俺、実は彼女がいるんだ……… (生焼け肉)
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俺の秘密


皆様、お待たせしました!生焼け肉です!!

活動報告にて様々なご意見を下さったユーザー様、本当にありがとうございました!

結果として自身の考えていた作品を出す事にしました。ちゃんと考えたんですよ?考えた結果…………「あれ?どのクロス作品も完結まで持って行けれる自信がない。」という作者の実力不足極まりなく、下らない理由です。

色々案を出してくれたのに、申し訳無いです!!




 

 

八幡side

 

 

ーーー奉仕部ーーー

 

 

結衣「でねでね、サブレってば全く言うことを聞いてくれないんだよね〜。」

 

雪乃「あら、それは何だか可哀想ね。何とかしてあげたいけれど、私犬については詳しくないから………ごめんなさい。」

 

結衣「いいよいいよ!気にしないで!ねぇヒッキーはどう思う?」

 

八幡「………」

 

 

明日……明日は大丈夫だって言ってたし、俺も言っておかないとな。

 

 

結衣「………あれ、ヒッキー?」

 

雪乃「比企谷君、ついに耳まで腐ってしまったのかしら?無視をするのは人としてどうかと思うわよ?もしかしたら、もう人じゃないかもしれないけれど。」

 

八幡「………」

 

 

けどこの2人が簡単に俺に休みをくれるとは思えない。どう説明したもんか………

 

 

結衣「ヒッキーってば!!」

 

八幡「っ!?あ、あぁすまん、少し夢中になってた……んで、何?」

 

結衣「いや、私の話は大した事じゃないんだけどさ。ヒッキーの夢中になってたの、気になるなぁ〜って。教えてくれたり?」

 

八幡「人のプライベートを覗き見するものじゃねぇだろ。それから雪ノ下、明日の部活なんだが、少し用事があるから休んでもいいか?」

 

雪乃「あら、貴方に用事なんてあるのかしら?」

 

八幡「あるから言ってんだろ。」

 

雪乃「その用事って何なの?」

 

八幡「それを言う義理は無いだろ?さっきも言ったけど、プライベートだ。」

 

結衣「なんか、怪しい………」

 

雪乃「小町さんに聞く必要がありそうね。」

 

八幡「小町に聞いても無駄だ、アイツも知らないからな。知ってんのは俺だけだ。」

 

 

何なら俺の家族でさえもこの事は知らない。知ってるのは………アレ、俺の関係者の中で知ってるのって俺だけか?まぁ別にいっか。

 

 

雪乃「益々怪しいわね………ひょっとしてサボる気じゃないでしょうね?」

 

八幡「そんなんじゃねぇよ、本当に用事があるんだよ。それと、用事を教えるつもりはないぞ。教えたところでお前達は信じないだろうしな。」

 

結衣「ヒッキー……」

 

雪乃「比企谷君………」

 

八幡「……はぁ、なんか微妙な空気になったな。取り敢えず明日は外せない用事がある。だから部活は休ませてもらう。先帰るわ。」

 

 

家帰ったら、財布の中に金足しておこっと。

 

 

八幡sideout

 

雪乃&結衣side

 

 

結衣「ゆきのん、どう思う?」

 

雪乃「………彼が嘘を言っているようには見えなかったけれど、気になるわね。」

 

結衣「うん、私も……」

 

雪乃「………じゃあ明日、比企谷君の後を追いかけてみましょうか。」

 

結衣「うえぇ、いいのかなぁ?」

 

雪乃「彼は一方的に休みをこじつけたのよ?なら私達も彼が部活を休んでまで何をするのかを見届ける責任があるわ。」

 

結衣「そ、そっか……うん、分かった!」

 

 

 

ーーー翌日・放課後ーーー

 

 

八幡「うっし、行くか。」

 

結衣「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………」ポチポチ

 

結衣「……なんか珍しいかも、ヒッキーがあんなにスマホイジってるのって。」

 

雪乃「そうね、普段は読書しかしない彼が歩きながらスマホを使うなんて………普段の彼からは考えられない行動ね。」

 

 

ーーー千葉駅ーーー

 

 

八幡「………」

 

結衣「誰か待ってるのかなぁ?」

 

雪乃「スマホから読書に変えたわね………それにしても、何故こんな所に居るのかしら?由比ヶ浜さんの言う通り、待ち合わせなのかしら?」

 

結衣「けど、ヒッキーっていっつもボッチって言ってるよ?友達、いるのかな?小学か中学の頃の同級生とか?」

 

雪乃「由比ヶ浜さん、その可能性も捨て切れないけれど、彼は自分から黒歴史と言う程の過去を持っている男よ。同級生がいても、その人と一緒に行動するとは思えないわ。」

 

結衣「そ、そうだよね………じゃあ何で「だ〜れだ♪」あっ!!」

 

雪乃「っ!!」

 

 

雪乃&結衣sideout

 

八幡side

 

 

やっぱり少し遅いな。俺の学校の方が距離は近いから仕方ないか。けど、読書するのも少し飽きたな………スマホでもイジって「だ〜れだ♪」………はぁ、相変わらずイタズラ好きだな。

 

 

八幡「もしかして………涼風か?」

 

???「ちょっと〜!!わざとでしょ〜!!」

 

八幡「ふっ、分かってるよ。俺がお前を間違えるわけねぇだろ………柊。」

 

柊「うん、こんにちは八幡君♪お待たせしちゃってごめんね?」

 

八幡「あぁ、こんにちはだな。そんなに待ってないから気にすんな。」

 

 

突然俺に目隠しをして来たのは、周りからの目を引くくらいには顔は整っている。長くサラサラのストレートの黒髪に切れ長の目で吸い込まれそうな赤い瞳、白い肌にすらりとした長身でスタイルもかなり良い。モデルになってもおかしくない程に美人だ。

 

 

名前は夜十神(やとがみ) (ひいらぎ)、俺の彼女だ。

 

 

柊「平日のデートなんて久しぶり〜!八幡君が部活に入ってからは1度も無いよね?」

 

八幡「あぁ、だから3ヶ月くらいだな。悪いな、休日にしか出掛けられなくてよ。」

 

柊「いいのいいのっ♪私は八幡君とデート出来るのなら、何でも許しちゃう♪」

 

 

ホント、俺には勿体無いって思う。さて、難しい事を考えるのは止めにして、俺も楽しみますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





キャラ設定

夜十神 柊 (高校2年)

モデルキャラ:【黄昏乙女×アムネジア】より庚 夕子。

八幡の彼女。中学校は一緒だが別々のクラスだった。とある理由で八幡に夢中になり、交際する事に。


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バレた秘密

 

 

八幡side

 

 

あぁ、昨日は楽しかった………久しぶりに学校終わりに柊と出掛ける事ができた。まぁ、雪ノ下と由比ヶ浜からは部活で追及されそうだが、教える必要なんてないわけだし、スルーでもいいよな。けど柊も学校では苦労しているらしい。何でも一緒に出掛けようと誘ってくる輩が多いらしい。しかもその大半が男と来た………まぁソイツ等なんてどうせ柊の身体目当てだろう。多分俺でも見ただけで分かると思う。絶対最初に見たら、顔から胸に視線行きそうだし。

 

 

小町「………ねぇ。」

 

八幡「ん?」

 

小町「なんかお兄ちゃん、昨日帰った時から少し機嫌良さそうだけどさ、なんかあった?」

 

八幡「……いんや、ねぇけど?」

 

小町「ホントに〜?なんか怪しいなぁ〜………小町に隠れて楽しい事してたりしない?」

 

八幡「何でだよ………もしやってたとしてもプライバシーなので教えません。」

 

小町「お兄ちゃんにプライバシーなんてあるの?」

 

 

やだこの妹ちゃん辛辣過ぎる………まぁでも、いつもそんな風に見えてるのかもな。けど、柊の事は小町にも教えるつもりはない。

 

 

八幡「プライバシーうんたらかんたらはいいとして、楽しい事があったとしても教えません。理由はプライバシーだからです。」

 

小町「ちぇ〜お兄ちゃんばっかりズルいなぁ〜!小町にも教えてよ〜!」

 

八幡「教えてもらえるようになるまで頑張れ。」

 

 

ーーー2-F組ーーー

 

 

なんつーか、ホントなんで朝からあんなに騒いでられるんだろって思う、マジで。朝からそんな元気で疲れないの?俺だったら午後に死ぬぞ?特にあの髪おっ立ててる奴、ベーベーウルセェな………

 

 

結衣「ヒッキー、部活で昨日の事、教えてもらうかんね!」

 

八幡「……昨日言ったろ、教える気はねぇって。」

 

結衣「だって気になるじゃん!」

 

八幡「気になるってだけで人の行動を聞くのか?まるで尋問だな。」

 

結衣「とにかく、今日は来るんだよね!?」

 

八幡「……おう。」

 

 

何聞かれたとしても、俺はそれを答えるつもりはない。あの時間は俺の………いや、俺と柊の時間だ。誰かに邪魔されたり、言ったりしていいような事ではない。

 

 

ピロリンッ♪

 

 

八幡「ん?」

 

 

_____________________________________________

 

・To:比企谷 八幡

・From:夜十神 柊

 

 

内容:八幡君おっはよ〜!!昨日は楽しかったね!!次は日曜日にね〜♪あっ、そうそう!夏休みのお祭りも一緒に行こうねっ!!絶対だよ!!

 

_____________________________________________

 

 

ふっ、アイツらしいな………まっ、去年も一緒に行ってるしな。当然今年も一緒に行くし、返事しとくか。『既読スルーしたー!!』って言われたら機嫌直すの少し面倒だしな。

 

 

_____________________________________________

 

・To:比企谷 八幡

・From:夜十神 柊

 

 

内容:おう、おはよう。俺も楽しかった。また次の日曜にな。夏祭りもOKだ、また花火見ような。

 

_____________________________________________

 

 

ーーー放課後ーーー

 

 

さて、今日も終わったか……部室に「ヒッキー!」向か………はぁ、呼ばれんでも部室には行くっつうの。どんだけ聞きたいんだよ………

 

 

八幡「……どした?」

 

結衣「一緒に部室行こ!」

 

八幡「嫌だけど。」

 

結衣「即答!?何で!?いいから行く!」

 

八幡「分かったから引っ張んな。」

 

 

ーーー奉仕部部室ーーー

 

 

結衣「ゆきのん、やっはろ〜!」

 

八幡「……うす。」

 

雪乃「こんにちは由比ヶ浜さん、それと………サボり谷君も。」

 

八幡「サボってねぇよ。用事があるって言って休んだだろうが。一々人の苗字を弄るな。」

 

 

ーーー10分後ーーー

 

 

八幡「………」ペラッ

 

結衣「………」

 

雪乃「………」

 

 

………何で今日コイツ等こんなに静かなの?いや、雪ノ下はいつも通りっちゃあいつも通りだが、本を読んでいない。由比ヶ浜は雪ノ下と話してるか、携帯を弄ってるのに、今日はそれがない。え、何?なんかこの静けさが怖いんだけど!?え、誰か助けて!!

 

 

雪乃「………ところで比企谷君。」

 

八幡「……何だ?」

 

雪乃「昨日の事だけれど、いいかしら?」

 

八幡「……用事の事なら言うつもりはないぞ。」

 

雪乃「あら、どうしてその事を聞かれると分かったのかしら?」

 

八幡「由比ヶ浜が朝、教室で教えてもらうとか何とか言ってたからな。お前らの事だ、どうせ昨日俺が居なくなった後にでも今日この時間に聞き出そうって話したんだろ?」

 

雪乃「………まぁ、貴方の推理はどうでもいいわ。それで、あくまでも考えは変わらないのね?」

 

八幡「あぁ、その通りだ。」

 

雪乃「………私と由比ヶ浜さんは昨日、貴方の後をつけていたわ。」

 

結衣「っ!ゆ、ゆきのん……」

 

八幡「………」

 

雪乃「勿論、貴方には悪いと思ったけれど、理由も無いまま休まれたのでは納得がいかなかったのよ。それで駅について少ししたら………」

 

 

………まさかな、コイツ等がこんな事をするなんてな。事情を言わなかった俺もそうだが、まさか尾行するとは予想外だ。

 

 

八幡「………つまりお前等は個人的な用事に首を突っ込んだ、って事だよな?しかもストーキングまでして。それで、何が分かった?」

 

結衣「え、えっと……ヒッキーが知らない女の人と仲良くお出掛けしてた、かな?」

 

雪乃「そうね、私達に分かったのはそれだけね。」

 

結衣「えっと、ヒッキー?」

 

八幡「何だよ?」

 

結衣「もしかして………怒ってる?」

 

 

はぁ?何聞いてんだコイツは?今の会話の流れで怒らない聖人君子が居てたまるかってんだよ。人様のデート覗き見した奴等に対して、怒りを覚えないわけねぇだろうが。

 

 

八幡「逆に怒らないと思うか?」

 

結衣「っ………そ、そう、だよね……」

 

雪乃「ごめんなさい、軽率だったわ。」

 

八幡「あぁ。まさかお前等がこんな事をするなんて思いもしなかった。んじゃもういいわ、聞きたい事があるなら聞けよ。」

 

 

 

 

 

 

 





うんわぁ……どうなっちゃうのかなぁ?


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ピンチヒッター

 

 

八幡side

 

 

八幡「あぁ。まさかお前等がこんな事をするなんて思いもしなかった。んじゃもういいわ、聞きたい事があるなら聞けよ。」

 

 

なんかもうコイツ等の事がどうでもよく思えてきた。柊の事がバレても問題無いよな。それに、ストーカーする奴等と一緒になんて居たくもねぇし。

 

 

結衣「じゃあさ………あの人との関係は?同じ中学の同級生?」

 

八幡「そうだ。より正確には俺が今付き合ってる彼女でもある。」

 

結衣「か、彼女………」

 

雪乃「どうしてその事を言ってくれなかったの?」

 

八幡「言ったとしてもお前なら嘘だとかサボろうとしてる口実だとか言って取り合ってもらえないだろ?だから言わなかったんだよ、時間の無駄だと思ってな。そしたらコレだ。」

 

雪乃「っ……」

 

八幡「それで、聞きたい事ってもう無いのか?」

 

結衣「……い、いつから付き合ってるの!?」

 

八幡「中3の中頃だから……2年くらいだな。」

 

結衣「付き合った経緯は!?」

 

八幡「………お前さ、プライバシーに関する事で俺が怒ってるのに、よくそんな事を堂々と聞けるよな?普通聞かないぞ。」

 

結衣「あ………ごめん………」

 

八幡「んで、他は?」

 

雪乃「………私はないわ。」

 

結衣「私も、かな。」

 

八幡「……そうかよ、じゃあ俺は職員室寄ってからそのまま帰るわ。それと、俺はもう来ないって思っといた方がいい。理由は………言わなくても分かるだろ?」

 

 

これで分からないようなら、いよいよ頭がおかしい。まぁ流石にそれは無いと思うけどな。

 

 

結衣「ヒッキー………ッ!」

 

雪乃「由比ヶ浜さん、止めておきましょう。今の比企谷君にそんな事をしても無意味だわ。」

 

結衣「………」

 

 

ーーー職員室ーーー

 

 

八幡「失礼します、平塚先生は居ますか?」

 

平塚「此処だ比企谷、どうした?何かあったか?」

 

八幡「そうですね。説明したいんですけど、此処だと少し目立ちます。」

 

平塚「では生徒指導室に行こうか。」

 

 

ーーー生徒指導室ーーー

 

 

平塚「それで、何があった?まぁあの2人関連なのは聞かなくとも分かる。」

 

八幡「えぇ、実は………」

 

 

俺は平塚先生に一昨日の事からさっき起きた事まで全てを話した。この人も事が事だからか、俺が彼女持ちだと知っても、その事には全く反応しなかった。

 

 

八幡「……という事です。俺としては、あの部活にはもう顔を出したくないんですけど。」

 

平塚「そうか………流石の私も予想外だよ、まさか雪ノ下がそんな事をするなんてな。比企谷、これは完全に私の目が彼女達に届いていなかったのが原因だ、済まない。」

 

八幡「別に平塚先生のせいじゃないですよ。アイツ等の独断ですからね。それよりも、この場合ってどうするんですか?俺はあの部活にはもう行きたくないんですが。由比ヶ浜は同じクラスだから仕方ないにしても、2人の顔は極力見たくないとも思ってます。」

 

平塚「そこまで言う……いや、君からしてみればそうなのだろうな。私としては、君にはまだ奉仕部に残ってもらいたいのだが、それも無理そうか?」

 

八幡「無理、とは言いませんけどあの2人と協力しろ、なんて言われたら時には即帰りますね。」

 

平塚「……そうか。分かった、本来なら君は退部が望ましいのだろうが、籍だけは置いておいてくれないか?ピンチヒッターという役割で構わない。それでどうだろうか?」

 

 

ピンチヒッター、つまり雪ノ下と由比ヶ浜が危ない橋を渡らないようにする役目、か。

 

 

八幡「分かりました、それでいいです。俺は依頼がない限り動きはないので、部活に参加する頻度は週1でいいですかね?」

 

平塚「あぁ、それで構わん。雪ノ下と由比ヶ浜には私から伝えておく。君はもう帰って構わないよ。」

 

 

話の分かる先生で良かった。これが脳筋先生とかだったら絶対に取り合ってもらえてない。こんなに良い先生なのにどうして………

 

 

平塚「比企谷、何か変な事を考えてないか?」

 

八幡「そ、そんな事ないでしゅよ?」

 

平塚「……まぁいい、気をつけて帰れよ。あぁそうそう、通うのは週初めの月曜日でいいからな。」

 

八幡「はい、さようなら。」

 

 

月曜か……休み明けかつ部活有りだから行きたくなくなるが、それ以外は自由になるから妥協するしかねぇか。

 

 

八幡sideout

 

平塚side

 

 

ーーー奉仕部部室ーーー

 

 

平塚「邪魔するぞ〜お前達。」

 

雪乃「っ!平塚先生……」

 

平塚「比企谷から事情は聞いた。お前達、流石にやり過ぎだな。」

 

結衣「はい、すみません。」

 

雪乃「すみません。」

 

平塚「比企谷はこの奉仕部のピンチヒッターとして週1の月曜日のみ通う事になった。これが私と彼の最大の譲歩だ。」

 

2人「………」

 

 

思っていた以上に比企谷に言われた事に堪えているようだな。まぁこれは彼女達から出た錆だ。甘んじて受けてもらうしかないな。

 

 

平塚「もしも依頼があった場合、それが君達2人では困難だと思った時は比企谷に相談したまえ。比企谷が入部する時に雪ノ下に言ったと思うが、比企谷はリスクリターンの計算が出来る。お前達の良いカンフル剤になる。つまりだ、今後は勝手な行動や独断な行動は慎んで、相談をしろという事だ。いいな?」

 

2人「……はい。」

 

 

………比企谷、とりあえずはこれでいいだろうか?

 

 

 

 

 



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月曜のハプニング

 

 

八幡side

 

 

柊「ふぅ〜ん、それで八幡君は月曜日にだけ参加で他はもう行かなくてもいいんだ。まさかあの日に見られてたなんて知らなかったなぁ〜。」

 

八幡「俺もだ。別に見られて困る事はないが、ストーカーをされた事に腹が立った。しかもその理由が休みの理由を知らないからと来た。流石に俺も怒ったぞ。」

 

柊「八幡君がキレるって相当だよね、その子達とはもう仲直りする気はないの?」

 

八幡「柊も知ってるだろ?物を壊すのは簡単でも、直したり作ったりするのは時間が掛かる。そして俺はあの2人と和解するつもりなんて、今はさらさら無い。」

 

柊「あちゃ〜………まぁ私にとっては八幡君とデート出来る日が増えてラッキーだけどっ♪」ダキッ!

 

 

それは俺の台詞でもある。平塚先生からの指示で訳の分からん部活に入ってからは、柊と出掛ける日がメッチャ減ってたから、知らぬ間にストレスも溜まってたんだ。良かった事なんてまるでなかった。あったとしても、戸塚と知り合えたくらいだ。

 

それにしても、相変わらずの豊作っぷりだ………どうやったらこんなに実るの?

 

 

柊「けどさ、その2人もきっと八幡君と仲直りしようと思ってるんじゃない?明日の月曜日、きっと八幡君に謝ってくると思うわよ?」

 

八幡「その時は今の話をするだけだ。お前等が本気でそう思ってるのなら、壊した分を全部直してみろってな。まぁ、それをしたとしても俺は許す気なんてないけどな。俺が奴等に持ってる信用なんてもう0に等しい。」

 

柊「手厳しいなぁ、八幡君は。けどそうだよね、私達の中学時代を考えれば、そうなるよね。」

 

八幡「………あぁ。」

 

 

あんな屑共はああなって当然だ。柊をあんな目に遭わせたんだ、それが倍になって返って来ただけだ。

 

 

柊「あっ、そうだ八幡君!夏休みの事でお話があるんだけどさ、いい?」

 

八幡「何だ?」

 

柊「あのね、夏祭りはいくとして、他は何処に行こっか?1年に1度しかない夏は思いっきり楽しまないと損だもんっ♪」

 

八幡「そうだな………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうこう考えている内に翌日の月曜日、今日の俺は一段とやる気のない俺である。だって行きたくもない所に自分から行かなくちゃならないんだぞ?いや、平塚先生と話し合った結果だから強くは言えないけどよ、雪ノ下と由比ヶ浜の顔は正直言って見たくない。その為に少し時間を置いてからこの部室前に来てんだからよ。

 

 

八幡「………はぁ。」

 

 

けど、平塚先生と約束した以上は俺も参加しねぇとな。決定権は俺にはねぇし、依頼の参加も自由にしていいって平塚先生にあの後電話で言われたしな。

 

 

ガラガラッ

 

 

八幡「………よぉ。」

 

雪乃「っ!こ、こんにちは、比企谷君。」

 

結衣「や、やっはろ〜……」

 

八幡「………」

 

 

別に話す必要なんてない。俺はこの部活のピンチヒッターだ。依頼が来なければ動く事なんてない。

 

 

結衣「えっと……ヒッキー、ちょっといいかな?」

 

八幡「……何だ?」

 

雪乃「その、昨日……いえ、先日の事で貴方に謝っておこうって昨日由比ヶ浜さんと話し合って決めたの。比企谷君、ごめんなさい。理由を知らなかったとはいえ、あんな事をするべきではなかったと反省しているわ。」

 

結衣「ヒッキーごめんね!私ヒッキーの事考えてなかった。ヒッキーは許さないと思ってるけど、とにかく謝りたくって………ごめん!」

 

八幡「………」

 

 

柊の言う通り、確かに謝ってきたな。昨日言った通り、俺も言うか………めんどくさいけど。

 

 

八幡「………先に言っとく。俺はお前等を許すつもりなんてない。」

 

 

2人「………」

 

八幡「けど、本当に悪いって思ってんのなら、この前にお前等2人が壊した分、キッチリと直してみろ。まぁ、それも直す気のあればの話だけどな。」

 

雪乃「……比企谷君はどう思ってるのかしら?」

 

八幡「俺は関係を直そうだなんてこれっぽっちも考えてない。お前等も普通に嫌だろ?考えてもみろ、傷を抉るようで少し悪い気もするが、自分にストーカーをしてた奴と仲を取り戻したいなんて本気でそう思うか?」

 

雪乃「……そうよね、比企谷君の言う通りだわ。」

 

結衣「うん、だよね。」

 

八幡「まぁとにかく、それはお前等に任せる。俺は依頼の事以外では動くつもりはないしな。」

 

 

これで少しは分かってくれたとは思う。俺の今の考えとこれからの考え。まぁとにかく、頑張れ(棒)くらいは思っといてやるか。

 

 

ガラガラッ

 

 

平塚「邪魔するぞ〜。」

 

雪乃「平塚先生、ノックをして下さい。」

 

平塚「すまんすまん、それよりもお前達にお客だ。というよりも、より正確には比企谷に客と言った方がいいな。」

 

八幡「俺に?」

 

 

誰だ?俺に客?ていうか依頼人なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「こんにちはっ、八幡くん!!来ちゃった♪」

 

八幡「………柊?」

 

柊「あっ、八幡君驚いてる〜、作戦大成功〜♪」

 

 

いやいやいや、え?何しに来たの?まさかとは思うけど、俺に会いたいからって理由で来たわけじゃないよな?

 

 

八幡「それで、何で此処に?」

 

柊「え?八幡君に会いたかったからだよ?」

 

八幡「……俺の予想とドンピシャなんだけど。」

 

柊「うふふふっ、私達はやっぱり通じ合ってるのよ!だからこんなにも良い感じなんだと思うわっ♪」

 

 

うん、そうだね。後、奥にいる2人にもあらためて説明しないとな。

 



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出会い

 

 

雪乃side

 

 

月曜日の部活が始まって、彼…比企谷君に由比ヶ浜さんと一緒に謝罪をしたのだけれど、気にも止めていないような口ぶりだったわ。

 

そして部活を始めて少し経った頃、平塚先生がいつものようにノックをせずに部室へ入ってくると、比企谷君にお客さんだと言って入らせると………

 

 

柊「こんにちはっ、八幡くん!!来ちゃった♪」

 

 

私と由比ヶ浜さんが比企谷君を尾行している時に比企谷君に抱き着いていた女性が来た。

 

 

八幡「お前が突然来たせいで俺も驚いたが、この2人も喋らなくなる程驚いてるじゃねぇか。」

 

柊「それって私のせいって言いたいの?」

 

八幡「それ以外にあるのか?んん〜?」

 

柊「ないわよ〜。私からは初めましてでいいのかな?私は夜十神 柊、八幡君の彼女をやっています。千葉私立誠教学園の高等部2年生よ。」

 

雪乃「雪ノ下雪乃です、総武高校2年生です。」

 

結衣「えっと、私は由比ヶ浜結衣っていうんだ。皆と同じ高校2年、よろしく。」

 

柊「雪ノ下さんに由比ヶ浜さんね、よろしく〜。」

 

 

………この飄々とした喋り方、彼女の素かしら?

 

 

柊「それで八幡君、この2人だよね?私達の後をつけていた幽霊さん。」

 

八幡「……何故かお前の捏造も混じってるが、その通りだ。」

 

柊「ふぅ〜ん。」

 

雪乃「夜十神さんにも謝るべきね。先日はごめんなさい、気付いていないとはいえ、ストーカーなんて事をしてしまって。」

 

結衣「夜十神さん、ごめんなさい!」

 

柊「私は平気よ。それに2人は八幡君から色々と言われたんじゃない?」

 

雪乃「え、えぇ……」

 

結衣「うん……」

 

柊「ならそれでいいわよ。終わった事をあれこれ考えても無駄だもの。」

 

 

……意外とアッサリ終わってしまったわ。

 

 

八幡「それよりも柊さんや、本当に俺に会いに来ただけなのか?もっと他にないのかよ?」

 

柊「じゃあ八幡君に甘えに来た!」

 

八幡「じゃあって何だじゃあって?」

 

柊「もう、八幡君っはつれないなぁ〜。ならこの中から私が来た本当の理由を選んでみて♪」

 

 

①八幡君と学校デートしに来た♪

②八幡君と一緒に帰りたいから来た♪

③八幡君と部活動をしてみたかったから♪

 

 

柊「さぁ、どれどれ?」

 

八幡「いや、全部でしょコレ。」

 

柊「ピンポーンッ♪大正解〜♪正解した八幡君には私をプレゼントしちゃいま〜す♪」ダキッ!

 

八幡「おい、人前ではあまり抱き着くな。」

 

柊「いいじゃない別に♪見られて困る事なんてしていないんだもの♪」

 

 

………こんな所で急に見せつけられているのだけれど、こういうのは他所でやってもらえないかしら?

 

 

結衣「むぅ〜……」

 

柊「やっぱり八幡君って良い匂〜い♪ずっと嗅いでても飽きないと思うわ。」スリスリ

 

八幡「あんまりくっつくなよ……」

 

柊「あら、八幡君は私にくっつかれるの、嫌?」

 

八幡「そういう訳じゃないが、一応今は部活中だ。こういう事する時間じゃないだろ?」

 

柊「しょうがないわね……けどくっつくのはやめないからそのつもりで♪」

 

八幡「それはもう諦めた。」

 

 

比企谷君は相当夜十神さんに気を許しているみたいね。こうやって見ているだけでも分かるわ。比企谷君は私達に向かってあんな喋り方はしないわ………

 

 

雪乃「んんっ!比企谷君に夜十神さん、横から口を挟んで悪いけれど、少しいいかしら?」

 

柊「おっ、何々〜?聞きたい事でもあるの?」

 

八幡「………何だ?」

 

雪乃「2人は同じ中学、なの?」

 

柊「うん、そうだよ♪」

 

雪乃「2人の出会ったきっかけって何なのかしら?その、性格が殆ど真逆なのにどうして交際しているのか気になったの。」

 

八幡「………」

 

柊「………」

 

 

………もしかして聞いてはいけなかったかしら?

 

 

雪乃「……ごめんなさい、聞いてはいけない事だったみたいね。今の質問は忘れて頂戴。」

 

柊「えぇ、大丈夫よ……」

 

八幡「………」

 

 

その後は結局、何も話さないまま部活が終わった。けれどあの2人の雰囲気から察するに、ただ事ではない何かが起きたんだと思うわ。

 

 

雪乃sideout

 

柊side

 

 

………まさか中学のことを聞かれるなんて思わなかったなぁ〜。私と八幡君の出会い、それはある意味私達だからこそ巡り合ったような出会いだった。その当時、流行っていたゲームによって。

 

 

八幡「柊、大丈夫か?あの後全く喋ってなかったけどよ。」

 

柊「うん、平気。聞かれるなんて思ってなかったから、ちょっとビックリしちゃっただけ。」

 

八幡「無理もない、あんな事は周りに言いふらしていいようなもんじゃあない。それで流行りだしたらソイツがどうなっちまうか。」

 

柊「うん、ある意味人間が出来る呪いみたいなものだからね。何もないのにあんな事をされたら誰だって………ううん、もうこの話はやめよっか。」

 

八幡「あぁ、そうだな………」

 

 

千葉県立中央中学校。私と八幡君が3年間通っていた中学校で、私達の出会った場所でもある。一応私と八幡君は3年間同じクラスだったんだけど、3年生になるまではあまり関わりがなかった。関わりを持って話すようになり、付き合うようになった。こうやって聞けばいい中学生活を送れたのだと聞こえるよね。けど本当は違う。私と八幡君の出会いは運命的な出会いでは無かった。あの出来事がなければ、私と八幡君はきっと出会ってはいなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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中学 ①

 

柊side

 

 

私と八幡君の中学時代、それは良いものではなかった。最初の1年生は皆と仲良く出来て、とても楽しい生活だった。クラスの友達だけでなく、他クラスの友達とも楽しく過ごせた。お昼休みに一緒に話したり、学校帰りに遊んだり、家にお泊まりしたりと、ありふれてはいるけど、充実した毎日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けど、そんな楽しい学校生活は3年生になってから急にガラリと変わった。

 

新学期が始まってから少し経った頃、私は同級生だった男の子から告白をされた。その子は運動も良く出来て、成績も良く、顔も整っていた。だからその男の子を狙っている子は多かった。それと自慢じゃないけど、私も中学では割とモテた方だったと思ってる。月に何回かは告白もされたし、ラブレターも貰った事がある。

 

それでこの男の子からの告白なんだけど、私はその頃誰かと付き合う気なんて全く考えてなかった。だから断った。それからだった、クラスだけでなく学校中の皆から白い目で見られるようになったのは。けどそれを知らない私はいつも通りにしていたんだけど、私の周りに集まってくる友達は1人も居なかった。それどころか皆、私を避けるように過ごしていた。

 

そんな日が続いて数日経った頃、こんな会話を偶然聞いてしまった………

 

 

「ねぇ知ってる?○クラスの夜十神さん、○○君の告白断ったらしいよ〜。」

 

「マジィ〜?○○君相手に断るってどんだけ理想の男のレベル高いのよ〜?マジであり得なくない?」

 

「だよねだよね〜。しかも顔が良いからってチヤホヤされてたのも腹が立ってたんだよね。けどさ、今のアイツって良い気味だよね。学校中でやってるんでしょ?【幽霊ごっこ】だっけ?」

 

「そうそう!夜十神さんに仲良くしたり話しかけたりしたら、ソイツも幽霊になるって遊び!だから夜十神さんに話しかけたらソイツも学校の友達とかに無視される事になるから、話しかけられないよね〜。」

 

「ていうか話しかけたくないよね〜。だってさ、顔は整ってるって言ってもさ、髪は長いし肌白いからもう幽霊じゃん!柊さんって幽霊いたりして〜!」

 

 

そこから先の会話は自分には分からない。その場から走って逃げ出したから。胸がとても痛かった。張り裂けそうだった。涙も止まらなかった。男の子の告白を断っただけでどうして私はこんな目に遭わなきゃならないの!?って何度も思った。もうこの学校に私の味方をしてくれる人なんて誰も居ない……家に帰っても涼風とお父さんやお母さん達がいるけど、とてもその事を話せる気にはなれなかった。

 

 

走り疲れた私は目の前にあった公園のベンチに座って1人で泣いていた。もう何もかもがどうでもよかった。私に話しかけてくれる友達はもういない。その子達も私の事を幽霊扱いするんだから………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時、彼と出会った。

 

 

八幡「お前、どうした?」

 

 

それが私と八幡君の初めての会話と出会いだった。

 

私はどうして自分に話しかけてくるのか全く分からなかった。同じ制服で同じクラスの男の子なのに。私は八幡君の言葉を敢えて無視した。そしたら……

 

 

八幡「……なんだ無視かよ、幾らこの目が気味悪いからって無視はねぇだろう。豆腐メンタル振り絞って話しかけたってのに………まぁいいや、お邪魔虫は消えるか。」

 

 

彼は私を責めるどころか自虐を含めながらその場を去ろうとしていた。私は何か悪口を言われると思っていたのに、それすらもしなかった。

 

 

柊「ま、待って!!」

 

八幡「ん?何?なんか用?」

 

柊「私に話しかけて、平気、なの?」

 

八幡「………はぁ?何言ってんのお前?お前に話しかけちゃいけないルールとか法則でもあんの?」

 

 

その言葉を聞いた瞬間に理解した、八幡君は【幽霊ごっこ】の事を知らない。知らされてもいないんだって。だから私はその事を八幡君にこれまでの事も合わせて説明した。

 

 

八幡「………そうか、そんな事あったんだな。」

 

柊「うん………ねぇ、比企谷君は私に話しかけたらマズいんじゃないの?友達とかに避けられちゃうよ?此処から離れた方がいいんじゃない?」

 

 

久しぶりの会話相手に私は自分から遠ざけた。勿論会話出来たのは嬉しかったけど、私は私のせいで他人が不幸になるのはとても嫌だと考えた。だから私は八幡君を遠ざけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど、八幡君からは予想外の答えが飛んできた。

 

 

八幡「俺は友達いねぇから避けられる事はない。寧ろそんなの必要無いまである。1人の方が周りに迷惑かけなくて済むだろ?内輪揉めもないし、静かに暮らす事が出来る。友達とボッチを選ぶのなら、俺は絶対にボッチを選ぶ。友達なんて居てもいつかは居なくなるんだ、居なくても問題ねぇだろ。」

 

 

………考えた事もなかった。友達なんて居なくてもいいなんて考え方、した事もなかった。だから八幡君は今まで誰ともあまり関わりがなかったんだって。私は今の言葉が胸の中にスーッと浸透していくのが分かった。それと同時にこう思うようにもなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「友達は要らない。比企谷君、ううん………八幡君さえいればそれで良い。」

 

 

 

 

 



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中学 ②

 

 

柊side

 

 

八幡君と出会ったその次の日からは、私は学校に行くのが久しぶりに楽しみになっていた。そう、八幡君に会えるから。八幡君は友達は要らないと言っていた。だから私も友達は要らない、八幡君さえ側に居てくれればもうそれでいい。そういう風に考える事にした。だから私は自分のクラスに入っても挨拶はしないようにした。だってそうでしょ?返してもくれないのに挨拶する必要なんてないもの。

 

そして八幡君が来た瞬間………

 

 

柊「比企谷君、おはよう〜♪」

 

八幡「ん?おう、夜十神か。」

 

柊「暗いなぁ〜朝なんだからもっと元気にしようよ〜ほら、もっと笑顔で!」

 

八幡「これが俺のデフォだっつうの。」

 

 

楽しい………久しぶりに学校でこんな感情になった。クラスメイトは私と八幡君に対して驚きの視線を向けていた。多分八幡君が私に喋っているからだと思う。そんな事はもう分かってる。でも、昨日八幡君の考えを聞いているからそんな事はどうでもよかった。

 

そして昼休みになると………

 

 

柊「ねぇねぇ比企谷君、今日の学校の帰りにららぽーとに行かない?」

 

八幡「………いやぁ、俺は「行こうよー♪ね?」分かった分かった、分かったからそれ以上くっつくな。お前ホント元気だな。」

 

柊「いいじゃない別に♪」

 

 

それから私は常に八幡君と行動するようになった。八幡君も私の事を拒まなかったから、少なくとも嫌な風に意識はしていなかったと思っている。そしてこんな事も起こるようになった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、柊さん!今まで無視しててごめんなさい!私達ともお話してくれないかな?」

 

3人「ごめんなさい!」

 

 

そう!今まで私と仲良くしてくれてた子達が謝りに来てくれたみたいなんだ。思えば彼女達にも少なからず罪悪感があったんだと思う。でも、そんな事はどうでもよかった。

 

 

八幡「……おい、夜十神?」

 

柊「ん?何、比企谷君?」

 

八幡「………いや、なんでもない。お前がそれで良いなら俺は何も言わない。」

 

柊「ふふっ、流石は八比企谷君だね!私の事を1番に理解してくれている人なだけはあるね♪」

 

 

そう、私はもう他の人なんて知らないし、どうでもいい。だから謝ってこようが頭を下げられたり土下座をされても、見えない人の行動なんてどうでもいいから無視をするだけ。だって私は幽霊、なんでしょ?なら私もあなた達を居ない人扱いするだけ。

 

私は八幡君が居てくれるのならそれで構わない。他の人なんて必要ない。

 

それから何人もの人が私に謝って来たって八幡君から聞いたけど、私はその人達を全員無視した。だって関わる意味なんて無いし見えないもの。それに友達でもないしね。そしていつの間にか【幽霊ごっこ】は終わっていて、皆私に普通に話しかけるようになっていたみたいだけど、見えないから私には関係なかった。そんな中、八幡君に仲を取り持ってもらおうとする人達も居たけど、八幡君は………

 

 

八幡「今更無理だろ。お前等やってきた事考えろよ、そんな奴等とまた仲良くしたいなんて、俺だったら絶対に嫌だわ。」

 

 

って言って拒否をしていた。それを聞いた私はますます八幡君にベッタリになった。自分でも自覚はしてる。八幡君に対して物凄く依存してるし、執着してるって。それも他人が見てたら引く程に。でもそんな事は気にならなかった。だってそうだと思わない?()()()()()()()()()()なんかの気持ちを考えても仕方ないでしょ?

 

学校行事でも私は必ず八幡君と一緒の班になった。勿論、必然的に他の人も班になったんだけど、元々私は八幡君としか楽しむ予定はなかったから、誰が同じ班にいようと関係なかった。

 

そして10月の修学旅行で私は八幡君に告白をした。私は告白なんて今までに1度もしたことが無かったから、これが初めての恋で初めてのプロポーズだった。

 

八幡君は私のプロポーズを受けてくれて、それ以降私達は恋人関係になった。この日から私は念願だった名前呼びをする事が出来た。今までは少し抵抗があったけど、これからは堂々と言う事が出来るのが堪らなく嬉しかった。それに八幡君も私の事を名前で呼んでくれるようになってからは、こんな日が待っていたなんて想像もしていなかったと思うくらい幸せだった。

 

当時はまだ私に謝ってアプローチをかけてくる人達は居たみたいけど、私にはその人の事が見えないし受けるつもりもなかった。それから受験もあって別々の進路になっちゃったけど、今でもこうして会えているから不満は無い。

 

 

柊「もうすぐ卒業だね〜。」

 

八幡「……なぁ、今更だけどよ、お前本当に連中と仲を取り戻そうって気はないのか?」

 

 

多分八幡君はこの時、分かっていながら敢えて私に質問をしてきたんだと思う。何だか周りの空気がすこしだけピりついてたから分かる、これは答えた方がいいって。

 

 

柊「連中ってこのクラスにいる【幽霊】の事?」

 

八幡「………まぁ、そうだな。」

 

柊「やだなぁ八幡君は〜そんなの決まってるじゃん!私がそんな人達と仲良くしたいって思う?私も八幡君と同じで友達なんて要らない、八幡君さえ居てくれれば後はどうでもいい。頭を下げられようと、泣いて謝られようと、そんなのもう知った事じゃないよ。勝手に何回も無意味に謝ってればいいって思う。」

 

 

きっとクラスの皆は私の発言に色んなショックを受けていたと思う。それが何なのかは知らないけど、何となく分かる。

 

 

自分がしてきた事は一体何だったのか。

 

私は、俺はなんて事をしてしまったんだ。

 

もう、やり直せない………

 

最後まで許してもらえなかった………

 

 

私が想像出来るのはこれくらい。けどそんな事はもう考えないようにしてる。今は八幡君と一緒に楽しく高校生活を送れていければそれで良い。

 

 

 

 



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旅行!

八幡side

 

 

総武高校の1学期も終わって、今は夏休みに入った。俺からしてみれば、つまらない学校生活が漸くお休みになってくれた事がありがたく思える。それにあの部室にも当分は行かなくて良くなったってのもありがたい。まぁ、休みって事はいつしかそれは終わるって事なのだが、今はこの休みを満喫しよう。

 

ちなみに俺は今、泊まりで出掛けている。その場所はというと………

 

 

柊「あぁ〜すっずしぃ〜♪八幡君と涼風も早く早く〜!外の風が気持ち良いよ〜!」

 

涼風「お、お姉様……待ってください。」

 

八幡「相変わらずだな………」

 

御影「いやぁ八幡君、急な誘いなのに来てくれてありがとう。元々誘う予定だったんだけど、女房がサプライズにしようって聞かなくてね……」

 

紫苑「いいじゃないの。八幡君ならこのくらいの事、許してくれるわよ、ね?」

 

八幡「まぁ、連れて来てもらってるので……しかも北海道旅行に。」

 

 

そう、俺は日本47都道府県ある内の最北の地である北海道にいるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「それにしてもお父さんとお母さんも酷いじゃない!行く寸前になるまで八幡君の事を黙ってたなんて!教えてよー!」

 

紫苑「あら?それじゃあ言っておいた方が良かった?サプライズなのに?」

 

柊「………お母さんありがとう、大好き!」

 

涼風「お姉様ったら、調子良いんだから。」

 

八幡「調子が良いのも元気が良いのもいつもの事だろ。まぁ、そこが良いまである。」

 

柊「さっすが八幡君、私の事よく分かってるわね!けど、小町ちゃんは大丈夫だったの?私と八幡君の関係、知らないんでしょ?」

 

八幡「あぁ、だから書き置きだけ残しておいた。」

 

柊「なんて?」

 

八幡「友達と一緒に旅行行くって。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「ぷっ、あはははははは!!!八幡君に友達?ふふふふふっ、居るわけないのにね〜!」

 

涼風「お姉様、八幡さんに失礼ですよ!」

 

紫苑「そうよ柊、少し笑い過ぎよ。」

 

八幡「別にいいんですよ、気にしないでください。俺に友達が居ないのは本当の事ですから。まぁ、最近1人だけ出来ましたけど。」

 

 

戸塚は今までに出会って来た奴等とは根本的に違う。多分柊も戸塚となら友達になれるだろう。

 

 

柊「は、八幡君に………とも……だち!?」

 

八幡「おい、その反応は流石に失礼だぞ。」

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

御影「しかし、自然が豊かで良い場所だ。北海道に住んでいる人達が羨ましいな。僕達が住んでいる所は住宅やビルが多くなってきているから、緑が少ないしね。」

 

涼風「えぇ、とても穏やかな気持ちになれます。あの草原に寝転んだらどれだけ気持ち良いか………」

 

柊「あっ、それ私もやってみたいかも!ねぇ八幡君、もし丁度いい草原があったら腕枕してねっ♪」

 

八幡「芝生の枕じゃダメなのか?」

 

柊「八幡君が居る時は八幡君の枕を使った方が良いじゃない。これ常識!」

 

八幡「へいへい、腕枕とついでに抱き枕になる運命なんだな、俺は。」

 

紫苑「あらあら。」

 

 

ーーー温泉旅館ーーー

 

 

御影「よし、着いたぞ。此処が3日間泊まる旅館だ。」

 

柊「わぁ〜立派!!」

 

涼風「とても立派ですね。」

 

八幡「……絶対高級旅館だろ、此処。幾らしたのか考えたくもないな。」

 

紫苑「八幡君は気にしなくてもいいわよ。いつも柊がお世話になってるお礼だと思って。」

 

涼風「いつも姉がお世話に……いえ、ご迷惑をお掛けしていますので。」

 

柊「ちょっと涼風、それってどういう意味?」

 

御影「まぁまぁ、チェックインして荷物を置いてから観光に行こうじゃないか。」

 

 

早速俺達は旅館の中に入って部屋に入ろうとしたのだが、問題が起きた。

 

 

柊「どうしてよ!?どうして私と八幡君が別々でないといけないのよ!」

 

涼風「男女別々にするべきです!お姉様のお気持ちは分かりますが、少しは自重して下さい!」

 

 

………姉妹が部屋割りで揉めているのだ。俺はおじさんと柊、どちらでも構わないんだが、柊は俺と一緒でないと嫌なのだろう。部屋は3つ取ってあるんだが………1人だけ1部屋使えるって個人的には凄い贅沢にも感じるけどな。

 

 

涼風「お父様とお母様からも何か言って下さい!旅館の中でくらいは節度を守れと!!」

 

柊「ちょ、何よそれ〜別にいいじゃない!!恋人と一緒にいたいって思うのは当然でしょ!?お父さんとお母さんもそう思うでしょ!?」

 

 

なんとも可愛い姉妹喧嘩だ……此処は俺が1人になるべきか?

 

 

八幡「じゃあ俺が1人に「それは絶対にダメ。」いや、そんなに言うのなら「お姉様が八幡さんの部屋に忍び込むのでダメです。」さ、さいですか……」

 

御影「うぅ〜ん、普段は泊まりなんてしないから、こういう時くらいは一緒でも良いんじゃないか?それに八幡君なら柊の良い抑止剤になるだろうしね。」

 

紫苑「そうね。涼風、今回は我慢しなさい。」

 

涼風「……はい、分かりました。」

 

柊「ふっふーん、私のかc「けど柊、旅館内で煩くしたり、走り回ったりしたら………すぐに私たちの部屋に来てもらいますからね?分かりましたか?」………は、はい、分かりました。」

 

紫苑「よろしい。」

 

 

流石は柊と涼風の母親だ、扱いに慣れてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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支笏湖・小町・お昼飯

 

柊side

 

 

柊「それにしても、大きい湖ね〜。なんていう湖なのかしら?」

 

八幡「支笏湖っていうこの辺りで1番デカい湖らしい。それと北海道の中で3番目に大きくて、日本の中でもトップ10の大きさらしいぞ。」

 

 

流石八幡君、博識だわ!けどこうやって見てると海みたいに見えるわね………でもちゃんと湖なのよね、不思議だわ〜。

 

 

八幡「因みにこれは本当にあった事だが、昔この湖は死んだ骨の湖と書いて【死骨湖】って呼ばれていたらしい。誰が呼んだかは知らんが、そう呼ばれていたらしいぞ。」

 

柊「っ!?ちょっと八幡君、怖い事言わないでよ!そういう怖い豆知識は胸の中にしまっておいて!」

 

八幡「悪い悪い、ついな。」

 

柊「許しません!許して欲しかったら、他に情報を言いなさい!怖いのじゃなくて行ってみたくなるような情報をね!」

 

八幡「そうだな………親水公園って所と山線鉄橋って場所だな。どっちも湖を眺めながら夕日を眺められるスポットみたいだ。湖に落ちていく夕日が綺麗なんだと。」

 

 

おぉ〜そういうのを待ってたわ!2人で湖の夕陽を眺めながら手を繋いだりして……うふふっ、何だか楽しくなってきたわ♪

 

 

八幡「今だとまだ早過ぎるから、1度旅館に戻っておじさん達と昼飯でも食ってからまた来ないか?」

 

柊「うん、じゃあそうしよっか!また後で、なるべく夕日の近い時間に来よう!」

 

八幡「おう。」

 

 

小町side

 

 

ーーー時遡って午前9時頃ーーー

 

 

………い、居ない。お兄ちゃんがどこにも居ない!?何処に行ったの!?こんな朝から居ないなんて今まで1度もなかったのに!

 

 

あり得ない!あのお兄ちゃんが1人で起きて1人で何処かに行くなんて………けど何処に?お兄ちゃんがこんな朝早くから行く場所なんてどっかあったっけ?小町には検討もつかない。

 

 

小町「もぉ〜何処に行ったのさーあのゴミぃちゃんは!!」

 

凛「どうしたのよ朝から?」

 

小町「あっ、お母さん!!ちょっと聞いてよ、お兄ちゃんがどっかに出掛けてるんだよ!?しかもこんな朝早くから!」

 

凛「あぁ〜その事。大丈夫よ、あの子なら友達と一緒に旅行に行ってるから。」

 

 

…………………………え?

 

 

小町「え、ちょっと待って?え?お母さん、お兄ちゃんが友達と一緒に旅行?」

 

凛「えぇ、事前に行くからって。アンタに言ってあるのかと思ってたけど、その様子だと知らなかったようね。」

 

小町「いやいやそれもそうだけど、もっと他にも突っ込む所あったじゃん!お母さん疑わなかったの!?お兄ちゃんに友達がいるって事!!」

 

凛「そりゃ最初は疑ったわよ。けどそんな事を一々確認する訳にも行かないじゃない。そんな必要もないしね。八幡がどの子と友達になろうが八幡の自由よ。まぁ旅行は驚いたけど。」

 

 

お、お母さん………あっ、そうだ電話!

 

 

『お掛けになった電話番号は、電波の届かない所にあるか、電源が入っておりません。』

 

 

小町「そうだ、飛行機の中!!」

 

凛「取り敢えず午後まで待ってみなさい。場所によっては電話に出るかもしれないから。」

 

小町「うん、そうする〜……」

 

 

小町に旅行行くの教えてくれなかった事、小町的に超ポイント低いからね!!説明してもらうからね、お兄ちゃん!!

 

 

小町sideout

 

八幡side

 

 

御影「いやぁ〜流石は高級旅館、良い品ばかりだね。どの料理も美味しかったよ。」

 

柊「ホントだよね〜!私思わずお代わりって言いそうになっちゃったもん。」

 

八幡「咄嗟に口押さえて正解だった。それとお前、絶対卵焼きお代わりするつもりだったろ?」

 

柊「やっぱり八幡君にはバレちゃうか〜♪」

 

八幡「嬉しそうにしている所悪いが、俺は別に褒めてるわけじゃないからね?」

 

涼風「ごめんなさい八幡さん、姉が本当に………」

 

八幡「大丈夫だ、今に始まった事じゃない。」

 

柊「ちょっと?」

 

紫苑「ふふ、それもそうね……あっそうそう、携帯を見て思い出したんだけど、八幡君携帯のマナーモード切った?私ったら写真を撮るまでその事忘れてたのよ。」

 

 

あ、俺もマナーモードにしたままだった。俺の携帯は目覚ましかAmazon、柊との連絡くらいでしか使わないから全く気にしてなかった。だってこの旅行では目覚まし役(柊)がいるし、Amazonで注文したモンだってないし、柊とは一緒にいる頻度が多いから連絡は要らん。

 

けど、一応戻しておかないとな。

 

 

八幡「俺もマナーモードのままでした。あんまり携帯使わないからそのままでした………あっ、不在着信。小町からか、多分旅行の事だろうな。」

 

涼風「小町さん、ですか?」

 

八幡「あぁ……旅行の事、小町には言ってなかったからな、絶対問い詰められるだろうな。」

 

御影「ははは……敢えて言わないでおくなんて、八幡君は何を考えているんだい?君なら真っ先に言っていそうだけどね?」

 

八幡「一応、俺と柊が付き合ってるって事は誰にも言ってないので。知ってるのは柊と俺、柊の家族、そして俺の部活メンバーくらいですよ。元々隠し通すつもりでいたんですけどね。」

 

柊「もう言っちゃえばいいのに、私と八幡君の関係。そしたら楽になるよ?」

 

八幡「言っても信じねぇだろ。特に長い事兄妹やってると本当の事でも信じてもらえない時ってのはあるもんだ。」

 

 

 

 

 

 



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妹の攻め

 

八幡side

 

 

紫苑「後々になって言われるのもアレだから、今出てあげたらどうかしら?何でもそうだけど、早い方がいいと思うわよ。」

 

八幡「確かにそうですね。分かりました、ちょっと失礼します。」

 

 

さて、小町に連絡っと………

 

prrr…prrrっ!

 

 

小町『もしもしお兄ちゃん!?』

 

八幡「おう小町、悪りぃな電話出られなくて。丁度飛行機の中に居たから出られなかったわ。」

 

小町『そんな事よりもお兄ちゃん今何処に居るの!?友達と旅行に行ったってお母さんが言ってたけど、本当なの?』

 

八幡「あぁ、本当だ。今北海道にいる。」

 

小町『北海道!!?嘘、そんな遠くにいるの!?』

 

八幡「まぁな、ちゃんとお土産は買ってくるから心配すんな。まだ何かあるか?」

 

小町『いやいやありすぎるから!!その、お友達っていうのは高校の?』

 

八幡「いや、別の高校だ。まぁ中学は一緒だったから顔馴染みではあるな。ソイツも妹がいるから結構話があったりしてな、たまに会ったりして話してんだよ。」

 

小町『……ちょっと待ってて。』

 

 

?何だ………あっ、ビデオ通話にして来やがった。

 

 

小町『お兄ちゃん、その友達に会わせてよ〜。小町何だかその人の事気になっちゃってさ〜。』

 

八幡「言っておくが、その友達は女だからな?』

 

小町『嘘っ!?女の人!?お兄ちゃん2人で旅行に行ってるの!?』

 

八幡「そんな訳ねぇだろ。向こうは家族で来てるし、俺はそれに誘われたから着いて来ただけだ。まぁ言わなかったのは悪いとは思ってる。」

 

小町『兎に角さ、その人に会わせて貰えない?何も悪い事はしないからさっ!』

 

八幡「そうしたら俺が真っ先に電話を切る上に、お土産も無しにするから安心しろ。」

 

小町『絶対に迷惑は掛けないであります!!』

 

 

こういう時だけは本当に調子の良い妹だと思うが、やはり俺とは違ってコミュ力がある。流石は次世代型ハイブリッドボッチだ………

 

 

小町『今さ、失礼な事考えてなかった?』

 

八幡「気のせい気のせい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「すまん、待たせた。柊、ウチの妹がお前に会いたいんだと。話してやってもらってもいいか?」

 

柊「私と?良いよ!」

 

八幡「ほい、携帯。」

 

柊「ありがと〜♪こんにちはっ、小町ちゃんかな?私が八幡君の友達の夜十神柊だよ、よろしくね♪」

 

小町『………はっ!!こ、これはどうも、兄の妹の小町です。ビックリしました、まさかこんな綺麗な人だったなんて………』

 

柊「ふふふっ、お世辞でも嬉しいっ♪それで、何かお話したい事ってあるのかな?」

 

小町『いやぁお兄ちゃんの彼女にでもって思ってましたけど、これは流石にハードルが高いですね〜。これからも兄をよろしくお願いします。』

 

柊「いいのいいの!私も八幡君と一緒にいる時間は楽しいしねっ♪もしかしたらいつかそっちのお家にもお邪魔するかもしれないけど、いいかな?」

 

小町『あぁもう是非いらして下さい!愚兄共々お待ちしてますので!』

 

 

愚は余計だ。

 

 

小町『それじゃあ、ありがとうございました!』

 

柊「はいは〜い!」

 

 

そして通話は切れた。まぁ失礼な事は言ってなかったからよしとするか。

 

 

紫苑「八幡君から聞いていた通りの子ね。君と違ってコミュ力はあるようね。」

 

八幡「俺と違って小町は明るいですから。まぁその分って訳でもないですけど、頭のIQが足りない部分が少なからずありますけど。」

 

御影「君の兄妹は一長一短で生まれてきたのかい?コミュ力が低くて頭の良い兄とコミュ力が高くて頭の悪………あまり良くない妹。」

 

八幡「無理して言い直さなくてもいいですよ、普段から頭の悪い事言ってるんで。」

 

 

((((兄も兄でかなりな事言ってる………))))

 

 

涼風「そ、それで八幡さん!お昼を終わった後はどちらに行かれるのですか?」

 

八幡「俺か?そうだな……今の時間では夕日は出ないから、お土産のありそうな場所にでも行こうと思ってる。」

 

涼風「っ!でしたらご一緒しても良いですか!?」

 

八幡「あぁ、いいけど。」

 

 

普段控えめな涼風がこんな事を言うのは珍しい。何か心境の変化があったのかは知らんが、積極的になったのは良い事だ。

 

 

涼風「という訳でお姉様、少しの間だけ八幡さんをお借りしますね。」

 

 

………え?

 

 

柊「ちょっと何考えてるの涼風!!八幡君は私の彼氏よ!?それを差し置いて八幡君を独占しようとしないで!!」

 

涼風「私だって八幡さんとお出掛けしたいんです。少しくらい時間を分けてくれてもいいじゃないんですか。私なんて普段は八幡さんと会える機会なんて少ないんですし。」

 

柊「それを言うならこの前の私だってそうよ!!2年生になってからは碌に八幡君とデート出来てなかったんだから!!」

 

涼風「私も八幡さんのような……お、お兄様のような人とお出かけしてみたいのです!」

 

柊「お、お兄様って八幡は「デデーン、柊ちゃんOUT〜。」ちょっ、何お母さん!?」

 

紫苑「柊、お母さん言ったわよね?中で煩くしたり、走り回ったりしないようにって。」

 

柊「………あっ。」

 

紫苑「涼風、八幡さんと一緒に出掛けてきなさいな。夕暮れ前には戻ってきなさい。八幡さんもその時間には約束があるみたいだから。柊は私達と一緒にお買い物をしましょうか。」

 

柊「わ、私も八幡君達と「私達と、一緒に、行きましょうか?」………はい。」

 

紫苑「じゃあ、楽しんできなさい。八幡さん、涼風をお願いしますね。」

 

八幡「は、はい。」

 

 

こんなの断れねぇよ……断ったら虎でも怯みそうなあの目で見られちまう。あれは勘弁だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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妹(涼風)と……

 

 

涼風side

 

 

お姉様がお母様に連れられてから、私と八幡さんの2人で町を散策に出ています。最後まで駄々を捏ねていた姉ですが、流石にお母様が睨みを利かせると、途端に大人しくなったのは少しだけ笑っちゃいました。八幡さんも口元を緩めていましたので、面白かったのでしょう。

 

ですが今、私は少しだけ緊張しています。八幡さんとは短くない付き合いとはいえ、こうして2人でお話やお出掛けをする事は今までに指で数えるくらいしか無かったからです。いつもは姉と過ごす事が多いので、今だけは八幡さんを独占………っ!べ、別に私はお姉様から八幡さんを奪い取りたい訳ではありませんからね!?兄のような、お兄様のような方と過ごしてみたいからです!八幡さんはその理想形のような方なので、少しだけと思ったのです!決して他意はありません!

 

 

八幡「なんか、変に緊張するな。」

 

涼風「え?」

 

八幡「いやな、顔が似ているとはいえ、目の前に居るのは涼風だからな。普段俺達はこうやって会話する事って殆ど無いだろ?だから少しな。」

 

涼風「私もそうです。八幡さんとお出掛けしてみたいというのは嘘ではありませんでしたが、そこにはいつもお姉様が居たので。2人きりという機会はありませんでしたので。」

 

八幡「そうだな………まっ、折角なんだ。姉の柊の前では話せないような話でもしてくれて構わないしよ、気楽に歩きながらでも楽しもうぜ。」

 

涼風「は、はい!」

 

 

やはり兄が居る、っという感覚はこんな感じなのでしょうか?無意識の内に安心させてくれるというか、大らかというか………よく分かりませんが。

 

 

ーーースイーツ店ーーー

 

 

涼風「それで、八幡さん………その、いいでしょうか?質問をさせて頂いても?」

 

八幡「あぁ、いいぞ。っていうか、俺にそんな畏まった口調でなくてもいいんだぞ?柊やおじさんおばさんと同じようにしてくれればいい。」

 

涼風「そ、そうですか?じゃ、じゃあ次からはそのように………えっと、姉と付き合い始めてもう2年程経ちますけど、姉の様子はどうですか?」

 

八幡「そうだな、普段は変わりない様子だ。だが俺は柊の学校面を知らないから、そこだな……少し俺が問題視してるのは。」

 

涼風「……と言いますと?」

 

八幡「柊が過剰にやり過ぎてないかって事だ。中学の時もそうだが、柊は俺を除いた他人に全く興味がない。それこそ幽霊扱いする程にな。お前もその辺りの事情は知ってるよな?中学も学年も同じだったから、あまり掘り返したくは無い事だろうが。」

 

涼風「……はい。」

 

八幡「その連鎖で高校でもクラスメイトの奴等を無視したりとかしてないかが心配だな。その事は今の俺にはどうしようもない事だからな。何とかできるとすれば涼風くらいになっちまう。」

 

 

そうですよね………八幡さんは総武高校で私達は誠教学園、学び舎が違うのでおいそれと学校には近づけませんから。

 

 

八幡「涼風から見て柊の様子はどうだ?」

 

涼風「私の目には中学3年生になる前の姉の姿、本来の姿のように見えます。なのであまり心配はないとは思いますけど……少し心配ではあります。またあんな事が起きてしまったらって考えると………」

 

八幡「そうだな……あの頃の学校は酷かったもんだ。出来れば2度とあって欲しくないな。」

 

 

やはり八幡さんでも中学3年生の頃は良い思い出が無いようです。無理もありません、私達の世代であの中学校に居た生徒はその1年間分の思い出は皆無に等しいでしょうから。

 

 

涼風「そうですね、私も同じ気持ちです。」

 

八幡「……そういえば柊に絡んでる男子とかは居ないのか?柊もそうだが、涼風も同じ美形だから話しかけられたりはするだろ?」

 

 

び、美形!?私が!?は、八幡さんは一体何を言って……お姉様は兎も角、私なんて………///

 

 

涼風「わ、私は兎も角としてお姉様は男子からも女子からも話しかけられる事は多いです。クラス、というよりも学年からの人気が高いです。」

 

八幡「私は兎も角って……俺がそこら辺の男子生徒だったら、間違いなく声掛けてると思うけどな。」

 

涼風「わ、私はお姉様と違って活発ではありませんし、どちらかといえば地味な方なので………」

 

八幡「おいおい、言い方が少しだけマイナスだぞ?お前は地味なんかじゃない、お淑やかなんだよ。姉の柊が【明朗快活】なら妹の涼風は【雲心月性】って所だろう。」

 

涼風「私には勿体無い四字熟語だと思いますが……確かに私は有名人になりたいとも、お金が大量に欲しいとも考えた事はありませんが、私だってそれなりに欲はありますよ?」

 

八幡「けど柊程では無いだろ?柊のように駄々捏ねてまで欲しがったりはしないだろ?」

 

涼風「っ!ふふふっ、確かにそうですね。」

 

 

確かに私は姉のように何かをしてまで物を欲しがった事はありませんでしたね。ふふふっ、お姉様は子供の頃に何度かそういう事がありましたので。八幡さんは言葉で人を例えるのがとても上手です。

 

 

涼風「じゃあ八幡さんは【温厚篤実】ですね。真面目で優しいですし、とても穏やかな方ですから。」

 

八幡「つい最近、その穏やかな奴は怒ったけどな。それについては?」

 

涼風「言葉というのは便利です。【龍の逆鱗に触れる】。例え優しい方でも、嫌な事をされれば怒ります。八幡さんの場合はそうでしょう?」

 

八幡「……涼風、絶対口喧嘩とか強いだろ?」

 

 

はい、姉に負けた事は今までで数えるくらいしかありませんから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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姉の病気

 

八幡side

 

 

時刻は午後の16時。陽が落ちるにはまだ早い時間だが、俺と涼風は1度旅館に戻って柊とおじさん達に会う事になっている。さて、戻った時にはどんな顔をしているやら………

 

 

涼風「お姉様、いったいどんな顔をされているのでしょうか?」

 

八幡「俺も同じ事考えてた。やっぱ気になるよな、少しだけど彼氏が妹と一緒に居るんだからな。取られはしないと思うが、何かしてるのでは?って勘ぐりたくなるってもんだ。」

 

涼風「きっと最初は八幡さんの安否の確認でしょうね。その次が私に尋問、それから本当に何も無かったかの確認、といった所でしょう。」

 

 

流石は姉妹だ、細かい所までよく分かってんなぁ……俺は小町の行動パターンを読めた試しがねぇってのに。流石に兄と妹じゃ無理ゲーか。

 

 

ーーー旅館・ホールーーー

 

 

涼風「只今戻りました。」

 

八幡「涼風、大じょ「はっちま〜んくぅ〜ん!!」……うぶじゃねぇな、こりゃ。」

 

柊「八幡!!大丈夫?怪我とかしてない?変な人と会ってない?妹に何か変な事されなかった?」ナミダメ

 

八幡「落ち着け柊、俺はどこも何ともねぇから。ていうかあるわけねぇだろ、この姿見てなんかあったって思うか?」

 

柊「………涼風、八幡君に何か変な事してないでしょうね?もししていたのなら………涼風でも許さないよ?」ジトー

 

涼風「お姉様は八幡さんの事になると過剰反応し過ぎです……ご安心下さい、何もしていません。歩く時に少しの間だけ手を繋いだ程度です。」

 

柊「…………………………まぁ、それなら。」

 

 

((((あっ、今心の中で絶対「やっぱり何かしてたじゃん!!」って思ってたな。))))

 

 

柊「んんっ!!まぁ次は私と八幡君の時間だから誰にも邪魔はさせないけど〜♪」ギュー!

 

八幡「いや、誰も邪魔する気は無いだろ………」

 

柊「だってさっきはお母さんが「ん?」い、いえ……私が煩かっただけでした、はい。」

 

 

おいおい柊、おばさんに弱過ぎだろ。

 

 

柊「そ、それよりも八幡君!早く行こっ!あともう少しで夕日も出てくると思うから!それまでにさっき八幡君が言ってた所に向かわなきゃ♪」

 

八幡「分かったよ、分かったからそんなに引っ張るなよ。夕日はそう簡単には逃げねぇし、落ちねぇからよ。」

 

 

まるで檻から飛び出した犬だな、親から離れた途端にメッチャ元気になりやがった。

 

まぁ、元気な所が柊のチャームポイントだよな。

 

 

八幡sideout

 

紫苑side

 

 

はぁ……あの子も尋常じゃないわね。付き合う頃から八幡君に対して凄くベッタリなのは知っていたけど、行動してる最中まで八幡君の名前を連呼しながら行動するなんて思わなかったわ。少し鬱が入っていたような気がしたのは気のせいよね。

 

 

涼風「八幡さんとの時間、とても楽しかったです。小町さんが少しだけ羨ましいと思いました。兄が居るとこんな感じなのですね。」

 

紫苑「あら?もしかして涼風も八幡君を狙い始めちゃったのかしら?」

 

涼風「ち、違います!ただ、兄という存在が少し欲しくなったというだけです!」

 

紫苑「ふふっ、そう。まぁ確かに八幡君は面倒見が良いものね。偶に家に来る時だってあまりに柊が煩かったら、口の中にお菓子を突っ込むか頭を撫でるものね。段々と柊の扱いに慣れてるというか、攻略しているわよね。」

 

御影「いや、単に柊が扱いやすいという逆説もあるぞ?ああいう性格だからね、人に……というより八幡君には無意識の内に甘えてしまう所もある。それで余計に八幡君に攻略されてしまっているんじゃないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫苑「それね、きっとそれだわ。」

 

涼風「はい、確実にそれですね。」

 

御影「うん、自分で言うのもアレだけど、否定する材料が今の所見当たらないから、今僕の言った事がそうだとしか言えなくなっちゃうね。」

 

 

結論、『困った時は八幡君にっ!』

 

 

紫苑sideout

 

柊side

 

 

柊「………ねぇ八幡君?なんか私に対して変な事考えてなかった?」ムスー

 

八幡「変な事?いや、別に考えてないが?」

 

柊「心なしか、なんか馬鹿にされたような気がしてさ。もしかしたらって思ったんだけど………」

 

八幡「気のせいだろ。ほら、その変な顔をいつもの顔に直せ。美人が台無しだ。」

 

柊「うん、分かった♪」

 

 

うふふっ、八幡君から美人って言われるとすっごく嬉しいなぁ♪たとえそれがお世辞だったとしてもついつい嬉しくなって笑っちゃう!だって八幡君からの言葉だもん♪

 

 

八幡「そういや、おばさん達とはどうだった?楽しめたのか?色んな所回ったんだろ?」

 

柊「それがね、八幡君に会いた過ぎて殆ど覚えてないんだよね………何してたんだろう?」

 

八幡「お、おぉ……そうか。」

 

 

八幡(ヤバい、ヤバいよこの子。俺と離れてる時間だけ鬱になってるんじゃないの?この子ちょっとだけ怖い………ヤンデレ状態になって俺に向かって来ないよな?)

 

 

柊「まぁそれはいいとして、早く行こっ♪」

 

八幡「………あぁ、そうだな。」

 

 

八幡君と夕日を拝める〜。何度もあったけど、こういう場所では眺めた事なかったからね、新鮮かも♪

 

 

 

 

 

 

 

 




病気……一時的な鬱の事でした。

理由……八幡と一緒に行動していながらも、一緒に過ごせない時に発症。


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夕暮れ

昨日はすみませんでした、少々立て込んでいたので投稿できませんでした!

では、どうぞ!


八幡side

 

 

ーーー親水公園ーーー

 

 

柊「着いたぁ〜!はぁー疲れた〜!」

 

八幡「おい、柊……あんまり走るなよ。別に夕日は逃げねぇよ。」

 

柊「何言ってるのさ八幡君は!?私は八幡君と過ごす時間を1秒でも長く過ごしたいのっ!涼風に八幡君との時間を取られた分、今は私が八幡君との時間を過ごす番なんだから!」

 

八幡「お、おう……まぁ大丈夫だろ。今は涼風もおじさん達も居ないんだからよ。それに、時間だって良い頃だろ?」

 

柊「ふふぅ、そうね♪じゃあ此処で座って待ってよっか。八幡君、お隣どーぞっ。」

 

 

公園にあった備え付けのベンチに座った柊は隣の空いてるスペースをトントンと叩いて座るように促した。特に断る理由も拒む理由も無かったから、俺はそのまま柊の隣に腰を掛けた。その瞬間、柊は俺の肩に頭を預けてきた。

 

 

八幡「どうした?走り疲れたか?」

 

柊「んん〜?うんん、そんなんじゃないよ。ただ単にこうしたかっただけ。ダメ?」

 

八幡「いや、ダメな事はない。」

 

柊「ふふっ、ありがと♪」

 

八幡「気にすんな。何だかんだで長い付き合いになるんだ。このくらい許容範囲だ。むしろこの程度ならいつでも大丈夫だ。」

 

柊「さっすが八幡君♪懐が深〜い!」

 

 

懐が深い、か。それはお前に対してだけだ。他の奴にはまずこんな事は許さないだろうしな。

 

 

柊「んん〜……あぁ〜!!なんか何度でも身体を伸ばしたくなっちゃうよね〜。和やかな場所だからしたくなっちゃうのかな?」

 

八幡「それもあるだろうな。俺達は普段、都会暮らしだから今みたいな緑に囲まれた場所でのんびりする事なんて指で数えるくらいしかないだろう。」

 

柊「開放的になってるって事かな?」

 

八幡「お前の場合いつも開放的だと思うが、まぁそういう事だ。にしても………」

 

 

着いた俺達に合わせるかのように、夕日の光が俺達を照らしてくれた。緋色の空と光が湖を照らして幻想的な景色が広がっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「綺麗だね。」

 

八幡「あぁ……そうだな。」

 

柊「普段は夕日なんて気にかけた事もないのに、スポットを変えただけでこんなにも綺麗で美しい景色になるなんて………」

 

八幡「………」

 

柊「これで八幡君が何かしてくれれば、もっと景色を堪能できるんだけどなぁ〜。」ジィー

 

八幡「フッ、我儘で甘えん坊な柊にはこれくらいで充分だろう。」

 

 

俺は柊の肩に手を回して、肩に乗せている柊の頭に俺の頬を軽く乗せた。

 

 

柊「うぅ〜ん………250点だね♪」

 

八幡「何点満点なんだ?」

 

柊「勿論100点満点だけど?」

 

八幡「オーバーしてるじゃねぇか。因みに得点配分は?」

 

柊「肩に手を回したのが50点、私の頭に頬を載せたのが100点だよ!だって初めての事だから♪」

 

 

それで100点取れちゃうのかよ………っていうか最初から100点満点なのはどうしてだろう?まぁ気にしないでおこう。

 

 

八幡「………」

 

柊「………」

 

八幡「………なぁ柊。」

 

柊「ん?どうしたの?」

 

八幡「……いや、なんでもねぇわ。」

 

柊「気になるじゃん!そこまで言ったのなら教えてよー!誰にも言わないから!」

 

八幡「………いや、もしもあの時に俺が柊に話しかけてなかったら、今どうなってんだろうって思ってな。こうして付き合ってる事はないと「そんな事、無いって私は思う。」………え?」

 

柊「きっと八幡君ならあの時でなくても、何処かのタイミングで私に話しかけてくれたと思う。だって八幡君は優しいもん。そんな優しい八幡君なら、違うタイミングでも多分………ううん、きっと私を助けてくれたと思う。」

 

八幡「………」

 

柊「だからね、もし時が違ってても私達はきっとお付き合いしてる!だって私と八幡君の相性、バッチリじゃん♪」

 

 

………柊らしい答えだな。

 

 

八幡「そうだな。多分、そうなってるよな。」

 

柊「多分じゃないよ!きっとそうなってる!」

 

八幡「………そうだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー旅館ーーー

 

 

柊「綺麗だったわね、夕日。千葉でもあんな景色が見られたら良いんだけど、滅多に見られないから良いのかもしれないわね。」

 

八幡「だな。千葉でもさっきみたいな景色が見られる所、探してみるか?」

 

柊「うん♪じゃあその日は1日中一緒に居た方が良いかもしれないから、お休みの土日の方が良いかもしれないわね。その方が私達にも都合が良いし。」

 

八幡「じゃあ帰ってからはそのスポット探しか?行く場所が増えるな。」

 

柊「なぁ〜に?不満なの?」

 

八幡「そんなのじゃねぇよ、また一緒にどっか行けるなって思ってただけだ。」

 

柊「っ!い、良いじゃん!デートなんだし!一緒に居たいって思うのは当たり前だもん!///」

 

八幡「お、おう……///」

 

 

これまでもそうだが、やっぱこうやってストレートに言われると恥ずかしいな。まだ耐性がついてねぇって事か。けどまぁ、それはこれからつけていけばいいか。俺にそれができるかどうかは分からんが。

 

 

涼風「お姉様、八幡さん、お帰りなさい。夕日はどうでしたか?」

 

柊「綺麗だったわよ〜、八幡君に肩を抱かれて愛を囁かれて………嬉しかったなぁ〜♪」

 

八幡「涼風、愛を囁かれての部分は柊の捏造だからな?肩を抱いたのは事実だけどよ。」

 

涼風「大丈夫です、お姉様の気分が良い時は半分嘘をつきますので。」

 

柊「ちょっ、姉の私より八幡君の方を信じるの!?しかも何で嘘だって分かったの!?」

 

八幡「柊良かったな、涼風はお前の事よく理解してくれているみたいだぞ。」

 

柊「嬉しくないわよこんな理解のされ方!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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さらば北海道!ただいま、千葉と我が家!

昨日の分はお昼に出したので、今日の分は今書き上げました!!

調子の良い自分に感謝!!(調子悪い時本当に書けないです。4〜5時間くらいかかります。)


 

八幡side

 

 

ーーー新千歳空港ーーー

 

 

柊「北海道とももうお別れかぁ〜……涼しくて良い所だったのになぁ〜。」

 

涼風「大丈夫ですお姉様、また来年もお父様とお母様のご予定がつけば行けます!」

 

柊「そうだと良いんだけど。あっ、その時は八幡君も一緒かなぁ!?一緒だと良いなぁ〜えへへ♪」

 

涼風「お姉様………」

 

御影「ははははっ、2人はやっぱり仲が良いね。君も八幡君もそう思わないかい?」

 

紫苑「えぇ、ホント。」

 

八幡「確かに。」

 

 

喧嘩とかした事あるんだろうか?いや、旅行中にあった口喧嘩とかそういうのじゃなくて、もっとこう………激しい言い合いとか叩き合いとか?

 

 

柊「あっ、八幡君!飛行機の席は隣になろっ!」

 

涼風「は、八幡さん!私も八幡さんのお隣にっ!」

 

八幡「お、おう………」

 

紫苑「ふふふっ、八幡君は本当に娘達に懐かれているわね。どっちを娶ってもいいのよ?」

 

八幡「は、はぁ!?」

 

柊「な、何言ってるのさお母さん!!八幡君は私の彼氏なんだから私と結婚するんだよ!!そうだよね八幡君!?」

 

涼風「は、八幡さんはお姉様の彼氏で……で、ですがチャンスがあるのなら………八幡さんはお優しいですし、もしかしたら一押しすれば………」

 

八幡「なんて事言うんですか……柊は兎も角、涼風が別世界に行ってしまったんですけど?」

 

紫苑「あら、少し刺激が強かったかしら?」

 

御影「けど八幡君なら、柊と涼風のどちらを選んでくれても構わないからね。」

 

八幡「だからその発言をやめて下さい。エスカレートしたらどうやっておさめるんです?」

 

 

ーーー飛行機ーーー

 

 

八幡「んで、こうなったと。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「まぁ、席を隣同士にするのなら、こうするしかないものね♪涼風1人除け者にしたくないもの。」

 

涼風「お姉様……ありがとうございます。」

 

 

結論から言うと、俺が真ん中で両サイドに姉妹がいるって構図だ。そしておじさんとおばさんは真ん中のシートにいるから、俺達を見ながら笑っている。ていうか俺を見て笑ってないアレ?

 

 

※物凄く簡単に表すとこんな感じです。

 

○○○ 通路 ○○父母 通路 涼八柊

 

 

八幡「それよりもそんなにくっつくなよ、そんなにくっつかなくても俺はどこにも行かねぇから。ていうか行けないから。」

 

柊「いいじゃない別に♪八幡君の腕に抱き着けるのは彼女である私の特権なんだから!」

 

涼風「は、八幡さんは姉の大事な恋人であり、私の……お、お兄様のような方でもありますので、す、少しでもその温もりを感じたいのです!」

 

 

この2人、俺を逃さない気だ。俺が自由に動かせるの、もう足しかないんだけど。足でどうしろというの?腕は2人に抱き着かれているせいで幸せなメロンに包まれている天国気分と同時に目的地に着くまでホールドされたままという地獄気分の両方を堪能しなければならない。食いもん食う時くらいは離してもらえるんだよな?

 

 

涼風「八幡さん、お腹が空いた時はいつでも仰ってください。僭越ながら私とお姉様が食べさせて差し上げますので。」

 

柊「そーそっ♪いつでも言って!あっ、飲み物もだからねっ♪」

 

 

終わってた、もう既に終わってたわ。ハチマンウッカリシテタ………嗚呼、さらば快適な空の旅。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっ、これって寝れば「「寝たい時は私に寄って……何言ってるの(涼風?)(ですかお姉様?)」」………いやダメだわ、寝る事もできねぇわコレ。

 

 

ーーー千葉駅ーーー

 

 

御影「本当に此処でいいのかい?君の家なら知ってるんだからそこまで送れるのに。」

 

八幡「ありがたいんですけど、少し歩きたい気分なので。」

 

御影「そうか、なら無理強いはしないよ。八幡君、今回の旅行は楽しかったよ。急な誘いを受けてくれてありがとう。妻も娘達も喜んでくれてたみたいだしね。」

 

紫苑「八幡君、また行きましょうね。」

 

涼風「八幡さん、また次にお会いしましょう。」

 

柊「じゃあ八幡君、次はプールかお祭りの時に会おうねっ!今年の夏も目一杯楽しもうね〜!」

 

八幡「あぁ、そうだな。俺も旅行楽しかったです。じゃあ、また。さようなら。」

 

柊「うん、ばいば〜い!」

 

涼風「次にお会いする時までお元気で!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ〜〜〜やっと解放されたぁ〜!!腕が!腕がもう痺れて痺れて!飛行機乗ってから降りるまでずっと抱き着いてるし、車も乗ったら乗ったで抱き着いてくんの!!あれは流石にダメだって。腕が少しだけ悲鳴あげてたから、『僕達に自由を下さい〜!!』って。

 

 

八幡「少し手の感覚ねぇもんな……バッグ落とさねぇように気をつけないとな。お土産も入ってるから落としたら大変だ。」

 

 

ーーー比企谷家ーーー

 

 

八幡「ふっ、着いた………小町の奴、玄関には居ないだろうが、待ち構えて聞き出そうとはするだろうな。まぁ何も言ってなかったしな、聞かれたら聞かれたで正直に答えるか。」

 

 

ガチャッ

 

 

八幡「ただいま〜。」

 

凛「あぁ八幡、帰ってきたのね。おかえり、旅行どうだった?」

 

八幡「あぁ、楽しかった。コレ、お土産。」

 

凛「ありがと。さっ、アンタもゆっくり休みなさい。疲れてんでしょ?」

 

八幡「何で分かるんだ?」

 

凛「伊達にアンタの母親やってないわよ。麦茶ならあるけど飲む?」

 

 

………意外な一面、だな。

 

 

八幡「あぁ、貰うわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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家族説明会

 

八幡side

 

 

小町「それでお兄ちゃん、説明プリーズ♪」

 

八幡「まぁそう焦るなって。んなしかめっ面はお前には似合わん。ホレ、土産と飲み物でも飲みながら、な?」

 

小町「あぁうん、そうだね。一先ず一口………っていう風にはならないからね?」

 

 

チッ、いつもだったら食いつくのに。今は彼女のネタの方が強いって事か………

 

 

八幡「分かった分かった、説明するから。その前に1つ聞きたいんだけどさ、何でちゃっかり母ちゃんも居るんだ?」

 

凛「だって気になるじゃない、アンタに彼女ができた経緯。」

 

 

うん、気になるよね。誰だって気になると思うけどさ、何で今?旅行行く前にも聞けたよね?

 

 

八幡「まぁいいや。小町、お前中学の時に流行ってた【幽霊ごっこ】って知ってるか?」

 

小町「あぁ〜流行ってたよね〜!誰かかは分からないけど、その人に話しかけたら無視されるっていうヤツでしょ?」

 

八幡「まぁ小町達はそういう認識だろうな。実はその【幽霊ごっこ】ってのはな、特定の人物を居ない人、見えない人、幽霊扱いにするって事だ。もっと簡単に言えばソイツを無視をするって事だ………それはYさんがクラスのイケメン君に告白された事で起こった事なんだよ。当然Yさんはこの事を知らない。最初は秘密裏にやらされてた事だからな、けどそれが何故か流行り始めて噂に尾鰭がついたのか、『その人物に話しかけたら、その人も幽霊になる。』ってバカげた設定もあったんだ。」

 

小町「へぇ〜最初のは知らないけど、1番最後のは小町達が聞いたのと一緒だね。」

 

八幡「そうだろうな。それで続きだが、その幽霊扱いされていたのが、柊だったんだよ。」

 

小町「うえぇ!!?ひ、柊さんが!!?」

 

八幡「あぁ。初めて俺が柊と話した時、アイツは泣いてた。それも酷く傷ついたような顔をしてな。それから少し話をしてから、次の日から何故か柊が俺と一緒に行動するようになった。まぁ俺はその【幽霊ごっこ】とかどうでもよかったしな。俺、友達居ねぇから無視されても困らなかったし。」

 

凛「八幡、アンタ………」

 

八幡「いいんだよ別に。でだ、一緒に行動するようになってからはその遊びも段々と大した事なくなってきたからか、柊の所に謝りに行く奴が増えて来たんだ。そしたらソイツ等にどんな事したか想像つくか、小町?」

 

小町「うぅ〜ん……優しそうな人だったし、やっぱりまたよろしく〜みたいな感じ?」

 

 

まぁ、あの人となりを見れば誰もがそう思うだろう。けど現実ってのはそんなに甘くない。

 

 

八幡「正解は……今度は柊がソイツ等を幽霊扱いしたんだよ。しかも本当に見えていないかのような扱いでな。」

 

小町「え、ええぇぇ………」

 

凛「そ、そうなの?」

 

八幡「あぁ。そん時の事はまだ覚えてっけど、俺の口からは言えない。流石に個人情報の問題もあるからな。そして修学旅行の時に柊に告白されて、そっから俺達は付き合って今に至るってわけだ。まぁ要するに柊はそん時【幽霊ごっこ】の対象者にされてクラスどころか全学年からハブられていた所に俺が話しかけた。そして次の日から俺と一緒に行動するようになって修学旅行で付き合い始めたってわけだ。」

 

小町「小町の知らない所でそんな事があったんだ………柊さん、凄い経験したんだね。」

 

八幡「あぁ。相当参ってたみたいでな、俺と遊ぶようになってからのアイツは本当に楽しそうだった。向こうのおじさんとおばさんにも頭下げられたし、握手もされた。家族も知っていたみたいで何とか励ましていたみたいだが、それでも限界があったみたいでな。」

 

凛「けど八幡、アンタ良くやったわ。うん、アンタはその時別に何とも思っていなかったようだけど、1人の人生と1つの家族を救ったんだから。これは誇りに思いなさい。」

 

小町「そうだよお兄ちゃん!小町もすっごい事だと思う!小町が柊さんの立場でも、間違いなくお兄ちゃんに惚れちゃってるもん!」

 

八幡「………おう。」

 

 

なんか、アレだな。普段から家族に褒められる事なんて滅多にねぇから照れ臭い………

 

 

凛「八幡も偶には良い所見せるじゃない。それよりも、その柊さんだったかしら?今度家に呼びなさいよ。もし良かったら家族も誘いなさい。」

 

八幡「それは別にいいけどよ、あんま期待すんなよ?おじさんとおばさん涼風は大丈夫だが、柊は基本的に俺以外の人には無関心だから。」

 

小町「お兄ちゃん、涼風って誰?」

 

八幡「柊の妹だ。双子の姉妹で瓜二つ。髪型同じだったら区別つかねぇぞ。柊がサラサラのロングストレートで涼風が同じロングで少しだけウェーブがあるような感じだ。まぁ性格は殆ど真逆だけどな。」

 

小町「ふむふむ、なんか小町とお兄ちゃんを逆にしたような感じだね!」

 

 

ちょっと小町ちゃん、それどういう意味?まぁその通りなんだけどよ。

 

 

凛「まぁそれはいいとして。ちゃんと言っておきなさいよ。アンタの旅行の分も含めてお礼もしたいんだから。」

 

八幡「分かった、言っておく。次に柊と出掛ける時にでも言っておくわ。」

 

小町「でさ、でさ、お兄ちゃん♪もうちょっと聞きたい事があるんだけどさ〜いい?」

 

 

柊、涼風、そしておじさんにおばさん。こういう所が俺の妹の頭が悪いところなんです。

 

 

 

 

 



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夏祭り!

 

 

柊side

 

 

柊「うん、これでバッチリ♪後は集合場所に行けばデートの準備完了だよね!よぉし、お祭りデートにいざ、出発〜♪」

 

 

うふふっ、これから八幡君とお祭りデート♪何しようかなぁ〜。けど、どうせやるのなら八幡君と一緒に楽しめる遊びの方が良いよね。輪投げとか射的とか金魚すくいとか!八幡君は私のこの浴衣、綺麗って言ってくれるかな?紫の着物に青色と水色の朝顔柄に赤い帯を巻いたから、それなりには良いと思うんだけど。それと今日は髪が長いと着物と合わないから、髪紐で結ってある。

 

 

柊「似合ってるって言ってくれたら良いなぁ♪」

 

 

ーーー集合場所ーーー

 

 

確かこの辺だよね〜……あっいたいた!

 

 

柊「はっちまんくん!」

 

八幡「ん?おぉ柊、来たか………ほぉ、去年のと浴衣違うんだな。」

 

柊「うん、中学から使ってた物だったからそろそろ新調しなきゃね〜って言ってたからこの前選んで買ってもらったんだけど………どう?」

 

八幡「あぁ、似合ってる。綺麗だ。」

 

 

八幡(いやだってそんな事は周りの目を見れば分かるでしょ。柊、お前何人の男を魅了してると思ってるの?ただでさえ顔が良いのに、それに重ね掛けして浴衣とかオーバーキルだよ?)

 

 

柊「やっぱり八幡君にそう言ってもらえるとすっごく嬉しいわ♪ありがとう♪」ダキッ!

 

八幡「お、おう……」

 

柊「八幡君も浴衣にすれば良いのに〜。無いの?」

 

八幡「あぁ、家には無いな。それに今まで買う必要もないと思ってたしな。」

 

柊「じゃあ来年までに買っておこっか♪私も浴衣選び手伝ってあげるから!」

 

八幡「そうだな、そん時は頼むぞ。俺はそういうセンス皆無だから。」

 

柊「はぁ〜い♪」

 

 

それから私達は集合場所から出発して屋台を見ながら歩いている。八幡君はこういう時でも私の歩調に合わせて歩いてくれる。浴衣だとどうしてもいつもみたいに歩くことは出来ないから凄くありがたい。

 

 

八幡「……柊はやりたい事とかないのか?」

 

柊「え?まぁ考えてはきたけど……どうして?」

 

八幡「いや、突っ走っていくのかと思っていたからよ。こうやって歩いてるから少し意外だと思っているだけだ。」

 

柊「何も遊ぶだけがお祭りの楽しみ方ではないもの。見て回るのもお祭りを楽しむ醍醐味の1つでしょ?それに八幡君も居るからね〜♪」

 

八幡「そうか、今年はそういう考えなんだな。」

 

柊「?去年は違うの?」

 

八幡「あぁ、去年は『お祭りは何でもやらないとねっ!全部コンプリートするんだ!』って言いながら全部の店片っ端からやってたけどな。」

 

柊「き、去年の私ってそんな事言ってたんだ………なんか恥ずかしい///」

 

八幡「まぁいいじゃねぇか、考え方が変わるってのは良くある事だ。1年の間で少し大人になったって思えば気も楽になる。おっ、たこ焼きある。柊、たこ焼き食べないか?嫌ならお好み焼きでもいいけど、どうする?」

 

柊「……じゃあ両方♪」

 

八幡「そういうと思ってた。」

 

柊「ふふふふふっ♪」

 

 

やっぱりお祭りに来たらたこ焼きとお好み焼き、焼きそばのどれかは食べないとね〜。生地を焼き上げる良い匂いが私達の食欲を唆らせるよ〜。早く八幡君と一緒に買って食べないとねっ♪

 

え?1回離れてからたこ焼きと焼きそばを別々で買ってこないのかって?分かってないなぁ〜私と八幡君は離れちゃダメなんだよ?買いに行く時も一緒に行かないとっ♪

 

 

八幡「座る所があって助かったな。」

 

柊「うん、そうだね。じゃあ早速食べない?今日のお昼ご飯少しセーブして来たからお腹空いちゃってるんだ〜。」

 

八幡「そ、そうなのか………じゃあ早速食べるか。じゃあ、いつものお決まりで行くのか?」

 

柊「もっちろん♪ホラ八幡君、早く早く!あっ、最初はたこ焼きね♪」

 

八幡「へいへい。そんじゃあ……あーん。」

 

柊「あぁ〜んっ♪」

 

 

八幡(………毎回思うけど、柊に何かを食べさせてるとなんか餌付けしてるみたいに思えるんだよな。)

 

 

柊「うん、美味しっ♪じゃあお返しに八幡君にもたこ焼き!はい、あ〜ん♪」

 

八幡「あむっ………うん、美味い。」

 

柊「♪〜」

 

八幡「……何だ?」

 

柊「やっぱり八幡君ってさ、物を食べてる時の顔って凄く正直だよね。本当に美味しそうに食べてるからさ、いつも新鮮に思うんだよね〜。」

 

八幡「そ、そうか?」

 

柊「うん♪だっていつもは嬉しい事があっても照れ隠しするからさ〜、あんまり八幡君の笑顔って見た事ないから。」

 

八幡「笑顔、ねぇー……柊の前では素直でいるつもりなんだがな。」

 

 

中学の時に比べたら物凄くマシにはなってる。それは事実。けど八幡君がニコ〜ってしてる所は見た事ないんだよね〜。ううん、想像もつかないんだけどね。八幡君の笑顔=微笑むって言った方がいいのかな?まぁ、そんな感じ?

 

 

柊「けどいつかは八幡君の笑顔、見られる時が来るよね?」

 

八幡「………まぁ、多分な。けど期待はしない方が良いと思う。」

 

柊「えぇ〜私は見たいなぁ〜八幡君の笑顔!想像つかないけど、それを見たとしても私は笑わないよ!笑うかもしれないけど、多分それは嬉しさから来る笑いだと思う!」

 

 

だって彼氏の笑顔を見れて嬉しくならない彼女なんて、居ないはずないもんね♪

 

 

 

 



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射的カップル

 

 

八幡side

 

 

さぁて、たこ焼きと焼きそば食って腹も少し満たせたし、次は何処に行くか………そういや柊はこの前、鈴のついたアクセサリーを気にしてたな。どっかにそれっぽい景品とかねぇかな。

 

 

柊「ねぇ八幡君、次はどこ行こっか?どうせなら射的でもしてみる?」

 

八幡「射的か……じゃあ行ってみるか。」

 

柊「うんっ♪」

 

 

もしかしたら、その場所に景品があるかもしれないしな。無くても何か代わりになるような物を落とせば少しは喜んでくれるだろう、多分。

 

 

ーーー射的場ーーー

 

 

柊「おっ、あったあった♪しかもちょうど空いてるし、今がチャンスだね!おじさ〜ん、射的2人分お願いしま〜すっ!」

 

「あいよー!1人7発までだからしっかり狙うんだぞー!サービスは無しだからなっ!」

 

柊「はぁーい!どれにしよっかなぁ〜。」

 

 

………まさかあるとは思わなかった。よし、アレを狙うか。7発までだからな、大切に使わねぇと。

 

 

パァン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボトッ

 

 

………あ、獲れた。

 

 

「おっ、兄ちゃん上手いなぁ!ホレ、お目当てかどうかは分かんねぇけど、持ってきな!」

 

八幡「ど、どうも………」

 

柊「すっご〜い八幡君!!」

 

八幡「お、おう……ホラよ。」

 

柊「え?」

 

八幡「この前出掛けた時、コレと似たようなアクセサリー気にしてただろ?だからコイツを狙ってたんだよ。1発で獲れるとは思ってなかったけどよ。俺が付けてもしょうがねぇしな。」

 

 

柊(八幡君、見ててくれたんだ………嬉しい。)

 

 

柊は俺が渡した鈴のついている赤と紫の紐でできたブレスレットを左手につけた。

 

 

柊「……ありがとう八幡君♪すっごく嬉しい!!コレ、私の宝物にするね!!」

 

八幡「おう、気に入ってくれたんなら良かったわ。獲れた甲斐があったってもんだ。」

 

「かぁ〜見せつけてくれるじゃねぇか!!兄ちゃん、アンタカッコイイなぁ!彼女にプレゼントたぁ粋な事するじゃねぇか!!」

 

 

パチパチパチパチパチ ヒューヒュー!

 

 

八幡「………///」

 

柊「うふふふっ、私も少し恥ずかしいかも///」

 

八幡「……早く終わらせて行くぞ///」

 

柊「うん♪」

 

「兄ちゃん、彼女にもっかいカッコイイ所、見せてやんな!ネックレスとかもあるぜ〜?」

 

 

余計なお世話だおっちゃん、黙ってみてろ。どうせ残りは失敗すんだから。後後ろのギャラリーも早く散った散った!見せモンじゃねぇぞ!

 

 

パァン! ピンッ

 

 

ホラ、外しただろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボトッ ボトッ

 

 

………え?

 

 

「おいおいおいおいぃぃぃ!!1発の弾で2つ獲っちまったぜ〜!!おい兄ちゃん、アンタ何モンだい!?しかもこれまた姉ちゃんに似合いそうなのを獲りやがって!!カッコイイにも程があんだろうがい!!」

 

八幡「うっそぉ〜………」

 

「ホレ!!後で姉ちゃんに付けてやんな!!」

 

八幡「ど、どうも………」

 

 

俺が獲ったのは白いボタンの髪飾りと青い勾玉が付いているネックレスだった。そんなつもりじゃなかったのに………何故だ!?どうしてこういう時に限って俺は見せ場を作ってしまうんだ!?

 

 

柊「八幡君………凄いね、射的上手いんだ。」

 

八幡「いや、持ったの今日を入れても数回くらいしか無いから。何なら今日が初めての景品ゲットだし。まぁ、後は外すだろう。」

 

 

その後は俺の宣言通り当たりはしたが、落ちはしなかったので俺の獲得した景品は3つで終わった。柊も2つ景品を落とした。景品はお菓子とブレスレットだったのだが、ブレスレットは明らかに男物だったから、俺にくれた。しかもおっちゃんが俺達の事を『射的カップル』と呼び始めたせいで無駄に目立ってしまったので、俺達はすぐにその場から離れた。

 

 

八幡「あの親父………変な言葉作りやがって。」

 

柊「けど私は嬉しかったよ?八幡君にこんなプレゼントを貰えたし♪それに、ちょうど花火の時間だからちょうど良かったかも!」

 

八幡「………そうだな。この辺りでよく見えそうな場所ってあったか?」

 

柊「どこも人で埋まってそうだよね〜。」

 

八幡「あぁ。仕方ないから此処で「あれ〜比企谷君じゃ〜ん!」………雪ノ下さん。」

 

陽乃「こんばんは、お祭りを楽しんでるみたいだね。青春してるね〜このこの〜。」

 

 

はぁー………この人とエンカウントしちゃったか。色々と面倒になる前にどっかに行くか。

 

 

柊「ねぇ八幡君、この人は?」

 

八幡「あぁ、この前部活に行った時に雪ノ下が居ただろ?そいつの姉だ。」

 

陽乃「どうも、雪ノ下陽乃です。よろしくね。」

 

柊「初めまして、夜十神柊です。」

 

陽乃「けど意外だなぁ〜。比企谷君が雪乃ちゃん以外にも接点のある子が居たなんてね〜。それでそれで?君と比企谷君はどんな関係なのかなぁ?」

 

 

………まぁ本当の事だし、言ってもいいか。どうせ雪ノ下も知ってるし。

 

 

柊「彼氏と彼女です。」

 

陽乃「………へ?」

 

柊「彼氏と彼女です。」

 

陽乃「………嘘?」

 

八幡「本当です。それともう俺達は行きますね、花火のよく見える場所を探したいので。」

 

陽乃「え?あぁ〜花火ね、それならこっちにおいでよ。良い席があるからさっ!」

 

 

ーーー有料観覧席ーーー

 

 

八幡「いいんですか?俺等が此処に来ても?」

 

陽乃「私と一緒なんだから問題無いよ。それに、面白いお話を聞かせてくれたお礼だと思って。」

 

八幡「それって?」

 

陽乃「君に彼女がいた事に決まってるじゃない。それもこ〜んなに美人で綺麗な、ね。色々聞かせてくれない?」

 

八幡「……教えられない事は教えませんからね。」

 

陽乃「それでいいよ。私も比企谷君に聞きたい事があるしね。お互いに聞き合おうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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夏祭り、終わり!

 

 

柊side

 

 

八幡「まぁ、今言ったのがこれまでの経緯です。」

 

陽乃「ふぅん、そっかそっかぁ〜……だから比企谷君はあの時、静ちゃんや雪乃ちゃん達と居なかったのかぁ。うん、これで合点がいったよ。」

 

 

今、八幡君と雪ノ下さんがこれまでの事を互いに話し合っていた。雪ノ下さんは今まで出会ってきた中の人とは圧倒的に違った。存在感を隠せない人物というのは見て分かるんだけど、何ていうか………私の中ではあまり関わり合いたくない人物かなぁ。

 

だって八幡君をあんな風にして独り占めしてるんだもん!!今日は私と八幡君のお祭りデートなのに、何横から掻っ攫ってるんですか!!八幡君も八幡君だよ、彼女の私を忘れて何お喋りに夢中になってるのさ!?んもうっ!!

 

 

陽乃「先ずは比企谷君、それと夜十神ちゃん。妹がごめんなさい。流石にこれは私でも笑い事じゃ済ませられないからさ、雪ノ下家として、雪乃ちゃんの姉としても謝罪しておくね。」

 

八幡「別にもういいですよ、俺としてはあの2人とはもう関わりを持ちたくはありませんが、柊に会う頻度を多くしてくれたので、そこは目を瞑りましょう。」

 

陽乃「さっき言ってた週1に奉仕部への参加、だったかな?君もよくそれでOKしたね?」

 

八幡「平塚先生からの頼みなので。それに俺は部活への参加を認められてもあくまでピンチヒッターか相談役って立場です。、依頼への参加は自由になってますので、あまりに酷い内容の依頼だったら受けませんしね。まぁ雪ノ下と由比ヶ浜は知りませんけど。」

 

陽乃「そっかぁ〜。けどやっぱりまだ信じられないよ。君に彼女が居るって。」

 

八幡「まぁ、普通は信じないでしょ。こんな目をした奴に彼女なんて。」

 

柊「むぅ〜八幡君!!それは八幡君の目が悪いんじゃないよ!!その辺の人達の男を見る目が超絶無いだけなんだから!!イケメン探しで中身見てない典型的なダメ男探しのプロなんだから!!」

 

八幡「いやそこまで言うか?」

 

 

当たり前!!中学の私もそうだったけど、何で八幡君みたいな優しい男の子をほっとくんだろう?私だったらカースト上位のクラスの人気者でイケメンの男の子なんかよりも、八幡君のような1人で居る男の子の方がよっぽど良いよ!!まぁ私が選ぶのは八幡君だけだけど♪

 

 

陽乃「あっははは!比企谷君もだけど、夜十神ちゃんも少しだけ頭のネジが飛んでるんだね〜♪」

 

柊「だってクラスでグループ作ってそのグループ中心でワイワイ騒いでる人達の何が良いんですか?仲良くするのは良い事ですけど、別にあそこまでして仲良くなろうとは思いませんよ?」

 

八幡「柊も中学に色々あったんで、その辺の奴等は信用しないようにしてるんですよ。特に柊は。雪ノ下と由比ヶ浜は少し違うと思いましたけど、やはり同じですね。過ごした時間が少しだけあるってだけでコレですから。」

 

陽乃「まぁそこは今後の雪乃ちゃん達次第だね。君の信用をどう取り戻していくか、そして認めてもらえるか………まぁ、無理に等しいけど。」

 

柊「雪ノ下さんは妹の事、助けようとは思わないんですか?」

 

陽乃「?何で助けないといけないの?自分から蒔いた種なのに、私も一緒に尻拭いしなきゃ行けない理由があると思う?」

 

柊「………」

 

 

こういう人なんだ………八幡君が会いたがらないわけだよ。表面上は綺麗だけど、中身はドス黒……ううん、真っ黒だね。

 

 

八幡「柊、俺達もそろそろ帰るか。」

 

柊「うん、そうだね。」

 

陽乃「およ、もう帰るの?車あるし、家まで送って行こうか?」

 

柊「いえ、八幡君と2人きりで帰りたいので。」

 

陽乃「あははは、それもそっか。じゃあそこまで送るよ。それくらいならいいでしょ?」

 

 

………まぁいっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽乃「じゃあね2人共、お話が聞けてよかったよ。またお茶しながら話そうね。」

 

 

もうやだ。だってこの人と会話しても面白くないもん。まぁ八幡君以外の人と会話しても別に面白味なんてないんだけどさ。心から楽しいって思える会話をするのは八幡君か家族くらいだもん。

 

 

八幡「はぁ…まさか最後にあの人と出くわすなんてな、ついてなかった。」

 

柊「だって八幡君、『はぁ!?何で此処にいんだよ!?家ん中でスイカ食ってラムネ飲みながら花火見てろ!!』って顔してたよ?」

 

八幡「いやそれどういう心境?前半は兎も角、家の中でうんたらかんたらは思ってねぇよ。」

 

柊「けど良かったね、学校の人達と会わなくて。会ってたら何か言われるの間違いないしね。」

 

八幡「お互いにそんな人は1人も居ないけどな。」

 

柊「その通り♪居るのは八幡君だけで充分、私は八幡君さえ居れば他はもう何も要らない。執着?依存?そんなの知ってる、けど関係ない。八幡君がそれを止めろって言うのなら止めるけど、言わないって事は不満は無い………って事なんだよね?」

 

八幡「まぁ、そうだな。」

 

柊「だから私達の相性は抜群って事♪心も身体も100………ううん、200%ぐらいだね♪」

 

八幡「心は兎も角、身体は知らんがな………」

 

 

いいも〜ん♪その内、その内には絶対に分かるんだから!私と八幡君の相性♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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バレた秘密 ②

 

 

八幡side

 

 

夏休みが終わってしまった………何でだよ、夏休みの期間2ヶ月くらい足りなくない?もっとあっても良いだろ。夏休みが7月の下旬から始まって10月の中旬まであっても俺は良いと思う。だって皆どうせ学校に行きたがらないだろ?そう考えたら学校の長期休暇なんて全部2ヶ月増やしちまえばいいんだよ。

 

 

小町「お兄ちゃん、今絶対下らない事考えてるでしょ?しかもすっごく。」

 

八幡「考えてるわけねぇだろ。アレだ、これからの学校はどうあるべきかについてだな……」

 

小町「はいはいどうせ夏休みをもっと伸ばすとか冬休みも伸ばすとかそんな事でしょ?」

 

 

あらやだ小町ちゃんったら。俺の事理解し過ぎでしょ。流石は俺の妹、兄の心をよく分かっている。アホだけど。まぁコイツもコイツで色々考えてるからな、勉強も頑張ってるみたいだしな。アホだけど。

 

 

八幡「まぁ、今日からまた学校だって思うと、怠いって思ってるだけだ。」

 

小町「柊さんが居てくれたらって思ってる?」

 

八幡「あ〜……あんまり考えた事はねぇな。今でも俺は充分だし。向こうはどう考えてるか分かんねぇけどよ。なんかあったらメールか電話してくるだろうしよ。」

 

小町「何だろう、お兄ちゃんがいつの間にか急成長しているように見えるよ。」

 

 

何を言う、俺はもう大人の考えを持っている。皆に迷惑をかけないように自分からボッチになったんだからな!それに人と関わんの面倒だし。あっ、夜十神さん達は別な。

 

 

ーーー総武高校ーーー

 

 

ワイワイガヤガヤ…

 

 

あぁ………今日から学校&初日からの部活か、面倒だ。今日は休みたい。けど平塚先生との約束もあるし、行くっきゃねぇよなぁ………やだわぁ。

 

 

戸部「なぁなぁヒキタニ君ヒキタニ君!」

 

 

……チッ、人が音楽聴きながら本読んでるってのに何だ?この喧しい天然パーマは?

 

 

八幡「何だよ?それと俺はヒキタニじゃない、比企谷だ。間違えるなよ。」

 

戸部「あぁ〜ゴメンゴメン!いやそうじゃなくてさ〜、これに写ってるの、ヒキタニ君だべ!?」

 

 

だから俺は………もういい、疲れる。ていうかこれ雑誌か?俺が載ってるって………え、マジなんですけど。しかもこれってこの前ららぽでインタビュー受けてた時のやつじゃねぇか!!

 

 

八幡「た、他人じゃね?」

 

戸部「往生際が悪いっしょ!!しかもヒキタニ君、結構カッコいい格好してるっしょ!!」

 

八幡「お、おう……」

 

 

やめろ!!それ以上俺を持ち上げるな!!何の意味もねぇから!!ていうか今の雑誌に写ってた俺の隣には柊も写ってたが………いや、まさかそんな事聞かねぇよな?な?

 

 

戸部「で、こっからが本題なんだけど〜、この雑誌のヒキタニ君の隣に居る人って彼女だべか?」

 

 

あぁ………言いやがったよコイツ。

 

 

その瞬間、クラスの雰囲気が凍りついたのが理解できた。全員が俺に注目を集めた。ある者は戸部の持っている雑誌に注目している奴もいる。そしてそれを見た瞬間に……

 

『うわっ、メッチャ可愛い。』

『ていうか綺麗。』

『いやそれよりも………デカくね?』

『ちょっとアルファベットだけでも……』

 

なんて言う奴も居た。それと最後の2人、後で校舎裏来い。

 

 

戸部「んで?んで?どうなんだべよ!?」

 

八幡「………言わなきゃダメか?」

 

戸部「ヒキタニ君、ここまで来て流石に焦らすのはダメだべ〜!」

 

 

クラスの誰もが俺の返答を待ってるかのようにジッと見ている。いや何?さっきまで会話してたよね?続けろよ!!何俺に注目してんだよ!?何もねぇよ!!ったく、もういいや………

 

 

八幡「あぁ、そうだ。けどそれが何だ?」

 

戸部「ヒキタニ君、変な意地張らなくてもいいんだべよ?正直に言えばいいべ。」

 

八幡「(はぁ?何だコイツ……流石にもう限界だ。)お前が焦らすのはダメだっつったから言ったんだろうが。じゃあ何だ?変な意地張って俺が嘘言ったとでも言いてぇのか?」

 

戸部「え?あ、いやぁ…そ、そんなつもりは……」

 

八幡「そんなつもりもねぇのに、んな下らない事聞いたのか?ふざけんじゃねぇよ………お前の下らないお喋りになんて付き合ってられねぇわ。テメェの妄想で勝手に決めつけとけ。」

 

 

コイツも中学の連中と何ら変わりねぇな。鐘が鳴るまで俺のベストプレイスにでも行くか。

 

 

八幡sideout

 

ーーーーーー

 

 

八幡の居なくなった2-F組の雰囲気はかなり悪くなっていた。八幡があそこまで言うとは思わなかったのだろう。

 

 

「何だアイツ、1人で勝手にキレて行ったぞ。」

 

「冗談だってのに、分からないかね?」

 

「冗談の通じない奴ってマジ無理〜ww」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戸部「違うべっ!!!!」

 

 

『っ!!!!?』

 

 

戸部「ヒキタニ君は悪くないっしょ。俺があんな事言ったから怒ったんだべ。ヒキタニ君は正直に言ってくれただけだべ。けど俺がふざけたからヒキタニ君が怒ったんだべさ。だから悪いのは俺だべ!!ヒキタニ君は悪くないっしょ!!」

 

葉山「……まぁ、さっきのは少しからかい過ぎたな。戸部、後で謝っとけよ。」

 

戸部「そうするべ。だから皆、ヒキタニ君の事悪く言うのはやめて欲しいべ。」

 

 

戸部と葉山の発言により、クラスの雰囲気は元に戻った。八幡が戻ってからの事はまだ分からないが、戸部が八幡に謝りたいという想いは本物だろう。

 

 

 

 



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謝罪

 

 

八幡side

 

 

………教室に戻ってHRの最中だが、さっきの事もあるせいであちこちから視線を感じる。鬱陶しいったらねぇ。んだよ、さっきからジロジロ見てる奴誰だよ?HRに集中しろよ。かくいう俺もあんま内容が入ってこないくらい苛立ってるんだけどよ。なんか今だけは早く授業終わって部活に行きたいって無性に思えてしまう。

 

 

担任「じゃあこれでHRを終わる。今日も寝ないでしっかり授業を受けるように。誰がとは言わないが、自分だと思ってる奴は真面目に受けるように。」

 

 

俺は違う。既に数学は捨ててるから受ける必要がないと思っているだけだ。だから寝ても問題ない。さて、最初の授業は何だっ「ヒキタニ君!!」たっ………またコイツか。

 

 

八幡「何だよ、さっきの話ならお前の想像に任せるって言ったぞ。」

 

戸部「いや〜そういうんじゃなくてさ〜、さっきはマジでゴメンっしょ!正直に言ってくれたのにあんな事言って悪かったっしょ。ゴメンッ!」

 

八幡「………別にもういい、謝って欲しくてあんな事を言ったわけじゃねぇし。」

 

戸部「ホントゴメンっしょ。」

 

八幡「だからもういいって。何回も謝ると謝罪の価値が下がるぞ。」

 

三浦「はぁ?ちょっとアンタ何その態度?戸部が謝ってんだから素直に受け入れればいいし。」

 

八幡「………じゃあお前は彼氏がいる事を秘密にしていたとして、突然クラスメイトからその事を暴露されたら怒らずにいられるのか?」

 

三浦「っ!そ、それは………」

 

八幡「よく事情を知りもしねぇのにしゃしゃり出てくんじゃねぇよ………戸部、もういいから謝んなよ。謝罪は受け取るからよ。」

 

戸部「ありがとうっしょ、それとホント………いや、何でもねぇべ。」

 

 

はぁ〜朝から面倒くさい事が起きたが、これで終わりだな。チラホラと視線があるのがムカつくが、そのうち消えるだろう。

 

 

葉山「なぁヒキタニ君、優美子にも謝罪してはくれないか?」

 

 

………はぁ?何言ってんだコイツ?

 

 

八幡「何故?」

 

葉山「さっきの君の言葉でショックを受けてしまっていてね、事実だとは言え、流石に女子にあの言葉遣いはどうかと思うんだ。」

 

八幡「それだけの理由で俺はそいつに謝んないといけないのか?そいつが謝って欲しいって言ったんじゃねぇだろ?お前の自己満足なんじゃねぇの?」

 

葉山「………確かに優美子からは言ってない。けど「なら謝る必要もねぇよな?元々そいつがちょっかいかけてきたからこうなってんだ。口出ししなけりゃそうなってねぇんだよ。こうなるのが嫌ならちゃんと手綱握っとけよ。」………」

 

 

………はぁ、今日は朝から面倒尽くしだ。何で俺が変な気まで回さねぇといけねぇんだよ。

 

 

八幡「おい、お前はどうなんだよ。」

 

三浦「……いい、あーしが口を挟んだのが原因だからいいし。」

 

八幡「………ならいい。」

 

戸部「……な、なぁヒキタニ君、聞いても良いべか?嫌だったら答えなくてもいいんだけどさ〜。」

 

八幡「内容による、何だ?」

 

戸部「付き合ってどのくらいなんだべ?」

 

 

ふむ……内容じゃないのなら、別に教えても構わないか。過程なら教えるわけにはいかないが、数字くらいならいいだろう。

 

 

八幡「もうすぐ2年だ。」

 

戸部「マジッ!?ヒキタニ君っべ〜わ!!1番青春謳歌してるっしょ〜!!」

 

八幡「お前朝からよくそんなに元気でいられるな……俺は無理だ。」

 

戸部「朝から元気でないと、後が持たねぇべ!!」

 

 

嘘だろ、絶対無理だ。朝からそんなハイテンションだったら、俺絶対午後の授業保健室で寝てる自信あるぞ。数学なら可能性増し増しだな、確実に。

 

 

ーーー昼休み・ベストプレイスーーー

 

 

柊『ふぅ〜ん、そんな事があったんだ。流石に無神経な質問だって反省してたみたいだね。』

 

八幡「あぁ、謝ってくれたのはいいが、その後だ。あの金髪2人がめんどくさ過ぎた。」

 

柊『ホントだよね〜。白馬の王子様ごっこなら他所でやって欲しいよ。八幡の言葉にショックを受けたから謝って欲しい?答えは簡単♪口を挟んだ貴女の責任です、謝る必要性皆無!』

 

八幡「お前の方はどうなんだ?あの雑誌、今時の学生とかはよく読んでるんだろ?クラスメイトとかになんか言われなかったのか?」

 

柊『私の所は全然。もしかしたら気付いてる子もいるかもしれないけど、口にしないだけじゃない?誠教学園の子達って凄い噂好きだから、広まったら1日で凄い事になるしね。』

 

八幡「想像したくもねぇな………」

 

 

誠教学園の皆、頼むから柊に変な質問とかするなよ?マジで無視されるからな?いや、居ないよりも酷いか。なんせ幽霊扱いだもんな。

 

 

柊『まぁとにかく、今の所こっちは何もないから大丈夫だよ。八幡君も今日は頑張ってね?次のデートの時に膝枕してあげるから♪』

 

八幡「それは何処で?」

 

柊『私ん家でかなぁ?』

 

八幡「………それってデートなのか?」

 

柊『お家デートってよく言うでしょ?そんな感じのやつだと思うよ?寝ちゃったらそのまま泊まればいいだけだしね。』

 

八幡「それが出来るのって金曜日だけだからな?次の日学校だったらアウトだから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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彼女のお迎え

 

 

八幡side

 

 

八幡「………」ペラッ

 

雪乃「………」ペラッ

 

結衣「………」モジモジ

 

 

………

 

 

………………

 

 

………………………………

 

 

結衣「………ねぇヒッキー。」

 

八幡「何だ?」

 

結衣「ヒッキーはさ、何で彼女の事を黙ってるの?隠す理由とかあるの?」

 

八幡「………俺が言いたくないからってだけだ。別に理由なんてない。それに、自慢にはなるだろうが、わざわざ人に言いふらすような事でもない。」

 

結衣「そ、そうだよね〜………」

 

八幡「何だ、今朝の事か?」

 

結衣「うん、ちょっとね。」

 

雪乃「私はそこに居なかったから知らないけれど、戸部君が比企谷君に彼女の事で言い過ぎたっていうのは聞いているわ。」

 

八幡「まぁ大体そんな感じだ。」

 

 

にしても戸部の奴、なんであんな雑誌持ってたんだ?アレって女子学生向けの本だぞ?姉か妹がいるのなら納得はできるが………いや、別にアイツの家族構成とかには興味ないが、戸部自身が購入したのなら………少し引くな。

 

 

結衣「けど、ヒッキーってあんな風に怒る時もあるんだね。」

 

八幡「何言ってんだよ、夏休み前の事忘れちゃったわけ?別にもうどうでもいいけど、俺が怒るような原因を作った奴って誰と誰だっけ?」

 

雪乃「……その事については本当にごめんなさい、夏休みの時に事情を聞いた姉さんからも強く言われたわ。」

 

結衣「あっ……そ、そうだよね〜あはは………」

 

 

柊……そっちの学校が噂好きなら、こっちの学校は無自覚に人を怒らせるのが得意な学校みたいだぞ。

 

 

結衣「そういえばもうすぐ文化祭じゃん!ゆきのんのクラスでは何か話とかあるの?」

雪乃「由比ヶ浜さん、文化祭の前にテストがあるでしょ?9月にある前期期末考査テストを忘れているのかしら?」

 

結衣「ゆ、ゆきのん……その話をしないでよ!折角文化祭が始まるのに〜!」

 

八幡「お前は楽しい事しか頭にねぇのかよ………」

 

 

けど、文化祭かぁ………去年の事はあんま覚えてねぇんだよなぁ。誠教学園の文化祭なら覚えてるんだけどな。いろんな出し物あって柊と涼風の3人で回ったよな。

 

 

雪乃「由比ヶ浜さん、また勉強会を開いて一緒に勉強しましょうか。」

 

結衣「えっと、お手を柔らかく?」

 

雪乃「………厳しく行く必要があるわね。」

 

結衣「うえぇ!?な、何で!?」

 

 

当たり前だろうが。流石に俺も叫びそうになったわ!まさか『お手柔らかに。』を知らない高校生が居るとは思わなかったぞ!?

 

 

雪乃「どうやら現代文を徹底的にやる必要がありそうね。前回の勉強会同様に。」

 

結衣「ゆ、ゆきのん?お願いだから優しくね?」

 

雪乃「ふふっ、安心しなさい由比ヶ浜さん。」

 

結衣「ゆきのん………っ!」

 

雪乃「それは貴女次第だから。もしも内容が酷いようであれば、この前以上に厳しく行くわ。」

 

結衣「ゆ、ゆきのぉ〜ん!」

 

 

安心しろ由比ヶ浜、お前よりも下にいる奴はあまり居ないから。多分だけど。

 

 

ピロリンッ!

 

 

八幡「ん?」

 

 

_____________________________________________

 

・To:夜十神 柊

・From:比企谷 八幡

 

 

内容:八幡君、もう大丈夫かな?部活ちゃんとやれてる?私今からそっちの校門前に行くんだけど、大丈夫そうかな?

 

_____________________________________________

 

 

………来るのか、まぁいい。今更だな。とりあえず返信しておくか。

 

 

_____________________________________________

 

・To:比企谷 八幡

・From:夜十神 柊

 

 

内容:分かった、着いたらまた連絡くれ。そしたらそっちに向かうから。

 

_____________________________________________

 

 

うし、これでいいだろ……ん?もう返信来やがった。絵文字付きでで了解って、流石は女子高生だな。俺には無理だ。まぁいい。

 

 

八幡「雪ノ下、由比ヶ浜。柊がウチの学校の校門まで来るから、もし来たら俺は部活切り上げてそのまま帰る。それでもいいか?」

 

雪乃「分かったわ、伝えてくれてありがとう。」

 

結衣「大丈夫かなぁ?ウチのクラスメイトに声掛けられたりとかしないかな?」

 

八幡「無いとは限らないが、いない事を祈るばかりだな。そんなバカな奴は居ないようにってよ。」

 

 

ーーー数十分後ーーー

 

 

ピロリンッ!

 

 

八幡「っ!」

 

 

_____________________________________________

 

・To:夜十神 柊

・From:比企谷 八幡

 

 

内容:着いたよ〜♪八幡君が来るまで1分おきに名前を叫んであげよっか?

 

_____________________________________________

 

 

なんだその拷問。絶対にお断りなんだけど。

 

 

八幡「来たみたいだから帰るわ。」

 

雪乃「えぇ、分かったわ。」

 

結衣「ヒッキーまたねっ!夜十神さんにもよろしくね。」

 

八幡「……おう。」

 

 

_____________________________________________

 

・To:比企谷 八幡

・From:夜十神 柊

 

 

内容:叫ばなくていいからそのまま待ってろ。もし叫んだら次のデートを無しにして、涼風と2人で出掛けてやるからな?

 

_____________________________________________

 

 

よし、これで叫ばないだろう。叫んだらデートチャラになってその時間が妹にうばわれるんだからな。

 

 

 

 

 

 

 



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八幡、ついに………

 

 

柊side

 

 

まだっかな〜まだっかな〜♪八幡君早く来ないかなぁ〜早く一緒に帰ってお菓子食べながらお話したいなぁ〜♪うふふっ、楽しみだなぁ〜!けど、この学校に近くなるにつれて段々と視線が集まってるんだよね〜。どうしてだろう?他校生徒が来るのが珍しいのかなぁ?………っ!もしかして今朝のアレかな?雑誌に載ってた事で噂が広まってるとか!?だとしたら少しだけ恥ずかしいかも///

 

 

柊「着く前に連絡した方が良かったかなぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女子1「あ、あの……少しいいですか?」

 

柊「え?私?」

 

女子1「は、はい!ちょっと聞きたくて……この雑誌に載ってるのって………」

 

柊「雑誌………あぁ、なんか載っちゃってるみたいなのよね。うん、それ私。」

 

女子2「や、やっぱりそうだ!うわっ、綺麗だしスタイル良い〜!」

 

女子1「背も高い〜モデルさんみたい!」

 

柊「そ、そう?」

 

 

何だろうなぁ……嫌な気分じゃないけど、こんな風に言われるのはあまり慣れてないんだよね〜。

 

 

男子1「おぉ、もしかしてこの人が雑誌載ってるって噂の美人女子高生?」

 

男子2「メッチャ可愛いじゃん!しかも……雑誌で見るよりも迫力あるな!」

 

男子1「なぁ、俺達これから遊びに行くんだけど、よかったら君もどう?一緒に行かね?」

 

 

………この男子達は嫌。明らかに私の身体しか見てない。八幡君とは大違い。私の嫌いな人種。

 

 

柊「ごめんなさい、人を待ってるんだ。」

 

女子2「もしかしてその人って、ウチの学校の2年生の人じゃない?ホラ、葉山先輩と同じクラスの。」

 

女子1「あぁ〜居た居た!名前は分かんないけど、確かこの雑誌にも………あっ、この人この人!」

 

 

雑誌にはやっぱり八幡君も映っていた。出来ればそのページだけ貰いたいけど、無理だよね。

 

 

男子2「えっ、マジ!?こんな目のヤバい奴と待ち合わせ?止めといた方がいいって!何されるか分かんね〜よ?ww」

 

男子1「そーそっ!こういう目してる奴ってマジでヤバそうだしっwwもしかしてヤクでもやってんじゃねww」

 

女子1「ちょっと、言い過ぎじゃない!」

 

女子2「そうだよ!此処に居ないからって言っていい事じゃないでしょ!」

 

男子2「別にいいだろ、それに見ろよこの目!腐ってやがるぜww」

 

 

………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パシィンッ!!

 

 

男子2「いって!!おい、何すんだよ!!」

 

柊「何って?貴方の頬を叩いただけだけど?」

 

男子1「おいおい、いきなり何すんだよ。俺等何も悪い事してねぇだろ。」

 

女子1「してたでしょ!先輩の事バカにしてたじゃん!だからでしょ!」

 

女子2「そうだよ!本当の事だったとしても、それをバカにするのは最低だと思う!!」

 

男子2「っ、んだよ!?本当の事言って何が悪りぃんだよ!!大体こんな目の腐った野郎なんて、近づきたいとも思わねぇよ!!」

 

柊「っ!!このっ「柊。」っ!は、八幡君!!」

 

八幡「悪い、遅くなった。で、何やってんの?」

 

女子「じ、実は………」

 

 

八幡君が来て、少しこの場に静けさが訪れて、総武高校の1年生?の女子が八幡君に事情を説明してくれた。それを聞いた八幡君は………

 

 

八幡「ふぅ〜ん、あっそ。俺にはどうでもいいわ。柊、さっさと行こうぜ。」

 

柊「えっ、う、うん。」

 

女子2「で、でも先輩!先輩の事バカにしてましたけど、いいんですか?」

 

八幡「別に?その程度の事しか考えられないくらい頭の中が幸せなんだろ?なら構う必要ねぇだろ。偏差値10以下だろうしな。」

 

男子2「ちょっと、それは流石に言い過ぎじゃないっすか?」

 

八幡「あん?俺の事を目が腐ってるだの言った奴に言われたくねぇよ。それとも何か?もっとドストレートに言って欲しいのか?これでも言いたい事を抑えてやってるんだぞ?」

 

男子1「お、おい……もうやめとけって。ムキになんなよ。」

 

男子2「うるせぇよ!何ビビってんだよお前!こんな貧弱そうな人、何言っても大丈夫だって!」

 

男子1「お、おい!」

 

八幡「そうか、じゃあもう抑える必要もねぇか。」

 

男子2「抑える抑えるって何言って「うるせぇよクソガキ、さっきからよ。」うぐおっ!!?」

 

柊「っ!?」

 

 

私は今、八幡君がしている事に驚きを隠せなかった。だって………だってあの八幡君が胸倉を掴んでるから。それも今までの怒り方がお遊びみたいに思える程、表情にも怒気を漂わせていた。

 

 

八幡「さっきから下手に出てりゃあ良い気になりやがって………俺はよ、今日1日ずっと機嫌が悪いんだよ。だからずっと抑えてたのに………お前何?調子に乗らないと生きていけないの?ずっと煩くしてないと生きていけないの?悪口言わないとやってけないの?」

 

男子2「うぐっ……ぐっ、うぅぅ!」

 

八幡「どうでもいいけどよ、お前今のこのやり取りで友達3人居なくなったからな?お前等も今この出来事、クラスの連中とか友達に話してやれよ。」

 

男子2「ま、待てよ!何でそこまで「お前が人の悪口を平気で吐くような奴なら、吐かれる側になってみろよ。どんだけ惨めな思いになるのか少しは分かるってもんだ。そのくらい安いもんだろ?」こ、このぉ……」

 

 

………もう、いい。

 

 

柊「八幡君、もう止めて。」

 

八幡「っ!柊………あぁ、悪かった。そうだな、これじゃあの時と一緒になる。それはゴメンだ。」

 

柊「……うん。」

 

男子2「はぁ…はぁ…やっと離したか。おい、覚悟は出来てブフォッ!!?」

 

八幡「………え?」

 

柊「………え?」

 

女子1/2「………え?」

 

男子1「お前、いい加減にしろ!!マジでふざけんなよ!!先輩が許してくれたんだからもう止めろよ!!先輩が抑えてたって言ってたけど、俺が言ってやるよ!!先輩の目が腐ってるってんなら、お前は頭の中と性根が腐ってるんだよ!!!この蛆湧き頭がっ!!!」

 

 

わぁ………ホントにストレートに言ったね。けど、彼のおかげでスッキリしたかも♪

 

 

男子1「先輩、すみませんでした!!俺も先輩の悪口言ってたんで、その………」

 

女子1/2「すみませんでした!」

 

八幡「あぁ〜まぁ素直に謝ってくれたし、もういいって。じゃあ柊、帰ろうか。」

 

柊「うんっ♪」

 

 

その翌日、放課後の騒ぎを報告した男子1によって、男子2は1週間の停学になったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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実行委員

 

 

八幡side

 

 

夏休みから1ヶ月くらい月日が経った。期末考査も終わって漸く羽を伸ばせると思っていたのだが、厄介事というのは平和が訪れてから来るのが定石とは誰が考えたのやら、ゆっくりもさせてもらえないのだ。どうしてかって?それはもうすぐ文化祭が始まるからである。まぁ普通だったら楽しみなんだろうが、俺は違う。何でこんなイベントを楽しまなきゃならんのだ。こんなの陽キャとかがウェイウェイ言いながらバカ騒ぎするようなイベントだろ?俺、参加したくねぇよ。

 

そして今は文化祭実行委員とかいう組織の役員決めなのだが………一向に進まない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

委員長「え、えぇっと〜誰か居ないかな?」

 

 

いやいや、誰もやりたがらんって。考えてみろよ、葉山の居るクラスだぞ?わざわざ葉山と離れてまで地味〜な作業したがる奴なんていねぇだろ。まぁ俺はあんな奴と一緒に作業しようなんて思わねぇけど。

 

 

委員長「せ、先生………どうしましょう?」

 

平塚「はぁ………しょうがない、誰もやりたがらんのなら、そうだな……古典的だがくじ引きだな。」

 

委員長「じゃあそれで。」

 

平塚「お前達、今からくじ引きをして紙に×が書いてあった奴が実行委員だ。なりたくないだとか嫌だとか喚いても聞かないからな?」

 

 

あ〜あっ、こうなったか………

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

委員長「じゃあ男子はヒキタニ君という事で、次は女子を決めていくんだけど、誰か居るかな?」

 

 

最悪だ、何でよりにもよって俺なんだよ。しかも平塚先生メッチャ笑顔だし。それにさっき『リア充爆発しろって念を込めながら書いた甲斐があった!』とか言ってたの聞こえてたからな!!それに今から女子決めるとか言ってたけどよ、居るわけねぇだろ!!ナメてんのか!?俺と組みたい女子が居たらソイツは変わり者か天使くらいだわ!!

 

 

???「あっ、それ私がやるよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?

 

 

委員長「え、いいの海老名さん?」

 

姫菜「うん、私がやるよ。」

 

優美子「ちょっ、待つし姫菜!アンタあーし等と一緒に作業するって言ってたじゃん!」

 

姫菜「けどさ、これじゃいつまで経っても終わらないし、またくじ引きする羽目になるでしょ?それにヒキタニ君には悪いけど、この中で彼と一緒に文実したい人って居るの?」

 

 

うん、確かに。確かに失礼だ。けど海老名さんのいう通りでもある。

 

 

姫菜「私は別にヒキタニ君の事避けてるわけでもないし、苦手でも嫌いでもないしね。まぁクラスの出し物には参加出来なくなるけど、そこは皆で頑張ってって事で。」

 

 

このクラスで1番大人な人は間違いなく海老名さんだ。平塚先生よりも大人だ。

 

 

委員長「じゃあこのクラスの文化祭実行委員はヒキタニ君と海老名さんで決定するから。」

 

 

……後よ、どうでもいいけど俺の苗字は比企谷だ。誰も聞いていなかったのかよ、夏休み明けの雑誌の時に。このクラスにそれを求めても無駄か。

 

 

平塚「漸く決まりか……じゃあ実行委員の2人は放課後になったら会議があるから会議室に集まるように。それじゃあ次に移るぞ〜。」

 

 

ーーー放課後ーーー

 

 

姫菜「いやぁ〜なんか新鮮だね〜。こうしてヒキタニ君と歩くなんてさっ!普段は優美子達と歩いてるから他の人と歩く事なんてないからね〜。」

 

八幡「そうか………」

 

姫菜「ヒキタニ君は私がどうして文実に立候補したのか聞かないの?」

 

八幡「別に興味ないからな。話したいのなら話してもいいけどよ。」

 

姫菜「そうだねー。理由としては私の計画が潰れちゃったからかな。」

 

八幡「計画?」

 

姫菜「うん。劇やろうと思ってたんだけどね、主役のヒキタニ君が文実に選ばれちゃったからもうやる意味無いなぁ〜って思ってさ。」

 

 

なぜ俺が主役なんだ?

 

 

姫菜「そして純粋な戸塚君と劇をやって良い感じに……うっはぁ〜!」

 

 

あぁ……海老名さんはアッチ系の人か。俺とは相容れない趣味を持っている人種だ。BL好きだったとは少し驚きだ。

 

 

姫菜「けどそれがもう出来ないから、こうして文実に立候補したってわけ。ヒキタニ君が居なければ意味のない演劇だもの、もうやる意味ないし。」

 

八幡「バッサリだな。俺以外に代役は居ないのか?その辺の男子使えば良かっただろ。」

 

姫菜「ダメダメ!それじゃ私のストーリー性と全く合わないの!やさぐれ系男子と純情系男子でウケるんだから!!」

 

八幡「………俺ってやさぐれてるのか?」

 

 

だとしたら心外だ。俺は別にやさぐれでなんていない。どこにでもいる普通の高校生だ。まぁここ最近はちょっと騒ぎがあって注目されてたが、それももう終わった事だ。

 

 

姫菜「………やっぱり思ってた通りだよ。」

 

八幡「は??何がだ?」

 

姫菜「ヒキタニ……ううん、比企谷君って普段は喋らないだけで普通に受け答え出来るんだなぁって。しかもそれが少し面白い方向で返してくれるから。」

 

八幡「受け答えくらいならできる。その相手がこの学校にいないだけだ。作る気もないしな。」

 

姫菜「……うん。私ね、君とならいいお付き合いができそうだよ。」

 

八幡「それはどういう意味でだ?」

 

姫菜「勿論友達としてだよ。君みたいな感性を持ってる人なんて滅多にいないでしょ?」

 

八幡「大量に居たら困るだけだけどな。それに、俺はBLに興味ねぇからな?勧めたりとかするなよ?」

 

姫菜「良いじゃん!新たな扉を「開けねぇよ!!開けてたまるか!!」あっはは!」

 

 

 

 

 

 

 



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実行委員長

 

八幡side

 

 

ーーー会議室ーーー

 

 

姫菜「失礼しま〜す。」

 

八幡「……します。」

 

姫菜「2-F組の実行委員の海老名です。そして隣に居るのが………」

 

八幡「……比企谷です。」

 

???「あっ、待ってたよ〜!空いてる席に座ってね〜、皆が来るまで待機してるから!」

 

 

まだ全員じゃないのか。まぁ俺等も終わってすぐに会議室に向かったしな、居ないクラスの所が居ても不思議ではないか。

 

 

雪乃「………比企谷君?貴方も実行委員に?」

 

八幡「おう、まぁな。」

 

雪乃「こういうのには絶対に参加しないと思っていたのに、どういう風の吹き回しなのかしら?明日は槍が降るかもしれないわね。」

 

八幡「俺だって好きでなったわけじゃねぇよ。ウチのクラスがやりたがらなさ過ぎて、クジ引きした結果が俺ってわけだ。ったくついてねぇよ、絶対に平塚先生の念のせいだ。」

 

雪乃「平塚先生のせいにしてどうするのよ?」

 

八幡「あの先生、俺に彼女がいるからってクジ引きする時にバツ印付けたんだけどよ、その念を込めて書いてたみたいでな。俺に決まった時に小声で『リア充爆発しろって念を込めながら書いた甲斐があった!』って言いやがったんだよ。」

 

雪乃「………すごい執念ね。」

 

姫菜「へぇ〜平塚先生そんな事言ってたんだ。ていうかまだ彼氏居なかったんだね。」

 

 

おい、それを言ってやるなよ。幾らこの場に居ないとはいえ聞こえてるかもしれないだろ。

 

 

ーーー数十分後ーーー

 

 

???「は~い。それでは、第一回、文化祭実行委員会をはじめま~す。じゃあ私の自己紹介をするね!私は生徒会長の城廻めぐりです♪ これから約3週間、生徒会は文化祭実行委員会をサポートしながら、文化祭を盛り上げるべく頑張ります!それでね、最初は文化祭の実行委員長を選出しようと思ってるんだけど、誰か立候補したいっていう人は居るかなぁ〜?」

 

 

城廻会長が進行をして、委員長の所まで話を持ち込むも、誰も立候補しようとする者は現れない。寧ろ現れるものなのだろうか?この中には嫌々実行委員になった者(俺)もいる筈だ。楽しむ時間を削ってまでなりたいものだとは思えない。

 

 

めぐり「え、えぇ〜っと………誰も居ないのかなぁ?内申点もつくよ?どう?」

 

 

それが餌!?いやいややりたがらんって!!

 

 

めぐり「……っ!あの、雪ノ下さん、だよね?」

 

雪乃「………はい。」

 

めぐり「やっぱり!陽さんの妹さんだ!陽さんも実行委員長でね♪あの時の文化祭は総武高の歴史に残るくらいすごい文化祭だったんだ!で、どうかな?よければ「実行委員として善処します。」あ、そっか………」シュン

 

八幡「そりゃ嫌だろうな、姉の面影を背負いながら実行委員長なんてするのはよ。」ボソッ

 

姫菜「へぇ〜お姉さんがいるんだ。」ボソッ

 

八幡「あぁ、とびっきり怖い、な。」ボソッ

 

姫菜「雪ノ下さんに言っちゃおっ。」ボソッ

 

八幡「おいやめろ。」ボソッ

 

 

雪ノ下さんの耳に入ったらタダじゃ済まされねぇ。絶対に何かされんだろ。それも超絶面倒な何かが。

 

 

めぐり「うぅ〜平塚先生〜!」

 

平塚「はぁ、あまりこういう事はしたくはないのだが、長引くようであればクジ引きで決めるぞ?」

 

雪乃「……先生、生徒会長、または生徒会の人間が委員長をやるわけにはいかないのですか?」

 

平塚「あぁ。生徒会はサポートという名目で参加してもらうのが今までの習わしだからな。それにこの文化祭実行委員は2年生が主体となって動く事になっている。つまり委員長も2年生の誰かにやってもらいたいという事になる。」

 

雪乃「そうですか………」

 

 

俺達2年にとっては地獄のような話だな、クジ引きになるにしろ俺達2年のいずれかになるって事だろ?はぁ……マジでヤダ。

 

 

雪乃「………では城廻先輩、掌を返すようで申し訳ありませんが、私が立候補します。」

 

めぐり「ホントッ!?嬉しいよ〜ありがとう雪ノ下「ですが。」さ……え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪乃「城廻先輩だけでなく、今この場にいる3年生の実行委員の先輩方には承知してもらいたいのですが、私が姉の妹だからといって過度な期待はしないで下さい。私は雪ノ下陽乃ではなく、雪ノ下雪乃です。なので同じような事例が出ると思わないで欲しいのです。」

 

 

………

 

 

平塚「まぁそうだな、3年生諸君は雪ノ下に対して少なからず期待を持っていた奴もいるだろう。だがそれは捉え方によっては彼女に対して毒を与えているものにもなるという事にもなる。重ねるのは個々の自由だが、今この場にいるのは雪ノ下陽乃ではない。その事をよく考えるように。」

 

 

………結構重たい雰囲気になったな。けどまぁ、当然っちゃあ当然なのか。あの城廻先輩もそうだが、雪ノ下が雪ノ下さんの妹だと知ると、明らかに目の色が変わった奴もいたしな。『あの人の妹なら!』『雪ノ下先輩の妹なら!』っていうのがな。過度な期待は毒になる、か………言い得て妙だな。

 

 

その後は副委員長、各役割を決める流れとなり、俺は記録雑務になった。俺にはこの方が性に合ってる。1人パソコンと睨めっこしながらデータを打ち込めば良いだけだからな。ボッチ向きの仕事だ。

 

 

 

 

 



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お泊まり決定?

 

 

八幡side

 

 

柊「そうなんだ……じゃあ暫くの間はデートはお預けかな?」

 

八幡「まぁ、そうなりそうだ。祝日なら出掛けられそうだが、平日は実行委員で忙しいからな。」

 

柊「そっか………うん、分かった。」

 

八幡「そっちの……誠教学園の文化祭はいつなんだ?もうその時期だろ?」

 

柊「総武高と同じくらいだよ。けど総武高の方が1週間早いから私も八幡君もお互いの高校で文化祭を満喫できるってわけね♪文化祭デート、楽しみになってきた♪」

 

 

神経図太いな……夏休み明けにあんな事があったってのにめげてねぇ………まぁ気にするような性格でもないか。

 

 

涼風「八幡さん、お忙しくなるようですね……お身体には気をつけて下さいね?」

 

八幡「そのつもりだ。まぁそれは仕事の内容にもよるけどな。そっちはどうなんだ?もう準備に入っているのか?」

 

柊「ううん、私達はまだよ。けどその内入ると思うわ。総武高みたいに大掛かりな事はしないけど、色んな事は出来ると思うわ。学園の敷地もかなり広いからね〜、それに中高一貫だから。」

 

涼風「けど殆どの場合は、クラスでの出し物や部活での出し物っていうところですね。私達は部活に所属していないので、クラスの出し物になりますが。」

 

八幡「2人は引っ張りだこになるだろうな、ていうかもうなってるのか?」

 

涼風「私はなっていませんが、お姉様はクラスだけでなく他クラスや他学年からも、よく声を掛けられています。きっと文化祭で一緒に何かをしたいというのが目的だと思います。」

 

柊「まっ、全部断ってるけどねー。」

 

 

そりゃそうだ。柊は俺以外の他人には殆ど関心ねぇし。好かれたいって思うのなら、積極的に攻めるよりも、柊の興味を引くような事をしないと意味がない。

 

 

涼風「あっ、八幡さん。少しお伺いしたい事があったのですが、いいでしょうか?」

 

八幡「ん、何だ?」

 

涼風「八幡さんのクラスで葉山隼人という方はいらっしゃるでしょうか?」

 

八幡「葉山?確かにいるが、そいつが?」

 

涼風「いえ、私がどうこうという事ではないのですが、私達の学園で少し流行っていまして。その……イケメンらしい、と。」

 

柊「あぁ〜確かに聞くね、その噂。でさ、実際どうなの?その葉山って人は?イケメンなの?」

 

八幡「まぁ顔は良いだろうな。万人受けすると思うぞ、顔はな。」

 

 

うん、本当に顔は。別に否定するつもりはないが、大勢を救って少数を殺すという奴のやり方は嫌いだけど、この場では言わないでおこう。

 

 

柊「え、何々?何か難があるの?教えて!」

 

八幡「悪いがそれは言わないでおこう。俺の個人的な印象もあるからな。まぁでも、涼風の言ってた事は間違いではない。」

 

涼風「そうですか、まぁ私も別に興味はありませんので。」

 

八幡「アッサリしてるな………」

 

柊「それでさぁ八幡君、今日は泊まりなのかな?泊まりだよね?泊まるんだよね?」

 

八幡「何でだよ……泊まらねぇよ。大体着替えもねぇし明日も学校だ。いつの日か言ったが、金曜日の時にしか出来ないって言っただろ?」

 

柊「じゃあ次の金曜日は泊まりに来てよ!ねぇ良いでしょ?夜になったらサービスしてあげるからさっ♪ね、お願い!!」

 

八幡「夜のサービスとか要らんから。」

 

涼風「あの、よろしければ来て下さい。私は歓迎しますので。もし来て下さるのなら………私の部屋で冷やしてあるプレミアムマックスコーヒーを1本差し上げますので。」

 

八幡「今週の金曜に必ず泊まりに行く、今夜から準備しておくわ。」

 

柊「ちょっと八幡君?何で私のサービスは要らなくて、涼風のマッ缶は要るの?おかしくない?」

 

八幡「俺がマッ缶好きなのは知ってるだろ?しかもプレミアムなら放ってはおけねぇ。俺まだアレ2本くらいしか飲んだ事ねぇんだよ。」

 

柊「いや、2本も飲んでるのなら充分過ぎると思うわ、あんなに甘いコーヒーは。」

 

涼風「取っておいて正解でした。八幡さん、金曜日はお待ちしてますね。」

 

 

物に釣られてしまったが、仕方ないだろ?マッ缶のプレミアムだぞ?マッ缶好きならば見逃すわけには行かない。けど何で涼風がそれを持っているのかは謎だが、気にしないでおこう。

 

 

八幡「けど、泊まる時って俺はどこで寝ればいいんだ?流石に柊と涼風の部屋には入れないし、空いてる部屋になるのか?」

 

柊「えぇ〜私は八幡君と一緒に寝ても問題ないよ?寧ろ一緒に寝たい!八幡君一緒に寝よっ!」

 

涼風「八幡さん、旅行ではお姉様とご一緒のお部屋だったので、今回は私の部屋で一緒に寝てはもらえませんでしょうか?」

 

八幡「え?」

 

柊「ちょっと涼風?八幡君は私の彼氏よ?私の彼氏を寝取るつもりなの?」

 

涼風「いいえ、そんなつもりは毛頭ありません。ですが折角泊まりに来て下さるのなら、お兄様の温もりを感じたいのです。それくらい寛容な心を持つお姉様ならお許しになるでしょう?」

 

柊「ダ〜メッ!!八幡君は絶対に私と一緒の部屋に寝るのっ!!」

 

涼風「いいえ、私と一緒の部屋です!!」

 

 

………いつの間にか言い合いが始まった。長引くようならリビングで待つけど?

 

 

 

 

 

 



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雪乃の心情

 

 

雪乃side

 

 

今日から文化祭実行委員が活動する日になっているわ。今は過去の資料を調べてどのくらいの費用が掛かるのかを再計算しているわ。勿論これは私だけではないわ。記録雑務の皆にも協力してやってもらっているわ………比企谷君もその中に居るのだけれど、彼が部活に月曜日以外来なくなってからは少しだけギスギスしたような雰囲気が続いているわ。由比ヶ浜さんもそれには気がついているようだけれど、流石にあの時の事を思い返してしまうと、戻ってきて欲しいなんて言えないわ。月曜日に来てくれているだけでも感謝しなければならない。

 

 

けれど彼も言っていたわ。本当に悪いと思っているのなら、私達が壊した分を直してみろと。だから少しでも彼の信頼を回復しなければならないと考えているわ。だから………

 

 

雪乃「比企谷君、この予算の資料なのだけれど、今って見れるかしら?」

 

八幡「……あぁ、今開いてる。それがどうした?」

 

雪乃「少し確認して欲しい部分があるの。だから少しだけ時間を貰えないかしら?」

 

八幡「分かった、その場所教えてくれ。」

 

 

この機会を逃すわけには行かないわ。失った分は取り戻していかないといけないものね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから文化祭の準備は滞り無く進み、スローガン決めに移る事になったわ。今のペースなら余裕もあるから、クラスの出し物にも参加してもいいと許可もしている。けど今日はスローガンを決める為、全員に集まって貰ったわ。

 

 

雪乃「では、会議を始めます。本日の議題は城廻先輩から連絡があった通り、文化祭のスローガンについてです。今出されている案をボードに書いていきます。」

 

 

『友情・努力・勝利』

 

『面白い!面白過ぎる!〜潮風の音が聞こえます 総武高校文化祭〜』

 

『一意専心』

 

『ONE FOR ALL』

 

『☆絆〜ともに助け合う文化祭〜』

 

 

雪乃「他に案はありませんか?」

 

めぐり「案って程の事でもないんだけど、皆でさ思いついた単語を継ぎ足していくのはどう?少し面白いスローガンになるかもよ♪」

 

雪乃「………成る程、では皆さん各自で何か単語を考えてみて下さい。文化祭に相応しくないような単語はNGでお願いします。」

 

 

八幡(それって俺に言ってるのか?)

 

 

そう指示を出した後、私もそれなりにウケそうな単語を書いて、皆の顔が上がるのを待った。そして集計した結果、音符や地域の方言を混ぜた言葉が少し面白いと思ったので、それを皆の前で相談した上で採用。そして決まったスローガンが………

 

 

『千葉の名物、踊りと祭り!同じ阿呆なら踊らにゃ ♫Sing a Song♪』

 

 

これになったわ。何だか出されていた案とは全く違う感じになったけれど、悪くは無いわね。むしろ固さが抜けたと感じるわ。緩さが大幅に出てしまっているような感じもするけれど。

 

 

雪乃「では、今日の委員会を終了します。お疲れ様でした。」

 

「終わった〜。」

 

「今日はスローガン決めだけだったでしょ?早くクラスのところに行こっ!」

 

「明日からまた書類漬けかぁ〜。」

 

「やるしかねぇでしょ。」

 

めぐり「雪ノ下さんお疲れ!良い司会だったよ〜♪流石は………ううん、雪ノ下さんなら当然だね。」

 

 

城廻先輩はきっと、私に姉さんの面影を見ているのだと思うわ。途中で撤回したけれど、今の3年生にとって姉さんはそれだけ凄い存在とも言えるのだと思うわ。

 

 

雪乃「ありがとうございます。では、私も失礼します。」

 

めぐり「うん、お疲れ〜♪」

 

 

けれど私は姉さんじゃないわ。周りに分からせるつもりはないけれど、これだけはハッキリしておかないといけないわね。

 

あら、比企谷君………

 

 

八幡「………」ポチポチ

 

 

携帯を操作しているという事は、内容は夜十神さんかしら?けどこの会議室もそろそろ閉めないといけないわ。

 

 

雪乃「比企谷君、会議室を閉めるわよ。」

 

八幡「ん、分かった。すぐ出る。」

 

 

比企谷君はすぐに携帯をポケットにしまうと会議室から足早に出た。それから私は鍵を締めて職員室に向かう。その際、行く方向が同じだから彼と横並びになっているわ。

 

 

雪乃「さっきの、夜十神さんとかしら?」

 

八幡「ん?あぁ、まぁな。何で分かった?」

 

雪乃「貴方が携帯を操作するのって、私にはそれくらいしか分からないから。」

 

八幡「そうか……この後に会う予定だ。」

 

雪乃「そうなの……それにしても、今日はリュックで来てるのね?いつもは学校指定のバックなのに。」

 

八幡「よく見てるんだな。」

 

雪乃「いつも肩に下げているのを見れば分かる事じゃない。それに大抵の生徒がそうよ。」

 

八幡「まぁ、そうだな……予定が気になるのか?」

 

雪乃「いいえ、聞き出したりなんてしないわ。私は貴方の信頼を取り戻したいだけだもの。」

 

八幡「………あぁーそんな話もしたな。」

 

雪乃「貴方から言ったんでしょう?もしかして忘れていたの?」

 

八幡「いや、どうでも良すぎて。」

 

 

……まぁ、今の比企谷君の私達に対する評価はそんな所でしょう。無理もないわ。

 

 

雪乃「じゃあ私は鍵を戻してから帰るわ。」

 

八幡「そうか……「比企谷君。」ん、何だ?」

 

雪乃「………また明日。」

 

八幡「………おう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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夜十神家へお泊まり

八幡side

 

 

今日も今日とてお泊まりに誘われました比企谷八幡です。え?この前約束したじゃんって?いやそれは先々週の話であって、今日は3回目のお泊まりに来てるってわけだ。柊もそうだが、涼風やおじさん達もすげぇ誘ってくるから断り辛くなっているのもある。だってメッチャ目を輝かせるんだぞ?『泊まるよね?泊まってくれるよね?』みたいな目をしながら俺を見るんだぞ?ある意味タチが悪い。

 

そして今日は金曜日。なので柊の家に泊まりに行くわけだが、ちょっと気が引けるんだよな……え?ただ彼女の家に泊まりに行くだけなのにどうしてそんなに気が引けるのかって?それは目の前の光景が物語っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聳え立つような大きい家……いや、城?やっぱ家。

 

緑の映える綺麗な庭。

 

そして車が2台通っても問題ない大きいゲート。

 

そしてその真ん中に立つ俺……いや俺は要らんか。

 

 

※イメージは【賢者の孫】の『領主の館』に緑を増やして開くゲートをプラスした感じです。

 

 

いやぁ……これと横並びになってる家ってどんだけこの家の事を羨ましいと思っている事か。俺も住んでみたいとは思った事あるが、1人では流石に嫌だ。

 

 

「お待ちしておりました、若様。夜十神家並びに私達執事やメイド共々、心より歓迎致します。」

 

八幡「すみません、3週連続で来てしまって……後、その若様って治りません?」

 

「お言葉ながら、若様は柊お嬢様がお認めになられた方。そして柊お嬢様が……いえ、奥様や旦那様、涼風お嬢様の全員がお認めになられているのです。そのようなお方に礼儀を欠いた真似など、この宮間には恐れ多くて出来ませぬ。」

 

 

今俺を歓迎してくれたこの人は、執事の宮間(みやま)さん。柊の中学の事も知っている人物で、おじさんが仕事に行く時に必ず側に置く人らしい。そしてこの屋敷の執事長もやっているとか。

 

 

宮間「さっ、中へどうぞ。若様の足を止めてしまい申し訳ございません。」

 

八幡「あぁいえ、お気になさらず。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「はっちまんくぅ〜ん!!待ってたよ〜♪」ダキッ!

 

八幡「おぉ、今日も厄介になる。」

 

柊「ううん、八幡君なら大歓迎!!他の人ならお断りだけど〜。ね、宮間さん!」

 

宮間「お嬢様の仰る通りでございます。」

 

柊「ほら八幡君早く行こうよっ!涼風達も待ってるからさっ!」

 

八幡「分かったよ。すみません、また荷物お願いします。」

 

宮間「畏まりました。」

 

 

ーーーリビングーーー

 

 

柊「お父さんお母さん涼風〜、八幡君来たよ♪」

 

御影「ははは、柊も3週連続お出迎えだね。八幡君もよく来てくれたね。」

 

八幡「いや、なんか3週連続で来ちゃって申し訳ないです。普段は人を呼ばないんですよね?」

 

紫苑「八幡君はいいのよ。君なら私達全員総出で歓迎するのは当たり前だもの。それに八幡君さえよければこっちの家に移り住んでもいいのよ、ねぇ宮間?」

 

宮間「はい。最早若様は夜十神家の家族も同然のお方。この屋敷に住まわれると言われても、私は反対など致しません。」

 

 

うっそでしょ?家族どころか執事達も買収済み?本当に俺が此処に住んじゃったらどうすんのさ?絶対に俺ダメな大人になると思うよ?

 

 

御影「もしそれが不満なら、君に住宅の1軒を「それは嫌です。」あははは、君ならそう言うと思ったよ。」

 

紫苑「けど困った事があったら相談しなさいね?家族にご相談するのもそうだけど、貴方はもう私達の家族も同然なのだから。」

 

八幡「は、はい……」

 

紫苑「けど、取り敢えずはこの家から「だからそれは嫌ですって。」ふふふふっ、やっぱり八幡君は面白いわね。」

 

 

この2人は………いつも俺をからかってくる。一応はすげぇ人なんだぞ?このおちゃらけてる2人は。

 

 

柊の父親は世界で最も有名なグループ企業の1つである【Nigh-Ten(ナイテン)・Group】の社長であり、実業家だ。様々な物を取り寄せては販売して、利益を得ている。しかもその取り寄せている物は日本に限らず世界を基準としており、世界の1大陸毎に1社置いているのだ。5大陸(正確には6大陸だが、南極は無理。)あるから6社(日本も含めて)あるってわけだ。その中でやりくりをしながらお金を稼いでいるってわけだ。それと同時に資産家でもあり、世界の売地になっていた豪邸の約3割はこの人が買い取っている。そして半年の収入が………0が10個くらいついていたと思う。1度だけそれが載ってた紙を見せてもらったけど、ヤバかった。

 

そして母親はグループの副社長にしておじさんの秘書をしている。だからおじさんが何かあって動けない時には、おばさんが代わりに社長代理をしているという事になる。実は経理を全て任されているらしく、普通の人が30分掛かる作業を半分以下の10分で終わらせてしまう程の凄腕。この作業も1度見せてもらったが、アレって人間技じゃなくね?紙を1回見ただけで後はもう打ち込み作業だぞ?その後なんて紙は1度も見てないし。完全記憶能力でも持ってるのかね?

 

 

御影「さっ、今日も八幡君が来てくれたからね。パ〜ッと美味しい料理を頼むよ。あっ、八幡君は何が良い?やっぱり男の子だからお肉かな?それとも魚かい?野菜もあるし、何ならコースでも良いよ。」

 

紫苑「折角だからワインもお願いね。八幡君は何が良いかしら?飲み物なら日本以外のもあるから、好きに言ってね?」

 

 

………もう1度言うよ?社長と副社長で実業家兼資産家だからね?この2人の発言、金持ち以外の何でもねぇよ。

 

 

 




夜十神家のご両親、メッチャと超がつくお金持ち。(現在記録更新中。)


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心が一杯

 

八幡side

 

 

御影「八幡君、もういいのかい?育ち盛りなんだ、もっと食べたらどうだい?」

 

紫苑「そうよ、なんだか少な過ぎる気がするわよ?遠慮しなくてもいいのよ?」

 

八幡「あ、いやぁ、そういうわけでは……」

 

 

いや無理だわ………俺もう無理だわ。もう食えない、ていうか一口一口のインパクトがやたらとすげぇんだよ。あっ、胃袋はまだ入るよ?けど、気持ちの問題。胃袋よりも気持ち的にお腹一杯一杯です……だって何?この両親ヤバ過ぎるんだけど。たかが娘の彼氏を家に泊まらせるってだけで、3週連続で世界三大珍味オールコンプリートさせるか普通!?

 

 

1週目はトリュフをふんだんに使った黒毛和牛ステーキ肉でしっかりと分厚い肉だった。しかもそれだけじゃなく、白トリュフを使ったチーズケーキも用意されてました。

 

2週目はフォアグラと先週の残りがあったのか、黒毛和牛の牛ヒレ肉も使ってロッシーニ風で出されました。そしてデザートにまたフォアグラ使ってショコラケーキです。

 

そして今日の3週目。今日はキャビアでございます。キャビアを乗せたホタテのソテーや、フランスパンの上にチーズ、トマト、生ハム、なんかの葉っぱ、そして主役の………キャビアを乗せた料理。メインはパスタだが、そこにも忘れずにキャビアが。

 

 

いやもうお腹一杯です……3週連続で世界三大珍味を食べてしまったんだよ?高級食材そんな軽々しく食べさせちゃっていいのか!?こんな一般庶民の俺に!!

 

 

八幡「流石に3週連続で三大珍味を食べさせてもらうと、なんか……お腹よりも心が一杯になってしまうっていうか………」

 

柊「けど八幡君、私達だって普段からこんな凄いの食べてるわけじゃないよ?あくまでもこれはお客さん用だからいつもは普通のご飯だよ。」

 

八幡「まだそっちの方が食えたかもしれない。」

 

紫苑「まぁ確かに八幡君には刺激が強かったのかもしれないわね。じゃあ次の週は松茸ご飯と秋刀魚にするわね。」

 

 

ヤバいぞこの母親、全然めげてないし、理解もしてないし、分かってもいない。高級食材から離れようよ?普通って言葉知ってる?柊が今言ったよね?

 

 

涼風「八幡さん諦めて下さい。父も母も八幡さんが来るって分かると、どうしても美味しいものを食べさせようとして、ああなるのです。」

 

八幡「なぁ?まさかとは思うけどよ、デザートまで何かしたんじゃないだろうな?」

 

涼風「はい……キャビアを使ったフルーツタルトをご用意してあります。」

 

八幡「………デザートもコンプしちゃったよ。」

 

 

ーーーリビングーーー

 

 

八幡「なぁ柊、さっき普通の料理って言ってたが、どんなのを食べてるんだ?」

 

柊「日によって違うのは当たり前だけど、やっぱり白米にお味噌汁、それに魚かお肉ってところかな。お魚は今が旬のシャケとか秋刀魚とかだよ。お肉だって生姜焼きとか醤油で味付けしたのだよ。」

 

八幡「俺、それで充分だよ。」

 

柊「まぁまぁ、お母さんとお父さんも八幡くんが来て嬉しいんだから許してあげてよ。けどもし次来るとしたら………さっき言ってたのもそうだけど、しゃぶしゃぶとかしそうだよね。松茸とか牛肉とか使って。ね、涼風?」

 

涼風「否定出来ませんね。八幡さんには申し訳ありませんが、頑張れとしか………」

 

八幡「先々週が初めての泊まりだけどよ、こんなので良いのか?お金無くなったりしない?」

 

柊「むしろ良い散財なんじゃない?」

 

涼風「普段は何かに乱費するような事はしないので、これくらいは大丈夫かと。」

 

 

俺、絶対に物とか強請らないようにしよっと。勢いに乗ってなんでも買いそう……あの両親が。

 

 

涼風「所で、文化祭の準備の方はどうなのでしょう?問題無いのでしょうか?」

 

八幡「あぁ、問題なく進んでるし、明日が本番だしな。会場設営も全て済んでるし、後は本番を残すのみだ。といっても俺が後やる仕事は写真撮るとかそのくらいだけどな。」

 

柊「私は当然、総武高の文化祭に行くからね。涼風はどうする?行く?」

 

涼風「そうですね、お姉様と一緒に行きます。八幡さんも自由時間はあるのですよね?」

 

八幡「なきゃ困る。そうでないと俺達文化祭実行委員はタダ働きだろう。明日までオールで働けなんて言われたら、文化祭行かずにサボるわ。」

 

柊「流石にそんな事言われたら、ね………」

 

八幡「まぁそれは言われてないから大丈夫だとは思うが、そん時は2人で「お仕事しながら私達も楽しもっ、ねぇ涼風?」お、おいひいら「はいお姉様、八幡さんと一緒に行動するのは予定の中で変わりない事ですし。」……涼風もか。」

 

 

この姉妹、俺が文化祭の日に仕事があったとしても俺と一緒に行動する気とか………学校で絶対に噂になるな、コレは。

 

 

紫苑「あら、何の話をしているの?」

 

八幡「はあ、明日の文化祭の事で少し。」

 

紫苑「そうなのね。何をやるのか少しだけ気になってたのよね〜。ほら、フルーツタルトを切って持ってきたから食べながら話しましょう?」

 

 

で、出た……キャビア入りのフルーツタルト。アレか?別腹なら平気だろ的なアレか?

 

 

 

 



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夜十神家の先祖と○○○○○の理由

 

八幡side

 

 

御影「いやぁ〜北海道旅行以来だけど、こうしてまた八幡君と一緒の風呂に入れる事を嬉しく思うよ。義息子と入れるのは、父親の夢でもあったからね〜。はははっ!」

 

八幡「そ、そうっすか……」

 

御影「柊が迷惑を掛けていないか心配していたけど、これだけ長い間付き合えているし、何よりも柊の心の支えになってくれた八幡君なら問題はないって信じてるしね。」

 

八幡「ありがとうございます。」

 

 

食事を終えて寛いでいた俺は、風呂が沸いたと宮間さんから言われて入っているわけだ。当然ながら風呂もかなりの大きさである。

 

 

御影「それにしても、八幡君は本当に欲が無いんだね?さっきも言ったと思うけど、君は僕達の家族も同然だから欲しい物があるのなら、言ってくれても構わないのだよ?お金は幾らあっても困る物ではないが、置いておくだけというわけにもいかないからね。」

 

八幡「急には思いつきませんよ。それに秘密なんでしょ、この家が超がつく程の大金持ちって事は。きっと俺の妹がそれを知ったら、それを狙って色んなのを強請るかもしれませんし。」

 

御影「君は自分の妹を一体なんだと思ってるんだい………」

 

 

いや、親父に甘やかされてる小町の事だ。この家が超金持ちだって知ったら………うん、メチャクチャな買い物とかしそう。

 

 

御影「まぁ確かにね。八幡君にはどうしてこの家がお金持ちなのを隠しているか、話した事があったかな?」

 

八幡「柊から少し。一般人としての教養や金銭感覚、常識を身に付けておく為っていうのは聞いてます。他にあるんですか?」

 

御影「まぁね。といっても今八幡君が言った事が全てなんだけど、最大の理由はお金の亡者にならない為、だからだね。」

 

 

金の亡者にならない為?

 

 

御影「一応、この夜十神家は明治時代からの名家で爵位持ちの家だったんだよ。伯家……まぁ、伯爵と言った方が分かりやすいかな、爵位の中では3番目に位置する位を持っていたんだよ。まぁそれも1947年に全て廃止になったから今は関係ないけど。けど財産は残ってたから、僕の先祖達はそれを使って商いに手をつけたんだ。夜十神家は元々、商業を専門としていたから金銭勘定は得意でね。1番に立て直したと言っても過言ではない。けど、そのせいで周りから言われる事も多くてね。」

 

八幡「金持ちなのを妬まれるようになった、ってわけですか?」

 

御影「うん。当時の当主達はかなり悩まされていたみたいでね。僕も文献でしか見た事はないんだけど、それこそ盗みが入ったり、夜襲とかもあったみたいなんだ。」

 

 

うわ怖っ!!そんな物騒だったのかよ……いや、1947年って昭和だよな?その頃ってそんなに物騒だっのか?

 

 

御影「そんな出来事が続いて数年が経った頃、僕が最も尊敬出来る夜十神家の当主様がこの時期の当主になったんだ。その当主様はこれまで親族のみにしか使わなかった家の資金を地域一帯の復興に当てたんだよ!それだけじゃない、他にも海外から取り寄せた物品での商業もこの代から始まって、服や装飾品、骨董品や食べ物、家具なんかも格安で売って来たんだよ。だからこの千葉は一時期『日本ではない日本』とまで言われる程、皆の生活は豊かになったんだよ!その人物が僕の祖父にあたる人物でね、生前は本当に良くしてもらっていたんだよ。あの人は本当に凄い人だった……皆からも『あの人はとんでもない人だ!』とか『偉大なお方だ!』って言われていたんだよ。あんなにも人の幸せを願った人はそうそういないと思っているんだ。」

 

八幡「………凄い人なんですね。」

 

御影「うん、本当に。人助けをしたご先祖様なんて、祖父くらいだからね。僕もあの人のような男になれたらって頑張ってはいるんだけど、中々上手く行かなくてね………お金しか生み出せなくなっている。どうしたものかな、あはは……」

 

八幡「けど、時代の流れもありますから。その時は生活が豊かじゃなかったから成功していたのであって、今は家を持っているのが当たり前な世の中になってますから。」

 

御影「そうだね。でも、もし僕があの頃に生まれていたとしても、祖父のように振る舞えていたかって言われると、きっとしていないと思うんだ。何せ祖父は子供の頃から『夜十神家の異端児』って言われていたみたいだから。分家からは少し嫌われていたみたいだから。」

 

 

多分、子供の頃から感性がその頃の子供とはかなり違っていたんだろうな。当たり前が当たり前じゃない、常識が非常識っていう風に、何処か他の人とは違う天性の才能を持っていたんだろう。

 

 

御影「僕は祖父から『お前は将来化けるぞ!きっちり勉強しておくんだぞ!』って言われたから一生懸命勉強した結果、今みたいなお金持ちになれた。僕の持ってる会社が海外進出したのは僕の代からなんだよ。違う事がしたいって思ったから。少しだけ!祖父の考えに染まってしまったっていうのもあるかもね。」

 

八幡「……いや、すげぇ事だと思います。」

 

御影「はは、ありがとう。何だか話し過ぎちゃったみたいでゴメンね、先祖様のお話に付き合わせてしまって。話の本筋が逸れちゃったけど、お金の亡者にならない為っていう理由は分かってくれたと思う。自分や自分の家の為だけに使うお金っていうのは、あまりにも窮屈で狭過ぎる。なら人々の幸せの為に自分の家族だけでなく人々に、家だけでなく世界の為に、てね。まぁ、まだまだだけどね。」

 

八幡「いえ、聞けてよかったです。」

 

御影「そう言ってもらえると嬉しいよ。じゃ、身体でも洗おうかな。」

 

八幡「背中流します。」

 

御影「あはは……ありがとうね、八幡君。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




○○○○○は金持ち隠しでした!


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勝負の行方

 

八幡side

 

 

八幡「………」

 

御影「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「今度こそ!!今度こそは私が勝って八幡君と一緒に寝る権利を貰うんだからっ!!」

 

涼風「先々週は私、先週はお姉様、この流れは私に決まっています!負けるわけにはいきません!」

 

紫苑「2人共〜、頑張りなさいね〜。」

 

御影「2人はまだやっているのかい?」

 

紫苑「あらあなた、八幡君も。お風呂から上がってたのね。お湯加減はどうだったかしら?」

 

八幡「ちょうど良かったです。それで、今は何をしているんです?」

 

紫苑「見ての通り神経衰弱よ。八幡君達が入っている間もずっとやっていたのよ?2回連続で勝つまでは決着にならないみたいで、2人共懲りずにずっとやっているのよ。」

 

御影「凄いね……余程八幡君と一緒に寝たいと見えるよ。」

 

 

いやいや、俺と寝たいが為に俺達が風呂に入ってる間ずっと神経衰弱(コレ)してたのか?凄いな、30分もやってるのか………最早執念だな。

 

 

八幡「それで、今はどっちが勝ち越してるんです?一本取ってるのは?」

 

紫苑「今は柊よ、さっきまでは涼風だったけど。けどこの流れが10回以上は続いてるのよね〜。」

 

御影「八幡君となると性格変わるよね。」

 

紫苑「はぁ………全くよね。」

 

涼風「やりました!1つリードです!」

 

柊「まだよ!まだ勝負はついてないんだから!!」

 

八幡「………いつまで続くんだコレ?」

 

 

ーーー5分後ーーー

 

 

紫苑「じゃあ私もお風呂に入ってくるわね。八幡君、おばさんの身体でも良ければ覗きに来ても良いわよ?」

 

八幡「茶化すのはやめて下さいよ……おばさんの茶化しのせいで俺がこれまで何度2人を宥めたと思ってるんです?」

 

紫苑「ふふふっ、ごめんなさいね。八幡君が面白いからつい、ね。」

 

八幡「勘弁して下さいよ……2人に聞こえてなかったからよかったものを。」

 

 

結局、勝負の決着はまだつかない。何でこんなにもケリがつかないのだろうか?勝ってからの勝負運が無さ過ぎだろ2人共。

 

 

御影「うぅ〜んこのままだと何時間経っても勝負にならなさそうだし、いっそ八幡君は僕と「「は?」」一緒に………え?」

 

柊「お父さんソレはダメ。八幡君は私の彼氏なんだから私と一緒に寝るの。分かるよね?お父さんはお母さんと一緒に寝なよ。」ハイライトオフ

 

涼風「お父様、私にもプライドがあるのです。私だって八幡さんと一緒に寝たいのです。それをお父様ともあろう方が邪魔をするのでしたら………容赦は致しませんよ?」ハイライトオフ

 

御影「………はい、ごめんなさい。」

 

八幡「だが、勝負はいつになったらつくんだ?かれこれもう40分は続いてるんだぞ?」

 

柊「大丈夫だよ八幡君!!次の勝負で私が勝てば私と八幡君の勝利だから!!」

 

涼風「いえ、次とその次の勝負で私が勝ちます!!そうすれば私と八幡さんが共に寝られる権利を得られます!!見てて下さい!!」

 

 

いやどうでもいいんだけど、勝手に俺を陣営につけるのやめてもらえるか?

 

 

柊「絶対に譲らないんだから!!先週も私だったんだから今週も私になる筈!!だから涼風も諦めていい加減お姉ちゃんに譲りなさい!!」

 

涼風「いいえ!幾らお姉様でも譲れないものだってあるのです!私だって負けられないんです!」

 

八幡「白熱してる所悪いんだけどよ、お前等が今やってる事ってただの神経衰弱だからな?」

 

御影「えっと……あのさ、1つ思ったことがあるんだけどさ………言ってもいいかい?」

 

八幡「何ですか?」

 

御影「いやね、2人共八幡君と一緒に寝たいっていうのは分かったんだけど、3人一緒に寝るっていう選択肢はないのかなぁって。」

 

 

ピタッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、あれ?アホ姉妹の手が止まった。

 

 

柊/涼風「お父さん(お父様)、その話詳しくお願い!(お願いします!)」

 

御影「う、うん……2人の部屋に置いてあるベッドでも3人は寝られるけど少し窮屈だよね?だから八幡君に用意してある部屋のベッドなら3人入っても余裕の広さだからね。八幡君を独り占めするよりも、共有するのはどうなのかなぁってちょっと思ってみたんだけど………」

 

 

おじさん、そんな事になったら俺の睡眠時間削られちゃいますよ………どうしてくれるんですか。

 

 

柊「八幡君を……共有……」

 

涼風「八幡さんと……お姉様と……寝られる……」

 

御影「え、えっと……2人共、大丈夫?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊/涼風「それだよお父さん!!(それですわお父様!!)」

 

 

わぁー急に嬉しそうな声。

 

 

柊「なんで今まで気が付かなかったんだろう?そうだよ、3人一緒に寝れば全部解決じゃん!!」

 

涼風「はい!私達は別に姉妹で寝たくないわけではありませんし、とても良い案です!!」

 

柊「これなら……」

 

涼風「きっと……」

 

柊/涼風「八幡君(八幡さん)も喜ぶ(喜びます)!」

 

 

喜ぶのはお前達だろ、何故その中に俺も入れた?

 

 

御影「まぁそれで納得してもらえたのならよかったよ。じゃあ2人も早くお風呂に入ってきなさい。母さんはもう先に行ってるからね。」

 

柊「はぁ〜い♪」

 

涼風「はい、分かりました♪」

 

 

…………………………

 

 

御影「……えっと、ゴメンね八幡君。」

 

八幡「いえ、気にしてませんよ。囮に使われた事なんて気にしてませんから。これで明日は睡眠不足確定ですよ、俺。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本日の勝敗……八幡の1人負け(2人と寝る事になり、睡眠不足になる為。)


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勝負終わりは

 

紫苑side

 

 

ふぅ〜良いお湯ね〜。それにしてもあの2人は本当に八幡君の事になると人が変わるわよね。柊は兎も角、まさか涼風までも八幡君に懐くなんて思わなかったわ。あの子あれで人見知りだから普段はあまり自分から他人には関わりを持たないのに。姉に認められた男子ってだけではないだろうけど、八幡君に何かを感じたのでしょうね。

 

けどあの子達まだ勝負をしているのかしら?だとしたら長過ぎるわね………もし私が上がる頃になっても来ないようであれば、1発勝負のジャンケンでもしようかしら。涼風は大丈夫だけど、柊は圧をかければすぐに言う事を聞いてくれるものね。あっ、この事は内緒よ?

 

 

柊「あっ、お母さんお待たせ〜♪」

 

涼風「お待たせしました。」

 

紫苑「あら、漸く来たのね。それも2人仲良く。てっきりどっちかは臍曲げてるのかと思っていたんだけど、良い結果になったの?」

 

柊「ふっふ〜ん、まぁね♪私達3人で寝る事になったんだ〜!いやぁ〜お父さんナイスアイデアだったなぁ!涼風がいっつも私に張り合うから3人でっていう考えがいつの間にかなかったのかもっ!」

 

涼風「お、お姉様!人聞きの悪い事を言わないで下さい!お姉様の節操の無さが問題なのです!」

 

柊「ちょっと!?節操が無いって何さ!?私はただ八幡君に甘えてるだけなんだけど!?」

 

涼風「それを少しは私にも分けて欲しいんです!」

 

柊「本音絶対それだよね!?」

 

柊/涼風「………」バチバチッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊/涼風「ぷっ!」

 

柊「あっはははは!!」

 

涼風「ふふふふふっ!」

 

 

この2人の良いところよね。少し喧嘩になったとしても、すぐに笑って仲直りできるところが。それに私かあの人が別の案を出して八幡君を遠ざけようとすると、同じような反応をするものね。やっぱり姉妹なのよね。

 

 

柊「じゃあ私達姉妹は、八幡君にもっと甘えたいっていう事で!」

 

涼風「はい、分かりました。お姉様!」

 

紫苑「そういえば八幡君の学校は明日文化祭なのよね?貴方達はどうするの?」

 

柊「勿論行くよ!八幡君と文化祭デートしたいしね♪色んなの食べて、色んなのやって来ないと損だもん!」

 

涼風「私もお姉様と一緒に行くつもりです。それにお姉様をお1人にすると、少し危なそうなので。」

 

柊「ちょっと涼風、それどういう事?」

 

紫苑「そうね、涼風お願いね。」

 

柊「お母さんまで!?」

 

紫苑「ところでずっと気になっていたんだけど涼風、貴女はどうして八幡君を気に入ったの?涼風の事だから慣れるまでに時間が掛かるかなぁって思っていたのに、すぐに八幡君にベッタリになったから気になってたのよね。」

 

涼風「えっと……何回かはお姉様と八幡さんに言ったのですが、いつしか私は八幡さんの事を兄のように見るようになっていました。勿論、八幡さんも無意識でしょうし、私の意識のし過ぎとも思っていましたが、八幡さんの態度も変わる事がなかったので。」

 

紫苑「そうだったのね……まぁ涼風の姉は少しチャランポランだから仕方ないわね。」

 

柊「ねぇ、流石に私も泣いちゃうよ?」

 

紫苑「ふふふっ、ゴメンなさいね。少しからかい過ぎたわ……寝るのは八幡君専用のあの部屋?」

 

柊「そっ、あの部屋のベッドなら私達3人寝ても余裕だからってお父さんが。あっ、そうそう!涼風はどっちで寝たい?八幡君の左か右、どっちが良い?」

 

涼風「私はどちらでも……敢えて言うのなら右側ですが、何故そのような事を?」

 

柊「んぅ〜?気になるぅ〜?」ニヤニヤ

 

涼風「………少しだけ。」

 

柊「実はね、左を選んだ人はガードが固い人で右を選んだ人が襲ってもいいですよって事なんだって!やぁ〜涼風ちゃんはムッツリだなぁ〜。」ニヤニヤ

 

涼風「………お姉様が変態親父のようになったと八幡さんに報告しておきますね。」

 

柊「わぁーー嘘っ!!嘘嘘、嘘だから!!!だからお願い!!八幡君にそんな事言わないで〜!!!」

 

 

もう、柊も少しは学習しなさいよ。そんな手で涼風が動揺するわけないじゃない。けど今の説って本当なのかしら?

 

 

紫苑「柊、大声を出さないの。はしたないわよ。私達もそろそろ身体を洗ってちゃんと温まってから上がるわよ。」

 

柊/涼風「はぁ〜い(はい。)」

 

 

紫苑sideout

 

御影side

 

 

御影「あっ、あ〜ぁ、まぁたファウルだよ……今日はツイてないなぁ。八幡君に取られっぱなしだよ。最後の9に賭けるしかないじゃないか。」

 

八幡「おじさんが全力過ぎるんでしょう……少しは加減したりとかしましょうよ。だから打って入った後も自分の球も入りに行くんじゃないですか。」

 

御影「あははっ!!八幡君の言う通りだ、けどこうして義息子と勝負もしてみたかったんだよね〜。賭けたのはコーヒー牛乳だけど。」

 

八幡「こんな家なのにコーヒー牛乳が1本しかないって逆に驚きましたよ。お酒やジュースはあんなにたくさんあるのに。」

 

御影「いやぁ本当だねっ!」

 

八幡「んじゃ、5番も貰いますからね?」

 

御影「まだ勝ち誇るのは早いんじゃないかなぁ?おじさんの本気を見せてあげるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「で、結局取れたのは1番と6番の球だけで。」

 

涼風「八幡さんは3番と5番と7番と9番で。」

 

紫苑「残りの数字は全部貴方が自分の球と一緒に落としたと……貴方ビリヤード下手ね。」

 

御影「ち、違うよ!?八幡君と出来るのが嬉しかったから舞い上がってただけだよ!」

 

柊/涼風/紫苑「言い訳。」

 

御影「妻と娘達が辛辣だよ八幡君………」

 

八幡「………このコーヒー牛乳もたっかいヤツやん。」ゴクゴクッ

 

 



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お休みの時間

 

柊side

 

 

御影「じゃあ3人共、お休み。」

 

紫苑「あまり夜更かしをしてはダメよ?八幡君は明日文化祭なんだからね?」

 

柊「もうっ、分かってるよそのくらい!」

 

八幡「気を付けます。」

 

涼風「姉は私がしっかりと見ておきますので、大丈夫ですよお母様。」

 

八幡「柊が何かする前提なんだな………」

 

紫苑「ふふふっ、本当に仲が良いわね。それじゃあお休み。」

 

 

私たち家族内でいう就寝時間が来たからそれぞれの部屋で睡眠を摂る。けど今日の私と涼風は八幡君と一緒に寝るという大切な使命があるから、自分の部屋には行かない。ていうか八幡君が逃げかねないから、腕に抱き着いてしっかりと捕まえておかないと♪

 

 

柊「じゃあ私達も行こっか♪」ムギュ~!

 

涼風「はい、お姉様♪八幡さんも。」ムギュ~!

 

八幡「お、おう……」

 

 

八幡(ヤバい………4つのたわわが、4つのたわわが俺を襲って来ている!!俺まだ身構えてないのに!身構える前に襲って来てるんだけど!?しかも何だよ2人のこの笑顔は?メッチャ機嫌良さそうじゃん!おじさんが提案した時からこの笑顔だもんなぁ〜。)

 

 

ーーー八幡専用部屋ーーー

 

 

八幡「……今更だけどよ、本当にこの部屋って俺だけに用意された部屋なのか?」

 

柊「え、そうだけど?」

 

八幡「いつ見ても思う、豪華過ぎるって。普通の部屋でいいのによ。」

 

柊「……私達の感性ってまだ普通の人より少しだけ違うのかもね。」

 

涼風「そうですね。八幡さん、お父様とお母様にお伝えしておきましょうか?」

 

八幡「いや、せっかく用意してくれた部屋だからな、なるべくそういう事はしたくない。これってホテルのスイートルームばりの豪華さだよな、きっと。」

 

 

あぁ〜それは分かるかもっ。私もパーティとかで行ったことあるけど、こんな感じのお部屋で内装がもう少し豪華だったかも。じゃあ八幡君に用意したこの部屋って絶対にスイートルームを意識したよね〜。そうなんでしょお父さん?

 

 

涼風「それよりも早くベッドに向かいましょう。」

 

柊「そうね。八幡君もほ〜らっ♪」

 

八幡「……じゃあ俺はソファで寝よ「「は?」」うとかじゃなくて、置いてある荷物を取りに行こうと思っただけだ。」

 

柊「なぁーんだ、そうだったんだ!じゃあ取りに行ってベットに入ろっ♪」

 

 

もしもソファで寝るなんて言ってたら………フフフ、ヨウシャシテナカッタカラネ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「んで、どうやって寝るの?」

 

柊「そんなの八幡君が真ん中で私と涼風がその隣に決まってるじゃん。どうして?」

 

八幡「いや、何でもう配置決められてるの俺?」

 

柊「それじゃあ八幡君は何!?どっちか両方に八幡君をお預けにしろって言いたいの!?絶対に嫌っ!!!八幡君が真ん中ったら真ん中!!!これは絶対に譲れない!!」

 

八幡「夜中にそんな大声を出すんじゃありません。分かったよ、俺が真ん中な?」

 

涼風「すみません八幡さん、姉が本当に。」

 

柊「ねぇ涼風?何で私だけが聞き分けがなくて悪い子のような言い方をするのか詳しく聞いていい?」

 

八幡「ホラもう行くぞ。」

 

柊「ま、待って八幡君!まだ涼風に「じゃあ柊はソファか自分の部屋な。」お姉ちゃんそんな事気にしない!さぁフカフカのベッドに行こう♪」

 

八幡「………チョロいな。」ボソッ

 

涼風「………チョロいですね。」ボソッ

 

 

八幡君のもう1つの隣は誰にも譲りません!!そんな事よりも八幡君と寝る方が大切だもん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「あのさ……くっつき過ぎ。」

 

 

八幡(え、何?これ絶対に俺を寝かせない気じゃん。腕に抱き着いて足も絡ませてきて、おまけに身体までもくっつけて来やがった。この子達少しだけ節操というのが足りてないんじゃないの!?)

 

 

柊「んむふぅ〜八幡君の身体あったかぁ〜い♪良い匂ぉ〜い♪抱き心地最上級〜♪」ムギュ~!

 

涼風「こ、これは………と、とてもクセになりそうです/////」ムギュ~!

 

八幡「いやこれじゃあ俺が窮屈過ぎる。少し離れ「絶対に無理。」て……いや、けど「私も出来ません。」お、おいおい………」

 

柊「良いじゃない。八幡君は動けない分、私達の柔らか〜いおっぱいの感触を堪能してくれればいいから♪知ってると思うけど、私達ってかなり大きいんだよ?果物で例えるならメロンだよメロン♪」

 

涼風「お、お姉様……そのような恥ずかしい事を平然と言わないで下さい/////」

 

 

えぇ〜別にいいじゃない。八幡君だって声には出さないけど、心の中ではきっとそう思ってるに違いないよ。私だって同年代の子達と比べると、かなりあるなぁって思ってたりもするしね。

 

 

八幡「あ、あのぉ、俺を挟んで口論やめて来んない?身体が余計に密着されんだよ。」

 

柊「えぇ〜いいじゃん!もっと堪能しなよ♪」

 

涼風「お姉様!」

 

 

ちぇ〜これ以上やったら涼風からお母さんに報告が行くかもしれないから、このくらいにしておこっと。あっ、そういえば明日の文化祭って一般の人が入れる時間って何時からなんだろう?聞きたいけど今日はもう寝ないとね。

 

 

柊「ゴメンゴメン、冗談だから。じゃあ八幡君、涼風、お休みなさい。また明日ね♪」

 

涼風「……はい、お休みなさい、お姉様。八幡さんもまた明日。」

 

八幡「おう、お休み……(寝れねぇよ!!!)」

 

 

 

 

 

 



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文化祭、開幕!

 

 

八幡side

 

 

昨日は寝るのに時間が掛かり過ぎた……おかげで今日は寝不足になりつつある所なのだが、そんな寝不足も今日の朝食を見た途端に吹っ飛んでしまった。メニューは普通だった、何処にでもあるような普通のメニューだった。けどその後だ、デザートいくつ用意してんだって思った程だ。プリン、ゼリー各種、ヨーグルト、シリアル各種、ロールケーキ等々が用意されていた。しかもそこらで売ってるようなのではなく、全て高級品。なして?普通に食事してたよね?どうして急に普通じゃなくなっちゃうの?

 

まぁそれはもういいんだ、折角の厚意だから受け取っておかないとおじさんとおばさんに失礼だ。けど今の状況にも少しだけ文句を言いたくなる心境がある。俺の両腕には両手に花って言葉がバカらしく思える程の高嶺の花(薔薇)が俺の腕に自身の腕(棘のついてる蔓)を絡ませているからだ。姉の方は分かるけど涼風、お前どうしちゃったの?そのせいで朝から物凄い視線を浴びている。目の腐ったボッチの両隣に10人いれば10人振り返る程の美少女2人だぞ?

 

 

八幡「なぁ、頼むから腕を離してくれ。周りからの視線が痛過ぎる………」

 

涼風「だそうですお姉様、ここは八幡さんの為に腕をお離しになっては?」

 

柊「それは私の台詞だよ?涼風こそ八幡君の彼女である私によくそれが言えるよね〜。離すのは涼風の方じゃないのかなぁ?」

 

八幡「お前等両方だ……」

 

 

はぁ………無理かぁ。これはもう校内に入るまで待つしかないな。それまで離してくれそうにない。ていうかこの2人、一般の解放まで時間あるけど何してるつもりなんだ?

 

 

八幡「お前等、一般の解放時間までまだ時間があるわけだが、何してるんだ?今から此処に来ても待ち惚けるだけだぞ?」

 

涼風「ご心配なく、八幡さん。ただ待つだけではございませんので。」

 

八幡「?それって「あっ、見えて来た!総武高だぁ〜♪あっ、やっぱり飾り付けしてる〜♪」………」

 

涼風「賑やかな飾り付けですね。八幡さんもアレの飾り付けを?」

 

八幡「いや、俺はしていない。実行委員だから書類とかをやってたしな。」

 

柊「ふぅ〜ん、そうなんだ〜。」

 

八幡「それよりも、校門からは別々だからな?だから『離さないよ?(しませんよ?)』……いや、そういうわけにはいかないだろ。」

 

柊「ふっふっふ〜♪実は私達ね、この総武高にこの時間から入れる正当な理由があるのよ〜。」

 

 

正当な理由?

 

 

涼風「まだ公には出来ませんが、校長先生とお話がありますので、その為にです。」

 

八幡「マジか………」

 

柊「うん、マジ♪だから八幡君、校長室まで案内プリーズ♪」

 

八幡「いや、来客なんだから職員用玄関から「八幡さんならそういうと思っていましたので、スリッパを2-F組付近の所に用意しておくようにとお伝えしておきました。」いや用意周到過ぎだろ!」

 

涼風「お褒めの言葉、ありがとうございます。」

 

八幡「褒めてねぇし!」

 

 

まさかなくなると思っていた視線が増える結果になるとは………ちくしょう、この2人一体なんの用事があって校長に?

 

 

ーーー校長室前ーーー

 

 

八幡「そんじゃあ、俺は教室に行くから。」

 

柊「うん、八幡君もありがとうね〜♪」

 

涼風「ご案内、感謝いたします。」

 

八幡「そう思うのなら、道中ずっと腕に抱き着くのをやめてくれ………」

 

柊「うん、無理♪」

 

八幡「だと思った………じゃあな。」

 

 

1人が久しぶりに思える……昨日からずっと夜十神家の誰かと一緒にいたから1人になれた時間が無かったような………けど教室についてからもなんか言われるんだろうなぁ。あぁ〜行きたくねぇ、もう帰りたい。

 

 

ーーー2-F組ーーー

 

 

戸部「ヒキタニ君!!!見ちまったべー!!あれが彼女なんだべ!!やっぱすげぇわ〜!!それで、後もう1人の子は誰なん!?」

 

 

出たよ………入って早々にコレだ。答える義理はないので答えないが、どうやっても話題を変えて食らい付いてくるだろうな。

 

 

八幡「答える義理はない。」

 

戸部「じゃあさ〜じゃあさ〜!!何でこの学校に入ってきたんだ?一般の解放ってまだ1〜2時間くらいだったべ?」

 

八幡「聞いたが答えてはもらえんかった。」

 

 

校長に会う事は言わなくてもいいだろう。言う必要もないしな。そんな時、予鈴が鳴って俺の周りを取り囲むかのように立っていた男子は席へと戻って行った。そして戸部、お前はもう来るな。

 

 

ーーー体育館ーーー

 

 

クラスの連中と別れ(別に別れを告げる奴なんていないが)俺は実行委員としての仕事をしている。インカムを耳に装着して体育館のステージ下で待機している。おっ、そろそろだな。

 

 

八幡「開演3分前、開演3分前。こちら比企谷、ステージ下にて待機。今の所はトラブルは無し。」

 

雪乃「雪ノ下です。各自の現在の状況を副委員長に伝えてください。』

 

 

そして各自が雪ノ下の指示の元で動き、副委員長に準備の程を報告している。微妙なのもいるようだが、本番までには間に合いそうだった。

 

 

八幡「開演まで後10……9……8……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

0。

 

 

そして体育館のステージがライトで照らされた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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息ピッタリ♪

ーーーーーー

 

 

めぐり「お前ら、文化してるかぁ〜!?」

 

 

〜〜〜!!!!!

 

 

めぐり「千葉の名物、祭りと〜?」

 

 

踊り〜〜〜!!!!!

 

 

めぐり「同じ阿呆なら、踊らにゃあ〜?」

 

 

Sing a Songシンガッソ〜〜〜!!!!!!

 

 

事前に打ち合わせしていたのかと疑う程の息ピッタリの掛け声。そしてステージ上ではダンス部とチア部による踊りのパフォーマンスが繰り広げられている。

 

 

『こちらPA、間も無く曲消えます。』

 

「了解。雪ノ下委員長スタンバイします。」

 

 

めぐり「では次に文化祭実行委員長より挨拶です。委員長、お願いします。」

 

雪乃「はい。」

 

 

体育館からは騒めきが生じた。その騒めきは予想されていたものと近いもので、『やっぱりかぁ〜。』『雪ノ下さんだよね〜。』『むしろあの人以外居なくね?』という声がちらほらと聞こえていた。

 

 

雪乃「皆さんこんにちは、文化祭実行委員長の雪ノ下です。今年のスローガンは先程皆さんが会長と仰ったように『千葉の名物、踊りと祭り!同じ阿呆なら踊らにゃ♫Sing a Song♪』です。なので皆さん、この文化祭を全力で楽しんで下さい。以上で挨拶を終わります。それと同時に、第○○回総武高校文化祭を開催します。」

 

 

そして学年問わず全員が拍手と共に叫び出し、口笛などの音も聞こえてきた。

 

 

ーーーーーー

 

八幡side

 

 

ーーーOPセレモニー後ーーー

 

 

雪乃「それでは各自文化祭を楽しみつつ、自分の時間には遅れないように。では解散です。」

 

 

ふぅ、漸く終わりか………俺は写真を撮りながら文化祭のパトロールだったな。そういや柊と涼風は何してんのかね?校長と話があるとか言ってたが、もう終わってたりするのか?まぁいい、取り敢えずはカメラと腕章を持ちながら仕事に行きますか。

 

 

ガラガラッ

 

 

柊「……あっ、八幡君やっと来た♪ほらほら早く行こっ!時間無くなっちゃうよ!」

 

涼風「時は有限です、時間は待ってはくれないのです。1分1秒も無駄には出来ません、早速向かいましょう。」

 

八幡「………お話は?」

 

柊「え、終わったよ?だからセレモニーが終わってからはずっと此処で待ってたんだ♪」

 

八幡「俺、一応実行委員の仕事もあるんだけど?」

 

涼風「楽しみながらすればいいだけの話です。両立させてはダメなんて決まりはないでしょう?」

 

 

………確かにその通りだ。写真を撮りながら文化祭を満喫してはダメなんてルールはない。けどこの2人といると確実に俺は好奇の目で見られる。特に戸部からは間違いなく声を掛けられるだろう。現に今も後ろや周りから見られているし。

 

 

柊「ほら早く♪」ダキッ!

 

涼風「行きましょう、八幡さん///」ダキッ!

 

 

やめて。こんな目立つ場所で俺の腕に抱き着くのはマジでやめて。

 

 

八幡「なぁ、これじゃカメラが持てないから「撮る時には離すから♪」いやそういう問題じゃ「八幡さん、ダメですか?」ぐっ………わ、分かった。」

 

柊「やったぁ♪」

 

涼風「や、やりました♪」

 

八幡「んじゃ早く行くぞ、これ以上晒し者にされてたまるか。」

 

柊「この先に行ったらもっとなったりして〜。」

 

八幡「………言うなよ。」

 

 

ーーー校庭ーーー

 

 

既に一般の人も学校の敷地内に入っているからか、それなりに賑わっていた。学生達も自分たちの模擬店で物売りをしていたり、宣伝をしたり、他の模擬店を見に行ったりと忙しない様子だった。だがある意味違う賑わい(驚き)を見せているのもあった。それが………

 

 

柊「八幡君、今度はあっち♪人も集まってるから良い感じの写真が撮れると思うよ!」

 

涼風「お姉様、その次はあちらはどうでしょう?お店を背景にしながら撮れば、映えると思います。」

 

柊「あっ、それ良いね!」

 

 

カメラをぶら下げながら美少女2人に連れられている男子、つまり俺である。流石に注目されないわけないよな、そしてこの2人は全く腕を離す気配がない。本当に撮るってなるまで離す気はないらしい。

 

 

柊「はぁーい楽しんでいる所悪いんだけど、お写真撮りたいから、こっち向いて笑顔でお願〜い!」

 

 

そしてこのコミュ力の高さ。まぁ見せかけだろうが、それでも俺には出来ない芸当だ。

 

 

柊「はい、じゃあ撮るよ〜3、2、1……オッケーありがとう〜♪」

 

 

因みに言うぞ?撮ってるのは俺だからな?柊は掛け声を言っているだけだ。俺はそれに合わせてシャッターを切っているだけだ。

 

 

八幡「なんかすげぇ助かるわ。」

 

柊「このくらいお安い御用っ!涼風が見つけて、私が声を掛けて、八幡君が撮る!これ完全に私達の息がピッタリな証拠だよね〜♪」

 

涼風「八幡さんのお役に立てているのなら良かったです。何か買ってきましょうか?」

 

八幡「一緒に行くか?」

 

柊「賛成〜♪何食べよっか?」

 

涼風「八幡さんは両手が塞がっちゃいますし、無難にたこ焼きにしましょう。ちょうど正面にありますし。写真を撮るついでに購入しましょう。」

 

柊「やっぱり涼風は気が利くなぁ〜、八幡君もそう思わない?」

 

八幡「あぁ、けど思った事を聞くぞ。そのたこ焼きって、人数分買うのか?」

 

涼風「いいえ?1人分ですが?それでは八幡さんに食べさせる事が出来ないではありませんか。」

 

 

………この妹、段々と姉の色に染まってきてる。

 

 



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妹と兄

 

 

八幡side

 

 

八幡「じゃあ、お願いします。」

 

 

カメラでの写真撮影の時間も終わって、漸く仕事から解放された。今は実行委員も何もない状態で文化祭を回れる。と言っても1人で、ではないが。

 

 

柊「終わった?」

 

八幡「あぁ、終わった。」

 

柊「じゃあ行こっか♪ねねっ、次は何処に行こっか?少し物足りない感じがするから、まだ何か食べよっか?」

 

八幡「そうだな……涼風はどうだ?」

 

涼風「私はお2人に従います。というよりも、八幡さんに従います。お仕事の後なのでお疲れでしょうから、八幡さんのしたい事をなさっては?」

 

八幡「つっても今は飲み物を飲みたいだけだからな。まぁ今柊が言ったように何かを食べながらでもいいぞ。今ならカメラを持ってないから自分で食えるしな。」

 

柊「八幡君、それって私達に食べさせられるのが嫌だったって事?」

 

八幡「そういう事じゃない。ただ人前では控えて欲しいってだけだ。お前等は気にしていないんだろうが、割と恥ずかしいんだからな?」

 

涼風「す、すみません八幡さん………」

 

八幡「いや、もう終わった事だからいい。」

 

柊「でもでも!別に嫌ってわけではないんだよね!?そうなんだよね!?」

 

八幡「あぁ、それは間違いない。」

 

柊「じゃあ腕に抱き着くのは?」

 

八幡「………それもなるべくは控えて欲しい。手を繋ぐ程度だったら構わない。」

 

 

まぁ、腕に抱き着かれて密着されるよりかはまだマシだしな。毎度毎度メロンを押し付けられたらたまったもんじゃない。

 

 

柊「じゃあ文化祭の間は手を繋ぐで我慢するね。」

 

涼風「他ならない八幡さんからのお願いです、私は受け入れます。」

 

 

………文化祭の間だけなんだ。

 

 

ーーー校内・廊下ーーー

 

 

柊「ちゃんと校内は回ってなかったよね。中にも色んなのがいっぱいだね♪」

 

八幡「外で模擬店出してたのは3年だからな、1〜2年は自分のクラスでしか出し物出せない決まりになってんだよ。まぁ、外で店出してない3年もいるけどな。」

 

涼風「部活動が主体になっての模擬店は無いのですね………誠教学園では部活動での参加も認められていますので、毎年かなりの数の模擬店があるのですよ。まぁその分、クラスと部活動で両方の準備をしなければならない事になりますが。」

 

 

うわぁ、超大変。俺絶対にやりたくないわ。だって俺の部活動なんてアレだろ?お悩み相談くらいしかやる事ねぇじゃん。絶対やらんし、参加もしねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「お兄ちゃ〜ん!!」

 

八幡「ん?小町、お前総武高に来てたのか?」

 

小町「ヤダなぁ私が受けようと思ってる高校だよ?来るに決まってるじゃん!それに下見も兼ねてね♪それとお兄ちゃんの様子も見にね。」

 

八幡「あぁ、そう……まぁ楽しめよ。」

 

小町「うん!!所でさ………隣に居る2人ってこの前の北海道旅行で紹介してた彼女さんだよね?」

 

八幡「そういやあれ以来、2人の事を紹介とかしてなかったな。右にいるのが柊で俺の彼女、左が涼風で柊の妹だ。双子の姉妹だからそっくりだろ?」

 

小町「いやぁ〜兄がいつもお世話になってます、妹の小町です。」

 

柊「何もだよ。私の方こそいつも八幡君と楽しく過ごさせてもらってるよ、彼女の夜十神柊です。」

 

涼風「妹の涼風です。」

 

小町「にしても………この前は画面越しでしたけど、生で見るとホントに綺麗ですね〜。」

 

柊「あはは、ありがとう。八幡君も言ってたけど、本当に似てないね?」

 

八幡「だろ?似てんのはアホ毛だけだ。それよりもお前1人か?」

 

小町「うん。他にも誰か誘おうと思ってたけど、今日休みだしね。面倒くさがるかなぁって思って。」

 

 

ほう、流石は俺の妹だ。人の事まで考えられる辺りは上出来だな。

 

 

小町「じゃあお邪魔したらいけないと思うし、小町はもう行くね〜、あっそれと、ちゃんとエスコートしてあげてよ?」

 

八幡「やれやれ、忙しない妹だね。」

 

涼風「ですが良い妹さんですね。あんな子が欲しかったかもしれません。」

 

八幡「いやいや、小町はアレで大変だぞ?妹にオススメは出来ねぇぞ?」

 

柊「八幡君、小町ちゃん自分の妹なのにその発言ってどうなのさ………まあ私には涼風がいるから妹はいいかなぁ。」

 

八幡「考えた事ないなぁ………じゃあ俺がお前等の兄になれるとしたらどうだ?」

 

2人「今すぐ欲しい(欲しいです)!!」

 

八幡「その代わり結婚できないぞ?」

 

柊「そんなのずっと八幡君の側にいれば問題ないよ!!お兄ちゃんと結婚する的なアレで解決するもん!!だから問題なし!!」

 

涼風「そうです!!私も八幡さんが兄であるのなら、誰とも結婚したくありません!!八幡さんも結婚させません!!」

 

八幡「分かった、お前等の熱意は充分に伝わったから大声でその発言はやめようか。廊下だからすぐに人寄ってくるからよ。」

 

 

これじゃあ腕に抱き着く行為を取り消した意味がなくなる。この2人の暴走発言は何とかしないとな。いや、俺もそれを招くような事を言うのも気をつけよう。また2人が暴走するかもしれねぇしな。

 

 

八幡「んじゃあ当初の目的だった、飲み物と食べ物がある場所に行くけど、問題あるか?」

 

柊「なぁ〜んにもっ♪」

 

涼風「では、行きましょうか。」

 

 

 

 

 

 

 



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魔王と……

 

柊side

 

 

あ〜ぁ、文化祭もあっという間だったなぁ〜。何で楽しい時間ってこうもあっという間なんだろう?今頃八幡君はEDセレモニー中かぁ………退屈だなぁ。待つ時間ってこうも長く感じるのはどうしてだろう?八幡君に早く会いたいからかな?早く終わらないかなぁ〜EDセレモニー。

 

 

柊「暇だね、涼風。」

 

涼風「そうですね、お姉様。」

 

柊「八幡君、早く来て欲しいね。」

 

涼風「そうですね、お姉様。」

 

柊「何か暇を潰せるような事、ない?」

 

涼風「読書はどうです?」

 

柊「本持ってきてないも〜ん。」

 

涼風「……そういえば今日のお姉様はお財布くらいしか持ってきていませんでしたね。失言でした。」

 

 

あぁ〜迂闊だった……こうなるんなら本の1冊でも持ってくるんだった。でも、今更だよね。あぁ〜ん早く時間経ってくれないかなぁ?

 

 

涼風「………」

 

柊「………」

 

涼風「………」ペラッ

 

柊「………」

 

涼風「………」

 

柊「………あぁもう退屈っ!!八幡君が居ないって何でこんなにも退屈なの!?八幡君が恋しいよぉ〜!!今すぐ来てよぉ〜!!」

 

涼風「お姉様、こんな所で叫ばないで下さい。」

 

柊「でもでもぉ〜!!」

 

陽乃「あら?君は確か比企谷君の彼女さんだったよね?夜十神ちゃん、だったかな?」

 

 

うげっ、あんまり会いたくない人に会っちゃった。雪ノ下さん、だったっけ?

 

 

柊「お久しぶりです、雪ノ下さん。」

 

陽乃「うん、久しぶりだね。今日は彼氏君と一緒に文化祭巡りかな?良いなぁ〜恋人と回れて。」

 

柊「雪ノ下さんなら、すぐにできると思いますけど?作らないんですか?」

 

陽乃「よく言われるんだけどさ、そこら辺の人達とお付き合いするのってつまんないと思わない?だからさ夜十神ちゃん、少しでいいから比企谷君を「ダメです。」貸し……あっはは、即答かぁ〜愛されてるね〜比企谷君は♪」

 

涼風「あの、お姉様。こちらのお方は?」

 

柊「あぁ、涼風は知らないもんね。雪ノ下陽乃さん、雪ノ下建設社長と千葉県会議員の長女。」

 

涼風「成る程………っ、申し遅れました。私は夜十神涼風と申します、こちらにいる柊の妹にあたります。以後お見知り置きを。」

 

陽乃「よろしく。君達は比企谷君を待ってるの?」

 

柊「そうです。」

 

陽乃「そっかぁ〜。それにしても……柊ちゃんの目には私が映ってないんだね?」

 

 

………この人、分かるんだ。

 

 

柊「はい、だって他人ですから。」

 

陽乃「傷つくなぁ〜そんな事言われたら、ガラスのハートのお姉さんはすぐに泣いちゃうぞ?」

 

柊「ならそれとついでに顔についてる『それ』も剥がしちゃったらどうですか?」

 

陽乃「………へぇ、分かるんだ?」

 

柊「八幡君も気付いてると思いますけど、私からしてみれば鬱陶しい事この上ないので。」

 

陽乃「あらら、そうなんだ。けどそっかぁ………なんか益々比企谷君が欲しくなっちゃったなぁ。ねぇ「あげません。」……なんも言ってないんだけどなぁ?」

 

柊「想像つきますよ。」

 

陽乃「まぁそうだろうね。けどさ、君はどうしてそんなに比企谷君に拘るのかな?それこそ、君の目には比企谷君しか映ってない程に。というよりも君は比企谷君しか見るつもりがない、って言った方が正しいかな?」

 

柊「はい、そうですよ?私は八幡君と家族以外の人達は興味ありません。どうでもいいので。雪ノ下さんもそうなんじゃないんですか?面白いと思った人にしか興味を持たない。ある意味私よりもタチが悪いと思いますけど?」

 

陽乃「………あはは、確かにそうかもね。いやぁ君も比企谷君と一緒で面白いね♪うん、前にも言ったけど、頭のネジが何本か飛んでるだけはあるね。」

 

 

同じような人にそんなことを言われたくはない。とても心外。

 

ん?総武の生徒………って事は終わったのかな?

 

 

陽乃「ちょっと話し過ぎちゃったようだね。私も比企谷君と一緒に帰っていい?」

 

柊「嫌です。」

 

陽乃「段々と拒否の言葉が辛辣になっていくのは聞かないでおくね。それじゃあまたね〜♪」

 

 

もう会いたくない。あの人相手するの凄く疲れるからヤダ………早く八幡君で癒されたい。今日も八幡君は家で泊まってもらう。そして私、いっぱい八幡君に甘える。

 

 

涼風「お、お姉様。先程の方は一体………」

 

柊「うん、とっても面倒な人。涼風はあんな危険人物には近づかないように、いい?」

 

涼風「は、はぁ………」

 

柊「まさか雪ノ下さんまで来てたなんて………早く八幡君来てくれないかなぁ。来たらたくさん甘えてやるんだから。」

 

涼風「まさかとは思いますがお姉様、八幡さんにまた家に泊まらないかとお誘いをするおつもりではないでしょうね?」

 

柊「いいじゃん別に!!最後の最後で疲れたんだから八幡君で癒されたいの!!」

 

涼風「ですが流石に2日連続は………」

 

柊「じゃあ涼風は八幡君も一緒に寝たくないって言うの!?」

 

涼風「………ね、寝たいです///」

 

柊「じゃあ決まり♪今日は八幡君にたっくさんご奉仕してもらおうかなぁ〜。あ〜んしてもらってり、膝枕してもらったり、頭ナデナデしてもらったり、ギューって抱き締めてもらったり、あぁ〜色んな事してもらいたいなぁ〜♪」

 

 

涼風(お姉様……よくそんな事を平然とこの場で言えるものですわ。私にはできません。)

 

 

 

 

 

 



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面倒な面談者

 

八幡side

 

 

八幡「校門で会っていきなり抱き着くなんて、一体どうしたんだ?昼間あんなにいたのにまだ物足りないってのか、このお嬢様2人は?」

 

柊「八幡君と一緒に居る時間は長ければ長いほど良いのだよ♪そうでしょう?」

 

八幡「いや、俺に聞かれてもな……」

 

涼風「まぁ八幡さん、お姉様のこの行為は許してあげて下さい。先程、雪ノ下家の御令嬢の雪ノ下陽乃様とお話をされていたんです。それで少しだけストレスが溜まっているのだと思います。」

 

八幡「え、マジで?あの人に会ったの?」

 

 

うっわぁ最悪だな、そりゃこうなる……のか?

 

 

柊「だから今はその気持ちを霧散させると共に八幡成分を補給中なの!今は10%だから残り90%ねっ!あっ、何なら過充電しても良いよ♪」

 

八幡「なぁ涼風、柊の言ってる事理解出来るか?俺、サッパリなんだけど。」

 

涼風「えっと……私も10%です///」

 

八幡「おい、お前もかよ………」

 

柊「あっ、八幡君!!今日は!?今日もウチに泊まってくよね!?」

 

八幡「え?」

 

柊「え?泊まるんだよね?」

 

八幡「いや、泊まら「泊まるんだよね?」いやだから「トマルンダヨネ?」………う、うん?」

 

柊「そうだよね〜♪八幡君2日連続で泊まるって言ってたもんね〜。あっ、安心して!今日は昨日みたいなメニューじゃないから!至って普通のディナーだから、多分!」

 

 

いや多分て………そこ確証無いのかよ。

 

 

涼風「すみません八幡さん。姉が我が儘で………八幡さんと過ごせる時間が少しでも長く欲しいみたいなので。」

 

八幡「そう言ってる割には涼風も逃さないようにしてるのはどうしてだ?」

 

涼風「………お兄様に甘えたいのです///」

 

 

Oh、そう来たか………俺の兄心を擽りに来やがったか。流石は妹だ、よく分かってやがる。けどまぁ、取り敢えずは………

 

 

八幡「小町に連絡だな、今日も泊まるって。」

 

 

ーーー夜十神家ーーー

 

 

宮間「お帰りなさいませ、柊お嬢様、涼風お嬢様、そして若様。」

 

 

もう直す気もなさそうだな………

 

 

涼風「ただいま、宮間さん。お父様とお母様はまだお仕事でしょうか?」

 

宮間「はい、仕事といえば仕事なのですが、只今お客様と面談中でして………」

 

柊「?宮間さんにしては煮え切らない答えね?そのお客様って誰なの?」

 

宮間「△△家の方々なのです。」

 

 

すると2人の顔が急に引き攣った。見るからに嫌そうな顔していた。俺は会った事ないが、そんなに嫌な人物なのだろうか?

 

 

柊「ねぇ、それってもしかしてさ………」

 

宮間「はい、御子息殿もご一緒でございます。」

 

涼風「お姉様、きっと業務関係のお話だけではございません。縁談のお話も込みでの面談でしょう。」

 

宮間「えぇ、私もそうだと思われます。今は旦那様と奥様がお相手をして下さっています。私はお嬢様方のお出迎えをしろと仰せつかりましたので、こちらで待たせて頂きました。」

 

柊「えぇ〜ヤなんだけど。」

 

八幡「なぁ、そんなに嫌な人なのか?その……△△家の人ってのは?」

 

涼風「いいえ、△△家の当主とその奥様はとても良心的な方なのですが、その息子さんに問題がありまして………その、自信家と言うのでしょうか……「八幡君、要するにその男はエリート意識が強いの。だから才能のある人とは仲良くするけど、乏しい人には蔑ろにするっていうか、明らかに見下すんだよね。」……ま、まぁそういう事なのです。」

 

八幡「エリート意識が強い、か………お前達と一緒の学校なのか?」

 

柊「まぁね。何かある度に構ってくるんだよね〜。私達は鬱陶しいから遠回しにあっちに行けって言ってるのに、全く気付かないんだよね。ホンット嫌になる!」

 

涼風「そうですね、彼は周りとの人間関係が明らかに出る方ですね。自分とよく関わりを持つ方とは良い関係を築けますが、無い方とは良好な態度は示しません。」

 

八幡「お前達2人が言うんだから相当だな、俺も流石にソイツとは関わりを持ちたくはないな。」

 

柊「しかも運が悪い事にさ、親がウチの会社で勤めているから知り合いなんだよね。だから小学生くらいから顔見知りになってるんだよね。しかも合わせたかのように小学と高校は一緒になったしね。」

 

 

所謂幼馴染(?)ってヤツか。けどそんなに会う頻度は少ないようだから一概にそうは呼べないか。

 

 

八幡「なら俺はソイツに会わないように早く此処から場所を変えないとな。居間に行けば大丈夫か?」

 

宮間「えぇ、恐らくは。旦那様と奥様も流石に居間へは連れては来ないでしょう。」

 

柊「じゃあ行こっか!」

 

 

ーーー居間ーーー

 

 

八幡「それで、その男の人間性は分かったんだが、見た目的にはどうなんだ?容姿の問題もあるだろ?」

 

2人「普通。」

 

八幡「………いや、もっとあるだろ。」

 

柊「ううん、普通。」

 

涼風「はい、普通ですね。」

 

八幡「………見た目の個性ゼロかよ。」

 

涼風「もしかしたらですが、初対面の八幡さんを値踏みするように見るかもしれません。そして最後に自分よりも上か下かを判断して態度を変えると思います。正直に言いますと、私はこれがとても気に入りません。」

 

 

まぁだろうな、人を見た目で判断するようなモンだ。柊と涼風はそんな事しないけどな。

 

 

柊「まぁ、面談が終わるまでは此処で大人しく静かに待ってようよ。私達も彼には会いたくないし、相手にしたくもないしね。」

 

八幡「ボロクソ言ってんな。」

 

 

 

 

 

 




さて、生焼け肉名物の△△です。

今回のこの△△ですが、後に名前が明らかになります。


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過激な一家

 

涼風side

 

 

お父様とお母様がお見送りしている声が聞こえます……どうやら今日は素直に帰ったみたいですね。あの方ならきっと八幡さんの事を下に見るでしょう。それに人と自分を比べ過ぎるところもあります、それだけで決めつけてしまうのはやはりどうかと思います。

 

 

柊「行ったみたいね。」

 

涼風「はい、もう2度と来て欲しくありません。」

 

八幡「そこまでなのかよ………いや、さっきも話してたけどよ。」

 

 

ガチャッ

 

 

御影「はぁ〜やっと終わ……ってあれ、八幡君?今日はどうしたんだい?」

 

八幡「2人に誘われちゃいまして……すみません、2日連続でお邪魔してしまって。」

 

御影「そうかそうか!八幡君ならいつでも大歓迎だよ!ゆっくりしていくといいよ。それで、今日も泊まりなのかい?」

 

八幡「ご迷惑で「ないから大丈夫♪」……いや、俺は「お父様もそう言って下さいますから。」……それで、おじさんの意見は?」

 

御影「そんなの決まってるさ、2日だろうが1週間だろうが何日でも居てくれて構わないさ。昨日も言ったけど、君はもう僕達の家族なんだからね!」

 

 

流石はお父様です、その通りです!八幡さんが何日居ようと私達は全く迷惑ではありません!それどころか同棲だってしたいくらいなのですから!

