艦これ《思い付くままに……》 (屋根裏散歩)
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第一章 あなたの知らない世界!
鎮守府七不思議 ①《工廠の謎空間》


心霊というよりは過去の犯罪の跡が暴かれただけですね


第六話

 

鎮守府七不思議

 

その①《工廠内の隠し扉》

 

「ねえ提督、私が普段いる工廠に七不思議の一つが有るって知ってました?」

 

私が青葉とその手の話を集めていると知った明石が執務室へとやってきて話し始めた。

 

「初耳です……」

 

青葉も知らない様だった。

 

「明石さえ問題なければ、話を聞かせてくれ」

 

青葉がボイスレコーダーの準備をしていた。

 

「青葉いい?」

 

明石が青葉に確認した。

 

「オッケー」

 

青葉の返事を聞くと明石は話し始めた。

 

「それじゃはじめます、隠し部屋と思しき場所に気が付いたのは着任してからすぐの頃でした」

 

明石は一呼吸置くとまた話しだした。

 

「工廠の事務所と給湯室が2階にあって…そしてその直下は窓も扉も無い壁で囲われた空間という造りに疑問を感じた私は超音波探査装置で空間の内部を調査してみることにしました……結局其処には何も無い空間が有るだけでした……ですが不思議な事に窓や扉と思しき陰影が映し出されていたのでした」

 

私は明石の調査結果に疑問を感じた。

 

「……つまり元あった部屋の外周に囲いをして入れないようにしているという事か、だが誰が何の為に…」

「はい……ただ何故そんなようにしているのかは解りません」

 

明石も解らないようだった。

 

「昼から執務もないから、探索してみるか……」

 

私の提案に青葉と明石が同意した。

 

「そうですね、しましょう」

 

ーーーーーーーーーー工廠前ーーーー

 

「提案、こっちです」

 

私は明石に案内されて問題の場所にやって来た。

 

「ウ~ン、確かに事務所下は……」

 

私は工廠の内と外から観察した。

 

「明石の言う通りの、かなり広い部屋が隠されていてもおかしくない……というか隠されているのか」

 

私が辺りを探索していると夕張もやって来た。

 

「提督、やっぱり気になります?」

「まぁな」

 

私は、悩むのを止めると明石に指示を出した。

 

「明日、早朝より謎空間の外壁の撤去作業を開始する」

 

明石と夕張が明日からの準備の為に散っていった。

 

「青葉、何が出るか分からない……長門と陸奥に近接戦闘装備をさせておいてくれ」

 

私の追加指示に青葉も動いた。

 

「装備はM-4にマスターキーでいきます」

 

そして翌日…明石の用意した重機により外壁が剥がされた……。

 

「おいおい、かなり広い部屋だな」

 

私の言葉通り、窓ガラスに飛散防止のテープが貼られた埃の舞う部屋が姿を現した。

ただ問題はそこではなかった……床一面に散らばった深海棲艦の艤装の残骸と血痕に混じった何らかの液体だった。

 

「この匂いって…」

 

明石がその何かを見抜いた。

 

「この匂い……血と…精液?……」

 

そんな時だった、工廠長妖精がやってきた。

 

「見つけちまったのか……嬢ちゃん、提督、こうなったら全てを話す」

 

そう言うと工廠長妖精はポツリポツリと話し出した。

 

「何だと!」

 

私はその話の内容に驚いた。

 

「そんな事が!」

 

同様に明石、夕張、長門、陸奥も驚きを隠せなかった。

 

「深海棲艦捕虜の拷問……前任の提督はそんな事を」

 

そして工廠長妖精が続きを話し出した。

 

「…深海棲艦とはいえ若い女性だからな、最後は……」

 

私は工廠長妖精の話に納得がいった、早い話が性的な事を強要し、最後は何処かへ連れ去ったそうだ、そして全ての痕跡を封印した上で私や新しい艦娘達を配属させたのだった。

 

「深海棲艦の捕虜達のその後は……噂ではまだ生きているらしい、軍上層部のオモチャにされているらしいが…」

 

オモチャ……恐らくは今も性的な行為をさせられているのだろうが殺された訳では無いらしい事が救いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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鎮守府七不思議 ②《艦娘寮2階のトイレ》

鎮守府七不思議第二弾となります。


「提督さん、提督さんと青葉で何か怖い話集めてるって聞いて…」

 

瑞鶴が執務室にやって来た。

 

「まあな、青葉に付き合ってというやつだな」

 

私は瑞鶴に紅茶とお菓子を出した。

 

「提督さんサンキュッ♪」

 

瑞鶴が早速手を出した。

 

「で、瑞鶴のはどんな話なんだ」

 

お茶とお菓子を一通り食べると瑞鶴が話しだした。

 

「艦娘寮2階のトイレなんだけど……一番奥の個室から深夜になると話し声が聞こえるだよね、みんなが恐がっちゃてさ」

 

瑞鶴はお茶のおかわりを一口飲むと、話しを続けた。

 

「でさ、私も調べようとして……その場所に行ったんだけどさ…」

 

瑞鶴が言葉を濁した。

 

「何かあったのか?」

 

私は聞いてみた。

 

「……確かに話し声が聞こえたんだけどさ、扉を開けても誰もいなかったんだよ、それでも話し声は聞こえていたの、私も怖くなって逃げちゃたけどね」

 

瑞鶴は笑いながら残りのお茶を飲んだ。

 

「瑞鶴……笑えない……青葉現地調査してみるか」

 

私の振りに青葉が喰い付いた。 

 

「調査してみましょう!」

「それなら、本日の昼以降該当箇所のトイレの使用を禁止して調査にあたろう、瑞鶴、トイレ入口に使用禁止の張り紙を貼るように」

 

私は瑞鶴にトイレ入口に使用禁止の張り紙を貼るように指示した。

 

私と青葉、瑞鶴は昼食を終えるとそのトイレへと向かった。

 

「提督さん、此処よ」

 

艦娘寮2階の西側に位置したトイレだった。

 

「ウ~ン、今も何か聞こえる?」

 

私が瑞鶴に聞いたその時だった。

 

「ボソボソ……ボソボソ……」

 

その声は確かに聞こえた。

 

「!」

 

私も青葉も互いの顔を見合った。

 

「声からすると幼い感じなんで駆逐艦娘位な?」

 

そんな中、青葉は冷静に声を分析していた。

 

「下は倉庫だし上は空母寮だし…駆逐艦娘寮は別棟だからなぁ…」

 

私は個室の内部を注意深く観察した。

 

「この扉は?」

 

私は便器裏にある1メートル四方の小さな扉が気になった。

 

「配管スペースですかね、明石さん呼んできます」

 

青葉が工廠に明石を呼びに行った。

それから程なくして青葉と明石がやって来た。

 

「提督お待たせ」

 

明石に事情を説明すると、

 

「ああこの扉は配管スペースの点検口ですね」

 

そう言いながら明石が鍵を開けて扉を開いた。

だがそこにあったのは配管ではなく何も無い暗闇が広がる空間だった。

 

「どういう事……」

 

当の明石も解らないという顔をしていた。

私は明石の持っていた懐中電灯で中を照らした。

 

「光が奥まで届かない……だと」

 

私は言い得ぬ恐怖を感じた。

 

「そんな事…」

 

勿論青葉も瑞鶴も同じ事を考えていたらしい。

 

「トイレの裏って談話室の自販機コーナーのはず……こんな広い空間存在する訳が……」

 

それもそのはず、両隣の個室にある配管スペースは奥行きがあっても三十センチくらいだったのだ。

 

「提督さん、話し声……この奥から聞こえる!」

 

瑞鶴が半分泣き声になりながら言ってきた。

 

「なにもないぞ!!」

 

私は声の聞こえたという方向を懐中電灯で照らしたが其処には漆黒の闇が浮かび上がるだけだった。

 

「提督、中に入って調査してみま「入るな!このまま封印する」」

 

何か嫌な空気を感じた私は明石が入ろうとしたのを止めると、トイレ全体を使用禁止とした。

 

「現時刻を以てこのトイレは使用禁止として完全封鎖する、明石速やかにこのトイレの止水と閉鎖の準備を」

 

私の指示で明石が動いた。

 

「青葉は速やかに使用禁止の告知を瑞鶴と行ってくれ」

 

私はその間に各便器の洗浄と洗面台に設置されていた備品を回収した。

 

それから明石がやってきて各個室を物理的に施錠閉鎖した。

 

「明石、窓も内側から封鎖してくれ、最終的には廊下側の壁に新しい壁材を取り付けて誰も入れないようにしてくれ」

 

私の指示を聞いた明石が直ぐに作業に取り掛かった。

 

「しかし提督……ここまで厳重にするなんて……」

 

明石の疑問も最もだった。

 

「得体のしれない何かがありそうでな、それならばと言う訳だよ」

 

その日の内に、その間場所は最初から何も無かったようにトイレの入口扉は新しい壁で隠された。

 

「しかしあの空間は何だったんだろうな、あの声といい……」

 

結局この答えは誰にもわからなかった。

 

 

 

 




異界への入口だったのでしょうか、それとも……


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鎮守府七不思議③ 《司令部棟東階段》

今回は大淀からのお話。


「私もいいですか」

 

青葉と執務室に戻った私に大淀がやって来た。

 

「大淀のはどんな話だい」

 

私は大淀と青葉にお茶を煎れると話を聞いた。

 

「司令部棟東階段最上階の話なんですが…」  

 

まぁこの段階で話の内容は大体見当がついた。 

 

「よくある十三階段的な話かな」

 

大淀は頷いた。

 

「他は知りませんが、十三段目を数えると十三日以内に何かしらの不吉なことが起きると聞いています…」

 

私は大淀の言葉に少しだけ戦慄した。

 

「だが、いままで何かあったとは聞かないけど……」

 

私は首を傾げた。

 

「実の処は、然程大きな不幸では無いみたいです……」

 

大淀がクスクスと笑いながら答えた。

 

「それならば実際に数えてみるか…」

 

私は青葉、大淀と問題の階段へと向かった。

 

「この階段です」

 

私は数えることにした。

 

「1……2……3……4……5……6……7……8……9……10……11……12……嘘だろ!13…」

 

私はもう一度数えた、だが結果は同じで13段あったのだった。

 

「提督の身に不幸が……」

 

大淀と青葉は驚いた様な顔をしていた。

 

不幸は意外と早くやって来た。

 

「おかしいなぁ、限定のプリンないぞ」

 

私が青葉と食べる為に朝から並んで買った数量限定のプリンが無くなっていたのだ。 

 

「えー、提督楽しみにしてたのにぃ」

 

青葉が口を尖らせて拗ねていた、そんな時だった。

 

「提督、ご馳走さまでした」

 

不幸姉妹と渾名される扶桑姉妹がプリンの空容器を手に何やらお礼を言ってきた。

 

「……しまった、間違えて秘書艦用の冷蔵庫に入れてしまったのか」

 

つまりこんな感じの極軽い不幸が起きるらしい。

 

「だから然程気にしてなかったのか…この位で済んでいる内は放置するけど、これ以上に被害が大きくなれば階段の使用禁止も視野に入れるとしよう」

 

私は当面様子見とする事にした、その後も扶桑姉妹や陸奥に何かしらの幸福が舞い降り、その分誰かが小さな不幸に見舞われていた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーオチーーーー

 

「13段あるぞ!」

 

私は再度数え直した。

 

「そんな馬鹿なことが……」

 

青葉と大淀も数え直した。

 

「12段しかないですね??」

 

つまり私にだけ13段目が見えていたのだ。

 

「あのぉ提督……申し上げにくいんですけど……」

 

大淀がとある場所を指差しながら俯いていた。

 

其処は屋上に出る為の扉の前にある段差だった。

 

「提督…これを一段って数えてますよね?」

 

私は頷いた。

 

「これは除いてください!」

 

私は一段数え間違えていたのだ…。

結局12段で間違いなかった、私が勝手に付け加えた屋上出口の段差を別としたら。

 

「提督、お約束のギャグはやめてください」

 

大淀に怒られてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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鎮守府七不思議④《謎の場所》

今回は提督が話します。
途中から進行形のガチになります。
後半は七不思議ではなくなってますがご愛嬌で赦してください!


「私も一つ有るんだ」

 

私は青葉に告げた。

 

「提督もあるんですか」

 

青葉が食い付いてきた。

 

「まぁな、鎮守府の敷地のはずれにトタンで囲われた建物が有るだろ……何時から在るのか…何の施設なのか誰も知らないんだよな」

 

私はそう言いながら写真をテーブルの上に置いた。

 

「外周はおろか、天井と云うか完全に封鎖されているのですね」

 

大淀と青葉が写真を見ながら不思議そうにしていた。

 

「私達は提督が着任するのと同時に配属されたからなぁ、知っている訳ないし…」

 

青葉も今回ばかりはお手上げな様子だった。

 

「まてよ…前任者の時のだったら、何かしらの理由を知っているかも」

 

私は直ぐに電話を取ると海軍人事部に問い合わせた。

 

「……そうですか…はい…はい…ありがとうございます」

 

私は電話を切ると、

 

「隣町に元金剛四姉妹が住んているそうだ、面会のアポイントも取ってもらった」

 

私の心の中で何かこうこの件に関してこれ以上触れてはならないのではないかと云う気持ちがチラチラと見え隠れしていた。

 

ーーーーーーーーーー面会の日

 

「はじめまして鎮守府の提督です、今回はお時間を頂き有り難うございます」

 

私は挨拶を済ますと本題に入った。

 

「今回お邪魔したのは、鎮守府敷地内のトタンで覆われた建物について知っていればと思いまして……」

 

私の質問に金剛が答えた。

 

「私と榛名が着任した時には既にあの状態でしたし、当時の提督からも近づく事を厳禁されていましたから……比叡や霧島なら…」

 

金剛が比叡をみた。

 

「私の時は……まだトタンで覆われていませんでした、ただ窓や扉は板で打ち付けられて出入りはおろか中を見る事も出来ませんでした」

 

私は比叡の答えを聞いて、少し考えた。

 

「中に見られたくない何かを隠しているのか……それとも…」

 

最後に霧島が語った。

 

「私が着任したときはごく普通の平屋の家でした…ただ誰かが住んでいるという気配はありませんでした……榛名が来るちょっと前に完全に封鎖してしまいました、何が有ったのかは…あの家についてはいきなりの箝口令が発せられたので詳しくは分かりません」

 

「霧島着任後比叡着任迄の間で何かあったのか、そして榛名着任の前に覆われ箝口令が出されたと…一体全体何を隠しているのか……」

 

私は四人の答えを聞いて更に疑問を感じた。

 

「提督、上手くいえないのですか……あの家には関わらない方が宜しいのではないかと……」

 

金剛が進言した。

私は四人に礼を言うと鎮守府へと戻った。

 

「どうでした?」

 

大淀が聞いてきた。

 

「前任者の時若しくはその前の代で何かあったのは確かなんだが……」

 

そんな時だった、青葉が一人の老人を連れて執務室に駆け込んてきた。

 

「提督、この人わかるそうです!」

 

私も大淀も「へっ?」という顔をした。

 

「ワシはこの土地に祖父の頃から住んどる、あの家には悪いもののけが取り憑いとるで近付くでない」

 

老人はそれから何があったのか話しだした。

 

「先ずあの家には出入り口がないんじゃ、何故なら中に住まうもののけを外に出さないようにする為にな」

 

私はもののけという言葉が気になった。

 

「ご老人、そのもののけと云うのは?」

 

私は老人に聞いてみた。

 

「ワシも詳しくは知らん、じゃがな……聞いた話によると……何処かの部屋にある古い鏡台の引き出しに大量の女の指が入っていたとか平屋なのに二階に上がる階段があったのだとかと云う事じゃ」

「まぁその家を取り壊そうとしたら重機が事故を起こすとか死傷者が出たとかあったそうじゃ……」

 

老人はそこまで話すと、最後に一言だけ言うと帰っていった。

 

「よいか、あの家にはこれ以上触れるな、何人たりとも近付くでない」

 

「お約束だが……念の為に……」

 

私が何を言いたいか理解したのか、大淀が明石に目隠しの塀を建てるように指示を出していた。

 

そして数日後、大淀が深刻な顔をして執務室にやって来た。

 

「大変です、3日前より夜間外出の申請のあった川内、那珂、鬼怒、球磨、多摩の5名が戻っていません」

 

私は大淀の報告に驚いた。

 

「5人の行き先は?」

「鎮守府からは出ていないようですが……」

「青葉を呼んでくれ」

 

私は青葉を呼ぶように指示した。

それから直ぐに青葉はやって来た。

 

「青葉緊急事態だ川内、那珂、鬼怒、球磨、多摩が3日前から行方不明となっている、ゲートのカメラを確認したが敷地外には出ていない、鎮守府内の防犯カメラ解析を」

 

私の言葉を最後まで聞くまでもなく青葉が行動をおこした。

 

「提督……やな予感がします、あの家の周囲にある監視カメラから調査します」

 

そう言うと青葉が執務室を後にした。

 

数時間後…

 

「提督、解析結果です」

 

青葉が数枚の写真を持ってきた。

其処には封印された家にトタンをこじ開けて入っていく5人が写っていた。

 

「あれには触れたくなかったが、行方不明者がいる以上放置も出来ない、明石にトタン壁の解体を指示してくれ」

 

私の指示のもとトタン壁全て取り払われた。

 

「出来る事なら中には入りたくないな……」

 

私の呟きを明石が聞いていた。

 

「これを使いましょう、一人づつなら曳航出来ます」

 

明石が上半身が人型、下半身は戦車の陸上走行タイプのドローンを持ってきていた。

 

「ドローンによる探索ならば…」

 

明石が操作しながらドローンを室内に入れた。

 

「玄関が無いので庭に面した居間から入ります」

 

キャタピラ駆動のドローンが室内を進んでいった。

 

「提督、球磨ちゃんです!」

 

居間を抜けた廊下に球磨が倒れていた。

 

「まずは球磨を曳航離脱」

 

ドローンによって球磨が家から引っ張り出された。

 

「では再度侵入します」

 

明石のドローンが再度家の中へと入っていった。

 

「ここは台所の様です」

 

私は明石の横から操作用のモニターを見ていた。

 

「明石ストップ、今の所」

 

私が指差した先、ちょうど冷蔵庫の陰に多摩が丸くなって震えていた。

 

「多摩、私だ、そのドローンに掴まって外に出てこい」

 

多摩は怯えながらではあったが私の指示通りにしてくれた。

その後も那珂、鬼怒が風呂場と扉の無い玄関で発見され無事にドローンに曳航されて出てきた。

私はある程度落ち着いた多摩に声を掛けた。

 

「多摩、何があったのか話してくれ」

 

だが多摩は答えなかった、ただ一言鏡台の引き出しとだけ言ってまた震えだした。

 

「提督、階段があります!」

「階段だと……あの老人が言っていた通りだ」

 

外から見ても二階部分なんか無い家なのに室内には二階に上がる階段があったのだ。

 

「提督、姉さんの事は諦めましょう、私の中のゴーストが囁くのです、これから先は行くなと」

 

いつの間にかやって来ていた神通が私にそう言った。

私は苦渋の決断を下すしかなかった。

 

「現時刻をもって捜索を打ち切る、明石は速やかにドローンを回収してくれ残念ながら川内は……MIAとする」

 

「提督待ってください!階段の中ほどに足が見えます」

 

明石が私の指示を聞かずにドローンを階段の中ほどに進めた。

だが其処には確かにあったのだ、間違いなく川内の下半身だけが

 

「ウェ」

 

流石の明石も口元を覆った。

何故なら何者かによって上半身を食い千切られた下半身だけがあったのだ。

 

「明石…この家ごと周囲五メートル四方をコンクリートで完全に埋めてしまってくれ」

「はい…」

 

あんなものを見てしまった明石も素直を従った。

川内の下半身は回収され、荼毘に伏した。

 

「川内に於いてはMIAでは無く戦死扱いとする」

 

私は神通にそう告げると、必要書類を準備した。

結局その封印された家で何があったのかはわからなかった、何故なら助け出された那珂達4名もその時の記憶がスッポリ抜けていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の話に出てきた陸上走行タイプのドローンですが、明石が趣味で開発したザクタンクを原型にしたものです…と云うか上半身はまんまザクとして、そのままスケールダウンしただけです。


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鎮守府七不思議⑤《謎の旧棟階段》

「提督、ご相談が………」

 

夕張が何か言いにくそうにしていた。

 

「夕張、何かあったのか?」

 

私は夕張に何かあったのか聞いた。

 

「はい………倉庫として使っている旧棟の事なんですが………」

 

夕張がポツリポツリと話しだした。

 

「旧棟って地下は無い筈なのに………一階部分の手摺が不自然な終わり方してるっていうか………その本来なら地下への階段があるかのような途切れ方なんです、それに床の色もなんていうか微妙に違うような気がします」

 

そう言うと、夕張は問題の階段部分の写真を机の上に並べた。

 

「確かに…手摺の最後部分なんていうか不自然な形で終わってますね…」

 

いつの間にか青葉も写真を覗き込んでいた、

 

「確かにな、何者かが切断して帳尻を合わせたような感じになってるな…現地調査するかなぁ」

 

私は、内線で明石を呼ぶことにした、

 

「明石、至急執務室迄」

 

それから直ぐに明石はやって来た。

 

「提督何か?」

 

私は夕張から聞いた話を明石にも話した。

 

「うーん………写真で見る限り、無理矢理地下を封鎖したような感じですね…図面では地下は無い筈ですけど………図面では」

 

私は明石と夕張、青葉を連れて旧棟の階段踊り場に行くことにした。

 

「………どういう事だ?!?!」

 

私は眼を疑った、何故なら、夕張の撮影した階段は眼の前にある階段とは違っていたのだった。

 

「確かに私この階段で………」

 

撮影した本人も理由が分からなくなっていた。

 

「階段手摺の模様が………」

 

私は実際の階段手摺と写真の手摺を見比べた。

 

「この写真は………一体何処の手摺なんだ」

 

私達は混乱した。

 

「だが旧棟の階段はここしか無いし………嫌な予感がする…一度執務室に戻ろう」

 

私達は一旦執務室に戻る事にし、旧棟を出た。

 

「どういう事だ?」

 

私達は旧棟を出ると、眼の前には有り得ない光景が飛び込んできた、其処には在りし日の軍港の姿があったのだ。

 

「何故…どういう事だ?」

 

そして驚くは、私達の眼の前には軍艦『大淀』が錨を下ろし停泊していたのだった。

 

「まさか旧棟は…過去への入口だったのか…全員旧棟ヘ戻るぞ」

 

私は今出てきたばかりの旧棟へ戻る事にした。

 

「もしそうだったとしたら…」

 

そして私達はあの階段踊り場迄戻った。

 

「それじゃ戻るぞ………」

 

私達はまた旧棟から外に出た。

 

「元に戻っている…」

 

港には艤装を付けた艦娘艦隊が出港しようとしている光景が目に入った、

 

「へーい、提督行ってくるネー」

 

金剛が手を振ってきた。

 

「気を付けていけよ」

 

私は金剛に答礼をした。

 

「ふぅ………どうやら元の世界に戻ることが出来たようだな…夕張、旧棟には何か必要な荷物とかあるのか?」

 

私は旧棟で保管しているものの確認した。

 

「いえ、これから使う予定だったので何も置いていません」

 

私は夕張の答えを聞くと、

 

「現時刻をもって旧棟への立ち入りを禁ずる、明石は速やかに旧棟の外周を物理的に封鎖してくれ」

「了解です、ブロック塀で宜しいですか?」

「構わない」

 

それから直ぐに旧棟は二重にしたブロック塀で封鎖された、あの現象の調査を打ち切りにして。

 

「結局、あれは一体何だったんですかね」

「そうだな、時空のねじれというかタイムパラドックス的な………判らん」

 

結局以降調査は打ち切り、資料は封印された。

………はずだった、翌日衣笠が血相を変えて執務室に飛び込んてきた、

 

「青葉が夜中にふらっと出掛けて行って帰ってこない」

「何だと、明石を」

 

私は大淀に明石を呼ぶように指示を出したの

 

「提督!」

「どうした」

「明石並びに夕張も昨晩から所在不明です」

「何だと…!」

「直ぐに北上を」

「はい」

 

大淀が工作艦もこなせる北上を呼び出していた。

 

「緊急事態発生!北上は執務室へ………」

 

それから程なくして北上が執務室にやって来た。

 

「やっほ~北上さんだょ」

「北上済まないが………青葉、明石、夕張が行方不意になった…鎮守府敷地内で」

 

それまでユルユルだった北上の表情が険しくなった。

 

「提督何処でなの?」

「恐らくは鎮守府外れにある旧棟…」

「あそこは………」

 

北上も何かに気がついた様子だった。

 

「提督ごめん………彼処は近付いては…その上手く言えないけど、禁地なんだよ………多分提督も…彼処に入ったなら…青葉達と同じく…」

 

北上はそれだけ言うと、執務室から足早に出ていった。

 

「仕方ない…私一人で行くか」

「私も同行致します」

 

大淀が名乗り出た、

 

「イヤ、駄目だ…昨日あの旧棟に入ったメンバーだけが行方不明となっている以上新たな犠牲者を出すわけにはいかない」

 

私は大淀の申し出を断ると、旧棟へと向かった。

 

「やはりか………」

 

入口付近のブロック塀が壊されていた。

 

「青葉っ!…明石っ!…夕張っ!…」

 

私は3人の名を呼びながら昨日同様に階段踊り場迄来た。

 

「明石っ!」

 

階段踊り場には明石と夕張が倒れていた。

 

「夕張しっかりしろ…何があった!」

 

私は夕張を揺さぶり起こした。

 

「提…督…此処は?」

 

夕張は自分がいる場所を理解していない様子だった。

 

「旧棟の階段踊り場だ、君達は昨晩フラフラと寮から出ると行方不明になった…まさかと思ってここに来たら居たというわけだ…残るは青葉だけなのだが…」

 

青葉だけが行方不明のままだった。

 

「あっ提督…どうして此処にって?何で私此処に?」

 

どうやら明石も同じように自分の意志で来たようではなかった。

 

「青葉は一体何処に…旧棟から出てしまったのか?」

 

私は旧棟出口からそっと外の様子を覗った。

 

「!」

 

外の様子は、至る所が破壊され瓦礫の山と化していた。

 

「まるで爆撃でも受けた様な有り様だな…」

 

私は外に出ると、青葉を探すことにした。

 

「貴様何者だ!」

 

振り返ると、ボロボロの軍服を纏い血だらけの兵士が小銃を私に向けて構えていた。

 

「私は…」

 

名乗ろうとした瞬間、

 

「失礼致しました!少将閣下とは知らず」

 

その軍人は痛みを堪えながら私に対して敬礼した。

どうやら私の階級章をみたようだ。

 

「君に尋ねるが、この女性を見なかったか?」

 

私は青葉の写真を見せた。

 

「この女性なら、敵の諜報員の疑いありとして営倉に留置しております!」

 

私は青葉が無事なことに安堵した。

 

「彼女は私の部下だ、直ぐに営倉から出して私の所に連れてきてくれ」

「はっ」

 

その兵士はまた敬礼すると恐らくは怪我をしているであろう脚を引き釣りながら、営倉のある建物に入っていった。

 

「何がどうなっているのやら………」

 

私は近場にあったブロック片に腰を降ろすと、先程の兵士が青葉を連れてくるのを待つことにした。

 

「少将閣下、お待たせ致しました!」

 

先程の兵士が青葉を連れて戻ってきた。

 

「青葉………無事で良かった」

「提督!」

 

青葉が私に抱きついて泣き出した、

 

「明石も夕張も無事だ、私達の鎮守府に帰ろう」

 

私は青葉の頭を撫でながら小声で語り掛けた。

 

「はい」

「君、名前は?」

 

私は青葉を連れてきた兵士に名前を尋ねた。

 

「自分は『小鳥遊 優一』二等兵であります!」

「そうか………小鳥遊二等兵、貴様も傷の手当を」

「はっ、お心遣い有り難うございます」

 

小鳥遊二等兵と名乗った兵士は恐らくは救護施設があるであろう場所へと向かっていった。

 

「私達も旧棟へ戻ろう」

 

私は青葉の手を取ると、旧棟へと入っていった。

 

「提督、青葉良かった………」

 

階段踊り場では明石と夕張が私と青葉を待っていた。

 

「それでは帰ろう私達の鎮守府へ」

 

そうして私達は元の鎮守府へと帰還することが出来た。

 

「しかし、この旧棟はどうすべきなのか?」

「爆破処理が妥当なのでは?」

 

明石が爆破処理を提案した。

 

「そうだな、また中に入ったら………今度は戻ってこれるという保証は無いからな」

 

私は必要書類を作成すると、明石に爆破処理の準備を開始させた。

 

 

それから数日後。

 

「此れより旧棟の爆破を行います、規制ライン迄下がっください」

 

北上が構内放送を掛けた。

 

「規制ライン内に残留者なし」

 

大淀が各部署からの点呼結果を報告した。

 

「爆破5分前」

 

北上がカウントダウンを掛けた、

 

「ドローンによる爆薬設置位置問題なし、旧棟内に熱源なし」

 

明石が最終安全確認を行うと私に報告した。

 

「爆破を許可する」

 

明石は私からの最終許可を確認すると北上へと向き直った。

 

「点火最終安全装置解除」

「安全装置解除確認、点火迄あと三分」

 

北上と明石が点火に向けて準備を進めた。

 

「保護メガネ並びに防塵マスク着用…点火十秒前…九…八…七…六…五…四…三…二…一、爆破…点火を確認!」

 

夕張が点火をスイッチを押し込むと同時に旧棟が爆破の轟音と共に崩れ落ちた。

 

爆破確認って!何アレ!」

 

その場に居た全員から驚きと驚愕の声が上がった。

 

「旧棟に地下が!」

 

私は旧棟跡地に空いた空洞を覗き込んでいた。

 

「何かの研究施設があったようだな………まるでフィラデルフィ実験みたいな………?これは?」

 

私は地下施設の瓦礫を見下ろした

 

「酷い………人が壁から………」

 

明石も夕張も顔を背けた。

 

「この地下施設は一体…兎に角破壊は完了したようだな」

 

私は瓦礫の上を歩く海鳥が消えること無く此方に向かって来る事を確認した。

 

後日談………。

 

私は司令部資料室で隠し金庫を発見した、

 

「この金庫………中に何が?」

 

幸いにも金庫には鍵が掛かっていなかったので中身を確認した。

 

「これは…そうか………あの時の小鳥遊二等兵が…」

 

私は小鳥遊二等兵からの時代を超えた手紙をポケットに仕舞うと、食堂へと向かった、

 

「提督、結局アレは一体何だったんでしょうか」

 

明石が昼食時に聞いてきた、

 

「簡単に説明すると、1943年フィラデルフィア港でアメリカ海軍によるある極秘実験“フィラデルフィア計画”が行われた、これは敵のレーダーから消え、味方の船を探知されないようにすると云うステルス実験を駆逐艦エルドリッジに対して行ったんだ、日本でも行おうとしたが…結果は見るまでもなくだけどな…本家もエルドリッジの乗員を犠牲にして…確か生存者は2名だけと聞いている」

 

私は小鳥遊二等兵からの手紙を二人に見せた。

 

余りに酷い実験内容に流石の明石と夕張も顔をしかめていた。

 

「殆ど人体実験ですね、酷すぎます」

「それだけ当時は戦局が切迫していたということだよ…」

 

後日旧棟跡地は埋め立てられ慰霊碑が建立された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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司令部庁舎三階の怪

 

 

夏の暑いある夜の事でした。

その日、私と青葉、衣笠の三人は呉の海軍司令部で広報の打ち合わせがあり、鎮守府に帰り着いたのが深夜の2時少し前でした。

艦娘寮は司令部庁舎の隣にある為、以前より噂のある深夜の司令部前を通りすぎなければなりません、私の自邸もその並びにあるので同様に通らなければ帰れないのです。

青葉達は心なしか少し震えているようでした、私は恐いもの見たさと言うか信じていなかったのか、ふと三階を見てしまったのです(三階は執務室や応接室がある)。

私は見てしまったのです、三階をユラユラとさ迷うように漂う青白い複数の光をそして金縛りというのでしょうか、体が全く動かせませんでした。

あれは人がイタズラ何かでは出来ません、何故なら其処は壁もあるからです。、青白い光のは壁をすり抜けるように移動していました。

当然青葉、衣笠も見てしまいました。

私達はその場で恐怖のあまり腰を抜かしてしまいました、その後何とか這うように近くのゲスト用の宿泊棟に逃げ込み其所で朝まで震えていました。

私は皆が起き出すのを見計らって、長門と霧島を連れて執務室に向かいました(一人では行けません)、そして室内に入った瞬間、何とも言えない嫌な空気が漂うっていました。

私はすぐに鎮守府が出来る前の事を調べました。

この場所はもとは軍の研究施設が建っていて、極秘に囚人を使った人体実験をを行っていたそうです。

私は司令部庁舎の移転を決定し、当面はゲスト棟に仮設の庁舎を置くとこにしました、そして旧庁舎を立ち入り禁止として総ての窓を塞いで厳重に施錠しました、結果まさかこんな事が起こるとは考えもしませんでした。

暫くは何事も無かった様でした、1ヶ月が過ぎた辺りでしょうか、毎晩深夜になると旧庁舎全体が音をたてて軋んでいました、艦娘寮の旧庁舎側の部屋の娘達はその音を聞いて夜も眠れない日々が続いた為、旧庁舎を取り壊すことにしました。

そして解体業者が解体を始めている最中それは見つかりました。

旧庁舎は地下は1階迄しか図面上は無いのですが、なんとエレベーターは地下3階迄有ったのです。

地下2階は殆ど埋められていてエレベーターはホールしかありませんでした。

地下3階はかなり広いスペースのようで、解体業者が投光器を持ち込み作業を開始使用と点灯した瞬間それは姿を現しました。

 

 

其処には大量の人骨それも形や大きさから女性の物ばかりが出てきました、更に埋められていて地下2階からも大量に出てきました。

調査の結果これらの大量の人骨は艦娘を人工的に建造使用として行った人体実験の犠牲者を人知れず捨ていた場所である事が判明しました、私は遺骨を回収すると改めて埋葬しその場所に慰霊碑を建て丁重に弔うことにしました。

これ以降青白い光のを見た者はいなくなりました。



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建造ドックから工廠に向かう通路の怪

 

 

 

私は何時ものように執務が終わると、工廠に有る夕張の部屋で深夜アニメやゲームをしていた、その日は某心霊ゲームをしていた、気が付くと日付が変わる迄遊んでいた、そんな時に同じ工廠で寝起きをしている明石がつまみとお酒を持って遊びに来た。

お酒も入り、時間は深夜と来れば話の流れは健全?な流れでエッチ話になるのだが、私達の場合はそうした流れにはならず別のお約束である心霊スポットの話へとなるのです。

この日も最初のうちは何県のあの場所は出るとか、あそこのビルは等と話しているうちに、この鎮守府のあそこに出るとう話に流れ着きました。

この話はその時に出た話で、実際に私が体験しました。

その場所とは、今は建造ドックが建っている場所から工廠に繋がる整備用の引き込み線がある場所だそうです。

其処に深夜になると白い靄の様な人影が何体も彷徨っているらしい。

何故らしいなのかは明石も夕張も見ていないし、ましてや警備兵も前任者からの噂でしか聞いていないからである。

私は前回同様に研究施設の時の図面を見比べて以前の施設の特定から始めた。

建造ドックは以前は無く其処には収容所が建っていたようで工廠は何かの施設のだった(ここだけ何の記載もなかった)、これは私の推測だが何らかの実験施設だったのではないかと思う。

私は青葉を呼び出した、彼女に夜間の定点監視に必要な機材を調達させ、設置までを指示した。

設置から1ヶ月が過ぎても監視システムには何も変化が無かった。

やはり噂話に過ぎないのかと諦めかけたそんなある日の深夜の事だ、私は執務室で監視システムのモニターを見ていると、モニター画面が全体的に靄が掛かったようになりそれは徐々に晴れて行き次第に人の顔の様な形になっていきました。

私は恐怖の余りに声も出せずに固まっていました(金縛りにあっていたのかもしれません)。

そしてその顔は輪郭が徐々にはっきりとして行きました、その顔は見覚えのある人物の顔でした、敵である空母ヲ級だった!私の中で一つの考えが浮かんだ、今戦っている敵である深海棲艦は軍が開発し失敗したかして放棄された艦娘の失敗体ではないのかという考えである。

翌日私はその場所に小さな地蔵と祠を造り浮かばれぬ艦娘の魂を弔うことにした。

数日後私の鎮守府に空母ヲ級、雷巡チ級、戦艦レ級が投降してきた、彼女達は戦うことを嫌い、我々と平和的に暮らしたいと、私の確認事項に協力することを条件に受け入れることにした。

これであの心霊現象が解決するだろう。

 

 

あれは心霊でも何でもなかったのである。

結果から言うと、今回捕虜となった彼女達が深夜に無断侵入しては食堂から食べ物をギンバイしていたのが目撃されていたのが写っただけなのである。

のはずであったが、彼女達から自分達は一週間に一回から二回位しか侵入していないと言われたのである。

しかしカメラには毎日同じ時間に写っていた!

彼女らの証言から画像を解析したところ侵入した彼女らに被るように写っていたのであった‼

(彼女達は気が付いていなかったのである。)

そして彼女達から別の心霊現象を報告されたのであった‼っておい‼まだあんのかよ!



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帰還用ドックから緊急搬送通路に至る怪

 

 

艦娘達の間で真しやかに噂されているドックから修理ドックに向かう緊急搬送用の通路に出ると噂される全身血塗れの髪の長い女の幽霊話を私は昨日迄は信じていなかった、まさか自分が目撃する羽目になるとは。

あれは前日の夜間哨戒任務で大破した天龍をドックに搬送するために搬送専用車両で専用通路を走っていて丁度鍵が無く開けることができない部屋の前を通過している最中だった、ふと私は天龍をの様子を見るために車を停車させ後ろ振り返った時でした。

視界の隅に何か黒い影のような物が入りました。

そのときはさほど気にもしていなかったのですが、天龍をドックに搬送し車を帰還用ドックに戻そうと戻っている時に私は来るときと同じ場所でそれを見てしまいました。

それは白い着物に赤い帯をした背の高い黒髪の女性でした、私は一瞬扶桑かと思ったのですが、彼女は先ほど天龍の隣のドックに入っていましたのであり得ませんでした。

そしてその女性はゆっくりとこちらを向いて来ました。

ついに眼があってしまいましたが、彼女には眼球は無く黒い穴がポッカリと空いているだけでした、そして何故か恐怖というよりは何かを訴えている様な感じがしていました。

 

私はあまりの出来事にアクセルを踏み込みフル加速でその場を離れました。

でも逃げられなかったのです。

その不気味な女はまたも私の前にいるのです……というより一緒に移動している感じでした。

しかし車が駐車場に着くと姿が消えていました。

翌日目撃したという艦娘に聞いたところ、目撃位置から消えるまで全く同じでした。

流石に私も何かあると思い、此処がまだ研究施設立った頃の図面を軍上層部から取り寄せました。

今の鎮守府の図面と比べながら確認をすると目撃位置には建造に失敗した艦娘を処分する施設の入り口があったのでした。

私は周囲の立地柄処分施設のは地下にあると考えその場を掘削するとこにしました。

やはり司令部庁舎の時と同じでしたコンクリートで埋められた地下3階分はある縦坑が姿を現しました。

それは処分するというよりは投げ落として終わりという単純なものでした。

縦坑を調査すると底の方にやはり夥しい数の人骨が埋まっていました。

あの女性の幽霊のはこれを見つけてほしいが為に出てきたのでしょう。庁舎後の慰霊碑に合祀するとでなくなりました。

前回の庁舎の件といい、一体過去の研究施設の時に何人の人間が殺されたのでしょうか。

こればっかりは資料が無いので分かりません。

 



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修理ドックの怪

 

 

 

 

此れから話す事は、前回のお話で投降してきたヲ級達から聞いた話です。

その前に投降したヲ級達の事をお話しします。

基本的には戦闘出撃はさせません(流石に元とはいえ同胞だった者に銃は向けられないですよね)。

なので鎮守府の警備隊か事務職、間宮や鳳翔の店での調理師等をやってもらってます。

当然武装解除していて(駆逐艦も中身は艦娘と同じだった‼)一般職員の制服なので肌の色が白い以外は何ら変わりません、中には出撃部隊に同行して新たな投降者を連れてくることもあります。

今回の話は警備隊に所属したヲ級から聞いた話です。

それではヲ級さんお願いします。

 

よろしくお願いします。

あれはまだ警備隊員として配属が決まって間もない頃でした。

私とチ級そしてレ級が三人で現在は使用されていない建物の側を夜間巡回している時でした、建物の中から何か引き摺るような音と微かな声が聞こえました、当然異常として警備隊本部へ報告したのですが、隊長からそのまま確認の必要無し巡回続行の指示が来ました。

その時は指示に従い翌日他の隊員にも聞いたところ同じような答えが帰ってきました、皆一様に無視していたのです。私達はその事がとても気になり日中の空いている時間を利用してその建物を調べることにしました。

まず驚いたのは窓も入口もなかったのです、いや無いのではなくコンクリートで塗り固められていたのでした、誰も入れないように。

私達は提督に相談しました、彼はまだ心霊スポットがあったのかとさほど驚いていませんでした。

彼と一緒に資料室で過去の地図から何の施設なのか調べることにしました。

しかし地図には修理ドックとありましたが立地場所がとても不自然でした、本来なら港湾付近に在るべき施設がかけ離れた場所にあったからです。

その後の施設課の調査の結果、コンクリートで外壁を覆われた内部にドック以外の何らかの施設が隠されている事が判明しました。

提督は外壁の撤去作業を指示し一週間後に内部の調査を行うと発表しました。

外壁の撤去が終わり、内部調査開始の日が来ました。

その日は朝から戦艦、重巡艦娘以外の寮からの外出が禁止され多数の憲兵と手錠を掛けられた数名の男達が来ていました。

朝9時提督は私達と戦艦、重巡艦娘を集め恐らくまた遺骨やもっと気分の悪くなるものを見ることになるだろうと希望者のみ参加を許可すると作業内容を説明しました。

設備課による照明の設置と給排気設備の点検が終わったのを確認して私達は内部に入りました。

一階部分は、事務所と手術室と思われる部屋があり、二階は何かを研究していたであろう研究室がありました。

此処までは何の異常もなく進んでいました此処までは。

そして三階に上がった時でした、同行した長門と陸奥が突然激しい嘔吐を繰り返しだしました、二人は直ぐに医務室に行きましたが後から聞いた所、二階に降りた瞬間に収まったそうです。

問題の三階部分は、生体サンプルが大量に保管されていました、各内臓器官から全身に至るありとあらゆる物がホルマリン容器のなかに浮いていました。

驚いたのは、赤ん坊迄いたのです。

提督は人工的に艦娘を建造する交配実験もしていたのかと怒りを露にしていました。

そして遂に事件が起こりました、手錠を掛けられた数名の男達が全員激しく痙攣を始め、自らの喉を掻きむしって絶命してしまったのです。

同時刻、一階の手術室を調査していた班から何かを見たような慌てた無線が入りました、彼らは一階の手術室で見てしまったのです。

手足がなく芋虫のように蠢く女の幽霊を、彼女は彼奴を絶対に許さない地獄に引きずり込んでやると言って消えていったそうです。

この建物に残っていた怨念に取り殺されたのでしょうか?そして彼女達の無念は晴れたのでしょうか。

この日以降出なくなりました。

 

~後日談~

青葉の事件ファイル

謎の施設調査のあったその日、全国の軍刑務所に収監されていた人体実験の研究者が一斉に何かに怯えるような表情と苦悶の表情を浮かべ一時間以内に全員死亡した、

原因については不明。

青葉の個人的考査として人体実験の検体に望まずもされてしまい無惨な死を迎えた者達の祟りではないか。

 

 

提督業務日誌

本日また新たな過去の犠牲者の御遺体が多数発見された。そして当時の関係者が謎の死を迎えた。

恐らくまだこの地にはこうした御遺体が出てくる場所があるだろう。



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艦娘寮の怪

 

 

「なぁ、提督……なんだ……その…」

 

いつになく天龍の歯切れが悪かった。

 

「なんだよ、天龍何が言いたい?」

「天龍ちゃん、館内巡視怖いのよね」

 

龍田があっさりとばらしてしまった、執務室には私と大淀、青葉しか居なかった為、駆逐艦達に聞かれることはなく天龍のメンツはなんとか首の皮一枚で保たれた。

 

「何が怖いんだよ」

 

私は、天龍に聞いてみた。

 

「……笑うなよ…何か……他の階と違う気配がすんだよ」

 

その場にいた天龍以外の全員が固まった。

 

「違う気配……?」

「何ていうか……其処の階だけ時間の進みが遅いっていうか」

 

天龍が俯きながら歯切れの悪い状態で話していた。

 

「時間の進みが遅い?どういうことだ、天龍その話をもう少し詳しく」

 

私の問に天龍がポツリポツリと答えだした。

 

「寮の5階なんだけどよ……4階から5階に上がるエレベーターも階段も何か変な感じなんだよ……その間だけ倍の時間が掛かるっていうか……」

 

天龍から話を聞いて調査する必要を私は感じた。

 

「倍の時間が掛かるって何かおかしくないですか……調査してみる必要があるかと、提督1度確認しほうが」

 

青葉が天龍達の巡視に同行する事を提案した。

 

「提督頼むよ……」

「分かった、今晩の巡視に同行しよう」

 

私が同行すると聞いても天龍にとっては怖いらしい。

 

ーーーー《同日二十二時》ーーーー

 

「それじゃ、先ずはエレベーターで4階から5階に上がるぜ」

 

私と青葉は各階への上昇に掛かる時間を計っていた。

 

「確かに天龍の言う通り、ほぼ倍の時間が掛かる……階段も一階分余計だったしな……隠し部屋ならぬ隠し階でもあるのか」

 

この予感は後日現実の物となるのだった。

 

 

ーーーー《翌日》ーーーー

 

私は天龍との巡視の結果について明石に相談した。

 

「つまり、本来の5階が隠されていると??」

「ああそうとしか考えられない」

 

明石は計測結果を見て首を傾げていた。

 

「誰が何の為に……確かに寮の高さから見ても一階分合わないのは確かですが……」

 

私はある手段を取ることにした。

 

「明石、全エレベーターを4階で停止後にエレベーターの電源を落としてくれ」

「わかりました、何をするつもりですか?」

「籠内の点検口から本来の5階に上がる」

 

明石がその手があったと云う顔をしていた。

その後は明石が手早く準備を始めた。

 

「提督、全エレベーター4階での停止を確認、これより電源を落とします」

 

明石による寮内へのエレベーター使用禁止の放送が流れ、エレベーターの電源が落とされた。

 

「提督、必要なものはこのバッグに入れておきました」

 

私は明石からそれを受け取ると、籠内の点検口から籠の天井によじ登った。

明石と長門が私に続いて登ってきた。

 

「それじゃ開くぞ」

 

私は五と書かれたホール側の扉を開いた。

 

「空調は効いているのか……」

 

長い間封鎖されていた割にはかび臭くなかった。

 

「しかし一体全体何の為に……」

 

長門が周囲を確認しながら聞いてきた。

 

「わからん……しかしこの大量の木箱は一体、取り敢えず開けてみるか」

 

私は手近にあったバール(何故あるのかはこのとき誰も気にしていなかった)で蓋をこじ開けた。

 

「嘘だろ……」

「!」 

「何よ!これ」

 

木箱の中身は金塊と現金……そして各種資材だった。

 

「そういうことか…ここは前任者の不正の証拠部屋……確かに寮内は男子禁制で部外者は入れないからな、隠すにはもってこいという訳か」

 

その後の明石の調査で、隠された地下2階のエレベーターホールと搬入用出入り口が発見された。

 

「それと、天龍が感じた違和感は空調操作で気圧を変化させていた様です」

「やれやれ、幽霊の正体見たり枯尾花……か」

 

天龍も調査結果を聞いて安堵していた。

 

「チゲぇよ、怖くねぇし……」

 

強がってはいたが。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー《心霊ver》ーーーーーーーーーー

 

「ここが問題の本来の5階…それじゃ開けるぞ」

 

私はホール側の扉を開いた。

 

「何だ普通のエレベーターホールじゃないか」

 

長門がやれやれといった感じで壁に寄りかかった。

 

「提督、隠し扉です」

 

明石が既に開けていた。

 

私はその中を覗いた。

 

「何だこの臭いと温度は!」

 

その部屋は異常なまでの低温となんとも言えない何かが腐った様な臭いを放っていた。

 

「この壁一面の扉は…」

 

長門がそう言いながら扉の一つを開いた。   

 

「!」

 

其処には白い袋状の物が入れられていた。

 

「……死体袋」

 

明石がボソリと呟いた。

私は扉を注意深く確認した。

 

「ヲ級 第○号……どういう事だ?」  

 

私は首を傾げた。

 

「提督、こっちはタ級○号とあるぞ!」 

 

長門もまた首を傾げていた。

 

「……」

 

明石が何かを考えているのか黙ったままだった。

 

「しかし遺体の損傷が酷いな」

 

私は遺体袋の一つを開いて中身を確認していた。

 

「提督、ここにある遺体は……その言い難いのですが性的な暴行を受けた形跡が見受けられます」

 

明石がここに来て検視結果を語った。

 

「……このままこの階は封印する、尚寮については新たに建設とする」 

 

数日後、妖精達が突貫工事で寮を新築した。

 

「明石、全員の引っ越しが完了次第、5階にある遺体を極秘裏に搬出する、その後は丁重に弔ってやろう」

 

 

結果、彼女たちは自分達の存在を知らせたくて色々とやっていたみたいだ(天龍以外は、残念ながら気が付かなかったようだ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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曰く付きの……

執務室に私と青葉、それと今回の語り手である夕張が揃った。

 

「それじゃ始めますね」

 

そう言うと夕張は話し始めた。

 

「うそっ!」

 

私は某オークションで思わぬ掘り出し物を見つけた。

それはジャンクではあるが現行機種最上位機種に当たる高級パソコンだった。

 

「中古相場の十分の一何て……これってば買いでしょ」

 

私はその価格に目がいってしまいそれ以外の事を見ていませんでした……そう不具合とかよく読んでいなかったのです。

 

そしてそれは私以外誰も入札されずに終了した。

直ぐに代金を振り込むと発送を待った。

 

「出品者さん速すぎ」

 

入金から十分と待たずに発送連絡が入った。

 

《明日には到着します》  

 

出品者からのメッセージが届いた。

 

翌日宅配便から受け取ると、早速開梱した。

それはジャンクとは思えない程綺麗で付属品も全て入っていた。

 

「紙書類もちゃんと揃ってる!」

 

その時の私は嬉しさから浮かれていてその異常性に気が付いていませんでした。

そうその異常とは保証書のことです、まだ有効期限内だったのでした。

その事に気が付いたのは翌日になってからでした。

 

「オンライン登録しないと駄目なのね」

 

私はメーカーサイトでオンライン登録をしていました。

必要項目を入力して登録を完了させて、専用ソフトをダウンロードしました。

 

「起動時にアップデートを確認してくれるんだ……えっ!嘘でしょ」

 

私はユーザー情報の欄を見て驚きました、何故なら保証がまだ有効期限内だったのです。

安く買えたという事から少し冷静になっていた私はやっと疑問を見つける事が出来ました。

疑問とは、メーカー保証が有効なのに修理もしないでジャンクで売られていた事、複数の手に渡っているという事、最後がジャンク理由でした……キーボードと電源の誤作動です。

 

「メーカー修理すれば済むのに何で……」

 

取り敢えずキーボードは私が愛用している無線方式の物と交換しました、そしてその日の夜の事でしでした。

 

「えっ?確か電源切ったはず……」

 

深夜いきなり付いた明かりにで目を覚ました私は驚きました。

机の上のパソコンが勝手に起動していたのでした。

 

「電源の誤作動っていう奴ね」

 

私は寝ぼけながら電源を切りました、ですがそれから毎晩のように勝手に起動を繰り返していました。

そんなある日の事でした、無線方式のキーボードの電池を買い忘れていた私は仕方なく有線タイプの物を繋いでいました。

 

「冗談でしょ!」

 

その日の深夜、私は見てしまったのです。

それは何者かが起動しようとしてパスワードを間違えて入力している痕跡に。

 

「誰よ……」

 

私はパソコンの状況を監視する為にカメラを取り付けました……。

まさかあんな事が起きていたなんて思いもしませんでした。

 

数日後、私は監視カメラの映像を確認していました。

其処には誰も居ないのに勝手に電源が入りログイン画面で不自然に動くキーボードが映し出されていました。

私は怖くなって出品者に連絡を取りました、しかし出品者は転売しただけと言い張りました、まぁ口調から知っていたようですが。

 

「保証生きてるからメーカー修理してみようかな」

 

私はダメ元でメーカーに修理を依頼してみました。

数日後メーカーからの回答は引取修理可能との事でした。

私は直ぐに梱包すると宅配便でメーカーに送りました。

 

夕張はコーヒー飲むとまた話しだした。

 

「メーカー修理から先日戻って来たのですが…新品が送られてきました……上手くいえないけど…多分メーカーの修理工場でも同じ事が起きて処分されたんじゃないかなぁって…今となっては理由も分かんないですけど」

 

私は夕張の話を聞くと同じ考えに至った。

 

 

後日談……

メーカーから詳細が知らされたそうだ、最初のユーザーは亡くなっているそうだ…パソコン操作中に吐血してそのまま……亡くなったその人物は今でも自分が死んでいる事に気付かずにパソコンの前に座っているのだろう。

このパソコンはその手の物件を専門に扱っているお寺に預けられて供養されたそうだ。

 

 

 

 



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白い影

今回は登場人物少な目です。
提督、明石、鳳翔、隼鷹、夕張、吹雪、時雨、夕立、陽炎
以上となります。

※オリジナル設定で明石が必ず配属されるという事にしています。

ホラー……と云うか幽霊の正体見たり枯れ尾花的なお話となります。


私は部下となる艦娘明石、鳳翔、隼鷹、夕張、吹雪、時雨、夕立、陽炎と任地に赴いた。

 

