艦これ Modern Record (箕理 田米李)
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第1章「燃える太平洋編」記録01「変化した海と世界」

摸型作りが転じて書く事になった艦これ二次創作です。Twitterで投稿していましたが、ここで連載する事になりました。初めましての方はこれからよろしくです。知ってる方はこれからもご愛読よろしくお願いします。


2013年、海の底から現れた異形の存在「深海棲艦」は突如この世界に現れ、人類を海洋から駆逐せんと大海原を荒らし周り制海権を次々と奪っていった。

それと時を同じくして在りし日の艦艇達とその魂を持ち人の形を得た存在「艦娘」とその乗員達である「妖精」、そして先の大戦の時代に生きた軍人達が転生した「転生軍人」達が世界各国に出現した。

日本、アメリカ、イギリス、ロシア、ドイツ、イタリア、フランスの7ヶ国が艦娘保有の多い国として知られ、このうち日本、アメリカ、イギリスが"世界三大艦娘保有国"と呼ばれた。国連は艦娘と転生軍人達を受け入れると同時に深海棲艦を人類共通の敵として定め、主要国家群の軍事力を結集した国連軍を創設する。海軍は国連平和維持海軍(UNPKN)として編成/発足した。国連海軍の指揮下に置かれた艦娘達は「現代戦に対応した近代化改装」通称"現世改装"を施され現用艦にも勝るとも劣らない性能を獲得し、深海棲艦に対し優位に立っていた。

そして深海棲艦の動きが最も活発な太平洋に日本、アメリカ、ロシアの3ヵ国の艦娘を含む海軍艦艇を主戦力とした第81独立機動艦隊の拠点となる海上鎮守府"QFOP(Queen Fort Of Pasific:太平洋の女王の砦)"が建設された。

 

提督(ナレーション)「で、私がそのQFOP 第81独立機動艦隊の提督という訳だ。上で説明した転生軍人の1人でもある。え❓名前はだって❓ここでは「提督」と呼んでくれ、私に名前なんてあってないようなものだからな。皆は普通に「提督」や「司令」と呼ぶしなんなら好きに呼んでも構わないぞ今読んでる君。まぁメタ的なおふざけはこのくらいにして我々QFOP 第81独立機動艦隊は国連平和維持海軍の太平洋方面艦隊に属している。ここまで規模のデカい海上基地と独立艦隊なんてのは世界中探してもここにしかいない程だ。アメリカとロシアが我が艦隊に加わっているのは上に記載した通りだ。最初は対立していて過去のわだかまりもあった国同士だったけど、今は互いを認め合う良い関係になったと思う。中国、韓国、北朝鮮はまぁいつも通りで特に関係が進展している訳でもなく、国連軍として協力しているとは言い難い存在になっている。国連にとっては悩みの種というか頭痛の種とも言えるだろう。他のアジアの国々はどうかと言うと海軍力が小さい故にあっという間に深海棲艦の蹂躙を受けてしまった。我々がその海洋の奪還の為に戦い続けて4年の月日が流れていた。」

 

太平洋上

海上鎮守府"QFOP"

鎮守府(司令部)プラットフォーム

提督室

装甲空母艦娘 大鳳(秘書艦)「提督、諜報班より報告です。"輸送船団は順調にQFOPに向け航行中"との事よ。」

第81独立機動艦隊 総旗艦であり、秘書艦でもある装甲空母艦娘の大鳳が提督に報告する。

提督「よろしい。あの荷は今後の反抗作戦に必要な物資だからな。」

大鳳「そうね、今回は尖閣諸島の奪還も入ってるけど中国がどう出るかしら❓」

提督「基地化を強引に進めてたからね。まぁ深海棲艦がやってきて放置されてそのまま深海棲艦の泊地になっちゃったけど、あの国の事だから国連軍に入らずともやれるとか言ってやってきそうだな。」

深海棲艦のみならず中国の事も気にしないといけない。なんともまぁ面倒な事だと2人は思う。そこにコンコンッとドアをノックする音がする。「入れ」と言って尋人を部屋に入れる提督。来たのは諜報班にいるスタッフだ。

諜報班スタッフ「緊急電です❗️"輸送船団、敵と接触"との事ですッ‼️」

提督、大鳳「何っ⁉️(なんですって⁉️)」

2人は声を出して驚いた。先程話していた輸送船団が深海棲艦と会敵したのだ。




プロローグと1話目を継ぎ合わせて再編集しました。1000字が最低ラインですので併せないと届かないとは最初に書いていたのが余程短かったんだなと改めて思いました。
まだ始まったばかりです物語にあまり入り込めてないかもしれませんが、ここからです。タグに記載されてる作品以外のキャラやネタも入れ込んでいきますのでお楽しみに。
模型の方はTwitter上で#艦これModernRecordで掲載しています。


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記録02「反抗への物資輸送」

敵艦隊発見の報を受けた提督は作戦室に向かう。接敵した艦娘達は輸送船団を守れるのか❓


QFOP

鎮守府プラットフォーム

廊下

提督「敵の規模と戦力数は❓」

作戦室に向かうべく廊下を歩く提督は諜報班スタッフに輸送船団を守っている艦隊が接敵した深海棲艦艦隊の規模と戦力数を尋ねる。

諜報班スタッフ「はっ、敵は巡洋艦隊で数は6。flagshipとeliteの混合で編成されています。」

 

作戦室

参謀妖精「提督、続いて秘書艦入られます。」

作戦室に入る提督と秘書艦 大鳳に対し部屋にいる全員が敬礼を送り、提督と大鳳も敬礼で応じる。

提督「直ってくれ。で状況は❓」

参謀妖精「第1哨戒戦隊が交戦中、QFOPのすぐ近くまで来ています。援軍を送りますか❓」

提督「いや、大丈夫だ。今の彼女達なら、そうだろ大鳳❓」

大鳳「えぇ、心配いらないわ。」

自信ありきの表情を浮かべる提督に大鳳も微笑んで応えた。

 

小一時間前...

QJL26(第26次QFOPから日本本土経由ライン)輸送船団

QFOP 第81独立機動艦隊所属

第6空母戦隊

旗艦 軽空母 瑞鳳

艦橋

軽空母艦娘 瑞鳳「対潜ヘリからの報告なし、ということは近くに潜水艦の存在は確認されず...ね。」

艦橋にて敵潜の存在を気にしているのは旧帝国海軍 祥鳳型(軽)航空母艦の2番艦(次女)の瑞鳳の艦娘だ。卵焼きに対しての拘りが強く、「オムレットメーカー」という異名を持つ。

この輸送船団(タンカー12隻)を守る旗艦を務めている瑞鳳は久々の旗艦の任に緊張しているからか落ち着かないでいる。頭上にある赤い受話器(ネイビーレッド)を取り出し、僚艦に連絡をつける。

瑞鳳「船団護衛旗艦 軽空母 瑞鳳より軽空母 千歳へ、敵航空機の脅威は確認できますか❓」

 

同船団 同所属

第7空母戦隊

旗艦 軽空母 千歳

艦橋

軽空母艦娘 千歳「こちら千歳、こちらのレーダーにもCAP(空中哨戒)についているF-35Bからも報告ありません。今のところは大丈夫ですよ。」

同じ軽空母艦娘である千歳はレーダーにも空中哨戒にも異常はないと伝える。ヘリだけでなく最新のSTOVL(短距離離陸垂直着陸機)であるF-35Bを第二次大戦期が運用可能なのかと言うと、これは「現世改装」によるものだ。現代の造船技術とテクノロジーで作られた現用艦と70年前の技術で建造された艦艇ではあまりにも能力に格差がありすぎてしまい、共同運用に支障をきたしてしまう。そこでQFOP 第81独立機動艦隊の提督が国連に提案を持ち掛けた。「艦娘が運用する第二次大戦期の艦艇を現代戦対応可能レベルに近代化改装する案」つまり「現世改装案」を提出した。架空戦記に登場する艦の様に艦容を大きく変える程の大規模な改装をせず艤装や兵装等の設備を現代のテクノロジーに換装することにより改装期間を大幅に短縮し、かつ大きく性能を向上させる事ができる現世改装は瞬く間に世界各国で実施された。この改装により艦娘が運用する艦艇の生存率も向上し、QFOP提督は世界中の艦娘や海軍関係者から大きな称賛を受けた。

