体のトロールに気付く。

 

ハーマイオニー「きゃあああ!」

ハーマイオニーの叫びにトロールが驚き棍棒を振りおろす。

 

“Protego Maxima”(最大の防御)

プリム「みんな私の側に居て!、絶対離れないで!」

ハリー達が私の後ろに隠れる。

…どうする。こんなの、想定外だ。

…どうする。…なんでだ。…最善の呪文を考えろ。

“Stupefy “(麻痺せよ)

…あたってるのに、頑丈すぎるのか、あまりきいてない。…どうする。

 

アリエッタ「プリム!セクタムセンプラ!」

プリム「…っ!…みんな、耳を塞いで!」

アリエッタ「な、なんで?」

プリム「いいから!早く!」

全員が耳を塞いだことを確認し、呪文を放った。

“Sectumsempra”(切り裂け)

プリム「…うまくいった。」

トロールの身体がみるみる切り裂かれ倒れた。トロールの血の池が床に広がる。

 

ロン「…君、何したの?」

 

すぐ足音がした、先生達だろう。

マクゴナガル「まぁ、なんてことでしょう!どういうことなんですか、説明なさい!」

ハリー「あのっ…」

ロン「その…つまり…」

ハーマイオニー「私のせいなんです、先生。」

マクゴナガル「なんですって?ミスグレンジャー。」

ハーマイオニー「トロールを探しに来たんです。本で読んだから倒せると思って。でも、ダメでした。みんなが来てくれなかったら、今頃死んでました。」

マクゴナガル「助けに来たのだとしても、とても愚かな行いでした。もっとよく考えて行動してもらいたいものです!ミスグレンジャー、あなたには失望しました。グリフィンドールは5点減点です。判断力に欠けていますよ。あなたたちも。無事だったのは運が良かったからです。1年生で野生のトロールを相手にして生きて戻れるのはそういないでしょう。よって5点ずつ4人に与えることにします。その幸運に対してです。」

 

 

クィレル「さ、もう、行きなさい。トロールが起きるかも…。」

 

スネイプ「…此方のトロールは、誰が呪文を?」

スネイプ先生が血の池の上に倒れたトロールを見る。…

アリエッタ「…えっと、それは」

プリム「私がやりました。」

スネイプ「ほぅ…この呪文は非常に危険なものだ、どこで目にしたのかは知らんが、むやみやたらに使うものではない。…だが、今回は最適な呪文だったようだな。」

プリム「はい、先生。」

 

______________

 

ハーマイオニー「あの…プリム、アリエッタ…みんな、ありがとう」

プリム「友達だから当たり前のことをしたまでよ。」

ロン「えぇ…君スリザリンだろ?しかもクロウリーだ。友達だって?」

ハリー「スリザリンはグリフィンドールが嫌いなんじゃ?」

プリム「私は何も偏見はないよ。仲良くしたいと思う人といるだけ。」

アリエッタ「私マグル生まれだけど、プリムとは1番最初に仲良くなったの。」

ロン「…信じられないや。」

ハリー「プリムってとっても強いんだね?」

ハーマイオニー「セクタムセンプラなんて魔法知らなかったわ。勉強不足ね…私プリムに負けないわ。」

プリム「…聞いたの?耳塞いでって言ったのに。」

ハーマイオニー「アリエッタが言ってたじゃない。」

アリエッタ「あ…ごめん、プリム。」

ロン「なんだ、あれって耳が変になる魔法とかじゃなかったのか。」

ハリー「え?なに?なんの話?」

 

何故トロールが2体になったのか考えた。たぶん私達の行動が影響した。本来ならハリー達だけだったけど、あの場には私達がいたから。たぶんそれだ。…3人には関わりたくなかったのに、がっつり介入している。もっと慎重にならないと駄目だ。話がもっと変わる。

 

プリム「アリエッタ」

アリエッタ「なに?」

プリム「もっと慎重にならないといけない。」

アリエッタ「そ、そうね…気をつけないと」




投稿が遅れてしまったお詫びに、短編ではありますが「ドラコマルフォイの思想」を投稿します。読まなくても、本編にはあまり影響がありません。ぜひご閲覧ください。


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ドラコマルフォイの思想

ドラコが主人公の短編です。こちらを読まなくても、本編の「プリムローズが咲いた日」にはあまり影響がありません。


 

ハロウィンの日

豪勢な飾りが広間に広がっていた。

僕を挟むようにクラッブとゴイルが座る。

 

クラッブ「わぁ…すごいうまそうだな!」

ゴイル「ああ、どれから食べよう…」

席につくなり目の前のお菓子の山に手を出していく2人。口いっぱいに頬張る。

 

クラッブ「ドラコも食べろよ、これうまいぞ?」

ドラコ「ああ…僕はチョコレートを食べるよ。」

僕はチョコを頬張る。甘いものは嫌いじゃない。…それに今日はなんだか甘いものを食べたい気分だ。原因はわかってる。ポッターがシーカーになった。嬉しくない。僕のせいだから面白くない。…それからグレンジャーが僕より勉強ができる。面白くない。…マグル生まれのくせに。

 

ゴイル「ドラコ?お腹痛いのか?」

ドラコ「…大丈夫だ、気にするな。」

 

パンジー「プリムは甘いの嫌い?」

女子の話が聞こえてくる。プリムの話だ。思わず聞き耳を立てた。

 

プリム「…嫌いじゃないけど、食べなくても死なないかなって。」

パンジー「何それ?変なこと考えるのね」

プリム「果物は好きだ。程よく甘くて。」

プリムは果物が好きなのか…いいことを聞いた。プリムはこの場であまり食べないだろう…あとでりんごを渡そう。

 

ダフネ「お菓子は子供のうちに食べておくのよ、大人になったら甘いものなんて食べられないわ。太るもの。」

ミリセント「そうよ!それにプリムってば細すぎるわ。…ほら、いっぱい食べて!」

大量のお菓子をプリムの皿に盛り付けるブルストロード。

…プリムが困ってるじゃないか。友達なのに気づかないのか?プリムはそんなに食べない。

 

バタンッと勢いよく広間の扉が開く。

クィレル「トロールが!地下室に!あぁっ!トロールが入り込みました!お知らせしま…」

「あぁぁぁ!!!」

ドラコ「あああぁ!!」

僕は怖くて叫んだ。トロールが!?なんでホグワーツに!?怖くて何も考えられなかった。

 

 

ダンブルドア「しーずーまーれーーー!みな、静かに。うろたえるでない。さぁ、監督生は皆を連れて寮に戻りなさい。先生方は、わしと地下室へ。」

ダンブルドアが大声で叫ぶと全生徒が静かになる。僕もその1人だ。

 

ジェマ「スリザリンの皆、集まって、静かに。さぁ、急いで、皆気をつけて進んで。」

各寮の監督生が指示をして、列になって進む。

 

ドラコ「…プリムはどこだ?パーキンソン」

パンジー「さっきハッフルパフの子が来て、どこかに行ったわ。…忘れものかしら?」

…な、なんだと!ハッフルパフ…おそらくアリエッタだ。

ドラコ「すぐに戻るのか?」

パンジー「知らないわ。プリムのこと止めたら怒られたんですもの。」

ダフネ「プリムのことだから、すぐに戻るわよ。」

ドラコ「そうか…」

下手に動いてトロールに出くわすことを考えたら、血の気が引いた。大人しく寮で待つことにしよう。

 

____________

 

ドラコ「遅い…」

いくらなんでも遅い。…トロールに襲われたか?いや、まさかな。

 

クラッブ「ドラコ、俺達もう寝てもいいか?」

ゴイル「プリムのことなら大丈夫だよ、あいつ頭いいから。」

ドラコ「ああ…僕はプリムが来るまでまつ、先に寝てろ。」

2人はソファーから立ち上がり、部屋へ向かう。

 

ドラコ「なんでこんなに遅いんだ…」

バタンッと寮のドアが開いた音がした。

 

プリム「あれ?ドラコまだ起きてたんだ。」

…よかった。何もなかったのか?…いや、ローブが汚れてる?

ドラコ「どこに行ってたんだ。まさかとは思うが、トロール退治にでも行ったのか?」

僕はプリムの汚れたローブを掴み言う。

 

プリム「まぁ…そんなとこ?ハーマイオニーがトロールに襲われてたから、助けたの。」

ドラコ「君は…死んでたかもしれないんだぞ?グレンジャーを助けただって?マグル生まれと関わるなと言っただろ?」

プリム「死んでないから大丈夫よ。」

ほら、生きてるわ。と僕に抱きついてくるプリム。体温があたたかい。

 

ドラコ「そういうことじゃない!…僕は、君が心配だったんだぞ?わかってるのか?」

プリム「心配?何故?」

ドラコ「そんなの…友達だからだ。当たり前だろ?」

プリム「ふふ、そうね。心配かけてごめんね?ドラコ」

ドラコ「もう危険なことはするなプリム。」

プリム「それは無理。…ドラコに教えてあげる。」

プリムがキョロキョロと周りを見て、人がいないことを確認すると、話しだす。

 

プリム「私はプリム。プリム·ウルバッハ·クロウリー。恐怖を感じず、好奇心を得るウルバッハビーテ症候群を患ってる。だから、恐怖は私の楽しみなの。」

ドラコ「ウルバッハビーテ…」

プリム「それでも友達でいてくれる?」

…そんなこと決まってる。

ドラコ「じゃあ、君が危険なときは僕が守るさ。友達は守るべきだろ?」

プリムはキョトンとしている。…変なこと言ったか?

プリム「うん、それはとても頼もしいよドラコ。」

ドラコ「安心しろ、頭がトロール並みでも僕は友達だ」

プリム「それってクラッブとゴイルのこと?…ふは、確かにドラコが友達でよかったよ。」

腹を抱えて笑うプリム。そんなに面白いか?

 

 

ドラコ「そうだ…プリム、広間であまり食べてなかっただろ?」

プリム「ああ…あまりお菓子は食べたいと思えなくて。」

ドラコ「これなら、食べるか?」

僕はプリムに青りんごを渡した。

プリム「わぁ…ありがとう!私、果物は好きなんだ。…なんでわかったの?」

ドラコ「…さぁな。なんとなくだ。」

ふーん、とりんごを頬張るプリム。

聞き耳を立てたなんて言えない。

 

ドラコ「りんご食べたら寝るんだぞ?出歩くなよ?スリザリンの点が減る。」

プリム「わかってるよ…」

また明日な、と僕は寝室へ向かった。



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クリスマス

今日はクィディッチの試合がある。スリザリンとグリフィンドールの試合だ。もちろんグリフィンドールのシーカーはハリーだ。

 

ロン「ハリー、もう少し食べろよ。」

ハーマイオニー「ロンの言う通りよ。今日は力をつけとかなきゃ。」

ハリー「お腹すいてない…。」

グリフィンドールの席の前を通ると、緊張で食欲がなくなっているハリーがいた。

 

スネイプ「健闘を祈る…ポッター。トロールと戦った君だから、クィディッチの試合くらい簡単なものだろう?例え相手が…スリザリンでも。」

ハリーより、ロンが活躍してたけど。まぁ、スネイプ先生にはそんなことどうでもいいんだ。グリフィンドールで、ポッター。目がリリーに似ていても、絶対親しくなんてできない。私ならそうだ。虐めていたやつに、仲良くしましょうなんて言われたら吐きそうだ。…スリザリンだなと腑に落ちた。

 

ハリー「そうか、あの血は!」

ハーマイオニー「血って?」

…ハリー達のそのあとの会話は聞き取れなかったが、まぁ、スネイプ先生を疑ってるんだろう。…スネイプ先生って損な役回りだ。

 

プリム「パンジー、パンジーは好きな人と自分を虐めてた嫌いな人がくっついたらどうする?」

パンジー「え?…うーん、好きな人がそれで幸せならいいかな?…でも、目に入れたくないわね。一緒にいるとこなんて。」

プリム「…私も。」

パンジー「どうしたの急に、変なこと聞くわね。好きな人でもできた?」

ダフネ/ミリセント「なになに!好きな人!?」

向かいの席に座ってたダフネ達が急いで私の隣の席へ移動する。

 

プリム「え、違う違う。好きな人なんていないよ。」

ミリセント「なんだ…つまらない」

ダフネ「プリムは人脈が広いでしょう?好きな人の1人や2人いてもおかしくないのに」

プリム「いや、私はそういうのは…まだ興味ないかな。」

パンジー「ブレーズはプリムと一緒にいたら退屈しないって言ってた。ブレーズはどう?顔も悪くないわ。」

プリム「え…いや、だから、よくわからないよ。」

この話これ以上は無理だ、と本で顔を隠した。

 

グリフィンドールの席にフクロウが飛んでくる。大きな荷物だ。

ハーマイオニー「郵便の時間には早いわ。」

ハリー「僕宛?初めてだよ!開けてみよう!」

ハリーが荷物を開ける。いつのまにか人集りができていた。

ハリー「…箒だ!」

ロン「そこらへんの箒とは訳が違うよ!ニンバス2000だ!」

ハリー「でも、誰が…?」

確かマクゴナガル先生のプレゼントだ。シーカーとして期待しているのだろう。

 

パンジー「ポッターにニンバス2000が送られてきたんですって!誰がそんなの!」

ダフネ「熱狂的なポッターファンじゃない?」

プリム「ポッターファンか、それって最高だね。傑作だ。」

ダフネ「あら?気に入った?ありがとう。」

マクゴナガル先生が熱狂的なポッターファンであることを想像して笑った。

 

___________

 

 

リー「さぁ、皆さん!今シーズン最初のクィディッチの試合です。今日の試合は、スリザリン対グリフィンドール!選手がポジションに着きました。試合開始のためフーチ先生がフィールドに入ります!」

 

プリム「日陰で観戦したい…眩しい。なんでこんな高いんだ。日に近いじゃないか。」

パンジー「クィディッチの観戦は高いところでないと、意味がないわ。」

プリム「…というか、ハリーの試合は興味がない。」

パンジー「スリザリンの試合なんだから、応援しなきゃでしょ?」

プリム「じゃあ端の席にしよう。影がある。」

パンジー「駄目よ、よく見えないし、押し潰されるわ。」

とまぁ、ずっと席についてパンジーと口論している。

ブレーズ「僕のところに来るといいさ、日陰だし、端っこじゃないから押し潰されないぞ。」

ブレーズがいつのまにか後ろに立っていた。

 

パンジー「あら?そう?じゃあそうしようかしら。」

ブレーズ「ん?パーキンソンの席はない。残念だ。」

パンジー「なによそれ!いいわよ、1番と高いところで観戦するわ!」

ズンズンと見通しのいい席につくパンジー。

ダフネも近くにいたようだ。

ブレーズ「で?プリムは?」

プリム「あー…日陰なら、どこでもいい。」

そうか、とブレーズが手を引いて案内した。

 

フーチ「正々堂々と戦って下さい!期待してますよ。」

リー「ブラッジャーが上がった、続いて金のスニッチ。スニッチのポイントは150点です。シーカーがスニッチをキャッチしたらゲームは終了。クァッフルが放たれ、試合開始です!」

プリム「ねぇ、ブレーズ。私、クィディッチの魅力ってわからないんだけど、どこを見ていたらいいの?」

ブレーズ「それって冗談だろ?…まぁ、女の子なら、少なくないか。ポッターを見ていたらいいじゃないか。きっとまぬけな姿が見れるぞ。」

それのなにが面白いんだ?と思ったが、心中に留めた。

 

リー「アンジェリーナ選手決めた!グリフィンドール10点!」

ハリーを見るとスニッチを探すことを教えられてるのだろう。動きがあまりない。

 

リー「今度はスリザリンがクァッフルをゲット。フレッチリーがキャプテンのフリントにパス!グリフィンドール!また10点追加です!」

ハリー「ぅわあっ!あっ!」

ハリーの箒が不可思議な動きをし始めた。

プリム「あー…この試合だったのね。」

ブレーズ「なにか言ったか?」

プリム「いいえ?ハリーが変な動きしてるなって」

ブレーズ「…ほんとだ。箒に嫌われたんじゃないか?実に滑稽だね。」

…記憶通りなら、ハーマイオニーがスネイプ先生の仕業だと思って、ローブに火をつける。筈だ。

 

プリム「ブレーズ、双眼鏡ある?」

ブレーズ「ああ、一応持ってきた。使うのか?」

プリム「ちょっとね、よく見えないところがあって。」

双眼鏡を借りて、教員席を見る。…スネイプ先生がいる。反対呪文を唱えている。…ローブに火がついた。後ろのクィレル先生が倒れた。

プリム「…うまくいってるな。ありがとう、ブレーズ。」

ブレーズ「ん?もういいのか?」

プリム「ハリーが元に戻ったよ、ほら。」

ブレーズ「…っ!」

スニッチを追いかけるハリー。

とても速い。流石だ。だがスリザリンのシーカーも負けてない。でも技術はハリーが上手だった。スニッチを追いかけ地面へ突き進むように、シーカー2人が競っていたが、スリザリンのシーカーは途中で上がってしまう。地面すれすれで箒を立て直すハリー。

…箒の上に乗りスニッチをつかもうとするとバランスを崩して転がり落ちた。

 

ハリーが気持ち悪そうにした瞬間、口からスニッチが出てきた。

リー「スニッチを取った!ハリー・ポッターがスニッチをキャッチ。150点獲得!」

フーチ先生が笛を鳴らす。

 

フーチ「グリフィンドールの勝利!」

グリフィンドールが歓喜している。

スリザリンは落胆していた。

ブレーズ「…そんなぁ。」

プリム「ハリーはクィディッチのセンスがあるね。」

 

____________

 

アルファがいるフクロウ小屋に来た。

手紙を出しておかないといけない。

スネイプ先生にもいろいろ伝えてくれと言われたしな。

 

“父上、母上

 

ホグワーツでの生活はとても充実しています。学友にも恵まれました。ありがたいことに、パンジーという女の子がいつも仲良くしてくださいます。マルフォイ家のパーティーにいた子です。スネイプ先生に挨拶をしました。シワ消し薬はもう寄越さないでくれとのことでした。

 

プリム”

 

プリム「えっとあとは、ルシウスさんね。」

 

“ルシウス·マルフォイ殿

 

お手紙拝見しました。ありがとうございます。ドラコは箒が得意なので、クィディッチでの活躍がいつか見れたらと思います。

また、勉強熱心なので、ドラコなら優秀な成績を収めるでしょう。よき学友としてドラコが側にいてくれるので、ホグワーツでの生活も充実した日々を過ごせています。

 

プリム”

 

プリム「アルファ、2通だから大変だと思うけど。よろしくね?」

アルファ「お任せください。」

フクロウ小屋のアルファに手紙を渡した。

プリム「さて日本は、式神よね。」

 

烏の式神を出し、あらかじめ書いておいた手紙を渡した。

プリム「日本の五領恭史郎か、賀茂明星に届けて。返事があれば私に届けて。」

カァ!と一鳴きし飛び立つ。

 

“五領恭史郎殿、賀茂明星殿

 

学校生活は、いかがお過ごしですか?

ホグワーツではクィディッチの試合の観戦をしました。とても白熱した試合だったと思います。私はスリザリンという寮に入り充実した日々を過ごせています。

 

プリム”

 

別に特別なことは書いてないけど、2人のことが気になって手紙を出した。

 

_____________

 

クリスマスイブの日

ドラコ「プリムは家に帰らないのか?」

プリム「うん、母上がしばらく家を留守にするから、魔法動物の調査でね。父上も新しい魔法薬の開発で忙しいし。」

パンジー「そうなの?じゃあ、スリザリンであなただけね。残るの。」

え…

プリム「…そうなんだ、なんで?」

ドラコ「当たり前だろ?純血一族のほとんどはそうだぞ?家族で過ごすのが常識だ。」

プリム「へぇ…初耳」

パンジー「あなたって身分は高いのに、一族に関しては知らないことだらけなのね?」

プリム「身分と知識は関係ないぞ、パンジー。」

ドラコ「…じゃあプレゼントは、ホグワーツに贈ればいいのか?」

プリム「プレゼント?あー、明日かクリスマス。…ホグワーツでいいよ。」

パンジー「はぁ…クリスマス休暇って知ってる?」

 

_____________

 

クリスマスが来た

確か…ハリーに透明マントが届くんだよな。

羨ましい。似たようなの作れないかな。

まぁ、作れないから秘宝なんだろうけど。

 

アリエッタ「プリム?プリム?」

スリザリンの寮の扉の前で声がした。

クリスマスはアリエッタと過ごすことにした。スリザリン生は誰もいないので、他寮の生徒が入っても大丈夫だ。

 

 

プリム「やぁ、ようこそ偉大なるスリザリンへ。」

アリエッタ「わぁ…なんか凄い。映画より暗く感じるなぁ。それに寒いかも。」

プリム「そりゃあ、地下だもの。」

アリエッタ「あ、これ!メリークリスマス、プリム!」

プリム「ありがとう…開けていい?」

アリエッタ「もちろんよ!開けて開けて!」

プレゼントの箱を開けると、バレッタが入っていた。とても可愛らしい。

 

プリム「わぁ…バレッタね、とても可愛いわ。ありがとう!」

アリエッタ「最初は本にしようと思ったけど、たぶん被ったりするかなってやめたの。」

プリム「そう…まぁ、本ばかり読んでるものね、私。」

記憶しなければという思いもあり、禁書にも手を出してしまいそうだ。

プリム「そうだ、私からも。メリークリスマス、アリエッタ!」

私からは四季で変わるスノードームをプレゼントした。賀茂からのプレゼントから改良したものだ。

アリエッタ「わぁ…綺麗。魔法がかかってるの?」

プリム「私の特別な魔法がね。四季で景色が変わるようになってる。」

アリエッタ「闇の魔術?」

プリム「まさか。」

 

 

アリエッタ「それ、プリムへのクリスマスプレゼント?」

アリエッタがツリーの下のプレゼントの山を指差す。

プリム「うん…凄いよね。知り合いだけじゃないと思う。」

山積みの光景を見て言う。

アリエッタ「じゃあ、見てみようよ。ドラコのもあるんでしょ?もちろん」

にやけた顔を私に向けるアリエッタ。

 

プリム「あー…ドラコのは、もう寝室にあるよ。」

アリエッタ「えー…なんだったの?」

プリム「ネックレス…持ってくる、ちょっと待ってて。」

ベッド横の引き出しから琥珀色に輝くネックレスを出した。

プリム「これ…綺麗だけど、もったいなくて。」

アリエッタ「わぁ…凄いね、マルフォイらしいや。」

プリム「日本の友達からも、同じような宝石のペンダントを貰ったわ。…ちょっと変な感じよね。」

ネックレスを外して元に戻した。

アリエッタ「ドラコはきっとプリムが好きだね。」

プリム「そう?…私にはよくわからないわ。」

またまたぁ、とアリエッタがソファーで寛ぐ。

他のプレゼントを開けてくと、ブレーズからは、魔法薬学の本のプレゼント。セオドールからは、インクと羽根ペン。ミリセントからは質のよさそうな、猫のブラシ。ダフネからは、癒しの香りがする手袋。パンジーからは、魔女のヘアカタログ。…これは身嗜みに気をつけろというやつか。

 

父上と母上からは、”偉大なるスリザリン生へ”と箱を開けると、シルバーの蛇が動いて指に巻きついた。指輪だった。

 

アリエッタ「あ!…知らない人のは開けない方がいいよ、呪いの類いがかかってることがあるって。ハッフルパフの上級生が話してた。」

プリム「な、そうなのか…残念だ。」

プレゼントは山のようにあったが、ほとんどが暖炉へと消えた。

 

アリエッタ「そういえば、みぞの鏡は見た?」

プリム「みぞの鏡?」

アリエッタ「ほら、ハリーが鏡に映るパパとママに会うの。」

プリム「あー、見てないよ。見た方がいいの?」

アリエッタ「んー、どうかな、あまりおすすめはしない。ダンブルドアがちょくちょく見に来てた筈だからね。」

プリム「じゃあ、絶対行かない。」

アリエッタ「見てもあまりいいものは見れないよ。私達が望むものなんて、都合がよすぎて見てられない。」

プリム「…それも、そうだね。」

 

 

プリム「そうだ、特訓。クリスマス休暇明けに始めるよ。」

アリエッタ「えー、もう少し後でも…」

プリム「駄目よ。早ければはやい程いいわ。それに、私アニメーガスになりたいし。」

アリエッタ「場所は?必要の部屋?」

プリム「もちろんよ。」

 

___________

 

ドラコがクラッブとゴイルに勉強を教えるのを手伝ってくれ、と図書室に来ていた。

 

ドラコ「おい、ここはさっき言っただろう?この薬はこれと同じ種類の薬草だ。」

クラッブ「あー…そっか。」

プリム「待って…そこは、この呪文よ。」

ゴイル「あー…ごめん。」

 

 

プリム「学年末試験は6月よ?まだ勉強するには、はやいんじゃない?」

ドラコ「いや、彼奴らには早く教えないと僕等についてこれない。」

プリム「あー…なるほどね。」

 

使った本を本棚に戻していく。

 

ハーマイオニー「全然違うところを探させちゃったわ。どうして、私忘れてたのかしら。ずいぶん前に借りた本。軽い読み物だけど。」

ハーマイオニーの声が図書室に響いた。

 

ドラコ「ほら、グレンジャーも勉強してる。全然早くないさ。」

プリム「そうね。」

いや、たぶんニコラスフラメルの本だ。賢者の石に辿りついたな。

 

__________

 

必要の部屋の前でアリエッタを待っていた。

毎週時間が合う時に寝る前に特訓をするようになった。…まぁ、最近はアリエッタの勉強会になりつつあるが。

プリム「アリエッタ、遅いよ。」

アリエッタ「はぁ…ごめんプリム」

走ってきたのか息が荒い。

 

プリム「走ってこなくてもいいのに。」

アリエッタ「まぁ、プリムより体力あるからね。」

プリム「その体力は勉強に使うべきよ。」

アリエッタ「ごもっともで…」

 

必要の部屋を開けると、訓練所が作られる。

ひとつは閉心術の訓練、ひとつは開心術の訓練ができる。私はどちらもできるようになった。数ヶ月かかったけど。

 

アリエッタ「プリムはできるから、特訓もういいんじゃ?」

プリム「鍛錬がしたい。それに…まだアニメーガスになれない。」

そうだ、まだアニメーガスになれない。ジェームズポッター達は天才だったのか?…何が劣っているのかわからない。イメージもしっかりしてるのに。

 

アリエッタ「アニメーガスってそんなに重要?」

プリム「んー、重要性はわからないけど、ジェームズポッターにできたんだ、私もできなきゃ悔しいじゃない。」

アリエッタ「なんでそこまでライバル心を…」

プリム「単に嫌い。」

アリエッタ「はは…まぁ、映画は嫌な役柄か。」

 

 

 

アリエッタ「くっ…ぁ、はぁ…もう無理だ。疲れた。」

アリエッタはどちらの術もあと少しという感じだ。

 

プリム「ダンブルドアにも見られないようにするにはもう少しね。」

アリエッタ「…ハリーとドラコは凄いね。」

プリム「待て、私達は1年だ。それを考えれば、私達の方が優秀だと思うよ。」

アリエッタ「そりゃ普通の1年生はこんなことしませんよ。」

 

プリム「…」

床に結界の魔法陣を書いていく。

アリエッタ「プリムなにしてるの?」

プリム「結界をね。…そうだ、私日本の杖はもう使わないことにしたの。あれ、もう使えないわ。ベッドの引き出しに入れてる。」

魔法陣を書き終わると結界が作られる。

 

アリエッタ「なんで結界を?」

プリム「全力を出せるから。」

 

“Bombarda Maxima”(完全粉砕せよ)

呪文を放つとバチバチと火花が散る。

 

アリエッタ「…わぁ、」

 

 

訓練の時間が終わって勉強をする。学年末試験の為だ。アリエッタが訓練に付き合ってくれるので、私も勉強を教えることにした。

 

プリム「そこ、違うわよ。…魔法薬学不得意ねアリエッタ。」

アリエッタ「んー…やっぱり理想と現実は違うっていうか。まぁ、私には難しいね。」

プリム「そう?…楽しいけどな」

えぇ、変わってる、と引かれたが失礼じゃないか。

プリム「あ、そうだ。今更なんだけどね?教えてなかったことあったの。休憩ついでに聞く?」

アリエッタ「え、なになに」

プリム「式札のことは教えたでしょ?」

夢喰い獏の式札を出す。

アリエッタ「うん、身代わりになるやつね。」

プリム「それとは違って、使役神っていうのがあるの。妖怪なんかを自分に使役させるの。」

アリエッタ「妖怪?…大丈夫なの?」

プリム「大丈夫よ、私に従うから。意思は持ってるけど。まぁ、見せた方が早いわね。」

“我に従い、我に仕えよ”

式札が夢喰い獏に変わる。

 

獏「あぁ…久々じゃのプリム。なにかようか?」

アリエッタ「…魔法動物?」

獏「…この小娘は誰じゃ?敵か?」

夢喰いが一回り大きくなり警戒する。

プリム「違うよ、その子はアリエッタ。私の友達で仲間だよ。」

獏「なんじゃ…つまらんの、」

アリエッタ「プリム…」

プリム「私の使役神、夢喰いの獏よ。夢を食べる妖怪。」

アリエッタ「そうなんだ…」

獏「アリエッタ…悪夢は見るか?悪夢は好物じゃ、食べさせてはくれんかの。」

アリエッタ「たまに見るけど…今はいいかな。試験前だし、なんか食べられるって不安だし。」

獏「そうか…なら、プリム。御主は夢を見ないだろう?…最近はプリムの力が強くなったのか、わしの力も高まっての。夢を見せられるようになった。どうじゃ?凄かろう?試してみないか?」

プリム「んー、凄いけど、私はいいかな。」

獏「なんじゃ…つまらん!つまらん!」

拗ねたように式札に戻る夢喰い。

 

アリエッタ「プリムって、ダンブルドアより凄いんじゃ。」

プリム「そんなことはないよ。たぶん。」

 

その日の勉強会も終わり各寮へ解散した。



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緑と赤 (賢者の石 終)

 

 

スリザリン寮の夜

プリム「あれ?ドラコはいないの?」

ソファーで寛ぐクラッブとゴイルに聞いた。

ドラコがいない。いつも一緒なのに。

クラッブ「あー、ポッター達が出歩くのを見つけて追ってったぞ。」

ゴイル「おい、ドラコがプリムに言うなって言ってただろ。」

クラッブ「え?そうだっけ?」

…あー、今日か。夜間外出で罰則くらうの。

 

プリム「そう…なら待ってようかしら。」

少しからかってやろう。あのプライドの高いドラコが自分のせいで50点も減点されてくるんだ。きっと青白い顔して帰ってくるんだろうな。…面白い。

 

夜遅く、スリザリン生はみんな寝室へ行ってしまった。

プリム「罰則って時間かかるのね。…まぁ、禁じられた森は広いのかな。」

映画はすぐ終わったように感じたが、もう2時間は待ってる。遅い……そうだ。そういえば、禁じられた森に行ったことないな。…今度行ってみるか。希少な薬草も沢山ありそうだ。

 

バタンッと寮の扉が開いた。

ドラコ「くそ、酷い目にあった。…禁じられた森で罰則だって?父上に報告してやる。」

プリム「夜間の外出は楽しめた?」

寛いで待っていたソファーから立ち上がり、ドラコの前に立った。

プリム「その様子だと、散々だったようだね?」

まぁ、禁じられた森でヴォルデモートに会って走って逃げてきたんだろう。…ローブや靴が汚れている。…冷や汗だろうか?額も汗で濡れている。

 

ドラコ「プリム…こんな時間まで起きてたのか。」

プリム「まぁ、ドラコがハリー達を追いかけて夜間外出したって聞いたからね。…人にあれだけ夜間外出するなって言ってるくせに。ドラコは思った以上にハリーが好きだね?」

からかうのが面白い。口角が上がるのを我慢出来なかった。

 

ドラコ「彼奴らめ…プリムには言うなと言ったのに。」

プリム「…禁じられた森で罰則でも受けたか?」

ドラコの土のついた革靴とローブを見ながら言うと、ドラコが目を見開いて動揺する。

 

ドラコ「な、なんでわかるんだ。」

プリム「まぁ…勘が鋭いからね?それに、ドラコがさっき言ってた。」

ドラコ「…っ!」

しまった、という顔をしている。幼いドラコは感情が豊かでとても面白い。

 

プリム「さて、ドラコ…夜間外出でスリザリンの点数はいくつ下がったのかな?…10?20?」

ドラコ「…5」

プリム「…5点?思ったより軽いんだね。よかった。」

ドラコ「…50点だ。」

プリム「なんと、50点も!…ああ、やってしまったねドラコ。たかが夜間外出で50点も…マクゴナガル先生にでも見つかったのか?」

ドラコ「…そうだ。」

プリム「スネイプ先生だったら、そんな点数は引かれなかっただろうに。運が悪いね、ドラコ。」

…からかいすぎたのか、若干涙目になっている。あー、まずい。

ドラコ「…プリム、どうか誰にも言わないでくれ。お願いだ。」

プライドエベレストのドラコが涙目でお願い?…あー、なんだろうか。この気持ちは。…しばらく癖になりそうだ。

 

プリム「言わないよ。もちろん。」

口がにやけるのを隠す。

ドラコ「ほ、ほんとか?」

プリム「言わないってば。からかいたくなっただけだもの。」

ドラコ「からかい…満足か?」

プリム「ええ、どうか誰にも言わないでくれ。お願いだ。なんて言葉、プライドの高いドラコから聞けると思わなかったもの。」

大満足よ、とドラコの額を人差し指で押した。うっ…とドラコが怯み睨みつける。

 

ドラコ「ところで、なんでプリムはこんな遅くまで起きてたんだ?」

プリム「あら?友達なんだから、心配するのは当然だと思ってたけど、違った?」

まぁ…半分はからかいたかっただけだ。

 

ドラコ「…そうか。心配をしてくれたのか。」

プリム「そうよ、この私が心配してたのよ?光栄に思いなさい?」

ドラコ「はは…すまない。心配をかけてしまって。」

プリム「何もなくてよかったわ。」

ドラコ「そうだ…実はな、禁じられた森で吸血鬼を見たんだ。」

ドラコが思い出したように話す。

プリム「吸血鬼?…」

…まぁ、ヴォルデモートだけど。ドラコの話を聞いておこう。

 

ドラコ「ああ、あれはとても恐ろしかったよ。…ポッターとファング…あー、ファングは森番が飼っている間抜けな犬だ。禁じられた森にはそいつらと一緒に入ったんだ。」

プリム「…それで?」

ドラコ「ユニコーンが森で襲われているから、犯人を見つけるのが罰則だった。…それで僕らは出会したんだユニコーンの血を啜る化け物に。」

プリム「それが吸血鬼だったの?」

ドラコ「ああ、きっとそうだ。血を啜るなんて、吸血鬼くらいだろう?」

プリム「どうかしら?ユニコーンの血には力があるのよ。」

ドラコ「力?どんな?」

プリム「死に瀕していても、生きながらえることができるの。まぁ、呪われてしまうけどね。…だから化け物ってのは間違いではないわね。」

ドラコ「…じゃあ、死にそうなやつが、血を啜ってたのか?一体誰が?」

プリム「さぁ、わからないわ。…もう遅いわ、寝ましょうドラコ。」

 

ああ、また明日な、とお互いの寝室へと向かった。

 

_______________

 

パンジー「あぁ…やっと学年末試験が終わったわね。」

ダフネ「…まぁ、結果はどうであれね。」

ミリセント「私全然出来なかった…あんなに夜遅くまで勉強したのに。」

プリム「そんなに駄目だったの?みんな?…私の教え方わかりにくかった?」

パンジー「そんなことないわ!プリムの教え方は完璧よ!」

ダフネ「そうそう!」

ミリセント「私達の脳みその問題ね…」

パンジー/ダフネ「そうね…」

同室の皆には丁寧に教えていたが、皆結果は散々だったみたいだ。

 

ドラコ「なに!あの問題は何回も教えただろう?なんで覚えてないんだ!全く。」

クラッブ「ご、ごめんドラコ。」

ゴイル「俺たちも頑張ったんだぜ?…でもほら、俺ら頭悪いから。」

そんな会話が前の方から聞こえた。ドラコ達も似たような結果だったのかもしれない。

 

アリエッタ「プリム!…今夜必要の部屋に来れる?」

アリエッタが私を引き止め耳元で話す。

プリム「ええ、いいわよ。何かあった?」

アリエッタ「たぶん、今夜ハリー達が動くわ。」

プリム「…わかった。」

小さな声で誰にも聞こえない会話は短く済んだ。

 

____________

 

夜、必要の部屋。

プリム「…で、どうする?私達ハリー達に関わりすぎじゃない?そのせいで話も少なからず違ってきてる。」

アリエッタ「だよね、浅はかな行動は控えなきゃ。」

プリム「…だけど私、賢者の石に興味があるのよね。」

アリエッタ「プリム!駄目よ。今回は何もしなくていいの。それにダンブルドアがいるわ。…危険すぎる。」

プリム「そう…そうよね。…でも、閉心術も開心術も習得した。アリエッタはまだだけど。」

アリエッタ「あぁ…プリムだけ行くの?ダメダメもっと駄目よ。」

プリム「でも、死者を蘇らすことができるんだよ?…セドリックがもし、もしも作戦がうまくできなかったとき、第二の手段になる。もちろんスネイプ先生も。」

アリエッタ「…セドリック」

プリム「そう、私達の望みを叶える手段なの。」

アリエッタ「…わかった、私達の為よ。でも!目くらまし術は使って。…どうせプリムだから完全に透明になれるんでしょ?」

プリム「ご名答だよ、アリエッタ。…」

アリエッタ「誰にも見つかっては駄目。わかってる?絶対よ?…話を変えるんだから。」

プリム「わかったわ。」

 

目くらまし術をかけて必要の部屋を出た。

 

_______________

 

プリム「さて、ここね…」

3階の廊下の扉の前に来た。

プリム「そうだ…私音楽に関する魔法知らないわ…しまった。」

…詰んだか…んー、どうしたものか。

プリム「いちかばちか…」

“Avis”(鳥よ)

呪文を唱えると、鳥が4、5羽出てくる。

プリム「…小鳥さん達、歌を歌える?」

鳥「もちろんよ、私達の歌はとても美しいのよ。」

…やった!ギフト様々だな。ありがとうアズラエル。この時ほどアズラエルに感謝した日はない。

 

プリム「申し訳ないけど、扉の中には大きな犬がいるわ。眠れるように歌ってほしいの。」

鳥「わかった。子守歌を歌うわ。」

ハリー達が既に鍵を開けたのだろう、扉の鍵は開いていた。…早くした方がいいかな、ダンブルドアが来るかもしれない。

 

扉を開けると鳥達が中で歌い始める。

…フラッフィーは眠ってしまった。

プリム「…ホグワーツほど安全な学校はないだろうよ。」

床下の扉を開けて素早く飛び込むと、ドサッと悪魔の罠の上に落ちる。

プリム「気持ち悪い…うぅ、我慢だ。」

悪魔の罠が身体に巻きつき、ぐっと下へ落ちていく。

プリム「はぁ…全く趣味の悪い仕掛けだ。」

 

奥の方で羽の音がする。

…よく見ると鍵が扉に突き刺さってる。

あー、ハリー達が鍵鳥を捕まえて鍵を開けたんだな。

プリム「箒に乗らなくてよかった。」

鍵の開いた扉を開けて進んだ。

荒れたチェス盤の上で、ロンとハーマイオニーが、ゆっくりと此方へ近づいてくる。

ロン「うぅ…は、ハリーは?」

ロンは歩き辛そうだ、足でも捻って怪我したのか?ハーマイオニーに支えられながら歩いている。

ハーマイオニー「先に進んだわ…ハリーなら大丈夫よ、それより…ダンブルドアに早く連絡しなくちゃ。」

…すぐ横を通った2人。気づかれていない。目くらまし術がうまくいってるみたいだ。

プリム「…」

静かに、息を殺して、前へ進んだ。

 

開けたところへ出ると、話し声が聞こえた。

 

ハリー「スネイプが…僕を助けようとした?」

クィレル「お前は目障りだったのだよ。…特にハロウィーン以降」

ハリーとクィレル先生が話している。

 

ハリー「じゃ、トロールを入れたのも…?」

クィレル「そう、私だ。…だが、スネイプはだまされなかったがな。みんな地下室へ急いだのにあいつだけは3階へ向かった。…あいつは常に私を疑っている。一人きりにはしなかった。だが、あいつは知らん。私は一人ではない。…決して。さぁ…鏡には何が映る?あぁ…見えるぞ。…賢者の石を持つ私が!…どうやって手に入れる?どうやったら…」

ヴォルデモート「…その子を使え。」

ヴォルデモートの声が響いた。苦しそうな声だ。ユニコーンの血で辛うじて生きながらえているのだろう。

 

クィレル「ここへ来い、ポッター!早く!答えろ…何が見える?どうした、何が見える!?」

ハリー「ぼ、僕がダンブルドアと握手してる!グリフィンドールが優勝して…!」

ヴォルデモート「…嘘だ!」

クィレル「本当のことを言え!何が見えるんだ!?」

開心術をかけたんだろうか?それともはじめからハリーが手にするとわかってたのか、真実はわからない。今はただ息を潜めて、終わるのを待つだけ。それだけだ。

 

 

 

ヴォルデモート「…わしが直に話す。」

クィレル「っ!…あなたはまだ弱ってらっしゃいます。」

ヴォルデモート「…その位の力ならある!」

クィレル先生がターバンを解くとヴォルデモートの顔が現れた。

 

ヴォルデモート「…ハリー・ポッター…また会ったな。」

ハリー「…っ、ヴォルデモート…」

ヴォルデモート「…そうだ。見ろ…この姿。…こうして人の体を借りねば生きられぬ…寄生虫のような様を!…ユニコーンの血でかろうじて生きているが体はとどめられなかった。だが、あるものさえ手に入れれば…自分の体を取り戻す!…そのポケットにある石だ!」

ハリーがハッとして逃げ出す。

 

 

ヴォルデモート「捕まえろ!馬鹿な真似はよせ。死の苦しみを味わうことはない。わしと手を組んで生きればよいのだ。」

ハリー「嫌だ!」

ヴォルデモート「ははっ、愉快だなぁ。親に良く似ておる。どうだ、ハリー?父と母にもう一度会いたくはないか?…2人でなら呼び戻せる。その代わりにある物をよこせ。…そう、それだよ、ハリー。この世に善と悪などないのだ。力を求める強き者と求めぬ弱き者がいるだけだ。わしとおまえなら全て思いのままにできる。さぁ、その石をよこせ!」

ハリーにヴォルデモートが甘い言葉をかける。口説き方が上手い。…参考にしよう。

 

ハリー「やるもんか!」

ヴォルデモート「殺せ!」

クィレル「あっ、あぁぁぁぁ!!なんだ、この魔法は!」

クィレル先生の腕が石となり崩れていく。

 

ヴォルデモート「馬鹿者!早く石を奪え!」

クィレル「わあぁぁぁ!」

クィレル先生が崩れていく。…愛情深いリリーだからこれほどまで強い魔法をかけられたんだろう。

 

ヴォルデモート「ぅおおぉぉ!」

ハリー「あぁぁぁ!」

…ハリーが倒れる。

 

プリム「…」

誰もいないことを確認して、ハリーの元へ歩み寄る。

 

…静かだ。さっきまで闇の帝王がいたとは思えないな。

 

プリム「…ハリーはやっぱり英雄だよ。」

ハリーの手に握られた輝く石。賢者の石。…とても綺麗だ。私は迷わず手に取った。手に入れた。

プリム「…これで、望みが叶う。」

 

ダンブルドア「…その石を、どうするつもりかの?」

…っ!?ダンブルドア…いつだ。いつからいた。…目くらまし術は完璧な筈。

…悪あがきしても、見つかってしまっては意味がない。目くらまし術を解いた。

 

ダンブルドア「ほほ…見事な目くらまし術じゃ、プリム。勉強を頑張っているようじゃの。」

プリム「でもバレたら意味がない。…しかも貴方に。」

閉心術を強くかけ、ダンブルドアの青いビー玉のような瞳を真っ直ぐ見つめた。

 

ダンブルドア「その歳で、閉心術も…とても優秀じゃ。さて、その石を寄越してはくれぬかの。大事なものなのじゃ。」

プリム「…はい、もちろんです。」

ダンブルドアの手の上に賢者の石を置いた。

ダンブルドア「この石は破壊せねばならぬ。…欲しがるものの手に渡ってはいけないものじゃ。」

プリム「そうですね。」

ダンブルドア「プリムは、なぜここに来たのかの?」

プリム「それは…どちらの意味ですか?、この世界?それとも、この場所?」

ダンブルドア「…後者じゃよ、ハリーを助けに来たのかの?」

プリム「はい、もちろんです。ハリーは友達なので。」

にこにこと笑いかけた。頬がすごく引きつった。

プリム「…ところで、ダンブルドア先生はもうご存知なのでしょう?私達のことを。」

ダンブルドア「…そうじゃの。組み分け帽子から聞いたのじゃが、アリエッタとプリムは別の世界から来たようじゃの。」

…やっぱり、バレてる。…アリエッタのことも。

プリム「はい、やはりご存知のようで。」

ダンブルドア「わしは、何もせぬよ。…賢者の石を欲しがるということは、何か目的があるようじゃが、君達はホグワーツの生徒じゃ。よく考え思案する。それが、君達のすべきことじゃよ。」

プリム「私達が何をするか…わかってるんですか?」

ダンブルドア「わからぬ。わからぬが、悪事ではなかろう?…悪事であれば、真っ先にわしに攻撃を仕掛ける筈じゃ。」

プリム「…」

ダンブルドア「もし、悪事をしようとしているのであれば、わしは罰則を与えねばならぬ。ここはホグワーツじゃからの。アズカバンではない。」

プリム「何もしませんよ。言ったでしょう?ハリーを助けに来たんです。あなたがいたので、必要はなかったみたいですが。」

ダンブルドア「…わしは賭けてみようと思うよ、プリムを信じる方にの。」

プリム「私は賭け事は好きではありません。…ハリーをよろしくお願いします。先生」

 

賢者の石を手に入れなかった。触ったのに。何も得られなかった。無駄足だ。…アリエッタにも話した。賢者の石を手にして、ダンブルドアに渡したこと。私達のこともバレていたこと。何もかも。でもアリエッタは許してくれた。失敗したのに。ダンブルドアにバレたのに。

 

アリエッタ「仕方ないわよ、計画通りにいくことなんて、あまりないの。プリムはよくやったわ。」

 

私は…無力だ。

…何も出来なかった。

 

 

_______________

 

 

その日広間はスリザリンの飾りが施されていた。

パンジー「やったわね。スリザリンが優勝だわ。」

プリム「ホグワーツはダンブルドアが校長だ、最後までわからないよ。」

パンジー「どういうこと?」

ふとドラコを見ると嬉しくて堪らないといった表情だ。君のせいで50点ほど低いんだけど。思ったことは口に出さなかった。

 

ダンブルドア「また1年が過ぎた。今年の最優秀の寮を表彰したいと思う。では、得点を発表しよう。第4位グリフィンドール、312点。第3位ハッフルパフ、352点。第2位はレイブンクロー。得点は426点。そして、第1位は472点で、スリザリンじゃ。よーしよしよくやった、スリザリンの諸君。だがのぅ、最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまい。ギリギリで得点をあげた者がいる。」

そうだ…これでグリフィンドールが勝つんだ。

 

ダンブルドア「まず、ハーマイオニー·グレンジャー。冷静に頭を使って見事仲間を危機から救った。50点。」

ハリー「いいぞ!」

ほら…記憶通りだ。

 

ダンブルドア「次にロナルド·ウィーズリー。ホグワーツでも近年まれに見るチェスの名勝負を披露してくれた。50点。…そして。3人目はハリー·ポッター。その強い意志と卓越した勇気をたたえたい。そこでグリフィンドールに60点。」

ハーマイオニー「スリザリンに並んだわ!」

ダンブルドアめ…ダンブルドアめ!…老害め!

パンジー「ぷ、プリム?目つき悪いわよ?」

プリム「…」

 

ダンブルドア「敵に立ち向かうのは大変勇気がいることじゃが、友達に立ち向かうのはもっと勇気がいる。その勇気を称え10点をネビル·ロングボトムに。」

ハリー「やったー、ネビル!」

これで、グリフィンドールが優勝だ。

…記憶通りだ。

 

ダンブルドア「…そして最後に、寮の壁を越え、友を救う手助けをした。その強き信念を称え10点をプリム·クロウリーに。」

…は?な、なに?

 

パンジー「プリム!やったわね!あなた何をしたの?」

プリム「え…いや、私にもよくわからないわ。」

…でも同点になる。どういうことだ?

…そんなことありえない。…いいのか?

 

ダンブルドア「さて、わしの計算に間違いがなければ表彰式の飾り付けを変えねばの。では、グリフィンドールとスリザリンに優勝カップを!」

広間は半分が赤く、半分が緑色に染まった。

 

ドラコ「よくやったぞプリム!」

 

リー「わぁ、やったー!」

 

…頭の中が混乱した。

ダンブルドアをみると、青いビー玉がキラキラと輝いていた。

 

 

____________

 

 

アリエッタ「記憶とは違うけど…なんとか1年乗り越えたわね。」

プリム「…ダンブルドアに見られたんだ、記憶と変わるのは仕方ないさ。」

 

 

 

ハグリッド「さぁさぁ、急げ。遅れるぞ。もうすぐ汽車が出る!みんな急げよ!」

ハグリッドが大声で呼びかける。

 

 

プリム「シャルマンおいで、我が家へ帰るよ。」

シャルマンが、にゃお…と気怠そうに返事する。

プリム「アリエッタは、家ではどんな暮らしなの?」

アリエッタ「んー、至って普通かな?ハーマイオニーと似てるんじゃないかな?わからないけど。」

プリム「そう…たまには、遊びに来てもいいのよ?」

アリエッタ「え!え!いいの?」

プリム「まぁ、忙しくなければ。」

アリエッタ「やった!約束よ?」

 

列車に乗りしばらくすると発車の合図の汽笛が鳴った。




賢者の石が無事終わりました。ここまでご閲覧いただきありがとうございます。楽しんでいただけましたでしょうか?❁⃘*.゚
次回からの「プリムローズが咲いた日」は秘密の部屋の話が始まります。
短編の「ドラコマルフォイの思想」も続きますので、お楽しみください。


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ドラコマルフォイの思想 2

短編です。ドラコが主人公ですので、ドラコ視点となります。



 

 

僕は図書室でいつものようにクラッブとゴイルと一緒に勉強をしていた。

 

ドラコ「おい、ここは何回も教えただろ?何度言われたらわかる?」

クラッブ「ご、ごめんドラコ」

ゴイル「ああ、俺ら学年末試験で死ぬのかな…」

ドラコ「たかが試験だ。何馬鹿げたことを言っている。ほら…集中しろ。」

 

正直、2人に教えるのはとても疲れる。でも、友達だから仕方ない。…プリムと教えれば楽だけど、プリムは最近忙しそうだ。

 

 

ハリー「きっとスネイプだ。…今夜ハグリッドのところへ行こう。」

 

ふとポッター達の会話が少し聞こえた。何の話かはわからない。…今夜?…何をする気なんだ。

 

_____________

 

その日の夜、寮へ戻ろうと廊下を歩いていると、ポッター達が森番のところへ行くのを見かけた。

 

ドラコ「おい、あれ…ポッター達だよな?」

クラッブ「ああ、そうだな。もう消灯時間だろ…いいのか?」

ゴイル「いや、見つかったら、グリフィンドールは減点されるぞ。」

 

減点…面白そうだ…

 

ドラコ「おい、プリムには絶対に言うなよ?」

僕は2人に忠告して、ポッター達の後を追った。

 

 

…何をしているんだろうか。分厚い扉からは中の音がよく聞こえない。

曇った窓を覗いてみた。…森番とグリフィンドールの3人がいる。

 

ドラコ「…なんだ、あれは。」

テーブルの上には大きな卵…動いているみたいだ。……大きく揺れた卵からは、ドラゴンが産まれた。

 

ドラコ「…あ、あんなの。学校で野放しにするなんて、どうかしている。」

やばい!声が大きく出てしまったのか、窓から覗いているのを気づかれてしまった。

急いでその場から逃げた。

 

はぁ…はぁ…

僕はとんでもないものを見たかもしれない。

 

マクゴナガル「おや、ミスターマルフォイ。こんな真夜中に、どうかなさいましたか?」

ドラコ「先生、大変なんです…はぁ…ポッター達が…外で…」

マクゴナガル「ミスターポッターが外出を?」

 

落ち着きなさいと先生が僕の息が整うのを待ってくれた。

 

マクゴナガル「落ち着きましたか…ミスターポッターはどこに?」

ドラコ「こっちです。森番のところにいます。」

 

ロン「やばいよ。マルフォイにまで見られちゃったし。」

ウィーズリーの声が近くで聞こえた。ポッター達も僕に見つかって、焦って帰ってきたんだろう。

 

ハリー「どうして困るの?悪いこと?」

ロン「悪いさ…」

マクゴナガル「…こんばんわ。」

 

 

 

 

マクゴナガル「いいですか。どんな理由があろうと夜中に抜け出して学校を歩き回ってはいけません。今回の規則違反の罰として、50点減点します。」

ハリー「50点!?」

僕はとても気分が良かった。何故か?そんなの決まってる。ポッターが痛い目にあった。それが嬉しい。

 

 

マクゴナガル「一人50点です。2度と同じことを起こさぬよう4人には処罰を与えます。」

…は?4人?

 

ドラコ「すみません、先生。聞き違いでしょうね?今、4人とおっしゃいました?」

 

マクゴナガル「その通りです、ミスターマルフォイ。事情はどうあれ、あなたも消灯時間を過ぎて出歩いていたのです。あなたも一緒に罰を受けるべきです。」

なんだと!?…くそ、にやけたポッターの顔が憎たらしい。

 

 

 

 

フィルチ「昔はもっと厳しい罰があった。両手の親指を紐でくくって地下牢に吊るしたりしたもんだ。あの叫び声が聞きたいねぇ。」

 

ドラコ「…」

僕は想像したことを後悔した。

 

フィルチ「今夜の処罰はハグリッドと一緒だ。一仕事してもらうよ。暗い森でな。哀れな生徒達だ。…なんじゃい、まだあんなドラゴンのことでめそめそしてんのか?」

 

ハグリッド「ノーバートはもういねぇ。ダンブルドアがルーマニアに送った、仲間の所に。」

ハーマイオニー「その方が幸せじゃない、仲間といられて。」

今回はグレンジャーがまともだ。幸せかどうかは知らんが、ホグワーツはドラゴンの飼育場じゃない。

 

ハグリッド「ほんでも、ルーマニアが嫌だったら?他のドラゴンにいじめられたらどうする?まだほんの赤ん坊なのに。」

フィルチ「いい加減にしゃきっとすることだな。これから森に入るんだぞ。…覚悟していかないと。」

…僕はまた想像して後悔した。

 

ドラコ「森へ!?冗談じゃない…森へ行くなんて。生徒は入っちゃいけないはずだよ。だって森には狼男が!」

フィルチ「それよりももっと怖いのがおる。せいぜい怖がれ。」

僕の抗議は無駄だった。

 

ハグリッド「よし、行こう。」

しぶしぶ森へ入った。

 

ハリー「ね、ハグリッド。それは何?」

ハグリッド「探してたものだ。見ろ、ユニコーンの血の痕だ。この間も一頭死んどった。こいつはだいぶひどい怪我をしてるらしい。いいか、俺達で傷ついたユニコーンを見つけるんだ。…ロンとハーマイオニーは俺と来い。」

ロン「わかった…」

ハグリッド「ハリーはマルフォイと一緒に行け。」

くそ…ポッターとだと?不安しかない。

ドラコ「OK。じゃあファングを貸して!」

ハグリッド「…良かろう。言っておくがファングは臆病だぞ。」

…怯えた顔を僕に向けるファング。役立たずめ。

 

 

ドラコ「父上が聞いたら何て言うか。こんなの召使の仕事。」

くそ…ローブが汚れた。革靴も土塗れ。最悪だ。早くユニコーンを見つけて帰るぞ。

ハリー「ドラコ、まさかとは思うけど、君もしかして怖い?」

…は?