「…提督、何かボロっちいポイ」

 

夕立が建物を見ると思わず漏らした。

 

「木造……今時それはないでしょ!」

 

隼鷹も呆れていた。

 

「まぁ外見はボロっちい……なか見てみよう」

 

私は渋る艦娘達をなだめると建物内に入った。

 

「中もボロっちい……床が軋むっポイ」

 

夕立がソロソロと歩いていた。

 

「僕が一体何をしたの?」

 

時雨が床を踏み抜いて涙目になっていた。

 

「これは……酷すぎるな」

 

私も言葉を失った。

 

「はいはい、そこはこの明石さんと夕張ちゃんにお任せあれ」

 

明石と夕張が矢継ぎ早に妖精さんに指示を出していた。

 

「流石だ」

 

明石と夕張の指示を受けた妖精達により瞬く間に内部については完全に補修が完了した。

 

「中を案内します」

 

私達は夕張の後に続いた。

 

「先ずは一階から、家庭科室が食堂になります隣の家庭科準備室は鳳翔さんのお部屋です、鳳翔さんこれが部屋の鍵です」

 

夕張が鳳翔にカードキーを手渡した。

 

「残りの一階部分は倉庫となります、それでは二階へ」

 

そう言うと夕張は階段をあがった。

 

「それでは二階ですが、この部屋は待機室となります」

 

私達は職員室のプレートが掛る部屋の中を覗いた、室内には簡易ベッドやテーブルなどが置かれていた。

 

「お風呂とトイレはこちらです、因みに提督と共用ですので……」

 

夕張が顔を赤らめながら部屋を出ると廊下の一番奥を指差した。

私達は待機室を出ると隣の部屋ヘ向った。

 

「待機室の隣は提督執務室兼秘書艦執務室になっています」

 

校長室とプレートが掛る部屋の内部を覗くと、私が使うであろう大型の机と少し小型の机が二つコの字を描いて設置されていた。

 

「提督執務室の隣が提督の私室となります」

 

その部屋は宿直室(1)とプレートが掛かっていた。

 

「宿直室(2)も有るのですが、鍵が無くて使用できません」

 

夕張が宿直室(2)の部屋は開かないと話した。

 

「それでは続けます、この部屋は応接室となります」

 

プレート通りだった。

 

「この部屋は娯楽室となります」

 

私達は部屋へと入った、娯楽室とは言ったが、どこから見ても図書室だった。

 

「次は三階となります、此処から私達の部屋となります」

 

そこは元は普通の教室だったのだろう、プレートに2ー1と書かれていた。

 

「部屋の中はパーテーションで区切って小分けにしています」

 

夕張の説明を聞きながら教室入り口の扉を開いた。

 

一教室ニ人で分けているとの事だった。

 

「教室は全て使用して私達の部屋としました、工廠については体育館を改装して使用しました、渡り廊下で繋がっています」

 

夕張が校内(?)地図を全員に配布して補足説明した。

 

私は時間を持て余したので鳳翔と街に夕食の材料を買い出しに行くことにした。

 

「あんちゃん達……あそこの学校跡に住んでんのかい」

 

地元民と思しき老人から声を掛けられた。

 

「そうですが、軍で買い取って警備府として運用していきますが……」

 

老人は驚きの表情をしていた。

 

「流石は軍人さんと艦娘さんじゃな、怖いもの無しとは」

 

私は老人の言葉の意味がわからなかった、だがそれはその日の夜に否が応でも理解する羽目になった。

私達は買い物を済まし、宿舎となっている元学校へと戻った。

 

そして日付が変わって……

 

「ポイー!」

「キャー!!」

 

私は夕立ともう一人誰かの悲鳴で目を醒ました。

 

「夕立どうした?」

 

私は寝間着姿のまま廊下に出た、そこには階段方向を指差した腰を抜かした夕立と陽炎が抱き合って震えていた。

 

「夕立何があった」

 

私は夕立に聞いた、だが夕立はパニックになりポイポイしか言えなかった。

 

「陽炎?」

 

私は少しはマシな陽炎にふった。

 

「トイレから出たら……階段の所に……白い影が…」

 

私は陽炎が指差す階段を見た、当然ながらそこには何も無かったか、極普通の木造のボロく軋む階段があるだけだった。

結局この日は何も解らずに夜が明けた。

 

「提督、おはよう御座います」

 

私は学級委員長風の知らない艦娘に起こされた。

 

「君は?」

「私は大淀型一番艦 大淀といいます」

「大淀、君は何時から居た?」

 

私は直感的に何かを感じると大淀に質問した。

 

「私はみなさんが来る一週間前には着任していました」

 

私は大淀の答えになんとなく聞いた。

 

「君は寝る時どんなカッコなんだい、それと部屋は?」

「私は……白い寝間着ですが……部屋は宿直室(2)ですがそれが何か?」

 

私は納得した、つまり昨晩の白い影はトイレか何かに起きた大淀だったのだろう。

 

「最後に昨夜の夜中、部屋から出た?」

 

私は確認する意味で聞いてみた。

 

「はい、夜中にトイレに行きましたけど……その時夕立ちゃんに悲鳴上げられました」

 

もう間違いなかった、昨夜の白い影は大淀だったのだ……正に幽霊の正体見たり枯れ尾花だった。

 

 

 

 




地元老人も大淀を幽霊と見間違えていたと言う訳です。


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そこにいる者

これは、アレンジはしていますが実話です。


「提督よ、鎮守府入り口の石碑について知っていたら教えてくれ」

 

長門が何やら血相を変えて執務室にやってくるなり開口一番に聞いてきた。

 

「入り口の石碑…ああっあれか」

 

私はすぐに解った。

 

「長門、あれなんだと思う?」

 

隣の陸奥がクスクスと笑っていた。

 

「なにかの記念碑か?」

 

丁度執務室に戻ってきた大淀が空気を読まずにネタバラシをしてしまった。

 

「長門さん、あれ……記念碑じゃなくて慰霊碑ですけど」

 

大淀の何気ない一言が長門を恐怖のどん底に叩き落とした。

 

「慰霊碑…だと!」

 

長門の顔色が段々青ざめていった。

 

「この鎮守府を造る時にな…正門から工廠にかけての地下から大量の人骨とか刀、鎧兜が出てきたんだ…地元の人もこの地の謂われとかはなにもない筈と首を傾げていたんだよ、まぁ兎に角人骨が出てきたからにはと慰霊碑を建てたという次第さ」

 

長門は耳を塞いで聞きたくない聞きたくないとうずくまって呟いていた、いつも凛とした長門がこの時は凄く可愛く見えた。

 

ーーーー数日後ーーーー

私は長門に巻き込まれそれを見る羽目になってしまったのだった。

 

其れはある日付が替わって少し経った日の事だった。

 

「提督、済まない工廠に忘れ物をしてしまった……取りに行くの付き合って欲しい……」

 

長門が執務室にやってきた、聞くと艤装をメンテしていてその際に工廠にスマホを忘れて来たので回収に行くから一緒に行って欲しいらしい。

 

「仕方ないな、あの話聞いたあとだからな」

 

長門は「ぴゃ!」とかかわいい悲鳴をあげた。

 

「へー長門、なんかかわいい声出さなかった」

 

無言で長門からつねられた、のだがその手は心なしか震えていて私から離れなかった。

 

「夜の工廠は確かに怖いからな…」

 

そりぁ、照明はついていても無人の自動搬送装置だけが動いている工廠は誰だって怖い…と思う。

 

「うん、もうこんな時間か」

 

私は腕時計を見た、時計は2時を少し過ぎた時間を指し示していた。

 

「長門、スマホ何処に忘れたんだよ」

「艤装分解整備室だ」

 

私はその場所を聞くと少し何かを感じた。

『艤装分解整備室』扉にそう書かれた部屋の前に到着した、丁度その時だった。

 

「自動搬送装置か」

 

床にはられた銀色のテープの上を其れは色々な部品を載せたカートを牽引しながら走行してきた。

そして私達の手前で止まると警告音を発した、あたかも障害物を検知したかの様に。

その次の瞬間、押しボタン式の艤装分解整備室の自動ドアが私も長門も触れていないのに勝手に開いたのだった、勿論私は立場上逃げるわけにも行かず内部点検をすることにした。

 

「と、と、兎に角だ、室内点検は異常はなかった…ほら長門のスマホ…」

 

私と長門は何も喋らずにスマホを何とか回収するとその場から逃げ出した。

 

 

翌日、私は明石に聞いてみた所、明石や夕張達工廠関係者は以前から知っていて深夜の工廠には近付かないようにしていたそうだ……とはいえ誰も実体と云うか霊体は見ていないそうだ…見たくないぞ!



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リビングデッド①

バイオハザード的なお話しと云うかまんまですね。


「何が起きた!」

 

私は、今眼の前で起きていることを理解できなかった。

 

「提督、早く逃げて!」

 

大淀が至る所破けた血塗れの姿で執務室に駆け込んできた。

 

「大淀直に治療を!」

 

私はスプレー式修復剤を棚から取ると大淀に駆け寄った。

 

「提督、近づかないで……もう私は助かりません…あれに噛みつかれ…」

 

大淀の瞳が徐々に濁っていった。

 

「……」

 

大淀は一瞬倒れ込むと口元から涎をたらし奇声をあげながら起き上がり僕に向かって近づきはじめた。

 

「大淀?」

「…提督、わ…た…し…を殺……」

 

まだ少しだけ残っていた理性で私に何かを伝えようとしていた。

 

「すまん」

 

私は謝りながら拳銃を構えると大淀の眉間を狙うと引き金を弾いた。

乾いた音と共に大淀が崩れ落ちた。

 

「提督ご無事でしたか!」

 

十数名の兵士がやってきた。

 

「一体何が…」

「我々にも解りません、気がついたらいきなりでしたから……部隊も不意を付かれてほぼ壊滅しました、唯一解ったのは…その噛まれると奴らの仲間になって他人を襲い出すという事です…それと噛まれると数分で死に至り、自我を持たない化け物として蘇るということです…更には生者の何かを求めて襲いかかってくるということです、無事なのは我々20名だけです」

 

私は兵士からの報告を受けて背筋が凍った。

 

「まるでバイオハザードの映画の世界だな…」

 

私の言葉に兵士達も相槌をうった。

 

「確かに仰る通りですね…大淀さんの状況から頭を破壊すればと云うのもまんまですか……」

 

私はこの部屋から移動する事にした。

 

「先ずは武器弾薬と食料、医薬品を回収するか」

 

私は鎮守府の敷地図面をタブレット端末に表示させた。

 

「武器弾薬はこの建物の地下か…食料と医薬品は鳳翔と明石が無事な事を祈るか…」

 

私達は地下室へと向った。

 

「不味いですな」

 

そこは正面玄関だった、其処を通り抜けないと地下へ降りる階段へは辿り着けない。

 

「奴らで溢れかえってますな…手榴弾で吹き飛ばしますか」

 

隊長の兵士が提案した。

 

「音を出せば集まってきそうだが致し方ないか…」

 

隊長が合図をすると一人の兵士が手榴弾を奴らの真ん中付近に投げ込んだ。

大音響とと共に奴らは爆散した。

 

「今の内に階段へ!」

 

私達は地下へ降りる階段室へと飛び込んだ。

 

「やれやれ」

 

私達は地下の武器弾薬へと向った。

 

「必要なのは散弾銃、軽機関銃、アサルトライフル、自動拳銃、携行式ロケラン、ハンドグレネード及び持てるだけの弾薬」

 

隊長の指示で兵士達が必要な銃火器、使用実包を集めだした。

 

「M870コンバットショットガンありました!」

 

一人の兵士がストックを短く加工したショットガンを3丁持ってきた。

 

「ロケランはどうします、FIM-92スティンガーとAT-4、RPG-7がありますが」

 

奥の方から呼ばれた、

 

「どれも要らない、それよりだM202はないか?」

「2つ有りました!」

「よしあとグレネードランチャーはないか?」

「M32とM79が1丁づつなら有りました!」

「両方持ってこい!」

 

奥の部屋からカートにロケランやグレネードランチャーを積んだ兵士が戻ってきた。

 

「M240Bがほぼ人数分有りました!」

「M240Bはボックスマガジンで使えるようにしておけ!」

 

指示を受けた兵士が直に使用実包を準備しだした。

 

「隊長、狙撃銃はどうしますか?XM2010とM24A2がありますが?」

「M24はナイトビジョン付きか?ついていたらM24持ってこい!」

 

狙撃銃もあったようで2丁が使用実包と共に眼の前に置かれた。

 

「隊長、M134持っていきます!」

「……持てんのかよ!」

 

ゴリラのような巨漢の兵士が弾薬箱とバッテリーを背負ってガトリング砲を手に戻ってきた。

 

「隊長、この空コンテナ持っていきましょう弾薬の収納や医薬品食料を入れられると思います」

 

4名ほどの兵士が四角い身長の半分はあろうかと言うコンテナを背負ってきた。

 

「ああ、確かにこの大きさなら使えるな…」

 

最終的に全員がM240Bと何らかの銃を持っていた。

私も持っているM240B以外にMG3にドラムマガジンをセットした物を見つけ出して背中に引っ掛けていた。

 

「隊長、鳳翔さんと明石さんは無事です」

 

壁の内線で鳳翔達の安否を一人の兵士が取っていた。

 

「居場所は?」

 

隊長が確認させた。

 

「鳳翔さんは店舗、明石さんは工廠事務室にて籠城中!」

 

気を利かせて兵士が明石の居場所も教えてくれた。

 

「鳳翔さんの店か…一旦地上に出ないと無理か…だが工廠なら地下から行ける、工廠の明石さんと合流を先にしよう、工廠についたら明石さんの救助並びに医薬品回収と溶接機の確保を最優先とする…此処を拠点とするか、武器弾薬は確保しておきたいですからね」

 

数名の兵士が指示を受けると先程入ってきた扉から出て階段室に弾薬庫にあったドラム缶を横倒しにして積み上げてバリケードを構築していた。

 

「これならたとえ階段を降りてきても扉は開けると出来ないですからな」

 

そう言うと、私達はもう一方の扉を開けて地下通路を工廠を目指して進んだ。

 

 

 

 




一部の兵士が背負った空コンテナ……陸戦型ガンダムが背負ってるあれデス…あれヲイメージしてください。
艦娘……大淀しか出てきてません、が次回ではゾンビ化した艦娘が出るデショウ。


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リビングデッド②

「この階段を上がれば工廠事務室に出る」

 

隊長がタブレットの画面を見ながら進んだ。

 

「隊長、出た瞬間に鉢合わせは勘弁ですよ」

 

まだこの時兵士たちは気楽だった。

 

「よし、扉を開けるぞ」

 

先頭の兵士が階段室へ抜ける扉に手を掛けた。

 

「どうだ?」

 

隊長が声を掛けた。

 

「この世の地獄とはこのことでしょうね」

 

私は兵士のヘルメットにつけられたカメラからの映像を隊長とタブレットで見ていた、其処にはゾンビ化した工廠作業員が多数生者を求めて彷徨っていた。

 

「M202で一気に焼き払うか…」

「確かにあれは焼夷弾ですから」

 

隊長が頷くと一人の兵士が扉を開けた瞬間にもう一人の兵士がM202をゾンビに向けて発射した。

 

私達は焼け焦げたそれに警戒しながら明石が立て籠もる部屋へゾンビを排除しながら向った。

 

「丁度いい事に医務室に立て籠もっていたようですな」

 

隊長が部屋のプレートを指差した。

 

「それなら一石二鳥で明石の保護と医薬品の回収を同時進行で行えるな、そうすると残すは溶接機の確保だな」

 

「明石無事か?」

 

私は扉をノックすると声を掛けた。

 

「提督…噛まれてないですよね?」

「どこもな、扉を開けてもらえるか」

 

部屋の中で何か重たい物を動かす音がすると程無くして扉が開いた。

 

「提督ご無事で…」

 

明石と夕張が抱きついてきた。

 

「大淀が……犠牲に…」

 

私は大淀が奴らの犠牲になった事を話した。

 

「そうですか…大淀…」

「泣くのは後だ、今はセーフポイントまで下がるぞ、必要なものはあるか?」

 

私は泣きそうな明石を強い口調で留まらせた。

 

「RQ-11を持っていきましょう」

 

夕張がドローンを持っていくことを提案してきた。

 

「隊長どう思う?」

 

私は隊長に聞いてみた。

 

「確かにドローンがあると偵察や生存者捜索がやりやすくなります」

 

私は隊長の意見を聞くと明石と夕張に指示を出した。

 

「RQ-11運用に必要な機材を直にありったけ確保してくれ」

 

私の指示を受けると明石と夕張は数名の兵士を連れて工廠奥のドローン保管庫へと向った。

 

「提督おまたせしました」

 

明石と夕張がちょっと大きめのラジコン飛行機位の物を持って戻ってきた。

 

「後はアンテナが工廠の屋上にありますから有線ケーブルを「ちっと待て、工廠の入り口は彼処だけか?」」

 

私は眼の前の鋼鉄製の大扉を指差した。

 

「はいそうですが、窓は天井と中二階部分にしか無いので」

 

私はある事を考えた。

 

「隊長、地下の武器弾薬庫にある物をすべて此処に移せないか、入り口を封鎖してしまえばこっちの方が」

 

私が言わんとしたことを隊長は理解していた、

 

「確かにそのとおりですな、ここなら問題ないでしょう、おいお前ら地下から武器弾薬すべて持ち出してこい、それとお前たちは、作業員の遺体を建物の外に運び出せ」

 

部下の兵士に指示を出した。

 

「入り口扉は閂で外から開かないようにできるが…壁は何で出来てるのですか」

 

隊長が明石に確認した。

 

「一応は二重の耐火レンガの間に3センチ厚の鋼板を挟んで出来てますけど」

 

「問題ないか……」

 

その時だった、内線が鳴った。

 

「鳳翔です、扉を開けてください!」

 

無線から聞き覚えのある声が聞こえた

 

「鳳翔さん無事でしたか、今から向かうところでした」

 

扉を開くと目の前に2台の2t車が飛び込んできた。

 

「直に扉を!」

 

兵士達がトラックが通過するが早いか扉を閉め閂を掛けた。

 

「提督さん…良かった」

 

トラックの助手席から伊良湖が降りてきた、もう一台からは間宮と瑞鶴が降りてきた。

 

「鳳翔、間宮、伊良湖、瑞鶴…4人共無事で何よりだ」

 

私は4人を抱きしめた。

 

「明石さんに夕張さん、鳳翔さんに間宮さん、伊良湖さん、瑞鶴さん……よく御無事で」

 

隊長以下の兵士達も喜んでいた。

 

「あと何人無事な娘が残っているか……やってみるか」

 

私は工廠の事務室に向かうと、予備の放送設備を起動させた。

 

「あー、私だ、もしこの放送を聞いたら工廠を目指せ、倉庫の屋根伝いに来れば工廠の事務室に直接入れる」

 

私は繰り返した。

 

「何人が生き残ったのでしょうか」

 

隣の兵士が首に掛けたロケットの中の写真を見ていた。

恐らくは彼女なのだろう、一人の女性が微笑んでいた。

 

「羽黒…」

 

それは妙高型重巡洋艦4番艦の羽黒だった。

 

「今は祈るしかないな」

 

そして日が暮れた。

 

 

ーーーーーーーー鎮守府内の屋根裏ーーーー

 

「妙高姉さん、今のは!」

「えぇ、提督さん無事なようですね、それならば私達も工廠に向かいましょう」

 

そう言うと、妙高は羽黒を起こした。

 

「羽黒起きなさい、移動しますよ」

 

羽黒ムックリと起き上がった。

 

「はい…」

 

しかしその表情は暗かった。

 

「足柄姉さん…」

 

この場に足柄の姿は無かった、なぜなら妙高と羽黒を逃すためにゾンビの餌食となっていたのだった。

 

ーーーー鎮守府内のとある一室ーーーー

 

「パーンパカパーン、私達も行きましょうよ」

 

長い金髪をたなびかせてその艦娘は隣でへたり込んでいた艦娘を起こした。

 

「そうですね、神通動ける?」

 

高雄が隣でぐったりしている神通に声を掛けた。

 

「大丈夫です、提督無事だったんですねホッとしました」

 

 

ーーーーーーーー

 

「提督、愛宕さんからで高雄さん、神通さんと共に合流するそうです!」

 

いきなり鳴った内線に出た兵士が報告してきた。

 

「高雄さんも無事でしたか」

 

隊長さんが安堵の表情をした。

 

「提督、倉庫屋根上に妙高さんを確認…那智さんと羽黒さんも一緒です!」

 

私は兵士からの報告を受けると隊長と現在までの人員を確認した。

 

「我々20名と提督、明石さん、夕張さん、鳳翔さん、間宮さん、伊良湖さん、瑞鶴さんとこれから合流する高雄さん、愛宕さん、神通さん、妙高さん、那智さん、羽黒さんの33名ですか…もう少し生き残っていて欲しいですな」

 

 

最後に隊長が呟いた。

 

「我々は待つしかない…定期的に放送をしているから徐々に増えてくるとは思うが」

 

私は鳳翔を呼んだ。

 

「鳳翔、店にはまだ食料残っているか?」

「……残ってはいますが、取りに行くには」

 

そうだった、輸送手段が必要だったのだ……。

 

「提督、冷凍冷蔵車ならありますよ4トンで良ければ……」

 

明石が裏に工廠で使う薬品の保管用に冷凍冷蔵車を持っているとの事だった。

 

「中の積荷を全て降ろして、鳳翔の店に食料確保に向かう」

 

私の指示を受けた兵士達が明石と共に積荷を下ろすと鳳翔の店へと確保に向った。

 

それから少し経って、外では銃声が派手に鳴り響いていた。

 

「負傷者なし、これから戻るそうです…それと新たな生存者確保との事です」

 

無線による工廠到着の報告を受けると扉が開かれ冷凍冷蔵車が工廠内に滑り込んできた。

 

「提督、只今戻りました」

 

明石が報告した、

 

「鳳翔さんの店で籠城していた陽炎、不知火、黒潮、時雨、夕立、吹雪、深雪、隼鷹、飛鷹、千歳、千代田を保護」

 

陽炎達はトラックから降りると床にへたり込んだ。

 

「11人かよく生き残っていてくれた」

 

私は一人ひとり抱き締めると頭を撫でた。

千歳が赤城達の最後を伝えてくれた。

 

「提督、残念な報告が…その赤城さんと加賀さん、蒼龍さん、飛龍さん、翔鶴さんは私達を逃す為に囮となって…瑞鶴さんは…みていません」

「そう…か………瑞鶴なら鳳翔達と一緒に居たぞ、無事だ」

 

その時だった、

 

「あのよろしいでしょうか」

 

不知火が口を挟んだ。

 

「どうかしたか?」

「はい鳳翔さんのお店に立て籠もる前に会ったのですが、金剛さん達が艤装保管室に立て籠もるって言っていました」

「本当か!」

 

明石がは隊長の持っていたタブレットを借りると艤装保管室の位置を示した。

 

「提督、ここです…彼処は確か放送聞こえないんです」

 

其れは工廠のすぐ脇の建物だった。

 

「此処なら工廠の2階から連絡通路で行けます」

 

私は夕張の案内で艤装保管室に向った。

 

「このドアの向こうが保管室です」

 

私は一応ノックしてみた。

 

「……誰?」

 

この声は恐らくは霧島だろう、

 

「私だ、開けてくれ感染者は居ない」

 

少しの間を置いて扉が開かれた。

 

「無事か?」

 

しかし目に映ったのは、柱に縛り付けられゾンビと化した長門の姿だった。

 

「私達は無事だけど……長門が」

 

陸奥が今にも泣き出しそうな顔をしていた。

私は長門の額を撃ち抜いた。

 

「せめて一発で…」

 

ついに陸奥が泣き出した。

 

「兎に角だ、全員隣の工廠へ」

 

私は金剛達を工廠に避難させた

 

「夕張、保管室と外部への扉は全て溶接並びに補強して破られないように!」

 

私の指示で夕張が扉と窓を厚めの鋼板で溶接していった。。

 

「さて、金剛、比叡、榛名、霧島、陸奥、扶桑、山城君達だけでも無事で良かった…艤装も無事確保できた…」

 

私は生存者が増えた事に少しだけ安堵した、とはいえこれでも艦娘全体からすれば四分の一だった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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リビングデッド③

「明石、2t車で入口扉を塞いでくれ」

 

私は明石にトラックをバリケードとして停めるように指示を出した。

 

「鳳翔と間宮は残りの食料をリスト化、霧島と神通は残弾の確認を」

 

私は次々と指示を出していった。

 

「夕張、工廠作業員の部屋を確認してくれ使える物は持ってくるように、念の為にこれ持っていけ」

 

私からショットガンを受け取ると夕張が陽炎達を連れて工廠3階の作業員寮へと向った。

 

「部屋の中にいる可能性もありますか…」

 

それから程無くして夕張達が戻ってきた。

 

「インスタント食品と寝具、飲料水がありました…それと作業員はいませんでした」

 

其れは私にも直に判った、何故なら一発の銃声もしなかったのだから。

 

「提督、窓の外を!」

 

見張りをしていた兵士が叫んだ。

 

「どうした?」

 

私と隊長が窓の外を覗いた。

 

「うじゃうじゃいますな…ですが、ただ彷徨っているだけのようですな」

 

窓の外のそいつらは目的もなく今は周囲を彷徨っているだけのようだった、だがその時だった、工廠外周に仕掛けたクレイモアが数個反応し爆発した。

 

「クレイモアに引っ掛かったか…新しいのを設置しないと」

 

「明石ドローンを飛ばしてくれ、偵察場所は鎮守府正面ゲート付近」

「了解です」

 

明石と夕張がドローンの準備を始めた。

 

「飛ばします」

 

夕張が工廠屋上からドローンを放った。

 

「ドローンからの映像来ます!」

 

私と隊長が明石の操作するパソコンの画面を覗き込んだ。

 

「鎮守府外には感染者いないようですが……荒廃の仕方が半端ないですね…ん?」

 

明石が何か見付けたようだった。

 

「何かあったのか?」

「サーマルカメラに複数の人間若しくは艦娘の熱源反応が!場所はゲート脇警備棟2階」

「提督、警備員詰め所のようです…ただドローンからの映像によると……1階部分は感染者が多数いるようです」

 

私は何か方法が無いかと思案した。

 

「提督意見宜しいでしょうか」

 

一人の兵士が意見具申してきた。

 

「構わない、この際だ意見のあるものは言ってくれ」

「はい、それでは……工廠の隣の倉庫は海軍陸戦隊が使用していまして……ストライカーICVが保管されていたはずです」

 

黙って意見を聞いていた隊長が口を開いた、

 

「ストライカーか……使えますな、何人か倉庫に行って使えるか確認してこい」

 

隊長の指示を受けた数名の兵士が夕張と共に隣の倉庫に向った。

 

「燃料が入っていればよいのですが…」

 

隊長は燃料切れを危惧していた。

 

「確認班から報告、ストライカー4台あり、燃料及び弾薬フル!エンジン始動良しとの事です」

 

私は指示を出した、

 

「バリケード替わりの2t車を外に出して、ストライカーを工廠内へ!」

 

そしてストライカー4台が工廠内へと入ってきた……、

 

「1台多くないか?」

 

入ってきたのは5台だった。

 

「最後の1台は16式じゃないか!」

 

最後尾は陸自の機動戦闘車だった。

 

「105mm砲…誰が乗っているのか?」

 

16式の各ハッチが開かれて4人の艦娘が降りてきた。

 

「提督、ご無事で…」

 

降りてきたのは最上と鈴谷、熊野、三隈だった。

 

「最上達も良く無事でいてくれた」

 

新たに最上達4人が加わった。

 

「ちょうどいいな、それではドローンのバッテリー充電が完了次第、警備棟2階で確認された生存者救助に向かう、誘導は夕張からの無線指示に絶対従う事」

 

「了解であります」

 

兵士達が装備品のチェックと車両への機材積み込みを始めた。

 

「念の為に脚立を2つ持っていきます、後は医薬品を」

 

ーーーー2時間ーーーー

 

「提督、ドローンのバッテリー充電終わりました」

 

夕張が報告してきた。

 

「それでは救出作戦を開始する」

 

2台のストライカーと16式が工廠からの出ていった。

先行するドローンからの映像を確認しながら夕張が車両部隊に進路指示を出していた。

 

「今の所障害物は無いか……」

 

車両部隊は問題無く警備棟へと到着した。

 

「これより2階を偵察します」

 

夕張がドローンを窓に近づけた。

 

「生存者確認!女性一般職員8名及び国後、択捉、占守、文月、瑞鳳、祥鳳を確認しました!」

 

夕張からの生存者発見の報告は現場にも直に伝わった。

 

「ストライカー2号車、前進2メートル…ストップ!」

 

夕張がストライカーの停車位置を正確に決めた。

 

「上の窓辺に固まっています、脚立を掛けて救助を!」

 

兵士達が素早く救助体制をとった。

 

「ストライカー2号車受け入れ準備よし!」

 

その合図を皮切りに次々と生存者がストライカーの車内に保護されていった。

 

それから直にストライカー部隊は14名の生存者と共に工廠へと帰還した。

 

 



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リビングデッド④

「救出作戦完了、バリケード扉の開放を要請します!」

 

16式の熊野から帰還の無線が入った。

 

「周囲警戒おこたるな!バリケード開放」

 

少しだけ扉を開けて奴等の有無を確認すると車輌部隊を迎え入れる為にバリケードを開放した。

 

「提督、今戻ったよ……部隊に負傷者欠員なし、要救助者は確認出来た人員を連れ戻ったよ」

 

最上が帰還の報告をした、

 

「御苦労休んでくれ、間宮と鳳翔が昼飯を用意してくれている」

 

私は救助されてきた者達と向き合った。

 

「先ずは確認したい、奴らに噛まれた者はいないか?」

 

その次の瞬間だった、女性一般職員の一人が周りの制止を振り切って私に掴みかかると押し倒して平手打ちを往復でしてきた。

 

「私達が怯えている間…こんな所でヌクヌクと!あんた達が遅かったせいで!崇は……崇は…絶対に許さない!私はアンタの顔なんか見たくない、此処から出て行く!」

 

其れだけ言うと、バリケードの隙間から扉を勝手に開けて外へと出て行ってしまった。

 

「なっなっ何よ、自分勝手な事ばっかり言って!」

 

他の女性職員が呆れていた。

 

「提督すみませんがこれ以上規律を乱すものを連れ戻すのは…」

 

隊長が彼女を引き止めようとした私を制しした。

 

「崇と云うのは…彼女のなんと云うか…その……都合の良い男金づる的な感じでした…それを失ったんです」

 

同僚が説明してくれた。

 

一瞬暗い空気が流れたが、間宮が昼食の用意ができたと呼びに来たのでなし崩し的にこの話は終わりとなった。

その後この女性は姿を見たものはいなかった、恐らくは敷地外に出て人知れず奴等の餌食となって屍を街で彷徨わせているのだろう。

 

「400名以上いた人間が……6分の1か…辛いな」

「見方を変えればよくこれだけ生き残れたとも…」

 

私と隊長がボソリボソリと呟いていた。

 

「提督、まだ諦めては…何処かで生き残った娘達がまだいるかも知れません、引き続きドローンによると調査を継続しましょう」

 

私は隊長の言葉に同意すると、明石と夕張にドローンによる調査を継続するように指示した。

 

「提督、隊長、意見具申宜しいでしょうか」

 

一人の兵士が私と隊長に意見具申してきた。

 

「今は遠慮なく意見を出してくれ」

「はっ、それではストライカーによると市街地への生存者調査と偵察及び物資確保を行うべきかと、可能であれば市街にて大型トレーラーを確保して輸送並びに避難車輌とするのはどうでありますか?」

 

私は兵士の案を了承した。

 

「確かに今の処は食料及び医薬品も足りて入るが今後のことも考えれば必要だな、よしそれでは明日より市街にて生存者捜索並びに必要物資の確保を開始する」

 

そう言うと、私はテーブルの上に市街地図を広げてコンビニ、スーパー、衣料品店、薬局、病院、各種物流センターをピンで示していった。

 

 

ーーーー翌日ーーーー

 

私は兵士と一部の艦娘を前に作戦を説明した。

 

「みんな見てくれ、赤いピンがコンビニとスーパー等の食料品店、青は衣料品関係、黄色が薬局並びに病院だ、緑はその他の物流センターとなっている、優先は物流センターで使えそうな大型トレーラーを確保してもらいたい、これはいざとなった場合、生存者の輸送にも使えるからだ、次は食料と医薬品を同時とする、こちらは可能な限り回収してくれ、尚食料品についてはレトルト品、袋菓子、缶詰等の保蔵可能な物を、生鮮食料は恐らくは傷んでいるので野菜以外は無視してほしい、冷凍食品は解凍の有無を確認の上で回収を飲料水はペットボトル入のミネラルウォーター又は有ればウォーターサーバーも回収してほしい、医薬品については消毒液及び正露丸、包帯、絆創膏、ガーゼ、抗生物質、解熱鎮痛剤を優先して回収してほしい」

 

私は全員を見渡した。

 

「えっと私が同行しますので医薬品については私が指示を出します、宜しく願いします」

 

明石が頭を下げた。

 

「食料品は私が選別致しますのでお願い致します」

 

続いて鳳翔が挨拶をした。

 

「護衛は任せてネー」

 

金剛姉妹と陸奥、愛宕と高雄が手を挙げた。

 

「それでは駆逐艦と海防艦の娘達は間宮と伊良湖のサポートを、それ以外の娘達は工廠の防衛を!」

 

「はい」

 

全員が一斉に動き出した、そして4台のストライカーが一斉に市街へと向かっていった。

 

「隊長は私と来てくれ、ドローンを使って鎮守府内を調査する、必要とあらば16式にて現地にも確認に向かう」

 

私はそう言うと夕張にドローンによる調査を再開させた。

 

 

 

 

 

 



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リビングデッド⑤

とある街のとある物流センターにて…

 

「条件に合うトレーラー何とか見つかりましたね」

「冷凍車と混載用があって助かりましたよ」

 

数名の兵士が他の牽引用トラクターから燃料を移し換えながら会話していた。

 

その他の者たちは物流センターにあった小型トラックなどで物資の回収に向かっていった、幸いな事にセンター内にいた奴等は少なく、あっという間に制圧出来た。

 

「後は生存者がどれくらいいるかだな……」

 

一人の兵士が呟いた。

 

ーーーー同時刻ーーーー

 

 

「あまり残ってないですね……」

 

高雄がコンビニのバックヤード扉をこじ開けると中を覗いた。

 

「幸いなのは袋麺や調理の必要な物や調味料が残されていたことですかね」

 

兵士が高雄と話しながらトラックの荷台へと運び込んでいた。

 

そんな最中無線が聞こえた。

 

「市立病院にて生存者多数、我々との合流は希望せず!どうしますか」

「食料品を積んだ車輌一台を病院へ向かわせてそのまま置いてくるように」

 

提督とのやり取りが聞こえた。

 

そして任務が完了した。

 

「偵察及び物資回収部隊はこれより帰隊します、大型トレーラー6台分の物資を回収に成功、提督指示によりうち1台は病院へ置いてきました」

 

そして鎮守府に次々と物資と数名の避難民を乗せたトレーラーが帰還してきた。

 

「トレーラー5台分の食品、医薬品を回収に成功それと少数では有りますが生存者8名も救出保護して来ました……後大型のタンクローリーを3台発見致しました、内容物は軽質油及びA重油のようであります、それとちらっと見えたのですが陸自の10式が5両放置されています」

 

私は報告を聞くと隊長に確認した。

 

「まだ時間はあるな…折り返しですまないが直にトレーラーの確保を」

 

隊長からの指示を受けた兵士達がストライカーへと乗り込むと市街へと戻っていった。

 

「タンクローリー3台分の軽油とA重油となると当分は自家発用と車輌用の燃料の心配はしなくて済みそうですね、戦車もあるというのは……」

 

明石と夕張が安堵の笑みを浮かべた。

 

それから程無くして回収班からの無線が入った、

 

「タンクローリーについては積載物の燃料は問題無く満載です、トラクターにも問題ありません、あと戦車については積載車に載ったままですので弾薬運搬車と共にこのまま回収します」

 

「提督、バリケードの構築終わりました」

 

山城指揮で隣接する港湾施設からコンテナとフォークリフトを拝借してバリケードの設置をしていたのだった。

 

「寮と工廠に隣接する倉庫内のアレ達は排除完了です」

 

扶桑がアサルトライフルを手に戻ってきた。

 

「寮だけでも使えるようになったのは助かるよ」

 

私は扶桑の頭を撫でた。

 

「私も頑張りました」

 

山城の頭も撫でた。

 

「助かったよ、でコンテナの中身は何だったんだい?」

 

私はコンテナの中身について聞いてみた。

 

「建材と一部は食料品か入っているコンテナは直に取り出せるように工廠付近に配置、夕張に頼んで横に扉を付けてもらいました、それ以外はそのまま2段積みにして防壁としています」

 

工廠付近にあるコンテナを見ると側面に即席の扉が取り付けられていた。

 

「中身の食料品はこれでした」

 

山城が中身の一部を持ってきた。

 

「輸入品の冷凍食品か…解凍されてない!!冷凍機付きのコンテナか!山城でかしたぞ!」

 

私は思わず山城にハグした。

食料品の冷蔵冷凍保管ができるようになった。

 

そんな中、私の携帯が鳴った。

 

「はい提督ですが」

 

電話の相手は市長だった。

 

「市長です、そちらも無事でしたか」

 

市長は安堵の声を出した。

 

「無事とは言えません6分の1……しか残っていません、警備兵は壊滅です」

 

私の言葉に市長も先程の安堵感が消沈していた。

 

「提督、こんな時に何だが……其処から私の家が近い…その可能であれば妻子の救助を頼みたい」

 

市長はこんな時に自分の妻子の心配をとか言いにくそうにしていたが、

 

「市長、戦闘車両も数台確保しているので救助は可能かと」

 

私は市長との電話を切ると、市庁舎及び市長宅への要人救出作戦を立案する事にした。

 

 

 

 

 

 



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日常に潜む闇

「やっと……やっと終わった」

 

長く続いた深海棲艦との戦争はようやく終結を迎えた。

 

「扶桑、私と結婚してほしい」

 

私は仮カッコではあるが結婚した扶桑に本当の意味での結婚を申し込んだ。

 

「勿論です、私なんかで宜しければ」

 

扶桑が結婚を承諾してもらえた、残るは妹の山城の説得だ。

 

「私は扶桑姉さまが良いといえば問題ありません」

 

私は肩透かしを食らった気がしたが兎も角婚姻届けを役所に提出した。

 

「さてと、これで本当の夫婦となり、山城は義妹になった訳だが…これからもよろしく」

 

何だかしまらない挨拶を交わすと、私は先祖から受け継いだ郊外にある家へと向った。

 

「あなた、3人で住める程広いのですか」

 

扶桑が家の事を聞いてきた。

 

「ああ、八畳間だけでも十部屋、四畳半に至っては七部屋もあるからな…広すぎて掃除が大変だよ」

 

等と家の事を話しているうちに私達は郊外の家に着いた。

 

「……」

 

山城があまりの大きさの家に言葉を失っていた。

 

「先に言っておくな、開かずの間や夜中に変な音何て事は一切ないから期待するなよ」

 

私は少しだけ茶化した。

 

「当たり前です、お兄様」

 

そうこの時迄は唯の冗談話で済んでいたのだ…

この祖先由来の家の改築工事中に借りる事となる家に問題があったのだった。

 

その日私と扶桑は半年間の仮住まいを探して不動産屋をまわっていた。

 

「なかなかないな…家財道具はレンタル倉庫でなんとかなるが」

 

そんな不動産巡りをしていたある日の事だった。

 

「この家良くないですか」

 

やましが一軒の家を見つけてきた。

 

『最寄り駅迄徒歩5分、敷金礼金無し、5LDK、リフォーム済み、家賃4万円』

 

私は何か引っかかるものがあったが、他に無かったのでこの家の内覧をする事にした。

 

「こちらが鍵で御座います」

 

不動産屋から鍵を受け取るとその家へと向った。

 

「まだ新しい家じゃないか!」

 

私の眼の前に建つ家はまだ築2年ないし3年の物件だった。

 

「あなた……私……この家…何か…わたくしは入りたくありません…」

 

扶桑が何かの気配を感じたようだった。

 

「そうか、私には何も感じないが」

 

そうこの時までは私も気楽に考えていたのだった、そして現実は家に入り2階に上がった瞬間に姿を現した。

 

「何だ……2階だけやけに…暗い…それに寒いな」

 

そう窓から陽の光は入って来ているのだが、何というか底冷えが堪らない感じなのだ。

 

「おっおっお兄様、これは」

 

山城が扉の影に盛り塩を見つけてしまった。

 

「この家何かあるぞ、すぐに出よう」

 

私達はすぐに家を出ると、その足で不動産屋を訪ねた。

 

「あの家について何か隠してないか!」

 

私は家の中で撮影したあの盛り塩の写真を不動産屋に突き付けた。

 

「何でしょうな、あの家が瑕疵物件とでも言うのですかな、言い掛かりですぞ!」

 

不動産屋は頑として認めなかった。

 

私は扶桑と山城をビジネスホテルに泊まらせると、あの家へと一旦戻った。

 

「何が何でも証拠を!」

 

私は2階の上がり口や風呂場等に定点カメラを設置すると庭先に停めた車へと向った。

 

「あんた、この家に越してきたんかい」

 

隣の住人と思しきご老人が声を掛けてきた。

 

「内覧しただけですが……」

「そうか、ここはやめたほうがええぞ、この家はの…住んだ人間に不幸が訪れる呪われた家じゃ…」

 

私はご老人の忠告を受け入れ、扶桑達が泊まるビジネスホテルへと戻る事にした。

そして翌日、家の各所に設置したカメラを回収すると、画像を確認することにした。

 

「この家は……」

 

私は背筋が寒くなり映像を途中で観ることを辞めた。

そして、その映像を不動産屋に突き付けた。

 

「これでもシラをきるつもりか!」

 

不動産屋もその映像を初めて見た様子でガタガタと震えていた。

 

「この事はどうかご内密に…その代わり此方で最高の物件をご提供いたします」

 

そう言うと、不動産屋は恐らくはタワマンの一室を提供してきた。

 

ーーーーーーーーーー

 

結局あの家で何があったのか、私があのご老人から聞いたのは、不動産屋が無理やり墓を潰して宅地とした為にその地に眠る御霊が怒り出てきたのだという事だった。

私が感じたのは2階だけであったが、実際は家中至る所で霊障が起きていたそうだ。

 

 



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廃墟探索

今回は川内と提督のみのお話となります。


「やーせーんー」

 

いつもの如く川内がまとわりついてきた。

このままにしておくと何時までも夜戦と煩いので、

 

「それなら今晩出掛けるか?」

 

俺の言葉に川内の目が輝いた。

 

「やったー夜戦だぁ!」

 

それから川内は大人しく執務を始めた。

 

ーーーーそしてーーーー

 

「今何時だ」

 

俺は時計を見た、

 

「21時か……そろそろ出掛けるか」

 

俺はリビングでゴロゴロしていた川内に声をかけた。

 

「川内そろそろ出掛けるぞ」

「うん、でどこ行くのさ」 

「秘密」

 

俺は川内と愛車のレンジローバーに乗ると、とある場所を目指した。

 

「随分山奥に行くけど……」

 

川内が少し不安になったのか車外をしきりに気にしだした。

俺はそろそろかと行き先を教えた。

 

「これから行くのは……とある廃墟なんだけど……曰く付きで……過去に何人か探索に来た奴が帰ってこないなんて噂がある場所だ……」

 

俺の説明に川内が少しだけ怯えた。

 

「げっ、そんな場所大丈夫なの」

 

勿論俺はそんなもの信じてはいない。

 

「事前に調べたが唯の廃屋なだけだ……タブン」

 

川内は小声で言った部分に反応した。

 

「最後の小声気になるなぁ」

 

等と話している間に、車は目的の廃屋に到着した。

 

「何人か来てるみたいだな」

 

廃屋周辺の空き地に車が何台か駐車されてきた。

 

「それじゃ入るぞ」

 

俺は懐中電灯を持つと川内の手を取り廃屋へと足を踏み入れた。

 

「かび臭ぁ」

 

川内がマスク越しに呟いた。

 

「仕方ないだろう廃屋なんだから」

 

とは言ったものの、至る所で床は抜け、壁も崩れていた。

 

「ねぇ、さっきから気になったんだけど……」

「どうした?」

「何台か車来てたよね…それなのに誰とも会わないなんてあり得る?」

 

確かに川内の言うとおりだ、あの台数なら最低でも10人位は居るはずなのに、話し声はおろか気配さえもないのだ。

 

「嫌な予感するな…川内、一旦出るぞ」

 

俺は川内の手を握り直すと、屋外へと向った。

 

「どういうこ……」

「へっ?」

 

俺と川内の目の前には……俺のレンジローバー以外は廃車の山があるだけだった。

 

「確かに普通に駐車していた筈……川内ヤバいぞ」

 

俺は川内を車に乗せるとエンジンを掛けた。

 

「おいてかないでよ……」

 

それはいきなりだった、川内が車外から窓を叩いていた。

 

「なっなっ……」

 

俺は助手席を振り向いた、そこには……川内ではない何が座っていた、俺の意識はそこで途切れた。

 

「っ!」

 

どれ位経っただろうか、俺は目を覚ました。

 

「川内……」

 

助手席に川内の姿は無かった、俺は川内を探す為に再度廃屋へと足を踏み入れた。

…………

…………

…………

「川内何処に……」

 

廃屋内に川内の姿は無かった、無論携帯も出なかった。

その日を堺に川内は姿を消した、俺はその責任をとることとなり、停職処分を受け自宅待機を命じられた。

 

それから数日か経ったとある日の事だった。

 

「提督ですね」

 

自宅で拘束されている俺を訪ねてきた男は海軍特捜と名乗った。

 

「あなたの部下である川内行方不明事件について進展がありましたので、お話をしに来ました」

「川内がみつかったのかっ!」

 

彼は俺に話しだした、

 

「見つかりはしたのですが……あなた方が探索に行った廃屋から更に山奥にある鉱山跡で…衰弱はしていますが……ただあの日の夜の事は廃屋に入るまでしか覚えていないそうです」

 

この日を堺に俺は提督へ復職した、勿論川内も戻ってきたが……。

俺はあの日の事を口にする事は無かったし川内もあれ以降夜戦と騒がなくなった。

 

結局の所助手席にいたあれは何だったのか、あの廃屋で過去に何があったのか、それは今でも謎のままだ。

当然あんな事のあった車はあの後すぐに売り払い新しく買い直した。

 



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廃墟探索②

此処から現在になります、語りは大淀若しくは提督です。


そして川内が戻ってから数日後の事。

 

「今日の業務はこれで終了だ」

 

俺は川内にそう言うと、執務室をあとにし官舎へと戻った。

 

「此処までは、前提督の……私が記憶している、最後の姿です…この後、何が起きてああなったのかはわかりません」

 

大淀は其処まで話すと、少し冷めたお茶を飲んだ。

 

「そして、翌朝総員起こしが掛かっても起きて来ない提督の様子を確認しに行った所……部屋中に血が飛び散っている中で前提督が……正確には首から上のない姿でしたが……遺体を発見しました……それから軍警察の調査が入って……そのまま封印する事にしたのです」

 

私は着任早々に、大淀から提督官舎の使用禁止と言われた理由をやっと理解できた。

 

「そんな事が……だが、前提督を殺害でいいのか、犯人はどうなったのだ?」

 

私は犯人について大淀に聞いてみた。

 

「軍警察の話では、官舎の鍵は公式には3本なのですが、1本目は執務室の鍵保管庫、2本目は提督自身で、3本目は警備部に…そして後の調査で判明したのですが……提督から複製を貰っていたらしく川内が持っていました……そしてこの事件後、鍵を見た者はいません、川内と共に…犯人は……軍警察の見解では川内ではないかと、その痴情のもつれから殺害に至ったのではないかと……」

 

私は大淀の話を聞くうちに背筋が寒くなるのを感じた。

 

「一体何が…川内は何処に……」

 

大淀も此処まで話すと口をつぐんだ。

 

「とはいえ、決定的な証拠も無い以上は川内犯人説は……推測に過ぎないなか…官舎の検証は何処までやっているのか知ってるのか」

 

私は大淀に聞いてみた。

 

「私が聞いたのは寝室と居間を検分したとしか……」

「成程……となるとそれ以外は手付かず担ってるのか……」

 

私は考え込んだ。

 

「提督…どうかされましたか?」

 

大淀が私を覗き込んだ。

 

「まあな、それより官舎の鍵はまだあるのか?」

「はい、まだありますが……一体何を?」

「川内の捜索と真犯人を暴き出す、まぁ夜は流石にあれだから昼から官舎に入って調べてみるさ」

「提督、あまりに危険です!」

 

私はそう言うと、しぶる大淀から鍵を受け取った。

 

「私の感が正しければ……川内も官舎内で死亡している……神通と伊勢、日向を呼んでおいてくれ」

 

私は大淀と伊勢、日向と官舎へと向った。

 

「ならば、入るぞ」

 

私は玄関扉の鍵を開けた。

私は暫く官舎内を歩き回ると、

 

「この下に何かあるな…」

 

私は足で床を叩きながら歩いた。

 

「地下室なんて聞いてないですが……」

 

伊勢がダイニングテーブルをどけると、そこには床下収納に偽装された地下への階段が姿を現した。

 

「いつの間に」

 

大淀も知らないらしい。

 

「神通、懐中電灯を」

 

私は神通に階段を照らさせた。

 

「かなりの深くまで降りてますね……」

 

神通が懐中電灯で階段やその下を照らした。

 

「降りてみる」

 

私も懐中電灯を点けると階段を降りた。

 

「行き止まり?」

 

先頭の神通が立ち止まっていた。

 

「いや、神通右に引き戸らしきものが有る」

 

日向の言葉に神通は右を懐中電灯で照らした。

 

「ありました……でも何かの腐敗臭が……」

「神通下がれ…私が確認する」

 

神通を下がらせると、私は右側の引き戸を開けて室内を確認した。

 

「やはりか……」

 

その隠し部屋とも云える空間には、想像通り川内と思しき遺体があった。

 

「川内も首が無いか……やはり川内犯人説は消えたな」

 

私達はこの事を軍警察に報告する為に一旦執務室へと戻る事にした。

 

  

 

ーーーーーーーー数日後ーーーーーーーー

 

「神通、大淀これから川内の検死に立ち会う……」

 

私は二人を連れて軍警察病院へと向った。

 

「川内について確認する、直近での負傷の有無と程度だが……」

「確か、左手腕に直撃弾を受けて……」

 

私は神通からの返事を聞きながら病理解剖室へ入った。

そこには解剖の為に全裸の川内と思しき女性の遺体が横たわっていた。

 

「やはりか……」

 

私は川内と思しき女性の左腕を確認した。

 

「きれいなものだな傷なんか無いか、替え玉だな……建造後間もない新造の川内を身代わりにしたか、となると提督の遺体も怪しいな」

 

「一体何を……」

 

大淀が疑問符を頭に浮かべながら聞いてきた。

 

「何簡単なことだ、身代わりの遺体を2体用意して、愛の逃避行と言う事だ、おそらくな……提督の遺体は、恐らくはクローンだろうな、艦娘建造の技術を使えば簡単なことさ、何処かで川内と二人幸せに暮らしているのだろう……今の話は口外を禁止する、たとえ警察相手でも……」

 

 

翌日ーーーー

 

「大淀、君を含む霧島、鳥海、明石、夕張、北上の6名を会議室に呼び出してくれ」

 

私は大淀にそう指示を出すと、会議室へと向った。

 

 

「提督、揃いました」

 

 

それから程無くして全員が揃った。

 

「先ずは明石、建造についてだが……提督一人でも可能か?」

 

私は明石に最初の質問を投げかけた。

 

「秘書艦がいれば可能ですね」

「……となると明石や夕張がいない深夜に建造したか……明石、此処半年間の解体施設の稼働状況を調べてくれ、夕張は霧島と建造ドックの稼働データ解析を」

 

「了解しました」

 

明石と夕張、霧島が解析作業に掛かるべく執務室をあとにした。

 

「鳥海と北上は此処半年間の電力消費量の確認をしてくれて、建造すれば資材については誤魔化せても電力消費は誤魔化せないからな、その日だけ大幅に増加している筈だからな」

 

「はいよー」

 

北上がユルユルな返事をすると鳥海と管理課に向った。

 

「大淀は私と二人の検死報告書を再調査する」

 

私は事前に明石から前任者の身体的特徴を聞いていた。

 

「確か、盲腸の手術をしたと言ったのだな」

「はい、川内からそう聞いていますが……」

 

私は大淀からの話を聞くと遺体写真の下腹部を注意深く確認した。

 

「ウ~ン、それらしき傷痕はないなぁ」

「提督、川内の遺体も戦傷が見当たりません」

 

大淀から分かりきっていた答えが返ってきた。

 

「遺体は二人共身代わりなのは確定的だな、後は確証が欲しいところか…大淀……外出する、同行を」

 

私と、大淀は私服に着替えると鎮守

 

「これから行く場所については口外を禁止する、いいな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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真相は…  25話以降は『北神山泊地の日常』にタイトルが変わります。
真相は(改)………①


私はとある諸島にある鎮守府で提督をしていた………そう2ヶ月前までは。

 

今から2ヶ月前……

 

「ヘーイ提督!バーニングラーブ」

 

何時ものように金剛からのダイビングアタックを受けながら私は食堂へと向かっていた。

 

「クソ提督、お茶よ」

 

秘書艦の曙がお茶を淹れてきた。

 

「これはすまない、早速頂くとするよ」

 

曙は私のは好みの温度を調べて淹れてくれた。

私は皆に好かれていて幸せな提督だとこの日迄は思い込んでいた、そうあの言葉を聞かされる迄は………。

 

 

 

………3時か………

 