 

 

紫苑「じゃあ八幡君も加えて、そろそろ晩御飯にしなきゃならないわね。宮間、今日のメニューは何かしら?」

 

宮間「本来であればいつもの食卓を囲おうと思っていたのですが、若様がいらっしゃいますので。」

 

八幡「いえ、普通の食卓でいいです。俺もこの家の普通の食卓を知りたいので。俺が来た時だけ特別っていうのも変でしょうし。」

 

柊「えぇ〜だって八幡君が来るんだよ?おもてなししたいじゃん!」

 

八幡「いや、その気持ちは嬉しいんだけどよ……毎食高級食材を見て食べてる俺の身にもなってくれ。分かってはいても気が引けてくるんだよ。」

 

宮間「成る程、分かりました。奥様、若様がこう仰られています故、予定通りのメニューにするよう具申致します。未来の義息子の意見を取り入れるというのも重要かと。」

 

 

八幡(まだ決まってねぇだろ、俺がこの2人のどちらかと結婚するなんてよ。え、決まってるの?いや、もしかしたら出会いがあるかもしれないだろ?)

 

 

柊(み、宮間さんってば大胆だなぁ///もう結婚前提で言っちゃってるし〜。えへへ、いつか私も八幡君の事を『旦那様』とか『あなた』っていうのかなぁ?えへへ、楽しみ♪)

 

 

紫苑「……そうね、そうしましょう。じゃあ宮間、料理人達にはいつも通りと伝えてちょうだい。それから私と夫には食後のコーヒーをお願いするわ。貴方達は?」

 

柊「私は要らないかなぁ。」

 

涼風「私は紅茶を。」

 

八幡「……俺はお茶で。」

 

宮間「かしこまりました。ではそのようにお伝えしておきます。では、私は失礼させて頂きます。」

 

 

宮間さんはきっと厨房の方々に今の事を伝えに行ったのでしょう。

 

 

御影「はぁ〜なんか疲れたなぁ〜。」

 

柊「その疲れってもしかしなくてもさっきの面談の事だよね?」

 

御影「うん。いやね、僕も伝えてるんだよ?柊と涼風には自分達の自由な恋愛と人生を送らせるって。だから婚約とかそういうのはやらないって。僕もそういうのは嫌いだしね。けど中々折れてくれなくてね………っていうよりも△△家の当主は理解してくれてるんだけど、その息子さんがねぇ〜………どうにも納得してくれないんだよ。」

 

涼風「お父様の会社に勤めているというだけでそんなにステータスになるのでしょうか?」

 

紫苑「まぁウチの会社もそれなりには有名だから。その中の上役に近い立場にもなればそう思えるようになるのも不思議じゃないわよ。特にその子供とかは、ね。」

 

 

………います、確かに。自分の力ではないのに、さも自分の力のように権力を傘にするような方が。まぁ、そのような人格の人物は全てお父様が解雇されていますが。

 

 

八幡「あの、俺って身を引いた方がいいんですか?」

 

柊「絶対にダメッ!!!!」

 

涼風「お気になさらないでください!!そして八幡さんが身を引く必要は何処にもございません!!」

 

紫苑「八幡君、貴方が身を引く必要はないわ。娘を助けてくれた子をどうして手放すような事をするのかしら?」

 

御影「それこそあり得ない話だね。君がこの家から身を引いたとしても、僕が君をスカウトしに来るからね。なんならこう言うよ?『ウチの会社に永久就職しに来ませんか?』ってね。」

 

八幡「………俺は今、夜十神家全員の必死な行動に驚いてますよ。」

 

 

当然です!!八幡さんを手放すなんて事、絶対にあり得ません!!

 

 

御影「八幡君、何か起きたらいつでも相談しに来なさい。もしそれがさっきの△△家だったら………即解雇させるから。」

 

柊/涼風「何なら今でも!!」

 

八幡「おい、過激過ぎる。過激過ぎるからやめなさい。その時になったら相談するから今から即解雇の考えは引っ込めなさい。」

 

 

いいえ、もしも八幡さんの事を蔑んだり、傷つけようものなら……それ相応の覚悟をしてもらいます。

 

 

 

 

 

 

 



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急展開!!

 

 

八幡side

 

 

文化祭から数週間後、漸く文化祭ムードも収まって普通の学校生活が始まったのだが、その間というか現在進行形で俺はとても居心地の悪い学校生活を送っている。その理由は文化祭にある。

 

何故かというと、文化祭に柊と涼風の3人で回っていたのを全生徒に見られていた為、噂されているからだ。更には戸部の奴からも色々と質問をされるばかりだ。アイツも俺を怒らせないようにする為か、そんなにぶっ飛んだ質問はしてこなかったがそれでも聞き耳を立ててるクラスメイトや他クラス、他学年の奴等が2-F組に押し寄せてきているのだ。マジでもう止めて欲しい。鬱陶しいにも程があるし、毎回毎回こんな事に付き合わされてる俺の気持ちも考えて欲しい。

 

 

こんな事を愚痴っていても意味はないのだが、こうなりたくもなる。はぁ………俺に安寧の場所はないのだろうか?

 

 

ーーー2-F組ーーー

 

 

数週間もあれば痛々しかった無数の視線も慣れ、今では何ともないが、だからといって何も感じないわけではない。さっきも言ったが、本当に鬱陶しいってだけだ。

 

 

戸塚「おはよう八幡!」

 

八幡「おぉ、戸塚……」

 

戸塚「あはは……やっぱり注目されてるから疲れてるんだね。」

 

八幡「はぁ……朝から何でああも元気なのかね?俺にはサッパリだ。人の恋愛沙汰を聞いて何が面白いんだ?俺からしてみればいい迷惑だ。」

 

戸塚「それって戸部君も入ってる?」

 

八幡「当たり前だろ?俺が好き好んでそんな事聞かれたい奴だって思うか?」

 

戸塚「あはは………あっ、それとね!今日このクラスに転校生が来るんだって!」

 

 

転校生ね〜………うん、興味ねぇ。

 

 

八幡「まぁ挨拶して終わりだな、俺は。」

 

戸塚「まぁ八幡ならそうだよね。」

 

 

キーンコーンカーンコーン♪

 

 

戸塚「あっ、予鈴だね。じゃあまた後でね。」

 

 

転校生、か……だから俺の隣と後ろが空いているのか?前居た奴もなんか移動してるし、何で俺の近く?勘弁して下さいよ平塚先生。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平塚「では、HRを始める……だがその前に、知ってる者も居ると思うが、このクラスに転校生が2人入る事になった。」

 

戸部「センセーセンセー!」

 

平塚「なんだね戸部?」

 

戸部「それって男子ですか?女子ですか?」

 

平塚「全くお前は………一応女子だ。」

 

 

その途端に男子は喜びに満ちた声を上げたりして頬を緩めたりしていた。よくこんな事で喜べるもんだ。相手が美少女だって決めつけてんじゃねぇの?

 

 

平塚「だが先に言っておくぞ男子諸君。君達の期待はすぐに無駄なものへと変わるぞ。」

 

 

………?どういう事だ?

 

 

平塚「では、入りたまえ。」

 

 

ガラガラッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………はぁ!!!?!??!?

 

 

柊「初めまして、私立誠教学園から転校してきました夜十神柊です!変な時期に転校になってしまいましたけど、よろしくお願いします♪」

 

涼風「同じく私立誠教学園から転校してきました、夜十神涼風と申します。隣の柊の妹です。よろしくお願いします。」

 

平塚「というわけで今日から夜十神姉妹がウチのクラスメイトになる。皆仲良くするように。それと席だが比企谷の後ろと隣だ。それから比企谷、放課後か昼休みにでも2人の学校案内をしてやれ。理由は言わなくても分かるだろ?」

 

八幡「………」

 

平塚「……比企谷、返事は?」

 

八幡「っ!は、はい……」

 

平塚「よろしい。2人も席に着いていいぞ。」

 

柊「よろしくね、はっちまんくん♪」

 

涼風「よろしくお願いします、八幡さん。」

 

平塚「それからもうすぐ体育祭も近付いてきている。体育ではそれに向けての練習もするからそのつもりでな。連絡事項はこれくらいだな。それじゃあ今日もしっかりと授業を受けるように。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「おいお前等、こりゃ一体?」

 

柊「うふふふっ♪八幡君を驚かせる作戦大成功〜♪」

 

八幡「いやそれどうでもいいから。何で転校してきたんだよ!?」

 

涼風「実は………△△避けなのです。」

 

八幡「……は?」

 

柊「最近やたらと私達に構うようになってきたからさ〜、それはもう本っ当に気持ち悪いくらいに。だからお父さんにその事を説明したら………『じゃあ八幡君の居る総武高に転校しよう。』って事になったんだ!」

 

八幡「ゴメン、色々と待って?」

 

涼風「最近の彼のしつこさには本当に参りました。なので私達はこの学校に転校する為に色々と手続きをしていたのです。」

 

八幡「………っ!まさか文化祭の日に用事があるって言ってたのは………」

 

柊「そっ♪正式な手続きをする為でした〜!!」

 

 

いやいや何してくれちゃってんの!?2人は知らないだろうけど、今この学校では俺たち3人の事で持ちきりなのよ?その張本人達が勢揃いしちゃダメだろ!

 

 

柊「というわけで、これからよろしくね八幡君!これでいつでも一緒だね♪」

 

涼風「八幡さんと一緒の高校………私はとても嬉しいです。」

 

八幡「………あぁ、そうか。」

 

 

はぁ〜……もうなっちまったもんは仕方ない、受け入れるしかない。っていうかさっきからクラスの連中の視線が痛過ぎる。ていうか由比ヶ浜、お前それどんな感情?戸部に関しても変な顔してやがるし。いや、そういう顔したいの俺の方なんだけど?

 

 

由比ヶ浜→ (゚Д゚)

 

戸部→ (*´Д`*)

 

 

なんかこれからの学校生活、波乱の予感しかないんだけど。俺、もう帰っていい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ランチTime!


37話のコメント欄を見て思った事………△△すんげぇ目の敵にされてる。(違う意味で)人気者だなぁ。

そして自分、今日【鬼滅の刃】の映画を見に行きました!!いや何あれ反則………もう煉獄さんが本当にスゴ過ぎて(泣)




 

 

柊side

 

 

やっとお昼休みね。授業の合間にある10分の休み時間には正直疲れたわ。皆して色んな事を聞いてくるんだもの。それに私と八幡君の事も………八幡君には話しかけ辛いのか、私にだけ交際の話を持ち掛けてくる。もう、私は八幡君と一緒に居たいのにどうして邪魔をするのかしら?

 

 

柊「八幡君、お昼にしよっ♪」

 

涼風「八幡さん、ご一緒しても?」

 

八幡「あぁ、別にいいぞ。」

 

柊「やった♪今日からは私が八幡君にお弁当を作ってくるから!毎朝丹精込めて作るからね♪」

 

涼風「あの、お姉様。その……私もお弁当を作るの、お手伝いをしても?」

 

柊「いいよいいよ、一緒に作ろ♪あっ、卵焼きは譲らないからね?」

 

涼風「ふふっ、分かりました。」

 

 

涼風と私、八幡君の3人分だからお弁当箱を3つ用意しなきゃならない。でも今家には3つのお弁当箱は無いから、重箱に詰めて持って来た。

 

 

八幡「予想はしてたが、重箱だったとはな。」

 

柊「お弁当箱無くってさ、ゴメンね。」

 

八幡「いや、気にしてない。自分の弁当箱なら自分が買うから。」

 

涼風「お弁当箱くらい、私達が買いますのに。」

 

八幡「いやいや弁当箱くらい俺が選んで俺が買うって。そのくらいの金ならあるから。」

 

 

けどどの道そのお弁当箱、私達が家に持ち帰るから(お弁当作るのに必要だから)八幡君が買ったとしても、八幡君の使い時って殆どないと思うなぁ。

 

けど今はお昼ご飯だよね!

 

 

八幡「おぉ……美味そうだな。」

 

柊「ふふんっ!私達、料理は好きだからね〜。まぁ、今日作ったのは私だけだけど。」

 

涼風「次からは私も作って来ますので。」

 

 

お弁当の中に入ってるのは1段目に俵お握り数個、2段目にはおかずとしてタコさんウィンナー、ハンバーグ、ブロッコリー、唐揚げ、煮たサツマイモ、ポテトサラダ、そして私の得意料理の卵焼き(カツオ節入りだよ♪)のメニューだよ♪3段目は流石に多いから2段で終わり。

 

 

柊「じゃあ食べよっか!」

 

涼風「はい、頂きます。」

 

八幡「あぁ、じゃあ頂くわ。」

 

柊「はぁ〜い、召し上がれっ♪」

 

 

多分八幡君も感じてると思う、クラスメイトからの目線が。気になるんだろうね〜私の作ったお弁当。でもあ〜げないっ!交換もしてあ〜げないっ!八幡君と涼風の為に作った特製お弁当だもん!

 

 

八幡「………うん、美味い。やっぱ柊の作る料理は美味いよな。」

 

涼風「はい、とても美味しいです。私もお姉様に追いつきたいと思っているのですが、中々辿り着けません。」

 

柊「そんな簡単に来られても困るけどね……まぁ私の場合、このお弁当には八幡君への愛情っていう最大のスパイスを使ってるからね〜。」

 

涼風「八幡さん関連ではお姉様に勝てそうにありません………」

 

八幡「張り合うなよ。」

 

柊「あっ、お味噌汁もあるからねっ!」

 

八幡「うわぁ〜気遣い完璧かよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「そんでよ、その△△ってのは転校先の事は知ってるのか?多分だけどソイツ追ってくんだろ。」

 

涼風「今の所は何とも言えません。ですが△△さんも私達が転校した事はもうご存知でしょうし、この事を親に話してまた面談しに来ると思います。そしてその時に私達にもお会いする事を希望してくると思います。」

 

八幡「執着心も強いのか?」

 

柊「うぅ〜ん、どうだろう?中学時代を知らないから何とも言えないけど、小学と誠教時代は私達に事ある毎に絡んで来てたかなぁ………頼んでもいないのに鬱陶しかったなぁ。」

 

八幡「それって明らかにお前達に「あー止めて、本当に止めて。それ以上先は聞きたくないから。」………本当に嫌なんだな、ソイツが。」

 

涼風「彼が私達を追って転校して来なければいいのですが………」

 

柊「ちょ、やめてよ涼風!本当にそうなったら完全に私達狙いって事になるじゃん!」

 

 

それでいてこのクラスだったら絶対に八幡君の影に隠れるから私!!絡んできたとしても無視を決め込んでやるんだから!!

 

 

八幡「ズズ〜……ッ、まぁそれは無い事を願うしかねぇだろ。向こうの考えはわからないが、おじさんがその△△の親父さんになんか言えば少しは抑えられるんじゃないのか?」

 

涼風「それは最後の手段です、最初の段階でそれをやったとしてもうまく行かなかったで終わりますから。ですが今回の転校で理由を作る事には成功してます。△△さんが嫌だったから転校をした、と。」

 

柊「それで引いてくれれば良いけどね〜。」

 

八幡「それでもし相手が納豆みたいに粘着質で執着心の強い奴だったら?」

 

柊「全力で逃げる!!」

 

八幡「それがもし俺だったら?」

 

柊「真正面から受け止める!!」

 

八幡「コイツすげぇな………ブレねぇ。」

 

涼風「私も同じ気持ちですよ、八幡さん。」

 

八幡「そ、そうか………あむっ。」

 

 

あっ、お弁当箱が綺麗になってる!!八幡君、私の卵焼きを最後の一口として取っておいてくれたんだ………嬉しいっ!

 

 

八幡「ご馳走さん、美味かったわ。柊また料理の腕、上げたんじゃねぇの?」

 

柊「デートする日のお弁当、誰が作ってると思ってるのさ?八幡君に美味しいお弁当を食べさせる為の研究は毎日欠かさずにやってるんだからね♪」

 

八幡「俺も料理覚えよっかなぁ………柊に毎日作らせんのもアレだし。」

 

柊「一緒に作るっていうのもアリだよ?」ニヤニヤ

 

八幡「お前、俺を揶揄う気満々だろ?」

 

柊「やだなぁ〜そんな事ないってば〜!」

 

 

八幡君と一緒にお弁当作りなんて、まるで夫婦みたい!なんていうのは流石にまだ恥ずかしいから言えないかなぁ///

 

 

 



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登場!!

 

涼風side

 

 

時間は放課後となり、皆さんそれぞれの行動を取り始めました。学校が終わって帰る人、部活動をする人、用事があって居残りをする人、当たり前の光景ですが、学校が違うと見え方も変わるものなのですね。八幡さんは確か部活動に参加していた筈でしたが、そちらはよいのでしょうか?

 

 

涼風「あの、八幡さん。八幡さんは部活動の参加はされないのですか?確か、奉仕部……という部活に入部されていたというのを前に聞きましたけど。」

 

八幡「あぁ、そういえば涼風には言ってなかったな。実は夏休みに入る前に………」

 

 

………まさかそんな事をされていただなんて。その方達も酷い方達です。八幡さんを信じていないも同然の行為です!お優しい八幡さんが週に1度の参加にしてくれたからよかったものの、本来であれば退部するのが普通です!個人的にはそちらの方が良かったのですが………

 

 

八幡「まぁ、別にもういいけどな。」

 

柊「そうね、今更気にしても仕方のない事だもの。同じクラスだったのね………名前忘れちゃったけど、あのお団子頭の子。」

 

八幡「由比ヶ浜か……まぁな。」

 

柊「あの子、授業中とか休み時間、お昼休みにチラチラこっちを見てたわよ?」

 

涼風「私も視線には気が付いていましたが、誰かまでは分かりませんでしたわ。」

 

八幡「マジで?全然気が付かなかったわ。ずっと柊達に意識いってたせいだな、こりゃ。」

 

柊「きっと訳を聞きたくて仕方ないんじゃないかしら?どうして転校してきたのか、とかね。」

 

八幡「どうだっていいけどな。」

 

 

ーーー校門ーーー

 

 

柊「さて、明日のお弁当はどうしよっかなぁ〜♪ねね涼風、何が良いと思う?」

 

涼風「そうですね………八幡さんは甘い物が好物なので、卵焼きは甘めの味付けにするとして、他の具材は………あっ、鮭などはどうでしょう?今の季節にはピッタリです!」

 

柊「あっ、それ良いかも!」

 

八幡「俺が聞いててもいいのか?」

 

柊「あ“っ!!!八幡君は聞いちゃダメ!!明日のお弁当の楽しみがなくなるでしょ!!」

 

八幡「おいおい、俺は悪くないぞ?」

 

 

うふふ、やはり八幡さんとお姉様と一緒に居るのは楽しいです。誠教学園を転校してしまったのは残念ですが、心を改めて楽しむ事に「夜十神さん!!」しま……っ!こ、この声は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△△「どうして転校なんてしてしまったんだ!?今日学校から知らされてビックリしたんだよ!?」

 

 

あぁ……やはりこの人でしたか。まさか1日も経たずにこちらに来るとは流石です。これでこの方には執着心と粘着質がある事が証明されました。

 

 

柊「別にいいでしょ?それにわざわざ転校する事を教える義理だってないんだし。」

 

△△「そんな言い方はないだろう……」

 

涼風「すみません、もう転校してしまったので諦めてください。」

 

△△「それよりも夜十神さん、君達の真ん中に居る男は誰なんだ?」

 

八幡「それよりも君こそ誰なんだ?こっちに寄って来たと思ったらいきなり大声出してよ、非常識だろ。それに此処まだ学校の敷地内な、君は入れません。」

 

△△「うるさい!ふんっ、どうやら減らず口だけは立派みたいだな。それで、お前の名前は?」

 

八幡「初対面の相手をお前呼ばわりする人なんかに教える名前は『名無しの権兵衛』くらいしかありません。」

 

△△「ふざけるな、いいかよく聞け!!この2人はお前のような奴が関わっていい人達じゃないんだ!!分かったのなら今すぐに離れろ!!」

 

八幡「………だってよ。」

 

柊「絶対嫌。何で八幡君から離れないといけないのか分からない。」

 

涼風「私もです。理由も無しにそんな事を言われても承諾なんて出来ません。」

 

八幡「だってよ。」

 

△△「お前から振り解けばいいだろ!!」

 

八幡「暴力は振るわない主義なので。そろそろ教えてくんない、名前?」

 

△△「………まぁいい、僕の名前は森崎駿。本当ならお前のような奴には名乗りたくは無かったが、仕方ない。」

 

八幡「あっそ。じゃあ俺達はこれで。行くか柊、すz「待て、話は終わってない!!」……はぁ、何?なんか用事ですか?」

 

 

………もう、本当にしつこい!!

 

 

涼風「いい加減にしてください!!私達は八幡さんと帰るんです!!何故邪魔をするんですか!?」

 

森崎「邪魔をしているわけじゃないんだ、ただ夜十神さん達はこんな男と一緒に行動するべきじゃないって「それは私達が決める事です!森崎さんには関係のない事です!」なっ!?」

 

柊「八幡君と一緒にいるのは私達の意志。それに文句を言うって事は私達が間違ってるって言いたいんだよね?そうなんでしょ?」

 

森崎「そ、それは………」

 

柊「何よ、結局そうなんじゃない。行こ八幡君、付き合ってられない。」

 

八幡「あぁ。」

 

森崎「待て!!」

 

八幡「……何だよ?」

 

森崎「お前の名前は?」

 

八幡「………比企谷八幡。」

 

森崎「僕はお前を認めないぞ、比企谷八幡!!夜十神さんはお前なんかが一緒にいていい相手じゃないんだ!!」

 

八幡「まるで自分はいいみたいな言い方だな。本人の意思そっちのけで言っても意味なんて無ぇぞ。」

 

森崎「お前なんかよりは相応しいさ!!雑草如きが、調子に乗るなよ!!」

 

 

そう言って森崎さんはズンズンと足を進めながら総武高を去って行きました。それにしても、冷静な八幡さんに対して、森崎さんはなんて短気なんでしょう……いえ、八幡さんと森崎さんを比べては八幡さんが可哀想ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで、△△の正体は【魔法科高校の劣等生】より、森崎駿さんでした!!他にも探していたのですが、中々居なくて………

恨みはありませんが、△△キャラになりました。


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また載ってる………

 

 

八幡side

 

 

柊「あぁ〜もう最悪!!何で転校初日の下校であんな人の顔を見なきゃいけないワケ!?暫くは見ずに済むと思ってたのにぃ〜!!」

 

涼風「全くです!恐らくですが誠教学園の教師が彼にリークしたのでしょう。お父様とお母様がそんな事をするとは思えませんし、こちら側が隠すなとも言っていませんでしたからあり得る話です。」

 

柊「くぅ〜賄賂でも渡しておけばっ!!」

 

涼風「お姉様、それはもうダメな人がする考え方です。私も少なからず思いましたけれど。」

 

 

この2人、あの森何とかが居なくなってから言いたい放題言ってる……多分こりゃおじさんとおばさんにも報告するだろうな。といっても報告するだろうし、手を出すにはまだ早過ぎるしな。いや、手を出す前提の話はやめた方がいいか。

 

 

八幡「まぁ、アイツも暫くは来ないんじゃないか?総武と誠教は意外と距離あるからな、アイツもおいそれと来れるような距離でもないだろうよ。」

 

柊「分かんないよ?もしかしたら学校の前に車待たせてこっちまですぐに来るかもしれないしね。」

 

八幡「え?森……山の家って金持ち?」

 

涼風「〜〜……い、いえ、そうではありませんが、彼の親は一応お父様の会社の上役ですので、それなりに融通が効くようになっています。」

 

八幡「つまりは親のコネを使うかもって事?」

 

涼風「はい、その通りです。」

 

八幡「もしそれで来たらアイツの事『親の七光り、森大君』って呼ぼう。」

 

柊「ぷぷっ……それも良いんじゃない?私は否定しないよ?八幡君もお父さんに何か強請ったら?お父さんも八幡君に何か買ってあげたいって言ってるんだしさ。」

 

八幡「そうは言ってもな……この前の夏休みと文化祭の時、柊経由でお金貰っただろ?アレまだ余ってるから。」

 

 

柊からなんだが、おじさんからお金を貰っていたのだ。しかも諭吉さんを………え、どうせ1枚でしょ?あのお父さん、お祭り堪能するのに諭吉さんを5枚もくれたんだよ?お祭りで諭吉さん5枚をどうしろと?合計で10枚の諭吉さんだよ?いや無理でしょ絶対。精々1人の諭吉さんを7〜8人の英世さんにするか、1人の樋口さんと1〜2人の英世さんにするくらいが精一杯だよ?あの人お祭りをなんだと思ってるんだ?

 

 

涼風「八幡さんに楽しんで欲しかったんでしょう、そこは分かってあげてください。」

 

八幡「いやそれは伝わるんだけどよ、普通お祭りで万は出さないだろ。」

 

 

ーーー自宅ーーー

 

 

八幡「たでーまー。」

 

小町「あっ!お兄ちゃんおかえり〜。」

 

八幡「小町、帰ってたのか……あれ、今日塾は?」

 

小町「お兄ちゃん、今日火曜日だよ?」

 

八幡「え………あ、そ、そうだったわ……水曜日だと思ってた。」

 

小町「お兄ちゃんもうボケてきたの?10代でボケとか小町的にポイント低いよ?」

 

八幡「やめてね?お兄ちゃんの心デリケートだから。ガラスよりも柔らかいから。」

 

 

まぁいい、俺も服着替えてくるか。

 

 

小町「あっ、そうそうお兄ちゃん!」

 

八幡「ん、何?」

 

小町「この雑誌にまたお兄ちゃん達が載ってたよ。いやぁ最近のお兄ちゃんは人気者だね〜♪」

 

八幡「小町、お前またこんな頭の悪そうな雑誌を買って……まぁお前の自由だけどさ。」

 

小町「お兄ちゃん、今その雑誌を買ってる人達全員に喧嘩を売ったからね?」

 

 

どれどれ………

 

 

 

______________________________________________

 

 

今月のベストカップルもこの2人で決まりだ!!先月と同じ堂々の1位を獲得ッ!!!最早敵なしか!?

 

 

7月より千葉県内でベストカップルを探す旅に出た当番組は、先月に入ってからこの2人のカップルに目をつけた!交際期間はなんと………プライバシーなので記載出来ませんが、先月号でも堂々の1位を獲得したが、今月も1位を獲得した!!その理由はなんと言っても彼女さんのチャームポイントでもある幸せそうな笑顔に加え、彼氏さんの控えめながらも嬉しそうな微笑みだろう!!番組スタッフもこれまで様々な場所で企画をしてきましたが、2ヶ月連続で1位を記録したのはこれが初めてである。11月で終了となるこの企画ですが、果たして3ヶ月連続で1位を飾ることが出来るのかも注目点でしょう!

 

来月号もお楽しみにっ!!

 

 

______________________________________________

 

 

八幡「………また載ってたのかよ、俺達。」

 

小町「お兄ちゃんがこういう事に積極的じゃないのは知ってるけど、柊さんが受けてるんでしょ?」

 

八幡「まぁな。柊は好奇心旺盛だから何でもやりたがるしな。特にこういうのは。」

 

小町「お兄ちゃん、後ろから刺されないように気を付けなよ?」

 

八幡「大丈夫だ、もう既に視線という針に容赦無く刺されまくってるから。」

 

 

そう、今日から視線が増えてるから刺されまくってる。ただでさえも多かった視線が2倍、3倍にもなっている。そしてこれからは校外からも、いらん輩が絡んで来そうだし………

 

 

八幡「波乱しか見えねぇな、これからの学校生活がよ。どうなるのかねぇ〜。」

 

小町「小町が入学する頃には大人しくしておいてよ?毎日がお祭り騒ぎの学校なんて、小町でも嫌だからね?ポイント低いからね?」

 

八幡「それ俺じゃなくて学校に言って?」

 

 

 

 

 

 

 



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明らかな拒絶

 

八幡side

 

 

柊と涼風が元いた誠教学園の生徒である森………森………あっ、森山があの時来てから1週間が経ったが、ソイツは毎日懲りずに総武高の校門前に来ている。しかも帰る生徒の視線も憚らずにだ。無駄に度胸が据わってるんだな。もっと別の場面で使えよ。んでそれから俺達もすぐに帰るとアイツに出くわすという理由から遠回りをしてでも別ルートで帰るようになっていた。まぁそうしたらそうしたで柊は『少し長い下校デート♪』と言い、涼風は『八幡さんと長く居られるいい時間です♪』と言う。

 

けどアイツもよく懲りないものだ。1週間だぞ?それも初日にはあれだけ2人から言われていたのに、自分が避けられているというのを全く理解できていない様子だしな。だが俺達もこのままだとジリ貧だ、何か手を打たないとな。

 

 

八幡「なぁ、もう1週間も経ってるぞ?アイツどうすんだ?」

 

涼風「確かにそろそろ何とかしないといけませんね。そろそろお父様に報告するのもいい頃合いでしょうか?」

 

柊「うぅ〜ん、そうね……するんだったら良いタイミングかもしれないけど、相手がそれで納得するとは思えないわ。それならあっちの両親にも見てもらった方が確実だしね。」

 

涼風「ですがそう都合良くは行きません。森崎さんご両親もお忙しい身ですから。それに社長の令嬢とはいえど、私達のような高校生に耳を貸すとはあまり思えません。」

 

八幡「まぁそうだろうだな。自分の息子がある意味ストーカーっぽい事をしてるんだ、親の立場からしてみれば信じられないだろうし、嘘だと言って取り合ってもらえない可能性だってある。」

 

柊「結局は私達がどうにかするしかないんじゃ〜ん!折角抜け出せたと思ったのにぃ〜!」

 

涼風「お、お姉様………」

 

 

だがアイツは何がしたいんだろうか?転校してしまったのならもう諦めるしかないと思うが、ヤツはそれだけではないような………

 

 

ーーー放課後ーーー

 

 

八幡「……流石に懲りたか?」

 

柊「今日は用事があって来れなかったとか?」

 

涼風「学校から呼び出し……とか?」

 

八幡「まぁ居ないのはありがたい。今日はこのまま帰れそう「待て、比企谷八幡!!」だ………はぁ、目の前に居るのは幻覚か?早めに帰った方がいいと思わね?」

 

柊「うん、絶対その方が良いと思う。早く帰ろ?あったかいココアとお布団掛けてあげるから。」

 

涼風「お手伝いします、お姉様。」

 

八幡「よし、じゃあ帰ろう。」

 

森崎「人の話を聞け!!幻覚じゃないのは自分がよく分かっているだろう!!」

 

八幡「何なのお前?流石に少ししつこ過ぎるんじゃないのか?もう1週間はこの調子なんだぞ?」

 

森崎「これは僕と彼女達の問題だ!部外者のお前が一々口出しするなっ!!」

 

八幡「流石に部外者とは言えないだろ。お前の行動は流石に俺でなくても目に余ると思うぞ。ウチの高校に対して迷惑だとは思わないのか?」

 

森崎「お前が素直に夜十神さん達を渡さないからだ!少し話をするだけで済むんだ!!」

 

八幡「ほう、言ったな?少し話をするだけで済むんだな?なら今しろ、時間を取る必要がないのなら場所を取る時間を作らなくてもいいだろ?」

 

森崎「当然だ!」

 

八幡「俺は此処で待つからよ、2人は森山と話してやれ。少しで済む話らしいからな。」

 

森崎「俺は森崎だ!!」

 

柊「………じゃあ少しだけ。」

 

涼風「はい、少し。」

 

森崎「夜十神さん、何故そんな奴と関わっているんだ?君達にはもっと相応しい人間がいるはずだ!その人達と関わるべきだ!!」

 

柊「それって八幡君は違うって事?」

 

森崎「彼のような雑草と関わりを持っても得る事は何もないよ、それよりも僕と……いや、誠教学園の皆と一緒に居た方が良いに決まってる!!」

 

涼風「……森崎さん、どうして私達姉妹がこの総武高校に転校をしたかお分かりでしょうか?」

 

 

………え、それを言うのか?マジ?

 

 

森崎「いや、分からない。だがきっと嫌な事があったからなんだろ?」

 

涼風「そうです、森崎さんの言う通りです。ですがその理由は目の前にあります。」

 

森崎「め、目の前?」

 

 

柊と涼風は森崎の顔を嫌そうに見つめていた。その森崎も段々と理解し始めたのか、顔色が悪くなり始めていた。

 

 

涼風「そうです、その理由は貴方です。隠す必要もありませんので正直に申し上げます。私は……いえ、私達は小学生の頃から貴方の事が苦手でした。今もそうです、関わる人間は選ぶべきだとか、自分より下の人間と関わりを持たない方がいいだとか、私達はとにかくそれが嫌でした。貴方のその思考を私達に押し付けられても困ります。」

 

森崎「ぼ、僕は……」

 

涼風「そして1週間前に発覚しました、八幡さんを見下すような態度で。私は貴方の事が嫌いです。お姉様を助けた、そして今も変わらずに接して下さる八幡さんに対して無礼を働く貴方が嫌いです。貴方とは金輪際、関わりを持ちたくない程に。」

 

 

い、言い切りやがった………森大も余程ショックが大きいのか、放心してやがる。このままでいっか。

 

 

八幡「話終わった?」

 

柊「うん、涼風が終わらせてくれた。」

 

涼風「では、行きましょうか。」

 

 

そういえばアイツどうしよう?いや、放置でいっか。俺の知った事じゃねぇし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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関係の終わり

 

 

柊side

 

 

森崎事変の日から翌日。今日も何もない事を祈るけど、森崎が来ない事を本当に切に願うばかりね。普段からあまり外交的じゃない内気な涼風があれだけ言ったんだから少しは効果があったんじゃないかとは思うけど。それでも効果が無かったら、それはもう超絶鈍感野郎としか思えないわね。

 

 

戸塚「そういえば八幡、やっぱり今日もかな?」

 

八幡「ん?何がだ?」

 

戸塚「何がって言われるとどう答えていいか分かんないけど、最近の放課後ってよく他校の生徒が来てるでしょ?今日もなのかなぁって……」

 

八幡「あぁ〜分からん。一応昨日は涼風が言いたい事全部言ったけど、それでも来たらいよいよ何すればいいか分からなくなる。」

 

戸塚「そ、そうなんだ………あのね、学校中で噂になってるんだよ?八幡とあの他校の生徒が夜十神さんの取り合いをしてるって。」

 

 

え?取り合い?八幡君と森崎が?ないない、私達は断然八幡君側だから。

 

 

戸部「あぁ〜その話は確かに出てるべ。ヒキタニ君と他校の男子生徒が夜十神さん達でモメてるって噂はサッカー部でも話題だべ。」

 

柊「まさかとは思うけどその話、信じてるわけじゃないよね?」

 

戸塚「それは本当にまさかだよ。だって夜十神さん達の行動を1週間だけでも見てたら分かるよ。2人が八幡の方が好きだっていうのは分かるし。」

 

柊「当然っ!」

 

涼風「当たり前ですね。」

 

戸部「けどこれがずっと続くワケにもいかねぇべ。そろそろ何とかしないといけねぇべ。」

 

八幡「まっ、それも今日次第だな。」

 

 

ーーー放課後ーーー

 

 

八幡「さて、放課後になったがどうなるか……」

 

涼風「理解して下さればいいのですが………」

 

柊「期待薄だよね〜。」

 

八幡「っ!おいおい、マジかい……」

 

柊「え?うわぁ……その手で来たの?」

 

涼風「1人では勝てないと見て………」

 

 

同級生連れて来てるんですけど………え、貴方達ってそんなに暇なの?他校にちょっかい出せるくらい放課後って暇なの?信じられないんだけど?

 

 

八幡「今度は徒党を組んだか……なぁ、流石にこれはおじさんに言った方がいいだろ?」

 

柊「うん、報告確定事項。」

 

涼風「非常に気が進みませんが、行くしかありませんね。とても嫌ですが。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森崎「こんにちは、夜十神さん………居なくてもいい奴も居るようだけど。」

 

柊「そうね。私としては早くそこをどいて欲しいんだけど?帰れないから。」

 

涼風「それとも昨日言った事をお忘れですか?それでしたらもう1度言いますか?」

 

森崎「いや、君達はソイツに言わされてるだけなんだろ?もう無理をする必要はない。」

 

2人「は?」

 

 

今、自分でもビックリするくらい低い声が出たと思う。それくらい今の言葉に腹が立った。

 

 

「夜十神さん、俺達と一緒に帰ろうぜ。」

 

「そんな目が魚みたいな奴はほっといてよ。」

 

「そうよ、私達と帰りましょう?」

 

八幡「随分と言いたい放題言ってるみたいだが、この2人の意思は無視か?物事を強要するのは良くないと思うが?」

 

「は?お前は何様だよ?夜十神さんと関われてるからって調子乗るなよ?」

 

「所詮アンタなんて夜十神さんが居なければ、ただの目の腐ったゾンビなんだから!」

 

 

………あぁ、もういいや。

 

 

八幡「っ!……おいお前等、話はもう終わった。俺達は帰らせてもらう。それと森大。」

 

森崎「僕は森崎だ!!一体何度言ったら分かるんだ、お前は!!?」

 

八幡「お前の苗字なんてどうでもいい。それよりお前も終了のお知らせだ。涼風、行くぞ。」

 

涼風「はい、八幡さん。」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ夜十神さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「ねぇ八幡君、私の左肩が少し重くなったんだけどさ、何か置いてるの?」

 

「え………」

 

八幡「気にするな、()()が手を置いているだけだ。俺がすぐにどける。」

 

柊「うん、ありがとう♪」

 

八幡「おい、その手をどけろ。」

 

「は、はぁ!?何で「いいからどけろって言ってんだよ。今ので分かんねぇのか?」っ!?」

 

八幡「もう柊はお前等の事なんて見えてねぇんだよ。今俺が言ったように、幽霊扱いしてるんだよ。」

 

森崎「ど、どういう事だ!?」

 

八幡「聞いた事あるか?幽霊ごっこって遊び。」

 

「そ、それってアレでしょ?その人に関わったら、関わった人も幽霊になるって遊びでしょ?それが何よ?なんの関係があるのよ?」

 

八幡「噂に尾鰭が付くのは当たり前だが、一通り説明してやるよ。」

 

 

八幡君は何故か()()()に幽霊ごっこの話をしているわ。どうしてかしら?

 

 

八幡「そしてその被害者が柊だ。暫くの間、柊は誰からも相手にされなくなっていた。後の事はプライバシーもあるから説明を省くが、噂も無くなってから謝る奴も増えて来たが、柊はソイツ等の事は見えていなかった。いや、見ていなかっただな。つまりだ、お前等も中学のソイツ等と同じになったってわけだ。」

 

森崎「お、おい!!何でだよ!?僕達はただ!!」

 

八幡「2人を説得しに来ただけ、とでも言いたいのか?お前からすればそうだろうな。けどな、柊にとってそれは迷惑でしかねぇんだよ。その結果がコレだ、お前等は柊からは認識されなくなっている。嘘だと思うのなら柊の手にでも触れてみろよ、触れるまで気づかないぞ。」

 

柊「ちょっと八幡君!何勝手に触らせようとしてるのさ!?幾ら幽霊でも触られるのは嫌なんだけど?勘弁してよ〜。」

 

 

八幡君ってば冗談が過ぎるよ〜全くもう♪

 

 

八幡(やっと理解しやがったな、コイツ等も森可も。だが分かったところでもう遅い。柊はもうお前達の事なんて見えていない。恨むのなら、愚かな事をした自分達を恨むんだな。)

 

 

八幡「じゃ、そろそろ行くか。」

 

柊「はぁーい♪」

 

涼風「分かりました。」

 

 

 

 

 





さて、これで森崎君もあの時の中学生達と同じに。


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終わらないお話

 

 

八幡side

 

 

柊達と下校した俺は今、夜十神家に居る。その理由は下校途中(と言うよりもする前?)で出くわした森可の事だ。涼風と柊が撃退したとはいえ、今日の事でまたこの家に親が来るかもしれないから、その報告がてらお邪魔しに来たってわけだ。宮間さんと涼風が言うには、向こうの両親は良心的な人みたいだが、どうやら息子は違うようだ。その息子は容姿や実力とかで相手を決めるみたいだしな。

 

 

御影「ふむ、転校して1週間ずっとそんな事が………言わなかった理由も聞いたけど、言ってくれても良かったんだよ?僕だって早まった行動をするつもりなんてなかったし、2人の意見を聞いた上で森崎君に連絡する事も出来るわけだしね。」

 

柊「けど私達は家の権力とかをこんな事で使いたくないの。私達はただの社長令嬢ってだけだもの、本当に偉いのはお父さんだし。」

 

御影「まぁ森崎君の息子さんはこの前会った時にも思ったけど、少し自信過剰な部分が見受けられたしね。森崎君がその事に気が付いてくれれば良いんだけどね〜。」

 

涼風「そこは期待するしかありません。」

 

八幡「期待薄だけどな。それでおじさん、俺と柊の関係ですが、森崎の親には話しておいた方がいいんじゃないですか?それともし、涼風に縁談の話が舞い込んだら強く拒否している事も。」

 

御影「うん。今の話を聞く限り、その子とウチの娘を結婚させるわけには行かないね。それに今の2人は八幡君にしか興味がないようだしね。」

 

 

……嬉しくないと言えば嘘になるが、柊は兎も角として涼風は良い相手を見つけた方が良いと思うんだがな………どっかに居ないのかね?

 

 

柊「というわけでお父さん、もしも森崎のおじさん達と何かあったらよろしくね?」

 

夜十神父「分かったよ、娘達の考えとその関係も伝えておくよ。八幡君もいいかな?」

 

八幡「はい、お願いします。」

 

御影「うん、よろしい。じゃあ『(コンコンッ 旦那様、宮間で御座います。』うん?入りなさい。」

 

宮間『はっ、失礼致します。』

 

涼風「この時間に宮間さんがお父様の自室に来られるなんて珍しい………何かあったのですか?」

 

宮間「はい。実は今し方、森崎家の方々がお見えになりまして。何でも今すぐにお話ししたい事があるとか。私も今日は先約がいるので、今回はお引き取りしてもらおうと思っていたのですが………終わるまで待つとの事でして。如何致しましょう?」

 

御影「じゃあ当人達も含めて話し合おうか。丁度良いし、またと無い機会だからね。森崎君達は家族総出で来てるんだろ?」

 

宮間「流石は旦那様、その慧眼お見事です。ではお呼びしても?」

 

御影「それでもいいかな?」

 

柊「うん、いいよ。」

 

涼風「私も構いません。」

 

八幡「大丈夫です。」

 

御影「というわけだから、連れて来て。」

 

宮間「畏まりました。」

 

 

ーーー数分後・居間ーーー

 

 

宮間『旦那様、お連れして参りました。』

 

御影「入れて差し上げろ。」

 

宮間『はっ。』

 

 

扉を開けたと同時に森崎の父親と母親と話題の張本人が入って来た。

 

 

森崎「なっ………な、なぜお前が此処にいる、比企谷八幡!!?」

 

八幡「俺も参加するようにと言われたからだ。それよりも、人の家で大声を上げるものではないぞ?」

 

森崎「なっ………くぅっ!」

 

森崎父「すみません社長、宮間殿には無理を言ってお願いをしてしまいました。」

 

御影「いや、気にする事はないよ。君は我が社である【Nigh-Ten・Group】本社所属の警備局局長補佐だからね。それで、今日はどうしたのかな?」

 

森崎父「えぇ、実は息子がそちらのむす……失礼しました。社長の御令嬢方と少々行き違いがあったと説明を受けましたので、私達共々お詫びに来た所存でございます。」

 

御影「ウチの娘達からも聞いているよ。だが行き違いという報告は受けていないけど、改めてどんな内容なのか、教えてもらえないかな?」

 

 

森崎の父親からの説明は確かに要領を得ていた。俺の話を抜きにした状態で。まぁ要するに『しつこくし過ぎてしまったから謝りたい。』って感じだ。

 

 

御影「なるほどね……うん、理解出来たよ。それを踏まえた上で僕も君達に伝える事にしよう。まず森崎駿君だったかな?残念だけど、娘達はもう君を許すつもりはないと言っている。」

 

森崎「っ!!?」

 

御影「……これだけ伝えても仕方ないからいくつか理由も言おう。まず1つ目、君の性格だ。2つ目、為人、まぁ人格とでも言うのかな。そして3つ目、これが1番重要で最大の理由………八幡君をバカにしたから。これが理由だよ。」

 

森崎母「八幡君というのはそちらの男性ですか?」

 

御影「えぇ、そうです。そして彼は私の長女である柊の交際相手でね、既に婚約者なのですよ。無論、私も認めています。」

 

 

…………………………え、婚約者?ナニソレ?ハチマンキイテナイヨ?

 

 

森崎「こ、婚約者?」

 

御影「だから君が幾ら謝ろうと、柊と涼風が君を許す事はないよ。未来のパートナーとその義兄を蔑むような真似を取ったのだからね、当然だよ。」

 

森崎父「少々お待ち下さい、社長!一体いつから柊お嬢様と……八幡君でしたかな?婚約を?」

 

御影「2年前だよ。とある出来事があって、それを解決した際に、ね。」

 

森崎父「そのお話、詳しく聞かせて頂く事は可能でしょうか?経緯が気になりますので。」

 

夜十神父「その話は僕よりも当事者である八幡君と柊に聞くといいよ。それにこれは僕の一存では答えられないしね。」

 

 

なるほど、言いたければ言えって事か。それにしても相手の父親は全く嫌な視線を向けてこないな。宮間さんと涼風の言ってた事は本当みたいだな。

 

 

八幡「では、俺から説明させてもらいます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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終わったお話

 

 

御影side

 

 

八幡「以上が俺と柊、そして涼風が3年間過ごしていた中学で起きていた出来事です。さっき言ったように、3年の修学旅行で柊から告白をされて受けた後、正式に婚約を交わしました。(婚約は嘘だが、それは言わないでおこう。)」

 

森崎父「そんな事が、柊お嬢様がそんな過去を経験されていただなんて……」

 

柊「私はあの公園で八幡君に声を掛けてもらっていなければ、ずっと1人のままでした。八幡君があの言葉を掛けてくれなければ、今の私はここに居ないと思っています。だから私はこの2年間ずっと忘れずに想っている事があるんです。友達なんてもう要らないから、八幡君さえ居てくれれば、それで良いって。」

 

八幡「だから今の柊には森崎……お名前を覚えていませんので息子さんとしか言えませんが、見えていないと思います。影すら残さず完全に。」

 

 

改めて聞くと、やはり良い気分にはなれないし、娘に何もしてやれなかった自分が本当に恨めしいと思う。それだけに八幡君には感謝しても仕切れない程の大恩がある。

 

 

御影「どうかな森崎君、聞いた感想は?」

 

森崎父「………いや、なんとも言えませんな。若くしてこんな体験をされているなんて。ですが、柊お嬢様の仰る事も充分理解できます。自分の居場所を作ってくれる異性が出来てしまったら興味や好意が生まれるのは至極当然。しかもそれが一時ではなく、継続して今に至るのですから。」

 

森崎母「私も同じ思いです。もし私がお嬢様の立場であっても、八幡君に惚れていると思います。お嬢様の辛い経験を全て掻き消す程、八幡君に惚れているのでしょう。」

 

御影「八幡君と柊が過ごした中学の事を知った上で僕から質問するよ。この前の縁談の話、森崎君はどう思うかな?正直に答えてくれていいよ。」

 

森崎母「社長、事情を知った上でお答えを聞くなんて、性格が悪いと思われますが?」

 

森崎父「まぁまぁ、社長も分かって聞いているんだ。そういう人だからな。勿論、我々の答えは決まっていますよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森崎父「縁談の件は無かった事にさせて下さい。そのような事情がおありなのでしたら、この話を持ち込む方が野暮というものです。」

 

森崎「っ!!?」

 

森崎母「私も同じです。」

 

森崎「と、父さん!?母さん!?」

 

御影「分かってくれて何よりだよ。」

 

森崎「待って下さい!!僕は夜十神さんに良かれと思って「駿、幾らお前がそう思って行動したとしても、柊お嬢様の気持ちは変わらん。」っ……」

 

森崎父「時に八幡君、君に1つ聞きたい。駿とは知り合いなのかな?話し合いをする前にこの部屋に入った時、駿が君の名前を言っていたのだが?」

 

八幡「……難しい質問ですね。顔見知り程度ってところですね、駿さんとは。」

 

森崎父「ほう……にしてはあまり友好的な関係ではないようだね。」

 

八幡「俺は特になんとも思ってはいませんが、駿さんの場合は、柊と涼風と一緒に行動している俺が気に食わないのでしょう。現に今もこちらを睨んでますしね。」

 

森崎「当たり前だ!!お前のような雑草なんかよりも、僕の方が「その態度が嫌われる要因の1つだってまだ気付かないのか?」こ、このっ!!」

 

森崎母「やめなさい駿!!貴方、八幡君になんて失礼な態度なの!!しかも雑草呼ばわりだなんて……八幡君に謝りなさい!!」

 

森崎父「その通りだ!目の前には社長だっているんだぞ!!その方の前でこんな醜態を晒して……恥ずかしいとは思わないのか!?」

 

 

少し興奮してしまっているかな?正論だと分かってはいても、納得出来ないようだね。八幡くんよりも娘に言われた方がまだ納得するのかな?

 

 

森崎父「申し訳ありません、社長、お嬢様方、八幡君。どうやらウチのバカ息子には再教育が必要なようです。今日の所はこれで失礼させて頂きます。後日改めて粗品と共にお詫び申し上げます。それでは我々は失礼させて頂きます。こら、立つんだ駿!!帰ったら説教だ!!」

 

森崎母「改めてウチの息子がご迷惑をお掛けしました。特に八幡君、さっきは本当にごめんなさい。」

 

八幡「大丈夫です、あの程度の悪口なんてなんて事ありませんので。」

 

森崎母「……では、失礼致します。」

 

御影「宮間、森崎君達がお帰りになるから見送りをよろしくね。」

 

宮間「畏まりました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御影「終わったぁ〜………やっぱり森崎君達は分かってくれたね。にしても、本当にあの2人から生まれた子とは思えないね。」

 

柊「ホントそうだよね〜。森崎さん達はあんなに良い人なのにね〜。」

 

 

けどこれで一件落着だね。きっとあの2人の事だから、駿君にスパルタで教育をするだろうね。

 

 

御影「八幡君も悪かったね、こんな事に付き合わせちゃって。」

 

八幡「いや、気にしてないんで。」

 

御影「お礼とお詫びに今日は夕食を食べていくといいよ。今日は松茸の天ぷらだからね、是非食していって欲しいんだ!松茸の他にもサツマイモやカボチャ、エビなんかもあるから!」

 

八幡「………なぁ、今のって元々の献立?」

 

柊「うん、今日はそうだよ。」

 

涼風「松茸ですよ八幡さん、焼いても炊き込みでも美味しいですが、今回は天ぷらです。」

 

八幡「俺の舌が今の内に肥えない事を祈ろう。」

 

 

 

 

 

 

 



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兄妹の会話

 

 

八幡side

 

 

八幡「ただいまぁ〜……」

 

小町「お帰りお兄ちゃん、なんか今日はいつもの疲れとは違うね?なんかあった?」

 

八幡「あったといえばあったが、多分今日以降は無くなると思う。はぁ〜………」

 

小町「こんなに遅くなったって事は、柊さんの家でご飯食べてきたの?」

 

八幡「あぁ、まぁな。悪いな、夜中に腹が減ったら食べるから置いといてくれ。」

 

小町「オッケー。それにしてもよく毎回用意してくれるよね?行くって分かってるからかな?」

 

八幡「今日はアポ無しだぞ?それで用意してくれるってどんだけだよ。んで小町よ、つかぬ事ちょっと聞いていいか?」

 

小町「変な口調なのは突っ込まないけど、聞いてあげましょう。なぁに?」

 

八幡「………例えばなんだが、この家に松茸があったらどうやって調理する?」

 

 

これはアレだ、別にさっき松茸の天ぷらを食べたからまた食いたくなったとかではない。普通に、普通に聞いてみただけだ。まぁ、また食べてみたいとは思うけどよ、そりゃね?畑の肉って言ったら大豆だろ?野菜の肉っていうか、キノコの肉って松茸じゃね?天ぷらなのに旨味がジュワァ〜って……むっちゃ美味かった。

 

 

小町「………え、嘘?お兄ちゃんもしかして松茸食べてきたの?」

 

八幡「いや、偶々そういう話になってよ。松茸食べるのならどうやって食べるって話になったからよ。炊き込みとか焼くとか天ぷらとかあるだろ?小町だったらどうすんのかなぁって思ってよ。」

 

小町「うぅ〜ん……悩みますなぁ。因みにお兄ちゃんは?食べてみたいのは?」

 

八幡「俺は天ぷらだな、1番美味そうだしな。醤油で焼くのもありかもしれないな。」

 

小町「じゃあ小町はホイル焼きかなぁ〜ほら想像してみてよ!松茸を包んだホイルの中にバターと醤油と何か他に合うものを入れて一緒に焼いたら………」

 

 

ヤッベ、めっちゃ美味そう………

 

 

八幡「………超美味そうだ。」

 

小町「1度でもいいから食べてみたいよね〜。まぁ、小町達は人生に何回か食べられれば、それで良いよね。食べ物の話してたらお腹空いたから、小町なんか食〜べよっと♪」

 

 

………ごめん小町、俺一足先に松茸の天ぷら食べちゃったわ。ものすっごく美味しかったです。

 

 

小町「でもお兄ちゃん、なんで今日はこんなに遅かったの?デートにしてはちょっと長くない?」

 

八幡「ん〜ちょっとな、デートではない。それとこれはおいそれとは説明出来ない内容だな。口の軽い堅いの問題ではないしな。」

 

小町「家庭の事情ってヤツ?」

 

八幡「まっ、そんな所だ。深入りするなよ?」

 

小町「しないしない!」

 

 

どうだかなぁ〜。

 

 

小町「あっ、そういえばお兄ちゃん最近部活とかどうなの?あんまりそういう話とかしてなかったから気になっててさ〜。」

 

八幡「………あぁ、部活か。そういや話してなかったよな、最近。」

 

小町「雪乃さんとか結衣さんから聞こうにも、まずは兄の口から聞こうと思ったわけですよ。あっ、今の小町的にポイントたっかい〜♪」

 

八幡「……あぁ、実は少し前にな、」

 

 

俺は奉仕部で起きた出来事をそのまま伝えた。ストーカーをされた事から始まって、今に至るまでをだ。流石に俺もこれを隠し通せる自信はねぇしな。小町だって雪ノ下と由比ヶ浜の連絡先知ってるしな。

 

 

小町「そっかぁ……そうなんだ。お兄ちゃんが席を残してくれたのは小町は少し嬉しいかな。」

 

八幡「何でだ?」

 

小町「小町もね、奉仕部に入りたいなぁ〜って思ってたんだ。けどその中にお兄ちゃんが居ないんだとしたら、なんかちょっと行く気なくなっちゃってたかもしれないしね。だからちょっと嬉しい♪」

 

八幡「来年になったら抜けてるかもしれないぞ?柊とだって出掛けたりしたいからな。」

 

小町「うわぁこのタイミングで惚気るの?小町的にポイント低〜い。」

 

八幡「マジトーンでそれ言うのやめろよ。けど俺だって最初は抜けてやろうって思ってたんだぞ?平塚先生がアレを言ってなけりゃ、確実に退部してただろうしよ。」

 

小町「まぁ確かに雪乃さんと結衣さんのやり過ぎかもね〜。お兄ちゃんは?復帰とか考えてないの?関係修復とかさ。」

 

八幡「復帰は考えてない。修復もそうだ。けど2人にはそれとなく伝えてある。お前等でなんとかしてみろって。まぁ、現状を言うとあまり変わってねぇけどな。」

 

 

俺も特にアイツ等にしてやろうとは思ってない。仮に思ったとしても、その行為は俺の欺瞞によるものだ。本意じゃない。なら俺は何もしない方が良いだろう。アイツ等が俺と本気で関わる気があるのなら、その内行動を起こすだろうしな。

 

 

小町「お兄ちゃん。お兄ちゃんも偶には自分から声を掛けてあげてよ?幾らあの2人がやり過ぎたとはいえ、放置っていうのもちょっと可哀想だしさ。」

 

八幡「週1でも良いなら偶にはやってやるよ。あまり気は進まないけどな。けど話題とかには期待するなよ?あくまでも俺からあの2人に吹っかけるってだけだからな?」

 

小町「そこはお兄ちゃんも少しは考えなよ……柊さんとの会話の幅も広がるかもしれないんだしさ。」

 

 

おぉ、そう考えるとやる気が出るな。よし、少し真面目に考えてみるとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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森崎家では………

 

 

ーーーーーー

 

 

ーーー森崎家ーーー

 

 

森崎(クソッ!!僕が今こうなったのも全て比企谷八幡が現れたせいだ!!そうでなければ今頃、夜十神さん達は僕と学園生活を満喫していたはずなんだ!!あの男が入れ知恵したに違いない!!)

 

 

あの後、自宅へ帰宅した森崎家両親と息子は早速息子である森崎駿に厳しい叱責を浴びせた。そして森崎家独自で駿の誓約書を作成した。その内容が以下の通りである。

 

 

______________________________________________

 

 

誓約書

 

 

この度は我が息子がご迷惑をお掛けしました事、深くお詫び申し上げます。書面での謝罪は無礼だと承知しておりますが、上記にあります通り、誓約書としてこちら側が独自に決めた事を発表する為に記しました。

 

 

①.息子である駿(以降を甲とする)を夜十神姉妹(以降を乙とする)並びに比企谷八幡(以降を丙とする)の接触を禁ずるものとする。

 

②.甲に対する以降の集まりやパーティの出席等を一切禁ずるものとする。

 

③.甲の丙に対する誹謗中傷並びに侮辱と同列な発言を禁ずるものとする。

 

 

これらの誓約を破った場合、改めて処分を下すものとし、これから行うであろう教育的指導を強化するものとします。

 

処分にご不満がある際はご連絡頂ければ、お話に伺う所存でございます。改めて本日は不出来な息子が大変なご迷惑をお掛けしましして、誠に申し訳ございませんでした。

 

 

森崎家当主

 

 

______________________________________________

 

 

この誓約が決められたからである。既にこの誓約は夜十神家へと送信済みであり、変更は夜十神家が提案しない限りはないだろう。そして叱責を受け、部屋に戻った息子、駿はこの1週間の……いや、今日の出来事に強い憤りを感じていた。

 

 

森崎「ふざけるな………あんな奴が、比企谷八幡のような雑草が、高嶺の花である夜十神さんと関わって良い道理なんてないんだ!」

 

 

駿自身、これまでの事を全く反省している様子はなかった。長年自身の中で正当な判断として見てきた基準はそう簡単に覆る事は出来ないようだ。

 

 

森崎「だがどうする?俺はもう夜十神さん達には接触出来ない。自分からは手を出せない……そうだ、他の奴を!いや、他の奴では期待はできない………くそっ、何かないのか!?」

 

 

駿もどこかに抜け道がないかどうかを探っているが、時間ばかりが経過していた。

 

 

ーーー森崎家・居間ーーー

 

 

森崎父「まさか見ない間に息子があんな姿になっていただなんてな………あまりにも情けなく醜い姿だった。それをまさか社長の、それも令嬢もいる目の前で見せてしまうなんてな。」

 

森崎母「えぇ……もう高校生だから一通りの事は判断が出来ると思っていたけど、そこも改めて見つめ直していくしかないわね。」

 

森崎父「駿の話を聞いていて分かったが、アイツは自分の価値観で物事を判断する傾向が強いから、人間関係もそうだろう。アイツの場合、自分に相応しいと思った人としか関わりを持たないのだろう。今日の八幡君との会話がいい例だ。」

 

森崎母「そうね。今まで連れて来たお友達とは仲良くしているのは見ていたけど、誰かに対してあんな風に言うのは初めて見たわ。」

 

森崎父「駿の中では八幡君は自分よりも下、だから関わる価値がないと考えているのだろう。全く、視野の狭い考え方だ。こんな事では社会に出た時、すぐに淘汰される。」

 

 

森崎両親は息子である駿のあまりに情けない姿を見て教育を考え直していた。それもその筈、社長の前であれだけの事をしてしまったのだ。親としては看過する事はまず無理であろう。

 

 

森崎母「そう考えると、八幡君はあの場でもかなり冷静だったわね。駿から散々な事を言われていたにも関わらず、ケロッとしていたわね………」

 

森崎父「確かに……駿にもあれくらいの男になってほしいが、流石に今となっては無理だな。人間性が出来上がってしまっているから、今更大きな矯正は出来そうにないしな。」

 

森崎母「やっぱり難しいわね……」

 

森崎父「あぁ………いっそ親父の家にでも飛ばしてみるか?親父は厳しいからな、俺もよく木の棒で頭やら身体を殴られてたもんだ。」

 

森崎母「あなた、今の時代ではそれは体罰よ?」

 

森崎父「分かってるさ、冗談で言ってみただけだ。ただ、親父が今の孫の姿を見たら確実に頭に10発は入れてるだろうな。」

 

森崎母「せめて駿に反省の気持ちがあってくれれば、こんなことをする必要もなかったんだけど、あの様子じゃあ反省すらしてないものね。」

 

 

息子の考えは母親には筒抜けなのか、駿が反省していない事は既に見抜かれていた。いや、息子の態度が変わっていない様子を見るからに、明らかに反省していないというのが分かるの取ろう。

 

 

森崎父「まぁ、根気よくやっていこう。俺達がなんとかしなければならないからな。」

 

森崎母「そうね。名誉挽回する為にも、こんな事でしょげていられないわね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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体育祭の種目決め

 

 

八幡side

 

 

八幡「ほぉ〜……誓約書ねぇ。それって保証できんの?なんか胡散臭いんだが?」

 

柊「私も。だって最後まで抵抗してたアイツがだよ?すんなり受け入れるとは思えないし、個人で何かしてきそうだしね〜。」

 

八幡「でもどうすんだ?森崎家って金持ちとかではないんだろ?」

 

涼風「……まぁ一般市民と比べるとお金持ちの部類には入ると思われます。あの家もパーティの出席をされていますし。勿論その時は警備ではない参加ですが。」

 

八幡「それなら裏で何かする可能性も出てくるって事だろ?見張りとか監視をつけた方がいいんじゃないか?俺等と接触を禁じられたっつっても、他の人間を使って無理矢理って手もあるだろ?」

 

柊「それも無くはないけど、森崎さん達を信じるしかないね〜。それにあのエリート気取りが1人で何かが出来るとは思えないし。」

 

 

まぁ昨日の校門の時は徒党を組んでたしな。

 

 

八幡「暫くは何もして来ないとは思うが、念の為に俺等も気を付けねぇか?」

 

涼風「そうですね、何があるか分かりませんし。」

 

柊「決死の覚悟で八幡に突然勝負を吹っかけるかもしれないしね。」

 

八幡「やめろよ、俺とアイツが勝負しても俺が負けるだろ。森崎家ってお前等の会社の警備してるんだろ?そしたらアイツも身体鍛えてるに決まってんだろ。俺が恥かくだけだ。」

 

 

ーーー2-F組ーーー

 

 

教室の雰囲気は特に変化はないが、柊達が入った途端に男子達の目の色が変わった。教室に入る前はそうでもなかった。これには大きな理由があった。その理由は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体育祭だ。

 

 

ーーー6時限目ーーー

 

 

委員長「じゃあ○○君はこの種目ね。じゃあ次の2人3脚だけど、希望者は居るかな?」

 

 

この種目が言われた時点で男子達と女子達の目が光った。女子の多くは葉山に、男子は柊か涼風を狙っているのだろう。この種目は男女ペアになっているからだ。俺が手を挙げれば2人が間違いなく手を挙げるだろう。多分だが由比ヶ浜とかもあげるかもしれないが。

 

 

委員長「この種目は3回やるから、男女3人ずつお願いしたいんだ。誰か居ないかな?」

 

葉山「それって俺が出てもいいのかな?一応障害物競走にも出る事になってるんだけど。」

 

委員長「それなら大丈夫、1人2種目までならOKって先生も言ってたから。」

 

葉山「じゃあ1枠は俺が出る事にするよ。その方が良いだろうしね。」

 

委員長「ありがとう葉山君、助かるよ。じゃあ他にってえぇ!?急に女子が増えたなぁ………」

 

 

まぁ、葉山狙いなんだけろうけどよ。このクラスの女子隠す気ねぇだろ、絶対。まぁ結果、相模とかいう女子が葉山とペアになった。どうでもいいけど。

 

 

委員長「えっと、他にいますか?」

 

 

さっきと同じ空気に逆戻りだな………

 

 

委員長「夜十神さん達はどうかな?2人3脚、やってみる気とかないかな?」

 

柊「八幡君がやるなら出るよ。」

 

涼風「八幡さんが出場するのなら出ます。」

 

委員長「………」

 

 

……おい、見んな!そんな目で俺を見んな!仮に俺が出たとしても、後の1枠どうすんだよ?ていうか平塚先生、アンタも目で訴えて来ないでください。

 

 

八幡「はぁ……じゃあ俺やり「私もやる!(やります!)」ま……せめて最後まで言わせてくんね?」

 

柊「涼風、これは私と八幡君の共同競技なんだから譲ってくれない?ていうか付き合ってる同士がやる方が良いと思うんだけど?」

 

涼風「いえ、偶には義兄と義妹のスキンシップも大切だと思うのです。なので此処は譲っていただけませんか、お姉様?」

 

委員長「あ、あの……じゃあ男子はもう1人「八幡君以外は受け付けないから。」え、えぇ〜……で、でも「八幡さん以外との男子とは組む気はありません。」………はい。」

 

 

名も知らぬ委員長、無理だと分かっていてももう少し頑張れよ。

 

 

涼風「やった、勝ちました!!」パアァ!

 

柊「うぅ〜負けたぁ〜……」ガクリッ

 

結衣「うぅ〜……出遅れた………」ズゥーン

 

 

結果は涼風の勝利で俺は涼風と2人3脚を組む事になった。ものすげぇ嬉しそうにしてるんだろうな、涼風の奴。後ろから幸せなオーラが遠慮もなく漂ってきてやがる。隣からは悔しさのオーラが滲んでるってのによ。

 

 

委員長「えっと……夜十神柊さんは「ん?出ないけど。」………そ、そっか。」

 

八幡「俺以外ともやってみたらどうだ?」ボソッ

 

柊「だって女の子の胸ばっかり見る男子と一緒にやりたいなんて普通思わないでしょ。」ボソッ

 

 

うん、正論。なんも言えねぇなコレは。

 

結果として最後の1枠はくじ引きで決まった。まぁこれは誰も手を挙げない結果だわな。

 

 

委員長「じゃあ最後の学級選抜リレーなんだけど、このクラスの中で速い人を中心に選ぶから、今日の放課後にでも少し集まってタイムを取りたいんだけど、いいかな?用事のある人はそっちを優先してもいいからさ。」

 

葉山「確かに早い方が良いかもね。俺は今日で大丈夫だよ、顧問にも遅れるって事を伝えておけば大丈夫だろうし。」

 

 

葉山の発言を起点に全員が残る事になった。まぁ俺も別に放課後予定なんてなかったから別に構わないんだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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タイム測定

 

 

八幡side

 

 

6時限目の授業も終わってジャージに着替えた後、2-F組の全員はグラウンドに集まっている。理由は100mのタイム測定をするからである。まぁ選抜リレーの選手を決める為の選考だな。けどあんまし考える必要なんてないと思うんだがなぁ………だってよ、サッカー部の葉山や戸部も居るし、他にも部活やってる奴がいるんだから、その中からチョイスすればいいと思うんだけよなぁ。

 

 

柊「ねぇ、八幡君はどうするの?」

 

八幡「ん?何が?」

 

涼風「真面目に走るのかどうかです。八幡さんは運動神経も良いではありませんか。」

 

八幡「いや、運動神経が良い=走りが速いは直結しないと思うんだが?」

 

 

そう、実際に俺はテニスのラリーとかサッカーのリフティング、バレーの1人トス、バスケのシュートとかはした事はあるが、趣味程度でしかない。所謂、器用貧乏みたいなものだ。

 

 

八幡「俺は普通に走るわ。」

 

柊「じゃあ私は抑えるね。」

 

涼風「私は遅いのでいつも通りで。」

 

八幡「………お前等って俺が居ないと参加したくないわけ?」

 

 

そうこうやり取りをしている内に女子が走り始めていた。どうでもいいが、選抜って何人なんだ?ウチのクラスで30人くらいだろ?3人は少ないし、5人くらいか?

 

 

委員長「よし、女子は決まったよ。えっと………川崎さん、高橋さん、富岡さん、三浦さん、夜十神……えっと、お姉さんの方の5人になりました。じゃあ次は男子ね。誰かストップウォッチとスタート変わってくれないかな?」

 

 

おいおい柊さんよ、さっき抑えるって言ってなかったっけ?本当に抑えたの?バッチリ名前呼ばれちゃってるじゃないの。え、何?『本気で走らないと許さない。』?嘘でしょ、俺もガチでやるの?すっごく手を抜きたいんだけど?しかも出席番号順的に俺って葉山と一緒だろ?マジでやりたくねぇ………

 

 

柊「八幡君、本気で走ってね?走らないと許さないよ?八幡君も選抜になるんだからね?」

 

八幡「あのよ、俺が本気で走ったとしても選抜に入れる保証なんてどこにもないぞ?その事を忘れるなよ?いや本当に。」

 

涼風「そうですよお姉様、八幡さんにだって不可能はあるのですから。」

 

柊「………ウチのクラスの女子が遅過ぎるんだよ、レベル低すぎだよ、もう!」ボソッ

 

 

あっ、柊の奴こっそりと言ってはならん事を言ってたな?1人愚痴ってヤツだな。あっ、次俺か………

 

 

女子「位置について、よぉ〜い……ドンッ!!」

 

 

………やっぱ葉山速いだろ、コイツについていける2年っていないんじゃねぇの?陸上部の中でも居るかいないかじゃね?

 

 

八幡「はぁ……はぁ……」

 

葉山「はぁ……ふぅ、意外と速いんだな。」

 

八幡「俺より速いお前に言われると嫌味にしか聞こえねぇよ。」

 

葉山「けど後ろには君が居たじゃないか。実力を隠してたのかい?」

 

八幡「本気出さないと、後がうるさい奴がいたから仕方なくだ。俺の意思じゃねぇよ。」

 

葉山「夜十神さんか……本気で走るわけだね。けどこれで君も選抜リレーは確定じゃないかな?」

 

八幡「目立ちたくねぇってのによ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

委員長「男子も決定したよ。加藤くん、戸部くん、葉山くん、比企谷くん、松田くんになったよ。それじゃあ皆、今日はありがとう。体育祭までの練習は授業でもやるけど、放課後で残れる人は練習しても良いから。それじゃあ解散〜。」

 

 

柊「いやぁ私は信じてたよ♪八幡君はやれば出来る人だって!流石は私の彼氏だよね!うん、よく出来ました♪褒めてあげましょう!」

 

涼風「本当に調子が良いんだから、お姉様は。」

 

柊「良いじゃん別にぃ!ほら私達も帰ろ?」

 

 

その意見には賛成だ。無駄に全力疾走したから無駄に疲れた。だから無駄な事をせずに早く帰りたい。

 

 

涼風「それにしてもお姉様、男子達の目線は本当に卑しいものでしたね。」

 

柊「ホンットだよね!!走る姿じゃなくて、胸にばっかり!!スケベしか居ないのかな、ウチのクラスの男子って?」

 

八幡「あのー、俺の前でそういう会話しないでくれない?俺も一応男なんですけど?」

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

八幡「柊達は玄関前に居る筈だし、急ぐ必要もねぇから休みがてらのんびり行くか。」

 

 

更衣室から玄関まではそんなに遠くねぇしな。おっ、2人ももう居るみたいだな………ん?何かモメてるのか?話してるだけか?

 

 

「困ってる事があったら相談に乗るから。」

 

涼風「お気遣いありがとうございます。ですが、今の所は特にございませんので。」

 

「そう?ならいいんだけど。」

 

八幡「涼風、柊、待たせた。」

 

柊「男子なのに遅いぞ八幡君!」

 

涼風「いえ、そんなに待っていませんので。」

 

八幡「………その人は?」

 

涼風「この方は3年の新堂さんです。私達が1週間くらい絡まれているのを遠目で見ていたらしくて、困っていたら協力してくれると言ってくださってましたので。」

 

八幡「そうなのか……どうも、比企谷です。」

 

新堂「3年の新堂だよ、よろしくね。困ってたら相談に乗るから、いつでも来てね。あっ、因みにクラスは3-D組だから。」

 

八幡「よろしくお願いします。」

 

新堂「それじゃ、またね。」

 

 

そう言って新堂先輩は去って行った。そういや俺って城廻先輩以外の先輩の知り合いってあの人で2人目だな。ある意味貴重かもしれん。

 

 

 

 

 

 

 



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夜十神家の朝


やったぁ〜!お気に入り登録者数1,000突破〜!!

正直、この作品では行くとは思ってなかったです……皆さんが呼んでくださるおかげです、ありがとうございます!!




 

 

柊side

 

 

柊「♪〜」

 

涼風「♪〜」

 

 

はい、皆おっはよぉ〜!!夜十神柊だよっ♪今日は秋のイベント第2弾、体育祭の日でぇ〜す!!なんかやっとだね、うん!でも個人的には体育祭ってあんまり楽しみじゃないんだ。じゃあ何でそんなにテンションが高いんだって?知りたい?ねぇ知りたい?ふふふぅ〜ん、特別に教えてあげるっ♪その理由はぁ〜………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「はい、ごま油を使った卵焼きの完成〜♪」

 

涼風「お姉様、私の方もチーズの卵焼きが仕上がりました。」

 

柊「丁度だね、じゃあ切り分けて入れよっか。」

 

涼風「はい。」

 

 

私達のお弁当を作ってるからだよ♪それに今日は体育祭だからね、いつもはお弁当箱だけど、今日は重箱にして持ってくよ♪それに今日は妹の涼風と一緒に作ってるんだよね。八幡君、何回(まだ転校して2〜3週間)も私達のお弁当食べてるんだから、ちゃんとどっちが作ったのかを当ててよね?

 

 

紫苑「ふふふっ、やっぱり早起きしてお弁当を作ってたのね?」

 

柊「あっ、お母さんおはよう!」

 

涼風「おはようございます、お母様。」

 

夜十神母「えぇ、2人共おはよう。ふふっ、精のつきそうなお弁当ね。重箱って事は八幡君とか3人で囲んでって事かしら?」

 

柊「うん!誰がなんと言おうと、このお弁当は私達も八幡君の3人だけのお弁当だもん!!誰にもあげたり、交換したりなんてしないんだも〜ん!!」

 

涼風「……との事らしいです。」

 

紫苑「まぁ柊は八幡君一筋だものね、他の男の子には興味無いでしょうから。あっ、聞きたいのだけど、朝ご飯って用意してあるのかしら?」

 

柊「してあるよ、和食メインだけど。」

 

紫苑「そう、よかったわ。柊が料理に夢中になり過ぎてなくて本当によかったわ。」

 

 

うっ、お母さんまだ覚えてたんだ………

 

 

涼風「あの時は宮間さんが早起きをしてくれて本当に助かりました……まさかお姉様が八幡さんへお弁当を作るのに夢中になり過ぎて、食材を使い過ぎてしまったのですから。」

 

柊「本当にすみませんでした……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「いただきます。」」」」

 

 

と弁当も作り終わってから数時間、お父さんとお母さんと涼風と私の4人家族全員で朝ご飯を食べている。我ながら良い出来だよ、この卵焼きっ♪

 

 

御影「今日は確か体育祭だったね?本当なら見に行く予定だったんだけど、大事な会議があるからね。2人には申し訳ないんだけど。」

 

柊「大丈夫だよお父さん、お父さんが忙しいのは私も涼風も知ってるんだから。それに宮間さんを側近に連れて行くんでしょ?ならお母さんは見に来てくれるんじゃないの?」

 

紫苑「えぇ、流石柊ね。私は見に行くから。貴女達と八幡君の頑張ってる姿をしっかりと撮ってあげるから安心しなさい。なるべくツーショットも撮れるようにするわ。」

 

柊「そこは本当にお願い!!」

 

涼風「私も強く希望します!!」

 

御影「はははっ、本当に八幡君は娘達から好かれているね。」

 

柊「当たり前!!だって婚約してるんでしょ?」

 

 

御影(いや、婚約の話は嘘なんだけどなぁ………けど今更否定しても別に意味は無いし、2人だったら僕も安心出来るから、そのままでいいよね?)

 

 

涼風「近い将来、私の義兄になるお方です!それに八幡さんなら私は全てを信じられますから!!」

 

紫苑「物凄い信頼ね……これなら将来も安心じゃないかしら?ねぇあなた?」ボソッ

 

御影「そうだね。八幡君がウチの会社の就職に望んでも望まなくても、柊とは結婚させるしね。あんな事があったのに、柊の心を掴んだ子だ。ウチに引き入れない方がおかしいさ。」ボソッ

 

紫苑「ふふ、そうね。それに内気な涼風からもあんなに好かれてるんだもの、八幡君を逃すなんて選択は無いわね、絶対に。」ボソッ

 

涼風「お父様にお母様、2人で一体何をコソコソされているのですか?」

 

御影「ん、いや?ただ八幡君と柊を結婚させるとしても、婿入りか嫁入りかどっちになるのかと思っていただけだよ。」

 

柊「でもきっと八幡君なら、こっちに婿入りに来るって私は思うよ?」

 

紫苑「なんでそう思うの?」

 

柊「だって八幡君ならそうしそうだもん。」

 

 

八幡君なら、私を比企谷には連れて行かないと思うなぁ。私の中での八幡君なら『俺の家に嫁いだら、嫌でも大変だぞ?なら俺がそっちに行った方がまだ楽だ。』って言いそう。

 

 

紫苑「ふふふっ、女の勘ってヤツね?」

 

御影「まぁ、それは本人とあちらの両親に聞いてみないと分からないね。まぁ僕としては、こっちに来てくれると嬉しいなぁ………義息子と相手出来るんだからね。今でも偶にしてもらってるけどさ。」

 

涼風「結論は、私達家族全員は八幡さんの婿入りという事ですね。」

 

紫苑「おかしな朝の会議ね?柊、涼風、そろそろ出る時間も近くなってきたわよ?」

 

柊「あっ、ホントだ!まぁ荷物も全部昨日の内に済ませてあるから、余裕だけどね〜。」

 

涼風「ですがお姉様、お早めにお口と手を動かして頂かないと、私が八幡さんを1人占めする事になってしまいますが?」

 

柊「待って!!食べる!すぐ食べるから1人で行かないで!!私を置いて八幡君とイチャついて登校しないで!!」

 

 

それだけはぜったいにゆるしません!!!

 

 

 

 



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やる気の出し方

 

 

八幡side

 

 

ーーー救護班テントーーー

 

 

八幡「……なぁ、立候補したはいいが、この体育祭の保健委員って要るのか?去年は怪我人はおろか、怪我しそうな事さえ無かったんだが?」

 

涼風「で、ですが用心に用心を重ねるというのは良い事です。ほら、【石橋を叩いて渡る】という諺もあるのですし。あって損はないと思います。」

 

八幡「………まぁ、今頃奴さんは悔しがってるだろうけどな。この委員のせいで。」

 

涼風「奴さん?」

 

八幡「ほら、あそこ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「うぅ〜八幡君〜………」ウルウル

 

 

ほら、目の前の2-F組の席で捨てられた犬のように瞳をうるうるさせながら、こちらを見つめている貴女のお姉様がいるよ?

 

 

涼風「あぁ………お姉様ですね?」

 

八幡「しかも俺が居ないというだけであの有様だ、もう少し我慢できないもんかね?」

 

涼風「仕方ないと思います、お姉様の八幡さんに対する依存度は並大抵のものではありませんから。1週間会えないものなら発狂すると思います。」

 

八幡「怖いからやめろよ………」

 

 

あの様子だと、あの場所で待機するのかどうかも怪しいぞ?その内救護テントまで来るんじゃねぇの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涼風とあれこれ話している内に体育祭が始まった。今年は組分けを行わず、学級別対抗という事になった。つまり、自分達の敵が最低でも9クラスあるというわけだ。だってウチの学校ってA組からJ組まであるだろ?そういうわけだ。だからウチのクラスでもかなり人選に手間取ったらしい。え、俺?知るわけないじゃん。俺が把握してるのは自分が何やるかくらいだよ。

 

 

八幡「………暇だな。」

 

涼風「………ですね。」

 

八幡「この後、徒競走だろ?やる気起きないな。」

 

涼風「私、走るの苦手ですし、運動もあまり……」

 

柊「コラァー!!何憂鬱なこと言ってるのさ!!」

 

2人「っ!!?」

 

柊「何2人して変な空気作り出しちゃってるのさ!?涼風が羨まし……2人の様子が気になったから見に来たら、何でこんな空気になってるのさ!?」

 

涼風「何故言い直したのかは聞かないでおきますが、私は体育祭で良い思い出がありませんので。走るのも投げるのも跳ぶのも苦手なんですから。」

 

八幡「俺はただ単に面倒だから。」

 

柊「あ〜そんなんでいいのかなぁ?本当にいいのかなぁ?やる気なくていいのかなぁ?」

 

八幡「煽るの下手かよ。もう少し練習して「八幡君が頑張らないのなら、今日私と涼風が一生懸命作ってきたお手製お弁当は私と涼風の2人で食べる事になっちゃいそうだなぁ〜。」次の徒競走見てろ、絶対1位獲ってやる。」

 

涼風「私には頑張る理由が無いので、別に「あら、いいの?頑張ったらお義兄様が何かご褒美をくれるかもしれないんだよ?頑張らなくていいの?ご褒美無しだよ?」お義兄様、私頑張って走ります!走り終わったら頭を撫でてください!」

 

柊「あのさ?煽てた私が言うのもアレなんだけどさ、そんな単純でいいの?」

 

八幡「じゃあ柊は俺と弁当食いたくないの?」

 

涼風「ご褒美欲しくないんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「……食べたいし、欲しい!!!

 

 

1番単純なのはどっちだよ………

 

 

放送『次の競技は2年生の徒競走です。2年生は指定の待機場所まで移動して下さい。』

 

 

八幡「どうやら出番のようだな。午前の競技が終わったら超旨弁当が待ってる!」

 

涼風「お義兄様からのご褒美、お義兄様からのご褒美、お義兄様からのご褒美………」

 

柊「なんか私が来たせいでカオスになってるんだけど、この救護テント。」

 

 

ーーー2年徒競走ーーー

 

 

さぁーて、漸く次か………今の所はかなりポイントを稼いでいる。俺達F組はある程度運動神経が良いのが集まってるからな。俺も平均の少し上くらいだと自負している。さっきまでの俺だったらやる気0だったが、今は賭けられている物が違う。柊と涼風お手製の弁当だ。負けるわけにはいかない。幸い俺の組にはあまり早い奴は居ない。上手く行けば1位を獲れる。

 

 

教師「位置について………よぉ〜い………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァン!

 

 

うおおぉぉぉぉ!!どけえぇぇぇ!!俺はお前等と違って賭けてるものが違うんだぁ!!!走ってればいい感覚のお前らとは違うんじゃあぁぁぁ!!!

 

 

※少し前の八幡も走ってればいい感覚でした。

 

 

放送『先頭はF組、そのまま1位でゴールです!』

 

 

よっしゃあ!!これで俺も弁当を食べれる!!購買でパンを買わずに済む!!見たか柊、涼風!俺だって本気を出せばこんなもんだ!

 

その後、女子の徒競走も始まり、柊はぶっちぎりの1位を獲った。涼風は走るのが苦手だと言っていた割には、速く走れていた。その甲斐もあって1位を獲ってしまった………すっげぇ。

 

 

ーーー救護テントーーー

 

 

涼風「あの、八幡さん……私、一生懸命走って1位を獲りました。えっと……頭を、撫でて……下、さい/////」

 

八幡「そんな顔真っ赤にしながら言うなよ、やり辛いだろ。まぁ柊が煽てたせいもあるからな、ジッとしてろよ?」ナデナデ

 

涼風「ふわぁ〜………」ポォ~

 

柊「と、蕩け切ってる……涼風が人生で1番蕩け切った顔をしてる……八幡君のナデナデ、恐るべし。」

 

 

 

 

 

 



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由比ヶ浜の心情

 

 

結衣side

 

 

ヒッキーが部活に週1でしか来なくなってからだいぶ経った。今ではこれが当たり前になってるけど、私は前みたいに戻って欲しいって思ってる。勿論それは無理だって事も分かってるけど、ヒッキーに確認してみたいと思ってる。

 

けどそれが出来ないでいる………ヒッキーの周りには必ず夜十神さん達が居る。部活でもそう、月の半分は彼女達も部室に居座っている。それが嫌だとは言わないけど、なんか………ちょっとだけやり辛い。ヒッキーは保健委員だから救護テントに居るけど、その隣には当然のようにあの2人が居る。しかもすごく楽しそうにしてるし、ヒッキーもなんだか満更でもなさそうな顔、ううん、明らかに幸せそうな顔をしてる。

 

 

結衣「もう無理なのかなぁ……」ボソッ

 

三浦「ん、結衣なんか言った?」

 

結衣「ううん、何でもない!」

 

 

ーーー水飲み場ーーー

 

 

聞いてみよっかなぁ……また、前みたいに部活来れないかなって。

 

 

葉山「結衣、どうかしたのかい?元気がないように見えるけど。」

 

結衣「隼人君、えっと……何でもないよ。ちょっと隼人君でも言えないかなって。」

 

葉山「けど友達が困ってるんだ、放っては置けない。訳を話してみてはくれないか?」

 

 

ど、どうしよう………一応これは奉仕部だけの問題だし、隼人君に相談するのは少し気が引けちゃう。うぅ〜……どうしよう。

 

 

新堂「君達、用が済んだのならそろそろ退けてくれると嬉しいんだけど、いいかな?」

 

結衣「え!?あ、ご、ごめんなさい!」

 

葉山「し、失礼しました。」

 

新堂「別にいいよ。」

 

葉山「じゃあ結衣、話したくなったらいつでも言ってくれ。俺はいつでもいいから。」

 

結衣「う、うん……」

 

 

隼人君はああ言ってるけど、流石にダメだよね。これは私とゆきのんとヒッキーの問題だもんね!

 

 

結衣「隼人君には悪いけど、奉仕部の事は話さないでおこっと。ヒッキーの事もあるし。」

 

新堂「ヒッキー………ひょっとして比企谷君の事かな?少し聞いてみようか。」

 

 

結衣sideout

 

八幡side

 

 

放送『これより、お昼休みに入ります。各生徒は各自でお昼ご飯を摂ってください。今年は外にも売店を出していますので、お弁当を持参していない生徒はご利用下さい。』

 

 

やっと午前の部も終わりかぁ………やっと飯が食える。柊と涼風が作ったお手製の弁当、絶対美味いに決まってる。美味くないわけがない。毎週食べてる俺が言うんだから間違いない。

 

 

涼風「では八幡さん、私はお弁当を持って参りますので、少し失礼します。」

 

柊「涼風〜、お弁当取りに行こっ!あっ、八幡君はとりあえず待ってて!」

 

八幡「おう、じゃあここで待ってるわ。」

 

柊「お願いね〜!」

 

涼風「では。」

 

八幡「あぁ。」

 

 

さて、時間を潰そうにも本も持ってきてないしな。空でも眺めて待ってるか。

 

 

新堂「比企谷君、少しいいかい?」

 

八幡「っ!………確か新堂先輩、でしたっけ?」

 

新堂「うん、そうだよ。覚えててくれたんだね。それで、少し話があるんだけど、いいかい?」

 

八幡「?はい、大丈夫ですけど。」

 

 

この人が俺に?一体何の話だ?

 

 

新堂「比企谷君、君は奉仕部っていう部活に所属していたりしてないかい?」

 

八幡「………城廻先輩から聞いたんですか?」

 

新堂「いや、違うよ。君と同じ学年の子が『奉仕部』っていう単語を口にしていたからね。後は『ヒッキー』ってあだ名と思われる事も言ってたから、もしかしたらって思ってね。」

 

 

由比ヶ浜だな。アホなネーミングセンスのせいで1発で分かった。

 

 

八幡「……それで俺だって思ったんですか、凄いですね。ドンピシャですよ。」

 

新堂「そうなんだね。じゃあ君はその奉仕部という部活に所属しているんだね?」

 

八幡「えぇ、まぁ……今は少し違いますけど。でも、それがどうかしたんすか?」

 

新堂「うん。それが、その事もう1人サッカー部の葉山君が話をしていたんだ。内容までは分からなかったけど、その女の子が去り際に、何か訳ありのような事を言っていたから気になってたんだ。別に話さなくてもいいけど、もしかしたらこの後の学校生活で何かあるかもしれないからって思ったから、報告しておこうと思ってね。」

 

八幡「それでわざわざ……すみません、ありがとうございます。」

 

新堂「ううん、いいんだよ。困った事があったら相談してって言ったのは僕だしね。」

 

 

この人、めっちゃ良い先輩だ………え、こんなに良い先輩って居たの?城廻先輩以外知らなかったんだけど?戸塚と同じくらい優しいじゃねぇか………

 

 

柊「お待たせ〜ってあれ、新堂先輩?」

 

新堂「やぁ、少し彼を借りてたんだ。もう行くから安心して。じゃあ比企谷君、また。」

 

八幡「はい、ありがとうございました。」

 

 

………あんな人も居るんだなぁ。

 

 

涼風「八幡さん、新堂先輩と何を?」

 

八幡「食いながら話さないか?柊達の作った弁当が待ち遠しくて仕方ない、できれば今すぐ食べたいんだ。お預けはなしで頼みたい。」

 

柊「しょうがないなぁ、もう♪そこまで言うんだったら、徒競走で皆1位獲れたお祝いも兼ねて、食べちゃおっか♪」

 

 

よしっ、今日1番の楽しみだ!!

 

 

 

 



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現状維持とからかい

 

 

八幡side

 

 

柊「ふぅ〜ん、葉山君と由比ヶ浜さんがねぇ〜……確かに気になるかも。でもさ、新堂先輩が言うには何も無かったんでしょ?」

 

八幡「ならいいんだけどな。今更何かしらのアプローチをされても、俺としては困るだけだしな。部活に行く頻度を増やしたいとも思わねぇし。」

 

涼風「ですが気になりますね、お2人のお話の内容というよりも、由比ヶ浜さんが八幡さんで何かを思い詰めている内容というのが。」

 

八幡「十中八九奉仕部の事だろうな。でなきゃアイツが悩むとは思えない。けど何で今なんだ?やろうと思えばいつでも行動を起こせたはずだけどなぁ………」

 

 

……いや、無理か?事故の礼を1年経ってからする程のシャイだから無理か?

 

 

八幡「まぁ、何かあったら言ってくれ。俺もあったら言う事にするからよ。」

 

柊「うん、分かった。」

 

涼風「よろしくお願いします。」

 

八幡「あぁ。【ピンポンパンポーン】『まもなく、お昼休みが終了します。生徒の皆さんは、時間までに待機場所へとお戻り下さい。』……ちょうど時間みたいだな。じゃあ柊、また後でな。」

 

柊「うぅ、この時ばっかりは涼風が羨ましい……」

 

涼風「ふふっ、我慢して下さいね、お姉様。」ニコッ

 

柊「うわぁ〜その良い笑顔が腹立たしいっ!」

 

 

柊も自分の席へと戻り、少ししてから午後の部が始まった。午後の部は午前の部と違って団体で行う競技が多い。俺が参加するリレーもその1つだ。だがリレーは最終種目だから時間が余っている。それ故に………暇というわけだ。

 

 

八幡「……涼風、悪いがトイレに行ってくる。」

 

涼風「分かりました、お気を付けて。」

 

八幡「なるべくすぐ戻る。」

 

 

ーーー校舎ーーー

 

 

八幡「グラウンドから校舎って微妙に距離あるんだよなぁ………」

 

結衣「あっ、ヒッキー。」

 

八幡「……よう、由比ヶ浜。」

 

 

俺の事で何かを気にしているようだが、気にしているだけなら俺から話しかける義理はない。このままトイレに向かうか。

 

 

結衣「ねぇヒッキー!」

 

八幡「……どうした?」

 

結衣「ヒッキーは……今の部活どう思ってる?」

 

八幡「………ちょっと意味分かんないんだが、もうちょっと情報は無いのか?」

 

結衣「えっと……ヒッキーが月曜しか来なくなってから結構経ったけどさ、今でも……その、部活に月曜にしか来る気は無いのかなって。」

 

八幡「………まぁ確かに、以前に比べればまだマシにはなっているとは思うが、俺は別に参加頻度を増やしたいとは思ってない。元々強制で入れられた部活動だしな。それに俺は今の立ち位置で充分だと思ってる、本当は辞める気だったが、平塚先生との約束もあるからな。」

 

 

自由の身になりたい、と思った事はある。正直今もだ。だが今ではないと思ってるだけだ。

 

 

結衣「………そうなんだ。私はね、前みたいに部活が出来たらなぁって思うんだ。依頼が来るまで3人でお話ししたりしてさ。」

 

八幡「言っておくが、俺は罵倒を受けてまであの部活に参加しようとは思わないからな?」

 

結衣「そんなつもりないし!けど、私もゆきのんも悪気があってやってるわけじゃないの。それだけは理解して欲しいかな。」

 

八幡「んな事分かってるよ。もし本気の悪ふざけ無しで言ってたら、俺次の月曜から絶対行かねぇ。」

 

 

いや、悪気が無くてもあの罵倒は控えて欲しいんだけどね?正直俺も嫌だから。

 

 

結衣「月曜は来るしっ!それにそんなつもりもないしっ!けど………ヒッキーが来たくなったら私とゆきのんはいつでも待ってるから。」

 

八幡「………まぁ、頭の片隅にでも入れておく。」

 

結衣「うん。」

 

 

可能性がないって知ってながら、来るわけないなんて思っておきながら、そんな事言うのかよ?今のお前、少し性格が悪いぞ、由比ヶ浜。

 

だが、さっき新堂先輩が言ってた内容は多分これだな。そんなに心配する事でもなかったか。

 

 

ーーー救護テントーーー

 

 

八幡「済まん、待たせた。」

 

涼風「いいえ、こちらも特に何も無かったので構いませんよ。」

 

八幡「そうか。」

 

涼風「喉は渇いていませんか?」ズイッ

 

八幡「あぁ、大丈夫だ。」

 

涼風「寒かったり暑かったりはしませんか?」ズイッ

 

八幡「と、特にないが……」

 

涼風「退屈したりしていませんか?」

 

八幡「それは現在進行形なんだが、少しいいか?」

 

涼風「はい、何でしょう?」

 

八幡「………どうして構ってちゃんになっちゃってるんだ?」

 

涼風「ふふっ、姉の反応を見る為です。ほら。」

 

 

涼風の指さす方向には、柊が物欲しそうな目でこちらを見つめている。多分、俺たちのやり取りが羨ましいんだろうな。

 

 

涼風「姉をからかえる数少ない機会ですので、ここは私も楽しまないといけないと思いましたので。」

 

八幡「お前は……実の姉で遊ぶなよ。意外な所で茶目っ気を出すんじゃねぇよ。」

 

涼風「いいではありませんか、少しくらい。少しくらいのやり返しなら許されるはずです。」

 

 

いや、逆に柊がからかおうとすると、お前が返り討ちにしてると思うんだが?

 

 

八幡「それで、次は何をしていじめる気だ?」

 

涼風「そうですね………少しだけ席を近くしてみましょう。表情が変わって面白いですので。」

 

八幡「完全に楽しんでるだろ、お前。」

 

 

 



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体育祭終了と3人で獲った賞状

 

 

柊side

 

 

うぅ〜涼風ってば絶対に私の事からかってるよアレ!!八幡君も八幡君だよ、絶対私に見せつけてるもん!!羨ましい……涼風が羨ましい、今だけ私と涼風のいる場所を交換して欲しい。はぁ、こっちは退屈だなぁ………それにさっきやってた2人3脚だって、私に見せつけてるようにしか見えなかったもん!!しかも1位獲っちゃうしさ、おめでとう!!

 

まぁそれは置いといて、私は本当に退屈なんだ。ううん、話し相手が居ないわけじゃないんだけど、私の場合って他人には全く興味無いから、話しかけられても別にどうでもいいんだよね。

 

 

柊「はぁ……早くリレーの時間になって、早く体育祭が終わらないかなぁ〜。」

 

 

ーーー数十分後ーーー

 

 

放送『次の競技は学年別で行われる選抜リレーです。リレーに選ばれた生徒は指定の待機場所まで移動して下さい。』

 

 

あっ、漸くかな。私は女子のアンカーで八幡君は私にバトンを渡す人になってる。本当なら八幡君に渡したかったんだけど、タイム的に1番早い人がアンカーになるって事になるから、これはしょうがないわね。まぁでも、八幡君からバトンを貰えるからいいかな。

 

あっ、八幡君来た♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、さっきの事について色々と説明を聞かせてもらわないと………

 

 

柊「八幡君、お昼ぶりだね♪」

 

八幡「そうだな。」

 

柊「うん♪ところでさ、さっきのアレって何なのかなぁ?私に見せつけてたの?涼風と随分楽しそうだったよね?」

 

八幡「いや、柊に少しだけ見せつけようって話になったから乗っかってやっただけ。」

 

柊「酷い八幡君!!私だって八幡君ともっとくっついていたいのに!!」

 

八幡「悪かったよ。」

 

 

本当だよもうっ!!お詫びとして後でいっぱい構ってもらわないとっ!!

 

 

葉山「夜十神さん、よろしくね。」

 

柊「あっ、うん、よろしく。」

 

八幡「俺もしっかりと柊にバトン繋ぐようにする。ミスらない限りは任せろ。」

 

柊「うん♪八幡君が私に来てくれるまで、いつでも待ってるからね♪」

 

 

時間になって私達はグラウンドへと入場した。男子と女子に分かれて走る事になってる。八幡君が男子の4走目で私が女子のアンカーだから5走目。だからやる気はそこそこあるよ。これで八幡君がアンカーだったらもっとやる気が出たんだけどなぁ………男子のアンカー葉山君だから、あんまりやる気起きないんだ。だって彼が走り出したら絶対煩いもん。

 

あっ、1年生がスタートした。

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

放送『続いては2年生による学級選抜リレーです。選手の皆さんは位置についてください。』

 

 

………始まる。

 

 

教師『位置について、よぉ〜い………」

 

 

パァンッ!

 

 

私も準備しておかないとね、アンカーとはいっても10人しかいないし、早い子達ばかりだからすぐ順番は回ってくるからね。

 

 

放送『男子第4走者にバトンが渡りました!先頭はF組です!他のクラスも頑張って下さい!!』

 

 

あっ、八幡君先頭だ!!あぁ……走ってる姿カッコ良いなぁ〜……っと、私も準備準備!

 

 

八幡「柊、任したぞ!」

 

柊「うん!」

 

 

パシッ!!

 

 

放送『2年F組の女子アンカーにバトンが渡りました!!速いです、2位にB組も来ました!!他のクラスも頑張って下さい!!』

 

 

これならF組の優勝は確定かな?なら早く葉山君に渡そっと。

 

 

私はカーブを曲がり切って葉山君にバトンを渡した。すると応援席から黄色くて甲高い叫び声が上がった。葉山君人気だなぁ〜どうでもいいけど。確かにカッコ良いけどさ、見た目だけじゃないよ?ちゃんと中身も見なきゃダメだからね?あっ、葉山君の中身がダメだって言ってるわけじゃないけどね。

 

葉山君がゴールしたら、またもや叫び声が上がった。そんな元気があるなら君達も走ろうか?

 

 

そんなこんなあって、無事体育祭も終了した。私達F組は他クラスとの得点を50点くらい離しての優勝だった。まぁ頑張ったから優勝できて良かったわ。

 

 

そして今、私達は教室に戻ってHRを受けている。2年生優勝と2年生最優秀選手の葉山君と女子優秀選手の涼風の2人に賞状が贈られた。涼風がまさかの優秀選手だよ?凄くない?あんまり運動得意じゃないのに。

 

 

柊「良かったじゃん涼風、優秀選手だよ!」

 

涼風「は、はい……これもお姉様と八幡さんのおかげです。ありがとうございました///」

 

柊「え?私達何かした?」

 

涼風「お姉様が八幡さんからのご褒美と言ってくださらなければ、徒競走で1位を獲れていないでしょうし、八幡さんが緊張を解してくださらなければ、2人3脚で1位を獲れませんてました。だからこれを貰えたのはお2人のおかげなんです。」

 

柊「もう、なんて良い妹なんだろう♪」ダキッ!

 

涼風「お、お姉様っ!?」

 

八幡「それなら、俺達も頑張った甲斐があったってもんだ。」

 

柊「そうね♪」

 

 

ふふっ、今年の体育祭は楽しかった♪また来年も同じくらい楽しめたら良いなぁ♪

 

 

涼風「では八幡さん、帰りましょう。我が家でお食事をご用意しておりますので。明日はお休みなのですから、今日は泊まっても問題ない筈です♪」

 

八幡「………普通の料理?」

 

柊「ううん。体育祭お疲れ様会と、さっきお母さんから『商談が成功した。』ってお父さんからの連絡があったから、それも兼ねてご馳走だって。」

 

八幡「………少し豪華なくらいで俺は十分だ。」

 

 

うん、それ無理♪

 

 

 

 

 



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班、紅茶、そして事件


修学旅行前のちょい話です。


 

 

八幡side

 

 

体育祭が終わって平和なのも束の間。すぐに次のイベントの修学旅行が待っている。2年生の一大イベントとも言えるこの行事だ。確かに楽しみにしている生徒は多いだろう。現に俺も珍しく楽しみである。その理由は2日目の自由行動にある。クラス男女関係なく自由に行動が出来るのだ。俺からしてみれば、柊と一緒に過ごすにはちょうどいい日なのだ。

 

まぁまだ班決めとかの話は出ていないのだが、クラス内でも暗黙の中で決まっているみたいだ。まぁかく言う俺達も決まっているけどな。俺と柊と涼風の3人は当たり前として、川崎と戸塚も加わった。クラス内のカーストの関係もあるのか、今はこれで落ち着いている。葉山達のグループは7人だが、交渉次第でなんとかなるだろう。どうでもいいけど。

 

 

柊「最近は平和で良いよねぇ〜。特にあの子煩い森崎が絡んで来なくなってくれただけでも、私達の日常は救われるよ〜。」

 

涼風「そうですね、あの叫び声が聞こえないのは確かに快適です。」

 

八幡「一々フルネームを大声で叫ばれなくても済むからな、ホント良かった良かった。」

 

 

森崎もあれから姿を現さなくなり、俺達にも平和が訪れている。この平和が続いてくれればいいと、俺も願っている。

 

 

ーーー放課後ーーー

 

 

八幡「じゃあ俺は部活があるから。」

 

柊「ちぇ〜、しょうがないかぁ〜。」

 

涼風「お姉様、我慢です。私だって本当は八幡さんと一緒の時間を過ごしたい所を我慢しているのですから。」

 

柊「分かってるよ〜……じゃあ頑張ってね。」

 

八幡「あぁ。」

 

 

ーーー奉仕部部室前ーーー

 

 

八幡「………うす。」

 

結衣「あっ、ヒッキー来た!」

 

雪乃「こんにちは、比企谷君。」

 

八幡「おう、なんか依頼でもあったのか?」

 

雪乃「いえ、特にないわ。どうして?」

 

八幡「由比ヶ浜が叫んだから。」

 

結衣「別にいいじゃん!それにヒッキーがいつもより遅いからじゃん。」

 

八幡「悪かったよ、柊と涼風を宥めてたんだよ。」

 

 

毎週月曜になると必ず起きるイベントだ。俺が部活に行こうとすると、間違いなく柊が駄々を捏ねるように不機嫌になる。涼風もさっきみたいに俺に力を貸してくれるのだが、涼風も涼風で雰囲気を隠し切れていないのだ。

 

 

雪乃「そう、それはお疲れ様………どうぞ。」

 

八幡「サンキュ……ん?紅茶の茶葉変えたのか?」

 

雪乃「っ!何故気付いたの?」

 

八幡「いや、香りから違うだろ。」

 

結衣「えぇ〜凄い!!私飲むまで気が付かなかったのに!なんか悔しいしっ!」

 

八幡「淹れ方1つで良し悪しが決まるって言うからな、コーヒーとか紅茶とかって。それにこれ、結構良い茶葉なんじゃねぇの?」

 

雪乃「母さんが珍しく送ってくれたのよ。何でもシンガポール産の紅茶らしいわ。」

 

 

ほぉーん、じゃあトワイニングかもな。安いのから高いのまであるブランドだが、あの色んな種類パッケージで覚えちまったんだよなぁ………まぁあのブランドは、イギリス王室御用達の高級なのだから、俺には縁が無いが。俺は普通の紅茶で充分。

 

 

八幡「にしてもよく手に入ったな。」

 

雪乃「母と姉さんがこれを1度飲んで以降、これを気に入ったらしくて、【Nigh-Ten・Group】に依頼したみたいなのよ。」

 

結衣「あっ、その会社知ってる!ものすっごく外国のものとか売ってるよね!」

 

雪乃「えぇ。それで1箱私にも送ってくれたの。」

 

 

流石はおじさんとおばさんだ、クライアントの心を掴んでる。多分だが、雪ノ下家はこの味を気に入っただろうな。

 

 

八幡「ならすぐに飲むのは勿体無いな、味を楽しみながら飲むか。」

 

雪乃「えぇ、そうした方が良いわよ。こんなの一生に何回飲めるかどうかも分からないのだから。」

 

 

………すいません、もう何度か飲んでます。マリアージュを飲んでしまってます、ただの一市民が。感じても意味のない罪悪感を感じながらトワイニングを飲んでいる俺がいます。

 

しかし、他の目線からあの会社を考えた事なかったな。少しだけ聞いてみるか。

 

 

八幡「なぁ、雪ノ下はその会社の事詳しいのか?」

 

雪乃「いえ、そこまで深くは知らないけれど、世界至る所の名産や名物を売っては買うを商売としている企業よ。それもその会社を立ち上げたのが日本人だからなお驚きよ。けれど、その創設者は人嫌いで有名なのよ。」

 

八幡「?どうしてだ?」

 

雪乃「パーティーやイベントには全くと言っていい程参加しないの。身内だけでしかそういうのは開かないみたいなのよ。」

 

八幡「………成る程な。」

 

 

まぁおじさんの場合、個人的な関わりでやりとりをしたくないってのが本音だろうな。あくまでも客と商人って立場が良いんだろう。

 

 

雪乃「もしかして貴方、【Nigh-Ten・Group】に興味があるのかしら?」

 

八幡「ちょっとだけな。海外の物なんて見る機会ねぇから少し興味湧くしな。」

 

雪乃「貴方のお金で買えるかどうかは知らないけれど、インターネットでも注文を受け付けているそうだから、見てみるといいわ。」

 

結衣「へぇ〜、なんかAma○nみたい!」

 

 

こら、他企業と一緒にするんじゃない!

 

 

pipipi…pipipi…

 

 

八幡「っ!悪い、少し外す。」

 

 

ーーー廊下ーーー

 

 

八幡「もしもし、比企谷です。」

 

宮間『若様、宮間でございます。落ち着いてお聞き下さい。よろしいですかな?』

 

八幡「?はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宮間『柊お嬢様と涼風お嬢様が何者かに、誘拐されました。』

 

 

 

 

 

 





まさかの急展開!!


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犯人は………

コメ欄が凄い事に……予想は当たっているのか!?


 

 

八幡side

 

 

俺は慌てて荷物を纏めて校舎を出た。あの2人が誘拐?まさか俺が居ない日を狙って?頭が回らない。取り敢えず俺は宮間さんと電話中に夜十神家に来るように言われたから、そっちに向かおうとしている。

 

 

「若様、こちらです!!」

 

八幡「っ!!」

 

「旦那様と奥様からのご命令を受けました!若様をお乗せして、大至急当家までお連れしろと!時間がございません、お急ぎをっ!!」

 

八幡「すいません、お願いします!!」

 

「はっ、少々飛ばします故、しっかり掴まっていてください!!」

 

 

ーーー夜十神家ーーー

 

 

ブロロロロッ〜キキィィィ〜!!

 

 

「若様、到着しました!!お荷物は私が運びます故、急ぎ旦那様の所まで!!」

 

八幡「すいません、ありがとうございます!!」

 

 

おじさんとおばさんに合わせる顔なんてないが、今はそんな事考えてる場合じゃねぇ!

 

 

ーーー応接室ーーー

 

 

宮間「旦那様、奥様!若様が只今ご到着されました。大変失礼ですが、入らせて頂きます!」

 

御影「構わない。八幡君もよく来てくれた。」

 

八幡「いえ………」

 

 

宮間さんは許可も取らずに中へと入った。当たり前だがそれ程までの事だというのが分かる。中にはデスクワークでも見る事のない程に真剣な表情をしているおじさんとおばさんが居た。それともう1人、意外な人物が座っていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怪我をしながら。

 

 

新堂「やぁ、比企谷君………」

 

八幡「新堂先輩?どうして此処に?」

 

新堂「うん、それも含めて説明をするよ。掻い摘んで説明するから少しだけ大雑把になるけど。」

 

八幡「お願いします。」

 

 

新堂先輩の話を要約するとこうなる。

 

帰っている2人を見て同じ方向だった為、途中まで一緒に帰らないかと誘う。

2人は了承したから、3人で帰る事に。

程なくして路地のある場所に来ると、覆面を被った複数人の男達が3人を取り囲む。

男達は2人を渡すように新堂先輩に言うが、それを拒否。何とかして守ろうとするも、数の暴力には叶うわけもなく無力化されてしまう。

誘拐後、新堂先輩は側に落ちていた携帯でSOSを発信した。そしてその場で力尽きてしまい、気を失ってしまった。

 

 

宮間「そしてそのSOSが私の携帯に発信されましたので、GPSで目的の場所まで行き、新堂殿が倒れていたというわけです。その後は新堂殿から説明を聞き、旦那様と奥様、そして若様にご連絡をさせて頂いた所存です。」

 

御影「うむ、ご苦労。新堂君、誘拐されてしまったとはいえ、君の行動にはとても感銘を受けた。あの行動が無ければ、このような奇跡のような状況は起きていない、感謝する。」

 

新堂「いえ、僕にもっと力があれば………」

 

紫苑「いいえ、その行動を起こしてくれただけでも私達としては感謝に値します。娘を守って下さり、本当にありがとうございます。」

 

御影「だが今は娘達の事だ。宮間、居場所の特定は済んでいるか?」

 

宮間「はい、既に。現在千葉県内○○市に居るようです。この位置から察するに、既に使われなくなった廃屋に居ると思われます。涼風お嬢様の携帯が落ちていなかったのが幸いでした。」

 

紫苑「そう……あなた、ウチの会社の警備員を連れて行きましょう。」

 

御影「あぁ、そのつもりだ。留守を任せてもいいかな?僕も現場に向かうよ。」

 

紫苑「分かったわ。宮間、私のフォローをして頂戴。いいかしら?」

 

宮間「畏まりました。」

 

御影「よし、じゃあ「待って下さい、俺も行きます。」っ!八幡君……」

 

八幡「誰がやったのかは分かりませんけど、ソイツを1発ぶん殴ってやらないと気が済みません。」

 

御影「……分かった、君も連れて行こう。ただし危険な事には首を突っ込ませない。これは絶対だよ、いいね?」

 

八幡「はい。」

 

紫苑「新堂君、貴方はウチで休んでいなさい。無理をさせるわけにはいかないわ。」

 

新堂「………分かりました。」

 

 

新堂先輩はあまり納得していない様子だが、今の自分の状態ではなんの役にも立たないと理解しているからか、すぐに引き下がった。

 

 

紫苑「誰か!彼を客室までお連れしなさい!怪我人だから丁重に!」

 

「「畏まりました。」」

 

宮間「では早速準備を「宮間さん、その携帯の写真を撮らせてもらってもいいですか?」はい、勿論構いませんが?」

 

八幡「ありがとうございます。」パシャッ

 

御影「八幡君、それをどうするんだい?」

 

八幡「居場所を教えてもらうだけですよ。怪しい奴の現在地を。」

 

 

ーーー車内ーーー

 

 

車の中には俺、おじさん、運転している執事さんの3人でさっき宮間さんが確認した場所まで向かっている。俺は今、ある人にさっき撮った写真と要件をメールで送り、返信を待っているところだ。

 

 

御影「しかし、何処の誰なんだ?僕の娘達を誘拐した者達は?」

 

「我々も尽力しましたが、流石に限界があります。これ以上となると、警察の介入も視野に入れなくてはなりませんから。」

 

御影「そうだね………」

 

八幡「………」

 

 

♪〜

 

 

八幡「っ!!おじさん、犯人が分かりました。」

 

夜十神父「何だって!?それは本当かい!?」

 

八幡「はい、居場所を探してもらったら、さっきの写真と同じ位置でしたから。」

 

御影「そ、それでその犯人は誰なんだい!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「森崎家の嫡男、森崎駿です。」





犯人は………あなただ、森崎駿。


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不屈の意思

 

 

森崎side

 

 

「へへ、これでいいのか?こんな仕事でこんな大金貰ってよ?」

 

森崎「あぁ構わない、よくやったなお前等。その金は好きにしろ。」

 

 

ははははっ!やったぞ、漸く夜十神さん達と3人きりになれる!奴等の周辺を1ヶ月調べた甲斐があった!今頃あのクズも狼狽えてるに違いない!!

 

 

柊「………」

 

涼風「私達をこんな所に誘拐して、一体どうするおつもりですか!?それにこんな事をして、ご両親や私達の両親が黙っていません!!」

 

森崎「うるさい!!君達が悪いんだ、君達があんなクズと一緒に居るから、しかも柊さんは付き合ってるだなんて……いい加減に目を覚ますんだ!!夜十神さん達が関わっていいような奴じゃないんだよ、アイツは!!」

 

涼風「お言葉ですが、私達の意見は変わりません!!貴方がなんと言おうと、私達は八幡さんと関わり続けます!!」

 

森崎「くぅ………まぁいい、此処に君達を連れて来たのは要件があったからなんだ。」

 

涼風「要件?こんな誘拐までしておいて何が要件ですか!!」

 

森崎「落ち着いて聞いて欲しい。君達にとっても悪い話じゃないから。1つ目、夜十神柊さんはあのクズと別れる。何度も言うけど、君達とあのクズは関わり合うべきじゃない。」

 

柊「………」

 

森崎「2つ目、その後に僕と婚約をする。そうすれば、夜十神家と森崎家はより良い関係になる。」

 

涼風「っ!………」ギリッ!

 

森崎「最後に3つ目、誠教学園に戻ってくる。君達に相応しいのは僕なんだ、他の学校に行くなんて、あり得ないよ。」

 

 

完璧だ………これなら2人も納得するだろう。それにだ、あんな雑草でクズな奴はもう要らない。むしろ夜十神さん達に寄生していただけの害虫だ!

 

これからはそうならないように、僕がしっかりと守ってあげないと!僕は警備員の両親の息子なんだ、納得してもらえる。今はまだ難しいけど、社長にも分かってもらえる筈だ。

 

 

森崎「答えは「当然お断りです!!そんな条件、誰が呑むものですか!!」なっ!?な、何故なんだ!!あんな奴といても碌な事がない!!そんな生活を送るよりも、僕といた方が楽しいに決まってる!!」

 

涼風「貴方の価値観で物事を決めないでください!!人攫いをするような方に誰がついていきますか!?貴方のような方、八幡さんと比べるのも烏滸がましいです!!」

 

森崎「なっ!!?こ、このぉ………っ!柊さんはどう思ってるのかな?」

 

柊「………」

 

 

 

柊さんは相変わらず口を固く閉ざしたまま、喋らずその場にいるだけだった。

 

 

涼風「お、お姉様?」

 

柊「涼風、お話は終わった?」

 

涼風「(あぁ、この場に居る全員見えなくなった、というわけですね?)はい、終わりました。それと今、その1人がこんな条件を出して来ました。」

 

 

な、何をしているんだ?あの2人は?それに柊さんは聞こえていた筈、なのにどうしてまた教えてもらってるんだ?

 

 

柊「………ねぇ涼風、ソイツってバカなの?呑むわけないじゃん、そんな1ミリも魅力の無い条件、誰が受けるの?」

 

森崎「んなっ!!?」

 

涼風「お姉さまの仰る通りです!!私達の意思は変わりません!!貴方の出した条件、私達は絶対に呑みません!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい依頼人さんよぉ。この娘流石にうるさ過ぎやしねぇか?外までキャンキャン声が響いてきてるぜ?どうやら自分の立場が理解できてねぇみたいだから、分からせてやるってのはどうよ?」

 

 

………はははっ、まぁ僕の本命は柊さんだ。涼風さんはおまけみたいなもので頂こうとは思ってたが、先に食うのもアリだな。

 

 

森崎「そうだな、先に口を黙らせる事にしよう。1度でいいから触ってみたいと思ってたところだ、僕達しか居ないんだ、堪能しても誰も文句は言わない。」

 

「おいおい俺達にもヤラせろよ……その為に言ったんだぜ?」

 

森崎「僕がした後にしろ。最初は僕だ。」

 

涼風「や、やめて下さい!!」

 

森崎「君の物分かりが悪いからこんな事になったんだ、恨むのなら自分を恨むんだね。さぁて、むふふふぅ〜♪」

 

 

涼風(八幡さん、助けて!!)

 

柊(八幡君、助けて!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

pipipi…pipipi…

 

 

森崎「チッ、誰だ良い時に!はぁ?不明発信者?一体誰だ……もしもし?」

 

八幡『よぉ、俺の彼女とその妹が世話になってるようだな?その礼をしに来た。』

 

森崎「お前、比企谷八幡か!!?はっ、残念だったな!お前に俺達の居場所が分かるか?見つけられるものなら見つけて『頭の悪い奴だ。』な、何だと!?僕をバカにするな!!」

 

八幡『俺が今なんて言ったのか、覚えてないのか?【礼をしに来た。】って言ったんだぞ?』

 

森崎「………っ!!?ま、まさか!!」

 

八幡『首洗って待ってろよ、最底辺の人間。』ブツッ

 

 

な、何故だ!!何故場所がバレた!?いやだが問題ない、まだ僕にはコイツ等が居る!!

 

 

森崎「おいお前等、新しい仕事だ!!今から来る奴をボコボコにしろ!!」

 

「んだよ、そのくらい自分でやれよ………まぁいい、報酬は高くつくぞ?」

 

 

くっはははは、お前もこれで終わりだ!目の前で好きな人を奪われる所を無様に見ていればいい………はははははっ!!

 

 

 



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呆気ない抵抗

 

 

八幡side

 

 

現場に着いた俺達は、おじさんと一緒に車の中で待機している。外には盾や警棒、ゴム弾を装填している拳銃を装備している警官数十人に、【Nigh-Ten・Group】のベテラン警備員が数十人と、かなりの人数になっていた。その警備員の中には森崎両親も含まれていた。相手の戦力が分からない為、迂闊に手を出せないこちら側だが、向こう側も逃げる事が出来ない為、膠着状態になっていた。

 

 

八幡「………」

 

御影「………」

 

 

『こちら正面入り口前。数人の人影がこちら側の様子を伺っている。今の所攻める意思は見られないが、逃げる意思も見られない。』

 

『了解、そのまま見張りを続けろ。潜入部隊ももう少しでポイントに着く。』

 

『了解。』

 

 

八幡「あの下衆、会ったらぶん殴ってやる。」

 

御影「……そうだね。流石に僕も看過出来ないから、森崎君達が何と言おうと1回は殴らせてもらおうかな。娘達をこんな目に遭わせたんだ、タダでは済まさないからね。」

 

八幡「はい、報いは受けさせます。」

 

 

『潜入部隊、ポイントに到着。』

 

『了解。では作戦合図を出す。カウントは15秒だ。15秒後には各員、敵対勢力の制圧と目標人物の保護、そして標的の拘束を迅速に行うように!ではカウントを取る!』

 

 

御影「いよいよだね………」

 

八幡「はい。」

 

御影「これで………」

 

八幡「やっと………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人『報復が出来る!!』

 

『潜入開始!!』

 

 

八幡sideout

 

森崎side

 

 

アイツ等上手くやっているのか?外が少し騒がしくなっている気がする………くそっ、僕達も移動しないとマズイな。

 

 

バタバタバタバタッ!

 

 

森崎「な、何だこの足音は!?」

 

「っ!!目標人物と標的を発見!!これより目標人物の保護と標的の拘束に入る!!」

 

森崎「な、何だとっ!?」

 

「ふんっ!!」

 

森崎「がはぁ!!」

 

 

僕は何が起きたのか、分からなかった。目の前に現れた警官達が目標人物やら標的やらを言い終わった直後に僕を攻撃してきた。一体何だ、何だっていうんだ!?

 

 

「標的の拘束、並びに目標の保護に成功を報告!」

 

『こちら正面、敵対勢力の制圧の完了を報告!』

 

『了解。全員次に与えられた任務を遂行せよ!』

 

「了解。よし、じゃあこの先からは……」

 

森崎父「はい。我々の社長をお呼びします。今暫くの間、抑えておいてください。」

 

 

今の声は父さん!?何故父さんが!?それに社長って………一体どういう事なんだ!?

 

 

森崎sideout

 

ーーーーーー

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

「社長、こちらです!」

 

御影「………」

 

森崎「っ!!」

 

涼風「お父様っ!!」

 

御影「涼風、怖い目に遭わせてしまって済まなかったね。」

 

涼風「いいえ……いいえっ!」

 

八幡「……柊。」

 

柊「っ!八幡君っ!!」ダキッ!

 

涼風「八幡さんっ!!」ダキッ!

 

森崎「っ!!おいお前!!僕の柊さんと涼風さんから離れ「黙れっ!!」ぐうっ!!?「今のお前に発言権は無い!!大人しくしてろ!!」ぐっ、ぐぐぅぅ、()ぼうじゃん(とうさん)!」

 

森崎母「社長、この度はウチの息子がとんでもない事を………伏して謝罪しましても収まりません!!ですが、ですがどうか謝らせて下さい。本当に申し訳ございませんでした!!」

 

 

御影「……うん、今はその謝罪を受け取っておくよ。森崎さん。けど僕にも許せない事もあってね、それをした者が目の前に居ると思うと、腸が煮え返る思いだよ。そうは思わないかい、八幡君?」

 

八幡「はい、すぐにでも殴り飛ばしてやりたいですよ。けどそれをやったら理由を聞けなくなるので、今は抑えてます。」

 

御影「ありがとうね………じゃあ早速、始めていこうか。因みに言っておくけど、君に回答の拒否権はないからね?回答を拒んだ分だけ僕と八幡君に報復されると思った方がいいよ。」

 

森崎「っ!!?」

 

 

森崎は今の発言に驚いていたが、当然だろう。これだけの事をしておいてお咎め無し、なんて事にはならない。森崎に待っているのは後にも先にも地獄しかないのだ。

 

 

御影「まず、どうしてこんな事をしたのかな?理由は大体見当がついてるけど、君の口から聞かない限りはこの場にいる全員が納得しない。答えてもらうよ。」

 

森崎「そ、それは………」

 

夜十神父「答えられないのかい?」

 

森崎「………ソイツと夜十神さん達を引き離す為、です。」

 

夜十神父「ふむ……ならきっとこの2人に幾つか提案を出したと思う。それを教えてくれるかな?」

 

森崎「っ!!」

 

御影「君が言わなくても娘達に聞くから安心するといいよ。報復もするけどね。」

 

 

その後の森崎は抵抗するだけ無駄だと感じ取ったのか、全てを洗いざらい自白した。八幡と柊との交際を破棄し、さらにそこへ自分が便乗。そして2人を再び誠教学園へと戻し、完全に八幡と関わる術を断つ事も。

 

 

御影「………それだけの為に、君は僕の大事な娘達をこんな目に遭わせた。自分の為だけに……僕の娘達をこんな目に………」

 

森崎父「お前がこんな風に育っていただなんて……父親として本当に恥ずかしい限りだ。」

 

森崎母「森崎家始まって以来の恥晒しだわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「んで、コイツどうするんです?話が終わったのなら、コイツ殴るなり蹴るなりしていいですよね?我慢の限界ですよ、俺は。」

 

 

 

 



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終息

 

 

御影side

 

 

八幡君はどうやら相当お怒りのようだね………表情には出していないようだけど、雰囲気から相当な怒りが滲み出てるね。流石にこれは僕も森崎君達も止める事は出来なさそうかな。寧ろ止める方法を教えて欲しいくらいだ。

 

 

御影「……森崎君、どうかな?」

 

森崎父「彼の気がこれで済むとは到底思えませんが、少しでも気が晴れるのでしたら、この愚息を好きにして下さい。」

 

御影「だそうだよ、八幡君。」

 

八幡「……ありがとうございます。すいませんけど、ソイツを離してもらっていいですか?」

 

森崎父「っ……いいのかい?」

 

八幡「はい、殴り返してきたらその分、重くすればいい話なので。」

 

 

どうやら本気みたいだ。そういえば八幡君は何か武術を嗜んでいるのかな?それによっては1撃1撃が大変なことになりそうだけど………

 

 

森崎「くぅ!!ふんっ、俺を解放させた事を後悔しろ!!今すぐお前を「誰が喋っていいって言った?」な、何だと!?」

 

八幡「テメェは今からぶん殴られるだけでいいんだよ。大人しく立ってろ。」

 

森崎「はっ、そう言われてそうする奴が居るとおぶふぅ!!?」

 

 

あぁ……もう言葉を聞くのも嫌なんだね。

 

それからの八幡君はただただ無心に彼を殴り飛ばしていた。自己満足、憂さ晴らし、どちらなのかは分からないけど、兎に角殴り飛ばした彼を起き上がらせては殴るの繰り返しだった。どういうわけか知らないけど、蹴りはしていない。

 

 

森崎「うぶおあぁ!!ま、まっひぇ(まって)!!ひゃのむ(たのむ)

まっひぇくふぇ(まってくれ)!!ありゃまりゅ(あやまる)!!ありゃまりゅ(あやまる)から、みょうゆゆひて(もうゆるして)!!」

 

八幡「謝るだ?御免なさいで済むのなら、世の中に争いや戦争なんて起きねぇんだよ。分かるか?これは俺の八つ当たりだ、俺はお前を許さない………柊と涼風に手を出したお前を。」

 

森崎「そ、そんなぁ(しょ、しょんにやぁ)………」

 

八幡「柊、涼風、お前等何かされなかったか?」

 

涼風「………あまり言いたくはありませんが、八幡さんが電話をくれる直前、彼から強姦をされそうになりました。なのでもし、あのタイミングで八幡さんが電話をしてくださらなければ、私は助かったとしてもきっと………」プルプル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブチッ!!

 

 

八幡「ウオオラアァァァァ!!!」

 

 

ドゴォッ!!!!

 

 

森崎父「っ………」

 

森崎母「………」メソラシ

 

御影「………」

 

 

八幡君はその言葉を聞き終わった瞬間、目の前で転がっていた彼に物凄い蹴りを彼の顔に目掛けて繰り出した。彼は声を上げる事もなく、蹴りを食らって気絶してしまった。僕は今、八幡君の後ろに居るから顔を見れないけど、ものすごい表情になっていると思う。今彼が行っている呼吸だけでも分かる、自分を落ち着かせる為にフーフーと肩で息をしている状態だ。

 

 

柊「八幡君………」

 

八幡「フゥー……フゥー……あぁ、大丈夫だ。少し落ち着いた。悪い、涼風のされた事を聞いて怒りを抑えられなかった。」

 

御影「謝る必要はないよ、八幡君。君のおかげで僕の気も晴れたよ。ありがとう。」

 

八幡「……いえ。」

 

御影「さて、恐らく事態はもう終息に向かってると思うけど、このまま何も無しで終われるわけがないよね。警察も絡んでるんだ、関係者には事情聴取が待っているだろう。もしかしたら八幡君と何かしらあると思う。こうして彼を殴ったのは事実だからね。」

 

森崎母「社長、我々ならもう覚悟はできています。その事情聴取にも嘘偽りなくお答えするつもりですし、必要とあらば私達が辞職致します!!これ以上、社にはご迷惑をお掛け出来ません!」

 

御影「……取り敢えずは此処から出ようか。じゃあ森崎君、息子さんの事は頼んだよ。逃げられないように拘束して連れてくるように。」

 

森崎父「はっ!!」

 

御影「八幡君も着いてきなさい。それから警察の人達から治療道具を貸してもらわないとね。」

 

八幡「?何でですか?」

 

御影「その右手、ずっと見せておくわけには行かないでしょ?」

 

 

八幡君は自分の右手を確認した。誰が見ても分かるように、手の甲の皮が殴った事によって乱雑に剥けていたからだ。流石にあんな痛々しいのを放置しておくわけにはいかないからね。

 

 

ーーー外ーーー

 

 

僕達は外に出てからは、警察の方達との簡単な事情聴取をしている。八幡君にはその間、娘の柊と涼風に怪我の治療をしてもらっている。(柊と涼風がやると言って聞かなかったから。)

 

森崎君とそれに協力した一味だけど、事件が事件なだけに1度留置場に置いて、裁判まで拘束する事になった。まぁこればかりは仕方ないね。そして裁判には僕達関係者も出席対象になっている。

 

そして聴取が終わった所で僕達は娘達がいる所に向かった。

 

 

柊「あっ、お父さん。お話終わったの?」

 

御影「うん、ひとまずね。後の事はあちら側にも色々とあるから追々かな。さて、じゃあ帰るとしようか。森崎君達も我が家に来るといいよ。今日は非番だろう?折角だから食事でも一緒にしようじゃないか。」

 

森崎父「で、ですが社長。私達は………」

 

 

きっと八幡君と娘達に会わせる顔が無いんだろうね。気持ちは分かる。自分の息子が当人とその恋人に迷惑どころの話ではない事をしたんだ、まず一緒に居ようとは思わないだろうね。けどね森崎君、八幡君はそんな心の狭い人間ではないよ。

 

 

柊「一緒に食べましょうよ!」

 

涼風「そうです、森崎さん達のおかげで私達が無事なのは事実なのですから。」

 

八幡「そうですね。俺は森崎の奴を憎んではいても、貴方達は憎んでないです。息子がやったから親にも、なんていう連座制みたいなのには興味ありませんから。俺は気にしませんし、おじさ………社長が言ってるんですから、いいんじゃないですか?」

 

森崎父「八幡君………済まない、ありがとう!!」

 

森崎母「社長、ご一緒させて頂きます。」

 

御影「うん、じゃあ帰ろうか。我が家に。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ふぅ、漸く森何とかを撃退できた………あっ、事件は終わりましたが、まだ続きはあります!


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感謝とお食事

 

 

八幡side

 

 

ーーー夜十神家ーーー

 

 

ガチャッ

 

 

紫苑「っ!!柊、涼風!!」

 

柊/涼風「お母さん(お母様)!!」

 

紫苑「あぁ、良かったわ……本当に無事でよかったわ………」

 

御影「遅くなったね、ただいま。」

 

紫苑「えぇ、おかえりあなた。それから森崎さん達もご苦労様でした。」

 

森崎父「いえ、滅相もありません。」

 

森崎母「むしろ、私達がケジメをつけなければならない問題でした。」

 

紫苑「?それって………」

 

御影「詳しい事は4人でね。宮間、7人分……いや、8人分の食事を用意して。」

 

宮間「かしこまりました。」

 

 

?何で8人?此処にいるのは俺、柊、涼風、おじさんとおばさん、森崎の両親で7人で合ってる筈だ。あと1人って………あっ、新堂先輩か!

 

 

御影「食事ができるまでは、皆自由にしてていいよ。それに僕達は大人同士でのお話があるしね。八幡君、娘達をお願いしてもいいかな?」

 

八幡「はい、分かりました。」

 

 

ーーー客室前ーーー

 

 

「こちらです、お待ちを。」

 

 

目の前は新堂先輩が休んでいる部屋がある。多分2人も礼を言いたいだろうからな、何も言わずに連れてきた。まぁ会えば分かるだろう。

 

 

コンコンコンッ

 

 

新堂『どうぞ。』

 

「失礼致します。新堂様、若様、柊お嬢様、涼風お嬢様がお話ししたいとの事でしたので、お越しになられました。」

 

新堂「っ!そうですか、どうもありがとうございます。」

 

「いえ、では。」

 

 

執事はそれだけ言うと、扉を閉めて仕事に戻って行った。

 

 

新堂「……よかったよ、2人共無事みたいで。」

 

柊「新堂先輩も。けど怪我を……」

 

新堂「ううん、こんなの大した事ないよ。それよりもごめんよ、僕にもっと力があれば、君達をあんな目に遭わせずに済んだのに。」

 

涼風「とんでもありません!こちらの方こそ、あの時守って頂いた事、とても感謝しています!」

 

新堂「そう言ってくれて嬉しいよ。それにしても、夜十神さん達ってお金持ちの家だったんだね。僕初めてだよ、こんなに広い部屋に入ったのは。」

 

 

うん、それが普通の人の感性だよね。俺も最初その反応だった。いや、もっと凄かったかも?

 

 

涼風「お怪我の具合はどうですか?傷が痛んだりはしていませんか?」

 

新堂「ううん、大丈夫だよ。僕が執事の宮間さんに見つけられた時はボロボロの状態でおでこから出血してたみたいだけど、そんなに深い傷じゃなかったみたいだから。」

 

涼風「そうですか、よかったです………」

 

新堂「比企谷君も無事でよかったよ。」

 

八幡「俺は何もしてませんので。ただ犯人を自分の八つ当たりで殴った程度ですし。」

 

新堂「そっか………夜十神さん達のお父さん達は?もしかしてお話中かな?」

 

八幡「はい、なんでちょっと待っててください。」

 

新堂「ううん、その必要はないよ。僕はそろそろお暇しようと思ってたから。さっき僕の母から電話があってね、遅くなる事は伝えてあるけど、もうそろそろ帰らないといけないからね。」

 

 

あぁ……でもそれはまだ延長しそうですよ。何故なら今、とてつもない豪華ディナーが用意されてる筈ですから。驚きますよ、きっと。

 

 

コンコンコンッ

 

 

新堂「どうぞ。」

 

「失礼致します。皆様、お食事の御用意が出来ました。ダイニングまでご案内します。新堂様はお1人でも歩行は可能ですか?」

 

新堂「え?僕も、ですか?」

 

「勿論でございます。」

 

新堂「えっと、歩くのは大丈夫です。けど……」

 

柊「新堂先輩!折角なので食べていって下さい!ウチの料理長が作る料理は美味しいですから♪」

 

 

新堂先輩、多分すぐにお腹いっぱいになりますよ。いや、多分じゃないな、絶対だ。

 

 

ーーーダイニングーーー

 

 

下のダイニングルームに来てみれば、凄いご馳走が目の前に広がっていた。これには新堂先輩も驚き過ぎて、口を開いたまま固まっていた。

 

 

新堂「………比企谷君、これって?」

 

八幡「はい。この家の特徴とも言える、お客さんが来たら最高のおもてなし、その1つ目が豪華過ぎる料理です。」

 

新堂「………これは凄いね。」

 

御影「新堂君、身体の具合はどうかな?」

 

新堂「とても良くなりました、ありがとうございました。あの、僕は……「新堂君の分も用意してあるんだ。さっ、4人共席に着いて。」………ひ、比企谷君。」

 

八幡「諦めて下さい。」

 

新堂「あはは……僕、とんでもない家と変な関わりを持ってしまったのかもしれないね。」

 

 

それからは8人で食卓を囲った。大人は大人で話したり、俺等は俺等で話したりしていた。そして偶に大人が俺達に話を吹っかけたりしたりと平和な食事をする事が出来た。胃を犠牲にして。

 

 

紫苑「こんな風に5人以上で食事をしたのなんていつ以来かしら?」

 

柊「そうだよね〜。八幡君が泊まりに来る時は5人で食べてるけど、それ以外は基本的に4人だからね。こんな人数って私は初めてかも。」

 

森崎父「ほう、八幡君はこの家に何度か来た事があるのかい?」

 

八幡「殆どの場合、柊が泊まりに来て欲しいって理由と、おじ……社長と副社長と涼風の圧のある言葉と輝いた目でアピールしてくるので。」

 

紫苑「泊まりじゃなくて、住んだらどうって勧めてるのだけど、それは嫌みたいだから。」

 

八幡「だからといって一軒家を俺に勧めてくるの、やめて貰えません?冗談だとしても笑えませんので。」

 

紫苑「ふふふっ、ごめんなさいね。」

 

新堂「………比企谷君、この家って、凄いね?」

 

八幡「いや、凄いじゃ収まりませんって。」

 

 

どの言葉だったら収まるんだろう?

 

 



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責任とお詫びの粗品

 

 

森崎父side

 

 

社長からのご厚意でお食事をご馳走になった後は、食後のティータイムへと移っていた。今回の事件の内容も少しだけ話した。だが、まさか駿の奴がここまでするとは思わなかった………私の教育がどれだけ甘かったかが、今にして身に沁みるように思い知った。八幡君……いや、若様、柊お嬢様、涼風お嬢様、そして新堂君には本当に申し訳ない事をしてしまったと思っている。やはりこの責任は私が取るべきだ。

 

 

森崎「社長。」

 

御影「ん、どうしたんだい?」

 

森崎父「その……子供達の前でお話するような事ではありませんが、今回の事件の発端は我が愚息にあります。もし、会社としての立場が危うくなるようであれば、私が全責任を持って退職します。その時が来ましたら「その必要はないよ。」……え?」

 

御影「確かに今回起きた事件は君の息子が引き金になっている。けどね、だからといって僕は君をクビにしたり、辞めさせたりするつもりなんてないよ。何故なら、有能な君を我が社から追い出すわけには行かないからね。そしてもう1つ、君に責任が無いから。そうだろう?」

 

森崎父「し、しかしそれでは息子がしでかした責任を誰が取れと!?」

 

御影「そこだよ、森崎君。」

 

森崎父「……は?」

 

夜十神父「僕はね、そういう連座制がとても嫌いなんだ。先祖が過去に何か過ちをしたというだけで、その子孫が罪を咎められなくてはならないというのがとても嫌いなんだよ。請け負うのは1人だけで十分。君の息子が事件を起こしてしまったのは事実だけど、僕は君が責任を問われるような立場にはしたくはない。何故なら君は彼の父親という立場なだけで、この件にはなんら関わりを持たない。ならば彼がどれだけ言われようと、君達両親が何かを言われる事なんて間違いでしかないと思っているんだ。ましてや彼はもう高校生。やって良い事と悪い事くらいは身についていた筈なんだから。もし中学生だったら、責任を問われていたかもしれないけどね。」

 

森崎父「………」

 

 

何も………何も言い返す事ができなかった。息子の不祥事は親の責任。そう思っていたが、社長はそうは思っておらず、1人の責任はその1人だけに背負わせる、という考え方だった。先程仰られた連座制の考えを嫌っているのが証拠だ。

 

 

御影「だからね森崎君、君がそこまでして責任を取る必要なんてないんだよ。君の息子だってこうなる事を覚悟の上でやったのかもしれないからね。」

 

森崎父「………はい。」

 

御影「うん。さて、この話は終わりにしようか。そういえばもう時間も遅いね。八幡君、新堂君、車で家まで送ろう。流石に高校生がこの時間に出歩くのはね、補導はされないけど、一応の為にね?」

 

八幡「すみません、お願いします。」

 

新堂「お手間をお掛けします。」

 

御影「いいんだよ、このくらいの事何でもないよ。じゃあ、支度が整ったら行こうか。」

 

 

ーーー玄関ーーー

 

 

御影「じゃあ、また少し出てくるよ。」

 

御影「えぇ、気を付けて。」

 

森崎父「若様、お嬢様方、新堂君、この度は本当にご迷惑をお掛けしました。申し訳ございません。」

 

森崎母「申し訳ございません。」

 

八幡「い、いいですよもう。俺も、その………我を忘れていたとはいえ、かなり痛めつけてしまいましたので、その………すいません。」

 

新堂「森崎さん達のせいではありませんので、そんなに気にしないでください。怪我もそんなに大した事ないので。それに謝罪ならお食事の時に頂きましたので。」

 

柊「私達も気にしてませんので!」

 

涼風「どうか、頭をお上げください。」

 

 

………心の広い少年と少女達だ、駿も彼等を見習って欲しかった。

 

 

森崎父sideout

 

新堂side

 

 

御影「いやぁ〜今日は色々あった1日になってしまったね。特に新堂君にはとんだとばっちりになってしまったね。」

 

新堂「え、えぇ……まぁ……」

 

御影「こんな風に喋ってるけどね、本当はすごく感謝してるんだよ。何度も言ってるけど、親にとっては子は宝だからね。」

 

 

夜十神さん達のお父さんが夜十神さん達を本当に大切にしているのがよく分かる。そうでなければこんな言葉は何度も出ない。

 

 

八幡「最初は新堂先輩の家からですよね?」

 

新堂「え、僕の?」

 

御影「うん、ご家族も大変心配しているだろう。だから僕もお詫びしないといけないからね。目の前に息子が怪我をして帰ってきたらビックリするだろうからね。」

 

 

ーーー新堂家ーーー

 

 

僕は普通に扉を開けて入ろうとしたんだけど、夜十神さんがインターホンを鳴らした。玄関の扉を開けた母さんは、当然僕を見て驚いていた。そして夜十神さんが事情を説明して何度も頭を下げていた。僕の両親も納得している様子だったから事なきを得た。

 

 

御影「あっ、申し遅れました。私、夜十神と申します。こちら名刺になります。」

 

新堂母「はい、ご丁寧にどう……っ!!?ナ、ナナナ、【Nigh-Ten・Group】社長!!?」

 

 

やっぱり、その反応になるよね。

 

 

御影「はい、僭越ながら。後、こちらつまらない物ですが、お詫びの品として。新堂君にもね。」

 

新堂「ど、どうも………」

 

 

そして夜十神さんは再度お詫びの言葉を言ってから、車に乗って行ってしまった。そして僕は渡されたお詫びの品を見ると………

 

 

新堂「【Nigh-Ten・Group】専用の小切手100万円分………」

 

 

しかも家族全員分………それとは別に家族にはお菓子や飲み物等が入っていた高級品だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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車登校と依頼

 

 

八幡side

 

 

森崎暴走事件から翌日の朝、何故か玄関の前には黒い車が停まっていた。多分、夜十神家の車だろう。小町の奴、先に行ってて良かった。これ見てたら絶対パニックになってた。だがこうして車でわざわざ俺ん家まで来たのは訳がある。それは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー回想・前日、夜十神家にてーーー

 

 

御影「八幡君。娘達なんだけど、暫くの間は車で送迎する形にする事にしたんだ。その事を君にも伝えておくよ。」

 

八幡「はぁ……まぁ仕方ないですよ、こんな事が起きたんですから。けど何でわざわざ俺に?」

 

柊「そんなの決まってるじゃん!!八幡君も一緒に車で登下校しようって事!!」

 

八幡「お、俺も?」

 

御影「うん……実は柊がね、『八幡君も一緒がいい!!』って言ってね、それで君にも聞いておこうと思ってね。どうかな?」

 

 

その時の柊の目は『分かったって言って!!オッケーって言って!!了解って言って!!イエッサーって言って!!』みたいな事を言っていた。涼風も目を潤せながら自身の両手を握りながら俺を不安気な表情で見ていた。

 

 

八幡「分かりました。目立つのは嫌ですが、もう今更です。俺も乗ります。」

 

柊「いやったぁ〜!!!ありがとう八幡君!!!大好き、大大大大好き♡」ダキッ!

 

 

柊、お前の気持ちのデカさには負けた。

 

 

涼風「八幡さんならそう言うと信じていました。」

 

 

さっきまで物欲しそうな目で見てた奴が何を言う。

 

 

ーーー回想終了ーーー

 

 

っと、このような事があったので、玄関には立派な車が待ってあるのである。

 

 

宮間「おはようございます、若様。どうぞ、お乗り下さい。」

 

柊「おはよ〜八幡君!!」

 

涼風「おはようございます。」

 

八幡「………あぁ、おはよう。」

 

 

………朝から無駄な注目を浴びそうだ。またあのうるさい奴が出てくるんだろうな。本当に勘弁してもらいたい気分だ。

 

 

ーーー学校・教室ーーー

 

 

はぁ………たかが車(見た感じ高級車)で送迎されただけで大袈裟だろう。どんだけ遠巻きでこそこそ話してんだよ。珍しい事か?

 

 

柊「なんか凄い騒がれてたね。」

 

涼風「そんなに珍しい事なのでしょうか?車での送迎が。」

 

八幡「多分今日みたいな雨も雪も降ってない日に送られてくるのが不思議だったんじゃないのか?まぁ、それだけじゃない気もするが。」

 

戸塚「おはよう八幡、夜十神さん達も!」

 

八幡「おう、戸塚。」

 

涼風「おはようございます、戸塚さん。」

 

柊「おはよぉ〜戸塚君。」

 

戸塚「なんか騒がしいけど、何かあったの?」

 

 

……そうか、戸塚はテニス部で朝練やってるってこの前言ってたな。だから知らないのか。

 

 

八幡「いや、ただ俺達が車で登校したってだけだ。そんなに珍しい事じゃないだろ?」

 

戸塚「そうなんだ………けど凄いね、一緒に車で来るくらいなんだね。」

 

柊「だって私の彼氏だもん♪親公認だしっ♪」

 

戸塚「そ、そうだよね………」

 

 

柊、多分戸塚が言いたいのはそこじゃない。涼風もなんか微妙な顔してお前を見てるから。

 

 

ーーー放課後ーーー

 

 

柊「八幡君、帰ろっ♪」

 

八幡「いや、今日は部活に顔を出す。」

 

涼風「?何故ですか?」

 

八幡「昨日何も言わずに飛び出したからな、詳しい話は言わないが、一応な。」

 

柊「そっかぁ………うん、分かった。」

 

涼風「では八幡さん、部活頑張って下さい。」

 

八幡「おう。」

 

 

あの部活で何を頑張れって話だけどな。

 

 

ーーー奉仕部室前ーーー

 

 

ガラガラッ

 

 

八幡「………よぉ。」

 

結衣「あれ、ヒッキー!?」

 

雪乃「比企谷君、今日は火曜日よ?」

 

八幡「いや、昨日飛び出して出てっただろ?だからその代わり、今日参加させてもらうわ。」

 

雪乃「昨日は随分血相を変えて部室から出て行ったけれど、何かあったの?」

 

八幡「……悪いが言えない。」

 

雪乃「そう、分かったわ。」

 

結衣「あっ、そういえば知ってる?昨日すごい数のパトカーが走ってたらしいよ!」

 

雪乃「……そうなの?」

 

結衣「うん、けど何だろうね?泥棒かな?」

 

八幡「陽が落ちるのが早くなったとはいえ、まだ明るい時間なのに泥棒ってのはないと思うけどな。」

 

雪乃「そうね、あり得るとしたら………誘拐、とかかしら?」

 

 

流石は雪ノ下、鋭い勘だ。

 

 

雪乃「けれど物騒ね。私達も気を付けましょう。」

 

結衣「うん!」

 

八幡「あぁ。」

 

 

まぁ、普通は考えつかないよな。自分達と同級生の奴等が誘拐されてるなんて。しかもそれが金持ちのお嬢様と来たもんだ。

 

 

八幡「そういや昨日、俺がいなくなってから依頼は来なかったのか?」

 

雪乃「えぇ、いつも通りよ。」

 

結衣「依頼来ればいいのにね〜。」

 

八幡「良い事だろ、あったらあったで面倒だ。面倒っていう爆弾抱えてくるんだからよ。」

 

雪乃「言い方に棘があるけれど、比企谷君の言う通りね。依頼はないに越した事はないわね。」

 

結衣「えぇ〜そうかなぁ?」

 

 

コンコンコンッ

 

 

………おい、由比ヶ浜がこんな事言うから依頼が来たかもしれねぇじゃねぇか。どうしてくれるんだよ、フラグ建造してくれやがって!要らねぇフラグ建てるんじゃねぇよ!!

 

 

雪乃「どうぞ。」

 

 

ガラガラッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葉山「やぁ。」

 

 



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経験者(?)は語る

 

八幡side

 

 

葉山が挨拶がてらに声を掛けたら、後ろから続くように戸部も入ってきた。しかもなんか困ったような、少し含みのあるような顔をして………何だ?

 

 

雪乃「何か御用かしら?」

 

葉山「ちょっと相談事があって、連れて来たんだけど………」

 

戸部「俺、相談があるんだけど、聞いてもらってもいいべ?」

 

雪乃「……聞いてみない限りには分からないわね。内容を聞かせてはもらえないかしら?」

 

戸部「じ、実は………いややっぱないわ〜。ヒキタニ君にはこういう事話せないでしょ〜。」

 

葉山「頼みに来たのはこっちだろ?」

 

戸部「け、けどよぉ〜………」

 

 

あぁ?なんだコイツ、また喧嘩売ってるのか?別に買う気はないが、あんな言い方されると腹が立つ。

 

 

八幡「……じゃあ俺が居なければいいんだな?なら俺は出てくから、後の事は4人でやってくれ。」

 

結衣「え、ヒッキー!?」

 

雪乃「比企谷君………」

 

八幡「コイツの言い方からして、俺が邪魔みたいだしな。なら邪魔者は居なくなるに限る。その方がやりやすいだろ。」

 

雪乃「………そうね、貴方の言う通りだわ。ではそうしてもらいましょう。」

 

八幡「あぁ、んじゃ色々終わったら適当に呼んでくれ。「待ちなさい、何処へ行くの?」え?」

 

雪乃「出て行くのは彼等の方よ。」

 

葉山/戸部「えっ!?」

 

 

俺もそうだが、葉山と戸部も驚いたような顔をしながら雪ノ下の方を見ていた。

 

 

雪乃「礼儀も知らない、礼節も弁えない、そんな輩の相談をこちらが聞く必要なんてないでしょう。早々にお引き取り頂いて結構よ。」

 

結衣「うん、なんかヤな感じ!戸部っちもさっきのだってヒドイと思うしっ!」

 

 

………沈黙が続いた。

 

 

葉山「……まぁ、俺等が悪いな。戸部、出直そう。俺達で解決すべきだ。」

 

戸部「うぅ〜……いや、もう後には引けないでしょ、コレ!あの、実は俺さ………」

 

 

それから俺達は戸部の依頼したい内容を聞いた。何でも同じクラスの海老名さんに告白したいという。それを聞いた途端、由比ヶ浜の目の色が変わった。

 

 

結衣「マジ!?」

 

八幡「つまり、海老名さんに告白して付き合いたい、と。」

 

戸部「そーそーそんな感じ!!でさ、フラれるとかキツいわけ!」

 

八幡「はぁ………フラれたくないね〜。」

 

結衣「なんかそういうのすっごく良いじゃん!応援するよ!!」

 

八幡「………(俺は柊から告白されてそれを受けたが、アイツはどんな気持ちで告白したんだろうか?当然生半可な気持ちではない筈。むしろ柊に関してはそんな考え方が出来ないと言ってもいい。中学があれだったからな。)」

 

葉山「やっぱり、そう簡単にはいかないかな?」

 

八幡「俺には何とも言えん。」

 

雪乃「悪いけれど、お役に立てなさそうね。」

 

結衣「えぇ〜良いじゃん!手伝ってあげようよ!」

 

雪乃「………」チラッ

 

 

………俺?

 

 

結衣「うぅ〜。」

 

 

なんで俺を見るんだよ?はぁ〜……平塚先生からピンチヒッター的なポジションも受けてるから、此処は少し俺も出張らないとな。

 

 

八幡「……戸部、1つ確認だ。お前はその告白、どうしたいんだ?」

 

戸部「………どういう意味だべ?」

 

八幡「色々あるだろ。必ず告白するとか、無理でも告白するとか、そんなだよ。」

 

戸部「あぁそういう事だべ!やっぱフラれずに告白成功させる事っしょ!」

 

 

………

 

 

八幡「そうか……雪ノ下、由比ヶ浜。」

 

雪乃「?」

 

結衣「ん、何ヒッキー?」

 

八幡「俺はこの依頼、受けるべきではないと主張する。」

 

 

……………当然、静かになるよな。

 

 

結衣「えぇぇ〜!!?」

 

戸部「ど、どうしてだべ!!?」

 

葉山「っ!?」

 

雪乃「………」

 

八幡「(よし、柊には悪いがここは……)戸部、俺は中3の修学旅行の時に柊に告白した。」

 

戸部「お、おぉ!時期重なるべ!」

 

八幡「あぁそうだな。まぁそれはどうでもいい。それと告白する理由もなんでもいい。単純に好きになったからだとする。当然俺はその時、初めての告白だった。するかしないかも考えたし、フラれた時の事も考えた。結果はOKだったから良かったとも言えるだろう。」

 

戸部「う、うん……で、それが何だべ?」

 

結衣「そうだよヒッキー、どういう事?」

 

八幡「………俺は絶対にフラれないようにしようとは考えてないし、絶対に成功してやるとも思ってないし、必ず付き合ってやるとも思ってない。俺が言いたい事分かる?」

 

戸部/結衣「………?」

 

 

マジか………コイツ等どうやって総武高合格したの?雪ノ下は最初の説明で理解してたし、葉山も2回目の説明で理解してたぞ。この2人現文の気持ちを表す問題、絶対に出来ないタイプだ。

 

 

八幡「つまりだ、そん時の俺は柊と付き合いたいとは思った。けどフラれないようにしようとは思ってない。お前のようにフラれないようにするってのは、相手の意思関係なく付き合ってもらうって言ってんのと同じって事だぞ?」

 

戸部「っ!!いや、でも俺は………」

 

八幡「そんなつもりで言ったわけじゃねぇって事くらいは分かる。けど今お前が言った『フラれず告白成功』ってのはそういう事だ。相思相愛なら可能だろうが、そうでないのなら強引、脅迫でもしない限りはそんな事不可能だ。」

 

戸部「お、俺………」

 

八幡「お前の気持ちを否定する気はないが、フラれないようにするって考えはなくした方がいい。成功を前提とした告白よりも、成功も失敗も過程に入れた告白の方が好ましいと俺は思うぞ。フラれたとしても『諦めねぇから!』とか『振り向かせてみせるから!』とかそういう根性あった方が、向こうも振り向いてくれると思うぞ。(多分。)」

 

 

俺、告白してないのに、こんなペラペラと言っていいんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戸部「ヒキタニ君っ!!!」

 

八幡「な、何だよ……」

 

戸部「さっきの依頼、取り消して欲しいっしょ!!変更って可能だべ?」

 

八幡「………それはウチの部長に聞け。」

 

雪乃「………内容は?」

 

戸部「好きな人に告白したいんだけど、上手くやれるかどうか不安だからフォローをして欲しいんだべ。どうだべか?」

 

 

ほう……フォローをする、か。

 

 

雪乃「………どうかしら、比企谷君?」

 

八幡「あぁ、それならいいと思うぞ。奉仕部の理念には反していないと思うぞ。」

 

雪乃「ではその依頼、受けましょう。」

 




葉山が空気に………


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内容とプラン

 

 

八幡side

 

 

戸部の依頼を受ける事にした俺達。正確な内容はあっちのグループ内で行く所が決まり次第って事になっているから、その辺はまた後日ってところだな。けど、こりゃまた面倒そうな依頼だ。俺と由比ヶ浜は兎も角、雪ノ下は別クラスだからそんなに動けない。それに俺も柊達と見回りたいから、当日にはフォローというか、サポートにも回りたくはない。折角の修学旅行なんだ、俺は満喫したい。

 

 

雪乃「それで、貴方はどうするの?この依頼の参加については?」

 

八幡「ん、俺?できれば参加はしたくはない。こんな面倒な依頼を受けたら、楽しむどころの話じゃなくなる。もしそれで柊達の機嫌が悪くなってみろ、修学旅行が終わったら俺は2人のご機嫌取りをしなけりゃならないんだぞ?回るところが決まったら適当にアドバイスをする。そんなのでいいだろ。」

 

結衣「えぇ〜そんなのつまんないじゃん!やるんだったらもっと応援してあげようよ!」

 

八幡「あのね、告白ってのは本来手伝ってあげるようなものじゃねぇのよ?他人の恋愛事にどうして外様同然の奴が関わろうって思えるんだよ?応援は分からなくもないが、手伝うのなら最低限にするべきだと思ってる。」

 

雪乃「貴方ならどうするの?」

 

八幡「例えば、初日の清水寺あるだろ?もしおみくじで大吉引いたら高い所に結ぶとか、地主神社にさりげなく行くとか、音羽の滝で延命長寿か学業成就の水を汲んでやるとか。」

 

結衣「最後のだけおかしくない!?何で恋愛成就じゃないのさ!?」

 

 

いやいやそうだろ、恋愛ばっかだったら勘付かれるって。え?柊?柊は行きまくってた。いや、俺も告白されるまではあんま意識してなかったけどよ、関わりあるのって俺だけだったし?可能性はあるかもって思ってたりはしたけどよ。

 

 

八幡「そのくらいのアドバイスの方がちょうど良いだろ。下手にフォロー入れまくってたら、返って向こうにも気付かれる。場所によってどうするべきかを教えておくのが1番だろ。」

 

雪乃「……そうね、1番最悪なのはその行為によって告白されるのが気付かされるって事だものね。比企谷君、私と由比ヶ浜さんの方でもある程度調べておくから、貴方の方でも何か調べておいてくれないかしら?」

 

八幡「あぁ、分かった。」

 

 

それからは特に誰も来る事なく部活が終わり、そのまま帰宅した。だが途中で柊から電話が来た。

 

 

八幡「もしもし、柊?」

 

柊『八幡くぅ〜ん、部活終わった?』

 

八幡「あぁ、終わった。今家に帰ってるところだ。声が聴きたくなったのか?話し相手か?ただ電話しただけか?」

 

柊『八幡君とお話をする為に電話をしました♪』

 

 

おぉ、俺の何気ない3つ質問の返しを全て返された。しかも悪意を感じさせない声で。100点です。

 

 

八幡「そうか。けど特に話題とかないだろ、ただ話してるだけでいいのか?」

 

柊『うん!私はそれだけでも嬉しいよ♪だって八幡君とお話ししてるんだもん♪好きな人とお話しできてるんだもん♪』

 

八幡「………そ、そうか。ところでよ、柊は修学旅行で行きたい場所とかあるのか?中学でも行ったけどよ、また行きたい場所とかあるんじゃねぇのか?」

 

柊『まぁね〜。向こうなんて行く機会がまず無いから、どこも行きたいっていうのが感想なんだよね。それじゃダメ?』

 

八幡「俺1人ならいいが、今回はダメだな。」

 

柊『あっはは!八幡君はやっぱり優しいなぁ〜。でもそうだね、私も色々見ながら決めたいから、絶対に行きたいって場所はないかな。』

 

 

俺達が自由にできるとしたら、2日目の自由行動くらいだ。この日は俺と柊、涼風はまだ聞いていないから分からないが、多分この3人で回る事になると思う。だが行きたい場所かぁ………そういや俺もあんま考えてなかったな。

 

 

柊『八幡君は?何処かないの?』

 

八幡「いや、俺も今考えてた。そしたら思いの外、よく考えてなかったのが分かった。俺も帰ったら調べてみる。」

 

柊『どうせなら一緒に調べたいけど、別々の方が行きたい場所も増えるしね!じゃあ私も涼風と一緒に京都について調べておくから!明日、勝負ね〜♪』

 

 

何の勝負をするんだか……まぁいいか。

 

 

八幡「それ、負けたらどうなるんだ?」

 

柊『負けた人は………なんと、相手の頭を撫でる!!これでどう!?』

 

八幡「勝敗の決め方は?」

 

柊『………』

 

八幡「……?おい、柊?」

 

柊『この勝負、八幡君の勝ちです!!勝利した八幡君は明日、私の頭を撫でてもらいます!!』

 

八幡「は?」

 

柊『明日、約束ね!』

 

 

要するに、『勝敗の決め方分かんないから、とりあえず八幡君の勝ちにしちゃって頭撫でられちゃえっ!!』的な事思ったんだろうな。しかもちゃっかり自分に得があるように仕向けてるし。

 

 

八幡「………車の中でいいか?」

 

柊『もっちろん!!物足りなかったら、学校着いてからも撫でていいからねっ♪』

 

八幡「調子に乗り過ぎだ。兎も角、ちゃんと調べとけよ?明日になって携帯で京都のサイトとか見てたら、頭を撫でるじゃなくて、掻き回してボサボサにしてやるからな?」

 

柊『八幡君が直してくれるのならいいよ?』

 

八幡「遊んでやろうか?」

 

柊『それも楽しそうっ♪ふふふふっ、じゃあまた明日ね、ばいばーい♪』

 

八幡「おう、また明日な。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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本心とお小遣い

 

柊side

 

 

八幡君と一緒に車登下校するようになってから数日が経った。登校の時には勝負(?)に負けたから頭を撫でられて、下校の時には妹の涼風のおねだりもあったから姉妹揃って撫でられ、それから連続で頭を撫でられ登下校が続いた。いやぁ八幡君の撫で攻撃は効果抜群だよ〜♪例えるなら八幡君の【撫でる】が《ほのおタイプ》の攻撃なら、私と涼風はどっちも《くさタイプ》と《はがねタイプ》だから、効果が4倍なわけ!私達は八幡君に【あまえる】攻撃と【メロメロ】攻撃をしてるんだけど、撫で攻撃の攻撃力は下がらないし、メロメロ状態にもならないから、正確に気持ち良いところを撫でてくる………凄いテクニシャン♡

 

 

そんなこんなで修学旅行が近づいてきて、八幡君と涼風と私とで一緒に回る所を相談したんだけど、ものの全部被っちゃった!事前に調べておいたのも全部!流石は私達だね!えっへん♪

 

あっ、涼風も一緒に回る事になったんだ!だって涼風ったら『八幡さん以外の男性と一緒に回る気はありません!』って言うんだよ?これさ、結婚できるのかな?八幡君と重婚とかやめてね?お姉ちゃん怒るからね?

 

 

八幡「んじゃあ回るルートはこんなもんでいいか、2人共?」

 

柊「異議な〜しっ!」

 

涼風「問題ありません。」

 

八幡「じゃあこの通りな。後は何があるか?」

 

柊「あるにはあるけど、此処じゃ目立ち過ぎるから帰る時になったら渡すね。」

 

八幡「渡す?」

 

涼風「はい。お父様とお母様から八幡さんに渡すようにと仰せつかっていますので。」

 

八幡「一体何だ?欲しい物リストか?いや、おじさんの職業柄それはないか………だとしたら何だ?サッパリ分からん。」

 

 

ふふふっ、悩んでる悩んでる♪お父さんからの贈り物がなんなのかは分からないみたい。まぁ確かに、お父さんからアレを貰うだなんて、予想も出来ないよね〜。

 

 

結衣「ねぇヒッキー、ちょっといい?」

 

八幡「ん、何だ?」

 

結衣「えっとね、昨日の部活の時に姫菜が来たんだよね。」

 

八幡「………誰?」

 

結衣「だから姫菜!」

 

八幡「苗字を言え、苗字を。」

 

結衣「クラスメイトの名前くらい覚えるし!海老名姫菜!姫菜が部室に来たんだ。」

 

八幡「ほぉ〜、海老名さんって姫菜って名前なのな。」

 

結衣「なんかね、よく分からないんだけど、グループの男子の事を気にしてたっぽいんだよね。今の関係が好きとか、今が気に入ってるって。」

 

八幡「………」

 

 

あっ、八幡が考え込んでる……もしかしてこの前の火曜日に変な依頼でも来たのかな?

 

 

結衣「ねぇ、ヒッキーはどう思う?」

 

八幡「さぁな、俺にも分からん。取り敢えず適当に男同士でくっ付き合わせとけば解決すんだろ。」

 

結衣「最悪な解決法だ!?けど、やっぱりヒッキーでも分かんないよね。」

 

八幡「俺はその場に居たわけじゃないからな、居合わせていたのなら少しは分かったんだろうが、そうでないのなら流石にな。」

 

 

………嘘、八幡君分かったって顔してる。

 

 

結衣「そっか。うん、分かった。聞いてくれてありがと、じゃ。」

 

八幡「………」

 

涼風「八幡さん、本当は理解していたのではありませんか?」

 

八幡「……お前達2人ってエスパータイプ?何で分かるんだよ?」

 

柊「そりゃ八幡君とは長い付き合いだもん♪一緒に居た歴5年で彼女になった歴がもうすぐで2年に突入♪もうすぐだよ!」

 

八幡「じゃあおめでたい記念日にお土産買って行かなくちゃな。」

 

涼風「それで八幡さん、先程の会話で何が海老名さんの何を理解出来たのですか?」

 

 

おっと、あまりの嬉しさに会話の流れを脱線しちゃってた!これはウッカリ。

 

 

八幡「あぁ。海老名さんは告白されるのを望んでいない。つーよりかは、今のグループ内の関係が変わるのを良しとしていないんだろう。多分奉仕部の2人には分かりづらい言い方をしたんだろうな。」

 

柊「だからあんな言い方をしたって考えてるの?」

 

八幡「あぁ。まぁそんなところだ。」

 

 

八幡(まぁ、それも次の月曜日にならないと分からない。さっきの由比ヶ浜の説明だけでは要領を得ない部分もあるだろうしな。雪ノ下にも聞いておこう。)

 

 

ーーー放課後・校門前ーーー

 

 

「お疲れ様です、柊お嬢様、涼風お嬢様、若様。お迎えにあがりました。」

 

涼風「すみません、ご苦労様です。」

 

「とんでもございません。では、お乗り下さい。若様のご自宅までお送り致します。」

 

 

(((若様を直す気はないんだろうなぁ………)))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「はい、八幡君!コレ、お父さんとお母さんから八幡くんにって!」

 

八幡「………ねぇ、この茶色い封筒何?100%予想はついてるんだけどさ、とりあえず聞いていい?これ何なの?」

 

柊「さぁ?私も中見てないから分かんない、予想ついてるけど。」

 

八幡「………うわぁ。」

 

 

八幡君が封筒の口を開いて中を確認してみたら、そこには諭吉さんが10人も居るんだけど。八幡君驚いた顔してる!多分(こんなに使いきれねぇよ。)って思ってるんだろうなぁ〜……ん?なんか落ちた、なんだろうコ

 

 

あ…………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀行のカードだ。しかも手紙付きで。

 

 

______________________________________________

 

八幡君へ

 

この前の事件の謝罪と感謝を含めて贈るよ。中には500万円入っているから、困った時には使いなさい。後、封筒に入っている10万円は森崎君達からだよ。森崎君達曰く『慰謝料として贈るので、好きに使ってください。』との事だから好きに使うように。

 

夜十神 ○○より

______________________________________________

 

 

八幡「………こんなに要らない。」

 

 

私達も八幡君からお手紙を貰って見たけど、確かにこんなに要らないと思う。お父さん、学生を何だと思ってるんだろう?

 

 

 



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修学旅行、前夜と始まりの朝

 

 

八幡side

 

 

小町「はいっ、お兄ちゃん!コレーッ♪」

 

八幡「………」

 

小町「小町オススメお土産リスト〜ドンドンパフパフ〜!第3位っ!!んっ!」

 

この妹はまぁた変なサプライズ形式でこういう事しちゃって。お土産リストって何ぞ?いや見れば分かるけどさ、口で言えばいいのに。

 

 

八幡「……生八ツ橋。」

 

小町「元祖でも本家でも本店でもいいでぇ〜す♪第2位っ!!んっんっ!」

 

八幡「……定番、あぶらとり紙。」

 

小町「こちら、ママンの分もお願いします!!そして待望の第1位はぁっ!!」

 

 

………コイツ、またふざけた事書きやがって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………彼女との思い出。」

 

小町「1番のお土産は、お兄ちゃんの素敵な思い出と、柊さん達のお話だよっ♪」

 

 

あざとかわいい……だがこの妹、絶対帰ってきたら聞き出す気満々だなこりゃ。嫌でも予想できちゃう。

 

 

八幡「………思い出ができたとしても、お前に言うかどうかは俺次第だけどな〜。まぁ取り敢えず3位と2位のお土産は分かった。買っとくな。」

 

小町「うん、お願い!」

 

 

ーーー翌日ーーー

 

 

柊「八幡君おっはよう♪」

 

涼風「おはようございます、八幡さん。」

 

八幡「おう、おはようさん………今日は車じゃねぇんだな。」

 

涼風「はい、今日は八幡さんと一緒にのんびり行こうというお話になったので、こうして来た所存です。あっ、ここまでの道のりは車でですけど。」

 

八幡「そうか。まぁ、じゃあ行くか。」

 

柊「おぉ〜♪」

 

涼風「はい。」

 

 

ーーー千葉駅ーーー

 

 

八幡「はぁ〜やっと着いたな。けどまだ全員ではなさそうだな。」

 

柊「そうだね。じゃあさ、今の内にルート確認しておこうよ。ほら、途中で良いお店とかあるかもしれないしさっ♪」

 

八幡「それもそうだな、んじゃあ「八幡〜!」ん?おぉ戸塚か。」

 

戸塚「おはよう八幡!楽しみだね、修学旅行!」

 

八幡「そうだな。」

 

戸塚「そういえば八幡はさ、2日目の自由行動って、どうするか決めてる?」

 

八幡「あぁ、この「私達3人で京都を回る予定なんだ〜♪」………というわけだ。」

 

戸塚「そっかぁ。八幡とも回ってみたかったけど、彼女さんが1番だもんね。じゃあ今日の班行動で楽しもうね!」

 

八幡「あぁ、だな。」

 

戸塚「じゃあ、また後でね!」

 

 

そう言って戸塚は離れて行った。多分同期のテニス部の連中の所だろう。あれから部員も増えたみたいだしな。

 

 

涼風「戸塚さんはやっぱり良い方ですよね。」

 

柊「うん。戸塚君なら大丈夫そうかも。」

 

八幡「まっ、戸塚には悪意ってもんがこれっぽっちも見えないしな。そればかりか善意しか見えないまである。」

 

 

時間になりある程度集まってから点呼を取り、全員いる事が確認されて、漸く電車に乗れた。

 

 

ーーー電車内ーーー

 

 

柊「涼風、窓が良い?」

 

涼風「よろしいのですか?」

 

柊「うん♪涼風は景色を眺めるのとか好きでしょ?なら窓側に座っていいよ。八幡君は通路側ね!」

 

八幡「あれ、中お「お姉様?」う……oh。」

 

柊「じょ、冗談!冗談だからそんな目で見つめるのやめて!大丈夫、八幡君はちゃんと真ん中だから!ね?独り占めしたりしないから、ね?」

 

涼風「………ならば許します。」

 

柊「ほっ………」

 

八幡「おい柊、あんまり涼風をからかうなよ?お前が負けるのは確定なんだから。」

 

柊「確定なの!?」

 

 

いやそりゃそうでしょうよ……今までの勝敗なんて殆どが涼風の完勝だぞ?それにお前が勝てたのなんて、俺を引き合いに出せた時くらいだろ。

 

 

柊「あっ、八幡君、やってるよ。」

 

八幡「ん、何がだ?」

 

柊「ほら、この前言ってたグループの人達。」

 

 

確認してみると、由比ヶ浜の奴が頑張って座席指定とかしていた。だがその頑張り虚しく、海老名さんが由比ヶ浜の背中を押して座席を決めてしまった。

 

 

柊「あからさまだね〜。」

 

八幡「まぁ仕方ないんじゃねぇの?2人きりって訳じゃねぇんだしよ。」

 

柊「それを言うなら私と八幡君の中学の時もそうだったじゃん!」

 

八幡「いや、アレとコレを引き合いに出すなよ。」

 

柊「それもそうだね〜。」

 

八幡「それと、もういいからこの体勢から解放してくんない?自分からやったとはいえ少しキツい。」

 

柊「八幡君、膝枕って知ってる?」

 

八幡「………知ってるが?」

 

柊「じゃそういう事だから♪」

 

 

待て待て待て待て!おかしい!説明も何も無かったよ!?ただの会話じゃん!何故その流れで膝枕が出来ると思った!?

 

 

八幡「いや、この体勢で膝枕は無理だって。俺が90度身体を傾けないと出来ないから。」

 

柊「ちぇ〜、仕方ないかぁ………けど八幡君、眠くなったら言ってね?膝枕でも肩枕でも好きなのをしてあげるから!」

 

八幡「………取り敢えず分かった。」

 

涼風「八幡さん。その、私にやって頂いても構いませんからね?」

 

八幡「何故そこで張り合う?」

 

涼風「お、お義兄様に安眠を………」

 

 

この姉妹は………見ろ、向かいの席にいる戸塚を。困ったような顔をしながら頬を赤らめて苦笑いしてるじゃねぇか。貴女達はもう少し遠慮という言葉を覚えなさい。いや、今更もう手遅れ?

 

 

 

 

 

 

 

 



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占い

 

 

涼風side

 

 

ーーー清水寺ーーー

 

 

着きました!日本で最も歴史の風格を感じさせる京の舞台に!この場所に来るのは2度目ですが、やはり良いものですね。集合写真を撮った後はそれぞれの班で行動するようにとの指示があった。私達の班は八幡さんとお姉様と私、戸塚さんと川崎さんの5人グループです。お土産は明日でも買えますし、此処では何をしましょうか………一足早く買ってもダメではありませんが、ちゃんと吟味したいですし、楽しみの時間をあまり減らしては迷惑ですからね。

 

 

柊「皆はさ、何か欲しい物とかないの?模型とか刀とか着物とか。」

 

八幡「見て回るのも観光だが、どうせなら何か1つでも買っておきたいよな。何が良いか………」

 

戸塚「僕はお土産かな。2日目は部活の友達と回る予定だから、なるべく皆の意見に合わせながら行動したいしね。」

 

沙希「あたしもかな。お土産を見てみたいかも。弟達にも何か買ってあげないといけないから。」

 

涼風「良いですね、姉弟愛が強いというのは。やはり歳が少しでも離れていると、そういうものなのでしょうか?」

 

八幡「どうなんだろうな?まぁでも、お節介とかはかきたくなるもんだとは思うぞ。」

 

 

私とお姉様の年も離れていたら、そうなっていたのでしょうか?少し考えにくいですね。

 

 

柊「じゃあ、お土産屋さん見てみよっか!私達は別に明日でも大丈夫だしね。ね?」

 

八幡「まあ、確かにな。」

 

涼風「はい。」

 

柊「じゃあ行ってみよ〜♪」

 

戸塚「お〜♪」

 

 

お姉様、私達にそのような真似はできません。恥ずかしいです。

 

そして私達は色々な所を見て回っては立ち止まって物色したりしました。やはり建物も昔ながらの造りなので、不思議と懐かしさを覚えますね。このような落ち着いた雰囲気はとても好きです。

 

 

戸塚「どれが良いかなぁ……お父さんはこっちが好きそうだけど、お母さんはこっちなんだよなぁ。」

 

沙希「大志には………ううん、京華も食べられるのが理想だし、やっぱりどっちも?」

 

 

ふふふっ、悩んでいるみたいですね。

 

 

八幡「お前達はいいのか?お土産選ばなくて。」

 

柊「大丈夫っ!私は2日目に八幡君と涼風の3人で選ぶしね。その方が良いの選べそうっ♪」

 

涼風「私は皆さんに時間を有意義に使って欲しいので、この場は遠慮しました。それに、理由はお姉様と一緒です。八幡さんとなら、良いお土産を選べると思ったので。」

 

八幡「俺に対する信頼がヤバ過ぎるんだけど?」

 

柊「無いよりかは良いじゃん♪」

 

八幡「まぁそうだけどよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

占い師「あの、もし?」

 

3人「?」

 

 

そこに居たのは少しだけ怪しげな格好をしたお婆さんでした。黒いローブのような服を着ていて、頭巾も被ってました。

 

 

占い師「よろしければ占いでも如何ですか?」

 

柊「占いかぁ………」

 

八幡「やった事ねぇな、そういうの。」

 

涼風「そうですね。」

 

柊「じゃあやってもらおうよ!お幾らですか?」

 

占い師「いえ、私からお誘いしましたので、お代は結構です。誰から占いましょう?」

 

柊「じゃあ私からお願いします。占って欲しいのは、修学旅行を楽しめるかどうかで!」

 

 

お姉様、それは私達次第な気もしますが………まぁいいでしょう。占い師のお婆さんは水晶玉にかざしながら動かして、少ししてから動かすのをやめて、膝の上に起きました。

 

 

占い師「修学旅行。貴女はとても楽しめると思います。とても良い兆しが出ています。しかし、良からぬ事態が予期する方向で1つと予期せぬ方向で1つと舞い込んでくる兆しもあります。」

 

柊「良からぬ事態が2つ………」

 

占い師「後ろのお2人にも関係している事のようですね。そちらの方は姉妹ですか?」

 

柊「妹です。」

 

占い師「妹さんにも貴女と同じ兆しが見られますね。これは珍しい………」

 

 

良からぬ事態というのが気になりますが、どうやら私は占いをしなくても済むようですね。良いのだか悪いのだか分かりませんが。

 

 

占い師「次はそちらの方ですね。」

 

八幡「はい、じゃあ同じ内容でお願いします。」

 

占い師「分かりました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

占い師「………成る程、貴方にとってこの修学旅行は思い出には残るでしょうが、それは良悪どちらとも言えるものとなります。」

 

八幡「……どちらとも?」

 

占い師「良い兆しが出ているのは間違いありません。先程の女性と同じ波動を感じました。それと同時に貴方には良からぬ兆しが3つ確認されました。内1つは先程の女性と同じ物でした。予期せぬ方向で舞い込んでくる形です。」

 

八幡「じゃあ残り2人は俺の中で心当たりのある事態って事ですか?」

 

占い師「その通りです。」

 

八幡「………(心当たりがあり過ぎる。だが、どれと取ればいいのか分からない。)」

 

占い師「これにて占いは終了になります。お付き合い頂き、ありがとうございました。」

 

 

お婆さんはそう言うと、次のお客さんを呼びに行ったのか、その場を去って行きました。しかし、よく分からない占いでした。予期する事態と予期せぬ事態………それも1つずつ。一体、何なのでしょうか?

 



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我慢が利かず

 

 

八幡side

 

 

今日1日の予定も残り僅かとなり、今俺達は泊まる予定の宿泊施設で晩飯を食べている。そして何故か先生達の粋な(?)計らいによって、同じクラスでなら好きな人と食べていいという事になったのだ。そうなったら俺の所に来る奴なんて限られてる。真っ先に来たのが柊と涼風でその後に戸塚と川崎が来た。グループじゃん。仲良しだと思われると思うだろうが、別に構わないよな。それに、誰も同じ班だってのは知らないだろうし。

 

その時、何故か由比ヶ浜と葉山と海老名さんが俺の方を見ていた。俺は気付かないふりをしながら様子を見てたが、特に何かをする素振りはなかった。由比ヶ浜、俺はもう告白の手伝いをしてやるつもりはないぞ?俺はもう戸部にアドバイスはしてやったしな。葉山、お前が何故俺を見ているのかは知らんが、こっち見んな。海老名さん、知らんもんは知らん。一応月曜に由比ヶ浜と雪ノ下から聞いてはいるが、行動するつもりはないからな。それに俺は依頼もされてねぇしな。

 

まぁそんなこんなあった晩飯だが、メニューはすき焼きで空腹という事もあり、無駄な事はすぐに忘れて食欲の進むままに箸を進ませる事ができた。だが隣の2人には物申したい。他の目線もあるから、食べさせる行為は謹んで欲しい。

 

 

そして食後………

 

 

ーーー旅館・宿泊部屋ーーー

 

 

八幡「だから此処でおみくじとか引いたのなら、東の方角の結ぶ所に結んどけ。」

 

戸部「いやぁヒキタニ君マジ助かるわ〜!」

 

八幡「少し調べりゃ分かるだろ、こんなの。」

 

戸部「いやいや今の俺ってテンパってんじゃん?」

 

八幡「おう、それは知らんが見てれば分かる。」

 

戸部「でさ、いざ目の前にすると頭ゴッチャになるわけよ〜。こんなの無理だって〜!」

 

八幡「成る程、じゃあこれも無駄になる可能性が高いと?アドバイスやめよっか♪ん?」

 

戸部「ヒキタニ君機嫌良さそうに言わないで欲しいっしょ!無駄にしないからもっとアドバイスおなしゃす!」

 

 

はぁ………まぁいいか。

 

 

八幡「分かったよ。んじゃあ『prrr…prrr…』ん?ちょっと待て、電話だ。もしもし?」

 

柊『あっ八幡君、こっちの部屋に来ない?』

 

八幡「………お前何言ってんの?行けるわけねぇだろ。男子と女子の階違う上に教師も居るのにどうやってそっちに行けってんだよ?」

 

柊『えぇ〜八幡君と会いたい〜!』

 

八幡「分かった分かった、じゃあロビーで待ち合わせにしないか?そこなら心配ないだろ。」

 

柊『オッケー♪』

 

 

………ったくアイツは本当に。俺に死ねと言いたいのか?無理に決まってるだろ、女子部屋に行くなんぞ。まぁいい、取り敢えず支度するか。

 

 

八幡「戸部、悪いが急用だ。一応まとめたメモあるからこれ見とけ。後は自分で調べてみろ。」

 

戸部「ヒキタニ君それヤバいっしょ!けどマジヤベ〜わっ!サンキューっしょ!」

 

 

さて、行くか。

 

 

ーーーエレベーター前ーーー

 

 

八幡「………」

 

 

エレベーター「ドアが開きます。」ウィィー

 

 

八幡「あ……」

 

柊「あっ♪」

 

八幡「………乗らせて頂きます。」

 

柊「はい、どうぞ♪」

 

 

エレベーター「ドアが閉まります。」ウィィー

 

 

柊「やったぁ♪ロビーに行く前に八幡君と会えた〜♪やっぱり私達は赤い運命の糸で結ばれてるんだね♪流石は私達!」

 

八幡「色々と突っ込みたいが、確かに運命かもな。エレベーターで会ったのは。」

 

 

ーーーロビー売店前ーーー

 

 

八幡「やっぱマッ缶はないか……」

 

柊「アレやめなよ本当に。涼風も偶に飲んでるけどさ、あれ甘過ぎるもん。」

 

八幡「いいんだよ別に。」

 

柊「全くもう……あれ?あそこに居るの雪ノ下さんじゃない?」

 

八幡「……だな。パンさん見てる。」

 

 

アイツ好きだからな〜しかも京都限定だから欲しいんだろうな………あっ、こっち気付いた。

 

 

雪乃「奇遇ね、比企谷君、夜十神さんも。」

 

八幡「あぁ、そうだな。」

 

柊「うん。でも意外、雪ノ下さんってこういう売店には来ないと思ってたんだけど。」

 

雪乃「クラスメイトの話の矛先がこちらに向いてきたのよ。どうしてああいう話が好きなのかしら?」

 

柊「でもそれって興味を持たれてるって事なんだから、仲良くしてあげたら?」

 

雪乃「その話題が奉仕部の事で、比企谷君と関係しているのよ。」

 

柊「雪ノ下さん、貴女の判断は正しいです!」

 

 

掌返すな、このおバカ。

 

 

雪乃「それで、貴方達こそ何をしているの?」

 

柊「会いたくなったから待ち合わせしてたんだ!そしたらエレベーターで会っちゃったからさ♪」

 

八幡「柊が俺に女子の部屋に来ないって言い出したから、此処を待ち合わせにしたんだよ。」

 

雪乃「夜十神さん、貴女………」

 

柊「だってしょうがないじゃん!八幡君と会いたかったんだもん!それにこの修学旅行では八幡君がこんなに近くに居るっていうのに、一緒に寝られないんだよ!?とんだ拷問だよ!!」

 

八幡「……悪い、今の柊は少なからず暴走中だ。発言とかは気にしなくてもいい。」

 

雪乃「そうさせてもらうわ。話について行こうとしたら大変な目に遭いそうだもの。」

 

八幡「それが正しい判断だ。」

 

柊「ちょっと、それ酷い!」

 

 

いや、正論だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡/柊/雪乃「あっ………」

 

平塚「あぁ!?」

 

 

 

 

 



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離れたくない!

 

 

柊side

 

 

ーーータクシー内ーーー

 

 

平塚「いやぁ〜美味かったなぁ〜!」

 

雪乃「凶暴な旨味でしたね………」

 

八幡「絶妙だな。」

 

柊「私、他のラーメンにしておいて心底良かったって今程思った事はないよ。」

 

雪乃「それにしても、何故私達も同伴を?」

 

柊「教師がこんな事していいんですか?さっきだってコート着てとサングラスまで付けてたし。」

 

平塚「いいわけないだろ、だからこうしてラーメンで口止め料を払った。」シレー

 

雪乃「その行いはさらに教師らしからぬのでは?」

 

 

うん、私もそう思った。

 

 

八幡「バレたら叱られますよ?」

 

平塚「叱られるのは悪い事ではないさ、誰かに見られているという証だ。君達もちゃんと見ているから、幾らでも間違いたまえ。」

 

 

へぇ〜………

 

 

柊「じゃあ学校でもっとイチャイチャしてもいいですか?何なら今でも!?」

 

平塚「比企谷、お前は殴られたいのか?」

 

八幡「何故俺?」

 

雪乃「比企谷君、貴方に限って無いとは思うけれど、今そんな事しないで頂戴ね?」

 

八幡「しねぇよ………」

 

柊「けどこうするくらいなら良いよね〜♪」ダキッ

 

 

えへへ〜あったかぁ〜い。八幡君の匂い〜♪

 

 

平塚「比企谷………」

 

八幡「だから何で俺なんですかね?」

 

 

ーーーコンビニーーー

 

 

平塚「さて、私は酒盛り用の酒を買ってくる。ではな、君達も気をつけて戻れよ。」

 

 

平塚先生はコートは着ずにサングラスだけを付けていた。あの先生、カッコ良いけどなんか残念なんだよねぇ〜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「♪〜」ムフー

 

八幡「柊さんはどこでも通常運転なんですね?」

 

柊「だって側に八幡君が居るんだもん、当たり前じゃん♪むしろ、そうしない理由が絶対にないと思わない?」

 

八幡「………そうだな。」

 

柊「あぁ〜このまま八幡君の部屋か私の部屋まで行って一緒に寝られないかなぁ………」

 

八幡「やめろよ、本当にやめて。先生に聞かれたらそれアウトだからな?」

 

柊「ふふふっ♪ん?雪ノ下さん、どうしたの?」

 

雪乃「い、いえ、別に………」

 

八幡「ここは右な。」

 

雪乃「そ、そう………」

 

柊「……ねぇ、もしかして雪ノ下さんって方向音痴なのかな?」

 

八幡「あぁ。本人は認めてないけどな。」

 

柊「ふふふっ♪雪ノ下さんももっとこっちに来なよ〜。そんなに離れてたら迷子になるよ?」

 

雪乃「………ついて歩くから結構よ。」

 

柊「えぇ〜八幡君の手あったかいよ?」

 

雪乃「何故それを引き合いに出すのかしら?」

 

柊「何となく!けど残念、八幡君の手も腕も私の永久予約が入っているから握らせないよ♪」

 

雪乃「私は別に比企谷君の手を握りたいわけではないのだけれど。」

 

八幡「気にすんな。柊が暴走してるだけだ。寝て明日になれば治る。」

 

柊「ねぇ、私の事を頭のネジが飛んでる人みたいに言うのやめてよ〜!私正常だもん!」

 

八幡「そうか?じゃあ腕は解放させて「やっぱり病気!今私まともじゃないの!八幡君の腕に抱き着いてなければ正気を保てない!!」……ホント調子の良い奴だよ、お前は。」

 

 

調子の良い奴でいいも〜ん!それで八幡君の腕に抱き着いていられるのなら問題な〜し♪

 

 

雪乃「貴方達は本当に仲が良いのね。」

 

八幡「……まぁ、事情が事情だからな。話す気はないが、俺がいなければこうはなってねぇだろう。」

 

柊「そうかもね。」

 

雪乃「………少しだけ羨ましいわ。」

 

 

それから私達は泊まってる場所に着いた。雪ノ下さんは一足早く部屋に戻ったみたいだけど、私と八幡君はギリギリまで一緒にいるつもり♪だって八幡君と離れたくないんだもん!

 

 

柊「あ〜ぁ、もう1部屋出してくれないかなぁ………2人用の部屋。」

 

八幡「無理だ無理。先生に言ってみろ、絶対断られるのがオチだ。」

 

柊「『カップルは一緒の部屋にすべきだ!』って言えば少しは聞き入れてもらえるかな?」

 

八幡「だから無理だって。」

 

柊「だってさ〜、時間になったら嫌でも八幡君と離れないといけないんでしょ?おかしいと思わない?付き合ってるのに別々の部屋にされるのって。そう思わない?」

 

 

八幡(ダメだコイツ、色々と思考がぶっ飛んでる。これはもうアレか、眠らせるしかないか?)

 

 

八幡「ったく、そう言うな。修学旅行の間だけだからよ。少しの辛抱だ。」ナデナデ

 

柊「うぅ〜だってぇ〜……」

 

八幡「だっても何もトンチもない。お前はこうやって頭撫でられてればいいの。お分かり?」ナデナデ

 

柊「………お分かり♪」

 

 

柊sideout

 

八幡side

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

柊「すぅ……すぅ……」

 

八幡「やっと寝やがったか………さてと。」

 

 

さて、涼風に連絡だな。多分まだ起きていると思うが、寝てたら………先生しか居ないな。

 

 

prrr…prrr…っ!

 

 

涼風『もしもし八幡さん?』

 

八幡「涼風、悪いなこんな時間に。」

 

涼風『いえ、大丈夫です。それでどうかしましたか?またお姉様がご迷惑を?』

 

八幡「いや、柊があまりにも俺から離れたがらないから、頭撫でて寝かしつけたんだ。そんでできれば迎えに来て欲しいんだ。頼めないか?」

 

涼風『はぁ、お姉様は………分かりました。では川崎さんも連れて行こうと思います。私1人ではきっと運びきれないと思いますので。』

 

八幡「悪いな、俺が運んでやるべきなんだろうが、女子部屋だからな。」

 

涼風『いいえ、お気になさらず。では八幡さん、すぐに向かいますので。』

 

 

そしてその後は涼風と川崎が来て、柊を回収して行った。さて、俺も戻って寝るか。

 

 

 



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2日目の朝

 

 

八幡side

 

 

目が覚めて修学旅行の2日目。今日は俺が楽しみにしていた自由行動の日だ。誰にも邪魔されずに行動する事が出来る。俺にとって1日目と最終日はそんなに楽しみでもないが、2日目だけは楽しむと決めていた。俺の柄ではないが、柊と涼風のあんなにワクワクした表情を見てしまえば、誰だってそう思うに違いない。

 

さて、このまま横になってたらまた寝ちまいそうだから布団は畳むか。その次は「八幡。」………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

材木座「UNOってぇ〜……言ってなぁ〜い。」

 

 

………お前違うクラスだろうが、何で居んだよ?

 

 

ーーー食堂ーーー

 

 

朝食の時刻に近くなり、俺は一足早く食堂に向かった。もう既に席に着いて待っている生徒も居るが、そんなに多くはない。

 

 

戸塚「八幡おはよう!早いね。」

 

八幡「おう、おはようさん。部屋に居てもする事ねぇしな。まぁ此処に来ても同じだが、朝飯の旨そうな匂いを嗅げるしな。」

 

戸塚「うん、そうだね!」

 

八幡「んで、他の連中は?」

 

戸塚「僕がお布団畳んでる時に起きたよ。少し慌てた様子だったなぁ〜。」

 

 

早起き苦手か?それとも楽しみ過ぎて昨夜寝付けなかったとかか?どちらにしてもどうでもいいけど。

 

 

柊「おっはよぉ〜八幡君、戸塚くんも!!」ダキッ!

 

涼風「おはようございます。」

 

沙希「おはよ。」

 

戸塚「おはよう〜皆!」

 

八幡「おはようさん。それと柊、朝から抱き着くんじゃありません。」

 

柊「いいじゃん別に♪」

 

涼風「全くお姉様は……すみません八幡さん、見つけるなり姉がまたご迷惑を。」

 

八幡「気にすんな。」

 

 

それから程なくして生徒が集まり、朝食を摂る事になった。そして俺の両隣はこの場でも俺に料理を食べさせようとしてくる。柊は性格上仕方ないにして、涼風はこういう場所では人目を気にする性格じゃなかったっけ?何故積極的に食べさせるの?

 

 

柊「八幡君、あ〜ん♡」

 

涼風「八幡さん、あ、あ〜んです///」

 

 

やめて。端のテーブルとはいえ、周りからの視線が痛いんです。特に1人の教師と1人の生徒からの視線をビンビンに感じます。俺が悪いんじゃないんだからね!この2人が勝手にやってるんだからね!俺何も悪くない!!

 

 

ーーー宿泊部屋ーーー

 

 

戸部「いや〜ヒキタニ君さっきの見てたんだけど、やっぱすごかったわ〜!マジでラブラブっしょ!ヒキタニ君マジきてるわー!」

 

八幡「意味は分からんが、一応彼女とその妹だからな。だがやってくるとは思わなかった。思わぬ羞恥プレイだった………」

 

戸塚「僕もちょっと恥ずかしかったかな、見てる方が恥ずかしくなるってこういう事なんだね。」

 

八幡「だな。それと戸部、今日は頑張れよ。後はお前の頑張り次第だからな。」

 

戸部「ヒキタニ君励ましてくれるん!?けど今はそれだけでも嬉しいべ!」

 

 

ーーーホテル・ロビー入口ーーー

 

 

「それでは皆さん、ちゃんと節度ある行動を心掛けながら楽しんで下さい。以上で終わります。行動開始です!」

 

 

長くなるかと思ったが、意外とすんなり終わった。どうやら先生達も旅行を楽しみたいようだ。まぁそうだよな、先生達も転勤とか無しだったら、3年に1回の行事だしな。さて、柊と涼風を「ヒッキー!」さが……由比ヶ浜?

 

 

八幡「何だ?何か用か?」

 

結衣「えっとさ、今日の自由行動なんだけど、私達と一緒に回らないかな〜って。」

 

八幡「いや、悪いが俺もう柊達と回るって決めてたから無理だ。」

 

結衣「うぅ、やっぱそうだよね………じゃあ戸部っちの依頼どうしよっか?」

 

八幡「俺はもう介入する気はない。昨日だって戸部にアドバイスはしたし、オススメも教えた。これ以上する事はない。」

 

結衣「えぇ!?ヒッキーもう何もしないの!?」

 

八幡「俺はもう既にした。お前の言うサポートってのは側であからさまに2人の空気を作る事か?初日の新幹線での座席決めを見たが、あんなのバレバレだぞ。鈍い奴でもすぐに気付きそうなくらいのサポートだぞ。」

 

結衣「うっ……うっさいし!だって他に思いつかなかったからしょうがないし!」

 

 

どうやら自覚はあるようだな。それなら尚の事タチが悪いぞ?

 

 

八幡「話はもう終わりか?何もないなら俺は行かせてもらう。」

 

結衣「あ……ヒッキー………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「悪い、待たせた。」

 

涼風「いいえ、気にしていません。由比ヶ浜さんからは依頼の件でお話を?」

 

八幡「あぁ、違うのもあるけどな。一緒に回ろうだの、依頼はどうするだのと聞いてきた。俺の出来る事はもう何もないってのによ。」

 

柊「ねぇ八幡君、その依頼の内容って何なの?なんかあのグループが関係しているみたいだけど、面倒な依頼なの?」

 

八幡「まぁ面倒っちゃ面倒だな。いや、面倒事だな。確信を持って言える。多分、柊がこの依頼を聞いたら………『は?』ってなると思う。」

 

柊「え?そんなに面倒な依頼なの?」

 

涼風「よろしければ教えてもらえませんか?私も少し気になります。」

 

八幡「それは構わないが、条件だ。この事は誰にも言うなよ?言いふらしていい事でもないからな。」

 

2人「うん、約束。」

 

 

そして俺は歩きながら今回の依頼について掻い摘んで説明した。

 

 

 

 

 

 



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双子の感想と着物

 

 

柊side

 

 

柊「八幡君、ソレ何?いや本当に。」

 

八幡「俺も聞きたいくらいだ。」

 

涼風「なんと言いますか、滅茶苦茶ですね。」

 

柊「私はその件に関して物申したい気分だよ、八幡君。」

 

八幡「じゃあ2人同時に言ってみてくれ、今何に対して呆れているのか。行くぞ、せーのっ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人「告白を遊びだと思ってるの?(ですか?)由比ヶ浜さんって。」

 

 

八幡(やっぱり。俺も最初の戸部の依頼については指摘して変更をしたから、そこは2人も納得してた。そしてその後の由比ヶ浜の対応、というよりも態度だ。あの時は俺もそんなに強くは言わなかったが、戸部はフォローを入れるだけでいいと依頼してるのに、何故そんな依頼に対して『つまんない。』という言い方をしたのかだ。恐らくその場に柊が居たら、間違いなく由比ヶ浜に集中砲火を浴びせてる事だろう。『告白をナメているのか!?』とか『一世一代の告白は遊びじゃない!!』とか言ってそうだしな。今も言いそうな顔してるけど。)

 

 

涼風「それで、由比ヶ浜さんはお1人で戸部さんのサポートをしていると?」

 

八幡「あぁ、よく分からんサポートをな。その点に関しては、告白が終わった後にでも色々聞く予定だけどな。戸部から。」

 

柊「そっか。けどさ、言い方すっごくムカ〜って来た!!何さつまんないって!!1から教えてあげようかしら!!?告白は何たるかをっ!!」

 

涼風「1番協力的な態度だったとはいえ、あの発言はどうかと思います。戸部さんが居なかったのも幸運ですね。」

 

八幡「あぁ、そうだな。由比ヶ浜が戸部にフォローやサポート入れるのは由比ヶ浜の勝手だが、何故俺も一緒にやる流れになっているのかは意味不明だったけどな。」

 

柊「さっきのロビーの時でしょ?あの子フォローの意味分かってるのかな?」

 

 

もうそこまで突っ込む気もないけど、奉仕部の理念って『飢えた人に魚を与えるのではなく、魚の捕り方を教える。』だよね?自立を促すんだよね?なのにあの子がやってるのは何?もうお手伝いの領域じゃん!それフォローじゃなくてヘルプッ!!

 

 

八幡「多分分かってない、アホだから。」

 

涼風「八幡さん、それはどうかと………」

 

八幡「じゃあ千葉の名物はと聞かれて、答えが味噌ピーと茹でピーって答える奴が頭良いと思うか?」

 

涼風「………」

 

 

うん、私も涼風と同じ思い。その子アホだね。

 

 

ーーー呉服店ーーー

 

 

八幡「俺も着替えるのか?」

 

柊「その方が良いじゃん♪折角の京都なんだよ?なら服装もそれっぽくしないと♪」

 

八幡「俺は着物着るだけ無駄だと思うんだがなぁ。着物に着られてる人間って思われるだろ。」

 

涼風「まぁまぁ。私達は八幡さんの着物姿を見た事が無いのです。これを機に着物姿を見せては頂けませんか?」

 

 

よし来たっ!涼風の上目遣い&涙目攻撃!これは《みずタイプ》の攻撃だから八幡くんにも効果はある筈!さぁどうする八幡君!?

 

 

八幡「分かった着る、着るからその顔をやめてくれ。俺が悪い事したみたいになるじゃねぇか。」

 

柊「よしっ、涼風の勝ちっ!」グッ!

 

八幡「何を言ってんだアイツは?」

 

涼風「きっと着物を着てくれるのが嬉しかったのでしょう。後は脳の中で変な事でも考えていたのでしょう。」

 

八幡「………そうか。」

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

「なぁ、アレ………」

 

「うわっ、メッチャ綺麗やん………」

 

「何やアレ、ごっつ可愛えぇやん。」

 

「嘘やん………あんな美人おった?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「えへへ、凄い注目だね……」

 

涼風「うぅ、恥ずかしいです……///」

 

八幡「流石と言うべきなんだろうな、やっぱ美人で着物着てると注目されるもんなんだな。」

 

柊「何で八幡君は注目されないのさ?着物着てて物凄くカッコ良くなってる筈なのに!」

 

八幡「俺はアレだろ、目が濁ってっからだろ。目で台無しになってるパターンだって。」

 

柊「……なんか納得出来ないんだけど。八幡君カッコ良いのに。」

 

涼風「ですがお姉様、逆に思えば良いのです。私達しか八幡さんの魅力に気付いていないと。他の方々は八幡さんの魅力に気付けていない、そう思えば多少は、いえ、だいぶ良くなると思います。」

 

柊「成る程……八幡君の魅力に気付けていない有象無象が殆どで、それに今この場で気付けているのは私と涼風の2人だけ………えへへ、良いねソレ♪」

 

八幡君の魅力に気付いているのは私と涼風の2人だけ………えへへぇ〜♪

 

 

八幡「有象無象って言い方が少し気になるが、柊の機嫌を良くしてくれてありがとな、涼風。」

 

涼風「いいえ、これくらいお安い御用です。」

 

八幡「頼りになるな、涼風は。」ナデナデ

 

涼風「あ………あぅ……/////」モジモジ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、あの男の人見て。さっきは不釣り合いって思ったけど………」

 

「せやね、笑うと男前やん………」

 

「あの人、なんかタイプやわ。ギャップあって良えと思わへん?」

 

「同じ事思った!アタックしてみよか?」

 

 

っ!!何か良く無い気配を感じる!!

 

 

柊「ほら八幡君、涼風!早く行こっ!時は有限なんだから早く楽しもうよっ!」

 

八幡「分かったよ、じゃあ行くか。」

 

涼風「は、はい……/////」

 

柊「それから八幡君、後で私の頭も撫でるように!!いいえ、撫でてください!!」

 

八幡「欲望に忠実だな、お前。」



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崩れる音

 

涼風side

 

 

お姉様に急かされるがままに次の目的地へと来ました。赤い神社に鳥居続きの階段がある場所で、喫茶店や路上販売をしています。中々居心地の良さそうな場所ですし、このような落ち着いた雰囲気はとても好きです。私自身も騒がしい所はあまり好ましくはありませんので。そして私は少し休憩中です、冷たいお茶を飲みながら。

 

 

柊「おぉ〜登ってきた甲斐があったよ、ほら八幡君、涼風も見てごらんよ!街が見えるよ〜!」

 

八幡「お前が走るせいで涼風は少しグロッキーだっつの。まぁいい、確かに京都の街並みが見えるな。」

 

柊「夜になったら綺麗なんだろうなぁ〜。」

 

 

ふふふっ、お姉様は………

 

 

雪乃「失礼するわね、夜十神さん。」

 

涼風「っ!はい、どうぞ雪ノ下さん。」

 

雪乃「ありがとう………着物を着てるのね、貴女のお姉さんと比企谷君もそうだけど、とてもよく似合っているわ。」

 

涼風「ありがとうございます。休憩ですか?」

 

雪乃「えぇ、階段を登るのに少し疲れたから。」

 

涼風「私もです。」

 

 

雪ノ下さんはお1人なのでしょうか?そうだとしたら少し寂しいです、私達と一緒に行動できないか聞いてみるのもいいかもしれませんね。

 

 

涼風「雪ノ下さんはお1人なのですか?見た所、お連れの方が見当たりませんが?」

 

雪乃「今はこの場に居ないだけよ。お友達を見かけたからそっちに行ってるわ。」

 

涼風「そうでしたか。」

 

柊「涼風大丈夫?あれ、雪ノ下さんも休憩中?」

 

雪乃「えぇ、少しね。」

 

八幡「だろうな、お前にこの階段は堪えそうだ。」

 

 

雪ノ下さんも体力が無いのでしょうか?

 

 

雪乃「比企谷君、少しいいかしら?」

 

八幡「何だ?」

 

雪乃「依頼の事で少し聞きたい事があるの。ねぇ夜十神さん、少しの間だけ彼をお借りしてもいいかしら?」

 

柊「……うん、分かった。けどなるべく早くね?」

 

雪乃「承知してるわ。比企谷君、こっちへ。」

 

八幡「………あぁ。」

 

 

………すぐに済めば良いのですが。

 

 

涼風sideout

 

雪乃side

 

 

八幡「それで、何だ話って?」

 

雪乃「えぇ、貴方はサポートだけをするって言っていたけれど、調子はどうかしら?」

 

八幡「それは俺にも分からんな。昨日と今朝で一応確認はしたが、後の事は戸部の要領次第だ。俺が出来んのは雰囲気作りだけだしな。」

 

雪乃「そう……ところで、由比ヶ浜さんの事だけれど。比企谷君も気付いてる?」

 

八幡「あぁ、流石にあれは俺達が関わっていい範疇を超えてるからな。どうするかは全て戸部次第だ、由比ヶ浜は善意でやってるんだろうが、あれじゃあ俺達の部活の理念に反する。まぁ、止めても無駄だろうがな。」

 

雪乃「………えぇ。」

 

八幡「お前はどうするんだ?」

 

雪乃「元々私にできる事は少ない依頼だから、今後どうするかは決めかねているわ。けれど、告白した後に戸部君がどう反応するのかも問題ね。この依頼をして良かったと反応するか、間違ってたと反応するか……」

 

八幡「まっ、そうだろうな。告白の場所だが、嵐山の竹林でいいのか?」

 

雪乃「えぇ、そうよ。」

 

八幡「じゃあ俺も夜になったらそこに向かう。」

 

雪乃「えぇ、分かったわ。」

 

八幡「で、後は何かあるか?」

 

雪乃「いえ、もう無いわ。時間をとらせてしまってごめんなさい。」

 

八幡「いや、気にすんな。2人に言ってくれれば大丈夫だろう。」

 

 

そう言って比企谷君は2人の元へと歩き出した。私もそれに続くように後を追いかけて、2人の所に着いた。

 

 

雪乃「ごめんなさい2人共、話は終わったわ。」

 

柊「そっか。じゃあ行こっか、八m「ヒキタニ君、少しいい?」………」ムッ

 

八幡「海老名さん……悪いが、丁度今から別の場所に行くところなんだ。」

 

姫菜「そっか……ん、邪魔してごめんね。」

 

八幡「いや、気にしてない。じゃ行くか。」

 

柊「うん、早く行こっか♪」グイグイッ!

 

八幡「お、おいおいそんな引っ張るなよ……」

 

涼風「では皆さん、また後程。」

 

 

………やっぱり、羨ましいわ。

 

 

雪乃sideout

 

ーーーーーー

 

 

柊(はぁぁ〜やっと3人になれた!集まり過ぎだよ、しかもよりにもよって1番会いたくない面子だったし!あっ、雪ノ下さんとあともう1人の金髪縦ロールの子は別だけど。それにしても………)

 

 

柊「綺麗な眺めだね〜。ただの竹林なのに、どうしてこうも綺麗に見えるんだろうね?」

 

涼風「はい、とても幻想的な眺めです。」

 

八幡「………2年前を思い出すな、柊。」

 

柊「………うん///」

 

 

そう、この場所は2年前に柊が八幡に告白をした場所である。妹である涼風が夜に八幡を呼んでおいて、柊が道の真ん中に立ち八幡を待つ。道においてある灯籠によってライトアップされた竹は黄金色に輝いていた。竹が黄金だとするなら、道を作っている竹組は金屏風といった所だ。そして2人は向き合い………

 

 

柊「この場所から始まったんだよね、私と八幡君の関係って。」

 

八幡「そうだな……あの時はもしかしてって思ってたが、本当にこうなるなんて思ってもみなかったしな。まぁ、そのおかげで今がある。」

 

柊「うん。」

 

 

柊は静かに八幡に寄り添う形を取った。八幡も拒む様子なく、柊の肩を掴んで自身の方へと寄せた。今の2人は幸せの真っ只中にあるだろう。それは2人を見守っている涼風や歩いている観光客でさえも分かる事だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「っ!!そこに居るのは柊と涼風かい!?」

 

 

だが、その幸せは意図せずして崩壊してしまう。

 

 

 





さて、2人の邪魔をする不届き者は!?


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歪んだ正義

 

 

八幡side

 

 

???「っ!!そこに居るのは柊と涼風かい!?」

 

 

俺達の正面からいきなり大きな声を上げながらこっちに向かってきた。見た目はかなりのイケメンだった、整った容姿に地毛であろう茶髪も手入れが行き通ってるように見える。ウチの高校に居たら葉山と同じくらい人気が出そうだな。

 

 

柊「えっと……誰?」ボソッ

 

涼風「やはりお忘れでしたか、お姉様は。小学の頃、同じ学校に居た天之川さんです。ほら、他クラスなのによく私達と遊ぼうとした………」ボソッ

 

柊「……っ!あっ、あぁ〜あの人かっ!森何とかの後に来るようになった子だよね?」ボソッ

 

涼風「はい、その方です。」ボソッ

 

天之川「えっと、大丈夫かい?」

 

涼風「はい、お久しぶりですね。小学卒業してからなので、5年振りでしょうか?」

 

天之川「そうだな。にしても見違えるように綺麗になってるから最初は戸惑ったけど、2人だって確信があったから。」

 

 

こんな時イケメンってのは有利だよな。ただ覚えてるってだけでチヤホヤされるんだからよ。まぁ、俺の知ってるイケメンでそういう奴は居ないが。

 

 

天之川「それで、2人はどうして此処に?」

 

涼風「私達、今此処に修学旅行で来ているんです。それで今は2日目の自由行動なので、自由に回っているんです。」

 

天之川「そうなのか、奇遇だな!俺達も修学旅行で来てるんだ。もしよかったら一緒に回らないか?2人なら歓迎するよ!」

 

 

このイケメン、俺が視界に入って目に見えている筈なのに、あからさまに俺の事を無視してやがる。しかもそれをいち早く理解しているのが柊だからか、天之川とは未だに口を聞いていない。しかも俺の気のせいでなければ、若干睨んでないか?涼風の顔色も良いとは言えない、コイツと何かあったのか?

 

 

涼風「お誘いは嬉しいのですが、私達も計画を立てて回ってますので、お断りします。それに、同じ班の方々を待たせていますよ?」

 

天之川「大丈夫さ、訳を話せば皆分かってくれる!それに俺達の仲じゃないか、遠慮する必要はないよ。少し待って「なぁ、少し待ってくれ。」……何だい?」

 

八幡「涼風は今明らかに断った筈なのに、どうしてお前はその意見を無視して自分の班を勝手に説得しようとしてんだ?おかしくないか?」

 

天之川「その方が楽しいと思っただけだ。だから2人を誘ったんだけど、何かあるのかな?」

 

八幡「大ありだ。敢えて言わせてもらうが、その中に俺は入ってねぇよな?さっきからお前はこの2人しか目に入ってねぇ。そうだろ?」

 

天之川「何を言ってるんだ、ちゃんと君も入って「だったら何で最初の時点で挨拶なり自己紹介なりしなかったんだ?目に映ってるのなら、知らない相手に挨拶をするのが常識なんじゃないのか?」っ……それを言うなら君はどうなんだ?君も挨拶をしていないじゃないか?」

 

八幡「自分から割り込んできた奴がよく言うな、まぁいい。話を戻そうか。柊、涼風、正直に答えろ。お前等はコイツ等と一緒に回りたいか?」

 

天之川「そうだ、正直に答えて欲しい!」

 

 

コイツのこの顔、自分達の班に来るのが当然って顔してるな。どうでもいいが、この後の展開なんて俺には手に取るように分かる。

 

 

柊「じゃあ正直に言うね。八幡君と回りたいから、貴方の所の班とは回らないから。ね、涼風?」

 

涼風「はい、お姉様。その為に色々と計画を練ってきましたからね。」

 

天之川「え……あっ、そうか。この男子の為か。2人は優しいんだな。けど正直に答えて欲しいんだ。この男の事抜きで。」

 

柊「………今言ったんだけど?」

 

天之川「いや、だからそれは「今、申し上げた筈ですが?」………」

 

八幡「言っておくが俺は何も示したり、合図したりなんてしてないからな。これは紛れもない2人の本心だ。それを疑うのは人としてどうかと思うが?」

 

天之川「だけどそれじゃ「ねぇ天之川君、まだ終わらないの?」っ!?もう少し「待たねぇよ、こっちだって時間押してんだよ。もう失礼する。」あっ、ちょ、待ってくれ!」

 

八幡「だから待たねぇよ。柊、涼風、次の場所に行くか。」

 

柊「うん、八幡君♡」ダキッ!

 

涼風「はい、八幡さん♪」ギュッ!

 

 

次の場所に行こうと言っただけなのに、柊は腕に抱き着き、涼風は手を握って嬉しそうにしている。そんなにアイツと居るのが嫌だったのか?というか、森崎の他にもあんな奴が居たとは………聞きたくないが、お前等の小学生時代どうなってんの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「はぁーあのしつこさ全っ然変わってない!こっちが迷惑してるっていうのが本当に気付かないのかなぁ!?鈍感……ううん、超鈍感!!朴念仁!!唐変木!!スーパーアホ!!」

 

涼風「はぁ……彼の相手は疲れます。しかもそれが善意の塊でしか無いので、余計に。断りを入れたとしてもすぐにご都合解釈で攻めてきますし。」

 

八幡「お前等って小学からハードモードなのな。」

 

柊「その点、八幡君はすっごく付き合いやすい!強制もしないし、嫌な事もしないし、して欲しい事はしてくれるし、ホント理想の恋人♪」

 

涼風「はい、私も八幡さん程お付き合いしやすい方は居ないと思っています。」

 

八幡「俺も2人程、小学から苦労してる奴を見た事がねぇよ。千葉帰って泊まる事があったら、抱き締めながら頭をメッチャ優しく撫でてやろうか?」

 

 

普段ならこういう事は絶対に言わないが、森崎に天之川………あんなキャラと嫌々6年間付き合っていたと思うと………労りたくもなる。

 

 

柊「ご、ご褒美………私、今までそんなご褒美、数を数えるくらいしかやってもらった事がないと思うよ………是非、是非やって!!」

 

涼風「あ、あの………私も、よろしいのでしょうか?お、お姉様のお零れが頂けるのでしたら、その………お、お願いします/////」

 

 

 

 





はい、2人目は【ありふれた職業で世界最強】に出て来るキラキラネームで勇者(笑)の天之川光輝です。

原作を読むと彼のウザさというか、空気読めなさが何とも言えないので、彼にしました!