空母にはジェット機運用の為に飛行甲板の耐熱化、夜間作戦運用能力付与、対空火器の一新等が実施され、艦級によって運用する機体に違いや制約はあるものの深海棲艦の空母ヲ級や軽空母ヌ級を遥かに超える性能となった。

第6空母戦隊

軽空母 瑞鳳

艦橋

瑞鳳「分かりました。引き続きお願いします。」

千歳からの「異常なし」との報告を受け、引き続き警戒よろしくと返事をすると瑞鳳はまたネイビーレッドを掛け直す。

 

同船団 同所属

第2護衛戦隊

旗艦 練習巡洋艦 鹿島

艦橋

練習巡洋艦娘 鹿島「こちら鹿島、レーダー、ソナー共に変化なしです。うふふふ。」

言葉の最後に笑みを忘れない事に定評のある第2護衛戦隊 旗艦 香取型練習巡洋艦 鹿島も「異常なし」と応える。

 

同船団 同所属

第1哨戒戦隊

旗艦 軽巡 神通

艦橋

軽巡洋艦娘 神通「こちらも変化なし、今の所は平穏です。」

川内型軽巡洋艦 神通も同じく「異常なし」と応えた。

 

第6空母戦隊

軽空母 瑞鳳

艦橋

瑞鳳「そうですか...。」

神通(通信)「瑞鳳さん。」

瑞鳳「は、はい❗️」

神通(通信)「旗艦として大変ですし緊張してると思いますが、あまり力み過ぎず肩の力を抜いてください。今の所は順調です。そのままの指揮をお願いします。」

瑞鳳「は、はい❗️ありがとうございます神通さん。」

神通からの労いと励ましの言葉に喜び笑みが戻る瑞鳳。このまま順調に行けば、家であるQFOPだ。

 

船団及び艦隊前衛

第6空母戦隊

軽空母 祥鳳 所属 SH-60K

コールサイン"ショウ・ホーク6"

パイロット妖精A「んっ❓おい、レーダーに反応が❗️」

パイロット妖精B「ショウ・ホーク6より母艦 祥鳳へ、敵艦隊捕捉。方位3-2-5、速度15ノットで接近中。接敵まで約30分。」

 

軽空母 祥鳳

艦橋

軽空母艦娘 祥鳳「了解よ、祥鳳より旗艦へ。瑞鳳、私の艦載ヘリが敵を発見したわ❗️規模からして巡洋艦隊よ‼️」

瑞鳳の姉の祥鳳が自身の搭載ヘリが敵発見の報を知らせる。

 

軽空母 瑞鳳

艦橋

瑞鳳「わかった❗️警報、全艦戦闘配置ッ‼️」

ブザーが艦内に鳴り響き、妖精達が一斉に持ち場に向けて走り始める。そして艦内閉鎖も忘れずに行いつつだ。

瑞鳳「巡洋艦隊で敵は6隻...神通さん❗️そちらでお願いできますか⁉️」

 

第1哨戒戦隊

旗艦 軽巡 神通

艦橋

神通「分かりました❗️私達が相手して船団から引き離します‼️第1哨戒戦隊全艦へ、これより迎撃に向かいます❗️取舵30°ッ‼️」

瑞鳳からの指示を受け、神通率いる第1哨戒戦隊は船団を離れ敵深海棲艦巡洋艦隊の迎撃へ向かった。




第2話は輸送船団を護衛する瑞鳳達のお話となります。反抗作戦の為に必要な物資を満載した船団を指揮する軽空母 瑞鳳、歴戦の軽空母たる彼女は巡洋艦隊の迎撃を神通達に任せます。次回は神通達の活躍が描かれます。flagshipとeliteで編成された艦隊に同立ち向かうのか❓お楽しみに。


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記録03「来るべき反抗に備えて」

船団護衛中の瑞鳳達は敵巡洋艦隊を迎撃すべく神通率いる第1哨戒戦隊を向かわせた。果たして神通達は船団を守れるのか❓


第1哨戒戦隊

旗艦 軽巡 神通

CIC(戦闘情報センター)

レーダー妖精「敵艦隊、針路速度変わらず。距離170km❗️」

神通「旗艦 神通より川内姉さん、那珂ちゃん、夕立ちゃん、吹雪ちゃんへ、単縦陣を維持しつつ接近、距離150kmで面舵を切り90式SSM(対艦ミサイル)を発射します。睦月ちゃんは対空対潜警戒をお願いします。」

現世改装した全ての艦娘運用艦艇にはCIC、"Combat Information Center(戦闘情報センター)"の設置が義務付けられている。目まぐるしく戦況が変化する現代の海戦においては情報処理能力の高さが戦闘の優劣を決めると言って良いからだ。第二次大戦期、アメリカが採用したこの戦闘と艦の指揮系統の中枢を担うこの部屋は艦の命運を左右する重要な要素の一つとして登場しそのハイテク張りを遺憾なく発揮し、この戦闘室を持たず情報処理能力に大きく遅れを取った帝国海軍を圧倒した。それを反省し、教訓として得た結果なのだ。事実このCICの義務化と兵装/艤装の現用化により日本所属艦娘の生存率は先の大戦の時とは比較にならない程上がっている。

話を戦闘に戻そう。神通は同じ川内型姉妹である長女 川内と末っ子の那珂、駆逐艦のぽいぽい口調の「ソロモンの悪魔」こと夕立、特型駆逐艦栄えある一番艦 吹雪に対艦ミサイルによる水上戦を命じ、旧式かつ小柄ゆえに対艦ミサイルを搭載できない代わりに対空/対潜ミサイルが充実している睦月に警戒を命じる。

 

軽巡 川内

艦橋

軽巡洋艦娘 川内「夜じゃないのが残念だけど、久々の水上戦腕がなるね〜。」

夜戦大好きな軽巡艦娘 川内は夜じゃないのが気に食わないが、久方振りの水上戦にやる気満々だ。

 

同 那珂

艦橋

軽巡洋艦娘 那珂「那珂ちゃんゲリラライブッ❗️お久さし開催ですねッ⁉️キラリ〜ン✨」

"艦隊のアイドル"を自称する那珂もやる気は十分だ。

 

駆逐艦 夕立

艦橋

駆逐艦娘 夕立「水上戦は嬉しいっぽいけど、夕立は雷撃戦がやりたいっぽい〜。」

 

同 吹雪

艦橋

吹雪「まぁまぁそう言わないで夕立ちゃん、うちの司令官の現世改装で今日までやってこれてるんだし。」

 

同 睦月

艦橋

睦月「そうだよ、私なんて古くて対艦ミサイル積めないから私の分まで頑張って❗️」

 戦友であり親友である2人にそう言われると夕立はふてくされた顔を辞め、「わかったっぽい」と言うとシャキッとした「狂犬の顔」となる。

 

軽巡 神通

CIC

レーダー妖精「距離150kmに迫りましたっ❗️」

神通「今ですッ❗️艦隊面舵一杯ッ❗️90式SSM(対艦ミサイル)攻撃始めッ‼️」

 神通の指揮の下、艦隊は一斉に面舵を切り対艦ミサイルを発射する。それを皆各々のディスプレイで見つめる。対艦ミサイルは海面スレスレを飛翔し、艦隊手前でホップアップ(上昇)して斜めに突き刺さる。