「待機の娘達におやつの差し入れを持っていくか」

 

私は朝ののうちに街で評判の洋菓子店でケーキを買って準備していた。

 

「わ……」

 

扉をノックし声を掛けようとした瞬間、室内から艦娘達の会話が聞こえてきた。

 

「もうヤダ、限界です………榛名は大丈夫じゃありません………なんであんな男に媚を売らないといけないのですか」

 

榛名が感情を爆発させていた。

 

「私も限界デース…バーニングラーブなんて言いながらあいつに抱きつくの嫌デース、病気がうつりマス」

 

金剛が私を病原菌扱いしていた。

 

「………さっき出したあいつのお茶に毒でも入れとけばよかった」

 

曙は曙で私の殺害を口にした。

 

「私だって嫌ですよ、お店に来られたら嫌でも料理出さないといけませんから………あんな奴に私の料理食べさせたくありません」

 

鳳翔までもが毛嫌いしていた、私は持っていった差し入れを妖精に渡すと、そのまま執務室へと戻った。

それから数日間あれは気の所為ではないのかと日中の談話室や夜勤待機室の外で会話を聞き続けた。

そして私は一番その言葉を聞きたくない艦娘から聞かされることになった。

 

「なんで彼奴から指輪なんて貰わないといけないのよ、まぁ彼奴の前にいるときにだけつけときゃいっか………今すぐにでも捨てちゃいたいけど………」

「ならさ、捨てちゃって違うのつけたら、そしたらあいつからのじゃないからいんじゃない」

 

それは小学校からの幼馴染であり、隣の家に住んでいた夕張と誰かの会話だった。

 

「あの陰キャの趣味に合わせて会話すんの辛いのよね………あんなのが幼馴染で結婚仮カッコとか私の人生最大の汚点だわ…」

 

私は夕張と誰かの会話で失意の底に叩き落された。

その夜、艦娘や妖精の気配が消えるのを確認してから、私はとある場所へ電話を掛けた。

 

「鎮守府提督です、火急の用件で元帥へお取次ぎを」

 

電話口で保留音が鳴っていた。

 

「待たせた、ワシだどうかしたのか?」

「艦娘による私の排除若しくは殺害計画及びが進行中です、原因については現時点では全く不明です、証拠の音声データを今から再生します」

 

私は録音しておいた艦娘の会話を電話口で再生した。

 

 

 

「一体何が………何故だ………何時からだ」

 

元帥が聞いてきた。

 

「会話の内容から判断すると最近なようで、原因も不明な状況であります」

 

私の話を聞いた元帥が対処を指示してきた。

 

「判った………提督、君の身の安全を最優先とし現時刻をもって鎮守府の運用管理を放棄し執務室内のPCを回収後、速やかに脱出し鎮守府外へ退避せよ、尚君に従っている艦娘については同行を認める」

「鎮守府運用管理を放棄、執務PCの回収後退避並びに同行艦娘の件了解しました」

 

私は元帥からの指示を復唱すると直ぐに退避行動を開始した。

 

「まさか本当こんなことにになるとは………」

 

私はそんな事を考えていた時だった、

 

「提督、危険です直ぐに脱出を!」

 

青葉が私の私室に駆け込んできた、

「金剛達が提督を殺害しようと………こちらに向かっています!………私と衣笠、陽炎、不知火、明石、神通の6名が援護します」

 

私は、エレベーターの操作パネルに暗証番号を打ち込んで非常用地下駐車場への運転操作機能を呼び出した。

 

「これで良しと………これで私の暗証番号がないと地下へは降りれないな、青葉、お前達も撤退し合流せよ」

 

私達は荷物を降ろし終えると、エレベーターを通常運転へと切り替えた。

地下駐車場には専用の大型のワゴン車が待機していた。

 

「なんで何だ………何故…」

 

 

誰に言うともなく、一人口にするとをエンジンを始動させた。

 

「提督、全員乗車完了です」

 

神通からの報告を受けると、衣笠がワゴン車を発進させた

その日を境に私は鎮守府を去ると、セーフハウスからのリーモトで必要な執務を行った。

勿論艦娘は私が鎮守府外の場所に居ることは知らない(提督執務室と秘書艦の部屋は別々の為顔を合わせることがないので)。

その後、査察官による調査が入ったが………彼等もまたこの問題を解決しうる答えに辿り着けなかった。

 

 




鎮守府外のとある場所………鎮守府島から本島に渡ってすぐの所にある少し広めのマンション。


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真相は(改)………②

そして2ヶ月が過ぎ現在。

 

 

「………此処も何時まで…連絡橋を渡ってすぐは流石にだからなぁ」

 

私は大本営にこの事を話し、引っ越すことを決めた。

 

「提督、少しだけお時間を下さい………在席艦娘の行動調査を行って立ち寄りの可能性の無い安全な場所を選定しますので」

 

担当官が直ぐに対応してくれた。

 

「わかりました、宜しくお願いします」

 

それから私は、いつものように日中は執務を外出は深夜帯にのみするようにした。

 

「これなら外で知り合いにも会うことは無いだろう」

 

マンションからかなり離れた場所のスーパーであり深夜帯だからという事から私達は油断していた。

 

「提督、お待ち下さい…前方に2名の艦娘を確認」

 

神通が私の前を歩く艦娘を捕捉していた。

 

「まさか………あれは」

 

それはとある日の何時もの深夜の買い物を何時ものスーパーでしている時だった、相手からは見えていないが私の前を艦娘と思しき二人組が歩いていた。

 

「提督が居ないと鎮守府も平和だね」 

「夜戦もやり放題だしね」

 

話し方や内容から川内と那珂であることは理解できた、

私と神通は静かに距離を取ると買い物を中断し会計を済ませると、その場をあとにした。

 

「気付かれてはいないはずだが…この店はもう使えないか」

 

私は別のスーパーへと向かうことにした。

 

「今の処は、直接的な行動は無いからな…」

 

私はそんな事を考えながら別のスーパーの駐車場に車を止めた。

 

「嘘っ………最低、こんなとこでこいつらに会うとか……ありえないんだけど、行きましょ………さん」

 

私が車を降りた瞬間、隣の車の持ち主と目があってしまった、それは大井だった勿論北上も一緒だった。

 

「ちょっと提督、話があるんだけど」

 

北上が私を呼び止めた。

 

「ちょっ………北上さん、あんな奴に声を掛けるなんて信じられません!」

「うっさいなぁ、大井っちは黙ってて」

 

大井を黙らせた北上が私の方へとやってきた。

 

「提督さぁ、最近鎮守府中で姿見ないよね、どこにいるのさ」

「答えられない、軍機に相応する」

「そっか………軍機なら仕方ないかぁ」

 

それだけいうと北上が去っていった、私の手に大井には見えないようにと小さなメモを手渡しながら。

 

「何だ?」

 

私は大井の車が駐車場から出ていったのを確認するとメモを読んだ。

 『提督、鎮守府の近状を報告するね 想像だけど今は鎮守府外で執務してるよね、それ正解だよ………提督を亡き者にするなんて物騒な話が戦艦と一部の重巡であがってね、それに反抗している娘は私と球磨、多摩、高雄、愛宕、足柄、羽黒、千歳、隼鷹、黒潮の10名だけだよ』

 

北上から渡されたメモには鎮守府内での近状が書かれていた。

 

「これが本当なら………」

 

私は直ぐに大本営へと電話を掛け、北上メモの内容を話した。

 

「とてもにわかには………とはいえ、提督の身辺警護隊は必要ですから、とにかくこちらで一度名前のある艦娘について調査しますので、再接触はその後にしてください」

 

私は了承すると電話を切った。

 

 

 

 

 



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真相は(改)………③

バターンとは!
インディペンデンス級航空母艦の8番艦で艦これには未実装のオリジナル艦娘となります…容姿はアズールレーンのバターンをイメージしてくださいね。


「提督、結果から申し上げます………北上以下の者との接触につきましてこちらから送る連絡員の確認結果問題無しと判断された場合にのみ合流してください、それとは別にこちらでセーフハウスの準備が完了致しましたので速やかに移ってください」

 

私は大本営からの連絡員と合流した、

 

「君か?」

 

「はっ、私は大本営からの連絡担当艦バターンです、宜しくお願いします」

 

私はバターンと北上達との待ち合わせ場所へと向った、

 

「提督、彼女達には問題ありません、合流よしです」

 

私はバターンが頷くのを確認すると、北上達と合流することにした。

 

「信じてくれたんだね、北上さんは嬉しいよ」

 

其処には、北上以下、球磨、多摩、高雄、愛宕、足柄、羽黒、千歳、隼鷹、黒潮が待っていた。

 

「どういう理由かさ、鎮守府を出るとあそこに止まってる陸自の輸送トラックが待機していてね、そんで乗せてもらってっ感じ」

 

成程、大本営から陸自に移送について協力要請がなされていたようだった。

 

「なら話は早い、君達はトラックに再度乗車し私のあとについてきなさい」

 

私は陸自のトラック乗員に向かう先の指示を出すと新たに大本営が用意したセーフハウスへと向かうことにした。

 

暫くして私と陸自のトラックは鎮守府とは逆方向の山麓にあるセーフハウスに到着した。

 

「此処か………何かの工場か倉庫みたいだな」

 

私はそれなりに大きな建物をみて驚いた。

 

「皆さんの新たな辞令です」

 

そう云うと、バターンが北上達に辞令を手渡し始めた。

 

「私達、提督の護衛艦隊なのね」

 

足柄が辞令に目を通していた。

 

「足柄さんの仰る通り、皆さんは提督の護衛艦娘隊となります…それとは別に鎮守府に残留して状況報告を行ってくれている調査員3名がいますがこちらは、大井、時雨、夕立の3名となっております、只疑われるのを避けるための行動は取りますので誤解なさらないであげてください」

 

バターンの言葉に私は大井や時雨に対しての気持ちを切り替えた。

 

 

「それでは室内の案内と部屋の割当を」

 

私達はバターンに案内されてセーフハウス内を見て廻ることにした。

 

「此処からが皆さんは個室となります」

 

北上達は其々部屋を決めていた。

 

「全員一時間後に、ラウンジに集合!」

 

私は一旦解散とした。

 

「提督、お話があります」

 

バターンが私の側に来ると小声で話しかけてきた。

 

「判った、私の部屋で聞こう」

 

バターンを私の部屋ヘ招き入れた。

 

「実は、私は元深海棲艦ヲ級なのですが、争いが嫌いなので投降して大本営で情報部でお仕事を貰っています、今回の件なのですが………大本営の知らない命令書が交付されています、その内容なのですが『工廠棲姫の捕獲』というものです」

 

バターンから語られた話は只驚きしかなかった。

 

「バターン君の事は解ったが、大本営の知らない命令書とはどういう事か…工廠棲姫聞いたことないぞ」

 

私にとって工廠棲姫は初めて耳にした敵の名前だった。

 

「工廠棲姫については後でご説明しますが…その命令書については軍令部総長もご存知ないものだそうです」

「それじゃ………正式な物ではないのか?」

「そこは何とも言えませんが、現物を確認していませんの………それと、この工廠棲姫を捕獲して鎮守府へ移送後からおかしくなっているようです」

 

私は思案を巡らせた。

 

「ちょっと待てよ…違和感を覚えていたのだが、何故北上達はなんともないのだ?」

 

私の感じていた違和感をバターンも感じていたらしい。

 

「仰る通りです、移送時前後の艦娘達の動きを確認する必要がありそうですね」

 

私は直ぐにパソコンを起ち上げると、当日の配置を確認した。

 

「北上達は前日からの48時間遠征で当日の昼過ぎまで不在…当日大井は外出で帰隊は夕方、時雨と夕立は寝坊しそのまま昼過ぎ迄演習か………共通点は朝食若しくは昼食か?」

 

私は朝食と昼食しか共通点を見つけられなかった。

 

「後は午前中不在ということですか………ちょっと待って下さい…天龍姉妹と吹雪、白雪、初雪、深雪、浦波、磯波、綾波、敷波が2ヶ月に及ぶ長期遠征に出ていて当日は不在で今日の夕刻帰還の予定です、現在はこの辺り…となると無事な可能性があります」

 

私はバターンに天龍を無線で呼び出すように指示した。

 

「直ぐに天龍に無線、大井には『我々に合流せよ』と送信してくれ」

 

バターンが無線室へと飛び出していった。

 

「天龍と無線繋がりました」

 

私はマイクを受け取ると、

 

「天龍か、現在どのあたりだ、即時帰投せよ、緊急時作戦指令書の開封を許可する、以降は指令書に記載に従え」

「おぅ、即時帰投、緊急時作戦指令書開封了解した」

 

天龍が何時になく真面目に復唱した、

 

「大井さんから了解の返信、あと大淀も影響を受けていないので連れてくるそうです、到着予定時刻は本19時だそうです」

 

大淀が無事なのは幸運だった。

 

「提督、それと警備に元鎮守府憲兵を6名ほど配置しました、彼等は本日21時には到着します」

 

私は名簿を確認すると安心した、何故ならその者達は、鎮守府でも艦娘を自身の孫の様に可愛がる好好爺達だったからだ。

 

「彼等なら安心だな、頼む」

 

そして19時に大井、時雨、夕立、大淀が合流した。

 

「大井以下4名到着致しました」

 

私は4人を見ると、

 

「良く無事でいてくれた、今日は休んでくれ」

 

大井達は敬礼すると、バターンに連れられて各自の部屋へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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真相は(改)………④

「提督聞こえっかオレだ、全員指定海域に到着したぜ」

 

天龍から指定場所到着の無線が入った。

 

「天龍、正面の山腹にキタガミ食品工業の看板は見えるか?」

「見えるけどよ………其れが?」

「その看板から海に向ったライン上に大堰川造船が見えるはずだが、どうだ」

「ちょっとまってくれよ………あるぜ」

「そしたら、天龍以下の者は大堰川造船2番ドッグに入船しろ、艤装は造船ドッグ内にて艤装解除し、造船所職員に任せろ」

 

私はここまで指示すると、天龍からの返事を待った。

 

「了解したけどよぅ………どういうことなんだよ」

 

天龍が疑問だらけという感じで聞き返してきた。

 

「安心しろ、大堰川造船は軍のダミー会社だ、職員はすべて海軍軍人だ、詳細は合流したら説明する」

 

其れを聞いてか天龍が安心したのか、

 

「了解したぜ」

 

何時もの口調で答えた。

 

「其れから、大堰川造船の敷地内にキタガミ食品工業と描かれたマイクロバスが用意してある、其れに乗ってこい、運転手は手配してある」

 

私は天龍との通信を切ると、バターンをみた。

 

「それじゃ、工廠棲姫について話してくれ」

 

バターンがコーヒーを二人分淹れてきた、

 

「わかりました、正式な私達深海棲艦内での名称は鎮守府棲姫と言って、港湾棲姫、飛行場棲姫と同じく陸上型の個体で、造船機能を持っています………実はこの造船機能が一番の問題で、艦娘を深海棲艦化させることで仲間を増やすというものです………」

 

バターンの話に私は驚きを隠せなかった。

 

「それじゃ………」

「はい、深海棲艦に撃沈された艦娘を回収若しくは、拿捕してというものです………深海棲艦化については、鎮守府棲姫のみが持つ特殊なウィルスといいますか、提督のお好きなバイオハザードに出てくるプラーガみたいなものとお考えください、其れを経口投与で摂取若しくは注射による幼体の体内への接種が方法です、そして深海棲艦化した艦娘は元には戻れません………通称ドロップ艦として転生してもそのプラーガ的なものを排除しないと再深海棲艦化します、それで今回の件については何者かが命令書を偽造して、鎮守府棲姫を鎮守府内に入れる事で鎮守府の壊滅を狙ったものかと」

 

私はある人物が頭に浮かんだ、

 

「まさか………彼奴からの艦娘移籍を拒否したからなのか…」

「提督、その人物とは?」

 

バターンが聞いてきた、

 

「それは玉袋 修造と言って、艦娘を欲望の対象としか見ていない下衆な奴だ………今回の事が起きる少し前に陸奥、金剛、榛名、愛宕、高雄を寄越せと言ってきたから拒否したのだが………」

 

バターンは少し考えると、

 

「時期的にみても、まず間違いないですね………証拠が欲しい処です」

 

そんな時だった、

 

「提督、大淀ですが入ってもよろしいですか」

「入れ」

「失礼します、実は鎮守府を脱出する際に命令書を持ち出しました」

 

大淀の手には偽造と思しき命令書や現在の艦娘達の写真があった。

 

「拝見します」

 

バターンが写真を手にした。

 

「不味いですね、かなり深海棲艦化が進行しています」

 

肌は白くなり、頭髪はまさに白髪となっていて、頭部には二本の角が生え始めていたがその写真に写っていたのは紛れもなく金剛だった。

 

「………」

 

私は言葉が出なかった。

 

「気休め程度ですが、私達深海棲艦から見れば感染者は判ります、あとはCTスキャナでも造影できます…治療方法は接種直後3日以内の段階なら放射線照射による駆除治療が有効ですが………此処までの変化が出てしまったら………残念ですが艦娘には戻れません」

 

私はバターンの言葉に驚くと同時に落胆した

 

「そうか………つまり外見に変化が出たら助からないという事か…」

「はい、それから現在ここセーフハウスにいる娘達は大丈夫です」

 

私はバターンの言葉に安心すると、残っていたコーヒーを飲み干した。

 

「バターン、今の話は極秘とし口外を禁止するいいね、それとこの後合流する天龍達を青葉と衣笠と共に大堰川造船に出向いて確認を頼む」

「了解しました」

 

バターンが青葉と衣笠を呼びに執務室から出ていった。



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真相は(改)………⑤

艦娘から深海棲艦へと変貌させるのは、オリジナル設定の工廠棲姫だけが持つ深海棲艦菌(バイオハザード4,5のプラーガみたいな感じ)という生物兵器により変異としています。


バターンが天龍達を迎えに行っている間、私は大淀が持ち出した命令書を確認していた。

 

「何か違和感があるのだが………」

「確かに何か違和感を感じるのですが………」

 

大淀も違和感を感じていたようだが、其れが何かはわからない様子だった。

 

「その体内に取り込まれた何かを駆除しないと駄目なのか…」  

 

私は命令書の事を考えるのを止めて夕張の事を考えていた。

 

「提督、元帥からお電話です」

 

大淀が電話を取った。

 

「はい、お電話替わりました」

「はい、はい…はい…、そうですか…」

 

私は元帥からの指示を受けると受話器を置いた。

 

「大淀、結論がでた」

 

私は沈痛な気持ちで言葉を繋いだと、

 

「残念だが、此処に居る者以外は全て深海棲艦と認定となった………大淀、済まないが今一度、艦娘ネットワークで呼びかけてくれ、其れに応じてくれたものは助けたい」

「了解しました」

 

大淀が直ぐに通信を開始していた。

 

「この無線を聞いたら、大淀迄返事をしてください…繰り返します、この無線を聞いたら、大淀迄返事をしてください…繰り返します………」

 

大淀が無線で必死に呼びかけていた。

 

「………ら、………す」

 

大淀の無線に微かだが何か反応があった。

 

 

「こちら大淀です、もう少し大きい声でお願いします」

「こちら扶桑、山城と私の部屋に隠れてます」

 

私は大淀から無線機を奪うよう取ると、

 

「扶桑、二人だけが?」

 

扶桑に確認した、

 

「はい…………」

「そうか…扶桑に命ずる、持てるなら身の回り品を持ってフタサンマルマルになったら、鎮守府を脱出第5公園噴水前にて待機、迎えの車両が待機している」

 

私は必要事項を扶桑に伝えた。

 

「扶桑、山城了解しました」

 

私は無線機を大淀に返すと、扶桑達のことを話した。

 

「今回ばかりはドッグ入が幸となったようですね………」

 

私は大淀と笑いあった。

 

「まぁ兎も角、扶桑と山城が無事で良かったよ、しかし総戦力の1/3しか助からなかったがな」

 

私と大淀は沈痛な表情だった。

 

「おぅ、今戻ったぜ………提督鎮守府で何が起きたんだよ」  

 

天龍が戻るなり聞いてきた。

 

「詳細は私にも解らない………鎮守府から脱出して来た者達からの聴き取りしている内容くらいしかな」

「そうなの………」

 

龍田も何時もの甘ったるい口調ではなくなっていた。

 

「大淀、済まないが会議室に全員を集めてくれ」

「了解しました」

 

大淀がセーフハウス内にいる艦娘を会議室に集めた。

 

「全員揃ったな………みんな不安だと思う、今解っていることを説明する」

 

私は全員の顔をみた、

 

「今から2ヶ月前のこの日、下命部署不明の命令書が長門に下された、これは私を通しておらず又大淀も知らないものだ、その内容は『深海棲艦 工廠棲姫』の拿捕であった、そしてこの命令は金剛型4名にて実行されたことが確認されている………」

 

私は此処まで話すと、一呼吸置いた。

 

「提督いいかしらぁ~」

 

龍田が何時もの口調で質問してきた。

 

「何だ?」 

「姫級を戦艦とはいえたった4人で拿捕って不可能なのじゃないかしらぁ~」

 

龍田の疑問はこの場に居た全員が感じたものだった。

 

「龍田の疑問は私も感じた………飽くまでも想像だが、この作戦は造られたものだ、私の鎮守府を壊滅させるためのな、此処に疑惑の渦中の人物からの通信が録音されている」

 

私は、ICレコーダーを起動させるとある人物との会話を再生させた。

 

『提督、ワシだ玉袋だ、要件を言う…貴様の処の陸奥、金剛、榛名、愛宕、高雄を寄越せ、ワシが足腰が立たぬまで可愛がってやるからな………』

『ふざけないでもらいたい、貴官の下らない欲望の為等に部下を渡すことはできない、顔を洗って出直せ、痴れ者が!』 

 

此処で録音は終わった。

 

「ふっふざけんな!」

 

天龍が切れた。

 

「落ち着け、私も流石にこのときは怒鳴り返したさ………だが腹いせに深海棲艦其れも姫級をとは、裏がかなり深いぞ」

 

「そうねぇ~、だけど深海棲艦と繋がっていたなんてぇ~この会話の相手許せないわねぇ~」

 

龍田の周囲の温度が氷点下にでもなったかに感じた。

 

「龍田、殺気仕舞え………吹雪達が怯える」

「あらぁ~ごめんなさいねぇ~」

 

何時もの龍田に戻った………隣で天龍が気絶しているのは黙っておこう。

 

「この会話の相手は玉袋 修造という男で、以前より問題行動を指摘されていた人物であり、父親が議員先生だ…まぁ今回の録音データから奴の鎮守府には特高警察の調査が入った………まぁ拷問というおまけ付きの取り調べが自白するまで行われるだろう…勿論父親も無傷ではすまないだろう………さて、此処からは現在の我々の鎮守府について説明する、先日偵察機を飛ばしたところ………鎮守府内に艦娘の気配は無く外周部の警備兵のみだった、其処で警備兵に施設内に残された資材や君達の私物の回収を命じてある…尚鎮守府については閉鎖としこのセーフハウスを仮の鎮守府として活動することが決まった…以上」

 

艦娘達に説明を終えると、私は扶桑姉妹の合流を待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 




鎮守府脱出組
戦艦
扶桑 山城

重巡
青葉 衣笠 高雄 愛宕 足柄 羽黒

軽巡
天龍 龍田 球磨 多摩 北上 大井 大淀

空母
隼鷹 千歳

駆逐艦
吹雪 白雪 初雪 深雪 浦波 磯波 綾波 敷波 時雨 夕立 陽炎 不知火 黒潮

工作艦
明石

合計31名(全体の約2/3が深海棲艦化)


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真相は(改)………⑥

ノースカロライナ、オクラホマ、アリゾナ、ネバダ、レパルス、フッド、シカゴ、ブルックリン、エンタープライズについてはアズールレーンの娘達を参考にしています………いやまんまアズールレーンの姿を設定してます。


「はい…はい…了解しました」

 

バターンが何処かと通信をしていた。

 

「提督、元帥からの指示です…鎮守府より艦娘達が一斉に姿を消したそうです、先任護衛艦隊到着を待って鎮守府へ調査へ向かってほしいとのことです」

 

私はバターンの先任護衛艦隊という単語が気になった、

 

「バターン、その先任護衛艦隊とは何だ?」

 

バターンが何枚かの資料を私に寄越した、

 

「ノースカロライナ、オクラホマ、アリゾナ、ネバダ、レパルス、フッド、シカゴ、ブルックリン、エンタープライズからなる元深海棲艦のみで構成された提督の身辺警護艦隊で、このような事案の発生時に出動します、旗艦はノースカロライナで戦艦5名、重巡2名、空母1名の8名で一艦隊となります」

「初めて聞いた艦隊だな」

 

私も知らない艦娘だった。

 

「申し訳ありません、このような事態の対処専門なのもですから極秘扱いなもので………」

 

バターンが謝っていた。

 

「まぁバターン、君が悪いわけではなかろう気にするな」

 

私はバターンに声をかけると、

 

「で、その護衛艦隊はいつ到着する?」

 

私は護衛艦隊の到着予定を聞いた、

 

「明日の朝にはこちらに到着との事です」

「分かった」

 

私は、大淀にこの事を話した。

 

「私達は………「大淀、お前たちの安全の為だからな、仮称プラーガの詳細が不明点だらけだから仕方ない」」

 

不安になっている大淀を落ち着かせると、この事を全員に話した。

 

「提督、しかしよぅ………そのプラなんちゃらだっけか………その護衛艦隊には効かないってことなのか?」

 

天龍が質問してきた。

 

「それには私から答えます」

 

バターンが応じた。

 

「私達には仮称プラーガは効きませんというか………深海棲艦ですからね、それと感染の有無も私達には判ります」

 

「でもねぇ~、感染経路はどうなのぅ~」

 

今度は龍田だった。

 

「この仮称プラーガは鎮守府棲姫のみから直接経口感染し其処で終わります、他のウィルスのように空気、接触、飛沫感染力はありません、このウィルスは艦娘にのみ感染しそれ以外の動植物には感染しません、ですが今回ばかりは鎮守府棲姫がまだ潜伏している危険性もある為にこのような措置を取りました」

 

バターンが事前に用意していた資料で説明を簡単ながらしてくれた。

 

「なら仕方ありませんわね………経口で直接って………?」

「直接文字通り口移し若しくは口に幼体をねじこむということです…これから見せる映像は深海棲艦が行っていた改造手術の記録です、私が離反する際に持ち出して大本営へ提出した資料の一部です」

 

バターンが無理矢理に口を開かされて口から蛸みたいな何かを押し込まれている艦娘の映像をスライドで投影した

 

高雄が納得したようだったがその後………映写された映像見て嫌悪の表情を浮かべていた。

 

「では、護衛艦隊到着の到着を待って、私は鎮守府調査へ向かう………通信についてはバターンと大淀を通じて行う、留守中は大淀の指示で動くこと以上」

 

私は鎮守府調査へ向かう準備を開始した。

 

 

「提督、扶桑さん達到着しました」

 

愛宕が守衛所から扶桑姉妹を連れてきてくれた。

 

「扶桑に山城………よく無事でいてくれた」

 

私は二人をそっと抱き寄せると頭を撫でた。

 

 



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真相は………インターミッション

「さて、扶桑達も合流したことだし施設について説明を頼む」

 

私はバターンに説明を振った。

 

「了解しました、それでは私から説明をいたします、この施設は倒産した食品会社の本社と工場を軍で買い上げたものです、偽装名はキタガミ食品工業 北神山工場となっています、それでは構内の方をご案内いたします」

 

私達はバターンについて建屋内を移動した。

 

「それでは4階から始めます、このフロアは食堂、大浴場、コンビニ、倉庫、給湯器室と後日着任する間宮さんと伊良湖さんの私室となります」

「しつも~ん」

 

隼鷹が手を上げた。

 

「何でしょう」

 

バターンが隼鷹に答えた、

 

「コンビニって………」

「基本的には街にある普通のコンビニを無人化したものになります、商品については雑誌や弁当類、飲料、菓子類の販売が主で、後はホットスナックは間宮さんが食堂にて販売を代行します………多分一番隼鷹が聞きたいアルコール類については瓶物は販売していません缶のみとなりますが種類は少数となります」

 

隼鷹が少し残念そうに頷いた。

 

「質問いいですか」

 

今度は吹雪だった。

 

「はい、吹雪さんどうぞ」

「お菓子とかの種類は?」

 

駆逐艦達に取ってはアルコールなんかはどうでもよく、お菓子やジュースが気になるらしい。

 

「こちらの物は街のコンビニと同等の品揃えとなりますのでご安心を、但しスイーツ系や乳製品は注文制となります、後提督の好きなうまい棒とサラミは全種取り扱っているそうです」

「ホントか!」

 

思わず身を乗り出した、うまい棒はつまみにもなるからな………。

 

「冗談はさておき、次に支払い方法ですが、こちらのカードをお使いください、まぁ交通系の電子マネーですね、こちらに現金をチャージして買い物をするという流れです、チャージについては1階警備室脇に設置してあるATMから出来ます、此処まで大丈夫ですか?」

 

バターンが全員を見回した。

 

「それじゃ大浴場について説明します、場所の関係で男女に別けることが出来なかったので、時間を決めて男女を別けます…ついでなのでトイレも説明します、男性用は1階と3階にのみあります、それ以外の階は女性用のみとなりますので間違えないようにお願いします」

 

私達はバターンに付いて3階へと降りた。

 

「3階と2階は居住空間となってます、提督専用は無くて全て8畳のワンルームタイプとなっています」

 

そう云うとバターンは空き部屋の扉を開けた。

 

「各部屋同じ作りで、簡単ながらキッチンもついています、家電………テレビと冷蔵庫、電子レンジとクローゼットが備え付けですね」

 

まぁ部屋については初日に説明されていたので、扶桑姉妹以外は特に驚いてはいなかった。

 

「それと、フロア中央の部屋は多目的スペースとなっていますので、ちょっとしたパーティーなんか出来ます」

 

 



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真相は………⑦

「ノースカロライナ以下9名到着いたしました」

 

私の目の前に金髪で白の軍服を着た長身の女性がオクラホマ、アリゾナ、ネバダ、レパルス、フッド、シカゴ、ブルックリン、エンタープライズと共に敬礼していた。

 

「ご苦労、楽にしてくれて構わない」

 

私は着席させた。

 

「では、諸君………明日より鎮守府の調査を開始するにあたり、注意点があれば頼む」

 

私は護衛艦隊旗艦のノースカロライナに意見を求めた。

 

「艦娘達の同行は厳禁といたします………が、すみません、明石さんだけは同行お願いします、それとお二人共鎮守府内にある飲料水、食料品は絶対に口にしないでください、深海棲艦化仮称プラーガの幼体はかなり小さいために紛れ込まれるとわからないからです、最後に基本防護服着用でお願いします」

 

私達はノースカロライナから鎮守府立ち入りの際の注意点を聞いた。

 

「生存者発見の際の注意点ですが、先ず私達が感染の有無を確認してからの接触となります、これは厳守してください」

 

その後もノースカロライナ達と質疑応答をしてその日は終った。

 

そして翌日。

 

「では、行ってる」

 

私と明石…それとノースカロライナを旗艦とする護衛艦隊が鎮守府へ向けて高速艇で出発した。

 

「提督、あと20分程で鎮守府に到着するよ」

 

高速艇の操縦席からレパルスが顔を出しながら報告してきた。

 

「総員、銃火器の再点検!、提督と明石は防護服を着用してください」

 

ノースカロライナから指示が出た。

其れから間もなく、我々は鎮守府桟橋に高速艇を接岸させた。

 

「上陸、全周警戒を怠るな、提督と明石は安全が確認されるまで艇内待機でお願いします」

 

ノースカロライナから指示が来た。

 

「了解した」

 

私と明石は艇内に留まった、其れから一時間後………。

 

「提督、安全が確認されましたのでどうぞ」

 

私と明石は約2ヶ月ぶりに鎮守府に上陸した。

 

「報告します、鎮守府内にやはり艦娘並びに鎮守府棲姫の姿は確認できませんでした」

 

フッドとレパルスが私に報告しできた。

 

「そうか、ありがとう…これより工廠へ向かう、機密開発書類の回収を優先とする」

 

私はフッドに声を掛けると、工廠へ向かうと告げた。

 

「了解いたしました」

 

フッドが敬礼すると艦隊内通信で他の隊員を呼び出した。

 

「フッドより各位…提督指示を伝えます、これより工廠の調査に向かいます、総員工廠前に集合」

 

「オクラホマ了解よ」

「アリゾナ了解しました」

「ネバダ了解だ」

「シカゴ了解した」

「ブルックリン了解」

「エンタープライズ了解した」

 

鎮守府内に散っていた護衛艦隊から返信があった。

 

「それでは提督参りましょう」

 

フッドの優雅なエスコートを受けて私は工廠へと向かった。

 

「しかし、誰もいないないとは…何処に」

 

私はそのことを考えながら歩いた。



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真相は………⑧

「提督、集合終わりました」

 

ノースカロライナが報告した。

 

「では、これより工廠内の捜索活動を開始する、掛かれ」

 

ノースカロライナ以外の者は其々に散っていった。

 

「こちらオクラホマ、エンタープライズこれより資材庫の調査に掛ります」

 

オクラホマから連絡が入った。

 

「こちらアリゾナ、ネバダですこれより艤装保管庫の調査を開始します」

 

アリゾナとネバダから報告が入った。

 

「フッドとレパルスですわ、これより工廠地下のボイラー室の調査に取り掛かりますわ」

 

フッドとレパルスがボイラー室の調査開始を報告してきた。

 

「それでは、私とブルックリン、シカゴは工廠の此処を調査しましょう」

 

ノースカロライナがスクラップや大量のガラクタが積み上げられた整備場を調査することになった。

 

「今の処はなにもないですね」

 

私の隣で明石が小声で話し掛けた。

 

「そうだな………」

 

この時、私の中で言い表せない不安を感じていた………。

 

「提督、艦娘を1名発見!」

 

シカゴからいきなりの無線を聞いた。

 

「シカゴ、それは生存者なのか?」

 

私は焦る気持ちを抑えつつ確認した、

 

「残念ですが………遺体です、しかし気になる点が有るので報告しました、出来れば確認を…」

 

シカゴが歯切れの悪い報告をしていた。

 

「気になる点?………わたかった、これから向かう」

 

私と明石はノースカロライナと整備場へと向かった。

 

「シカゴどこだ」

 

私はシカゴに聞いた。

 

「こちらです」

 

私と明石はシカゴに案内されて艦娘が発見された場所へと向かった。

 

「気になるというか、不自然なのです」

 

そう云うとノースカロライナが掛けてあったシーツをどけた。

 

「夕張………」

 

其処には胸に大きな穴を開けた夕張が横たえられていた。

 

「て…」

 

明石も言葉が出なかった。

 

「ノースカロライナ、この胸の穴は?」

 

私はノースカロライナに胸の穴について確認した、

 

「あくまでも私見ですが………鎮守府棲姫によるものでは無いようです…」

 

私と明石、ノースカロライナが胸の穴について考えていると、

 

「提督、総員撤退の指示を!」

 

ネバダから切迫した通信が入った、その背後で銃声が鳴り響いていた。

 

「ネバダ、何があった、報告「正体不明の生物の襲撃を受け撤退中、尚当該生物は強酸性の体液を………」を」

 

私は直ぐに決断すると、

 

「護衛艦隊総員に告げる、速やかに撤退せよ、敵との交戦は可能な限り避けよ!」

 

折返しで全員から了通信があった、ネバダとアリゾナはどうやら無事だったようだ。

 

私達は一旦高速艇に退避すると、

 

「一旦セーフハウスへ撤退する、鎮守府より何も持ち出すな」

 

鎮守府の現状写真を撮影すると、セーフハウスへと退避した。

 

「ノースカロライナ、セーフハウスに帰還したら全員を会議室に集めてくれ」

「了解しました」

「セーフハウス大淀とれる?」

「はい、こちら大淀どうかしましたか?」

「鎮守府で問題発生、現在帰還中です…私達帰還後全員を会議室にとの提督命令です」

「大淀了解です」

 

ノースカロライナが大淀に通信をしていた。

其れから一時間後我々はセーフハウスへと帰還した。

 

「全員集まったな」

 

私は会議室を見廻した。

 

「先ずはこれを見てもらいたい」

 

私は夕張の遺体写真を映した、当然の事だがすすり泣く声が至るところからあがっていた。

 

「注目すべきは胸のところだ、内側からなにかに食い破られたような穴が空いている………それと、レパルスが見つけてきたこの化石卵のような物体だ」

 

私はレパルスが工廠地下のボイラー室で撮影した何かの写真を見せた、

 

「提督、何かの化石?ですか」

 

衣笠が写真を見ながら聞いてきた、

 

「見た目はな…そうちの2個は、最近中から何かが出てきたような外観たったそうだ」

 

私は少しの間を置くと、次はネバダが交戦した謎の生物の写真を映した。

 

「な…何なんだよ、これ!」

 

天龍が震えながら指さした。

 

「全く解らない………唯一解ってるのは強酸性の体液を持つ事と好戦的性格であることくらいだ…」

 

私は画面に映し出されている、得体の知れない生物を睨んだ。

 

「ひょっとしたら………姫様がご存知かも、提督、通信の許可を!」

 

バターンが北方棲姫なら知っている可能性があると通信の許可を求めてきた。

 

「何か分かる可能性があるなら許可する」

 

私からの許可を得ると直ぐに北方棲姫へと連絡を取り出した。

 

「こちらヲ級65189、繰り返します、こちらヲ級65189級、姫様応答してください」

「………」

「………」

「………こちら北方艦隊、ヲ級65189元気なようですね」

「至急、姫様にお取次ぎを、緊急事態です」

 

バターンが至急を繰り返しながら取次を頼み込んでいた。

 

 

「なんですか、騒々しい」

 

その人物は唐突にテレビ会議に出てきた。

私はバターンと替わって画面に映る位置にたった、

 

「いきなりで申し訳ありません、私は鎮守府で提督をしていた者ですが、鎮守府内に謎の生物が発生し壊滅しました、ヲ級さんの話ですと姫様がこの生物について御存知の可能性が有るとのことでしたので、失礼とは思いましたが連絡を取らせていただきました」

 

私の説明を聞いた北方棲姫は、

 

「その生物の写真はありますか?」

 

と静かに聞いてきた、

 

「はい、こちらに」

 

私はバターンにカメラの前に持ってこさせた。

 

「鮮明でなくてすみません」

「いえ………これは………他に何かありましたか?」

 

北方棲姫が他に有ったものを聞いてきた。

 

「後は卵らしきものが多数有りました」

 

北方棲姫はその写真を見ると、静かに口を開いた。

 

「ビッグチャップ………何で…また…」

 

私は北方棲姫が口にしたビッグチャップという名前が気になった。

 

「提督、鎮守府に行かれたとおっしゃいましたが卵を発見した際に何かに襲われるか襲われたような遺体はありませんでしたか?」

「はい、フッドとレパルス…タ級戦艦2名が発見しましたが、接近せずに撮影したとのことですので被害は無いとのことですが………それと胸を内側から食い破られたような遺体が…」

 

北方棲姫は少し考えると、

 

それなら問題ないでしょう…………遺体については、チェストバスターによるものでしょう」

 

私その生物の正体について聞いてみた、

 

「そうですね………我々に古くから伝わる伝承なので、私共も何かは解りませんが、ただこの地球上の生物でないことだけは確かです………私共も、其れに仲間を沢山殺されました」

 

北方棲姫の表情が曇った。

 

「そうですか…貴重な情報を有難う御座いました、それでは失礼いたします」

「………こらからもこの生物についての情報交換の為に、このチャンネルは開けておきます」

 

北方棲姫からとてもありがたい提案を受けた。

 

「助かります、こちらこそ宜しくお願いします」

 

私は北方棲姫とのテレビ会議を切ると、

 

「少なくとも深海棲艦にも同様に多大なる被害を与えている謎の生物がいる事が判明した………よって鎮守府の立ち入り調査は今回を持って終了とし以降は立入禁止とする」

 

私は大本営報告書を作成すると提出した。

しかし、大本営は私の報告書を無視し鎮守府へと調査の艦娘艦隊を差し向けたのだった。

 

 



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真相は………⑨

「あの生物はいったい…」

 

私は鎮守府を壊滅に追い込んだ謎の生物の事を考えていた。

 

「提督…」

 

大淀が心配したのか声を掛けてきた。

 

「ああ大淀か、済まない」

 

私はネバダやレパルスが撮影したそれの写真を机の上に置いた。

 

「提督、失礼いたします」

 

ノースカロライナが入ってきた。

 

「大本営からの調査報告書のコピーが来ました」

 

私はノースカロライナから封筒を受け取った、

 

「私の報告を無視して調査艦隊を送り込んだ挙げ句に………生存者数名を残して壊滅か…まぁ救いはあれを持ち帰らなかったという事と撃退した事だな…」

 

この時、私は知らなかった大本営の調査艦隊が卵を…いや生存者が寄生された状態で帰還中であることを。

 

「提督、大本営から至急電文です」

 

青葉が執務室に駆け込んできた。

 

「何事か!」

「鎮守府調査より帰還中の輸送船『のすとろ丸』が音信途絶、発見次第…その」

「その何だ」 

「撃沈せよ、生存者の有無に拘らず、救助不要速やかに撃沈せよ」

 

私は卵の存在を思い出した…。

 

「あいつら…成体は無理でも卵ならと持ち帰っていたのか!」

 

私は、直ぐに指示を出した。

 

「全員に通達する、『のすとろ丸』を発見次第撃沈とする、間違っても救助を考えるな、乗員は既にアレの餌食となって全滅したものと決定が下さ「追加電文!のすとろ丸に於いては、沈没が確認された生存者無し、繰り返します沈没が確認された、生存者無しです、それと漂流物には手を出すな、全て砲撃処分とせよです」………」

 

どうやら生き残った乗員の手によって自沈したようだった、積荷の砲撃処分とせよか………どうやら大本営もアレの恐ろしさを理解したようだった。

 

「ですが、提督………アレは一匹だったのでしょうか、卵の数から見ても、複数存在してもおかしくないよう思えますが」

 

ノースカロライナが冷静に考えていた、

 

「確かにな………これだけの卵なら」

 

その時だった、

 

「提督さん、とれますか?」

 

北方棲姫からのテレビ通話が鳴った。

 

「はい、いかがなされましたか」

「実は、部下に伝承を調べさせたのですが、アレの種族名は無くて、ただエイリアンとしか記されていませんでした、後は、クイーンと呼ばれる個体が存在している、其れが卵を産み付けていると云うことですが、前回見せていただいた写真の個体はクイーンではありません、いうなれば兵隊アリみたいなものです、恐らくは鎮守府内の何処かにクイーンが存在しています………」

 

北方棲姫はこれだけ言うと数枚の古文書の写しを送ってくれた。

 

「明石、至急執務室迄」

 

私は明石を呼び出した。  

 

「明石参りました」

「明石、至急長距離無人偵察機を鎮守府へ向けて飛ばせ、目的は卵の発見現場周辺の撮影だ」

 

明石は敬礼すると直ぐに準備に掛かった。

数時間後………無人偵察機が帰還した。

 

「此処を見てくれ…何か生物的な腹部が映っているように見えるが…」

 

私は1枚の写真の隅を指差した、

 

「確かにこの写真をよく見ると、この隅っこに何かブヨブヨした何かが微かに写っているな」

 

ノースカロライナも写真を覗き込むように見ていた。

 

「これですか………なんというかイモムシのお腹みたいな」

 

自分で言って嫌悪感を覚えたらしい、とても嫌そうな顔をしていた。

 

「出来れば撃退されていてほしいところですね」

 

大淀が希望的な言葉を口にしていた、これは同時に全員も同じ事を願っていた。




のすとろ丸………エイリアン一作目のノストロモ号からつけました


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真相は………➉

鎮守府での謎の生物との遭遇から3日後

 

「提督、ドローンの準備が完了しました」

 

明石が執務室に報告してきた。

 

「北方棲姫さんからの情報だと水に弱いとのことでしたので、水中型と陸上型の2種用意しました」

 

私は明石と艤装整備場へと向かった、

 

「こちらになります」

 

明石が平べったいエイのようなドローンを指して説明を始めた。

 

「先ずはこのドローンで鎮守府近海まで接近します、一応マイクロ魚雷と格闘用のクローアームを装備しています、こちらは任務終了後回収です、稼働時間については72時間となります」

 

私は明石の説明を聞いた。

 

「続いて、陸上型のドローンですが、下半身は無限軌道の戦車型を採用し、上半身は人型となって、このモーショントレースシステムで制御します、こちらの稼働時間については、鎮守府の電源を使用しますので、長期の稼働が可能です、最悪はデータを母船に転送して廃棄もありえます」

 

私は明石の説明を一通り聞くと、

 

「判った、それではこれよりドローンによる再調査を開始する」

 

明石が敬礼すると空き部屋を利用して急遽作られたドローン制御室へと向かった。

私もその後に続いた。

 

「水中型ドローンは私が操作するよ」

 

北上がオペレーター席に座っていた………当然だろうか大井も張り付いていた。

 

「北上さんに危険はありませんよね、提督?」

「遠隔操作だから危険は無い………はずだよな明石?」

 

私はそのまま明石に振った。

 

「遠隔なので危険はありません、それじゃ、北上さんお願いします」

「ほーい」

 

北上がドローンを操作しだした。

 

「このドローン水中速度かなり速いね」

 

北上がその速度に驚いていた。

 

「水中高速性を重視しているのでエイのような形状にした影響ですね」

 

 

「ふーん、なんか昔のロボットアニメで観たことあるようなデザインだよね、何だっけ…えっーとグラなんとか」

 

北上君も見ていたのか、

 

「グラブロだろ多分」

 

私も思わず名前を出してしまった。

 

「提督も北上さんもよくご存知で…そのとおり、因みに地上ドローンはザクタンクだったりします」

 

道理で観たことあるようなデザインだと思ったよ。

 

「提督、あと20分程で鎮守府連絡艇桟橋に接舷します」

「判った、陸上型ドローン揚陸後は直ちに沖合待機とせよ」

「ほーい」

 

北上がひらひらと手を降って了解とした。

 

「失礼します」

 

それはいきなりだった、

 

「えっ」

 

私の背後に北方棲姫が立っていた、

 

「オッス、オラヲ級!」

 

随伴のヲ級が何やらわけのわからない挨拶をしていたが………。

 

「鎮守府にドローンを向かわせているとお聞きしたものですから」

 

北方棲姫が丁寧に答えた。

 

「こちらとしても丁度良かったです」

 

伝承とはいえアイツラのことを知っている者がいてくれるのは心強かった。

 

「提督、上陸するよ〜」

 

北上が陸上型のドローンを上陸させたところだった。

 

「明石〜あとよろ〜」

「任されて」

 

明石が器用にドローンを操作していた。

 

「明石、そこの角を左に」

 

フッドが指示を出した、

 

「そのまま真っ直ぐボイラー室迄進んでください」

「了解」

 

フッドの道案内の元、明石がドローンを進めた。

 

「そのままボイラー室に入ってください、突き当り右側の階段を降りてください」

 

明石のドローンがクローラを器用に操り階段を下っていった。

 

「明石、周囲の壁を………」

 

私はドローンのカメラから送られてきた画像を見て驚いた。

 

「ボイラー室地下の壁ってこんなにも………有機的なものだったか?」

「………まさか、普通の壁って何これ、こんなの………」

 

明石も北上も言葉が出てこなかった。

 

「間違いありませんね、無数の卵…エイリアンクイーンの巣です…この奥に居ます…」

 

北方棲姫が教えてくれた。

 

「提督、この部屋です」

 

フッドが卵を見つけた部屋だと教えた。

 

「………クイーンの姿はないようです、見てください」

 

北方棲姫が部屋の奥に放置された産卵管を指さした。

 

「恐らくは何者かの襲撃を受けて産卵管を切り離して襲撃者を追いかけたのでしょう…でも一体どこに………」

 

私達は言葉が出なかった。

 

 

 

 

 

 



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真相は………⑪

「クイーンは一体何処に…」

 

私達はクイーンを探すことにした。

 

「産卵管を引き千切ってまで追いかけた相手なんて………」

 

北方棲姫が首を傾げていた、

 

「すいません、私が卵を見つけたときは地下ボイラー室はにクイーンの姿はありませんでした」

 

フッドとレパルスが頭を下げた。

 

「二人共気にするな………とはいえクイーンは何処に消えたのだ…我々の撤退後にやってきた大本営の奴等と交戦して…」

 

それまで黙っていたヲ級が唐突に口を挟んだ。

 

「見てください、部屋の入口付近の卵が数個無くなっています、何者かが持ち出したとしか思えません、飽くまでも予想ですがクイーンは卵を持ち出そうとした何者かを追い掛けたのではないでしょうか」

 

ヲ級の話は辻褄が合う内容だった。

 

「それじゃあ………のすとろ丸の沈没は、卵を取り戻そうとして………」

 

大本営は卵を持ち出そうとしてクイーンの追跡を受けて、のすとろ丸に乗り込まれてクイーン諸共に海底に沈んだということだった。

 

「楽観は出来ません、アレの卵は私達か艦娘の生体反応に感応して羽化します、ただ成体となった場合は、人間も無差別に襲います」

 

ヲ級がさらにアレの生態を説明した。

 

「我々の祖先もアレに追われて陸地から海へと追われたのです」

 

北方棲姫が深海棲艦の誕生の謂れを話した。

 

「………となると、鎮守府に於いて産卵したあの卵はなんとしても駆除しないと、深海棲艦、艦娘、人類にとって最悪の強敵となるということか………」

 

私は一人呟いた。

 

「成体や幼体は体液の性質上水を嫌いますが、卵は殻で覆われているので水は効果がありません………効果的なのは、かなりの高温で焼き払うことしかありません」

 

私はヲ級に高温について聞いてみた、

 

「火炎放射器程度でもよいのか?」

 

ヲ級は少し考えると、

 

「そうですね………それで問題ないかと」

 

私がヲ級と卵の処理方法を話していた時だった、

 

「提督、鎮守府棲姫を発見しました」

 

大井が報告した、

 

「やはりか…」

 

ドローンのカメラに映し出された鎮守府棲姫もまた胸部を内側から食い破られていた、其れを見た北方棲姫が口を開いた。

 

「恐らくは最初の犠牲者でしょう………アレは最初にクイーンとなると個体から誕生しますから、そしてそこから多数のビッグチャップを産み出します…あとは見てのとおりです………」

 

「先ずは卵の駆除から始めるか………大井、すぐに元帥へ連絡して鎮守府への立ち入りを厳禁を徹底させるように」 

「はい」

 

大井が通信室へと向かった。

 

「残りの者は、近隣の陸自へ火炎放射器の貸出を要請」

 

私は矢継ぎ早に指示を出すと、一息ついた。

 

「北上、今のうちに休憩を取っておけ」

「ほーい、大井っち、お茶しよ」

 

ドローンのコントロールデスクから立つと、大井と飲み物を買いに出ていった。

 

「明石も少し休憩を」

 

私は青葉に代わるように指示を出すと、明石にも休憩を取らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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真相は………⑫

「提督、兵器開発局?という部署と憲兵隊から来客です」

 

正面入口の警備室から来客を告げる内線が鳴った。

 

「兵器開発局?憲兵隊?」

 

大淀が聞き返していた、

 

「はい、元帥から行くように言われたと………」

 

大淀が内線を保留にすると、私に許可を求めた。

 

「どうします?」

「分かった、許可を」

 

私が許可をすると、大淀が警備室に許可が出たことを伝えた。

 

其れから程無くして、2名のスーツ姿の男が憲兵と警備兵に連れられてやってきた。

 

「兵器開発局第一課の蒔田と里谷です…てってっ提督、この者は!」

 

2人は室内を見回すと北方棲姫を見て顔を強張らせた。

 

「私が提督だ、北方棲姫に驚いたようだな、済まないが今回の謎の生物について知っているという事なので一時的に休戦して意見を求めていた処だ」

 

私の説明を聞いて少し落ち着いた様子だった。

 

「そう…そうですか」

「で、君達は何の用があって此処に?」

 

軍でも一部の高官しか知らされていないこのセーフハウスへの訪問の訳を聞くことにした。

 

「のすとろ丸の件で提督にと………」

「成程な、貴様たちの独断ということか」

「はい………」

 

艦娘や北方棲姫達深海棲艦、私から睨まれた2人は縮こまっていた。

 

「何故だ、私は警告したはずだが?」

 

私は語尾を荒くし説明を求めた。

 

「それは………その…」

「はっきり言えよ!」

 

天龍が怒鳴り声をあげた。

 

「ヒィ…」

 

天龍の剣幕に2人は失禁していた。

 

「掃除する身にもなってくれよ………」

 

私は思わず天龍に愚痴をこぼしたかな

 

「すまねぇ…でもよ………」

 

天龍の言いたいことも理解できた。

 

「こいつらのせいで…よその所属とはいえ………仲間が大勢死んだのだからな、真実を話せ、いいな」

 

私は一人の胸ぐらをつかむと少し脅し気味に言った。

 

「………私達がアレの存在を知ったのは、玉袋修造からでした、荒島の遺跡に太古のワニであるデイノスクスの卵があるから調査してみてはと…それは地上最強で………その…深海棲艦をも簡単に撃退できるし艦娘をも駆逐して戦いを我々主導に持っていけると言われて…それがまさかあんな化け物だったなんて知らなかった………だから我々は悪くない、悪いのは玉袋だ!」

 

私は自分も被害者だと言い出した男を殴り飛ばした。

 

「ふざけんな、調査に行って…録に調査もせずに鎮守府に持ち込んで………更にその危険性も考えずに帝都に持ち込もうとして…」

 

私は更に数発殴った。

 

「貴様たちのせいで何人の艦娘やのすとろ丸の乗員が死んだと思ってるんだ!」

 

私は憲兵に止められるまで殴り続けた。

 

「そうですかわかりました、貴女達もそこから離れなさいよいですね」

 

北方棲姫が何処かと交信していた。

 

「提督、今のすとろ丸沈没海域を調査していたカ級からの報告で、クイーンと卵6個の圧潰した残骸を確認したそうです」

 