ドラコ「怖い?僕が?…今の聞いたか?来い、ファング。」

何か唸り声が聞こえた気がした。ファングの動きが止まる。

ハリー「ファング、どうした?」

…吸血鬼だ。吸血鬼がユニコーンの血を啜ってる。…そうかあの森番め!僕達に吸血鬼を捕まえろって?…無理がある!!

ドラコ「ぅわあああぁぁぁ!助けてー!」

 

僕は逃げた。ポッターがいないことに気付いたのは、森を抜けた後だ。

 

 

ドラコ「…ふん、僕は知らない。」

そうだ、ポッターがどうなろうとどうでもいい。森番のところにランタンを返して寮へ戻った。

 

________________

 

 

寮の扉を開けた。

ドラコ「くそ、酷い目にあった。…禁じられた森で罰則だって?父上に報告してやる。」

プリム「夜間の外出は楽しめた?」

…っ!?

 

プリム「その様子だと、散々だったようだね?」

ドラコ「プリム…こんな時間まで起きてたのか。」

プリム「まぁ、ドラコがハリー達を追いかけて夜間外出したって聞いたからね。…人にあれだけ夜間外出するなって言ってるくせに。ドラコは思った以上にハリーが好きだね?」

クラッブとゴイルだな…くそ…

 

ドラコ「彼奴らめ…プリムには言うなと言ったのに。」

プリム「…禁じられた森で罰則でも受けたか?」

…なんでわかるんだ!?僕は思わず目を見開いた。

 

ドラコ「な、なんでわかるんだ。」

プリム「まぁ…勘が鋭いからね?それに、ドラコがさっき言ってた。」

ドラコ「…っ!」

しまった…声が出ていたか…

 

プリム「さて、ドラコ…夜間外出でスリザリンの点数はいくつ下がったのかな?…10?20?」

ドラコ「…5」

プリム「…5点?思ったより軽いんだね。よかった。」

プリムは笑ってる。僕に起きたことが全部わかるかのように。

 

ドラコ「…50点だ。」

プリム「なんと、50点も!…ああ、やってしまったねドラコ。たかが夜間外出で50点も…マクゴナガル先生にでも見つかったのか?」

ドラコ「…そうだ。」

プリム「スネイプ先生だったら、そんな点数は引かれなかっただろうに。運が悪いね、ドラコ。」

…僕はだんだんと、自分がしたことがとても悪いことのように思えた。ポッター達も同じことをしたのに。僕は惨めに思えた。目頭が熱くなる。

ドラコ「…プリム、どうか誰にも言わないでくれ。お願いだ。」

懇願した。お願いなんて父上にしかしたことがない。…僕は初めて父上以外の相手にお願いしている。

 

プリム「言わないよ。もちろん。」

ドラコ「ほ、ほんとか?」

涙で滲んだ世界は、拭ってクリアになる。

プリム「言わないってば。からかいたくなっただけだもの。」

 

…プリムが僕をからかった?少し悔しい。

ドラコ「からかい…満足か?」

 

プリム「ええ、どうか誰にも言わないでくれ。お願いだ。なんて言葉、プライドの高いドラコから聞けると思わなかったもの。」

大満足よ、と僕の額を人差し指で押した。僕は怯み睨みつけた。…何をするんだという意味を込めて。

 

ドラコ「ところで、なんでプリムはこんな遅くまで起きてたんだ?」

プリム「あら?友達なんだから、心配するのは当然だと思ってたけど、違った?」

…僕は胸のあたりがあたたかく感じた。

 

ドラコ「…そうか。心配をしてくれたのか。」

プリム「そうよ、この私が心配してたのよ?光栄に思いなさい?」

ドラコ「はは…すまない。心配をかけてしまって。」

プリム「何もなくてよかったわ。」

ドラコ「そうだ…実はな、禁じられた森で吸血鬼を見たんだ。」

…プリムになら教えてやろう。

プリム「吸血鬼?…」

 

ドラコ「ああ、あれはとても恐ろしかったよ。…ポッターとファング…あー、ファングは森番が飼っている間抜けな犬だ。禁じられた森にはそいつらと一緒に入ったんだ。」

プリム「…それで?」

ドラコ「ユニコーンが森で襲われているから、犯人を見つけるのが罰則だった。…それで僕らは出会したんだユニコーンの血を啜る化け物に。」

プリム「それが吸血鬼だったの?」

ドラコ「ああ、きっとそうだ。血を啜るなんて、吸血鬼くらいだろう?」

プリム「どうかしら?ユニコーンの血には力があるのよ。」

ドラコ「力?どんな?」

プリム「死に瀕していても、生きながらえることができるの。まぁ、呪われてしまうけどね。…だから化け物ってのは間違いではないわね。」

吸血鬼じゃないとすれば、瀕死の誰かが血を…誰が?

 

ドラコ「…じゃあ、死にそうなやつが、血を啜ってたのか?一体誰が?」

プリム「さぁ、わからないわ。…もう遅いわ、寝ましょうドラコ。」

…僕は考えるのをやめた。ポッター達に関わるとろくな事がないと、今日学んだ。

 

 

ああ、また明日な、とお互いの寝室へと向かった。




ハリポタとは全然関係ないことなんですが、テレビでプラダを着た悪魔を見ていて「小柄な男はプライドが高ーい」って台詞があったんです、それってドラコみたいだなぁと思ってしまいました。作者はドラコ推しなので、そんなところも可愛いと思えてしまうのですが…‪
次回も短編「ドラコマルフォイの思想」をお楽しみください!


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秘密は上手く隠すこと

 

 

早朝、式神から手紙が届いた。もちろん日本からだ。

“プリムへ

 

大ニュースがあります!マホウトコロで僕はクィディッチのチームの一員になりました!それもシーカーだ!僕はまだ興奮が抑えられません。賀茂はいつも成績が優秀で、女子では1番じゃないかな?呪術学っていうのが今年から始まるんだけど、プリムは知ってる?賀茂はそれが楽しみでもう勉強してる。

 

五領恭史郎”

 

プリム「シーカーだって?、そこまで才能があったのか…」

 

シルビア「プリム?ドラコから手紙が届いてるわよ?あと…アリエッタ?かしら?」

手紙を読んでいると、部屋の外からシルビアさんの呼ぶ声がする。

ドラコとアリエッタからも手紙が届いたみたいだ。

プリム「はい、今行きます母上」

ドタバタと駆け下りると、女の子がそんなに音を立てて下りてきてはいけません!と怒られた。

プリム「ごめんなさい母上、手紙が待ち遠しくて」

シルビア「…全く、気をつけるのよ?」

はい、母上と手紙を受け取った。

レオナルド「はぁ…ただいま、」

レオナルドさんが新薬を魔法省に登録して帰ってきたみたいだ。…随分と早い。

 

プリム「父上?早い帰りですね?」

レオナルド「ああ…実は魔法省で耳にした情報が気がかりでね。早々に帰ってきたよ。」

シルビア「どうかなさったんですか?」

レオナルド「実は抜き打ち調査が始まるらしい。…屋敷にある闇の代物は離れに移そう。あそこは見つからないからね。」

あー…なんかそんなこともあったような。…もうそんな時期なのか。

 

レオナルド「プリム、手紙を読んだら部屋を整理しなさい。…プリムの部屋が1番多いんだからね。」

…な?そうなのか?

プリム「は、はい父上。」

静かに急いで階段を上がった。

 

プリム「闇の代物なんて、置いてない筈だけどな…な?ビーテ?」

ビーテ「僕はわからないけど…僕の色そろそろ戻してよ!」

…今のビーテは全身ピンク色である。何故か?シルビアさんがある日言ってたんだ。プリムはもっと女の子らしくしなきゃだめよ?部屋だって…ピンク色のものとか置きなさいって。だから私の部屋で1番存在感のあるビーテをピンク色にしたのだ。

プリム「シルビアさんからの頼みだ、しばらく我慢だな。」

ビーテ「僕の美しい翼が!嘴がああ!」

グァ!!とビーテが嘆いた。

 

 

“親愛なるプリム·クロウリー殿

 

父上が今朝方、屋敷にあるものを整理していた。魔法省が抜き打ち調査するらしい。プリムのところも少なからず危ないだろう。気をつけろ。今年の揃える学用品は一緒に行かないか?暇が合えばいいのだが。

 

ドラコ”

プリム「…」

マルフォイ家は慌ただしくなってそうだな。

 

“プリムへ

 

プリムの家に会いに行けなくてごめんね?

知らないところへ行っては駄目って…私の家族はわりと過保護なのかも。

両親は学校の先生なんだけどね、魔法界のことは知らないから、今度ダイアゴン横丁へ一緒に行くの。プリムも一緒にどう?そしたらきっと遊べるようになるわ!

 

アリエッタ”

プリム「…」

アリエッタのご両親は厳格な方なのだろうか?…ん?まてよ、

 

プリム「2人に誘われたな…どうしようか」

アリエッタはマグル生まれ。初めてご両親を連れてくる。…ドラコは純血主義。ルシウスさんも一緒だ。

 

プリム「…2人を会わせると面倒だな。1人で行こう。」

2人にはそれとなく断りの返事を書いてアルファに届けるように頼んだ。

さて…日本へ祝いの返事を書いておこう。

 

“五領恭史郎殿、賀茂明星殿

 

クィディッチのチーム加入おめでとうございます。恭史郎ならきっと素早くスニッチを掴み取る優秀なシーカーになれるでしょう。ワールドカップも夢ではないですね。

明星は私に負けず劣らず優秀な生徒です。監督生にもなれるかもしれないですね。マホウトコロでの生活、充実しているようで嬉しい限りです。呪術学に関しては何もわからないです。力になれずごめんなさい。今年もお互い頑張りましょう。

 

プリム”

 

呪術学に関しては少し知ってる。ギフトのおかげで。

呪術師なるものが主に使う魔法だ。闇の魔法に近い極めて危険で難しい。ようは迷信や怪談が力を持ってしまうのが呪術だ。呪術とは読んで字の如く、呪いなのだ。

 

プリム「…日本の五領恭史郎のところへ届けて。返事があれば持ってくるのよ。」

式神を出して、手紙を渡した。

 

シャルマンが部屋を開けて入ってくる。

シャルマン「プリム、レオナルドが来るぞ。」

レオナルド「プリム?部屋は整理したかい?」

プリム「ああ…えっと、どれが闇の代物か分からなくて」

 

レオナルドさんが部屋に入ると、固まった。

 

レオナルド「……ビーテ、なんだその色は」

プリム「シルビアさんがピンク色が好みだと。」

レオナルド「そうか?…シルビアがいうなら。」

仕方ないか、とレオナルドさんは納得してくれた。…ビーテごめんよ、私のちょっとした反抗だ。

 

レオナルド「ところで、プリム…プリムの部屋のものはほとんど闇の代物だよ?」

…よ?なんだと?

プリム「これは?」

レオナルド「ああ、これはただのランタンじゃない。魅惑のランタン。人攫いがよく使うんだ。このランタンを持ち歩くと子供が列になってついてくるらしい。」

プリム「…なんで、私は効かないんだ。」

レオナルド「それはプリム、最初に手にした時に火を消しただろ?所有者になったんだ。効かないよ。」

なんと…恐ろしいランタンを手にしたんだ私は。そりゃ、この繊細な装飾に惚れたんだが。

 

プリム「こ、これは?」

普段使ってる衣装ダンス

レオナルド「ああ、それも。」

レオナルドさんが横の印字を杖で叩くと、タンスの形状が変わり拷問器具になる。

…は?今まで知らずに使ってたのか?全部?

印字はボージンアンドバークスと変わっていた。

プリム「…あんまりだ」

 

部屋を整理すると、ほとんどのものがなくなった。まぁ、離れに移っただけなんだが。

 

プリム「ああ…私は何も知らずに闇に囲まれていたのか。」

このジメジメとした、日の当たらない部屋にはぴったりな家具達だったけど。

 

シルビア「プリム·クロウリー!」

プリム「は、はい!」

突然名前を叫ばれ驚く。部屋までシルビアさんが駆け上がってくる音がする。

シルビア「…っ!!ビーテを戻しなさい!」

レオナルドさんが告げ口したな。

プリム「で、でも母上がピンク色のものを部屋に置けって」

シルビア「ええ、言いましたね。ビーテは生き物なの!!今すぐ戻さないと離れに移したもの全部処分しますからね!」

プリム「それはあんまりだ!」

シルビア「いいえ!私はすると言ったらしますよ。…全く、あなたはあなたらしくいればいいわ。そんなに嫌なら言えばいいのに、ビーテをピンク色にするなんて…戻さないと処分ですよ?わかりましたね?」

プリム「は、はい、今すぐに!」

ビーテの呪文を解いて元に戻した。

 

直後に玄関をノックする音がした。

…誰だろうか。…もう抜き打ち調査か?早いな。

シルビア「はい、今出ます」

シルビアさんが玄関を開けるとなんだかピシッとしたスーツにローブ姿の気難しそうな人がいた。

魔法省役員「魔法省の抜き打ち調査だ、上がらせてもらうよ。」

シルビアさんがどうぞ、という前にズカズカと家に上がって家の中を漁る。

…感じの悪い連中め。

 

プリム「…シャルマン、おいで」

シャルマンは私の後ろについて歩き、部屋に入る。

 

魔法省役員「…この屋敷は怪しいところだらけだ、隅々まで調査しろ。子供部屋もだ!」

プリム「…」

バタンッと勢いよく部屋の扉が開くと、大人2人が子供部屋を漁る。…随分なご趣味だ。

 

 

魔法省役員「…なにもないぞ、くそ」

プリム「…おじさん達は何を探してるの?」

純粋な子供のフリをした。

 

 

魔法省役員「…おじさん達は子供に悪いことが起こる、危ないものを探しているんだ。何か知らないかい?」

1人は私の目線に合わせて身体を屈める。

プリム「…知らないわ。」

 

魔法省役員「本当に?」

1人が私を真っ直ぐ見つめ心を覗く。…子供に開心術とはご立派だ。

プリム「…本当よ?」

だが、私には無意味だ。何も覗かせない。

魔法省役員「くそ…この子供閉心術を使いやがる。」

レオナルド「私の娘に何をするんだ。」

レオナルドさんが怒っている。

プリム「父上」

私はレオナルドさんの後ろに隠れた。

魔法省役員「その子供普通じゃないな、何か闇の代物を身につけてるのか?」

レオナルド「娘に手を出したら、ただじゃおかないぞ…」

レオナルドさんが静かに杖を向ける。

魔法省役員「ふん…まぁいい、撤退だ!次に行くぞ。」

魔法省の抜き打ち調査は済んだみたいだ。…人の家に上がり物を漁るとは、この仕事はしたくないな。

 

レオナルド「プリム…大丈夫かい?何かされたかい?」

プリム「…心を覗かれたけど、見せてない。」

レオナルド「そうか…よかった。」

シルビア「ああ、プリム…全く、子供に開心術を?なんて野蛮なの?」

レオナルド「僕も同じことを思ったよ」

2人が私を抱き締めた。あたたかい。とても。…私の体温が冷たいのか?

 

________________

 

ダイアゴン横丁

 

プリム「まったく…これが教科書なんて」

 

「泣き妖怪バンジーとナウな休日」ギルデロイ・ロックハート著

「グールお化けとクールな散策」ギルデロイ・ロックハート著

「鬼婆とオツな休暇」ギルデロイ・ロックハート著

「トロールとのとろい旅」ギルデロイ・ロックハート著

「バンパイアとバッチリ船旅」ギルデロイ・ロックハート著

「狼男と大いなる山歩き」ギルデロイ・ロックハート著

「雪男とゆっくり一年」ギルデロイ・ロックハート著

 

書店で購入しようと手にしたものをパラパラめくると、理想の教科書の内容とはかけ離れたものだった。…ギルデロイロックハートめ。

一階ではサイン会なるものが開かれている。

記者「通してください!すみませんマダム!失礼お嬢さん!日刊予言者新聞ですよ!」

 

上からの景色は…まぁ、言わなくてもわかるだろう。

書店の入り口で、プラチナブロンドが輝いているのが見えた。人集りをみてすぐに二階へ上がる。

ドラコ「やぁ、プリムじゃないか。元気だったか?」

プリム「ご機嫌ようドラコ、さっきまでは元気だったわ、さっきまでは。これ見てよ。…これが教科書なんて馬鹿げてる。」

ドラコに見ていた教科書…本を押しつけた。

パラパラとドラコが読み進めていくと、眉間にどんどんシワがよる。

ドラコ「…こんなので授業ができるのか?」

プリム「さぁ。…まぁ、でも買わなきゃね。一応教科書だから。二階で会計した方がいいわよ。一階はサイン会が始まるから。」

ドラコに渡した本を取って、会計を済ませた。

プリム「サインが欲しいなら一階ね。」

一階の人集りを指差したが、僕には関係ないと言っていたので二階で会計するだろう。

本は全て揃えたので店を出た。

赤毛が見えたので、あのシーンが始まるのかもしれない。

 

アリエッタ「プリム!」

プリム「アリエッタ!元気だった?」

アリエッタを強く抱き締めた。

 

アリエッタ「ええ、もう教科書買ったの?」

プリム「うん、あ、今は行かない方がいいかも、たぶんハリー達がいるわ。」

アリエッタ「そう…じゃあもう少し後にしよう。」

シルビア「プリム?…お友達?」

シルビアさんとレオナルドさんが私の隣に立つ。

プリム「あ、父上母上。私の友達のアリエッタです。」

アリエッタ「こんにちは、アリエッタ·ロリスです。」

レオナルド「あー、君がアリエッタかい?…娘から聞いているよ、仲良くしてくれてありがとう。私はレオナルド、こちらは妻のシルビアだ。よろしくね?」

アリエッタ「いえいえ!こちらこそ、私マグル生まれなのに…」

シルビア「ふふ、気にしなくていいのよ、生まれなんて、同じ魔法使いなんだから。」

プリム「そうよ、アリエッタ。私達は友達でしょ?」

アリエッタ「うん、ありがとうプリム。」

???「アリエッタ?」

アリエッタ「あ、パパ、ママ!えっと…私のパパとママ。」

ルーカス「こんにちは、ルーカスロリスです。こちらは妻のジュディ。」

ジュディ「こんにちは、魔法使いのみなさん…ここはとても不思議なところですね」

レオナルド「ダイアゴン横丁は初めてですか?魔法界では1番大きな市場で、魔法使いのあれこれは此処で全て揃うんですよ。」

ルーカス「なるほど、確かに物珍しいものがたくさんある。」

シルビア「そうだ、よかったらご案内しますよ?ね?レオナルド?」

レオナルド「そうだな、初めてのものばかりでしょうから、ぜひ。いかがですか?」

ジュディ「…そうね、お言葉に甘えましょうか、ルーカス」

ルーカス「ああ、そうしようか」

…よかった。アリエッタのご両親とはうまく仲良くできるみたいだ。

 

 

ドラコ「プリム、ここにいたのか…あー、アリエッタ」

アリエッタ「ドラコ、元気だった?」

ドラコ「ああ…」

ドラコの顔色が悪い。まぁ、そうだろうな。

 

ルシウス「これはこれは、久しぶりですなプリム殿。ドラコとは同じ寮で仲良くしてくださっているようで…そちらは?」

そう、ご立派な父上がいるからね。

 

アリエッタ「アリエッタ·ロリスです。」

ルシウス「ロリス…?半純血かな?」

アリエッタ「いえ、マグル生まれです」

ルシウス「…」

眉が上がり本気か?って表情だ。この表情には慣れた。

 

プリム「アリエッタは、マグルについてよく教えてくださるよき友人です。ね?ドラコ?」

ドラコ「…ん、」

ドラコはまだルシウスさんが怖いみたいだ。

ルシウス「…」

ドラコ「…プリムはご両親が学者だから、知らないことに対する探究心が強いのです。父上。」

顔色が悪くなり口が震えながら、私を庇ってくれてる?…なんて健気なんだ。本当にドラコか?

 

ルシウス「秀才なご両親に似たのですな、プリム殿…」

プリム「はい、おかげで学友に恵まれています。」

2人の腕を組み引き寄せた。

ルシウス「…これからも、ドラコとはよき学友でいてくださると有難い。」

…ルシウスさんは、たぶん私の家の、クロウリーの地位や名声が欲しいんだ。

プリム「ええ、もちろんです。」

 

_______________

 

ホグワーツ特急の汽笛がなる。

 

ドラコ「プリム…僕のコンパートメントに来い。」

ブレーズ「いや、僕のとこに来た方がいい。狭くないしな。」

プリム「…」

なんでこんなことになったか。少し話を遡ると、ドラコがどうせまた席を取ってないだろうと声をかけてきた。それを聞いたブレーズがドラコの席はクラッブとゴイルがいて狭いぞ僕のとこの席の方が快適だ。…と板挟みになっているわけだ。

 

パンジー「あらあら、なに。プリムの取り合い?」

…パンジーに気づかれた、厄介だ。

 

プリム「あー…2人とも、悪いけど、アリエッタと一緒に乗るの。」

ドラコ/ブレーズ「なに!?」

プリム「ごめんね?先に約束してたし、話したいこともあるから…」

2人が項垂れる。…なんか、この2人って似ているところがあるんだよな。まぁ、だからぶつかるのか。

パンジーがつまらなそうに席に帰る。

 

プリム「アリエッタ!」

アリエッタ「プリム!遅いよー。」

プリム「あー…まぁ、いろいろあって。シャルマンおいで」

コンパートメントの中にシャルマンを入れ、マフリアートをかける。

 

プリム「さて、今年は秘密の部屋ね。」

アリエッタ「そう秘密の部屋…プリムってスリザリンの血筋なんでしょ?家は。今回は目をつけられるわ。きっと。」

プリム「あー、でも、蛇舌じゃないよ。話せるけど。」

アリエッタ「は、話せるの?本当?なんで?」

プリム「まぁ、意識を向ければね。…シャルマンとも話せる。全種言語力で。ね?シャルマン」

にゃお、と気怠そうに返事する。

アリエッタ「プリムってほんとずるいなぁ…」

プリム「…私は箒ができないから、アリエッタが羨ましいわよ?」

アリエッタ「プリムに羨ましいって言われるなんて、誇らしいわ。」

プリム「アリエッタも今回は注意しないと駄目よ。狙われるわ。」

アリエッタ「そうよね…」

アリエッタの顔が曇る。石になる。それを想像したんだろう。

 

プリム「鏡を常に持ってて。鏡は持ってる?」

首を横にふるアリエッタ。

プリム「…じゃあこれ、大事なものだから、無くさないでね?」

アリエッタにコンパクトを渡す。ドラコから貰ったものだ。

アリエッタ「すごく高そう…いいの?」

プリム「ええ、アリエッタの為だもの。でも、絶対無くさないで。」

わかった、とアリエッタが大事にしまう。

 

プリム「アリエッタって、お菓子好きよね」

アリエッタ「うん、だって美味しいじゃん」

口いっぱいに、かえるチョコを食べているアリエッタ。

プリム「まぁ…そうね。」

私はリンゴを食べていると、突然汽笛がなる。…ん?ホグワーツはもっと先じゃないか?

 

アリエッタ「あー、ハリー達が車使ったのね。きっと」

プリム「…あー、そうか。」

なるほど、その汽笛か。

 

プリム「そうだ、あの日記帳って何か使えないかな。…考えたんだけど、敢えて復活させて味方につけるとか。それか、日記帳のまま改心させる。」

アリエッタ「どうだろう、確かにあの分霊箱は、1番安定した魂だから人間的なものに近いかも、でも復活させるのは危険だわ。どうせやるなら後者ね。」

プリム「…まぁ、魂吸い取られるけどね。」

アリエッタ「じゃあどっちも無理ね。」

プリム「…もうすこし考えるわ。」

アリエッタ「まぁ、どうであれヴォルデモートだから、救えないって考えがまともね。」

プリム「…そうよね。」

考えても今は何も浮かばないのでマフリアートを解いた。




ルーカス·ロリス
アリエッタの父親。学校で歴史を教えている。
アリエッタがホグワーツに行ってから魔法の世界の歴史にふれ、純血主義という考えがアリエッタの学校生活を暮らしづらくするのではと思い、あまり魔法使いのことをよく思っていない。

ジュディ·ロリス
アリエッタの母親。服の仕立て屋をしている。
新しいことに敏感で、魔法の世界も素敵なところだと思っている。


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運命を開く

 

今日は薬草学の授業がある。

ハッフルパフのスプラウト先生が教える授業だ。

 

プリム「…グリフィンドールっていつも遅くない?なんで?」

グリフィンドール生が揃うのはいつも授業が始まる直前だ。ふと不思議に思った。

パンジー「ギリギリまで寝てるのが半分以上いるって噂よ。」

プリム「あー…そうなのね。」

ロンを浮かべると納得がいった。

 

スプラウト「おはよう皆さんおはよう皆さん。」

「おはようございますスプラウト先生。」

スプラウト「3号温室は初めてですね2年生の皆さん。…さぁもっと寄って。」

目の前にはうねうね動く葉。…マンドレイクだっけ。確か。記憶から知識を引っ張り出す。

スプラウト「今日はマンドレイクの植え替えをやりますよ。誰かマンドレイクの根の特徴が分かる人?」

…やっぱりマンドレイクか。

 

ハーマイオニーが手を上げた。

スプラウト「ミスグレンジャー。」

ハーマイオニー「マンドレイクは、マンドラゴラともいい、石に変えられた人を元に戻す薬として使われます。また危険な面もあり、マンドレイクの泣き声は、聞いた人の命取りになります。」

スプラウト「その通り!グリフィンドールに10点!」

完璧だ。ハーマイオニーってやっぱり頭いいよね。…私のはギフトだから。…ドラコが悔しいという表情をしている。ドラコも頭いいんだよね。クラッブとゴイルに教えてるだけあって。そんなくだらないことを沸々と考えた。

 

スプラウト「…さて、このマンドレイクはまだ苗なので、泣き声を聞いても死にはしませんが、数時間は気絶するでしょう。ですから安全のために耳当てを配ります。では耳当てをつけて早く!完全にふさいで…よく見てなさい。まず、苗をしっかりとつかんで、鉢から勢いよく引き抜きます!」

瞬間、マンドレイクの泣き声が響き渡る。

プリム「…っ、」

小太りなしわくちゃの赤子みたいだ。

…あまり可愛くない。気持ち悪い。…まぁ、今回大活躍するんだけど。

 

スプラウト「引き抜いたら、パッと別の鉢に放り込んで、パラパラと…土をかけ寒くないように埋めてあげます。」

寒い寒くないって感じるのか。変な薬草だ。

ネビル「うぁ……」

ネビルが気絶した。

 

スプラウト「ロングボトムは耳当てをしなかったのですか?」

シェーマス「耳当てをしていても、気絶しました。」

スプラウト「…いいわ、ほっときなさい。」

扱いが可哀想なネビル。同情しておこう。

 

スプラウト「では、やってみましょう。マンドレイクをつかんで…はい、引き抜く!」

大量のマンドレイクの泣き声が響き渡る。

プリム「…」

…ふわふわなら、まだ。…いや気持ち悪いな。一瞬想像して後悔した。考えずに、早く土をかけよう。

ドラコ「はは…っ、」

ドラコがふざけて口に指を入れて噛まれる。

…何やってるんだ。

 

_________________

 

プリム「アリエッタ、ちょっといい?」

アリエッタ「うん、どうしたの?」

プリム「…次の授業の前、確か空き時間でしょ?必要の部屋来れる?」

アリエッタ「うん、わかった。」

やらないといけないことを思い出した。今年中に。絶対に。

 

ディーン「ロン、君のフクロウじゃない?」

グリフィンドールの机にロンの梟が手紙を運ぶ。…かと思ったが梟が着地に失敗する。

ロン「うぅ…」

ドラコ「ははは…」

スリザリン生が嘲笑う。…まぁ、私も少し笑った。あまりに着地が下手すぎて。

 

ロン「あぁ…そんなぁ!」

ロンが手紙を手に取ると嘆いている。

シェーマス「みんな見ろよ、ロンに吠えメールが来たぞ!」

ネビル「開けなよロン、僕お婆ちゃんから届いたのそのままにしてたら、酷い目にあった。」

ロンが恐る恐る手紙を開ける。

…この場で?吠えメールを?

吠えメール(モリー)「ロナルド・ウィーズリー!」

ロンのお母さんの声が広間に響いた。

…まぁ、そうなるな。

 

吠えメール(モリー)「車を盗むとは何てことです!おとうさんは役所で尋問を受けてますよ!それもみんな、お前のせいです!よくお聞き!今度ちょっとでも規則を破ってごらん、家に引っ張って帰りますからね!あぁ…ジニーちゃん。グリフィンドールに決まっておめでとう。パパもママも鼻が高いわ。」

吠えメールは破れる。…そういえばジニーが入学したんだった。…ジニーね。

 

パンジー「私思うんだけど、グリフィンドールって退屈しないわよね。」

隣にいたパンジーがグリフィンドールを見ながら言う。

プリム「…スリザリンは静かだ。まぁ、目立つやつは孤立する。」

ダフネ「寮の特徴じゃない?」

ミリセント「グリフィンドールは、ちょっとお馬鹿ってこと?」

ん?…そうじゃない、それならハーマイオニーはどうなる?

 

プリム「頭の問題じゃない、トラブルを好むかどうか。それだけ。スリザリンはトラブルは避けたい。グリフィンドールはトラブルが好きってこと。」

パンジー「スリザリンにもちょっとトラブルがあれば退屈しないわよね。」

ダフネ「私は嫌だわ。トラブルなんて。」

プリム「パンジーの言うことはわかるよ。トラブルは退屈しない。」

今年はスリザリンがトラブルに巻き込まれる。退屈しない年になるな。

 

_________________

 

必要の部屋。

アリエッタ「パトローナス?」

プリム「そう、来年はアズカバンでしょ?ディメンターがでるわ。」

そう、ディメンターがわんさか出てくる。どっかの犬のせいで。

 

 

アリエッタ「あー…確かにね、身を守る為にできないと駄目ね。」

プリム「でも、とても難しい魔法だから、今のうちに練習しないとって」

アリエッタ「うん、確かにね。プリムはもう、アニメーガスになれた?」

まだなれない。…とても時間がかかっている。焦ってきた。

 

プリム「…んーん、まだ…でも絶対なるわ。ならなくちゃ。ジェームズポッターごときに負けてられない。」

アリエッタ「…まぁ、いいや。あ!そうだ、プリム!私に開心術かけてみて!」

…開心術?何故?…もしかして

 

プリム「あなた、もしかして…」

アリエッタ「いいから早く早く!」

アリエッタが急かすので、開心術をかけた。

…でも何も見えない。

 

アリエッタ「ど、どう?」

プリム「何も見えないよ、凄い!アリエッタできるようになったのね!」

思わずアリエッタに抱きついた。

アリエッタ「まぁね!…ダンブルドアに私達の存在は気づかれてるけど、もう覗かせないわ。絶対ね。」

プリム「そうね、絶対。…開心術もできる?」

アリエッタ「もちろん!」

すごいわ!すごいわ!と更に抱き締めた。

 

アリエッタ「それでね、プリムがアニメーガスになるなら、私もなりたいなって。同じことができた方がいいでしょ?」

プリムがいいならだけど、とアリエッタが言う。そんなの決まってる。大歓迎だ。

プリム「うん、その方がいいかも。でも、無理しないでね?」

アリエッタ「私はプリムより体力あるのよ?」

まぁ…それはそうだ。確かにな。

 

私達はその日からパトローナスとアニメーガスの特訓を共に始めた。

 

_________________

 

ロックハート「皆さん!闇の魔術に対する防衛術の新しい先生を紹介いたしましょう。…私です。」

そう…今年はこの人が闇の魔術に対する防衛術を担当する。…あんまりだ。早くルーピン先生が来てくれないかと思った。私はルーピン先生の授業は割と好きだ。ユーモアがあって。映画の記憶ではだが。

 

ロックハート「ギルデロイ·ロックハート…勲三等マーリン勲章受章。それに加えて闇の力に対する防衛術連盟の名誉会員であり、雑誌『週刊魔女』のチャーミング・スマイル賞5回受賞。…それは置いときましょう。妖怪バンシーをスマイルで追い払ったわけじゃない。

フフフフ…。」

…どうでもいい。すこぶるどうでもいい。

パンジー「はぁ…」

パンジーの表情が蕩けている。は?もしかして…ミリセントも、ダフネも、ハーマイオニーも!?…あぁ、そんな…みんなコイツにお熱なのか!なんてことだ…

 

ロックハート「…さぁ!気を付けて!魔法界の中で、最も汚れた生き物と戦う術を授けるのが、私の役目です。君達は、これまでにない恐ろしい目にあうことでしょう。だが私がいる限り、君達は安全ですぞ。どうか、叫ばないようにお願いしたい。…こいつらが暴れるから!」

ロックハートが揺れる鳥籠の布を取ると、ピクシーが入っていた。

 

シェーマス「コーンウォール地方のピクシー?ははは…」

ロックハート「笑うのは今のうちだ、フィネガン君。ピクシーは厄介で危険な小悪魔ですぞ。」

…確か、ハーマイオニーが魔法をかけるんだよな。これ。…どう隠れよう。机の下…はガムが付いていて嫌だ。

 

ロックハート「さぁどう扱うかな?お手並み拝見!」

考えがまとまらないうちにピクシーが放たれる。

パンジー「きゃあぁぁ」

ドラコ「わぁああ」

スリザリン生もグリフィンドール生もピクシーに振り回されている。

 

“Depulso”(退け)

ピクシーが遠くへ吹っ飛ぶ。…効果はあるみたいだ。

ピクシー「フッフ〜!」

 

プリム「キリがないな。…くそ」

ロックハート「捕まえなさい、たかがピクシーでしょう。」

たかがピクシー、されどピクシーだ。これだけ多いと厄介だ。…ハーマイオニー早くしてくれ。

 

ネビル「わぁああ!」

ピクシーに耳を掴まれるネビル。

ピクシー「それっ!お前はずっとそこにいろ!」

ネビル「下ろして!助けて〜!」

…ネビルを助けるのは私の役目じゃない。

 

ロックハート「ペスキピクシ・ペステルノミ!あっ!」

杖をピクシーに盗られるロックハート。

何してるんだ。

ピクシー「やった〜!」

ロックハート「君達!残ってるピクシーをカゴに戻しておきなさい。」

…役立たずめ。もう我慢できない。 

 

ピクシーを遠くに吹き飛ばしながら、教室を出た。

ドラコも教室の外にいた。

プリム「最悪な授業ね」

ドラコ「最悪な教師だ。」

 

ハーマイオニー「イモビラス!」

扉の隙間から魔法の光が漏れる。…やっと収まったな。

 

 

プリム「…あいつ、ピクシーに杖を盗られてたぞ?本当にあの偉業を成し遂げたと思う?」

パンジー「あんなに大量のピクシーですもの、そんなこともあるわ。」

パンジーはロックハートにお熱だ。何を言っても無駄だろう。

プリム「ハーマイオニーの方がまだ魔法が使えるんじゃないか。」

ドラコ「そうか?教師なんだ、魔法が出来なきゃ意味がないだろ?」

プリム「どうかしらね?」

 

________________

 

スリザリン寮

プリム「…」

さて、これをまた使う時が来たな。

繊細な装飾が施された黒い箱を手にとり、ベッドの上へ座った。

 

プリム「私ちょっと寝るから起こさないでね、」

わかったわー、と隣のベッドらへんからパンジーの声がした。

 

プリム「…”運命を開く”」

箱の鍵穴に杖を向けて呟くと、黒い箱の装飾が動き箱が開く。…中には薬瓶が入っている。ただの薬瓶じゃない。例の毒薬だ。私特製、自殺専用超猛毒薬。この箱は合言葉を言わないと開かないようになっている。隠し物にはもってこいだ。

 

プリム「…おやすみ私。」

キュポンッと一瓶開け飲み干す。

 

 

 

 

真っ白な世界。覚えてる。

アズラエル「やぁ、プリム。また来たのかい?ハリーポッターの世界は満足いかないかな?」

プリム「いや、大満足だよ。とってもとってもね。」

青い大きな翼の天使。アズラエルだ。

 

アズラエル「ではまた、何故自殺を繰り返すのかな?」

プリム「アズラエルにしかできない相談が湧いて出てくるんだよ。付き合ってくれないの?」

アズラエル「…プリム、私は暇じゃないんだよ?まぁ、話は聞くよ。相談って?」

アズラエルがちょっと不機嫌そうだ。まぁ、目の前には何か大量に書類がある。忙しいのは嘘じゃないだろ。

 

プリム「ヴォルデモートは絶対に死なないといけない?その道しかない?」

アズラエル「ヴォルデモート…ああ、トムリドルのことだね?…トムリドルの魂はもう壊れてしまっている。残念だけど…もう救えない魂だ。」

プリム「そう…何度も殺人を犯したから?」

アズラエル「そうだよ…自分の死から逃げる為に人の命を絶ってしまった…大罪を犯している。」

プリム「そうなのね…やっぱり。」

救えない。トムリドルは救えない。私もベラトリックスを殺すつもりだ…私の魂も…地獄に落ちるだろうか。

 

プリム「あとひとつ、…私動物もどきになれないんだけど、もしかしてそういう身体?」

アズラエル「いや?そんなことはないさ…そもそも君は魔力はダンブルドア並だ。できるはずだよ?」

プリム「…努力が足りないってことね。」

アズラエル「私からアドバイスをするとすれば、なりたいものではなくて、何の為に、誰の為に、その考えが大事だ。」

…そうだったのか。それは盲点だ。

プリム「ありがとう、なんだかできそうな気がするわ。」

アズラエル「…私はプリムに甘い。」

書類に目を通しながらアズラエルが呟いた。

 

プリム「最後にひとついい?」

なんなりと、とアズラエルが視線を向ける。

プリム「記憶と世界が少しずつ変わってる。私達の介入によって…」

アズラエル「そのようだね、良くも悪くも変わる。君達の行動次第で。」

プリム「私達の為の世界なのに?」

アズラエル「それは、何を聞きたいのかな?」

アズラエルが掛けていた眼鏡を外す。

プリム「思ったの、私達に与えた世界…それって…アズラエルが作ったのよね?アズラエルの望む方向に変えられるんじゃ?って」

そう、アズラエルの手の上で転がされてるのでは?と考えた。

 

アズラエル「…少なからず変えてはいるよ。よく気づいたね?賢い子だ。流石だよ。」

…やっぱりな。

プリム「じゃあ、トロールが増えたのも、ダンブルドアが現れたのも、あなたが?」

アズラエル「正解だ。…君達の行動は私の管理下で動いている。望む展開でなければ変えている。」

…あんまりだ。アズラエルの望む展開?私達の世界じゃなかったのか?

プリム「そんなの、私達の世界じゃない…アズラエルの世界じゃないか…」

アズラエル「…プリム、それは違う。君達のいる世界は君達の記憶から作られている。だが、プリム…君達が動くことによって記憶から遠く離れた展開になってしまう。だから私は手を加えて元の記憶に近いようにしているんだ。…助けているんだよ、プリム。…プリム達がしたいことはわかっているよ。でも私が何もしなければとても危険な未来になってしまう。…それこそ、世界が闇に包まれる未来にね。」

…アズラエルは私達を助けていた。私達が動きやすいように手を加えていた。

 

プリム「私達の望む世界に近づけていたのね、アズラエルは…」

そうだよ、とアズラエルは私の頬を撫でた。

プリム「アズラエルは私に甘いね。」

アズラエル「君は私のお気に入りだ。…自由に生きなさい。私はいつでも君の味方だ、プリム。」

 

 

 

 

 

「プリム!プリム!」

誰かが私の身体を揺する。

パンジー「あなた…熟睡しすぎよ、死人みたいだったわ。」

心配したのよ、とパンジーが私を抱き締める。死人だったのは間違いない。

 

プリム「ごめんねパンジー、おかげでよく仮眠がとれたよ。」

パンジー「そう?ならよかったけど…そうだあなた知らないでしょ、スリザリンのクィディッチのチームに新しいシーカーが入ったのよ!誰だと思う?」

…あー、新しいシーカーね。

プリム「ドラコとか?」

パンジー「そう!ドラコ!…なんだ、知ってたの」

プリム「いや?私の中で1番箒が上手な人を挙げただけ。」

 パンジー「今日練習があるのよ、見に行かない?」

プリム「あー…見に行こうかな。」

 

 

 



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疑いの目

 

 

練習を見に行こうと外に出ると、クィディッチのチームが丁度、競技場へ向かっているところだった。

パンジー「…あれ、なんだか揉めそうじゃない?」

スリザリンとグリフィンドールのクィディッチのチームが鉢合わせている。確か…競技場で練習するのはどっちかで口論になる。筈だ。

プリム「…揉めたら揉めたで面白い。」

もう少し近づいて聞いてみよう、と近くに佇んだ。

 

 

ウッド「私、スネイプ教授は、スリザリンが新しいシーカーを教育する必要を認め、競技場の使用を許可する。…新しいシーカー?誰だ?」

グリフィンドールのオリバーウッドがスネイプ先生の許可証を読み上げると、ドラコが前に出る。

 

ハリー「…マルフォイ?」

ハリーは信じられないと言った表情だ。失礼だぞ。ドラコは才能がある。

ドラコ「その通り。新しいのはそれだけじゃない。」

ドラコが自慢げに、黒く輝く箒を見せつける。…ルシウスさんが頼みを聞いたんだろう。ハリーのシーカーの話とかしたのかな。だとしたら、子供らしくて可愛げがある。

ロン「ニンバス2001だ。…どこで手に入れた?」

どこで?盗んだと思うのか?箒店だろ。

フリント「ドラコの父上がくれた。」

ドラコ「どこかの親と違って、父上はいいものが買えるからね。」

ハーマイオニー「でも、グリフィンドールの選手はお金じゃなくて、才能で選ばれてるわ。」

…違う、ドラコは才能がある。

プリム「ドラコは才能がある。」

パンジー「プリム?」

…っ!しまった。まずい。…声に出てた…仕方ない、もう下がれないな。

 

プリム「お金で選ばれたんじゃない、ドラコは才能で選ばれたんだ。私が6歳の時には、ドラコは箒に乗れてた。」

ハーマイオニー「そんなの信じられないわ。」

ドラコ「お前の意見なんか聞いてない。この…汚れた血め。」

「うわぁ…ひでぇ」

スリザリン生が哀れむ声を上げる。

ハーマイオニーが鋭くドラコを睨む。

 

ロン「よくも言ったなマルフォイ!ナメクジ食らえ!」

ロンが折れた杖を使ったんだろう。呪文が跳ね返る。

 

「ハハハハ…。」

スリザリン生が嘲笑う。…折れた杖は使わない方がいい、普通は。

ハーマイオニー「大丈夫?ロン!何か言って!」

ロン「うっ…うっ…うぇっ!」

ロンの口からナメクジが出る。…気持ちの悪い呪いだ。

カメラのフラッシュが眩しく光る。

 

コリン「わぁ!ロンをこっち向かせて。」

ハリー「コリン、どいてくれ!ハグリッドのとこへ行こう。何とかしてくれる、大丈夫だ。」

「ハハハハ…」

スリザリン生は面白くて仕方がないみたいだ。

 

プリム「汚れた血はどうかと思うよ、ドラコ。」

パンジー「グレンジャーにはお似合いだわ。」

ドラコ「ああ、そうさ。それにあいつ…僕がお金で選ばれただって?」

プリム「それはもう私が言ったじゃない。あなたは才能があるわ、ドラコ。」

パンジー「そうよ、ドラコ。シーカーなんて凄いわ。」

プリム「…とにかく、ドラコはもっと発言には気をつけたほうがいい。言った言葉は一生取り消せないんだ。紙に書いた文字と違ってね。」

これで、ドラコが少し考えてくれればいい。…そんな上手くはいかないだろうけど。

スネイプ先生もリリーに汚れた血って言ったんだっけ。…汚れた血なんて言葉無くなればいいのに、そう心の中で呟いた。

_______________

 

必要の部屋

 

 

プリム「そうだ。動物もどき、なんでなれないのかアズラエルに聞いたの。」

アリエッタ「アズラエルに?…あなたまた毒薬飲んだの?」

うん、と首を縦に振る。何かいけないのか?

 

アリエッタ「はぁ…もっと命を大事にしてよ。」

プリム「でも死なないわ。」

そうでしょうね!と何やら勘に触ってしまったみたいだ。

プリム「あー…それで、動物もどきなんだけど。イメージだけじゃ駄目なの。何の為にその姿になるか考えるの。これに関しては盲点だったわ。」

アリエッタ「んー、なるほどね、ジェームズ達はルーピン先生の為に動物もどきになったんだものね。」

プリム「やり方がわかったら、こっちのものだわ。」

私は口の端を上げた。

 

 

 

イメージして考えた、何の為になるか。

 

私達の為に…

 

望みの為に…

 

スネイプ先生の為に…

 

ドラコの為に…

 

プリム「…」

考えた瞬間、私の身体は変わり始めた。

 

アリエッタ「…プリム?」

アリエッタが私を見つめている。怯えてるようにも見える。…少し目線の高さが変わっている。どうなったんだ?…鏡。鏡はないか?

 

必要の部屋には鏡が現れる。鏡の前に立つと、黒い。…黒豹だ。イメージ通りだ。…目の色は変わってないけど。成功だな。すぐに姿を戻した。動物もどきでは話せない。

 

プリム「やったぞ!私の勝ちだジェームズポッター!」

歓喜の声を天井に向かって放った。

アリエッタ「凄いわプリム!何を考えたの?」

プリム「それはド…」

確か…最後に私は、ドラコの為を考えた。

アリエッタ「ど?…あー、ドラコね?」

プリム「…っ!なんでわかるの」

アリエッタ「それはわかるわよ、プリムってドラコのことしか考えてないじゃない。」

な、なに!?そうなのか!いや、そんなことないぞ!

プリム「そ、そんなことない!」

アリエッタ「まぁ、でもアニメーガスになれたね、これで。」

ドラコのおかげね、なんて言うから頬をつねっておいた。

 

プリム「アリエッタもなるのよ、アニメーガスに。セドリックのことを考えたらすぐにできるわ。」

なんだか睨まれたが知らない。

 

 

 

アリエッタ「…セドリックのこと考えたけど、駄目みたい。別のことを考えなきゃ。」

プリム「そうなの?…イメージは焦らずに鮮明に考えた方がいいわ。」

そうね、とアリエッタが溜息を吐く。

プリム「パトローナスも出来なきゃいけないし、今年は石になってる暇ないわね。」

 

_____________

 

広間で夕食を食べていると、シャルマンが膝の上に乗る。

プリム「どうしたのシャルマン?」

シャルマン「…くさい臭いがする。凄く臭い。」

プリム「…スキャバーズ?」

シャルマン「違う、ネズミじゃない。」

スキャバーズについてはシャルマンも知っている。でも原因は違うみたいだ。

シャルマン「気をつけた方がいい、あまりよくない臭いだ。」

プリム「うん…」

まぁ、たぶんバジリスクだ。震えてるシャルマンの耳の後ろを撫でた。

 

パンジー「プリムってシャルマンと話せるの?」

プリム「大親友だから。」

パンジー「頭いいと猫とも話せるのね。」

かもね、と曖昧に返事しておいた。

 

 

夕食が終わって、寮へ戻ろうとすると、何やら通路が騒がしい。

「秘密の部屋は開かれたり。継承者の敵よ気を付けよ。」

壁には血文字でそう書かれていた。

…ジニーが動いた。

 

ハリー「…フィルチの猫だ…ミセスノリスだ。」

ドラコ「”継承者の敵よ気を付けよ” 次はお前達だ、汚れた血め。」

フィルチ「何の騒ぎだ?どけどけ通るぞ。」

フィルチが来てしまった。…可哀想に。

 

フィルチ「ポッターお前何を…ミセスノリス!…お前…私の猫を殺したな?」

ハリー「違う!僕じゃ…」

ドラコ「ふっ…」

ドラコ達は楽しそうだ。にやにやしている。

 

フィルチ「殺してやる。…殺してやる!」

ダンブルドア「アーガス!何事じゃ?…諸君みんな速やかに寮に戻るのじゃ。」

…いや、これからが面白いんだ。私は物陰に隠れた。もちろん隣にはアリエッタがいる。

 

ダンブルドア「そこの3人は残りなさい。」

ハリー達が残される。ダンブルドアは私達に気づいていない。筈だ。

 

ダンブルドア「猫は死んではおらん、石になっただけじゃ。じゃがどうして、石になったのか分からん。」

フィルチ「あいつです!あいつがやったんです!ヤツの文字をお読みでしょう!」

ハリー「違います!誓って!ミセスノリスには触ってません!」

フィルチ「ウソをつけ!」

ハリーとフィルチの口論を遮ったのはスネイプ先生だった。

 

スネイプ「ポッター達はたまたま居合わせただけかもしれません。とはいえ…状況的には実に疑わしい。…それに私は、夕食の席でポッターの姿を見た覚えがない。」

口調からするに、スネイプ先生はあわよくばハリー達を罰せられればいいのだろう。

 

ロックハート「それは私のせいなのですよ。…ファンレターの返事書きを手伝ってもらっていたんです。」

ハーマイオニー「だからロンと私は、ハリーを探しに来たんです。それで、見つけたときハリーは…」

スネイプ「ハリーは?ミスグレンジャー?」

ハリー「食べたくないって言ったんです。それで戻ろうとしたらミセスノリスが…」

ダンブルドア「…疑わしきは罰せずじゃよ、セブルス。」

スネイプ先生の企みは失敗に終わった。

 

フィルチ「私の猫が石にされたんだ罰を与えなきゃ治まらん!」

ダンブルドア「君の猫は治せますぞ、アーガス。聞くところでは、スプラウト先生がマンドレイクの苗をお持ちだ。…成長したら蘇生させる薬が作れるじゃろう。それまでは、皆くれぐれも用心をすることじゃ。…よいな?」

 

 

 

アリエッタ「ジニーが動いたね。」

プリム「…鏡、持ってる?」

アリエッタ「プリムから借りたやつなら。プリムは?」

プリム「ないけど、大丈夫よ。目は見ないわ。それに一応、純血ってことになってるし。」

 

________________

 

マクゴナガル「はいでは、今日は、動物に変身の術をかけゴブレットに変えます。こうです。ワン・ツー・スリー…フェラベルト。」

…シャルマンをゴブレットに?…シャルマンが嫌そうな顔をする。授業だから我慢してよ。

 

マクゴナガル「では、やってもらいましょう。最初は誰から行きますか?…じゃ、ミスターウィーズリー。ワン・ツー・スリー…フェラベルト。」

ロン「…フェラベルト!」

ロンが魔法をかけると、毛むくじゃらのゴブレットができた。…見事といえば見事だ。

「ハハハ…」

スリザリン生が嘲笑う。ハリー達も笑ってる。

 

マクゴナガル「…その杖は取り換える必要があるようですね。」

それはごもっともだ。ハーマイオニーが手を挙げる。

マクゴナガル「はいミスグレンジャー。」

ハーマイオニー「先生…聞いても構いませんか?…秘密の部屋のことです。」

みんながマクゴナガル先生を見つめる。秘密の部屋についてはみんなが知りたいのだろう。

 

マクゴナガル「…ええ、いいでしょう。皆さんもご存じの通り、ホグワーツは1000年以上前に、当時の最も偉大な4人の魔法使いと魔女達によって創設されました。…ゴドリックグリフィンドール。ヘルガハッフルパフ。ロウェナレイブンクロー。そして…サラザールスリザリン。」

教室はマクゴナガル先生の声だけが聞こえる。

 

マクゴナガル「この4人の創設者のうち3人は、意見も合い協調していましたが、1人は違いました。」

ロン「誰だか分かるな。」

まぁ…スリザリンだ。

 

マクゴナガル「サラザールスリザリンは、ホグワーツに入る生徒をより選別すべきだと考えたのです。魔法教育は純粋に、魔法族の家系にのみ与えるべきだと。…つまり純血の者ですね。」

スリザリンは、マグルで生まれた魔法使いが、自分が魔法使いだと知らずに過ごせば、それもそれで危険だとは思わなかったのだろうか。

 

マクゴナガル「でも3人が反対したので、彼は学校を去りました。伝説では、スリザリンはこの城のどこかに…隠された部屋を作ったといわれています。…それが、秘密の部屋なのです。」

トイレに作ったのはなんでなんだろうか。スリザリンが生きていたら問いたい疑問だ。

 

 

マクゴナガル「スリザリンは、学校を去る前にこの部屋を封印し、学校に彼の継承者が現れるまで開かないようにしました。…その継承者だけが、秘密の部屋の封印を解き、その中にある恐怖を解き放ち…それを操り、魔法を学ぶにはふさわしくない者…スリザリンが認めぬ者を、追放するといわれています。」

ハリー「マグル出身者を?」

 

マクゴナガル「当然、学校側としても何度も調査をしたのですが、そのような部屋は見つかりませんでした。」

ハーマイオニー「あの…先生その部屋にはどんな恐怖があるといわれているんですか?」マクゴナガル「伝説では秘密の部屋の中には、スリザリンの継承者のみが操ることのできる恐ろしい怪物がすむと…いわれています。」

プリム「…」

 

 

 

パンジー「秘密の部屋って本当にあるのかしら?」

プリム「あるだろうね、先生達があんなに怯えてるんだ。それに、マクゴナガル先生がわざわざ授業で話してくださった。」

ダフネ「でも私達には関係ないわ、純血だもの。」

プリム「純血かマグルかって正確に見分けることができるならね。」

そう話すとパンジー達は青ざめる。

 

パンジー「でもでも!プリムは絶対安全よ。だってスリザリンの血筋じゃない。」

ダフネ「もしかして…もしかしたらだけど、プリムが継承者?」

プリム「残念だけど違うわ。そもそもアメリカの一族だもの。スリザリンの血は濃くないでしょうね。それにホグワーツのことは、よく知らないわ。秘密の部屋のことだって初めて知ったもの。」

嘘は本当のことと混ぜて話すと信憑性がある。

 

ハリー達も廊下で同じようなことを話していた。…よく聞こえない…聞こえる距離まで行こう。

 

 

ハリー「本当だと思う?本当に秘密の部屋なんてあるのかな?」

ハーマイオニー「あるわ。気付かない?先生達がみんなおびえてるもの。」

ハリー「本当に秘密の部屋があって、本当にそれが開いたんだとしたら…。」

ハーマイオニー「継承者が現れたってことね、果たして誰なのか?」

ロン「考えてみろよ…マグル出身はカスだと思ってるヤツは誰だ?」

ハーマイオニー「それってマルフォイのこと?」

ロン「もちろん!あいつ言ってたろ?”次はお前達だ”って。」

ハーマイオニー「聞いたわよ?…でもマルフォイが継承者?」

ハリー「ロンの言う通りかもしれないよ。マルフォイ一族って、何百年も代々スリザリンの寮だもの。」

ハーマイオニー「それを言ったらプリムも怪しいわ。クロウリー家はスリザリンの血筋だって聞いたもの。…純血主義のマルフォイの方が可能性は高いけど。」

ロン「クラッブとゴイルをだまして、何か聞き出せないかな?」

ハーマイオニー「そこまでまぬけかしら?他の方法があるわ。」

 

…な、私も疑われてる!?…ポリジュース薬ね。気をつけなきゃ。

 



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ポリジュース薬

図書室へ行くとポリジュース薬の作り方が書かれてある”最も強力な薬”の本がなくなっていた。…ハーマイオニーだな。

 

プリム「…てことは、マートルのトイレね。」

図書室へアリエッタがドタバタと入る。注意されていた。…なんだか身に覚えがある。

 

アリエッタ「プリム…あのね、ビッグニュースだよ!グリフィンドールとハッフルパフのクィディッチの試合が決まったの!…プリムも観に来る?」

プリム「いや、観戦はあまり好きじゃないんだ。ごめんね。」

そう…とアリエッタがしょぼくれてしまった。観戦はスリザリンの時だけにしたい。…直射日光が好きじゃない。人も多い。そうだ…そういえばスリザリンの試合がある。…ドラコの試合なら悪くないかな。

 

 

 

リー「またまたゴール!スリザリン!90対30でスリザリンリード!」

プリム「…結果がわかる試合ほど退屈なことはないな。」

パンジー「そうね、ドラコがシーカーだもの。それに箒だって最新のものよ。スリザリンが優勝ね。」

…別の意味だったけど。パンジーの目が爛々としていたので、何も言わないことにした。

 

 

ブレーズ「おい、ポッターがブラッジャーに追いかけられてるぞ。はは…」

ブレーズ達が隣で嘲笑う。

パンジー「本当だわ、英雄様はブラッジャーも虜にするのね。」

いい気味だわ、とパンジーも楽しそうだ。

…ドビーの魔法って容赦ないよね。

 

 

プリム「…」

ハリーとドラコがスニッチを追いかける。

…ドラコがスニッチを掴まないかと、少し期待した。でも、記憶通りだった、ドラコが競技場の芝生に倒れる。

 

ドラコ「うっ…ごほっ、」

…目の当たりにすると、可哀想だ。後でお見舞いに行こう。…確かアリエッタに貰った蛙チョコがあった。

 

 

ハリー「うっ!あぁ…。」

ハリーも倒れた。

リー「ハリーポッターがスニッチをつかんだ!グリフィンドールの勝利!」

 

パンジー「あぁ…そんなぁ…」

嘆くスリザリン生。

プリム「パンジー、ドラコのところに行こう。」

そうね、と競技場へ下りるとパンジーとブレーズもついてきた。

 

プリム「ドラコ…大丈夫?」

ドラコ「あぁ…」

怪我より、負けたことが情けないみたいだ。

1人で立ってマダムポンフリーのところへ向かうドラコ。

パンジー「ドラコはよくやったわ」

ブレーズ「新しい箒に慣れてないだけさ、そうだろドラコ?」

次は絶対勝てよ、とブレーズが励ましていたが、ドラコにはプレッシャーではないだろうか。

 

 

ハリー「うわっ!」

ブラッジャーがハリーに向かって落ちる。

ハーマイオニー「フィニート・インカンターテム!」

ドラコに付き添ったから、そのあとの会話は聞こえなかったけど、ロックハートがなんとかするだろう。…悪い方向に。

 

 

ドラコ「うぁ…」

医務室ではドラコとハリーがベッドで治療していた。

ポンフリー「呻かなくてよろしい!あなたは大丈夫です!どいてどいて」

マダムポンフリーが呻いてるドラコに言う。

 

ポンフリー「なぜすぐ来なかったの?骨折なら簡単でも、骨を生やすとなると…。」

ハーマイオニー「でも治せますよね?」

ポンフリー「もちろん治せますとも…痛みますけどね。今夜はつらいですよ、骨の再生は荒療治です。」

ハリー「ぶっ!…うぇ。」

ポンフリー「かぼちゃジュースとでも思ったの?」

 

ドラコ「うぅ…」

ドラコはまだ呻いている。1人で歩いてきたんだ、大丈夫な筈だけど。

パンジー「大丈夫?ドラコ…」

パンジーがドラコの手を握って心配している。…そういえば、2人は付き合うんだっけ。…考えたら眉間に力が入ったので、考えるのを辞めた。

ブレーズや、クラッブとゴイルもそれなりに心配している。

プリム「これ、チョコレート好きでしょ?…食欲が出たら食べてね。」

ドラコのテーブルの上に蛙チョコを置いた。

 

________________

 

 

プリム「アリエッタは、ハーマイオニー達がいつ頃ポリジュース薬を完成させるかわかる?」

アリエッタと人気のない廊下で話す。

アリエッタ「んー、正確にはわからないけど、まだ作ってる段階だと思うよ。決闘クラブはまだでしょ?」

プリム「決闘クラブ?…」

あー、ロックハートのやつか。

プリム「まだね。」

アリエッタ「決闘クラブで、ハーマイオニーがミリセントの髪の毛をとるの。猫の毛だけど。…わたしミリセントが映画で急に出てきたから、調べて…その話は知ってるの。だから、映画とは違うかも。…プリム気をつけてね。」

プリム「わかった…順調かどうか、調べてくるわ。アリエッタは必要の部屋で待ってて。」

 

 

3階の女子トイレの前

プリム「…」

ポリジュース薬の進みを見に来た。

 

ハーマイオニー「…ポリジュース薬が出来れば、確かめられるわ。」

ハーマイオニーの声が聞こえた。ポリジュース薬は順調に作られているみたいだ。

 

ロン「聞くけどさ、こんなとこで昼間っから薬作ってていいの?…女子トイレの、ド真ん中で。」

ハーマイオニー「ここには誰も来ないわ。」

…もう聞かなくていい。マートルの嘆きを聞くほど暇じゃない。

 

プリム「…」

その場をすぐに去り、必要の部屋に向かった。

アリエッタ「どうだった?」

プリム「順調に作られているよ。ハーマイオニーは天才だ。」

アリエッタ「そうね…そういえば、よくない噂を聞いたの。あなた継承者だって言われてるわ。…蛇と話せるんでしょ?気をつけてね。」

プリム「こちらから意識しなければ話せないよ。壁からも声がしない。」

わたしの全種言語力は、話そうと思わないと話せない。でも、それはいいことだ、蛇の囁き声は聞こえないのだから。

 

プリム「継承者のことはもう一度言っておくけど、わたしじゃないよ。もちろんね。」

でしょうね、とアリエッタが特訓を始める。

プリム「アリエッタ、うまくいかない?アニメーガス。」

アリエッタ「うん…プリムはほかに何を浮かべた?」

プリム「わたしは…スネイプ先生のこと、望みのこと…私達のことかな」

アリエッタ「…私達ね、そう。それだわ!私はずっと自分の為に動いてるんだもの。」

 

アリエッタが静かに集中し始める。

…身体がどんどん縮む。え?まさかもう動物もどきになれるのか?

