俺と虹の のどかな?日々 (レイ1020)
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プロローグ
ラブライブに至っては初めてですので数々の作品を見てくださってる方は不快に思う箇所もあるかもしれませんが何卒、暖かい目で応援してください!
よろしくお願いします!
ピピピピ......。
のどかな朝に、目覚まし時計の音がこだまする音が俺の耳に突き刺さって来た。布団から出たくなかった俺は、顔だけをほんの少しだけ出し、時間を見ながらアラームを止めた。
「今日は休みだし・・・・・・もう少し寝てても・・・・・・」
そのまま俺はまた夢の世界へと旅立っていくのだった。
「こらっ!隆!いつまで寝てんの!さっさと起きなさい!!」
夢の世界に旅立ったのに、そのあとすぐにまた俺は現実世界に連れ戻されていた。布団を剥がされ、まだ冬の寒さが残る春の朝の寒さに俺は身を震わせていた。そんな俺の眠りを覚ましたのは、俺、鈴木
「・・・・・・」
(バサッ)
「いや、なんでまた布団被ってるのっ!?起きなさいったら!!」(バッ)
「あ〜・・・・・・マイ布団〜〜・・・・・・君のことは死んでも離さないって決めてたのに・・・・・・こんな駄目な俺で・・・・・・ごめんな〜」
「何朝からくさい芝居やってるの!!さっさと起きてご飯食べる!休みだからってだらけるのは無しだからね!」
「へ〜い」
我が家恒例の”朝のバトル”を終えた後、俺は眠くて怠い体に鞭打って朝食を摂りにいった。
「全く・・・・・・いつになったら自分で起きれるようになるのよ?もう高二でしょ?そんなだらしなくしてると・・・・・・彼女なんて出来ないぞ♡」
「余計なお世話だし、それにおばさんがそんな可愛らしく言ったって可愛くないよ?」
「おばさんって何よおばさんって!?私まだアラフォーですけど!?」
「おばさんじゃん」
「親に対して辛辣すぎるでしょあなた!?」
朝からギャーギャー騒ぎまくってる母さん。このやり取りももはや定番と言っても過言では無かった。・・・・・・というか、あんまり騒がないで欲しい。さっきから耳がキーンってしてるから・・・・・・。
彼女?なんだそれは?俺は生まれてこの方彼女というものを作ったことはない。作れないのではない!作らなかったのだ!裏を返せばいつでも作れたということだ!なれば今日からでも俺はリア充になれるのだ〜〜〜ハッハッハッハッハッハ・・・・・・はぁ。
「(自分で言ってて情けなくなってくるなこれ・・・・・・)」
「ん?何か言った?」
「言っても人妻の母さんにはわかんないよ・・・・・・」
「どういう意味よ!?」
朝から妙にメンタル的にダメージを受けた俺は、朝食を食べ終わった後、ベランダに出た。軽く風に当たりたいと思ったからだ。
「ふい〜〜〜・・・・・・朝の風は肌に染みる〜〜〜」
「ふふ・・・・・・なんかお爺ちゃんみたいだよ?
「お〜〜、歩夢か。おはよー」
隣のベランダから出て来た声の主の女の子に俺は挨拶した。この子の名前は上原歩夢。俺が住んでるマンションの隣の部屋に住んでいて幼稚園の頃から付き合いのある・・・・・・いわゆる幼馴染ってやつ。歳も一緒で高校も同じ虹ヶ咲学園というとこに通ってる。
「おはよ。眠そうだね?今日も沙織さんに起こされたの?」
「鬼みたいな顔して布団ひっぺ返された」
「あはは・・・・・・それは大変だったね・・・・・・」
なんかかわいそうな人を見るような目で見つめて来た歩夢。やめて!そんな目で俺を見ないで!
「それでさ?今日は何か予定入ってる?」
「予定?もちろん入ってる!」
「え?どっか出かけるの?」
「部屋でゴロゴロタイムを満喫するという大事な予定がある!」
「そんなのを予定にしないで〜!!」
「そんなのってなんだ!俺にとってその時間はまさに・・・・・・至福の時間だ!」
ベランダで髪をかき上げてウィンクを歩夢に見せつけた俺。・・・・・・朝からベランダで何やってるんだろ?俺・・・・・・。
「それ・・・・・・全然かっこよくないよ?とにかくさ!今日一緒にお出かけしよ!買い物に付き合って欲しいの!」
(グサッ)
「・・・・・・今精神的にダメージが追加された。俺のライフはもうーーー」
「そういうのいいから!お願い!行こうよ買い物!」
俺のボケを無視して、両手を合わせてお願いしてくる歩夢。さすがの俺もここまでお願いされていかないのは流石に男としてどうかと思い・・・・・・。
「おう、じゃあ行くか!着替えたらマンションの外で待っててくれ」
「ほんと?ありがとー!じゃあ私もすぐに支度するね!」
というわけで、今日は歩夢と買い物にいくことに決定した。身嗜みを整え、母さんに歩夢と出かける旨を伝えた後、俺と歩夢は今回の買い物地、お台場に向かっていった。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
「結構買ったね〜!」
「ああ、最近お台場ばっか来てる気がするけど、意外と飽きないもんだよな〜」
お台場で買い物を済ませた俺たちは買ったものを手に下げ、ぶらぶらしていた。
「また化粧品買ったのか?歩夢って結構持ってなかったっけ?」
「そうなんだけど、新しいのが出るとつい・・・・・・」
「化粧しても大して歩夢は変わんない気がするけど?」
「そ、そんなことないよ〜!というかそれ女の子に言っていい台詞じゃないよ!?」
「なんで?歩夢は元から顔がいいから化粧なんてしなくても良いだろ?」
「え・・・・・・?」
なんか妙に歩夢の顔が赤くなった気がしたけど、気のせいか?
「も、もう!隆くんったら!褒めたって何も出ないんだからね!」
「・・・・・・なんで怒ってんだよ?」
「知らない!ふんっ!」
そっぽ向きながらそう言って来た歩夢。こういうのはなんだけど・・・・・・こういうところは子どもっぽいよな。
「あ、これ良いかも・・・・・・」
「ん?何が?」
「これこれ。このパスケース・・・・・・良い」
「パスケース?・・・・・・え?お前、こんなの欲しいの?」
そう言いながら、俺は歩夢の視線の先にあったいかにも”ホラー系で異様な雰囲気を醸し出してるパスケース”を指さした。描かれてるのは・・・・・・ゾンビか?
「お前・・・・・・こんなの好きだったのか〜、意外だ」
「違うよ!?違う違う!私が言ってるのはこっちだよ!!この花柄のもの!」
焦りつつも歩夢はそのパスケースではなく、その隣にあるピンクの花柄のパスケースを指さした。
「なんだ〜良かった・・・・・・。歩夢がここ巷で見る”ホラー大好き系女子”になったんじゃないかって思ってヒヤヒヤしたわ・・・・・・」
「そんなのじゃないよ〜!もう・・・・・・隆くん、私がホラーとかお化けとか苦手なの知ってからかってるでしょ?」
「ハテ?ナンノコトデショウカ?」
「カタコトになってる!?」
もう〜っとポカポカ俺のことを叩いてくる歩夢。歩夢とのこのやり取りももはやお決まりみたいになってるんだよな。なんたって歩夢をからかうのが面白すぎていつの日かやめられなくなってたからな。その反応を見るのもまた面白くてついやりたくなるんだよな〜。
「さて、冗談は置いておいて、それ欲しいのか?」
「うん。それでね?できれば・・・・・・隆くんも同じのを買って欲しいの」
「二人でお揃いにしたい的な感じか?」
「うん!・・・・・・嫌かな?」
うおっ!その上目遣いは反則すぎる!!それをやられてしまっては・・・・・・俺は断るという選択肢を失うことになる・・・・・・。とはいえ、別に元から断る気はなかったけどな。花柄だけど、別に問題はないな。
「別に嫌じゃない。分かった、じゃあこれとこれな。ちょっと待ってな」
「え!?どこ行くの?」
「どこ行くって、レジだけど?何?そのままレジを通らずに行って良いの?」
「それ万引きだから!!・・・・・・そうじゃなくて、私も・・・・・・お金出すよ?」
歩夢は徐に財布を取り出そうとした。でも、それを俺は制止した。
「良いって。さっきからかったお詫び。ここは黙って払わせておけって・・・・・・な?」
「・・・・・・ふふ、ありがと、隆くん」
にこやかな笑顔を向けてくる歩夢。ま、このくらいならお安い御用だな。そのまま俺はレジに行き、二つのパスケースを買い歩夢に片方のパスケースを渡した。
「色はピンクで良かったな?じゃあ俺はこの緑で」
「うん!後で一緒につけようね!・・・・・・あれ?なんだろうあれ?」
「何が?・・・・・・あ〜、なんか生配信されてるみたいだな。ほら、大きなモニターにそれが映し出されてる」
「何て書いてある?え〜と・・・・・・スクール・・・・・・アイドル?」
大きな広場の中心にある大きなモニターに映っていた映像は、今流行りのスクールアイドル関係のものだった。うちの高校、虹ヶ咲学園にもそんな部?同好会?があるって話は聞いたことあったけど、ここ最近はそんな話聞いてないな。ともかく、続きを見てみるか。
『皆さん!こんにちは!スクールアイドル【μ's】の高坂穂乃果です!』
『同じくスクールアイドル!【Aqours】の高海千歌です!』
『『今日はスクールアイドルの祭典、【スクールアイドルフェスティバル】のお知らせに来ました!』』
「へ〜、お知らせね〜?」
そこからその二人はその【スクールアイドルフェスティバル】?について軽い説明をした後、二人が所属するグループ・・・・・・μ'sと・・・・・・Aqoursだっけか?その二つのグループが一曲ずつライブを始め出した。そのライブを見た感想としては、歌も踊りも一級品でメンバ一人一人が一体となって一つの作品になってた。何度かスクールアイドルのライブを見たことがあったけど、ここまですごいのは初めて見たな。
「すごい・・・・・・やっぱりμ'sとAqoursは凄いよ・・・・・・」
「ん?歩夢はあの子たち知ってるのか?」
「え!?隆くん知らないの!?μ'sもAqoursも【ラブライブ!】で優勝したことのある有名なスクールアイドルグループだよ?」
「俺、そこまでスクールアイドル興味無いしな〜・・・・・・」
スクールアイドルのことなんてかじった程度しか知らない。もちろんさっき映ってたμ'sもAqoursも知らなかった。
「凄かったな〜・・・・・・私もあんな風に歌って踊れたらな〜」
「なんだ?スクールアイドルやりたいの?」
「前までは、見てるだけで良いかな?って思ってたんだけど、最近は・・・・・・もしかしたら私にも・・・・・・って気持ちがあるかな?でもさ・・・・・・私って歌も踊りもあんな大勢の人の前で披露できる自信がなくて、だから自分の想いにずっとストップかけてたの・・・・・・」
「歩夢・・・・・・」
俯きながらそう答える歩夢はどこか寂しげだった。あ〜、要するにやりたいわけな。でも人前だと緊張しちゃうからできないと・・・・・・そういうことか。
(ペチッ)
「いたっ!なんでいきなりデコピン!?」
「な〜にグダグダ言ってんだよ?やりたきゃやれば良いだろ?幸い虹ヶ咲にはスクールアイドル関係の部活だか同好会だかがあるみたいだし、明日にでも入部しちゃえよ?」
「でも、私・・・・・・」
それでもまだ決心できない様子の歩夢。はぁ〜、しょうがない。お人好しが過ぎるかもしれないけど、歩夢のためだしな。
「それなら俺も一緒に入るよ。スクールアイドル同好会に。もちろんマネージャーとしてな?俺がマネージャーになってお前のことを支えてやるよ。何か辛いことや悩んだことがあったら俺のとこに来い。俺が面倒見るからさ?」
「・・・・・・いいの?隆くんにメリットは無いかもしれないんだよ?」
「メリットならあるさ。スクールアイドルになった歩夢を普段からずっと一番近いとこで見られること!そんで持って、練習中の歩夢のミスを死ぬほど指摘しまくれる事!そしていじれること!そんなメリットがあるんだ何の不満があろうことか!」
「最初のはともかく、最後のはやめてよ〜!!・・・・・・でも、ありがと」
そう言いながらゆっくりと頭を下げて来た歩夢。
「隆くん、私と一緒に夢を追いかけてください!そしてそばで支えてください!お願いします!」
「おう!ドンと任せとけ!」
こうして俺たちはスクールアイドルの道を歩んでいくことに決めたのだった。
最初のこの場面でスクスタのストーリー第一話は終了してますが、基本的にはストーリーに沿っていきます。主人公の性格はだらけてるようで芯は強く人思いの人情熱い人物という設定にしてます。
次回で少しそのことを明らかにしていきたいと思います。
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結成編
入部しようとしたら?
「とはいったものの、そのスクールアイドル同好会ってどこだ?」
「私もわかんないよ・・・・・・虹学は広いし、部活も同好会もたくさんあるから探すのにも苦労しそう・・・・・・」
翌日、俺たちは放課後を使ってここ虹ヶ咲学園に存在するスクールアイドル同好会を探すことにしたんだが、現状どこにその同好会があるのか分かっていなかった。何しろこの虹ヶ咲学園は都内でも有数のマンモス校で規模が大きく、生徒数や部活、同好会の数も他の高校と比べ、かなり多い。あまりの規模なため、たびたび建物内で迷う生徒も少なく無いんだとか。とにかくそんな大きな高校でたった一つの同好会の部室を二人で探すとなるとすごく骨が折れることなんだ。
「歩夢〜、何か部室を探せる能力みたいの持ってないか〜?」
「そんな都合のいい能力なんて持ってるわけないでしょ!?馬鹿なこと言ってないで探すよ!」
「分かったって」
結局何の手掛かりのないまま俺たちはあてもなく校内を彷徨っていた。1時間ぐらい探してもやっぱり部室は見つからなかったため、さすがに今日は帰るか・・・・・・そう切り出そうとした時だった。
「わっ!!」
「・・・・・・っと」
曲がり角を右に曲がろうとした時、ちょうどその進行方向から来た女の子と俺がぶつかってしまった。ぶつかった勢いでその女の子は尻餅をつき、鈍い顔をしていた。
「いっ・・・・・・たたた・・・・・・」
「悪い、大丈夫か?」
「・・・・・・大丈夫じゃないですよ!これからダンスの練習しようとしてたところなのに、尻餅ついて腰が痛くなっちゃったじゃありませんか!かわいいかすみんの腰が痛い痛いって泣いてますぅ〜・・・・・・」
「何言ってんの?頭大丈夫?」
「心配するのそこなんですか!?しかもそれ心配じゃなくてかすみんのことディスってないですか!?」
「・・・・・・?」
「隆くん・・・・・・そんな意味わかんないって顔してもダメだと思うよ?」
さりげなくフォロー?に回ってくれた歩夢。正直助かった。この子の相手は歩夢に任せたほうが良さそうだな。
「ごめんね?隆くんも悪気は無いの。だから今回は多めに見てくれると嬉しいかな?」
「はぁ、まあ今回はこのかわいいかすみんは急いでることもあってあまり時間が取れないので、許すとします。ではこれで、これから”スクールアイドル同好会復活”に向けての練習をしにいきますので」
「「!!」」
今なんて言ったこの子!?今絶対スクールアイドルって言ったよな!?
「スクールアイドル?もしかして同好会の?」
「はい!かすみんはそこの部員ですよ!」
「まじか・・・・・・やったな歩夢!!」
「うん!やったよ隆くん!!」
その場で手を取り合って小躍りする俺と歩夢。周囲の目が俺たちに向いてた気がするけど気にしなかった。
「え〜っと?お二人とも?」
「「あっ」」
我に帰った俺たちは喜びに浸るのもそこそこに、目の前のかすみんちゃんに頭を下げた。
「「本日からスクールアイドル同好会でお世話になります!!」」
––––––––––––––––––––––––––––––––––
「なるほど〜、それで同好会に入りたいと・・・・・・?」
同好会の部室に案内してもらってる間、俺たちはかすみんちゃんに入る動機を聞かれていた。ある程度は省いてざっくりわかりやすく説明したけど何とか納得してもらえた。ちなみに同好会への参加はOKが出た。
「そういうことだ。あ、俺は2年の鈴木隆斗。こっちは2年の上原歩夢だ。よろしく!」
「よろしく!」
「よろしくです!あたしは1年の中須かすみです。気軽に”かすみん”って呼んでくれていいですよ?先に言っておきますけど、決して・・・・・・”かすかす”なんて呼ばないでくださいね?」
「よろしく!かすかす!」
「言ったそばから!?鈴木先輩、話聞いてました!?」
「え?呼ばないでってことは呼んで欲しいって意味じゃなかったの?」
「フリじゃないですから!!お願いですからやめて下さいぃぃ〜〜!!」
「あはは・・・・・・」
校内にかすかす・・・・・・やめてあげよう。かすみちゃんの声が大きくこだました。この子もあれだな・・・・・・面白いな。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
「どうぞ〜!」
「「失礼しま〜す・・・・・・」」
やっとついたスクールアイドル同好会の部室の中は意外と綺麗で、散らかってる様子もなかった。でも、一つだけ疑問に思ったことがあった。
「何で誰もいないんだ?今日は休みか?」
「月曜日って意外に休みになってる部活多いからね。もしかして休みだったかな?」
「・・・・・・いえ、休みじゃありませんよ。現在、今この同好会にいるのはかすみんだけなんです・・・・・・だから今はこれが当たり前なんです」
「は?」「え!?」
ちょっと何言ってるか分かんなかった。部員が一人ってどういうこと?意味がわからん。
「それに、もうじきこの同好会も廃部になってしまうんです。人数が一人しかいない同好会は認められないって生徒会長が・・・・・・言って・・・・・・」
「そんなぁ・・・・・・せっかく見つけたのに・・・・・・」
悲しそうな顔をして俯いてしまった歩夢。でもさ?そんなに悲観的なことでもなくないか?だって・・・・・・。
「それなら今からでも生徒会長室行って直談判すれば良くないか?今は部員が3人になってることだし言えば何とかしてくれるかもよ?」
「はっ!!その手がありましたね!いや〜かすみんともあろうものがこんな簡単なことを忘れていたなんて〜」
「あーはいはい。そうだねー、よっしさっさと行くか歩夢!」
「あ、うん!」
「何で棒読みになってるんですか!?それと二人とも置いて行かないでくださいよ〜!!」
かすみちゃんのツッコミを聞き流して、俺たちは生徒会長室に向かった。今日はもう一波乱ありそうだ・・・・・・。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
「それで・・・・・・用件は何ですか?鈴木隆斗さん、上原歩夢さん、中須かすみさん」
「へ〜、俺たちのこと知ってるんですね?」
「この学校にいる生徒のことは全て把握してます。生徒会長としては当然では?」
生徒会長室についた俺たちは、早速殴りk・・・・・・直談判しに生徒会長の中川菜々と会っていた。
「それで・・・・・・用件は?」
「お願いします!スクールアイドル同好会の廃部の件を取り下げて下さい!」
「それは・・・・・・出来かねますね」
「何でですか!?それは部員がかすみちゃんが一人だったからの話ですよね?でも今は私と隆くんがいます!なので・・・・・・どうかお願いします!」
「・・・・・・」
何か考え込んでる生徒会長。そして何か思いついたのか俺たちに向かってこう言った。
「・・・・・・10人、部員を集めたらこの話は無しにしましょう。それが条件です」
「「10人!?」」
歩夢とかすみちゃんが揃って驚きの声をあげた。
「何で10人なんですか〜!?今までは5人だったのに!せつ菜さん達が戻ってくればそれで済む話じゃないですか〜!!」
「・・・・・・そのせつ菜さんがスクールアイドル同好会を引き裂いた張本人ではないですか。だからこそ10人なんですよ。たとえ誰かしらがやめてしまっても10人いればそこまでも支障は出ない。そのまま活動を続けることが可能ですよ?」
「ぐっ・・・・・・確かにそれはそうですけど・・・・・・でも、今はきっとせつ菜さんや・・・・・・他のみんなも・・・・・・」
ギロリと鋭い視線を生徒会長から向けられたかすみちゃんはすでに泣きそうだった。歩夢ももはやどうしたらいいかすら分かってない状態だった。・・・・・・しょうがない。
「いいですよ?その条件呑みましょう!」
「「「はっ!?」」」
「いや、はっ・・・・・・じゃなくて、条件呑むって言ってるんです。部員10人集めればいいんですよね?そんなの簡単じゃないですか」
「貴方・・・・・・自分が何言ってるのか分かって・・・・・・」
「もちろん分かってますよ?だから言ってるんです。せっかく歩夢と同じ夢観られる場所が見つかったのに、貴女のせいで廃部にされたくありませんからね」
少し好戦的な目で生徒会長を見た俺は静かに微笑を浮かべた。
「では、楽しみにしてて下さい。行くぞ〜?歩夢、かすみちゃん」
「隆くん!?ま、待って〜!」
「せんぱ〜い!!置いて行かないでくださーい!!」
生徒会長に盛大に喧嘩を売った俺は、そのまま生徒会長室を後にした。さて・・・・・・これから忙しくなるな〜。
「鈴木さん・・・・・・あの人はどうしてそこまで・・・・・・?」
自己紹介
鈴木隆斗
虹ヶ咲学園に通う普通科2年の男子。普段は抜けてるとこが多く、よくボケをかまして突っ込まれているが、いざというときには自分が先頭に立って周りのサポートをし、持ち前の頭のキレ具合と情報収集力と豊富な知識でみんなを支えているニジガクのマネージャー。ダンスや作詞作曲の経験があるため、振り付けや曲作りなどは全て彼が引き受けている。
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部員集め
生徒会室を出た後、俺たちは一度部室に戻り部員集めの対策を練っていた。
「まずは、今同好会から離れてる部員さんのとこに行くのが良いんじゃないかな?」
「それが一番ですね〜・・・・・・それにしても、鈴木先輩ったら生徒会長にあんなこと言っちゃってよかったんですか?」
「なにが?言ったろ?部員なんてすぐに集まる。焦ることなんてないよ」
「その先輩の図太い神経が羨ましいです・・・・・・」
その場で出た結論としては、まず同好会に戻って来てくれそうな人たちを説得しに行って、それから新たな部員を探すっていう方針に決まった。
「で?まずは誰を説得に行くんだ?」
「しず子です!かすみんと同じ1年の桜坂しずく。今は掛け持ちしてる演劇部にいると思うので、講堂に向かいましょう!」
「あ、待ってかすみちゃん〜!」
俺たちを置いて、先に講堂に向かって行ったかすみちゃん。先輩を置いて行くなんて・・・・・・後でデコピンの刑だな・・・・・・。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
「うぅ〜・・・・・・痛いぃ〜〜」
「あはは・・・・・・大丈夫?かすみちゃん?」
数分後、無事に講堂についた俺たちは演劇部の練習に区切りがつくまで静かに待っていた。その際に、さっき俺たちを置いて行った罰としてかすみちゃんにはデコピンの刑を執行した。
「どうだ、かすかす?俺の自慢の【デコピンハンマー】は?」
「デコピンにそんな変な名前つけないでください!あと、かすかすって言わないでください!」
「お?まだまだ元気そうだな?それじゃあもう一発・・・・・・」
「もうやめて下さいよ〜!?かすみんのおでこ既に真っ赤ですからね!?」
「二人とも・・・・・・静かにしようよ・・・・・・」
おっと、確かにさっきからこっちに視線を感じる。演劇ってのは演技に全集中力をかけてるからな。気を散らすのは良くないな・・・・・・。反省した俺たちはその後は静かに終わりを待っていた。
「しず子〜!お疲れ〜!!」
「え!?かすみ・・・・・・さん?」
「しず子〜、お願い!今すぐ同好会に戻って来て〜!このままだと廃部になっちゃうよ〜!!お願いお願い〜!!」
「え、いやちょっと落ち着いてかすみさん!」
(ポコッ)
「痛っ!?」
いつまで経っても落ち着かなそうだったかすみちゃんに俺は落ち着けという意味も込めて軽いチョップをかましてやった。
「桜坂さん困ってるだろーが?とにかく一旦落ち着けってかすみちゃん」
「だからかすかすって・・・・・・あ、いや今回はいいのか・・・・・・いやそうじゃなくて!何いきなりかすみんの頭殴ってくれてるんです!?タンコブ出来たらどうするんですか!?」
「殴ってなんかいないけど?ちょっと頭にチョップしただけだけど?」
「結局殴ってるじゃないですか!・・・・・・先輩って女の子に対しても余裕で攻撃的なことして来ますよね・・・・・・」
「俺は男女平等を貫いているからな」
「それ今使う言葉じゃないですよ!・・・・・・はぁ、なんか疲れた・・・・・・」
「ふふ・・・・・・なんかかすみさん楽しそう」
「どこがっ!?」
ついには桜坂さんにまでツッコミを入れたかすみちゃん。やっぱりかすみちゃんって面白いな。っと、時間伸ばすのも何だし、そろそろ本題を・・・・・・。
「桜坂さん・・・・・・でいいのかな?はじめまして、私は上原歩夢、こっちは鈴木隆斗くん。スクールアイドル同好会の部員だよ?」
「え!?かすみさん、部員増やしたの!?」
「先輩たちの方から入るって言って来たの!断る理由もなかったしむしろ大歓迎だったから早速入ってもらったんだ〜!!」
「そういうわけだ。あ、ちなみに俺はマネージャー志望な?」
「そういうわけなのですね。私は桜坂しずくです。今は演劇部ですが、一応スクールアイドル同好会にも所属しています。・・・・・・最近顔は出してないですが・・・・・・」
「へ〜?それは何でだ?」
「それは・・・・・・」
言いにくそうな顔をして、俺から顔を背けた桜坂さん。同好会がバラバラになったことと何か関係があるのか?