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舞踊

 

 

八幡side

 

 

柊「あ〜むっ、んっ……んっ……うん、美味しっ♪流石は八幡君が調べた名所だね♪さっきの料理もこの餡蜜もとっても美味しいよ〜!」

 

八幡「それは良かった、調べた甲斐があった。」

 

涼風「えぇ、流石八幡さんです。」

 

八幡「やめろって、大した事はしてねぇんだから。それよりも気になってたんだが、さっきの………天之川だったか?奴はお前等に何をしたんだ?森崎みたいに迷惑かけてたんだろうけどよ。」

 

柊「うん………あの人ね、3〜4年生の時に一緒のクラスだったんだけどさ、昼休みに私達が2人で教室で読書をしてたんだけどさ、彼が皆で遊ぼうとしてたんだよね。私達も誘ってきたんだけど、読書がしたいって断ったんだよね。そしたら『読書なら家でも出来るしさ、今は皆で遊ばないか?』って言って強引に手を引っ張ったんだよね。まぁ今日くらいならいいかって感覚でその日はついてったんだけど、それからも彼は私達をよく誘うようになったんだよね。ホントにしつこいくらいに。断っても断っても懲りずに誘って来てたんだよね。」

 

涼風「なので私達も周りの方々に迷惑をかけないように、教室には留まらずに場所を変えて読書をするようにしました。教室の皆さんも彼の行動に疑問を抱いていた方も居たので、無理に誘うのは良くないと言って下さった方もいたそうなのです。」

 

 

その行動をした同級生の奴にはナイスを贈ってやりたい、よく言ったわ。それから天之川、お前は人の気持ちを考えろよ。世界はお前中心じゃねぇんだぞ?迷惑かけてるってのを少しは自覚しろ。

 

 

ーーー街中ーーー

 

 

柊「♪〜」

 

涼風「八幡さん、お次はどちらに行かれましょうか?面白そうなのがまだまだ沢山ありますよ?」

 

八幡「そうだなぁ………「あっ、アレ!」ん?」

 

 

ーーー体験・日本舞踊ーーー

 

 

八幡「日本舞踊?」

 

柊「うん、私達こう見えても踊れるんだよ!しかも資格も持ってるしね!これでも私達、松竹歌舞伎検定1級持ちなんだから!」

 

八幡「マジで?」

 

涼風「舞を舞っていれば、嫌な事があったとしても心を無にして踊れますので。」

 

柊「ねぇねぇ、踊っていいかな?」

 

八幡「それはいいが、人前だぞ?」

 

涼風「お姉様、私はご遠慮させて頂きます。目立ちたくはありませんから。」

 

 

まぁ、涼風は柊とは違って自分から目立つような事はしないしな。人前で踊るような性格でもないしな。まぁ日本舞踊も公衆の面前で踊るような事でもないとは思うが。

 

 

柊「じゃ、私行ってくるね〜!」

 

涼風「お姉様は………八幡さん、客席に向かいましょう。できれば1番前に。」

 

八幡「そうだな。」

 

 

ーーー客席ーーー

 

 

「さぁて、次は誰が踊るんやろな?」

 

「来んのはオバハンとかチビばっかやからな、エラい可愛ぇ姉ちゃんとか来てくれへんかなぁ?」

 

「せやな。」

 

 

コイツ等、下心丸見えじゃねぇか。こんな奴等に柊の姿を見せたくはないが、仕方ないよな………

 

あっ、来た。

 

 

「おっ、メッチャ可愛いやん!」

 

「エラい上玉やんな、おい!!」

 

「お手並み拝見やな。」

 

 

それから程なくして柊が踊り出した。柊が踊るまでは後ろに居る男達の言葉に苛立ちを感じていたが、それも忘れさせるくらいの踊り、いや……舞だった。今まで興味も無かった舞だが、柊の舞を見て純粋に『綺麗』『美しい』と思った。洗練された舞の中に込められた想いが直に伝わっているように感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私だけを見て欲しい。』っと。

 

 

柊「………ふぅ、っと。」

 

涼風「八幡さん、迎えに。」

 

八幡「……っ!あ、あぁ。」

 

 

そして俺は柊を迎えに行く為に最初の受付の所に向かった。

 

 

「あの、是非ウチの門下に来ませんか!?」

 

柊「あの、私そういうのは興味ないので……あっ、八幡君、涼風も!どうだった!?」

 

涼風「相変わらず、お見事でした。」

 

八幡「あぁ、綺麗な舞だった。」

 

柊「ホント!?ありがとぉ〜!じゃあ行こっか!」

 

「あぁ、そんなぁ〜!」

 

 

後ろから何かを惜しむような声が聞こえるが、今の俺達は今日という時間が有限なのだ。修学旅行だから楽しまないと損だからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、辛い時間や苦しい時間は長いように、嬉しい時間や楽しい時間は早く過ぎてしまうというものだ。そう、2日目のタイムリミットだ。

 

 

柊「あ〜ぁ、もう終わりかぁ………」

 

八幡「そう言うな、また来れるだろ。その時にまた満喫すればいい。」

 

涼風「そうですわお姉様、今度は私達個人で来れば良いのです。そうすれば、時間を気にせずに楽しむ事ができるのですから。」

 

柊「……そうだね。うん、今度は私達でね!」

 

八幡「じゃ、次に会うのは夕食だな。ないとは思うが、着物で来るなよ?今でさえ2人はかなり目立ってるんだからよ。」

 

涼風「安心して下さい、八幡さん。私がそんな事には絶対にさせませんので。それよりも、八幡さんもそのままの格好で夕食に来ないように気を付けてくださいね?」

 

柊「そうそう、八幡君も気を付けなよ?あっ、もしよかったら今夜着物デートしちゃう?」

 

八幡「悪いが今日の夜は無理だ、分かってるだろ?例の依頼だ。」

 

柊「分かってるよ〜。」

 




皆様、今年最後の投稿です!!

今年もありがとうございました!!
来年からも頑張りますので、よろしくお願いします!!


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身勝手


皆様、明けましておめでとうございます!!
2021年になりましたね〜!今年もよろしくお願いします!!




 

 

八幡side

 

 

ーーー宿泊部屋ーーー

 

 

買って自由行動中にずっと来てた着物も脱いでバッグの中にしまって、漸く楽な制服姿になれた。まぁ着物に比べたら制服の方が幾らかマシだ。

 

 

戸塚「八幡の着物姿よく似合ってたよ!もう少し見てたかったんだけどな〜。」

 

八幡「俺のよりも柊達の方が映えるだろ。」

 

戸塚「確かに女の子が着てると凄く魅力的になると思うけど、八幡が着てても魅力を感じたよ?なんか………よく分からないけど、不思議に色気を、ね。」

 

 

戸塚さん?それ貴方が言っても説得力はありませんよ?そこらの女子より女子してる貴方が着物着てみ?普通の女子は絶対自信無くすから。

 

 

戸部「やべーよ、緊張してきたー!やべぇーやべぇーよー!」

 

大岡「大丈夫だ。」

 

大和「戸部も彼女持ちかぁ………俺と遊ばなくなるんだろうなぁ。」

 

戸部「そんな事ねぇから!………っ!!あぁ〜やべぇ緊張するよぉ〜!」

 

大岡「大丈夫だって。」

 

 

………そういや今日の夜に告白するって葉山が言ってたような……まぁそんな事はどうでもいい。

 

 

葉山「なぁ、戸部……」

 

戸部「っ!なになに隼人君?俺今ケッコーテンパってるんだけど?」

 

葉山「いや………何でもない。」

 

戸部「何だよぉ〜!?」

 

葉山「頑張れって言おうと思ったけど、顔見たら言う気が失せた。」

 

戸部「酷くねっ!?あぁ〜でもなんか、緊張解けてきたわ〜。」

 

 

葉山の奴、一体何を考えてるんだ?

 

 

ーーー渡月橋ーーー

 

 

葉山「………」

 

八幡「こんな所で何してんだ?」

 

葉山「……別に、なんでもないさ。」

 

八幡「そうか………まぁ俺から言う事なんて特に何も無いが、1つ聞かせろ。お前海老名さんの事知ってただろ?」

 

葉山「………」

 

八幡「肯定、と取らせてもらうぞ。どういうつもりだ?分かってた上で戸部に奉仕部の事を教えたのか?」

 

葉山「………俺にはどうする事も出来なかったんだ。アイツは本気だった。俺もまだ時期が早いと言ったけど、止まらなかった。だから君達に「お前、それが無責任だって言う自覚はあるのか?ハッキリ言っておくぞ、俺達は便利屋じゃねぇ。かと言ってお前の道具でも尻拭いをする為の部でもねぇ。このまま行けば戸部がフラれるのは確実だ。」………」

 

八幡「奴の依頼自体は俺達奉仕部には実害はないだろう。内容はフォローだからな。お前がこの2日間どんな行動をしてたかなんて知らねぇけど、碌な行動はしてないって事だけは分かる。けどな、お前のその勝手な都合が俺達にも被害が被ってるって事、分かってんだよな?知らないなんて言わせねぇぞ?」

 

葉山「………済まないとは思ってる。だが、俺は何も変えたくない。今が気に入ってるんだ。」

 

八幡「……それが、お前の勝手な理想だったとしてもか?他の奴が望んでいなかった事だとしてもか?そう言い切れるのか?」

 

葉山「………あぁ。」

 

 

………勝手な野郎だ。よくあんな上っ面だけの連中の関係をここまで拗らせておきながら、こんな発言ができたもんだ。改めて感心したよ、悪い意味でな。

 

 

八幡「そうかよ……まぁ俺にはもうどうする事も出来ねぇよ。後は事の結末を見守るだけだ。どうせお前も来るんだろ?なら精々見ておく事だな、こんなちっぽけな事でこれから起きる事がどんな風になるのかをな。」

 

葉山「………君でも、何とかならないのか?」

 

八幡「この状況で俺に何かをしろって言いたいのか?そんなの願い下げだ。無いことも無いが、俺はそんな事をする気は毛頭ない。それにだ、これから告白する奴の邪魔を何で進んでやるんだ?好きでもねぇ奴の為なんかによ。」

 

葉山「………」

 

 

葉山はそのまま俯くと、何も言わなくなった。この先どうなるかなんて誰にも分からない。だが、これからの告白で何かが大きく変わるのは目に見えて分かる。それだけは確かだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「はぁ……ああいう奴も居るんだな。」

 

涼風「あら、八幡さん?」

 

八幡「?涼風、どうしたんだこんな所に?」

 

涼風「いえ、夕焼けが綺麗でしたので、眺めの良さそうな所に行って眺めていました。」

 

八幡「柊は?一緒に来なかったのか?」

 

涼風「お姉様は何故か他クラスの方達に捕まって、その………八幡さんとの関係の事を。」

 

八幡「あぁ……そう。一緒に来ようとしてたのか?それとも帰る途中で?」

 

涼風「帰る途中です。なので今頃は部屋にいるか、未だ質問攻めをされているかのどちらかでしょう。おいたわしや………」

 

 

まぁ、今までそういう質問攻めをされた事なかったしな。いつも一緒に居るから気になっている奴も居たんだろう。それに今日も一緒だったしな。聞けるとしたら、俺が居ないこういう時くらいだろうしな。

 

 

八幡「確かに綺麗な眺めだな。」

 

涼風「?八幡さんも夕焼けを眺めにきたのではないのですか?」

 

八幡「ん、いや、俺はちょっとした野暮用でな。夕焼けは見に来ていない。」

 

涼風「そうでしたか。それでしたら今はお帰りになる途中でしたか?」

 

八幡「あぁ、じゃあ一緒に帰るか。」

 

 

俺と涼風はホテルで一緒に帰ったのだが、制服に着替えて後を追おうとしたみたいだが、俺と涼風を見て頬を膨らませて涙目になりながら、『2人でデート!?私まだこの旅行で八幡君と2人きりになってないのに〜!!』と言ったので、告白の夜に少しだけデートする事になったのは、秘密のことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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依頼完了

 

八幡side

 

 

ーーー嵐山・竹林ーーー

 

 

いよいよ戸部の告白だ。まぁ俺は結果なんて分かり切ってるが、見守る義務って奴だ。そしてその隣には雪ノ下と由比ヶ浜、向かい側には葉山も居る。夜で人が少ないからあまり目立たないが、これを昼間にやってたらただの変な奴だよな。しっかしまぁ、戸部の奴………

 

 

戸部「………」ガチガチ

 

 

超緊張してるじゃねぇかよ………初告白だから仕方ないとは思うが、リラックスしろよ。言っただろうがよ、『告白なんて失敗すると思え。』って。成功を最初から期待する方が、失敗した時のダメージ大きいんだから。

 

 

結衣「ねぇ、どう思う?成功するかな?」

 

雪乃「私は今日の2日目しか彼の行動を見ていないから、それで言わせてもらうけれど、告白が成功する可能性は期待しない方がいいわね。」

 

結衣「だ、だよね〜……ヒッキー。」

 

八幡「何だ?何とかしろなんて言われても、俺はする気なんてないからな?俺達自身の依頼は既に達成してるんだ、後は奴の告白次第だ。」

 

結衣「で、でもヒッキー旅行中に戸部っちに何もしてないじゃん。」

 

八幡「したぞ。1日目のホテルで今日の自由行動で行く所のアドバイスをな。それだけでもするのとしないとでは随分違うと思うが?」

 

結衣「けど……「由比ヶ浜さん、落ち着いて頂戴。そろそろ海老名さんが来る時間よ。」あっ!そ、そうだね。」

 

 

雪ノ下、今回ばかりは礼を言う。これ以上ヒートアップしてたら、告白の現場を見守るより面倒な事になってた。てか葉山、何でそんな顔で俺を見る?何もしねぇって言ったろうが。今更そんな顔したとしても手遅れだ。

 

 

結衣「っ!来た!!」

 

「「「っ!」」」

 

 

俺達は竹林の道に居る戸部の方に意識を向けた。向こう側には待ってる戸部と、その奥側に海老名さんが居た。

 

 

姫菜「戸部っち、話って何かな?」

 

戸部「あ、あのさ……俺、海老名さんの事が好きです!つ、付き合ってください!」

 

 

ほう、ストレートな告白だ………

 

 

柊『私は5月頃に八幡君に声を掛けられて、救われました。私は私にとても優しくしてくれる八幡君が好きです!付き合ってください!!』

 

 

………思い出す、あの時の事を。けどな戸部、俺のは特殊な環境にあった状況だったから上手く行っただけなんだ。違う未来があるとしたら、俺は柊とは付き合えてない。だから………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが現実だ。

 

 

姫菜「……ごめんなさい。私、今は誰とも付き合う気がないんだ。だからゴメンね。」

 

戸部「……そっか、分かったわ。来てくれてありがとだへ、海老名さん。」

 

姫菜「うん、戸部っちの事は友達として好きだから、これから仲良くして欲しいな。」

 

戸部「了解っしょ!」

 

姫菜「うん、じゃあまた明日ね。」

 

 

海老名さんはそう言ってから来た方向へと戻って行った。そして戸部もこちらへと戻って来て、俺達の方に顔を向けた。

 

 

戸部「ヒキタニ君、雪ノ下さん、結衣………ゴメンッ!折角協力して貰ったのに!失敗したべ!」

 

八幡「……にしてはスッキリした顔だな?」

 

戸部「何かさ、途中から気付いたんだ。今の海老名さんはそういう気がねぇって。でも、今日告白したのは3人が協力したのを無碍にしないのと、海老名さんの気持ちを確認する為だべ!!」

 

 

………戸部、男だなぁお前は。

 

 

八幡「そうか、まぁでもお疲れさん。さっきのお前、カッコ良かったわ。男らしかった。」

 

戸部「……ヒキタニ君から褒められるって新鮮だべ〜!ちょっと気持ち良いっしょ!」

 

雪乃「お疲れ様、戸部君。ごめんなさいね、あまり協力出来なくて。」

 

結衣「ゴメンね……」

 

戸部「いいっていいって!また次に成功させればいいっしょ!それにヒキタニ君から学んだからいいべ、相手の事もちゃんと考えないといけないって!!」

 

 

………何だよ、分かってんじゃねぇかよ。ただ騒がしいだけかと思ってたが、次の事も考えられてる。これもまた成長ってヤツだな。

 

 

戸部「じゃ、俺先に行くべ!隼人君行くべ!」

 

葉山「あ、あぁ………」

 

 

戸部はスッキリした表情を浮かべ、葉山はホッとしたような表情で山を降りて行った。

 

 

八幡「取り敢えずこれで依頼は完了だな、お前等もホテルに戻っとけ。」

 

結衣「………ねぇヒッキー、ホントにこれでよかったのかな?」

 

八幡「どういう意味だ?」

 

結衣「だって、戸部っちはああ言ってたけど、告白には失敗してるんだよ!?ヒッキーは戸部っちに何とも思わないの!?」

 

八幡「思わない事はないが、アレはアレで俺は良かったと思うぞ。これでアイツも告白に絶対はないって事が分かっただろ。終わった後のアイツも満足気だったからこれで良いだろ。」

 

結衣「けど依頼は失敗してるじゃん!!」

 

 

は?何言ってるんだコイツは………依頼内容を履き違えてないか?

 

 

八幡「由比ヶ浜、俺達が依頼された内容はあくまでもフォロー・サポートだ。内容の中に告白の成功なんて含まれてない。そうだな雪ノ下?」

 

雪乃「えぇ、最初は告白を成功させたいという依頼だったけれど、比企谷君の説得でフォローという内容に変わったわ。」

 

八幡「だろ?なのに何故依頼が失敗したという考えになる?まさかお前はこの依頼が告白の成功も含まれている、なんて物凄く壮大な解釈はしてないだろうな?」

 

結衣「………」

 

八幡「マジかよ………」

 

 

コイツの頭の中はお花畑に桜満開の樹でも咲いてるのか?控えめに言ってもアホ過ぎる。

 

 

八幡「由比ヶ浜、依頼の内容を履き違えるな。それとこれは葉山にも言ったがお前にも言っておく。」

 

結衣「え?」

 

八幡「俺達は便利屋じゃねぇ。何でもかんでも俺達がソイツの手伝いをしてたら、この部の理念に反する。お前が今回やってたのは、戸部を手助けしている事にはなってるが、戸部の為にはなってない。完全に魚を与えている行動になっているって事だ。」

 

結衣「………」

 

八幡「『飢えた人間に魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える。』この部に入る事になった時に、雪ノ下から最初に教わった事だ。自己変革を促させる為に活動をしているという事を忘れるな。」

 

 

これで伝わればいいが、コイツの場合は時間が掛かりそうだ。次に何もやらかさなければいいが………

 

 

八幡「じゃあ俺も失礼する。お前等も早く帰っとけよ、先生に見つかりでもしたら説明が面倒だし、こんな夜に説教なんてされたくねぇだろ?」

 

雪乃「比企谷君は?」

 

八幡「俺は野暮用だ、ついてくるなよ?」

 

 

こうしてある意味、1番の面倒事である依頼は無事に完了したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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夜デート

 

 

八幡side

 

 

由比ヶ浜の奴には困ったもんだ。まさか依頼の内容を間違えるなんてな………あれには流石に呆れてしまった。けどまぁ、最後にあれだけ言ったんだ、自覚がなくとも少しくらいまともにはなると………思う。

 

 

八幡「さて、こっちだったな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「あっ、来た来た!おぉ〜い八幡くぅ〜ん、こっちこっち〜♪」

 

 

………どうやらお待ちかねだったようだ。

 

 

八幡「悪い、待たせた。」

 

柊「ううん、いいのいいの!だってこうして来てくれたんだから!さっ、早く行こっ!時間は少ししかないんだから!」

 

八幡「あぁ。」

 

 

ーーー竹林道ーーー

 

 

柊「今の時間じゃ何処も閉まってるから、この竹林を抜けたら帰ろっか。」

 

八幡「俺はこの景色だけでも満足だけどな。京都はまだ2回目なんだ、じっくり回れた方が良いに決まってるしな。それに、此処は柊との思い出の場所でもあるんだ。ゆっくり見ていたいって思うのは自然な事だろ。」

 

柊「……うん、そうだね///」

 

 

柊は俺の方へと近づいて来て、俺の右手を握って来た。振り解く理由もない俺は握ってきた左手を握り返して、そのまま手を繋いで景色を堪能しながら歩いている。

 

 

柊「………依頼は上手くいった?」

 

八幡「あぁ。俺は特に文句はないし、雪ノ下も何も言ってなかったから文句はなかったと思うが、由比ヶ浜がな………」

 

柊「?何かあったの?」

 

八幡「依頼内容を履き違えててな、内容は流石に言えないが拡大解釈をしててな。」

 

柊「わぁ………」ヒキッ

 

 

おぉ、柊が引いてる……どうやら自分が予想してた以上にヤバかったらしい。

 

 

八幡「そんで何故か俺に矛が飛んできてな、内容を履き違えるなって言ってきたってとこだ。あれで分かってくれれば良いんだが………」

 

柊「分からないんじゃないの?だってあの子、見た目と言動で頭悪そうだもん。」

 

八幡「そう言うなって。否定はしないが。」

 

柊「だってそうじゃん。」

 

八幡「お前、由比ヶ浜の事少し嫌いになったか?少し刺々しい言葉遣いになってるが?」

 

柊「だって八幡君に文句言ったんでしょ!?しかも自分が1番頑張ってました的な言い方をしてさっ!!彼女って何様なのかな!?」

 

八幡「ははは………まぁこの話はもうやめようか?折角こうして景色を楽しみながら散歩してるんだからよ。こんな話をしてたら空気も悪くなる。」

 

柊「……そうだね。あっ、あそこに休憩スペースあるから、あそこで座りながら見ようよ。」

 

八幡「あぁ、そうだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「ねぇ、帰ったらどうしよっか?」

 

八幡「家族にお土産渡して、休日は休むか柊と出掛けるか、火曜日から学校に行って、金曜日に学校が終わるから「それでそれで!?」………夜十神家に泊まれるか聞くとか?」

 

柊「それが良いよ!!来週の金曜日は泊まりに来てよ!!お父さんもお母さんも宮間さんもきっと喜ぶからさっ!!」

 

八幡「で、1番喜ぶのは?」

 

柊「……えへへ、私♪」

 

八幡「だろうな。」ナデナデ

 

柊「んっ♪……ふふふっ、八幡君からのナデナデ、なんか久しぶり!嬉しいなぁ………」

 

八幡「確かに久しぶりだな、相変わらずサラサラしてるんだな。お前の髪。」

 

柊「手入れは欠かしていませんから!」

 

八幡「みたいだな………」

 

柊「………」

 

八幡「………」

 

柊「また、此処で………やっちゃう?」

 

八幡「2年待ったんだ、解禁祝いで此処から始めても良いと思わないか?」

 

柊「ふふふっ、そうだね♪じゃあ、八幡君………」

 

八幡「柊………」

 

 

誰もいない……この静かな雰囲気で出来るのは幸せな事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天之川「そこの君っ!!柊に何をしてるんだ!!」

 

 

………誰だ?

 

 

天之川「今すぐ離れろっ!!」

 

 

ガバッ、ドガッ!!

 

 

八幡「うおっ!?」

 

柊「は、八幡君!?」

 

天之川「ダメだ柊、彼は危険だ、近づいてはダメだ!!俺が守るから後ろに下がるんだ!!」

 

 

いっつ………アイツ確か昼間にこの竹林で出くわした、名前は……確か、天之川?

 

 

八幡「お前、人の事を突き飛ばしておいて何なんだ?それにいきなり「君は黙っていてくれ!柊に迫った強姦魔めっ!!」……おい、俺には何の弁明もさせてくれないのか?」

 

天之川「君が柊に無理矢理迫っていたのなんて明白だ!!そもそも君は昼の時も「退いて!!」っ!?ちょ、柊!!彼に近づいたら危険だ!!」

 

柊「八幡君、大丈夫!?怪我はない!?」

 

八幡「あぁ、大丈夫だ。突き飛ばされただけだからな。それよりも………おい、お前いきなり現れて人の事突き飛ばしておいて何なんだ?」

 

天之川「君が彼女に迫っていたからだろう!!昼の時といい今夜といい、いい加減に彼女に付き纏うのはやめるんだ!!」

 

 

コイツ、アレか。涼風の言ってたご都合解釈ってヤツか。こちらの事情も聞かずに自分の中だけで解決してるって事か………面倒な奴だ。そして自分が1番の正義って思い込んでる。

 

 

八幡「付き纏う、か………これを見てもそう思うのか?俺は柊には何もしてないぞ?それでも俺が柊に付き纏ってるって言いたいのか?」

 

天之川「君が脅しているんだ!!そうでなければ彼女が君の元に行くはずがない!!」

 

八幡「………もう話にならないな、俺達はもう行かせてもらう。行くぞ柊。」

 

柊「うん。」

 

天之川「待つんだ!!柊を連れて行かせる訳には「お前いい加減黙れ、しつけぇんだよ。」な、俺は柊を助けようと「八幡君早く行こうよ。」ま、待ってくれ!!ダメだ柊、危険だ!!こっちに来る「嫌っ!!」っ!?」

 

八幡「柊、お前まさか………」

 

柊「八幡君、早く行こ?私の前から凄く嫌な空気を感じる………」

 

 

やっぱりか………柊には既に天之川が見えていない。奴は【幽霊】になったんだ。

 

 

八幡「……天之川、これ以上は柊に近付くな。」

 

天之川「な、何故そうなるんだ!?「○○中学の同級生の誰かに知り合いはいるか?」………いる。だがそれが何だ!?」

 

八幡「ソイツ等に中学の事を聞いてみろ、夜十神柊についてな。そうすれば今のお前がどうして柊から避けられているのか、すぐに分かる。」

 

天之川「なっ、そんな筈は「近寄るなっ!!」っ!!?」

 

八幡「近付くなと言った筈だ。今柊に近付けば、俺も流石に我慢は出来ない。」

 

天之川「………」

 

 

とんだ夜になった………流石にこのままは返せない。ホテルで落ち着くまで宥めないとな。

 

 

 

 

 

 

 



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八幡のお願い

 

 

八幡side

 

 

ーーーホテルーーー

 

 

まさかこんな事になるなんてな………柊と少しだけ夜の京都を散歩したと思ったら、訳の分からない事を言う変な奴(天之川)が現れてから、ちょっとした言い合いになった。そして柊の我慢の臨界点を超えたのか、天之川の事が見えなくなった。しかもこれまで見えなくなる事はあっても、その場所に嫌悪感を示す事なんて今までで1度も無かった。故に柊が今、どれだけ天之川を嫌っているかが俺には分かる。しかもその柊だが………

 

 

柊「………」プルプル

 

 

小刻みに震えている。俺もこうなっている柊は初めて見た。今も俺にしがみついて離れない。これは柊をそのまま女子部屋に戻しても落ち着くとは思えない。だからといって俺の独断で男子部屋に連れて行くわけにもいかない。くそっ、どうすりゃいい?

 

 

柊「……八幡君?」プルプル

 

八幡「っ!何でもない、大丈夫だ。」

 

 

柊に心配を掛けさせてどうする!?取り敢えず今はソファに座らせて少しでも落ち着かせよう。昨日、自販機の近くにあった所に座ったからそこにしよう。ついでにあったかい飲み物も買ってな。

 

 

八幡「柊、座れるか?」

 

柊「うん……」プルプル

 

八幡「……何か飲むか?あったかい飲み物の方が良いだろ?コーンポタージュ、コーヒー、ココア、お汁粉、色んなのあるけど、どうする?」

 

柊「……じゃあココアを頂戴。」

 

八幡「分かった。手を離すがすぐ側に居るからな。何処にも行かないから安心しろ。」

 

 

柊を座らせた後、俺はすぐ隣の自販機でココアを購入したが、その間も柊は俺の制服を掴んで離さなかった。これは流石に目を離せない。今はまだ外出可能な時間だが、後30分だ。それまでに柊がいつもの調子に戻れるとは到底思えないし、無理だろう。

 

 

八幡「柊、ほら。これで暖まれ。」

 

柊「………うん、ありがとう。」プルプル

 

八幡「隣、座るぞ………っ!?」

 

 

俺が座った途端、柊は俺の腕に抱き着いて胸に顔を埋めてきた。俺も柊の頭に手を添えて撫でる事にした。誰が見ていようと今は柊が最優先だ。

 

 

八幡「大丈夫だ、もう天………幽霊は居ない。安心しろ、大丈夫だ。」ナデナデ

 

柊「………」フルフル

 

八幡「………」ナデナデ

 

 

………涼風にも連絡を入れておこう。おじさんとおばさんが居ないんだ、1番の身内である涼風には連絡を入れておかないとな。取り敢えずメールだけ打っておくか。

 

 

_____________________________________________

 

・To:夜十神 涼風

・From:比企谷 八幡

 

 

内容:涼風、一応報告しておく。柊と嵐山の散歩をしてる時に天之川と出くわした。内容は省くが、柊の我慢が限界になったせいで天之川が幽霊化した。しかも柊が小刻みに震える程にだ。今はホテルのロビーにあるソファで休ませてるが、余程嫌だったのか、今日は多分俺から離れないと思う。一応先生にもこの事は言うつもりだ。何かあったらまたメールか連絡する。

 

_____________________________________________

 

 

………こんな所だろう。さて、次は平塚先生だ。あの人なら何とかしてくれるだろう。

 

 

八幡「柊、今から少し平塚先生と電話するが、いいか?」

 

柊「……うん、大丈夫。」フルフル

 

八幡「ありがとな。」

 

 

prrr…prrr…prrっ!

 

 

平塚『平塚だ、どうした比企谷?ラーメンなら今日は奢らないぞ。』

 

八幡「いえ、実は少しだけお願いがありまして。こんな事他の教師には頼めないので、平塚先生に連絡しました。」

 

平塚『訳ありのようだな。分かった、私がそっちに向かおう。今何処だね?』

 

八幡「昨日会った自販機のあるソファです。そこでひいら……夜十神姉と一緒に居ます。」

 

平塚『そうか、分かった。じゃあ私が行くまで待っていてくれ。ではまた後でな。』

 

八幡「はい、また後で………話は聞いてくれるようだな。『♪〜』ん、涼風からか。」

 

 

_____________________________________________

 

・To:比企谷 八幡

・From:夜十神 涼風

 

 

内容:そんな事があったのですね………わかりました。本来なら今すぐにでもお姉様にお会いしたい所ですが、あまり刺激してはお姉様に負担がかかるかもしれませんので、今日はやめておきます。私にできる事がございましたら、遠慮なくご連絡下さい。いつでも力になります。他ならぬ八幡さんとお姉様の為に!

 

_____________________________________________

 

 

……本当に良い妹だな、柊。

 

 

平塚「比企谷、待たせ………何があった?」

 

八幡「説明しますので、場所を変えましょう。此処だと目立ち過ぎます。」

 

平塚「いいだろう、生徒指導の為に貸し与えられた客室がある。そこで話そう。」

 

八幡「ありがとうございます。柊、行けるか?」

 

柊「……うん。」フルフル

 

 

ーーー客室(生徒指導用)ーーー

 

 

平塚「それで、どうしたんだ?夜十神がそんな風になるとは………怖い事でもしたのか?」

 

八幡「そうではないんですが、柊のこれは………恐怖というよりも怯えに近いものです。」

 

平塚「……要領を得ないな。詳しく話を聞きたい。それは構わないか?」

 

八幡「………分かりました。この際、先生には俺と柊の中学時代の事もお話します。それには今回起きた事に少なからず影響してますので。」

 

平塚「分かった。」

 

 

俺は平塚先生に中学3年生に起きた【幽霊ごっこ】の事と今回の事を出来るだけ分かりやすく説明した。平塚先生もこの出来事が予想外の事だったのか、かなり複雑そうな顔をしていた。

 

 

平塚「そうか……そんな過去があったのか。それでさっき他校の生徒の姿が見えなくなった、というわけなのか。」

 

八幡「はい。そうなんですけど、今まではただ見えなくなるだけで、こんなに怯える事はなかったんです。余程その相手に向ける嫌悪感が強いって事の表れなんだと、自分は思ってます。」

 

平塚「ふむ………恐らくだが、夜十神は1種のPTSD、所謂ストレス障害なのだろう。親御さんもその事は把握しているのかね?」

 

八幡「いや、俺は何とも……ただ、こうなると柊をこのまま帰すのは少しだけ不安が残るという事です。なので、平塚先生にお願いがあります。」

 

平塚「言ってみたまえ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「今夜、俺と柊の2人を同室にさせてもらえませんか?お願いします!」

 

 

 

 




さぁ、平塚先生にこのお願いは届くのか!?


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平塚の奮闘

平塚先生、頑張って!


 

 

平塚side

 

 

八幡「今夜、俺と柊の2人を同室にさせてもらえませんか?お願いします!」

 

 

………さて、比企谷からのこのお願いにはどうしたものか。私独断での判断なら、これに賛成しても構わないとは思っている。今まで夜十神のこんな表情は見た事が無いし、比企谷のこれ程真っ直ぐな表情と目も初めて見る。本来であれば、私達教師と共に過ごしてもらうのがルールになるのだが、夜十神の様子を見る限りでは、比企谷から離れる可能性はまず無いだろう。

 

少し、質問をしてみるか。

 

 

平塚「比企谷、質問だ。同室にする場合、私や他の教師がいる状況は望ましいか?」

 

八幡「……今の状態だとあまり好ましくはありません。柊は他人には無関心ですが、自分の本心を見せるのは自分の心を開いた人物のみです。なので俺が居たとしても、第3者が居たら、本当に気持ちを落ち着けるかどうかは分かりません。」

 

平塚「そうか。」

 

 

さて、こうなっては少しややこしいな……私としてはこの2人の力になってやりたいが、他の教師が何を言うかだ。生徒指導用の客室を使えれば、文句は無いのだが………うぅむ、他の教師の説得、だな。

 

 

平塚「比企谷、もう1つ質問だ。今日の、厳密に言えば君達奉仕部が依頼を終えた後の事だ。それを教師全員に説明して同室を認める材料にするのは、許可できるか?」

 

八幡「………それって俺と柊の過ごした時間を教師全員に報告する、って事ですよね?」

 

平塚「あぁ。君のしてくれた説明だけでは、説得力はあっても賛同をしてくれるかどうかはまだ不安が残る。そこでだ、夜十神の過去と今回の事を引き合いに出させて同室を認めさせる。どうだね?」

 

八幡「………分かりました、それなら構いません。ですが柊がストレス障害だと決まっているわけではありませんので、それを言うのはやめてください。難しいでしょうが、難病とでも。」

 

平塚「君は無理難題を平気で言ってくれるな。分かった、取り敢えずは今夜にある会議で話してみる。だがあまり期待はするなよ?私もこんなケースは初めてだからな。」

 

八幡「はい。先生、お願いします。」

 

 

比企谷のこんな姿は初めて見る。手の掛かる生徒だが、彼女に対してまっすぐな想いを持っているようだ。私もこれに応えてやらないとな。

 

 

ーーー客室・(職員会議)ーーー

 

 

「では、職員会議を始めます。まず最初に1番の不安であった自由行動を事故なく終えられた事を嬉しく思います。では、報告に移ります。」

 

 

報告するのは最後の連絡事項の時だな。今はあくまで自由行動中での事を報告する会だ。不用意に発言しては元も子も無くなってしまうからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「以上で報告を終わります。」

 

「ありがとうございました。では明日の予定ですが、明日は朝の新幹線で千葉に帰る予定です。途中下車する事はありません。席も生徒の自由にする事にしています。我々教師は各クラスの配置に着き、生徒が問題を起こしているようであれば注意を促して下さい。よらしくお願いします。私から以上ですが、皆さんの方から何か連絡事項等はございますか?」

 

 

よし、此処だ。

 

 

平塚「よろしいですか?」

 

「何ですか、平塚先生?

 

平塚「今日の自由行動終わり後、もっと言えば夕食後の自由時間と言いましょう。その時間に2-F組の比企谷八幡と同じクラスの夜十神柊の2人が嵐山で散歩をし、その際に他校の学生から突き飛ばされ、暴言を吐かれたとの報告を受けました。その内容は……少々複雑なので大雑把にしか言えませんが、他校の学生が比企谷に対して中傷するような発言をしたようで、それに対し夜十神がショックを受けたようなのです。夜十神は未だショックが抜け切れず、比企谷が私の部屋で看病を続けています。比企谷からお願いという形で、今日だけ2人だけで過ごさせてはもらえないかという要請がありました。私だけでは決断しかねましたので、この場で報告をさせて頂きました。」

 

「………平塚先生、それは事実なのですか?」

 

平塚「事実としか思えない状況でした。震えながら比企谷にしがみついていたのです、見間違えでもなければ、演技だとも思えません。」

 

「しかし、状況が良く分かりませんね。平塚先生、もっと詳しく状況を説明する事は出来ませんか?」

 

 

やはりそうだろうな、それが当然だ。

 

 

平塚「分かりました。」

 

 

そして私はその出来事を説明した。人が見えなくなる事については難病という風に。そして他校の生徒が天之川という名字である事も。暴言の内容も比企谷が夜十神に強引に迫っていたから助けようとしたという事も。出来る事は全てやり尽くした。

 

 

平塚「以上が、比企谷から受けた説明です。なので再度要請を伝えます。比企谷、夜十神を今夜同室にしてあげられないでしょうか?」

 

「そんな事が……しかし問題がありますね。」

 

「えぇ、男女となると、やはり他の生徒達の事もありますからね。」

 

 

やはりそこが問題か……1番の問題は男女が一緒の空間で過ごす事にあるだろう。間違いがあってからでは遅い、という事か。確かに私もそれが心配な面は少なからずある。だが今の彼等がそれをするような状況にあるとも思えん。しかしそれを言ったとして納得してもらえるかどうか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鶴見「私は比企谷君のお願いを受けるべきだと主張します。」

 

平塚「っ!鶴見先生。」

 

鶴見「今の平塚先生の説明だけでも分かります。夜十神さんは相当な精神的ダメージを受けている可能性が非常に高いです。ならばそれを少しでも緩和する為にも我々は尽力するべきだと思います。」

 

『………』

 

鶴見「それに比企谷君と夜十神さんは恋人同士だとか。でしたら今1番、彼女を安心させる事の出来る比企谷君と一緒に居る事が、1番の特効薬になると思います。それに今の2人が情事に耽るような状態になるとはとても思えませんし。私は1人の教師、養護教師、どちらの立場であったとしても、彼の要求を受け入れるべきだと主張します。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

茅ヶ崎「私も鶴見先生の意見に賛同しましょう。」

 

平塚「校長先生………」

 

茅ヶ崎「今は彼女の心の傷を癒す、それには比企谷君の力が必要不可欠です。精神が不安定のまま自宅に返すわけにもいきません。比企谷君及び夜十神さんは今夜は同室にします。皆さん、異議、反対のある方は居ませんね?」

 

『………』

 

茅ヶ崎「では、2人の同室を許可します。平塚先生、同室する部屋はどうなっていますか?」

 

平塚「は、はい!生徒指導用に1つとってある部屋があります。そこなら問題ないかと。」

 

茅ヶ崎「ではそちらを2人の宿泊部屋にして下さい。それとくれぐれも他の生徒には勘付かれないようにお願いしますよ?平塚先生は2人の所に行ってこの事を報告して下さい。」

 

平塚「分かりました、失礼します。」

 

 

ありがとうございます、校長。

 

 

茅ヶ崎「さて、では今の平塚先生の報告にあった他校の生徒の事について話し合いましょうか。流石にこれを看過するわけにはいきませんからね。」

 

 

 

 

 

 

 




ありがとう平塚先生!
ありがとう鶴見先生!
ありがとう校長先生!


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かける、かけられる

 

 

八幡side

 

 

八幡「なので今は平塚先生が交渉中です。おじさんとおばさんには後追いの形で説明する事になってすみません。」

 

 

俺は平塚先生が職員会議で居なくなっている間、おじさんとおばさんに連絡を取っていた。電話だと柊の状況が分からないから、テレビ電話にしている。理由は言わずとも分かるだろ?今日あった出来事を報告する為だ。流石にしないわけにはいかない。

 

 

御影『いや、それは構わないよ。君は両方の当事者なんだ、君にだって発言権はある。それに柊の為にやった事なら、過去の事なんて僕は気にしないよ。』

 

八幡「ありがとうございます。それと、柊を守りきれなくてすみません。」

 

御影『それは違うよ八幡君、君は柊を守ってくれたじゃないか。君が天之川君という男子を止めてくれなかったら、柊はもっと追い詰められていた。そうなる前に君が止めてくれてよかったよ。』

 

八幡「………はい。」

 

御影『じゃあ帰るまでは柊の事をよろしく頼むよ。きっと今の柊は体調面でも精神面でも繊細な状況になってる筈だ。君以外では……例え涼風でも対処し切れないだろう。だから頼むよ、八幡君。』

 

八幡「はい。」

 

御影『じゃあ電話を切るからね。柊、今日はゆっくり休みなさい。八幡君がついているからきっと大丈夫だから。じやあね。』

 

 

そう言っておじさんはテレビ電話を切った。柊の状態は震えは止まったが、依然として俺から離れない。少しは良くなったが、明日の朝食までとなると厳しいかもな………

 

 

ガチャッ

 

 

っ!平塚先生か?

 

 

平塚「比企谷、職員会議の結果だが、許可が降りたぞ。今日は君達の同室で構わないそうだ。」

 

八幡「本当ですか!」

 

平塚「この状況で嘘や冗談は言わん。場所は生徒指導の為に用意してあった部屋を使うといい。」

 

八幡「ありがとうございます!柊、先生達のおかげで今日は一緒に寝れるぞ。」

 

柊「……ありがとうございます。」

 

平塚「礼なら比企谷に言え、お前の為に動いてくれたのだからな。では荷物を……どうするか。」

 

八幡「それなら柊の荷物は涼風に、俺の荷物は戸塚に持って来てもらいます。俺が取りに行った方が確実でしょうけど、柊が心配なので「私なら大丈夫。」っ!柊?」

 

柊「八幡君がずっと側に居てくれたから、もう大丈夫。少しなら我慢できるから。だから行ってきて。私は待ってるから。」

 

八幡「………分かった、じゃあ行ってくる。平塚先生、少しの間柊をお願いします。」

 

平塚「あぁ、任せておきたまえ。」

 

 

よし、そうと決まれば荷物を取りに急ぐか。涼風にも連絡をしないとな。平塚先生の部屋は………○○○号室か。そこに持ってきてもらおう。

 

 

八幡sideout

 

柊side

 

 

平塚「しかし、君達の中学時代にそんな事があったとは私も驚きだよ。一応聞いておくが、私は見えているのかね?」

 

柊「はい、見えてます。」

 

平塚「そうか、なら安心した。しかし君も災難だったな、もしあの場に比企谷が居なかったと思うと、少しゾッとするな。」

 

柊「………先生は、」

 

平塚「ん?」

 

柊「先生は八幡君の事、信用してるんですか?」

 

平塚「そりゃしてるさ。あんな性格をしてはいるが、君に関していえば人が変わるくらいにまっすぐな男になる。それを他人にも向けてほしいととは思うが、流石にそれは押し付けというものだ。だがまぁ、大切な人にだけ向けるまっすぐな姿勢は確かに好ましい。」

 

柊「………」

 

平塚「君は良い男に巡り会えたようだな。あんな男はあまり居ないぞ?私も君と同じ年齢くらいだったら、間違いなく惚れていただろうな。」

 

柊「惚れてたとしてもあげません。」

 

平塚「だろうな。見ていたら分かる、君は独占欲がかなり強いと見る。呆れる程にな。」

 

柊「……ふふふ。」

 

平塚「やっと笑ったか。」

 

柊「っ!」

 

平塚「その笑顔を比企谷にも見せてやりたまえ。そうすればアイツもかなり落ち着くだろう。今1番不安定なのは君だが、それと同じくらいに君を心配して、不安定になっているのもまた比企谷だ。少しでもいいから、自分の恋人を安心させてやりたまえ。」

 

 

………この先生やっぱり良い人だね。先生が男の人だったらモテそうなのに。

 

 

コンコンコンッ

 

 

平塚「ん、入れ。」

 

涼風「失礼致します、八幡さんからこちらにお荷物を……お姉様!!ご容態は如何ですか!?」

 

柊「うん、大丈夫。八幡君のおかげで凄く落ち着いたから。」

 

涼風「……良かったです、本当に。」

 

柊「心配を掛けてゴメンね、涼風。」

 

涼風「いいえ、とんでもありません。」ナミダメ

 

 

涼風にも心配を掛けちゃったかな、帰ったら涼風にもお詫びをしないと。

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

八幡「柊、待たせ……涼風、荷物ありがとな。」

 

涼風「いいえ、他ならぬ八幡さんの頼みです。無碍になど致しません。」

 

平塚「よし。準備も出来た事だ、2人は○○□号室に向かえ。そこが今日の2人の部屋だ。夜十神妹も心配だろうが今日は部屋に戻りたまえ、本来であればもう外出禁止時刻で部屋の中にいる時間だ。」

 

涼風「……分かりました。ではお姉様、また明日。ごゆっくりお休みください。八幡さんもお姉様をよろしくお願いします。」

 

八幡「あぁ、任せておけ。」

 

柊「うん、涼風もおやすみ。」

 

平塚「途中まで一緒に行くといい。そのくらいなら誰も咎めはしないだろう。」

 

 

 

 

 



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2日目の終わり

 

 

八幡side

 

 

3人で平塚先生の部屋から出て、同じ階にある生徒指導用の部屋に向かう途中で涼風と別れた。まだ不安そうな表情を残す涼風に対し柊はぎこちないながらも笑顔で涼風を送り出した。

 

涼風がエレベーターに乗り込んで見えなくなってから、俺達も部屋へと向かった。

 

 

八幡「けど良かったな、一緒にしてくれて。」

 

柊「うん、私も今は八幡君と一緒の方が安心する。涼風もそうだけど、男の子だからかな……」

 

八幡「なんで声掛けたらいいか分からんが、嵐山からずっと一緒だったからな。同じ相手の方が安心感が湧くんじゃないのか?多分。」

 

柊「私は八幡君だからだと思うなぁ。だってそうでなければ、私が他の男の人にこんな事する筈がないもん。八幡君だけだよ、こんな風に自分の身体を預ける事ができる男の人は。」

 

 

まぁ曲がりなりにも彼氏だからな。彼女がこんな目に遭ってるのに、知らんふりする彼氏なんている筈がねぇだろ。

 

 

八幡「まっ、今は早く部屋に行って休むとするか。あっ………柊、風呂どうする?もう時間も過ぎてるだろ?大浴場は使えないから部屋のがあったらそこにするか?」

 

柊「うん、私はそれでいいよ。」

 

八幡「分かった………おっ、○○□号室って事は此処だな。じゃあ入るか。」

 

 

俺は部屋の鍵を開けて中へと入る。間取りは俺達学生が止まってる部屋よりも狭いから2人か3人用の部屋だ。まぁ俺達には丁度良いだろう。

 

 

柊「じゃあ……どうしよっか?」

 

八幡「あったかい水が出るなら、風呂かシャワー浴びて来てもいいぞ。俺はその間に布団とか敷いとくからよ。」

 

柊「………」

 

八幡「……ん?どうした?」

 

柊「あの……一緒に入る、のはダメかな?」

 

八幡「っ!!?」

 

 

い、いいい一緒にっ!?アイツ何を言って……いや、今の柊のメンタルからして俺と一緒に居たいと思うのは当然だとしよう!だが………一緒に風呂に入るのはダメだ!!流石に倫理的に考えて不可能だ!!ここは断るしかない!

 

 

八幡「いや、流石にそれは……な?/////」

 

柊「う、うん……だよね。私も流石に裸を見られるのは恥ずかしいから………今のは忘れて?/////」

 

八幡「お、おう………/////」

 

柊「………/////」

 

八幡「………/////」

 

 

ち、沈黙が気まずい………

 

 

柊「じ、じゃあ私お湯が出るかどうか確認するね。八幡君はお風呂かシャワーどっちが良い?」

 

八幡「……俺はどっちでも。柊の好きな方にしろ。俺は文句なんて言わねぇからよ。」

 

柊「……ありがとう、八幡君。」

 

 

………俺も布団敷くか。

 

それからは柊が気を利かせ、風呂を用意してくれた。何とも自分が不甲斐ないと思ってしまう。気を利かせるどころか、柊に利かせてしまうなんてな。けど、柊の表情にも少しずつ余裕が出てきたように感じる。

 

 

柊「八幡君、お風呂先に………」

 

八幡「ん、分かった。俺もその内したら入る………どうした、急に固まって?」

 

柊「………八幡君、今日は一緒の部屋だよ?」

 

八幡「あぁ、知ってる。」

 

柊「なのに、これは何?」

 

 

柊が指差したのは、俺の敷いた布団だった。けど何かあるのか?位置?いや、そんなのはどうでもいいよな?え、何だ?

 

 

柊「私八幡君とくっついて寝たい!だから布団を離したりしないでよ………」

 

八幡「あ、あぁ済まん!うっかりしてた、悪い。」

 

柊「ううん、八幡君も無意識だっただろうし、もう気にしてないから。」

 

八幡「柊のケアの為に2人部屋にしてもらったのに、今のだと意味が無いよな。」

 

 

迂闊だった……俺も少し柊に気を利かせないと。でないと一緒にしてもらった意味がない!

 

 

柊「八幡君もお風呂に入ってきなよ。多分今は頭が落ち着いてないでしょ?私もそうだけど、あんな事が起きた後だから思考がまだ充分に働かないんだ。私も今は兎に角八幡君と一緒に居たいって大雑把な事しか考えられないから。」

 

八幡「………分かった、俺も少し風呂に浸かってリラックスしてくる。」

 

柊「うん、行ってらっしゃい。」

 

 

思考が充分に働いてない………そうかもしれないな。就寝時間が迫ってるのに、こんな事を思うのもおかしな事だが、今はそうも言ってられないしな。俺も風呂に入って気持ちを落ち着かせよう。

 

 

ーーー入浴後ーーー

 

 

風呂から上がった俺は柊と2人用の椅子に座りながら、外を眺めている。因みに少しだけ窓を開けて。柊は俺の肩に頭を乗せ、俺は後ろから手を回してその頭を撫でている。少し湿り気のある髪は撫でづらくもあるが、まだ乾き切っていないからか、逆にいつもより艶やかに見えている。

 

 

柊「………」

 

八幡「………」

 

 

特に話す事も何もないので無言の状態が続くが、俺達はこれが苦だと思った事はない。むしろ落ち着くと言ってもいい。前からそうだった、特に話す内容がない時は柊が俺の肩に頭を乗せ、俺がその頭を撫でる。こういう時の柊は決まって身体だけでなく、全ての力を抜いているのだ。

 

 

八幡「………」

 

柊「……ねぇ、八幡君。」

 

八幡「ん?」

 

柊「今回の件、どうなると思う?」

 

八幡「どうなるってのは?」

 

柊「このまま終わると思う?」

 

八幡「………多分ならないと思う。他校の生徒同士で問題を起こしたとなれば、必ずぶつかり合いが起きるだろう。アイツが余程の問題児でなければ話は別だが、そうはならないだろうな。」

 

柊「……そうだよね。」

 

八幡「俺もおじさんとおばさんに連絡はしちまったからな、当然問題にはなるだろう。けど、柊が心配する事じゃない。俺がなんとかする。」

 

柊「八幡君………」

 

八幡「つっても、俺に出来る事なんてたかが知れてるけどな。」

 

柊「………ううん、そう言ってくれるだけでも凄くありがたいし、凄く嬉しい。私、八幡君に守られてるんだなぁって分かる。ありがとう、八幡君。」

 

八幡「………あぁ。」

 

 

それから程なくして就寝時間となったので、俺と柊は布団に入って眠りについた。この時、布団を2つ用意したのだが、5分も経たない内に柊が俺の布団に入ってきたのは気にする事ではないだろう。

 

 

 

 

 

 




お休みなさい八幡、柊。ゆっくり休むんだよ。


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万全!!

 

 

柊side

 

 

………不思議な夢を見た、中学生の時の夢を。懐かしいとは思ったけど、何処か違った。特に1年生から2年生の夢は何かが根本的に欠けている。そんな気がしてならなかった。そして3年生の夢に入って、それはすぐに分かった。分かった途端、私の身体は太陽の光を浴びているかのようにポカポカと暖かくなった。あぁ……そっか、やっぱり私はもう抜け出せなくなってるんだ。どんなに良い思い出があったとしても、私が1()()()()()()()()()()()が居ないから満たされないんだ。けど今はもう違う、今はいつでも隣にいてくれる………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだよね、八幡君。

 

 

柊「……んんぅ、あっ………ふふふっ♪」

 

八幡「すぅ……すぅ……」ギュ-!

 

 

ふふふっ、だから満たされた気持ちになってたんだね♪納得納得!八幡君に抱き締められながら眠れたのなら、良い夢を見られる筈だね♪気持ち良いなぁ………私の1番落ち着く場所。もう1度眠って夢を見たいくらいだけど、この幸福感を手放したくない。守られているのがよく分かる。きっと私が動いたら、八幡君もすぐに起きると思う。抱き締められているとは言っても、キツく抱き締められているわけではない。私が動いても大丈夫なくらいの強さだった。ふふふっ、八幡君は夢の中でも私の事を守ってくれているのかな?

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

八幡「………っ。」パチッ

 

柊「………」ジィー

 

八幡「………何だよ、人の寝顔見てて面白がっていたのか?」

 

柊「ううん、私を抱き締めながら守ってくれているカッコ良い彼氏の寝顔を見ていたの。」

 

八幡「……っ!済まん、キツかったか?」

 

柊「ううん、気持ち良かった。八幡君に包まれていたから安心して眠れた。それにね、良い夢を見れたから。」

 

八幡「……聞いてもいいか?」

 

柊「私には八幡君が居ないとダメだっていう夢。」

 

八幡「何だそりゃ?」

 

 

ふふふっ、八幡君は分からなくてもいいよ〜。これは私だけが知っていれば良いんだもん♪

 

 

八幡「今何時だ?」

 

柊「7時10分くらいだよ。後1時間くらいしたら朝食だね。皆には悟られないようにしないとね。」

 

八幡「そうだな……先に顔洗ってこいよ。俺は布団を片付ける。ついでに着替えも此処でするわ。」

 

柊「オッケー。あっ、八幡君。」

 

八幡「ん?」

 

柊「私は洗面所で着替えるけど、もし良かったら覗いてもいいよ?」

 

八幡「冗談言ってないではよ行け。」

 

柊「えへへ、はぁーい♪」

 

 

八幡(柊、何とか元の状態に戻ったみたいで良かった。これなら平塚先生にも安心して報告できる。けど朝食行く時どうするか、時間通りにエレベーターで行ったら流石に階の違いで怪しまれるだろう。なら階段か?一応男子は6〜7階、女子が4〜5階、教職員が3階という風になってる。少し時間をズラして行った方がいいだろうな。)

 

 

八幡「それに、終わった後も抜け方を考えないとな。特に男子共には悟られんようにしないと。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「………」

 

 

八幡君、やっぱり考えてくれてたんだ………よぉし、私も少し考えてみよう!

 

 

柊「お待たせ〜。」

 

八幡「おう。」

 

柊「八幡君あのね、私色々と考えてみたの。」

 

八幡「何を?」

 

柊「朝食に行く時と終わった後の抜け方。」

 

八幡「俺もそれを考えてた。それで?」

 

柊「朝食は時間をズラして早く行くか遅く行くか、それか階段で行くかの3つ。終わった後がトイレに行くと言って抜けるか、歩きたいと言って抜けるかの2つ。思いついたのがこれくらいなんだけど、どうかな?」

 

八幡「俺と殆ど同じってすげぇな……俺は終わった後にもう1つあって、先生に用事があるからって抜けるの1つだ。」

 

 

さっすが八幡君………

 

 

八幡「してどうするよ柊さん。」

 

柊「そうだね八幡さん、じゃあ行きは階段で行こうか!2人で行きたいしっ♪」

 

八幡「欲を隠さない辺り流石っす柊さん。それで帰りはどうする?」

 

柊「八幡君の最後に言ってた先生に用事があるからにしようよ。その方が1番現実的だもん。よく考えたら、他の2つは終わるまで待ってるか、一緒に行くパターンがあるからね。」

 

八幡「じゃあ柊の言ったパターンにするか。行きは階段、帰りは先生に用事があって抜ける。」

 

柊「オッケー♪」

 

八幡「了解だ。」

 

柊「じやあ、八幡君も顔を洗って来なよ。八幡君の事だから洗面用具以外はもうカバンの中に片付けてあるんでしょ?」

 

八幡「お見通しですか、俺彼女に隠し事出来ないじゃん。隠す事ないからいいけどさ。」

 

柊「私もっ!八幡君にはなぁ〜んにも隠し事なんてしないよ♪八幡君には私の全部を知ってて欲しいから!何かあったら必ず教えるから!」

 

八幡「絶対に教えたくない事とかは話さなくてもいいからな?」

 

柊「分かってるよ〜。」

 

 

けど多分、それも教えちゃうと思う。八幡君だったらそれもどうにかしちゃうって思えちゃうんだよね〜不思議と。あっ、そうだ!新幹線も八幡君の隣にならないとっ!!旅行が終わった後もきっと私に着いてくると思う。『心配だから。』とか『おじさんとおばさんに報告。』とかそういう理由をつけてね、ふふふっ♪

 

 

 

 



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修学旅行、終幕

 

 

八幡side

 

 

平塚「そうかそうか、それは何よりだ。君から見ても、夜十神はこうでないと落ち着かんかね?」

 

八幡「まぁ、そうですね。天真爛漫な柊でないと、柊じゃないみたいで少し………」

 

平塚「まぁ君からすればそうだろう。彼女の事をよく知る君だからこそ、思える事だろうけどな。」

 

柊「ふふふっ、ありがとう八幡君♪」ギュー!

 

平塚「だが1つ言わせてもらう。私の前でその行動は謹んでもらえんかね?」

 

八幡「いや、俺も止めたんですよ?部屋から出る時に。けど柊がどうしてもと聞かなくて。」

 

柊「だって八幡君に抱き着いてたいんだもんっ♪」

 

八幡「………すみません。」

 

平塚「………まぁ彼女の心情的な事も考えて、今日の所は我慢しよう。」

 

 

………本当にすみません、平塚先生。

 

 

ーーー食堂ーーー

 

 

俺等は部屋を出て食堂に行こうと思ってたが、丁度よく平塚先生も出て来たから一緒に行く事になった。昨日の事や、朝の事もとりあえず報告してある。平塚先生には本当に感謝だな。もしあの場で許可が降りなかったら、柊はきっと今日も精神不安定だっただろう。

 

 

戸塚「あっ、八幡!!昨日は何処に行ってたの!?ずっと帰ってこないから心配してたんだよ!?」

 

八幡「あぁ〜済まん。実は………」

 

 

ヤバい、コレの言い訳考えてなかった。どうしよう………

 

 

柊「……ちょっと色々あったんだ、私も関係あるけど理由は言えないの。ゴメンね。」

 

戸塚「そ、そうなの?大丈夫?」

 

八幡「あ、あぁ……今はなんともないから大丈夫だ。心配させて悪かった。」

 

戸塚「ううん、気にしないで。困った事があったら相談してよ?僕でよければ力になるから。」

 

八幡「あぁ、ありがとな。」

 

沙希「……おはよ。」

 

涼風「おはようございます、お姉様、八幡さん。良い朝ですね。」

 

八幡「お、おう……おはよう。」

 

柊「おはよう川崎さん、涼風もね。」

 

沙希「昨日、アンタの妹から聞いた。大変だったみたいだね。」

 

柊「っ!?す、涼風!?」

 

涼風「申し訳ございません。ですが川崎さんなら信頼における人物だと思いましたので、お話しました。それに川崎さんはとても良い方ですので。」

 

沙希「買い被りすぎだから。あたしも戸塚の言った通り、なんかあったら相談に乗るから。」

 

柊「……ありがとう。」

 

戸塚「あ、あれ……もしかして僕だけ仲間はずれ?夜十神さんの事って……何かあったの?」

 

 

………戸塚にも説明するか、けどこの場所だと人が多過ぎる。人が居なくなった時に話すか。

 

 

八幡「戸塚、お前にも説明する。だから少し待ってくれ。場所が場所だし、起きた事もそれなりに大きい事だから、大っぴらにはしたくない。」

 

戸塚「……うん、分かったよ。じゃあ席につこっか!場所は……もう決まってるんだけどね。」

 

柊「はい、私は八幡君の隣♪」

 

涼風「お姉様に同じく、です。」

 

 

そんなこんなやり取りがあって、朝食を無事に済ませた。別れる時も皆気を遣ってくれたから難なく抜けられた。

 

 

だが横目でチラッと見たが、葉山のグループが少しだけギスギスしたように見えた。由比ヶ浜が少しだけ周りの様子を伺うような視線を常にしていた。まぁ俺には関係のない事だ。

 

 

ーーー生徒指導客室(2人の部屋)ーーー

 

 

柊「八幡君、なんか様子変だったね。葉山君達のグループ。ギスギスしてたような気がする。」

 

八幡「お前も見てたのか?」

 

柊「少し気になってたから。いつもは騒がしいくらいお話が聞こえるのに、今日はすっごい大人しいんだもん。逆に気味が悪いよ。」

 

八幡「あぁ、俺もそう感じた。けど今はそんな事は考えないようにするぞ。意味のない事を気にしても仕方ないからな。」

 

柊「……そうだね。」

 

 

そして3日間お世話になったホテルに別れを告げて、現在京都駅のホールに居る。皆旅先での思い出やら、起きた事を話していてかなり騒々しい雰囲気だった。

 

 

八幡「……これで京都も見納めか。」

 

柊「?八幡君何か言った?」

 

八幡「いや、何でもない。柊、少し京都の街を眺めに行かないか?」

 

柊「っ!……うん、行く!」

 

 

ーーー京都駅・展望ーーー

 

 

柊「………」

 

八幡「………何も聞かないのか?」

 

柊「え?」

 

八幡「何かを察してついて来たんじゃないのか?さっきの顔、そういう顔だったぞ?」

 

柊「………八幡君にはお見通しかぁ。奉仕部、どうするの?きっと帰って部室に行ったら、八幡君絶対にあの女からネチネチ言われるよ?」

 

 

あの女、とは由比ヶ浜だろうな。

 

 

八幡「まぁ、そうなったらそうなっただ。次の依頼でもしも由比ヶ浜がまた変な行動をするようなら、奉仕部とはそれっきりだ。俺の手に余る。俺はあの2人の保護者じゃねぇから、責任取りなんてしたくねぇしな。」

 

柊「……今すぐ、じゃダメなの?」

 

八幡「流石に、な。平塚先生には世話になったから今回は先延ばしにするだけだ。だがもし次にやらかすようなら、その時は辞める。」

 

柊「………うん。」

 

八幡「……そんな顔するな。」

 

柊「あっ………」

 

 

俺は少しでも柊を安心させる為に、柊の身体を抱き寄せてそのまま抱き締めた。

 

 

八幡「大丈夫だ、俺はお前を置いて何処かに行ったりなんてしない。もう俺の中でもお前が居る事が当たり前になってるんだからよ。俺もお前が居なくなったら困るんだよ。だから柊、俺は何処にも行かないからお前もそんな顔をするな。」

 

 

柊「………うん。」

 

 

そして俺達の修学旅行は幕を閉じた。

 

 

 

 

 



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柊の状態と説明

 

 

ーーーーーー

 

 

千葉駅に着いた総武高一同はその場で現地解散となっている。その後教師達は学校に戻り、溜まった業務との格闘になるが、学生達は様々だ。素直に家に帰る者も居れば、友人達と何処かに遊びに出掛けたり、部活に行こうと精を出す者も居る。修学旅行は終わったが、学生達にとっては、まだ終わってはいないようだ。

 

 

八幡「あぁ、だから千葉には着いたけど、帰るのは少し遅れる……あぁ、悪いな………お前はお土産の事しか頭にねぇのか?心配しなくても第1位しか持ってきてないから安心しろ。は?お前が忘れんなよ、俺と柊の思い出だよ。話す予定はねぇけど………冗談だよ、ちゃんと買ってきてる。現金な奴は嫌われるぞ?だからちゃんと家で待ってろ。でないと八ツ橋は俺が全部食うからな、じゃな………ふぅ、待たせた柊、涼風。」

 

涼風「いえ、私達も宮間さんにお迎えを頼んでましたので。それで八幡さん、本当にいいのですか?八幡さんもお休みになられたいのでは………」

 

八幡「いや、ちゃんとおじさん達に報告しとかないと俺の気が済まない。それに、アイツが今後も柊や涼風に何もして来ないとは限らない。慎重になる必要もあるかもしれない。」

 

柊「………」

 

涼風「お姉様………」

 

八幡「まっ、なるようになる。今から心配してても仕方ないだろ。」

 

柊「そうだね……あっ、来たみたい。」

 

 

千葉駅の前に黒塗りの車が到着して、運転手の扉から夜十神家の執事長、宮間が出てきた。

 

 

宮間「柊お嬢様、涼風お嬢様、若様、長旅からのご帰還とても嬉しく思っております。ご無事で何よりでございます。」

 

柊「宮間さん、来てくれてありがとう。」

 

宮間「いえ、お嬢様からのご命令であればこの宮間、すぐにでも馳せ参じましょう。さっ、お車にお乗り下さい。旦那様と奥様もお待ちです。」

 

 

宮間に言われて車の後部座席に乗った八幡達は、宮間の運転で夜十神家(邸?)へと向かった。

 

 

ーーー夜十神家・居間ーーー

 

 

ガチャッ

 

 

柊「ただいまお父さん、お母さん!」

 

涼風「お父様、お母様、只今帰りました。」

 

御影「おぉ、柊に涼風!無事で良かったよ!」

 

紫苑「えぇ、本当に。」

 

御影「八幡君も娘達の面倒を見てくれて感謝するよ、ありがとう。」

 

八幡「いえ、俺は何も………」

 

御影「さて、娘達の帰還の喜びにもう少し浸りたい所だけど、そうも言ってられない。八幡君、旅行での事、聞かせてもらえるかな?」

 

八幡「その為に来たんです、自分からもお願いしようと思ってましたので。」

 

紫苑「八幡君、お願いね。宮間、此処に居る全員にお茶をお願いね。貴方の分も用意して同席してもらって構わないわ。もしかすると、貴方の力も必要かもしれないから。」

 

宮間「奥様のご命令とあらば……かしこまりました。では早速ご用意致します。」

 

 

そして程なくしてから紅茶が用意されて、八幡と柊、そして涼風は起きた事を説明した。夜十神両親も天之川光輝という名前には聞き覚えがあったようだ。というのは、小学の頃に柊と涼風から聞いていたのだろう。尤も、2人はその会話の事は覚えていないようだが。

 

 

柊「それで、その………お父さんとお母さんには言ってなかったんだけど………私ね、人が、見えなくなるの。」

 

御影「……な、何だって?」

 

柊「私もビックリしたの。形は見えるけど、顔や格好が見えなくなって、黒い人影みたいなのが立ってるんだ。見えるようになったのは、八幡君と出会ってすぐの事だったの。」

 

御影「じゃ、じゃあ僕達の事も?」

 

八幡「いえ、どうやら条件があるみたいで………柊自身の感情にも左右されるみたいですが、1番なりやすい理由としては、柊が対象の人に対して嫌悪感を抱いている事だと思います。なので皆さんは大丈夫だと思います。だから中学時代は殆どの連中が黒い人影にしか見えなかったと思います。」

 

紫苑「………柊、どうして私達に言ってくれなかったの?」

 

柊「……心配を掛けたくなかったの。それに、実害があったわけでもなかったから………」

 

御影「何を言ってるんだ柊、子が親に迷惑を掛けなくてどうするんだい?僕達は柊が学校中の生徒から避けられていると涼風から聞いた時、なんとかしてあげようと本気で思ってたんだ。けどそうする前に八幡君が救ってくれた。もう大丈夫かと思ってたけど、柊の身体にそんな事が起きていたなんて………何かあったのなら、すぐに僕達に言いなさい。赤ん坊は泣くのが仕事のように、子供は親に頼るのも仕事の1つなんだ、僕達にも少しは頼って欲しいよ。」

 

柊「………うん、ごめんなさい。」

 

紫苑「いいのよ、もう。言ってくれただけでも充分だわ………でも八幡君、さっき言ってた『これまでの症状とは桁が違う。』ってどういう事かしら?」

 

八幡「……はい。これまでの柊なら、その相手の事が幽霊になるだけで済んだのですが、今回の天之川に対しては柊が嫌悪感を出したと同時に天之川に怯えながら俺の腕にしがみついたんです。こんな事は今までに無かったんです。その後も柊は震えてました。多分柊にとって余程嫌な事だったんだと思います。」

 

柊「……今でも思い出したくない。目の前には黒い人影が立ってて、何度も何度も私に迫り来るし、私を守るとか言いながら八幡君から引き剥がそうとしてた………近くに居るだけでも嫌な空気を感じたし、鳥肌も震えも止まらなかった。」

 

 

柊のこの発言に、夜十神両親は1つの事を決めた。それは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御影「柊、1度病院に行って診てもらおう。自分の今の状態を知る為にも。」

 

 

 

 

 

 

 



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診断

アンケート結果を見てみましたが………400名以上とは驚きました。そんなに見て下さっているなんて(本当はそれ以上だと思いますけど。)

頑張って名前考えなきゃ!!


 

八幡side

 

 

修学旅行から翌日。俺は夜十神一家と一緒に千葉大学医学部附属病院に赴いている。理由は分かるだろ、柊を診てもらう為だ。もっと早くにこうするべきだったのだろうが、それは今考えても仕方のない事だ。今は柊の状態を把握する事が最優先だろう。それに、特定の人物を嫌いにならないと見れないようにはならないんだ。多分、初対面の先生や看護師なら問題はないだろう。

 

 

ーーー千葉大学医学部附属病院ーーー

 

 

御影「精神科で予約していた夜十神です。」

 

看護師「夜十神様ですね?少々お待ち下さい………お待たせしました、紹介状も預かっておりますので、すぐにご案内致します。此方へどうぞ。」

 

 

?紹介状?

 

 

御影「実は僕と此処の院長は昔からの友人でね、何かあった時には連絡を寄越せって言われてたから融通を利かせてもらってたんだよ。」

 

柊「要するにコネを使ったんでしょ?身も蓋もない言い方をしたら。」

 

御影「柊、容赦ない言い方をしないでくれ。」

 

紫苑「事実でしょ?」

 

御影「………うん。」

 

 

おじさん、もう少し頑張れよ………

 

 

看護師「院長、夜十神柊様をお連れしました。」

 

院長『構わねぇから入れてやれ。』

 

看護師「はい。では中へどうぞ。」

 

 

看護師がスライド式の扉を開けると、目の前には白衣を着たスキンヘッドのヤクザが居た。しかも左の目元に十字傷あるんですけど?

 

 

八幡「すいませんおじさん、おばさん。先生間違えてませんか?見間違えでなければ俺の目の前にヤクザがいるんですけど。」

 

柊「うん、私も全く同じ感想。」

 

涼風「あ、あの………同じ感想です。」

 

御影「あっははは!やっぱり君は少しでも見た目を変えるべきだよ、この病院に配属された新人さん、きっと君の顔を見て1度はこう思ってるはずだからね。」

 

院長「うっせぇ。これが俺なんだ、誰にも文句は言わせねぇよ。てか久しぶりに連絡寄越したと思えば、精神科ってどういうこった?」

 

紫苑「えぇ。その事なんだけど、貴方に娘を診てもらいたいの。」

 

 

院長は神田次矢(かんだつぐや)という名前で、この病院が受け持っている全ての内容を網羅してるとも言っていい程の知識を持ってる人らしい。その中でも特に精神科・神経科を得意としていて、医者になってからずっとその道のエキスパートみたいで、医者の世界でも名前が広まっている程の名医だとか。このなりで。だって見た目マジでヤクザだぞ?

 

 

神田「……つまり嬢ちゃんは嫌いな奴はマジで見えたりしねぇんだな?」

 

柊「はい、人影でしか見えません。」

 

神田「ふむ……これまで夢に出てきたり、幻覚が見えたりとかはしないか?」

 

柊「ないです。」

 

神田「無いとは思うが、暴力を振るわれたりとかはされてないか?」

 

柊「はい、無いです。」

 

神田「っとするとだ……御影、こりゃ難病かもしれん。命には関わらんが、最悪の場合は嬢ちゃんの精神が耐えられなくなるかもな。」

 

御影「何か分かったのかい、次矢?」

 

神田「あぁ。嬢ちゃんの状態だが、今の所は問題ねぇ。精神面も体調面も特に異常はない。けど問題はそこじゃねぇ。対象人物に会った時、もしくは自分で作っちまった時だ。」

 

紫苑「どういう事?」

 

神田「この症状の良い点は、自分で視認した相手を嫌いになんねぇと発生しねぇ。つまりは嫌いにならない限りは問題じゃねぇって事だ。だが悪い点は、その嫌いな奴が出来た時、嬢ちゃんの精神面の影響がデカ過ぎるって事だ。さっきの説明だが、中学の時は同級生または全生徒が対象になって、嬢ちゃんの中ではそこに居る坊主や御影達以外はどうでもいい存在になってたんだろ?」

 

柊「は、はい。」

 

神田「だとしたら、嬢ちゃんはソイツ等の事は嫌いで、どうでもいい存在だから見えなくなったって事になる。そうなると今回のケースは単純だ。ただ単に嫌いだから相手に対しても嫌悪感を抱くようになりながら人影しか見えなくなったってわけだ。つまりは嬢ちゃんの精神の天秤によって変わるって事だ。」

 

御影「なる程………」

 

神田「そしてこの症状は少なくとも新種の病、というよりは障害に近いだろう。最初にPTSD…所謂心的外傷後ストレス障害の可能性もあるとお前達も俺も疑っていたが、嬢ちゃんにはその兆しが無かった。完全に新種だな。俺も聞いた事ねぇしな。」

 

 

新種の障害、か………どの括りにも入らない原因不明の障害。

 

 

神田「幸いにも治療法はすぐ側に居るみたいだから安心だな。坊主が嬢ちゃんを撫でるなり抱き締めるなりすれば、取り敢えずは治まるんだろ?」

 

柊「はい、1日一緒に寝たら治りました。」

 

神田「ん、なら当面の心配はないな。取り敢えず俺から言える事は、出来る限り嫌いな奴は作らねぇ!出会わねぇ!関わらねぇ!コレに限るな。そうすりゃあ問題もなく過ごせんだろ。」

 

紫苑「それってかなり厳しいんじゃないの?関わらないは兎も角、作らないや出会わないなんて「俺も無茶言ってんのは分かってる。けどそうでもしねぇと精神がすり減ってく一方だ。なら出来る限りの事はやっておいた方がいい。」………そうね、分かったわ。」

 

神田「おう。んじゃ診断は終わりだ。」

 

御影「感謝するよ、次矢。」

 

神田「いいって事よ。何かあったらまた連絡寄越せ。嬢ちゃんに限定せずに俺が診てやるよ。特別料金でな。」

 

御影「次矢………」

 

神田「その代わり、「美味しい食べ物やお酒を持って行くよ。」……へっ、流石は御影だな。」

 

御影「20年も付き合いがあれば分かるよ。じゃあ何かあった時は頼むよ。」

 

神田「あぁ、分かった。気を付けろよ。」

 

 

見た目はともかく、中身はかなり良い先生だな。平塚先生と良い付き合い出来るんじゃね?紹介はさすがにしねぇけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで夜十神両親の名前は

父が【御影(みかげ)】、母を【紫苑(しおん)”にしました!!

それとオリキャラの神田次矢先生ですが、イメージキャラは【ナンバカ】の看守主任、双六一です。



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電話

 

 

ーーーーーー

 

 

千葉市立総武高等学校。千葉県内で進学校と言われている高校であり、学力でも県内トップを誇る学校である。生徒の自主性を重視しており、伝統行事においても生徒達で思考、計画、実行させる事にしている。

 

そんな総武高校の職員室では……いや、校長室では少しだけ殺伐とした雰囲気になっていた。厳密に言うと、校長先生がである。

 

 

ーーーーーー

 

茅ヶ崎side

 

 

さて、私の済ませるべき業務も終わりましたし、そろそろお電話を掛けるべきでしょうか。天之川君が在籍している高校も分かった事ですし、済ませるべき面倒事は早い方がいいですからね。

 

そうですね……折角です、私1人では不安ですから平塚先生も同室させましょう。彼女も教育熱心な方ですから、夜十神さんのあの後の様子も知っているでしょう。

 

 

ーーー職員室ーーー

 

 

茅ヶ崎「平塚先生、少しよろしいですか?」

 

平塚「っ!校長先生、何でしょう?」

 

茅ヶ崎「えぇ。あの2人の事についてお話があるのと、少し同行してもらいたいのですが、今はお時間は空いてますか?」

 

平塚「私の預かる生徒の為なら、時間は幾らでも使えます。伺います。」

 

茅ヶ崎「ありがとうございます、では校長室までお願いします。」

 

 

流石は平塚先生だ、こんな生徒想いの教師は近年では珍しい……教育者として鑑であるべき方の姿と言ってもいいでしょう。

 

 

………まぁ、少し乱暴な所はなくは無いですが。

 

 

ーーー校長室ーーー

 

 

茅ヶ崎「夜十神さんのあの後の容態はどうでしたか?私も確認したかったのですが。」

 

平塚「昨日は落ち着いてました。比企谷と過ごしたのが効いたのでしょう。いつも通りの彼女に戻ってました。」

 

茅ヶ崎「そうですか、それは何よりです。それでですね、その件についてお話があります。本校の生徒に危害を加えた生徒の在籍校が分りました。千葉市立京葉高等学校2年所属、天之川光輝君。彼は京葉高校に在籍しているみたいです。」

 

平塚「……今からそちらに向かうと?」

 

茅ヶ崎「いえ、まだその段階までには。ですが今から今回の事についてお電話をさせてもらう予定です。恐らくは保護者同伴での話し合いになると私は踏んでいます。そうならなくても、当人同士での話し合いは必ず起きるでしょう。そこで平塚先生には私が電話をかける前に、改めてその時の状況を説明して欲しいのです。そして電話の最中の同行もお願いしたい。恐らく向こう側もこの事は知らないでしょう、こちら側が丁寧な説明をすれば少しは納得するでしょう。」

 

平塚「分かりました、では改めて説明します。」

 

 

今考えても恐ろしい事です、その気が無いとはいえ人に恐怖を植え付けるなど。天之川光輝君、一体どのような人物なのでしょうか?

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

平塚「以上が今回の概要です。」

 

茅ヶ崎「ありがとうございます。おかげで状況が分かりました。では早速「校長先生!」電……何ですか平塚先生?」

 

平塚「その……相手側がこの話を鵜呑みにするとは思えません。その辺りはどうするつもりですか?」

 

茅ヶ崎「はっはっは……平塚先生、私くらいにならないと分からないとは思いますが、目の前に相手が居ない、口だけでの対話なら、嘘も方便も何とでも言えます。それに私も当事者ではありませんからね、あり得る嘘くらいならつけられますよ。よく言うではありませんか、大人は汚いと。」

 

 

私も存外、酷い人間なのかもしれませんね。

 

 

茅ヶ崎「もしもし、千葉市立京葉高等学校でしょうか?私は千葉市立総武高等学校校長の茅ヶ崎です、お世話になっております……えぇ、畑山先生という方はお手隙でしょうか?」

 

 

平塚(担任の先生まで特定していたのか?一体何処まで調べてるんだ!?しかもその隙にスピーカーにもしてる………っ!?録音機!?)

 

 

畑山『お電話代わりました、畑山です!』

 

茅ヶ崎「お忙しい中申し訳ございません。改めまして、総武高校校長の茅ヶ崎です。日々の業務、お疲れ様です。」

 

畑山『あ、ありがとうございます!』

 

茅ヶ崎「それで、今お時間は大丈夫でしょうか?」

 

畑山『はい、大丈夫ですけど。』

 

茅ヶ崎「実は少しお聞きしたい事がありましてね、畑山先生が受け持っている生徒の中に天之川君という生徒はいらっしゃいませんか?」

 

畑山『はい、居ますけど………』

 

茅ヶ崎「その生徒の特徴を……先生の見た限りで構いませんので、教えては頂けませんか?」

 

畑山『は、はい。天之川君は学校の人気者です。成績も優秀でスポーツもよく出来る凄い子です。それにとても強い正義感を持っている良い生徒ですよ。』

 

茅ヶ崎「なる程、とても優秀な生徒さんのようですね。担任としても誇らしいでしょう。」

 

畑山『はい、とても!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、それではダメですね。生徒の表面しか知らない、教科書通りの教師のようですね。

 

 

畑山『あの、天之川君の事で何か?』

 

茅ヶ崎「えぇ。実は先日にあった修学旅行の事なのですけどね、ウチの生徒が彼から被害を受けたと、その生徒の担任から聞きましてね。それで畑山先生から天之川君の人柄を聞かせて頂きました。」

 

畑山『天之川君が!?な、何かの間違いでは?そうでは無いのですか?』

 

茅ヶ崎「えぇ、ウチの生徒が名指しでそう言ってましたからね。間違いはありません。それに面識もあったようですので。私は当事者ではありませんが、流石にこの事態を放っておくわけにはいきませんので。」

 

畑山『……詳しい内容を聞かせて頂けませんか?』

 

茅ヶ崎「勿論ですとも。しかし長くなりますが、大丈夫ですかな?」

 

畑山『自分の生徒が関わっているんです、放ってなどおけません!』

 

 

………先程の言葉は撤回しましょう。生徒想いであるのは間違い無いでしょう。

 

 

そして私は畑山先生に今回起きた事を事細かに説明しました。畑山先生は被害の内容を暴力と履き違えていたみたいですが、説明の内に精神的である事を理解してくれたようで何よりです。

 

 

畑山『そんな事が。まさか彼が………』

 

茅ヶ崎「意図せずしてやった事とはいえ、こちらの生徒はその日、震えていたと聞きました。それに怯えるようにしていたと。」

 

畑山『……そちらの生徒は無事なのでしょうか?』

 

茅ヶ崎「えぇ、翌日には本調子に戻りました。今は自宅で休養をとっているでしょう。それで畑山先生、一通りの説明はしましたが、担任として貴女はどうするおつもりですかな?私共としても大事にはしたくありません。ですがそちらの動き次第では、という事にもなります。」

 

畑山『私は………』

 

 

お願いしますよ、畑山先生。正当な評価と決断をして下さいね。

 

 

 

 





【ありふれ】の原作では畑山愛子さんは彼等の担任ではありませんが、今作では担任にしました。


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真実を知るも………

 

 

天之川side

 

 

俺は修学旅行で小学生の頃に仲の良かった柊と涼風と再会した。けど2人は何処か余所余所しかった。様子がおかしいとは思っていた、だがそれは目の前の男の影響だとすぐに分かった。名前は知らないが、目の特徴的な野暮ったい男だった。2人は八幡と呼んでいたが、そう呼ばせているに違いない。その夜に嵐山を散歩していた俺は、偶然柊を見つけた。だがその隣にはまたもアイツが居た。そしてベンチで座ったかと思ったら、急に柊を抱き寄せて顔を近付けた。

 

俺は我慢の限界だった。まさか無抵抗の柊に迫るとは思っても見なかった。何故か奴を心配する柊が居たが、奴は許されない事をしたんだ。罪に問われるべきだった。だが後ろにいた柊が真っ先に彼の元に駆け寄った。何故あんな事をしたのか分からなかった。それからアイツは俺に『突き飛ばしておいて謝りもしないのか』『自分は何もしてないのに付き纏っていると言えるのか』やらと言い訳を言い始め、口論が話にならないと言ったアイツは柊を連れて行こうとした。

 

当然俺はそれを阻止した。だが柊もそれを邪魔してきた。俺は助けようとしているのに………しかも、俺が柊の手を取ろうとしたら、彼女は突然大声で『嫌っ!!』と叫んでアイツの後ろに隠れた。そしてアイツは俺に『柊に近づくな』と告げて『○○中学の奴に夜十神柊について聞け』と言って去ろうとしたが、俺が1歩前に出ただけで彼は突然怒り出した。柊に近づく事を恐れていたのだろう。流石に俺もこれ以上騒ぎにはしたくなかったから、そこからは何もしなかった。

 

 

だがこれでもっと確信が持てた。アイツは柊を脅している。そして柊もアイツに脅されているんだ!あの拒絶も悟られないようにする為の演技だったに違いない!何をされるか分からないから、あんな事を言ったんだろう。柊、なんて可哀想なんだ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが大丈夫だ、必ず俺が救って見せる!!

 

 

女子「光輝君久しぶり〜!元気だった?」

 

天之川「あぁ、本当に久しぶりだな!俺は元気だったよ、君は?」

 

女子「元気元気!光輝君とこうやって会って話すのも久しぶりかも〜♪」

 

男子1「おいおい俺達も居るんだが?無視ですか?」

 

天之川「忘れてないよ、久しぶりだな。」

 

 

俺は奴に言われた通り、○○中学の友達と再会している。当然ワケを聞く為だ。

 

 

男子1「んで、俺達に話ってなんだよ?」

 

男子2「光輝の為なら何でも答えるぜ。」

 

女子「そーそーっ♪それで、どうしたの?」

 

天之川「あぁ、夜十神柊さんについて聞きたいんだ。教えてくれないか?」

 

『………………』

 

 

………な、何だ?何で皆固まってるんだ?

 

 

男子1「なぁ光輝、それ誰に聞いたんだ?」

 

天之川「え、どうして?」

 

男子2「俺達○○中学じゃあそれは禁句にしてんだ。俺等が3年だった頃の1年や2年もその名前を出す事は禁止にしてんだ。」

 

女子「うん、私達は取り返しのつかない事をしちゃったから。彼女に。」

 

天之川「……一体何があったんだ、教えてくれないか?」

 

男子1「光輝、もしそれを好奇心で聞いてんなら答える気はねぇぞ。俺達だってあの時の1年は人生で1番後悔した1年なんだ、興味だけで聞いてんのならやめてくれ。」

 

天之川「俺は八幡って男の奴に聞けって言われたんだ。」

 

男子2「比企谷にっ!?」

 

天之川「知ってるのか?」

 

女子「知ってるも何も、比企谷君も私達と同じ中学だったから。それに夜十神さんがよく……ううん、いつも側に居たのが比企谷君だったから。」

 

 

ど、どういう事だ?

 

 

天之川「聞かせてくれ!俺はその時の状況を知りたいんだ!」

 

女子「……どうする?」

 

男子1「いや、でもなぁ………」

 

男子2「うぅん………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男子1「分かった、教える。」

 

天之川「っ!本当か!」

 

女子「うん。でも私達は教えるだけだからね?質問とかは受け付けないから。」

 

 

それから彼等は俺に中学で起きた事を説明してくれた。柊が告白されたのを知り、怒りが湧き上がったのかは知らないが、その女子は【幽霊ごっこ】というのを始めて、柊を避けた。それに興味を持った生徒が続々と参加し始めて、彼女は孤立してしまった……とても酷い話だ。だがそれから1ヶ月くらいが経ち、アイツ比企谷が急に柊と親しくなって常に行動するようになったとか。それから少ない数の生徒が謝りに行ったのだが、柊には全く取り合って貰えず、比企谷に頼むも門前払いさせられたとか。

 

 

男子2「そして卒業近くなってから比企谷が俺達との仲を取り戻そうとする気はないのかって夜十神さんに聞いたんだよ。」

 

天之川「あ、あぁ………」

 

男子2「そしたら夜十神さん、特に何も無いかのように淡々と言ったんだ。『頭を下げられようと、泣いて謝られようと、そんなのもう知った事じゃない。勝手に何回も無意味に謝ってればいいって思う』って。」

 

天之川「………」

 

女子「そして私達は卒業。彼女達の進学先は分からないけど、頭良かったから総武高とかに行ってると思う。分かんないけど。これが中学3年の事実だよ。」

 

天之川「そんな事があったのか………」

 

男子2「あぁ、じゃあ俺はもう行くわ。流石に遊ぶ気分になれねぇしな。」

 

女子「うん、私も行くね。」

 

男子1「じゃあな光輝。」

 

天之川「………」

 

 

そんな事があったなんて………確かに彼等も酷い事をしたとは思う。だが今は反省してるみたいだから、それを問い詰めるのは違うな。だがそれ以上に酷いのは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

比企谷だ。

 

 

アイツはどんな手段を使ったかは知らないが、柊と仲良くなった。そこまではいい、だがここからだ。その先からは柊を独占していた。謝りに来ていた生徒もいたのにそれを突っぱねたんだ。彼等は柊が取り合ってもらえなかったと言っていたが、裏で比企谷がそうさせていたのだろう。そして自分もそれがさも当然かのように仲裁を取り持たなかった。

 

そして卒業間近のあの質問だ。あれはクラス全員に仲を取り持つ事を無駄だと分からせる為にやった芝居だろう。きっと柊も断腸の思いだったに違いない………本当はもっと仲良くしたかった筈だ。

 

 

だからこそ許せない………柊をあんな風に脅しながら自分に従わせている比企谷が!!

 

 

天之川「俺は絶対に許さないぞ!!」

 

 

 





知ってもこの自分都合解釈………いやはや流石っす。



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旅行明けの学校

 

 

茅ヶ崎side

 

 

修学旅行から2日経って、今日から2年生も授業に参加ですか………夜十神さんが心配ですが、比企谷君もついてますし、今の所は安全とも言えるでしょう。ですが問題は今日以降の放課後と休日です。恐らくですが、天之川君は学校に来るでしょう。理由はありませんが、自信があります。我々教師に出来る事は少ないですが、本校の生徒である以上は、何がなんでも守らなければなりません。我々にはその義務がある。もし危害を加えるつもりであるならば、全力で止めなくてはなりません。その時は京葉高校ではなく、次は教育委員会に報告せざるを得ませんね。

 

 

茅ヶ崎「平塚先生だけにでも、言っておいた方がいいですね。」

 

 

茅ヶ崎sideout

 

柊side

 

 

今日からまた勉強の日々が始まっちゃう………けど、今の私にとってはありがたいかなぁ。だってその時間の間は嫌な顔を見ずに済むから。ううん、クラスの中にも実は嫌いというか、好きになれそうにない人は居るんだけどね。まだ嫌いの中には入らない人だから。

 

 

涼風「お姉様、大丈夫ですか?」

 

柊「うん、大丈夫だよ。」

 

八幡「まだ暫くは車通学になりそうだな。森崎の一件が片付いたばかりなのに、次から次へと厄介な奴が舞い込んでくるな。」

 

柊「参っちゃうよね、ホント。」

 

八幡「大丈夫だとは言い切れないが、柊の事情を知った学校側にしても、放置しておくとは思えない。何かしらの対策はしてくれるはずだ。特に平塚先生ならな。」

 

柊「………そうだよね。」

 

涼風「それとお姉様、神田先生から頂いた診断書はお持ちになられましたか?」

 

柊「昨日の内にカバンに入れておいたから大丈夫!ちゃあんと持ってるよ。」

 

八幡「それじゃ学校に着いたら教室行く前に、平塚先生に見せに行かないか?教室行ってからだと少し手間だろ?なら来た段階で渡した方が効率的だ。」

 

柊「そうだね、早く言った方が良いよね。」

 

涼風「ではまずは職員室に向かいましょう。」

 

 

ーーー職員室ーーー

 

 

八幡「失礼します、2年F組の比企谷です。平塚先生は居ますか?」

 

平塚「おう、此処だ。おぉ、夜十神姉妹も一緒か。ちょうど良かった、お前達にも話しておきたいと思っていたんだ。」

。」

 

涼風「何ですか?」

 

平塚「此処じゃアレだ、生徒指導室に行くか。その方がお互い落ち着いて話しやすいしな。」

 

八幡「俺は大丈夫ですけど、2人は?」

 

柊「私も大丈夫。先生に見せたいものもあるし。」

 

涼風「私もです。」

 

平塚「そうか、ではついてきたまえ。」

 

 

ーーー生徒指導室ーーー

 

 

平塚「さて、では君達の方から聞こうか。何かあったのか?」

 

柊「いえ、これを平塚先生に見せようと思って持ってきました。」

 

平塚「これは………っ!診断書。」

 

柊「先日、千葉大学医学部附属病院に行って、そこの医師に診てもらい、作ってもらいました。1度先生にも目を通してもらった方がいいと思って持って来ました。」

 

平塚「そうか……夜十神、この診断書のコピーを取っても大丈夫だろうか?詳しく君の事を知っておく必要がある。構わないか?」

 

柊「平塚先生ならそう言うと思って、その許可も取ってあります。」

 

平塚「済まないな、それでは1度預からせてもらう。それで君達の報告は以上か?」

 

柊「そうですね、私達からは以上です。」

 

 

何もないのに話を長引かせても時間を取らせちゃうだけだしね、時間が勿体無い!それに、平塚先生のお話も気になるからね。私のは終わったらすぐに打ち切る予定だったし。

 

 

平塚「ではこちらからの報告だ。昨日、校長が天之川の学校に連絡を入れた。天之川の在籍している高校は千葉市立京葉高等学校だった。内容は当然ながら夜十神についてだ。担任の先生に話を通してはいるが、今日どう出るかが問題だ。」

 

八幡「どういう事ですか?」

 

平塚「その教師がちゃんと生徒を注意して指導にあたれるかどうかという事だ。私からの独自の目線になるが、あの教師は注意をする事は出来ても、私のように指導には向かない教師だ。酷い言い方をするとだ、恐らくあの教師が指導に当たったとしても、それを受け入れる生徒はそんなに多くは無いだろう。それこそ生活指導や生徒指導といった教師の方がまだ向いているとも言える。だがそこには属していない教師だと思う。」

 

八幡「つまり指導が終わったとしても、天之川がこっちに来る可能性がある、という事ですか?」

 

平塚「残念ながらそうなるな。生徒指導の教師に話を通しているのであればまた別になるが、担任の教師だ、恐らくそんな真似はプライドが許さない限りはしないだろう。」

 

柊「………」

 

平塚「まぁ、今日は確実に来ないと思う。昨日の今日だ、今日の放課後にでも指導には当たるだろう。そうしてもらわないと困る。」

 

涼風「本当に来ない事を祈るばかりです。」

 

平塚「そうだな……私からも以上だ。君達も教室に向かいたまえ。旅行明けとはいえ、授業はしっかりと受けるんだぞ?特に比企谷、数学の授業では寝ないように。」

 

八幡「大丈夫ですよ、きっと柊が寝かせてくれないんで。こっちに来てからずっとそうですし。」

 

柊「今日以降も寝たらすぐに私が起こしてあげるからね?だから寝ても大丈夫だよ♪」

 

八幡「頑張って起きてるわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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視線の紛らわしに

 

 

八幡side

 

 

平塚先生との話も終わって教室に向かっている俺達3人。だが俺は少しだけクラス内の雰囲気が不安である。いや、俺の杞憂かもしれないが、あの告白の後だろ?葉山ん所のグループがギスギスして、クラスの雰囲気が悪くなってたりしないかって事だ。そして俺はもう決めている、もう葉山関連の依頼は絶対に受けないと。だってアイツが来ると面倒な事しか持って来ないだろ?チェンメがそうだ。お前等で解決しろよって思ったもんだ。告白の件だって元を辿れば、アイツが問題先延ばしにして引っ張ってこなれけばこんな事にはならなかったんだ。いや、別に俺が後悔してるわけじゃねぇんだけどな?

 

 

柊「八幡君、どうかしたの?」

 

八幡「ん?あぁ、クラスの雰囲気大丈夫かなって思ってただけだ。」

 

涼風「告白の依頼の後ですからね。ですがそれは当人同士の問題です、八幡さんは関係ありません。」

 

八幡「俺は気にしない方向で居るんだが、文句を言ってきそうな奴が居るんだよなぁ………」

 

 

その2人は言わなくても分かるだろ?

 

 

柊「葉山君と由比ヶ浜さん、だよね?」

 

八幡「御名答。しかも由比ヶ浜は俺が教室に入った途端に突っかかって来そうな予感がしてならない。揉め事は好きじゃねぇんだよ。」

 

柊「まぁ教室に入ってみないと分からないよ。」

 

 

ーーー2-F組ーーー

 

 

涼風「何かお話をしながら入りましょう。例えば………あっ、そうです、父がまた新しいのを見つけたらしいんです。その話題をしましょう。」

 

柊「オッケー!」

 

八幡「了解。」

 

 

そして俺は教室の扉を開けて、中へと入った。

 

 

柊「八幡君は何だと思う?」

 

八幡「新しいのだろ?それって飲食物なのか?それとも衣類とか、家電とか?」

 

涼風「飲食物ですよ。けれど八幡さんは食べた事は1度も無いと思います。」

 

八幡「なんでそう言えるんだ?」

 

柊「お父さんが『今度八幡君が家に来たら、絶対に食べさせるんだ!』って機嫌良さそうに言ってたのを偶々聞いてたから。」

 

 

おじさん、娘達に盗み聞きされてますよ?いいんですか?情報が筒抜けですよ?

 

けど、やっぱり後ろから視線を感じるな。多分由比ヶ浜だな、俺、知ーらねっ。そんな事よりも………

 

 

八幡「じゃあ………チョコとか?」

 

柊「あっ、少しだけ前進っ!」

 

八幡「じゃあ……ホワイトチョコ?」

 

涼風「それだと変わっていませんね………」

 

八幡「?………チョコビスケット?もしくはチョコクッキーか?」

 

柊/涼風「遠くなった(なりました。)」

 

 

えぇ〜………何だ?

 

 

八幡「………アイス?」

 

涼風「あっ、一気に近づきました!!」

 

柊「良い線来てるよ〜!もう一息!」

 

八幡「アイスでもう一息?ならジュースとかの液体ではないんだな?」

 

柊「おぉ〜………」

 

 

え、何その反応?気になるんだけど………

 

 

涼風「えっと……八幡さんの質問に答えますと、両方に近い感じ、ですね。」

 

八幡「何だそりゃ?アイスみたいでジュースみたい?いやもっと分からんって。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………分からん、降参だ。

 

 

八幡「降参だ、教えてくれ。」

 

柊「ふっふっふ………八幡君もまだまだだね〜?勉強不足だよ?」

 

八幡「個体でも液体でも近い食い物なんて分からん。そんなのあるのかよ。」

 

涼風「ふふふっ、では正解です。正解は………ヴェリーヌという料理でした。」

 

八幡「ヴェリーヌ?」

 

涼風「はい。きっと八幡さんも食べた事はなくとも、画像とかで見た事くらいはあると思いますよ。脚のないガラスの小さめの器に液状、固形の料理を入れた物です。デザートに近いですね。このようなものです。」

 

八幡「………あぁ〜こういうのか。これをヴェリーヌっていうのか。」

 

柊「お父さんがね、欧州の支社で何か探してたら見つけたみたいなんだ。それでこっちに取り寄せて、ウチの社で販売してるんだ。あっ、勿論八幡君の分は家にあるから安心してね?八幡君はタダだから♪」

 

八幡「それっていいのか?俺だけ何も払わずに食えるのはありがたいが、何か礼をした方がいいんじゃないのか?」

 

涼風「むしろそう思われているのはお父様のようでして、『娘を守ってくれた八幡君にはこれじゃ足りないね!けど八幡君はあまり物欲ないし、どうしようかなぁ。』っと、頭を悩ませていましたから。」

 

 

おじさん、俺みたいな人間にそんなに頭を捻らないで下さい。俺なんてそこらで売ってるお菓子とか、マッ缶とかくれれば充分ですから。

 

 

涼風「八幡さんはどんな味が好みですか?」

 

八幡「そう言われても、ヴェリーヌにどんなのがあるのか分からないから一通り教えてくれないか?」

 

涼風「そうですね………先程八幡さんが仰られたチョコは定番ですね。他にもフルーツや飲料系、野菜も使われていて、林檎、梨、蜜柑、苺、メロン、キウイ、葡萄、桃、マンゴーベリー類、紅茶、抹茶、チーズ、牛乳、豆乳、コーヒー、ヨーグルト、お豆腐、アボカド、生クリーム、食材を上げてもキリがない程の種類があるんです。今あげた食材や他にもまだある食材とで、層を作って食べるのもヴェリーヌの特徴ですね。1種類のヴェリーヌはありますが、基本は数種類の層で食べる一品のようです。」

 

八幡「そんなにあるのかよ………俺、もう何があるのか忘れたんだけど。」

 

柊「大丈夫だよ八幡君、私も覚えてないから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





八幡「……あれ、なんか忘れてるような。」

柊「気にしなくてもいいんじゃない?」

八幡「……それもそうだな、忘れるって事はそんな大した内容でもないだろ。」



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お礼とお昼

 

 

八幡side

 

 

4度目の授業が終了の鐘が鳴り、号令の元授業の終了を告げる。漸く昼休みの時間だ、これで少しは寛げる………と思える筈もなく、2つの視線が俺の背中に突き刺さっているのがよく分かる。何?なんなのアイツ等?俺が何をした?ただ依頼を受けて協力をしただけだ、なのに何で俺は睨まれなきゃならないんだ?

 

1度だけ後ろに視線を向けてみたが、由比ヶ浜は睨む、というよりかはジト目で見ているような感じだった。いや、睨むでいいのか?葉山は何か物言いだけな表情をしていた。うん、知りません。俺には管轄外です。

 

だから俺は………

 

 

八幡「さて、昼飯何処で食う?」

 

柊「場所無いんだよね〜。八幡君のベストプレイスは今の時期だと少し寒いし。」

 

八幡「仕方ない、視線に耐えながら食べるか……」

 

涼風「でしたらちょうど良い場所があるかもしれません。そちらはどうでしょうか?」

 

八幡/柊「ちょうど良い場所?」

 

涼風「はい。ですがその前に寄りたい所があるので、それが終わってからになりますが……」

 

八幡「場所があるならそれに越した事はないな。涼風、お前の用事が終わったら案内してくれ。」

 

涼風「分かりました。では向かいましょう。」

 

 

ーーー3-D組ーーー

 

 

柊「涼風、何で3年生の教室?」

 

涼風「森崎さんの事件で大変ご迷惑をお掛けした方がこのクラスにいますので、そのお礼という形で修学旅行のお土産を渡そうと思ったんです。」

 

八幡「………っ!新堂先輩か?」

 

涼風「はい。私達はあの方にお礼は言いましたが、何もしてあげられていませんので。」

 

 

涼風のこういう所は美徳だろうな。ちゃんと受けた恩は忘れない、受けたらその分を返す。しっかりしてるなぁ、俺と違って。

 

 

涼風「す、すみません!あの、新堂先輩はいらっしゃいますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新堂「夜十神さん?」

 

涼風「ご無沙汰しています、あれからお身体の方はどうでしょうか?」

 

新堂「大丈夫だよ、心配してくれてありがとう。それで、どうかしたのかい?君のお姉さんに比企谷君も一緒のようだけど………」

 

涼風「はい。親からのお気持ちの品はお渡ししましたが、私達は新堂先輩に何もお返しできていませんでしたので、つまらないものではありますが、修学旅行のお土産をと思いまして………こちらよろしければ。」

 

新堂「いいのかい?」

 

涼風「はい、その為に来ましたから。」

 

新堂「わざわざありがとう、じゃあ気持ちと一緒に頂くよ。」

 

涼風「いいえ、こちらこそ。では私達も昼食がありますから、これで失礼します。」

 

新堂「うん、ごゆっくりね。」

 

 

………あの人見知りで内気な涼風が3年生の教室の前であんなに堂々と………成長したもんだ。

 

 

涼風「では、参りましょう……どうしました?」

 

八幡「いや、涼風も成長したなぁって。」

 

柊「うん、私もすっごくそう思う!」

 

涼風「?」

 

 

ーーー家庭科室ーーー

 

 

柊「ちょうど良い場所って此処?」

 

涼風「はい、そうです。」

 

八幡「いや、流石に鍵が無いと開かないだろう。」

 

涼風「大丈夫ですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラカラッ

 

 

涼風「開いていますから。」

 

八幡/柊「………嘘。」

 

 

え………なんで開いてんの?

 

 

涼風「実は2年の家庭科を担当している先生にボソッと言われた事があったんです。『もし、教室で居づらくなったら家庭科室に来なさい。いつでも入れるようにしておくから。貴方のお姉さんと比企谷君にも伝えておいてね。』っと。」

 

柊「流石は私の妹!!ナイスッ!!」ダキッ!!

 

涼風「お、お姉様!!お弁当が崩れてしまいますからお止め下さい!」

 

八幡「いや、けどこれはファインプレーだろ。俺もあの教室ではあまり食いたくなかったしな。ありがとうな涼風。」ナデナデ

 

涼風「は、はいぃ………/////」

 

柊「……ちょっとズルいって思っちゃったけど、涼風のおかげだからナデナデは許します。じゃあ時間も勿体無いから食べよっか!」

 

 

こうして俺等は事実上、平和な昼食を取る事が出来た。いやぁ……平和だわぁ。

 

 

柊「あっ、そういえば八幡君は今日の部活はどうするの?一応昨日の月曜日は振替休日でお休みだったから、今日参加するの?」

 

八幡「いや、しない。特に特別な理由がない限りは、月曜が休みだったとしても火曜に参加したりはしない。まぁ俺の部活参加もいつまで続くか分からんけどな。」

 

涼風「?それはどういう意味でしょうか?」

 

柊「そっか、涼風は居なかったもんね。京都から千葉に戻る前に、私と八幡君は京都駅の展望台に登ったんだ。その時に八幡君が奉仕部内でまた問題が起きるようだったら、その時は部活を辞めるって言ったんだよ。」

 

八幡「まっ、正確には由比ヶ浜が、だけどな。雪ノ下は見る限り、そこまで問題では無いしな。」

 

涼風「そうだったのですか………」

 

 

だが実際、どうなるかなんて分からない。この先依頼が来ないなんて事はあり得ないだろうし、俺がいない間に来る可能性だってあるんだ。そこで俺に白羽の矢が飛んでくる可能性も低くはない。むしろ高いと言ってもいいだろう。平塚先生は俺の立場をピンチヒッターとも言っていたしな。内容次第では由比ヶ浜がまた暴走してもおかしくは無い。その時に止められる奴は奉仕部の中には居ない。雪ノ下ではあまりアテにならんしな。かといって俺の言う事を聞く程、アイツは利口でも無いだろうし。

 

 

八幡「先が思いやられるな、こりゃ。」

 

柊「もう辞めちゃえば?」

 

八幡「出来るならそうしたい。」

 

柊「じゃあして!!」

 

八幡「次の依頼で問題が起きたらな。」

 

柊「むぅ〜!」プクー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天之川の事情説明と結論

 

 

天之川side

 

 

キーンコーンカーンコーン!

 

 

「起立、気をつけ!さようなら!」

 

畑山「はい、さようなら!皆さん、気をつけて帰ってくださいね!」

 

 

よし、学校も終わった事だし柊と涼風のいる高校に行こう。確か○中学の言ってた話では総武高、だった筈だ。よし、龍太郎と雫、香織も連れて行こう。

 

 

坂上「光輝、俺等も帰ろうぜ。」

 

天之川「その前に龍太郎、雫、寄りたい所があるんだ。付き合ってくれないか?」

 

雫「別にいいけど、何処なの?」

 

天之川「歩きながら説明するよ。香織は………またアイツの所なのか。」

 

 

全く……香織は誰にでも優し過ぎる。それが悪いとは言わないが、何故南雲みたいな奴にまで優しさを振り撒くのか、俺には分からない。アイツはもっと努力するべき人間なのに。

 

 

香織「ねっ、南雲君!一緒に帰ろうよ!」

 

ハジメ「い、いや僕は……」

 

天之川「香織!一緒に着いてきて欲しい所があるんだ!来てくれないか?」

 

香織「天之川君………ゴメンね南雲君、また今度一緒に帰ろうね。」

 

ハジメ「僕の事はいいから、早く行きなよ。」

 

香織「うん。」

 

 

香織も毎日のように南雲の所に行っているが、どうして世話を焼きたがるんだ?俺には分からな……っ!そうか、ダメな奴程、面倒を見たがるような性格なのか。南雲は弟とか、従兄弟のような感覚で触れ合ってるのだろう。きっとそうだ。

 

 

香織「お待たせ天之川君。それで寄りたい所って何処なの?」

 

天之川「あぁ、実は「ピンポンパンポン」ん?」

 

畑山『生徒の呼び出しをします。2年○組の天之川光輝君、職員室畑山までお越し下さい。繰り返します、2年○組の天之川光輝君、職員室畑山までお越し下さい。』

 

 

俺が?何もした覚えはないが………

 

 

坂上「どうする?」

 

天之川「行ってくる。俺が10分経っても戻って来なかったら、今日は解散だな。せっかく集まってもらったのに済まない。」

 

雫「別にいいわよ、行きましょう香織。」

 

香織「うん!あっ、南雲君まだ間に合うかな?」

 

雫「ふふっ、相変わらずね。」

 

 

ーーー職員室ーーー

 

 

天之川「失礼します、2年○組の天之川です。畑山先生に呼ばれて来ました。」

 

畑山「あっ、天之川君。待ってましたよ。」

 

天之川「先生、何か俺にお話ですか?」

 

畑山「はい。此処では話しにくいので、こちらについて来てください。」

 

 

ーーー生徒指導室ーーー

 

 

畑山「では早速お話しますね。天之川君、先日に千葉市立総武高校の校長先生から連絡がありました。貴方も少なからず関係しているのですが、何か心覚えはありますか?」

 

天之川「っ!はい、あります。」

 

畑山「天之川君から詳しい内容を聞かせてもらってもいいでしょうか?」

 

天之川「はい、分かりました!修学旅行の2日目に俺はグループ行動をしていました。そして昼になる前に嵐山に行きました。その場に小学生の頃、柊と涼風………仲の良かった女子2人と再会して一緒に回らないかと誘ったのですが、一緒に居た男子に断られてしまって………その場は諦めてグループ行動に移りました。」

 

畑山(聞いたのは確かに嵐山の事でしたが、まだ続きがあるのかもしれません。)続きをお願いします。」

 

天之川「そして同じ日の夜、俺はもう1度嵐山に行って竹林を眺めようと思ったんです。1人で行きたかったので、誰も同伴させずに行ったのですが、その時に昼に会った女子の1人と男子が居ました。男子は女子に迫っていて、女子は無抵抗でしたが、俺は危険だと思ってその女子を助けました。ですが女子はその男子に怪我がないかどうかの確認をとって男子に寄り添ってました。俺もその男と一緒に居るのは危険だからこっちに来るように言ったんですが、男子からは『近寄るな。』と言われ、そのまま行ってしまいました。これが俺の知ってる事です。」

 

畑山「なる程………」

 

天之川「先生!俺は今日今から総武高校に行ってその男と話をしようと思っているんです!なので行かせてください!俺はあの男と話して、柊と涼風を解放してやらないといけないんです!!」

 

畑山「……天之川君、私は総武高の校長先生からお話があったと言いましたね?そのお話と照らし合わせたのですが、どうも辻褄が合いません。幾つか確認です天之川君、貴方と小学生が同じだと言っていた女子2人とは本当に仲が良かったのですか?」

 

天之川「勿論です!何度か一緒にグラウンドや校庭で遊んだ事があります!」

 

畑山「次に、その子達はその男子生徒に対して嫌がるような素振り等は出していましたか?」

 

天之川「もう1人の子は一緒に居なかったので分かりませんが、あの夜に居た時の柊はそんな素振りを見せていました!」

 

畑山「それが勘違い、だとは思いませんか?」

 

天之川「思いません。」

 

 

先生、早く終わらせてくれ!今も柊達は苦しんでいるかもしれないんだ!あの男が今も苦しめていると思うと、俺は早くそれを止めたい!!

 

 

畑山「……最後の確認です。天之川君、彼等が竹林から出る前、その女の子から何か言われませんでしたか?」

 

天之川「………俺が助けようとした時、柊から拒絶されました。嫌と大きな声で。ですがあれはあの男を庇うような声に聞こえました。」

 

畑山「そうですか………天之川君、貴方にお伝えしたい事があります。」

 

天之川「何でしょう?」

 

畑山「金輪際、貴方が彼女達に関与する事を一切禁止とします!!」

 

 

 

 

 





畑山先生からの接触禁止令!さて天之川、どうする?


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更なる歪み

 

 

天之川side

 

 

畑山「金輪際、貴方が彼女達に関与する事を一切禁止とします!!」

 

 

……今、先生はなんて言ったんだ?彼女達に関与する事を一切禁止?

 

 

天之川「先生、彼女っていうのは柊と涼風の事ですか?」

 

畑山「もう1人です。比企谷八幡君、この3人と関わりを持つ事を禁止します。」

 

天之川「何故ですか!!?あの2人はあの男に苦しめられているのですよ!!?それを黙って指を咥えたまま見ていろと言うのですか!!?」

 

畑山「天之川君、貴方は勘違いをしています。」

 

 

何だって?勘違い?

 

 

畑山「彼女達は比企谷君に対して嫌悪感を持ってはいません。それに悪感情もです。むしろ好意的な感情を持っているとの報告もあります。」

 

天之川「そんなのただの報告です!!現実は分からないではありませんか!!」

 

畑山「では何故、彼女はあの夜に貴方に助けられるのを拒み、比企谷君を助けたのですか?この場面、貴方の言い分ならすぐに天之川君の背中に隠れてもおかしくはありません。ですが彼女はすぐに比企谷君の怪我がないかどうかの確認をした、これについてはどう説明をしますか?」

 

天之川「それはさっき言いました、奴に脅されていたから仕方なくやってたんです!」

 

畑山「……何故そうだと分かるんですか?」

 

天之川「え?」

 

畑山「脅されてしかたなくやっていた、私は総武高側の報告を受けた限りではそんな事はあり得ないと思いました。ましてや夜に人気の少ない所で2人で居るなんて、脅されている身で考えれば、絶対に抵抗するはずです。無抵抗で居るとすれば合意の上としか思えませんが、それ以外で何か理由があるのでしたら、教えて下さい。」

 

天之川「そ、それは………」

 

 

どうして脅されている?そんなの………

 

 

天之川「奴の目を見れば分かります!!あの目はとても下劣な目でした!!それに、妹も……涼風も脅されているんです!あの夜は妹に手を出されたくなければ1人で来いと言われていたんだと思います!!」

 

畑山「………話を続けます。貴方と別れた後、夜十神さんは震えていたそうです。それも翌日になるまで体調は良くならなかったとか。何故か分かりますか?」

 

天之川「……比企谷が怖かったからですよね?」

 

畑山「違います。」

 

天之川「では解放された安堵による震えですか?」

 

畑山「違います。」

 

天之川「?ではなんだと言うのです?」

 

畑山「………天之川君、これはあまり言いたくはありませんが、理解出来ていないようなので先生は意を決して言う事にします。」

 

天之川「?はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

畑山「どうして自分に非があるという考え方が出来ないのですか?」

 

 

………は?

 

 

畑山「彼女達が比企谷君に脅されていたという事実なんてありませんし、震えていたのも貴方のせいです。そのせいで彼女は比企谷君から離れる事はおろか、抱き着いた腕を離そうとする仕草もしなかったとか。」

 

天之川「だからそれは学校の報告で「その言葉が夜十神さん本人からの言葉だったとしても、ですか?」………柊が?」

 

畑山「はい、彼女は翌日の準備時間中にこう言っていたそうですよ。『震えが止まりませんでした。もう2度とあんな思いはしたくありません。彼にも会いたくありません。』………と、担任の先生に話していたみたいです。」

 

天之川「そんな……柊が?」

 

畑山「はい。それと天之川君、比企谷君から何か言われていたのでしょう?それを考えるのなら、さっき行こうとしている所には行かないで下さい。」

 

天之川「ひ、柊………君は………」

 

畑山「天之川君、分かってくれましたか?」

 

 

柊、涼風。君達は………本当に………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天之川「なんて可哀想なんだ………」

 

畑山「え?」

 

天之川「まさかそんな事までさせられていただなんて………俺の詰めが甘かったんだ!しかもそんな虚言まで言わせていたのか、比企谷の奴!!こんなの、見過ごせない!!」

 

畑山「天之川君、止めなさい!!もし総武高に行くのだとするなら、先生は止めます!!」

 

天之川「先生、無理に庇わなくていいんです。比企谷は罰を受けるべきなんです!先生どころか学校まで巻き込んだんですから!学校が許しても、俺は比企谷を許さない!!」

 

畑山「天之川君、いい加減にしなさい!!」

 

天之川「先生、俺は先生の為にも戦います!!あの卑怯者を、偽善者を必ず裁きを与えます!!」

 

 

こうしてはいられない!!すぐに準備をしよう!!いや、今日はもう龍太郎達は帰ったか………なら明日だ!!明日、総武高に行って比企谷に裁きを与えてやるんだ!!

 

 

畑山「天之川君、止まりなさい!!まだ話は終わって「先生!今は時間が惜しいんです!止めないでください、失礼しました!!」天之川君!!」

 

 

比企谷、お前は一体どれだけの人を利用して来た?柊や涼風だけではないだろう?お前には利用してきた人間の数だけ罪を償ってもらう!!

 

 

天之川「龍太郎と雫、香織はきっと明日も来てくれるはずだ。他にも協力してくれそうだけど、大人数で行くべきではないな。この人数で行こう!」

 

 

待ってろ比企谷……今度こそお前を完膚なきまでに叩き潰してやる!!首を洗って待ってろ!!

 

 





うんわぁ………


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報告とコーヒー牛乳


前回の感想数、42件!!!全作品中2位の多さです!!コメントありがとうございました!!全部に返信するの1時間くらい掛かっちゃった!




 

 

茅ヶ崎side

 

 

茅ヶ崎「そうですか………では彼の説得は失敗に終わったと。」

 

畑山『はい。それどころか余計に事を大きくしてしまって………申し訳ございません!!』

 

茅ヶ崎「いえ、畑山先生は事実をしっかりと述べたのでしょう。それを責めは致しません。ですがこれで彼がこちらの学校に来る可能性が高まったのも事実。こちらでも対策を練っておきましょう。わざわざご連絡、ありがとうございます。」

 

畑山『いえ、結局私は何もお役には立てませんでした。すみません、失礼致します。』

 

 

………どうやら一筋縄ではいかないようですね。きっと明日にでもこちらの学校に来るでしょう。平塚先生にも報告しておきましょうか。

 

 

pi pi pi prrr…prrr…っ!

 

 

平塚『お疲れ様です、平塚です。』

 

茅ヶ崎「平塚先生、お疲れ様です。今し方京葉高校の畑山先生から彼の件について報告が来ました。」

 

平塚『っ!それでどうでしたか?』

 

茅ヶ崎「それが余計に彼をその気にさせてしまったようでしてね、正しい説明をしたにも関わらず比企谷君を許さない、夜十神さん達が可哀想、先生だけでなく学校まで巻き込んだ、とも言っていたらしいです。」

 

平塚『……畑山先生はちゃんとした説明をされたのですよね?』

 

茅ヶ崎「お気持ちは分かります。ですが内容をしっかりと伝えた上で今の発言なのです。」

 

平塚『………』

 

 

言葉に出来ない、いえ、ならないのでしょう。それはとても理解出来ます。私も畑山先生から聞いた時は耳を疑いました。まさかそのような結果に至るなんて思いもしませんでしたから。しかし、比企谷君と夜十神さんが言っていたご都合解釈とはこういう事ですか………少し理解出来ましたよ。

 

 

平塚『この事は比企谷達には?』

 

茅ヶ崎「まだ伝えてはいません。ですが絶対に伝えておいた方が良いでしょう。流石に彼等に知らせないまま事件の解決なんて出来ませんからね。」

 

平塚『そうですね……では明日のHR後には私から2人に伝えておきますか?』

 

茅ヶ崎「お願いします。では報告は以上で終わります。」

 

平塚『はい、失礼します。』

 

 

平塚先生との報告も終わって少しだけ一息ですね。しかしこの歳になって驚かされる事はないと思っていましたが、これには驚きですね。

 

 

茅ヶ崎「はぁ……中々に、癖の強い問題ですね。」

 

 

茅ヶ崎sideout

 

八幡side

 

 

八幡「あぁ〜………」

 

 

晩飯を食い終わった後、俺は風呂に入って今日の疲れを癒している。平塚先生の話では、向こうの先生が天之川に指導をするような話になっているが、あまり期待はしないほうが良いだろう。だってあんな奴だぞ?あんな性格で生徒指導して治るくらいなら、あんな人間になってないだろ。

 

 

八幡「明日かぁ………」

 

 

少しだけ明日が憂鬱になる……だが俺がこれじゃ柊にも不安が移る。しっかりしないとな。柄でもない事を思ってるが、柊は守ってやらないとな。

 

 

ーーー入浴後ーーー

 

 

八幡「………」

 

小町「♪〜ん?何してんのお兄ちゃん?」

 

八幡「ん?いや、別に。ボーッとしてるだけだ。少し色々あってな。疲れてるのかもな。」

 

小町「そっかぁ、色々かぁ……大変そうだね。」

 

八幡「あぁ、ちょっとな。だから今こうやってコーヒー牛乳飲みながらリラックスしてんの。」

 

小町「コーヒー牛乳?マッ缶じゃなくて?珍しいね〜お兄ちゃんがそれ以外飲むなんて。」

 

八幡「それは言い過ぎだっての。俺だってマッ缶以外の飲み物だって飲む。」

 

 

朝晩の飯時はちゃんと水がお茶だしな。それ以外でも………あれ、俺ってそれ以外何か飲んでたっけ?

 

 

小町「けどさ、そんなボトルのコーヒー牛乳ってあった………え!?その瓶ってロックメイじゃん!!?」

 

八幡「あぁ、そうだけど?」

 

小町「いやいやいやいや何言ってんのお兄ちゃん!!?ロックメイって焙煎日本一のコーヒー店で有名な所だよ!?どうしたのさそれ!?」

 

八幡「修学旅行で自分のお土産用に買った。コイツと一緒に混ぜて飲むコーヒー牛乳がまた美味いんだよなぁ………クセになっちまう美味さだ。」

 

 

今日だけでもう3杯目だ。旅行明けで飲んだのは今日が初めてだが、めっちゃ美味い。

 

 

小町「ちょっとお兄ちゃん!!小町にも飲ませてよ、お兄ちゃんだけズルい!!」

 

八幡「わーったよ、風呂上がりに1杯やるから。けど1杯だからな?」

 

小町「お兄ちゃんのケチ!もうちょっとくれても良いじゃん!!」

 

八幡「俺はエコに飲みたいんだよ。飲み過ぎてすぐ空になったら面白くねぇだろ。」

 

小町「もうっ、分かったよ!けど絶対飲ませてよね!!飲ませてくれなかったらお母さんに言うからね!!お風呂行ってくる!!」

 

八幡「おーう………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「まぁまだ2本あるんだけどさ。」

 

 

正直どうするかは悩んだけどな。3本買って1万超えたしな。2本でも良かったけど、折角関西まで来たんだしってテンション上がってたんだろうな。それに小町と母ちゃんから頼まれてたお土産もそんなに大した値段じゃなかったしな。

 

 

八幡「俺だって偶にはこういう贅沢をしてみたいって思う時もある………やっぱ美味い!」

 

 

まぁ、俺が望んでなくても贅沢をさせてくれる一家があるんだけどさ。それとこれとは別さ。リラックスしながら飲むのと周りを少し気にしながら飲むのとでは違うんだって。

 

 

 

 

 




ロックメイは奈良県にあるコーヒーショップの【ロクメイ】さんを少し(ッ付けただけだけど)弄った店名です。


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翌日と校長からの依頼

 

 

涼風side

 

 

柊「………」

 

涼風「………」

 

柊「………」

 

涼風「えっと……お姉様、体調がよろしくないのでしょうか?」

 

柊「ううん、そういうわけじゃないんだ。ただ今日の放課後が憂鬱なだけ。はぁ………車での送迎とはいえ、不安なんだ。」

 

涼風「そ、そうですよね………」

 

 

あうぅ……こんな時八幡さんやお父様ならどうするでしょう?お姉様、励ます事すら出来ないバカな妹で本当に申し訳ございません!

 

 

柊「……中学みたいにならないと良いなぁ。」

 

涼風「え?」

 

柊「中学では八幡君と涼風の顔以外、誰も分からなかったから。高校ではそんな風になりたくないの。誰かの顔はハッキリと覚えていたい。名前は知らなくてもいいから、誰がどんな顔をしていたのかは知っていたい。中学の同級生や後輩なんかはアルバムですら影の姿だから。」

 

涼風「お姉様………」

 

柊「私の我儘なんだけどね。」

 

涼風「……いえ!お姉様の事を考えれば、そのくらいの我儘なんて無いようなものです!」

 

柊「……ありがと、涼風。あっ!八幡君のお家見えた〜八幡君は居るかなぁ〜?」

 

 

私はこの姿のお姉様が好きです。明るく元気なお姉様が………その姿になるのは家族と一緒に居る時か、八幡さんと一緒に居る時かのどちらかです。昔に戻って欲しい、なんて思った事は少なからずありますが、私は今のお姉様も充分好きです。

 

 

ーーー学校・教室ーーー

 

 

平塚「私からの報告は以上だ。それから比企谷、夜十神姉妹。少し話がある、HRが終わったら生徒指導室まで着いて来てくれ。では挨拶。」

 

 

挨拶が終わってから私達は言われた通り、先生に着いて行きました。恐らく天之川さんのお話でしょう。そうとしか考えられません。

 

 

平塚「そのまま入って正面のソファがあるだろ、そこに座っていたまえ。」

 

柊「は、はい……え!?校長先生!?」

 

茅ヶ崎「おはようございます、比企谷君、夜十神さん達も。朝早くからすみませんね。」

 

柊「い、いえ……でも何で校長先生が?」

 

茅ヶ崎「君達の一件に少なからず私も関係していますので、同席しているまでです。そして報告もありますからね。君達の耳にも入れておいた方が良いと思ったので。」

 

涼風「進展があった、という事ですか?」

 

平塚「その事に関しても今から説明する。少し長くなるだろうから、1時限目の先生にはもう訳を話している。遅れて出席するか、欠席する事になるとな。」

 

 

そこまで長くなるお話なのですか………

 

 

平塚「先日の件で校長が天之川という生徒が在籍している高校に連絡をつけて指導してもらうように依頼をした。修学旅行の事も話してな。そして昨日にそれが実行された。だが結果としては天之川の心に火をつけてしまった、というのがオチになる。」

 

涼風「え?」

 

柊「………」キュッ

 

八幡「………」

 

平塚「担任の先生は充分な説明をしたそうだ。それは私も校長から聞いている。だが天之川はその説明をこう解釈したそうだ。夜十神さん達が可哀想、先生だけでなく学校まで巻き込んだ、そして………お前だ比企谷、お前を許さない、と言ったそうだ。」

 

八幡「………」

 

茅ヶ崎「私達もそれを聞いて耳を疑いました。間違った説明をしたのではないかとも思いましたが、彼女はそのような先生ではない。君達の言う『ご都合解釈』によって、比企谷君が加害者、夜十神さんや我々教師が被害者という事になっているのでしょう。そしてこれはあくまでも予想でしかないのですが、今日の放課後にでも天之川君は総武高に来るでしょう。」

 

八幡「やっぱりそうなりますか。それはソイツの担任がそう言ってたんですか?」

 

茅ヶ崎「いえ、それは言ってませんでしたが、可能性としては非常に高いです。」

 

柊「っ………」

 

 

お姉様………

 

 

平塚「校長も私も何とかしたいのだが、下手に手を出せば天之川がまた何かを言い出すだろう。となるとだ………」

 

八幡「教師の介入はあまり好ましくない、アイツが何かをしない限りは、という事ですね?」

 

茅ヶ崎「その通りです。ですから比企谷君、この中で彼とお話が出来るのは君しかいません。しつこく付き纏うようであれば、その時は我々も対処します。なので少しの間だけ、彼のお相手をお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

八幡「………平塚先生のさっきの話を聞く限りだと、アイツは人の言葉を理解出来ないと思うんですが、それでもですか?というよりかは自分は悪くない、ですかね?」

 

平塚「比企谷、お前の言いたい事も分かる。だが現状、この学校の中でこの2人が心を開いている人物は君だけだ。いや、君を除いて他にはいない。夜十神姉妹の過去の事を聞けば誰でもそれが理解出来る。その2人を守る為にも、頼めないだろうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「2人の為なら仕方ないですね、分かりました。すっげぇ嫌ですけどやってみます。」

 

茅ヶ崎「……ありがとうございます。」

 

平塚「比企谷、頼むぞ。」

 

涼風「八幡さん、ご承知だとは思いますが、無理だけはなさらないでくださいね?」

 

八幡「あぁ、分かってる。お前達は教室で待っていてくれ。取り敢えず追っ払うだけだからな。」

 

柊「八幡君……ゴメンね?」

 

八幡「謝るなよ、謝るのはアイツの方だ。自分が何をしたのかまるで分かってない、それを分からせてやるだけだ。」

 

柊「……うん。」

 

 

 

 



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2人の邪魔者

 

八幡side

 

 

授業終了の合図である鐘が鳴り、ついに帰る時間となってしまった。俺達にとって1番来て欲しくない時間である。けど早く帰ればアイツにエンカウントする可能性だって低くなる。よし、挨拶が終わったら時間を掛けずに即校門まで行こう。そして車に乗ってさようなら、これで行こう。

 

 

八幡「柊、涼風。HRが終わったらすぐに校門に向かって車に乗り込もう。その方が出会う確率は低くなる。幾ら学校が少しだけ近いからといってすぐに帰れば出会いはしないだろう。」

 

柊「そうだね……うん、わかった。」

 

涼風「分かりました。」

 

 

そしてHRも滞りなく終わって帰りの挨拶も済んだ。そして今は廊下に居る。よし、これで漸く「ヒキタニ君、少しいいかい?」………誰だよこのクソ忙しい時に。

 

 

葉山「少し話があるんだ。」

 

八幡「俺には無い。それと俺達急いでるんだ。悪いがまた今度にしてくれ。」

 

葉山「……今でないとダメなんだ。」

 

八幡「また面倒な事を言うんじゃねぇだろうな?」

 

葉山「………」

 

 

図星、か………

 

 

八幡「修学旅行の時にも言ったよな?あの部活は便利屋じゃねぇってよ。部活でなければ迷惑をかけてもいいなんて理由は何処にもねぇぞ。」

 

葉山「違う、そういうのじゃないんだ。」

 

八幡「じゃあ何だってんだよ。」

 

葉山「……ここじゃ話しにくい。」

 

 

コイツ、俺から時間取る気満々じゃねぇか!あの面倒な依頼を間接的に持ってきただけでなく、まだ何かあるのか?こいつマジでいい加減にしろよ………

 

 

八幡「言ったよな、急いでるって。今の時間を取らせる気満々の一言なんだよ?」

 

葉山「………」

 

八幡「頼むからもう俺の所に面倒な事を持って来るな。言われるのが嫌ならお前で解決しろ。グループのゴタゴタもこれ以上、奉仕部にも持ち込むな。」

 

葉山「………結衣の事なんだ。」

 

八幡「由比ヶ浜?」

 

葉山「最近元気がないから。俺も皆もなんとかしようとはしてるんだけど、あんまり上手くいってなくて………」

 

八幡「………それで?」

 

葉山「君なら何とか出来るんじゃないかと思って、相談しようと思ったんだ。」

 

八幡「………結局時間食っちまった。急いで帰る事もできなかったじゃねぇかよ。いいかよく聞けよ、由比ヶ浜がああなったのは全部アイツの自業自得だ。戸部の依頼を受けたはいいが、どういう訳かアイツは内容を履き違えた。そしてアレだ。言っておくが俺は知らねぇからな、全部アイツが蒔いた種だ。そんな事の責任取りなんてしたくねぇんだよ。」

 

葉山「そんな言い方しなくてもいいんじゃないか?同じ部活の仲間だろ?」

 

八幡「俺はあの部の奴等を仲間だなんて思った事はほんの僅かしかねぇぞ。つまり今は思ってないって事だ。ただ部活が同じなだけの同級生程度だ。」

 

 

それに、次でラストチャンスだしな。

 

 

葉山「ヒキタニ、君は………」

 

八幡「念の為もう1度言っておく。あの部活は便利屋じゃねぇ。俺もそうだ。由比ヶ浜がどうこうなろうと言おうと、俺にはどうでもいい。それが気に食わないからといって何かしようものなら、俺は容赦しないぞ。」

 

葉山「………」

 

八幡「はぁ……結局こうなるのか、何で俺が自主的に行動しようとすると何かが阻むようにやって来るんだよ。マジで勘弁してくれよ。」

 

 

もしかしたら校門前に陣取ってるかもしれない。そうなったら柊は終わりだ。こうなったら………

 

 

ーーー玄関ーーー

 

 

八幡「………」

 

柊「………」

 

涼風「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天之川「………」

 

 

居るぅ〜超居るぅ〜。しかもなんかお友達連れてね?何アイツ?お友達も巻き込むつもりか?どんだけ事を大きくするつもりだよ。俺アイツの事、一生理解出来そうにねぇわ。

 

 

涼風「八幡さん………」

 

八幡「大丈夫だ、策なら考えてある。柊、涼風、お前達は俺が行って奴等の注意を引いている間に車に乗って帰れ。もうこれしか無い。」

 

柊「えっ!?で、でも!」

 

八幡「柊を怖い目に遭わせる訳にはいかない。お前の事だ、あの場所に人影でも見えてるんだろ?」

 

柊「………うん。」

 

八幡「だからこそだ。俺が1人なら奴等だって俺に注意が行く筈だ。その隙を狙え。」

 

涼風「………お姉様、ここは八幡さんの言う通りに致しましょう。」

 

柊「っ……涼風。」

 

涼風「今日はこれ以外に方法が分かりません。私にも思いつきません。とても心苦しいですが、八幡さんに彼等のお相手をお任せするしか………」

 

柊「………」

 

 

柊が俺の方をじっと見てくる。その表情はとても不安そうで、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

 

八幡「俺なら大丈夫だ、お前の彼氏を信じろ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「……分かった、八幡君にお任せする。けど約束して!絶対に無理はしないで………ダメだと思ったらすぐに帰ってきていいから。」

 

八幡「分かった、約束する。まぁ俺が約束をしたとしても、あいつが俺を解放してくれるとは思えないけどな。まぁやるだけやってみる。それじゃ、行ってくる。」

 

柊「八幡君………」

 

涼風「お気をつけて………」

 

 

はぁ………身体を張るなんて事、出来ればしたくはないが、これも柊の為だ。いっちょやるか。

 

 

八幡「………」

 

天之川「っ!!止まれ、比企谷八幡!!!」

 

 

さて、少し付き合ってもらうぞ。

 

 

 

 

 

 




葉山、君マジでさぁ………

天之川、ホント君さぁ………


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間違いを修正

 

 

八幡side

 

 

八幡「ん?お前は……いつぞやの迷惑男じゃねぇか。しかも何だ、お友達も一緒に連れてよ………この学校に何か用なのか?」

 

天之川「惚けるな!!用があるのはお前にだ!!」

 

八幡「俺に?一体何の用だ?」

 

天之川「その前に、柊と涼風は何処だ?お前に連れて行かれる前に俺達が預かる!」

 

 

うわぁ………もう相手にするの疲れたんだけど。ていうか後ろの連中は事情知ってるわけ?

 

 

八幡「柊と涼風ならもう居ねぇよ?帰ったし。」

 

天之川「か、帰った?」

 

八幡「それよりも後ろのお前等、このご都合解釈男に連れて来られたんだろうが、事情は聞かされてんのか?」

 

雫「えぇ、聞かされているわ。けど私はこの目で見たものでしか判断しない事にしてるわ。だから貴方に会うまではどうするか悩んでたの。」

 

八幡「……つまり?」

 

雫「私の中での答えは決まったわ。」

 

天之川「っ!雫、やっぱり雫もそう思って「何を勘違いしているか分からないけど、きっと間違ってるのは貴方よ、光輝。」なっ!!?い、いきなり何を言い出すんだ!!?」

 

雫「私、比企谷君だったかしら?彼が言った言葉の中に1つとても共感出来る単語が含まれてたの。それを聞いた瞬間に、アンタがまた勘違いをしてるんだって気付いたわ。」

 

 

という事は………このポニーテールの女は苦労人か。わぁ………いつもご苦労様です。

 

 

天之川「そ、そんな筈はない!!俺は確かに見たんだ!!柊がこの男に襲われている所をっ!!」

 

八幡「………これじゃ埒があかない。おい、お前が説明した内容を俺にも説明してみろ。違う部分を真っ向から修正してやる。」

 

天之川「………分かった。」

 

 

そして天之川は手持ちの情報の中で俺と柊、そして涼風がどんな接点や行動をして来たのかを説明してくれた。のだが、いやいやいやいやこりゃ参ったね。直す箇所とんでもなく多いんだけど?しかも中学からやらないといかんのコレ?骨折れるわ〜。

 

 

天之川「これが俺の聞いた話をまとめた内容だ。間違いはあるか?」

 

八幡「うん、間違いだらけ。」

 

天之川「な、何!?」

 

八幡「何に驚いてんだよ?はぁ………もうどっから突っ込んだらいいのか分からんな。じゃあまず中学から。確かに俺と柊と涼風はとあるきっかけで仲良くなった。だが俺が2人を独占した事実なんて何処にも無い。」

 

天之川「あるじゃないか!!柊はお前と関わってから、お前以外の生徒とは関わりを持たなくなったと聞いた!!」

 

八幡「関わりを持たなくなった、っていうのは間違いでは無いが、もっと正確に言うなら柊が他人と関わるのを辞めたっていうのが正解だ。」

 

天之川「な、何だそれは!?」

 

八幡「そうだな………そこの女子、名前は?」

 

香織「え?えっと……白崎香織だよ?」

 

八幡「じゃあ白崎、例えばお前が天之川から告白を受けてそれを断ったとする。そして翌日にはそれが学校中に広まってる状態だがお前はそれを知らない。だがある時、こんな事を耳にした。お前だけを無視する、居ない奴扱いにする、幽霊化させる、それを聞いたらお前はどう思う?」

 

香織「そ、そんな事聞いたら………私、きっと学校に行けなくなるよ。」

 

八幡「まぁだろうな。普通ならそういう反応をするのが当然だ。」

 

天之川「それで、どうなったんだ?」

 

八幡「細かい内容は省くが、柊はその会話を聞いていた。そして公園で1人泣いていた所に俺が出くわした。そしてその翌日から柊は俺と家族以外の人間には殆ど関心や興味を持たなくなった。天之川、お前【幽霊ごっこ】って聞いたのか?」

 

天之川「あぁ……」

 

香織「幽霊、ごっこ?」

 

八幡「何だ、お前等には言ってないのか……簡単に言うとさっき言った通りだが、対象の人物を居ない奴扱いする遊びの事だ。柊はその対象だった、たかが学校の人気者に告白されてそれを断ったってだけでだ。柊はそれを1ヶ月も過ごしている。」

 

雫「1ヶ月………」

 

香織「そんなに………」

 

 

女子なら分かるだろう。友達と話せない、話したとしても無視をされる。その苦痛なんて表現できるものではない。

 

 

八幡「それから柊は俺と居るようになってから徐々に明るさを取り戻した。そして2つ目だ、謝りに来た連中を俺が突っぱねてたって所だ。」

 

天之川「………」

 

八幡「間違いではない。だがこれは柊自身が望んだ事だ。俺はそれに便乗したに過ぎない。」

 

天之川「何っ!?柊が!?」

 

八幡「あぁ。さっきも言ったが、柊は俺と関わるようになってから他人と殆ど関わらなくなった。そんで【幽霊ごっこ】が終息し始めると、柊と関わりのあった連中が柊に対して謝りに行った。それで柊なんて言ったと思う?」

 

雫「………もう関わる気はない、とか?」

 

坂上「もう話しかけるな、か?」

 

香織「うぅ〜ん……もう知らない?」

 

 

まぁ、そんな所だろう。けどヒントは出してあったんだよ、殆ど関わらなくなったってな。まぁ、半分正解で半分不正解のヒントだけどな。

 

 

八幡「何も言わなかったんだよ。何もだ。」

 

雫「え……何も?」

 

八幡「そう、何もだ。まるで何も聴こえていないかのように、そこに誰かがいるのも気付いていないかのように。勘の良い奴ならもう気付いてると思うが、どうだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香織「………嘘。比企谷君、そうなの?」

 

天之川「香織、分かったのか!?」

 

香織「うん……でも、こんなの普通じゃ………」

 

八幡「言ってみろ、お前の出した答えを。」

 

香織「柊さんは……その人達が見えなくなっていた。声も何もかも。」

 

八幡「………正解だ。まぁ人影くらいは見えていたようだけどな。顔なんかは全く見えていなかったそうだ。だが、おかしな話だ。事情を聞いている筈の天之川がそんな反応をするなんてな。お前、一体何を聞いてたんだ?少し頭を捻れば分かる話だろ。」

 

天之川「こんな事だとは思わなかったんだ!!それに俺はその中学の友達からそんな事聞かされてなかった!!」

 

八幡「まぁそれもそうか、ソイツ等に柊の事なんてこれっぽっちも理解出来るはずがねぇ。理解出来ているのなら、ソイツが柊の横に居るはずだからな。」

 

香織「もしかして、今も?」

 

八幡「この学校の連中は大丈夫みたいだ。ちゃんと認識できてる。まぁこれが俺達○○中学の起きた事だ。嘘みたいな話だが、全部事実だ。」

 

雫「………」

 

坂上「マジかよ………」

 

八幡「その上でお前等に聞くぞ。今のを聞いてそれが間違いだと思う奴はいるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天之川「話は分かった。けど、柊はその友達が謝ってきた時にもっと人と関わろうとする努力をすれば良かったんじゃないかって俺は思う。」

 

 

 

 




全く、天之川のアホめ……中学の内容が全っ然違うよ!!

しかも最後の最後のなんだそれは!!?


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アイ スクリーム

 

 

雫side

 

 

そんな事があっただなんて………酷い話だわ、その子がとても報われない。いいえ、今は比企谷君が居るから大丈夫だとは思うけど、その間はずっと1人だったのよね?そんなのって………

 

 

八幡「その上でお前等に聞くぞ。今のを聞いてそれが間違いだと思う奴はいるか?」

 

 

そんなの、あるはずがないじゃ無い。だって、何処に間違いがあるというの?比企谷君は何も悪い事はしてない。寧ろ褒められた事をした。私は柊さん?の気持ちは分からないけど、あの子の事を思うと間違いがあるだなんて言えたものではないわ。

 

それに、皆も同じ意見のはz

 

天之川「話は分かった。けど、柊はその友達が謝ってきた時にもっと人と関わろうとする努力をすれば良かったんじゃないかって俺は思う。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………え?

 

 

八幡「………何だと?」

 

天之川「君の説明も理解したよ、どうやら俺は勘違いをしていたみたいだ。俺は君を「んな事どうでもいいんだよ、それよりもさっきなんつった?柊がどうするべきだって?もう1回言ってみろ。」だから、彼女は謝ってきた人に関わる努力をするべきだと言ったんだ。」

 

八幡「テメェ………1ミリも理解してねぇだろうが。白崎も言ってたよな?その人が見えなくなってたってよ。おまけに声も聞こえず、姿形も人影しか分からない。お前はそんな得体の知れない奴に関わろうとする努力が出来んのか?」

 

天之川「目の前に居るのなら気になるだろう?なら関わろうと思えるのが当然なんじゃ無いのか?」

 

 

光輝………

 

 

香織「………ねぇ天之川君、それって本気で言ってるの?」

 

光輝「香織?」

 

香織「私だったら嫌だよ、訳の分からない、何かも分からないのと関わるなんて私には無理だよ。」

 

坂上「そうだぜ光輝、俺もそんな奴とはお断りだ。比企谷と白崎の言う通り、それって本気なのか?」

 

天之川「違うって言うのか?関わろうとしてるんだぞ?人が関わろうと努力をしているのに、それを無視するのはよくないだろ。」

 

八幡「コイツ前提から間違ってやがる。それとも分かってて言ってるのか?どちらにしてもお前、最低な屑野郎だな。」

 

天之川「何故そうなる!!?」

 

八幡「分かんねぇのか?お前以外の連中は最初の説明で理解できてんだぞ?それなのに何故お前は理解ができねぇんだよ?頭のネジがぶっ飛んでるんじゃねぇのか?」

 

雫「光輝、比企谷君は人影が見えるだけで顔も声も分からないって言ったのよ?アンタそんなのと関われるの?相手を例えるのなら、名探偵コ○ンの全身真っ黒の犯人の目と口がなくなってるような状態なのよ?」

 

 

光輝、これが私のラストチャンスよ?分かって。これで分からなかったら、アンタ………本当にどうかしてるわよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天之川「声が聞こえないのなら、紙とペンで筆談とかすればいいじゃないか。」

 

 

………

 

 

香織「天之川君………」

 

坂上「光輝、お前………」

 

雫「………」

 

八幡「………お前等、よくこんなのと一緒の学校に居られたな。」

 

雫「えぇ、今私達も痛感している所よ。」

 

天之川「なんだ皆して!俺が異常みたいな事を言うな!俺はまと「異常だって言ってんだよ。まだ分かんねぇのか?お前が今、どんだけ非常識な事言ってんのかをよ。」ひ、非常識だって!?」

 

香織「そうだよ。天之川君、変だよ………」

 

坂上「あぁ、俺も白崎に同意だ。お前の考え方、マトモじゃねぇぞ………」

 

天之川「香織、龍太郎、何故そんな事を言うんだ!!俺はマトモだ!!」

 

雫「光輝、今のアンタが普通だって思ってる人はこの中には誰も居ないわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天之川「そうか……分かったぞ!!比企谷、お前また3人に何かをしたんだな!!」

 

4人「………はぁ?(え?)」

 

天之川「そうでなければ、皆こんな事を言う筈がない!!香織達に何をした!!」

 

八幡「………もう話にもならないんだが。」

 

雫「もういいわ、これ以上貴方に迷惑は掛けられない。なんとかするわ。龍太郎、手伝って。」

 

坂上「おう。」

 

天之川「雫、目を覚ますんだ!!君は暗示にかけられているんだ!!俺が今すぐ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パシィン!!

 

 

こんなくだらない事で人の頬を叩くだなんて………

 

 

雫「冷静になりなさい!!!」

 

天之川「し、雫………」

 

雫「よく聞きなさい!!私達は比企谷君に暗示なんか掛けられてないし、操られても居ないわ!さっきアンタが自分が異常みたいに言うなって言ったわよね?そう思ってるから言ったのよ!香織も私も龍太郎もアンタがおかしいって思ったから言っただけよ!!何でもかんでも比企谷君のせいにするのはやめなさい!!」

 

天之川「だがそれで柊は傷付いている!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涼風「お姉様の事をよく知りもしないのに、勝手な事を言わないでください!!!」

 

 

っ!あの子って………お姉様って事は妹さん、なのかしら?

 

 

天之川「す、涼風………どうして此処に?帰ったんじゃ?」

 

涼風「そんな事はどうでもいいのです。天之川さん、先程の会話、聞かせて頂きました。お姉様が中学の同級生と関わる努力をすればよかったと仰ってましたね?」

 

天之川「あぁそうだ!今からでも遅くない!彼等も仲良くしたい筈だから、予定の空いてる日にでも「ふざけないでください。」……な、何だって?」

 

涼風「ふざけないでくださいって言ったんです!!!あの時のお姉様が精神的にどれだけ追い詰められていたのかも知らないのに、そのような勝手で愚かで浅慮な事を口に出さないでください!!!同級生の方々と好きな事も出来なければ、会話や登下校、昼食、遊ぶことも満足に出来なかったのです。私達家族でさえもどうする事もできなかった。励ます事しかできなかった。そんな、そんな酷い状態だったお姉様を助けて下さった八幡さんには感謝の言葉は伝える事はできても、その恩は一生を果たしたとしても償い切れない程大きなものです!八幡さんが居なければ、お姉様はきっとこの学校にも通えていないでしょう……お姉様の痛みはお姉様にしか分かりません。私が幾ら懸命にその気持ちを分かろうとしても、届く事はありません………八幡さんですらです。そんなお姉様が味わった痛み、苦しみ、悲しみ、辛さ、孤独、虚無感………貴方如きに何が分かるというのですか!!!何が関わる努力ですか!!お姉様の気持ちも碌に理解しないで、そんな愚かな事を口にしないでください!!!!!」ポロポロ

 

 

………あの子、姉の事がとても大事なのね。そんな姉に対して、自分は何も出来なかった。それがとても苦しくて辛いのね。

 

 

香織「………」ウルウル

 

坂上「………」

 

雫「……光輝、もう帰るわよ。」

 

天之川「っ!?だが涼風が「それはアンタのする事じゃないわ。比企谷君が居るでしょ。」………」

 

八幡「涼風………」

 

 

比企谷君は妹さんを宥めるように優しく抱き締めていたわ。妹さんも比企谷君の胸に顔を埋めて静かに泣いていた。

 

 

八幡「………おい、八重樫と白崎だったか?今日の事は学校に報告させてもらう。」

 

八重樫「……えぇ、私達もそうするつもり。今日は……少し難しいから、明日担任に言うわ。」

 

八幡「………分かった。」

 

天之川「待ってくれ!報告って何「光輝、今は喋らないでくれ。」りゅ、龍太郎?」

 

坂上「今の雰囲気考えれば分かるだろ。俺でも分かる、お前の無神経な言葉であの子が泣いたんだぞ。今回は流石にお前を擁護する気にはなれない。」

 

天之川「なっ………」

 

坂上「分かったら大人しくしててくれ。」

 

 

そして私達は総武高を後にして、それぞれ帰路に着いた。香織は何も言わなかったけど、きっと私と龍太郎と同じ思いだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう光輝の事が信じられない。

 

 

 

 

 




タイトルはダジャレです。(知ってる方は知ってますよね。)

英: I scream.
訳:私は叫ぶ。


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やりとりの後

 

 

八幡side

 

 

天之川達が総武高から立ち去った後、俺は泣いている涼風を落ち着かせる為に1度教室へと戻った。今の時間、教室に残っている人物は居なかったから好都合だ。だが俺は1つ疑問に思っている事がある、それは………

 

 

八幡「涼風、どうして学校に残ってたんだ?柊は見当たらなかったから帰ったようだが………」

 

涼風「………私も最初は帰宅するつもりでした。八幡さんからのご命令なら何でも従うつもりでしたので。しかし、八幡さんと天之川さん達の会話が気になってしまいまして。それで………」

 

八幡「そうか………別に咎めるつもりはねぇからそんなに縮こまらなくていい。けど驚いた、俺はお前があんなにも思い詰めているなんて知らなかった。少しは気にしているものだとは思っていたが………気付いてやれなくて悪かった。」

 

涼風「いえ、とんでもありません!八幡さんが謝る事は何1つありません!私はお姉様の妹です。あのくらいの事、思うのは家族として当然です。」

 

 

柊、お前は本当に良い妹を持ったな。こんなに姉想いな妹ってそうそう居ないぞ?

 

 

八幡「きっとお前が居なかったら、今頃まだ口論の途中だろう。そういう意味でも涼風には感謝をしないとな。」

 

涼風「そ、そんな……感謝だなんて。ですが八幡さんに感謝されるのはとても嬉しいです。」

 

八幡「そうか………なら良かった。」

 

 

ガラガラッ!

 

 

平塚「比企谷っ!」

 

八幡「っ!?ひ、平塚先生?」

 

平塚「おぉ、夜十神……妹の方だな?その様子では姉の方は帰ったのかね?」

 

涼風「はい、お姉様は先に家へ向かいました。」

 

平塚「そうか……比企谷、それと夜十神妹、済まなかった。あれだけの騒ぎになる前に私が駆けつけるべきだった。」

 

八幡「俺は大丈夫です。特に何かダメージを受けたわけでは無いので。涼風は「八幡さん、私も大丈夫です。」………そうか、ならいい。」

 

平塚「そうか……ありがとう。それで、あの場で何があったのか、説明をする事は可能か?」

 

八幡「大丈夫です、平塚先生のとこにも寄ろうとは思ってたので。」

 

平塚「………では頼む。」

 

 

平塚先生の要求通り、俺は天之川とのやり取りを説明した。俺も説明しながらかなり呆れ……いや、怒りが湧き上がってきた。涼風の言う通り、人の気持ちも知らないでよくあんな事を言えたものだ。柊にその気があるのなら、とっくに中学の頃にそれをやってるに決まってる。そして涼風にもあれだけ言わせたんだ、天之川の頭の中がおめでたいって事がよく分かるだろう。

 

 

平塚「………そんな事があったのか。」

 

八幡「はい。最後は向こうの八重樫が全員に帰るように促して帰って行きました。そして明日、担任に今日の事を伝えるそうです。」

 

平塚「担任というと、畑山先生か………一先ずこの事は校長先生にも伝えておく。君達も疲れただろう。今日はもう帰りなさい。あまり遅くなってはご両親が心配するだろうからね。」

 

八幡/涼風「分かりました。」

 

平塚「うむ、ではな。」

 

 

平塚先生が教室から出てから、俺達も帰る準備をして帰路に着いた。しかも校門前には宮間さんが車で待ってくれていた。すみません、学校に2度も来させてしまって。

 

 

八幡sideout

 

香織side

 

 

ーーー同時刻ーーー

 

 

あの子のあの叫び、とても辛そうに叫んでた。しかもそれだけじゃない、苦しそうで辛そうにしながら……そして悔しそうにもしていた。

 

 

香織「雫ちゃん………」

 

雫「何、香織?」

 

香織「あの子、凄く辛そうだった………」

 

雫「………そうね。けれど、あの子よりもあの子のお姉さんの方がもっと辛い思いをしてる。私達がこれまで経験した事もないような辛さを。」

 

香織「………うん。後、比企谷君も辛そうにしてた。あの2人って本当にそのお姉さんが大切なんだよね。」

 

雫「えぇ……でなければあんな事、言える筈がないもの。カッコ良いわよね、2人共。」

 

 

私も南雲君に言えるかな?あの2人みたいに………

 

 

坂上「比企谷って奴、もしかしたらあの子の姉と付き合ってるんじゃないのか?でなければアイツだって他人だろ?幾ら恩人とはいえ、ただの他人に心まで開けるかって言ったら微妙だしな。」

 

香織「っ!!恋人?」

 

雫「確かにそうね………もし比企谷君がお姉さんの恋人なら、あれだけの説明が出来たのも頷けるわね。龍太郎、脳筋のくせによく思いついたわね?」

 

坂上「余計なお世話だよ!」

 

 

比企谷君とあの子のお姉さんが恋人………じゃあ比企谷君は恋人の為にあれだけ必死になってるって事だよね?凄い………

 

 

香織「カッコ良いなぁ、比企谷君は。」

 

雫「?香織、何か言った?」

 

香織「ううん、ただ比企谷君がカッコ良いって思っただけ。雫ちゃんもそう思うでしょ?」

 

雫「……そうね。比企谷君はカッコ良いわね。」

 

坂上「お前等、比企谷がカッコ良いからって取ろうとするなよ?」

 

香織「そ、そういう意味じゃないよ!」

 

雫「だからアンタは脳筋なのよ。もう少し女心も勉強しなさいよね。」

 

坂上「だから余計なお世話だ!!」

 

 

私も明日から南雲君にもうちょっとだけアプローチを掛けてみよっと!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





八幡、もっと涼風を労ってあげて。

ハジメ、明日からまた頑張れ!香織が攻める気です!


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起こった変化

【俺、実は彼女がいるんだ………】 100話、達成です!!

皆様、いつもいつも見て頂いてありがとうございます!!




 

 

天之川side

 

 

総武高に行ってから1日が経った。今日こそは納得させてやる。そして3人にかけられた暗示も解いてもらう!!柊にも中学の同級生達に会わせてやらないとな、そうでないと彼女の為にもならない。だがその前に比企谷をなんとかしないとな、アイツが居ると邪魔で何も出来ない。

 

 

香織「おはよう、ハジメ君♪今日は少し余裕で登校だね!」

 

ハジメ「っ!?お、おはよう白崎さん……」

 

香織「うん、おはよう♪」

 

 

香織はまた南雲に………いい加減アイツは学習しない奴だって香織も気付くべきだ。何故あんなにも南雲に拘るんだ?しかも何故南雲に着いていくんだ?挨拶なら終わった筈なのに。

 

 

ハジメ「えっと……何か、用かな?僕の席まで着いてきて………それと何で名前呼び?」

 

香織「うん!あのね、ハジメ君っていっつも飲むタイプのゼリーしかお昼摂ってないでしょ?」

 

ハジメ「う、うん……あれでも午後は持つから。」

 

 

な、何っ!?弁当!!?香織が南雲に!?

 

 

香織「けどね、それだときっと足りないと思ったから………コレ、お弁当作ったの!ハジメ君、一緒に食べよっ♪」

 

ハジメ「………でも、それって白崎さんのお弁当でしょ?それは悪いよ。」

 

香織「ううん、私のはこっち。コレはハジメ君に!だから今日のお昼休み、一緒に食べよっ♪」

 

 

なっ、何を考えているんだ香織は!!?あんな奴と一緒に食べる?しかも弁当を作ってきただと!?そんなの許可できるわけがない!!

 

 

天之川「香織、南雲はいつもアレで済ませているから充分な筈だから、そのお弁当は俺達で分けて食べないか?その方が良いと思うぞ。」

 

香織「………私はハジメ君に聞いてるの、天之川君は静かにしてもらえるかな?」

 

天之川「っ!?」

 

香織「それでハジメ君………食べてくれると嬉しいんだけど、どうかな?」

 

 

………周りのクラスメイトも驚いている。それもそうだ、香織はいつもならこんな事は言わない。それに驚きなのはまだある。香織が南雲に弁当を作ってきたという事実だ。

 

 

雫「おはよう香織、南雲君も。香織は早速やっているみたいね。」

 

香織「うん♪今返事を聞いてるの。」

 

雫「そう。南雲君、出来れば受け取ってくれないかしら?香織ってば昨日から何作るのか悩みに悩んでたから。」

 

香織「ちょ、雫ちゃん!」

 

雫「いいじゃない別に。」

 

ハジメ「………じ、じゃあありがたく貰うよ。ありがとう、白崎さん。」

 

香織「……うん、こちらこそ!!じゃあまたお昼休みにねっ♪」

 

雫「じゃあ南雲君、またお昼休みに来るわ。」

 

ハジメ「う、うん……」

 

 

おかしい………いつもなら俺と香織、雫、龍太郎の4人で食べてる。なのに今日は突然香織が南雲に弁当を渡した………しかも一緒に食べるという約束までして!!

 

 

「ねぇ、あの2人ってあんなに仲良かった?」

 

「いや、白崎さんが南雲に絡んでただけだと思ってたんだけど………」

 

「けど普通お弁当渡す?」

 

「いや、普通はねぇよな………」

 

「じゃあ………」

 

「もしかして………」

 

 

香織が南雲を?いや、そんな可能性万が一、いや億が一にもあり得ない。南雲の何処に好きになる要素があるんだ?香織は優しいから南雲の健康を気遣って弁当を作ってきたんだ、きっと今日だけだろう。

 

 

香織「うぅ〜ん、南雲君ってどんな料理が好きなのかなぁ〜………さっき聞けばよかったなぁ。」

 

雫「別に昼休みでもいいでしょ?その時に聞きなさいよ。南雲君も答えてくれる筈よ。」

 

香織「そうだよね!うん、そうする!」

 

雫「その意気よ香織。」

 

天之川「な、なぁ香織!今日は南雲と一緒に食べるのか?」

 

香織「うん、そうだけど?」

 

天之川「そういうのは事前に言ってくれないと困ると思う。俺もそうだが、龍太郎も知らないんだし「さっきから何言ってるの、光輝。」………え?」

 

雫「今日は私と香織は南雲君とお昼を食べるのよ?龍太郎と光輝とは食べないわよ?」

 

天之川「ど、どういう事なんだ!!?いつも一緒に食べていたじゃないか!!」

 

雫「偶には違う人と食べてみたいって話になったのよ。そしたら香織が南雲君と一緒に食べたいって言うから、今日こうしてお昼を誘ったのよ。別にいいじゃない、私達だって光輝達以外の誰かと食べる権利くらいある筈よ。」

 

 

と、突然過ぎる………何故こうなったんだ?

 

 

畑山「皆さん、席に着いてください!HRを始めますよ〜!」

 

 

くっ……こうなったら後で香織と南雲にちゃんと説明してもらわないとな!!まず最初は南雲に聞いてみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

畑山「ではこれでHRを終わります。それから天之川君、坂上君、白崎さん、八重樫さん、HRが終わったら先生に着いてきてください。お話する事がありますので。」

 

 

また先生からの呼び出し……しかも今度は一昨日と違って香織達も一緒?まさか昨日の件か!?だとしたら………きっと比企谷が学校に報告したに違いない!アイツはこの後に及んでまだ学校を利用するつもりなのか!!

 

 

坂上「おい光輝、何やってんだ?置いてくぞ?」

 

雫「早く行きましょう?」

 

天之川「………あぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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容赦のない応酬

 

 

雫side

 

 

ーーー生徒指導室ーーー

 

 

畑山「皆さん、入って下さい。」

 

4人「失礼します。」

 

 

生徒指導室……初めて来たわね。通りがかった事は何回かあるけど、入った事は1度も無いわ。

 

 

畑山「校長先生、教頭先生、昨日総武高校に行った4人を連れて来ました。」

 

教頭「ご苦労様です、畑山先生。さっ、皆さんもそのソファに座りなさい。」

 

 

私達は教頭先生に言われた通り、目の前にあるソファに座った。けど、やっぱりこの件で呼ばれるとは思っていた。私は朝学校に来たのと同時に職員室に行って、畑山先生に昨日の事を言ったから。

 

 

教頭「先ずは君達を此処に呼んだ理由ですが、もうお分かりだと思います。昨日の総武高校についての事です。お気付きの方も居ると思いますが、昨日その総武高校の先生から報告がありました。我が校の生徒が被害を受けたと。当然、しっかりとした説明を受けて。そして今朝方も同じく報告がありました。そうですね、八重樫さん。」

 

雫「はい。」

 

教頭「結構。その上でお聞きしたい事は1つあります。天之川君、何故畑山先生の言われた事を無視して総武高校に行ったのですか?」

 

 

え?どういう事?言われた事?無視?

 

 

天之川「それは畑山先生が利用されていると思って、その黒幕にやめるようにしてもらう為にです。」

 

教頭「ほう、小学生の頃一緒にいた子を助ける為ではなく先生の為に、ですか?」

 

天之川「っ!?い、いえ!確かに今、教頭先生が言ったのが最大の理由ですが、俺は利用するのをやめさせる事も視野に入れてました。」

 

教頭「成る程………しかしね天之川君、それはあまりにも荒唐無稽だ。総武高校からの報告ではそんな事は一言も聞いていなかった。相手側の被害者である比企谷君からもそのように聞いている。」

 

天之川「そ、それは比企谷が「教頭先生、次に行きましょう。これでは話が進みません。」っ!」

 

教頭「分かりました。では次に移ります。比企谷君からも説明は受けていると思いますが、夜十神さんでの中学時代の件についてです。説明は省きますが、比企谷君の説明を受けてそれを理解して納得している方は手を挙げてください。」

 

 

この質問に私を含む龍太郎、香織の3人はすぐに手を挙げた。それはその通りよ、あの説明を受けて比企谷君が悪いなんて言えないわ。むしろ夜十神さんを助ける為に最善の事をした凄い人だと思っている。

 

でも貴方は違うのね、光輝。

 

 

教頭「君は納得していないのだね?」

 

天之川「はい。比企谷は問題を先延ばしにしているだけです。ひい……夜十神さんはもっと努力するべきだったんです。そうすれば今のような事にはならなかったと思っています。」

 

教頭「………天之川君、此処に居る教師は先方から細かい説明を受けています。なので何があったのかはある程度理解しているつもりです。それでも尚、彼女の努力が足りなかったと言いますか?」

 

天之川「はい、言えます。」

 

 

光輝………

 

 

校長「………本当は出すつもりなんてなかった。だがこうなっては致し方あるまい。君達に1つの書類を見せよう。これは総武高校から頂いた物だ。」

 

 

校長先生は封筒の中から1枚の紙を出して机に置いた。それは病院でよく使われるカルテだった。そのカルテを見た私達は驚きを隠せなかった。

 

 

雫「人が、見えなくなる……病気?」

 

校長「そう……夜十神さんは中学生の時に起きた事により、特定の人物の顔や輪郭が見えず、声すらも聞こえていない状態だ。こうやって聞くだけでも重症なのが分かりますが、大事なのはそこではない。この部分だ。」

 

 

対象となった人物となった人物に対して、嫌悪、憎悪のような悪影響を及ぼすような感情が生まれた場合、この障害が発生する。

 

 

坂上「つまり………嫌いになったらその人が見えなくなるって事ですか?」

 

校長「その通り。こんな書状まで送ってくれた。読み通すだけでもこっちのとある生徒がどんだけバカやらかしたっていうのがよく分かる。」

 

 

校長先生……挨拶とかでも思ってたけど、やっぱり口が少し悪いのね。でも校長が読み上げた内容はこの症例と合致していた。

 

 

校長「そして本番はこっからだ。修学旅行2日目の夜、竹林にて天之川がこちらに接触。天之川は比企谷を突き飛ばし、夜十神を守る行動を取る。だが夜十神は比企谷の方へと向かい安否の確認。天之川が離れるように言うものの、聞く様子はなく、比企谷と少しだけ口論に。そして次だ、次の事に耳の穴を開けてよく聞いておくように。」

 

 

光輝、アンタ一体何をしたのよ………

 

 

校長「比企谷達がその場から立ち去ろうとするが天之川がそれを妨害、比企谷も行動に移すがそれでも妨害。夜十神も混ざって口論になるが、天之川がこっちに来るように手を伸ばすと夜十神からは激しい拒否。そして彼女が言っていた言葉はこうだ。

 

『私の前から凄く嫌な空気を感じる。』

 

だそうだ。それからは天之川が比企谷から近付くなと言われてその場を去った………っていうとこだ。もう理解してるよな、天之川?」

 

天之川「っ………」

 

校長「彼女の目はもう君を捉えてはいない。しかもこれまでで1番最悪のケースときたもんだ。嫌悪感を抱く奴は初めてだったんだと。」

 

雫「光輝、アンタ………」

 

天之川「ち、違うんだ雫。これには「何も違わねぇよ、俺はこういう性格だからまどろっこしいのは嫌いだ。ハッキリ言うが、お前のやった、あるいは今やってる行為ってのは明らかな迷惑行為でしかねぇ。しかも修学旅行では明らかな暴行もしてるんだぞ?お前さん、これにどう落とし前をつけるんだ?」っ………」

 

 

校長先生………容赦ないわよね。全校集会とかでも思っていたけれど。言葉のナイフどころか、これじゃあノコギリよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




校長先生、何でこんなに怖くしちゃったんだろう?


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されど彼は

 

天之川side

 

 

俺のやってきた行動が迷惑行為?ど、どうして………俺は柊の為を思ってやっていたのに。じゃあ比企谷はどうなんだ!?アイツは柊を独占しているじゃないか!!アイツこそ柊の迷惑になっているだろう!!俺だけに言えた事ではないはずだ!!

 

 

天之川「ですが校長、俺は良かれと思って「その良かれと思っての行動が相手にとって嫌な行動だってんだよ。お前のやる事なす事が全部正しいとでも思ってんのか?」そ、それは………」

 

校長「んな訳どこにもねぇんだよ……確か夜十神とお前さんは小学からの知り合いだったな?向こうは小学の頃から苦手だったって言ってたぜ?」

 

天之川「なっ!?そ、そんな筈は……!!」

 

校長「中休みや昼休みになったら必ず一緒に遊ぼうと誘ってくるから、鬱陶しかったとも言っていたな。お前さんが思っている以上に2人のお前さんに対する評価は低いぜ?」

 

天之川「………では彼は?」

 

校長「ん?」

 

天之川「一緒に居る比企谷はどうだというのですか!?アイツは中学から柊と一緒に居ます!しかも柊を独占しながら今日までずっと一緒なんですよ!!それを放っておいてもいいんですか!?」

 

 

そうだ!!アイツが柊と一緒に居るようになってからおかしくなったんだ。だから柊もそれが当たり前のようになってしまったんだ!その環境を消せば………

 

 

校長「はぁ………これも言うつもりはなかったが、とんでもなく物分かりの悪い奴が居るようだから教えてやる。比企谷八幡と夜十神柊は男女の交際をしてる。それも2年間な。」

 

天之川「えっ!!?」

 

 

雫(ふぅん……やっぱりそうだったのね。あれだけの事を知ってながら普通に関わりを持てているんだもの。納得もいくわ。)

 

香織(素敵………あんな風に彼女の事を守ってあげていたなんて。私もハジメ君と………)

 

坂上(俺が言ってた通りだったとはな……本当に付き合ってたのかよ。勘で言っただけなのによ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校長「これであの2人とその妹が同じ中学でも一緒に行動している理由が分かっただろ?あの姉妹、いや彼女の方は比企谷の事を手放せない存在なのは間違いねぇだろうな。それにだ、恋人を独占しようとして何が悪いんだ?しかも事情が事情だ、ソイツに強烈な依存を持っても不思議ではないだろ。」

 

天之川「………」

 

 

あの2人が恋人同士………だがあの柊や涼風はそんな事は一言も言ってなかった。比企谷だってそうだ、付き合っているとは言ってなかった。

 

 

校長「んで天之川、お前に質問だ。今のを聞いても、お前はまだあの2人にちょっかいをかけるつもりか?まだ何とか出来るって思ってるのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天之川「………あの2人が付き合っているのは分かりましたし、障害を抱えてしまっていたという事情があったのも分かりました。ですがそれでは柊が1人になった時、どうしようもなくなってしまいます。だから柊は最低限の人間とは関わりを持ってほしいと思います。」

 

校長「ほう……それでその人間は?」

 

天之川「前回では失敗をしてしまいましたが、次は成功させてみせます!なのでもう1度俺が「普通に却下だ。」行き……な、何故ですか!?」

 

校長「お前さん、俺の話聞いてたか?修学旅行でお前が女に触ろうとした時、なんて言われた?」

 

 

………っ!!そうだ、俺は柊に拒絶されていたんだ。だが誠意を持って接すれば分かってもらえる!!

 

 

天之川「ですが誠意を持てば「嫌いな奴から仲良くなろうなんて言われても、俺は絶対に仲良くしようなんて思わねぇ。しかもソイツが原因を作った奴だとするなら尚更だな。」くっ………」

 

校長「いい加減気付け、お前さんは既にゲームオーバーなんだよ。やり直しなんて効かないくらいにな。ここまで言われないと気付かないくらい頭の中がめでたいのか、お前さんは?」

 

天之川「っ、そこまで言わなくても「光輝、私も校長先生の意見に賛成よ。」なっ!?雫まで何を言い出すんだ!?」

 

雫「貴方は自覚ないでしょうけど、南雲君と香織との距離をやたらと置くようにしてるでしょう?私からしてみればバレバレなのよ。」

 

天之川「そ、そんなつもりはない!!「だから言ったでしょう、自覚ないでしょうけどって。けれど見てる側からすれば邪魔をしているようにしか見えないのよ。香織が南雲君に話しかけてもすぐにアンタが邪魔をする。今まではあまり言ってこなかったけど、アンタの行動は度が過ぎてるわ。」な、なんだって………」

 

香織「………何でハジメ君に向かってあんな態度を取るのかなって疑問だったけど、そういう事だったんだ。天之川君………」

 

校長「何だこの学校でも似たような事してたのかよ………お前さんはとんでもねぇな。」

 

天之川「ち、違います!!俺はそんなつもりじゃ「そんな事を今更言ったとしても、此処に居る連中は誰も信じないぜ。お前さんは分かってないと思うが、やり過ぎたんだよ。」………」

 

 

違う………俺はそんなつもりでやったんじゃない。南雲がだらしないから香織が構っていたんだ。比企谷だってそうだ、アイツが柊を独占していたからこうなっていたんだ!

 

 

校長「(この様子だと、反省の色無しか。)取り敢えず話し合いは終了にする。お前達3人は今回、特に相手側からの被害は無かったから注意だけで済ませる。だが天之川、お前のはそれなりのものだと思っておけ。反省文や掃除なんかで済むとは思わない事だ。」

 

 

 

 



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お昼ご飯

一応、ありふれsideはこれで終わりです。

次からは総武sideに行きます。


 

 

香織side

 

 

校長先生とのお話が終わって、私達も普通の授業に戻った。天之川君のこれまでの行動は少しだけ不思議には思っていたけど、あんな考え方をしてたなんて思ってもみなかった。流石に私もあれは無いかな。少しだけ鳥肌が立ったくらいだもん。出来れば今後は接触を控えたいかな。だから次からはハジメ君の側に居ようかなぁ。でもそうしたらまた天之川君が来そうなんだよね………雫ちゃんも言ってたけど、私とハジメ君の邪魔をしてるって言ってたし。うぅ〜ん、どうしよう。

 

 

ーーー昼休みーーー

 

 

香織「雫ちゃん、行こっ!」

 

雫「か、香織?行くって何処に?」

 

香織「いいから早く!お弁当持って!」

 

雫「え、ちょ、香織!?」

 

 

結局どうするか思いつかなかったから、私は取り敢えず一緒にお弁当を食べる雫ちゃんと南雲君を連れて、教室から出ようと思っていた。

 

 

香織「ハジメ君も早く!」

 

ハジメ「えっ、僕も!?」

 

香織「当たり前だよ!一緒にご飯食べるんだから!ホラ、早く!」

 

ハジメ「う、うん!」

 

 

そして私達は教室から飛び出した。行き先は屋上にした。だって今日は天気が良いから……あっ!そういえばもう11月になるのに、お外で食べたら寒いよぉ〜。手前の階段で食べよう、うん。

 

 

ーーー屋上階段ーーー

 

 

雫「驚いたわよ、香織ったら突然理由も無しに連れ出すんだもの。」

 

ハジメ「あはは………」

 

香織「ゴメンね雫ちゃん。でもね、あのまま教室で食べてたらきっと大変な事になってたと思うんだ。雫ちゃんも言ってたけど、天之川君が私とハジメ君の邪魔をしてるって聞いたから。」

 

雫「あぁ、それで………」

 

ハジメ「えっと、なんの話?」

 

香織「あっううん、なんでもないの!じゃあお昼食べよ!ハジメ君のお口に合えば良いんだけど……」

 

 

ドキドキ………ワクワク………

 

 

ハジメ「……えっと、そんなに見つめられると少し食べにくいかなぁって。」

 

香織「あっ、ゴメンね!人にお弁当を作るの初めてだったから、つい気になっちゃって………」

 

 

雫(香織、頑張れ!)

 

 

ハジメ「じゃあ、いただきます………」パクッ

 

香織「………」ジー

 

雫「香織、見つめ過ぎよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメ「うん、美味しいよ!」

 

香織「ホ、ホント!?」

 

ハジメ「うん、これなら何個でも行けそうだよ!」

 

香織「よ、良かったぁ〜………」

 

雫「良かったわね香織。」

 

香織「うん♪じゃあ私達も食べよっか。」

 

雫「えぇ。」

 

 

ハジメ君に美味しいって言ってもらえた………よぉし、明日のお弁当も頑張って作ろう!

 

あっ、そうだ!大事な事忘れてた!

 

 

香織「ねぇハジメ君、ハジメ君の好きな料理って何かな?できれば教えて欲しいんだけど!」

 

ハジメ「好きな料理………うぅ〜ん何だろう?あまり好き嫌いとかないから。」

 

香織「そうなんだ、南雲君って好き嫌いないんだ〜。凄いなぁ………」

 

ハジメ「………い、一応例を挙げるならハンバーグとかカレーとか、普通に皆が好きなものかな。」

 

香織「普通に皆が好きなもの………そっか、分かった!ありがとうハジメ君、明日も頑張るから!」

 

ハジメ「な、何を?」

 

雫「きっと明日も南雲君にお弁当作る気でいるのよ。その為に聞いたんだと思うわ。」

 

ハジメ「さ、流石に2日連続はいいよ………白崎さんに悪いし。」

 

香織「でもハジメ君っていっつもあのゼリーだけでしょ?飲み終わったらすぐに寝ちゃうし………」

 

ハジメ「自業自得だよ。遅くまで本を読んでたり、ゲームをしてたり、親の手伝いをしてるから、睡眠が足りてないってだけだし。」

 

香織「へぇ〜ハジメ君って親のお仕事のお手伝いもしてるんだ!」

 

ハジメ「ま、まぁ………一応ね。」

 

香織「やっぱりハジメ君って優しいなぁ………」

 

 

雫(南雲君、きっと貴方は気付いていないと思うけど、南雲君のなんでもない発言でも、香織には立派に聞こえてしまうのよ。さっきの好き嫌いがないとか、親の手伝いとかも全部そうよ。香織が段々貴方への好感度を勝手に上げてるんだから。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ご馳走様でした。」」」

 

ハジメ「白崎さん、お弁当ありがとう。美味しかったよ。」

 

香織「ううん、お粗末様でした。明日からはもっと美味しいのを持ってくるから!」

 

ハジメ「い、いや……流石に明日はいいよ。苦労を掛けちゃうから。」

 

雫「香織、南雲君もこう言ってるんだから無理強いはしないの。」

 

香織「……うん、分かった。じゃあ週に2回はどうかな?それならいいでしょ?」

 

ハジメ「や、やめる気はないんだ………」

 

雫「諦めて南雲君、香織ったらお弁当を作る事を曲げる気がないみたいだから。」

 

 

週に2回………南雲君にお弁当を作る!1回じゃ少ないもんね。南雲君には健康になってもらいたいし!

 

 

ハジメ「じ、じゃあお願いしようかな。週2回で……いいかな?」

 

香織「うん、任せて♪南雲君の為に美味しいお弁当、一生懸命作るから!」

 

 

これで南雲君との接点が増えた♪曜日はいつにしようかなぁ?火曜日と木曜日かなぁ?うぅ〜んでも金曜日も週最後だしなぁ………悩むなぁ。

 

 

ハジメ「………ねぇ八重樫さん、白崎さんはどうしちゃったの?」

 

雫「きっとどの曜日に作って来ようかを考えてるんだと思うわ。その内したら帰ってくるから心配いらないわ。」

 

ハジメ「そ、そうなんだ………」

 

 

木曜日……金曜日……大穴で土日でハジメ君のお家に!?

 

 

 

 

 



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心強い味方

 

 

八幡side

 

 

茅ヶ崎「という事があり、京葉高校の校長先生と教頭先生が丁寧に説明したにも関わらず、理解も納得も反省もしていない様子だったそうです。あちらの先生方の苦労を思うと胸が痛くなる報告でしたよ。」

 

八幡「まさかそれでもダメだったなんて………」

 

茅ヶ崎「えぇ、我々としても予想外の結果です。これで納得しないとは思いませんでしたので。私の立場でこのような事を聞くのは些か気が引けますが、君達は今後はどうするおつもりなのですか?恐らく彼はまた来るでしょう。」

 

八幡「向こうの出方次第ですね。それに処分もまだ決まってないんでしょう?ならそれを待ちますよ、報告では放課後には決めておくって話でしたしね。今頃天之川を呼んでそれを報告して、天之川がいちゃもんをつけているんじゃないですか?アイツが少しでも利口なら、退学寸前まで足を踏み入れる事はしないでしょう。」

 

茅ヶ崎「それなら良いのですが………いずれにしても、比企谷君も気をつけて下さいね?」

 

八幡「はい、ありがとうございます。」

 

 

○曜日の放課後、俺は校長先生から呼び出されて校長室で話し合いをしていた。当然柊達も着いてきたがっていたのだが、流石に2人での話を求められていたので、待ってもらう事になった。しかし天之川の処分かぁ………どんなものになるんだ?まぁ確定であって欲しいのは総武高への侵入禁止と俺等との接触禁止だな。これがあれば最高だ。もし破ったら間違いなく停学モンだろうしな。

 

 

茅ヶ崎「ではまた追って報告をします。お付き合いして頂いてありがとうございます。」

 

八幡「いえ、こちらこそありがとうございました。失礼します。」

 

 

よし、教室で待ってる柊達の所に行くか。柊が拗ねてなければいいんだが………いや、きっと拗ねてるだろうな。涼風が拗ねるとは思えないし。

 

 

ーーー教室ーーー

 

 

八幡「柊、涼風………と新堂先輩?」

 

柊「あっ、八幡君おかえり♪」

 

八幡「あぁ。何で先輩が?」

 

新堂「偶々通りかがったんだけど、2人が退屈そうにしてたから話相手になってたんだ。僕も3人の過ごし方とか気になってたしね。」

 

八幡「なるほど………余計な事言ってないよな?」

 

柊「言うわけないじゃん!」

 

涼風「はい、あり得ません!」

 

新堂「あはは……それよりも比企谷君、また何か厄介事に巻き込まれているみたいだね?もしよかったら聞かせてくれないかい?」

 

八幡「いや、でも先輩受験でしょ?そんな場合ないんじゃないんですか?」

 

新堂「少しなら心配はないよ。それに力になってあげたいしね。君達は僕の同級生よりも友好的な関係を築けていけそうだしね。」

 

 

何この人の良さ、そうそういねぇよ?何でこんなに良い人なの?

 

 

涼風「どうしてそんなにも私達によくしてくれるのですか?」

 

新堂「どうして、かぁ……正直僕もよく分からないんだよね。けど君達になら力を貸せるって思えるんだ。ただの直感だけどね。」

 

柊「………八幡君、話して。」

 

八幡「っ!いいのか?」

 

柊「うん、この先輩は信用出来る。」

 

八幡「……そうか、じゃあようやく俺以外で1人目って事だな。」

 

新堂「?どういう事だい?」

 

八幡「色々事情があるので、帰りながら説明します。行きましょうか。」

 

 

俺は帰り支度を済ませてから、4人で歩きながら中学の事や今回起きている事を説明した。

 

 

新堂「そんな事があったんだね………それでこうなってしまったと。けど、それじゃさっき比企谷君が言ってた1人目っていうのは?」

 

八幡「あぁ、あれは柊が俺以外の誰かを初めて関心を持った人って事です。凄い分かりづらいですけど、柊は他人には無関心です。その柊が先輩に、というよりも誰かに対して初めて関心と信用を持ったんですよ。だから1人目っていう事なんです。」

 

新堂「そういう事だったんだね。うん、素直に嬉しいよ。信用してくれたのは。比企谷君、夜十神さん達も。僕もこの件に協力させてもらうよ。できる限りって事になっちゃうけどね。」

 

八幡「………いいんですか?さっきも言いましたけど、先輩って受験生ですよ?」

 

新堂「確かに大切なのは変わりないけど、困ってる人がいるのにそれを放っては置けないのが僕なんだ。それに何かあっても君達の責任にはしないよ。僕が君達に協力するって言ったんだからね。自分の責任くらい自分で取るよ。」

 

 

イ、イケメン過ぎる………

 

 

涼風「でしたらもし、本当にもしですよ?受験に失敗してしまったら我が家に来てください!父の会社に入れてもらいないかどうか相談しますので。」

 

柊「あっ、それ良い!森崎の件でも今回の件でもお世話になってるから、お父さんも断る事はしないはず!先輩、その時は私達に言ってくださいね!」

 

新堂「ありがとう2人共。もしそうなったその時は相談させてもらうよ。」

 

柊「あっ、八幡君はもう内定もらってるから!ウチに永久就職する事は決定してるから!」

 

八幡「俺の未来設計図を勝手に作るなよ………」

 

 

だが、心強い味方が増えた。俺も新堂先輩なら信用出来るしな。そういやあの時の小切手100万円、どのくらいつかったんだろう?

 

 

 

 

 

 




新堂先輩が仲間に加わった!


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罰則内容と平穏

 

 

柊side

 

 

柊「八幡君、今日は来ると思う?」

 

八幡「………分からない、俺も予想がつかない。奴がお前を取るか自分の保身を取るかのどっちかだが、正直俺にはどっちをとっても不思議ではない状況だしな。処罰覚悟で総武に来るか、処罰回避で行動を抑えるかってところだな。」

 

涼風「来て欲しくありません、あんな人。」

 

柊「本当だよ!小学生の時の事はそんなによく覚えてないけど、絶対タチ悪くなってるよね。お近づきになんてなりたくない。なりたいって思う人の神経を疑っちゃう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平塚「おぉ、比企谷、それに夜十神姉妹も。丁度良かった、今は大丈夫かね?できれば昨日の事で話したい事があるのだが。」

 

 

前の方から平塚先生が私達を見つけるとまっすぐ歩いてきた。

 

 

八幡「………処分が決まったんですか?」

 

平塚「あぁ。それについて君達にも教えておいた方がいいと思ってな。時間はあるかね?」

 

八幡「俺も2人も大丈夫です。」

 

平塚「よし、では行くとしようか。」

 

 

ーーー生徒指導室ーーー

 

 

平塚「さて、いきなり本題だが、天之川の罰則内容は………『総武高への立入禁止』『比企谷八幡並びに夜十神姉妹への接触禁止』『10日間停学』が下された。当然この事は天之川のご両親も承知済みだ。」

 

涼風「いつ天之川さんのご両親が?もしかして昨日の放課後に?」

 

平塚「その通りだ。ご両親2人を京葉高校までご足労頂いて、これまでの経緯を説明してから処分を下した。内容が内容だけにご両親は酷く嘆いておられたそうだ。無理もないな。」

 

 

両親の前で説明されちゃったかぁ〜………もう言い逃れも何もないじゃん。わぁ〜その幽霊さんの親可哀想。

 

 

八幡「もしそれでもアイツがこの総武高に来て、俺達に関わったらどうなるんですか?」

 

平塚「………そうなった場合の事も考えているそうだ。そうなった場合、退学だそうだ。」

 

八幡「………退学ですか。無期停学とかではないんですか?」

 

平塚「向こうの校長にもそれを伝えたそうなんだが、こう答えたそうだ。『それで彼が反省をしてくれるのなら、今頃とっくに反省できてるはずだ。』とな。京葉の校長は無期停学は無意味だと思っているんだろう。だから今回の罰則を破ったら即退学、という事にしているそうだ。まさに首の皮1枚だけで繋がっているような状況だ。」

 

 

私は処分なんてどうでもいいけど、とにかくその幽霊が私達の所に来なければ問題ない。八幡君といつも通り過ごせれば尚の事良いしね!

 

 

平塚「だから比企谷、天之川が停学になったからといって油断はするな。人という生き物は勝利を確信した時や、安堵に浸っている時が1番油断しやすい。そんな時こそ何かあると思え。天之川関連ではない何かでもいい、何かがあると思う事だ。」

 

八幡「………それメチャクチャ嫌ですね。」

 

平塚「君の立場からすればそうだろうが、この学校で夜十神姉妹を守れるのは君だけだろう?この2人は君以外の生徒には目もくれていなさそうだしな。普段の様子を見ていれば嫌でも分かる。」

 

八幡「まぁ2人が望むのなら「私は八幡君に守ってもらいたい!!」俺は「是非、八幡さんにお願いしたいです!!」喜んで………引き受けます。」

 

平塚「そのようだな。時間を取らせて済まなかったな、もう教室へ行っていいぞ。」

 

 

守ってもらうのなら絶対八幡君が良いに決まってるよ!!それ以外の人なんてお父さんくらいしか思いつかないもんね!!え、新堂先輩?無しではないけど、1番はやっぱり八幡君だよね!!

 

 

ーーー2-F組ーーー

 

 

八幡「はぁ……1週間がこんなに長く感じたのは初めてかもしれないな。今まで1週間ってこんなに長かったっけ?」

 

涼風「いえ、きっと今週が忙し過ぎたのかと。天之川さんが総武高校に来たりしたのが原因だと思われます。それが無かったとしても、天之川さんが来るかもしれないという緊張感で時間が長く感じてしまっていたのではないかと思われます。」

 

八幡「そういう事か、全部天之川のせいか。」

 

涼風「………は、はい、そうですね。」

 

 

涼風も否定するのを辞めちゃった………間違ってはいないしね。ううん、むしろ八幡君が正解だよ。全部あの幽霊が悪いんだよ。

 

 

八幡「なぁ柊に涼風、明日の学校が終わったら泊まりに行っていいか?今週の俺ならたとえ何が出されたとしても全て食べ切れる自信があるし、気にしない自信もある。そのくらい精神面が疲れてる。ダメか?」

 

柊「来て来て!!八幡君ならいつでも大歓迎♪お父さんとお母さんもきっと喜ぶしね!!」

 

涼風「はい、お姉様の言う通りです。きっと喜びます、是非いらしてください。」

 

八幡「あぁ、悪いな。」

 

 

やった♪今週は八幡君が泊まりに来る〜♪楽しみ楽しみ!やっぱり八幡君が来るって分かると張り切りが違うかも。なんていうか………おもてなししてあげなくちゃって思っちゃう!

 

 

八幡「んじゃ今日もそれとなく、1日を過ごしていきますか。」

 

柊「はぁ〜い♪」

 

涼風「はい。」

 

 

これが毎日続いてくれれば、私は文句無いんだけどなぁ………

 

 

 

 

 

 

 



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リフレッシュ

 

 

八幡side

 

 

修学旅行明けから5日経ち、漸く休みが訪れた。この時をどれ程待った事か………やっと何も考えずに行動が出来る。意外にも、天之川は学校には乗り込んでこなかった。そのおかげもあってか、俺達は愉快な学校生活を送る事ができた。2人の視線を感じる事もあったが、気にしない気にしない。

 

そして今はおじさん達夜十神家に居る。まぁお察しの通り、泊まりだ。柊と涼風が今週俺が行くっておじさんとおばさんに言ったところ、『よし、じゃあ何かご馳走を考えないとね!』『リラックスしやすい入浴剤とか用意した方がいいわね。』とか言ってたらしい。実際、料理はゴージャスだったし、めっちゃ良い匂いの入浴剤でリラックス出来た。

 

寝る時はいつも通り、動く抱き着き枕(柊と涼風)が両サイドに居た。それに慣れたからか、今ではもう普通に眠る事ができる。慣れって恐ろしいね。けどやっぱり2人がお持ちのアレは、実に豊かでたわわでした。そして今はそんな2人も既に起床済みで朝食の席に居る。勿論、俺も居るし、おじさんとおばさんもだ。2人はこれから仕事だけど。

 

 

御影「そういえば八幡君、今日はどうするんだい?この家に居ても大丈夫だけど、それだと暇でしょ?」

 

八幡「それなら大丈夫です、昼くらいになったらららぽに行こうと思ってたので。新しい本とかないか見ようと思ってました。」

 

柊「そして私もそれに着いて行く♪」

 

八幡「………なんて予定は組んでませんでしたが、柊の事ですからそう予想もしてました。」

 

紫苑「そう……涼風は?」

 

涼風「私も八幡さんとお姉様とご一緒に、と言いたい所なのですが、最近はお2人になる時間が少なかったと思いますので、今回はお留守番をしますわ。お姉様も八幡さんと2人きりの時間を過ごしたいでしょうから。」

 

紫苑「涼風がそれでいいのなら私は何も言わないけれど、何かあったらすぐに連絡するのよ。八幡君と柊もね。」

 

八幡「分かりました。」

 

柊「了解!」

 

御影「そういえば八幡君、君はもう進学は決めているのかい?」

 

八幡「場所は多分千葉にする予定ですけど、私立文系辺りを。けどそれが何か?」

 

御影「ううん、大学が決まっていないのならいいんだ。まだ1年はある話だからね、ゆっくり決めるといいよ。」

 

八幡「………まさかとは思いますけど、近くの家を買うもしくは作る、なんて言おうとしたんじゃないですよね?」

 

御影「や、やだなぁ〜八幡君、そんなわけないじゃらいかー!あはは〜。」

 

 

おじさん、噛んでます。考えてたんですね?そして言おうともしてたんですね?俺は安いアパートで充分です。

 

 

紫苑「はぁ………あなたったら。」

 

柊「お父さんってこういう時、本当に分かりやすいよね〜。」

 

涼風「お姉様に同感です。」

 

 

皆しておじさんをイジめてやるなよ……可哀想だろ。しかし、女家族の中男1人っていうのは結構苦労しそうだ。そして朝のやり取りから時間も経って、昼近くになった。

 

 

八幡「……そろそろ「行こっか♪」行く………そうですね、行きましょうか。」

 

涼風「八幡さん、姉をよろしくお願いします。ご迷惑を多々掛けるとは思いますが。」

 

柊「涼風〜、私だってちゃんと分別を弁えてるよ!八幡君には迷惑かけたりしないっ!」

 

涼風「………姉が周りに迷惑を掛けないように、見張りをお願いします。」

 

柊「ちょっと涼風!?」

 

八幡「よし、任せておけ。」

 

柊「八幡君まで!?」

 

 

周りの人には迷惑掛けないだろうが、色々と動き回りそうだしな。用心するに越した事はない。まぁ冗談だとして、柊のリフレッシュにもちょうど良いだろう。

 

 

八幡「半分冗談だ。柊、行くのなら支度して来い。俺はもう出来てるぞ。遅かったら置いてくぞ?」

 

柊「うぇ!?ちょっと待ってよ〜!!」

 

 

ーーーららぽーとーーー

 

 

柊「久しぶりに来たって感じだね、ららぽ。」

 

八幡「あぁ。文化祭や体育祭、修学旅行もあったから、行く機会が少なくなってたしな。それ以外にもまだあったといえばあったが、まぁそれはいいだろう。今日は気軽にショッピングしようぜ。」

 

柊「うん、そうだね♪」

 

八幡「さて、まずは何処から回ろうか……柊、何処から回る?」

 

柊「八幡君、本が見たいって言ってたでしょ?なら本屋さんに行こうよ。私も何か良いのがないか見てみたいしね、お料理本とか!」

 

八幡「そうか………よし、ならそうしようか。」

 

柊「うん♪」ダキッ!

 

 

そして俺達は目的地である本屋を目指してエスカレーターを目指して歩き始めた。

 

 

「すみませぇ〜ん、少々よろしいですか?」

 

柊「?」

 

八幡「あっ………」

 

「突然声を掛けてすみません〜……あっ、お2人だったんですね〜。」

 

柊「………あぁ!どうも、雑誌見ました。」

 

八幡「おかげで注目度が増しました。」

 

「あははは、今やお2人はあの雑誌の注目ですからね。あっ、今回も取材よろしいでしょうか?」

 

柊「はい、いいですよ〜。」

 

 

声を掛けてきたのは、俺達が2ヶ月前に雑誌に載るようになってしまった元凶とも言える取材班達だ。まぁ載るといってもテレビには出てないからまだ良い方だろう。これがテレビに出るようになったら………もう騒ぎが収まらなくなるだろう。

 

 

「じゃあ最初の質問から行きますね。」

 

柊「はーい!」

 

 

………まぁ、柊も楽しんでるようだからいっか。

 

 

 

 

 

 



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厄日

 

 

柊side

 

 

あの後インタビューも無事に終わった私達は、ららぽにある本屋さんに行ってじっくりと吟味した後、店内のフードコートエリアで昼食を取る事にした。私はお料理本を買ったよ!だって八幡君にはもっと美味しいお弁当を食べてもらいたいしね♪勿論いつかは家族にも食べさせてあげたいなっ!

 

 

柊「八幡君は本何も買わなかったけどいいの?欲しいのがあったんじゃないの?」

 

八幡「いや、別にあったわけじゃない。なんか良いラノベがないかを見たかっただけだ。」

 

柊「そっかぁ………じゃあ今度は何処回ろっか?やっぱりお洋服屋さんかなぁ?」

 

八幡「言っておくが、俺は服のセンス皆無だからな?期待なんてするなよ?」

 

柊「それなら八幡君が選んだ服を基準にコーディネートしちゃおっと♪それならセンスは自分で何とかなるし。」

 

八幡「じゃあ変なの選んでもいいって訳だ。」

 

柊「その時は八幡君も同じ服を買ってね?1度ペアルックで街を歩こうよ!」

 

八幡「今更かもしれんが、俺は目立ちたくない。」

 

 

うん、それ本当に今更だね。八幡君はもう雑誌にも載ってるから、学校でも知らない人は少ないと思う。名前は知らないけど、顔は知ってるっていう子とかもいそうだしね。

 

 

???「おやおや、久しぶりに見る顔だ♪」

 

八幡/柊「?………あっ。」

 

 

そこに居たのは雪ノ下さんのお姉さんだった。私の苦手な人で、八幡君の苦手な人でもある。

 

 

陽乃「やぁ、こんな所で奇遇だね〜!」

 

八幡「………どうも。」

 

柊「………こんにちは。」

 

陽乃「あっはは、暗いなぁもぉ〜。高校生なんだからもう少し元気が無いといけないぞ?」

 

八幡「はぁ………ていうか何で此処に座るんですか?他にもまだ席ありますよね?」

 

陽乃「んん〜?それはね、君達と少しお話がしたいからだよ。」

 

柊「私達は今、デート中なのでまた今度にしてもらえませんか?」

 

陽乃「そんな事言って〜、私達そんなに会わないじゃん。今日逃したら次はいつになるか分からないから却下♪」

 

 

………はぁ、この人まで邪魔するの?

 

 

陽乃「ねぇ比企谷君、何か面白い話ないの?」

 

八幡「俺にそんな話題求めないでくださいよ、要求する相手間違えてますよ。それにそんな話ができるんだったら、とっくにボッチ卒業してますよ。」

 

陽乃「それもそうだ。けど何かないの?」

 

八幡「ありませんね。面白い事なんて。」

 

陽乃「なぁんだ、つまんないの。じゃあ夜十神ちゃんは?何かない?」

 

柊「あっても話しません。八幡君と2人の時にお話します。」

 

陽乃「あちゃ〜嫌われてるなぁ………ううん、この場合避けられてるって言った方が良いのかなぁ?」

 

柊「八幡君を取ろうとしてる人なんかとどうして仲良くしなくちゃいけないんですか?」

 

陽乃「ふふふっ、正論だね。いやぁ〜君達はやっぱり面白いね。見ていて飽きないよ。見たのはまだ2回目だけどさ。」

 

 

この人、早くどっか行ってよ………何で此処に居座り続けてるのさ!

 

 

陽乃「もう、そんな怖い顔しないでよ〜。別に比企谷君を取ろうだなんて考えてないから。可愛い顔が台無しだぞっ♪」

 

八幡「……本当は分かってるんじゃないですか?柊が思ってる事。敢えてそれに逆らうって性格悪いっすよ。」

 

陽乃「良いじゃん別に。最近退屈だったんだから面白い事が欲しかったの!」

 

柊「それを私達に言われても困ります。」

 

陽乃「釣れないなぁ〜……あっ、そういえばこの前修学旅行だったんでしょ?」

 

八幡「よく知ってますね。」

 

陽乃「ウチにお土産届いたからね。」

 

 

……届いた?雪ノ下さんって別居中なのかな?

 

 

八幡「わざわざ宅配便を?」

 

陽乃「……きっと私とお母さんに顔合わせたくなかったんでしょ。」

 

柊「それなのにお土産は買っていくんですか………律儀なんですね。」

 

陽乃「あぁ、別にそういうのじゃないと思うよ。嫌いだけど、嫌われたくはないのよね〜………でも、もう大きな行事も無くなったし、後は受験に集中って感じかな?退屈なんじゃない?」

 

八幡「………別にそうでもないですよ。生徒会選挙とかありますし、それに………」

 

陽乃「?それに?」

 

八幡「………何でもないです。」

 

陽乃「え、何々!?お姉さん気になるなぁ〜♪」

 

八幡「何でもないですって。」

 

陽乃「良いじゃん言っちゃいなよ〜♪お姉さんも秘密にしておいてあげるからさ〜!ねっ、ねっ!」

 

 

………近い。

 

 

柊「八幡君に近づかないで下さい。近過ぎるので半径5m以内には近づかないで下さい。」

 

陽乃「あらら、ちょっとやり過ぎちゃったかな?けど大丈夫!奪ったりなんてしないから。それに奪ったとしても、比企谷君が君を裏切るとは思えないしね。そうでしょ?」

 

八幡「………」

 

陽乃「そこは男らしくビシッと決めないとっ!彼女ちゃんの前なんだからさ〜。」

 

柊「家に帰ってから私に言ってくれるのでお構いなくっ!いつまで居るんですか!」

 

 

八幡(あっ、柊がついに耐えきれなくなったか……)

 

 

陽乃「そうだね〜比企谷君がさっき言い渋ったのを聞くまで、って言ったら?」

 

八幡「話す気はないので諦めてください。」

 

陽乃「それってつまり、何かはあるって事なんだよね?しかも人にはおいそれと話せない何かが。」

 

八幡「それでいいんじゃないですか、知った所で雪ノ下さんには関係のない事ですしね。聞くだけ無駄、時間の無駄ってヤツですよ。」

 

陽乃「随分と言うね〜なんか益々気になっちゃうじゃん、その内容。ねぇ、教えてよ?」

 

八幡「………行くぞ柊。」

 

柊「うん。」

 

陽乃「ちょっと比企谷君待ってよ〜!」

 

 

もうついて来ないで欲しい………八幡君が渋ってるのにどうしてこんなに「比企谷!!!!!」もしつ……っ!!

 

 

八幡「………今日は厄日だな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天之川「今すぐ柊から離れろ!!!!」

 

 

 



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暴走

 

 

八幡side

 

 

天之川「今すぐ柊から離れろ!!!!」

 

 

おいおいおいおいちょっと待ってくれよ。え、何で?此処に居るのは別にとやかく言わないけど、何で話しかけて来んの?接触禁止ってあったよな?総武に来るか、俺等に関わったら即退学って。じゃあアイツって退学したいって事なのか?あれこれ気になる事は多いが、まずは柊をアイツから離さないとな。

 

 

八幡「柊、お前は雪ノ下さんと一緒に居ろ。雪ノ下さん、今は説明してる暇はありません。けど柊を連れて此処から離れて下さい。」

 

陽乃「それはいいけど、一体何が「説明してる暇は本当にないんです、早く!」わ、分かったよ。じゃあ夜十神ちゃん、行こうか。」

 

柊「は、八幡君………」

 

八幡「俺は大丈夫だ。それよりも早く行け。」

 

柊「う、うん!」

 

 

よし、これで柊は安全な場所まで行けるだろう。雪ノ下さんも居るんだ、少しは安心だ。

 

 

さて………

 

 

八幡「一体何の用だ、天之川?それとお前、俺達に関わっていいと思ってるのか?お前には処分が下されていた筈だが?」

 

天之川「あれは総武高校内での話だろう?今は関係ない!!」

 

八幡「関係大有りだ。お前ちゃんと罰則内容見たのかよ?1つ1つに項目書いてあったろう。何処に総武高校内って書いてあった?」

 

天之川「今はそんな事どうでもいい!!」

 

 

うわっ、論点ズラしに来たぞコイツ。立場悪くなるとすぐに逃げるんだな。

 

 

天之川「それよりも柊は?何処にやったんだ!?」

 

八幡「お前に会わせないように、移動中だ。聞いてんだろ?柊の症状。それを考えたら当然の処置だ。自覚がないなんて言うなよ?」

 

天之川「比企谷、お前はどれだけの人間を洗脳すれば気が済むんだ!?柊や涼風だけでは飽き足らず、俺の幼馴染達や教師まで!!許される事ではないぞ!!」

 

八幡「どうやって柊達の洗脳をしたのか、俺が聞きたいくらいだ。俺はそんな事一切してねぇし、しようとした事もねぇ。第一どうやってするのか教えてくれよ。」

 

天之川「やはりお前は裁かれるべきだ!何度もチャンスを与えてやっているというのに、お前は………それを全て台無しにしてきた!!」

 

 

その台詞、そのまま返す。お前の方が台無しにしてんだろうが。この罰則だってお前にとっては最後のチャンスだったんだぞ?

 

 

八幡「おい、お前分かってるのか?今お前のやってる事が学校にバレたら退学だぞ?」

 

天之川「退学?ははははっ、冗談にしては面白いな。だが嘘にしては下手過ぎる!!学校が俺の事を退学にするわけがないだろう!!」

 

八幡「罰則内容にも書いてあった。『上記の内容を1つでも破った場合、罰則対象者である天之川光輝を退学処分とする。』って。お前それでも自分が退学にならないって言い切れるのか?」

 

天之川「あぁ、言えるさ!」

 

 

………コイツ、もうダメだ。全てにおいて根っからイカれちまってる。停学や処分退学なんかじゃ収まりつかねぇぞ?

 

 

天之川「お前なんかに付き合ってる時間はない。柊を何処にやったか教えるんだ!」

 

八幡「俺にも分からねぇよ。虱潰しに探したらどうだよ?出来たらの話だけどな。」

 

天之川「君に聞いた方が早いだろ?それに本当は知ってるんじゃないのか?知っていなくてもメールか電話でもすれば分かるはずだ。」

 

八幡「すると思うか?柊の心に傷をつけたお前を、俺が会わせるとでも思うか?」

 

天之川「君程度が俺を止められるとでも思ってるのか?十中八九無理だ。痛い目に遭いたくなければ、早く柊の居場所を教えるんだ!」

 

八幡「誰が言うかよ、バカ野郎。」

 

 

天之川「………これは最終警告だ、早く柊の居場所を言うんだ。」チャキ

 

八幡「っ!?」

 

 

天之川が手にしたのはナイフだった。折りたたみ式のナイフだが、あの形状からしてサバイバル用だろう。アイツあんな物まで持ってたのかよ!

 

 

八幡「おい、そんなもん取り出してどうする気だ?此処を何処だと思ってる?店の中だぞ!しかも警察や警備員が立ち入る大型店舗でもある、そんな所で振り回していいもんじゃねえだろうが!」

 

天之川「全部お前が悪いんだ!!俺が停学や処罰を受けたのも全部お前のせいだ!!お前が何もかも俺から奪っていったせいで!!早く柊の居場所を教えろ!!」

 

八幡「………言わねぇって言ってんだろ。誰がお前に教えるかってんだ。早くそれをしまえ。銃刀法違反で捕まりてぇのか?」

 

天之川「黙れええぇぇぇぇぇ!!!」

 

八幡「っ!!」

 

 

天之川は自棄になったのか、ナイフを構えながら俺に突進してきた。あんなの刺されたら俺もどうなるか分かったもんじゃねぇ、最悪死ぬ!!避けないと危ねぇ!!

 

 

天之川「このおおおぉぉぉぉ!!!」

 

八幡「いい加減にしろ!お前人殺しになる気か!?お前のやってる事は殺人未遂でもあるんだぞ!!」

 

天之川「全部お前のせいだ!!お前のせいで!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あそこです!!あそこにナイフを持った男が男を襲ってるんです!!」

 

警官「おい、そこの君達!!止まりなさい!!」

 

 

警官!?あの女の人が呼んできてくれたのか………

 

 

天之川「比企谷あああぁぁぁぁ!!!」

 

八幡「っ!?」

 

 

ザシュ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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事態終息

 

 

八幡side

 

 

天之川「比企谷あああぁぁぁぁ!!!」

 

八幡「っ!?」

 

 

ザシュ!!

 

 

八幡「うぐっ!!」

 

 

コ、コイツ……マジでやりやがった。マジで人を刺しに来やがった………クソォ、力がうまく入らねぇ上にメッチャ痛ぇ……

 

 

警官1「今すぐ離れなさい!!」

 

天之川「がっ!?な、何をするんだ!!悪いのは俺じゃない、そこに居る男だ!!」

 

警官1「大人しくしろ!!こちら2階フードコートエリア、異常事態発生!応援を求む!応援を求む!怪我人も1名居るので、救急車の手配を要請!箇所は左腕の前腕を刃物で刺突!」

 

無線『了解!すぐに駆けつける!』

 

無線『救急車の手配も了解、至急行う!』

 

天之川「くそっ、離してくれっ!!まだ話は終わってない!!」

 

警官1「大人しくしろ!!これ以上暴れるようだったら公務執行妨害と見做すぞ!!」

 

 

八幡「………」

 

 

クソッ、痛みが全く引かない………それどころか寒気までして来やがった。とてもじゃねぇけど、立っていられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「八幡君!!!」

 

八幡「っ!あぁ、柊……」

 

柊「八幡君、う、腕が……」

 

八幡「大丈夫だ、刺されてるだけだ。けどメッチャ痛い………救急車が来るまではこのままだな。」

 

柊「でも、ナイフが刺さったままだよ?抜いた方が「それはダメ。」っ!ゆ、雪ノ下さん?」

 

陽乃「今は血が流れてポタポタ落ちてる程度で済んでるけど、もし今ナイフを抜いたら一気に出血するよ。そうなったら失血して死ぬ事だってあり得るんだから。だから今は無闇に抜いたり、変にその箇所を動かさないようにする事。比企谷君は分かってるみたいだから、少し安心したけど。」

 

八幡「まぁ……まだ平気です。」

 

警官2「こっちだ、急げ!!」

 

警官3「警察です、この場に居る方々はそのまま動かないように!!」

 

 

今取り押さえている警官が応援を呼んだおかげですぐに他の警官も駆け付けた。そして怪我をしているのが俺だというのを警察側が理解すると、手当てと同時にこうなった経緯の説明を要求してきた。流石に全てを説明すると話が長くなり過ぎるから、細かい部分は省いて説明をしてから、今日の出来事に移った。

 

 

警官3「応急処置、終わりました。」

 

警官2「ご苦労。では今日彼と会ったのは全くの偶然であり、口論になった末に彼が刃物で襲いかかって来たと。」

 

八幡「はい。口論というよりも、向こう側の勝手な言い掛かりを返していたら、急にナイフを取り出して………警官が来てちょっと安心した隙に刺されました。」

 

警官2「成る程……分かりました、ご協力ありがとうございます。後日またご説明に上がると思われますが、今日は救急車に乗って手当を受けてもらってください。病院の救護班がここに到着するまで、暫く待っていてください。」

 

 

とりあえずは納得してもらったか………

 

 

柊「………」ポロポロ

 

 

柊は涙を流しながら俺の右腕にしがみついていた。頭を撫でて落ち着かせてやりたいところではあるが、左腕がこの状態だから動かせない。

 

 

八幡「雪ノ下さん、なんか巻き込んじゃってすみません。とばっちりでしたね………」

 

陽乃「それはいいけどさ、一体どういう事なのか説明してくれるよね?君の性格上、こんなトラブルを引き起こすような人間じゃないでしょ?」

 

八幡「本当は話す気なんてなかったんですけど、こうなってしまった以上は仕方ありません。お話します。それとこれは柊の話なので、俺が勝手に話していい内容ではありません。内容については他言無用でお願いします。例えそれが雪ノ下や親であってもです。」

 

陽乃「そんなに重大なんだね……うん、分かった。約束するわ。」

 

八幡「事の始まりは柊が小学生の頃です。」

 

 

柊と天之川の出会いから今に至るまでの話を俺の知りうる限りで説明した。雪ノ下さんにはいつもの飄々とした表情はなく、真剣な表情で聞いていた。

 

 

八幡「これが俺の知っている内容です。高校からの話は俺も立ち会っているので、事実です。」

 

陽乃「………比企谷君、その天之川君ってさ……自分の言葉や行動に一切疑いを持ってないタイプでしょ?しかももっとタチが悪いのは、それに対して善意しかない事。悪いなんて全く思ってない、違う?」

 

八幡「やっぱ分かりますか……その通りです。」

 

陽乃「君がさっき言い淀んだのはこの事だったんだね。確かにこんな事、誰かに言うなんて面白内容では無いね。うん、私も勉強しないとね。無闇に人にそういう事は聞いちゃいけないって。」

 

八幡「そう思ってくれて何よりです。」

 

陽乃「まぁ、まだ何かは隠しているとは思うけど、それは聞かないでおくね。その子を見て分かったわ、普通の人よりも遥かに重い何かの傷を心に負っている。事情を知らなかったから今までは少しだけ意地悪しちゃったけど、それを知っちゃうと意地悪なんて出来ないもんね。」

 

 

……少し意外だ。この人の場合、影響しない限りで揶揄ってくるのかと思ってだが………だがそうしてくれるのはありがたい。今の柊は不安定だ、好きにやらせておくのが1番効果がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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病院にて

 

 

八幡side

 

 

ららぽで事件が起きてから数十分後、俺は今病院で治療を受けてベッドで大人しくしている。刺さった時、貫通もしていたから、骨には異常無かったみたいだ。そして俺を治療してくれたのは神田さんだった。そして今いる病院も、この前に柊を受診してもらった所だ。止血もして、しっかりと包帯で巻いてもらったから、安静にしてれば大丈夫と言われた。

 

それでこの個室に案内されて今に至るわけだが、柊もさっき漸く落ち着いた。それで俺が治療を受けている間におじさん達に連絡を入れてくれたらしい。しかもその時の返事がこうだった。

 

 

御影『何処の病院だい!?直ぐに向かう!!』

 

 

だったみたいで、俺にもあんな感情を向けてくれたのが少しだけ嬉しかったりする。

 

 

八幡「悪いな柊、折角のお出掛けだったのによ。」

 

柊「ううん、気にしないで。しょうがないよ。だってあんな事になるなんて気付ける筈がないもん。それよりも、八幡君は安静にしてる事!無闇に動いちゃダメだからね!」

 

八幡「分かってるよ、起きて普通に歩くくらいだったら大丈夫だって神田さんも言ってたし問題ないだろ。片手で出来る事なんてたかが知れてるしな。しっかしまぁ、まぁた入院する羽目になるなんてなぁ………」

 

陽乃「比企谷君、その話を盛り返さないでよ……一応わざとじゃないとは言え、私の家が加害者側なんだから。」

 

八幡「そんなつもりで言ってませんよ。だから気にしないでください。」

 

 

神田さんは俺に『念の為に1週間は入院しとけ。安心しろ、金なら御影が何とかすんだろ。』とか言って入院の手続きを済ませてしまったのだ。許可取ったのか?いやでも、おじさんなら本当になんとかしてしまいそうだ………出来ない所を想像出来ない。

 

 

コンコンコンッ

 

 

柊「はーい、どうぞー!」

 

神田「邪魔するぞ〜、その様子ならちゃんと大人しくしてるな。御影、未来の息子が無事だからって大声出すんじゃねぇぞ。此処は病院なんだからな。幾ら個室でも声は響くんだからな?」

 

御影「感謝するよ、次矢………」

 

紫苑「八幡君、体調はどう?」

 

八幡「はい、大丈夫です。意識もハッキリしてます。神田さんがすぐに治療してくれたので。」

 

紫苑「そう……良かったわ。柊も無事で何よりだわ。」

 

御影「それで八幡君、柊。そちらのお嬢さんは?」

 

八幡「この人は雪ノ下陽乃さん、今日偶然会ってここまで同伴してくれたんです。俺と同じ部活にいる同級生の姉で大学生です。」

 

陽乃「初めまして、雪ノ下陽乃と申します。比企谷君と夜十神さんの安全の為に、僭越ながら同行させて頂きました。」

 

 

流石は雪ノ下さんだ、普通の人なら気付けそうにない程の仮面をつけてる。けど相手が悪い………

 

 

御影「これはこれはご丁寧にどうも。けど、そんな怖い顔を、君はまだしながら挨拶をする必要はないよ。それに君はまだ学生なんだ、その面を付けるのは早過ぎるよ。」

 

陽乃「っ……何の事ですか?」

 

紫苑「誤魔化さなくていいのよ。私達も職業上、人と関わる事が多いから、そういう表情や視線、口や頬の動き、笑い方なんかには敏感なのよ。だから無理に取り繕う必要はないわ。けど中々ね、雪ノ下建設社長さんの教育の賜物かしら?」

 

 

ほらな?あっさり見破られた。この2人は世界でも有名な【Nigh-Ten・Group】の社長と副社長。雪ノ下さんには悪いが、そのくらいの強化外骨格じゃあこの2人は騙せない。

 

 

陽乃「………比企谷君、この方達って一体何者?」

 

八幡「【Nigh-ten・Group】日本総本店の社長と副社長です。」

 

陽乃「……………え?」

 

御影「あぁ、申し遅れたね。僕は【Nigh-ten・Group】日本総本店代表取締役社長の夜十神御影です。コレ、僕の名刺になります。」

 

紫苑「私は同グループの社長秘書兼副社長の夜十神紫苑よ、こっちは私の名刺ね。」

 

陽乃「………ほ、本物?」

 

御影「こんな所で嘘はつかないさ。にしても、雪ノ下建設の御令嬢だったとは驚いたよ。」

 

陽乃「い、いえ……この間はとても良いお買い物をさせて頂きました。」

 

紫苑「お買い物………あぁ、10月に購入してたトワイニングの事ね?あれは確かに良い紅茶よね〜。どう?美味しかった?」

 

陽乃「はい、とても!ですが、どうして購入した事を?」

 

紫苑「これでも経理をしているから、誰が何を買っているのかはある程度見ているのよ。その中に珍しい名前があったから偶々覚えていたのよ。」

 

八幡「おばさん、因みに日本で何人くらい利用してるんですか?」

 

紫苑「そうね………月大体10万人は超えるわね。ネット購入する人が増えたものね〜。」

 

八幡「分かります雪ノ下さん?その10万人の名前の中から雪ノ下建設の事を覚えていられる程の記憶力の良さなんですよ、この人。」

 

陽乃「………凄いを超えてるわね。その御令嬢である柊ちゃんと付き合えてる君もある意味凄い人だからね?」

 

 

俺も2人に初めて会った時はこんな大企業のトップ2人に会うなんて思ってもみなかった。しかもその令嬢とお付き合いしてるんだよ?普通はあり得ないって。当たり前に過ごしてるけど、俺のまわりって少し異常だよな?

 

 

 

 

 




陽乃さんの強化外骨格もおじさんおばさんには通用せず!!