 

小さくなったアリエッタは梟になった。…アルファと似ている。メガネフクロウだ。

プリム「アリエッタって…私より才能あるんじゃ。」

鏡が現れ、アリエッタが鏡の前で嬉しそうに羽ばたいている。鏡の前で止まり身体を戻すアリエッタ。

アリエッタ「やった!これで私もアニメーガスだわ!プリムの梟を思い浮かべたの。…イメージしやすくて。」

プリム「わたしは何年もかかったのに…なんだか解せないわ。」

アリエッタ「へへ…でもプリムのアドバイスがないと、こんなに早くなれなかったわ。」

プリムのおかげ、と強く抱き締められた。あたたかい。

 

_______________

 

 

 

ロックハート「皆さん!集まって!…さぁ、私がよ〜く見えますか?声はよ〜く聞こえますか?…よろしい。」

見えなくていいので、アリエッタと私は端っこにいた。パンジー達からは離れたが、ここでは目立たないことが最善だろう。…アリエッタが言った通り映画とは違うかもしれない。

 

ロックハート「最近、何かと物騒な事件が続いているので、校長からお許しをいただいて、決闘クラブを開くことにしました。」

そう、今日は遂に決闘クラブだ。…気をつけて行動しないといけない。

 

ロックハート「…万一に備え、自分の身を守れるよう、皆さんを鍛えます。…私も何度も危ない目にあって来ました。詳しくは私の著書を読んでください。」

「きゃー!」

ロックハートがマントを生徒に投げると、上級生の黄色い声が響く。

 

ロックハート「…では、紹介しましょう。私の助手、スネイプ先生です。」

スネイプ先生は、いつもより眉間にシワが寄っている。助手は嫌だよな。この人の助手は。

 

 

ロックハート「皆さん、心配には及びませんよ。魔法薬の先生を、消したりはしませんからご安心を。」

プリム「…」

 

スネイプ先生とロックハートは向き合ってお辞儀をする。所作はお互い綺麗だ。所作は。

ロックハート「ワン…ツー…スリー。」

スネイプ「エクスペリアームズ!」

ロックハート「うわ〜っ!」

…無様だな。

「ははは…」

男子生徒たちの笑い声がちらほら聞こえる。

アリエッタも隣で吹き出していた。

 

ハーマイオニー「先生大丈夫かしら?」

ロン「知るもんか。」

ロックハート「生徒にあの術を見せたのは素晴らしい思いつきでしたよ、先生。しかしやることがあまりにも、見え透いていましたね。止めようと思えば…簡単に止められたでしょう。」

スネイプ「まずは、生徒達に非友好的な術の防ぎ方を教えるのが、賢明ではないでしょうかね。」

その通りだ。教師もどきめ。

 

ロックハート「っ…おっしゃる通りですなスネイプ先生。…では生徒にやってもらいましょうか。あ〜…ポッター、ウィーズリーどうだね?」

スネイプ「ウィーズリーの杖では簡単な呪文でも、惨事を起こす。ポッターを粉々にして病院送りにしかねない。」

 

プリム「ロンってまだ杖変えてないの?」

アリエッタ「うん、まだ先。」

…まともな授業にならんだろ。

 

スネイプ「代わりに私の寮の生徒ではいかがかな?…マルフォイで…どうかね?」

ドラコが杖を素早く抜いて壇上に上がる。

プリム「…」

アリエッタ「…あー…プリム、口元緩んでるわ。」

っ!?顔が熱く感じた。

 

ロックハート「幸運を祈る。」

ハリー「はい先生。」

ロックハート「杖を構えて!」

ドラコ「怖いか?ポッター」

ハリー「そっちこそ」

ギラギラとした視線を交わすドラコとハリーに、スリザリン生とグリフィンドール生はワクワクとしている。

 

 

 

ロックハート「3つ数えたら、武器を取り上げる術をかけなさい。…取り上げるだけ!いいですね?…事故を起こすのは、イヤですからね。」

事故といえば…ハリーがパーセルマウスだと知れ渡る。筈。

 

 

ロックハート「ワン…ツー…」

ドラコ「エヴァーテ・スタティム!」

ロックハートがカウントを数え終える前にドラコが呪文を放つ。すると、ハリーがくるくると宙を舞う。

ハリー「うぅ…」

 

「ずるいぞ!」

グリフィンドール生からは非難轟々だ。

ドラコ「フン。」

クラッブ「ハハハハ…」

スリザリン生は歓喜している。

 

ハリー「リクタスセンプラ!」

ドラコ「うぁっ…」

ドラコも同じようにハリーの呪文を喰らう。

 

ロックハート「武器を取り上げるだけです!」

ドラコ「サーペンソーティア!」

ハリーの前に蛇が現れる。

 

アリエッタ「ねぇ…蛇と話して。プリム」

…は?何を言ってるんだ?

プリム「わたしが疑われるじゃない!」

アリエッタ「2人が話せるってわかればいい。そしたらみんな混乱するでしょ?」

プリム「ああ、とても利口な判断だ。」

もちろん皮肉だ。

 

スネイプ「動くなポッター、追い払ってやろう。」

ロックハート「いや!私にお任せあれ。ヴォラテー・アセンデリ!」

…アリエッタの前に蛇が飛ばされる。

ハッフルパフのジャスティンの前だった筈だ。…話が違う。

アリエッタ「プリム…早く」

…どうなっても知らない。

 

 

プリム『…彼女に近づくな。』

アリエッタの前に出て蛇に向かって話しかけた。蛇語を話した。恐らくシューシュー音がしているんだろう。

ハリー『…こっちだ。僕が相手だ。』

ハリーも蛇語を話す。

 

スネイプ「…ヴィペラ・イヴァネスカ」

 

その後、各台座の上で決闘が始まった。

ハーマイオニーはミリセントと。

アリエッタはダフネと。

私はブレーズと。

 

ハーマイオニーとミリセントは取っ組み合いになってた。ミリセントは、こういうのは得意だ。魔法使いらしくないが。

 

ブレーズ「…集中しろよ。継承者殿。」

プリム「あら?継承者って言ったかしら?」

“Stupefy”(麻痺せよ)

 

プリム「ごめんねブレーズ、口が勝手に…」

武器を取り上げるつもりだったけど、口が勝手に動いたということにしよう。…まぁ自業自得だ。

「おい汚いぞ」

スリザリンの男子生徒には面白くないみたいだ。

 

 

 

ロン「君、パーセルマウスだって何で黙ってたの?」

ハリー「僕が、何?」

ハーマイオニー「ヘビと話せるのね。」

ハリーがハーマイオニー達に連れられて問い質されている。

 

スリザリンの談話室では、継承者様などとまるで英雄のような扱いをうけた、もちろん上級生にも。…ハリーはいつもこうなのかと思うと同情した。

 

ドラコ「ちょっと話したい、今いいか?」

プリム「いいわよ、」

どうせ、継承者なのか?だろ

ドラコ「プリム、今日の決闘クラブで蛇と話しただろ。継承者なのか?」

…ほらきた。

 

プリム「違うわ、私はアメリカの一族なの。だからスリザリンの血は濃くないの。継承者じゃないわ。…何度も言ったけど覚えられない?」

ドラコ「そうじゃない、パーセルマウスだ。それは、継承者に与えられる能力だ。」

プリム「ハリーも話せる。」

ドラコ「ああ、だから聞いてるんだ。ポッターが継承者なんてありえない。なら、プリム、君が継承者だろ?」

あー…面倒だ。

プリム「…もう面倒くさい。アリエッタのせいだ。くそ。」

ドラコ「なに?なんだって?」

プリム「ちょっと来て、シャルマンおいで」

にゃお…と背伸びしてついてくるシャルマン。ドラコの腕を掴み必要の部屋を開けた。

 

必要の部屋

 

ドラコ「っ、ホグワーツにこんなところがあったのか。」

プリム「わたしは意識を向けると、どんな動物とも話せるの。猫とも話せる。もちろん蛇とも。」

ドラコ「な、なんだって?ありえない。」

全種言語力について話すことにした。

 

プリム「パーセルマウスじゃないわ。私の、特別な力というか。まぁ、そんなとこ。」

ドラコ「…見ないとわからない。シャルマンと話してみてくれ。」

プリム「シャルマン、ドラコに擦りよって」

シャルマン「なに?嫌だ、俺は男は嫌いだ。」

プリム「お願いよ、ドラコが私とシャルマンが話せるのを信じてくれないの。」

シャルマン「じゃあ、今度マタタビをくれ。それなら喜んで擦りよるぞ。」

プリム「…わかったマタタビね。」

ドラコ「な、なにを話してるんだ?」

プリム「あなたに擦りよってってお願いしたの。」

にゃお…と気怠そうにシャルマンがドラコに擦りよる。

 

プリム「信じてドラコ。私は継承者じゃない。」

ドラコ「僕は…確認しただけだ。プリムのことは信じてる。友達だからな。」

ドラコがシャルマンの耳の裏を撫でる。

ドラコ「プリムじゃないなら、誰なんだ…」

_______________

 

 

 

スリザリンでは、ドラコが私が継承者じゃないと、言いふらしてくれたことで、私へ継承者様なんて言う人は居なくなった。…でも、マグルの血が入ってる半純血の人は私を避けるようになった。…他寮のことは知らないけど、ハリーか私が継承者って噂は消えてない。だって廊下を歩くとみんな避ける。

 

パンジー「プリムが継承者じゃないってわかったのに、まだビクビクしてるの。」

パンジーが私を避ける人に向かって言い放つ。

プリム「私はパンジー達がいればいいよ。」

ミリセントが珍しくドラコ達と一緒にいる。

…変だな。

 

ドラコ「まぁ座れ。」

…ミリセントも座ってる。これってあれか?

 

ドラコ「あれでウィーズリーが純血とはな。連中ときたら、どいつもこいつも、魔法界の恥晒しだ。」

クラッブ「ぐぅ…」

クラッブが何か言いたげだ。

 

ドラコ「どうしたクラッブ?」

クラッブ「…腹が痛くて」

ドラコ「…それにしても、日刊予言者新聞が、事件を報道していないとはね。きっとダンブルドアが口止めしてるんだろ。」

…クラッブの反応でわかった。ポリジュース薬だ。ミリセントはハーマイオニーだろう。…いろいろと変えたから猫にならなかったんだな。アズラエルも忙しいな。

 

プリム「なんの話?…あら、ミリセント。珍しいのね、ドラコ達の話を聞くなんて。」

ドラコの隣に腰をかけた。…面白そうだ。

ミリセント「…まぁね。たまにはいいかなって。」

ドラコ「まぁ…プリムも聞いてけよ、つまらない話じゃない。…父上が言ってるよ、ダンブルドアが学校を最悪にしてるって。」

ゴイル「それは違う!」

ドラコ「何だ?ダンブルドアよりもっと悪いのがいるって言うのか?え?誰だ?」

ゴイル「…ハリーポッター。」

 

ドラコ「フンなるほどな。いいこと言うじゃないか。お偉い…ポッターめ!みんなヤツがスリザリンの継承者だと思ってる。」

ハリー「誰が糸を引いているか、知ってるんだろ?」

ドラコ「だから知らないって…昨日も言ったろ。何度も言わせるな。」

 

ミリセント「プリムは?何か知らないの?」

プリム「あなたってクラッブとゴイル並の記憶力だった?…知らないわよ。もしかして…継承者なの?なんて聞かないでしょ?」

ミリセント「ち、違うの?」

ドラコ「…プリムは違うと言っただろ?まさか、半純血の連中みたいに怯えてるのか?」

ミリセントが首を激しく横にふる。

 

 

ドラコ「…父上の話では、秘密の部屋が開かれたのは50年前で、開けた者の名は言えないが、追放されたそうだ。…前に秘密の部屋が開かれた時は、汚れた血が死んだ。だから今回も、あいつらの誰かが殺されるさ。僕としては…グレンジャーだといいな。」

 

クラッブ「んーっ!」

顔を赤くしたクラッブが立ち上がる。殴るつもりだったのか?

ドラコ「お前らどうかしたのか?さっきから…変だぞ。」

ゴイル「腹が痛いせいだよ。落ち着け…。」

クラッブ「き…傷が…。」

ゴイル「髪が…。」

ミリセント「1時間だわ…。」

ドラコ「おい!どこ行くんだ?」

 

プリム「…変な3人。」

ポリジュース薬ってあんなにそっくりになるのね。

 

 

 



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蛇はパイプで眠る(秘密の部屋 終)

 

ハッフルパフとグリフィンドールの試合は中止になった。…ハーマイオニーが襲われたんだ、確か。

アリエッタ「あぁ…楽しみにしてたのに。」

プリム「アリエッタはシーカーになりたいの?」

アリエッタ「んー、向いてるなぁと思うのはシーカーだけど…セドリックがいるからね。」

プリム「そう…でもクィディッチはするんでしょ?」

アリエッタ「もちろん!その為のギフトだもの。来年の選抜試験受けてみようかなって。ビーターとしてセドリックを守るわ。」

来年はディメンターがでる。…早くパトローナスをできるようにならなきゃ。

プリム「…ディメンターに気をつけてね。」

 

________________

 

スリザリン寮

マクゴナガル「皆さん…静かに!事件が続いたため、たった今から、新しい規則を設けます。全校生徒は、夕方6時までに、各寮の談話室に戻ること。授業に行く時は、必ず先生が引率します。…例外はありません。…残念ですが…一連の襲撃の犯人が捕まらない限り学校の閉鎖も考えられます。」

 

 

…必要の部屋も頻繁には使えない。

 

ドラコ「プリム聞いたか?」

プリム「何を?」

ドラコ「今日、魔法省大臣が来てくださる。森番がアズカバンへ連行されるそうだ。…これは秘密だが、父上が言うにはダンブルドアは校長を停職するらしい。」

何やらドラコは嬉しそうだ。

プリム「…じゃあ、学校が閉鎖されるのはそう遠くないわけね。」

 

 

広間前

 

プリム「アリエッタ!…規則のこと聞いた?必要の部屋で集まるのは難しくなる。個人で空いた時間に開くことにしましょう。」

アリエッタ「そうね…」

沈黙が長く感じた。

 

_____________

 

その日の夜、スネイプ先生に、医務室に来るよう私は呼び出された。…ドラコもついて来た。私が怒られるとでも思ったのだろう。医務室にはハリー達もいた。私達を見ると直ぐに出て行ったけど。

 

スネイプ「8階の廊下で見つかったのだ。こうなってしまっては…薬の完成を待つしかない。」

 

アリエッタが石になっていた。

8階ってことは必要の部屋を開けようとしたんだろう。…手に握ってあるコンパクトのおかげで命に別状はない。

 

プリム「アリエッタ…」

ドラコ「…っ!これ、僕がプリムに…なんでアリエッタが。」

ドラコがアリエッタの握ったコンパクトを手に取る。

プリム「貸したの。」

ドラコの眉間にシワが寄る。

ハーマイオニーのベッドに近づいた。鏡が置いてある。手に紙は…ない。ハリー達が持ち去ったんだろう。

 

 

ドラコ「プリム、これは、僕が君にプレゼントしたものだ。君が持つべきものだ。」

ドラコが後ろで声を上げる。

 

プリム「アリエッタには必要だったの。」

ドラコ「気に入らなかったか?」

プリム「そうじゃないわ。これがなければ、アリエッタは死んでたってこと。」

スネイプ先生が後ろに立つ。

 

スネイプ「…ミスクロウリーは、原因が何か知っているのかね?…スリザリンの継承者が誰かも。」

閉心術をかけながら話すことにした。スネイプ先生にまだ存在がバレてはいけない。

 

プリム「…推測ですが、秘密の部屋にはバジリスクが眠っているのではないかと。継承者は知りません。」

ドラコ「バジリスクだって!?」

プリム「スリザリンの継承者はパーセルマウスで、バジリスクは蛇。石になった生徒が出た夜はクモが逃げる。」

スネイプ「…」

ドラコ「でも、バジリスクに睨まれたら死ぬんだ。誰も死んでないじゃないか。石になっただけだ。」

プリム「だから鏡が必要だったの。」

スネイプ「…さよう。」

ドラコ「…ど、どういうことだ?」

プリム「誰も直に目を見た訳じゃない。ハーマイオニーとアリエッタは鏡で。コリンはカメラを通して。ジャスティンは、ほとんど首なしニックを通して。ミセスノリスは床の水を見たの。」

スネイプ「君達は…寮に戻りなさい。それから、この件に関してはもう介入してはならない…。」

プリム「はい、先生。」

 

 

 

ドラコとスリザリン寮へ戻る。

ドラコ「バジリスクがホグワーツにいるって?一体どうやって動いてるんだ?でかい蛇が廊下をズルズルと?」

プリム「パイプ。」

ドラコ「パイプ?パイプだって?」

ありえないという表情だ。

 

プリム「城中張り巡らされてる。…ミセスノリスを見たとき床は水浸しだったし。でかい蛇がいて、マグル生まれを見つけて突然現ることも、パイプを使ってたらおかしくないわ。」

ドラコ「…そう、だな。」

ドラコは納得してソファーに深く腰をかける。

プリム「バジリスクのおかげで、ホグワーツはとても安全ね。」

危険でもあるが。

 

______________

 

 

 

アナウンス(マクゴナガル)「生徒は全員、直ちに寮に戻りなさい。先生方は、至急2階の廊下にお集まりください。」

 

…ジニーだな。先生達は集まるんだ、寮から抜けても気づかれないだろう。たぶん。

 

プリム「…」

おっと…。ハリー達も聞き耳を立てている。

…目くらまし術をかけておこう。

 

マクゴナガル「…ご覧の通りです。スリザリンの継承者が、また伝言を残しました。…恐れていた事態です。生徒が1人怪物にさらわれました…秘密の部屋の中へ。生徒を家に帰しましょう。…ホグワーツはもう、これでおしまいです。」

 

ロックハート「ウトウトしまして…何の話で?」

…ロックハートは、とことん教師もどきだ。

 

スネイプ「女子生徒が怪物に連れ去られた、あなたの出番ですぞ。」

ロックハート「私の…で…出番?」

スネイプ「昨夜おっしゃいましたな、秘密の部屋への入り口は…とうに知っていると。」

マクゴナガル「では決まりですね。怪物はあなたにお任せしましょう、ギルデロイ。伝説的な、あなたのお力にね。」

先生方はもう気づいているんだな、教師もどきだと。

 

ロックハート「よろしいあ〜…では部屋に戻って…。支度します。」

マダムポンフリー「連れ去られた生徒は誰なんです?」

マクゴナガル「…ジニーウィーズリーです。」

ロン「ジニー…」

 

“彼女の白骨は 永遠に 秘密の部屋に 横たわるであろう。”

 

プリム「…」

ハリー達がロックハートのところへ向かった。秘密の部屋の場所を教えに行くのだろう。…私は何もしない。いくら強くても、バジリスクとは闘いたくない。…半分嘘だ、臭くて汚いパイプの中に入りたくない。

___________

 

 

翌朝、ダンブルドアに呼び出された。何かしただろうか。…何もしてない。だってバジリスクと闘ってないし、トムリドルにも会ってない。…なんだ。

 

沸々と考えていると、ロンが校長室から駆け下りてきた。フクロウ便でハグリッドの釈放通知を送るんだろう。

 

ロン「あ、お前クロウリー…なんでこんなところにいるんだよ。」

プリム「ダンブルドアに呼び出された。そっちこそ、何か問題でも起こしたの?トラブルメーカー」

ロン「…感じの悪いやつ。なんでこんなのをハーマイオニーが友達って言うのかわからないな。」

プリム「あら気が合うのね、私もあなたは感じが悪いと思ってたわ。…ところで何か急ぎの用事があるんじゃないの?」

あ、そうだ!とロンが走り去る。

慌ただしいな。

 

 

校長室へ入ると、ハリーも居た。

プリム「お呼びですか、先生。」

ダンブルドア「あぁ、プリム。ようきた。少々聞きたいことがあっての。」

青いビー玉が見つめてくる。…常に閉心術をかけてる、大丈夫だ。落ち着け。

 

ダンブルドア「ハリー、まずは君にお礼を言いたい。君は、まことの信頼を示してくれた。そうでなければフォークスは、呼び寄せられまい。」

…不死鳥。そうだ、ひとつやることがある。

不死鳥の涙が欲しい。…バジリスクの毒も癒す力。

 

ダンブルドア「それからもう1つ。…君は何か悩んでいるようじゃが、違うかね?…ハリー。」

青いビー玉がハリーを見つめる。

 

 

ハリー「僕はその…あることに気付いてしまったんです。認めたくないけど…トムリドルと僕には、似通った点がある。」

私をチラチラと見て、様子をみながら話すハリー。

 

ダンブルドア「あぁ、そうじゃのう。君もまた、パーセルタングを話せる。プリムもじゃがの。」

プリム「…」

 

ダンブルドア「なぜならば、ヴォルデモート卿が…それを話せるからじゃ。わしが思うにヤツは、ハリー…君に自分の力の一部を移したのじゃ。…その傷を負わせた夜に。」

 

ハリー「ヴォルデモートが、力の一部を僕に…移した?」

 

ダンブルドア「ああ…思いがけずじゃろうが、そうなのじゃ。」

ハリー「じゃあやっぱり…僕はスリザリンに入るべきだった…。」

ダンブルドア「確かに君は、ヴォルデモートが誇った様々な資質を持っておる。…意志の強さ。豊かな才知。…少々規則を無視する傾向もな。…だがなぜ帽子はグリフィンドールに入れたか?」

ハリー「僕が頼んだから。」

ダンブルドア「その通りじゃよ、そこが君と、ヴォルデモートの違いじゃ。自分が何者かは能力で決まるのではない。“どんな選択をするか”じゃ。」

…能力を沢山つけてる私の存在を否定されていないか?さりげなく。知ってていってるなら、ダンブルドアもスリザリンだ。老害め。

 

 

ダンブルドア「君が、本当にグリフィンドールに属すという、証拠が欲しいのなら…これをよ〜く見るがいい。…気を付けてな。」

剣を持ち、見つめるハリー。

 

ハリー「…ゴドリック・グリフィンドール」

ダンブルドア「…そう。真のグリフィンドール生だけが、この剣を出せる。」

 

バタンッと強くドアが開く音が響いた。

…ルシウスさんだ。ドビーもいる。

ハリー「ドビー!じゃあ君のご主人って…君、マルフォイの家に仕えてるの?」

ドビー「うぅ…」

ルシウス「…お前のお仕置きは後だ。」

ドビーが怯えて震えてる。

 

 

ルシウス「ほう…お戻りだとは、本当でしたな。」

ダンブルドア「アーサーウィーズリーの娘が連れ去られたと聞いて、理事達がわしをここに、呼び戻したのじゃ。」

ルシウス「バカな…」

ダンブルドア「奇妙なことにの、何人かの理事は君に脅されたと考えておる。停職に賛同せねば、家族を呪うと。」

ルシウス「無礼なことを!」

ダンブルドア「何じゃと?」

ルシウス「この私が心を砕いているのは後にも先にも、この学校の繁栄と、そしてもちろん、生徒達のことです。誰の仕業か判明したのでしょうな?どうです?」

 

 

ダンブルドア「したとも。」

ルシウス「それで?誰かね?」

ハリーを見るダンブルドア

 

ダンブルドア「ヴォルデモートじゃ。」

ルシウス「ああ…」

ダンブルドア「今回は誰かを手先にして、行動したようじゃがな。これを…使ってじゃ。」

トムリドルの日記が黒く輝く。

ルシウス「なるほど。」

ドビーがハリーのローブを引っ張って、何か言いたげだ。…確かルシウスさんがジニーに渡したんだっけ。

 

ダンブルドア「幸いにもポッターが、これを見つけてくれた。ヴォルデモート卿の昔の学用品が、罪もない生徒の手に二度と渡らねばいいが、何かあれば…裏で糸を引いた者はただでは…済まさぬ。」

 

ルシウス「ではこの先もポッター君がいつも救ってくれることを祈りますか。」

スカイグレーがギラギラと輝く。

 

ハリー「ご心配なく、そのつもりです。」

ルシウス「…では失礼。来いドビー!帰るぞ。」

蹴られるドビー…扱いが酷いな。普通がわからないが。

 

ドビー「うっうっ…あ〜っ!そんなあんまりでございます…。」

ドアが閉まると、ハリーが日記を手に取る。

ハリー「先生、これをいただいていいですか?」

ハリーが日記を持って校長室を出た。

 

 

 

プリム「ハリーの話は終わりましたか?」

ダンブルドア「あぁ、プリム…君は何故パーセルタングを話せるのじゃ?」

プリム「私はどんな動物とも話せます。」

ダンブルドア「ほぅ…なんと、そんなことが。」

プリム「心は覗かないんですね、本当かどうかもわからないのに。」

ダンブルドア「わしはプリムを信じる方に賭けておるからの。」

…わかってないな。私はあなたを救わないのに。

 

プリム「ひとつ頼みを聞いてくださいませんか。」

ダンブルドアが視線をむける。心は覗いてない。

ダンブルドア「頼みとは?」

プリム「不死鳥の涙を採取したいのです。…とても貴重なものだ。興味があります。」

ダンブルドア「わしはよいが、フォークスに聞いてみてはいかがかの?…不死鳥とも話せればじゃが。」

もちろんだ、私はビーテといつも話せてるんだぞ?

不死鳥のフォークスに意識を向けて話しかける。

プリム「フォークスさん、私はプリム。あなたの涙をわけてくださいませんか?」

純粋で礼儀正しい子供。そう思わせる。

フォークス「…私はダンブルドアを信じるものに、力を貸します。あなたは違いますね?」

…鳥のくせに。気取ってる。鳥頭のくせに、勘がいい。

 

プリム「…確かにダンブルドアは信じてない。でも、あなたの力が必要なの。私の…私の大事な人を救う唯一の手段なの。」

嘘じゃない。スネイプ先生のことだ。ナギニの毒も不死鳥の涙があれば救える。筈だ。

 

フォークス「…時がくれば、私はあなたの前で涙を流しましょう。」

…やっぱり駄目か。可能性は初めから低い。

 

プリム「駄目みたいですね、先生。涙は貰えない。残念です。」

ダンブルドア「そうじゃったか、残念じゃ。じゃがプリムは、本当にどんな動物とも話せるようじゃの。」

プリム「はい、意識を向けないと話せませんが。…じゃあ、もう行きますね。」

 

ダンブルドア「プリム」

寮に戻ろうとすると呼び止められた。

 

ダンブルドア「わしのことは信用できないかの?」

プリム「はい、あなたのことはよく知ってますので。」

振り向かずに校長室を出た。

 

 

…ん?

ドビーが靴下を握ってる。あー、やっと自由になったんだね、ドビー。

 

________________

 

 

その夜、広間ではドラコがなにやら不機嫌だった。まぁ、マルフォイ家はいろいろあったよね。

 

広間のドアが開くと、アリエッタとハーマイオニーが戻ってきた。

ドラコ「アリエッタだぞ、会いに行かないのか?」

プリム「行かない。アリエッタならそうする。」

ロンとハーマイオニーが意識し始めるところだ。あまり下手に動かない方がいい。

 

 

ダンブルドア「宴を始める前に、まず拍手を送りたい。スプラウト先生と、マダムポンフリーに。マンドレイク薬で、石にされた者達を見事元に戻してくださった。」

盛大な拍手が送られる。

スプラウト「ふふ、ありがとう」

ドラコは拍手してない。…私はしておこう。軽く。アリエッタを救ってくれた。

 

ダンブルドア「更に、これまでの経緯を踏まえ、お祝いとして…期末試験を取りやめとする。」

スネイプ先生が本気か?という表情をしている。何も知らされてなかったんだろう、ちょっと面白い。たんまりと作った問題もあっただろうな。

ドラコも、これには拍手している。

 

バタンッと強く扉が開く音が広間に響く。

ハグリッド「遅れてすまねぇ。釈放通知を送ってきた梟が、道に迷ってしっちゃかめっちゃかでな。…エロールつう名前のやつだが。」

…ロンの梟だ。

 

ハグリッド「お前さん達のおかげだ、ハリーがいてくれたんで…。ロンも…もちろんハーマイオニーもだ。でなきゃ俺は…例のあそこから出られんかった。礼を言わせてくれ…ありがとう!」

ハリー「ホグワーツには、ハグリッドがいなきゃ。」

ハリーとハグリッドが抱擁し、拍手が送られる。だんだんと拍手は広がり立ち上がってみんな拍手する。拍手と歓声が広間に響く。

 

クラッブやゴイルが立ち上がって拍手しようとするが、ドラコに止められる。ドラコに付き合っておこう。…マルフォイ家はいろいろあったのだから。もちろん同情だ。

 

 

 

プリム「アリエッタ、さっきは会いに行かなくてごめんね?…もう、元気?」

アリエッタ「いいのよ、だってあそこの場面って重要だもの。…あなたのおかげで死ななかった。ありがとうプリム。」

抱き締めた。強くつよく。生きてることを確かめるように。

 

プリム「アリエッタは必要の部屋で特訓しようとしたの?」

アリエッタ「そう、守護霊の呪文。だって私達まだ形になってないでしょ?…マグルの世界じゃ魔法使えないから練習できないし。」

焦ってきて頻繁に通ったの、とアリエッタが言った。そうだ、まだ守護霊の呪文は膜を貼るくらいにしかならない。

 

プリム「じゃあ、私の家で練習しない?魔法を使っても、父上が使ったことになるから大丈夫よ。」

アリエッタ「わぁ…プリム、それって最高だね」




無事に秘密の部屋も終わりました!ここまでの「プリムローズが咲いた日」を読んでいただきありがとうございます❁⃘*.゚
次は遂にアズカバン!これからも是非、引き続き「プリムローズが咲いた日」をご愛読ください!


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ドラコマルフォイの思想 3

僕はスリザリンのシーカーになった。

ポッターにできて、僕にできないことはない。そもそも、僕は運が悪かった。

あの日、箒を飛んでるところを見たのはマクゴナガル先生だった。もし、もしもあの時…いや、もう考えるのはやめよう。思い出しただけでも腹が立つ。

さて、今日は初めての練習だ。…それに、この新しい箒。父上にずっと頼み続けた甲斐がある。

 

ドラコ「スリザリンの優勝は間違いないな…」

僕は輝く箒を見つめて小さく呟いた。

チームと競技場へ向かうと、ちょうどグリフィンドールと鉢合わせた。…まぁ、スネイプ先生の許可証がある。有無を言わせずスリザリンが使えるだろうな。

 

ウッド「どこ行くんだ?フリント。」

フリント「競技場さ。」

ウッド「今日はグリフィンドールが予約してる。」

フリント「どっこいお墨付きがある。」

 

ウィーズリーとグレンジャーが話を聞きにくる。揉めると思ったんだろう。プリムとパーキンソンも来た。

 

 

ウッド「私、スネイプ教授は、スリザリンが新しいシーカーを教育する必要を認め、競技場の使用を許可する。…新しいシーカー?誰だ?」

グリフィンドールのオリバーウッドがスネイプ先生の許可証を読み上げると、僕は前に出た。

 

ハリー「…マルフォイ?」

…なんだその間抜けな表情は。僕がシーカーなのがそんなに信じられないのか、ポッター。

ドラコ「その通り。新しいのはそれだけじゃない。」

僕は自慢の、黒く輝く箒を見せつける。…

ロン「ニンバス2001だ。…どこで手に入れた?」

…馬鹿な質問をするなウィーズリー。

フリント「ドラコの父上がくれた。」

ドラコ「どこかの親と違って、父上はいいものが買えるからね。」

…フン、ウィーズリーには縁遠い代物だ。

 

ハーマイオニー「でも、グリフィンドールの選手はお金じゃなくて、才能で選ばれてるわ。」

…こいつ、僕が金で選ばれたって言うのか。グレンジャーのくせに。…汚れた血のくせに!

プリム「ドラコは才能がある。」

パンジー「プリム?」

…っ!

 

プリム「お金で選ばれたんじゃない、ドラコは才能で選ばれたんだ。私が6歳の時には、ドラコは箒に乗れてた。」

…そうだ。プリムの言う通りだ。僕はポッターよりも前に乗れてたんだ。僕は、プリムのおかげで自信が持てた気がした。

 

ハーマイオニー「そんなの信じられないわ。」

ドラコ「お前の意見なんか聞いてない。この…汚れた血め。」

「うわぁ…ひでぇ」

スリザリンチームが哀れむ声を上げる。

お似合いの言葉だ、汚れた血のことなんか哀れまなくていい。

グレンジャーが鋭く僕を睨む。

 

ロン「よくも言ったなマルフォイ!ナメクジ食らえ!」

ウィーズリーの呪文が跳ね返る。無様だ。

 

「ハハハハ…。」

僕達は嘲笑う。無様すぎる。…折れた杖を使うほど、ウィーズリーの財産は無いのか。同じ純血とは思えない。

 

ハーマイオニー「大丈夫?ロン!何か言って!」

ロン「うっ…うっ…うぇっ!」

ウィーズリーの口からナメクジが出る。…気持ちの悪い呪いだ。僕は喰らわなくてよかったと心底思った。

カメラのフラッシュが眩しく光る。

 

コリン「わぁ!ロンをこっち向かせて。」

ハリー「コリン、どいてくれ!ハグリッドのとこへ行こう。何とかしてくれる、大丈夫だ。」

「ハハハハ…」

面白くて仕方がない。ウィーズリーにはお似合いの呪文だ。

 

 

プリム「汚れた血はどうかと思うよ、ドラコ。」

パンジー「グレンジャーにはお似合いだわ。」

ドラコ「ああ、そうさ。それにあいつ…僕がお金で選ばれただって?」

…思い出してまた腹が立った。くそ。

 

プリム「それはもう私が言ったじゃない。あなたは才能があるわ、ドラコ。」

パンジー「そうよ、ドラコ。シーカーなんて凄いわ。」

…パーキンソンはプリムと同じように僕に自信を持たせてくれる。悪い気分じゃない。

 

プリム「…とにかく、ドラコはもっと発言には気をつけたほうがいい。言った言葉は一生取り消せないんだ。紙に書いた文字と違ってね。」

僕を貶したんだ。グレンジャーにはぴったりだ。取り消すつもりはない。

 

_______________

 

 

 

夕食が終わって、寮へ戻ろうとすると、何やら通路が騒がしい。人集りを分けて前に出ると、面白いことが書かれていた。

「秘密の部屋は開かれたり。継承者の敵よ気を付けよ。」

壁には血文字でそう書かれていた。

 

 

ハリー「…フィルチの猫だ…ミセスノリスだ。」

ドラコ「”継承者の敵よ気を付けよ” 次はお前達だ、汚れた血め。」

フィルチ「何の騒ぎだ?どけどけ通るぞ。」

フィルチが来た。…ポッター、痛い目に合うぞ。口元がにやけた。

 

フィルチ「ポッターお前何を…ミセスノリス!…お前…私の猫を殺したな?」

ハリー「違う!僕じゃ…」

ドラコ「ふっ…」

ポッターのこういうときが一番面白い。

 

 

フィルチ「殺してやる。…殺してやる!」

ダンブルドア「アーガス!何事じゃ?…諸君みんな速やかに寮に戻るのじゃ。」

 

ダンブルドア「そこの3人は残りなさい。」

…ポッター達は残された。退学にでもなればいい。

 

______________

 

リー「またまたゴール!スリザリン!90対30でスリザリンリード!」

…フン、スリザリンの優勝は間違いない。

それに今日は父上が来てくださっている。

スリザリンが、僕が栄光を手にする瞬間を見せつけたい。絶対に。

 

ドラコ「バレエの練習かい?ポッター。」

…っ!ブラッジャーが変な動きをしている。

くそ、先にスニッチを見つけられた。…でも、この箒なら。

ドラコ「追いつけやしないだろ。」

僕はポッターの前に出た。フン、ほらな。僕の勝ちだポッター!…ポッターが横から僕を追い越す。ブラッジャーの邪魔も相まって、僕はバランスを崩してしまった。…地面が近く見えた。

 

ドラコ「うっ…ごほっ、」

…ポッターはスニッチをまだ追いかけているのが視界の端で見えた。…痛い。地面に打ちつけられたんだ。空が青い。

 

 

 

リー「ハリーポッターがスニッチをつかんだ!グリフィンドールの勝利!」

歓声が煩い。静かにしてくれ。…目頭が熱い。

 

 

プリム「ドラコ…大丈夫?」

ドラコ「あぁ…」

怪我よりも、痛みよりも、ポッターに負けたことが情けない。僕は、勝てなかった。今すぐここから立ち去りたい。…僕は、立ち上がって、マダムポンフリーのところへ向かった。

 

パンジー「ドラコはよくやったわ」

…煩い。

ブレーズ「新しい箒に慣れてないだけさ、そうだろドラコ?」

…煩い。…僕は勝てなかった。ポッターよりも前に乗れたのに。ポッターよりもいい箒なのに。…くそ。

 

 

 

 

 

ドラコ「うぁ…」

ポンフリー「呻かなくてよろしい!あなたは大丈夫です!どいてどいて」

呻きたくもなる。呻くことくらい許されてもいいだろう。

 

ポンフリー「なぜすぐ来なかったの?骨折なら簡単でも、骨を生やすとなると…。」

ハーマイオニー「でも治せますよね?」

ポンフリー「もちろん治せますとも…痛みますけどね。今夜はつらいですよ、骨の再生は荒療治です。」

ハリー「ぶっ!…うぇ。」

ポンフリー「かぼちゃジュースとでも思ったの?」

ポッターのところの方が騒がしい。僕はまた呻く。

 

 

ドラコ「うぅ…」

パンジー「大丈夫?ドラコ…」

パーキンソンが僕の手を握って心配している。…悪い気分じゃない。あたたかいし。…プリムが変な表情をしているのが気になるが。ブレーズとクラッブとゴイルも僕をそれなりに心配している。

 

プリム「これ、チョコレート好きでしょ?…食欲が出たら食べてね。」

僕のテーブルの上にプリムが蛙チョコを置いた。…プリムはチョコを食べない。アリエッタに貰ったか?僕の為に買ったのか?どっちだろう。

 



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ドラコマルフォイの思想 4

 

 

 

スネイプ「代わりに私の寮の生徒ではいかがかな?…マルフォイで…どうかね?」

 

今日は決闘クラブが開かれた。教師もどきのロックハートが開いたから面白いことが起こると思ってみていた。…まさか、ここでポッターと闘えるなんて。…クィディッチでは負けたが、魔法なら純血の僕の方が上に決まってる。

 

僕は杖を素早く抜いて壇上に上がった。

 

ロックハート「幸運を祈る。」

ハリー「はい先生。」

ロックハート「杖を構えて!」

ドラコ「怖いか?ポッター」

ハリー「そっちこそ」

僕達は視線を交わす。

一瞬も視線を逸らさなかった。

 

 

 

ロックハート「3つ数えたら、武器を取り上げる術をかけなさい。…取り上げるだけ!いいですね?…事故を起こすのは、イヤですからね。」

…あぁ、そうか…僕は考えた。狡猾に。スリザリンらしく。

 

ロックハート「ワン…ツー…」

ドラコ「エヴァーテ・スタティム!」

ロックハートがカウントを数え終える前に、僕は呪文をポッターに放った。ポッターがくるくると宙を舞う。…踊りが下手だなポッター。

ハリー「うぅ…」

 

「ずるいぞ!」

グリフィンドールからは非難轟々だ。

僕はスリザリンだ。狡くて何が悪い?

ドラコ「フン。」

クラッブ「ハハハハ…」

スリザリンは歓喜している。

 

ハリー「リクタスセンプラ!」

…っ!?

ドラコ「うぁっ…」

僕は正面からポッターの呪文を喰らう。

くそ…ポッターめ。

 

ロックハート「武器を取り上げるだけです!」

ドラコ「サーペンソーティア!」

蛇が現れる。ポッターの前にスルスルと近づく。

 

 

スネイプ「動くなポッター、追い払ってやろう。」

ロックハート「いや!私にお任せあれ。ヴォラテー・アセンデリ!」

…アリエッタの前に蛇が飛ばされる。

まずい、プリムが近くにいる。

アリエッタ「プリム…早く」

 

 

 

プリム『…Sei ya si es』

プリムがよくわからない言葉を話す。

蛇をけしかけてるみたいだ。

ハリー『…Sei a si essa 』

ポッターもシューシューと音を出す。

 

 

 

スネイプ「…ヴィペラ・イヴァネスカ」

 

 

 

 

____________

 

スリザリンの談話室では、プリムのことを継承者様などと、まるでポッターのような扱いをしていた。…馬鹿らしい。本人に聞くまでわからないじゃないか。それにスリザリンの血は薄い筈だ。プリムが嘘をついてなければ。

 

 

ドラコ「ちょっと話したい、今いいか?」

プリム「いいわよ、」

ドラコ「プリム、今日の決闘クラブで蛇と話しただろ。継承者なのか?」

少し小さく話した。

 

プリム「違うわ、私はアメリカの一族なの。だからスリザリンの血は濃くないの。継承者じゃないわ。…何度も言ったけど覚えられない?」

ドラコ「そうじゃない、パーセルマウスだ。それは、継承者に与えられる能力だ。」

プリム「ハリーも話せる。」

ドラコ「ああ、だから聞いてるんだ。ポッターが継承者なんてありえない。なら、プリム、君が継承者だろ?」

そうだ、ポッターはありえない。なら残るのはプリムだ。

 

プリム「…もう面倒くさい。アリエッタのせいだ。くそ。」

…っ?プリムから汚い言葉が聞こえた気がした。

ドラコ「なに?なんだって?」

プリム「ちょっと来て、シャルマンおいで」

にゃお…と背伸びしてプリムの後をついてくるシャルマン。プリムが僕の腕を掴み8階へ移動すると、壁が扉に変わる。

 

 

 

ドラコ「っ、ホグワーツにこんなところがあったのか。」

プリム「わたしは意識を向けると、どんな動物とも話せるの。猫とも話せる。もちろん蛇とも。」

ドラコ「な、なんだって?ありえない。」

プリム「パーセルマウスじゃないわ。私の、特別な力というか。まぁ、そんなとこ。」

ありえるのか?…聞いたことがない。そんな能力。七変化ならわかる。生まれついた能力だ。…なら、どんな動物と話せてもおかしくないのか?

 

 

ドラコ「…見ないとわからない。シャルマンと話してみてくれ。」

プリムとシャルマンが何やら話し始める…

わからない、何を話してるんだ。全くわからないぞ。

ドラコ「な、なにを話してるんだ?」

プリム「あなたに擦りよってってお願いしたの。」

にゃお…と気怠そうにシャルマンが僕に擦りよる。

 

プリム「信じてドラコ。私は継承者じゃない。」

ドラコ「僕は…確認しただけだ。プリムのことは信じてる。友達だからな。」

シャルマンの耳の裏を撫でる。プリムはここがシャルマンのお気に入りだと言っていた。

 

ドラコ「プリムじゃないなら、誰なんだ…」

継承者が誰なのか、わからなくなった。

マグル生まれを告げ口しようと思ったのに。

______________

 

 

…クラッブとゴイルが広間にいなかった。

どこにいったんだ?…寮の談話室に戻ろう。

 

廊下の先で2人を見つけた。…ん?ブルストロードもいるのか。珍しいな。プリム達はいないのか。

 

 

ゴイル(ハリー)「僕は…あの…。」

フン、監督生に捕まったのか。

 

ドラコ「クラッブ!ゴイル!どこにいたんだ?ず〜っと広間でバカ食いしてたのか?」

激しく顔を縦に振る2人。…そんなに振らなくてもいい。

 

ドラコ「それにブルストロードも…珍しいじゃないか…ゴイル、お前何でメガネなんだ?」

ポッターみたいな丸眼鏡をかけている。…ゴイルは視力が悪かったか?

ゴイル「あ…あの…本を読んでて。」

本を?…ゴイルが?…

ドラコ「字が読めたのか?」

また激しく顔を縦に振る。…フン、まぁいい。

 

ドラコ「こんな所に何の用だい?ウィーズリー。」

パーシー「態度に気を付けたまえマルフォイ。」

 

 

 

寮に戻りソファーに座る。

…声をかけないと座りそうにない3人。

心なしか、ソワソワしているように見えた。

…勘違いか。

ドラコ「まぁ座れ。」

 

 

ドラコ「あれでウィーズリーが純血とはな。連中ときたら、どいつもこいつも、魔法界の恥晒しだ。」

クラッブ「ぐぅ…」

 

 

ドラコ「どうしたクラッブ?」

クラッブ「…腹が痛くて」

…まぁいい。

 

ドラコ「…それにしても、日刊予言者新聞が、事件を報道していないとはね。きっとダンブルドアが口止めしてるんだろ。」

 

プリム「なんの話?…あら、ミリセント。珍しいのね、ドラコ達の話を聞くなんて。」

どこからか話を聞いていたのか、プリムが僕の隣へ座る。

ミリセント「…まぁね。たまにはいいかなって。」

ドラコ「まぁ…プリムも聞いてけよ、つまらない話じゃない。…父上が言ってるよ、ダンブルドアが学校を最悪にしてるって。」

ゴイル「それは違う!」

…っ!僕の言うことにはいつも頷くのに。なんだ?

ドラコ「何だ?ダンブルドアよりもっと悪いのがいるって言うのか?え?誰だ?」

ゴイル「…ハリーポッター。」

 

ドラコ「フンなるほどな。いいこと言うじゃないか。お偉い…ポッターめ!みんなヤツがスリザリンの継承者だと思ってる。」

そうだ、プリムは違うと言ったら、ポッターが継承者だと言うやつが増えた。

 

ハリー「誰が糸を引いているか、知ってるんだろ?」

ドラコ「だから知らないって…昨日も言ったろ。何度も言わせるな。」

なんてことだ、僕はこいつらの記憶力を舐めていたみたいだ。

 

 

ミリセント「プリムは?何か知らないの?」

プリム「あなたってクラッブとゴイル並の記憶力だった?…知らないわよ。もしかして…継承者なの?なんて聞かないでしょ?」

ミリセント「ち、違うの?」

プリムを疑うのか?あれだけ僕が言ったのに?