「仲が悪かったとか?」
「それは無いですよ〜。むしろ仲は良かったんですけど・・・・・・ある時期から、一人ひとりのスクールアイドル像っていうのが違ってきちゃいまして・・・・・・方向性もバラバラで気持ちもバラバラ。そんなことをずっと続けてきた結果が、今の状況ってことですよ・・・・・・しず子もその一人でした」
「なるほどな。大方同好会が崩壊した原因の一存は自分にもあるって思い込んでて、どんな顔してかすみちゃんと会ったらいいか分かんなくなって顔が出せなかった・・・・・・そんな感じか?」
「・・・・・・すごいですね?ほとんど正解です。ですが・・・・・・理由は他にもあるんです」
他にも・・・・・・という言葉に俺たちは首を傾げた。その他に何か理由があるっていうのか?
「本当は、スクールアイドルの私の姿、というものに自信が持てなくなってしまったというのが原因なんです。最初は楽しそう、面白そうみたいな気持ちで始まって、スクールアイドルの活動をして行くうちにどんどんその魅力に惹かれて行って自分にも少しは自信を持てるようになったんです・・・・・・せつ菜さんのパフォーマンスを見るまでは・・・・・・」
またせつ菜か・・・・・・。本当にその人がすごいのかはよくわからないが、桜坂さんやかすみちゃんがそこまでいうってことは相当すごいんだろう。
「せつ菜さんのパフォーマンスは・・・・・・一言でいえば”完璧”でした。正確無比で素早いステップ、お客さんや私たちにはっきりと自分の力、魅力を見せつけることの出来る表現力、そして、誰も寄せ付けることの出来ないほどの絶対的な歌唱力。それら全てを兼ね揃えたせつ菜さんに私は・・・・・・正直嫉妬しました。だから、それからは自分に足りないものを補うために演劇部にも通うようになり、以前に比べて同好会に顔を出す機会が少なくなりました。そして・・・・・・最近ではほとんどと言ってもいいくらい顔を出してませんでした。・・・・・・ごめんなさい、かすみさん」
「え?・・・・・・う、うん。かすみんも何も知らなかったのに無理に戻そうとして、ごめん・・・・・・」
どうやら完全なすれ違いになってなくて安心したな。つまり桜坂さんは、優木せつ菜のパフォーマンスに圧倒されて、自分には何が足りないかというのを見つめ直すとともに技術の向上を図るためにスクールアイドル同好会から距離をとって演劇部に武者修行に来てたってことか。・・・・・・なるほどな。
「じゃあ、桜坂さんはスクールアイドルのために一度同好会と距離をとってたの?」
「はい。一度自分を見つめ直してみるいい機会だと思いましたので。実際今では技術も向上してきましたし、パフォーマンスも前よりもきっと納得できるものになってると思いますし・・・・・・それに、失ってた自信も何とか取り戻すこともできました」
「そっか。なら同好会に戻ってきなよ。せっかくスクールアイドルの情熱と自信が戻ったんならやらないともったいないって。もう一度戻ってきて、自分の夢を追いかけてみなよ?俺も全力でフォローするからさ?」
「ふふ・・・・・・ありがとうございます。わかりました。私も一緒に皆さんと一緒に夢を目指したいと思います!改めて・・・・・・よろしくお願いします!」
「「「もちろん!!!」」」
こうして、スクールアイドル同好会に桜坂しずくが戻ってきた。これで同好会のスクールアイドルは3人、残り6人だ・・・・・・。
しずくちゃん加入です!基本的に今後は一話ごとにメンバーが加入して行くことになるかもです。場合によっては跨ぐかもしれませんが、その時はよろしくお願いします!
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必要なのは個性?
桜坂さんが同好会に戻ってくることが決まった翌日、帰りのホームルームを終えた俺は部室に向かうため荷物を整理していた。
「隆くーん!」
「お?歩夢?今日は珍しいな俺のクラスに来るなんて。いつもは俺が迎えに行ってたのに・・・・・・」
いつもは俺が歩夢のクラスに迎えに行ってるのに、今回は歩夢の方から俺のクラスに来たことに疑問が浮かんだ俺だった。
「えへへ・・・・・・実は良いニュースが入ったから隆くんに聞かせようって思って!」
「ん?良いニュース?苦手な古典でいい点取ったとか?」
「うっ・・・・・・それは〜・・・・・・違うかな〜あはは・・・・・・」
この顔をしてるってことは違うってことか?じゃあ・・・・・・
「お通じが良くなったとか?」
「・・・・・・!?そ、そんなことでわざわざ隆くんのクラスにまで来るわけないでしょ!?もうっ!!」
「はは、悪い悪い。で?良いニュースってなんだ?」
いつものように歩夢をからかった後、本題を歩夢から聞き出した。
「はぁ・・・・・・実はね?私のクラスにスクールアイドル同好会に入ってくれるかもしれない子がいるの!話してみても良い子だったし、興味ありげにしてたよ?」
「まじか!よし、早速交渉に行こう!」
「うん!行こ!」
荷物を持った俺は、早速歩夢の教室にいる件の子のもとに向かった。せっかくのチャンスだし、絶対に部員に引き込んでみせる!
––––––––––––––––––––––––––––––––––
「それでさ?あたしに話があるって言ってた子はきみ?」
歩夢の教室についた俺は、歩夢の紹介で”その子”に会うことができた。ぱっと見た感じで言うと、今風の女子高生って感じ。言い方を変えればギャルっぽいって感じだ。非常に個性あふれた女の子って感じだな。金色に輝く髪をポニーテールにしていて、顔立ちもスタイルも良く、申し分なかった。
「ああ、そう。俺は鈴木隆斗。同じ2年だから気軽に接してくれて良いよ」
「隆斗か〜・・・・・・じゃあ”リュウ”で!よろしく!あたしは宮下愛、気軽に愛って呼んでくれて良いよ」
「そっか、じゃあ愛で。早速なんだけどさ?さっき歩夢から説明あったかもしれないけど、愛が良ければスクールアイドル同好会に入ってくれない?聞いたけど、いろんな部活の助っ人とかはしてるけど、正式にはどの部活にも入ってないわけなんだろ?」
俺がそう言うと、愛は少し難しい顔をして何かを考え始めた。
「うん、確かにあたしはどの部活にも入ってないよ?あたしってさ?楽しければ別にどの部活でも良かったんだよね。体を動かすことは好きだし、運動も自分で言うのも何だけど得意から。でもさ〜、なんかこう・・・・・・ただ楽しいだけじゃなくて、もっとあたしが今までに体験したことないような刺激的なこととか、緊張感みたいなスリルのある体験を味わえるような部活とか同好会にはまだ出会えてないんだよね〜。だからこうして、どこの部活にも入らないでそんな部活をずっと探してるの」
「なるほどな。それなら問題ないぞ?俺たちの同好会ならきっと愛の言うそのスリル?緊張感?みたいなこともきっと体験できる。もちろん決して楽な同好会じゃない。スクールアイドルっていうのは、生半可な練習じゃまともなパフォーマンスはできないし、人前で歌うことさえできない。だからこそ、練習からすごく厳しいこともあるかもしれない。だが、それでもそこまでしてもやるほどの価値がスクールアイドルにはあるって思ってる。愛も一度やってみれば、やみつきになるかも知れないぞ?どうだ?やってみないか?」
俺がさっき考えた説得の言葉を聞いた愛は、さっきまでの難しい顔から一転して、満面の笑みを見せた。
「へ〜!やみつきか〜!良いじゃんそれ!わかった、今はまだ楽しさとか分かんないけど、やって行くうちにわかるっていうなら・・・・・・愛さんも、その同好会に入る!」
「ほんとに!?やったー!」
どうやら交渉は成立みたいだな。よし!これで後は6に・・・・・・。
「あ、それとなんだけどさ?もう一人紹介したい子がいるんだけど、良い?」
「「紹介?」」
「そう!ちょっと待ってて〜!」
愛はそう言い残すと、教室を出てどこかに向かって行った。そして数分後・・・・・・愛はある女子生徒の手を引いて戻ってきた。リボンの色が”黄色”なことから、この子は1年生だということがわかるな。
「お待たせー!この子が紹介したい子の、天王寺璃奈。1年生だよ」
「はぁ・・・・・・えっと、それはわかったんだけど〜・・・・・・愛ちゃん、その”ボード”は何かな?」
歩夢が指さしたのは、天王寺さんが顔の前に掲げて顔を隠している絵描きボードだ。それには天王寺さん?と思わしき人物が描かれているが、これは一体?
「もしかして・・・・・・ウケ狙ってるのか?」
「ち、違う・・・・・・そういうわけじゃ・・・・・・無い」
「あはは!りなりーは訳あって”これ”が無いとまともに相手を見て喋ることが出来ないんよ。だから基本的にはりなりーとはいつもこの状態で話してもらうかな?それでさ?このりなりーも部員として同好会に入れてもらえない?」
「もちろんそれは大歓迎!そういう個性がある子もまた新しくて良い!必要なのはその子にしか無い個性を出すことだからな。だが・・・・・・天王寺さんはどう思ってる?別に強制はしないから入りたくなかったら断っても良いからな?」
今は部員を集めてる時だってのに何言ってるんだって話だけど、さすがに入りたくも無い子に無理やり入らせるのはかわいそうだと思ったから、聞いてみることにした。
「ここに来る途中に、愛さんから聞いた。わたしは、愛さんが入るならやってみたい。璃奈ちゃんボード【むん!】」
「そっか、ならよろしくな。俺は鈴木隆斗」
「私は上原歩夢だよ。よろしくね?え〜っと・・・・・・」
「璃奈でいい・・・・・・」
「よろしく、璃奈ちゃん!」「よろしくな!璃奈ちゃん!」
こうして2人の新たな仲間、愛と璃奈が部員に加わった。残り・・・・・・5人。
愛さんとりなりーはほとんど一緒に仲間入りしたので一つにまとめさせてもらいました。
主人公の隆斗は、基本的にはいろんな人をからかったりいじったりするお調子者な一面が多いですが、今回や前回のしずくちゃんの時のような場面でははっきりと自分の想いを相手に伝え、多少強引にも相手の心を開こうとする真面目な一面も出します。こうしたギャップもまた良いんじゃ無いでしょうか?
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何のため?誰のために?
「・・・・・・はぁ〜、またあの視線を感じる・・・・・・マジでいい加減にしてほしい・・・・・・」
俺がその視線を感じるようになったのは、愛と璃奈ちゃんを同好会に加えた翌日からだった。俺がどこかに移動するたびにまるで後をつけてくるかのように俺に視線をぶつけてくるんだ。向こうは気がついてないと思ってるんだろうけど、俺には思いっきりばれてるっての。
「・・・・・・しかも、まさかつけてるのが”あの人”だとはな〜・・・・・・」
以前偶然にも後をつけてくるその人物をチラッとだが目撃することが出来た。その時に俺はその正体を知った。俺も後をつけてる人物があの人だとわかった時は正直驚いたが、理由は何となくわかってた。だからこそ、そろそろ腹割って話したいと思ってたんだよな。
「もう良い加減出てきたらどうです〜?”生徒会長”〜」
「・・・・・・!?」
後ろの曲がり角から反応があった。やっぱりバレてないと思ってたんだな〜、もう一度言っておくか・・・・・・。
「一人の生徒をずっーとストーカーしてた生徒会長さ〜ん?さっさと出てきてくださーい!」
「!!?わ、わかりましたから!ですからそんな大きな声で叫ばないでください!」
「お、出てきた出てきた」
ようやく向こうも観念したのか、角からゆっくりと姿を現した。そう、俺をずっと尾行してたのはこの学園の生徒会長、中川菜々だった。
「・・・・・・気付いていたんですね」
「ああ、でもまさか生徒会長がストーカーとは思いませんでしたけどね〜?」
「す、ストーカーではありません!!」
「じゃあなんです?」
「それは・・・・・・か、観察です!貴方のことを観察してました!」
うわ〜、すっげー顔赤くなってる。絶対嘘だよなこれ・・・・・・まあでも、ここはそういうことにしておくか。
「観察・・・・・・ね〜?聞くけどなにを観察してたんです?」
「貴方はここ最近、スクールアイドル同好会の部員を着々と集めていると聞きましたので・・・・・・こんな短期間のうちに5人も集められるなど、おかしいと思いましたので仕方なく私直々に観察することにしたのです。貴方がどんなやり方で部員を集めているのかを」
「へ〜?生徒会長って案外暇なんですね?」
「暇ではありません!現在も書類整理などの仕事なども残っています!そんな中でも、”仕方なく”私直々にきてるんですからむしろ感謝してもらいたいくらいです!」
「だったら誰かに頼めば済むでしょうに・・・・・・あれ?もしかして意外と・・・・・・脳の回転が遅いんですか?」
「遠回しにバカと言っているようなものですよ今の発言は!?・・・・・・知り合いの人たちは用事があるからと断られましたよ・・・・・・」
全く・・・・・・と腕を組みながらそう言う生徒会長。だったらこんなことするなよ・・・・・・って言ってやりたい。そもそも、人を尾けてくれって言われたら誰でも断りそうだけどな。
「で?何かわかったんですか俺のことは?少なくとも俺は真面目に勧誘をしてるつもりですけどね?」
「真面目・・・・・・ですか。具体的にどのようにして勧誘をしてるのですか?」
真面目と言った後、一瞬間があったのが気になったが、気にせずに話した。
「簡単な話です。スクールアイドルに興味ないか〜って聞いてみて興味ないって言ったらそれで終わり、あるって言ったら入らないかって説得する。それだけです」
「・・・・・・?本当にそれだけですか?何か脅しみたいな事も言ってたりは・・・・・・」
「俺を何だと思ってるんですか・・・・・・。勘違いしないでほしいけど、さすがに嫌がってたりやる気のない奴を入れたりなんかしてないですよ。あくまで本人の意思を尊重したいので。俺が基準としてるのはスクールアイドルに興味があるのかどうかと、スクールアイドルをやる上で必要な覚悟を持っているかどうかです。とはいえ、基本的に前者の気持ちがあれば入れるようにはしてます。覚悟っていうのは追々時間をかけてゆっくりと決めていければいいですからね。そんなことを今までやってきた結果、今は5人に増えているのが現実です。・・・・・・これが俺の勧誘の仕方ですけど?」
「・・・・・・なるほど、ですが、貴方はなぜそこまでするのですか?貴方はスクールアイドルではないでしょう?」
納得した様子だったが、今度は俺への話へシフトした。なぜそこまでするか・・・・・・か。
「深い意味はないですね。強いて言うなら、歩夢のため・・・・・・ですかね?」
「上原さんの?」
「ええ、あいつって元から何処か消極的で自分から何かやりたいって言ったことなかったんですよ。いつも受け身でやりたい事も本人ですら見つけられてない状態で、見てるこっちもどこか心配になるくらいでした。そんな時にスクールアイドルにであったんです。歩夢が初めてスクールアイドルという自分の夢を追いかけたいと言ってきて、俺もそれをサポートするって決めたんです。そして、せっかく歩夢が見つけた自分の夢を追いかけられる場所と仲間をつぶさせるわけにはいかないって、自分で思っちゃったんですよ。だからこうして、貴女の条件の部員10人を目指そうと頑張ってるわけですよ」
「・・・・・・」
「まぁ、もちろん他のメンバーのサポートもしっかりやって行くつもりですけどね。そのためのマネージャーだし」
最後は少し笑いながら返した俺。少しくらい話しちゃったからな、これくらいは許してくれるだろう。
「ふふ、どうやら私は、少し貴方のことを誤解していたのかも知れませんね」
「どう誤解してたのか分かんないですけど、少なくても会長が思ってるような男じゃないですよ?」
「ええ、そのようですね」
「俺は女の子に不潔な行為をするよりも、いじったりからかったりする方が好きですし?」
「そうなの・・・・・・え!?」
納得しかけた会長が途端に間抜けな顔に変貌を遂げた。
「中でも歩夢とかすみちゃんは特に面白いんですよ!俺が絡めば絡むほど面白い反応してくれるし、毎日してても飽きないんですよ!」
「〜〜〜!?あ、貴方は一体何を!?」
「あ、いっそのことメンバー全員に絡んで行ってその人独特の反応見るのも良いかもな・・・・・・。マネージャー業だけじゃつまんないし、それも俺のやりたい事リストに入れとくか・・・・・・」
「・・・・・・」
もはや気味悪いと言いたげな顔をしながら俺をのぞいていた会長だったが、俺はそのことに気がつかなかった。
「(本当にこの人に任せていいのでしょうか・・・・・・?)」
俺の新たな一面を知った会長は、不安の思いを抱えることになるのだった。
少しストーリーから外れましたが、次からはまたストーリーに戻ります。
書いていて思ったんですが、こうして見ると隆斗は真面目な部分があると共に非常にドSな部分があるってことがよくわかりましたね。
今後の隆斗とニジガクメンバーとの関わりに注目です!