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神田流精神鑑定

 

 

御影side

 

 

柊「じゃあ八幡君、また明日来るから……」

 

八幡「おう、分かった。おじさんとおばさんもありがとうございます。わざわざ来てくれて。」

 

紫苑「いいのよこのくらい。私達にとっては仕事よりも貴方や娘達の方が大事なんだから。」

 

御影「そういう事だよ、じゃあ僕達も仕事の合間を見てなるべく来るようにするから。」

 

八幡「無理しなくても大丈夫ですよ。けどありがとうございます。それに雪ノ下さんも。」

 

陽乃「ううん、気にしなくていいよ。」

 

柊「じゃあね、八幡君。明日も学校の放課後になった時も絶対に来るからね。」

 

 

全く、我が娘ながら八幡君への依存度は並外れてるね。まぁ悪いとは言わないけどね。

 

 

ーーー車内ーーー

 

 

柊「お父さん、今回の件ってやっぱり大事になるのかな?」

 

御影「ニュースにはなるだろうね。けど世間が騒がしくなる事はないだろうね。なるとしても千葉県内のこの地域辺りだと思うよ。特に加害者側の学校や保護者にもマスコミが集中するだろうね。」

 

紫苑「裁判を開く可能性もあるわね。でもそれは相手側に弁護する弁護士が居るかどうかにもよるわ。ちゃんとした言い分があるのならまだしも、確実性の無い証言や虚偽や思い込みなんかの発言では裁判にもならないから。」

 

御影「けど、裁判の前に加害者の彼は今頃精神鑑定を受けているだろうね。」

 

柊「?精神鑑定って?」

 

陽乃「精神鑑定っていうのは、裁判所が訴訟当事者などの精神状態や責任能力を判断する為に精神科医などの鑑定人に対して命じる鑑定の事だよ。今回の事で言うと、彼はその時、比企谷君を刺した事についての責任を感じていたかどうか、とかね。」

 

柊「成る程………絶対ないですね。」

 

御影「即答する程なんだね……まぁでも、精神鑑定を受けて異常がある場合は、確実に少年院送りにされるとは思うよ。彼の場合はないと思うけど、悪くて死刑だからね。これは殺人になってない限りはない。彼にあり得るとすれば、無期懲役や数年の懲役だと思うよ。」

 

 

今回の場合だと、無期懲役になる可能性が高いかな。一応彼は暴行罪に加え銃刀所持に殺人未遂までやってしまってるわけだしね。懲役数年で終わる筈がない。

 

 

御影「兎に角、この事は学校にも報告が行くだろうね。柊がしなくても、逮捕した警察の取り調べを行なっている人達が在籍している学校を調べてそこに報告をすると思う。」

 

 

紫苑「はいはい、難しい話はこれでおしまいにしましょう?ほら、そろそろ陽乃ちゃんのお家も見えて来る頃よ。」

 

 

御影sideout

 

神田side

 

 

やれやれ、まさか俺も呼び出されるとはな………昼に坊主の治療をしたばかりだってのに、次はその坊主の腕を刺した奴の精神鑑定の様子を見て欲しいなんてよ………俺も暇じゃねぇんだけどな。

 

 

神田「千葉大学医学部附属病院院長の神田だ。精神科の○○先生と検察官からの応援要請で呼ばれた、取り次いでくれ。」

 

「は、はい!少々お待ち下さい!」

 

神田「人手が足りないわけじゃねぇってのに、なんで俺が呼ばれるんだ?いや、理由は1つしかねぇよな。そんなのは………」

 

 

ソイツの精神が「お待たせしました!」………

 

 

ーーー精神科・診察室前ーーー

 

 

「こちらです、今先生を「あぁ、大丈夫だ。もういいから仕事に戻んな。」は、はい……」

 

神田「邪魔するぞ〜……おーおーやってるね〜。」

 

医者「おぉ、神田先生!来て下さいましたか!」

 

検察「この人が?」

 

医者「はい、日本でも精神科においてはプロ中のプロとも言われている神田次矢先生です。お忙しい中来て頂きありがとうございます!」

 

神田「別にそれはいいけどよ、坊主を刺したガキってのはコイツか?」

 

天之川「っ!………」ギリギリ

 

医者「はい。検察官の方が色々事情を聞いた上での質疑応答をしていたのですが、答えに脈絡が無くて………【はい】か【いいえ】の答えに関しても、『自分は悪くない。』や『悪いのは比企谷。』、『洗脳を解こうとしただけ。』と無実を主張するばかりでして。」

 

神田「成る程な………診断書は?」

 

医者「コレです。」

 

 

………ほぉ〜、成る程なぁ………なら、今までにやった事のねぇ荒療治で行くか。

 

 

神田「検察官さんよ、コイツの思う正しい答えが返って来るまで、少し荒療治っていう方法を取ってもいいか?俺のやり方で色々と吐かせてやる。」

 

検察「えっ、まぁ構いませんが………」

 

神田「よし、言質は取ったぜ?後でそれ否定すんなよ?じゃあ始めるぜ………おい、今度は俺からの質問だ。坊主を刺した事についてどう思ってる?」

 

天之川「アイツが全部悪いからだ!!アイツがいたせいで俺はうっ!?」

 

医者/検察官「っ!?」

 

神田「おいおいおかしな答えが返ってきたなぁ?もう1度言うからちゃんと聞いておけよ?坊主を刺した事についてどう思ってるかって聞いてんだよ?次はビンタじゃ済まさねぇぞ?」

 

 

心の中でお前に言っておくぞガキ、俺の鑑定はそんじょそこらの奴とは違うぞ?俺はやるとしたら徹底的にやる主義だ、テメェやこの2人がなんと言うと、俺のやり方を曲げる気はねぇからな?

 

 

神田「さぁ、質問に答えてもらおうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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それぞれの反応

生焼け肉「前話のコメントでこの方から言いたい事があるそうです。さっ、どうぞ。」

神田「アンタ達よぉ……気持ちは分かるが、俺は別にあのガキをぶん殴りたいわけじゃないからな?ただの鑑定だからな?」

生焼け肉「いやだってさぁ………貴方のキャラ考えてよ?顔に十字傷出来てる上にスキンヘッドだよ?どっからどう見てもヤクザ「あ?」いえ何でもないですはい。」

神田「ったく………さっさと本編に行けよ。」




 

 

涼風side

 

 

涼風「そんなっ!!八幡さんは……八幡さんはご無事なのですか!!?」

 

柊「落ち着いて涼風、八幡君なら無事。今は病院の個室で安静にしている筈だから。」

 

涼風「そ、そうですか………けど何故、何故私を呼んで下さらなかったのですか?」

 

柊「呼んだら涼風、きっと止まらなくなるでしょう?だから。悪いとは思ったけど、私達も落ち着いて話が出来る状態になってから報告した方が良いと思ったの。何も言わなかったのは悪いって思ってるから。」

 

涼風「………」

 

 

これはお姉様が私の事を考えて取ってくださった行動………であれば、お姉様を責めるのは無礼になります。感謝こそすれど、責め立てて良い理由にはなりません。

 

 

御影「涼風、これは柊が涼風の事を思って取った行動なんだ、分かってあげなさい。」

 

涼風「い、いえ!お姉様の取った行動に文句はありません。私も少しだけ熱くなりました。お姉様の言う通り、私がその時に病院に行ったら、きっと実行した方に対して悪感情を抱いていたかもしれません。お姉様は間違ってはいません。」

 

紫苑「幸い明日もお休みなんだから、2人で行ってきなさいな。八幡君も喜ぶわ。」

 

柊/涼風「は〜い♪(はい。)」

 

御影「僕達は今日の分を明日確実に終わらせないとね。机の上にはある程度の書類が溜まっているだろうしね。頑張らないと!」

 

紫苑「そうね。あっ、そうだわ。八幡君の家族にも連絡を入れておかないといけないわ。きっと病院側がもう掛けていると思うけど、一応私達からも伝えておいた方がいいから。」

 

御影「そうだね……じゃあ頼めるかい?」

 

紫苑「分かったわ。」

 

御影「2人は明日病院に行くんだったね、くれぐれも他の患者さんの迷惑になるような事や、常識を欠いた事はしないようにね。」

 

涼風「はい、分かりました。私も姉をしっかりと監視しておきます。」

 

柊「涼風が八幡君に会って大声で泣かないか、私がしっかりと見てるから安心して!」

 

御影「………本当に大丈夫かな?」

 

 

八幡さん………お元気にしているといいのですが。

 

 

涼風sideout

 

茅ヶ崎side

 

 

茅ヶ崎「そうですか……比企谷君に被害が出てしまいましたか。」

 

校長『えぇ。ウチの生徒が本当に申し訳ございません。この件ですが、今の所はこの事件に関係している人の家族、そして我々学校という事になっています。畑山先生にも既に伝えてありますので、そちらの担任である平塚先生にもお伝えください。』

 

茅ヶ崎「分かりました。しかし、まさか休日に行動するとは………そこまで目が届かなかったというのもありますが、刃物まで用意するとは予想外でしたね。」

 

校長『えぇ、全くです。比企谷君は無事のようで本当に何よりです。後日私の方からも謝罪を入れたいと思います。その際はご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします。』

 

茅ヶ崎「勿論ですとも。比企谷君が退院して学校に来るようになりましたら、その時はご連絡いたしますので。」

 

校長『よろしくお願いします。じゃあ報告は以上ですので、失礼します。』

 

 

………はぁ、やられました。土日の休みを利用するなんて。本当にしてやられました。

 

 

茅ヶ崎「週が明けて月曜日の学校で全教師に報告、平塚先生にはその前……一応今電話をしておきましょう。比企谷君のご家族には病院の方々がして下さったので、しなくてもいいでしょう。」

 

 

さて、やる事も決まりましたし、早速平塚先生に電話を入れましょう。出てくれるといいのですが……

 

 

茅ヶ崎sideout

 

神田side

 

 

質疑応答も大体終わって、今は少しだけ頭を使った事も答えさせてる。と言っても簡単な事だけどな。だがコイツが少しでも考え込んだり、答えを出すのが遅れた時は答えが肯定でも否定でも、調べる必要がある。それで鑑定が決まると言ってもいい。

 

 

神田「じゃあ次の質問だ。お前は今日以外にも誰かに何かをした事があるか?あー今回みてぇに人に刃物ぶっ刺したりとかそういうのじゃねぇぞ?ちょっかいとかかけた事あるかって事だ。」

 

 

天之川「(比企谷以外に………南雲か?いや、あれはただ香織が優しいから声を掛けているだけだ、俺はただ南雲がだらしないから少しアドバイスをしているだけだから、該当はしないな。)……いいえ。」

 

 

神田「……本当にいいえか?思い当たる節とか何かねぇのか?」

 

天之川「今少し考えてみましたけど、思い当たる事は特にありませんでした。」

 

神田「(こりゃ調べる価値有りだな、コイツの在籍してる高校の校長か担任にでも聞いてみるか。)そうか、じゃあ最後だ。お前は今回のこの事件、自分が引き金になってるって思ってるか?それとも他の誰かか?」

 

天之川「比企谷が引き金になっていると思ってます。俺の周りがおかしくなったのは比企谷のせいだと思ってるので、アイツが元凶だと思ってます。」

 

 

一切の迷いなしで答えやがったな……本気で思ってるんだろう。このガキ嬢ちゃんの中学の出来事知ってんのか?知ってたらこんな事は言わないと思うが、まぁそれは次に聞けばいい事だ。

 

 

神田「一応今日はこれで終了だ。次また来るからそん時もまた答えろよ。ただし、俺の質問にちゃんとだぞ?他に指定されてねぇ答えはいらねぇからな?そんじゃあな。」

 

 

………はぁ。

 

 

医者「おぉ、神田先生!如何でしたか?」

 

神田「取り敢えず今知りたい事があるから、それを知った上でもう1度アイツを鑑定する。今日だけの質疑じゃあ疑問に思うところが多過ぎる上に情報が足りない。俺の欲しい情報が手に入るまで、奴はあの場所に拘束しておけ。無許可で外には出すなよ?」

 

医者「も、勿論です!」

 

検察「それで、今の所はどのような判定なのでしょうか?」

 

神田「建前的には統合失調症って事になる。だがアイツの場合、ステージレベルが分からねぇってところだ。普通なら急性期ってのに該当するんだが、不安定な様子も見られなかったから、一概に統合失調症とは言えない。だからあれはマジで答えているのかもな。それはそれでかなりヤバい考え方してるけどな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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家族の反応

 

 

比企谷母side

 

 

比企谷母「はい、わざわざご連絡ありがとうございます。はい……はい、失礼します。」

 

 

……今、学校の校長先生から電話があったけれど、昼頃に病院の先生から聞いていたから落ち着いて会話が出来た。八幡がららぽで刺されて怪我を負った。刃物で左腕を刺されたって聞いた時は本当に焦ったわ………けど意識もあって意思疎通も出来るって聞いた時は本当に安心したし、ちょっとだけ余裕も出来た。明日にでも八幡に会いに行こうと思ってる。仕事?そんなの今日事情を話して休みにして貰ったわ。息子が刃物で刺されて大怪我して伏せってるっていうのに、行かない親がいるわけないでしょう?当然、父親(アイツ)も一緒だから。

 

 

小町「誰からだったの?」

 

比企谷母「高校の校長先生からよ、わざわざ連絡してくれたのよ。」

 

小町「そっか………」

 

比企谷母「小町、そんな顔をするのはよしなさい。八幡は無事だったんだから良かったじゃない。確かに様子を1回も見ていないから心配ではあるけど、明日になれば分かるわ。」

 

小町「そ、そうだよね……」

 

比企谷父「しかし、アイツが刺されるとはな………何か事件に巻き込まれたのか?」

 

比企谷母「その辺はまだ何も聞かされていないわ、明日行って八幡から聞きましょう。こんな事無視なんてできるわけないもの。」

 

比企谷父「そうだな……だが何で八幡の奴、ららぽに居たんだ?アイツの事だから休みの日は家でゴロゴロしているものだと思っていたんだが………」

 

小町「お父さんその情報古いよ……お兄ちゃん中学生の頃に彼女が出来てから、土日どっちかにデートしに行ってるんだよ。まぁ、小町もお兄ちゃんに彼女が居るって知ったのは最近なんだけどさ。」

 

比企谷父「か、彼女!!?」

 

 

………あぁ、そういえば知らなかったわね。私は八幡から聞かされたけど、コイツには何も教えていなかったわね。

 

 

小町「そっ。だから今は放課後とかお休みの日とかによく出掛けてるよ。週末金曜になると、向こうの家に泊まりに行く事も増えたしね。小町も行ってみたいとは思うんだけど、流石にお兄ちゃん達の邪魔をしたくはないしねぇ〜。」

 

比企谷父「ま、まさか八幡に彼女が出来ていたとは………偽物じゃないよな?」

 

小町「直接会っても居るんだからそれは無い。」

 

比企谷父「そ、そうか………」

 

比企谷母「まぁどうしても信じられないというのなら、明日八幡に事実確認取ればいいでしょ。その方がアンタも納得出来るだろうし。さっ、晩御飯にしましょう。小町、今日は久々にお母さんも作るから手伝いよろしく。」

 

小町「逆に小町のお手伝いをしてもいいんだからね、お母さん?」

 

比企谷母「言うようになったじゃない……まっ、それは置いといて、とにかくよろしく。」

 

小町「あいあいさー。」

 

 

比企谷母sideout

 

天之川母side

 

 

天之川母「………あなた、警察から連絡が来たわ。光輝がららぽーとで人を刺して逮捕されて、今病院で精神鑑定というものを受けてるって。」

 

天之川父「………あの大馬鹿息子、学校からも再三注意を受けていたにも関わらず、今度は人の集まりやすい大型店舗で事件だと………?」

 

天之川母「しかも刺された人は、光輝が前から言っていた男の子の比企谷君みたいなの。」

 

天之川父「またしても彼か……また迷惑をかけてしまった。光輝の奴、自分が何をしたのか分かっているのか?危うく人を1人殺してしまうところだったという事に……っ!」

 

 

以前、京葉高校の校長先生とお話をして納得した時もそうだったわ。光輝は表面上は納得していたように見えていた。けど中身では全く反省はしていないようにも見えた。その結果がコレだなんて………私がもっとしっかりと見ていればこんな事には………

 

 

天之川父「お前だけのせいではない。しっかり息子を教育してこれなかった俺の責任でもある。光輝にはしっかりと現実と向き合ってもらわなければならない。その為にも俺達は「光輝に弁護士はつけないし、そして自分達も光輝側の弁護にはつかない、そうよね?」……分かっていたのか?」

 

天之川母「あなたの考えそうな事だわ。今の光輝に味方をしたところで得られるものなんて何1つないもの。それなら最後に現実を教えてあげるのも、親として出来る事よ。」

 

天之川父「やったところで無駄だろうがな。」

 

 

あの子が大人しく学校側の罰に従っていたのなら、私達もまだ貴方を信用していたわ、光輝。けどこうなってしまった以上は、貴方の味方につく事は出来ない。勿論自分達可愛さにって理由じゃないわ。光輝がやってきた事を考えると、とても味方にはなれないわ。

 

 

天之川父「精神鑑定は終わっているのか?結果も出ているのか?」

 

天之川母「まだみたいよ。詳しい事も知りたいから、光輝の親しい友達から色々聞きたいとも言っていたみたいよ。だから雫ちゃんや龍太郎君、香織ちゃん達に聞きに行くんじゃないかしら?」

 

天之川父「そうか……俺達にできる事は何かないかと思ってはいたが、今の所はその精神鑑定に協力するくらいしかなさそうだな。」

 

天之川母「そうね。それから比企谷君の事はどうしようかしら?行くならすぐの方がいいかしら?」

 

天之川父「そうだな、礼儀知らずの一家と思われるのは心外だからな。明日にでも俺が行ってみようと思ってる。お前はどうだ?」

 

天之川母「私も明日は大丈夫よ。」

 

天之川父「よし、では明日に比企谷君の病室へ行こう。」

 

 

 

 

 

 

 

 



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看病&お見舞い

 

八幡side

 

 

事件から日が変わって翌日。寝慣れてない布団で寝たからか、かなり早く起きてしまった。だが、その方が良いのかもしれない。早寝早起きの習慣なかったからなぁ俺。そして今は8時半くらいになっている。後少しもすれば開館時間になって、診察に来た人達でごった返しになる事だろう………ん?あれって柊と涼風か?まさか朝早くから来るなんて思わなかったぞ。

 

 

八幡「昨日の帰り際に柊が明日も来るとか言ってたが、朝早くから来なくてもいいだろう………何か他の事にも時間を使えよ。」

 

 

ーーー8時45分ーーー

 

 

柊「八幡君おはよう♪来たよ〜。」

 

八幡「柊、お前等は他に何か「八幡さん、ご容態は?体調は?お怪我の具合はいかがですか?」お、おぉう……大丈夫だ。別に気持ち悪くもないし痛くもないから。」

 

涼風「そうでしたか………良かったです、ご無事で。本当に。」ウルウル

 

八幡「心配かけたな、俺は大丈夫だから。おじさんとおばさん、今日は仕事に行ったみたいだな。」

 

柊「うん、昨日の夜に『今日やり残した事は明日やればいい。』って言ってたから。」

 

 

なら良かった、俺の為に時間を割かせるわけにはいかないからな。自分の仕事をやってもらわないと、なんか申し訳なく思ってしまう。

 

 

柊「それからお父さんから伝言預かってるよ。はい、コレ。」

 

八幡「?手紙?柊には言わなかったのか?」

 

柊「うん。どうしてかな?」

 

八幡「お金だったら即返す所だが、その類ではなさそうだな。封筒も薄いし。」

 

 

_____________________________________________

 

娘達の相手をお願いします。きっと朝早くから君の所に行ってると思うから、よろしくね。それとなるべく涼風には優しくね?君に会いたがっていたのを我慢していたから。

_____________________________________________

 

 

………普通の内容だな。

 

 

涼風「八幡さん、お手紙の内容は?」

 

八幡「普通だった。朝早くから俺の見舞いに来てるだろうからよろしくっていうのと、昨日から俺に会いたがっていた涼風には優しくしてくれって。」

 

涼風「ま、間違ってはいませんが………お父様はそんな事をお書きに?」

 

八幡「あぁ、見るか?」

 

涼風「………いえ、さらに恥ずかしくなりそうなのでご遠慮させて頂きます。」

 

 

まっ、それもそうか。

 

 

柊「八幡君、何かして欲しい事とかない?遠慮しないで言っていいからね?八幡君は今怪我人なんだから、たっくさん甘えていいんだからね♪」

 

八幡「そう言われてもな……今の所は右手だけでも間に合ってるし、何かして欲しいと急に言われても思いつかないな………」

 

柊「えぇ〜何かあるでしょ〜?」

 

 

無いです。無いものを強請ろうとしないで。昨日からこの状態で過ごしてるけど、そんなに不自由はないから。けど娯楽品が何も無いから暇ではあった。

 

 

八幡「ここで1日過ごしてみて分かったんだが、本が欲しい。ゲームはこの腕じゃ出来ないからいいとしても、本がないから天井のシミ数えるか、外眺めるか、散歩くらいしか出来なかったからな。」

 

涼風「それでしたら私が読んでいる本をお持ちしましたので、コレをお読みください。私の本の趣味は八幡さんと合いますので、きっと暇潰しにはなると思います。」

 

八幡「ありがとな。しかし、2人は他に何かする事はなかったのか?」

 

柊「?どういう事?」

 

八幡「いや、俺の所に来てくれたのは嬉しいんだが、何か他にする事ってなかったのかなぁって。」

 

柊「うぅ〜ん………そう言われても、八幡君のお見舞いか看病しに行くくらいしか考えてなかったし、それをほっといてまで何かしたい事があるかって言われても、何も無かったし………ね、涼風?」

 

涼風「はい。私もお姉様から八幡さんのお怪我の事を聞いた時、「早く八幡さんの病院に行かなくてはっ!」っと思いましたので。私にする事があるとすれば、八幡さんの為に看病をする為にここに来た、っというのが答えです。」

 

八幡「そ、そうか………」

 

 

嬉しいよ?嬉しいんだけどさ、もうちょっと自分の事を優先してもいいんじゃないの?

 

 

涼風「八幡さん、お着替えをお持ちしました。と言っても八幡さんの寝巻きに使っているジャージですが、お父様から使ってもいい服を何着か頂きましたので、お着替えなさいますか?」

 

八幡「そうだな、着替えるか。おじさんの服、借りてもいいか?」

 

涼風「はい。あの、八幡さん?」

 

八幡「ん?」

 

涼風「お着替えのお手伝いを、致しますか?」

 

八幡「………いや、大丈夫だ。」

 

柊「遠慮しないで八幡君!!私達は八幡君の看病とお見舞いに来てるんだから!!手伝える事があったらなんでもいっていいんだよ!!」

 

八幡「欲望が丸分かりなんだが………兎に角、着替えは1人で出来る。トイレに入ってやるから2人は待っててくれ。」

 

柊「ちぇ〜。」

 

涼風「八幡さんがそう仰るのなら、分かりました。お待ちしております。」

 

 

俺が骨折している時はまだしも、まだ腕を動かせる状態だから手伝ってもらう必要はない。好意は嬉しいが、やっぱ恥ずかしいからな。

 

 

 

 

 

 



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邂逅

 

 

八幡side

 

 

手伝ってもらうのは恥ずかしいとは言ったが、2人がどうしてもやりたいというので、なし崩し的にやる事になった。とは言っても、やる事が多いってわけではないけどな。現に柊は俺の側で椅子に座りながら鼻唄を歌ってるし、涼風は林檎の皮剥きをしている。1回も途切れさせる事なくずっと剥いてる。すげぇ………慣れたらあんな風に出来るんだな。

 

 

涼風「八幡さん、出来ましたよ。」

 

八幡「あぁ、悪いな。じゃあ1つ貰お「あ、あ〜んです///」………あむっ。」サクッ

 

柊「あぁ〜涼風ったらずる〜い!私が食べさせてあげようと思ってたのにぃ〜!」

 

涼風「まだ林檎はありますから。それで八幡さん、お味の方は如何ですか?」

 

八幡「あぁ、美味い。林檎ってなんか久しぶりに食べた気がする。」

 

涼風「ではもう1口分ありますので、口を開けてください。あ〜んです///」

 

柊「2回目は私だからねっ!」

 

 

ガラガラ〜

 

 

神田「邪魔するぞ〜……って何だ、もう来て世話されてんのかよ。美女2人に世話かけられるとは羨ましいねぇ〜。」

 

八幡「ほっといて下さい。」

 

神田「揶揄わずにはいられねぇだろ、この状況。まぁいい、丁度3人居るからとりあえず報告しておく事にする。天之川についてだ。」

 

 

天之川?

 

 

神田「昨日、○○病院でアイツの精神鑑定を受けた。その結果はまだなんとも言えないってのが現状だ。建前では統合失調症という事にはしてあるが、それもまだ確定はしてない。俺はこれからアイツの友人に会って話を聞いてくる。もうアポは取ってあるしな。」

 

柊「その人って異常じゃないんですか?」

 

神田「アイツの喋り方や仕草からして異常ではないと思うが、考え方がヤバいのかもな。常識の欠如ってのもあるが、事によっては責任問題の放棄ってのも出てくる。それはこれからの友人の話次第だ。」

 

八幡「………成る程。」

 

神田「まっ、お前等がアイツに会うのは裁判までないと思っておけ。」

 

柊「2度と会いたくありません。」

 

神田「まっ、嬢ちゃんはそうだろうな。話は以上だ、それから昼になったら御影達もこっちに来るってさっき連絡が来たぞ………その顔をするって事は嬢ちゃん達は聞かされてないみたいだな。」

 

涼風「はい、昨日の分の仕事を終わらせるって言っていましたので。」

 

神田「あの2人が1日分の仕事程度で何時間もかからねぇだろうよ。まぁそういう事だ、俺も失礼するぜ。こんな所に長時間居たら胸焼けしそうだ。」

 

八幡「余計なお世話です。」

 

 

そう言って神田先生は病室から出て行った。しかしどうなるんだろうな、天之川は。俺としては、ずっと刑務所の中か少年院の中にいて欲しいんだが。

 

 

柊「ねぇ、私またあの嫌な空気と立ち会わないといけないの?そんなの絶対に嫌だよ?」

 

涼風「お姉様、お気持ちはよく分かりますが、八幡さんの証人としても諦めるしかないかと。」

 

柊「あんな気味の悪い幽霊なんかに見たくも近づきたくもないのに………」

 

八幡「仕方ねぇだろ、そこは割り切ろうぜ。」

 

柊「はい、じゃあもうこの話はもうおしまい!はい八幡君、次は私が林檎を食べさせてあげるからね♪はい、あ〜ん♪」

 

八幡「分かったからそんな前に「お兄ちゃ〜ん、お見舞いに来たよ〜!」………タイミング最悪かよ。どのタイミングで入ってきてんだよ、しかもノックも無しに。」

 

 

俺もまた教育し直した方がいいのかねぇ?

 

 

小町「お兄ちゃん、怪我の具合は………お、おぉ〜お兄ちゃんが介護されてる。」

 

八幡「小町、入る時はノックを忘れるな。それと病院内では静かにする事、いいですね?」

 

小町「まぁそれよりも。」

 

八幡「それよりも?……まぁいいや、で?」

 

比企谷母「八幡、怪我はどうかしら?」

 

八幡「おふくろ……まぁ、特には。」

 

比企谷母「あら、確か初めましてよね。八幡と小町の母です、いつも息子がお世話になっています。」

 

柊「いえ、こちらこそ。夜十神柊です。八幡君の彼女をさせてもらっています。」

 

涼風「妹の涼風と申します。姉共々よろしくお願い申し上げます。」

 

比企谷母「えぇ、よろしく。けどまだ驚きだわ。夏に知ったけど、八幡に彼女が居たなんてね〜………しかもこんなに美人な。」

 

柊「痛み入ります。」

 

比企谷母「………はぁ、もう何やってるんだか。アンタ、早く入ってきなさいよ。何いつまでもウジウジしてるのよ?年頃の女子学生じゃないんだから、早く入って挨拶しなさいよ。いい男の大人がみっともないわね。」

 

 

あっ、親父も来てたんだ。そして何故か恥ずかしがってる?

 

 

比企谷父「ウ、ウジウジなどしていない!心の準備をしていただけだ!」

 

比企谷母「それをウジウジって言うのよ………」

 

小町「うん、ぶっちゃけ小町もそれ思ってた。」

 

 

俺もそう思ってた……ちょっとみっともない。

 

 

比企谷父「………んんっ!初めまして、八幡と小町の父です。息子がご迷惑をお掛けしていますが、これからもよろしくお願いします。」

 

柊「はい、よろしくお願いします。」

 

涼風「こちらこそ、ご迷惑をお掛け致しますが、今後ともよろしくお願い致します。」

 

比企谷父「………ところで、息子に壺を買わせたりはしませんよね?」

 

2人「壺?」

 

 

バシッ!!

 

 

比企谷父「痛っ!!な、何をするんだお前!?」

 

比企谷母「それはこっちの台詞よ!アンタは息子の彼女に何を聞いてるのよ!」

 

小町「お父さん、流石にそれはないよ………」

 

 

親父………確かにその言葉はないが、この2人の家の財力ならそこらの壺なんて簡単に買えるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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高評価

 

 

涼風side

 

 

八幡さんのご家族がお見舞いに来て下さり、この病室も少し賑やかになりました。最初のお父様の質問には驚かされましたが、特に気にしてはおりません。今は病室に備え付けられてある椅子かベッドの横に腰掛けているような状態です。(因みに私とお姉様がベッドで、ご家族の皆様が椅子に座っている状態です。)

 

 

小町「それにしても、お兄ちゃんも災難だったよね〜。去年入学式の日に事故に遭ったっていうのに、今年は腕を刺されたって………お兄ちゃんもしかしたら呪われてるんじゃないの?」

 

八幡「んな事言うんじゃねぇよ。今回のだって向こうから急に襲いかかってきたんだぞ?咄嗟に避けろなんて言われても無理だろ。」

 

比企谷母「そうよ小町、滅多な事を言うのはやめなさい。本当は恐ろしい事なんだから。」

 

小町「……はぁ〜い。」

 

比企谷母「それと八幡、何か欲しい物ってあるかしら?1週間だけの入院なのは聞いてるけど、何か無いかなぁって思ってたのよね。」

 

八幡「そうだな、柊と涼風にも言ったが、本があれば嬉しい。ゲームを用意してくれたとしても、この腕じゃあな………」

 

比企谷父「そうか……なら本と片手でも出来そうな何かを持ってくる。」

 

八幡「あぁ、頼むわ。」

 

柊「八幡君安心して!私は学校が終わったらすぐにこの病院のこの病室に直行するから!」

 

涼風「私もです!八幡さんが退屈しないように1分1秒でも早く駆け付けます!」

 

八幡「おう、ありがとな。道中には気をつけて来いよ?まぁ運転は宮間さん辺りがしてくれるだろうから問題ないとは思うけどよ。」

 

柊「分かってるって〜♪」

 

八幡「………なんか心配だ。」

 

 

ふふふっ、八幡さんもなんだかんだ言いながらお姉様が心配なのですね。ですがご安心下さい、お姉様は私が見ていますので。

 

 

コンコンコンッ

 

 

八幡「?どうぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御影「失礼するよ、八幡君。おや、貴方達は八幡君のご家族の方達ですね?初めまして、そこに居る柊と涼風の父です。八幡君には日頃から娘達の事でよくお世話になっています。」

 

紫苑「母です。娘達が八幡君の事でいつもお世話になっております。」

 

比企谷父「ど、どうも……八幡と小町の父親です。息子がお世話になっています。」

 

比企谷母「どうもご丁寧にありがとうございます。八幡の母です、こちらこそご迷惑をお掛けしております。」

 

御影「ご迷惑だなんてとんでもありません、八幡君は寧ろ私達家族の恩人です。彼には返し切れない程の恩がありますから。」

 

 

お父様はきっと中学時代の事を言っているのでしょう。あの頃は家庭崩壊までは行きませんでしたが、少しだけ雰囲気も悪かったですから。喧嘩をしていたわけではありませんが、どうしたら状況が良くなるかと皆で考えている内にあんな雰囲気になってしまいましたから。それを解決して下さった八幡さんは、本当の意味で私達家族の恩人なのですよね。

 

 

紫苑「夫の言う通りです。八幡君が居なければ、おそらく今の柊や私達は居ないでしょう。それ程までに八幡君が私達に与えて下さった影響というのは多大なものなのです。」

 

比企谷父「そ、そうなのですか。息子が………」

 

御影「えぇ。娘の柊も八幡君との恋人関係は解消したくないと言っていますので、とても良好な関係を築けていると思っています。それに我々家族全員、八幡君との関係を切るつもりは毛頭ございませんから。」

 

 

比企谷母(な、なんという高評価………ううん、八幡があの子を助けた時にした行動を考えればそれも頷けるけど、まさかあの子のご両親がここまで八幡を評価するなんて………)

 

比企谷父(八幡、お前一体何をしたらこんなにも高い評価を貰えるんだ?ベタ褒めってレベルを超えているぞ?我が息子ながら恐ろしい………)

 

小町(小町のお兄ちゃんって人からこんなに高評価もらえる人だったっけ?7月の時点で彼女が居るの知ってたけど、こんなに言われるの?お兄ちゃん、改めて言うけどポイント高いよ………)

 

 

御影「なので今後ともよろしくお願いします。」

 

比企谷父「あ、あぁはい。こちらこそよろしくお願いします。」

 

八幡「すみませんおじさん、おばさん。昨日の今日で来てもらって。」

 

御影「いいんだよ八幡君、だって僕達が来たくて来てるんだから。仕事も終わらせたし、後はこの後会社に戻って書類が残ってたら片付ける程度の仕事だからね。大した事はないよ。」

 

八幡「は、はぁ………」

 

涼風「お父様、お母様、お水でございます。」

 

紫苑「あら涼風、ありがとう。」

 

 

お仕事もある中でこうして時間を割いてお見舞いに来てくださっているのです、このくらいの事はさせて頂きます。それに今、お姉様は八幡さんにつきっきり(抱き着く)で忙しいみたいですから。

 

 

御影「昨日も来たけど、元気そうで何よりだよ。」

 

八幡「俺も寝込むかもって思ってましたけど、思った以上に元気です。」

 

紫苑「そう、良かったわ。けど無理して体調を崩さないようにするのよ?」

 

八幡「はい、分かりました。」

 

紫苑「それから柊、貴女は少し八幡君から離れなさい。貴女の事だからず〜っとその体勢だったのでしょう?八幡君の腕が痺れちゃうわよ。」

 

 

流石はお母様、お見通しですわ………



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不祥事の謝罪

 

 

八幡side

 

 

おじさんと親父達が会ってから数分、漸く緊張が解けて少しずつ会話が弾むようになっていた。けどおじさん達は自分たちの正体を明かしてはいない。まだその辺の信用には至っていないって事か?それともただの悪戯心?どちらでもいいけど、やっぱおじさんって少しだけいい性格してるよな。新堂先輩の時もそうだったし。

 

 

柊「八幡君のご両親って外見あんまり八幡君に似てないね。お母さんの方は小町ちゃんと少しだけ似てるけど。そっくりなのはアホ毛だけ?」

 

八幡「唯一の遺伝はそれだろうな。それ以外に何があるのかと聞かれても、俺には答えられる自信がねぇ。生まれて17年間、親父とおふくろに似てるって思った事なんて1度もねぇしな。」

 

小町「お兄ちゃんってお父さん達と違ってめんどくさがりだもんね〜。」

 

八幡「それは認めるが、お前も親父達と違って頭悪いからな。」

 

小町「お兄ちゃん、傷抉らないでよ………因みに小町のどこが頭悪いっていうのさ?」

 

八幡「そのまんま学力の意味と、アホっぽい言葉を使う所。」

 

 

それ以外に何があると?まだあるかもしれないが、俺には分からん。

 

 

コンコンコンッ

 

 

?今度は誰だ?

 

 

八幡「どうぞ。」

 

???「失礼しま……お取り込み中でしたか?」

 

八幡「いえ、大丈夫ですけど………」

 

 

入って来たのは親父達よりも少し若いくらいの男性と女性だった。そしてもう1人、女の子もいた。

 

 

???「君が比企谷八幡君ですか?」

 

八幡「そうですが………どちら様ですか?」

 

???「私は天之川輝幸(てるゆき)。先日君に怪我を負わせた光輝の父親です。」

 

???「母親の天之川光輪(みつわ)です。」

 

???「私は天之川光香(みつか)、お兄ちゃんの妹です。」

 

 

………天之川の家族も総出でご挨拶って訳か。しかしアイツの名前はこういう事だったのか。親からのキラキラネーム受け継いじゃってるよ。まぁ、受け継いでるのは名前だけのようだけど。

 

 

八幡「えっと……比企谷八幡です。」

 

輝幸「……今回こちらに来たのは息子の事でです。比企谷君、ウチの息子が大変ご迷惑をお掛けしました。私達の注意が足りなかったせいで大怪我を負わせてしまいました。それだけでなく、何度もご迷惑をお掛けしてしまった………謝ってどうにかなるものでもありませんが、この場で謝罪をさせてください。本当に申し訳ございませんでした。」

 

光輪「息子が本当にご迷惑をお掛けしました、重ねて謝罪致します。」

 

光香「っ!」ペコリッ!

 

 

天之川一家は俺に向かって頭を下げて来た。アイツのやった事をそれほど重く捉えていなければ、こんな真似は出来ない。どうやらアイツだけが異常だったみたいだな。

 

 

八幡「………頭を上げてください、俺は別にいいんです。俺は柊を守る為にやった事です。柊が無事ならこのくらいの傷、安いもんです。」

 

輝幸「柊………っ!という事は、この場にいらっしゃるのはその両家の親御さんかな?」

 

八幡「はい、そうです。」

 

 

すると今度は親父達の方へと向かい、再び頭を下げた。

 

 

輝幸「比企谷さん、並びに夜十神さん!この度は息子が多大なご迷惑をお掛けしました!本当に申し訳ございません!!」

 

御影「ま、まぁまぁ落ち着いて。君の誠意は伝わったから、一旦落ち着こう。僕達夜十神家は謝罪は受け入れるよ。けどね、僕達は今回娘には何1つしてあげられなかった。だからその謝罪はさっきしてくれた八幡君ので充分だよ。」

 

尚人「俺の方も夜十神さんと同じ意見です。全て息子が1人で行った事です。それに俺達比企谷家は事情しか知りませんので。」

 

凛「まぁ私達も八幡に謝って下さったのであれば、それで構わないという事です。」

 

輝幸「………ありがとうございます!!そしてこちらの入院費なのですが、我々の方で払わせて頂きます!せめてもの償いです。」

 

御影「本当にいいのかい?この病室、個室だから割と高いよ?」

 

輝幸「構いません。これで償い切れるとは言いませんが、このくらいはさせて下さい。」

 

 

……本当に天之川(アイツ)の親かよ。全然違うじゃん。足して2で割ってもこんな風にはならんぞ絶対。アイツは何処でおかしくなったんだ?

 

 

光輪「光輝の事ですが、私達天之川家は彼の弁護は一切致しません。あの子の行った事は1つ間違えれば殺人にも繋がっていました。あの子はしっかりと自分のやった事に向き合ってもらいます。それが私達に出来る事だと思っています。」

 

紫苑「……そうですか。そちらが決めた事なら私達からは何もいう事はありません。裁判にはご出席されるおつもりで?」

 

輝幸「?はい、そのつもりですが。」

 

八幡「でしたら、覚悟をしておいた方がいいと思います。きっと家と外のアイツはまるで別人だと思うので。所謂二面相ってヤツですよ。」

 

光香「お兄ちゃん………」

 

 

流石に妹の前でこの話はしない方がよかったか………もう少し気を使えばよかったな。

 

 

輝幸「長居してしまってはご家族とのお時間をお邪魔してしまいますので、私達はこれで失礼させて貰います。改めて今回の息子の不祥事、誠に申し訳ございませんでした。では、失礼致します。」

 

 

そう言って天之川さん達は病室から出て行った。短時間ではあるが、この病室に10人も人が入る事になるなんてな………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





一気に親の名前を出しました。


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拘束されている彼は………

 

 

天之川side

 

 

天之川「………」

 

 

俺が警察の留置所に入れられてから2日が経とうとしている。裁判が行われるまでの間、罪人はこの場に入れられる。俺は自分が罪を犯した覚えなんて無いから、抵抗したし抗議もしたが、警官に無視をされ続けるとその気力も無くなる。さらに俺が今1番気力がなくなっている最大の理由は………家族が会いに来てくれないという事だ。この場所にも面会というシステムはある。なのに俺の家族は2日経っても会いに来てはくれなかった。

 

 

天之川「何故だ……どうして来ないんだ………」

 

 

俺の家族はそんな薄情じゃない。困り事があったら相談にも乗ってくれるし、休みの日には家族総出で出かける日だってある。その辺の家族よりかは家族愛が強いと思っている。そんな俺の家族がまだ1度たりとも面会に来ていない………どうしてなんだ?

 

 

天之川「………っ!そうか、きっと俺の為に。俺の為に弁護士や武器になる証拠を集めているから………だから今は面接に来ている暇がないのか!そうだ、きっとそうに違いない!」

 

 

今は証拠集めや証言集めで時間が取れないんだ!だから面会に来れないんだ!きっと今も………俺がもっとしっかりしていればこんな事には………だが次はこんな事は起こさない!今は両親や光香も頑張っているんだ!俺も今はこの生活を耐えるべきだ!今俺のやるべき事をやるだけだ!!

 

 

天之川「だが………比企谷の奴、今はどうしているんだ?病院には居ると思うが、腕の治療は終えている筈だ。その後は?きっと事情も聞かされている筈だから、もしかしたらアイツも何処かの留置所に?いや、普通に入院かもしれないな。あの怪我で留置所だったら、流石に健康面で問題がある。気に食わないが、おそらくは病院で入院しているだろう。」

 

警官「君はまたブツブツ独り言か?昨日に続いて飽きないものだ………食事の時間だ、食べ終わった容器は下から廊下に戻しておくように。」

 

 

あの警官、俺は覚えている。俺を真っ先に組み倒した警官だ。あの警官が仲間の応援や救急車を呼んだのか………判断は間違えていないが、捕まえる相手が違うだろ。本来捕まえるべき相手は俺の目の前にいた人間だ。それなのにあの警官は何を血迷ったのか、俺を捕まえて幾つかの質問をされた後に、この場所に入れた。裁判で分からせてやる、お前は捕まえる相手を間違えたんだと。

 

 

天之川「………」モグモグ

 

 

だがこの留置所、俺以外に人は居ないのか?2日間過ごしたが、あり得ないくらいに静かだ。もっと人がいるのかと思っていたが………

 

 

天之川「……少しいいですか?」

 

警官「何だ?」

 

天之川「此処には俺以外に人は居ないんですか?」

 

警官「今の所は君以外には誰も居ない。それに今年に入ってからこの場所に入れられた罪人は君を入れて2人目だ。そういえば1人目も君と同じで学生だったのは記憶している。」

 

天之川「俺で2人目………」

 

警官「そんな事よりも早く食事を済ませろ。」

 

 

もう1人も俺と同じ学生………今は少年院で暮らしているのだろうか?それはどうでもいいが、俺が2人目という事は千葉県内で犯罪を犯した人数は俺ともう1人の男だけという事か?

 

いや、俺は犯罪を犯してない。確かに今はこの留置所に身を拘束されているが、俺はすぐに釈放されて、比企谷が少年院に送られる。

 

 

待っていろ比企谷………裁判の日が楽しみだ。お前の余裕が絶望に変わるのが今から待ち遠しい。お前の積み重ねてきた罪が世に出回ってからでは遅いんだからな!今は俺の家族達が頑張ってくれているんだ、お前に勝ち目なんてない!

 

 

天之川sideout

 

輝幸side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光香「お父さん、お母さん。比企谷さん達って良い人達だったね。」

 

光輪「そうね。あんな風に言ってくるなんて思わなかったわ。特に比企谷さん達なんて自分達の子があんな大怪我をしていて、かつ私達がその怪我を負わせた本人の親だと知ってあの態度………」

 

輝幸「俺達も見習わないとな。」

 

光香「それでさお父さん。お兄ちゃんの事だけど、本当に何もしないの?」

 

輝幸「光輝を擁護した所で悪く言われるのは目に見えている。それにだ、どちらが悪いかなんて事件の段階でも手に取らなくても分かる。それに今日比企谷君に会って分かった、あの子は人を騙すような子じゃない。」

 

光香「うん、それは私も思った。」

 

光輪「彼女さんを守る為にと言っていたものね。修学旅行から帰って来た光輝の様子がおかしいと思っていたけど、あの子達の事だったのよね。」

 

輝幸「あぁ……しかもその女の子にトラウマを植え付けてしまう程の事までしてしまった。それを気付いていながらアイツは………」

 

 

だがトラウマから離れられるという意味では、この状況はある意味正解なのかもしれない。きっと彼等は今この時間を平和に過ごせている筈だからな。光輝が余計な事をしてくれたせいで、あの子達は心に余裕がなくなる程に追い込まれていた事だろう。

 

 

光香「はい、上がり〜!」

 

 

え…………あっ!!

 

 

輝幸「おいおい、そこで8切りするのか?お父さん次で勝てたのになぁ………」

 

光香「へっへ〜ん、どんなもんだっ♪」

 

光輪「ふふふっ、じゃあ私はこうしようかしらね。」

 

輝幸「え!?キングが3枚!?」

 

光輪「はい、終わりね。」

 

光香「お父さんって考え事してる時、凄くゲーム弱くなるよね〜。まぁいつも弱いけど。」

 

輝幸「また最下位………」

 

 

俺は何度大貧民になればいいんだ?

 

 

 




天之川…家族が頑張っていると思っている。

天之川の家族…2家に謝罪、そして大富豪なう。


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お見舞いの差し入れは?

 

 

柊side

 

 

事件から2日後。今日から学校なんだけど、八幡君が居ないから気分が乗らない。放課後になるまで八幡君がお預けって思うと、その時間がとても長く感じてしまう………八幡君、今日から来てくれないかなぁ。

 

 

涼風「お姉様、今日から5日間頑張りましょう!私も八幡さんが居ないととても心細いです………ですが私は思います、それを乗り越えた時こそ、最高の瞬間を迎えられるのです!」

 

柊「そうは言ってもさ、八幡君が居ないんだよ?八幡君成分が放課後にしか摂れないんだよ?涼風はそれに耐えられるの?私達に出来る事といえば、八幡君の事を思いながら写真を見る事くらいだよ?」

 

涼風「………頑張りましょう!」

 

 

涼風も自信無いんだ………そうだよね、八幡くんが居ないんだもんね。私達のやる気も30%くらいしか出せないよ。はぁ………憂鬱だなぁ。

 

 

ーーー2-F・HRーーー

 

 

平塚「それと今日欠席している比企谷だが、先日土曜日に起きた事件で怪我をした為、現在入院中だ。退院は1週間後だから土曜日に退院して、来週の月曜日からまた登校してくる。あまり事件の内容を詮索しないように。以上だ。」

 

 

やっぱり起きた事は言うよね………何だか教室も騒めき出したし。見た感じ心配はしてなさそう。してるのは数人程度かな……興味ないから本当に見た感じだけど。

 

 

戸塚「夜十神さん、八幡の事は知ってたの?」

 

涼風「……はい、姉は当事者でもありますので。私はその時居ませんでしたが。」

 

戸塚「酷い怪我なの?」

 

柊「……左腕に刃物が刺さっちゃったんだ。だから今は傷口を圧迫して固定してる。別に経過観察でも大丈夫だって言ってたんだけど、念の為にって。」

 

川崎「そうなんだ……」

 

涼風「そんなに心配はいりませんよ。意識もハッキリしていますし、ちゃんとお休みもされているようでしたので。宜しければ放課後にお見舞いでもどうですか?」

 

戸塚「そうだね、僕は行こうかな。今日の部活はお休みにしてもらう事にするよ。八幡が心配だし。」

 

川崎「あたしは今日はやめとく。妹のお迎えもあるから。明後日なら行く。」

 

柊「じゃあ放課後になったら八幡君の病室に行こっか。」

 

涼風「はい。」

 

戸塚「うん!」

 

 

それからは何事も無く1時限目から4時限目が終わってお昼休みになった。八幡君が居ないから、私達もいつもの重箱ではなく、普通のお弁当箱にしている。だってアレは八幡君と涼風と私の3人だからこそ出来る事だもん、2人だったら無理!

 

 

柊「ねぇ涼風、お見舞いって行くのはいいけどさ、何か持っていかないとダメだよね?フルーツとか持ってく?」

 

涼風「お姉様、それは昨日持って行ったではありませんか。はぁ………お姉様がそう言うだろうと思って、私が本を用意しておきました。八幡さんのお父様も本を持って行くとは言っていましたから、私は5冊程度にしました。私達からの、という事にしておきましょう。」

 

柊「流石は我が妹!頼りになるなぁ〜♪」

 

涼風「お姉様が考えなし過ぎるのです。普段は凛としててカッコ良いというのに、どうして八幡さんの事になると、こうもアンポンタンになってしまうのでしょう?」

 

柊「涼風ちゃん、毒あり過ぎない?」

 

涼風「お姉様は何か考えなかったのですか?」

 

柊「考えたよぉ〜……けど食べ物はフルーツあげちゃったし、お菓子は消化に良くないし、服だってお父さんのがあるし、本は涼風が用意するって言ったし………ねぇ、他に何がある?」

 

 

涼風(………意外に色々と考えていたのですね。先ほどの言葉は訂正しておきましょう。)

 

 

涼風「そうですね………っ!でしたらプリンを作ってみてはいかがですか?」

 

柊「プリン?」

 

涼風「はい。プリンはヨーグルトやゼリーと一緒で消化に良い食べ物です。作り方も比較的簡単ですので、八幡さんに作ってはどうでしょうか?八幡さんは甘い物が大好きですから。」

 

柊「………それだよ!うん、それにするよ!よぉし、八幡君のお見舞いが終わったら、頑張ってプリンを作ろっと!涼風、手伝ってくれる?」

 

涼風「勿論です!私も八幡さんにプリンを作って差し上げたいですから。」

 

柊「ふふふっ、楽しみが増えたね♪」

 

 

よくよく考えたら、お菓子作りってそんなにした事ないかも。クッキーとかは作った事あるけど、プリンは1度も無いんだよねぇ〜。もし作り方を覚えられたら、デザートにも作れるし、お弁当の食後にも良さそう♪

 

 

涼風「今少しだけ調べたのですが、色々な作り方があるみたいですね……フライパンで作ったり、電子レンジで作ったり、様々みたいです。」

 

柊「皆凝った作り方するんだね〜。でも最初は無難に普通の作り方でいいよね。わざわざ難しい作り方から覚えなくてもいいし。」

 

涼風「はい。作り方を覚えてから徐々にアレンジをしていきましょう。」

 

柊「うぅ〜ん……ネットだけだと心許ないから、帰りに本でも買わない?その方が戦略の幅が広がるし、色んな事が分かりそう!」

 

涼風「そうですね!では帰りは本屋でデザート系のレシピ本を探しましょう。」

 

 

ふふふふっ、八幡君待っててね。私と涼風がとっても美味しいプリンを作って、おみまいに持っていってあげるからね♪

 

 

 

 

 

 



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皆でお見舞い

 

柊side

 

 

キーンコーンカーンコーン♪

 

 

いやったぁ〜〜〜!!!漸く6時限目が終わった!!ほら先生早く!!早く終わる準備をして!!八幡君が私を待ってるんだから!!今にも寂しく待ってるんだから!!今もこの瞬間、先生は生徒の貴重な時間を1秒ずつ無駄にしてるんだからね!!分かったら早く!!

 

 

教師「それでは授業を終わります。日直の人、挨拶をお願いします。」

 

日直「起立〜、礼っ、着席〜。」

 

 

よしっ、順調!平塚先生も早くしてよ!

 

 

涼風「お姉様、ものすごく早く行きたそうな顔をしていますわよ?『平塚先生、早く来い!』みたいな顔をしてますわよ?」

 

柊「当たり前じゃん!八幡君が私を待ってるんだから!!」

 

涼風「………そうですね。(姉の八幡さんへの依存は知っていますが、ツッコむのも疲れました。)」

 

 

それから1分くらいしてから平塚先生が教室に入ってきて、報告事項を私達に伝えてから帰りの挨拶を終えた。よし、校門前には宮間さんの車がある筈だからね!戸塚君を連れて早く会いに行こう♪

 

 

柊「涼風、戸塚君!じゃあ行こっか!」

 

戸塚「な、なんかお姉さん凄く生き生きしてない?そんなに八幡と会えるのが嬉しいのかな?」

 

涼風「まぁ、姉にとって八幡さんは生き甲斐でもある存在ですから。」

 

戸塚「あはは………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪乃「夜十神さん、少しよろしいかしら?」

 

 

私達に話しかけてきたのは、J組の雪ノ下さんだった。そしてその隣には由比ヶ浜さんも居る。

 

 

涼風「っ!雪ノ下さん?」

 

戸塚「こんにちはっ、どうかしたの?」

 

雪乃「えぇ、今から3人で比企谷君のお見舞いに行くのよね?」

 

柊「……うん、そうだけど?」

 

雪乃「私達もお見舞いに行きたいから、同行させてもらってもいいかしら?」

 

結衣「お願い!」

 

 

うぅ〜ん、どうしよう。雪ノ下さんは一応の信用は出来るけど、由比ヶ浜さんがなぁ………けど、病院内で罵倒するとも思えないし、いいか。

 

 

柊「うん、いいよ。」

 

結衣「やったぁ!ありがとう夜十神さん!!」

 

雪乃「ありがとう。」

 

柊「うん、じゃあ行こっか。」

 

 

ーーー校門前ーーー

 

 

涼風「お姉様、よろしいのですか?由比ヶ浜さんはお姉様のブラックリストに載る寸前の方なのでは?それを一緒に、しかも八幡さんの所になんて。」ボソッ

 

柊「病院で騒ぐ程おバカじゃないでしょ。それにあの場で断ったら絶対口論になるからね、それを避けただけ。面倒は嫌いだもん。」ボソッ

 

涼風「………ま、まさかお姉様が八幡さんと同じような言葉を使うなんて………」

 

 

失礼なっ!私だってそう思う時くらいあるよ!でも八幡君と同じ扱いをしてくれた事に関してはポイント高いっ♪

 

 

柊「さっ、乗って乗って。」

 

涼風「席は何処でも構いませんので。」

 

 

因みに宮間さんは外に出ないで、車の中で待つようにしてもらっている。え?何故かって?お金持ちのお嬢様やお坊っちゃんって大体外で待たせてるでしょ?そう見られないようにしてるだけ。

 

 

ーーー病院・廊下ーーー

 

 

戸塚「あっ!そういえば僕、八幡にお見舞い持ってきてなかった………知らされたの今日だから。」

 

結衣「げっ、そういえばそうだった………うぅ、何か買わないとなぁ〜。」

 

涼風「お気になされる必要はないと思いますよ、八幡さんはそのような事を気にするような方ではないと思いますから。」

 

柊「そーそっ!私は昨日フルーツ持ってったから、今日は何も持ってきてないしね。」

 

雪乃「夜十神さん達の言う通りよ、比企谷君はお見舞いの品が無いくらいであれこれ言う人間ではないわ。」

 

 

おっ、雪ノ下さんほんの少しは八幡君の事分かってるみたいだね〜。感心感心。

 

 

ーーー八幡の病室ーーー

 

 

雪乃「途中で気づいてはいたけれど、やっぱり個室入院だったのね。」

 

柊「加害者側の親族がね、そうするべきだって言ってたからこうなったんだ。(っていう設定です!)」

 

雪乃「比企谷君にしては贅沢だとは思うけれど、これも患者の特権よね。」

 

戸塚「その人の好意でもあるから、無碍にも出来ないしね。」

 

結衣「取り敢えず入ろうよ!ヒッキー待ってるかもしれないし!」

 

涼風「では行きますよ。」

 

 

コンコンコンッ

 

 

八幡『どーぞ。』

 

涼風「失礼します、八幡さん。お約束通りお見舞いに伺いました。皆さんも一緒に。」

 

結衣「ヒッキー、無事で良かった!!」

 

戸塚「八幡、元気そうで良かったよ!」

 

雪乃「………大事が無いようで良かったわ。」

 

八幡「お、おう……見舞いありがとな。」

 

柊「八幡君、今日は何も持ってきてないけど許してね?次はちゃんと持ってくるから!」

 

八幡「そんな1日毎にお見舞いの品を貰ってたら、消化するのに苦労しそうだ。フルーツだけでも充分だぞ?3時のおやつに1つ頂いたし。」

 

結衣「因みに何を食べたの?」

 

八幡「林檎だけど?」

 

涼風「ですがゴミ箱の中には芯だけで皮はありませんでしたが………もしかして皮ごと?」

 

八幡「あぁ、果物ナイフ無かったしな。それに皮が食べられないってわけじゃねぇし、そのまま丸齧りして食っても大した事ないって思ったから。」

 

柊「ワイルドな八幡君、素敵………♡」

 

戸塚「えっと……夜十神さん、そこじゃないと思うんだけど………」

 

雪乃「無駄よ戸塚君、きっと聞こえてないわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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レシピ本ともう1人の

 

柊side

 

 

八幡君の様子を見て、少しお話した後に私達は病院を後にした。本当なら最後まで居てあげたかったんだけど、今日の私にはやらなければならない目的があるから、最後まで八幡君の側に居るのは断腸の思いで断念した………うぅ〜ゴメンね八幡君!

 

それから雪ノ下さんと由比ヶ浜さんだけど、歩いて帰るって言ってたから車には乗ってない。そして私と涼風は今、本屋さんに来ている。美味しいプリンを作る為にレシピ本を買う為にね♪けどプリンだけでも色んな雑誌があるんだなぁ………コーナーで言うと、料理のデザートでプリンの項目を見てるんだけど、20冊くらいあるの!それに中身を見てみると、どれもこれも美味しそうなんだ!

 

 

柊「どれにしようかなぁ〜………どれも美味しそうに出来てるから悩んじゃうよ〜。涼風はどれにするか決めたの?」

 

涼風「いえ、私も今悩んでいます。こんなにも種類があると、どの本も目移りしてしまいそうです。」

 

柊「涼風もかぁ〜………最初は普通のにするとしても、作り方が異なるんだね。蒸すのもあれば冷やす作り方もあるんだね。」

 

涼風「同じものを作るにしても、工程によっては時間も違って来ますからね。お姉様ならどちらを選びますか?やはり時間をかけずに簡単に作れる方ですか?」

 

柊「手間を考えないならね。凝ったものを作りたくなる時もあるから、どちらともいえないかなぁ。」

 

 

特に八幡君にお弁当を作る時!そういう時は絶対に簡単には終わらせない!絶対に美味しいって言ってもらいたいから、片手間程度では絶対に済ませないようにしてるの!だからレシピがたくさん載ってるコレにしようかな。

 

 

柊「じゃあ私はレシピがたくさん載ってるコレにする!初心者から上級者まで色んなのがあるし!」

 

涼風「では私はコレにします。本来ならお会計に行くところですが、折角来たんですから他にも見ていきませんか?」

 

柊「それもそうだね、じゃあ他に良い本が何かないか見てみようか!」

 

 

私あんまり漫画とかは見ないから、やっぱり小説かなぁ………ミステリーとか純愛とかならよく読むんだよねぇ〜。八幡君は純文学やラノベをよく読むけどね。私も少しだけ読んでみようかな?

 

 

ーーー車内ーーー

 

 

柊「ゴメンね宮間さん、長い間お待たせしちゃって。退屈だったでしょ?」

 

宮間「いえ、滅相もございません。お嬢様方から私にも自由な時間を設けさせて頂きましたので、この宮間も羽根を伸ばす事ができました。」

 

柊「そう?ならいいんだけど。」

 

宮間「それで、お嬢様方はどのようなお買い物をされたのですか?何やら楽しそうな雰囲気を出しておられるようですが?」

 

涼風「はい。今病院で入院している八幡さんにプリンを手繰って差し上げようと思っていまして。固形物は消化によろしくないので、ゼリーやプリンならと思いましたので。」

 

宮間「成る程、そうでしたか。きっとお2人の手作りでしたら、若様もお喜びになるでしょう。微力ではありますが、私めも応援しております。」

 

柊「ふふふっ、ありがとう宮間さん♪」

 

宮間「勿体なきお言葉。」

 

 

会話を終えた私達は、宮間さんが車を発進させて自宅へと向かっていくのであった!

 

 

柊sideout

 

八幡side

 

 

八幡「柊達は来るって100%予想してましたけど、今日先生が来るとは思ってませんでした。」

 

平塚「私の教え子で部員だぞ、来ないわけないだろう。それにしても聞かされた時は肝を冷やしたものだ。君が刺されたと聞いて冷静さを欠いたものだ。」

 

八幡「先生らしくありませんね。」

 

平塚「刺された箇所を聞かされなければ誰でもこうなるものだと思うがね。まぁでも、元気そうで何よりだ。差し入れだが、君の好きなあのコーヒーは糖分が高過ぎるから、微糖コーヒーにしておいた。」

 

八幡「気遣いありがとうございます。」

 

 

ブラックじゃないだけでもマシか……ブラックを持ってきたら、親父達にでもプレゼントしよう。

 

 

平塚「天之川光輝の在籍している高校からだが、明日この病室に訪れる事になっている。目的は………君でなくとも予想はつくか。」

 

八幡「謝罪の為、ですよね。それと今回の事件の内容に加えて、これまで何があったのかを聞く為、じゃないですか?」

 

平塚「やはり君には分かるか………お前のそういうところは本当に高校生とは思えんよ。相手側もそれを気にしていてな、細かい内容を聞きたいそうだ。悪いのだが明日、頼めるかね?」

 

八幡「時間が他に取れないのであれば、明日で大丈夫です。今のところ、この病室に必ず来る人間は2人居るのは確実ですので。」

 

平塚「君は愛されているのだな。」

 

八幡「まぁ、そうとも言えますね。」

 

平塚「私への当て付けかと言いたいような台詞だな、今のは。」

 

八幡「そんなんじゃないですよ………」

 

 

ホントに誰かこの人貰ってやれよ!誰かいねぇのかよマジで!

 

 

平塚「では私もそろそろ学校に戻る。来週の月曜日に登校してくるのを待っているぞ。」

 

八幡「はい、分かりました。」

 

平塚「では、またな。」

 

 

そう言って平塚先生は病室を去って行った。今日だけで6人か………多い、のか?

 

 

 



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謝罪と【模範】の意味

 

 

八幡side

 

 

入院生活4日目。今日は朝から俺の通ってる高校の校長と天之川の通ってる高校の校長と担任がやってくる日だ。その前に俺はナイフが刺さった左腕の様子を診てもらう事になっている。担当医は何故か神田さんになっている。院長直々っていいのかコレ?

 

 

神田「………んっ、着実に塞がってはきてるな。よし、このままの調子なら次の土曜に退院出来るだろう。それと金曜には抜糸するって頭の片隅にでも入れておけ。俺も予定に入れておくからよ。」

 

八幡「分かりました。」

 

神田「あぁそれと、お前の病室に校長2人と天之川の担任が来るんだってな?さっき受付嬢から聞いた。俺もその場に立ち会う事にしたからよろしくな。」

 

八幡「耳が早いんですね。」

 

神田「これでも俺は院長だぜ?見た目はヤクザでも中身は善良な医者なんだからな?お前の今の容態と天之川の現状も教えてやんないといけないんだ、立ち会うのは当然だろ?」

 

 

最もだな。確かにアイツの状態を教えられるのなら、今の場面程ちょうど良い機会は無いだろう。

 

 

八幡「まぁ、分かりました。」

 

神田「んじゃそういう事だ、また後でな。」

 

八幡「はい、ありがとうございました。」

 

 

………また1人になってしまった。激しい運動を制限されているだけで普通に歩けるからいいとしても、やはり暇になる。涼風が用意してくれた小説も読んだ、さすがと言うべきか、俺の好みを1冊で当ててくる辺りはお見事と言いたくなった。来たら撫でてやろう。そしてそれに嫉妬する柊にも。

 

 

先生達が来るのって、確か10時だったよな?それまでは病院の中でも散策するか。外寒いから行きたくないし。けど見る所なんて別に無いんだよな、病院に来る機会なんてそうそう無いってだけだから。

 

 

八幡「誰か知り合いが居るってわけでもないから、話し相手も居ないしな。」

 

 

何も考えずに行動するのも良いかもな。最近は天之川のせいであれこれ考えてばかりだったしな。とは言っても何する?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

っと、思いながら行動してたわけだが、時間が経過して10時になった。俺は病室に戻って側には神田さんも居る。手に持ってるカルテを真剣な表情で見ていて、医者なんだなっと改めて認識した。全くそうには見えないが。

 

 

コンコンコンッ

 

 

神田「どうぞ。」

 

茅ヶ崎「失礼します。こちらが比企谷君の入院している部屋だと聞いたのですが……」

 

神田「えぇ、こちらになります。ぼう……比企谷君ならこちらに居ます。」

 

校長「失礼します。」

 

畑山「し、失礼します………」

 

 

次々と大人が入ってくるから俺も少しだけ背筋が伸びる。

 

 

茅ヶ崎「比企谷君、容態の方は如何ですか?」

 

八幡「大丈夫です。怪我もそんなに酷くなかったので。土曜には退院出来ます。」

 

茅ヶ崎「そうですか、それは何よりです……それから、今日はこの場を設けさせてもらい、感謝します。ご紹介しましょう、こちらに居るのは千葉市立京葉高等学校の校長先生と天之川君の担任の畑山先生です。」

 

校長「比企谷君、今回は当校の生徒が大変申し訳ない事をした、申し訳ない。」

 

畑山「ごめんなさい!」

 

八幡「まぁ、俺は刺されただけなんで別に……こんな身体に出来た傷よりも、心の傷の方が深いんで、俺よりもソイツに謝ってやってください。」

 

畑山「はい、分かりました。では後日そうさせて頂きますね!」

 

神田「んんっ、では自己紹介も謝罪も終わったところで、今回の事件の内容を比企谷君からお聞きになってください。因みに俺が此処に居るのは比企谷君の容態を診る事と、天之川君の現状をご報告する為です。なので、話し終えたら教えて下さい。俺はそれまで待機していますので。」

 

茅ヶ崎「分かりました。では比企谷君、改めて当時の状況の説明をお願いします。」

 

 

校長先生のこの言葉によって、俺はその日あった出来事を出来るだけ細かく説明した。京葉の校長先生は怒ったような顔をしており、担任の畑山先生はショックを受けたような、悲しさも混ぜた表情を見せていた。

 

 

八幡「これがその日にあった内容です。」

 

神田「自分も比企谷君の説明に嘘偽りが無い事を証言します。私も当時の事を聞いていましたので、彼の言葉には間違いありません。」

 

校長「そうですか………しかし、あの天之川がこんな行動に出るとは思わなかった。」

 

畑山「はい、彼は模範的な生徒だったのに………」

 

神田「ふむ……畑山先生、でしたかな?」

 

畑山「は、はい?」

 

神田「医者の立場から申し上げますので、あまり説得力はありません。ですが敢えて言わせて頂きます。自分からしてみれば、模範的な人程信用ならない人は居ませんよ。」

 

畑山「え……それはどういう?」

 

神田「確かに彼は模範的な生徒だったかもしれません。しかし貴方はそれだけしか知らない。こう言ってしまうと他の生徒にも同じ事を言ってしまいますが、内面を見ていないのと同義です。模範というのは見習うべきものを表す言葉です、彼の事を知っているのであれば、その言葉は出てくるものではないと思われますよ。」

 

 

神田さん、その言葉はとてもよく分かります。

 

 

畑山「そ、それはつまり、何かあったと?」

 

神田「………これは私が独自に調べた事です。信憑性が無いから信じないも良し、聞く価値があるから耳を傾けるのも良しです。皆さんにお任せします。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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神田院長の調べ

 

 

神田side

 

 

天之川光輝の精神鑑定を受けた翌日、俺は奴の身元を調べる事にした。今現在、アイツについて分かっているのは千葉市立京葉高等学校の2年生で部活には入ってない。八重樫道場ってとこの門下生らしく、剣の腕は全国レベルをいくとかいかないとか。まぁレベルはどうでもいいとして、まず行くのは学校からだな。詳しい話を聞きたい。

 

だがその時は運悪く、学校も立て込んでいてそれどころではなかった。仕方なく学校の聞き込みは諦める事にした。次に向かったのは八重樫道場だ。天之川が通っているという道場だ。何か得られればいいとは思っていた。だが道場でも、鍛錬をしている時の様子なら分かるが、私生活の事までは分からないと言われた。人柄も特に問題はなかったという。

 

流石にこれ以上のことは聞き出せないと思って、俺も諦めかけた時だった………

 

 

雫「あの、光輝の事でしたら少しはお役に立てると思います。」

 

 

八重樫道場の道場主の娘さんから話を聞いた。どうやらその娘さんも過去に1つ苦い経験があるようだった。天之川関連でだ。その内容は伏せておくが、天之川に相談した所、事態を余計に悪化させた事があるらしい。当然天之川はその事を知らないし、気にも留めていなかったと話した。

 

 

雫「後は……そうですね、今の高校で同じクラスにいる男の子によく突っ掛かるんです。理由は……好きな女の子がその子ばかりに構うのが気に入らないんだと思います。何度も何度も………」

 

神田「ふむ……その事も詳しく教えてくれないか?覚えている範囲でいいから、その時発した言葉も教えてくれると非常に助かる。」

 

 

そして俺はその子から色々と教えてもらった。今の話だけに限らず、中学でも様々な自分勝手を押し通してきたらしい。その全てが人間関係だ。

 

だが本人はそれを理解しておらず、自分の行なった行為を善行だと思っているようだ。子供の悪戯ならまだ笑えただろう。だがここまでになってくると、流石に俺でも笑えねぇ………

 

 

俺はその話や過去にあった事をさらに詳しく聞きたかったから、その娘さんの友達を呼んで、話をしてもらう事にした。そしたら余計に話はリアルになった。他人の迷惑は考えねぇわ、自分勝手な事を言い出すわ、もっと努力しろだの何だの言うわで聞くだけでもウンザリする程だった。

 

 

結論から言うと、天之川の精神面はヤバい。どの辺がヤバいかというと、判断力や解決能力の面だ。もっと簡単に言うと精神障害者だ。

 

 

話を聞いている内に理解した。アイツはこれのせいで今まで何度も知らぬ間にやらかしてきたんだと。そして終わった後はそれすら見届けてねぇ、これは所謂放置ってヤツだ。

 

 

黒髪長髪のかわい子ちゃんが言ってたが、

 

 

香織『私がハジメ君と話してたら、天之川君が【香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。】って言ったんです。それで私がハジメ君と話したいから話してるだけって言ったら、【香織は優しいんだなぁ。】って言われて………私はただハジメ君とお話ししてるだけなのにって思いました。』

 

 

っていうのがあった。今のだと自分の言い分を否定してねぇし、かわい子ちゃんの優しい部分とハジメって男の甘えって部分を肯定してるって事にもなる。

 

他にもまだ言いたい所だが、今はこのくらいにしておこう。今は全てを語るべきじゃねぇしな。

 

 

畑山「そんな事が………」

 

神田「生徒を信用するのは大いに結構な事です。私も人の命を預かる身として、やる事は最大限やりますし、部下の事も信頼しています。しかし過剰な信用は時としては毒もしくは猛毒になります、自分自身のね。」

 

校長「……中々に貴重な事を聞かせて頂きました。神田院長、ありがとうございます。」

 

茅ヶ崎「私からもお礼を言わせてください。ありがとうございました、神田院長。」

 

神田「いやいや、教師でもないただの一介の医者が生意気を言いました。」

 

畑山「いえ、私も改めて教師とは何なのかを考えさせられました。」

 

 

………まぁ、この話が為になったってんのなら、それはそれでいいんだけどよ。俺にじゃなくて、その生徒さんにも感謝をしたいもんだ。時間割いてまでこんなおっさんに話し付き合ってくれたんだからな。まぁ、飯とか俺の奢りだったからイーブンだとは思ってるけどよ。

 

 

校長「我々も改めてその生徒から色々と聞かなければならなくなりました。生徒についてあまりにも無知過ぎた………改善していかなくてはならなくなった。そうだな、畑山先生?」

 

畑山「はい、校長!」

 

校長「茅ヶ崎校長、神田院長、そして比企谷君。急ぎで申し訳ないが、我々はこれで失礼させてもらう。急ぎやらなくてはならない事が見つかった。」

 

八幡「わ、分かりました。」

 

茅ヶ崎「では私も学校へ戻りましょう。学校の教師達にも君は元気に過ごせていると安心させなくてはなりませんからね。」

 

神田「では入口までお見送り致します。比企谷君、ではまた後でな。」

 

 

俺が話したからって訳でもないが、この影響で日本中の教育や指導に手が加わるだろうな。



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八幡、退院!!

入院してから1週間後の話です!


 

 

柊side

 

 

八幡君が入院してから7日が経過した。昨日病室に行って八幡君から聞いたんだけど、今日退院出来るって!!長かったよ………八幡君の居ない学校生活なんて無に等しかったし。あっ、そうそう!八幡君の入院生活について少しだけおさらいしておくね!

 

 

1〜3日は皆知ってるから省くとして〜………4日目!午前中に校長先生達が来て謝罪されたみたい。私と涼風と川崎さんがお見舞いに行きました♪その時に家で作ったプリンを食べてもらったんだけど、八幡君からの評価は『毎晩のデザートが楽しみになる。』って言われちゃった♪八幡君が来た時は、デザート作り張り切ろっと!!

 

5日目。この日は特に何もなかったみたいで、本を読んだり、果物を食べたり、飲み物を飲んだりという比較的平凡な日を過ごしたみたい。お見舞いには私と涼風、そして戸部君からお見舞いの品(部活で行けないから私達で渡してくれないかって頼まれたから。)を渡した。因みにお見舞いの品は男用のファッション雑誌と飲み物数本だった。

 

6日目。午前中に抜糸をしたみたい。6日間固定してたから徐々に動かしていくようにって言われていたみたいで、リハビリをしてたみたい。お見舞いには私と涼風と材木座君っていう八幡君の相棒(?)らしいんだけど、お見舞いに何かの原稿を持って行って読んで欲しいと言ったら、八幡君に渡した原稿の束で頭を何度も叩かれていた。教えてくれなかったけど、アレ何だろう?

 

そして7日目。八幡君の退院する日だから、家族総出で病院に行く予定♪楽しみだなぁ〜。

 

 

紫苑「柊〜、そろそろ行くわよ〜。」

 

柊「は〜い!」

 

 

さて、そろそろ出発の時間だからまた後でね!八幡君との退院を祝いたいから邪魔しないでね!

 

 

ーーー千葉大学医学部附属病院ーーー

 

 

八幡君何処かなぁ〜?まだ病室かなぁ?

 

 

神田「ったく、早速来やがったか。坊主、お前も愛されてんなぁ〜。」

 

八幡「よう、柊。」

 

柊「八幡君っ!!」

 

八幡「うおっとと、おいおいあぶないだろ。いきなり飛び着いて来るなよ。」

 

柊「えへへ〜ごめんなさ〜い!」ギュ~!

 

涼風「お姉様ったら……八幡さんはまだ万全ではないというのに。ですが八幡さん、退院おめでとうございます。」

 

八幡「あぁ、ありがとうな。」

 

御影「次矢、今回は助かったよ。」

 

神田「このくらいお安い御用だ。お前と俺の仲だろ?まっ、坊主の入院費やら治療費やらは天之川から頂いてるからな、俺はただ世話しただけだよ。」

 

御影「それでも、だよ。」

 

八幡「先生、ありがとうございました。」

 

神田「やめろやめろ、小っ恥ずかしい!俺は医者として当然の事をしただけだ!大手術の後なら兎も角、こんな事で真面目な顔してンな事言うんじゃねぇよ………」

 

 

神田先生ってこういう真面目なのは苦手なんだ……ちょっと意外かも。しっかりしてそうなのに。あっ、そうだ!!

 

 

柊「ねぇねぇ、八幡君も退院したんだし、お祝いに何処か食べに行こうよ!」

 

紫苑「柊ったら………神田君、その辺りってどうなのかしら?」

 

神田「傷口も塞がってるから問題ない。ただ、あまり食い過ぎるなよ?1日3食にデザート程度なら構わないが、5食とか6食とか間食とかはするなよ?栄養バランスとか崩れるからな。」

 

八幡「俺、1日にそんなに飯食えませんよ。けどまぁ、分かりました。」

 

御影「じゃあ次矢、僕達は行くよ。」

 

神田「あぁ。また何かあったらいつでも来い、来ないに越した事はねぇけどな。」

 

 

そして私達は八幡君を連れて、千葉大学医学部附属病院を後にした。1週間どうもありがとう!

 

 

ーーー喫茶店ーーー

 

 

柊「ねぇ八幡君、本当に此処でいいの?」

 

八幡「俺からしてみれば病院食以外なら何処でも構わないって思ってるからな。別に病院の飯が不味いってわけではないけどよ。」

 

涼風「まぁまぁお姉様、八幡さんにとっては1週間ぶりの外食なのですから、お気持ちを汲んで差し上げましょう。」

 

柊「涼風、それを言うなら私達も外食は1週間ぶりだよ?」

 

御影「柊も涼風もいいじゃないか、八幡君が無事に退院できた事が何よりのお祝いなんだから、お店なんて関係ないさ。」

 

紫苑「盛大な事をしなくていいのよ。それに八幡君はこういう方がいいでしょ?」

 

八幡「はい。」

 

柊「別に文句があるわけじゃないよ?皆して私の事を虐めないでよ〜。」

 

御影「ゴメンゴメン。それじゃあ料理も飲み物も来た事だし、乾杯でもしようか。八幡君の退院を祝して……乾杯っ!」

 

「「「「乾杯〜!」」」」

 

柊「八幡君、食べづらかったら言ってね!!私が食べさせてあげるから!!最初からそれでも良いからね!!私は喜んで食べさせてあげるから!!」

 

八幡「いや、俺そんなに左腕不自由なわけではないから。少し使いにくいってだけでちゃんと動かす事はできるから。」

 

涼風「八幡さん、私も八幡さんがお望みであればお手伝いして差し上げますが、如何でしょうか?」

 

八幡「涼風、お前もか………」

 

紫苑「ふふふっ、いつもの風景に戻ったわね。」

 

御影「うん、そうだね。やはり我が家には八幡君の存在が必要不可欠になってしまったね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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裁判!!

 

 

八幡side

 

 

退院して更に1週間が過ぎた。特に何事もなく平和に過ごせたが、あんな風に何も警戒せずに過ごせたのはここ最近なかったから何日振りだろうと思ってしまった。それもそうだ、修学旅行前に森崎が来て終わったと思ったら、今度はそれに続き天之川があり得ないくらいの粘着で絡んで来やがった。

 

だがまぁ、そんな苦労した日々も何処かへ行ってしまったから、今はとても充実している。だが、今俺がいる所ではそんな空気は出せない。何故なら………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裁判長「これより、裁判を開始する!」

 

 

これから、天之川の裁判が始まるからだ。しかも、かなり一方的な裁判が。

 

 

弁護士「事の発端は修学旅行にあります。2日目の自由行動にて2人は再会。一緒に行動しないかと被告人より発言がありましたが、これを拒否。少ししてからクラスメイトの生徒達が待ちくたびれたように彼に話しかけている間にその場を離れました。そして同じ日の夜、嵐山の竹林にて2人で過ごしていた比企谷君と夜十神さんを見つけた被告人は比企谷君をいきなり突き飛ばしました。比企谷君と夜十神さん2人の証言によりますと、彼は比企谷君を突き飛ばすと比企谷君を悪者扱い、危険人物扱いしたとの事です。その後夜十神さんは被告人が守ろうと行動に出ましたが、彼からの行動に強い拒絶をし、比企谷君の背中へと身を隠して、更には被告人に対して震える程の恐怖に苛まれていたようです。」

 

天之川「っ〜………!!」

 

 

天之川の奴、反論したくて堪らないって顔だな。

 

 

弁護士「今ご説明した修学旅行の件に続き、彼はその後も被害者である比企谷八幡君及び夜十神柊さんへの執拗な絡みを止める事はありませんでした。さらに旅行後には彼に接触禁止令が担任により出されていたにも関わらず、その翌日には比企谷君に接触していた事が分かりました。その翌日には京葉高等学校の校長、教頭の立ち会いの元に処罰が下されました。内容は資料にてご拝見ください。この処罰には被告人である天之川君のご両親も納得済みです。そして5日後の土曜日に天之川君による刺突事件が起こりました。比企谷君は左腕に刃物が刺さる怪我を負い、1週間の入院。天之川君は警察によって拘束され、今日までずっと留置所で生活をしていました。その間、千葉大学医学部附属病院院長の神田次矢院長により精神鑑定を受けました。その結果、天之川被告は精神障害者だという事が判明しております。特に判断力や解決能力にとても強い異常があるようです。」

 

 

すげぇ……俺達の間で起きた出来事を1回も噛まずに言い切った。しかもそれを昨日の事のようにペラペラと言っちゃってたし………マジすげぇ。

 

 

裁判長「うむ、ご苦労。では被告人である天之川光輝、何か言いたい事はあるかな?なお発言は手短に行うように。」

 

天之川「はい。まず1つ目として、竹林での事ですが、俺は比企谷が柊に迫っていたからそれを引き剥がしただけです!突き飛ばしたりなんてしていません!!それに、もし仮に突き飛ばしたとしても、無理矢理迫られているのに、それを助けない訳にはいきません!!」

 

裁判長「……被害者である比企谷君、並びに夜十神さんはこれに対しての返答を。」

 

八幡「はい。確かに俺は柊に迫っていました、そこは否定しません。ですがそれは互いに了承を得て取った行動です。自分達は2年前、あの場は交際する事になった記念の場所でもあります。ならあの時のようにキスをしようかって話になり、それを実行しようとした所に彼が現れて、俺が突き飛ばされました。それとお前に聞くぞ。お前あの時両手で俺の肩を押したよな?あれが突き飛ばしてないって言うのなら、お前が取ったあの時の行動は一体何ていうんだ?」

 

天之川「っ………」

 

 

言い返せねぇのなら言うんじゃねぇよ。無駄な時間使わせるんじゃねぇよ………

 

 

輝幸「………」

 

光輪「………」

 

光香「………」

 

 

天之川「では2つ目に………俺は担任の先生から接触禁止令なんて出されていません!話は確かにしましたが、そんな事は言われていません!」

 

弁護士「天之川君、本当にそう言い切れますか?」

 

天之川「はい、間違いありません!!」

 

弁護士「そうですか………実はこちらに担任である畑山先生がその時に会話したであろう内容を覚えている限りではありますが、記した手記があります………その内容を拝見してみたのですが、『金輪際、貴方が彼女達に関与する事を一切禁止とします!!』という風に書かれているのですが、これは間違いでしょうか?」

 

天之川「っ!?それは………」

 

弁護士「しかも貴方はその後に担任の教師が懇切丁寧に説明して下さったというのに、さらに比企谷君を誹謗中傷するような発言までしたそうですね。畑山先生によると『虚言まで言わせていたのか。』『比企谷は罰を受けるべきだ。』『卑怯者』『偽善者』と発言していたみたいですね?」

 

天之川「本当の事を言ったまでです!!」

 

弁護士「その結果が、その次の日に夜十神さんの妹さんを泣かせる事になり、クラスメイトから失望される事になったとしても、ですか?」

 

天之川「っ………」

 

 

確かに最初来た時とは天之川に向けていた視線は違ってたよな。冷めたような………マジかよ、みたいな目で見てたな。

 

 

天之川「………そうだ、俺は精神異常者なんかじゃない!!俺は普通の人間です!!どこも異常なんかない!!」

 

 

おいおい、今度はそっち方面の否定かよ。俺等の事じゃねぇのかよ。

 

 

神田「何だぁ?俺の結果が不満か?」

 

天之川「当たり前だ!!デタラメな診断結果を「あ?デタラメだと?」っ!?」

 

神田「お前、またぶっ叩かれてぇのか?んじゃ今度はぶん殴りながら診断してやろうか?同じ質問をよ?それに何度やったとしても答えは一緒だよ。俺じゃない精神科の医者が診ても全員が同じ答えを出すだろうぜ。」

 

天之川「くぅ………!!」

 

 

相手が悪かったな、あの人見た目ヤクザだしな。それに加えてそれ以上の風格あるし。

 

 

裁判長「では、判決を言い渡す!!」

 

 

っ!いよいよか………

 

 

 

 



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判決、そして後日談

 

天之川side

 

 

裁判長「では、判決を言い渡す!!」

 

 

っ!判決………俺はきっと実刑だろう。だが比企谷にも少なからず何かはある筈だ。柊達を自分の物のように連れ回したりしていたんだ、刑があるのは当然だ!!それにあの院長もだ!あんなやり方をしたら絶対に実刑が下るに決まってる!!

 

 

裁判長「被告、天之川光輝を懲役10年及び執行猶予5年に処するつもりだった。」

 

 

?な、何だ?

 

 

裁判長「この裁判での発言、態度を考慮した上での判決を言い渡す。被告、天之川光輝を無期懲役に処する!執行猶予は無いものとする!これに「ふざけるな!!」てへい………」

 

天之川「無期懲役?執行猶予が無い?何故俺だけなんだ!?比企谷はどうなんだ!?そこに居るヤブ医者は?裁かれるべき人間は俺以外にも居るはずだ!!何故俺だけなんだ!!?」

 

裁判長「被告人は静粛に!!被告が今申した事に対する答えは………分かりきっていると思うがね。」

 

天之川「何ィ!?」

 

裁判長「彼等に問われるべき罪がないからだ。君は何故、被害者である比企谷君や神田院長にも罪を被せようとしているのか、私には理解が及ばない。」

 

天之川「くっ!!こんな裁判どうかしている!!まともに判断出来る奴は居ないのか!?俺だったらもっと公平な裁判をする!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バシィン!!!

 

 

天之川「っ!?………と、父さん?」

 

輝幸「光輝、お前にはこの数週間で大きく失望させられた。まさかお前のような奴が俺の息子だと思うと、とても恥ずかしくなる。お母さんと妹の光香の姿を見てみろ!」

 

 

恥ずかしいだって………?母さんと光香の方を見てみると、泣いていた。何故だ?何故泣いてるんだ?俺が実刑判決になったから?比企谷に罰がいかなかったからか?

 

 

天之川「何故、どうして泣いて………」

 

輝幸「分からないか?お前が息子であるのが、お前が兄であるのが恥ずかしくて仕方ないからだ!!今日この裁判、俺達はほんの僅かにだがお前に期待していた。罪を認めて罰を受けるお前に少なからず期待していた………だが蓋を開ければこの有様だ!!被害者である比企谷君にも罪をなすりつけようとし、医者である神田院長の否定に加えて最後の最後にはヤブ医者呼ばわりもするとは何事だ!!」

 

天之川「違うんだ父さん!!父さん達は「お前の言い訳などもう聞きたくない!!」と、父さん……」

 

輝幸「俺は今すぐにでもこの場から立ち去りたい、何故か分かるか?我が家のとんでもない恥晒しと一緒に居るからだ!!」

 

天之川「………」

 

輝幸「判決はもう出たんだ、大人しく罪を受け入れろ。お前がどう足掻いたところで出てしまった結論は変わらん………裁判長、すみませんでした。」

 

裁判長「うむ………では改めて判決を言い渡す。被告、天之川光輝は無期懲役に処する。執行猶予は無し!これにて閉廷!!」

 

 

………

 

 

天之川sideout

 

八幡side

 

 

裁判が終わって裁判長も居なくなり、天之川も連行されて行った。その時の様子は何も考えられないような、放心しているかのような状態だった。ただただ、連れられていくような感じで去って行った。

 

 

輝幸「神田院長、あの愚息がとんだご無礼な発言をしました、申し訳ございません!!」

 

神田「いや、いいんですよ。アイツの立場からすれば俺は恨まれて当然だ。」

 

 

言われたのがヤブ医者だもんなぁ………しかも院長相手によくあんな事が言えたもんだ。大物だよ。

 

 

八幡「柊、平気か?」

 

柊「……うん、八幡君が手をずっと握ってくれたから何ともなかったよ。」

 

御影「八幡君もお疲れ様。あの場で天之川君に反論した時の君はとてもカッコ良かったよ、映像に残せないのが残念でならない。」

 

紫苑「貴方は何を言ってるのよ………」

 

 

うん、本当に何言ってるの?おじさん。

 

 

御影「何はともあれ、これで娘達にやっと平穏が訪れたんだ。とても良い事じゃないか。ここ最近は立て続けに何かが起きていたからね、少し慌ただしかったけど、ようやく僕も落ち着いて仕事ができるよ。」

 

涼風「でしたら私達も八幡さんと歩きで登下校をしてもよろしいでしょうか?」

 

紫苑「そうね……悩みの種だったものが無くなったから大丈夫よね?」

 

御影「うん、歩きで登校してもいいよ。」

 

柊「やったぁ〜♪八幡君と一緒に歩きで登校できる〜♪1ヶ月ぶりくらいじゃない?」

 

八幡「そうだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談。天之川はあの後、すぐに少年刑務所へと向かって入れられたそうだ。その時の天之川は何も言い返してこない、無気力な状態だったらしい。親に言われたのが相当ショックだったようだ。

 

 

それと裁判所からも新たに定められた規則が俺達に設けられた。内容はこんな感じだ。この内容は弁護士等と色々話し合って決められた事だ。

 

1つ、天之川家は、天之川光輝との関係を絶縁するものとする。

 

1つ、裁判所から比企谷八幡及びその家族、夜十神柊及びその家族との接触禁止令が発行された。これは裁判所で正式に出されたものだ。

 

1つ、賠償金を天之川光輝個人に請求する。内容は【刺突事件での治療費に加えて慰謝料と夜十神柊への精神的苦痛による慰謝料】によるものだ。

 

以上がこの裁判で定められた規則だ。

 

 

そして京葉高等学校の校長と教頭、担任の教師には監督不行き届きとして減給が言い渡されたのだが、3人もこれは納得している様子だった。むしろ止められなかった自分達に対する罰だと言っていた。そして天之川さん達も俺達に賠償金を支払うと言っていたのだが、俺としては入院費を出してくれただけで満足だし、おじさん達も謝ってくれただけで満足していると言ったので、賠償金は無しになった。無しになるまで1時間くらい時間を使ったけどな。

 

まぁこんな感じだ。京葉高校もかなり荒れてるだろうな。人気者が居なくなったんじゃなくて、人気者の本性が知られたんだからな。見る目がなかった自分を呪っている事だろう。

 

 

柊「八幡君〜、来たよ〜♪」

 

涼風「久しぶりの歩き登校です♪」

 

八幡「あぁ、今行く。」

 

 

 




天之川、ようやく終わりを迎えました!!いやぁ〜長かったですね〜(自分で長くしてたんですけどwww)

なんか漸く一区切り終えた感じです!!

さて、次はどうしようかなぁ〜。


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平穏な生活

 

 

八幡side

 

 

平穏な生活。俺は今その生活を肌で感じているところだ。ここ1ヶ月、ずっと面倒事の連続だった………修学旅行前には姉妹誘拐してそのまま強姦しようとする奴がいたり、依頼を受けたはいいものの、その内容を拡大解釈したアホが居たり、修学旅行から2週間くらいずっと俺と柊と涼風に付き纏って、周りにも迷惑を掛けるだけ掛けまくった挙句にムショ行きになった自分至上主義な奴がいたりと、かなり嫌な1ヶ月を過ごした。

 

だが、今日からは普通の学校生活を送ろうと思っている。面倒事はもうゴメンだ。なるべく奉仕部の依頼も受けないようにしようと思ってる。俺は今部員っていう立場ではなく、ピンチヒッターの立場だからな。仮に俺が居る場で依頼が来たとしても、無理に依頼に介入しなくてもいいだろう。

 

 

柊「八幡君、どうしたの?考え事?」

 

八幡「ん?いや、別に……ただ漸く普通に暮らせるって思ってただけだ。」

 

柊「そうだね♪ホント普通って良いね〜。普通じゃない過ごし方を2〜3週間続けてたからね〜。」

 

涼風「事情があるとはいえ、少し狭い思いをしたのは事実ですしね。特に八幡さんとお姉様は大変な目に遭いましたから無理もありません。」

 

八幡「それよりもさ、少し気になる事があるんだが、聞いてもいいか?」

 

柊/涼風「何?(何でしょう?)」

 

八幡「何かさ、クラスの雰囲気ちょっとだけ険悪じゃね?俺の居ない1週間に何かあったの?」

 

 

な〜んか変なんだよ、いつもクラス内でお祭り騒ぎみたいにお喋りしているのに、今日はそれがやけに静かだ。何だこれ?

 

 

柊「私も分かんない。というよりもこの学校の事で興味持てるのなんて八幡君に関する事だけだし。」

 

八幡「まぁ柊の答えは大体想像通りだが、涼風は何か知らないか?」

 

涼風「私にも分かりません………それにあったとしても、きっと私はどうでもいいと切り捨てていたと思います。」

 

八幡「お前にしては言い切ったな、その心は?」

 

涼風「八幡さんが入院しているのに、そんな些細な事を気にしてなんていられません。私にとっては八幡さんの方が余程大事です。」

 

 

良い子だ、この子は本当に良い子だ………どうしてこんなにも良い子に育ってくれたんだ?後で頭撫でてあげるよ。

 

 

八幡「それはどうもありがとう。後で頭を撫でてあげます。それに嫉妬している柊にもプレゼントしてやるから、そんなリスみたいに頬を膨らますな。」

 

柊「私だって八幡君の方が大事だもん!」

 

 

分かってる、分かってるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「はい、お弁当〜♪」

 

八幡「出た、お決まりの重箱弁当。量もさる事ながらその質もまた最高の弁当箱。」

 

柊「ヤダなぁ〜八幡君ってば、八幡君に愛情たっぷりのお弁当を食べてもらいたいんだから当たり前じゃん♪不味いお弁当なんて作る訳ないじゃん!」

 

涼風「私達が八幡さんに失敗作を食べさせるわけがないではありませんか!八幡さんにはいつでも美味しい状態で食べさせたいのですから!」

 

八幡「力と説得力のある返しをありがとう。」

 

柊「じゃあ八幡君、1週間ぶりのあ〜ん♡」

 

八幡「あむっ………うん、今日も美味い。」

 

柊「やった♪」グッ!

 

涼風「わ、私のもどうぞ………///」

 

八幡「あむっ………うん、これも美味い。」

 

涼風「嬉しいです…///」カオカクシ

 

 

恥ずかしいのならやらなければいいのに………柊を見てやりたくなったのかな?そしてやってみたら想像以上に恥ずかしかったと。

 

 

柊「けどやっぱり八幡君って、ご飯食べてる時って美味しそうに食べるよね。私その時の八幡君の顔好きなんだよね〜。」

 

八幡「……俺、そんな顔してるのか?」

 

柊「表情にはあまり出てないよ?けど雰囲気っていうのかな?雰囲気がね『んんぅ〜美味い!』みたいな感じなんだよね〜♪」

 

涼風「よく分かります!家で食事をしている時もそうですし。お父様とお母様の前では少し隠れてはいますが、私達にはお見通しです!」

 

 

そうだったのか………俺、顔に出やすいとは言われた事あるが、そういうのもあったのか。

 

 

柊「あっ!でもだからって変に顔に出したり、隠したりしなくても良いからね!私達はその顔の、普段通りの八幡君が好きなんだもん♪」

 

八幡「そ、そうか………」

 

 

改めて言われると、照れ臭い………

 

 

柊「あっ、次を食べさせないとね!」

 

八幡「え?いや、自分で食え「八幡さんはまだ左腕を上手く使えません。なので私達が食べさせます。」いや、右手普通に使え「はい、八幡君、あ〜ん♡」ちょっと?わざとか?わざと聞かないようにしてるのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「今日の学校も終わりぃ〜♪八幡君帰ろ……あっ、今日月曜日だった。」

 

八幡「いや、平塚先生から怪我が完治してからで良いって言われてるから、今週と来週の部活は休む予定だ。何かあったらアイツ等の方から俺に言ってくんだろ。」

 

柊「やったぁ〜♪八幡君と帰れる〜♪右手も〜らいっ!えへへ〜♪」ギュ~!

 

涼風「では左手を………///」キュッ

 

柊「じゃあ家に向かってしゅっぱ〜つ♪」

 

 

あぁ、これだ………これが何もない、ただの平穏な、俺の求めていた生活だ。漸く戻ってきたんだな……おかえり、俺の平穏。

 

 



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険悪なワケ

 

 

八幡side

 

 

翌日の学校。登校してきたは良いものの、やはり昨日と同じで教室内の雰囲気は良くない。俺は別にどうでもいいが、これが続くようだと流石に黙ってはいられない。少し誰かに聞いてみるか………まぁ、俺が事情を聞ける人間なんて、由比ヶ浜、戸塚、川………上?くらいだけどな。柊と涼風は知らないって言ってたし。

 

 

八幡「よう戸塚、少しいいか?」

 

戸塚「あっ、八幡。どうかしたの?」

 

八幡「いや、俺が来てからの学校というか、このクラスの雰囲気おかしくね?なんかあったのか?」

 

戸塚「………僕もよく分からないんだけど、三浦さんが葉山君達に対して何か怒ってるみたいなんだ。僕も直接聞いたわけじゃないから分からないんだけど、見れば分かるでしょ?いつも一緒に居る筈なのに、集まってる場所に行こうともしないんだ。」

 

 

成る程、この険悪な雰囲気の原因は三浦………というよりも葉山グループか。よくもまぁこの短期間でこんなにもトラブルを引き起こせるもんだ。

 

 

八幡「お前も理由は知らないんだな?」

 

戸塚「うん、突然あんな雰囲気になってたから皆驚いてるくらい。僕達も知りたいくらいなんだ。」

 

八幡「そうか………」

 

戸塚「八幡は病院から退院して昨日が久しぶりの登校だったもんね。知らないのも無理はないよ。先週の………水曜日か木曜日からなんだ。」

 

八幡「もう1週間って事か………早く何とかしてくれないもんかね。」

 

戸塚「あははは………」

 

 

だが実際にこう思っている奴は少なくない筈だ。ただでさえクラスの女王様が不機嫌丸出しなんだ、無関係な奴からしてみれば迷惑でしかない。

 

だがそれ以前に葉山の奴は何してんだ?戸塚から聞いて分かった事だが、この問題はアイツが解決するべき問題だ。それなのに何故1週間も放置している?

 

 

八幡「………まっ、俺が幾ら知恵を絞ったとしても考えるだけ無駄か。」

 

 

きっと斜め下の問題だろうし。

 

 

ーーー昼休みーーー

 

 

八幡「ふぅ……ご馳走さん、今日も美味かった。」

 

柊「当たり前っ♪八幡君だけに分かる愛情をい〜っぱい注いであるからねっ♡」ダキッ!

 

 

あの事件以来、柊は俺にもっと依存するようになってしまっていた。まぁ無理もないとは思っている、目の前であんな事が起きたんだしな。それに俺でなくとも、恋人が目の前で大怪我を負った後は、看病とかをしたくなるもんだと思う。

 

 

八幡「悪い、少し飲み物買ってくる。何か欲しいのあるか?」

 

涼風「ではご一緒します、八幡さん。お姉様は待っていて下さい。」

 

柊「涼風〜、もしかしてアピール?」

 

涼風「お姉様という恋人が居ますのに、何故私が八幡さんにアピールをしなければならないのですか?私にとって八幡さんは大事な義兄です。」

 

八幡「こんな場所でそんな事は言わなくていいから。んで柊、何か飲みたいのはあるか?」

 

柊「うぅ〜ん……じゃあお茶でいいよ。」

 

八幡「お茶な。じゃあ行ってくる。」

 

涼風「すぐに戻って参りますので。」

 

柊「はぁ〜い♪」

 

 

ーーー自販機ーーー

 

 

八幡「柊のは聞いたものの、俺は何にするか。」

 

涼風「マックスコーヒーではないのですか?」

 

八幡「今は違う気分でな。普段だったら迷わず一択なんだが………」

 

涼風「迷わないんですね………」

 

 

千葉のソウルドリンクだぞ?迷う必要が何処にあるんだ?むしろ千葉県民はもっと飲むべきだ。

 

 

葉山「ヒキタニ君、少しいいか?」

 

八幡「………葉山?」

 

葉山「話を聞いてもらえないか?」

 

八幡「面倒事はゴメンだぞ?ましてや、今クラスの話題になってる三浦関係ならもっとゴメンだ。」

 

葉山「そこを何とか頼めないか?」

 

八幡「却下だ、自分で何とかしろ。そもそもお前等の問題に何で俺が首を突っ込まないといけねぇんだよ。第一、俺はまだ病み上がりの状態なんだ。疲れる事はしたくない。」

 

葉山「………修学旅行の告白の事が、優美子にバレたんだ。」

 

 

なんか急に勝手に語り出したんだけど?え、俺もう飲み物買って行っていいかな?いいよね?誰も聞くなんて言ってねぇし。

 

 

八幡「あっそ。じゃあ俺はコーヒー牛乳でいいや。涼風は何にする?」

 

涼風「私はお姉様と一緒のお茶にします。」

 

八幡「そうか、じゃあ「比企谷、俺の話聞いているのか?」………何だよ?俺は聞くなんて一言も言ってねぇぞ?お前が勝手に話し始めたんだろうが。勝手に人のせいにするな。」

 

 

それにコイツ、俺の苗字の呼び方知ってんじゃねぇかよ。分かっててあの呼び方してたのかよ、最低じゃねぇか。

 

 

葉山「だからといって、人の話を無視するのはどうなんだ?」

 

八幡「知るか、勝手にやってろ。行くぞ涼風。」

 

涼風「はい。「夜十神さんからも、比企谷に何か言ってくれないか?」私から八幡さんにいう事は何もございません。失礼致します。」

 

葉山「………」

 

 

ったく、俺を何だと思ってるんだアイツは?カウンセラーじゃねぇんだぞ?悩み事ならネット掲示板にでも書いとけ。

 

 

涼風「八幡さん、よろしかったのですか?」

 

八幡「話、聞いた方が良かったって?」

 

涼風「いいえ、とんでもありません。私もあの方のお話は聞きたくありません。八幡さんの態度から察するに、あまり好印象をお持ちではないようなので。八幡さんが嫌いな方は、私も嫌いです。」

 

八幡「俺自身が嫌いだと言ったら?」

 

涼風「………その質問は卑怯です。」ジト~

 

八幡「ごめんなさい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




葉山ァ………


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三浦の想いとデートの続き

 

 

八幡side

 

 

ったく、あの野郎は何だったんだ?三浦と仲違いしてるから何だってんだよ?そんなの俺の知った事じゃねぇよ。第1、俺には全く、何の関係のねぇ話だし。はぁ………アイツがあんな調子だと、あのグループすぐに崩壊するぞ。どうでもいいけど。

 

 

三浦「ちょっとヒキオ。」

 

八幡「?……三浦か。」

 

三浦「ちょっと顔貸してくんない?」

 

八幡「………」

 

 

葉山を追い返したと思ったら、今度は女王様かよ………いつから俺はこんな風になったんだ?

 

 

八幡「……涼風、柊には野暮用だって伝えといてくれ。少し行ってくる。」

 

涼風「………わかりました。」

 

八幡「悪りぃな………で、何だよ?」

 

三浦「さっき、自販機の前で隼人と話してるとこ見てた………何話してたん?」

 

八幡「別に何も。お前等が喧嘩してるのを聞かされただけだ。聞くとも言ってねぇのに勝手に喋り出してな。まぁ殆ど聞いてねぇけど。」

 

三浦「……ヒキオも知ってんだよね?修学旅行の告白の事。」

 

八幡「まぁな、俺も部活で少し噛んでるからな。けどお前は何処でそれを知ったんだ?」

 

三浦「結衣が偶々1人でブツクサ言ってるところを聞いただけ。」

 

 

おいおい、盗み聞きかよ………それと由比ヶ浜も何やってんだよ。よりにもよって1番聞かれたらまずい奴に聞かれてるじゃねぇかよ。

 

 

八幡「そうか………で、それでお前はあのグループから距離置いてるってわけか?不機嫌なオーラダダ漏れで。グループ以外の奴等からすればいい迷惑なんだが?」

 

三浦「………それは反省してるし。けど、あんな事してたなんて知らなかったし………」

 

八幡「人には隠し事の1つや2つあんだろ。今回はそれが偶々アホの独り言でバレちまったってだけだ。けどお前どうすんの?」

 

三浦「……隼人と話してみる。答えによってはグループ抜けるかも。」

 

八幡「そうか………」

 

三浦「………ねぇヒキオ、あーしどうしたらいいと思う?」

 

八幡「そんなの俺が知るわけねぇだろ。お前がしたいようにすればいいんじゃねぇの?あのグループと居たけりゃ許せばいいし、もうたくさんだと思ったら抜けりゃいいし。お前の自由だろ。」

 

三浦「………」

 

八幡「んじゃ俺はもう行くからな。」

 

 

はぁ………まさか事の発端が由比ヶ浜とは予想外だった。アイツ独り言とはいえ何してんだよ。

 

 

ーーー放課後ーーー

 

 

柊「今日の学校も終わったね〜!じゃあ八幡君、今日も家に直行?」

 

八幡「………この前の続きってわけじゃねえけど、ららぽに行かないか?大して見て回れなかったし、ちょうどいい時間だしな。」

 

柊「あっ、それ賛成!」

 

八幡「言い出しっぺの俺がいうのもアレだが、事件現場に行くようなものだぞ?抵抗無いのか?」

 

柊「悪いのはあの悪霊であってららぽは悪くないもん!だから平気♪」

 

八幡「そ、そうか………涼風はどうだ?」

 

涼風「お2人がよろしいのなら、私はそれにお供します。」

 

柊「よしっ、決まりっ!じゃあららぽーとにレッツゴー!!」

 

 

ーーーららぽーーー

 

 

柊「特に何事もなくやってるみたいだね。」

 

八幡「暫くは閉店してたんだろうが、立て直しが早いな。」

 

涼風「八幡さん達はこの場所で何をしていたのですか?やはり本屋さんに行っていたのですか?」

 

八幡「流石だな、正解だ。まぁもっと言うと、雑誌のインタビューを受けてから本屋に向かったんだよ。まぁこれと言って欲しい本は無かったから何も買わなかったけどな。柊は料理の本を買ったけど。」

 

柊「そうそうっ!それで雪ノ下さんのお姉さんとバッドエンカウントしちゃって付き纏われてたんだよね〜………はぁ、あの人本当にしつこい。」

 

 

やはり柊は雪ノ下さんの事が苦手……いや、嫌い?少なからず好印象は持っていないだろう。まぁ俺もあの人にはあまり良い印象は持ってねぇけどよ。

 

 

涼風「そ、そうなのですか………それで、その後は?その後何をするかは決めていたのですか?今日はそこから始めては如何ですか?」

 

柊「あの時は………そうそう!洋服屋さんを回ろうって話になったんだ!それで私と八幡君がペアルックで歩こうって!」

 

八幡「目立つのは嫌だ。」

 

柊「って八幡君が言ったところに雪ノ下さんが現れたんだ。だから今日はお洋服屋さんに行こう!あっ、ちゃんとメンズの所にも行くからね!」

 

八幡「………じゃあ俺、ちょっとATMに行ってくる。お金下ろしてくるわ。」

 

涼風「あぁ、そうでしたわ………お父様から頂いた口座があるんですものね、八幡さんには。」

 

柊「実際お父さんからしてみれば端金だけど、八幡君みたいな一般人からしてみれば大金だもんね。確か500万円だったよね?」

 

涼風「はい。幾ら八幡さんがお気に入りの、未来の義息子だとお認めになられているからといって、少し羽目を外しすぎている気がするのは、否めませんね。」

 

柊「お父さん調子に乗ると、分かりやすいもんね。それで分かりやすいぐらい勝負事に弱くなるもんね。この前の八幡君とのビリヤードが良い例だよね。」

 

八幡「悪い、待たせた。」

 

 

操作初めてだったから少し手間取ったが、引き出し方は分かったからこれで問題はないな。

 

 

柊「ううん、全然大丈夫♪じゃあ行こっか!」

 

 

そしてその1日は柊と涼風の服選びと、俺の服選びをしてかなり盛り上がった。そしてペアルックだが………1着だけ買う事になった。案外カッコ良かったし、柊が着ても違和感なかったから。

 

 

 



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依頼内容

ウマ娘楽しい〜!!!苦節2年、やっとリリースされたアプリだからメッチャ楽しんでます!!

アニメも絶賛視聴中であります!!!




 

 

柊side

 

 

♪〜昨日は楽しかったなぁ〜。八幡君とこの前の続きが出来たし!涼風も一緒だったけど、楽しかったから私は全然気にしない!けど次は2人きりが良いかなっ♪むふふ〜その時は何をしようかなぁ?

 

それと昨日のお昼休みに八幡君の野暮用を聞いたんだけど、勿論葉山君もだけど、誰が1番悪いかって言ったら由比ヶ浜さんだよね………八幡君じゃないけどため息ついちゃうよ。

 

八幡君も少しだけ気になってるみたい。私達と居る時もチラッと向こうの様子とか気にしてるから。とは言っても、三浦さんを除いた葉山君達はいつも通り。三浦さんに話しかけようとする人すら居なかったんだけどね、あのグループも三浦さんも仲直りする気あるのかなぁ?

 

 

柊「ねぇねぇ、八幡君からは事情を聞いたけどさ、アレって仲直りする気あるの?」

 

八幡「さぁな、それはアイツ等次第だろ。まっ、あの中にはバレる原因になった奴と、この状況を作った原因になった奴が居るからな。本人達は分かってないだろうが、話しかけづらくはあるだろうな。」

 

涼風「心の準備もあるのではないでしょうか?今は生徒も多いですから、人の少なくなる放課後に話をする可能性もあります。」

 

八幡「まっ、俺等には関係のない事だ。」

 

柊「それもそっか♪」

 

涼風「そうですね。」

 

 

それよりも今日のデートコースについて考えないとっ♪昨日はららぽーとに行ったから別の所が良いよね。でも千葉にららぽーと以外に何処か面白そうな場所を、見繕っておかないとね!

 

 

ーーー放課後ーーー

 

 

平塚「比企谷、少しいいかね?」

 

八幡「?なんすか?」

 

平塚「君にも一応耳に入れておいた方が良いと思ってな、昨日来た依頼の事を話したいんだが………時間は今空いてるか?」

 

八幡「……俺は大丈夫ですが、柊が何て言うか。」

 

柊「八幡君失礼だなぁ!私だって我慢くらい出来るよ!出来るもん!」

 

平塚「何なら君達も一緒にどうだね?他人に口外しないという条件を守ってくれるのなら、比企谷と一緒に居る事を許可しようじゃないか。」

 

柊「約束します。」

 

八幡「即答かよ………」

 

涼風「お姉様に迷いがありませんでした。この場合、流石と言うべきでしょうか?それとも呆れるべきでしょうか?まぁ兎も角、私もご一緒させて頂いてもよろしいでしょうか?」

 

 

ーーー生徒指導室ーーー

 

 

平塚「此処なら邪魔は入らないだろう。さて、早速だが昨日来た事について話そう。君達2人も頼むぞ?」

 

 

平塚先生はそう言って、昨日奉仕部に来た依頼の説明を始めた。要約すると、1年生の一色さんって人が生徒会会長に出馬する事になってるみたい。しかも本人の意思ではない形で。クラスの人や担任からも推されているらしくて、どうにかして欲しいみたい。

 

しかもこれは本人の希望みたいで、落選にはなりたくないみたい。どうでもいいけど、その子の面子ってヤツなのかな?

 

 

八幡「………また面倒な依頼ですね。そんな無茶な依頼、あの2人受けたとか言いませんよね?」

 

平塚「現在保留中だ。流石にこれには雪ノ下も考えざるを得ないようだしな。いや、むしろ普通この状況は考えてしまうさ。」

 

八幡「当たり前でしょう。それよりもその1年も勝手に出馬されるとか、何やったらそんな風になるんです?」

 

 

あっ、それ私も思った。どうして何だろう?

 

 

平塚「それは知らん。」

 

八幡「そこも聞きましょうよ………」

 

平塚「依頼に関係ないだろう。まぁという事だ、君ならどうする?」

 

八幡「どうするもこうするもないでしょう。担任の教師が勝手に出馬させてる時点で、これはもう俺達生徒で解決するものではありませんよ。教頭先生か校長先生にでも言えばいいじゃないですか、生徒会会長の選挙に知らぬ間に勝手に出馬されちゃいましたって。」

 

平塚「成る程、それが君の意見か………分かった、取り敢えず今日も来る事になっているし、今も来ているだろう。少し今のも話してみよう。」

 

八幡「それで終われば良いですけどね。」

 

平塚「そうだな。時間を取らせて済まなかったな、もう帰っていいぞ。」

 

 

その言葉を聞いて、私達はすぐに帰り支度をして玄関先まで向かった。

 

 

ーーー校門前ーーー

 

 

八幡「まさかあんな依頼が来てたとはな………この学校は面倒な事が絶えないな、暇を弄んでる奴にはちょうどいい学校かもしれないな。」

 

柊「けど八幡君にとっては?」

 

八幡「すげぇウゼェ………面倒からやって来るから勘弁してもらいたい。」

 

柊「あははは、八幡君だったらそうだよね!」

 

涼風「けれど八幡さん、お疲れではありませんか?退院明けすぐの学校だというのに、色々な事が八幡さんに舞い込んできていますから………」

 

八幡「そうだな………正直、学校では気が休まる時間というのが昼休みくらいしかない。それ以外は学校が終わるまで『誰も来んなよ。』って切に願ってるくらいだ。特に葉山とか。」

 

涼風「でしたら今日は早めにお布団に入ってお休みになられた方が良いかもしれませんね。」

 

 

あ〜あ、今日のデートは無しかぁ………けど仕方ないよね。流石に今の状態で毎日連れ回すわけにはいかないもんね。

 

 

八幡「………そういや、俺が2人の家に行った事はあったが、逆は無かったな。良かったら来るか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人生初の彼氏の家っ!!!!!

 

 

 

 

 

 



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比企谷家のご案内

 

 

柊side

 

 

八幡君の家………八幡君の家………八幡君の家………八幡君の家………あぁ〜考えただけでワクワクしちゃうしドキドキもしちゃうよ〜!!だって八幡君の家だよ!?彼氏の家だよ!?八幡君は私の家に何度か来た事あるけど、逆はないから今日が初めてなんだよ!?なんか………少しだけ調子が狂っちゃうよぉ!?

 

 

涼風「……?お姉様、何故にお1人で百面相しているのですか?」

 

柊「ち、違うよ涼風!これはただの緊張を解す為の行動だから気にしないの!!」

 

八幡「あぁ〜言ってなかったか?俺の両親平日は居なくて全く会わないから。だから家にいるのは俺と小町とカマクラくらいだ。」

 

柊/涼風「カマクラ?」

 

八幡「ウチで飼ってる猫の名前だ。」

 

柊「へぇ〜八幡君猫なんて飼ってたんだ!知らなかったよ〜。」

 

八幡「まぁ、言う必要もないと思ってたから。よかったら遊んでやってくれ。」

 

 

ーーー比企谷家ーーー

 

 

柊「つ、ついに来てしまったか………」

 

八幡「それ、今までの俺の台詞なんだけど?」

 

柊「私の家はいいの!!」

 

八幡「そうか?初めて行った時なんて間違えたかと思ったんだからな?豪邸で庭広いし、出て来る物は全て高級品。料理もめちゃ美味で高級食材をふんだんに使ってくるしで、おもてなしされまくりだったんだが?」

 

涼風「す、すみません………ですがお父様とお母様のお気持ちも汲んであげてください。お姉様を救ってくださった方へのせめてものお礼なのですから。」

 

八幡「まぁ、今はもう慣れたけどな。」

 

 

そして八幡君は家の扉を開いてただいまと言った。私達もそれに倣って………

 

 

柊/涼風「お邪魔します。」

 

八幡「ん?小町居ないのか……まぁいい。2人共、こっちが居間だから。」

 

 

おぉ〜これが普通の家庭のリビングなんだ〜……あっ、キッチンと繋がってるんだ!私達の家に比べるとやっぱり狭いけど、なんか居心地が良い。安心するような感じっていうのかな?

 

 

涼風「此処が普段、八幡さんが暮らしている家なのですね。やはり私達の住んでいる家とは大分違いますね。」

 

八幡「まぁそう思うのが当然だな。けどおじさん達の財力なら、あれ以上の家とかを買う事も建てる事も可能だと思うけどな。まぁおじさんとおばさんの性格上やらないとは思うけど。」

 

柊「そうだね。お父さんって派手なのあまり好きじゃないしね。それなのに、人の為に使うお金には惜しまないんだよね〜。特に八幡君。」

 

八幡「そうだな、そうだったわ………家1軒あげるなんて言われた時は何の冗談だ?って思ったけど、家の資料渡された時、この人マジじゃんって思った程だ。今も冗談半分で聞いてくる時あるけどよ、アレって冗談だと思う?それとも本気か?」

 

涼風「お父様とお母様の事ですので、きっと半分半分かと思われます。八幡さんになら散財してもいいとお考えなのではないでしょうか?」

 

柊「けどこの前言ってたよ?『八幡君が何も欲しがらないから、何も出来る事がない。どうしたらいい?』って。何かしてあげたら?」

 

八幡「いや、それ以前に俺って銀行のカードと500万円貰ってるんだけど?」

 

 

そんな事を八幡君と涼風の3人で談笑をしながら家の居間でお茶菓子と飲み物を頬張りながら過ごしていた。そして私は意を決して言ってみた………

 

 

柊「八幡君、私八幡君の部屋に行ってみたい!」

 

八幡「俺の部屋?まぁ別にいいけど。」

 

柊「………八幡君、エッチな本を隠すのなら時間をあげるよ?」

 

八幡「そうか。じゃあ片付けてくるから柊は待っててくれ。涼風〜行こうか。」

 

柊「待って待って待って待って!!嘘っ!!嘘だから仲間外れにしないでよ〜!!」

 

八幡「最初から分かってるよ……けど冗談でもそういうのは言わないように。いいな?」

 

柊「はい!」

 

八幡「んじゃ行くぞ、一応飲み物と茶菓子も持ってくか。」

 

涼風「お持ちします、八幡さん。」

 

八幡「いい、此処では2人が客人なんだからな。」

 

 

ーーー八幡の部屋ーーー

 

 

柊「こ、此処が噂の………」

 

涼風「こ、此処が伝説の………」

 

柊/涼風「八幡君(さん)の部屋っ……!!」

 

八幡「噂も伝説もないが、俺の部屋だ。」

 

 

わぁ〜本がいっぱい……あっ、パソコンもあるんだ!でも意外と物は少ないんだ。あっ、あれは……

 

 

柊「ベッド………」

 

八幡「ん?なんか言ったか?」

 

柊「ベッドがある………」

 

八幡「?………そうだな。」

 

柊「ダイブしていい?」

 

八幡「何で?」

 

柊「したいから。」

 

八幡「してどうするんだ?」

 

柊「八幡君の匂いを嗅ぎながら八幡君を全身で感じたい。そしてお布団の中に包まりたい。」

 

八幡「涼風、お前の姉を何とかしてくれ。」

 

涼風「は、八幡さんのベッド………は、入りたい!で、ですが八幡さんの許可なしでは……でも入りたい、凄く入りたいです………」

 

八幡「涼風、お前もなのか………はぁ、分かったよ。入りたいんだったら入ればいい。特に何もないが、それでも良いのならな。」

 

柊「っ!!?ホ、ホント八幡君!!?」

 

八幡「これに一々反応してたら、俺が疲れるだろうしな。好きに堪能しとけ。俺のベッドなのに俺が言うのも変な感覚だが。」

 

 

八幡君の許可が出た………ならっ!!

 

 

柊「とうっ!!」

 

 

入らないなんて選択肢はないよねっ!!!

 

 

 

 



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混沌と勝負

 

 

八幡side

 

 

2人が俺のベッドに入りたいと言ったから許可を出したわけだが、柊は突然ダイブをして俺のベッドに潜り込んだ。あのさ、いいんだよ?言ったのは俺だから今更無しにするとかはないけどさ、普通やる?いつもそのベッドで寝てる本人の前でそういう事する?

 

 

柊「すぅ〜………んはぁ〜………八幡君の匂いがいっぱぁ〜い♡えへへ、えへへへ〜このまま私も八幡君になりたいなぁ〜♪」

 

八幡「何を言ってるんだ?」

 

涼風「うぅ……お姉様、1人で独占するなんてズルイです………」

 

八幡「いや、そんな事で張り合うなよ………」

 

涼風「ですが………っ!」

 

 

すると涼風は何かを見つけたのか、視線を何かに集中させていた。ベッドなのは分かったが、柊が布団を掛けながら丸まっている………のを見ているわけではなさそうだ。もう少し上側………枕を見ているような?

 

 

涼風「………」スタスタ

 

八幡「………」

 

 

涼風は俺の枕を手に取った。何故か少し丁寧に持っているんだが………

 

 

涼風「………すぅ〜。」

 

八幡「やっぱりか………」ガクッ

 

涼風「んっ………とてもクセになる香りです///私の大好きな、近くに居るだけで幸せになれるような、とても良い香りです///」

 

柊「このまま八幡君がベッドに来てくれれば、私は抱き枕にされて………良い、凄く良い。ギュッてして貰ってナデナデも………」

 

涼風「私が八幡さんの枕になれば………八幡さんのお疲れを癒す為に頭を撫でたりも出来ますけど、もし八幡さんが嫌でなければ………お、おでこに……キ、キスなんかも………/////」

 

 

ヤバいこの2人、俺の寝具の匂い嗅いでるだけでとんでもない事言い始めてる。コレ、引き剥がした方がいいのか?元の世界に連れ戻すべきか?

 

いや、でも今声を掛けたら俺にも被害が出そうだな………ここはもう少し様子を見るか。いつ正気を取り戻すのかも気になるしな。

 

 

ーーー数十分後ーーー

 

 

柊「すっごく幸せ時間だったよ……今でも八幡君に抱き締められているような錯覚が………」

 

涼風「八幡さんの香り、とても堪能しました。ところで、枕のシーツを私に………」

 

 

やや危険な思考はまだ残ったままだが、幾分かはマシになったな。しかしまぁ、ただのベッドでよくこんなにもカオスな状態になれるもんだ。俺には無理だ。だって男がやったらキモいだろ?やる予定なんて一生ないとは思うけど。

 

 

八幡「まぁ俺の部屋に来たところでできる事なんて限られてるから、面白くはないだろう?今のだってただベッドの匂いを嗅いだだけだしな。」

 

柊/涼風「ううん(いいえ)、最高だった(でした)。」

 

 

………もうそれでいいや。

 

 

柊「あっ、ねぇねぇ!久しぶりにさ、中学の頃にやってたトランプとかしない?久しぶりにやると楽しいかもしれないしね!」

 

涼風「いいですね、やりましょう。」

 

八幡「じゃあ何やる?ババ抜き、ジジ抜き、大富豪、大貧民、ポーカーとかも出来るぞ?」

 

柊「じゃあ最初は簡単なババ抜きでもしない?そして最下位の人は………1位の人の命令を聞く事にしよっか。そのくらいのスリルが無いとね。」

 

八幡「言っておくが、無理難題な命令とかするなよ?常識の範囲内での命令で頼むぞ?」

 

柊「分かってるよ〜じゃあもし私が1位で八幡君が最下位の時は、八幡君が私の事をギュッと抱き締めてね♪」

 

 

命令って先に言っていいのか?まぁいいか、楽しくゲーム出来ればそれで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「ほい、今度は俺が1位だな。柊、今の所良いとこ無しだぞ?全試合連続で2位なんだからよ。」

 

柊「分かってる!次は絶対に負ける!!」

 

涼風「次も頂きます!」

 

 

なんだかんだババ抜きをしているのだが、柊は全ての戦いにおいて順位が2位で終わっているのだ。1位と最下位は俺か涼風のどちらかが獲るという事になっていた。だから柊は俺か涼風が罰ゲームを受けている所を見ている事しか出来ないでいた。

 

 

涼風「お姉様の勝負弱さはお父様から完全に受け継がれていますね。まさか1回も勝てないだけでなく、最下位にもなれないなんて………欲を出し過ぎたのでしょうか?」

 

柊「そんな事言ったら、八幡君と涼風は2人だけで罰ゲーム盛り上がってるじゃん!私だってやりたいのに、2位で上がっちゃうんだもん!」

 

八幡「それもまた微妙な所だな………」

 

柊「………コレかなぁ。あぁ〜もう!!何で揃っちゃうのかなぁ!?私後2枚だから次揃ったらもう終わりだよ!?また2位だよ!?普段だったらシルバーカラーなのに、このゲームだと2位がドブみたいな色に見えちゃうよ!」

 

 

例えが悪いな………このゲームでの2位のカラーがドブって何?

 

 

涼風「ではコレを………揃ってしまいましたか。」

 

柊「よしっ!!次のカードで外れれば私にも勝機がある!!お願いだからハズレを引きたい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「うぅ〜何でぇ〜!!?」

 

涼風「八幡さん、痛くありませんか?」

 

八幡「あぁ、ちょうどいい。」

 

柊「全部2位!!見せ場も何も無かったよぉ〜!!」

 

 

柊はあの後も全て2位を獲り、俺は今涼風の命令で耳掃除をしてもらっている。

 

 

柊「涼風ばっかりズルい!!」

 

涼風「コレばっかりは運と実力ですわ、お姉様。私に言われても困ります。」

 

柊「うぅ〜……」

 

 



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普通の家とメール

 

 

柊side

 

 

あ〜ぁ、結局あの後1回も勝てなかったよ。私もやりたかったなぁ………耳掻き、膝枕、あ〜ん、ギュッってしたりとか色んなのをしてた。おのれ涼風めっ、勝負とはいえ八幡君にそんな事が出来るなんて羨ましい!こんな事になるなら罰ゲームシステム入れるんじゃなかったよ〜!

 

 

涼風「お姉様?如何しましたか?」

 

柊「涼風がすっごく羨ましいって思ってただけ。」

 

涼風「?」

 

柊「だって八幡君に色んな事してたじゃん!私もやりたかったのに〜!納得はしてるよ?罰ゲームって言ったのは私だからさ。けど私も1回くらいやってみたかったなぁ〜って。」

 

涼風「その事でしたか………ですが何故、勝負をしようと?お姉様も理解していると思いますが、お姉様は駆け引きとかがあまり得意な方ではないでしょう?なのに何故?」

 

柊「えっと、八幡君のベッドで匂いを嗅いでたら調子に乗っちゃって………」

 

 

だって八幡君の匂いなんだよ?八幡君の匂いがこれでもかってくらい染み付いたベッドなんだよ?行くに決まってるじゃん?あったら普通飛びつくじゃん?あの匂いきっと麻薬以上だよ、うん。

 

 

涼風「成る程、でしたら仕方ありませんね。」

 

柊「うん、八幡君の匂いだから仕方ない。」

 

涼風「しかし、今日初めて八幡さんの家に行きましたが、本当の一般家庭の一軒家はあんな風になっているのですね。私達の住んでいる空間が如何に広いかが分かりました。そしてあの間取りの中で生活しているのだと感じました。そう考えると、私達の家はとても広々としているのですね。」

 

柊「そうだね、私も同じ事思ってた。家の半分もないくらいの大きさの家に住んでるんだなぁって。でもあれが普通なんだよね〜。私達も一応、金銭とか常識とかはお父さん達から教わってるからその辺は大丈夫だと思うけど、こういうのは実際に見てみないと分からないからね〜。けどマンションとかアパートに住んでる人達はどうなんだろうね?」

 

涼風「あの大きな建物の中がどんな風になっているのか、気になりますね。色々と調べてみませんか?千葉のマンションやアパートの事を。」

 

柊「良いねそれ、面白そう♪」

 

 

やっぱり2階まであるのが普通なのかな?それとも1階まで?そういうのも考えると、ちょっぴり楽しくなっちゃうよね。でもアパートとかってドアも沢山あるから………あはは、どんな風になってるんだろう?

 

 

柊sideout

 

八幡side

 

 

家の中に入った時もそうだったが、入る前からも少し驚いた様子だったな。今まで普通の家に入った事が無い2人からしてみれば驚きだったろうな。まぁ俺もあんなデカい家に行った時は驚いたもんだ。『え、マジで此処に住んでるの?』って思っちまったし。そのくらい俺にとっても驚きだった。まぁこれでイーブンだろ。夜十神家は普通の日には普通の食事を摂っているが、あの部分はウチじゃあどうしようもねぇよな。俺も最近あの家の普通の料理を食べたけど、そこらの家と変わらん。だから飯に関しては大丈夫だ、エラい高級食材使われない限りは。

 

 

小町「ただいま〜あれ、お兄ちゃんがそんな所にいるなんて珍しいね?どったの?」

 

八幡「さっきまでお客が来てたからな、飲み物と茶菓子出してたからその片付けだ。それよりもお前、今日は遅かったな。」

 

小町「勉強会開いてたから。所でそのお客さんって誰なの?小町の知ってる人?」

 

八幡「柊と涼風だ。俺が何回もあっちの家に世話になってるから、今日はウチに遊びに来たらどうだって誘っただけだ。」

 

小町「えぇ〜柊さん達来るのなら言ってよ〜。そしたら小町も家に帰って来てたのに〜。」

 

八幡「お前は受験勉強してろ。それに………」

 

 

取り繕っていたとはいえ、柊の目には俺の家族に対しても一切の興味を抱いていなかった。ただの恋人の家族って認識だろう。たとえ小町が柊と仲良く出来ていたとしても、それは柊の表面上で仲良くしてもらっているという事でしかない。小町にもその事情は話してはいるが、それだけだしな。

 

 

小町「?何、お兄ちゃん?」

 

八幡「ん?いや、何でもない。」

 

小町「そっか。じゃあ小町は晩御飯作るから、お兄ちゃん後片付け終わったら教えてね〜。」

 

八幡「おう。」

 

 

片付けが終わって小町に知らせてから、俺は居間にあるソファに寝転がる。そして近くに置いてあったスマホを確認すると、柊と涼風から1件ずつメールが届いていた。

 

 

_____________________________________________

 

・To:比企谷 八幡

・From:夜十神 柊

 

 

内容:八幡君、今日はありがとう♪とても楽しかったよ!!また遊べる日があったら、誘ってね♪それと、今度は八幡君のYシャ………ううん、何でもないの!また誘ってね!

 

_____________________________________________

 

 

アイツ、絶対に今度はYシャツの匂いも嗅がせて欲しいっていう気だっただろ。なんか少しずつ変態色が出てきてるんだが………俺、少し悲しい。

 

次は涼風だな。

 

 

_____________________________________________

 

・To:比企谷 八幡

・From:夜十神 涼風

 

 

内容:本日はお招きありがとうございました。とても幸せな時間を過ごせました。機会がございましたら、是非お誘い下さい。私達も八幡さんが我が家に来るのを心よりお待ちしております。

 

_____________________________________________

 

 

涼風らしい丁寧な言葉遣いだな。柊、お前も涼風のこういう所を見習って「ピロリンッ♪」だな……ん?また涼風から?

 

 

_____________________________________________

 

・To:比企谷 八幡

・From:夜十神 涼風

 

 

内容:その、できれば次は私が八幡さんのベッドに入りたいです………

 

_____________________________________________

 

 

撤回します、柊さん。やっぱり貴女の妹です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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一先ず

 

 

八幡side

 

 

柊と涼風が我が家に来た次の日。2人はいつも通り俺の家へと迎えに来てから一緒に登校するという1種のルーティーンをしている。俺もこれにはもう慣れた。慣れたっつってもようやく1ヶ月って所だけどな。だってその前は誘拐強姦魔だったり、唯我独尊野郎だったりで歩けなかったからな。

 

 

柊「今日も楽しく過ごせれば良いね!」

 

八幡「そう祈るばかりだ。三浦が暴発してなけりゃいいけどな。」

 

涼風「八幡さんは昨日の事をまだ憂いているのですか?ご自分の事ではないのに?」

 

八幡「俺等には関係ない事だが、クラスメイトではある以上面倒な事はついて回る。特に今回のような事がな。三浦に限らず、葉山も俺には関わらないで欲しいと思っている。アイツの持って来る悩みは1つ1つが一々面倒過ぎる上に拗れ過ぎてる。まともなのが来た試しがねぇしな。」

 

柊「でもさ、今もその状態なんでしょ?なら尚更八幡くんの所に来るんじゃないの?」

 

八幡「………言うなよ。」

 

 

勘弁してくれよ………アイツの悩みなんてもう聞きたくもねぇよ。チェンメが1回目だが、修学旅行の2回目でもう嫌になった。3回目なんてゴメンだ。

 

 

ーーー2-F扉前ーーー

 

 

八幡「………」

 

柊「………」

 

涼風「………」

 

 

なんかもう既に始まってるんだけど。中から三浦と葉山達が話し合ってる………んじゃなく、三浦が一方的に葉山に問い詰めているのが聞こえる。俺達の聞く限りではだが。

 

 

八幡「………入る?」

 

涼風「入らなければどうしようもありませんが、流石にこの空気の中には入りたくありませんね。」

 

柊「私もかなぁ〜………」

 

 

満場一致で行きたくないって事になるな。それにクラスメイトの中にも教室外に出ている奴すら居る。流石にこの中には入りづらいのだろう。

 

 

八幡「………はぁ、仕方ない。」

 

 

俺は意を決して扉を横にズラして中に入った。やはり注目されてしまう。葉山グループも注目するが、興味なさげに目を逸らす奴もいる。その中葉山は俺の方を困ったような表情で見てるし、由比ヶ浜も何とかして欲しいという顔だった。冗談じゃねぇよ、誰が首突っ込むかってんだ。

 

 

戸塚「お、おはよう八幡。夜十神さん達も………」

 

八幡「おう、おはようさん。今日は朝から随分と騒がしいんだな。」

 

戸塚「うん。葉山君の所でトラブルみたいだね。」

 

八幡「……のようだな。」

 

涼風「この前の野暮用の時と関係が?」

 

八幡「まぁな。」

 

 

告白の事がバレた………けど、それだけだ。自分だけ知らない事が気に入らないだけであんな風になるか?流石に度が過ぎてるぞ?

 

 

三浦「なんかもうまどろっこしいし。ハッキリ言う、隼人は海老名が誰とも付き合う気がないって知ってたよね?知ってて告白の手伝いなんてしたん?」

 

 

………三浦も知ってたんだな、海老名さんが誰とも付き合う気がないって事。

 

 

戸部「は?え?ど、どういう事だべ?」

 

三浦「どうなん?」

 

葉山「いや、俺は……」

 

 

知らないなんて言うなよ?俺は京都でお前が知ってる事を聞いてるからな。割って入るつもりはないが、これで嘘をついたら自分に災いが降りかかるかもしれないからな?

 

 

葉山「あぁ、知っていた。けどそれは修学旅行の最中からだ。流石に依頼を受ける前にこの事を知っていたら、戸部に知らせているよ。」

 

三浦「………」

 

葉山「優美子、相談しなかったのは悪かったと思ってる。次からはちゃんと相談するから。」

 

三浦「………今回はそれで納得してあげるし。」

 

葉山「ありがとう優美子。」ニコッ

 

 

葉山、今のお前程薄気味悪い笑顔を浮かべてる奴は見た事ねぇよ。心の中で安心し切ってんだろうな。けど三浦の顔を見れば分かんだろ………このことに納得してないって事くらい。

 

 

まっ、空気は元に戻ったからいいか。どこまで続くのかは知らんけどな。

 

 

涼風「漸く終わったようですね。」

 

八幡「あぁ。」

 

柊「中学の時もそうだったけどさ、内輪揉めが凄い所って本当に最後まで激しいよね。だっていつまでも喧嘩してるんだもん。同じグループなのに。」

 

八幡「それはあの時が特殊だったからだ。」

 

柊「それもそっか♪」

 

 

あの頃のと今のを比べても比較にすらなんねぇよ。柊が今の障害を患って俺と家族以外の他人に全くと言っていい程無関心になったのを機に、クラス内でトップだったカーストは一気に仲が険悪になっていった。内容は『幽霊ごっこ(あんなの)流行らせたからこんな事になったんだろ!!』らしい。俺からしてみればお前等なんて五十歩百歩だ。それで1ヶ月もの間、人を使って楽しんでたのは何処の誰だって質問してやりたいくらいだ。

 

 

八幡「まっ、あの頃に比べたら今のこんなのなんて俺等からしてみれば些細なもんだ。入るのは流石に躊躇うけどな。」

 

柊「物凄く普通に言うと、どうでもいいしね。」

 

八幡「関わらないのが1番だ。さて、悪い雰囲気も無くなったし、いつも通りに過ごすか。」

 

涼風「八幡さん。今日のお弁当ですが、幾つかお姉様と一緒に新しく作った献立がありますので、楽しみにしていてください。後、デザートにプリンもご用意してあります。」

 

八幡「昼まで待てなかったら?」

 

柊「お昼ご飯抜きって言うね♪」

 

八幡「よし、耐える。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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今日のお弁当

 

 

八幡side

 

 

ーーー校庭・自販機前ーーー

 

 

八幡「……やっぱ少しだけ冷えるな。まだ10月とはいえ、もうすぐ11月だしな。あったけぇマッ缶でも買うか。」

 

 

今は授業終わりの中休みだ。少し喉が渇いたからこうして校庭の自販機まで来て飲み物を買いに来たわけだ。教室の雰囲気は幾らかマシにはなった。三浦の奴も不機嫌なオーラを出さなくなった………のだが、三浦はグループからは距離を置いている。流石に今のグループ、というよりかは葉山に疑問を抱いているのだろう。途中から来たから聞いたところしか分からんが、アイツ…葉山は三浦に1つ嘘をついている。

 

修学旅行の時に海老名が誰とも付き合う気がないと気付いたと言っていたが、アイツはその前から気付いている。あの場で三浦が海老名さんに何も聞かなかった事は、葉山にとって九死に一生を得たも同義だろう。まぁ、アイツのグループの事なんてどうでもいいけどな。

 

 

八幡「まぁ、俺は柊と涼風と居られればそれでいいし、他は………平穏だな。」

 

 

まぁ、後者に関してはもう諦めてるけどな。

 

 

ーーー昼休み・2-Fーーー

 

 

柊「さぁ八幡君、今日のお弁当は新作メニューもあるから早く食べよっ!」

 

八幡「漸く食べられる……お前達の弁当は本当に美味いからな、朝から我慢してたから美味さも格別だろうな。楽しみだ。」

 

柊「それじゃあご開帳〜♪」

 

 

おぉ〜………ん?今日は米じゃない?ていうか、サンドイッチ?

 

 

涼風「今日は洋風に仕上げてみたんです。このサンドイッチは俗に言う、BLTサンドイッチで、BLTとはベーコン、レタス、トマトの英語の頭1文字を取ったものの略語です。それと今回は軽く焼いたパンを使ってます。」

 

柊「洋風だからこっちも少し変えてるんだ〜。」

 

 

具はハンバーグ、マッシュポテト、ツナのサラダ、アスパラや人参等を野菜をベーコンで巻いた食べ物、そして………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「スクランブルエッグがあるのに、卵焼きはやっぱり外せなかったんだな。」

 

柊「私の得意料理だもん♪」

 

八幡「……ん?この卵焼き、今日は何を使ってるんだ?ネギでもほうれん草でも鰹節でもないな。見た目に変わりはないのに、なんか香ばしい………」

 

柊「おっ、流石は八幡君!そこに目をつけられるなんて、私の事よく分かってる♪」

 

 

けど何だ?さっき言ったが、見た目に変化はない。だからネギとほうれん草は無し。鰹節も食べた事あるが、こんな匂いはしなかった。何だ?こんなに香ばしく卵焼きを仕上げられる食材って何だ?

 

 

涼風「では八幡さん、お箸をどうぞ。」

 

八幡「あぁ、サンキュー。じゃあこの卵焼きから食べてみる。気になるしな。じゃあ頂きます。」

 

柊「召し上がれ〜♪」

 

 

俺は卵焼きを1つ箸で摘み、口の中へと放り込んだ。すると口の中で甘くて香ばしい味が広がった。けどこの風味、何処かで………

 

 

八幡「っ!胡麻油か?」

 

柊「正解っ!卵を解いて砂糖、本だしを入れた後にごま油も追加してからまた混ぜる。それから焼き上げるの。だから手間を1つ加えさせただけなんだ。けどこんなに美味しく仕上がっちゃう!」

 

 

確かに美味い……

 

 

柊「成功だね、涼風!」

 

涼風「はい、お姉様。今日は洋風にして正解でした。最初は和食料理の卵焼きですけど。」

 

八幡「じゃあ次はサンドイッチだな。」

 

 

………うん、これも美味い。焼いたパンが良い仕事をしてくれている。挟まれているベーコン、トマトは歯応えが無い分、パンのサクサク感とレタスのシャキシャキ感がより際立っている。それに味付けもしっかりしてる。

 

 

八幡「これも美味い!サンドイッチは食べた事あるけど、BLTってこんな味なんだな。美味い。」

 

柊「ベーコンは特製のを使ってるし、トマトも酸っぱいのじゃなくて甘味のあるのを使ってるからね。レタスもシャキシャキしてるから美味しく出来てるはず♪私達も味見したから。」

 

八幡「朝と同じ料理を食べるのか?」

 

涼風「ご安心ください。食べたと言っても、私達が食べたのはコレの半分のサイズですので。ではお姉様、八幡さんからの好評も頂けましたし、私達も食べませんか?」

 

柊「そうだね。じやあ私達も、頂きま〜す♪」

 

涼風「頂きます。」

 

 

このハンバーグも冷めてるが美味い。これ手捏ねか?こんなのを食べられるなんてな………マッシュポテトも甘いのとしょっぱいのがちょうど良くマッチしてる。ベーコンで巻かれている野菜達も良い仕事してる。どれもこれも本当に美味い。少し満たされないかもって思ってたが、結構腹にずっしりくるメニューになってる。

 

それにクラスメイトの連中も弁当が気になるのか、遠目で俺たちの事を見てる。まぁそんな目で見てもやらないけどな。コレは俺と柊と涼風の3人の弁当だからな。

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

八幡「ご馳走さん、今日も美味かった。」

 

柊「お粗末様でした。お口にあって何より♪」

 

八幡「いや、本当に冗談抜きで美味かった。和食が得意なのは知ってたけど、こういうのも作れるんだな。見た事なかったから。」

 

涼風「勉強中ではありますが、こういう簡単なものでしたら作れますので。今はまだ凝った物は作れませんが。」

 

 

いや、充分過ぎる。俺の弁当なんかでそんな気合い入れなくてもいいぞ?自分達の為なら良いけどさ。

 

 

 

 

 



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良い案と解決

 

 

八幡side

 

 

今日の学校も終わったな………さて、じゃあ今日も帰るとしますか。

 

 

葉山「ちょっといいかな?」

 

八幡「……何だよ?」

 

葉山「折り入って相談があるんだけど、聞いてもらえないかい?」

 

八幡「お前のグループの事や面倒事ならお断りだ。俺も暇じゃ無いんでな。」

 

 

嘘です、今から帰ろうとしてました。

 

 

葉山「………今朝のを見ただろ?流石にあの空気が続くのは俺でなくとも君も嫌だろ?だから君にも力を貸してもらいたいんだ。君なら何か良い案が出ると思うんだ。」

 

八幡「俺は別にクラスの空気なんてどうでもいいし、柊と涼風が居ればそれでいい。それによ、この2人が総武に来るまでボッチだった俺にそんな事を言うとはな………随分と優しくなったもんだ。」

 

葉山「………頼めないか?」

 

 

そう言って葉山は俺に頭を下げてきた。さっきの笑顔もそうだが、コイツの謝罪や感謝は基本的に軽過ぎる。俺はそんな奴の相談なんて………

 

 

八幡「断る。最初にも言ったが、お前のグループの内輪揉めや面倒事ならお断りだ。お前のグループが引き起こした問題なんだ、お前等で解決しろ。」

 

葉山「君も無関係ではないだろ?依頼を受けたんだ、なら君も「ふざけんな。」っ!」

 

八幡「あの依頼を受けたから俺も手伝え?どんだけ自分勝手な野郎なんだお前は。だからこんな下らねぇ事が起きるんだよ………っ!」

 

 

声を出し過ぎたか………少し注目されてるな。柊と涼風も俺の袖をキュッと摘んでる。

 

 

八幡「………力を貸せって言ってたな?じゃあ手っ取り早く解決出来る方法を教えてやるよ。今の関係を全部ぶっ壊せばいいんだよ。要はお前のグループ解散させろって意味だ。」

 

葉山「っ!!?比企が「それが嫌なら自分で考えろ。俺がお前等の為に動いたとしよう、それで?俺に何のメリットがある?お前が満足するだけだろ?私腹を肥やす為に俺を使うんじゃねぇよ。」………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平塚「比企谷、少しいいか………取り込み中か?」

 

八幡「いえ、今終わりました。何ですか?」

 

平塚「昨日の話だ、お前に報告しておこうと思ってな。時間はあるか?」

 

八幡「大丈夫です。生徒指導室ですか?」

 

平塚「あぁ、そこで話そう。」

 

八幡「分かりました。2人は先帰っても「一緒に行く(行きます)」いい……まっ、だよな。」

 

 

葉山のせいで先生に捕まっちまったが、まぁいいだろう。生徒会の話になりそうだが、一体どうなったんだ?面倒な展開になってなければいいんだが。

 

 

ーーー生徒指導室ーーー

 

 

平塚「入りたまえ。」

 

八幡「失礼します。同じ場所でいいですか?」

 

平塚「あぁ。」

 

 

………ん?

 

 

めぐり「あっ、比企谷君!」

 

八幡「ども。お久しぶりです。」

 

めぐり「久しぶりだね〜!こうしてお話するのは文化祭の時以来だね!あっ、そういえば体育祭でもお話したっけ?」

 

八幡「まぁ、少しだけ………」

 

 

相変わらずのほんわかオーラだな………隣に居るのは誰だ?城廻先輩の同級生か?

 

 

八幡「先輩、隣に居るのは?」

 

めぐり「あぁ、この子は一色いろはさん。生徒会長に立候補されちゃった子なんだ。」

 

 

コイツが………

 

 

いろは「はじめまして〜先輩っ!一色いろはで〜す〜!よろしくお願いしますねっ!」

 

 

あぁ〜コイツが立候補された理由、何となく分かった気がする。

 

 

八幡「………そうか、比企谷だ。」

 

柊「一色さんね、私は夜十神柊。よろしくね。」

 

涼風「私は夜十神涼風と申します、隣の柊の妹です。よろしくお願いします。」

 

いろは「よ、よろしくです〜……」

 

平塚「揃ったようだな。じゃあ一先ずお前達も席に座れ、何処でも構わない。」

 

 

俺達は席に座って平塚先生の話を聞いた。昨日の職員会議で昨日俺の言った事を言ったみたいで、校長先生はその事実確認を一色の担任に取ったところ、事実と認めて出馬を取り下げた。かなり悪質だと校長も思ったのだろう。

 

そして今は新しい生徒会長の出馬を待っている状態だ。

 

 

平塚「というわけだ。一色の担任教師は減給の上、1ヶ月間担任から副担任に降格になった。」

 

めぐり「そうですか………でもそれって先生が勝手にやったんでしょうか?」

 

平塚「やってもやらなくても、どの道○○先生が責任を取るべき問題だ。自分で蒔いた種なんだ、自分で取らせるのが普通だ。そして自分でなくとも、自分の生徒が蒔いた種だ。どの道教師にも責任はついてくる。」

 

八幡「………それで先生、話は終わりですか?」

 

平塚「ん?あぁ、そうだな。報告は以上だ。奉仕部にも私から伝えておく。」

 

八幡「分かりました。」

 

めぐり「比企谷君、どうもありがとうね。」

 

いろは「せんぱ〜い、本当にありがとうございま〜す!」

 

八幡「………あざとい。」

 

いろは「え?」

 

八幡「いや、何でもない。それよりも行こうぜ柊、涼風。」

 

柊「うん、分かったよ〜。」

 

涼風「かしこまりました。」

 

 

さて、面倒事の1つはコレで解決だな。残るは葉山だが、これはもうほっとこう。俺が関わっても意味のない事だ。けどまた絡んでくる可能性もあるんだよなぁ………あぁ〜やだやだ。

 

 

涼風「お疲れですか、八幡さん?」

 

八幡「あぁ、少しな。放課後に思わぬストレスが来たもんだから気疲れしたのかもな。」

 

柊「そういう時は甘い物が良いよ!食べに行く?」

 

八幡「甘いものかぁ………」

 

 

 

 

 



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八幡の忠告

 

 

涼風side

 

 

柊「中々来ない場所に来れたから良かったんじゃない?八幡君だってあまり来る事ないでしょ?マスタードーナツ。」

 

八幡「いや、まぁ確かにないが、何故?悪いとは言わないし、甘いお店ではあるが………」

 

涼風「実は、次に挑戦しようと思っているお菓子がドーナツでして。なのでその研究兼味も見ておきたいと思っていたんです。」

 

 

ドーナツ。砂糖や卵、小麦粉を使って油で揚げる洋菓子の1つ。一工夫するだけでも美味しさは千差万別。このマスタードーナツも然り、色々なドーナツがあります。私達でも作れそうなドーナツを研究しなくてはいけません。

 

 

八幡「そういう事か……なら納得だな。じゃあ出来る限り被らないように選ぶか。柊達の研究に協力する。」

 

柊「ありがとう〜八幡君♪お礼じゃないけど、納得のいくドーナツが作れるようになったら、八幡君に食べさせてあげるから!」

 

八幡「それは楽しみだな。」

 

涼風「期待しておいてくださいね、八幡さん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「じゃあ何処に座ろっか?やっぱり3人座れる席がいいよね?」

 

八幡「そうだな。じゃああそこに行かないか?」

 

陽乃「あれ、比企谷君に夜十神ちゃん達?」

 

 

私達に向かって話しかけて来たのは、雪ノ下建設の御令嬢、雪ノ下陽乃さんでした。お姉様のお話によれば、この前の天之川さんの事件で少しだけお世話になったとか………

 

 

八幡「……こんにちは。」

 

陽乃「うん、こんにちは。」

 

八幡「では、これで。」

 

 

すると八幡さんはすぐに決めていたテーブルへと向かって行きました。お姉様も異論が無いからか、八幡さんに従って歩き出しましたので、私もそれについて行きました。席に着いて一息入れました。当然ですが、お姉様は八幡さんの隣です。

 

 

陽乃「ご一緒するね〜♪」

 

柊「………」ムス~

 

八幡「………何か用ですか?」

 

陽乃「用がなきゃ来ちゃダメ?」

 

柊「ダメです。」

 

陽乃「じゃああるから大丈夫だね。比企谷君、あれから容態はどうかな?あの日から1度もお見舞いには行けてなかったから少し心配だったんだけど。」

 

八幡「取り敢えずは大丈夫です。感覚も戻って来てますので、大丈夫そうです。」

 

陽乃「そう……大事がなくて何よりだよ。」

 

涼風「あの、雪ノ下さん……お1つ質問をしてもよろしいですか?」

 

陽乃「ん?何かな?」

 

涼風「どうやったらお姉様からあんな目で見られるようになるのですか?お姉様からとても警戒の色が滲み出ているのですが………」

 

 

お姉様なら、この反応を見るだけでも分かります。普通なら見えなくなっても不思議ではないのに、雪ノ下さんの事がハッキリと見えている………

 

 

陽乃「あぁ〜きっと私が比企谷君にベタベタし過ぎちゃったからかなぁ〜。取る気はないって伝えてあるんだけど、どうにも警戒されちゃってるんだよね〜。きっと私が比企谷君に触ろうとしたら、手を叩く勢いで止めると思うよ。」

 

涼風「そ、そうですか………」

 

柊「……それで、用はもう無いんですよね?でしたら他の席に行ってください。」

 

陽乃「まだ用はあるから、そんな風に言わないでよ。比企谷君からも何か言ってよ。お姉さんはそんなに怖い人じゃないって。」

 

柊「八幡君、あの人に近づいたらダメだからね!」

 

八幡「………雪ノ下さん、お話は?」

 

陽乃「つれないなぁ〜比企谷君は。まぁいいや、学校ではどう?楽しんでる?」

 

八幡「迷惑な金髪がクソ迷惑な金髪にグレードアップして俺にしつこく絡んでくる以外はいつも通りですよ。」

 

陽乃「隼人が?」

 

涼風「はい。学校に復帰して早々、葉山さんが八幡さんに………」

 

 

私は葉山さんと八幡さんのやり取りを聞いているので、一部始終を雪ノ下さんに説明しました。すると雪ノ下さんはとても興味なさげ、というよりも飽き飽きしたような表情を含みながら肩肘を突き、腕で顔を支えながら聞いていた。

 

 

陽乃「ふぅん………そっかぁ。隼人も隼人で少しも変わる気はないみたいだね〜。はぁ……前までは可愛いもんだったけど、今見ると何にも面白くない。引っ張れば動く人形のようだよ………ホント、つまんない。」

 

八幡「………」

 

陽乃「あっ、それに比べたら比企谷君達は凄く面白いよ♪これからもよろしくねっ!」

 

八幡「出来れば駆け引きとかそういうのなしでよろしくしたいですね。まぁ、無理でしょうけど。」

 

陽乃「お姉さんの事、よく分かってるじゃん。もしかして気になってるのかなぁ?」ニヤニヤ~

 

柊「まだ用件はありますか?ありませんね?なら早くどこかの席に行くか、このお店から早く出てって下さい………」ゴゴゴゴゴ……

 

 

お姉様、お気持ちは分からなくもありませんが、オーラを隠してください!

 

 

八幡「柊落ち着け、この人にそんな体力使ってると、この先持たないぞ?事ある毎に迷惑事吹っかけてくる人だから、最近はねぇけど。」

 

陽乃「比企谷君も言うようになったねぇ?」

 

八幡「まぁ、こんな俺にも一応譲れないもんがありますので。」

 

陽乃「……聞いちゃったりしても?」

 

八幡「………この2人に何かしようって奴が現れようものなら、例えそれが雪ノ下さんでも、俺は容赦なんてしませんよ?」

 

陽乃「っ!」

 

柊/涼風「っ!」

 

 

八幡さんが、少しだけ怒って………

 

 

陽乃「………肝に銘じておくよ。それに、君を本気で怒らせたらマズいかもね。それだけはお姉さんもやめておこうかな。」

 

八幡「マジで頼みますよ。俺は女でも殴れちゃいますんで。」

 

陽乃「あははは……うん、そうする。」

 

 

さっきの笑い声とは違う………空元気の笑いに聞こえます。八幡さんの本気が伝わったのでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「あれ、比企谷?比企谷じゃん!それと……あっ、夜十神さん……」

 

 

 

 

 



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再会とそれぞれの思惑

 

 

八幡side

 

 

 

???「あれ、比企谷?比企谷じゃん!それと……あっ、夜十神さん……」

 

八幡「折本………」

 

涼風「折本さん………」

 

柊「………」

 

 

俺と柊、涼風の苗字を呼んだのは、俺達と同じ中学出身で同じクラスだった折本かおりだ。同中でクラスメイトって時点で気付いているとは思うが、柊には黒い影にしか見えてないって事だ。つまりは幽霊化してるって事だ。

 

 

折本「あはは……久しぶりだね、元気?」

 

八幡「まぁ、ボチボチな。その制服、お前海浜高校なんだな。」

 

折本「比企谷達は総武高なんだ〜じゃあ3人共頭良いんだ!」

 

 

いつも通り話してるように見えるが、やはり少しばかり影が見える。その最大の理由は柊だろう。中学であんな事があったんだ、気にしないなんて方が無理だ。そんな奴居るとは思えないけどな。

 

そして折本は柊に謝りに行こうとはしてたが、謝りには行けていない。俺に仲介を頼んだ側の人間だ。まぁ断ったんだけどな。

 

 

陽乃「比企谷君、この子達は?」

 

八幡「中学の同級生です。」

 

陽乃「ふぅん……それにしてはあまり良い雰囲気ではなさそうだけど?」

 

八幡「前にも言いましたけど、中学でも色々ありましたから。それを言うつもりはありませんけど。」

 

陽乃「まぁ、聞き出そうとは思ってないから安心して。そんな事しちゃったら、色んな意味で後が怖いからね。」

 

折本「じゃ、じゃあね比企谷、夜十神さん達も!」

 

 

話す理由が無くなったからか、はたまた空気に耐えられなくなったからか、折本は後ろの友人を連れて別の席へと向かって行った。

 

 

陽乃「何があったのか気になるけど、私が介入しても意味のない事だしね。私もこれで帰るね。あっ、そうそう。雪乃ちゃんにもよろしくね。」

 

八幡「自分で言いに行けばいいじゃないですか。俺等に丸投げしないでくださいよ面倒くさい。」

 

陽乃「じゃあまたね。」

 

 

そう言って雪ノ下さんはお盆を持って行って、片付けてから店を出て行った。なんか今日は色んな人に会う日だな。

 

 

涼風「……八幡さん、お姉様。今日は早々に帰りませんか?ドーナツの研究はまた次回にする事にして、今日はもう家に………」

 

柊「……そうだね、私も何だか疲れちゃった。八幡君ごめんね、折角着いてきてもらったのに。」

 

八幡「いや、気にするな。こんな日もある。次また来ればいいってだけの事だ、深く考える事でもねぇよ。俺も少し疲れたしな。」

 

 

そして俺は柊と涼風を家まで送った後に、自分の家に向かって歩いた。

 

 

八幡sideout

 

折本side

 

 

偶然だったけど比企谷達に会った………別にそれはいいんだけど、夜十神さんは最後まで私と目を合わせようとしなかった………それどころか本当にあたしの事に気付いていないかのような感じだった。夜十神さんはまだウチ等の事、見えてないって事にしてるんだ。

 

………それとも本当に見えてない?今更そんな事聞けるわけ無いけどさ。

 

 

???「かおり、大丈夫?同級生の人達と会ってから少し……っていうかかなり元気ないけど?」

 

折本「うん……」

 

仲町「あの比企谷君って人が言ってた中学時代に関係してるの?」

 

折本「まぁね……けど、これはあたしも話したくないんだ。あたしにとって1番最悪な出来事であって、1番後悔してる出来事でもあるから。」

 

 

あの時、比企谷に仲介してもらおうと思って比企谷に話しかけた時に言われた事は今でも覚えてる。

 

 

八幡『今更無理だろ。お前等やってきた事考えろよ。そんな奴等とまた仲良くしたいなんて、俺だったら絶対に嫌だわ。』

 

 

そうだよ……仲の悪かった人が急に掌返して仲良くしてくるようなものだもん。あたしもそんな人無理。けど、中学のあたしはそういう事をしようとしてたんだよね………夜十神さんが何をされてきたのを知っててあんな事を言っちゃったんだ………

 

 

折本「はぁ………ウケないわぁ〜……」

 

仲町「別に聞くわけじゃないけど、何があったのかは少し気になる………」

 

 

折本sideout

 

陽乃side

 

 

予想外だったなぁ………まさか比企谷君があそこまで感情を露わにするなんて。完全に予想外だった。それ程までにあの2人が大事なんだね〜。今までの私なら少し遊ぼうかなぁって思ってたけど、今日の彼のあんなのに当てられたら、流石にその気も無くなっちゃうね。まぁ流石に夜十神家の婚約者相手にこれ以上の粗相も出来ないしね。お母さんの立場も危うくなるし。

 

けど、今はそれよりも………

 

 

prrrr…prrrr…っ!

 

 

葉山『陽乃さん、どうかしたのかい?』

 

陽乃「単刀直入に言うよ、隼人。これ以上比企谷君に迷惑を掛けるのは無しね。」

 

葉山『……どういう意味だい?』

 

陽乃「あれ?しらばっくれちゃう?じゃあハッキリ言った方がいい?自分のグループの事くらい自分達で解決しなさい。アンタ達の問題に比企谷君を巻き込ませるなって言いたいの。」

 

葉山『………比企谷から?』

 

陽乃「さっき会って少しね。けどこれは意地悪で言ってるわけじゃないから。アンタの為を思って言ってる事でもあるから。もし続けるんだったら、私はもう知らないから。じゃ。」

 

 

………比企谷君、一応の警告だけはしておいたからね。聞くかどうかはしらないけど。

 

 



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お泊まり再び!

 

 

柊side

 

 

昨日のマスタードーナツで会った影なんだけど、きっとアレは中学の同級生なんだと思う。だってそれ以外に誰かがいるとしたら、この前捕まった2人くらいしかいないもの。けど誰かまでは分からない。姿形は黒い影だけど、声は聞こえないから。私達に話しかけてたみたいだけど、聞こえない上に答える意味もないから別にいいよね。それに私にとってはどうでもいいし。

 

け・れ・ど〜今はそんな事どうでもいいんだっ。だって今日は待ちに待った金曜日!八幡君にも言ってあるから学校終わりがとっっっても楽しみなんだ♪え?どうして?そんなの決まってるじゃん!今まで何回出してきたと思ってるの?八幡君が私達の家に泊まりに来るのっ!あぁ〜楽しみだなぁ〜修学旅行明けからは1回しか泊まりに来れなかったからね、だからテンションが上がっています!!

 

早く学校終わらないかなぁ〜………

 

 

八幡「……なぁ涼風、柊のあの顔って………」

 

涼風「はい。早く学校が終わって欲しいという顔ですね。余程今日が楽しみなのでしょう。」

 

八幡「まっ、だよな。にしても気が早過ぎるだろ……まだ学校始まっても居ないんだぞ?何なら今登校中だし。」

 

涼風「………私も同感です。」

 

 

?八幡君と涼風は何を言ってるんだろう?まぁいいや♪さて、今日も学校頑張んないとね!終わった後には特大ご褒美が待ってる事だし♪

 

 

ーーー2-Fーーー

 

 

柊「♪〜」

 

八幡「ご機嫌だな、柊。」

 

柊「そりゃそうだよ〜!今日は八幡君が家に泊まりにくる日だもん、旅行明けからは1回しか無かったから今日すっごく楽しみなんだ♪」

 

涼風「私も八幡さんが泊まりに来て下さる事は嬉しく思います。お父様もお母様もきっと心待ちにしておられたと思います。」

 

八幡「俺個人としては、何度も泊まりに行ったら迷惑じゃないかって思うくらいなんだが、そこのところはどうなんだ?」

 

柊「全っ然迷惑じゃないよ!!むしろ来てくれた方が私達としては嬉しいの♪それにお父さんも言ってたでしょ?八幡君はもう私達の家族みたいなものだって。アレ本音なんだからね。」

 

八幡「いや、そこは疑ってないけどよ………」

 

 

私も八幡君は家族だって思ってる。けど私の場合もう一歩踏み出さないといけないもんね………だって私、八幡君のお嫁さんになりたいもん///

 

 

涼風「お姉様、何を想像したのかは大方予想はつきましたが、何故顔を赤くしているのですか?」

 

柊「え?べ、別にぃ〜?何でもないよ?」

 

涼風「………まぁここはお姉様の顔を立てて何も言わないでおきましょう。それよりも八幡さん、腕の方はどうですか?」

 

八幡「あぁ、もう何ともない。風呂にも普通に浸けてるしな。試しに自分の頭を乗せて枕とかにもしてみたが、痛くも痒くもなかった。だから完治したって事かもな。」

 

柊「じゃあ今日寝る時は私達のどっちかがお預けにされるって事はないんだよね!?」

 

八幡「……お預けって何だ?」

 

柊「もうっ!分かってないなぁ八幡君はっ!八幡君の腕が完治してなかったら、右腕には抱き着けるけど、左腕は無理でしょ?だから私と涼風のどちらかが八幡君の右側を賭けて勝負をするっていう展開になるのかなぁって思ってたんだけど、それはないんだよね?」

 

涼風「八幡さん、どうなのでしょうか?」

 

八幡「涼風、お前もかよ………まぁそうだな。今のところは何もないから大丈夫だと思う。」

 

柊「……っと、いう事は!!」

 

涼風「勝負をしなくても……」

 

柊/涼風「仲良く3人で寝られる、って事だよね(ですよね)っ!?」

 

八幡「……そ、そうだな。うん、いつもの寝方でいいんじゃね?」

 

 

や、やったぁ………今日はきっと良い夢を見られるよ。だって八幡君と寝られるんだよ?悪い夢なんて100%見るはずがないよ!けどやっぱり寝るとしたら私は右側かなぁ〜だって少し不安だしね。

 

それにしても………

 

 

柊「ねぇ八幡君、何かしたの?」

 

八幡「……いや、身に覚えは無いな。」

 

涼風「でしたら不可解です。何故八幡さんがあの方達にあんな目をされながら見られなければならないのでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結衣「………」

 

葉山「………」

 

 

あの2人、八幡君の様子を伺うように見てる。しかもチラチラとグループで会話をしながら。そっちに集中しなよ!八幡君は私達とのお話で忙しいから構ってる暇なんてないの!!

 

 

八幡「まっ、見るだけならタダだからな。気にしない方がいいだろう。葉山の方は多分だが、雪ノ下さんが何か告げ口したんだろうな。」

 

涼風「告げ口、ですか?」

 

八幡「内容は分からないけどな。けど葉山の話をした後だ、何か言っていても不思議ではないだろう。由比ヶ浜に関しては分からん。何故俺を見ている?何もしてないだろ。」

 

柊「構って欲しいから見てるとか!」

 

八幡「やめろよ気持ち悪い。構って欲しいからこっちをジーッと見るとか犬かよ。俺の隣にいる元気で活発なのと、大人しくてお淑やかなお嬢様犬の方が何倍もマシだぞ。」

 

柊「えへへ〜ワンワン♪」

 

涼風「……ワ、ワンワン/////」

 

八幡「いや、無理に真似しなくていいから。可愛いから良いんだけどさ。」

 

 

やった♪可愛いって言われた♪

 

 

 

 

 

 

 



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昼食と告白?

最近、新しい曲を入れたのですが、【ウマ娘プリティダービー season2】の挿入歌【ささやかな祈り】が良過ぎて………(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

石見舞菜香さん、凄過ぎました………!


 

八幡side

 

 

昼休みになり、俺達は家庭科室で弁当を食べている。俺達がこの学校内で平和な一時を過ごせる数少ない場所だ。誰の視線もなく、話し声もなく、雑音もない。とても穏やかな空気で弁当を食べられる。はぁ………良い時間だ。

 

 

八幡「この教室を用意してくれた先生には感謝だな。この家庭科室程、俺達にとって安全な場所はない。そして涼風にもな。」

 

涼風「いえ、とんでもないです。私はただ八幡さんやお姉様と一緒に過ごしたかっただけなのですから。その為ならこのくらいの事何でもありません。いつでも頼ってください。」

 

柊「あぁ〜もぉ〜私は本当にとても良い妹を持ったって思うよ〜。」ナデナデ

 

涼風「お、お姉様、擽ったいです……///」

 

 

少し困ったような顔をしている涼風だが、その表情に拒絶等といった悪感情は見られない。心では満更でもないのだろう。褒められて素直に喜べないか、照れ臭いのだろうな。

 

朝の話ではないが、今の涼風に犬の尻尾が付いていたら、尻尾ブンブン振ってるだろうな。

 

 

柊「そういえば八幡君。話は変わっちゃうんだけど、生徒会って結局どうなっちゃったの?あれなら何も音沙汰無しだけどさ、何とかなったの?」

 

八幡「いや、そこは俺も知らない。俺も特段興味があるわけじゃないから、そんなに気にならないしな。何だ、気になるのか?」

 

柊「まさか!もしも八幡君が会長をやるっていうのなら、私は副会長に立候補するけど、八幡君が興味のない事なんてしたくないもの。」

 

八幡「まぁ、だよな………」

 

 

まぁでも、奉仕部の2人もこれで納得はするだろう。けど少し嫌だなぁ〜………来週から参加だって思うと、少しだけ学校に来たくなくなる………

 

けどそうも言ってられねぇんだよなぁ。

 

 

柊「八幡君に意味も無く白羽の矢が立たなければいいんだけど………ちょっと心配だなぁ。私達はただ静かに生活してたいだけなのにね。」

 

涼風「はい。何故か八幡さんの周りにはトラブル、というよりも厄介事が嵐のように舞い込んできますから。」

 

八幡「勘弁して欲しいもんだ………」

 

 

ーーー廊下ーーー

 

 

柊「ふぅ〜あっともう少しっ!!八幡君とのお泊まりデートまで後2時間と少しっ♪」

 

涼風「お姉様とお気持ちは同じですが、お姉様は待ちきれないご様子ですね。」

 

柊「早く時間が経過しないかなぁって思っちゃうくらい!何とかならないかなぁ〜。」

 

八幡「そればっかりは自分の気持ち次第だろうな。まだかまだかと思ってたら時間ってのは長く感じるもんだ。心掛けの問題じゃね?」

 

柊「それって前にも言ってた、嫌な時間は長くて良い時間はあっという間ってヤツの事?」

 

八幡「まっ、それに近いな。」

 

 

実際、俺が奉仕部に入れられた時なんてマジで時間が長く感じたし。土日に柊とデートする時間が異様に短く感じる程に。ホントあの時程、時間を無駄にした日はないと思っている。返して欲しい。

 

 

八幡「本当にそういう時間って長く感じるから嫌なんだよな………無駄に精神を削られるっていうのか?その感じがどうにもな。」

 

柊「確かにそうかも。その時も八幡君と繋がれるのはメールか電話くらいだったからね。八幡君に、恋人に会えない辛さは分かるなぁ〜。」

 

涼風「私も八幡さんに会えず、とても寂しい思いをしておりました。ですので、八幡さんが月曜日のみ部活へ参加と聞いた時は、不謹慎ですがとても嬉しかったですし。」

 

 

まぁ、俺の月曜のみの部活動参加はこの2人にとっては吉報以外の何でもないしな。まぁ実際、俺も嬉しかったし。あの時はそんな事よりもあの2人の行動に腹立ってたからそれどころじゃなかったけど。

 

 

涼風「それに今はこうして一緒に学校生活を送れている、これはとても幸せな事です。」

 

柊「そうね。転校の理由自体はとっても下らないけれど、結果的には嬉しい方向に進んでくれたから良かったって思ってる。アイツが居なかったら、私達は誠教学園のままだったと思うし。」

 

 

森崎の事か………少年院入りしたとは聞いているけど、今はどんな生活してんだろうか。そんな事どうでもいいか。思い出したくもないしな。天之川同様、もう2度と関わる事のない奴だろうし。

 

 

八幡「そこだけはアイツに感謝しないとな。俺もお前達2人と一緒に学校生活を送れるのは嬉しい。」

 

柊「えへへ、私もっ♪」ダキッ!

 

涼風「わ、私も同じです///」ギュッ

 

八幡「それに……この空間だけは誰にも譲れない。俺達の日常は俺達のだしな。グループだろうが何だろうが、そんな些細な事の為に俺達の日常を壊させはしない。」

 

柊「八幡君………」

 

八幡「俺の数少ないプライドって奴だ。俺にだって譲れないものの1つや2つあるんだ、それをあんな訳の分からん奴の頼みなんかで潰されてたまるかよ。そんな事よりも俺はお前達の方が大切だ。」

 

涼風「八幡さん………」

 

 

………っ!?な、なんか告白みたいになってる!?

 

 

八幡「ま、まぁだから………要するにだ。お前等も俺から離れるなよ?」

 

 

あれ、違くね?これじゃもっと一緒にならね?

 

 

柊「うん、分かった♪私も八幡君が大切だから離れないようにするね!」

 

涼風「私も同じ気持ちです。八幡さんのお言葉、自身の胸にしかと刻みました。私も八幡さんから離れません!」

 

 

………まぁ、いいか。

 

 



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挨拶と私のっ!!

 

 

涼風side

 

 

キーンコーンカーンコーン!

 

 

授業終わりの合図……今日1日の授業も終わりましたか。今日も楽しい学校生活を送れました。やはり八幡さんと一緒の空間は私達には欠かせませんね。このクラスが行うかどうかは分かりませんが、席替えは行いたくないものです。私はこのままの席配置が良いです。

 

 

教師「それでは、今日はここまで。来週は小テストをやるからちゃんと予習しておくんだぞ。じゃあ日直、挨拶。」

 

「起立、礼、着席!」

 

 

そして先生が教室から居なくなると、クラスの皆さんが隣や前後ろの人達と話し始めました。私は特に何も思いませんが、そんなに話す事があるのでしょうか?話題が尽きないのは少しだけ羨ましいです。

 

その5分後に平塚先生が入ってきてHRになり、連絡事項を私達に知らせてから今日1日の学校が終わりました。この後は謂わば放課後活動ですね。私達は部活動に参加していないので学校に残る理由がありませんので、すぐ家に帰るだけですが。

 

 

柊「さて、機は熟しました!八幡君、早くお家に帰ろう!!」

 

八幡「……俺はお邪魔する立場なんだが?」

 

涼風「八幡さん、前にも言いましたが、私達は家族も同然の間柄。お邪魔という言葉は相応しくないと思います。帰るで良いのです。」

 

八幡「そう言われてもな………」

 

柊「遠慮は無用なんだよ?お父さんもお母さんもそれを望んでるんだし、宮間さんや他の人達も。だから八幡君は私達の家でも『ただいま』とか『行ってきます』って言ってもいいんだよ?寧ろ言おうよ!その方が家族になれた感が出るもん!」

 

涼風「私もお姉様に賛成です。挨拶だけでもそれらしくしてみませんか?慣れないのは最初だけですし、慣れてしまえばそれが普通になるのですから。試しに今日、実践されては?」

 

柊「そうだよ!お父さんとお母さんの前で言ってみてよ!きっと喜ぶから!」ズイッ!

 

涼風「八幡さん、今後の為にも今から慣れておくべきです。」ズイッ!

 

八幡「お、おう………わ、分かった。(圧が凄い。そんなにやって欲しいのか?)」

 

 

涼風(お姉様、もしも八幡さんが実行しなかった時は如何しますか?)

 

柊(その時は……脇腹つねろっか?)

 

涼風(はい、分かりました。)

 

 

これで八幡さんが挨拶をしなかった時の対策も練られました。ふふふっ。八幡さん、頑張ってくださいね。応援していますから。

 

 

柊「じゃ、行こっか!」

 

八幡「あぁ。」

 

涼風「はい。」

 

 

ーーー校舎入口ーーー

 

 

いろは「せぇんぱぁ〜い!」

 

 

あの方は確かこの前、指導室でお会いした……一色さんでしたね。生徒会長に立候補させられていた。誰かを待っていたようですね。それにしても先輩のお知り合いが居たとは意外でした………いえ、城廻会長が居ましたね。

 

 

いろは「っ!!?ちょ、ちょっと無視しないで下さいよ〜先輩!」

 

八幡「?まさか俺達か?」

 

いろは「他に誰が居るんですか!?」

 

八幡「いや、先輩なんてお前の立場からすればその辺りにゴロゴロいるからソイツ等かなって。それに俺、後輩に知り合いなんていねぇし。」

 

いろは「私が居るじゃないですか!?」

 

八幡「………知ってる?」

 

柊「ううん。だって私、八幡君にしか興味ないし。他の子なんて知らない。」

 

 

お姉様は相変わらずですが、八幡さんはあの表情からして悪ふざけでしょう。

 

 

いろは「忘れちゃったんですか〜!?」

 

八幡「覚えてるよ、一応な。一色だろ?んで、俺達に何か用か?俺達これから帰るんだが?」

 

いろは「大した事じゃないんですけど、先輩にお礼を言おうと思ってまして〜。この前の生徒会長の件はありがとうございました。」

 

八幡「大した事はしてない。俺はただ自分の提案を平塚先生に提示しただけだ。だがこれに懲りたのなら、さっきもそうだが、ああいう態度はやめろよ?」

 

いろは「え?何の事です?」

 

八幡「今更誤魔化すな。あざと過ぎるって言ってんだよ。まぁ男子対象だと思うが、そういうの続けてるとまた同じ事されるぞ?」

 

いろは「うっ……」

 

八幡「言っとくが俺は面倒事が嫌いだ。俺自身は関係無いのに押しつけるかのように頼んでくるような輩は特に、な。」

 

 

その辺りの方達は騙せても、八幡さんは騙せません。八幡さんは人とは違う感性を持っています。それに人の感情や表情の機微に聡い方です。そして何よりも周りの環境に左右されない強さに加えて優しさも兼ね備えた寛大な心の持ち主ですから♪

 

 

※涼風から見た八幡の想像図です。

 

 

八幡「分かったら早いうちにそれやめろよ。んじゃ行くか。」

 

涼風「はい。」

 

柊「私達の家にLET’S GO〜!!」

 

いろは「あっ!ちょ、先輩!?」

 

 

ーーー校門前ーーー

 

 

八幡「ところで柊さん、1つ質問があるのだがよろしいかね?」

 

柊「うむ、何でしょう?」

 

八幡「何故今日はいつにも増してくっついているのでしょうか?差し支えなければ教えてもらいたいのですが?」

 

柊「八幡君が大好きだから♪」

 

八幡「うん、知ってる。それ以外の理由で。」

 

柊「八幡君を愛してるから♡」

 

八幡「………分かった。」

 

柊「うんっ♪」

 

 

いえ、八幡さん。きっとお姉様はこう思っているのです。『あのあざと後輩ばっかり!!八幡君は私のなんだから!!誰にもあげないもん!!』と。

 



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おやつタイム

 

 

八幡side

 

 

御影「お帰り柊、涼風、八幡君も!早く身体を休めるといいよ。僕も今日は少し早く仕事が終わったからこうして3人が来るのを待ってたんだよ。いやぁ中々良いものだね、お出迎えをするというのも!」

 

 

………学校が終わったら普通は家に帰るのだが、俺は今日泊まる約束をしていたので、夜十神家に来ている。そしたら玄関にはおじさんが待っているではありませんか。宮間さんも少しだけ困ったような、嬉しいような顔してたし。けど今日来て思った事は、おじさんが俺に対しても『お帰り』という言葉を使った事だ。

 

この前までは『よく来てくれたね。』が普通だったのに………ついにそうなってしまったのか?

 

 

涼風「ありがとうございます、お父様。」

 

御影「そうそう!今日はまた良いのが手に入ってね。それをおやつに持っていくからね。」

 

宮間「旦那様、そのお役目は私が……「偶には君達が何をしているのかを知るのも大切だと思うから、少しだけ手伝わせてはもらえないかい?」………かしこまりました。」

 

柊「もしかして、また海外の人気スイーツとか?」

 

御影「ううん、今回は日本の。老舗高級レストランから良い値段で提供して貰ってね、今日の10時頃に届いたんだ。だから君達に食べさせようと思ってね。きっと気に入ると思うよ。」

 

 

俺はまた高級なものを食べさせれるのか………いや、もう気にするのも疲れるだけだな。

 

 

ーーー柊の部屋ーーー

 

 

八幡「この前のヴェリーヌもそうだったが、あの人は本当に色んな所から色んなのを仕入れるよな。しかもそれでいて売り上げを伸ばしてる。ホントすげぇよな。しかもその1部を無料で俺が食っちまってるっていう事実も。」

 

涼風「まぁお父様からすれば、八幡さんに何かしてあげたいのでしょう。そうでなければ、高級食材やスイーツ等は仕入れたりはしない筈ですから。」

 

柊「試しにお父さんに言ってみたら?『少し欲しい物があるんですけど〜。』って。」

 

八幡「いや、本当に無いんだよなぁ………」

 

涼風「簡単な物でもよろしいのですよ?例えばお父様が今から持って来てくださるスイーツとか、ちょっと食べてみたいと思った食材だったり、前から興味があった服や装飾品と様々ですから。」

 

八幡「………」

 

柊「本当に無いの、八幡君の欲しい物?」

 

八幡「あったら苦労はしてねぇよ……2人は無いのか?気になる物とか。」

 

柊「うぅ〜ん……私達も偶にしかお父さんに頼まないんだ。けど強いて挙げるなら洋服とかかな。それでも本当に欲しいって思った時だけだからね?」

 

涼風「そうですね。私達の欲しい物もその辺りのお店を探せばあるようなものばかりですので、お父様に言わなければ手に入らない物くらいしか頼みませんね。お父様はよく購入しているみたいなんですけど。」

 

 

結局、この姉妹も俺と同じような感じだというのは分かった。けどなぁ………このままこれが続くとまた次に何度言われるか分かったものじゃない、嘘でもいいから何か言ってみるか?いやでも嘘を言うのは気が引ける。

 

 

八幡「はぁ………どうしたもんかねぇ。」

 

 

コンコンッ ガチャッ

 

 

御影「入るよ〜、相変わらず仲が良いみたいで何よりだよ。はい、コレがさっき言ってたヤツね。」

 

柊「チョコケーキ?」

 

涼風「1番上はガナッシュ、真ん中の1番大きい層がムース、最後1番下がスポンジみたいですが、見ただけでも濃厚だと分かりますね。」

 

八幡「詳しいんだな。」

 

涼風「最近は洋食、洋菓子の勉強もしていますので。今私はチョコを使用する洋菓子の勉強をしていますので、多少の事は………1番上のガナッシュとは簡単に言うと生チョコレートです。北海道のお土産でよく知られているLOADS(ローズ)のチョコレートと同じですね。真ん中のムースは卵とクリームで作られるデザートです。今回はそれにチョコレートを混ぜているみたいですね。最後のスポンジは卵、砂糖、小麦粉で作られるケーキの土台になる部分です。」

 

 

いやいや、勉強してるにしてもガチじゃん。完読しちゃってますやん。知り尽くしちゃってんじゃないの?俺にはそう見えるぞ?

 

 

御影「あはは!涼風は凄いね、見ただけでよく分かったね。それに3段構造については全部正解だよ。コレ、このケーキを作ったレストランの名前ね。」

 

柊「えっと………伍島軒?」

 

八幡「聞いた事ない名前ですね………老舗って言ってましたけど、この辺りじゃないですよね?」

 

御影「うん。このケーキはね、函館で作られた名作なんだよ。現地ではとても有名なスイーツみたいでね、僕も食べてみたかったから頼んでみたんだよ。味の感想は3人にして貰ってから食べようと思ってるから、僕は感想を聞かせてもらおうかな。」

 

柊「なんか今日のお父さん、少しだけ賢いかも。」

 

涼風「はい。まさか私達に食べさせて感想を聞いてから食べるなんて………策士ですね。」

 

御影「悪だくみをしてるわけじゃないからね?」

 

八幡「けど、現地で有名って事は北海道の中でもかなり有名なんじゃないんですか?」

 

御影「まぁね。お土産としても使われる事が多いみたいだから、評判は良いんだと思うよ。」

 

 

………さっきの事は少し考えよう。今はこのケーキを食べてみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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欲しい物と膝枕

 

 

八幡side

 

 

おじさんが居る前で感想を聞かせるなんて、俺からしたら無茶振りに等しいが、何とかやってみせた。物凄く簡単な感想しか言えなかったけど。けどすげぇ美味かった。甘過ぎない甘さで、控えめながら口の中に広がる微かなビターな味わいがまた甘さを強調させていた。そしてやっぱり濃厚なチョコの味が口の中に広がった。あんな美味いチョコケーキあったんだな………また食べてみたいものだ。口には出さないけど。

 

 

柊「食べやすかったね。濃厚だったのにくどくなかったし、何度も食べたいって思えちゃった。」

 

涼風「そうですね。あの甘さなら2切目も行けちゃうそうですね。」

 

八幡「確かに美味かった。」

 

御影「お気に召したようで何よりだよ。僕も買ってきた甲斐があったよ。また食べたくなったら言うんだよ、まだあるからね。」

 

涼風「一体いくつ買ってきたのです?」

 

御影「全部で20個だけど、売るようにも残しておきたかったから、この家にあるのは5個だよ。」

 

 

5個……それでも5個あるんだ………

 

 

御影「じゃあ食器片付けるね。後は3人仲良くね、まぁ心配入らないと思うけど。それじゃ「あ、おじさん、ちょっといいですか?」ん?何だい八幡君?」

 

八幡「えっと、何ていうか、ちょっと言いにくい事なんですけど………」

 

御影「?」

 

 

柊(っ!八幡君ついに、ついに言うんだね!?頑張れ!頑張れ八幡君!!)

 

涼風(欲しい物が少し気になりはしますが、八幡さんの初めての我が儘です!八幡さん、後もう少しです!もう少しの辛抱です!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「えっと、良い枕ってありますか?最近あんまり寝付けなくて。良いのがあったら買おうかなぁって思ってるんですけど………」

 

 

柊/涼風(ま、枕?)

 

 

御影「それってつまり、八幡君は枕が欲しいっていう事かな?」

 

八幡「はい、まぁ……そうです。それで……どうですか?探せそうですか?」

 

 

………いや、枕くらい自分で探せって思うよな、流石に。やっぱやめるか。

 

 

八幡「す、すいません。やっぱ「嬉しいよ八幡君!!」っ!?え、え!?」

 

御影「やっと、やっと八幡君からおねだりをしてもらえたよ!!待ってて八幡君!!今すぐに枕を探してみるから!!あっ、そうそう!八幡君は低反発かな?それとも高反発?普通?材質は?枕の中身に拘りは?大きさや長さは?リクエストがあったら何でも言ってね!!何だか力が漲ってきたよ!!よし、これから枕探しをしなきゃだね!!」

 

八幡「いや、あの………」

 

御影「こうしちゃいられない!八幡君、君もついておいで!!君の身体に合ってて、かつ最適な枕を選ばなくちゃね!!もし無かったらオーダーメイドするから大丈夫!!」

 

 

ヤ、ヤバい………今までにない本気の目だ。おじさんどんだけ本気なんだ?たかが枕だぞ?

 

 

御影「さぁ行こう!八幡君の枕が君を待ってるよ!!急いで選んであげよう!!あっ、柊に涼風、八幡君を借りて行くよ!やらなくちゃいけない事が出来ちゃったからね。じゃあ失礼!」

 

 

そして俺はおじさんに手を掴まれて連れて行かれた………おじさんの部屋に直行しているのだろう。バイバイ、2人共。

 

 

八幡sideout

 

柊side

 

 

八幡君がお父さんに連れてかれちゃった………あ〜ぁ、どうしようかな?涼風も居るけど、これだといつもの日常と同じだしなぁ〜。

 

 

柊「涼風、何して待ってようか?八幡君が来ない限り、私達ずっと暇だよ?」

 

涼風「しかし、何をしましょうか?お姉様は何をするご予定だったのですか?」

 

柊「……八幡君と過ごすに決まってるじゃん!」

 

涼風「要するに特に何もなかったのですね?」

 

柊「……はい。」

 

 

しょうがないじゃん!八幡君が来るっていってもいつもと変わらないもん!!彼氏が来るから抱き着くとか、抱き締めるとかだよ?後はあ〜んとかするくらいだもん!

 

 

柊「じゃあ涼風は?涼風は八幡君がこの家に来たら何かするって決めてたの?」

 

涼風「………八幡さんの許可が出れば、やってもらおうと思っていた事が1つだけ。」

 

柊「ほほぉう?では聞かせてもらいましょうか?」

 

 

一体何をやってもらうつもりだったのかをねぇ?内容によっては私もやってもらおうかなぁ?なんてね、嘘じゃなくて本当の事だけど♪

 

 

涼風「えっと………ひ、膝枕を///」

 

柊「………えっと、ごめん涼風。耳悪くなっちゃったのかな?もう1回言ってくれない?八幡君に何をしてもらうつもりだったって?」

 

涼風「ですから膝枕です!八幡さんの膝を枕にして寝させてもらおうと思っていたんです!思いついたのはつい先程ですけど///」

 

柊「……………一体何を考えてるのかなぁ!?私まだやってもらった事ないんだけど!?それなら私が先っ!私がやってもらうの!!」

 

涼風「わ、私が思いついたのです、私が試す権利があると思います!幾らお姉様でも譲れません!」

 

 

むむぅ〜……涼風ったら、何というけしから羨ましい事を思いつくのだろうか………流石は私の妹、血は争えないって事かな。

 

 

柊「なら涼風がやった後に私もやる、それなら文句ないよね?」

 

涼風「まぁ、それなら構いませんが。」

 

柊「じゃあそれで!先にやるからには感想聞かせてよね!八幡君の膝枕がどうだったのかを!」

 

涼風「も、勿論です!」

 

 

そしてその膝枕に私のオリジナルを加えれば………ふふん、私の勝ちっ!

 

 

 

 

 

 

 




御影お父さん、メッチャ嬉しそう………


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八幡side

 

 

あの後、おじさんから質問攻めを受けながらも枕の注文をする事が出来た。しかし、まさかおじさんがここまで本気になるとは思わなかった……あの熱意、というよりもマジっぷりには少しだけ引いた。

 

そして今は柊の部屋へと戻っている最中だ。拗ねてなければいいんだけどな、おじさんに取られたからって凹んでたらどうしよう………まぁ、その時はその時だな。

 

 

ーーー柊の部屋の前ーーー

 

 

コンコンコンッ

 

 

八幡「柊、涼風、俺だ。入っても大丈夫か?」

 

柊『いいよいいよ〜入って〜♪』

 

八幡「んじゃ入るな………悪いな、おじさんがメチャメチャ本気だったから長引いた。」

 

涼風「そのようですね。八幡さんがお父様に欲しい物を言った瞬間に分かりました。それに私はここ最近であんなにも生き生きした顔のお父様は初めて見ましたし。」

 

柊「そうだね〜それに今日は仕事が早く終わったって言って宮間さん達のお手伝いまでしてるし。今日は気分が良いのかなぁ?」

 

 

まぁそうなんだろうな、何でかは分からんが。けどあの人の事だから、仕事が早く終わってラッキーとかそういうのではないだろう。

 

 

涼風「あの、八幡さん……少々お願いしたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」

 

八幡「お願い?何だ?」

 

涼風「その………八幡さんの膝を枕にして寝てみたいのですが、いいでしょうか?」

 

八幡「………それって膝枕?」

 

涼風「は、はい!」

 

八幡「俺は別にいいけどよ、男の膝枕なんていいもんじゃないと思うけどな………まぁいっか、ベッドの上でとりあえず脚伸ばして待ってる。」

 

涼風「分かりました///」

 

柊「………」ジィー

 

 

柊、俺も分かってるから。分かってるからそんな目で見ないでくれよ………妹と浮気なんてしねぇよ。誓ってしねぇから。

 

あっ、涼風の頭が乗っかった。

 

 

涼風「………///」

 

八幡「どうだ?」

 

涼風「は、はい………私、八幡さんの膝枕、好きになれそうです///」

 

八幡「そうか………」

 

柊「……じゃあ私は八幡君の肩で肩枕するっ!」

 

八幡「おい柊……背中もたれかかってないとリラックス出来ないぞ?」

 

柊「良いの!八幡君に抱き着きながら肩枕するから大丈夫!」ダキッ!

 

 

あまり大丈夫には思えないんだが………

 

 

涼風「はぁ………八幡さんの体温を感じます。それにとても暖かい………良い温もりです。」

 

柊「普段こうする事なんてないからね〜腕に抱き着けても枕にする事なんて滅多に無いから、やってみて良かったかも♪」

 

八幡「試せて正解なのは理解したが、なるべく早く終わらせてくれよ?この体勢そんなに楽じゃない上に手首疲れてくる。」

 

柊「大丈夫、分かってるから♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー5分後ーーー

 

 

柊「すぅ………すぅ………」

 

涼風「すぅ………すぅ………」

 

八幡「………」

 

 

寝やがった………寝やがったよこの2人。いや、涼風はいいよ?膝だからそんなに問題はないけどよ………柊、お前が寝たら俺まで寝転がらなきゃいけなくなるだろうが。おかげで今俺はベッドで横になってるぞ?そして見事に肩枕されながらな。

 

 

八幡「ホント、コレどうしたもんかね………起こすにしても、こんな幸せそうな寝顔をしている2人を起こすのは少しだけ気が引ける。かといってずっとこのままで居させるわけにもいかないしな………そしたら俺がマズい。」

 

柊「んうぅ〜八幡くぅん〜♪………」ギュ~!

 

涼風「ん……八幡、さん……」キュッ

 

 

………コレ、無理じゃね?どうしろっていうんだ?

 

 

八幡「はぁ………起きるのを待つしかねぇか。確かスマホは………あったあった、ニュースとか見てよっと。そういえばこのSofari(ソファリ)でネット検索もできるんだったよな?なんか小説とか読めたりすんのか?」

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

八幡「………」

 

柊/涼風「すぅ………すぅ………」

 

 

これ、面白いな………お気に入り追加しとくか。なんか久しぶりかもな、こんなに長くスマホいじったの。さて、次は何読むかなぁ………

 

 

柊「んふふぅ〜八幡君〜………」ギュー!

 

 

………いつもながら見事なたわわです、本当にありがとうございます。

 

 

涼風「んっ……八幡さん………」

 

 

………いつもいつも貴方に癒されてます、本当にありがとうございます。

 

 

ーーー1時間後ーーー

 

 

コンコンコンッ

 

 

すいません、今声出せないんです………

 

 

宮間「失礼致します………成る程、そういう事でしたか。配慮が至らず申し訳ございません。」

 

八幡「いや、いいんです。それよりもどうかしましたか?」

 

宮間「はい。ご夕飯の準備が出来ましたので、そのお知らせに参りました。」

 

八幡「ありがとうございます。ほら2人共起きろ、もう飯の時間だとよ。」

 

柊「んうぅ〜後10時間〜………」

 

八幡「そしたら夜中だぞ?晩飯も摂らずに日を跨ぐつもりか?ほら起きろ。」

 

涼風「んん………八幡さん、おはようございます。良い朝ですね。」

 

八幡「うん、今夕方だから。11月だから陽がもうすぐ落ちそうだけど。」

 

 

こうして俺は2人の枕になる事に無事成功したのであった。けど思った事がある。もっとリラックスしやすい位置で枕になれば良かったと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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夕飯戦争

 

 

涼風side

 

 

涼風「申し訳ございません、八幡さん!まさかあのまま寝てしまうなんて……!とても寝心地が良かったのもありますが、まさかあのまま30分も………」

 

柊「いいじゃん別に〜八幡君はもう気にしてないって言ってるんだからさ。いつまでも謝ってたらねちっこいって思われちゃうよ?」

 

涼風「で、ですがお姉様………」

 

八幡「涼風、俺は本当に気にしてないから大丈夫だ。それに、涼風はまだ膝で寝てくれたから良い。お前のお姉様なんて俺の肩で寝た挙句に、俺まで寝転がらなければならない状況を作った張本人なんだからな。だから涼風は気にするな。」

 

柊「ねぇ八幡君。フォローのつもりで言ったんだとは思うけどさ、なんか毒があるのは気のせい?」

 

八幡「大丈夫大丈夫、気のせい気のせい。」

 

柊「返事適当〜!」

 

 

……この様子からして、八幡さんは本当に気にしてはいないようです、良かった……私のせいで気分を害していないか心配でした。

 

 

ガチャッ

 

 

御影「あっ、来たみたいだね。どうだった柊に涼風?特製の本人枕は?」

 

柊「すっごく気持ち良く眠れた!寝起きも寝心地も最高!毎日一緒だったら、絶対良い夢見られる♪」

 

涼風「あ、あの……えっと、八幡さんがご迷惑でなければ、また………やって欲しい、です/////」

 

御影「あははは、どうやら娘達は大絶賛のようだよ八幡君。もうこれは別々の部屋で寝るなんてあり得ないんじゃないかな?」

 

紫苑「八幡君が用意された部屋で寝ようものなら、柊と涼風はきっとその部屋に向かうわね。」

 

 

お母様の言う事に否定が出来ません………何度か八幡さんと一緒に眠りについた事はありますが、あれはとても素晴らしかったです。八幡さんの入っている布団に入った途端、幸せが身体中を包み込むような錯覚になります。

 

 

八幡「俺の寝る直前の未来に抱き枕になっている光景が見えるんですけど、これはどうにかした方がいいんでしょうか?」

 

柊「何もしなくて大丈夫だよ♪八幡君に危害は無いからそのままそのままっ♪」

 

涼風「わ、私も八幡さんがよろしければ、今のままがいいです///」

 

八幡「………」

 

御影「あははは、相変わらず娘達は八幡君に夢中のようだ。けど今は晩御飯にしようか。今日も料理長達が腕によりをかけて作った美味しいご飯が待ってるからね、早く食べよう。」

 

 

八幡さんには申し訳ありませんが、泊まると聞いては流石に黙ってはいられません。ですが、改めて思いますが本当に目覚めが良いです。

 

 

柊「はい八幡君、あ〜ん♡」

 

八幡「あむっ。」

 

涼風「八幡さん、こちらも。あ、あ〜ん///」

 

八幡「あむっ。」

 

 

八幡(美味い。美味いんだけど………お願いだからそんなに食べさせるやめてもらえないかなぁ?別に嫌ってわけじゃないけど、恥ずかしいんだよ。おじさんとおばさんはめっちゃニコニコしてるし。視線が生暖かいんだよなぁ………)

 

 

柊「八幡君、次は何食べる?」

 

涼風「八幡さん、次は何になさいますか?」

 

八幡「いや、自分で食べたいんだけど………」

 

柊「まぁまぁ遠慮しないで〜。」

 

八幡「何故俺が遠慮してるって思ってんだよ?してないから。今のは切実に思ってる事だから。」

 

 

度々申し訳ございません、八幡さん。私達も八幡さんに食べさせたいのです。なので幾ら八幡さんのお願いであっても、納得しかねます。

 

 

柊「だって涼風、八幡君が自分で食べれるって言うから涼風は自分のを食べようね?」

 

涼風「そう言うお姉様もそうして下さるのなら、私も引き下がりましょう。私だけ引いてお姉様が続けても意味がありませんから。」

 

八幡「おいおい俺を挟んで口論はやめてくれよ?もし続くようだったら、寝る時間になった時に扉に鍵かけて誰も入れないようにするけど、それでも構わないか?」

 

涼風「………お姉様、ここは八幡さんの邪魔をしないように致しませんか?あまりやり過ぎてしまっても逆効果だと思われます。」

 

柊「そうだね。私達ちょっと調子に乗りすぎてたのかも。八幡君にも決める権利があるのにね。じゃあ私達も食べよっか!」

 

 

八幡さんと眠れなくなるくらいなら、私は今の時間で八幡さんに食べさせる事をやめます!お姉様だけにその時間は渡しません!

 

 

紫苑「ふふふっ、2人共必死だったわね。けど八幡君もやるわね。既に2人をコントロールできているんだもの。やっぱり八幡君は面白いわ。」

 

御影「そうだね。柊は理由が理由だから分かるんだけど、あの涼風までもが他人にここまで心を開くとは思っても見なかったよ。余程八幡君を気に入ったんだろうね。」

 

 

お父様とお母様が何か会話をしているようですが、ここからだとよく聞こえません。それよりも、食事を済ませましょう。1秒でも遅れてしまったら、八幡さんと過ごす時間が減ってしまいます。

 

………何だか最近、自分でも八幡さんとの距離が少しだけ近過ぎる気もしなくもないですが、八幡さんもお姉様も何も言ってきませんし、このままでいきましょう。八幡さんの温もりはとても気持ち良いですし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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父の本心

 

 

八幡side

 

 

ふあぁ〜………さっぱりした〜。やっぱあの風呂は格別だ。この家に来た時の楽しみだ。この屋敷の風呂はデカいだけでなく、ちゃんと清掃も行き届いているから使う側である俺もかなり快適だ。さらに普通の湯だけでなく、ジャグジーやサウナもあったりするから温泉並に楽しむ事ができる。俺はおじさんと入る事が多い。あの人が誘ってくるという理由もあるが、1番はおじさんと会話してても暇にならないし、ペース配分も上手いからだ。話術が高い人ってすげぇのな。

 

 

御影「はい八幡君、コーヒー牛乳。」

 

八幡「どうも……やっぱりコレなんですね、この前泊まりに来た時もコレでしたけど。」

 

御影「やっぱりお風呂上がりの一杯は瓶のコーヒー牛乳に限るよ。そう思わないかい?」

 

八幡「日本人なら分からなくもないですけど、俺はいつも思います。自販機で売ってるような100円単位のコーヒー牛乳で充分だと。」

 

 

そう、おじさんが渡してきたのはコーヒー牛乳でも、1本500mlで2,500円以上するロックメイのコーヒー牛乳だ。確かに1本飲むなら充分な量だとは思うけど、1本2,500円の飲み物渡すって普通じゃないですよ?改めて思うけど、この家マジでスゲェ………

 

 

御影「いやぁ〜八幡君にはこの程度の事では返し切れないくらいの事をしてもらったからね。安いものさ、瓶1本のコーヒー牛乳くらい。」

 

八幡「………因みに聞きますけど、コレ後幾つあるんですか?」

 

御影「うぅ〜ん………」

 

八幡「あっ、もういいです。大体察しました。」

 

 

だって考えるって事はそれだけ量があるって事でしょ?一体何本貯め置きあるの?

 

 

ーーー居間ーーー

 

 

御影「お風呂頂いたよ〜女性陣の皆さん、先に頂いちゃってごめんね、お次どうぞ。」

 

柊「は〜い、ありがとうお父さん。じゃあ早速行こっ涼風、お母さん!」

 

紫苑「はいはい、分かったわ。」

 

涼風「では、私達も行ってきます。」

 

柊「あっ、八幡君。覗きはダメだからね?」

 

八幡「しないから行ってこい。」

 

柊「ふふふっ、ほんの冗談♪じゃあね!」

 

 

ったく、冗談じゃなかったら今頃………いや、今なってる可能性もあるな。おばさんからの扱き。

 

 

御影「あんな姿の柊を見られるのも、君のおかげなんだ。君はしつこいって思ってるかもしれないけど、僕や妻、涼風、この屋敷にいる人達全員からしてみれば、君は大恩人なんだ。だから僕が君にできる事は何だってしてあげるさ。さっきの枕の件だってそうさ。」

 

八幡「いや、まぁ……あれは「分かってたよ、君があの時咄嗟に思いついた事だって。」………え。」

 

御影「でも嘘ではなかった、違うかい?」

 

八幡「………そうです。」

 

御影「僕はね、咄嗟の思いつきであったとしても、君がああやって初めて僕を頼ってくれた事がとても嬉しいんだ。ようやく君に何かをしてあげられるってね。」

 

八幡「買い被り過ぎですよ、おじさん。俺はおじさんにいつも何かを貰ってばかりですから。」

 

御影「そうかもしれない。けどそれは僕が君にあげているだけであって、君が望んでいる物ではないからね。それはどんな高級品であっても、心を込めていなければ意味は無いさ。あっ、僕はちゃんと心を込めてるからね!」

 

 

いや、そこは疑ってないです………

 

 

御影「まぁ要するにだけど、僕に出来るのは本当にこのくらいしかないんだよ。出来る事ならもっと君の為になる事をしてあげたい、けどそれで君自身の人生の妨げになったら元も子もないからね、だから八幡君には申し訳ないけど、物で感謝を与えるしかないと思ってこうしているんだ。」

 

八幡「………おじさん、確かに俺はおじさんから数え切れないくらい色々と食べさせて貰ったり、物を貰ったり、連れて行ったりしてもらいました。でも俺はそれに対して不満なんて持った事はありませんよ。寧ろおじさんの言う心をたくさん貰ってます。だってそうでしょう?おじさんだけでなく、おばさんや柊、涼風や宮間さん達が俺の事を家族だって言ってくれてるんですから。そんな人達からそう言われて誰が申し訳ないって思うんです?俺の方こそありがとうですよ、こんな奴を家族だって思ってくれてるんですから。」

 

御影「………」

 

 

おじさんは優しげに笑みを浮かべると、その場で顔を俯けて右手の親指と人差し指で両目の内眼角辺りを押さえた。

 

 

御影「………そうだった、君はそういう優しい子だったね。ふふふっ、ホント柊は良い子を、本当に良い子を選んだんだって改めて感じたよ………僕の心中を知って尚、そんな事が言えるんだ、君はとても優しい子だよ。」

 

八幡「やめて下さいよ、俺が優しいだなんて………優しかったらもっと人気者ですよ。」

 

御影「そうかもしれないね。でも僕は今程、君が柊と涼風と知り合って、僕達と関わりを持ってくれた事を嬉しく思った日は無いよ。前から知ってはいたけど、君は柊と涼風を大切にしてくれているし、裏切るような人でもない。本当に君という人と出会えて嬉しいよ。これからも、君とは仲良くしていきたいよ。」

 

八幡「………はい、おじさん。」

 

 

おじさんのこの時の言葉に嘘や偽り、冗談なんて混じってない事は俺でなくとも分かるだろう。だからそれだけに俺はこの人達との関係は断ち切らないようにすると、心の中で強く決心をした。

 

 

 



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程々に

 

 

柊side

 

 

柊「八幡君〜お父さん〜上がったよ〜。」

 

涼風「良いお風呂でした。」

 

紫苑「宮間、私達にもコーヒー牛乳用意してくれてあるかしら?」

 

御影「勿論用意してあるよ。はい、どうぞ。」

 

 

なんか今日のお父さん、執事みたい………私達に3時のおやつを持ってきてくれたり、コーヒー牛乳用意してくれたりと。今もお母さんが宮間さんに言ったのに、お父さんが持って来てたしね………宮間さんちょっとだけ微妙な顔しちゃってるし。

 

 

紫苑「ありがと、あなた。それにしても今日のあなた、宮間の仕事を取ってばかりじゃない?」

 

御影「そんな事ないよ。僕も彼等の仕事を知ってみる必要があると思っただけだよ。だから今日は少しだけお手伝いさせてもらったんだよ。」

 

宮間「その……大変ありがたく思っているのですが、これだと私共のこなす事が無くなってしまいますので、旦那様にはいつも通りの立ち振る舞いでお願いしたいのですが………」

 

御影「あぁ………やっぱりそうだよね〜。」

 

紫苑「程々に、っていう事ね。」

 

宮間「はい。」

 

御影「うん、分かったよ。」

 

涼風「八幡さんはお飲みになられましたか?」

 

八幡「あぁ、おじさんがくれた。おばさん、これさっきおじさんにも聞いたんですけど、このコーヒー牛乳って幾つくらいあるんですか?」

 

紫苑「そうねぇ………幾つなのかしら?」

 

八幡「要するに分からないんですね?」

 

紫苑「大丈夫よ、賞味期限切れのは無いから。そんな物置いておくわけにはいかないでしょ?」

 

八幡「そりゃそうですけど、家の数字に関してはどっちもザルなんですね………」

 

御影「そういうのは宮間達に任せてるからね。さっ、もう難しい話は止めよう!八幡君はもう休むかい?それともまだ起きてるかい?」

 

八幡「俺が休むって言っても、俺から離れない姉妹が居るので、少しだけ起きてます。髪も乾いてないから寝れないでしょうしね。」

 

 

流石八幡君だね♪私達の事をよぉく分かってくれてるよね〜。

 

 

紫苑「そうなの。じゃあ2人の事は八幡君にお任せしても大丈夫っていう事になるのかしら?」

 

八幡「いいですよ。2人はもう休むんですか?」

 

紫苑「私は起きているけど、部屋に行こうと思ってるわ。明日も仕事があるから。」

 

御影「僕も部屋に行くよ。八幡君、娘達をよろしくね。寝る場所は何処にするんだい?」

 

八幡「俺は用意された部屋にしますけど……「じゃあ私もその部屋っ♪」「私も同伴します!」……まぁ、そういう事なんで。」

 

 

八幡君の居る所に私ありだもんね!当然八幡君が部屋に行くのなら、私も同じタイミングで行くもん!一緒に寝たいし♪

 

 

御影「そのようだね。じゃあお休み、3人共。柊と涼風も八幡君に迷惑をかけ過ぎないようにね?いいかい?」

 

柊「は〜い♪」

 

涼風「分かりました。」

 

 

そしてお父さん達は部屋の方向へと向かっていった。私達も行こうと思ってたけど、八幡君はまだ私達のコーヒー牛乳が飲み終わってないから、飲み切ってから行くって言ってくれた。

 

 

ーーー八幡専用宿泊部屋ーーー

 

 

八幡「毎回毎回思うんだけどよ、こんな良い部屋俺が使っていいのかね?バチ当たりじゃね?」

 

涼風「お父様達からのご好意なのですから、お気になさらないでください。居心地が悪いようでしたら、私のお部屋に案内しますが、如何でしょう?」

 

柊「八幡君、私の部屋でもいいよ?」

 

八幡「いや、部屋に不満はないから。それと自分の部屋に男を招く事に抵抗を持て。」

 

柊「え?八幡君なら全然平気だよ?他の人なら絶対お断りだけど。ねぇ涼風?」

 

涼風「はい、八幡さんだからお誘いしています。八幡さんになら見られても構いませんので。」

 

八幡「なんかこの下り前にもした気がする………いや、もう気にしないでおこう。それよりもお前等の髪、もう乾いてるのか?長いから乾くのにも時間掛かるだろ?」

 

柊「もうちょっとかな、だから八幡君!もうちょっと待って!もうちょっとだけだから!!」

 

八幡「一緒のタイミングで寝たいって言うんだろ?わーってるよ、お前の考えてる事なんて。」

 

柊「八幡君………!」

 

 

八幡(単純だから分かりやすい、とは言わないでおこう。余計な火種を生みそうだ。)

 

 

そして数分後、私達の髪も乾いた所で3人一緒にベッドへと入った。あぁ……やっぱり八幡君に抱き着けるって良いなぁ………

 

 

涼風「八幡さん。明日はお休みですが、どう過ごされるのかはお決めになられているのですか?」

 

八幡「腕の事もあるから、明日は安静にしてようかなって思ってる。だからこの屋敷にいるか、家に帰るかのどちらかだな。」

 

柊「じゃあこの家で出来る事をしよう!その方が良いよ!そうするべきだよ!」

 

 

明日まで八幡君は家に帰さないんだから!だって八幡君と過ごせる週最後の楽しみなんだから!

 

 

八幡「涼風はどう思ってる?」

 

涼風「私も八幡さんには残ってもらいたいです。私達3人で過ごせる環境はこの場所を除けば、登校の時や家庭科室での昼食の時くらいしかありませんから。」

 

八幡「………じゃ、残る事にする。」

 

 

よし!涼風、ファインプレーだよ!!

 

 



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三文の徳

 

 

八幡side

 

 

夜十神家に泊まってその翌日。目覚めの良い朝とは裏腹に体を動かす事すら叶わないこの現状。何故なら、豊かな果実を持った黒髪ロングの美人姉妹が俺の腕に抱き着き、両足を俺の足に絡めて離さないからである。物凄く嬉しそうで幸せそうな表情を浮かべながら。今更ながら思うが、凄い密着度だ。

 

しかもだ、腕に抱き着いていると言ったがそれだけではない。ちゃんと絡めた後の腕は手を繋ぐまでしっかりとお後もよろしくしてある。流石だよね、しかも2人おんなじようにしてるんだからビックリだ。

 

 

八幡「さて、どうすっかなぁ………いつもは弁当作るから起きるのも早いって言ってたけど、今日は弁当も作らないし、早起きする理由無いからな………起きるまで待ち続けるしかねぇか?」

 

涼風「んんっ………」

 

 

涼風が少しだけ動いたから起きたのかと思ったが、どうやら違ったようだ。だが俺が様子を見た時、俺の目と鼻の先に涼風の顔があった。至近距離、と言っても過言ではないだろう。

 

 

涼風「すぅ……すぅ……」

 

 

柊が見てたら、嫉妬して自分も同じ事をしてくるだろうな……にしても姉妹だからか顔の形やら何までそっくりだ。似てない部分があるとすれば、声と髪質と目元だな。柊はサラサラの髪質でキリッとしたつり目が特徴的だ。一方で涼風はフワフワの髪質でちょっと優しそうな垂れ目をしている。声に関しては、柊がソプラノで涼風がメゾソプラノって所だな。

 

だがこうして目を瞑っていると、判断材料が髪しかない。だから見分ける事ができるが、何も無ければどうやって見分けりゃいいんだろうな?やっぱ性格とかか?

 

 

涼風「すぅ……ん、んんっ……あっ、八幡さん、おはようございます。」

 

八幡「おう、おはようさん。起きて早々で悪いんだが、少しだけ離れてもらえると助かる。体勢は構わないが、顔が近過ぎるしな………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涼風「はっ!!!?も、もももも申し訳ございません!!!眠っていたとはいえ、こ、ここここのような!!!」

 

八幡「あぁいや、そんな気にすんなよ。寝てたんだから仕方ねぇって。」

 

 

それでも腕は離してくれないんですね。姉同様、こういう所はちゃっかりしてるなぁ………

 

 

八幡「いつも涼風の方が起きるの早いのか?」

 

涼風「は、はい。偶にお姉様が起きている時もありますが、大抵は私が先です。それに今日は余計に起きない日だと思われます。」

 

八幡「ん?何でだ?」

 

涼風「八幡さんという、お姉様を眠りにつかせるにはこれ以上にない程のアイテムがありますから。」

 

八幡「それはお前もじゃねぇの?」

 

涼風「………八幡さんは意地悪です///」

 

 

そう言って涼風は顔を赤くしながら、俺の肩に顔を埋めた。可愛い奴め………

 

 

八幡「悪い悪い、それでいつもは何時に起きてるんだ?因みに今は7時半だが。」

 

涼風「私は5時半に起きています。ですのでこんなに遅く起きたのは久しぶりですね。休日に起きる時間は大体7時くらいなので。」

 

八幡「それでも充分だと思うけどな。」

 

涼風「早起きは三文の徳と言うように、私は今3つの徳を得ています。1つは今日初めての挨拶を八幡さんに贈れた事、2つは今日初めての会話を八幡さんと交わせた事、3つは今日も八幡さんと仲良く出来ると感じている事、この3つです。」

 

 

全部俺なんですけど。お姉様の事も入れてやれよ、起きてたら飛び掛かってるぞ?

 

 

八幡「最後は別として、1つ目と2つ目は柊が知ったらどうなるか分かったもんじゃないぞ?」

 

涼風「ならこう言えばいいのです、『早い者勝ち』だと。その証拠に私はこうして八幡さんの温もりを堪能出来ているのですから♪それに対してお姉様は眠りながらです。この差はとても大きいです。」

 

八幡「起きてる方がその効果が大きく出ると?」

 

涼風「きっとお姉様は、起きたら八幡さんに甘えに行くと思いますが、私はお姉様の倍の時間八幡さんと過ごせていますから。」

 

 

ここまで強気な涼風も珍しい。ならもう少しだけ待ってみるか、柊が起きるのを。

 

 

ーーー15分後ーーー

 

 

柊「んんぅ〜………ふあぁぁ〜……あれ?八幡君起きてる〜?」

 

八幡「起きてるぞ、おはようさん。」

 

柊「んふふ〜おはよぉ〜八幡君〜♪八幡君あったかぁ〜い、良いにお〜い、抱き心地抜群〜♪」ギュー!

 

八幡「はいはいどうもね〜。」

 

柊「えへへへ〜♪」

 

涼風「お姉様、おはようございます。」

 

柊「うん、おはよう涼風………うん?涼風はやっぱり起きてたんだ?5分前くらいとか?」

 

八幡「いや、20分前くらい。」

 

柊「………八幡君、涼風に変な事されてない?」

 

八幡「お前は自分の妹を何だと思ってるんだ?心配すんな、何もされてねぇよ。」

 

涼風「ご安心下さいお姉様。八幡さんの仰る通り、私は何もしておりません。ただ、今日初めての八幡さんへの挨拶と会話は私が頂きましたが。」

 

柊「ちょっと涼風!?それ私がいつも言ってた事だよね!?どうして取っちゃうの!?」

 

涼風「……では早い者勝ちという事で。」

 

柊「ムキイイィィィィィ!!」

 

涼風「もう、お姉様。今のは軽い冗談ですから落ち着いて下さい。」

 

柊「その割には顔が少しだけ得意気なんだけど!ほんの少しドヤ顔しているように見えるんだけど!八幡君何とか言ってよ〜!」

 

 

その後は俺の両隣で口喧嘩になってもアレだから、腕を解放してもらって2人の頭を撫でる事で解決した。腕を離した事により、身体への密着度が高まったのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 



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職場見学

 

 

八幡side

 

 

あれから特に何も起きる事もなく起床をして、身支度を済ませた俺達。特に何もする事がなかったから、夜十神邸でのんびりしていようかと思ったのだが、おじさんからこんな事を言われた。

 

 

御影『もし時間を持て余しているんだったら、僕達の職場に来る気はないかい?都合上僕は相手をしてあげられないけど、妻なら何とか出来るだろうからね。』

 

紫苑『そうね、確かに1度私達が働いている職場に来るというのも、世の見聞を広める良い機会かもしれないわね。』

 

 

という事が朝食の時のやり取りであったので、俺と柊と涼風は【Nigh-ten・Group】日本総本店に訪問する事になった。まぁ社長と副社長が良いって言ってるから構わないとは思うけど………いきなり行って大丈夫なのか?