レーダー妖精「対艦ミサイル命中、重巡1、軽巡2、駆逐2大破/撃沈を確認。残存艦は撤退するもよう。」

川内(通信)「神通どうする❓」

神通「追撃の必要はありません。船団に戻ります。」

敵艦隊の8割に損害を与え、残りは撤退。船団の脅威は去った事を確認すると神通は追撃の必要は無いとして艦隊を船団に戻らせる。

その後、輸送船団は無事QFOPに入港し荷下ろしが行われていた。

QFOP

第1埠頭

マッコイ「この荷はこっちじゃ、そいつは〜向こうじゃな。」

埠頭にて荷下ろしを指揮するこのQFOPの爺さんはマッコイ。かつては中東のブラックマーケットで武器商人をしていた所を提督がスカウトし、現在はQFOPの補給や兵站面を担当する責任者となっている。

瑞鳳「あ、マッコイのお爺ちゃん。」

神通「お疲れ様です。」

マッコイ「おぉ〜お二人さん。この荷守る為に頑張ってらしいな❓」

神通「任務ですから。」

マッコイ「そうじゃ、瑞鳳。お前さんに一つ商談がな。シーホーク(SH-60K)に搭載するヘルファイアが安く手に入ったんじゃが、買わないか❓」

マッコイはブラックマーケット時代のコネを使ってこのように時折艦娘に極秘ルートで手に入れた武器を売りつける事がある。中東時代は「ティッシュペーパーから核弾頭まで」「貧乏人がが戦争したきゃマッコイの所に行け」「金さえ積めばクレムリン宮殿だって引っ張ってくる」を信条にしていたが、QFOPに来てもそれは変わっていない。

瑞鳳「お爺ちゃん、そんなに武器を売りつけてると地獄に行っちゃうよ❓」

マッコイ「へへ、ここは最前線のQFOP。地獄の一丁目じゃよこれ以上どこに堕ちるって言うんじゃ❓」

神通「お爺さん、商談はまた今度にしてください。荷下ろしの状況はどうですか❓」

マッコイ「あ、あぁそうだな。また今度にさせてもらうから忘れないでくれよ。7割がた完了しとる。こんなに物資を用意してうちの提督は何かおっぱじめようとしてると違うか❓」

長年戦場を見てきたマッコイ爺さんだけあって、この量の物資が来るのは何かあると見破る。

瑞鳳「そうみたいなの。」

神通「提督は近々に実施される大規模反抗作戦の準備をなさっているようです。」

マッコイ「ほぉ〜、そりゃ楽しみじゃな。我らが大提督はどんな手で行くか、へへへ〜っと。」

マッコイは久々の大きな仕事にニヤけが止まらないようだった。




アニメ版のメンツの活躍いかがだったでしょうか❓現代の兵装をうまく使いこなし敵巡洋艦隊を撃破しました。かつての砲雷激戦ができなくなってしまった事に夕立は不満がってましたね。しかし吹雪の言う通り現世改装のお陰で生き残ってこれたのも事実なのと時代に合わせる為なので仕方ありません。
後半には「エリア88」からマッコイ爺さんが出てきましたね。QFOP にいても相変わらず怪しい商売をしているようです 


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記録04「海中の観察者たち」

輸送船団を無事にQFOPに送り届けた瑞鳳と神通達。大規模反抗作戦の為の物資は揃った頃、潜水艦娘達は情報収集に努めていた。


QFOP

鎮守府プラットフォーム

提督室

大鳳「瑞鳳さんと神通さん達、無事でよかったわね。」

提督「あぁ、これで作戦の為の物資は全て揃った訳だ。にしてもflagshipもeliteも見るのが当たり前になってきたな。」

大鳳「そうね、敵も対抗して強くなってきたわ。」

瑞鳳と神通達の報告にあったflagshipとeliteの事が気になる提督。現世改装にて強力になった艦娘達だが、深海棲艦もいつまでも手をこまねいている訳ではない事を提督は感じている。 

提督「展開中の潜水艦隊から何か報告は来てるか❓」

提督は哨戒に出ている潜水艦隊の状況を尋ねる。現世改装されてるとはいえ、敵が強力になっているなら潜水艦娘達も危険かもしれないからだ。

大鳳「敵の詳細を逐一暗号で伝えてくれてるわ。」

提督「そうか、彼女達には引き続き監視を。ただしこう伝えてくれ、無理はするなと。そして見つかったらその場から離れて戦闘は避けろとな。」

大鳳「了解しました。」

艦娘達を信頼している提督だが、不安がないわけではない。長らく彼の秘書艦 を務める大鳳は提督の部下の艦娘を大切にする気持ちがよく分かっていた。

 

太平洋

東シナ海

中国領海内 青島

QFOP

第1潜水戦隊

旗艦 伊400型潜水艦 伊400

機関室

機関妖精A「はぁ、ここに来てもう一週間か〜。」

機関妖精B「あぁ、スターリング機関とAIP(非大気依存推進装置)のお陰で長く潜れるようになってオマケに居住生も良くなったなんて。提督の現世改装は大したもんだよな。」

大戦期の潜水艦は機関を現用の物に換装された事による静粛性と潜航時間の延長が図られ、かつ冷暖房、冷凍冷蔵設備も備わって大戦時とは比べ物にならない程の性能向上を遂げている。

機関妖精A「変わってないのは潜航深度とこの狭さだけだな。」

彼の言う通り元の潜航時間と艦内の狭さだけは大きく改良できず、そこは現用潜水艦に大きく溝を開けられている。その為、潜水艦娘達が就ける任務はかなり限られているのが現状だ。

 

発令所

副長妖精「艦長、入られます。」

潜水艦娘 伊400(愛称:しおん)「副長、状況は変わりない❓」

副長妖精「は、未だ中国機動部隊に動きありません。」

伊400「そう、まだかかりそうね。」

潜水艦 伊400率いる第1潜水戦隊は中国海軍の基地の一つがある青島にて中国海軍の動きを監視していた。これと同規模の潜水戦隊も太平洋の各地へと散らばり情報収集に当たっている。

通信妖精「艦長、提督から暗号電です。」

通信妖精がそう言うとしおんは側によりディスプレイに表示された暗号電を共に見る。

伊400「ふ〜ん、"エンジェル"3人が陸に舞い降りるそうよ。」

副長妖精「それはそれは、これでさらに見えやすくなりますね。」

少し洒落た暗号に洒落た掛け合いをするしおんと副長妖精、息ピッタリだ。

伊400「それは何よりだけど、それで私達のこの任務が終わって新鮮な空気を吸ってQFOPでまったり休みたいわ。」

副長妖精「全くですね。」

2人は海上の新鮮な空気と休暇を待ち遠しいようだ。




潜水艦娘の地味なれど重要な情報収集を行っています。潜水艦は戦艦や空母の様な水上艦も違って現世改装の恩恵をあまり受けられていません。というのも船体が小さく、当時の潜水艦が「可潜艦」ととりあえず潜れる程度の能力しかないというのもあり現用潜水艦と肩を並べるのが難しいのです。
しかし彼女達の役割と活躍の場が無いわけではないので、これからも地味に登場します。


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記録05「出航、作戦開始」

潜水艦娘達の偵察の様子を描いた前回に続き、それを踏まえて艦隊が大規模反抗作戦へ遂に出航します。


QFOP

埠頭エリア

「積み残しのないようにな❗️大事な補給品だぞ‼️」

「焦って燃料溢すなよ、そこ❗️近くで煙草吸うなッ‼️」

「出撃が迫ってる❗️遅れたら提督にシバかれるぞッ‼️」

埠頭エリアはここ数時間慌ただしかった。大規模反抗作戦の作戦開始時刻が迫っているからだ。埠頭でバタバタ、艦内でバタバタと慌ただしいったらありゃしないと第三者が見たら皆全会一致で思うに違いない光景だろう。

 

そしてしばらくして...