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集まるメンバー
「で?今はどこに向かおうとしてるわけだ?」
生徒会長と思わぬ邂逅を果たした翌日、移動授業から教室に戻ってる際にかすみちゃんと桜坂さんに出会し、なぜかそのまま手を引かれたまま何処かに連行されていた。今は昼休みだから多少の時間付き合うなら問題はないが・・・・・・。
「元メンバーの近江彼方先輩のところです!先輩は基本的に保健室で寝てることが多いので今から保健室に向かっています!」
「・・・・・・サボりか?」
「先輩になんてこと言ってるんですか!?彼方先輩は授業以外の時は保健室で仮眠を取ってる事が多いだけです!何でも特待生だから夜中まで勉強を頑張っているからだとか・・・・・・」
「特待生?」
「はい、彼方さんは現在妹の遥さんと二人きりで生活してるらしくて、出費を抑えて生活費を少しでも確保するために特待生になったらしいです」
「なるほどな〜」
この高校ってそんなのあったんだな。全然知らなかった・・・・・・。とはいえ、元メンバーなら戻ってきてくれる可能性も充分にあるな。
「なら早く行くか。早くしないと昼休み終わるし」
「「はい!」」
俺は引かれていた手を離してもらい、少し急ぎ目に保健室に向かった。保健室に行くなんて初めてかもな・・・・・・。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
「おはようございます。彼方さん、そして久しぶりですね?」
「ん〜〜?お?お〜しずくちゃんー?おひさだね〜。それで、何かご用かなー?」
かすみちゃんと桜坂さんが言ってた通り、ほんとに保健室で寝てたよこの人・・・・・・。保健室ってそんなことのために利用して良いとこだっけか?
「彼方せんぱ〜い!!お願いします!同好会に戻ってきてくださーい!このままだと廃部にされちゃいますよ〜!!」
「落ち着け!保健室なんだから騒がしくするな!」
(ポコッ)
「痛いっ!だからいちいち殴らなくてもいいじゃないですか〜!この乱暴男!」
「何だ?もう一発くらいたいか?」(スッ・・・・・・)
「すみません!もう黙ります!」
「分かればいい。・・・・・・すみませんね?うるさくしちゃって・・・・・・えっと、初めまして、俺は2年の鈴木隆斗って言います。この同好会の部員ですが、一応マネージャーを志望してます」
うるさくした(ほとんどこの
「お〜、とうとう同好会にも男の子が入ったか〜これは春が訪れそう〜〜。あ、あたしは近江彼方ちゃん。一応3年生だよ〜。それで、何かご用〜?」
「単刀直入に言いますね?今すぐ同好会に戻ってきてください。かすみちゃんも言ってたようにこのままだと廃部にされかねないんですよ。だから・・・・・・お願いできませんか?」
「ん〜・・・・・・彼方ちゃんがいない間にそんなことになってたんだね〜。ちょっとショックだな〜・・・・・・でも、今はちょ〜っと厳しいんだよね〜?」
「え!?どうしてですか彼方さん!?」
桜坂さんまでここが保健室だってことを忘れて近江さんに詰め寄っていた。
「テストの方が厳しいんだよ〜。特に理数系のテストは彼方ちゃん苦手で〜・・・・・・中間テストもいい点取れなかったし、そのせいで成績が落ちちゃったんだよね〜・・・・・・次また悪い点とったら特待生じゃなくなっちゃうかも知れないんだ〜、だから今は戻ることはできないかも〜・・・・・・」
「「そんなぁ〜・・・・・・」」
近江さんの発言に落胆の声が漏れ出たかすみちゃんと桜坂さん。だが、俺には考えがあった。
「それなら問題ないです。俺って理数系とってますし、新たに入った愛も璃奈ちゃんも理数系ですので、教えられますよ。それなら戻ってきても勉強の方は問題ないんじゃありません?」
「お〜!ないすあいでぃあ〜!それなら、問題ないかな〜・・・・・・分かったよ〜、彼方ちゃんも同好会が廃部なんて嫌だし、戻ることにするよ〜」
「っ!!本当ですか!ありがとうございます!」
「彼方せんぱ〜い!ありがと〜〜〜!!」
二人は近江さんに抱きつきながらそう叫んだ。だから叫ぶなってのに・・・・・・まぁ、今回は許すか。その微笑ましい光景に俺の口角も自然と吊り上がっていた。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
「おーいみんな〜!近江さんが戻ってきた・・・・・・ぞ?」
俺の語尾が少しおかしくなったのは、同好会の部室になぜか知らない人がいたからだ。赤い髪を三つ編みにして肩に下げてる感じが印象的で、そのスタイルも容姿も素晴らしいの一言だった。・・・・・・何なんだこの人?
「あれ?貴方は?」
「え?いや、俺は・・・・・・」
「あ〜〜!!エマせんぱーい!!戻ってきてたんですね〜!!」
「「「「・・・・・・エマ?」」」」
俺、歩夢、愛、璃奈ちゃんの声がハモった。どうやらこの人を知らないのはもともとこの同好会に入ってなかったメンバーだけみたいだな。かすみちゃんも桜坂さんも近江さんもどうやら知ってるみたいだし。ということはこの人は・・・・・・。
「かすかす〜、この人は?」
「かすかすって言わないでください愛先輩!この人は元メンバーのエマ先輩です。最近ずっと顔を出してくれなくって心配してたんですけど・・・・・・エマ先輩!今までどこに行ってたんですか!同好会、抜けちゃったのかと思ったじゃないですか〜!ぷんぷん!」
「何処って・・・・・・スイスにしばらく帰るって置き手紙置いておいたよね?机の上に置いておいたはずだから見れなかったってことはないと思うけど?
何言ってるの?と言いたげにエマさんはかすみちゃんの方を向いた。手紙という単語にかすみちゃんは思い当たる節があるのか、顔を伏せて何かを思い出していた。
「えっ・・・・・・あ・・・・・・あの手紙ってエマ先輩のだったんですね。何処かの部からの怪文書だと思ってました・・・・・・」
「いや・・・・・・置き手紙と怪文書の区別くらいつくだろ・・・・・・。お前やっぱ、”バカすみん”何じゃねーか?」
「そんなあだ名つけないでくださいよ〜!!・・・・・・はぁ、つまりかすみんの早とちりだったってことですか?」
「同好会を抜けるわけなんてないでしょ?というわけでエマ・ヴェルデ、今日からまた同好会に復帰します!よろしくねみんな!」
おお、なんか訳もわからんうちに話が成立しちゃったな。でも、とりあえずメンバーが戻ってきてくれたんなら心強いことこの上無い。これで7人だな・・・・・・。
「ところで、見たところ新しい子たちもいるみたいだし私のことも自己紹介しておくね?私はエマ・ヴェルデ。3年生だよ。これからよろしくね!」
「よろしくお願いします!私は上原歩夢です!」
「エマちゃん、だね!よろしく〜!あたし、宮下愛!」
「天王寺・・・・・・璃奈。よろしく」
「うん、よろしく。あとは・・・・・・」
「ああ、俺は鈴木隆斗です。スクールアイドル同好会なのに何で男がいるのって話なら安心してください。俺はマネージャー志望ですので」
「そうだったんだね。よろしく、隆斗くん!」
いきなり名前呼び・・・・・・結構フレンドリーな先輩だな。まぁ、こういう方が付き合いやすいけどな。
「ともかくこれで残り3人だな・・・・・・。後戻ってきてないのは・・・・・・優木せつ菜だけか」
「そうですが、せつ菜さん・・・・・・同好会で活動する時以外で会ったことないんですよ。なので、手がかりもあまり無いので・・・・・・」
「そうか・・・・・・」
ここに来て、少し部員集めに暗雲が立ち込めてきそうだった・・・・・・。
エマさん、彼方さん加入です!!残るはせっつーと果林さんですね!早く加入させたい!
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理想のスクールアイドル
「居場所がわからない以上、優木せつ菜に関しては後回しの方が良さそうだな」
「うん、そうだね・・・・・・。でもそうなると、後一人誰かを勧誘しないといけないって事だよね?」
「優木せつ菜も戻ってくる保証は無いし、保険をかけて2人くらいは候補を用意しておきたいな・・・・・・」
俺たちは一旦優木せつ菜に関しては保留という形にすることに決め、他のメンバー集めに焦点を置くことにした。だが、入ってくれそうな奴には大方話を聞いてみたし、そして断られたため、正直これまで通りに事が運ぶとは思わなかった。ここにきて難局到来・・・・・・って感じだな。
「あ、私一人興味ありそうな子知ってるよ?せっかくだし、その子にも話を聞きに行ってみない?」
「ほんとですか!?それじゃあ早速その人のとこに向かいましょう!善は急げです!」
「だな。エマさん、早速その人のとこに案内してください」
「うん!分かった!」
エマさんのおかげで、どうやら早くも難局を突破できそうな状況になった。もちろんその人が入ってくれる保証はないが、可能性はある。それならその可能性にかける。もしだめならその時はその時でまた考えればいい。とにかく今はその人を説得することだけに集中することにしよう。
そのまま俺たちはエマさんと共に、そのエマさんの知り合いの人のもとに向かうのだった。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
「・・・・・・なるほどね。それで私にそのスクールアイドル同好会に加わって欲しいってわけね?」
「うん、どうかな果林ちゃん?きっと入れば楽しいと思うよ?」
ん〜、と少し困惑に似た顔をしながら話を聞いていた果林と言う人。俺たちが来ていたのは食堂の一角の休憩施設だ。そしてそこにいたのはまるでモデル!?とでも思えるかのようなルックスと美貌を持ち合わせた、一言で言えば・・・・・・セクシー系な人がそこにはいた。リボンが緑色なことから”3年生”だと言うのがわかる。
「果林ちゃんって読者モデルもやってるし、ダンスもやってたでしょ?スクールアイドル同好会に入ればきっとそのスタイルとダンスの実力でもっといろんな人たちを虜に出来ちゃうかもよ?」
「そうですよ!果林先輩・・・・・・でしたっけ?かすみんだってこの可愛い顔と衣装とスタイルでいろんな人をかすみんの虜にしてきたんですから!」
「へ〜、ちなみに聞くがそれは誰のことだ?」
「え!?鈴木先輩・・・・・・かすみんにずっと虜にされてた訳じゃなかったんですか?よくかすみんに絡んでくるじゃ無いですか?」
「そう見えたんなら一度眼科に行ってこい」
「ひどい!?じゃあいつも絡んでくるのは何なんですか!?」
「反応見て楽しんでるだけ。かすかすの反応面白いし」
「人で遊ばないでください〜!あとかすかすは禁止ですってば〜!」
暴れてるかすみちゃんを頭を掴んで押さえつつ、俺は果林さんに話を振った。
「別に無理に入らなくてもいいですよ?嫌な人に入らせるようなひどいことはしませんので。ただ、何か自分に新たな刺激を求めたいんなら入ることを勧めますけどね?」
「刺激・・・・・・ね?」
「モデル仕事やただのダンスをやるよりももっと楽しくて燃えるような体験もできるかも知れないですし、興味があるんなら・・・・・・どうですか?一緒にやってみませんか?もっとも、俺の場合はその刺激だとか燃えるような体験ってのがどんなのかよくわかんないんですけどね〜ハッハッハ〜!」
「・・・・・・それは笑えることなのかしら?でも、ほんとに私でいいの?私あまりフリフリの衣装とか合わないと思うし、グループ活動も苦手だから、あまり関わる気もないわよ?」
私はこう言う人間だと言うことを誇示するかのように言った果林さん。確かに、今までモデルだとかそう言う仕事をしてれば自然とそう言う考えになるのもわかる。モデルって基本的に一人で撮影をするからなぁ。衣装に関しては・・・・・・うん、このスタイルはフリフリと言うよりも露出がある衣装の方がいい気がする・・・・・・。
「隆くん・・・・・・今何か変なこと考えてなかった?」
「変なこと?”歩夢の寝癖が直りづらいのは生まれつきであって永遠に直らない”、みたいなことか?」
「そのことじゃないよ!それに寝癖だって今は前よりも直りやすくは・・・・・・なってる・・・・・・はず?」
疑問形になってる時点で嘘だって言ってる証拠じゃねーか・・・・・・。相変わらず、寝癖直しには苦労してるんだな。
「話それちゃったな・・・・・・。別にそれはそれでいいんじゃないですか?それが果林さんの個性なんですから。自分を騙して受け身の状態で活動してもらうよりも、ありのままの状態で自由に活動して貰った方が果林さん自身も俺たちみんなも楽しくなりますしね。あ、いっそのことソロでデビューしてみるとかどうです?スクールアイドルは一人でもできるって聞いたことありますし、果林さんみたいな人あまりいないんでいい線行くかも知れないですよ?」
「え!?でもそれだと、部としてまとまりが・・・・・・」
「言葉が足りなかったな。正確には、同好会としてはまとめるつもりだけど、それぞれが自分の理想とするスクールアイドルを目指す!って言う同好会の決まりみたいなことを言ってる訳なんだ。目指す場所は違うけど、お互いに助け合ってそれぞれが手を取り合ってそれぞれ夢に向かって歩んでいく。そうすれば、前みたいに方向性の違いのせいでバラバラになることもないだろ?だから
ソロでのスクールアイドル。これは少し前に考えついたことだ。かすみちゃんの話で同好会は一度、理想のスクールアイドル像をお互いが違った見方をしていたせいですれ違いが起こりバラバラになったことを聞いた時、すでに俺はこの考えに達していた。何も全員が全員同じ夢を追いかけなくてもいい。それぞれが追いかけたい夢があるんだったらそれを追いかけさせればいい。でもそれをするんだったらグループでの活動はなるべく控えないといけない点もあったため、出た答えが”ソロ活動”だった。これならば全員が夢を追いかける事ができる。何にも縛られる事なく自由に楽しく追いかける事ができるんだ。とは言え、これは俺、独断で考えついた事だから正直みんなが賛成してくれるかどうか不安だったが、それはどうやら杞憂に終わりそうだった。
「なるほど〜、彼方ちゃんはそれでいいと思うよ〜?」
「ソロ活動か〜、いいね!ソロでみんな揃って始めよーう!”ソロ”だけにね!」
「わたしも・・・・・・その方がやりやすいかも?」
「かすみんはソロでも可愛いですからね〜!ぐっふっふ〜・・・・・・同好会で一番になるのはかすみんですよ〜?」
「ソロというのはやったことありませんが、何事もチャレンジですよね!私も賛成です!」
「何だか面白そう!うん、私も賛成だよ」
「一人で歌ったり踊ったりするのは緊張するけど・・・・・・でも、私はやってみたい!」
7人全員が賛成の意を示してくれた。よかった〜、これで拒否られてたら盛大に泣くとこだったよ俺・・・・・・。
「というわけで、スクールアイドル同好会はそれぞれの夢を目指すためにソロで活動するって言う主旨になりましたけど、どうです果林さん?」
「ふふっ・・・・・・いいわね、面白そう。分かったわ、この朝香果林、スクールアイドル同好会に入って理想のスクールアイドルを目指すわ」
「「「「「「「やったぁーー!!!」」」」」」」
7人の声が響き渡った。・・・・・・後で食堂の人には謝っておくか。ともかく、これであと2人だ!最後までやり切って見せますか!
果林さん加入です。いよいよラストはあの人です!
多分ですが次回でメンバー集めは終了します!
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新生虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会結成!
「・・・・・・で?俺に何か用ですか?生徒会長」
果林さんが同好会に入った翌日、俺は会長に呼び出しを受けた為、他のみんなに一言言っておき、生徒会長室まで来ていた。
「・・・・・・部員が後少しで集まりそうだと聞きましたので、少し話をしておきたいと思いましたので・・・・・・」
「・・・・・・相変わらず貴女の情報網は凄いですね?そんなにスクールアイドル同好会のことが心配ですか?」
「べ、別に心配してるわけでは・・・・・・・・・・・・いえ、嘘をつくのは良くありませんね。それに、もう嘘をつく理由も無くなりましたから・・・・・・」
「・・・・・・」
俺が沈黙を貫く中、会長は三つ編みにしていた髪をゆっくりと解き、かけていた眼鏡を外した。もう今俺にいる目の前の人はさっきまでいた”生徒会長の中川奈々”では無く、全くの別人となっていた・・・・・・さらさらの黒い髪を背中まで伸ばし、クリっとした眼がまた印象的で可愛らしい人へ・・・・・・。おそらくだが、俺の予想だとこの人が・・・・・・。
「やっぱり・・・・・・貴女が”優木せつ菜”だったんですね?」
「・・・・・・気付いていたんですね。はい、私こそスクールアイドル同好会の優木せつ菜です。今まで嘘をついていてごめんなさい・・・・・・」
「確証はなかったですけどね。ただ、会長があまりにも同好会について詳しすぎるし、それに部活以外で会ったことがなかったってのも引っかかってましたので、もしかしたらって思ってたんですけど・・・・・・まさかほんとに会長が優木せつ菜だとはな・・・・・・」
「驚かせてしまってすいません。あ、それとそんなに畏まらなくても良いですよ?私と貴方は同い年ですし、気軽に接して貰って構いません」
「そっか、じゃあそうするな。それで
「!?は、はい!何でしょうか?」
俺のいきなりの名前呼びにびっくりしたのか、上擦った声で返してきたせつ菜。そっちが気軽にって言ってきたのにそんなに驚くことないだろうに・・・・・・。
「・・・・・・何で同好会を潰そうとした?お前の部だろ?」
さっきまでより少し声音を低くし、真剣味を伝えるようにしながらせつ菜に問質した。いくら生徒会長という立場であったとしても、何の理由もなく同好会を廃部にしようだなんて思わないはず。だからこそ俺は当人のせつ菜の口から聞きたかった。何でこのような行動に出たのかを。せつ菜も俺の雰囲気の変化に気づいたのか、顔を強張らせつつも冷静に答えてくれた。
「もちろん、私だって自分の同好会を潰したいだなんて本気では思ってません。ですが・・・・・・また、あの時のように私のせいで同好会がバラバラになってしまうんじゃないかって思ってしまうと・・・・・・怖くて・・・・・・」
「・・・・・・」
「それで、もし同好会のメンバーを10人集めてしまうようなスクールアイドルに情熱を持った人がいてくれればきっと・・・・・・今度は大丈夫なんじゃないかと思っていまして・・・・・・私は今まで自分の理想を皆さんに押し付けてしまっていましたから、皆さんはきっと・・・・・・私のことを許してないのではないですかね?」
それを話した途端に悲しい顔をして俯くせつ菜。あぁ、なるほどな。せつ菜もせつ菜で責任感じてたんだな・・・・・・。
「はぁ・・・・・・そんなわけねーだろ?せつ菜が誰よりもスクールアイドルに熱中してること、誰よりもスクールアイドルのために努力をしてること、そして誰よりもスクールアイドルが好きなことはみんな分かってる。一度はバラバラになったみたいだが、今の同好会ならきっと大丈夫だ。それに、お前だって前々から思ってたんだろ?やり直したい、もう一度夢を追いかけたいって・・・・・・」
「・・・・・・ふふ、本当に貴方は時々・・・・・・心が読まれてるのかと錯覚するほど鋭い感性を発揮しますね?」
「せつ菜の思考は単純だから読みやすいからな〜」
「た、単純!?私ってそんなに単純ですか!?」
「ん?大方スクールアイドルのことしか考えてないんじゃないのか?」
「そ、それは確かに否定できませんが・・・・・・でもだからと言ってそれ以外のことを全く考えていないというわけではないですよ!?仮にも生徒会長ですし・・・・・・」
「仮にもって・・・・・・なんかこの生徒会長にこの高校任せるの不安なんですけど〜?」
「〜〜〜!!もう、虐めないでくださいよ
顔を紅潮させながら俺の名前を叫んだせつ菜。さすがの俺もいきなりの名前呼びには動揺した。こんな美少女に面と向かって名前呼びなんてされたら世の男どもは誰でもそうなる。だから・・・・・・俺は悪くないよな?
「というか、何で俺にだけこのこと話したんだよ?部室でみんなのところで話せばよかっただろうに?」
「いえ・・・・・・話そうとは思ったんですけどいざ話すとなると・・・・・・緊張してしまいまして・・・・・・」
「それで俺に先に話して、一緒にみんなに説明をしてもらいたいってか?もしそうなら何で俺なんだよ?他にも言える奴はいるだろ?」
「いえ、隆斗さんだからこそです。貴方はスクールアイドル同好会の部員集めに一番尽力してくれ、そして部の方向性を定めてくれた人でもありますから。だからこそ私のことを話すなら隆斗さんにまず、と思っていました」
・・・・・・そこまで分かってんのかよ。とはいえ、別に俺はそこまでの自覚はない。俺は単にこの同好会をつぶさせない為に尽力しただけであって、スクールアイドルにすごい興味があるってわけでもない。俺はただ、みんなのことを応援したいだけだ。・・・・・・まぁ、この先もしかしたら俺もスクールアイドルに興味が出てくるのかも知れないが、今はまだ想像できないな。でも、それでも同好会が潰れないのであればそれはそれでよかった。
「そっか、なら話も終わったことだし、早いとこ部室いくぞ〜?みんなにも話すんだろ?」
「は、はい!すぐに行きましょう!」
話が済んだところで、俺たちは生徒会長室を出て同好会の部室に向かった。さて・・・・・・生徒会長が優木せつ菜だと知ったときの反応はどうなるかな〜?