私は北方棲姫からの話を聞くと、無傷の男を見た、

 

「貴様に聞く、鎮守府から卵は何個持ち出した」

 

もう一人の男が震えながら答えた、

 

「間違いありません、6個です………それ以外は何も持ち出していません………艦娘さんのご遺体も何も…」

「本当だな」

「はい…ただその………私達も知らない部隊が何か木箱を運び出していました」

 

男は恐怖からかも震えて小声になっていた。

 

「知らない部隊?木箱を?」

「はい…どう見ても陸海軍の兵では無かったと思います」

 

私は二人が見かけた不審な部隊が気になったが、憲兵が急かしてきたので今回は此処で打ち切ることにした。

 

「提督、この2人連行しても?」

 

一緒に来ていた憲兵が連行の許可を求めてきた、

 

「ああ、連れて行ってくれて構わない…が………先程の所属不明の部隊については徹底的に調べてほしい」

「了解しました」

 

憲兵は無理矢理にでも2人を立たせると連行していった、

 

「提督らそれでは我々はこれで失礼します」

 

憲兵が敬礼して出ていった。

 

「となると、クイーンと持ち出された卵は心配ないと…残るは鎮守府にある卵と消えた艦娘達だけか…明石、北上、引き続き頼む」

 

私は明石と北上に引き続きドローンによる鎮守府調査を命じた。

 

 

 

 



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真相は………⑬

私はある疑問があったので北方棲姫に確認した。

 

「北方棲姫さん、私にはあの二人の話はどう思いますか、どうも私にはまだ何か隠しているように感じましたが………」

 

どうやら北方棲姫も同じ事を感じていた様子で、

 

「そうですね、私達も何か隠しているように思いましたね、卵だけならクイーンが追いかけてくる何てことはないかと思いますが………恐らくは知らずに何らかの特殊な幼体を持ち出したのでしょう」

 

となると更なる疑問が生じた。

 

クイーン以外の死体が確認されていないというカ級からの報告で、クイーンと卵6個の圧潰した残骸を確認それだけだったのだ、つまりそれ以外つまり行方不明となっている艦娘達は発見されていないという事だ、

 

「別便が存在していて、そちらに………とはいえ前後して出港しているはずですので既に成体となり此方も壊滅していると考えるのが妥当かと………やはり所属不明の部隊というのが気になります」

 

北方棲姫が可能性を口にした。

 

「となると、此方も沈没ないしは漂流している危険性があるわけだな…大淀、至急消息不明になっている艦船が無いか大本営に確認を!」

「了解です」

 

私の指示を受け大淀が大本営へと確認をしていた。

それから2時間くらいして一本の電話が鳴った。

 

「はい、キタガミ食品工業です………はい、はい、はい、そうですかありがとうございます」

 

大淀は電話を切ると、

 

「大本営からで一隻だけ消息不明になっている病院船があるそうです………船名は州羅湖丸、南方各地からの傷病兵並びに避難民500名が乗船だそうですが………問題は寄港地で鎮守府近郊の民間貨物港に入港…到着は有明ターミナルとなっています」

 

私は北方棲姫の顔をみた、

 

「どうやら裏で何か動いているようですね」

 

どうやら私と同じ事を考えていたようだった。

 

「そうですね、この州羅湖丸に寄生された人物を乗船させたのでしょう…鎮守府近郊の民間貨物港の安否を確認するのが先決ですね」

 

私は直ぐに明石に指示を出した。 

 

「明石、直ぐにドローンによる鎮守府近郊の民間貨物港の上空並びに地上からの偵察を行え」

 

明石が直ぐにドローンの準備を開始した。

 

「提督、民間貨物港の港湾責任者と連絡がとれました、現在傷病者並びに行方不明者はいないとの事です…ただ軍から中身不明の大型の木箱3つが州羅湖丸に搬入されているそうです」

 

私は直にその木箱の中身が想像ついた。

 

「箱の中身は恐らく寄生された遺体か」

 

北方棲姫も黙って頷いた。

 

「ですが、避難民や傷病兵という事は艦娘ではないですよね…なのに何故」

 

大淀が首を傾げた。

 

「飽くまでも予想だが…成体となったそれに襲われてではないだろうか…州羅湖丸については捜索はしても場所によっては雷撃処分若しくは放置が妥当だろうな」

 

明石のドローンが撮影している民間貨物港の映像を確認することにした。。

 

 

 

 

 

 

 

 




州羅湖丸は言わずと知れたスラコ号です、リプリーと植民地海兵隊がLV-426に向かう際に使用した大型艦船からとってます。


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真相は………⑭

「提督、ドローンが民間貨物港上空に到達しました」

 

明石がドローンで民間貨物港の状況確認を始めた。

 

「建物や港湾施設に異常無いようです」

 

明石がドローンの高度を下げていた。

 

「大淀、港湾施設の責任者と連絡を取ってくれ」

「了解です」

 

大淀が通信器を操作した。

 

「責任者と連絡がとれました」

 

大淀が私にマイクを渡してきた。

 

「提督です、今当方のドローンが敷地内を飛行しています」

「これは提督さんの所のでしたか、安心しました」

 

私は、責任者の最後の言葉『安心しました』に違和感を覚えた。

 

「安心しましたとは?」

 

少し間をおいて責任者が話しだした。

 

「実はここ数日、不明のドローンが飛来していまして………」

「そうでしたか」

 

私はその不明ドローンが気になったが、一先ず港湾作業者の安否を再度確認した。

 

「あれから変わりはありませんか?行方不明とか原因不明の体調不良なんかは発生していませんか?」

 

私はあの生物の事は伏せて置くことにした。

 

「変わりはありませんが………何故です、それに鎮守府に艦娘さんはおろか警備の兵隊さんの姿も見られないのですが?」

「警備兵の姿もですか、おかしいですね警備兵は駐屯していると聞いていますが、我々は軍機に付きお応えできませんが作戦行動中でして」

 

私は軍機を盾に艦娘がいないことを正当化した、だが警備兵迄いないというのは聞いていなかった。

 

「警備兵の件は確認します」

 

私はその後も当たり障りのないように話すと通信を終えた。

 

「大淀、大本営に警備兵不在の件を至急確認」

「了解です」

 

私はこの時何とも言えぬ嫌な予感がしていた………。

それから数時間後………。

 

「提督、大本営からの回答がきました」

 

大淀が通信器を操作した。

 

「『警備兵は現任務を遂行せよ』の命令書しか出ていないとのことです」

 

私は直感的に、明石を呼び出した。

 

「明石、至急執務室!」

 

程なく明石がやってきた。

 

「提督何か?」

「至急鎮守府外構を陸上ドローンで調査…警備兵もエイリアンの餌食となった可能性が出てきた」

 

明石が慌てふためきながらドローンの準備に取り掛かった。

 

「大淀、直に港湾責任者と連絡を取り、総員離島勧告を」

「了解です」

 

大淀も慌てながら責任者と連絡を取り出した。

 

「提督、一体何が」

 

バターンが聞いてきた。

 

「まだ推測の域ではあるが、ここ数日警備兵の姿が見えないそうだ………恐らくエイリアンの餌食となった可能性が出てきたので、港湾作業員を一旦島から避難させる」

「そうですか………」

 

飽く迄も推測だがエイリアンと遭遇した警備兵が戦闘となり壊滅したのだろう。

 

「民間人に被害が出ていないのが現時点での救いだな」

 

だが我々はまだ鎮守府で起きた惨劇を知る由もなかった。



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真相は………⑮

「提督、港湾施設責任者から総員避難了解との返信を受信しました」

 

大淀から報告があがった。

 

「明石、至急ドローンを港湾施設上空に送って確認を!」

「了解です」

 

その日、朝から事態は動いた。

 

「警備兵だけで済んだのか………港湾施設にまで奴は行っていないか………」

 

私のこのときの予感は当たるのだった。

 

「ドローン施設上空に到達しました」

 

明石からの報告を受けると、私は直にモニターを覗き込んだ。

 

「特に変わったところは………これは!」

 

施設の端に置いてあったコンテナが溶けていたのだった。

 

「金属のコンテナを此処まで溶かすのは………奴らの体液位か………」

 

私は覚悟を決めると。

 

「大淀、緊急事態に付き鎮守府島と本島を結ぶ可動式連絡橋を上げ、空港島と鎮守府島の海底トンネルは耐水圧隔壁を閉鎖とする、本島橋管理室並びに空港管理室へ通達せよ」

「了解です」

 

大淀が慌ただしく動き出した。

 

「此方は鎮守府提督、空港管理室へ鎮守府島に於いて未知の生物を確認、極めて危険であるとの観点から緊急事態とし海底トンネル内耐水圧隔壁を大至急閉鎖処置とします、現在通過中の車両は有りません…繰り返します………。」

 

程なくして空港管理室から閉鎖了解と閉鎖完了の返信があった。

 

「海底トンネルは閉鎖完了しました」

「閉鎖了解した、橋はどうなっている」

 

「此方は鎮守府提督、本島橋管理室、鎮守府島に於いて未知の生物を確認、極めて危険であるとの観点から緊急事態とし可動式連絡橋をあげる準備をしてください、繰り返します………」

 

此方も直に連絡があった、

 

「未知の生物、極めて危険っていきなり言われても…連絡橋を上げる準備をとは」

 

管理室の担当者は理由を聞いてきた。

 

「鎮守府提督だ詳細は後で説明する、今は一刻を争う緊急事態につき大至急橋を上げる準備を開始してもらいたい、このあと港湾作業員の乗車したバスが通過するはずだ、通過確認したら直に可動橋をあげてくれ急ぎ給え………市民に無駄な犠牲を強いることになるぞ!」

 

電話の相手は何やら文句を言いながらモタモタとしていた。

 

「もし本島の住人に被害が発生した場合貴様の職務怠慢から被害が拡大したと報告するぞ!」

 

私は少し脅した。

 

「たっ、たっ、只今直に…」

 

責任問題を引き合いに出した途端慌てふためいて準備を始めた。

 

「やれやれ、事の重大性を理解してるのか………」

 

私は誰となく呟いた。

 

「提督、橋監理室からで港湾作業員を乗せたバスの通過を確認、港湾責任者からの報告で総員避難完了、欠員なしだそうです」

「了解した、橋をあげるように指示を」

「了解です」

 

大淀が私の指示を受け、

 

「提督より橋を上げてくださいとの指示です」

「橋上昇了解した」

 

橋監理室から了解の返事が来た。

 

「提督、ドローンを橋に向かわせます」

 

明石がドローンを操作して橋に向かわせた。

 

「ドローンからの映像来ました、橋の上昇を確認です」

 

ただ橋に関しては問題もあった、それは橋を支えているケーブルや可動橋自体のフレーム伝いにやって来ないかということだった、最悪は橋を爆破して物理的にという手段を取れるように準備はすることにした。

 

 



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真相は………⑯

私は避難が完了した港湾関係者や空港、橋梁関係者、行政職員を前にしていた。

 

「それでは、今鎮守府島で何が起きているのかを説明いたします」

 

私は一旦此処で区切った。

 

「最初に鎮守府で発生したことを説明しますが、軍機に触れる部分はご容赦ください」

 

私は断りを入れると、工廠棲姫を鎮守府に送り込まれた所から話した。

 

「そんな………その男の欲望を満たす為だけに艦娘さんを…それを断ったからって」

 

市長が言葉を詰まらせた。

 

「事実です、現在この男は身柄を拘束され取調べ中です…ただ深海棲艦との繋がりは自白していないそうです」

 

一人の人物が手を上げた。

 

「提督、そちらに居る方々も深海棲艦のようですが……」

 

その人物は私の横に座る北方棲姫と南方棲姫を指さした。

 

「この二人は仰る通り姫級の深海棲艦だ、此処にいる理由はこれからの話に関係します」

「そうですか分かりました」

 

その人物は椅子に座り直した。

 

「問題はその後でした、この男は自らの行為を隠蔽するために深海棲艦に古くから伝わる古生物を蘇らせたのです、そして軍を騙し太古の巨大ワニだと謳って其れを回収鎮守府へと持ち込みました………」

 

私は此処まで話すと、大淀が鎮守府で撮影したその生物の写真を投影した。

 

「これがその古生物です彼女たちは此れをエイリアンと呼称しており、体液は強酸性、性格は極めて好戦的、艦娘若しくは深海棲艦にのみ寄生します…詳しいことは南方、北方両棲姫から説明してもらいます」

 

私は北方棲姫にマイクを渡した。

 

「それでは、私からこの生物について説明いたします、そもそもこの生物は地球上のものではありません、はるか太古に飛来した宇宙生物………我々に伝わる古文書ではエイリアンと記されていました、この生物は私達を地上から海洋へと追いやり絶滅寸前まで追い込んできました、何故地球に来たのかは不明です、そして私達と身体的同類の艦娘にも寄生することが分かりました………」

 

此処まで北方棲姫は話すと一息ついた。

 

「太古っておっしゃいましたが、そんなに長く生存していたのですか?」

 

港湾関係者から声があがった。

 

「はい、今回の空の卵の殻を年代測定した結果約3000年前のものであることが判りました、つまり卵の状態ならば其れ位は生存可能な事が判明しました」

 

会場からは驚きの声が聞こえた。

 

「この生物の生態ですが、アリの生態と似たような構成で一体の女王その下に多数の兵隊蟻的な個体が存在します、特に成体となった兵隊蟻的な個体の場合、目に入る動く物は総て無視別に攻撃します」

「倒す方法はあるのですか?」

 

橋梁関係者が北方棲姫に質問をした。

 

南方棲姫が北方棲姫からマイクを受け取ると、話しだした。

 

「成体については、君達が持つ銃火器での攻撃も通用するし体液が濃硫酸である性質からH2Oつまり水に弱い、攻撃で出来た傷口に放水すれば化学反応を起こして急激に体液が沸騰し体が爆発することが確認されている、卵については銃火器での攻撃や火炎放射器による焼却が有効な手段だな……問題なのはフェイスハガー形態で、移動速度が異様に速く、この形態になられたら撃退は絶望的だ、次はチェストバスター形態となった場合だが、こっちは既に寄生された後だから見つけ次第殺すしか無い…以上のことから卵を見かけたら不用意に近づくな、容赦なく破壊してくれ、効果的なのは擲弾筒…簡単に言うとグレネードランチャーだなあとは火炎放射器による高熱による焼却が効果的だ」

 

南方棲姫がスクリーンに映し出されているエイリアンの卵やフェイスハガー、チェストバスターの画像を指示棒で指しながら説明していた、

 

「今回はこのような地球外生物に対抗するために深海棲艦との一時休戦条約を締結した次第です」 

 

私はそう締めくくると、行政職員や空港、港湾職員はその後も南方棲姫や北方棲姫に質問をしていた。

 

「それでは時間ですので…以上の事から、鎮守府島へ通じる海底トンネルの閉鎖並びに連絡橋の切り離し、船舶による上陸の禁止をご理解ください、ただ今後の奴らの出方次第によっては連絡橋を爆発する可能性も有る事を念頭に置いておいてください」

 

この日はこれで解散となり、私達は一旦偽装鎮守府へと戻った、勿論二人の姫級も一緒に。



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真相は………⑰

「しかしまだ疑問が残るな………」

 

私は、大淀や明石、バターンと同じ事を思っていた。

 

「確かに、残りの艦娘や警備兵は一体何処に消えたのでしょうか?」

「映像からみてもクイーン以外は一体だけしか確認されていません…」

「後は溶けたコンテナもそうだとすると2体と見るべきではないでしょうか」

 

明石や大淀、バターンが意見を交わしていた。

 

「………………待てよ、確か鎮守府の地下に非常用シェルターがあったんじゃないか?」

 

私は前任者からの引き継ぎに記載されていたシェルターの事を思い出した。

 

「確かに有りますが………果たしてアレを防ぎきれる場所でしょうか疑問ですね」

「議論していても始まらない、明石陸上ドローンがまだ鎮守府に有るな?」

 

私は明石にドローンの所在を確認した。

 

「はい、工廠にて充電を終えて待機モードにしてあります」

「直に地下防災用シェルターへ向かわせろ」

「了解です、バターン悪いけどカメラ操作お願い」 

「いいわよ」

 

明石は直にドローンを起動させると、カメラ操作をバターンに頼んでいた。

 

「ドローン起動しました、これよりシェルター地上入り口に向かいます」

 

明石の操作でドローンは司令部内へと入っていった。

 

「提督、入り口到着です」

「付近にヤツの反応は?」

「生物の熱源無しです」

 

私はバターンに入り口周辺の確認を徹底させた。

 

「よし、扉を開けてくれ」

 

私の指示を受けて明石がドローンのマニピュレータを操作して扉を開けた。

 

「内部異常なし、エレベーター使用不能な為これより階段室へ向かいます」

 

バターンがエレベーターの状況を報告した。

映し出された映像にはエレベーターの扉が開いたままとなり籠が傾いて止まっているエレベーターがあった。

 

「エレベーターは壊されているのか…期待は無いか」

 

私と大淀が話している間に、明石の操作するドローンは階段を降りていった。

 

「提督、シェルター入り口に到着しました」

 

 

明石が報告した。

 

「入り口周辺に戦闘による痕跡は認めず…」

 

バターンがカメラで周囲を確認した。

 

「扉開きます」

 

ドローンのマニピュレータが扉の回転ハンドルを回し始めた。

 

「扉ロック解除完了、開きます」

 

明石がドローンを操作して数センチ扉を開いた。

 

「シェルター内、生存者確………」

 

バターンの報告が途中で止まった。

 

「何があった」

 

私はドローンからのカメラ映像を見た。

そこには激しい銃撃戦の痕跡が残されており、艦娘達とヤツの遺体が遺されていた。

 

「此処で戦闘になって………相打ちになったのか」

 

持ち出された卵の数と抜け殻となった卵の数は成体の数と一応数的には合った………だが兵器開発局が最初に持ち込んだ卵の数が最大の謎となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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真相は………⑱

関係者への説明を終えた私は部下を会議室に集めた。

 

「提督、全員揃いました」

 

大淀が報告してきた。

 

「分かった」

 

私は全員の顔を見渡した………北方棲姫に南方棲姫とその護衛、バターンとノースカロライナ以下の先任護衛艦隊、そして何とか鎮守府を脱出に成功した面々の顔があった。

 

「提督、警備室からで民間人の全員の退出確認、それと枝はついていません」

 

青葉が民間人の残留者の有無と盗聴器の有無を報告してきた。

 

「それれでは始めようか、今から話す内容は兵器開発局が持ち込んだエイリアンは一体だけという奴らの話が真実とした場合の仮定話となる………奴らの持ち込んだ卵は鎮守府棲姫に寄生しクイーンとなった、そしてドローンによる調査で確認できた産卵された卵の数は176個…そこからのすとろ丸に積まれたのが6個」

 

私は此処まで話すと、全員の顔を見渡しまた話し始めた。

 

「そして兵器開発局は輸送船のすとろ丸で本土へと輸送するために持ち出してクイーンの追撃を受けて沈没………クイーン及び6個の卵は海底で圧潰しているのはカ級によって確認された………昨日の地下防災用シェルター調査により成体となったエイリアン15体の死体が確認された、残念ながら金剛達全員の遺体も確認された………皆気が付いたと思うが、最低でもエイリアンは2体居る、だが羽化した卵は15個これについては羽化したあとの殻が見つかっていないし既に数がクイーン若しくは夕張の何方かに寄生していた分の1個が合わない事に」

 

私は一旦話を止めると、一息ついた。

 

「提督よぅ、難しい話は抜きにして簡単に言ってくれよ」

 

天龍らしいホントに。

 

「つまりだ、兵器開発局の奴らはまだ何かを隠しているっていう事だ、続けるぞ………更に州羅湖丸という病院船に詳細不明の木箱が3つ積み込まれている上にこの州羅湖丸は現時点で消息不明となっている事からその木箱はエイリアンに関するものと推察される…以上の事から鎮守府島を完全封鎖とした」

 

ノースカロライナが手をあげた、

 

「提督、よろしいでしょうか」

「ああ、構わない」

「つまり、まだ発見されていない巣が有るということでしょうか?」

「恐らくは………とはいえ其処まで大量には持ち込まれてはいないと思いたいが、取調べ結果次第だな」

 

会議室の空気が重くなっていた。

 

「それでは解散とする」

 

私は解散とした。

 

「提督、よろしいでしょうか」

 

明石が北上とやってきた。

 

「かまわないが…」

「鎮守府並びに港湾施設周辺をドローンによる上空並びに陸上からの定期的な偵察を進言します」

 

私は明石から偵察内容を聞くと、

 

「必要なら機材及び人材の確保は明石の裁量判断を許可する」

 

私が許可を出すと、

 

「了解です」

 

明石は北上に必要な機材と人員の見積もりを出し始めた。

 

数日後…………………。

 

大淀が慌てながら執務室に駆け込んできた、

 

「提督、軍令部より至急電を受信『兵器開発局が鎮守府に持ち込んだ卵は全部で16個、持ち込んだ卵は16個』だそうです、それと『州羅湖丸を発見、船内に運び込まれた3箱の木箱についてはエイリアンの成体標本残りの2箱はフェイスハガー並びにチェストバスターの標本、乗員に被害なし………消息不明の原因は無電装置の故障と嵐による被害を防ぐために一時避難をしていた』だそうです」

 

私はその至急電を受け取ると、

 

「州羅湖丸は無事だったか………しかし兵器開発局は何を考えているのだ」

 

傷病兵や避難民に被害が無かった事は良かった(これも何処迄真実を伝えてきているかは不明だ)。



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真相は………⑲

「鎮守府産卵地から発見された数は176個…持ち出された卵が6個…地下シェルターで見つかったエイリアンの残骸は15体…兵器開発局が鎮守府に持ち込んだ卵の数は不明………鎮守府内で誕生したエイリアンは抜け殻となった殻が見つかっていない為不明…成体の遭遇数から希望的予測は17体と仮定して………州羅湖丸に積み込まれていた3体の標本は何処で入手したのか………疑問は尽き無いか………」

 

私は北方棲姫、南方棲姫と一体どれくらいの卵が鎮守府に持ち込まれたのか頭を悩ませた。

 

「彼等を尋問するのが手っ取り早い方法だろ」

 

南方棲姫が口を開いた。

 

「そうですね、其れが一番なのでしょうか」

 

北方棲姫も同意していた。

 

「やはりそれしか無いようですね、後は何処に有って、誰からの話なのか………といったところでしょう」

 

私は二人を見た。

 

「しっかしよぅ、あたし達の間でも古文書でしか言い伝えられていない物をよ………一体どうやって」

 

南方棲姫が皆が思っている疑問を口にした。

 

「偶然………にしては出来すぎているな」

 

私も其れは疑問でしかなかった。

其れから重い空気が流れ、この日は一旦解散とした。

 

 

数日後………。

 

「提督、憲兵司令官より至急電文受信『鎮守府に持ち込まれた卵は16、及び既に死んでいた成体1体並びに幼体2体合計3体の標本のみ、発見場所については………先日噴火した海底火山により発見された荒島にて発見された年代不明の遺跡、尚当該遺跡は既に海軍並びに深海棲艦混成航空部隊により空爆を敢行、遺跡の完全破壊を確認』です」

 

兵器開発局の二人が自供し危険極まりない生物の巣窟を完全破壊したという電文だった。

 

「そうかっ!」

 

私はその内容を聞いて安心することが出来た、何故なら最初に持ち込まれた数がわかればエイリアンの残存数が正確に把握できるからだ。

 

「ふぅ………となると残りは夕張から出てきた1体のみが残っているということだな………しかし偶然とはいえ海底火山の噴火で発見された新しい島にこんな危険な生物が眠っている遺跡が存在していたとは………」

 

つまりこの1体を倒せば鎮守府島は元の状態に戻るということだ、勿論卵を破壊駆除しての上でだ。

 

「大淀、済まないが明石を呼んでくれ」

「了解です」

 

大淀が頷くと明石を呼び出していた。

 

「明石さん、至急執務室に………繰り返します………」

 

それから直に明石はやってきた。

 

「提督、お呼びですか?」

「持ち込まれた卵の正確な数が判明、それによりエイリアンの残存数は1体となった、ドローンによる攻撃を検討している、武装は可能か?」

 

明石は少し考えると、

 

「一旦此処に戻せれば可能です、武装と言ってもスティンガーミサイルと機銃ターレット位ですが」

「分かった、水中型ドローンを使用して回収した上でといきたいが…その水中型ドローンに忍び込まれると厄介だな………」

「それなら水中型ドローンの対地ミサイルを使用するというのはどうでしょうか、これについては飛行ドローンでエイリアンを目標地点に誘導しないとななりませんけど………」

 

私と明石はエイリアンの撃退法を摸索した。

 

「港湾職員からの話で溶けたコンテナは内容物の漏洩によるものと判明したとはいえ………やはり最後の1体の潜伏場所の特定が鍵だな」

 

結局最後は奴の潜伏場所の特定に行き着くのだった。

 



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真相は………⑳

「やはり奴の居場所が特定出来ないと攻撃殲滅は難しか………」

 

私は奴の撃退方法で頭を悩ませていた。

 

「何か方法でも思い付けば良いのですが…」

 

私同様にバターンと大淀も考えていた。

 

「提督に兵器開発局から電話だぜ」

 

偶々執務室にいた天龍が電話応対をした。

 

「はい提督ですが………それは本当ですか………はい…はい…助かりますが………本人たちにはそのことは………了承済み………そうですか、分かりました」

 

私は兵器開発局とある事を決めると電話を切った。

 

「大淀、これから全員を会議室に集めてくれ、今の内容を話す」

「了解です」

 

大淀が放送設備を起動させ呼集をかけた。

 

「全ての艦娘は会議室に集合してください………繰り返します、全ての艦娘は会議室に集合してください」

 

それから程無くして会議室に北方棲姫に南方棲姫、ノースカロライナを始めとする護衛艦娘組、鎮守府脱出組が集まった。

 

「全員集合終わりました」

 

扶桑が報告してきた、

 

「そうか………先程兵器開発局から電話があった、内容は例の二人が囮役を志願したそうだ………強制はしてないらしい………と同時に兵器開発局経由で陸自からスレイヴ・トルーパー『MADOX-01』6機と菱井インダストリー/篠原重工製HAL-X10が我々の鎮守府に譲渡されるそうだ、明後日の早朝同輸送トレーラーで搬入されるので明石は可及的速やかに陸上担当者から引き渡しを受けるように、此処までで何か質問は?」

 

私は一旦話を終えると質問の有無を確認した。

 

「提督………そのHAL-X10とMADOX-01ってなんですか?」

 

大井が聞いてきた。

 

「先ずHAL-X10というのは菱井インダストリーと篠原重工が共同開発した陸自向けの試作重攻撃レイバーで全長は約9m、武装はATMランチャー、9連装ロケットランチャー、スモークディスチャージャー、対空用ミニガンとなっていて乗員は1名若しくは自律稼働となっているそうだ、次MADOX-01については米軍との共同開発された市街戦用空挺高機動兵器らしい、兵装として両肩のスタピライザー内部にはチェーンソー、スタピライザーの翼端にはケーブル付のマニピュレーターが付き、アンカーとしても使用可能、主武装は右腕部分に装着した大型ガトリング砲これはアタッチメントになっており、設定上は様々な火器を左右の腕に装着または装備、あとは35mm機関砲、12.7mm機関砲、腕甲部には対戦車ミサイルを二基をオプションで取り付ける事が可能だそうだ………まぁ現物を見ない事にはだな…恐らくは市街地での運用試験を兼ねてだろう」

 

私は事前に兵器開発局経由で陸自から提供されていた資料を読んだ。

 

「結構大きいのですね」

 

大井がプロジェクタースクリーンに投影されたスペックと外観図を見ながら呟いた。

 

「でもよぅ………それが強うそうなのは分かったけどよぅ、兵器開発局の二人はどうすんだよ」

 

天龍があの二人の事を聞いた。

 

「兵器開発局の話によると、あの二人は防爆スーツを着用して鎮守府内を探索するそうだ………強酸性の体液に何処迄通用するかは疑問だが………あの二人が何処迄説明されているのか気になるが………あれと遭遇戦闘で死亡の場合は戦死扱いにすると伝えてあるそうだ………ある意味あの二人も被害者だからな」

 

その後は簡単な質疑応答をして終わることにした。

2日後………HAL-X10とMADOX-01を積載した空自の輸送機による空輸で鎮守府へ搬入された………HAL-X10は試作機カラーである紅い塗装のままで(誰かが呟いていた、赤い機体3倍速いのかと………赤い彗星じゃあるまいし)。

 




今回からレイバーとスレイヴ・トルーパーが登場です。
何時の間にか北方棲姫と南方棲姫の二人も鎮守府に居座っているようです(アレが片付くまでは)


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真相は………㉑

HAL-X10については、一部オリジナルの設定をしています(有人複座や自律稼働)


「これがHAL−X10………」

 

私と明石は眼前に鎮座する試作レイバーを見上げていた。

 

「提督、明石さん、こちらですが試作機ですので予備部品については………量産型の部品が使えます」

 

陸自の担当者が保守管理について説明をしていた。

 

「基本量産型との違いは色と単座か複座かと対空用ミニガンの砲身長の違いしかありません………主砲はMGM-51 シレイラを発射する152mm ガンランチャー M81と7.62mmミニガンが主兵装となります」

 

 

私は唖然とした、何故ならそれは1965年に配備されたM551シェリダン空挺戦車に使われていた砲だったのだ。

 

「随分とまた古い物を………砲弾は?」

 

私は使用弾薬について聞いてみた。

 

「通常弾は多目的弾のHEAT-MPを使用し、通常弾とミサイルを合わせて30発を搭載しています、またM81用に燃焼式薬莢を採用しています…これについては新規開発し製造を行っていますので弾薬補給については問題ありません、MGM-51 シレイラについては設計を見直しほぼ別物となっています」

「そうですか………」

 

私はその後も陸自の担当者から説明を聞きながら全体を見て回った。

 

「最後に複座のコクピットハッチですが、ここになります」

 

陸自の担当者がコクピット後方の側面にある大型ハッチを指さした。

 

「右にも同じハッチがあるようだが?」

「右側のハッチはミニガンと主砲弾ラックへの給弾用です」

 

そう言うと陸自の担当者がハッチを開けた。

 

「バッテリーは機体下部と後部のホバーユニットの2箇所に搭載しています、但し機体下部の物は現地交換ができません、ですので充電済みホバーユニットを複数準備をお勧めします」

 

私の隣で明石が眼を輝かせながら頻りにメモを取っていた。

 

「残るは運用方法だな………」

 

私は今回のエイリアン殲滅戦に際しての運用方法を考えることにした。

 

「我々から、スレイヴ・トルーパー6機による捜索、HAL−X10による砲撃殲滅を提案いたします、この作戦は連携が必要となりますので99式特型牽引車内に設置されています管制室を利用するのが得策と進言します」

 

担当者が99式特型牽引車内の管制システムを説明し始めた。

 

「成る程………管制制御だけだはなくてHAL−X10のメンテナンスやバッテリー交換作業も出来るのか……確かに今回のような特殊作戦に於いては有用だな、明石は陸自担当者と詳細を」

 

そしてふと明石を見ると………。

 

明石がMADOX-01を試着していた、

 

「凄いですよ、ホバー機能もあってコクピットは完全機密ですよ………武装もATMにミニガン、大型ガトリング砲迄有るんですよ!」

 

明石が浮かれていた。

 




メタルスキンパニックMADOX-01からも出します!
市街地戦に於いて丁度良さ気な機体でしたので………駆動方法は………詳細なスペックが公開されていないので全高2.6m程度
動力は小型ガスタービンエンジン2基とします。


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真相は………㉒

私は陸自の担当官と少し話をすると、

 

「マドックスの搭乗員割当を決めるか」

 

私は担当官と搭乗員候補を決めていった。

 

「天龍、龍田、球磨、多摩、北上、大井の軽巡組6名………X10は前席を足柄、後席羽黒で決まりだな」

 

陸自の担当官も同意した。

 

「そうですね、彼女達の能力から判断すると、この組み合わせが一番かと、それと基本は二機一組で行動するので姉妹でペアを組めるのでよろしいかと」

 

私は大淀に、搭乗員メンバーを呼び出させた。

 

「では、マドックスについて説明を始めます」

 

陸自の担当官が実機を前に説明を始めた。

 

「手持ち武装として35mm機関砲とスモークディスチャージャー、左腕選択装備として対戦車ミサイル若しくは12.7mmガトリング砲又は背面20mm大型バルカン砲を装備可能です、それと左右の安定翼前面に装備されたチェーンカッターがあります、これ以外にも、マイクロミサイルポッドや大口径砲等があります」

 

陸自担当官が実機前に並べられた多数のオプション兵装を説明した。

 

「すげぇ………」

 

天龍が眼を輝かせていた。

 

「このマドックスの特徴の一つである滑空能力ですが、左右の安定翼を展開し、背面下部のホバーユニットによる滑空が可能です、滑空速度については時速60km/hとなります、では次に運用についてですが、2機ペアを基本運用とします」

 

そこまで説明すると、陸自隊員によるデモ稼働を行った。

 

「それでは、これより実機に搭乗しての訓練を始めます」

 

陸自担当官が搭乗候補艦娘の操縦訓練を開始した。

一週間後………。

 

「皆さん、操縦訓練はこれで終わります」

 

天龍達による操縦訓練が終わった。

 

「怪獣駆除任務なので高度な連携訓練は不要なのでここまでとし、提督と協議の上で今回の任務に於いては12.7mmは不要とし、35mm機関砲と対戦車ミサイル、20mmガトリング砲を基本装備と致します」

 

陸自担当官がマドックスの兵装を最後に説明した。

 

「では、足柄と羽黒が訓練より戻り次第エイリアン捜索作戦を開始する」

 

私は明後日に陸自駐屯地より戻る足柄達が戻り次第捜索作戦を開始する事を宣言した。

 

「提督、戻ったわよ」

 

 

足柄と羽黒が陸自駐屯地から戻った。

 

「どうだ?」

「そうねぇ………艤装を扱うよりは手間取ったかしらね」

 

足柄が手間取ったといいながら少し笑っていた、まぁ実際は彼女の事だから其処まででは無かっただろう。

 

「あっあっあの提督さん!…羽黒も頑張りました」

 

羽黒は何時もの通りだった。

 

「さて、足柄達も戻ったから明日よりマドックス隊との連携訓練を開始する、ただ日数的にも数日しか無い心して掛かってくれ」

 

私の言葉に全員が敬礼で応えた。

 

「あとは兵器開発局の2人の事か………彼等が無事に任務を果たせるかどうか甚だ疑問だがな」

 

私は敷地内で模擬戦をしているマドックスを執務室の窓から見下ろしていた。

 



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真相は………㉓

更新が遅くなりました!!
ようやく最後の一匹に対しての駆除作戦が始まります。


 

天龍、龍田、球磨、多摩、北上、大井、足柄、羽黒、高雄、愛宕、青葉、衣笠、扶桑、山城、大淀、明石が私の前に整列した………陸自から提供された迷彩服3型を着用した姿で。

 

「これより、残エイリアン掃討作戦を開始する、各トレーラーの運転担当を通達する、1号車『高雄』同マドックス搭乗『天龍』『龍田』2号車『愛宕』同マドックス搭乗『北上』『大井』3号車『扶桑』同マドックス搭乗『球磨』『多摩』4号車『山城』同X10搭乗『足柄』『羽黒』、5号車『衣笠』同車輌は予備電源ならびに弾薬を積載する、6号車『明石』同車輌は管制システム並びに休憩車輌とする、情報担当『青葉』並びに指揮通信担当『大淀』」

「はっ」

「各搭乗艦娘はマドックスの積み込みを開始せよ」

 

天龍、龍田、球磨、多摩、北上、大井の6名が敬礼するとマドックスに搭乗し始めた。

 

「最後にX10の積み込みを開始せよ、足柄は前席、後席は羽黒」

「了解よ」

 

足柄がX10の操作席に収まった。

 

「提督さん………X10全システム正常オールグリーン  です」

 

羽黒は後席であるガンナーシートに収まると火器管制システムのチェックを直ぐにおこなっていた。。

 

「よし、マドックス隊は2機ずつ割当の99式特型牽引トレーラーへ、X10も専用の99式特型牽引トレーラーへ」

 

マドックスとX10はそれぞれの99式特型牽引トレーラーへと積み込まれていった。

 

「提督、準備完了しました」

 

統括指揮車兼宿泊用車両の99式特型牽引車を運転する明石が私に報告してきた。

 

「それでは、現時刻をもって作戦開始とする」

 

私の作戦開始の合図と共に空港側海底トンネルの入口の閉塞扉が開かれ6両の99式特型牽引トレーラーはトンネルへと侵入していった。

 

「それでは、我々通過後にまた閉鎖をお願いします」

「了解しました」

 

私はトンネル内進入後に閉鎖扉の閉鎖を指示した。

 

「それでは作戦を説明する」

 

私はトンネルに入ると、無線で各隊員へ作戦説明をした。

 

「この先、100m毎に設置されている閉鎖扉を通過毎に開閉する、そして最終から一つ前の閉鎖扉内側を臨時作戦司令部兼待機エリアとする」

「了解!」

 

私達はその後も6枚ある閉鎖扉の開閉を繰り返しながら、何事もなく通過していった。

 

「よし、これが最後の閉鎖扉だ」

 

私達は臨時作戦司令部として予定しているエリアに到着した。

 

「でもよぅ提督、まだもう1区画あるよな、なんで最後の扉にしねぇんだ?」

 

天龍が聞いてきた。

 

「その事か、最終エリアは防護区画とする為だ、まぁ最悪機材をそのエリアに置いて、やつが機材に潜んでいた場合の事を考えてだな、その場合人員は脇にある避難用非常扉から出入りする」

 

私は本道脇にある避難用通路を指さした。

 

「そういうことなのねぇ〜」

 

龍田が納得したような感じだった。

 

「提督、お待たせいたしました」

 

兵器開発局から志願した2名が避難用扉を開けて入ってきた。

 

「最終エリアに奴の姿はありませんでした」

 

彼らは私達より先行して鎮守府側から入ってきていた。

 

「鎮守府は至って静かなもので動くものは有りませんでした」

 

もう一人が報告してきた。

 

「そうですか、動き無しでしたか」

 

私はマドックスやX10を展開させると、99式特型牽引車車内へと移動した。

 

「各指揮者は携行装備を各自点検報告のこと」

 

私は各99式特型牽引車の後部に搭載されている自動小銃や散弾銃、分隊支援火器である軽機関銃等の装備品と個人装備品の点検を指示した。

 

「こちら1号車、全ての装備品点検修了異常ありません」

 

1号車の高雄が報告してきた。

 

「こちら2号車、全装備品異常なしよ~」

 

2号車の愛宕が報告してきた。

 

「こちら3号車の扶桑、全装備品異常ありません」

 

3号車の扶桑からも報告が入った。

 

「こちら4号車よ、全装備品異常なしよ」

 

4号車の山城が報告してきた。

 

「こちら5号車、全装備品並びに予備電源、予備弾薬問題ありません」

 

5号車の衣笠が報告してきた。

 

「6号車全装備品並びに各種システム異常なし」

 

最後に明石が報告してきた。

 

「それでは、鎮守府内に於ける掃討作戦を明日の夜明けと共に開始する、それまでは各自よく休んでおくように…あの二人には5号車キャビンを休憩場所として指示を」

「了解」

 

衣笠からの返答を受けると、私は明日の作戦開始迄休む事を指示し、青葉の肩越しから鎮守府内の監視カメラ映像と防護区画内に設置した動体検知センサーのモニターに目をやった。

 

「今の処動きはないか…青葉、5号車の車内モニターを常時監視していくれ」

 

私は彼等が鎮守府側より入って来た事に不安を覚えた為5号車にいる兵器開発局の二人を監視することにした。

 

深夜2時………。

 

「提督…起きてください、あの二人に動きが」

 

私は青葉に起こされた。

 

「やはり動いたか」

「はい、これを聴いてください」

 

私は青葉から録音された通信を聞かされた、

 

「蒔田と里谷です、艦娘共と合流に成功しました…はい抜かり有りません………はい気付いてはいないかと…はい…はい…手筈通りに艦娘にアレを寄生させて…はい…それでは」

 

通信は其処で終わった。

 

「成る程な…罪滅ぼしからではなくて、まだ玉袋と繋がっていたのか………青葉、即時全員起床をかけろ6号車トレーラー内にて待機、奴らに気づかれないように」

「了解」

 

青葉が6号車に牽引されている宿泊車両に移動していった。

 

「緊急 緊急 総員直ちに起床、即時待機………」

 

それから10分後、私は宿泊車両にいた。

 

「仮眠中にお越して済まないが、これを聴いてくれ

 

私は兵器開発局員と玉袋の通信を聴かせた。

 

「嘘だろ…彼奴等!」

 

天龍が怒りを露わにしていた、

 

「裏がありそうな気がしたのよねぇ~」

 

龍田…頼むその殺気はとりあえず納めてくれ………堪らん。

 

「やはりというか奴らに裏がある事が確定した以上は一緒には動けない…其処で作戦の一部を変更する」

 

私は全員を見渡すと、

 

「先ずあの二人には先行してもらう、その後に我々はエイリアンとの遭遇戦になった状況を想定する」

 

私の説明に天龍が首を傾げていた。

 

「つまり、無線機によるお芝居だ、幸いにもマドックスの予備部品として都合よく破損機が来ている、こいつを使ってエイリアンに撃破された事を演出する…大淀、艦娘通信で空港側で待機中のノースカロライナを呼び出して予備機を持ってくるように伝えてくれ」

「了解です」

 

大淀が直ぐにノースカロライナと艦娘ネットワークでやり取りをしだした。

 

「この作戦はあの二人をなるべく我々から遠ざける必要がある為あの二人には真っ先に港湾施設の偵察を命ずることにする、その間に我々は司令部付近にて遭遇戦の跡を作り出し此処まで撤退とする」

 

全員が静かに頷いた。

 

「青葉、あの二人の行動から目を離すな」

「了解」

「それでは解散、くれぐれもあの二人には気取られないように最新の注意を払ってくれ以上」

 

我々はまた仮眠を取る事として、戦開始時刻を待った。

 

 

 

 

 

 

 



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真相は………㉔

「総員おこーし、5分前」

 

………

 

「総員おこーし!」

6号車に牽引されている宿泊用車両の車内に総員おこしの声が響き渡った。

 

「総員18名異常なし!」

 

扶桑が私の前に来ると報告した。

 

「楽に休め………」

 

私は安めを掛けると全員を見た。

 

「本日午前9時をもって作戦開始とする、先ずは司令部を確保する、その後に港湾施設、工廠、待機所、格納庫の順に捜索を行う」

 

そこで一旦区切ると、

 

「此処までで質問はあるか?」

「有りません」

 

扶桑からの返答を聞くと、作戦説明を続けた。

 

「マドックスは3機1班とし多摩、北上、大井の編成と天龍、龍田、球磨の編成とする、なおX10は適時どちらかのマドックス編成に随伴とする………単独行動は厳禁とする、最後に兵器開発局のお二人は港湾施設の偵察をお願いします、それと我々も司令部確保後は港湾施設の確保に向かいますのでそちらで合流としますから、偵察後は港湾施設で待機していてください」

 

「了解」

 

全員が揃って私に敬礼で応えた。

 

「それでは簡単ではあるが、朝のブリーフィングを終わる、このあとは各自朝食とし作戦開始迄は自由時間とする……以上解散」

 

各員はそれぞれ分担に分かれて朝食の準備を始めだした。

 

「提督、今の処異常なしです」

 

青葉が当直での監視を終え報告に来た。

 

「そうか、朝食迄まだ時間がある少し寝ておくと良い」

「そうさせてもらいます」

 

青葉はフラフラと指揮通信車である6号車へと戻っていった。

 

それから2時間後

 

「提督どうぞ」

 

大淀が出来上がった朝食を私に持ってきた。

 

「ありがとう、済まないが青葉を起こしてやってくれ」

「了解しました」

 

大淀が青葉を起こしに行った。

 

「提督おはようございます」

 

青葉が寝ぼけながら起きてきた、

 

「朝食ができてるぞ」

「………頂きます」

 

寝ぼけ眼で青葉が朝食を食べ始めた。

 

「よし、時間だな」

 

私は時計を見ると、大淀と青葉を見た。

大淀は黙って頷くと、

 

「総員集合!」

 

号令をかけた。

 

「全員揃ったな…只今より作戦を開始する、各隊は作戦指示に沿って捜索を開始せよ、改めて云う、単独行動は厳禁とする以上」

 

最終区画の閉塞扉が開かれた。

 

「大淀は管制員席に、青葉は引き続き監視カメラと動体検知センサー並びにあの二人の監視を、衣笠は5号トレーラーを」

「了解」

「提督、鎮守府側閉塞扉開きます」

 

大淀が鎮守府側閉塞扉をリモートで操作した。

 

「我々も前進する」

 

明石が頷くと、99式特型牽引車を前進させた。

 

「天龍より提督へ、海底トンネル出口付近は異常なしだぜ」

「了解した、明石前進だ」

 

私は明石にトンネル出口迄進むように指示した。

トンネルを抜けると、マドックス隊とX10が待機していた。

 

「提督、周囲20m圏内に動体反応無し」

 

青葉がセンサー画面を見ながら報告していた。

 

「わかった、それでは我々は第1目標である司令部の確保に向かう」

 

兵器開発局の二人が見えなくなった頃、もう1台の99式特型牽引トレーラーがやって来た。

 

 

 

「提督、ノースカロライナ到着しました」

 

ノースカロライナがマドックスの予備機を積んで来た。

 

「よし、手筈通りに作業を開始せよ」

 

天龍がエイリアンの尻尾をマドックス予備機の腹部に突き立てた。

 

「提督、こんなもんか?」

「あと盛大に血糊をぶちまけてくれ」

「了解」

 

天龍が腹部周辺に血糊をぶち撒けだした。

 

「提督、こっちはこれでいいかしらぁ~」

 

龍田がエイリアンの濃硫酸の血液をマドックス予備機にかけていた。

 

「そんな感じで大丈夫だ…龍田、自分にかけるなよ」

「は~い」

 

撃破され濃硫酸の餌食となった機体を私と明石の指示で演出すると、天龍は私に向かって頷いた。

 

「何だよ!アレ………残り一匹じゃねえのかよ、何匹居るんだ!」

「天龍ちゃん後ろ!」

 

天龍と龍田が迫真の演技を始めた。

 

「てめぇ、龍田になっ!」

「天龍ちゃ…」

 

天龍と龍田の無線は其処で途切れたように切った。

 

「天龍うまいじゃないか」

「まあな」

 

天龍が顔を赤らめ照れていた。

 

「こっちくなクマー…天龍と龍田が殺られたクマ」

 

次は球磨達だった、

 

「提督…やばいクマ…彼奴等増えているク………」

 

球磨との交信も途絶えた。

 

「天龍!龍田!球磨!応答しろ、何が起きている!!」

 

私も逼迫した状況の演技をした、隣で青葉が口元を抑え笑いを堪えていたが突然真顔に戻ると。

 

「提督、多摩からも通信途絶しました………北上さん応答してください、大井さん何が起きているんですか?」

 

「マドックス隊全機並びに足柄、即時撤退しろ!」

「………」

「………」

 

誰からも応答が無かった。

 

「足柄!羽黒!応答しろ!」

 

少しの間を置き、

 

「こちら羽黒………左前脚をやられました、何とか後退を開始します、足柄姉さんは………分かりません、前席との通信が途切れました」

 

と此処まで迫真の演技をすると、青葉が艦娘通信で全員に後退指示を出していた。

 

「提督、全員問題無しです」

 

私は静かに頷いた。

 

「それでは予定通り海底トンネルへ各自移動してくれ、あの二人には見つからないように」

 

その後我々は彼らに気が付かれることなく撤収を完了した、勿論エイリアンとの遭遇戦を演出し撃破されたマドックスと輸送トレーラーを残して。

 

ーーー兵器開発局蒔田と里谷視点ーーー

 

「おい、里谷今の無線!」

「ああ、一匹だけじゃなかったのか…話が違うぞ!」

「どうする、鎮守府の奴らは全滅したみたいだが…」

 

俺は同僚の里谷の顔を見た。

 

「蒔田………兎に角奴らが拠点にすると言っていた司令部へ行ってみよう」

「そうだな………」

 

俺は里谷と司令部に向かうことにした…。

 

「おい蒔田…アレみろ」

 

里谷が指さした先には、下半身を引きちぎられ、頭部バイザー部を何かで刺し貫かれた血塗れの上半身部分が転がっていた。

 

「この機体番号は天龍か…」

「そうすると…此れは龍田だな」

 

もう1機頭部を潰され腹部に大穴の空いたマドックスの残骸が転がっていた。

 

「ひでぇ有り様だな………遺体は無しか…回収したようだな」

 

俺達はその後も奴等に襲われて破壊されたマドックスの残骸を横目に見ながら司令部を目指した。

 

「全滅か………X10はどうなった?」

 

俺は里谷に聞いてみた、

 

「確か前脚をやられたと報告していたな、艦娘の片方は生死不明らしいがな」

 

里谷がそう答えた。

 

「おい………」

 

司令部に辿り着くと、其処は酷い有り様だった。

 

「指揮車両も司令部もこの有り様か………」

 

俺達の眼前には炎上し今だに燻ぶり続けている車両や、何かの爪で引き裂かれたり半分濃硫酸で溶けたような装甲シャッターを晒す司令部があった。

 

「ひでぇ有り様だな…この様子だと生存者は無しだろうな、玉袋様に至急報告をしないとならねえな」

 

 

ーーー艦娘サイドーーー

 

「奴等安心して馬脚を表しましたね」

 

大淀が彼等の通信を聴きながら笑いを堪えていた。

 

「まさかな、こうも簡単に引っ掛けるとは思わなかったけどな」

 

私も通信を聴きながら笑いを堪えていた。

 

「提督、玉袋への通信を確認しました」

 

私はヘッドホンを受け取ると、彼等の通信を傍聴した。

 

「それと、此れをみてください」

 

青葉が動体検知センサーの画面を私に見せた、

 

「アレの反応が現れました、彼らに接近しています」

「セントリーガンスタンバイ」

 

私はX10で待機している足柄にリモート機銃の準備を指示した。

 

「発砲のタイミングは足柄に一任」

「了解よ、任せなさい」

 

暫くの間の後に、

 

「あの二人の反応が消えました、セントリーガン発砲確認!」

 

モニターやセンサーの監視をしていた青葉が報告してきた。

 

「提督、エイリアンの反応も消失を確認!」

 

青葉が続け様に報告してきた。

 

「24時間様子を、その間に動きがなければ再度鎮守府内へ再進入する、それまでは交代で休憩とする以上」

 

結局のところ玉袋の手先二人も殺られたようだった。

 

ーーーーその後ーーーー

 

エイリアンの犠牲となった艦娘と工廠棲姫の遺体が回収され荼毘にふされた。

 

「で、結局のところ玉袋はどうなったんだよ」

 

天龍が聞いてきた。

 

「玉袋シンパは全員極刑だそうだ…国家転覆罪を無理矢理に成立させたらしい」

「でも、此処はどうなるのかしらぁ~」

 

龍田が跡地について聞いてきた、

 

「慰霊碑建立の後、地下は全て埋めて、その上で連絡橋は撤去、海底トンネルは完全閉鎖、此処は慰霊祭の日以外は立入禁止とするそうだ、まぁ私達はキタガミ食品工業跡地と大堰川造船をそのまま新しい鎮守府として運用することで決定している、追加人員としてノースカロライナ以下オクラホマ、アリゾナ、ネバダ、レパルス、フッド、シカゴ、ブルックリン、エンタープライズ、バターンも正式に配属となる」

 

私の説明に、

 

「街中だから便利なのよねぇ~えっあらあの娘達も配属なのねぇまた賑やかになるじゃない、楽しみねぇ」

 

龍田がニコニコしながら言った。

 

「エイリアンってホントに全滅したのかニャー」

 

多摩がふと疑問を口にした。

 

「恐らくは…一応うちの鎮守府で監視するのも任務として割り振られている…監視カメラと熱源センサーによる遠隔監視ではあるが…」

 

 

こうして私の鎮守府を襲った一連の事件は解決の日を迎えた、多数の犠牲者を出して。

 

 

 

 

 

 

 



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真相は………㉕

今回で真相は………は終わりますタブン


「提督、1番にお電話です」

 

大淀が電話を取ると会話を交わし、私に振ってきた。

 

「はい、お電話替わりました提督です」

 

私が電話に出ると、

 

「軍警察捜査課の者ですが、明日の13時に今回の件で捜査の経緯説明に伺ってもよろしいでしょうか?」

「お願いします」

「それでは13時に伺います」

 

そう言って電話は切れた。

 

「大淀、明日の13時に捜査課が今回の件で説明に来るそうだ、北方棲姫と南方棲姫の二人に連絡、それとノースカロライナ、バターンの2名を呼んでおいてくれ」

「了解しました」

 

大淀が北方棲姫に連絡を取り出した。

 

「了解だそうです、護衛を2名連れて来るとの事です」

 

扉がノックされ、

 

「ノースカロライナ入ります」

 

ノースカロライナがバターンと執務室にやって来た。

 

「明日13時から、あの事件について捜査課から事後説明に来るとの事だから二人も出席してくれ」

「了解しました」

 

二人は敬礼すると退室していった。

 

「あと明石も呼んでおいてく「何にか呼びました?」れ」

 

丁度大淀に明石を呼ぶように指示を出している最中に本人がやって来た。

 

「丁度良かった、明日13時に軍警察捜査課が今回の件についての説明に来るとの事だ、出席してくれ」

「了解です…これで全て解明されたと思いたいですね」

 

ーーーー翌日13時ーーーー

 

「お待たせしました」

 

捜査課の捜査員が3名やって来た。

 

「こちらへどうぞ」

 

大淀に会議室へ案内させた。

 

「大変お待たせいたしました、それでは我々捜査課より今判明したことについてご説明させて頂きます」

 

そう言うと、1名の捜査員がパソコンとプロジェクターを操作した。

 

 

「先ずはこちらをご覧ください…これは、あの事件のおきる数日前の島内にあるホテル内の防犯カメラの録画映像です」

 

捜査員がブリーフケースから数枚の写真と光学メディアを取り出すと拡大された写真をホワイトボードへと貼り付けた。

 

「これは…!」

 

私は、写真に撮されていた場面を見て驚愕した。

 

「えっ………そんな………」

 

写真には、長門が玉袋から現金と小型のアタッシュケースを受け取っている瞬間が撮影されていた。

 

「となると……メディアの内容は…」

「はい、音声付きのその場面の防犯カメラ画像です」

 

捜査員がパソコンの光学ドライブにメディア読み込ませると記録映像を再生させた。

 

『長門、この命令書を実行しろ、工廠棲姫とは話がついている…なに簡単な任務だ、成功すれば、お前と陸奥それに希望の駆逐艦は助けてやる………失敗は全員の死を意味する………わかったな』

 

陸奥と駆逐艦を人質に長門を引き込んだのか…。

 

「………何処までも腐ってますね」

 

ノースカロライナが呆れていた。

 

会議室に沈黙が流れた。

 

「何処までも………」

 

私は怒鳴るのを我慢した。

 

「話を続けます………玉袋は深海棲艦を鎮守府に解き放つ計画を実行しましたがろこの計画に穴だらけで未感染者がいた場合確実に露呈する可能性がありました、しかし思わぬ発見がありました、皆さんご存知の荒島発見です、

其処で発見されたエイリアンの卵を軍情報部や開発局を騙し鎮守府に持ち込み、艦娘及び深海棲艦の殲滅による証拠隠滅を実行しました」

 

捜査員がパソコンを操作し荒島で発見された古代遺跡を映した。

 

「この映像は逮捕した玉袋配下の兵が個人的に持っていた記録映像を押収したものです」 

 

その映像には複数の卵や、エイリアンの成体、幼体サンプルを持ち出す為に梱包作業の瞬間が撮影されていた。

 

「………ちょっ、映像戻して、卵梱包を始める所から再生して」

 

明石が何かに気がついたのか捜査員に頼み込んでいた、

 

「此処見て下さい!」

 

明石が指さした場面は…

 

「彼奴等…最後の最後まで嘘を!」

 

そう卵の数だった、彼らは16個と言っていたのだが梱包作業の映像を確認していくと20個になるのだった。

 

「………となると、まだあと4個存在するのか…何処かに持ち込まれたか、鎮守府の何処かに眠っているかだな…」

「………!!」

 

私が考えていると、捜査員の携帯に着信があり、何やら小声で話していた。

 

「提督、今玉袋周辺の家宅捜索組から残りの4個が確認されたとの報告がありました!」

 

捜査員が報告してきた。

 

「何処にっ!」

「はい、都内の玉袋が個人所有していた倉庫に梱包状態のまま有ったとの事です」

「おい、開梱せずにX線検査のみとし焼却処分を!」 「はい」

 

捜査員は直ぐに焼却処分を指示していた。

 

「これで一安心か…」

「一応は」

 

捜査員もホッとした顔をしていた。

 

その後、荒島の件や玉袋の処遇についての説明をすると捜査員達は引き上げていった。

 

「ふぅ~…何とか解決か」

「そうですね」

 

北方棲姫がお茶を飲みながら頷いた。

 

「だけど…何かしっくりこないけど…」

 

南方棲姫は何かまだ疑問がある様子だった、

 

「何か疑問でも?」

「疑問っていうか…何ていうか、エイリアンってあれだけなのかなって」

 

つまり南方棲姫の疑問は、まだ荒島のような巣が他にも有るのではないかと云う事だった。

 

「確かにあれだけという確証はないですね、できればこのまま発見されずに埋もれたままでいてほしいですね」

「それを祈ります」

 

北方棲姫もそれに同意すると、

 

「それでは私達はこれで失礼いたしますね」

 

そういうと帰っていった。

 

「やっと終わったな…でも果たして私の行動は間違っていなかったのだろうか…」

 

私は今回の件で犠牲になった者達の事を考えると、玉袋の要求を断ったことが果たして正しかったのか悩んだ。

 

「提督………提督がそうしなかったら、この事件は私達の死…いえ国民を巻き込んで国の滅亡という最悪の結末が待っているだけです………だから………」

 

いつの間にか明石が側にいた。

 

「そうだな…明石ありがとう」

 

こうして、私の鎮守府で発生した事件は終焉を迎えることが出来た、民間人に一人の犠牲者も出すこと無く。

 

 

 

 




太古の昔、何者かによって地球に持ち込まれたエイリアン…流石にプレデター迄出すと話が長くなりそうなので登場は見送りました。
このお話し以降タイトルを『北神山泊地の日常』と変わり、北神山泊地の日常生活のお話しが始まります、このお話は飽く迄も日常生活での出来事がメインとなりますので戦闘シーンは有りません、遠征や演習への出発する迄若しくは帰還してからが主となります。
それでは次回をお楽しみに。


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北神山泊地の日常 再始動!