装甲空母 大鳳

艦橋

先任妖精「提督上がられます。」

皆が提督に敬礼を送り提督も敬礼で返した後、提督は艦長席に座る大鳳の隣の席に腰を掛ける。

大鳳「全艦総員配置完了です。第2/第3艦隊は予定通り先発し、作戦海域に進行中です。」

提督「よろしい。第1艦隊、全艦出撃❗️」

提督の号令の下、作戦参加艦が一斉に埠頭から出航していった。まるで争うかの様にそれでいてその後綺麗に陣形を組んでいく。

 

「トライデント作戦」

東南アジア方面の海域とそれに隣する国々の復興支援を目的とした作戦だ。東シナ海、フィリピン海、ソロモン海の三海域にそれぞれ第1〜3艦隊を配置し三方向から侵攻する。第2、第3艦隊は提督が指揮する第1艦隊よりも先に出航し作戦海域に向け航行している。

提督が指揮する第1艦隊の目標は深海棲艦が基地としている尖閣諸島を奪還、そのまま南下して第2、第3艦隊と合流して作戦継続するという流れだ。

中国は深海棲艦が現れる前から軍拡を推し進め、海軍もそれの例に漏れず増長し太平洋の島々にその手を伸ばした。その島の一つが今回の作戦目標の尖閣諸島だ。しかし深海棲艦の出現によりその野望は潰え、現在島は空母ヲ級flagshi

pを旗艦とする三個機動部隊が停泊する泊地と化している。その艦隊の中には深海棲艦の最強の艦級である「姫/鬼」と称されるクラスの一つである戦艦棲姫の存在も潜水艦隊の偵察により確認されている。

 

フィリピン海

西北西の海域

第1艦隊

旗艦 装甲空母 大鳳

艦橋

大鳳「CDC(Combat Direction Center:戦闘指揮センターの略、空母版のCIC)へこちら艦長、異常はありませんか❓」

大鳳は艦内無線を手に取りCDCに連絡を入れる。

CDC

戦術行動士官妖精「こちらCDC、レーダー及び直掩機隊からの反応、報告なし。現在クリーンです。」

大鳳「了解、引き続き警戒お願いね。」

そう言って無線機を元に戻す。

大鳳「提督、現在敵反応無し。順調よ。」

ここで第1艦隊の陣容と配置を紹介しよう。

 

第1艦隊

最前衛

第1戦闘空母打撃群

艦隊中央輪形陣前方

第1空母戦隊

同後方

第4空母戦隊

輪形陣前衛

第1戦艦戦隊

輪形陣左右

第1ミサイル打撃戦隊

第3巡洋駆逐戦隊

輪形陣外縁

第6護衛駆逐戦隊

 

第2、第3艦隊もこれと同等の規模の艦隊が編成されて作戦に臨んでいる。

 

装甲空母 大鳳

艦橋

通信妖精(CDCからの通信)「通信より艦橋。"山猫"より入電、「姫は舞踏会の支度をした」です。」

大鳳「提督❓」

提督「あぁ、動いたね。少し急ごう。全艦に発光信号にて通達、両舷前進全速と。」

大鳳「はっ❗️」

通信妖精からの暗号電を受け取った提督は艦隊の速度を上げる様告げる。




遂に作戦開始です。作戦名は「東南アジア海域を三方向から攻める三本の槍=艦隊(トライデント)」という意味合いを込めて名付けました。
「トライデント作戦」果たして成功なるか❓


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記録06「中国海軍機動部隊の出撃とそれを見張る者達」

深海棲艦への大規模反抗作戦「トライデント作戦」が開始されました。今回は前回の最後に出てきた"山猫"なるコードネームを持つ人物の視点のお話です。


トライデント作戦開始の数日前...

中国

青島軍港近郊の町

軍港を見渡せる廃ビル

 

1人の男が廃ビルから中国海軍人民解放海軍北海艦隊司令部のある青島軍港を見渡していた。

オセロット「アディ、町の人間達から何か聞けたか❓」

彼はオセロット(暗号名"山猫")、元CIAのエージェントでロシア人。その前はロシアで※スペツナズ(※ロシアの特殊任務部隊の事、一口にスペツナズと言ってもGRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)や連邦保安庁、内務省、対外情報局などにもそれぞれのスペツナズが存在する。)に所属していたこともある実力者だ。兵士の尋問や拷問に対するプロフェッショナルでもある。 

今現在、部下3人を引き連れ青島で情報収集に当たっている。

 

青島軍港 近郊の町

繁華街

アディータ・ジマー・サルダート「街の人達と話によれば近頃軍港が慌ただしくなってるみたい。"西太后"の姿を皆見てるそうだよ。」

ドゥーヴァ・ジマー・サルダート「"お付き"の姿も確認されてるそうだよ。」

トリィー・ジマー・サルダート「アチェーツ(ロシア語で"父親"彼女達の場合は提督の事を指している)が中国海軍が動くならここ青島だと踏んでるからね。」

続け様にオセロットに報告するこの暁型駆逐艦娘の次女 響にそっくりなこの3人はオセロットの部下であるジマー・サルダート三姉妹だ。艦娘の身体能力の高さに目をつけたロシアの科学者達(旧ソ連寄り)が「ジマー・サルダート(英語訳:Winter Soldier)計画」て生み出した駆逐艦娘 響のクローン艦娘である。クローンといっても完全なコピーではなく、元となった響が小学校高学年生の容姿をしているがジマー・サルダート三姉妹は高校生くらいの姿で遺伝子調整され生み出されている。左腕はソ連を表す赤い星がペイントされた機械義手にされ艦娘譲りの高い身体能力による格闘戦と豊富な銃火器を使いこなすまさに"冬の戦士"だ。しかし彼女達を研究していた施設は国連軍により制圧され彼女達が旧ソ連派に利用される事はなく冷凍保存されたままに終わった。制圧部隊に参加した後のQFOP提督が彼女達を引き取り自分の娘として育てる事を決め今に至る。

オセロット「中国海軍はこの4年間よく戦った方だ。だがそれでも深海の数的優勢は崩せず敗北を続け、今じゃまともな艦隊戦力が残ってるのはここ青島の北海艦隊だけになってしまったわけだ。

さて、おしゃべりはこれまでにしよう。作戦開始まであと数日だ、最後までしっかりな。」

アディータ、ドゥーヴァ、トリィー(通信)「ダー。」

 

トライデント作戦開始前夜

先と同じ廃ビル

作戦開始前夜、オセロットは廃ビルにて夜食のカップラーメンを食しながら双眼鏡で青島軍港を監視していた。その後ろで連日の聞き取り調査での疲れかアディータ達3人はすやすやと寝息を立てている。人造兵士として生み出された彼女達だが、その寝顔は年相応の少女そのものだ。

オセロット「(こいつらを引き取るって提督が言った時にはどうなる事かと心配してたが、寝顔は可愛いらしいな。)」

当時の事を振り返るも彼女達の寝顔を見て提督の判断は正しかったと思いほくそ笑むオセロットは視線を双眼鏡に戻すと...。

オセロット「ッ❗️おい❗️3人とも起きろッ❗️」

オセロットが声を上げて3人を起こす。アディータ達を目を擦って眠気を払い、オセロットに手渡された携帯双眼鏡で軍港を見る。

アディータ「遂に動いたな同志。」

ドゥーヴァ「やっと動いたね同志。」

トリィー「張った甲斐があったけどやっとだよ同志。」

仲の良い掛け合いをする三姉妹。

オセロット「あぁ、我らが大提督にご報告だな。」

そう答えるとオセロットは再び双眼鏡で出航する中国機動部隊を睨んだ。




「メタルギア・ソリッド」シリーズからオセロットの登場です。ここでのオセロットの容姿は「ファントム・ペイン」時のをイメージして貰えればOKです。アディータ、ドゥーヴァ、トリィーの3人のクローン艦娘の元ネタはMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)作品の「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」のウィンター・ソルジャー(バッキー・バーンズ)です。艦娘が人間よりも身体能力が高い、それと艦娘のクローンというのは他の二次創作媒体でもよくあるので私もそれに倣ってという感じです。彼女達は艦娘としてというよりかはこの様な潜入工作等の任務を専門としています。元ネタのウィンター・ソルジャーもしくはブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフ並みの活躍をしてくれる事でしょう。


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記録07「行く手を阻む者」

オセロットとアディータ達からの情報を得た作戦中のQFOP 第1艦隊は情報を整理し中国の動きの意図を探ります。だがそこに...