––––––––––––––––––––––––––––––––––
部室に生徒会長もとい優木せつ菜を連れてきた時、案の定みんなからは心底驚かれた。驚きは色々あるとは思うが、一番はやっぱり生徒会長が優木せつ菜だったという事実だと思う。結局その後、俺とせつ菜がこうなった経緯とせつ菜の今回の行動についてのことを詳しくみんなに説明したことでようやくみんなは納得してくれた。
「せつ菜せんぱ〜い!戻ってきてくれてありがとうございま〜す!!」
「はい、ですが本当にいいのですか?もしかしたら私、またあの時みたいに気持ちが昂って爆発してしまうかも・・・・・・」
(ペチッ)
「痛っ!?デコピン!?」
「ネガティブになるなって。そういうとこがお前の悪い癖だぞ〜?大丈夫だって、何かあれば俺がフォローするし、その気持ちも受け止めてやるからさ。だからお前は何も気にすることなくスクールアイドルやってろって!なっ?」
ニカッと笑いながら、せつ菜に優しく伝えた。
「隆斗さん・・・・・・ありがとうございます!私はもう迷いません!私はもう一度このスクールアイドル同好会で私の理想のスクールアイドルになるという夢を追いかけたいと思います!なので皆さん!よろしくお願いします!」
部室内に拍手が起こった。どうやらみんな賛成みたいだな。よ〜っし、あとは一人・・・・・・ってあれ?そういえば?
「せつ菜、10人集めろって言ってたけど、それってスクールアイドルを?それとも部員をか?」
「?部員を集めろとお伝えしましたが?」
「そうだよな・・・・・・となると、俺も一応部員だからこれで10人揃ったってことになるよな?」
俺は一応確認のため、みんなに聞いてみることにした。
「そうだけど・・・・・・え!?今まで隆くん気付いてなかったの?」
「せんぱ〜い?もしかして〜知らなかったんですか〜?かすみんをいつもバカ扱いしてますけど〜、先輩もそうじゃないんですか〜?」
「もしかして先輩自身を人数にカウントしてなかったとかですか?」
「リュウにもそんな一面があるんだね〜!」
「ちょっと意外かも・・・・・・」
「大丈夫だよ隆斗くん。間違いは誰にでもあるから」
「疲れてるんじゃな〜い?彼方ちゃん愛用の枕で一緒に寝る〜?」
「ふふ、君ってばほんとに面白いわね?」
「さっきまでの頼れるオーラは一体何処へ・・・・・・」
一人一人言いたいこと言ってくれるじゃねーか・・・・・・。でも、今回は明らかに俺、どじったよな・・・・・・。とりあえず、言い方にむかっときたかすみちゃんは後でしばくか・・・・・・。
「先輩はともかく、これで10人揃いましたね!これで同好会も・・・・・・」
「待ってください!あと一つ、どうしても頼みたいことがあります!」
かすみちゃんの声を遮るようにしてせつ菜はみんなを・・・・・・正確には俺を見ながらそう言った。まだ何かあるのか?
「隆斗さん、貴方にこのスクールアイドル同好会の部長になっていただきたいのです。部長になって私達を引っ張っていって欲しいんです!」
「部長?・・・・・・いいけど?」
「軽っ!?そこは普通少し悩むとか・・・・・・しなさそうだね、リュウなら」
愛から何か失礼な発言が聞こえた気がしたが、気にしないことにした。別におかしなことなんてないだろ。
「俺がみんなのことフォローするだとか支えるだとか言っちまってる以上、俺がやらないわけにはいかないだろ。だから悩む必要なんてねーよ。部長は俺がなる。そんで、お前らのことを全力で支える!それでいいか?」
「「「「「「「「「もちろん!!!」」」」」」」」」
どうやら、これで決まりだな。
「今日から、新生虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会、スタートだ!!そんでもって・・・・・・夢はスクールアイドルフェスティバルで最高のライブをすることだ!」
この日、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会は新たな形態へと変わり、それぞれの夢へと向かって再スタートをきったのだった。
最後にせっつーが加わり、隆斗が部長になったところで結成が完了しました。ここまで長くするつもりはなかったんですが、少し細かく書きたいと言う気持ちがあったため、長くなりました。
次回からもよろしくお願いします!
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登場人物(キャラクター)紹介
一部はスクスタのプロフィールから引用してます。
登場人物(キャラクター)紹介
・鈴木 隆斗
高校2年生 11月23日生 血液型A型 身長175cm
本作の主人公。普段の態度や性格から誤解されがちな部分もあるが、芯は強く一度決めたことは最後までやり遂げる精神を持っている男子生徒。ダンスと作詞作曲の経験を持っている為、ダンスの振り付けや曲作りなどは彼一人でこなしている。
人をからかうのが趣味と言えるほどのドSな為、たびたび歩夢やせつ菜から叱りを受けているがその反面、それ以外の点では部長としてスクールアイドル同好会を引っ張って行ってる為、部員からの信頼は厚い。
・上原 歩夢
高校2年生 3月1日生 血液型A型 身長159cm
何事にもコツコツ真面目に取り組む努力家。内気な性格で夢を持てなかった過去を変えるべく、スクールアイドルで夢を追いかけることを決意した。隆斗とは小さい頃から付き合いのある幼馴染の関係。付き合いが長いせいか、隆斗には日頃から揶揄われてばかりだが、本心ではそこまで嫌だと思ってる様子はないらしい。隆斗がやろうとしてること、今後やるかも知れないことは何でも一緒にやりたがるほどに隆斗のことが好きな女の子(これが恋愛の”好き”なのかは未定)。
・中須 かすみ
高校1年生 1月23日生 血液型B型 身長155cm
自分のことが大好きで、スクールアイドルへの憧れと情熱は誰よりも強いと自負している元気があって気が強い女の子。スクールアイドルのためなら努力を惜しまないほどに気持ちが強い上に、負けず嫌いな性格でもあって度々ライバルである同好会のメンバーにいろんな悪戯を仕掛けたりするものの、大抵は隆斗に見つかり、お仕置きを受ける羽目となっている。
・桜坂 しずく
高校1年生 4月3日生 血液型A型 身長157cm
虹ヶ咲学園に編入してきたばかりの編入生。演劇部と同好会を掛け持ちしていて、うまく両立できるように配慮しているしっかり者の女の子。当初は同好会に戻ることを躊躇ったが、隆斗やかすみ達の説得もあって無事に戻ってくる。将来は女優を目指しているが、現在はスクールアイドルで自分の理想の姿を見せることを目標に日々練習に励んでいる。演劇をやっているだけあって、運動神経はいいが、球技だけは苦手。
・宮下 愛
高校2年生 5月30日生 血液型A型 身長163cm
活発で明るい性格で、自分が面白そうと思ったことならどんなことでもチャレンジしようとするほどの積極性を持つ女の子。同好会に参加したのも、隆斗の説得内容に魅力を感じた為だった。見かけが派手で、周りからは誤解されがちだが、実は面倒見が良く人当たりもいい為、人望が厚く友達も多い。
・天王寺 璃奈
高校1年生 11月13日生 血液型B型 身長149cm
同好会唯一の中等部からの内部進学生の女の子。人の目を見て話すことが苦手で、感情を表に出すことも苦手な為、愛と一緒に作った【璃奈ちゃんボード】を使って感情表現をしている。愛のことは深く信頼していて、愛がすることだったら自分もすると言うほどに愛のことを慕っている。
・近江 彼方
高校3年生 12月16日生 血液型O型 身長158cm
3年生になって編入してきた編入生。いつも眠そうにしていて、よく勉強の合間時間には学園の中庭や保健室で睡眠をとっている。妹の遥のことを溺愛していて、妹の事となると人が変わったみたいに積極的に動こうとする。勉強の出来が悪いせいで特待生の制度が解除されそうになった為、一度は同好会から離れていたが、同好会のみんなで勉強を教えると言う条件で同好会に戻ってくる。
・エマ・ヴェルデ
高校3年生 2月5日生 血液型O型 身長166cm
スイスから留学生としてやってきて、虹ヶ咲学園にはつい最近編入してきた。普段はおっとりしていて非常にマイペースだが、スクールアイドルへの情熱は本物で、練習に妥協は一切しない。天然な部分も持ち合わせている為、よくメンバーから突っ込まれたりすることもあるが、本人はそれもまた楽しいと思ってる。食べることが大好きで日本のパンもまた大好きな為、よく持ち合わせている。
・朝香 果林
高校3年生 6月29日生 血液型AB型 身長167cm
高校生とは思えないほどのルックスと美貌を持ち合わせた女の子。読者モデルをやっている為、人と触れ合うことをあまり好かない。見かけ以上に負けず嫌いな性格で、それはかすみにも匹敵するほど。スクールアイドル自体には最初はそこまで興味なかったが、隆斗のスクールアイドルの良さと楽しさ、そして情熱を語る姿勢に心を動かされ、スクールアイドルをやることを決めた。
・優木 せつ菜(中川 菜々)
高校2年生 8月8日生 血液型O型 身長154cm
確かな実力とカリスマ性を持ち合わせ、周りの高校からも期待をされている有望なスクールアイドル。その元気いっぱいの笑顔と技術の高いダンスパフォーマンスで心を掴まれたファンは数多くいるらしい。アニメや漫画が大好きで、親にそのことがバレないように生徒会長室にまで漫画を持ち込んでいるほど。おまけにその手の話となると周りの制止を無視して熱く語り出してしまうほどにアニメ&漫画オタクである。部活の時以外は生徒会長、中川菜々として虹ヶ咲学園を取りまとめている。
おまけ
・鈴木 沙織
40歳 7月30日生 血液型A型 身長160cm
隆斗の母親。40歳という年齢だが、外見からはよく30代前半だと思われるくらいに若々しく見える。夫が単身赴任中な為、今は隆斗と二人暮らしをしている。現在は専業主婦をしているが、昔は音楽関係の仕事(作詞や作曲)をしていた為、やろうと思えば今でも曲は作れるそう。隆斗には中学の頃から教えている為、本人曰く、隆斗は将来有望な作曲家になれるかもしれない、らしい。最も隆斗はそんな気は無いらしいが。
自己紹介終了です。なんでお母さんを入れたかと言うと、せっかく話に出てたのに自己紹介しないのは可哀想だと思ったからです。
次回からは話に入っていきたいと思います。
ニジガクメンバーの隆斗の呼び方
歩夢→隆くん
かすみ→隆斗先輩
しずく→隆斗さん
愛→リュウ
璃奈→隆斗先輩
彼方→隆斗くん
エマ→隆斗くん
果林→隆
せつ菜→隆斗さん
まだ名前を呼んで無いメンバーもいますが基本的にこう呼びます。かすみちゃんは一度鈴木先輩と呼んでいますが、部活が再開してからは下の名前で呼ぶようになったらしいです。
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活動編
曲作りと練習
そこを少し捻っていけたらと言った感じです。
「よし!みんな集合〜!」
同好会の再始動から数日、俺たちは怠けていた時間を補うために練習を重ねていた。とは言っても最初からいきなりダンス練習はキツそうだったから、基礎的なストレッチだとか体幹トレーニングをやらせていた。もちろんこれは俺が考えた練習メニューだが、理には適ってる練習メニューだと思っている。いきなりハードにして怪我をされたら元も子もないからな。そんな練習も終わりを迎えた時、俺はみんなを集めた。
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・け、結構きついね?この練習メニュー・・・・・・」
「は、はい・・・・・・。せ、せんぱ〜い?いくらなんでもまだ再始動切ったばかりのかすみん達にこの練習メニューはきついんじゃ・・・・・・」
・・・・・・とまあこんな感じで、結構緩めな練習にしたと思っていたのに既にみんなは息が上がっている。・・・・・・いや、せつ菜、愛、しずくを除いてだな。
「おいおい、こんなの基礎の基礎の練習だぞ〜?こんなんで疲れてるってことはまだまだ基礎体力がついてないってことだ。そんなんでよくスクールアイドルフェスティバルに出るなんて言えるもんだ。なぁ、せつ菜?」
「はい!隆斗さんのこのメニューは今の私たちにはぴったりのメニューですよ。まずはダンスをする上で重要な柔軟さと怪我の防止をするためのストレッチ、そして筋力増強と基礎体力の増加を目的とした体幹トレーニング。この2つを難なくこなせない限り、スクールアイドルフェスティバルを目指すなんて出来ない!・・・・・・そう言いたいんですね?」
まだまだ元気なせつ菜に話を振ったところ、やっぱり俺の意図を理解できたのか、俺の代わりにこの練習の重要性を説いてくれた。さすが他校が注目するスクールアイドルだ。こう言った知識も豊富だ。
「そう言うことだ。とりあえず、今日の練習はここまでにするけど、その前にみんなには言っておきたいことがある」
俺がそれを言うと同時にみんなは首を傾げた。
「1ヶ月後にちょうどイベントがあるんだ。今回はそのイベントを俺たちの初陣にしようと思ってるんだが、どうだ?」
「いいと思います!私たちの実力を測れるいい機会だと思いますので!」
「アタシもだいさんせ〜い!そ・れ・に?噂の優木せつ菜ちゃんの実力も見てみたいしね〜!」
「愛さんは私のことを買いかぶりすぎですよ?私なんて全国から見たらそこまで大したスクールアイドルではありませんから・・・・・・」
「でも、出てみる価値はありそうね?」
「かすみんも出てみたいでーす!そのイベントに来たお客さん達をかすみんの色気でメロメロにしちゃいますからね〜!」
「わ、私も出てみたい!」
大体は出たいってことでいいな。他のみんなにも一応聞いてみたが、答えは出たい!だそうだ。なら今後の部の方針は決まったな。
「じゃあ出るってことでいいな。それじゃあ今後の方針としては、あと数日は今日まで続けた基礎練習を中心にして、それからは本格的にダンスの練習と発声練習を織り込んでいく気でいるからそのつもりでな?」
「わかりました。ですが、イベントに出るに至っては少々問題がありまして・・・・・・その〜、イベントで使う曲に関しては新曲でないと出場できないとネットでも書かれていまして、曲を作らないことにはダンスの練習もうまくは・・・・・・」
お、そういえば言い忘れていたな。確かに曲作んないと振り付けも考えられないもんな。
「それは問題ない。曲は俺が作るから」
みんな「え!?」
俺の発言とともに静寂の空気が流れたと思ったら、次に流れたのはみんなの驚きの声だった。
「隆斗先輩って、曲作れるんですか?」
「ああ、親が以前それ関係の仕事してた時に俺も教えてもらってたんだ。その腕は親のお墨付きだから安心して任せてくれていいからな?」
「へ〜意外〜」
「リュウって馬鹿そうだけど、そういうとこだけは凄いよね〜」
「言えてますねそれ!先輩っていつもはドSで、頭がおかしくて、変な危険人物って感じなんですけど、こんな時だけは頼りになります〜!」
「よ〜し!果林さん、愛、かすみちゃんは今からグラウンド10周な?」
「「「すみませんでした〜〜〜!!!」」」
真っ先に平謝りしてきた3人。まぁ、俺の日頃の行いもあっての印象だし、今日は多めに見るとするか・・・・・・。ただし、次は無い。
「ってなわけで、曲作りに関しては俺に任せて、みんなは練習に専念してくれ。話は以上だからとりあえず、今日はこれで解散にしよう。お疲れ様!」
みんな「お疲れ様でした!!!」
––––––––––––––––––––––––––––––––––
家に戻った後、早速俺は曲作りを始めよ・・・・・・うとしたんだが、早速難題に悩まされていた。それは・・・・・・
「みんならしい曲ってなんだ?」
まさにそれだった。俺たちはまだ会ってそんなに経ってなく、付き合いもそこまでない浅い関係なんだ・・・・・・歩夢を除いて。だからこそ悩む、メンバーのことをよく知らない状態で曲作りなんてして良いもんかと。でも、無理に作ってその子のイメージを崩してしまってはステージが台無しになる可能性がある以上、それはやめたほうがいいだろうな。
そんな時、絶賛悩んでる俺のスマホの着信音が鳴った。確認してみると、かけてきたのは歩夢だった。
「もしもし かめよ かめさんよ〜 せかいのうちに〜 おまえほど〜 あゆみののろい ものはない〜 どうしてそんなに のろいのか〜 って曲って何度聞いてもいいよな?」
「長いよ!歌を聴きながら待たされてる私の身にもなってよ〜!」
相変わらずいい反応するな〜歩夢は。電話越しに隠れて笑いながら続きを促した。
「悪い悪い。で、どうかしたか?」
「うん、曲作り順調かな〜って思って電話したんだけど、もしかして邪魔しちゃった?」
「今まじで悩んでるとこだったから正直かけてきて欲しくなかったわ〜、歩夢がそんな子だったなんて・・・・・・俺はなんと言う幼馴染を持ってしまったんだ・・・・・・俺は悲しいぞ!」
「え!?ご、ごめんね!?別に私は邪魔をしようとは思っていなくてね?それで・・・・・・えっと・・・・・・」
ぷっ・・・・・・。やっぱり面白い。さて、さすがにこれ以上は可哀想だから素直に話してやるとするか。
「はは、冗談だって!俺がそんなこと思うわけないだろ?むしろありがたかったよ。遊び相・・・・・・相談相手が来てくれて」
「今遊び相手って言いかけたよね!?もう〜・・・・・・私本当に心配しちゃったじゃない・・・・・・ひどいよ隆く〜ん」
「悪い悪い。曲作りなんだが、さっき言った通り少し悩んでる。みんなとの付き合いも短いし、まだ互いに知らないとこも多いし、現状その子に合った曲を作るのは難しいな」
「・・・・・・そうなんだ。何か私に手伝える事は無い?もし何かあったら・・・・・・」
「今んとこは大丈夫だ。俺もそれなりの対策はしてあるからな」
そう、こんなこともあろうかと俺はちゃんと対策を練っていた。だからこそ、今でも冷静でいられるんだ。
「わかったよ。でも、何かあったら本当に言ってね?昔から頑張りすぎると周りが見えなくなっちゃうとこあるから・・・・・・」
「ありがとな、気をつけるさ。あ、そうだ!歩夢の曲は、歌詞だけなら少し起こしてみたんだ。今から送るから見てみろ。じゃあ、また明日な〜!」
その後、送られてきた俺作成の詞を見た歩夢がスマホを胸に抱えながら、ベッドの上をゴロゴロ転がり顔を赤くしていたことを俺は知らなかった。
幼馴染の歩夢にだけは先に未完成だが詞を見せた隆斗。こう言った優しさに、歩夢も心惹かれていったんじゃ無いですかね?
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自分らしさとは?
「明日息抜きがてら近くの公園に遊びに行かない?」
「息抜き?いきなりだね?」
翌日俺は、練習の終わった後エマさんに声をかけていた。と言うのも、最近エマさんが元気ないって近江さんと桜坂さんから聞かされたからなんだけどね。とは言え、これは俺の話した”対策”にもちょうどいいかと思って誘ってるんだよな。
「エマさん、自分らしさが何かって悩んでるんでしょ?だったらじっとしてるよりはどこか楽しいとこにでも言って気分転換したほうが考えもつくかもよ?」
「うん、そうだね。わかった、じゃあお言葉に甘えて行かせてもらう事にするよ!」
「グッド!じゃあ予定とかは後で伝えるからよろしくー!」
そんなわけで俺はエマさんと一緒に公園に遊びにいく事になった。エマさんは【自分探し】のために、俺は俺が立てた”対策”の【みんならしさを見つけるためにメンバーと触れ合う】を遂行するために。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
そして次の休日、俺は朝の家の台所に立っていた。何してるかって?もちろん弁当を作ってるからだ。今作ってるのはサンドウィッチ、具材はレタスとハムにマヨネーズをかけた物と卵をサンドした物、そしてカツをサンドした物の三種類にした。量が少し多くなったが、これなら飽きさせないで食べてもらえることができそうだ。せっかくエマさんに付き合ってもらってるんだし、お礼の意味を込めて・・・・・・な?