 

 

ーーー【Nigh-ten・Group】日本総本店ーーー

 

 

八幡「……相変わらず立派な建物だ。」

 

御影「あはは、ありがとう。じゃあ中に入ろうか。いつまでも此処に居ると寒いしね。」

 

 

ーーー大広場ーーー

 

 

受付「社長、おはようございます。」

 

御影「うん、おはよう。見学用の札を3つ貰えるかな?この3人に。」

 

受付「社長、失礼ですがどちら様ですか?見たところ高校生のように見えますが………」

 

御影「うん。僕と副社長の娘で、右が柊で左が涼風。それと男の子は比企谷八幡君、いずれこの社に入るかもしれない逸材であり、僕のお気に入り。」

 

受付「し、失礼致しました!!お嬢様方に御曹司だったとは知らず……!!!」

 

 

………御曹司?

 

 

御影「いいよいいよ、言ってなかったしね。」

 

 

その後は見学証を貰って、それを首にぶら下げた。しかし、何で御曹司なんだ?

 

 

ーーー廊下ーーー

 

 

柊「ねぇお父さん、本当に私達がここに来てよかったの?周りの人達ずっとこっち見てるよ?」

 

紫苑「今日は訪問してくる予定なんて無かったから、それの影響ね。実際は訪問者ではないけど、彼等にはそれ以外の考えなんてないでしょうから。それがこんなにも若いものだから却って好奇心が出ているんだと思うわ。」

 

御影「まぁ僕達と一緒にいる時点でそう捉えられるのも不思議じゃないしね。」

 

八幡「却って興味を持たれてるって事ですよね?」

 

紫苑「そういう事になるわね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森崎父「おはようございます、社長、副社長。おぉ、お嬢様方に若様まで……おはようございます、ご無沙汰しております。」

 

森崎母「おはようございます。その節は大変なご迷惑をお掛け致しました。」

 

御影「おはよう森崎君、森崎さん。朝からご苦労様。君達がこっちにいるという事は、何か用事があったのかい?」

 

森崎父「えぇ、まぁ………それよりもお嬢様方と若様を連れてどうされたのですか?」

 

紫苑「少し職場見学よ。このグループのトップに立つ人間になるかもしれない人材だから。」

 

森崎母「っ!……成る程。」

 

 

おじさんもおばさんもさっきから嘘の声色をしていない。本気で言ってる………俺がこの会社を継ぐって本気で言ってるのか?いや、まだ()()()()()()だから可能性の話だけどよ。

 

 

森崎父「それは良い考えだと思います。自分も若様やお嬢様方であれば、安心出来ます。では、我々はまだ業務があるので失礼します。」

 

森崎母「失礼します。」

 

御影「……ごめんよ八幡君、勝手な事言って。けど僕は君がウチのグループに来てくれたらとても助かると思ってるんだよ。君のような人材は貴重だからね。」

 

八幡「いや、俺にそんな価値があるとは思えないんですけど………」

 

御影「まぁ、今は分からなくても大丈夫だよ。さぁ、社長室はこっちだよ。」

 

 

………分からない、俺にはおじさんの考えている事が全く分からなかった。俺が貴重?何故そんな風に思えるのか、俺には見当もつかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、あの女の子2人って社長と副社長の娘さんらしいよ、綺麗な子達だったよね〜。」

 

「流石は社長の娘さんだよな、気品あるよな。」

 

「けど、あの男の子って誰なの?警備局の森崎局長補佐達とも何だか親しげだったし………」

 

「まさか社長の隠し子!?いや、無いか………だって全く似てないし。」

 

「けどさ、どことなく出来そうな雰囲気はあるよね。物怖じしない態度とかも良かったし。」

 

 

ーーー社長室ーーー

 

 

御影「皆驚いていたね、まぁ当然かな。」

 

紫苑「それはそうよ、いきなりだもの。本当は誰も来る予定がなかったんだから。」

 

御影「まぁ3人は妻と一緒に色んな所を回ってくるといいよ。今通ってきた所のみならず、この会社には色々な部署があるからね。例えば君達とも面識のある森崎君達は警備局。端的に言うと、この会社を警備している人達が所属している部署だね。」

 

紫苑「他にも経理、情報、通信、商品と色々だけど、見て感じる方がきっと早いわよね。だから見学しながら知っていくと良いわ。」

 

 

多分、まだあるんだろうな。今言った5つの他にもあるんだろう。やるとしたら俺は何だろうか?

 

 

御影「まぁ着いたばかりで早速というのもアレだから、少しだけ休憩して行くといいよ。あっ、紅茶出すから座ってていいよ〜。」

 

 

そしてこの人は本当に社長出来ているんだろうか?どうして社長自ら紅茶淹れようとすんの?いや、家族だから別に良いんだけどさ。秘書の人に頼めよ………あっ、おばさんが秘書だった。

 

 

 

 

 



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部署案内

 

 

柊side

 

 

お父さん達の会社に来て、時間が10時になった。この会社でいうところの営業開始、職務開始の時間みたい。それまでは自由ってわけではないけど、身の回りの整頓や準備をする時間なんだって。お父さん達も10時になるまで私達とお話してたから、強ち嘘でもないみたい。

 

 

紫苑「じゃあ案内していくわね。近い所から順番に案内していこうかしら。貴方達が通って来た所にあった部署、経理局からね。」

 

 

ーーー経理局ーーー

 

 

紫苑「経理局って名前だけで貴方達もおおよそ理解はしていると思うけど、お金の管理をしている部署ね。ウチの会社は1日でも相当なお金の動きがあるから、この部署は他のに比べると仕事量が多いと言えるわ。その分、やりがいのある職場でもあるのよ。」

 

八幡「じゃあこの部署が1番大変?」

 

紫苑「いいえ、部署によって内容は千差万別。私は仕事量が多いからって1番大変だって考えはないわ。まぁこの部署は他の部署に比べると、1番頭を使う部署でもあるから皆甘い物とか用意してあるのよね。何故かは知らないけど、此処に配属された人ってみんな、先輩にそう教わりましたって言うのよね。」

 

 

(((糖分摂らないとやってられないからじゃないですか[かな?]?)))

 

 

ーーー情報局ーーー

 

 

紫苑「この会社の強みと言えば、私は1番にこの部署が出てくるわね。それがこの情報局よ。この部署は、世界各地の商品の情報収集をしている部署よ。例えば今流行りの物、これから流行りそうな物、旬の物、急上昇している物、まだ選択の幅はあるけど、大まかに分けるとこの4つで情報を得ているわ。けれど、得ている情報はそれだけではないわ。」

 

涼風「相手の交渉の成功率とか、ですか?」

 

紫苑「鋭いわね、その通りよ。幾ら物が良くても交渉を受けてくれなければ意味はないわ。そのお店の店主が『この商品はこの店でしか販売しない!』っていう強い気持ちがある人なら、諦めるしかないもの。粘って交渉したところで逆に相手をしてくれなくなる可能性だってあるもの。」

 

柊「?けど此処って情報を集める部署なんだよね?交渉もこの部署の人達が行くの?」

 

紫苑「いいえ、あくまでも此処は情報専門。さっき言った4つの内容に当てはまっている物をピックアップして、それで交渉に持ち掛けやすいお店を選んでから、担当部署に回す事になってるわ。」

 

柊「成る程………」

 

 

ーーー通信局ーーー

 

 

涼風「この部署は他の部署に比べるとなんだか静かで人も少ないですね………通信局、ですか。」

 

紫苑「この部署は主に通信をする時に使う部署なのだけど、使う頻度はそうそう無いわ。ならなくしてもいいんじゃないかって思うかもしれないけど、そうもいかないのがこの部署なのよ。何故かというと、他の会社との定例報告会や幹部会、緊急時の作戦会議をする為にある部署なのよ。それにこの部署にいる人達はかなりの戦術家で、色々な角度からの視線で今後の方針を決める事ができるエキスパートなのよ。だから私や社長も会議をする時は必ずこの中の誰かを側に置いているの。」

 

八幡「そういう思想もあるんですね、意外です。」

 

 

ーーー商品局ーーー

 

 

紫苑「此処が機能してなければウチは機能しない、それ程までに重要なのがこの商品局よ。外国産の商品だってあるし、生物や海産物といった保存の扱いが難しい物だって此処で管理してるの。食材のみならず、家具や工具、花とかも販売しているのよ。」

 

八幡「じゃあ俺が来た時に食べてる高級食材とかっておじさんかおばさんが此処で買って貰ってるって事ですか?」

 

紫苑「そういう場合もあるけど、予め分かってる時は私達が先に買っておく事が多いわね。その方が余計な手間が掛からないもの。」

 

 

八幡(わぁ……用意周到。)

 

 

紫苑「チラッと見えたと思うけど、この会社自体も販売店とかあるから、お客様の出入りもあるのよね。その人達の対応もこの商品局の人達がしているのよ。商品管理からお客様対応までこなせるこの会社の要ね。」

 

 

ーーー警備局ーーー

 

 

紫苑「貴方達も知ってる通り、此処は警備局。この会社を守るのもそうだけど、それ以外にもやる事があるのよ。あら、ちょうど来たわね。」

 

 

トラックが来たかと思ったら、警備の人が点検をしている。トラックの点検が終わったら最後に運転手の顔に何かをかざしてから通したわ………何だろう?

 

 

紫苑「見ての通り、運ばれて来た商品の確認をするの。本当にあるのかどうかをトラックの中を確認してね。張ってある表だけが正しいとは限らないもの。だからああいう風に2重で確認しているってわけ。」

 

柊「あの警備員さんが翳してたのって何?」

 

紫苑「あれはカメラよ。」

 

柊「アレが!?」

 

紫苑「そう。あの大きさならはみ出る事もないし、正確に撮る事もできるから。それに、もしも何かあった場合の似顔絵にもなる優れ物よ。」

 

 

そんなのあったんだ………

 

 

紫苑「とまぁ大まかではあったけど、大きな部署の説明はこれで以上よ。後はこの部署から分けられた部署がいくつかあるのだけど、20部署もあるのよね。」

 

八幡「そんなにあるんですね………」

 

紫苑「けれど、どの部署もやりがいのある職場だと思うわ。実際私もこの職場からスタートして来たから分かるのよ。まっ、経験者は語るってヤツよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




難しい事はよく分からないので、自分の解釈+自分の考えで色々と付け足しました。


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実はこの社長……

 

 

御影side

 

 

今頃、妻と娘達は見学の最中かな。本当は僕も行きたい所だけど、流石に社長と副社長が仕事から抜けるわけにはいかないからね。そんな事したら、部下達に示しがつかないし。今はどこにいるのかなぁ?

 

 

コンコンコンッ

 

 

おっと、誰か来たみたいだ。

 

 

御影「どうぞ。」

 

「失礼します、社長。この前仰っていた○○店への事業拡大案ですが、先方から『大変貴重な物を頂きました。少しばかりではありますが、ほんのお気持ちです。お受け取り下さい。』との事で、こちらを頂いてきました。」

 

 

えぇ………事業拡大したいって言ってたから案を出しただけなのに、お金を出しちゃ意味ないでしょうに。本当に気持ちだけで良いのに。

 

 

御影「そう、報告ありがとう。じゃあ………はい、これは君に。後、これは僕からの気持ちだよ。」

 

「で、ですがこんなには………」

 

御影「いいんだよ。僕が君を信用して託した仕事で君はそれを成功させた。それ以外の事実はないからね。なら君にはこのくらいの事はしなくちゃね。」

 

 

僕が渡したのは、先方の○○店から頂いた御礼金100万円の1割10万円と八幡君達にも食べさせた老舗料理店・悟島軒のチョコケーキ。あっ、ケーキはちゃんと箱に入れてあるから大丈夫だよ。

 

 

「で、ではありがたく………あの、このお気持ちなんですけど、部署で分けてはダメですか?」

 

御影「そのお金はもう君のだから、君の好きに使うと良いよ。部署の全員に分けても、僕は文句なんて言わないから安心して。」

 

「は、はい!ありがとうございます!では、失礼しました!」

 

 

そうなんだよね〜………僕もお礼で端金を渡す時あるんだけど、少し多いのかな?偶に、と言うよりも少ない頻度でさっきみたいに『部署で分けたい。』なんて子が多く居るんだよね〜。もう少し金額を下げるべきかなぁ………でも僕がその子に頼んだ仕事だから、中途半端な金額はあげたくないし………

 

 

御影「加減って難しいよね〜。」

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

コンコンコンッ

 

 

御影「どうぞ。」

 

「失礼します、社長。今月の収支が確定しましたので、報告書を提出しに参りました。こちらがその報告書になります。」

 

御影「ありがとう。」

 

 

………うん、問題なく伸びてるね。ただ今回は少し各地に人を回し過ぎちゃったかもね。11月からは少し控えめにしないと。自由に使えるお金は渡しているとはいえ、その子の自由を奪わせちゃってるしね。来月は少し減らしてみようかな………

 

 

御影「うん、問題ないね。それと1つ質問したいんだけど、いいかな?」

 

「はい、何でしょうか?」

 

御影「今の資料を見てもわかる通り、今月はかなり人を動かしているんだ。それを考えて来月は少しだけその回数を減らそうと考えているんだけど、どう思うかな?君も出張で社を空ける事があるでしょ?その辺はどうかなって思ってね。」

 

「個人的な意見ではありますけど、自分はこのくらいが丁度いいと思っています。出張とはいえ、社長は私達に自由な時間も与えて下さいます。それに報いるのは我々商品局内交渉部の務めですから。寧ろ出張命令を貰った時は、次は誰だ誰だと楽しみながら封を破る事さえしていますので。」

 

御影「そ、そうなの?てっきり僕は無理させ過ぎちゃってるかなぁって思ってたんだけど………」

 

「無理だなんてとんでもない!確かに仕事で遠方に行く事ではありますが、社長は1日自由な時間を必ず取らせてくれるじゃないですか。寧ろこんな事をしてて良いのかって思ってしまうくらいですよ。」

 

御影「……そうなんだね。うん、君の気持ちはとてもよく分かったよ。もしよければ交渉部の皆に今の内容を聞いてみてくれないかな?より多くの声を聞けた方が僕も納得できるから。」

 

「分かりました。では、失礼しました。」

 

 

………あの部署って、あんなにアウトドアな子が多かったっけ?いや、あの部署は比較的外商にも抵抗がない子達を集めてる部署ではあるけど、あそこまでなるものなのかなぁ?

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

ガチャッ

 

 

紫苑「戻ったわ、あなた。」

 

御影「あっ、おかえり。どうだった?」

 

柊「想像以上に色んなのがあるんだね〜。お父さんはこれ全部把握してるんだよね?」

 

御影「そうしないと手が回らないからね。覚えるのにはちょっとだけ苦労したけど、今はもうそんなに苦労はないかな。」

 

八幡「いや、これら全部を把握なんて普通は無理ですからね?自分がどれだけ凄い能力持ってるか自覚あります?」

 

紫苑「八幡君ダメよ。御影にはそういうの通じないから。」

 

 

あれ、なんか僕ちょっとだけ引かれてない?

 

 

紫苑「あぁそうそう。さっき交渉部の子が機嫌良さそうにしてたんだけど、何かあったの?」

 

御影「うん、今月と来月の出張について話してたんだ。今月は多いから来月は少し減らそうって考えてたんだけど、彼の考えでは寧ろあった方が良いみたいなんだ。」

 

紫苑「その理由、私にはすぐに分かるわよ?」

 

御影「………やっぱり最後の1日自由?」

 

紫苑「当たり前じゃない。リフレッシュも兼ねて仕事が終わったら次の日は完全休日で自由な日を違う土地で取れるのよ?コレ旅行と変わりないわよ?」

 

御影「モチベーションアップの為にやらせてるんだけどね、無くしたら「ダメに決まってるでしょ。そんな事したら、交渉部誰も居なくなるわよ?」うん、分かってた。」

 

 

このままで行こう!不満は無いみたいだしね!

 

 

八幡「……改めて思った、おじさんすげぇのな。」

 

柊「うん、私もそう思った。家では普通のお父さんなのに、会社では凄腕のトップなんだね。」

 

涼風「はい。私もお父様が改めて凄い方なのだと、実感しました。」

 

 

あれ?なんか今度は尊敬の目で見られてる?

 

 

 

 

 



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休憩&食事時間

 

 

柊side

 

 

八幡「おじさん、こっち終わりました。」

 

御影「え、本当に?確認させて……………本当だ!全部入ってる!いやぁ〜助かるよ八幡君。」

 

八幡「いえ、ただ待ってるのも暇なので。」

 

御影「柊と涼風もゴメンね、書類整理なんて任せちゃって。いつもは妻にやらせちゃってるから。」

 

柊「別にこのくらい何でもないよ。でも流石お母さん、几帳面な性格してるからどこに何があるのかすぐに分かるもん。」

 

涼風「そうですね。お母様の整理整頓はとても分かりやすいですから。」

 

紫苑「あら、ありがとう。けど貴女達も負けてないわよ、流石は私の娘ね。将来は八幡君の良い秘書と懐刀になるんじゃないかしら?」

 

柊「当然っ!」エッヘン!

 

涼風「が、頑張ります!」グッ!

 

 

♪〜♪〜

 

 

八幡「?何だこの音楽?」

 

御影「あぁ、この音楽は午前の業務終了の合図だよ。だから皆はこの時間に昼食を食べる事になってるんだ。当然僕達もこの時間はペンや紙なんて一切持たないから。」

 

紫苑「じゃあ、行きましょう。」

 

柊「え、行くって何処に?」

 

御影/紫苑「食堂。」

 

 

ーーー食堂ーーー

 

 

八幡「………マジ?」

 

柊「予想はしてたけど………」

 

涼風「広い………ですね。」

 

 

目の前に広がっていたのは、この会社の食堂の風景なのだが、俺達の予想していた食堂の広さの想像以上だった。丸々1階分を食堂スペースに使ってるのかよ………おじさんもとんでもない事をするな。

 

 

御影「日毎にメニューが変わっていてね。今日は日本料理のひつまぶし、中華料理の特製盛り合わせ(メニューは麻婆豆腐、酢豚、野菜中心回鍋肉だよ。)、トルコ料理のケバブサンド、スペイン料理のパエリアって所だね。」

 

八幡「その中から選ぶって事ですか?」

 

紫苑「そうよ。皆好きなの選んでいいわよ。」

 

八幡「けど、俺達お金無いですけど………」

 

御影「あぁ、無料だから大丈夫。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?

 

 

柊「無料?タダって事!?」

 

御影「そっ♪この食堂で使われている食材は仕入れたのはいいけど、結局売れなかったり残ってしまった物が殆どなんだ。だからそれを有効活用してるって事だよ。本来ならお金を取るんだろうけど、自分達で買ったのにまたお金を払わなくちゃいけないなんて、変な話でしょ?」

 

 

いや、それ会社のお金ですよね?お昼代で払う為の個人のお金なら使っても良いのでは?

 

 

「今日も美味いなぁ……このパエリアがやっぱ1番だわ!」

 

「それを言うならこのひつまぶしだって負けてねぇぞ?見ろよ、鰻をこんなに使ってるんだぜ?贅沢過ぎるって。普段だったら絶対無理だってこんな食事。此処だからだよなぁ………」

 

「しかもこれを無料で食べられるんだもんね!社長が手に入れて販売した上で売れ残ったのは仕方ないけど、私達が食べる事によって無駄にならずに済むって考え方も凄いよね〜!」

 

「全くだな、だってあれ見ろよ!社長がその時に言った言葉をそのまま誰かが印刷して張り出したらしいぜ。度胸あるけど、良い言葉だよな〜。」

 

 

……アレだよな?

 

 

食材を無駄にする事なかれ!食材は調理する事によって料理へと変わり、我々の血となり肉となる!この世の全ての食材と調理して下さっている方々に最大の敬意と感謝を込めながら食すようにっ!

 

 

八幡「………おじさん、ああいう事言ったんですね。メッチャカッコ良いと思いますよ。」

 

御影「や、やめてよ八幡君///僕もあれは少しだけ恥ずかしいんだ!本音とはいえ、あの言葉をあんなに大きく、しかも皆が見えるような位置に張り出すとは思わなかったんだから!」

 

涼風「取り外さなかったのですか?」

 

紫苑「考えたのだけど、当時……と言うよりも今もだけど、アレはあのまま張り出しておくべきだって皆言うのよね。だから手出し出来ないってわけ。」

 

八幡「成る程………」

 

紫苑「因みに私も取り外すのは反対。だって良い言葉じゃない、逆に外す理由が知りたいわ。恥ずかしい以外で。」

 

 

おばさん、それ逃げ場ないです。

 

 

御影「まぁ僕ももう諦めてるから良いけど、何回もあの会話を聞くと、少しこの食堂から逃げ出したくなるんだよね〜羞恥心で。」

 

涼風「どうしてですか?とてもご立派なお言葉だと思いますが………」

 

御影「だって本人がいる前でもその話をするんだよ?気付いているのかいないのかは分からないけど、ちょっとは周りを見てって思っちゃうよ……」

 

八幡「まぁ、その内なくなりますって。多分。」

 

 

そんな雑談をしながらも、俺達は食べるメニューを決めて注文をした。そしたらすぐに出てくるから、食事においても気が利いているのがよく分かる。少ししかない食事時間も休憩時間を有意義に使ってもらいたいっていう考えなのかもしれない。

 

 

紫苑「なんというか、予想通りの注文ね。」

 

御影「だね。涼風はきっとひつまぶしを頼むと思っていたよ。そして柊は中華かトルコを選ぶと思ってた。これも的中だね。そして八幡君はパエリア、いやぁ〜娘達は当然だけど、僕達も八幡君の事を分かってきたみたいだね〜。」

 

涼風「和食は日本人の魂ですから。」

 

柊「他の国の料理の勉強もしないとだから!」

 

八幡「まぁ、美味そうだったので。」

 

 

 

 

 



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会社のシステム

 

 

涼風side

 

 

この会社の皆様のモチベーションの高い理由が少し分かった気がします。あれだけ美味しい料理を毎日出してくれるのですから、やる気にもなる事でしょう。それに調理師の方々も社員の皆様への配慮や心遣いがとても丁寧でした。学生である私達に対しても、社員の皆様と変わらない態度で接して下さいましたし。

 

 

流石はお父様とお母様です、素晴らしい腕を会社や部下の為に振るわれているのがよく分かります。もしも私が此処の社員だとしても、頑張って働こうという気持ちになるでしょう。

 

 

御影「どう?美味しかったかい?一応この会社の昼食システムに関しては少し自信があるんだ。」

 

八幡「いや、昼食無料はかなり大きいと思います。それに美味かった上に量もかなりあったから満足度も高いです。因みにおかわりとかってあるんですか?」

 

御影「あるよ。まぁする人はあまりいないけど、物足りないって感じる人は同じくもう少し食べたいって人と一緒に分けたりして食べる事もするみたいだしね。流石にあの量を2杯目に行く勇気は僕には無いかなぁ。」

 

涼風「そうですね。私もあのひつまぶしは1つで充分だと感じました。まだ食べられそうな量に感じましたが、いざ完食してみると、とてもボリュームのある1皿でした。」

 

柊「私もないかなぁ………あのケバブサンドも2つだけ?って思ったけど、2つで正解だって食べた後に思った。此処の調理師って凄いね。そういう計算もできるのかな?」

 

 

もし出来るのだとすれば、凄い方達です。あの壁に貼られていたお父様の『調理して下さっている方々に最大の敬意と感謝を込めながら食すようにっ!』という言葉が良く伝わりますね。本当に感謝しなくてはなりませんね。

 

 

御影「さて、3人にはこの会社を見て学んでもらったわけだけど、午後も同じ感じだからもう見せられる事はこれと言って無いんだ。それにこの会社の営業終了時間も6時になってるから、その時間になれば皆帰る事になってるんだ。因みに僕達の帰りが早いのは今日の仕事や明日、明後日の仕事を先に終わらせてから帰ってるのであって、早く帰りたいから帰って来てるわけじゃないからね?」

 

紫苑「まぁ私達のやってる事は決済印を押す事や、仕入れる品の確認が大まかな内容だからそんなに時間も掛からないのよね。」

 

八幡「なんか今日のおじさんを見てると、本当にこの人俺の知ってる人って思えてくるんだが、これは俺だけが思ってる事か?」

 

御影「え?八幡君から見る僕ってそんなにダメなイメージなの?」

 

八幡「いや、ダメってイメージでは無いですけど、こんなに仕事の出来る人だとは思ってなかったので。正直職場でもかなり緩〜くやってるのかなって思ってたので。けど蓋を開けたら本当にちゃんとしてたので。屋敷で見た書類とかが全部じゃないので。」

 

御影「あはは、まぁ八幡君の言う通りかもね。仕事は仕事、プライベートはプライベートっていう風に分けてるからね。それに家族で過ごす時間はとても大切だからね。それを削ってまで仕事をさせるべきではないって思ってる。なら会社に居られる時間は制限させておいた方がいいと思ってるんだ。だから僕の会社では残業代とかが発生してないんだ。そうだよね、紫苑。」

 

紫苑「えぇ。貴方の言う通り、貴方が社長になってからはずっと残業代は出てないわ。それと、朝から晩までの勤務スタイルにしたのもプラスのようだわ。先代の頃は昼から来て夜までっていうのもあったみたいなの。勤務時間は一緒だけどね。先々代の頃は今と同じ体勢だったけど、急に変えたのよね。まあ上手く連携が取れていたから良かったけど、『夜が多過ぎる。』とか『夜ゆっくり出来ない。』っていう事もあったから社長が元に戻したけど。」

 

 

そんな頃もあったのですね………ですが先々代と言うと、お父様が仰っていた当家の異端児のお話ですね。誰もして来なかった事を平然とやり、この千葉を豊かにした偉大な人だと。私とお姉様の曾お爺様に当たる方ですね。そして先代が私達の祖父にあたるお方………滅多にお会いする機会が無いので、顔は全く覚えていません。

 

 

御影「今は1ヶ月に1回、要望アンケートとかを配布してるから、何かあれば記載すると思うよ。色々と改案した後は1つも要望出てないけど。」

 

柊「それって良い事じゃないの?不満とかないって事じゃないの?」

 

紫苑「裏を返せば、言いにくい事もあるっていう風に受け取る事も出来るわ。誰がなんて特定する事は出来ないけど、大きな企業ともなれば不満が出てくるのは当たり前だもの。」

 

 

※いや、本気で本当にないと思われます。

 

 

御影「今はそれでも良いかもしれないけど、後になってそれが欠陥に繋がるのだけは避けたいからね。だからしつこくともこうする必要があるんだよ。あまりにも横暴な要望とかは聞けないけどね。給料上げろとかそういうのはちょっとね……」

 

 

いえ、それは当たり前かと………

 

 

八幡「まぁおじさん達が色々考えているのはよく分かりました。その上で言わせてもらうと、この会社、超がつく程良いって事です。俺が就活生なら此処選んでます。」

 

御影「大丈夫!八幡君なら即採用だから!!勿論、涼風と柊もね!!」

 

 

コネを使うわけではありませんよね?娘とその彼氏という理由では、私は納得しませんよ?八幡さんとは一緒に居たいですが。

 

 

 

 

 

 

 

 



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帰った3人は

 

 

八幡side

 

 

ーー車内ーーー

 

 

あの後は特に何もする事がなくなってしまったという理由から、社内見学は終了した。今は宮間さんが車で屋敷まで送ってくれている。にしても凄い会社だったな………ホント凄い。あの会社って悪い所あるんだろうか?良い所しかなくて、逆に悪い所探したくなる。いや、そもそも探す気はないけどよ。

 

 

柊「お父さん達の会社ってあんな感じなんだね〜。なんていうか、アットホーム?」

 

涼風「それはまだ分かりませんよ?だって私達はお母様と見学をしに行ったというだけであって、実際にはその場で何かをしていたというわけではないのですから。実際に入ってみない限りは分かりません。」

 

柊「けど食堂では皆仲良くしてたじゃん。だから会社の皆は特別仲の悪い人はいないんじゃない?」

 

八幡「そうだと良いな。それも入ってみれば分かる事だろう。」

 

柊「おっ?八幡君もお父さんの会社に入社希望?第一希望かな?」

 

八幡「あそこ以上の会社が見つからなければな、ていうか見つかる気がしないけどな。あんな高待遇な会社なんて、日本中探したとしても見つかりゃしねぇだろ。何だよ昼食無料って。最早最高最強じゃねぇか………誰かしらは休みの日でも食いに来てる人居るだろ。」

 

 

これは他の会社にとっても大きな差だろうな。だがこの会社ならではの手法だろうな。手に入れた食材を無駄にしないって考え方から始まったやり方だから、他の会社ではやろうとしてもまず無理だろう。

 

それに強みはこれだけじゃない、出張もそうだ。普通なら仕事で行く筈だが、出張の目的が終われば帰って来いではなく、その地で1日自由にして良いと来たもんだ。これも他の会社にはない強みだろう。

 

 

柊「他の会社はきっとこんな事、やろうともしないよね。食堂を無料にするだなんて。普通じゃないもの。あっ、これ言ったらお父さんが普通じゃないみたいになるから今の無しっ!」

 

八幡「いや、大丈夫だと思うぞ。実際、おじさんがやった事……つーよりもやってる事ってある意味常識破りだから。」

 

涼風「普通では考えられませんからね。」

 

柊「宮間さんはお父さん達の会社に顔を出した事ってないの?」

 

宮間「柊お嬢様の質問にお答えするなら、イエスです。私も旦那様の仕事場に顔を出す時はございます。しかしその場合は、私共では決断しかねる場合のみとしております。」

 

八幡「成る程、緊急の時だけって事ですね?」

 

宮間「はい。なので私も旦那様の会社に行く事はあっても、中に入る機会は滅多にございません。強いてあるとすれば、旦那様が独自に仕入れた品をお車に積む時は出入りさせて頂いていますが。」

 

柊「な、成る程………」

 

宮間「それと若様、昨夜は旦那様が若様の事でかなり唸っておられましたよ。」

 

八幡「?俺の事で?何かありました?」

 

宮間「えぇ。若様達が起きている間も必死に探しておられたのですよ、若様がご所望なされた枕を。」

 

 

………ホントに?けど晩飯の前に注文したよな?

 

 

宮間「私もかなりの質問を投げつけられたものです。ですが、旦那様のあの楽しそうな表情を見るのは久々でした。唸りながらも楽しそうにしておられた。若様が欲しい品があると知っただけで、あそこまでやる気になるとは思いませんでしたが、数年振りにあの表情を見られました。」

 

八幡「ま、まぁ……その、怒ってないようで何よりです。ホントに。」

 

柊「確か、八幡君が枕欲しいって言った時も異常なくらい喜んでたもんね。私達も引くくらい大声で叫びながら。」

 

涼風「八幡さんがお部屋にお戻りになられた時も、少しだけ疲れた表情をしていましたし。」

 

宮間「ほっほっほっほ。やはり若様はこの一家を退屈させるような事をさせませんな。」

 

八幡「好きでやってるわけじゃないですけどね。」

 

 

ーーー夜十神邸ーーー

 

 

宮間「ご到着致しました、お嬢様方、若様。」

 

柊「ありがとう宮間さん♪」

 

涼風「ご苦労様でした。」

 

八幡「ありがとうございます。」

 

 

ホント何度も思うけど、若様って呼び方を辞めるつもりは無いんだな。諦めてるけど。

 

 

柊「結構早い時間に戻って来たけど、何しよっか?家に帰ってすぐお出掛けなんてしたくないしね。」

 

涼風「………八幡さんは何かございますか?」

 

八幡「俺も特にないな。昼飯も食ったし、のんびりするにしても、ちょっとな………2人はないのか?したい事とか。」

 

柊「私もないんだよね〜………」

 

涼風「私もです。」

 

八幡「……じゃあ俺はお暇「「ダメ(です)。」」させ………冗談で言っただけだって。」

 

 

必死過ぎだろ、お前ら。

 

 

柊「じゃあ色んな事して遊ぼうよ!ビリヤードにダーツ、トランプだってあるんだからさ!勝負して最下位だった人に罰ゲームっていうのはどう?」

 

八幡「成る程な………因みに罰ゲームの内容は?内容次第では却下だぞ?」

 

柊「うぅ〜ん………あっ!じゃあコーヒー牛乳1本一気飲みっていうのはどう?」

 

涼風「それは罰ゲームなのでしょうか?」

 

八幡「飯食ったばっかとはいえ、3本くらいなら飲めそうだぞ?」

 

柊「甘いねぇ〜2人共。今言ったのは3種のゲームだけだけど、何も私はそれだけだなんて言ってないよ?花札とかチェス、ウノ、人生ゲームだってあるんだからね!」

 

八幡「………そんなのあるのか?」

 

涼風「………確か娯楽施設にある筈です。」

 

 

マジか、本当に罰ゲームになるかもしれねぇじゃねぇか。いや、俺からしてみれば最初から罰ゲームだな。高級コーヒー牛乳飲まされるんだからよ。

 

 

 

 

 

 

 

 



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諦めの悪い人

 

八幡side

 

 

職場見学から2日が経ち、月曜となり学校へと登校する日となった。いやぁ〜まさかあんな形で職場見学をするとは思わなかったが、また行ってみたいもの………いや、ダメだよな。何高校生が職場にまた行きたいだなんて言ってんだよ。こんな軽い気持ちで言うべきじゃないよな。けど美味かったんだよなぁ〜あのパエリア。また食いたい。

 

そしてその後の屋敷内でのボードゲーム対決では、中々に接戦を繰り広げていた。結果内容はこんな感じだ。あっ、負けた結果な。

 

 

トランプ(大富豪)…柊

 

トランプ(ババ抜き)…俺

 

トランプ(7並べ)…柊

 

ダーツ…涼風

 

ビリヤード…俺

 

花札…柊

 

人生ゲーム…涼風

 

ウノ…俺

 

 

こんな結果だ。な?意外と皆平均的だったろ?柊と俺、カードゲーム系弱いんだなって思った。そして涼風はボードっていうか、運とかに弱いって感じだな。人生ゲームでなんて最終的にはプラスだったが、マイナスマスに10回くらい止まってたし。

 

 

柊「?八幡君、どうしたの?」

 

八幡「ん、あぁ……一昨日の勝負の事思い出しててな。意外と良い勝負だったなって。」

 

涼風「そうですね。やっていてとても楽しかったです。また3人でやりませんか?勝負でも良いですが、次は罰ゲームなしで。」

 

柊「そうだね。それと次からはカードゲーム系減らそ?私頭脳系すっごく弱いから。」

 

八幡「それ言ったら涼風の運系もだぞ?見てて少しだけ哀れな気分になった。ゲームなのにお金貸したくなっちまったし。」

 

涼風「や、やめて下さい八幡さん……私もあんな事になるとは思わなかったのです。うぅ………恥ずかしいです///」

 

柊「八幡君も平均するとカードゲームが弱かったよね。守りに入り過ぎて後から何も出来なくなっちゃうタイプかなぁ〜?」ニヤニヤ

 

八幡「やろうと思ったらお前等2人が先にやるんだからよ、手が出せなくなるだけだ。」

 

柊「分かる〜!私が出そうと思ったら涼風がそれを防いじゃうんだから溜まったものじゃないよ!涼風ってばホントに戦術家だよね!」

 

涼風「八幡さんとお姉様でしたら、次の手が何となく分かりますので。」

 

 

うわぁ〜その能力良いなぁ………俺も欲しい。

 

 

ーーー2-F前ーーー

 

 

八幡「まぁそういう時もあるだろうよ。」

 

柊「ないって!絶対ない!」

 

 

ガラガラッ!

 

 

八幡「うおっと………三浦?」

 

 

俺が教室の戸を開けようとする前に三浦が戸を開けて教室から飛び出して行った。中の様子を見ると、既に葉山グループの面々が集まっていて、なんかすげぇ居心地の悪い感じになっていた。

 

 

八幡「………アレだな、失敗したスポンジ生地は俺が食べるから気にすんなって。」

 

柊「嫌だよ!八幡君には成功したヤツしか渡したくないのっ!特に焦げたヤツなんてあげられるわけないじゃん!」

 

涼風「お姉様、私はいいという事ですか?」

 

柊「だって………ね?」

 

八幡「じゃあ今度作るかもしれないクッキー、作って失敗したとしても俺個人で食べるわ。もしかしたら涼風にもあげるかも。」

 

涼風「喜んで頂きます!」

 

柊「八幡君!!私の失敗しちゃったヤツとも交換しようよ!!意見交換にもなるよ!!」

 

 

必死さが伝わってくる………本気になり過ぎじゃね?たかが俺の作るクッキーくらいで。作るかどうかも分からないんだぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葉山「少しいいかい?」

 

八幡「またお前か………今度は何だ?」

 

葉山「力を貸して欲しいんだ。」

 

八幡「この前貸してやったぞ、関係ぶっ壊せって言ったろ?俺はあれ以外助言なんてねぇよ。」

 

葉山「君は奉仕部だろ?依頼という形で引き受けてもらえないか?」

 

八幡「俺は奉仕部でもピンチヒッターって立場でな。俺の一存では依頼を受ける事は出来ない。ちなみに参加するしないは俺の意思で決められる事にもなってる。そういうわけで、依頼が通ったとしても俺が受けようと思わない限りは依頼参加はあり得ない。」

 

葉山「なっ………」

 

八幡「意外だな。お前の事だから由比ヶ浜経由で知ってるかと思ってたが………まぁいい、そういうわけだ。俺を動かしたいんだったら、それなりの材料を持ってこないと無理だぞ。最も、お前の為なんかに動く気になんてなれないけどな。」

 

葉山「どうしても、か?」

 

八幡「愚問だな。」

 

 

そして葉山は俺を睨むように少しの間見下すと、廊下へと走って行った。多分三浦を探しに行ったのだろう。見てねぇから分からないが、アイツが行ってもどうにもならんだろ。葉山()三浦()に突っ込みに行くようなものだ。

 

 

柊「彼もしつこいね。八幡君は協力しないっていってるのに………どうして分からないんだろう。」

 

涼風「葉山さんにも失いたくないものがあるからではないでしょうか?それが私達にとって理解出来ないものなのでしょう。」

 

八幡「まっ、理解出来なくて当然だ。奴の頭の中に俺達なんて……いや、俺なんて入ってない。」

 

柊「何で言い換えたの?」

 

八幡「お前達は知らないだろうが、入学する前のアイツは俺の事なんて目にも暮れてなかった。意識し出すようになったのは俺と柊が付き合ってるのがバレた頃だろう。そう考えたら簡単だ、見映えのある奴と一緒にいた方が自分の箔が上がるとでも思ってんじゃねぇのか?まぁ知らねぇけどよ。俺には人気者の気持ちなんて分からないしよ。分かろうとも思わねぇ。」

 

涼風「今が1番、ですか?」

 

八幡「そっ、今が1番。お前達2人が居るだけで充分。他は別に要らない。」

 

柊「私も〜♪」

 

涼風「八幡さんと同意見です♪」

 

 

 

 

 

 



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久々の部活

 

八幡side

 

 

1日の学校が終わってしまった………はぁ、今日から部活かぁ。けど平塚先生に腕が回復するまでは休んでいいって休ませて貰ったんだ、一応それには報いないとな。念の為だが教えておこう。今日1日中三浦の奴はすげぇ機嫌が悪そうだった。話しかけに行こうにもその雰囲気が許さなかった。あの葉山でさえも、近付いて話し掛けても意味をなさなかった。それが放課後まで続いているわけだが、漸く三浦が居なくなってくれたおかげで気まずい雰囲気も無くなった。

 

今朝の事だが、恐らくは教室で修学旅行の告白の事を話していたんだろう。多分クラスはその話題で持ちきりだろう。その証拠に昼休みは周りの連中が葉山を観察するように見てやがったし。アイツ、これからどうするつもりなのかねぇ?

 

さて、俺も奉仕部に向かいますか。柊と涼風には部活があるから先に帰っていいと伝えてある。帰れるのであれば俺も帰りたいが、そうもいかない。

 

 

ーーー奉仕部ーーー

 

 

ガラガラッ

 

 

八幡「う〜っす。」

 

雪乃「あら、比企谷君。もう腕はいいの?」

 

八幡「あぁ、退院してからも休ませて貰ってたからな。順調に回復してるから、今日から俺も部活参加って事で。」

 

雪乃「分かったわ。けれど無茶はしないように。」

 

八幡「するつもりはねぇよ。それにしようとも思わん。俺はピンチヒッターだからな。」

 

雪乃「……そうだったわね。」

 

 

ガラガラッ

 

 

結衣「やっはろー……あっ、ヒッキー!」

 

八幡「おう。」

 

雪乃「こんにちは、由比ヶ浜さん。」

 

結衣「うん、やっはろーゆきのん!ヒッキー今日から部活に復帰するの?」

 

八幡「あぁ。」

 

結衣「そっかぁ……良かったね!」

 

 

いや、俺個人としては良くはないんだが………

 

 

八幡「んで、俺が居なかった時に依頼とか来たわけ?あぁ、一色のは抜いて。」

 

雪乃「いえ、一色さんの依頼だけだったから特に何もないわ。」

 

八幡「そうか……由比ヶ浜、お前ん所の金髪2人だが、あれ何とかならないのか?1人は私不機嫌ですよオーラだだ漏れの女王様に、1人は事ある毎に無関係の奴に協力してくれだの力を貸してほしいだの言ってくる厚かましさ100%の王子様だ。」

 

結衣「あははは………」

 

雪乃「私のクラスでも耳にしているわ。修学旅行の告白の事ね?」

 

八幡「あぁ。それで今日の朝に口論があったみたいでな、俺は別にどうでもよかったが、葉山の奴がまた俺にちょっかいかけてきてな。しかも挙げ句の果てには此処の名前まで使って来やがった。奉仕部の事はどうでもいいが、利用するように使われるのは我慢ならんからな。」

 

雪乃「………それは許せないわね。部長の私に何の相談も説明もなく、勝手に依頼を受理させようとするだなんて。」

 

結衣「でも、隼人君も優美子と仲直りしたくってやった事だし………」

 

雪乃「由比ヶ浜さん、これはそれ以前の問題よ。葉山君と三浦さんの事は置いておくにして、彼は比企谷君に奉仕部を通さずに依頼をしようとした。それが問題なのよ。」

 

八幡「幸い俺に決定権は無いし、やるやらないも決められる。だからその場で俺の立場を説明して、依頼は受けずに済んだ。もしかしたらだが、アイツまた奉仕部に来るかもな。」

 

雪乃「その時は追い返すまでよ。彼と話す事なんて何も無いわ。」

 

結衣「………」

 

 

雪ノ下の奴、ご立腹だなぁ………まぁ無理もない。自分のとこには何の相談もなしに勝手に依頼をさせようとしたんだからな。多分今回は幾ら由比ヶ浜が何かを言おうが応じる事はないだろうな。

 

 

雪乃「それと比企谷君。生徒会長の件だけれど、平塚先生から聞いたわ。貴方のおかげで解決出来たわ、ありがとう。」

 

八幡「聞く気なんてなかったが、奉仕部に依頼として舞い込んできた内容だ。聞かないわけにもいかなかったからな。それに何つーか、あの一色って奴………アイツがああなるのも頷けるわ。女の友達居なさそうだし。」

 

結衣「え?何で?良い子なのに。」

 

八幡「気付かないのか?アイツ先輩や男子には無駄に自分アピールをしてんだよ。俺もアイツに会って自己紹介をしてもらった時一目で分かった、『コイツならこんな事になっても不思議じゃない。』ってな。」

 

 

しかもアイツあざとい。先週の金曜日に校門の下駄箱前で猫撫で声で間伸びした口調で先輩って呼ばれたし。いや、やめて欲しいわ。ああいうの。

 

 

雪乃「私達の前でも最初はそうだったわね。ある程度面識のある人の前でならそれも許されるとは思うけれど、初対面の相手にあの態度は私も少しどうかと思ったわ。」

 

結衣「ヒッキーもゆきのんもバッサリ言うね。」

 

八幡「柊と涼風を見習ってほしいもんだ。あの2人がああいう態度を取ったところなんて見た事ねぇし、仕草もねぇ。」

 

雪乃「いえ、それはないと思うわ。」

 

結衣「うん、私もそう思う。」

 

 

………え?

 

 

結衣「だってヒッキーの前では2人共すっごい甘えてるじゃん!特にお姉さんの方!」

 

雪乃「そうね。一色さんのような感じではないけれど、比企谷君には甘えるような声を出したり、密着しているのは事実ね。」

 

八幡「そ、そうか………」

 

 

………次からは少し気を付けるか?

 

 



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拒否と密会

 

 

八幡side

 

 

あれから特に何もなく、時間だけが過ぎて行った。まぁ奉仕部としてはいつもの風景なのだろうが、俺からしてみれば少し退屈だ。本は読んでいるのだが、やっぱ柊と涼風と過ごしていた時間が長いからか、2人との時間が欲しくなってしまう。俺も柊の事は言えないな。

 

けどそろそろ新しいの買いに行かないとな。最近は本屋とか行けてなかったから、新刊とか出てるだろうし。帰りにでも行ってみるか。

 

 

雪乃「………今日はこのくらいにしましょうか。」

 

八幡「分かった。」

 

結衣「うん!ゆきのん途中まで一緒に【コンコンコンッ】帰ろ………あれ、誰だろう?」

 

雪乃「……どうぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葉山「失礼するよ。」

 

 

うわぁ……数時間前に話題になった葉山が来やがったよ。コイツは本当に色々とやらかしてくれるな。残念だが、もう遅いぞ?

 

 

雪乃「何か用かしら?」

 

葉山「結衣からも聞いていると思うんだけど、最近グループがギスギスしていてね、何か知恵をもらえないかと思ってきたんだ。ヒキタニ君に今朝その事を頼もうと思ったんだけど、断られ「それは誰の事かしら?」……え?」

 

雪乃「だから誰の事を言っていると言っているのだけれど?私はヒキタニ君という人物を知らないわ。」

 

 

珍しく雪ノ下が鋭い言葉を突き刺した。普段ならこういう事は言わないのだが、葉山の行動が相当頭に来ているのだろう。

 

 

葉山「……比企谷に頼もうとしたんだけど断られたんだ。だからこうして直接来たんだ。君達なら引き受けてくれると思ってね。どうかな?」

 

 

この野郎、遠回しに俺の事disりやがった……

 

 

雪乃「私達もお断りするわ。」

 

葉山「え……ど、どうしてだい?」

 

雪乃「私達が何も聞かされていないとでも?随分と比企谷君を自分の都合の良いように使おうとしていたみたいじゃない?」

 

葉山「な、何の事かな?俺は何も「今朝の事、比企谷君から聞いているわ。それに先週の事も。」………」

 

雪乃「貴方は認めたくないでしょうけど、他者からの目線で見るとそう見えるのよ。ましてや今朝なんて比企谷君にこの部の名前まで使ったみたいじゃない?私の許可なく勝手に依頼を受理させようとした、それがどれだけ悪い事かっていうのは貴方でも分かるでしょう?」

 

葉山「………」

 

雪乃「もう分かりきっていると思うけれど、私達奉仕部は貴方の依頼を受ける気はないの。早急にお引き取り願うわ。」

 

結衣「ゆきのん………」

 

八幡「………」

 

 

雪ノ下は鋭い目で葉山を睨みつけながらそう言い放った。対する葉山は無言のままでいるのだが………どうするつもりだ……っておい、なんで俺を見る?

 

 

葉山「雪ノ下さんに言う必要があったのか?」

 

八幡「は?」

 

葉山「今朝の事だ。」

 

八幡「あるに決まってんだろ。お前は部内で揉め事があっても顧問に報告しないのか?俺は当たり前の事をしただけだ。報連相は常識だろ?」

 

葉山「っ………」

 

 

葉山は苦虫を噛み締めたような表情をしながら部室から出て行った。雪ノ下の言葉の説得力もそうだが、なによりも雰囲気だな。絶対にお前からの依頼なんて受けないっていうオーラがダダ漏れだった。

 

 

八幡「厄介者も居なくなったし、帰ろうぜ。」

 

雪乃「えぇ、そうね。由比ヶ浜さん、鍵を返しに行くけれど、一緒に行く?」

 

結衣「う、うん、行く!」

 

八幡「んじゃ、また来週な。」

 

雪乃「えぇ、また。」

 

結衣「じゃあね〜ヒッキー!」

 

 

さて、本屋にでも行くか。

 

 

ーーーららぽ内・本屋ーーー

 

 

やっぱ新作出てるな………最後に行ったのは2週間前だから色々と出てるな。けど買いたいかと言われたらそうでもないな。他のも見てみるか。

 

 

三浦「……ヒキオ?」

 

八幡「………三浦?」

 

三浦「奇遇じゃん、こんなとこで。」

 

八幡「だな。お前もこういう所来るんだな。」

 

三浦「あーしだって雑誌の一冊くらい買うし………あんさ、隼人あれからどうだったかアンタ知ってる?教えてくんない?」

 

八幡「グループを元に戻したいみたいだぞ。具体的な事は分かんねぇけどな。」

 

三浦「あっそう………朝、あーしが教室から飛び出したじゃん。アレ隼人が何にも答えてくんないからイラついたのと、ちょっと嫌気が指したんだよね。あーし何してんだろって。」

 

 

最近の三浦を見て分かったが、意外と話の分かる奴でもあるんだな。

 

 

三浦「………あんさ、ちょっと話さない?」

 

 

ーーーサイゼリアーーー

 

 

八幡「まっ、お前の気持ちも分からなくもない。他の奴は知ってんのに自分だけその事実を知らない。輪から自分だけ外されてんだ、そう思いたくもなる。」

 

三浦「あーし、修学旅行まではあのグループ気に入ってたんだよね。本当に。けど今は……なんていうか、よく分かんないし。よく分かんないけど、好きではないかもしんない。」

 

八幡「……言い方は悪いかもしれないが、俺からしてみれば、上っ面の関係だけでしかないように見える。そうでなきゃ、こんな事にはなってない筈だしな。もしなっていたとしても、全員で解決に取り組む筈だ。」

 

三浦「ヒキオズケズケ言うし。けどそうかも。それに比べてヒキオと夜十神さん達っていつも一緒に居るけど、仲良いし。恋人だからっていうのもあるかもしんないけど。」

 

八幡「まっ、俺達の場合は特殊だからな。中学に色々あったから今はこうなってるってだけだ。話すつもりはねぇけどよ。」

 

三浦「………ちょっと羨ましいし。」

 

 

 

 

 

 

 

 



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決断

 

 

八幡side

 

 

昨日奉仕部で色々あって、その終わりにららぽで三浦と話した。普段ない事があったから少し気疲れがあった昨日だったわけだが、気にしていても仕方ないからもう気にしない。それに今はそんな事思っていても無駄になるだけだしな。今は柊と涼風と一緒に登校してるんだし、楽しまないとな。

 

 

柊「そういえば八幡君、昨日の部活はどうだったの?久し振りだったんでしょ?」

 

八幡「部活自体は問題なかった。だが最悪な奴が最悪のタイミングで来たって所だな。」

 

涼風「?どういう事ですか?」

 

八幡「葉山が昨日、俺にグループの事で力を貸して欲しいって頼んできたのは知ってるな?俺は断ったから今度は奉仕部に依頼をしに来たんだよ。」

 

柊「………でも普通じゃない?」

 

八幡「此処だけ聞くとな。俺が雪ノ下に朝の事を報告してた事が決め手になった。雪ノ下はアイツの依頼を聞く気はないってよ。」

 

柊「成る程ね〜確かに八幡君の朝の事を聞けば、どんな依頼であっても聞きたくなくなっちゃうよね。私も雪ノ下さんと同じ気持ちかも。」

 

涼風「私もお姉様と同じ気持ちです。」

 

 

しかし、気になるのは三浦の方だ。昨日サイゼで少しだけ話したが、今のグループの事は好きでも嫌いでもないみたいな言い方をしていた。前までは気に入ってたようだが、今のこの現状を察して判断したんだろう。まぁ奴がどんな結論を出そうと俺等には関係ない事だが、どうでもいい火種まで飛んでくる事がないように祈っておこうか。

 

 

ーーー2階廊下ーーー

 

 

涼風「……何でしょう?私達のクラスに人だかりが出来ているようですが………」

 

柊「うん。しかもクラスメイトも覗いてるよね、何してるんだろう?」

 

八幡「いやいや、理由なんて1つしかねぇだろ。昨日の今日でまた騒ぎを起こしやがって………」

 

涼風「では、葉山さんが?」

 

八幡「逆に聞くが、ウチのクラスでソイツ以外に無駄に目立つ奴がいると思うか?」

 

 

葉山以外考えつかないよなぁ………だって他に誰がいるってんだ?それに覗いてる奴等もどんだけ気になってんだよ、邪魔だよ。こっちは荷物置きてぇんだよ。

 

 

八幡「なぁ、ちょっとどい『グループを抜けるってどうしてなんだ、優美子!?』………ん?」

 

柊「どうかしたの?」

 

八幡「……この会話、少し聞くか。」

 

柊/涼風「?」

 

三浦『だから、あーしは隼人達のグループから抜けるって言ってんの。だって隼人も海老名も何も教えてくんないし、男連中だってはぐらかすだけ。あーしだけ仲間外れにされるんだったら、もうこのグループになんていたくないし。』

 

葉山『待ってくれ優美子!話せばきっと分かり合える!だから話し合って『そう言って話し合った事って1度もないし。隼人があーしに修学旅行の事で教えてくれた事なんて1つもない……で、あーしも張り合うのに疲れたの。だからもう抜けるし。』ま、待ってくれ優美子!』

 

 

そう言いすてると、昨日とは違って歩きながら扉へと向かってきた。前に居た野次馬達は散らばって行ったが、俺はそうする理由がないからその場に立っていた。

 

 

三浦「………」

 

八幡「………」

 

三浦「………昨日。」

 

八幡「?」

 

三浦「昨日、相談に乗ってくれてありがと。お礼言いそびれてたし。」テクテク

 

八幡「………」

 

柊「八幡君、三浦さんと昨日何かあったの?」

 

八幡「ららぽに寄った時に少し話をした程度だ。他はなんもねぇよ。」

 

 

けどこうも早く結論を出すとは思わなかった。こりゃまたクラスが荒れるかもしれないな。葉山争奪戦が始まるかもしれない………だが、まだ分からない。これだけの目がある中で葉山が隠しておきたかった事をバラしたんだ、関係ない奴でも少しは気になるだろう。

 

 

八幡「まっ、取り敢えず荷物置いてのんびりしようぜ。立ったままだと疲れるしな。」

 

柊「さんせ〜♪」

 

涼風「はい、分かりました。」

 

戸塚「おはよう八幡、ビックリしたね………」

 

八幡「本当にな。」

 

 

けどこれで俺も少し安心だ。三浦が抜けたから、葉山が俺を頼る理由がなくなるからだ。無駄に乗っかってた肩の荷が降りたような気分だ。楽〜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休みになって、少しだけ和やかムードになるかと思いきや、そうはならなかった。あの朝からずっと葉山が三浦に話し合いを求めていたからだ。中休みの間もずっとだ。三浦はそれに対して拒否の反応を示してから教室を出たり無視を決め込んだりしている。そして今も尚、葉山の行き過ぎた行為が続いている。三浦も流石にウンザリしたような顔をしているのが、俺にも分かる。

 

 

柊「葉山君も懲りないね〜。あんなにしつこく粘っこく絡む必要ってあるのかな?」

 

八幡「さぁな。葉山にとって三浦は重要人物なんじゃねぇの?」

 

柊「私でいう八幡君みたいな!?」

 

八幡「そうそうそれだ。」

 

柊「いぇ〜い♪」ダキッ!

 

八幡「こらこら、食事中に抱き着くな。摘んでるの落っことしたらどうすんの?」

 

涼風「しかし、本当に諦める気配がありませんね。ご自分の食事時間を減らしてまで三浦さんに自身のグループにいて欲しいメリットがあるのでしょうか?」

 

柊「どうなんだろうね?私達は八幡君と涼風と私の3人だけのグループで充分だけどね〜♪」

 

八幡「増やす意味もないし、同じ中学出身だしな。それに恋人関係だしな。」

 

柊「その通りっ♪」

 

 

うん、今日の卵焼きも美味い。日に日に美味くなってねぇか、コレ?柊さん、涼風さん、次はどんな高級品使っちゃったの?

 

 

 

 

 



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注意、そしてサイゼデート

 

 

柊side

 

 

んんぅ〜……あぁ〜終わった終わった〜♪今日の学校も何事もなく終われて何よりっ♪まぁ、中休みとかお昼休みとかは葉山君が煩かったんだけど………周りの人達もなんか葉山君の行動を見てちょっとだけ引いてたしね。女子なんて小さな声で『ちょっとしつこ過ぎない?』とか『流石にあれはちょっと無いよね〜。』とか言ってたし。私もあれは嫌だなぁ〜………あっ、八幡君ならいつでも大歓迎だよ!

 

きっとLHRが終わった後も三浦さんの所に行くんだろうなぁ……このクラス全員が予想してると思うよ。放課後になったら葉山君が三浦さんの所に行って説得しに行くって。

 

 

平塚「以上でHRを終了する。あぁそれと葉山、話をするだけなら構わないが、度が過ぎる迷惑行為は慎めよ。何があったかは知らんがお前の今の行動は教師の間でも噂になってる。節度を守るように。」

 

葉山「っ………はい。」

 

平塚「今度こそ以上だ。日直、挨拶を頼む。」

 

 

わぁ、教師にも知れ渡ってるんだ………葉山君これって迂闊に手を出せないよね。まさか平塚先生が居る前で三浦さんに話し掛けるなんて真似はしないと思うし。

 

 

八幡「なんつーか、段々大変な事になってきてるな。その内葉山のグループ無くなるんじゃね?」

 

柊「可能性が無いとは言えないよね。けどさ、また新しいグループが作られるかもしれないよ?だって葉山君人気者なんでしょ?それに乗じて誰かが葉山君に声を掛けに行くかもしれないしね。」

 

八幡「前の葉山だったらそうだったかもな。今は修学旅行の事や三浦へのしつこいアタックも自分の身を顧みずやってるんだ、他の奴の主観にもよるが、良い目では見られないだろう。」

 

涼風「今の葉山さんは目立つ、というよりも悪目立ちするという方が正解かもしれませんね。」

 

八幡「だな。まぁこれも身から出た錆だ、甘んじて受けるしかねぇだろ。」

 

 

もし葉山君がこのタイミングで三浦さんに話しかけたら、葉山君は確実に立場が危うくなる。きっとそれは避けると思う。現に葉山君は三浦さんに話し掛けずに今のグループと話してるしね。そして三浦さんはもう帰っちゃった。多分近いうちにまた三浦さんに話しかけに行くとは思うけど、まず成功はしないよね。するとも思えないし。

 

 

柊「何を話してるんだろうね?」

 

八幡「大方、俺は動けないから皆で三浦を説得してほしいみたいな事だろ。まぁあのグループの奴等が三浦を説得できるとは思えないけどな。」

 

柊「うん、同感。」

 

涼風「彼等の為人を知りませんから、私は何とも言えませんね。」

 

八幡「気にしてても仕方ねぇし、俺等も帰ろう。寄り道してく所とかあるか?」

 

柊「あっ、じゃあ私も八幡君とサイゼリアに行きたい!昨日は三浦さんと行ったんでしょ?なら私とも!」

 

八幡「昨日行ったのにまた行くのか………じゃあドリンクバーだけな?飯食ったら晩飯食えなくなりそうだし。」

 

柊「それでもOK♪」

 

 

ーーーサイゼリアーーー

 

 

「お飲み物のグラスはドリンクバーの右手側にございますので、そちらをご利用ください。ごゆっくりどうぞ。」

 

八幡「取り敢えず、飲み物持ってくるか。」

 

涼風「その方がいいですね。」

 

柊「何にしょっかなぁ〜?」

 

八幡「じゃあコーヒーの無糖で。」

 

柊「なら八幡君はコーラに砂糖を10本入れてね。」

 

涼風「ならお互いに作って差し上げては?」

 

八幡/柊「………ごめんなさい。」

 

 

やっぱり涼風には敵いません………

 

 

八幡「サイゼに来たはいいが、何するんだ?生憎俺は話題になるような事なんて何も持ち合わせてないし、遊び道具もないぞ?そっちは?」

 

涼風「私もありません。話題は………申し訳ございません。私も………」

 

八幡「いや、涼風は謝らなくてもいい。ここは俺達をこの場に誘った柊に全責任を押し付けよう。」

 

柊「八幡君!?」

 

八幡「さぁ柊さん、何かお話は?」

 

柊「え!?え、えぇっと、えぇっと〜………バ、バターの適切な使い方について?」

 

八幡「………何だその全く興味をそそられない話題は。」

 

涼風「お姉様………」

 

柊「しょうがないじゃん!急に話をしろなんて言われても思い浮かばないよ!」

 

八幡「お前達2人が話してる事でもいいんだぞ?」

 

柊「そしたら八幡君の話題だけど、いいの?」

 

八幡「………謝るからやめてくれ。」

 

涼風「仕方ありません、では僭越ながら私からお話を提供して差し上げますわ。」

 

柊「涼風から?何々?」

 

涼風「その前に八幡さん、今週も我が家に泊まりに来るご予定はございますか?」

 

八幡「え……いや、今週はないな。再来週だったら行くかもしれないが。」

 

涼風「では八幡さんにお願いします、今週我が家に来て下さい。」

 

 

ま、まさか涼風がこんなお願いをするなんて………凄く珍しい。しかも今の、かなり強気なお願いの仕方だった。何かあるのかな?

 

 

八幡「な、何かあるのか?」

 

涼風「はい。実はお父様が先日、鮪を1匹仕入れたのです。そして職人の方にお願いして丸々1匹捌いて頂いたのです。かなりの量なので私達では食べ切れません。そこで八幡さんにも食べてもらいたいのです。どうでしょう?」

 

八幡「……因みに聞くぞ、鮪の名前は?」

 

涼風「クロマグロです。我々に親しまれている言い方をすれば本鮪ですね。」

 

 

八幡(高級魚じゃねぇか!!!一瞬違うと思った俺の感動返しやがれ!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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鮪大食いとお裾分け

 

 

八幡side

 

 

御影「あはははごめんね八幡君、いやぁ流石に今回は僕も反省かなぁ〜まさかこんなにも量があるとは思わなくってさ。食べられる部分って意外とあるんだね。」

 

八幡「おじさん、鮪を何だと思ってるんですか?それと重さと値段もう1度言ってくださいよ。」

 

御影「………500万円と100kgです。」

 

八幡「競りでも行ってきたんですか?普通鮪買うのにそんな値段競りでもしなければなりませんよ?一体何処で買い物したんですか………」

 

御影「返す言葉もありません………」

 

柊「おぉ、お父さんが八幡君にお説教されてる。」

 

涼風「今までにない光景ですね。」

 

紫苑「まぁ、頑張って食べるしかないわよね。もう捌いてあるんだから。」

 

 

いやもうホントに凄いよこの社長。何が凄いかってもう色々だよ……まさか100kgの鮪を500万円で買うなんて思わなかった。え、おじさんって社長だよね?お金の使い方下手過ぎない?それとも家族サービスの一環として?上物を食べさせたかったから?

 

 

八幡「まぁ取り敢えず頑張りましょうか………」

 

御影「ごめんよ八幡君、君だけが頼りなんだ。」

 

八幡「こんな事で頼りにされるとは思いもしませんでしたよ、本当に。」

 

 

誰か呼ぼうかなぁ………呼べる奴居ねぇわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御影「それじゃあ今日の晩ご飯はマグロ三昧だから好きなだけ食べていいからね!あっ、宮間達も遠慮無く食べていいからね!」

 

宮間「では僭越ながら。」

 

御影「それじゃあ完食目指して、いただきます!」

 

全員『いただきます!』

 

柊「どれから食べようかなぁ………」

 

涼風「カマトロが美味しいと聞きましたが………」

 

紫苑「やっぱり大トロかしらね。」

 

御影「僕は赤身なんだよね〜。」

 

八幡「………トロにしとこ、部位分かんねぇし。」

 

 

いやそれにしても多いな………これ絶対食べ切れないでしょ。幾ら人がいるとはいっても流石に100kgは食べ切れん。

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

柊「んんぅ〜………色んなの食べて紛らわせてたけど、もう無理。食べられないし、お腹いっぱい!涼風はもうギブアップしてたけど。」

 

八幡「あぁ、俺も限界だ。食い過ぎたって思うくらい食った。」

 

 

他の皆さんも同じ感想のようだ。だが鮪はまだ余っている、保存は効くのだがその代わり鮮度が落ちる。早く食べまなければ美味しくなくなってしまう。魚とはそういうものだ。

 

例えば秋刀魚に塩振りをしてどれだけ置いておくかによっても、味に違いが明確に出てくるくらい違ってくるものなのだ。

 

 

八幡「………っ!おじさん、この鮪ってこれで全部ですか?」

 

御影「ううん、保存出来るように容器に詰めてもらってるのが幾つかあるけど、それがどうかしたのかい?持ち帰るの?」

 

八幡「いや、そんな事したら俺の家族に怪しまれるので持ち帰りはしませんけど、今ちょうど受け取ってくれそうな人が思い浮かんだので。取り敢えずそれぞれ3つずつ頂けませんか?」

 

御影「……その人って誰だい?」

 

八幡「雪ノ下建設の令嬢です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽乃「まさか君から呼ばれるなんて思ってもなかったけど、その理由がこれだとは思わなかったわ。」

 

八幡「いや、俺もまさか最初に雪ノ下さんを呼ぶ理由がこれだとは思ってませんでした。けどこうでもしないと鮮度落ちちゃうので。それに、この前の事件のお礼もしてませんでしたし。」

 

陽乃「そんなの気にしなくてもいいのに。ところで、学校はどう?楽しくやれてる?」

 

八幡「楽しくはやれてますが、また一騒ぎ起き始めたって感じですね。俺は関係無いですけど。」

 

陽乃「ふぅん………」

 

八幡「気にならないんですか?」

 

陽乃「だってどうせ隼人でしょ?」

 

八幡「よく分かりましたね。」

 

 

どうして分かったんだ?この前会ったあれだけの会話でそこまで想像出来るとは思えないが………

 

 

陽乃「あぁ、実はマスドで比企谷君達から学校の事聞いたでしょ?あの後に隼人に忠告したんだ、君に迷惑を掛けるなって。まぁ無駄に終わったみたいだけど。」

 

八幡「……それで、葉山にはまた何か忠告するんですか?」

 

陽乃「まさか。1度言って聞かなかったんだから2度言っても聞くわけないじゃん。それにどうでもいいしね。隼人の周りがどうなっても私には関係ないし。」

 

八幡「それなのに俺には協力しろだの知恵を貸してほしいだの言ってくるんですから、変わって欲しいですよ。今の立ち位置。」

 

陽乃「嫌に決まってるじゃない。」

 

八幡「知ってますよ。」

 

陽乃「まっ、取り敢えずお礼は受け取っておくね。家族皆で食べる事にするから。きっとお母さん達も喜ぶよ。」

 

八幡「そういえばおじさん達と知り合った事、家族に言ってないんですか?」

 

陽乃「言ってない。言ったら絶対に会わせろって煩くなると思うし。何よりも、あの人達ってそういうの嫌いなんでしょ?」

 

八幡「自分達の時間が減るからって言ってましたね。だから会議とかも最低限しかやらないって。」

 

陽乃「ふふふ、合理的な人達だね。」

 

八幡「それでいてかなり人間性に溢れた人達ですよ、あの社長と副社長は。」

 

 

だから500万円の鮪を買えるんだよな………

 

 

陽乃「じゃ、私もそろそろ行くね。」

 

八幡「はい。わざわざありがとうございました。それから、ちゃんと雪ノ下も呼んでやってくださいね?断られる前提でも構いませんから。」

 

陽乃「君も悪い子だねぇ〜、了解。それじゃ、また今度ね〜。」

 

 

………さて、俺も帰るか。かなりの量食ったけど、マジで美味かったなぁ。特に脳天と頬肉。希少部位だけあって味も格別だった。けど、流石に無くなっていることを祈ろう。暫くは鮪……というよりも魚はやめて貰いたい。特に生の状態では。

 

 

 

 

 

 

 

 



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雪ノ下家

 

 

陽乃side

 

 

はぁ………予想はしてたけど、まさか隼人がここまでバカだとは思わなかったなぁ。忠告したその次の週にまた比企谷君にちょっかい掛けるなんてね。

 

けど、今は隼人の下らない事よりもやらないといけない事があるもんね。それを片付けないと。

 

 

陽乃「というわけだから雪乃ちゃん、家族皆で鮪パーティーしようよっ♪」

 

雪乃『突然電話を掛けてきたと思ったら………私はもう夕食を済ませたのだけれど?』

 

陽乃「別腹枠で空いてない?」

 

雪乃『空いていたとしても食べる気にはならないわよ。』

 

陽乃「そっかぁ……雪乃ちゃんお母さんの事苦手だもんね〜。」

 

雪乃『そういう事ではないのだけれど………』

 

陽乃「まぁいいや。じゃあ雪乃ちゃんの分は私が後で持って行ってあげるからさ、その時に受け取ってよ。それならいいでしょ?」

 

雪乃『……分かったわ。』

 

陽乃「じゃあその時にね、バイバーイ。」

 

 

………結局雪乃ちゃんは来ない、か。まぁ概ね予想してたから驚きはしないけどね。さてと、家に帰ったらなんて説明しようかなぁ〜。まんま通りに説明しようかな?この前の少年助けた時のお礼って。

 

 

ーーー雪ノ下家ーーー

 

 

陽乃「ただいま〜。お母さん、晩御飯ってまだかな?」

 

秋乃「えぇ、まだですが何か?」

 

陽乃「実はさ、この前言った事故の事あったでしょ?その子からお礼にってこれ貰ったんだ〜。だから食べない?」

 

秋乃「………鮪、ですか。ですが1種類だけではないようですね。高校生がこの部位を買い揃えるとはとても思えませんが?」

 

陽乃「そこは私も知らないよ。」

 

秋乃「………陽乃、あの子……確か比企谷さんといったかしら?彼は一体何者なのですか?最近、貴女も興味がある様子ですが………」

 

 

やっぱり聞かれちゃったかぁ………でもどうしよっかなぁ。流石に勝手に教えるわけにはいかないよね〜。よしっ、許可取ろう!

 

 

陽乃「ちょっと待ってくれる?」

 

秋乃「?分かったわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽乃「みたいな話の流れになったんだけど、夜十神さんの事、話しても大丈夫かな?」

 

八幡『それで俺に電話ですか………俺には分かりませんよそんな事。』

 

陽乃「ははは、だよね〜………」

 

八幡『……5分待ってください、確認します。』

 

陽乃「え、いいの?」

 

八幡『俺が雪ノ下さんのお母さんから絡まれたら、マズい事に発展しないとも限らないので、今のうちにですよ。言っておきますけど、勝手な事はしないでくださいね?』

 

陽乃「分かってるよ〜。」

 

八幡『では、一旦切ります。』

 

 

ふひぃ〜……ごめんね比企谷君。

 

 

ーーー5分後ーーー

 

 

♪〜♪〜

 

 

あっ、来た!

 

 

陽乃「もしもし、比企谷君?」

 

八幡『どうも、お待たせしました。結論から言うと、話しても良いそうです。』

 

陽乃「うん、それで?他にもあるんでしょ?」

 

八幡『はい。おじさんが言った言葉をそのまま伝えますね。『例え君達が僕とのパイプを持っている八幡君と知り合いだったとしても、彼を使って僕達と接触しない事が条件だよ。』だそうです。まぁ要するに、俺を自分達の都合の良い道具にしないのであれば構わないって事ですね。多分それ以外も含まれるとは思いますけど。』

 

陽乃「成る程ね、分かったよ。お母さんにも必ずそう伝えておくね。」

 

八幡『信用してないみたいな言い方になっちゃいますけど、大丈夫ですか?』

 

陽乃「その辺は大丈夫。私のお母さん、その辺はちゃんとしてるから。確かにお母さんが抱えてる【雪ノ下建設】も【Nigh-Ten・Group】とのパイプはかなり欲しいみたいだけど、誰かを道具にしてまで手に入れようとは思わない筈だから。」

 

八幡『そういう事にしておきます。じゃあ、確かに伝えましたから、俺は切ります。』

 

陽乃「うん、わざわざありがとう。」

 

 

………さぁて、お母さんに報告っと。

 

 

ガチャッ

 

 

陽乃「お待たせ〜お母さん。確認とってたらちょっと時間掛かっちゃって〜。」

 

秋乃「構いませんよ、それで?」

 

陽乃「うん。比企谷君なんだけどね、お母さんもよく知ってる【Nigh-Ten・Group】があるでしょ?その社長令嬢が居るんだけど、その令嬢さんとお付き合いしてるんだよね。」

 

秋乃「……… 【Nigh-Ten・Group】?待って下さい陽乃、貴女は知っていたのですか?」

 

陽乃「事故の時にね。けど勝手に話したらマズいと思って黙ってたんだ。後一応これ名刺、会った時に貰ってたんだ。」

 

 

お母さんが私から名刺を受け取ると、食い入るように名刺を見ていた。一言一句間違ってないか確認しているんだと思う。

 

 

陽乃「話を続けるけど、これを教えるに当たって条件も提示されたんだ。内容は比企谷君を都合の良い道具にしない事だって。比企谷君は誰もが羨む程の大企業の社長令嬢の恋人だから、この事を他の企業とかにバラしたらとんでも無い事が起きちゃうしね。もしそんな事したら、私達なんてお終いだよ。」

 

秋乃「………私も少し処理が追いついていないようです。道理でこんな物を用意できたわけです。成る程、あの企業の………ご挨拶にお伺いしたい所ではありますが、それでは比企谷さんを使ったも同然の行為。我々自身がパイプを作るまで、挨拶は取っておきましょう。お預けにされているようで少しだけやるせない気持ちになりますが。」

 

陽乃「うん、それが絶対正解。」

 

 

 

 

 

 

 



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12月

 

 

柊side

 

 

三浦さんが葉山君達のグループを抜けて1ヶ月が経とうとしていた。葉山君は最初の1週間くらいは頑張って説得をしていたんだけど、三浦さんは全く相手にしないし、無視もするから、クラスメイトの女子達もそんな三浦さんを見て、グループに戻る気は無いのだと確信した途端、葉山君に猛アプローチを開始した。

 

当然、葉山君はそれに対応しているんだけど、その相手をしている間にも三浦さんとの距離は段々と離れていってるのも気付いていると思う。それで結局説得を諦めてしまった。それを見ていたって言ったら語弊があるかもしれないけど、最近では海老名さんもグループに集まらなくなって、三浦さんの所に行くようになっていた。もしかして海老名さんもなのかな?

 

最近では葉山君の周りにはいつもの男の子3人と由比ヶ浜さん、そして新しく入った?さ、さ……相模原さん?とそのお友達2人がよく話をしているのを見かける。多分あれが新しいグループなんだろうね。葉山君が三浦さんに話しかけに行かなくなって、教室の雰囲気も大分落ち着いた。険悪な雰囲気も何もないし、平和と言ってもいいんじゃないかなって思う。

 

ただ、葉山君の顔を見る限りでは納得はしてなさそうだけどね。どうでもいいけど。

 

 

生徒会選挙も無事に終わる事ができた。無事……では無いとは思うけど、取り敢えずは役員も決まったから終止符って事で。名前?分かんない。だって私が気にしてもしょうがないじゃん!学年くらいは分かるよ?会長と副会長が2年生で、書記が1年生だったかな。

 

 

けど今はそんな事も言ってられる余裕なんてないよ!だって………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「ううぅ………寒くなったよね〜。」

 

涼風「12月ですからね。雪は降っていなくとも、寒さは嫌でも感じてしまう季節ですから。」

 

柊「ううぅ……ねぇ八幡君、ズボンのポケットに手を入れてもいい?」

 

八幡「すいません涼風警部、ここに人のズボンに手を入れようとしている変態が居るんですけど、何とかしてもらえませんか?」

 

涼風「ではお母様に連絡をしておきます。」

 

柊「やめて!本当にやめて!!そんな事されたら私、お説教だけじゃ済まなくなっちゃう!!」

 

八幡「手を繋ぐくらいならいいが、何でポケットなんだ?しかもズボン。」

 

柊「だってその方があったかいじゃん!八幡君の温もりが直に伝わってるんだよ?」

 

八幡「地味に納得できそうな理由だな。」

 

 

当然!でも、流石に八幡君から変態扱いされたくないから手を繋ぐで我慢しよっと。

 

 

涼風「そういえば八幡さん、八幡さんは3年生に入ってからの選択は決めているのですか?文系に行くか、理系に行くか。」

 

八幡「涼風、俺にそれを聞くのは野暮だろ。俺は文系一筋だ。理系は2人に教わってるから平均点レベルにはなってるが、やろうとは思わん。」

 

柊「まぁ八幡君ならそうだよね〜じゃあ私も文系!そして八幡君と同じ大学に第1希望!!」

 

涼風「では私も文系にします。そして進学も八幡さんと同じ大学を目指します。」

 

八幡「お前等なら簡単だろ。ていうか、他の大学は受け『ない(ません。)』ないの……理由は?」

 

柊「だって八幡君と別の大学に行ったら絶対に誰かにちょっかいかけられるんだもん!!それだったら八幡くんと一緒に居た方がいい!!勘違いされても良いもんね!!本当の事だし!!」

 

涼風「お姉様程過激な考えではありませんが、私も同じ理由ではあります。男除けではありませんが、八幡さんの側に居ると落ち着きますから。」

 

八幡「そうか。まぁ大学云々は置いといて、同じ文系にするにしても、3年に進級した時に俺達が同じクラスになるとは限らないけどな。」

 

 

はっ!!そうだった!!3年生に上がったらクラス替えもあるんだ!!文系と理系に分かれてのクラス替え………八幡君と一緒のクラスが良い!!!

 

 

柊「一緒じゃなかったら呪ってやるもん。」

 

八幡「怖い事言うな。」

 

涼風「藁人形の手足を釘で打ってから徐々に………ふふふ。」

 

八幡「涼風、お前までそんな風にならないでくれる?俺走って先に行くよ?」

 

柊「私達が一緒のクラスになるのは当たり前だよ!!一心一体表裏一体なんだから!!」

 

八幡「それ、怖くね?」

 

 

ーーー2-Fーーー

 

 

八幡「おじさんまた変な買い物とかしてないよな?この前の鮪みたいな事してないか?」

 

涼風「ご安心下さい。八幡さんも御存知だと思われますが、あの日からお父様は1度も変なお買い物はしておりませんので。」

 

八幡「ならいいけどよ、あれはもう勘弁だからな?あの量を見たら寿司を食いに行く気にもならなくなる。頼むとしても唐揚げとかになるかもしれん。」

 

柊「あはは、重症だね。けどその気持ちすっごく分かる。私もあの量を食べて1週間は生魚は食べたくないって思ってたし。」

 

涼風「流石にお父様も反省しておられたみたいです、『100kgは買うべきではない。』とも口にしておられましたから。」

 

八幡「当たり前だ。1日で100kgなんて大食いの人何人呼べば食べ切れるんだよ………頼むからそういう買い物はしないでって切に祈ろう。」

 

 

八幡君、本気なんだね………割と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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夜十神の血

 

八幡side

 

 

八幡/柊/涼風「合同イベント?」

 

平塚「うむ。同じ千葉にある海浜総合高と総武高で、クリスマスイベントを開催したいという打診が来て、今の生徒会が動いている……のだが、1週間経っても進展が無い様子でな。会長の話では、向こうの生徒会はビジネス用語ばかりを頻発して、全く話について行けないそうなんだ。訳せば分かる部分もあるが、向こう側が何をしたいのかさっぱりだそうなんだ。」

 

八幡「そんな生徒会でよくこんなイベントやろうと思いましたね。先が思いやられますよ?」

 

平塚「君の言いたい事も分かる。だからどうだろう、君達も少しでいいから協力してはもらえないだろうか?勿論、都合が悪ければこの話は蹴ってもらっても構わない。君達の関係は知ってるからね。無理に引き剥がすような事はしないさ。」

 

 

平塚先生はこう言ってるが、正直俺にはこのイベントに参加するメリットが無い。別に向こうの生徒会と交流を持ちたいわけでも無いし、一緒に盛り上げていこうなんて気持ちも無い。それなら柊達と放課後を過ごしていた方がマシだ。

 

 

柊「ねぇ、今日だけ覗いて行かない?」

 

八幡「え?」

 

涼風「お、お姉様?」

 

柊「大丈夫、覗いて行くだけだから!口出しなんてしないし、ただ会議の様子を見守るだけ。どんな感じなのかも気になるしね。」

 

八幡「……じゃあ覗いてくか。先生、参加はしませんが覗くだけっていいですか?」

 

平塚「出来れば参加して欲しいのだが、こちらから頼んだ事だし構わんさ。ただし、本当に口出しはしないように頼むぞ。簡単に言うと、君達は審査役みたいな立場でいてほしい。」

 

涼風「審査役……成る程。」

 

平塚「君達からの目線も欲しい。本牧からは私から言っておく。では、頼んだ。」

 

 

ーーー文化センター前ーーー

 

 

本牧「君達が平塚先生の言ってた審査役?」

 

八幡「まぁ、そんなもんだ。俺達からは一切口出しはしない。見ているだけだ。」

 

本牧「出来れば参加して欲しかったんだけど、居てくれるだけでもありがたいよ。あの空気、というよりもあの会話がずっと続くと思うと少し気が滅入りそうなんだ。発足して間もないのに、そのうえアレではまともな連携ができるとは思えないのに………」

 

 

ほう、ちゃんと周りは見えているようだな。確かに本牧の言う通りだな。たった1ヶ月しか経ってない生徒会に一体何を求めているのやら。

 

 

涼風「まぁ、私達も皆さんのフォローくらいは致します。口出しはしませんが、お手伝いをする事くらいはしますので。」

 

柊「そうね、そのくらいなら手伝うわ。」

 

本牧「ありがとう。じゃあ場所まで案内するよ、ついてきて。」

 

 

ーーー会議室ーーー

 

 

会議室へと着いたのはいいのだが、中には仲良さそうに話している海浜の連中が居た。その中には折本もいたが、俺達は別にどうでもいいから無視をした。

 

 

???「おや、その3人はニューフェイスかい?大歓迎だよ、僕は海浜総合の生徒会長の玉縄。お互いにリスペクト出来るパートナーシップを築いてシナジー効果を生んでいけたらいいと思っている。よろしく。」

 

 

………本牧、お前の言ってた事がよく分かった。これマジで滅入るわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから時間は進み、会議も進………む訳ではなく、停滞して進歩のないままだった。両サイドにいる柊と涼風も向こうの言っている事を理解出来てはいるのだろう。でなければこんな不愉快そうな顔はしない。

 

それとアイツ等は一々縦文字を横文字にしないと気が済まないのか?精神的で良いだろ、共同体や地域社会でいいだろ、何だよマインドって?何だコミュニティって?聞いてて腹が立ってくる。言ってる事は間違ってないが、言語の使い方が下手くそ過ぎる。カタカナ言えば良いってもんじゃねぇぞ。

 

 

特にあの会長は言ってる事がメチャクチャだ。そしてあれよこれよと向こう側が盛り上がって話をしている内に時間になってしまった。

 

 

玉縄「皆お疲れ様。君達も初日で疲れただろう。今日はクールダウンしてまた明日フレッシュに「来ないわよ。」来て……え?」

 

柊「私達3人は今日だけこの会議に参加させてもらう事になってるの、条件付きでね。その条件は言わないけど、貴方達は本当にこのイベントを達成したいって思ってるの?」

 

玉縄「当然だよ、だからこうして皆で会議をしてるんじゃないか。

 

「俺も会長にアグリーさ!」

 

柊「そう?私の知ってる会議は、無意味にビジネス用語を連発して停滞したままお喋りするようなものじゃないんだけど?それと貴方、さっきアグリーって言ったよね?賛成でいいじゃない、何でそう言うの?」

 

「そ、それは………」

 

柊「貴方も、貴方も、マインドじゃなくて精神の方が分かりやすいわよね?コミュニティのよりも地域社会の方が伝わりやすいよね?特に酷いのが貴方、ロジカルシンキングで論理的に考える。お客様目線でカスタマーサイドに立つ………意味分かってる?ロジカルシンキングは論理的思考または論理的な考え方って意味。カスタマーサイドはお客様目線って意味。貴方がさっき会議で言った事を訳すると、論理的思考で論理的に考える。お客様目線でお客様の立場に立つ。同じ事を2回やろうとしてる上に、お客様相手に自分もお客のように相手をするって意味、私の言ってる事分かる?」

 

『………』

 

柊「アウトソーシングもメソッドもスキームもバッファもどれもこれも無駄に使い過ぎ。会議ごっこなら他所でやって。本当に達成したいって気持ちがあるのなら、こんないい加減な会議にはならないわ。結論と総評、話にならない。」

 

 

柊が真正面切って海浜生徒会に想いをぶつけた。余程イライラが溜まってたんだろうな。まぁ、少しだけフォローしとくか。

 

 

八幡「俺の言いたい事も柊が言ってくれた訳だが、1つアドバイスだ。俺達は高校生だ、幾ら背伸びしたとしてもそれはただの猿真似だ。高校生らしい会議って何なのかをよく考えろ。伝わらない言葉繋げるよりも、意見と意見合わせてやった方が良いに決まってる。まっ、時間がどのくらい残ってんのか知らんから、それができるのかどうかも分からんけどな。んじゃ俺達は行くわ、お疲れさん。」

 

 

………今日は柊の頭を目一杯撫でてやろう。涼風が羨ましそうにしてたら涼風も。

 

 

 

 



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ご褒美タイム

 

 

柊side

 

 

皆〜こんばんわぁ〜……夜十神柊だよぉ〜。今日は変な会議があったからすっごく疲れてるんだぁ〜……え?それにしては物凄くのんびりしてるって〜?だって今は完全リラックスモードに突入してるからね、こんな喋り方なんだ〜。ん〜?そんな喋り方今までになかった?

 

ははぁ〜ん……鋭いね〜。実は完全リラックスモードに加えて、私は今とっても癒される事をされているからこうなっているんだぁ〜。あぁ〜こうされてるとね、この時間がいつまでも続いてくれないかなぁ〜って思っちゃうんだよね〜。幸せな時間って良いよね〜。

 

まぁ隠す必要も無いから、皆には教えちゃうね〜。私は今、こんな状態です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「どんな具合だ、柊?」ナデナデ

 

柊「すっごく良い感じ〜。えへへ〜♪」スリスリ

 

八幡「柊は今日の会議ごっこで頑張ってたからな、そのご褒美だとでも思っとけ。」ナデナデ

 

柊「はぁ〜い♪」

 

 

私は今、八幡君に撫でられています。でもただ撫でられているだけではなくて、膝枕をされながらという大サービスに加えて手も繋いでくれてるんだよ?凄くない?あんな悲惨な会議(みたいなお喋り)をちょこっと指摘しただけでこの高待遇もとい好待遇〜♪はぁ〜幸せぇ〜♪

 

 

御影(柊、蕩け切ってるね〜。涼風から事情は聞いたけど、八幡君からああいうのをされると、柊はあんなにも駄々甘になっちゃうんだね〜。)

 

紫苑(八幡君にはかなり積極的に甘えに行くのは知ってたけど、八幡君から柊に何かご褒美的なのを与えたらああなるのね………)

 

涼風(お姉様、羨ましいです………)

 

紫苑(見てよあの顔、デレデレになってる上に猫みたく丸まっちゃって。余程嬉しいのね………)

 

涼風(お姉様は八幡さん一筋ですから。それに、八幡さんからしてくれたのがとても嬉しかったのだと思います。普段はお姉様から仕掛ける事の方が多いですし。)

 

 

なぁ〜んか変な視線を感じるけど、今はそんな些細な事どうでもいいよねぇ〜。今はこの時間を目一杯堪能しなくちゃいけないしね〜誰にも邪魔はさせないもぉ〜ん♪

 

 

八幡「………なぁ、柊。」ナデナデ

 

柊「うん、なぁ〜にぃ〜?」

 

八幡「他に何かして欲しい事はあるか?」ナデナデ

 

柊「っ!?」

 

 

えっ!?まさかのご褒美追加!?ど、どうしちゃったの八幡君!?私今日そんなに良い事した!?で、でも今してもらってるのだって充分過ぎるくらいだし………うぅ〜ん分かんないよぉ〜!

 

 

八幡「思いつかないようだな。」ナデナデ

 

柊「だって今でも充分過ぎるから………」

 

八幡「そうか、まぁそれならいい。」ナデナデ

 

柊「勿体無い事したかな?」

 

八幡「いや、寧ろ欲張らないでよく言えたって褒めてやりたいくらいだ。というわけだからご褒美の時間は延長だな。」ナデナデ

 

柊「えへへ、やった♪」

 

 

延長、頂きました〜♪

 

 

八幡「だがいつにも増して嬉しそうだな。撫でられるのは普通によくやるだろ?」ナデナデ

 

柊「確かにそうだけど、今日は八幡君が自分からやってくれたんだもん。だからかなぁ〜。」

 

八幡「そういうもんか?」ナデナデ

 

柊「そういうもの〜♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「なんか久し振りに感じるな、この状況……そう思わないか?」ナデナデ

 

柊「?前にもあったっけ〜こんな事?」

 

八幡「いや、この撫でられてる状況の事じゃなくて、こうして2人でいる事がって事だ。俺達は俺と柊と涼風の3人でいる事が普通だっただろ?だから改めてこうして2人で話すのって随分無かったなって思った。」ナデナデ

 

柊「……そうだね。私達はいつも3人で行動してたもんね。私は全然嫌じゃないけどさ。」

 

八幡「俺もだ。恋人の柊に加えて涼風も居るって環境は俺にとって苦でもなければ嫌でもない、寧ろ良い方だ。それに今ではもう3人が当たり前だからな。今更涼風を省こうなんて気にはならん。」ナデナデ

 

柊「最初から省く気なんて無いくせに〜♪」

 

八幡「当たり前だ。」ナデナデ

 

柊「んふふふ〜♪」

 

 

確かに私達恋人だけど、いつも3人でいるもんね。でもそれが嫌って感じた事もないし、涼風をどうにかしようって思った事もない。今で満足してるし、充実してるんだって事だよね〜。

 

 

柊「八幡君はさ、涼風に恋人が出来たらどう思う?やっぱり気になる?」

 

八幡「気にはなるが、涼風が選んだ男なら本物だろう。義妹を誰かに取られるのは癪に思うかもしれないけどな。」ナデナデ

 

 

涼風(八幡さん、涼風は大丈夫です!!私は何処へも行きません!!)

 

御影(堂々と言い切ったね………)

 

紫苑(えぇ、今までに見た事がないくらいの覚悟を感じたわ。本気なのね。)

 

 

柊「ふふふっ、私の旦那様と涼風の義兄は随分と独占欲の強い人みたいだね。」

 

八幡「悪いか?」ナデナデ

 

柊「ううん、ちっとも♪だってそのくらい私達の事を大切に思ってくれてるって事だもんね。涼風が聞いてたらきっとすごく喜ぶと思うよ〜?」

 

八幡「そう思ってくれると嬉しい。」ナデナデ

 

柊「思わないわけないじゃん。だって私の妹だよ?私の好みはあの子の好み、私の好きな人はあの子の好きな人でもあるんだから。」

 

八幡「やけに説得力があるな、その言葉。」ナデナデ

 

 

当然だよ、だって本当の事だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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冬休みの予定

 

 

八幡side

 

 

俺達があの酷い会議に参加してから3日が経った。柊の棘……いや、刃物のような言葉が海浜生徒会に炸裂したその翌日からまともな会議が出来るようになったと、ウチの生徒会長の本牧から聞いた。まぁ、俺達にとってはもう終わった事だから別にどうでもいいんだけどな。

 

またこの前の会議みたいな事になってなくてよかった。もし変化が無かったら、イベント開催どころではなかっただろう。これも柊の容赦のない言葉のおかげだな、うん。

 

 

そして12月といえば、冬季休暇もある。所謂冬休みというヤツだ。もうすぐ冬休みに入るからって理由なのか、クラスの連中とかはテンションが高くなっている。その気持ちは分からなくもないが、そんなに騒ぐ事か?俺はそうは思わないけどなぁ………

 

 

だが、今年の夏休み同様に、俺の予定にも冬のイベントが組み込まれようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「別荘で療養?」

 

柊「うん。お父さんがね、今年は色々あったからお父さんの所有している別荘に行って英気を養おうって話になったんだ。」

 

八幡「ほぉ〜……良いんじゃねぇか?色々あったってのは間違いじゃねぇしな。」

 

涼風「……八幡さんもご一緒しませんか?」

 

八幡「え、俺も?」

 

涼風「はい。行くのなら八幡さんも誘ってみてはというお話になったので、お誘いしようと思ってたんです。それで、八幡さんもご一緒に如何でしょうか?お父様が所有されていますので、旅費等は掛かりませんので。」

 

 

ふむ、中々に魅力的だな。だがこのまま鵜呑みにして行かせてもらってもいいのだろうか?だって夏休みの時は北海道旅行だぞ?しかも俺が行く行かない関係なしに飛行機の予約まで取ってだ。流石にされっぱなしな気がしなくもないんだが………

 

 

柊「八幡君が今考えている事だけど、そんなの気にしなくていいよ。お父さんもお母さんも八幡君だから誘ってるんだから。八幡君以外の人を誘う気なんてないんだよ?だから何かしなきゃとか考えなくていいんだからね?

 

八幡「……本当に心の中を覗き見されたようだ。けどまぁ、分かった。それなら行かせてもらうわ。そんで、場所って何処なんだ?この辺なのか?」

 

柊「ううん、場所は滋賀県にある伊吹山って山の麓に別荘があるの。そこで泊まる予定なんだ。琵琶湖も眺められる良い所なんだよ。」

 

涼風「それに伊吹山から取れる水はとても清く澄んでいるのが特徴で霊水としても有名なんですよ。伊吹山も霊峰で有名ですから、エネルギーも沢山ありますし。」

 

八幡「そんな所に別荘を………」

 

柊「私達も一昨年行ってるけど、やっぱり山の中だから空気が美味しいんだ〜。あの場所で深呼吸したら、肺の中の空気もぜ〜んぶ洗われていくような気分になるんだ♪別に千葉の空気が悪いって言ってるわけじゃないけど、そのくらい違うんだ。」

 

 

いやそりゃそうだよ。霊峰だよ?よくは知らないが、パワースポットなのは間違いないでしょ。そんな場所と千葉の空気を一緒にするなよ………流石に違うって。

 

 

八幡「それで、いつ行くんだ?決まってるのか?」

 

涼風「はい、年末2日前から年始の2日後の計4日間で、4泊5日の予定です。」

 

八幡「ん、分かった。俺も親に伝えとく。今年は滋賀で年越し迎えるって。」

 

柊「それだと分からないよ?」

 

八幡「まぁ……いいんじゃね?」

 

涼風「八幡さんが偶に適当になる時がありますが、少しだけそのタイミングが分かった気がします。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涼風「そういえば、八幡さんはお家の都合は大丈夫なのですか?私達はその予定を何も聞かずに旅行のお話をしてしまったのですが………」

 

八幡「別に?俺の場合、家に残る方が多かったからな。だから新しいパターンだと思うぞ、俺が出かけて家族が残るっていうのは。あむっ………」モグモグ

 

涼風「その発言は些か問題だと思われますが、八幡さんが気にしておられないようなので、私からは何も言いません。はむっ………」モキュモキュ

 

柊「んっ……でも確かに八幡君、私たちのお誘いを断った事ないよね?家では本当に何もする事ないの?旅行とか家族イベントとかさ。」

 

八幡「んー……んっ、俺の両親共働きだからな。そういうのあんま無いんだ。あったらしてると思うけど、もう高校2年生と中学3年生の息子と娘だぞ?今更そういうのをやってもって思ってたりするんじゃないか?おじさん達はそれをやるのが当たり前だと思ってやってるから違和感は無いだろうけどな。」

 

涼風「では、今までにそういった事は全く無かった、という事ですか?」

 

八幡「まぁそうだな。ある時はあったかもしれんが、記憶の中から完全にバイバイされてる。あむっ………」モグモグ

 

柊「八幡君はそういうのされたいって思った?」

 

八幡「いや?俺はこれが当然だから思った事は1度も無いな。まぁ今でこそ小町も中学生だから気にしなくなったが、小学生の頃は早く帰ってやらないと小町の奴が不安がるからって理由で早く帰ってたからな。」

 

柊/涼風「………」

 

柊「八幡君。この旅行、絶対楽しもうね。」

 

八幡「ん?あぁ、そうだな。」

 

涼風「きっと楽しい思い出にしましょう。」

 

八幡「お、おう……どした急に?」

 

柊「でもやっぱりお父さん達には知らせておいた方がいいよね?私達だけじゃ……」ボソボソ

 

涼風「そうですね、皆さんの協力も不可欠です。頑張らなくては。」ボソボソ

 

 

なんか今度は2人で話し始めた。え、コレ慰安旅行なんだよな?

 

 

 

 

 



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雰囲気

 

 

八幡side

 

 

八幡「ごちそうさん、今日も美味かった。なんかこの弁当が無いと無理かもしれないな、学校の授業乗り切るの。」

 

柊「そこは頑張ってって言いたいけど、もしも寝ちゃったら私が机をくっつけて、手を握ったり、脚を絡めたりして八幡君を起こしてあげる♪」

 

八幡「そういうのはやめてくれ、恥ずか死ぬ……まぁ寝る事なんて数学の時くらいしか無いけどよ。」

 

涼風「八幡さん………」

 

柊「相変わらずだなぁ八幡君は。それなのにテストでは平均点くらいの点数出すんだもんね。」

 

八幡「いつもいつも教えてくれてありがとうございます。」

 

涼風「そうお思いでしたら、少しでも授業を真面目に聞かれては如何ですか?」

 

八幡「いや、それはイヤだ。この学校の教師と2人の教え方を比べたら、断然お前達の方が分かりやすい。だからイヤだ。」

 

涼風「とても嬉しいのですが、八幡さんたった今教師をバカにしましたよ?」

 

 

いやいや、あの数学教師って俺が1年の頃から担当してるんだが、教え方下手なんだよ。数学嫌いな俺からしてみれば呪文唱えてるようにしか聞こえん。しかも書いた黒板の文字、まだ書ききれてないのに聞きもしないですぐ消すし。だから個人的にあの教師好きじゃねぇんだよな………

 

 

八幡「まぁ、アレだ、教えてもらうのならお前等2人に頼む方がいいって事だ。分かりやすいし、無駄な事しないし、書いた文字消さないし、眠くならないし。」

 

柊「じゃあ数学の時間は分かり辛くて、無駄な事をしてて、書いた文字をすぐ消すし、すぐ眠くなっちゃうって事?」

 

八幡「そういう事そういう事。」

 

涼風「八幡さん………(眠くなるのは八幡さんの問題では?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相模「ねぇ葉山君〜、クリスマスと年末とかって何かする予定あるの〜?」

 

遥「あっ、それ私も気になってた〜!葉山君教えてよ〜。それでもし空いてたら一緒に遊ばない?」

 

葉山「クリスマスも年末も家の用事があってね、どっちも無理かな。悪いね。」

 

ゆっこ「えぇ〜残念、じゃあ私達で遊ぼっか。」

 

葉山「戸部達はどうなんだ?」

 

戸部「え、俺?俺は〜まぁどっちも大丈夫だべ。予定とかは無いっしょ。」

 

大和「戸部、お前何の予定も無いのかよ?まぁ俺もだけどよ。」

 

大岡「人の事言えねぇな、お前も。俺もだけど。」

 

遥「男子達寂し〜。男子だけで集まってクリパとかしないの?」

 

葉山「あはは………」

 

 

三浦と海老名さんが葉山のグループから抜けて、あの3人(名前?そんなの知らん。)が後釜としてグループとして加入したようだが、グループの雰囲気はお世辞にも良いとは言えない。寧ろ悪いとも言える。前は三浦という絶対的な女王が居て、海老名さんというカンフル剤も居たからなんとかなってた。だが今はそれが無い上に、女子がかなり遠慮のない事を言っているようだから、グループ男子はかなりやり辛そうだ。グループに残った唯一の女子、由比ヶ浜も空笑いしたままだしな。

 

葉山もフォローを入れてるようだが、アイツあれでフォローのつもりか?戸部にああいうのを振るなよ。戸部が今、誰の事が好きなのか忘れたのかよ?よくあんな台詞を名指しで言えたもんだ。だがこれも葉山が自分で振り撒いた種だ、今後どうするかは全てアイツの行動次第になってくる。

 

三浦に関しては、海老名さんと2人で行動しているようだった。三浦から後日談で聞いたが、グループを抜けた後に海老名さんが謝りに来たらしい。『黙っていてごめんなさい。』って。三浦の奴もどうでも良くなっていたのか、どうでもいいと返したそうだ。そっからは三浦から何かするわけでもなかったが、海老名さんから『一緒にいてもいいかな?』と言われて今に至るらしい。

 

 

ウチのクラス、トップが入れ替わったせいで雰囲気がゴチャゴチャになってんな。雰囲気が決して良いとは言えない新生葉山グループに、どこ吹く風の三浦と海老名。遠巻きから様子を伺う?クラスメイト達に、三浦達と一緒でどこ吹く風の俺達3人。まぁ一部例外もいるが、殆どのクラスメイトが雰囲気の悪さを感じ取っているだろう。その元凶が相模達3人組である事を全員知っているだろうし、その3人組は自分達が空気を悪くしているという自覚が無いのだろう。周りが見えていないし、今どんな風に見られているのかも分かってない。これならまだ三浦が葉山グループにいた頃の方が良かったな。

 

 

柊「どうかしたの八幡君、また考え事?」

 

八幡「いや、別に……ただ、このクラスの行く末がどんなものになるのか気になっていただけだ。」

 

涼風「前よりも悪くなっていますからね、クラスの雰囲気が。私達はこの程度の雰囲気なんて何ともありませんが、普通の人からすれば気になるのでしょうね。」

 

柊「八幡君、何とかしたいの?」

 

八幡「まさか。そんな事する必要性なんて100%皆無だろ?見出せないまである。」

 

柊「もしまた葉山君が八幡君に頼ってきたら?」

 

八幡「それこそ自分でどうにかしろって追い返す。自分で蒔いた種なんだ、育てるのも処分するのもアイツの役目だ。俺が動く時は、お前達が不遇に晒された時だけだ。その時は俺が対処する。」

 

柊「八幡君1人だけに辛い思いはさせないからね?八幡君がやるなら私もやる。」

 

涼風「私もです。お姉様にはもうあんな思いはさせませんし、八幡さんお1人に苦労は掛けられません。私も尽力します。」

 

 

………何も言わなくても協力してくれる人がいるって良いもんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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相談、そして怒り

 

 

八幡side

 

 

八幡「んで、何だよ話って?前提として言っておくが、俺はお前等のグループのゴタゴタになんて付き合うのはゴメンだからな?それ以外の内容なら聞くだけ聞いてやる。その話の内容を手伝うかどうかはまた別だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戸部「いやぁ〜なんてゆーの、ヒキタニ君も分かるっしょ?今の俺等の気まずさ!」

 

八幡「あぁ、やり辛そうにしてんのは見てて分かる。だがそれだけだ。」

 

戸部「なんかさ〜相模さんが来てからあのグループがギスギスしてさ〜、優美子も海老名さんも抜けてイマイチ楽しくなくなっちゃったって感じなんだわ〜………」

 

八幡「……つまりお前はグループを抜けたい、って事でいいのか?」

 

戸部「ん〜まぁ、そうなるっしょ。けど、そう思ってんのは大岡と大和も同じだべ。」

 

八幡「成る程、葉山以外はあのグループでやっていけそうにない、そういう事か?」

 

戸部「なんつーかさ、相模さんが突っ走り過ぎてるってゆーのもあるけど、隼人君もセーブし切れてないって感じだべ。俺達にも振ってくるんだけど、それした途端に女子達は微妙な顔すんだべ。」

 

 

……1つ分かった。その女子達は葉山の事だけしか見てないな。戸部達はついでだ。三浦や海老名さんが居なくなって磐石の基礎が無くなった状態の葉山グループに、バランスの取れない尖った石、つまりあの女子達が来た事によってさらに崩れやすくなっちまったって所だな。俺ならこのグループは捨てるな。そもそも必要とした事ねぇけどさ。

 

 

八幡「お前も分かってると思うが、あの女子3人にとってお前や残りの男子2人はついで、つまりただの駒だ。女子連中は葉山っていうトップさえ居りゃそれで良いんだろうよ。だからお前等があのグループ抜けるって言っても葉山は止めるかもしれないが、あの3人なら歓迎すると思うぞ。まぁ、これはただの予測だが。」

 

戸部「ヒキタニ君、心臓に悪い話はしないで欲しいべ………マジかと思ったべ。」

 

八幡「じゃあマジだって言ったら?」

 

戸部「………マジで?」

 

八幡「あぁ。お前等3人にその覚悟があるんだったらやってみろ。もしそれが怖ければ、葉山の周りに集まらないで自然消滅って形でもいいと思うぞ。俺はお前等のグループ結成時なんて知らんけど、もうその時のメンバーじゃねぇんだし、引いてもいいと思うぞ?環境が違って来ると、その環境に誰もが順応出来るわけじゃねぇからな。」

 

戸部「………」

 

八幡「まっ、そうなったらお前等は今後葉山と行動する機会は大幅に減るだろう。だが今の気まずさからは解放されるぞ。」

 

戸部「………どうすりゃいいんだべ?」

 

八幡「それを決めんのはお前だ、俺じゃない。だがやり方は選べる。今教えたやり方もあるし、お前の考えたやり方でもいい。まぁ、残りの2人と相談してみろ。1人で悩んでも仕方ねぇだろ。」

 

戸部「……だな、ヒキタニ君の言う通りだべ。相談に乗ってくれてありがとだべ!じゃあ俺、部活あるからそろそろ行くわ!!」

 

 

………こうもギスギスだとはな。三浦がグループ居なくなった途端にコレか、酷いもんだ。

 

 

三浦「………戸部達もなんだ。」

 

八幡「!?お前、居たのかよ……」

 

三浦「偶々。つーかアンタって相談のんの上手いよね?あーしの時も聞いてくれたし。」

 

八幡「別にあのくらい相談の内にも入んねぇよ。それにグループでの面倒事ならお断りだが、抜けたいってんなら話はまた別だ………段々と変わって来てるな、葉山のグループ。」

 

三浦「うん……あーし、抜けて正解かも。今の方がちょっと楽しいし。今は海老名と2人だけど、前よりも遠慮なしで会話出来るようになったから、少し楽になった。」

 

八幡「……みたいだな。なぁ、戸部達が葉山のグループから抜けたとして、お前ん所に来たらどうするんだ?受け入れるのか?」

 

三浦「分かんないし。海老名はフツーに謝って来たから許したけど、アイツ等があーしにどんな態度で来るかってとこ。アイツ等次第だし。」

 

八幡「手厳しいな、元同じグループの奴に。」

 

三浦「あーしに修学旅行の事黙ってたんだから、このくらいおあいこだし。」

 

 

成る程な、確かに言えてる。何も無しで許してもらおうなんて虫が良過ぎるしな。

 

 

三浦「じゃあ、あーしも行く。アンタもあの2人と帰るんでしょ?早く行ってやんな。」

 

八幡「そのつもりだ。」

 

 

ーーー2-Fーーー

 

 

教室の前まで戻って来たら、何故か三浦が中に入らずに聞き耳を立てていた。何やってんだ?

 

 

八幡「おい、何してんの?」

 

三浦「っ!ヒキオ、なんか夜十神さん達と相模達が大変な事になってるし!!」

 

八幡「はぁ?」

 

 

涼風『今の発言、撤回して下さい!!八幡さんは気味の悪い方ではありません!!』

 

相模『けどさ〜本当の事じゃん?あの目とかキモくないの?ヤバい目してんじゃんww』

 

遥『それ私も思ってたww』

 

ゆっこ『そんな人と付き合ってる夜十神さんって男の趣味悪いよね〜。』

 

 

………

 

 

ガラガラッ

 

 

三浦「ヒ、ヒキオ!?」

 

八幡「………」

 

涼風「は、八幡さん………」

 

柊「八幡君………」

 

葉山「比企谷………」

 

八幡「………葉山、お前は自分のグループの犬すらまともに躾する事も出来ねぇのか?廊下まで響いてんだよ、キャンキャンキャンキャン煩くてかなわねぇよ。」

 

葉山「お、俺も止めようと「んな事はどうでもいいんだよ。結局お前は止められなかった、違うか?」………」

 

八幡「……はぁ、もう帰るか。行くぞ柊、涼風。待たせて悪かったな。」

 

柊/涼風「…うん。(はい。)」

 

相模「待ちなよ王子様〜、まだ話終わってないんだけど〜?途中で帰んないでくれる?」

 

遥「そーそー!彼氏君の良い所、まだ私達聞かされてないんだよね〜!」

 

ゆっこ「だからさ、勝手に帰んないでくれる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡あぁ?

 

相模/遥/ゆっこ「ひっ!!」

 

 

今、自分でも驚くくらい低い声が出たと思ってる………けど今はそんな事どうでもいい。

 

 

八幡「テメェ等の都合なんざ知るかよ?バカ犬に構ってられる程暇じゃねぇんだよ………

 

 

その後、何も言わなくなった女子3人組をほっといて、俺は2人を連れて学校を後にした。

 

 

 

 

 

 



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理由(ワケ)

 

ーーーーーー

 

 

八幡達が去った後の教室は静かなものだった。相模が急に柊や涼風の前で八幡をバカにしていた時から雰囲気は最悪だったのだが、今の雰囲気はより悪くなっていた。それに追い討ちをかけたのは八幡の普段出す事のない低い声と殺気だ。それらにクラス内は完全に呑まれてしまっていた。だが恐れを知らないというのは、時として悪い方向へと向かっていってしまうものでもある。

 

 

相模「……アイツ何なの?帰るの止めただけで勝手にキレてさ、訳分かんなくない?」

 

ゆっこ「それね〜ていうか聞いた?アイツ私達の事犬とか言ってた!まじムカつくよね!」

 

遥「私もそれ本当にウザかった!目がヤバい奴なんかに言われたくないっつーの!」

 

相模「ホントそれだよね〜!じゃあさ「アンタ等さ〜。」あし……なぁに三浦さん?」

 

三浦「アンタ等さ、人が居なくなってからじゃないと文句言えないの?超ダッサイんだけど。それって自分達がその人に負けてるって認めてるって事だし。」

 

遥「ちょっと三浦さ〜ん、いきなり出て来て説教なんてやめてよね。ていうか、三浦さんってあの根暗の味方するの?」

 

三浦「アンタ達に味方するって考えるよりかは、あーしはヒキオに味方する方を選ぶし。」

 

ゆっこ「マジィ〜?あんな男に味方するとかマジあり得なくない?」

 

相模「いいじゃん別に。誰が誰に味方してもさ、ウチ等も帰ろ?」

 

遥「うん。」

 

ゆっこ「さんせー。」

 

 

そう言って相模達3人組は帰り支度をして帰路についた。喋り方から見ても分かるが、彼女達には明らかな余裕があった。その理由については分からないが、八幡に負けるなんて考えてもいないのだろう。

 

 

三浦「………」

 

葉山「………優美子。」

 

三浦「………アンタ等はどうするし?あーしには今の、決定的に思えるんだけど?」

 

 

三浦は葉山に向かってそう言ってるが、葉山には言っていなかった。その背後に居る葉山グループの3人に言っていた。

 

 

戸部「……隼人君、悪りぃけど俺等、このグループ抜けるべ。」

 

葉山「えっ!?な、何を言うんだ!?」

 

大岡「相模達が来てから思ってたんだ、すげぇやり辛いって。俺達それで話し合ってたりとかもしてたんだよ。そんで決めたんだ。」

 

大岡「もうこのグループではやっていけない。俺達と相模さん達とじゃそりが合わなかったんだよ。だから………悪い。」

 

葉山「ちょっと待ってくれ!急過ぎないか!?相模さん達とも話し合って「隼人君。」決めれば………戸部?」

 

戸部「もう決めた事なんよ。隼人君の事は好きだけど、今のグループも好きかって言われるとそれは違うべ。俺達はこのグループでやっていける自信ないんだ。だからゴメンっしょ。」

 

 

葉山にそう伝えると、戸部達も部活の準備を始めてそそくさと教室から出て行った。周りの生徒もそれに伴って帰り支度を始めて、準備が出来た者から教室を出て行った。そして残ったのは葉山と三浦の2人だけだった。

 

 

三浦「隼人、何で戸部達がグループ抜けたか、隼人はちゃんと分かってる?」

 

葉山「それは……相模さん達が嫌になったから「そうじゃないし。」で……え?」

 

三浦「それもあるけど、1番じゃないし。じゃあ質問変える。何であーしがグループ抜けたと思う?」

 

葉山「………修学旅行の告白の事を教えてくれなかったから?」

 

三浦「確かにそれもあるし。けど違う。」

 

葉山「ち、違う?」

 

三浦「隼人、本当に分かんないわけ?」

 

 

困惑する葉山の表情を見た三浦はウンザリしたような表情で葉山を見つめる。

 

 

三浦「………隼人が言った理由も含まれてる、確かにそれもあるし。けど1番の理由は、隼人のグループでやっていけそうにないって思ってるからだし。あーしは隼人がさっき言った修学旅行の告白で何も教えてくれなかったって理由でもうこのグループとは縁を切るって思った。」

 

葉山「………」

 

三浦「戸部達も相模達が来てから居づらそうにしてた。そんで色々と3人で相談して、もう無理ってなったってわけだし。」

 

葉山「そんな……相談してくれれば「そしたら隼人、絶対にグループに残れって引き止めるって分かってるからしなかったんだと思うし。」ど、どうしてそれが分かるんだ?」

 

三浦「だってあーしの時がそうだったじゃん。」

 

 

葉山ははっとしたような表情をする。今までの自分の取った行動が裏目に出ていたという事を今になって初めて気が付いたのだ。

 

 

葉山「じゃあ、俺はどうしたら………」

 

三浦「あーしには分かんない。ただ1つ言えるのは、隼人は直接ではないにしろ、ヒキオにケンカ売ったって事。相模達を止められなかったから。自覚あるかは知んないけど、隼人は葉山グループって呼ばれてんだかんね?そんでそのメンバーに今は相模達が居る。だから隼人があの3人をどうにかしない限り、これはずっと続くよ。」

 

葉山「………」

 

三浦「だからあーしは思う、葉山グループを抜けて正解だって。そうでなきゃあーしがどの立場にいたのかさえも気付けなかったし。調子に乗ってるように見えていたのも気が付かなかった。だから隼人も手遅れになんない内に早くあの3人何とかするか、逃げ道でも作っておいたほーがいいと思う。そんくらいしておかないと、益々自分の首絞めに行くことになるし。」

 

 

そして三浦も荷物を持って教室から出た。ただ1人教室に残された葉山は、眉間に皺を寄せながらその場に立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 



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死活問題?

 

八幡side

 

 

昨日も平穏に過ごせると思っていたが、放課後のせいで全てが台無しだ。あの女子3人何処の誰?なんか急に葉山達と関わり始めてから調子に乗りやがってよ………そのおかげで戸部達も抜けたっていうのに。まぁアイツ等帰った後だからあの3人の知った事じゃねぇと思うけどよ。

 

昨日柊の様子を見てから帰ったが、やはりあの3人は途中から見えていなかったそうだ。それもその筈だ、恋人をバカにされたら、誰でもバカにした奴を嫌いになるもんだ。なんか自分の事を言ってるからむず痒いな。今日になってもあの3人が関わって来ようものなら、いっその事平塚先生にも相談するか?だがその場合、中学の事も公になる可能性もある。そうなったら余計に目立っちまう。柊も涼風もそれは嫌だろう。はぁ〜………ヤダねぇ。

 

 

ピンポーン♪

 

 

八幡「おっ、来たか。今出る。」

 

 

ガチャッ

 

 

柊「おっはよ〜八幡君〜♪」ギュ~!!

 

八幡「お、おぉ柊……涼風も。」

 

涼風「おはようございます、八幡さん。」ペコリッ

 

八幡「それで柊さんや、朝っぱらからの激しい抱擁を何とかしてくれません?嬉しくはあるけど。」

 

柊「八幡君成分補充〜♪」ギュ~!!

 

八幡「………八幡君成分って何?涼風は分かるのか?その謎成分。」

 

涼風「それが無くては、私達にとっては死活問題です………」

 

八幡「超大事じゃん八幡君成分………」

 

涼風「なので、私も八幡さんの腕をお借り致しますので、失礼します///」ダキッ!

 

 

補充ってこういう事しなきゃいけないの?抱き着かなきゃダメなの?手を握るとかそれじゃダメなの?幸せホルモンの中に俺も入ってないよね?

 

 

柊「えへへぇ〜八幡君の匂い〜♪温もり〜♪えへへぇ〜♪」スリスリ ギュ~!!

 

涼風「……とても幸せな気持ちになります///」キュッ!

 

 

………学者の皆さん、今日からハチマンというホルモンを加えて下さい。オキシトシンとかドーパミンとかと同じ効果で。

 

後追加で質問です。彼女達のたわわで幸せを得ている俺は異常ではありませんよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「あっ、そうそう!八幡君の枕届いたよ。お父さんがあの日から『まだかなぁ〜まだかなぁ〜。』って言いながら玄関で待ってるのを見てるの、面白かったなぁ〜。」

 

八幡「届いたのか、じゃあそれいつ取りに行けばいい?やっぱ今日か?」

 

柊「え?金曜に家で泊まって?」

 

八幡「え?」

 

柊「え?」

 

 

いや、何その「え?」は?今週もさも当然のように泊まるの確定させないで?

 

 

涼風「お姉様、流石に毎週は遠慮した方が良いかと思います。八幡さんだって休日にお1人で過ごされたい日だってあるでしょうし、それに何度もお誘いするのは反って迷惑に繋がってしまいます。」

 

柊「でも私は八幡君と一緒に居たいよぉ〜……」

 

涼風「そのお気持ちは私も痛い程分かります。しかし、時には我慢も必要かと。年末には滋賀の別荘で八幡さんと過ごすのですから。その時まで我慢するのもアリかと思われますが?」

 

柊「涼風は私を殺したいの!?年末まで2週間もあるんだよ!?その間週末を八幡君無しで過ごせって言うの!?私死んじゃう!!」

 

 

死にません……いや、さっきの八幡君成分を考えたらそうなのか?いやそれはないか。

 

 

涼風「お姉様、週末に八幡さんと過ごせないだけで人は死にはしません。ですのでここは少しの辛抱を「じゃあ涼風は八幡君成分を週末に使って摂取しておかないで大丈夫なの?前は平気だったけど、今も平気なの?」………」

 

 

柊、涼風にそんな事言っても無駄だろう。これまでの口喧嘩というか口での勝負でお前が勝ったのってたっ「八幡さん………」たの……ん?

 

 

八幡「何だ、涼風?」

 

涼風「毎週金曜日になりましたら我が家に泊まりに来て下さい。このままでは私達が死んでしまいます………」ウルウル

 

 

おい!何言いくるめられてるんだよ!?もうちょっと頑張れよ!!お前いつもはもっと強いだろ!

 

 

八幡「あのな……涼風も言ってたが、週末会えないだけで人は死なねぇよ。「じゃあ八幡君にはこれからお弁当作ってあげないって言ったら?私達の分だけって言ったら?」それを早く言えよ、週末何持ってけばいい?」

 

柊「えへへ〜♪持ち物はいつもので大丈夫!」

 

 

誰だよ週末会えないだけで人は死なないって言った奴。死ぬ一歩手前まで行くから。死活問題にまで発展するから。目が虚になって手足に力が入らなくなって立ち上がれなくなるから。そして月曜日には………骸(寝たきり)になってるから。

 

それと俺にとっても柊と涼風のお手製弁当が食べられなくなるのは死活問題だ。2人の作る弁当マジで美味いからな!?それが食べられなくなる上に、目の前で美味そうに食べるのを購買のパン食べながら見てるとかどんな拷問?

 

 

柊「良かったね八幡君♪八幡君の返事次第では、今日のご飯が無くなってたかもしれなかったよ?」

 

八幡「………マジで?」

 

柊「うん、マジ♪」

 

八幡「………発言には気をつけます。」

 

柊「大変よろしい。お昼ご飯のお弁当はこれまで通り作って来てあげます。」

 

八幡「ありがとうございます、いつも美味しく頂いております。」

 

 

よかった………弁当食べられる。

 

 

 

 

 



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様子見

日付が変わっててすみません!


 

 

柊side

 

 

学校に到着した私達は2階の廊下を歩いて自分達の教室へと向かっていた。けど、こんな気分になるのは久しぶりかも。だって教室の中に人影が居るんでしょ?2年振りだよ、その光景を見るのは………はぁ、嫌だったのになぁ。けどしょうがないよね、私だって嫌なものは嫌だし、嘘なんてつきたくないもの。嘘をついてまで自分の気持ちを偽ろうなんて思わないもん。

 

そして目の前まで来た2-Fの教室。え、緊張してるかって?全然?だって八幡君も涼風も居るんだよ?そんなのって野暮だと思わない?中学の時は涼風は違うクラスだったけど、今は同じクラスだからね!心強いよ、本当に。

 

 

ガラガラッ

 

 

………やっぱり皆、八幡君に注目してる。そうだよね、昨日教室に残ってたクラスメイト、それなりに居たしね。

 

 

八幡「……はぁ、要らん注目だな。」

 

柊「うん、そうだね……でも良かった、あの人達まだ来てないみたいで。」

 

八幡「あぁ、あの小煩い女子3人な。」

 

涼風「八幡さん、口が悪くなっていますが……」

 

八幡「いいだろ別に、本当の事だ。」

 

柊「そうだよ、いいよ別に。まぁ、会話の内容なんてもう覚えてないけど。」

 

 

だって覚える価値ないしね。

 

あっ、戸部君達が葉山君と別々に居る。じゃあ抜けたのかな?それとも今日は偶々?まぁいっか。

 

 

柊「それでさ八幡君、昨日の事どうしよっか?先生に言っておいた方がいい?」

 

八幡「お前が精神的に耐えられなくなったらそれも考えている。負担はかけたくないしな。だからキツくなったらいつでも言えよ?」

 

柊「うん、分かった………」

 

八幡「今は柊に言ったが、お前もだからな涼風?溜め込む前に吐き出せよ?柊やおじさん達に言いにくかったら俺に話してもいいんだからな?」

 

涼風「は、はい!ありがとうございます!」

 

柊「うんうん!良かったね〜涼風、未来の義兄がこんなにも親切で♪」

 

涼風「は、はい……///」

 

 

咄嗟に言われて驚いたと思うけど、涼風も八幡君の事気に入ってるしね。涼風は人見知りな所あるから、自分から人に関わろうとしない。八幡君にも最初はそうだった。でも何度か一緒に居る内に打ち解けていったのもあるけど、居心地が良かったんだろうね〜。1ヶ月もしないですぐに八幡君と仲良くなっちゃったから。まぁ、時々スキンシップが過剰だって思えなくもない所があるんだけどね。

 

 

戸塚「おはよう八幡!夜十神さん達も!」

 

八幡「おう、おはよう。」

 

柊「おはよう戸塚君。」

 

涼風「おはようございます。」

 

戸塚「八幡、昨日大変だったんだって?友達から聞いたんだけど、八幡が怒ったって。」

 

八幡「あぁアレか……まぁ柊をバカにされたからな、黙ってはいられなくて、ちょっと言いたい事を言わしてもらっただけだ。」

 

戸塚「僕もその友達もそうだけど、八幡が正しいって思ってるんだ。だって恋人をバカにするなんて酷いよ!夜十神………えっと、涼風さんと八幡が怒るのも当然だって思うよ!」

 

涼風「戸塚さん、ありがとうございます。」

 

八幡「ありがとな、そう言ってもらえて嬉しい。」

 

戸塚「うん。僕に出来る事があったら言ってね!八幡の為なら僕、絶対に力になるから!」

 

 

ま、眩しい………八幡君から聞いてはいたけど、戸塚君って本当に男の子なのかな?実は女の子でした、なんて事はないよね?

 

 

相模「でさでさ〜!」

 

遥「えぇ〜マジ〜?」

 

ゆっこ「あははは!」

 

 

………あぁ、来た。

 

 

八幡「見るな、柊。お前はあの3人を見るな。気持ちの良いもんじゃ無いだろ?なら見ない方がいい。無視しとけ。」

 

柊「……うん。」

 

八幡「涼風もフォロー頼むわ。」

 

涼風「お任せ下さい。」

 

 

けどその後、HRが終わっても結局あの人影は私たちの方に向かってくる事もなくて、予想よりも平和的に過ごす事が出来たんだよね。でも涼風曰く、こっちの方をチラチラ見ていたみたいだから、私達を標的にはしているみたい。多分、八幡君が邪魔だと感じているみたいだって予想してた。私にはどんな風に見てきているのか分からないけど、昨日の事で八幡君が標的になってしまったのは、悪い事をしてしまったと感じてる。

 

 

相模「マジさ、ムカつかない?」

 

遥「それね!昨日マジそれだった!」

 

ゆっこ「しかもさ、キレる意味分かんないし。」

 

葉山「………」

 

 

何か話してるみたいだけど、私には聞こえない。けどきっと、私達にとって良い話ではないのは確かだと思う。そういう人の顔は誰だって人を見下すような、蔑むような、そんな感じのとても嫌な顔をするから。

 

 

八幡「アイツ、止める気は無いようだな………」

 

柊「八幡君?」

 

八幡「ん?あぁいや、何でもない。」

 

涼風「………」

 

柊「涼風もどうしたの?」

 

涼風「……八幡さん、正直にお聞きします。何かあるとお考えですか?」

 

八幡「………さぁな、俺にも分からん。流石に確信が得られないからな。憶測でお前等に不安は掛けられない。」

 

柊「?それって……」

 

八幡「あの3人がお前達や俺に嫌がらせをしてもおかしくないって事だ。どのタイミングでやるのかは分からないけど、やってもおかしくはない、そう考えていた。」

 

 

……そんな事考えてたんだ、八幡君。うん、私もちょっとだけ気を付けようかな。

 



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八幡、大激怒!そして………

 

 

八幡side

 

 

八幡「じゃあトイレに行ってるから少しの間、席を外す。先に食べててもいいからな。」

 

柊「八幡君を置いて先に食べるわけないでしょ?八幡君が来るまで待ってるよ♪」

 

涼風「はい、皆で食べた方が美味しいですから。」

 

八幡「そうか?じゃあ待っててくれ。」

 

 

俺はトイレに行く為に2-Fの教室を一時的に後にした。なるべく早く戻んないとな、少し心配だし。今日は何が入ってるのか、楽しみだ。きっと卵焼きは入ってるだろうが、隠し味に何を使っているかも最近の楽しみだ。それに最近は和食だけでなく洋食の具も入れるようになってきたから、俺達3人の満足度もかなり高くなっている。でも、卵焼き作ってあるのに、スクランブルエッグとかをチョイスするのは何故かと思うけどな。柊が入れてるんだろうけど。

 

 

八幡「今日の献立は何か考えながら行くか。」

 

雪乃「あら、比企谷君。1人だなんて珍しいわね。夜十神さん達は一緒ではないの?」

 

八幡「雪ノ下……俺はトイレだ。2人には教室で待ってもらってる。だから早く済ませて早く行ってやらないと拗ねちまう。」

 

雪乃「そう……ではあまり時間は掛けない方がお互いの為のようね。」

 

八幡「そのようだな。お前は部室でか?」

 

雪乃「えぇ、日課だから。」

 

八幡「由比ヶ浜の奴もか?」

 

雪乃「最近は偶に来る事が多いわね。前のように毎日来るみたいな頻度では無いわね。」

 

 

由比ヶ浜もグループの事で忙しくなったんだろう、雪ノ下ともお気軽に飯を食えなくなってるって事か。それもそうか、今の葉山グループ絶対窮屈だろうしな。

 

 

雪乃「じゃあ、私はここで。」

 

八幡「おう、また月曜にな。」

 

雪乃「えぇ、また。」

 

 

そう言って雪ノ下は奉仕部のある特別棟の方へと向かって行った。さて、俺もトイレトイレ。

 

 

ーーー1分後ーーー

 

 

よし、これで万全だ。さぁて柊と涼風の作った弁当を食べに行きますか。楽しみだ、本当に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙希「あっ!居た!!比企谷!!!」

 

 

なんか目の前で川……崎?が走りながら俺の方へと向かって来た。ていうか何であんなに慌ててんだ?

 

 

八幡「どした川崎?何そんなに慌ててんの?」

 

沙希「はぁ……はぁ……さ、相模達がまた、夜十神さん達にちょっかい掛けてんの!しかも今度は弁当で揉めてる!」

 

八幡「………は?」

 

沙希「兎に角急いで比企谷っ!!!」

 

 

俺は川崎の言われた通り、2-Fへと全力疾走で戻った。川崎は置いていったかもしれないが、そんな事はどうでもよかった。

 

 

ーーー2-F前ーーー

 

 

教室前に着くと扉が閉まっていた。だから俺はすぐに扉を開けようとしたが、中から声が聞こえた。

 

 

相模『ア、アンタ達が悪いんでしょ!折角私達が分けて食べようって言ったのに、抵抗したからこんなことになったんじゃない!』

 

ゆっこ『そ、そうよ!私達は悪くないし!』

 

 

俺はその会話が途切れたと同時に教室の扉を開けた。柊と涼風の周りに居る女子3人と三浦と海老名さん、それを遠巻きに見るクラスの連中、だがそんなことはどうでもよかった。俺は今、怒りを抑えるのに必死だった。俺は教室の中の床に落ちているのを見て、それを誰が落としたのかを頭の中で想像するだけで怒りが爆発しそうだったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊と涼風が作ってくれた弁当を落とした奴を。

 

 

三浦「ヒ、ヒキオ………」

 

八幡「おい、どういう事だコレ………誰がやった?

 

三浦「ヒ、ヒキオ!落ち着くし!」

 

八幡「俺は落ち着いてる、質問に答えろ。この弁当落としたの、誰だ?

 

 

三浦(ダ、ダメだし………ヒキオ凄い怒ってるし!ビリビリ伝わってくる、これヤバい!!)

 

 

相模「ソ、ソイツ等が悪いのよ!!私達が折角一緒に分けて食べようって誘ったのに、アンタが来ない限り手はつけないっていうから……それで中見ようとしたらこうなったのよ!み、見るくらい良いじゃない!!」

 

八幡「言い訳なんてどうでもいいんだよ。3回目だ、誰が落としたんだよ?お前か?」ギロッ

 

相模「ひぃ!!!」

 

涼風「は、八幡さん……」ウルウル

 

八幡「………説明、してくれるか?

 

涼風「………はい。」ウルウル

 

 

俺が教室から出てちょっとした所でこのバカ共が話しかけて来たらしい。内容はさっき言った通りで一緒に飯食わないかってヤツだ。2人(涼風が返事)は俺と食うからって断ったが、その3人はどんな脳みそ使ったかは知らんが、2人の弁当を急に取ったらしい。それを見ていられなかった三浦と涼風が弁当を取り返そうとしたのだが、手を滑らせてしまったのか、はたまたわざとかは知らんが、弁当を教室の床に落として今に至る………

 

 

涼風「………折角お作りしたのに、申し訳ございません。」ウルウル

 

八幡「お前の謝る事じゃねぇよ。涼風は何も悪い事してねぇんだ。」ポンポン

 

涼風「は、はい……」ウルウル

 

八幡「………どうやらお前みたいだな?

 

相模「は、はぁ!?ウチだけのせいって言うの!?ならこの2人も連帯じゃん!!」

 

遥「やったのは南でしょ!?私達まで巻き添え食らわせないでよっ!!」

 

ゆっこ「そうだよ!!南が1人でやったのに私達まで連帯とかそれなくない!?」

 

相模「提案したのはそっちでしょ!?何で「……るせぇよ。」……え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、コイツ等マジで………クズだ。

 

 

ダァン!!!!

 

 

八幡「ウダウダうるせぇんだよ!!!罪のなすり付け合いしてる暇があったら、拾うもん拾ってからにしろや!!!お前等の弁当を同じ風にしてやってもいいんだぞこっちは!!言い合ってる暇があんのなら、さっさと弁当箱拾って中身の掃除しろ!!

 

3人「ひっ!!!」

 

 

今までにないくらい低くて大きい声を出したせいか、目の前の3人も震えながら掃除を始めた。だがこの程度で俺の鬱憤は晴れない、晴れる筈もない。

 

こりゃ冬休みが始まる前に大掃除しないと行けなくなっちまったらしい………

 

 

 

 

 



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葉山の決断

 

 

八幡side

 

 

昼休みが終わって今は授業中だ。あのバカ3人は弁当の落ちた所を綺麗に掃除してもらった。米粒1つすら残すのは許さなかった。俺達は床に落ちていなかった具材の部分を食べる事によって空腹は免れたが、やはり食った気がしなかった。それよりも俺には怒りの感情の方が勝っていた。あの屑共、柊達に謝りもしねぇ所か、柊達が悪いだと?挙げ句の果てには汚ねぇなすりつけ合いまで始めやがる始末だ………

 

そっからは平塚先生が来て相模達が掃除しているのを見て異常に思ったのか、事情を聞き説明を涼風がしてくれた。3人はそれに対して反論も異議もしなかった。当然だ、したら俺が絶対に論破してやるからな。周りにだって証人は居るんだから、どっちが正しいのかなんて一目瞭然だろう。けどマジでどうしてやろうか、あの3人。

 

 

平塚「……なぁ、比企谷。」

 

八幡「何です?」

 

平塚「あー……お前の気持ちは理解しているつもりだ。だが、そのオーラをしまってはくれないか?」

 

八幡「無理です。」

 

平塚「だがな、これでは皆この雰囲気に呑まれ過ぎて授業にならん。」

 

八幡「なら問題起こしたバカ3人を土下座でもさせてくれません?人が作った弁当を床にぶち撒けておいて掃除だけで済まされるって思ってるなら大間違いっすよ?」

 

3人「っ!?」

 

八幡「俺はまだ許したつもりは毛頭ないっすよ。寧ろこれっぽっちも気が晴れてない。弁当落としたってのに、作った本人2人に謝罪の1言も無いんですからね、そりゃ許せないでしょ。それも悪いのは何もしてない柊達と来たもんですからね、大した奴等ですよ、ホント。」

 

 

平塚先生が何と言おうと、俺はあの3人を許すつもりなんてない。というよりも潰すと決めている。一緒の空気がいるだけでも反吐が出そうだからな。

 

 

平塚「………比企谷、流石に土下座は無理だ。それに今は授業中だ、流石に授業以外の事をすることは出来ない。」

 

八幡「分かりました。「ただ先も言ったが、やはり今のままではまともな授業にならない。そのオーラを出さないでもらいたいんだ。」………」

 

柊「八幡君………」

 

八幡「っ!」

 

 

………柊にこんな顔されたら、流石に出すわけにはいかないか。いや、別に意図して出していたわけではないんだが。

 

 

八幡「……一応了解です。けど、意図して出していたわけではないので、そこは分かってください。」

 

平塚「助かるよ、比企谷。」

 

 

クラスの雰囲気も幾らかマシにはなったが、それでも暗く、重たい事には変わりなかった。特にあの3バカは雰囲気はマシになっても顔色が良くなっていなかった。まぁアイツ等の事なんて知った事じゃないが、こんな事で潰れてもらったら困る。

 

 

ーーー放課後ーーー

 

 

八幡「おい葉山、話がある。顔貸せ。」

 

葉山「………屋上でもいいかい?」

 

八幡「付き合わせるのは俺だ、場所くらいは選ばせてやる。好きにしろ。」

 

葉山「じゃあ屋上で話そう。」

 

八幡「……あぁ。」

 

 

ーーー屋上ーーー

 

 

八幡「………」

 

葉山「………」

 

八幡「俺の言いたい事、分かるよな?ここんとこ連続で起きてるんだ、分からないなんて言うなよ?」

 

葉山「……あぁ、分かってる。どうして相模さん達を止めなかったのか、そう聞きたいんだろう?」

 

八幡「そうだ………何故だ?あの時三浦は止めに入ってた。アイツの事だ、見てられなかったってのもあるんだろうが、お前は違う。あの3人の中心人物であるお前がどうしてあの3人を止めなかった?理由を言え。」

 

葉山「………」

 

 

葉山は苦虫を噛み締めたような顔をしながら何かを考え込むような仕草をしていた……コイツ、この期に及んで考え事か?随分余裕だな。だが少しすると、覚悟を決めたかのような顔つきになった。

 

 

葉山「俺は彼女達を庇うのをやめた。それに、彼女達が起こした事に関して、俺は関係ない。」

 

八幡「それは何だ、この事に関与してないから俺に責任は無いって言いたいのか?」

 

葉山「それもある。だが俺はあの3人をグループに歓迎した事は1度も無い。入れた覚えもない。彼女達が勝手にグループに入り込んだと思っているだけだ。屁理屈だと思われるかもしれない、だが事実だ。相模さん達は葉山グループじゃない。彼女達がそうだと思い込んでいるだけだ。」

 

八幡「………」

 

 

成る程………今のグループには助ける価値は無い、そう判断したわけだ。いや、あの3バカと言った方がいいか。しっかし、勝手にグループに入り込んだと思ってるだけ、か………

 

 

八幡「じゃあお前は今回の一件、自分には何の罪も無いって事でいいんだな?あの3バカがどうなろうと自分には関係ない、知った事ではない、そうだな?」

 

葉山「………あぁ。」

 

八幡「その言葉、一先ず信じてやる。だがお前が少しでもあの3バカに肩入れするような事があったら、その時はお前も一緒に道連れにしてやるからな。」

 

葉山「……分かった。」

 

八幡「……付き合わせて悪かったな、んじゃ俺は行くわ。「比企谷。」……何だよ?」

 

葉山「相模さん達を止められなくて済まなかった。関係なくとも止めに入るべきだった………優美子のように。」

 

八幡「………次が来るとは思いたくないが、期待しないで待っておく。」

 

葉山「………あぁ、済まない。」

 

 

さて、これで完全にあの3バカは孤立状態になった。まさかあの3バカに加担するような馬鹿な奴は居ないとは思うが、葉山に助けを求めに行ったら滑稽に思えるだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 



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反撃する為に

 

 

八幡side

 

 

八幡「よし、準備完了だ。さて、行くか。」

 

 

ーーー居間ーーー

 

 

八幡「小町、今日から少しの間、柊の家で少しやる事があるからこの家空けるわ。」

 

小町「……あのさお兄ちゃん、柊さんが好き過ぎるのは別に良いんだけどさ、ちょっとはこの家に居てよ?ここ最近の週末ずっと居ないじゃん。」

 

八幡「俺も断ってんだよ。けど向こうの家族も止まらねぇんだよ………特に柊。」

 

小町「もう……分かった、どのくらい掛かるの?」

 

八幡「それは正直分かんねぇ。最低でも1週間かも知れない。もっと伸びるかもしんねぇし。」

 

小町「………じゃあ1週間小町1人?」

 

八幡「プリン買ってきてやるから許せ。」

 

小町「うん、小町頑張るね♪だからプリンシクヨロ!!」

 

 

お前は相変わらずだな、小町よ。だが今はそれがありがたい。単純でありがとう。

 

 

ーーー玄関前ーーー

 

 

八幡「すいません、遅くなりました。」

 

「いえ、お気になさらず。では向かいましょう。旦那様や皆様がお待ちになっておられます。」

 

八幡「はい。」

 

 

今日の下校は柊と涼風と別行動にした。俺は帰って荷物の準備をする必要があったからだ。そして2人には今日と昨日あった事をおじさんとおばさんに説明してもらっている。多分今頃はもう終わってるだろう。

 

そしてこれは俺達の問題だから、介入はしないでもらおうと思う。流石に頼りっぱなしじゃあダメだと思うし、少しは柊を守れる所を見せないとな。今の所、そんな場面1つも作れてねぇしな。やらかしてばかりだ。

 

 

ーーー夜十神家ーーー

 

 

八幡「お邪魔します。」

 

「「「お帰りなさいませ、若様。」」」

 

 

………もういいや、若で。

 

 

御影「八幡君、よく来てくれた。今し方、娘達から話は聞かせてもらったよ。随分と酷い目に遭ってしまったようだ………八幡君も娘達の為に怒ってくれてありがとう。」

 

八幡「いえ、結局2日連続で俺の居ない所で2人に被害が出てしまってるので、感謝なんて受け取れません。けど、受けたこの借りはキッチリと返させてもらいます。」

 

御影「……分かったよ、八幡君。僕達に出来る事があったら何でも言っていいよ。皆、喜んで協力しよう。娘達の、そして八幡君の為なら何でも引き受けよう。」

 

 

この人は本当に良い人だ、こんな………柊を守れなかったこんな俺にもこうしてくれる。だからこそ、俺は今度こそやらなければならない。あの時教室で決めた………決めたからには最後までやってやる。

 

 

八幡「ありがとうございます。じゃあ俺は早速作業しますので、夕食になったら呼んでください。なるべく集中したいので。」

 

御影「分かったよ。さっきも言ったけど、必要になったら言うんだよ。いいね?」

 

八幡「はい。」

 

 

ーーー客室(八幡専用)ーーー

 

 

八幡「さて、まずはアイツ等のGwitterやらAcebookやらで洗いざらい調べるか。そんで奴等が何かしら呟いているはずだ。」

 

 

さて、忙しくなるな。

 

 

八幡sideout

 

柊side

 

 

八幡君が何かを頑張ろうとしてる………きっと私達の為に。なら私もそれを全力で応援しなきゃいけない。それに今日のお昼ご飯は少ししか食べられなかったし、今日の晩ご飯は沢山作らないと!少しでも八幡君に栄養のあるのを食べさせてあげなきゃ!

 

 

涼風(八幡さんはお1人で戦おうとしています。お手伝いをして差し上げたい所ですが、きっとお断りされるでしょう。ならば私は八幡さんに最大限のサポートをさせて頂くまでです。昼食では私が至らぬばかりにあのような事が起きましたが、次はこのような事は起こしません!)

 

 

「あ、あの……奥様、柊お嬢様と涼風お嬢様が厨房を独占しておられるので、我々が調理を進められないのですが………如何致しましょう?」

 

紫苑「ごめんなさい。今日学校で色々あってお弁当が半分くらいしか食べられなかったのよ。それで今、八幡君に美味しいものを食べさせようと燃えているってわけ。だから余計な事はしない方がいいわよ?もしかしたら怒られるかもしれないから。」

 

「で、では我々はどのようにすれば………」

 

紫苑「そうね………味見役でもお願いしようかしら?その方があの子達の練習にもなるでしょうし。お願い出来るかしら?」

 

「……分かりました。お嬢様方もそれをお望みのようでしたら、我々厨房スタッフ一同、尽力しましょう。」

 

紫苑「頼りになるわ。」

 

 

うぅ〜ん、ちょっと薄いかな?でもお母さんが作った時の味はこんな感じだったけど………むぅ〜悩むぅ!八幡君に食べてもらう料理だから手なんて抜けない!しかもお弁当とは違って冷めてない状態だから1番美味しい状態で食べてもらうって事だもんね!気合い入れないとっ!

 

 

涼風「お姉様、こちら1品目終わりました。お姉様の方はどうですか?」

 

柊「涼風、コレどう?薄い?」

 

涼風「………私はちょうど良いと思います、お母様が作って下さる味に似ていますので。」

 

柊「でもさ、八幡君がどう感じるのかも気にならない?ほら、私達は丁度良くても、八幡君にとっては薄いか濃いってありそうでしょ?」

 

涼風「確かに………しかしお姉様、1度我が家の味付けにも触れさせるというのも1つの戦法だとは思いませんか?」

 

柊「成る程、それ良いかも!じゃあ今日は夜十神家の味っていう事で!」

 

涼風「はい、これで攻めましょう!」

 

紫苑「ふふふっ、楽しそうで何よりだわ。」

 

 

 

 



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夕食と揶揄い

 

 

八幡side

 

 

復讐心ってのはすげぇもんだ。1時間くらい経過したってのに、全然疲れてない。それどころかまだまだ行けそうだ。今の所は1人目は見つかったからソイツが過去に書いた情報を引き出している所だ。そしたら見つかる見つかる、今まで書いてきた碌でもない内容がよ。総武以外の事もそうだが、総武に対しての悪口まで書いてやがるしな。それに昨日今日の俺に対しての悪口もだ………今だけは良い仕事をしてるって感謝したいくらいだ。

 

俺はSNSなんてやらないからどういうものかはサッパリだが、日本だけでなく世界にまで発信されてるってのは俺にも分かる。ネットっていう大海だからな、ちょっとでも名前が引っ掛かればソイツってなるだろう。まだまだ探してやるからな、SNSで1つのアカウント見つけたくらいで俺は満足しねぇぞ?別のアプリでも居ないか探すからな?

 

 

コンコンコンッ

 

 

宮間「失礼致します、若様。お食事の用意が出来ました………おや、音楽を聴かれながらの作業ですか。」

 

 

トントンッ

 

 

八幡「っ!あっ、宮間さん。どうかしました?」

 

宮間「お食事のご用意が出来ましたので、呼ばせて頂きました。作業の阻んでしまい、申し訳なく思っております。」

 

八幡「いえ、ありがたいです。じゃあ居間に向かいましょうか。」

 

 

ーーー居間ーーー

 

 

八幡「すみません、遅くなりました。」

 

紫苑「いいのよ気にしなくて。それより八幡君も席に着いて、早速食べましょう?」

 

八幡「はい………なんか今日のメニューは普通ですね。見ていて安心します。あっ、いや……俺が来た時のメニューが嫌だって訳じゃないんで、勘違いしないで下さい。」

 

御影「そんな事分かってるよ、君はそういう事を言う子じゃないからね。それに今日のメニューは我が家のシェフが作った料理じゃないんだ。柊と涼風が作ってくれたんだ、お昼は半分くらいしか食べられなかったからそのリベンジだと言ってね。きっと明日から2人が調理をするんじゃないかな?」

 

八幡「今の発言、シェフの方達が聞いたらどうなりますかね?」

 

紫苑「今日は味見役をしてもらったけど、流石にこれが毎日となると彼等の仕事が無くなっちゃうわね。その日作ったら次の日1日空けてその次の日にしてもらいましょう。それでもいい?柊、涼風。」

 

柊「うん、それで良いよ。」

 

涼風「かしこまりました。」

 

 

けど要はこういう事だろ?柊達の料理を食えるのは良いが、その次の日は高級料理なんじゃ………

 

 

御影「それじゃあ、冷めないうち頂こうか。いただきます。」

 

「「「「いただきます。」」」」

 

 

トンカツか……この家では食べた事なかったな。いや、でも使ってる豚は例の豚に違いないだろう。まぁ、聞かないでおくけど。

 

 

柊「八幡君、サラダにはお好みのソースをどうぞ♪オススメは私達ブレンドの特製ソースだよ!」

 

涼風「私達がサラダに好んで使うドレッシングです。よければ使って下さい。」

 

八幡「へぇ〜ドレッシングも作ったりするのか。じゃあ使ってみるか………」

 

 

見て分かったのだが、色はオレンジ色。和風やゴマとは違う色だから驚きはしたが、食欲は無くなったわけではないから大丈夫だ。

 

 

八幡「あむっ………んん〜ドレッシング特有の酸味も効いてるが、なんかサッパリしたのも感じるな。くどさがそんなに感じない。」

 

柊「それはね、料理が好きな人なら1度は作った事がある、オレンジドレッシングだよ。元になるドレッシングに数種類の調味料とオレンジの液を入れてあげたら完成!オレンジの酸味とサッパリとした甘さがプラスされるんだよ。」

 

八幡「ほぉ〜……俺は濃いめのドレッシングが好みだが、これもアリだな。今回は和風だろうが、ゴマにやったらどんな味になるんだろうか………」

 

 

なんか少し気になるな……家に帰ったら試してみるか。俺専用のドレッシングって事で。

 

 

涼風「因みにこちらがトンカツにかけるソースです。これも私達がブレンドしたものです。元になるウスターソースに調味料を数種類、そしてすりおろした胡麻をまぶせば完成です。」

 

八幡「調味料の部分は教えてくんないの?」

 

柊/涼風「企業秘密です。」

 

 

企業秘密かぁ………じゃあしょうがない。

 

 

紫苑「あら、じゃあ私が使うドレッシングの調理法を教えようかしら?手取り足取り、ね?」

 

柊「っ!!!八幡君、私の特製ドレッシングの調理法ならいつでも教えてあげるからね!!遠慮なく言って!!手取り足取り教えるから!!」

 

涼風「わ、私もです!八幡さんには私の使うドレッシングの良さを知ってもらいたいので、是非教えたいです!1から10まで手取り足取り教えます!」

 

八幡「いや、企業秘密は?」

 

柊/涼風「そんなのないよ!(ありません!)」

 

 

いやいや、さっきの発言を思い出してから言いなさい。思いっきり企業秘密って言ってましたよねお嬢さん達?

 

 

紫苑「ふふふっ、2人共まだまだね。このくらいで焦っちゃうなんて。」クスクス

 

八幡「その焦らせた本人が何言ってるんですか………今にもレシピを持ってきて説明しそうな顔してますよ、お嬢さん2人。」

 

紫苑「ごめんなさいね。けど八幡君も分かるでしょう?柊と涼風って揶揄いたくなるのよ。」

 

 

………まぁ、分からなくもないです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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働き過ぎ、ダメ!

 

 

柊side

 

 

全くもう、お母さんってばまたあんな風に私達をからかって!私だって八幡君に教えられる事があったら、手取り足取り教えるもん!!教えたいもん!!ドレッシングもそうだけど、お料理とかも一緒にしたいもん!!なのにお母さんってば、私達が突っ掛かって来るのを分かってるかのような顔でやって来るんだよ!?分かってはいたけど、思い通りになるのが釈然としな〜い!!

 

 

「あ、あの……柊お嬢様、涼風お嬢様。お皿洗いは私達が致しますので、使われた食器は置いて下されば結構なのですが………」

 

涼風「いえ、今日は私達がお料理をお出ししましたので、用意から片付け、最初から最後まで私達がやりたいのです。なのでやらせてください。」

 

柊「うん!いつも私達に美味しい料理を作ってくれますから、私達が作ってる時くらいはこのくらいさせてください!」

 

「お嬢様方、ご立派になられて………旦那様や奥様がそのお言葉をお聞きになったら、さぞ御喜びになるでしょう。」

 

 

そうかなぁ?私は普通の事だと思うんだけどなぁ。普通の家庭ってこうじゃないの?

 

 

柊「でも、やっぱり八幡君は濃い目の方が好きだったみたいだね。ただ、オレンジドレッシングも気に入ってくれたみたいで良かった♪」

 

涼風「はい、お作りした甲斐がありました。」

 

 

ーーー客室(八幡専用)ーーー

 

 

涼風「どうですか、お姉様?八幡さんは作業の続きをされておりますか?」

 

柊「うん、またパソコンと睨めっこしてる。でもさ、あんなに真剣にやってくれてるって思うと嬉しくなるんだ。だって八幡君がこうして動いてくれた理由って私達でしょ?私達がこれ以上被害を被らないようにする為に動いてくれてる。それが嬉しいんだ。そう思わない、涼風?」

 

涼風「………そうですね。私も八幡さんのようになれたら良いのですが、思うようになれません。」

 

柊「なったら困るよ〜涼風が八幡君のように怒鳴ったら、私どうしたらいいか分かんないし!」

 

涼風「わ、私は怒っている八幡さんになりたいわけではありません!」

 

八幡「な〜に扉の前で話しちゃってんの?会話丸聞こえなんだけど?」

 

柊/涼風「八幡君(八幡さん)!?」

 

 

ありゃりゃ……バレてた。

 

 

八幡「見るのはいいけど、相手はしてやれないからな?結構集中してやってるから良い所なんだ。だから、居るとしても部屋の中に居るだけで頼むぞ。」

 

柊「………」

 

涼風「………」

 

 

私と涼風は同時にお互いを見た。うん、涼風の考えている事が分かる。流石は姉妹♪そしてやる事はただ1つ!

 

 

柊「んふふ〜ねぇ八幡君♪」

 

八幡「……どうした?いつもならしない笑い方しながらこっちに来てよ。」

 

涼風「はい、少しこちらについて来てはくださいませんか?すぐに終わりますから。」

 

八幡「?」

 

 

来たのはベッド。私達は真ん中に八幡君を座らせてから、その両隣に座った。

 

 

八幡「………え、何?すぐ終わるって言ってたが、これだけか?」

 

柊「はぁ〜い、リクライニング〜♪」

 

八幡「うおっと。」

 

柊「おっと、リクライニングし過ぎて寝転んじゃった〜これは仕方な〜い♪」

 

涼風「は、八幡さんが抱いていたま、枕も……リ、リクライニング〜/////こ、これも、し、仕方な〜い/////」

 

 

良い、良いよ涼風!!

 

 

八幡「………んで、これは一体どういう状況なわけ?どうしてこうなっちゃった?」

 

柊「八幡君、良い所なのは良いけど、根を詰め過ぎるのはダメ。ちゃんと休みながらやるように。来て早々に1時間もパソコンと睨めっこ。晩御飯が終わってすぐに睨めっこ。これじゃあすぐに疲れちゃうから連続稼働は禁止!」

 

八幡「いや、でも本当に良い所で「ダ〜メッ!今はお休みタイム!無理な働き禁止!堕落なお休み歓迎!今日は学校でも色々あったんだから、頭を酷使させない事!」お、おいおい………」

 

涼風「もしも、もしもですよ?八幡さんが私達の言う事を聞かずに作業に没頭するというのであれば、その時は………致し方ありません。実力行使で行かせて頂きます。」

 

八幡「……怖い言葉聞こえたから休む。んで、俺は何すればいいわけ?」

 

柊「簡単だよ♪八幡君の隣にはと〜っても暖かい抱き枕があるでしょ?それに抱き着いてくれればOKだよ!抱き着かれなかった方は、何でか分からないけど、後ろから抱き締めてくれるから!!」

 

 

我ながら強引な手段に出ちゃったけど、良いよね!だって八幡君に休んでもらう為だもんね!

 

 

八幡「……勝手に動く抱き枕とか怪し過ぎるが、まぁ物は試しにやって………みるか?」

 

柊「さぁどうぞ!!是非私を抱き締めてね!!抱き心地が良い上に女の子特有の柔らかさもあるよ〜♪」

 

涼風「は、八幡さんになら………歓迎します/////」

 

 

そして私は八幡君にギュッと抱き締められた。寝る時は私から抱き締めに行くんだけど、今は八幡君からしてくれている。こ、これは………良い/////

 

 

八幡(それにしても柊さん、女の子特有の柔らかさと言ってましたけど、身体の事を言ってるんですか?それとも貴女達姉妹が持ってるたわわの事を言ってるんですか?俺にはサッパリです。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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さっきとは逆に

 

 

八幡side

 

 

八幡「………なぁ柊、もう「ううん、後5分。」いや、その台詞さっきもその前も聞いたんだけど?そう言ってかれこれもう30分は経過してるんだが?」

 

柊「だって八幡君から抱き締めてくれるなんて滅多に無いんだよ!?それを終わらせるなんて勿体無い事、出来るわけないじゃん!!」

 

八幡「え、なんで俺怒られたの?はぁ………涼風、お前からも「八幡さん、ご、5分です///」ジーザス、お前もか………」

 

 

はい、2人の内の片方(柊)を抱き締めて、もう片方(涼風)に抱き締められている現状なのだが、全く離してくれないのだ。今は抱き締めてはいるが、そこまで強くは抱き締めてない。寧ろ2人の方が強いまである。どんだけ離したくないんだよ………俺、やりたい事あるんだけど?今日はこのまま過ごすっていうのかい?それはあんまりだぜ………

 

 

涼風「八幡さんに抱き着いていると、とても安心するのです………幸せな気持ちが継続的に得られると言いますか、とても嬉しい気持ちになるのです///」

 

八幡「それはいいけどさ、もういい時間だよ?そろそろ作業させて?」

 

柊「嫌、八幡君に抱き締められてたい。」

 

涼風「あの、八幡さん………後程時間が空いた時で構いませんので、私にもよければ………/////」

 

 

増えた………

 

 

八幡「そうこう言ってるうちにもう5分経ったんだけど?もういいよね?「「後10分追加。」」……俺、充分癒されたよ?無理してないから。」

 

涼風「私達はお弁当の傷が癒えてません。なので八幡さん、私達を癒して下さい。」

 

柊「そうだよ。毎朝一生懸命作ってるお弁当をあんな風に扱われたら傷付くよ。だから八幡君、私達の心の傷を癒やしてよ〜。」ウルウル

 

 

そう来られたら断れねぇだろう………まぁ確かに昼間の事を考えたらこの2人のケアもしなくちゃいけないってのはその通りかもな。あの時はこんな事考えてる余裕なんてなかったしな………2人の気持ちを汲むか。

 

 

八幡「分かったよ、じゃあもうしばらくこのままな。いや、次は涼風にするか。」

 

柊「八幡君もしかして浮気!?」

 

八幡「何が浮気だ、そんなんじゃねぇよ……」

 

柊「けど次は涼風に抱き着くんでしょ?」

 

八幡「お前と同じで涼風も傷付いてんだ、なら同じ事をしてもいいだろ?涼風が嫌ならしない「ぜ、全然嫌ではありません!!是非お願いします!!」……ほら、さっきもそう言ってたし。」

 

柊「ぐぬぬぅ……正論だから何も言い返せない!」

 

八幡「こんな事で張り合うなよ。俺が柊を1番に考えている事は変わりないんだからよ。」

 

柊「………そんな事言っても騙されないもん///」

 

 

そんな事言われて嬉しそうにしてるのは何処のお嬢様かな?んん?

 

嬉しそうにしている柊に回している腕を解放して、俺は涼風の方へと向いて抱き締めた。

 

 

涼風「ふ、ふわぁ………/////」

 

 

………今の声、物凄く可愛いと思ったのは俺だけではないだろう。きっと柊も思っていたに違いない。

 

 

八幡「どうだ?」

 

涼風「は、はい………さっきよりも幸せを多く感じます、はい/////」

 

柊「むぅ〜……」

 

八幡「柊にはやってただろ?このくらい我慢しなさい。っていうか、涼風を抱き締めてまだ10秒も経ってないのにその反応かよ………」

 

柊「だってぇ〜……」

 

八幡「今は俺の背中に抱き着くで我慢だ、涼風もそうしてたんだから。」

 

柊「……はぁ〜い。」

 

 

しかし姉妹でもこんなに違うものなんだな。柊は自分から俺の方へと迫るように、擦り寄って来るような感じだったのだが、涼風は逆に縮こまるように小さくなっていっているような感じだ。まぁ、少しずつ俺の方へと近づいてきているようだけどな。

 

だが何だろう?涼風から漂ってくるこの幸せオーラは………物凄く甘ったるいんだが。柊はこんなの出さなかったぞ?

 

 

涼風「あ、あの……八幡さん、私はもう充分ですのでそろそろ作業に………/////」

 

八幡「いや、まだ1分くらいしか経ってないだろ。それにさっき暫くこのままって言ったから、このままでいいだろ。」

 

涼風「で、でしたらお姉様に………/////」

 

八幡「柊にはさっきやった、今は涼風だ。」

 

涼風「あうぅ……/////」

 

 

ヤバい、ちょっと面白い上に可愛い………なんか揶揄いたくなってきた。

 

 

柊「ちぇ〜。なんだかんだでいっつも涼風が良いとこ取りするんだよね〜。八幡君もさっきまで作業がどうたらこうたらで離してくれ〜なんて言ってたのに、今では涼風の為に抱き締めてるんだもん。涼風って策士だよね〜狙ってる?」

 

涼風「ね、狙ってません!た、確かに八幡さんにこうしてもらいたいという願望があるのは否定しませんが………」

 

八幡「お前等、俺を挟んで言い合いするなよ。それよりも涼風、あまり縮こまるなよ。抱き締めにくくなるだろ。」

 

涼風「あ、い、いえ、そんなつもりでは……/////」

 

柊「良いなぁ涼風……私も八幡君からこんな風にされたいなぁ〜。」

 

八幡「柊は涼風のようにお淑やかさを身に付ければ、少しは期待できるかもしれないぞ?」

 

柊「もうっ!またそんな風に揶揄って!」

 

 

結局その後もかなりの時間を使って2人に抱き着き、抱き着かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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お弁当

 

 

八幡side

 

 

………気が付けば夜が明けて朝になっていた。どうやらあの後そのまま寝てしまったらしい。しかし、布団も掛けず枕も使わずでよく平気でいられたものだ。今は冬だってのに………パソコンの電源が落ちてる。きっと誰かがシャットダウンしてくれたんだろう。多分宮間さんだろうな、後でお礼言っておこう。

 

しかし、パソコンを切ってくれたのなら、そのまま俺の事も起こして欲しかったものだ。そしたらこんな寒い思いをせずに………そういや寒くないな、何も掛けてないのに。室内の温度も変えてくれたのだろう、風邪も引いてないし熱もない。それに体調も悪くない、それどころか良い方だ。

 

 

八幡「昨日何時に寝たのかは覚えてないが、早寝には間違いないだろう。早寝をしたからか、起き時間もそれなりに早いな……今の時間なら外もまだ日が昇ってない。」

 

 

こういう時って何したらいいか分かんないんだよなぁ………隣の2人もってアレ?居ない………

 

 

八幡「自分の寝室に戻ったか?いや、柊がそんな事をするとは思えない。それにだ、涼風もなんだかんだ言って俺と一緒に寝たがる。だから朝から居ないのは何でだ?よく分からんが2人が居ない朝って物凄い違和感だな。取り敢えず起きて着替えるか、2度寝する時間でもないしな。」

 

 

それに喉が渇いた、水を貰おう。

 

 

ーーー居間ーーー

 

 

八幡「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涼風『お姉様、こっちは終わりました。後はおかずをもう1品作れば私は終わりです。』

 

柊『オッケー♪私の方も後1つだから丁度だよ。』

 

 

……目の前には料理をしている柊と涼風が居た。マジか、まさかこんな朝早くから朝飯の準備しているとは………っ!いや、違う。これは弁当だ……側に置いてある重箱が何よりの証拠だ。まさか俺が起きるもっと前に起きて準備をしていたとは………

 

 

宮間「これはこれは若様、おはようございます。昨晩はごゆっくり出来ましたか?」

 

八幡「宮間さん、おはようございます。それと、パソコンや部屋の温度の設定とか、色々とありがとうございました。おかげで電気代も無駄にならずに済みましたし、風邪も引かずにすみました。」

 

宮間「おや、気付いておいででしたか……礼には及びません。若様の事は旦那様から伺っております。我々も若様の悲願成就の為、微力ではありますが全力でお手伝いいたしましょう。」

 

八幡「ありがとうございます、俺個人でやっている事なのに。それで、柊と涼風って毎朝こんな感じなんですか?」

 

宮間「より正確には月曜日から金曜日、ですね。平日はお嬢様方や若様の学校がある日である以前に、お嬢様方が気合を入れる日でもあるのです。その理由は………若様、貴方様に美味しいと言ってもらえるようなお弁当を作る為に。」

 

 

道理で………しかもキッチンを見たらもっと驚きだ。冷凍食品を一切使ってない。つまり全て自分達の手作りで、1から作ってるって事だ。冷凍食品ならただ突っ込めばそれで終わりだろう。だが柊と涼風の料理は全て最初から、1から作られている。

 

 

宮間「私は1度、柊お嬢様に問いました。何故全て手作りなのかと。すると柊お嬢様がさも当然かのように答えて下さりました。『八幡君に美味しいって言って貰いたいから、頑張れるんだ!』っと。それもとても嬉しそうに言うのです。それから毎朝、私はお2人の調理姿を目にしますが、とても楽しそうに調理をされています。飽きたような表情を見せた事は1度もございません。」

 

 

………

 

 

八幡「いつも特に何も考えずに食べてましたけど、それじゃダメですね。もっと感謝して食べないと。」

 

宮間「若様ならそう仰ると思いました。ですが若様のその想い、お嬢様方には届いておられるかと思われます。」

 

八幡「え?それって『完成〜♪今日こそは全部食べられるようにしないとね!』っ!」

 

 

涼風『そうですね。今日からは家庭科室で食べましょうか?入り方なら知ってますし。』

 

柊『そうだね、その方が良いかも。八幡君も理由を言えば納得してくれると思うしね。』

 

涼風『今日のお弁当も美味しいと言って下さると嬉しいですね、お姉様。』

 

柊『だね〜。けど八幡君って顔にもよく表れるから分かりやすいんだよね。でも言葉で言ってくれるのも嬉しいよね♪』

 

涼風『はい、お姉様。』

 

 

八幡「………」

 

宮間「若様、若様の想いは言わずともお嬢様方には届いておられます。なのでご安心なされてください。無理に答えずとも、若様とお嬢様方ならば心で通じ合っていると、この宮間はそう思います。」

 

八幡「………そうですね、宮間さんの言う通りかもしれません。」

 

宮間「いえ、出過ぎた真似をいたしました。」

 

八幡「いや、全然。むしろ気持ちの整理が出来ました。ありがとうございます。」

 

宮間「勿体無いお言葉です。」

 

 

無理に答えなくても心で通じ合ってる、か………

 

 

柊「あれ、八幡君?どうしたのこんな朝早くに?」

 

八幡「いや、喉が渇いたから水を飲みに来たんだ。そしたら楽しそうに料理してるのを見て邪魔したら悪いと思ってな。」

 

涼風「そんな事ありません、私達が八幡さんを邪魔に思う筈がありません。」

 

柊「八幡君、今日のお弁当は楽しみにしててね!昨日食べれなかった分、今日は倍以上に美味しく仕上げてるから!!」

 

 

あぁ………本当、楽しみだ。

 

 

 

 



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自身の力で

 

 

涼風side

 

 

八幡さんが泊まり込みで作業を始めてから4日が経過しました。本日は日曜日なので学校がお休みの日です。作業の方は順調に進んでいるらしく、八幡さん曰く『今2人目のSNSを漁ってる所だ。コイツ等の汚い本音が出てくる出てくる。』だそうです。

 

昨日も土曜だったのにも関わらず、お姉様は八幡さんの事を考えてデートをお止めになった程です。あのお姉様がですよ?あのお姉様が『八幡君は今、忙しそうだからデートはまた今度にしよっと。』って仰ったのですよ?少々驚きました………今でも少し驚いておりますが。

 

その1日分をフルに使う事が出来た八幡さんはかなりのスピードで作業をしています。お手伝いをしようかと思いましたが、八幡さんは手伝ってほしくない様子でしたので、私達も余計な事はせずに八幡さんのサポートに徹しました。例えばお飲み物をお持ちしたり、糖分補給の為に甘い物を用意したりですね。

 

 

そして今、私は八幡さんに糖分とお飲み物をお持ちしている所です。

 

 

コンコンコンッ

 

 

涼風「八幡さん、涼風です。お部屋に入ってもよろしいでしょうか?」

 

八幡『おう、いいぞ。』

 

涼風「では失礼致します、八幡さん。お飲み物とケーキをお持ちしました。」

 

八幡「おぉ、助かる。じゃあ少し休憩にするか。」

 

 

八幡さんはお飲み物と糖分をお持ちになると、必ず休憩を挟んで下さります。きっと休憩すべきだとメリハリをつけているのでしょう、流石です!

 

 

八幡「?そういや柊は?」

 

涼風「お姉様はお昼の準備です。八幡さんの為にと張り切っておられます。」

 

八幡「……なんか悪いな、俺が来た事によってこの家の人達の生活リズムが狂っちまってるんじゃないのか?」

 

涼風「とんでもありません!私達は好きでやっているのです、好きで八幡さんのお世話をしているのですから、お気になさらないでください!」

 

八幡「そ、そうか?」

 

涼風「はい♪」

 

 

八幡(ふむ……なら俺も気にしないようにするが、やっぱ気になるんだよなぁ。柊に休みの日にも昼食を作ってもらってたりとか、こうやっておやつ持ってきてもらってる時点でさ。)

 

 

涼風「調子は如何でしょうか?」

 

八幡「あ、あぁ………2人目に入ったのは言ってたな。段々とそれらしい投稿が見つからなくなってきたから、多分2人目もこれで終わりだ。この後すぐに3人目に入れると思う。」

 

涼風「そうですか。しかし八幡さん、準備が整ったとして、それをいつ実行するのですか?もう1週間もすれば冬休みです、もう時間もあまりないと思われますが………」

 

八幡「そうだな。まぁ俺からのクリスマスプレゼントっていう事でクリスマスの日にでも学校に張り出そうと思っている。大抵クリスマスって冬休みの残り1〜2日前だからな、アイツ等の冬休みを潰してやるのにもちょうど良いだろう?」

 

涼風「ふふふっ、八幡さんもお人が悪いですね。」

 

八幡「人の楽しみを奪ってくれたんだ、ならこっちもそれくらいの事をしても文句はないだろう?それに、夜十神家の力を使えば、世間の皆様に伝えるくらい訳ないんだ、それを学校だけで収めてやるんだから、ありがたい方だろ。」

 

 

確かにこれが世間に知れ渡ったら、あの方々……のご両親の面子は丸潰れどころの話ではありませんね。子供とはいえど高校生、一般常識を身につけていて当然ですし、善悪の違いも理解出来ていて当然なのですから。

 

 

八幡「だが俺は夜十神家の力を使う気なんて毛頭ない。それをやっちまったら、俺の力じゃなくなる。だからこれは俺の力だけでやらなくちゃ意味がない。この件はまだ高校生でも片付けられる問題だしな。ちょっとそれが発展したとしても、親と子供がお前達2人とおじさん達に謝罪をする形で終わるだろうよ。」

 

涼風「八幡さん、そこまでお考えに?」

 

八幡「考えられる範囲で、だけどな。未来の事がどうなるかなんて誰にも分かんねぇしな。もしかしたらこれのせいで冬休みが延期になるかもしれない。そうなったら申し訳ないけど。」

 

涼風「そうなったとしても、私とお姉様は八幡さんを責めたりなどしません。私達の為に動いてくださったのですから。それに、姉の恋人をどうして責める事が出来ましょう?」

 

八幡「……ホント、良い妹を持ったよな柊は。俺にとっても良い義妹だよ。」ポンポン

 

涼風「あ、ありがとうございます///」

 

 

私は八幡さんのこの顔が好きです。頭を撫でる時は必ず、とても優しい顔をしてくれます。姉を撫でる時もそうですが、八幡さんが頭を撫でる時は決まって優しい顔をします。

 

 

※例えるなら、【魔法科高校の劣等生】の司波達也が妹の深雪を撫でるときの顔。

 

 

八幡「まぁ何にしても、俺があの3人を許さないって事だけは確かだ。お前達を傷つけた時点でそれは決定事項だからな。」

 

涼風「八幡さん………」

 

八幡「何かと俺達の周りでは色々と起きやすいみたいだからな、俺も力をつけておかないとって思っただけだ。力の使い方は……正しいとは言えないけどな。人を貶める時点で間違っているのは確かだ。だが俺にはこれしかやり方がない。」

 

涼風「………私は、それで良いと思います。八幡さんは今まで誰にでも優しくしてこられたのです。なら、少しくらい意地悪になっても誰も文句は言いません。」

 

八幡「………悪いな、涼風。」

 

 

いえ、この程度の事、八幡さんの為ならなんの問題もございません。

 

 

 

 

 

 

 



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12月23日

 

 

柊side

 

 

今日は12月の23日………所謂クリスマスイヴの前日。そして冬休みが始まる3日前、何だか実感が全く湧かない。最近、というよりも1週間前の出来事がまだちょっと残っているのかも。今は教室で八幡君と涼風の3人でお昼ご飯を食べてるんだけど、八幡君から今日の事を聞いているから落ち着かないのかも。

 

そう、今日は八幡君がネットで集めたあの人達の情報を張り出す日。明日になったら学校中にあの3人の実際に投稿した内容が全校生徒、そして全教師に知れ渡る事になる。因果応報って言葉があるけど、あの人達のした行いの報いが明日になって表れるんだよね。

 

 

八幡「今日も美味いな……冷めても美味いってやっぱり最高だわ。」

 

柊「そう?八幡君の為に作ってるからね〜♪でも明日はもっと凄いかもよ?なんて言ったってクリスマスイヴだからね〜その次はクリスマスだしね!」

 

涼風「お姉様、ご自身でハードルを上げるのは結構ですが、用意出来なくなったなんて言わないで下さいね?私は堅実に行きますからね?」

 

柊「えぇ〜涼風も協力してよ〜、ね?」

 

涼風「八幡さんやお父様達の為ならば致し方ありませんが、違う理由であればお断りしますからね?」

 

柊「分かってるって!じゃあ今日は食材買いに行こっ♪頑張らないとだからねっ!」

 

涼風「……ふふっ、はい。」

 

 

明日はどんな風にお弁当作ろうかなぁ〜?やっぱりクリスマス風にした方が喜ぶかな?それともいつも通りの方が受け良いかな?うぅん、八幡君はどっち派なんだろう?

 

 

ーーー放課後ーーー

 

 

柊「それで、いつ張り出すの?」

 

八幡「明日の朝早くだ。こんな時期でも朝練やってる部活もあるからな、それを利用する。その時間に合わせて学校に行って張り出しをする。」

 

涼風「ですが、明日の朝に部活動の朝練があるとは限らないのでは?」

 

八幡「大丈夫だ。戸塚に聞いたら、野球部は毎週同じ曜日に朝練してるって教えてくれた。だから学校は問題なく開いているって事だ。それにその間は顧問の先生は居ても、朝練を入れてない部活動の先生や生徒は居ない筈だしな。そして野球部が練習している場所はグラウンドだ。」

 

柊「余程の事がない限りは、八幡君がやったってバレる可能性は低いって事だね。そしてそのヘイトが行きやすいのは………野球部って事になるのかぁ。」

 

八幡「野球部の連中には悪いが、今回は囮になってもらう。まぁあの3人は俺だって言うかもしれんが、考えてもみろ。普通の生徒が、それも文系の部活に所属している俺が5時や6時に学校に行くなんて不自然極まりないしな。理由なんて幾らでも思いつく。」

 

涼風「八幡さんも存外、お人が悪いですね。」

 

八幡「俺は俺の大切な奴を傷付けられるのが嫌いでな、その為の報復なら喜んでしてやるよ。」

 

 

八幡君………

 

 

八幡「それに、張り出すのは1番人の行き来が激しい廊下の掲示板にする。学校中に貼るのはリスクがデカ過ぎる。生徒が頻繁に通る廊下に貼っておいた方が通る生徒の興味を買いやすいしな。特にそれが噂好きな奴だったり、クラス内で影響の大きい奴なら尚更な。」

 

柊「成る程〜……確かに校内全部回ってたら疲れちゃうし、可能性が低くても先生に遭遇しちゃうかもしれないしね。なら1番目立つ所に貼って後は撤収ってわけだね!」

 

八幡「その通り。画鋲なんてその辺で買えば幾らでも手に入るし問題ない。」

 

涼風「八幡さん、もしよろしければ使いの者を出しましょうか?朝早くは冷えるでしょう、よろしければお車を手配しますが?」

 

八幡「ありがたいがやめておいた方がいい。校門まで走らせたら1発でお前等か俺ってバレる。近くに止めるのもダメだ、1ヶ月も車登校してたんだから即バレだろう。まぁ気持ちだけ受け取っておく。」

 

柊「八幡君、その作業私も行っていいかな?八幡君1人だと周りにも気を使うでしょ?だったら私も「ありがたいがそれもダメだ。」え……な、何で?」

 

八幡「お前がついて来たら、明日の卵焼き食えなくなるだろ。お前の作る卵焼きが無かったら、1日乗り越えられる気がしねぇよ。だから柊は涼風と一緒に弁当作っといてくれよ。昼飯の時も言ってたけど、凄いかもしれないんだろ?俺はその凄い昼飯に期待してんだからよ。」

 

柊「八幡君………」

 

八幡「だから明日も頼むぞ?めっちゃ美味い弁当、期待してるからよ。早起きして神経使いながら作業した時の疲れも吹き飛ぶような弁当を頼む。」

 

 

………正直に言うと、私は八幡君が心配だった。もし何かあったらって思うと、自分も一緒にって無意識に思ってた。でも八幡君はお弁当を作って欲しいって言ってくれた。でも私には分かる、それは半分本音で半分嘘。その嘘は私達に被害が及ばないようにする為。何があっても自分だけの責任にするようにする為だと思う。

 

 

柊「……うん、分かった。じゃあ明日は疲れも取れるようなうんっと美味しいお弁当にしないとっ!今から腕が鳴るよ〜……ねっ、涼風♪」

 

 

だから私も、自分に出来る最大限のサポートを八幡君に一生懸命しなきゃ!

 

 

 

 

 

 

 



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実行!

 

 

八幡side

 

 

ふぅ………よし、この日が来た。12月24日、クリスマスイヴだ。まぁ夜ではないんだけどな。プレゼントを頼む子供達にとっては夢のような日だろう。だがそれは今の俺も同じ、今日だけはサンタの気分だ。まぁ、贈るプレゼントは良い物ではなく、悪い奴を懲らしめる為の物なんだけどな。

 

さぁて、今年最後の大仕事と行きますかね。

 

 

♪〜

 

 

八幡「ん?誰だ?………おじさんから?はい、もしもし?」

 

御影『八幡君おはよう。ちょっとした手助けになるだろうと思って電話をしたんだ。』

 

八幡「手助け、ですか?」

 

御影『うん。君が調べてかき集めた投稿をまとめた紙を貰ったよね?その紙を千葉の教育委員会に匿名で送っておいたんだ。』

 

八幡「匿名、ていってもアドレスとかで逆探知されるのでは?」

 

御影『そこも大丈夫。送ったアドレスもその為だけに作ったアドレスで、もう無いから。』

 

 

………流石はおじさんだ、仕事が早い。

 

 

御影『そういうわけだから、今日の朝は生徒だけでなく教師も大騒ぎになるだろうから、よろしくね?真犯人さん?』

 

八幡「俺の仕事手伝った人が何言ってんですか、共謀者さん?」

 

御影『あははは、違いないね!じゃあもう切るよ、君の仕事の邪魔はしたくないからね。頑張ってね、心から応援してるよ。』

 

八幡「……はい。」

 

 

そう言って電話は切れた。そんな事をしてくれてたのか、おじさん………改めて、ありがとうございます。

 

 

八幡「よし、俺も行くか!」

 

 

ーーー総武高ーーー

 

 

やっぱ開いてる、クリスマスでも関係なく朝練やるって信じた甲斐があった。んじゃ、俺も入らせてもらいますよ〜。しかし、この時間は本当に教師も居ないんだな。駐車場スペースがガラガラだ。数台しか停まってない。

 

 

ーーー3階(1年生廊下)ーーー

 

 

八幡「此処だな。周りに気を配りながら急いでやらないとな。スペースの確認とかしとけばよかったかもな〜、こんなに余裕ならA3用紙でも行けたな。」

 

 

文句垂れててもしょうがない。今は少しでも早く貼ってかないとな。足音がしたら急いで隠れなきゃならないからな。貼ってもいないのに中途半端な状態で隠れたら、それはもうおしまいだしな。

 

 

八幡「よし、完了。次は俺達2年だ。」

 

 

ーーー2階(2年生廊下)ーーー

 

 

八幡「いつもこの場所通ってるのに、こんなに静かだとなんだか変な感じだな。いつもの煩さが嘘のようだ。まぁ今日の7時半には、違う意味で騒がしくなってるだろうけどな。」

 

 

あっ、ちなみに俺は今ゴム手袋を着用している。この紙を作った時もゴム手袋をつけていた。指紋がつかないようにする為だ。もし鑑識なんかに回されたら、俺だってすぐにバレちまうしな。別にバレても良いんだけどさ。だってどっちが悪いかなんて見れば分かるだろ。

 

ネットのSNSで悪口書いて投稿してる奴と、その情報を学校に晒す奴、皆さんならどっちが悪いと思いますか?

 

 

八幡「よし、終わりだ。さて、次が1番の難関ポイントだよな。」

 

 

ーーー1階(3年生廊下)ーーー

 

 

この1階は1番教師や生徒との遭遇率が高い。何せ出入りが激しいったらないからな。だから今まで以上に周りに気を配らないといけない。そうでないと、すぐにバレる。それに今は外とはいえ、生徒と教師が居る。休憩に学校の中に入って来ないとも限らないしな。

 

 

八幡「3回目だからちょっと慣れたし、手早く出来たな。よし、3年廊下も終わった。よし、撤収するか。学校から出る時もバレないようにしないとな。特に同級生とかに見つかると厄介だ。今の俺、制服だし。」

 

 

その後は問題なく、校舎から出る事が出来た。多分誰にも見つかってない筈だ。俺にはステルスヒッキーっていう能力があるんだ、きっと大丈夫だ、多分。

 

さて、今日の登校した時が楽しみだ………試しに全階回って見てみるか。どんな反応してるのか気になるしな。その時は柊達も連れて行こうか。

 

 

ーーー自宅ーーー

 

 

八幡「ふぅ〜………一仕事終えた後ってこんな感じなのかねぇ〜。」

 

小町「アレ、お兄ちゃん?どしたの?こんな朝早くからそんな支度して。今日ってそんなに学校早いの?あっ、柊さん達に早く会いたいんでしょ〜?」

 

八幡「悪りぃけど用事済ませた後なんだわ。ほい、お土産。朝めしの時にでも食おうぜ。」

 

小町「わおっ、エクレアじゃん!しかも中身が生クリーム&ストロベリーのクリスマス限定バージョンじゃん!さっすがお兄ちゃん、気が利く兄を持てて小町は嬉しいよ〜♪」

 

 

心にも無い事を言いおってからに………けどまぁ、今はこの軽口が少しはありがたい。張り詰めた身体を少しだけ解してくれる。

 

 

八幡「そういや母ちゃんからなんか言われてないか?チキンとケーキの用意とか。」

 

小町「うん、言われてるよ。買っといてって。お金も貰ってる。」

 

八幡「それくらい俺に頼んで欲しいもんだ。小町は今年受験生だってのによ。」

 

小町「いいよいいよ、小町も良い気分転換になるし。ずっと勉強しっぱなしもストレスになっちゃうしね。丁度いいよ。」

 

八幡「そっか……じゃあ頼むわ。」

 

小町「うん、任せといて♪」

 

 

………取り敢えず少しだけ休むか。

 

 



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広がる噂

 

 

柊side

 

 

何だか緊張するなぁ〜……私達が何かしたってわけじゃないけど、八幡君がこの1週間で準備した物がどんな効果をもたらすのかと思うと、ちょっとソワソワしちゃう。その理由は今朝、八幡君が学校に行ってあの3人のSNS投稿の貼り出しをしたから。

 

今私達は車で八幡君の家に向かってるけど、少しだけ遅めに向かってもらってる。八幡君にも休む時間が必要だと思ったから。あっ、車が停まった。着いたみたい♪

 

 

宮間「お嬢様方、ご到着しました。」

 

涼風「ありがとうございます、宮間さん。」

 

柊「いつもありがとうございます。」

 

宮間「いえ、このくらいなんて事はございません。若様はまだ屋内でしょうか………お呼びしましょうか?」

 

涼風「いえ、結構です。八幡さんは今日までずっとご多忙だったのです、少しはのんびりする時間を差し上げてもバチは当たりません。」

 

宮間「かしこまりました。」

 

 

ガチャッ

 

 

八幡「おはよう、柊に涼風。宮間さんもおはようございます。」

 

柊「おはよう八幡君、朝からご苦労様!」

 

涼風「おはようございます、八幡さん。」

 

宮間「おはようございます、若様。早朝からご苦労様でした。さっ、お乗り下さい。途中までお送りしましょう。」

 

八幡「すみません、お願いします。」

 

 

ーーー車内ーーー

 

 

柊「どうなってるかな、学校は?」

 

八幡「見てる奴がいれば、それで大騒ぎになってるだろう。まぁ恐らく、教師が対応してる可能性は低いだろう。朝は職員会議とかで廊下をウロウロする教師は殆ど居ないだろうからな。だから教師が知るタイミングとしては、朝早く来て確認をする時か、生徒に聞くかくらいしかないだろう。」

 

涼風「几帳面な方でしたら、掲示物が増えただけでも分かりますからね。」

 

柊「それでもやっぱり生徒の間でどれだけ広まっているかが鍵?」

 

八幡「まっ、そうなるな。」

 

 

八幡君は生徒間での広まりを狙ってるみたい。教師だとすぐに外すと思ってるからかな?でも高校生が掲示物を凝視するとはあまり思えないんだよね〜。

 

そして宮間さんが運転してた車は総武高の近くにあるコンビニ前の信号で停まったから、そこから徒歩で向かう事にした。

 

 

八幡(2人にはおじさんが教育委員会にもSNSの投稿を匿名で提出したとは、言わない方がいいな。)

 

 

ーーー校内ーーー

 

 

私達が校舎に入って3年生の廊下を見てみると、かなりの生徒の人だかりが出来ていた。きっと八幡君の貼った3人の投稿が話題になってるみたい。

 

 

八幡「3年の受けは良いみたいだな。さて、じゃあ次は俺達2年だな。」

 

涼風「凄い人ですね。受験前でお忙しいと思っていましたが、やはりこういった話題には食い付くのでしょう。」

 

柊「ホント、今来た3年生も何があったのか聞きに行ってるしね。八幡君のパワー凄い………」

 

八幡「俺のパワーじゃねぇだろ。ほら、2階に上がるぞ。もしかしたら此処よりももっと酷い状況かもしれないんだしな。」

 

 

それを実現させたの、八幡君だよ?

 

 

ーーー2階(2年生廊下)ーーー

 

 

「なぁ、掲示板見た?」

 

「見た見た!アレヤバいよな………」

 

「幾ら本当の事だったとしても、アレは無いわ。」

 

 

「なんかすっごい幻滅……あんな人だとは思わなかった。」

 

「うん、ちょっと口の悪い所はあったけど、あんな事書くなんて思ってなかった。」

 

「だよね〜……人の悪口も書いてたしね……」

 

「後、バイト先や学校のもね〜………」

 

 

………八幡君の言ってた通り、下よりも酷い事になってた。きっと私達のクラスでも凄い事になってるに違いない。それに、あの3人は私達よりも登校してくるタイミングが遅いから、この騒動が自分達であるという事なんて、最初は気付かないと思う。

 

 

八幡「想像以上だな………まぁ当然だが。」

 

涼風「お友達同士で集まってコソコソ言ってる方達も居ますね、これも八幡さんには想像通りの展開ですか?」

 

八幡「概ねな。」

 

柊「学校中、あの3人の噂で絶えないだろうね。これをあの3人が知ったらどんな反応するんだろう?投稿のペンネームだって知ってる方からすれば、違うと言ったとしても嘘だというのはすぐに気付きますしね。」

 

八幡「言い訳はするだろうが、全部無駄に終わるだろうな。それに、アイツ等には後ろ盾が何もない。頼れるのは自分達しか居ないからどうしようもないだろうな」

 

 

私達が遠巻きに全体を見ていると教室に辿り着いた。入ると、やはりあの3人の話題だった。しかも3人の席を遠ざけるように距離を取りながら話していた。まだ来ていないけど。

 

 

八幡「(……やっぱ見てやがるな。)2人共、少しだけ席を外す。多分大丈夫だとは思うが、何かあったらすぐに呼べ。」

 

柊「うん、分かった。」

 

涼風「かしこまりました。」

 

 

柊sideout

 

八幡side

 

 

ーーー廊下ーーー

 

 

八幡「………」

 

葉山「………」

 

八幡「聞きたい事があるんじゃないのか?」

 

葉山「……否定するわけじゃないが言わせてくれ、あまりにもやり過ぎじゃないか?」

 

八幡「たかが床掃除で許せってか?俺は自分の彼女とその妹が作ってくれた弁当を台無しにされたのをその程度で許してやる程、心は広くねぇよ。ただの掃除で俺の気が晴れるとでも?冗談だろ。お礼参りと一緒だ。」

 

葉山「………君との約束だ、俺は彼女達を擁護したりはしない。」

 

八幡「別にしたけりゃすれば良い。だがその時はお前も標的になるだけだ。」

 

 

葉山は聞いていたかどうかは知らんが、そのまま教室の中へと入っていった。

 

 

八幡「葉山、お前はどうか分からんが、人には誰だって譲れないもんがあるんだよ。俺は柊と涼風を傷つける奴は絶対に許さないって決めてんだよ。ソイツが誰であろうと、俺は容赦しない。」

 

 

 

 

 



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3人の反応

 

 

ーーーーーー

 

 

ゆっこ「あぁ〜今日の体育マジだるくない?私部活前に汗かくのチョーイヤなんだけど〜。」

 

遥「それ分かる〜部活の前に疲れたくないってのにさ〜よりにもよって5〜6時間目ってウザイよね〜。南もバイト前だったらそう思わない?」

 

相模「うん、しかもそのバイト今日だし。慣れたけどさ、めんどいよね〜。」

 

 

ーーー校内ーーー

 

 

遥「でさー昨日先輩が………ねぇ、なんか3年生集まってない?なんかあるのかな?」

 

ゆっこ「さぁ?大学の試験とかじゃない?試験の日と内容とか張り出してんじゃないの?」

 

遥「あぁ〜かもね。でもこんなギリギリにする普通?もう冬休みだよ?」

 

相模「いやいや、あり得なくもなくない?ほら夏休みとかで課題くれる時、無駄に渡すの遅い先生とか居たじゃん。あれと同じだって。同じ先生だったりしてね〜あはは!」

 

ゆっこ「南って辛辣〜!」

 

遥「あはははっ〜!」

 

 

だがまだ3人は知らない……いや、知る筈もない。今集まっている3年生が自分達の事で集まっているという事など。だが、上の階に登れば嫌でも思い知る事になる。自分達がSNSに投稿した内容が自分達の首を絞めていくという事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー2階(2年生廊下)ーーー

 

 

相模「あれ、なんか2年も同じじゃない?」

 

遥「うっそ、そしたら全学年共通って事じゃない?何貼り出されてるんだろう?」

 

ゆっこ「荷物置いたら見に行かない?私達も見に行こうよ。これじゃ動き辛いし。」

 

相模「賛成〜。」

 

 

何も知らない3人はそのまま教室へと向かうが、周囲からの視線を感じないのか、そのまま教室へと向かって行った。

 

 

「あの3人だよな?」

 

「そうそう、このSNSの投稿主!」

 

「あたしも知ってる!この投稿じゃないけど、このアカウントネーム見た事あるし!」

 

「すげぇよな、こんな事書いてんのかよ………」

 

「どうでもいいけどさ、俺あの3人と友達じゃなくて良かったわ〜。」

 

「あたしも〜。関わんなくて正解。」

 

 

ーーー2-F組ーーー

 

 

相模「着いたぁ〜早く上着かけて見に行こ?」

 

ゆっこ「そだねー。」

 

遥「うん。」

 

三浦「あんさーちょっといい?」

 

相模「え?なぁ〜にぃ〜三浦さん?私達この後用事あるんだけど?」

 

三浦「アンタ達さ、アレってマジなわけ?」

 

ゆっこ「アレって?」

 

三浦「アンタ達がこの学校の事とか先生や生徒、クラスメイトの悪口書いてるってアレってマジなの?しかも部活も含めて。」

 

相模「はぁ?そんなの嘘に決まってんじゃん?何、私達が最近調子に乗ってるとでも言いたいの?」

 

三浦「じゃあコレ見て、1年から3年の掲示板に貼られてた紙。」

 

相模「………え……何これ、何なのよこれ!?」

 

ゆっこ「ど、どうしたの南何が書いて………は?これって私の……嘘でしょ、何で?」

 

遥「………コレ、私のアカ名じゃん。どうして?」

 

三浦「やっぱ本当だったんだ……今朝来た時にはもう貼り出されてたし。1年から3年の掲示板スペースにちょっと細かいけど、アンタ達がSNSに投稿してる内容が貼ってあった。もう学校中の噂になってるし。」

 

相模「な、何かの間違い!!私達がそんな事するわけないじゃん!!」

 

三浦「じゃあ携帯のアカウント見せてよ。それで違ったら信じるし。多分だけど、このクラス全員そう思ってる。」

 

遥「そ、そんなの………」

 

ゆっこ「無理に決まってんじゃん………」

 

相模「………」

 

三浦「やっぱ本当だったんだ、あの投稿。」

 

 

今、2-F組にはクラスに所属している生徒だけでなく、他クラスの生徒までもがクラスの中に入ったり、覗いたりしていた。それもそうだ、あの投稿をした張本人達が登校して来たのだ、それに注目しない理由がなかった。

 

隠してはいなかったのだろうが、こうも明るみになってしまっては言い逃れも逃げる場所も無いに等しい。むしろそれを探しているとすれば、滑稽というものだろう。

 

 

相模「くぅっ………!!」

 

ゆっこ「あっ、ちょっと南!!」

 

遥「ま、待ってよ!!」

 

 

3人は廊下へと飛び出すと、掲示板の方へと向かった。3人が食い入るように見ているのは、今し方三浦に見せてもらっていた掲示物の内容だった。

 

 

相模(これも……これもこれも全部私のっ!!)

 

遥(本当に全部、私達の………)

 

ゆっこ(なんで、一体どうして………)

 

 

そしてまた教室の方へと走りながら戻ると………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相模「誰よ、あんなの貼り出したの!!!出て来なさいよ!!!」

 

 

出てくる筈もなく、静まり返っていた。それどころかクスクスと笑いを抑える笑い声すらも聞こえていた。今の相模程、とても醜く見えるものはないだろう。それ程までに滑稽だからであった。

 

 

相模「……っ!!アンタね、アンタでしょう!!」

 

 

すると相模は1人の生徒の前まで来てからそう怒鳴りつけた。

 

 

八幡「………何で俺なんだよ?俺も今朝登校して初めて知ったんだぞ?その中でどうやってあの紙を貼るんだよ?言いがかりならやめろよ。」

 

相模「うるさい!!!私達の事が気に食わないからこんな事したんでしょ!!?正直に言いなさいよ!!どうせその女の為でしょ?よく見るとお似合いだわ!!髪が長くて顔も隠せそうなくらいだもん、そんな幽霊みたいな女とアンタなんてお似合いよ!!!」

 

三浦「ちょっと、それは「幽霊、ねぇ……」っ。」

 

 

すると八幡はゆっくりと立ち上がった。そして相模の前に立った。

 

 

相模「な、何よ!?」

 

八幡「別に幽霊呼ばわりするのはいいけどよ、自分の事をよく考えるんだな。あんな投稿をしてるくらいだ、クラスからも学校からも浮くのは目に見えてる。この先、幽霊になるのはどっちだと思う?」

 

 

八幡の言葉に相模は何も言い返す事が出来なかった。そして顔を俯かせたまま、自分の席へと戻った。遥とゆっこも同じように席へと戻った。

 

 

 

 



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居ない時に

 

 

八幡side

 

 

平塚「連絡事項だが、特にこれといって無い。だがお前達、というよりもこの学校の生徒や教師が把握している事だと思うが、1〜3年の掲示板に貼り出されている紙についてだ。あの紙の内容によると、投稿者は相模を含めた3人という事になってはいるが、調査中だ。なのでこの件に関しては不用意に口にしないように。まだ3人が本当の投稿主だと決定したわけではないからな。それと3人にはこの後、このSNS投稿をやっているかどうかを確認したい。HRが終わったら生徒指導室まできてSNSを見せてもらいたい。構わないか?」

 

相模/遥/ゆっこ「………はい。」

 

平塚「よろしい。それではHRを終了する。今日も1日真面目に授業に取り組むように。」

 

 

平塚先生の連絡事項が終わると、あの女子3人組は平塚先生に連れられて生徒指導室へと向かった。まぁ投稿を消していたとしても、アカウント名や画像、過去のデータとかを全部消したり変えたりしない限りはバレない方法なんてありはしない。しかもあの遅めの登校でこの騒ぎだ、そんな暇なんてないだろう。

 

 

涼風「大変な事になっていますね、あの3人は大丈夫でしょうか?」

 

八幡「大丈夫とは言えないだろうな。学校でこんだけの騒ぎになってる上にこれが世間にも広まってみろ、アイツ等は終わりだ。」

 

柊「けど、私は自業自得だと思うな。だってアレ全部あの3人が投稿した内容なんでしょ?なら自分でやった事なんだからああなっても文句は言えないよ。だってそれを言い出したら、自分達が悪いって認めてるって事だもん。」

 

 

確かに柊の言う通りだ、あの内容は3人で自分からやったもの。誰にも文句は言えない。言えた義理でもないしな。

 

 

結衣「ねぇヒッキー、さっきさがみん達がヒッキーが犯人だって言ってたけど、実際はどうなの?」

 

八幡「してないって言ったぞ俺は。」

 

結衣「けどさ、夜十神さん達の事もあったから、動機はあるかもって思ったから。」

 

八幡「仮にあったとしても、俺にメリットはあると思うか?ただ憂さ晴らしが出来るだけだろ。そんな無駄な事、俺はしねぇよ。」

 

結衣「………じゃあ仮にヒッキーがあの紙を貼った本人だとしたら、動機は?」

 

 

妙に突っ掛かるなコイツ……そんなに理由が欲しいのか?

 

 

八幡「さぁな、考えた事ねぇから分かんね。さっきも言ったろ、こんな無駄な事しねぇって。(まぁ、本当は柊達の弁当を床にぶち撒けて置いて謝罪も無かった上に2人のせいにしたからなんだけどな、言わないけど。)」

 

結衣「………そっか、分かった。ごめんねヒッキ「俺からもいいか?何でそんなに突っかかって来るんだ?相模達に言われたのか?」う、ううん違うけど。」

 

八幡「なら何でこんな事を聞いたんだ?知っても無駄な事だと思うが?」

 

結衣「………気になったから、じゃダメかな?」

 

 

………話す気は無いって事か?まぁ別にいいけどよ、知りたいとも思わないし。

 

 

八幡「あっそ、ならいいわ。」

 

結衣「うん、じゃあね。」

 

柊「………何だったのかな?」

 

八幡「知らね。けどあの聞き方、俺が犯人だって分かってるような口ぶりだったな………」

 

涼風「あの女子3人に言うのでしょうか?」

 

八幡「そこまでは分からないが、言ったとしても大して脅威にはならないだろう。貼ったのがバレたとして、それって問題なのか?」

 

涼風「………私には分かりかねますが、問題にはならないと思います。それよりも問題なのは彼女達の投稿だと思いますので。」

 

八幡「だよなぁ………」

 

 

あの3人の投稿内容を纏めるとこうだ。因みにバラバラに出すから、誰がどうだとかは皆の想像に任せる。

 

 

・クラスの○○がマジで空気読まなさ過ぎるww鈍感にも程があるでしょ〜脳味噌が猫並み〜ww

 

・○○トロ過ぎ〜。ホンットウザい!

 

・夜十神の弁当落としたってだけで根暗がキレた、マジ最悪。たかが弁当でマジになり過ぎ。

 

・現文の課題渡すとか言ってたのにまだくれない。行動マジで遅過ぎ。現文の○○教師向いてない〜♪

 

・冬休みの課題って誰が作ったんだろう?絶対に要らないのに。これ作った人バカ過ぎww

 

・部活前の体育ってやる気0。5〜6時間目に体育にする意味って何?

 

・コンビニバイトの先輩の○○がしつこ過ぎ。誰があんなのと一緒に行くかってのww

 

・トップグループの仲間入り!!けど周りに居る男子ホント邪魔!どっか行けば良いのに。

 

・三浦って女がうるさ過ぎる。元トップグループだったからって調子乗り過ぎ。今は私達がトップなんだからおとなしくしてれば良い。

 

 

思い出せる限りではこんな感じだ。けど他にも似たような投稿はあったと思う。よくこんなに書いたって思う。どんだけ自分の事が可愛いんだよ、あの3人は。書きたい事書き放題だなって思った。

 

 

流石にこの内容を知ってあの3人に味方をしようなんて考えを持つ奴は居ないだろう。味方をしただけで白い目で見られるのは目に見えてる。そんな自殺行為を志願するような奴、流石に居ないだろう。

 

 

八幡「あの3人が帰って来た時、どんな表情をしているのか、楽しみにするか。」

 

 



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事態の発展

 

 

柊side

 

 

今、2時間目が終わって10分休みに入ってるんだけど、あの3人が朝のHRで生徒指導室に行ったっきり教室に戻って来ていない。きっと今も先生達が大勢集まってる中で話し合いや質問をしてるんだと思う。今もクラスではグループを作ってその話題で持ちきりだった。今頃どんな事をしているのか見当もつかない………だって2時間もずっとだよ?事実確認だけじゃないよね。

 

 

「アイツ等、一体何やってんだろうな?ひょっとしてまだ言い逃れしてたりして?」

 

「あり得るな。だって夜十神さんやヒキタニに押し付けるくらいだもんな。もしかしたら、まぁた誰かになすりつけたりしてんじゃね?」

 

「やってそうだな、アイツ等なら。」

 

 

「あたしあの3人のアカにコメントとかしてなくて良かった〜。してたらあたしもきっとタダじゃ済まないよね?」

 

「その可能性もあるよね〜。私はやってないからセーフ!」

 

「でも、相模さん達のアカウントに何もしてないなら皆セーフ、だよね?」

 

「「それね!」」

 

 

この通り、皆この話ばかり。やっぱりこうなっちゃうのは無理もないって思うけどね。HRが終わった後も1時間目が終わった後の10分休みもこの話だった。

 

 

戸塚「なんか、ちょっと嫌な空気だね。確かに相模さん達が悪いのかもしれないけど………」

 

沙希「言いたい放題だね、あたしは別に気にならないけどさ。」

 

涼風「はい……」

 

八幡「良い奴も悪い奴も目立つもんだ、今回はそれがデカかった。プライベートな事ならまだ目を瞑れたかもしれないが、生徒や教師、学校の事で否定、誹謗するような事が書かれていたのなら、流石に黙ってもいられないだろう。もうこんだけの事になってんだ、何かしらの罰はあるって考えた方が自然だろう。話し合いだけで済めば奇跡みたいなもんだ。」

 

沙希「けど、あの3人のこれからがどうなるかなんて、ちょっと想像つかないね。」

 

 

私も川崎さんと同じ考え。あの3人がどうなるか想像がつかない。ついた所で私には関係ないけど。

 

 

柊「あの3人が学校から腫れ物扱いされるのに、時間は掛からないだろうね。初日でこれだもん。」

 

八幡「明日になったらまた変わるだろうな。女子同士と部活内での噂周りは早いからな。相模以外の2人は女子バスケ部だから余計に早いだろう。もう3年も引退してる時期にこの騒ぎだ、顧問も黙ってないだろうよ。」

 

戸塚「何だか怖いね………」

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

川崎「あっ、チャイムだね。じゃ。」

 

戸塚「また後でね。」

 

柊「この時間も帰ってこなかったね。まだ話してるのかなぁ………」

 

涼風「かもしれませんね。ですがこんなに長引くとは思いませんでした。他にもまだ何かあったのでしょうか………」

 

 

ガラガラッ

 

 

あれ、次って現国じゃなくて歴史だったよね?何で平塚先生が来るんだろう?

 

 

平塚「全員に連絡事項を伝えに来た。放課後では伝えられないから、今伝える。今日の授業だが、午前授業のみ行う形となった。これは校長先生と教頭先生、そして各学年の主任教師が集まって決まった事だ。なので全生徒は4時間目が終わったらすぐに帰り支度を済ませるように。4時間目が終わったら10分後に担任教師が来る。HRを終えたら真っ直ぐ家に帰るように。部活動も無しだ。」

 

葉山「先生、何かあったんですか?」

 

平塚「………まだ生徒に教えられる内容ではない。今この場では教えられない。だがいずれ正式に君達にも教える形になるだろう。」

 

葉山「………」

 

平塚「兎に角、4時間目が終わったら帰り支度を済ませておくように。尚、この3時間目は自習とする。教師は来られないが、何をしても良い理由にはならないからな。私も緊急職員会議があるので、これで失礼する。」

 

 

そう言って平塚先生はすぐに教室から出てしまった。もしかして全教師が集まって会議するのかな?そんなに大事になってるって事?

 

 

柊「八幡君、何が起きてるのかな?」

 

八幡「分からん。だが俺達が思っているよりも事態は深刻らしいな。まさか教師全員が集まる程の事になってるとはな……(絶対に教育委員会だな。あの情報が教育委員会に回ってるとなれば、学校側だって無視は出来ない。それにしたってこれだけの効果があるのか。)」

 

柊「でも、どうしよう………」

 

涼風「何かお困りの事でもあるのですか、お姉様?」

 

柊「涼風、気付かないの?午前授業になったんだよ?ダメなヤツだよ………」

 

八幡「?午前授業になったら何がダメなんだ?」

 

涼風「八幡さんの言う通りです。こう申し上げては失礼ですが、学校が早く終わるのですから良かったではありませんか。」

 

柊「ダメに決まってるよ!だって……だって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しみにしてた八幡君と食べるランチタイムが無くなっちゃったんだよ?こんなのって無いよ………」

 

涼風「っ!!?そ、そうでした………そんな………私達の楽しみが………」

 

八幡「そ、そんなに楽しみだったのか?」

 

柊「当たり前だよ!!八幡君とのランチタイムがなくなるなんて………なんて事をっ!!!」クワッ!

 

涼風「酷いです……あんまりです………」ウルウル

 

 

八幡(なぁ、弁当が食べられなかったってだけでこの反応だぞ?俺も残念ではあるが、家で一緒に食べればよくね?それじゃダメなのか?)

 

 

 

 

 

 



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比企谷宅でランチタイム

 

八幡side

 

 

4時間目の授業が終わり、HRも終わって、俺達は帰路に着いている。3時間目からの柊と涼風は、10分くらいは生気の抜けたような状態で授業を受けていたが、その後は何かを思いついたのか、生き生きとしながら授業を受けていた。その理由がなんなのか気になったから、授業終わりに聞いてみると……

 

 

柊『あのね!学校で食べられなくなったのなら、八幡君の家で食べれば良いじゃんって考えたの!!そしたら私達も八幡君もハッピーでしょ?』

 

 

何ともまぁ幸せな思考をしている。まぁ俺自身、2人の弁当が食べられないのは嫌だからこの案に反対はしなかったし、今家にはカマクラしか居ない。親父も母ちゃんも仕事だし、小町も中学だから居ない。静かに過ごすのならウチが1番だろう。

 

 

ウキウキしながら授業を受けていたのだが、4時間目からはあの3人も教室に戻って授業を受けていた。クラスメイトも目の前にいる中では悪口を言えないからか、かなり静かな状態だった。まぁ授業中に騒がしくするなんて以ての外だけどな。

 

授業が終わってHRになると、平塚先生から連絡事項を伝えられた。今日の午前授業に伴って、明日以降の登校は追って連絡をする事になった。つまり、冬休みがこのまま普通に始まるかどうかは分からなくなったって事だ。ヤバい、このままだと滋賀の別荘計画が無くなる………

 

 

柊「まさか午前授業になるなんて思わなかったよ。けれど、八幡君と静かにお弁当食べられるから、結果オーライだよね♪」

 

涼風「はい、お姉様。とても素晴らしい結果となりましたね♪」

 

八幡「平塚先生から連絡受けた時、絶望に満ちた顔してた奴等がよく言うよ。けどまぁ、外出自粛の指示にならなかっただけ良かったかもな。そうなったら本当に弁当が食べられなくなってたな。」

 

柊「大丈夫、寄り道してるだけだもん!八幡君の家は私達の家の通り道なんだから!」

 

八幡「無理あるだろ、本来の帰り道別方向だし。」

 

涼風「……そういえば、私達が八幡さんのお家にお邪魔するのはこれで2回目ですね。目の前までは何度も来た事はありますが、中に入る事は滅多にありませんでしたね。そこからは普通の登校でしたから楽しみです♪」

 

八幡「まぁ寛ぐ事はできると思う。今は誰も居ないし、猫1匹居るだけだから。」

 

柊「カマクラちゃんだよね?この前写真見せてもらったけど、良い顔してるよね〜。」

 

八幡「まぁ最近は割と俺にも構ってくれるようになったな。前までは太々しい態度してたが、今は割とおとなしくなってきてる。俺の膝の上にも乗ってくるしな。多分2人なら大丈夫だろ。」

 

柊「猫ちゃん触り放題だね〜♪」

 

涼風「その前にお弁当です!」

 

 

まぁ、こんな感じの帰路に着いている。他の奴等はどうかは知らんが、俺等はいつも通りの帰りを送っている。違うとすれば、あの3人だろうな。今頃お通夜のような雰囲気で帰ってんだろうな、絶対。

 

 

ーーー比企谷家ーーー

 

 

柊「着いた〜♪」

 

八幡「待ってろ、すぐ鍵開けるから。」

 

 

俺は鍵を開けてから中に入った。2人も俺に続いて中に入ってくると、奥からカマクラが出てきた。

 

 

涼風「この子がカマクラちゃん、ですか?」

 

八幡「あぁ、そうだ。」

 

柊「へぇ〜意外と凛々しい顔つきだね。」

 

八幡「カマクラ、腹減ってるか?」

 

カマクラ「にゃ〜。」

 

八幡「つっても猫の言葉なんて分からんから、用意するだけなんだけどな。待ってろ、用意してやるから。2人も上がってくれ、居間のテーブル席に座っていいから。」

 

柊「うん、分かった。」

 

涼風「分かりました。」

 

 

俺は居間に行ってカマクラのエサと水の用意をして床に置いた。カマクラは待ってましたと言わんばかりに食いついた。

 

 

柊「じゃあ、私達も食べよっか。」

 

八幡「楽しみだ。お茶淹れようと思ってたけど、2人はお茶とかも水筒に入れて用意してくれてるから、俺が用意する必要もないんだよな。」

 

涼風「スープやお味噌汁は温かい方が美味しく頂けますから。さぁ、頂きましょう。」

 

八幡「今日も美味しく頂くとしますか。」

 

 

その後は俺と柊と涼風の3人(カマクラも入れれば3人と1匹)で楽しく昼食を取った。時間に囚われない昼食ってやっぱり良いもんだよなぁ………学校だとこうも行かないからなぁ。しっかし………はぁ〜味噌汁美味ぁ………

 

 

八幡「俺よく思うんだが、3人とはいえよく重箱に入った弁当を全部食べ切れるよなぁ。2段重ねでもかなりの量だろ?2人もかなりギリギリなんじゃないのか?」

 

涼風「私達はそこまでギリギリではありませんね。八幡さんが美味しく食べるのを見ながら食事していますので。」

 

八幡「じゃあ俺も、これからは2人の美味そうに食べるところを観察しながら食べる事にするか。」

 

柊「ふふっ、八幡君になら見せても平気だよ〜。」

 

涼風「けど、確かに不思議ですね。お姉様は満腹になりますか?私は丁度いい具合に満たされますが。」

 

柊「私も涼風と同じ。八幡君がたくさん食べてくれるからかな?」

 

八幡「そうか………じゃあ今度は2人が食べられなくなるまで待ってみるか、どのくらい食べられるのか見てみる事にする。」

 

柊「食べる所見られちゃうよ涼風、上品に食べる練習しなきゃね♪」

 

涼風「は、はい、お姉様!」

 

八幡「冗談だよ、一緒に食った方が美味いからな。それに、見ながらでも食事は出来る。」

 

 

 

 

 



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名推理とこれから

 

 

八幡side

 

 

柊「ほれほれ、ココかなぁ〜?ココが良いのかなぁ〜?うりうり〜♪」

 

カマクラ「にゃ〜♪」

 

柊「あっははは、カマクラちゃん可愛い〜♪」

 

八幡「ふっ。」

 

涼風「お姉様、楽しそうで何よりです。」

 

八幡「お前はいいのか?カマクラと遊ばなくて。」

 

涼風「私もカマクラさんとお相手してしまっては、八幡さんがお1人になってしまうでしょう?なので私は八幡さんとご一緒します。」

 

八幡「それは、お気遣いどうも。」

 

涼風「いえ。」

 

 

猫は構い過ぎると反って嫌な気持ちになると聞くが、カマクラを見てると本当にそうなのかと疑いたくなるな。柊と30分くらい戯れてるが、飽きる様子が一向にない。それどころか楽しんでるようにも見える。俺達が日頃から遊ばせてないからか?

 

 

涼風「しかし、どうしてこんなにも急に午前授業になったのでしょう?」

 

八幡「ん?どうした急に?」

 

涼風「だっておかしいではありませんか。八幡さんが学校にあの紙を貼り出ししたのは今日の朝です。教師だって確認したのは生徒が集まっているのと同じタイミングでしょう。たったそれだけでこうなるとはとても思えません。それこそ、学校外部にでも情報が漏れない限り………」

 

 

意外に鋭い涼風さん………

 

 

八幡「誰かがSNSで情報を撒いたとかか?」

 

涼風「そうしたとしても、お昼にもなってないのにこれだけの騒ぎになるとは思えません。それこそ、もっと大きな所にでも知られない事にはこんな事はないと思います………」

 

 

とても鋭い涼風さん………

 

 

八幡「大きい所………例えば?」

 

涼風「そうですね……やはり教育委員会でしょうか。そこに知られれば学校側も早急に対処せざるを得ませんから。こんな情報が委員会に届いているのに、のんびりと授業をしている場合ではないかと思いますし。」

 

 

エラく鋭い涼風さん………

 

いやもう降参、粘るのは無理だ。

 

 

八幡「実は、俺が学校に貼り出す以外にも協力してくれた人がいまして……」

 

涼風「は、はぁ………その方は?」

 

八幡「………おじさんが俺の作った用紙を教育委員会にメールで送っておりまして、恐らくそれのせいだと思います。」

 

涼風「お、お父様が!?」

 

八幡「あぁ。」

 

涼風「お父様までそんな事を………ですが、何故黙っていたんですか?」

 

八幡「知らない方がいいと思ったからだ。まぁ結局、話しちまったけどな。お前の勘良すぎだろ……お前のさっき言ってた事、全部当たってたぞ。こっちの肝が冷えたくらいだぞ。」

 

 

実際スゲェよ………名推理だよあんなの。これがもし本場での推理だったら俺、逃げ出したくなる。絶対冷や汗止まんねぇもん。

 

 

八幡「まぁ俺もおじさんがどうしてそこまでしたのかまでは分からないけどな、流石に。朝に連絡を受けて初めて俺も知ったし。理由も聞かなかったしな。手助けになるだろうとは言ってたけどな。」

 

涼風「学校では八幡さんが実行をして、教育委員会にはお父様が根回しをしていたのですか……だからこんな事態になっているのですね。私も納得が出来ました。」

 

八幡「そういうわけだ。これが午前授業になった本当の理由ってヤツだ。おじさんも2人の為にやった事だろうから、思う事があったとしても、あまり言わないでやって欲しい。」

 

涼風「いえ、私は特に言う事はないのですが……そうですか、お父様が。」

 

八幡「多分俺のやろうとしている事だけじゃあ不充分だと思ったんだろう、だからおじさんも協力してくれたんだと思う。」

 

涼風「お父様ならやりかねませんね………しかしお父様も思い切った事をしたものです、八幡さんに事後報告という形で済ませるなんて。」

 

八幡「確かにな。」

 

 

本当なら許可を取ってから実行って形を取るんだが、まぁ俺だしその必要も無かったんだろう。それに遅かれ早かれこうなってただろうし問題ない。いつかは知られる事だったろうしな。

 

 

柊「ふぅ〜遊んだ遊んだ〜♪涼風もカマクラちゃんと遊んだら?楽しいし癒されるよ〜?」

 

涼風「いえ、私は結構です。カマクラさんとお姉様が遊んでいる所を見ているだけでも充分楽しめましたので。」

 

柊「そう?なら良いけど。ねぇ八幡君、聞きたいんだけどさ。」

 

八幡「何だ?」

 

柊「どうなると思う、冬休み。やっぱり短縮されちゃうのかな?冬休み間近でこれだもん、ちょっと心配になっちゃってさ。」

 

八幡「可能性はなくもないな。明日以降の学校だって未定になってる、もしかしたら本当に年末辺りになるまで冬休みが延期になる可能性だって捨て切れない。流石に3日前には突入するとは思うが、それまでどうなるかは予測出来ない。ギリギリまで学校開くとは思えないしな。」

 

涼風「今日の夕方以降、ですね。本当にどうなるのでしょう。もしも冬休みが短縮してしまったら、全生徒からのクレームは免れないでしょうね。そうなってしまった場合、責められるのは………」

 

八幡「あの3人、だろうな。本当なら学校側なんだろうが、1番の悪とも言えるのはあの3人のやった事だからな。まぁ、先の事なんて起こってみないと分からないし、連絡を待つしか無いだろう。」

 

柊「そうだね。ちょっと心配だけど、平塚先生からの連絡を待つしかないね。」

 

 

どんな結果になるとしても、あの3人には最悪な事しか待っていない、いっておくが今日の事なんてまだ生温いからな?