太平洋

尖閣諸島へ向け作戦行動中のQFOP 第81独立機動艦隊 第1艦隊

第1艦隊 旗艦 装甲空母 大鳳

艦橋

オセロット達から得た情報をディスプレイ付きの海図盤の上に表示する。

大鳳「情報によれば出航した中国機動部隊の編成は空母 遼寧を中心に旅洋Ⅲ型ミサイル駆逐艦 海龍、大原、052A型駆逐艦 ハルピン、青島、江凱Ⅱ型ミサイルフリゲート艦 煙台、塩城、大慶、揚州です。」

提督「空母1、ミサイル駆逐艦2、ミサイルフリゲート艦4、駆逐艦2の合計9隻か、それなりに揃えてきたな。我々を阻止するには少ないけどな。」

深海棲艦との戦闘により消耗していた割にはちゃんと機動部隊に相応しい編成で来た事に少し感心する提督だが、こちらの作戦を妨害するには少ないと疑問を感じている。

提督「水上艦は分かったとして、潜水艦はどうだ大鳳❓」

大鳳「原潜が機動部隊についているなら二隻以上はいるはずですが、向こうからの情報はありません。」

提督「先に出航していて途中から合流したかもしれないから、そこは知らなくても無理ないか。」

参謀妖精「我々の作戦の妨害が目的なのでしょうか❓」

提督「それかうちらより先に尖閣諸島を攻略して領土を取り戻したいんだろうかのどちらかだな。もっとも旧式艦込みのたった9隻の機動部隊で敵う相手とも思えないがな。」

妨害にしても攻略にしても数が不足な中国機動部隊の行動は提督達にもまだこの時点では分からなかった。

 

QFOP 第1艦隊

最前衛

第1戦闘空母打撃群

モーニング・グローリー級汎用駆逐艦

DD-696 モーニング・グローリー所属

SH-60K コールサイン"モグ02"

パイロットA「ッ⁉️ソノブイNo.14に感あり❗️敵潜探知ッ‼️」

パイロットB「水深320m、艦隊正面50㎞。スモークマーカー投下❗️」

パイロットA「"モグ02"より旗艦大鳳へ、艦隊正面50㎞に敵潜の反応❗️数2ッ❗️」

第1艦隊最前衛に着く第1戦闘空母打撃群の汎用駆逐艦 モーニング・グローリー所属ヘリの"モグ02"が艦隊正面に敵潜水艦2隻の反応を探知し、即それを艦隊総旗艦の大鳳に伝える。

 

装甲空母 大鳳

艦橋

提督「噂をすればなんとやらだな。」

大鳳「噂って時折怖いものね。」

提督「ほんとほんと、さてさて十中八九中国さんのだろうけど音紋を照合してどなたさんか調べるよう言ってくれ。それから戦闘配置に入れるようスタンバイよろしく。」

大鳳「了解ッ❗️」

噂というのは時に良い時にも悪い時にも当たるものだと思いながら提督は戦闘配置の準備に入るよう命じた。

 




中国海軍機動部隊の出撃、作戦の妨害か❓中学のと思われる潜水艦二隻にどう立ち向かうのか❓
最後の方に出てきたオリジナル駆逐艦の説明は次の話でやります。


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記録08「対潜戦闘用意❗️」

中国海軍の潜水艦が出現❗️QFOP 第1艦隊に立ちはだかろうとする。どうするQFOP艦隊❓


QFOP 第1艦隊

輪形陣 最前衛

第1戦闘空母打撃群

ヒマラヤ級戦闘航空母艦 CVB-861

CIC

ソナー手「艦長、モーニング・グローリーからの報告では敵潜は中国海軍の元級(039A型)攻撃型潜水艦です。」

艦長

滝澤 美優一佐(たきざわ みゆ)「提督の読み通り中国海軍ね。」

戦闘空母 ヒマラヤ艦長の滝澤は中国海軍来ることを予期した提督の読みの良さに感心しつつ、ソナー手と一緒にモニターを見つめる。

滝澤「ラヤ、この中国潜の予想される行動は❓」

艦のホログラム投影機から長い銀髪と碧眼の美しい少女の姿が投影される。彼女が"ラヤ"ことヒマラヤ。この艦のサポートAIシステム"擬似艦娘"の1人だ。

ヒマラヤ(擬似艦娘)「艦首をこちらに向けています。こちらの作戦行動の妨害と見て間違いないかと思われます美優。」

この"擬似艦娘"は提督とその同期達により生み出され、艦内の制御や管理を行ったり、この様に参謀としての役割を行える。艦長や乗員達の好みに性格や容姿をカスタマイズできたり人並みの感情を持っている高性能自律AIプログラムなのだ。この戦闘空母打撃群に所属する艦艇に1隻各1人ずつプログラムされており「人とAIによる艦艇の共同運用」の試験艦隊としての側面を持ち合わせている。

滝澤「ここで足止めされる訳にはいかないわ、私達は前に進まなくてはいけないの。」

ヒマラヤ「その通りです。お父様(提督)から戦闘配置の命が下っています。対潜戦闘配置に移行を具申します。」

滝澤「承認よ。旗艦 ヒマラヤより第1戦闘空母打撃群全艦に通達、これより対潜戦闘に入る❗️総員配置に着けッ‼️」

滝澤の指令により各々の戦闘配置に入る乗員達、それに合わせて艦隊の艦艇達も一斉に動き始める。

滝澤「ラヤ、ASW(対潜戦闘)兵装全火器用意❗️コンディションを確認して戦術(行動士官)に情報と戦闘行動の委託を。」

ヒマラヤ「了解しました。ASROC、短魚雷、ボフォース対潜ロケット、デコイ、全て異常なし。情報及び戦闘行動権を戦術行動士官に委託。」

戦術行動士官

倉田 貴輝(くらた たかき)一尉「いたたぎました。」

ヒマラヤの戦術行動士官 倉田がシステムチェックされた兵装類の権限を委託されるのを確認する。

滝澤「ヒマラヤよりモーニング・グローリー、ビーナス・ベルト両駆逐艦へ、艦隊前方に展開されたし。」

 

第1戦闘空母打撃群

輪形陣 右翼

モーニング・グローリー級汎用駆逐艦

DD-696 モーニング・グローリー

艦橋

艦長「モーニング・グローリー了解。操舵手、前に出るぞ❗️モグ、対潜戦闘用意だ。戦術と兵装チェックよろしく。」

モーニング・グローリー(擬似艦娘)「了解だよ❗️」

艦長の命に元気よく答えるモーニング・グローリー。二隻の同型艦は他艦よりも前に出て横隊を組み対潜戦闘に入る。本級 モーニング・グローリー級は旧ソ連/現ロシア海軍のウダロイ級大型対潜艦をタイプシップとした駆逐艦だ。現ロシア海軍から退役したウダロイ級がQFOPに配属され近代化改装を施される事になった。その際に西側製の艤装及び兵装/火器管制システムに換装され、そのデータを元に建造された。ステルス性が考慮されてない一世代古い艦をベースに選んだのは深海棲艦の登場で完全新規設計の艦を作る余裕が無かったことと深海棲艦との戦闘ではステルス性よりも重装備の艦艇が重要視されたからだ(提督がロシア艦が好きだからという理由もあるというが詳細は不明)。モーニング・グローリー級もタイプシップと同様に強力な兵装、特に対潜兵器の搭載量が多い。