ドラコ「…プリムは違うと言っただろ?まさか、半純血の連中みたいに怯えてるのか?」

ブルストロードが首を激しく横にふる。

 

 

ドラコ「…父上の話では、秘密の部屋が開かれたのは50年前で、開けた者の名は言えないが、追放されたそうだ。…前に秘密の部屋が開かれた時は、汚れた血が死んだ。だから今回も、あいつらの誰かが殺されるさ。僕としては…グレンジャーだといいな。」

 

クラッブ「んーっ!」

顔を赤くしたクラッブが立ち上がる。…なんなんだ。さっきから。

ドラコ「お前らどうかしたのか?さっきから…変だぞ。」

ゴイル「腹が痛いせいだよ。落ち着け…。」

クラッブ「き…傷が…。」

ゴイル「髪が…。」

ミリセント「1時間だわ…。」

ドラコ「おい!どこ行くんだ?」

…なんなんだ。

 

プリム「…変な3人。」

 

 

 

 

______________

 

石になった生徒やほとんど首なしニックが戻った。薬ができたおかげだ。でも、僕にはどうでもいい。…僕の家の屋敷しもべが、居なくなった。父上はお怒りだ。…校長の退陣も、森番のことも、全部無くなった。

 

 

広間のドアが開くと、アリエッタとグレンジャーが戻ってきた。

ドラコ「アリエッタだぞ、会いに行かないのか?」

プリム「行かない。アリエッタならそうする。」

…どういうことだろうか。

 

 

ダンブルドア「宴を始める前に、まず拍手を送りたい。スプラウト先生と、マダムポンフリーに。マンドレイク薬で、石にされた者達を見事元に戻してくださった。」

拍手が送られる。

スプラウト「ふふ、ありがとう」

僕はしない。当たり前だ。マグル生まれがせっかく石になったのに。台無しだ。

 

 

ダンブルドア「更に、これまでの経緯を踏まえ、お祝いとして…期末試験を取りやめとする。」

ドラコ「っ!やった…」

僕はこれには歓喜した。まぁ、勉強をした努力は無駄になるが。

 

バタンッと強く扉が開く音が広間に響く。

ハグリッド「遅れてすまねぇ。釈放通知を送ってきた梟が、道に迷ってしっちゃかめっちゃかでな。…エロールつう名前のやつだが。」

 

ハグリッド「お前さん達のおかげだ、ハリーがいてくれたんで…。ロンも…もちろんハーマイオニーもだ。でなきゃ俺は…例のあそこから出られんかった。礼を言わせてくれ…ありがとう!」

ハリー「ホグワーツには、ハグリッドがいなきゃ。」

拍手が送られる。だんだんと拍手は広がり立ち上がってみんな拍手する。拍手と歓声が広間に響く。騒がしい。嬉しくない。

 

クラッブとゴイルが立ち上がって拍手しようとするが僕が止めた。拍手なんてしなくていい。なにもめでたくない。

 

 



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記憶

ファンタビの話に少し触れます。
見ていない方はネタバレになるかもしれないので、注意してください。


暗い。真っ暗。…冷たい。頬が濡れてる。

???「……タウ…タウリン…」

緑の光が視界の端で光る。

 

アリエッタ「…き…て…おきて…おきてプリム!」

 

 

プリム「…っ!」

声がして、ガバッと起き上がると、目の前にアリエッタがいた。

アリエッタ「プリムおはよう、何回も呼んだのに起きないから、心配したのよ?…ちょっと…凄い寝汗…大丈夫?」

寝汗…本当だ。枕やシーツが湿っぽい。…なんか夢見たかな。覚えてないや。

 

ボフッと音がなり煙が上がって…夢喰い獏が出てくる。獏は私の詠唱が無くても出てくるようになった。

 

獏「悪夢だ…悪夢の匂いがするぞ…プリム、おぬし悪夢を見たな?」

プリム「…覚えてない、何か見たような気もする。」

獏が近寄りスンスンと鼻先を額の上で動かす。

獏「…死だな。死の夢だ。…惜しいなぁ、喰えたら絶品だったじゃろうなぁ。」

そう言って式札に戻ってしまった。

…死の夢?…もうはっきり思い出せない。

 

プリム「アリエッタ、なんか言ってた?タウ…なんだったかな。そんな感じのこと。」

 

アリエッタ「んー、言ってない。それより朝ごはんだよ!シルビアさんのご飯って最高よね…まぁ、うちのママのご飯も好きだけど。シルビアさんのは別物だよ、魔法のおかげ?毎日食べてるプリムが羨ましい!」

アリエッタは私の家に泊まりに来てる。ご両親と何度か交流をして仲を深め、ようやく許してくださった。…一緒に学用品を揃えるからという理由もつけたが。…あ、シャワー浴びなきゃ。

 

プリム「…あぁ、結構汗かいたな。」

パジャマが張り付く感じが気持ち悪く、シャワーをさっと浴びた。

 

シルビア「さぁ、みんな朝ごはんできてるわよ。」

アリエッタと、シルビアさんレオナルドさんと食卓を囲んだ。平和だ。とても穏やかな一日だ。

 

アリエッタ「んー!シルビアさんのごはんは絶品です!…ほっぺた落ちちゃいそう!」

アリエッタが口いっぱいに頬張り、幸せそうな表情をしている。

 

シルビア「あら、嬉しいわ。プリムはあまり食べないから、アリエッタがいっぱい食べてくれると作り手としてもやる気になるわね。」

…私は食が細い。…前はそうじゃなかった気がする。前世のことはあまりわからないから、感覚的なことになるけど。…たぶん甘いものも好きだった。…身体が変わると体質も変わるのかもしれない。

 

レオナルド「プリム、アリエッタみたいに沢山食べないと駄目だぞ?」

プリム「はい…」

…食べない訳じゃない。食べれない。胃が悲鳴をあげるんだ。ミートボールを突きながら私は不貞腐れた。

 

 

 

 

プリム「アリエッタ、幸せな思い出ってどういう感じ?」

アリエッタ「んー、私は…魔法を使えた時…幸せだった。他にも思い浮かべたよ、セドリックが生きてる未来とか。」

ここは離れ。そう、魔法陣型結界を施した別邸で今、守護霊の呪文を練習している。アリエッタを招待した、もちろん危険なことも伝えた。…アリエッタは守護霊の呪文をもう習得できた。ハチドリだった。小さい身体を素早く動かしてアリエッタの周りを飛んでいる。

 

プリム「…幸せがわからない。」

私は行き詰まっていた。思いつく限り幸せなことを考えた。魔法のことも、ドラコのことも、シルビアさんとレオナルドさんのことも。…全部考えたのに、動物の形にならない。

 

プリム「私って、本当は…劣等生?」

アリエッタ「いやいや、だってギフト貰ったんでしょ?しかも魔力ダンブルドア並って…劣等生なんて…」

ありえないから、とアリエッタが私の額を押す。痛い…。

 

プリム「じゃあ、なんで出来ないのかな、わからない…もっかい自殺するか」

アリエッタ「駄目だめ、プリム!言ったでしょ?命は大事にするのよ、もう…」

プリム「死ぬけど、死なないよ?」

アリエッタ「駄目!」

また額を押された…痛いよ。

 

プリム「…でも、アリエッタができるなら、万々歳かな。汽車で使えるね。」

アリエッタ「でも、まずはルーピン先生が呪文を放った後じゃないと。」

プリム「何故?」

アリエッタ「ハリーが気絶しなくなるかも。」

あー…

プリム「そうね…つらいけど、耐えないとか。」

 

 

 

 

プリム「…」

 

“「怪物的な怪物の本」

「未来の霧を晴らす」カッサンドラ・バブラッキー著

「中級変身術」

「基本呪文集(3年生用)」ミランダ・ゴズホーク著

「数秘学と文法学」”

 

プリム「怪物的ね…」

 

アリエッタと学用品を揃えて、明日ホグワーツへ行く準備をした。怪物的な本がベルトを巻かれて唸っている。背表紙を撫でて読んだが、至って内容は普通だ。…何故怪物にしたのか。

 

プリム「…アリエッタには悪いけど、結局はこれが近道なのよね。」

アリエッタは別室で寝ている。こっそりと黒い箱を出した。

 

 

 

______________

 

 

白。真っ白だ。あたたかい。

アズラエル「…また来たんだねプリム。命を粗末にしてはいけないよ。」

青が視界に映る。

 

プリム「…近道を選んだの。粗末にはしてない。」

アズラエル「近道か。…それで?今度は何を知りたいんだい?」

沢山積まれた書類の間から視線を感じる。

 

プリム「そうね…まずは、守護霊の呪文が使えなくて行き詰まってる。幸せなことを沢山浮かべたけどどれも駄目だった。…アリエッタはできたのに。」

アズラエル「……守護霊の呪文は、絶対に使うべきものなのかい?」 

…?どういう意味だろうか。でも、守護霊の呪文は出来た方がいい。決戦の時にはディメンターが湧いていた筈だ。

 

プリム「そうね、絶対に使うわ。」

アズラエル「アリエッタにはあって、君には無いものがある。…前世の記憶だ。守護霊の呪文は自分の最も幸せだった記憶から生まれる。」

…わかった。理解してしまった…転生者は、恐らく前世の記憶を含めて全ての記憶なんだ。だから…私は使えない。 

 

プリム「…」

アズラエル「転生の儀の後には、前世の記憶を持たせることができない。…だから、守護霊の呪文は使えないに等しいね。」

…っ、そんな

プリム「なにか…方法はない?」

 

 

アズラエル「ひとつ手はある…でもとても難しいし、君への負担が大きい。」

プリム「その方法は、どんなことなの?」

アズラエル「君が、プリムになる前…その身体の持ち主だった魂がいる。その子について知り、全てを受け入れたら…守護霊の呪文は使えるかもしれない。でも、君がプリムでなくなる可能性もある。」

…身体?魂?…なんの話だ。

 

プリム「…私の身体は、私のものじゃないの?」

アズラエル「……私は5つのギフトを与えたね?それはとても稀なことなんだ。普通ならばアリエッタのように、1つ2つ…それに私は浅はかにも私の守護を与えた。…それに耐えられる強靭な肉体が必要だった。…もちろんアリエッタのように私が存在を作ることも可能だが、プリムの場合それでは肉体が保たない。」

…な、なにを話してる。どういうことだ。

 

プリム「つまり…何をしたの。」

アズラエル「…プリム達の世界を作ったときに存在していた死ぬ筈だった肉体に、君の魂を入れた。私が作るよりも、その方が安定するのです。」

元々…存在する?…プリムクロウリーなんていたか?知らない…

 

プリム「おかしいわ!プリムクロウリーなんて居ない筈…」

アズラエル「プリム達の記憶から作った世界には不安定なところもある。それを私が安定するよう複数の存在を作った。それにさっきも言ったように、その身体は何もしなければ魔力の暴走もせず死ぬべき命だった。でも私がプリムの魂を入れたから生きている。」

わからない…わからない…こんなのおかしい。私は…なんなんだ。

 

プリム「私はなんなの…私は!私は…プリムじゃないの!?」

 

 

 

???「プリム…?」

???「…」

…っ、気づくと、アズラエルの横に子供と女性が立っている。

プリム「あなた…誰なの」

子供は私によく似てる。でも目の色は違う。…双子や鏡を見ているみたいだ。

 

???「…私は元々その身体の持ち主だった魂。」

プリム「…そう、なら、そっちは?」

アリエス「私は…母親よ。アリエスシンプソン…。」

知らない人だ…マグルだろうか。

 

プリム「マグルなの?」

アリエス「違うわ、魔法使いよ。母はマグル。でも…父はオリオンブラックという魔法使いらしいわ。会ったことはないけど。」

確か…シリウス達の父親だ…じゃあ

プリム「ブラック家なの?シリウスを知ってる?」

アリエス「…父とは会ったこともないの、ブラック家に入ったこともない。何も知らないわ。恐らくシリウスも。」

 

プリム「そう…で、その子は?」

タウリン「私はタウリン…プリム、ありがとう…私の魂はもうその身体にないけど、身体は残った。あなたのおかげ。」

ありがとう、と微笑みを浮かべる。タウリンという少女。私より優しい微笑みだ。

 

プリム「で…私は何をすればいいの?アズラエル」

アズラエル「君の中にタウリンの魂を入れる…それで無理なら、守護霊の呪文は使えない。」

…は?無理だ。私の魂でも普通なら保てないんだろう?…2人分の魂なんて

 

プリム「…無理よ、それにタウリンについて何も知らない。もし私の一部になるなら、知らないと受け入れられない。」

 

アズラエル「タウリンのことか…タウリンはエイデンベアボーンとアリエスシンプソンの間に産まれた子だよ。…アリエスはもちろん彼女だ。」

隣の女性が優しく微笑む。

 

アズラエル「エイデンベアボーン、父親は…少々複雑でね。プリム…君にはクリーデンスベアボーンの記憶があるね?…私は世界を安定させる為にエイデンの存在を作った。」

クリーデンスは…ダンブルドアの弟かも知れない存在として記憶がある。…もしかして

 

アズラエル「タウリンは、クリーデンスベアボーン…つまりアウレリウスダンブルドアの血筋だ。」

プリム「…」

そんな…そんな…ダンブルドアなんて…

 

プリム「違う…私は、タウリンじゃない…ダンブルドアじゃない…プリムだ。…プリムクロウリーだ。」

瞬間、指先が崩れ始める。…なんだ!

アズラエル「駄目だ!プリム…タウリンの存在を否定するな!身体がなくなってしまう!」

プリム「っ!…私は…私は」

タウリン「私を受け入れて…」

タウリンが私の胸に飛び込む。…あたたかい。…マリアに包まれてるみたいだ。…シルビアさんやレオナルドさんに優しく抱き締められた時にも似てる。

 

 

__________

 

 

私が、女性と一緒に笑いあっている。女性はアリエスシンプソンに似てる。…

???「タウリン、あまり走ってはいけないよ。身体が弱いんだ。」

後ろから声が聞こえて振り向くと、整った顔の男性がいた。黒い髪…私と似てる。

 

タウリン「父上、でも今日は天気がいいの。だから沢山外で遊ばなきゃ。」

…目の前の子は私じゃない。緑色の目…タウリンだ。…父親、オリオンブラックか。…これは、記憶?…違う、タウリンの望む世界?

オリオン「…アリエスからも言ってくれ、」

アリエス「タウリンは活発な子だから、ふふ」

 

タウリンは私とは正反対だ。…でも、この光景は見たことがある。レオナルドさんとシルビアさんと一緒にいる時…。

 

 

タウリン「私が、もしも生きてたら、こういう世界があったらなっていつも思うの。…」

幸せだよねこんな世界があったら、と隣にタウリンが立つ。

 

プリム「…」

タウリン「私のことは、受け入れられない?…私が、ダンブルドアだから。」

プリム「…受け入れるよ。ダンブルドアでも。私は…プリムで…タウリンだ。私達は2人でひとつなんだ。そうでしょ?」

タウリンが微笑みを浮かべる。優しい。あたたかい。

 

タウリン「信じて、私を。私達を…受け入れて。」

 

 

 

______________

 

アズラエル「…プリム、大丈夫かい?」

プリム「…うん。」

…タウリンがいない。

 

アズラエル「タウリンは今、君の中だ。…受け入れてくれたんだね?」

プリム「……タウリンは、普通の女の子だった。家族の幸せを望む、普通の。」

胸の辺りを触った。鼓動を感じる。

 

プリム「私…ダンブルドアなら、魔力いらなかったんじゃ」

アズラエル「いや、プリムには必要かな。…今まではタウリンのことを知らなかったからね。でも、今ならきっと最大限の力が出せるようになるだろう。タウリンを受け入れたなら。」

私は…タウリンになるんだろうか。

 

プリム「…」

アズラエル「…タウリンは君の一部だ。プリムはタウリンで、タウリンはプリムだよ。」

…思考を読んだな。

 

アズラエル「さぁ…もう、目覚める時間だよ。」

 

 

 

 

 

 

 

…重い。腹の辺りが重い。

シャルマン「にゃお」

 

プリム「…重いシャルマン。」

目が覚めると、朝になっていた。そんなに経ったのか。

 

プリム「…何も変わってない。」

姿鏡の前に立って、鏡の中の自分に触れた。

冷たい。…よく見ると、目の奥が違う色に見えた。緑色…タウリンの色だ。…夢じゃなかった。私の中にタウリンがいる。

 

プリム「…タウリンダンブルドア。」

 

“Expect Patronum”(守護霊よ、来たれ)

…タウリンが見せてくれた光景を思いだした。…不死鳥の守護霊。…輝いて私の周りを飛び回りゆっくり消える。

 

プリム「…やっぱり。」

やっぱり不死鳥だ。…汽車では使えない。目立ってしまう。

 

 

 

ドタバタと廊下を走る足音。バタンッとドアが開く。

アリエッタ「プリム!朝だよ!朝ごはん!…あぁ、今日からまたホグワーツだわ。それに、クィディッチ選抜試験!」

プリム「…た、楽しみだね、アリエッタ」

…元気だなぁ、アリエッタ。

 

______________

 

 

ホグワーツ特急

 

ハリー「叔母さんを膨らませるつもりは無かったけどキレちゃって…」

ロンとハリーが笑っている

ハーマイオニー「笑うようなことじゃないわ…退学にならなくてラッキーよ」

プリム「やぁ、ハーマイオニー」

ハーマイオニー「あら、プリム。元気だった?」

プリム「まぁ。ハーマイオニーは?」

ハーマイオニー「元気よ、あ…私達まだ席見つけてないの、またホグワーツでね。」

ハーマイオニーが先の方へ進む。ハーマイオニーとは仲良くしている。

 

ロン「おい、ハーマイオニー正気か?君まだクロウリーと仲良くしてるの?」

ハーマイオニー「もちろんよ、プリムはいい子よ?マルフォイと違って」

…そんな会話が聞こえてきたので、ロンとは仲良くなれない。

 

プリム「シャルマン、おいで。」

シャルマン「鼠はいいのか?」

プリム「…うん。学校で見張るだけにして。」

クルックシャンクスもいるから、大丈夫な筈だ。

 

ブレーズ「プリム、あれ読んだか?」

プリム「あれ?」

ブレーズ「怪物的な怪物の本だよ、なんなんだあの本。僕の服が半分駄目になった。」

最悪な本だ、とブレーズが眉間にシワを寄せる。今年はブレーズ達と一緒にいる。アリエッタは一緒に乗りたがってたが話はホグワーツでもできるので断った、ドラコと乗るつもりだったけど…

 

パンジー「ドラコは髪を下ろした姿もかっこいいわね」

ドラコ「…そうか?」

向かいのコンパートメントでいちゃいちゃする2人。手を握っている。

 

プリム「…」

そう…どうやら2人は付き合っているらしい。話的には変わらず進んでいるから嬉しい。…のに、吐きそうだ。

 

セオドール「…プリム、具合悪い?」

プリム「…ちょっとね。」

ブレーズ「大丈夫か?」

ブレーズが私の額に手を当てる、心配をしているみたいだ。

プリム「大丈夫、すぐよくなるわ。」

 

向かいのコンパートメントは視界に入れないことにした。

 

セオドール「ねぇ、みんなアズカバンから脱獄した囚人知ってる?」

ブレーズ「シリウスブラックだろ?でも、魔法省が総動員して探し回ってるから、じきに捕まるさ。」

プリム「でもアズカバンから脱獄したなら、見つけるのは難しいかもね。」

その時、列車が急停止した。

ガタンッと車両が揺れる。

 

ブレーズ「なんだ?…なんで止まった?」

セオドール「ホグワーツはまだ先だよね?」

窓が凍りつき、寒い空気が漂う。

…ディメンターだ。

プリム「ドアから離れて…」

電灯がチカチカと点滅して消え始める。

ドアが開き、黒い影が乗り込んでくる。

…ハリーのところだけじゃないのか!

 

プリム「っ…ぅ、」

魂を吸われる。幸せがなくなってく感じだ。

ハリーが気絶するまで待たないと行けない。

…はやく…はやくして。

…意識が遠のいてく、視界の端でハチドリが飛んでる気がした。

 

 

 

暗い。真っ暗だ。…冷たい。頬が濡れてる。

アリエス「……タウ…タウリン…」

緑の光が視界の端で光る。

 

 

ブレーズ「…リム…プリム…大丈夫かプリム」

プリム「…ええ、大丈夫よ。」

…意識がなくなる瞬間見えたのは、たぶんタウリンの記憶だ。アリエスシンプソンが殺された姿だろう。…夢で見た光景をやっと理解できた。

セオドール「ルーピン先生が、プリムが起きたら、食べさせてって。…食べられる?」

セオドールがチョコレートをくれた。

ブレーズ「…プリムはチョコレート嫌いだろ?無理しなくていいぞ?」

私はそんなにわかりやすく避けてたか?

 

プリム「…食べるわ。」

ひとかけら口に入れた。

 

 

ノックがして、コンパートメントの扉が開く。

アリエッタ「プリムっ…大丈夫?」

プリム「アリエッタ、大丈夫よ。ありがとう…あなたよね、あのハチドリ。」

アリエッタ「うん、ハリーが倒れた姿を見て、すぐ。」

プリム「アリエッタの守護霊は素晴らしいよ、ありがとう。」

アリエッタ「でも、ルーピン先生に目をつけられたかも。」

プリム「…大丈夫、先生は優しいから。」

 

 

____________

 

 

ホグワーツ特急がホグズミード駅で止まり、ホグワーツまでの夜道を馬車が走る。

 

ブレーズ「まだアリエッタと仲良くしてるのか?」

プリム「アリエッタはいい子よ」

ブレーズ「君に相応しくない」

純血主義者は皆同じことを言う。

 

プリム「…あなたってドラコと同じこと言うのね。」

ブレーズ「…っ!僕とアイツを一緒にするな。」

セオドール「…ブレーズはドラコと比べられるのが嫌なんだよ。2人って似てるだろ?」

おい!とセオドールの言葉を遮るブレーズ。

 

プリム「ドラコと一緒になりたくないなら、考え方を変えることね。」

ブレーズ「君は純血主義じゃないのか?」

プリム「…純血主義なんて、もう古い考えよ。生まれについてこだわっていたら、優秀な魔法使いは生まれないと思う。…ハーマイオニーがいい例ね。…純血であれば魔法の力は強いけど、魔法の世界の発展には広い視野を持つべきって思わない?」

 

セオドール「…確かにグレンジャーは成績トップだ。…プリムの考えも一理あるね。」

ブレーズ「…」

 

プリム「…純血であることを誇りに思う。けど、純血だから必ずしも優秀でもないでしょ?」

ブレーズがクラッブやゴイルを見る。

 

プリム「だから私に相応しいかどうかは、血を見るんじゃない、才能を見るの。…わかった?」

セオドールとブレーズが静かに頷く。

考え方を理解してくれたみたいだ。

監督生のジェマのスピーチを参考にした。効果はあるみたいだな。




実の父親はアウレリウスダンブルドア(クリーデンスベアボーン)とナギニの孫にあたる、エイデンベアボーンだった。エイデンの父はアウレリウスの息子ライアンベアボーン、母はオフィリアモント。エイデンはイルヴァーモーニー出身。卒業後はマグルの世界で医者になる為、アリエスにマグルと勘違いされる。

実の母親はアリエスシンプソン、オリオンブラックとマグルであるアメリアシンプソンの娘、アメリアシンプソンは容姿が美しいことで有名だった。スリザリン生。ホグワーツ卒業後エイデンと出会い結婚したが、考え方の違いにより別れる。子供を身篭っていたが、ノクターン横丁に産み落としすぐに死亡。子供はタウリンと名付ける。子供は、のちのプリムクロウリーである。

アリエスシンプソンはシリウスブラックの妹にあたる魔法使いだが、マグルとの間の子であった為に母親の元で育ちブラック家の家系図にはいない。シリウスも知らない存在。

プリムの出生名タウリンダンブルドア(Taurine Dumbledore)


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動く影

 

生徒の集まった広間で、ダンブルドアが新学期の挨拶をする。

ダンブルドア「いよいよ新学期が始まる。まず皆に知らせがある。…宴のご馳走でボーっとなる前に話しておこうかの。…はじめにR·J·ルーピン先生を紹介しよう。…空席だった”闇の魔術に対する防衛術”の担当をしてくださる。ルーピン先生じゃ!」

 

ルーピン先生が軽く挨拶をし、先生や生徒が拍手で迎える。スネイプ先生は…少しは拍手をしてくれたみたいだ。

 

ハーマイオニー「だからチョコレートが効くって知ってたのね。」

 

ドラコ「ポッター!…ポッター!…気絶したって?」

ブレーズ達が気絶するフリをする。

…なかなか上手いじゃないか。

 

ドラコ「本当に気絶したのか?」

ロン「うるさいぞマルフォイ!」

ハリー「なんで知ってるんだ…」

ハーマイオニー「…ほっときなさい。」

ドラコは面白くてたまらないという表情だ。

 

ダンブルドア「”魔法生物飼育学”の先生が退任されることになった。手足がまだ無事に残ってるうちに余生を楽しまれたいそうじゃ。…幸いその後任として皆もよく知っている先生があたってくれる。…ルビウス·ハグリッドじゃ。」

ハグリッドがマクゴナガル先生に突かれて立ち上がる。急に立ち上がったので、大きな身体が机を押す。

 

ドラコ「…森番が教師だって?」

ドラコは眉間にシワを寄せる。

グリフィンドールからは歓声が上がった。

 

ダンブルドア「最後に深刻なお知らせじゃが…魔法省の申し入れでアズカバンのディメンターが我が校の警備に当たる。シリウスブラックが逮捕されるまでじゃ。」

「アズカバンのディメンター?」

「シリウスブラックだって?」

生徒がざわつき始める。

 

ダンブルドア「ディメンターは学校への入り口を全て見張る。ディメンターがいることで毎日の学校生活には何ら影響はない筈じゃが、ひとついうておく…ディメンターは凶暴じゃ。狙う相手も邪魔する者も容赦なく襲う。くれぐれも注意するのじゃ。あの者達が危害を加える口実をあたえるでないぞ。…ディメンターに許しを乞うても耳を貸さん。」

生徒が静かになり、固唾を呑んで聞いている。

 

ダンブルドア「じゃが、暗闇の中でも、幸せは見つけることができる。…明かりを灯すことを忘れなければな。」

 

 

 

広間を出ると、何やらグリフィンドールの寮がある階段が騒がしい。…

 

ハーマイオニー「太ったレディーが通してくれないんですって。」

プリム「っ!…やぁ、ハーマイオニー。」

後ろにいたハーマイオニーに気づかなかった。…びっくりした。

 

太ったレディーの叫び声が響いた。…何がしたいんだろうか。

ハーマイオニー「3年間もこんな感じなのよ…スリザリンはどう?」

プリム「…滅多にないかな。」

そうよね、そこは羨ましいわ。とハーマイオニーが階段を登る。

 

______________

 

スリザリン女子寮

 

パンジー「でね、ドラコってばエスコートまで完璧なの!流石よね。」

プリム「…まぁ、由緒ある純血一族様だからね。それもかの有名なマルフォイ。出来なきゃお父上様が怒るだろうね。」

ガールズトークなるものが繰り広げ始めた。ことの発端はパンジーがドラコの自慢話を始めたからだ。

 

ダフネ「そういえば、私の妹も今年入学したのよ、無事にスリザリンだったわ。知ってる?」

プリム「ええ、見たわ、ダフネと似て綺麗な子だった。」

アストリアが今年入学した。…ドラコの結婚相手になるかもしれない子だ。

 

プリム「アストリアだっけ?…」

ダフネ「ええ、そうなんだけど…ドラコのことばっかり話すのよ。純血の集まりがあるから、前からドラコのこと、知ってはいた筈なんだけど…最近は特に酷いというか…」

パンジー「ちょっと!ドラコは私と付き合ってるのよ?妹でしょ?なんとかしなさいよ!」

…未来の結婚相手だ。たぶん無理だけど。

 

ミリセント「私はまだ男の子って理解できないわ…」

みんな早いわね、とミリセントが猫のノアールを撫でる。

 

プリム「私もわからない。」

パンジー「え?プリムにはブレーズがいるじゃない!」

うんうんとダフネとミリセントが頷く。

 

プリム「ん?…ブレーズ?なんで?」

パンジー「ちょっと…気づいてないの?ブレーズはプリムのこと好きなのよ。」

……あー。そうなのか?

プリム「…私はそういう感情はないよ。」

パンジー「なんだ…つまらない」

つまらないとは失礼じゃないか?

 

プリム「…昔、好きだと思った相手はいる。」

きゃー!だれだれ?と近づく皆の顔。…そんなに面白い話じゃないんだが。

 

プリム「あー…ドラコだよ。でもでも!6歳の時だし…今は普通に友達だから、心配しないでよ、パンジー?」

パンジー「プリムじゃ…私敵わないわよぉ…うぅ」

…泣いてしまった。

プリム「あー、パンジー。パンジーはとても魅力のある女の子だよ、私よりも貴族の振る舞いができるし、それにかわいいし、だから…ドラコもパンジーが可愛げのある大事な恋人だと思ってるよ。」

パンジーの頭を優しく撫でながら、褒め称えた。

 

パンジー「本当?…私ドラコに相応しいかな?」

ダフネ「もちろんよ、私達が認めるわ。」

パンジーが、よかったぁ…と涙ぐみながら安慮の表情を浮かべる。

 

…ドラコは、パンジーやアストリアと一緒にいるべきだ。アズラエルの仕事量も増えるしな。

 

_____________

 

翌朝の授業は、バスシバ·バブリング先生の古代ルーン文字学だった。トレローニー先生の占い学じゃない。3年生は古代ルーン文字学と、占い学は同じ時間の選択科目だった。ハリーの様子を見る為に占い学を選択しようとしたけど、パンジー達がイースター休暇中に手紙で古代ルーン文字学を選択するから、皆で合わせようと言われた。アリエッタは占い学かもしれない。

 

正直なところ、先生のことも記憶にないし、占い学しか記憶がない。それもそうだ…ハリーの物語しか知らないのだから。

 

ハーマイオニー「プリム!あなたもこの授業選択したのね?一緒で嬉しいわ。」

プリム「やぁ、ハーマイオニー。…ハリー達は一緒じゃないのね?いつも一緒なのに。」

ハーマイオニー「あー…私はこの授業が面白そうだと思ったけど、ハリー達は占い学の方が楽そうだって。」

…映画では占い学にハーマイオニーいたよな。あー…逆転時計か。

プリム「…」

胸元で輝くタイムターナーが見えた。

アルバス達は来年来るのだろうか…

 

ハーマイオニー「プリム?」

プリム「あー、占い学はハーマイオニーにはつまらないかもね。頭では考えないらしいから。こっちを選んで正解だよ。」

ハーマイオニー「頭では考えない?そんな授業あるの?」

プリム「後でハリー達に聞いてみるといい、居眠りしていなければだけど。」

居眠りをしている姿を思い浮かべてお互いに笑った。

 

パンジー「プリム、こっちで授業聞きましょう?」

プリム「あー、じゃあ…また後でね?ハーマイオニー」

ハーマイオニー「ええ、またね?」

 

スリザリンとグリフィンドールには壁がある。悲しいかな、これは記憶通りだ。

 

バブリング「…私はバスシバ·バブリング。古代ルーン文字学を教えます。…古代ルーン文字は”呪術や儀式に用いられた神秘的な文字”と紹介されることもありますが…実際には日常の目的で使われており、ルーン文字で記された書簡や荷札なども多数残されています。」

…結界術や式神学と似ているか?…古代ルーン文字学の派生なのかもしれない。意外なところと繋がりがあるな。

 

バブリング「ルーン文字の起源説としては、学者の間では、北イタリア説が最も有力です。…世界最古のルーン文字は、北ドイツで出土した1世紀の遺物のブローチに彫られたものであるといわれています。その他には、ブラクテアートと呼ばれる薄い黄金製の円盤にルーン文字を刻んだものが多数発見され、護符を兼ねた装飾品として扱われていました。…」

 

 

 

 

 

パンジー「プリム、グレンジャーと話すのは、もうやめた方がいいわ。」

ハグリッドの授業に向かいながら、パンジーが話しかけてくる。

 

プリム「…どうせ、私に相応しくない、だろ?」

パンジー「ええ、相応しくない。汚れた血なのよ?」

この会話何度目だ?…血への執着が強いなスリザリン。

 

プリム「そんなことで少ない友達を失いたくないね。」

パンジー「…友達?グレンジャーが?」

プリム「ええ、何かおかしなこと言った?」

パンジー「…あなた血を裏切るの?」

プリム「そうじゃないよ。純血であることには誇りに思ってる。」

パンジー「じゃあやっぱり、グレンジャーといるべきじゃないわ。」

プリム「…パンジー、クラッブやゴイルを見て?純血だから優秀で優れていると思う?私に相応しいかどうかは、血を見るんじゃない、才能を見てるの。」

そういうと、パンジーは黙ってしまった。

 

プリム「…だからパンジー達が一番の友達ってことに変わりないわ。私はスリザリンだしね。」

パンジーは何も言わず微笑んだ。

 

 

 

ハグリッドが小屋の外で待っていた。

 

ハグリッド「いいか皆…おしゃべりはやめてもっと近くによれや。今日は皆にいいもんを見せる。すごい授業だぞ。ついてこいや。」

奥に進むと、開けたところがあった。

 

ハグリッド「さてと、そこに集まれや…49ページを開いて」 

ドラコ「どうやって開くのさ!」 

ハグリッド「ただ、背表紙を撫でればいいんだ…やれやれ」 

皆が背表紙を撫でて開く中、ネビルは撫でずに本を縛っているベルトを取ったから本が暴れだす。

ネビル「わああぁあ!」

ドラコ「喚くなロングボトム」

…ネビルは話を聞いてなかったのか?

 

ハーマイオニー「面白い本ね。」

ドラコが「ああ、面白いね、笑えるよ。あのウドの大木が教えるなんて、この学校も落ちたもんだな。…父上が聞いたらなんとおっしゃるか。」

ハリー「黙れよマルフォイ」

ハリーとドラコが視線を交わす。

ほっとけばいいのに。

 

ドラコ「っ!ディメンターだ!」

はっ!とみんなが後ろを振り向く。

まぁ、当然そこには居ない。とことんスリザリンらしいな、ドラコは。

 

「ハハハハ…」

スリザリン生が嘲笑う。

パンジーやブレーズがディメンターの真似をする。

プリム「…パンジー、女の子でしょ?ディメンターの真似なんて。」

パンジー「あら楽しいじゃない。」

プリム「…」

ぼろぼろの姿のネビルが視界に入り、そっちに目線がいった。

 

 

ハグリッドが咳払いをして皆が注目する。

 

ハグリッド「タッタラターン!さあ、みんな美しかろ…バックビークに挨拶しよう」

…奇妙で…美しい生き物を見せる。 

胴体、後ろ足、尻尾は馬で、前足と羽根と頭部は巨大な鳥のように見える。

ぎらぎらした目とくちばしは鷲にそっくりだ。

ロン「ハグリッド…それ何なの?」 

 

ハグリッド「ヒッポグリフって言う生き物だ。最初に言うとくが、こいつらは誇り高い。…すぐ怒るから絶対侮辱しちゃなんねえぞ。そんなことしたら…おしめえだからな。さて、誰から挨拶する?。」 

ハリー以外が後ろに下がる。…っ、狭い。後ろに立ったのは間違いか。

ハグリッド「よし、ハリーいいぞ」

ハリー「っ!」

 

 

ハグリッド「いいか、ヒッポグリフが先に動くのを待つ。それが礼儀だ。…そばまで行ってお辞儀をして、向こうがお辞儀を返すのを待つ。…返したら触ってもいいと言うことだ。返さなかったら、まぁ…その話はあとだ。」 

ハリーはバックビーグの前にゆっくり出て行く。

ハグリッド「それ、おじきだ」

ハリーが丁寧なお辞儀をする。

バックビーグが近づくなというように、前足を上げる。

 

ハグリッド「下がれ!下がれハリー…そのまま…そのままだ」

ハリー「…」

バックビークが前足を折ってお辞儀を返した。

 

ハグリッド「ええぞハリー、やったな。…ようしよし、いい子だ!…そんじゃ今度は触ってみ。…さぁ、遠慮せんで。ゆっくりだぞ…ゆっくり。…あせるなハリー。…近づくのを待て…」

ハリーがバックビーグの嘴に触れた。

ハグリッド「ハリー…ようやった」

静かに従うバックビークにみんなが拍手する。 

ハグリッド「背中に乗せてくれるぞ」

ハグリッドがハリーをバックビーグの背中に押し上げる。 

ハリー「ちょっと…ああ」 

ハグリッド「羽根を引っこ抜かぬようにな。それッ…」

ハグリッドがバックビーグの尻を叩くと走り出し羽根を大きく広げて大空に舞い上がった。学校の上から山を超え、湖で遊ぶ。ハグリッドが口笛を吹くと元のところに舞い降りた。

ハグリッド「ようやったぞハリー」 

ハグリッドがほめながら「オレの初日はどうだ」と聞く。 

ハリー「最高だよハグリッド」  

 

 

ドラコ「やってられないね…」

影口を叩くドラコ。…あ、そうだ。怪我するんだ。…

ドラコ「何だよこいつぜんぜん危険じゃないな」

…どうする。…いやでも大したことない筈だ。

プリム「…」

バックビークが立ち上がりドラコが前足で蹴られる。皆がパニックになる。わかってて何もしなかった。…胸の辺りがズキズキした。

 

ハグリッド「…バックビーグ!全く…馬鹿なやつだ」

 

ドラコ「死んじゃう…死んじゃうよ…」 

ハグリッド「落ち着け…かすり傷だ。」

ハーマイオニー「ハグリッド早く医務室に!」

ハグリッド「…ああ、先生だから俺が…授業はこれまでだ」 

ハグリッドがドラコを抱えて医務室に運んだ。 …美女と野獣みたいだな。想像して吹き出した。ごめんドラコ。

 

 

 

パンジー「ひどく痛む?ドラコ」

ドラコ「時々ね、でも運が良かったよ…マダムポンフリーの話だと、下手すれば腕が取れてたって。…これじゃ宿題も出来ない」  

プリム「…」

ブレーズ「おい、変な顔になってるぞプリム。」

プリム「…りんごが酸っぱくて」

手にしていた青りんごをかじった。

 

 

ロン「よく言うぜあいつ…大したこともないのに大げさに」 

ハリーが「…大したこと無くてよかった」

ハーマイオニー「でもドラコのお父さんがかんかんだから、まだ分からないわ…」

3人はハグリッドが首にならないか心配しているみたいだ。

 

 

グリフィンドールのシェーマスフィネガンが日刊予言者新聞を広げて「あいつが目撃されたって」と叫ぶ

「誰が?」

「シリウスブラック…」 

ハーマイオニー「ダフタウンで?ここから遠くないわ!」

ネビル「ほ、ホグワーツに来るの?」

シェーマス「ディメンターの目をくぐって脱獄したやつだぞ。またくぐるかも知れないだろ」

 

___________

 

地下 魔法薬学教室

 

プリム「…蔵書。半純血のプリンス蔵書はどこだ。」

スネイプ先生が居ない教室で、半純血のプリンス蔵書を探していた。…スラグホーン先生の時にはすぐにあったのに。どこにも見当たらない。

 

プリム「…もしかして、こっち?」

スネイプ先生の机が目に入る。

プリム「いやいや…無かったらどうする。見つかって減点ならいい方だぞ。」

……さっと見てなかったら諦めよう。

 

プリム「…っ!、これは。」

蔵書だ。…サインもある。…半純血のプリンス蔵書。それにこの書き込み。本物だ。

 

“Geminio”(そっくり)

 

双子の呪文をすかさずかけた。するとそっくりの本が一冊できる。…中身もよくできてる。…魔力のおかげか?本物みたいだ。

 

プリム「…案外楽勝じゃないか。」

本物の蔵書を元の位置に戻す。瞬間、教室の扉が開いた。…まずい。

 

スネイプ「…何をしているのかね?ミスクロウリー、」

…まずい。…どうする。

プリム「忘れ物をして…でもこの教室じゃなかったみたいです。」

忘れ物?馬鹿か?…バレバレだ。おしまいだ。

プリム「あの…じゃあ、これで失礼します。」

スネイプ「…気をつけたまえ。」

 

 

 

プリム「し、心臓に悪い…」

でも、蔵書を手に入れた。まぁ…偽物ではあるけど。だいたいは同じだろう。あとは…幸運の液体の材料を集めて…作るだけ。



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黒い魂

 

継ぎ接ぎのローブを着たルーピン先生。

今日は、闇の魔術に対する防衛術の授業だ。

洋タンスが先程からガタガタ音をたてて揺れている。

ボガートが入ってるのだろう。

私は…どうなるんだろうか、何になるんだろうか。

スリザリン生もグリフィンドール生も、近ず離れずといった位置にいる。

 

ルーピン「面白いだろ…たんすの中にいるのは何者か、分かる人はいるかな?」 

ディーン「まね妖怪ボガート」 

ルーピン「そのとおりだよ…では、ボガートはどんな姿をしているかな?…」 

ハーマイオニー「誰も知りません。」

ハーマイオニーが現れて発言する。

ロン「いつ来たんだ!?」

ハーマイオニー「形態模写妖怪です。…相手が一番怖いと思うものに姿を変えます。だから…」

 

ルーピン「だから、とても怖い…そのとおりだね。…幸いボガートを退散させる簡単な呪文がある。…じゃあ練習しよう…あー、杖なしでいいよ。言ってみよう…”リディクラス!”」 

「リディクラス」 

ルーピン「いいね、次は大きな声ではっきりとこんな風に”リディクラス”」

「リディクラス!」

 

ドラコ「”馬鹿らしい”授業だ」

馬鹿げたという意味のridiculousとかけてるのだろう、ユーモアがある。…クラッブとゴイルは理解してないだろう。

 

 

ルーピン「…とてもいい。ここまでは簡単だけど、呪文だけでは十分じゃないんだよ。…ボガードを本当にやっつけるのは笑いだ。…ボガードをひどくこっけいな姿に変える必要がある。ネビル前に出て。…恥ずかしがらずにネビル、君が一番怖いものは?」 

ネビルロングボトムがゆっくり前に出る。

背中を丸めて、自信なさげだ。

 

ネビル「…イプ…生…」

ルーピン「なんだって?」

ネビル「スネイプ先生です」 

笑い声が響く。

 

ルーピン「そうだね…スネイプ先生は皆怖いよね…」

怖いというか、グリフィンドールにはあたりが強い。

 

ルーピン「ネビル…君はおばあさんと暮らしているね。」

ネビル「はい。…でもおばあちゃんに変身されるのもいやです」 

また笑い声が上がる。

 

ルーピン「そうじゃない…おばあさんの服装を想像してごらん」 

ルーピン先生はどうなるか知ってる?ネビルのおばあさんって有名なのか?

 

ネビル「赤いハンドバックを持って…」

ルーピン「声に出さなくても、思い浮かべるだけでいい。私がタンスを開けたら君はこうやるんだよ。」

ヒソヒソとネビルの耳元で話すルーピン先生。何か指示したんだろう。

 

ルーピン先生が杖をたんすの取っ手に向けて構えた。 

ルーピン「出来るかな。…じゃ、杖を構えて…いち、にの、さん、」 

 

ルーピン先生が杖を振り洋たんすが開くと、スネイプ先生が現れた。 

 

 

ルーピン「さあ、思い浮かべて」 

 

ネビル「り…”リディクラス”」 

…スネイプ先生はスネイプ先生のままだけど…これは。

長いレースで縁取りしたドレスを着て、高い先のとがった帽子を冠り、手には大きな真っ赤なハンドバックを持ったスネイプ先生に代わっていた。

教室が笑いに包まれる。

 

…あー、酷く滑稽な姿のスネイプ先生だ。

ルーピン先生は後で怒られるんじゃないか?ネビルも何か言われそう。

 

ルーピン「素晴らしいよネビル!最高だ!…さぁ、じゃあ一列に並んで!」

ルーピン先生は生徒を洋たんすの前に一列に並ばせた。 

 

ドラコが怪我した腕を使ってグリフィンドール生を押す。…スリザリン生はグリフィンドール生の後ろに並んだ。

 

ルーピン「自分の一番怖いものを思い浮かべて、それをどんなおかしな姿に変えるか。…では次!ロン!」 

 

先生がテンポの良い曲をかける。…楽しい授業だ。やっぱり好きな授業だ。惜しいな…。

 

ロンが前に出る。

ルーピン「杖だ…杖を構えて」

 

ボガートがロンの怖いものを選ぶようにぐるぐると身体を変える。毛むくじゃらの大蜘蛛が飛び出しロンに向かってきた。 

ロン「うぅ…り、リディクラス」

ロンが杖をかざし呪文を唱えると、大蜘蛛はローラースケートを履いた姿になる。どっと笑いが起きた。

ルーピン「見たかい?上出来だ!」

 

ルーピン「さあ、次はパーバディ!君の番だ」 

蜘蛛がまたぐるぐると選び、大きな蛇に変わる。首を前後に動かし、パーバディは青ざめる。

 

パーバディ「リディクラス!」

 

蛇は大きなからくり仕掛けのピエロになった。

ルーピン「よーし…いいぞ!どんどん行こう!」 

 

生徒が次々に出て呪文を唱えボガートはその都度変身した。

 

…ハリーの番になる。

ボガートはディメンターになった。

だけど直ぐにルーピン先生が前に出る。

ルーピン「…っ、こっちだあ!」

 

ボガートは満月になる。

…先生はやっぱり、狼人間だった。

 

プリム「…」

 

ルーピン「リディクラス!」

ボガートは風船になって洋タンスの中に消えた。

ルーピン「さあ、今日はここまでとしよう。…みんな教科書を忘れずに授業はこれでお終い。残念だが、次のお楽しみ。」 

 

ルーピン先生は意図的にハリーがボガートと対決するのを止めた。ヴォルデモートになることを考えたんだろう。

 

____________

 

マクゴナガル「よろしいですか、ホグズミードへの外出はご褒美ですから。ホグズミードで悪い行いをすれば、二度と外出の許可は出ません。 」

ハリーが許可証を出す。

マクゴナガル「…許可証にサインがなければ出かけられません。規則ですから…」

 

フィルチ「許可証のあるものは付いて来い。 無いものは残れ…いいな」  

プリム「…」

許可証はある。サインも。…

 

パンジー「許可証早く出しなよプリム」

プリム「…」

 

ハリーは叔父さん達がサインをしてくれていないのだろう。…まぁ、それはそうだな。

ハリー「でも先生…先生がサインをしてくだされば僕も…」 

 

マクゴナガル「無理です。…サインできるのは親か保護者だけ、私はそのどちらでもありません。…残念ですが最終決定です」 

ハリー「行けないや…またね」

 

プリム「あの…先生。許可証はあるんですけど、残ってもいいですか?」

ハリーとパンジーが驚愕した表情をする。

…ハリーの為じゃない。今はやることがあるんだ。

プリム「…今日は体調が優れないので、」

あからさまに嘘をついたが。許してくれるだろう。

 

マクゴナガル「そうですか…安静になさってください、許可証は預かります。」

うまくいった。

 

_____________

 

3階 女子トイレ

 

マートルの嘆きが響いている。見つかると厄介だ、目眩し術をかけておこう。

プリム「…」

1人で使うなら必要の部屋より、こっちの方がいい。臭くて汚いところ以外は。

プリム『扉よ開け』

パーセルマウスじゃないけど、秘密の部屋は開ける。ロンがハリーの寝言の真似で開いたんだ。当然だな。

 

 

プリム「…うぅ、くさい。汚い…最悪。」

魔法で綺麗にするか?…毎回汚れた姿になるのも嫌だ。

 

“Scourgify”(清めよ)

 

おお…一瞬にして骨だらけだったあたり一面が綺麗になる。流石だ。タウリン様ギフト様だな。…汚れたローブにもかけておこう。

 

 

 

プリム「さて…バジリスクの牙は採取しておかないとな。」

骨となったバジリスク…なんてデカいんだ。素晴らしいな。

 

バジリスクの牙を1本もぎ取った。

プリム「…まぁ、使うか使わないかはわからないけど。あるに越した事はない。」

牙を持っていたトランクにしまった。

 

 

プリム「…あー、難しい」

半純血のプリンス蔵書に似た教科書を広げて項垂れる。

 

“1、アッシュワインダーの卵を大釜に入れ、セイヨウワサビを加えて火を通します。

2、カイソウの汁を入れ、大釜に加えて勢いよくかき混ぜます。

3、マートラップの裏面にアネモネを刻み、混ぜたものを加えて熱します。

4、チンキ剤を少し加えてゆっくりかき混ぜてください。

5、オカミーの卵の殻をすりつぶして混ぜます。

6、ゆっくりかき混ぜてから大釜を温めます。

7、粉状のコモンルーをふりかける。

8、強めにかき混ぜて、最後にもう一度火を通します。

9、8の字で杖を振って呪文「フィリックスエンプラ!」と言いましょう。”

 

 

プリム「いや…でも、間に合う。私なら。できるさ…材料もあるし、蔵書もある。」

セイヨウワサビやコモンルーは禁じられた森で見つけた。

それでも見つからない珍しい材料はスネイプ先生から拝借した。

 

プリム「さて…手を動かさないと。」

トランクから大鍋を出して幸運の液体を作り始めた。

 

___________

 

 

学校中、ホグズミードから生徒が帰ってきたばかりで、楽しかった思い出話でにぎやかになっていた。

 

パンジー「ハニーデュークスのお菓子は最高だったわ!プリムも今度行きましょう?」  

ドラコ「プリムはお菓子は苦手なんだ、ゾンコのいたずら専門店は楽しかったよ。行かないと損だ。具合はもう大丈夫か?」 

 

具合は悪くない。幸運の液体を作ってた。

プリム「うん、大丈夫よ。ホグズミードって楽しそうね?」

ブレーズ「ホグズミードはそれだけじゃない、叫びの屋敷は知ってるか?イギリス一の幽霊屋敷さ。…行く暇がなかったが。」 

セオドール「ゆ、幽霊屋敷は僕は行かなくて大丈夫。」

セオドールが青ざめる。

 

プリム「私は見てみたいわ。今度みんなで一緒行きましょう?」

 

 

ふと階段を見ると、グリフィンドールの生徒がすし詰め状態になって前に進めないみたいだ。太ったレディーの肖像画が閉まったままになっている。 

 

プリム「どうしたのかしら。」

ドラコ「…またロングボトムが合言葉をわすれたんだろ」

 

パーシー「通して…僕は主席の監督生だ。…調べが済むまで誰も寮に入らないで…」

ジニー「太ったレディーが消えちゃった!」

 

パンジー「今の聞いた?太ったレディーが消えたんですって。」

プリム「…」

 

みんなが騒いでいるところにダンブルドアが来る。

 

ダンブルドア「ミスターフィルチ…ゴーストを呼んで城中の絵を集めて調べてくれ。婦人を探すのじゃ」

フィルチ「ゴーストを呼ばなくても、太ったレディーはあそこです。」

婦人は5階の風景画の中で見つかる。 

グリフィンドール生が階段を上がる。

 

パーシー「おいこら!主席の言うことを聞け!戻りたまえ!」

 

ドラコ「見に行かないか?面白そうだ。」

私達は階段を5階まで上がった。

ダンブルドア「誰がこんなことをしたのじゃ」

太ったレディー「悪魔のような瞳でした…名前のとおり真っ黒な魂…あいつが来たんですここに。…この城のどこかにシリウス・ブラックが…」

泣き崩れる婦人。

 

ブレーズ「シリウスブラックだって?」

ドラコ「ディメンターが警備してるんじゃないのか?」

セオドール「ホグワーツにシリウスブラックがいるってこと?」

パンジー「そんな…」

プリム「…」

 

ダンブルドアが「みな大広間に集まるのじゃ。…今夜はそこに泊まってもらう」

生徒が全員青ざめていた。

 

大広間のドアには何重にもカンヌキがはめられ、寝袋に入って寝た。 

 

プリム「…」

寝袋は寝心地が悪い。眠れない。

 

しばらくすると扉が開いて、足音がした。

複数人いる。…先生達だろう。

 

フィルチ「天文台の塔も、フクロウ小屋も探しましたが何もなしでした。」

ダンブルドア「ご苦労じゃった。」

フリットウィック「3階もくまなく調べました。」

ダンブルドア「ご苦労。」

スネイプ「地下牢にも、城のどこにもブラックの姿はありません。」 

ダンブルドア「いつまでも残っては居るまい」 

スネイプ「たった一人で気付かれずにホグワーツに入るとは、たいしたものですな。…どんな手を使ったと思われます?」 

ダンブルドア「どれもありえないことだ」

スネイプ「新学期の前にご忠告申し上げましたが、校長が新しくお雇いになった…」

スネイプ先生の言葉を打ち切るようにダンブルドアが話す。

 

ダンブルドア「城の内部のものがシリウス・ブラックの手引きをしたとは思わん。この城の中は安全じゃ…もう生徒たちをそれぞれの寮に戻しても良かろう…」

スネイプ先生はルーピン先生を疑ってる。

そういえば、ルーピン先生は薬を飲み忘れるんだ…それで…

 

スネイプ「…ポッターに警告は?」

ダンブルドア「…今は眠らせておこう。夢の中の世界は自分だけのものじゃ。深い海を自由に動き、空高い雲に乗ることもできる。」



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幸運の液体

 

中庭でアリエッタの姿を見つけた。

 

プリム「アリエッタ!今日よね?クィディッチの選抜。」

アリエッタ「プリム!そうなの、見に来てくれる?」

プリム「行かないわ、だってアリエッタは必ず選ばれるもの。」

アリエッタ「ふふ、そうかな。」

 

冬が近づいているのか、暴れ柳の葉は枯れてしまっていた。

 

プリム「そうだ私、幸運の液体を作ってるの。でも案外難しくて…もう少しってところ。」

アリエッタ「幸運の液体?それって…凄く難しいやつじゃない?えっと…6年生あたりの話よ?」

指で数えて驚愕しているアリエッタ。

 

プリム「まぁ、実は半純血のプリンス蔵書を手に入れてね。あ、双子の呪文をかけたから、本物じゃないけど。だいぶ助かってるよ。」

アリエッタ「プリムって…何歳だっけ?」

プリム「あなたと同じだと思ってたけど、違った?」

 

ブルブルと暴れ柳が寒そうに震える。

 

プリム「幸運の液体ができたら、あなたにプレゼントしようと思ったの。でも選抜には間に合わなかった…ごめんなさい。」

アリエッタ「プレゼントは嬉しいけど、選抜にも試合にも使いたくないよ。…ギフトの出番だしね!」

アリエッタが微笑みを浮かべる。

プリム「そう?…幸運の液体があればいい結果になるのに。」

アリエッタ「私のこと信用してない?…プリムってばとことんスリザリンね。」

それって狡いってことか?何が悪いんだ?使えるものは使わないとだろ。

 

アリエッタ「そうだ、今年は脱狼薬の方が必要じゃない?ルーピン先生大変なことになるでしょ?」

プリム「…ルーピン先生を助けるの?」

アリエッタ「私は…助けてもいいかなぁって思ってた。でも脱狼薬って難しいからプリムに任せることになるんだけどね。」

私も暇じゃないんだぞ。…相変わらず他力本願だな。

 

プリム「ルーピン先生を助けたら、ピーターペティグリューがアズカバン送りになる。その後どうなる?…バーテミウス·クラウチ·ジュニア。そいつが厄介になるだろうね。それにセドリックが助かる可能性が低くなる。」

アリエッタが青ざめる。

 

アリエッタ「…じゃあ、幸運の液体をあげたらどう?先生が飲むか飲まないかは別として。飲んだら狼にならないかもしれない。」

プリム「…まぁ、飲まないだろうね。スリザリン生が作った得体の知れない薬だ。」

アリエッタ「そうよね…」

 

___________

 

闇の魔術に対する防衛術の授業だが、今日はルーピン先生ではなく、スネイプ先生が授業を担当することになった。満月の日が近いのだろう。…どこにいるんだろうか。禁じられた森…もしくは叫びの屋敷かな。

プリム「…叫びの屋敷ね」

パンジー「叫びの屋敷?」

プリム「…早く行きたいなって」

 

勢いよく教室のドアが開き、スネイプ先生が教室へ入る。

生徒を見回して怖い顔を向ける。

スネイプ「教科書の394ページを開け」

ピリッとした空気だ。ルーピン先生とは正反対の空気感。…悪くはないが。

 

ハリー「スネイプ先生…ルーピン先生はどうなさったんですか?」 

 

スネイプ「君が気にすることではない。…ルーピン先生は、今日は授業が出来る状態でないことだけ言っておこう。教科書を開きたまえ394ページだ…」

 

ロン「狼人間?…」 

ハーマイオニー「先生…レッドキャップとヒンキーパンクは習いましたが、夜行性の生き物はまだです。」

先生は「…黙れ。」

ロン「ハーマイオニーいつ来たんだ!?入ってきたのみた!?」

…逆転時計だ。随分と乱用してるらしい。

 

スネイプ「…この授業は私が教えているんだ」と機嫌が悪いスネイプ先生。

 

スネイプ「さて、動物もどきと人狼はどうやって見分けるか分かるものは?…居ないのかね?なんと嘆かわしい…」

ハーマイオニーが手を挙げているが。

 

ハーマイオニー「先生…動物もどきは自分の意思で狼に変身しますが、狼人間は違います。満月が来て変身すると今までの自分を忘れて、友達さえも殺してしまいます。…そして、同じ仲間の呼び声だけに答えます。」 

ドラコがすかさず狼の鳴き真似をする。

 

スネイプ「ご苦労、ミスターマルフォイ。…ミスグレンジャー…勝手に発言したのはこれで二度目だな。君はそうやって知ったかぶりをせずには居られないのかね?…罰としてグリフィンドールから5点減点だ」 

グリフィンドールからは嘆く声が上がる。

 

スネイプ「不勉強の罰として、月曜日の朝レポートを提出するように。人狼とその見分け方について羊皮紙2巻きだ。」

 

ハリー「でも明日はクィディッチが…」

スネイプ「では、より一層注意したまえ。例え手足がもがれても、宿題は免除せん。…教科書394ページを開け。」

とことんスリザリン贔屓だ。

 

スネイプ「人狼という言葉だが、じんは人。人間を意味し、ろうは狼を意味する。すなわち人狼とは狼人間のことを指す…」

 

ドラコが魔法のかかったメモ書きをハリーに渡す。…子供っぽい。

 

 

 

 

満月の夜、外出をした。

プリム「…」

たぶんこの先にいる。

 

“Immobulus”(動くな)

暴れ柳に魔法をかけて、根っこの穴に潜った。道が続いている。

 

…やっぱりここは叫びの屋敷に繋がっていた。先生はいるのだろうか。あたりを見回した。

 

プリム「…ルーピン先生?」

ルーピン「…っ!誰だ!…今すぐここからでなさい!」

部屋の隅で継ぎ接ぎのローブを被り、蹲る先生がいた。

脱狼薬の効果だろう、理性がある。それか、まだ変身してない。変身する寸前なのか?ローブのせいでわからない。

 

プリム「ルーピン先生、脱狼薬は欠かさずお飲みですか?」

ルーピン先生の声がする震えたローブに手を置く。

 

ルーピン「っ、なんでそれを知ってる。」

プリム「ルーピン先生のボガートの授業で、先生は満月が怖いものでした。それから…スネイプ先生が狼人間の授業をしました。他にもあるけど…これで気づいてる人はハーマイオニーくらいですかね。」

 

ルーピン「…頭がいいようだけど、ここに来たのは間違いだ。早くホグワーツに戻りなさい。」

プリム「ルーピン先生はいい先生です。いいことは褒めてくれるし、悪いことは叱ってくれる。寮に関係なく。…ハリーは先生の特別かもしれないけど。…私は、ルーピン先生の授業が好きです。」

ローブが少しずれてルーピン先生の瞳が光る。

ルーピン「…君は、プリムだね?スリザリン生だろ?…なんで私なんか気にかけるんだ。僕のような…化け物を。」

プリム「…尊敬する先生なので、まぁ…ただの気まぐれです。」

…話も目立つ変化はない。このくらいは大丈夫だろう。

 

プリム「…」

私は静かに黒豹になり、隣に座って朝を待った。

 

 

 

目が覚めると先生はいなかった。

______________

 

 

外は大雨だ。それでもクィディッチは中止にならなかった。…そして、今日はアリエッタの初試合だ。無事にビーターとしてのポジションを勝ち取った。まぁ、当然だな。

 

ハッフルパフとグリフィンドールのクィディッチの試合の為に、学校中の生徒が芝生の競技場に集まった。

 