 

 

 



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3人の行動と方針

 

 

相模side

 

 

何で………何でこうなったの?私達のSNSで投稿されてるのが学校中にばら撒かれていた。しかも悪口書いてる投稿だけって……絶対に嫌がらせに決まってる!そのせいで私がこんな目に遭ってるのに!!

 

 

「相模さん、今日はどうしたの?なんか元気ないようだけど?」

 

相模「あっ、いえ、何でも………」

 

「そう?ならいいんだけど。」

 

 

今私はバイト中。先生も早く帰れって言っただけでバイトに出るなとは言ってなかったし。けど良かった、今日はあの大学生来てない。今は店長と私の2人。もし大学生が来てたら………顔直視出来なかったかも。

 

 

「相模さん、品出ししてきてもらえるかい?何だか調子が悪そうだしね、それが終わったら中に入って少しだけ休憩取ると良いよ。」

 

相模「……はい。」

 

 

店長にそう言われて私は奥にある箱に入ってる商品を棚に出す作業を始めた。はぁ………憂鬱、今はバイトがずっと続いてくれないかなぁって思ってしまう。家に帰りたくない………帰ったら親に何を言われるか。

 

バイトやってれば少しは気が晴れると思ってたけど、私の投稿したSNSの事が頭から離れない。考えないように努力しても頭の片隅に必ず存在する。忘れられない………消えて欲しいのに!

 

………はぁ、こんな事考えても仕方ないのに。

 

 

相模「……店長、終わりました。」

 

「うん、ありがとう。じゃあ奥で休んでると良いよ。今はそんなにお客さん来ないからね、人が多くなったら呼ぶから。」

 

相模「……はい。」

 

 

いつまで続くんだろ、これ。

 

 

相模sideout

 

遥side

 

 

早く帰った時は決まって誰も居ない。私の家は両親共働きだけど、お母さんは夕方、お父さんは夜になったら帰ってくる。けど今日は2人がずっと帰ってこなければって思ってしまう………だってもし、学校からの電話で今日の事の連絡がいってたらって思うと気が気じゃない。それに、明日の学校はまだ未定って事になってる。もし親が電話を取ったら何があったのか説明しなきゃいけない可能性も出てくる、それは避けたい………

 

 

遥「はぁ………どうしよう。」

 

 

親にだけはバレたくない……ううん、それは無理だとは分かってるんだけど、バレたら大変な事になる。そんなの想像しなくても分かる。嫌な想像しか出てこない………楽しい事を考えて気分を紛らわそうとしても、あのSNSの方が強過ぎて全く勝てない。

 

 

遥「SNS削除しようかな……でもそんな事したら、学校からなんて言われるか。うぅ………」

 

 

SNSを削除しろとは言われてないけど、削除したらきっと何か言われる………証拠を隠蔽しようとしたって言われるかもしれない。もうどうすれば良いのか分からない。どんな行動をしても失敗しちゃうって思っちゃう。

 

 

遥「はぁ………」

 

 

余計な事、考えないでおこっ。余計に惨めになるだけだし。

 

 

遥sideout

 

ゆっこside

 

 

「そう、そんな事が………」

 

ゆっこ「………」

 

 

私は帰ってから部屋に篭って今日の事を考えていた。お母さんは専業主婦だからずっと家にいる。ずっと黙っているだけじゃいずれバレて痛い目に遭うって思った私は、お母さんに正直に話した。私のした事も学校で起こった事も全部。

 

 

「まずは自分がやってはいけない事をしたっていう自覚はあるかしら?お母さんもよくは知らないけど今の世の中、SNSでの悪口は事が発展したら罪にもなるわ。」

 

ゆっこ「うん……」

 

「貴女の投稿したのを見せてもらったけど、名前を出している時点でかなり悪質だというのはお母さんでも分かるわ。こういう事は言いたくないけど、悪口を書いた人全員に謝りに行かないといけない。」

 

ゆっこ「………」

 

「けどお母さんはちょっと安心したわ。自分がやった事に少しは責任を感じてくれてるみたいで。感じてなかったら、こんな事話さないでしょ?」

 

 

見破られていた………確かに最初は話すつもりなんてなかった。でもやっぱり話さずにはいられなかった。だってこんなの、1人でどうにかなるような問題じゃない。責任は感じてないわけじゃない、こんな事しなければって思ってる。

 

 

「きっとこの後、私達親にも説明される機会があると思うわ。この事はお父さんにも報告しましょう、いいわね?」

 

ゆっこ「……はい。」

 

 

………怖かったけど、お母さんに相談して良かった。そうでもしなかったら不安で押し潰されそうになってた。南や遥がどうしてるかは分からないけど、どうしてるのかな?

 

 

ゆっこsideout

 

ーーーーーー

 

 

ーーー総武高・職員室ーーー

 

 

教頭「では明日の学校から冬休みに突入とし、終わりは通常通りのものとします。少し期間が延びる事になります。それから今回問題になっている3人ですが、年内中に騒動を収めたい為、至急ではありますが保護者を含めた説明会を開きたいと思っています。平塚先生、同席をお願いしてもよろしいですか?」

 

平塚「私の預かるクラスの生徒なので喜んで。」

 

教頭「ありがとうございます。因みにその席には教育委員会の方達も同席する事になっていますので、その事も忘れないように。皆さん、明日から冬休みという事になります。急ではありますが生徒達への連絡、よろしくお願いします。以上で職員会議を終わります。」

 

 

平塚(これは忙しくなるな。しかもこの年末時期にこんなことが起きるなんて予想もしてないだろうしな。私も予想外だが。さて、連絡を入れるか。)

 

 



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まったり時間の終わり

 

 

八幡side

 

 

八幡「………」

 

 

_____________________________________________

 

・To:比企谷 八幡

・From:平塚 静

 

 

内容:明日の学校についてメールしました。明日の学校も午前授業になります。なお授業ですが、3時間目までは通常の授業を行い、4時間目からは全校集会を開きます。明日の準備を忘れずにして下さい。そして急ですが、明日の学校が終わったらそのまま冬休みへと突入します。学校再開日は今の所予定通りです。後、比企谷君から夜十神さん2人にこの事を伝えて下さい、お願いします。

 

_____________________________________________

 

 

平塚先生がメールではこういう話し方するのってやっぱ変にしか思えないんだよな。普段の話し方を知ってるから余計にそう思えちまう。なんていうか……気持ち悪いって感じてしまう。メールでもいつもの話し方で良いと思うんだが………

 

 

柊「八幡君、どうしたの?」

 

八幡「あぁ、明日の事でだ。どうやら明日も午前授業みたいだ。」

 

柊「えぇ〜………」

 

涼風「では明日はお弁当を作れないのですか?」

 

八幡「そうなるな。後、明日の学校が終わったらそのまま冬休みに入るってよ。学校もかなり切羽詰まってるようだ。学校がこの動きなら、教育委員会も動いてるって事だろう。」

 

柊「やっぱり早くこの騒ぎを沈静化させたいんじゃないかな?しかもよりにもよって年末だからね、次の年に仕事を持ち越したくないんじゃない?」

 

涼風「その年の厄を次の年に持っていくと災いが起きる、なんて言い伝えもありますからね。それが本当かどうかは分かりませんが、新しい年を迎えるなら悪い物は全部祓ってから迎えたいですからね。」

 

 

まぁ学校側からしてみれば、こんな騒ぎは早く終わらせたいのだろう。こんなのを新しい年に持ち越しだなんてしたくないもんな。しかも冬休み真っ只中で呼び出しなんてされたくもないしな。

 

 

八幡「まっ、そういう事だ。だから明日は弁当無しになっちまった。今日は突然だったからこんな形で食べる事になっちまったが、分かってて弁当作ってくる程、お前達もバカじゃないだろ?」

 

柊「けど作りたいよぉ〜!」

 

涼風「私達の楽しみの1つなのですよ?それを取り上げるなんて………非情な方達です。」

 

八幡「いやいや、そこまで言うか?そんなに酷い事はしてないと思うぞ、涼風さんよ?」

 

 

2人の中では学校に行く過程でお弁当を持つのは当たり前になっているらしい。そしてお弁当を持って行く必要がなくなる=非情らしい。なんかすっげぇ短絡的なんだが、否定出来ないんだよなぁ………何故かって?俺も2人の特製弁当食えないから。

 

 

柊「でも明日の学校が終わったら冬休みかぁ……学校が延長にならなくて良かったよ、そしたら私達の慰安旅行もどうなっちゃうのかなぁ〜って思ってたもん。これなら旅行に行けるね♪」

 

八幡「あぁ、少し安心だ。まぁ流石に年末3日前まで学校やるとは思ってはいないが、コレだもんなぁ〜………いや、まぁ俺がやった事なんだけど。」

 

 

……よく考えたら俺が引き金だったわ、うっかり。年明けにやった方が良かったか?いや、でもそれじゃあなぁ〜………やっぱ今だよな。涼風もさっき言ってたが、悪い物は年越し前に祓っときたいしな。

 

 

柊「そういえば平塚先生からのメールで固まってたけど、何で?」

 

八幡「あぁ、あの人とのメールのやり取り(一方的ではあるが)の言葉遣いがな………敬語なんだよ。見るか?平塚先生の話し方と照らし合わせると言葉にならない違和感があるから。」

 

柊「どれどれ〜………わぁ、確かに違和感すっごい。これ本当に平塚先生?違う人が打ってるとかないよね?まるで別人じゃんコレ。」

 

涼風「同一人物とはとても思えませんね。これが平塚先生の打ったメールですか………」

 

八幡「夏休みの時のもあるが、それは見ないほうが良い。ある意味刺激的だからな、マジで。」

 

柊「余計気になるけど、八幡君が言うなら……」

 

涼風「はい、遠慮しておきましょう。」

 

 

その後は小町が帰ってくる時間になるまで雑談やゲームをしたりして、時間を潰した。(2人はカマクラとも遊んでいた。)そして大体3時くらいになって、2人は宮間さんに連絡を取って俺の家に迎えに来る手筈を整えた。

 

 

柊「分かっているとはいえ、楽しい時間や幸せな時間っていうのは本当にあっという間だよね。もっと長く続いて欲しいよ。」

 

涼風「逆がそうであって欲しいものです。苦しい時間や辛い時間を短くして欲しいです。」

 

八幡「涼風がそういう事をいうとはな……まぁ俺も思った事あるし、分からなくもない感情だな。」

 

柊「お父さん達もそうだけど、八幡君も私達の家の事家族にお話してないよね?それって何で?」

 

八幡「親父や母ちゃんは多分大丈夫だとは思うが、小町が買ってもらえる事に味を占めて、何でもかんでもおじさん達に買ってもらうのを阻止する為だ。やらないって俺も信じたいが、無い物強請りする時や欲しい物がある時のアイツって、絶対猫撫で声になったり語尾伸ばすから。調子の良い時は『お兄ちゃん♪』なんて言うからな、流石におじさん達の家の事を話すのは得策じゃないと思ったからだ。」

 

涼風「八幡さん。偶に思うのですが、妹さんの扱いがぞんざいな所がありますよね。」

 

 

そうか?普通だと思うがなぁ?

 

 

 

 

 

 



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校長の言葉

 

 

八幡side

 

 

翌朝、俺達は通常通り学校へと通っている。今日から冬休みだと思うと普通は楽しみになるのだが、全生徒は嬉しさ半分といった所だろう。何しろこの騒ぎだ、最後の4時間目に全校集会が開かれるが、冬休みに入る話よりも今起きてる事の説明がメインだろう。それしか考えられない。今はまだ授業の1時間目が終わったばかりだが、明らかに異質な雰囲気だ。まぁ原因なんて分かり切ってるが。

 

他クラスの連中も朝からあの3人の様子を見に来る程だ、かなりの噂になってる。これがもし世間にも広がっていたらと思うとゾッとするだろうな。学校に広めた張本人が言っても仕方なのない事だとは思うが、こればっかりは慈悲だと思って欲しいくらいだ。おじさんが本気だったらそのくらい訳ないだろうしな。

 

 

柊「あ〜ぁ……なんか暗いよね〜。」

 

八幡「あぁ、そうだな。」

 

涼風「仕方のない事です、これだけの事になっているのですから。」

 

八幡「それにあの3人、誰とも関わろうとしてないしな。まぁ無理もないけどよ。だが3人で集まる事もなくなるとは思わなかった。傷の舐め合いでもするのかと思ってたんだけどな………」

 

柊「……ねぇ涼風、どうなってるの?」

 

涼風「はい。それぞれの机に座ってただじっとしているだけですね。スマホをいじる気配もありません。操作をすればまた何か書いているんじゃないかと思われるからでしょうか?」

 

 

まぁそうやって考えるのが普通だ。悪口書いてたんだから、スマホ弄る=誰かの悪口みたいなフレーズが作られていても何ら不思議ではない。学校でも満足にスマホを操作できないのはかなり不便だろう。俺、あんまり操作しないけど。使うのなんて柊達との連絡やAma○nのメールくらいだ。

 

 

涼風「しかし八幡さん、この場合3人はどうなるのでしょうか?」

 

八幡「さぁな。法律の事なんてさっぱりだし、今時こういうやり取りでの裁判とか罪なんて珍しくない。ありきたりなら罰金だろうな。」

 

柊「それで済むの?」

 

八幡「分からない。もし被害者側とかが納得すればそれで済むんだろう。まぁ裁判に掛けられるかどうかは知らんけど。なったらそれはそれで大ごとだしな。」

 

 

裁判になるのかどうかは、被害者の親達次第だろう。けどまぁ、そう簡単には行かないだろうな。人の感情は物差しや天秤では計れないからな。

 

 

八幡「まっ、これに関して俺達にする事なんて何もない訳だし、のんびり気ままに時が過ぎるのを待つしかねぇよ。同情する余地もないんだしな。人の気も知らずに悪口を叩く、中学のあの連中と一緒だよ、あの3人は。」

 

涼風「……そうですね、中学の方達と一緒です。」

 

柊「………」

 

 

この前は折本とも偶然会ったが、気まずそうだった。恐らく俺というよりも柊にだろう。仲良かったのに、今では他人以下の関係なんだからな。柊も折本の事なんて気にもしてなかったし、本当にどうでもいいのだろう。まっ、そうだよな。

 

そんな奴に関わろうだなんて、普通は思わない。柊はもう心を閉ざしてる。あの中学の連中とは一生、和解なんて日は訪れないだろう。

 

 

ーーー全校集会ーーー

 

 

3時間目もようやく終わって、今は体育館に移動中だ。因みに隣は柊だ。平塚先生、気を利かせてくれてありがとうございます。

 

そして校長先生の言葉、これが1番全校生徒が聞きたい言葉だろう。

 

 

茅ヶ崎「え〜全校生徒の皆さん、昨日に続き今日も4時間授業になってしまった事、大変申し訳なく思っています。聡明である皆さんならもうその理由はお分かりになってはいると思われますので、その事については敢えて何も言わないでおく事にします。それは此処にいる全生徒に周知されるのみならず、教育委員会にもリークされていました。どの方がどのような手段や動機でやったかは不明ですが、当人達との話し合いなどで確認した結果、事実であるという結果となりました。本来であれば責められても仕方のない立場にありますが、その矛はどうか納めてもらいたいと思っています。他人を傷つける刃はいずれ自分にも返ってくる刃となるのです、その事を重々ご理解頂きたいと願っています。言われた方達も納得できないとは思いますが、その思いはどうか口には出さずに胸の中にしまっておいて欲しいです。私の切実な願いであります。」

 

 

………

 

 

茅ヶ崎「このような諺があります、【一匹の馬が狂えば千匹の馬も狂う】簡単に言いますと、1人の行いが、その周りの人達にも影響を及ぼす事を意味しています。例えば今此処で1人が否定的な意見をしたとしましょう、それに賛同する人が増えて、最終的には全員がその騒ぎに巻き込まれてしまう事を指します。この諺のように、1人がそのような行動を取ると、全員が狂ってしまうのです。再三言うようですが、どうか今向けようとしている矛は納めてください。気持ちは晴れるかもしれませんが、その行為には自分に何の意味ももたらしません。願わくば自分の為、相手の為にもなる行動をとって欲しいと願っています。以上で終わります。」

 

 

校長先生、俺はあの3人に矛を向けるつもりはもうありませんし、その刃を口にする事もないと思います。けど俺は柊をバカにするような事を抜かす奴が居たなら、徹底的にやらせて貰います。あの3人のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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聖夜前の晩御飯も共に

 

 

涼風side

 

 

全校集会が終わり、HRと帰りの挨拶を終えた私達は帰路に就く所です。今年の学校はこれで見納めになりそうです。来週には滋賀の別荘に行きますからね、その準備も始めないといけませんね。

 

あっ、そうでした!今日は八幡さんを家に招待しようと思っていたのでした!今日は泊まりでは無いので、お誘いは帰りにしようとお姉様と話し合って決めたんでした。

 

 

柊「涼風、八幡君、準備終わった?」

 

八幡「俺は終わってる。涼風は?」

 

涼風「私も終了しました。お待たせしてすみません、お姉様、八幡さん。」

 

柊「そんなに待ってないから気にしないの。じゃ、帰ろっか。そうそう八幡君、今日この後って空いてるかな?」

 

八幡「この後?予定はないが?」

 

涼風「実は昨日、私とお姉様でケーキを作ったんです。今日は25日のクリスマスですから、ご一緒にと思ってたのですが、如何でしょう?」

 

八幡「2人の作ったケーキなら美味いに決まってるし、喜んで行かせてもらう。因みに何ケーキを作ったんだ?」

 

柊「ふっふ〜ん、聞いて驚かないでね?ショートケーキを作ったんだけど、1番下の外側のスポンジ層をタルト生地に変えてるんだ!だからケーキとタルト、2つの味が楽しめる仕組みになってるの♪」

 

八幡「……メッチャ美味そう。」

 

 

ふふふっ、どうやら八幡さんもどんなものか想像がついたようですね。

 

 

涼風「では八幡さん、早速参りましょう。今日は泊まりではありませんから、時間がありません。早くしないと日が暮れてしまいます!」

 

柊「そうそう、涼風の言う通り!ケーキは逃げないけど、時間はどんどん逃げてくから早く行こっ♪」

 

八幡「あぁ、じゃあ行くか。」

 

 

ですがどうしましょう?ケーキを食べるのは勿論なのですが、食前でしょうか?それとも食後の方がよろしいでしょうか?少し悩んでしまいます。

 

 

ーーー夜十神家ーーー

 

 

柊「八幡君、今日は晩御飯食べてく?」

 

八幡「なんか今日晩飯食べたいって言ったら、チキンとか出てきそうな予感がするんだが?俺の予想ってどう?」

 

涼風「ど、どうでしょうか?」

 

柊「どうだろうね〜?」

 

八幡「誤魔化してるのかどうかは分からんが、これで家におじさんとおばさんが居たら絶対に食べて行けって言われるだろうな。『折角のクリスマスなんだから八幡君にも料理をご馳走したいんだ!』って言いながら。」

 

柊「お父さんにとっては八幡君はもう息子みたいな感じなんじゃない?私達から見ても、八幡くんと一緒に居るお父さん、すごく生き生きしてるもん。」

 

涼風「そうですね。確かにお父様は普段からああいう方ではありませんし。」

 

柊「じゃあ、お父さんの答え次第っていう事で!もし八幡君に食べてもらいたいって言ったら晩ご飯ウチで食べよ!ダメって言ったら八幡君を素直に家に帰してあげる!」

 

八幡「素直に帰してあげるって何?」

 

涼風「あはは………」

 

八幡「それによ、おじさんがダメっていう所見た事あるのか?俺に関係してる時で。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「八幡君、今日の晩ご飯はウチでだね♪」

 

涼風「楽しく食べましょう♪」

 

八幡「答え出てんじゃねぇかよ。」

 

 

そう雑談をしながら私達は家の中へと入った。宮間さんがお出迎えをして下さり、上からお父様が降りて来ました。

 

 

御影「おや、八幡君。おやすみ前に来るなん……いや、そう言えば明日からだったね。今日が年内最後の日だったんだっけ?」

 

八幡「はい。」

 

御影「という事は今日は泊まりかい?」

 

八幡「いえ、今日は2人にケーキを食べないかと誘われたので、来ました。」

 

柊「それでさお父さん、質問なんだけどいい?」

 

御影「ん?何だい?」

 

涼風「お父様は今晩のお食事、八幡さんとご一緒したいかそうでないか、どちらですか?」

 

御影「え、なにその究極の2択みたいなの?それってどっちかじゃないとダメなの?」

 

柊/涼風「ダメ(ダメです)。」

 

御影「どっちかって言われたらそりゃ一緒に食べたいに決まってるじゃないか。八幡君とは週末ずっと一緒に食事をしてるんだ、今更ご一緒したくないって方がおかしいよ。でも、何で急にそんな事を?」

 

柊「はい、八幡君今日はウチでご飯ね〜♪」

 

八幡「分かり切ってた回答をどうも。」

 

御影「………どういう事?」

 

涼風「はい、実は………」

 

 

私はお父様に事の顛末を説明しました。するとお父様は納得した表情をされてましたが、ホッとした顔もされてました。

 

 

御影「あぁ〜良かった!これで遠慮して欲しいなんて言ってたら今日どころかこれからが危なくなる所だったよ………」

 

柊「けどそんな事は〜?」

 

御影「言うわけないけどね〜!」

 

柊「さっすがお父さん♪」

 

八幡「テンション高いなぁ………」

 

涼風「偶にこんな風に息が合う時があるのです、お父様とお姉様は。」

 

八幡「何となく分かる気がする。」

 

御影「あっ、じゃあ今日の料理を確認しないとね。宮間、今日のメニューは何だったかな?」

 

宮間「本日はクリスマスですので、ローストターキーがメインとし、サーモンと玉ねぎのカルパッチョ、エビとマッシュルーム、タコとブロッコリーの2種類のアヒージョ、生ハムとモッツァレラチーズ、アボカド、トマトとオリーブの3種のバケットでございます。」

 

御影「うん、ありがとう。そこに2人の作ってくれたケーキがあれば充分満腹になりそうだね。」

 

 

こうして八幡さんは私達と一緒に晩御飯を食べる事になりました♪

 

 

 

 



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豪華な夕食

 

八幡side

 

 

紫苑「下に来たら八幡君がいたから驚いたわよ、今日は平日だから来ないって思ってたから。」

 

柊「お母さん、昨日言ったでしょ?私達は今日から冬休み。」

 

紫苑「あら、そうだったわね。ダメね私も、ちゃんと話は聞かなくちゃ。」

 

御影「心配要らないよ、僕も忘れてたんだから。」

 

 

いや、それはそれでどうなんだ?

 

 

御影「だけど今日はクリスマスだからね、たくさんご馳走を用意させてもらったよ!何しろ八幡君が来てくれているからね、追加でメニューも出してあるから目一杯食べるといいよ!」

 

八幡「つ、追加で?」

 

御影「うん、チーズフォンデュも用意させたんだよ。具材も沢山あったからね、余らせたら勿体無いと思ったからいっその事どれも食べちゃおうと思ってね。だからチーズフォンデュ!」

 

八幡「成る程………(けどそれ、食い切れなかったらどうするんだ?保存は出来るけどよ。)」

 

御影「それに僕達だけ盛り上がるのも少しアレだし、今日は宮間達も一緒に食べようって言ってあるんだ。無礼講ってわけではないけど、楽しく皆で食べられればと思ってね。」

 

涼風「それは良い考えですね、お父様!」

 

柊「お世話になってるし、皆にお酌してあげるのも良いかも!」

 

紫苑「ふふふっ、そんな事したら皆驚くわね。」

 

御影「そうだね。じゃあ時間もいい頃だし、そろそろ向かおうか。きっともう晩ご飯の準備もできてると思うしね。」

 

 

ーーー居間ーーー

 

 

八幡「………マジかよ。」

 

 

目の前に広がる光景、多分俺は今までにこんなクリスマスを味わった事はないと思う。そのくらい煌びやかなものになっていた。いや、背景はいつもと一緒なのだが、並んでいる料理が豪華なだけでこれだけ違うものなのかと。この家の食事が豪華なのはしっているが、それとは比較にならないくらいだ。

 

 

宮間「旦那様、奥様、お嬢様方、若様、お待ちしておりました。先に準備を進ませておきました。」

 

御影「うん、ありがとう。」

 

紫苑「綺麗ね〜やっぱりこういう伝統行事の時は少し豪華にしないと盛り上がらないわよね。」

 

柊「そうだよね〜八幡君はどう思う?」

 

八幡「いや、俺いつも豪華な料理に囲まれてんだが………今日のはまた一段と豪華に感じる。」

 

 

これで豪華じゃなかったら、どれが豪華なのか教えて欲しいくらいだ。

 

俺達はいつもの席へと進んで座った。いつもならコップなのだが今日はグラスのようだ。使用人の人達がグラスに飲み物を注いでくれた。おじさんとおばさんはワインで、俺達はジンジャーエールだ。色合いもクリスマスっぽいな。ちなみに使用人の人達は色々だった。ワイン、ビール、ジュースと様々だ。お酒飲んでる人は定時なのか?

 

 

御影「皆、グラスは持ったかい?じゃあ僭越ながら僕が音頭を取るよ。年末にはまた1週間早いけど、その頃になったら僕達と八幡君は滋賀の別荘に向かってこの家を空ける事になる。だからちゃんとした挨拶は今日くらいしかないから、やっておこうと思ってる。日々のサポート、とても感謝している。今日は好きなだけ食べて飲んでいって欲しい。じゃあ……乾杯っ!!」

 

『乾杯〜!!』

 

御影「さぁ、今日は楽しもう!」

 

 

凄いな、おじさんは………知ってはいたが、ちゃんとメリハリをつけられてんだもんな。

 

 

柊「八幡君、何食べよっか?ターキーもいいけど、チーズフォンデュも美味しそう♪バケットもアヒージョも捨てがたいなぁ〜。」

 

涼風「八幡さん、食べたいものがありましたら遠慮なく言って下さい。私がご用意致します。」

 

八幡「お、おう……何が良いかな……どれもマジで美味そうだ。」

 

柊「じゃあ一通り全部取っちゃおうか!涼風、サラダとバケットを盛って!私はフォンデュの具とターキーを用意するから!」

 

涼風「分かりました!」

 

八幡「……俺はアヒージョだな。けどアヒージョって今取っても意味無いよな。」

 

 

でもこれもすげぇよ、取れる位置に置いておいてくれてるんだから。ターキーも2つ用意されてるから、この人数なら食べ切れるだろう。ていうかどの料理も2つ並んでるな………シェフの皆さん、ありがとうございます。

 

 

柊「んん〜いい匂〜い♪焼いた鳥の香ばしくて良い香りがするよ〜♪」

 

涼風「こちらも彩りがとても素敵です、食欲をそそられますね!」

 

柊/涼風「八幡君(さん)、最初は何から食べる(食べますか)?」

 

八幡「………じゃあ生ハムとチーズのバケットを貰う。」

 

涼風「分かりました……はい、どうぞ。」

 

八幡「………涼風さんや、それはもしかしなくてもそういうことですかね?」

 

涼風「………あ、あーん///」

 

 

………断れねぇよこんなの。うん、美味い。

 

それよりも………

 

 

八幡「料理は自分で食うから、2人も食べろよ。その方が一緒に楽しめるだろ?」

 

涼風「……分かりました。」

 

柊「はぁ〜い。でも、私にも1回だけあーんさせて!今のままだったら涼風だけずるいもん!!」

 

 

あっ、1回は確定なんだな。

 

 

八幡「分かったよ、その後は一緒に食べような。」

 

柊/涼風「うん(はい)♪」

 

 

次は………やっぱターキーだよな。

 

 

 



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心からの感謝

 

 

御影side

 

 

御影「いやぁ〜食べた食べた〜今日もとても美味しく頂いたよ、いつもありがとうね。」

 

「いえ、旦那様達の為ならば粉骨砕身、身を粉にしてお口に合うお料理を作らせて頂きます。」

 

御影「そう言ってくれると僕も嬉しいよ。けど、本当に身を粉にするのはやめてね?君の料理が食べられなくなるのは寂しいからね。」

 

「ありがたきお言葉でございます。」

 

 

彼はこの家で雇ってるシェフなんだけど、本当に良い腕をしているよ。彼を雇ってもう15年くらいかな、とても助かってる。それに毎日違う料理を出すから、飽きも来ない。

 

 

宮間「旦那様、お済みのお皿をお下げ致します。」

 

御影「うん、ありがとう。」

 

宮間「奥様もこちら、よろしいでしょうか?」

 

紫苑「えぇ、ありがとう。お願いね。」

 

宮間「かしこまりました。」

 

 

宮間もウチに来てから20年くらいになるのかな。彼にも毎日助けられている。家の事だけでなく娘たちの事もよく見てくれている。僕や紫苑だけではできない事もこの屋敷に居る人達のおかげで上手くバランスが取れている。そして………

 

 

「わ、若様!お皿運びは我々にっ!」

 

八幡「いや、いつもやってもらってますし。それにこの数ですから少しくらいは手伝わせて下さい。」

 

「し、しかし………」

 

柊「………じゃあ私もやるっ!」

 

涼風「お手伝いします!」

 

「あぁ、お嬢様方までっ!」

 

 

彼、八幡君が来てからは特に変わった。柊が彼の話をよくするようになった時は、確かに驚いたものだ。だが日を追う毎に増えていく情報で比企谷八幡という人を知っていく事によって、彼の人物像がようやく理解出来た。八幡君は間違いなく良い人だ、私がこれまで会って来た柊達と同年代の子達のどの子よりも。そうでなければ柊は兎も角、あの人見知りの涼風があんな風に懐くとは思えないからね。

 

 

紫苑「何を考えてるの、御影?」

 

御影「ん?あぁいや、ちょっとね………」

 

紫苑「八幡君の事を考えているのかしら?」

 

御影「分かってて聞いたのかい?」

 

紫苑「貴方の視線の先に八幡君が居たから、それを考えた上で聞いたのよ。」

 

御影「ははは、妻には隠し事は出来ないか……まぁ、正確には僕の周りに居る人達の事、かな。助けられてるなぁ〜って思ってね。柄にもなく感慨深くなっていたんだ。娘達には特に八幡君がお世話になってるからね。」

 

紫苑「そうね……柊が立ち直れたのは八幡君が居たからだものね。もしいなかったらと思うと………考えたくもないわね。今も柊は塞ぎ込んでいたかもしれないのだから。」

 

御影「うん………本当に彼は僕達家族にとって大恩人さ。償い切れない程、大きな恩がある。何度も言ってるけど、それだけ娘を助けてくれた事に感謝しているって事だからね。」

 

紫苑「………そうね。」

 

 

八幡君、君のおかげで今の柊が居るんだ。もしあの時、公園で君が柊に声を掛けていなければどうなっていたか………君が柊に手を差し伸べてくれた事に、僕は心から感謝しているんだ。

 

 

柊『じゃあ私達の作ったケーキ、出すからね♪』

 

八幡『今日1番の楽しみだな、待ってた。』

 

涼風『では八幡さんはお座りになって待っていて下さい。切り分けの作業がありますので。』

 

八幡『そのくらいなら俺も手伝うぞ?』

 

柊『いいのいいの!私達がやりたいからやるの!』

 

八幡『……2人に邪魔者扱いされたから座って待ってる事にするわ。』

 

涼風『べ、別に邪魔者扱いなどは!!『涼風、冗談だから。』っ!も、もう八幡さん!』

 

八幡「ふっ、じゃあ待ってるからな。』

 

柊『うん♪』ニコッ!

 

 

君が柊のあの笑顔を取り戻してくれた、再び火を灯してくれたんだ。柊が再び笑ったあの日程喜んで笑った日はないし、あの日程嬉しくて泣いた日もない。その日から柊は君の話をよくするようになって、笑顔も見せてくれた。それが僕達にとってどれだけ喜ばしいものか、きっと八幡君には測れないだろう。それだけの事を君は僕達にくれたんだ。

 

 

八幡「あっ、おじさんとおばさん。今柊と涼風がケーキ切り分けてます。何でも1番下の外側の生地はタルト生地になってるみたいです。」

 

御影「ほう、それは美味しそうだ。」

 

紫苑「ホント、あの子達何でも作るようになってきたわね。これが愛って事かしらね、八幡君?」

 

八幡「愛かどうかは分かりませんけど、柊からはそうだと信じたいですね。」

 

紫苑「ふふふっ、そうよね。」

 

御影「きっとケーキを食べる時、2人から食べさせられるんじゃないかい?夕食の時は一緒に食べてたけど、食べさせてはいなかったからね。」

 

八幡「絶対そうなるでしょうね。あの2人がそれをしないわけがないので。」

 

紫苑「2人の愛情表現だと思って受け取りなさい。八幡君が断った瞬間、2人ともきっとシュンとする筈だから。お願いね。」

 

八幡「後が面倒なのでそうしますよ。」

 

柊「何々、何の話?」

 

紫苑「食べさせるのを断ったら2人がいじけるから、断らないでってお願いしたのよ。」

 

涼風「い、いじけたりしませんが、残念に思うかもしれません。」

 

八幡「それをいじけるというのでは?」

 

柊「ていう事は八幡君、あ〜んしても良いんだよね!?そうなんだよね!?」

 

八幡「別にいいぞ。」

 

柊「いやったぁ〜♪」

 

涼風「やりました!」

 

 

何度目になるかは分からないけど八幡君、柊の笑顔を取り戻してくれて、心から感謝するよ。

 

 

 



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八幡の予定

 

 

八幡side

 

 

小町「成る程〜それで今まで柊さん達の家に行ってて、晩御飯をご馳走になった上にケーキまで食べて帰って来たと………それで、何か弁明は?」

 

八幡「いや、連絡しなかったのは済まないと思ってるし悪かったとも思ってるが、玄関入っていきなりこんな事されるとは思ってなかったぞ、お兄ちゃんは。」

 

 

夜十神家でご馳走になってから帰宅した俺は玄関で待ち受けていた小町に何をしていたのかを説明していた。小町は先に食べていたみたいだが、俺が何も言わないでいたのが気に入らなかったらしい。

 

小町「もう、1言くらいはちょうだいよ!そしたら小町も無駄に待たずに先に食べてたのにさ!」

 

八幡「先に食ってた奴が言っても説得力無いぞ。」

 

 

居間に入ると、此処からも香ばしい香りが漂っていた。どうやら小町もさっきまでチキンを食べていたようだ。毎年この時期になったら母ちゃんがチキンとケーキの金を小町に持たせるからな。俺に渡してくれたらそのまま行ってたのによ、今年の小町は受験生だぜ?

 

 

小町「にしてもさお兄ちゃん、明日から冬休みなんだよね?良いなぁ〜。」

 

八幡「そうなった理由は良いものでもないけどな。どっかのバカが何処ぞの大バカのSNS投稿を晒したおかげでこうなったんだからよ。おかげで学校も教育委員会も大忙しってわけだ。授業してる暇なんてねぇって事だろう。」

 

小町「うわぁ〜そんな裏事情聞きたくなかった……じゃあさ、そのSNS投稿を晒さなければ今も平和に学校に通ってるって事?」

 

八幡「まっ、そうなるな。」

 

 

あっ、まぁその投稿晒したの俺なんだけどね。教育委員会にはおじさんがだけど。

 

 

ガチャッ

 

 

凛『ただいま〜。』

 

小町「あっ、お母さんじゃん!お帰り〜!」

 

八幡「……珍しいな、こんな時間に帰るなんて。」

 

 

いつもなら遅くまで仕事してんのに、今日は早上がりの日なのか?

 

 

凛「はぁ〜疲れた……あら八幡、ただいま。」

 

八幡「お帰り。今日は早いんだな。」

 

凛「まぁね。今日くらいは早く帰ろうって上司がね。こういう気が利く所をいつもやってくれれば文句無いんだけどね〜。」

 

小町「お母さんいつも遅くまでだもんね〜。」

 

凛「えぇ、だからお腹空いちゃったわ。何かあるかしら?」

 

小町「うん、今日はクリスマスだからチキンとケーキがあるよ!用意するね〜。」

 

凛「ありがと小町。」

 

 

………飯が出来るまで肩でも揉んでやるか。

 

 

凛「……あら、ありがと八幡。」

 

八幡「別に、ただの気まぐれだ。」

 

凛「懐かしいわね〜子供の頃はよくこうしてもらってたわ。もう10年くらい経つのね〜。」

 

八幡「歳も取るわけだな。」

 

凛「女の前で歳の話はやめなさい。」

 

八幡「へいへい。」

 

凛「けどそうよね………いつの間にかそんなに経っているものなのよね。小町も中学生で八幡ももうすぐ受験生だものね。ホント、あっという間ね。」

 

 

俺にはまだその感覚は分からない。けど中学の時はかなりあっという間に月日が経ったような感じなのは覚えてる。柊や涼風が居たからかもな。

 

 

凛「そういえば八幡、アンタお付き合いしてる人達とは上手くいってるの?」

 

八幡「問題ねぇよ。今日だってケーキ食べて帰るつもりだったのが、晩飯までご馳走になっちまったからな。そのくらい好かれてるってくらいだ。」

 

凛「それ、好かれてるを通り越して無いかしら?」

 

 

あぁ、ソレね………向こうは既に俺の事を家族として見てるから。

 

 

小町「お母さ〜ん、ご飯出来たよ〜。」

 

凛「分かったわ。んん〜……はぁ。じゃ、私も食べようかしらね。」

 

小町「お酒いる?」

 

凛「遠慮しとく。お水かお茶でいいわ。」

 

小町「はーい。あっ、そうだお兄ちゃん。今から聞いておくんだけどさ。」

 

八幡「?何だ小町?」

 

小町「お兄ちゃんさ、年末年始はどうするの?やっぱり柊さん達と過ごすの?」

 

八幡「あぁそうだ、言おうと思ってたんだ。小町の今言った通り、大体5日間くらい家空ける。」

 

小町「やっぱり。柊さんの家で泊まりでしょ?」

 

八幡「……まぁそんな所だ。」

 

 

別に『滋賀の伊吹山にある別荘に行ってくる。』っていうのは言わなくてもいいよな。言ってどうにかなるってもんでもねぇし。

 

 

小町「でも冬休みだもんね、もしかしたら何処か別の地域に行ってるかも?夏休みだって北海道行ってたんだし、もしかしたら冬休みでも………」

 

 

うわ、小町の奴いらない所で鋭い勘を働かせやがる。そういうのは別の所で使うもんなのに。

 

 

小町「お兄ちゃん、本当は何処に行くの?」

 

八幡「………滋賀県だ。」

 

小町「滋賀県!?関西じゃん!!」

 

凛「そんな所に行くのね………」

 

八幡「最初に言っておくが、俺が行きたいって強請ったわけじゃないからな?向こうから誘われて行くって言っただけだ。そうでもなけりゃ俺が遠出なんてするわけねぇだろ。」

 

小町「確かに………じゃあお兄ちゃん、お土産よろしく〜♪」

 

八幡「言っておくが俺達が行くのは滋賀県でも山奥だから土産なんて期待しない方がいいぞ。あっても水だと思っとけ。」

 

小町「何で水なの?」

 

八幡「山にある家で過ごすからだ。伊吹山って聞いた事あるか?霊峰なんだが、そこで5日間過ごすから街中にはあまり入らないと思う。」

 

小町「折角関西まで行って山過ごすの?それってどうなの?」

 

 

良いんだよそれで。修学旅行のせいで関西にはあまり良い思い出がないんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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いざ、滋賀へ!

 

 

八幡side

 

 

12月30日の大体朝、俺は今車に揺られてます。金持ちらしく黒塗りされた高級車に乗っていて、両隣にはいつも通り柊と涼風という大輪の花がくっついている。そしてその正面にはおじさんとおばさんが乗っていて、運転は宮間さんがしている。そう、今俺達は関西の滋賀県にある霊峰、伊吹山に向かって車を走らせている。おじさん達は一昨日が会社の年内最後の仕事だったらしく、昨日は今日の準備を家族総出でしていたとか。

 

そして俺はそんな事をしているとも知らずにこの日が来るまでのんびりしていた………何か言ってくれれば俺も手伝ったのに。

 

 

そうそう、あの3人の処遇が決まった。裁判にはならなかったものの、弁護士を同席した上で説明会を行って話し合った結果、慰謝料を支払うという形で収まった。金額は1人につき15万円と比較的安い金額で収まったみたいだ。親御さん皆が腹の中で本当に納得しているのかは知らんが、この程度で収まってあの3人もその家族も幸せ者だろう。特にあの3人は。もっとかかっててもおかしくないと思っておいた方がいいというのは、親から教わるだろう。

 

 

柊「ふんふふ〜ん♪あぁ〜楽しみだなぁ〜八幡君との旅行、北海道ぶりだもんね〜!」

 

八幡「そうだな。けど、準備くらいなら俺も手伝いましたよ?どうして呼んでくれなかったんです?」

 

紫苑「私達は貴方をお誘いした側なのよ?お客さんにお仕事させるわけにはいかないじゃない。」

 

柊「そうだよ!八幡君はお客さん!」

 

八幡「俺を家族だと言っていたのは誰だ?それにだ、もし俺を誘ってたらデート出来てたかもしれないんだぞ?そこの所どう思いますか?」

 

柊「………何で八幡君を誘わなかったの?」

 

御影「え、今度僕!?」

 

涼風「まぁまぁお姉様、お買い物の時には『八幡君と一緒に楽しむんだ〜♪』と言いながら張り切っていたではありませんか。八幡さんが居たら、用意できた物も出来なかったかもしれないのですし。」

 

紫苑「そういう事よ。」

 

柊「……なんか誤魔化されている気がするけど、敢えてそれに乗ってあげる。誤魔化されてあげる。けど後で理由を聞かせてねお父さん?」

 

御影「何で僕だけなの?お母さんと涼風には聞かないのかい?」

 

柊「だって勝てる気がしないんだもん。」

 

御影「僕には勝てるって自信があるって事!?それはそれで傷付くよ!?」

 

 

何ともまぁ和気藹々とした会話が続いている。柊の奴、幾ら口で涼風とおばさんに敵わないからっておじさんに当たるなよ………

 

 

ーーー数十分後ーーー

 

 

柊「すぅ……すぅ……」

 

涼風「すぅ……すぅ……」

 

 

朝早くから楽しむ気満々だったのか、2人は寝てしまった。柊は俺の膝を、涼風は俺の肩を枕にして、正しい呼吸を取りながら眠っている。それでも俺の手を握って離さないけど。

 

 

御影「ははは、こうして見ると八幡君が彼氏ではなく兄のように見えてくるね。ブラコンの妹を寝かしつける優しいお兄さんに見えるよ。」

 

八幡「それ、柊が聞いたらなんて言うでしょうね?それにいつだったかそういう話になりましたけど、俺が兄だったら誰とも結婚せずに俺と一緒に居るとか言い出してましたよこの2人。俺がこの家に生まれてたら、きっと結婚すらもままならないでしょうね。家に女性すら呼べませんよ。」

 

紫苑「あり得るわね……だって八幡君が他の女の子と一緒にいる所を見ただけで2人の目から光が消えそうだもの。その代わりに持った刃物に光が宿りそうだわ。」

 

八幡「やめて下さいよ、俺は死にたくありません。それに他の女なんて興味もありませんし。」

 

御影「ははは、柊が惚れるわけだね。けど八幡君、君には1度も聞いた事なかったけど、どうして柊とお付き合いする事にしたんだい?君がどんな風に思って柊と付き合おうと思ったのか聞いた事がなかったからね。この際、聞いてもいいかな?」

 

 

柊と付き合う理由、か………簡単だ。

 

 

八幡「柊の俺に向ける表情や仕草、行動に嘘がなかったからです。」

 

紫苑「それはどういう事?」

 

八幡「人間誰しも嘘をつく時は何処かにそれが表れます。本当の事を話す時はありませんが。柊の場合、嘘をつく時とか興味の無い事には目を向けません。必ず目を逸らします。けど俺が柊と関わるようになってからは柊にはそれがたったの1度たりともなかった。悪ふざけの時にはやりますけど、好意を示す時にそんな行動は一切取ってません。俺もあの時までは1人で過ごしてきましたから、人を観るのは趣味みたいなもんですので。俺には嘘偽りなく話す柊に段々と惚れていった、そして中学の時に告白されて付き合う事になった。こんな所です。」

 

御影/紫苑「………」

 

八幡「柊や涼風、おじさん達は俺の事恩人だって言ってくれますけど、俺にとっても柊は恩人のような人です。俺に偽りのない好意を向けてくれる。事情がどうであれ、俺はそれを一直線に向けてくれる柊に惚れました。」

 

御影「………そうなんだね。君からは初めて聞いたけど、そう思っていたんだね。聞けて良かったよ、何度思ったか分からないけど君が柊と出会ってくれて良かったって思うよ。」

 

紫苑「えぇ、本当に。柊のこんな顔が見られるんだものね。」スリスリ

 

柊「……んふふぅ♪」

 

 

おじさんとおばさんは満足そうにそう言うと、それ以降は何も聞いて来なかった。だが見ていて分かった、自分で言うと少し恥ずかしいが、『八幡君で良かった。』と思っているように見えた。

 

 

 

 

 

 



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別荘、そして晩ご飯

 

 

八幡side

 

 

途中休憩を挟みながら車を進めて、大体7〜8時間が経過していた。もう夕方で、辺りは暗くなっていた。今、関ヶ原ICを抜けて街中を通り抜けて山奥を進んでいる。けど進んできた道には家や建物が見当たらなかったが、本当にこっちで合ってるのだろうか?疑いたくはないが不安になってきた。

 

 

宮間「旦那様、もうすぐでございます。」

 

御影「うん、そのようだね。さて、そろそろ準備をしないとね。」

 

柊「さってと〜♪」

 

八幡「なぁ、別荘って言ってたがどんな感じなんだ?皆目検討もつかないんだが………」

 

涼風「そうですね……強いて言うならば古風、でしょうか。私達が慣れ親しんでいるような造りではありませんね。」

 

八幡「それって大丈夫なのか?」

 

宮間「ご安心下さい若様、安全面ならば保証致します。旦那様が2ヶ月に1度、お手入れをする為に建設会社に様子を見てもらっておりますので。異常がありましたらすぐに修繕をしています。」

 

八幡「そうですか。」

 

紫苑「見えてきたわね、アレがそうよ。」

 

 

涼風は古風って言ってたが、どんな………え?アレがそうなのか?嘘、デカくね?外観だけでもデカイって分かるんですけど………

 

 

「旦那様、奥様、お嬢様方、若様、そして宮間様、この度の千葉からの長旅、大変お疲れ様でした。宮間様からの言伝により、お部屋のご用意は出来ております。どうぞ中へ。」

 

紫苑「貴方達も用意してくれてありがとう。じゃあ行きましょうか。」

 

「「「お荷物をお持ち致します。」」」

 

 

此処が本邸じゃ無いんだよね?どっからどう見てもこっちの方がデカい………倍以上あるんじゃねぇの?

 

 

※別荘のイメージは【鬼滅の刃】の蝶屋敷です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御影「うぅ〜ん、やっぱり和を感じられる良い雰囲気だね。落ち着くよ。」

 

涼風「はい、とても。ここ数年は来れる機会がありませんでしたので、とても嬉しいです。」

 

柊「此処ってホントに落ち着くよね〜。余計な音は聞こえないし、夜空の星は綺麗に見えるし、八幡君が一緒だし♪」

 

紫苑「最後のは貴女のでしょうけど、この屋敷の魅力は確かにそこよね。」

 

八幡「………」

 

 

成る程、確かに古風だ………ていうかこの屋敷っていつ作られたんだ?そこが気になってしまう。だって襖や障子の戸、畳に木材の床に柱に木材は使われてるが、金属類を使われている箇所が殆ど見当たらない。庭には池や石の通路、立派な木だって植えられてる。築100年とかあり得るんじゃね?

 

 

御影「皆、お腹が空いていないかい?此処に着く1時間前くらいに晩ご飯の用意をしておいてって頼んであるんだけど、お腹の空き具合はどうかな?」

 

柊「私ペコペコ〜!車の中ではずっと眠ってた上に少ししか食べてないしね〜。」

 

涼風「私もお姉様と同じです。」

 

御影「じゃあ晩ご飯にしようか。宮間にも休憩があったとはいえ、ずっと運転させっぱなしだったからね。君も思う存分食べるといいよ。」

 

宮間「ありがたきお言葉でございます、旦那様。」

 

 

ーーー食堂ーーー

 

 

「旦那様、お待ちしておりました。既にご用意はできております。」

 

御影「わざわざありがとう。ごめんよ、もっと早くに連絡を入れれば良かったのにね。」

 

「いえ、充分でごさいます。」

 

 

目の前には座布団と大御前に乗った料理だった。ていうかコレを1時間で作ったのか!?豪華過ぎる………和食メインで出てくるとは思ってたが、刺身と天ぷらを出してくるかよ。山の幸と海の幸、畑で採れる食材をふんだんに使った豪華和食御膳だ………

 

夜十神家が現代のフルコースだとしたら、この別荘は和風版のフルコースだな。

 

 

紫苑「本当に良い腕をしているわ、どれもこれも美味しそうね。」

 

「痛み入ります、奥様。お嬢様方に若様、お嫌いな食材はございましたか?」

 

柊「ううん、全然大丈夫!全部食べられるよ!」

 

涼風「お気遣いありがとうございます。私もお姉様と一緒で嫌いなものはありません。」

 

八幡「俺も大丈夫です。」

 

 

だって作り直しとか申し訳ないじゃん。食うよ、こんなすげぇの食うしかないじゃん!

 

 

「左様でございますか。どうか存分にお楽しみ下さい。因みにお刺身や天ぷらその他料理のおかわりもご用意しておりますので、ご遠慮なく我々に申してください。」

 

御影「ありがとう。それじゃあ皆、頂こうか。天ぷらや他の料理が冷めない内にね。」

 

 

合唱をしていただきますの挨拶を済ませて、俺は味噌汁から手をつけた。だが中は味噌汁ではなく椀物だった。中には麩と白身魚、人参によく分からない緑の野菜だ。すげぇ、俺椀物なんて初めてだ。作法なんて分からんからまずは啜るだけにしよう。

 

 

柊「はぁ〜……染み渡るよね〜この優しい味。」

 

紫苑「そうね。焼いた鱈の香ばしさが感じられるし、焼いた魚の臭さもよく抜かれているわ。とても楽しめられるわね。」

 

御影「こっちの天ぷらも良い味付けだよ。」

 

涼風「こちらのお刺身もとても歯応えがありますし、とても新鮮です。」

 

 

………この流れ、俺も何か言った方がいいのか?けど料理の感想なんて俺にはサッパリだ。このまま黙って食事をしよう。黙食を貫こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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星の答え

 

涼風side

 

 

はふぅ〜とても美味でした………どの料理も素晴らしい味でした♪特に新鮮なお刺身と山の幸で採れた天ぷらです!堪らずお代わりをしてしまいました……仕方のない事です、美味しかったのですから!

 

 

御影「いやぁ〜堪能したよ、和食料理は口にする機会は偶にあるけど、その中でも1番の料理だったよ。腕はまだまだ衰えていないようだね。」

 

「恐縮です。」

 

紫苑「けれどいいの?貴方元々は料理人希望だったのでしょ?」

 

「そうでしたね。ですが旦那様と奥様の別邸での料理人として雇われた時、現在本邸での料理長から手解きを受けました。自分は学んできた技術には自信がありました、しかしそれは簡単に跳ね除けられました。その時私は思いました、料理を作るのに必ずしも料亭で働かなくてはならないという決まりはないのだと。本邸の料理長はあれだけの技術があるのに、料理人の道を行かなかった。そして私もいつしか思うようになっていたのです、旦那様や奥様の舌を唸らせる事ができる程の料理を作りたいと。まだまだ道半ばといった所ですが。」

 

御影「いいや、君の料理は見事なものだったよ。その証拠に僕達は満足している。八幡君なんて一言も喋らずに食していたからね。彼の場合、話しながらというよりも顔に出やすいからすぐに分かるんだ。」

 

柊「そうだよね〜八幡君の顔、『うわ何だこれっ!?メッチャ美味い!!』って顔してた!」

 

涼風「ふふふ、そうですね。八幡さんはとても分かりやすいです。私達のお弁当を食べてる時も頬が緩んでますから。」

 

「……左様ですか、少し安心しました。」

 

御影「あれ、そういえば八幡君は?」

 

柊「夜風に当たるって。八幡君にとっては初めての場所だからね〜、少しでも慣れておきたいんじゃないかな?」

 

涼風「八幡さんがそのような事をするようには思えませんが………」

 

 

夜風に………お庭でしょうか?

 

 

涼風sideout

 

八幡side

 

 

八幡「山奥だとこんなに星が見えるんだな……千葉村や京都ではこんなに星は見えなかったが、こんなに違うものなんだな。」

 

 

山奥だからか?いや、そうだとしたら千葉村だって山の中だ。違う理由があるんだろう。今日は見えやすい日なんだろうな。

 

 

八幡「こうやって空を見る事なんて滅多に無いしな、少しでも堪能しておくに越した事はない。」

 

「ご一緒しても?」

 

八幡「あぁ、はい大丈夫ですよ………え?」

 

 

俺は後ろを振り向くと、そこには銀に近い白髪の初老そうなお婆さんが居た。

 

 

「では失礼いたしますね。今宵は星が綺麗ですね。より一層輝いています。」

 

八幡「そ、そうですね。千葉ではこんなの滅多に見られませんから気になりまして………」

 

「ふふふっ、そうですか。知っていますか?星の光というのは月の光によって見え隠れするものなのですよ。まるで月が星を引き立てているかのように感じます。そうは思いませんか?」

 

八幡「えっと………そう、ですね。けどそれだと月があると星が消えてしまうって事になりますね。何か月だけ仲間外れにされているようにも感じちゃいますけど。」

 

「……面白い考え方をするのですね。私の父にとても似ています。あの方もかなり捻くれた思考の持ち主でしたので。」

 

 

どんな父親だったんだ、このお婆さんの父親。しかも遠回りに俺の事捻くれてるって言いやがった。いや、自覚あるからいいけどよ。

 

 

「質問をしても?」

 

八幡「はい、どうぞ。」

 

「あのオリオン座は見えますね?左上に見える赤い星がα(アルファ)星ベテルギウス、右下にある青い星がβ(ベータ)星リゲルという名があります。貴方は中央の星のε(イプシロン)星アルニラムだとしましょう。貴方ならベテルギウスとリゲルのどちらの星を輝かせますか?」

 

 

え、哲学?いや分かんな!あの赤いのと青いのだろ?ええぇ………もう思った事言おう!

 

 

八幡「両方、ですかね。」

 

「ほう、両方、ですか?」

 

八幡「だってあの星はあれで1つの形になってるんですから、どれか1つでも違うものになったら別物になってしまいます。だから俺は、そうなって欲しくないから両方輝かせる為に頑張りますよ。」

 

「………」

 

八幡「それに、俺が頑張れば他の星だって負けないくらい輝くでしょう?俺が頑張れば周りがそれに呼応してくれる。そしてそれ以上の事をしてくれる、後は俺がそれについていけばいいだけですよ。」

 

「っ!………ふふふっ、成る程そうですか。」

 

八幡「あの、どうでしょうかね?」

 

「貴方は私の父親によく似ています。考え方からそれに至る道筋まで。」

 

八幡「は、はぁ………」

 

「私はこれで失礼いたしますね。」

 

 

………結局あのお婆さん誰だったんだ?いきなり現れたが、この別荘の侍女さん?

 

流石に冷えるし、俺もそろそろ戻るか。

 

 

八幡sideout

 

ーーーーーー

 

 

「比企谷八幡さん………ふふふ、これもまた神様の悪戯でしょうか、ね?」

 

「っ!!こちらにおいででしたか!!探しましたよ!!何方へ?」

 

「懐かしい気配を感じましたので中庭に行っていました。今日はとても気分が良いです。」

 

「はぁ……お忍びで来ているのですから目立った行動はしないでくださいね?」

 

「そこは心配いりません。」

 

「いつもそう言うんですから………では、参りましょうか、大奥様。」

 

 

(本当に父にそっくり。大胆さは無いものの、穏やかで優しそうな雰囲気や人とは違う感性を持っている所なんて………ふふふっ、長生きはしてみるものですね。柊、良い相手を見つけましたね。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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老人?

 

 

八幡side

 

 

あのお婆さん、一体何だったんだ?いきなりどちらの星を輝かせるだの何だの………よく分からん質問だったけど、あの回答でよかったのか?自分じゃよく分からん。まぁいっか、この別荘に居れば会う事だってあるだろうし。

 

 

八幡「……あれ、こっちだよな?」

 

 

ーーー5分経過ーーー

 

 

八幡「………迷った。マジかよ、まさか自分が寝る部屋を忘れちまうなんて。」

 

 

でもこの別荘ホントに広いんだ。だって迷うくらいだぞ?そんな広いんだから迷ったって不思議じゃないだろ?此処に雪ノ下が居てみろ、アイツなら2分とかからずに迷子行き決定だぞ。けどここ本当に何処?

 

 

八幡「地図でもあればなぁ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?こんな所に何の用だい?」

 

八幡「え?」

 

 

後ろから声がしたと思ったら、立っていたのは白髪を後ろに束ねて髭を生やした豪快そうな老人だった。背丈もかなり高い。

 

 

八幡「あの……迷っちゃって。」

 

「迷ったぁ?ははぁ〜ん、さてはお前この屋敷初めてだな?そんで探検してたってわけだ?」

 

八幡「え、いやそういうわけじゃ「良いね良いね〜探検っ!若いねぇ〜!」……何なんだこの人。」

 

「まっ、ちょいと俺の話し相手になってくれや。なぁに心配すんな、ちゃんと帰してやるからよ。」

 

八幡「はぁ………」

 

 

俺は豪快な老人についていくと、部屋に案内された。中は今通ってきた部屋とは違ってかなり煌びやかだった。というよりも日本のものではないものがたくさん置いてある。

 

 

「珍しいもんばっかだろ?まっ、これは俺が趣味で集めたもんだ。気になるんだったら別に触っても良いぜ。壊れるもんでもねぇしな。」

 

八幡「はぁ………」

 

 

けど確かに珍しそうなものばかりだ。それに何だろう………今この世に出回っているのかどうかも分からなさそうだ。作りからしてなんかちょっと古めかしいというか、レトロって言うのか?

 

 

「んでぇ〜?お前さんはどうして此処に?」

 

八幡「えっと、おじさん……いや、夜十神さん達と一緒に来たんです。一緒にこっちで正月を過ごさないかって。」

 

「ほぉ〜……でよ、その夜十神さんって下の名前なんてんだ?良かったら教えてくんね?」

 

八幡「御影ですけど………」

 

「………そうか。」

 

 

老人は何処か嬉しそうな表情をしていた。さっきまでとは打って変わって自信溢れるような表情ではなく、年相応の優しい表情だった。

 

 

八幡「あの、知り合いなんですか?」

 

「ん?あぁまぁな。けどよお前さん、その家の奴等とどうやって知り合ったんだい?知ってるとは思うが、超だけじゃ足らねぇくらいの超金持ちだぜ?」

 

八幡「話してもいいですけど、長いですよ?」

 

「はっはっはっは!!長さなんて関係ねぇよ!要はそれが面白いかどうかだ、お前さんもそうだろ?長い話でも面白ければ興味が湧くし、つまんなければ眠くなる。それと一緒だ。俺を退屈させんなよ?」

 

八幡「はぁ………」

 

 

それから俺は飲み物や菓子を頂きながら、夜十神家との出会いを話した。まぁ出会いっつっても柊との出会いから始まるんだけど。

 

確かに長い話になったが、老人は退屈そうにするどころか微笑みながら聞いていた。柊が中学の同級生を無視した時や、俺が仲を取り持つのを拒否した時なんかは『よっし!!良いじゃねぇか!!よくやった!!』とか言いながら喜んでたし。

 

 

八幡「まぁ、ざっとこんな感じなんですけど……」

 

「色々あったんだろうが、こんだけは言えるぜ。お前さんは良くやった!!俺も同じ事をしたぜ!!その中学の連中にはざまぁ見ろって言ってやりたいぜ!!かぁ〜その場に俺も居たかったぜ〜!!」

 

八幡「ははは………」

 

「ん?もうこんな時間かよぉ〜………良い時間ってのは経つのが本当に早いな。もっと話してたいが、お前さんもそろそろ戻らないとな。お前さんの大事な恋人に嫉妬される前にな!」

 

 

誰がおっさんなんかに嫉妬するかよ……いや、柊ならしかねないけどよ。

 

 

「んじゃ途中まで案内してやるよ。」

 

八幡「ありがとうございます。」

 

 

ーーー廊下ーーー

 

 

「ここを真っ直ぐ行きゃ着く筈だぜ。」

 

八幡「ありがとうございます。じゃ、また。」

 

「あぁ、じゃあな!」

 

八幡「あっ、そういえばお爺さんのなま……え?」

 

 

振り向くと既に老人の姿は消えていた。廊下を少し戻って確認したが、影すら見えなかった。この別荘ってのは隠しギミックでもあるのか?忍者屋敷だったりして?

 

 

ーーー宿泊部屋ーーー

 

 

柊「もぉ〜どこ行ってたのさ〜!!!八幡くんが戻って来なかったから、私達ずっと退屈だったんだよ〜!!」ギュー‼︎

 

八幡「悪かったよ、色々あったんだよ。庭で風に当たってたらお婆さんと話したり、道に迷ったらお爺さんの話し相手になったりとで色々な。」

 

御影「そうなのかい?この屋敷には使用人と僕達以外にはいない筈だけどね………八幡君、その2人は使用人の誰かかい?」

 

八幡「いや、そこまでは………っ!あの、おじさん?質問してもいいですか?」

 

御影「ん?何だい?」

 

八幡「あの額縁の男の人って誰です?」

 

御影「あぁ、アレかい?アレは僕の祖父だよ。八幡君にはこの前お風呂場で話したよね?僕の1番尊敬する人だよ。あの人が居たから今の僕が……ん?どうかしたのかい、八幡君?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その額縁の中の写真に写っていた人物は、俺が先程道に迷った時に偶然会って、部屋で色々と話をしたときの豪快な老人本人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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老人の正体と置き土産

 

 

八幡side

 

 

俺はもう1度、さっきの老人と話した部屋へと向かった。道順は覚えているからすぐに辿り着けたので、部屋にはすぐに辿り着けた。後ろからは追ってくる足音も聞こえた、きっと柊達だろう。そして俺は部屋の扉を開けた。

 

中は綺麗ではあったが、さっきまでとは違っていた。物珍しい海外の物は置いてはいるが棚の中だし、さっき飲んだ筈のお茶や茶菓子だって無くなってる。

 

 

八幡「………」

 

柊「八幡君、速いよ〜……この部屋って?」

 

御影「……八幡君、君はこの部屋を知っていたのかい?この部屋は僕の祖父が使っていた自室だよ?今は祖父の私物だけを置いている物置になってるけど………」

 

八幡「………」

 

 

嘘だろ………じゃあさっき会った人は幽霊?けど俺の飲んだ紅茶は?茶菓子のクッキーやビスケットは?今もまだ微かに口の中に味が残ってる、これは嘘なわけない!

 

 

八幡「っ!!コレ………」

 

御影「ん?あぁ懐かしいなぁ〜!これはまだ僕が子供の頃によく食べさせてもらっていたクッキーだ!こっちはビスケット、それに茶葉まである!うわぁ〜こんなのも残ってたのかぁ〜!」

 

 

おじさんは嬉しそうに昔の事を思い出しているが、俺はそれどころではなかった。じゃあさっき俺の目の前にいたのは幽霊?けどあのお爺さんは俺に触ってたぞ!?

 

 

御影「懐かしいなぁ……僕が来た時は宝箱に入ってるような部屋だったからなぁ〜!周りがキラキラしてて、珍しい物が沢山あったんだよねぇ〜。」

 

八幡「………それって車や建物の模型だったり、タイプライターや蓄音機、西洋の電話やスタンドライトとかですか?」

 

柊「は、八幡君?」

 

御影「………八幡君、何でそんなに詳しいんだい?それは全部僕の覚えている限りでは全部この部屋にあった物だよ?まさか君はこの部屋の物を漁った、なんて言わないよね?」

 

八幡「いえ………信じてもらえないでしょうけど、さっき俺、さっきの額縁の人と……おじさんの祖父と会いました。」

 

御影「………何だって?なら喋り方は?」

 

八幡「豪快、の一言です。」

 

御影「じゃあ背丈は?」

 

八幡「俺の見立てだと180の後半くらいだと。」

 

御影「……二人称の呼び方は?」

 

八幡「お前さん、でした。」

 

 

おじさんは固まってしまった………

 

 

涼風「あの、八幡さん。本当なのですか?見間違いとかではないですか?」

 

八幡「違う。俺はその時その人に触られた感触だってあったし、紅茶や茶菓子も食べた。今もその味はほんの少し残ってる。」

 

柊「でもそしたら八幡君と話してたのは幽霊って事に「きっと八幡君の言った事は事実だろうね。」お、お父さん?」

 

御影「これだけ祖父の事を言い当てられるのなら、それはもう事実としか言えないよ。それに祖父は親以外の身内に対してはお前かお前さんとしか呼ばなかったんだ。」

 

八幡「でも俺はまだ身内じゃ……「きっと祖父も君ならと思っているんだろう。」………マジかよ。」

 

 

でも何で俺に?道に迷っただけなのに?訳が分からなくなってきた。それに何だかポケットが熱いような………ていうかなんか入ってる?

 

 

八幡「………なんだコレ、いつの間に?」

 

柊「おぉ、なんかカッコいい!これって中国の模様に出てくるアレだよね?」

 

涼風「確か八卦ですね。」

 

御影「えっ!!?」

 

八幡「っ!?」

 

柊「え、な、何お父さん?」

 

涼風「驚きました……どうかされたのですか?」

 

御影「………八幡君、これを何処で手に入れたんだい?」

 

八幡「い、いや……なんかポケットが熱いと思って手を入れてみたら、入ってました。」

 

御影「………コレはね、祖父が死ぬまで肌から手放す事もなかった黒曜石で出来た八卦印の首飾りだよ。死んだ時は付けてなかったから部屋の中の何処かにあるのかと思っていたのに、何処にもなかった品なんだ。このタイミングでこれが出てくるって事は………きっと祖父は君が此処に来るのを待っていたんだろうね。それに……うん、その首飾りは君が持っていた方が良さそうだ。」

 

八幡「え?いや、でもこれはおじさんが持っていた方がいいんじゃないですか?」

 

御影「いいや、君が持っていた方がいい。きっとそれは祖父が君に渡したんだ、僕が持ったら祖父からの災いを受けそうだしね。君が祖父から託された物だ、それはもう君の物だよ。」

 

 

ハチマンは黒曜石の首飾りをてにいれた!

 

………いや、遊んでる場合じゃねぇ。ていうかどうすればいいのコレ?やっぱ付けるのか?

 

 

八幡「………」

 

柊「八幡君、付けたげよっか♪」

 

八幡「お、おう………」

 

柊「♪〜ん?何この留め具、オシャレ〜。」

 

涼風「そうですね。留め具にも装飾が施されているのですね。」

 

御影「へぇ〜これはクラスプ留め具っていうんだ。でもこれは珍しいね。差し込むだけで留める事が出来るんだけど、装飾もされてるなんてね………祖父の見る目は相当な物だね。」

 

 

柊が留め具を付け終わると、少しだけ重みが増したがそれだけだった。さっきまでの熱さはとっくに消えていて、今では普通の感触しかない。

 

 

柊「うん、似合ってる♪八幡君がそういうの付けてるとなんか新鮮っ♪」

 

涼風「はい、とてもお似合いです♪」

 

御影「そうだね。白ワイシャツに何か色付きのベストでも着れば、もっと映えるんじゃないかな?」

 

 

だからといって俺を着せ替え人形にしないでくださいね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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お風呂ってリラックス出来るんだよね?

 

紫苑side

 

 

私がお風呂でゆっくりして上がった時、八幡君を含めて皆が何だか騒がしかったわ。御影の話だと、八幡君が御影のお爺様にお会いしたそう………八幡君もそれを肯定していて、色々な怪奇現象や話の内容とかも教えてくれたわ。私と柊、涼風は一応信じてはいるけれど信用半分疑い半分といった所ね。だって不可解だもの、どうして御影じゃなくて八幡君に会うのかが。

 

 

紫苑「ふぅ、八幡君にねぇ〜………」

 

御影「良いなぁ〜僕も会いたかったなぁ〜お話したかったなぁ〜。」

 

紫苑「貴方ねぇ………八幡君は知らなかったけれど、相手は幽霊なのよ?それを相手によく会いたいだなんて言えるわね?」

 

御影「だって僕の祖父だよ!僕が1番尊敬してる人なんだ、会いたいって思うのは当然でしょ!?」

 

紫苑「そうかもしれないけれど、わざわざ幽霊相手に会おうとは私は思わないわよ。けれど不思議ね、どうして八幡君なのかしら?会うのなら血縁者だと思わない?」

 

御影「うぅ〜ん……僕の祖父は一族の中でも変わり者だったからね、やっぱり人とは違う考え方を持ってるみたいだったから、八幡君に接触したのも何か理由があったんじゃないかな?僕は柊に相応しいかどうかを見極める為だと思うよ。」

 

紫苑「私はお義祖父様にお会いした事がないから分からないわね。」

 

 

豪快な人だとは聞いたけど、それだけで人柄は伝わらないものね………

 

 

御影「八幡君羨ましいなぁ〜僕もお話したいよ〜。来てくれないかなぁ〜。」

 

紫苑「滅多な事言わないでちょうだい。会いたいのならお義祖父様の部屋で寝たらどう?」

 

御影「いや、流石にあの部屋で寝るのは祖父に失礼だからね!」

 

紫苑「変な所で律儀ね。まぁいいわ、今頃あの子達もお楽しみでしょうしね。」

 

御影「そうだね。」

 

 

紫苑sideout

 

柊side

 

 

柊「良いお湯だよね〜///」

 

涼風「そ、そうですね………/////」

 

柊「………///」

 

涼風「………/////」

 

柊「ねぇ何とか言ってよ〜///」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「無茶言うな!とてもじゃないが、お前達の方なんて向けない!///」

 

柊「すっごい遠くにいるじゃん!もっとこっちに来てよ!そうじゃないとお話出来ないじゃん!くっつけないじゃん!///」

 

八幡「やめろくっつくな!今の状態でくっつかれたら理性飛ぶわ!!」

 

柊「むぅ〜……じゃあ私から八幡君の方に行っちゃうもんね!///」

 

八幡「は、はぁ!?///」

 

 

えっと、私達3人は今同じお風呂に入ってるんだけど、八幡君が近くに居ないので困ってるの。折角一緒に入れたのにこれじゃあ意味ないでしょ?だから近くに行くの、恥ずかしいけど///

 

 

柊「はい、これでもう逃げられないよ!逃さないもんね!///」ムギュ~!

 

八幡「バカ、おい!そんな格好で抱き着くな!///」

 

柊「い、いいじゃん!裸の付き合いでしょ!///」

 

八幡「合ってる!合ってるけど、今やるべきじゃねぇだろ!///」

 

柊「ほら涼風も!八幡君に抱き着くのなら今だよ!私が抑えておくから!///」

 

涼風「お、おおおおおお姉様!!?/////」

 

八幡「お前は何自分の妹まで巻き込もうとしてんの!?ねぇ本当はバカだろ!?」

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

八幡「………/////」

 

柊「あ、あははは、やっぱり恥ずかしいね/////」

 

涼風「………/////////」プシュ~

 

 

結果的に言うと、私達姉妹は無事に八幡君に抱き着く事に成功したんだけど、嬉しさよりも恥ずかしさの方が強くて会話が弾みません/////

 

 

八幡「………なぁ、俺もう身体洗って出てもいいか?耐えられん/////」

 

柊「ならお背中流す/////」

 

涼風「わ、私もお手伝いします/////」

 

八幡「しなくていいから!蒸発寸前のお前等がそんな事したらのぼせんの確定だぞ!?/////」

 

 

八幡(ただでさえ今もギリギリなんだぞ?普段から抱き着かれるのには慣れてるが、それとこれとは話が別だ!今は服着てなくてタオル1枚だぞ!?タオルも無くなったらヤバいだろ!ただでさえ服越しでも凶悪なたわわをお持ちなのに、それを生でとなると破壊力が違ってくる!/////)

 

 

柊「い、いいでしょ別に!旦那様のお背中を流すのはお嫁さんの役割だもん!/////」

 

八幡「ならせめて嫁になってから言え!それよりも涼風はもう上がれ!顔真っ赤だぞ!?風呂入ってる場合じゃねぇだろ!/////」

 

涼風「こ、こここれはお風呂のせいではありません!私の体温が上昇しているからです!/////」

 

八幡「それが問題だとなぜ分からない?/////」

 

 

八幡君、諦めが悪い………こうなったら!

 

 

柊「えいっ!!/////」ギュ~‼︎

 

八幡「っ!!?お、おま、柊!!?/////」

 

 

私は巻いてあったタオルを外して裸のまま八幡くんに抱き着いた。予想通り八幡君は慌てふためいているけど、そんなの関係ないもん/////

 

 

柊「ほ、ほほ本当ならこれが正しいお湯の入り方なんだからね!!巻く方がおかしいんだよ!!ほら、2人も早くタオル取って!!/////」

 

八幡「ついに頭ぶっ飛んだか!!?/////」

 

 

 

 



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罰と成分

祝、200話達成です!!いやったぁ〜♪


 

 

八幡side

 

 

あの後、俺は2人による背中を流すという洗礼を受けて、逃げられないように腕を抱き締められながら湯船に浸かるという、男連中なら血涙を流す展開に見舞われていた。いや、嬉しくないわけじゃない。俺も男だ、されて嬉しいとは思ったが、刺激が強過ぎて………特に2人の豊かな部分が腕にダイレクトに当たってるもんだから、ホンット耐えるのに必死だった。

 

 

御影「おかえり〜どうだった?楽しめたかい?」

 

八幡「おじさん、ハメましたね?」

 

御影「なんの事だい?僕にはサッパリだけど?」

 

紫苑「2人はどうだったのかしら?」

 

柊「八幡君、意外と筋肉質/////」

 

涼風「………//////////」プシュ~

 

紫苑「あらあら、2人には刺激が強かったかしらね?まだ水着とかの方が良かったかしら?」

 

 

おばさんの会話で分かる、絶対仕組んでただろ……しかも2人だって知ってるような感じだ。まさか知らなかったのは俺だけか!?

 

 

八幡「はぁ……俺は耐えるのに必死でしたよ。」

 

紫苑「よく手を出さなかったわね?」

 

八幡「出すわけないでしょうに………」

 

柊「それって私に魅力が無いから?」ウルウル

 

八幡「んな訳ねぇだろ………手ぇ出したらその後どうなるか分かんねぇからだよ///」

 

柊「そ、そっかぁ〜/////」ニヤニヤデレデレ

 

御影「おぉ、八幡君は紳士だね〜。」ニコニコ

 

八幡「今だけはその笑顔が腹立たしいです。」

 

 

本当に良い笑顔だ………

 

 

御影「まぁ揶揄うのもこれくらいにして、はい八幡君に柊と涼風も。コーヒー牛乳。」

 

八幡「持って来てたんですね。」

 

紫苑「けれど今晩だけよ。明日からは街に行って買おうと思ってるのよ。違うのも味わってみたいと思ってるから。」

 

八幡「俺はなんでも良いですけどね、紙パックのヤツでも充分ですし。」

 

柊「けどお父さんがそれじゃダメだって言うんだよね、八幡君にはそれじゃダメだ〜って。」

 

涼風「そうですね。お父様の場合、何が何でも八幡さんに美味しい物を食べさせようとする傾向がございますので、八幡さんとなるとうるさくなるのでしょう。」

 

御影「え、そう思われてるの?」

 

柊/涼風「え、違うの(ですか)?」

 

御影「………まぁ、間違ってないけどさ。」

 

紫苑「何よ、その通りじゃない。」

 

 

いつもながら柊達娘には弱いんだな、おじさんは。

 

 

八幡「そういえば何で此処に別荘作ったんです、おじさん達の先祖は?」

 

御影「さぁね〜それは本当にご先祖の方たちに聞かないと分からないよ。それに霊峰の近くだし、霊的な何かを期待していたのかもね。」

 

八幡「だったら俺の出来事、マジで洒落にならないじゃないですか………本当に会ってるんですよ?明日は伊吹山の霊水取りに行くか、そして山頂まで行くとしよう。その方が良さそうだ。」

 

柊「じゃあ私も行く♪」

 

涼風「私もご一緒します!」

 

八幡「……お2人はお父さんお母さんのお手伝いをしなさい。」

 

柊「えぇ〜!?」

 

涼風「そ、そんなぁ〜………」

 

八幡「俺に隠し事をしていた罰だ。お前等、一緒に入る事を俺に黙ってただろ?いきなり突入して来やがって。なので明日はご両親のお手伝いをするように。それで許してあげよう。」

 

柊「むぅ……じゃあ無理矢理にでもついて行くって言ったら?」

 

八幡「そうだなぁ………今後抱き着き無しにするとか「明日お父さんとお母さんのお手伝い一生懸命するね!!」お、おう……分かった。」

 

紫苑「効果覿面ね、よろしくお願いするわ。」

 

八幡「まっ、そういう訳なんで俺は明日伊吹山に登山します。登山道具とかはあるって言ってましたけど、お借りしても良いですか?」

 

御影「構わないけど、気をつけるんだよ。道があるとはいえ、危険は付き物だからね?」

 

八幡「はい。」

 

柊「八幡君、明日お父さん達のお手伝い頑張れば明後日は一緒に居られるんだよね!?そうだよね!?」

 

八幡「俺に隠し事をしなければな、したらまた………だからな?」

 

涼風「はい、八幡さんには隠し事はもう一切致しません!八幡さんに誓います!」

 

八幡「その言葉、今は信じよう。」

 

 

よし、一応言質は取った。後は本当に裏切らないかどうかだな………まっ、2人にとってそんな事はあり得ないか。それに風呂の事だって別に怒ってる訳じゃないしな。少しやり過ぎじゃないかとは思ったが。いや、少しどころではないな。

 

 

御影「じゃあ今日はもうお開きにしようか。寝る場所は来た時に説明した通りだからね。」

 

八幡「さて、じゃあ「八幡君(さん)!!」………はぁ、一応聞くけど、どしたの?」

 

柊「一緒に寝たい!!」

 

涼風「わ、私もです!」

 

八幡「お前等なぁ………」

 

柊「いいじゃん別に!八幡君が約束したのは明日のお手伝いだもん!今日はノーカウントでも良いでしょ!!?」

 

涼風「お姉様の言う通りです!このままでは私達の八幡さん成分が枯渇して死んでしまいます!」

 

八幡「その成分設定、まだ続いてたのかよ………」

 

御影「?何だいその八幡さん成分って?」

 

八幡「知らなくていいです、知ってもきっと無駄知識に終わりますので。」

 

紫苑「ふふふっ、私はすぐに分かったけどね。」

 

 

まぁ、おじさんもきっと分かってるとは思う。こんなあからさまな成分名を聞いて分からないわけがないしな。



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柊の禁断症状?

 

 

柊side

 

 

柊「えへへ、やっぱり八幡君が居る時はこうでなくちゃいけないよね♪そうじゃないと、一緒に居る意味がないもんね!そう思わない、涼風?」ギュ~!

 

涼風「はい、お姉様。私もそう思います。普段は少しだけ気を使いますが、この時間は誰にも邪魔される事はありません。なので思う存分楽しむ事が出来ます♪」ギュ~!

 

八幡「いや、もう慣れたから良いんだけど………抱き締める力強過ぎない?もうちょっと緩めてくれない?そんなにキツくしなくても俺逃げないから。」

 

 

ダーメッ!この別荘に来てから八幡君とあまり話せてないんだもん!それに明日は八幡君からの命令でお父さんとお母さんのお手伝いをしなくちゃいけないから、今の内に八幡君成分の補充をしておかないと!でないと明日の私達きっとダメダメになっちゃうから。

 

 

柊「ダメだも〜ん♪明日は八幡君と一緒に居られないから、今の内に八幡君成分の補充をしなくちゃいけないんだから!だから緩くもしてあげない!」

 

八幡「俺の腕が紫色になっちまうよ………」

 

柊「大丈夫大丈夫、その時は私達が誠意を以て癒してあげるから♪」

 

八幡「主犯お前達なのに?」

 

涼風「あ、あの………癒しますから。」ウルウル

 

八幡「よし、その時は頼んだ。」

 

柊「ねぇ、なんか私と違くない?」

 

八幡「気のせい気のせい、気にしすぎだって。」

 

 

むっ、八幡君が誤魔化そうとしてる………けど私は心が広いから許してあげちゃう♪それにこれ以上、八幡君から罰を受けたら、私発狂しちゃうもん!

 

 

柊「じゃあ八幡君、涼風、お休み〜♪」

 

涼風「お休みなさい、お姉様、八幡さん。」

 

八幡「おう、お休み。」

 

 

あぁ〜八幡君の匂いに温もり〜♪うん、これの匂いを嗅ぐとすっごくリラックス出来るんだよね〜。

 

 

八幡「………あの、2人共?本当に頼むから抱き締める力緩めてくんない?俺、痛さで途中で目を覚ましたくないからよ、頼む………」

 

涼風「……………………八幡さんの嫌がる事はしたくありません。このくらいで如何ですか?」

 

八幡「……あぁ、左腕が楽になった。ありがとな、涼風。」

 

涼風「いえ、とんでもありません。八幡さんの為ですから。」

 

八幡「(そう思うのならもう少し早くにそうして欲しかったんだが、贅沢は言わないでおこう。)そうか、それじゃあ柊も少し緩めてもらえないか?」

 

柊「もぉ〜しょうがないなぁ………本当はしたくないけれど、八幡君の為だもんね。」

 

八幡「あぁ〜楽になった、サンキューな。」

 

柊「それじゃあ身体で支払ってもらうぜ?」

 

八幡「………ほう?」

 

柊「嘘嘘!嘘だからね!!1度言ってみたかっただけだから!!本気にしないでよ!?個人的にはいつでもOKなんだけど、涼風が居るから今日はダメ!!もしも私と2人きりの時だったら………ゴーサイン出すかも/////」

 

八幡「分かったから変な方向に話を持って行かないでくれます?涼風が耐えられなくなって爆発しそうだから。」

 

涼風「わわ、私は別に「顔真っ赤にしながら何言ってんの?嘘はダメです。」あうぅ……」

 

 

あららぁ〜涼風には刺激が強いお話だったかな?まぁそうだよね〜八幡君の裸を見ただけでも頭から湯気出てたしね〜私もだけど///

 

 

八幡「まぁとにかく、少し楽になった。じゃあ改めて、お休み。」

 

柊「うん、お休み〜♪」

 

涼風「また明日です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー翌朝ーーー

 

 

柊「………んんぅ〜、んん………」

 

 

………んん?あれ、もう朝かなぁ?ちょっとだけ日が差してるような?起きないとね〜………

 

 

柊「んんぅ〜………はぁ〜朝だぁ♪けどまだ2人は寝てるみたいだし、私はこの時間で八幡君を堪能しちゃおう♪うん、そうしよう!それが良い!むしろそれ以外に時間を使うべきでは無いとみた!」

 

 

では早速、八幡君にもう1回抱き着いてから八幡君の匂いを………あぁ、大好きな匂い〜♪

 

 

柊「えへへ、えへへへへ♪私にとって八幡君の匂いはもう麻薬そのものだよ〜えへへへ♪」

 

 

八幡(少し前に起きたが、柊の発言がちょっとだけヤバい。何、俺の匂いが麻薬って………嬉しいけど笑えない。)

 

涼風(お、お姉様………まさかそのようなお考えだったなんて思いもしませんでした。私も八幡さんの匂いはとても好ましく思っておりますが、麻薬という表現はどうかと思います。)

 

 

柊「はぁ♡………八幡君成分を過剰摂取しちゃうかも。離れられなくなっちゃったらどうしようか?ねぇ、八幡君?その時は腕じゃなくて身体に抱き着いちゃうかもしれないよ?けど八幡君は優しいから許してくれるよね?」

 

 

あはは、ちょっと変な考えしちゃってるかも。頭を冷やさないと………けど嘘じゃないからね?でも初めて口に出しちゃったかも、八幡君と涼風は寝てるから聞かれてはいないよね?

 

 

涼風(………お姉様、私はお姉様のとんでもない一面を見てしまったのかもしれません。先に謝らせてください、申し訳ございません。)

 

八幡(あの、勘弁して?抱き着くのはいいけど、せめて腕にしてくれ。身体に抱き着かれたら敵わん………それと柊さん、貴女はもう末期のようだ。)

 

 

 

 

 

 



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それぞれの予定

 

 

八幡side

 

 

柊「へっへ〜ん、今日は私が初めての八幡君への挨拶と会話を貰ったからね〜♪悔しい?ねぇねぇ涼風ちゃん悔しい?」

 

涼風「は、はい……悔しいです。(正直、今はそれよりもお姉様の独り言の方が衝撃が強いので、八幡さんとの挨拶と会話は二の次になってます。)」

 

 

あっ、涼風の奴この表情は………きっと起きてたな。柊のあの独り言聞いてたんだろう。いや、なんていうか色々とヤバい表現が混ざってたから反応しづらいよな、うん。分かるよ、俺も起きてたから。

 

 

柊「ふふふ〜ん、今日は朝から良い気分〜♪八幡君成分もたっくさん補充出来たし、なんか良い事起こりそうな予感!ねっ、八幡君♪」

 

八幡「そ、そうだな……何か良い事があるかもしれないな。」

 

柊「……ねぇ、2人共なんかあったの?」

 

八幡「いや、何もないぞ?ほら行こう、おじさん達もう起きているだろうしな。」

 

柊「それもそっか!」

 

涼風「八幡さん、もしや八幡さんも?」ボソボソ

 

八幡「涼風、此処は俺達だけの秘密にしておこう。あの発言は誰にも言えないし、言いたくもない。俺の気持ち、分かってくれるよな?」ボソボソ

 

涼風「はい、痛い程。」ボソボソ

 

八幡「そういう訳だから、頼むぞ。」ボソボソ

 

 

ーーー食堂ーーー

 

 

「「「「「おはようございます、お嬢様方、若様。」」」」」

 

 

柊/涼風「おはようございます。」

 

八幡「お、おはようございます……」

 

御影「やぁ、おはよう。今日も天気が良いし、良い日になりそうだね。」

 

「皆様お揃いになりましたので、お食事のご用意を致します。」

 

御影「お願いね。それにしても、やっぱり3人一緒に来たというか、いつも八幡君に抱き着いてるよね。飽きないのかい?」

 

柊「飽きるわけないじゃない!八幡君だよ?八幡君の腕だよ!?彼氏の腕なんだよ!?飽きるわけがないじゃん!!」

 

御影「………ご、ごめんね?」

 

涼風「すみませんお父様、今日のお姉様は朝から絶好調なようなので、少しだけ情緒が不安定かもしれません。お許し下さい。」

 

柊「ねぇねぇ、なんで私が調子良いとダメみたいな言い方するの?」

 

涼風「………何となくです。」

 

柊「ひっどーい!八幡君も何か言ってよ〜!」

 

 

いや、朝のアレを見たら流石に擁護しにくい……まぁ、適当に言っておくか。

 

 

八幡「そうだな……柊はいつもハイテンションだから、その辺は任せるからな?」

 

柊「なんで否定してくれないのさぁ〜!」

 

紫苑「朝から元気が良いわね、本当に。朝食が来るからもう座りなさい。今日はうんと手伝ってもらうんだから、食べないと持たないわよ?」

 

 

間も無くして、朝食が来たのだが、こりゃまたすごく美味しそうな和食だった。昨日の晩飯は刺身と天麩羅だったが、朝のメインは焼き魚か………卵焼きにほうれん草のお浸しに冷奴、そしてお味噌汁と白米。やっぱ日本………和食はこうでないとな。

 

 

ーーー数十分後ーーー

 

 

御影「さて、今日は街に降りて気になる物や食材の買い足しだね。涼風と柊にも手伝ってもらうからね?八幡君は伊吹山の登山だったよね、登山道具は出してもらってるから、それを使うと良いよ。」

 

八幡「はい、ありがとうございます。」

 

柊「八幡君、私もついて行く?」

 

八幡「大丈夫だから柊はおじさん達と買い出しに行きなさい。ミネラルたっぷりの伊吹山の霊水お土産にして帰るから。」

 

柊「それなら八幡君と一緒が良〜いっ!!」

 

 

全く、甘えん坊だな………だが悪くない!

 

 

紫苑「御影、買う物は決まってるの?」

 

御影「滋賀県といえば、やっぱり近江牛が有名だよね。僕はアレを買いたいと思ってるよ。後は赤こんにゃく、糸切餅かなぁ〜。」

 

紫苑「考える事はほぼ一緒ね。けど私は鴨鍋にも興味があるから、鴨肉が欲しいわね。買って今晩に皆で囲うのも良いと思わない?」

 

御影「おぉ〜それは良さそうだ!柊と涼風は何かあるかい?」

 

柊「うぅ〜ん、滋賀って何が有名なのかよく分からないんだよね〜………私は見て決めようかなぁ。」

 

涼風「私は丁稚羊羹(でっちようかん)に興味があります。後、食べてみたいと思っているのがあります。焼鯖そうめんというのですが………」

 

紫苑「聞いた事ないわね………じゃあお昼はそれを目当てで探しましょうか。八幡君は何かある?欲しい物とか食べたい物。」

 

八幡「俺も滋賀は全く知らないんで任せます。あっ、でも買い過ぎないで下さいね?おじさんが散財しそうな時はお願いしますねおばさん。」

 

紫苑「えぇ、任せなさい。本鮪の時のような事はさせないわ。2週間も生魚を食べられなかったのだから。」

 

御影「うぅ、ごめんよ?」

 

八幡「まぁ、多過ぎず高過ぎず買い過ぎすであればお任せします。これ良いと思った品があればお願いします。」

 

御影「うん、分かったよ。八幡君も楽しんでおいでよ、伊吹山。」

 

八幡「はい、ありがとうございます。」

 

 

そして俺は一足早く登山の準備をする事にした。山頂は酸素が薄く、呼吸が難しいと聞く。急ぎすぎて体力切らさないようにしないとな。それに食べ物も入れて貰ったし大丈夫だとは思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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伊吹山、登山?

 

 

八幡side

 

 

「それでは若様、お気をつけて行ってらっしゃいませ。お帰りになられる際は我々をお呼びください。いつでも馳せ参じましょう。」

 

八幡「ありがとうございます。」

 

「では。」

 

 

………さて、此処が伊吹山登山用のスタート口か。最初の道は普通に道路なんだな。調べたら、2合や3合には休憩出来る施設があるらしいが、そこから上にはそういうスポットはないらしい。それに今は冬だ、ペース配分も考えないと、すぐに体力切れで遭難しちまう可能性だってある。一定のペースを刻みながら登っていこう。

 

 

八幡「よし、じゃあ行きますか。」

 

 

けど、冬だからか知らんが、誰1人として登山客が居ないんだな………誰か1人くらいはいてもおかしくはないと思ったんだが。正月だしな、皆家に居るんだろう。登山しようと山に来てんのは俺くらいか。

 

 

ーーー伊吹山・森林ーーー

 

 

八幡「急に山道になるのかよ……にしても、コレって光苔か?コイツのおかげで迷わずに済む。」

 

 

何故かは知らんが、この苔のおかげで道が分かる。この苔の道をそのまま進んで行けば、いずれかは2合地点に着くんだよな。よし、このまま進むか。

 

 

八幡「けど、そんなに上に来てもいないのに霧が出てきたな。此処の時点で気温差が出てるって事か?でもまだ歩いて10分そこらなのに、こんなにも低い場所で霧って出るものなのか?」

 

 

まぁいい、この苔を進めば間違い無いだろう。

 

 

ーーー伊吹山・森林内奥地ーーー

 

 

八幡「………え、洞窟?何で?しかも手前には何故か(やしろ)がある。こんなのガイドにも載ってなかったぞ?此処って何処なんだ?社に何かないか?」

 

 

………何もない。なんか家紋のような模様をした色違いのお椀が5つ並べてあるだけで、後は何もなかった。だがどうしてだろう、この社は最近作られたのだろうか?かなり立派に見える。苔も生えてないし、何なら綺麗な状態だ。

 

 

八幡「けどこの中進むのか?洞窟の中って基本不気味要素しか詰まってなくね?本当に入っても大丈夫なのか?でも他に道なんて知らねぇし、行くしかないか。」

 

 

俺は意を決して洞窟の中へと足を進めた。意外にも中は歩きやすい道となっていて、苔もあったから道はそれなりに見えた。だが参ったのは行き止まりもある事だった、来た道を戻るのは何とも複雑な気分だ。そして不思議なのは梯子があった事だ。しかも縄梯子や鉄梯子ではなく、木材と縄で作られた昔風の梯子だった。上に引き上げられていたから登る事は出来なかったが、こんなのあるんだな。

 

 

八幡「うわ、何だ此処………すげぇ。」

 

 

目の前には洞窟……いや山中だとは思えない光景が広がっていた。本当に此処は山の中なのかと。奥の方にはちゃんと出口もあった。だが複雑な道が多くあったので、迂闊には進めなかった。それに違う心配もある。

 

 

八幡「動物とか居ないのか、此処?不安になってくる………呻き声とか唸り声とかは聞こえないが、住んでそうな場所だよな。しかも此処にはあの苔生えてないから道が分からん。この場合は用心して進むしかないよな。」

 

 

それに湧き水の場所すらねぇじゃん。ここ本当に合ってるのか?なんか既に道間違えてる気がしなくもないが、進むしかないよな。頼むから何も出てくんなよ、本当に。

 

その後は意外にも、何の動物も出てこなかった。時間は掛かったが、漸く出口の所まで辿り着いた。そのまま前の道へと進んだのだが、外へと出ると目の前に広がっている光景は壮大なものだった。まだ半分が山だったが、それでもかなりの景色になっている。

 

しかし出口から出てのその先の道は崖だった。しかも舗装とか何もされてないから、踏み外したら一貫の終わりだ。下なんて見えない………岩しか見えないぞこれ、凄過ぎる。

 

 

八幡「俺、登山してるのにこんな崖っぷちを登る事になるとは思わなかった………登山ってこういう道も通るのな。」

 

 

いや、けどこんな道通るか?安全そうな道じゃない場所をこれから歩くわけだが、これもう完全に別ルートだよな。だってこんな道あるわけねぇし。まぁでも、進むしかねぇよな………戻ったとしてもどっから行けばいいのかさっぱりだしよ。

 

 

八幡「うわぁ……これ落ちたら終わりだよな、コレ。しっかしこの道って何なんだ?絶対に昨日調べたサイトではこんな場所無かった。かといって伊吹山ではない場所を登ってるなんて思いたくもねぇし………ん?アレって山小屋か?」

 

 

俺が見つけたのは正規ルート?から少し外れて下の道へと進んだ先にある小さな小屋だった。見た目からしてかなり古い。だが此処まで休みなしだったから、休憩するにはもってこいだ。

 

 

八幡「よし、あそこで休憩だな。この先どこで休憩できるか分からない。出来る所で休憩を取った方が身体も休まるし、メンタルも不安定にならずに済むしな。あの小屋を目指そう。」

 

 

ーーー小屋ーーー

 

 

見た目は本当に昔の家って感じだ。俺が今泊まってる別荘よりも昔の建物って感じだ。木で出来た扉を横に引いて中に入ってみると、囲炉裏があって畳もある。今の時代では使われないタイプのキッチンもある。マジで昔の家だな、けどこんな所に住むなよ。よく住もうと思ったな、此処に住んでた人は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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登山の旅はまだ続く……

 

 

八幡side

 

 

小屋があるのは助かったが、この道って本当に頂上まで行けるのか?なんか凄く怪しいんだが………正直に言うと、戻りたい気もしてきた。が、何故かは分からんが戻ったらダメな気がしてならない。本当によく分からないのだが、後退ダメ、前進のみって感じなんだよな。

 

途中にある給水所も無かったし、ホントどの辺りなんだ?登ってるのは確かなんだろうが………

 

 

八幡「まぁでも、こうして休憩が出来てるだけでも嬉しい事だ。お握りうんま〜。」

 

 

料理人の方達が作ってくれたお握り。これとは別にお弁当も作って貰っている。とてもありがたかった。山登り(?)ってかなり体力を使うらしく、途中に挟む休憩がとても大事らしい。因みにお握りは全部で6つあって、今はその内の2つを食べた。後にとっておかないと、スタミナ切れ起こしちまうかもしれないしな。

 

 

八幡「さて、じゃあ行くか。」

 

 

俺は休憩を終えて小屋を出てから再び崖沿いの道を進んだ。別れ道があったりもして、中には行き止まりもあった。そんな道を進むと、また洞窟の中へと導かれた。今度の道も分かれているのが多くあったが、さっきのと違うのがあるとすれば、まっすぐの道や上に続く道がある事だ。つまり1つ選ばないといけないって事になる。

 

 

八幡「まるで整備のされてない迷路だな……さて、真っ直ぐ行くか、上から行くか、引き返すか、どうするべきか………引き返すのはなしだけどよ。」

 

 

………いっちょ神頼みでもしとくか?

 

 

八幡「どーちーらーにーしーよーうーかーなーかーみーさーまーのーいーうとーおーりー………上の道か。」

 

 

俺は指の差した上の道へと足を進めた。すると進んだ先にはさっき通った広い場所が見えた。まさかこんな所でさっきの場所を一望出来るなんてな………

 

 

「キュキュキュ!」

 

八幡「っ!?」

 

 

後ろから突然蝙蝠が鳴いた。ビックリしたぁ〜……危ない危ない、ていうかコレって素通りしても大丈夫なのか?襲って来たりしないか?

 

 

八幡「………失礼しますよ〜。」ソソクサ

 

 

蝙蝠は襲って来なかったが、こんな近くで見たのは初めてだ。しかも野生だろ?大人しいものなんだな。少し進むと、また中へと戻る道があった。しかもその道は岩の一本橋のようにもなっていた。命綱の無い橋みたいなもんだ。しかも下を見てみると、床の無い場所まである。堕ちたら絶対死ぬだろコレ………早く通っちまおう。

 

 

八幡「………この道、高所恐怖症の奴が居たら1歩も進めないんだろうな。俺も怖いし……また分かれ道かよ。」

 

 

上に進む左方向と下に進む右方向だった。やっぱ左か?上に続いてるし。それとも引き返し覚悟で右でも行っとくか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「右に行ってみるか。」

 

 

俺は下へと続く右の道に進む事にした。進んで行くとその道は1本道でかなり長い道が続いていた。そして何か見えたと思ったら………木材と縄で出来た梯子だった。ん?此処って………

 

 

八幡「もしかして最初に発見した板梯子か!これは良い所を発見したぞ!頂上ついたら一気に降りられる!これはツイてるぞ。」

 

 

これは左に行っておいて良かった、多分コレ上じゃなくてまっすぐの道選んでたら絶対見つけられなかったヤツだ!上の道と右の道選んで正解だった!

 

そして俺は士気が上がった状態で道を戻り、反対側の道へと進んだ。同じく1本道が続いたが、やがては外に出た。どうやら今度はさっきの反対側に出たようだ。だがさっきと違って、次は竹が生えていた。こんな所に竹なんて生えるんだな………

 

 

八幡「意外と此処が頂上だったりして?いや、画像で見た時こんな危なっかしい所じゃなかったから、もうちょっと登るんだろう。お?」

 

 

すると、また山小屋を発見した。しかも今度は立地的にはやや安全なのだろうが、今のこの地点では間違いなく1番高いであろう場所に建てられている。いや、ホントどうしてこんな所に建てた?さっきの山小屋もそうだったが、建てる場所おかしくね?

 

 

八幡「お邪魔します〜………うわっ、此処の方がさっきよりも汚いな。けど休憩するなら此処しかないよな。よし、じゃあ2回目の休憩は此処だ。さて、あんま腹は空いてないけど、1つくらいは………ん?なんだアレ?」

 

 

俺は部屋の隅っこにある箱のような物を見つけた。少し細長で平べったい箱だ。木材の箱だが、端には金属も使われている事から、宝箱?いや、千両箱って所か?これで玉手箱は違うしな。だが鍵はついていないようだ。

 

 

八幡「………」

 

 

気になる、中何入ってんだろう?いや、空の可能性だってあるし、曰く付きかもしれない。けど開けてみたい………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ええい、ままよ!!

 

 

俺は思い切って箱を開けてみた。すると中は………

 

 

八幡「瓢箪と……なんかの爪?牙?の御守り?」

 

 

赤い紐が巻かれていて、赤く染められていて、黒い線のような模様が描かれた瓢箪に、何か動物の牙のような、爪のようなのを細い紐で御守りにしたような物が入っていた。

 

 

八幡「………コレって持って行ってもいいのか?でも長年このままだったんだよな?何か取り憑いてたりしてたら………」

 

 

ヤッベ、開けて何かあったはいいけど、これどうすればいいんだ?

 

 

 

 



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案内人?

 

 

涼風side

 

 

涼風「大丈夫でしょうか、八幡さん………」

 

御影「確かに心配だけど、ずっと気にしていたらキリがないよ。今は僕達の出来る事をするのと、楽しむ事だよ。」

 

柊「そうだよ涼風、八幡君が心配っていう気持ちは痛い程分かるけど、今は楽しまなくっちゃ!」

 

紫苑「えぇ。きっと八幡君も今頃は休める場所で山から見下ろせる位置でおにぎりでも食べているんじゃないかしら?」

 

 

だといいのですが………

 

 

御影「ほら涼風、折角の焼鯖の旨味が逃げちゃうよ?早く食べよう。」

 

涼風「……はい、お父様。」

 

 

屋敷から出て街へと駆り出した私達は今夜の食材とお土産を買い、今は昼食に名物の焼鯖そうめんを食べています。しかしやはり気になってしまいます、八幡さんが無事に山登りを出来ているかどうか………お姉様も気丈に振る舞っていますが、心の奥底では大変心配なさっていると思います。八幡さん、ご無事でいて下さいね?

 

 

涼風sideout

 

八幡side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、2回目の休憩を終えて出発しました比企谷八幡です。入口とは反対側にも扉があったからそこから抜け出すと、階段があって、下に続いていた。ずっと降りて行くと、目の前には今にも崩れそうな1本橋があった。いやだって見ろよ、木なんてボロッボロだぞ?縄だって緑の苔生えてるし………マジで何年前のヤツ?だが此処以外に道なんてない。渡るしかないようだ………しかも下は見えない程に霧がかっている。絶対終わりだよな、落ちたら。

 

 

八幡「頼むからバキッって言うなよ……ギイィィとかも要らないからな?冗談抜きで。」

 

 

はぁーーー言ってる、言ってるよ!ギイィィって容赦の欠片もなく響いてるよ!お願いだからもうやめて!頼むからもうやめて!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんな思ってる内に渡り切ってしまった。かなり揺れていたが、止まらないで行くとあっという間だったな。多分止まらないで進んだのが正解だったんだな。

 

そして渡った先はまた広場みたいなところに出た。だが今度は洞窟の中じゃないから広々としているように見える。デッカい樹があったり苔のついた岩もあるし、草だって生えてる。こんな場所あるんだな………けどさ、登山ってこんなにスリルがあるものなのか?絶対俺が今まで想像してた登山とは根本的にかけ離れていると思う。

 

 

八幡「………えぇ、なんかすげぇ階段あるんだけど。あれ登んないといけないのか?うわぁ………気が滅入るけど、なんか1番上に建物らしき建造物があるし、行ってみるか………その前に、何かあるぞ?洞窟?」

 

中に入るとすぐに行き止まりなのだが、なんか石で出来た大仏がいくつかあって、真ん中には祠のような物まである。それと何故か石で積み立てられただけの何か(本当に石だけ。)があった。え、これ何かしなきゃダメか?けど供え物なんてねぇしな………握り飯3つくらいしかないぞ?後は弁当と非常食くらいしか無いしなぁ。でも折角だし、何かお供えしよう。

 

 

八幡「まぁ無難にお握りだよな、これをちょっとずつ分けて………あっ、コレって中身あるのか?」

 

 

俺はさっき千両箱から見つけた瓢箪と御守りを持っていく事にした。そして今、その瓢箪の中身がないかどうかを調べる。それとなく重いから中身はあるとは思うけどなぁ………おっ、栓抜けた。よし、かくに………!!?

 

 

八幡「酒くっさ!!?うっわ何だこれ!?こんなの絶対飲めないだろ………けどまぁお供えするんだったらスポドリよりも酒の方だよな。アレ、匂いの割には意外と綺麗な透明色なんだな。てっきり濁りが酷いのを想像してたんだが。」

 

 

よし、お供えとしては足りないだろうがこれで良いだろ。取り敢えず手を合わせてお礼しとこ。

 

 

八幡「よし、じゃあ登るとしますか。それじゃあ失礼します。」

 

 

そして俺は一応出る時にも一礼して洞窟から出た、のだが………初のアクシデントだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白い猪「………」

 

 

目の前に白い猪が居たのだ。マジでヤバい、猪って敵を見つけたら突進して来るってヤツだろ?本当にマズくないか?猪の敵意を無くす方法って何だ?スマホ見たい!けど此処圏外だから見れない上に開いてる内に突進してきたら終わりだ!ヤベェよどうする!?

 

 

白い猪「………」トコトコ

 

八幡「………え?」

 

 

だが俺の予想に反して、白い猪は目の前の階段を駆け上がって行った。そして階段を登った先で俺の事を見下ろしていた………10秒経ってもずっと。

 

 

八幡「え、ついて来いって事?」

 

白い猪「………」ジィ~

 

 

俺はよく分からないまま階段を駆け上がった。正直体力の使う事はしたくないが、この白い猪が駆け上がったのに、俺だけのんびり歩くわけにもいかないから、駆け上がる事にしたのだ。

 

しかしその後の白い猪は歩きながら階段を上がって行った。今度は離されないように俺もその後をついて歩く事にした。階段を登り終えると、さっき下から見えていた建物へと辿り着いた。中には何も無く、ただ扉だけがあった。

 

 

白い猪「………」ジィ~

 

八幡「……っ!あぁ、はいはい。今開けますね。」

 

 

この猪、賢くね?人に飼われてるとかじゃないよな?人を使うの上手くない?

 

 

俺は扉を開けて白い猪を通れるようにした。すると猪はトコトコと歩き始め、また止まった。目の前にはまた扉があるからだ。だが今度のは願掛けが吊るされてある扉だった。内容が気になるが、今は待っている猪が居るから後回しだ。

 

 

俺は願掛けのついた扉を開けて再び猪を通れるようにした。そして俺もそれに続いて中へと入った。そこはまた広場になっていたのだが、今まで見てきた1回目と2回目の広場とは大きく違っていた。

 

 

 

 

 

 

 



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白い猪の返礼

八幡side

 

 

恐らくこの洞窟の最深部であろう場所に辿り着いたのだが………今までのと明らかに違う。なんていうか、俺でも分かる。ここ凄い神聖な場所だ。普通の人が立ち入って良いような場所じゃないだろう。この白い猪、何のつもりで此処に………アレ、何処行った?

 

 

白い猪「………」ジィ~

 

 

………どうやら案内はまだ終わっていないようだ。しかしあの猪はアルビノなのか?白い体毛なんて滅多に居ないだろう。それにより目立つのはあの赤い瞳に牙だ。絶対怒らせないでおこう。

 

だから雄叫びと突進をされる前に早く猪の方に行かないとな。何だかどこかに案内してくれるようだしな。これで頂上だったらすごくありがたいんだが、猪にそこまでの頭は無いだろう。

 

 

猪が上の方へと登ると、そこにはまた祠があった。此処にもお供えしろって事?

 

 

白い猪「………」トコトコ

 

 

………なんか祠に近付いて何かをし始めたぞ、一体何してるんだ?もしかして祠の扉開けようとしてる?あっ、開いた。

 

 

白い猪「………」コクコクッ

 

 

いやいや、うんうんじゃなくて!え、取っていいの?けど中にあるこの青いお椀のような物、本当に取っていいの?ダメじゃないの?

 

 

八幡「あの、本当に取っていいのか?」

 

白い猪「………」コクコクッ

 

八幡「………じゃあ、遠慮なく。」

 

 

俺は祠の中にあった青いお椀のような物を貰った。けど何で?何でこんな事になったの?この白い猪に案内されるがままに来てたらプレゼントされたよ!?俺何かした?お供えくらいしか思いつかないんだけど!?

 

 

白い猪「………」トコトコ

 

八幡「え、次?」

 

 

白い猪は反対側の高台へと向かって行った。移動速度が俺と同じくらいだからついて行きやすい。何しろこの猪、俺の身長より少し低いだけのデカさだ。だからかなりデカい………

 

そして反対側へと着くと、またも祠があった。猪はまたもや開けようと頑張っていた。え、またプレゼント?いやもう充分ですって。でも歯向かったら何されるか分からないから黙ってよう。そして開いてからの………

 

 

白い猪「………」コクコクッ

 

八幡「あの、どうしても?」

 

白い猪「………」コクコクッ

 

八幡「………ありがとうございます。」

 

 

次に中に入っていたのはお椀や茶器ではなく、なんか水晶のような結晶だった。しかも1つや2つじゃない、色取り取りな結晶があった。分かるだけでも、透明、白、黒、紫、青、黄本当に色々だ。いやこれどれ取ればいいの?気に入ったのだけ貰おうかな?

 

 

八幡「じゃあ………この透明なのを1つ。」

 

白い猪「………」ブンブンッ!

 

八幡「え?」

 

 

白い猪は首を横に激しく振って否定するかのような仕草を取った。え、コレじゃダメなの?

 

 

八幡「じゃあ………この紫?」

 

白い猪「………」ブンブンッ!

 

 

アレ、これもダメか………じゃあどれなら良いんだ?その後、全部手に取ってみたが、全部首を横に振られた。どうして欲しいんだ?聞きたいけど、なんか強請ってるみたいで気が引けるしな………しかもジッとこっちを見てるし。

 

 

八幡「………2つ?」

 

白い猪「………」ブンブンッ!

 

八幡「えっと、欲張ってるわけじゃないけど、一応な?全部じゃないよな?」

 

白い猪「………」コクコクッ!!

 

 

うっそおぉぉぉん!!?全部!?コレ全部!!?いやいやいやいや、ダメだって!!1つでいいって!!こんなの持ち帰ったら柊達から「泥棒したの?」って思われちまうよ!!

 

 

八幡「いや、でも俺1つで充分「ブルッ!」はい分かりました、ありがたく全部頂きます。」

 

 

いやだって聞いた?「ブルッ!」って………なんか暗に『いいから早よ取れ。』って急かされたように感じる。

 

 

八幡「それじゃあ、全部頂きますね?なんかすいません、こんな頂き物………」

 

白い猪「………」トコトコ

 

 

しかし、この猪は一体何なんだ?突然現れたかと思ったら何かをするわけでもなく、俺に青いお椀に水晶数種をくれるとても良い猪だ。何もお返し出来ないのに。そして俺はまた1人歩いて行く猪について行った。すると今度はさらに上へと登った。そしたら雲の上にいるかのような景色が広がっていた。しかもそれでいてしっかりと景色は見渡せるという最高の場所だった。ヤバい………これが頂上かぁ〜。

 

 

八幡「すげぇ………」

 

 

俺はその後、写真を連続で撮って景色を楽しんだ。そして頂上に着いた所で………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「はぁ〜こんな壮大な景色を見ながら昼食が出来るなんてな………登ってきた甲斐があった。あっ………ご一緒します?」

 

白い猪「………」コクコクッ

 

八幡「じゃあお礼にもならないですけど………コレちょっとですけどどうぞ。」

 

 

俺は取り出した弁当の中身の具材を少しずつ分けてから猪の近くの地面へと置いた。猪はまるで動物がするとも思えないような行儀の良さで食べていた。絶対飼われてたでしょ?

 

 

八幡「……いただきます。」

 

 

俺の隣で白い猪が食事をご一緒しているという奇妙な体験をしている。あっ、飲み物欲しかったらどうしよう………俺の飲み物スポドリだし、この瓢箪の中の酒か?けど絶対怒らせるよな………

 

 

 

 

 

 

 

 



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登山終了?

 

 

八幡side

 

 

景色を楽しみながら昼食を食べていても、やはり気になってしまう白い猪の存在だ。この猪、分けた弁当を食べ終わったにも関わらず、俺から離れようとはしないのだ。それどころか、その場で横になって俺を待っているかのような仕草を取っている。何故分かるかって?俺から目を離さないからだよ。ジッと見てるんだよ?

 

流石に俺も食べ切れない弁当の量でもないから、程なくして弁当全てを平らげた。そしてスポドリと一緒に口の中に入れた具材を飲み込んでから………

 

 

八幡「ふぅ……ご馳走様でした。やっぱ弁当も美味かったなぁ〜。」

 

 

俺が食べ終わるのを察知すると、白い猪は立ち上がってその場から歩き出した。俺について来るようにジャスチャーっぽいのをしてから。まだ何処かに案内する場所があるのか?

 

 

八幡「山頂に着いたから後は下山するだけなんだが、他に行く所ってあるのか?」

 

 

俺は猪の後をついて行く事にした。行く道を戻って行くだけだったのだが、さっきの大きな樹のある広場に着くと、猪は洞窟の中へと入っていった。その洞窟は俺がさっきお供えした時に入った小さな洞窟ではなく、もっと大きな洞窟だった。こんなデカい洞窟見つけられなかった俺も俺だが、この先に何かあるのか?

 

 

崖沿いの道を進んで暫くすると、何やら小屋のような場所に辿り着いた。猪は小屋の扉を開けて奥へと進んで行った。中は予想通りの時代を感じる作りだったが、猪は奥の扉もすぐに開けた。すると奥には池が………いや、温泉があった………え、温泉!!?

 

ちゃんと湯気出てる………それに何だかちょっとだけ白っぽい緑色をしているというか、見た事のないような色だ………え、入るの?

 

 

白い猪「………」コクコクッ

 

 

………その通りでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は裸にハンドタオルを持って、その温泉へと出向いた。あっ、荷物はさっきの小屋に置いてきたから大丈夫。けどこの猪、律儀に待ってるんだな………先に入ってるものだとばかり思ってたが、まぁいい。此処までしてくれているんだから、そのご厚意は素直に受け取っておかないとな。

 

 

チャプッ

 

 

八幡「おっ、俺好みの湯加減だ。あっ、あああぁぁぁぁ〜………良い湯だぁ〜。」

 

 

ヤバい、メッチャ気持ちいいぞコレ………何でだ?登山したからじゃないよな?体育で疲れた時とか、色々ありすぎた時に入る風呂よりも格段に気持ち良いぞ!効能とかあるのか?ヤバい、なんか動きたくないかも………

 

しかもいつの間にか猪まで入ってるし。

 

 

八幡「あぁ〜……なんかありがとうございます、こんないい温泉まで。初登山がこんな最高なものになるなんて思わなかったですよ。」

 

白い猪「………」ノソォ~

 

 

完全リラックスモードなのか、猪は顎を岩に乗せたまま目を瞑って動かなくなっている。メッチャ気持ち良さそうじゃん………最初はちょっと怪しい登山になったが、後になるにつれてもっと変になってたなぁ………特に白い猪が現れてからは。

 

 

だって誰も思わないし信じないだろ、猪に案内されながら登山するって。コイツ寝惚けてるんじゃないかって言われたり思われたりしておしまいだろ。

 

 

八幡「けどこんなに気持ち良いのって続くもんなのか?ずっと良い湯が続くって夢みたいだな………このくらいなら身体傾けても落ちないよな、少しだけ目を瞑るか。」

 

 

俺はもっとこの気分を堪能したいからその場で少しだけ楽な体勢を取ってから目を瞑った。

 

あぁ〜極楽………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『久方ぶりに楽しきほどをふられしぞ、心の清き人ぞ。また会ふべきを楽しみにせり。』

 

(久しぶりに楽しい時間を過ごせたぞ、心清き人間よ。また会えるのを楽しみにしている。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………ん?んんぅ…寝ちまってたのか、え?」

 

 

さっきまで俺は温泉で寝ていた筈……なのに俺は社の前に居た。しかも身支度も来た時の格好と同じだ。え、じゃあもしかして今までのって夢か!?

 

 

俺はバッグの中身を確認すると、そこには山の中で見つけた瓢箪、ガラス細工、結晶数個があったが、何かの御守りだけが無くなっていた。もしかしてあの御守りって………あの猪の?

 

 

八幡「俺は何をして……どうなってんだこりゃ?」

 

 

俺は最初に入った洞窟の方へと目をやると、あった筈の洞窟の道が瓦礫で塞がれていた。嘘だろ、俺が通った時はこんなの無かったのに………けど登った時とは違って身体が異常なぐらい軽い。あの温泉に入ったから?だとしてもだ、俺はどうやってこの服を着て此処に?あの猪が?いや、流石に無理だ。あの猪がどれだけ賢くても人間の服を着させられるとは思えない。

 

 

八幡「なんかこっちに来てから変な事ばかり起きてるな。しかもそれが悪い事でも良い事でもない、どちらとも言えないような事だ。けど山登りは終わったし、俺も帰るか。携帯携帯………」

 

 

おっ、あったあった。さて、これで別荘の電話に連絡すれば良かったんだよな。伊吹山の霊水は持って来れなかったが、それ以上の物をお土産に貰ったし、それで我慢してもらおう。

 

 

けど、あの白い猪って本当に何者だったんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『二千年前に会ひし人とは異なるめり、主ならば雹を下す事もあらざらむ。』

 

(2000年前に会った人間とは違うようだ、主ならば雹を下す事もなかろう。)

 

 

 



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白い猪の正体

 

 

八幡side

 

 

迎えの車が来て、俺は熱い歓迎を受けた後に車に乗って屋敷へと戻っている。けど、本当に不思議な事だらけな登山だった。特にあの白い猪だ、あの猪って一体何なんだ?あの伊吹山に住んでるとか?けどその住んでるだけの猪が人間の言葉を理解出来たり、襲わずに物を上げたり案内したりなんて出来るわけがない。

 

こりゃおじさん達にも相談か?した方がいいよな、だって俺には分からない事だらけだし。おじさん達の方が詳しいだろう。

 

 

「若様、何やらお考え事をなされているようですが、何がございましたか?」

 

八幡「え?あぁ………えっと、伊吹山の登山ってキツい方なのかなって。」

 

「思っていた登山と違いましたか?」

 

八幡「はい。もうちょっと苦労するのかなって思ってたので。(途中から猪に案内してもらったとは言わないでおこう。)山登りって体力使うって聞きますし。」

 

「そうですね……伊吹山は登山許可が降りている山に比べると、そこまで高い山地ではありませんからね。最も高い日本高山の富士山と比べても半分以下の高さしかありませんから。」

 

八幡「そうなんですか………」

 

 

けどあの道、正規ルートではないよな。だって洞窟からスタートする登山なんてあるのか?

 

 

八幡「あの、ちょっとした疑問なんですけど、洞窟からスタートする登山ってあるんですか?」

 

「私は聞いた事がありませんね……登山と聞くならば、普通は作られた道を山道に沿って行くものでは?」

 

 

まぁ、普通はそうだよな……普通は。

 

 

八幡「そうですよね。」

 

 

ーーー別荘ーーー

 

 

八幡「帰って来れたか。」

 

「登山からの無事帰宅、おめでとうございます。旦那様方は既にお帰りになって中でお待ちです。」

 

八幡「分かりました。」

 

 

すぐに行ってやらないとな、きっとお姫様が待ち焦がれてるだろうし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「只今戻りました。」

 

柊「あっ、八幡君っ!!!」ダキッ!!

 

涼風「八幡さんっ!!」ダキッ!!

 

八幡「おぉ……ただいま。」

 

 

いきなり腕に抱き着いてくるなよ……気持ちは分かるけども、これじゃ落ち着けないって。

 

 

御影「無事に帰って来れたみたいで良かったよ。遭難しませんようにって心の中で願っていた甲斐があったよ。」

 

紫苑「そうね、無事に帰って来てくれて本当に良かったわ。」

 

八幡「どうも。」

 

御影「それでどうだった?頂上からの景色は?」

 

八幡「確かに凄かったんですけど、その事で少しだけおじさん達に聞きたい事があるんです。」

 

紫苑「あら、何かしら?」

 

八幡「伊吹山に白い猪が居るって知ってます?」

 

柊「白い猪?なぁにそれ?」

 

八幡「いや、ちょっとな………」

 

御影「うぅ〜ん……聞いた事ないなぁ。それに白い猪でしょ?野生でいるとは思えないけどね〜……」

 

紫苑「私も聞いた事がないわね………宮間、貴方はどうかしら?」

 

宮間「さぁ、私にも分かりかねます。」

 

 

結局全員知らないか………けどあの猪がただの猪には到底思えない。

 

 

涼風「ですが、どうしてそのような事を?」

 

八幡「あぁ、登山してる内に不思議な事が連発で起きてな。それが起こったのが山に入って大仏が祀られてる洞窟があって握り飯と酒を備えたんだよ。登山を再開しようとしたら、洞窟出た所に白い猪が居たんだよ。大きさは大体俺より低いくらいだった。」

 

柊「それってすっごく大きいじゃん!!大丈夫だったの!?」

 

八幡「あぁ、俺は何もされてない。むしろその猪には登山の案内をしてもらったくらいだ。」

 

 

それからも俺は登山で起こった不思議な出来事を皆に説明した。だがやはり微妙な反応ばかり返ってくる。まぁ当然だな、信じろっていうのが可笑しい。

 

 

「若様、それはもしや伊吹山の神の化身、伊吹大明神ではないでしょうか?」

 

八幡「伊吹……大明神?」

 

「はい。かの伊吹山にはこのような逸話があります。伊吹山の神を倒そうとする男がいました。その男は腕に自信があるのか、『素手で倒してやる。』と豪語し自らの得物を置いて行きました。山に登って暫くすると、目の前に白い猪が立ちはだかったようです。男はその白い猪の事を『この山神の家来だな、帰りに相手をしてやる。』と言い捨て、白い猪を威嚇したのです。すると突然空から氷雨、つまりは雹が降り始めて男の行く手を阻みました。白い猪の正体は山の神の家来ではなく山の神そのものであり、その怒りを買ってしまったのです。雹に打たれ体力を大きく奪われた男は何とか麓まで下山して湧き水に足をつけて、体力を回復させたのだそうです。その湧き水こそが、現在の伊吹山の霊水で有名になっているというわけです。これが伊吹山の神の逸話でございます。」

 

 

………マジ?じゃあ俺が会ったあの猪って、伊吹山の神様?

 

 

「因みに言いますと、伊吹大明神に喧嘩を売った男の名前ですが、かの有名な皇族のヤマトタケルでもあります。」

 

 

うっそヤマトタケル!!?超有名人じゃん!!

 

 

御影「そんな逸話があったんだね………けどそれじゃあ八幡君は伊吹山の神様に会ってしまったって事になるよね?」

 

「はい、そうなってしまいますね。」

 

 

いやいや軽い、そうなってしまったで済まされるような内容じゃないですって。神様だよ?ご先祖様の次は神様だよ?一気にグレードアップし過ぎでしょ!

 

 

紫苑「八幡君、貴方霊感強いのね?」

 

 

いいえ、強くないです。ただの一般ピーポーです。

 

 




あの白い猪………神様でした。


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お土産?

 

 

御影side

 

 

「それと若様、お荷物の中に若様が持って帰られた物であろう品があるのですが、如何致しますか?」

 

八幡「あっ、すみません忘れてました。今すぐ取りに行きますね。」

 

「畏まりました。トレイを持って参ります。」

 

八幡「あっ、ありがとうございます。」

 

 

持って帰ってきた?八幡君は伊吹山で一体何をしてきたんだろう?宝探しでもしてきたのかな?

 

 

涼風「何だか不思議です、私達の居ない場所で八幡さんの身に色々な事が起きているのが。」

 

柊「そうだよね〜それに八幡君自身は何ともないんだよね、おかしなくらいに。」

 

紫苑「最初は御影のお義祖父様から始まって、次は伊吹山の神様だものね。八幡君ったらどうしちゃったのかしらね?」

 

御影「八幡君本人には特に異常が無いようだからこのままでも大丈夫そうだけどねぇ………」

 

紫苑「そうね………けれどさっき、山から持ち帰ったって言ってたけれど、八幡君って伊吹山に登山しに行ったのよね?山荒らしとかしてないわよね?」

 

柊「いや、そんな事したら今もこの屋敷の辺りにだけ雹が降ってると思うよ?」

 

 

お、恐ろしい事を言うなぁ我が娘は……けどさっきの逸話の内容に沿うとしたら、そうなっててもおかしくはないよね。けれど伊吹大明神も凄い事をしたよね、まさか雹を降らせて山から追い払っちゃうんだからね。

 

 

ガチャッ

 

 

八幡「すいません、今戻りました。」

 

紫苑「えぇ、おかえ………八幡君、それは?」

 

八幡「山の中で発見したのと、さっき言ってた猪………いや、山の神から頂いた物です。」

 

 

八幡君がトレイに乗せて持って来たのは、とても綺麗な青色で出来たお椀のような物に、6種類の何かの宝石の原石のような物に加えて、八幡君が腕にぶら下げている大きな瓢箪があった。

 

 

涼風「あの、八幡さん?八幡さんは伊吹山へ登山をしに行ったのですよね?」

 

八幡「いや、疑うのも無理ないと思うが、トレイに乗ってるのは本当に貰った物だから。瓢箪は別な、瓢箪は小屋の中に千両箱があって、それを開けたら入ってたから持って来た。」

 

御影「しかし、これはまた見事な物だね。このお椀………いや、茶器かな?青というよりも瑠璃色に近いね。それにこの模様も品性を感じられるよ。不思議な茶器だね。」

 

柊「この原石も凄いよ〜全部一緒の種類なのかな?だとしたら凄いよね、ここまで色が違うものなんだって思っちゃうよ!」

 

涼風「はい、とても綺麗です!」

 

紫苑「そうね、どれも品質の良い物ばかりだわ。それで八幡君、その瓢箪は?」

 

 

そうなんだよね………なんか赤い上に黒い模様がついてる。トレイに乗ってる物とはまた違う迫力があるね。

 

 

八幡「おじさん、おばさん、コレの中の匂い嗅いでみて下さい。最初に言っておきますけど、ものすっごい酒臭いです。」

 

 

八幡君は瓢箪の栓を抜くと、僕達の方に注ぎ口を向けて来た。興味もあったから僕はその注ぎ口に手を近付けて鼻先に向かって仰ぐようにしてみた………んだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御影「っ!!?な、何だいコレ!?物凄く臭いじゃないか!!酒臭いなんてレベルじゃないよ八幡君………コレ一体何なんだい?」

 

八幡「いや、俺も分かんないんですよね。酒だっていうのは分かりますけど、俺飲めないし………というよりも飲みたくありませんし。」

 

 

うん、僕もこれは飲みたくないよ………1回仰いだだけでもこれだけ匂いが濃いなんて思わなかった。

 

 

御影「紫苑、やめておいた方がいいよ。大人の僕でさえもこの匂いはダメだから。八幡君、栓をしてくれないかい?」

 

八幡「分かりました。」

 

 

うぅ……まさかこんな目に遭うなんて思わなかったよ。けどこれで済んでよかったよ。もし直接嗅いでいたら、気持ち悪くなっていたかも………匂いだけで酒酔いしてたかもしれないし。

 

 

紫苑「それにしても色んな物を持って帰ってきたものね。コレ一体どうするの?」

 

八幡「猪の神様には申し訳ないですけど、コレがどんな物なのか気になるので鑑定したいんですよね。けど、この辺りに鑑定出来る所なんてないですもんね。もしくはその専門の職をしている人とか。」

 

御影「そうだね……この辺りには無いかもね。八幡君、その鑑定だけど、千葉に戻ったらやって貰おうかい?宝石や骨董品を専門とする人に知り合いが居てね、その人に見てもらった方が早いと思うんだ。」

 

八幡「じゃあそれでお願いします。」

 

柊「けど本当に綺麗………私原石って初めて見たかも〜。私はこの紫がお気に入りかなぁ〜♪」

 

涼風「私は白です。他のも良い色をしていますけど、白が1番目に映りました。八幡さんはどれがお気に入りですか?」

 

八幡「俺は………普通に透明だな。1番見慣れた色だし、落ち着く。」

 

御影「僕は青だね。さっきの茶器を見て思ったけど、気品のある色に見える。」

 

紫苑「私は黒ね。真っ黒ではない所がギャップに感じるわ。」

 

八幡「黄色も良い味出してますけどね。好みが分かれますよね、やっぱり。」

 

 

これは何だか帰ってからの鑑定がちょっと楽しみになってきちゃったよ………結果はどうなっても良いけど、こうして見るだけでも楽しいしね。どれも綺麗だし。

 

 

 

 



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年末の鍋

 

 

柊side

 

 

八幡君がお土産として伊吹山から持ってきた物の品評会も終わった所で、私達は食堂に集まって晩御飯の用意をしている。何せ今日は今年最後の12月31日!だから最後は皆で用意しなくちゃね!それにお買い物してきたのは私達だし、用意もしなくちゃいけないし!

 

 

 

 

 

八幡「………おじさん、俺達は男だからどっしり構えて待ってろだそうですよ?」

 

御影「………うん、そう言われたね。」

 

八幡「料理人達は別なんですかね?」

 

御影「あぁ〜………そうなんじゃない?」

 

 

 

 

 

柊「♪〜♪〜はい涼風、こっちのお皿は完了だよ〜残りはどう?」

 

涼風「はい、滞りなく進んでいます。皆様のサポートのおかげです。」

 

「いえいえ、お嬢様方の調理技術もお見事なものです。感服致しました。勿論、奥様も。」

 

紫苑「ふふふっ、ありがとう。」

 

 

 

 

 

八幡「………おじさんっておばさんから怒られた事ってあります?」

 

御影「う〜んとね、凄いお買い物をした時かな。今思うと流石にアレはやり過ぎたと思ってるよ。」

 

八幡「何やったんです?」

 

御影「牛丸々1頭お肉に捌いたのを買ったんだ。色んな部位のがあって楽しめるかなぁって思ったんだけど、お値段が100万円だったんだ。」

 

八幡「いや買う前に気付いてくださいよ………食材に100万円って普通はかけないですからね?」

 

御影「うん、『私を太らせる気なの!?』って烈火の如く怒られちゃったよ………」

 

八幡「そりゃそうなりますよ、この前の本鮪もそうだったでしょ……おじさんもしかして食べ物の買い物する時って途端にポンコツになります?」

 

御影「うっ………言わないでよ。」

 

 

 

 

 

紫苑「はい、鴨肉盛り合わせの完成よ。これを野菜と一緒に鍋に入れればいいのよね、具材は大体の鍋料理と一緒だから混乱しなくて済むわ。」

 

涼風「画像でも見ましたが、見た目はすき焼きを薄くしたような感じですね。しゃぶしゃぶにも似ているような………」

 

柊「じゃあその中間って事にしようよ。」

 

紫苑「大雑把ね………まぁそういう事にしておきましょう。さて、鴨肉はまだ余ってるのがあるけど、どうしようかしら?」

 

 

 

 

御影「………ねぇ八幡君、今更ながら気付いた事を言ってもいいかい?」

 

八幡「………何です?」

 

御影「僕達って厄介払いされただけじゃ「それ以上は言ったらダメなヤツです。」………うん、そ、そうだね。」

 

八幡「俺はいいですよ、役に立てそうもないって自覚ありますから。俺の料理レベルなんて小学生止まりなんで。」

 

御影「………僕も最近は料理してないからなぁ。これを気にまた始めようかな?」

 

八幡「ていう事はそれなりに出来るんですか?」

 

御影「………八幡君とあまり変わらないかも。」

 

八幡「え、出来る風な言い方してそれですか?期待した俺がバカみたいじゃないですか………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「八幡君〜お父さ〜ん、お待たせ〜♪」

 

涼風「お食事のご用意が出来ました!」

 

八幡「おぉ、準備ありがとな。俺も手伝えればよかったんだが、済まんな。」

 

紫苑「いいのよこれくらい。こういう時くらいは私も普段しない事をしなきゃって思うもの。それにこういうのは女の仕事だもの。男はどっしりと構えていれば良いわ。」

 

御影「八幡君も言ってたんだけど、料理人達はいいのかい?」

 

紫苑「だってそれが仕事じゃない。」

 

御影「……正論だね。」

 

八幡「柊、鍋ってまだあるのか?持ってくるぞ。」

 

柊「ううん、これで全部。八幡君は後片付けの時にお願いしても良いかな?」

 

八幡「おう、任せろ。」

 

 

私達はセットしてあったコンロの上に鍋を置いて火をつける。元々それなりに温めておいたから食べるのに時間はそんなにかからないと思う。

 

 

ーーー数十分後ーーー

 

 

柊「オ〜プンッ!おぉ〜良いね〜ちゃんとグツグツしてるっ♪どれどれ………ズズッ、んー……うん、美味しい!ちゃんと出来てる!」

 

紫苑「完成したみたいね、それじゃあ頂きましょうか。じゃあ御影、挨拶。」

 

御影「うん、じゃあ手短にね。今年もあと数時間で終わりを迎えるけど、それまで有意義な時間を過ごそう!今年最後の晩ご飯に乾杯っ!!」

 

 

『乾杯〜!!』

 

 

何だか早く感じるなぁ〜……今年ももう終わりなんだよね。八幡君と一緒に過ごした日が多いから短く感じたのかなぁ?けど、そんな事今はいいよね!今は美味しい料理を楽しまないとっ♪

 

 

柊「八幡君、鍋以外にも欲しいのがあったら言ってね?私が取るから!」

 

涼風「八幡さん、反対側の方は私にお任せ下さい!お取りいたしますので!」

 

八幡「じゃあその時は言うから任せたぞ。」

 

柊/涼風「うん♪(はい♪)」

 

 

さて、じゃあ私も初めての鴨鍋を頂きましょう♪

 

 

柊「あむっ………んんぅ〜あっ、美味しい♪臭みがあるのかと思ってたけど、そんな事ないんだ!」

 

紫苑「えぇ、美味しいわ。」

 

涼風「これならお刺身やロースも美味しく頂けそうですね。」

 

八幡「そうだな。俺も鴨肉は初めて食べるが、少し楽しみになってきた。」

 

御影「それじゃあ此処にある料理全部無くす勢いで食べちゃおうか!」

 

 

お父さんの宣言通り、私達はテーブルにある食材を残す事なく全て平らげた。うん、とても美味しかったです、ご馳走様でした♪

 

 

 

 

 

 

 

 



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明け

 

 

八幡side

 

 

八幡「………どの角度から見ても綺麗だよなぁ、コレ全部。何の宝石なんだろうなぁ?」

 

 

俺は今、1人自分の部屋で山の神様から貰った6種の原石をついてる電気を覗かせるようにして見ていた。透明なヤツも意外と透き通って見えるのだ。加工してアクセサリーにするのもアリだろうが、このままの形のまま残しておくのも縁起があって良い気がする。まぁ先ずは千葉に帰ってからの鑑定だな。

 

 

八幡「けど、御守りみたいなのがなくなってたのは、自分のだったからか?そうでなければ持ってくなんてあり得ないしな。他の持ってきた物と貰った物はあったってのに………まぁでも別に良いよな、これだけはって思いだったんだろう。」

 

 

ガチャッ

 

 

柊「あっ、八幡君此処に居たんだ。あのね、年越し蕎麦なんだけど、八幡君は蕎麦に何かトッピング入れる?ネギは元々入れる予定なんだけど、結構色々あるでしょ?揚げ玉とか天ぷらとか、蒲鉾に油揚げって入れようと思えばかなりあるでしょ?何かある?」

 

八幡「そうだな、俺は天ぷらがあればそれでいいぞ。『これがなきゃ年越せねぇ!』とかは無いから。」

 

柊「あはは、そっか。因みにだけど、鴨肉の天ぷらも用意してあるんだ。これは量があるから全員分あるって事になってるから。」

 

八幡「そうか、じゃあ他は特に無いな。」

 

 

それにしても、やっぱり綺麗だな。

 

 

柊「原石ちゃん達、見てたの?」

 

八幡「まぁな。コイツ等の正体って何だろうって思ってる内にな。光に浴びせながら見てたらこうなってた。あっ、要件ってまだあったか?」

 

柊「ううん、今のだけ。八幡君も幽霊とか神様に会ってたりとかしてない?」

 

八幡「あぁ、今の所大丈夫だ。お前達の曾祖父にも会ってないし、白い猪にも出くわしてねぇ。帰って来てから今の所は普通の人間にしか会ってないから安心しろ。」

 

柊「そう?なら安心♪」

 

 

柊は要件を達成したにも関わらず、部屋から出て行こうとはせず俺の隣にチョコンと座った。そしてそれから俺の膝に頭を乗せ、膝枕をしていたのだ。

 

 

八幡「どうした?今日全く話せなかったから八幡君成分の補給か?」

 

柊「それもあるよ。ただ私が今はこうしたいって思っただけ。」

 

八幡「そうか。」

 

 

静まり返る部屋だが、前にも言ったが俺はこの空気が嫌いではない。元々俺はそんなに話す方ではない、会話のラリーだってあまり……というよりもそんなに人と話した経験が無いからな。だが柊と関わってからは少しずつこういぅ時間が増えた。最初こそ戸惑った、突然頭を膝を乗っけてくるんだからな。そして今は少しの事なら分かるようにもなった。以心伝心ってヤツだ。それが本当になるかどうかは分からんけど。

 

 

八幡「………『今年も後もうちょっとで終わりかぁ〜。今年は八幡君と2人きりで新年を迎えようかなぁ?』とかか?」

 

柊「えへへ、当たり♪」

 

八幡「マジで?」

 

柊「うん、マジ♪」

 

八幡「おいおい、嬉しいけどやめろよ?おじさん達はないだろうが、涼風が泣くぞ。」

 

柊「え〜そう?最近私達だけの時間が減ったでしょ?だからさ………良いんじゃない?」

 

八幡「ったく、悪いお姉様だな。」

 

柊「あら、今更気付いたの?」

 

八幡「知ってたよ、当然。」

 

 

俺は柊の頭に手を置く。多分柊もこれを望んでいたと思う。こんな風にする事、最近は無かったしな。

 

 

柊「なんか久しぶり、こんな風にのんびりするの。普段は涼風も一緒だから大っぴらな事は出来ないけど、こんな風に2人だけの時間でこういうのは本当に久しぶりだよね。」

 

八幡「そうだな………3人の時間が嫌いってわけではないが、柊との時間ってのは減ってたのは確かだな。けどまぁ、義妹とも仲良くしたいって気持ちは汲んでくれないか?」

 

柊「私もそうだよ。放っておけない妹がいるから構ってあげなくちゃいけないんだ。だから八幡君もこれからよろしくね?」

 

八幡「嫁さんからそう頼まれちゃあ仕方ないな。」

 

柊「そう、私からのお願いだから仕方ないのっ♪」

 

 

ルビーを連想させる美しい赤い瞳からは慈愛と優しさを滲ませながら俺を見つめていた。俺達は暫くこの体勢で話をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御影「んんぅ〜出汁が効いてるね〜。」

 

八幡「はい、美味いです。」

 

涼風「どうですか八幡さん、精一杯打って作った手打ち麺なのですが………」

 

八幡「あぁ、美味い。流石は涼風だな。和食の腕なら柊にも勝てるんじゃないか?」

 

柊「聞き捨てならないねぇ?あっ、なら今度勝負でもしてみよっか?私達がお弁当を作って八幡くんに食べてもらうのっ!テーマは和食、食材は自由にしてさっ♪」

 

涼風「それは良い考えです!」

 

八幡「待って、その場合って俺が2つの弁当を食べるって事になるけど、そこの所どうするの?」

 

柊「え、八幡君頑張って?」

 

涼風「八幡さんなら大丈夫です!」

 

八幡「何その俺ならいける的な謎理論は?」

 

紫苑「ふふふっ、八幡君〜据え膳食わぬは男の恥よ〜?残したら許さないわよ?」

 

八幡「今は静かにしててくれませんかね?」

 

御影「2人共、分かってると思うけど、八幡君に作るお弁当なんだから手を抜いちゃダメだよ?」

 

柊/涼風「うん!(はい!)」

 

八幡「おじさん、塩送るどころか岩塩ぶちまけるのやめてくれません?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「今年も終わりだね。」

 

八幡「そうだな……あっという間だったか?」

 

涼風「八幡さんと過ごした時からは、ですね。」

 

八幡「まっ、来年からも良い年になれるようにしてこうぜ。初詣では厄介事やうるさい奴が絶対に来ませんようにって。」

 

柊「そのお願い、八幡君がしてね?私達は別のお願い事をするのに手一杯だから!」

 

八幡「じゃあお前らの分までしっかりとお祈りしておくとしよう。」

 

 

さて、そんじゃあ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡/柊/涼風「新年、明けましておめでとうございます。」

 

 

 

 

 



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カミングアウトと別れの時

 

 

八幡side

 

 

ふぅ………良い時間を過ごせた。山の中だったら不便な事も多いかと思ってもいたが、そんな事も無かったな。けどこれでこの別荘ともお別れか……なんかあっという間だったな。最初は迷ったが今ではもう慣れてしまった。その理由といってもアレだが、この別荘を散歩代わりに歩き回るくらいには道順やどこに何があるのかも覚えてしまった。

 

そして今、まさにその散歩中だ。しかし本当に良い空気だ。柊の言ってた空気が美味しいとはこの事だな。千葉とは、というよりも都会とは違うな。

 

 

「おや、また会いましたね?」

 

八幡「ん?あぁどうも、おはようございます。」

 

「耳にしましたが、今日立つようですね?」

 

八幡「はい。長い間、お世話になりました。」

 

「いえいえ、この老いぼれは何もしておりませんので。それで、どうでした?充分に身体を癒やし、休められましたか?」

 

八幡「はい、おかげさまで。」

 

「そうですか、それは何よりです。」

 

 

そういえばこのお婆さんも居たな……最初の日以来会ってなかったけど。

 

 

「……ふふっ。」

 

八幡「?」

 

「失礼。やはり貴方は私の父に似ているものでして、何と言いますか、滲み出る優しさというんでしょうね………懐かしく感じます。」

 

八幡「はぁ……」

 

「引き止めてしまってすみませんね、では私は「大奥様〜!!こちらに居たんですか!勝手に出歩くのはお身体に障りますよ!?」………見つかってしまいましたか。」

 

 

………え、大奥?

 

 

八幡「あの、もしかして………」

 

「……本来は言うつもり等は無かったのですけどね。はぁ………この屋敷では私の行動よりも、貴方のその大声の方が余程目立ちますよ?少しは声量を慎みなさい。」

 

「え、何で私が怒られているのですか?」

 

「コホンッ、改めて挨拶を。いつも息子、孫達がお世話になっています。柊さんと涼風さんの祖母であり、御影の母の(ゆかり)と申します。」

 

 

………まさかのお婆ちゃん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

縁「遠巻きながら様子を見させて頂いておりましたが、孫達だけでなく、息子とも仲良くしてくれているようで。今後ともよろしくお願いしますね。」

 

八幡「は、はい……こちらこそ仲良くさせて頂いてます。いつもお世話になりっぱなしですし。」

 

縁「ふふふっ、謙虚なのですね。」

 

 

まさかあの時にあったのが、柊達のお婆ちゃんだったなんて………っていう事はこの別荘ってこのお婆ちゃんの?

 

 

八幡「あの、この屋敷ってもしかして………」

 

縁「いえ、私のではありません。御影が購入したものです。私は貴方達が此処に来ると聞きましたので、その間だけでもお忍びで滞在する事にしたのです。まぁ、声だけは1人前の彼のせいでバレてしまいましたが。」

 

「うっ、すみません………」

 

縁「比企谷八幡さん、私がこの別荘に居るという事はどうかご内密にお願いしますね?知られてしまったら御影がうるさいものなので。」

 

八幡「えっと……過保護、だとか?」

 

縁「そうですね、似たようなものです。この老体の身体を気にし過ぎるのか、少し1人で歩いただけでもすぐに心配を掛けるのですよ。最初は可愛いとも思っていましたが、構われ過ぎるのも問題ですね。」

 

 

それで別居してるって事なのか?なら余計に気になりそうだけどな。

 

 

縁「比企谷さん、孫達の事をお願いしますね。息子からも報告は受けています。中学生の頃、イジメに遭っていたのを貴方が救ってくれたと。柊さんも涼風さんも貴方に全幅の信頼を寄せているのは一目瞭然。何よりも、父と同じ雰囲気を持っている貴方なら大丈夫だと。」

 

八幡「………はい。」

 

縁「………多くを語らない所もそっくりですね。長い間引き止めて申し訳ありません。貴方にも準備があるでしょうし、私達はこれで失礼致します。行きますよ。」

 

「はい。では失礼致します。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御影「いやぁ〜長い間お世話になったね。とても良い時間だったよ。」

 

「勿体無いお言葉でございます、旦那様。」

 

御影「いやいや、本当に。妻も娘も八幡君もそう言ってるよ。もしかしたらまた今年の年末も来るかもしれないけど、その時はまたよろしく頼むよ。」

 

「我々一同、誠心誠意おもてなしさせて頂きます。心よりお待ちしております。」

 

柊「その時はまた一緒にご飯とか作りましょうね!見てて色々勉強になりましたし、また見てみたいですので!」

 

紫苑「ふふっ、柊ったら。」

 

涼風「私もとても良い時間を過ごせました。お次はいつになるか分かりませんが、その時もまたご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。」

 

「ご迷惑だなんてとんでもありません。我々は旦那様方が来るのをいつでもお待ちしております。」

 

八幡「今日まで色々、お世話になりました。」

 

 

そして俺達は乗ってきた車に乗って、別荘を後にした。お見送りをしてくれた使用人達は見えなくなるまで頭を下げたままだった。

 

それとは別に、さっきのお婆さんが部屋の窓で優しく微笑んでいるのが見えた。きっと見送りのつもりなのだろう。安心して下さい、ちゃんと約束は守りますから。

 

 

 

 

 



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耀変天目茶碗

 

 

八幡side

 

 

家に帰って数日が経った。帰って来た時には家族に向かって普通の挨拶に加えて新年の挨拶も同時にしたのだが、少しだけこそばゆかった。けどまぁ、こういう挨拶ってのは大事だしな、形式美だとしても。そしてこの数日は柊とは直接会っていない、理由としては冬休みの課題やらがあったからだ。滋賀県に行ってる間は思う存分遊んだからな、だからその分の勉強はしなくてはならない。あまりやりたくはないけど。

 

そして今日は、おじさんと予てから約束していた鑑定をしてもらう日だ。おじさんの知り合いにいい人がいるらしく、その人に見てもらう予定になっている。骨董品鑑定士と宝石鑑定士の専門家の所に行って見てもらうらしいけど、どうなんだろうなコレ?伊吹山の祠に入っていた物とはいえ、本当に価値があるのかどうかも俺には分からん。本物かどうかも分からないし。

 

 

っと、来たな。

 

 

御影「やぁ八幡君、こんにちは。」

 

八幡「こんにちはおじさん、今日はありがとうございます。」

 

御影「ううん、気にしないでよ。僕もそれらの価値がどんなものなのか知りたいしね。」

 

八幡「期待しない方が良いと思いますよ?価値がないって知った時のテンションの落ちようとか半端じゃないと思いますし。」

 

御影「あはは、まぁ見てからのお楽しみだね。」

 

 

ーーー壺墨堂(こぼくどう)ーーー

 

 

御影「まずはお椀を見てもらおうか。綺麗な青色だったしね。」

 

八幡「はい。」

 

 

おじさんはそのままお店の扉を開けて中へと入って行った。奥へ奥へと進むと、そこには1人の男性が居た。歳は………大体おじさんと同じくらい?

 

 

御影「全く、せっかく予約まで入れて時間を作ってもらったのに……ほら墨ちゃん、来たんだから起きてよ!でないと帰るよ?」

 

墨ちゃん「ん?あぁ〜影ちゃん、ゴメンゴメン。いやぁ〜久しぶりに茶器の鑑定なんて話を貰ったからウキウキしててさ〜寝ちゃった、あはは♪」

 

御影「あはは、じゃないよ全く……あぁ八幡君、紹介するね。彼は高城墨吉(たかじょうすみよし)、僕の同級生の1人で骨董品の鑑定士なんだ。昔からそういうのに鋭くてね。それを売りにこの商売をしてるんだ。」

 

高城「よろしく、気軽に墨ちゃんで良いからね。」

 

 

いや、無理です。

 

 

高城「けど影ちゃん、見てもらいたいって言ってたのはこの子が持ってるのなの?」

 

御影「うん。この前、八幡君が1人で滋賀県の伊吹山に登った時に見つけてね。綺麗だったから鑑定してみたらどうかなって話になったんだよ。」

 

高城「綺麗………ふぅん、山にあったのに綺麗ねぇ。それって洗ったりしてない状態でかな?」

 

八幡「あ、はい。そのままの状態で。」

 

高城「………まずはその現物を見せてもらっていいかい?物を見ない限りには鑑定なんて出来ないからね。見せて。」

 

八幡「はい。」

 

 

俺は鞄の中から椀を出した。やっぱ綺麗だよなコレ……青じゃないっていうか………瑠璃色っていうのか?それに斑点みたいな模様がついてるのもなんか味があるよなぁ。

 

 

高城「………」

 

 

高城さんが色々な角度から見つめている。単眼鏡なんかも使ってマジマジと見ていた。

 

 

高城「影ちゃん、八幡君、もっと時間をもらってもいいかい?この茶器、【耀変天目茶碗】っていうんだけど、ただ覗いただけじゃ価値が分からない。今の所僕が見た限りでは、現代で作られた物じゃない。むしろもっと前………そうでもなければ現代ではこういう形はあまり見られないし、滲むような瑠璃色がこんなにも美しい理由はないんだ。もっと見てもいいかな?」

 

八幡「俺はいいですけど………」

 

御影「八幡君もこう言ってるから、好きなだけ見るといいよ。」

 

高城「感謝するよ。それから、店内は好きに見て回っていいよ。興味無いとは思うけど、色んな骨董品があるから。」

 

 

………確かに見る分には飽きる事はなさそうだな、この店内は。日本だけじゃない、色んな国の骨董品がある。

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

高城「影ちゃん、八幡君、査定が終わったよ。」

 

御影「おぉ、漸くかい?」

 

高城「うん、時間をもらっちゃってごめんよ。何せ物が物だったからね。」

 

御影「僕も八幡君も時間に余裕はあるから問題ないよ。それで、結果はどうだったんだい?」

 

高城「うん。この茶器、【耀変天目茶碗】は………紛れもない本物、しかも完全体で見つかったことに加えてこの輝きや艶、状態も加味すると、この茶器の価値は5000万円から1億円の間くらいになるよ。しかもこの茶器は日本国内では4つあると言われているんだけど、今はその内3つしか見つかっていないんだ。まさかこんな形で………」

 

 

………嘘、俺が山の神様から貰ったお椀が5000万から1億の価値?

 

 

御影「墨ちゃん、本当なのかい?」

 

高城「僕が影ちゃん相手に嘘つくと思うかい?僕だって嘘を突きつけられてるような気分さ。まさか4つ目の【耀変天目茶碗】を生で見られたばかりか、その査定を自分がやってしまったとは……恐ろしさが伝わってくるよ。悪いんだけど、コレはウチじゃあ買い取れないよ。物の桁が違い過ぎる上にそんなお金無いしね。美術館か博物館に行けばその価値の恐ろしさがすぐに分かるよ。」

 

 

いや、それよりも5000万から1億する程の茶碗を鞄の中に入れていた自分がよっぽど恐ろしいです。

 

 




耀変天目茶碗…天目茶碗の中では最上級の茶碗。


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6種の水晶

 

 

御影side

 

 

……………まさかあんな査定金額になるとは思わなかったよ。僕も八幡君も聞いた時は10秒くらい時が止まったかのように呆然としてたからね。それもそうだよ、1つのお椀が最低でも5000万円、最大で1億なんだからね。しかもその後に

 

 

高城『このお店での査定価格は今の通りだけど、美術館とかで鑑定してもらったら今の倍以上はするんじゃないかな?僕は1つの茶器としての価格を提示したけど、そこに茶器本来の価値なんかも合わさったらとんでもない数字になる事は間違いないね。』

 

 

とか言ってたしね。八幡君は帰りに『お椀用の入れ物ありますか?』って聞いてたしね。流石に値段聞いた後にそのまま鞄に入れるような真似は出来ないよね………

 

 

八幡「まさかあんな価格になるだなんて……【耀変天目茶碗】でしたっけ?たかが茶器にそんな価値があるなんて思いませんでした。」

 

御影「物によっては今でも価値のある物はあるらしいけど、10万円〜50万円とかだからね。さっきのを聞くと、この価格が可愛く思えるよ。」

 

八幡「………さっきの事は忘れましょう。じゃあ次は原石の鑑定ですよね?」

 

御影「うん、宝石鑑定士の所に行くからね。」

 

 

ーーーJewel forteーーー

 

 

八幡「此処が……」

 

御影「そっ!僕の知り合いがいる宝石を専門としたアクセサリー屋さんだよ。さっ、入ろっか。」

 

 

カランコロンッ

 

 

「いらっしゃいませ。」

 

御影「すみません、鑑定の予約をしていました夜十神です。馬場さんは居ますか?」

 

馬場「待ってたわよ〜御影、随分と久しぶりね。こっちに全く顔を出さないんだからどうしてるのかと思ってたわ。」

 

御影「ごめんごめん、最近はプライベートでも忙しくてね。来る暇がなかったんだよ。」

 

馬場「忙しくて、ねぇ〜……まぁそういう事にしておいてあげる。それで、隣の子は?」

 

御影「あぁ、彼が今回の依頼主の八幡君。査定をお願いしたい物は6つあるんだ。八幡君、この人がこのお店のオーナーで僕の知り合いの馬場奏美(ばばかなみ)。この人も墨ちゃんと一緒で僕の同級生なんだ。」

 

八幡「比企谷です、よろしくお願いします。」

 

馬場「よろしく。じゃあ鑑定してもらいたいのを出してもらえるかしら?」

 

八幡「はい。」

 

 

八幡君は鞄の中から原石達を次々と取り出していたんだけど、最初の1つを取り出した瞬間に馬場さんの目の色が変わった。

 

 

馬場「御影、1つ聞いていいかしら?この原石達は何処で手に入れたの?」

 

御影「何か分かったのかい?」

 

馬場「えぇ。この原石達、純度が普通のよりも圧倒的に高いわ。しかもこんなにも土台の部分が少ないのも珍しい………」

 

御影「僕は手に入った過程は知らないんだけど、八幡君が伊吹山で取ってきたんだよ。」

 

馬場「………よく分からないわね、まぁいいわ。じゃあ鑑定してくるわ。その間、店内で待っててもらえるかしら?少し時間は掛かるけど、その分ちゃんと鑑定させて貰うわ。」

 

御影「お願いするよ。」

 

八幡「よろしくお願いします。」

 

 

さて、またもやこんな時間が出来てしまった。八幡君って宝石に興味あるのかな?

 

 

御影「八幡君は宝石に興味はあるのかい?」

 

八幡「俺はあまり興味はないですね。綺麗だとは思いますけど、ただそれだけです。」

 

御影「そっか。まぁ取り敢えず店内の掲示物を見て回らないかい?何か良いのがあるかもしれないよ?八幡君も男の子だからカッコいいネックレスとかあるかもしれないよ?」

 

八幡「けど此処そこそこ良い店ですよ?若者向けというか、遊び心を入れたアクセサリーって扱ってるんですかね?」

 

御影「まぁまぁそう言わずに。見てたら良いのがあるかもしれないじゃないか。」

 

 

ーーー数十分後ーーー

 

 

馬場「御影、比企谷君、査定が終わったわ。」

 

八幡「っ!」

 

御影「あっ、終わったみたいだね。」

 

馬場「えぇ。じっくりと見させてもらったわ。」

 

御影「じゃあさ、値段を聞く前にこれがなんなのかを聞かせてもらっても良いかい?僕達は宝石に関しては素人だから、そこから知りたいんだ。」

 

馬場「結果から言うと、全て水晶の類よ。普通の水晶、紫水晶、黄色水晶、白水晶、黒水晶、青水晶の6つね。そしてどれも驚くくらい純度が高かったわ。不純物がこれでもかってくらい無いの。普通はこの大きさの原石ならあまり良い値段はしないのだけど、これだけの純度、質、輝き、透明度が優れているのであれば………私なら合計で1000万円出すわ。」

 

 

………え、1000万円?

 

 

八幡「そ、そんなにですか?」

 

馬場「それだけの価値があるのよ、この水晶達には。見ただけでも分かるわ、店頭に並んでるアメジストドームなんかよりも遥かに良い質だもの。極めつけはこの水晶ね。ここの突起を見て頂戴。これだけ異常に透明感があって光を当てると虹色に輝くでしょ?これはレインボー水晶って言って、とても珍しいのよ。これが500万円で他が………物によるけど、50万円〜200万円の価値って所ね。」

 

 

………八幡君、君ってもしかしてお金を作る天才?

 




因みに作者は宝石の価値なんて全く分かりません。ネットで色々調べましたけど、全然出て来なくて………

この価格だって取り敢えずって感じでやったに過ぎません。宝石に詳しい方、マジレスはちょっと勘弁してください………


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どうするのコレ?

 

 

八幡side

 

 

ーーー夜十神邸ーーー

 

 

ふぅ………なんて濃い数時間だったんだ。

 

 

御影「………ふぅ、まさか家に帰ってから飲む紅茶がこんなにも美味しく感じるなんてね。それもこれも、八幡君の今持っている茶器と原石達のおかげだね。ホント、驚かされたよ。」

 

八幡「全くですね、全ての金額を合わせただけでも最低6000万円もするなんて……しかも茶器に関しては美術館に見せたら跳ね上がる確率大と来ましたし。恐ろし過ぎますよ。」

 

 

俺は茶器も宝石達も売る事はせずに、持ち帰る事にした。持ち帰ると言っても、どうするかまでは決めていない。だってどうすりゃいいんだこんなの?今までは価値とか分からなかったのもあるが、鞄の中にしまったままだったが、これからはそういうわけにはいかない。だって片や国宝、重要文化財とまで言われていて、今まで見つからなかった幻の4つ目の茶器。

 

そして片や、色とりどりの水晶達。中でも透明な水晶に1つの突起があるのだが、その突起の価値がとんでもない。レインボー水晶というらしいが、それだけでも100万円以上の価値だ。

 

 

御影「それで八幡君、どうするつもりなんだい?持ち帰った茶器と原石達。」

 

八幡「あー………ここで預かってもらうっていうのはダメですか?ウチじゃあ飾る場所も無いので。俺の部屋にも多少はあるかもしれませんけど、そのまま置くというのも罰当たりな気がしますし。」

 

御影「ならショーケースを買ってその中に入れて飾るというのはどうだい?それなら困らないんじゃないかな?」

 

八幡「確かに困りはしませんけど……」

 

御影「それにケースの費用はこっちで持つからさっ!提案したのは僕だしっ♪」

 

 

なんか楽しそうっていうか嬉しそうだな……きっとアレだな、『八幡君の為にお金を使える!枕以来何も強請ってこなかったからこれはチャンス♪』とでも思ってるんだろうな。けどショーケースって高いんじゃなかったか?

 

 

八幡「でも、ショーケースって高いんじゃなかったでしたっけ?この家の財力なら全く問題ないんでしょうけど、買うにしても高過ぎるのは俺も嫌ですよ?元々ショーケースってそこそこ良い値段しますし………」

 

御影「そうだね〜……そこは八幡君と相談かな。相談した上で気に入ったのを買うって事でどう?」

 

八幡「………アレ、なんか買う方向で話が進められてるような?」

 

御影「っ!そんな事はないよ?あっ、そうそう!八幡君ならどんなのが良いんだい?色々あるでしょ?お店屋さんでお客さんが見れるような床に置くタイプか、コレクションみたいに机とかに置けるタイプとか色々あるよ?」

 

八幡「今の話の流れからするなら机の上とかに置けるタイプのですね。大きいケースがドンッとあっても部屋がかさばりますし。」

 

御影「じゃあそれを後で見てみないかい?八幡君の意見も聞きながら決めようじゃないか。」

 

八幡「あの、おじさん?」

 

御影「ん、何だい?」

 

八幡「こんな言い方したら、なんだか俺が悪者みたいになりますけど、おじさんってそんなに俺の為にお金使いたいんですか?」

 

御影「え、そうだよ。」

 

 

わぁ〜曇りのない眼。

 

 

御影「だって八幡君ちっとも欲しい物とか言ってくれないじゃないか!何か買おうにも八幡君が喜ぶ物が想像出来ないから買うに買えないんだよ!八幡君もう少し貪欲になりなよ!」

 

八幡「え、なんで俺怒られてるの?」

 

柊「ふぃ〜ちょっと一休m……あっ、八幡君だぁ〜♪」ダキッ!!

 

 

自分の部屋から休憩がてら何かをしに来たのか、柊が居間に来た。そして俺を見つけた途端に抱き着いて、ご自慢のたわわを押し付けてくる。うむ、くるしゅうない。

 

 

八幡「よう柊、課題か?」

 

柊「うん、後もう少しで終わるけど少し休憩。そしたら八幡君が居るんだもん!これは休憩時間延長にするしかないよね♪」

 

八幡「そうか、それは仕方ないな。」

 

柊「うん、仕方ないのっ♪」

 

御影「あはははっ、柊は本当に八幡君が大好きだね。入った時のテンションと八幡君を見つけてからのテンションの違いが凄いよ。」

 

 

確かに。普通の目からキラキラに変わってた。

 

 

柊「そういえば今日は鑑定しに行ってたんだよね?どうだったの?」

 

八幡「青い茶器あったろ?アレが名器中の名器らしくてな、国宝、重要文化財として登録されている品の1つで幻の4つ目だったらしくて茶器として見ただけでも5000万円〜1億円だとよ。」

 

柊「え、何そのとんでも価格………」

 

八幡「しかも美術館に見せてもらったらもっと上がるってよ。まぁやるつもりはないけどよ。そして宝石なんだが、差額はあるとしても、合計で1000万円だった。」

 

柊「………嘘ついてない?」

 

八幡「俺が今まで柊に嘘は「ついた事ないよ?けどさ、信じられないんだよ?この気持ち分かるよね?」………まぁ、俺も聞いた時は嘘だって思った。でも事実、おじさんも俺の隣で聞いてたからよ。」

 

柊「す、凄いねそれ………それで原石はどうしたの?売っちゃったの?」

 

八幡「いや、どちらも持ち帰って来た。そんで今どうするかっておじさんと話してた所だ。ショーケースの中に入れて飾るって案が出て、検討してる。」

 

柊「……うん、私もその方が良いと思う。原石はまだいいとしても、茶器を美術館なんかに持って行ったら、八幡君有名人どころじゃないよ?そんな事したら今頃時の人だからね?」

 

 

うん、俺もそれは嫌だ。

 

 

 

 

 

 

 

 



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1人でお出掛け

 

 

八幡side

 

 

とある日の休日、俺は久しぶりに1人で外出をしている。6000万円騒動の件だが、結局あの茶器と原石達はおじさん達の家で預かる事になった。やっぱ俺の家じゃあ安全面に欠けるしな、色々な意味で。だからショーケースを買ってその中に敷物を敷いてからその上に置く予定だ。配置については俺がする事になっている。別にお任せでも良かったんだが、おじさんが『所有者に全権があるからね、僕達が勝手に弄る訳にはいかないよ。』との事だった。

 

まぁケースについても俺の気に入った物を注文して、届いたらまた連絡が来る事になっている。そしてさっきも言ったが、今日は俺1人で街に出歩いてる。休日に1人で街に出歩く機会なんてここ数年間で1回も無かった気がするから新鮮だ。特に何か目的があるわけではないが、久しぶりに楽しむか。

 

 

ーーーららぽーと内・雑貨屋ーーー

 

 

八幡「こうして1人で来ると、いかに柊達と一緒に行動してたかってのがよく分かる。元気な声がないだけでも少しだけ寂しいもんだな。中学2年までこれが当たり前だったってのによ………」

 

店員「お客様、何かお探しですか?」

 

八幡「え、あぁいや、適当に見てただけです。」

 

店員「そうですか。何かありましたら遠慮なくお声がけ下さいね?」

 

八幡「は、はぁ……」

 

 

まさか声を掛けられるとは思ってなかったな……やっぱ雑貨じゃないな。本屋にでも行くか?いや、どうせなら楽しみは最後まで取っておきたい。どっか俺でも楽しめそうな所………

 

 

ーーーららぽーと内・ゲーセンーーー

 

 

ピロピロピロピロピロピロ………ボトッ

 

 

八幡「あぁ〜……やっぱこの機種はムズイな。だがこの中にあるマッ缶クッションはマッ缶好きとしては取らないわけにはいかない!」

 

 

俺が今プレイして切るのは、UFOキャッチャーの中でも確率機と呼ばれているゲームで遊んでいる。中に入っているのは縦60cmで横30cmの特大サイズのマッ缶クッションだ。こんな物が置かれてたら取らないわけにはいかないのが、マッ缶好きというものだ。しかしながら中々手強く、簡単には取らせてもらえない。一時的にアームの力が最大になる魔法でもかけてくれませんかね?

 

 

八幡「けどまだ400円だ。流石に2000円を超えたら考えるが、まだまだ元は取れる金額だ。」

 

 

俺は再び100円を入れて機械の操作に移る。人によって分かれるみたいだが、100円を入れて地道にやってくか、500円入れて6回で確実に取るか、の2つのパターンがあるらしい。俺は100円派(派閥あるのか?)だが、他の連中はどうなんだろうか………別にどうでもいいけど。おっ、良い感じ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーららぽーと内・喫茶店ーーー

 

 

八幡「ふぅ……なんか柄にもなくやり切った感が出てしまってる。けど取れたし良いよな別に。しかし、久々にゲーセンなんて入ったな………他にも色んなのあったが、あんまやる気は起きなかったな。この後は本屋に行って新刊がないかどうか見てだな。」

 

 

スマホを確認しながら注文したのを待っていると、柊からメールが来ていた。内容をざっくり言うと、一緒に行きたかった、だな。けど今日くらいは1人の時間も満喫させてくれ。また今度一緒に行けば良いだろ?

 

何で柊が知ってるのかって言うと、俺がさっき取った特大マッ缶クッションの写真を送ったからだ。それを見た反応がコレだ。柊、気持ちは分からんでもないが、個人の時間もしっかり取った方がいいぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽乃「新年、明けましておめでとう比企谷君。君とこんな所で会うなんてね〜。」

 

葉山「比企谷………」

 

 

………神様、俺に金運と豪運をくれてもこういうときの運の悪さはどうにもならないんでしょうか?

 

 

八幡「………明けましておめでとうございます。」

 

陽乃「夜十神ちゃん達は?今日は居ないの?」

 

八幡「今日は俺1人です。」

 

陽乃「ふぅ〜ん……じゃあご一緒するね♪」

 

八幡「他を当たってください。」

 

陽乃「けど断るね。それに君の口からも聞きたいしね、冬休みに入る前の学校について。」

 

八幡「………雪ノ下や葉山から聞いてるんじゃないんですか?」

 

陽乃「私がそれだけで納得すると思う?そもそも雪乃ちゃんは別クラスで殆ど関わり無いし、隼人の説明だって聞いたけど、なぁんか要領得ないんだよね〜。隠し事でもしてるのかな?」

 

葉山「………」

 

陽乃「まぁそんなの別に良いけどね。比企谷君から聞けば良い話だし。」

 

八幡「俺、言うなんて言いました?」

 

陽乃「そこはさ、ほら♪私達の仲じゃん?」

 

 

俺とこの人にそんな関係性があっただろうか?

 

 

八幡「……なら雪ノ下さんが聞いた内容を教えて下さいよ。もし間違ってたら俺が正しいの教えますから。わざわざ知ってる内容を1から10まで言うのなんてアホらしいですし。」

 

陽乃「ふぅん、比企谷君もやるねぇ〜お姉さんを使うなんてね〜。」

 

八幡「俺は別に言おうが言うまいがどうでも良いんで。俺にとってはもう過去の事ですから。それに、関係のない事に一々めくじら立てても仕方ないと思いません?」

 

 

これで引いてくれればなぁ………

 

 

陽乃「しょうがないなぁ、君の口車に乗ってあげる。じゃあ私が聞いた事を話すね。間違ってたら言って。」

 

八幡「了解です。」

 

 

 

 



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八幡「何でこうなるの?」

 

 

八幡side

 

 

カフェで葉山と雪ノ下さんにバッタリと会ってしまい、俺は冬休み前に起きた出来事の説明を聞いていた。葉山視点からというオマケ付きだが。だがそれを加えたとしても、コイツは一体どんな説明をしたんだ?まず第1に、アイツ等が柊達の弁当をぶち撒けた事に関して『悪気は無かったし、わざとでは無い。』と説明したらしいが、あのバカ(相模)の言った事を真に受け過ぎだろ。しかもだ、あの時罪のなすりつけあってた奴等がわざとじゃ無いって言うのなら、最初から謝るだろう。悪気が無いのに罪をなすりつけ合う意味が俺には分からん。

 

極め付けはアイツ等3人の行動に対して、葉山は『反省している様子だった。』と言っていた事だ。反省していた?何処の誰が?どんな様子で?俺にはアイツ等が反省しているようには到底見えなかったけどな。要領を得ないと雪ノ下さんは言ってたが、この事だけなら良いんだがな。後は俺も知らん。

 

 

陽乃「それで、どう?」

 

八幡「………まぁ大体合ってますよ、大体ね。」

 

陽乃「じゃあ君の視線では違う内容があるって事かな?聞かせてもらっても?」

 

八幡「それを知って雪ノ下さんにメリットがあるのかどうかは知りませんが、良いでしょう。あるのは2つです。1つ目は弁当をぶち撒けた事に対してです。おい葉山、お前に聞くがどんな主観でアイツ等に悪気は無いし、わざとでは無いと言えた?」

 

葉山「それはさg「因みに言っておくが、あの3人が言っていたからとかほざくなよ?何の理由にも説明にもなってねぇからな?」………」

 

 

ちょっと口調が雑になってしまってるが、そんな事はどうでも良い。しかしコイツ急に無口になりやがったな、無言は肯定、つまりはたったそれだけの事で決めつけていたらしい。

 

 

八幡「呆れたな、たったそれだけの事で決めつけていたのかよ……これは俺の主観だが、悪気が無くてわざとでも無いのなら、最初から謝んのが普通だろ。その両方が無いのにあの3人が互いになすりつけ合う意味が俺には理解出来ない。なすりつけ合うって事はそういう感情が少なからずあったって考えるのが自然なんじゃねぇのか?」

 

葉山「っ………」

 

八幡「まぁそういう事ですよ。俺の主観ですけど、アイツ等に悪気が無くて、わざとでも無いなんて俺からしてみればあり得ないって事ですよ。寧ろそんな考えに至るなんてバカバカしいし、人の事を何も見てない証拠ですよ。」

 

陽乃「成る程ね〜………」

 

八幡「2つ目に関してもお前に聞くぞ。お前、あの場所に居たのか?アイツ等の何処に反省してる様子があるって言えるんだ?謝りもしない、態度も改めない、これの何処が反省してるって?」

 

葉山「それは……あの貼り出されていた紙を見た後ならそうなるだろう。」

 

八幡「そうか?俺には『ヤバい、これからどうしよう。』っていう風にしか見えなかったけどな。」

 

葉山「それも君の主観だろう?」

 

八幡「あぁ、そうだ。けど少し考えれば分かるだろう、お前ならな。」

 

葉山「何だって?」

 

八幡「アイツ等があの貼り紙を見て最初に反省しようなんて思う性格してると思うか?俺には到底思えないけどな。お前ならどうだ?1ヶ月くらい一緒に居たんだし、俺よりもアイツ等の事は知ってんだろ。お前の主観で答えろよ。」

 

葉山「そ、それは………」

 

 

だろうな、コイツもそれなりにはアイツ等の事を知ってる。だからこそ言い淀む。何せアイツ等はそんな良い性格してないからだ。見ているだけでも分かる、あの中にそんな奴1人も居ねぇよ。

 

 

葉山「………」

 

八幡「そういう事だ。言うだけなら簡単だが、お前の場合はそれに対する理由がない。あったとしても取って付けたようなものだ。レゴブロックじゃねぇんだぞ?こんなバカみたいな理由付け、小学生の方がマシなのを作れるぞ。」

 

陽乃「……それで、君の言いたい事は?」

 

八幡「理由はどうであれ、俺からはあの3人が反省している様子なんて全く見られませんよ。まぁ見る機会なんてありませんから何とも言えませんけど、アイツ等の行動や言葉遣いを知ってたら、反省してるなんて口にしないですよ。」

 

陽乃「ふぅ〜ん、成る程、ねぇ………」

 

八幡「んで、雪ノ下さんは?」

 

陽乃「私?もういっかなぁ〜比企谷君が隼人を論破してる所を見たらスッキリしたし。」

 

葉山「っ………」

 

陽乃「やっぱり君は面白いよ、全く。」

 

 

俺は面白くないですよ、ホント。厄介事に巻き込まれる俺の身にでもなれば少しは分かるでしょう。

 

 

八幡「まぁそういうわけですので、俺はもう行きます。」

 

陽乃「あっ、なら伝票置いたままでいいから。お話聞かせてもらったお礼として。お駄賃として♪」

 

八幡「……ならお言葉に甘えます。言っときますけど、後になってから『あの時お支払いしたから、ね?』っていうのは無しですからね。」

 

陽乃「大丈夫大丈夫!私そんな事しないから。」

 

 

胡散くせぇ………まぁいいや、早くこの店から出たい上に早く自由になりたい。

 

 

八幡「じゃあしつれ「お待たせしました陽乃、隼人君もごめんなさいね。」……え?」

 

陽乃「全然。そんなに待ってないから大丈夫だよお母さん。」

 

秋乃「……それで、この方は?」

 

陽乃「この前話した比企谷君だよ。」

 

秋乃「比企谷………」

 

 

神様、ホントどうしてこういう時の運をくれなかったんですか?今すぐ欲しいです。どうしたら良いですか?今すぐここから逃げ出したいです。

 

 

 

 

 



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八幡「お、終わった………」


久々に何もビジョンが浮かばなかった………執筆に3時間もかかってしまった。


 

 

八幡side

 

 

秋乃「…確か【Nigh-Ten・Group】のご令嬢の恋人、でしたね。確か学年は雪乃と一緒でしたね?いつも雪乃がご迷惑をお掛けしております。」

 

八幡「いえ………」

 

秋乃「折角なのでご一緒に、と言いたい所ではありますが、本日は仕事の関係でこちらに赴いております。また後日、改めてゆっくりとお話をさせて頂いてもよろしいですか?」

 

八幡「……いや、俺に挨拶してもしょうがないと思いますけど……」

 

秋乃「そうお考えですか?」

 

八幡「はい。だって欲しいのは夜十神家とのパイプでしょう?俺ではなく夜十神家という名のブランド。違います?」

 

秋乃「………」

 

 

葉山(な、何を考えてるんだ比企谷!?小母さんにあんな事を言うなんて!!)

 

 

秋乃「……成る程、ただお付き合いをしているだけではない、という事でしょうか。物怖じしない態度に度胸、胆力もある。すぐに謙る方達とは違うようですね。」

 

八幡「こんなの普通でしょう。初対面の人に何を謙れと?それに雪ノ下さ……陽乃さん経由でおじさんの意思をお伝えしてもいますよね?俺を道具にしないって。それが理由で強がってるわけではありませんからね?」

 

秋乃「ふふふっ………駆け引きが上手いのね?」

 

八幡「ただ小生意気なだけですよ、俺なんて。じゃあ俺はこれで。」

 

秋乃「えぇ、道中お気をつけて。」

 

陽乃「またね〜♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………はああぁぁぉぁぁ〜怖かった!!俺何口走っちゃってんの!!?相手大魔王だぞ!?その大魔王相手にたかが村人Aの俺が何言ったところで無駄だろうにっ!!けど幸い、あの場所から離れる事は出来た。その事に関してはマジで良かった………さて、本屋本屋。

 

 

八幡sideout

 

陽乃side

 

 

いやぁ……まさか比企谷君があんな風に言うなんて完全に予想外だったよ。心無しかお母さん、少しだけ楽しそうだし。久しぶりに骨のありそうな人を見つけた、みたいな顔してるよアレ。

 

 

秋乃「ふふふっ。陽乃、比企谷さんは中々面白い方のようですね。今までに類を見ない方でした。」

 

陽乃「そりゃそうでしょ、私のお気に入りだもの♪彼って斜め下と斜め上の答え両方出して来るからさ、退屈もしないし飽きもし無いんだよね〜。まぁ私は比企谷君を本気で怒らせようなんて絶対にしないけど。」

 

秋乃「それが賢明ですね。あぁいう方を怒らせたら後が怖いですからね。」

 

葉山「比企谷があの世界有数の大企業の令嬢の恋人だったなんて……陽乃さんはいつ知ったんだい?」

 

陽乃「去年の秋。社長と副社長にも会ったけど、一目で見抜かれちゃった。」

 

秋乃「……それ程なのですか。」

 

陽乃「うん、それも淡々とさも当然かのように。」

 

 

あの時は内心ちょっとビビったよ……いきなりあんな風に言われるんだもんね。

 

 

秋乃「1度お会いしてみたいものですね。しかし現状ではそれは叶いません。地道に進めていくしかありませんね。」

 

陽乃「もし認められたら、世界でも有名ブランドの家具を使わせてもらえるかもしれないしね。」

 

秋乃「お会い出来ている貴女が羨ましいですよ、陽乃。私も直接会ってお話ししたいものです。」

 

陽乃「名刺に番号あるからそれ使えば良いじゃん?それはダメなの?」

 

秋乃「材料が足りません。ただ提携したいというだけでは交渉するには不充分です。それにあちらの会社は目をつけた会社に提携を持ちかけるという話でも有名です。こちらにその話が来ないという事は、我々の会社にはまだ魅力が足りないという事なのでしょう。」

 

 

ははは……まぁウチは建設業だから、向こうの興味を引きにくいっていうのもあるけどね。

 

 

秋乃「では、そろそろ参りましょうか。それともまだゆっくりしたいですか?」

 

陽乃「ううん、私は平気。隼人は?」

 

葉山「俺も平気だよ。」

 

 

陽乃sideout

 

八幡side

 

 

八幡「おぉ〜結構新作出てるなぁ………最近来れてなかったから全巻最新刊勢揃いだ。こりゃ帰ったら持ってるやつから読み直しするのもアリだな。」

 

 

にしてもあんな所で葉山と雪ノ下さん、そして大m………雪ノ下の母親に会うとは思わなかった。いやでも、あの場で何であんな事言ったんだ俺は!?自分でも理解出来ない、本当の事だったとはいえ別に言わなくても良い内容だ。それをわざわざ………

 

 

八幡「……いや、もう思い返すのはやめよう。思い出したとしても意味なんてない。この新刊買って、今日はもう帰るか。」

 

 

そう思う事にした俺は持ってる小説の最新刊を手に持ってカウンターに向かって会計を済ませる事にした。なんか過ごした時間は短い筈なのに、とてつもなく濃い内容だった。これはもう柊を愛でる事で発散させるしかないな。

 

残りの冬休みどうしようか……家で過ごすのは当たり前だが、あの家族(特に柊)がこのまま俺を家に泊めずに冬休みを終わらせるとは考えづらい。何かはあると踏んでも良いだろう、柊主催の何かが。

 

 

八幡「今更だが、これもうお泊まり会の範疇超えてるよな。半同棲みたいになってる気がする。向こうが俺の家に………いや、無いな。俺が向こうの家に泊まるのがベストだ。」

 

 

色々と要らん事聞きそうだしな、小町と母ちゃん。

 

 

 

 

 

 



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1番

 

 

小町side

 

 

最近、お兄ちゃんと過ごす時間が減っている比企谷小町です。いや、別に寂しいってわけでもないんだけど、前まで……って言っても2年くらい前だけど、シスコンだったお兄ちゃんが彼女が出来たからとはいえ、あまり構ってくれなくなったのは、ほんっっっっとうに少しだけ寂しく感じる。

 

けどホント休みの日に見かける事なんて無いもん。平日の金曜日には必ず柊さんの家に泊まりに行くし、そうでなくとも今は冬休み中だから家を空ける事が多い。受験生で勉強漬けになってる小町への当てつけ?いや、違うって理解はしてるけどね?彼氏の居ない小町にとって見せつけられているようにしか思えないわけですよ。

 

そんなお兄ちゃんが滋賀県から帰って来て色々お土産を持って帰って来てくれたんだけど、その中に1つだけ変な物があった。赤色に黒模様のついた大きめの瓢箪だったの。なんかお兄ちゃんにしては変なの持って来たなぁ〜って思ったんだけど、向こうに登山をした時に持って帰った物らしいけど………それっていいの?

 

なんかお兄ちゃんから注意も貰った。

 

 

八幡『この瓢箪の中身の匂い嗅ぐなよ?メッチャ酒臭いから。どうしても嗅ぎたいって言うなら嗅いでも良いが、後の事なんて俺は知らんから自己責任で頼むな?』

 

 

って言われた。って事はお兄ちゃんはあの瓢箪の匂いを嗅いだって事だよね?いや、嗅がないよ?興味はあるけど流石に小町はそこまで命知らずじゃないから。でもどんな匂いするんだろう?ビールとかの匂いは嗅いだ事あるけど、それよりもっとかなぁ?

 

 

小町「はぁ〜………ちょっと休憩!ずっと睨めっこしてたけど、もう限界!なんか飲もっと。」

 

 

あっ、そういえばお兄ちゃんが修学旅行で買って来た有名なコーヒー店のロックメイのも〜らおっと♪あの日以来飲ませてもらってないし、1杯くらいなら良いよね〜。

 

 

ーーー八幡の部屋ーーー

 

 

小町「さって何処かなぁ……ってアレ?こんなのあったっけ?ていうかコレ冷蔵庫?こんなのいつの間に買ってもらってたの?ズッルイなぁ〜お兄ちゃんは。まぁいいや、あったあった♪じゃあ早速……ん?」

 

 

なんか付箋が貼ってある………あっ。

 

 

『小町、勝手に飲むなよ?飲んだらすぐに分かるからな?もし飲んだら冷蔵庫の中にあるおやつ、俺が食ってやるからな。』

 

 

小町「………」

 

 

私は取り出そうとしたロックメイのコーヒーをソッと冷蔵庫の中へとしまってお兄ちゃんの部屋を後にした。だっておやつの方が大事だもん!けどいつの間にこんな良い冷蔵庫を買ったんだろう?お兄ちゃんの部屋に入る機会なんて滅多にないから知らなかったけど、こんなの置いてあるとは思わなかったなぁ………

 

あっ、瓢箪も置いてある。

 

 

ガチャッ

 

 

およ、誰か帰って来た。お兄ちゃんかな?

 

 

八幡「はぁ〜………」

 

小町「お兄ちゃんお帰り〜。」

 

八幡「よぉ小町、たで〜ま。勉強は捗ってるか?」

 

小町「今休憩中。お兄ちゃん、ロックメイのコーヒー牛乳飲みたい〜。」

 

八幡「しょうがねぇな、1杯だけだぞ。」

 

小町「わぁい、さっすがお兄ちゃん!!」

 

八幡「はいはい、どうもどうも。」

 

 

適当だなぁ〜………

 

 

小町「今日は柊さんのお家じゃなかったの?」

 

八幡「あぁ、今日は1人で街まで行っただけだ。偶には1人の時間も過ごさないとって思うしな。柊はどう思ってるかは分からんが、偶にはこういう時間も必要だろう。」

 

小町「お兄ちゃんってさ、偶に良い事言うよね。」

 

八幡「偶には余計だ。まぁそのおかげで新刊も買えたし、久しぶりに行ったゲーセンでは良いもんも取れたし、久しぶりに1人でリフレッシュ出来たかもな。(最後のが無ければだが、な。)」

 

小町「良いもんって?」

 

八幡「マッ缶のデカいぬいぐるみ。」

 

小町「………それ、良いもんなの?」

 

八幡「俺にとってはな。お前は………何だろうな?何が好きなんだ?やっぱ肉か?」

 

小町「否定はしないけどさ、もっとなんか選択の幅なかったの?」

 

八幡「お前ならこれかなぁってのが肉しかなかった。他になんかあったっけ?プリンとか?」

 

小町「おっ、良いじゃん♪大きいプリンのぬいぐるみ、欲しくなって来た〜!」

 

八幡「じゃあ頑張ってネットで探せ。ゲーセンにはなかったから諦めろ。」

 

小町「じゃあもしあったら?」

 

八幡「そこは頑張れよ。」

 

小町「えぇ〜その時はお兄ちゃんも一緒に手伝ってよ〜!小町1人じゃ自信ない〜!」

 

八幡「暇だったら付き合ってやるよ。」

 

小町「まっ、そうなるよね〜今の1番は柊さんだもんね〜。いやぁ〜お熱いですなぁ〜。」

 

八幡「否定はしないが揶揄うんじゃねぇよ。ほら、出来たぞコーヒー牛乳。」

 

小町「わぁいありがとう〜♪」

 

八幡「んじや、俺も飲むか。」

 

 

………すっかり変わっちゃったんだね、お兄ちゃんにとっての1番は。今まで私が1番だったからかなぁ〜取られちゃったよ。まぁでも仕方ないよね、いつかはこういう日が来るんだもん。

 

 

八幡「………何辛気臭い顔してんだ?お前らしくもない。どうした?」

 

小町「……ううん、別に。勉強で分かんない所どうしよっかなぁって思ってただけ。」

 

八幡「俺は文系しか受け付けないからな。」

 

小町「最初から頼ってないし。」

 

八幡「あっ、そうですか………」

 

 

 



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始まる学校

 

 

柊side

 

 

冬休みが終わって今日は新学期初日の登校日っ!だから今は八幡君の家に向かってるんだ♪八幡君の家まで行く時は宮間さんが送ってくれる。そこからは歩きで通ってるの。皆も恋人と過ごす時間は少しでも長い方が良いと思わない?

 

 

柊「今日からまた学校だよ涼風〜やっと八幡君にお弁当を食べてもらえる日々が来たんだよ!」

 

涼風「はい、お姉様!昨日はとてもワクワクしながら寝ていました。おかげで今日はとても良いお弁当に仕上がったと思っています!」

 

柊「おっ、涼風もそう思う?私もなんだ♪」

 

 

朝に涼風と一緒に作るお弁当は、今や私達にとって楽しみの1つでもある。これがもし無くなっちゃったら半分くらいやる気無くなっちゃうかもしれない。だってお弁当作る為に学校行ってるんだもん!アレ、逆かな?

 

 

宮間「お嬢様方、到着しました。」

 

涼風「ありがとうございます、宮間さん。」

 

柊「どうもありがとう〜♪」

 

 

ガチャッ

 

 

おっ?

 

 

八幡「おはようさん。」

 

柊「おはよぉ〜八幡君、今降りるね〜♪」

 

 

やった、今日は私がいっちばん!

 

 

涼風「おはようございます、八幡さん。今日からまた学校ですね。」

 

八幡「そうだな。」

 

柊「嫌な事起きなければ良いね。」

 

八幡「こら、そういう事言うなっての。言ったら本当になっちゃうかもしんないだろうが。」

 

柊「あらら、じゃあ撤回します!!良い事が起こりますようにっ!!」

 

涼風「お姉様ったら………」

 

八幡「そんじゃお願いも済んだ事だし、行くか。」

 

柊/涼風「うん(はい)♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「八幡君はどうなると思う?あの3人。」

 

八幡「まっ、今後の学校生活は静かになるんじゃないのか?葉山のグループにいるって形にはなってるが、表立って派手な行動は出来ないだろう。寧ろ出来るとは思えない。」

 

涼風「そうですよね、全校生徒の噂の的ですからね。今最もこの学校で注目されているのは彼女達でしょうから。」

 

八幡「まぁ俺達はいつも通り過ごす事だけ考えよう。他の事したって別に意味無いしよ。」

 

柊「そうだね。平穏平和が1番♪」

 

涼風「はい、その通りです。」

 

 

そうだよね、特にこれまでと変わらないよね。変わる必要も無いしね。

 

 

ーーー2-F組ーーー

 

 

ちょっとはあったかいかなぁ〜外よりはマシかも。それにしても皆久しぶりに会うから会話が弾んでる。冬休み前よりかは良い雰囲気になってるみたい。あの3人のせいで冬休みになる前は酷かったしね〜まっ、自業自得なんだけど。

 

 

戸塚「八幡〜、夜十神さん達もおはよう!明けましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。」

 

八幡「おう、よろしくな戸塚。」

 

柊「おはよう戸塚君、今年もよろしく〜。」

 

涼風「よろしくお願いします。」

 

戸塚「皆久しぶりだよね。お休みはどうしてたの?僕はテニスなんだけど。」

 

 

戸塚君テニス好きだよねぇ〜。冬休みもテニス三昧とは恐れ入りました。

 

 

八幡「俺は………登山したな。」

 

柊「私と涼風は街歩きかなぁ〜。」

 

戸塚「へぇ〜そうなんだ!登山かぁ〜僕も今度挑戦してみようかなぁ!」

 

八幡「富士山とかやめとけよ、やった事ない奴が登る山じゃないと思うし。」

 

戸塚「うん、そうするよ。」

 

 

うん、これなら普通に学校生活を送れそう♪普通に授業を受けて、普通にご飯を食べて食べさせて食べさせてもらって、普通に下校。うん、良いね♪

 

ふんふふ〜ん♪

 

 

八幡「お決まりだが、朝から全校集会とはな……柊と涼風は兎も角、俺には数学教師の授業同様で催眠術に聞こえるんだよなぁ。」

 

柊「もう、八幡君ったら〜。」

 

戸塚「校長先生の言葉なんだから、しっかりと聞かないとダメだよ?」

 

八幡「分かってはいるんだけどな、徐々に慣れてくるとはいえ冷たい床にずっと体育座りするんだぞ?流石に嫌にもなるだろう。」

 

柊「それは何となく分かるかも………」

 

涼風「お姉様………」

 

八幡「まぁ集会さえ乗り切っちまえば普通の授業になるんだ、話の長い授業だと思えばいいだろ。」

 

 

八幡君、身も蓋もないよ……

 

その後教室にはあの3人が入って来たけど、やっぱりというか何というか少し静かになったけど、それだけだった。あとはいつも通り……でもなかった。八幡君と涼風から聞いたけど、あの3人は集まる事をせずに1人で机に座ったまま特に何もしていなかったみたい。携帯も弄らずただ座ってるだけ。多分弄ってたらまた何か投稿してるって皆から勘違いされるかもって思ったからかな?まぁ今更だけどね。それを気にした所でどうにかなる話でもないしね。

 

あっ、予鈴だ。先生来るから静かにしとこっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平塚「諸君、おはよう。誰1人休む事なく全員出席になった事を私は嬉しく思う。さて、今日の予定だが授業の変更は特に予定されていない。なので冬休み前に言った通りの時間割になる。君達なら既に友人から何が必要かどうかの確認はしていると思うから、その辺は心配していない。HRが終わり次第全校集会を行う。一応言っておくが、話をしている最中に居眠りをしないように。」

 

 

分かった八幡君、居眠りはダメだからね?

 

 

 

 

 



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実害は無いが………

 

八幡side

 

 

学校も始まって数日が過ぎた。特に何も起きる事なく普通に学校へ行って、授業受けて、手製弁当食べて、授業受けて、帰るというルーティーンを繰り返している。本当に何も無い平和な日が続いている。こういうのだよ………俺はこういうのを待ってたんだ。3ヶ月前や3週間前とかなんて騒動しかなかった。

 

今は本当に静かに暮らせている。特段目立つ事もなく、3人でそれなりの学校生活を送れている。月曜には部活もあるのだが、全く依頼なんて来ないに等しいからやる事もない。俺はただ読書をしてるだけだから退屈なのは否定しないが、あれが1番丁度良いんだよな。

 

 

このまま3年になるまで平和に………行けるかどうかは知らんが、こんな毎日だったら文句無いよなぁ………うるさいの好きじゃねぇし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、嵐とは突然やってくるものである。

 

 

「ねぇねぇ、昨日の品目更新見た?」

 

「見たに決まってるじゃん!今週もかなり新しいの入荷してたよね!」

 

「うんうん、やっぱ良いよね〜【Nigh-Ten・Group】の品揃えって!お菓子も服も色んなの売ってるし目移りするよね〜見てて楽しいもん!」

 

 

 

 

 

「最近のシューズ見たか?めっちゃカッコ良くね?あれメッチャ欲しいんだよなぁ………」

 

「バカ言え、あんなモン買えるわけねぇだろ。だって5万円だぞ?バイトしねぇと買えねぇよ。」

 

「でもカッコ良いよなぁ〜………」

 

「でもよ、もっと良いのはこれを売ってる【Nigh-Ten・Group】だよな。マジ神だぜ!」

 

 

 

 

 

ここ最近、この学校でおじさん達の会社の評判がかなり良いのだ。生徒間で話題になるくらい。バレるのではないかと気が気でない。だって俺の隣と後ろにいる2人はその会社の日本総本店社長と副社長の娘でお嬢様だ。バレたら大変な事になる……それこそアホな奴だったら、クラスメイトや同じ学校のよしみなんて理由でコレコレ買ってほしいなんて言いかねない。いやそんな奴居ないって信じたいけどよ。

 

 

八幡「最近、おじさんの会社の話題が多いな。」

 

柊「そうだね。それだけ評価されてるって事だから、私は嬉しいけどね♪」

 

涼風「はい、これもお父様達の手腕あっての評価ですから。」

 

八幡「それもそうだが、2人は不安にならないのか?もしもバレたらって。」

 

柊「うぅ〜ん……あんまりかなぁ。だって私達が凄いってわけじゃないし。それにさ、バレた所で別に実害ってないでしょ?」

 

八幡「………実害、かぁ。まぁそうかもしれんが、同じ学校の生徒だからこれ買って欲しい的な事言われたりとかするかもしれないだろ?」

 

涼風「その可能性も捨てきれませんが、私達は受けません。受けるとしても八幡さんだけです。」

 

 

いや、それはもう諦めてるけどよ………

 

 

柊「まぁいいんじゃないのかなぁ?」

 

八幡「お前達がそう言うのなら別に良いけどよ。」

 

柊「それに、何かあったら八幡君が守ってくれるでしょ?違う?」

 

八幡「………違わない。」

 

柊「なら良いじゃん♪」

 

 

どうやら俺の彼女は掌握術が巧みなようです。これまで何度かこんな風に納得させられた事あったし。

 

 

涼風「まぁまぁ、私達も疑われないようにアプリを開いて見てみましょう。八幡さんはアプリ内でお買い物をした事は?」

 

八幡「見る事はあっても買い物する事は無いな。それに買い物したらおばさんに絶対バレるだろ?それ経由でおじさんに知られたら絶対にこう言うだろ。『八幡君、何で僕に頼ってくれなかったんだい!?君の為ならなんだって買ってあげるのにっ!!』って。」

 

柊「あはは……お父さんなら言いそう。でもこうやって見ると色々な物あるよね〜。」

 

八幡「あっ、コレこの前食べたヴェリーヌだよな。すげぇ評価じゃん………コメント欄もすげぇな。」

 

 

内容としては

 

『冷たい状態で送られて来るからすぐに食べられる!感謝♪』

 

『普通なら常温で宅配とかされるのに、この会社はそこの所よく分かってる!』

 

『その日お友達と集まってたんだけど、すぐに食べられました!冷たくて美味しかったです!』

 

 

かなりの高評価なのだが、商品というよりも会社が評価されているのはなんとも皮肉なものだ。

 

 

柊「ねぇねぇ、新しい商品見てみようよ!」

 

涼風「そうですね。」

 

 

今は食品の新商品を見ているのだが、流石は世界の大陸に1社ずつ(南極以外)支店を持っているだけあって、世界各地の商品が見られる。

 

 

柊「うぅ〜ん食べ物はあまり無いかもね。服とか見てみよっか、八幡君に似合いそうなのあるかもしれないしさっ!」

 

涼風「そうですね、そうしましょうっ!」クワッ!

 

八幡「なぜテンション高くなった?」

 

涼風「八幡さんに似合う服があるかもしれないからです!」

 

八幡「ド直球な返答だな。」

 

柊「だって本当の事だもん♪八幡君ならその辺の服から高級ブランドまで全部着こなせそうだもん!」

 

八幡「そんなわけねぇだろ………」アキレ

 

涼風「いいえ、八幡さんならどれを着ても素敵です。私が保証します!」

 

八幡「………今日どうした?」

 

 

なんか涼風の様子がおかしい……服のコーナーに移ってからやたらと俺を持ち上げる。お願いだからいつものお淑やかな涼風さんにもどって。

 

 

 

 

 




ネタを………下さい………(Valentineに入るべきかなぁ………)


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こんな風景が続いてほしい

 

 

涼風side

 

 

先程は大変、お見苦しいお姿をお見せしました事をお詫び致します、申し訳ございませんでした………

 

しかし私の気持ちも理解して欲しいのです。将来私の義兄になる方が質素なお召し物をして欲しくないのです!するからにはとてもよくお似合いな、誰から見られても恥ずかしくないような格好をして頂きたいという気持ちなのです!

 

ですがやはり、かなりの噂になっているみたいですね……お父様の会社は。廊下にまで話し込んでいる方達が居る程です。

 

 

八幡「あっ、ちょっと気になってたんだが、高級食材以外の普通の食材ってどうしてるんだ?やっぱ普通のスーパーとかで買ってるのか?」

 

柊「うん、その辺の食材は普通のスーパーの物だよ。それに高いのだって大抵お父さんが買ってくる時だけだしね。まぁ最近はその頻度も多くなってるんだけど。」

 

八幡「?何でだ?」

 

涼風「八幡さんが我が家に泊まりに来られるからです。お父様ったらご自宅にいる時も唸っているのですよ。『八幡君は何が良いかなぁ〜。』っと言いながら。」

 

八幡「なぁ。やっぱさ、俺もう少し行く回数減らすわ。流石に行き過ぎだと思うんだわ。」

 

柊「えぇっ!?私達の楽しみを奪わないでよ!八幡君が自分からそれを奪うっていうの!?」

 

涼風「八幡さん酷いです、あんまりです………」

 

八幡「いや、普通は毎週泊まりに行かないもんだからな?ご近所同士の幼馴染でも無い限りは。」

 

柊「いいもん!八幡君がそんな事言うんだったら、私達もお父さん達に言っちゃうんだから!八幡君が食材費用を気にし過ぎて家に泊まりに来るのやめそうって!」

 

八幡「それやめて。もし言ったらおじさん、絶対俺に電話掛けてくるだろ。」

 

 

八幡さんが悪いんです、来る回数を減らすだなんて脅しを言うから………

 

 

八幡「分かったよ、減らすのは無しにするからそれ言うのやめろよ?」

 

柊「了解で〜す♪」

 

涼風「分かりました♪」

 

 

八幡(気分良さそうに返事しちゃって………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戸部「うえぇ〜隼人君マジやっべぇっしょ!!オシャレ決まってるべ〜!!」

 

葉山「あぁ、ありがとな戸部。」

 

大岡「やっぱ隼人君には物を選ぶセンスもあるって事だよなぁ〜。」

 

大和「だな。」

 

 

………別にどうでもいいのですが、あれから相模さん達は葉山さんの所には集まっておらず、新学期前までの葉山グループは空中分解した状態で、現在は男性のみのグループになっています。由比ヶ浜さんの姿がそこに無かったので抜けたのだと思われますが、三浦さんの所にも行かず1人で過ごしておられます。恐らく声を掛けづらいのでしょう。

 

 

戸部「なぁ、それってやっぱり今噂のあのグループで買ったん!?」

 

葉山「あぁ、【Nigh-Ten・Group】で買ったんだ。デザインが気に入ってね。」

 

戸部「やっぱそうだったんだな〜それ良いべ〜!」

 

葉山「あぁ、良い仕事をしているよ。」

 

戸部「けどそれ幾らくらいしたんだべ?前のも良かったけど、今のは凝ったデザインしてるっしょ。」

 

葉山「これで大体3000円だよ。」

 

戸部「へぇ〜でもそれで3000円なら安い買い物だべ!俺も買おっかなぁ〜!」

 

大岡「お前がつけても似合わねぇよ。」

 

大和「それな。」

 

戸部「ちょっち〜それ酷くね?」

 

 

恐らく戸部さんが言っているのは葉山さんの首に下げてあるループタイの事でしょう。遠目ではそこまで変わったようには見えませんが紐の色が紺色になっていたり、金細工に模様がついているようですね。アプリで見た事があります。

 

 

八幡「ほぉ〜……アイツも使うんだな。」

 

柊「どう?八幡君も制服にオシャレ付け足してみる?今なら私も協力してあげるよ?」

 

八幡「結構だ。制服にオシャレして何になる?俺はこのままでいい。」

 

柊「まぁ、そうだよね〜。でもさ〜私服のオシャレを見るのなら良いよね?」

 

八幡「お前、涼風のノリが移ったか?」

 

涼風「あうぅ……八幡さん、その事はお話しないで下さい。思い出すだけでもお恥ずかしい……///」

 

柊「あぁ〜よしよし、義理のお兄ちゃんがいじめてくるんだよね?大丈夫だよ、お姉ちゃんが守ってあげるからね。」ナデナデ

 

八幡「そっか。じゃあ柊にはイジってやらんぞ?」

 

柊「それってさ、やられたら嬉しいのかな?」

 

八幡「頭ナデナデ無しだけど?」

 

柊「是非イジってください!!」

 

 

お姉様………

 

 

八幡「よしよし、可哀想にな涼風。こんな手のひら返しをする姉を持って。」ナデナデ

 

柊「ねぇ八幡君、なんで涼風を撫でてるの?私だよね?私を撫でる所だよね?しかも何で私がいけない子みたいな扱いになってるのかな?後涼風、そんな可哀想な子を見るような目で私を見つめないでもらえる?なんか惨めになってきちゃうから。」

 

涼風「お姉様があまりにも素直な反応を見せていましたので、つい………」

 

柊「だからその目をやめてってば!お姉ちゃん妹にそんな目で見られるの耐えられないよ!」

 

八幡「まっ、自業自得だと思って頑張りなさい。」

 

柊「自分は関係ないみたいな事言ってるけどさ、言わせてもらうよ?こうなったのは八幡君のせいでもあるんだからね!?」

 

 

ふふふっ、こんな風景がいつまでも続いて欲しいものです。

 

 

 

 



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1つの原因

 

 

八幡side

 

 

御影『会社の評判かい?』

 

八幡「はい。ウチの学校では商品というよりもそれを管理しているおじさんの会社の方が人気が高まっているんですよ。それで最近の声とかってどうなのかなぁって思ったんです。」

 

御影『そうだね………お客様からの声を頂くのは大抵商品をお届けしてからすぐか数日って所だからね。少し待っててもらえるかい?』

 

八幡「はい。」

 

 

俺は今、おじさんに連絡を取って会社の評判について聞いている。トップページなんかにも評判とか載っているのだろうか?

 

 

御影『お待たせ八幡君。君の言った通り、ここ最近は確かに高評価のコメントが多いね。確かに妙だねこれは………』

 

八幡「はい。おじさんの事ですから、こんなの前からやってる筈ですしね。もしや誰かが?」

 

御影『それは考えにくいよ。たかが1人噂を広めた所で、ここまでなるのに時間は1ヶ月じゃ少な過ぎるからね。多分自然現象だと思うけど………』

 

八幡「なら良いんですけどね。」

 

御影『けど心配してくれたのは嬉しいよ、ありがとう。他に何か質問はないかい?』

 

八幡「いえ、自分からは今のだけです。」

 

御影『そっか、じゃあまた今度ね。そうそう八幡君、今週の金曜は来る予定なのかな?』

 

八幡「いえ、行く予定はありませんけど。どうしてですか?何か来て欲しい要件でも?」

 

御影『ううん、ただの確認。きっと娘達からも金曜日にどうするのか確認されると思うけど、その時はまたよろしくね?』

 

八幡「分かりました。」

 

御影『それじゃあね、おやすみ。』

 

 

評判は高くなってるみたいだが、それだけか。まぁ何もないに越した事はない。だがこうなると柊達にも何かしらあるかもしれないからな、用心しておくに越した事はない。

 

 

ーーー居間ーーー

 

 

小町「………」モグモグ

 

八幡「………」モグモグ

 

小町「んっ……あっ、そういえばお兄ちゃんさ、【Nigh-Ten・Group】って知ってる?」

 

八幡「知らないわけないだろ、それがどした?」

 

小町「なんかすっごい評判良いらしいんだよね。ほら、お兄ちゃんも前まではAmaz○n使ってたけど、今は【Nigh-Ten・Group】を使ってるでしょ?」

 

八幡「まぁな。何で評判良いのかは小町も分からないのか?」

 

小町「うぅ〜ん小町はあんまり使わないから分かんないけど、友達がねネットでショッピングしたんだよね。その時頼んだのがね、外国の飲み物だったんだよ。前行った時に飲んでそれ以来お気に入りだったらしいんだ。それでお小遣い出来たから頼んでたらしいんだよね。特に不満とかはなかったみたいだけど、【Nigh-Ten・Group】で注文したら値段が安かった上に冷たい状態で届けられたんだって。」

 

八幡「じゃあ保存状態が段違いだったって事か?」

 

小町「それもあるかもだけど、やっぱりさすぐ食べられる、飲めるっていうのが良かったんじゃない?ほらアイスだってさ、冷たい内に食べるから美味しいじゃん?溶けてたら美味しさ半分だし。」

 

 

確かに……ん?そういえば学校でアプリを見た時のヴェリーヌの感想欄にも似たような事が載ってあったな。もしかしたらアレが原因か?

 

 

八幡「成る程な……今の時期じゃ冷たい物は印象薄いかもしれんが、アイスとか飲み物なら冷たい状態や凍った状態の方が良いよな。それが原因か……」

 

小町「その友達もね、キンキンだった〜って言ってたしね。多分ソレじゃない?」

 

八幡「かもな。」

 

 

だがそれだけではないかもしれない。普通は商品が届いた段階で喜ぶものだ。見るだけでも楽しいって奴も居るだろうし、状態がいいだけで評判が高くなったってのは考えづらい。けどまぁ、今はこれで良いだろう。

 

 

八幡「お前はなんか欲しいの無いのかよ、何かしらはあるだろ、欲しいの。」

 

小町「白物家電かなぁ〜。」

 

八幡「………頑張って自分で買え。」

 

小町「えぇ〜お兄ちゃんも協力してよ〜。可愛い妹の小町の為にさ〜、ね?」

 

八幡「なぁにが『ね?』だ。金はともかく探すだけなら協力してやるよ。」

 

小町「それ協力って言わないじゃん。」

 

 

当たり前だろうが。何で俺まで金出さなきゃならんのだ?絶対俺が多く出す未来が待ち受けてるに決まってる。

 

 

小町「お兄ちゃんから何か話題ないの?例えば柊さんの事とかさっ♪」

 

八幡「急に何だ気色悪い奴だな………」

 

小町「お兄ちゃん、実妹に向かって気色悪いはポイント低いよ……」

 

八幡「あからさまに声色変えて話しかけてきてるんだからそう思うっての。てか何で柊の事?」

 

小町「だってさ、小町全然その話題聞いた事ないんだもん。気になるじゃん。ちょっとでいいから教えてよ。」

 

八幡「そうだな………まぁ取り敢えず、毎日面白楽しいって事で。」

 

小町「うんお兄ちゃん、それ何の説明にもなってないから。やり直し。」

 

 

って言われてもなぁ……別に話す事なんて何もねぇし、話題もこれといってめぼしいのも無いからなぁ。逆にあるのか?俺と柊に関する話題。

 

 

小町「……え、無いの?」

 

八幡「……そうだな、無い。」

 

小町「いやそれってさ、どうなの?」

 

八幡「いや、いつも一緒に居るから普通に過ごしてるだけだし、特段何かあるわけでも無いしな。」

 

小町「えぇ〜絶対何かあるよソレ〜。」

 

 

諦めて晩飯食べてろ。

 

 

 

 

 



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正体

 

 

陽乃side

 

 

はぁ〜今日も疲れたなぁ〜っと。にしても最近は企業関係の噂が絶えないなぁ〜。特に夜十神さんの所の会社の【Nigh-Ten・Group】の噂が。別に悪い噂では無いけど、どうして今になってこんな噂が立つんだろう?そりゃ就活とか控えてる子達なら重要ではあるけど、どうにも気になる………

 

 

陽乃「ただいま〜。」

 

秋乃「お帰りなさい、陽乃。」

 

陽乃「うん……あっ、そうだお母さん。質問したい事があるんだけど、聞いてもいい?」

 

秋乃「えぇどうぞ。話してみて下さい。」

 

陽乃「今私の大学ではさ、【Nigh-Ten・Group】の噂が結構出回ってるんだけど、会社の方ではどうなのかなぁって。」

 

秋乃「【Nigh-Ten・Group】の噂、ですか………その噂は批評的なものなのですか?」

 

陽乃「ううん、寧ろその逆。良い噂が流れてるんだ。この時期に流れるのもおかしいと思うんだけどさ、お母さんは知ってるのかなぁって思ってさ。」

 

秋乃「………噂については私も知りませんでした。しかし気になりますね、その噂。どのようなものなのですか?」

 

陽乃「そんなに多くはないんだけどね。」

 

 

私は知ってる限りの噂をお母さんに話した。お母さんも考えるような仕草を取った。

 

 

秋乃「……成る程、確かに良い噂ですね。しかしこれだけでは分かりませんね。一体何がどういう風にしてこうなったのか、自然なのかはたまた人為的なのか、まだ様子を見るべきだと思います。」

 

陽乃「そっかぁ………うん、分かった。」

 

秋乃「ごめんなさいね、あまり力になれなくて。」

 

陽乃「ううん、元々情報の無い噂だったし仕方ないよ。きっと雪乃ちゃんの居る総武高校でも噂になってるだろうね。比企谷君達も何かしらの行動はしてそうだけど。」

 

秋乃「彼、ですか………そうですね、比企谷さんなら何か行動を起こしていても不思議ではありませんね。どちらにしても、あまり深入りはしないようにして下さいね?」

 

陽乃「うん、分かってる。」

 

 

結局分からず、かぁ……そんなに気にする程の事でもない筈なんだけどねぇ………

 

 

陽乃sideout

 

御影side

 

 

御影「っていう事を八幡君から聞いてね、皆はどう思う?この現象について。」

 

 

僕は夕食が終わったその場で会社の噂について、妻と娘達に話を聞いてもらっている。持続性の無いものだったらいいんだけど、永続性のあるものだったら流石に無視は出来ないからね。

 

 

紫苑「………分からないわね。根本の元を見つけない限りは何とも言えないわ。それにこの噂、学生中心みたいじゃない。なら全国の学生の誰かが噂の元凶じゃないかしら?別に捕まえようとかは思ってないけど、ネットで書き込めばそういう1人歩きだってあり得るもの。」

 

柊「確かに学校で急に話題になったっていうのも気になったかなぁ。新学期の何日か経ってから急にだからね、今じゃ誰もがアプリを持ってると思う。」

 

涼風「私は………すみません、特に気になった点は見つかりませんでした。」

 

御影「ううん、気にしなくていいよ。ただ、やっぱり注意しておくに越した事はないと思ってね。八幡君には誤魔化したけど、一応これでも社長だからね。無視は出来ない。この噂に喜んで天狗になる程、僕は能天気じゃないつもりだしね。」

 

宮間「旦那様、言葉を挟むようで申し訳ありませんが、よろしいでしょうか?」

 

御影「どうかしたのかい?」

 

宮間「今し方のお話の内容なのですが、恐らくは日本国内での内容ではないと思われます。」

 

御影「?それはどういう事だい?」

 

宮間「どうやらその噂は国外の情報によるものだと思われます。その発生源は欧州のイタリアの首都ローマからのようです。」

 

御影「ローマ……欧州支店のある場所だね。」

 

宮間「はい。どうやらその国の者がSNSで投稿された物が人から人へと移って行ったものだと思われます。日本に伝わったのは、誰かがその投稿を翻訳したからだと思われます。こちらがその元となる投稿内容と翻訳でございます。」

 

御影「………」

 

 

……成る程、これを投稿した人は欧州支店ではなく、【Nigh-Ten・Group】そのものを評価しているようだね。そして恐らく、この文が反響を呼んだのだろう。

 

 

______________________________________________

 

この会社、【Nigh-Ten・Group】を設立したのは日本人だそうだが、正直素晴らしい方だと思っている!!僕はこれまでに幾度となくネット注文をしてきたが、あの日程感動を覚えた日はない!!日本には『起承転結』という言葉がある。この言葉で例えるなら、

 

起=僕達が注文をする。

承=会社がそれを了承する。

転=会社が僕達に届けてくれる。

結=無事に届けられる。

 

何でもない、当たり前のように聞こえるが、この対応が素晴らしいのだ!!僕は暑がりだから1日に何度も冷えた飲み物を飲む、それは冬でも同じだ。ある時このグループに初めて注文をして品を受け取った時即座に気が付いた………冷たかったのだ。あの日は特に暑かったから鮮明に覚えている。すぐにでも飲みたいし抱き締めてやりたいと思ってしまった程だ!!

 

そして届けてくれた宅配の人もそのグループの人だったのだが、終始丁寧に対応をしてくれただけでなく世間話にまで付き合ってくれたのだ!しかも嫌な顔一つせずにだ!!この対応、日本人の精神が宿っていると感じた瞬間だ!!さっきは『起承転結』を4つの意味で分けたが、アレでは収まりきらない程の思いやりが感じられる。きっとこの会社を設立した日本人の社長がとても良い教育者、人格者だったのだろう。1度も日本には行った事は無いが、日本人の思いやりを感じた瞬間だったので、これを記した。

 

僕はこの会社を立ち上げた社長のように思いやりを持って行動するべきなのだと心からそう思った。

 

______________________________________________

 

 

御影「……うん、この投稿主はとても良い人のようだね。僕自身も嬉しいけど、こんな風に言ってくれるとね。」

 

涼風「お父様への評価は絶賛のようですね。」

 

紫苑「良かったわね御影、とても良い教育者、人格者だそうよ?」

 

柊「流石はお父さん、流石は海外進出をしただけの事はあるよね!!」

 

御影「み、皆褒め過ぎだよ〜///」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




かなり捻じ曲げられた噂になっていますね。


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予想外の事態

 

 

八幡side

 

 

八幡「海外の人の投稿?」

 

涼風「はい。その方がお父様の会社に初めて注文して、その時の感想を書いた物が根幹だそうです。それが世界的に大反響を起こしたのでしょう。恐らくですが、数日前からお父様の会社の売り上げは鰻登りだと思われます。」

 

八幡「まさかイタリアの人がそんな投稿をしてたとはな………けど、何でそれがこんな事になってんだろうな?日本では会社と商品の半々になってるようなもんだが?」

 

柊「それは分かんない。何でだろうね?」

 

 

……まぁ、分からん事をあれこれ考えても仕方ない。今は普通に過ごす事だけ考えるか。

 

 

ーーー2階廊下ーーー

 

 

ザワザワ……ザワザワ……

 

 

八幡「……なんか今日は騒がしいな。」

 

柊「八幡君、なんか………」

 

八幡「あぁ、見られてる。それも俺達ってよりもお前等2人を、だな。」

 

涼風「はい、なんだか薄気味悪いです……」

 

八幡「何だってこんなに注目されてんだ?昨日まで普通に過ごしてた筈だが………」

 

 

ガラガラッ

 

 

八幡「………おいおい、マジか。だからこんなに騒がれていたのかよ。」

 

 

俺達が扉を開けて教室に入ると、黒板には大きめの文字でこう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜十神柊、夜十神涼風はあの大企業【Nigh-Ten・Group】社長の娘で超お金持ちのお嬢様である。

 

 

八幡「ったく誰だよこんなの書いたの。」

 

柊「ホント、迷惑もいい所。」

 

涼風「辞めてもらいたいですね。」

 

 

俺は荷物を置いてからすぐに黒板の方へと向かって黒板消しでそれを消した。ホント誰がやったんだ?この学校でそれを知ってんのは………葉山くらいだ。そして新堂先輩もだが、あの人がそんな事するとは思えない。じゃあ葉山が?いや、葉山はこんな目立つような事はしない。じゃあ誰が?