 

「総員おこーし、5分前」

 

 

 

………

 

 

 

「総員おこーし!」

 

館内に総員おこしの声が響き渡った。

 

そして朝食が始まり、いつもの朝が始まった。

 

ーーーー午前9時ーーーー

 

大会議室で何時もの点呼から始まり、これまた何時もの朝礼が始まるのだった。

 

「各艦種別に点呼開始」

 

扶桑が号令を掛けた。

 

「戦艦ノースカロライナ以下オクラホマ、アリゾナ、ネバダ、レパルス、フッド、山城7名異常なし」

 

ノースカロライナが報告した。

 

「巡洋艦シカゴ以下ブルックリン、青葉 衣笠 高雄 愛宕 足柄 羽黒、天龍 龍田 球磨 多摩 北上 大井 大淀15名異常なし」

 

シカゴが報告した。

 

空母エンタープライズ以下バターン、隼鷹 千歳4名異常なし」

 

エンタープライズが報告した。

 

「駆逐艦吹雪以下白雪 初雪 深雪 浦波 磯波 綾波 敷波 時雨 夕立 陽炎 不知火、黒潮13名異常ありません」

 

吹雪が報告した。

 

「工作艦明石並びに給糧艦間宮、伊良湖以下3名異常なし」

 

明石が報告した。

扶桑が総ての点呼を受けると、

 

「総員43名欠員無し、集合終わり」

 

旗艦である扶桑が取り纏めると私に報告した。

 

「楽に休め」

 

私が扶桑にそう告げると、

 

「休め!」

 

扶桑が号令をかけた。

 

「皆おはよう」

「おはようございます」

 

全員から朝の挨拶が返ってきた。

 

「それでは、先ずは連絡事項から伝える。

我々について、本日この時刻を以て全員北神山泊地所属となる、主任務は鎮守府跡地と周辺海域の警戒監視となる」

 

私は大淀を前に呼んだ。

 

「ではこれより辞令を渡す、各艦の代表は受け取るように、大淀は前に」

 

私が読み上げ、大淀が各艦種代表に辞令を手渡していった。

 

「また今日より宜しく頼む、さて………本日以降の予定についてだが……本日は泊地整備の日とし、戦艦、巡洋艦組は書類の名称変更並びに施設内各案内板名称変更作業を、空母と駆逐艦は間宮と伊良湖の指示にて夕刻よりの懇親会の準備手伝いとする…なお明日から5日間は総ての業務は無し完全休暇となる、課業開始」

 

大淀と明石が、役割を分担を指揮してきた。

 

「私も始めるとするか」

 

私は執務室の決済書類の変更作業を開始した。

 

「さて………各艦種長や泊地役割を決めないとならないな………」

 

私は所属艦娘リストを基に役割を決めることにした。

 

「総旗艦は扶桑が妥当か、となると………副艦はノースカロライナと山城で決まりだな」

 

私は総旗艦と副艦の欄に3名の名前を記入した。

 

「次は艦種長と…戦艦はフッド、巡洋艦は高雄、空母はエンタープライズ、駆逐艦は吹雪と時雨の2名と………」

 

私は次々と担当を決めると記入していった。

 

「総務の艦種長は間宮だな…」

 

こうして泊地での各艦種の役職が決まった。

 

「新生北神山泊地のスタートか………」

 

 

私は窓から見える港町を見た。

 



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北神山泊地の日常 旧工廠跡で発見された物

「提督、旧鎮守府工廠跡地で見つかった、鎮守府棲姫の日誌です」

 

それは旧鎮守府を更地に戻す際に、調査部隊による各施設の徹底した調査が行われその際に発見された。

 

「鎮守府棲姫…日誌をつけていたのか」

「はい、もとより管理側の深海棲艦でしたので」

 

私はノースカロライナから日誌を受け取ると目を通した。

 

「やはりな………」

 

日誌には、艦娘を深海棲艦化させていった経緯が記載されていた。

 

「最初は拿捕に向かった金剛達か…、次は人質となっていた陸奥や駆逐艦娘…あとは次々と増やしていったと………」

 

私が日誌を読んでいると、

 

「あと夕張さんの部屋で見つかった、提督宛の日記です」

 

ノースカロライナが一冊のノートを鞄から取り出すと私の机に置いた。

 

「内容は調査部隊による確認が行われていはいます」

 

私はノートをひらいた。

 

『提督がこの日記を読んでいる事を期待して

 

金剛さんがあの深海棲艦を拿捕してきてから、様子がおかしくなってきて………提督を毛嫌いしたり、人間は害悪だとか…鳳翔さんまでもが提督は殺すべきと言い出してます…………。

 

最近霧島さんの額に角が生えてきている。

 

比叡が泣き叫ぶ駆逐艦娘を引き摺って何処かに連れて行った

 

私の番みたい、霧島さんが呼んでいる。

 

今日、金剛さんからキスされた…金剛さんの趣味って

 

 

なんだろう金剛さんとキスしてから…提督の事が……

 

ー中略ー

 

最近鎮守府内で変な生物の死体を見ることが多くなった、私も昨日何か変な生物に張り付かれた。

 

もう意識を保てない…提督ごめんなさい…胸が痛い、何かが胸の中にいるみたい』

 

夕張のノートは此処で終わっていた、

 

「………」

 

私はノートを閉じると、

 

「済まない、少し一人にしてくれ」

 

ノースカロライナは私の意図を汲んで退室していった。

 

「夕張………」

 

夕張が残したノートの内容により、あの日以降鎮守府で起きていたことが解明された。

 

私はノースカロライナと大淀、明石を呼んだ、

 

「ノースカロライナ、大淀、明石は執務室に」

 

程なくして3人が執務室にやって来た。

 

「ノースカロライナ入ります」

「入れ」

 

私はノートを明石に渡した、

 

「提督これは?」

「夕張の残したノートだ」

 

明石がノートを開くと大淀と読んだ。

 

「これは!」

「ああそうだ」

 

明石の表情が何時になく険しくなっていった。

 

「そんな…なってことなの…酷すぎる」

 

恐らくは駆逐艦娘の事を書いている辺りを読んだのだろうか、大淀が静かに眼鏡を外しハンカチで目元を拭っていた。

 

「………夕張さんとしての自我が残っていたのですね」

 

ノースカロライナが口を挟んだ。

 

「そうだな、夕張の姿で最後を迎えられた彼女は幸せな方だな………」

 

私はエイリアンに胸を喰い破られ絶命していた夕張の姿を思い出していた。

 

 

 

 



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第二章 雑記帳
明石の作った物……!!


「なぁ明石…これ何?」

 

俺の眼の前にそびえ立つ巨大な三連装砲座三基を見上げた。

 

「……何でしょうねぇ」

 

明石がとぼけた。

 

「すっとぼけんな!誰が見ても戦艦級の主砲塔そのものだろうが!」

 

等と明石に怒鳴っている間、俺はそれが何か理解してきた。

 

「九十四式四十六センチ三連装砲ちゃん!」

 

明石が唐突にちゃん付けで呼んだ。

 

「連装砲ちゃんはぜかましだけだから、これはあんな可愛いものじゃねえよ……大和の主砲があれだったら怖えよ」

 

俺はぜかましの周りをチョロチョロする連装砲ちゃんを思い描いた。

 

「江田島の沿岸砲台みたいなものです」

「まぁそれなら妥当なじゃねぇよ、こんなでけえのどうすんだよ」

 

確かに江田島には陸奥の主砲塔が設置されているが……対抗して大和型の主砲塔を設置してどうすんだよ俺は呆れた、しかもご丁寧に副砲迄設置してやんの(三連装砲塔三基と副砲塔ニ基)。

 

「で…給弾揚弾は?」

 

俺は明石に聞いてみた。

 

「地下にちゃんと給弾室を設けてます」

 

俺は砲塔背面の扉から内部に入った。

 

「機構は全て自動化しています、有事は人力でも射撃可能です、下におります」

 

明石からの簡単な説明を受けながら換装室から下の給弾室へとはしごを使って降りた(先に降りたので明石のスカートの中を覗けたのは言わないでおこう、うん履いてなかったのな……眼福眼福)。

 

「先程質問のあった給弾についてですが、装薬も同じなので此処で説明します、こちらへどうぞ」

 

俺は明石に連れられて給弾室の後部側に案内された。

 

「此処の扉から給弾します、そして此処迄の輸送は地下に専用のトロッコ列車を敷設しています」

 

俺は明石が造ったこの沿岸砲台の建設費用が何処から捻出されたのか気になった。

 

「多分…提督も気になっているでしょう建設費用ですが、元々この地での設置工事は始まっていたようでそれが途中放棄されていたのを流用したので……砲塔の製造費用のみという所です」

「製造費用の申請書見てねぇぞ?」

 

俺は明石に詰め寄ったが

 

「えっと……ごめんなさい、色々な諸費用を水増しして捻出しました」

 

明石は請求書の水増しをして捻出したようだった。

 

「これ大淀が知ったら……」

 

俺はどうすべきか悩んだ。

 

「提督、お願いします……なんとか内密に!」

 

明石が擦り寄った。

 

「私の事を好きにしていいので!」

 

明石がスカートを捲って下半身を露出させた。

 

「俺だって男だが……俺はそういう事は…別にお前に魅力が無い訳じゃないぞ、だからそれは受けられない……代わりに俺の飯作りな、それで聞かなかったことにしてやる」

 

俺は三食コンビニ飯なので明石に飯を作らせる事を条件にした。

 

「それくらいの事で……」 

 

だが明石にはこれが一番の問題だった、何故ならこいつも料理出来ない娘だったのだから。

 

そして翌日の朝から、俺は焼き過ぎて焦げたパンと一部炭化した目玉焼きを食べさせられる羽目になった。

まぁ比叡飯より遥かに料理らしかった(あれは飯というより劇物なのだから)。

 

そして月日は流れ…俺は結局の処、明石を美味しく頂いた(ちゃんと男の責任はとった)。

その結果、明石の中に次世代明石を建造した(早い話が妊娠)。

 

 

 

 



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廃墟探索…

ここは艦娘による特殊部隊駐留基地
提督(隊長)以外すべて艦娘


『HOT!』

 

大淀がそう叫ぶと壁にあった赤いボタンを押した。

 

「提督、緊急事態発生…」

 

大淀が電話で何処かとやり取りしていた。

 

『艦娘6名 行方不明 24時間経過 C県F市 廃ホテル』

 

大淀が電話の内容をメモに書き出し私に見てるようにした。

 

「何が起きたのですか」

 

私の前には非常召集を受けた川内、神通、那珂、天龍、龍田、青葉、伊勢、日向、明石、夕張の10名が整列していた

 

私は大淀のメモを見ながら経緯を説明した。

 

「近隣鎮守府の白露、村雨、時雨、夕立、不知火、陽炎の6名が無断外出を行い消息を断った」

「警察からの情報によると国道沿いにあるコンビニの防犯カメラに写っているのが最後との事、友人などの証言からその近くにある廃ホテル探索に向かった模様」

 

大淀が付け加えた。

 

「これがそのホテルの見取り図になります」

 

明石がホテルの建築図面をプロジェクターに映し出した。

 

「市当局からの情報では廃業後15年経過し、先日の地震の影響で一部崩落もしているそうです」

 

青葉が最新の状況を説明した。

 

「今回はSMGとハンドガンをメインとする、重火器は特にMGは不要だ、ノクトビジョン…ボディアーマー……銃火器はMP7とSIG−P320でいいか」

 

私は川内達の前に出ると、改めて説明をした。

 

「基本3人で行動してくれ編成は神通に任せる、大淀は携行通信機を、明石は緊急事態に備えて医療キット、夕張はコイツを」

 

私は指示を出しながら夕張にとある物を手渡した。

 

「提督…これは!」

 

私は夕張にレミントンM870ショットガンを渡していた。

 

「万が一はそいつでドアを破壊しろ」

「マスターキーって……開かない扉は無いでしょうけど…」

 

夕張が呆れていた。

 

「それでは時間がない、出発!」

 

3台の民間宅配業者を装った偽装トラックに機材を積み込むと我々は目的地に向った。

鎮守府を出てから約一時間後其処に到着した。

 

「提督、内部に複数の人体による熱源あり」

 

明石がドローンに取り付けたサーマルカメラを視ながら報告してきた。

 

「突入準備!」

 

私を始めとする全員がスカルマスクを被った。

全員が黒ずくめだった、勿論1番目立つ明石と夕張の髪もスカルマスクに隠れて見えなくなっている。

 

廃ホテルの内部へと我々は侵入した。

 

「これ必要なかったですね」  

 

日向がバッテリングラムとスラップチャージを指差した。

 

「まあな、それよりだ室内の動きは」

 

俺の問に大淀が耳元に小声で報告してきた。

 

「上層階にて人体による熱源多数感知」

 

我々は一旦集合すると大淀のタブレットを覗き込んだ。

 

「恐らくは最上階の一番角の部屋だと思われます」

 

我々は足音を殺して階段を上がっていった、そして最上階に到着した。

 

「提督、あの部屋で間違いありません内部に人体による熱源複数確認」

「こちら川内、室内に縛られた村雨以下8名確認、怪我無い模様、会話の内容から夕立達の身体に危険あり」

 

私は川内の報告を受けると、

 

「神通、スタングレネード」

 

私の意図を神通は直に理解すると扉の隙間からスタングレネードを投げ込んだ。

その直後閃光と轟音が部屋を覆った。

 

「状況終了!」

 

スピーカーから女性の声が聞こえた。

 

「お疲れさまでした、まぁ最初の報告から突入までの経緯は流石特務です、……使用する銃火器の選択と携行する銃器を目的に合わせたものを短時間に我々陸自も見習うべき所は多数ありました」  

 

私達は陸自の観戦者からの感想を聞くと廃ホテルを出て鎮守府へと戻った。

そうこれは抜き打ちで行われる緊急事態への即応体制を確認する試験だったのだ、勿論大淀は事前に知らされていた為使用する銃火器の実包を演習弾に変更していた。

 

 




大幅に加筆修正いたしました。


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MIA 前編

今回は作戦行動中行方不明となった艦娘と再会を果たすだけのお話……一部何ともと云う内容となっています。


「現在までにMIAとなっている艦娘は、戦艦が『長門』『金剛』『霧島』の3名、空母は『鳳翔』『千歳』『隼鷹』『祥鳳』の4名、巡洋艦は『青葉』『那智』『足柄』『高雄』『愛宕』『神通』『夕張』『大淀』の8名、駆逐艦は『時雨』『夕立』『黒潮』『陽炎』『不知火』の5名合計20名となっています」

 

明石が各艦娘の身体的特徴を記載したリストを持ってきた。

僕はそれを受け取ると目を通した。

 

「明石…これPDFで僕のスマホに送れる?」

「可能ですが…何故です?」

「見つかった時にいちいちこの紙ベースのリストを見なくてもスマホで確認できるからね」

「了解です、数日待ってください」

 

明石は電子データ化を受けてくれた。

 

 

 

数日後ーーーー

 

「はい、瀧原ですが」

 

早朝に一本の電話で僕は起こされた。

 

「手短に言う、君の所の艦娘だと思われる者達が捕らえられている場所を教える」

 

電話の相手男とも女ともつかない機械的な声で一方的に話すと電話を切った。

 

「明石、直に僕の所に!」

 

僕は内線で明石を呼び出した。

 

「誠さん、こんな朝早くにどうかしたのですか?」

 

僕は先程の電話の内容を明石に話した。

 

「本当ですか!」

「これから指定の場所に行ってみる、一応憲兵を極秘に連れて行く」

 

僕はそれだけいうとの指定の埠頭へと向った。

 

「此処か…」

 

僕が指定された倉庫に着くと中からでっぷりと肥ったハゲ親父が出てきた。

 

「瀧原様ですね、こちらです」

 

僕はハゲ親父について倉庫に入った。

 

「なんでも奴隷が欲しいそうで、艦娘ですが柔順にするように躾けていますから…まぁご覧ください」

 

ハゲ親父がニヤニヤしながら倉庫の奥へと僕を案内した。

 

「!」

 

僕は驚いた、何故なら眼の前には全裸にされた多数の艦娘が並んで立っていた。

 

「何故裸…」

 

僕は思わず口にした。

 

「ああ簡単なことですよ、実際に身体を見て触って決められるように、勿論あそこの具合もチェックして頂いても結構ですよ」

 

そう言うとハゲ親父は長門の股関を指差した。

僕はスマホを取り出すと長門の項目を見た。

 

「長門、少し足を開いて」

 

僕は画像データを見ながら長門の太腿の内側を確認した。

 

「間違いない…先ずは一人目」

 

僕は購入済みの札を長門の額に貼った(キョンシーかっ!)

 

「次は金剛…」

 

金剛が憎悪の目で僕を睨んでいた。

 

「確か金剛はうなじに特徴的な痣か」

 

スマホの画像データを見ながら痣を探した。

それは直に見つける事が出来た。

 

「はい」

 

長門の時と同様に額に札を貼った。

 

「霧島に手を出すな、出すなら私だけに」

 

金剛が低い声でそう告げた。

金剛の瞳からは憎悪の焔が上がっていた。

この後も僕はハゲ親父が連れてきた艦娘を全て確認したが残念ながら『高雄』『愛宕』『大淀』『神通』『時雨』『夕立』は見つからなかった。

 

「配送してもらえるのか?」

 

僕は努めて冷徹に聞いた。

 

「勿論です、こんなにお買い上げ頂いたのですから無料配送させて頂きます」

 

ハゲ親父は下卑た笑みを浮かべていた。

 

「『鳳翔』『長門』『青葉』3名はこのまま持ち帰るが構わないか?」

「勿論ですともお客様のご随に、ではその3名には服を着せておきますので、お支払いをお願い致します」

 

僕は車のトランクからアタッシュケースを持ってくるとハゲ親父が提示した金額を支払った。

 

「この条件に適合する『高雄』『愛宕』『大淀』『神通』『時雨』『夕立』を探してくれ」

 

僕はハゲ親父に追加分のオーダーを入れ手付金を支払った。

 

「畏まりました、卸業者に当たってみます…ん?この条件に合う大淀なら確か先日スクラップヤードに送ったやつか?…まだ解体していないのでそのままですがご覧になりますか?」

 

ハゲ親父が条件に該当する大淀がスクラップヤードにいると言うと、部下に連れてくるように指示していた。

 

「少しお待ち下さい、スクラップヤードから引っ張ってきます」

 

30分位経っただろうか、首輪をされた全裸の薄汚れた姿の大淀が引っ張ってこられた。

 

「ご希望でしたらこの大淀はサービスで差し上げます」

 

僕は一応確認するふりをすると、

 

「貰うよ、大淀はこのまま連れて帰るから鳳翔達と同じにしてくれ」

 

とだけ言うと倉庫を後にした。

帰りの車内

 

「やっと見付けた、青葉」

 

僕は助手席に座る何故かメイド服の青葉の手をそっと握った。

 

「……」

 

青葉の瞳は怯えの色をたたえていた。

 

「僕だ、瀧原、瀧原 誠」

「うそっ!誠くん…」

 

これまたメイド服の大淀が最初に反応した。

 

「…!」

 

長門(何も言うまい……)と鳳翔(日頃和服だからメイド服姿はある意味眼福だった)も驚いていた。

 

「夢じゃないよね……」

 

やっと青葉も反応を示した。

 

「家で明石も待ってるから」

 

そう言うと、僕は愛車のアクセルを踏み込んだ。

 

 

ーーーー後編に続くーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 




MIAとなった艦娘は深海棲艦によって解体されて奴隷として業者に売却されていたと云う設定です(外貨を得るために売り捌いた)、勿論戦死した艦娘もいますし、未だに捕虜となっている艦娘もいるという状況です。

ランボー2を見ていたら思いついたので書いてみました



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過去へ……①

何番煎じかわからないタイムスリップものです生暖かい目でお読みください。



「痛え…ここは何処?」

 

僕は確か土星宙域で各種武装の試験をしていたはずだった、だが目を醒ました其処は漆黒の宇宙空間だった。

 

「航海長大丈夫?現在位置を確認して」

 

僕は眼の前に座る航海長を起こすと現在位置を確認させた。

 

「機関長?波動エンジン並びにワープブースターの点検を」

眼を醒ましていた機関長に機関の点検を指示した。

 

「船務長、怪我人は?」

 

レーダー席に座る船務長に声を掛けた。

 

「技師長、艦内の損傷報告を」

 

思いつく限りの確認を指示し僕は艦長席に座った。

 

「艦長、本艦及びワープブースターの波動エンジン並びに補助機関問題ありませんが……拡散波動砲は何らかの安全装置が作動したらしく撃てません」

 

機関長と技師長が報告をした。

 

「波動砲はつかえない…その他の物は?」

「主砲並びに対空砲、艦載機に損傷無し何時でもいけます」

 

僕は取り敢えず機関始動を指示した。

 

「機関長、補助機関始動」

 

僕の指示を受け、機関長が席についた。

 

「補助機関始動します、波動エンジンへのエネルギー充填を開始します」

 

僕の席にある通信機がなった。

 

「こちら医務室、艦長安心してください負傷者は転んでタンコブ作った奴だけです、こんなもんつばつけときゃ治ります」

 

妖精さんも怪我は無いようだった。

 

「艦長、現在位置判明しました土星の第2衛星エンケラドス軌道上…そんな馬鹿な!」

 

航海長が絶句していた。

 

「航海長何か問題があったのか?」

「エンケラドスと云えばあの雪風が沈んで…救難信号が…救難信号が出ていませんそれどころか、雪風の艦影有りません!」

 

そうエンケラドスには古代艦長の雪風が沈んでいる筈なのだ、なのにその残骸すら無いというのだ。

 

「どういう…」

 

僕は混乱し始めた。

 

「艦長、波動エネルギー充填120%完了何時でもいけます」

 

機関長が主機関始動可能を報告してきた。

 

「…機関長、いくよフライホイール接続、波動エンジン始動!」

 

僕の声に反応するかのように機関長が始動レバーを引いた。

 

「フライホイール接続点火!波動エンジン始動確認!」

 

僕は機関長からの報告を受けると、

 

「本艦は地球へ向け帰還する、火星軌道への短距離ワープを行う、各部準備にかかれ」

 

機関科と航海科が慌ただしく動き出した。

 

「戦術長、準備出来次第地球へ向け発進する」

「準備出来次第地球へ向け発進します」

 

戦術長が復唱した。

 

「全艦ワープ準備完了」

 

技師長が報告をした。

 

「ワープ10秒前、9、8、7、6、5、4、3、2…ワープ!」

 

航海長がワープ突入のカウントダウンを行いワープに突入した。

 

「まもなく火星の衛星軌道、ワープアウトします」

 

僕は火星の衛星フォボス軌道上にワープアウトした。

 

「地球を映像で捉えました」

 

船務長が地球をメインスクリーンに投影した。

 

「艦長……何かおかしいですな、戦闘衛星が一基も見当たりませんが…」

 

機関長が禿げ上がった頭を撫でながら聞いてきた。

 

「あれは確か対ガトランティス戦役時に無断発進したヤマトが破壊した……いや待てよ複数あった筈」

 

地球の衛星軌道上にはその残骸すら浮遊していなかった。

 

「コスモタイガー隊による偵察を意見具申致します」

 

戦術長と技師長が僕の前に立つと同じ事を言った。

 

「許可する、先ずは月面司令部を確認してくれ」

 

僕の指示を受けたコスモタイガーが月面司令部へ向けて発進していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公設定
ZZZ-0002Kアンドロメダ改2型(ZZZ-0001 アンドロメダ改の改良発展型と云う架空のオリジナル空母型アンドロメダです!)、乗員は艦娘と数十名の妖精、艦載機搭乗員で構成。
艦載機は1式空間戦闘攻撃機コスモタイガーⅡをアンドロメダ改本体に180機、ワープブースターのドレッドノート改級補給母艦アスカ型に各15機計30機の合計210機搭載。
主砲に於いてはヤマト最終決戦仕様に準ずる3連装陽電子衝撃砲を4基に換装している(ガトランティスの大戦艦もヤマトと同様に一撃で撃沈可能)。

艦名 こんごう 
艦番 U.N.C.F.ZZZ-0002-YF2210

※基本的性能は空母型アンドロメダに準ずる…が高機動仕様ながら艦内では強化服が不要となっている。


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過去へ……②

「艦長…妙ですな、ここまでに一度も地球ガミラスの艦艇の残骸若しくは残存ガトランティス艦艇群を見ていません、それにフォボスにはガトランティス拿捕艦艇の集積場があったはずですが…」

 

僕も機関長と同じ事を考えていた。

 

「確かに妙だね…フォボス軌道上をパトロール艦とガミラス艦艇が警備している筈」

 

フォボス軌道上はおろか地表にも何も無かったのだった。

 

「艦長、月面偵察隊より報告!」

 

通信士が回線を回してきた。

 

「どうした?」

「こちら月面偵察隊…月面には何の建造物も確認度できず、司令部及びサナトリウムの存在を確認出来ません、それと勝手に向った偵察機よりアポロのアレも無いそうです」

「なんだと!」

 

艦橋にいた全員がその通信を聞いて驚いた。

 

「勝手に向ってすみません、艦長…月面にはアポロの月着陸船はおろかアメリカ国旗もありませんでした」

 

その報告を聞いていた技師長がとある可能性を口にした。

 

「まさか…我々は過去に来ているのか?」

 

技師長の口にした言葉は全員も直に理解できた。

 

「確かにそれだと説明つく……が」

 

機関長もしきにり首を傾げていた。

 

「本艦は偵察機収容後月軌道へ短距離ワープを行う、然る後地球圏の偵察を行う」

 

僕は偵察機を収容すると月の軌道上にワープした、勿論月面基地司令部はおろかガミラス大使館も存在しなかった。

 

「やはりいないか…月面には旧ガトランティスのメダルーサ級殲滅型重戦艦、カラクルム級戦闘艦、ククルカン級襲撃型駆逐艦、ナスカ級打撃型航宙母艦で構成された練習艦隊が常駐していた筈…それに第5航空戦隊旗艦のアポカリクス級航宙母艦『赤城』もいないようだな」

 

僕はメインスクリーンに映し出された月面の様子を見ていた。

 

「艦長、地球上空にも偵察機を出しましょう」

 

僕は戦術長の意見具申を受け入れ偵察機を発進させることにした。

 

「地上の主要都市の偵察をそれ以外については君達の判断に任せる」 

 

 

搭乗員妖精達がコスモタイガーで発艦していった。

 

「技師長の云う此処が過去の地球として…いつ頃なのか調査が必要じゃな」

 

機関長が禿頭を撫でながら僕に語りかけた。

 

「月着陸船が無い事から1969年以前ではあるだろうね」

 

僕達がある意味呑気にしていたその時だった。

 

「コスモタイガー隊よりこんごうへ、正体不明の物体に攻撃を受けている民間船舶を発見、支援許可を求む!」

 

僕は直に詳細を報告させた。

 

「映像回せるか」

 

偵察機より映像が転送されてきた。

 

「偵察中のコスモタイガー隊は直ちに民間船舶支援に向かえ、火器使用を許可する」

 

コスモタイガー隊から了解の返信を受けた。

 

「艦長、アレの正体解りました……空母ヲ級艦載機です…二百年以上前の機体です」

 

技師長が三面図をタブレットに出して説明してくれた。

 

「となると……近海にヲ級を含む機動部隊がいるな、周辺海域の探索を厳とせよ」

 

こうして僕は西暦2210年最強の戦力を持って人類対深海棲艦との戦いに介入することになった。

 

 

 

 

 

 




ガトランティス戦役終結後残存していた艦艇はガミラスと地球で拿捕回収されて不足した自国の戦力として再配備したという設定にしています。
メダルーサ級殲滅型重戦艦も地球防衛軍カラーやガミラスカラーの物が存在します。


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過去へ……③

今回は金剛視点で進みます。


「救助要請のあった海域はまだデスカ」

 

私は航海長妖精に繰り返し確認していた。

 

「艦長…落ち着いてください、このまま行ってあと一時間位で到着します」

 

非武装の民間船舶が深海棲艦の艦載機に襲われ救助要請を受けた私達は直に急行したのデース。

 

「艦長、比叡艦長より通信『ワレ、サンジホウコウニバクハツエンカクニンス』以上」

 

通信妖精が僚艦からの電文を読み上げた。

 

「艦長確認しました、航空戦展開中の模様、詳細不明…交戦中の機体極めて高速なり」

 

見張員妖精が報告をしてきた。

 

「艦長、対空電探に感アリ、正面より極めて大型の何かがこちらに近づく!」

 

私は愛用の双眼鏡で正面を確認した。

 

「……な…に…!巨大な浮遊物体視認…戦艦??」

 

私はそれを見て驚きと恐怖で言葉が出なかった。

 

「艦長、不明物体側面に何か英文らしきモノ『KONGO U.N.C.F.ZZZ-0002-YF2210 Advaned Abillty Armament』と名称らしき記載アリ!」

 

私はそれを聞いて愕然とした、何故なら見張り員妖精が読み上げた英文の中に私の名がローマ字表記で認めたからだ。

 

「どういう…事なの?」

 

私は思考が停止した。

 

「艦長、正面不明物より通信が入りました」

「スピーカーへ」

「了解」

 

私の命令を受けて通信士妖精が通信を艦橋スピーカーに切り替えた。

 

「こちらは地球連邦航宙艦隊前衛武装宇宙艦こんごう、艦籍番号U.N.C.F.ZZZ-0002-YF2210 です、前方の洋上艦艇は応答されたし」

 

私は気を落ち着けると返信した。

 

「こちらは日本海軍佐世保鎮守府所属軍艦金剛です」

 

このあと起きる事を誰が予測できたでしょうか、不明艦艇からの通信は私を驚かせました。

 

「ま…まさかご先祖さま!」

 

姉ならまだしも母や祖母を通り越してご先祖様ときたのです。

 

「艦長いつの間にご結婚されて……」

 

副長が何やら言いかけたので私は彼をアイアンクローで黙らせました。

 

「私は未婚です!勿論子供なんていません」

 

私は副長相手にコントじみた事をやっていると、更に通信が入りました。

 

「そちらに行ってもいいですか」

 

私はとにかく子孫(?)にあってみることにしました。

 

「どうぞ、内火艇出しますか?」

 

私は迎えの連絡艇を出すか聞いてみた。

 

「接舷して移乗しますので不要です」

 

声から判断すると男の子のようです。

 

「艦長涎…出てます」

 

副長がジト目で指摘してきた。

 

「かわいい男の娘だといいですね」

 

副長の趣味わかんない…なんですか男の娘って?

 

等と言っているうちに不明艦が接近してきました。

 

「デカイ…400m以上はありますな」

 

副長が真面目に戻ると不明艦の細部を観察していた。

 

「主砲は中央船体に2基…いやどうなってるんだ、両舷に小型艦艇を接舷させているのか!砲戦極能力極めて強力…」

 

「艦長、不明艦の艦長と思しき少年?こちらに移乗許可を求めてきました」

 

見張り員妖精が私に報告してきた。

 

「艦長なら佐官級です、幹部妖精は舷門に集合」

 

私は佐官級の乗艦を見越しての指示を出した。

 

「前衛武装宇宙艦こんごう艦長乗艦されます」

 

舷門の警備妖精がサイドパイプを鳴らして合図した。

 

「艦長の小さい頃に何やら似ておりますなぁ」

 

副長が私と見比べてきた。

 

「?それは」

 

私は彼が首から下げていた双眼鏡に触れた。

その瞬間それは私に流れ込んできた、双眼鏡本来の持ち主であるこの子の母親の壮絶な最後や歴代のこんごうの記憶が。

私は気が付くとその子を優しく抱きしめていた。

 

「この子を宜しくネー」

 

どこからか優しくそれでいて聞き覚えのあるそんな声が聞こえた。

これが私と遥か未来の子孫との出合いでした。

 

 

 

 



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過去へ……④

今回も金剛視点で進みます。


「……ものごころ付い時から独りぼっち、寂しかったデスね」

 

私はこの小さな子を優しく抱きしめるとそっと呟いた。

 

「僕にも妹達はいました………まだ養成学校の生徒だけど…もう会えないのかなぁ」

 

彼はそのまで言うと泣き出した。

 

「そうですか…」

 

私も言葉に詰まった。

 

「今は独りぼっちじゃありません、私もいるし比叡や榛名、霧島もいます……ご先祖様は流石にねぇ…あれなんで…そうです!お姉様と呼びなサーイ」

 

こんごうちゃんは私の言葉を聞くと嬉しそうに頷いていました。

 

「さてと、目前の問題を先に解決しましょう」

 

私が進路を指示する前に彼が口を開きました。

 

「僕の装備で行く方が早いよ、金剛お姉様も…」

 

私はこんごうちゃんの提案を受け入れる事にしました。

 

「そうね、空飛べるならその方が速いかもね、比叡は艦隊の指揮をお願い、私はこの子と先に行きます」

 

私は比叡に艦隊指揮を引き継ぐとこんごうちゃんの艦に乗り込む事にした、その時に比叡がちらっと見えたこんごうちゃんを見て鼻血を出したのは見なかった事にしておきましょう。

 

「それでは説明しましょう、新こんごう型は基本形態が空母型で建造されて2隻のドレッドノート改級補給母艦を両舷に重力アンカーと物理接舷機構で固定することで、個別のワープブースター兼武装増加補給物資積載ユニットとして使用可能で、これについては基本形態の補給艦型でも可能、航行はドレッドノート側の波動エンジンでも新こんごう型の波動エンジンどちらでも航行可能です、今は原因不明の故障で撃てませんが基本的には新こんごう型の波動砲を撃ったは後すぐに波動エンジンを始動できない為ブースター側の機関でと云うのが基本的運用方法です、武装については新こんごう型は4連装拡散波動砲と48センチ三連装陽電子衝撃砲通称ショックカノンが2基6門、艦載機にコスモタイガーⅡを180機、、ブースター側のドレッドノート改は、30.5センチ三連装収束圧縮型衝撃波砲塔が2基6門と艦載機にコスモタイガーⅡを各15機合計で30機、ミサイルや魚雷発射管は多数、速度は光速の99.9パーセント」

 

こんごうちゃんの技師長が詳しく説明してくれたが私は全く理解出来なかったが…恐らくは長門や大和でも勝てないそれどころか1、2、5航戦の6隻の空母と互角の航空戦力を有している事だけは理解できた。

 

「お姉様、お茶をどうぞ」

 

私が技師長から性能諸元を聞いて混乱していると、紅茶を彼は淹れてくれた。

 

「ありがと、うん美味しい」

「霧島母さんに習った」

 

私はふと彼の双眼鏡が持つ記憶を思い出した。

其処には初期の宇宙戦争で親を失った彼や比叡、榛名の子供達を引き取り我が子のように育てた霧島の姿もあった。

 

「鎮守府に帰ったら榛名がお菓子を作って待ってマース、一緒に帰ろうね」

 

私はそっと彼の頭を撫でた。

 

「うん」

 

彼は頷くと、艦載機の発艦を命じた。

 

「コスモタイガー隊は直ちに発艦、前方敵性艦隊を撃滅せよ、砲術長は主砲測距開始」

 

彼の命令を受けた艦橋配置の妖精達が動き出した。

 

「エンジンからのエネルギー伝導終わる、本艦並びにジュニアズ主砲追尾よし、誤差修整ゼロコンマゴ」

 

彼の戦闘は一方的に終了した、艦載機による雷撃と主砲(驚く事に光線兵器!)による砲撃で深海棲艦は反撃はおろかこちらを視認する前に海の藻屑と化していった。

 

「両舷のドレッドノート改だっけジュニアズなのね」

「うん霧島母さんが最初に言い出したのがそのままに……右舷がジュニア1号、左舷がジュニア2号で基本はAIによる遠隔操作で分離独立戦闘可能更に有事の際は脱出艇にもなるように専用建造されたんだ「艦長がよくいけっ!ファンネルとか言って分離させて自立行動させてますけど…」」

 

 

副長妖精がよく分からない何かのネタを言っていた。

彼が言うにはドレッドノートは本来主力戦艦として沢山建造されたそうです、とはいえ対ガトランティス戦役ではそれなりの数が沈んだそうです(次元断層内に作られた造船基地でほぼ無尽蔵に建造されたとか……)。

 

「このアンドロメダ級は極東管区日本地区は僕達高速航空戦艦型のこんごう型4隻と純粋な戦艦型の長門型2隻が配備されてたよ」

 

こんごうちゃんが自分の時代の話を少ししてくました。

 

「ウ~ン西暦だと何年になるのかな」

 

私はこんごうちゃんの艦橋内部を見回すと聞いてみた。

 

「僕が建造されたのは西暦2210年だから…」

 

私は目眩を覚えた。

 

「今年が西暦1943年だから…えっと「267年前になるよ」」

 

こんごうちゃんが簡単に答えた。

そりゃそれだけ年数経ってれば祖母を通り過ぎてご先祖様になるわけね……シクシク

 

 

 

 

 




新こんごう型はひえい、はるな、きりしま全艦空母型で建造され、高速戦艦設定なのでドレッドノート改を接続した状態で就役していますが(こんごう以外は現在の所まだ造船台の上ということになっています)
この話に出てくるアンドロメダは架空設定をてんこ盛りに盛りまくってますのでアニメ設定とは詳細が違いますのでご了承ください。
バンダイから今回発売される地球防衛軍 ドレッドノート改級補給母艦アスカを架空設定として使っています(波動砲が使えるかはわからないのでオリジナル設定として砲口カバーを爆散ボルトで排除後新こんごうより分離、独立行動時の発射可能とします)。
艦載機については後部甲板に露天若しくはサイドエレベーター(商品写真から妄想!)で下層の格納庫へと設定しています(100パーセント妄想です)


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過去へ……⑤

……某鎮守府 提督執務室……

何処かと電話で話す女性提督

 

「そんなっ!いくらなんでも……」

「…」

「そんな事が許されるのですか!」

「…」

「彼女達にさせるくらいなら…私が…」

 

女性提督の顔色は青ざめていた。

 

「佐世提督、どうされたのですか」

 

秘書艦の妙高がお茶を出しながら聞いた。

 

「金剛達が邂逅した新型艦娘を何としても味方にって言われたわよ…でも相手が男性型だとわかると…私の体を差し出してでも嫌なら艦娘の体をって言っきたの……」

「佐世提督…そんな、いくらなんでも……」

 

妙高は提督の言葉を聞いて怒りが込み上げていた。

 

「いいの、私の体でそれだけの強力な戦力が手に入るのなら……それにこんな傷だらけの体で…」

 

そう言うと彼女は自身の背中を見るような仕草をした。

 

「佐世提督…」  

 

妙高は知っていた、彼女の背中には火傷のような大きな傷痕があり、それだけではなく顔を始め身体中至る所にケロイドの様な物が沢山ある事を。

 

ーーーーーーーー

 

戦艦金剛航海艦橋

 

「こんごうちゃん、もう直鎮守府につきマース」

 

金剛が通信機で話していた。  

 

「僕の艦体は大き過ぎるから連絡艇でお姉様に移乗したほうがいいかなぁ」

「そうですね、鎮守府上空待機といきましょう」

 

こんごうとの通信を終えると、

 

「通信士、鎮守府の佐世提督に通信を内容は『新こんごう型は港湾施設に接舷不可の為鎮守府上空待機とします』で」

「鎮守府佐世提督ヘ電文了解」

 

ーーーーーーーー

佐世鎮守府(提督視点となります)

 

「提督、邂逅した新型艦娘を目視で捉えました!極めて大型……3隻なのか…」

 

見張り妖精が驚きの声を上げていた。

 

「こちら金剛、鎮守府到着デース」

 

それから程無くして、執務室の扉がノックされた。

 

「金剛以下比叡、祥鳳、陽炎、不知火、黒潮に損傷ありません」

「全員無事ね」

「救難要請のあった民間船舶については無事目的地への到着を確認しています、続きまして新型艦娘の件ですが、こっちいらっしゃい」

 

金剛が後ろに隠れるように立っていた10歳くらいの男の子を前に出るように呼んだ。

 

「この子は金剛型5番艦の『こんごう』デース」

 

私は頭を抱えた、なぜならあれだけ私に大本営が無茶ぶりを振ってきた相手を金剛がしっかりと手懐けていたのだ。

 

「5番?貴女達は4姉妹でしょう?どういう事?」

「この子はは西暦2210年建造の準アンドロメダ級新こんごう型の1番艦にあたります、私の名を受け継ぐ最新鋭前衛武装宇宙艦です」

 

彼は金剛の説明の後また金剛の巫女服の裾を摑みながら彼女の影に隠れてしまった。

 

「提督、でも大本営の無茶な件はしなくて済みそうですね……長門が見たら卒倒しますね、彼女ああいうの好みですから」

 

耳元で妙高が囁いた、何やら最後に不穏なことを言っていたが、今は彼とお話をしてみましょう。

私は彼の目線までしゃがむと声を掛けた。

 

「こんにちは、こんごうちゃんっていうのね、私はこの鎮守府の司令で佐世 保子っていうの宜しくね」

「佐世 保子の鎮守府略して佐世保鎮守府……」

 

比叡が鎮守府の名称を説明した。

 

「僕は金剛型戦艦5番艦で新こんごう型1番艦のこんごうデース」

 

間違いなく金剛の血筋だとその場にいた全員が思わず納得した、その特徴的な語尾を聞いて。

 

「私に君の艦を見せてもらえる?」

 

私は努めて優しく彼に接した、顔の傷痕とかから恐れられない様に。

 

「うん…いいよ」

 

彼は金剛の陰から頷いた。

 

「こんごうちゃん、大丈夫……保子提督見た目は怖いけど凄く優しいから安心して」

 

金剛がフォローになってない様なフォローをしてくれた。

 

「それじゃちょっと行ってくるわね」

 

私は明石、夕張、赤城、加賀を呼び出すと新こんごう型の見学に向かう事にした。

 

「それじゃ先ずは武装から教えてくれるかなぁ」

 

私は彼の目線で話しかけた。

 

「武装は4連装拡散波動砲と48センチ三連装陽電子衝撃砲通称ショックカノンが2基6門、艦載機にコスモタイガーⅡを210機、ミサイルや魚雷発射管は多数…、ブースター側のドレッドノート改級補給母艦の方は30.5センチ三連装収束圧縮型衝撃波砲塔が2基6門」

 

私の隣で明石があれこれと同行した彼の乗組員妖精に質問しまくっていた。

実際私が聞いても殆ど理解出来ないから正直好きにさせた。

 

「保子提督、正直な処私も理解不能です」

 

夕張がそっと耳元で教えてくれた。

 

「マイクロブラックホールがどうとかホーキング輻射がどうとか…もうチンプンカンプンです」

 

夕張でもお手上げなようだった。

 

「あの…その…お茶を」

 

彼がもじもじしながらテーブルに紅茶を用意してくれた。

 

「あら、ありがとういい香り、流石金剛家ね」

 

其れは見事なお点前だった。

ふと壁に貼られた一枚の写真に目が行った。

 

「あれは?」

「僕の妹達と霧島母さん」

 

私の視線に気が付いた彼が小声で答えた。

 

「そう…」

 

予め彼の境遇は金剛から聞いていた為私は内心しまったと思った。

 

「それでは艦載機に付いて教えてくれるかしら」  

 

加賀が話の流れを変えようとしてくれた。

 

「正式名称1式空間戦闘攻撃機コスモタイガーⅡ…制空、対艦、対地攻撃に使える多用途戦闘攻撃機…エンジンは複合輻流式コスモエンジン2基、武装は機首に30mmパルスレーザー機関砲8門翼内に12.7mm機関銃10門…」

「私にも積めないかしら」

「飛行甲板を装甲化してカタパルトを付けないと無理…」

 

彼と加賀がコスモタイガーを積めないか話していた。

 

「保子提督、ぶっちゃけ鎮守府中の空母艦娘総出でも彼には勝てないでしょう」

 

赤城がいつになく真面目な表情で彼の航空戦力を分析していた。

 

「多用途戦闘攻撃機……今迄そんな考え方無かったです、確かに言われてみれば凄く合理的ですね」

 

赤城がしきりに頷いていた。



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過去へ……⑥

僕はこの鎮守府の提督である佐世 保子提督に艦内を案内していた、同行していた明石さんや夕張さんは頭から湯気が出ていた、恐らくは僕のシステムを理解できなかったのだろう。

 

「艦長、先程通信を傍受しました内容は『如何なる手段、如何なる犠牲……お前の汚え体を差し出しても我々が行くまでに不明艦を接収、従わない場合は撃沈せよ』です、ただこちらの鎮守府からの返答はまだ無いようです」

 

通信士妖精が僕にそっと耳打ちした。

目の前の加賀さんも顔色を真っ青にして提督に何か話していた。

 

「僕を強制接収しろって言ってきたの?」

 

僕の質問に佐世提督が静かに頷いた。

 

「仕方ないね、話し合いは此処まで、せっかくご先祖様に逢えたのに」

 

僕は此処まで言うと、副長妖精に戦闘指揮を出した。

 

「コスモタイガー隊を速やかに展開、全機対艦攻撃隊形!」

 

眼の前で佐世提督も真っ青になっていた。

 

「……艦全面に重力子スプレッド展開、然る後拡散波動砲発射準備に掛かれ!」

 

僕は矢継ぎ早に副長妖精に指示を出した。

 

「佐世です、何かおきたの?」

 

佐世提督の通信機がなった。

 

「鎮守府上空に新こんごう及び艦載機多数展開!総数は不明」

 

その場にいた、明石、夕張、加賀、赤城の表情が凍りついた。

 

「艦載機多数…」

 

僕は一応補足説明した。

 

「さっきも話したけど艦載機のコスモタイガーはドレッドノート級に各15機計30機、僕の180機を合わせると210機になるよ」

 

佐世提督が卒倒した、無理もないか。

 

「副長、これから近づく艦隊は我々にとって敵と同じと見て構わない、少なくとも女の人に身体を差し出してもっていう時点で許せない」

 

「艦長ならそう言うと思いましたので既に指示は出してます、私も同意見ですな、御婦人に身体を差し出してもっていうのは許せません痛い目にあって頂きましょう」

僕達のやり取りを見ていたら明石達は安堵の表情をしていた。

 

「佐世提督をこっちに」

 

僕はリクライニングさせた艦長席に佐世提督を寝かせた。

 

「艦長通信です」

 

通信士妖精が報告してきた。

 

「繋げ」

「俺は軍令部作戦課の灘巻だ、速やかにそのふざけた艦を引き渡せ、希望ならそこにいる佐世以下の艦娘共を好きにしても構わぬ」

 

僕はヤレヤレという顔をすると、

 

「灘巻さんでしたね、僕の希望は貴方のような人間に退場してもらうことだよ」

 

僕はそれとなく挑発した。

 

「俺の命令を聞けないなら貴様は敵とするぞ」

 

そう言うが早いか、長門の全主砲が僕に狙いを合わせていた。

だが長門だけだった、僚艦の陸奥や大和、武蔵に動きはなかった、勿論空母の翔鶴、瑞鶴も艦載機の一機も発艦させてこなかった。

まぁ無線の向こうで長門以外に罵声を浴びせていたのは聞こえていた。



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汝は冒険者か……①

ノーチラス号(艤装では無くアルペジオみたいな感じで船体も存在する)
正式名 - 第二世代型惑星間航行用亜光速宇宙船ヱルトリウム
動力主機関 - 常温対消滅エンジン
推進機関 - 水流ジェット推進
装甲材質 - スペースチタニウム、硬化テクタイトなど
全長 - 152m
水中排水量 - 12,000t
最大船速 - 108ノット
兵装
飛行爆雷 / 誘導弾
対雷撃防御システム(ホム・ガード)
そして!男の子ですね、見た目はビナシス(幼少時)誰も髭のおじさんやですよね……


「此処は…」

 

僕はケルマデック海溝近海の戦いで、ネオ・アトランティスの空中戦艦に搭載された原子振動砲及び超音波砲と殲滅爆弾により大破。グランディスさんの機転によってスーパーキャッチ光線の空中捕縛からの脱出には成功したけど……落下先の海中へ沈没。戦闘ブロックを爆破させて乗組員のみんなは居住区へ移って……そこで沈んだ筈だった。

 

「船長ご無事でしたか」

 

僕は声の方を振り向いた。

 

「副長…機関長……それに操舵長、航海長、技術部長、エーコーさん、それにイコリーナさんまで…」

 

僕の先には見慣れた艦内服を着た妖精さんたちが立っていた。

 

「船長、一緒に行こう…仲間じゃないか」

 

機関長が優しく僕に話しかけた。

 

「そうだね、有り難う……」

 

僕は副長であるエレクトラから帽子を受け取ると被り直した。

 

「機関長」

「対消滅機関問題無し」  

「技術部長」

「船内各部異常なし」

「……」

「船内総て出港位置」

 

改めて副長であるエレクトラが報告をした。

 

僕は船橋内を見渡すと、

 

「対消滅機関始動!」

 

主機関を始動させた。

 

「一旦南極点基地へ向かい資材の補給を行う」

「了解!」

 

操舵長が南極に舵を取った。

 

「しかし船長…驚きましたな、まさか生まれ変われるとは……」

 

機関長が自身の身体を見ながら呟いた。

 

「この世界でも僕達にやる事があるという事なんじゃないかな……」

 

「船長、飛行爆雷 /並びに誘導弾 及びホム・ガードの残弾ですが」

 