プリム「大雨なのに、こんなに集まるのね。」

ドラコ「当たり前だ。クィディッチだぞ?」

パンジー「ハッフルパフとグリフィンドール、どっちが勝つと思う?ドラコ」

ドラコ「…グリフィンドールじゃないか?僕といい勝負をするからな。」

ブレーズ「ハッフルパフはアリエッタがビーターになったらしいぞ、そうだろプリム?」

プリム「ええ、まぁアリエッタは運動神経がいいから、当たり前よ。」

 

 

フィールドにいる、ハリーとアリエッタが目に入る。

フーチ先生が試合開始のホイッスルを吹いた。

 

ハリーは急上昇したが風にあおられた。 

アリエッタはブラッジャーを難なく打ち返している。…力もあるんだろうな。額押されると痛いし。

 

プリム「…」

痛みを思い出して額を抑えた。

 

ブレーズ「寒くないかプリム?」

プリム「大丈夫、このくらいは。」

 

パンジー「ドラコ、私なんだか寒いわ。」

パンジーが寒そうにブルブルと震える。

ドラコ「…ローブ羽織るか?」

ドラコが自分のローブをパンジーに渡したから、ドラコが寒そうだ。

 

プリム「…」

視界に入れない。試合に集中しよう。

 

稲妻が容赦なく落ちる競技場。

アリエッタは素早く交わしている。…やっぱりシーカーの方が良さそうだ。

 

ハリーが上空で向きを変えると目の前で稲妻が走る。スピードを上げてスニッチに突進した時、ディメンターが襲い掛かる。ハリーはニンバスから落ちていった。

 

ドラコ「おい!あれ…」

プリム「…」

 

沢山の叫び声が上がる。

 

ダンブルドア「アレストモメンタム…」

 

 

ハリーは医務室に運ばれた。試合はハッフルパフが勝ったけど、アリエッタは不完全燃焼だったと言っていた。ダンブルドアは魔法省にかんかんだそうだ。ディメンターがハリーを襲ったから、生徒のいるグラウンドに入ったからだ。

ハリーの自慢の箒は、暴れ柳にぶつかって壊れてしまったらしい。変わらない。記憶と変わらない。…アリエッタがいたのに。何か見逃してるのかもしれない。

 

________________

 

秘密の部屋

 

プリム「間に合わなかったけど…上出来ね。」

ぐつぐつとした大鍋には金色の液体がパチパチと弾ける幸運の液体ができていた。

 

液体を瓶へ詰めると量が多く感じた。

プリム「…3…4…6本か。」

そんなに作るつもりではなかったが、思いの外沢山できた。

 

プリム「ルーピン先生にあげる分はあるか。」

 

 

 

 

雪の降るホグワーツ。学期の最後の週末、みんなはホグズミード行きが許され、クリスマスのショッピングの計画で大騒ぎしている。

 

プリム「パンジーは、ドラコと行かないの?」

ダフネ「っ!プリム!」

駄目よ、と口を塞がれた。

パンジー「…喧嘩したの。」

プリム「あぁ…それは、ごめん。」

 

 

 

ハニーデュークス店にやってきた。 

アリエッタとドラコは甘いものが好きだから、食べなくても買わないといけない。

 

プリム「蛙チョコと百味ビーンズ。あとは…」

袋いっぱいに買ったから、間に合うだろう。

…早く立ち去りたい。甘い匂いがキツい。

 

店を出ると、ドラコとブレーズとクラッブとゴイルがいた。…ちょうどいい、ドラコに渡そう。

 

プリム「ドラコ!」

ドラコ「っ!プリム?…どうしたんだその荷物。」

プリム「あー、これドラコに。…ブレーズ達も食べる?」

クラッブとゴイルは食いつくように袋を見つめる。

ドラコ「…蛙チョコ?」

ブレーズ「プリムがわざわざ買ったのか?」

プリム「うん。ドラコは蛙チョコ好きでしょ?」

クラッブとゴイルのおかげでアリエッタに渡す分だけになった。

 

ブレーズ「そうだ、これから叫びの屋敷に行くんだ。プリムも行かないか?行きたがってただろ?」

 

プリム「行くわ。もちろんよ。」

 

 

 

ハーマイオニーとロンが先客だったみたいだ。話し声が聞こえた。

ハーマイオニー「ねえ…イギリスいち怖い幽霊屋敷よ…”叫びの屋敷”まで行ってみない?」

ロン「えぇ…いいよ…僕ここで十分」

 

 

ドラコ「誰かと思ったら…新居でも買うつもりかい。…ここじゃ大きすぎないか?」 

ロン「うるさいぞマルフォイ」

あ…これ、ハリーが…

まずいな…

 

ドラコ「その態度はなんだ。こいつに目上の者を敬うことを教えてやれ。」

ハーマイオニー「あなたが目上?」

ドラコ「僕に口をきくな!この…汚れた血め!」

 

二人をからかっていたドラコの顔に雪玉が飛んでくる。 

…やっぱり。…どうしようか。私は叫びの屋敷を見に来ただけなのに。

 

ドラコ「誰だ!」

ズボンが脱がされる。

次は押し倒される。

引き摺り回される。

 

…私は何もされなかった。なんでだ?…まぁ、いい。好都合だ。

 

ドラコたちが恐怖で逃げて行く

 

プリム「ハーマイオニー…ごめんね?ドラコがあんなこと。」

ハーマイオニー「気にしてないわ。」

プリム「ロンも…」

クロウリーが謝ってる!?とハーマイオニーに驚きの表情を見せるロン。失礼だぞ。

 

私はドラコ達を追いかけて去った。

 

 

_____________

 

 

ルーピン先生に幸運の液体を渡そうと、教室へ向かうと、ハリーとすれ違った。

 

プリム「やぁ、ハリー」

ハリー「…やぁ、プリム」

 

それだけ。たったそれだけ特に何も起こらない。ハリーは疲れた表情だ、パトローナスかな…

 

プリム「ルーピン先生…体調はいかがですか?」

ルーピン「…やぁ、プリム。大丈夫だよ。いつも通りだ。」

…嘘ではなさそうだ。

 

プリム「ルーピン先生、これを先生にお渡ししたくて。…私が作った幸運の液体。フェリックスフェリシスです。きっと先生には必要ですから、使いどころを間違いなければ。運良く事が進みます。…スリザリン生の作ったものですから、飲まないのが正解ですけど。」

最後のが本心だ。飲むな。

 

ルーピン「君が作ったのかい?…フェリックスフェリシスを?…その歳で?」

プリム「魔法薬学は得意なんです。父上が魔法薬の学者なので、小さい頃から調合していました。」

…蔵書の力が半分だが。

 

プリム「先程もいいましたが、飲まないのが正解ですよ。…ルーピン先生は苦い薬でお腹いっぱいでしょうから。」

ルーピン「はは、スリザリン生だね。やっぱり君は。…教え子が作った自信作だ、飲んでみよう。」

プリム「っ!駄目です!飲むな!」

しまった…思わず声が…

ルーピン「っ!飲んだら駄目なのかい?…じゃあ何故これを私に?」

 

半分救われて、ルーピン先生の授業をまだ受けていたい。半分うまく話が進んで、何も変わらなければいい。…正反対の感情がぶつかり合った結果だ。

 

プリム「…」

ルーピン「君はアニメーガスにもなれるね?」

ルーピン先生が瓶を置いて私に近づく。

 

プリム「…勉強したので。」

ルーピン「でもそれは、私の前で見せなくてもよかっただろう?教師に見せるのは都合が悪くならないか?…君は、何をしたいんだ?」

私にもわからない。正反対なんだ感情が。

 

プリム「私…は、本当は、何もしない方がいいんです。…でも、ルーピン先生はいい先生だから…。」

何かしたいのに、何もできない。何か変われば、全て変わる。アズラエルも全てを良い方向するわけじゃないだろう。

 

ルーピン「…私は、いい先生ではないよ。君が知っているように人狼だ。それに、こんなみすぼらしい…何か成し遂げた、偉大で優れた魔法使いでもない。」

プリム「…」

ルーピン「…だから、これは返そうプリム。君は私に何もしてない。」

幸運の液体を私の手に握らせ、頭を優しく撫でられた。あたたかい優しい手だ。

 

プリム「…ルーピン先生、ひとつ頼みがあるんです。」

ルーピン「なんだい?」

プリム「ボガートの授業…途中で終わってしまったので、受けてみたいんです。」

ルーピン「…構わないよ、呪文はわかるね?」

プリム「はい…」

私は…病で恐怖がわからない。だから、どうなるかわからない。

 

ルーピン「ボガートはこの中にいる…準備はいいかい?…さん…に…いち」

ルーピン先生が黒い大きな箱を開ける。

 

ボガートが私の前で怖いものを探すように、ぐるぐると回る。

…なんだ。…何になる。

 

ドラコが床に倒れている。血塗れだ。どくどくと血が流れてる。セクタムセンプラを受けた時に似てる。血が溢れるのが止まらない。

 

プリム「…やるじゃないボガート。”リディクラス”」

杖を振ると、ベリーで口を汚したシロイタチになり。箱に戻って行った。

 

ルーピン「…さっきのは、ドラコマルフォイだね?スリザリンの」

プリム「…ドラコは魔法界でできた最初の友達なんです。あ、恋人とかではないですよ。」

 

 

 

ドラコの死が恐怖だった。なるほどな。

…ドラコやスネイプ先生の死、それは私にとって最悪なことで。それが起きればこの世界のことなど、どうでも良くなる。だって意味がない。守るべきものがないんだから。…この身体だってタウリンのものだ。私がいる理由がなくなる。

 

それが私の恐怖なんだ。



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言わぬが花 (アズカバンの囚人 終)

3階 女子トイレ 秘密の部屋

 

プリム「…これもアズラエルの仕業か。」

恭史郎から貰った手紙と蔵書を交互に見つめて考えた。

 

“プリムへ

 

ホグワーツではいかがお過ごしですか?

僕は来年から、日本のクィディッチチームのトヨハシテングで練習を始めます。鳩谷さんが引退した後のシーカーのポジションに、僕も候補が挙がったんだ。必ず選ばれるから、いつか観戦に来てよね。先生達の話で、興味深い話が聞こえたんだけど、ホグワーツのダンブルドアって先生から魔法学校対抗試合へのお誘いがあったらしいよ。毎年のことだから断るだろうけど、でも賀茂がさっき抗議してたな。どうなるかはわからない。

 

五領 恭史郎”

 

…ヨーロッパの三大魔法学校対抗試合だぞ?

日本が?来るのか?…まさかな。いやでも…私が日本へ行ったことが失敗だったか?アズラエルが変えることもありえるかもしれない。

 

プリム「…だとしても、ハリーが選ばれる。ヴォルデモートには必要だ。」

 

蔵書と最も強力な薬の本を広げてぐつぐつと大鍋を煮込んだ。

 

_______________

 

スリザリン寮 談話室

 

ドラコ「森番のあのでかい鳥が処刑されるらしい。父上が聴聞会で僕に起きた惨事を申し立ててくれたそうだ。…森番が首になると思ったが、鳥の処刑も悪くないな。」

 

バックビークは処刑されるらしい。変わりない。…ハーマイオニー達が逆転時計を使う。厄介だ、下手に動かない方がいい。…アリエッタにも言っておこう。

 

プリム「…見に行くの?」

ドラコ「もちろんさ、これほど面白そうなイベントはない。」

ブレーズ「プリムも来るだろう?」

プリム「嫌よ、行かないわ。処刑の見物なんて。パンジーでも誘ったら?ドラコの誘いなら断らないわよ。」

 

__________

 

必要の部屋

 

プリム「ってことでアリエッタ、記憶通りに進んでる訳だが、今回は絶対に何もしてはいけない。」

アリエッタ「そうね、タイムターナー使うんだもんね。…時間の操作は危険よね。」

…何もできない、とアリエッタが呟く。

 

プリム「本当は、私達の存在も異常なんだ。何かすることが間違いだよ。」

アリエッタには記憶を元に知ってる範囲で、話が動くことしか伝えていない。

だから、私がタウリンダンブルドアだということも、アズラエルが話を変えてることも知らない。でも、それでいい。アリエッタはまだ知らなくても大丈夫な筈だ。

 

アリエッタ「…来年、アルバス達来ると思う?」

プリム「さぁ…わからないよ。…監視はするつもり。いつアルバス達が来るかわからないから。」

アリエッタ「どうやって?」

数枚の式札を出した。

“我に従い、我に仕えよ”

杖をあて札には字のような何かが浮き出た。

…札を手にし息を吹きかける。

ふわふわとした人の形が出てくる。腹部には番号が書いてある。

 

プリム「術者の指示通りに使役する、思業式神を使うことするわ。…意思伝達をできるようにする。」

アリエッタ「わお…」

プリム「君は外の様子を見て、君達は私達が様子がわかるように説明して。」

式神に指示を出すとそれぞれ動く。1と2が書いてある式神は3の式神が見たこと聞いたことがわかるようになっている筈だ。

 

3が外へ出ると1と2から生徒の声が聞こえてくる。

アリエッタ「…どうなってるの?」

プリム「通信機みたいな感じね。生き物じゃないから、忍びの地図にも反映されない筈。…どうかな?」

アリエッタ「わぁ…最高だよプリム。」

 

プリム「それから、来年のことなんだけど、日本へ行ったことがあるって話したじゃない?…ちょっと失敗したかもしれない。…トライウィザードトーナメントに、マホウトコロがもしかしたら…いやでもそれは有り得ないけど。」

アリエッタ「ヨーロッパの三大魔法学校対抗試合なのに?」

プリム「どうやらダンブルドアが毎年手紙を出してるらしい。…まぁ、頭の隅に置いといて?ハリーは当然選ばれるし。」

 

式神をしまった。

_____________

 

 

私は思業式神を出して目眩し術を施し、ハリーの動きを監視させた。ピーターペティグリューはシャルマンが追っている。

ハリー「ペティグリューが僕に近づいている」

式神からハリーの声がしている。

ハリー「わぁっ!…はぁ、なんだ。」

ペティグリューは見つからなかったんだろう。…地図にはやっぱり式神は反映されないらしい。使える。うまく使おう。

 

ハリー「…スネイプだ。」

スネイプ先生に見つかる。

ハリー「”いたずら完了”」

ハリーが地図を仕舞う呪文を唱える。

 

スネイプ「なぜこんな夜中に廊下をうろついている。」 

ハリー「夢遊病です」 

スネイプ「なんとも君は父親にそっくりだな。…威張り腐って城じゅうを歩いていた」 

ハリー「父さんは、いばってなんか居ませんでした。…僕だって」 

スネイプ「ポケットを裏返せ。…ポケットの中のものを出せ…それはなんだ!」

ハリー「羊皮紙です」

スネイプ「本当かね?…開けてみよ」

スネイプ「”汝の秘密を現せ”…読み上げろ!」

ハリー「我らムーニー、ワームテール、パットフット、プロングスからスネイプ教授にご挨拶申し上げる。…そして他人事に対する異常なお節介はお控えくださるよう」 

 

スネイプ「なに!なんと無礼な!」

ルーピン「セブルスどうしたのかな?おや?ハリーじゃないか。」

ルーピン先生が通りかかる。

 

スネイプ「おやおやルーピン。…散歩ですかな。…たった今ポッターから没収した興味深い品だ。見たまえルーピン。…君の専門分野だと思うが明らかに闇の魔術が込められている」

ルーピン「それはどうかなセブルス。…私には、読もうとするものを侮辱するだけの羊皮紙に過ぎないように見えるがね。…ゾンコの店の品物じゃないのか?。…だが一応隠された力がないかどうか調べてみよう。…私の専門分野だからね。…ハリー、一緒に来たまえ。…ではお休み!」

 

プリム「…ルーピン先生達についていって」

式神に指示をだした。

 

ルーピン「それにしてもなぜ、この地図が君の手に渡ったのかね?…正直言って君がこれを提出しなかったことに驚いているよ。もしブラックの手に渡ったら、君の居場所を教えているようなものだと気付かなかったか?」 

 

ハリー「はい…」

ルーピン「君のお父さんも規則をまったく気にしなかったが、ご両親は君を守るために命をささげたんだよ。…それに報いるのに、これじゃあまりにお粗末じゃないか。…構内をほっつき歩いて、ご両親の犠牲の賜物を危険にさらすなんて…次からはもうかまって挙げられないよ」

 

まだ13歳だ。好奇心旺盛な年代には、わからない話ではないか?

ハリー「…はい」

ルーピン「では、もう寮に戻って…寄り道はしないように…もしすれば判るからね」

ハリー「先生!…その地図正しいとは限らないみたいです。…さっき人が動いてるマークが出たけど死んだはずの人でした。」

ルーピン「ほう…誰だい…」

ハリー「ピーターペティグリュー…」

ルーピン「そんな…まさか」

ハリー「でも見たんです。…おやすみなさい」

 

プリム「…もういいわ、戻ってきて。」

城中を歩き回るのは鼠も同じようだ。

 

____________

 

 

バスシバ先生の古代ルーン文字学は、やはり結界術と似ていて、書き取りが中心の授業だった。…占い学よりは面白いかもしれない。わからないけど。授業が終わるとハーマイオニーが隣に座ってきた。

 

ハーマイオニー「正直言って、この授業をとって正解だわ。占い学って最悪よ!私の心がカラカラですって?失礼すぎるわ!」

プリム「…占い学もとってるの?」

ハーマイオニー「まさか?同じ時間なのに受けられないわ。ハリー達に聞いたの!最悪だって!」

プリム「占い学って才能もあるかもね、だからほら…予言者や、占い師って少ないじゃない?…風変わりな人が大半だし。ハーマイオニーはきっと理屈で考えるでしょ?だからトレローニー先生は悪気があった訳じゃないよ。きっと。」

ハーマイオニー「心が枯れてるって言われたのよ!教科書みたいって!」

バンバンと教科書を叩いてる。

怒りがおさまらないみたいだ。

プリム「そんな、ハーマイオニーの心は教科書みたいじゃないよ。…私とだって仲良くしてくれるし、太陽みたいなあたたかい心をしてると思うよ。」

ハーマイオニー「そうかしら…ありがとうプリム。」

ハーマイオニーがうねった髪を耳にかけると優しく微笑みを浮かべた。

ハーマイオニーはきっと暗闇で迷っていても、照らして導いてくれるだろうな。ロンが羨ましい。ハリーだって。…私にはハーマイオニーのような存在がいない。

アリエッタは一緒に動いてくれるが、少し違うような気もする。同じ立場だからだろうか。

 

ハーマイオニー「…あれ?あなた…目の色が前と違うみたい。」

プリム「…っ、そう?夜に本を読んでたから、充血したのかも。気にしないで?」

…目を伏せてその場を後にした。

 

_____________

 

ドラコ「今日、危険生物処理委員会の処刑人がくるらしい。僕はもう見かけたよ、大きな鎌を持った不気味なやつだった。」

ドラコがクラッブやゴイルに楽しげに話す。

 

ブレーズ「パンジーは誘ったか?」

ドラコ「…あー、断られたよ。別にいいだろ?女子が興味のあるような話じゃない。」

 

…喧嘩は長引いているのか。

 

________________

 

スリザリン女子寮

 

パンジー「…ドラコと別れるかも。」

ダフネ達が驚きの声を響かせる。

 

ダフネ「どうして?仲直り出来なかった?」

パンジー「うん…うまく出来なかった」

アストリアに興味が出てるのかもしれない。話しているところはあまり見かけないが、時期的に恐らくそうだろう。…パンジーには悪いが。

 

プリム「…」

鏡を見つめる。目の色が…緑が濃くなっている気がする。…なんでだろうか。気のせいかもしれない。

 

プリム「…錆びれてきた。お気に入りなのに。」

レオナルドさん達からプレゼントされた蛇の指輪を撫でる。錆びれてすこし手触りが悪い。…家に帰ったら加工してもらおう。

 

パンジー「プリム聞いてる?」

プリム「ああ…まぁ、人生なんて長いんだ。パンジーには生涯を共にする相手が現れるよ。…それがドラコじゃなかったってだけさ。」

パンジー「ちょっと年寄りみたいなこと言わないでよ。」

…し、失礼だな。ダンブルドアだが年寄りじゃない。…自分で考えて笑っておいた。

 

プリム「ドラコは蛙チョコが好きだ。プレゼントしたらいい。少しは機嫌がよくなるんじゃないか?」

パンジー「…そんな簡単かしら。」

プリム「単純な筈だよ。たぶんね。」

 

_____________

 

広間

 

朝、ドラコ達がいないことに気付く。

プリム「ドラコ達は?」

パンジー「さっき森番のところに行ったわ、処刑を見るんですって。男子って趣味が悪いわよね。」

シャルマンを撫でるパンジー。

 

プリム「シャルマン、スキャバーズは?」

シャルマン「鼠は城の外だ。あそこはカラスだらけだから近づけない。」

…ハグリッドのところだな。

 

プリム「…ごはんも食べずにご苦労なことだ。」

パンジー「ドラコ達ならさっきガツガツ食べてたわよ。」

プリム「…ガツガツと?純血の気品を忘れたのか?そこまでクラッブやゴイルに影響されたか。全く。」

スープを飲みながら腹を立てた。

 

パンジー「まぁ…マグル生まれの下級生を虐めるくらいには馬鹿よね。」

プリム「な、そんなことしてたのか!」

ダフネ「あら?プリム知らなかったの?ドラコって腹を立てたらマグル生まれを虐めるし、上機嫌な時もちょっかいを出してるわ。」

ミリセント「クラッブとゴイルに教えてるつもりなのよ、マグル生まれは自分達と対等じゃないって。」

…ドラコの考え方を変えないと。いやでも、悪い方に変わったら?

 

プリム「下級生を虐めてなにが楽しいんだ。自分より下だとわかるじゃないか。」

パンジー「知らないわ。だから私達は男子は馬鹿って言ってるの。」

プリム「スリザリンの恥だ。…もっとこう、闇の魔術を教えるとか、新しい魔法を生み出すとか…そういう教育を下級生にはすべきだ。何も知らない下級生ならスポンジのように吸収するからな、優秀に育てば上級生として誇らしい。」

ダフネ「…プリムもプリムね。」

はぁ…と溜息をつく。なんだ?何か違ったか?なんで溜息なんだ?

 

 

アリエッタ「プリム…朝ごはん食べたらちょっと話してもいい?」

何もしない筈だが。…なんだろうか。

プリム「構わないよ。」

 

パンジー「あなたグレンジャーの他にアリエッタロリス?…ドラコが知ったら」

プリム「ドラコなら知ってるよ。それに公認だ。」

パンジー「それ本当?ロリスって何者?」

プリム「何者?…意見の合う友人?…または共犯者」

ダフネ「でも、ビーターとしては優秀だったわよね。ブラッジャーの逆手打ちは見事だったわ。」

パンジー「まぁ…そうね、それは私も見たから凄いと思うわ。」

プリム「アリエッタは運動神経がいいからね。シーカーがいいだろって言ったけど、ビーターがやりたかったらしい。」

ミリセント「ビーターでも凄い活躍だから、シーカーも良さそうね。稲妻を素早く交わしてたし。」

プリム「私は優秀な人は誰でも友人に歓迎するよ。」

 

食器を片付けアリエッタの元へ向かった。

 

 

 

 

プリム「話って?」

人気のない廊下の隅で話す。

アリエッタ「私って梟になれるでしょ?だから考えたの…うまく進んでいるか私なら直に見ることができる。もちろん何もしないけどね。」

プリム「…なら私も。」

アリエッタ「無理よ、あなたは黒豹じゃない。」

変化の術も使えるが、あれは長時間使うものではない。

 

プリム「じゃあ、ハリーがパトローナスを使うまで、それまでならダンブルドアにもバレないかもしれない。」

恐らくだが、ダンブルドアは全部知ってる。

だからとても危険だ。…何もしない方がいい。

アリエッタ「わかったわ。」

プリム「パトローナスを使ったらすぐ戻ってきて。…その場にいるだけでも話が変わるの。」

危険なことよ、と忠告した。

 

アリエッタ「でも…危険でも、見守っていたいの。」

プリム「…幸運の液体。少し飲んでから行って。じゃないと行かせない。」

ローブのポケットから一瓶出した。

アリエッタは半分ほど飲み、ハグリッドのところへ向かった。

 

______________

 

日が沈み夜になる。満月だった。白く照らされるのが心地よく感じる。明るく照らす朝日よりも優しい月夜が好きだ。

 

プリム「…アリエッタ、遅いな。」

 

うまく進んでいないのか?…ロンが確か医務室に運ばれてくる筈だ。

 

プリム「…覗くだけなら。」

医務室へ続く階段を登ると、ダンブルドアと鉢合わせた。…まずいな。

ダンブルドア「おやおや、もうすぐ消灯時間じゃが、どうしたのかねプリム。」

プリム「…ロンが医務室に運ばれたと聞いて、お見舞いに。」

たまたま持ってた蛙チョコを見せた。アリエッタがディメンターに襲われてしまった時の為だ。一応な。幸運の液体を飲んだからそんなことはないが。

 

ダンブルドア「…そうか、ロンは蛙チョコが好きなようじゃからの、喜ぶじゃろう。…消灯時間は過ぎるでないぞ?」

プリム「はい先生。」

プリム「ダンブルドア先生…私の目の色は、何色に見えますか?」

ダンブルドア「…琥珀色ではないかの?」

プリム「…はい、そうです。」

では、おやすみプリム、とダンブルドアが階段を降りる。

ダンブルドアには、私はプリムに見えている。…タウリンじゃない。

 

医務室へ行こうとすると、腕を引っ張られる。

アリエッタ「プリム!」

プリム「アリエッタ…よかった、無事だったのね。…遅かったじゃない。」

アリエッタ「実は…最後まで見届けてて。…ごめんね?」

プリム「うまくいった?」

アリエッタ「うん、大丈夫よ。全部記憶通りだった。」

そう、よかった…と階段を降りた。

 

月明かりに照らされる廊下。静かだ。もうすぐ消灯時間だから。

 

 

プリム「アリエッタ…ドラコは性格変わると思う?」

アリエッタ「さぁ…わからないわ。悪いことばかりしてるらしいじゃない。」

プリム「…」

そうだ、下級生を虐めてる。

 

アリエッタ「改心させたいなら、したらいいじゃない。」

プリム「でもドラコがドラコじゃなくなる。重要なのに。」

アリエッタ「…これはハリーポッターだけど、私達の世界でしょ?…私達が生きる為の世界なの。だからしたいことをするのよ。」

プリム「それで事態が悪くなっても?」

アリエッタ「どんな世界にも犠牲はつきものよ。」

 

プリム「正直、今のドラコは好きじゃない。顔はもちろん好きだけど。…性格が嫌すぎる。」

ひどい言われようね、と変な表情のアリエッタ。

アリエッタ「性格なら改心させられる。実際、呪いの子のドラコは毒がないらしいじゃない?…たぶんそっちが本来あるべきドラコなんじゃない?まぁ、わからないけど。」

 

 

プリム「…死喰い人にさせたくないわ。」

 

_______________

 

ルーピン先生が退職されるらしい。

…何も変わらない。何も出来なかった。でも、それが正解なんだ。

 

ルーピン先生の教室へ向かうとハリーとすれ違った。

プリム「やぁ、ハリー」

ハリー「やぁ、プリム。…君、ルーピン先生のこと何か言った?」

プリム「ルーピン先生のこと?…あー、それは私じゃないよ。」

恐らく私が告げ口したとか思ったんだろう。

 

ハリー「そう…ならいいんだ。」

プリム「そもそも、13歳の戯言を誰が真面目に聞くと思う?」

ハリー「…それもそうだね。」

プリム「私は、ルーピン先生の授業が好きだ。…じゃあ後でね、先生にお別れしたい。」

そう言って教室へ入った。

 

ルーピン「やぁ、プリム。君もきたんだね。」

プリム「はい…退職なさると聞いて。」

…荷造りをしている。

ルーピン「ああ、その話は本当だよ。」

 

プリム「だから、幸運の液体を飲めばよかったんですよ。先生。」

ルーピン「そうだね…でもいいんだ。慣れっこさ。こういうことはね。」

プリム「まぁ…そうでしょうね。」

ルーピン「プリムは先のことがわかってたのかい?…だから幸運の液体を?」

…どう答えるべきだ。

 

プリム「いいえ?預言者の才能はないので。…逆転時計でも使えるなら別ですけど。」

ルーピン「じゃあなぜだい?」

プリム「まぁ…人狼だとわかったので、薬の飲み忘れくらいは起こるでしょうから、その為です。」

ルーピン「でも君は、何もしたらいけないのだろう?そう言っていた。」

…余計なことを言った。くそ。

 

ルーピン「私の考えだと、プリム…君は先のことがわかる。それで、何かの為に水面下で動いてる。違うかな?」

プリム「まさか…13歳にそんなことできないですよ。考えすぎです。」

ルーピン「…そうかな。」

プリム「私は、ただ…ルーピン先生の授業が好きだったんです。人狼だとわかったから、何かしたかった。それだけです。」

ルーピン「…ありがとうプリム。」

 

______________

 

みんなが夏休みの帰省の準備をしている。 

ロン「おい!ハリーを通してやれ!あの…開ける気は無かったんだけど包みが開きかけてて…あの…二人が開けろって!」

フレッド/ジョージ「言ってない!」

同時に声がした。騒がしいグリフィンドールにはトラブルがある。今日はなんだろうかと見物人に立つ。

ハリーが改めて包み紙を開くと箒が輝く。

ロン「”ファイアーボルトだよ。…世界最高速の箒だよ。」

ハリー「でも、誰から?…」

ロン「判らないんだ」

ハーマイオニー「これが付いてたわ」

ハーマイオニーが大きな羽根を手にする。

 

外に出てファイアーボルトにハリーが乗るとニンバスが比べ物にならないくらい速く飛び立つ。

 

アリエッタ「シリウスってやっぱりブラック家なのね。」

ファイアーボルトってすっごく高級なのよ!と隣で叫ばれる。

プリム「財産なら家も負けてないよ。」

アリエッタ「まぁ、あの家なら…そうね。」




アズカバンの囚人が無事終わりました!ここまでご閲覧いただきありがとうございます。楽しんでいただけましたでしょうか?❁⃘*.゚
次回からの「プリムローズが咲いた日」は炎のゴブレットの話が始まります。
短編の「ドラコマルフォイの思想」も続きますので、お楽しみください。


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ドラコマルフォイの思想 5

 

ホグワーツ特急

 

パンジー「ドラコは髪を下ろした姿もかっこいいわね」

ドラコ「…そうか?」

 

3年になって、僕はパンジーパーキンソンと付き合い始めた。家柄もよかったし、向けられる好意は悪くなかった。…筈だ。

 

セオドール「…プリム、具合悪い?」

プリム「…ちょっとね。」

ブレーズ「大丈夫か?」

ブレーズがプリムの額に手を当てる…

プリム「大丈夫、すぐよくなるわ。」

 

向かいのコンパートメント席にはプリム達が乗っているのが見えた。

 

ドラコ「面白くない…」

パンジー「え?何か言った?」

ドラコ「なんでもない、気にするな」

 

ブレーズはプリムが好きなんだ。きっと。

プリムもだろう…悪い表情はしてない。

面白くない…吐き気がする。なんでだろう…列車の揺れのせいだ。それか、クラッブとゴイルが目の前でお菓子を爆食いしてるから。

 

ドラコ「…お前達、そんなに食って大丈夫なのか?」

クラッブ「ドラコも食べるか?」

ゴイル「…蛙チョコなら、ほら。」

埋もれた蛙チョコを渡された…

ドラコ「いい…お前達がたべろ」

 

パンジー「ねぇ、シリウスブラックがアズカバンから脱獄したって知ってる?」

パーキンソンが新聞を広げてみせる。

酷い顔をした囚人が叫びをあげている写真だ。

 

ドラコ「ああ、父上の話だと、魔法省が総動員して探しまわっているそうだ。時期に捕まるだろう。」

私怖いわ、とパーキンソンが僕の腕に絡みついてくる。…細い腕だ。

 

その時、列車が急停止した。

ガタンッと車両が揺れる。

 

ドラコ「なんだ?…なんで止まった?」

パンジー「ホグワーツはまだ先よね?」

窓が凍りつき、寒い空気が漂う。

…嫌な予感がする。何かが乗り込んできたみたいだ。電灯がチカチカと点滅して消え始める。

 

パンジー「ドラコ…」

パーキンソンが怯えている。…僕も怖いんだ。そんな表情するな。

 

 

プリムが乗ったコンパートメントのドアが開き、黒い影が乗り込む。

プリム「っ…ぅ、」

プリムが苦しむ声が聞こえてくる。

ドラコ「…っ」

動かないといけない。足がすくんだ。パーキンソンも僕にしがみつくから動けない。でも、今行って…僕に何ができる?

 

 

 

アリエッタ「エクスペクトパトローナム!」

白く輝く…小さい鳥?…ハチドリか?

黒い影を追い払うように飛び回ると黒い影が去って行く。白く輝く鳥は列車の端まで飛んで行った。

 

奥の車両から人が来る。…学生ではないみたいだ。継ぎ接ぎのローブ…誰だろうか。

 

ルーピン「…君、守護霊の呪文が使えるのかい?」

アリエッタ「はい、練習したんです。…アズカバンの話を聞いたので。」

ルーピン「そうか…とても難しい魔法だ。よくやったよ。私はリーマスルーピン、今年から闇の魔術に対する防衛術の講師を担当するんだ。君の名前は?」

アリエッタ「アリエッタロリスです。ハッフルパフです。よろしくお願いします。」

ルーピン「アリエッタ覚えておくよ…あー、その子に起きたらこれを。」

リーマスルーピンという男はプリムのコンパートメントに入って何か置いた。

 

僕は…何も出来なかった。何も。

パンジー「私すごく怖かったわ、ドラコ」

ドラコ「ああ、大丈夫か?」

僕も怖かった。…自分が動けないせいで、何か失うのが。

 

____________

 

 

生徒の集まった広間で、ダンブルドアが新学期の挨拶をする。

ダンブルドア「いよいよ新学期が始まる。まず皆に知らせがある。…宴のご馳走でボーっとなる前に話しておこうかの。…はじめにR·J·ルーピン先生を紹介しよう。…空席だった”闇の魔術に対する防衛術”の担当をしてくださる。ルーピン先生じゃ!」

 

あのみすぼらしい男が講師だというのは本当らしい。

 

 

ハーマイオニー「だからチョコレートが効くって知ってたのね。」

 

ドラコ「ポッター!…ポッター!…気絶したって?」

ブレーズ達が僕に合わせて気絶するフリをする。

 

 

ドラコ「本当に気絶したのか?」

ロン「うるさいぞマルフォイ!」

ハリー「なんで知ってるんだ…」

ハーマイオニー「…ほっときなさい。」

面白くてたまらない…ポッター感謝しよう、気晴らしになった。

 

ダンブルドア「”魔法生物飼育学”の先生が退任されることになった。手足がまだ無事に残ってるうちに余生を楽しまれたいそうじゃ。…幸いその後任として皆もよく知っている先生があたってくれる。…ルビウス·ハグリッドじゃ。」

 

 

ドラコ「…森番が教師だって?」

有り得ない、信じられない。父上が知ったら即首になるだろう。

グリフィンドールからは歓声が上がった。

 

ダンブルドア「最後に深刻なお知らせじゃが…魔法省の申し入れでアズカバンのディメンターが我が校の警備に当たる。シリウスブラックが逮捕されるまでじゃ。」

「アズカバンのディメンター?」

「シリウスブラックだって?」

生徒がざわつき始める。

 

ダンブルドア「ディメンターは学校への入り口を全て見張る。ディメンターがいることで毎日の学校生活には何ら影響はない筈じゃが、ひとついうておく…ディメンターは凶暴じゃ。狙う相手も邪魔する者も容赦なく襲う。くれぐれも注意するのじゃ。あの者達が危害を加える口実をあたえるでないぞ。…ディメンターに許しを乞うても耳を貸さん。」

生徒が静かになり、固唾を呑んで聞いている。

 

ダンブルドア「じゃが、暗闇の中でも、幸せは見つけることができる。…明かりを灯すことを忘れなければな。」

 

 

 

 

広間を出る時、ハッフルパフの列を探した。

 

ドラコ「おい!…お前!…お前だアリエッタロリス!」

何度も呼んでるのに気づかないアリエッタ。

 

アリエッタ「ああ…ドラコ?、名前を呼ばないとわからないわよ。」

なんのよう?、とアリエッタが立ち止まる。

なんだその態度は。これだから汚れた血は…いや、こいつはプリムの友人だ。

 

ドラコ「…列車で、ディメンターを追い払っただろ?何をしたんだ?」

アリエッタ「あー…これって教えていいことかな?うーん…」

どうしよう…プリムいないし…でもなー、といつまでも進まない会話。…これがハッフルパフ生か。

 

ドラコ「はやく教えろ!僕は君と無駄話を話す程暇じゃない。」

アリエッタ「えぇ…ドラコから話しかけてきたくせによく言うよ。…まぁ、友達だから許してあげよう。私は優しいからね。」

…友達?アリエッタが?…プリムの友人だから話してるだけだ。馬鹿なのか?

 

ドラコ「馬鹿か、僕は君と友達じゃない。」

アリエッタ「友達だよ、だって嫌いじゃないんでしょ?汚れた血ってこと以外は。」

ドラコ「…フン、血は変えられないんだ、友達になるなんて無理だね。」

アリエッタ「…そう、じゃあ教えてあげようと思ったけど、辞めよう。友達じゃないし。」

な!なに!こいつ…

 

ドラコ「生意気だぞ!…汚れた血のくせに!」

アリエッタ「だってそうじゃない?友達でもないし、むしろ私を貶す人になんで魔法を教えるの?それも高度な魔法を。」

じゃあね、私も暇じゃないの、とアリエッタはハッフルパフの寮へ行ってしまい、何も聞き出せなかった。

 

________________

 

スリザリン男子寮

 

 

生意気だ。なんなんだあの態度。…よくプリムと友人になれたな。

 

ドラコ「面白くない…」

 

でもアリエッタしかいない。…いい講師だとは思えないが。…汚れた血と友人に?無理だ。…でもプリムは…なれたんだよな。

 

ドラコ「…1人くらいならいいか。」

アリエッタを利用しよう。僕の為に。

 

ブレーズ「なんだ?難しい顔して、」

ブレーズが向かいのソファーに座る。

ドラコ「ちょっと面白くないことがあったんだ。」

ブレーズ「面白くないこと?」

パーキンソンのことか?、とにやけた顔を向けてくる。

ドラコ「は?なんでパーキンソンなんだ?」

ブレーズ「付き合ってるらしいじゃないか、ドラコマルフォイも男だな。」

ドラコ「…お前もだろ?プリムとはいい感じじゃないか。」

ブレーズ「プリム?…お前、気づいてないのか?」

ドラコ「…なんの話だ?」

 

___________

 

…ベッドに深く沈んだ。

 

ブレーズ『プリムが見てるのは僕じゃない、ドラコだ。』

ドラコ『…』

ブレーズ『プリムが気づいてるかわからないけどな、だから気づくまで僕は側にいるさ。僕からは教えない、スリザリンだからな。』

 

 

プリムは僕を見ていた。

…なんでだろう。

 

でも僕はパーキンソンと付き合っている。

 

ドラコ「はぁ…女ってわからない。」

 

…何も考えずに寝ることにした。



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ドラコマルフォイの思想 6

 

 

暖炉の側で隠れて座っていると、スリザリンの寮の扉が開く音が響く。

 

ドラコ「…」

まただ。満月の夜、プリムが寮から出る。

気になってついて行くことにした。

 

プリムは時計台で佇んでいた。…何をしてるんだろうか。

プリム「…今夜も満月ね。…こんなに綺麗なのに、悲しいわ。」

ドラコ「プリム…何してるんだこんな夜更けに。」

月明かりが彼女の肌を照らしている。

プリムの瞳に僕が映る。

 

プリム「…月が綺麗だから。…スリザリンの寮からじゃ見れないでしょ?」

ドラコ「もう消灯時間は過ぎてる。月夜を楽しむならもっとはやく出ろ。」

プリム「…それはドラコもでしょ?私は1人になりたかったから夜遅くにきたのに…もう1人じゃなくなったから意味ないわ。」

プリムが月を見つめる。

 

プリム「腕はもう良くなったの?」

ドラコ「…まぁ」

プリム「本当は大したことなかったでしょ?」

ドラコ「な!そんなことない!…大怪我だったんだ!」

プリム「そう?マダムポンフリーだもの、どんな怪我でも治してくれるわ。」

治ってよかった、と彼女が微笑みを僕に向ける。

 

プリム「ドラコは、月明かりは好き?…日の光の方がいい?」

ドラコ「考えたことないな…でも月は好きだ。」

プリムを綺麗に照らしてくれるから。

…っ?今僕は何を考えた?

 

なんでこんなに心臓が速く動くんだろう。パーキンソンと話してる時にはこんな風にならないのに。…変だ。

 

プリム「そうなの?ドラコは太陽が好きだと思ってた。クィディッチが好きだから。…それにあたたかいし。」

ドラコ「…嫌いじゃないさ、どちらかと言えば、月の光が好きだ。」

プリム「…そういえば、ドラコの髪は月の色ね。初めて会った時も、キラキラ輝いていて綺麗だと思ったわ。」

 

僕はあの時、君の夕陽のような瞳が綺麗だと思った。…ん?

 

ドラコ「…プリム、君…目の色が変わったか?」

プリム「っ、ドラコには何色に見えるの?」

…緑だろうか。元々の琥珀色も薄いけど見える。

ドラコ「緑が濃いな。…前は琥珀色だっただろう?」

プリム「そう、緑なのね…」

プリムが深く考え込む。

ドラコ「プリム?」

プリム「…琥珀色を忘れないでね」

彼女が哀しそうに笑うから、なんだか不安になった。でも僕には深く聞けなくて、聞いたらいけないような気がして…

 

ドラコ「ああ…」

そう言うしかなかった。

 

____________

 

外は大雨だ。雷が鳴り響く。

 

ハッフルパフとグリフィンドールのクィディッチの試合の為に、学校中の生徒が芝生の競技場に集まった。

 

プリム「大雨なのに、こんなに集まるのね。」

ドラコ「当たり前だ。クィディッチだぞ?」

パンジー「ハッフルパフとグリフィンドール、どっちが勝つと思う?ドラコ」

ドラコ「…グリフィンドールじゃないか?僕といい勝負をするからな。」

ポッターが勝つだろう。…面白くはないが。

 

ブレーズ「ハッフルパフはアリエッタがビーターになったらしいぞ、そうだろプリム?」

プリム「ええ、まぁアリエッタは運動神経がいいから、当たり前よ。」

アリエッタがビーター?…大丈夫なのか?

 

フィールドにいる、ハリーとアリエッタが目に入る。

フーチ先生が試合開始のホイッスルを吹いた。

 

ポッターは急上昇したが風にあおられた。 

アリエッタはブラッジャーを難なく打ち返している。…力があるな。…アリエッタが逆手でブラッジャーを後方に打つ…ブラッジャーの逆手打ちだ!上手い。…初試合の筈なのに。

 

プリム「…」

ブレーズ「寒くないかプリム?」

プリム「大丈夫、このくらいは。」

ブレーズがそうか、と何もしない。…そこは無理矢理でもローブを掛けるんだ。馬鹿なのか。

 

パンジー「ドラコ、私なんだか寒いわ。」

パーキンソンが寒そうにブルブルと震える。

…仕方ないな。

ドラコ「…ローブ羽織るか?」

寒い…仕方ないよな、レディーの為だ。

 

 

稲妻が容赦なく落ちる競技場。

アリエッタは素早く交わしている。…速い…ビーターにはもったいない。シーカーならもっと輝いていただろう。

 

 

ポッターが上空で向きを変えると目の前で稲妻が走る。スピードを上げてスニッチに突進した時、ディメンターが襲い掛かる。ポッターはニンバスから落ちていった。

 

ドラコ「おい!あれ…」

まずいんじゃないか…あの高さ…

プリム「…」

 

沢山の叫び声が上がる。

 

ダンブルドア「アレストモメンタム…」

 

 

ポッターは医務室に運ばれた。試合はハッフルパフの勝利。

ポッターの自慢の箒は、暴れ柳にぶつかって壊れてしまったらしい。

 

 

____________

 

 

僕はクィディッチの試合後、ハッフルパフ選手の背中を探した。

ドラコ「…おい…おい!…アリエッタロリス!」

こいつ…僕をなめてるのか?呼ばれたら振り向くだろう。

 

アリエッタ「ああ、ドラコ…もういい加減名前を呼んでよ。」

馬鹿ね、と僕の前に立つアリエッタ。…こいつ…僕を苛つかせるのが上手いじゃないか。…しかし、ここは冷静になれドラコマルフォイ。

 

ドラコ「ゆ、友人になってやろうじゃないか。…僕と友人なんてお前の身分じゃ誇らしいだろう?」

…アリエッタがジーッと僕の目を見てくる。

な、なんだ。やめろ、気分が悪い。

 

ドラコ「…な、なんだ。」

アリエッタ「ああ、そういうこと?ドラコが友達になるなんて急に言うから怪しいと思った。…私を利用して、魔法を使おうとしてるなんて、スリザリンらしいわね。」

な!なんでバレた。…思考を読んだみたいだ、こいつ危ない。気持ちが悪い。

 

アリエッタ「気持ちが悪いなんて失礼ね。一応女の子なんだけど?あ、私には嘘つけないわよ?わかるんだから。」

アリエッタが口の端を上げて笑う。

なんなんだ…魔法か?くそ、厄介だ。手強い…汚れた血のくせに、やるじゃないか。

 

アリエッタ「…でも、いいよ?騙されてあげる。」

ドラコ「なに?どういうつもりだ」

アリエッタ「私はあなたと友達になりたい。あなたは高度な魔法が知りたい。…目的は明確でしょ?だから騙されてあげる。」

ドラコ「…」

アリエッタ「ただし、私はあなたに教える立場になるんだから、失礼な態度は許さないからね?」

ドラコ「…フン、汚れた血に失礼な態度だと?相応しい態度じゃないか?」

アリエッタ「ほら!そういうのよ!…それなおさないなら教えないわよ。」

 

ドラコ「っ、教えてくれ…と、友達だろう?」

アリエッタ「っ!…もちろんいいわよ!」

今夜8階で待ってるわ、とアリエッタが去って行った。

 

…8階?

 

______________

 

 

広間で夕食を済ませた後、アリエッタに言われたとおりに8階に向かおうとした。

 

パンジー「ドラコ、どこに行くの?寮はこっちよ?」

ドラコ「…あー、先に行っててくれ、用事がある。」

パンジー「用事?…なんの?」

ドラコ「図書室で借りたい本がある。」

パンジー「なら、私も行くわ」

…なんでそこまで首を突っ込む。

 

ドラコ「…ハッフルパフの奴と行くから、お前は先に寮へ行け。」

パンジー「ハッフルパフ?…まさかアリエッタ?」

な、なんでわかるんだ?

ドラコ「ああ、アリエッタだ。」

パンジー「なんで汚れた血なんかと…行かせないわ!ドラコは純血一族でしょ?アリエッタと関わるべきじゃないわ!あなたのお父様が知ったら…」

ドラコ「父上は関係ない!…もう寮へ戻れ。」

パンジー「…」

 

僕はパーキンソンを見ずに8階に向かった。

 

_____________

 

8階ではもう、アリエッタが待っていた。

アリエッタ「ドラコ!遅かったね?…何かあった?」

ドラコ「…別に。お前には関係ない。」

今は何も話したくないんだ。

 

アリエッタ「…あー、じゃあちょっと待ってね、今開けるから。」

しばらくすると、扉が目の前に現れる。

…っ、

ドラコ「これ…プリムが」

アリエッタ「あれ?プリム教えたんだ?いいのかな、後から面倒な気もするけど」

まぁいっか、と先に進むアリエッタ。

 

アリエッタ「ようこそ、”必要の部屋”へ」

ドラコ「…ん?前と違うな。」

アリエッタ「必要の部屋は目的によって変わるから。」

ドラコ「そうか…だから」

魔法の訓練ができるような内装だ。

アリエッタが咳払いをする。

 

アリエッタ「じゃあ、今からドラコに教えるのは、守護霊の呪文”エクスペクトパトローナム”よ。パトローナスはプラスのエネルギーで、うまく使えればディメンターの盾になってくれる。列車で使ったのはこれ。」

 

ドラコ「エクスペクトパトローナム…」

アリエッタ「呼び出すには想い出が必要なの、幸せな想い出、強い想い出がね。」

幸せな想い出…箒に乗れたときだろうか。

 

アリエッタ「じゃあ、やってみようか。やらないとわからないし。…目を閉じて、集中して…幸せな想い出で心を満たして…そしたら呪文を唱える”エクスペクトパトローナム”…」

僕は箒に乗れた時のことを思い浮かべて、心を満たした。

ドラコ「…」

アリエッタ「心の準備ができたら、杖を構えて唱えてみて。」

 

ドラコ「…エクスペクトパトローナム」

白いモヤのようなものが出てきたが、すぐに消えた。

 

アリエッタ「安定した守護霊の姿にするには、強さがないといけないの…でも初めてでモヤが出るのは流石って感じね。私は何も起きなかったもの。」

ドラコ「当たり前だ。僕は純血だからな。」

 

消灯時間前まで練習をした。

 

____________

 

 

雪の降るホグワーツ。学期の最後の週末、みんなはホグズミード行きが許され、クリスマスのショッピングの計画で大騒ぎしている。

 

 

ブレーズ「ドラコ、パーキンソンとは行かないのか?」

ドラコ「ああ…ちょっといろいろあってな」

クラッブ「なんか喧嘩したんだろ?」

ドラコ「…まぁ、」

ブレーズ「まぁって…はやくなんとかしろよ?」

ドラコ「…」

 

ゾンコのいたずら専門店で、伸び耳やパンチ望遠鏡を見て店を出た。

 

 

プリム「ドラコ!」

ドラコ「っ!プリム?…どうしたんだその荷物。」

プリム「あー、これドラコに。…ブレーズ達も食べる?」

クラッブとゴイルは食いつくようにプリムが持った袋を見つめる。

 

プリムがはい、と僕に蛙チョコを渡す。

ドラコ「…蛙チョコ?」

ブレーズ「プリムがわざわざ買ったのか?」

プリム「うん。ドラコは蛙チョコ好きでしょ?」

ドラコ「…」

僕の為に買ったのか?…まさかな。

 

クラッブとゴイルのせいで、お菓子はほとんどなくなっていた。

 

ブレーズ「そうだ、これから叫びの屋敷に行くんだ。プリムも行かないか?行きたがってただろ?」

 

プリム「行くわ。もちろんよ。」

 

 

 

誰かの話し声が聞こえた。

ハーマイオニー「ねえ…イギリスいち怖い幽霊屋敷よ…”叫びの屋敷”まで行ってみない?」

ロン「えぇ…いいよ…僕ここで十分」

 

 

ドラコ「誰かと思ったら…新居でも買うつもりかい。…ここじゃ大きすぎないか?」 

ロン「うるさいぞマルフォイ」

パーキンソンの話をされた僕は今気分があまりよくない。

 

ドラコ「その態度はなんだ。こいつに目上の者を敬うことを教えてやれ。」

ハーマイオニー「あなたが目上?」

ドラコ「僕に口をきくな!この…汚れた血め!」

 

突然僕の顔に雪玉が飛んでくる。 

…な、なんだ?