 

 

戸塚「八幡、僕も手伝うよ。」

 

八幡「おう、悪いな。」

 

三浦「あーし達も手伝うし。」

 

 

戸塚と三浦、海老名さん、川崎、が手伝ってくれたからすぐに消せたが、多分2年生にはかなり広まってるだろう。1年と3年は分からないが、一色と新堂先輩の所に行ってみないとな………

 

 

八幡「なあ戸塚、お前のとこの部員の1年に教室でこういうの書かれてるかどうか聞いてみてくれないか?」

 

戸塚「う、うん分かった。」

 

八幡「頼む。柊、涼風、新堂先輩のクラスに行くぞ。3年の状況を確かめる。」

 

柊/涼風「うん(はい)!」

 

 

ーーー1階廊下ーーー

 

 

新堂「っ!比企谷君、それに夜十神さん達も!」

 

八幡「新堂先輩、その反応って事は……」

 

新堂「うん。2人の事が黒板に書かれていたんだ。すぐ消したけど、3年生の間でも噂になってる。2人は大丈夫なのかい?」

 

八幡「今の所は。心当たりとかは?」

 

新堂「ううん、無いよ。見当もつかない。」

 

 

やっぱそうだよな……

 

 

めぐり「比企谷君!」

 

八幡「城廻先輩。」

 

新堂「城廻さん、これは一体………」

 

めぐり「私にも分からない。けど今先生達に報告して来たんだ。比企谷君達が此処に来たって事は2年生と1年生の黒板でも?」

 

涼風「はい。2年生もきっと全クラスの黒板に同じ事を書かれていると思います。」

 

 

♪〜♪〜

 

 

八幡「っ!失礼します。戸塚か………あぁ……そうか、分かった。助かったわ………あぁ、3年も同じだ。全学年全クラスに同じ事がされてあるみたいだ。とりあえずは城廻先輩から先生に報告してあるから現状確認からだろう……あぁ、分かってる。また後でな……どうやら1年も同じみたいです。」

 

新堂「そうみたいだね。比企谷君、今は2人を連れて教室に戻った方がいい。あまり教室の外に出歩いてると人目につくから。それに………

 

夜十神さん、お姉さんの方が危険だから。」

 

八幡「はい、分かりました。じゃあ俺達は教室に戻ります。何か分かったら連絡下さい。」

 

新堂「うん、そっちもね。」

 

八幡「はい、では。」

 

 

分からない事だらけだ……一体誰がこんな事を?

 

 

ーーー2-Fーーー

 

 

八幡「2人は大丈夫か?」

 

柊「今はね。さっきは人の視線とか凄く感じたから気分は良く無かったけど今は大丈夫。」

 

涼風「私も平気です。」

 

八幡「そうか……誰も何も聞いてこないのが幸いだったな。空気読めない奴が居なくて良かった。ホントマジで。」

 

戸塚「誰があんな事したんだろうね?」

 

柊「うん……私達に恨みを持ってる人かな?」

 

八幡「それだとこの学校では限られるな……けど関わりの無い奴かもしれないしな。」

 

戸塚「八幡が言った側から聞くのも悪いんだけど、黒板に書かれてあった内容って本当なの?」

 

八幡「今更隠しても仕方ないから教えるが、本当の事だ。言って良かったか?」

 

柊「うん、別にいい。」

 

涼風「私達はお金持ちとか普通とか貧乏とかには特に興味なんて無いので。」

 

戸塚「そんなんだ。でも僕はお金持ちだからって態度とか変えないからね!」

 

柊「うん、ありがとう。」

 

 

さて、戸塚は即味方だって事が確定した。普通に暮らしてても良いんだろうが、必ず厄介な事が起きて来るだろう。はぁ……一体どうなってんだ?

 

 

八幡「一先ずは普通に授業を受けるか。」

 

柊「うん、そうだね。」

 

涼風「はい。」

 

 

 

 

 




一体誰がこんな事を?


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明らかな敵意

 

 

???side

 

 

???「で、首尾は?」

 

『はい、予定通りやりました。全クラスの黒板に書いてきました。』

 

???「それで、あの2人の反応は?」

 

『それが、あの2人は俺達1年の教室には来てないので何とも………ただ、昼休みにでも様子を見に行こうかなって思ってます。その方が怪しまれる事もなく行けると思いますんで。』

 

???「いいや、この後HRがあるんだろ?それが終わった後にでも行け!俺は早くその2人の様子が知りたいんだ!!」

 

『けど俺にも授業が「口答えするんだったらお前にやる金はない!いいか、お前がやると言ったからお前に頼んでるんだ、当然お前の協力者にもな!その事を忘れるなよ?」………分かりました。終わったらすぐ行きます。』

 

???「最初からそうしていれば良いんだよ、間抜けな奴だ!!【ピッ!】まぁいい、この2人がどんな反応だったのか、聞かせてもらおうか。」

 

 

???sideout

 

柊side

 

 

「夜十神さんってあのグループの社長の娘だったんだ〜!」

 

「って事はさ、お嬢様じゃん!!」

 

「ソレソレ!社長令嬢じゃん!!」

 

「しかも超絶金持ちなんだってな!!」

 

「凄いよね〜!!あんなに大きい会社なんだもん、きっと凄い家なんだろうなぁ〜!!」

 

 

………HRが終わった後なんて私と涼風の周りに人だかりが出来て凄い。正直に言うと、凄い迷惑。朝のあの静けさどこに行ったのさ。

 

 

柊「えっと……あんまり騒がしいのは好きじゃないからやめて欲しいんだけど。私も涼風もこういうの嫌なんだ。だからやめて。」

 

「えぇ〜何で?すっごく羨ましいじゃん!!けど何でお金持ちの事隠してたの?気になるなぁ〜。」

 

「あっ、俺も気になってた!何で?」

 

涼風「あ、あの……隠していたわけでは……」

 

「えぇ〜でも教えてくれなかったじゃん!そんな素振りもなかったし!!」

 

「やっぱ困る事があったりしたのか!?」

 

 

ワイワイガヤガヤッ!

 

 

………久しぶりに私の周りでこんな賑やか……騒がしくなったような気がする。中学2年生以来かな?前までは好きだった雰囲気だけど、今は………好きになれない。寧ろ嫌いかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタッ!!

 

 

私のすぐ隣の席の机から激しい音がした。八幡君だった。きっと組んでる足で机を膝で蹴ったんだと思う。こっちは向いてないけど雰囲気で分かる、アレはイライラしてる顔だね。

 

その行動で私と涼風の周りにいた人達はすぐに静かになって八幡君に注目した。

 

 

八幡「………ガヤガヤうるせぇよ、人の気も知らねぇで騒ぎやがって。」ギロッ

 

柊「ご、ごめんね八幡君。私が早く注意してれば良かったのにね。」

 

八幡「いや、お前はちゃんと言ってただろ。それは別に気にしてねぇよ。ただ、注意されたのにも関わらず隣の教室にまで聞こえそうなくらいの大声で質問なんかしてんじゃねぇよ。お前等は柊や涼風にとって騒がしいのが迷惑だってのが分かんねぇのかよ。」

 

『………』

 

 

八幡君の威圧的な態度で周りの人達は私達の前から消えていった。八幡君は1度このクラスでキレちゃったからその恐ろしさを分かってるからだろうね。

 

 

涼風「……すみません八幡さん、ご迷惑をお掛けしてしまいまして。」

 

八幡「お前達のせいじゃねぇよ。考えなしに大声で質問したり聞いてきたりするアイツ等も迷惑だが、1番迷惑なのは黒板に書いた野郎だ。アレがなければ普通に過ごせていたのによ。」

 

柊「うん、そうだね………」

 

三浦「ヒキオも人の事言えないし………クラスの雰囲気悪くしてるって私に言っときながらヒキオだって悪くしてんじゃん。」

 

八幡「俺が悪いって言いたいのか?俺は悪くないぞ、興味だけで突っかかってきたアイツ等が悪い。」

 

三浦「それただの屁理屈だし。」

 

海老名「まぁ確かに煩く感じはしたかもね、集まるのは良いとしても声量に限度はあるよね〜。」

 

涼風「お姉様は兎も角、私は多くの方と接するのは得意ではありませんので。寧ろ人見知りなのでああいうのはちょっと………」

 

柊「私もだよ涼風。中学2年の時はまだ大丈夫だったけど、今では皆と一緒にワイワイなんて出来ないわよ。したくもないし。八幡君とならしても良いけど♪」

 

八幡「俺はそんなキャラじゃねぇよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

柊sideout

 

???side

 

 

♪〜♪〜

 

 

???「チッ、漸くか。ノロマな奴だ……俺だ。様子はどうだ?」

 

『今教室前で確認したんですけど、割と普通というか………俺が偶に見てる時とあんま変わんない様子でした。』

 

???「変わんない?見間違えじゃないのか?」

 

『はい。けどやっぱあの男が居るからかもしれないっス。あの目の腐ったアイツです。』

 

???「んな特徴的な事言われても分かるかっ!!その男の名前と他に情報は?」

 

『名前は比企谷八幡で、あの2人とよく一緒にいる男っていうか、姉の方の恋人だとか……』

 

???「恋人だとっ!!?………随分とまぁ調子に乗った奴みたいだなぁ。」

 

『俺が知ってんのはそれくらいです。』

 

???「そうかよ、まぁいい。今度はあの男について調べろ。悟られるんじゃねぇぞ、良いな!」

 

『で、でもそろそろ金下さいよ。そういう約束でしょ?依頼はこなしたでしょう……』

 

???「ならこの依頼が完了したら倍額出してやる!!途中放棄なんてしたら金なんてやらん!!さっさとやって来い!!【ピッ!】比企谷八幡……なんとも馬鹿らしい名前だ。だが今に見てろよ?お前をそこから引き摺り下ろしてやる!!」

 

 

 

 

 



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久しぶりの笑顔

初めてPCでコメント返信しましたが、慣れませんね………やっぱり携帯でポチポチする方が性に合ってます。


 

 

八幡side

 

 

柊達がお金持ちのお嬢様だという事がバレて数日後、周りの連中からのアタックは止まらなかった。クラスの連中からは無くなったが、それ以外のクラスや2年以外からも押し寄せて来ている。登校の時や学校に着いてからHRが始まるまでの時間、昼休み、下校等で俺達に休まる時間がなかった。だが風当たりが1番強いのは俺と涼風だった。

 

理由は俺が柊と付き合っているのが不釣り合いだからという何とも下らない理由だ。お前等が柊の何を知ってるってんだよ………見た目だけでしか選ばないクズ野郎共なんかに柊は渡さねぇよ。

 

そして涼風は俺と柊が付き合っているから、事実上のフリーだというのが知られているからだ。なので下駄箱や机の中とかにも手紙が入っていたりするし、告白なんかも珍しくない。2人は日に日に嫌そうな顔をしていることが増えていった。俺も何度かフォローをしているのだが、最近では昼休みの時間も潰れているからフォローの時間すらあまり取れないのだ。

 

唯一の救いは授業終わりの中休みだけだった。この時間だけは誰も来ないで済むから1番リラックス出来るのだが、1日の学校時間を統合したとしても40分しか無いのだ。これでは気は休まらない。

 

 

柊「はぁ………」

 

涼風「………」

 

八幡「大丈夫……じゃないよな。悪いな、大してフォローも入れられなくて。」

 

柊「ううん、八幡君は良くやってくれてるよ。流石にこれだけ続くと、ね………」

 

涼風「流石に私も嫌です………」

 

八幡「だよなぁ……涼風は基本人見知りだから、知らない奴相手は辛いよな。」

 

柊「ましてやいきなり馴れ馴れしくだから余計にだよ。いつになったら静かになるんだろう……」

 

 

2人の精神も少しずつではあるが擦り減ってる。学校を休むってのも1つの手だが、復学した時の反動がヤバいだろうな。正直オススメは出来ない。良い案が何も思い浮かばない………

 

 

ーーー昼休みーーー

 

 

いつもなら楽しそうに重箱を開けるお楽しみの昼休みなのだが………

 

 

柊「はぁ………」

 

涼風「八幡さん!お弁当です。」

 

 

明らかに元気が無くなってる。ここ最近俺以外の連中も混ざっての食事だからな。しかも他クラス多学年と来たもんだから落ち着かない上に、どうでもいい話を振られたりするのだ。2人の事を全く考えていない、自分の事しか考えていない、典型的な自己主張パターンだ。

 

 

ガラガラッ

 

 

「あっ、居た居た!ねぇ2人共、今日も一緒に食べようよ!!ついでにお話してさっ!」

 

「お前抜け駆けすんなよな!俺も混ざる〜♪」

 

「おいおい、そんながっつくなって!2人は逃げないんだからさっ!」

 

 

ほら見ろ、3年の空気の読めない脳内お花畑の先輩達が今日も懲りずにやって来た。

 

 

柊「あの、この前から言ってますけど、私は妹と八幡君の3人で食べたいんです。なので勝手に割り込んでくるの止めてください!」

 

「けどさ〜、いつも同じメンバーで食べるのもつまんないとは思わないの?」

 

柊「思いません。別に他の人と食べようなんて思いませんので。」

 

「涼風ちゃんはどうなの?偶には他の人と食べたいって思ってたりするよね?」

 

涼風「いえ、私は好きでお姉様と八幡さんの3人でお食事をしています。私は今の環境に不満はありません。」

 

「………でも偶には違う人と「私は今が良いのです。他の誰かと食べたいと、思った事も思う事もありません。」………」

 

 

ガラガラッ

 

 

新堂「……やっぱり居た。」

 

八幡「っ!新堂先輩。」

 

新堂「君達、また懲りずに2人にアタックしているみたいだね。迷惑だとは思わないのかい?」

 

「な、なんだよ新堂!俺達のやってる事が迷惑だって言いたいのかよ!?」

 

新堂「少なくとも、彼女達の顔を見ればそれは分かると思うよ?君達が来てから彼女たちの顔に笑顔になったかい?笑顔を向けられたかい?」

 

「っ……んだよ、有名大学の一橋大学に受かったからって調子に乗りやがって!」

 

新堂「今はそんな事関係ないよ。それより、彼女達が困っている事に気が付かないのかい?」

 

「……チッ、あ〜ぁ!どっかの誰かさんのせいで萎えたわ。俺別の場所で食うわ。」

 

「俺も。涼風ちゃん、また今度ね!」

 

「また来るからね〜!」

 

 

そう言って先輩3人は教室から出て行った。

 

 

八幡「ありがとうございます、新堂先輩。」

 

新堂「気にしないで。僕も放っておけなかったから。ここ数日彼等が君達の教室に向かっている所を見てはいたからね。流石に困っていると思って来てみたんだ。そしたら正解だったよ。」

 

涼風「ありがとうございます、新堂先輩……久しぶりに昼食を楽しめます。」

 

新堂「それは何よりだよ。じゃあ僕も行くよ、あとは3人で仲良くね。」

 

 

新堂先輩、本当に良い人だ………

 

 

柊「さっ、久しぶりに楽しくお昼ご飯を食べられるよ!なんかテンション上がってきちゃった!それに、八幡君にも食べさせてあげられるし、食べさせてもらえるし♪」

 

八幡「久し振りだしな、それくらいはしてやる。」

 

涼風「で、では私にもお願いします!」

 

 

余程溜め込んでいたのだろう、爆発したみたいに生気が溢れ出している。新堂先輩には本当に感謝だな。

 

 

柊「はい、八幡君♪」

 

涼風「八幡さん♪」

 

柊/涼風「あ〜ん♪」

 

 

久々に学校で見たな、この笑顔。

 

 

 

 



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挨拶

 

???side

 

 

???「そろそろ俺が出向く時だな。アイツ等の周囲もかなり悪くなった事だろう。それに、あの比企谷とかいう男、家は平凡、育ちも平凡、資産も平凡、何もかもが平凡だ。あんなどこにでも生えるような草木のような奴にあの場所は不釣り合いだ。私が【格】というものを教えてやらねばな………おい、車の用意をしろ。」

 

「はっ。」

 

 

くくくっ……精々頭の中身は平凡でない事を祈るぞ、比企谷八幡。

 

 

ーーー総武高校ーーー

 

 

「到着しました。」

 

???「あぁ……何とも見窄らしい建物だ。夜十神家に生まれたならば、名門校に行くのが普通だというのに………嘆かわしいな。こんな何処にでもあるような普通の学校に通っているなんて………」

 

 

しかしまだ来ぬのか?むっ!

 

 

柊「〜〜〜」

 

涼風「〜〜〜」

 

八幡「〜〜〜」

 

 

ほう、今は3人なのだな。これは好都合。邪魔者は2人の真ん中にいるあの雑草だけと見た。ならば正面からで良かろう。ふっ、俺の前で平伏すが良い……

 

 

???「おい貴様、止まれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「んで、今日のメニューって何なんだ?」

 

柊「今日はビーフストロガノフだよ♪なんかちょっと久しぶりかも、牛肉料理!」

 

涼風「普段は煮込みや炒め物が多かったですからね。その分新鮮に感じます。」

 

八幡「あぁ、少し楽しみだ。食べた事ないし。」

 

???「貴様等、この俺を無視するとはどういう了見だ!!!」

 

八幡「え、俺達ですか?」

 

???「貴様等以外に誰が居る!!」

 

八幡「他の奴かと思ってたので。後俺達すぐ帰りたいので、絡んでくるの止めてもらえます?ハッキリ言って迷惑ですし邪魔です。」

 

???「迷惑、邪魔?お前は誰に物を言っている?この俺にそんな事を言ってタダで済むと思っているのか!?」

 

八幡「……アンタ誰です?」

 

???「フンッ、俺の名前なんて言わずともその2人がよぉく知っている。」

 

八幡「………らしいけど?」

 

柊「知らないよ、あんな気持ち悪い人。」

 

???「………へ?」

 

涼風「私も存じ上げません。見た事も会った事も会話した事もありません。」

 

???「な、何だとっ!?お前等、私の事を知らんと言うのか!?」

 

柊「知るわけないじゃん!」

 

涼風「姉と同文です。」

 

 

お、おのれぇ………どこまで俺を侮辱すれば気が済むのだ!!!まさかここまで教養がないっていないとは思わなかったぞ!!!

 

 

八幡「なぁ、もう行っていいか?こっちも暇じゃないんだよ。お前の1人漫才に付き合ってられる程、待ってられないんだよ。」

 

???「良い気になるなよ、ならば教えてやる。俺は泰納(やすな)宰安(ざいあん)!!誇り高き泰納グループの御曹司だ!!」

 

八幡「泰納グループ………」

 

泰納「どうだ、自分の無礼を詫びる気になったか!!今なら土下座をしてやれば考えてやらなくも「なぁ、知ってるか?泰納グループって。俺知らん。」な、何!?」 

 

柊「聞いた事はあるよ。けど最近は経営不振が続いてるってお父さんが言ってた。」

 

涼風「はい。詳しくは知りませんが、あまり良い噂は聞きませんね。」

 

八幡「………だそうだが?」

 

 

何なんだコイツ等!!?無礼にも程がある!!泰納グループの御曹司であるこの俺に向かってなんて口の利き方だ!!姉妹の2人はまだ分かるが、この男には身の程を弁えろと言いたいものだ!!

 

 

泰納「フンッ、教養がなっていないようだがまぁいい。貴様等に話がある。何、簡単な事だしすぐ終わる。比企谷八幡、お前はそこの2人と金輪際関わらないでもらう。」

 

八幡「………は?」

 

泰納「当然意味は理解「出来るわけねぇだろ。お前の脳みそ腐ってんのか?」な、何だとっ!?貴様、私を愚弄するか!!」

 

八幡「大体いきなり現れて何なんだよ、こっちはお前の事なんて知らんし関わろうとも思ってねぇんだよ。どこぞのお坊ちゃんだか知んないが、これ以上突っかかって来るんだったらこっちも出るとこ出るぞ?」

 

 

チッ、此処で騒ぎになるのはマズイ………だが、ククククッ、良い事を思いついた。

 

 

泰納「まぁ今日の所は挨拶程度で終わらせてやる。そして予言してやる、君は自分から俺の所に来る。絶対にな!!」

 

 

そして俺は車に乗り込んで総武高校を後にした。ククククッ、アイツの顔が目に浮かぶ………絶望した顔で俺に向かって媚び諂う顔がなぁ………

 

 

泰納sideout

 

八幡side

 

 

何だったんだアイツは………まぁいい、関わらないでおこう。このクソ忙しい時にあんなバカみたいな奴に構ってられるか。

 

 

八幡「さて、行くか。」

 

柊「うん、そうだね。」

 

涼風「はい。」

 

柊「けどさ、本当にいきなりだったね。名前忘れたけど、あの人って何しに来たんだろう?」

 

涼風「最後に挨拶と言っていましたが、とてもそうには思えませんでした。」

 

八幡「まっ、放っておいても大丈夫だろう。今の所アイツから何かされてるってわけでも無いしな。されたらその時考えれば良い。」

 

柊「八幡君、あんまりやり過ぎないようにね?」

 

八幡「分かってる。あくまであっちが仕掛けてきた時だけだ。俺からは何もしない。」

 

 

 

 

 

 

 

 




と言うわけで今回の新キャラは【魔弾の王と戦姫】に出てくるザイアン・テナルディエです!!

いやぁ、彼のキャラ出すの苦労しました………ちょっと変かもですけど。


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推測と警戒

 

涼風side

 

 

御影「泰納グループ?うん、知ってるよ。3年前から経営の上手く行ってないグループだね。その前までは良かったんだけどね……今は見る影もないって感じだよ。」

 

柊「どんな会社だったの?」

 

御影「精密機械を専門としてたんだけど、そういうのはとてもコストが掛かるんだ。きっとこの周辺で請け負ってくれる大企業や小中会社が居なくなってしまったんだろうね。そのグループ独自のやり方があったみたいだけど、この近代化した時代には合わないみたいだしね。パネル操作や簡略化が当たり前になってる世の中に対して、説明書を見ながらの作業は何とも効率が悪いからね。」

 

八幡「そうなんですね。」

 

御影「1度僕もあの会社のを1つだけ発注してみたんだけど、どうにもやり辛いんだよね。丁寧じゃないというか、親切じゃないというか、あれじゃ買い手も居なくなるわけだよ。」

 

 

どうやらお父様のお話によると、その会社は前までは評判だったらしいのですが、今は見る影もない様子ですね。3年前までは大きな企業として立っていたようですが、今は経営不信ですからね。

 

 

紫苑「で、帰る時にその家の宰安って子がちょっかいをかけて来たと………どうしてかしらね?」

 

柊「分からない。帰ろうとしたら急に話しかけてきてさ、長い時間引き止められたから迷惑だった。」

 

八幡「ホントうるさかったよな、アイツ。」

 

柊「うん、もう2度と現れないでほしい。」

 

御影「けど確かに急だね……いや、そうでもないのかもしれないね。今までの君達の被害を考えると。どれもこれもいきなり来たものだしね。」

 

八幡「俺はいいですけど、2人に何かあってからでは遅過ぎますから。なのでおじさん、また2人の車登校と下校をお願いしてもいいですか?2人には了承取ってるので。」

 

紫苑「それって八幡君も込みで、でしょう?」

 

八幡「………2人が、特に柊が一緒に帰るって聞かなかったもので。」

 

柊「そんなの当たり前じゃん!大切な私達の時間を減らすだなんて、八幡君は何を考えてるのさっ!!それもこんな大変な時にだよ!?」

 

涼風「その通りです!こういう時だからこそ一緒に帰るべきなのです!」

 

八幡「という事です。何で2人がこう言う反応になっているのかと言うと、数日前に学校で2人が金持ちだってことがバレてまして………それ以来やたらと絡んでくる奴が多いんですよね。」

 

御影「バレたってどうしてだい?」

 

柊「手口は分からないけど、私達がお父さんの会社の娘でお金持ちだっていうのが、全クラスの黒板にデカデカと書かれていたの。最初は気にしなかったけど、他のクラスの男子達からの猛アプローチが鬱陶しくて……本当に嫌になるよ。」

 

涼風「クラスでは八幡さんのおかげでどうにかなったのですが、他クラスの人となると、迂闊に手を出せませんので。ましてや3年生の先輩もいますので。中々声を出す事も出来ず。」

 

 

ですが本当にどのようにして情報がバレたのでしょう?私達が他の家よりも裕福なのを知っているのは、八幡さんを除けば新堂先輩くらいです。

 

 

紫苑「………ちょっと待ってね。八幡君、柊、涼風、その黒板に書いた人、その泰納グループの子って事は無いかしら?」

 

八幡「………どういう事ですか?」

 

紫苑「ほら、この前八幡君がやったように朝早い時間から黒板に書いておくとか。」

 

八幡「そんなの無理ですよ。タダでさえ人の出入りもあるのに加えて全クラス分ですよ?絶対にいつかはバレますよ。俺がやった時は掲示物だったから目立たずに済みましたが、黒板だったら生徒が来る前に教師が来るかもしれないんですから。しかもアイツ、ウチの生徒でも無いし。」

 

紫苑「そうね、八幡君の言う通りだわ。でも、総武高校の生徒で協力者が居たら?」

 

涼風「お母様は総武高校に協力者が居ると踏んでいるのですか!?」

 

紫苑「仮説だけどね。だってタイミングが良過ぎるもの。貴方達の事が周囲にバレた事もそうだけど、数日置いてからターゲットに接触を図るやり方なんて、何処にでもあるような推理小説のやり方みたいだもの。それに向こうも一応は一般の家庭ではないから、私たちの事を知っていても不思議ではないもの。」

 

八幡「………確かにそれならあり得るかもしれない。そしてその協力者が複数人いたらもっと可能性が高い。1度に全クラス同時になら時間は短縮されるだろうから。」

 

柊「じゃあ、もしかしたら………」

 

御影「………八幡君、2人も周りの環境に気をつけるように。特に影からコソコソ見るような人にはもっと気をつけた方がいいかもね。探しにくいとは思うけど、探して捕まえろなんて無理は言わないよ。ただ気を付けるだけで良い、いいね?」

 

八幡「分かりました。」

 

涼風「はい、お父様。」

 

柊「うん、分かった。」

 

 

私達の通っている学校にあの方の協力者が………考えるだけでも嫌な気持ちになります。しかし、それが一体誰なのか、単独なのか複数なのか、色々考えさせられます………はぁ、違う意味でも学校に行くのが嫌になりそうです。

 

 



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最初の一手

 

 

泰納side

 

 

泰納「ククククッ、今頃奴は余裕たっぷりでのんびり過ごしている事だろう………だがそれも今の内だ。何故なら………ククククッ、今から想像するだけで笑いが止まらない!!あのバカな男に目に物を見せてやる、俺をバカにした事を絶望しながら後悔させてやる………」

 

「宰安様、お食事の用意が………どうかされましたか?何やら企てておいでのようですが?」

 

泰納「あぁ、これから楽しい事をしようと思ってな、それを想像するだけでも楽しみで仕方ないのだ!!ククククッ!!」

 

「左様ですか………何にせよお食事です、皆様お揃いですのでお早めに。」

 

泰納「分かった、すぐ向かう。」

 

 

今に見ていろ比企谷八幡………この先の未来が楽しみで仕方ない気分だぁ!!

 

 

ーーー食堂ーーー

 

 

父「宰安、お前は今日何処に行っていたのだ?仕事場には居なかったようだが?」

 

宰安「お言葉ながら父上、私は定時で上がった後に夜十神家のご息女にご挨拶に行った次第です。」

 

父「何?何故そんな事を?」

 

宰安「今の我が家には残念ながら全盛期ほどの力はございません。しかし、夜十神家の財力と知識、権力を持ってすれば如何様にもなりましょう。その為に私は動いている所存です。ご報告が遅れてしまい、申し訳ありません。」

 

父「……そうか、夜十神家をか………確かにあの家柄なら問題は無いな。分かった、そのまま進めろ。ただし、しくじる事は許さん。その時は我が家に居られるとは思わぬ事だ。分かったな?」

 

宰安「も、勿論でございます父上。この宰安、必ずやものにして見せましょう!!」

 

 

よし、ひとまずは乗り切ったぞ!この俺が失敗などするものか!!それに相手はただの一般庶民だ、恐れる事など何もない。その辺の雑草と何ら変わりのない存在だ!幾らでも居る。ソイツさえ始末してしまえば、あとは俺の物だ………ククククッ!!

 

だがそれには兵隊がいるな。あの学校の奴を使うとして、他には………あの学校の他に比企谷八幡に少なからず悪印象を持っている奴が居ないだろうか?ソイツをこちら側に引き込めば………充分だな。

 

 

宰安「よし、食事が終わったら奴に電話だな。ククククッ、楽しみだ。」ブツブツ

 

父「どうした宰安?」

 

宰安「いいえ、何でもありません父上。」

 

 

宰安sideout

 

御影side

 

 

食事を終わった僕と紫苑は自室に戻って少し話をする事にした。この話はちょっと子供達の前でするには抵抗があったからね。

 

 

御影「紫苑、3人には警護をつけようと思う。」

 

紫苑「………けどそれは3人の嫌がってる事なのよ、特に柊がよ?」

 

御影「勘違いしないで欲しいんだけど、常に近くに行動させるわけじゃない。遠くに離れた位置でさ。多分学校では何もないとは思うけど、校外に出たら何が起きるか分からないからね。だから常に3人を見ておこうと思うんだ。まぁこの家にいる間は安心だと思うけど、八幡君は平日自宅だからね。少し心配な部分もある。」

 

紫苑「警護っていってもどうするのよ?宮間達を出すのではないんでしょ?会社の警備局を使うの?」

 

御影「ううん、僕の知り合い。個人的にお願いしようと思ってる。」

 

紫苑「また貴方の友達?」

 

御影「うん、彼女なら安心してお願いできるしね。彼女には八幡君の警護を任せようと思ってるんだ。柊と涼風は普段は八幡君がそばにいてくれるし、この家は安全だろうから要らないしね。だから八幡君を守るようにお願いするよ。」

 

紫苑「前から思っていたけど御影、貴方の知り合いや友達や同級生って凄い人しか居ないわよね?貴方の交友関係どうなってるのよ?」

 

御影「そんな事言われてもなぁ〜………僕は普通に接してただけだし、将来の夢についても応援してただけだよ?だから普通だよ?」

 

 

紫苑(もしかしたらその普通の中に普通じゃない事が紛れているのかも………)

 

 

紫苑「それでその知り合いだけど、一体どんな人なの?お仕事は?」

 

御影「前までは警察官をしてたよ。一応階級もあって警視長だったんだけど、辞めてるんだ。」

 

紫苑「辞めてる?じゃあ今は無職って事?」

 

御影「ううん、ICPO。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫苑「ごめんなさい貴方、今なんて言ったの?私の聞き間違えでなければ今、ICPO……つまりは国際警察の人に依頼をしようって事?」

 

御影「うん、そうだよ。今は警視庁に居るから頼もうと思ってるんだ。腕もそうだけど、彼女の執念深さはかなりの物だからね。敵と見做したら何処までも追いかけるタチだから。」

 

紫苑「明らかに過剰戦力でしょうが!!それならまだウチの会社の警備員使いなさいよ!?八幡君の警護と監視をするのにどうして国際警察の人を呼ばなきゃならないのよ!?しかも元警視長!?上層部の人間じゃないの!?」

 

御影「でも皆だって仕事があるしさ、無理は言えないよ。それに大丈夫!今も彼女はそれなりの地位にいるから。日本の警視庁に居てリーダーをやってるんだよ。確か局長だったかな?」

 

 

紫苑(違う、私の言いたい事はそんな事じゃないの!?しかもまたとんでもない事を言ったわね!?局長に依頼するってどういう事よ!?この人それがどれだけ凄い事か分かってるのかしら!?)

 

 

御影「やっぱり八幡君を守るのなら腕の良い人に頼まなきゃだもんね。その点彼女なら問題無いよ。今はそんなに動く事はないけど、動いてた時はすごい数の人を捕まえてたからね〜。暴れる人に関節技決めながら。」

 

紫苑「………もう何も言わないわ。」

 

 

 

 

 

 

 





生焼け肉「御影さん、本当にやりすぎじゃない?人もそうだけど、関節技決めるんでしょ?」

御影「大丈夫大丈夫!彼女って動きたくて仕方ないって感じの性格の人だから!それにね、関節技に関して何だけど。」

生焼け肉「え、危険な技してくるの?」

御影「ううん。なんか彼女の話では、技かけられた男に人が何故か嬉しそうにするんだって。どうしてだろうね?」

生焼け肉「………ホントどうしてでしょうね?」


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依頼と謎

 

御影side

 

 

???『ふぅ〜ん……つまり私はその子を見ていれば良いのね?それも遠巻きに。』

 

御影「君が納得出来ないのも分かる。けどそうでもしないと相手がどう出るか分からないからね、頭のキレる人だったら君の存在は把握してるだろうし、悪ければ君の存在なんて目もくれてないさ。けど頼むよ。」

 

???『いいわ、引き受けてあげる。私も暇だったからちょうど良いわ。もしも何かあったら私が動いてあげるから安心しなさい。当然、犯罪扱いでね。』

 

御影「助かるよ。それで装備なんだけど『警棒1本で充分よ。私を誰だと思ってんのよ?元警察の警視長で現役のICPOの捜査官よ?』……要らないお世話だったね。」

 

???『兎に角任せなさい。それにアンタも知ってるとは思うけど、私は夜の方が得意なの。昼は寝てる事が多いもの。』

 

御影「ははは、頼もしいよ。じゃあね。」

 

???『えぇ、また。』

 

 

ふぅ………引き受けてくれてよかったよ。正直彼女以外に護身や警護で頼れる人は居なかったからね。彼女なら確実だし。

 

 

御影「さて、僕もお風呂お風呂〜♪」

 

 

御影sideout

 

八幡side

 

 

泰納グループ………っ!あった。

 

 

______________________________________________

 

 

精密機械の事なら我々にお任せをっ!!自信を持って皆様にサービスします!!

 

 

20□▽年3月

新開発!!次なる時代のPC!!

 

20□▽年1月

新たなるスピーカー新登場!!

 

 

______________________________________________

 

 

………確かこのグループが栄えていたのは3年前。この更新は今から5年前のものだ……だとすると、低迷して行ったのはこの時期からか。この商品のプレビューを見る限り、今扱っている人は居なさそうだ。使いづらいという意見しかない。だが5年前に発売されていた物の中にそういう物が無い事からして、今のトップが余程パワープレイなのだろう。

 

新開発とは言っても、この商品の新しい開発部分は既に他社が作り上げていた。これはさっき調べた。要は嘘をついているという事になる。この頃はこの会社の方が大きかったから大きくは言えなかったのだろう。だからあまり問題にはならなかったんだろうな。そう思うと今はあのグループを追い抜かして精々している事だろう。

 

 

八幡「碌に新しい掲載をしてない事から、この会社の士気は最底辺なんだろうな。腕に覚えがある奴はいるんだろうが、上層部が腐り切ってるからって奴だろう。何となくだが、見えるようになって来たのかもな。」

 

 

おじさんの会社の話を聞かせてもらってるから、少しは、ほんの少しだけは分かるようになった。おじさんの会社は営業の中でも販売を主に行なっていて、最新の情報なんかには敏感でないといけない。だからその日の新しいはすぐに取り入れるようにしているのがおじさんの会社だ。

 

だがこの会社はどうだ。開発・販売はしているのだろうが、最新の情報が無いから売られていても知らない、分からないが普通だ。これでは客も寄って来ないだろう。戦争は情報を有した方に軍配が上がると言うが、これではまさにその通りになってしまっている。幾ら戦力が5倍や10倍あろうと、情報や地の利を活かして戦えば、その差はすぐに埋まってしまう。まぁ戦力もおじさんの方が上なんだけどな。

 

 

八幡「けど、こんなのじゃあ確かに経営が傾いても無理はないというか、どうしてこうなった?役職持った奴がそんなに無能なのか?それとも金がないのか?いや、どっちもって例もあるよな。」

 

柊「八幡くぅ〜ん、難しい事してないで私に構ってよ〜さ〜み〜し〜い〜!」

 

八幡「はいはいゴメンねほったらかしにして。ホレ、こっち来てあったまれ。」

 

柊「わぁ〜い、むふふぅ〜♪」ギュー!

 

涼風「八幡さんは先程から何を見ておいでだったのですか?」

 

八幡「泰納グループのホームページ。経営がうまく行ってないっておじさん言ってただろ?それで気になって調べてみたんだが、納得したって感じだ。」

 

涼風「因みに内容を教えて頂いても?」

 

八幡「あぁ。新しい商品はあるのに告知もホームページへの掲載も無し、新開発の部分は他社のをそのまま使っただけの丸パクリ。とまぁこんな所だな。細かい部分はもっとあるんだろうが、大きいのはこの2つだ。凄いよな、新しい物は告知してかないと売れないってのに。」

 

涼風「はい。しかし八幡さん、下校時の彼の方についてなのですが………」

 

八幡「何かあったのか?」

 

涼風「その、お姉様もお気づきになったかもしれません。あの方の視線に………」

 

 

視線?

 

 

柊「あぁ〜気付いた。八幡君は男の子だからきっと分からないと思うけど、女の子はそういう視線に敏感だから。あの人私達の身体を舐めるように見てたんだよね〜……器用な事するよね、私達の相手をしながら私達の身体をやらしい目で見てくるんだよ?」

 

八幡「そんな事があったのか………確かにそれは男の俺には分からないな。」

 

柊「八幡君だって気になる事はあるでしょ?例えば私達が腕に抱き着いている時とかさ。」

 

 

うん、正直メッチャ気になってる。それに今でも『たわわ』って表現を使ってるくらいだから。

 

 

八幡「まぁ、そうだな……悪い///」

 

涼風「い、いえ!八幡さんは良いのです!」

 

柊「そっ、八幡君は良いのっ♪けどね、あぁいう気持ち悪い奴にずっと見られるのは本当に嫌になる!私の身体を見て良い異性っていうのはこの世に1人だけなんだから!!」

 

涼風「その通りです、八幡さん以外にこの身体を見せる気はありません!」

 

 

柊の言う事は分かるが涼風、お前はダメだろ……俺はお前の義兄になるつもりはあっても浮気をするつもりはないぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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憂鬱な月曜日

 

柊side

 

 

とっても、とぉ〜っても過ぎて欲しくない日曜日が過ぎて、今日は月曜日。あ〜ぁ、今日は最悪な日だよ。また変な人達が教室に来るかもしれない上に、八幡君は部活で居ない。はぁ〜………こんなにも憂鬱な気分になったのはいつぶりだろう?下校の時に絡まれたりしないかが心配だよ。そのまま学校に残るのもアリかもしれないけど、そこでも声を掛けられちゃったりするかもしれないから嫌なんだよね。

 

 

涼風「お姉様、私も月曜日がこんなにも始まって欲しくないと思ったのは生まれて初めてかもしれません。周りの方達がうるさい上に帰りには八幡さんが居ないなんて………嫌になります。」

 

柊「ホント。八幡君が下校する時に居ないだけでも嫌なのに、それに加えて嫌がらせとも思える男子達からの猛アタックはやめて欲しいよ。私には八幡君っていう決まった人がいるのにさ。」

 

涼風「お姉様が羨ましいです………私も八幡さんのような殿方と結婚したいです。ですが、そのような方は世界中探しても見つからないでしょう。ですのでそれはもう諦めてます。結婚はしませんので、八幡さんと一緒にいたいです。」

 

 

割り切っちゃってるなぁ〜………私としては八幡君と2人で暮らすのを想像してたけど、涼風が居ても別に嫌じゃない。それにこれまで通りの暮らしが出来るから、OKしちゃうかもね。

 

 

柊「もうさ、八幡君が18歳になったら籍だけ入れちゃおっか?そしたら余計な邪魔者が来なくて済むじゃん?指輪とかもして男連中を寄り付かなくさせちゃえば良いんじゃない?」

 

涼風「そうなれば、今度は私に白羽の矢が飛んでくると思うのですが………」

 

柊「そこはアレだよ、八幡君が『お前みたいな奴が俺の義弟なんて認めん!!』って言えば大丈夫だよ。涼風も分かってると思うけど、お父さんもお母さんも八幡君以外の男の子見てもなんら信頼しないと思うよ?信頼してもらうには、それこそ八幡君みたいに周りの事を顧みずに私達を助けてくれる人なんじゃないかな?この学校でいう新堂先輩とかさ。」

 

涼風「そうかもしれませんね……お父様が八幡さんにお友達を連れておいでなんて一言も発した事、ありませんしね。暗にそういう事なのでしょうか?」

 

柊「私の仮説だけどね。前にお父さんとお母さんが八幡君にどっちを貰ってもいいって言ってたけど、あれ割と本気なのかもね。私はちょっと困るんだけどさ、恋人の妹にそんな事言うんだもん。」

 

涼風「そ、そうですね………(申し訳ございません、お姉様。私はその時、とても嬉しかったです。)」

 

 

ーーー比企谷家ーーー

 

 

宮間「到着しました、お嬢様方。」

 

涼風「ありがとうございます。」

 

柊「いつもありがとう♪」

 

八幡「よぉ。」

 

柊「あっ、八幡君おはよう♪今日は早いんだね?」

 

八幡「まぁ、気分でな。なんか今朝から落ち着かなくてよ。」

 

涼風「?何かあったのですか?」

 

八幡「いや、そういうわけじゃないんだ。ただ、なんか変な感じがすんだよな。何かは分からん。」

 

柊「八幡君にしては珍しく煮え切らない答えだね?じゃあ本当に何か分からないんだ?」

 

八幡「あぁ。普段通りに起きて顔洗って飯食っただけなんだが、どうにもなぁ………落ち着かなかった。また学校が始まるって思ってるからか?」

 

涼風「私達も先程から思っていました。」

 

柊「まぁたちょっかいかけてくる男達が居るんだろうなぁ〜とか、今日は八幡君の部活の日だから一緒に帰れないとか。」

 

八幡「うわっ、その事忘れてた。けど暫くは車で送迎って事になったからある程度は安心だ。変な奴等が割り込んできたりしなければ。」

 

柊「言わないでよ八幡君、本当にそうなったら?」

 

八幡「俺が飛び出してく。」

 

 

ーーー総武高校・下駄箱前ーーー

 

 

柊「ふぅ〜……何もない事を祈ります。」

 

涼風「切実にそう願うばかりです。」

 

八幡「俺の所にも何も入ってない事を無意識に願ってしまうのはおかしな事じゃないよな。」

 

 

俺達は掛け声を出してたわけではないが、同時に下駄箱の戸を開けた。中には………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何という事でしょう。

 

 

『今すぐ別れろ。』

『釣り合わねぇんだよ、カス!!』

『あの2人に近づくなっ!!』

 

 

こんなにも素敵な手紙が入っていました。うん、ホント………暇な奴がいるんだな。こんな事に時間費やすくらいならマシな事すれば良いのによ。

 

 

柊「やっぱりあった………はぁ、私は八幡君にしか興味ないのに。」

 

涼風「お姉さまの言う通りです。私も八幡さんにしか興味はありません。」

 

八幡「のようだな。そんで、それどうすんの?」

 

柊「読むけどそれだけ。屋上とか体育館裏とかに来てくださいって書いてるようなものならすぐ捨てちゃうかも。」

 

 

私八幡君に直接言ったもん!手紙で送るのが悪いとは言わないけど、私は直球の方が好きなの!ダイレクトが良いの!告白なら遠回りじゃなくてストレートがいいの!カーブとかフォークとかそういうまどろっこしいのは良いから!

 

 

八幡「……ちなみに涼風は?」

 

涼風「お姉様と一緒です。それに私には気になる異性なんて居ませんので。」

 

柊「え、八幡君は?」

 

涼風「………気になる、ではなく好きな異性です。当然、義兄としても/////」

 

 

あぁ〜可愛い!!けどちょっと複雑!!

 

 

 

 

 

 



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犯人、捕らえたり。

 

 

涼風side

 

 

それにしても本当に酷い内容の手紙です!この手紙を書いた方達は八幡さんの事を何だと思っているのでしょうか!?八幡さんは寛容なお方なので、攻め入ったりしようなんて考えはしていないようですが、そんな八幡さんの優しさに気付けないような方達とお付き合いする気など毛頭ございません!!

 

 

柊「………」ゴゴゴゴゴ…

 

涼風「………」ゴゴゴゴゴ…

 

八幡「……なぁ、大丈夫か?」

 

柊「うん、すっごく気持ち悪い手紙の内容だったからムカついているだけ。」

 

八幡「………因みに聞いても?」

 

柊「八幡君から俺に鞍替えしろよ的な発言を手紙に書いてるの。しかも八幡君の事、ゾンビって例えてた……身の程を弁えて欲しいよホンットに!!」

 

涼風「私の方にも……八幡さんのような冴えない奴と一緒に居ない方が良いと。優しく言ってるつもりでしょうが、これは暗に『あんな見栄えも何も無い奴なんかよりも俺と一緒の方が良い。』という風に聞こえます。お姉様の言う通り、身の程を弁えて欲しいです!」

 

八幡「そんなこと言われるような事、俺したかねぇ?何も身に覚えがないんだが?」

 

柊「八幡君にある訳ないじゃん!ただ向こうが勝手に逆恨みしてるだけでしょ!鞍替え?する訳ないじゃん!八幡君に比べたら1μも魅力も無い人と誰が付き合うもんですか!」

 

 

八幡(朝から白熱してるなぁ〜………柊は兎も角として、涼風も声を上げて言うのは余程嫌な文だったんだろう。送り主の皆さん、俺が心の中で返事を送ります。チャンスも何もありませんでした。雑巾で顔面の汚れをよ〜く取ってから他の女にアピールでもしてろ。)

 

 

八幡「それで、その手紙どうすんだ?」

 

柊/涼風「捨てる。」

 

八幡「言うと思ってた。その手紙だが、今はまだ取っておかないか?後々使えそうだし。俺の手紙もある意味では使えそうだしな。」

 

柊「けどどうするの?」

 

八幡「平塚先生に見せる。」

 

 

ーーー職員室ーーー

 

 

平塚「成る程な……これがその手紙か。」

 

八幡「はい。2人にはラブレター、俺には恐喝っていうんですかね?それとも脅迫?それらしい文がデカデカと書いてありますよ。」

 

平塚「………これは確かに酷いな。」

 

涼風「それから最近、他学年の男子の方達からしつこく付き纏われているのです。噂の影響もあるとは思いますが、正直に言って私たちは迷惑をしています。」

 

柊「お昼休みや下校の時なんかも私達の事なんて気にもせず、自分の成したい事だけしか見えてないみたいです。私達でも何とかやってはいますけど、先生達の方からも何か口添えって出来ませんか?」

 

平塚「そうだな………君達の場合事情もあるしな。分かった、今日は無理かもしれんが、放課後にある職員会議で話してみる事にしよう。それでも構わないか?」

 

八幡「対処してくれるだけでもありがたいです。じゃあ俺達も教室に戻ります。」

 

 

ーーー2-Fーーー

 

 

八幡「………」

 

柊「?」

 

涼風「あの、八幡さん?どうかされたのですか?」

 

八幡「……なぁ、手紙の事は除くとして、朝から昨日の先輩や1年達は何処行った?ここ最近は校門前とかで待ち伏せてから教室までついて来たりするのに、今日はその影すらなかった。それに今の時間もだ。何か不自然だ。急に来なくなる事ってあるか?それも全員一斉に。」

 

 

っ!そういえば朝から見かけもしませんでした………八幡さんとお姉様とのお話に夢中で気付きもしませんでした。

 

 

八幡「………なんか不気味だ。」

 

柊「うん、確かに………」

 

涼風「今日だけ偶々、なんて事は……」

 

八幡「こんな手紙を書くアイツ等にそんな頭があるとも思えないが、分からない事だらけだな……っ!」

 

柊「?八幡君?」

 

八幡「………お前等、顔はこっちに向けたままでいろ。その場から動くな。」

 

涼風「は、はい。」

 

 

八幡さん、一体どうしたのでしょう?

 

 

八幡「……っ!」

 

「う、うわあぁぁ!!」

 

柊「は、八幡君!?」

 

涼風「八幡さん、一体何を!?」

 

八幡「コイツ、俺達の事を影からコソコソ見てやがった。」

 

柊/涼風「っ!?」

 

八幡「ん?お前は………」

 

「くっ………」

 

 

お知り合い、でしょうか?ですが八幡さんに後輩のお知り合いがいるとは聞いた事がありませんが。

 

 

柊「八幡君、そこに居るのって誰なの?」

 

涼風「お、お姉様?」

 

八幡「やっぱりそうか……お前、あの時の騒ぎで停学になった1年だな?」

 

 

※詳しくは22話【八幡、ついに………】を参照。

 

 

八幡「なんで俺達を見張るような事してた?」

 

「………」

 

八幡「成る程、黙秘か。じゃあお前の依頼主は泰納宰安って事だな?」

 

「っ!な、何で分かった!?」

 

八幡「ほう?カマをかけてみたが、本当にそうだったのか。成る程、あのねちっこそうな奴の事だし納得も出来る。黒板に柊達の事を書いたのもお前の仕業だな?どうなんだ?」

 

「……くそっ、あぁそうだよ俺がやったんだ!!」

 

八幡「お前だけか?他には?」

 

「っ……いねぇよ。「嘘だな、まだ居るよな?1人って事にして良いのか?このままだとお前1人だけが泥被る羽目になるぞ?」………」

 

 

そして1年生の彼は黒板に書いた実行犯の名前を言いました。どうやら全学年に2人ずつ協力者がいたようです。

 

 

八幡「……今度のは嘘じゃないな?」

 

「う、嘘じゃない!!本当だ!!」

 

八幡「………まぁお前のその言葉、今は信じる。さて、今日はやる事が多いな。また職員室に行かなきゃならん。」

 

 

黒板に私達の事を書いた実行犯の1人は自白しましたが、何故でしょう………先程から胸騒ぎが止まりません。どうしてでしょう?

 

 

 

 

 

 

 

 



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黯然失色

 

 

八幡side

 

 

あの1年を使ってその他の協力者を捕まえに行った所、どうやら本当にあの泰納と繋がっていたらしい。繋がっていたと言うよりも、一方的な関係だったらしいが。まぁ簡単に言うと、金と俺だ。金が欲しいのは分かってたが、どうも俺が柊と涼風と一緒に居るのが気に食わなかったらしい。今まで言う機会もきっかけも無かったから手出しせずに居たようだが、今回の事で手を出す気になったとか………なんともアホらしい。

 

 

教頭「……成る程、それで君達は先日の黒板の騒動を起こしたと。しかも君達に至っては受験を終えて卒業を待つ身だというのに………こんな事をしでかすなんて。」

 

「「「「「「………」」」」」」

 

八幡「それで、この場合ってどうなるんです?」

 

教頭「……私個人では判断ができない。校長先生と教師全員での会議を開く事になるだろう。規模が全学年なのだ、教師全員で真剣に話し合わなければならない。」

 

八幡「そうですか。」

 

 

因みにだが、俺はあのグループの事は話してない。この6人が協力して実行したという事にした。ややこしくなりそうだしな。

 

 

教頭「取り敢えず、今日はもう帰りなさい。君達6人の処遇についてはまた後日、報告させてもらう。甘い罰になるとは思わない事だ。」

 

 

そして俺達は職員室を後にした。すると………

 

 

「テメェ!!なんて事してくれやがったんだ!!おかげで罰を受ける羽目になっただろうがっ!!」

 

「そうだ!!責任取りやがれ!!これのせいで大学に落ちたらどうしてくれるんだ!!浪人なんて俺は御免だぞ!!」

 

八幡「そんなの知りませんよ。たかが金欲しさでこんな事したんだ、そのくらいの覚悟あったんでしょう?それとも何ですか、自分達は守られてるとでも思ってたんですか?」

 

「ぐっ………」

 

八幡「それに、俺がさっきあのグループの事を言わなかった事を感謝して欲しいくらいですよ。もしそれでグループの被害が被ったら、アンタ等だってこの学校だけの騒ぎになってないかもしれないんですから。それをこの場だけで収めてやってんですよ?ありがとうの一言くらい貰いたいくらいですよ。」

 

「「「「「「………」」」」」」

 

 

当然嘘だ。いや、あるかもしれないけど、九分九厘無いだろう。そうなれば利用した会社の責任になるだろうし。もしかしたら少なからず何かはあるかもしれないけど。

 

 

八幡「まぁ、もうどうでもいいけどよ。それに、貴方さっき責任取れとか言ってましたけど、こう言いますね。自業自得だこの野郎。」

 

「………」ガクッ

 

 

そう言い返して俺は2人が待つ教室へと向かった。

 

 

ーーー2-Fーーー

 

 

柊「あっ、八幡君♪」

 

八幡「悪い、遅くなった。」

 

柊「ううん。それでどうなったの?」

 

八幡「あぁ、教師全員で話し合って決めるそうだ。規模がデカいみたいだから、全員の意見を聞きたいんだと。まぁ俺は俺達に迷惑をかけなければ何でもいいけどよ。」

 

涼風「そうですか……いえ、そうですね。私も八幡さんの意見に賛同します。」

 

柊「さっ!じゃあ用事も終わったし帰ろっか♪校門前には宮間さんも待ってる事だしさ。なんか堂々と出来るっていうのはそれはそれで良いよね。」

 

八幡「まっ、今更目立つ事を気にしても仕方ないしな。割り切るしかないよな。」

 

 

ーーー校門ーーー

 

 

宮間「お待ちしておりました、お嬢様方、若様。どうそ、お乗り下さい。」

 

八幡「宮間さん、わざわざありがとうございます。俺の家まで送ってくれて。」

 

宮間「とんでもございません。旦那様や奥様、お嬢様方がお認めになられたお方に尽くせるのであればこの宮間、雑用でも何でも謹んでお受けする所存でございます。」

 

 

ホントこの人凄いよな………

 

 

涼風「………」ソワソワ

 

柊「涼風、まだ胸騒ぎが止まらないの?」

 

涼風「は、はい……その、お昼に感じた時よりもより強く感じるのです。なんかとても不安で………」

 

八幡「何なんだろうな?涼風がそんな風になるなんて今までになかったのにな。」

 

柊「うん、ホントにね。私もずっと見て来たけどこんなの初めてだもん。」

 

涼風「………」

 

宮間「っ!お嬢様、前の方から煙が上がっておられます。」

 

柊「煙?」

 

宮間「はい。それも灰色の、何かが燃えているような色の煙でございます。これは私の推測ですが、涼風お嬢様の先程から続いている胸騒ぎですが、的中しているかもしれません。」

 

柊「え?どういう事?」

 

宮間「大変な無礼を承知で申し上げますが、この先は若様のご自宅がある方向。もしも涼風お嬢様の胸騒ぎが正しければ………」

 

 

っ!!!

 

 

八幡「すいません宮間さん、少し急いで下さい。」

 

宮間「かしこまりました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は家の前まで着いた。目の前には俺の住んでいる家が炎によって焼かれている姿だった。

 

 

八幡「………」

 

柊「そんな………」

 

宮間「………」

 

涼風「酷い………」

 

 

燃えていない場所が無いくらい、家は炎で包まれている。今日の朝まで普通に過ごしてた家がこんな風になっているのは、とても信じられなかった………

 

 

「あぁ、八幡ちゃん!」

 

八幡「っ!あぁ、おばさん。」

 

「あぁ誰がこんな酷い事を………どんな理由か知りゃしないけど、八幡ちゃんの家を焼くなんて!!」

 

八幡「あの、消防に連絡とかって?」

 

「もうしてあるよ!すぐに来てくれるそうだから安心しなさい!」

 

 

………

 

 

柊「八幡君………」

 

八幡「………親父達に連絡する。小町には学校で待ってもらうように言っとくわ。」

 

涼風「は、はい………」

 

 

俺は今、何も考えられない頭で言葉を探しながら、小町に学校で待ってもらうように説得した。親父達は夜遅くまで働いてるけど、電話は早めにしておくべきだと思ってるんだが、今はそんな気持ちにはなれなかった。

 

 

 

 

 

 



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信じられない事態

 

 

宰安side

 

 

宰安「……そうか!よし良くやった!!お前等はそのまま帰って来い!!ククククックッハハハハハハハッ!!!最高の気分だ!!どうだ思い知ったか比企谷八幡っ!!この俺にかかればお前の住んでるボロ家なんて一瞬で燃えカスに出来るんだ!!クククククッ、笑いが止まらん………これでアイツは住む場所を失った。どうする事も出来んだろう!さぁ比企谷八幡、次はどうする?惨めな顔をしながら俺様の所に来るか!?泣いて謝るのなら、俺は寛大だから許してやるがなぁ!!!」

 

 

まぁ、俺はアイツに予言をしたからな。必ず此処に来るだろう。だがその時の顔は絶望に染まった顔になっているに違いない。今から楽しみだ、なぁ?

 

 

宰安sideout

 

八幡side

 

 

ーーー千葉県立中央中学校ーーー

 

 

八幡「……小町。」

 

小町「あっ、お兄ちゃん!急にメール来たからビックリしたよ〜しかも学校の校門で待ってろなんて………どしたの?」

 

八幡「今は説明出来ない………とにかく車に乗れ。話はそれからだ。」

 

小町「車って……この黒塗りの!?」

 

八幡「そうだ。早くしろ待ってんだから。」

 

小町「う、うん……あれ!?柊さんに涼風さん!?どうして!?」

 

柊「うん、こんにちは。」

 

涼風「ご説明は私達からは………」

 

八幡「宮間さん、お願いします。」

 

宮間「かしこまりました。」

 

 

ーーー夜十神邸ーーー

 

 

小町「………ここ何処?」

 

八幡「柊と涼風の家だ。事情は中入ってから話す、今はとにかくついて来い。」

 

 

小町(え、何この豪邸!?広っ!!?ていうか柊さんと涼風さんってお金持ちだったの!?)

 

 

ーーー居間ーーー

 

 

小町「うっわぁ………中も広い。」

 

宮間「お嬢様方、若様、小町様。私はお茶を淹れて参りますので、失礼します。」

 

涼風「お願いします。八幡さん、これから一体何をなされるのですか?」

 

八幡「一先ず、俺の家族に連絡する。俺の両親は一緒の職場で共働きしてるから、どっちかに繋がればそれで大丈夫だ。」

 

小町「それよりもお兄ちゃん、何で柊さんの家に来たの?彼女の家がお金持ちだっていう自慢ならもう分かったけどさ、家に帰らないの?」

 

八幡「………」

 

 

prrr…prrr…prrっ!

 

 

凛『もしもし八幡、どうしたの?』

 

八幡「あぁ、お袋。親父と2人でテレビ電話って今出来るか?話さなきゃならない事がある。」

 

凛『?えぇいいけど、ちょっと待ってなさい。』

 

 

そう言ってお袋は親父を連れて何処かの部屋に入ってからテレビモードに切り替えて画面に顔が映し出された。

 

 

凛『お待たせ……ってアンタ達今何処にいるのよ?周り豪華に見えるんだけど?家に居ないの?』

 

尚人『八幡、小町。お前達何してるんだ?』

 

小町「怪しい所じゃないから。此処は柊さんと涼風さんの家。夜十神さんの家って言った方がいい?」

 

八幡「そんな事よりも、俺たちが今家に居ない訳を説明する。20分前くらいに、俺達の家が火事にあって全焼した。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚人『八幡、お前は何言ってるんだ?俺達は今仕事中なんだぞ?お前の冗談に付き合ってる場合じゃないんだぞ?』

 

小町「そ、そうだよお兄ちゃん。家が全焼したって小町も笑えないんだけど。いくらお兄ちゃんが人を笑わせる才能がないからってその冗談は無いよ?」

 

八幡「………本当に冗談だったら良かったのにな。写真も動画も無いけど、俺は目の前で自分の家が燃えているのを見た。きっと今頃は火は消されてる頃だろうが、真っ黒になってると思う。」

 

凛『………それ、ホントなの?』

 

八幡「こんな時に嘘なんかつくかよ………こんな苦笑も失笑も出来ない冗談、俺が作れるわけねぇだろ。全部本当だよ。」

 

小町「う、嘘………」

 

尚人『っ!八幡!お前達は平気なのか!?』

 

八幡「あぁ。小町は学校に居たし、俺は帰る途中で煙が上がってたから大丈夫だ。そんで俺達は今、衣食住の衣と住が無い状況にあるが、俺から柊の父親にこの家に住めるように頼んでみる。部屋は余ってるから問題ないと思うけど、もし大丈夫だったら地図と一緒にメールを送る。」

 

 

正直、俺の家族にこの家が金持ちだって事は伏せておきたかったが、この状況じゃ背に腹は変えられない。俺だけってわけにもいかないしな。

 

 

凛『………分かったわ。一先ず夜十神さんに確認が取れたらメールを頂戴。私達も事情を説明して今日は早退させてもらうようにするから。だから八幡、それまでの間は小町をよろしく。』

 

八幡「分かってるよ。じゃあまた後で。」

 

 

………信じられないって顔してたな。それもそうだ、無理もない。俺だってあんなの信じたくもない。

 

 

八幡「涼風、小町を頼めるか?今からおじさん達と話すから。」

 

涼風「分かりました。小町さん、こちらで少しゆっくりしましょう?」

 

小町「は、はい………」

 

 

ガチャッ バタンッ

 

 

八幡「………ふぅ〜。」

 

柊「八幡君、大丈夫?」

 

八幡「あぁ………一応はな。」

 

柊「お父さんとお母さんには私から話そっか?小町ちゃんが居るでしょ?」

 

八幡「いや、これは俺の口から言っておきたいんだ。けど、ありがとな。」

 

柊「ううん、気にしないで。けど、隣には居るからね。その方が安心するでしょ?」

 

八幡「………あぁ。」

 

 

 

 

 



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飼い猫の行方

 

 

八幡side

 

 

八幡「っていう事がありました。火事が起きたのは家に着く前で、妹も家に居なかったので怪我人は居ませんでした。」

 

御影『そんな事が………八幡君、とても辛いだろう。目の前で住んでる家が焼かれたんだ、誰よりも君が1番辛い。慰めにもならないと思うけど、そんな辛い事をよく言ってくれたね。ありがとう。』

 

八幡「……いえ。」

 

紫苑『私達も仕事を大急ぎで終わらせてそっちに行くわ。それからさっき言ってた家族を泊める件だけど、断る理由なんて無いわ。私も御影もそんな状況下で断るような事なんてしないわ。』

 

八幡「ありがとうございます、おばさん。」

 

柊「それで、この後はどうするの?」

 

御影『その事は僕達と八幡君のご両親が帰って来てから話そうか。僕達だけで決めても仕方ないしね。八幡君、この際だ。前から冗談で言ってた家の件、本気で考えてもいいかい?』

 

八幡「っ!けど………」

 

御影『心配しなくていいよ。君達家族には一刻も早く住む場所が欲しい所だろう。その為の支援なら幾らでもさせて欲しい。普通の一軒家でも高級マンション、豪邸でも何でもだ。君は君で家族を安心させてあげられるように努力しなさい。いいね?候補だけは見つけておくから。』

 

八幡「………はい。」

 

御影『うん。じゃあ切るよ?今すぐにでも仕事に移りたいからね。』

 

紫苑『柊、八幡君達を頼むわね?涼風や宮間達にも伝えておいて頂戴。』

 

柊「うん、分かった。」

 

御影『それじゃあ、また後でね。』

 

 

そう言っておじさんとのテレビ電話は終了した。事情を説明した結果、おじさんが今所有している物件を貰う所にまで発展してしまったが、親父達と話し合ってだな。新しい家で暮らすもあの焼かれた場所に同じ家を建てるのも、親父達と相談してだ。

 

 

八幡「……よし、親父達には送信した。」

 

柊「八幡君、涼風の所に行かない?小町ちゃんもそろそろ落ち着いていると思うし。」

 

八幡「……あぁ、そうだな。」

 

 

ーーー客室ーーー

 

 

柊「涼風、入ってもいい?」

 

涼風『お姉様、どうぞ。』

 

 

部屋の中に入ると、ベッドで寝ている小町が居た。相当ショックを受けているに違いない。目元が腫れてるし泣いた跡もある。それに涼風の手を握って離してないしな。

 

 

八幡「涼風、ありがとな。」

 

涼風「いいえ、このくらい何でもありません。」

 

八幡「中学生にはキツい話だとは思うが、話しておかないと余計に不安を感じさせるだけだ。知れる内に知っておいた方が良いだろう。」

 

柊「それで八幡君、私達はどうする?」

 

八幡「一先ずはこの家で待機だな………今俺達に出来る事なんて何も無いしな。」

 

涼風「そうですね。あの家に誰も居なかったのは幸い………っ!!八幡さん、猫がっ!!カマクラさんはどうなったのでしょう!!?」

 

 

っ!!!マズい、あの火事の中にカマクラが居たらもうお終いだ!!それに今頃は消火も済んでる頃だと考えると………

 

 

八幡「柊、直ぐに行くぞ!!涼風は小町を見ててくれ。1人にはさせないでくれ。」

 

涼風「分かりました!」

 

 

俺と柊は宮間さんに頼んで再び、俺の自宅へと舞い戻った。

 

 

ーーー自宅ーーー

 

 

………出来れば今日はこの場所には来たくなかったが、カマクラが行方不明になってるからそんな事言ってられない!

 

 

消防士「君!この先はダメだ!下がりなさい!」

 

八幡「すいません、俺はこの家の住人です!この家の辺りに猫を見かけませんでしたか!?」

 

消防士「この家の!?そうだったのか………ご覧の通り家は全焼してしまっている。君の言う猫が無事だったとしても、我々は見掛けてもいないんだ。それに、中も見れるだけ見たんだが、猫の遺体らしき物も発見出来なかった。すまない。」

 

八幡「………そうですか。」

 

消防士「この先は今、立入禁止区域になってる。幾ら現住人の君でも入る事はできない。心苦しいとは思うが、分かってくれ。」

 

八幡「………はい。」

 

柊「八幡君………」

 

 

クソ………カマクラの事を忘れてたなんてな。小町になんて説明すりゃいい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、八幡ちゃん!やっと見つけた!」

 

八幡「っ!おばさん………」

 

「良かったよ〜さっき見かけてから姿が見えなかったから。」

 

八幡「すいません……家族と連絡してたので。」

 

「そっかそっか……あっ!それでね、此処に来たのは八幡ちゃんの家で飼ってるあの縞猫の事だと思ってね。」

 

八幡「っ!!カマクラを知ってるんですか!?」

 

「まぁねぇ〜……あの猫なら無事だよ。何せ私の家に居るからね。」

 

八幡「え……おばさんの家に?」

 

「最初は何処の猫かと思ったんだけどね。首輪してるからどこかの猫かとは思ってたんだけど、八幡ちゃんの家から出て来るからそうだと思ってたんだよ。八幡ちゃん達が家を空けてる間、ずぅ〜っと私の家に来てたからね。だから火事が起きてた時も私の家に居たから毛先1本の火傷すらしてないよ。」

 

八幡「………そうだったんですか。」ヨロ

 

柊「あっ、八幡君。」

 

八幡「……悪い、安心したら力が抜けてな。」

 

「安心して良いよ。それと八幡ちゃんは今、そのお嬢さんの所に居るんでしょ?なら猫の事は私に任せて良いよ。猫は慣れた所の方が居心地が良いだろうからね。八幡ちゃんは今後の事をゆっくり考えなさいな。決まったら引き取りに来ればいいからね。」

 

八幡「………ありがとうございます、おばさん。」

 

 

 

 

 

 

 




おばさん………超絶ファインプレー!!!


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これからの話

祝、お気に入り登録者数2,000人突破!!

皆様ありがとうございます!そして、自分の投稿した作品のお気に入り登録者数が合計で10,000人を突破しました!!これだけの人が登録して下さっているのかぁと思うと、大変嬉しく思います。

これからも活動は続けていきますので、2,000字程度の短い内容ではありますが、これからもよろしくお願いします!!

では、本編へどうぞ♪




 

 

八幡side

 

 

カマクラが無事だと分かった俺達は、おばさんにカマクラを任せて夜十神邸へと戻った。それで今はおじさん達とおふくろ達の帰りを待っている。

 

おじさん達からは『仕事が終わったから今から家に帰るよ!!』と連絡が来たし、おふくろ達も『上司が【早く帰って安心させてあげなさい、落ち着くまで休んでもいいから。】って言ってたから、今すぐ向かうわ。』との事だ。いや良い上司じゃん。

 

 

ガチャッ!

 

 

御影「っ!八幡君、それに柊も!」

 

八幡「お帰りなさい、おじさん、おばさん。」

 

柊「お仕事お疲れ様。」

 

紫苑「えぇ、ありがとう。」

 

八幡「それと、すみません……俺の為にわざわざ早退なんてさせるような事して。」

 

紫苑「何言ってるのよ。」ダキッ

 

八幡「っ!?」

 

紫苑「私達も現場を見てから来たけど、貴方は焼けてる瞬間を目の当たりにしたのでしょう?1番ショックを受けているのは八幡君なのに、それを放っておくような真似は出来ないわよ。もう大丈夫よ……辛かったわね。」

 

八幡「………」

 

御影「もう1度言うけど、よく僕達にも言ってくれたね。説明するのも辛かっただろうに。」

 

八幡「………はい。」

 

御影「うんうん。それで、八幡君のご両親はまだ到着されていないようだね。詳しい話はご両親も到着してからの方が良さそうだからね。」

 

紫苑「さっ、私達も少し落ち着きましょう。」

 

 

それよりもおばさん、そろそろ離れて下さい。慰める為なのはもう分かりましたから。

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

『旦那様、奥様。若様のご両親がご到着されました。お入れしても?』

 

御影「構わないよ、入れて差し上げて。」

 

『かしこまりました。失礼致します。中へどうぞ。若様………失礼致しました、八幡様もおいでですので。」

 

尚人「っ!八幡!!」

 

八幡「親父、おふくろ。」

 

凛「八幡、大丈夫!?怪我は無い?」

 

八幡「俺は大丈夫だ、怪我もしてない。」

 

尚人「そうか、それは良かった……ところで小町は?」

 

八幡「客室で寝てる。ショックがデカかったんだろう、泣き疲れて寝ちまった。」

 

凛「無理も無いわよ……」

 

御影「お2人も立ち話をされていては寛げませんし、お座りになられて下さい。宮間、あの2人にも紅茶をお出しして。」

 

宮間「かしこまりました。」

 

御影「さて、それじゃあ早速ではありますが、本題に移りましょうか。」

 

 

今この場にいるのは俺、柊、おじさん、おばさん、親父、おふくろ、宮間さん、もう1人の執事さんの計8人だ。小町は寝てるし、涼風はその様子を見てもらっている為、この場には居ない。現場の事を知ってるのは、俺と柊と宮間さんの3人だけだからその場での分かる事を説明した。

 

 

御影「さて、今の説明を受けた上で皆に聞きたい。犯人は誰だと思う?」

 

尚人「誰だ、と言われましてもそれだけでは分かりませんね。」

 

紫苑「手掛かりになる物とかはなかったの?」

 

柊「そういうのは無いけど、八幡君の家を焼いた人に心当たりはあるよ。というよりも、その人が首謀者だって私は思ってる。きっと八幡君もそうだと思ってる。」

 

尚人「何か知ってるのか?」

 

八幡「あぁ、少し前から俺達にちょっかいをかけてる奴がいてな。多分ソイツの仕業だ。」

 

凛「それで、その首謀者って?」

 

八幡「泰納グループの御曹司、泰納宰安。コイツがこの件の黒幕だ。」

 

 

寧ろコイツしかあり得ない。他にやる奴が居るとも思えない。それにだ、人を使って柊と涼風の事をバラしたり、放火をするような奴だ。自分の手を汚さない辺り、コイツが黒だろう。

 

 

紫苑「断定するの?」

 

柊「私もこの人だと思う。嫌がらせの域を通り越してこんな事ができるの、権力のある人間だけだもん。実際は権力なんて無いけど。」

 

 

ガチャッ!!

 

 

???「待たせたわね御影。カメラの時間遡って連中の目的地までを調べてたら時間が掛かったけど、相手は泰納グループみたいよ。」

 

「「「っ!!」」」

 

御影「そのようだね。今皆とも話してそのグループの御曹司だっていう所まで話してたんだ。どうやらそれで確定みたいだ。そうだ、君を皆に紹介するよ。石嵜(いしざき)エルナ、ICPO…所謂国際警察に所属している日本支部局長だよ。」

 

石嵜「よろしく。一応説明するけど、実行犯は黒いバンで比企谷家付近まで走行した後に停止。その後は比企谷家周辺にガソリンと思わしき物を撒いてからライターで火をつけてその場を離れる。後は予想通り泰納グループの家族が住んでる家に向かってたわ。首謀者の確認は取れてないけど、そこの2人が断言するのならそうなのでしょうね。私が調べた限りではこんな所よ。」

 

御影「ありがとう。これであのグループがやった事は明確になったわけだけど、どうする?」

 

石嵜「一応私から忠告よ。アンタ達が犯人だと断言していても、間違いだったって可能性もあるわ。今、貴方達が話しているのはまだ仮説の域でしかないのだから。」

 

 

仮説の域………っ!

 

 

八幡「あの、石嵜さん。それを本当の話にすれば良いんですよね?」

 

石嵜「えぇ、その通りよ。」

 

八幡「なら俺に考えがあります。聞いてくれませんか?多分アイツは気付きもしないと思いますので。」

 

御影「……聞かせてくれるかい、その考えを。」

 

八幡「はい。」

 

 

 

 




石嵜エルナ…【俺だけ入れる隠しダンジョン】に出て来る教師、エルナ・ストーングス先生です!


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決起前に

 

 

八幡side

 

 

八幡「という作戦です。」

 

柊「八幡君、その作戦は………」

 

御影「うん、危険過ぎる。幾らこれが作戦であっても君1人を首謀者かもしれない所に行かせるわけにはいかないよ。」

 

八幡「けどアイツは必ず俺が家に現れるとまで言いました。それならそれを利用しない手はありません。寧ろそれ以外で攻めたとしても、証拠は残りづらい。」

 

紫苑「……証拠を得る為とはいえ、そんな事は「なら私が一緒に行くわ。」……え?」

 

石嵜「要はこの子が危険じゃなければ良いんでしょう?ならこの中で1番腕の立つ私がこの子と一緒に行けばそれなりに安全だと思うわよ?」

 

尚人「だ、だがもしもの事があったら……」

 

石嵜「私を誰だと思ってんの?相手が集団だろうと、ただの素人なら高校生の男の子1人くらい余裕で守れるわよ。それに目的はケンカじゃないのよ、それを忘れてるんじゃない?この作戦の目的は相手に決定的な発言をさせる事。必要なのは話術と相手を誘導させる能力よ。それ以外は必要ないわ。武力はこの際あってもないのと同じもんよ。だから相手に気付かれないように行動するのが1番良いってわけよ。」

 

 

石嵜さんの言葉に全員が黙る。実際、他の作戦よりもこの方が確実だからだ。盗聴器やらを仕掛けるにも時間が掛かる上に、その間に何をされるのかも分からない。だから攻めるのなら、やられた今しかない。

 

 

御影「分かった、それで行こう。」

 

柊「っ!?お父さん!」

 

御影「柊、八幡君はもうやる気みたいだ。それを止めるのはもう野暮だよ。八幡君、他に何か用意する物はあるかい?」

 

八幡「ボイスレコーダーは必須ですけど、最低でも2つは欲しいです。俺と石嵜さんに2つずつ。」

 

凛「2つ?1つじゃなくて?」

 

八幡「あぁ。1つは見つかりやすいポケットに忍ばせておく。もう1つは絶対に見つからないであろう場所に。まぁそれも見つかっても良いですけど。」

 

柊「え、何で?見つかったら壊されちゃうでしょ?そうなったら八幡君達はお終いだよ?」

 

八幡「だよな?だからそこで盗聴器を使う。石嵜さん、盗聴器ってあります?」

 

石嵜「今は持ってないけど、今私の使ってる拠点に行けばあるわ。でもソレ、何処に仕掛けるの?」

 

八幡「それは………の中にです。それなら絶対に怪しまれないでしょう?」

 

御影「成る程………」

 

石嵜「敵の裏の裏の裏までかく、貴方かなり頭が回るのね。しかもこういう戦術に関しては。」

 

八幡「アドレナリンが働いてるだけですよ、偶々です。何で用意するのはボイスレコーダー4機に盗聴器2機って所ですね。」

 

御影「ボイスレコーダーは僕が持ってるのがあるからそれを使うと良いよ。エルナ、君は1度拠点に帰って盗聴器の調達を頼むよ。」

 

石嵜「えぇ、分かってるわ。それから警察にも連絡してあるわ。この件、私よりも彼等の方が役立つもの。指揮に関しても一応ギリギリまで私が取るから安心して。私とこの子が乗り込む時には命令も全て終わってると思うから。」

 

 

おぉ、流石は元警察官。使えるものは何でも使うって事か。

 

 

御影「それじゃあ準備が出来てから出発しよう。けどその前に、戦前の食事をしなくちゃね。【腹が減っては戦はできぬ。】【腹拵えをする。】なんてことわざがあるからね、しっかり食べなきゃね。」

 

石嵜「アンタらしいわね……じゃ、私は1度戻るわ。それと、私にも何か用意しておきなさいよ、軽い物でも良いから。」

 

御影「分かってるよ、じゃあ皆さんも席に着いてください。宮間、準備はどうだい?」

 

宮間「はっ、全て完了しております。」

 

御影「よし、じゃあ「おじさん、小町と涼風を呼んできてもいいですか?」あぁ、そうだったね!じゃあ頼めるかい?よろしくね。」

 

柊「私も行くよ!」

 

 

ーーー廊下ーーー

 

 

八幡「………」

 

柊「………」

 

八幡「何か聞きたいんじゃないのか?」

 

柊「え?」

 

八幡「そういう顔をしているぞ?」

 

柊「………無事に帰ってくるよね?」

 

八幡「あぁ、絶対にな。」

 

柊「怪我、しないでね?八幡君の怪我する所、私もう見たくないよ。」

 

 

………多分、天之川のショッピングモールの事を言ってるんだろう。だが流石にあんな大それた事は起きないだろう……多分。

 

 

八幡「大丈夫だって。振われそうになったら抵抗はする。何とかやってみる。」

 

柊「……約束だからね?」ギュッ!

 

八幡「………あぁ。」

 

 

俺は柊と約束を交わした後、一緒に2人を呼びに行った。既に小町も起きていて大分落ち着いていた。そして一緒に居間に向かって、着いたのだが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚人「………」

 

凛「………」

 

小町「………」

 

御影「さっ、皆さん遠慮せず食べて下さいね!ウチのシェフが作る料理はどれも美味しいですから。」

 

八幡「今日は水炊きですか……美味そうですね。」

 

御影「そうでしょ?それと一応鍋なんだけど、メインは鍋じゃなくて豆腐なんだ!豆腐は今が旬だからね、豆腐ハンバーグに肉豆腐、冷奴、鶏肉が余ってたから鶏大根も作ったんだ。」

 

八幡「流石っすね………親父達もいつまでも引いてないで食べるぞ。」

 

尚人「あ、あぁ……」

 

凛「こんなに豪勢だなんて………」

 

小町「すごい量………」

 

 

まぁ、それが普通の反応だよな。俺も最初にこの家に来た時、こんな反応だったし。

 

 

御影「じゃあ、いただきます!」

 

『いただきます!』

 

 

 

 

 

 

 



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決行

 

 

八幡side

 

 

ーーー泰納家付近ーーー

 

 

作戦決行の直前まで来た。俺は今車に乗って待機している。車と言っても普通の車ではない。警察の機動隊というチームの車両に乗っていて、警備車という車らしい。

 

 

石嵜「さて、久しぶりにチームを組む人も居るけど、これから概要を説明するわ。先ずは私とこの子で対象の屋内に侵入して対象と接触。そして必要な情報を聞き出す流れに入るわ。欲しい情報は対象者『泰納宰安』が計画したとみられる放火事件に関する発言を入手する事よ。暴力に関しても私と彼で徹底的に見るようにするから、その辺は安心して。そして突入の合図だけど、これは簡単なものにするわ。私が『寝取り趣味の変態。』と言ったら侵入しなさい。それまでは待機よ、いいわね?」

 

『イエス、マム!!』

 

石嵜「よろしい。じゃあ行くわよ。それから私達の設定だけど、姉弟って事で行くわよ。その方が怪しまれずに済むわ。」

 

八幡「分かりました。それから1つだけ。」

 

石嵜「何?」

 

八幡「もしかしたらですけど、アイツの視線にも気を配っておいた方がいいと思います。奴と初めて会った時なんですけど、柊と涼風の身体を舐めるように見てたみたいなので。2人もそう言ってました。」

 

石嵜「女の敵ね……もしそれで私も見てきたら、女だったら誰でも良いって事になるわね。とりあえず了解したわ。じゃ、行くわよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………」テクテク

 

石嵜「………」テクテク

 

「止まれっ!何者だ?」

 

八幡「この家に居るバカ息子を呼んで来い。比企谷八幡が来てやったぞって言えば分かる。」

 

「何だ貴様は……無礼な奴だ。お前のような奴、宰安様を呼ぶまでもない。」

 

八幡「何だよ、上が上なら下も下だな。まぁそれもそうか。あんなバカな奴の元で働いてんだ、思考が似通っても不思議じゃねぇな。」

 

「っ!!おい、この無礼者を捕らえろ!!そこの女も一緒にだっ!!」

 

石嵜「あら、私は何も言ってないんだけど?弟がケンカを売っただけじゃないの?」

 

「ならば姉であるお前も同罪だ!!」

 

 

石嵜(相手を嵌めるのが上手いわね……まぁコイツがただ単に短気で短絡的っていうのもあるけど。)

 

 

さて、うまく釣れろよ?

 

 

八幡sideout

 

宰安side

 

 

今日は何とも美味い食事だった………今までで1番とも言える食事だろう。何せ食前に忌々しい奴の家を焼くという最高のスパイスがあったのだからな。クククククッ、しかしあの馬鹿な平民は今頃どうしているのやら……どうせその辺の道草でも食べているのだろう。泊まる家が無くて困っているのが浮かんでくる!調子に乗った罰だと思い知るが良いさっ!!

 

 

「失礼します、宰安様。」

 

宰安「ん?何だ?」

 

「今し方、ゲート前にて比企谷を名乗る2人組を捕らえました。何でも宰安様に御用があるとか。」

 

 

おぉっ!!まさか本当に俺の予想通りになるとはなぁ〜〜俺も大した男だ、未来予知まで可能にしたとは!!まぁそれは置いておこう。どれ、1人はあのバカだとしてもう1人は誰だ?

 

 

宰安「良かろう、会ってやる。案内しろ。」

 

「はっ。」

 

 

ーーー応接間ーーー

 

 

宰安「フハハハハハッ!!待たせたなぁ?比企谷八幡に………おい、そこの女は誰だ?」

 

石嵜「アンタなんかに名乗る名前なんて無いわよ。私の家を焼いた奴なんかに。」

 

 

何っ!!?まさか八幡(コイツ)の姉なのか!?似ても似つかん!!だが……中々良い素材だ、夜十神姉妹を貰う前に遊んでやっても良いかもしれんな。

 

 

宰安「恨むのなら俺に楯突いた馬鹿で間抜けで考え無しの弟を恨むのだな。そこに居る馬鹿のせいでお前達の家は無くなったのだ。それに俺に楯突いたのだから当然の報いだろう?」

 

 

八幡(コイツ、やっぱバカだ………)

 

石嵜(見事に自白ならぬ自爆してくれたものね。それに八幡君の言ってた通りだわ、コイツキモいくらい私の胸を見てるじゃない。視線が丸分かりだわ。視姦でも訴えようかしら?)

 

 

石嵜「弟のせいで?焼いたのはアンタ等でしょう?しかも弟の恋人にまで迷惑かけるような事をして何が弟のせいよ?ふざけるんじゃないわよ。」

 

八幡「お前知ってるのか?放火ってのは日本では死罪、無期懲役になる程、重い罪なんだぞ?」

 

宰安「だから?お前の家も、俺の周りに建ってる家も燃やされても崩されても壊されてもまた直るのだ!そんな物を1つ燃やした程度で罪になんて問われんよ!それに、お前達の口を封じれば良いだけの話なんだからなぁ!!!」

 

八幡「下衆がっ!!」

 

宰安「なんとでも言え敗北者!!俺に逆らった時点でお前の負けは決まっていたんだ………大人しくあの2人を俺に渡していればこんな事にはならなかったんだ。今だから教えてやるが、学校にお前達の情報を流したのは………この俺なんだよ。」

 

八幡「……何だと?(うん、知ってる。)」

 

宰安「そしてお前達の様子を逐一監視していたのも俺が指示を出していたからだ。」

 

八幡「………このっ!!(あの1年だよね。)」

 

宰安「だから俺はお前の行動なんて筒抜けだったのさ!!掌で踊らされていた気分はどうだ!?」

 

八幡「くっ!!(別に何とも、知ってたし。知ったのは今日の昼だけど。)」

 

 

ククククッ、この顔だ!!この顔が見たかったのだ!!完全に俺の勝利だ!!俺の勝ちは揺るぎない!!どう転んでもなっ!!

 

 

石嵜「じゃあアンタはその後に私と弟の口を封じて、2人を自分の物にするってわけね?とんだ寝取り趣味の変態ね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『合図だ!!!総員、乗り込めっ!!!』

 

 

 

 




1つ書いてて思った事、バラすタイミング絶対30秒も掛かってない。


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作戦終了!

 

 

八幡side

 

 

宰安「………貴様、今何と言った?」

 

石嵜「あら、聞こえなかったのかしら?ならもう1度言ってあげるわ、寝取り趣味の変態って言ったのよ。だってそうでしょう?人の恋人を奪おうとするんだもの、そう言われてもおかしくないとは思わない?」

 

八幡「確かに。お前にはお似合いのあだ名だな。」

 

「貴様等、宰安様に無礼だぞっ!!!」

 

八幡「無礼?そんなもんとっくにこちとら把握済みなんだよ。それよりも人の彼女奪おうとする奴の方が無礼だと思わねぇのか?まっ、アンタ等に言った所で何1つ理解なんて出来ないだろうけどな。」

 

「貴様っ!!「まぁ待て。」っ!宰安様………」

 

宰安「おい、比企谷八幡。なかなか面白い事を言う、ならば俺も意趣返しをさせてもらうぞ?お前の女を、あの姉妹をもらう前にお前の姉で楽しませてもらうと言ったら、どうする?」ニヤニヤ

 

 

うわぁ………気持ち悪い顔だ。あのニヤケ顔にそばかすが嫌でも目に入る。いや、実際には姉でもないし、石嵜さんがやられる所なんて想像もつかないが、好き勝手にされるのは無性に腹立つな。けど今は最善を尽くすだけだ。それに、合図はもう送ってあるしな。

 

 

八幡「……やってみたらどうだ?俺の姉はお前の手に負えるような女ではないと思うけどな。」

 

宰安「はっ、何を馬鹿な事を……所詮は女、力で男に敵う道理なんてあるわけが無いだろう。」

 

石嵜「あ〜コイツも今までの男と一緒ね。性別で強さを判断するような馬鹿な男達そのまんま。こんな男、この状態でも余裕ね。」

 

宰安「いつまでそんな事が言えるか見物だな。まぁいい、どの道もう俺は決めた。お前で遊ばせてもらうぞ。おいお前、覚悟はできているんだろうなぁ?んんぅ?」ニヤニヤ

 

石嵜「あら、それはこちらの台詞よ?アンタ達は全く気付いていないと思うけど、アンタ達の行動なんて私達には何の意味もなさないのよ?」

 

宰安「………はぁ?お前は一体何を言って「総員、一斉突入!!中に居る者を対象者以外全員捕らえなさい!!」っ!?な、何【バァン!!】事、な、何だアイツ等は!!?」

 

 

そこからはあっという間だった、俺達の周りに居た連中は呆気なく無力化されて、残っているのは泰納だけとなっていた。

 

 

宰安「ど、どういう事だ!?何で警察がこんな所にいるっ!?」

 

石嵜「どうしてって、そんなの呼んだからに決まってるでしょう?それ以外に理由があるの?」

 

八幡「それにだ、俺とこの人が姉弟だってのは嘘だ。本当の事を教えてやるよ。この人は石嵜エルナ、ICPOの日本支部局長だ。つまりお前は最初から警察官、しかも国際警察を相手にしてたって事だ。欲しい情報まで洗いざらい喋ってくれた時には、俺もこの人も笑いそうになったくらいだ。」

 

宰安「な、何だとっ………」

 

八幡「お前はもう終わりだ、泰納。迷惑行為をしただけでなく人の家に放火までしたんだ。ただのムショ暮らしで終われるなんて思うなよ?」

 

宰安「こ、このおぉぉぉぉ………庶民風情がああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

石嵜「うっさいわよ、このバカ。」

 

宰安「どわああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

宰安は俺に殴り掛かって来たのだが、石嵜さんに背負い投げされた後に腕挫十字固めをされて身動きが取れない状態になっていた。

 

 

宰安「うがあぁぁぁぁ!!や、やめろ!!お前、こんな事をしてタダで済むとおおぉぉぉぉ!!!?」

 

石嵜「うっさいって言ってんのよ。これ以上うるさくするのなら、行くとこ行くわよ?」

 

 

ーーー数十分後ーーー

 

 

その後、アイツとその場に居た警備員達は現行犯逮捕、そして父親にも容疑が掛かり、拘束される事になった。そして放火を行なった奴等の事だが、別働隊で向かわせていた人達が既に逮捕済みとの事。足がつかないようにしていたみたいだが、監視カメラの映像で車のナンバーや顔が筒抜けだったので、すぐに捕まえる事が出来た。

 

 

石嵜「終わったわね。」

 

八幡「はい、ありがとうございました。」

 

石嵜「気にしなくて良いわよ、これも私達の仕事なのだから。それよりも貴方を御影の家まで送らないとね。このまま1人で帰すわけにも行かないから。本当なら私が行ってあげたい所だけど、まだ残ってる事があるからそれは出来ないし、使いを出すわ。」

 

八幡「でしたら「その必要はございません。」っ!宮間さん?」

 

宮間「若様、石嵜様、お疲れ様でございました。若様の事は私にお任せ下さい。ですので、石嵜様達は引き続き業務にお励み下さい。」

 

石嵜「助かるわ、じゃあお願いするわね。」

 

宮間「承知致しました。若様、皆様が今か今かと首を長くしてお待ちになられております。」

 

八幡「……はい。」

 

 

ーーー車内ーーー

 

 

八幡「あの、やっぱり落ち着きない様子でしたか?特におじさんとか柊とか。」

 

宮間「えぇ、若様の仰る通りでございます。私が車を出そうとした時、一緒に行くと聞かない程でしたので。どちらも奥様に止められていましたが。」

 

八幡「そ、そうでしたか………」

 

宮間「はい。なので若様は早く皆様に無事な姿をお見せ下さい。それが何よりの薬となりましょう。」

 

八幡「そうですね。」

 

 

あぁ………大きい仕事が終わった。俺がやる必要もないと思うかもしれんが、家があんな風にされた以上は無視や知らん顔なんて出来ない。それにだ、柊と涼風を傷付ける奴に容赦はしないって決めてるしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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帰還と家

 

 

柊side

 

 

柊「………」ソワソワソワソワ

 

涼風「………」モジモジモジモジ

 

御影「………」テクテクテクテク

 

紫苑「……はぁ、貴方達?もう少し落ち着いていられないの?仮にもお客人、それも八幡君のご家族の前よ?もう少し構えていられないの?」

 

柊「だ、だってもう30分だよ!?30分も帰って来ないまんまなんだよ!?」

 

紫苑「行ってすぐに終わるわけないでしょう………30分くらい当然よ。」

 

涼風「で、ですが八幡さんにもしもの事があったらと思うと………とても落ち着いてなんていられません。な、何か八幡さんの為にご用意しておく物とかないでしょうか?」

 

紫苑「なら軽く摘めるものとか飲み物とか用意しておきなさい。」

 

御影「あわわわわ……ほ、本当に何かあったんじゃ?も、もしかしてまた怪我でも!?だから連絡が来ないのかもしれない!!こうなったら僕も現場に「止めなさい。」あうっ!?」

 

紫苑「貴方が1番錯乱してどうすんのよ?仮にもこの子達の親でしょう?1番どっしりしてないといけない貴方が何で1番狼狽えてるのよ?」

 

御影「だ、だって宮間からの連絡も無いんだよ?」

 

紫苑「その内戻ってくるわよ。だから私達は信じて待つのが仕事よ。ほら、紅茶でも飲んで落ち着きなさい。糖分が足りないからそうなるのよ。」

 

「あの、奥様。そちらは塩でございます………」

 

紫苑「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫苑「仕方ないじゃない!!心配なものは心配なのよ!!我が子も同然な八幡君が犯人の所に行ったのよ!?落ち着いていられるわけないでしょう!!!それにどうしてこんな所に塩があるのよ!?」

 

 

比企谷一家(((1番動揺してる………)))

 

 

「お気持ちは分かります。先程私も紅茶をお持ち致しましたが、準備段階で許可も無いのに砂糖を入れたりミルクを入れたり適量を間違えたり湯ではなく水を淹れたりと、ミスばかりでございます。お恥ずかしい………」

 

 

比企谷一家(((執事も負けてない!?)))

 

 

うぅ〜心配だよぉ〜……八幡君早く帰ってきてよぉ〜早く抱き締めたいよぉ〜抱き締められたいよぉ〜ナデナデされたいよぉ〜!!

 

 

ガチャッ!

 

 

夜十神一家「っ!!!」ビグッ!!

 

 

小町(この人達凄いなぁ……お兄ちゃんの事になると必死過ぎるでしょ。ていうよりもお兄ちゃんの事大好き過ぎない?)

 

凛(私達は流石にこんな風にはならないわね……心配はしているけど、こんな風にならない、というより出来ないわ。)

 

尚人(やはり普通の家族では無いな、愛情表現もこの家並みに派手だ………)

 

 

宮間「奥様、只今戻りました。」

 

御影「み、宮間?八幡君は?」

 

柊「八幡君は!?何処!?」

 

涼風「ま、まさか……お怪我を!?」

 

宮間「ご心配なさらずに、旦那様、お嬢様方。」

 

八幡「只今戻りました。」

 

柊「八幡くぅ〜んっ!!!」ナミダメ

 

涼風「八幡さんっ……!!」ナミダメ

 

八幡「うおっと………心配かけて悪かった。俺は怪我してないから安心しろ。」

 

御影「よく無事に帰ってきてくれたね、八幡君。それにしても宮間、心臓に悪いじゃないか?君だけ入ってくるなんて。」

 

宮間「旦那様とお嬢様方が間髪入れずに迫ってきたからではありませんか。」

 

御影「うっ………その通りです。」

 

宮間「さぁ八幡様、お寛ぎになってください。お疲れになられたでしょう?今、ココアを淹れます。紅茶では張り詰めた神経を落ち着かせる事は出来ませんからね。」

 

八幡「お願いします。」

 

紫苑「柊、涼風、八幡君が座るから今は離してあげなさい。座ったら抱き着いても良いから。」

 

柊/涼風「…………………………うん(はい)。」

 

 

八幡(離れたくないんだろうなぁ………すげぇ間だった。それよりもおばさん、座ってからは抱き着くのはアリなんですね………)

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

御影「さて、少し落ち着いた所で八幡君。経緯を教えてもらいたいんだけど、良いかい?」

 

八幡「はい、構いません。聞いていて気分の良い物ではないと思いますけど。」

 

紫苑「構わないわ。だってウチの娘と義息子に迷惑を掛けたんだもの。それなりの報いを……いいえ、相応の報いを受けてもらわなくちゃならないわ。」

 

八幡「手加減する気なしかぁ……まぁ俺もですけど。取り敢えず説明しますね。親父達も一応聞いておいてくれ。」

 

 

それから八幡君はあの変な人の家で何かあったのかを説明してくれた。八幡君の言う通り、気分の良い物ではなかった。けどそれ以上に………

 

 

一同「………バカ。」

 

八幡「まぁそれが当たり前の反応だと思いますよ。こっちから仕掛けずとも自分から言ってくれたんですからね。」

 

紫苑「まぁ一先ずはこれで安心ね。それで八幡君、それから皆さん。これからの事だけど、まずは家をどうする気なのかしら?」

 

凛「私はあの家を元に戻してくれればそれで構いません。新しい家も魅力的ではありますが、今の家の方が愛着がありますので。」

 

尚人「そうだな、お前の言う通りだ。小町はどうなんだ?」

 

小町「小町も今の家の方が良いかなぁ。」

 

御影「………八幡君はどう思ってるんだい?」

 

八幡「俺もあの家が良いですね。ずっとあの家で過ごして来ましたので。」

 

柊「そうだよね、私もこの家が1番好きだもん。大きな理由がない限りはこの家から離れたくないしね。」

 

涼風「はい、此処が私の家ですから。」

 

御影「……そっか。貴方達がそれで良いのなら、それで構いませんが、建て直すにしてもどうするおつもりで?」

 

八幡「それなら安心してください。うってつけの人達が知り合いにいますので。」

 

 



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交渉

 

八幡side

 

 

prrr…prrr…っ!

 

 

陽乃『もしも〜し、どうしたの比企谷君?まさかとは思うけど、また何かのお裾分け?』

 

八幡「どうもこんばんは、雪ノ下さん。今回はそういうのじゃなくて、貴女のお母さんにお話があって電話しました。流石に会社の電話番号じゃ直接繋がらないと思ったので、電話させてもらいました。」

 

陽乃『お母さんに?なんかあったの?』

 

八幡「えぇ、まぁ……詳しい事は社長本人にお話したいので代わる事って出来ます?それとも今別の所ですか?」

 

陽乃『家に居るけどさ、それって私が聞いても大丈夫かな?』

 

八幡「……別に良いですけど、人に言わない事が条件です。まぁ、既に耳にしている事だとは思いますが。」

 

陽乃『?まぁいいや、お母さんに代わるね。』

 

 

さて、ここからだ。俺の家族だけじゃ家を建てるにしても金が足らなさ過ぎる。そこで駆け引きだ。もし向こうが【Nigh-Ten・Group】の名前を出してそれを交渉材料にするようであればこの件は無し。出して来なければおじさん達と引き合わせる。そういう事だ。向こうにも言ってあるからな、流石にここで欲張るような事はしないと思うが、どうする?

 

 

秋乃『お電話変わりました、比企谷さん。ご無沙汰しております。』

 

八幡「ご無沙汰してます。早速なんですが、本題に入ってもいいですか?」

 

秋乃『えぇ、どうぞ。』

 

八幡「いきなりの質問なんですが、今日の千葉に関するニュースは見ましたか?」

 

秋乃『えぇ、拝見しました。1軒の家が全焼という内容でしたね。』

 

八幡「はい。本当の事を言いますと、あの家は俺の住んでいる家です。」

 

秋乃『っ!………本当なのですか?』

 

八幡「はい。この目で燃える所も崩れる所も確認済みですしね。まぁ、既に犯人は逮捕して、関係者も全てお縄についてますけど。」

 

秋乃『そうですか……とても気休めにはなりませんが、誠に残念としかいえません。』

 

八幡「はい。そこで雪ノ下さんに、いえ、雪ノ下建設さんに我が家の再建を依頼したいんです。全て元通りの形に。」

 

 

さて、これにどう出る?

 

 

秋乃『再建、ですか……比企谷さん、とても申し上げにくいのですが、そんなに甘い事ではありませんよ?再建と言っても、ただ建てるだけではありません。その場に残っている家の解体に撤去もあります。それに最低でも費用は2500万円も掛かるのです。比企谷さんの親御さんがどのようなお仕事に携わっているかは存じませんが、未だ学生の子を持っている状態では、再建は難しいと思われます。』

 

八幡「やっぱり相当な金額なんですね……」

 

秋乃『はい。私としても娘達がお世話になっているので、お力にはなって差し上げたいのですが、一部の顧客のみに贔屓するわけにもいきませんから。』

 

 

……よし、もう良いだろう。この人は大丈夫そうだ。おじさんと話をしてもらおう。

 

 

八幡「……分かりました。少し待ってもらっても良いですか?」

 

秋乃『えぇ、構いませんよ。』

 

八幡「ありがとうございます、それじゃ少しだけ………オネガイシマス。」

 

御影「ハァーイ……もしもし、お電話変わりました。私、【Nigh-Ten・Group】取締役社長をしております、夜十神御影と申します。お電話での対面という事で名刺をお渡しできませんが、ご了承下さい。」

 

秋乃『【Nigh-Ten・Group】………初めまして、私は雪ノ下建設社長をしております、雪ノ下秋乃と申します。【Nigh-Ten・Group】さんのお噂はかねがね聞いております。』

 

御影「お恥ずかしい……それで、先程八幡君からもお話がありましたが、比企谷家の再建の費用を全額、私が支払いましょう。それで再建は可能でしょうか?」

 

秋乃『っ!?それは御社の資金から割くという事でしょうか?それでしたらお受け出来かねますが?』

 

御影「いえいえ、私のプライベートマネーからですよ。こう見えても私財には余裕がありますので。それで如何でしょう?」

 

秋乃『………分かりました。では後日、改めてお話を伺いたい所ですが、ご都合のよろしい日程はありますか?』

 

御影「私の方はいつでも。比企谷さんのご両親もご一緒に行かれる予定でいます。会社にも事情を説明して落ち着くまではお休みをもらっているとの事なので。それに、早く元の家で暮らせた方が安心でしょうから早い段階で済ませた方が良いでしょう。」

 

秋乃『分かりました。では………明後日の11時に我が家はどうでしょう?その日は学校もお休みですし、比企谷さんも同席された方が宜しいと思われますので。』

 

御影「分かりました。では明後日の11時にお伺いします。よろしくお願いします。」

 

 

どうやら無事に交渉は済んだようだ。まぁ向こう側からすれば、断るなんて真似はしないだろう。

 

 

秋乃『よろしくお願いします、最後に比企谷さんに代わって頂いてもよろしいですか?』

 

御影「はい、わかりました……はい、八幡君、社長さんから。」

 

八幡「……もしもし?」

 

秋乃『最初から試されていたのですか?』

 

八幡「まさか。偶々ですよ。」

 

秋乃『ふふふふっ……ウチに欲しい人材だわ。』

 

八幡「せっかくの話ですが、【Nigh-Ten・Group】に就職するってもう決めてますので。」

 

秋乃『そうですか、残念ですね……ですが、気が変わりましたらいつでもお待ちしてますよ。また明後日にお会いしましょう。』

 

八幡「はい、失礼します。」

 

 

そして電話は切れて、緊張が解けた。

 

 

御影「良かったね〜八幡君!」

 

八幡「えぇ、何とかなりましたね。後は明後日ですね。はぁ〜………」

 

 

今日は気を張り詰めてばかりだな。疲れた………

 

 

 

 

 

 

 



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雪ノ下家とお話

 

 

八幡side

 

 

泰納宰安を逮捕してから2日後の朝、今日は雪ノ下建設と家の再建についての打ち合わせをする日だ。打ち合わせをするのに何故雪ノ下本家なのかはおいておくとして、まずは学校で起きたあの6人の事について教えたいと思う。

 

最終的にあの6人は停学5日間と反省文10枚の処罰が下された。このような事はあまり例が無くどんな罰を与えたらいいか頭を悩まされたらしいが、いじめに該当するものとして扱う事にらしく、このような処分になった。

 

因みにだが、1〜2年の奴等もこの先そうだが、3年の2人の進学先、就職先にこの事を報告済みらしい。もしも合格していたら取り消しになるのかどうか分からんが、一気に不利になった事だろうな。不合格の奴と入れ替わっていたりして………いや、それは無いか。

 

まぁ取り敢えず学校のアイツ等はこれで終わった事になる。宰安の事を言おうか悩んだが、終わった事だし良いやって事にした。次ちょっかい掛けたら、その時は容赦しねぇけど。

 

 

凛「すみません夜十神さん、私達まで車に乗せて頂いて。」

 

御影「構いませんよ。大事なお話ですからね、徒歩で向かわせるような真似は致しません。」

 

八幡「けど、良かったんですかね?向こう側から言ってきた事とはいえ、俺や柊達が雪ノ下の家に向かうなんて。」

 

涼風「そうですよお父様。もしかしたら向こうが何か企んでいるかもしれませんよ?」

 

御影「例えそうだとしても、僕は1度口にした事を曲げるつもりはないよ。君達の家の費用は持つつもりだし、何なら前よりも良い感じにしたいと思ってるし。それに………」

 

「「「それに?」」」

 

御影「きっとその内、八幡君やそのご家族には良い事が起きるだろうしね。」

 

柊「良い事?」

 

八幡「それってどういう?」

 

御影「あはは、それはまだナイショ♪さっ、もうすぐ着く頃だね。」

 

 

窓から外を覗くと大きめの敷居の屋敷が見えてきた。おそらくアレが雪ノ下の実家だろう。おじさん達の家よりも大きいし豪華だ………まぁおじさん達は派手なのが嫌いなのと目立ちたくないという理由で今の家なのだが。本当だったら絶対おじさん達の家の圧勝だろう、本当だったら。

 

 

都築「【Nigh-Ten・Group】取締役社長の夜十神御影様にその御令嬢様方に比企谷様、お待ちしておりました。私、当家の執事をしております、都築と申します。以後、お見知り置きを。」

 

御影「どうぞよろしく。」

 

都築「早速ではありますが、奥様の所へとご案内致します。こちらへ。」

 

 

ーーー家内・廊下ーーー

 

 

小町「ひぇ〜……やっぱお金持ちは違うなぁ。夜十神さんの家も凄かったけど、こっちも凄い。」

 

涼風「そうですね、煌びやかさや派手さでは完全に負けていますね。」

 

御影「ただ単に僕がそういうの嫌いなだけだけどね。着飾ってるようで………あっ、別にこの家の悪口を言ったわけではないからね?」

 

都築「心得ておりますとも。」

 

 

そして扉の前に着くと都築さんは立ち止まり、扉を数回ノックした。

 

 

都築「奥様、お嬢様、夜十神様と比企谷様一行をお連れして参りました。」

 

秋乃『入れて差し上げて。』

 

都築「失礼致します。」

 

秋乃「ようこそ皆様、遠い所をいらして頂き感謝致します。私は雪ノ下建設の社長をしております、雪ノ下と申します。そして隣に居るのが娘の陽乃になります。こちら名刺でございます。」

 

御影「【Nigh-Ten・Group】取締役社長の夜十神です。私の左隣に居るのが長女の柊と次女の涼風になります。こちら名刺とつまらない物ではありますが、粗品です。お受け取り下さい。」

 

凛「○○会社の比企谷と申します。後ろに居るのが息子の八幡と娘の小町です。私からもつまらない物ですが、お受け取り下さい。」

 

秋乃「これはこれはお土産までご丁寧にありがとうございます。立ち話も何ですから、お座り下さい。お見積もりの方も気になると思われますし。」

 

 

そして俺達は雪ノ下さんとその母親と対面するような形で座った。

 

 

秋乃「物件の図面は既に入手してありますが、比企谷様はどのような設計をご所望ですか?」

 

凛「私としてましては、今まで通りの設計でお願いしたいと思っています。勿論、新しい家も大変魅力には感じますが、やはり育ってきた家に愛着があるものですから。」

 

秋乃「そうですよね。お引越しなら兎も角、場所が変わらないのに住居の形が変わるのも少し変な感じがしますものね。分かりました、同じ設計で進めて行きまますが比企谷様、他に何か足して欲しい所はございませんか?例えば、収納が欲しいとかこんなものを足して欲しいとかそのようなご注文でも構いません。」

 

凛「いえ、私からは特に……八幡、小町、アンタ達は何かないの?」

 

八幡「………思いつかないな。」

 

小町「小町もかなぁ………今まであんまり不便を感じた事ないし。」

 

御影「本当に無いのかい?地下が欲しいとかロフトが欲しいとか無いの?」

 

八幡「地下なんて要りませんよ。一体何に使うんですか?ロフトがあっても物置に使うかもしれませんし、あってもあまり意味ありませんよ。」

 

御影「そう?柊と涼風の3人で寝るのに最適な空間だと思うけど?」

 

柊/涼風「っ!!」

 

八幡「おい、お前等もそれに反応すんな。」

 

秋乃「ふふふ、ゆっくり決めていただいて結構ですよ。お時間は幾らでもありますから。」

 

 

 

 

 

 

 



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お話終了

 

 

御影side

 

 

秋乃「では、以下のように勧めさせていただきます。建設の開始、終了のご報告はさせて頂きますが、進捗状況のご報告もしますか?」

 

凛「いえ、開始と終了の報告だけで結構です。」

 

秋乃「分かりました。では以上の内容で建設を進めさせて頂きます。」

 

凛「はい、よろしくお願いします。」

 

御影「よろしくお願いしますね……」

 

 

結局、ロフトも地下も作らないで、そのままの設計のまま進める事になった。うぅん……別に僕は構わないんだけどなぁ〜………

 

 

秋乃「そして次にキッチンとお風呂になりますが、こちらの方でも調べましたが、どちらもあの作りは今はしていないようで絶版しているとの事です。今なら良い設備のお買い上げが出来ますが、どう致しますか?」

 

 

良い設備っ!!!

 

 

凛「……折角ですが、これ以上夜十神さんにはご迷惑を「比企谷さん、私の事は気にしなくても大丈夫です。それに、これは比企谷君にも言いましたが、お金は寝かせておくだけでは意味はありません。使うからこそ意味があるのです。」………」

 

御影「ですので、ご遠慮なくご注文なさって下さい。IH式や洗浄付きのキッチン、バブル式やボタン式だろうと私がまとめて払わせて頂きますから。」

 

凛「し、しかし………」

 

 

八幡(おじさん、力になりたくて仕方ないんだろうな。そして良い暮らしをしてもらいたくて仕方ないのだろう。でなければあんな事言わないし、しない。)

 

小町(嘘……全部払ってくれるの?この人お金持ちなのは分かったけど、そんなに持ってるの?)

 

柊(お父さん必死だなぁ………)

 

涼風(流石はお父様ですが、八幡さんのお母様も若干引かれておられます。)

 

陽乃(良いキッチンでも30〜50万円するのに、最新となると絶対70万円以上はするよね。お風呂場でも良いのだと150万円以上はするし、この人それ分かってて言ってるのかな?この調子だと、建設費に加えて家具とかも買い揃えるとか言ったら余裕で3000万円超えるよ?)

 

 

秋乃「夜十神様、こちらから質問をさせていただいても構いませんか?」

 

御影「えぇ、どうぞ。」

 

秋乃「では遠慮なく。夜十神様はこの建設のみに関わらず、比企谷様のご自宅に関わる事全てに投資されるおつもりでしょうか?」

 

御影「えぇ、最初からそのつもりですよ?キッチンやお風呂場に関わらず、洗濯機やテレビ、ソファにベッドといった日常生活では欠かせない物品は全て私で負担するつもりです。衣類などは流石に私では判断しかねますので、比企谷さんにお任せする流れになりますが。」

 

 

秋乃(やはりそのつもりでしたか………なんという財力。いえ、社の資本金も相当なものなのでしょうが、この方は一体どれだけの資産を持っているのでしょうか?それに2000万円の大金が動くというのに眉1つすら動かしません。)

 

 

八幡「おふくろ、ここはもうおじさんに任せた方がいい。でないと話進まないぞ?」

 

凛「で、でも八幡……家を建ててもらうお金に加えて家具なんかも負担するのよ?」

 

八幡「きっと梃子でも動かないと思うぞ?おじさんは家族の為に100kgの本鮪を500万円で買う程だから。しかも1日の夕食分で。」

 

御影「や、やめてよ八幡君!その話をこの場でしないでよ〜恥ずかしいなぁ〜!」

 

 

秋乃/陽乃(嘘………)

 

陽乃(嘘でしょ!?あの時食べた鮪って本鮪だったの!?高級魚じゃん!!しかも500万円!?)

 

秋乃(まさかそれ程の物を頂いていたなんて………)

 

 

八幡「だからもう諦めて任せちまって良いと思う。選ぶのは俺達で買うのはおじさんって形で良いだろ。少し遅いお年玉だと思えば良いって。」

 

小町「いやいやお年玉にしてはお値段が凄過ぎるからお兄ちゃん。」

 

御影「八幡君の言う通りですよ、比企谷さん。選出はお任せしますから、私に払わせて下さい。この通りです。」ペコッ

 

八幡「いや、おじさん。こっちが頼む側なのでおじさんが頭下げないでくださいよ。どんだけ払いたいんですか………」

 

 

だって八幡君の為の投資なら、僕遠慮なんてしないもん!!1億でも躊躇わないよ!!

 

 

※1億は躊躇ってください。

 

 

凛「………分かりました。誠に申し訳ありませんがお支払いの方、よろしくお願いします。」

 

御影「はい、任せて下さい。」ウキウキ

 

 

やった………勝ち取ったよ!!

 

 

秋乃「お話は済んだようですね?ではキッチンとお風呂場についてはご相談の上でお決めになられて下さい。お決まり次第、こちらも撤去と建築の作業に取り掛かりますので。」

 

御影「分かりました。ではそのようにお願いします。私達の方でもなるべく早く答えを出しますので。」

 

秋乃「よろしくお願いしますね。それにしても……こんなに有意義な相談は初めてで、少し気分が良いです。これも………」

 

八幡「……?」

 

秋乃「比企谷……八幡さんのおかげなのでしょうね。ふふふっ、少し理解しました。やはり我が社に欲しい人材ですね。」

 

柊「八幡君は渡しませんっ!!!」

 

涼風「八幡さんはお父様の会社に入るのです!」

 

御影「雪ノ下さん、八幡君はあげません。」

 

八幡「いや、そんな必死に「あげません!!!」お、おじさん落ち着いてください。」

 

秋乃「ふふふっ、そのようですね。」

 

 

八幡君は僕の会社で働いてもらうんだから!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだよね、はちまんくん?

 

 



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進まない家族会議

全話の最後の御影さんの一言、アレ………ただの変換忘れでした♪テヘッ!(よくやりますけど)

でも皆さん、とても良いリアクション(感想欄では)だったのでそのままにする事にしました。

こういう事ってあるんですねww


 

 

八幡side

 

 

………

 

 

凛「どれが良いかしら……やっぱりあまり掛からない方が良いわよね、夜十神さんがああ言ってはいたけど、節約できる所では節約しないといけない訳だし。」

 

尚人「間取りは同じなんだろう?同じ物ってわけにはいかないのか?」

 

凛「それが、私達が使っていたキッチンは今は絶版だって言ってたのよ。だからこれを機に新しいのにしたらどうだって勧められたのよね。そしたら夜十神さんが凄く乗り気で………けれど高過ぎるのもアレだから、悩むわ。」

 

尚人「そ、そうだったのか……乗り気だったのか。それは確かに、どうすれば良いか悩むな。」

 

小町「お母さんとお父さんはどうしたいの?やっぱり今までみたいなキッチン?」

 

凛「出来ればそうしたいけれど、私もあんまり使う事ってないじゃない?使うのだって殆ど小町くらいでしょう?そう考えると、あまり欲張った金額の物を頼むべきではないって思うのよ。」

 

 

予想通りというか何というか、家族全員でキッチンのカタログを見ているのだが、やはり値段に目がいってしまうようだ。まぁ無理もない、家の建築費だけでなく家具なんかも負担するって言ってくれたんだ、負担は減らすべきだと考えているんだろう。

 

だがかれこれ1時間はこんな感じである。流石に俺も少しだけ気が滅入っている。平行線だからな………あんまり参加はしてないが。

 

 

八幡「なぁ、キッチンや風呂場はそれなりので良いんじゃないか?家具とかで節約すれば良いだろ。」

 

凛「そうは言うけどね八幡、私達の為に3000万円もの大金を支払うのよ?だから少しは金額を抑えるべきだと思うのは普通でしょ?」

 

 

……まぁ、そうなんだけどさ。この家に、というよりおじさんの手元に入ってくるお金が数千万だとは言えないよなぁ………良い時で1億届くくらいだし。それだけの稼ぎだからなぁ。

 

 

紫苑「あら、まだお悩みで?気に入った物を選んで頂ければそれでそれで結構ですのに。」

 

尚人「やはり遠慮してしまうものでして………」

 

紫苑「まぁお気軽にお選び下さい。何を選んだとしても私達は責めはしませんので。」

 

八幡「俺も一応、そう伝えてはいるですけどね。」

 

柊「八幡君〜どう、終わった?」

 

八幡「絶賛頭お抱え中だ。やっぱそう簡単に選べないらしくてな、現に最初の段階で躓いてる。」

 

柊「そっかぁ〜……ねねっ、八幡君ならどれを選ぶの?使い易さとかオシャレとかあるでしょ?」

 

八幡「俺か?俺なら使い易さだな、幾らオシャレで見た目が良くても機能性が無かったら使う側としては不便だろ?俺ならそれを第1に考えるな。値段とかはまず置いといて、候補絞ってからどれにするかを決める。」

 

柊「じゃあお風呂場は?」

 

八幡「そうだな………単純にリラックスできる空間であればそれに越した事はないだろう。使うのに遠慮し過ぎて強張るようじゃ入浴の意味なんてないしな。」

 

 

俺の話を聞いていた家族は何かを閃いたのか、少しだけ話が進んだ様に見える。

 

 

八幡「ありがとな、柊。」ボソッ

 

柊「ううん、どういたしまして♪」ボソッ

 

 

ーーー数十分後ーーー

 

 

御影「それで?どう?決まりそうだったかい?」

 

八幡「まだ時間は掛かると思いますけど、柊達が来てくれたおかげで今日中には決まりそうかもって所まではきました。」

 

御影「本当に気にしなくて良いんだけどね〜。」

 

八幡「ソレ、無理な話ですからね?」

 

紫苑「でも、本当に悩んでいたものね。八幡君も遠目で見て呆れていた程だから。」

 

涼風「八幡さんは参加されなかったのですか?」

 

八幡「参加はした。けど俺の意見を言っても聞き入れてもらえなくってな。気に入ったの選べば良いって言ったら、『金額的に安いのをっ!!』とか『高過ぎはダメッ!!』とかって言って話にならなかった。」

 

涼風「そ、そうでしたか………」

 

八幡「んで今も会議中。少しは進んだが、どんな結果になるやら……」

 

 

また安いのを選ぼうとして悩みまくってたらおじさん達に決めてもらおうか。その方が手っ取り早い。

 

 

柊「あっ!八幡君、明日デート行こうよっ♪」

 

八幡「ん?デート?」

 

柊「そっ♪だって一昨日あんな事があってのんびり出来てなかったじゃん?だからさぁ〜ね?」

 

八幡「………まぁ良いか。どの道俺が居なくてもキッチンも風呂場も家具も決めるだろうし、良いぞ。んじゃ明日の………何時にする?」

 

柊「10時!その方が色んなお店開いてるしねっ!それに将来的な事も考えて家具とか見てみたいって思っちゃってさ〜どう?良いと思わない?」

 

八幡「そんじゃ、明日のテーマは将来の事も兼ねたデートって事ね?」

 

柊「そういう事♪」

 

八幡「了解。」

 

御影「じゃあ将来の為にこの中から物件を「それはまだ早いです。」えぇ〜そうかい?」

 

紫苑「そうよ御影、先ずは八幡君が一軒家かマンションか世帯、どれが好みなのかを調べないといけないわ。まずはそれからよ。」

 

 

おばさん、そういう事でもありません。ただ単にそういう話が早いってだけです。

 

 

涼風「八幡さん、なるべく広めのお部屋を取りましょうね?」

 

八幡「………なんで涼風が乗り気なの?」

 

 

 

 

 



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知らなかった想い

 

御影side

 

 

平穏な日だね〜……比企谷さん達のお買い物も決まったし、後は家具の注文だね。今頃八幡君と柊はデート中かぁ〜……青いねぇ〜青春だねぇ〜甘酸っぱいねぇ〜!

 

 

紫苑「……御影、貴方なんて顔してるのよ。」

 

御影「え?そんなに酷かった?」

 

紫苑「酷くはなかったけど、ニヤけてたわよ?みっともないわよ?比企谷さんも居るのに。」

 

尚人「いえ、私達の事は気にせずに。」

 

凛「えぇ、ホントに。」

 

御影「あはは、これはお恥ずかしい……少しだけ八幡君と柊の事を考えてましてね、今頃どんな仲睦まじいデートをしているのかと思っていた所です。いやぁ〜青春ですね〜。」

 

凛「あの、夜十神さん?お聞きしたい事があるのですが、良いですか?」

 

御影「何でしょう?」

 

凛「夜十神さんは……いえ、夜十神さん達は何故、八幡にそこまで味方をしてくれるのですか?私達が言っても説得力に欠けると思いますが、娘の恋人にしては過剰過ぎると思いまして………」

 

 

……成る程、やはり疑問に思ったか。

 

 

御影「そうですね……お2人は柊と八幡君が知り合って付き合う経緯はご存知で?」

 

凛「はい、八幡から聞きました。」

 

尚人「私も妻から。」

 

御影「………【幽霊ごっこ】、その時私は娘に何が起きているのか把握していませんでした。何かあったのだというのは分かっていましたが、深入りし過ぎて娘を傷つけてはならないと思いソッとしておく事にしました。しかしそれが返って柊を追い詰めていたのでしょうね。日に日に心を閉ざすようになってしまったんです。」

 

凛/尚人「………」

 

御影「今思うと自分はあの時、娘に何もしてあげられなかった………しようともしなかったとも捉えられます。苦しんでいる中、それを知っておきながら手を出しませんでした。父親失格ですよ、私は。」

 

紫苑「御影………」

 

尚人「そんな事は………」

 

御影「ありがとうございます。それである日の学校から帰って来た柊はとても嬉しそうに、楽しそうに学校での事を話していたのです。お宅の息子さん、八幡君との事を含めて。」

 

凛「八幡が……」

 

御影「あの日程、娘の顔が輝いていた日はありません。その日は私も紫苑も珍しく晩酌をしながら泣き明けたものです。そして柊が元に戻ってから数ヶ月してから、八幡君との交際を聞きました。私はすぐに家に呼んで欲しいと娘に頼みました。こう見えても私は人を見る目がある方だと自負しています。八幡君を見て思った事は、優しい、でした。」

 

凛/尚人「優しい?」

 

御影「見た目では写らない、とても優しい雰囲気を持っていました。そして八幡君を見ている内に、彼は打算で動いていない、自分に正直のままの状態で柊と接しているのだと気づきました。それで彼と打ち解けてきた時にそれとなく質問したんです、『柊とお金、どっちが好き?』って。まぁ普通の人なら恋人を選ぶでしょう。当然八幡君もそっちを選びました。理由を聞くと『お金なんて働いてれば手に入りますけど、柊はお金では買えません。それに俺は金持ちがどうとかじゃなくて、そのままの柊を好きになったんです。だから幾らお金を積まれようと、俺から柊と別れるつもりはありません。』って言ってくれたんです。」

 

尚人「八幡がそんな事を………」

 

御影「その瞬間、私は即座に決めました。この子は絶対に柊と離してはならないって。話がかなり脱線してしまいましたが、私達……柊を除く私と紫苑、涼風は八幡君に返し切れない程の恩を感じているんです。私達家族を再び1つにしてくれた事、柊に笑顔を取り戻してくれた事、心を解き放ってくれた事、私にとってそれはお金よりも大きな価値のある物なのです。それを私達の為に取り戻してくれた八幡君に少しずつではありますが、返している最中なのです。今回の家の再建の事もそうです、比企谷さん方はご気分を悪くするかもしれませんが、これも八幡君の為に行った事です。」

 

凛/尚人「………」

 

御影「私に出来る事なら何でもする、私はそのつもりです。それで少しでも八幡君への恩返しになるのなら………八幡君にもかなり真剣な感じでこう言ってますけど、いつもそれ以上の事を言われてしまうんですよ、ははは。きっと僕の事も薄々気が付いていると思います、こんな事考えてるって。けど別にそれでも良いんです。僕なりの恩返しなので。」

 

凛「……それ程の想いがあるのですね。」

 

御影「えぇ、なので一言では語れないのですよ。」

 

 

何度も思っている事だけど、それ程八幡君には恩を感じている。しつこいかもしれないけど、僕にだって意地があるからね。

 

 

凛「夜十神さんが八幡を気にかける理由がよく分かった気がします。八幡が柊さんを救った事は知っていましたが、夜十神さんがそこまで強い想いをお持ちだとは知りませんでした。」

 

御影「八幡君には何度感謝したか分かりません。いつの間にか真剣に感謝してる時が多々ありますから。感情の制御というのは難しいものです。」

 

 

ホント、八幡君を前にして感謝の言葉を送ると、感情が昂るよ。自分でも困る程にね。

 

 

 



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面倒はやはり向こう側からやってくる

今朝、【魔法科高校の優等生】最新話の第2話を見て思った感想………

森崎テメェ牢屋にぶち込んでやろうかぁ!!!?エリカにCADじゃなくて手首狙って欲しかったって思うのは僕だけではない筈!!お前なんてお兄様にかかれば1度魔法使えば消せるんだからな!!

………以上、完走でした。ふぅ………では、どうぞ。


 

 

八幡side

 

 

あの事件から数日が過ぎたある日、俺はいつも通り学校へと通っている。いつもと違うことと言えば、実家がああなってしまっているので、夜十神邸からの登下校になっている事だ。だから家を出てから学校に着くまでも、学校を出てから家に着く時までも一緒って事になる。柊と涼風は今の生活がとても嬉しいようだ。一緒の生活なんてその内飽きると思っていたが、2人の枠の中にそれは当てはまらないようだ。しかも弁当作りも張り切るようになっちゃってるし。俺は良いんだよ?良いんだけど手伝った方がいいのか?この場合は。

 

 

柊「そういえばさ、あの何とかって人ってどうなったの?八幡君何か知ってる?」

 

八幡「さぁ?俺にも分からん。それに何かあったらまずおじさん達と親父達に話が行くだろ。一応被害者の親って事になってるからな。」

 

涼風「裁判になるのでしょうか?」

 

八幡「確実になるだろ。ストーカー……では無いにしろ迷惑行為は掛かるとして、放火の主犯格だしな。決定的な証拠も岩嵜さんが取ってあるんだ、言い逃れは出来ないだろ。」

 

柊「まぁそうだよね。」

 

八幡「俺も両親や小町の前では言わなかったけど、家の建築費とか迷惑料の賠償金はかなり付くと思うぞ。多分それはおじさんのとこに行くと思うけど。だってもう建築費とか支払っちまってるし。俺達だけ良い思いするわけにも行かないしな。」

 

柊「別に気にしないと思うよ、お父さんなら。」

 

涼風「お姉様の言う通りです。やはり比企谷さん達が受け取るべきでは?」

 

八幡「まっ、そこはウチの両親次第だな。」

 

 

きっと俺のお袋の事だから貰う金の金額によるが、必ずおじさん達に渡すだろうな。住まわせてもらってる迷惑料とか再建費とかっていう理由で。

 

 

葉山「ちょっと良いかな?」

 

八幡「……何だ?」

 

葉山「昨日陽乃さんから聞いたんだが、君の家が焼かれたっていうのは本当かい?」

 

 

ザワザワ………シィ~ン

 

 

コイツ、何とんでもない事をサラッと平然な顔で言ってやがるんだよ?しかも時と場所考えろや、今10分休みの教室だぞ?全員の耳に入るに決まってんだろうが!しかもこの野郎、自分の話には場所とか変えんのに俺の時にはそういう気遣い無しかよ!ふざけんなよマジで!

 

 

八幡「………お前さ、段々と空気の読めない奴になってきてるよな。」

 

葉山「……どういう意味だい?」

 

八幡「此処、何処だと思ってんの?」

 

葉山「っ!」

 

八幡「自分の話には場所変えんのに、俺の時にはそういうの考えないんだな。マジで迷惑な奴だよお前………俺にとって。」

 

葉山「す、済まない、そんなつもりじゃ……」

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

八幡「………また要らん迷惑持って来やがって。」

 

葉山「………」スタスタ

 

 

葉山は申し訳なさそうに自分の席へと戻って行った。だがアイツの発言のせいでクラスは俺の家の事や俺がホームレスだとかで持ちきりだった。

 

 

涼風「どういうつもりなのでしょう?」ゴゴゴ…

 

柊「ホント。返答次第では許さない。」ゴゴゴ…

 

八幡「また全校中に広まらなければ良いが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「幸い、まだ噂は流れてないようだな。」

 

涼風「ちょっと安心しましたね。」

 

八幡「あぁ、これで絡んでくる奴が居たらホント勘弁して欲しい。」

 

柊「でも、やっぱり何かしらの動きはあるんじゃない?ほら、この学校って面倒な事には事欠けないでしょ?この後もそういう事があるって前提で考えておいた方が良いかも。」

 

 

うわぁ……非常に納得の出来る理由だ。

 

 

八幡「はぁ………もうアイツには関わらないでおこ。碌な事がない。あむっ……」

 

柊「寧ろマシな事ってあったの?」

 

八幡「…………んっ、いや無い。皆無だな。」

 

涼風「私もそう思います。」

 

柊「涼風がこう言うって事は確定だね。」

 

 

そうそう、涼風がこう言ってるんだから関わらないのはもう確定。はい締結、これから世界共通になります………ホントにそうなってくれないかなぁ。

 

 

由比ヶ浜「ねぇヒッキー?」

 

 

今度は由比ヶ浜かよ………

 

 

八幡「どした?」

 

由比ヶ浜「さっき隼人君が言ってた事ってさ、本当なの?家が……その………」

 

八幡「あぁそうだよ、だから何だ?」

 

由比ヶ浜「え、えっと……もし良かったらだけど、私の家に泊まりに来ても……「いや、もう解決してるから大丈夫だ。」……そ、そなの?」

 

八幡「2人の家に泊まってる。家を建て直し終わるまではそこで厄介になる。」

 

由比ヶ浜「そ、そうなんだ………」

 

八幡「まっ、心配は要らんから。」

 

由比ヶ浜「う、うん………」スタスタ

 

柊「ふんだっ!八幡君は渡さないもんね〜だ!」

 

涼風「お姉様、聞こえますよ?同感ですけど。」

 

八幡「はぁ………今日の部活でも雪ノ下に聞かれるんだろうな。まぁ聞かれても適当に流すけど。」

 

柊「八幡君、私達も一緒に部活行く?」

 

涼風「いつでもお声をかけて下さいね?」

 

八幡「多分その日は来ないと思うから安心しろ。」

 

柊「じゃあ早く奉仕部が問題起こすようにってすっごく強く祈っておくから!」

 

涼風「そうすれば八幡さんも無事に退部できますしね、お姉様同様に祈っています!」

 

八幡「涼風、お前までそっちサイドに行かないで。唯一の癒しがなくなっちゃう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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キッチリと

 

 

八幡side

 

 

授業が終わって放課後、今日は部活があるから2人とは一緒に帰れない。その事に若干渋りながらも先に帰ってもらった。俺は奉仕部の部室に向か………っているのではなく、屋上に居る。葉山を連れて。

 

 

八幡「………」

 

葉山「………」

 

八幡「……で?言ったのは貴女だそうじゃないですか、どういう事か説明してくれるんですよね?知らなかったじゃ済みませんよ、雪ノ下さん。」

 

陽乃『………まさかそんな事をしたなんて。比企谷君、ホントにごめ「能書きなんてどうでも良いんだよ。何勝手に人の家の事情喋ってんだって言ってんだよ………何処の会社でも常識だろうが。個人情報は漏洩はしてはならない、高校生なら当然だし、勉強してる中学生でも知ってるような事だぞ。」………うん、その通りだね。』

 

八幡「それをあろう事か、俺の目の前に居るバカが喋りやがった………ホントにふざけた事をしてくれたもんですよ。揃いも揃って。」

 

葉山「っ………」

 

陽乃『……昨日、雪乃ちゃんを除いた私達雪ノ下家と葉山家で話したんだ。そこではこの事は他言無用って事になってたの。君の言ってた通り、個人情報だったから………それにこういうのは1度弁護士にも相談する必要があるから、隼人のお父さんにしたんだけど………』

 

八幡「それが間違いだったようですね。」

 

葉山「だ、だが俺は本当に比企谷の助けになろうと『隼人、黙りなさい。』して………」

 

陽乃『比企谷君、これは雪ノ下家の責任です。この事は雪ノ下建設社長に報告するものとし、再度家でしっかりと処分を決めます。当然、私も。』

 

八幡「……生温い処罰だったら容赦しませんよ?」

 

陽乃『分かってます……』

 

八幡「………取り敢えず分かりました。一先ずは雪ノ下さんを信じます。俺からは両親や夜十神家に報告はしないでおきます。俺からは、ですけどね。柊と涼風はどうするのかは知りません。」

 

陽乃『うん、分かった。じゃあ隼人、アンタはすぐに家に帰って来なさい。そして自分のやった事を両親に、特におじさんにはきちんと説明しなさい。これが夜十神さんに知られてみなさい、私達の信用なんて地に落ちるわよ。もう落ちてるようなものだけど。』

 

葉山「………分かった。」

 

八幡「じゃあ切ります。」

 

陽乃『うん。比企谷君、本当にごめんなさい。』

 

八幡「どうにもならない謝罪なんてもうどうでも良いです。失礼します………正規の手続きにはなってるみたいだが、下らん事したな、お前。」

 

葉山「………」

 

八幡「お前がどんな考えであの場であんな事言ったのかなんて理解したくもないが、これだけは言ってといてやる。少しは人の事考えろ、バカが。」

 

 

ーーー奉仕部ーーー

 

 

はぁ………疲れた。何で悩みの種が無くなったと思ったら、また別なのが増えるのかね?葉山の奴、ホントに面倒な奴だ。一緒の空間にも居たくない。3年になってからの教室、別々になんねぇかなぁ………

 

 

ガラガラッ

 

 

八幡「よう。」

 

雪乃「こんにちは比企谷君、随分遅かったわね。何かあったの?」

 

八幡「あぁ、どこぞのバカが余計な事を言ったもんだから告げ口した人と一緒に会話してた所だ。」

 

雪乃「大体理解したわ、噂になっているものね。」

 

由比ヶ浜「でもビックリした、ヒッキーの……」

 

八幡「雪ノ下も知ってんのなら言い淀む必要ねぇだろ。あとお前も発言には気を付けろ。」

 

由比ヶ浜「え、どういう事?」

 

八幡「お前が俺を家に泊めるとか言ったろ?それのおかげで柊と涼風、お前を睨み殺しそうな目で見てたぞ。気持ちはありがたいが、2人の家が金持ちなのは知ってんだろ?そう考えたら普通泊まる家くらいある。」

 

由比ヶ浜「そ、そうだったんだ………うん、気を付ける。」

 

八幡「はぁ………」

 

雪乃「随分と大変だったみたいね、どうぞ。」

 

八幡「まぁな……サンキュ。」

 

 

はぁ〜やっと落ち着ける………いやもう本当に参った。とんでもなく迷惑な放火魔の次は常識知らずの同級生と来たもんだ。心が休まらん。

 

 

雪乃「それで、そのおバカさんは?」

 

八幡「家に帰ったよ。多分コッテリ絞られるだろうな………もし甘い内容だったら許さないけどな。」

 

雪乃「そう………」

 

 

雪ノ下も当然ながら葉山には興味無いようだ。どうなろうが自分には関係ないと。まぁそりゃそうか、雪ノ下は………ん?

 

 

八幡「そういやお前は知ってたのか?」

 

雪乃「いいえ、知らされてないわ。だから知ったのは今日の昼休みよ。」

 

八幡「……そうか。」

 

 

♪〜♪〜

 

 

八幡「ん?」

 

 

_____________________________________________

 

・To:比企谷 八幡

・From:夜十神 柊

 

 

内容:八幡君、今日の葉山君の事どうする?お父さんに報告する?するなら今言っちゃうけど?

 

_____________________________________________

 

 

……柊の奴、容赦するつもりはないらしい。だが一応チャンスはやっちまったわけだし、ここは止めておこう。

 

 

_____________________________________________

 

・To:夜十神 柊

・From:比企谷 八幡

 

 

内容:まだしなくていい。さっき俺と葉山と雪ノ下さんと話して、じっくりと話し合う事になったから。

 

_____________________________________________

 

 

よし、これで良いだろう。

 

 

雪乃「今のは夜十神さん?」

 

八幡「まぁな。【♪〜♪〜】ん?」

 

 

_____________________________________________

 

・To:比企谷 八幡

・From:夜十神 柊

 

 

内容:分かった!でも言いたい時はすぐに言ってね♪私も一緒に報告するから!それに私、葉山君の事ツブシタイシ………ね♪

 

_____________________________________________

 

 

………返信はしないでおこっ。

 

 

 

 

 



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両家の話し合い

 

 

ーーーーーー

 

 

葉山「………っていう事を起こしてしまい、ました。それでさっき、陽乃さんにも注意されて………」

 

 

葉山父「………」

 

秋乃「………」

 

陽乃「………」

 

 

誰も口を開かないばかりか、とてつもなく重苦しい雰囲気がその場を飲み込んでいた。今日の午前、葉山隼人が比企谷八幡に『家が焼けてしまった』事を言及したからである。この事は雪ノ下家と葉山家で他言無用と言われていた事なのだが、あろう事か葉山隼人はそれを本人に言っただけでなく、クラスメイトが居る教室内で言ってしまったのだ。

 

人気の無い屋上や体育館裏で2人でならまだ理解は出来るだろうが、教室内で行った事により比企谷八幡の家が全焼してしまった事が知れてしまった事が問題になっていた。

 

 

葉山父「隼人、何故そんな事をした?」

 

葉山「俺は、事実確認として聞いたんだ。」

 

葉山父「ほう?まさかとは思うが、それは雪ノ下社長が昨日言った事を信じられなかったからと捉えて良いのか?」

 

葉山「ち、違う!違うんだ父さん!俺はそんなつもりは毛頭【ダンッ!!】なくっ!?」

 

葉山父「お前にその気がなくても、こちら側にはそう聞こえているんだ!!お前は自分が何をしたのか分かっているのか!!?」

 

葉山「………」

 

葉山父「お前の余計な一言で比企谷君の情報が出回ってしまったのと、彼に恥をかかせてしまったんだぞ!!お前これをどう落とし前つけるつもりだ!!」

 

 

息子に対して怒鳴りつける葉山父。雪ノ下建設社長の秋乃とその娘の陽乃は止める様子もなく静観していた。どうやらこの2人も同じ思いのようだ。

 

 

葉山父「隼人、お前は知らんだろうから教えてやる。昨日の場では雪ノ下社長が他言無用と言ったが、本来であれば個人情報の他者への開示は絶対にやってはならない事だ!というよりも、あれはお前への警告でもあったんだぞ!それを無碍にするとは………」

 

葉山「そ、それならそうと言ってくれれば「いってくれれば良いだろう?そう言いたいのか?」あ、あぁ……だってそうだろう?」

 

葉山父「ならばもう1度質問をする。お前はとある人から話を聞いたとしよう。その後はどうする?ちなみにその相談相手はあまり人には言えないような相談と言う事にする。」

 

葉山「………解決策をおおよそ考えてから、他に何か無いか知り合いに相談する、とか。」

 

葉山父「………隼人、知り合いというのは何人程度だ?」

 

葉山「……自分の友達とか、そういうのに詳しそうな人とか、かな。」

 

 

再び重苦しい雰囲気が場を包んだ。そして………

 

 

陽乃「隼人、アンタおじ様の話聞いてたの?」

 

葉山「も、勿論。」

 

陽乃「じゃあさ、相談相手は人には言えないような相談なのに、何でアンタはそれを破るような事をするわけ?」

 

葉山「っ!」

 

葉山父「話にならないな………社長、ウチの愚息が大変申し訳ございません。この件に関しては私の方から夜十神さんと比企谷さんにご報告させて頂きます。」

 

秋乃「………陽乃、比企谷さんは何と?」

 

陽乃「比企谷君は処罰に関しては私達に任せるみたいだけど、隼人に関しては生温い罰だったら許さないって言ってたよ。それから夜十神さんには報告はしないけど、御令嬢の2人がどうするかは知らないって。重要な話し合いの場とはいえ、私が比企谷君の家の事を話したのは事実だから私にも罰はあっていいと思ってる。」

 

秋乃「そう………葉山さん、我々は再建費の約5割を減額。加えて陽乃を1週間の期間、自宅謹慎とします。良いですね?」

 

陽乃「うん、覚悟はできてる。」

 

秋乃「これが我々の処遇です。」

 

葉山父「分かりました。我々に関しては正直結論を出しかねています。愚息を謹慎にさせようとは思っていますが、他に何をさせれば良いのか………」

 

陽乃「でしたら私から提案します。隼人はしょっちゅう比企谷君に迷惑を掛けてるので、金輪際彼に関わらないようにするのが1番だと思います。偶に私にも愚痴をこぼしたりしていますので。」

 

葉山「っ!?」

 

葉山父「お前、まさか今回だけならずこれまでにも何か迷惑を掛けていたのか!?」

 

秋乃「葉山さん、それはまた後でにしましょう。此処にいる皆さんに言っておきますが、私はようやく掴んだ【Nigh-Ten・Group】との繋がりを手放したくないと考えています。あの会社と繋がりを持てるのはとても心強い事です。陽乃、隼人君、もう理解しているとは思いますが、軽はずみな行動は慎むように、良いですね?」

 

陽乃「うん、分かった。」

 

葉山「……分かりました。」

 

秋乃「ではこの話は終わりにします。葉山さんは比企谷さんへの対応をお願いします。私は夜十神さんから対応をします。」

 

葉山父「分かりました。家に着き次第、早速連絡します。」

 

 

こうして雪ノ下家と葉山家の話し合いは終了した。

 

 

秋乃「………向こうと関わりを持って早々にこのような事になるとは、予想外でした。」

 

陽乃「私から比企谷君に電話する?その方が早いと思うけど……勿論、両親も一緒にだけど。」

 

秋乃「いえ、それでは逆に不快感を与えてしまいます。親がそれを知っていながら子に電話をさせると、もしかしたら何かを言ってくるかもしれません。私から見た比企谷さんは油断ならない方ですから。陽乃、携帯番号を教えて下さい。」

 

 

 

 

 

 



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雰囲気

 

 

八幡side

 

 

秋乃『この度は誠に申し訳ございませんでした。』

 

 

開幕早々だが、俺は雪ノ下の母親から謝罪を受けた。原因は皆も知ってる通り、葉山の件だ。

 

 

八幡「学校の一部のクラス内とはいえ、もう知れてしまった事は仕方ないです。そこは目を瞑ります。それで、今後はどうするつもりですか?」

 

秋乃『はい。まず私の娘の陽乃ですが、1週間の自宅謹慎を下しました。比企谷さんからして見ればたったの7日間と思われるかもしれませんが、これも隼人君を同席させてしまった我々の落ち度でもあります。そこで、今回の再建費用を約5割、つまり半額とさせて頂きます。』

 

八幡「……成る程、雪ノ下さんの方は分かりました。それで、葉山はどうなりましたか?恐らく今頃は夜十神の方に電話しているのでしょう?」

 

秋乃『……恋人からお聞きに?』

 

八幡「いえ、自分の予測です。あんな事をしたんですから、雪ノ下さん1人だけが謝罪しているわけがありませんからね。」

 

秋乃『(呆れたものだわ……まさか私達の動きまで予測していただなんて。)はい、今は弁護士の葉山さんが夜十神さんにお電話をしている所です。』

 

八幡「葉山さんからの報告はあちらも面倒だと思うので今聞きます。聞かせてもらえませんか?」

 

 

正直、もし途中で葉山が代わってきたらって思うとすげぇ腹立つからっていうのもある。

 

 

秋乃『分かりました。隼人君なのですが、これといって案が浮かびませんでした。今申し上げられるのは未定ではありますが謹慎と比企谷さんへの接触禁止という事にしました。比企谷さんからすれば甘いと言われても返す言葉がありません。』

 

八幡「……質問ですがさっき言ってた再建費用の残り半額分は雪ノ下建設が払うという事ですか?」

 

秋乃『はい、その通りです。』

 

八幡「ならその2割をアイツが肩代わりして下さい。およそ250万円、期間は設けませんので葉山に借金として払わせるようにお願いします。」

 

秋乃『(陽乃の言った通り、容赦する気は無いようね。)分かりました、私から葉山さんに伝えておきます。他には何かございますか?』

 

八幡「俺の予想ではアイツは俺との接触を禁止にしても大した意味はありません。何食わぬ顔で接触してくると思いますしね。もしも奴が俺に接触してきたら、俺から雪ノ下……陽乃さんに連絡を入れます。別に何かしようってわけではありません。ただ報告をするだけです。」

 

秋乃『……その後は?』

 

八幡「陽乃さんにお任せしますよ。胸の内に留めておくもよし、正直に雪ノ下さんや葉山さんに報告するもよし、本当にお任せです。まぁ、陽乃さんの性格を考えれば、ただで終わるとは思いませんけどね。」

 

秋乃『……分かりました。では陽乃にもそのように伝えておきましょう。』

 

八幡「俺からは以上です。」

 

秋乃『分かりました。では比企谷さんが言った事も加えて葉山さんに報告します。恐らく葉山さんからは連絡がないと思いますが。』

 

八幡「はい、分かりました。」

 

秋乃『では、失礼致します。』

 

 

………まぁ、取り敢えずはOKにしておくか。

 

 

八幡「取り敢えず、こんな感じですよ。」

 

紫苑「そのようね、後で御影にも言っておくわ。もし何か違う所があれば突っ込むようにも。」

 

八幡「お願いします。」

 

紫苑「それにしても八幡君、やっぱり真面目になると雰囲気が変わるわね。」

 

八幡「そうですか?普通のつもりですけど?」

 

紫苑「貴方は分からないと思うけど、少し刺々しいというか、少し優しさが消えるわね。」

 

 

そうなのか………もし俺が会社に入る事になったら気を付けよう。周りの雰囲気を壊しかねない。

 

 

八幡「そうですか……入る前に何とかしておかないとダメですよね。」

 

紫苑「それはそのままで良いと思うわよ。時には厳しい判断をしないといけない時だってあるもの。その時には優しい気持ちは捨てないとダメ。今の貴方のようにね。」

 

八幡「いや、まぁ……葉山相手になら別に優しさとか要らないと思ってるんで。」

 

 

これは嘘ではない。穢れなき純度100%の思いだ。

 

 

紫苑「けれどそれを私達に向けないでね?」

 

八幡「向けませんよ。」

 

 

ーーー居間ーーー

 

 

八幡「ふぅ………」

 

涼風「八幡さん、お疲れ様です。」

 

八幡「あぁ、ありがとな。」

 

柊「それで、どうだったの?」

 

八幡「それはおじさんが来てから話す。まだ話してるのか?」

 

柊「うん、少し長引いてるみたいだね。」

 

紫苑「御影の事だから大丈夫だとは思うけど、ハッスルしてたらどうしようかしら?」

 

 

おばさん、やめてくださいよ………おじさんが容赦無くなったら何するか想像もできませんって。

 

 

柊「気長に待つか〜まぁ私はその間も八幡君と一緒に居るけどね〜♪」ダキッ!

 

涼風「私も八幡さんと一緒に居ます。」キュッ

 

柊「……なんか思ってたんだけどさ、涼風最近八幡君との距離近いよね?どうして?」

 

涼風「お義兄様の近くが安心するから近くに居るだけです。」

 

柊「………なら仕方ないっか、八幡君だもんね。」

 

涼風「はい、八幡さんなので仕方ありません。」

 

八幡「………どゆこと?」

 

 

 

 

 

 

 

 



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気苦労が絶えず……

 

秋乃side

 

 

秋乃「ふぅ………本当に、呆れる程の才ですね。」

 

陽乃「比企谷君の事?」

 

秋乃「えぇ、そうよ。夜十神さんに電話してる事を予測してたみたいです。それにその後、接触禁止の事でも隼人君が何食わぬ顔で接触して来るだろうとも言っていました。」

 

陽乃「まぁ隼人ならやりかねないね。」

 

秋乃「そこで陽乃、貴女に比企谷さんから依頼です。」

 

陽乃「?私に?」

 

 

私は比企谷さんから言われた事をそのまま陽乃に伝えました。陽乃も少し神妙な顔つきになりました。そうなるのも無理はありません、報告はするがどうするかは陽乃次第などと不明瞭な事を言ったのですから。

 

 

陽乃「お母さん、どういう事だと思う?」

 

秋乃「……意図が読めませんね。こんな事は初めてですから。ただ最後に彼は、貴女の性格を考えればタダで済むとは思えない、とも言っていました。」

 

陽乃「………」

 

 

これはどう汲めばいいのか分からない内容ですね。しかし比企谷さんの方から報告してくるというのであれば、その日の事を記録しておいた方が良いかもしれませんね。

 

 

秋乃「陽乃、もしも比企谷さんから報告があったらメモを取るようにしなさい。その日の分を忘れた、なんて事は許しません。」

 

陽乃「うん、分かった。」

 

秋乃「さて、そろそろ葉山さんの方も終わったでしょうか?」

 

 

ーーー通話中ーーー

 

 

秋乃「通話中……随分と長いですね。」

 

陽乃「相手は夜十神さんだから長引いてるのかも。きっと向こうも何か言ってきてるんじゃない?」

 

秋乃「……葉山さんからの連絡を待ちましょう。不在着信で電話してきた事に気付くでしょうから。」

 

 

ーーー数十分後ーーー

 

 

♪〜♪〜

 

 

秋乃「っ!……葉山さんですね。もしもし、雪ノ下です。」

 

葉山父『雪ノ下社長、葉山です。申し訳ございません、電話中だったもので。』

 

秋乃「いえ、そうだろうと思っておりました。」

 

葉山父『それで、どうかされましたか?この後は比企谷さんにお電話する所なのですが………』

 

秋乃「はい、その事で葉山さんにご連絡をさせて頂きました。比企谷さんに結果を要求されましたので、先に言っておきました。なので葉山さんからのお電話は不要になりました。」

 

葉山父『成る程……』

 

秋乃「そして私達の懸念していた罰の甘さで比企谷さんから提案がありましたので、勝手ではありますがそれを受けました。」

 

葉山父『いえいえ、本来ならば我々が決めなければならない事でしたから。それで、その内容というのはどんなものでしょう?』

 

秋乃「雪ノ下建設が半額の1250万円の建設費を受け持つ事になりましたが、その2割の250万円を隼人君に借金として課す事です。期限は設けずにとの事ですが。」

 

葉山父『そうですか、分かりました。隼人にはキッチリと支払わせますので。』

 

秋乃「隼人君の肩を持つわけではありませんが、それなりに高額です。大丈夫ですか?」

 

葉山父『えぇ、これも身から出た錆、自業自得というヤツです。寧ろこの程度で済んで良かったというものです。』

 

秋乃「そうですか……それとこれは隼人君にも関係しているのですが、少し線引きが微妙な所なのでお教えしておきます。」

 

葉山父『はい、何でしょう?』

 

秋乃「比企谷さんから言われた事なのですが、接触禁止になっても隼人君の事だから何食わぬ顔で接触して来るだろうと言っていました。そしてその後に彼から娘の陽乃に接触してきた事を連絡すると言ったのですが、その後の対応は陽乃に任せるとの事でした。」

 

葉山父『……それはどういう意図で?』

 

秋乃「分かりません。なのでこれは陽乃に一任するつもりです。匙加減も何もかも。」

 

葉山父『分かりました。借金については私から息子に説明します。今の話については内密にしておきますので。』

 

秋乃「お願いしますね。そちらの方は大丈夫でしたか?随分と長くお話されていたようですが?」

 

葉山父『えぇ、まぁ………静かなお声でお叱りを受けました。返す言葉も無かったとしか言えませんね。息子がした事とはいえ、堪えますね。』

 

秋乃「そうでしたか。」

 

葉山父『私の方から異を唱える事なんて出来ませんからね、電話越しではありますが謝罪をするだけでしたよ。』

 

 

葉山さんの苦労が目に浮かびますね。しかしこの後は私も夜十神さんにお電話をするのですが、少しだけ心配になってきましたね。

 

 

秋乃「心労お察しします。」

 

葉山父『ありがとうございます。雪ノ下社長もこの後の夜十神さんへのお電話、頑張って下さい。励ましにもならない言葉ですが。』

 

秋乃「ありがとうございます。では失礼します。」

 

陽乃「夜十神さんからは何もなかったのかな?」

 

秋乃「お話を聞く限りではそのようですね。」

 

陽乃「けど、比企谷君が先で良かったかもね。先に夜十神さんに掛けてたら、何か言われてたと思うし。内容は分からないけど。」

 

秋乃「そうね………」

 

陽乃「私が言えた事じゃないけど、お母さん大丈夫?すっごい疲れてるように見えるけど。」

 

秋乃「まさか1日でこんな事になるなんて誰も思わないもの。はぁ………ため息もつきたくなるわ。」

 

 

陽乃(お母さんのため息なんて滅多に聞く事ないもんなぁ。それだけ気持ち的にも参ってるのかも………けど私がなんか言った所でどうしようもないしなぁ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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疲れも吹き飛ばす甘さ

 

 

御影side

 

 

どうも皆さん、夜十神御影です。今さっき入って来た電話の内容に少しだけ憤りを感じている所なんだ。聞けば学校で八幡君の家が焼かれた事を聞こえる声で言ってしまったと………いやぁ葉山さんの息子さんは凄いね、本当に。だが聞けば聞く程驚いたものだよ、他言無用と言われていたのにも関わらず本人に聞いた。これだけならまだいい、いや、本当はあまり良くないんだけど。だがそれを周りに聞こえる程の声で言ったのが間違っている。

 

葉山さんの息子さん曰く『事実確認として聞いた。』みたいなのだが、それは八幡君や僕達が嘘をついていると、信用出来ないから聞きたいとしか聞こえない。遠回しに否定されるとは思わなかったよ。まぁ本人はそんなつもりはないって言ってるみたいだけどね。

 

けどまぁ色々と話しちゃったなぁ〜後で八幡君や娘達にも葉山君の事を聞いてみよう。多分嫌な顔すると思うけど。

 

 

♪〜♪〜

 

 

………雪ノ下建設さんからかな?

 

 

御影「もしもし、夜十神です。」

 

秋乃『こちら雪ノ下建設社長の雪ノ下です、先日はありがとうございました。』

 

御影「いえ、こちらこそ。」

 

秋乃『はい。それで早速なのですが、今回お電話させて頂いた件の事です。もうお分かりになっているかと存じます。』

 

御影「えぇ、先程葉山さんからお電話を頂いてお話をしました。」

 

秋乃『はい、こちらも葉山からお話は伺いました。それで、こちらも比企谷さんとお話をしまして、謝罪と補足をしておきたいと思い、お電話をさせて頂きました。』

 

 

補足?

 

 

御影「…詳しくお聞かせください。」

 

秋乃『ではお話します。この度のご迷惑のお詫びとして、夜十神さんにお支払いして頂く予定だった2500万円ですが、その5割の1250万円を雪ノ下建設で負担するのと雪ノ下陽乃と葉山隼人の謹慎、葉山隼人の比企谷八幡への接触禁止については聞かれたと思います。』

 

御影「はい。」

 

秋乃『そこに追加で葉山隼人に我々の会社が負担する1250万円のおよそ2割の250万円を借金として支払わせる形になりました。』

 

御影「250万円……学生にしては少ない金額ではありませんね。」

 

秋乃『はい。しかしこれは比企谷さんにご提案して頂いた金額でもありますので、それに従おうと思っています。』

 

御影「成る程……」

 

秋乃『そしてもう1つ。もし葉山隼人が比企谷さんに接触した場合、この事をウチの娘である陽乃に報告するという事になりました。比企谷さんは報告するだけだとおっしゃっていました。我々も比企谷さんに乗っ取り、この件は陽乃に任せる事にした所存です。』

 

御影「ふむ………」

 

秋乃『以上が先程、比企谷さんとお話して変更のあった部分です。夜十神さんからは何かお聞きしたい事等はございますか?』

 

 

もう八幡君がお話したんだ……ならいいかな。

 

 

御影「いえ、私からは特にありません。八幡君がそれで良いのなら私も文句はありませんので。」

 

秋乃『何も、ですか?』

 

御影「えぇ。ただ1つ申し上げるとすれば、もしウチの娘にも迷惑を掛けるようであれば………その時は考えさせて頂きますが。」

 

秋乃『……分かりました。私の娘と葉山さんに必ず伝えておきます。』

 

御影「よろしくお願いしますね。」

 

秋乃『分かりました。では、失礼します。』

 

 

………八幡君もやるなぁ、学生に250万円の借金なんて。けど少しだけ気が晴れたよ。

 

 

ーーー居間ーーー

 

 

御影「おや皆、お揃いみたいだね。」

 

柊「さっきまで八幡君に雪ノ下建設社長との電話の内容を聞いてたんだ。」

 

御影「その事で少しだけ聞きたいんだけどさ、3人は葉山君ってどんな印象なんだい?聞かせて欲しいんだけど。」

 

八幡「面倒事や厄介事を持ってくる迷惑極まりない男です。」

 

柊「自分の事しか考えてない単細胞生物。」

 

涼風「自分で作ったグループも碌に守れない低脳無能です。」

 

「「「「………」」」」

 

涼風「?あの、何か?」

 

 

いや、3人からの低評価はある程度予想してたけど、涼風がここまで言うとは思わなかった………低脳無能って凄い事言うね。

 

 

八幡「いや、すごいハッキリ言うなって思ってよ。いつもなら言わないだろ?涼風が他人に対して悪口なんて。」

 

涼風「確かに言いませんが、八幡さんにしつこく付き纏ってあれだけ迷惑を掛けていれば言いたくもなります。それに今言ったのは本心ですから。」

 

柊「うん、よく言った我が妹よっ♪」

 

紫苑「正直、私も少し驚いてるわ……」

 

御影「うん、僕も………あっ、じゃあ2人は八幡君の事はどう思ってる?」

 

柊/涼風「最高の彼氏(義兄)だよ!!」

 

御影「そ、そっか………他には無いのかい?例えばこういう所はちょっと嫌だなぁとか。」

 

柊「え、無いよ?最初は揶揄うの少しやめて欲しいって思ってた時もあったけど、今ではそれも心地良いって思ってるから♪」

 

涼風「八幡さんに嫌いな所なんてある筈がありません。とても理想的な方です!」

 

八幡「いや、なんかあるだろ、少しは探せよ。」

 

 

………うん、八幡君は我が娘達にすごく愛されているのがよく分かったよ。電話での疲れが一気に何処かへ吹き飛んじゃったよ。ありがとね、我が愛娘達と義息子君。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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問題日の翌日

 

葉山side

 

 

葉山「………」

 

 

ーーー回想ーーー

 

 

葉山父「隼人、お前は暫くの間家に謹慎してもらう事になった。それは分かってるな?」

 

葉山「はい……」

 

葉山父「そこでだ、先程雪ノ下社長から比企谷さんに電話した所、比企谷さんから罰の提案があった。元々少ない罰だったから私もそれを受けた。今からそれをお前に伝える。」

 

葉山「………」

 

葉山父「雪ノ下建設が建築費の半分を負担する事になったのは知ってると思う。およそ1250万円、とても大きい額だ。お前にはその金額の2割、250万円を雪ノ下建設への借金として返済してもらう事になった。」

 

葉山「なっ………」

 

葉山父「当然、お前に拒否権など無い。そして謹慎期間だが、新学期が始まるまでとする。3年生になるまでは学校には行かせん。」

 

葉山「そんな、父さん!「その約2ヶ月の間、お前には雪ノ下建設の仕事を手伝って貰う。事務ではなく現場のだ。」……」

 

葉山父「仕事は4時間、雪ノ下建設の時給換算で計算をする。その発生した分の金額は給与日に俺の方に渡される。最低5000円はお前に渡すつもりでいるが、万以上は貰えないと思っておけ。」

 

葉山「父さん、俺は本当に比企谷が心配だったからあの時聞いたんだ!なのにこれはあんまりだ!それに学生の内にそんな量、払い切れる訳がないじゃないか!」

 

葉山父「安心しろ、比企谷さんは無期限と言って下さった。そしてこれは雪ノ下建設への借金だ。この先、返済が何日も遅れるようなら、雪ノ下社長や陽乃ちゃん、そして雪乃ちゃんからの信用は無くなっていくと思え。」

 

葉山「………」

 

 

ーーー回想終了ーーー

 

 

何でだ……何で俺がこんな目に遭わなければならない?俺は比企谷に聞いただけだ、本当かどうかを!確かに聞いたタイミングは悪かったかもしれない。だがここまで不当な扱いをされる筋合いはない筈だ!

 

それに心配してくれた奴だっていただろう!戸塚や川崎さん、優美子に姫菜や結衣だって心配していた!俺のやった事全てが悪い事ではない筈だ!!

 

 

葉山「比企谷が告げ口しなければ……っ!」

 

 

こんな事にはならなかった!!

 

 

葉山sideout

 

柊side

 

 

柊「♪〜♪〜」

 

八幡「ご機嫌だな、柊。」

 

柊「そりゃそうだよ!今日から何日かはあの鬱陶しい金髪を見なくて済むんだも〜ん♪」

 

尚人「鬱陶しい金髪?」

 

涼風「はい、クラスメイトに少し印象の悪い方が居まして………」

 

尚人「そうなんだね……ところで八幡、家の再建の事だがやっぱり3〜4ヶ月は掛かるそうだ。」

 

八幡「俺もネットで調べたが、そのくらい掛かるみたいだな。分かった……おじさん、聞いての通りなんですけど、暫くの間厄介になってもいいですか?」

 

御影「勿論だよ八幡君、皆さんもその間はこの家を自分の家だと思って生活して下さい。」

 

八幡「ありがとうございます。」

 

小町「でもこんな豪邸を自分の家みたいに過ごすなんて無理がありますよ〜。まだ慣れませんし。」

 

紫苑「それはそうよ、まだ数日だもの。でもその内慣れてくるわよ。」

 

 

ホントの所は八幡君さえ居ればそれで良いんだけど、今は家が無いからしょうがないよね。

 

 

御影「そうそう八幡君、最近忙しい事が続いて申し訳ないと思うんだけど、君にお願いしたい事があるんだ。聞いてくれないかな?」

 

八幡「?何ですか?」

 

御影「ほら、泰納宰安の事で裁判の日が決まったんだ。そこで君に学校を早退して裁判に出席して貰いたいんだよ。被害者の一人として。本来なら比企谷さん達が出るのが1番なんだけど、現場や状況を1番理解出来ているのは君だからね……それで、どうかな?」

 

 

完全に忘れてたけど、八幡君の家を燃やした黒幕、だよね?もう顔なんて忘れちゃったけど。

 

 

八幡「いいですよ、ちなみにいつです?」

 

御影「1週間後の13時。そういう訳だから柊と涼風、その日のお弁当は八幡君抜きでお願いするよ、ごめんね。」

 

柊「お父さん、私達の学校に行く大半の理由を奪わないでよ!!楽しみ無くなっちゃったじゃん!!」

 

涼風「八幡さんの、私達による、八幡さんの為のお弁当が作れないのなら、どんなお弁当を作ればいいのですか!?」

 

御影「分かってはいたけど大バッシング………」

 

八幡「なら、小さい弁当箱に作ってくれないか?それなら俺も車の中で食べられるし……どうだ?」

 

柊「うぅ〜……でも八幡君と一緒に食べるから意味があるのに〜。」

 

涼風「そうです、幾ら作れたとしても八幡さんが居ないと意味がありません。」

 

小町「この家に来てから少し経ったけどさ、お兄ちゃんってすっごい愛されてるよね。」

 

八幡「揶揄うな小町………じゃあ、帰って来たら頭撫でてやるから、それでどうだ?」

 

柊「夜十神柊、全力で作ります!!」

 

涼風「お任せ下さい八幡さん、いつものお弁当に負けないくらいのお弁当を作ります!!」

 

八幡「………うん、頼むわ。」

 

紫苑「相変わらず娘達の心に火をつけるのが上手ね、八幡君は。」

 

 

よぉ〜し、今日から涼風と念入りにおかずの打ち合わせをしないとっ!!けど絶対に入れないといけないのは卵焼きだよね!!

 

 

八幡「おっ、そろそろ時間だな。柊、涼風、小町、支度して行くぞ〜。」

 

柊/涼風/小町「はーい(はい)(あいあいさー)!」

 

 

 



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お休みと裁判予想

 

 

八幡side

 

 

戸部「うぅ〜ん………隼人君、今日は遅いべ〜。何してんだべか?」

 

大岡「あぁ、いつもは俺達より早いのにな。」

 

大和「それな。」

 

戸部「なんかアレっしょ、隼人君が居ないとあんまし気分乗らないべ。」

 

 

学校の奴等は知らんだろうが、アイツは自宅謹慎中だ。多分その事は平塚先生から言われるだろうな。細かい事情は省かれるだろうけど。それにおじさん経由でだが、雪ノ下社長からも借金の事は問題なく行うって言ってたみたいだから、その辺も問題無いだろう。葉山の親父さんと会話した事なんて1度もねぇからどんな人かは分からんが、あの社長の弁護士やってんだから大丈夫だろう。

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

平塚「お前等席に着けー。」

 

戸部「おっ、今日は先生早いべ〜。」

 

平塚「あーお前に1つ連絡事項だ。今日欠席している葉山だが、家の事情で新学期まで学校を休む事になった。詳しい事情は話せないが、葉山とは3年生になるまでこの学校では会えない事になるから、そのつもりで居るようにな。」

 

戸部「え!?せ、先生、どういう事だべ!?」

 

平塚「詳しい事情は話せないと言った筈だ。私も教師だ、守秘義務がある。おいそれと他人の家の事情に首を突っ込んでいいわけがないだろう?聞きたければ葉山に直接聞いてみたまえ。それでアイツが答えればの話だがな。」

 

戸部「……分かりました。」

 

 

普通そうだよな。守秘義務って大事な事だよな。他人の家の事情に首突っ込まないのは当然だよな。アイツ、それ一気に2つも破ったから。

 

 

平塚「それから2月には期末試験がある。呆けているとテストはすぐやって来るからな、今の内に復習しておくように。以上だ。」

 

 

………にしても2ヶ月か、意外と長かったな。

 

 

柊「八幡君、どう思う?」

 

八幡「意外と長いって思った。1ヶ月とかそこらで復帰させるもんだと思ってたが、葉山さんもそれなりに重くしたんだろうな。」

 

涼風「八幡さんに言われたからではありませんか?生温い罰では容赦しないと。」

 

八幡「脅したつもりなんて無いんだけどな。」

 

柊「でもさ、これで正解だと思うよ。私達はそういう事した事ないから分からないけど、罪の意識ってさ、やっぱり自分の問題だからさ。」

 

涼風「そうですね、認めないまま塀の中に行った方達を私達は見てきていますから。」

 

 

あぁ〜森崎と天之川の事か。もう2度と会いたくねぇ奴等だな、2人にストーカー紛いな事してた挙句に片や誘拐、片や殺人未遂だもんな。もう思い出したくもない………でもよ、不思議なもんだよな。嫌われてたって分からんもんなのか?俺ならすぐに分かるぞ。

 

 

柊「で・も〜これで暫くは安心だね♪」

 

涼風「はい。」

 

八幡「とか言ってまた厄介事が出てきたらどうする?俺もう勘弁して欲しいってなるぞ?2年後半になってからのラッシュヤバ過ぎるだろ。」

 

柊「確かにね………」

 

涼風「私もそう思っていました。そしてその中心に居るのが、殆ど私達ですから………」

 

柊「八幡君、ほぼとばっちりだもんね………」

 

八幡「最初の一声『なんでこんな奴と付き合ってんだー』みたいな台詞ばっか聞いてた気がする。他人から見てそんなに不釣り合いかね?」

 

涼風「私はそうは思いません。八幡さんとお姉様はとってもお似合いの恋人同士だと思います。」

 

八幡「俺が言うと自慢になるかもしれないが、柊と付き合っていける男って俺くらいだろ?他の男が近寄ってもダメな気がする。」

 

柊「そりゃそうだよ。私は八幡君だから付き合ってるんだもん。他の考え無しとは付き合いたくないよ。それにさ、八幡君なら周りよりも私を選んでくれるでしょ?」

 

八幡「当たり前だ。」

 

 

天秤にかける物にもよるが、俺はそこいらの奴よりも柊を取る。あっ、涼風を掛けられたらすんげぇ迷うかもしれん。だって大事な義妹だし。

 

 

涼風「八幡さん、来週の裁判の事ですが……どうなると思いますか?」

 

八幡「どうもこうも、俺達の一方的な勝利になると思うぞ。向こうに弁護士がついたとしても、反論出来る事なんて一切無いしな。多分おじさんは慰謝料とかを搾り取る気なんだと思う。建設費は半分に抑えられたから、他の費用とかを取りに行くと思うぞ。それに向こう側は放火までしたんだから間違いなく刑務所の中にぶち込まれる。最悪、死刑だしな。」

 

涼風「そうなのですか………あの、もしかして泰納グループも?」

 

柊「きっと閉業すると思うよ。こんな騒ぎになるんだもん、一時的な休業にしたとしてもお客さんなんて寄ってこないと思うよ。だってあの会社ってあっても無駄でしょ?」

 

八幡「まぁ近年の様子からして、残しておく価値はあまり無いかもな。柊の言う閉業が確定したら、何から何まで押収されるだろうな。」

 

柊「そしてその分をお父さんの所に?」

 

八幡「金が不足してたらな。順番的には慰謝料や損害賠償が出て、もし金があったらそれで解決。足りなければ自宅の金品を押収してそれで払う。間に合えばそれで良し、間に合わなければ……それ以上は分からんな。借金ってパターンになるのかもな。」

 

涼風「ですが、今の話の流れになると………」

 

八幡「生き残れたとしても極貧生活は免れない、って事になるな。」

 

 

何にせよ、ご愁傷様です。

 

 

 

 

 

 



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賑やかな昼食

 

 

涼風side

 

 

戸部「………出ないべ。やっぱ家の用事だべか?きっと忙しくしてんだろうなぁ〜。」

 

大和「隼人君だしな。」

 

大岡「それな。」

 

 

……本当は八幡さんにご迷惑を掛けたせいで謹慎を受けているのですが、それを説明する必要はないでしょう。そこまで親しいというわけでもありませんし。しかし意外です、このクラスの皆さんならもっとざわつくと思っていましたが、意外にも皆さん静かですね………

 

 

「どう思う?」

 

「どう思うって……うぅ〜ん、どうなんだろう?」

 

「けどさ、修学旅行の時とか色々あったじゃん?それ見ちゃうとさぁ………」

 

「やっぱそうだよね〜……ちょっと印象悪くなっちゃうよね。」

 

 

 

「葉山君もしかしたらだけど、身内で問題起こしたんじゃねぇの?」

 

「おいおい、何でそう思うんだ?」

 

「だって修学旅行とか相模さん達の事とかで比企谷に言われてただろ?だからだよ。」

 

「あぁ〜……確かにアレ見ちゃうとなぁ。」

 

「納得出来るだろ?」

 

「説得力はあるよな。」

 

 

成る程、修学旅行後の葉山さんの印象が皆さんガラリと変わってしまったようですね。以前のような印象はないようですね。八幡さんに声を掛けている所も、お叱りを受けていた所も加味されてこうなったのでしょう。

 

 

三浦「隼人の事なんてもうどうでもいいけどさ、ヒキオなんか知ってんじゃないの?」

 

八幡「何で俺?」

 

三浦「だってさ……昨日、隼人が口走ってたの聞くとさ、無関係じゃない気がしただけだし。」

 

海老名「あぁ〜確かにね。アレって絶対他の人に言いふらしたらダメな内容だもんね〜。」

 

八幡「お前等意外と鋭いな。一応半分正解だ。」

 

海老名「半分?」

 

八幡「あぁ。だがこれ以上は答えない。流石に言うわけにもいかない内容だしな。」

 

柊「けどさ、葉山君って何考えてるんだろうね?」

 

三浦「あーしにもサッパリ。」

 

涼風「寧ろ、理解したいと思いません。」

 

八幡「お前等、言いたい放題だな………まぁ俺もだけどよ。」

 

海老名「比企谷君も負けてないよ?」

 

 

三浦さんと海老名さんはすっかり葉山さんを見限っているようですね。今の口調で分かります。

 

それはそうと、今はお昼休みなのですが何故私達の近くでお食事をしているのでしょうか?いつもなら私達3人で食べているのに………いえ、今の状況が不満だというわけではありませんが、今日は何故一緒にご飯を?

 

 

八幡「なぁ、何で今日はこっちに来たんだ?」

 

三浦「ん〜?なんていうか、気になってたから。アンタ達の弁当が。」

 

八幡/柊/涼風「弁当?」

 

海老名「私達だけじゃないけど、3人のお弁当っていっつも美味しそうに見えるから気になってたんだよね〜。それにいつも重箱で3人一緒じゃん?何でかなぁ〜って。」

 

柊「最初は別々を考えてた(ホントは考えてない)んだけど、もうこれが習慣になっちゃったから変える気もなくなっちゃってさ〜。八幡君も何も言わないし、いっかなぁ〜って。」

 

三浦「……あのさ、もしかしてこれって夜十神さんが作ってんの?」

 

涼風「はい。八幡さんにはより美味しく食べて貰いたいので、全て手作りです。最近は洋食も勉強中なのですが、和食メインで作ってきましたので、中々上手くいきません。」

 

八幡「いや、充分美味いから。何なら他の奴にお裾分けなんてしたくないくらい美味いから。」

 

柊「いやぁ〜そんなに言われると照れるよ〜。」

 

涼風「恐縮です……///」

 

三浦「嘘、これが手作り?レベル違い過ぎるし。」

 

海老名「女子力高いね〜2人共。」

 

 

八幡さんに不味い料理を食べさせるわけにはいきませんから!

 

 

三浦「ん?じゃあさ偶に持ってくるデザートも?」

 

柊「手作りもあるけど、お土産もあるって感じだから半々かな。お菓子作りも最近勉強中だから。最近だとマドレーヌとかタルトかなぁ〜。クッキーとかは簡単に作れちゃうから別に何でもないし。」

 

八幡「この2人、スゲェだろ?」

 

三浦「女子力では完全に負けてるし………」

 

海老名「あはは……完敗だね。」

 

八幡「気を落とすなって。この2人が異常なくらい女子力が高いだけだから。普通のお嬢様はこうはならん、多分。」

 

柊「八幡君、そんな事言うとデザートあげないよ?欲しかったら私達に謝って?」

 

八幡「すみませんでした、もう言いません。」

 

三浦「頭まで下げんの?プライドは?」

 

八幡「2人の飯とデザートが食えなくなるくらいなら、俺はプライドを捨てる!!」

 

三浦「……そ、そうなんだ。」

 

涼風「ではどうぞ八幡さん、今日はマカロンです。」

 

 

三浦(うわぁ……これホントに手作りなん?レベル高過ぎ。あーしも食べたくなってきたんだけど。)

 

海老名(お、美味しそう………)

 

 

柊「良かったら、2人も食べる?」

 

三浦「え、いいん!?」

 

涼風「久しぶりに賑やかな昼食でしたので。」

 

海老名「ありがとう!」

 

八幡「相変わらず美味いなぁ〜2人の作るお菓子は。何度食べても飽きない気がする。」

 

 

ふふふっ、八幡さん。それは最高の褒め言葉です。それに気付いておられますか?私達以外のクラスメイトは私達に釘付けになっている事を。

 

 

 

 

 

 

 



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ギュー!

 

 

八幡side

 

 

さて、あれから1週間が経って今日は裁判の日だ。俺は4時間目が終わったら早退をすると平塚先生にも言ってある。事情はもう説明済みだ。流石にしないわけにもいかないしな。そんなわけで俺は今、皆で朝食を食べているわけなのだが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「………」ギュー!!

 

涼風「………」ギュー!!

 

 

………彼女とその妹に抱き着かれて上手く食事が取れません。どうしたらいいでしょうか?

 

 

八幡「あの、2人共?そろそろ「やだ。」………涼風「私もです。」………これじゃあ俺が食事出来ないんだけど?」

 

柊「私達が食べさせるもん!」

 

八幡「いや、雛に餌付けする親鳥じゃないんだから自分でやらせてくれよ。まだ朝だろ、学校には午前まで居るんだから我慢しろよ。」

 

柊「八幡君は私達に死ねって言いたいの!?」

 

八幡「何でそんな悪い方向に発展してるの?」

 

涼風「私達は八幡さん成分を摂らないと死んでしまうのですよ!?それなのに八幡さんは私達を死に至らしめようとしているのです!これがどんなに残酷な事か!」

 

 

あぁ〜そんな成分もあったね。いやでもね?そう考えたらさ………

 

 

八幡「じゃあ俺が家に居る間の平日の夜とかはどうなんだ?俺、その時は居ないはずなんだけど?」

 

柊「だってあれは分かってた事だもん。八幡君に明日から会えるって。でも今日のは想定外なの!1週間前から知らされてた事だから日常化されてない事なの!」

 

 

おい、仕事しろよ成分内容。ガバガバだぞ。

 

 

小町「ここの暮らしには慣れたつもりだったけど、お兄ちゃんと柊さんと涼風さんのアレには、まだ慣れそうもないね。」

 

八幡「兎に角1度離れ「「嫌です!」」て……そしたら俺が朝飯食えないの!」

 

柊「私達が食べさせるもん!」

 

涼風「食べたいのは何ですか!?」

 

八幡「………譲る気は無いのね。」

 

 

こうして俺は朝から姉妹にベッタリされながら、学校へと向かったのだが、いつも以上にくっついているからか、注目度が2倍くらい上がっていた。それもそうだ、腕にギュッとしがみつかれているのだ。興味がない奴だって2度見するくらいだしな。

 

 

戸塚「お、おはよう八幡……あはは……」

 

三浦「アンタ、朝から何見せつけてくれてるの?」

 

海老名「今まで見てきた中で1番情熱的だね……」

 

八幡「物申したいのならこの2人に行ってくれ。俺も朝から言ってるんだが離れてくれないんだよ。幾ら事情があるとはいえ、くっつき過ぎなんだよ。」

 

三浦「事情って?」

 

八幡「今日ちょっと用事があるから4時間目が終わったら早退すんだよ。そのせいで2人がいつも以上にベッタリでな………昼から俺に会えないからって大袈裟だろ?」

 

柊「大袈裟!?何を言ってるのさ八幡君は!私達にとって八幡君は生活する上で欠かせないんだよ!?それが3時間も会えない状況になっちゃうなんて………」

 

涼風「いえ、お姉様……もしかしたらそれ以上かもしれません。私達が帰ったとしても居ない可能性だってあるのですから………」

 

柊「やあぁぁだあぁぁぁ!!」ユサユサ

 

 

おいおい揺するな揺するな、君の立派なのが俺に引っ付いてる状況なんだからやめろ!っておい涼風、お前も抱き締める力を強めるな!

 

 

戸塚「八幡も大変だね………」

 

八幡「今日は特に、な。」

 

 

そして時は過ぎて行って漸く来てしまった4時間目の終わり………あろう事か2人が俺のコートとマフラーを抱き締めて離さなかった。

 

 

八幡「………」

 

柊「………」ギュー!!

 

涼風「………」ギュー!!

 

八幡「……俺はもう行かなければならない。なので、それを渡しなさい。」

 

柊「うぅぅぅ〜………」

 

八幡「唸ってもダメ。ほら、渡す。」

 

涼風「………」ウルウル

 

八幡「涙目もダメ。ほら、渡す。」

 

 

この2人、前よりもダメダメになってる気がする。さて、どうしたものか………

 

 

八幡「はぁ………このまま行くか、どうせ車の中はあったかいだろうし。柊、涼風、コートとマフラー絶対に家に持って帰れよ?でないと明日、俺が困るんだからな?」

 

柊「じ、じゃあ今日の帰りは………私達がこれを使っても良いって事!?」

 

涼風「そ、そうなんですか八幡さん!?」

 

八幡「あーそだねーうん、使っていいよー。独り占めとかすんなよー。」

 

柊「……少しだけ希望が見えたね、涼風!」

 

涼風「は、はい!これは念入りに話し合わなければなりませんね、お姉様!」

 

 

なんかもう面倒だから2人に任せた。

 

 

ーーー校門前ーーー

 

 

御影「学校お疲れ様………アレ、コートとマフラーは?行く時してたよね?」

 

八幡「娘さんの餌食になりました。」

 

御影「あぁ………そういう事ね。八幡君と離れるのが嫌過ぎて、とうとう八幡君の私物にまで手を出してしまったわけか………」

 

八幡「少しだけ言い方がマズい気もしなくもないですが、大体そんな感じです。」

 

御影「ま、まぁ兎に角中に入りなよ。外に居ると八幡君が冷えちゃうからね………ねぇ八幡君、アレ。」

 

八幡「え?……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊『………』

 

涼風『………』

 

 

2人が教室の窓からこっちを見ていた。コートとマフラーを抱きながら涙目になって。

 

 

八幡「………行きましょうか。」

 

御影「あはは………」

 

 

 

 

 

 

 



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呆気なき裁判

 

 

八幡side

 

 

ーーー裁判所ーーー

 

 

八幡「まさか1年も経たない内に此処に来るなんて思いもしませんでしたよ、俺。」

 

御影「そうだね、僕も同じ気持ちだよ。今度の裁判では被告が喚き散らさない事を祈るよ。」

 

八幡「すっごいみっともなかったですしね、見てる側からしてみると。あんなにも滑稽なんだって思いましたよ。」

 

石嵜「あら、早いわね。」

 

御影「やぁエルナ、こんにちは。君も証人側の立場で参加するんだったね。」

 

石嵜「私は弁護士の資格なんてないもの、それは専門の人に任せるわよ。それに向こうが屁理屈立てて来ようものなら、恥ずかしい思いをしてもらうだけよ。証拠なんて全部弁護士に渡してあるんだから。そうでしょ御影?」

 

御影「まぁね。あのボイスレコーダーの音声は聞いたけど、アレで言い逃れをできるとは思えないしね。寧ろ嘘を言ったら罪が重くなっちゃう気もするしね。まぁそれはそれで構わないけど。」

 

 

おじさん、その可能性はないですよ。俺も色々と準備はしてきていますので。

 

 

八幡「けどおじさんはあの家から有り金全部取る気なんですよね?」

 

御影「あ、バレてた?」

 

八幡「そりゃ分かりますよ。おじさんが意味もなく俺の家族の家の建築費を払うわけ無いじゃないですか。業績不振が続いていたとはいえ、向こうも元は有名企業ですからお金はあるでしょうしね。」

 

御影「なんか八幡君が知らない間に頭のキレが良くなってる気がするんだけど?」

 

 

いや、全然普通ですって。普通の高校生です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裁判長「これより、裁判を開始する!」

 

宰安「………」ギロッ

 

泰納父「………」

 

 

うわぁ〜見られてる………お前からそんな熱い視線送られても、ちっとも嬉しくねぇ。早くその鬱陶しい視線をどっかに逸らしてくれませんかね?

 

そして被告側の弁護人が答弁を始めた。なんかもうメチャメチャだった。事の始まり……つまり接触は学校からなのだが、向こうは言いがかりをつけてきたと言ったのだ。そしてあの火事の事も自分達に身に覚えは無いと、誰かと間違えているのだと言った。家を焼かれて錯乱した所を標的にしたのだろうと供述した。いや、意味分からん。それで逃げ切れると思ってんのか?

 

 

裁判長「では次、原告側の答弁。」

 

弁護士「はい。始まりは被告側と同じく総武高校の校門前です。しかしこちら側からは言いがかりをしておらず、寧ろ向こう側から見下すような、蔑むような、そして自分自身を誇示するような口調で話しかけてきた様子との事です。その時はそれ程長い時間拘束はされていなかったようです。そしてその翌日の放課後、比企谷八幡さんの自宅が全焼するという事件が発生しました。犯人を被告側の泰納宰安だと確信していたので、当自宅に乗り込んで逮捕に及んだというのが一連の流れになります。そして此処からは証拠と共に説明させて頂きます。」

 

 

証拠というのは俺と石嵜さんが家に乗り込んだ時にずっと録音してたボイスレコーダーの事だ。奴は8〜9割の事実をあの場で話してくれたからな、これでアイツが弁護士に言わせてた事の殆どが嘘だっていうのが分かるだろう。だってアイツの顔、真っ青だし。

 

 

弁護士「との事ですので、先程の被告人の弁護士が述べられていた答弁の殆どが嘘だと主張します。」

 

宰安「さ、裁判長!発言よろしいでしょうか!?」

 

裁判長「………許可する。」

 

宰安「ありがとうございます。先程学校にも被害があったと述べられておりましたが、あれは私の知るところではありません。何せ私は総武高校に行った事はあれども、中には入った事は1度も「入った事はなくても、人を利用したりはしてただろ?」っ!!?」

 

八幡「すみません、裁判長。横から突然失礼しました。しかし我慢ならないので発言の許可を。」

 

裁判長「許可する。」

 

八幡「ありがとうございます。では、これをお聞きください。」ピッ

 

八幡『で?お前の依頼主は?』

 

『や、泰納宰安、です……』

 

八幡『依頼の内容は?』

 

『え、えっと……比企谷八幡と夜十神姉妹の様子を伺う事、です。』

 

八幡『他に指示された事は?』

 

『学校の教室に夜十神の情報を書くのと、3人の様子を逐一報告する事、です………』ピッ

 

八幡「今のは僕個人が証拠として今日持ってきた物です。きっと言い逃れをするだろうと思いましたので。質問していたのが自分で、答えていたのが被告人の協力者もとい利用されていた人物、という背景になっています。自分からは以上となります。」

 

裁判長「………被告、何かあるかな?」

 

宰安「……何も、ありません。」

 

 

もう逃げられないと悟ったのか、奴は顔を俯かせたまま動かなかった。多分、俺がこの証拠を持ってくるとは思わなかったのだろう。それにしても、今回のは意外とアッサリ終わって良かった気がする。被害は1番デカいけど、関わる日が少ないのは俺としてもありがたい。

 

それからも裁判は進み、こちら側と向こう側の要求をそれぞれ言ったのちに判決だ。まぁこっちが負けるなんて天地がひっくり返ってもないだろう。

 

 

 



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終わって一息

いやぁ〜すみません!昨日書いてはいたのですが、寝落ちしてしまってこんな時間に………申し訳ないです。


 

 

御影side

 

 

裁判長「判決を言い渡す。被告、泰納宰安を仮釈放並びに執行猶予無しの無期懲役に処す!並びに泰納▽▽には比企谷家の住宅に関する費用の全額負担を命ずる!これにて閉廷!」

 

 

結果は見ての通り、僕達の勝利だった。途中から分かってたけど、あの2人はこの裁判に勝てる見込みが無いと気付いてからは大人しいものだった。というより父親は何もしてなかったけど。

 

まぁでも、これで安心だね。

 

 

御影「さて、じゃあ帰ろうか八幡君。」

 

八幡「はい。」

 

 

ーーー車内ーーー

 

 

御影「にしても、無期懲役かぁ………まぁ妥当な所だね。死刑にならなかったのは、死者が出てなかったからかもしれないね。」

 

八幡「まぁ俺は別にどちらでもいいですよ、柊と涼風に影響が出なければ。2人に害を与えようとするなら、俺はソイツを許しませんので。」

 

御影「流石八幡君、容赦ないね……けどその分、僕達には優しいから結果オーライかな。」

 

八幡「まぁ見知らぬ奴に優しくしろなんて、普通はできませんからね。」

 

御影「それもそうだね。八幡君はこの後は家に?」

 

八幡「はい。取り敢えず学校が終わる頃に2人を迎えに行きますよ。宮間さんと一緒に。」

 

宮間「若様のご希望とあらばこの宮間、お供いたしましょう。」

 

八幡「すみません、俺に命令権なんてないのに。」

 

御影「いいよいいよ、気にしないで。」

 

 

それに八幡君に命令とかお願いとかされると、なんか嬉しく感じるんだよね〜。これ僕だけじゃなくて屋敷内の人共通ね。

 

 

御影「それにしても、今頃柊達はどうしてるかなぁ〜。学校から出発する時なんて君のコートとマフラーを抱きながら見送る程だからね。」

 

八幡「何処で間違えたんですかね。まさかあんな風になるとは思いませんでしたよ。」

 

御影「あはは、確かに。けどさ、それだけ娘達も八幡君が大好きだって事だから分かってあげてよ。八幡君もそうでしょ?」

 

八幡「勿論。でもあぁはなりませんよ?」

 

 

………うん、それはまぁそうなんだけどね?

 

 

八幡「そういえばおばさんは?会社ですか?」

 

御影「うん、そうだよ。僕の代わりに仕事をしてくれてるよ。ありがたい事だよ、僕がこうして抜けられない仕事があるにも関わらず、快く引き受けてくれるんだからね。帰ってきたらサービスしないとね。」

 

八幡「………なんかアレですね、俺達って尻に敷かれるタイプではありませんけど、頭は上がりませんよね。身内には。」

 

御影「………うん、納得出来るよそれ。」

 

 

八幡君、君は僕達の事を身内と思ってくれていたんだね!僕は嬉しいよ!

 

 

ーーー夜十神邸ーーー

 

 

宮間「旦那様、若様、今お茶を淹れます。」

 

御影「あぁ、頼むよ。」

 

八幡「お願いします。」

 

御影「さて八幡君、色々と語ろうじゃないか。」

 

八幡「語るって何をです?」

 

御影「決まってるじゃないか、君の部屋の家具についてだよ。君の部屋は僕が支払う事にするから。他の部屋は別に構わないけど、君の部屋に泰納グループの汚いお金は使わせたくないからね。」

 

八幡「俺の部屋に、ですか?」

 

御影「君の部屋に、だよ。ここだけの話、僕は君の家族には何の恩義も無いからね。比企谷八幡君という人物に出会って娘を助けてくれたからこうしている訳だよ。少し言い方は悪いかもしれないけどね。」

 

八幡「まぁ、正論ですね。」

 

御影「だからあの時、君から僕に頼み込んでいなければこの家に君の家族を泊めるような真似もしてないって事。だから僕が何かするにしても、君だけにしかしないって事さ。」

 

八幡「……おじさんも柊達と負けてないじゃないですか。なんていうか、独占欲?支配欲?」

 

御影「あははは、これも祖父の影響かな?気になる物、欲しい物があると手に入れたくなる主義なんだ。まぁ八幡君の場合は既に確定してるんだけどね。」

 

八幡「少しでもいいからたじろいでくださいよ……いつものおじさんじゃないから、俺も少しだけ引いてるんですからね?」

 

御影「え、そうなの?」

 

八幡「いや、まぁ……はい。正直に言うと俺の家具をの辺りから若干雰囲気が。」

 

 

おや、そうだったのかぁ〜……少し隠したつもりなんだけどなぁ。でもまぁ八幡君だからまだ良いよね。他の人だったらバレたくないけど。

 

 

御影「ごめんよ。でも気持ちは変わらないよ。君の家族はきっと泰納グループのお金で色々と買うだろうけど、君の部屋に関しては僕が払うから。そこだけは譲らないよ。」

 

八幡「今回はやけに強気ですね?」

 

御影「だって今回は八幡君に何1つしてあげられなかったんだもん!!良いじゃないか別に!!僕だって何か役に立ちたい!!」

 

 

八幡(あっ、少し違うって思ってたけど全然そんな事ねぇわ。いつも通りになってるわ。)

 

 

宮間「旦那様、若様、どうぞ。」

 

御影「あっ、うん………というわけで八幡君、早速カタログを見ようじゃないか。」

 

八幡「ブレてなくて安心しましたけど、さっきの雰囲気出すなら最後まで出しましょう?途中で終わるとなんか変な感じになりますよ?」

 

御影「じゃあ今日の夕飯の時にでもやろっか?」

 

八幡「しなくていいです。」

 

 

 

 



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ご褒美?お仕置き?

 

 

柊side

 

 

はぁぁぁぁぁぁぁぁ〜………………………なんかもう八幡君が居ないから気力が湧かない。元気が出ない、力も出ない、はぁ〜………どうしたらいいのかなぁ?

 

え?少しは涼風を見習えって?今のこの状態でもそんな事が言えるかな?

 

 

涼風「………八幡さん。」ズゥーン…

 

 

八幡君が居なくなると、私達の力は普段の20%くらいしか出せないんだ。だからね、私も………

 

 

柊「………八幡君。」ズゥーン…

 

 

………ね?けどあと1時間、一時間が終われば私達はすぐに帰って八幡君にお仕置きなんだから!裁判があったから仕方ないとはいえ、私達を置いてっちゃうんだもん!罰は受けてもらいます!

 

 

ーーー夜十神邸ーーー

 

 

八幡「っ!?」

 

宮間「どうかされましたか、若様?」

 

八幡「……いや、何でしょう?なんか一瞬、ブルッと身体が震えてまして………寒いわけじゃないんですけど。」

 

 

八幡(何だろう、なんか凄い理不尽な事を要求されてるような気が………)

 

 

ーーー学校ーーー

 

 

柊「涼風、残り1時間だから頑張ろぉ〜……」

 

涼風「はい、お姉様………」

 

三浦「アンタ達、昼前と別人みたいに元気無いじゃん。この辺りだけ暗い雰囲気なんだけど。」

 

柊「だって……八幡君居ないんだもん………」

 

三浦「……あれ、ヒキオ?」

 

涼風「……三浦さん、嘘はやめて下さい。八幡さんの気配を全く感じません。」

 

 

三浦(……そのレベルなの?アンタ達ちょっとヤバいし。気とかそんなので分かるん?)

 

 

柊「早く放課後になんないかなぁ………早く八幡君に会いたいよぉ〜………甘やかされたい〜。」

 

涼風「お姉様、そのお気持ちよく分かります……」

 

三浦「……ヒキオ、私今までにないほどアンタが此処にいてくれたらって思ってる。」

 

 

ねぇ何で?何で時間ってこんなにも長いの?楽しい時間はあっという間のくせに!何で辛くて苦しい時間はこんなにも長いのさ!理不尽!

 

 

ーーー1時間後ーーー

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

お、終わった……終わったよぉ〜……やったよ、私達やったよ八幡君!乗り切ったよ!八幡君にようやく会えるよ!

 

よぉ〜し、挨拶と同時に出られるように帰り支度の準備準備!きっと宮間さんは気を利かせて早めに待機してると思うし!

 

 

柊「………」ウズウズ

 

涼風「………」ウズウズ

 

平塚「(あの2人、余程早く帰りたいのだろう……恐らく目的は比企谷だな。誰が見ても分かるくらいソワソワしている。比企谷、何て羨ましい………)連絡事項は特にない。部活のある者ない者関わらず、下校には気をつけるように。では挨拶。」

 

 

よし終わった!もう早く帰ろう!

 

 

柊「涼風〜早く行くよ〜♪」

 

涼風「お、お姉様、お待ち下さい!」

 

三浦「すっごい元気になってるし………」

 

姫菜「帰ったら比企谷君に会えるのかな?」

 

三浦「ヒキオがあの2人の家にいるとか?」

 

姫菜「まさかね〜。」

 

 

ーーー校門前ーーー

 

 

宮間「お嬢様方、お待ちしておりました。」

 

涼風「ありがとうございます、宮間さん。」

 

柊「早く帰ろうよ〜八幡君に会いたいしさ〜!」

 

宮間「若様の仰っていた通りになりましたな。若様は柊お嬢様なら『早く帰ろうよ〜!』っと開口1番に言うと予想されておりました。」

 

柊「いいも〜ん!だって会いたいのは本当の事だし嘘なんてついてないも〜ん!」

 

宮間「左様ですか、では短い間ではございますが、お車での時間をお楽しみください。」

 

 

………え、どういう事?

 

 

宮間「どうぞ。」

 

柊「あっ♪」

 

涼風「まぁっ♪」

 

八幡「よう、迎えに来たぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「んうぅ〜八幡君だぁ〜♪」ギュー!

 

涼風「はぁ………良いです♪」ギュー!

 

八幡「車に入って早々に抱き枕にされるのは予想してたが、これじゃあ身動き取れないんだが?」

 

柊「良いじゃん別に♪八幡君と会えなかった3時間に比べたら安いものだと思わない?」

 

八幡「そういう事にしといてやる。」

 

 

良いね〜八幡君、今日の八幡君はなんだか素直!あっ、このまま行けばもしかしたらご褒美コース!?

 

 

八幡「なぁ柊、帰ったら俺の部屋に来てくれないか?少し相談したい事があってな、協力してもらいたいんだが、頼めるか?」

 

柊「もっちろん!!八幡君の頼みなら何でも引き受けちゃうんだから!!」

 

涼風「あの、八幡さん……私もお手伝いを……」

 

八幡「あー悪い、涼風には相談しづらい事なんだ。どうしてもっていうのなら柊の後になるんだが、それでもいいか?」

 

涼風「は、はい!八幡さんのお力になれるのでしたら、是非お願いします!」

 

 

八幡君の相談って何だろう?

 

 

ーーー夜十神邸・八幡の部屋ーーー

 

 

柊「ひゃ()ひゃひみゃんひゅん(はちまんくん)………こ、こりぇ()は?」

 

八幡「ん?なんか学校に迎えに行く前に嫌な震えがあってな?嫌な予感がしたから、帰ったら柊を甘やかそうって考えになったんだよ。」

 

柊「しょ()しょうにゃの(そうなの)?」

 

八幡「ダメだったか?」

 

柊「い、いいきぇ()ど………」

 

 

うぅ〜上手く喋れない………まさか八幡君の方からこんな事をしてくるなんて思わないもん!だって八幡君が私を抱き締めてベッドに寝転んでるんだよ!?しかも頭ナデナデのオプション付き!こんなのご褒美だよ!!前にしてもらったのも良いけど、これは段違いだよ〜!!あれ?でも私がやってもらおうと思ってたお仕置きの内容とほとんど同じ内容で、私こうなっちゃってるからお仕置き?

 

もうどっち〜!!?

 

 

 

 

 

 

 

 



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相談と………

 

 

柊side

 

 

柊「………/////」ポ~

 

八幡「おーい、大丈夫か?」

 

柊「………/////」ポ~

 

八幡「うん、大丈夫じゃねぇな。」

 

 

………なんかね、私さっきからすっごく頭がフワフワするんだ。幸せっていうか、満ちてるっていうか………よく分かんないんだけど、兎に角すっごく気分が良いんだ。あぁ〜なんか………ホントにポ〜ッとしちゃう。

 

 

八幡「意識あるのか?柊〜?」

 

柊「………/////」ポ~

 

八幡「………ダメかもしれん。」

 

柊「………八幡君。」

 

八幡「あ、起動した。何だ?」

 

柊「……私ね、今すっごく満ち足りてるんだ。」

 

八幡「うん、それで?」

 

柊「もっとこれを味わいたいなぁ〜って。」チラチラ

 

八幡「はいはい、今日はもうダメだ。次回は未定、また今度だ。」

 

柊「えぇ〜!?次は未定って、じゃあいつやってくれるのかも分からないって事!?」

 

八幡「そういう事。」

 

柊「ヤダよそんなの〜!」

 

八幡「その方が良いだろ?分かってる状態でやって貰うよりも、急にやられた方が今みたいになれるかもしれないぞ?」

 

柊「け、けどさぁ〜………」

 

八幡「またやってやるから、それまで我慢だ。大丈夫だってその内忘れるかもしれないんだから。忘れた頃にやって来るって。」

 

柊「忘れないもん、私忘れないもん!」ムッ!

 

八幡「そっかぁ〜……じゃあ次回は無し「忘れるもん!!次の事の為に忘れるもん!!」じゃあ、次まで頑張れよ。その時は甘やかしてやるから。」

 

柊「………絶対だからね?」

 

八幡「忘れてるだろうけど、約束だ。」

 

柊「なら良いよ♪」

 

八幡「あぁ、じゃあ本題に入るか。相談の事なんだけどな、おじさんにも言われてるんだが、俺の部屋の家具をどうするかって話になったんだ。それで柊の意見も聞きたくてな。」

 

柊「良いよ、八幡君の部屋なら入った事あるし何となくイメージもつくから。」

 

八幡「助かる。じゃあまずは………」

 

 

こうして私はこれから建設される比企谷家の八幡君の部屋の家具選びに付き合った。本棚やベッド、箪笥に机、テーブルとか色々と相談した。家具以外にもカーペットやカーテンとかも選んだんだよ!えへへ〜なんか新しい部屋に引っ越す前準備みたいで楽しかった♪

 

 

柊「どう?私の好みとか八幡君の好きそうな色とか雰囲気とかで選んでみたんだけど。」

 

八幡「あぁ、参考になった。ありがとな。」

 

柊「どういたしまして♪」ニコッ!

 

八幡「おじさんが張り切っててよ……俺の部屋の家具は僕のお金で払うんだ〜って。泰納グループの汚いお金で俺の家具は買わせない、とか。」

 

柊「あははは、お父さんならそう言いそうだね。けど、それを言うって事は、裁判で向こう側が家の建築費とか家具の費用を負担するっていうのは決まったんだね?」

 

八幡「あぁ。汚い手も使って来たが問題なかった。柊達は学校大丈夫だったか?」

 

柊「八幡君が居なくて辛かった………」

 

八幡「(そういう意味じゃないんだが………)そうか、他には?」

 

柊「他はないかなぁ〜。今日は一緒に食べようって誘ってくる人とかも居なかったし。」

 

八幡「そうか、それは何よりだ。」

 

柊「うん。今日は八幡君が居なかったけど、何もなかったのはラッキーかも。」

 

八幡「そうだな……そうだ柊、涼風を呼んできてくれないか?同じように家具の相談をしたい。」

 

柊「あぁ〜車の中でも言ってたよね。うん、分かったよ。じゃあ呼んでくるね。」

 

 

ーーー3分後ーーー

 

 

柊「呼んできたよ〜!」

 

涼風「八幡さん、ご相談の件だとか………」

 

八幡「あぁ、そうだ。じゃあ柊、回れ右して部屋から出て。」

 

柊「うん、分か………んないよ!?何で!?私は居たらダメなの!?」

 

八幡「柊の時も2人で相談しただろ?だから涼風の時も2人でしたいんだ。」

 

柊「うぅ〜………分かったよぉ〜。」

 

八幡「素直でよろしい。」

 

柊「涼風?八幡君に変な事したら………許さないからね?いい?」

 

涼風「は、はい………」

 

 

ううぅぅぅ〜!!!

 

 

柊sideout

 

涼風side

 

 

涼風「……それで八幡さん、ご相談というのは?」

 

八幡「それは後だ。涼風、こっちに来い。」

 

涼風「?はい。」

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

涼風「ひゃ()ひゃひまんひゃん(はちまんさん)………/////」

 

八幡「ん?どうした?」

 

涼風「あ、あにょ()………みょ()りゅうびゅん(じゅうぶん)……りぇしゅ(です)……/////」

 

八幡「本当か?まだ5分くらいしか経ってないぞ?柊は10分とか15分くらいはしてたんだけどな〜。もう終わりにするか?」

 

涼風「………お、おにぇえしゃみゃ(ねえさま)と、お………おにゃ()じ、きゅ()らいで、お……お……おにぇぎゃ(ねが)いしみゃしゅ(ます)/////」

 

 

お姉様、私からではないですからノーカウントですよね?八幡さんからはセーフですよね?お姉様に問いたい所ですが、今の私はそれどころではありません。八幡さんのせいでまともな思考がもう出来そうにありません………残り10分、八幡さんを堪能させて頂きます。

 

 

八幡「何かあったら言えよ?」

 

涼風「ふぁ()ふぁ()い………/////」

 

 

 

 

 



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進学先

 

 

涼風side

 

 

八幡「成る程、涼風はこういうのが良いんだな。」

 

涼風「私が、というよりも八幡さんの前の部屋に寄せて考えてみました。」

 

八幡「けど少しは自分の好きな色とか特徴とかを入れてるんだろ?それで俺の好みとかも合わせながら選んでくれるんだから助かる。」

 

涼風「恐縮です///」テレテレ

 

八幡「柊の時も思ったんだが、やっぱりベッドはそれなりに大きいのを選ぶのな。なんか意味あんの?(まぁ、大体分かるんだけど。)」

 

涼風「ひ、秘密です///」テレテレ

 

 

い、言えません!八幡さんとお姉様とあわよくば一緒に寝てみたいだなんて!だ、だって八幡さんはお姉さまの恋人、そんな人とこうして2人きりでいられる事自体、奇跡みたいな事です!

 

 

八幡「そうか、秘密か……まぁいい。答えなんて大体予想ついてるし。」

 

涼風「つ、ついてるんですか!?」

 

八幡「日頃のお前達を見ていれば、理由くらい簡単に分かんだろ……そんじゃ、相談事も終わったしそろそろ居間に行かないか?きっと柊も待ちくたびれてる頃だと思うし。」

 

涼風「はい、分かりました。」

 

 

八幡さん、本当にお分かりになっているのでしょうか?き、気になります……しかし聞きづらいです。

 

 

ーーー居間ーーー

 

 

八幡「柊〜居るか〜?」

 

柊「あっ、八幡君!終わったの?」

 

八幡「あぁ、終わった。良い参考が聞けた。」

 

柊「そっかぁ〜………ねぇ涼風?八幡君に変な事、してないよね?大丈夫?」

 

涼風「だ、大丈夫ですお姉様!そのような事は一切しておりません!ご安心下さい!」

 

柊「まぁそうだよね〜涼風はそんな事絶対にしない子だもんね〜。」

 

 

お姉様、八幡さんからはノーカウントですよね?

 

 

八幡「2人の意見は俺が参考にさせて貰う。けどまぁ、流石は姉妹って感じだな。似通ってた点は幾つかあったぞ。」

 

涼風「少しだけ気になります……教えてはくれないのでしょうか?」

 

八幡「そうしても構わないが、それだと面白くないだろう?家が出来て、家具を買って2人を家に上げた時にお披露目にしたいと思ってる。」

 

柊「まぁ八幡君がそう言うならそうするね!その日が楽しみっ♪」

 

涼風「楽しみにしてますね♪」

 

八幡「いや、そんな楽しみにされてもな………」

 

 

それから私達は用意された紅茶とお茶菓子を頂きながら談笑をしていました。そしてふとこんな会話になりました。

 

 

柊「そういえばさ、八幡君の進路は確か私立の文系希望だったっけ?」

 

八幡「あぁ、県内のな。2人から教えてもらってるから理系も人並みには出来るが、苦手には変わりねぇしな。だから文系だ。」

 

柊「進路は変わってないんだね。」

 

八幡「まぁずっとこの道で来てるからな、今更変更しようなんて考えは無いな。2人は………聞くまでもない様子だよな、その顔。」

 

柊「私の進路は八幡君の行く所だもん♪だから私の進学先も私立の文系!それにね、誠教学園に入ってから思い知ったの。八幡君と過ごす時間が圧倒的に少ないって。だから学校も同じじゃなきゃダメだなぁ〜って。」

 

涼風「私もお姉様と同じ思いです!私ももう八幡さんが居ない生活はあり得なくなっていますので。」

 

八幡「まぁそういうとは思ってたよ。けど柊、なんでそんな事聞くんだ?」

 

柊「八幡君ってさ、大学に進学したらどうするのかなぁ〜って。在宅で通うのか、それともアパートとか借りるのか、どっちかだよね?」

 

八幡「そうだな………まぁ多分、借りる事にはなると思う。俺の家から大学ってそれなりに距離あるからな、近いに越した事はないしな。」

 

柊「成る程、じゃあその時はお父さんに相談?」

 

八幡「しないって。おじさんからはお小遣いという名の大金を大量に貰ってるんだぞ?親からの仕送りなんて貰わなくても、バイトしてれば問題ないくらいに過ごせる額をな。」

 

涼風「ですが八幡さん、お父様が受験シーズンになって家を出ると知った時、お父様の性格的に黙っているとは思えないのですが………」

 

八幡「………だよなぁ。」

 

 

八幡さん、前にも何度かそういうのをお断りしていましたから。流石に無償で、というのが嫌なのでしょうか?

 

 

柊「ならさ、私達と一緒に住めば問題解決じゃない?ほら、八幡君は家賃を払わなくて済む、水道や光熱費が浮く、共同で住める、八幡君成分を補充出来る、いつでも一緒に居られる、これって素晴らしいと思わない?」

 

八幡「なんか半分お前の願望が見え隠れしてたように思えるんだが?」

 

柊「私のじゃないもん!私達のだもん!」

 

涼風「お、お姉様!?」

 

 

な、何故私まで!?

 

 

柊「あれ〜?涼風は違うのかぁ〜そっかぁ〜じゃあ一緒に住むって話になっても涼風は在宅か別の場所借りるのかなぁ〜?」

 

涼風「お、お姉様……ズルいです。」

 

柊「いつも口では負けてるからね〜。こういう時くらいはマウント取っておかないと!」

 

八幡「……まぁ俺は柊でも涼風でも2人でもなんでも良いけど、どうしたいわけ?」

 

柊「私は一緒に住みたい!!」

 

涼風「は、八幡さんとお姉様がご迷惑でなければ、私もご一緒したいです………」

 

八幡「まぁ、だろうな。」

 

 

八幡さんはどこまで見据えているのでしょうか?

 



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雪ノ下家の休日?

 

 

秋乃side

 

 

比企谷さん並びに夜十神さんからの依頼を受けてから数週間が経ち、漸く全焼した家宅の撤去が終わりました。次は組み立ての作業に入る予定です。私の会社で預かる優秀な方達が居ますので大丈夫だと思いますが、進捗を聞いておいた方がよろしいでしょうね。

 

 

陽乃「お母さん、おじ様から連絡来たよ。隼人の事でって。」

 

秋乃「そうですか、それで?」

 

陽乃「今はいつも通りの日々を送ってるって。現場に向かって作業をしては帰って来てご飯を食べたら勉強してるって。けど前に比べたら部屋に篭る時間が増えてるって。」

 

秋乃「引き篭もり、では無いのですね?」

 

陽乃「それは無いみたい。おば様も話す時は顔を合わせてるし、部屋からも出てくるからって。」

 

秋乃「そうですか………」

 

陽乃「これは私の予想だけどさ、隼人は罰の事納得してないんじゃない?口ではああ言って納得してるように見えたけどさ、心の中までそうとは限らないでしょ?腹に一物抱えてるんじゃない?」

 

秋乃「………」

 

陽乃「まぁ、あくまでも予想だけどさ。」

 

 

………陽乃の言う事も一理ありますね。もしかしたら隼人君は………

 

 

秋乃「陽乃、近い内に隼人君の様子を見て来てはくれませんか?貴女の言う事、少し気がかりに感じました……もしかしたら杞憂かもしれませんが、貴女の言う通りかもしれません。」

 

陽乃「それって隼人が何かするかもって事?」

 

秋乃「そこまで考えたくはありませんが、貴女のそれが正しければ、そのような事が起きても不思議ではありません。」

 

陽乃「……いいよ、分かった。じゃあ近い内に行ってみるね。」

 

秋乃「頼みましたよ。それとこれは出来ればで構いません。少し揺さぶりをかけてください。貴女ならそれで多少の事は分かるでしょう?」

 

陽乃「簡単に言うよね〜……まぁいいけど。」

 

 

本当に考えたくはありませんが、もし陽乃の言った事が的中すれば、被害は私達だけでなく、比企谷さんにも及びます。それだけは何としても避けなくてはなりません。

 

 

陽乃「お母さん、根詰めるのも良いけど、少しは休んでよ?身体に毒だよ?」

 

秋乃「ちゃんと休息は取っています。」

 

陽乃「それって普通の社会人のどの程度?お母さんが休まないと、下の人って休めないんだからね?偶には息抜きしたら?」

 

秋乃「息抜きと言われましても、何をしていいのかもよく分かりませんからね。」

 

陽乃「仕事がパートナーとか言うのやめてよ?まぁお母さんに言うのもアレだけどさ、私だったら旅行とか行ってるよ?街歩きとかしてみたら?」

 

秋乃「街歩き、ですか………そうですね、偶には自分の足で街を眺めるのも良いかもしれませんね。」

 

陽乃「そうしなよ、次の休みの日にでも行ってきたら?誰も何も言いやしないって。」

 

 

告げ口をするような社員が居るとは思えませんが、まぁいいでしょう……それにしても、街歩きですか。最近はあまり行っていませんでしたね。

 

 

秋乃sideout

 

陽乃side

 

 

陽乃「そういう訳だから次の日曜日、お母さん出かけるから家においでよ雪乃ちゃん。」

 

雪乃『何がそういう訳なのか理解できないわ。』

 

陽乃「だって雪乃ちゃんお母さんの事苦手でしょう?だからそれを考慮してあげてるんじゃな〜い!どう?優しいお姉ちゃんでしょ〜?」

 

雪乃『今の私にそんな暇は「テスト勉強だなんて言わないでよね〜?偶には息抜きだって必要でしょ〜?」……嫌になるくらいお見通しなのね?』

 

陽乃「伊達に17年も雪乃ちゃんのお姉ちゃんしてないからね。別にイジメるわけじゃないんだよ?」

 

雪乃『それを最初に切り出す辺り、とても怪しいのだけれど………』

 

 

もう、雪乃ちゃんったら本当に堅物なんだから……こうなったら奥の手!

 

 

陽乃「そんなにお姉ちゃんを疑わないのっ!家にはパンさんだって待ってるんだから。今週がラストチャンスなのよ?」

 

雪乃『……どういう事かしら?』

 

陽乃「この前【Nigh-Ten・Group】で買ったパンさんの人形があるの。雪乃ちゃんの誕生日1月3日でしょ?あげようって思ってたんだけど中々会えなかったから渡す機会がなかったの。だからさ〜お姉ちゃんとパンさんからのお願いっ!一緒に誕生日会しようよ〜♪」

 

雪乃『………分かった、行くわ。次の日曜日でいいのよね?』

 

陽乃「そうそう♪待ってるからね〜!」

 

雪乃『えぇ、それじゃあ。』

 

陽乃「うん、お休み〜。」

 

 

………ぃよしっ!誘い出し成功っ!偶にはお姉ちゃんしてあげないとねっ!雪乃ちゃんだって寂しいだろうし、抱き締めてあげようかなぁ?