「な〜にお弁当作りながらニヤニヤしてんの〜?気持ち悪いんだけど?」
「別に良くないか?母さんだって昔は父さんの弁当作ってる時はいつもニヤついてたじゃん?」
「っ!?い、いやあれは・・・・・・ってか貴方よくそんなこと覚えてたわね・・・・・・私も半分忘れてたわ・・・・・・」
「いずれ母さんをいじる時に武器になりそうだって思ったからさ〜?」
「親をなんだと思ってるのよ!?それとそんな黒歴史をこれからも蒸し返すのはやめてくれる!?」
「そっか〜、じゃあ母さんが父さんの下着を毎日鼻を鳴らしながら嗅い・・・・・・」
「もうやめて〜〜〜〜!!!」
朝から母さんの絶叫を聴きながら、俺はそのまま弁当作りを再開させた。相変わらず仲の良い夫婦だこと・・・・・・。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
「・・・・・・で?なんで2人までいるんだよ?」
弁当を作り終えた後、俺は時間通りに目的の公園につきエマさんと合流したんだが、なぜかそこにはエマさんの他に近江さんと桜坂さんの姿もあった。
「いや〜、なんかエマちゃんから誘われちゃってね〜?人数が多いほうが楽しめるって〜、だから彼方ちゃんも来ちゃったのだ〜」
「それに、私たちもエマさんの事はどこか心配してましたし、いい機会だと思いましたので・・・・・・もしかして迷惑でしたか?」
「俺は構わないぞ?2人のことももっと知りたいと思ってたしな」
「本当ですか!ありがとうございます!」
にこやかな笑顔を浮かべて喜ぶ桜坂さん。こう言った笑顔もまた可愛くていいな。見てるだけで癒される感じだ。
「でも、せめて連絡ぐらいはして欲しかったよエマさん〜。俺の連絡先は知ってるよね?」
「うん、でもすっかり忘れちゃってて〜・・・・・・」
「天然だな」
「ええっ!?」
いや・・・・・・驚いてる顔してるけど、誰がどう見てもそれは天然だぞ?いずれ自覚させよう・・・・・・。
「さて、時間がもったいないし、早く行こっか。ここではいろんな体験もできるみたいだしな」
「おぉ〜、それは楽しみ〜」
「私、バードウォッチングとかやってみたいな〜。スイスでもやってたから!」
「よし!じゃあ行くとしますか!桜坂さんもやりたいことあったら遠慮なく言えよ?」
「そうですか?じゃあ早速一ついいですか?」
「おぅ、なんだ?」
桜坂さんはそう言うと、静かに俺のそばまで近づいてきて、背伸びをしながら俺の耳元でこう呟いた。
「私のことを、”しずく”って呼んでください。お願いします」
「ん?ああ、構わないぞ。なんで今それを言ったかはわかんないが・・・・・・まぁいいか!じゃあこれからはよろしくな”しずくちゃん”!」
「ふふ・・・・・・はい、よろしくお願いしますね?隆斗さん・・・・・・」
なんだかこれをきっかけにしずくちゃんとの距離が少し縮まったような気がしたが・・・・・・気のせい・・・・・・では無いな。と言うかむしろこれを望んでいたんだからむしろ喜ばないとな!
そのまま俺たちは公園の中を散策しに向かった。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
「ふ〜、結構遊んだらお腹空いてきちゃったね〜。そろそろお昼にしようか!」
「そうですね。私もお腹が空いてきました」
「彼方ちゃんもこんなに遊んだの久々だったからお腹減っちゃった〜」
「なら、近くの広場に移動するか。あそこなら空気も上手いし暖かいからさ」
「「「さんせ〜!!」」」
昼時まで遊んだ俺たちは、ちょうど全員の腹の虫がなった事もあって昼食を取る事にした。ちなみに遊んだのは主にバードウォッチングや自然散策、持ってきていたボールで遊んだりなど結構バリュエーションがあった(ボールで遊んだ時にしずくちゃんが放ったボールが全く見当違いの方角へと飛んで行き、そのまま池に落ちたボールを俺がなんとか救出したのは内緒の話だ)。
「よ〜し!今日は俺が作ってきたサンドウィッチを3人にご馳走するわ。量多くなってどうしようかって思ってたけど、ちょうど良かったし。みんな、遠慮せず食っていいからな!」
広場でござをひいた後早速俺が今朝作ってきたサンドウィッチをござの上で広げた。
「すっご〜い!これ隆斗君が作ったの?私サンドウィッチ大好きだから嬉しいよ〜!ありがと!」
「隆斗くんは料理男子だね〜。彼方ちゃん思わず惚れそうになっちゃうよ〜」
「隆斗さん、ありがとうございます。ありがたくいただきますね」
3人は俺にお礼と感謝をした後、サンドウィッチを一切れ取り、口に運んだ。
「おいし〜!このレタスとハムが入ったのすごく美味しい!いくらでも食べられちゃうよ!」
「お〜、このカツサンドもまた美味し〜。彼方ちゃんの眠気まで吹き飛んで行っちゃいそう〜」
「卵サンドも美味しいです!卵がふわふわしていて、口触りも柔らかいのでとても食べやすいです!」
「それならよかった。早起きして作ってきた甲斐があったってもんだ」
どうやら俺のサンドウィッチは好評のようだな。これで不味いなんて言われたら周りの目も気にしないで発狂&号泣してたとこだな・・・・・・。そう思いながら俺も自分のサンドウィッチに手を付けた。・・・・・・うん、我ながら上手くできたな!
「ん?あれ?・・・・・・寝てたか?」
サンドウィッチを食べ終えた後、気持ち良くなって横になったことまで覚えているが、そこから先は覚えていなかった。どうやらその後すぐに眠っちまったらしいな。・・・・・・やれやれ、人間が食べてすぐ寝ると牛になるって言われてたが、わかりきってたことだが牛になんてなってないよな?うん、大丈夫!
「ん〜〜、むにゃにゃ・・・・・・」
「あれ?近江さんも寝てる・・・・・・しかも、俺の隣で・・・・・・」
なぜか俺の隣で近江さんが眠っていた。この状況を誰かに説明してもらいたかったが、生憎エマさんとしずくちゃんはトイレにでも行ってるのか、席を外していた為それは叶わなかった。
「ん・・・・・・?おぉ〜、隆斗く〜ん、おはよ〜」
「っと、近江さん起きちゃったか。悪いな。起こしちゃったか?」
「だいじょーぶ〜。もう充分寝たから元気いっぱ〜い!」
起こしてしまったことを謝ったが、本人はそこまで気にして無い様子だった。
「それならいいけど・・・・・・それよりもなんで俺の隣で寝てんだよ?」
「いや〜最初は寝てる隆斗くんを眺めてたんだけど〜、だんだん彼方ちゃんまで眠くなってきちゃって〜そのまますやぁ〜っと・・・・・・」
「ある意味すげー度胸だな近江さんは。男の側で寝るとか・・・・・・」
「ん〜?隆斗くんは寝ている彼方ちゃんに何かするつもりなの〜?」
「悪戯はするかもな〜」
「それは手厳しい〜〜・・・・・・」
目を擦りながら不満を口からこぼした近江さん。なんで近江さんとこんな話しないといけないんだ?
「それよりもさ〜?そろそろ隆斗くんも彼方ちゃんのこと【彼方】って呼んでくれてもいいんだよ〜?同好会のみんなはそう呼んでるし〜」
「?呼んで欲しいならそう呼ぶが?」
「呼んで〜」
「わかった。じゃあ【彼方さん】。これからもよろしくな!」
「こちらこそ〜」
今日1日だけで呼び方が変わったメンバーが2人。珍しい日もあるもんだ。それから数分後、エマさんとしずくちゃんが戻ってきた。っと思ったら、急にエマさんが歌い始めた。
「あれ〜?エマちゃんなんで歌ってるの〜?」
「なんとなく、歌いたいって思っちゃってね!」
「ふふ、エマさんらしいですね」
「全く・・・・・・相変わらずいつもマイペースでのんびりしてるって言うか・・・・・・ある意味着飾ってなくていい気がするが・・・・・・・・・・・・!!」
「隆斗さん?どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
俺はこの時、エマさんの個性というものが頭の中に入ってきた。さっきも言ったように、エマさんには何かにこだわったり何かになろうとしてる訳では無くてあくまでも自然体でいる事に拘っている。だからこそ誰にでも受けいれられ易く、馴染まれやすい。それこそが、エマさんの個性なんじゃ無いかとこの時俺はそう思った。
エマさんの悩みも解決しそうなところで今回は終わりにします。
次回はまたメンバーとの絡みが中心になっていきます!
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2人だけの時間
同好会のメンバーとの交流を深める事で着々とみんなの曲作りを進められている俺は、今日もまた部室で曲作りに励んでいた。
「お疲れ様・・・・・・あ、隆くん!もう来てたんだ?今日も曲作り?」
「ん?ああ、歩夢か。そういうこった。みんなのこともだんだん分かってきたしその子の個性がどんなのかってのも分かってきたから、正直できるのは時間の問題だな」
練習までまだ1時間近くあるって言うのに、歩夢はなぜか部室に来ていた。どうやら俺が思ってる以上にこいつも気合入ってるんだな〜。
「こんなに早い時間から来たって事は・・・・・・練習か?イベントに向けて」
「・・・・・・うん!私、歌もダンスもみんなより出来ないから少しでも多く練習しようと思って・・・・・・」
「やっぱりな。だと思った・・・・・・」
・・・・・・なんか最初に間があった気がしたが気のせいか?・・・・・・まぁいいか。ちょうど俺も一区切りついた事だし、せっかくだからな。
「よし!せっかくだし俺とタイマンで練習するぞ!分かんないとことか難しいとこがあるんなら今のうちに聞いとけ?」
「!!う、うん!!ありがと!すぐに着替えてくるね!」
満面の笑みを浮かべながら更衣室に向かった歩夢。やれやれ、そんなに練習が好きなのか・・・・・・よし、今日はいつも以上に扱いてやるとしよう・・・・・・。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・ぜぇ・・・・・・ぜぇ・・・・・・」
「ほらほら!足が動かなくなってるぞ〜。そこのステップはもう少し細かく!肩の力はもっと抜いてリラックスしろ!」
「う、うん!・・・・・・!」
練習を始めてから30分。初めに比べたら多少はマシな動きになった歩夢を見て少し胸を撫で下ろした。と、安心したのも束の間、ついに足に限界が来たのか、歩夢が足をとられ転びそうになった。
「・・・・・・っと。大丈夫か?」
「・・・・・・ごめんね?」
「気にすんな。そろそろ切り上げるか。これ以上やると今日やる練習に響きそうだし」
「うん・・・・・・わかった」
歩夢は素直に俺の言う通りにしてくれ、近くの椅子に腰掛けながらタオルで汗を拭っていた。
「隆くん・・・・・・私のダンス、どうだった?」
「クソ下手」
「ストレート!?もう少しオブラートに包むとかしてよ〜!!」
「俺は何事にも全力ストレートだからな!」
「言ってる意味わかんないよ〜もう〜〜!」
疲れてるのも忘れて、いつものようにツッコんでくる歩夢。このキレだけは一級品だよな・・・・・・。
「まあ冗談はさておきだな?お前のパフォーマンスは確実に良くなってる。まだまだ人様に見せれるレベルじゃ無いが、このままやっていけばきっとそのレベルに届く。だから腐るんじゃねーぞ?」
「最初からそう言ってくれればよかったのに・・・・・・」
「前言撤回。やっぱりクソ下手」
「なんで!?ごめんてば〜!!」
素直にわかったとか言ってくれればよかったのに・・・・・・。こういう素直じゃ無いとこも昔と変わんないな・・・・・・。
「はぁ・・・・・・でも、私嬉しいの」
「叱咤されるのが?」
「違うよ!そうじゃなくって・・・・・・隆くんと一緒にこうやって練習できて・・・・・・嬉しいの」
目を伏せて俺から目を逸らしながらそう言った歩夢。・・・・・・なんでそんなに恥ずかしそうなんだよ?
「なんでだ?いつも俺と一緒に練習してるだろ?」
「うん、そうなんだけど・・・・・・そうじゃ無くて、こうやって二人きりで練習できることが嬉しいの。最近は私も隆くんも忙しくてこうやって2人きりで何かやる機会なんてなかったでしょ?だから久しぶりに隆くんと2人きりになれて・・・・・・嬉しいの!」
「まー確かに最近は無いよな?・・・・・・あ、お前もしかして?」
俺はこの時気づいた。何で歩夢がこんなに早く部室に来て俺と一緒に練習したのかが。
「ふふ、そう!隆くんと一緒の時間を過ごしたかったからなんだ〜!練習に早く来たの」
「はぁ〜、だろうな。・・・・・・ったく、そんな事しなくても部屋隣なんだから俺の家くればいいだろーが?」
「それはそうなんだけど・・・・・・やっぱり今しかできない事で隆くんと一緒にやりたかったからさ!」
「青春だね〜」
全く・・・・・・だったらそう言ってくれれば良かったものを・・・・・・。ま、そんなとこもまた歩夢らしい。
「でも、やっぱり隆くんの教え方って分かりやすいよね!細かいとこまでしっかり頭に入ってくるもん!」
「これでも一応、小学生からのダンス経験者だからな。それぐらい教えられて当然だろ?」
「うん。でも・・・・・・なんで、ダンス辞めちゃったの?隆くんすっごくうまかったのに・・・・・・」
「ん?あぁ・・・・・・それは〜」
どう答えようか迷ってしまった俺。正直その事に関してはあんまり触れて欲しくなかったんだよな・・・・・・。あんまりいい話でも無いし、思い出したくも無いしな・・・・・・。
「単にダンスに才能がないって感じたからだな。周りの奴らがみんなうますぎてついて行けなくなって、俺だけ浮いちまって、結局そのままやめたってとこだな」
「・・・・・・そうなんだ。ごめんね、変なこと聞いちゃって」
「気にすんなって。歩夢の”あの顔”を見ることも出来たしチャラってことで」
「え!?あの顔?あの顔ってなに?」
「内緒〜」
「意地悪しないで教えてよ〜〜!!」
あの顔・・・・・・それは歩夢の久々に見せた”輝いた笑顔”。練習をしてる時にちらほらだがそれが出るようになってたんだ。今回の練習ではそれが一番の戦果だったと思う。あれが出れば歩夢の個性も十分に発揮できるし、さらなるレベルアップも期待できる為、俺は歩夢に追いかけられながら、歩夢の今後のプランを頭の中で練り込んでいた。
ちなみにさっきの俺の答えは嘘っぱちだ。本当のこと言ったら、多分歩夢は悲しむからな。その真実は、俺だけが知っていればいい・・・・・・。
なんか最後暗い感じになりましたね。隆斗にもなにやら闇がありそうな予感?
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近づくイベント
歩夢との練習の後、そしてメンバー全体での練習を終えた後、何故か【璃奈ちゃんを笑わせましょうのコーナー】と言う愛が考えた催しで俺と歩夢が参加させられる羽目になった。結果として、俺が一発芸【棒人間】をしても、歩夢が変顔をしても、愛がお得意のダジャレを披露しても璃菜ちゃんはクスリとも笑わなかった。・・・・・・というか、璃奈ちゃんボードのせいで笑ってるかどうかさえもわかんないんだけどな・・・・・・。
その翌日、今日もまた学校で全授業を受けた後、イベントに向けてみんなで練習に励んでいた。すでにダンスの練習と発声練習に入ってるんだが、みんななかなかに様になってきていた。もちろんまだまだ課題点はあるが、及第点は出してもいいくらい、成長していた。
「じゃ、今日はここまで!各自ストレッチをして着替えたらすぐに上がれよ〜」
みんな「お疲れ様です!!!」
さて・・・・・・じゃあ俺は練習ノートの記入と・・・・・・少し曲作りも進めてから帰るとするか。あ、ちなみに練習ノートってのは俺がつけてるこの同好会専用のノートだ。一人一人の今日よかった点、成長した点、改善点、ポイント、アドバイスなどその日によって書くことを変えている。一度壁にぶち当たった時にみんなにはこのノートを見返して貰って、何かを掴んで欲しい。そして、誰よりもみんなのことを見ているということを形として残しておきたい、という俺なり我が儘でもあり俺の優しさでもある代物だ。
「隆斗さん、少し居残りで練習して行ってもいいですか?」
「あ、それなら私もやるわ。まだ少し物足りなかったし」
「あ〜!ずるいですよ〜!かすみんだって残ってやります〜!!」
「お?なら俺が考えた3人だけの特別メニューを・・・・・・」
「「「それは無理よ(です)!!」」」
3人揃って無理!って・・・・・・。まぁもちろん冗談だけど・・・・・・いや、一応メニューはあるけど・・・・・・まぁいいか。
「わかったわかった。無理はするなよ?」
「わかりました!」
「ええ」
「かすみんに疲れなんてありません!」
そのまま3人は再び練習に入った。他のみんなは既に着替えに戻っていて、今いるのは俺とせつ菜と果林さん、かすみちゃんだけだった。せっかくだし、ノート書きながら3人の練習も見るとするか。そう決めた俺は、徐ろにノートを取り出し、今日のことをまとめる為、ペンを走らせた。
「せつ菜、ちょっといいかしら?」
「?何ですか果林さん?」
何か果林さんがせつ菜に話しかけてるが、俺には関係ない話だろうと思い、気にせずノートに集中した。
「最近よく貴女が一番居残り練習をしてるって聞いたけど・・・・・・本当なの?」
「はい!イベントまでもうそんなにありませんからね!できる時に目一杯やっておきたいんです。練習はいくらやっても損ではないですから!」
「何でそこまでやるの?貴女は同好会の中で一番ダンスも上手いし歌唱力もあるのに・・・・・・。パフォーマンスだってあれじゃまだ満足出来ないの?」
「出来ませんね。果林さんにそう言ってもらえるのは嬉しいんですけど、私はまだまだ未熟です。現状に満足せずに自分を鍛え上げて、本当の私・・・・・・優木せつ菜のスクールアイドルの姿をお客さん達に伝えたいんですよ!ですから、私はまだまだ努力して、皆さんが追いつけないぐらいのスクールアイドルになって皆さんを驚かせて見せますよ!」
「へ〜?言うじゃない?そこまで言われたら・・・・・・私ももっともっと頑張らなくちゃね?貴女みたいな、強力なライバルが頑張って練習してるって言うのにじっとなんてしていられないもの」
「ええ!果林さん、お互いに頑張りましょう!」
どうやら話はまとまったみたいだな。なんて言ってたのかは分かんないけど、意欲が高まってる様子から2人とも・・・・・・お互いにライバル視をし始めたのかもな。いいことだ。
「せんぱ〜い!あの2人、さっきと比べて意識高くなっちゃってません!?もしかしたら、2人で衝突でもしてそのまま帰ってくれるかもって期待してたのに〜・・・・・・」
「お前のスクールアイドル馬鹿には感心させられるな・・・・・・。その意欲と闘争心を勉強の方にも向けたらどうだ?しずくちゃんから聞いたけど、成績・・・・・・悪いんだってな?」
「ぐっ・・・・・・しず子め〜、余計なことを〜・・・・・・。だ、大丈夫ですよ〜!赤点は取らない・・・・・・はずなので」
「語尾が怪しかったから今後は昼休み、俺とタイマンで勉強会な?」
「え〜〜〜!?・・・・・・というか、隆斗先輩ってかすみんに教えられるほど頭良いんですか〜?」
「隆斗さんはこの前のテストで1位を取るほどに頭が良いですよ?」
「うそ〜〜〜!!?隆斗先輩が!?というかせつ菜先輩、いつの間に!?」
いつの間にか俺のとこに来ていたせつ菜に驚いたかすみちゃん。こいつはいつでもうるさいな・・・・・・。せつ菜は、休憩ってとこだな。
「せつ菜・・・・・・何で知って・・・・・・あぁ、”元”生徒会長だったっけ?」
「”元”ではありません!今も生徒会長ですよ!?しかも何でナチュラルに驚いてるんですか!?」
「まじで生徒会長だって忘れてたから?」
「忘れないでください!生徒会長のプライドが傷つきますから!」
「そんなことよりも!隆斗先輩って・・・・・・そんなに頭良かったんですか?」
「ああ、というわけで・・・・・・明日からよろしくな?・・・・・・
「ひぇぇ〜〜!!!そんな〜〜〜!!!」
俺の邪悪?な笑いを見て絶叫したかすみはその場から逃げ出した。だが、結局かすみちゃんは翌日、俺が事情を話したしずくちゃんと璃奈ちゃんによって昼休みに連行される事になり、俺とのタイマンでの勉強会をする羽目となったのだった。かすみちゃんが、この時の勉強会が後々影響を及ぼす事に気がついたのは、まだまだ先のことだった・・・・・・。
見事に間話でしたね。かすみちゃんとのやり取りだけはオリジナルです!この勉強会によってかすみちゃんは何かが変わるかも?
次回はようやくイベントの話です!
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イベントの結果は?