 

ドラコ「誰だ!」

クラッブとゴイルとブレーズ達は、ズボンが脱がされ、押し倒される。

僕は引き摺り回される。

意味がわからない…何が起きてるんだ。

 

僕は恐怖で逃げてしまった。

 

___________

 

 

僕らは森番の小屋を岩陰から覗いた。

 

ドラコ「ヒッポグリフの首をもらって、やつらの寮に飾ってやろう…」

ゴイル「ああ!」

クラッブ「いいな」

ブレーズ「処刑は見ものだぜ。…おいドラコ、見ろよ」

 

後ろを見るとグレンジャーが怒りに満ちた顔で近づいてきた。

 

ドラコ「おやおや、君達も見物かい?」

ハーマイオニー「あなた達!なんて下劣なの!ゴキブリ以下よ!」

グレンジャーがそう叫んで僕の首に杖を向ける。

ブレーズ達は突っ立ってなにもしない。…役立たずめ。

 

ロン「ハーマイオニーやめろ!そいつにそんな価値ないよ。」

杖がゆっくりおろされる。

助かった、そう思った。

 

ドラコ「っ…ぐぁ、」

グレンジャーが僕の顔を殴りつけるまでは。

痛い…鼻血が出てくる。

 

ブレーズ達がやっと動く。

クラッブ「マルフォイ、大丈夫か?」

ゴイル「行こう!」

ドラコ「くそ、誰にも言うなよ!」

 

僕は痛い鼻を押さえながら、廊下に走った。

 

 

 

逃げ帰った先には、プリムがいた。

 

プリム「そんなに慌ててどうしたの?」

ブレーズ達はあー…その…と何も話せない。

ドラコ「なんでもない…」

プリム「…あー、なるほどね。…鼻血出てるわよドラコ。」

っ、くそ…見られたくないところを見られた。僕は上を向くが、喉を唾たる血が気持ち悪い。

 

プリム「鼻血が出たら下を向いた方がいいわよ。はい、これ。汚れてもいいから使って。」

プリムが白い花の刺繍のハンカチを渡してくれた。

 

ドラコ「ああ…すまない。」

プリム「ハーマイオニーのパンチはどうだった?」

ドラコ「な、なんでそれを!」

お前達…とブレーズ達を見たが違うというように横に首を激しく振る。

 

プリム「ハリー達の姿が見えたから、そうかなって。殴りつけるのはハーマイオニーよね。他の2人はきっと呪文をかけるもの。」

ドラコ「…誰にも言わないでくれ。」

プリム「言わないわよ、面白くないもの。」

処刑の見物なんてするからよ、と額を押された。



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不吉な予言

 

夏休み。勉学にはもちろん励んだが、やるべきことも複数あった。

 

まず、4年になるにあたって、ヴォルデモートが復活する。これは変えられない。変えるにはとても大きすぎる出来事だ。

 

次にセドリックの死だ。これは必ず防がないといけない。アリエッタの為に。それによってどう変わるか。アズラエルがどう手を加えるのか。

 

そして、私の目の色の変化。これは夏休み前にわかった。…確信ではないが。だが恐らくそうだ。決定打はマグル学のチャリティーバーベッジ先生だ。

 

プリム『あの…先生、バーベッジ先生』

バーベッジ『あら、プリムどうしたの?』

プリム『あの…突然で申し訳ないのですが、聞きたいことがあって』

バーベッジ『聞きたいこと?なにかしら?』

 

 

プリム『私の目の色は…何色に見えますか?』

 

…先生には琥珀色に見えた。…死が迫っている人には琥珀色。生き延びる人は緑色に見えている。筈だ。…恐らく私は、プリムの私は死ぬのかもしれない。それは推測でしかなくて、不確かだった。…でも、私は知ってる、推測をクリアにする方法がある。予言だ。恐らくだが、私の予言もそこにあると考えた、神秘部に。

 

 

 

私は夏休みに帰ってくるなり、レオナルドさんに頼むことにした。

 

プリム「父上、魔法省の神秘部をご存知ですか?」

レオナルド「ん?ああ…知ってはいるけど、何をしてるのかはわからないよ。」

プリム「神秘部へ行くことはできませんか?」

レオナルド「どうだろう…大臣に聞いてみよう。何をしたいんだい?」

プリム「神秘部は謎に包まれているので、とても興味深いと思いまして…将来的にも魔法省に関わる身となれば、知っておきたいのです。」

嘘だ、魔法省なんて私には窮屈すぎる。それに確かハーマイオニーとかハリーが関わる。

私はシルビアさんのようになりたい。

 

レオナルド「そうか、もうプリムもそんな歳だね。…大臣にその旨を伝えておこう。」

レオナルドさんは人脈は広く、クロウリー家ということもあり、地位もそれなり…だと思う。よくはわからないが。

 

____________

 

7月の末になって、恭史郎から手紙が届いた。…悪い予感がして、もう何時間も手紙を開いていない。

 

プリム「…嫌だ。開けないぞ…わかってるんだからな、アズラエルめ。」

手紙は後で開けようと机にしまった。

 

 

外へ出て離れにあるレオナルドさんの研究室…の更に奥、魔法薬管理室の扉を開けた。

 

プリム「…魔法薬に関してはここから拝借するのが一番だな。」

 

私なりにホグワーツで煎じた魔法薬…ハナハッカを煎じたがそれは不完全で終わり夏休みに入った。

 

プリム「…わぁ、幸運の液体こんなにあるなら最初からここにくるべきだったか。」

ずらっと棚には何十本もフェリックスフェリシスというラベルが貼られた瓶が並べられていた。

他にも、ハナハッカや、老け薬、戯言薬…まぁ、学者だろうなぁという量の魔法薬が置かれている。その中にはまだ申請許可待ちのものもあるみたいだが、レオナルドさんはよく私が拝借すると知って、鍵付きの棚に入っている。

 

プリム「えっとハナハッカと…おできをなおす薬と、元気爆発薬も必要か…ん?なんだこれ…」

 

“性転換薬”(1時間)…まぁ、使わないだろうけど…面白そうだ。拝借するとしよう。

 

 

錆びれた蛇の指輪を触った。…実はこれ、自分で抜けないのだ。最近明らかになって困っている。…加工してもらいたいのに。

 

プリム「…母上に聞くか。」

私は離れから出てシルビアさんを探した。

 

プリム「母上…母上どこですか?」

シルビア「プリム?部屋にいるわよ?」

シルビアさんの部屋から声が聞こえる。

 

プリム「母上…ご相談なのですが」

ノックをして入ると、シルビアさんは香水瓶を磨いていた。

 

シルビア「相談?…何かしら?恋の悩み?」

プリム「こ、恋ですか…恋ではないのですが。」

シルビア「あら、残念…」

磨いた香水瓶を棚にしまう。

 

プリム「実は…父上と母上に頂いたこの指輪なのですが、錆びてしまいまして…外したいのですが、錆びのせいか抜けなくなってしまって。なにか方法はありませんか?」

 

シルビア「…そんな…それはレオナルドが外せるわ。帰ってきたら、外してもらいましょう。」

プリム「…はい、母上。」

シルビアさんが一瞬哀しそうな顔をした。

 

 

レオナルドさんが帰宅すると、家には重苦しい空気が漂った。

 

プリム「あ…の…指輪…」

なんか油で外すとか、そういう方法じゃないことは確かだ。

 

レオナルド「その指輪が錆びれたんだね?」

プリム「はい…この通り…」

指輪を見せると、レオナルドさんは指輪を触る。

 

レオナルド「これはねプリム…僕が魔法をかけた指輪なんだ。君は昔から魔力が強いだろう?だから抑えておくように魔法をかけた。元々は魔法使いがマグルのフリをする為の指輪なんだけど、より強力にしたんだよ。」

 

…ん?でもそれなら魔法を使えるのはおかしい。普通に魔法使えるのだが。

プリム「父上、それはおかしいです。魔法は使えますよ?」

レオナルド「…たぶん錆びたことが影響してるんだろう。」

…それにプリムは元々強いから、と箱から新しい指輪を2つだし指にはめ、錆びた指輪に杖をあて外した。

 

レオナルド「今度は自由に外せるようにしたけど…外しては駄目だよ。何が起こるかわからない。それこそオブスキュリアルのようになるかもしれない。」

 

 

 

 

自分の部屋に戻って指輪を弄る。

プリム「…オブスキュリアルね。」

それは恐らくならないだろう。クリーデンスのような精神的な苦痛などもなかったし。

 

プリム「…」

指輪をひとつ外してみた。

 

 

 

外さなければよかったと思った。

台風が過ぎ去ったかのように部屋が崩壊した。

プリム「…っ、」

すぐに指輪をはめたが、大きな音だったので、レオナルドさん達に惨事を見られて怒られた。

 

 

恭史郎からの手紙は読めずにどこか行ってしまった。…外に飛んでしまったのかもしれない。読まずとも内容はわかるような気がした。

 

____________

 

翌朝、朗報があった。

 

神秘部へ行くことが許可されたのだ。

てことなので、さっそく魔法省にお邪魔させてもらった。

レオナルド「ファッジ殿、この度は許可頂き有難う御座います。」

コーネリウスファッジなる人は、魔法省大臣で、小柄で白髪の男性だ。悪い人ではないような気がする。

 

ファッジ「いやいや、礼には及ばんよ。優秀で若い魔法使いが、魔法省に関心があることは歓迎せねばね。してそちらが?」

プリム「プリムクロウリーです。魔法省神秘部へ入室許可をしていただき有難う御座います。」

ファッジ「ああ、プリム。ホグワーツでの評判は耳に届いているよ。今日の経験が君の勉学の励みに繋がればいいが。」

プリム「はい、もちろんです。優秀な成績を修め、ゆくゆくは魔法省に貢献できればと思います。」

よろしいよろしい、ではまた、と言ってファッジ大臣はどこかへ行かれた。

 

 

 

地下9階 神秘部

 

神秘部は予言の他に、時や死の世界、思考、愛などを研究しているらしい。

 

降りた先は無数の水晶玉。

 

レオナルド「…っ、」

レオナルドさんも初めて来たからか、目の前の光景に息を呑む。

 

この無数の水晶玉から私の予言を探さないといけない。

プリム「…私の予言を探して」

私は鳥型の式神を使って探すことにした。

 

奥にも何やら部屋があるようだ。”時の間”そう書いてある。

 

プリム「…タイムターナー?」

時を刻む無数の針の音。

どうやら逆転時計の管理もしてるらしい。

 

…私が所持することで、使うことで、救えない命も救えるだろう。

 

プリム「欲は尽きないな。」

欲張り過ぎるとアズラエルが怒りそうだ。手にした逆転時計を元に戻した。

 

レオナルド「プリム、君の式神がさっきから僕を突くんだけど…」

レオナルドさんの頭を突く式神。

プリム「予言を見つけたようですね。」

レオナルド「予言?予言って?」

プリム「予言者が予言した水晶玉です。」

式神は私に気づくと、導くように飛び回る。

止まった先は”Prim Crowley”プリムクロウリーという私の名前が書かれた水晶玉があった。

プリム「…ありがとう。」

式神を戻す。

 

レオナルド「これは?」

プリム「私の…予言です。」

見つけた。やっぱりここにあった。手に取ると予言者の声がした。

 

予言『彼女は闇を打ち消す日の光。その者は夕陽の瞳を持つ。しかしその瞳は死の前触れを意味する。

 

その者の死によって、月は雨を降らし、やがて太陽が昇る。しかしその太陽は大きな陰となり冷たく照らす。

 

緑が太陽を見つめる時、花が咲き運命は開かれるであろう。

 

その者が死なねば、闇の帝王の手によって闇に包まれる。

 

日が沈むとき瞳に花を宿す者が目覚めるであろう。その者は闇の帝王が抗えぬ力を持ち、闇を照らす光となる。』

 

トレローニー先生の声じゃない。だからだろうか、遠回しに言っているから、半分は何を言っているかわからない。だけど…

 

レオナルド「死なねばならない…」

プリム「はい。私は死なねばなりません。」

レオナルドさんは優しく私を抱きしめてくれた。

 

___________

 

8月になると、クィディッチワールドカップの情報が耳に入った。…アイルランドの筈なのに。ブルガリアとアイルランドの筈なのに。

 

レオナルド「いやぁ、まさかクィディッチワールドカップ決勝戦は、ブルガリアと日本なんてね。」

プリム「…」

シルビア「日本の新しいシーカーが優秀らしいわよ。プリムと同級生って聞いたけど?」

恭史郎だろうな…たぶん。私が日本に行ったせいだ。絶対…なんてことだ…

 

プリム「ああああ!!」

私は叫んで部屋に籠った。

シルビア「どうしたのかしら…」

レオナルド「さぁ?」

 

ベッドに深く沈んで、枕を顔に押し付けた。

プリム「…」

虚無とは…こういうことだろうか…

たぶん恭史郎からの手紙は、クィディッチワールドカップのことが書かれてたんだろう。

 

ドラコから観戦の誘いがきていた。

 

“親愛なるプリム殿

クィディッチワールドカップの事は耳にしたかい?日本のクィディッチチームの観戦を見るのは初めてだから、楽しみだ。実は魔法省大臣から直々に貴賓席へ招待されたんだが、プリムも一緒に観戦しないか?

ドラコ·マルフォイ”

 

プリム「…まぁ、恭史郎が出るしな。」

断る理由がない。

いや、ある。死喰い人が動く。…ルシウスさんも。でもまぁ、離れに誘うタイミングかもしれない。

 

プリム「どうやって誘うべきかな…」

ドラコなら簡単だけど。ルシウスさんは難しい。それにまだ、ヴォルデモートに忠実に支えてるだろうし。いっそ…姿現しで無理矢理連れてくか。有無を言わせず、離れに招待すれば、離れの秘密は守らないといけなくなる。

 

プリム「悪くないな。」

姿現しはできる。まぁ、レオナルドさんに迷惑はかけるが。魔法省は騒ぎで未成年のことなど気づかない筈だ。

 

______________ 8月25日

 

クィディッチワールドカップ当日、会場にはレオナルドさんの姿現しで向かうことになったが、私がしたいとお願いした。危険だと止められたけど…いろいろ言われている内に姿現しをした。会場は沢山の魔法使いで溢れかえっていた。

 

プリム「…ほら、うまく着きましたよ?」

レオナルド「あ、ああ…」

シルビア「流石ね…」

 

まぁ、これで可能だということは確定した。

あとは、マルフォイ家を無理矢理連れてくるだけ。死喰い人が動く前だな。…試合が終わった直後だ。

 

ドラコ「プリム、ここにいたのか」

プリム「やぁ、ドラコ。元気だった?」

ドラコ「まぁね、こっちだ。僕のテントに案内しよう。…あ、レオナルドさん、シルビアさんお久しぶりです。」

シルビア「ええ、久しぶりねドラコ」

レオナルド「プリムとは変わらず仲良くしてくれてるみたいだね?」

ドラコ「もちろんです。…みなさんもこちらです。」

ドラコが自分達のテントへ案内する。

テントは大きくて、広い。マルフォイらしいな。中にはナルシッサさんとルシウスさんがいた。

 

ルシウス「おや、ドラコ…ああ、クロウリー殿お待ちしていました。」

ナルシッサ「どうぞゆっくりして行ってください。まだ試合まで時間がありますから。」

プリム「お久しぶりです、ルシウスさん、ナルシッサさん。お言葉に甘えさせて頂きます。」

 

 

 

 

クィディッチワールドカップがまもなく始まる。会場に入るとハリー達の声が上で聞こえた。

ロン「凄いや、一番上の席だ。」

ルシウス「こうとも言えるな…雨が降れば真っ先に濡れる。」

ドラコ「僕等は魔法省の貴賓席さ。じきじきのご招待でね」

ルシウス「自慢するなドラコ!…相手にする価値はない」

我々クロウリー家は気まずくてしょうがない。

 

 

会場はすでに大変な盛り上がりなようで、風船や紙吹雪が舞っている。シーカーの編隊が妙技を公開している。

 

日本のチーム、トヨハシテングのシーカーは、鳩谷さんのあと恭史郎が選ばれたみたいだ。

プリム「父上、母上、日本のシーカーはやっぱり恭史郎です。」

私は恭史郎を指差した。

ドラコ「プリムの知り合いか?」

プリム「ああ、ほら、日本で箒が得意な子がいたじゃない?その子よ。」

ドラコ「な、なに?…そんなに若いのか」

 

 

ファッジ「ようこそ、みなさま…大いなる喜びをもって、歓迎のご挨拶をさせていただきます。…第422回クィディッチワールドカップ決勝戦です。…それでは”試合開始”」

 

魔法省大臣の杖が振られ、杖の先から火玉が飛んでいった。

 

試合が終わってすぐ、テントでドラコが興奮しているのをよそに、ルシウスさんの様子を見ていた。

ルシウス「…」

いつもより青白い顔をしている。

 

プリム「ルシウスさん、少しお話が」

ルシウス「ああ…なんだね?」

プリム「…左腕を見せてください。」

ルシウス「…なに?…何故左腕を?」

…時間がない。面倒だ。

ルシウスさんの左腕をまくり上げると、濃く色付いた死喰い人の印があった。

 

ルシウス「…っ、見たな。」

ルシウスさんが手を振り払って殺気を放つ。

プリム「…大丈夫です、誰にも言いません。もう時間がない。…失礼しますね。」

私はルシウスさんとドラコの腕を掴み、父上と母上には、ナルシッサさんを家に連れてくように手早く話す。

 

ドラコ「おい、プリム、何するんだ!」

なんだか横が煩いが、気にせず姿現しをした。

 

ルシウス「こ、ここは…君姿現しが?」

父上達も現れる。うまくいってる、ここまでは。

プリム「みなさん…こちらへどうぞ。ご招待します。」

私は離れに招待し、マルフォイ家を手中におさめた。

 

 

プリム「さて、みなさん。第二のクロウリー家へようこそ。我々はみなさんを歓迎します。」

ルシウス「…なんのつもりなのかね?」

私達をこんなところへ、と突然連れてこられたことを怒っているようだ。まぁ、仕方ない。

 

プリム「突然連れて来てしまったので、混乱されているでしょう。しかしご安心ください、ここは誰にも見つからない。そういう結界を張っていますので。」

ドラコ「結界?」

ナルシッサ「なんなの?どこなのここは」

 

プリム「落ち着いてください。全てお話ししますから。…時間がないので、要約いたしますが。今魔法界では大きな動きがあり、死喰い人が動き出しました。闇の帝王は時期に復活するでしょう。」

ナルシッサ「そんな…」

ドラコ「まさか…ありえない」

ルシウス「…」

 

プリム「ここは闇の帝王が復活した時の為に、破れず、見つからず、強力な結界を施した隠れ家です。…招待されないと入れません。そして、場所を知ったみなさんはこの家に関して口外した場合、苦しみながら死ぬことになるでしょう。」

マルフォイ家は固唾を飲んで静かに聞いている。

 

レオナルド「信じられないかもしれないが、家に関しては本当だ。プリムが日本で学んだ魔法陣型結界を少し組み替えて、この家に施した。」

ドラコ「なんでそんな危険な家に僕達を入れたんだ!」

ドラコがレオナルドさんの襟を掴む。

 

 

プリム「マルフォイ家を守るためです。闇の帝王は自分の為に、如何なる犠牲を払っても目的を成し遂げようとします。犠牲を犠牲だと思わない彼に救いを求めても救ってはくれない。死喰い人も数ある駒のひとつとして扱うでしょう。」

ルシウス「…」

ドラコ「僕達になんの関係があるっていうんだ。」

ドラコ、君の父上は死喰い人だ。というのが一番早いが、ルシウスさんはあとで話すだろう。自分から。

 

 

プリム「マルフォイ家は由緒ある純血一族ですから、闇の帝王は手に納めて置きたがる。だから、私はマルフォイ家がそちらへ行く前に、同盟を組みたい。我々は帝王にも、ダンブルドアにもつかない。どっちつかずの二重スパイのような感じですかね…いかがですか?まぁ、この家に入った時点で答えは決まっているのですが。」

ルシウス「…」

ん?反応がいまいちだな。…あー、そうか。

 

プリム「あ、マルフォイ家のみなさんのことですから、こんな小娘に何ができるとか思っているでしょう?」

マルフォイ家の目が泳ぐ。やっぱりな。

 

プリム「…今は2つの指輪によって魔力を抑えていますが、ひとつ外しますと…」

レオナルド「プリム駄目だ!」

シルビア「よしなさい!」

 

指輪を外した。

瞬間床に亀裂が走り窓ガラスが割れ、部屋は荒れる。

プリム「…とまぁ、こんな風になりますので、抗う力くらいはあるかと思います。どうぞご安心ください。」

 

私は指輪をはめ、部屋を戻す。レオナルドさん達は…怒ってる。外すの2回目だからだろうな。

 

ルシウス「…いいだろう、そもそも答えはひとつしか用意されてない。」

プリム「では、決まりですね。我々は必ずマルフォイ家をお救いします。組織名は…そうですね…第三の眼なんていかがでしょう。」

ルシウス「…私はなんでも構わない。」

ルシウスさんの手を掴み契約をするように握手をした。

 

プリム「第三の眼は、クロウリー家、マルフォイ家、そしてアリエッタロリスが今のメンバーです。」

ルシウス「っ、汚れた血も招いているのか」

プリム「アリエッタは特別なのです。…そうですね、私の共犯者というか。…まぁ、それはどうでもいいですね。」

 

プリム「では、これで話は以上です。お戻りいただいて結構ですよ。なにか聞きたい事は?」

ルシウス「…結界を破る方法はないのか?」

プリム「ひとつありますよ、術者である私の血です。でも時が来るまで結界は解くつもりはないです。」

ルシウスさんは何か考えた顔をした。

私はすかさず横に立った。

 

プリム「結界を解こうとしているならやめた方がいいですよ。ドラコが死喰い人になる未来から救おうとしてるんですから。」

ルシウスさんの耳元で囁くと、視線をドラコに向ける。

 

ドラコ「父上?」

ルシウス「…帰るぞ。」

 

プリム「ではマルフォイ家のみなさん、絶対にこの家に関しては他言しては駄目ですよ?待っているのは…死ですからね。」

そういって、玄関の戸を開けた。

うまくいった。…あとはスネイプ先生だけ。

 

レオナルド「プリム…いいのか?マルフォイ家を招いて」

プリム「はい。私は絶対マルフォイ家を守りたいのです。父上。」

シルビアさんが私を抱き締める。

シルビア「プリムは大人になるのが早いわ。…まだこんなに幼いのに。」

プリム「私は死ぬまでに、やるべきことはやらないといけません。でないと、安らかに眠れない。」



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風前の灯火

ホグワーツ特急に乗ってホグワーツ魔法魔術学校に帰っている。アリエッタと話すことにした。いろいろ話が変わったから。

 

アリエッタ「で、どうする?もう4年よ?」

それにこれ、とアリエッタがワールドカップの記事を見せる。”クィディッチワールドカップの恐怖”そう書いてある。

 

プリム「うん…あ、マルフォイ家はもう招待したんだ。あとはスネイプ先生かな。第三の眼って組織名どう思う?」

アリエッタ「…ダンブルドア軍団よりはマシね。」

 

プリム「もう式神を動かしてるよ。アルバス達がいつくるかわからないから。アリエッタもいる?」

アリエッタ「そうね、その方が動きやすい。」

 

“我に従い、我に仕えよ”

…札を手にし息を吹きかける。

ふわふわとした人の形が出てくる。腹部には3と番号が書いてある。1は列車をうろちょろし、2は私の肩にいる。もちろん見えないように目眩しの術をかけて。

 

プリム「2と同じように動いて、アリエッタに報告。アルバスポッター、スコーピウスマルフォイ、デルフィーディゴリーの3人が現れたら必ず報告しなさい。」

3はアリエッタの肩にのる。

 

アリエッタ「…クィディッチワールドカップ、日本だったわね。プリムの予想通り。」

アリエッタが新聞を見ながら言う。

 

プリム「ああ…まぁね。恐らく四校の集いが見られるぞ。良い方向か悪い方向かわからないけどね、いつも用心すべきだ。」

そうだ、と私は身代わり式札をだす。

 

プリム「セドリックに必ず渡して、試合前がいいだろうね。…身代わりってことは伝えない方がいい。彼は思ってるより、プライドが高いから。使い方はわかる?」

アリエッタ「えっと、名前書いて、血を垂らすんだっけ?」

プリム「そう。でも名前はセドリックの。次はあなたの血を垂らす。それで最後は杖をあてて“我の名の下に身代わりとなれ”と唱える」

アリエッタ「わかった…」

アリエッタが慎重にローブにしまう。心なしか震えている。

 

プリム「大丈夫、必ず救える。」

震えていたアリエッタの手を握った。

 

プリム「…アリエッタ、それとわかったことがあるの。私の予言を手に入れたんだけど…死の予言だった。」

アリエッタ「…そんな、嘘よ。」

プリム「いや、本当だよ。死ななきゃいけないんだ。いつかはわからない。予言者はトレローニ先生じゃないからはっきりとした言い方じゃなかったんだ。」

アリエッタ「…どんな予言だったの?」

私はゆっくり予言の言葉を話す。

 

 

プリム「…彼女は闇を打ち消す日の光。その者は夕陽の瞳を持つ。しかしその瞳は死の前触れを意味する。

 

その者の死によって、月は雨を降らし、やがて太陽が昇る。しかしその太陽は大きな陰となり冷たく照らす。

 

緑が太陽を見つめる時、花が咲き運命は開かれるであろう。

 

その者が死なねば、闇の帝王の手によって闇に包まれる。

 

日が沈むとき瞳に花を宿す者が目覚めるであろう。その者は闇の帝王が抗えぬ力を持ち、闇を照らす光となる。」

 

アリエッタ「夕陽の瞳?あなた随分前から緑じゃない?」

プリム「…ダンブルドアには琥珀色に見えるんだ。」

アリエッタ「……つまり?」

プリム「アリエッタは生き残るよ。…私の予言、半分わからないだろ?まるでシェイクスピアが予言したみたいだ。」

私はうまく笑えなかった。

 

アリエッタ「私…解読してみるわ。」

プリム「いいよ、死ねばわかる話だ。」

アリエッタ「プリム!今までは生き返れたけど、今度は話が違うのよ!…もっと真面目に考えて。」

アリエッタが立ち上がって凄い形相で責める。

プリム「…ああ。そうだね、ごめん。」

 

 

 

車内販売のおばさんが来ると、クラッブとゴイルがいくつか買うのが見えた。

 

________________

 

ホグワーツの校庭に、羽根を持った7頭の馬に引かせた馬車に乗って、ボーバトン魔法学校の生徒が空から舞い降りた。

 

湖からは大きな帆船が、湖底から一気に浮上して現せた。まるで海賊船のようだ。

…そして、問題の日本。

空から降りてくるそれは…形状は豪勢な屋台舟、しかしよく見ると屋台舟自体が妖怪だ。大きな目玉がある。そして舟の先頭には小鬼がいる。

 

プリム「随分とまぁ…派手だな。」

「あれなんだ?ゴブリンか?」

「いや、屋敷しもべじゃない?」

日本の妖怪を見たことがないホグワーツ生は小鬼をゴブリンと勘違いしている。

 

 

広間にホグワーツの生徒を全員集めダンブルドアが話を始める。

ダンブルドア「皆に一つ知らせがある。ここは皆の家でもあるわけじゃが、この学校に今年は特別なゲストを迎えることとなった。今年このホグワーツにおいて…」

と、話してる途中に、フィルチさんがダンブルドアに駆け寄り耳打ちをする。 

 

ダンブルドア「今年ホグワーツにおいて、伝説の催しが行われる。トライウィザードトーナメントじゃ。…これは三大魔法学校の対抗試合じゃが、今年は例年と違い四校が集うこととなった。一連の魔法競技種目を各校から1名づつ選び競い合う。選ばれた者は一人で戦うことになる。厳しい競技じゃ…やわなものにはとてもこなせぬ。…詳しくは後ほど。…さて、ゲストをお迎えしよう!…まずはレディーから、ボーバトン魔法学校の生徒と、校長先生マダムマクシーム」

 

 

扉が開いて音楽に合わせ、踊りながらブルーのコートにブルーの帽子を身に着けた上品な女子生徒の一団が入ってきた。

腰を振り、手を振り、最前列に並んだ。 

 

パンジー「…見惚れちゃって」

男子生徒はほとんど釘付けになっている。

プリム「男ってのはそんなもんさ、パンジー」

パンジー「私もフランス人なら…」

プリム「フランス人がいいのか?ボンジュールなんて挨拶、長たらしくて嫌だね。やぁ、の二言で済むじゃないか。」

パンジー「プリムってもっと女の子らしいこと考えないわけ?」

…それって失礼じゃないか。

 

 

拍手で迎えるとダンブルドアが続ける「そして、北からはダームストラング魔法学校の一行と、校長イゴールカルカロフじゃ。」

 

皆が注目する中で扉が開き、軍服姿で鉄の杖を持ち、床に打ちつけたり、目の前で回転させたりして、頭を丸刈りにしたたくましい男子生徒の一団が入ってきた。壇上で彼らは口から火を吹いて見せた。

 

「おい!ビクトールクラムじゃないか?」

「ブルガリアのクィディッチのシーカー?」

ホグワーツの生徒がざわつき始める。

 

パンジー「ビクトールクラムって学生だったの?…凄いわ。」

見惚れた顔のパンジー。

プリム「…パンジーはああいうのがタイプか。」

ちょっと、と肩を突かれた。

 

ダンブルドア「そして最後に、遠く東洋から来てくださった。マホウトコロ魔法学校の生徒と、校長 一ノ瀬 國重じゃ。」

 

扉が開くとさっきとは打って変わり、優しい鈴の音が一定のリズムで鳴り、鼓の音が響く。一風変わった登場に生徒は静かになった。…2人の子供…いや妖怪だツノがある。ツノがなければ子供みたいだ。

子鬼達が広間を楽しげに駆け回ると、桜の花びらの道ができた。綺麗だ。

 

パンジー「何の花かしら、凄く綺麗ね」

プリム「桜だよ。日本の花だ。」

 

 

凛とした表情の生徒は袴姿に金色のローブを羽織っている。優秀な人だけを集めたのだろうか顔見知りはいない…まぁ上級生達だな…いや…前言撤回だ。賀茂明星と、五領恭史郎、安倍龍が金色のローブを羽織っている。

 

プリム「そこまで優秀だったか?」

…いや、恭史郎は普通だ。運動神経は並じゃないが。恐らく安倍と賀茂のおかげだな。

 

「日本もクィディッチのシーカーがいるぞ?」

「キョウシロウだろ?すっげーや!」

恭史郎は思ったより知名度が高いみたいだ。凄いな、有名人だぞ恭史郎。

 

 

子鬼達は校長の手を握ると式札になる。

一ノ瀬校長はゆっくり進み、ダンブルドアに挨拶する。校長は私が在学中にもいたが…あまり話したことはない。

 

 

ホグワーツの食事を各校の生徒が楽しむ。

ドラコはダームストラングの生徒と仲を深めている。…ホグワーツかダームストラングへの入学の選択もあったからだと思う。

 

龍「…だから、恭史郎を劣等生から救ったのは僕達ってわけだ。」

明星「そうよ?恭史郎はクィディッチばっかりで勉学は全くだったもの。」

恭史郎「まぁ、金色のローブにいち早くなれたのは有難いよ。凄くスパルタだったけど!」

プリム「…数年で随分と仲を深めたな。3人は。」

明星「それはそうよ、同じ寮ですもの。龍だって、私の様子を見て、劣等生でなければいいって自分から教え始めたの。」

なるほどな、感化されたってやつか。

 

 

パンジー「ぷ、プリム…通訳してくれない?日本語わからないんだけど…」

無意識に日本語になっていた、指輪様々だな。これは便利だ、無くしてなくてよかった。

 

プリム「ああ…ちょっと待って。”君達英語話せるか?この子は日本語がわからない。”」

外国へ来てるんだ話せて当然だろう。

 

明星「あら?そうなの?プリムが話せるから話せるもんだと思ってた。”こんにちは、私は賀茂明星、プリムの同級生で、さっきは思い出話をしていたの。”」

僕は五領恭史郎、安倍龍だ。と2人も挨拶する。

 

パンジー「あ、私はパンジーパーキンソン…あー…え!プリムと同じ歳?じゃあ…恭史郎さんも?」

恭史郎「そうだよ、ここの3人は同じ歳だから、そんなかしこまらないで。」

パンジー「嘘…じゃあ、もしかして最年少シーカー?」

恭史郎「まぁ、そうみたいだね。才能に恵まれてたんだ。勉強は全くできないから2人に叩き込まれて、有難いことに金色のローブになれたし、僕は凄くラッキーなんだ。」

まぁ、恭史郎は可愛げがある。教える側も捗るというやつだ。

 

食事が終わるとダンブルドアが壇上にあがり話を始める。

 

ダンブルドア「よいか諸君。…一言云うて置こう、…永久の栄光がトライウィザードトーナメントの優勝者に贈られる。…それには三つの課題をやり遂せねばならん。…きわめて過酷で危険を伴う課題じゃ。…そこでこのたび魔法省は新たにルールを設けた。これについては国際魔法協力部の、ミスターバーティクラウチ氏から説明してもらおう。」 

指名されたクラウチ氏が立ち上がると会場に一瞬稲妻が走る。

 

左の目が義眼の教授が杖をふるって戦った。

 

バーティクラウチジュニア…いや、今はムーディだ。

 

 

ロン「あれ…マッドアイムーディだ…」 

ハーマイオニー「アラスタームーディ?…オーラーの?」 

ディーン「オーラーって?」 

ロン「闇払いのことだよ。…闇の魔法使いをアズカバン送りにした。 」

グリフィンドールの囁き声が聞こえた。

 

 

左足を引きずりながら、ムーディが壇上のダンブルドア校長に近づき握手をした。

ムーディ「ふざけた天井だ。」

ダンブルドア「ああ、全くじゃ、よく来てくれた。」

ムーディは隠れるようにして、ウイスキーの小瓶をあおった。

シェーマス「何飲んでるんだ?」

ハリー「…かぼちゃジュースじゃなさそうだね。」

ポリジュース薬だ。記憶通りなら。

 

プリム「…」

アリエッタ「…」

私はアリエッタと目線が合う。

 

 

クラウチ氏は壇上に進み、全生徒に向かって宣言をする。

 

クラウチ「検討の結果…安全のため、17歳未満の生徒は、この度のトライウィザードトーナメントに立候補することを禁じると魔法省が決定した」と発表した。  

 

「嘘だ!」

「…そんな、あんまりだ。」

生徒たちからは一斉に不満の声が上がった。

 

恭史郎達も悔しそうな表情をしている。

 

ダンブルドア「静まれ!…」   

 

ダンブルドアが叫んだ後、壇上のトロフィーに杖をかざすと、背丈ほどもあるトロフィーが融けていって、中から大きいゴブレットが現れ、青い炎が点いた。 

 

ダンブルドア「炎のゴブレットじゃ…」

ゴブレットの炎を生徒が見つめる。

 

ダンブルドア「トーナメントに名乗りを上げたい者は、用紙に自分の名前を書き、木曜日のこの時間までに、ここに入れるのじゃ。軽い気持ちで入れるでないぞ。…選ばれたら後戻りは出来ぬ…今この時からトーナメントは始まって居るのじゃ」

生徒達は固唾を飲んで話を聞く。

 

_____________

 

 

ムーディが教室で生徒に講義をしている「おれはアラスタームーディだ!…元闇払い、魔法省にも居た。”闇の魔術に対する防衛術”担当だ。…ダンブルドアに頼まれたので引き受けた。以上だ!終わり!質問は!…闇の魔術に関しては実践教育が一番だと思っている。」

ムーディはイカれてるという噂もあってか、スネイプ先生と似た空気感だ。

 

 

ムーディ「お前たちに質問する…許されざる呪文は幾つあるか?。」

 

ハーマイオニー「三つです」

ハーマイオニーが素早く答える。

ムーディ「その名の由来は?」

ハーマイオニー「許されないからです。…この呪いを使うだけで…」

ムーディ「アズカバンで終身刑を受けるに値する。よろしい!…子供に教えるのは早すぎると言うが、おれはそうは思わん。…戦う相手を知るべきだ。」

いかれた授業と思われてるだろうな。でも、ありがたいことに、この授業は重要になる。

 

ムーディ「チューインガムを貼るなら机でなく、もっとマシなところに貼れフィネガン!」

背中を向け、黒板に板書をしながら叫ぶムーディ。

 

シェーマス「嘘だろ?あいつ背中に目があるのか?」

ムーディはすかさずチョークを投げつける。

 

ムーディ「耳もよく聞こえるぞ!」

教室が静まり返る。

 

 

ムーディ「さて、どの呪いからいくか」

プリム「…」

今は目立つのはよくない。

 

ムーディ「ウィズリー!…立て!」

ロン「はい!」

ロンが自席で立ち上がる。

 

ムーディ「どんな呪文がある?」

ロン「一つパパから聞いたのが…服従の呪文…」

ムーディ「お前の父親なら良く知ってるだろう…魔法省はさんざん手こずったからな。…そのわけを教えてやろう」

 

ムーディは教壇に置いたガラスの容器の中で飼っている、クモのような虫を「そーら…いい子だ」と言って手の上に取り出した。

ムーディが呪文をかけると虫は段々大きくなる。肥大呪文だ。

 

ムーディ「インペリオ!」

虫は操られるように宙を舞う。

…服従の呪文だ。

 

生徒のところに跳んでいった。ムーディが杖で指示をすると、生徒の頭の上や肩や顔に飛んでいって止まるので生徒は恐がって騒いだ。

パンジー「ふふ…」

プリム「…」

 

 

ムーディの義眼は上下左右を睨み付けるようによく動いた。 

 

ムーディ「なに笑ってるんだ?」

ドラコ「わぁ!…と、とってくれ!」

慌てふためくドラコ。

 

ムーディ「芸達者だろ!次は何をさせる?…身投げか?…溺れさせるか」

 

ムーディが続けて言う「多くの魔法使いがこう言った。自分の悪戯は服従の呪文によって、例のあの人に無理強いされたのだとだが、それが嘘か真かをどう見分ける?…さて、後の呪文は?」

 

ムーディはネビルを指名して立たせた。

ムーディ「スプラウト先生に聞いたぞ薬草学が得意だそうだな。」

ネビル「はい…えっと…あとは磔の呪文です」

ムーディ「そう、その通り。…」

 

こっちにこい、とネビルを教壇まで呼ぶ。

 

ムーディ「身も竦むぞ…拷問の呪文だ」

クルーシオ!とムーディが唱えると、虫は「キーキー」と苦しそうな声を出して悶えた。

ネビルはその様子を見て、辛そうに息が上がっている。

ハーマイオニー「やめて!ネビルがつらそうです!…やめて!」

 

ムーディは弱った虫をハーマイオニーの机に置いて佇む。

ムーディ「許されざる呪文の最後の一つは?」

ハーマイオニーが答えたくないというように、首を左右に振ると、ムーディは虫に杖を突きつけて、叫ぶようにアバダケダブラ!と呪文を唱えた。

…虫はひっくり返って即死した。

教室は静かになる。

パンジーもドラコもさっきまでの騒ぎようが嘘のように静かだ。

 

ムーディ「死の呪いだ」

プリム「…」

 

ムーディ「これを受けて生き延びたのはただ一人、今ここに居る…」と言い、ハリーの前まで来てポケットから小瓶を取り出して、何かをあおる様に飲んだ。

 

 

 

パンジー「禁じられた呪文を教室でやるなんて…」

階段を降りながら話すパンジー。

 

ドラコ「イカれてるって噂は本当だったわけだ。」

後ろからドラコが話しかけてくる。…マルフォイ家にした仕打ちは忘れてるのか?どういうつもりだ?

 

プリム「…ドラコちょっと、話があるんだけど。」

ドラコ「ああ、なんだ?」

 

空き教室へ入って事情を聞きだすことにした。

プリム「ドラコ…あなた私がしたこと忘れたの?」

ドラコ「プリムがしたこと?わかってるさ、僕達の家を守ろうとしてるんだろ?」

机の上に座って話を聞くドラコ。

 

プリム「そ…そうだけど…え?なんで気づいてるの?納得いくように話したつもりないんだけど…」

ドラコ「父上が話してくださった…いろいろね。プリムも気づいてたんだろう?だから、第三の眼に誘った。」

そうだ。全くその通りだ。

ルシウスさんが話した?正体がバレるのはもっと後の筈だ…でも今回は沢山変化してる。いい方向に変わったのかもしれない。そう思うことにしよう。

 

プリム「でも…私の魔力見たでしょ?闇の帝王に抗うことができるってことは、そのくらい危険ってこと…私…私…異常なのよ?」

ドラコ「だからなんだ?プリムは危険じゃないさ。その力を持ってるのが例のあの人なら危険だがな。」

ドラコはこんなに物わかりがよかったか?…そうだ。そうだった。…ドラコは勘がいいんだ。

ドラコ「プリム、僕は今までと変わらない。プリムもだろう?…僕達は友達だ。」

そうだろ?、と私の瞳を覗いてくる。スカイグレーだ。…綺麗で、あまりに綺麗で見惚れた。

 

プリム「そうね、変わらないわ。…友達よ。」

 

_____________

 

 

雨の降る日、大広間に生徒たちが集まっている。各校の生徒がゴブレットの炎の中に名前を書いた紙を入れていた。一際騒がしい方へ視線をやると、ハッフルパフ生に背中を押されて、セドリックディゴリーも投票していた。

 

アリエッタ「…やっぱり参加するんだ。」

プリム「セドリックならそうだろさ。…大丈夫、いい方向に進んでいる筈だ。…ルシウスさんがドラコに正体をばらした。」

アリエッタ「そうなの?…変化は起きてるってことね。」

うん、とその場を離れようとすると、恭史郎に話しかけられる。アリエッタはまたね、と廊下に出た。

 

プリム「やぁ、恭史郎。ゴブレットに名前は入れたか?」

恭史郎「プリムと同い年なの忘れた?ゴブレットにはいれられないよ。」

プリム「錯乱の呪文をかけたらいい。」

君って変わらないね、と苦笑いされた。なんだ?なんか貶されたか?

 

プリム「ところで、日本はどういう人がゴブレットに名前を?」

恭史郎「上級生はほとんど。まぁ、元々マホウトコロは生徒数が少ないからね。ここに来る条件が金色のローブであることだったし。期待値が高いのは、白虎の一ノ瀬宗介さんかな、文武両道で有名だよ。因みに一ノ瀬校長の御孫さんだ。」

プリム「ああ、そうなんだ。…金色のローブの人しかいないし、変だとは思ったけど。条件にあったのか。」

恭史郎「マホウトコロが初めての海外留学をするって大騒ぎだったよ。僕はまだ金色になってなかったから必死で努力した。」

プリム「はは、そうだったのか。案外想像できなくもないな。」

ちょっと、と恭史郎に不満を吐かれた。

 

 

しばらくすると、フレッドとジョージが今朝完成させたばかりと言う”老け薬”を持ってやって来た。

 

ハーマイオニー「そんなのきかないわ!これ見える?…年齢線よ…ダンブルドアが自ら引いたの。…あれほどの人が掛けた魔法を簡単にごまかせるはず無いわ。」

 

フレッド/ジョージ「ところがどっこい、ごまかせちゃうんだなー。」

 

二人が同時に薬を飲んで「乾杯!」と言いながら輪の中に飛び込むと、一斉に拍手が起こった。

二人が同時に投票用紙をゴブレットに投入すると、煙の渦が暴れて二人は飛ばされてしまう。

 

…起き上がったときは二人とも白髪の老人になっていた。

 

恭史郎「ホグワーツ生って退屈しないね?」

プリム「グリフィンドールはとくにね。」

 

「お前のせいだ!」と二人が取っ組み合いの喧嘩を始め、周りを取り囲んだ生徒が「やれ!やれ!」とはやし立てた。

 

 

騒ぎをよそに、ダームストラング校のビクトールクラムが校長を従えてやってきて、ゴブレットの炎の中に名前を書いた紙を入れた。

 

ハーマイオニーに熱い眼差しを向けて。

 

_________________

 

 

 

鐘が鳴り学校の大広間に生徒全員が集まっている。 

 

ダンブルドア「着席!…よいか、待ちに待ったときがやって来た。代表の発表じゃ…」

手をかざすと、青い炎を上げているゴブレットが赤い炎に変わり、周りに火の粉を放った、その炎の中から紙切れが1枚舞い落ちる。

 

 

ダンブルドアがその紙を空中で受け取り広げて読み上げた。

ダンブルドア「ダームストラング校の代表は、ビクトールクラム!」

 

口笛や歓声があがりクラムは立ち上がり、仲間から祝福されて壇上に歩いた。 

 

 

続いて炎の中から舞い落ちてくる紙片を校長が片手で握り取った。焼け焦げた紙片を広

げて叫ぶ。

ダンブルドア「ボーバトンの代表は、フラーデラクール!」

 

美少女と評判の、フラーも立ち上がり仲間の女性が拍手で祝福した。

 

ダンブルドアがまた紙片を空中で受け取り広げて読み上げた。

ダンブルドア「マホウトコロの代表は、一ノ瀬宗介!」

 

恭史郎が言っていた人だ。セドリックに負けず劣らず好青年だ。一ノ瀬校長の孫というのが信じられない。

 

 

ダンブルドアはさらに手を伸ばして、落ちてくる紙片を掴みとる。

ダンブルドア「ホグワーツ代表は、セドリックディゴリー!」

 

 

歓声が一段と高くなった。選ばれた代表の四人が壇上に進む。

 

ダンブルドア「よろしい!これで四人の代表が決まった。…しかし、歴史に名を残すのはただ一人、…ただ一人だけが勝利の証として、かかげることが出来るのじゃ…この優勝杯を!」

 

ダンブルドア指差した先には、さん然と輝く優勝杯があった。

今回は、これがポートキーになる。筈だ。

 

 

…瞬間、またゴブレットの青い炎が左右に飛び散り、やがて赤い炎に変わり、舞い上がった紙片が落ちてきた。

 

 

スネイプ先生や、ダームストラング校長のイゴールカルカロフが驚いた顔をして立ち上がった。 

 

ダンブルドア「…ハリーポッター」

焼けた紙片を掴みダンブルドアが呟いた。

 

ダンブルドア「ハリーポッター!」

ダンブルドアは震える声で読み上げた。

ハグリッド「そんな…まさか」

首を振るハグリッド。

アリエッタに視線をやると、静かに頷く。

うまくいってる。今のところは。

 

 

生徒の視線がハリーに集中する。

ダンブルドアがもう一度「ハリーポッター!」と呼びかけてハリーを探した。

 

ハーマイオニー「行くのよ!…行かなくちゃ…」

 

ハリーはまだ何が起きたんだという表情をしている。

「ずるしたんだ!」

「17歳にまだなってないだろ」

生徒の声が響いた。

 

ハリーは壇上の先生たちの間を通り、最上段の鉄の扉を開いて中に入った。



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第一の課題

 

広間を出るとアリエッタに引き止められた。

 

アリエッタ「ハリーが選ばれたね。」

プリム「ああ、仕方ないさ。必要なんだよ、ハリーポッターは。」

アリエッタ「アルバス達の情報はまだないね。」

プリム「式神を増やすよ。10…いや15体に監視させる。第一の課題と第二の課題が重要だ。」

 

 

スリザリン談話室

 

ドラコ「ポッターはどうやってゴブレットに名前を入れたと思う?」

プリム「さぁ、ハリーが永遠の栄光をほしがるかしら?。」

ドラコ「プリムならそういうだろうな。」

プリム「あら、私のことよく知ってるのね。」

ドラコ「当然さ。友達だからな。」

 

ブレーズ「なぁ、プリム面白いことしないか?」

プリム「面白いこと?」

パンジー「なに?なんの話?」

プリム「ブレーズが面白いことをするって」

 

ブレーズ「面白いさ、ポッターの缶バッジを作ってやろう。応援しないとな?」

プリム「…子供っぽい」

ドラコ「面白いじゃないか?僕は賛成だ。」

パンジー「デザインなら私に任せて?」

 

 

 

日刊予言新聞社の女性記者リータスキータが新聞を書いた。”悲劇のティーンエージャー対抗試合へ”と書いてある。内容は言うまでもなくデタラメだ。…年齢が違うしな。

 

バサっと読んでいたくだらない記事の上に、パンジーが羊皮紙を広げる。

パンジー「ねぇ、このデザインどう?」

缶バッジのデザイン案がいくつか書いてある。…どれも酷い仕上がりだ。

 

プリム「…芸術のセンスはない。面白いか?それ」

パンジー「ええ、ポッターが滑稽だもの。」

プリム「…そのデザインは、すぐに流行りが過ぎそうだ。」

 

_____________

 

 

 

学校の中ですれ違う生徒はパンジーのデザインした趣味の悪い缶バッジをしている。予想に反して人気なようだ。

 

「ポッターはズルしたんだ」 

「汚いぞポッター」

ハリーが廊下を歩くと聞こえるように声をあげるホグワーツ生。

 

ハリーはセドリックに話しかけた。ドラゴンのことだろう。聞くまでもない。

 

 

ドラコ「おい、上にあげろ。」

クラッブ「ああ…」

ゴイル「ぅ…」

 

木の上に登るドラコ。

 

プリム「…登る理由ってなに?」

パンジー「さぁ…」

 

 

 

 

ハリー「君、感じ悪いよ…」

ロン「そうかよ…」

ロンとハリーは最近喧嘩したらしい、廊下で話してるのが見えた。ピリピリした空気だ。

 

 

ハリー「ああ、そうさ!」 

ロン「他に用ある?」

ハリー「ああ!僕に近づくな!」

ロン「判ったよ」

 

ドラコ「ピリピリしているな、ポッター」

ドラコが木の上にからハリーに声をかける。

 

 

ドラコ「父上とお前の賭けをしたんだ…お前が試合で10分ももたない方に賭けた。…でも父上は5分ももたないってさ」 

ドラコ達が嘲笑う。

 

プリム「くだらないな…」

パンジー「そう?私は面白い」

 

 

ハリー「父親がどう思おうとそんなことは知ったことじゃない。…父親は邪悪で残酷だし、君は卑劣だ…」

 

ドラコ「卑劣?…卑劣だと!?」

ドラコがハリーの背後から魔法を掛けようとした。

 

ムーディ「そうはさせんぞ!」

先程から様子を見ていたムーディの杖から魔法が発せられ、ドラコは白イタチに変身させられた。

 

 

ムーディ「後ろから襲うやつはけしからん」

ドラコを懲らしめているところをマクゴナガル先生が止めに入る。

 

マクゴナガル「ムーディ先生!何をなさってるんです!?」

ムーディ「教育だ!」

マクゴナガル「それは生徒なのですか?」

ムーディ「今は白イタチだ!」

クラッブのパンツに入れられるドラコ…すまない、これは面白い。

 

プリム「面白いってのはこういうことだよ、パンジー」

パンジー「プリムってば趣味悪いわ。」

 

 

しばらくするとマクゴナガル先生がドラコを元に戻す。

 

ドラコ「ち、父上が黙ってないぞ!」

ムーディ「それは脅しか!?」

 

マクゴナガル「アラスター!懲罰に変身術を使うことは決してなりません。校長がお話したはずですが?」

ムーディ「言ったかもな…」

マクゴナガル「ではくれぐれもお忘れなきよう!」

ムーディ「ポッター!一緒に来い」

 

_____________

 

 

フレッド/ジョージ「さあ、みんな賭けて!賭けて!」

 

トライウィザードトーナメントの会場は満員の観客が詰め掛けている。

 

プリム「いい?監視は15体。ここ、競技場の中にも式神はいるけど、恐らくドラゴンの火で長くは持たないわ。だから、こっち、監視の式神を鳥形にしたの。空から広い範囲で監視できる。」

アリエッタ「わかった…アルバス達が来たらどうする?」

プリム「タイムターナーは確か時間制限がある。だから、何かする前に止める。それだけでいい。」

アリエッタ「でもすぐに移動できないわ。」

プリム「獏を使うわ。…夢をみさせる。」

アリエッタ「不安になってきたよ、プリム…」

プリム「大丈夫、私達ならできるわ。必ず。」

 

 

ダンブルドアが挨拶を始めた「静粛に!待ちに待った日じゃ。トーナメントの三つの課題はいずれもかなり危険なことじゃ、決して立ち上がったりしないよう、安全のため常に着席してるのじゃ。まもなく開始じゃ!」 

 

 

しばらくすると大砲が轟音を発し、セドリックがスタート位置に進んだ。セドリックはスウェーデンショートスナウトというドラゴンと戦う。

 

始まった。…これからだ。どうか、アルバス達が現れませんように。どうか、何も起こりませんように。祈って。ただ、見守っていた。

 

セドリックはドラゴンを見ると目の色を変えた。近くの岩を大きな犬に変身させ、それを自分の身代わりにドラゴンの注意を引きつけて卵を取ろうとする。

 

…ドラゴンの気が変わったのか、セドリックを襲い始める。火を吹いたり、尻尾を乱暴に振り回している、…式神が半分ほど燃えてしまった。セドリックは攻撃をギリギリのところで切り抜けた!

 

セドリックは卵を手にして頭上に掲げた。

 

…何も起きなかった。…アルバス達は来てない。安堵した。心の底から。

 

アリエッタ「プリム…喜んでいい?」

プリム「ああ…でもまだ第二の課題がある。でも、第一関門は抜けたな。この時間にはアルバス達は来なかった。」

アリエッタ「いい方向かな?」

プリム「…うん、いい方向だ。」

正直なところわからない。でもアリエッタが望む言葉をかけた。

 

 

 

 

他の選手も無事に卵を手に入れた。

 

フラーはドラゴンに向けて魅惑呪文をかけ、恍惚状態にし、クラムはドラゴンの一番の弱点である目を攻撃するために、結膜炎の呪いをかけた。宗介は結界術を巧みに使ってドラゴンを閉じ込め、なんなく卵を手にした。

 

 

 

ダンブルドア「これまで4人の代表がそれぞれ金の卵を勝ち取り、次の課題に進むことが出来た。次はいよいよ5人目最後の競技者じゃ」

 

 

ハリーが競技場の岩場に姿を現した。

とても不安気だ。顔が青白い。

「ハリー!…ハリー!」の大合唱の中を慎重に岩の間を中央に進んだ。

金の卵は岩場の一段高いところにある。

 

ハリーは卵を見つけると、気にせずに歩く、直ぐにドラゴンの叫びと羽音がハリーの頭上に迫った。

 

 

ハリーが転んで見上げると、怒りで口を大きく開いて、火を吐くドラゴンが襲いかかろうとしていた。

 

 

追い詰められたハリーは呪文を唱えた。

上空から箒が飛んできてハリーは箒に乗って一気に金の卵を奪おうとするがうまくいかない。競技場の外に飛び出すとドラゴンが鎖を切って飛び立ちハリーの後を追った。

 

 

みんなが心配そうに見上げていた競技場の上空に、箒に乗ったハリーの姿が見えた。生徒たちが歓声を上げる中をハリーは悠々と岩場の金の卵のところに舞い降りて卵を頭上に掲げた。

 

______________

 

 

大広間のテーブルではパンジーやドラコ達が面白くなさそうな表情で座っている。

 

プリム「どうしたの?」

パンジー「缶バッジの流行が過ぎ去ったわ…今じゃポッターは英雄だもの。」

ドラコ「面白くない…くそ、」

プリム「流行は回り回ってくるさ。ドラコ、ハリーは運がよかったんだ。セドリックを上回る魔法を使えるわけでもない。」

 

日刊預言者新聞を広げて読むとデタラメ記事がでかでかとのっていた。

 

プリム「ほら、パンジー。君の好きそうな記事だぞ?…ミスグレンジャーは平凡な女の子。でもボーイフレンドは大物狙いのよう。情報筋に寄れば今のターゲットは、かのブルガリアの恋人ビクトールクラム。…振られてしまったハリーポッターの心中やいかに。」

パンジー「…グレンジャーなんかに負けてらんないわ。」

パンジーの眼に炎が宿ってるように見えた。

 

 

しばらくすると梟便の時間になる。

グリフィンドールが騒がしい。確かロンに古いローブが届くんだ。

 

家の梟アルファが何やら少し大きな包みを持ってきた。ドサッと重みのあるそれ。

プリム「ありがとう、アルファ…これ、ドレス ?」

アルファ「わからないですが、シルビア様が何やら綺麗な布を包んでいました。」

プリム「そ、そう…」

 

広間で開けるのはやめよう…

 

______________

 

スネイプ「…トライウィザードトーナメントにともない舞踏会を行うのが伝統とされている。…クリスマスイブの夜、大広間で一晩楽しみ、騒いで結構。…トーナメント開催校の代表として、一人ひとりが自覚を持ち、最高のリードをすることだ。そして舞踏会で何よりも肝心なのは、ダンスだ。…」

スネイプ先生がやる気がなさそうに説明した。生徒たちがざわめいた。

 

 

スネイプ「黙れ…スリザリンの寮の偉大なる魔法使いが培ってきた尊厳をたった一夜で汚すことのないよう…ダンスを踊れるものは?」 

パンジーやダフネ達が素早く手を挙げる。

パンジー「プリムもあげなさいよ、」

囁かれたが、私は見せ物になる気はない。

 

プリム「あー…パンジー達に譲るよ」

 

スネイプ「…ミスターマルフォイ、ミスクロウリー、2人は当然踊れるな?」

…手挙げてないんですけど。

 

プリム「あの先生、私挙手してないんですが。…パンジーがいいんじゃないでしょうか。」

スネイプ「…ダンスは毎年のようにしている、ミスターマルフォイと、ミスクロウリーが1番見本になるとそうは思わないかね?」

…この時ほどスネイプ先生を嫌いになったことはない。

減点されるのも嫌なので仕方なく立ち上がって中央に立った。

ドラコも続くように中央に立つ。

 

ドラコ「足を踏むなよ?いつものように踊れ」

プリム「そっちこそ」

 

レコードの音楽に合わせてワルツを踊った。

 

 

 

 

パンジー「2人ってやっぱりそういう関係でしょ?」

ダフネ「そうね、そう見える」

ミリセント「ブレーズじゃドラコに敵わないわ。」

プリム「違う。ただの友達だよ。それにドラコはアストリアが好きな筈だ。」

ダフネ「そうかしら?妹とはあまり話してないようだけど。アストリアもアストリアで先輩として慕ってはいるみたいだけど。」

パンジー「じゃあプリムは誰と踊りたいの?」

…ドラコだ。でも、踊れない。アリエッタはきっとセドリックと踊るから。私は欲を出したらいけない。

 

プリム「ドラコ以外。」



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波乱のダンスパーティー

ホグワーツ城はダンスのパートナー探しで男子はそわそわし、女子は誘われることを待つように色めき立っている。

 

「僕と一緒に踊りませんか?」

「はい!喜んで!」

 

廊下では、沢山の生徒がダンスの申し込みをしているのが目立つ。

 

プリム「…で、アリエッタはセドリックでしょ?」

アリエッタ「あー、うん…そうなの。ふふ」

アリエッタが頬を赤く染めて嬉しそうに笑う。

 

アリエッタ「プリムも、もちろんドラコでしょ?まさかスネイプ先生ってことはないよね?」

プリム「スネイプ先生も悪くないな。」

アリエッタ「ちょっと!冗談でしょ?」

プリム「ドラコはアストリアを誘う筈だよ。変わらないなら。」

アリエッタ「でも…あなたはドラコと踊りたいんでしょ?」

…踊れない。

 

 

プリム「チョウチャンは誰と踊るか知ってる?」

アリエッタ「さぁ…でもたぶん、ハリーかもね。」

 

______________

 

 

授業中もヒソヒソとダンスのパートナーの話ばかり聞こえる。授業に集中してくれ。

 

前の席のブレーズが先生の目を盗んで、メモを渡してきた。

“ダンスパーティー、一緒に行かないか?”