技術部長が点検から戻ると報告をしてきた。

 

「どうだった」

「はい、総て装填済みです」

 

その時だった。

 

「船長、ニ時方向海面に水上艦艇を認!数は六……何かと交戦中の模様」

 

エーコーが報告をしてきた。

 

「状況を」 

「通信が混乱しているようですが……どうやら日本の艦艇と…不明艦艇より爆雷攻撃!」

 

エーコーが現在までに判明しているで事を報告したきた。

 

「船長…どうするね」

 

機関長が僕の隣に来ると聞いてきた。

 

「こちらに爆雷を落としたという事は正体不明のそれは敵として認定で…奴らはガトランティスなのか?」

「ガトランティスとは違うようです」

 

僕は潜望鏡に映し出された黒くて禍々しいそれを見た。

 

「取り敢えず、僕達は日本の艦艇を救援する、通信を」

 

エレクトラが通信機を操作して日本の艦艇へ支援する事を伝えた。

 

「船長、向こうの艦長が話したいと」

 

エレクトラが通話を僕に切り替えた。

 

「船長です」 

「僕は最上、助けてくれるの……その姿見えないけど」

「僕は潜水艦なんでね」

「そう、助かるよ」

 

僕は向こうの旗艦の最上と話し終えると、支援行動を開始した。

 

「誘導弾発射深度へ浮上!」

「誘導弾 発射管開け、目標最上後方の敵性艦隊」

「測的よし、誘導弾発射!」

 

エレクトラが発射ボタンを押した。

 

 

 

 



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みかさ いざ出撃! ①

海上自衛隊に所属する架空の潜水艦娘(男の娘)のお話し。
主人公の艦はアメリカ海軍から海上自衛隊へ売却された改良型オハイオ級巡航ミサイル潜水艦(スペックは改良型オハイオに準ずるが核弾頭の搭載は無くトマホークVLSは日本独自開発の二段式(通常は7発だが日本仕様は14発搭載可能)のものを搭載)
みかさ(SSGN-726 オハイオ)
しきしま(SSGN-727 ミシガン)
あさひ(SSGN-728 フロリダ)
はつせ (SSGN-729 ジョージア)
敷島型の艦名を踏襲した海上自衛隊初の原子力潜水艦
具体的な改造は24基の弾道ミサイル発射筒のうち22基をトマホーク発射筒に改め、残りの2基を特戦隊のためのロックアウト・チェンバーに改造、トマホーク発射筒の一部も任務に応じてトマホークの代わりに小型潜水艇ASDSやドライデッキ・シェルターを搭載することも可能とされる。トマホークは発射管1基あたりにつき14発を装備、最大で計308発と大量のトマホークを搭載可能(発射管24基を総てトマホーク発射管とする事も可能、その場合は336発となる)。

旧敷島4艦娘全員健在で三笠のみ横須賀に艦体有り(記念艦ではあるが)。
尚、潜水艦隊旗艦として、じんげい(二代目)が建造配備されています。




「お兄様、私の艦どのようなものなのでしょうね」

 

僕の隣で紅茶を飲んでいたしきしまが聞いてきた。

 

「まぁ元は米海軍の改良型オハイオだから排水量は水上で16,764t、水中で18,750tになるらしいよ、全は170.67m、全幅 12.8m吃水 11.1m船体構造は単殻式で機関は原子力蒸気タービン推進60,000馬力GE社製S8G加圧水型原子炉を1基、蒸気タービンが2基で1軸推進、速力は水中20ノット水中24ノット以上、潜航深度については運用300m、最大500m位らしい…後は24基のミサイル発射管全てにトマホークミサイルを満載だってさ」

 

僕は事前に米海軍から渡された資料を見せた。

 

「お母様達は戦艦で私達の代で最新鋭とは言えませんが日本初の原子力潜水艦娘になるのですね」

 

しきしまが資料を見ながらしきりに頷いていた。

 

「みかさ君、もうじき真珠湾到着よ」

 

じんげいが艦橋から降りてきて僕達に声を掛けた。

 

「今行きます」

 

僕達はじんげいの艦橋へと向った。

 

「じんげい艦長並びにみかさ艦長、しきしま艦長、あさひ艦長、はつせ艦長入室されます!」

 

艦橋入り口に立つ警備兵が声を張り上げた。

 

「入港ヨーイ!」

 

折しも真珠湾への入港途中だった。

 

「戦艦アリゾナに対し敬礼!」

 

じんげいが艦内放送を入れた。

 

じんげいの甲板上に乗組員妖精さん達が整列し登舷礼を行っていた。

 

じんげいは米海軍指定の泊地へと向った。

 

「お兄様、あそこ!」

 

あさひが指差した先には旭日旗を掲げた4隻の大型潜水艦が係留されていた。

 

「皆も元気そうだね」

 

各潜水艦のセイルや船体上には先行して操艦訓練を米海軍より受けていた乗組員妖精達が鈴なりになっていた。

 

「しきしま、あさひ、はつせ……僕達の名前に恥じないよう…お母様の顔を汚すことの無いようにその職務を」

 

僕達は日本からお世話になったじんげいを退艦するとそれぞれの艦へと向った。

僕が舷側のタラップを上がりきって乗艦するとサイドパイプが吹かれ、

 

「艦長乗艦!」

 

と専任が声を張り上げた。

甲板上には乗組員妖精さん達が整列していた。

 

「艦長、お待ちしていました」

 

副長妖精が敬礼した、僕は答礼すると、

 

「では、諸君……横須賀へ」

 

僕はそれだけ言うと全員の顔を見た。 

乗組員妖精さん達が素早く敬礼すると各員の持ち場へと散っていった。

 

「艦長、行きますか」

 

僕は副長妖精と発令所へと向った。

 

「原子炉問題なし、タービン内圧力正常、総て問題なし」

 

僕が発令所に入ると直に報告を副長がしてきた。

 

「しきしま、あさひ、はつせからも出港用意よしとの事です」

 

通信士が報告をした。

 

「では、諸君……出港!」

 

僕の一声で4隻の潜水艦とじんげいが横須賀への帰途についた。

 

 

 

 




戦艦アリゾナについてですが日本の真珠湾攻撃で沈んだのでは無く日本海軍の艦艇に偽装した深海棲艦の攻撃により撃沈されました。
トライデントミサイルの全高が13.41メートル、トマホークは全長(ブースター含み):6.3mなので二段としても12.6mなのでいけそうな数値なので架空兵装として装備しました(二段目はVLSハッチオープン時に圧搾空気で上段との間の隔壁を排除してからの発射となる)


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みかさ いざ出撃! ②

僕達はじんげいを中心に太平洋を日本に向けて航海を続けていた。

 

「艦長、日付変更点を超えました、現在までに艦内に問題無し」

 

副長妖精が報告してきた。

艦内は慣熟航海の為か何処かのんびりしていた…そんな空気を破るような通信がじんげいからもたらされた。

 

「大型の低気圧が接近中、当艦を追尾しています!」

 

僕も副長もその通信の意味を理解できなかった。

 

「低気圧が追尾していますだって…どう云うこと?」

 

はつからも意味不明という内容の通信が入った。

 

僕達が海中で悩んでいたその時、じんげいは追尾する低気圧に飲み込まれていった。

 

 

ーーーー数時間後ーーーー

 

「こちらじんげい……皆無事?」

 

洋上のじんげいから安否確認の通信が入った。

 

「こちらみかさ、各艦に異常認めず、そっちは?」

 

僕はじんげいの被害について確認してみた。

 

「特に無しよ、何故か頭痛がするくらいかしら…それより一旦浮上してくれない、確認して欲しいことがあるの」

 

僕達はじんげいを中心に浮上した、そしてセイルトップに立つと唖然とした。

 

「何で……だって今は夜中の3時だよね…」

 

艦内の時計は午前3時を示していたのだが、洋上は何故か太陽が出ていた。

 

「艦長!通信を傍受、極めて微弱……嘘だろ、この符号は!」

 

僕は直ぐに通信士に確認させた。

 

「通信士、明確な報告を」

 

通信士の代わりにじんげいから報告が入った。

 

「どうやら無線の内容から私達は太平洋戦争真っ只中の1943年の太平洋上にはにタイムスリップしてしまったみたい、兎に角横須賀を目指しましょう」

 

僕達はじんげいを守るように輪形陣を取ると旭日旗を掲げ浮上航行で横須賀を目指した。

 

 

同時刻、横須賀鎮守府

 

「八丈島近海に旭日旗を掲げた潜水艦4隻並びに母艦と思しき水上艦艇を認、潜水艦は極めて大型なり」

 

哨戒中の大艇から報告を受けた横須賀鎮守府の提督は驚いていた、何故なら艦艇一覧に無い艦艇が旭日旗を掲げて航行しているのだから。

 

「国籍を確認……旭日旗を掲げてりゃ日本艦艇だよな普通は」

 

提督はやれやれと言う顔をしていたが、秘書艦だけは顔をしかめていた。

 

「提督、艦名も不明な潜水艦が何故味方と?」

「そりゃ旭日旗を「馬鹿ですか、偽装行為かもしれませんよね」」

 

提督は秘書艦を恨めしそうな目で見るとその臀部に手を当てた。

 

「きゃ」

「高雄のお尻……」

 

高雄と呼ばれた秘書艦が華麗な回し蹴りを提督に繰り出した。

 

「今日は黒……」

 

高雄が慌ててスカートの裾を抑えた。

 

「どぉもー青葉でーす」

 

一人の艦娘が執務室に入ってきた。

 

「提督……また高雄さんにセクハラしたんですか、懲りませんね……あっと此れが哨戒中の大艇から送られてきた写真です」

 

提督が青葉から写真を受け取ると高雄をそれを見た。

 

「なんて大きさだ、伊400潜よりも大きいぞこれは」

「でしょうね、真ん中の潜水艦母艦よりも大きいですし、しかし変わった形ですね、葉巻型の船体に潜舵が艦橋についてます、スクリューも一軸の様ですし」

 

高雄が全体の形状を見ながら言った。

 

「それよりも私はこの甲板上に並ぶハッチみたいな物が気になります」

 

青葉が甲板上に並ぶハッチ群を指し示した。

 

「確かに何かの格納塔なのか、それとも機雷敷設艦なのか…旭日旗を掲げている以上は友軍艦艇と仮定して接触を」

「了解です」

 

高雄と青葉が真面目な顔に戻ると直に行動を起こした。

 

「哨戒中の大艇ヘ下命、不明艦隊と接触を」

 

じんげい艦橋

 

「艦橋、こちらに近づく航空機探知、数ヒト!」

 

じんげいの艦橋はにわかに慌ただしくなった。

 

「対空戦闘ヨーイ」

「スタンダード並びに主砲、CIWS用意よし」

「みかさ以下の艦は直ちに潜航」

 

じんげいからの指示を受けた潜水艦隊はあっという間に潜航していった。

 

じんげいの艦橋内に緊張した時間が流れた。

 

「こちらは日本海軍…洋上の艦隊応答されたし」

 

不意に無線が入った。

 

「こちらは日本国海上自衛隊特殊潜水艦隊旗艦のじんげいです」

 

じんげいが無線に応じた。

直に大艇から返答が入った、

 

「友軍艦隊と認識して問題ないのか?」

「ええ、各潜水艦を再浮上させますね」

 

そう言うと、じんげいはみかさ達に浮上を指示した。

 

「では、改めて目的地をお教え願いたい」

 

大艇からの通信にじんげいは素直を答えた。

 

「私達は横須賀が母港です、できれば横須賀へ入港したいのだけど」

 

この時、報告を受け取っていた横須賀の提督はその扱いに苦慮していた。

 

 



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赤城の旅

タイトル変更となります。
ヴァリアブルファイターマスターシリーズの記載内容を元に随時変更がかかりますのでご了承ください。

プロメテウス級からARMD級に変更します、計10隻建造され(バターンとサラトガはオリジナル建造艦)、統合戦争とその後の異星人との戦闘によ赤城以外は01及び02、09、10のみが現存が確認されていて、艦娘もこれ以外はクレマンソーとエンタープライズしか助からなかったとしています。
一部の搭載機搭載艇をオリジナルとしています。

アームド級
ARMD-01  ハーラン・J・二―ヴン
ARMD-02 インヴィンシヴル 
ARMD-03 エンタープライズ
ARMD-04 クレマンソー
ARMD-05 赤城
ARMD-06 コンステレーション  
ARMD-07 ラングレー
ARMD-08 ミッドウェー
ARMD-09 バターン
ARMD-10 サラトガ

全長    約450m
全幅    約220m
全備重量  174,000t
噴射推進系 熱核反応エンジン2機
姿勢制御用スラスター多数
攻撃兵装  誘導収束ビーム砲
      小型対空火器
      対艦戦用反応弾ランチャー
搭載機   各種VF-1バルキリー260機以上
      無人戦闘機ゴースト多数
      LCAC 4隻


その日、マクロスと合流する為に僕赤城は姉妹艦のバターン、サラトガと共に月衛星軌道へと向かっていった。そして月まであと少しという所で、今までに遭遇したことの無い強烈な磁気嵐に遭遇した。

 

 

「此処は……被害の確認を!」

 

僕は眼の前に位置した妖精さんに指示を出した。

 

「了解です、艦長」

 

妖精さんが直に動いた。

 

「艦長、報告します」

 

少しの間を置き、妖精さんが戻ってきた。

 

「艦内異常なし、一部の乗組員妖精がコケてたんこぶ作ったくらいです」

 

僕がホッとしている所に、航海長妖精が駆け込んできた。

 

「艦長大変です現在位置なんですが……月面周回軌道迄あと2時間の位置を航行していた筈なのですが……………現在地は日本本土近海、小笠原諸島南東250kmの海域……………その大気圏内を航行しています」

 

僕は驚いた、何故なら本来は月の衛星軌道に乗るべく航行していたはずだったのだから。

 

「それと……艦長、時計を見てください」

 

僕は妖精さんに言われるままに腕時計を見た。

 

「なんだって!」

 

さっき昼を過ぎたばかりのはずが、まだ朝の9時を時計は指していた。

 

「それと周辺海域偵察の為、ゴーストの飛行許可を」

「ゴーストの使用を許可する」

 

僕の許可が出るが早いか、艦首のカタパルトにQF-2200Dゴースト無人機が2機セットされていた。

 

「エアボス、一応VF-1Gも出せるように準備を」

 

エアボス妖精さんが敬礼すると航空管制室に走っていった。

 

「どうなってるんだろう……」  

 

僕は首をかしげるしかなかった。

 

「ゴーストより画像来ます!」

 

航空管制官からゴーストの偵察映像が回されてきた。

 

「随分と旧式な…」

 

僕はその映像に驚きを隠せなかった。

 

「あれは何かからの退避行動中の様です、艦種は……軽空母、あとは、特型駆逐艦と軽巡…あれは旧世紀の艦艇だろそんな馬鹿な!」

 

妖精さん達も驚いていた。

 

「如何いたしますか艦長、支援行動を取りますか」

 

副長妖精が僕に許可を求めていた。

 

「スカル小隊を急行、その…何かを追い払え」

 

僕の指示を受けた妖精さんがアラートボタンを押した。

艦内にアラート警報が鳴り、対空戦闘用意の放送が流れた。

 

「艦長、全気密扉閉鎖完了」

 

「艦長、現場海域にはスカル小隊を向かわせます」

 

航空司令からの報告を受けると僕は頷いた。

僕の眼下の飛行甲板では垂直尾翼にドクロの絵が書かれたVF−1バルキリーが次々と発艦していった。

 

「スカル小隊発艦完了」

 

4機のバルキリーがゴーストに先導されて現場海域へと向かって飛び去った。

 

 

 

ーーーー同時刻?????ーーーー

 

「此処までですか」

 

私は何としても提督の待つ鎮守府ヘ帰りたかったのですが、深海棲艦はそれを許してくれませんでした。

 

「鳳翔さん、吹雪ちゃん大破!」

 

私が振り向くと深海棲艦の艦載機の攻撃を受けた吹雪ちゃんがボロボロになって何とか航行しているといった状況でした。

 

「私達は艦載機も無い、おまけに先程の戦闘で弾も無いと来てますから逃げるしか……」

 

私の頭の中を暗い考えが大半を占めたその時でした。

 

『ゴーーーーー』

 

頭上を聞いたことの無い轟音が凄い速さで通り過ぎて行きました。

 

 

ーーーー赤城ーーーー

 

「艦長、スカル小隊が敵性航空機と戦闘になった模様、敵性航空機多数、追加の航行隊の発艦を!」

「アポロ、バーミリオン、スカーレット各隊を……万が一もあるか……対空戦闘ヨーイ」

 

妖精さんが復唱すると慌ただしく各部署に指示を出し始めた。

 

「デルタ・ワンよりスカルリーダー、交戦を許可します、あと3分でアポロ、バーミリオン、スカーレット各隊が現場空域に到着します、当艦も現在急行中」

「スカルリーダーよりデルタ・ワン了解」

 

僕は航空管制官とスカルリーダーのやり取りを聞きながら、戦闘海域へと急行した。

 

「こちらは統合海軍所属 太平洋艦隊旗艦の赤城です、貴艦の所属を」

 

僕はゴーストが捕捉した艦隊に通信を送った。

 

「ザ…ザ…こちらは日本海軍……ザ…小笠原泊地所属艦隊……ザ…旗艦の鳳翔です」

 

ノイズが入っていたがなんとか通信を開くことが出来た。

 

「本艦隊は敵艦隊と交戦中……ザー……」

 

その後はノイズが酷くなり聞き取ることが出来なかった。

 

「艦長、日本海軍と言う事は友軍艦隊と認識して差し支えないのでは?」

 

副長が意見してきた。

 

「通信士、救援の必要ありか送れ」

 

僕の指示を受けた通信士が即座に取り掛かっていた。

 

「艦長、救援の必要有りと返答あり!」

 

僕は通信士からの報告を受けるとエアボスを呼び出した。

 

「エアボス、バルキリー各隊発艦初め!」

 

「バルキリー3個飛行隊を緊急発艦了解であります」

 

僕の指示を受けたエアボスからの命令が各飛行隊に下命された、そしてバルキリーが次々とエレベーターで格納庫から飛行甲板へと上げられ始めた。

 

「デストロイド隊をスタンバらせろ!」

 

僕の命令を聞いた一人の艦橋妖精がデストロイド隊に命令を伝達するや飛行甲板上を5機の人型兵器が艦橋後方の専用ステーションへと収まっていった。

 

「最大船速!」

「バルキリー隊発艦はじめっ!」

「各シャイアンは試射始めっ!」

「ファランクス01、02は1号リフト付近にて待機!」

 

艦橋内部では対空戦闘や対地対艦戦闘に備えての命令が飛び交っていた。

 

「艦長、戦闘準備完了」

 

副長が報告してきた。

 

「そろそろか」 

「スカルリーダーよりデルタ・ワン、敵性航空隊と遭遇これより戦闘体制に移行します」

 

敵性航空機は総てがレシプロ機だった為、最新鋭の可変戦闘機そして遠距離からのミサイル攻撃の前に3分と保たずに全滅した。

 

 

 

 



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ヤマト

ヤマトと大和のお話、二人の関係は250年の時を越えた親子としています。
ヤマト自体は2205のアンドロメダとの邂逅後とします、コスモタイガー出したいので……………。


「ここは……………一体」

 

僕は非常電源の灯りの中目を覚ました。

 

「技師長…無事?」

 

僕は艦橋右側に座る技師長妖精に声を掛けた。

 

「はい、艦長」

 

それから機関長、航海長、戦術長、船務長の各妖精が意識を取り戻し無事を報告してきた。

 

「各部損害並びに負傷者の状況を」

 

 

副長を兼務する技師長が各部署に損害の有無を確認した。

 

「艦長、乗組員に怪我人無し、艦内全機構異常無しです」

 

 

技師長妖精から報告を受けた。

 

「怪我人無しか…船務長、現在位置は?」

 

僕は船務長に現在位置の確認を指示した。

 

「おかしいです……………測位不能?」

 

船務長が首をしきりに傾げていた。

 

「どうかした?」

 

僕は船務長にどういうことか聞いた。

 

「はい艦長、測位衛星からの電波を受信できないのです、艦自体のレーダーは正常に機能しているのですが……………」

 

僕は船務長のコンソールを確認した。

 

「衛星自体が無いようだね……………あっ、戦闘衛星なら僕が砲撃して破壊したんだっけ……………」

 

衛星からの電波を受信できないのは僕が原因だった。

 

「艦長が強行突破なんかするから…全く」

 

技師長が呆れていた。

そんなやり取りをしていた時だった。

 

「艦長、レーダーに感!本艦に接近する洋上艦艇群を補足、距離フタセンゴヒャク!」

 

船務長がレーダーコンタクトを報告した。

 

「何処の所属かわかる?」

「国連宇宙艦隊にあらず、国籍不明、大型艦フタ、小型艦ヤー、速力フタジュウノット」

 

船務長が落ち着いた声で報告した。

 

「……………スクリュー?この音はタービン機関?洋上艦艇は極めて旧式と思われる」

 

僕は船務長からの報告に疑問を感じた。

 

「タービン機関だって?旧世紀の内燃機関じゃないか……………どういうことか?」

 

今まで黙っていた技師長がおもむろに口を挟んだ。

 

「艦長、確認の為探査プローブを射出してはどうでしょうか」

 

僕は技師長に頷いた。

 

「探査プローブ射出!」

 

技師長がコンソールを操作した。

 

「探査プローブからの映像きます!」

「メインスクリーンへ」

 

僕の指示よりも技師長がメインスクリーンへ映像を映した。

 

「なんじゃと、ありゃ先代の大和じゃ!」

 

機関長が頭を抱えた。

それもその筈だ、メインスクリーンに映し出されたのは僕の母さんの現役時代の艤装だったのだから。

 

「あれは……………かあさん?」

 

僕や乗組員妖精が見間違える筈もない艦影がそこにあった。

 

「という事は、残りの艦艇群は…矢矧さん、冬月さん、凉月さん、磯風さん、浜風さん、雪風さん、朝霜さん、霞さん、初雪さんなのか……………」

 

僕は母さんと最後を共にした矢矧さん達とそれを認識した。

 

「現在の時刻ヒトヒトマルマル……………艦長、史実通りに進むならヒトフタヒトマル朝霜に被害が出ます」

 

技師長が意見した。

 

「艦長!レーダーに感、航空機編隊近づく、機数約サンマルマル!米軍機にあらず、深海棲艦艦載機と認!」

 

僕は決断を迫られた。

 

「行こう!」

 

僕は決意した。

 

「艦内全機構異常無し、エネルギー正常」

 

技師長が艦内チェックを終えた。

 

「補助エンジン内圧力上昇、始動10秒前」

 

機関長が補助エンジン始動準備を始めた。

 

「補助エンジン動力接続」

 

航海長が補助エンジン始動を合図した。

 

「補助エンジン動力接続、スイッチオン……………補助エンジン低速回転1600、両舷バランス正常パーフェクト」

 

機関長が補助エンジンを始動させた。

 

「微速前進0.5」

 

航海長の声でヤマトは動き出した。

 

「微速前進0.5」

 

機関長が復唱した。

 

「波動エンジン内エネルギー注入」

 

機関長が波動エンジン始動の準備を始めた。

 

「補助エンジン第ニ戦速から第一宇宙ノット迄あと30秒」

 

航海長が速度を上げ始めた。

 

「波動エンジンシリンダーへの閉鎖弁オープン、波動エンジン始動五分前」

 

機関長が淡々と始動準備を進めた。

 

「波動エンジン内圧力上昇エネルギー充填90パーセント」

 

機関長が波動エンジンの状況を報告した。

 

「海面に出ると同時に波動エンジンに点火してジャンプ、高度をとってコスモタイガー隊を発艦させましょう」

 

技師長がアドバイスをくれた。

 

「補助エンジン最大戦速、上昇角40、海面迄あと二分」

 

航海長が舵を取った。

 

「波動エンジン内圧力上昇エネルギー充填100パーセント、波動エンジン点火二分前、フライホイール始動10秒前」

 

機関長が報告した。

 

「海面迄30秒、現在補助エンジンの出力最大」

 

航海長が報告した。

 

「波動エンジン内エネルギー充填120パーセント」

 

機関長が数値を読み上げた。

 

「フライホイール始動」

 

航海長がフライホイール始動を声にした。

 

「フライホイール始動」

 

機関長が復唱と共に操作スイッチを入れた。

 

「波動エンジン点火10秒前、5、4、3、2、1フライホイール接続点火!」

 

航海長が波動エンジンを始動させた。

 

「ヤマト発進!」

 

僕がそう告げると、航海長スロットルを押し込んだ。

 

ーーーーーーーーーー同時刻海面上、大和艦橋にてーー

 

「艦長、同航の駆逐艦『雪風』より入電……………極めて大型の潜水艦らしき物体を音探にて探知、浮上中との事です」

 

私は直ぐに確認をさせた。

 

「近海で友軍の潜水艦は活動中?」

「いえ、そのような報告はありません」

 

副長が直ぐに回答をした。

 

「報告、対空電探に感!航空機の大編隊近づく、機数計測不可」

「対空戦闘ヨーイ」

 

艦橋にいた砲雷長が直ぐに下命した。

 

「かっ艦長!」

 

右舷の見張り妖精が声を上げた。

 

「何事か」

 

副長が右舷見張所へと向かった。

 

「何だありゃ!そんな事が!海中から戦艦が浮上だと……………」

 

副長の驚きの声に私も見張所を見た。

そこには今まさに海面から飛び立とうとする戦艦らしき大型艦がそこにいたのだった。

 

「艦長、艦尾に艦名らしき表記を認……………嘘だろ」

 

見張り妖精が驚き声を失っていた。

 

「報告はどうした!」

 

副長が怒鳴った。

 

「BBY-01やまとだと!」

 

副長もその艦の艦名を見て言葉を失っていた。

 

「艦長、通信を受信……………」

「読んで」

「こちらは国連宇宙海軍所属 BBY−01ヤマト、貴艦隊の所属と艦名を」

「こちらは大日本帝国海軍所属、第一遊撃隊旗艦『大和』以下『矢矧』『冬月』『涼月』『磯風』『浜風』『雪風』『朝霜』『霞』『初雪』です」

 

こちらが名乗ったその直後、私は相手の声を聞いて驚くしかなかった。

 

「母さん……………」

 

確かに無線の向こうでそう聞こえたのだった。

 

「はて、艦長いつの間にご結婚されてお子さん迄こさえたので…」

 

副長が何やら失礼なことを言いかけたので黙らせた、右ストレートをお見舞いして。

 

「私はまだ独身です!子供なんて居ません!」

 

見張り所から双眼鏡で監視していた見張り員妖精が新たな報告をしてきた。

 

「艦載機多数発艦中!凄い、戦艦なのにお艦並の艦載機搭載数だぞ」

 

見張り員妖精が鳳翔さんの搭載機数と比べていた。

 

「艦長、先方よりこれより接近する深海棲艦艦載機撃滅に向かうとのことです」

「接近するのは米軍機じゃないの??」

 

私は相手は米海軍とばかり思っていた。

 

「深海魚の悪知恵のようですな」

 

副長がある意味納得していた。

 

「ヤマトより入電、深海棲艦撃滅後に合って話がしたいとのこと」

 

私は黙って頷いた。

 

「返信了承した」

 

通信兵が相手へ返信していた。

 

「あの船体からするに我々の造船技術では造れませんな、推測ですがかなり未来から来たと見るべきだと、そうなると祖……………」

 

副長がまたとてつもなく失礼なことを口に仕掛けたので今度は左ストレートをお見舞いした。

 

続く……………のか?

 

 

 

 



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甦れ!ヤマト①復活篇

「此処は何処だ………何も見えないが………」

 

俺は気が付くと暗闇の中にいた。

………………………どれ位時間が経ったのだろうか、眼の前に一筋の光が徐々に拡がっていった。

 

「えっと………何これ………艦娘?どう見ても男なんだけど?」

 

俺の眼の前に立つミートボールみたいな体型の白い軍服を着たオバハンが文句を垂れていた。

 

「提督、私に言われても…」

 

側に立つ褐色の肌で胸にはサラシしか巻いてない露出狂としか思えない大柄な女が返していた。

 

「俺はヤマト」

 

俺は一応名乗った『ヤマト』と

 

「大和だと!」

 

褐色肌のゴリラが詰め寄ってきた、

 

「あの赤錆びで朽ちたスクラップがかっ!」

 

ゴリラは俺に掴みかかるような勢いで問い詰めてきた。

 

執務室は一種即発状態となった。

 

「提督!緊急事態発生、当鎮守府沖360kmに深海棲艦の大艦隊が接近中!」

「なんですって!数は?」

 

提督が慌てるように大淀に聞き返していた。

 

「戦艦25、空母6、巡洋艦18、駆逐艦多数!」

 

大淀からのそれを聞いた提督は顔面蒼白となりながら、

 

「今から言う娘は、直ちに出港用意………呼ばれなかった者は鎮守府に残留して防衛に当たれ」

 

提督は一呼吸おくと、

 

「武蔵、長門、陸奥、金剛、比叡、榛名、霧島、伊勢、日向、赤城、加賀、飛龍、蒼龍、翔鶴、瑞鶴、隼鷹、飛鷹、妙高、那智、足柄、羽黒、鳥海、摩耶、最上、三隈、鈴谷、熊野、阿賀野、矢矧、能代、酒匂、白露、村雨、時雨、夕立、陽炎、不知火、黒潮、雪風、秋雲、夕雲、浜風、秋月、冬月、涼月…以上の者は直ちに出港準備!」

 

提督が出撃メンバーと覚しき名を挙げると、妙高が反論した。

 

「提督!何を考えていらっしゃるのですか、残された娘達は皆損傷艦娘ばかりではないですか………まさか!」

 

妙高が何かに気がついたようだった。

 

「あら、言わなきゃ解らないかしら、損傷艦娘なんてなんの役にも経たないんだから、足留め位はしてよ…それとさ、大和だっけお前も残留ね、そんな赤錆びたスクラップ戦艦なんて要らないから」

「提督、私達は残ります、貴女の命令は聞けません」

 

妙高は、はっきりと命令拒否を口にした。

 

「まぁ、好きにすれば…どうせ蹂躙されて全滅しか未来は無いんだからね」

 

提督は言いたいことだけを言うと、執務室から出ていってしまった、脱出組の艦娘達と。

 

「妙高さん、この鎮守府に明石は居ますか?」

 

俺は明石がいるか聞いてみた。

 

「ええ、居るわよ」

「案内頼めますか?」

「構わないけど………」

 

俺は妙高さんに明石の所への案内をお願いした。

 

「明石いるの?」

 

妙高さんが工廠の扉を開くと声を掛けた。

 

「こっち〜」

 

工廠の奥から声が聞こえた。

 

「明石さん、深海棲艦の大艦隊が迫っているのは知ってますね?」

「聞いてるわよ、それが?」

「ドッグと工廠で使う以外の全電力を俺にまわして欲しい、そうすれば主機が起動できる」

 

明石は俺の赤錆びて朽ちた艤装を見ると胡散臭そうに溜息をついた。

 

「電力を回したからって………そんなに赤錆びて朽ちた艤装が使えるようになるわけないでしょ!」

 

明石は俺の提案に苛ついたような声で返してきた。

 

「時間が無いんだろ!」

 

明石は俺の声に驚いて慌てながら電力ケーブルを引っ張ってきた、

 

「これでいいの………」

「ああっ」

 

俺は艤装の給電口にコネクターを接続した。

 

「動力接続…エネルギー充填開始!」

 

俺は主機起動の為の電力を蓄え始めた。

 

「敵艦隊到着迄…あと365分!」

 

大淀が顔面蒼白になりながら工廠に駆け込んできた。

 

「全機構異常無し、エネルギー正常に充填中」

 

俺は補助エンジン始動手順を始めた、

 

「補助エンジン内圧力上昇、始動10秒前……補助エンジン動力接続スイッチオン……………補助エンジン始動確認、補助エンジン低速回転1600、両舷バランス正常パーフェクト」

 

俺は補助エンジン始動を確認すると、主機への動力接続準備を開始した。 

 

俺は淡々と主機始動の準備を続けた。

 

「波動エンジン内エネルギー注入、シリンダーへの閉鎖弁オープン、波動エンジン始動五分前」

 

俺は鎮守府の電力を主機へと充填していった、

 

「波動エンジン内圧力上昇エネルギー充填90パーセント…波動エンジン内圧力上昇エネルギー充填100パーセント、波動エンジン点火二分前、フライホイール始動10秒前…現在補助エンジンの出力最大」

 

「敵艦隊鎮守府到着迄あと180分!」

 

大淀が金切り声を上げていた。 

 

「波動エンジン内エネルギー充填120パーセント」

 

俺はそれに動じること無く、主機始動に向けてのプロセスを実行していた。

 

「フライホイール始動…波動エンジン点火10秒前、5、4、3、2、1フライホイール接続点火!波動エンジン始動確認!」

 

俺は一呼吸置くと、

 

「偽装解除、抜錨ヤマト発進!」

 

俺の声に反応して、赤錆びて朽ちたそれは崩れ落ちていった、そしてそこに現れたのは…真新しい装甲に覆われた一隻の大型戦艦が姿を現した。

 

「主砲追尾装置連動よし、主機からのエネルギー供給終わる、主砲発射準備よし」

 

妖精さんからの報告を聞くと、

 

「全主砲、うちー方始め!」

 

ショックカノンが接近する深海棲艦の艦隊前衛部隊を壊滅させた、そして俺は大淀達に向き直ると、

 

「俺の名は、国連宇宙海軍所属 恒星間航行用超弩級宇宙戦艦『ヤマト』、貴此れより敵艦隊撃滅の為出撃する!」

 

そう告げ俺は強力な波動エンジンの力で空高く上昇すると、鎮守府に迫る深海棲艦の艦隊を撃滅すべく出撃した。

 

 



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甦れ!ヤマト②復活篇

今回は複数の艦娘視点で進みます。


ーーー明石視点ーーー

 

「電力って言うけど………電力を供給してもそんなボロボロの艤装をどうするつもりなのよ!」

 

私はその青年(どう見ても十代半ば位)の言う言葉を理解できなかった。

 

「時間が無いんだろ!」

 

彼は私を急かした。

 

「これでいいの………」

 

私は言われるままに給電用のコネクターケーブルを彼の艤装に接続した。

 

「動力接続…エネルギー充填開始!」

 

彼がそう言うと、艤装に電力が流れ始めた。

 

「嘘でしょ………」

 

彼の艤装からの重い何かの回転音が聞こえだした。

 

「補助エンジン始動」

 

彼がそう言うと、脚にある推進機が振動していた。

 

「波動エンジン始動確認!」

 

私は耳を疑った、何故なら聞いたこともない機関名だったのだ。

 

「波動エンジン?何よそれ………艦本式ロ号缶じゃないの?」

 

私の頭の中で??が飛び交っていると、

 

「偽装解除、抜錨ヤマト発進!」

 

更に驚くべき言葉を発した。

 

「艤装?偽装?大和?どういう事?」

 

私は…いえ、その場に居合わせた総ての艦娘が混乱した、赤錆びて朽ちた外板が崩れ落ちるとその下から大和とはかけ離れた大きさである真新しい艤装が姿を現した、それは各武装かみても大和を超える超大和とでも言うような形状だったのだから。

 

そして彼は3基ある主砲を沖合に向けると、発砲した。

 

「えっ?光が?ビーム兵器なのっ!」

 

私は愕然とした、その大和の主砲は私達のような実弾兵装ではなく光学兵装だったのだから…更に驚く事に、煙突と思われた場所から垂直に噴式兵器を発砲したのだった。

 

「まさか………大和は大和でも………ヤマトの方なの!だとしたら、提督は人類最強の艦娘を敵にしたことになるのね………」

 

私は鎮守府に迫る深海棲艦の艦隊を撃滅に向かう彼を見送った。

 

ーーー妙高視点ーーー

 

「提督!緊急事態発生、当鎮守府沖360kmに深海棲艦の大艦隊が接近中!」

 

大淀が近隣の鎮守府からの敵艦隊接近の報告を提督に伝えた。

 

「なんですって!数は?」

 

提督が慌てるように私に聞き返してきた、

 

「戦艦25、空母6、巡洋艦18、駆逐艦多数!」

 

鎮守府から発進した索敵機の報告で敵の編成も明らかとなってきた。

 

「なんて数なのよ………」

 

提督は顔面蒼白隣りながらも、

 

「今から言う娘は、直ちに出港用意………呼ばれなかった者は鎮守府に残留して防衛に当たれ」

 

提督は一呼吸おくと、

 

「武蔵、長門、陸奥、金剛、比叡、榛名、霧島、伊勢、日向、赤城、加賀、飛龍、蒼龍、翔鶴、瑞鶴、隼鷹、飛鷹、妙高、那智、足柄、羽黒、鳥海、摩耶、最上、三隈、鈴谷、熊野、阿賀野、矢矧、能代、酒匂、白露、村雨、時雨、夕立、陽炎、不知火、黒潮、雪風、秋雲、夕雲、浜風、秋月、冬月、涼月…以上の者は直ちに出港準備!」

 

と意味不明の指示を出した、そして………

 

「提督!何を考えていらっしゃるのですか、残された娘達は皆損傷艦娘ばかりではないですか………まさか!」

 

私は提督に意見していた。

 

「あら、言わなきゃ解らないかしら、損傷艦娘なんてなんの役にも経たないんだから、足留め位はしてよ…それとさ、大和だっけお前も残留ね、そんな赤錆びたスクラップ戦艦なんて要らないから」

 

私は提督の言葉に耳を疑った、そして………。

 

「提督、私達は残ります、貴女の命令は聞けません」

 

はっきりと命令拒否の意思表示をした、

 

「大淀、鎮守府に残された娘は?」

 

提督が脱出組を連れて出ていくと、私は大淀に聞いた、

 

「戦艦は『扶桑』『山城』『大和』の3人、空母は『千歳』『千代田』『祥鳳』『瑞鳳』『鳳翔』の5人、巡洋艦は『青葉』『衣笠』『高雄』『愛宕』『天龍』『龍田』『川内』『神通』『北上』『夕張』『大淀』の11人、駆逐艦は『吹雪』『白雪』『初雪』『深雪』『浦波』『磯波』『綾波』『敷波』『暁』『響』『雷』『電』の12名と『明石』『間宮』『伊良湖』の合計34名よ」

 

大淀から残留を言い渡された艦娘の名簿と損傷放置されている現状を聞いた。

 

「そう……損傷した娘達は放置されたままなのね………私の一存では高速修復材は使えないし」

 

私はどうしたものかと悩んでいた、丁度そんな時だった。

 

「えっ何?」

 

私の居る部屋の照明が消えた、私は窓から周りの建物を確認した。

 

「工廠と司令部以外は停電?」

 

私は直ぐに大淀に確認した、

 

「大淀何が起きたの?」

 

そして暫く経ってから来た大淀からの答えは私の理解を超えていた。

 

「人類最強の艦娘が目を覚ましました」

 

私は大淀の答えを理解できなかった。

 

「大淀何を………」

 

そして私は窓から、空中に浮かんでいる一人の艦娘(?)を目撃した。

 

「な………何よアレ」

 

 



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天龍と龍田と時雨と………①

古蛇………あだ名はスネーク(提督仲間からは)、因みに伊達でアイパッチをしてますが髭は無いです、容姿はどちらかというと龍が如くの真島吾朗に近いかもです。
天龍達は、勤務中は提督と呼びますがオフの時は名前(優弥)で呼んでます。
※注意!
このお話しには、戦闘シーンは一切出てきません。


「古蛇 優弥海軍大佐、超僻地鎮守府ヘ着任を命ず」

「古蛇 優弥海軍大佐、超僻地鎮守府ヘの異動辞令拝命いたします」

 

俺古蛇は上官から左遷とも取れる辞令を受け取った。

 

「尚、特例として秘書艦3名の同行を認める、貴官が指名せよ、まぁ聞くまでもないか………」

 

成程、秘書艦3名の指名権で納得でもさせようということか…。

 

「それならば、天龍姉妹と時雨を指名します」

 

俺はこの大本営に配属してからの相棒の名前を出した。

 

「判った、手配しよう…しかし、お前はあの3人と何時も一緒だな」

 

上官がため息混じりに聞いてきた。

 

「何故か馬が合う…だからですかね」

 

俺はすこし考えると呟いた。

 

「馬ねぇ………まぁそういう事にしておくか」

 

上官は3枚の書類に署名捺印すると俺に寄越した、

 

「天龍以下の辞令だ」

「天龍以下3人の辞令確かに、それでは失礼します」

 

俺は3人の辞令を受け取ると上官の執務室から出ようとした

 

「古蛇、向こうで無茶するなよ………大人しくしてろ」

「そりゃぁ、俺は大人しくしているつもりですけど、周りがさせてくれないんでね」

 

俺は上官の言葉に冗談混じりに応えると、自分の執務室へと戻った。

 

「龍田、天龍と時雨を呼んできてくれ」

「は~い」

 

龍田が何時もの甘ったるい声で返事をすると天龍達を呼びに行った。

俺はそれまでの間に超僻地鎮守府について調べてみることにした。

 

「マジかよ、かろうじて本土ではあるけどよそれでも人家もないような場所とはな………俺何かやらかしたか?」

 

「天龍ちゃんと時雨連れてきたわよ~」

 

等と考えていると、龍田が二人を連れて戻ってきた。

 

「おぅ、なんか用か」

 

天龍が何時もの口調で聞いてきた。

 

「異動だ、俺たち4人でな」

 

俺は辞令を其々に手渡した。

 

「僕達は何処に行くのかな?」

 

時雨が首を軽く傾げながら聞いてきた(ヤバイカワイスギダロ)。

 

「任地は此処だ」

 

俺はタブレットに地図を表示すると鎮守府の場所を指し示した。

 

「………嘘だろ、テメェなんか上に嫌われる事やっただろう!」

 

天龍が文句をたれていた。

 

「何もして………無いと思うが」

 

俺は考えながら応えた。

 

「君は………ホント無自覚なんだよね」

 

時雨が呆れていた。

 

「でも此処って………鎮守府って言うけど、どう見てもそれ以下の様な気がするのよねぇ~」

 

龍田それ以上言うな、頼むから。

 

「まぁ良くて警備基地か泊地位か」

 

俺達はその日の夜、首都での最後の夜を街に繰り出して味わった。

 

「優弥………食べすぎた、もう無理」

 

時雨がお腹をさすりながら歩いていた、とても女の子がする様な仕草ではなかった。

 

「あそこの中華すげぇ美味えからついついな………」

 

天龍は笑いながら同じ様にお腹を手をさすっていた。

 

「二人共ぉ、ちょっとはしたないわよ~」

 

龍田だけは普通にしていた………タブン。

 

「明日夕方からフェリーで異動だ」

「荷物は宅配で発送終えたよ、それとフェリーのチケットも、四人部屋で取ったよ」

 

時雨が応えた。

 

「予定では僕達の到着後に配送されるように手配したから大丈夫」

 

時雨が抜かりなく手配していた。

 

「俺と優弥のバイクは牽引トレーラーに積み込み終えてるぜ、時雨のはトランクに固定済みだ、後はトレーラーを優弥の車に繋ぐだけぜ」

「おう、なら帰ったら直ぐに繋いどくよ」

「身の回りの必要品は優弥の車に積み込んだわよ~」

 

龍田が各自の着替えや身の回り品を俺の車に積みを終わらせていた。

 

「なら後は、各自忘れ物は無いか最終確認しとけよ」

「は~い」

「おう!」

「うん」

 

俺達は寮に戻ると其々に部屋へと戻った。

 

「今日のうちにガス入れとくか」

 

俺は愛車のハンヴィーに燃料を入れるべくガソリンスタンドへと向かった。

スタンドに着くと荷台のモトコンポを降ろし、

 

「バイクと併せて満タンで、あとタイヤの空気圧みといてくれ」

 

俺は店員にそう云うと終わるまで事務所でコーヒーを飲むことにした。

 

「お客様、バイクのバッテリーが弱ってますので交換の必要が」

 

店員が事務所でコーヒーを啜っていた俺を呼びに来た。

 

「ホントか」

「はい」

 

俺はバッテリーを確認すると、

 

「交換してくれ、それとついでにエンジンオイルとフイルターも交換で頼む」

「畏まりました」

 

店員は直ぐに交換作業に入った。

それから2時間後………

 

「おまたせ致しました、お車とバイクの作業終了致しました」

 

店員が俺に作業終了を告げた。

 

「こんな時間に助かるよ」

 

俺は料金を払うと寮へと戻った。

 

「さてと、バイクトレーラーを結合して」

 

俺はハンヴィーにトレーラーを繋ぐと各灯火類の点灯確認をした。

 

「灯火は問題無なしと、バイクの固定はと………問題無し」

 

俺は確認を終えると自室へ戻った。




天龍のバイク…GSX1100Sカタナ
古蛇のバイク…カワサキKLX250と
時雨のバイク…ホンダモトコンポ
龍田は天龍の後ろに乗るか、優弥のバイクを借りて乗っている。
優弥の車ですがレンジローバーからハンヴィーに変更しました(大本営明石の魔改造でエアコンとリモコン付き集中ドアロック、パワーウィンドウが取り付けられてます)


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天龍と龍田と時雨と………②

4人の私服
天龍…アイパッチはしておらず、カーゴパンツにTシャツ
龍田…ベージュのサマードレス
時雨…一番と描かれたTシャツとキュロットパンツ
優弥…エイリアンのイラストTシャツとカーゴパンツ
※注意!
このお話しに戦闘シーンは一切出てきません。


月曜日の17時

 

「ちょっと早いが着いたぞ~」

 

俺達は有明のフェリーターミナルに到着した。

 

「ねぇ、優弥………あの船に乗るのかい」

 

時雨が港に停泊している大型のフェリーを指さした。

 

「びざん………ああそうだ」

 

俺は船名を確認すると答えた。

 

「なぁ優弥、弁当買う必要あんのかよ、中で食えねえの?」

 

天龍は船内のレストランを使いたかったようだ。

 

「天龍…残念だけどな、レストランは無い………自販機しかない、だから行きがけのスーパーで買い込んだんだよ」

「それにねぇ~天龍ちゃん、飲み物中で買うとね割高になってるのよ~ビールなんか特にね」

 

龍田が予めネットで調べた飲食物の料金表を見せた。

 

「マジかよ、何なんだよツマミ600円とかよ………優弥の言う通りだな………」

 

俺達は其々に好みのツマミやビール等の飲み物(時雨はソフトドリンク)と弁当を5食分買い込んでいた。

 

「さっさと乗船手続き済ませちまおぅ」

 

俺達は手続きを済ますと、待機スペースへと車を移動させて車内で待機した。

 

「あと少しだね」

 

時雨達は初めてフェリーに乗る為なのか、目を輝かせていた。

 

「まぁ時化にでも遭わなきゃ快適だよな」

 

俺は過去に台風の中で九州から四国に向かうフェリーに乗船したことを思い出していた。

 

「あれは………地獄だったなぁ」

 

俺の呟きは龍田には聞こえていたらしく、

 

「大丈夫よ~天気予報は今日から3日間は快晴で風も無いみたいよ~」

 

俺は内心ホッとしていた。

 

「それではお車の乗船を開始します」

 

出港1時間前となり誘導員が車の誘導を開始した。

 

「おっ乗船開始か、乗船チケット出しとけよ」

「おぅ」

「は~い」

「うん」

 

俺達は駐車場誘導員に乗船券を渡し、船内へと車を進めた(バイクトレーラーを牽引しているせいで料金は………割増)。 

そして車を指定位置に止めると、俺達は部屋へと向かった。

 

「俺達の部屋はと………おっと、此処だ」

 

その部屋は四人部屋だった。

部屋に入るや否や天龍が、 

 

「俺、此処な」

 

二段ベッドの上段を指した。

 

「なら私は〜天龍ちゃんの下ね~」

 

龍田はぶれるとこなく下段のベッドに腰掛けた。

 

「時雨はどこにする?」

 

俺は一応時雨の希望を聞いてたみた。

 

「僕も上がいいかな」

 

時雨が遠慮がちに上段を指した。

 

「なら俺は下な」

 

ベットを起すと其々の荷物を置いた。

 

「出港前に飯済ませちまおぅ…揺れたら飯どころじゃないからな…」

 

俺の意見に三人は頷くと、電子レンジのある自販機コーナーへと向かった。

 

「ねぇ優弥………此処で食べない?」

 

時雨が窓際の席を指さした。

 

「其れもありか…天龍、部屋からビール持ってこいよ」

「おぅ、あとツマミはどうする」

「ツマミはあれ買ってみるから、ビールと時雨のだけでいいぞ」

 

俺は自販機の焼き鳥をみた。

天龍が時雨にリクエストを聞くと部屋へと戻っていった。

 

「そうね~気になるわよね~」

 

そう言いながら、龍田が買いに行った。

 

「それじゃあ僕と優弥は席を確保しとくね」

 

俺は時雨に手を引かれながら窓際の四人がけ席へと向かった。 

 

「時雨ちゃん〜ちょっと手伝ってもらえるかしら~」  

 

自販機コーナーから龍田の声が聞こえた。

 

「僕、龍田手伝ってくるね」

 

時雨が龍田の元へと走った。

 

「おまたせ〜」

 

龍田と時雨が焼き鳥や唐揚げ、フライドポテト、お好み焼きをもって戻ってきた。

 

「結構買ったな」

 

龍田と時雨がテーブルに買ってきたツマミを並べていると、

 

「わりぃ、遅くなっちまった」

 

天龍がビールとソフトドリンクをもって戻ってきた。

 

「あら、これだけ〜」

 

龍田は少ないと言わんばかりな口調だ。

 

「本格的に呑むなら部屋でだ、ツマミ少しは残せよ」

 

まぁ言うだけ無駄かも知れないが………。

 

「優弥、コロッケ一口ちょうだい」

 

言うが早いか、時雨が俺の弁当のおかずであったコロッケを半分近く持っていった。

 

「おっおい、それで一口かよ」

 

お返しにこれあげる

 

「焼売いいのかよ、お前の好物だろ」

「優弥、ハンバーグとマカロニサラダ交換な」

 

天龍も有無を言わさず持っていった、まぁハンバーグとの交換なら良しだ(天龍はマカロニが好物)。

 

「二人共………それじゃあねぇ〜私は春巻きあげるから天龍ちゃん〜人参もらうわねぇ~」

 

弁当のおかずをシェアしながら俺達は食事を楽しんだ。

 

 

 

 

 




モデルとなっているフェリーはオーシャン東九フェリーの四人部屋です………有明ー新門司港航路で約36時間(途中徳島に寄港します)で結ぶカーフェリーです。


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天龍と龍田と時雨と………③

「甲板に出てみようぜ」

 

天龍が龍田と甲板に散策に向かった。

 

「時雨はどうする?」

 

俺は時雨に聞いてみた、

 

「そうだね、後から行って見る」

 

時雨は弁当の空き容器や空き缶をゴミ箱へと捨てに行った。

 

「そんじゃ俺も一旦部屋に戻るか」

 

俺と時雨は部屋へ戻った。

 

「僕、フェリー初めてだから………ちょっと楽しみかな」

 

時雨が部屋に戻る道すがらにある設備とかを興味津々で観ていた。

 

「お客様…お客様、お連れの女性が!」

 

俺達は船員に呼び止められた。

 

「何かあったのか!」

 

俺は船員に確認した、

 

「素行のよろしくないお客様に絡まれて………」

「わかりました、直ぐに行きます、場所は?」

「船首側のプロムナードデッキです」

 

俺は船員に場所を聞くと一旦、部屋へと戻り必要な物を取るとプロムナードデッキへと向かった。

 

「ちっとは愉しませろよ、姉ちゃんよぅ」

 

俺と時雨がプロムナードデッキに着くと大声で騒ぐ声が聞こえてきた。

 

「やめろって」

 

流石の天龍も苛立ちながらも、龍田を庇っていた。

 

「何なら二人共でもいいぜ、俺達も愉しませろよなぁ、でけえ乳揉ませろよ」

 

俺は懐の拳銃を抜くと、男の背後に忍び寄った。

 

「いい加減にしろよ、それ以上口開いたら………次は解るな」

 

俺は銃口をそいつの頭に突き付けた。

 

「おもちゃの銃なんざ怖くねぇよ、バーカ」

 

俺は一旦頭から銃口を外すと、頭上に向けて引き金を引いた。

 

「これで解ったか、おもちゃじゃねえよ」

 

男達は俺の手にある拳銃を見ると、その場に震えながらへたり込むと、時雨の方を向いた、その手にも小型拳銃が握られていたのを彼らは見てしまっていた、そして彼等はその場に水溜りを人数分造っていた。

 

「こいつを外から施錠出来る部屋に拘束しておいてくれ」

 

俺は軍籍手帳を船員に提示すると、男達の指を結束バンドで縛った。

まぁ、覚えておけだのお礼参りだのテンプレ的な捨て台詞を吐きながらだが、

 

「優弥やりすぎ」

 

時雨が呆れていた。

 

「ああ、あれは空砲、てかお前もだろう」

 

流石に実弾は装填してなかったのだ、俺でもな。

俺達はその場に居合わせた他の船客に詫びると部屋へと戻った。

 

「最初はよ、ナンパかと思ったんだけどよ………あいつら下心丸出しにしてきて、龍田の事………」

 

俺は天龍抱き寄せると頭を軽く撫でた。

 

「天龍、よく我慢した」 

………龍田から何やら黒いオーラが出ていたようだが見なかった事にしよう、それが一番だ。

 

「天龍ちゃんを虐めた…許さないから〜」

 

うん龍田激怒だな、あいつら外鍵付きの部屋に拘束しておいて正解だよ、部屋の位置は教えないでおこう。

 

そうして乗船後初めての夜は過ぎていった。

 

「しっかし、天龍の寝言は………」

 

俺は天龍の寝言で目が醒めた。

 

「優弥も、ごめんなさいね〜」

 

龍田も起きてきた。

 

「呑むか?」

「ちょうだい」

 

俺は備え付けの冷蔵庫からビールを取り出すと龍田に渡した。

 

「まさか、天龍がこれとはな」 

 