それから、俺たちはイベント当日を迎えた。俺が無事に完成させた曲をみんなに渡し、振り付けなどを一緒に考えながら今日まで切磋琢磨してきた。ダンスも歌も問題は無い。後は本人達の気持ち次第だろう。
朝学園に集合したあと、電車に乗りイベント会場に向かった。着いた時には既にたくさんの客と出場するスクールアイドルで、ごった返していてマジで人に酔いそうになった。
そのまま俺たちはステージ裏まで行き、俺は出る順番の確認と事前確認、みんなは衣装に着替えに向かった。数分後、俺は確認を終え、みんながいる控え室に戻ってきていた。そこには既に衣装に着替えたみんなの姿があった。
「お?もう着替え済んだみたいだな?中々似合ってるぞみんな!」
「あ、あんまりジロジロ見ないで・・・・・・恥ずかしいから・・・・・・」
「な〜に恥ずかしがってんの歩夢〜!もうここまで来たら覚悟決めないと〜!」
「そ、そそ、そうですよー!恥ずかしがってる暇があるなら少しでも振り付けの見直しとかしておかないと!あはは・・・・・・」
「かすみさん?震えてるけど大丈夫?」
「もりろん!」
・・・・・・噛んだな。ま、初めてのイベントだしな。無理もないか。他のみんなも何処か顔が引き攣ってるし・・・・・・仕方ないな。
「なにびびってんだよ?お前らは今まで散々この日のために練習してきたんだろ?体ボロボロになる程。そんだけやったお前らなら絶対にいいステージに出来るさ!なにも心配すんな。失敗したら・・・・・・骨は拾ってやる」
「ちょっと!?何で失敗する話なんてするんですか!?しかも骨って、かすみんは別に死にに行くわけじゃ・・・・・・」
「・・・・・・かすみさん。隆斗さんは別にそのように言ってるわけでは無いと思いますよ?」
「相変わらずお前はバかすみんだな〜」
「だからそんなあだ名つかないでくださいってばーー!!!」
みんな「あはははは!!!」
控え室内にみんなの笑い声がこだました。あの笑顔を見る限り、どうやら緊張は取れたみたいだな。
「さて、そろそろ時間だ!最後に俺から言えるのは・・・・・・自分に自信を持って、最高のパフォーマンスをしてこい!そして最高に楽しいステージにして客に自分の存在を見せつけろ!」
最後にみんなの気を引き締めるために、檄を飛ばした俺。それを聞いたみんなは、笑顔は浮かべているがさっきまでの引き攣ったような笑顔ではなく、心の底からの笑顔を浮かべていた。
「行くぞ!」
みんな「おーー!!!」
俺たちの初陣が今、幕を開けた。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
結果として、そのイベントは俺としては合格点をみんなにあげる程良かったものとなった。流石に優勝どころか入賞も出来るかどうかってとこかなって思ってたんだが、まさかの
「まさかせつ菜としずくが入賞するなんてな・・・・・・正直びっくりしたわ」
「・・・・・・何でそこで露骨に私の方を見るんですか?もしかして私・・・・・・入賞するなんて思われてなかったですか?」
「ぶっちゃけ?」
「先輩ひどいです〜!」
も〜!っとグイグイ詰め寄ってくるしずくを押さえつつ、今日のことを振り返っていた。今回入賞した2人はもちろんのこと、他のみんなももっと練習と経験を積めば入賞どころか最優秀賞を狙えることも夢じゃ無いほどの実力を持っていることを改めて実感できた。
「とは言っても・・・・・・今回は残念だったわね〜・・・・・・」
「かすみんだって・・・・・・良いライブできたと思ってたのに〜〜」
「まぁまぁ、良い経験ができたんだから良いんじゃない?」
「そうそう。楽しかったんだからそれで良いじゃ〜ん」
「まだまだ愛さん達はこれからだって!みんなから”期待”されてい”きたい”よね〜!”きたい”だけにね!」
「うん!もっと頑張る!璃奈ちゃんボード【メラメラ〜】」
今回のイベントの感想は人それぞれか・・・・・・。そりゃそうだよな。誰だってこう言ったステージでは良い成績を残したいと思うもんだし、ソロでやってるだけあってライバル意識も強い。その意識がプラスに働くかマイナスに働くか分かんないが、それも含めて今後俺がサポートしていくとするか。
「そういうこった。まだまだ始まったばっかなんだし、今日の結果を踏まえて今後に生かしてくぞ。とにかく、今日はお疲れ!・・・・・・ほら、歩夢もいつまでも落ち込んでるなよ?」
「うん・・・・・・」
さっきからずっと俯いたまま一言も発せずにいた歩夢。歩夢も決して変なライブをしたわけではなかったけどな?これは、後で問い詰める必要ありだな。それを決行することを決めた俺はみんなが着替えを終えるまで、外で待機をしているのだった。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
「それで歩夢。お前、何か悩んでるだろ?」
「・・・・・・え?」
駅でみんなと別れた後、俺と歩夢は2人で帰路についていた。その際、俺は歩夢に唐突にさっきのことを聞いていた。
「さっき控室でお前ずっと俯いて何か考えてただろ?考えてることでもあるんなら俺に相談してみろよ。何だ?ライブで不満なとこがあったとかか?」
「・・・・・・ううん。そうじゃないんだ。そうじゃなくて・・・・・・その・・・・・・」
言い澱んだ歩夢。この様子だと、ライブの話ではなさそうだな。
「私・・・・・・みんなと争うなんて・・・・・・耐えられないよ・・・・・・」
「は?何言って・・・・・・」
「同じ同好会の仲間なのに、何で敵同士になって争わなきゃいけないの?せっかく自分楽しいステージにして良い成績残したとしても、それのせいで誰かが・・・・・・仲間のみんなが悲しむ姿なんて想像したくない。そんなことしてたら、いずれまた同好会がバラバラになっちゃうんじゃないかって思っちゃうと・・・・・・怖くて・・・・・・」
「・・・・・・(はぁ〜)」
これには流石の俺も内心溜息を吐いた。確かに昔から仲間意識が強くて思いやりのある歩夢の気持ちもわかる。誰しもが勝利を掴める訳ではなくもちろん敗者もいる。それは分かるんだが最初に言った事に関しては・・・・・・今回それは全くの筋違いだ。だから俺は・・・・・・。
(ポコッ)
「痛っ!?何でここでチョップするの!?何か変なこと言った!?」
「ああ言った。むしろもう一発行きたいぐらいだな?」
「痛いからやめてよ〜!」
どうやら自分の間違いに気付いてないみたいだな。しょうがないな・・・・・・。
「・・・・・・ったく。歩夢のそういうとこは昔からまるで変わってねーな。
「・・・・・・え?」
「おまけに敵でもない。いいか?お前とあいつらはライバルだ。お互いに競い合って、お互いにレベルを一緒になって高め合っていくライバルという名の仲間だ。誰かが悲しむだ?そんなのみんな分かってる。そんなことを承知の上でみんなはスクールアイドルを目指すって決めてるんだからな。同好会がバラバラになる?そんなこと俺がさせねぇ!せっかくお前やみんながスクールアイドルを目指せる場所ができたのにそこを壊させなんてぜってーにさせねぇ!」
「隆くん・・・・・・」
「だからさ?もうあいつらのこと・・・・・・敵だなんて言ってやるな。大事な同好会の仲間なんだろ?だったらこれからも仲間として、ライバルとして付き合っていけや。分かったな?」
俺が言い終わると同時に、歩夢の目から一粒の涙がこぼれ落ちた。次第にそれは次々と二粒、三粒となっていき・・・・・・。
「・・・・・・っと。今日は随分と甘えん坊だな〜」
「・・・・・・っ。ありがと・・・・・・ありがと隆くん。もう迷わない・・・・・・私はこの同好会でみんなと・・・・・・隆くんと一緒にスクールアイドルを目指すよ!・・・・・・っ」
「分かったから泣くなって。・・・・・・ったく、泣き虫なのも相変わらずだな〜・・・・・・」
俺の胸に顔を埋めながら静かに泣く歩夢を静かに抱きしめてやった。歩夢もこれをきっかけにもっとレベルアップするだろうな・・・・・・。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
「じゃあ、また明日な〜」
泣く歩夢を落ち着かせた後、俺たちは再び帰路につき、家の前で別れようとしてるとこだった。
「うん。今日はありがと隆くん。イベントもだけど・・・・・・さっきのことも、ありがと」
「久々に歩夢の泣き顔が見れたってことでチャラってことでいいぞ〜」
「っ!?もう!またそうやって〜〜!!」
顔を真っ赤にさせた歩夢の慌てようが面白く、つい声を上げて笑っちまったな。・・・・・・ご近所さん、すいません。
「ま、とにかく今日はお疲れ様!明日からも頑張ろうぜ!」
「うん!これからも頑張るよ!」
「おう!それじゃあな!」
「あ、待って隆くん!」
家の中に入ろうとする俺をなぜか呼び止めた歩夢。まだなにか話でもあるのか?
「ん?どうし・・・・・・た!?」
「・・・・・・」
(ちゅ・・・・・・)
振り返った俺が覚えたのは・・・・・・俺の横頬に柔らかな感触・・・・・・そして歩夢独特のお花の甘い香りだった。何が起こってるのか分からず、改めて見てみるとそこには、俺の頬に遠慮がちに口づけをする歩夢の姿があった。そして、すぐに歩夢は俺から離れた。
「歩夢?・・・・・・今のは・・・・・・」
「じ、じゃあ!また明日ね!」
「あっ、おい!」
俺が聞く前に家の中に入ってしまった歩夢。残された俺は呆然と立ち尽くすだけだった。
「(あんなことされたの・・・・・・初めてだな・・・・・・」
まさかの急展開!?イベント終わりに何やってんの!?って話なんですけど、初めて恋愛的な場面を出してみたくこんな感じにしてみました!
「そういえば、璃奈ちゃんのステージでつけてたあの【デジタル璃奈ちゃんボード】ってどうしたん?」
「前に愛さんが【機械弄り同好会】に掛け合ってくれて、その時にその人達に作ってもらったの」
「虹学の同好会と技術ってやべーな・・・・・・」
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新たなる挑戦
「(うぅ〜〜衝動的にとは言え、隆くんにキスしちゃったよ〜〜・・・・・・)」
部屋に一目散に駆け込んだ私はベッドに横たわっていた。そしてさっき私が隆くんにしたことを考えていた。
「(でも・・・・・・我慢できなかったんだもん・・・・・・。しょうがないよ・・・・・・)」
そう自分に言い聞かせてみたものの、やっぱりどうしても顔が熱くなってしまう。異性の男の子にキスをするなんて初めてだったんだから仕方ないことなんだけど・・・・・・。でも、こんな風にキスしたくなる私の気持ちってやっぱり・・・・・・。
「隆くんのこと・・・・・・好き・・・・・・なんだよね」
いつからこの感情が湧き出てきたのかは分からない。つい最近なのかもしれないしもっと昔からなのかもしれない。でもこの際それはどうでもよかった。私は隆くんが好き。いつも私のそばにいてくれて、どんな時でも支えてくれて、どんな時でも優しい隆くんが大好き。その答えだけわかっていれば今の私にはそれで充分だった・・・・・・。今はまだこの気持ちを伝える勇気なんて私にはないけど、いつかこの気持ちを隆くんに伝えられたら良いな・・・・・・。その気持ちを胸に、私は今日を締めくくるのだった。あ、でも、一つだけ問題が・・・・・・。
「明日からどんな顔して隆くんに会えば良いんだろ・・・・・・」
––––––––––––––––––––––––––––––––––
イベントの翌日、いつものように学校に向かった俺は次のイベントを探すべく奮闘していた。・・・・・・歩夢がどうにも俺と顔を合わせるのを拒否ってる感じがあるが、多分昨日のことだよな。・・・・・・真意がどうであれ、俺にキスしたんだから気まずくもなる。あのキスの訳を聞こうとしたんだが、結局はぐらかされて終わりだった。・・・・・・言いたくないんならこれ以上詮索はしないが、いつかは歩夢の気持ちを聞かせて欲しいものだな。
そんな時だった。俺はあるイベントを見つけた。それはーーー
「スクールアイドルフェスティバルのメインステージの出場枠かけてのイベントか・・・・・・。面白そうだな」
スクールアイドルフェスティバルのメインステージって言うとあのμ'sやAqours達と一緒のステージに立てるってことだよな?それは随分と生きの良いイベントだ。これでメインステージにみんなが立てばみんなはこれ以上無いほどのレベルアップを測れる。なおかつみんな憧れのμ'sやAqoursとライブ出来るんだ、良い刺激も貰えるだろう。
「こんな優良物件なイベント、出ないわけにはいかないよな。早速みんなに話してみるか!」
浮き足立つのを抑えながら、俺は部室に向かった。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
みんな「スクールアイドルフェスティバルの出場校枠が増える!?」
部室で俺が調べたイベントのことを話したら案の定みんな驚いていた。
「ああ、急な話だが次はこのイベントに出る事にするぞ?優勝すればみんなが憧れてるμ'sやAqoursと一緒にメインステージに立てるって話だ。出ない手は無いだろ?」
「た、確かにそれは魅力的ですが、でもまだ活動を始めて間もない私たちが優勝なんて出来るのでしょうか?」
「おいおい・・・・・・お前がそんな弱気になってどうすんだよ?俺としてはアニメや漫画のこと語ってる時ぐらいに情熱的になってくれた方がマシなんだけど?」
「そ、それは今は関係ありません!と言うかそれを皆さんの前で言いふらさないでください!」
顔を真っ赤にさせ叫ぶせつ菜にみんなが笑いを起こした。・・・・・・ったく、何でここで弱気になるんだか。
「活動の長さなんて関係ないだろーが?いくら活動を長くやってようがそれ=イベントで優勝できるって訳じゃないからな?大事なのはそのイベントで優勝するっていう強い気持ち!これなんじゃないのかよ?」
「・・・・・・」
「先に言っとくとな?みんなならきっと優勝出来るって思ってる。お世辞じゃない。昨日のイベントを見てても思ったがやっぱりみんなは凄い。これからもっと練習に励んで経験を積めばきっと凄い・・・・・・いや、あのμ'sやAqoursをも凌ぐスクールアイドルになれる!俺はそう思ってるんだが?」
「隆くん・・・・・・」
間違った事は言ってないと思う。確かにメインステージに立つ事はこの上なく難しい。だが、俺にはとてもそうは思えなかった。みんなならきっと優勝出来る!なぜかそう確信を持てたからだ。
「はぁ・・・・・・全く、隆にそこまで言われちゃったら私たちも頑張るしか無くなっちゃうじゃない・・・・・・」
「果林さん・・・・・・」
「先輩がそこまでかすみんのこと見てたなんて・・・・・・やっぱり先輩ってかすみんのこと・・・・・・」
「黙れかすかす」
「何でっ!?あとかすかすって言わないでください!」
「まぁまぁかすみさん。隆斗さん、私たちのことをそこまで見てくださってありがとうございます。貴方の期待にそぐわないような結果を出して見せますね?」
「おう。頼むぜしずくちゃん」
「不安はあるけど・・・・・・でも隆斗くんがそこまで期待してくれてるんだからしっかり応えないとね!」
「一緒に頑張ろうエマさん」
「愛さんも君には随分と良い言葉貰ったからね!愛さん頑張っちゃうよ!」
「お!良いね〜!その粋で頑張ろうぜ!」
「さっきは弱気なこと言ってしまいましたが・・・・・・貴方のおかげで目が覚めました!もう迷いはありません!私も一人のスクールアイドルとして全力で優勝を目指したいと思います!」
「やっといつものせつ菜に戻ったか・・・・・・。おう!俺も全力でサポートしていくわ!」
「彼方ちゃんも眠いんだけどさ〜?でも隆斗くんが彼方ちゃんに期待してくれてるなら応えないとだよね〜」
「おう。まぁ、でも睡眠はきっちり取れよ?」
「自信ないけど・・・・・・でも頑張りたい!だから、応援しててね?璃奈ちゃんボード【ペコリ】」
「もちろん応援する!良いライブ期待してるからな!」
「隆くんがあそこまで私たちのことを期待してくれてるなんて知らなかったけど、だからこそその期待を裏切りたくないの!だから・・・・・・私たちが優勝する姿を、見ててね?」
「はっ!もう優勝する気満々だな!ああ、特等席で見ててやる!」
メンバーからそれぞれ自分の気持ちを伝えられ、改めてそのイベントに対する意欲がみんなに備わったと俺は見た。
「よし!なら決まりだ!そのイベントで優勝するためにも、今日からの練習は今まで以上にハードにして行くからな!覚悟しとけよ!」
みんな「はい!!!」
こうして俺たちはスクールアイドルフェスティバルのメインステージの出場枠をかけてそのイベントに望むのだった・・・・・・。
いよいよスクフェスのイベント開催です!誰を優勝にするかな・・・・・・。
次回はイベント前夜です。
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イベント前夜
明日のイベントに向けての練習を終え、家に戻って来た俺は、風呂に入って夕飯を食べた後、せっかくだしと思いスマホを手にとった。そして俺は、同好会のメンバー一人一人に連絡を取るのだった・・・・・・。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
【歩夢】
『よっ!歩夢!今何してた?』
『え!?隆くん?どうしたのこんな時間に電話なんて?』
『暇だったから歩夢で遊ぼうかなって?』
『わたしおもちゃじゃないよ!?いきなり何言ってるの!?』
『なんてな。ちょっとお前のことが気になってさ?今日の練習中でもどこか緊張気味だったろ?』
『うん・・・・・・。あのスクールアイドルフェスティバルに出場できるかもって言う大きなイベントだもん。緊張もするよ・・・・・・』
『プレッシャーを感じるなって無理なことは言わない。ただ俺から言えることはだな・・・・・・とにかく今までやって来たことを全部出しきれ。そして・・・・・・ステージを楽しめ』
『楽しむ?』
『ああ。とにかく楽しむんだ。観客がお前を見てようがいろんなスクールアイドルがお前のことを敵視してようが気にするな。お前はただ、明日の自分のステージを目一杯楽しめば良いんだ!それが結果としてついてくるからさ!』
『そっか・・・・・・わかったよ。そうだよね。緊張して練習の成果が発揮できなかったら嫌だもん。・・・・・・わたし、明日はたくさん楽しんでくるね!』
『その意気だ。じゃあ、明日は楽しみにしてるからな』
『うん!ありがと!隆くん!』
––––––––––––––––––––––––––––––––––
【かすみ】
『かすかす〜、起きてるか〜?』
『かすかす言わないでください!それよりもどうしたんですか?あ、もしかして〜・・・・・・隆斗先輩ったらかすみんが恋しすぎて我慢できなくなって電話して来たんですね〜?も〜先輩ったら〜〜』
『あ〜、急に電話する気失せた。切るぞ?』
『なんで!?待ってくださいよ!?』
『ったく・・・・・・その様子なら明日のイベントも問題なさそうだな?』
『むぅ〜、かすみんだって緊張してない訳じゃないんですよ?いくらかすみんが世界一可愛くて魅力的なスクールアイドルでも、緊張するものは緊張するんです』
『まぁ、そりゃそうか。明日は大丈夫そうか?』
『あれ?いつもだったらここでボケかましてくるのに・・・・・・先輩、どうしちゃったんですか?』
『俺だって毎度毎度ふざけてる訳ねーだろ?かすみちゃんが緊張してる時に俺だけふざけててもしょうがないからな?』
『そうですか・・・・・・。先輩・・・・・・かすみんは明日・・・・・・上手くできますかね?』
『弱気になんなよ。かすみちゃんの魅力は誰になんと言われてもめげない気持ちとスクールアイドルへの愛情だ。その二つと今までの成果を明日のステージで発揮すれば良いだけの話だ。だから、今日はしっかりと寝て、明日に備えろよ?』
『先輩・・・・・・でも・・・・・・』
『はぁ〜・・・・・・大丈夫だって。かすみちゃんはさっきも自分で言ったように可愛くて魅力的なんだからきっと観客の心も掴むこともできるって。だから心配すんなよ』
『か、可愛いっ・・・・・・!?』
『?なんだよ?自分で言ってたじゃねーか?可愛いって』
『それはそうですけど・・・・・・自分で言うのと先輩から言われるのとでは全然・・・・・・』
『嫌だったら取り消すぞ〜?』
『それはダメ!・・・・・・はぁ〜、なんか今日の先輩と話してると調子狂います・・・・・・』
『なんだよ?せっかく褒めてるのに・・・・・・いつもの俺だったらこんなこと言わねーぞ?多分明日になったらいつものようにかすみちゃんをいじり倒して・・・・・・』
『なんでですか!?むしろ明日こそ今みたいに接して欲しいんですけど!?・・・・・・でも、それがほっとしますかね。なんだかんだ言って、先輩のその雰囲気と会話でかすみんもどこか安心できてるって感じがしてますし・・・・・・慣れって怖いですね?』
『はっ?何言って・・・・・・』
『ありがとうございます先輩!先輩と話せて色々ともやもやしてた気持ちが吹き飛びました!明日のステージでは、観客の皆さんと、隆斗先輩の心を掴んじゃうようなパフォーマンスにして見せます!』
『そっか。頑張れよ』
『はいっ!!』
––––––––––––––––––––––––––––––––––
【しずく】
『しずくか?悪いなこんな時間に連絡して?』
『いいえ、大丈夫ですよ。わたしも隆斗さんの声が聞きたいと思っていましたし』
『なら良いけどな。それでさ?明日に向けての準備は大丈夫そうか?』
『そうですね・・・・・・。まだ少し緊張してますけど、それでも頑張ろうとは思ってます』
『その意気だ。しずくちゃんには演劇部で培った技術や演技力があるんだから、明日はそれを生かしたパフォーマンスをすれば良いと思う。それと第一なことは・・・・・・楽しむことだ。それを忘れるなよ?』
『はい。そうでしたね。・・・・・・隆斗さん。一つ頼まれてくれませんか?』
『なんだ?』
『何かひとつ、エールの言葉をいただきたいです。隆斗さんが言ってくれれば、勇気が出る気がするので・・・・・・』
『エールね・・・・・・。・・・・・・明日は目一杯楽しんでこい。そんでもって俺を満足させるようなステージにしたら、頭撫でてやる!ってきな?』
『っ!・・・・・・ありがとうございます!では、明日は隆斗さんを”あっ!”と言わせるようなパフォーマンスをして見せますね!そしたら、頭撫でてください!』
『お、おう。頑張れよ・・・・・・(最後のは冗談のつもりだったんだがな〜?)』
––––––––––––––––––––––––––––––––––
【愛】
『愛〜、今いいか?』
『リュウ?電話なんて珍しいね〜?何か用かな?』
『用って言うか〜、愛なら心配ないとは思うんだが、緊張してないかなって思ってさ?』
『ん〜、緊張っていうか・・・・・・むしろ明日が楽しみで仕方ないんだよね!』
『だよな。お前が愛ならそう思うのは当たり前だ』
『どう言う意味!?・・・・・・だってさ?緊張してたって何も面白くないじゃん?せっかく大きなイベントに出られるって言うんだから楽しまないと勿体ないじゃん。だからさ?決めたんだ。明日は絶対に楽しんでやるって!』
『お前は相変わらずだな。ま、それなら何も心配はいらなそうだな』
『なになに〜?リュウってば愛さんの事心配してくれてたの〜?柄にもなく?』