 

それに………

 

 

陽乃「パンさんが居るっていうのは本当の事だしね。そうだよね、パンさん♪」

 

パンさん人形「………」

 

陽乃「ホントはお母さんにも会ってもらいたいけど、雪乃ちゃんがあんなじゃあまだ会わせられないしね。もう少し成長してくれたらなぁ………比企谷君が居たら1発で効き目出るのに、残念。」

 

 

まぁしょうがないかぁ………比企谷君には大事な大事なお姫様とその妹が居るもんね。手を出したら何されるか分からないし、遠くで見てるのが1番だもんね。

 

 

陽乃「ホント、いつの間にか恐ろしい牙と爪を持った猛獣になっちゃったよね、比企谷君は。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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社長の社内見学

 

 

秋乃side

 

 

この間、陽乃に言われた通りに街へと出掛けている最中ですが、車から眺める街並みと歩きで眺める街並みというのは、とても違って見えるものなのですね。気が付きませんでした。それにしても、これから私は何をすれば良いのでしょうか?一応、スケジュールは立ててきましたが、特段したいというわけでもありません。困りましたね………

 

 

秋乃「休日の過ごし方というのは難しいですね。」

 

 

………今の一言、ひょっとすると私は充分に休息を取れていない事の証拠なのでは?これでは下の人達に示しがつきませんね、今日くらいはしっかりと自分の身体を休めなくてはなりませんね。

 

 

紫苑「あら、貴女は雪ノ下建設社長の………」

 

秋乃「……失礼ですが、貴女は?」

 

紫苑「あぁごめんなさい、私達は初対面でしたね。先日は夫がお世話になりました。夜十神御影の妻、紫苑と申します。」

 

秋乃「っ!夜十神さんの奥様でしたか、これは失礼致しました。」

 

紫苑「いえ、通りかかっただけですので。雪ノ下さんは何を?街歩きですか?」

 

秋乃「娘から身体を休めろと言われたもので。休んでいないように見られてたようです………お恥ずかしい限りです。」

 

紫苑「そうですか。」

 

秋乃「夜十神さんは何をされていたのですか?」

 

紫苑「私は仕事ですが、街歩きも兼ねてですね。白紙が足りなくなったので、近くのお店で買いに行ったのとついでに色々街を観ていた所です。」

 

秋乃「副社長自ら、ですか?」

 

紫苑「ふふふっ、疑問に思われるのも当然だと思われます。ですがこれは私と御影の趣味のようなものです。自分の足で歩き、自分の手で触り、自分の目で目利きし、自分の耳で聞き、自分の鼻で嗅ぎ分け、自分の口で味わい、自分の感覚で決める。そうやって私達は……私達夫婦は取引や契約を行なっていますので。」

 

 

………全て自分を使っているなんて、凄いです。

 

 

秋乃「素晴らしい考え方ですね。私にはとても真似出来ません。」

 

紫苑「それが当たり前です、誰も自らを実験台に使おうとはしないものです。」

 

秋乃「………そうですね。」

 

紫苑「もし……雪ノ下さんは今、何をしたら良いか分からないと言ったように見えますが?」

 

秋乃「お恥ずかしながらその通りです。街へ来たはいいものの、路頭に迷っている最中でして……」

 

紫苑「でしたら、我が社に来ませんか?分からずに行動するよりかは退屈せずに済むと思いますよ、どうでしょう?」

 

 

あの世界規模の大企業、【Nigh-Ten・Group】の会社に入れるお誘いを頂けるなんて。しかしよろしいのでしょうか?私は今プライベートなのですが。

 

 

紫苑「お気遣いなら無用ですよ。御影からは貴女がどういう人物なのか、聞いております。それを聞いて判断したので。」

 

秋乃「………では、お言葉に甘えさせて頂いてもよろしいですか?」

 

紫苑「えぇ、勿論です。こちらへ。」

 

 

またと無い機会です。しっかりと勉強させて頂きましょう。学べるものが多くある筈です。

 

 

ーーー【Nigh-Ten・Group】・本社ーーー

 

 

 

秋乃「……壮観、ですね。」

 

紫苑「ありがとうございます。」

 

「あっ、副社長!お疲れ様です!そちらの方は?」

 

紫苑「その事で少しいいかしら?見学者用の名札を1つくれる?この人を案内したいから。」

 

「えっと、どちら様ですか?」

 

紫苑「雪ノ下建設社長の雪ノ下さんよ。」

 

「雪ノ下建設!?大変失礼致しました!」

 

秋乃「いえ、こちらこそ急で申し訳ございません。お手間をお掛けして。」

 

 

ーーー廊下ーーー

 

 

秋乃「中はこのようになっているのですか……」

 

紫苑「驚かれましたか?」

 

秋乃「他部署の様子が見られるようになっているのですね。それに間隔も近いように感じます。」

 

紫苑「常に連携を取っている部署同士の間隔は近くするようにしているのです。そうした方が何かあった時に時間を使いませんから。」

 

 

ーーー社長室ーーー

 

 

紫苑「社長、只今戻りました。」

 

御影『紫苑、今は僕しか居ないから普通に喋っていいよ。』

 

紫苑「いえ、私の方にお客様が居ます。」

 

御影『え“っ!?あっ……んんっ!どうぞ。』

 

 

………すみません、夜十神さん。

 

 

紫苑「失礼致します。」

 

秋乃「失礼致します。」

 

御影「おぉ、雪ノ下さんではありませんか。ようこそ我が社へ。」

 

秋乃「急に来てしまい申し訳ございません。」

 

御影「いえいえ、きっと副社長からのお誘いなのでしょう、ゆっくりしていってください。大したおもてなしもできませんが。」

 

 

何も言っていないのに紫苑さんがお誘いしたと分かるなんて………

 

 

紫苑「社長、次の交渉部の出張なのですが、今度は四国の愛媛県になっていますが、日程はどうされますか?」

 

御影「そうだね……1週間にしようか。その間でお土産になりそうな所を攻めようか。6日間………いや、5日間は交渉期間に使って残りの2日はいつも通り自由にしよう。」

 

紫苑「分かりました。ではそのように伝えます。」

 

 

じ、自由?

 

 

御影「あぁすみません、お客人なのに放っておいたままにしてしまって………」

 

秋乃「いえ、お構いなく作業を続けて下さい。それと差し支えなければ教えて頂きたいのですが、先程の交渉で最後に仰っていた自由とはどういう意味なのでしょう?」

 

御影「文字通りですよ?1週間の内5日間は交渉の期間として設けて、残りの2日間は自由にさせてるんです。遊ぶも良し、寝るも良し、観光するも良し、全て任せてます。まぁ使ってる費用は自費になりますけどね。」

 

 

ですが移動費は出るのですから、実質旅行に近いのでは?仕事を終えれば残りは自由………これがこの会社の強みなのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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無料食堂、再び!

 

 

秋乃side

 

 

御影「えっと……これが今月から引き入れる品のリストだから検印押してから商品局に回して、こっちは来月から仕掛ける予定のリストだから情報局に回して、さっきの四国に行く人達の人を決めて経費も渡さないとね。後は売店の品物も少し変えないとね。そっちの方はどう?」

 

紫苑「既に進めています。2月に入る頃には完了している筈です。それから社長、アメリカ支部からの連絡で社長が現在保持しているカリフォルニア州にある屋敷を当支部で販売している物品を催促する為に使用したいとの事ですが、如何致しますか?」

 

御影「構わないよ。ただしこう伝えておいて。『使うからには必ず利益を出す事。』ってね、お願いしてもいいかい?」

 

紫苑「かしこまりました。後程通信局にて報告しておきます。それと別件ですが………」

 

 

………この2人の作業量、異常だわ。私でもこれ程の量の作業はしていないっていうのに、このお2人は淡々と当然かのように。これが世界で名を轟かせているあの【Nigh-Ten・Group】なのね………

 

 

♪〜♪〜

 

 

秋乃「?」

 

御影「おや、もうこんな時間かぁ〜。さて、雪ノ下さんも見ているだけで退屈だったでしょう?我が社の食堂へご案内しますよ。今の音楽は午前の業務終了の合図と共にお昼の食事と休憩の時間という意味の音楽です。」

 

秋乃「そのようなシステムを取り入れているのですか………」

 

紫苑「はい。なのでこの時間に筆を取るのはいつの間にかご法度になっているのです。誰が決めたのかは分かりませんが。」

 

 

ーーー食堂ーーー

 

 

秋乃「………広いのですね。」

 

御影「1つの階を丸々専用の階にしてますからね、此処に居る間は誰もが息抜きをしていますよ。さて、今日は何かなぁ〜?」

 

 

献立も決まっているのでしょうか?

 

 

______________________________________________

 

今日の献立

 

 

・四季の仕出し弁当(手まり寿司)

 

・ビーフストロガノフ

 

・魚介たっぷりペスカトーレ

 

・本格派ピエロギ

 

・4種のキッシュタルト

 

 

______________________________________________

 

 

秋乃「これは……日本では見慣れない名前の品ばかりですね。」

 

御影「当社で仕入れたは良いものの、残念ながら余ってしまった食材はこうして有効活用しているのです。なのでお好きな物をお選びください。」

 

秋乃「しかし夜十神さん、こちらには値段が書かれていませんが……それに券売機のような物も無ければ表のような物もございません。一体どのようにして購入するのでしょうか?」

 

御影「先程も言いましたが、余ってしまった食材で調理をしておりますので、ここでの食事は無料という事になっているのですよ。我が社最大の自慢とも言えるポイントの1つですね。」

 

秋乃「無料っ!?………失礼しました、取り乱しました。しかし何故?」

 

御影「我々のお金で買ったのに、それを社員から貰うなんて変なお話でしょう?なのでこういうサービスも行っているというわけですよ。休みの日にも会社に来て昼食を、なんて人も居るくらいですからね。やって成功という事でしょう。」

 

 

成功の一言では済まされない事です………先程の出張に行った際の最終日の自由行動から始め、この食堂での昼食の無料提供、これだけのサービスをしているなんて思いもしませんでした。

 

 

紫苑「という訳ですので、遠慮する必要はありません。何になさいますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御影「今の雪ノ下さんのイメージにぴったりですね、仕出し弁当は。」

 

秋乃「あの中で1番魅力を感じましたので。」

 

紫苑「それに、普段はこんな手の込んだ物食べないでしょうしね。手まり寿司なんてそんなに食べる品ではありませんからね。」

 

秋乃「えぇ、なのでこの機会にと思いました。」

 

紫苑「では、我々も頂きましょう。」

 

 

ではお1つ………っ!

 

 

秋乃「美味しい………」

 

御影「そうでしょう?この会社で調理をして下さっている方々の腕は確かですよ。世界各地の料理を作れるんですからね。やり方は少し変則的ではあれども、その地域の特徴は消さずに仕上げる事が出来るのですから。」

 

秋乃「成る程………」

 

御影「胃袋から落とすとはよく言ったものです。おかげで買った食材も無駄になりませんし、社員も満足して笑顔で食べてくれます。これこそ持ちつ持たれつの関係だと思いませんか?」

 

紫苑「一方的に持たせてるように感じるけど?」

 

御影「………そこは内緒にしといてよ。」

 

 

いえ、夜十神社長の言う通りだと思います。こんな会社があると知れば真っ先に飛びつく筈です。私の会社でも取り入れたいくらいですが、生憎とこの会社と我が社では行っているサービスのカテゴリーが違いますので不可能でしょう。しかし、出張後の自由ならば可能性は………

 

 

秋乃「いえ、夜十神社長の手腕は素晴らしいと思います。私だけでなく、殆どの方がこのような事は思い付かないでしょう。お見事としか申し上げられません。」

 

御影「いえいえ、ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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会話の練習?

 

 

秋乃side

 

 

秋乃「すると、お2人でも気に入った物があれば自身のお金でご購入していると?」

 

御影「えぇ。無論、私達の立場なら会社のお金を使う事だって可能ですが、それでは下の者達や世の倫理に反します。それに私達もこの会社だけでなく、他の会社の方達と同様で働いてお金を得ている身です。そんな事は致しませんよ。そんな事をしたら、私の祖先に顔向け出来ませんからね。」

 

紫苑「手に入れる事は簡単でしょうけど、それに味を占めてしまえばまともな思考は出来なくなります。会社は会社、私達は私達で使っています。まぁ当然の事ですけどね。」

 

秋乃「それではさぞかし誘惑が多い事でしょう。」

 

御影「えぇ、本当に。娘達にも何か欲しい物は無いのかと偶に聞くのですが、物欲があまり無いのか無いらしくて………八幡君だって枕が欲しいって言ってくれたっきり何も無いですし………はぁ………」

 

秋乃「は、はぁ………」

 

紫苑「気にしないでください、夫のいつもの愚痴です。」

 

 

………以前お会いした時から薄々感じてはいましたが、この夜十神さん達と比企谷さんはとても親しい仲なのですね。娘さんとお付き合いしているだけの間柄では無さそうです。

 

 

御影「今は比企谷さん達が家に住んでいるので仕方ないとはいえ、娘達の私に対する扱いが段々と雑になっているような感じもしなくもないような感じでして。色々と考えさせられますね……距離感とかパーソナルスペースとか。」

 

秋乃「社長さんは色々お考えになられているようで………しかし、私からしてみれば羨ましい悩みとも言えますわね。」

 

紫苑「おや、それはどうしてです?」

 

秋乃「私の方では小さい時から厳しく教育をして参りました。それも将来になって困らないようにする為にと、娘達を思っての事でした。しかしそれが原因で次女は現在別居中で、長女は普段の顔を見せずに行動するようになってしまいまして………お2人は1度、陽乃とお会いしたと聞いているので既に分かっていらっしゃると思いますが。」

 

御影「そうですね……あの歳でよく自分を誤魔化していると思いましたよ。余程、これまでの環境下で大人と近い場所に居たのでしょうね。」

 

紫苑「そうですね、そうでなければあのような顔は出来ません。」

 

秋乃「……なので私も表面上は上手くしようとはしているのですが、中々上手くいかないもので。」

 

御影「………いっその事全てを言ってみては如何です?もしかしたら気付いているかもしれませんが、わだかまりは解いておいても損はないと思われますよ?遅くなればきっと向こうから切り出してくるでしょうし。」

 

秋乃「その通りなのですが、中々家族で集まれる機会というのが無くて………」

 

紫苑「ふむ……でしたら今日はチャンスかもしれませんね。」

 

御影/秋乃「チャンス?」

 

紫苑「私の見立てでは、長女のお子さんは陽気でイタズラ好き、という感じでした。なら今頃、何かしているのではないでしょうか?次女を家に呼んで久々に遊んでいるとか。」

 

 

陽乃が?性格上は考えられなくもありませんが、雪乃をそう簡単に家に呼べるとは思えませんが………

 

 

秋乃「しかしそうであったとしても、切り出し方が………私はこの性格ですので。」

 

御影「うぅ〜ん………っ!紫苑、ちょっと。」

 

紫苑「?………分かったわ。」

 

秋乃「?あの、何を?」

 

紫苑「………実はね、私がこれまでしてきたのは貴女達の事を思ってしてきた事なのよ。」

 

御影「……今更そんな事言われても。」

 

紫苑「貴女達は子供の頃から可愛かったから、大人になってもきっと綺麗になるって確信していたのよ?だから変な男に捕まらないようにって。」

 

御影「見ての通りだから大丈夫だよ。お母さんの心配してる事は何1つ起きてないから。」

 

紫苑「そうね、その通りね。けれど陽乃はお見合いを断り続けてるし、変な男に捕まるどころか逆に本性出したら男すら捕まえられないようになってしまってるし、雪乃は性格も相まって寄せ付けないという悲惨な結果になってしまっているから………」

 

御影「余計なお世話だよ!」

 

 

………

 

 

秋乃「今のをしてみろと?」

 

紫苑「いえ、そうは言いませんよ。ただこんな風に少しふざけた事を言ってみても良いのでは?という事です。堅苦しいままではお話にならない時だってありますからね。家族間でくらい、少しは肩の荷を下ろしても文句は言いませんよ。」

 

御影「紫苑の言う通りです。僕なんて一家の中では1番弱い立場にあるんですから。大黒柱なのに口は1番弱いんです。」

 

紫苑「貴方がいつもツッコミ所満載なボケをするからでしょう?」

 

御影「あの、ボケてるわけじゃないんだけど?」

 

紫苑「得意な筈のビリヤードで八幡君に負け越していた時の貴方は見るに耐えなかったわ。」

 

御影「うぐぅ!?」

 

紫苑「ならもっと威厳を見せなさい。500万円の本マグロを買った時の八幡君に叱られてた時の姿なんて、ある意味滑稽だったわよ?」

 

御影「うぐぅ!?」

 

紫苑「まぁ家だから別に構わないけど。」

 

御影「あの、紫苑?今の言葉、すっごく切れ味の良いナイフと化してなかった?心に響いたよ?」

 

紫苑「そう?私的にはバターナイフのつもりなんだけど、もっと鋭くした方が良いかしら?」

 

御影「今のでバターナイフ!?これ以上になると僕からすれば名刀レベルの切れ味なんだけど!?」

 

紫苑「鈍よりマシでしょう?」

 

御影「これに関しては刃物じゃない物のでお願いしたいよ………」

 

 

………こんな風に会話をするのは私には無理ですね。ですが、少しは考えておきましょう。

 

 

 

 

 

 



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様子見とお祝い

 

 

陽乃side

 

 

ーーー同時刻・比企谷家前ーーー

 

 

そろそろ出てくる頃だよね〜。仕事の手伝いを4時間させられてるんだから、最低でも1時には出て来る筈。まぁお母さんの会社の人達がオーバーワークさせるはずがないんだけどね。

 

 

葉山「………」

 

 

おっ、来た来た。

 

 

陽乃「お仕事お疲れ様、隼人。」

 

葉山「……陽乃さん。」

 

陽乃「頑張ってるみたいじゃん?どう、調子は?」

 

葉山「………」

 

陽乃「あっそう………まぁ良いけど。」

 

葉山「………なぁ、陽乃さん。」

 

陽乃「ん〜?」

 

葉山「陽乃さんは納得してるのか?こんな扱いを受けて………陽乃さんも謹慎を受けたって聞いた。それもこれもアイツが、比企谷が告げ口したせいで………陽乃さんは納得してるのか?」

 

陽乃「……一応聞くけどさ、誰が誰に告げ口したの?アンタの事だから比企谷君がお母さんにって言いたいんだろうけどさ。」

 

葉山「そうさ、比企谷がそんな事をしなければ「勘違いしてるようだから言うけどさ。」……え?」

 

陽乃「お母さんに言ったのは私だよ?比企谷君が告げ口したのってアンタが教室で下らない事を聞いた時に放課後に屋上で呼び出した時でしょ?勝手に比企谷君を悪者にしてどういうつもり?」

 

葉山「け、けど陽乃さんだって被害を受けて……」

 

陽乃「あんなの私は当然だと思ってる。弁護士の息子だからって、知っておく必要があるって思って呼んだ私がバカだったって思ってるよ。比企谷君には悪い事をしたって思ってるし。それにアンタのその口振りからすると、比企谷君にした事についてなぁ〜んにも反省してないみたいだね。」

 

葉山「そんな事はない!」

 

陽乃「全然信じられな〜い。説得力の欠片もないし感じられな〜い。比企谷君のせいだって言った時点でアンタが反省してるなんて嘘っぱちもいい所。」

 

葉山「………」

 

陽乃「まぁ私はアンタの事なんてもうどうでも良いけどさ、比企谷君の迷惑になるような事は今後しないようにね。自分で自分の首を絞める事になるんだから。」

 

葉山「………」

 

陽乃「そう言えば最初の質問に答えてなかったね。私がこの件に納得してるのかって。当然、納得してるよ。だから謹慎明けには比企谷君にも謝りに行ったしね。アンタも新学期始まったら復学するんだからその時にでも謝ったら?まぁこれまで迷惑しかかけてないアンタを許すわけないと思うけど。」

 

葉山「俺は……そんなつもりは……」

 

陽乃「まっ、アンタはそうだろうね。けど比企谷君はどうだろうね?」

 

葉山「………」

 

陽乃「まぁどうするかはアンタの自由だけど、比企谷君にちょっかいかけるのはもうやめてね。これ以上は私だけでなく、お母さんやおじ様もアンタの事潰しにかかると思うから。じゃあ。」

 

 

………隼人は相変わらずみたいだね。アレじゃあ次に何をやらかすのか心配になってきちゃうよ。はぁ………さっ、価値の無い男の話はここまでにして、午後からは雪乃ちゃんが家に来るから準備しなくっちゃ!プレゼントのパンさんは箱で用意してあるし、ケーキもオッケーだし昼食の用意も万端。よし、残すは雪乃ちゃんを待つだけだね!

 

 

陽乃「さぁ〜て、今日は忙しいぞ〜!」

 

 

ーーー雪ノ下邸ーーー

 

 

陽乃「♪〜♪〜」

 

 

雪乃ちゃんがこの家に来るの久しぶりだなぁ〜。なんかちょっとワクワクしちゃう!それに今日はお母さんもお出かけしてるから居ないし、少しの間は家でのんびり出来るしね!

 

 

「楽しそうですね、陽乃様。」

 

陽乃「うん♪これから雪乃ちゃんが来るんだ〜♪」

 

「雪乃様が?」

 

陽乃「そっ!お母さんが仕事お休みで出掛けてるでしょ?その間に家に帰って来たら〜って誘ったらOKしてくれたんだ♪いやぁ〜誘ってみるものだね〜。」

 

「成る程………ですが大丈夫なのですか?奥様のお帰りのお時間を気にされなくても。」

 

陽乃「それなら大丈夫、今日のお母さんの予定は私も1枚噛んでるから。だからお母さんが帰ってくるその前に雪乃ちゃんは帰すよ。」

 

「そうですか。」

 

 

さぁて、そろそろかなぁ〜♪

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

コンコンコンッ

 

 

『陽乃様、雪乃様がお見えになりました。』

 

陽乃「入れていいよ。」

 

「かしこまりました、失礼致します。」

 

雪乃「………」

 

陽乃「いらっしゃい雪乃ちゃん♪待ってたよ〜!」

 

雪乃「姉さん………」

 

陽乃「ほらほら早くこっちに来て!昼食まだでしょ?ケーキも用意してあるから一緒に食べよっ♪今日はお姉ちゃんからのお祝いなんだから!」

 

雪乃「……急にどういう風の吹き回し?」

 

陽乃「細かい事はいいの!今日は純粋に雪乃ちゃんをお祝いしたいだけなんだから!ほら、私達の身近にとっても仲の良い姉妹が居るでしょ?それにあやかろうと思っただけ。」

 

雪乃「………夜十神さん達の事ね。」

 

陽乃「そういう事。だから雪乃ちゃんも笑顔笑顔♪仏頂面じゃあダメだぞ〜!」

 

雪乃「なんだか忙しい日になりそうだわ………」

 

陽乃「そんな事言わないのっ!最近雪乃ちゃんとも会えてなかったからさ、お話聞かせてよ〜!」

 

雪乃「……分かったわ。」

 

陽乃「うんうん!じゃあ、乾杯と行こっか♪」

 

 

 

 



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姉妹の在り方

昨日は投稿出来ず、すみません………少しトラブルがあったもので。


 

 

陽乃side

 

 

陽乃「ふぅ〜ん、学校はそんな感じなんだね〜。そういえば雪乃ちゃん、奉仕部はどう?最近依頼とか無くて退屈なんじゃない?」

 

雪乃「依頼がないのは良い事だと思っているわ。困っている生徒がいないという事だもの。」

 

陽乃「そう?それなら良いんだけどさ。あぁそうそう、雪乃ちゃん。聞きたいんだけどさ、雪乃ちゃんのクラスで比企谷君の家が燃えた事って広まってたりする?」

 

雪乃「確かに話題にはなってるけれど、表立って話題にする人は居ないわね。」

 

陽乃「あれ、そうなの?」

 

 

あれぇ〜なんか意外。今の総武高の生徒なら、間違いなく食いつきそうな話題なのに。しかもその中心が比企谷君でしょ?内容からしてみても、もっと食いつきそうだけどなぁ〜。

 

 

雪乃「姉さんは知らないと思うけれど、比企谷君って怒るとかなり怖い印象があるみたいなのよ。私は直接見ていないから見た印象は知らないけれど、怒声が聞こえて来る程だから。」

 

陽乃「ど、怒声?あの比企谷君が?何で?」

 

雪乃「何でも、夜十神さん達が作ったお弁当を床に落とされたらしいわ。相手は知ってるけれど言わないでおくわね。それで相手側の人達が言い合いをしてたら、比企谷君が怒ったのよ。」

 

陽乃「うわぁ………要するにそれって擦りつけをし合ってたって事でしょ?醜いねぇ〜。」

 

 

でも比企谷君が大声で怒るって印象全く無かったからなぁ………私も警告はされた事あるけど、それだけでもかなり雰囲気違ったからなぁ。きっとアレ以上なんだよね。

 

 

陽乃「成る程、だから比企谷君を怒らせないようにするっていうのが、今の総武高の暗黙のルールだったりするのかな?」

 

雪乃「私はそういうのに詳しくないけれど、そうかもしれないわね。」

 

陽乃「……ねぇ雪乃ちゃん、私ってもう少し比企谷君とか夜十神ちゃん達にちょっかいかける回数、減らした方がいいかな?」

 

雪乃「どんなちょっかいをかけてるのかは知らないけれど、間違いなく減らした方が良いと思うわ。」

 

陽乃「あははは………だよね。」

 

雪乃「まぁ、姉さんの印象が既に固定されていると思うから警戒を解くにはそれなりに時間がいると思うけれど、まだ何とかなると思うわ。既に修復不可能な人が私達の身近に居るでしょう?」

 

陽乃「アレはもう病気でしょ。普通学校であんな事聞かないって。しかも教室でだなんてなに考えているのかサッパリだよ。」

 

雪乃「えぇ、そうね。彼の事なんて考えたくもないもの。想像もしたくないわ。」

 

 

ありゃりゃ、雪乃ちゃんからも強烈な嫌われ具合だね〜。まっ、無理もないけど。

 

 

陽乃「じゃあそろそろこんな辛気臭い話は止めにして………はい、コレ。雪乃ちゃんに誕生日プレゼント〜♪パンさんのぬいぐるみ、鬼○隊服バージョンだよ〜!」

 

雪乃「っ!そ、それって1番人気の………」

 

陽乃「そっ!主人公の竈門○治郎の羽織と瓶の代わりに刀を持ってるんだよ!やっぱりコレかなぁって思ってさ、妹のと悩んだんだけどさ〜。」

 

雪乃「………」ニギニギ

 

 

あはは、夢中になってる!けど気に入ってくれたのならそれでいっか。けど雪乃ちゃん、ホントにパンさん好きだよね〜。知ってるけど。

 

 

雪乃「………っ!ごめんなさい姉さん、つい夢中になってて。」

 

陽乃「良いの良いの、気にしないで。気に入ってもらえたようで何よりだから。それにしても今度はアレかな?パンさんの寝間着とかプレゼントしたらさ、雪乃ちゃんは使う?」

 

雪乃「………観賞用に飾らせて貰うわ。」

 

陽乃「えぇ〜着ようよ〜絶対似合うって!」

 

雪乃「パンさんの寝間着だなんて……恐れ多くて着る事が出来そうにないわ。」

 

陽乃「雪乃ちゃんってさ、パンさんを何だと思ってるの?神格化してるの?なんか部屋に神棚作って飾ってそうなんだけど………」

 

雪乃「そ、そこまではしてないわよ……」

 

 

何でだろう、今の雪乃ちゃんの言葉が信じられない。ホントに作ってそうなんだもん。

 

 

陽乃「ふふふっ、まぁいいや!じゃあさ雪乃ちゃん、色々散歩しながら話さない?」

 

雪乃「……えぇ、いいわよ。」

 

 

ーーー廊下ーーー

 

 

陽乃「そういえばもうすぐテストだったね、勉強とかは大丈夫?根を詰め過ぎないようにね?」

 

雪乃「電話でも言われたけれど、ちゃんと休憩は取ってるわ。けどありがとう。」

 

陽乃「妹なんだから心配するのは当然。でもさ、ちょっと思うんだよね。こういうのが本当の姉妹なのかなぁ〜って。」

 

雪乃「?どういう事?」

 

陽乃「ほら、私と雪乃ちゃんってあんまり一般的じゃなかったでしょ?姉妹っていってもどこか距離があるような感じのさ。」

 

雪乃「………」

 

陽乃「けど夜十神ちゃん達姉妹を見てるとさ、隠し事もしてなさそうだし、気を遣ってもなさそうだし、意識した様子もなかったからさ、本当の姉妹ってこんな感じなのかなぁ〜なんて思ってさ。」

 

雪乃「姉さん……」

 

陽乃「あっ、だからって理由じゃないからね?」

 

雪乃「分かってるわよそのくらい、姉さんの妹なのだから。分かって当然よ。私だって姉さんの妹を長くやってるのだから、嫌でも分かるわ。」

 

陽乃「………あはは、こりゃ1本取られちゃったね。ふふふっ、ありがとね。」

 

雪乃「えぇ、こちらこそ。」

 

 

これが私達の姉妹の在り方、って事だよね。

 

 

 

 

 



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姉妹の会話と母の感謝

 

 

雪乃side

 

 

こんなにも長い間、姉さんと一緒に過ごしたのはいつ以来かしら?小学生の頃くらいよね、それ以降は家でしか会えなかったけれど、段々と疎遠になっていったものね。会う事はあっても素っ気ない会話だとか、姉さんからの見透かされているような、揶揄われているような会話ばかりだったものね。

 

けれど今日の姉さんはいつもの姉さんと違って少しだけ調子が狂うけれど、懐かしさも感じるわ。昔の優しかった頃の姉さんを見ているような気がして。

 

 

陽乃「?どうかしたの雪乃ちゃん?お姉ちゃんの顔を見ちゃってさ〜。」

 

雪乃「別に何でもないわ。ただ、昔の姉さんを見ているようで懐かしく思っていただけよ。」

 

陽乃「昔の私かぁ〜……もうあんまり覚えてないなぁ。雪乃ちゃんの事なら分かるのになぁ〜。」

 

雪乃「あら、奇遇ね。私も昔の姉さんの事ならよく知ってるわよ。」

 

陽乃「そうみたいだね。まっ、腹の中を探ろうなんて考えてないから安心してよ。それに、私だってこんな風に息抜き出来るのも久々だしね〜。」

 

雪乃「やっぱり母さんが居ないから?」

 

陽乃「それもあるかもね〜。最近は特に忙しそうにしてたからピリピリしてたし。まぁ無理もないけどね、あの【Nigh-Ten・Group】と関わりを持てたんだからさ。何としても友好な関係を築きたいんだろうね。見てて分かるよ。」

 

雪乃「そうなのね……」

 

 

母さんも忙しくしているのね………ここ数年顔を合わせていないけれど、大丈夫かしら?

 

 

陽乃「お母さんが心配?」

 

雪乃「母親だもの、心配にもなるわ。」

 

陽乃「励ましてあげて、って言いたい所だけど、雪乃ちゃんも苦手意識があるみたいだから無理にとは言わないよ。」

 

雪乃「えぇ、助かるわ。」

 

陽乃「けど!偶には帰って来なよ?私達だって雪乃ちゃんの事、心配してないわけじゃないんだからね?探せば居るとは思うけど、高校生の女の子が1人暮らしなんて心配でしかないんだから。」

 

雪乃「……えぇ、分かったわ。」

 

 

………なら次の春休みにでも1度だけ帰ってみようかしら?短い間なら良いわよね?

 

 

雪乃sideout

 

秋乃side

 

 

秋乃「夜十神社長、副社長、今回はとても有意義な時間を過ごす事ができました。お時間を割いて頂きありがとうございました。」

 

御影「いえいえ、元々副社長が雪ノ下社長をお誘いしたのですから、我々に感謝を述べる必要なんてありませんよ。寧ろ謝らなければならない方ですから。貴重な休日を、こうして私達の為に使わせてしまっているのですから。」

 

秋乃「いえ、とんでもありません。それに……娘達との事もご相談に乗って下さいましたから、とても感謝しております。では、私はお暇させて頂きます。」

 

御影「えぇ、道中お気を付けて。副社長、送って差し上げて。」

 

紫苑「はい、かしこまりました。」

 

 

ーーー会社・出入口ーーー

 

 

紫苑「今日は私の我儘に付き合わせてしまってすみませんでした。」

 

秋乃「いえいえ、とても良い時間を過ごせました。謝罪の言葉は必要ありません。」

 

紫苑「そう言って頂けると嬉しいです。」

 

 

ブロロロロッ

 

 

紫苑「ちょうど来たみたいね。」

 

秋乃「?」

 

「お待たせ致しました夜十神副社長、並びに雪ノ下建設社長様。お車の準備が出来ました。」

 

紫苑「お帰りの際はこちらをお使いください。行き先は伝えてありますので。」

 

秋乃「よろしいのですか?」

 

紫苑「勿論です。それに………」

 

秋乃「?」

 

紫苑「私、こう見えても人を見る目は旦那の次に自信があります。雪ノ下さんが思うような、ギスギスとした関係にはならないと思いますよ?」

 

秋乃「っ!」

 

 

まさか………見透かされていた?

 

 

紫苑「ふふふっ、今日お誘いしたお詫びの品もご用意してありますので。では。」

 

秋乃「………」

 

 

………成る程、これが【Nigh-Ten・Group】のトップという事ですか。

 

 

秋乃「敵う気がしませんね、全く………それでは、よろしくお願いします。」

 

「かしこまりました。」

 

 

秋乃sideout

 

陽乃side

 

 

陽乃「ふぅ〜ん、じゃあ比企谷君はいっつも夜十神ちゃん達が作ってるお弁当を食べてるんだ?しかもそのお弁当箱が重箱なんだって?」

 

雪乃「えぇ、それを囲いながら食べているのを見た事があるわ。それに、あの3人が自覚しているかどうかは分からないけれど、周囲に人を近づかせないような雰囲気もあるのよ。きっとそれが世間でいうATフィールドって言うものだと思うのだけれど、どういう意味なのかしら?」

 

陽乃「ATフィールドっていうのはアニメ用語なんだけど、現代社会では簡単に言うと話しかけるな〜とかそういう意味かな。」

 

雪乃「そうだったのね……けれど他のもあるように見えたのよね。それは比企谷君と夜十神柊さんからだったわね………あれは私でも分かるわ、甘い雰囲気って言うのよね。」

 

陽乃「2人は学校でもラブラブなんだ〜比企谷君ったら見た目によらず見せつけるんだね〜。」

 

雪乃「どちらかと言えば、夜十神さんが甘えてくるのを比企谷君が受け入れている、と言えば正確かしらね。見る側が恥ずかしくなりそうなくらいだもの。」

 

 

ワォ………大胆だね。

 

 

陽乃「そうなんだぁ〜。あっ、ならさ「陽乃様、雪乃様、奥様が………お母様がお帰りになられました!!」………え?」

 

 

…………………………嘘?

 

 

 

 

 



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不器用な親子

 

 

陽乃side

 

 

嘘でしょ!?何でこんなに早く帰って来ちゃったの!?まだ時間に余裕あり過ぎなんだけど!?今日のスケジュールは?もしかしてすっ飛ばして帰って来ちゃったの!?嫌になっちゃったの!?

 

 

雪乃「はぁ……姉さん、こうなったら諦めて会うしかないわよ。」

 

陽乃「雪乃ちゃん……いいの?」

 

雪乃「えぇ、それに会うのだって久しぶりだから。顔くらい合わせないと。」

 

 

雪乃ちゃん、立派になって………

 

 

陽乃「うん、分かった。じゃあ色々とお片付けしちゃおうか。」

 

「それには及びません、陽乃様。それは私達がやっておきますのでお寛ぎを。」

 

 

うん、お母さんが来るのに寛ぐとか無理。

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

ガチャッ

 

 

秋乃「ただいま戻りました………雪乃も帰っていたのね、お帰りなさい。それからごめんなさいね陽乃、折角貴女が作ってくれた予定だけど、色々あって無くなってしまったわ。」

 

陽乃「いいよいいよ、ただの予定なんだからさ。お母さんのしたいようにしたら良いって。」

 

秋乃「そう言ってくれると嬉しいわ。雪乃も会うのは久しぶりね、夏休み以来かしら?」

 

雪乃「え、えぇ……久しぶり、母さん。」

 

秋乃「そうね、折角家に帰ったのだからゆっくりして行きなさい。此処は貴女の家でもあるのだから。」

 

雪乃/陽乃「………(誰?)」

 

 

雪乃(こ、これがあの母さん?有無を言わせない威圧も無ければ、最近の事も聞いてきたりもしないわ……それに何だか目つきも鋭くないというか、柔らかくなっている?)

 

 

なんかお母さんが別人なんだけど………嘘、ホントにお母さんなの?出かける前と全然違うんだけど。何があったの?何があったらこんなになっちゃうの?カウンセリングでも受けたの?

 

 

秋乃(夜十神さんからは、あまり質問するのも意味はないからと言われたから、それとなく返しはしたけれど、この反応は何かしら?気にしても仕方ないわ、次に移りましょう。)

 

 

秋乃「雪乃が帰って来たという事は……何かしていたのですか?」

 

陽乃「そ、そうなんだよ〜!だって1月3日は雪乃ちゃんの誕生日でしょう?だからお祝いとプレゼントをあげようと思ってたんだ〜!」

 

秋乃「あら、そうだったのね。陽乃、私にも声を掛けてくれれば良かったのに。娘の誕生日ならお祝いをするのは当然の事よ?」

 

陽乃「あははは、だってお母さんならすぐパーティーとか出しそうじゃん?」

 

秋乃「それは雪乃の希望に沿って行います。望んでもいないのにパーティーでお祝いなんてさせられるわけがないでしょう?」

 

陽乃「それもそっか!あはは、ごめんねお母さん。最近のお母さん見てると相談とかし辛くてさ〜。」

 

秋乃「今度からはお願いしますね?」

 

陽乃「うん、分かった。(………うえぇぇぇ!?)」

 

 

なんかもう全ッッッ然違う!!!私の、ていうか私達の知ってるお母さんじゃない!!何この良母!?優しいから逆に違和感凄いんだけど!?

 

 

雪乃「あの……母さん、少しいいかしら?」

 

秋乃「何かしら?」

 

雪乃「その……何かあったの?」

 

 

ええぇぇ!?雪乃ちゃんそれ聞いちゃうの!?

 

 

雪乃「何だか私の知ってる母さんとかけ離れ過ぎていて、私達は困惑しているのよ。姉さんの様子を見ていてもそれは分かるわ。お出かけした時に何かあったの?」

 

陽乃「雪乃ちゃんの言う通りだよ、お母さんお出掛け中に何かあった?」

 

秋乃「やはり家族だからかもしれないわね。実は今日、夜十神さんの会社を見学させてもらったのよ。それはもうとても立派な会社だったわ。」

 

陽乃「えぇ!?もしかして、【Nigh-Ten・Group】にお邪魔していたの!?」

 

秋乃「えぇ、社長や副社長からは色々なお話を聞かせてもらいました。その中でも副社長の紫苑さんからは『娘達との接し方』について、とても有意義なお話をさせて頂きました。それに習って私も今、少しだけそうしてみたのですが………違和感があるようね。」

 

雪乃「まぁ……そうね、棘の無い母さんなんて久しぶりに見たもの。」

 

秋乃「棘、ですか……いつもの私はそのように見えていたのですね。これはお邪魔してお話を聞いておいて正解でした。」

 

雪乃「あっ、別にいつもというわけでは「いいのよ、分かっているわ。これまでの事が殆ど裏目に出ていたからこんな事になったというのも事実だもの。少し恥ずかしいわ。」……母さん。」

 

 

こんなお母さん、初めて見るかも………

 

 

秋乃「雪乃、陽乃、今更ではあるけど、これまでごめんなさいね。貴女達の為にと思って来たけど、それが壁になっているとは気が付かなかったわ。」

 

雪乃/陽乃「………」

 

秋乃「我儘を言うようだけど、この先からは家族としてもっと仲良くしてくれると私は嬉しいわ。」

 

陽乃「……もう、お母さんからそんなお願いされたんじゃ、受けるしかないよ。ねっ、雪乃ちゃん?」

 

雪乃「勿論よ、姉さん。私も今まで母さんは苦手だったわ。けれど、今は違う。いきなりは無理だと思うけれど、努力するわ。」

 

秋乃「………ありがとう、2人共。」

 

 

どうなるかと思ったけど、心配は無かったみたい。それどころかその逆だったね。それにしても夜十神さん達ってホント何者なんだろう?あのお母さんをこんな風に変えられちゃうなんて………

 

 

 

 

 

 

 



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バレンタイン前

少し時は進んで………


 

 

八幡side

 

 

月は1月から2月へと移った。そして全国の学生の天敵とも言えるテストも終わって、ようやく羽を伸ばしているこの頃だが、女子はソワソワ、男子はワクワクしているのが現状だった。それもその筈、あと数日もすればバレンタインデーだからだ。男子連中は貰った個数とかどんなチョコだったかを言い合ってるようだが、何が良いんだ?よく分からん。女子も手作りで行くのか、市販で行くのかを悩んでいるみたいだが、まぁその辺は俺も分かる。俺もホワイトデーには柊や涼風、おじさんやおばさん達にはお返ししてるからな。

 

まぁ今はホワイトデーの事は置いといて、今俺の隣に居る柊は普通にしているし、涼風も普段通りだ。予想ではあるが、この2人がチョコを渡す相手なんて家族と俺くらいだろう。今の内に心の中で言っておくぞ男子連中、期待しても結果は虚しいだけだからな。

 

 

柊「うぅ〜ん………ねぇ八幡君?八幡君はさ、どんなチョコが食べてみたい?」

 

八幡「それって、俺に聞いても良いのか?」

 

柊「八幡君には付き合ってからずっと渡してきてるけどさ、最初は普通の手作りチョコ、次はクッキー、他は何にしたら良いかなぁ〜って。」

 

八幡「俺は柊から貰えるのなら何でも嬉しいけどな。同じのじゃダメなのか?」

 

柊「けど八幡君は去年私達の為にブラウニー作ってくれたじゃん!!凄く美味しかったんだからね!今だから言えるけど、八幡君が帰った後は余りにも嬉し過ぎて家族全員で泣きながら食べました!!」

 

 

え、何そのカミングアウト………言う必要あった?

 

 

涼風「その通りです八幡さん!八幡さんからブラウニーを貰って食べた時に気付きましたが、真心がとても込められていて、一生懸命作られたのだと思うと………涙がとめどなく溢れて………」

 

柊「分かる、分かるよ涼風!!」ガシッ!!

 

八幡「俺は一体何を見せられてんだ?」

 

 

ま、まぁ俺が去年作ったブラウニーが好評なのは分かった………泣くくらい。

 

 

柊「それで八幡君に再度聞きます、どんなチョコが食べたいですか?」

 

八幡「そう言われてもなぁ………ん〜…あっ、スフレとかどうだ?前に作ってくれた事あったよな?チョコじゃなかったけど、美味かったんだよなアレ。」

 

涼風「……そういえばありましたね、確か一昨年の冬にチーズスフレをお姉様と一緒に作ったのを覚えてます。」

 

柊「おっ、良いね♪じゃあ今年八幡君にプレゼントするチョコはチョコスフレに決定〜♪」

 

八幡「そうか、楽しみにしてる。」

 

柊「頑張って作るね♪それでさ、涼風は何作るか決めてるの?あっ、分かってるとは思うけど、お姉ちゃんのを真似るのはダメだよ〜?」

 

涼風「ご安心下さい、お姉様。真似る気はありませんので。それに、私は既に決めていますから。」

 

八幡「なんかやけに自信があるみたいだな?」

 

涼風「はい、きっと渡す頃にはお姉様も作り方を教えて欲しいと行ってくると思います。」

 

柊「へぇ〜お姉ちゃんに宣戦布告?」

 

涼風「ではどちらのバレンタインチョコが八幡さんに気に入られるか、勝負致しましょうか?」

 

柊「涼風が勝負に出るなんてよっぽど自信があるみたいだね〜………いいよ、その勝負受けてあげる。負けるつもりなんて毛頭無いけど。」

 

涼風「それは私も同じです、お姉様。ですがこれだけはハッキリさせておきましょう。そうでなければただの争いになってしまいますから。」

 

柊「?それって?」

 

涼風「八幡さんに『美味しい!』と言ってもらえるように全力を尽くしましょう。その次に私達の勝負です!」

 

柊「ハッ!!………そうだ、そうだよ!1番は八幡君だもんね!!目的を見失う所だったよ、ありがとうね涼風〜♪」ダキッ!

 

涼風「お、お姉様っ!?」

 

 

勝負よりも俺なんだな。

 

 

八幡「それで、涼風は何を作るんだ?」

 

涼風「ふふふっ、秘密です。」

 

八幡「ほう、秘密か……それって期待を最大限にまで引き上げても良いと?」

 

涼風「八幡さんは最近、私に意地悪をするのが趣味になってしまったのですか?」

 

八幡「冗談だ。」

 

柊「それよりも、八幡君はバレンタインデー楽しみにしててね!私達がうんと美味しいチョコを作ってあげるから♪」

 

涼風「当日をお楽しみに、です!」

 

八幡「分かったよ、楽しみにしてる。」

 

柊「楽しみにね!それと八幡君にもう1つ質問しても良いかな?」

 

八幡「ん、何だ?」

 

柊「このクラスってさ、バレンタインに関してそんなに興味って無いの?男子は別にいつも通りだけど、女子の盛り上がりが今ひとつな感じがするんだけど………」

 

八幡「お目当ての奴が居ないからじゃね?」

 

涼風「それって葉山さんの事ですか?」

 

八幡「多分な。アイツ顔は良いからな。学校外の連中からも人気あるらしいしな。知らんけど。」

 

涼風「ですが葉山さんは三浦さんや相模さんとの件であまり良い印象を持たれていないと思われます。他学年からの評価は分かりませんが、同学年からの評価は少し下がっているそうですよ。」

 

八幡「そうなのか………まっ、葉山が居ねぇから渡す相手がいない分、やる気のない奴が多いんだろうな。女子だって間違いなく話題になるだろ?なのにその会話すらないんだからよ。」

 

 

そりゃ話題に出す出さないは自由だけどよ、このクラスでその手の話題が無いってのは不気味だよな。

 

 

 



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奉仕部では

久しぶりの風景ですね〜。


 

 

八幡side

 

 

結衣「それでね、私のクラスでは誰かにチョコあげるのとかってあんまり話題になってないんだ〜。」

 

雪乃「そうなの。まぁ、私のクラスでも同じようなものだけれど、気にする事なんてないんじゃないかしら?由比ヶ浜さんは誰かにあげるの?」

 

結衣「わ、私?私は………」チラッ

 

八幡「………」ペラッ

 

 

おい、見るんじゃねぇよ。こちとら視線には敏感だから隠しもしない視線なんて普通に気付けちゃうんだよ。やだよ?この前みたいな暗黒物質だったら俺、絶対貰わないからな?

 

 

雪乃「差し出がましいとは思うけれど、比企谷君にあげるのは相当な覚悟をしておいた方がいいと思うわよ?比企谷君の側にはいつも夜十神さんが居るもの。余程の理由がない限り、彼女達は比企谷君から離れないと思うわ。」

 

結衣「そ、そうだよね……あはは〜。」

 

雪乃「比企谷君、夜十神さん達はやっぱり張り切っていたのかしら?」

 

八幡「あぁ、まぁな。今日も何を作るかで話してたよ。俺は何でも良いんだけどな。」

 

雪乃「そう……」

 

 

それにしても………

 

 

八幡「ふぅ〜………」クビ パキポキ

 

雪乃「あら、貴方がそんな仕草をするなんて珍しいわね。何かあったの?」

 

結衣「ホントだね〜。ヒッキーが首鳴らしてるのなんて初めて見たかも。」

 

八幡「いや、特に何もない……っていうより、悩みの種が1人居ないだけでかなり平和なもんだから、身体が緩んだのかもな。」

 

雪乃「身体が緩むという言葉を聞いた事がないけれど、大体理解したわ。」

 

結衣「それってやっぱり隼人君の事だよね?」

 

八幡「当たり前だ。クラスやお前の中でアイツの事をどう思ってるかはどうでも良いが、俺にとってはただの害悪でしかねぇ。自分の問題に他人を巻き込むわ、人の個人情報を暴露するわで最悪な野郎だ。雪ノ下、お前よくあんなのと小学生の間一緒に過ごして来れたよな。」

 

雪乃「えぇ、それだけは本当にそう思うわ。」

 

結衣「あはは………」

 

 

葉山に俺の家の事を暴露されて以降は、奴は1度もこの学校に来ては居ない。雪ノ下建設の手伝いをやらされてるみたいで、働かされているらしい。給金も出るらしいが、その金の大半は借金に当てられてる事だろう。雪ノ下建設の専属弁護士やってる程の親だ、息子に対して甘いわけがない。

 

 

八幡「まぁアイツの話は置いておこう。そんで、由比ヶ浜は分かったからいいとしてだ、雪ノ下は誰かにあげんのか?」

 

雪乃「さぁ、どうかしら?今の所あげたいと思える男子なんて1人も居ないわ。」

 

八幡「さいで。まっ、お前と仲の良い男子なんて、俺は見た事も聞いた事もねぇしな。」

 

雪乃「それってもしかして、私の交友関係が狭すぎると言いたいのかしら?」

 

八幡「誰もそんな事言ってねぇだろうが………それを言うなら柊と涼風だってお前と負けてねぇよ。」

 

結衣「2人はこの学校以外に友達って居ないの?」

 

八幡「あぁ、居ないな。そんな奴等、中学の頃に………いや、何でもない。忘れてくれ。」

 

結衣「う、うん………」

 

 

雪乃(何かあるとは思っていたけれど、中学の頃みたいね。けれど比企谷君は話したくないみたいね。)

 

結衣(気になる……けど、ヒッキーは言いたくないみたいだから我慢しないとだよね。)

 

 

八幡「そういや依頼とかなかったのか?」

 

雪乃「えぇ、居なかったわ。」

 

結衣「修学旅行から1回も依頼来てないよね。」

 

雪乃「依頼がないのは良い事よ。相談事や悩みがないという事だもの。」

 

八幡「面倒も増えなくて済むしな。」

 

結衣「ヒッキーそれ言うなし。けどさ、こんなに無いものなのかなぁ?冬休み前とかはそれなりにあったじゃん?」

 

雪乃「……そうね、比企谷君と由比ヶ浜さんがこの部に入部した頃が1番のピークだったわね。それ以降はそんなに無かったわ。」

 

八幡「それ以降って言っても、修学旅行くらいじゃねぇか?俺はそれ以外思いつかない。アレだろ、活動期と休眠期でもあるんじゃね?熊と一緒で。」

 

雪乃「人間が冬眠するわけないでしょう………」

 

八幡「例えばの話だよ。」

 

 

しかし、ホントに何も依頼がねぇな……コレだったら俺って必要無いんじゃねぇのか?ピンチヒッターの出番って絶対に無くね?

 

 

結衣「でもさ、この時期だったら増えると思ってたんだけどな〜。」

 

雪乃「それはどういう意味?」

 

結衣「だってバレンタインデーだよ?もし好きな人が居る女子とかだったらさ、チョコの美味しい作り方とかを依頼してきそうなのになぁ〜って。」

 

八幡「………由比ヶ浜、お前そんな事まで考えられるようになっていたのか。成長したな。」

 

結衣「ヒッキー私の事なんだと思ってるし!?ねぇゆきのん、今の酷いと思わない!?」

 

雪乃「ごめんなさい由比ヶ浜さん、正直私も比企谷君と同じ感想だわ。」

 

結衣「ゆきのんまで!?」

 

 

いやいや由比ヶ浜よ、普通に考えてみろよ。自分の胸に手を当てて考えてみ?暗黒物質をクッキーだと言える奴は後にも先にもお前だけだって。千葉の名物を落花生と茹でピーや柿ピーだと答える奴もお前しかおらん。だって他を知らんから。

 

 

 

 

 

 

 



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姉妹のチョコ作り

 

 

柊side

 

 

柊「♪〜♪〜」

 

 

ふふふふっ、スフレなんて久しぶりに作ったけど良い感じ♪けど、ただのスフレじゃあ面白くないから、ちょっとした仕掛けもしてあるから、八幡君は気に入ってくれる筈♪後は作ったこのスフレをお父さんに味見してもらおっと!八幡君と涼風にはバレないようにしないとねっ、スフレを作るのは八幡君から言い出した事だからバレちゃってるけど、仕掛けに関してはバレないように気を付けないと!

 

 

コンコンコンッ

 

 

御影『はいはい、どうぞ〜。』

 

柊「お邪魔しま〜す、お父さん。コレ、良かったらおやつに食べて!」

 

御影「ん?おぉ、これはケーキかい?」

 

柊「残念っ!スフレでした〜。」

 

御影「スフレかぁ〜そういえば何年か前に作ってたね。もしかしてだけど、バレンタインの八幡君にあげる前に、僕で実験かな?」

 

柊「えへへ、当たりっ♪」

 

御影「あはは、良いよ。それじゃあ、頂きます……」

 

 

お父さんはスフレをスプーンで掬うと口へと放り込んだ。味わうようにしてから、少しだけ驚いたような表情をしてから口を開いた。

 

 

御影「凄いね……前に作った時よりも更に美味しくなってると思うよ。しかし、スフレの中に○○○○と○○○○○を入れるなんてね、かなり凝ってるね……苦労したんじゃない?」

 

柊「それなりに、ね。けど八幡君の為ならこのくらいの苦労なんて何ともないもん〜♪」

 

 

だって作ってる内に楽しくなって苦労なんて言葉忘れちゃったんだもん。あっ、当然だけど手を抜いたりなんてしてないからね?

 

 

御影「うん、これは八幡君も喜ぶと思うよ。」

 

柊「ありがとお父さん!あっ、それと食器片付ける時は言ってね。八幡君にはバレたくないから!」

 

御影「あはは、了解。八幡君も今頃は家に向かってる頃だと思うから、片付けとかは早めにね?」

 

柊「はぁ〜い♪」

 

 

よし、お父さんからの評価は上々♪後は他に何か改良出来ないか試行錯誤しながら当日に向けて準備をするだけだね!

 

 

柊sideout

 

涼風side

 

 

涼風「何とかできました……」

 

 

作った事は去年に何度かありましたが、味をつける工程に少し苦労しました。何度も失敗しましたが、漸く1つ目が完成しました。自分でも味見はしましたが、自分の評価だけでは不安です。ここはお父様に………いえ、お母様に味見をお願いしましょう。もしかしたら的確なアドバイスを頂けるかもしれません。

 

 

コンコンコンッ

 

 

紫苑『入って良いわよ。』

 

涼風「失礼致します、お母様。少しお願いがあって参ったのですが、よろしいでしょうか?」

 

紫苑「そのお願いというのは、貴女の持ってるトレイの上に置かれている物の事かしら?」

 

涼風「はい。1種類作って味見をしたのですが、自分の舌だけでは不安なので、お母様にアドバイスを頂きたくて………」

 

紫苑「私で良ければ良いわよ、早速食べたいから器とスプーンを頂戴。」

 

涼風「はい、どうぞ。」

 

 

そしてお母様は一口頬張りました。味わうかのように目を閉じながら咀嚼していました。

 

 

紫苑「よく作られているわね。ここまで味を出すのに苦労したでしょう?幾つ使ったの?」

 

涼風「見て分かると思いますが、4種類です。徐々に食べ進めるのも良いですけど、全部を混ぜて食べるのも楽しめるかと思いましたので。」

 

紫苑「成る程……」

 

 

その後もお母様は1つ1つの感想を丁寧に述べながら私に色々とこうするべきだと教えてくれました。やはりお母様に頼んで正解でした。

 

 

紫苑「じゃあ最後に混ぜて食べてみるわね。」

 

 

お母様はスプーンで混ぜてから掬い、口の中へと入れて咀嚼すると、目を開いていました。も、もしかしてお口に合わなかったのでしょうか?

 

 

紫苑「………涼風、さっきの1つ1つのアドバイスだけど、アレは無しにして頂戴。」

 

涼風「え?ど、どうしてですか?」

 

紫苑「全部を混ぜて食べてみたら、その分けてある風味が絶妙に良い味を出してるのよ。これは今の方が良いわ。面白い上にとても美味しいわ。」

 

涼風「よ、良かったです。お口に合わなかったのかと思いました………」

 

紫苑「安心しなさい。貴女も味見をしたのでしょう?なら不味いわけないじゃない。そうじゃなかったらわざわざ混ぜて食べるなんて勧めるわけないでしょう?」

 

涼風「そ、それもそうですね。」

 

 

そうですよね。わざわざ悪くなる方に勧めたりなんてしませんよね。

 

 

紫苑「試作、頑張りなさい。1種類って言ってたくらいだから、まだ作るんでしょう?味見には協力してあげるから。」

 

涼風「はい、ありがとうごさいます!」

 

 

お母様からの協力もありますし、これは張り切らなければなりませんね!

 

 

涼風sideout

 

八幡side

 

 

八幡「………すげぇチョコの匂いしますね。」

 

宮間「はい。お嬢様方がキッチンを占領しておりまして………恐らく若様に渡す為のチョコをお作りになられているのかと。」

 

八幡「多分後何日かはこれが続くでしょうね。シェフの方々には申し訳ないですけど。」

 

宮間「若様、これは若様が恋人になってから恒例になっておりますので、シェフの者達も慣れております。ご安心を。」

 

 

あっ、そうなんだ………けど、なんかごめんなさい。よく分かりませんけど、ごめんなさい。

 

 

 

 

 



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バレンタイン当日

 

 

八幡side

 

 

ついに当日となったバレンタイン。あの日から帰る毎にチョコの甘い香りが家中を包み込んでいた。だがそれも今日で終わりだ……とは言い切れない。2人がどんな手段で俺にチョコを渡すのかにもよる。渡すタイミングなんていつでもあるようなものだしな。

 

 

八幡「まぁ、このタイミングでだけは無いだろうけどな。2人共寝てるし。」

 

柊「すぅ……すぅ……」

 

涼風「すぅ……すぅ……」

 

 

さて、何時になったら起きるのかね?俺は偶々早く起きたから外はまだ真っ暗だ。2人の事だから弁当を作る時間も必要だろうし、もう少ししたら起きるだろうけど。

 

 

ーーー10分後ーーー

 

 

柊「んん〜………ふわぁ〜んんぅ………」

 

 

おっ、まずはお姫様がお目覚めのようで。

 

 

柊「んん〜八幡君補充〜。」ギュー!

 

 

いや、まだ8割くらい寝てるわコレ。ていうか起きる前にこんな事してるのか?

 

 

涼風「………おはようございます。」

 

柊「涼風おはよぉ〜……早く補充補充〜。」ギュー!

 

涼風「はい……」ギュー!

 

 

お前もか………ていうか柊、お前も何勧めてんだよ。寝ぼけてるからか?そうなのか?

 

 

ーーー10分後ーーー

 

 

柊「100%充電完了〜♪涼風は?」

 

涼風「もう少しです、後5%くらいです。」

 

 

5%って分かるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涼風「………フル充電完了です。」

 

柊「うん。じゃあお弁当作りに行こっか♪」

 

涼風「はい、お姉様。」

 

 

ガチャッ…バタン

 

 

八幡「………涼風、前々から思ってた事だが、段々と柊に毒されてるよな。真面目なお前が抱き着きながら補充とか充電とか言うとは思わなかった。」

 

 

………もう少しだけ寝よ。

 

 

ーーー2時間後ーーー

 

 

八幡「おはようございます。」

 

御影「あぁ、おはよう八幡君。」

 

紫苑「おはよう。」

 

八幡「今日は朝からチョコの香りがしますね。」

 

紫苑「そうね。」

 

御影「何処かの誰かさん達が張り切っているみたいだね。今はそっとしておこうか。」

 

八幡「ははは……ですね。」

 

小町「おはようございます、皆さん〜。」

 

紫苑「小町ちゃんおはよう。」

 

御影「何だか朝から少しだけ疲れた表情をしているみたいだけど?」

 

小町「あぁはい……ちょっとこの匂いに胸焼けしていまして。チョコが嫌いって訳ではないですけど。連日この匂いを嗅いでいるとちょっと………」

 

八幡「作ってる本人達が1番分かってる筈だが、ゾーンに入ってるんだろう。匂いすらも気にならないくらい集中してんじゃない。」

 

御影「まぁ実際、毎年こんな感じだったからね。今年は特別だけど、去年、一昨年は1週間くらいこの状態が続いてたから、八幡君と小町ちゃんは数日で済んでるからまだ良い方だと思うよ。」

 

 

1週間って………凄いな。確かにまだ良い方だな。にしても1週間も厨房を占拠してるのか、夕食とか作る時、大変だろうなぁ〜シェフの皆さん。

 

その後は大変おいしい朝食を頂いてから、学校へと登校した。まぁ朝食の料理に少しばかり甘い香りが漂っていたのは気のせいという事にしておこう、うん。知らない方が良い事だってあるからな。

 

 

ーーー学校・廊下ーーー

 

 

八幡「それで2人はチョコ作りの方は上手くいったのか?」

 

柊「うん、自分の中では過去最高の逸品になったよ!八幡君に食べて貰うのが楽しみっ♪」

 

涼風「私もあの出来なら、八幡さんにお見せしても大丈夫だと自負しております。」

 

八幡「そうか。因みに学校に持ってきたのか?」

 

柊「私は持って来たよ。涼風は?」

 

涼風「私は家に置いてあります。その方がゆっくり食べられると思いましたので。」

 

八幡「お前等、戦略立ててきてんのな。去年は作った物は違えど一緒に渡してきたのに。」

 

涼風「今回は勝負ですから。お姉様には負けられないのです。」

 

柊「私も負けないもん!」

 

 

おぉ……バチバチとやり合ってますね。それよりも柊はスフレだったな。一体どんな感じになってるのか楽しみだな………早く昼休みになってもらいたいもんだ。

 

っと、もう教室か……にしても2人に向けての期待の視線ったらねぇな。どんなに期待しても貰える可能性なんて0なのによ。教室入った瞬間、男子達の目の色とかすぐに変わるんだろうな。

 

 

ガラガラ

 

 

男子「………」ジッ

 

 

予想通りかよ………

 

 

柊「……ねぇ八幡君、男子達ってどうして視線を隠そうとしないんだろうね?バレバレだよ?」

 

八幡「そのくらいチョコが欲しいんだろうよ。俺には分からないけどな。」

 

柊「けど八幡君だってそういう時期はあったんじゃないの?チョコ欲しいなぁ〜って。」

 

八幡「ねぇよ。それに家族以外の異性から貰ったのだってお前達からのが初めてだし。今更他の異性から貰っても、ありがたいとしか思わねぇよ。」

 

涼風「しかし凄い視線です………」

 

八幡「チ○ルチョコ3つとか、麦チョコ3粒とか、ベビーチョコ3個あげれば満足するんじゃね?」

 

柊「大きさが段々小さくなってるよ?」

 

八幡「強請る奴にはそのくらいの大きさで充分だって。板チョコなんてあげたくないだろ?あげてもブラックだって。」

 

涼風「嫌がらせにしか思えませんね、それは。」

 

八幡「男ならそれでも満足するって。」

 

 

 

 

 



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姉のチョコ

 

 

柊side

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

遂に鳴った、4時間目終了の予鈴っ!!やっとだよ、やっと八幡君に私特製のスフレチョコを食べさせられるよ〜♪ほら先生早く早く〜!

 

 

ーーー3分後ーーー

 

 

柊「八幡君、お弁当食〜べよっ♪」

 

八幡「おう。」

 

柊「えへへ〜♪」ニコニコ

 

涼風「お姉様、笑いを堪えきれていませんよ?お気持ちは良くわかりますけれども。」

 

柊「きっと涼風も家に帰ったらこんな顔になると思うよ?そしたら私も同じ事言ってあげる。」

 

八幡「一応聞いておくが、弁当は普通だよな?チョコで作られた何かが入ってたりしないか?」

 

涼風「ご安心下さい、八幡さん。お弁当はいつも通り作りました。それに八幡さんの健康を損なうような事はしたくありませんから。」

 

八幡「そうか、それを聞いて少し安心した。」

 

 

はい、オープン♪

 

 

柊「ほらねー普通でしょ?」

 

八幡「あぁ、いつも通りの美味そうな弁当だ。」

 

柊「当然っ♪八幡君の為に毎日全力で調理してるんだから!」

 

涼風「お姉様の言う通りです、八幡さんに食べてもらう品にどうやって手を抜く事ができましょう!?そんな真似、恐ろしくて出来ません!」

 

八幡「恒例の過剰反応どうも。」

 

 

軽口を叩き合いながらも、私達はお弁当へと箸を進めた。うん、今日も美味しく出来てる♪あっ、涼風も中々に良い仕事をしますな〜今度教えてもらお〜っと。

 

洋食風のお弁当を取り入れてからは、お弁当が前よりも色鮮やかになったし、メニューも増えたから八幡君に飽きさせる事も無くなったと思う。それでも和洋のお弁当の中に欠かせないのは卵焼きなんだよね〜。私の得意料理だし♪

 

 

八幡「いつも思うが、今日もやっぱり美味い。こんな弁当が食えて幸せもんだな、俺は。」

 

柊「もう、急にどうしたのさ?そんな事言わなくても、これからも毎日作る予定なんだからそういう事言わないの。八幡君ももう嫌でしょ?購買とかコンビニとかで買うパンは。」

 

八幡「この味を知っちまったからな………昼飯はもうこれしかねぇだろ。」

 

柊「ふふふっ、だってさ涼風♪」

 

涼風「これからも調理のし甲斐がありますね♪」

 

八幡「いやだって冗談抜きで美味いんだからしょうがないだろ。もし誰かがこの弁当の具を1口食べてみろ、抜け出せなくなるから。」

 

柊「それでも具材は?」

 

八幡「やらねぇ、これは俺達の弁当だ。」

 

涼風「ふふふっ、想像通りの答えでした。」

 

 

八幡君はこういう所の独占欲強いんだよね〜。

 

そんなこんな会話をしながら箸を進めていき、数十分後にはお弁当を全て平らげた。綺麗サッパリなくなりました♪

 

 

八幡「ふぅ、今日も食ったなぁ。」

 

柊「御馳走様しないでよ?八幡君、別腹枠でデザートあるんだけど食べる?」

 

八幡「勿論頂く。」

 

柊「じゃあ用意するね。あっ、涼風にもあるからね〜。やっぱり勝負相手にも食べさせないとね。」

 

涼風「ありがとうございますお姉様。そして、望む所です!」ムンッ!

 

 

そして私は保冷剤と一緒にソフトクーラーの中に入れておいたチョコスフレを取り出して、机に置いた。うん、形崩れも起こしてないから大丈夫!

 

 

柊「はい、八幡君、涼風、どうぞ!私からのバレンタインチョコだよ♪」

 

八幡「おぉ、前に見たスフレと同じだ。しかもそれがチョコ味だから楽しみにならないわけがないよな。すげぇ美味そうだ。」

 

涼風「流石はお姉様です、とても素晴らしい仕上がりです。」

 

柊「ありがとう。けどそれは食べてから言ってよ、お口に合わなかったら意味ないんだから。」

 

八幡「いや、合わないわけないだろ。じゃあ早速、頂きます。」

 

涼風「頂きます。」

 

 

食べる前に気付いたと思うけど、スフレには中に色々と仕掛けを混ぜてある。さらに美味しくなるようにね!

 

 

八幡「………美味ぇ、なんだコレ。」

 

涼風「………」

 

八幡「柊、これどうなってんだ?」

 

柊「まずは生地。きっと2人はチョコ生地だって思ってるだろうけど、実はチョコじゃなくてココアパウダーで作られてるんだ。だから生地はチョコじゃないの。メインは中。中に入れてあるのは生クリームと生チョコなんだけど、生クリームはチョコ味にしました〜♪最初は普通に食べて欲しかったから何も言わなかったけど、生クリームだけで食べると優しい甘さ、生チョコだと濃厚な甘さ、2つを合わせると優しさの中にもチョコのずっしりとした濃厚な甘さが味わえるようになってるの。」

 

 

ふぅ……説明するとなると、少し疲れちゃう。けど、2人の驚いた顔が見られたからOKだね♪

 

 

八幡「………本当だ、クリームで食べると市販で売ってるロールケーキを思わせるような優しい食感に優しい甘さだ。」

 

涼風「八幡さん、生チョコも先程お姉様が言っていた通りです。生チョコらしい、とても濃いチョコの味が口の中を巡っています。」

 

八幡「そんじゃあもう1度………」

 

涼風「よく味わって………」

 

 

そして2人はまた上と下、チョコクリームと生チョコの両方を合わせて食べた。

 

 

涼風「凄いです、チョコの風味が2倍になってます。」

 

八幡「あぁ……同じチョコでも性質が違うだけで、ここまで違いが出てくるのか。」

 

柊「美味しかったみたいで何より。一応言うけど、学校にお代わりは持ってきてないから、味わって食べてね?」

 

涼風「お姉様、是非このスフレのレシピを教えて頂きたいです!」

 

柊「ふふふっ、良いよ。一緒に作ろっ♪」

 

 

私のバレンタイン、大・成・功♪

 

 

 




柊「というわけで私のバレンタインはスフレチョコでした〜!因みに【姉妹のチョコ作り】にあった○○○○と○○○○○の中に入る言葉は《生チョコ》と《生クリーム》でした〜!本当は最初、生クリームで行こうと思ってたんだけど、どうせならって思って生クリームもチョコにしたんだ〜♪」


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妹のチョコ

 

 

八幡side

 

 

さて、今日の授業が終わって残すは帰るのみとなった。しかし、昼飯のチョコスフレは最高に美味かったなぁ………俺は生チョコの方が好きだったが、クリームの方も美味かった。だからこそこう思ってしまう、幾つか残してないかなぁって。そのくらいマジで美味かった!

 

 

柊「?八幡君どうかしたの?」

 

涼風「少し難しそうな顔をしておりますよ?」

 

八幡「あぁいや、大した事じゃない。ただ、柊の作ったスフレってまだあるのかなぁって考えてただけだ。予想以上に美味かったから。」

 

柊「ふふふっ、八幡君ってばそんなに気に入ったの?私の作ったスフレ。」

 

八幡「すげぇ美味かったんだからしょうがねぇだろ。おかわりも欲しくなる。」

 

柊「褒めてくれてありがとう。けど今日はもうダ〜メッ!帰ったら涼風のチョコが待ってるんだから!スフレはその後日かそのまた次の日っ!」

 

八幡「……そうだな、涼風のチョコもあるんだったな。けどどんなのを作ったんだ?」

 

涼風「それは帰ってからのお楽しみです。八幡さんの舌を唸らせて見せます!」

 

 

そして俺達は帰路へと着いた。帰りの最中では、2人の試作中のエピソードなんかを聞かせてもらった。色々と苦労をしてたみたいだ。だからこそあんな美味いチョコを食べられて、俺はすげぇ幸せ者だって感じた。

 

 

ーーー夜十神邸・八幡の部屋ーーー

 

 

涼風「八幡さん、早速お食べになりますか?食後のデザートでも私は構いませんが?」

 

八幡「いや、折角だから今もらう。どんな物を作ったのか、気になるしな。」

 

涼風「分かりました。では、ご用意しますね。」

 

 

ガチャッ バタンッ

 

 

八幡「柊も知らないのか?」

 

柊「うん、私も知らない。お互いに干渉しないようにしてたからね〜。どんなのを作ったんだろうね?」

 

八幡「あぁ。けどチョコの香りがかなり強かったのは柊の作った品で分かるが、涼風はどんなのを作ったんだろうな?やっぱかなり香りも風味も強いとか?」

 

柊「あぁ〜それもあるかもね。けどさ、そんなに強烈に匂ってたの?」

 

八幡「あぁ、朝食に香りが混ざるくらい。」

 

柊「………換気にも気を付けないと。」

 

八幡「あぁ、そうしてくれ。」

 

 

ガチャッ

 

 

涼風「八幡さん、お姉様、お待たせしました。」

 

八幡「おっ、来たか。」

 

涼風「はい、これが私の八幡さんへ贈るバレンタインチョコ………」

 

 

一体どんなのが………え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涼風「プリンです。」

 

 

………目の前にあるのは茶、緑、桜の色をしたプリンと呼ばれるものだった。しかもその物体の色は、縦に3つに分かれていた。まるで………

 

 

柊「ヴェリーヌみたいだね。」

 

涼風「はい、それをモチーフにしましたので。」

 

八幡「薄い、普通、濃いの3色に分けられてるんだな。面白いな………」

 

涼風「どちらからお食べになりますか?」

 

八幡「まぁ、普通の味で。」

 

涼風「では、どうぞ。あっ、それと1つだけ。食べる時は薄色の方から食べて下さい。」

 

 

俺の前に出されたのは茶色のプリンだった。多分チョコプリンだろう。

 

 

八幡「じゃあ、頂きます。」

 

 

俺は薄い色の部分のプリンをスプーンで掬って口へと運んだ………すると優しい甘さが口の中に広かった。これは………

 

 

八幡「ホワイトチョコレートか?」

 

涼風「はい、正解です。」

 

八幡「じゃあ………」

 

 

俺は次の普通の色を食べた。これはミルクチョコレートで、濃いのはブラックチョコレートだ。成る程、3つの味を楽しむ事ができるってわけか。こういうのは柊の作ったスフレと似ているかもな。だがこれの面白い所は組み合わせの幅が広いという所だ。

 

簡単に表すとこうなる。

 

 

薄×普 薄×濃 普×濃 薄×普×濃

 

 

このように4通りの味を楽しむ事ができる。俺はただこれだけだと思っていたが、その予想は大きく外れてしまった。

 

 

八幡「なぁ涼風、このプリンの下の部分ってどうなってんだ?普通の色と違うぞ?」

 

涼風「流石は八幡さん、お目が高いです。そちらは各種類のチョコから生チョコを作りました。なのでこれはチョコプリンと生チョコプリンを掛け合わせた物となっています。」

 

 

マジか……涼風も同じ生チョコで攻めて来るとはな。いや、待てよ?じゃあ残りの2つも?

 

 

八幡「じゃあその2つもそうなのか?」

 

涼風「はい。緑は抹茶、ピンクが苺のチョコプリンとなっています。」

 

 

うわぁ……コレ涼風の方が何倍も時間と手間を掛けてるな。しかもそれでいて丁寧だ。そして美味い。

 

1つ1つの味はなんで事なくても、掛け合わせる事によって美味さが倍増する。うわぁ………これも美味いなぁ。プリンだからって甘く見てたわけではないが、これは予想外のパンチだ………油断してた。

 

 

柊「むぅ………我が妹ながら流石の腕前。本当に八幡君の舌を唸らせちゃってる。」

 

涼風「質で劣るならば手数で、その勝負に出た結果です。まだどうなるかは分かりませんけど。

 

柊「そ、そうだね。八幡君はどっちを選んでくれるのかなぁ?」

 

八幡「………なぁ涼風、こっちのプリンも食べてみて良いか?なんか気になって仕方ない。」

 

涼風「っ!はい、勿論です!その為のご用意したのですから。遠慮なくお召し上がりください。」

 

 

………うわぁ、抹茶も美味い。

 

 

 

 

 



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勝負の結末と闇

 

 

八幡side

 

 

柊「さて、じゃあ八幡君。」

 

涼風「結論を出して頂きます。」

 

柊「私と涼風………」

 

涼風「どちらのチョコが好きでしたか?」

 

 

………数日前からの勝負だったが、さてどうする?正直な感想を言うと、どっちもすげぇ美味かった。去年のも美味かったが、今年のはそれが前戯だと思えるくらいにだ。ていうかこれの勝敗の決め方って俺が気に入った方なのか?どっちも選んじゃダメなのか?

 

 

八幡「なぁ、1つ聞きたいんだが、この勝負って引き分けってアリなの?」

 

涼風「………それはつまり、八幡さんは私達のチョコはどちらも同じくらい美味に感じた、という事でしょうか?」

 

八幡「あぁ。去年、一昨年は2人で合わせて作ってただろ?けど今年は2人個人で作ってきたから、どっちのも面白かったし、何より美味かった。だから個人としては勝負をつけかねているんだ。」

 

柊「ん〜……確かに勝負って言っても、勝利条件が八幡君に気に入られる事だったもんね。」

 

涼風「はい。逆に八幡さんに気に入られなければ負けという事になります。」

 

柊「八幡君はどっちのチョコも気に入ったの?」

 

八幡「気に入った、なんて軽い言葉じゃ済まされないな。これを商品化してみろ、絶対売れるってレベルで美味かった。他の奴になんて食わせたくないけどな。」

 

 

実際の所、本当に決められない………だってムズイもん!2人共ちゃんと個性出してたし、チョコへのアプローチも完璧、工夫に工夫を凝らした点も互角以上。他に何を基準に評価させればいいんだ?俺にはもう分からん。

 

 

柊「………涼風、どうしよっか?」

 

涼風「………では、今回の勝負は引き分け。次の勝負までお預けというのでどうでしょう?」

 

柊「次の勝負、ねぇ〜?いつ来るかな?」

 

涼風「それは私も分かりません。来年の今日かもしれませんし、もしかしたら近い未来かもしれません。私達次第でしょう。」

 

柊「それもそうだね。じゃ、勝負はこれでおしまいっ!それじゃあ早速なんだけどさ………」

 

涼風「はい、お姉様。同じ事を考えてます。」

 

 

ん?何だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊/涼風「レシピ教えてください!!」

 

八幡「………」

 

柊「……ふふふっ、やっぱり考える事は一緒だね。流石は私の妹っ♪」

 

涼風「姉妹というのは、こうも考えが似るのですね。どちらからにしますか?」

 

柊「じゃあ私のスフレから教えてあげる♪でも今は材料無いからまた今度にしよっか。」

 

涼風「はい、分かりました。楽しみです。」

 

 

多分、今までにあったであろう姉妹喧嘩もこんな感じの短い時間で終わってたんだろうな。真剣勝負の後にこのほのぼの感………この2人でなければあり得ないだろうしな。

 

 

八幡sideout

 

葉山side

 

 

葉山「………」

 

 

俺が間違っていたのか?比企谷に火事で家が焼けてしまった事を聞いたから………だがそうでもしないと本当の確認なんて取れない!それにアイツは他人に対して全くと言っていい程に関心が無い。アイツに関わっているのなんて夜十神さん達くらいだ。

 

それに、夜十神さん達も夜十神さん達だ。どうしてあんな奴と一緒に居るんだ?夜十神家は雪ノ下家と同じでこの地域の名家であると聞いた。さらに今では世界中で知らぬ者はいない程の会社を作り、雪ノ下どころか世界有数の富豪になっている。そんな家の人がどうしてあんな奴と!?家も普通なら人付き合いも碌にしないような奴となぜ一緒に居る?

 

 

葉山「アイツの何が良いんだ?陽乃さんもそうだ、あんな奴なんかに貶められて………」

 

 

それに俺はアイツのおかげで借金までも背負わされる羽目になった。3年になったら復学する事になってるが、サッカーをしている暇なんてない。お金を稼がないと借金は減らない、父さんが全て管理してるからだ。

 

だがどこでだ?どこでこんな事になったんだ?

 

 

葉山「………っ!修学旅行の後………」

 

 

……そうだ、アイツは俺が頼み込んでも一切聞き入れてくれなかった!それどころか夜十神さん達が関わると過剰なくらい攻撃的になっていた!そうだ、俺がこうなったのは元々アイツが原因になっていたんだ。だからこんな事に………

 

 

葉山「比企谷………」

 

 

待っていろ比企谷………復学したらすぐにお前に会いに行く!そしてこれまでの事を「隼人。」すべ……っ!

 

 

葉山「父さん………」

 

葉山父「………」

 

葉山「な、何か用かな?」

 

葉山父「………いや、最近部屋に篭る時間が増えているなと思ってな、少し様子を見に来ただけだ。変わりなければそれで良いが………」

 

葉山「俺は問題ないよ。」

 

葉山父「そうか……突然悪かった。」

 

 

待っていろ、比企谷っ!

 

 

葉山sideout

 

葉山父side

 

 

葉山父「………」

 

 

あの目………あれは最初の頃と何ら変わっていない。それどころか酷くなっている。しかしどうする?あの状態の隼人を学校に行かせても良いのか?比企谷君と夜十神さん、雪ノ下さんとの約束でもあるが、しかし休学を長くすれば隼人の反発も増すだろう………

 

 

葉山父「………悩みの種が少なくならないどころか、不安が大きくなるとはな。」

 

 

私に雪ノ下さん程の決断力と比企谷君程の無情さがあれば………無いものを羨んでも仕方ない、か………

 

 

 

 



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落ちた信頼

 

 

陽乃side

 

 

陽乃「というわけ。この前、お母さんに言われたから隼人の様子を見に行ったけど、あれは全く反省してないね。寧ろ君のせいにしてたくらいだよ。」

 

八幡『なんつーか、キモいですね。』

 

陽乃「まぁね。比企谷君が隼人にした借金も、きっと隼人の中では比企谷君のせいって事になってると思うよ。自己改竄っていうのかな?」

 

八幡『はぁ………それで、その事は葉山さんには?伝えてるんですか?』

 

陽乃「ううん、まだ。決めかねてるんだ。見に行ったのはその日の1度だけだったから、後2〜3回は様子を見たいかなって所。本当は見に行きたくなんてないけど、やっぱり不安材料だからね。」

 

八幡『………』

 

陽乃「……比企谷君?」

 

八幡『ん?あぁすいません、わざわざありがとうございます。他に何かありますか?』

 

陽乃「ううん、とりあえずこれだけ。君だって無関係じゃ無いからね。一応報告だけでもしておこうと思ってさ。」

 

八幡『まぁこっちはアイツが新学期に学校に復帰してどんな事をするかで、動きは変わりますけどね。4月になって欲しくないって思いが強くなりますよ。』

 

陽乃「あはは……こんなに憂鬱な2月って初めてかもしれないよ。受験でもこんな事なかったのに。」

 

八幡『じゃあ、そろそろ切ります。また何か分かったら連絡下さい。』

 

陽乃「オッケー。それと八幡君の方もね。」

 

 

………はぁ、お母さんに報告した事は言わなくても良いよね。おじさんには言ってないだけだから。けどその内、おじさんにも言うかもしれないね。

 

 

陽乃「おじさんからも聞いておこっかなぁ〜。家での隼人はどんな感じなのか。なんか1人部屋でブツブツ小言とか言ってそうだなぁ。」

 

 

陽乃sideout

 

秋乃side

 

 

秋乃「そうですか……問題は無いですか。」

 

『はい。一応彼のやってる事は雑用にしてるんで、そこまで影響はありません。1ヶ月前から入ってますけど、今日まで見てきてそんなに問題になるような事はありませんでした。』

 

秋乃「そうですか………わざわざすみません、ありがとうございます。では、失礼します。」

 

『はい、失礼します。』

 

 

………現場の方に隼人君がどんな感じで働いているかを聞いてみましたが、現場では普通のようですね。粗探しではありませんが、何も行動を起こしていないとなると、何だか不気味ですね………

 

 

秋乃「隼人君を信用していないみたいで心苦しいですが、陽乃からの報告を受けるとやはりそうなってしまいます。」

 

都築「比企谷様や夜十神様へのご迷惑を考えれば、奥様のお考えになってる事、行動されている事は当然かと。」

 

秋乃「それが後手に回らなければ良いのだけど、遅ければ意味がないわ。」

 

都築「おっしゃる通りです。」

 

 

家ではどんな様子なのかしら?葉山さんからは何もないという事は、いつも通りの過ごし方をしていると言う事なのかしら?もし本当にそうなのだとしたら、益々不気味ね………

 

 

秋乃「今の所、家の建築が順調なのが良い知らせね。予定が………大体4月か5月という所かしらね。少しでも早く完成させたいものね。」

 

都築「………奥様、1つよろしいでしょうか?」

 

秋乃「何かしら?」

 

都築「無礼を承知で申し上げさせて頂きますが、心の変化でもごいましたでしょうか?」

 

秋乃「?どういう事かしら?」

 

都築「いえ……最近の奥様はお人柄、というよりも雰囲気、物腰が柔らかくなられたと感じております。前よりも余裕があるように見えます。」

 

秋乃「………そう、そう見えるかしら?」

 

都築「私の勘違いでなければ、ですが。」

 

秋乃「勘違いじゃないわ。貴方の思っていた事は的中しているわ。とある方達から学ばされたのだけど、違うものなのね。」

 

都築「左様ですか………」

 

 

夜十神さん達との交流は無駄ではありませんでしたね。それに家でも陽乃と話す事も増えましたし、良い経過ね。

 

 

秋乃「今度は雪乃とゆっくり話でもしたいものだわ。今なら落ち着いて話ができそうだもの。」

 

都築「でしたら次の休日にでも、雪乃お嬢様の住まわれている部屋へ向かってみては如何です?」

 

秋乃「サプライズって事かしら?」

 

都築「今の奥様でしたら、それも可能なのでは?」

 

 

………それも良いかもしれないわね。お料理でも持って行って一緒にお話しながら食べるのも良いかもしれないわね。ふふふっ、前までは考えもしなかった事だわ。

 

 

秋乃「少しやってみようかしらね。」

 

都築「その際はお手伝いさせて頂きます。」

 

 

秋乃sideout

 

八幡side

 

 

柊「じゃあ葉山君は反省の色無しって事?」

 

八幡「雪ノ下さんの話だとな。それをどこまで信用して良いのかは分からんが、今回の事で嘘をつくような事はしないだろう。雪ノ下さん自身もそれで被害を受けたわけだしな。」

 

涼風「では、新学期になったら………」

 

八幡「今の状態だったら、間違いなく俺に絡んで来るだろう。前にも予想してた事だが、その時よりも鬱陶しくなってる可能性大だ。」

 

柊「八幡君、葉山君を退学にさせるのはダメ?」

 

涼風「私もそれが良いです。」

 

 

※作者も退学に1票!

 

 

八幡「出来るならそうしたいが、無理だろう。余程の問題を起こさない限りは難しい。例えば無期懲役になったアイツみたいにな。」

 

柊「うぅ………八幡君に被害を出さずに問題起こしてくれないかなぁ。」

 

八幡「問題は起こすなよ、絶対トバッチリ受けるのこっちだぞ………」

 

 

 

 

 

 

 

 



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3人の春休み

皆さん、清き1票ありがとうございました!!

特に意味はなかったのに入れて頂いて感激です!!


 

 

八幡side

 

 

時は過ぎて、3月の下旬。あれから特に何事もなく日常を過ごしてきた。月〜金は学校に行き、月曜は部活に励んだが、それ以外はいつも通りだ。土日は休みだからのんびりするか柊と街歩き(という名のデート。)をした。そして今現在は卒業式も終わって春休みの真っ最中で学校もない。いや、正確にはあるのだが、俺達ではなく新入生が入学式やらオリエンテーションやらで貸切状態だ。

 

まぁ俺にとって新入生なんてどうでも良いが、妹の小町も今年から総武高に通う為、関係のない話ではない。そこでだ、俺は考えている。もし小町が奉仕部に入部すると言うのなら、俺は奉仕部を引退しようと思っている。だって〜ピンチヒッターっていってもあんまそれらしい事もしてねぇし、平塚先生も転勤で居なくなっちまったから居る意味も無くなっちまったし、顧問も居ないからな。ぶっちゃけ居る理由が無い。

 

 

八幡「今頃、どうしてるかねぇ〜。」

 

柊「オリエンテーション中でしょ?きっと学校のシステムとかを教えてるんじゃないの?」

 

涼風「八幡さんが入学した時はどうだったのですか?やはり行ったのですか?」

 

八幡「そうだな……俺の時も簡単な教室案内とかしてたな。後は……置き勉していい教材とか、何時まで残ってOKとかそんなだった気がする。もう2年前だから覚えてねぇわ。」

 

涼風「高校生になってからもう2年が経つんですね………長いようであっという間に感じますね。」

 

八幡「学校生活なんてそんなもんじゃねぇか?まっ、2年生は異常に長く感じた時もあったけどな。2度と思い出したくもないが。」

 

柊「ホントだね、私達もあんなのは2度と起きてほしくないよ。」

 

涼風「そうですね、お姉様………はい、上がりで私の勝ちです。」

 

八幡「うわっ、お前まさかの8切りかよ………じゃあ次は柊だが、お前そんな非道な事しないよな?」

 

柊「じゃあ……これでどうだ!」

 

八幡「おいおいおい……そんな事したら俺は11戻り(イレブンバック)だよ?」

 

柊「えぇ!?嘘っ!?」

 

八幡「手札ある?」

 

柊「うぅ………強いのしかないよぉ〜!」

 

八幡「じゃあ捨てで。じゃあ次は……「は、八幡君?まさかそんな人でなしな事はしないよね?」ん〜………じゃあ2で。」

 

柊「うわあぁぁん八幡君がイジメる〜!」

 

八幡「大丈夫だって、俺あと2枚で上がりだから。その内の1枚はクイーンだからそれ出す。」

 

柊「やった!じゃあ私はエース♪」

 

八幡「そしたら俺が2を出して上がり。」

 

柊「あああぁぁぁ!!?八幡君が2を2枚持ってたの!?何さそれぇ〜!?」

 

八幡「ごめんな柊〜。」

 

柊「絶対わざとでしょ〜!わざとクイーン出して私の事遊んでたでしょ!」

 

八幡「だってこうしないと面白くないだろ?」

 

涼風「上げて落とすとは………八幡さん、お見事です。勉強になりました。」

 

柊「そんな事勉強しなくていいの!!」

 

 

そして俺達は今、暇潰しに大富豪をしている。

 

 

柊「………八幡君のイジワル。」ムスッ

 

八幡「悪い悪い、けどこれも勝負だから大目に見てくれ。」

 

柊「………ふふふっ、いいの♪こういうのは楽しむものだもん。イライラしてたら意味無いもんね。」

 

涼風「切り替えの早さはお姉様の良い所です。」

 

八幡「そうだな。」

 

 

コンコンコンッ

 

 

八幡「どうぞ。」

 

宮間「失礼致します、若様、お嬢様方。お昼食のご用意が出来ました。」

 

柊「ありがとうございます!じゃ、行こっか♪」

 

涼風「はい、お姉様。」

 

八幡「あぁ。」

 

 

ーーー廊下ーーー

 

 

八幡「にしても、大分大人しくなったもんだな。」

 

涼風「?どういう事ですか?」

 

八幡「お前達2人、休みの間も俺の昼食作るって言って聞かなかっただろ?週に1回にしてもらったとはいえ、かなり落ち着いたと思ってな。」

 

柊「私達の楽しみの1つだったんだもん、日課だったんだもん。」

 

八幡「お休みだと思えばいいんじゃないのか?それか勉強の期間とでも思えば。」

 

涼風「お勉強は普段している事ですし、お休みなんて要りません。八幡さんのお弁当、昼食を作るのにお休みなんて罪な事は出来ません。」

 

 

アレ、休みって悪い事なの?

 

 

柊「本当なら作りたかったんだよ?八幡君が祝日に作ってくれって言ったから納得してるだけなんだからね?本当なら今頃キッチンで調理してるか、呼びに行ってる頃なんだから。」

 

八幡「その代わり週に1回の絶品料理を食べられるんだから良いだろ。」

 

宮間「お嬢様方、若様はこう言っておられるのです。『少しでも美味しく食べられるように間隔を開けておいたんだ。』っと。」

 

 

ちょっと宮間さん?何言ってんの?

 

 

柊/涼風「っ!!!」

 

柊「そ、そっか………毎日食べてた分、それが当たり前になってるんだもんね。少し日を置いて食べれば美味しさが増すなんて考えもあるもんね!」

 

涼風「成る程、そのようなお考えが………八幡さん、私達は考えが甘かったみたいです。」

 

八幡「お、おう?」

 

柊「1週間後、楽しみにしててね!より美味しい昼食を作ってあげるから!」

 

涼風「普段から振るってる腕をより振るってお作りいたします!」

 

 

気合が乗ったのは何よりだが、燃え過ぎじゃね?宮間さん、どうしてくれるんですか?作り過ぎでもしたら俺1人じゃ手に余りますよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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釘刺しとゲーム

 

 

葉山side

 

 

はぁ……漸くだ、漸く学校に復帰出来る。そして奴だ、奴に、比企谷にやられた分だけやり返す!俺をこんな目に合わせたんだ、それなりの報いを受けさせてやる!

 

 

葉山父「隼人、お前も知ってるとは思うが、今お前の学年の生徒達は春休みに入っている。お前は春休みが明けた時点で学校に復帰を許可する。」

 

葉山「……はい。」

 

葉山父「お前も学校に行けて嬉しいと思っているだろうがこれだけはしっかりと頭の中に入れておけ。もし少しでもこれを破るようであれば、お前をこの家には置いておけない。」

 

葉山「………それって?」

 

葉山父「簡単な事だ、向こうからの希望でもあるからな。比企谷君達に接触しない事だ。どんな理由であれ彼等に接触するのは一切禁止だ。お前は彼に多大な迷惑を掛けたんだ、向こうからも関わりを持ちたくないという声をもらっている。いいか?これが最後のチャンスだ。もしこれを溝に捨てるようなら………この家の敷居は跨がせん。いいな?」

 

葉山「それだと俺は比企谷に謝りに「その必要はない。それに比企谷君は『謝罪ならもう受け取ったから、もし葉山隼人君が謝罪を希望したとしても、断りを入れて欲しいです。』と言っていた。お前からの謝罪は必要ない。それよりもお前は彼と関わりを持たない事だけを気にしていれば良い。」………」

 

葉山父「だからといって、夜十神さんに取り入ろうともするなよ?一応お前の為に言っておくが、お前は常に監視されている。」

 

葉山「………」

 

 

最初から分かっていたのか?俺がこんな行動をするのを予測していたのか?いや、そんな筈はない!奴にそんな頭がある筈がない!きっと誰かの入れ知恵だ、そうでなければこんな事になってない!誰の………っ!陽乃さんか!!

 

 

葉山父「分かったのか?」

 

葉山「っ!わ、分かった………」

 

葉山父「抜けた返事だな………まぁいい、話は終わりだ。行きなさい。」

 

 

ーーー葉山の部屋ーーー

 

 

まさか最初から行動が制限されるなんて思わなかった………最初に陽乃さんが様子を見に来た時から決めていたのか?いや、あの人はその後も3回くらい見に来た。多分それで決めたんだろう。だがどうする?これで俺からは奴に話す事も出来ない。したら最後、俺は家には居られない………いや、父さんのハッタリか?違うな、父さんは嘘や冗談を言うような人じゃない。

 

 

葉山「………」

 

 

思い通りにならない………くっ、比企谷の奴!俺の親にまで取り入るなんて!!

 

 

葉山sideout

 

御影side

 

 

御影「………それで、新学期からは大丈夫そうかい?葉山君も復帰するんでしょ?」

 

八幡「そこは何とも言えませんね………葉山に関してはアイツ自身がどうするかで決まりますし。まっ、俺に何かしようものなら向こうが黙ってませんよ。それこそ厳罰ものじゃないですか?」

 

御影「そうだね………まぁ君からも色々と提案したからね、早々に問題が起こることは無いとは思うけど、初日からはやめてもらいたいね。」

 

八幡「はい、全くです………あっ、ダブルイン。」

 

御影「八幡君やっぱり強いなぁ〜……ビリヤードの才能があるんじゃない?」

 

八幡「いや、それ程でも………それに今のは入りませんでしたし。」

 

御影「角度難しかったからね、仕方ないよ。じゃ、今度は僕だね。」

 

 

僕達は今、ビリヤードの対戦中でそれなりに良い勝負をしている。今八幡君が2つのボールをポケットするというナイスプレーを見せてくれた。僕も負けてられないね!

 

 

御影「あっ………」

 

八幡「………ファウル、ですね。」

 

御影「………僕、ビリヤードでは八幡君に羞恥プレーに加えて負け続きだよね。どうしてかな?」

 

八幡「いつもはこんなではないんですよね?」

 

御影「普段ならトリプルインも狙えば出来るんだけどな〜八幡君にカッコいい所見せようとするからかなぁ?だから余計にダメダメなプレイになっちゃうのかな?」

 

八幡「けどよくありますよね、そういう時って。」

 

御影「うん、あるよね〜。」

 

 

結果は僕の負け。あの後八幡君がまたダブルインをした。5番をポケットしたんだけど、9番にも当たってそれがポケットしたからゲームセットになった。僕、1番しか入れれなかった………

 

けど八幡君とゲームするのって楽しいんだよね〜。娘達とは確かトランプをしてたっけ?

 

 

八幡「ふぅ………」

 

御影「今は何も起こらない事を祈るしかない、かぁ………それも不安だね。」

 

八幡「しかも必ずと言っていい程、面倒な事を持ってくる奴ですからね。初日からしてくる可能性も捨てきれません。」

 

御影「雪ノ下さんと葉山さんを信じるしかないね。僕達は僕達で出来る事をしないと。」

 

八幡「……そうですね。」

 

御影「そういえば八幡君は退屈してないかい?柊ともデートに出掛けてるみたいだけど、他の曜日はこの家にいる事が多いからね。娯楽があるとはいえ、飽きてしまったら元も子もないからね。」

 

八幡「それなら大丈夫です。暇にさせてもらえない存在が居ますので。助かってますよ。」

 

御影「そっかそっか、それは何よりだよ。」

 

 

 

 



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新学期の初登校

 

 

柊side

 

 

春休みが終わって、新学期が今日からスタート♪私達在校生も進級してからの初登校なんだ。

 

なんて気分良く行けたら良いんだけど、現状はそうも言ってられない。だって新学期が始まるって事は、嫌でも見たくもない顔を見なければならないって事になる。あ〜ぁ、数ヶ月前に戻りたいなぁ〜………

 

もう1人だけ隔離してくれないかな?青空教室ならぬ隔離教室みたいにさ。そしたら私達の学校生活は凄く豊かになると思うんだよね。登校する前とかに色々言われてるとは思うけど、それで分かる人だとは思えないしね。

 

 

柊「八幡君、嬉しい筈の新学期があんまり嬉しくない………」

 

八幡「それは俺もだ、何度数ヶ月前に戻ってくれって思った事か………はぁ。」

 

涼風「私もお2人と同じ気持ちですが、もうなってしまったものは仕方ないのですから、腹を括りましょう。何かあれば報告すれば良いのですから。」

 

八幡「まぁそうなんだが………」

 

涼風「きっと葉山さんの方でも厳しく言われていると思いますし、私達は葉山さんが接触して来たら報告をすれば良いだけです。」

 

 

涼風が逞しくなっちゃってる………いつの間にこんなにイケメンになっちゃったの?

 

 

八幡「俺達3人は文系にしてるが、アイツはどっちだろうな?理系なら文句は無いんだが………」

 

柊「そこは祈るしかないよね。」

 

涼風「私達3人も同じクラスだと良いのですが………どうなっているでしょうか?」

 

 

そんな会話を弾ませながら、私達は学校へと目指している。

 

 

ーーー総武高・玄関前ーーー

 

 

八幡「結構人が居るな………」

 

柊「そうだね……少し待ってから行く?」

 

八幡「いや、俺が見てくるから2人は少し待ってろ。柊は大丈夫だろうが、涼風は人混みとか苦手だろ?じゃあ行ってくる。」

 

涼風「よろしくお願いします。」

 

 

八幡(えっと………文系はこっちか、比企谷〜……夜十神〜……おっ、あったあった。よしっ、一緒のクラスだ!それに葉山は別クラス!よし、何にしても奴が一緒の教室の中に居ないだけでも大きい。)

 

 

八幡「2人共行くぞ、俺達は3-A組で全員一緒だ。葉山はC組、俺達とは離れている。」

 

柊「やったぁ♪八幡君と一緒なのもそうだけど、3人一緒なのはもっと嬉しいね!

 

涼風「それに別クラスというのも嬉しい事です。気持ちにも余裕が出来ます。」

 

八幡「じゃあ教室に行くか。」

 

柊/涼風「うん(はい)♪」

 

 

ーーー3-Aーーー

 

 

よし、着いた〜じゃあ早速………

 

 

柊「八幡君、席!席の確認!」

 

八幡「お、おう………」

 

 

私は八幡君の隣じゃないと嫌っ!!それ以外の人達と隣になっても全然嬉しくない!!私は八幡君か涼風が良いんだもん!

 

 

柊「外側の真ん中かぁ……後ろが良かったけどまぁまだ良いかなぁ。八幡君が隣に居るんだし、大目に見てあげよっと。」

 

八幡「お前ってどの立場?監査役?」

 

柊「八幡君専用の♪」

 

八幡「そうか、恋人じゃないのか……」

 

柊「ごめん、今の嘘♪私の大切な恋人です♪」

 

涼風「お姉様………」

 

 

だって本当の事だもん!

 

 

「なぁ、そういえば今日から葉山君が学校に復帰するって聞いたか?」

 

「そういえばそうだった!今日から葉山君も復学かぁ〜。」

 

「けど2-Fの連中の話だと、なんか学校に来れなくなる前に色々とやらかしてたみたいだぞ?内容はよく知らねぇけど、元F組の奴から聞いた。」

 

「じゃあ今の葉山君って割とヤバい?」

 

「どうなんだろうな?まぁ会ってみれば分かるんじゃね?」

 

 

……どうやら葉山君の噂はF組の話だけじゃなくなってたみたい。元々2-F組だったクラスの人が、葉山君の事を広めてたみたい。ううん、広めてたは正確じゃないね。意図せず話したの方が正しいのかな?

 

 

八幡「なんかいつの間にか学校での、というよりも生徒からの評価も落ちてってるんだな。前々から知ってたが、話題になるくらいだとは……」

 

柊「私たちの知らない所で、他の人達が話題にしてたんじゃない?」

 

八幡「あり得るな。」

 

涼風「ですが葉山さんはまだ来ていないみたいですね?来ないのでしたらそれに越した事はないのですが………」

 

海老名「葉山君なら来てるみたいだよ。」

 

八幡「海老名さん、同じクラスだったのか。」

 

海老名「知らなかったんだ……まぁいいや。葉山君ならもう来てるよ。どう過ごしてるのかは知らないけど、C組の人と仲良くしようとしてるんじゃないかな?」

 

涼風「それで私達A組の所にも来たら、迷惑極まりないですね。」

 

八幡「外面だけは良いからな。それに騙される奴も少なからず居るだろう。だが、2-F組の奴等は騙されないとは思うけどな。」

 

海老名「でもさ、葉山くんの事だから比企谷君にまた話しかけてくるんじゃない?2年の時もそうだったでしょ?葉山君がよく比企谷君に話し掛けてたの遠目で見てたからさ。」

 

八幡「止めてくれって思わなくもないが、まぁそれは良いだろう。」

 

柊「あの空気の読めない金髪、A組に来ないと良いね。そしたら平和だよ。」

 

涼風「お姉様の言う通りです!」

 

八幡「まっ、それはアイツ次第だな。」

 

海老名「大変な事にならないと良いけどね。」

 

 

 

 

 



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気になる彼と大問題

昨日は投稿できずすみませんでした……

ベッドに入って感想書いてたらいつの間にか寝落ちしてて………気付いたら翌日の3時でした。


 

 

八幡side

 

 

新学期が始まってから数週間が経った、葉山からのコンタクトも目立った行動も今の所は無い。それに俺の前にすら現れていない………改心してくれたのなら兎も角、何も聞かされてない今の状況でこの行動の無さは怪し過ぎるな。何か企ててるとしか思えない。

 

今葉山の事で分かっている事はこのくらいだ。

 

・俺達との接触を禁止。

・借金が200万円と少し。

・学校であまり良くない噂がある。

・サッカー部を自主退部。

 

 

サッカー部を辞めたのはクラスの奴が話しているのを聞いていたから分かったが、他に情報が無さすぎる。真っ先に絡んで来るって予想していたが、大きく外れたな。この先何仕掛けて来るか分からん。そしてこれもクラスの奴が話しているのを聞いていただけだが、何でもアイツはクラスでも浮いているらしい。腫れ物扱いされている、って言った方が正確かもしれないな。

 

にしても、学校の人気者が今や腫れ物扱いか……何が起こるか分からないが、落ちたものだ。

 

 

柊「八幡君、考え事?」

 

八幡「ん?いや、別に。」

 

涼風「それにしては、なんだか思い詰めたようなお顔をされていましたよ?」

 

八幡「葉山の事を少し考えていただけだ。」

 

柊「……心配?」

 

八幡「そんなわけあるかよ。今までの事とか流れてる噂を考えろよ、どうしてアイツを心配してやろうって思うんだよ。」

 

涼風「八幡さんらしいですね。」

 

柊「けどさ、確かになんか変。新学期始まって少し経ったけど、私達………というよりも八幡君に絡んでないもんね。どうしてかな?」

 

涼風「葉山さんの事はよく分かりませんが、葉山さんのお父上や雪ノ下さんのお母上のお言葉が効いているのでしょうか?」

 

 

ふむ、普通ならそう考えるのが妥当なのだが、俺はどうもそういう風には思えない。葉山は三浦のグループ抜けを止める時には、教師に注意されるくらいのしつこさを持っていた。俺にも何度も相談や力になって欲しいと言ってきてたしな。そんな奴が今回指を咥えて黙ってみているだけとはとても思えない。あまり考えたくもないが、裏があるようにしか思えない。

 

 

柊「何にしてもさ、何もないなら良いじゃん♪快適に何もなく過ごせてるんだしっ!」

 

涼風「ですが、お姉様は気にならないのですか?あれ程八幡さんにご迷惑をかけていたというのに、新学期が始まってからはこの行動の無さ………改心したといえば聞こえは良いですが、八幡さんはご懸念しておられる様子です。」

 

柊「……八幡君、どう思ってるの?」

 

八幡「………いや、何とも言えないな。それに、今は奴の事に関して何も知らないと言ってもいい。情報が無さすぎる。」

 

柊「じゃあ今は何もしない?」

 

八幡「その言い方は正しくないぞ?俺達から行動する必要なんてない。向こうから何かしてこない限りはな。それにアイツも今は首の皮1枚でどうにかなってる状況だ、危ない橋を渡るような真似はしないと思うがな。」

 

涼風「……そうですね。自ら首を絞めるような真似はしないでしょう。」

 

 

だが用心はしておくに越した事はないだろう。アイツが何もしてこないなんて保証はどこにも無いからな。それに今は大人しいが、いつ牙を剥くか分からないからな。

 

けど………はぁ、次から次へと。何でこうも俺達の周りには問題を作る奴等が多いんだ?いい加減、俺達に平穏な学校生活を提供してくれよ。俺は中学から始まった事だが、悪い意味で賑やかな学校生活はもううんざりなんだよ。

 

 

柊「けどさ八幡君、その問題も大事だけどさ、それよりも今の方が大事だと思わない?」

 

涼風「その通りですよ八幡さん、葉山さんの問題は葉山さんが動いた時でないと分からないのですから。それよりも今です。」

 

八幡「………真面目な相談だと言われて柊の部屋に入った、話の流れの説明を受けてそして葉山の話になった、ここまでは良いだろう。最後の相談ってのは俺が実家に帰る事って何だよ、普通の事だろうが。」

 

柊「だって!!!この数ヶ月、八幡君と一緒に暮らすっていう夢見心地な日々が続いてたんだよ!!?それが………まさか家が完成間近だから、そろそろ帰る準備をって何!?八幡君だけこの家に居てよ!!八幡君はこの家が本当の家ですっ!!!」

 

八幡「いやいや、俺だって実家に「だから八幡くんの実家はここ!!!」……いやいやいやいや、無理があるでしょうよ、柊さんや。」

 

涼風「八幡さん、私はお姉様程乱れたりはしません。今でも落ち着いて話ができます。」

 

八幡「おぉ、なら「ですが八幡さん、考え直して下さい。前も週末には泊まりに来てくれたではありませんか。アレはもう同棲も当然です。ならばいっその事、もうこの家に住んでしまえば良いではありませんか!誰も八幡さんを拒む人など居ないのです、ここに住んでください、いえ………ここに住みましょう!」………」

 

 

ダメだ、姉よりもまともだと思ってたが、妹も姉とどっこいだ。ダメだこの姉妹、重症だ。

 

 

八幡「はぁ、兎に角俺は1度「嫌ぁ〜!!八幡君と離れたくない〜!!一緒に暮らすの〜!!」「八幡さんと離れてしまったら私は……死んでしまいます!」………お前等なぁ。」

 

 

皆さんに一応言っておきます、今すぐではありません。まだ完成間近ってだけです。なのに今からこの反応だ………家帰るって事になったらどうなるんだこれ?

 

 



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両親の思いと姉妹の考え

 

 

御影side

 

 

娘達にも困ったものだね、まさか比企谷さんの家が完成するって話をしただけであんなに過剰反応するなんてね………しかも八幡君にこの家に住むように逆に説得するとはね。予想してた事だからそんなに驚きはしないけどさ。←姉妹に情報流した本人

 

個人的にはこの家に住んでもらいたいんだよね〜。だって八幡君が居る日常はとても新鮮だし、刺激もある。今までは金曜日に来て日曜日に帰るのが普通だったけど、今の生活環境に慣れてしまった娘達はそれでは足りないだろうからね。八幡君にどうしてもこの家に住んでもらうように言うだろうね。何日もかけて。

 

 

御影「さて、八幡君はどうするかなぁ?」

 

紫苑「何がどうするかなぁよ?御影、貴方絶対に八幡君と一緒に居たいから柊達に比企谷家の事バラしたでしょう?」

 

御影「そうだよ。だって僕も娘達と一緒の想いだしね。流石に柊には負けるけど、この家に住んで欲しいというのは本当さ。」

 

紫苑「はぁ………御影、貴方本性が偶に見える時があるけれど、欲張りなのね?」

 

御影「あれ、今更かい?そうだよ、僕はとっても欲張りなんだよ。だから八幡君を手放す気はないよ、君もそれは知ってると思うけど。」

 

紫苑「それについては同感よ。八幡君を手放すなんてあり得ない選択肢よ。会社は捨てても八幡君は捨てないわ。」

 

御影「流石は僕の妻だ、そういう所も好きだよ。だって、僕と似てるからね。」

 

紫苑「あら、御影も今更かしら?私だって貴方と同じくらい欲張りだもの。」

 

 

罪でいえば【強欲】。それにしても、この家は本当に強欲一家だね〜。何せ八幡君を絶対に手放したくないんだもの。勿論、八幡君の意思は尊重するけど、この暮らしに慣れてしまった僕としては、このまま住んでもらいたいんだよね〜。

 

 

御影「娘達よ、八幡君の説得を頑張ってくれ。」

 

紫苑「御影、全部丸投げじゃない………」

 

御影「僕が言っても軽く流されるだけだよ。なら八幡君に対して全力投球の娘達に任せた方が効率が良いと思わないかい?」

 

紫苑「とんだ策士ね、貴方は。よくそんな悪知恵が働くものだわ。」

 

 

失敬なっ!知略に長けてるって言って欲しいよ!

 

 

御影sideout

 

柊side

 

 

結局八幡君には答えを濁されちゃったなぁ………もうっ!あの場で「しょうがねぇな……分かったよ。」って言ってくれれば丸く収まるのにっ!

 

 

涼風「お姉様、どうしましょう?」

 

柊「うぅ〜ん……八幡君はもうこの家の味に慣れてるから食べ物は使えないし、そもそも物欲があまり無いし、私はやっても良いけどあんまり色仕掛けはしたくないし………詰んじゃってる?」

 

涼風「……っ!でしたら涙ながらに懇願するというのはどうですか?」

 

柊「やめておいた方がいいと思うよ?八幡君ってそういうところかなり敏感だし、嘘泣きにしろそういう所も簡単に見破ると思うよ?」

 

涼風「そうですよね………何せお姉様の恋人で未来の旦那様にして、私の義兄になる御方ですから。」

 

 

なぁんか色々と発展してるけど、間違っていないから良しとしましょう!寧ろナイス♪

 

 

柊「でも本当にどうしよっか?さっきは少しおふざけ気味に言ったけどさ、今度は真剣に言ってみたりする?『1度帰るのは構いません、その後はこの家で一緒に暮らしては頂けないでしょうか?』って。」

 

涼風「八幡さんならこの言葉が本心だとお気づきになられるでしょうから、そこは問題ありませんが、受け入れてくれるかどうか、ですね………」

 

柊「うん。だって八幡君だからね、油断できないよ。八幡君だから。」

 

涼風「そうですね、八幡さんなので気は抜けませんね。八幡さんですから。」

 

 

※あの、お2人さん?会話が成り立っ「「黙ってくれる(下さい)?」」………すみませんでした。

 

 

柊「やっぱりお願いするしかないよね、八幡君なら真剣に言ったら真摯に答えてくれると思うし。」

 

涼風「………そうですね。期待していた答えとは違っていても、八幡さんならきっと考えた上での答えをして下さるでしょう。」

 

柊「けどさ、もしもだよ?全く違う答えが帰ってきたらどうしようか?」

 

涼風「………案が浮かびません。」

 

柊「あっ!!その時は八幡君の家に居候するとか!」

 

涼風「お姉様、流石にそれはお止め下さい!居るのは八幡さんだけではないのですよ?我が家なら構いませんが、比企谷さん達が居る中で八幡さんを束縛して良いわけなんてありません!」

 

柊「それはそうだけどさ〜………」

 

 

あ〜ぁ、八幡君が『はい。』って言ってくれればなぁ………そしたらこんな悩まずに済むのに。

 

 

八幡「お前達!まさかさっきの事で何か企んでるんじゃないだろうな?」

 

柊/涼風「八幡君(八幡さん)!?」

 

八幡「さっきも言ったが、俺だって家に帰りたい思いがあるんだ。汲み取ってくれないか?それに最後はお前達の口撃で言えなかったが、1度帰りたいって言おうとしたんだ。その後の事はそれからでも考えられるだろう?」

 

柊「は、八幡君………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答えはすぐ欲しいのっ!そうでないと先延ばしにされちゃう可能性だって捨て切れないんだから!」

 

八幡「俺の恋人がすげぇ必死なんですけど………」

 

 

八幡君、逃がさないからね?

 

 

 



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悪の企て

 

 

葉山side

 

 

ーーー新学期数日後ーーー

 

 

漸く学校に行けたというのに、クラスメイトは俺に何故か余所余所しい。その上、戸部達までもが俺に関わらなくなっている………まぁ俺が少しの間学校に行っていなかったから、皆は俺に気を遣ってくれているんだろう。ここは俺から話し掛けに行こう。

 

 

葉山「久しぶりだな戸部、元気だったか?」

 

戸部「あ、うん、元気だべ隼人君………俺、次の授業の準備あるから。」

 

葉山「あ、あぁ………」

 

 

何だ?妙な態度だったな………まぁ準備があるっていってたしな、他の人にでも話してみるか。

 

 

葉山「久しぶりだね。」

 

「う、うん………」

 

 

 

 

葉山「元気だったかい?」

 

「あ、あぁ……まぁ、な。」

 

 

 

 

葉山「学校はどうだった?」

 

「ボ、ボチボチだったよ………」

 

 

戸部だけでなく、他のクラスメイトや同級生も俺に対して何故かあんな感じだ、一体何故だ?

 

 

ーーー新学期1週間後ーーー

 

 

1週間経っても俺の周りの環境は改善されなかった。皆俺に対して余所余所しい………というよりも避けるような仕草さえある。一体どうしたんだ?何でこんな事をするんだ?

 

そしてその日の放課後………

 

 

「ねぇ、今日も葉山君話しかけてたよね。」

 

「うん、見てた。戸部君もなんか可哀想………」

 

「元グループだからって事じゃない?話しやすいからって理由で。」

 

「やっぱそうだよね〜。けど葉山君って意外と鈍感だよね。自分の噂に何も気付いてないんだもん。」

 

「確かにww最初はさ、すっごいイケメンだって思ってたけど、三浦さんとか相模さんとかのを見ると……ねぇ?」

 

「うん、分かる。顔良くってもさ、やってる事が釣り合ってなかったら流石にないよね〜。」

 

 

………まさか俺が皆から避けられていたなんて思いもしなかった。それどころか悪く言われてるなんて………どうしてだ?どうしてこうなっている!?

 

 

「それに比べたら、同じクラスに居た……えっと、比企谷君だったっけ?」

 

「そうそう!なんか良いよね♪姉の夜十神さんが彼女らしいけど、バカにされた時に怒ったんでしょ?」

 

「詳しい事は分かんないけど、そうらしいよ。彼女の為に本気で怒れるって良い彼氏さんだよね〜!夜十神さん良いなぁ〜。」

 

「いつも一緒に居るもんね!しかもかなり距離近いしっ♪夜十神さんって比企谷君にベッタリだよね〜!」

 

「「キャー!!」」

 

 

どうなってる?は?何で俺の評価が低くて比企谷の評価が高いんだ?おかしいだろ?アイツはただの陰キャのボッチだぞ!そんな奴がどうして俺よりも!!?

 

 

ーーー数週間後・現在ーーー

 

 

この数週間で俺が今どの立場に居るのか、理解した。俺の立場はこの学校の中で底辺に居る。しかもただの底辺じゃない、あの比企谷よりも下の底辺だ!ふざけるな!!俺が比企谷よりも下だと!?きっと比企谷の奴が俺が謹慎になっている間に何かしたに違いない!!俺の悪い噂でも流したんだ!!デタラメだったとしても、アイツの二枚舌ならそれも可能だ!!

 

 

葉山「アイツ………謹慎の期間だけでなく、学校に通うようになってからも俺の邪魔をするのか!!」

 

 

アイツに復讐しようにも、俺はアイツに接触出来ない………それどころか夜十神さん達にも話す事さえ禁じられている。これも比企谷の策略だろう、ずる賢い奴だ。だがどうすればいいんだ?父さんを説得してもきっと無駄だろう……その辺りは厳しい人だからな。

 

 

葉山「やっぱり校内の誰かを味方につけるしか……だが誰が居る?同学年にそんな奴はいない……そうだ、1年生と2年生から探してみるしかないな。」

 

 

まずはサッカー部の後輩達から当たってみよう。そしてもしうまく行ったら他の部の後輩達も取り込もう。

 

 

葉山「それに1年生や2年生なら、俺のデタラメな噂は届いていないだろう。よし、明日から行動を開始しよう。だが行動するにしても目標はどうする?俺は比企谷に復讐できればそれで良いんだが………」

 

 

こんな理由だと後輩達はついて来ないだろう。ましてや俺の人格が疑われてしまう、考えろ………っ!そうだ、あの2人を使えばいい。夜十神さん達は比企谷の弱点だ、あの2人を比企谷から引き離して人質に取れば………はははっ、よし、これで行こう。だが先ずは味方を集める。そこからだな、最初は2年生から当たってみよう。比企谷に何かしら良くない思いを持っている奴がいるかもしれないしな。ソイツはきっと俺の話に乗ってくれるだろう。

 

 

葉山「色々と考えなきゃな、比企谷と夜十神さん達を引き離すタイミングも重要だな。後は………」

 

 

ふっ、こんなに楽しいのは久しぶりだ。夜十神さん達には悪いけど、比企谷への復讐の為に犠牲になってもらうよ。それに君達だって悪いんだ。比企谷に相談に乗って欲しいと頼んだ時、君達にもそう頼み込んだ。だが断った。だから………比企谷と同罪だ。

 

まぁ女の子だからね、傷つけはしないでおくよ。それに、俺の本命は比企谷だ。俺はアイツに復讐できればそれで良い………色々と楽しみになって来たよ。おっと、親にバレないように進めないとね。比企谷にも釘を打てるようなネタを用意しておかなきゃならないしね。

 

 

 

 

 

 



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八幡君成分

 

 

柊side

 

 

柊「………ね〜ぇ八幡君、どうしても1度家に帰らなきゃダメなの?」

 

八幡「どうしても、だ。色々家具とかも買わなきゃならんし、何より俺の部屋だって色々置きたいしな。家帰ったのにベッドの1つも無い部屋なんて寂しすぎるだろ。その為に帰るんだよ。」

 

柊「それってどのくらい?どのくらい居るの?」

 

八幡「そこまではな………家具の届く日にもよるんじゃないか?まぁ最低でも1週間以上は掛かるとは思っとけ。」

 

柊「そ、そんなに!?私死んじゃう!」

 

八幡「前から思ってたが、何で死ぬの?」

 

柊「八幡君成分欠乏症。」

 

八幡「あの内容ガバガバな成分でよく死ねるな。」

 

柊「けど八幡君にだってあるでしょ?」

 

 

………え、俺に?そんな不可解な病気、俺抱えた覚えないんだけど。

 

 

柊「あるじゃん!柊欠乏症!」

 

八幡「………あるかもしんないけどさ、お前程深刻じゃねぇよ。それよりもその成分を補充する為に必要な事って何だ?少し気になる。」

 

柊「簡単だよ♪八幡君にくっつく!」

 

 

………本当に簡単な説明だけで終わらせやがった。よし、こうなったら。

 

 

八幡「そうか、くっつくだけで補充出来るのか。なら頭撫でる必要も無いし、抱き締める必要もないって事か。成る程成る程、後でメモっとこ。」

 

柊「嘘ですごめんなさい!!色々と補充方法あります!!細かく教えるのでくっつくだけは勘弁して下さい!!本当に死んでしまいます!!」

 

 

すげぇ必死さ………どんだけ本気なんだよ。まさか大声を出して否定する程とは思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「ふむ、大体分かった。けどコレって普段やってる事とあんまり変わらないんだな。」

 

柊「八幡君成分は消費が激しいの。だからくっついていないとすぐに無くなっちゃうんだ。近くにいる時はそんなに消費は激しく無いんだけど、離れているとあっという間に無くなっちゃうんだ。」

 

 

前よりも説明できてる。ガバガバじゃない………しかもそういう設定になってんだ。

 

 

八幡「んで?俺が居なくなった時の活動限界は?」

 

柊「………10ぷ「嘘言わない。」うぅ〜!」ウルウル

 

八幡「涙目で睨みながら唸ってもダメ。ここまでよく説明出来てんだから、ほら。」

 

柊「………分かんない。」

 

八幡「………は?」

 

柊「だって八幡君とずっと一緒に居たから、活動限界がどのくらいか分かんないんだもん!」

 

八幡「おいおい、そこも計算しておけよ………」

 

 

………ん?待てよ。前までは金曜日に泊まりに行ってた事を考えれば、一応の目安は4日間。けどその翌日にも一応はくっついてるから………あぁくそ、基準が分からん!何つー厄介な成分だ!

 

 

柊「何か分かった?」

 

八幡「分かるわけ無いだろ………取り敢えずは前みたいにするしかないな。金曜に泊まりに来るって方法。それしかないだろ。」

 

柊「………1日おきは?」

 

八幡「本気で言ってる?そんな事したら俺が大変だわ。そんなハードスケジュールしたくねぇよ。冗談でもじゃなくてもやめてくれ。」

 

柊「うぅ〜………分かった、そうする。」

 

八幡「ふぅ………さて、話し合いも終わったし、そろそろ居間に行こう。」

 

柊「うん、お茶にしよっか。」

 

 

ーーー居間ーーー

 

 

御影「おや、八幡君に柊。お話は終わったのかい?」

 

八幡「取り敢えずは。後で細かい事は教えますね。」

 

御影「柊の事だから、随分と手間取ったんじゃないかい?目に浮かぶしね。」

 

八幡「そう思うんだったらおじさんも説得して下さいよ。どうして俺だけなんですか?」

 

御影「決まってるじゃないか。僕は八幡君の意見を尊重するけど、どちらかと言えば柊側の方だしね。この家に居てもらいたいって思ってるし。」

 

八幡「マジかよ……そんなカミングアウトして欲しくなかったんですけど。」

 

御影「ていうよりも、この屋敷にいる全員が八幡君の滞在を望んでるんだけどね。だって離れてほしくないんだもん!楽しい生活を手放せって、そんな鬼みたいな事進んでする訳ないじゃないか!」

 

 

今の生活が楽しいって思ってくれるのは何よりなんですけど、俺にも選択権はありますよね?

 

 

御影「まぁ僕の心情は置いとくとして、あくまでも君の行動は君で決める事だからね。流石にそこまで縛るつもりはないよ。」

 

八幡「それはよかったです。」

 

柊「ぶぅ〜……お父さんなら味方してくれると思ってたのに〜。」

 

御影「けどね柊、よく考えてご覧。」

 

柊「?」

 

御影「もし前みたいな金曜日に泊まりに来るような生活になったとしよう。そしたら八幡君も柊を甘やかす頻度が増えると思うよ?」

 

 

ちょっとおじさん、何勝手な事言ってんの?あるかもしれないけど、そういうのやめて。

 

 

柊「っ!!」キラキラ

 

 

ほら、期待しちゃってる子が目の前に居るよ!これどうするの!?おじさんまでおばさんみたいな事しないでくださいよ!宥めるの俺なんですから!

 

 

柊「ねぇねぇ八幡君、ホント?ねぇねぇ!」キラキラ

 

八幡「………はぁ、考えておく。それよりも、まずは家が完成して入居しても問題無いか確認する所からだな。そこからだろ、お前の場合。」

 

柊「………八幡君、すぐ帰って来てよ?」

 

八幡「いや、ここはまだ俺の家じゃねぇから。」

 

御影「いやいや、八幡君の家でもあるよ?」

 

八幡「真面目な顔で何言ってんですか?」

 

 



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誓約

 

 

八幡side

 

 

家の完成が近づいて来たからか、柊と涼風がソワソワする事が増えて来たこの頃。それに追加されるように俺への密着度も増している。それは昼休みの事なのだが、普段なら普通に弁当を食べる。それが今となっては、柊が俺の座ってる椅子の半分に座るという暴挙に出たのだ。『少しズレてくれる?』の一言から始まったのだが、それが起爆剤になってしまったのだ。

 

涼風も椅子を近づけてくっついて来るし、2人共平気であーんをして来る。おかげで前までは感じなかった視線が、少し増えた気がするのは気のせいではないだろう。最近少しずつ周りも慣れてくれたのかと思った矢先にコレだよ?頼むよお2人さん、こういうのは帰ってからにしてくれよ。

 

 

八幡「んで、お2人さん?君達はいつになったら俺を離してくれるのかな?コレじゃあ身動き取れなくて困るんだけど?」

 

柊「………八幡君成分の補充。」ギュー‼︎

 

涼風「お姉様と同じです……///」ギュー‼︎

 

八幡「出たよ八幡君成分……なぁ、最近出るようになったソレ、何とかできないのか?」

 

柊「そんなの簡単だよ。八幡君が私達に色々してくれれば良いんだよ♪」

 

八幡「今この状況はダメなのか?俺は今、姉妹2人にとんでもなく密着されながら抱き着かれてるんだけど?」

 

涼風「八幡さん、よく言うではありませんか?力を使うのと使われるでは違うのです。もしこれが八幡さんからしてくれたのであれば、きっと結果は違っていたでしょう………」

 

 

え、遠回しにこうなったのは俺のせいにされてる?

 

 

柊「八幡君からしてくれるのはあまり無いから効果が抜群なの!」

 

八幡「あぁ、そうっすか………まぁそれは良いとして、離してはくれないのか?」

 

柊/涼風「ダメ(です)。」」

 

八幡「ええぇ………」

 

 

さっきからこの調子だ。どうやら俺が2人に色々と仕掛けないと意味が無いらしい………面倒な成分だよ、本当に。誰が作ったんだよ……目の前に居る2人しか居ないよな。

 

 

八幡「じゃあもういいとして、2人に質問する。この行動、これからも続ける予定ですか?」

 

柊「うん、勿論♪」

 

涼風「私もお姉様と一緒、と言いたいところですが、八幡さんのご迷惑になる事はしたくありません。なのでどちらとも言えません。」

 

八幡「一応どちらもする予定、と………さて、そういう事なら家に帰る準備を進めないとな。」

 

涼風「っ!?ど、どうしてですか!?」

 

八幡「いや普通そうなるだろ、流石にこれだけくっつかれると少し鬱陶しいの。もうちょっと節度を守ってくれ。するなとは言わないが、流石にこの1週間ずっとはやり過ぎだ。」

 

柊「で、でも八幡君が遠くに〜………」

 

八幡「行かないから、居るから。こうやってくっつくのは少し控えて欲しい。皆からの視線もあるが、なんか束縛されてるようで少しな………」

 

柊「うぅ……分かった、我慢する。でも家でなら良いんだよね!?」

 

八幡「あぁ、それなら構わない。」

 

涼風「お姉様、少しやり過ぎたのかもしれません。ここは私達が引くべきです。」

 

 

うん、やりすぎの範囲はもうとっくに超えてたよ?自重して欲しいの範囲だったのは明らかだったぞ?あっ、腕を離してくれた。

 

 

八幡「どうもありがとう。コレお礼ね。」ナデナデ

 

柊「んっ………ねぇ涼風、私達って今までとんでもない見落としをしていたのかもしれないね♡」トロ~ン

 

涼風「は、はい……お姉様。八幡さんからのナデナデ、とても良いです♡」トロ~ン

 

八幡「これが欲しいのなら、やり過ぎには注意してくれ。いいな?」

 

柊「うん、分かった。」

 

涼風「はい、分かりました。」

 

 

この時、クラスメイトはこう思っていたという。

 

 

「あの時の比企谷は躾をする飼い主で、2人はそれに従う犬みたいな感じだった。」

 

「言う事を聞かせる飼い主と、従順に従うペット見たいな?そんな風だったよ。」

 

「頭撫でられてる時、なんか夜十神さん達から尻尾と耳が生えていたように見えた………」

 

 

と殆どの生徒が同じように証言している。このやり取りは後に【比企谷調教事変】と呼ばれるようになった。

 

 

八幡「はい、終わり。」

 

柊「ありがとう八幡君♪過充電で一杯だよ〜。」

 

八幡「やらない方がよかったか?」

 

柊「ううん、そんな事ないよ♪」

 

涼風「はい、とても気持ち良かったです……///」

 

柊「だよね〜。これからもして欲しいなぁ〜って思っちゃったよ。」

 

八幡「して欲しければ、それなりの距離感と節度を守るように。それさえ守ってあげれば提供して差し上げましょう。」

 

柊「因みにサービスは?」

 

八幡「……学校では無し。家に帰ったらとりあえずなんか考える方向で。」

 

柊「この条約は締結されました。」

 

八幡「よろしくな。」

 

柊「こちらこそ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涼風「八幡さん、お姉様?今のやり取りは一体なんなのでしょうか?」

 

柊「遊びっぽくなっちゃってたけど、これからの行動についての誓約……みたいな?」

 

涼風「成る程………では今言った事を守れば八幡さんからも支援を頂ける、と言うことで間違いありませんね、お姉様?」

 

柊「うん、そういう事♪」

 

八幡「一応言っておくぞ、やり過ぎ注意な。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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毒の葉は周りを犯す

 

 

八幡side

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

さて、今日の学校も終わりだな。それにしても2人の弁当パワーは凄まじいの一言だ。眠くならない上に目が冴えてるくらいだ。授業にも集中出来るから一石二鳥……いや、三鳥くらいか?そのくらいのレベルだ。おまけに超が付く程美味いしな。

 

 

柊「八幡君、行こっ♪」

 

八幡「あぁ、そうだな。んじゃ「夜十神さん、なんか先生が呼んでたよ〜。」ん?」

 

涼風「それは私ですか?それとも姉ですか?」

 

「2人共だって。なんか少し頼みたい事があるんだってさ〜。」

 

涼風「……仕方ありません、少し行って来ます。」

 

柊「そうだね、すぐ済むと思うし。八幡君、ちょっとだけ待ってもらっても良いかな?」

 

八幡「あぁ、分かった。じゃあこの教室で待ってる。終わったら連絡してくれ。」

 

柊「うん、分かった!」

 

涼風「では、行って参ります。」

 

 

頼み事かぁ……2人にだろ?一体どんな頼み事なんだろうか?難しい事なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー10分後ーーー

 

 

八幡「………遅い。」

 

 

何でだ?遅過ぎる……あの2人がこんなに手間を取るとは思えない。先生はどんな頼み………待て、アイツはただ先生って言っただけだ。どの先生かまでは言ってなかった。まさか………

 

俺はすぐさま携帯のGPS機能を使って2人の居場所を特定した。すると案の定、職員室ではなく、此処からだいぶ離れた場所に居た。

 

 

八幡「まさかっ!!」

 

 

俺はすぐに教室を飛び出た。すると………

 

 

「意外と早かったですね、気付くの。」

 

「いや、10分くらいだし遅い方じゃね?」

 

「15分掛からなかっただけ早い方だろ。」

 

八幡「……お前等、柊達をどうした?」

 

「さぁ?知〜らねっ♪」

 

 

……っ!アイツ、よく見たら宰安の時のスパイしてた奴だ。まさかコイツが………

 

 

八幡「兎に角、行かせてもらうぞ。」

 

「いやいやダメっすよ?大人しくしててくださいよ。そうすれば痛い思いなんてしないんスから。」

 

八幡「……退け、2度は言わねぇぞ?」

 

「5対1ですよ?勝てると思ってんスか?」

 

八幡「数合わせれば勝てると思ってんのか?だったらお前………バカだろ?」

 

「おい、もうコイツやっちまおうぜ?前からだけどさ、段々とムカついて来るんだよ。コイツの顔を見てるとよ。」

 

「もうやっちまうか!先輩、今更謝っても遅いですからね?」

 

八幡「誰がお前等みたいなバカに頭下げるかよ。死んでも下げねぇよ。」

 

 

クソ、ハナからコレが狙いかよ!足止めする事が想定内か!!待ってろよ、柊、涼風!!

 

けどよ………高校生になって初めての喧嘩がコレかよ!!ざっけんな!!

 

 

八幡sideout

 

柊side

 

 

柊「………」

 

涼風「最近大人しいと思っていたら………貴方の仕業だったんですね、葉山さん。」

 

葉山「あぁ、そうだよ。比企谷には随分と借りがあるからね。ここで返させてもらう。」

 

涼風「何が返させてもらうですか!八幡さんが何をしたって言うんですか!?」

 

葉山「決まってるじゃないか………俺を、俺をこんな目に遭わせたからに決まってるだろ?3学期の殆どを謹慎な上に借金まで抱えさせて……新学期が始まったら今度はクラスメイトどころか学年の全員が俺に冷たい!奴が何かしたに決まってるだろ!!」

 

涼風「それは貴方の自業自得です!八幡さんは何もしておりません!」

 

葉山「それを信じろと?あんな奴誰が信じるんだ!?俺が助け舟を求めた時、1度だって助けた事があるかい?いいや無い!それどころか冷たくあしらったりもしていた!誰がそんな奴を信じるんだ?」

 

涼風「それは貴方が誤解をしているだけです。それに八幡さんは貴方が思うような人ではありません。貴方が八幡さんに無理な事をお願いしているからこうなったのではありませんか?修学旅行の事や三浦さんの事だってそうじゃないんですか?」

 

葉山「………君は僕が悪いって言いたいのかい?」

 

涼風「その気が無くても、八幡さんにはそう見えていたかもしれない、という事です。ですが私は八幡さんの行動を否定するつもりはありません。」

 

葉山「………まぁいいさ、別にそんな事はどうでも良い。それに君達はただの人質だしね。安心して欲しい、君達を痛めつけようなんて思ってない。ただ、今頃比企谷はボコボコにされてるだろうけどね。」

 

涼風「っ!!八幡さんに何をしたのですか!!?」

 

葉山「別に?アイツが気に入らない奴に声を掛けたら数人くらい居てね、ソイツ等に思う存分比企谷を懲らしめさせている所さ。奴のボロボロになっている姿を見るのが楽しみだよ。」

 

涼風「あ、貴方は………っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「………ねぇ涼風、目の前いるのってさっきから何言ってるの?」

 

 

私はもう目の前に居るのが誰なのか分からない。ううん、知りたくもないんだけど。

 

 

涼風「じ、実は………八幡さんが今、傷つけられているかもしれないんです!この人の命令で………」

 

柊「………じゃあそこに居る人はもう終わりだよね?だって、その人って葉山君でしょ?」

 

涼風「っ!?まさか見えて?」

 

柊「ううん、見えてないけど、今八幡君にちょっかいを出しそうなのって葉山君くらいでしょ?」

 

葉山「それよりも、終わりっていうのはどう言う事だい?」

 

柊「………」

 

葉山「聞こえてるのかい?」

 

涼風「……貴方の犯した事を貴方のお父様に報告させてもらうからです!聞いている筈です、私達に接触する事を禁じられている事を!」

 

葉山「あぁ、それの事かい?それなら心配ないさ、そこの所は比企谷とじっくり話をして解決する予定だからね。だから此処でゆっくり待とうじゃないか。」

 

 

何を言ってるのか分からないけど、きっと八幡君の事を待ってるんだと思う。けど残念、もう勝負はついてるんだよ。

 

 

 

 

 

 



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葉先の猛毒とうつけ者

 

 

八幡side

 

 

八幡「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

「な、何なんだよ、お前………」

 

「こんだけ殴って蹴ったのに……」

 

八幡「はぁ……はぁ……悪い、なぁ……テメェ等のパンチやキックなんて……痛くも、痒くもねぇんだよ……ゲホッ……プッ!はぁ……はぁ……」

 

 

漸く片付いた……待ってろよ柊、涼風。今、助けてやる……からな。

 

 

「何処……行くんだよぉ!!」

 

八幡「ぐふぅっ!!」

 

「勝手に……終わらし、てんじゃねぇ……まだ終わってねぇんだよ………」

 

八幡「はぁ……はぁ……ぐぅ〜っっ!!」

 

「あぁ!?いい加減倒れろよ!!」

 

八幡「っ!」

 

「なっ!!?」

 

八幡「だから………お前等の攻撃なんて、効かねぇんだよ!!!」

 

「ブフォッ!!」

 

八幡「はぁ……はぁ……もう立ってくんじゃねぇよ、相手にすんの面倒だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生!こっちです!」

 

「っ!!こ、これは………」

 

 

………は?

 

 

「この状況は………どういう事なのか、説明してくれるね?」

 

八幡「今そんな場合じゃないんですよ……早く助けに行かないと、間に、合わなくなる………」

 

「誰の事を言っているのか知らないが、今は説明をしなさい!これはどういう「うるせぇんだよ……」なっ!?」

 

八幡「聞こえなかったのかよ……説明してる無駄な時間なんてねぇんだよ!早く柊達を助けにいかねぇとダメなんだよ………退け。」ギロッ‼︎

 

「っ!」ビグッ!!

 

 

頭の硬い教師だ、平塚先生ならどれだけ良かったか……けど今はそれどころじゃねぇ。

 

 

八幡「はぁ……はぁ……待ってろよ2人共、今行くからな。」

 

 

くそ……身体が重い。けど2人を助ける為ならそんなのどうでも良い。

 

 

ーーー数分後・屋上ーーー

 

 

八幡「此処か………」

 

 

ガチャッ……

 

 

八幡「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葉山「やぁ、随分と良い格好じゃないか。」

 

涼風「っ!八幡さん!!」

 

柊「っ!八幡君!」

 

八幡「おい葉山……1度しか言わねぇ、今すぐ柊達をこっちに渡せ。汚ねぇ手で2人に触るな。」

 

葉山「随分な物言いだね。それよりも君は立場を理解していないようだ。」

 

 

バコッ!!

 

 

八幡「うぐっ!!?」

 

柊/涼風「八幡君(八幡さん)っ!!」

 

「何だよ、良い状態に出来上がってんじゃねぇか。これならサンドバッグにもってこいだ。」

 

「へへへっ、確かに。」

 

 

な、何だ………何が、起きた?

 

 

葉山「一応言っておくよ?あまりやり過ぎないでくれ、俺の番が無くなるからね。」

 

「分かってますよ先輩。ていうかヤバいっスね。ボコれないからやり過ぎるなとかww」

 

八幡「……お前、らしい……やり方だな、葉山。」

 

葉山「?」

 

八幡「自分では……手を、出さねぇで、他人を使う………ゴホッ、小物のお前がやりそうな、姑息なやり方だな………今のお前に、お似合いのやり方だ。」

 

葉山「その姑息なやり方でボロボロにされているのは誰だい?まぁ君はどの道まだまだやられ足りないようだからね、ソイツ等が相手をしてくれるさ。」

 

八幡「はぁ……はぁ……」

 

葉山「君達も初めていいよ、僕はここで2人と見物してるから。」

 

「りょーかいでーす♪」

 

「さて、じゃあやりますよ〜!」

 

「良い声出してくださいね〜♪」

 

八幡「はぁ……はぁ……」

 

 

クソが………身体が上手く動かねぇ。

 

 

バコッ!!ドガッ!!バキャッ!!

 

ガスッ!!ボコッ!!ドゴッ!!

 

 

八幡「………」

 

「おい!!なんとか言ってみろ!!」

 

「やめて下さいとか言ってみろよ!!言うまでやるぞ!!」

 

「黙ってればやめるとでも思ってんのか!!?」

 

八幡「………」

 

葉山「………」

 

「オラァッ!!まだまだ行くぞこの野郎!!」

 

「このクソ野郎、なんとか言えや!!!」

 

「このっ!!オラッ!!んのっ!!」

 

柊「八幡君………」

 

涼風「八幡さん………」

 

葉山「比企谷、2人も心配してるんだ。何か声くらいかけてやったらどうだい?」

 

涼風「っ!!この、下衆………!!」

 

 

………声なんて必要ねぇ。その内、コイツ等も飽きて来る。そこが狙い目だ。

 

 

八幡sideout

 

ーーーーーー

 

 

(全く、何なのだあの生徒は!?あれは確実に彼がやった事だろうにっ!!なのに説明もせずに立ち去るなんて………一体何を考えているんだ!)

 

 

茅ヶ崎「○○先生、先程騒ぎがあったと聞きましたが、収まったのですか?」

 

「校長先生。それが要領を得なくてですね、校内で喧嘩が起きた事までは理解したのですが、その1人の生徒に説明を求めた所で睨まれましてね……そのまま何処かへと行ってしまいました。」

 

茅ヶ崎「ふむ………その生徒の名前は?」

 

「名前までは……私は1年生を担当していますので、ですが特徴なら。特徴的な目とアホ毛の生えている男子生徒でした。それに不可解な事も言っていましたね、『助けに行く。』とか………」

 

茅ヶ崎「………なんて事だ。」

 

「校長先生?」

 

茅ヶ崎「○○先生、今すぐ放送室へと向かって職員全員で比企谷八幡君を探すように呼び掛けてください。これは最優先事項です!急いで下さい!!」

 

「わ、分かりました!」

 

 

茅ヶ崎(まさか夜十神さん達に何かがあった?それに喧嘩が起きているという事は、今も起きているかもしれないという事!!私も探さなくては!!今暫く辛抱して下さい、比企谷君!!)

 

 

 

 

 

 

 



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毒はやがて自身に回る

 

 

八幡side

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

 

『全教職員に通達します!3-A組の比企谷八幡君を捜索して下さい!校長先生からの通達です!繰り返します、3-A組の比企谷八幡君を捜索して下さい!』

 

 

………校内、放送かよ。チキショウ、こうなったらコイツ等が、逃げ、ちまう………

 

 

葉山「教師達が何で比企谷を?」

 

「ちょっと、どうすんですか先輩?教師達コイツの事を探してるみたいですけど?」

 

葉山「………おい、何をしたんだ?」

 

八幡「知る、かよ………俺が聞きてぇくらいだ。」

 

葉山「………フンッ、どうせ大した事じゃないだろう。それよりも………」

 

 

ドゴッ!!

 

 

八幡「うぐっ!!」

 

葉山「クズが………お前さえ居なければこんな事にはならなかったんだ!!」グリグリ

 

八幡「ぐっ、があぁぁ……」

 

葉山「少しでも俺の痛みが分かったか?」

 

八幡「…なん、だよ。爪楊枝でも刺した、のか?」

 

葉山「っ!!このっ!!!」

 

 

ドゴッ!!ドガッ!!ドスッ!!

 

 

葉山「はぁはぁ……ふぅ、どうだい?」

 

八幡「ゲホッ、ゴホッ!はぁ……はぁ……汚ねぇ唾、飛ばすんじゃ、ねぇよ………臭ぇんだよ。」

 

葉山「まだ分からないようだね!!」

 

 

その後も俺は葉山から一方的に暴力を振るわれていた。さっきまで俺に暴力を振っていた連中は遠巻きで俺達を見ていた。

 

 

「先輩!流石にもう行きましょうって!もしかしたらここに向かってるかもしれないんスよ!?」

 

葉山「はぁはぁはぁ………」

 

八幡「が、あぁ………」

 

葉山「全然物足りないけど、今日はこのくらいにしておくよ。忘れるなよ比企谷、俺はお前に復讐する!!お前が壊れるまでなっ!!!」

 

八幡「……壊れ、てる奴が……何言って、やがる………パスタ頭が………」

 

葉山「………そんなに壊されたいのなら、壊してあげるよ。」

 

「ちょっ、先輩!!」

 

「もう行きましょうって!!」

 

「もう限界ですよ!!」

 

葉山「思ったら君に次なんて必要ないな、今この場でトドメを刺した方が良いよね。」

 

八幡「はぁ……はぁ……」

 

葉山「いい様だね、君にお似合いだ。」

 

八幡「言ってろ、クズ……お前こそ、お似合いだ。無駄に背伸びして、バカやってる所がよ。」

 

葉山「減らず口だね、まずはその口から「そうはさせませんよ、葉山君。」っ!?誰だ!?」

 

茅ヶ崎「私に向かって誰だとは心外ですね?」

 

葉山「こ、校長先生!?」

 

茅ヶ崎「さて、どういう事か説明して頂きましょうか?してくれますね、葉山君?」

 

 

葉山(どうしてこんなに早く!?放送があったのはついさっきだぞ!?それなのにこの身体でどうやって!?)

 

 

茅ヶ崎「返事が聞こえませんが、説明はしてくれないのですか?残念ですね………では夜十神さん達から聞く事にしましょう。」

 

「「「………」」」

 

茅ヶ崎「あぁそれと、逃げられるなんて思わない事ですよ。君たちの顔と名前は既に把握しています。今この場からは逃げられても、私から逃げられるとは思わない事です。それに、逃げたところで手遅れでしょうからね。」

 

「ど、どういう事ですか?」

 

茅ヶ崎「入口を見れば分かりますよ。」

 

「「「………っ!!」」」

 

 

入口には教頭を始めとした厚木先生や鶴見先生といった、この学校をよく知る古参の教師が逃げ場を塞いでいた。

 

 

茅ヶ崎「逃げたければどうぞお好きに。その場合、取り押さえさせてもらいますが。さてと………鶴見先生、すぐに比企谷君の治療を。厚木先生は葉山君の様子を見ておいて下さい。もし何かするようであれば遠慮なく対処して下さい。いいですね?」

 

鶴見「はい!」

 

厚木「分かりました!」

 

 

2人は縄で繋がれている状態からすぐに解放された。そしてすぐに俺の方へと向かって来た。

 

 

柊「八幡君っ!!!」

 

涼風「八幡さんっ!!!」

 

八幡「………悪りぃ、カッコ、悪かったな。」

 

柊「そんな事ない!!私達の為に………ありがとう、本当に、ありがとう!」ポロポロ

 

涼風「八幡さんが助けてくださらなければ………どうなっていたか………」ポロポロ

 

茅ヶ崎「どうやら少し落ち着いてからの方がよろしいみたいですね。」

 

 

俺が応急処置を行っている間、次々と教師が屋上へとやって来た。そして次々と校長先生が指示を出していた。俺の家や2人の家、葉山の家、俺に暴力を振るった奴等の家への電話だったり、生徒の取り押さえや監視、そして警察への通報。

 

 

鶴見「随分と痛めつけられたのね………痣ばかりだわ、痛いと思うけど、我慢してね。」

 

八幡「はい。っ〜!」

 

 

俺が治療を受けている間も2人は俺に寄り添っていた。手を握ってくれるのは正直助かった。痛みを我慢するのに少しちょうど良かったからだ。顔も身体もあちこち蹴られたり殴られたりしたからな、何処も彼処も痛い………

 

 

茅ヶ崎「葉山君、私は君に説明をしてもらいたいのだが、それはできないのかな?」

 

葉山「そ、それは………」

 

茅ヶ崎「廊下での喧嘩もそうですが、この屋上での騒動はただの喧嘩ではありませんね?比企谷君が一方的にこんな傷だらけになるのはおかしいですからね。しっかりとした説明をしてくれますね?」

 

葉山「………」

 

茅ヶ崎「まただんまりですか………「あの、校長先生。」ん?君は夜十神涼風さん、でしたね?」

 

涼風「はい、私も断片ながらご説明させて頂きます。まずは「待て、涼風。」っ!は、八幡さん?」

 

八幡「これも、使え。」

 

 

俺は隠し持っていたボイスレコーダーを涼風に手渡した。

 

 

八幡「廊下の喧嘩の時からずっと録音してた。連中の会話も全部入ってる………先生、一応それを証拠にして下さい。」

 

葉山「っ!!?」

 

茅ヶ崎「………分かりました。では夜十神さん、ご説明をお願いします。」

 

 

………漸く、落ち着ける。



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保健室にて

 

 

柊side

 

 

先生達が来て事態が落ち着いてから数分後、私達は今保健室に居る。理由は……分かるよね?八幡君を楽な体勢にさせる為なのと、安静にさせる為だから。鶴見先生が治療してる時に見たけど、顔の怪我だけじゃなく身体のあちこちに痣が出来るほどの大怪我を負っていた。幸いなのは骨折レベルの重傷を負っていなかった事。けどすごく痛々しい姿になってる………

 

それと先生達は私達の親は勿論、今回関係している生徒の元に電話を掛けているらしくて、電話で説明すると同時に学校へ来て欲しいとの連絡も入れているみたい。でも当然だよね、それだけの事をしたんだもの。そして校舎内の駐車スペースにはパトカーが1台停まっている。今校長先生が相手をしているみたい。

 

それから、涼風が八幡君のボイスレコーダーと一緒に事件の事を話してたんだけど、葉山君は当然反論していた。でも、八幡君のボイスレコーダーには葉山君と八幡君の会話がバッチリと入っていたので、反論しても論破されて苦虫を噛み締めたような顔をしながら押し黙る事しか出来ないでいた。

 

 

ガラガラッ!

 

 

御影「八幡君、柊、涼風!!」

 

柊「お父さん……っ!」

 

御影「あぁ、無事で良かった………八幡君、事情はおおよそだが聞いたよ。身体を張って娘達を守ってくれて本当にありがとう!」

 

八幡「いえ、当然の事をしただけです。俺にとって替えの効かない2人ですから。」

 

涼風「八幡さん、動いてはダメです。お身体に障りますからそのままで。」

 

御影「涼風の言う通りだよ、そのままでいいから。楽にしてて。」

 

八幡「……はい。」

 

御影「にしても………まさかこんな暴挙に出るとは思わなかったよ。1度会ってみたいものだよ、その葉山君とやらにね。」

 

 

……お父さんが珍しく怒ってる。普段はこんな風に目付きが鋭くなる事なんて絶対にない。きっとそれだけ今日の事が許せないんだと思う。

 

 

秋乃「失礼致します……っ!夜十神さん、お先にいらしてたのですか。」

 

御影「義息子が心配だったものでしてね、雪ノ下さんもお早いですね。」

 

秋乃「いえ、当然の事です。それに………」

 

葉山父「………比企谷君、それに夜十神家の皆様、この度は愚息が誠に申し訳ございませんでした!!こんな価値の無い頭しか下げられませんが、伏して謝罪申し上げます!!」

 

 

葉山君の父親だ………きっと今日の事を聞いてものすごく責任を感じてるに違いないね。入って来るなりすぐに土下座だもん。けど無理もないよね、あれだけ約束をしてチャンスまでもらってたのに、全て無碍にしちゃったんだもんね。

 

 

御影「………八幡君、柊に涼風。」

 

八幡「……謝罪を受け入れます。それに頭を上げてください。葉山さんが頭を下げる必要なんてありませんよ。下げるのは今回こんな事をしでかした奴等だけで充分ですよ。」

 

柊「八幡君がそう言うなら、私も気にしません。」

 

涼風「私も同じです。」

 

御影「……これが彼等の意思みたいです。」

 

葉山父「………ありがとうございます。」

 

秋乃「私からも謝罪申し上げます。このような事になってしまった事、申し訳なく思っております。もっと比企谷さんにご忠告を申しておけば、このような事態は未然に防げたかもしれません。私の配慮不足もこの事態を招いてしまったものです。」

 

八幡「雪ノ下さんの謝罪も受け入れます。」

 

秋乃「寛大なお言葉、ありがとうございます。」

 

 

そしてそれから数分くらい、少しだけ話をしてからお父さん達は教室へと向かって行った。そこで保護者を集めて説明をするみたい。説明が終わったら一斉に保健室に保護者の人達が来そう………八幡君に暴力を振るった人達も連れて。

 

 

柊「八幡君、寝ててもいいよ?きっとお父さんと一緒に帰ると思うから、それまではゆっくりしてなよ。誰も起こしたりなんてしないから。」

 

涼風「お姉様の言う通りです。八幡さん、今の八幡さんは心身共に疲労困憊の状態なのですからお休み下さい。私達がずっとお側に居ますので。」

 

八幡「……悪いな、実を言うとかなり気を張っていてな。今も少しその状態だ………だから寝るのは無理そうだ。済まんな。」

 

柊「………じゃあさ、こんなのはどう?」

 

八幡「?」

 

 

私は八幡君と握っていた手を離して、頭に手を置いてそのまま撫でた。偶に涼風を撫でるようなやり方………は出来ないから何となく思いついたやり方で撫でてる。八幡君を撫でる事なんて普段無いから………撫で方勉強しないとっ!

 

 

八幡「………」ウトウト

 

柊「いいよ、目を閉じて。気を抜いても大丈夫だよ。今は私達しか居ないから。」

 

八幡「………」

 

涼風「………お眠りになりましたね。」

 

柊「うん。気を張っていたのは本当みたいだね。もうぐっすりだし、八幡君はこのまま起こさないでおこっか。」

 

涼風「はい。」

 

柊「涼風も眠っていいんだよ?疲れたでしょ?」

 

涼風「……いえ、私は結構です。お姉様は大丈夫なのですか?」

 

柊「うん、不思議とね………今はさ、八幡君が気になって仕方ないからさ。」

 

涼風「……はい、同じ気持ちです。」

 

 

今は八幡君を安心させてあげたいから、自分の事は後回しって気持ちなんだよね。でも良いよね?今の君はこんなに傷だらけなんだもん、自分よりも八幡君優先でも良いよね?

 

 

 



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帰ってからも

ウマ娘の新SSRのライスが可愛くて、尊くて堪りません………はぁ、どうしたら良いんだろう?


 

 

涼風side

 

 

八幡さんがお眠りになってから数十分後、先生からの説明が終わったのでお父様が保健室へと戻ってきましたが、同時に多くの保護者の皆様がゾロゾロと保健室へと入ってきました。そして私達に向かって頭を深く下げて謝罪をして来ました。本来ならばこの謝罪は八幡さんにするべき事だと思いますが、今八幡さんはお疲れです。無理に起こすわけにはいきません。なので私とお姉様が代弁者としてお答えしました。

 

とはいえ、これで2回目の方も居たようなので、その方の保護者にはこうお伝えしました。

 

涼風『1度八幡さんのお情けを与えられておきながら、それを無駄にした報いは受けて貰います。前回の事も含めて検討させて頂きます。』

 

と告げると、親は頭を下げたまま『分かりました。』っと、ただ一言そう言いました。親とはいえ少し同情してしまいますが、私が八幡さんなら手心は加えたくありませんから。

 

今はもう家に帰って部屋でゆっくりしています。あんな事があったばかりですので、食欲はありません。今は八幡さんの事で頭が一杯ですから。

 

 

八幡「2人は飯食いに行っていいんだぞ、俺は大丈夫だから。」

 

柊「ううん、八幡君と居る。大丈夫なのは分かるけど、私は八幡君の側に居たいから。」

 

涼風「私もお姉様と同じ気持ちです。私達が八幡さんを放っておけないのです。」

 

八幡「……悪いな。」

 

柊「ううん、このくらい何とも無いよ。それよりも八幡君、何かあったら遠慮なく言ってね?私も涼風も迷惑だなんて全く思わないから。」

 

涼風「八幡さんのご命令であれば、何でも聞きます!遠慮なく言ってください!」

 

 

寧ろ断る理由が何処にもありません!

 

 

八幡「あぁ、助かる。じゃあ最初のめいr……お願いなんだが、いいか?」

 

2人「何でも良いよ(はい、何なりと)!」

 

八幡「喉が渇いたから何か飲み物を持って来てくれないか?アルコールとトマトジュース以外だったら何でも良いから。」

 

柊「じゃあプロテインでも?」

 

八幡「意地の悪い奴が居るから注文を増やそう。フルーツ系のだったら何でもいい。」

 

涼風「では私が持って参ります。お姉様は八幡さんを見ていてください。」

 

柊「了解、任せておいて。」

 

 

ーーー居間ーーー

 

 

紫苑「あら涼風、八幡君の容態はどう?」

 

小町「兄は大丈夫なんですか?」

 

涼風「お母様、小町さん、八幡さんなら大丈夫です。今し方お飲み物の要求がありましたので、持って行くところです。よろしければご一緒しますか?八幡さんなら拒みはしないでしょうし。」

 

紫苑「いいえ、やめておくわ。安否の確認はさっき取ったもの。何度も同じ確認をしたら八幡君だって良い気分にはならないと思うもの。また明日、八幡君に会ってからにするわ。」

 

小町「小町も遠慮しておきますね。今は兄もゆっくりしたいでしょうし。大勢で来られても迷惑になっちゃうかもなので。」

 

 

………お母様も小町さんも八幡さんの事をよくお考えになられているのですね。小町さんも八幡さんがあんな状態だからこそ、しっかりしようとしているのでしょう。いつもと様子が違いますからすぐに分かりました。

 

 

涼風「分かりました。では私は八幡さんからのお使いがありますので。」

 

紫苑「えぇ、八幡君によろしくね。」

 

 

ーーー八幡の部屋ーーー

 

 

涼風「八幡さん、お持ちしました。八幡さんは普段、あまりジュースを飲む所を見た事がありませんでしたので悩みましたが、オレンジジュースで良かったでしょうか?」

 

八幡「あぁ、問題ない。ありがとな。」

 

涼風「いえ、このくらい何でもありません。今お注ぎしますね。」

 

八幡「あぁ、悪いな。」

 

 

八幡(何だろう、召使いとかメイドができたらこんな感じなのか?普通の事なんだろうが、居心地悪いな………やっぱ俺は出来る事は自分でやろう。え、宮間さんとかはどうなんだって?あぁ〜………いつもご苦労様です。)

 

 

涼風「八幡さん、どうぞ。」

 

八幡「あぁ、ありがとな。」

 

柊「飲ませてあげようか?」

 

八幡「いや、大丈夫だ。グラスも持てないくらい怠いわけでもないしな。」

 

涼風「………」

 

八幡「………ふぅ、美味い。目を覚ましてから飲まず食わずだったからな、余計に美味しく感じる。と言っても、食欲があるわけじゃ無いから食べたい欲求は無いんだけどな。」

 

涼風「食べたら止まらなくなってしまうのではないですか?今はそう感じてはいても、そうなるかもしれませんよ?」

 

八幡「かもな。」

 

柊「じゃあ重湯でも作ろっか?」

 

八幡「俺はそんなに重傷じゃねぇよ……しかも気を失ってから数ヶ月後の患者でもねぇんだ。そんな奴に重湯もお粥も必要ないだろ。せめて普通の食事にしてくれ。」

 

柊「じゃあ軽食にして持って来る?」

 

八幡「いや、食欲は「八幡君、さっきは何も言わなかったけど、食べれるなら食べた方がいいよ?その方が傷の治りだって早くなるんだから。」………じゃあ、頼む。」

 

柊「はーい♪じゃあ今度は私が行くから、涼風は八幡君をよろしくね♪」

 

涼風「はい、お姉様。」

 

 

………あっ、お姉様の作るお料理にジュースは合うでしょうか?

 

 

 



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慎重

 

 

葉山父side

 

 

秋乃「………大変な事になってしまいましたね、葉山さん。まさか隼人君がこんな事を実行するとは。もっと賢い子だと……いえ、これ以上は酷ですね。」

 

葉山父「いえ、雪ノ下さんの仰る通りです。アイツは………隼人はとんでもない事をしました。比企谷君からの情けを無碍にして、あまつさえ夜十神さんの御息女の誘拐だけでなく恩人への暴力沙汰を引き起こすなんて………」

 

秋乃「………比企谷さんはああ言っていましたが、心底ではどう思っているか分かりません。それよりも問題は………」

 

葉山父「はい、夜十神さんですね?」

 

秋乃「ただ立っているだけなのに、とてつもない怒気を感じました………下手な事を言えば首が絞まる所ではない程の雰囲気でした。」

 

葉山父「えぇ、私も感じました。それに今回の謝罪、比企谷君と御息女の許しの言葉を頂きはしましたが、夜十神さんからは何も頂いていません。これは暗に許すつもりはない、と捉えた方がいいでしょうね。」

 

秋乃「えぇ、その方がいいでしょう。その矛先が隼人君から我々に向いたら………」

 

葉山父「えぇ……考えたくもない事ですね。」

 

 

まさか半年も経たない内にこんな事が起きるなんて思わなかった。これならもっと監視をつけるべきだった………いや、今はやらなかった事を後悔しても意味はない。今後どうするのかを決めなくてはな………

 

 

葉山父side

 

陽乃side

 

 

陽乃「とまぁそういうわけで、今はお母さんとおじ様の2人で対談中。頭抱えてると思うよ、身内がこんな事をしでかしたんだからね。」

 

八幡『それは雪ノ下さんも同じなのでは?』

 

陽乃「まぁね………けどさ、君はどう思ってるの?学校ではお母さんやおじ様を許したみたいだけど、本音は?」

 

八幡『アレが本音ですよ、嘘偽りのない。俺が許せないのは葉山だけですから。柊や涼風をあんな目に遭わせた葉山だけは許しませんよ。まぁでも、俺が許したとしてもおじさん……御影さんが許しそうにありませんけどね。』

 

 

お母さんも言ってた、夜十神さんからは何も言葉を頂けなかったって。今ので確信に変わったよ、確かにこれは何が起こるか私にも分からないよ。

 

 

八幡『一応こっちでもおじさんにどうするのか聞いてはみますけど、あまり期待はしないでくださいね?俺もおじさんのあんな姿は見た事ありませんし、どんな返答が返って来るのかも予想つきませんので。』

 

陽乃「うん、分かった。あっ、その事ってお母さん達には………」

 

八幡『伏せておいた方がいいでしょうね。それを言って余計な反応や行動をされても困りますからね。俺達だけの話で。』

 

陽乃「そうだね。また隼人みたいにでしゃばられても困るだけじゃ済まされないしね。」

 

八幡『それじゃあ、もう切りますね。俺も休みたいので。』

 

陽乃「うん、ありがとうね。連絡寄越してくれて。身体を大事にね。」

 

 

………ふぅ。取り敢えず私は比企谷君からの連絡を待つしかないかなぁ。それまでは動かずに静かにしてよっと。きっとお母さんも慎重に行動するようにって言われるだろうし。

 

 

陽乃「さて、次は雪乃ちゃんに連絡かな。一応、伝えておいた方がいいだろうしね。」

 

 

陽乃sideout

 

八幡side

 

 

八幡「………それで、結局どうするんですか?」

 

御影「うん、僕も少し悩み中でね。それに気持ちの整理もできてないんだ。例え雪ノ下建設じゃないにしろ、それに深く関わっている人達の起こした事だからね。この前は前向きに友好関係を築こうとは思っていたけど、こうも連続で裏切られるとね………」

 

八幡「こう言ったらズルいと思われちゃいますけど、森崎の件のように収めるわけにはいかないんですか?いや、俺も森崎と同じで葉山を許すつもりなんてありませんけど、親はそんな人じゃないですから。」

 

御影「理屈では分かってるんだけどね………」

 

 

こりゃおじさんもかなり悩んでるみたいだ。まぁ雪ノ下建設と提携できなかったからといって、おじさんの会社にデメリットは今の所特に無い。そこだけを考えるのなら別に切っても構わないだろうが、おじさんの考えている事はどうやらそれだけではないらしい。

 

 

八幡「まぁでもおじさんの好きにしたら良いと思いますよ。向こうでもおじさんの出方次第みたいですしね。漸く関わりを持てた関係を切られたくないでしょうから、きっと必死になるとは思いますけど。」

 

御影「八幡君、君も意外と人を見てるよね。」

 

八幡「人間観察が趣味なので。」

 

御影「今の言葉、僕の祖父にそっくりだよ。祖父も『人っていうのはよぉく観察すれば、本性が見えるものだ。よぉく観察するんだぞ。だから俺の趣味は人間観察なんだ!』って豪語してたしね。」

 

八幡「流石、異端児って呼ばれてただけはありますね。俺そんな人に出会ったのかぁ………」

 

 

今思うだけでも不思議体験だよなぁ………もう2度と体験する事なんてないだろうけど。死者との対面なんて何度もあっていいもんじゃないだろうし。

 

 

御影「まぁ、僕も僕なりに考えてみるよ。八幡君も色々と相談相手になってくれると助かるよ。」

 

八幡「相談くらいならいいですよ。ただし、俺に決定権とか委ねるのやめて下さいね?」

 

御影「最初から釘を刺す辺り、八幡君も段々と駆け引きが上手になってきたよね。」

 

 

居候のように泊まりに来たり、3ヶ月も住んでたらこうもなりますよ。今もおじさんが家に持って帰って来てる仕事を偶に見てるんですから。

 

 

 

 

 

 



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留置所、そして話し合い

 

 

葉山side

 

 

ーーー留置所ーーー

 

 

葉山「………」

 

「葉山先輩、アンタのせいですからね。あんたがあの時アイツなんかにかまけて無かったら、今頃俺達はこんな所にいなかったのに。」

 

葉山「俺のせいだって?それなら俺に付いてきたお前等が悪いんだろう?責任転嫁はやめてくれるかい?全部自己責任さ。」

 

「自己責任ね………じゃあ葉山先輩が捕まってんのも自己責任ってヤツですか?」

 

葉山「俺のは違うさ………全てアイツの、比企谷のせいだ。アイツが余計な事をしなければこんな事にはならなかったんだ。全てアイツのせいだ!!」

 

「んだよ、結局ソレかよ………もうなんでも良いわ、結論俺達はついて行く相手を間違えたって事だよな、お前等?」

 

「あぁ、本当だな。自分の事しか考えてねぇ奴についてったのが間違いだったわ。」

 

「それがコレだ、冗談じゃねぇよ………」

 

葉山「煩いから静かにしてもらえるかい?悪い頭が移るから。」

 

「へいへいそりゃすいませんでしたね、比企谷先輩以下の葉山先輩〜。」

 

葉山「お前っ!!!今なんて言った!!?俺がアイツに劣るわけがない!!」

 

「煩いっスよ先輩、悪い頭が移るんで静かにしてもらえます?」

 

葉山「お前ええぇぇぇ!!!」

 

警官「おいお前っ、何を騒いでいる!!静かにしろ!!此処はカラオケじゃないんだ!無意味に騒ぐなっ!!」

 

 

俺が比企谷に劣るだとっ!?そんなわけあるか!!あんな奴に俺が負けるわけがない!!勉強や運動、顔だってアイツよりも上だ!!それなのにアイツは………!!!

 

 

「すいません警官さん、俺達っていつまでここにいれば良いんですか〜?」

 

警官「まだ決まっていない。事件が起きたばかりなんだ、そんな早くに出られるわけが無いだろう。」

 

「やっぱりかぁ〜………」

 

警官「それにしても、最近の高校生っていうのは一体どうなっているんだ?恐ろしいよ。」

 

「それってどういう事っすか?」

 

警官「君達が来る前にも、2人この留置所に居たんだよ。まぁその2人も今は塀の中に居るんだけどな。収まったと思ったのに、まさかこんなに大量に来るとは思わなかったよ………千葉の高校生って、本当にどうなってるんだ?」

 

「あぁ〜………なんつーかすんません。」

 

警官「君、謝るくらいなら悪い事なんてするんじゃないよ………まぁでも、少し気は楽になった。」

 

「へへっ!まぁ1番悪いのはそこで黙ってる金髪の人なんですけどね。」

 

葉山「なんで俺なのかな?」

 

警官「あぁ〜やっぱりね、だと思ったよ。」

 

葉山「………どういう意味ですか?」

 

警官「以前に捕まった2人も君と同じような性格……というよりも言動をしているのを覚えているよ。意味の分からない事を言ったり、独り言を言ったり、とね。まぁ今回は人が居るから独り言は無いだろうけどね。一言で表すのなら歪んでいる、とでも言うのかな。」

 

 

俺が歪んでいる?何をバカな事を言ってるんだ、この警官は?あたまがおかしいんじゃないのか?

 

 

「歪んでる、ですかぁ………違いないですね。」

 

「全くだww」

 

「お似合いじゃないっスかぁ〜、ねぇ?」

 

葉山「お前等、今すぐその煩い口を閉じろよ………耳障りだ。」

 

「おぉ〜怖っ、別にいいけど。」

 

「けどさ警官さん?これで分かったでしょ?あの先輩あんな反応するって事は図星って事ですしね。自覚あるんですよ〜。」

 

警官「君達「黙れっ!!!それ以上言ってみろ、タダじゃ済まさないぞ!!」おい、静かにしろ!!君もこれ以上は彼を煽るな!落ち着かせるのに一苦労だ。」

 

「すみませ〜ん。」

 

警官「はぁ………君も一々彼等の言葉に反応するな。何も出来ないだけの時間が過ぎるだけだ。大人しくしていなさい。」

 

葉山「………余計なお世話です。」

 

警官「………まぁいい、これ以上騒ぎを起こさないように。」

 

 

くそっ、アイツ………外に出たら覚えていろよ、比企谷の次に叩きのめしてやる!!

 

 

葉山sideout

 

葉山父side

 

 

葉山父「………雪ノ下社長、私は雪ノ下建設の顧問弁護士の任を降りようと思っています。」

 

秋乃「………それはどうしてでしょう?」

 

葉山父「今回の一件がもし世間に晒されようものなら、雪ノ下建設の立場も危うくなります。愚息の犯した事は、私の手で鎮めたいのです。それに、雪ノ下社長からは充分なお力添えをして頂いたのに、それを活かせないどころか無駄にしてしまいました。このような弁護士は必要ないでしょう。」

 

秋乃「………」

 

葉山父「せめて息子のしでかした尻拭いは、私の手でしたいのです。」

 

秋乃「………でしたら私からも遠慮なく言わせて頂きます。顧問弁護士の解任は認めません。貴方はこれまで通り、我が社の顧問弁護士でいて下さい。」

 

葉山父「な、何故………」

 

秋乃「隼人君を止められなかったのは私の責任でもあります。あの場に呼んで説明さえしなければこうはならなかった、違いますか?」

 

葉山父「………」

 

秋乃「葉山さん、貴方だけではないのです。私も間違いを犯しました。なのでお1人で背負うのではなく、共に同じものを背負わせてください。」

 

葉山父「………ありがとう、ございます。」

 

 

………私には勿体ない程の方だ、この人は。

 

 

 



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暖かい反応と大人事情

 

八幡side

 

 

事件から数日、俺は怪我の具合も少し良くなったので登校する事にした。顔にはガーゼや絆創膏、身体には包帯やらがまだ巻かれている状態だが、激しく動かさなければ何ともないから大丈夫だ。

 

葉山の事だが、事件のあった次の日に公表されたようだった。流石に問題にならないわけもなく、取材陣やらが押し寄せてきてたらしい。誰がやったのかは公表していない為、葉山さんの所は無事らしい。だがこれも時間の問題だろう。

 

そして生徒の間でも持ちきりだったらしい。柊と涼風から聞いた話では驚愕していた人が殆どだったらしいが、納得した人も僅かながらいたらしい。多分その人は元2-F組の生徒だろう。三浦とか戸部とかの元葉山グループなら予想できてそうだしな。

 

まぁそんなわけで俺は今し方、教室に着いたわけなんだが………

 

 

「比企谷君大丈夫?先生から聞いたよ?リンチにあったって!」

 

「葉山の奴、まさかこんな事するなんて思わなかった!マジ最低な野郎だ!」

 

「手伝える事があったら言ってね!」

 

「夜十神さん達も何かあったら、遠慮なく言って!協力するから!」

 

 

クラスメイトがこんな風に迎えてくれた………柊も涼風もこんな風にされた事がなかったからか、少し驚いた表情をしている。まぁでも、いつもは3人で事足りてるから問題はないと思うが、困った時にでも頼らせてもらおう。

 

 

八幡「まぁ早々に困る事があるとは思えないけどな。まっ、その時は頼らせてもらうか。」

 

柊「そうだね。八幡君は体育の授業、見学?」

 

八幡「そうだな。歩く程度なら問題ないが、運動となるとまた別になる。身体の怪我が完治したってわけじゃないしな。まぁ見た目で分かると思うが。」

 

涼風「ですが、前に比べて大分良くはなりました。これも看病の効果ですね、お姉様!」

 

柊「うん!真心と愛情を込めた看病が抜群だったんだよ♪」

 

八幡「うん。まぁそれは分かるんだけどさ、もう少しだけあの過保護な看病って何とかならないのか?アレじゃあ俺、束縛されてるも同然なんだけど?」

 

柊「だ、だって八幡君に痛い思いさせたくないし、安静にしてなくちゃって………」

 

涼風「それにあの時は私達がなんとかしなければと思っていたもので………」

 

 

………うん、謝ろう。

 

 

八幡「そ、そうか……ありがとな、俺の為に。」

 

柊「ううん、八幡君元気なら良いの♪」

 

涼風「八幡さんのお元気な姿を見られるだけで、私は嬉しいのです!」

 

 

現金な姉妹だって思っちまうが、この前あんな事が起きたばかりだから無理もないよな………

 

 

八幡sideout

 

御影side

 

 

御影「………」

 

紫苑「………」

 

尚人「………」

 

凛「………」

 

秋乃「………」

 

葉山父「………」

 

宮間「………」

 

都築「………」

 

 

………さて、取り敢えず向こうがどう考えているのかを聞こうか。

 

 

紫苑「御影、落ち着きなさい。此処には葉山隼人君は居ないのよ、そんなオーラ出すものじゃないわ。今日は話し合いで来たのよ?」

 

御影「理屈では分かってるんだけどね、どうにも収まってくれなくてね………無意識なんだ、申し訳ないけど我慢してくれるとありがたいよ。」

 

紫苑「……すみません、主人のコレはどうもコントロールできないみたいなので。」

 

葉山父「いえ、夜十神さんのお怒りは尤もです。それだけの事を私の息子はしてしまったのですから。私は気にしません。」

 

秋乃「私も葉山さんと同じです。それよりも夜十神さんと比企谷さんは今後の我々の行動をお聞きになりたいと思っていると思いますので、そこからお話ししたいと思っております。」

 

 

ふむ……話が早くて助かるね。

 

 

葉山父「先ずは我が愚息の件ですが、愚息については一切の弁護や擁護は致しません。私達葉山家は愚息と絶縁をする事に致しました。そして今回、ご迷惑をお掛けした夜十神さんと比企谷さんに賠償金をお支払いする予定です。金額につきましては今後のお話で決めて頂ければ結構です。」

 

尚人「それは我々で決めろと?」

 

葉山父「私に決定権はないと判断しました。そちらの納得のいく金額で構いません。」

 

御影「………」

 

秋乃「我々雪ノ下家も少なからず責任ある立場にあります。なので我々も賠償金をお支払いする算段でいます。」

 

凛「私達はそれでも構いませんが、夜十神さん達はどう思っていますか?」

 

御影「………」

 

紫苑「……私はそれでも構いません。きっとこれは主人も考えている事だと思います。なので代弁して申し上げます。今回の件、お2人に何かをしてもらおうとは思っていません。私達としては、友好な関係を育んでいきたいと考えています。」

 

 

………なぁんだ、やっぱり紫苑には全部お見通しかぁ〜。流石だよ、本当に。

 

 

葉山父「そ、それは一体どういう………」

 

秋乃「はい、理由をお聞かせ下さい。」

 

紫苑「………御影。」

 

御影「……分かりました、簡単に説明しましょう。理由は簡単です。私は貴方達から謝られる理由がないからです。この事件の原因は葉山さんの息子さんです、私は彼からの謝罪が欲しいわけではありませんが、八幡君や娘達をあんな目に遭わせた彼がどうしても許せないのですよ………親の葉山さんでも雪ノ下さんでもなく、彼がです。なので私は貴方達をどうこうしようとは考えておりません。なので賠償金については我々は不要です。それに、雪ノ下建設さんとは八幡君が紹介してくれたおかげで巡り合った縁なのです、それを険悪のまま終わりにしたくないというだけです。」

 

 

八幡君のした事を無駄にしたくないしね!ここで縁を切っちゃったら、八幡君のした事を無駄にしちゃうもん!それは僕の本意でもないしね。

 

 

御影「では、気を楽にしながら話し合いを進めていきましょうか。」

 

紫苑「御影、貴方が場の空気を乱しておきながらそんな事言わないでくれる?」

 

御影「雰囲気作りって大事だと思わない?」

 

紫苑「程々にしなさい、いいわね?」

 

御影「………はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




都築「とても苦労なされているのですね。」

宮間「普段はとてもユーモアな方なのですが………」

都築「アレで、ですか?」

宮間「奥様やお嬢様方には勝てないようなので。」

都築「………」


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話し合いの末と家帰りの予定

 

 

八幡side

 

 

八幡「成る程、じゃあ裁判は決まり次第行う形になったんですね?」

 

尚人「葉山さんや雪ノ下さんもそれを望んでいるみたいでな。それに少年法というものがあるだろ?それによると、17歳も18歳もあまり大差が無いらしい。だから成人年齢である18歳になるのを待ったとしても、そんなに内容が変わるものではないらしい。」

 

紫苑「けれど天之川さんの所とはちょっと違うパターンになりそうなのよ。天之川さんの場合、事件の内容が内容だから子供でも普通の刑務所に無期懲役刑で収容されているけど、葉山さんの場合は暴行、誘拐、恐喝、大体これが当てはまるのだけど、これでは普通の刑務所ではなく、少年刑務所に収容されるのよ。だから刑期も10年から20年の間くらいになるの。」

 

 

成る程、つまりは今の葉山では天之川みたいにするのは難しいって事か。もし刑期を終えて出て来た時、また俺を狙う可能性も捨て切れないよな。確かにそれは考えものだ。

 

 

柊「でも今の安全を考えるなら、その方が良いって事ですよね?」

 

尚人「あぁ、決断は早いに越した事はないと思ってね。我々と葉山さん、雪ノ下さんと話し合った結論だよ。」

 

八幡「……まぁ俺は親父達がそう決めたのならそれでいいと思ってる。色々ケチつけて先延ばしにしても意味ないだろうしな。」

 

柊「私も八幡君がいいなら………」

 

涼風「私もです。」

 

御影「そっか………一先ず安心だよ。当事者である君達にも決める権利があるからね。まぁ決定権は親の僕達にあるわけだけど、君達の意見も重視するつもりだったからね。」

 

八幡「ありがとうございます。けど俺はアイツを潰せればそれで良いので。」

 

柊「………」

 

涼風「………」

 

紫苑「八幡君、それはもしかして………」

 

八幡「はい。俺は裁判でも遠慮なくやらせてもらうつもりです。アイツには色々と振り回されましたのでね、まぁボイスレコーダーがあるのでそんなに出番はないと思いますけどね。」

 

 

まぁ本当に少ないと思うけどな、俺に出来る事なんて。挙げられるとしても、火事で家が全焼した事を学校で暴露された事くらいだろうしな。

 

 

ーーー八幡の部屋ーーー

 

 

八幡「あのさ、看病はもういいよ?」

 

柊「ダ〜メッ、まだ完全に治ってないんだから看病は必要なのっ!大人しくしててっ!」

 

八幡「いや、でもな?「デモもデマもデンマークもないのっ!じっとして!」いやデンマークは知らんがな………」

 

涼風「八幡さん、ダメですよ?患者が生意気言ってはいけません。」

 

八幡「アレ、俺って患者なの?」

 

涼風「当然です。ご自身の身体を見てから言ってください。その身体を見て一体誰が平気だと言うのですか?」

 

八幡「けどな涼風「ケドもケバブもケニアもありません。患者は大人しくしてるのが仕事です。」俺はアフリカの人間じゃねぇよ。それにサバンナ出身でもねぇよ。」

 

 

何この姉妹?国の名前出しちゃって………

 

 

八幡「分かったよ、大人しくしてるから手短に頼むぞ、美人看護師さん?」

 

柊「はぁ〜い♪」

 

涼風「かしこまりました。」

 

八幡「あっ、少しだけスマホを操作「「ダメだよ(です)、八幡君(さん)。」」………は、はい。」

 

 

ですが患者には厳しいようで。いや、愛が深いっていうのかな?こういう時は。

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

柊「ねぇねぇ八幡君、さっきスマホで何しようとしてたの?調べ物?」

 

八幡「あぁ、まぁな。お前達がデンマークやらトルコやら言ってたから少し気になったから調べようと思ってな。涼風なんてケバブなんて言ったから驚いたぞ。少し食いたくなった。」

 

涼風「は、八幡さんが言い訳をしようとするからです!そ、それに言い始めたのはお姉様からではありませんか!」

 

八幡「いや、だとしてもインパクトはお前の方があったからな?国の場所と食べ物マッチしてたし。」

 

柊「じゃあ私も合わせた方が良かった?」

 

八幡「いや、アレはアレで良いからそのままで。ていうか涼風を真似るな。」

 

 

だって『デ』から始まる料理って何がある?デンプン?そもそも料理じゃねぇ………もうやめよ、考えるの。

 

 

柊「でさでさ、話は変わるんだけどね?八幡君達っていつ家に帰るの?」

 

八幡「………え?」

 

 

な、何だ?なんか少し声が低かったような………

 

 

柊「八幡君が家に帰っちゃったら看病出来ないよ?お夕飯とか朝御飯を食べさせる事も出来ないよ?八幡君って元の家にいつ帰るの?」ハイライトオフ

 

八幡「(あらヤダ、柊さんったら病んでらっしゃるようで………)いつ帰るかはまだ決まってないな………帰るにしても家具とか生活用品とか揃えてからじゃないと住めないし、まだ完成間近ってだけだからもう少し掛かるも思うぞ。」

 

柊「じゃあまだこの家に居るの!?」キラキラ

 

八幡「(うわっ!?今度は眩しくなった………)そ、そうだな。もう暫くは、な………」

 

涼風「八幡さん、お部屋の家具をお選びになる際は、私達を呼んで下さいね?お部屋のコーディーネートや【ベッド】の事でも色々と相談に乗れると思いますので!」

 

 

………おい涼風、お前はなんでベッドの部分を強調した?家具で良かったよね?何でベッドだけ単体で言っちまったの?

 

 

 

 



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八幡の帰路と裁判の結果

 

 

柊side

 

 

月日は流れて1ヶ月、とうとう八幡君達が元の家へと戻ってしまう時が来てしまった………私にとっては悪夢のような時間の始まりだった。え?今までの時間ってもしかして夢だったりしないの?現実?あっ、もしかしたらこれから始まるのが悪い夢の時間なんだよね!うん、そうに違いない!

 

 

涼風「お姉様、1人で百面相をしないで下さい。」

 

柊「何さ涼風ってばっ!私はこの日が来て欲しくないって思ってたのに、ついに来ちゃったんだよ!?私達がどれだけこの数日間、八幡君を説得し続けたと思ってるの!?」

 

涼風「お姉様、私はお姉様程しつこくした覚えはありませんが?」

 

御影「柊は食事中の時も八幡君を説得してたよね〜。『この家にずっと居て〜!』とか『卒業して住む所が決まるまで此処に居て〜!』とか色々言ってたよね。」

 

柊「私知ってるんだからね!涼風が八幡君に『行っちゃイヤです、此処に居て下さい。』って言ってたのと『私も八幡さんの家に住みます!』って言ってたの知ってるんだから!」

 

涼風「お、お姉様!?ど、何処でそれを!?」

 

柊「お父さんだって八幡君に会社のノウハウとかの知識を教えるのを口実に家に留めさせようとしてるの知ってるんだからね!」

 

御影「え!?あの話は僕の部屋でしてた筈なのにどうして柊が知ってるの!?」

 

 

八幡君に関しての事なら知らない事はないもん!八幡検定1級合格してるもん!

 

 

八幡「そういうお前が1番しつこいのは自覚あるのか?柊お姉様?」

 

柊「………だって八幡君に行って欲しくないんだもん。しょうがないじゃん………」

 

八幡「そうだとしても、これまで通り週末にはこっちに来るようにするから。毎週は無理でも「毎週、コレ絶対!」いや、それは無理だって……「毎週です!」いや、だからな?「八幡君、待ってるからね!」おじさんまでやめてもらえます?」

 

紫苑「はぁ………御影も貴女達も何してるのよ。」

 

八幡「まともなのはおばさんだけで「それじゃ八幡君は来てくれないわよ?断れないように誘わなきゃ。」……アンタが1番ダメなパターンだった。」

 

柊「八幡君、行っちゃヤダよぉ〜………」

 

八幡「大袈裟だな………今生の別れじゃないんだぞ。明日学校で会うだろうが。」

 

涼風「ではその間の時間はどうしろというのですか!?八幡さんと会えないその間は!?」

 

八幡「そんな事を俺に言われてもなぁ………兎に角、家に帰る事はもう決まって言ってたんだから、俺はもう行くからな。」

 

涼風「うぅ………」ウルウル

 

柊「くぅ〜ん………」ウルウル

 

八幡「そんな目で見るな。後柊、お前はいつから犬になった?明日学校までの辛抱だからそのくらい頑張れよ。」

 

 

そして八幡君達は私達の説得を何度も止めた後に家の方へと車を走らせて行ってしまった………

 

 

ーーー居間ーーー

 

 

御影「2人共、行ってしまったものは仕方ないんだから元気を出しなさい。前から言っていたんだからしょうがないだろう?」

 

紫苑「そう言って貴方も引き留めてたじゃない?」

 

御影「………だって行って欲しくなかったのは事実だったんだから仕方ないだろう。」

 

柊「お母さんももっと言ってくれればよかったのに………そしたら八幡君も「ならないわよ、そんな風には。」ぶぅ〜………」

 

紫苑「それにいいじゃない、八幡君にだって自由になる時間が必要よ。ずっとこの家に住んでた頃は2人が八幡君にベッタリだったじゃない。だから八幡君に少しは自由を与えなさい。自分の都合ばかり押し付けてたら、行き違いがあったりするわよ?」

 

 

むぅ〜………けどお母さんの言う事も一理ある。そうだよね、八幡君も1人になりたい時だってあるもんね。うん、少しは我慢しないといけないよね。

 

 

紫苑「そうね………今週と来週は泊まりに来させるのを控えさせましょうか。ゆっくりしてもらう為にもね。それでいい?」

 

柊「そんなことされたら私死んじゃう!!」

 

紫苑「死なないわよ。」

 

涼風「お母様、2週間は長過ぎます………」

 

紫苑「いいえ2週間よ。それに事が収まって漸く落ち着けるのよ?張り詰めた空気が漸く溶けたのだから、リフレッシュの時間も必要よ。」

 

 

お母さんの事が収まったっていうのは、気味の悪い幽霊とその他の8人の事。少し前に裁判が行われて結果が出たの。6人は少年院で2年懲役、その内の2人は前にも八幡君に危害を加えたとして刑務所で5年の懲役が決まった。そして気味の悪い幽霊だけど、反省の色無しと静粛の合図を聞かない、弁護士の証言の邪魔をする、八幡君の証言を何度も否定する等をして、暴行罪、誘拐罪、恐喝罪、殺人未遂、そして留置所の態度や裁判所での態度が重なりに重なって、八幡君を刺した人と同じで無期懲役の執行猶予無しになった。だからずっと刑務所の中で過ごす事になった。

 

しかもその人の投獄先は北海道の網走みたい。少年院の6人は県内にある所で、5年懲役の2人は宮城の刑務所に収監されるみたい。

 

 

柊「分かった、我慢する!ただし、お母さん達もこっそり会いに行くのは無しだからね!抜け駆け禁止!これが条件!!」

 

紫苑「貴女が1番やりそうだけどね。」

 

 

しないもん!!絶対に………し、しないもん!!

 

 



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婚約

 

 

八幡side

 

 

あれからまた数ヶ月が経ち、季節は夏となって8月を迎えている。夏休みに突入して今はその中間くらいだ。課題も既に終えていた俺は柊とデートをする、というのもあったのだが、おじさんに頼み込んで会社で働かせてもらっている。勿論コネなんて使わずにちゃんとした理由を言ってだ。おじさんを含めた役員達との面接も行った上での採用だ。

 

なので俺はバイトという形で働かせてもらっているわけだが、何故かおじさんの元で働く形になってしまっている。普通は色々な人達に教わりながら仕事をしていくのだと思っていたのだが、おじさん曰く『君はいずれこの会社を背負っていく存在だから、僕の側で教えていこうと思ってるんだ。』というわけだ。

 

なので一応は納得したが、おじさんの作業スピードはとんでもないぐらい早く、最初の3日なんてついて行けもしなかった。漸くついて行けるようになったのは5日目くらいで、それでもかなりやっとの思いだった。そしてこれはおばさんが言ってた事なんだが『御影のスピードについて行けるだけ凄い事よ。普通の人ならこのスピードは絶対無理なんだから。』という事らしい。

 

 

御影「いやぁ〜八幡君も大分作業が速くなってきたよね。関心関心♪」

 

八幡「よく言いますよ、最初からハイスピードで教えてたくせに。まぁそのおかげでスピードがついたのは事実ですけど。」

 

御影「八幡君なら出来るって分かってたしね。けどたったの5日間で僕について来るとは思わなかったよ。八幡君も中々凄いよ。」

 

紫苑「貴方は加減を知らないのよ………まぁ、八幡君にはその必要も無かったみたいだけど。普通の子なら絶対に音を上げてるわよ?」

 

 

おばさん、俺が普通じゃないみたいな言い方やめてくれませんかね?普通の人間ですからね?

 

 

御影「あぁそうそう、八幡君。この食事が終わって僕の部屋で仕事をする前に話があるんだ。大事な話だから時間を空けておいてくれるかい?」

 

八幡「他に予定はないので大丈夫です。」

 

御影「うん、ありがとう。一応紫苑も同席するからそのつもりでね。」

 

 

なんの話だ?

 

 

御影「うん、今日の献立も美味しいね♪」

 

八幡「はい。」

 

 

ーーー社長室ーーー

 

 

八幡「………それで、大事な話っていうのはなんですか?」

 

御影「うん、単刀直入に言うよ。八幡君、君は8日の誕生日で18歳になるでしょ?だからその日に柊と婚約を交わして欲しいんだ。」

 

八幡「………え?」

 

御影「君が驚くのも無理はない、急な話だからね。けどこれは僕達も真剣でね、他に悪い虫がつかないように考えると、これが1番だと思ってね。」

 

八幡「えっと、あの………」

 

紫苑「勿論本当の結婚はまだしないわ、ただの婚約よ。2人が良いってなった時に結婚してもらって構わないから、今は形だけでもいいからお願い出来ないかしら?」

 

八幡「あぁ〜なんていうか………俺、そのつもりだったんですけど………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御影/紫苑「え?」

 

八幡「いや、この前泊まりに来た時に………」

 

 

ーーー回想(夜十神邸・八幡の部屋)ーーー

 

 

柊「んふふ〜♪」

 

八幡「何度も思うけどよ、飽きないのか?」

 

柊「全っ然♪八幡君と一緒に居るのは私の幸せでもあるんだよ〜♪」

 

八幡「そうか、なら良い。」

 

柊「………ねぇ八幡君。」

 

八幡「うん?どうした?」

 

柊「えっとさ、八幡君は8月の8日の日が誕生日でしょ?もし八幡君さえ良かったら、私と婚約だけでもしてくれないかな?その方が私も嬉しいし、お父さん達も「いいぞ。」安心して……いいの?」

 

八幡「あぁ、お前がそうしたいのならな。俺も断る理由なんてねぇし、将来的にも結婚するつもりだったんだろ?まぁ、俺もそう見据えてたからな………少し早い結婚の前準備だと思えば良いだろう。」

 

柊「………八幡君ありがとう!!」

 

八幡「いいんだよ、気にするな。」

 

 

ーーー回想終了ーーー

 

 

八幡「っていう事があったんですけど………もしかして柊からは何も聞いてませんでしたか?」

 

御影「………」

 

紫苑「………御影。」

 

御影「うん、紫苑。」

 

御影/紫苑「帰ったら柊を問い詰める。」

 

八幡「あ、あの……言わなかった俺も悪いので、程々にお願いします。」

 

御影「いやいや、こんなにも大事な事を言わなかったんだからしっかりと、みっちりと聞かせてもらうよ。言い訳があるならたっぷりと聞かせてもらうとするしね。」

 

 

柊、どうやらおじさんとおばさんが少しご立腹みたいだ………一応止めてはおいたからな?

 

 

紫苑「まぁ柊の件は後にして、八幡君は柊との婚約は前向きと言うことで間違い無いのね?」

 

八幡「はい、俺は反対しません。寧ろ柊の婚約を断ったら次は誰かいるのかと聞きたいくらいです。」

 

御影「それなら居るよ、涼風がね。」

 

 

あ、そうだった………

 

 

御影「でも君からその言葉が聞けて嬉しいよ。後は君のご両親ともお話をしてから正式に婚約だね。いやぁ〜僕も漸く義息子が出来るのかぁ〜♪」

 

紫苑「はぁ………御影、はしゃぐのは分かるけれど程々にね?でもそうね………肩でも揉んでもらおうかしらね?」

 

 

おばさん、貴女も充分なくらいはしゃいでます……

 

 



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ポンコツと世界に1人だけ

 

 

柊side

 

 

紫苑「それで柊?申し開く事は?」

 

涼風「お姉様、流石に私もそれはフォローに回れませんからね?」

 

御影「言い訳を聞こうじゃないか?」

 

柊「本っ当に申し訳ございません!」

 

 

私は今、目の前にいる両親と妹に頭を深々と下げて謝罪をしている。理由は………八幡君との婚約するという約束をした事を黙っていた事です、はい。

 

 

御影「全く、八幡君からはするっていう返事を貰えたから良かったけど、まさか事前にその約束をしていただなんて思わなかったよ。しかもその報告を忘れるだなんて………柊、いつからそんなにポンコツになってしまったんだい?」

 

柊「ポ、ポンコ「本当です、その日はそのまま寝てしまったから仕方ないにしても、その次の日にはお父様にご報告をしておけばよかったではありませんか。そこまで頭が回らなくなってしまう程、ポンコツになってしまったのですか?」だ、だからポン「サプライズだったら分かるけれど、どうして忘れられたのかしら?変な物でも食べてしまったのかしら?」う、うわあぁぁぁん!!八幡君〜、皆が酷いよ〜!!家族が皆して私の事イジメる〜!!」

 

八幡「あー……まぁ俺も皆さんには言ってなかったので、すみません。」

 

御影「八幡君はいいんだよ、気にしなくても。」

 

紫苑「そうよ、八幡君は謝らなくてもいいのよ。」

 

涼風「お姉様が忘れていたのが悪いのですから。」

 

柊「ちょっと!何で私と八幡君とでそんなに反応が違うのさっ!?」

 

御影/紫苑/涼風「何か問題でもあるのかな?(あるの?)(あるのですか?)」

 

柊「………無いです。」

 

八幡「ま、まぁそんなに柊を責めないで下さい。俺も忘れていたんですから、それでおあいこという事にしてもらえませんか?それに俺だって自分の家族には報告してないので。」

 

御影「………」

 

八幡「俺は18になった時に家族に言おうと思ってますので。それまでの間、少しだけ待っててはもらえませんか?」

 

 

は、八幡君………

 

 

紫苑「八幡君はそのつもりだったのね……分かったわ、誕生日が来たら親に報告をしなさいね?」

 

八幡「はい。」

 

御影「まぁ君のご両親だから心配はないと思うけど、もし反対された時は………僕が何が何でも八幡君を獲りに行くから心配しないでね♪」

 

 

八幡(何だろう、今【とる】っていう部分のニュアンスが致命的に違ったように感じるんだが………)

 

 

八幡「まぁ大丈夫だとは思いますけどね。」

 

涼風「八幡さんはお姉様とのご婚約に抵抗は無かったのですか?他意があるわけではありませんが、随分とすんなり受け入れられていると思いましたので。やはり見据えておられたのですか?」

 

八幡「まぁ、な。普段の柊を見ていればそんな事はすぐに分かる。それに柊は障害が出る前もそうだったが、あまり男には寄りたがらなかったからな。恋人である事も込みで考えると、本気なんだと感じてはいた。」

 

柊「当然!!だって私は中学3年の時から八幡君にしか興味無かったもん!他の男の人なんて知〜らないっ!!私にとって八幡君が全部だもんっ!!」

 

御影「ははは……どうやら愚問だったようだね。」

 

涼風「はい、そうですね。」

 

柊「私と八幡君は切っても切れない、伸ばしても千切れない、撃ってもはね返す、潰しても押し返せるくらいの強い絆と愛で繋がってるんだよ〜?そんな私達を誰も引き裂けるわけないじゃん!」

 

 

寧ろやれるものならやってみるといいよ!後悔するのは自分なんだからさっ!八幡君にかかれば刑務所送りなんてチョチョイのチョイなんだからっ!!

 

※柊さん、その発想はちょっと………

 

 

紫苑「ふふふっ、貴女達の仲が相変わらずのようで何よりだわ。」

 

涼風「うぅ、羨ましいです………」

 

柊「幾ら可愛い妹でも、八幡君はあげないからね?八幡君は私の旦那様なんだから♪」

 

涼風「そんな事分かっています!」

 

御影「しかし、そうなったら涼風は「私は独身を貫きます。」え、えぇ……けど結婚は「八幡さんと同等かそれ以上の殿方が居るのであれば少しだけ考えます。」………参ったねぇ、そんな子なんて何処にも居ないじゃないか………」

 

 

うん、絶対に居ないよ?八幡君よりも上の人間なんて居るわけないじゃん。

 

 

八幡「いやいや、俺よりも優れた人格の人なんて探せば居るでしょう。」

 

柊「ふぅ〜ん?じゃあ八幡君は1人イジメられている子を1人で助けて、それ以外の人達には目も暮れずに居られる人は居るって言うんだ?私はそんな人、八幡君しか知らないなぁ〜………」

 

八幡「………多分居るって。」

 

柊「そんなレアな人間、この世界中何処を探しても八幡君しか居ないよ!!そんな事出来る人なんて八幡君以外には居ません!!」

 

八幡「そこまで言うか?」

 

紫苑「えぇ、断言するわ。この世でそんな人は八幡君しか居ないわ。」

 

御影「うん、そうだね。八幡君だけだね。世界中を探しても八幡君しか居ないね。」

 

涼風「はい、八幡さんしか居ません!なのでもし、八幡さんがこの世に2人居るとしたら、私は迷わず八幡さんに猛アプローチしてます!」

 

 

そうだよね〜涼風も八幡君の事大好きだもんね〜。それに分かってる?今の涼風、目がキラキラしてるよ?流石にダメだからね?八幡君はこの世に1人しか居ないんだよ?

 

 

 



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八幡side

 

 

8日の誕生日、俺は改めて両親に柊との婚約について説明をした。ウチの両親は基本あまり俺達には干渉してこないが、向こうの家族の事も知ってるわけだから一応説明はしておいた方がいいと思ったわけだ。そしたら………

 

 

尚人『ん?婚約?良いんじゃないか?』

 

凛『私も賛成よ。文句無いわ。』

 

 

……っとこのようになんとも軽い返事で了承を得た。俺は真剣に考えていないと思って、夜十神家のサイン済みの婚姻届を両親に出した。

 

俺が『ならここにサインをして欲しい。』と言うと、何の躊躇いもなくサインをしてから印を押した。こうして両家公認の婚約者となった俺達は、一応形だけでもそういう風にした方が良いとおじさんから提案されて、今現在指輪専門店………ではなく、この前俺が原石を見てもらった店に来ている。目的はペアリングを購入する為だ。

 

 

馬場「この子が貴方の子なのね〜………あんまり似てないわね。」

 

御影「余計なお世話だよ。娘達は母親似なんだ、僕と柊の似てる所なんてそんなに無いよ。強いて言うなら性格くらいさ。」

 

馬場「あらそう?なんか意外ね、この子そういう風には見えないけど?」

 

御影「信頼してる人にしか自分の素は見せないんだよ、だから人前では大人しいの。」

 

馬場「ふぅ〜ん……まぁいいわ。それで、今日は何しに来たの?比企谷君も一緒みたいだけど?」

 

御影「あぁ、ペアリングを作って欲しいんだ。」

 

馬場「………何?結婚できない私への冷やかし?」

 

御影「違うから!この2人が婚約したから形だけでもそういうのが必要だと思ったからだよ!なんで僕が友人の君を冷やかさないといけないのさっ!」

 

馬場「結婚指輪じゃないの?なんでペアリングなのよ?御影の事だからどっちも同じようなものじゃないの?」

 

御影「変な虫を寄せつけないようにする為だよ、娘は美人だし、八幡君もかっこいいしね。」

 

八幡「お世辞をどうも。」

 

柊「お世辞なわけ無いじゃん!八幡君は本当にかっこいいもん!八幡君がかっこよくなかったら、この世界の人類なんて、醜い人ばかりだよ?」

 

 

おい、全世界の人になんて事言うんだこの娘は?

 

 

馬場「とりあえず了解したわ。じゃあ2人共、少し付き合ってもらうわよ。指のサイズとかデザインとか色々あるから。」

 

八幡「お、お願いします。」

 

柊「お手柔らかに………」

 

 

そして俺達は指のサイズを測った後にデザインとか色々と決める為に話し合っていたのだが、馬場さんが「見せつけているのかしら?」と言ってきたので少しだけ怖かった………勿論そんなつもりなんてこれっぽっちもなかったが、馬場さんから見ればそういう風に見えていたのかもしれない、なんかすみません………けど、平塚先生みたいな人って居たんだな………皆さん、ここにも貰い手の無い人が居ますよ。

 

 

ーーー喫茶店ーーー

 

 

御影「作成には3日くらい掛かるって話だから、それまではのんびり待とうか。それと、此処は僕が持つから好きなのを食べると良いよ。僕もお腹が空いているしね。」

 

柊「お父さんって凄くフットワーク軽いよね。嬉しいけどさ、娘と義息子の為にこんなに早く動けるものなの?普通の家じゃ無理じゃないの?」

 

御影「まぁ普通の家なら無理だろうね。けど八幡君は………柊も分かってるでしょ?普通の家の生まれでも八幡君はその枠には当てはまらない。」

 

柊「うん、それは私も同じ想い。」

 

八幡「え、何がです?」

 

柊「要するに、八幡君になら早過ぎるくらいの行動をしても問題ないって事〜♪」ダキッ!

 

八幡「そういうものなのか?」

 

御影「君の事はよく見てきているつもりだからね、だからどういう人間なのかは理解しているつもりだよ。もし八幡君じゃない人が柊の恋人だったら、こんなに早い行動はしないさ。」

 

 

褒められているのだろうが、むず痒いな………

 

 

柊「それよりも八幡君、何食べよっか?」

 

八幡「そうだな………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫苑「成る程、それで完成は3日後なのね。」

 

御影「うん、だから夏休み明けの学校には間に合いそうだよ。良かった良かった♪」

 

柊「うんうん♪私も堂々と八幡君とお付き合いしてますってアピール出来るしねっ♪」

 

涼風「お姉様、羨ましいです………」

 

八幡「ま、まぁ涼風にもその内「現れません、八幡さん以外の男性なんて。」………」

 

 

今に思った事ではないが、涼風って意外と一途だよな。だって俺以外に良い男が居ないって言う程だし。いや、頑固の方が正確か?

 

 

紫苑「けれど高校は大丈夫なの?アクセサリーの装着なんて。」

 

八幡「多分大丈夫でしょう。髪染めやカチューシャをつけるの認めてるのなら、指輪くらいでどうこう言わないでしょう。ループタイだってつけてた奴居ましたしね。」

 

 

今はムショの中だけど。

 

 

御影「まぁつけて何か言われたら婚約の事を話すといいよ。別に隠してるわけでもないしね。」

 

柊「うん、そうする〜♪」

 

紫苑「柊ったら、帰ってきてからずっとこの調子ね………余程嬉しかったのかしら?」

 

御影「まぁ、形とはいえそういう証みたいなものだからね。そうなんじゃないかな?」

 

 

婚約、かぁ………実感湧かねぇなぁ〜。

 

 

 

 



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新しい旅路

 

 

御影side

 

 

はぁ〜………まさかこんなにも早く感じるとはねぇ。感慨深いものだよ、ホントに。

 

 

紫苑「ちょっと御影、何してるのよ?」

 

御影「ん?あぁ、ちょっとね。何かさ、ここまで来るのにかなりの障害があったと思うけど、何気に乗り越えてきたんだよなぁ〜って。」

 

紫苑「そうね………確かに色々あったわね。」

 

御影「けど、なんかそれも含めて今日の為にあるって思ったら、悪くないのかもしれないなぁって思うのは僕だけかなぁ?」

 

紫苑「奇遇ね、私もよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「お父さん、それにお父さんを呼びに行ったお母さんも何ベランダで黄昏てるのさ………」

 

御影「え!?あぁいやコレは………」

 

紫苑「色々あったって思い出していただけよ。」

 

柊「それよりも手伝ってよ!1人だと大変なんだから!八幡君が来る前にセット完了しておきたいんだから!」

 

 

ホント、早いって思うよね?そう思わない?けどさ、これが親の気持ちなんだよね………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

娘が結婚するってこんなに幸せなんだね………

 

2人が高校と大学を卒業して、僕の会社に入社してから3年。漸く2人は入籍した。八幡君が婿入りするという形だが、八幡君は全く抵抗していなかった。寧ろそれが当たり前かのような反応だった。

 

高校、大学共に2人にちょっかいをかける人達は予想通り居た。中には事件沙汰に発展する事もあったが、全て解決している。大学を卒業して僕の会社に入社してからも、多くの業務をこなしてくれている。八幡君は紫苑の右腕、つまりは秘書の補佐役として。柊と涼風も八幡君の両腕として腕を奮っている。

 

え?下からの研修はしなかったのかって?当然したよ?けどね?3人の作業スピードが異常なくらい早くて仕事が無くなっちゃうくらいだったんだよ。1番忙しい部署に配属したつもりだったのに、3人の上司が僕に「僕では扱いきれません!!」って泣きつく程だったんだ………あれは3人に対する僕の過小評価だったよ、ごめんなさい。今ではこの会社に欠かせない程の人材に成長している。因みに次の年には役職を与えるつもりなんだ。管理職の皆を実力で黙らせちゃうんだもん、こりゃ参ったもんだよね。

 

 

コンコンコンッ

 

 

八幡『入っても大丈夫ですか?』

 

柊「は、八幡君っ!?もう来たの!?」

 

八幡『あぁ、俺は準備できてるんだが………柊の方はまだ時間掛かりそうか?』

 

涼風「大丈夫ですよ八幡さん、今ちょうどお姉様も準備が終わりましたから。」

 

八幡「そうか?じゃあ入るぞ。」

 

 

八幡君は僕達の居る部屋に入ってきた。八幡君も柊と同じ純白のタキシードを着て万端だった。そして八幡君は娘の姿を見て固まっていた。

 

 

柊「ど、どう……かな?」

 

八幡「………今までそんな姿見た事なかったから、マジの感想で言うと………すげぇ綺麗だ。」

 

柊「っ!………あ、ありがとう///」

 

御影「八幡君もタキシード、よく似合ってるよ。うん、この晴れ舞台に相応しい姿だよ。」

 

八幡「ありがとうございます。」

 

 

………ふふっ、お邪魔虫は退散しとこっかな。

 

 

御影「じゃあ八幡君に柊、時間になったら出ておいでね。待ってるから。」

 

紫苑「遅れないようにね?」

 

涼風「お待ちしています。」

 

 

流石は僕の妻と娘だ、すぐに僕の考えている事を読んでくれる。

 

 

御影sideout

 

八幡side

 

 

突然2人きりにされた俺達。だが今は2人にされたとしても、そんなに困らなかった。不思議と心に余裕がある。

 

 

柊「……なんか変な感じだね、こんな格好で話すのって。そう思わない?」

 

八幡「あぁ、そうだな。けど、不思議と緊張はない。お前と居るから、かもな。」

 

柊「うん、そうかも。」

 

八幡「なんか……思い返すのも面倒なくらい、色んな事があったよな。」

 

柊「うん………そうだね。」

 

 

それから俺達は一緒の部屋で思い出話に耽っていた。そして………

 

 

『新郎新婦さん、間もなくお時間です!』

 

八幡「時間みたいだな。」

 

柊「うん。じゃあ………」

 

八幡/柊「行こうか(行こっか)。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それでは、新郎新婦の登場です。拍手でお出迎え下さい。』

 

 

俺と柊は拍手で迎えられる中、敷いてあるレッドカーペットの上をゆっくりと歩き、神父のいる元へと歩いていく。

 

 

神父「ではこれより、婚礼の儀を行う。」

 

八幡「………」

 

柊「………」

 

神父「汝、夜十神柊は比企谷八幡を夫とし、喜びの時も、悲しみの時も、健やかなる時も、夫に永遠の愛を捧げる事を誓うか?」

 

柊「はい、誓います。」

 

小苑「汝、比企谷八幡は夜十神柊を妻とし、喜びの時も、悲しみの時も、健やかなる時も、妻に永遠の愛を捧げる事を誓うか?」

 

八幡「誓います。」

 

 

当然だ。

 

 

神父「であれば双方、指輪の交換を。」

 

 

隣からは係の人が指輪を乗せたトレイを持って来て、2人の側までやって来た。因みにこの指輪だが、俺が高校生の時に伊吹山で神様から貰った水晶で作られている。

 

 

最初は柊が、そして後に俺が柊に指輪をはめた。

 

 

神父「………では最後に、誓いの口付けを。」

 

 

八幡「………」

 

柊「………」

 

 

俺は柊の両肩を優しく掴んで、少しずつ柊の唇に自身の唇を近づけていった。そして………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神父「2人の人生に祝福を。」

 

 

 



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幸せの為に

今回で最終話となります!!


 

 

八幡side

 

 

俺と柊が結婚して5年の歳月が経った………俺は今、おじさんの……違うな。義父さんの右腕、つまりは副社長として働いている。会社に入って8年目で副社長………とんでもない速さでの大出世だ。因みに義母さんは副社長を解任された後、義父さん専属秘書兼相談役となり、柊と涼風は俺の専属秘書となった。いや、考えてみたら本当にスゲェぞ?俺の役職図。

 

 

1年目…一般社員

4年目…課長補佐(途中から課長)

6年目…常務

8年目(現在)…副社長

 

 

いや何これ?普通じゃねぇよ………俺も一応言ったんだよ?義父さんや義母さんには『普通の社員と同じ扱いにして欲しい。』って口酸っぱくして。けど2人や上層部の人間が………

 

『いや、もう3人を普通の社員としてみるのは限界なので、ていうかこっちに仕事来る前に殆ど終わってる状態が殆どだから、逆に仕事を下さいって思うくらいです。』

 

 

………という事だった。いや、俺達は自分達に出来る事を最大限にやっただけなのだが、どうやらそれが今回の大出世に繋がってしまったらしい。やり過ぎってダメなんだって身に染みた。そして今の会社の業績は義父さんによると鰻登りの状態らしい。俺達が入ってきた年からだそうだ。義父さんの話では、スマホやPC画面での操作方法を効率化、商品レビューの欄に使用した事のある社員がいればその人の感想を挿入、大雑把に言うと社内の仕事効率を底上げにより全体の作業スピードの底上げ、との事だった。俺達、大分やらかしてたんだなって思ったわ。

 

そして今、柊は育休の為仕事は休んでいる。その代わり、涼風が俺につきっきりでサポートしてくれているから、かなり助かっている。だが思う事がある、副社長の仕事ってこんなに少ないのか?それとも俺がまだ平の時にこなしてた仕事量が異常だったのか?きっと後者だろうな、うん。

 

 

涼風「八幡さん、本日のノルマは達成です。おめでとうございます。」

 

八幡「え、もうか?少な過ぎないか?」

 

涼風「八幡さんは明日、明後日、1週間も先に行う予定の業務を先倒しでやってしまわれるので、業務が残らないのです。なのでハッキリと申し上げます。今後の業務、並びにお仕事は………資料が来ない限りはありません。」

 

八幡「マジかよ………注意してたつもりなんだがな、やり過ぎは注意って。」

 

涼風「今更です、八幡さん。」

 

八幡「みたいだな。しょうがない、見回り兼社内歩きでもして来るか。」

 

涼風「畏まりました、お供致します。」

 

 

これが仕事モードの涼風だ。人前だったら俺の事を副社長って呼ぶが、今は2人だからいつも通り名前にさん付けで呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、夜十神副社長!お疲れ様です!!」

 

「お疲れ様です!!」

 

八幡「いや、そのままでいいですよ。仕事を続けてください。」

 

「どうされたのですか?こんな所にわざわざ副社長がお見えになるなんて………何か不手際でも?」

 

八幡「いや、そんなのじゃありませんよ。自分の業務がひと段落したので、社員の様子を見に来ただけです。迷惑かもしれませんけど。」

 

「とんでもありません!!」

 

 

いつもながら思う、俺より年上で倍くらい勤めているこの人にこんな風にされるのって、少しだけ罪悪感ある。本当ならこの人の方が上の筈なのに。

 

 

「しかし、副社長も入社した時からの癖は治っていないようですね。」

 

八幡「ははは、ですね………心掛けてはいるんですけどね。無意識に忘れちゃってるみたいで。」

 

涼風「副社長の悪い癖です。いつの間にか私の行う筈だった業務にまで手をつけていましたから。」

 

八幡「それは悪かったって言ってるだろ………」

 

「ははははっ!若い頃を思い出しますなぁ!」

 

 

ーーー退社時刻ーーー

 

 

御影「お疲れ様、八幡君に涼風。今日も無事に仕事を終えられて良かったよ。」

 

八幡「お疲れ様です、義父さん。義母さんも。」

 

紫苑「えぇ、お疲れ様。さっ、早く帰りましょう?家で愛妻と椿が待ってるわよ。」

 

八幡「はい、そうですね。」

 

「旦那様、奥様、若旦那様、涼風様、お車の準備できております。」

 

 

ーーー夜十神邸ーーー

 

 

「「「お帰りなさいませ、旦那様、奥様、若旦那様、涼風様。」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「おかえり、皆。それに……あなた♪」

 

八幡「あぁ、ただいま。」

 

椿「パパお帰り〜♪」

 

八幡「おぉ〜椿、良い子にしてたか?」

 

椿「うん!あっ、おじいちゃん達もお帰りなさい!お仕事、お疲れ様っ!」

 

御影「っ〜!!挨拶が出来て偉いなぁ〜椿は!!流石はおじいちゃんの孫だっ!!」

 

椿「えへへ〜。」

 

 

………遺伝、だろうなぁ〜こういう所は。

 

 

柊「ほら皆、着替えてご飯にしよう?椿も皆と一緒に食べるってずっと我慢してたんだから。」

 

紫苑「あら、じゃあ早く着替えないとね。」

 

 

ーーー八幡&柊&椿の部屋ーーー

 

 

八幡「ん?あれ………椿は?」

 

柊「宮間さんのお手伝いするって張り切ってた。まだ4歳の子供なのにね。」

 

八幡「ははは、そう言ってやるな。宮間さんからしてみれば曾孫も同然の年だからな。」

 

柊「ふふふっ、そうだね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊「ねぇ、八幡。」

 

八幡「ん?」

 

柊「私の事、好き?」

 

八幡「おいおい、何だその質問?」

 

柊「あははは〜。」

 

八幡「分かりきった答えだろ?好きなんかじゃ収まらないくらい、お前の事を愛してる。」

 

柊「それに嘘はない?」

 

八幡「お前に嘘なんてついた事ねぇよ。冗談は何度もあるけど。」

 

柊「じゃあもしかしたら冗談かもしれないから、本当っていう証拠が欲しいなぁ〜。」

 

八幡「………あぁ。」

 

 

俺は柊の顎に手を添えて、柊の唇に俺の唇を合わせた。たった数秒の口付けだが、心が満たされる。

 

 

八幡「……どうだ?」

 

柊「うん、八幡の本気、よく分かったよ。そうじゃなきゃ、こんなに胸が一杯にならない………私も八幡の事、すっごく愛してるよ!」

 

八幡「………あぁ。」

 

 

ドンドンッ

 

 

椿『パパァ〜ママァ〜まだお着替え〜?』

 

八幡/柊「………ぷっ!」

 

八幡「ははははっ!」

 

柊「ふふふふっ!」

 

八幡「じゃあ、行くか。」

 

柊「うん、あなた♪」

 

 

俺は妻の、柊のこの笑顔をずっと守る。そして俺達の椿もずっと守っていく。この先何があろうと、何人たりとも、俺達の幸せを壊させはしない。

 

 

八幡「ごめんな〜椿、じゃあ行くか!」

 

椿「うん!」

 

柊「手を繋いで行こうね。」

 

 

この幸せがずっと続きますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺、実は彼女がいるんだ………完

 

 

 

 

 




皆様、これまでのご拝読、誠にありがとうございます。この300話を持ちまして、【俺、実は彼女がいるんだ………】は完結致しました!!

作品を書き始めた当初はここまで長くなるとは思っていませんでしたが、自分の悪い癖なのか話数だけを稼いでしまいまして………しかしこうして完結できたのも皆様のおかげです、ありがとうございました!!

次回作なのですが………まぁ、アレです。自分、競馬が好きなのは知ってらっしゃる方もいると思います。そして今、サイゲのすんごいアプリが2月にリリースされたじゃないですか?まさにそれを書こうと思っています。(ウケるかどうかは別ですけどねww)

なので次回は【ウマ娘プリティダービー】を主軸とした投稿をしていきたいと考えてます。ちょっと悩んでいる部分もありますが、そこは皆様にアンケートでお聞きしたいと考えています。

3度目になりますが、【俺、実は彼女がいるんだ………】のご拝読ありがとうございました!!

次回作にまたお会いしましょう!



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