エデンの檻×自衛官 (エデンの園)
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1話 墜落

「巧。俺は先に帰国するがしっかりと任務をやり遂げろよ」

「大丈夫ですよ、先輩。任務も明日で終わりますし」

 

 櫻井巧。日本が誇る自衛官の男はグアムの空港で一緒にグアムに訪れていた先輩を見送った。

 先輩と共に日本の上司から武器の調達という任務を任されグアムに来ていた。しかし、突如日本からの緊急任務があり先輩は一日早く日本に戻ることになってしまった。

 

「さてと、折角の休暇だしグアムの観光でもするかな」

 

 巧は先輩の姿が見えなくなるまで見送り、空港を後にした。

 巧の便は明日だ。そして、先輩の見送りも兼ねグアムの上司から一日休暇を貰っていた。今までグアムでは任務に追われろくに観光を出来ていなかった。折角の機会なので巧はグアムを観光する事を決め、日本での友人から勧められた店に向かおうとした。

 すると、その時「やめてください!!」と言う女の声が聞こえて来た。それに続くように複数の男女の声も聞こえて来る。どうやら、近くで日本人と現地の人間が揉めているようだった。

 

「少し、様子でも見に行くか」

 

 巧は女の声が聞こえて来た方向に向かった。するとそこではセーラー服を着た少女が現地の不良らしき男たちに囲まれていた。

 少女たちを囲んでいる男の一人が、ショートボブの少女の腕を掴み無理矢理体を触ろうとしていた。周りの男たちはそれを止めようとする少年少女たちを引き止めながらニヤニヤ笑っていた。この、不良らしき男たちが行ってる行為は見て見ぬ振りをすることは出来なかった。

 

「おい、アンタらいい大人が子どもにちょっかい掛けてるんじゃねぇよ」

 

 少し違和感がある英語で巧は男たちに話しかける。突然現れ、説教してきた巧に男たちは一斉に振り向き巧を睨んだ。そして、巧を指差して何やら喋っているが、そんなに英語が得意じゃない巧はあまり理解出来ていなかった。

 

「あ……あの、おじさん」

「おじさんって……俺、まだ二十代何だけどな……。まぁいいや、取り敢えずその辺の物陰に隠れてて、ここはお兄さんが何とかするから」

「えっ……でも」

「いいから」

「は……はい、分かりました」

 

 巧は男たちにセクハラされそうになっていた少女と何度か言葉を交わした後、近くの物陰に隠れるように指示を出した。

 少女たちが物陰に隠れたと同時に、今まで蚊帳の外にされていた男たちが何やら叫び巧に詰め寄り胸を掴んだ。どうやら、男たちは想像以上にキレているらしい。

 もしこの状況の男たちを野ばらしにしたら何をしでかすか分かったもんじゃないだろう。

 

「さてと、何か随分頭に血が上ってる見たいだけど、ここはお互いの事を考えて引き下がって欲しいんだけど」

 

 流石に自衛官の身分で民間人と喧嘩する訳は行かないため、巧は男たちを説得することを試みた。

 しかし、それは無意味で男たちは余計に頭に血が上り、ナイフまで取り出してしまった。

 

「なるほど、やる気ってことね……」

 

 男の一人がナイフを自分に向けたことに対してやる気と捉えた巧は、自分にナイフを向けている男の腕を掴み、そのまま腕を捻り、足を掛け身体を一回転させた。

 

「what?」

 

 身体を一回転させられた男は空を見上げながら自分に何が起きたのか理解出来ていなかった。

 そして、周りの男たちも今までナイフを突き付けていた男に何が起きたのか理解出来ていなく、唖然としていた。

 

「一応、殺しはしないつもりだけど、無事に帰れると思わないでよ」

 

 指をバキバキと鳴らし、唖然と立ち尽くしている男たちに向かって巧はゆっくりと近づいて行く。

 この瞬間、男たちは巧が自分たちより格上の存在だと本能的に理解したのか、倒れた男を見捨ててその場から立ち去ってしまった。

 

「おい、君たちもう出てきて大丈夫だよ」

「は……はい」

 

 残された男も慌てて立ち上がり、立ち去ったのを確認した巧は物陰に隠れてるように指示を出した少女たちに出てくるように促した。

 

「あの、助けていただきありがとうございました」

「あっ、別に大したことじゃないよ。それより、君たち修学旅行生だろ?」

「は……はい」

「じゃ、人通りが少ないところは歩かない方がいいよ、人通りが少ないところにはさっき見たいな奴らがいるから」

「はい、分かりました」

 

 少女たちに人通りが少ないところは通らないようにと忠告し、その場から立ち去ろうとした時、「初瀬さん!!」という少女たちにとっては聞き覚えのある声が聞こえて来た。

 

「初瀬さん大丈夫!! 今さっき、現地の人に絡まれたって聞いたんだけど!!」

「だ……大丈夫です。この人に助けてもらったので」

「アンタが、この子たちの教師?」

「はい、そうです」

「なら、他の生徒たちにも人通りが少ないところは通らないように言っておいてください。危ないので」

 

 少女たちの学校の教師来栖モトコが少女たちの元に駆け付けた。モトコは生徒たちが無事なのを確認するとホッと胸を撫で下ろした。

 巧はモトコに他の生徒たちにも人通りが少ないところは通らないようにと忠告し、今度こそその場から立ち去ろうとした。

 すると、モトコが叫ぶ。

 

「あ…………あの、私の生徒たちを助けてもらいありがとうございました!!」

「いえ」

 

 

 

 

 翌日。予定通りの便に乗り込むことができた巧は自分の座席に腰を下ろしホッと一息ついていた。

 すると、前の座席の方から騒がしい少年少女たちの声が聞こえてきた。少し席を立ち上がり前の座席を確認した。

 前の座席には、中学生たちが席から立ち上がり雑談を楽しんでいた。制服からして巧が昨日助けた少女たちもこの便に乗っているようだ。

 

「懐かしいな……、俺も中学生の頃はあーやって騒いでたな」

 

 巧が昔を懐かしんだその時、突如機体が大きく揺れ始めた。揺れは段々と大きくなり、機内では悲鳴が響き渡り、更には荷物などが散り、立っていた人たちが倒れ始めた。

 近くで倒れそうになったCAを支えて助けると、窓から外を確認した。すると、外は昼の筈なのに夜のような景色が広がっていた。そしてそれに、追い打ちを掛けるように浮遊感が巧を襲った。

 どうやら、飛行機が墜落していってるようだ。

 

「まずいなこれは……」

 

 巧はフッと一言そう呟いた。



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