 

プリム「…」

なんでだろう。ドラコと行けないから、断る理由は無いのに…誘われるのを待っている自分がいた。

 

“私、ダンスパーティーには行かないの。”

 

しばらく考えて、そう書いたメモをブレーズに返した。たぶん…これが一番いい。

 

 

 

 

ブレーズ「プリム!…さっきのどういうことだ」

授業終わり、廊下へ出るとブレーズに肩を掴まれた。

 

プリム「あなた字が読めないの?そのままの意味よ。」

ブレーズ「パーティーに行かないなんて、そんな理由…認めないぞ僕は。」

プリム「私、パーティーって好きじゃないの。今までは家のこともあるから、参加してたけど。有難いことに代表選手じゃないから、参加は自由でしょ?」

唖然としたブレーズを置いて、次の授業へ向かうことにした。

 

______________

 

 

パンジー「プリム!パーティーに行かないって本気!?」

パンジーが近くで大きな声を出す。…耳が痛い。

プリム「あー…うん。行く理由がないしね。」

パンジー「そんなの、もったいないわ!」

ダフネ「…プリム、ドレス届いてなかった?着ないのはもったいないわ。それに、ご両親もせっかくご用意してくださったんでしょ?…嫌でも行くべきよ。」

ミリセント「プリムの家って名家じゃない?だから参加しないって知れたら…私なら外歩けないわ。」

…なんで純血の集まりでもないのに、こんなに面倒なんだ。

 

プリム「でも、もう断ったし、ブレーズはパートナーを見つけたでしょ?…パートナー無しで参加する方が恥ずかしいわ。」

パンジー「それなら私に任せて!1人知ってるわ、まだパートナーがいなくて、プリムをリードできる人。」

プリム「それ誰?」

 

____________

 

ドラコ「…」

プリム「…」

パンジー「ね?ほら!2人ならぴったりでしょ?」

プリム「パンジー…」

…やってくれるじゃないかと睨みつけた。

パンジー「え、なんで睨まれてるの私。」

じゃあ、お邪魔者は消えるわね?とパンジーが空き教室に2人きりにする。

 

ドラコ「…ブレーズに誘われたんじゃないのか?」

プリム「あら?知ってるの?パーティーに行きたくないから断ったの。…でも、パンジー達が行かないと家の恥だって。」

ドラコ「まぁ、そうだろうな。君の家なら。」

プリム「…アストリアは誘った?」

ドラコ「アストリア?なんでアストリアを?下級生だろ。あまり話したことがない。」

な、なんでだ。変わってる…それじゃあ、駄目だ。セドリックが…スコーピウスが…

 

プリム「アストリアはいい子だから、誘ってみたら?」

ドラコ「君は行かないのか?本当に。」

プリム「…行くわ。ドレスがあるし。…でもドラコとは行けない。」

ドラコ「っ、なんでだ。僕じゃ不満か?…あー、ポッターみたいに代表選手じゃないしな。僕じゃ確かに不満だろうな。」

ドラコが自分を貶すように言うから、私は止めるように言葉が出た。

 

プリム「そんなことない!…あなたがハリーじゃなくても、代表選手じゃなくても、あなたに誘われたら踊るわ。…でもできないの。アストリアと踊って?お願いだから。」

ドラコ「アストリア、アストリアって…なんでそんなに彼女を勧めるんだ。僕は君と行きたいのに。」

プリム「え?」

ドラコが、私と行きたいと言った。…しまった、とドラコが口を塞いで顔が赤くなる。面白いことになった。少しいじめるか。

 

プリム「なんでブレーズより早く誘わないのよ。私が受けてたらどうするつもりだったの?」

ドラコ「な!それは僕はブレーズが君を誘っても君は断るだろうから、君に申し込みの言葉を僕は慎重に考えてたんだ!」

…ああ、なんて僕は馬鹿なんだ、とドラコがもっと顔を赤くする。…感情的になってるとはいえ、全部言うなんて馬鹿だな。

 

プリム「ふーん…どんな言葉を考えてくれたの?」

ドラコ「…僕以外じゃプリムを上手くリードできない。僕と踊るべきだ、そうだろう?」

プリム「ドラコらしい申し込みね?…でも、ドラコはアストリアと行って?お願い。」

ドラコ「…なんでだ。」

プリム「…時がくれば…ドラコにもいつかわかるわ。私があなたと踊れない理由が。」

私はドラコを置いて教室を出た。

 

_____________

 

パンジー「なんで!ドラコと!踊らないの!」

本を読んでいると、パンジーが駆け足で近づいて本を取り上げられた。

 

プリム「ぱ、パンジー…まぁ、落ち着いてよ。」

…そして、本返して。

 

ダフネ「ドラコはアストリアを誘ってたわ…もうみんなパートナー決まってるわよ?大丈夫?」

パンジー「そうよ!もう残りはポッター達とあなたくらいだわ!」

プリム「それ本当?…不味いな。」

パンジー「やっと気づいた?ほら!ボサッとしてないで!もうポッターでもいいからあなたから声かけてきなさい!」

は?無理だ!無理!それはできない!チョウチャンと踊る筈だ。

 

 

プリム「あーでもまだ、1日あるし…」

パンジー「1日しかないのよ!プリム!」

パンジーの怒りは収まらない。…本返して。

 

____________

 

 

ロン「まずいよ…この調子じゃ相手が居ないのは僕らとネビルだけだよ」

ハリー「ネビルは一人でも踊れるから…」

ハーマイオニー「ネビルならもう相手を見つけたそうよ」

ロン「あ〜…それって落込むなあ」

 

スネイプ先生が目を光らせて徘徊してるのに、ダンスのパートナーの話をするハリー達。

 

 

ロン「…”早くしないと、いい子はみんな売れちゃうぞ”…そういうお前は!」

ジョージがアンジェリーナを誘って、なんなくパートナーになる。…あー、そんなに簡単ならいいのに。

 

ロン「ハーマイオニー…女の子だよね?」

ハーマイオニーが「…よくお気付きですこと」

そんな誘い方じゃ失礼だ。…全く。

 

ロン「僕等とどう?」とジョージの真似をして誘うが、後ろからスネイプ先生に本でゴツンと殴られる。

スネイプ先生が何事も無かったように歩いていった。

 

ロン「ほら…男なら一人でも平気だけど、女の子は惨めだよ」

ハーマイオニー「一人じゃないわ!お生憎、もう申し込まれているの!」

 

スネイプ先生にノートを渡し戻ってくるとハーマイオニーは、「イエスって返事をしたわ!」と言い捨て教室を出て行った。

 

 

ロンが「おい…まさか…うそだよな?」

ハリー「どうだろうね」

 

ロン「こうなりゃ歯を食いしばってがんばるしかないよ。…こんや談話室に戻るまでにパートナーを見つけること…いいか?」

ハリー「うん。」

背後にいたスネイプ先生に2人は頭を下げられた。

 

______________

 

 

教室を出ると、恭史郎に呼び止められた。

恭史郎「プリム!…やぁ、あの、えっと…ちょっと、こっちきて。」

プリム「え、あ…ちょっと」

恭史郎が私の手を掴んで、人気のない廊下で止まる。

 

プリム「ちょっと!…なんなんだよいきなり。」

恭史郎の手を振り解いた。

 

恭史郎「あ、ごめんね?痛かった?」

プリム「あー…ちょっとね。大丈夫よ。」

 

恭史郎「あー…えっと、プリムって、まだパートナー決まってないって本当?」

ん?…もしかしたら、これ。あれか?

 

プリム「あーうん…もうハリーに声をかけてみるしかなさそう。それかロン…最悪はクラッブとゴイル。」

恭史郎「あ、あの、僕も決まってないんだ。よかったら…その、僕と一緒に行かない?」

やっぱり。…なんでだ?日本のシーカーなら選びたい放題だ。

 

プリム「本当に?恭史郎が?…なんで?ワールドカップシーカーなら人気だろ?」

恭史郎「そう、あ、えっと…断ってたんだ。ずっと。だって…ギラついた目で女の子が迫ってくるんだ。怖くてさ…特にパンジーって子が…で、そしたらいつのまにか誰もパートナーがいなくて。へへ」

…クラムじゃないのかパンジー…日本じゃない経験だな、確かに。

 

プリム「あー…なるほど。有名人も大変だね。…恭史郎がいいなら、喜んでパートナーになるよ。」

恭史郎「本当!?やった!…僕、ダンスできないけど、大丈夫?」

プリム「な、そうなのか?…私がリードするよ。仕方ないな。」

恭史郎「ありがとう!…じゃあ、ダンスパーティーで。」

 

______________

 

 

 

夜、湖に浮かぶ大帆船のかがり火の灯る大広間に、美しく着飾った男女が続々と集まってくる。

 

プリム「これは…はぁ…母上…」

 

見たことがある…それはそうだ。これは11歳のときマルフォイ家のパーティーで着た青いドレスと同じ布を使っている。綺麗だけど…とても綺麗だけど…

 

“プリムへ

 

プリムはきっとドラコとダンスパーティーに行くでしょう?だから11歳の時に着たドレス と同じ布で作って貰うように頼んだの。ドラコもプリムも驚く顔が目に浮かぶわ。ダンスパーティー楽しんでね。

 

シルビア”

 

一緒に入っていたカードをみると、シルビアさんがサプライズで作ったのだろう。ドレス の採寸の時は何もわからなかったから。

 

プリム「はぁ…」

これを着たらドラコと踊らないといけない気がして、しばらく着れなかった。

 

 

パンジー「やだ、プリム!まだ準備終わってないの?」

プリム「えっと…なんか気が重くて…パーティーってやっぱり苦手なんだ。」

パンジー「ほら、さっさとしないと、最後の方は目立つわよ?」

着替えなさいほら、とドレスを押しつけられた。

 

___________

 

ドレスを着ると…前とデザインが変わっていたので、少し驚いた。

プリム「ねぇ…これ私に似合うかな?パンジー。私にはもったいないような…てか、ドレスで幽霊感が増したような…」

パンジー「わぁ…あなたとっても綺麗よ…フラーにも負けないわ!」

プリム「それはいいすぎだよ。ドレスが綺麗だから、髪型は適当にできないね。」

パンジー「私に任せて!」

ダフネ「あら…プリムそのドレスとっても綺麗…」

プリム「ありがとう、ダフネも綺麗だよ?」

パンジー「ちょっと、あなた手伝って!」

ダフネ「へ?」

 

_____________

 

パンジー「…どうよ!私達の力作は!」

パンジーが私の髪を巻いたり、編んだりしてくれた。ダフネはパンジーを手伝いながらメイクをしてくれた。

 

鏡をみると…自分じゃない自分がいた。

 

プリム「わぁ…凄いよ2人とも…」

パンジー「あたりまえよ!」

ダフネ「魔法じゃこうはならないわね。」

 

 

パンジー「さて!仕上げは、これね!」

プリム「え…それ、あるの知ってたの?」

パンジー「知ってるわよ、あなたいつも寝る前に一度見るじゃないこれ。」

…クリスマスにプレゼントされた琥珀色の宝石のネックレスだ。付ける機会はあまりないからジュエリーケースに入れていた。…ドラコからのプレゼントだ。

 

プリム「…っ、」

パンジーがネックレスをつけてくれた。…でもこれは。

プリム「執着心の塊みたい、」

パンジー「なんかいった?」

プリム「んーん、」

 

_____________

 

 

【挿絵表示】

(プリムのドレス)

 

パンジー達と会場へ向かうと、途中アストリアとドラコがいるのが見えた。…すごく綺麗だ。ドラコと視線があった気がした。…気のせいかもしれない。

 

パンジー「もうみんな集まってるわ、ほら、早くしないからよ!もう」

ダフネ「ボーッとしてた子がいたからだわ。」

プリム「ご、ごめん…」

 

 

【挿絵表示】

(アリエッタのドレス)

 

アリエッタ「プリム!…わぁ…とても綺麗だわ。プリム」

プリム「ありがとう、アリエッタも綺麗だよ。」

アリエッタ「ありがとう、セドリックと上手く踊れるかな…」

プリム「大丈夫よ、踊れなくても、リードしてくれるわ。」

アリエッタ「ふふ、そうね」

じゃあ、また後でね!と代表選手のところへ行った。

 

パンジー「私のパートナー、セオドールなの!…あ、いたわ。ブレーズも一緒ね。」

ダフネ「ブレーズは私と踊ることになったの。」

プリム「私のパートナー…まだみたい。先に行ってて?」

 

_______________

 

 

しばらくして、ドレスローブ姿の恭史郎が現れた。

恭史郎「ご、ごめん。僕こういうの着慣れなくて…待った?」

プリム「うん。…ねぇ、ちょっと、もっとちゃんと着ないと踊れないわよ。」

私は恭史郎の緩んだ襟や、ローブを直した。

 

恭史郎「…っ、ありがとう」

プリム「さぁ、もう行かないと。もう代表以外は会場に集まってるわ。エスコートしてくださる?パートナーさん」

恭史郎「も、もちろん!」

恭史郎は不器用に腕を差し出した。私はその腕を組んで会場に入った。

 

会場には沢山の人がいた。視線が痛い。恭史郎が遅れてくるからだ!

 

「キョウシロウのパートナーってプリムクロウリー?」

「あの子とっても綺麗…」

 

…恭史郎がパートナーだから目立ってる。そりゃそうか。恭史郎はクラム並に人気だ。

 

恭史郎「プリムが綺麗だから、皆見てるね。」

…な!さらっとそんなことを言うのか?

プリム「…」

恭史郎「プリム?大丈夫?」

プリム「私じゃなくて、恭史郎が有名人だからだよ。」

恭史郎「んー、そうかもね?」

 

 

しばらくすると、ファンファーレが鳴り響き、広間のドアが開いて、代表選手たちが入場した。ハリーのパートナーは…チョウチャンではなく、パーバディパチルだった。…じゃあチョウチャンは誰と踊るんだ?私はチョウチャンの姿を探した。チョウチャンの姿は代表選手の中にいた。…パートナーは一ノ瀬宗介だ。…そうなったのか。

 

 

パドマパチルがクラムにエスコートされて入場した女性を見て「あれ、ハーマイオニーグレンジャー?…クラムのパートナー…」と驚きの声を上げる。

 

ロン「まさか、そんな訳無い…」

ロンは目の前の光景が信じられないというように瞬きを激しくしている。

 

アリエッタもセドリックと一緒に入場し、広間中央まで進んだ。

 

演奏が始まって選手達が踊り始める。

ハリーのダンスは頑張ってはいるが…いまいちだ。ハーマイオニーはダンスを楽しめているみたいだ。とても嬉しそうな表情をしている。アリエッタは動きが強張りながらも、セドリックが上手くリードしている。

 

しばらくして、ダンブルドアとマクゴナガル先生が踊りの中に加わる。

 

次々とカップルが進み出て踊り始める。

 

 

恭史郎と私も前に出て踊る。

 

プリム「…っ、恭史郎、力抜いて。」

恭史郎「う、うん…」

緊張しているのだろう。恭史郎の動きは固くてリードしづらい。…ハリーといい勝負だ。

 

___________

 

やがて音楽は、激しいロックのリズムに替わり、全員が狂気のごとく踊り楽しんでいる。

 

プリム「…嫌だ。この曲は踊りたくない。無理よ。」

恭史郎「ええ…踊ろうよ。僕はこっちの方が好き。今度は僕がリードするから。」

恭史郎が腕を強く引っ張るので、私は狂気のダンスの中に入ってしまう。

 

プリム「…楽しいか恭史郎?」

私を困らせるのが恭史郎は好きなようだ。

 

恭史郎「うん、楽しいよ!…ほら、みて?皆僕達のことに気づいてない。プリムも気にしなくていいんだ…好きに踊ろう?」

プリム「…確かに、それはそうね。」

皆が目の前の異様な格好をしたバンドに夢中だ。跳ねたり、髪を振り乱したりまさに狂気だ。…私もしぶしぶ踊るものの、そこまでは私には無理だ。

 

フリットウィック「こら!おろしなさーい!…ああ〜…」

頭上をフリットウィック先生が通った。

 

プリム「ねぇ、今の…っ、」

恭史郎が私の腕を引っ張って身体が近づく、顔が近い。…こんなに背が高かったか?いや、14歳だ。背は伸びるな。

 

恭史郎「…僕、本当はプリムと踊りたくて他の子のこと断ってたんだ。」

音楽が煩くて何を言っているかわからない。

プリム「ごめんなさい、もう一回言って?」

 

恭史郎の顔が更に近づいて、耳元で囁いてくる。

恭史郎「言っただろ?僕はラッキーなんだ。」

どういう意味だろうか?よくわからなかった。

プリム「…そうね?」

 

 

曲が終わって、次の曲に変わった。

プリム「ちょっと…休みましょう?私…もうヘトヘトだわ。」

私は体力がない。運動も得意じゃない。踊りは得意だが、こんな踊りは初めてだ。ヒールを履いた足はもう…生まれたての小鹿のように震え始めている。

 

恭史郎「そうだね、じゃあ僕、飲み物とってくるから、そこで座ってて?」

プリム「ええ…ありがとう。」

 

 

プリム「…足がもう限界だわ。」

恭史郎のあの様子じゃ…もう一回踊るな。

靴ずれした痕にハナハッカをかけて治した。

 

 

 

ドラコ「…怪我したのか?この匂い、ハナハッカだろ?」

ハナハッカをかけていると、ドラコが目の前に立っていた。

 

プリム「あー…ちょっと靴ずれして」

ドラコ「…まぁ、あれだけ派手に踊ってれば、靴ずれするだろうな。」

プリム「え、見てたの?」

ドラコ「嫌でも目に入るさ。君達は代表選手並に目立つ。」

プリム「ああ、そうかもね…恭史郎は有名人だし。」

ドラコが隣に腰をかける。

 

ドラコ「だから断ったのか?僕の申し込み。」

プリム「え?違うわよ…恭史郎はたまたまパートナーがいなかったの。ラッキーよ。じゃなきゃハリーか、ロン…最悪クラッブかゴイルと踊ってたわ。またはスネイプ先生?」

ドラコ「冗談だろ?」

プリム「…冗談よ。」

何に対してか、笑いが溢れる。

 

ドラコ「そしたらなんで断ったんだ?」

プリム「聞きたいの?そんなに」

ドラコ「ああ、聞きたいさ、そのドレスも、そのネックレスも…僕がパートナーじゃなきゃ勿体無いね。」

…気づかれた。気づいてた。それはそうだ…ドラコだから。

 

プリム「っ、ドレスは母上が用意したのよ。…断った理由を話すのはまだ早いわ。」

ドラコ「それはどういう…っ、」

恭史郎「プリム!…待たせたね。君、僕のパートナーになにか?」

恭史郎が駆け寄って笑顔で話す。怒ってる。

 

ドラコ「ああ、僕達は話してる途中なんだ。話を遮るなんて、随分とお偉いようだなシーカー殿。」

恭史郎「家柄はそこそこいいよ。有難いことにね。…ところで、君のパートナーはどこに行ったのかな?まさかパートナー無し?」

ドラコ「っ!、お前…」

プリム「やめてドラコ!」

ドラコが殴りかかりそうだったから、2人の間に立った。

 

 

恭史郎「ドラコ?…あー、君がドラコか。…プリムが言ってたよ。君って箒が上手いんだろ?…僕より上手いの?」

プリム「やめてったら!」

煽るように恭史郎が言う。…2人の影響か?苛つかせるのが上手くなってる。今は喜ばしくないが。

 

ドラコ「…プリムはお前に相応しくない。…くそ」

ドラコが舌打ちをして去っていく。

…なんでこんなことになったんだ。

 

_______________

 

プリム「なんであんな事いうのよ。」

恭史郎「僕は君のパートナーだよ?他の男がいたら追い払うだろ?」

…まったく。

 

プリム「馬鹿なんだから…」

恭史郎「僕一応金色のローブなんだけど?優秀なんだけど?」

プリム「はいはい…」

 

 

広間ではゆったりした曲が流れ始めるが、2人の口論の後で恭史郎と踊る気分ではない。廊下に出ると、ロンがハーマイオニーと言い合っているのが聞こえた。

 

ロン「君、利用されているんだよ」

ハーマイオニー「なんてことを言うの!…私、丸め込まれたりしないわ」

ロン「どうかな、向こうは年上だし」

ハーマイオニー「そんなこと考えてるわけ!?」

ロン「ああ、そうだよ」

ハーマイオニー「いい解決方法があるわよ」

ロン「なんだよ…」

ハーマイオニー「この次は他の人が申し込む前に申し込んでよ!最後の手段じゃなくて…!?」 

ロン「何言ってんだよ…勘違いもいいとこだぜ。…ハリー」

 

そこにハリーがやってくる。

ハーマイオニー「どこに行ってたの?…もういい!二人とも帰って寝れば!」

ロン「女って年々恐くなるよな…」

ハーマイオニー「どうして何もかも…無茶苦茶にするの!!」

ハーマイオニーは階段でしゃがみ、泣いていた。

 

 

恭史郎「…あの子、クラムの…大丈夫かな?」

隣の恭史郎のドレスローブを見て、いいことが浮かんだ。

 

プリム「…ねぇ、ちょっと、そのドレス ローブ貸してくれない?」

恭史郎「うん。…え?」

プリム「早く脱いで。」

 

 

 

その場で追い剥ぎはできなかったので、恭史郎と私は、宿泊しているマホウトコロの生徒の部屋へ行き、恭史郎は制服姿に着替える。

恭史郎「いいけど…絶対返してね!、全く何に使うんだか…」

プリム「内緒…あと靴も貸して。」

恭史郎「…」

 

_____________

 

私は恭史郎のドレスローブを借りて、近くの空き教室に入った。私はドレスを脱ぎ、借りたローブを着た。…ぶかぶかだ。

 

プリム「さて…早くしないとな…使わないと思ったけど。」

私は性転換薬の瓶を出す。

プリム「えっと…1時間だから、半分くらいでいいか。」

性転換薬を半分飲む。…吐き気がした。…そうか、身体が変化する薬は、吐き気を伴うんだ。大きかったローブが身体にあっていく。

 

プリム「…っぅ、軽く毒だな。っ!」

声を発すると、男性の声がした。ドラコより低い。変な感じだ。

 

プリム「…これは、なかなかの美男子になったな。」

持っていたコンパクトを開いて見ると、黒髪の美男子がいた。…複雑ではあるが、トムリドルと似ている気がする。目の色は違うが。

 

 

プリム「さて…急がないとな、パーティーが終わってしまう前に涙を晴らさないと。」

 

——————

 

 

 

階段下で、まだハーマイオニーが泣いていた。

ハーマイオニー「っ、…ぅっ、…」

プリム「…君に涙は似合わないよ。」

私は後ろからハンカチを渡す。

 

ハーマイオニー「…っ、ほっといて。」

と言いながらもハンカチを受け取るハーマイオニー。

プリム「ハーマイオニーは笑っていた方がいい。」

ハーマイオニー「っ!…ほっといてってば。誰なの!」

ハーマイオニーが後ろを振り向いて、驚いた表情をする。

 

ハーマイオニー「だ、誰?…私のこと知ってるの?」

プリム「ああ、よく知ってるよ。ハーマイオニーグレンジャー。…僕と踊っていただけませんか?」

私は純血一族直伝の、キザなダンスの申し込みをした。

 

ハーマイオニー「…悪いけど、気分じゃないの。それにあなたのこと知らないもの。」

プリム「僕のことは知ってる筈だよ?ずっと一緒にいたもの。…それに気分じゃないなら、変えればいい。」

ハーマイオニーの手を引いて広間に入った。…よかった、まだ音楽は終わってない。

 

ハーマイオニー「ちょっと…待って、あなたのこと本当に知らないわ。あなたみたいな知り合いならすぐわかるもの。」

プリム「本当に?ちっとも?…残念だな、僕はずっと太陽のような君を見てたのに。」

ゆったりした曲に合わせて、ハーマイオニーの目を見ながらリードして踊る。男性のパートが覚えられるくらい経験があることはラッキーだ。

 

ハーマイオニー「あなた…プリム?」

プリム「よかった、涙は晴れたみたいだね?」

ハーマイオニー「あなたその姿どうしたの?…ポリジュース薬ね?」

プリム「違うよ、性転換薬さ。面白そうだから父上から拝借したんだ。…役に立ったね?」

ハーマイオニー「でも、なんでそんなこと…」

プリム「ハーマイオニーは僕の大事な友達だから。…それにせっかくのパーティーを涙で終わらせるのは勿体ない。」

私はハーマイオニーの崩れかけた髪を耳にかけてあげた。

 

「ハーマイオニーと一緒に踊ってるの誰?」

「見たことないよな?ホグワーツ生?」

 

ハーマイオニー「やだ…皆集まってきたわ。メイク崩れてるのに…」

廊下にいた生徒が集まって、私達のダンスを見ている。

 

プリム「ハーマイオニーはそのままでかわいいよ。…ちょっと悪戯しようか。」

私をハーマイオニーの身体を回転させて、引き寄せ、顔に手を添えを近づけた。…たぶん遠くから見たらキスしてると勘違いするだろう。

ハーマイオニー「っ!ちょっと!」

プリム「やりすぎ?」

 

「きゃー!」

「凄いとこ見ちゃった…」

 

プリム「やっぱりやりすぎた。ふふ」

ハーマイオニー「あなた、髪伸びてきてる…」

プリム「しまった、もう時間だ…じゃあ、いい夢を!おやすみハーマイオニー」

私は伸びた髪を隠しながら、「きゃー!こっちに来たわ!」「彼、私と踊らないかしら!」とうるさい人集りをわけ走って、ドレスの置いてある教室に向かう。

プリム「ごめんね、通してくれ、急いでるんだ!」

まずい、薬が切れそうだ。髪が伸び続ける。

身体をねじ込んで、必死に人集りを後にする。

 

ドラコ「おい!お前これ落としたぞ!」

プリム「え?…あー、ごめん時間がないんだ。」

 

…この時コンパクトを落としたのを気づかなかった。

ドラコ「これ…あいつ…」

 

_________________

 

 

 

プリム「はぁ…美男子すぎるのもつらいな。はは」

性転換薬が切れかけていて、声が高く聞こえる。…ん?あれ?ない…、ない!

プリム「…っ、コンパクトがない!」

 

ドラコ「これを探してるのか?美男子殿。…いや、プリムだろ?」

気づくと、ドラコが後ろにいた。手には探していたコンパクトを持っている。

 

プリム「それ…どこに」

ドラコ「拾ってやったのに礼も言えないのか?」

プリム「あ、ありがとう。…それ返してくれる?」

ドラコ「駄目だ。」

…は?

 

プリム「…な、なんでよ。」

ドラコ「グレンジャーと踊るなら、僕と踊れ。じゃなきゃ返さない。元々、僕がプレゼントしたものだしな。」

プリム「…ドレスがないもの。」

ドラコ「おや?そこに置いてあるのは、ただの布か?」

…しまった、ちゃんと隠すべきだった。

 

 

プリム「わかった…着替えるから、外に出て。」

ドラコ「あ、ああ…」

ドラコが外に出たのを確認して、ドレスに着替えた。

 

プリム「…なんか今夜だけで、一生分踊った気分だわ。」

解いた髪は、魔法で纏めた。パンジー達ほど綺麗ではない。メイクも落としたからな。

 

 

プリム「…ドラコ、入っていいわよ。」

ドラコが教室に入ってくる。

ドラコ「…」

 

プリム「いまいちよね、メイクしてないし。髪も…」

ドラコ「綺麗だ。…今夜は特別に。」

プリム「え?」

ドラコ「…何度も言わせるな。」

お互いの顔が赤くなる。

 

ドラコ「僕と、ラストダンスを踊っていただけますか?」

ドラコが蓄音器に魔法をかけて、音楽をかける。そして丁寧に私にダンスの申し込みをする。

 

プリム「…はい、喜んで」

私達はいつものように一曲踊った。

 

 

ドラコ「で?なんで男のふりを?」

プリム「秘密。」

ドラコ「…じゃあなんで、最後は踊ってくれた?パートナーは駄目なのに」

プリム「秘密。」

ドラコ「…君、秘密が多くないか?」

プリム「女の子は秘密が多いのよ。」

 

音楽と私達のステップの音だけが鳴り響く。

ドラコが私をターンさせて引き寄せる。

顔が近い。…

 

 

プリム「ドラコ?…」

ドラコ「僕の秘密を話そうプリム。…君が好きだ。」

心臓の音が聞こえた気がした。



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第二の課題は愛と共に

ドラコ「僕の秘密を話そうプリム。…君が好きだ。」

近い…ドラコの香水の香りがする。ムスクの香り…ドラコが私を好きと言った。私も…でも言ってはいけない。アストリアとドラコが結ばれ、スコーピウスが産まれないといけない。

 

プリム「…私は」

ドラコ「言うな、何も。…君は本当のことを言わない。」

プリム「…」

ドラコ「”時がくれば”その意味はわからないが、君は今先を見て行動している。僕とアストリアが踊らないと行けないのは、先に何か影響があるからだ。…僕なりの推測にすぎないが。」

ドラコの勘は思っているより鋭い。危険だ。今後は気をつけないといけない。ドラコの前でも閉心術をかけておかないと駄目だ。

 

 

プリム「…ドラコはいつから探偵になったの?」

ドラコ「さぁな、プリムという奴は昔から謎が多い女性でね。」

プリム「じゃあ、その女性に振り回されてるのね。可哀想なドラコ。」

ドラコ「女性に振り回されるのが男という生き物だ。そんなに悪くないさ、側に居られるなら。」

プリム「…アストリアの側にいて。私じゃなくて。」

ドラコ「…君が望むなら僕はそうする。後悔しないか?」

プリム「…ええ、後悔することなんてないわ。」

 

しばらくして曲が終わる。

 

ドラコ「…僕の心にいるのは君だ。忘れるなよ?」

ドラコが私の手の甲に口付けた。

プリム「忘れるわ。…あなたを忘れないと、後悔するもの。」

 

_______________

 

スリザリン女子寮

 

パンジー「で、恭史郎とドラコ。結局はどっち?」

プリム「え?なんの話?」

ダフネ「付き合わないの?2人のどっちかと。」

ミリセント「でも、恭史郎と付き合ったら、遠距離ね。とっても。まぁ、それが逆にいいって人もいたけど。」

 

戻ってきて早々に、ガールズトークなるものが開催され、パジャマに着替えた後、気を紛れされる為に蔵書を暗記した。

プリム「…どちらとも付き合わないわ。」

「ええ!!なんで!!」

全員が同じ言葉を発したので、心臓が跳ね身体がびくついた。

 

プリム「なんでって…2人ともそういう感情はないよ。昔からの知り合いだ、ただの幼なじみにしか見えない。」

パンジー「プリム…あなたもう14よ?」

プリム「…そうだね?」

パンジー「恭史郎がパートナーに誘ったってことは、少なからずそういう感情があるわ。ドラコだって…まぁ、本人が気付いてるかわからないけど。」

ドラコには好きと言われた。…好きと。…思い出して意識を蔵書に戻した。

 

プリム「相手にあっても、こちらにはないから、付き合わないよ。」

ダフネ「…アストリアはパートナーに誘われたから、少し意識し始めてるみたいよ。ドラコのこと。昔は子供だったから自分の気持ちに気づいてなかったのね、きっと。」

プリム「だから?」

ダフネ「ドラコが好きなら、後悔する前に…」

プリム「私は2人とも好きじゃないし、誰とも付き合わない!…ほっといてくれ。」

私はベッドに深く潜った。…わかってない。わからなくていい。私が身勝手に行動すれば、望んだ未来にならないんだ。

 

______________

 

 

 

真っ暗。…冷たい。頬が濡れてる。

アリエス「……タウ…タウリン…」

緑の光が視界の端で光る。

 

 

プリム「っ!…はぁ…まただ。…くそ。」

夢喰いが出てきて、私の額に鼻を這わせる。

獏「また、悪夢を見たか?…本当に喰わなくてよいのか?辛いじゃろ。」

プリム「いいんだ。…私には必要な夢だから。」

まだ早朝だった。皆眠っている…シャワーを浴びよう、汗をかいている。

 

 

プリム「…なんで、最近しょっちゅうタウリンの夢を見るんだ。」

シャワーに打たれて、考えこんだ。ひとつ浮かんだのは、死期の近づき。これはたぶんまだ早い。だから可能性は低い。…もうひとつは、私の魂がタウリンに近づいている。これは推測だが、身体に2人の魂があることで多少の揺れがあるのかと思う。揺れというのは、何か不安定な感情になるとタウリンに近くなり、安定していると私でいられる。まだうまく混ざりあっていないのだろう。…たぶん最近は、セドリックのこと、アルバス達、そして…ドラコのことで、私の精神が揺らいだから夢を見るようになった。そう考えている。

 

 

プリム「…いつも冷静にならないと。」

シャワーの温度を上げて、頭から浴びた。

 

___________

 

…その日は少し居づらかった。というのは廊下、広間、教室行くところ全てである事が話題になっていた。

日刊予言者新聞にリータスキータが書いたであろう記事が載っていた。”ダンスホールに颯爽と現れた謎の美少年、幾多の少女の心を奪い去る。”そうかいてあった。

 

図書室で毒に関する本を読み漁っていると、ハーマイオニーがこっちに向かって早足で来る。

バサっと新聞を広げ、一箇所を指差す。

…読めってことかな?

 

プリム「…”真夜中のダンスホールに現れた正体不明の謎の美男子。…その少年はビクトールクラムのダンスパートナー、ハーマイオニーグレンジャーとその日ラストダンスを踊り、口付けまで交わした仲とされるが、その正体はまだわかっていない。…有力な情報筋によると、ドレスローブはマホウトコロの生徒のものだという情報を掴んだ。…かの有名なブルガリアの恋人、ビクトールクラムの心境はいかに。”」

図書室で静かに記事を読んだ。

 

ハーマイオニー「…プリムのせいよ?」

プリム「…いやぁ、こんなことになるとは思わないじゃないか。なかなかの美男子だっただろ?半分くらい薬あるから、また飲もうか?」

ハーマイオニー「馬鹿なこと言わないで!」

ハーマイオニーが私の額を突いてきた。…痛い。

 

 

プリム「冗談だって…でも楽しかっただろ?」

ハーマイオニー「…まぁね、あなたも美男子だったし、悪い気はしなかったわ。」

プリム「お褒めの言葉ありがとうミスグレンジャー」

ハーマイオニー「でもやりすぎよ!クラムやロンがしつこく聞いてくるの。相手は誰だって。」

プリム「はは、本当?誰って答えたの?」

ハーマイオニー「知らない人って言ったわ。」

プリム「知らない人と君キスしたの?」

ハーマイオニー「プリム!…キスしてないって言ったわよ。角度でそう見えるだけって。」

プリム「ロンは納得しなそうだな。」

ハーマイオニー「まったくもってその通りよ。」

プリム「でも、そうまでしないと、ロンは馬鹿だから気づかないさ。」

ハーマイオニー「…わかってたの?」

プリム「ああ、ずっと見てきたからね。」

 

 

図書室を出ると、恭史郎が血相を変えて迫ってくる。

恭史郎「プリム!」

プリム「どうしたの、恭史郎…ちょ、ま」

恭史郎に引っ張られ、空き教室へはいる。

 

恭史郎「君だろ!謎の美男子!」

プリム「あら、ご名答。よくわかったね。」

恭史郎「そりゃわかるさ!僕のドレスローブだもの!君に貸したんだからね!」

プリム「返しただろ?なんでそんなに責めるんだ。」

恭史郎「僕のドレスローブが載ってるんだ、僕が疑われてるの!ポリジュース薬を飲んだのかとか、クラムやウィーズリーって子にしつこく聞かれて困ってるんだ!」

ファンの子の前だと凛とした恭史郎が、取り乱している。こっちの方が懐かしく感じる。

 

プリム「…ああ、なるほど。でも、私だと言っても信じないだろ。時間が経てば謎の美男子は忘れられるさ。」

恭史郎「プリムのせいだからね!」

プリム「…ごめんって。」

 

_______________

 

 

3階 女子トイレ 秘密の部屋

 

プリム「…っ、悪霊の火か、バジリスクの毒しか破壊方法がわからない。ダンブルドアはどうやって破壊したんだ。…ニワトコの杖か。」

 

スネイプ先生を助けるにあたって、分霊箱であるナギニの存在が厄介だ。最初はバジリスクの毒を考えた。毒を身体に充満させて、ナギニにあえて噛まれる。危険だが、確実だ。

…でもそれは難しい。何年もかかるし、そしてバジリスクの毒は私の身体が順応しないだろう。

 

プリム「…この毒で何回も死んでるんだ。無理だな。」

自分で編み出した、自殺専用超猛毒薬を並べた。

 

プリム「…悪霊の火か。…いや、これは最終手段にしよう。危険だ。」

…指輪を回しながら呟いた。

 

プリム「…スネイプ先生を第三の眼に呼ぶのは辞めておこう。ヴォルデモートに信頼されているからこそ危険だ。…気づかれずに、水面下で守るんだ。絶対に。」

プリム「だとすると、正体がバレたらまずいな。…っ、いや、なんだ簡単じゃないか。」

いいことが思い浮かんで、唇の端が上がる。

 

プリム「破壊しなくていい、ネビルが破壊するはずだ。なら私は、スネイプ先生が襲われるのをただ守ればいい。…私は幸い動物もどきになれる。襲いかかるナギニを止める。スネイプ先生の首の傷はナギニの毒がなければ、ハナハッカでも治ったはずだ。…これなら、正体もバレず、話も変わらない筈だな。」

 

ひとつの路線は決まった。

でもこれは失敗する可能性もある、だからもうひとつ考えておかないといけない。

 

______________

 

 

 

 

第二の課題では、湖の中に大型の塔が3台組み立てられて、会場にはすでに多くの見物者が集まっている。…アリエッタはいない。恐らく湖の底だ。アリエッタについていた式神も昨晩私の元にきた。…つまりはそういうことだ。

 

木陰に隠れ、式神を放つ。…水中には放てないが、恐らくは大丈夫だ。アルバス達の存在がわかればいい。

 

プリム「獏…今回はより注意しないといけない。アルバス達がいたらすぐに夢をみさせて。」

獏「…御意」

夢喰いはすーっと消える。

 

 

ダンブルドア「いよいよ第二の課題じゃ!…昨夜代表の諸君は、あるものを盗まれた。…大切なものじゃ。5人から盗まれた5つの宝は湖の底に眠っておる。各代表はその宝をみつけ水面に戻ってくること…これだけ」

 

ハリーの様子がおかしい…あー、エラコンブを食べたんだ。

 

ダンブルドア「ただし、許された時間は1時間…1時間きりじゃ、それを過ぎるとどんな魔法も役には立たぬ…では、大砲の合図でスタートじゃ」

すぐに砲音が轟き、5人の選手が水中に飛び込んだ。…ハリーはムーディに背中を押されて。

 

見物している生徒たちは選手が浮上してこないので心配した。

しばらくすると、ハリーが水面から飛び、歓声があがる。

 

 

ムーディはストップウォッチを見ながら心配している。

 

ダンブルドア「ボーバトン代表ミスデラクールは競技を続けることが出来なくなった。…よってこの競技は棄権となる」

 

水中の様子がわからない…

もう何時間も経ってるような感覚がした。

 

恭史郎「大丈夫?…顔が青いよ?」

プリム「アリエッタがいないから…」

恭史郎「もしかして…」

プリム「湖の底よ…」

 

 

時計が8分前を指していた。

最初にセドリックがアリエッタと一緒に浮上し、歓声に迎えられた。…よかった。無事だった。…アルバス達もいない。この時間はアルバス達は干渉していないみたいだ。

 

続いてクラムがハーマイオニーと浮上した。顔だけサメの頭になっていた。クラムが右手を高々と上げると、一斉に歓喜の声が響いた。

次に浮上したのは一ノ瀬宗介とチョウチャンだった。歓声があがる。

 

ちょうど時計が1時間を指したときロンと少女が水面に浮上した。二人が大歓声で迎えられた。しばらくしてハリーの身体が空中高く舞い上がり、スタート台の上に腹ばいになって落下した。

 

心配してみんなが駆け寄った。

 

ダンブルドア「心配要らん、みんなこっちへ…」

 

フラーデラクールがハリーの下へ走って何か言ったあと、頬にキスした。…フランス人は少し大胆なようだ。

ハーマ イオニー「ハリー!…大丈夫?あなたは勇敢で立派だったわ。」

ハリー「でも、ビリだったよ」

ハーマイオニー「ビリから2番目よ。…フラーは水魔に邪魔されてダメだったの」

 

ダンブルドア「注目!…第1位はミスターディゴリー!」

歓声があがる。

 

ダンブルドア「ディゴリーはみごとじゃった。…ミスターポッターは1位も取れたはずじゃったが、ロナルドウイーズリーだけでなく、他の人たちを助けようとしたために、遅れを取った。…これを考慮し、ポッターを第二位とする。…実に道徳的な行いじゃ」

 

イゴールカルカロフや、一ノ瀬國重は面白くないと言った表情だ。

 

 

帰り道アリエッタに付き添った。

プリム「…つまり、アルバス達はたぶん干渉してない。もし今回アルバス達が魔法をかけていたら、セドリックは死喰い人になってた。…よかったよ、本当に。」

アリエッタ「そう…本当よかった。セドリック大丈夫よね?きっと」

プリム「ああ…死なせない。」

アリエッタ「…死喰い人にもならない?」

プリム「…何もしなければ、きっと大丈夫だ。でも、死から救うから、どうなるかわからないよ。」

 

沈黙が長く感じた。

 

アリエッタ「ところで、プリムはどっちと付き合うの?ドラコ?恭史郎?」

…またか。

 

プリム「…それパンジー達にも言われたよ。」

アリエッタ「ドラコでしょ?あなたならそうよね。」

プリム「無理だ。アストリアと結ばれてスコーピウスが産まれないといけない。」

アリエッタ「…でも、もう知ってる話とはだいぶ変わったわ。自由に生きるべきよ。」

プリム「それで、セドリックやスネイプ先生を救えなかったら?」

アリエッタ「大事な人を守る為に動いてる。だから必ず救えるわ。プリムがそう言ったじゃない!…プリム、私達はもう覚悟したのよ。」

アリエッタは私の前に立って、歩みを止めた。

 

プリム「私は…死なないといけない。アリエッタ、大事な人が増えるほど、つらいんだ。…わかるか?」

そういうと、アリエッタは何も言わなかった。

 

プリム「…私は誰も愛したらいけないんだよ。」



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第三の課題 復活と穴熊 (炎のゴブレット 終)

第二の課題が終わった後、アストリアやアリエッタとドラコが頻繁に一緒にいるようにみえた。…ドラコはクラッブやゴイルと常に一緒にいたような記憶があるんだが、そうでないとすると…変わってしまったのだ。じゃあ…誰がドラコの代わりになるんだろうか。

 

…にしてもアリエッタとはそんなに仲が良かっただろうか?

プリム「…犬猿の仲だった気がする。」

 

気にするな。私には関係ない。

 

私は秘密の部屋を開ける。

そこは私が頻繁に出入りしているので、映画よりも綺麗になっている。そして訓練ができるように魔法陣を書いた。…ロン達が来るからいずれは消さないといけないけど。

 

プリム「…さて、どうなるかわからないけど。知る必要はある。」

蛇の指輪を全て外すと、石畳や水が荒れる。

なんでこんなことをしているか、必要の部屋は、そろそろ使えなくなる。だからここで、私の力をコントロールできるようにしようと…したが…

 

プリム「…っぁぁあ゛ァ!!」

指輪を外すと、抑えていた魔力が魔波のように一気に放出される。同時に精神が憎悪感で包まれる。…とんでもない苦痛だ。

 

すぐに指輪を嵌めた。

 

プリム「…っ、はぁ…はぁ…くそ、ものにできない。」

…数秒でこれだ。長時間外すとなると…精神が崩壊するだろう。ちょっと考えれば当然良くない結末がみえる。…

 

プリム「…”その者の死によって、月は雨を降らし、やがて太陽が昇る。…しかしその太陽は大きな陰となり冷たく照らす。”……不愉快な予言だな。全く。…有難いよ、望んだ力だもんな。」

詩のような洒落た予言で、よくわからないが、ここの意味は…私が死んで、何かしらあった後この力が暴走するという事なのかもしれない。…何かしらがわからないので、推測だが。

 

プリム「…欲深く生きたせいだな。」

 

_____________

 

 

丘の上の広場に会場が作られて、生徒が大声援を送っている。

楽団が演奏し、ボーバトン校の女生徒が、揃いの振り付けで応援のダンスを見せた。

 

プリム「アリエッタ、セドリックには渡した?」

アリエッタ「うん。ちゃんと渡した。」

…セドリックを救う為の身代わり式札のことだ。

 

プリム「身代わりってことは伝えてないわよね?」

アリエッタ「うん、御守りって伝えてる。呪文もたぶん正確にしたし、ちゃんとポケットに入れてるところも見たし、大丈夫よ。…大丈夫よね?」

プリム「…だ、大丈夫よ。」

アリエッタが真っ青になって不安な表情をするので、同じように沢山の不安を抱えていた私の頭の中は冷静になった。

 

プリム「今回は、監視する式神は飛ばさないわ。…今ヴォルデモートにバレるのは厄介だし、勘がいいからね。それに恐らくだけど、第一の課題と第二の課題でアルバス達は現れなかったから、アルバス達によって未来が変わることはないと思う。」

アリエッタ「監視しないなら、セドリックがどうなるかわからないね。…」

プリム「そうね、そもそも優勝杯がポートキーだから、式神はそこまで動けない。…だから身代わり式札がうまくいくことを祈るしかない。」

アリエッタ「…うん。」

プリム「あと…ここでセドリックを救えても、その先がどうなるかはわからない。それは覚えていて?」

アリエッタ「…そうだね、私達ついにやるんだね。…話を変えちゃうんだ。」

プリム「…これはそもそも話じゃない。私達の為の世界だ。…好きに生きる覚悟はできてるだろ?」

アリエッタ「…もちろんよ。」

 

教授が先導して、ハリーなどの選手がそれに続いて入場した。

ダンブルドアが壇上に立って挨拶を始める。

 

ダンブルドア「ムーディ先生が、 優勝杯を迷路に隠した。場所を知っているのは先生だけじゃ。…まずミスターディゴリー」

セドリックが手を上げて、歓声が上がった。

 

ダンブルドア「…ミスターポッター」

又も声援が響く。

 

ダンブルドア「同点1位のこの二人が、まず迷路に入る。次にミスタークラム…次にミスター一ノ瀬…そして、ミスデラクール。…最初に優勝杯に触れた者が優勝じゃ。競技を棄権し、助けを求める場合は、杖を使って赤い花火を空に打ち上げれば良い…選手諸君こちらへ。」 

 

5人を集めてダンブルドアが選手に忠告をする。

ダンブルドア「迷路にはドラゴンも水魔も居らんじゃろ。だが、 これまで以上に厳しい試練が待って居る。迷路の中では人が変わるのじゃ。…優勝杯を追ううちに、自分自身を見失うこと にならぬよう心してな。

よくは聞こえなかったが、迷路のことだろう。

 

ダンブルドア「では、諸君位置に着いて」 

会場から大歓声が上がった。

アリエッタが震えるので、手を握った。

 

ダンブルドア「三つ数える。1…」

瞬間、大砲が轟音を発し、ダンブルドアは数えるのを辞めたが、競技をスタートした。

 

ムーディに見送られて、ハリーは迷路の中に入っていった。ハリーが振り向くとムーディが人指し指を横にして方向を示していた。入り口が閉じられ、ハリーは先へ進んだ。

 

 

ドラコ「プリム、ちょっといいか…」

プリム「え、…ええ。」

行って、とアリエッタに言われたので、競技場を離れ、木陰へ入った。

 

ドラコ「…君はわかってるかもしれないが、罠だ。気をつけろ。」

なんで知ってるんだ。

プリム「…ど、どうして私に?」

 

ドラコ「第三の眼だからな…父上はあの方を常に警戒している。…父上が仰るにはポッターは何ものかに嵌められたんだ。」

どこまで知ってる…変わってることが多い。どうなってるんだ…わからない。…アリエッタ!ドラコは最近アリエッタと一緒だ。

 

プリム「…アリエッタは何か話した?」

ドラコ「…何も」

プリム「嘘はつかない方がいい。」

私はドラコに開心術をかけた…でも何も見れなかった…なんだ。なんでだ。

 

 

ドラコ「…っ、プリム、心を覗くなんて、礼儀を忘れたのか。」

プリム「な、なんなの。…なんで閉心術を使えるの。おかしいわ。まだできない筈。」

ドラコ「アリエッタに教えてもらったんだ。…僕には必要だった。」

プリム「アリエッタ…あなた達一体何してるわけ。何を知ったのドラコ!」

私は咄嗟に杖を向けた。

 

ドラコ「落ちつけプリム。…僕は味方だ。アリエッタは僕に君達のことと、少し先のことを教えてくれた。それで君達の知らない世界になってしまう危険もわかってる。でも、君の力になりたかった。」

プリム「わかったふりしないで!ドラコ!あなたのせいでセドリックが死ぬ確率が上がったわ!…余計なことをしたわねアリエッタもドラコも…最悪だわ。」

ドラコ「プリム…そうはいうが、忘却の魔法を使わないということは、僕を信用してるんだろ?」

プリム「…どこまで知ったの」

ドラコ「ディゴリーが死ぬこと。僕が…死喰い人になること。スネイプ先生が死んでしまうこと。君達はそれを防ごうとしていること。」

プリム「…ほとんど知ってるのね。…最悪だわ。」

ドラコ「…ディゴリーが死ななければ、僕がプリム達のことを知っていても、僕を信用するか?君達に協力したいんだ。…第三の眼として、動きたい。」

プリム「…協力したいなら動かないで。何もしないで。それがあなたがするべきことよ。」

ドラコ「…プリム」

プリム「…セドリックが死んだらあなたのせいかもね。」

 

私は冷たい言葉を言ったと後悔したけど、その場から離れ、競技場に戻った。もうすぐハリーが来る筈だ。

 

________________

 

競技場を戻ると、フラーやクラム、一ノ瀬さん達がもう戻ってきていた。

 

アリエッタの隣へ座ってマフリアートをかけた。

プリム「アリエッタ…あなた何を考えてるの?」

アリエッタ「ドラコからいろいろ聞いたのね…ドラコとはいろいろ魔法の特訓をしていて、その過程で開心術や閉心術を教えることになって…いろいろ見られたの。どこまで見られたかはわからない。」

プリム「…最悪ね。」

アリエッタ「ごめんねプリム…でも、それがきっかけでドラコは考え方を変えたわ。ヴォルデモートについても何も救ってはくれないと本当の意味で気づいた。…沢山変わるかも知れないけど、ドラコは絶対死喰い人にならないと思うの。」

プリム「…いい方向だといいわね。」

 

私はマフリアートを解いた。

 

 

直後、ハリーがセドリックを抱えて競技場に飛び込んで戻ってきた。

歓声と拍手、ファンファーレが響き渡る。

 

プリム「…」

アリエッタと私は固唾を呑んで見つめた。

どっちだ…生きてるか?死んでるか?…よくわからない。

 

 

ダンブルドアもハグリッドも立ち上がって心配する。

 

ダンブルドア「何があった?」

ハリー「戻ってきた!あいつが…ヴォルデモートが!」 

 

…セドリックの身体が、動いた。

ハリー「…セドリック!?君…よかった、生きてた!」

セドリック「…ぅ、ハリー?…ここは?僕、あの時…死の呪文を…」

 

ダンブルドア「ハリー、何があったのじゃ。」

ハリー「…ヴォルデモートが復活したんです!…それでセドリックは…死の呪文を受けたけど…」

ダンブルドア「2人共、詳しくは後から聞こう。…」

注目!とダンブルドアの声が響く。

 

ダンブルドア「2人の代表選手が同時に優勝杯を手にした!よって…異例ではあるが、ミスターポッター、ミスターディゴリー。二名を優勝者とする!」

ダンブルドアが優勝者を発表した後、ファンファーレが鳴り響いた。

 

セドリックとハリーはダンブルドアに連れられた。代表選手と先生達も騒めきながらついていく。

 

アリエッタ「プリム!やった!生きてる!…セドリックが生きてる!」

プリム「…よかったわね。」

生きていた。…もうこれで、どうなっていくかわからない。

 

_____________

 

対抗試合に幕が下ろされ、生徒たちは競技場を離れる。私は急いでホグワーツ城に戻った。

 

プリム「…っ、はぁ…はぁ…」

私は慣れない全力疾走に酸欠の状態で、ホグワーツに戻るとすぐに式神を放った。話が変わってなければ、ムーディの存在が明らかになる筈だ。見なければいけない。確認しないといけない。…どこまで変わってる。ムーディの存在がわからなければ…ならないんだ。

 

 

 

様子を伝える式神から、ドアを蹴破った音がした。瞬間、ダンブルドアが見えた。

 

ダンブルドアが杖をかざしてムーディを押さえつけている。ハリーもいる。

 

続いて入ってきたスネイプ先生がムーディの口に液体を流し込んだ。

ダンブルドア「飲むのじゃ」

ダンブルドア「わしは誰じゃ?」

ムーディが「アルバスダンブルドア」と答えた。

ダンブルドア「お前はムーディか?」

ムーディ「違う」

ダンブルドア「本物はどこじゃ?…この部屋に居るのか?」

 

ハリーと一緒にマクゴナガル先生たちが壁際に逃げる。

スネイプ先生が杖を振るい大きい木箱の鍵を壊した。

蓋が開いて、中から次々と木箱が出てきた。 みんなが覗き込むと箱の中には小さなものが動いていた。

ダンブルドア「無事か、アラスター」

中から「すまんアルバス」とか弱い返事が返ってきた。

 

ハリー「ムーディだ」

スネイプ先生は小瓶を鼻に当てて匂いを嗅ぎ「ポリジュース薬です」と言った。

ダンブルドア「君からくすねていた犯人が判 ったの」

 

ダンブルドアは箱の底に居る小さいムーディに「今、助けてやるぞ」と声をかけた。

 

偽者のムーディが急に苦しみだして、自分の義眼を外して床に投げた。

顔が次第に変わってきて、その場に座り込んだ。

ハリー「…バーティ・クラウチ・ジュニアだ」

ダンブルドア「離れるのじゃハリー」

ジュニア「…そいつの腕の傷も見せろ」

 

左腕にあの”しるし”があった。

ジュニア「この意味が判るだろ。…あの方が、ヴォルデモート卿がよみがえったのだ。」

ハリー「僕、抵抗できなかったんです…」

ダンブルドア「アズカバンに告げよ。…囚人が逃げていたとな。」

ジュニア「俺は英雄として迎えられる!」

ダンブルドア「どうじゃろうな…闇の世界に英雄などおらん」

ダンブルドアはハリーを連れて部屋を出た。

 

プリム「…はぁ…はぁ…よかった…バーティクラウチジュニアだ。よかった…よかった。」

心から安堵した。…体力がないのに競技場から全力疾走してホグワーツにきた、そして魔力を削る式神を放った。…そのせいで、意識が飛んだ。

 

 

ドラコ「…」

 

_____________

 

あたたかい…暖炉がそばにあるのか。…寮の匂いがする。じめっとした…

プリム「…っ!」

私は身体を勢いよく起こした。スリザリンの寮だった。

 

ドラコ「…まだ寝ていろ。倒れるほど走るやつがいるか?」

プリム「な、なにしたんだ。」

ドラコ「…倒れた君を運んだんだ。血相かえて走る君を追いかけたら、廊下で倒れてるなんて、最初はあの人がなにかしたのかと思ったが、すやすやと寝ているだけだったからな。…礼はいらないぞ。僕が勝手にやったことだ。」

プリム「…医務室じゃないの?普通。」

ドラコ「あれだけ走ったんだ、ただの貧血だと思った。」

…そうだあの時、式神を置いてきた。…まずい。

プリム「…どこから見てたの」

ドラコ「バーティクラウチジュニアが…どうのこうのってあたりだな。…そうだ、これ置いていくのはまずいんじゃないか?…監視できるような魔法がかけられてるしな。」

そういって、ドラコが式札に戻った式神を渡す。

 

プリム「…利用すれば便利なのに、なんで返すの。」

ドラコ「…言っただろ、僕は味方だ。…信じてないんだな。死喰い人だからな、それもそうか。」

プリム「ドラコはまだ違うわ、それに私が…」

しまった…

 

ドラコ「君が?…なんだ?」

ドラコが私のそばに近づいてくる。口元が笑っているようにみえた。

プリム「私が…いえ、なんでもないわ。」

ドラコ「…裏切る僕にはいえないか?」

プリム「……私が…た……る。」

ドラコ「なんだって?」

プリム「私があなたを守るわ!あなたを死喰い人にさせない!…アリエッタの心を見たんでしょ!知ってるくせに!」

私は顔に熱が溜まる。

 

ドラコ「はは…プリム、君ってやつは…僕を避けてるのに、僕を守るのか?…矛盾してるな。」

プリム「…避けてないわ。」

ドラコ「避けてるさ。必死に僕から離れようとしてる…でもいいさ、君がそう思ってるかぎり、僕から逃れられない。」

プリム「…私がまるであなたに執着してるみたいね。」

ドラコ「違うのか?…僕はそうだ。」

真っ直ぐ見つめてくる空のような、灰のような瞳が、キラキラと暖炉の光で輝いてた。月のような髪も指通りが良さそうで、見惚れた。…あれ?ドラコは今、なんて言ってた?