同 右翼

ブルビネラ級ミサイル巡洋艦

CG-751 ブルビネラ

艦橋

滝澤(通信)「ブルビネラ、ベロニカ両巡洋艦は引き続き対空警戒を頼みます。」

艦長「了解。ネラ、ロニとデータリンクして警戒を側に。」

ブルビネラ(擬似艦娘)「はっ❗️対空監視を厳にします‼️」

このブルビネラ級もモーニング・グローリー級と同じく旧ソ連/現ロシア海軍のキーロフ級をタイプシップにしたミサイル巡洋艦だ。タイプシップそのものでも強力な艦を西側製装備に換装してさらに強力な艦艇となっている。

 

第1戦闘空母打撃群

前方海中

カムチャッカ級攻撃型潜水艦

SS-223 カムチャッカ

発令所

ソナー員「本艦頭上、僚艦が陣形変更を変更すべく変針しています。」

海中ではカムチャッカ級攻撃型潜水艦 カムチャッカが耳を済ませて僚艦の艦隊運動と敵潜水艦の音に耳を済ませていた。このカムチャッカ級もロシアのアクラ級をベースにしているが、動力は原子力からディーゼル機関に換装されている。

艦長「ソナー、敵潜に動きは❓」

ソナー員「いえ、艦首を依然こちらに向けたままです。」

艦長がソナー員に敵潜の様子を尋ねる。そう言った矢先だった。ゴポゴポッという音が聞こえてくる。

ソナー員「ッ❗️敵潜水艦、魚雷発射管の外扉を開放ッ‼️」

艦長「開けたのか❗️2隻とも⁉️」

敵潜2隻が魚雷発射管に魚雷を装填し注水、外扉を開けた。

 




オリ艦で編成された空母打撃群の面々が中国潜水艦2隻に対処すべく艦隊を動かします。この艦隊の艦艇にはサポートAIシステム「擬似艦娘」が搭載されています。「擬似艦娘」のモチーフは「蒼き鋼のアルペジオ」のメンタルモデルです。この創作内の世界ではAIの軍事利用が現実世界よりも早い段階で行われています。深海棲艦の登場で人材確保が難しくなった事による反動です。
さて、QFOPは次でどう中国潜に対処するのでしょうか❓お楽しみに。


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記録09「敵潜突破」

魚雷発射管の扉を開けた中国潜水艦にQFOP 第1艦隊 第1戦闘空母打撃群はどう対処するのか❓


QFOP 第81独立機動艦隊

第1艦隊 第1空母戦隊

旗艦 装甲空母 大鳳

CDC

大鳳「了解よ。提督、全艦艇の対潜戦闘の用意が整ったわ。」

受話器を置いて提督に戦闘配置完了を知らせる大鳳。

提督「よろしい、さぁ〜てとこの後どおっすかだよな〜。」

参謀妖精「提督、敵は発射管に魚雷を装填したんですよ❓そんな呑気に構えてては...。」

提督「呑気なフリだけさ、もちろん敵が仁王立ちしてようと引き下がる訳にはいかんさ。」

通信妖精「提督ッ❗️空自のAWACS(早期警戒管制機)より入電、中国空母機動部隊から尖閣諸島へ艦載機発艦を確認。」

提督「なるほど、こちらが潜水艦にかまけてる間に尖閣を頂こうって寸法か〜。」

シンプルな陽動作戦だが、シンプルだからこそ効果的だ。

参謀妖精「ますます急ぐべきです。」

提督「同感だ。大鳳、ヒマラヤに繋いでくれる❓」

 

同艦隊

第1戦闘空母打撃群

旗艦 戦闘空母 ヒマラヤ

CIC

滝澤「はい、先程カムチャッカが敵潜が魚雷発射態勢に入ったと報告を。」

提督(通信)「シーホーク3機を爆雷と短魚雷を搭載して発艦、中国潜の頭上をホバリングで待機するようにしてくれ。それと...」

ヒマラヤの飛行甲板では3機のSH-60Kの両翼に爆雷と短魚雷が搭載され発艦する。

ヒマラヤ「シーホーク3機、予定通り発艦。ポイント到達まで後7分。」

滝澤「了解。通信士、モーニング・グローリーへ繋いで今から言う事をアクティブソナーでモールスするよう言いなさい。」

滝澤からの指示を受けた駆逐艦 モーニング・グローリーは艦首のバウ・ソナーでアクティブ・ソナーを打つ。コーンッ、コーンッと海中にソナー音が響き渡る。

 

海中

中国海軍 "遼寧機動部隊"

元級攻撃型潜水艦

遠征102

発令所

ソナー員「ッ❗️艦長、敵艦からアクティブ・ソナーが❗️」

副長「艦長ッ❗️」

艦長「落ち着け副長、よく聞けこれはモールスだ。」

攻撃型潜水艦 遠征102号艦長は狼狽る事なく冷静にソナーがモールスを打っている事に気付く。

艦長「ソナー、なんと言ってきている❓」

ソナー員「はっ❗️「貴艦ノ頭上ニ対潜ヘリ3機ガ待機シテイル。攻撃ヲ敢行スレバ爆雷ノ雨ヲ降ラセル。」」

副長「脅しです艦長ッ❗️日本人にそんな事ができるはずありませんッ‼️」

艦長「いや副長、向こうは海自じゃないぞ。」

副長「まさかあの...⁉️」

艦長「そうだ、噂に聞く国連が編成した艦娘多国籍艦隊だ。」

ソナー員「続きます。「貴艦ノ真ノ敵は我々カ❓」です。」

その文面に対し艦長は口をつぐんで額に汗を垂らす。

 

第1戦闘空母打撃群

旗艦 戦闘空母 ヒマラヤ

CIC

倉田「伝わったでしょうか❓」

ヒマラヤ「確率は低いと見えます。」

滝澤「提督を信じると同時に敵も信じなさい。」

倉田「敵もでありますか❓」

滝澤「相手も同じ中国人という名の人間よ、中国だって共同戦線を張ってないとはいえ他国と戦争がしたい訳じゃないわ。提督はそれを分かっててあの様な文を打ったのよ。」

中国が軍拡を進め領海問題を度々引き起こしても戦争にならなかったのはそういう事だと滝澤は2人に言う。

ヒマラヤ「お父様とミユの考えは分かりましたが、私にはやはりまだ人の心は理解できません。」

AIであり擬似艦娘"第1号であるヒマラヤは他の娘と比べ思考が機械的な部分がある為、まだ「人の心」という部分の理解が追いついけない事に落ち込む姿に滝澤は言う。

滝澤「そのうち分かるようになるわラヤ、そのうちにね...とにかく向こうが撃ってくるまで撃っちゃダメよ。」

倉田、ヒマラヤ「はっ❗️(了解しました)」

第1戦闘空母打撃群を含む第1艦隊は中国潜水艦二隻の頭上を通り過ぎた。その数分後には二隻の反応は消失した。




なんとか敵潜を撃たずに退ける事ができましたね。話としては空母いぶきのオマージュです。中国潜水艦もいぶきに登場する遠征102号です。
なんとか撃たずに済み前進できたQFOP 第1艦隊ですが、さらなる試練が待っていることでしょう。


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記録10「激戦の幕開け」

 中国潜水艦2隻の妨害を突破したQFOP第1艦隊だが、一難去ってまた一難と次の試練がやってきます。中国の妨害により作戦通りとはいかなくなってしまった訳ですが、それでも進んでいく様です。


中国海軍空母機動部隊の攻撃により尖閣諸島への奇襲が台無しとなり、島は蜂の巣を突いた様に慌ただしくなった。だが、作戦を中止する訳にはいかない。提督曰く...