俺と龍田は笑った。

 

「時雨ちゃんは起きないわねぇ〜」

 

龍田の言うとおりだ、この寝言の中で時雨だけはポイヌのぬいぐるみを抱きしめながら熟睡していた。

 

「夕立のぬいぐるみ………ってか抱きまくらか」

 

俺は、はだけていたタオルケットを時雨にかけ直した。

 

 

 

 

 




携行銃器
優弥…デザートイーグル(357マグナム)
天龍…FN ファイブセブン(5.7x28mm弾)
龍田…ワルサーPPK(25ACP弾)
時雨…ワルサーPPK(25ACP弾)
基本的には一発目は空砲(威嚇用)が装填されている設定となってきます(龍田と時雨はあくまでも護身用なので小口径弾となってます)。

皆さんの気になる優弥以外の………
天龍…白のTシャツとトランクス
龍田…天龍と同じ(普段は…鼻血ものなスケスケなお召し物)
時雨…Tシャツとハーフパンツ


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とある鎮守府

「提督!お早く退避を!」

 

執務室警備の兵士が声を荒げた。

 

「一体何が起きたと言うのだっ!」

 

窓の外からは艦娘やそれに同調した兵士達の声が響いていた、

 

「提督を引き釣りだせ!」

「提督を鎮守府から叩き出せっ!」

 

中には殺せや吊るせ等といった過激な声も上がり始めていた。

 

「提督もはや此処まですお早く脱出を、このままではお命も…」

 

側近の従卒が生命の危機もあり得ると口にした。

 

「そ…そうだな、判った」

 

提督は鎮守府からの脱出を図るために、扉へと手を掛けたその時だった。

 

「全員、そのまま動くなっ!」

 

MPと書かれた腕章を付けた一団が執務室になだれ込んできた。

 

「提督以下この部屋にいる全員の身柄を拘束する」

 

一人の男が逮捕状と書かれた紙を提督に提示した。

 

「ワシが逮捕だとっ!」

 

提督が抵抗しようとしたが、直ぐに制圧された。

それからまもなく、艦娘達が執務室になだれ込んできた、

 

「提督、貴様に…これは…一体何が」

 

艦娘達は言葉が途切れた、何故なら眼前には床に押し付けられ後ろ手に手錠をかけられ銃を突き付けられたた提督がいたからだ。

 

「長門さんですね、お初にお目にかかります…情報部の羽鳥中佐です」

「ああっ…如何にも長門だが………これは一体」

「この男には、色々とありましてな…陸奥さんにでしたかね、彼女からの情報提供でという事で」

 

恐らく責任者だと思われる男が長門に説明した。

 

「陸奥は、陸奥は無事なのか?」

「ええ、我々に同行してますよ、陸奥さんを此処に」

 

責任者が部下に陸奥を連れて来るように指示していた。

 

「それから暫くはこの鎮守府に提督は配置されませんので、長門さん以下の戦艦娘で運用してください、それでは我々はこれで撤収します」

 

責任者は其処まで話すと、陸奥を残し撤収していった。

 

「我々で鎮守府の運用か…ある程度期限付きとはいえ…」

 

長門が腕を組み考えていた。

 

「やるしか無いか」

 

長門は覚悟を決めると、提督代行としての職務を開始していった。

 

ーーーーー半年後ーーーーー

 

 

「やはり我々は…」

 

長門の手には1枚の紙が握られていた。

 

「遂に提督が配属されると…」

 

扶桑が任命書を長門の手から取ると読んていた。

 

「配属は………今日?!こうしてはいられませんね」

 

扶桑が満面の笑みを浮かべていた、それは今迄見たことのない幸せそうな笑みだった。

 

「扶桑…」

 

長門は扶桑が提督配属で精神的に壊れたと思っていた。

 

「間宮さん、厨房少し借りますね」

 

扶桑は厨房に来ると、間宮に頼み込んで食材と場所を借りた。

 

「久しぶりね」

 

扶桑が楽しそうに料理をしていた。

 

「そう………あの子も18歳になるのですね」

 

扶桑はとある男の子を思い出しながら料理を作っていた。

 

 

ーーーーーその頃執務室ーーーーー

 

 

「本日付けで提督を拝命した『田神 健司』大佐です、宜しく」

 

一人の恐らくは二十歳前の男が長門に任命書を提示していた。

 

「そうか………貴様が、新しい提督か」

 

明らかに長門は歓迎してはいないという顔をしていた。

 

「健司君…大きくなりましたね」

 

扶桑が執務室に戻ってくると、新しい提督に近づくと優しく抱きしめていた、

 

「お姉ちゃん…」

 

新しい提督が扶桑をお姉ちゃんと呼んで懐かしそうにしていた。

 

「扶桑、知り合いなのか」

 

長門が口を開いた。

 

「ええ、隣に住んでいて、弟みたいな子ですね」

 

扶桑が提督との関係を話したが、提督は弟という単語に少し表情を曇られていた、まぁ其処は理解できる。

 

「健司君、はいお弁当」

 

扶桑が提督にお弁当を手渡した、

 

「お姉ちゃん、有り難う」

「扶桑が料理を!」

 

長門が驚きの声を上げた、

 

「お姉ちゃんの手作り弁当、久しぶり今からお昼が楽しみだよ」

 

提督の口振りから昔から扶桑が弁当を作ってあげていたようだ。

 

「扶桑姉様のあんな顔………」

 

山城が扶桑の表情をみて驚いていた。

 

「弟みたいなか………この提督なら奴よりも信頼は出来るか」

 

長門の表情が少しだけ緩んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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戦えない艦娘の任務①

「辞令 海軍少佐『竹柴 克実』特務への配属を命ず」

 

俺は上官から一枚の辞令を受け取った。

 

「大佐…この特務とはいったい?」

「機密だ…聞くな」

 

上官からは教えられてもらえなかった、機密の一言で、

 

「尚、艦娘は、戦艦『扶桑』『山城』以上2名、航空母艦『隼鷹』『千歳』『龍驤』『鳳翔』以上4名、重巡洋艦『那智』『足柄』『鈴谷』『熊野』『青葉』『高雄』『愛宕』以上7名、軽巡洋艦『最上』『三隈』『神通』『川内』『夕張』『大淀』以上6名、駆逐艦『吹雪』『白雪』『初雪』『深雪』『浦波』『磯波』『綾波』『敷波』『睦月』『如月』『弥生』『卯月』『皐月』『水無月』『文月』『長月』『菊月』『三日月』『望月』以上19名、非戦闘艦娘として『明石』『間宮』『伊良湖』の3名で計41名が配属となる以上だ」

 

ただ配属予定の艦娘については説明があったのだが………明石、間宮、伊良湖以外は艤装とのリンクが上手く出来ない落ちこぼれ艦娘だと追加説明があった。

 

「落ちこぼれって………どうすんだよ、特務とか言っても、これじゃ戦闘は無理じゃねえか」

 

俺は艦娘の身上書を見ていた。

 

「?」

 

そして渡された資料の最終ページにあった一枚の紙、そこには、

 

「デラメイヤ級強襲揚陸艦4隻配備…」

 

配備される強襲揚陸艦についての詳細が記されていた。

 

「全長92.6m、幅38m、全高24.6m、戦車6両まで積載可能…魚雷発射管2門、連装機銃1門、乗員は固定乗員4名で…あとはカーゴ要員3名の7名………しかしデラメイヤ級なんて艦艇聞いたこと無いな…写真もなしか…艦の幅からすると3両つづ並列搭載だろうな」

 

俺は聞いたこと無いデラメイヤ級強襲揚陸艦について考えていた。

 

そして迎えた指定日。

 

「竹柴克実少佐でいらっしゃいますね、お迎えにあがりました」

 

俺は横須賀の潜水艦桟橋で一隻の潜水艦に出迎えられた。

 

「少佐、これより仮称IR島ヘ向かいます」

 

俺は潜水艦艦内の与えられた部屋へと案内された。

 

「艦長です、少佐此方を読んでおいてください…機密書類ですので取り扱いは…」

 

俺は艦長から厚めのファイルを受け取るた中を読んだ。

 

「艦娘海難救助部隊…専用艦『デラメイヤ級』陸上以外は行動可能って、何だこりゃ……任務については、はぁ??」

 

俺は其処に記載されている救助対象の項目で声を出した、

 

「民間人、艦娘は当たり前だが………深海棲艦までも対象ってどういうことだ!」

 

俺の疑問に艦長が答えた、

 

「そのままです、少佐達の部隊は敵味方関係無く要救助者は助けるというのが任務です、基地の維持管理は深海棲艦が担当、艦艇と人員は我々が、そして必要経費は各国で分担拠出で話がついています」

 

俺はこめかみを押さえた。

 

「いつの間にこんな話が纏まっていたんだよ………」

 

「昔から戦争中でも海難救助中や病院船は攻撃しないと暗黙の約束事がありましたからね」

 

艦長はそれだけいうと、艦橋に戻っていった。

 

 

 



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過去との邂逅①

ヤマトよ永遠に REBEL3199』より選択式で7隻のアスカ級が発売されるそうです…その中の一艦であるマミヤは間宮の子孫という設定で今回のお話は行きまーす!!
※物語の2206年という時代設定、艦載機としてコスモタイガーIIを12機とコスモシーガル2機(実際はコスモシーガル2機のみ)の計14機搭載はオリジナル設定です。

間宮の時代設定は1943年の父島近海とします。


西暦2206年土星宙域。

 

「マミヤ艦長、今回のタイタン基地への補給物資一覧です」

 

副長妖精が電子リストを僕のタブレットに転送してきた。

 

「確認する、通信士妖精タイタン基地へ通信、定刻通り到着すると」

「マミヤ艦長了解」

「こちら補給艦マミヤ、タイタン基地応答願います、こちら補給艦マミヤ」

「タイタン基地よりマミヤへ感度良好」

「補給艦マミヤは定刻通りタイタン基地へ到着します」

「タイタン基地了解、ようこそタイタンへ歓迎します」

 

僕は通信士妖精とタイタン基地のやり取りを聞きながら、リストを確認すると為に正面モニターから自分の持っタブレットに視線を落したその瞬間だった、艦全体が大きく揺れた。

 

「何が起きた、詳細並びに被害報告!」

 

僕は補給物資リスト確認を中断すると、先程の揺れによる被害と詳細の報告を調べるように艦橋勤務妖精に指示を出した。

 

「機関室より艦橋、波動エンジン並びに機関科員に問題なし」

「飛行科より艦橋、艦載機並びに搭乗員異常なし」

「航海科より艦橋、航路ビーコン反応なし、航海科員には異常なし」

「船務科より艦橋、コスモレーダーホワイトアウト確認中、科員に問題なし」

「報告、タイタン基地との通信途絶、呼びかけに反応なし!」

 

通信士妖精が副長妖精に報告していた。

 

「タイタン基地との通信途絶だと、通信士は呼びかけ続けろ、副長偵察機を!」

「艦長了解」

「艦橋より飛行科…直ちにタイタン基地への偵察を開始せよ」

「飛行科了解」

 

それから数分の後に4機のコスモタイガーIIが発艦していった。

 

「艦長、艦内全機構異常認めず、ですが…タイタン基地の防空用戦闘衛星のレーダー反応が全くありません、本艦から発艦したコスモタイガーIIの反応はあるのでレーダーの故障とは考えにくいのですが…」

 

副長妖精が俺に報告するも自身ですら訳がわからないという顔をしていた。

 

「艦長偵察機より報告」

 

通信士妖精が艦橋スピーカーに通信を切り替えた

 

「こちらコスモタイガー、タイタン基地発見出来ず、映像送ります」

 

メインモニターに本来タイタン基地があったであろう場所が映し出された。

 

「何の痕跡も無い…だと!」

「変ですね、先程まで通信で話していたのに跡形もないとは…」

 

副長妖精も映像を見ながら首を傾げるばかりだった。

 

「防空用戦闘衛星といい、タイタン基地といい…どうなっているんだ…」

 

俺は何が起きているのか理解できずにいた、それは艦橋メンバー妖精も同様だった。

 

「えっ!嘘だろ…」

 

技師長が何かに気がついたのか俺を見た、

 

「マミヤ艦長…艦内時計が!」

 

俺は技師長に促され艦橋備え付けの時計に視線を移した、

「時計がなんだって…なんだと!」

 

そう表示されていたのは、2206.08.17ではなく、1943.10.5だったのだ。

 

「263年前だと!」

 

おれは技師長を見た。

 

「量子時計が狂う事は無いと聞いていますが…故障の可能性もゼロではありません…」

 

俺は少しだけ考えると、

 

「各科長は作戦室集合」

 

俺は副長妖精にそう指示を出すと、作戦室へと移動した。

 

「集まったな…」

 

俺は作戦室内を見渡した。

 

「皆知っている事だが、艦内量子時計が263年前日付と時刻を指し示している…故障の可能性もあるが、タイタン基地消失の現状を鑑みエンケラドゥス経由で一旦地球へ帰還する」

「エンケラドゥス経由ですか」

「そうだ、もし我々が本当に過去にいるのであればエンケラドゥスのゆきかぜは其処にない事になるからな、その確認の為だ」

「了解、月面基地への寄港は」

「あぁ頼む」

 

航海長妖精が直ぐにエンケラドゥス経由月面基地寄港のルートを設定しだした。

 

「マミヤ艦長、偵察により通信『タイタン基地周辺に生体反応無し』だそうです」

「了解した、偵察機隊に帰還命令を出してくれ」

 

通信士妖精が偵察機隊に帰還を命じていた。

 

「マミヤより偵察機隊へ帰還せよ、艦長命令です」

「偵察機隊了解」

 

俺はその後も各科長達と話し合うと、

 

「それでは、各自持ち場についてくれ」

「了解」

 

全員が各部署へと戻っていった。

 

「マミヤ艦長、艦橋に入室されます」

 

艦橋入り口に立つ衛兵が声をあげた。

 

「現状の報告を」

 

俺は副長妖精に聞いた。

 

「偵察機隊は全機帰還済み、依然タイタン基地からの応答も無し、エンケラドゥス経由、月面基地へのルート設定完了、何時でもいけます」

「補給艦マミヤ、地球へ向け発進」

 

俺は全員の顔を見ると地球へ向けての発進を指示した、

 

「反転180度回頭」

「補助エンジン出力最大、波動エンジン圧力上昇中…エネルルギー充填90パーセント、フライホイール接続用意よし」

「火器管制システムオールグリーン」

「重力アンカー解除…解除確認!」

「波動エンジン内圧力上昇中…エネルギー充填120パーセント、フライホイール接続、点火!」

「波動エンジン点火、確認」

「地球へ向け発進!」

 

俺の合図で、補給艦マミヤは土星宙域を離れ地球へ向かう航路を取った。

 

「エンケラドゥス目視で確認」

 

航路長がエンケラドゥスを確認した、

 

「艦長、エンケラドゥス到着は2時間後を予定」

「了解した、到着と同時に偵察機隊を発進させてくれ」

「了解」

 

副長妖精が指示を出し始めた。

 

「しかし艦長、此処に来るまでに何処からも応答無しとはやはり…」

「可能性が大きくなったな…月面司令部も応答無しとは…」

 

そしてマミヤはエンケラドゥス上空に到着し偵察機隊からの報告を待った。

 

「此方コスモタイガー、エンケラドゥスにゆきかぜの艦影無し、繰り返すエンケラドゥスにゆきかぜの艦影は無し!」

「コスモナイトの採掘場痕跡認めず!」

 

 

複数の偵察機隊からの報告を受けると、今迄の事象が確実な物になった。

 

「1943年に間違いないようですね」

 

副長妖精が俺を見た。

 

「あとは地球と月面司令部を確認してからの判断だな」

 

俺はそう言うと、偵察機隊の帰還を指示した。

 

 

「月周回軌道上へワープ!」

 

航路長が月周回軌道上へ向けてワープ航法へ移行した。

 

「ワープアウト」

「艦内総て異常無し」

 

航路長と技師長が報告を上げてきた。

 

「了解した、偵察機隊はどうなっているか」

 

俺は副長に偵察機隊発進状況を確認した。

 

「現在、月面司令部並びにその他民間施設上空へ向け飛行中」

「了解した」

 

俺は偵察機隊の目標到着を待つことにした。

 

「艦長、偵察機隊より報告『月面上には何も確認出来ず』です」

 

最早過去に飛ばされた事は確実だった。

 

「これが現実となると…我々はどうすべきなのか…先ずは地球周回軌道に移動した後に地上の様子を確認するが最善かと」

 

副長妖精が意見してきた。

 

「そうだな、それが1番妥当か、全艦に達する本艦はこれより地上周回軌道にて待機、コスモタイガーIIによる地上偵察を行ったのち然るべき組織と接触する事とする以上」

 

俺が指示を出すと、副長妖精が近寄ってきた。

 

「艦長、時刻と日付が合っているとして…そうなると今日は先代間宮が深海棲艦の潜水艦の雷撃により航行不能となる日です」

 

折しも今日は駆逐艦追風の護衛中に、父島の西南西300海里の地点でアメリカ軍潜水艦セロの魚雷を3本受け命中航行不能となった日だった。

 

「接触を図る相手として先代の間宮が最適かと」

 

副長妖精が付け加えた。

 

「そうだな…直ぐに先代間宮の航海日誌から今の航行位置を割り出してくれ」

「了解しました」

 

副長妖精が航行科に指示を出し始めた。

 

 

 

 

 

 



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終戦後………①。

西暦2015年、全人類は深海棲艦との戦争に敗北した。

深海棲艦は勝者として人類に対し、人類の武装解除と艦娘の解体を要求してきた、艦娘の解体それは彼女達を殺せと言う事だった。

 

最初のうちは勝者の要求に従い、多数の艦娘が身柄を拘束され殺されていったが、敗戦から5年後極東のとある国で疑問を感じた時の政府により地下で艦娘の保護が極秘裏に始まった。

 

とある地方都市

 

「そっちに行ったぞ!」

「逃がすな!」

 

複数の黒い軍服姿の人物達に、二人の艦娘と覚しき人物が追われていた。

 

「何で…何で見つかったのよ青葉!」

「ガサ………分かんないよぅ」

 

青葉と恐らくは衣笠と覚しき二人は路地裏を必死に逃げていた。

 

「捕まったら殺される………」

 

二人は殺される事を知っている為に必死で逃げていた。

 

「鬼ごっこは終わりだ」

 

それは不意に聞こえた………そして衣笠は路地裏で倒れた、青葉と一緒に。

 

「私達…死にたくないよぅ…」

 

それが青葉の最後の台詞だった。

 

「二人を護送車に」

 

黒い軍服の人物が同じような黒い軍服姿の人物に指示を出していた。

 

「提督…この娘達を頼むわよ…」

 

護送車に二人を乗せられているのを確認していた隊長と思われる人物が小声で呟いていた。

 

「深海棲艦の思い通りにはさせないから、あの人なら」

 

を見送りながら呟いていた。

 

数日後(青葉視点)

 

「私………生きてる?」

 

青葉は目を覚ますと、自分の体を確認した。

 

「青葉やっと目を覚ました」

 

衣笠が目の前に立っていた。

 

「私達、彼奴等に撃たれて………」

 

私は混乱していた。

 

「お目覚めのようだね、状況を説明する」

 

その声の主が部屋に入ってきた、

 

「二人には怖い思いをさせて済まなかった」

 

その人物は私達逃げていた頭を下げた、

 

「何がどうなっているのよ、説明して」

 

衣笠が説明を求めた。

 

「此処は防衛省直轄の極秘艦娘保護施設だ、所在は明らかに出来ないが、安心してくれ君達に危害を加える意思はない」

「極秘保護施設?」

 

私は極秘保護施設という単語が気になった。

 

「8年前の敗戦時、深海棲艦からの命令で艦娘の解体命令が出ていたのは知っているな」

 

その男性と思われる目出し帽の人物は確認しながら話し続けた。

 

「人類の武装解除と艦娘の解体………事実上の処刑命令だ、アメリカやフランス、ロシアは彼らに従い………艦娘を戦犯として処刑していった、だがな日本とイギリス、ドイツは何か裏があると考え、表向きは処刑したことにして、彼奴等の眼の届かない日本の内陸奥深くの山中に匿うことにした、勿論脱走した海外艦娘もだ」

 

私と衣笠はただ黙って話を聞いていた。

 

「勿論、君達の艤装も極秘裏に回収し保管されている…目出し帽は暑くて敵わん!」

 

とその男性は徐ろに目出し帽を脱いだ。

 

「提督!」

 

そこには私達が一番知っている人物の顔があった。

 

「済まないね、怖い思いをさせて………青葉達を襲ったのは足柄と那智だ」

 

私は真相を聞くと、安心からか腰が抜けた。

 

「提督、酷いですよぅ」

 

私は頬を膨らませた。

 

「済まない、済まない」

 

提督はそう言うと私をそっと抱きしめてくれた、

 

「青葉ばかりずるい」

 

勿論提督は衣笠も抱きしめてくれた。

 

「でも…テレビで流していた、遺体の焼却映像は?」

 

私は疑問をぶつけた。

 

「それはな、水面下で一般に同世代の遺体提供を募って葬儀費用を政府負担ということで協力をしてもらった、まぁ解体映像をでっちあげて、火葬の時に深海棲艦を立ち会わせるということで納得させた、解体後の姿なんて彼奴等は知りもしないからな、この様な施設は日本全国に点在しているよ」

 

「提督、最終組が到着します」

 

私の目の前に懐かしい顔である大淀が部屋に入ってきた。

 

「そうか、陽炎、不知火、黒潮、時雨、夕立、龍驤、千歳、隼鷹か…これで全員揃ったな」

 

提督が保護した最後の艦娘の名前を呟いた。

 

「深海棲艦の真の狙いは………艦娘を排除したら次は人類の絶滅だろうな………」

 

提督はそう云うと、私達を連れて施設を案内してくれた。

 

「旧鎮守府のメンバー全員と海外艦娘である、ウォーススパイト、アークロイヤル、ロドニー、ネルソン、リシュリュー、ビスマルク、グラーフ・ツェッペリン、プリンツ・オイゲン、レーベレヒト・マース、マックス・シュルツ、ガングート、タシュケントが居る」

 

提督が説明していると、懐かしい顔ぶれが私の前に揃っていた。

 

「みんなっ!」

「青葉も衣笠も無事だったんだね」

「青葉………」

「ビスマルクさん………」

「青葉、私達やイギリス組以外は………」

 

ビスマルクさんが何か言いにくそうにしていた。

 

「祖国を脱出し中国韓国経由で日本に逃れてきた」

 

ガングートが説明した。

 

「はい、武中です」

 

提督の携帯が鳴った。

 

『久し振りですね武中中将、元横須賀のダグラスです』

 

提督がスマホをスピーカーモードにして全員に聞こえるようにした。

 

『噂で聞いたのだが、君の所で艦娘を保護しているらしいじゃないか、昔馴染みのよしみで、私の処の、アイオワ、サウスダコタ、ノースカロライナ、ホーネット、レキシントンを匿ってもらえないか?』

 

ダグラス少将からの保護依頼の電話だった。

 

『少し時間が欲しい、受け入れるかは改めて連絡する』

 

そう云うと電話は電話を切り、間宮に横須賀の米海軍基地の通信傍受を指示した。

 

「間宮、横須賀の米海軍関係の通信を総て傍受してくれ」

「はい」

 

間宮さんが直ぐに艤装の通信機器を操作しだした。

 

『ダグラスです潜入準備完了です、これで日本の潜伏艦娘を処分できるはずです』

『………約束は守る』

 

 

相手はそれだけ言うと通信を切った。

 

「深海棲艦のスパイに成り下がっていたか………恐らく艦娘受け入れの話は嘘だな………よし、偽装墓地で話をつけるとするか、川内、神通は私と来てくれ」

「はい」

 

川内と神通が動いた。

 

「では、私は偽装墓地へ向かう」

 

 

 

                      続く



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第三章 特捜!
〇〇鎮守府士官候補生暴行事件  ①


「東雲警部、私の部屋まで来てくれ」

 

日頃この豊洲分庁舎に居ることの無い猿渡警視から呼び出された。  

 

「東雲、参りました」

 

俺は扉をノックすると室内に入った。

 

「わざわざ呼び出して済まない、この書類を見てくれ」

 

猿渡警視は機密と書かれた書類の束を俺によこした。

 

「…………これは!」

 

内容は酷いものだった。

 

「この鎮守府に過去に16人士官候補生を配属させたのだが、その全てが辞めてしまった」

 

猿渡警視が補足した。

 

「全員が?どう云う事ですか」

「私にも解らん、皆口を閉ざしているか、この世におらんから……」

 

俺は少し考えると、

 

「わかりました、部下を事前に配属させます、その後に自分も名前と素性を隠して候補生として着任します」

「潜入捜査しかないか…」

 

警視もまた同じ考えに至った。

 

「書類はこちらで用意しよう、話は以上だ」

 

俺は猿渡警視の部屋を出た。

 

「さてと…」

 

俺は自分の部屋に戻ると、明石、青葉、衣笠、天龍、龍田の5人を呼び出した。

 

「明石以下7名集合しました」

「任務だ」

 

俺は全員にその鎮守府について説明した。

 

「……鎮守府についてだが、過去に16人の士官候補生が辞めている…理由は誰も語らないそうだ」

 

俺はここまで話すと、明石を見た。

 

「士官候補生の医療記録を取り寄せました、それによりますと体中に痣や打撲痕、軽い骨折の跡が確認されています…それと内8名が自ら命を……」

 

明石が現在迄に分かったことを説明した。

 

「俺は明日から生存して居る士官候補生とそれ以外の家族から事情聴取を行う、その後に鎮守府に新任の士官候補生として身分を隠して着任する、君達は指定日迄に対象鎮守府の該当艦娘の身柄を拘束し入れ替わる様に」

 

明石達は敬礼すると部屋から出ていった。

俺はすぐに遺族や士官候補生本人に事情聴取を始めた。

俺が軍特捜部から調査の為に来たと言うと、事実を語りだしてくれた。

 

「提督については何故か皆一様に良い人か……何か引っ掛かるな、後の為にと書類仕事も手伝わせていた……ほぼ深夜までか徹夜は当たり前……極めつけは艦娘達からの暴行……秘書艦娘ならば何か知っている可能性あるな……」

 

俺は事情聴取から得た情報を明石達にも話した。

 

「その提督、執務を士官候補生に丸投げしてるみたいね…秘書艦娘を早急に押さえる〜?」

 

龍田が確認してきた。

 

「まだだ、今は泳がせておけ」

 

そして、二週間後。

 

「お世話になります、士官候補生 立脇です」

 

俺は警部の身分隠して鎮守府へと着任の報告を行った。

 

「頑張り給え、後の事は秘書艦から聞くように」

 

それだけいうと提督は私室に消えた。

 

「そ、それではこちらへ」

 

秘書艦の羽黒が何かに怯えるような挙動をしながら案内をした。

 

《……やはり秘書艦も何か知っているな》

 

俺は暫く様子を見る事にした。

 

《証言によると、艦娘からの暴行や嫌がらせはだいたい2日ないしは3日後位から始まるみたいだし》

 

俺は提督の出方を見守ることにした。




タイトルと設定を変更しています。
階級は軍のものではなく警察官に準じたものとなっています。
ですので上官は猿渡警視、主人公
東雲特務大尉から東雲警部、明石は警部補、その他艦娘は巡査部長、一般隊員は巡査とします。


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〇〇鎮守府士官候補生暴行事件  ②

『』の中のセリフはモールス信号としています。
《》独り言…
「」普通の会話


《証言によると、艦娘からの暴行や嫌がらせはだいたい2日ないしは3日後位から始まるみたいだし》

 

初日……歓迎会を開いてくれた。

二日目…提督より事務仕事の勉強と称して殆どの書類をまわされる。

三日目…ほぼすべての艦娘より嫌がらせ、暴行が始まる。

ここまで来て変化が無いのは提督の態度である、あくまでも善人ぶっている。

秘書艦については、怯えている様子がわかる。

 

『発 衣笠より、宛 東雲…艦娘による集団暴行計画進行中注意されたし予定は明日のフタヒトマルマル、場所は鎮守府工廠』

 

俺は衣笠からの電文を受け取った。

 

『発 東雲より、宛 強攻班隊長…明日のフタヒトマルマル工廠にて動きあり、突入準備されたし』

 

俺は衣笠からの電文を強攻班隊長に転送した。

 

『強攻班了解、明日フタヒトマルマル工廠付近にて待機す』

 

返電を受け取ると俺は書類の内容を確認した。

 

《やはりな、後の為とか言いながら士官候補生に丸投げしてあたかも自分が処理決済したように偽装していたのか》

 

俺は提督執務室に忍び込むと決済済み書類を確認した。

 

《となると秘書艦羽黒も一枚噛んでいるのか……》

 

俺は書類をもとに戻すと自室に戻った。

 

『発 衣笠、宛 東雲…全ての準備完了せり』

 

衣笠が準備完了の報告を寄越した。

 

『発 東雲、宛、青葉…こちらの動きと呼応して証拠押収を開始せよ』

 

俺は青葉へと指示を出した。

 

『発 青葉、宛 東雲 了解』

 

青葉からも了解の返電を受けた。

俺は奴らが行動を起こすフタヒトマルマルを待つことにした。

 

そして迎えた21時

俺は腕時計を確認した。

 

《そろそろか…》

 

「立脇いるんだろ!ちょっと来いよ」

 

摩耶がいきなり部屋に入ってくると俺の襟首を掴んでいて引き摺って行った。

 

「パーンパカパーン、立脇のリンチ大会開催でーす」

 

愛宕から強烈な蹴りを腹部に受けると、それが合図になったのか他の艦娘達も殴る蹴るをしはじめた。

俺は扉の脇に立つ天龍に合図した。

天龍は静かに頷くと龍田にも同様の合図を送り扉を開いた。

 

「全員、手を頭の上に置いてその場に跪け!」

 

MP5Kを構えスカルマスクを被った一団がなだれ込んてきた。

艦娘達は何が起きたのかわからずに狼狽えていた。

 

「隊長、発砲を許可する…指示に従わないものは容赦なく撃て!」

 

俺は強攻班隊長に指示を出した。

 

「テメェ…一体何…何もんだよ」

 

摩耶が噛み付いてきた、俺は摩耶の眼前に身分証を出した。

 

「…海軍特務調査部……特捜班、警部…嘘だろ…なんであたい達が」

 

摩耶は俺の身分証を見て顔面蒼白となった。

 

「今までさんざん士官候補生に暴行を加えてきたよな…しかも半数が自決してるんだよ、てめぇ等を軍事法廷に引き摺り出す為に俺達は来たんだよ……すっとぼけんなよ!」

 

摩耶だけではなかった、俺の言葉が聞こえた奴らはその場に力なく崩れ落ちた。

 

「間宮、伊良湖、鳳翔、瑞鶴、翔鶴の以上5名については…別途取り調べを行う」

 

俺は表向きの指示を出した、理由は彼女達は内通者であり、以前より士官候補生を庇う行動を取っていたことは生存する被害者から確認が取れていたし、今後の事を考えると証人保護の観点から取り調べと称して安全な場所へ移送処置をとった。

 

 

 

 



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〇〇鎮守府士官候補生暴行事件  ③

俺は霞が関の特捜本部に戻ってきている。

そしてここは取調室……周辺の複数ある取調室から艦娘達の喚き散らす声や取調官(艦娘)の怒声が響いている。

 

「さてと、羽黒もうわかるな、知っている事を話せ」

 

俺は背後に完全武装の元長門型だった警務兵2名を待機させて尋問を始めた。

 

「…………」

 

羽黒はただ下を向いて終始無言だった。

 

「姉妹艦…妙高、那智、足柄…」

 

俺は羽黒の姉妹艦娘の名前を上げてカマをかけてみた。

 

「!」

 

羽黒の表情に変化現れた。

 

「やはりな、姉妹艦娘に対してなにかすると脅されてか?」

 

やっと羽黒が小さく頷いた。

俺は背後に控える警務兵に一言二言話すと別の取調室へと羽黒をその場に残し退室した。

 

「こっちはどうか?」

 

俺は妙高が取り調べを受けている取調室へと入室した。

 

「妙高型は士官候補生暴行案件には関与していないようですし、暴行について知らなかったようです」

 

俺は取調官からだいたいを聞くと妙高の前に座った。

 

「妙高、確認する…羽黒が秘書官になってから変わったことは無かったか?」

 

俺の質問に妙高は少し考える仕草をすると答えた。

 

「変化というのでしょうか…羽黒が落ち込んでいる時は必ずと言っていいほど私達は激戦海域の作戦に駆り出されていました…それくらいでしょうか」

 

妙高の言葉である程度は予想ができた、つまり激戦地に派遣して沈めると脅していたのであろう。

俺は妙高の取調室をあとにし、羽黒を残した取調室へと戻った。

 

「さてと、羽黒……妙高から話は聞いた、全て話せ」

 

俺は出来る限り静かに問い掛けた。

 

「…………、もし話せば姉さん達をと脅されて」

 

やはりであった、そこからは羽黒は協力的に話しだした。

取り調べも一通り終わり、後は刑が確定するのを待つだけだった。

俺は自分の執務室に戻ると、青葉と話した。

 

「士官候補生暴行案件には関与していない艦娘を探す方が難しいですね」

 

青葉が調書を見ながら言った、確かに未関与といえたのは間宮、伊良湖、鳳翔、瑞鶴、翔鶴、天龍、龍田、川内、神通、那珂青葉、衣笠、妙高、那智、足柄、羽黒位しかいなかった。

 

「実際、羽黒は執務面しか知らなかったしな…元凶はやはりあいつか……」

 

俺は元提督の資料をテーブルの上に置いた。

 

数日後刑が確定した。

 

元提督……任務放棄、艦娘への脅迫行為などから軍籍剥奪の上で極刑が言い渡された。

艦娘……最前線への配置転換が言い渡された、事実上死刑(生還しても別の激戦地ヘ異動)が言い渡された。

間宮、伊良湖、鳳翔、瑞鶴、翔鶴、天龍、龍田、青葉、衣笠、妙高、那智、足柄についてはそのまま鎮守府に残留となり、川内型三姉妹が特捜に配属となったか、ただ一人羽黒は責任を感じたのか退官した。

 

……俺はこの結果を元士官候補生とその家族に伝えた。

 

 



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不正 





「初期艦は五月雨か…」

 

俺は書類から目を離すと五月雨を呼び出した。

 

「五月雨まいりました」

 

五月雨が扉をノックして入室してきた。

 

「五月雨、君の軍籍票を出してくれ」

 

俺はそう言うと五月雨から首から下げている軍籍票を受け取った。

 

『五月雨 S-Y18524』

 

軍籍票にはそう刻印されていた。

俺は艦娘簿で確認した。

 

「3年前に横須賀で建造……五月雨に確認する、艦娘の権利や鎮守府の運営について何か知っているか?」

 

俺は五月雨に確認してみた、帰ってくる答えは何となく予想はしていたが。

 

「はい…」

 

五月雨はよどみなくスラスラと答えた。

俺は電話を取ると猿渡警視に報告をした。

 

「まだ可能性なのですが、新規建造艦に於いて不正が考えられます」

 

猿渡警視への報告を終えると、明石達を非常呼集したそして五月雨に部屋の準備を指示した。

 

「大本営から明石、青葉、衣笠、天龍、龍田、川内、神通、那珂の緊急着任がある、部屋の準備を」

 

五月雨が敬礼して……やっぱり転んで退出した。

 

ーーーー数日後ーーーー

 

「明石以下7名到着しました」

 

明石が真面目に到着の報告にやって来た。

 

「よく来てくれた、早速で悪いがこれからこの鎮守府についての調査を行うので資料に目を通してくれ」

 

執務室に紙をめくる音だけがしていた。 

 

「まさか…そんな事が」

 

衣笠の疑問も仕方のない事だった。

 

「不可能じゃないわね、鎮守府にて建造若しくは海域での保護艦娘の場合、軍籍番号を設定登録しないと大本営では存在が把握出来ないのよ、だから不正が行われても把握不能若しくは困難なの」

 

明石が代わりに答えた。

衣笠はそのままに黙ってしまった。

 

「衣笠、天龍、龍田、那珂は鎮守府所属艦娘への着任日を聴き取り調査を頼む、青葉は記録の調査を、明石は俺とこい」

 

俺は明石に指示を出した。

 

「了解」

 

明石達は敬礼すると直ぐに取り掛かってくれた。

 

「必要とあらば鎮守府の艦娘を招集しても構わない」

 

執務室隣の会議室は鎮守府中から集められた各帳簿で溢れた。

 

「巧妙に隠されてましたけど……」

 

神通が内容を見て表情を曇らせた。

 

「捨て艦作戦はしていないようですが……不正売買はかなりです」

 

俺は帳簿を見た限りでは建造後の記載に不審な点を認めた。。

 

「建造失敗……………有りえないな」

 

俺は建造台帳から失敗の項目を見ると机の上に投げ出した。

 

「資材の増減、資金の不自然な増減…上げれば切りが無い」

 

俺達は一週間缶詰となって鎮守府中から集めた帳簿と格闘した、勿論鎮守府所属の艦娘も招集しての上でだ。

 

「東雲警部!提督執務室の床下から」

 

鎮守府所属の大淀が長門達と捜索していた提督執務室から何かの帳簿を複数見つけてきた。

 

「これは!」

 

帳簿の中にはどの艦娘を何処の誰に幾らで売却したと記載されていた。

 

「大淀でかしたぞ!」

 

俺は直ぐに猿渡警視に電話をかけて、提督の逮捕状の発行を請求した。

 

「クズ提督……………待ってろよ今貴様の首にロープを括り付けてやるからな」

 

数日後、鎮守府の提督は憲兵隊により緊急逮捕された。

 



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〇〇鎮守府艦娘暴動事件 ①

那珂が異動して、夕張が後任で着任しています。


「東雲警部、私の部屋まで来てくれ」

 

俺は日頃この豊洲分庁舎に居ることの無い猿渡警視から呼び出された。  

 

「東雲警部、出頭しました」

 

俺は扉をノックすると室内に入った。

 

「わざわざ呼び出して済まない、この書類を見てくれ」

 

猿渡警視は機密と書かれた書類の束を俺によこした。

 

「ここで読んでも?」

「かまわん」

 

上官はそれだけいうと俺に背を向けて窓辺へと移動した。

 

「艦娘による暴動……………死傷者多数……………」

 

 

俺はその報告書を読み進めていくうちにある疑問を感じた。

 

「警視、質問が」

「何だ、私の把握している内容なら答えるが」

 

俺はその疑問を口にした。

 

「暴動ですが、艦娘全員ではないのですね」

「ああ、暴動に参加せず最後まで提督を護衛していた者もいたようだ」

 

其処までいうと猿渡警視は少し間を置き、

 

「東雲警部、〇〇鎮守府艦娘暴動事件の再調査を命ずる」

 

俺は猿渡警視からの命を受けると執務室へ戻ると部下全員へ30分後に会議室集合の指示を出した。

 

30分後俺が会議室へ入ると明石、夕張、青葉、衣笠、天龍、龍田、川内、神通、と部下の女性隊員は会議室に揃っていた。

 

「全員揃っているな、先ずは手元の資料を各自読んでくれ」

 

会議室には紙をめくる音だけが聞こえていた。

 

「よし、それでは次の任務について説明する」

 

俺は、会議室に備え付けのプロジェクターに資料を映した。

 

『〇〇鎮守府艦娘暴動事件

○月✕日 午後三時頃発生 

警備並びに一般事務兵士に多数の死傷者

尚、明石、夕張、青葉、衣笠、川内、神通、間宮、伊良湖、鳳翔、時雨、夕立、陽炎、不知火、黒潮、大淀15名は暴動艦娘により大破もしくは鎮守府には不在の為難を逃れた』

 

簡単ではあるが概要を説明した。

 

「尚、鎮守府内での調査は俺と普通科で行う、明石達は艦娘病院に収容されている間宮達からの事情聴取を」

 

「隊員、何故です?」

 

川内が質問してきた。

 

「簡単だ、暴動の原因が判らない以上二ノ舞はゴメンだからな……………午前中迄普通だった艦娘が午後には豹変して襲いだしたとなると、何らかの薬物若しくは誘導電波的なものが使われたのではと判断したからだ」  

「解りました」

 

川内が納得したらしく、天龍にも説明をしていた。

 

「それでは、各員の分担を決める、明石と夕張は第一と第二分隊を指揮して病院に収容されている非暴動側の艦娘からの事情聴取を、第三分隊は一般職員からの事情聴取を、第四と第五分隊は俺と鎮守府内の調査にあたる、第六分隊は本部隊として情報の統轄を行う、指揮は青葉に一任する、調査開始は明日マルキュウマルマルとする、各分隊は準備出来次第出発以上解散」

 

部下達が一斉に会議室から退出していった、それから一時間前後すると地下駐車場から民間運輸会社に偽装された捜査車両が〇〇鎮守府へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 




   


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〇〇鎮守府艦娘暴動事件 ②

「このビジネスホテルの会議室で任務にあたる、部屋はこの上の階を確保してある」

 

俺は事前に執務と宿泊を兼ねて鎮守府近郊のビジネスホテルを確保していた。

 

「特捜でこのホテル一棟全て借り上げている、情報漏洩対策も問題無い」

 

俺は青葉に会議室の鍵を渡しながら説明した。

 

「それと、近隣住民からも要望も凄い……………艦娘達の無実をと懇願されたよ」

 

住民達は艦娘達が何らかの事件に巻き込まれての事だと考えている様子だった、それは俺達も同じ事を考えていた。

 

「さて……………それでは調査を開始する」

 

明石達は俺に敬礼すると予め決めていた担当の調査を開始した。

 

「それと、明石、俺も最初病院での聴取任務参加する」

 

俺の言葉に明石が聞き返してきた。

 

「何か気になることでも?」

「ああ…少しな、間宮と鳳翔の聴取には俺も立ち会う」

 

それだけ云うと、 

 

「第四、五分隊は鎮守府内の調査を、但し鎮守府内の自販機や給水器を含む全ての飲食物は使用不可とする、これは厳命とする、薬物汚染も視野に入れての事だ」

 

配下の二個分隊に指示を出した。

 

俺は明石と艦娘海軍病院へと向かった。

 

「東雲警部、こちらです」

 

病院につくと警備兵が既に待機していた。

 

「この病院に川内、神通、間宮、伊良湖、鳳翔、時雨、夕立、陽炎、不知火、黒潮、大淀の11名が収容されております、明石、夕張、青葉、衣笠の4名は鎮守府外作業でしたので難を逃れました」

「そうか……………となると間宮、伊良湖、鳳翔の3名との話が鍵か…」

 

俺は間宮達の病室へと向かった。

 

「東雲警部入られます」

 

病室の入口に立っていた警備兵が室内に声をかけた。

 

「どうぞ」

 

警備兵が扉を開けた。

 

「失礼する」

 

俺と明石、夕張は室内に入った。

 

「では三人共、起床してからの事を詳しく話してくれ」

 

間宮達は起床後から事件直前までの事を話しだした。

 

「これと言って……………「間宮、君達も食事は食堂か?」」

 

俺は明石の言葉を遮って間宮に確認した。

 

「はい、ただ皆さんが来る前に三人で厨房内で済ませます」

 

俺にはなんとなく視えてきた。

 

「飲み物とかは?」

「私達はお茶でいただきますが、皆さんは備え付けの給水器を使ってます」

 

俺は直ぐに携帯を取り出すと、鎮守府調査に向かった第四分隊の分隊長を呼び出した。

 

「分隊長か、直ぐに食堂に向かい給水器を接収、直ちに科捜研へ送れ」

 

そう、暴動を起こした艦娘達は皆給水器からの水を飲んでいたのだった。

 

「あとは……………何らかの誘導電波的なものが送信されていたのだろう「大尉、報告!鎮守府裏手の山頂レーダーサイトに不審な通信機器があったそうです」な」

 

明石の事情聴取を行っていた第一分隊の分隊長から至急という通信を受信した。

 

「そうか……………話が繋がったな、何らかの薬物と電波を使用して艦娘を催眠状態にして操ったのか!

命令変更!第一から第三分隊は行方不明の艦娘捜索とする、掛かれ!」

 

俺達は直ぐに次の行動へと移った。

 

 

 

 

 

 



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〇〇鎮守府艦娘暴動事件 ③

「こちら第四分隊長より警部へ」

 

鎮守府内を捜索している第四分隊長からの無線が入った、

 

「俺だ、何かあったのか?」

「はい、鎮守府裏手のレーダーサイト併設の通信機器室内にて鎮守府明石の発見したものとは別に詳細不明の機器を発見、取り外し並びに調査に移ります」

「了解した、取り外した機器は直ぐに科捜研に送り給水器と併せて調査を急がせろ、それと明石、青葉、夕張は会議室に集合」

「了解しました」

「了解です」

俺は会議室に入ると明石と現在までに判明していることを纏めた。

「青葉から報告を」

「通信機器室に謎の機器がニ種類、うち一つは取り外されて置かれていた…こちらは鎮守府明石の発見したものと推測されます、時間的に見て明石の見つけた機器を取り外しした結果、何らかの電波が流れてと見る事ができます」

 

青葉が機器の写真を貼り付けるとホワイトボードへ書き込んだ。

 

「引き続き通信機器室の調査を継続します」

 

青葉が報告を締めた。

 

「次は……………」

「私から」

 

夕張が手を挙げた。

 

「先日回収した給水器ですが、給水器内の水から成分不明の薬物が検出されました、現在科捜研で分析中です」

「やはりか……………」

 

俺は青葉と夕張の報告を聞くと静かに頷いた。

 

「最後は私から」

 

明石が報告を始めた。

 

「給水器メンテナンス業者に確認したところ、当日の午前中に鎮守府へ行った社員と連絡が取れなくなってると回答がありました、社員2名の身元調査を行なったのですが、全く存在しない人物であることが判明しました、尚この2名は先週より勤務を始めたとのことです」

 

「残るは行方不明となっている艦娘達の件だけか……………」

 

そう操られて暴動を起こした艦娘達は、事件後行方がわからなくなっていたのだ。

 

「哨戒機と沿岸パトロール隊の報告待ちですね」

 

青葉が報告書を片付けながら言った。

 

「やっぱり問題なのは薬物の影響が何処まで持続しているのか、またその間の記憶は残っているのかという点ね」

 

明石と夕張が現在までの疑問を話していた。

俺は彼女達の会話を聞いていた

 

「此処で結論は出せない、科捜研の報告待ちか…明石、兎に角科捜研からの報告書が出るまでは今迄と同じで艦娘の鎮守府立ち入りは厳禁とする」

「はっ、了解しました」

 

そんなタイミングを見ていたのかホテルの従業員が食事を用意してくれていた。

 

「皆さん、お食事こちらに置いておきます」

 

俺達は一旦休憩を取ると、少し遅い昼食にした。

 

「隊長…住民の皆さんの期待に応えらるのでしょうか」

 

青葉の分隊の一人が口にした。

 

「我々にできることは全てする、それだけだな」

 

それから少し会話をしながら昼食を終えた。

 

 

 



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〇〇鎮守府艦娘暴動事件 ④

「残るは行方不明となっている艦娘達の件だけか……………」

 

俺はホワイトボードに貼られた写真を眺めていた。

 

「隊長、哨戒機隊と沿岸パトロール隊の責任者の方がおみえになりました」

 

青葉が俺を呼びに来た。

 

「おう、判った」

 

俺は別の会議室へと向かった。

 

「遅くなりました」

 

俺が会議室に入ると、年配の男がホワイトボードに貼られた海図を見ていた。

 

「あぁ隊長さん、こちらは地元漁協組合長の佐伯さんです」

 

パトロール隊の責任者が紹介した。

 

「はじめまして、組合長の佐伯です」

「特捜の東雲警部です」

 

俺は軍籍手帳と警察手帳を見せた。

 

「ところで警部さん…この海図ですが」

「この海図がどうかしましたか?」

 

佐伯が海図を見ながら何か言いたそうだった。

 

「はい、最新ではないですね……………此処と此処、あと此の位置に小型ですが座礁した輸送船が有ります」

 

佐伯は海図に書き加えていった。

 

「となると……………」

 

俺は携帯電話明石を会議室に呼んだ。

 

「明石直ぐに行方不明艦娘のデータを持って会議室に来てくれ」

「少し時間をください」

 

明石がそう云うと電話を切った、それから三十分後、明石が会議室にやってきた。

 

「遅くなりました、こちらです」

 

明石がリストを俺に寄越した。

 

「明石説明を」

 

明石がホワイトボードを前に説明を始めた。

 

「艦娘は洋上補給という概念が無いので補給艦娘からの洋上補給という点はありませんが、漁協長さんのお話にある座礁した輸送船にどれだけの物資が残っていたかによって話は変わってきます、この輸送船については現在海軍省に確認中です」

 

明石は一息つくと話を再開した。

 

「航続距離については戦艦艦娘の航続距離をもとに計算して……………」

 

明石がホワイトボードに貼られた海図に鎮守府を中心とした円を書き加えた。

 

「更に、この輸送船に燃料や弾薬、食料が残されていた場合……………」

 

明石はその輸送船を中心とした円を更に書き加えた。

 

「かなりの広範囲だな」

 

哨戒機隊隊長とパトロール隊隊長は唸っていた。

 

「輸送船に隠れているとも考えられるが……………虱潰しに捜索するしかないですか……………」

 

パトロール隊隊長が部下と何か話していた。

 

「隊長、座礁した輸送船の中でこの位置に座礁している物が最大の大きさでだそうです」

 

明石が漁協長からの情報を俺に話した。

 

「この輸送船だけは貨物は満載のままだそうです、残りの船は積み荷はからだそうです先程海軍省から回答がありました」

「積み荷おろしていないのか…」

「はい、理由までは聞いていませんが」

「そうか……………パトロール隊隊長、この輸送船を中心に捜索を開始してくれ」

 

俺は物資が残されたまま放置された輸送船を指した。

 

「物資が残されているなら拠点とし生活している可能性もありますか……………」

 

佐伯と哨戒機隊隊長も頷いていた。

おれは会議を終わらせると、猿渡警視に現在までの内容を書面にして提出した。

 

「もう一つ気になるのは、この座礁輸送船から少し沖合にある島だな、物資を揚陸させることが出来れば…」 「あっ隊長、行方不明艦娘の中に神州丸とあきつ丸が!」    

 

青葉が行方不明艦娘のリストを見直して声をあげた。

 

「青葉、無線で沿岸パトロール隊に追加指示、この島を重点捜索対象とすると」 

「了解です」

 

青葉が無線機を操作してパトロール隊に連絡を入れた。

 

「哨戒機並びにパトロール艦の補給完了しだい、開始とのことです……………ちょっと待てください、哨戒機から輸送船の写真が転送されてきました」

 

青葉が複数の写真データを俺に見せてきた。

  

「隊長、此処を見てください!」

 

青葉がある画像を俺に見せた。

 

「此処をズームします」  

 

そこには船首に番号の記載がある大発が数隻輸送船の陰に隠されるように写り込んでいた。

 

「大発に記載されている番号から輸送船標準装備のものてはなく艦娘それも神州丸かあきつ丸のものと判断します」

 

哨戒機からの画像で事態に進展があった。

 

 

 



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〇〇鎮守府艦娘暴動事件 ⑤

前半は設定となります。


特捜

東雲警部班

東京都江東区豊洲のウォーターフロントに分庁舎を構える捜査班。

豊洲分庁舎…地下2階、地上8階建てのビル

地上2階…艤装及び銃火器保管庫と捜査車両の駐車場

地下1階…各捜査員個人所有車駐車場並びに倉庫

1階………警備員詰め所、工廠(車両整備場)

2階………会議室、通信司令室、各執務室

3階………浴場(男女別)、ランドリー室

4階以降…課員居室(2LDK)

8階………食堂、ラウンジ

 

編成

隊長  東雲(警部)

副隊長 明石(警部補 設備保全分隊指揮官)

    夕張(巡査部長 装備分隊指揮官)

    青葉(巡査部長 情報第一分隊指揮官)

    衣笠(巡査部長 情報第二分隊指揮官)  

    天龍(巡査部長 捜査第三分隊指揮官)

    龍田(巡査部長 捜査第四分隊指揮官)

    川内(巡査部長 捜査第一分隊指揮官)

    神通(巡査部長 捜査第二分隊指揮官)

各艦娘には一個分隊(4名)の一般隊員(巡査)を配置

明石と後述伊良湖の分隊のみ二個分隊8名編成

今回の事件中に新設分隊の追加あり。   

    間宮(警部補 通信傍聴分隊指揮官)

    伊良湖(巡査部長 主計分隊指揮官)

    鳳翔(警部補 航空機運用分隊指揮官)

    大淀(警部補 通信管制分隊指揮官)

以上合計12分隊69名

 

車両

(機材運搬等は積載物の安全の為に民間会社を偽装)

国産2トン ドライバン(3人乗り)

国産普通乗用車(5人乗り)

トラックは車体に東雲運送と記載あり(偽装車両)

小型ピックアップトラック(SUVタイプ5人乗り)

大型四輪駆動車(5人乗り)

等有り。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「これより捜査会議を開始します」

 

明石が捜査会議を仕切っていた。

 

「ちょっとその前に、俺達の班の再編成が行われた…新たに三分隊追加された……………まず鳳翔の航空機運行分隊、まぁドローンを運用する分隊だ、次は間宮の通信傍聴分隊、伊良湖の主計二個分隊、大淀の通信管制分隊の25名が配属となった、鳳翔、間宮、伊良湖、大淀はこの鎮守府からの転属だ、明石続きを」 

 

俺は新規配属班員の件を話すと明石に引き継いだ。

 

「青葉からお願い」

 

明石が青葉にマイクを渡した。

 

「えっと……………では青葉からいきます、今回の暴動で死亡したのは一般職員6名だけですが、この6名については身元調査が行き詰まっています」

 

青葉が隣に座る衣笠へとマイクを渡した。

 

「履歴書にある住所を訪ねた処、家人より別人であるとの回答があり、更にこの2名《剣崎 薫》《上代 祐希》ですが……………死亡したのは女性なのですが、人事課にあるデータでは男性でした」

 