 

プリム「え?今なんて?」

ドラコ「…僕も君を守りたい。強くなりたかった。だから、アリエッタに無理を言った。…アリエッタのことを責めないでやってくれ。」

プリム「…責めてないわ。」

 

_____________

 

大広間に全生徒を集めて、ダンブルドアが話した。

ダンブルドア「皆に重大な知らせじゃ。…ヴォルデモート卿が…復活した。ハリーポッター、セドリックディゴリー、2人はヴォルデモート卿に対面し勇敢に立ち向かった。魔法省はわしに事実を話すことはならぬと、口止めをした。…だが、真実を語らぬのは、皆の身の危険になる。いまわれわれは皆、共に同じ不安や、恐怖を感じている。たとえ国は違えども、話す言葉は違えども、我々の心は一つじゃ。我々は決してヴォルデモート卿の恐怖に屈しない。…それをこの場を借りて誓おう。」

ダンブルドアがゴブレットを掲げると、その場にいた生徒達は合わせてゴブレットを掲げた。

  

 

_____________

 

ホグワーツ校の前庭。ダームストラング校とボーバトン校とマホウトコロの生徒が帰るので、お別れの挨拶を生徒たちが交わしている。

 

プリム「じゃあね、みんな。…寂しくなるわ。」

明星「ほんとね…また別れなんて」

龍「…手紙いつでも寄越せよ。」

2人を抱き締めると、恭史郎が何やらそわそわしている。こっちで話したいと言われ、廊下へ連れられる。

 

恭史郎「…僕ね、プリムが好きだ。最後にどうしても言いたくて。」

プリム「うん。」

恭史郎「もしかして、知ってた?」

プリム「…まぁ、なんとなく。」

恭史郎「そう…なんだ。」

プリム「…ごめんね。友達でいたいな、恭史郎とは。」

恭史郎「…ドラコが好きなの?」

プリム「…いや?恭史郎と同じだな。」

そう、よかった、と恭史郎は私の頬を優しく触る。私はその手を優しく包んだ。

 

プリム「…どうか私を忘れないでね。」

いつか死んでしまう私を、恭史郎には覚えていて欲しくなった。

恭史郎「…忘れない。ずっと、君は僕の太陽だもの。」

…その言葉が胸にスッと入ってきて、心地が良くて、頬が緩んだ。

 

_____________

 

 

大砲を轟かせてダームストラング校の大型帆船が湖に浮かんでいる。

ボーバトン校の生徒が、青い制服と青い帽子で、二列に並んでホグワーツ校の生徒の間を通って行く。歓声と拍手で見送っている。

金色のローブをはためかせ、マホウトコロの生徒達が屋台舟へ進む。 

 

アリエッタ「あの…プリム…」

ドラコ「…」

2人が私の後ろから声をかける。

 

プリム「どうしたの?」

アリエッタ「ごめんね、プリム。…私沢山余計なことして。」

プリム「…大丈夫よ。セドリックは生きてる。余計なことではなかったかも。」

ドラコ「ほら言っただろ?プリムは許してくれるって」

プリム「…これからもっと動きづらくなるのは確かよ。2人とも、注意しないと駄目よ。」

2人は黙って頷く。

 

 

校舎の高台で見送った。羽根を持った7頭の馬に引かれて、ボーバトン校の生徒が乗った馬車が湖の上を遠ざかって行った。大型帆船が湖の底に潜って見えなくなった。豪勢な屋台舟の妖怪はマホウトコロの生徒を乗せてスッと空へ飛んで行く。

 

 



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ドラコマルフォイの思想 7

______________ 8月25日

 

今日はクィディッチワールドカップの観戦日だ。すでに会場は沢山の魔法使いで溢れかえっている。今回はプリムのご家族と一緒に観戦することになっている。…そろそろ来る筈だ。

 

ドラコ「父上、母上、プリムを迎えに行ってきます。」

ルシウス「ああ、気をつけなさい。…それから失礼のないように。」

ドラコ「はい、父上。」

父上にネクタイを直されてテントをでた。

 

賑わっている通りを歩いてプリムの姿を探す。確か深いブルーのワンピースを着ていると言っていた。…道の先に深いブルーが目に入る。…心臓が跳ねた気がした。

 

 

ドラコ「プリム、ここにいたのか」

プリム「やぁ、ドラコ。元気だった?」

ドラコ「まぁね、こっちだ。僕のテントに案内しよう。…レオナルドさん、シルビアさんお久しぶりです。」

シルビア「ええ、久しぶりねドラコ」

レオナルド「プリムとは変わらず仲良くしてくれてるみたいだね?」

プリムの両親はプリムに似て不思議な雰囲気を漂わせている。学者だからだろうか、薬品の匂いも微かにする。高い香水の匂いと混ざって妙薬のように引き寄せられるようだ。

 

ドラコ「もちろんです。…みなさんもこちらです。」

テントへ案内すると、プリムは感嘆の声をあげた。…珍しいだろうか?…まぁ、感動されるのは悪くない。ほとんど父上の趣味だが。

 

ルシウス「おや、ドラコ…ああ、クロウリー殿お待ちしていました。」

ナルシッサ「どうぞゆっくりして行ってください。まだ試合まで時間がありますから。」

プリム「お久しぶりです、ルシウスさん、ナルシッサさん。お言葉に甘えさせて頂きます。」

 

それからプリムとは夏休みのことを話した。他愛もない話が心地よかった。

 

 

 

クィディッチワールドカップがまもなく始まる。会場に入るとウィーズリー達の声が上で聞こえてきた。…ポッターもいる。

 

ロン「凄いや、一番上の席だ。」

ルシウス「こうとも言えるな…雨が降れば真っ先に濡れる。」

ドラコ「僕等は魔法省の貴賓席さ。大臣じきじきのご招待でね」

ルシウス「自慢するなドラコ!…相手にする価値はない」

父上のステッキが腹部にあたって少し痛かった。…先に声をあげたのは父上なのに、あんまりだ。それにプリムの前で叱るなんて…あぁ、やっぱり気まずそうな顔をしている。…そんな顔で見ないでくれ。

 

 

会場はすでに大変な盛り上がりようだった、風船や紙吹雪が舞っている。シーカーの編隊が妙技を公開している。

 

日本のチーム、トヨハシテングは新しいシーカーを導入したらしい。…名前は覚えてないが、マホウトコロで前シーカーがその才能を見つけたと記事に載っていた。

 

プリム「父上、母上、日本のシーカーはやっぱり恭史郎です。」

プリムが両親に興奮しながら日本のシーカーを指差す。目が輝いている、僕の試合の時はそんな目…しないのに。

 

ドラコ「プリムの知り合いか?」

プリム「ああ、ほら、日本で箒が得意な子がいたじゃない?その子よ。」

ドラコ「な、なに?…そんなに若いのか」

あのシーカーは僕等と同じ歳ということか?…そんなに若いのに試合で追いつけるのか?怪しいところだ。

 

ファッジ「ようこそ、みなさま…大いなる喜びをもって、歓迎のご挨拶をさせていただきます。…第422回クィディッチワールドカップ決勝戦です。…それでは”試合開始”」

 

魔法省大臣の杖が振られ、杖の先から火玉が飛んでいった。

 

 

試合は思った以上に白熱した試合だった。ブルガリアのシーカー、ビクトールクラムは、しつこく付き纏われるもののブルガリアチームはブラッチングやコビングは当たり前のようにしていた、でも反則行為はクィディッチでは割と多い。

一方で日本のシーカー、五領恭史郎は稲妻のようなスピードに自在に方向転換する高度なバランス能力、それは…僕よりも、いやポッターよりも優れた技術だと感じた。ブルガリアチームの反則も物ともせず、華麗にスニッチを手にする瞬間はまさに花形選手だった。

 

結果は日本が260点ブルガリアは180点だった。

 

ドラコ「なぁ、プリム、恭史郎のあの稲妻のようなスピードを見たか?僕もいつかあれだけ飛べたらな…クラムの技も素晴らしかった!…試合には負けたけど、あそこまで研ぎ澄ますのは何年もかかるんだ、わかるか?」

プリム「…ええ、どちらも素晴らしかったわ。」

 

試合が終わってすぐ、僕はまだ熱が冷めずにプリムに話しかけたが、聞いてるのか聞いてないのかわからない顔だ。

 

ドラコ「それにしても、恭史郎が僕等と同じ歳だなんて信じられないな。」

プリム「…そうね。」

プリムがふと立ち上がり父上に話しかけた。

 

プリム「ルシウスさん、少しお話が」

ルシウス「ああ…なんだね?」

父上は先程から具合が悪いようだった。顔が青白い。

 

プリム「…左腕を見せてください。

ルシウス「…なに?…何故左腕を?

プリム「…失礼します。…っ!やっぱり…

ルシウス「…っ、見たな。

プリム「…大丈夫です、誰にも言いません。もう時間がない。…失礼しますね。

何を話しているのか聞き取れなかった。けど、2人共何やら深刻な表情を浮かべている。父上に至っては…プリムを殺しそうな眼差しで見つめていた。覚えがある、ポッターに対する眼差しだ。

ドラコ「…」

たまにあることだ、珍しくはない。

 

…と思っていると、プリムが急に父上と僕の腕を掴んだ。プリムの両親は母上の腕を掴む。…急になんなんだ。

 

ドラコ「おい、プリム、何するんだ!…何をする気だ!…聞いてるのか!?」

プリム「…」

…プリムが僕の話を無視して…姿現しをした。視界が歪んで身体もぐるっと回った感じがした、とても…気持ちが悪いがここは堪える。…そこは海辺で、近くに大きな屋敷が聳えていた。…我が家に似たような雰囲気を感じる。

 

ドラコ「…ぅ、」

ルシウス「こ、ここは…君姿現しが?」

少し遅れて母上とプリムのご両親も現れた。

 

プリム「みなさん…こちらへどうぞ。ご招待します。」

今まで何も無かった場所に急に建物が現れて、プリムがその先へ招く。…プリムが怪しい笑みを浮かべている気がした。

 

 

プリム「さて、みなさん。第二のクロウリー家へようこそ。我々はみなさんを歓迎します。」

ルシウス「…なんのつもりなのかね?」

ドラコ「…」

父上に続いて入ったが、第二のクロウリー家だと?…どういう意味だ?いや…先程の屋敷が本館か?クロウリー家は多大な財産があると聞いた、ありえるな。

 

プリム「突然連れて来てしまったので、混乱されているでしょう。しかしご安心ください、ここは誰にも見つからない。そういう結界を張っていますので。」

ドラコ「結界?」

ナルシッサ「なんなの?どこなのここは」

 

プリム「落ち着いてください。全てお話ししますから。…時間がないので、要約いたしますが。今魔法界では大きな動きがあり、死喰い人が動き出しました。闇の帝王は時期に復活するでしょう。」

ナルシッサ「そんな…」

ドラコ「まさか…ありえない」

ルシウス「…」

変な屋敷に招かれたと思えば、プリムが信じられない事を話し始めた。…しかし父上が黙って聞いている。何故だ?…どういう事だ?

 

プリム「ここは闇の帝王が復活した時の為に、破れず、見つからず、強力な結界を施した隠れ家です。…招待されないと入れません。そして、場所を知ったみなさんはこの家に関して口外した場合、苦しみながら死ぬことになるでしょう。」

僕達は固唾を飲んで静かに聞いた。

 

レオナルド「信じられないかもしれないが、家に関しては本当だ。プリムが日本で学んだ魔法陣型結界を少し組み替えて、この家に施した。」

な…なに!、なら僕達は今脅迫されているようなものだ。

ドラコ「なんでそんな危険な家に僕達を入れたんだ!」

僕はレオナルドさんの襟を掴んだ。

 

 

プリム「マルフォイ家を守るためです。闇の帝王は自分の為に、如何なる犠牲を払っても目的を成し遂げようとします。犠牲を犠牲だと思わない彼に救いを求めても救ってはくれない。死喰い人も数ある駒のひとつとして扱うでしょう。」

ルシウス「…」

ドラコ「僕達になんの関係があるっていうんだ。」

信じる信じないにしても、僕達には関係ない話だ。なにしろ純血一族だからな、闇の帝王が復活したところで狙われることはない。

 

 

プリム「マルフォイ家は由緒ある純血一族ですから、闇の帝王は手に納めて置きたがる。だから、私はマルフォイ家がそちらへ行く前に、同盟を組みたい。我々は帝王にも、ダンブルドアにもつかない。どっちつかずの二重スパイのような感じですかね…いかがですか?まぁ、この家に入った時点で答えは決まっているのですが。」

ルシウス「…」

…なるほど、プリムの考えはありえる話だ。それでもし、駒の一つとして扱われるとする…いい気分ではないな。…だが、プリムに何ができる?結界を施した家をシェルターとして使うのか?…たかが未成年魔法使いと、学者達の集まりに何ができる?何もできないだろう、闇の帝王の力の前では。

 

 

プリム「あ、マルフォイ家のみなさんのことですから、こんな小娘に何ができるとか思っているでしょう?」

…っ!

 

プリム「…今は2つの指輪によって魔力を抑えていますが、ひとつ外しますと…」

レオナルド「プリム駄目だ!」

シルビア「よしなさい!」

 

プリムの両親が血相を変えて止めようとするが、言うことを聞かずに指輪らしきものを外した。

瞬間床に亀裂が走り窓ガラスが割れ、部屋は荒れる。僕達はレオナルドさんが咄嗟に放った守護呪文で守られた。…なんという魔力なんだ。…プリムはこんな力を持っていたなんて。

 

プリム「…とまぁ、こんな風になりますので、抗う力くらいはあるかと思います。どうぞご安心ください。」

 

プリムは指輪をはめ、何事もなかったかのように部屋を戻す。…ご両親に叱られながら。

 

 

 

ルシウス「…いいだろう、そもそも答えはひとつしか用意されてない。」

プリム「では、決まりですね。我々は必ずマルフォイ家をお救いします。組織名は…そうですね…第三の眼なんていかがでしょう。」

ルシウス「…私はなんでも構わない。」

父上はプリムの手を掴み契約をするように握手をした。

 

プリム「第三の眼は、クロウリー家、マルフォイ家、そしてアリエッタロリスが今のメンバーです。」

ルシウス「っ、汚れた血も招いているのか」

プリム「アリエッタは特別なのです。…そうですね、私の共犯者というか。…まぁ、それはどうでもいいですね。」

 

プリム「では、これで話は以上です。お戻りいただいて結構ですよ。なにか聞きたい事は?」

ルシウス「…結界を破る方法はないのか?」

プリム「ひとつありますよ、術者である私の血です。でも時が来るまで結界は解くつもりはないです。」

父上は何か考えた顔をした。

 

 

プリム「…結界を解こうとしているならやめた方がいいですよ。ドラコが死喰い人になる未来から救おうとしてるんですから。

プリムが父上の耳元で何か囁くと、視線を僕に向けた。

 

ドラコ「父上?」

ルシウス「…帰るぞ。」

 

プリム「ではマルフォイ家のみなさん、絶対にこの家に関しては他言しては駄目ですよ?待っているのは…死ですからね。」

…フン、僕の家より立派な屋敷だ。もちろん皮肉だ。

 

 

我が家へ帰宅すると、重苦しい空気が漂った。

ドラコ「父上…プリムの話、本当だと思ってらっしゃいますか?」

ルシウス「…ああ、お前にはもう話すべき事かもしれない。…クロウリー家が知っていることだ、遅かれ早かれお前の耳にも入るだろう。」

ナルシッサ「…あなた、まだドラコには早すぎます。」

ルシウス「いや、早く知らねば…ドラコの身にも危険が及ぶかもしれん。」

ドラコ「…何の話です?父上、母上。」

父上と母上は僕をまっすぐ見つめてくる。

 

父上は左腕を捲り、しるしを見せた。…死喰い人の印だ。

 

ルシウス「私は、死喰い人だ。…あの方に仕えている。プリムクロウリーが話したことは本当だ。印が濃くなっている…あの方はもうじき復活なさるだろう。」

 

僕の父は死喰い人だった。

 

ドラコ「…っ、」

ルシウス「プリムクロウリーは予言者かもしれない、未来のことも知っているような口振りだった。…クロウリー家は我々を守ると言っていた、殺す気ならあの場で殺せた。その力があるからな。…ドラコ、あの方に気をつけろ、我々はあの方に抗えない決して。目の前で仲間が殺されても、家族が殺されても動じてはいけないのだ。…もし、もしも望みがあるとするなら…プリムクロウリーが我々を守ってくれるかもしれないということだ。」

プリムクロウリーの側にいろ、と父上が肩を掴んでまっすぐ見つめてきた。

 

ドラコ「はい…父上」

 




本編である「プリムローズが咲いた日」不死鳥の騎士団編に入る前に、「ドラコマルフォイの思想」を数話ほど投稿致します。本編「プリムローズが咲いた日」を楽しみにされている読者の皆様申し訳ございません!どうか引き続き次話の投稿をお待ちいただけると嬉しいです❁⃘*.゚


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ドラコマルフォイの思想 8

ホグワーツの校庭に、羽根を持った7頭の馬に引かせた馬車に乗って、ボーバトン魔法学校の生徒が空から舞い降りた。

 

湖からは大きな帆船が、湖底から一気に浮上して現せた。まるで海賊船のようだ。ダームストラング校だ。

…そして空から降りてくるそれは…大きな舟の様だ、しかしよく見ると大きな目玉がある。そして舟の先頭にはゴブリンらしき姿のヘンテコな生物がいる。

 

 

「あれなんだ?ゴブリンか?」

「いや、屋敷しもべじゃない?」

ドラコ「…珍妙な学校だ」

 

 

広間にホグワーツの生徒を全員集めダンブルドアが話を始める。

ダンブルドア「皆に一つ知らせがある。ここは皆の家でもあるわけじゃが、この学校に今年は特別なゲストを迎えることとなった。今年このホグワーツにおいて…」

と、話してる途中に、フィルチがダンブルドアに駆け寄り耳打ちをする。 

 

ダンブルドア「今年ホグワーツにおいて、伝説の催しが行われる。トライウィザードトーナメントじゃ。…これは三大魔法学校の対抗試合じゃが、今年は例年と違い四校が集うこととなった。一連の魔法競技種目を各校から1名づつ選び競い合う。選ばれた者は一人で戦うことになる。厳しい競技じゃ…やわなものにはとてもこなせぬ。…詳しくは後ほど。…さて、ゲストをお迎えしよう!…まずはレディーから、ボーバトン魔法学校の生徒と、校長先生マダムマクシーム」

 

 

扉が開いて音楽に合わせ、踊りながらブルーのコートにブルーの帽子を身に着けた上品な女子生徒の一団が入ってきた。

腰を振り、手を振り、その動きに誰もが見惚れた。僕もそのひとりだった。

 

ドラコ「…っ、」

なんだか顔が熱く感じた。

 

男子生徒はほとんど釘付けになっている。その様子に女子生徒は面白くないといった表情だ。

 

拍手で迎えるとダンブルドアが続ける「そして、北からはダームストラング魔法学校の一行と、校長イゴールカルカロフじゃ。」

 

皆が注目する中で扉が開き、軍服姿で鉄の杖を持ち、床に打ちつけたり、目の前で回転させたりして、頭を丸刈りにしたたくましい男子生徒の一団が入ってきた。壇上で彼らは口から火を吹いて見せた。

 

「おい!ビクトールクラムじゃないか?」

「ブルガリアのクィディッチのシーカー?」

ホグワーツの生徒がざわつき始める。

 

今度は女子生徒が黄色い歓声や、見惚れた表情を浮かべる。

 

ドラコ「…まさか」

プリムも見惚れているかと思ったが、その表情はしていないように見えた。

 

 

ダンブルドア「そして最後に、遠く東洋から来てくださった。マホウトコロ魔法学校の生徒と、校長 一ノ瀬 國重じゃ。」

 

扉が開くとさっきとは打って変わり、優しい鈴の音が一定のリズムで鳴り、鼓の音が響く。一風変わった登場に生徒は静かになった。…子供?…いやツノがある。ツノがなければ子供みたいだ。

ツノのある子供が広間を楽しげに駆け回ると、花びらの道ができた。綺麗だ。…見たことがある。プリムが昔くれた花だ。

 

ドラコ「…さくら?」

「何の花?」

「凄く綺麗…」

ホグワーツ生は感嘆の声をあげた。

 

 

凛とした表情のマホウトコロの生徒はキモノ?だったか…日本らしい姿に金色のローブを羽織っている。

 

「日本もクィディッチのシーカーがいるぞ?」

「キョウシロウだろ?すっげーや!」

ドラコ「っ!恭史郎だと?」

列を見ると、確かにその姿が見えた。異国の顔立ちが綺麗だと女子生徒が騒つく。

 

ドラコ「…ぅ、」

プリムが、今までと違う表情をしている。まさか…そうなのか?あり得ないことじゃない、幼馴染だ。…いや、まだ決まったわけじゃない。

 

 

一ノ瀬校長はゆっくり進み、ダンブルドアに挨拶する。

 

 

ホグワーツの食事を各校の生徒が楽しむ。僕はダームストラング校の生徒と仲を深めた。父上に勧められた学校だったのもわかる、考え方が似ているから話しやすい。言葉の訛りはあるけれど、クラッブやゴイルのような馬鹿はいない。

 

 

食事が終わるとダンブルドアが壇上にあがり話を始める。

 

ダンブルドア「よいか諸君。…一言云うて置こう、…永久の栄光がトライウィザードトーナメントの優勝者に贈られる。…それには三つの課題をやり遂せねばならん。…きわめて過酷で危険を伴う課題じゃ。…そこでこのたび魔法省は新たにルールを設けた。これについては国際魔法協力部の、ミスターバーティクラウチ氏から説明してもらおう。」 

指名されたクラウチ氏が立ち上がると会場に一瞬稲妻が走る。

 

左の目が義眼の教授が杖をふるって戦った。

 

 

ロン「あれ…マッドアイムーディだ…」 

ハーマイオニー「アラスタームーディ?…オーラーの?」 

ディーン「オーラーって?」 

ロン「闇払いのことだよ。…闇の魔法使いをアズカバン送りにした。 」

グリフィンドールの囁き声が聞こえた。

 

 

左足を引きずりながら、マッドアイが壇上のダンブルドアに近づき握手をした。

ムーディ「ふざけた天井だ。」

ダンブルドア「ああ、全くじゃ、よく来てくれた。」

マッドアイは隠れるようにして、ウイスキーの小瓶をあおった。

シェーマス「何飲んでるんだ?」

ハリー「…かぼちゃジュースじゃなさそうだね。」

 

ドラコ「気味の悪いやつだ…」

 

 

クラウチ氏は壇上に進み、全生徒に向かって宣言をする。

 

クラウチ「検討の結果…安全のため、17歳未満の生徒は、この度のトライウィザードトーナメントに立候補することを禁じると魔法省が決定した」と発表した。  

 

「嘘だ!」

「…そんな、あんまりだ。」

生徒たちからは一斉に不満の声が上がった。

 

誰もが悔しそうな表情をしている。

 

ダンブルドア「静まれ!…」   

 

ダンブルドアが叫んだ後、壇上のトロフィーに杖をかざすと、背丈ほどもあるトロフィーが融けていって、中から大きいゴブレットが現れ、青い炎が点いた。 

 

ダンブルドア「炎のゴブレットじゃ…」

ゴブレットの炎を生徒が見つめる。

 

ダンブルドア「トーナメントに名乗りを上げたい者は、用紙に自分の名前を書き、木曜日のこの時間までに、ここに入れるのじゃ。軽い気持ちで入れるでないぞ。…選ばれたら後戻りは出来ぬ…今この時からトーナメントは始まって居るのじゃ」

生徒達は固唾を飲んで話を聞く。

 

_____________

 

 

マッドアイが教室で生徒に講義をしている「おれはアラスタームーディだ!…元闇払い、魔法省にも居た。”闇の魔術に対する防衛術”担当だ。…ダンブルドアに頼まれたので引き受けた。以上だ!終わり!質問は!…闇の魔術に関しては実践教育が一番だと思っている。」

イカれてるという噂により磨きがかかる授業だ。

 

 

ムーディ「お前たちに質問する…許されざる呪文は幾つあるか?。」

 

ハーマイオニー「三つです」

グレンジャーが素早く答える。

ムーディ「その名の由来は?」

ハーマイオニー「許されないからです。…この呪いを使うだけで…」

ムーディ「アズカバンで終身刑を受けるに値する。よろしい!…子供に教えるのは早すぎると言うが、おれはそうは思わん。…戦う相手を知るべきだ。」

 

ドラコ「…」

 

ムーディ「チューインガムを貼るなら机でなく、もっとマシなところに貼れフィネガン!」

背中を向け、黒板に板書をしながら叫ぶマッドアイ。

 

シェーマス「嘘だろ?あいつ背中に目があるのか?」

義眼をギロつかせ、すかさずチョークを投げつける。

 

ムーディ「耳もよく聞こえるぞ!」

教室が静まり返る。

 

 

ムーディ「さて、どの呪いからいくか」

誰もが静まり返った。

 

ムーディ「ウィーズリー!…立て!」

ロン「はい!」

ウィーズリーが無慈悲にも指名され、自席で立ち上がる。…同情しておこう。

 

ムーディ「どんな呪文がある?」

ロン「一つパパから聞いたのが…服従の呪文…」

ムーディ「お前の父親なら良く知ってるだろう…魔法省はさんざん手こずったからな。…そのわけを教えてやろう」

 

マッドアイは教壇に置いたガラスの容器の中で飼っているクモのような虫を「そーら…いい子だ」と言って手の上に取り出した。

何か呪文をかけるとクモは段々大きくなる。…肥大呪文か?

 

ムーディ「インペリオ!」

虫は操られるように宙を舞う。

 

 

生徒のところに跳んでいった。マッドアイが杖で指示をすると、生徒の頭の上や肩や顔に飛んでいって止まるので生徒は恐がって騒いだ。…グリフィンドールが怯えているのが凄く滑稽だ。

 

ドラコ「はは…」

 

マッドアイの義眼は上下左右を睨み付けるようによく動いた。 

 

ムーディ「なに笑ってるんだ?」

ドラコ「わぁ!…と、とってくれ!」

僕のところへ虫がやってくる、必死で取り払おうとする。

 

 

ムーディ「芸達者だろ!次は何をさせる?…身投げか?…溺れさせるか」

 

ドラコ「…っ、」

 

ムーディ「多くの魔法使いがこう言った。自分の悪戯は服従の呪文によって、例のあの人に無理強いされたのだとだが、それが嘘か真かをどう見分ける?…さて、後の呪文は?」

 

次はロングボトムを指名して立たせた。

ムーディ「スプラウト先生に聞いたぞ薬草学が得意だそうだな。」

ネビル「はい…えっと…あとは磔の呪文です」

ムーディ「そう、その通り。…」

 

こっちにこい、とロングボトムを教壇まで呼ぶ。

 

ムーディ「身も竦むぞ…拷問の呪文だ」

クルーシオ!と唱えると、虫は「キーキー」と苦しそうな声を出して悶えた。

その様子を見て、ロングボトムが辛そうに息が上がっている。

ハーマイオニー「やめて!ネビルがつらそうです!…やめて!」

 

グレンジャーが声をあげた。

 

 

マッドアイは弱った虫をグレンジャーの机に置いて佇む。

ムーディ「許されざる呪文の最後の一つは?」

グレンジャーが首を左右に振ると、ムーディ教授は虫に杖を突きつけて、叫ぶようにアバダケダブラ!と呪文を唱えた。

…虫はひっくり返って即死した。

教室は静かになった。

 

 

 

ムーディ「死の呪いだ」

ドラコ「…」

 

ムーディ「これを受けて生き延びたのはただ一人、今ここに居る…」と言い、ポッターの前に立ち止まりポケットから小瓶を取り出して、何かをあおる様に飲んだ。

 

 

 

パンジー「禁じられた呪文を教室でやるなんて…」

階段を降りながらパンジー達の話し声が聞こえた。

 

ドラコ「イカれてるって噂は本当だったわけだ。」

プリムが勢いよく振り向いて、鋭く睨みつけてくる。

 

プリム「…ドラコちょっと、話があるんだけど。」

ドラコ「ああ、なんだ?」

 

僕はプリムに言われて、空き教室へ入った。

プリム「ドラコ…あなた私がしたこと忘れたの?」

ドラコ「プリムがしたこと?わかってるさ、僕達の家を守ろうとしてるんだろ?」

机の上に座って話を聞いた。

 

プリム「そ…そうだけど…え?なんで気づいてるの?納得いくように話したつもりないんだけど…」

ドラコ「父上が話してくださった…いろいろね。プリムも気づいてたんだろう?だから、第三の眼に誘った。」

…思案してるような表情だ。…プリムが予言者という父上の考えはあり得なくもないな。

 

プリム「でも…私の魔力見たでしょ?闇の帝王に抗うことができるってことは、そのくらい危険ってこと…私…私…異常なのよ?」

ドラコ「だからなんだ?プリムは危険じゃないさ。その力を持ってるのが例のあの人なら危険だがな。」

戸惑っている?…プリムは想定外のことが起きると表情が豊かになる。それは僕を退屈にさせない。

 

ドラコ「プリム、僕は今までと変わらない。プリムもだろう?…僕達は友達だ。そうだろ?」

僕はプリムの宝石のような瞳を見つめた。…エメラルド、前は琥珀色だった。夕陽の色、僕をあたたかく照らすようだった。

 

プリム「そうね、変わらないわ。…友達よ。」

 

_____________

 

 

雨の降る日、大広間に生徒たちが集まっている。各校の生徒がゴブレットの炎の中に名前を書いた紙を入れていた。

 

ドラコ「…」

 

…そんなことはどうでもよかった。プリムが見物しようとするのが不思議に思った、いつもならこういう人が集まるところは彼女は好まない。だから、ついてきたら、見たくない光景が目に入った。

 

プリム「やぁ、恭史郎。ゴブレットに名前は入れたか?

恭史郎「プリムと同い年なの忘れた?ゴブレットにはいれられないよ。

プリム「錯乱の呪文をかけたらいい。

恭史郎「君、変わらないね?

 

ドラコ「…面白くない、」

会話は聞こえない、あまり近づくとプリムにバレる。

 

 

プリム「ところで、日本はどういう人がゴブレットに名前を?

恭史郎「上級生はほとんど。まぁ、元々マホウトコロは生徒数が少ないからね。ここに来る条件が金色のローブであることだったし。期待値が高いのは、白虎の一ノ瀬宗介さんかな、文武両道で有名だよ。因みに一ノ瀬校長の御孫さんだ。

プリム「ああ、そうなんだ。…金色のローブの人しかいないし、変だとは思ったけど。条件にあったのか。

恭史郎「マホウトコロが初めての海外留学をするって大騒ぎだったよ。僕はまだ金色になってなかったから必死で努力した。

プリム「はは、そうだったのか。案外想像できなくもないな。

恭史郎「ちょっと!

 

ドラコ「随分と仲が良さそうじゃないか…くそ、」

 

これ以上いたらはらわたが煮え繰り返って、おかしくなりそうだった。いや、もうそうかもしれない。僕は足早にその場を去った。

 

苛立ちながら廊下に出る。

アリエッタ「あ、ちょうどよかった」

ドラコ「…なんだ」

僕の前にアリエッタが立ち往生した。

 

アリエッタ「ドラコマルフォイくん、今日から少し、レベルアップしてみようか。」

ドラコ「…レベルアップ?」

アリエッタ「まぁ、いずれ必要になるし、早くから鍛えるべきかなって。」

これ読んでおいて!と僕に何冊か本を押しつけられた。

ドラコ「”心を閉ざす術と覗く術”…”開心術の悪用方法”…”上級魔法閉心術と開心術編”…なんだこれは。どれもまだ学ぶには早いんじゃないか、6年くらいのものだ。」

アリエッタ「いいから、ドラコには簡単よ。…優秀だもの、理解できないわけないわよ、ね?」

ドラコ「…フン、当たり前だ。」

僕は返そうとした本を、抱き抱え踵を返した。

 

_________________

 

 

 

鐘が鳴り学校の大広間に生徒全員が集まっている。 

 

ダンブルドア「着席!…よいか、待ちに待ったときがやって来た。代表の発表じゃ…」

手をかざすと、青い炎を上げているゴブレットが赤い炎に変わり、周りに火の粉を放った、その炎の中から紙切れが1枚舞い落ちる。

 

 

ダンブルドアがその紙を空中で受け取り広げて読み上げた。

ダンブルドア「ダームストラング校の代表は、ビクトールクラム!」

 

口笛や歓声があがりクラムは立ち上がり、仲間から祝福されて壇上に歩いた。 

 

 

続いて炎の中から舞い落ちてくる紙片を校長が片手で握り取った。焼け焦げた紙片を広

げて叫ぶ。

ダンブルドア「ボーバトンの代表は、フラーデラクール!」

 

美少女と評判の、フラーも立ち上がり仲間の女性が拍手で祝福した。

 

ダンブルドアがまた紙片を空中で受け取り広げて読み上げた。

ダンブルドア「マホウトコロの代表は、一ノ瀬宗介!」

 

確か…一ノ瀬校長の孫という噂だ。似てないが。

 

 

ダンブルドアはさらに手を伸ばして、落ちてくる紙片を掴みとる。

ダンブルドア「ホグワーツ代表は、セドリックディゴリー!」

 

 

歓声が一段と高くなった。選ばれた代表の四人が壇上に進む。

 

ダンブルドア「よろしい!これで四人の代表が決まった。…しかし、歴史に名を残すのはただ一人、…ただ一人だけが勝利の証として、かかげることが出来るのじゃ…この優勝杯を!」

 

ダンブルドアが指差した先には、さん然と輝く優勝杯があった。

 

 

…瞬間、またゴブレットの青い炎が左右に飛び散り、やがて赤い炎に変わり、舞い上がった紙片が落ちてきた。

 

 

スネイプ先生や、ダームストラング校長のイゴールカルカロフが驚いた顔をして立ち上がった。 

 

ダンブルドア「…ハリーポッター」

焼けた紙片を掴みダンブルドアが呟いた。

 

ダンブルドア「ハリーポッター!」

ダンブルドアは震える声で読み上げた。

ハグリッド「そんな…まさか」

 

ドラコ「…」

 

 

生徒の視線がハリーに集中する。

ダンブルドアがもう一度「ハリーポッター!」と呼びかけてポッターを探した。

 

ハーマイオニー「行くのよ!…行かなくちゃ…」

 

ポッターは、何が起きたんだという表情をしている。

「ずるしたんだ!」

「17歳にまだなってないだろ」

生徒の声が響いた。

 

ポッターは壇上の先生たちの間を通り、最上段の鉄の扉を開いて中に入った。



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ドラコマルフォイの思想 9

 

 

スリザリン談話室

 

ドラコ「ポッターはどうやってゴブレットに名前を入れたと思う?」

プリム「さぁ、ハリーが永遠の栄光をほしがるかしら?。」

…欲しがるんじゃないか?と思ったが、プリムの表情からすると違うらしい。

ドラコ「プリムならそういうだろうな。」

プリム「あら、私のことよく知ってるのね。」

ドラコ「当然さ。友達だからな。」

 

ブレーズ「なぁ、プリム面白いことしないか?」

ブレーズがプリムの横に座る。

プリム「面白いこと?」

パンジー「なに?なんの話?」

プリム「ブレーズが面白いことをするって」

プリムはこういうときは協力的だ。昔から悪戯が好きなのかもしれない。いつも僕が考えつかないことをする。前にウィーズリーの髪をスネイプ先生の髪に変えたことがある。これは魔法薬が得意なプリムの案だった。スネイプ先生のあの表情と言ったら…

 

ブレーズ「面白いさ、ポッターの缶バッジを作ってやろう。応援しないとな?」

プリム「…子供っぽい」

…?珍しく今回は加担しないらしい。

ドラコ「面白いじゃないか?僕は賛成だ。」

パンジー「デザインなら私に任せて?」

プリムが居ないのは残念だが、ポッターの応援缶バッジを作る事にした。もちろん僕達の特別製でな。

 

_____________

 

日刊予言者新聞の女性記者リータスキータが新聞を書いた。”悲劇のティーンエージャー対抗試合へ”という見出しらしい、興味がない僕は新聞を読まなかった、内容は大体がデタラメだと噂だ。

 

プリムが変な表情で読んでいる新聞の上に、パーキンソンが羊皮紙を広げる。

パンジー「ねぇ、このデザインどう?」

あー…缶バッジのデザインか。僕とブレーズはそういうのはわからなかったから、プリムに聞いてるわけか。

 

ドラコ「…」

ブレーズ「プリムは今日も綺麗だと思わないかドラコ…そうだ、父が言っていたんだが、ダンスパーティーがあるのを知ってるか?」

見慣れたブレーズの顔が視界に入ったので、視線を逸らした。

 

セオドール「あ、それ僕も言われた。…僕誘う勇気ないよ。」

ドラコ「心配ない、本当に不安なら僕が手伝ってやる。」

セオドールが不安気な表情を明るくした。

 

ドラコ「…それよりも、僕はお前達の方が心配だな。…そろそろ食事の仕方くらい覚えたらどうだ?」

朝食を食い散らかすクラッブとゴイルに視線をやる。

クラッブ「…?」

ゴイル「…?」

ドラコ「はぁ…なんでもない、気にせず食べろ。」

ブレーズ「ドラコ、ここだけの話だが…僕はプリムを誘うつもりだ。別にいいよな?」

ドラコ「…いいさ。…プリムがお前の誘いを受けると思えないしな。」

ブレーズ「…随分と自信があるようじゃないか。…僕がパートナーになっても悪く思うなよ?」

ドラコ「…プリムをちゃんとリードできるなら悪く言わないさ。」

セオドール「あ…あのさ、プリムって他寮でも人気があるんだよ。グレンジャーやアリエッタと仲がいいでしょ?だから…他のスリザリン生とはちょっと違うっていうか…セドリックディゴリーと話してるところ見たって話を聞くし。…だから、誘いたいなら2人共早く動いた方がいいんじゃないかな?」

ドラコ/ブレーズ「…っ!」

僕達は同じように頭を抱えた。

 

_____________

 

学校の中ですれ違う生徒は、僕達が作った特別製応援缶バッジをつけている。

 

「ポッターはズルしたんだ」 

「汚いぞポッター」

「セドリック万歳!」

ポッターが廊下を歩くと聞こえるように声をあげるホグワーツ生。陰口ではない。聞こえている筈だからな。

 

 

 

ドラコ「おい、上にあげろ。」

クラッブ「ああ…」

ゴイル「ぅ…」

 

木の上に登った、特に意味はなかったが、高みの見物というやつか。

 

 

ハリー「君、感じ悪いよ…」

ロン「そうかよ…」

ウィーズリーとポッターは喧嘩したらしい、ピリピリした空気が漂っている。

 

ハリー「ああ、そうさ!」 

ロン「他に用ある?」

ハリー「ああ!僕に近づくな!」

ロン「判ったよ」

 

ドラコ「ピリピリしているな、ポッター」

僕は木の上からポッターに声をかけた。

 

ドラコ「父上とお前の賭けをしたんだ…お前が試合で10分ももたない方に賭けた。…でも父上は5分ももたないってさ」 

なんでかわかるかポッター?おまえはドラゴンと闘うんだ。僕は哀れなポッターを笑った。

 

ハリー「君の父親がどう思おうとそんなことは知ったことじゃない。…父親は邪悪で残酷だし、君は卑劣だ…」

ポッターが僕に卑劣と言い残し背を向けた。父上のことより、自分が卑劣と言われたのが気に食わなかった。

 

ドラコ「卑劣?…卑劣だと!?」

僕は背後から魔法を掛けようとした。

 

ムーディ「そうはさせんぞ!」

ギロリと睨む義眼が僕を捉えて、いつのまにか僕は身体が縮んでいた。

 

ドラコ『な、何するんだ!』

キーキーという声が僕から聞こえた。僕は何かに変身しているらしい。いや、そんな冷静な判断をしている場合じゃない…っ!

 

ムーディ「後ろから襲うやつはけしからん」

マッドアイが杖を振るだけで僕の身体は軽々と宙を彷徨った。

 

ドラコ『わ、ぁ…やめろ!やめないか!今すぐやめないと、どうなるかわからないぞ!』

キーキーという僕の声は残念ながら届かない。

 

マクゴナガル「ムーディ先生!何をなさってるんです!?」

ムーディ「教育だ!」

マクゴナガル「それは生徒なのですか?」

ムーディ「今は白イタチだ!」

ドラコ『な、僕は白イタチなのか!?…くそ、お前は絶対許さない!』

その声も届かず、僕はクラッブのパンツに入れられた。

ドラコ『…ありえない、これは夢だ。いや、クラッブの匂いが現実だと言っている。』

暗いパンツの中をなんとか外に出ようとするが、クラッブが暴れて上手くいかない。次の瞬間ガシッと尻尾を強く掴まれる。

ドラコ『いっ!なにするんだ!』

その手に噛み付くと、ゴイルの痛がる声がした。どうやらゴイルの手だったらしい。

 

プリム「面白いってのはこういうことだよ、パンジー」

パンジー「プリムってば趣味悪いわ。」

 

ドラコ『ぅ…プリムの声だ。』

笑っているプリムの声が聞こえてきた。あー、なんて無様な姿だろうか。

 

やっとのことで、クラッブのよくない匂いから解放された。

ドラコ『っ!やった、出られたぞ!』

 

マクゴナガル先生が僕を元に戻してくださった。僕はすかさずマッドアイに忠告した。

 

ドラコ「ち、父上が黙ってないぞ!」

ムーディ「それは脅しか!?」

ドラコ「ぅ…」

僕はマッドアイのギロリと睨む義眼が嫌で廊下へ走った。

 

 

ドラコ「屈辱的だ…最悪だ…」

ブレーズ「あー!それにプリムも見てたぞ?」

ブレーズは面白くて堪らないと笑う。

 

ドラコ「…クラッブ!ゴイル!お前達、もっと身嗜みをちゃんとしろ!そんなんじゃパートナーなんて無理だぞ。」

クラッブ/ゴイル「ぁ…うん。」

セオドール「ムーディってイカれてるよ、ほんとに」

ドラコ「それは最初から知ってたさ、プリムに見られた…最悪だ…」

ブレーズ「そうか?案外似合ってたぞ?白イタチ」

ドラコ「ブレーズ…寝る時は気をつけておけ?お前の綺麗な顔立ちが台無しになるぞ?」

 

_____________

 

 

フレッド/ジョージ「さあ、みんな賭けて!賭けて!」

 

トライウィザードトーナメントの会場は満員の観客が詰め掛けている。

 

ドラコ「プリムはどこだ?」

ブレーズ「あー、アリエッタと一緒にいるよ、あそこだ。」

ブレーズが指差して遠くの席にプリムが居たのが見えた。

ドラコ「あそこは近すぎないか?」

セオドール「2人共近くで見たいから、ほっといてくれって」

ドラコ「そうか…」

プリムは試合事はあまり好きではないのに…変だと僕は思った。

 

ダンブルドアが挨拶を始めた「静粛に!待ちに待った日じゃ。トーナメントの三つの課題はいずれもかなり危険なことじゃ、決して立ち上がったりしないよう、安全のため常に着席してるのじゃ。まもなく開始じゃ!」 

 

 

しばらくすると大砲が轟音を発し、セドリックディゴリーがスタート位置に進んだ。ディゴリーはスウェーデンショートスナウトというドラゴンと戦う。

 

ディゴリーはドラゴンを見ると目の色を変えた。近くの岩を大きな犬に変身させ、それを自分の身代わりにドラゴンの注意を引きつけて卵を取ろうとする。

 

…ドラゴンの気が変わったのか、ディゴリーを襲い始める。火を吹いたり、尻尾を乱暴に振り回している、攻撃をギリギリのところで切り抜けている。クィディッチの選手経験もあって、瞬発力が高い。…見事だ。

 

ディゴリーは卵を手にして頭上に掲げた。

 

他の選手も無事に卵を手に入れた。

 

フラーはドラゴンに向けて魅惑呪文をかけ、恍惚状態にし、クラムはドラゴンの一番の弱点である目を攻撃するために、結膜炎の呪いをかけた。宗介は結界術という魔法を巧みに使ってドラゴンを閉じ込め、なんなく卵を手にした。

 

 

 

ダンブルドア「これまで4人の代表がそれぞれ金の卵を勝ち取り、次の課題に進むことが出来た。次はいよいよ5人目最後の競技者じゃ」

 

 

ポッターが競技場の岩場に姿を現した。

顔が青白い。…まぁ、無理もないか。

「ハリー!…ハリー!」の大合唱の中を慎重に岩の間を中央に進んだ。

金の卵は岩場の一段高いところにある。

 

ポッターは卵を見つけると真っ先に向かって歩く、直ぐにドラゴンの叫びと羽音がポッターの頭上に迫った。

 

ドラコ「賭けは父上の勝ちか、5分も持たないな」

ブレーズ「ハンガリーホーンテールだぞ?骨折で済めば良い方だ」

 

ポッターが転んで見上げると、怒りで口を大きく開いて、火を吐くドラゴンが襲いかかろうとしていた。

 

追い詰められたポッターは呪文を唱えた。

上空から箒が飛んできて箒に乗って一気に金の卵を奪おうとするがうまくいかない。

 

ドラコ「おい、なにしてるんだよ」

クラッブとゴイルが僕に合わせて嘲笑った。

 

競技場の外に飛び出すとドラゴンが鎖を切って飛び立ちポッターの後を追った。

 

ブレーズ「…あー、死者が出ないといいが」

ドラコ「知ったこっちゃないさ」

 

しばらくして競技場の上空に、箒に乗ったポッターの姿が見えた。生徒たちが歓声を上げる中をポッターは悠々と岩場の金の卵のところに舞い降りて卵を頭上に掲げた。

 

______________

 

 

大広間のテーブルで僕達は項垂れていた。

 

プリム「どうしたの?」

パンジー「缶バッジの流行が過ぎ去ったわ…今じゃポッターは英雄だもの。」

ドラゴン…それもハンガリーホーンテールに勝ったポッターは5人目の選手として認められた。

 

ドラコ「面白くない…くそ、」

プリム「流行は回り回ってくるさ。ドラコ、ハリーは運がよかったんだ。セドリックを上回る魔法を使えるわけでもない。」

…そうか、ポッターは運がよかったのか。いやそんなことで僕のこのジメジメした思いは変わらない。

 

プリム「ほら、パンジー。君の好きそうな記事だぞ?…ミスグレンジャーは平凡な女の子。でもボーイフレンドは大物狙いのよう。

情報筋に寄れば今のターゲットは、かのブルガリアの恋人ビクトールクラム。…振られてしまったハリーポッターの心中やいかに。」

プリムがパーキンソンに日刊予言者新聞のデタラメスキャンダルを見せた。

 

パンジー「…グレンジャーなんかに負けてらんないわ。」

パーキンソンの眼に炎が宿ってるように見えた。

 

 

しばらくすると梟便の時間になる。グリフィンドールがなにやら騒がしい。まぁ、いつものことだ。

 

プリムの梟が、何やら少し大きな包みを持ってきた。

プリムは梟と何か話している。その会話は当然わからないが、気怠げな表情を浮かべていた。

 

 

______________

 

スネイプ「…トライウィザードトーナメントにともない舞踏会を行うのが伝統とされている。…クリスマスイブの夜、大広間で一晩楽しみ、騒いで結構。…トーナメント開催校の代表として、一人ひとりが自覚を持ち、最高のリードをすることだ。そして舞踏会で何よりも肝心なのは、ダンスだ。…」

スネイプ先生がやる気がなさそうに説明した。生徒たちがざわめいた。男子生徒は嘆き、女子生徒は歓喜している。

 

 

スネイプ「黙れ…スリザリンの寮の偉大なる魔法使いが培ってきた尊厳をたった一夜で汚すことのないよう…ダンスを踊れるものは?」 

純血一族の女子生徒達が素早く手を挙げる。…1人を除いて。プリムは人前で踊りたがらない。パーティーでさえも嫌だと言っていた。だからいつも最初に2人で踊り、その後プリムは話にふけるのだ。

 

 

スネイプ「…ミスターマルフォイ、ミスクロウリー、2人は当然踊れるな?」

…指名されたら踊るしかないだろうな。

 

プリム「あの先生、私挙手してないんですが。…パンジーがいいんじゃないでしょうか。」

スネイプ「…ダンスは毎年のようにしている、ミスターマルフォイと、ミスクロウリーが1番見本になるとそうは思わないかね?」

パーキンソンには悪いが、踊り慣れているプリムの方が有り難い。

プリムが渋々立ち上がって中央に立ったので、僕も続くように中央に立つ。

 

ドラコ「足を踏むなよ?いつものように踊れ」

プリム「そっちこそ」

 

レコードの音楽に合わせてワルツを踊った。プリムの細い腰と小さい手が、お互いに成長したことを実感させた。

 

______________

 

 

 

ホグワーツ城はダンスのパートナー探しで男子はそわそわし、女子は誘われることを待つように色めき立っている。

 

「僕と一緒に踊りませんか?」

「はい!喜んで!」

 

廊下では、沢山の生徒がダンスの申し込みをしているのが目立つ。

 

プリムとパートナーになるのでは?と噂があったセドリックディゴリーは、アリエッタとパートナーになったらしい。まぁ、あり得ない噂だなとは思っていた。

 

ブレーズ「おい、もう申し込んだか?」

ドラコ「…まだだ。僕はそんなにがめつくない。その様子だと、余裕がないみたいじゃないか?」

ブレーズ「まさか…そんなことはない。」

セオドール「僕もまだ…というか、女子の視線が怖い。」

ドラコ「当たり前だろ。僕達は純血一族だぞ?そこらのマグル生まれとは違うんだ。」

セオドール「自分に相応しい人を女子も選んでるってこと?」

ブレーズ「そして僕等はその相応しさを持っているって訳だ。」

ドラコ「だが、プリムはブレーズを選ばない。」

セオドール「ダンスレッスンの時のプリム達って凄く…いや、なんでもない。」

ブレーズの顔を見てセオドールが口を閉じた。

 

 

______________

 

 

 

授業中もヒソヒソとダンスのパートナーの話ばかり聞こえる。…静かに授業も受けられないのか。

 

ブレーズが先生の目を盗んで、後ろの席のプリムにメモを渡した。

 

プリム「…」

しばらくしてからブレーズがプリムの返事を受け取ると、何やらプルプルと身体が震えている。

 

ブレーズ「な…」

ドラコ「どうした?」

ブレーズ「なんでもない…」

 

 

 

 

ブレーズ「プリム!…さっきのどういうことだ」

授業が終わるとすぐ、ブレーズがプリムの元へ駆け寄り話しかけていた。

 

ドラコ「どうしたんだ?あんなに血相変えて」

セオドール「それは…僕は友人の名誉を守るべきだと思うんだ。ドラコ、図書室へ行こう。魔法薬学は常に学ぶことがあるだろう?」

ドラコ「…別に構わないが、なんなんだ?」

セオドールがいいからいいから、とブレーズを置いて図書室へ向かった。

 

 

図書室ではマダムピンスが目を光らせて、監視している。所業の悪い生徒は追い出されるらしい。

 

ドラコ「…」

僕は部分消失術という本を手にした、東洋の解毒剤という本を探したが、なかったので仕方ない…手にした本を机の上に置きセオドールの隣に座った。

 

セオドール「…その本まだ僕達には早いんじゃないかな。」

ドラコ「…”アッシュワインダーの卵の保存方法”?その本も似たようなものじゃないか?」

セオドール「あー…まぁ、先々を考えてね」

ドラコ「なんでアッシュワインダーの卵なんだ?愛の妙薬でも作るつもりか?」

セオドール「…んー、まぁ、使いたくはないけど、万が一の為?」

なるほどな…パートナーが決まらないから薬をもってやろうというわけか。

 

ドラコ「そんなことしなくても、セオドールは大丈夫だ。」

セオドール「僕には家柄と少しの才智しかない。…ドラコとブレーズとは違うんだ。」

ドラコ「何が違うっていうんだ?」

セオドール「ドラコはマルフォイ家だ。それに魔法の才能もある。…箒だってね。ブレーズは容姿が良いし、話し方だって上手い。それに何より2人にはプリムがいる。」

セオドールが本を読む事を辞めずにつらつらと述べる。

 

ドラコ「プリムがなんだっていうんだ?」

セオドール「…僕には心底信頼できるような、そういう人がいない。…ごめん、しんみりしちゃったね。つまりは僕自身にドラコやセオドールみたいに自信が持てないってだけだよ。」

セオドールは乾いた笑顔を見せた。

 

ドラコ「セオドール、お前は頭がいい。だから、他人に心を許すのが怖いのだろう?…信頼っていうのは、妙薬なんかで掴み取れないぞ?」

セオドール「わかってるよそんなこと…でも、ダンスの時だけでいい、偽りでもいいんだ…」

ドラコ「…」

セオドール「なんでも持っている君達にはわからないよ。」

セオドールは静かにまた本を読み進めた。

 

 

ドラコ「…っ、東洋の解毒剤という本を探している。」

図書室を出る前に、マダムピンスに問いかけた。

ピンス「…その本は貸し出し中です。」

ドラコ「誰が?」

ピンス「…プリムクロウリーですね。」

ドラコ「プリム…」

解毒剤の本なんて何に使うんだ?…僕は暇潰しに読むつもりだったのに。

 

______________

 

必要の部屋

 

アリエッタ「ドラコ、あなたってやっぱり頭いいのね。”部分消失術”!これはとても役立つ本だわ。」

ドラコ「そうだな、君が貸してくれた本は表面的なことしか書かれてなかった。」

アリエッタ「ええ…私も頑張って探したのに。でもまぁ、これで…あった!これよこれ…なるほどね、じゃあ…あの本が必要ね。」

ドラコ「なんだ、なにかわかったのか?」

アリエッタ「この本は大体が閉心術のことが記載されてるんだけど、途中から記憶修正のことが書いてあるの。」

ドラコ「へぇ…だから?」

アリエッタ「…プリムと私は忘却呪文をかけられてしまう可能性がある。だから、その対策として記憶修正術について知らないといけない。…けど、まだ詳しく載っている本は出版されていないの。だから自分で探るしかないってこと。…でもドラコがそのひとつを見つけたわけ!天才!流石よドラコ!」

ハグしたいくらい!と腕を広げて迫るアリエッタを避けた。

 

ドラコ「あー…なんで君達に忘却呪文がかけられるって思うんだ?なにか、知ったらいけないことでも知ってしまったか?…例えば、ダンブルドアの実年齢とか?」

アリエッタ「そんなくだらない事でポンポン呪文をかけられてたら、たまったもんじゃないわ。…まぁ、今言えることは…闇の帝王が知ってしまえば…最悪なこと。とってもね。」

アリエッタが真っ直ぐ僕を見つめた。

 

アリエッタ「…あなたまだプリムのこと誘えてないの?」

ドラコ「おい!勝手に心を見るな!…全く」

アリエッタ「これだからマグル生まれは…プリムはこの言葉好きじゃないから気をつけてね。」

ドラコ「…知ってるさ。心は覗くな!僕は…まだ閉心術を習得してない。開心術もな!」

アリエッタ「じゃあ、早く習得しましょう。ドラコはどちらかというと閉心術が学びたいでしょう?私に見透かされるのは心底嫌だものね。」

ドラコ「…ああ、わかってるじゃないか」

アリエッタ「でも、閉心術の方がつらいのよ?大丈夫?」

ドラコ「心を見透かされる方がつらいさ。」

アリエッタ「…じゃあ、心を閉ざすのよ。闇の帝王にも見透かされることがないようにね。…”Legilimens “(開心)」

 

ドラコ「…っ、!」

 

開心術をかけられると、アリエッタが見透かすような生温いものではなく、心を無理矢理こじ開けるように入ってくるのがわかった。精神的に削られる。体力も。…

 

アリエッタ「…心を閉して、見られては駄目よドラコ。」

ドラコ「…ぅぐ、!」

僕の記憶や思い出に、無理矢理こじ開け入ってくるアリエッタ。閉心術はまだ思い通りにいかない。

 



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