 

第1艦隊

装甲空母 大鳳

CDC

提督「臨機応変に行かないとね。潜水艦隊の皆に対地ミサイル攻撃をしてもらうつもりだったけど、それも必要なくなっちゃったな。」

大鳳「対地ミサイル攻撃で敵を混乱させて私達第1艦隊とソロモン海域に展開中の第3艦隊が敵を陽動、誘引している隙にフィリピン海域に待機している第2艦隊が突入して内側から攻撃して逆包囲し殲滅する手筈でしたよね。」

参謀妖精「それも中国さんのせいで修正が必要になってしまいました。」

提督「今頃イムヤ達はため息ついてるか不貞腐れてるかのどっちかだろうね。」

作戦というのは立ててもそれ通りに行くとは限らないというのを改めて思い知る提督達にビーッ❗️ビーッ❗️ビーッ❗️と警報が鳴る。

大鳳「どうしたのッ⁉️」

通信妖精「艦隊左翼の駆逐艦 ネイサン・ジェームズが方位3-5-0にて深海棲艦偵察機を捕捉したと。」

 

第1艦隊 左翼

第1ミサイル巡洋駆逐戦隊

アーレイ,バーク級ミサイル駆逐艦

DDG-151 ネイサン・ジェームズ

CIC

トム・チャンドラー中佐(艦長)「大鳳、こちらネイサン・ジェームズ。」

大鳳(通信)「明瞭に聞こえますチャンドラー艦長。」

チャンドラー「偵察機を発見しました。判断を仰ぎたいと思います。」

第1艦隊左翼を構成する第1ミサイル巡洋駆逐戦隊の一隻である駆逐艦 ネイサン・ジェームズ艦長のトム・チャンドラー中佐が敵偵察機にどう対応するかを提督に判断を仰ぐ為、座乗艦である大鳳に無線を繋ぐ。

 

第1空母戦隊

装甲空母 大鳳

CDC

大鳳「提督❓」

提督「(中国機動部隊の攻撃で敵は既に臨戦体制下だしな。こちらの存在がバレるのも時間の問題...だけど敵に情報を与えるのも得策じゃないしな。)」

提督は間を取って考え、決断する。

提督「よろしい、撃墜してよろしと伝えて。」

大鳳「はい❗️艦長、撃墜許可が下りました。」

チャンドラー(通信)「了解、直ちに撃墜する。」

提督「通信妖精、第3艦隊に打電「渦中ニ入ッタ、前進セヨ。」と。」

通信妖精「はっ❗️」

 

第1ミサイル巡洋駆逐戦隊

ミサイル駆逐艦 ネイサン・ジェームズ

CIC

撃墜許可が下りたのを確認したチャンドラーは受話器を元に戻し戦術行動士官に命じる。

チャンドラー「戦術、対空戦闘用意。ESSM(発展型シースパロー)発射だ❗️」

戦術行動士官(TAO)

カーラ・フォスター大尉「戦術了解❗️キルトラック87452を捕捉。シースパロー1発、発射ッ❗️」

ネイサン・ジェームズの後部ヘリ格納庫上のVLSからシースパローが勢いよく空高く飛んでいき、方向を転換して深海棲艦の偵察機に命中する。

カーラ「命中、目標破壊❗️」

チャンドラー「よくやった大尉。」

CICレーダー手

カール・ニシオカ「艦長ッ❗️レーダーに反応、大編隊です‼️撃墜した偵察機と同方位から敵戦爆連合と思われる機影群を捕捉❗️目標は約80機です‼️」

偵察機を撃墜したのも束の間、深海棲艦の航空機大編隊が艦隊に近づいてくる。それは旗艦である大鳳もCDCのレーダーディスプレイ確認していた。

 

装甲空母 大鳳

CDC

大鳳「提督ッ❗️」

提督「思ったより早かったな。提督より艦隊全艦へ、対空戦闘用意。警報レッド、火器使用に備えッ❗️」

警報が鳴り響き、艦内放送で「戦闘配置❗️」が3度言われると各艦の乗員達は持ち場に駆け込み非常扉を閉める。艦隊は対空戦闘に備え陣形を整えつつあった。




中国海軍機動部隊のせいで当初の作戦計画がおじゃんになってしまいましたが、それでも提督は落ち着いてこの状況を臨機応変に乗り切ろうと前向きです。私も見習いたいですよこういう姿勢にwww.
ドラマ「ザ・ラストシップ」より主人公艦であるネイサン・ジェームズが登場ですね。イージスの本分をすぐ様発揮しましたが、すぐに大編隊が来てしまいました。QFOP 第1艦隊どうなるか⁉️


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記録11「機動部隊戦」

尖閣諸島にいる深海棲艦と中国海軍機動部隊が戦闘に入る中、QFOP 第1艦隊も深海棲艦の偵察機に見つかる。ミサイル駆逐艦 ネイサン・ジェームズがこれを迎撃、撃墜するも既に敵攻撃編隊が向かっていた。


第1空母戦隊 装甲空母 大鳳、信濃、第4空母戦隊 軽空母 飛鷹、隼鷹のQFOP 第1艦隊に属する艦隊の空母4隻から次々と最新鋭ステルス機 F-35Bが次々と発艦する。

 

第1艦隊 第1空母戦隊

旗艦 装甲空母 大鳳

CDC

航空管制妖精「艦長、迎撃及び攻撃隊の発艦終了。艦隊直掩は戦闘空母 ヒマラヤ所属航空隊が努めます。」

大鳳「よろしいわ。」

提督「通信、迎撃及び直掩隊はイージス艦及び秋月ら防空駆逐艦とのデータリンクで連携を密にするように伝えてください。」

通信妖精「はっ❗️」

 

装甲空母 大鳳

第1戦闘攻撃飛行隊 コールサイン「ビーフェックス1」

ビーフェックス1-1(パイロット妖精)「ビーフェックス1-1よりビーフェックス及びシナノ隊全機へ、長距離レーダーに"お客さん"を捉えた。歓迎会の準備をする。AMRAM(長距離空対空ミサイル)用意、射程に入り次第任意の目標を狙え。」

大鳳所属の飛行中隊「ビーフェックス」の隊長妖精の機が深海棲艦機動部隊の艦載機編隊を捕捉した事を告げ、「"もてなす"用意をしろ」と言う。各々がレーダーに映る敵機に照準を合わせ、F-35Bの機体下部にある格納式ウェポンベイに搭載されたAMRAMが一斉に発射される。放たれたミサイルは白煙の尾を引いて深海棲艦艦載機編隊に襲いかかる。レーダーディスプレイの敵機を表す光点が一気に総数の三分の一が消滅する。

ビーフェックス1-1「第一次攻撃成功、一気に距離を詰めるぞ。全機突入❗️アターックッ‼️」

 

第1空母戦隊

装甲空母 大鳳

CDC

レーダー妖精「迎撃隊 "ビーフェックス"、"シナノ"両隊が交戦開始。続いて攻撃隊もまもなく攻撃始まります。」

 

軽空母 飛鷹

第2戦闘攻撃飛行隊 コールサイン「スカイグ2」

スカイグ2-1「スカイグ2-1よりスカイグ、ファイグル全機へ空自のAWACSからの情報を再度確認して。まもなく射程に入るわ、対艦ミサイル用意❗️」

 

軽空母 隼鷹

第3戦闘攻撃飛行隊 コールサイン「ファイグル3」

ファイグル3-1「ファイグル3-1了解、キツいの1発ぶち込んでやろうぜ❗️ヒャッハーッ‼️」

落ち着きのある飛鷹所属のスカイグに対しファイグルは所属の軽空母 隼鷹の艦娘の性格と同じく元気な「ヒャッハーッ❗️」を口にして隊の士気を上げる。F-35Bの翼下に搭載された重い90式対艦誘導弾を全機が一斉に発射する。全弾を撃ち終えた攻撃隊は反転しそれぞれの母艦に帰投する。

 