青葉がホワイトボードに其々の写真を張り出した。

 

「それと遺体の検死を行なった医師の検死報告書が提出されてきました、それによるとこの6名の死因は暴行ではなく薬物による物と判明しました、尚薬物については目下調査中です」

 

「次は俺だな、それじゃ行くぜ」

 

天龍がマイクを受け取ると報告を始めた。

 

「食堂にあった給水器メンテナンス作業員だけどな……………現在も行方不明となってる、但し車両は隣接する〇△県の山中に乗り捨てられていた、車内から指紋等の遺留品は回収できなかった」

「それからねえ、作業員なんだけどぅ、こちらも身元不明なのよねぇ」

 

天龍から引き継ぎた龍田が報告を続けた。

 

「えっと、次は私が」

 

夕張が報告を始めた。

 

「通信機器室で発見された不審物ですが、最初に鎮守府明石が取り外した機器はある種のスイッチであり、其れが外れると催眠暗示電波が送信を開始する仕組みになっていました、ただ事前にある種の薬物を投与されていないと効果は無かったようです」

 

俺は今現在迄に判明した事実を確認した。

 

 

 

 



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〇〇鎮守府艦娘暴動事件 ⑥

午前5時

 

「さてと……………起きるか」

 

俺はビジネスホテルの一室で目を覚ました。

 

「この事件で既に2ヶ月か……………」

 

俺は洗濯物を纏めるとランドリー室へと向かった。

そのついでに朝風呂に入ることにした。

 

「まだ掛かるか」

 

俺は時計を見るとエレベーターで1階へと下りた。

 

「洗濯もまだ時間掛かるからな」

 

俺は朝食を先に済ませることにした。

 

「あっ、隊長おはようございます」

 

色んな分隊の隊員も起き出して朝食を取るためにレストランに来ていた。

 

「おはよう、今日も頼むよ」

 

俺は一人ひとりに挨拶を返すと、朝食のメニューを選んでいた。

 

「朝からバイキング形式とは有り難いですね」

 

いつの間にか隣に青葉がトレーを持って並んでいた。

 

「そうだな」

 

俺はそう言いながら、青葉のトレーにミニサラダを追加した。

 

「野菜も食えよ」

「はーい」

 

青葉は文句を言いながらもドレッシングを選んでいた。

其々に朝食を済ますと、また各自の部屋へと散っていった。

俺は洗濯物を回収すると、部屋に干した。

 

「ん、時間か」

 

俺は部屋を出ると2階へと下りた。

 

「みんなおはよう、今日の朝礼を始めるぞ」

 

ガタガタと音を立てて着席した。

 

「まず午前中に新規着任の捜査官4名と分隊員4名が合流する、これ以外に分隊員16名が豊洲分庁舎に着任することになっている、それに伴い、分庁舎から新規車両2台が昼一で到着するから衣笠は済まないがそのつもりで、次…青葉は哨戒機隊から上がってきたこの島の上空偵察結果を解析報告を、次…天龍と龍田は引き続き身元不明者の捜査を、川内並びに神通、夕張は通信機器室への外部からの不正アクセスの捜査を、最後になるが鎮守府への立ち入りを解禁とする以上」

 

俺は各自に捜査を割り当てた。

 

「はっ」

 

明石以下は起立すると敬礼して其々の捜査を開始した。

 

「明石は俺と川内達の捜査に合流だ」

 

俺と明石、川内、神通、夕張は裏手の通信機器室へと向かった。

 

「鎮守府の明石、夕張が到着しました」

 

川内の分隊員が鎮守府の二人を連れてきた。

 

「それじゃぁ、鎮守府明石、君の動きを最初から」

 

川内は鎮守府夕張の動きを聞いていた。

そして鎮守府明石役はうちの明石が、鎮守府夕張役はうちの夕張が行い現場検証が開始された。

 

「このハッチって?」

 

夕張の動きを検証していた神通があることに気付いた。

 

「鎮守府明石これは?」

「電力線や通信ケーブルトンネルへのアクセス扉です」

「降りてみますか」

 

神通がアクセス扉を開けた。

 

「このケーブルトンネルは何処まで延びてる?」

 

俺の問いに、鎮守府明石が答えた。

 

「電力線は鎮守府受変電設備と民間電力会社の変電所迄、通信ケーブルは鎮守府通信室と民間通信会社の基地局迄です」

 

俺は其れを聞くと、川内と神通に捜査指示を出した。

 

「川内は電力会社に行って、電力線トンネルから地上に出るマンホールはないか確認を、神通は通信会社で同様のマンホールの確認を!」

「はい!」

 

川内と神通が其々の分隊員を引き連れ確認へと向かった。

 

「隊長、念の為に市の上下水道の図面も取り寄せます」

 

明石が市役所に向かった。

 

俺は一旦ホテルへと戻ることにした。

 

「隊長おかえりなさい、進展は?」

 

衣笠が出迎えた。

 

「川内達の報告待ちだな」

「そうですか、こちらは新規着任の捜査官4名と分隊員4名並びに捜査車両2台が到着しました」

 

そう云う衣笠の後ろに8人の捜査官が並んでいた。

 

「大淀以下8名本日付けを以って特捜東雲班ヘ着任しました」

「大淀以下の着任を許可する、正式な辞令は豊洲分庁舎に戻ってからとなるが宜しく頼む」

 

俺は簡単な着任式を行うと、大淀を通信指揮車に連れて行った。

 

「君の指揮する通信管制分隊の車両だ」

 

俺は大淀に2台の《東雲運送》と描かれたトラックを指した。

 

「えっと……………運送会社のトラックが??」

 

大淀は混乱していた。

 

「職務の都合上、民間の運送会社を偽装している」

 

俺はそう言うと、トラック側面の扉を開いた、その車内は最新の通信機器が並んでいた。



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〇〇鎮守府艦娘暴動事件 ⑦

川内達が電力会社等を捜索して数日が過ぎた、その間は特に進展もなく過ぎていった。

 

「ていと…失礼しました隊長、明石さんから通信で市の河川整備課と水道局で上下水道と河川詳細地図の提供を受けられ今から戻るとのことです」

「そうか、わかった」

 

その日の昼過ぎに明石が戻ってきた。

 

「隊長、河川と上下水道の地図をデジタル情報で提供してもらえました」

 

そう言うと、明石がプロジェクターに投影した。

 

「後程、市街地地図と重ねられるように加工します」

 

俺は投影された地図を見ていた。

 

「上下水道や河川だけだとわからないな、後は川内達の情報を待つだけか……………ん?ここ川なんかあったか?」

 

俺は鎮守府から少し離れた場所に河川が有ることに気が付いた。

 

「あっ、此処は暗渠区間です……………こちら側の入り口は住宅地なのでひと目に付きますが、反対側は山間部の過疎地区なので出入りはわかりにくいかと」

「隊長、戻りました」

 

会議室に川内と神通が入ってきた。

 

「詳細図面提供受けられました」

 

川内と神通はUSBメモリーを明石に渡した。

 

「このデータ形式なら……………画像重ねます」

 

明石がプロジェクタースクリーンに2つのデータを重ねた。

 

「通信会社からの話では、サービス・ホールは基地局となると各地方の支局下からしか入れないそうです」

 

神通が通信会社からの情報を報告した。

 

「私だね、電力会社のサービス・ホールは此処と此処、それと此処の3箇所、そして問題なのはこの場所で電力会社の話ではここ最近3ヶ月作業は無いとの事でしたが、実際に周辺の住民に確認したところ、此処で事件の一週間前に緊急工事と称して5分程度工事車両と作業員がいたそうです、現在近隣住民と関係機関から防犯カメラ映像の提供を要請中です」

 

川内が報告した。

俺は重ねられた地図を見た。

 

「……………電力会社のサービス・ホールから入って、鎮守府へ侵入、暗渠を伝って脱出というのが経路か…川内と神通は防犯カメラ映像の検索を明石は俺とこの暗渠の調査に向かう、明石は河川整備課に話をつけてくれ」

「了解」

 

また川内達が捜査に戻っていった。

 

「隊長、哨戒機からの画像きました」

 

大淀が数枚の画像データを俺のパソコンに転送してきた。

 

「……………人体らしき熱源ありか」

 

機長からの電文が添えられていた。

 

「これは?」

 

俺が指差したのは、島の反対側入り江となっている部分だった。

 

「艦娘の艤装?でしょうか、拡大鮮明化します」

 

大淀に代わって青葉がパソコンを操作した、

 

「終わりました、画像表示します……………艤装に間違いないです」

 

鮮明化した画像には浅瀬の海底に沈んでいた艤装が映し出されていた。

 

「自沈迄行動をされていたのか!」

「ですが島にはかなりの人数いるようです、熱源の分布からの人間では無く艦娘であることに間違いありません」

 

青葉が各種データからの結果を報告した。

 

「隊長、神通さんからの通信で防犯カメラ映像入手出来たとのことです」

 

地元警察が捜査協力で回収してくれたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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〇〇鎮守府艦娘暴動事件 ⑧

「我々は艦娘達の保護を優先とし、特捜三課は座礁輸送船の捜索を」

 

俺は会議室に並ぶ捜査員艦娘に指示を出した。

 

「了解です」

 

捜査員艦娘が会議室から出ようとした時、

 

「特捜本部より各局…特捜本部より各局」

 

特捜本部からの緊急無線が入った。

 

「………全員そのまま!」

 

俺達は各々その場で内容を聞いた、

 

「当該被疑者職業住所不定『猪戸 高揚』並びに同『猪の倉 久良』、『丈競山 海斗』の身柄を横須賀駅にて確保………繰り返す………」

 

俺は通信が終わると、

 

「聞いてのとおりだが、引き続き一課は背後関係、三課は被害者艦娘の救助にあたってくれ以上!」

 

俺は改めて指示を出すと、会議室を出た。

 

「警部、猿渡警視から緊急の帰庁命令です、一体何が………」

 

間宮が追加の通信を俺に伝えた。

 

「俺にもわからん………」

 

俺は明石経由で全員の撤収指示を出した。

 

「全員そのまま聞いてくれ、先程猿渡警視から俺達二課から三課へ捜査を引き継いで豊洲庁舎へ戻る旨の命令がきた、速やかに機材を纏めて撤収準備に掛かってくれ」

 

俺は全員に指示を出すと、ホテル関係者や民間協力者にその旨を話し、引き続き三課が捜査にあたることを伝えた。

 

「警部、撤収準備完了です」

 

明石が報告に来た。

 

「そうか…それじゃ撤収しますか、総員乗車!」

 

明石以下の二課員達が一斉に捜査車両に乗り込んだ。

 

「支配人、お世話になりました、この事件が完全に解決するまでは三課と一課が残りますので、引き続きお願いします」

 

俺はホテルの支配人に挨拶をすると、明石と東京行きの新幹線に飛び乗った。

 

「一体何が………」

 

俺は駅で待っていた県警の捜査課長から一通の封筒を受け取っていた。

 

「………………こいつらか!」

 

そう封筒の中身は今回の事件の背後にあった非合法組織とそこが運営する特殊風俗の詳細だった。

 

「艦娘は人間と性行為しても妊娠しにくく、年齢もある程度固定化………」

 

俺は資料を読んでいるうちにあることに気がついた。

 

「この内容、一般人には知らされていないはずなのにどうして………まさか!そうとしか………」

 

俺の予想では海軍内それも高官が関わっているとみた、実際にそれしか考えられなかったのだ。

 

「問題は、〇〇鎮守府の被疑者が何処まで知ってるかだな」

 

俺は資料に目を通しながらコーヒーを口に含んだ。

隣では俺の手渡した資料を明石も読んでいた。

 

「警部、やはり」

「あぁそこに行き着くな」

 

明石も内部の協力者に考えが行き着いたようだった。

 

「まぁあとは豊洲庁舎に帰ってからだな、今は呑むか」

 

俺は車内販売の売り子を呼び止めるとつまみとビール二人分を買った、

 

「明石ほれ」

 

俺は明石にビールとツマミを渡した。

 

「いただきます」

 

明石がビールのプルトップを開けた。

 

「たまりませんね、この一口が!」

 

俺と明石は新橋迄の一時の安らぎに浸っていた。

 

 



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束の間の休息

「『猪戸 高揚』並びに『猪の倉 久良』、『丈競山 海斗』の口から芋づる式に………」

 

俺は上司である猿渡警視から事件の顛末を聞かされた。

 

「関係者総てを逮捕したのだから解決したと考えて良かろう」

 

猿渡警視がふぅと小さく溜息をつくと頷いた。

 

「まぁ、君達2課は一週間の休暇を取るように」

 

俺は猿渡警視より強制休暇を言い渡された、まぁ今回の事件でかなりの期間缶詰めになっていたからな。

 

「隊長!」

「おぅ、終わったぞ」

 

俺の姿を見つけた運転手兼護衛の夕張が駆け寄ってきた。

 

「で、どうでした」

 

夕張は事件の結末を知りたい様子だった。

 

「まぁ有耶無耶にはならずに、総ての関係者を逮捕したそうだ………それと一週間の特別休暇が出た」

 

俺の口から出た特別休暇一週間という言葉に夕張が目を輝かせた。

 

「本当ですか!」

「先ずは打ち上げをするか」

「はい」

 

夕張が直ぐに庁舎で待機している間宮と伊良湖にメールを打っていた。

 

「隊長、二人共準備に入りますって」

 

まぁ、事件も解決したから羽目を外すのもいいだろう。

 

「よし、徹底的に呑むぞと言いたいが、先ずは報告書の作成をしないとな」

「おぅ………」

 

夕張の声が小さくなっていった………、

 

「報告書………」

「そう書類仕事だ、安心しろ報告書は俺がさっき提出してあるから、あとは交通費とかの必要経費のものだけだ」

 

まぁ今は電子化されていて交通費等だけだし、それに宿泊費用は今回は関係ないしな。

 

「隊長、じゃあ豊洲に帰りましょう」

 

夕張の運転で俺は豊洲庁舎へと帰ることにした。

 

「隊長は休暇中は何をしますか?」

 

唐突に夕張が休暇中の予定を聞いてきた。

 

「そうだな、掃除と洗濯とあとは映画見て呑み歩く位か」

 

俺の答えを聞いた夕張が、

 

「なら、隊長皆でバーベキューしましょうよ」

 

呑み歩くよりはバーベキューの方が少しはマシか、

 

「そうだな、バーベキューもいいか」

 

とはいえ、一週間という日数は溜まった洗濯や掃除をしても有り余る日数だ。

 

「近場にで「私も行きたいです!」も」

 

夕張が喰い付いた、

 

「本当に近場だぞ」

 

俺は夕張の押し負けて、連れて行くことにした…だが何故か明石と大淀、青葉にバレて三人も連れて行くことになるとは此時は思いもよらなかった。

 

「問題は何処に行くかだな…」

 

俺は行き先を考えることにした。

 

「近場でそれなりにとなると………」 

 

俺が悩んでいると、

 

「秋葉原と中野なんてどうです」

 

趣味丸出しのチョイスだが………これと言って行き先を思いつかなかったので俺は頷いた。

 

 

 

 

 




今回は短いお話ですが、まぁ休息といったところです。


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K警備基地艦娘蒸発事件………①

「全員集まったな」

 

俺は会議室に全員を集めた。

 

「猿渡課長から緊急を要する案件が指示された、明石頼む」

 

俺は明石に照明の操作を命じた。

 

「事件は首都近郊のC県K市にある警備基地で昨晩発生した…詳細は手元の資料を見てくれ、行方不明になったのは阿賀野型の阿賀野、矢矧の2名、防犯カメラ映像からは昨晩の23時迄はいた事が確認されている」

 

俺は説明に合わせて送られてきた防犯カメラ映像を再生させた。

 

「この寮の一階にあるコンビニを出たあと消息が途絶えた、ここまでで何か質問は?」

 

俺は一旦説明を終えると確認した。

 

「隊長…寮の出入り方法は?」

 

夕張が聞いてきた、

 

「入る方は生体認証つまり虹彩認証だ、出るのはカードアクセスだけだそうだ」

 

「窓は?」

 

川内も寮の間取りを見ながら聞いてきた。

 

「窓は総て施錠状態で一階は基本的には食堂用倉庫なので間宮か秘書艦のカードでないと開かないそうだ、まぁ履歴は当日に関して言えばなかったそうだ」

 

川内が唸っていた。

 

「窓は施錠…カード履歴なし…となると一体どうやって」

 

神通も首を傾げていた。

 

「行方不明は阿賀野型の二人だけですか?」

 

龍田が質問してきた。

 

「そうだ、軽巡はあともう一人夕張が居るのだが、そちらは存在が確認されている、この事件の第一発見者とで発見の経緯はコンビニ行くなら序にと買物を頼んだらしいのだが、いくら待っても帰ってこなかったそうだ、それが23時で1時間待っても戻らない二人を心配してコンビニに行ったがいなかったので司令に報告の上でこちらにまわってきたということだ」

 

俺は全員の顔を見ると、

 

「分担を決める先ずは青葉、衣笠、夕張はカード履歴並びに基地内の監視カメラ映像のチェックを、川内、神通は寮の調査、天龍、龍田は所属艦娘からの聴き取り、間宮は阿賀野と矢矧の携帯及び基地内の通信履歴の調査を、それでは取り掛かってくれ」

 

「はっ!」

 

全員が即時に捜査に取り掛かるべく会議室から散っていった。

 

「大淀は俺とこれから海軍本部に基地司令の事情聴取に向かう、明石は必要に応じて行動してくれ」

 

「了解です」

 

俺は大淀に説明すると海軍本部に向かうことにした。

 

「私は少し気になることがあるので捜査に同行します」

 

そう言うと明石は現地捜査組に加わった。

 

「所属艦娘はいなくなった2名を加えて18名、阿賀野、矢矧、夕張、睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、長月、菊月、三日月、望月、初霜、子の日、雷、電………」

 

俺は大淀の運転する車の助手席で基地資料に目を通した。

 

 

 

 

 

 



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K警備基地艦娘蒸発事件………②

「隊長、海軍本部に着きました」

 

俺は大淀と海軍本部へとやってきた、警備基地司令への事情聴取が目的だ。

 

「特捜の東雲と大淀だ、連絡は来ているはずだ」

 

俺は警察手帳を入り口に立つ警備兵に提示した。

 

「はっ、伺っております、只今案内の者が参りますのでお待ちを」

 

俺は暫し待つことにした。

 

「東雲警部お待たせ致しました」

 

2名の憲兵と思しき男が二人こちらにやってきた。

 

「こちらが我々の聴き出した調書です」

 

俺は男からファイルを受け取ると中を確認した。

 

「成程………聞いている内容と然程違わないようだな」

 

俺は歩きながらパラパラと資料を捲っていった。

 

 

「やはり現場で調べるのが最短か………」

 

等と考えていると、

 

「東雲警部、大淀警備補こちらの部屋でお待ち下さい」

 

俺達はこじんまりとした応接室に案内された。

 

「隊長…まさかこの部屋で?」

 

大淀が小声で聞いてきた。

 

「あくまでも事情聴取っていうことだからな」

 

俺は大淀に答えた。

 

「お待たせ致しました」

 

先程の背広姿の憲兵が一人の制服姿の男を連れてきた。

 

「私に何か…?」

 

男性は俺達に警戒している様子だった。

 

「申し遅れました、自分は特捜の東雲と大淀です、今回の艦娘蒸発事件の調査を担当することになりました、それで我々は司令からお話を伺うためにきました」

「そうですか………何処から話せば?」

 

何とか話してくれそうな雰囲気になった。

 

「それでは二人が行方不明になった事を知った状況からお願いします」

「分かりました、二人が消えたと報告を受けたのは確か0時を少し過ぎたくらいだったと………夕張から報告を受けました、その後総員起こしをかけて基地内の捜索を行いました」

 

俺は手元の資料と比べながら聞いた、

 

「23時頃までの他の艦娘の行動は?」

「睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、長月、菊月、初霜、子の日、雷、電の13名は私の部屋で23時頃迄映画を見ていました、三日月、望月の2名は部屋で寝ていたと聞いています」

 

大淀がメモを取りながら資料と見比べていた。

 

「夕張の話では23時頃に阿賀野がコンビニに行くと部屋から出てきた所で会ったそうです…そのときに夕張が序にカップ麺を頼んだのが最後の姿だったらしい…」

 

司令が俯きながら証言を続けた。

 

「一つ確認したいのですが、その時夕張は二人を見ているのですか?」

 

俺は夕張が見たのは阿賀野だけなのかそれとも二人揃って見ているのかを確認した。

 

「其処までは聞いていません………」

 

声が小さくなってった。

 

「成程、すみませんが一度警備基地ヘご同行願えますか、司令立ち会いのもとで調査をする必要があります」

「分かりました…二人が見つかるなら協力致します」

 

俺は憲兵に司令を連れ出すことを伝えた。

 

「問題ありません、我々からも早期の解決をお願いします」  

 

憲兵が頭を下げた。

 

「分かりました、解決に向けて努力します」

 

俺はそのまま大淀に車を運転させるとK警備基地へと向かった。



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K警備基地艦娘蒸発事件………③

「隊長、到着しました」

 

海軍本部を出発してから3時間後、目的地である警備基地に到着した。

 

「東雲警部こちらへ」

 

司令が応接室へと案内してくれた。

 

「基地内の施設は使ってもらって構いません、寮も部屋は余っているので宿泊も可能です」

「寮の使用は辞退します」

 

俺は宿泊施設の利用を断った。

 

「なぜです?」 

 

 司令の疑問は尤もだった。

 

「一応事件事故の両方から捜査するから、流石に現場に泊まるはな…」

 

其処まで聞いた司令ははっとなった。

 

「配慮が足りずすみません」

「いえ、お気になさらずに」

 

大淀がすかさずフォローしていた。

 

「我々専用の車両が後程到着しますので駐車スペースと電源の確保をお願いしたいのですが?」

「大丈夫です駐車スペースと、外部電源は確保できます使ってください…その………専用車両とは?」

「東雲観光と描かれた大型バスが6台です」

 

 

車両情報を確認すると司令が何処かに電話して指示を出していた。

 

「さてと大淀、捜査員全員を会議室に集めてくれ」

「了解です」

 

大淀が直ぐに呼集をかけていた。

それから直ぐに青葉、衣笠、夕張、川内、神通、天龍、龍田、間宮が会議室にやってきた。

 

「隊長も来たんですね」

 

青葉が寄ってきた。

 

「結局な………全員座ってくれ」

 

俺は海軍本部で司令から聞いた内容を話した。

 

「隊長、その夕張からの話だけど、矢矧の姿は見ていないそうです、直接姿を見たのは廊下にいた阿賀野だけだったそうですが、ただ矢矧らしき声は聞こえたようです。」 

 

龍田が報告してきた。

 

「先ずはカード履歴ですが、阿賀野と矢矧の履歴が23時34分にコンビニアウトでありました…その後の履歴は有りません、次に基地内の監視カメラ映像を確認しました処、此方も寮から出た映像は記録されていません」

 

青葉が報告した。

 

「司令寮への立ち入りを許可してもらいたい、それと寮の設計図面とかあれば」

 

俺は実際に足で捜査することにした。

 

「構いません、寮の設計図面は…探してみます」

 

司令は直ぐに手空きの駆逐艦達を動員して書庫を捜索してくれた。

 

「隊長…一体?」

 

 

神通が小声で聞いてきた。

 

「まだ可能性だが、隠し通路や部屋の類があるのではないかと思ってな………」

 

だがその可能性は用意された設計図面には記載されていなかった。

 

 

「となると………実測してか明石と夕張の出番だな」

 

俺は二人を呼んだ。

 

「寮の実測調査をしてくれ、部屋の間取りから総てだ、必要なら豊洲庁舎待機組を招集しても構わない」

「了解です」

 

二人は直ぐに取り掛かった。

俺は設計図面を見ながら怪しい箇所に印を付けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




新たな専用車両について。
宿泊用車両………大型観光バスを改造し12名分の個室を備える(今回は5台60名分)
指揮管制車………大型観光バスを改造し2名分の個室と通信機器、指揮所を備えた車両で今回は1台


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K警備基地艦娘蒸発事件………④

「隊長………」

 

明石と夕張がやってきた。

 

「何か解ったか」

 

俺は二人に聞いた、

 

「先ず此処を見てください、一階の階段室なのですが不自然な造りになっています」

 

そう言うと、明石が現場写真を示した。

 

「本来なら一階で終わっている場合、踊り場はこうなりますが、この施設のそれは明らかに地下が有るような造りです、それと此処の部分は図面との相違がありました」

「此処の司令に聞いてみるか、神通呼んできてくれ」

 

俺は神通に司令を呼ぶように指示した。

 

「了解です」

 

神通が部屋から出ていくと、程なくして司令を連れて戻って来た。

 

「何か分かりましたか?」

「はい、司令この図面と写真を確認してください」

 

俺は明石に先程の階段室の件を説明させた。

 

「隠し階段があるということですか!」

 

司令は驚きを隠せなかった。

 

「現地調査の結果にもよりますが、何らかの地下施設があると考えられます、また何か分かりましたらお呼びしますので執務室にて待機していてください」

「そんな………わかりました」

 

司令が退席すると、夕張が寄ってきた。

 

「隊長、階段室の件ですが…地中探査装置での探査の結果、この基地敷地外迄地下通路が延びています、現在ドローンに探査装置を取り付けて出口の捜索を行っています」

 

俺は夕張からの報告を聞くと、

 

「外部からの侵入…誘拐事件なのか」

 

俺は考えを口にした。

 

「あとはその隠し通路使っての脱走…ただ此処の司令の業務を見る限りだと艦娘に対する不当な扱いは無いようなので………」

「阿賀野と矢矧の性格から考えても脱走は考えにくいな…」

「確かに………やはり誘拐」

 

俺と夕張、神通が等と考えていると、

 

「隊長、隠し階段の入口及び、地下通路の出口を見つけました」

 

現地調査をしていた明石が戻って来た。

 

「見つけたか!」

 

俺は、直ぐに全員を集めると、

 

「これより地下通路の探査に向かう、先鋒は川内、神通、本隊は明石、夕張とし後衛は天龍、龍田とする、青葉は俺と本隊と同行、衣笠は間宮と此処に残り通信を担当以上!」

「了解!」

 

全員が速やかに行動を起こした。

俺は基地司令に現時点で判明していることを総て説明すると、通信指揮車での待機を伝えた。

 

「わかりました、阿賀野と矢矧をお願いします………」

 

司令が力なく応じた。

 

「隊長、こちらです」

 

明石が階段室の壁の一部を押し込んだ。

 

「そんな所に隠しスイッチがあったのか」

 

明石がスイッチを押すと、床の一部が開いた。

 

「川内………」

「了解」

 

川内と神通が警戒しながら階段を降りた。

 

「クリアー」

 

俺達は川内達に続いて地下通路へと降りた。

 

「隊長、ゴルフカートがあります」

「使わせてもらうか、全員搭乗!」

 

俺達は数台あるゴルフカートから3台を選ぶと装備を載せて地下通路を進むことにした。

 

「敷地外迄延びているので距離があるので置いてあったのでしょう」

 

明石がタブレットに地図を表示させて地下通路の詳細地図を作製しながらそう言った。

 

「隊長そろそろ出口です」

 

先頭の神通から報告が入った。

 

「各員警戒を怠るな」

 

俺達はゴルフカートから降りると、地上へとむかうてあろう階段を駆け上がった。

 

「室内に人の気配は有りません」

 

サーマルサイトを付けたMP7A1を構えた川内から報告があった。

 

「警戒を怠るな、突入」

 

神通がそっと扉を開き室内へと侵入した。

 

「ルームクリア………阿賀野型の制服を発見、状況から無理矢理着替えさせられた可能性大」

 

川内から報告が入った。

 

「隊長、こちらに接近する車両あり!」

 

ドローンを操作する夕張が声をあげた、

 

「2階に!」

 

俺達は2階にある事務室と思しき小部屋に身を隠した。

 

「あれは!」

 

倉庫の扉が開くと1台のワゴン車が入ってきた。

 

「次は駆逐艦だってよ、如月、文月、初霜の3人だそうだ」

 

車から降りた男が部下に指示を出していた。

 

「隊長、車内にあと2名の熱源あり、車外と合わせて5名」

「5名か、川内、車内にスタングレネード、天龍達は車外の3名を確保!」

「了解」

俺が指示を出すと、川内がワゴン車の車内にスタングレネードを投げ込んだ。

大音響と閃光が車内を襲った。

 

「なんだ!」

 

車外の3人が振り向くより早く俺と天龍と龍田が制圧した。

 

「とっとと歩け!」

 

5人を拘束すると2階の小部屋に連行した。

 

「隊長、全捜査員こちらに向かってます」

「了解した」

 

俺はMP7A1を構えると、リーダーであろう男に近付いた。

 

「阿賀野と矢矧を何処へ連れて行った」

「知るかよ」

 

あくまでも反抗的な態度のリーダー格の男に、俺は銃床で殴り付けた。

 

「もう一度聞く………」

「………」

 

「明石」

「了解です」

 

明石が注射器を手に戻って来た、

 

「やめてくれ、答えるから………」

 

リーダー格の男は注射器を見ると怯えるように答え始めた。

 

「代議士の星谷に売った………」

 

俺は直ぐに猿渡警視に星谷代議士宅への家宅捜索令状を請求した。

 

「隊長、家宅捜索令状出ました」

 

夕張が近隣の裁判所に受領に向かった。

 

「さて、貴様らにはこれから家宅捜索令状が届くまでの間に色々喋ってもらおうか」

 

K警備基地は今の司令になる前から、艦娘の行方不明事案が度々発生していて、星谷代議士が総て絡んでいることが判明した。

 

「成る程、貴様らが総て攫ってきたと………全部で6名、阿賀野、矢矧、浜風、潮、愛宕、高雄で間違いないな」

「はい、間違いまりません」

 

リーダー格の男が素直に認めた。

 

「隊長、間違い無いようです、過去の行方不明事件と合致します」

 

無線で間宮が報告してきた。

 

「隊長戻りました」

 

夕張が家宅捜索令状を手に戻って来た。

 

「それでは、これより星谷代議士宅への家宅捜索を開始する」

 

実行犯5名を憲兵に引き渡すと、俺達は憲兵の用意した車両で星谷代議士宅へと向かった。

 

「特捜だっ!全員その場を動くな!」

 

俺は家宅捜索令状を提示すると星谷代議士宅へと突入した。

 

「なにごとじゃ!」

 

でっぷりとした70歳近い男が殆ど裸で出てきた。

 

「代議士まずは服を着てこい」

 

俺達は代議士の静止を振り切ると邸宅内の家宅捜索を開始した。

 

「隊長、阿賀野発見!」

 

俺は天龍の報告に現場へと向かった、そこには全裸で首輪をつけられた阿賀野がいた。

俺は龍田が持ってきたバスタオルを掛けると、

 

「阿賀野確保!」

 

無線で全員に伝えた、その後も行方不明艦娘の確保の報告が次々と入った。

 

「全員………全裸に首輪とは、悪趣味以外何物でもないな」

 

俺はそうつぶやくと、明石からの報告を待った。

 

「隊長、全員から違法薬物の反応と…阿賀野、矢矧を除く全員から…その複数からされたであろうレイプ反応がありました」

 

俺は明石の検査報告書を付けて憲兵隊に星谷代議士と邸宅内いた全員も同様に取調べ後引き渡した。

 

「胸糞悪い終わり方だったな………薬で自由を奪ってから複数でレイプしてそれをネタに脅していたとは………」

「ドッグに入れば体の傷は消えますが………心までは」

 

明石と夕張が目を伏せた。

 

「そういえば阿賀野と矢矧は?」

「カウンセリングと治療の後原隊復帰するそうです」

「そうか………」

「その矢矧はあそこの警備基地司令の婚約者だそうです………」

 

俺はその話を聞くと…あの司令に何処まで話すか頭を悩ませた、ただ救いだったのは阿賀野と矢矧はまだ薬物だけで済んでいた事だった。

 

「総員、撤収!」

 

俺達は警備基地へと戻ることにした。

 

「司令、阿賀野と矢矧の身柄を確保しました…こちらが報告書です」

 

俺は一連の事件内容を纏めた報告書を司令に手渡した。

 

「ありがとうございます」

 

司令は報告書を受け取ると読み始めた。

 

「あの代議士が…」

 

司令の目に怒りの色が出ていた。

 

「過去にもやっていたようで、拷問の付録付きで今頃は憲兵の取り調べを受けているでしょう」

 

司令が報告書を最後まで読むと、

 

「阿賀野と矢矧は薬だけで済んでいましたか…よかった」

 

司令の目に光るものがあった。

 

「それでは、我々はこれで」

 

俺達は豊洲分庁舎への帰路に着いた。

 

後に憲兵から回ってきた報告書に星谷代議士はあの6名以外にも多数の艦娘誘拐事件に関与していたらしく、死刑宣告がされたそうだ、勿論あの時に邸宅内にいた全員も関与していたので………同様に死刑となった。

 

「ふぅ………」

 

俺は、報告書を机に投げ出すと、溜息をついた。

 

 

 

 

 




特捜 東雲警部班で使用される火器について。

個人装備 
H&k MP7A1(4.6☓30mm)サプレッサー、スコープ、40発マガジン
H&K HK53(5.56x45mm NATO)前衛の神通と川内、天龍、龍田のみ試験的に装備。

分隊装備 
M249PARA(5.56x45mm NATO)
M14EBR-R(I7.62x51mm NATO)

※分隊装備については殆ど使用することはなく個人装備のMP7A1を2丁持ち及びH&K HK53で対応する事が殆ど。



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K警備基地艦娘蒸発事件………⑤

「憲兵の不始末の後片付けに行くか………大淀同行を」

「了解です」

 

俺は大淀を連れてK警備基地前任の司令を訪問した。

 

「元司令………いらっしゃいますか、特捜の東雲と大淀といいます」

 

俺はインターホーンを鳴らすと出てきた声の主にそう告げた。

 

「今更何のようだ………」

 

出てきた中年男性は不機嫌そうに俺を睨みつけた。

 

「以前勤務されていたK警備基地艦娘蒸発事件についてお話がありまして伺いました」

 

中年男性は俺を睨みつけたまま上がるように手招きをした。

 

「正式な謝罪と賠償については後日憲兵隊司令が伺うとのことです………簡単にお話すると、不名誉除隊の取り消しと本日までの大佐としての給与並びに賞与、賠償金のお支払いがあるとのことです」

 

元司令は俺の話を黙って聞いていた。

 

「つまり別に犯人がいて、私は誤認逮捕だったと」

「はい」

「特捜の君達に当っても仕方ないか………で話とは?」

 

俺は報告書を元司令に手渡した。

 

「読み終えたら返却をお願いします」

 

元司令は黙って頷くと読み始めた。

 

「あの代議士が黒幕だったのか!………そうか高雄見つかったのか」

「現在、高雄以下は治療とカウンセリング中です」

 

元司令はほっとしたような表情を浮かべた。

 

「元司令、あの警備基地の土地はどのようなかたちで?」

 

俺は話の本題を切り出した、

 

「あそこは元々漁労があってね、代議士経由で警備基地にどうかと打診されたのだよ、上が現地視察して受けたらしい、特に建物とかは改修せずに使える状態だったからね」

「成る程、代議士は建物を改修されないように事前に改装をしていたのか…」

 

俺はその後も元司令に過去の事を確認した。

 

「ちょっと失礼します」

 

俺は掛かってきた電話に出た、

 

「はい東雲………はい、はい、了解した、伝えておく」

 

俺は電話を切ると、元司令に内容を伝えた。

 

「今部下からの報告で高雄、愛宕の治療とカウンセリングが終わったそうです、本人の意思で元司令の下に戻りたいと、あとの2名は残念ながら除隊とのことです」

 

元司令は少し考えると、

 

「高雄と愛宕を受け入れます…元々高雄とは将来を見据えたお付き合いをしていましたから」

「そうでしたか…一応高雄、愛宕は予備役扱いとなります、お幸せに」

 

俺達はそれだけ言うと、元司令宅をあとにした。

 

「高雄さん幸せになれると良いですね」

 

大淀がボソリと呟いた。

 

「なれるとではなくなるでないとやりきれないな」

 

俺はそれだけ言うと車を豊洲分庁舎へと走らせた。

 

後日、正式に元司令は不名誉除隊を解除となり、その期間の大佐としての給与並びに賞与と賠償金が支払われた、そして高雄と結婚しだそうだ。

 

「高雄のウエディングドレス姿綺麗ですね………私も誰がいい人に貰ってもらいたいです」

 

大淀が送られてきた結婚報告のハガキに印刷されていた写真を見ながら溜息をついていた。

………そこで何故俺を見ると?

 

 

 

 



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インターミッション(改)

「全員注目! 昨日で捜査も終了しましたので本日は各自持ち出した火器の点検と使用弾薬の返却点検を行います、隊長からは?」

 

大淀が予定を説明した。

 

「俺からは………今回は弾薬使用が無かったので申告書は楽だとは思うが………特に天龍期日まで出すように、龍田は監督を頼む、提出が無いと明日からの休みは無しだ」

 

俺がそう言うと天龍がブツブツ文句を言っていた。

 

「俺だけかよ」

「あら天龍ちゃんがドンケツでせっつかないと書かないじゃない………」

 

龍田が天龍をやり込めていた。

 

「それでは各自始めてください」

 

俺達は持ち出したH&k MP7A1やH&K HK53から弾倉を抜くとコッキングレバーをひいては銃内部に弾が残っていないか確認すると、弾倉から弾丸を抜いて専用ケースへと収めた、今回は分隊装備のM249PARAとM14EBR-Rの持ち出しが無かったので少しだけ楽が出来た。

 

「大淀できたよ」

 

川内と神通が電子報告書を送信してきた。

 

「問題無し」

 

俺は報告書に不備がないのを確認すると承認印を押して、大淀へと転送した。

 

「隊長、出来ました」

 

次に出してきたのは青葉と衣笠だった、

「問題無し」

 

俺は承認印押すと同じ様に大淀へと転送した。

 

「お~い、天龍まだかぁ~」

 

そして残るは天龍だけとなった。

 

「天龍ちゃん………書き直し」

 

龍田がダメ出しをしていた………、どうやら誤字脱字が多いようだ。

 

「何をそんなに時間がかってるんだ?」

 

俺は天龍の書いている報告書を覗き込んだ。

 

「弾薬使ってない………弾薬の返却と持ち出した数が合わないだと?」

 

天龍の報告書に記載された弾薬の数が30発も合わないのだった。

俺は報告書のとある項目に目が行った。

 

「なぁ天龍………お前のH&K HK53弾倉は何発いりだ?」

 

そう原因は簡単な事で、H&K HK53の弾倉はうちでは30発を使用しているのだが、天龍は何処で間違えたのか40発弾倉で報告書を書いていたのだった。

 

「天龍………俺達の所のH&K HK53は30発弾倉しか使ってないぞ、何処から40発弾倉が出てきた?」

 

俺の指摘に天龍はようやく間違えに気が付いて訂正した報告書を提出してきた。

 

「まぁこれでいいだろう」

 

俺は承認印を押すと大淀に渡した。

 

「本庁装備課に送信します」

 

大淀が全員分を纏めると、本庁装備課へと報告書を送信した。

 

「天龍も無事に報告書を出してきたので………今日の午後半休と明日よりの6日間の休暇とする!」

 

………で?迎えた連休初日、何故か明石と大淀が俺の部屋に居た。

 

「何で俺の部屋に居る?」

 

俺はジト目で明石を見た。

 

「えっとですね………皆朝からどっか行っちゃいまして…私達は部屋呑みしようかとも思ったのですけど…ちょっとさみしいかなぁ何て思って………それなら隊長の部屋でってことになりまして………」

「まぁわかったよ………ったく」

 

俺は呆れながらも冷蔵庫の中身を確認した。

 

「つまみになりそうな物も何もねぇなぁビールも心許無いか………明石は宅配のピザの注文と皿とか用意を、大淀は俺とつまみとビールの買い出し」

 

俺は明石に少しだけ多めに金を渡すと、大淀を連れてつまみの調達へと向かった。

 

「大淀はケンタで骨なしチキンを………他にもあるなら任せる」

 

大淀にこれまた金を渡すと、

 

「俺はコンビニ巡りすっか」

 

大淀と別れると、俺はコンビニにビールやホットスナックを買いに向かった、

 

「結構買ったな」

 

レジ袋にはコロッケや春巻き等のホットスナックが大量に入っていた。

 

「余ったら帰ってきた奴も食べるだろう」

 

レジ袋を眺めながら車で待っていると、大淀が両手に袋を持って帰ってきた。

 

「大淀も買ったな」

 

俺は袋を覗き込むと、

 

「ホットパイ………買ったのか」

「はい骨なしチキンとポテトとかナゲット、バーガーです」

 

そう言いながらお釣りを俺に返してきた。

 

「さて呑むか」

 

俺は部屋に戻ると、テーブルに買ってきたホットスナックを拡げると予め冷やしておいたビールを開けた。

 

「………喰い切れるか?」

 

テーブルの上から溢れんばかりの料理も並んでいた。

明石が気を利かせてオニオンリングフライやタコワサを作ってきたのだった。

 

「青葉と衣笠がお昼前に帰るって連絡があったから………追加で」

 

笑いながら明石が答えた。

 

「ただいまぁ………美味しそうな匂いが!」

 

青葉が鼻をクンクンとさせながら俺の部屋に入ってきた。

 

「あぁ~青葉も食べたい!」

 

青葉と衣笠も加わると俺達は昼から呑みだした………。

青葉と衣笠が加わったおかげで、買ってきたつまみは総てビールも含めて綺麗さっぱりなくなった。

 

 

 

 

 

 

 



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インターミッション②(改)………俺に嫁だと!

東雲隊長
東雲 大毅



「少し呑み過ぎたか………」

 

俺は夜中に目を覚ますと少し頭を押さえ、冷蔵庫からペットボトルの水を取り出して少し飲んだ、そして眼の前の光景に頭を抱えた、何故なら明石と大淀、青葉がそのまま寝落ちしていたからだ。

 

「こいつら………」

 

間宮たと大淀はテーブルに突っ伏して寝ていた………。

 

「………やれやれ」

 

そして俺はまた眠りについた………、どれだけ寝たのだろうか、俺は何かに腕があたった感触に目を覚ました。

 

「何だ?」

 

俺は腕に当ったそれを見た。

 

「おいおい………」

 

俺の腕を明石にホールドされていただった。

 

「ついさっきまでテーブルに突っ伏して寝ていた筈だろう………」

 

等と思っていると、

 

「トイレ………」

 

大淀がフラフラと立ち上がるとトイレに入っていった。

 

「明石………」

 

俺はそれ以上見ないでやることにした、何故なら年頃の女性が…涎を垂らして寝ていたのだ。

 

「やれやれ………」

 

俺は呆れながらも涎を垂らして眠る明石をそのままにしてまた寝ることにした。

 

「………眩し」

 

俺は窓から差し込む陽の光に目を覚ました。

 

「これ………どういう状況だ?」

 

俺が目を覚ますと右腕に明石を左腕に大淀が、青葉が抱きついて寝ていた。

 

「俺は抱き枕かっ!」

 

俺は明石達を起こさないように腕を引き抜くと、シャワーを浴びる為に、シャワー室へと向かった(部屋にも一応あるが…流石に)。

 

「さっぱりした」

 

俺はシャワー室から戻りがてら、コンビニで朝食を買うと部屋へと戻ることにした。

 

「大淀はまだ寝てるのか…」

 

明石が寝惚けながら、洗面所で歯を磨いていた。

 

「あっ隊長、おはようございます」

「おはよう」

 

俺はそのまま部屋に戻ると残り二人を起こした。

 

「起きろ、いつまで寝ている」

「隊長だぁ~」

 

大淀が寝惚けながら抱きつこうとしてきた、

 

「寝ぼけてないで、ほら起きろ」

「隊長おはようございます………」

 

青葉が起き出してきた所で俺は朝食の準備を終えた。

 

「隊長頂きます」

 

青葉が目を輝かせながらテーブルについた。

 

「コンビニのサンドイッチだけどな」

 

そうこうしていると、覚醒した大淀が洗面所から戻って来た。

 

「隊長おはようございます」

 

何時もの大淀だ、

 

「大淀、朝ご飯」

 

こちらも何時もの青葉だった、が俺の腕には二人から押し付けられていた2つのおやまの柔らかい感触が残っていた。

 

『女の子の胸………あんなに柔らかいのか』

 

俺は内心そんな事を考えていた。

 

「隊長のニブチン………」

 

不意に大淀が小声で俺に囁いた。

 

「隊長………艦娘は重婚出来るのに、何もしてくれない………結構勇気だしたんですけど」

 

今度は明石が小声で俺に囁いた。

 

「初めては隊長にもらって欲しいかなぁって………」

 

大淀が小声で俺に囁いた。

 

「………つまり………その………なんだ………俺でいいのか?」

 

俺はシドロモドロになりながら聞いた、

 

「はい!隊長じゃなきゃ嫌です」

 

3人がが口を揃えた。

 

「………俺で良ければ」

 

俺は思わずそう応えた。

 

「不束者ですが」

 

大淀が三つ指をついていた。

 

「隊長………いえ大毅さん、宜しくお願いします」

 

明石がいつになく真面目に頭を下げた。

 

「大毅さん、青葉いい奥さんになります!」

 

突然部屋の扉が勢い良く開かれ、

 

「3人共良かったね」

 

衣笠と夕張がクラッカーを鳴らした。

そしてその後ろには神通や川内を始めとする豊洲庁舎の職員ほぼ全員が顔を覗かせていた。

 

「俺達は昼要らない………指輪を買いに行ってくる」

 

俺は自分でも分かる分かる位に顔を紅くしながらそう伝えた。

 

「はい」

 

間宮が微笑みながら答えた。

俺は朝食を済ますと2人を連れて指輪を買いに行くことにした。

 

 

 

 

 

 




オリジナル設定
艦娘が相手の場合は重婚可(提督若しくはそれに準ずる地位にある者に限り許可)。

艦娘退役後も継続となるので経済状況の審査は抜き打ちで厳格に行われる。

但し駆逐艦娘に於いては養子縁組で養女とする者が大半を占める。


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インターミッション③(改)………紹介

「お袋、俺………明日朝イチで顔出す」

 

俺は実家に居る母親に電話で手短に伝えると電話を切った。

 

「これ………どうすんだよ」

 

俺は伯父からお袋名で送られてきていた大量のお見合い写真が入ったダンボールを恨めしげに見ていた。

 

「大毅さん………この写真は?」

 

大淀が目聡く見つけるとその中のひとつを手にとって中を見ていた。

 

「これってお見合い写真ですね…凄い量」

 

大淀も呆れていた。

 

「伯父が勝手に送り付けて来るんだよ、お袋の名前使ってな…いい迷惑なんだよ、それと間宮に伝えておいてほしいことがある」

「何ですか?」

「明日朝イチで3人を俺の実家に連れて行く、まぁ顔合わせ位に考えていてくれ」

「わかりました、伝えておいておきます」

 

そう言うと、大淀は俺の部屋から出ていった。

 

「まだ明石達の事、話してないんだよな………」

 

俺はその事を何時話すかタイミングを考えていた。

 

そして迎えた翌日の明け方。

 

「大毅さん、おはようございます」

 

俺の部屋に明石と大淀、青葉がやってきた。

 

「準備万端です」

 

大淀が清楚な白いブラウスに青のスカートを俺に見せてきた。

 

「いいんじゃないか、三人共似合っていて可愛いぞ」

 

3人は顔を赤くしていた。

 

「間宮、留守の間宜しく」

 

俺は間宮に連絡先や行き先を書いたメモを渡すと出発することにした。

 

「俺の実家は千葉の下の方だからな、車移動の時間が結構長いから覚悟しておけよ」

 

俺は3人を乗せると、実家を目指し車を走らせた。

 

「このPAで少しだけ休憩な」

 

通勤ラッシュ時間に休憩を摂ることにした。

そして俺はお袋に2人の事を話すために実家に電話をかけた。

 

「もしもしお袋俺、今PAで休憩中………それでな婚約者連れてくから」

 

それだけ言うと電話を切った。

 

「さてとあと2時間から3時間で着くぞ」

 

車内で軽く朝食を摂ると、3人にそう話した。

 

ーーーーー2時間後ーーーーー

 

「やっとついた………疲れたぁー」

 

俺は固くなった体を伸ばした。

 

「此処が大毅さんのご実家…変な処無いよね?ね?」

 

3人は互いを確認し合っていた。

 

「ただいまぁ~お袋、帰ったよ」

 

俺は、玄関の引き戸を開けた、

 

「お帰り、大毅………その娘達?………ああっ艦娘ちゃんなのね、また3人も婚約者を連れてくるなんて!」

 

お袋は多少驚いてはいたが難なく受け入れてくれたようだった。

 

「大毅がねぇ………こんな別嬪さんを3人も………」

 

お袋が何やら呟いていた。

 

「大毅、今晩は泊まっていくんだろ?」

「いや、夕方には戻らないと………」

「お父さん何やら張り切っていたから、泊まっていきなさいよねっ」

 

それだけ言うとをお袋は明石と大淀、青葉を家へと招き入れていた。

 

 

 

 



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インターミッション④(改)………顔合わせ

「大毅帰ったか」

 

親父が何処からか帰ってきた。

 

「いや~目出度いですよ、大毅君が婚約者を連れてきた、それも艦娘さんとだなんて、町をあげてお祝いしないといけませんねぇ」

 

どうやら親父が誰かを連れてきたようだった。

 

「久しぶりですな、大毅君」

 

そう言って顔を出したのは、俺が高校を卒業する当たりから連続で町長を務めている人物であり遠縁の叔父だった。

 

「笠原のおじさん、お久しぶりです」

 

俺は3人を、笠原のおじさんに紹介した、

 

「婚約者の間宮と大淀です」

「明石と申します…」

「大淀と申します…」

「青葉です…」

 

3人はカチカチになりながら自己紹介をしていた。

 

「それはそうと済まないね、あの馬鹿者が勝手にお見合い写真を送りつけていたようで、うちの娘も勝手に送られて困っていたんだよ」

 

どうやら勝手に送り付けていたようだ。

 

「大毅君帰ってるって」

 

玄関からその本人の声が聞こえた。

 

「どうだ、お見合いいい娘さん達だろ…」

 

伯父が間宮達を見ると、誰だという顔をした。

 

「伯父さん、俺の婚約者の明石と大淀、青葉だけど」

 

伯父は不機嫌な顔をなると、

 

「艦娘か………よくもまぁこんな化け物と婚約なんて………ほら最も良い娘さんいるだろうになあ大毅君…」

 

何か言い掛けたが町長の睨みで黙り込んだ。

 

「艦娘さんを化け物?この娘達が居なかったら、私達は生きておらんよ、その恩人さん達を化け物呼ばわりする様な奴は出ていけ!フンこんな奴が親族とか一族の恥じゃ」

 

さらに町長の言葉を言うと伯父を家から追い出したのだった。

 

「済まないね、どうか気を悪くせんでくれ………」

 

町長の言葉に3人共気にしてないと町長の手を取っていた。

 

「大毅、本当に良い娘さん達だな」

 

親父が俺の肩に手を置いた。

 

「ああ、勿体ない位だよ」

 

そして、昼は近所に住む親族が集まり盛大な宴会となった。

 

「いやぁ~ホンに目出度い、あの大毅君がなぁ」

「本当ですよこんな美人を3人、それも艦娘さんと来た日には、これで本家の跡継ぎも安泰ですな」

「しかも海神の巫女とまで云われる艦娘さんをですからね」

 

あの伯父以外は受け入れて貰えた…みたいだ、親戚達のあちらこちらから羨望の眼差しが向いていた。

 

「まぁ、彼奴はあちこちのご家庭の娘さんのお見合いを厚かましくも斡旋していたみたいでな、苦情が入っていたのだよ、全く…」

 

どうやら相手のご家族の了承を得ないで勝手に俺に送り付けていたみたいだった。

 

「うちの人が済みませんでした」

 

伯母が謝罪してきた。

 

「気にしてませんよ」

 

伯母と二言三言言葉を交わした。

 

「大毅君…明石さんって言ったら、確か工作艦の艦娘さんなのよね?」

「そうだけど?」

「実はお聞きしたいことがあって」

 

伯母は何か間宮に聞きたいようだったので、

 

「明石ちょっと」

 

俺は明石を呼ぶと伯母が聞きたいことがあると話した。

 

「…」

「そこは…」

「あっ!」

「ありがとう」

 

どうやら伯母が趣味でやっている小料理屋で出す料理の事を聞いていたみたいだった。

そして…時間は過ぎ。

 

「宴もたけなわではございますが、ここらで終わりと致したいと思います、最後に大毅からの挨拶で締めたいと」

 

俺は親父から振られると、

 

「えっと………今回は俺達の為にかくも盛大な模様し物を開いてくださり有り難うございました、ここにいる、明石と大淀と青葉の4人で幸せな家庭を築いていきますので暖かく見守っていただければ幸いです、今日は皆様、本当に有り難うございました」

 

俺達は頭を下げた。

 

「大毅、初孫見せてね」

 

お袋が最後に特大の火種を投下した。

 

「ちょっ…」

 

俺は慌てたが、間宮達は顔を赤くして俯いていた。

 

「まぁまぁ、母さんも気が早いぞ…兎に角、大毅よ先ずは幸せにな」

 

親父が何とかお袋の暴走を収めた。

 

「今日は泊まっていくよ、結構呑んだからな」

 

俺は実家に泊まっていくことを、お袋に伝えた。

 

「それじゃ、あんたの部屋に布団運んでいくから、ほらお父さんも」

 

お袋が親父を引きずっていった。

 

俺は夕張に電話すると、

 

「夕張か、親戚達との宴会で呑まされたから今日は実家に泊まって明日の夕方に戻る」

 

明日帰ることを伝えると、

 

「隊長、現地建造は「するかっ!」」

 

夕張が何やら赤面ものの事を言い掛けていた。

 

「ったく…何が現地建造…って」

 

俺はその言葉の意味を遅れて理解した。

 

「ったく…おふくの初孫発言といい、夕張の現地建造とか…」

 

 

 

 

 



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