『・・・・・・明日になったらステージ横から失敗するようにヤジ飛ばしてやろうか?』
『やめて!?ごめん、謝るからさ!』
『ったく・・・・・・とにかく明日は頑張れよ?俺だって愛には期待してるんだからよ・・・・・・』
『そっか。ありがと。じゃあ明日は期待してみててね!それじゃ!』
––––––––––––––––––––––––––––––––––
【璃奈】
『璃奈ちゃん。明日の準備はバッチリか?』
『どうだろ?まだなんとも言えない・・・・・・』
『璃奈ちゃんボードの調子は問題なさそうか?』
『さっきチェックしてみたけど、大丈夫だったよ。明日のステージでの問題は無さそう』
『ならあとは気持ちってか?璃奈ちゃんにはあまり個人的に練習見てあげることできなかったけど、大丈夫か?』
『大丈夫。むしろ今までにないくらいに仕上がってると思う。だから・・・・・・明日はそのわたしの姿を見て欲しいんだ・・・・・・隆斗さんに・・・・・・』
『もちろんじっくり見させてもらう。俺が見てるからって緊張して変なミスするなよ〜?』
『っ!大丈夫だってば〜!』
『ははっ!じゃ、今日はもう寝ろよ?明日に向けてな?』
『うんわかった。明日、楽しみにしてて!』
『おう、わかった』
––––––––––––––––––––––––––––––––––
【彼方】
『彼方さん。寝てそうだから、メッセージで送っとくけど、今日のステージ、今までの彼方さんの努力全てを出し切ってくれよ?俺は陰ながら応援してるからさ!』
『起きてるよー?なんでかわかんけど、いつもねむねむの彼方ちゃんが起きてるのだ〜。多分緊張かな〜?』
『彼方さんでも緊張するんだな?』
『人間だもん。緊張するよ〜。でもね?隆斗くんのこのメッセージだけでも十分力が貰えたよ〜。だから〜もう大丈夫〜。そう言うわけで〜おやすみ〜〜・・・・・・』
『はいよ。じゃあ明日な・・・・・・』
––––––––––––––––––––––––––––––––––
【エマ】
『エマさん。明日に向けて何か意気込みとかある?』
『明日か〜。そうだね、明日は観客の人たちがみんな笑顔で満足してもらえるようなステージにしたいかな?もちろん隆斗くんもね?』
『当たり前だろ?俺でさえ満足させられなかったら観客に満足なんてさせられねーぞ?』
『あはは、相変わらず厳しいね隆斗くんは・・・・・・』
『エマさんを想ってのことだ。だからと言って肩に力入れるなよ?いつもどおりリラックスした気持ちで臨むんだ。そうすればきっとエマさんの理想とするステージに出来るはずだ』
『うん。そうだね。なんかそう言ってもらえただけでも力が湧いて来たかも!明日絶対にいいステージにして見せるね!』
『おう!エマさんの勇姿をみんなに見せつけてやれ!』
––––––––––––––––––––––––––––––––––
【果林】
『隆から連絡なんて珍しいわね?』
『まあな。どうだ?明日のステージは最高なものに出来そうか?』
『もちろんよ。やるからには誰よりも一番になりたいもの。明日は今までにないくらいの最高のステージにして見せるわ!』
『そう言って明日ずっこけたら大笑いだけどな?』
『ええっ!?もう!隆ったら変なこと言わないでよ!』
『悪い悪い。ま、もともとスペックが高いわけなんだし、俺も果林さんなら一番になれるかもしれないって思ってるかな?』
『そう。それなら、貴方のその期待を裏切らないようにしないとね?』
『裏切ったら果林さんだけその後の練習・・・・・・倍な?』
『なんでよ!?・・・・・・はぁ〜よけい明日は負けられなくなっちゃったじゃない・・・・・・』
『そのくらいの気持ちで頑張れってことだ。さ、今日はもう遅いし、そろそろ寝ろよ?』
『ええ、わかったわ。明日は目に物見せてあげるわね?』
『ああ、楽しみにしてるわ』
––––––––––––––––––––––––––––––––––
【せつ菜】
『せつ菜〜、アニメ見てないで明日の準備しろよ〜?』
『へっ!?なんで知って・・・・・・・・・・・・見てません!準備だってしてます!』
『(絶対見てたな・・・・・・)それなら緊張だってしてないよな?』
『し、してないですよ。ええ・・・・・・』
『してるな?』
『うっ・・・・・・そ、そうですね。少しは・・・・・・だって仕方ないじゃないですか?明日のイベントの結果次第で夢のスクールアイドルフェスティバルに出れるって思うと、どうしても緊張してしまいます・・・・・・』
『ったく・・・・・・お前な?お前がスクールアイドルをやっているのはただ単にスクールアイドルフェスティバルに出るためか?』
『え!?そんなわけないじゃないですか!?わたしがスクールアイドルをしているのは、観客の皆さんを笑顔に、そして楽しくさせるために・・・・・・いえ、何よりわたし自身がスクールアイドルが大好きで・・・・・・・・・・・・あ・・・・・・』
『そう言うことだ。今のお前はスクールアイドルフェスティバルっていう言葉に執着しすぎなんだよ。お前は明日のステージ、ただ自分の気持ちに素直になって楽しめばいいんだよ。だから明日は、目の前のステージだけに集中しろ。それだけで十分だ』
『・・・・・・そうですよね。私ったら大切なことを忘れるところでした。ありがとうございます!明日は私のさいっこうに素敵なステージにしますからね!隆斗さんも応援しててくださいね!』
『おう!応援してるから頑張れよ!』
『はい!頑張ります!』
––––––––––––––––––––––––––––––––––
俺は、全員に連絡を取った後スマホを置いた。
「明日が・・・・・・楽しみだ・・・・・・」
俺はそう呟きながら、静かに夢の世界へと旅立っていった・・・・・・。
次こそ、イベントが終了です。
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イベントの結果・そして・・・・・・
そして翌日、昨日電話越しやメッセージ越しでは緊張気味だったみんなだったが、本番のイベントステージではそんな様子を微塵も感じさせないステージを披露した。俺から見れば、みんなは今までの中でも一番のステージを披露できたと思っている。
そして・・・・・・肝心の結果は・・・・・・・・・・・・。
「くぅ〜〜、せつ菜先輩!今回は優勝を譲りますけど、次は負けませんからね!!」
「ええ!臨むところです!私だってかすみさんに追い抜かれないように頑張りますよ!」
せつ菜の優勝で幕を引いた。とは言っても同好会のメンバーは全員が上位に食い込むほどの結果を残したため、多少の悔しさが滲んでいるものの、後悔をしているメンバーは誰一人としていなかった。
「ですが・・・・・・隆斗さん?これで私たちは・・・・・・スクールアイドルフェスティバルに出れるってことですよね?」
「そういうことだ。ここで優勝できなくて悔しい思いをした奴は、その気持ちをスクールアイドルフェスティバルでぶつけることだ。そうすればやりがいもあるだろ?」
「そうだね〜。彼方ちゃんも珍しく燃えてるよ〜〜」
「うん!私も!せっかくμ'sとAqoursと同じステージに立てるんだもん!精一杯頑張りたい!」
「ああ、でなんだがな?」
みんな「??」
みんなが俺の方へ視線を向ける。
「先に言っておくと、スクールアイドルフェスティバルは一人一人もそうだが、グループでもライブをするらしいんだ。だから、みんなにはグループでもステージに出てもらうことになるが、いいか?」
「へ〜?グループでなんてやった事ないけど、愛さん一度みんなと一緒にステージに立ってみたかったんだよね!あたしは大賛成だよ!」
「愛はこう言ってるが、みんなはどうだ?」
俺は改めてみんなに聞いてみたが、特に反対の意見が出なかったため、みんな賛成と判断した。
「じゃあこれからはグループに向けての練習も追加するけど、だからと言って個人の練習が疎かになるなんて事許さないからな?みんなが際立つのはやっぱり、ソロでの活動なんだからさ?」
みんな「はーい!!」
そんなわけで、俺たちの次の目標、スクールアイドルフェスティバルに向けて俺たちは前進していくことになった。今後がどうなるのかは俺にもわからないが、俺が出来ることはただ、同好会のメンバーのために曲を作り、見守ることだけだ・・・・・・。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
イベントが終了し、俺たちはひとまずいつも通りの学生生活に戻った。とは言ってももう直ぐ夏休みだったから直ぐに休みに入るんだけどな。期末テストも無事に・・・・・・かすみちゃんと果林さん以外は無事に終了し、俺たちは夏休みを満喫することにした(赤点をとった二人には後でお灸を据えておいた)。
各自、夏休みは自由に過ごすんだろうけど、俺は同好会の活動が休みの日を利用して、あることを計画していた。・・・・・・それは。
「沼津旅行ーーーってなんでやねん!?・・・・・・・・・・・・ノリツッコミしてる場合じゃないよな・・・・・・ちゃんと理由あって沼津きてるし・・・・・・」
沼津に行き、Aqoursに会うことだった。理由としては簡単で、せっかく一緒のステージに立てるのだから挨拶をしにいくのと、実際にAqoursの練習や活動などをみて、今後の同好会の練習の参考にならないかと思って勉強させてもらうことにしたんだ(ちなみに同好会のみんなには事前に伝えてある)。
「とは言っても、どこに行けば会えることやら・・・・・・住所なんて知らないし、ぶっちゃけ顔もよく知らないんだよな。とりあえず、浦の星女学院に行ってみるか。そこにAqoursが通ってるって話だし・・・・・・」
とりあえず浦の星女学院に向かうことにした俺は、沼津を観光しながらそこに向かった。意外と浦の星女学院まではそこまで遠くはなく、数十分程度で着く事ができた(学院前の長い登り坂が少しキツかったが)。
「ここか・・・・・・。さて、Aqoursのメンバーはどこかな・・・・・・っと、すみませーん!」
俺は校門近くにいた一人の生徒さんにそれとなく声をかけてみた。
「はい?」
「今って、Aqoursのメンバーってだれか学院の中にいたりします?」
「そうですね・・・・・・今日は特に夏季講習もありませんし、それにAqoursのみなさんは祭りの準備をするって言ってましたよ?」
「祭り?」
「沼津サマーフェスティバルのことです。多分Aqoursの皆さんはそっちのお手伝いに行ってるんじゃないかと・・・・・・」
そうか。・・・・・・そうなると今日会うのはキツそうだな・・・・・・。仕方ない。
「わかりました。ありがとう」
「いえ・・・・・・」
俺はその子にお礼を言い、学院を後にした。このまま今日を終えるのは釈だったから、せっかくの沼津なんだし観光でもしようと街の中をぶらつくことにした。さすがに海沿いの街ということもあって、海鮮系や海にまつわる特産物などもたくさんあった。
「(帰るときにでもみんなにお土産買っていくか〜・・・・・・って、あれは?)」
土産ののことを呑気に考えてた俺だったが、道を少し外れたところで何やら”男女が揉め合う声”がしたため足を止めた。さりげなく近づいて聞く耳を立ててみると・・・・・・。
「だから行かないって言ってるでしょ!」
「いいじゃん!俺たちと一緒に飯行くぐらいさ?」
「私たちこの後用事があるんです!放っておいてください!」
「へ〜?そうやって怒鳴る姿もまた可愛いね?俺の好みだわ〜」
「うぇ・・・・・・何この人達・・・・・・」
聞いたところ、どうやらあの男二人にあの女の子3人がナンパされてるようだな。はぁ〜・・・・・・面倒なな状況に立ち会ったもんだ。とはいえ、あの子たち困ってるみたいだし・・・・・・助けるとするか。内心溜め息を吐きながら、俺はその場に割って入った。
「よっ!待ったか?」
3人「・・・・・・え?」
「あぁ?誰だてめぇ・・・・・・?」
「野郎はお呼びじゃねーんだよ?」
二人の男が俺を威圧してくるが、俺にとっては全然怖くなかった。むしろこのぐらい余裕だった。
「誰って・・・・・・この子たちの友達だけど?俺とこの子たち待ち合わせしてたんだけど、俺が待ち合わせ場所間違えてたみたいでさ〜?」
3人「・・・・・・」
女の子たちは全く知らない俺の友達発言に唖然としていて、言葉が出ない様子だった。まぁ、今はそれの方がありがたいけどな。
「で?あんたら何なの?もし、無理やりにでも俺の友達を・・・・・・ナンパでもしてたんだとすれば・・・・・・わかるよな?」
男2人「「うっ・・・・・・」」
俺は二人を睨みながら110番の番号が載ったスマホを見せびらかした。ボタン一つで警察に通報できる状態だ。
「警察にチクられたくないんだったらさっさと失せろ・・・・・・。それと、二度とこの子たちに近づくんじゃねーぞ?いいな!」
男2人「「・・・・・・っ!!」」
男2人は自信に身の危険を感じたのか、その場からすごすごと去っていった。男たちが離れたことを確認した俺は、後ろの女の子たちの方へ向き、優しく微笑んだ。
「大丈夫だったか?もう安心していいぞ?」
「え、ええ・・・・・・ありがとうございます・・・・・・」
「ああいう輩って本当に絡まれると厄介だよな?今後はもっと気をつけてろよ?」
「は、はい・・・・・・」
「よし。じゃ、俺は行くわ。じゃあな!」
3人の身の安全が確保できたと判断した俺は、そのままその場を後にした。こっちにきていきなりあんな人助けするなんてな・・・・・・。
「千歌ちゃん、あの人・・・・・・誰だったんだろ?」
「わかんない。でも・・・・・・」
「そうよね・・・・・・」
「「「かっこよかったな・・・・・・あの人・・・・・・」」」
【イベントが終わった後の控え室】
「隆斗さん!今回の私のステージはどうでしたか?」
「ん?ああ、すごくよかった。しずくちゃんの良さがバッチリ出てたよ」
「そうですか。よかったです!じゃあ・・・・・・」
「ん?どうした、頭なんて差し出してきて?」
「昨日の約束です!頭撫でてください!」
「へ?・・・・・・ああ、そういえばそうだったな・・・・・・・・・・・・(ナデナデ)・・・・・・これでいいか?」
「えへへ〜ありがとうございます!」
「あー!しず子だけずるいです〜!!かすみんも撫でてくださーい!」
「わ、私も!」
「お、おいおい・・・・・・」
結局この後、俺は同好会のメンバー全員を撫でることとなった・・・・・・。
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Aqoursに会いに
人助けをした後、俺は適当に沼津を観光し、旅館に泊まることにした。街マップで見たところ、旅館は結構な量があり、正直どこに行こうか迷っていた。そんな中、一つの旅館に目が止まった。
「十千万旅館か・・・・・・」
その旅館は他の旅館よりも料金が安く、料理も美味しいということで有名らしい。俺もそこまで持ち金があるわけでもなかったから、とりあえず今回泊まる旅館はここにすることにした。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
「さて、ここで合ってるよな?」
マップを頼りに歩き続けること数十分、俺はようやく目的の旅館【十千万旅館】にたどり着いた。
「へ〜?思ったより立派な旅館だな。これなら人気なのもわかる。・・・・・・って、あんまり旅館前でうろうろしてても仕方ねーか。ひとまず中に入ろう・・・・・・」
旅行鞄をしっかりと肩に掛け直し、俺は旅館の中に入った。
「すみませーん!」
「はーい!今行きまーす!」
玄関先で俺が一声かけると、旅館の中から一人の女の子の声が帰ってきた。・・・・・・店番は女の子がしてるのか?まぁ、旅館によって違うんだし別にいいか。
「お待たせしまし・・・・・・た?」
「ん?あれ?君は昼に会った・・・・・・」
中から出てきたのは、オレンジ色の髪色をしていて、三つ編みにした髪型が何とも可愛らしい俺と同い年くらいの女の子だった。というか、この子さっき街でナンパされてたあの女子3人組の一人じゃねーか?・・・・・・こんな偶然あるもんなんだな。
「あ、えっと・・・・・・さっきはありがとう・・・・・・ございます」
「気にしなくていいよ。それより、ここの旅館に泊まりたいんだけど・・・・・・君も泊まってるの?」
「ああ、違います。ここ、わたしの家なので・・・・・・」
やっぱりそうか。そうじゃなきゃこうして出迎えてなんてくれないよな。・・・・・・ってかなんかこの子の顔、赤くなってないか?気のせいだろうか?
「部屋って空いてるかな?」
「えっと、今ですと一部屋だけなら空いてます」
「よかった。じゃあそこに泊まらせてくれるか?」
「は、はい。わかりました。少しお待ちください・・・・・・」
その女の子はそう言うと、一度中へ引っ込んでいった。それから数分後、許可が取れたみたいで俺は部屋へと通された。一人が使うにしてはかなり広めの部屋だったが、広い分には問題なかったから気にしなかった。荷物をおいた俺はやっと一息がつけると、腰を落とした・・・・・・んだけど、すぐに襖がノックされた。
「はい?」
「浴衣をお持ちしたんですけど〜、入っても大丈夫ですか?」
声からするに、さっきの女の子だろう。浴衣を持ってきたって言ってたな?
「どうぞ」
「失礼します・・・・・・」
襖が開くと、案の定先ほどの女の子が入ってきて浴衣を持ってきてくれた。あ、そうだ。せっかくだしこの子にも聞いてみるか。
「じゃあ、わたしはこれで・・・・・・」
「ねえ、ちょっといいかな?」
「っ!?な、何ですか?」
俺が声をかけてくる事が予想外だったのか、声が上ずっていた。とりあえずそこはスルーしておこう・・・・・・。
「君って高校生?」
「へ?は、はい。そうですけど?」
「じゃあ浦の星女学院に通っていたりする?」
「通ってますよ。と言うか、ここら辺の子たちはみんな通ってます」
「じゃあAqoursって知ってるよね?その子たちっていつもどこで練習してたりするってわかったりする?俺、Aqoursに会いにきたんだ」
「え?
「・・・・・・・・・・・・は?」
今、聞き捨てならないことをこの子の口から聞いたような・・・・・・とりあえずもう一度聞いてみよう。
「今、なんて言った?」
「へ?だから
再びそう言う彼女。・・・・・・どうやら俺の聞き間違いではなかったみたいだ。まさか目の前のこの子が・・・・・・Aqoursなんてな・・・・・・。
「・・・・・・まじかよ」
––––––––––––––––––––––––––––––––––
「えっと・・・・・・つまりだな?君があのAqoursのメンバーってことであってるか?」
「は、はい。一応リーダーをやらせて貰ってる高海千歌と言います」
「あぁ、君が高海千歌さんだったんだ。歩夢からいつも聞かされてたよ。いつもキラキラ輝いていて憧れだってな」
俺がそう言うと、高海さんはどこか誇らしげに笑った。どうやら憧れられてたと聞いて嬉しくなったんだろう。
「そ、そうだったんだ。嬉しいな〜。あ、えっとさっき言った歩夢ちゃんって・・・・・・もしかして虹ヶ咲学園の上原歩夢ちゃんですか?」
「歩夢のこと知ってるのか?ああそうだ。俺もあいつも幼馴染でさ?今は俺たち、虹学の同好会に入ってるんだ」
「わたし達やμ'sと同じステージに立つスクールアイドルですからね。知ってて当然です・・・・・・え?幼馴染?虹学に入ってる?・・・・・・あれ?もしかして貴方って・・・・・・高校生ですか?」
高海さんからのその一言に俺は地味に傷ついた。俺ってさっきから高校生に思われていなかったんだな・・・・・・それならさっきからの高海さんのよそよそしい態度にも納得が行く。・・・・・・そこまで老け顔ではないと思うんだけどな〜俺って・・・・・・。
「高校生だよ。バリバリのな?・・・・・・自己紹介してなかったな。俺は虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の部長の鈴木隆斗だ。高校二年生な?」
「え〜!?同い年だったんですか!?」
「そんなに驚くなよ・・・・・・傷つくだろーが・・・・・・。だから別に無理に敬語なんて使わなくていいぞ?」
「そうなんです・・・・・・そうなんだ。び、びっくりした・・・・・・」
しくしく・・・・・・もういっその事嘘言ったほうが傷つかないで済んだかもしれない・・・・・・。
「それでさ、高海さん・・・・・・」
「千歌でいいよ?同じスクールアイドルフェスティバルに出る仲間なんだしね。そっちはどう呼んで欲しい?」
「俺は何でもいい。鈴木でも隆斗でも隆ちゃん♡でもいいけど?」
「何で最後ハートマークついてるの!?・・・・・・と、とりあえず隆斗くんって呼ばせてもらうね?」
「おう。よろしくな、千歌!」
「っ・・・・・・う、うん」
俺が手を差し伸べると、一瞬何かに躊躇したように見えたけど、結局握手には応じてくれた千歌。この子ともいろいろ同じスクールアイドルに携わるものとして、関係を深めていかないとな・・・・・・。
「・・・・・・なぁ、千歌。俺ってそんなに老け顔に見えるか?」
「え!?何でっ!?」
「千歌がさっき俺が言うまでずっと俺のこと高校生じゃないって思い込んでたろ?だから俺って高校生には似つかない老け顔なのかなって思ってさ?」
「そ、そんなことないよ!?そうじゃなくて・・・・・・何というか、同じ高校生にしては妙に大人びいてたし・・・・・・・・・・・・・・・・・・カッコ良かったから・・・・・・」
「?それならいいが・・・・・・最後なんて言ったんだ?」
「な、何でもないよ!?気にしないで!」
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早朝での出会い
千歌の実家の旅館で一晩を過ごした翌日、布団から出た俺は朝の空気を吸おうと旅館を出ていた。東京の騒がしい朝とは違い、物静かで空気も澄んだ朝だったこともあって、俺は新鮮な気持ちに浸っていた。
「朝飯まで時間あるし、軽く散歩でもするか」
現在の時刻は朝の6時。朝食の時間は7時だから約1時間は猶予があった為、せっかくだしと思い、ここら辺を散歩することにした。海辺の近くだったこともあって、海からの潮風が体や顔に当たってくる為、若干塩でベタつくのが少しだけ気持ち悪かったのは否めなかったけどな。
「・・・・・・にしても外れまでくると本当に何もないよなここ・・・・・・。東京とは大違い・・・・・・ん?」
しばらく散歩を堪能していると、前方から誰かがランニングしてくるのが見えた。こんな朝っぱらからランニングしてるやつもいるんだな〜っと感心していると、向こうも俺のことに気がついたようで、俺の近くまで来ると声をかけてきた。
「おはよ。あれ?ここらじゃ見ない顔だね?旅行にでも来てるの?」
「まあそんなもんです。というか、よく俺が見ない顔だってわかりましたね?」
「ここらへんの人の顔は大体知ってるからね。知らない人がいたらすぐに気づくよ?」
どこか人懐っこく、汗を拭いながらそういう彼女は、藍色の髪をポニーテールで縛ってる何とも大人びた女の人だった。
「今はどこに泊まってるの?」
「俺は十千万旅館です。安いし料理も美味しいと評判だったので・・・・・・」
「へ〜?千歌の旅館に泊まってるんだ〜?あたしのおすすめは魚の煮付けかな?」
常連さんみたいなことを言うなこの人・・・・・・。いつも食いに行ってるのか?・・・・・・ん?この人、千歌って言ったよな?
「あれ?千歌の知り合いですか?」
「ん?そう。幼馴染なんだ。・・・・・・君こそ、千歌の知り合いかな?あれ?もしかして〜・・・・・・彼氏さん?」
「何言ってるんです?アホ?」
「いきなりどストレートだね!?キミ!」
朝っぱらから大声を出さんでもらいたい。彼氏なんて、んなわけねーだろーが?出会って1日だぞ?そんな短時間で恋仲になるとかどんな奴らなんだよ・・・・・・。
「昨日知り合っただけです。彼氏なんてことは絶対に無いんで勘違いはしないでください」
「そ、そう?ごめんね?あ、あたしは松浦果南。この近くの浦女に通ってる3年生なんだ〜」
「先輩だったんですね。俺は鈴木隆斗。高2です」
「そっか。隆斗だね。あ、別に年上だからって敬語とか要らないよ?あたしは特に気にしないから」
「それならそうしよっかな?敬語って結構疲れるし・・・・・・」
やっぱりこの人はどこか人懐っこいって言うか・・・・・・話やすい人だな。俺にとってはこう言う人の方が好きだな。
「あ、そうだ。隆斗はこれから旅館に戻るんでしょ?なら、あたしも一緒に行くよ。千歌にちょっと用事もあったからさ?」
「そっか。それならそうするか」
「決まりね!じゃあこっからは走って行こ!隆斗もついて来てね!」
「は!?いや・・・・・・まじかよ・・・・・・」
俺が何か言おうとする前に松浦さんは勢いよく走り出して行った。・・・・・・走るのは別に構わないんだが・・・・・・せめて準備運動くらいさせてくれよ。そんな余裕もないような為、俺は渋々走って追いかけることにするのだった・・・・・・。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
「か、果南ちゃん!?それと・・・・・・隆斗くんまで・・・・・・。こんな朝早くから何でそんなに息切らしてるの!?」
「「この人が悪い!!」」
俺と松浦さんの声が被る。
「どう考えてもあんたのせいだろ!?何で俺があんたに追いつこうとするたびに走るペース上げんだよ!」
「だって、まさか追いついてくるなんて思ってなかったんだもん!抜かれたくないと思ってペース上げれば同じようについてくるし〜・・・・・・だからこんなに疲れたのはキミにも原因があるんだからね!」
「理不尽だ!」
朝から俺と松浦さんの声が響き渡る。久しぶりにマジで走ったこともあって、疲れていた為、朝だとか言う配慮みたいなものは頭からすっ飛んでいた。・・・・・・後々、旅館の女将(千歌のお母さん)に俺と松浦さんは叱られることとなった。
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新たな出会い
朝から松浦さんとのランニング勝負を存分に堪能し、最終的に朝っぱらから大声で二人で言い合いをしていたことを千歌のお母さんにこっぴどく叱られた後、俺は朝食を摂るため、部屋に戻ってきていた。千歌は着替えてくると言って自分の部屋に戻り、松浦さんは・・・・・・なぜか俺の部屋まで来ていた。
「何であんたまで来てんだ?」
「え?だって千歌の知り合いだっていうキミのことをあたしは全く知らないし、キミともっとちゃんと話してみたかったからかな?」
「暇人か?」
「違うからっ!・・・・・・って、大声出したらまた叱られちゃうよね。・・・・・・とにかくさ?まずはキミのことを教えて欲しんだ。話せる範囲でいいから教えて?」
「まぁ・・・・・・いいけどさ」
そんなわけで、俺は松浦さんに簡単に自己紹介とここに来た目的を話した。最初は黙って聞いていた松浦さんだったけど、俺がここに来た目的を話した辺りで、その表情はなぜか徐々に明るくなり始めた。
「何でそんなににやついてるんだ?」
「え?だって・・・・・・”あたし達”Aqoursに会いに来たって言ってくれたから嬉しくってさ〜。つい嬉しくなっちゃって・・・・・・」
・・・・・・この展開、千歌の時にもあったな。という事はこの人もやっぱり・・・・・・。
「松浦さんもAqoursのメンバーだったんだな?・・・・・・ったく、そうならそうと早く言ってくれりゃいいのに」
「言う暇無かったんだよ。ごめんごめん。あ、後あたしのことは”果南”で良いからね?そっちの方が呼ばれ慣れてるし」
「じゃあ、果南さんで」
話に区切りが付いたところで、先ほど運び込まれた朝食に手をつけた。アジの干物が脂が乗っていて美味くてご飯が進む!やっぱ海沿いの旅館はこうでなくちゃな!
「・・・・・・」
「(もぐもぐ)・・・・・・ん?どうかしたか?」
朝食を口に運びながらふと視線を感じた俺は隣に座っていた果南さんを見た。だが、よく見てみるとこの人が見ているのは俺ではなく、目の前にある俺の朝食だと言うことに気がついた。・・・・・・あ〜、そう言うわけね?何となく察した俺は、干物の一切れを果南さんに差し出す。
「少し食べるか?食べたいんだろ?」
「・・・・・・へっ!?い、いや・・・・・・誰もそんなこと言ってないけど?」
「よだれ垂らしながらこっちを見てたあんたに言われても何の説得力もねーけど?」
「よだれなんて垂らしてないから!!ただ少しお腹が空いて・・・・・・あっ」
果南さんが何か言い訳を話そうとした直後、俺ではない誰かの腹の音が部屋中に鳴り響いた。俺じゃないとすれば、もういるのは果南さんしかいない訳で・・・・・・。
「あ〜、身体は素直だな」
「う〜〜・・・・・・男の子に聞かれるなんて・・・・・・不覚・・・・・・」
「果南さんでもそんな顔できるんだな?」
「そんな顔って・・・・・・どんな?」
「今みたいな照れた顔。果南さんって意外としないのかなって思ってたけど、そんなことなかったわ」
「っ・・・・・・」
ぼんっと音が出そうなくらいに、果南さんの顔が真っ赤に紅潮する。
「ほらっ、遠慮しないで食べていいからさ?」
「・・・・・・えっ?隆斗が食べさせてくれるの?それはさすがに・・・・・・」
「果南さんが考えてる事は何となくわかるけど、こんな程度で俺が果南さんにやましい感情抱く訳ないからな?」
「・・・・・・なんか女の魅力がないって言われてるみたいで腹が立つんだけど?」
「何だよ?可愛いとでも言って欲しいのかよ?」
「〜〜〜っ!!も、もういいっ!!」
さらに顔を真っ赤にさせた果南さんは俺の差し出したアジの干物に豪快に食らいつくと、そのままそっぽを向いてしまう。その光景は何と言うか・・・・・・面白いと言うか・・・・・・可愛らしいと言うか・・・・・・言うとまた怒られそうだからやめとこう。その後、朝食を食べ終わった俺は果南さんと共に千歌を待つのだった。
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Aqours2年生 邂逅
「で、これからどこ行くんだ?」
「浦女かな。他のみんなにも隆斗くんの事紹介したいからさ?いいよね?」
「元々Aqoursに会うために来た訳だし、むしろ大歓迎だな。そうしてくれ」
朝食を摂った後、俺は千歌と果南さんに連れられて、浦女(千歌達の通う女子高校)へと向かっていた。何でも俺をAqoursに紹介したんだとか。千歌の旅館からは少し離れた場所にある浦女だったが、特段疲れるような距離ではなかったため、特に問題なく浦女へと着くことが出来た俺たちだった。
「隆斗って虹学に通ってるんでしょ?虹学って聞いた話だとすっごく大きな学校なんでしょ?うちの学校と比べてどう?」
「デカさならこの学校の倍以上はあるな。それに生徒数も馬鹿みたいに多いからクラスもめちゃくちゃ多いな」
「うへ〜・・・・・・わたしだったらちょっと嫌かも?そんなに人が多いとこって好きって訳でもないし、うるさそうだから・・・・・・」
「千歌ってそういうとこ好きだと思ってたわ。そういう見かけだし?」
「どういう意味!?」
「ほらほら?そんなとこで喋ってると他の子に迷惑だよ?早く中に入ろ?」
「果南ちゃんが話振ったんでしょ!もうっ!」
果南さんと千歌が学校の中に入っていくのを、俺は”校門の前”で静かに眺めていた。なんで入らないかって?そりゃ当たり前だ。何せ・・・・・・。
「隆斗?どうしたの?早く来なよ?」
「そうだよ。みんなに会いたいんでしょ?」
「お前ら・・・・・・忘れてないか?ここ・・・・・・
「「あっ・・・・・・」」
忘れてたとでも言わんばかりに顔を強張らせる二人に、内心でため息を吐いた俺だった。俺が浦女の敷居を跨がないのは単純に俺が男でここが女子校だからだ。流石に女子しかいない学校で男の俺がお邪魔するのは気が引ける。ある意味、俺が中に入ったら色々と問題になることは間違いないからな。・・・・・・最悪不法侵入で逮捕されても不思議じゃないぞ?・・・・・・ったく、俺的にはここで俺を待たせ、校舎から他のAqoursのメンバーを連れてくると思っていたんだが、こいつらと来たら・・・・・・。
「た、多分大丈夫だよ・・・・・・多分?」
「・・・・・・俺に『女子校に無断で入り込んだ、エロくて変態のダサかっこ悪い男学生』っていうレッテルを貼らせたいのかバカ千歌?」
「バカってなに「あんっ?」・・・・・・すいません。確かにそれはまずいよね・・・・・・ん〜、そうすると、どうしよっか?」
「いや、普通にみんなをここに連れてくれば良いだけの話でしょ?それなら問題無いはずだけど?」
「それだっ!果南ちゃん頭良い!!」
千歌はそう叫ぶと同時にすぐさま校舎内へと入っていってしまった。思い当たったらすぐさま行動・・・・・・ある意味おもしろい子だな千歌って・・・・・・馬鹿っぽいけど。
「ごめんね〜?千歌って普段からあんな感じだから。でも、そんなあの子だからこそあたしたちを支えてくれたり、引っ張っていってくれたりするんだ。だからあたし達もあの子のことは同じメンバーとして・・・・・・友達として認めてる。ちょっと頭の回転が遅いのが玉に瑕だけど・・・・・・」
「千歌と一緒に俺に女子校の門を潜らそうとしてたあんたも人のこと言えない気がするんだが?」
「(ギクッ)そ、それは成り行きで・・・・・・じ、じゃああたしもみんなのこと呼んでくるね!待っててねー!」
明らかに動揺した果南さんは、千歌同様にピューッと校舎内へと入っていった。あの様子だと果南さんもおそらく・・・・・・考えるのはやめとこう。とりあえず俺は、その場で二人が来るのを待つことにするのだった。
それから数十分後、スマホをいじりながら待つ俺の元に二人が他のAqoursのメンバーを連れて戻ってきた・・・・・・んだが、見たところ二人を含めて何故か4人しかいなかった。確かAqoursって9人グループだよな?
「お待たせ〜!連れてきたよ〜!」
「ああ、それはありがたいんだが・・・・・・なんでそれだけしか居ないんだ?まだ学校に来てないのか?」
「うん、そうらしいんだ。だからとりあえず居た二人を連れてきたって訳。というわけで、先にこの子達だけに自己紹介してくれる?」
うん、だよな。一瞬うちの時みたいにメンバーが離脱してるっていう事態になってると思ったけど、流石にそれはなかったようでホッとした。よし、とりあえずこの二人に自己紹介を・・・・・・って、ん?
「あれ?君たちって千歌と一緒にいた・・・・・・」
「うん!そう!あの時私と一緒にいた・・・・・・」
「お前に聞いちゃいねーわ」
「話してる最中なのにひどくないっ!?」
「まあまあ・・・・・・はい、そうです。あの時は助けてくれてありがとうございます」
「ろくにお礼も言えずにごめんなさい。改めて、助けてくれてありがとうございました」
「おう、サンキューな」
二人が連れてきたのは、俺がナンパから助けたあの時、千歌と一緒にいた女の子二人だった。二人もここの生徒だったんだな。
「自己紹介してなかったな。俺は虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の部長をやってる鈴木隆斗です。今回はAqoursに会いにここまで来ました」
「そ、そうなんですね。あ、私は2年の桜内梨子です。よろしくお願いします」
「私は2年の渡辺曜。よろしくです!」
「よろしく。2年ってことは俺とタメな訳だし、敬語はいらないぞ?」
「「2年生だったんですか!?」」
「・・・・・・」
千歌と全く同じ反応をした目の前の二人にまた心の傷を抉られた。・・・・・・やばい、泣きそうになるんだが?
「千歌・・・・・・泣いていいか?」
「泣かないで!?二人も多分わたしと同じ理由だと思うからさ?」
「えっと・・・・・・なんかごめんなさい?」
「気にすんな。もう慣れたし・・・・・・ぐすん・・・・・・」
「その様子だと全然そうは思えないんだけど・・・・・・」
目尻に涙を溜めつつも、何とか下に落とすことは防げた俺は、二人にもっと話を聞こうと少し距離を詰めようとした・・・・・・んだが・・・・・・。
「ま、それはいいや。でさ・・・・・・」
「「っ!」」
「はっ・・・・・・?」
何故か二人がみじろぎ、俺から一歩距離を取るように下がった。・・・・・・何でだよ?
「何だ?どうした?」
「いや・・・・・・その・・・・・・」
「き、気にしないで?ちょっと驚いただけだからさ?」
そんなにおろおろしながらそう言われても気にせずにはいられないんだがな?でも本人達は気にすんなって言ってるわけだし、下手に詮索しないほうがいいか。
「・・・・・・なら良いけどさ?他のメンバーはもうそろそろ来るか?」
「多分そろそろ来ると思うけど・・・・・・」
「じゃあ少しだけ待たせてもらうわ」
とりあえず、メンバー全員が揃うまで待つことにした俺は、その場で少々待たせてもらうことにするのだった。
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Aqours勢揃い!
待たせてもらうこと数十分、ようやくAqoursのメンバー全員が校門の前に集まった。集まったことを確認した俺は、校門に寄りかかっていた体を起こし、改まった姿勢で再度自己紹介をした。
「忙しい中集まってくださりありがとうございます。俺は虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の部長をしている鈴木隆斗です。どうぞよろしくお願いします」
「お、おぉ・・・・・・隆斗くんがいつになく真面目になってる」
「ん?俺はいつも真面目だと思うが?」
「日頃の行いを見ても、そうとは到底見れないけどね?」
俺の真っ当な自己紹介に千歌と果南さんから指摘が入った。・・・・・・失敬な。
「東京からわざわざお越しいただいて有難うございます。この学院の生徒会長でもあります、黒澤ダイヤと申します。どうかよろしくお願いしますわ」
「ご丁寧にどうもです」
挨拶をしてきたのは黒いロングヘアーが特徴的な黒澤ダイヤさんだった。見たところ、果南さんが着ている制服と同じものを着ていたから、この人も3年生なんだろう。・・・・・・ってか、生徒会長って・・・・・・せつ菜と気が合いそうだ。
「じゃあ、ダイヤさんが自己紹介した事だし、みんなも順番ずつで自己紹介して行こっか!」
千歌からそう言われると、そこからAqoursの自己紹介のオンパレードがスタートした。すでに自己紹介を終えたダイヤさん、千歌や果南さん、渡辺さんや桜内さんを除いた残りの4人は・・・・・・なんとも俺的に言わせれば個性的なメンバーだと感じざるを得なかった。ニジガクもかなり個性的なメンバーが集まっているとは思うが、正直Aqoursの方も負けてないんじゃないか?
まず最初に自己紹介をしたのは、1年生の黒澤ルビィちゃん。苗字からも分かるように、この子はダイヤさんの妹さんで、綺麗な黒髪をしていたダイヤさんとは対照的に、ワインレッドの色合いをした髪をツインテールで結えているなんとも可愛らしい女の子だった。ダイヤさん曰く、俺・・・・・・と言うか、男性とあまり話した事が無く、苦手な様だから、この子と接するときには注意が必要だと言う事がわかった。
次は、国木田花丸ちゃん。同じく1年生だ。語尾に『ずら』をつけると言うなんとも特徴的な喋り方をする子で、ある意味新鮮で面白い子だと思えた。この子は内浦にあるお寺の一人娘のようで、そこで過ごすに連れてこんな口調になったらしい。
お次は津島善『ヨハネよ!!』・・・・・・津島ヨハネ改め、津島善子ちゃんだ。さっきの言動からも分かる通り、この子は・・・・・・中二病を拗らせてる。さっきだって『さぁ、新たなるリトルデーモン?・・・・・・我の眷属となれること・・・・・・ひどく光栄に思うが良いわ!!あっはっは!!』・・・・・・なんて叫んでたしな。ニジガクにこんな属性を持つメンバーはいなかったから面白かったけど、毎回毎回相手をすると流石に疲れるから、今後はなるべく傷をつけずに流せる様工夫をしていこうと思っている。
最後は3年生の小原鞠莉さん。小原財閥の娘であり、近くのホテルを経営している名家の出らしい。驚きなことに、この人は高校生でありながらこの学院の理事長でもある様で、かなりの権力者であると言う事がこの場でよくわかった。とはいえ、メンバーのみんなは彼女が理事長だからといって特に態度を改めると言うこともなく、友達の様に気軽に接していた。イタリア人のクォーターでもあるらしいが、日本での生活も長いようで日本語もペラペラだ。
「これで全員かな?・・・・・・うん、全員だね!じゃあ、改めて・・・・・・隆斗くん!」
「「「「「「「「「ようこそ!浦の星女学院へ!!」」」」」」」」」
自己紹介を終えた俺は、改めてAqoursのみんなから歓迎されることとなった。
––––––––––––––––––––––––––––––––––
「・・・・・・俺がまさか、女子校の門を潜る事になるなんて・・・・・・人生何があるか分かったもんじゃねーな・・・・・・」
自己紹介の後、俺は何故か普通に学校の中へと案内をされた。・・・・・・さっきも言ったが、ここは女子校で本来男である俺が立ち入れる場所ではない。・・・・・・なのになぜ俺が普通に通されているのかというと・・・・・・。
「ノープロブレムよ!理事長であるマリーの権限で、あなたは入校オーケーにしておいたから!」
・・・・・・こんな感じで、小原さんに入校を許可してもらえたからなんだが・・・・・・”理事長権限”ってそんな軽々しく使って良いものじゃない気がするんだが?
「それなら良いんですけど・・・・・・さっきから視線が痛い・・・・・・場違い感が半端じゃねーな・・・・・・」
「あはは・・・・・・男の隆斗くんが珍しいんだと思うよ?普通、この学校で男の子なんて見かけないから。それに、隆斗くんは顔も整っていてカッコいいから尚更目を惹くのかもね」
「マジ?それなら見られても文句ねーな。一気にテンション上がったわ」
「・・・・・・謙遜はしないんだね?普通そこは『俺なんて、全然カッコよくなんてない』なんて言う所じゃないの?」
「どこのラブコメ主人公だよ。・・・・・・ってか、お前がそう言ったんだろ?謙遜したらなんか、お前に失礼じゃねーかよ?」
「っ!そうだけどさ・・・・・・はぁ、もういいや。早く教室行こ?」
どこか頬を赤くした千歌は少し歩くスピードを上げつつ教室を目指していった。俺達も追従するようにその後を追っていった。
さてさて、隆斗をどう絡ましていきますかね・・・・・・。
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