第1空母戦隊

装甲空母 大鳳

CDC

第1艦隊 総旗艦 装甲空母 大鳳のCDCでは提督と大鳳そしてCDCにいるクルー(妖精)達が航空隊の戦闘状況をディスプレイで見ている。

航空管制妖精「ビーフェックス、シナノ両隊、敵編隊迎撃率73%。スカイグ、ファイグル両隊は対艦ミサイル全弾投射、全弾命中。」

通信妖精「軽空母 飛鷹より入電、「空母ヲ級2、戦艦ル級4、重巡リ級3の撃沈を確認。されど戦艦棲姫3を含むその他艦艇は健在」です。」

見事な戦果を挙げて喜ぶところだが、提督と大鳳の表情は緩んでいない。

大鳳「戦艦棲姫が残りましたね。」

提督「予想通りだけどね。空母は全部仕留めたかったけど1隻残っちゃったか、まぁ制空権はこちらがもらったから十分か。」

深海棲艦の最強クラスで、強力な"障壁"を持つ「棲姫級」が残るのは想定内だった。いくら現用兵器の優位性があっても"障壁"という強力な盾を破って撃沈するのは困難だからだ。

レーダー妖精「艦長ッ❗️レーダーに新たな反応(コンタクト)ッ❗️方位3-4-7と0-2-3からです。」

大鳳「3-4-7は第二波ね、0-2-3からのは...❓」

提督「ッ❗️」

レーダー妖精の

提督「中国機動部隊から来たんだ❗️攻撃から戻ってきたのがこっちに来たんだ‼️」

0-2-3の方角には中国海軍空母機動部隊がいる。提督は即攻撃から帰投するも母艦を沈められ帰る場所を失った編隊だと悟る。彼らの残された手段は一つ、そう...

大鳳「もしかして体当たりを⁉️」

提督「大鳳❗️、直掩機隊とイージス、各防空艦は警戒するよう言ってくれ❗️」

大鳳「は、はいっ❗️」




QFOP空母艦娘の航空隊の活躍回です。コールサインはそれぞれ所属する空母の名前をもじったものが付けられています(シナノはそのままです)。現世改装により最新鋭ステルス機のF-35Bを運用できる様になり深海棲艦に対し優位に立っています。劇中では難無く乗り回してる妖精さん達ですが、機種転換訓練とか色々大変だったのは想像に難くないでしょう。敵編隊への迎撃、艦隊への攻撃と成功しますが、帰る所を失った艦載機達が次回QFOP第1艦隊に牙を剥きます。


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記録12「対空戦闘始め❗️」

深海棲艦機動部隊の艦載機編隊と艦隊本隊を叩く事に成功したQFOP 第1艦隊だったが、母艦を失った中国機動部隊への攻撃隊がそのままQFOP 第1艦隊に襲い掛かる。


QFOP 第1艦隊の方位0-2-3の上空、そこでは第1戦闘空母打撃群 旗艦 戦闘空母ヒマラヤ所属の直掩機隊と軽空母 飛鷹、隼鷹の航空隊により母艦を沈められ、帰る場所を失った深海棲艦空母航空隊が大乱戦を繰り広げていた。

 

第1戦闘空母打撃群

戦闘空母 ヒマラヤ

第1戦闘攻撃飛行隊 コールサイン「ヒマラヤa(アルファ)」

飛行隊長

坂本 美緒 三佐 "a(アルファ)1"「クソッ❗️思ったより数が多いな‼️」

戦闘空母 ヒマラヤ所属の第1戦闘攻撃飛行隊 隊長 坂本 美緒は予想以上の数の敵機来襲に苦言を漏らす。

坂本「a(アルファ)1より艦隊所属の防空担当艦全艦へ❗️敵数予想以上に付き我が方での迎撃困難❗️編隊複数機に突破された❗️対空戦闘に備えられたしッ‼️」

自分達で迎撃しきれないと判断し、艦隊の防空担当艦に通達している隙を狙って敵が格上の筈のF-35Bに果敢かどうかはさておき食ってかかってくる。

坂本「チッ❗️喋ってる暇もないかッ‼️」

宮藤 芳佳 三尉 "a(アルファ)2"「大丈夫ですか坂本さんッ⁉️」

同隊の2番機を務め、機を駆り空を舞う時以外は"白衣の天使"となる宮藤 芳佳 少尉が苦を漏らす坂本を心配して声を掛ける。

坂本「あぁ、大丈夫だ宮藤❗️雁淵はどうだッ⁉️」

雁淵 ひかり 三尉 "a(アルファ)3"「はいッ❗️なんとか大丈夫です‼️」

同隊3番機は正義感の強さと努力を惜しまない姿が買われている雁淵 ひかり 三尉が坂本、宮藤の両名より若干未熟さを思わせる戦い振りながらも敵を撃退しつつ坂本に返事を返す。

坂本「よし❗️宮藤、雁淵そしてa(アルファ)隊全機に告ぐ、突破された敵は艦隊防空艦に任せ我々はこれ以上の突破を許さぬよう今相手どってる敵を優先して堕とせ❗️」

a(アルファ)隊全パイロット「了解ッ❗️」

 

艦隊輪形陣外縁右翼

第6護衛駆逐戦隊

旗艦 秋月型防空駆逐艦 秋月

艦橋

秋月「敵機来襲ッ❗️ 艦橋よりCICへ主砲、CIWS、シースパロー用意❗️各艦と連動し射程に入り次第攻撃始めッ‼️」

第1艦隊の外縁に位置する第6護衛駆逐戦隊の防空駆逐艦 秋月が艦娘であり艦長の秋月の指示に従い長10㎝連装速射砲(内部近代化済み)、CIWS、シースパローを接近する敵編隊に向け射撃を始める。同戦隊所属の姉妹艦 涼月、新月と旗艦であり長女の秋月に続いて射撃を始める。

 

第1空母戦隊

旗艦 装甲空母 大鳳

CDC

大鳳「艦隊輪形陣外縁の秋月さん達が対空戦闘を開始。続いてミサイル巡洋艦 ヴィンセンス、ミサイル駆逐艦 シャクルトンも攻撃開始しました。」

提督「突破を許した分を見事に埋めているな。」

防空担当艦の見事な艦隊防空に感心する提督。

通信妖精「空自AWACSから入電❗️尖閣諸島より新たな敵編隊反応あり、重爆を含む編隊の離陸を確認したそうです❗️」

提督「全艦に共有させてください。あと長丁場になりそうだともね。」

体当たり覚悟で突入してくる敵空母艦載機隊に尖閣諸島からは重爆を含む編隊。波状攻撃の波は未だに凪そうにないようだと提督は悟る。

 

艦隊右翼

第1ミサイル巡洋駆逐戦隊

タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦

CG-49 ヴィンセンス

CIC

艦長「 Mk.45、CIWS、シースパロー撃ち続けろ❗️」

2005年に退役しQFOP配属の末に近代化にされたタイコンデロガ級3番艦 CG-49 ヴィンセンスが使える対空火器を総動員して迎撃に当たる。

レーダー手「直上に2機、直撃コースッ❗️」

艦長「CIWSでやれッ❗️」

戦術行動士官「ダメです❗️間に合いませんッ‼️」

そう言った瞬間、ヴィンセンスに強い衝撃と閃光が2回襲った。




深海棲艦空母艦載機隊の迎撃に「ストライク・ウィッチーズ」から坂本さんと宮藤が「ブレイブ・ウィッチーズ」から雁淵 ひかりが戦闘空母 ヒマラヤ所属の航空隊パイロットとして登場です。本家ではストライカーユニットを履いて戦ってましたが、本作ではステルス機であるF-35Bに乗り暴れ回ってます。多くの場数をこなした彼女達でも深海棲艦の数には苦戦を強いられてるようです。
QFOP 第1艦隊の防空担当である秋月型姉妹とタイコンデロガ級、アーレイ・バーク級が迎撃隊を突破してきた敵編隊を迎撃するが、ヴィンセンスが被弾しました。果たしてヴィンセンスは無事なのか❓


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記録13「幕が晴れた後...」

深海棲艦機動部隊との交戦に入ったQFOP 第1艦隊。順調に敵編隊を迎撃していたが、対空戦闘の最中にミサイル巡洋艦 ヴィンセンスが被弾する。果たしてヴィンセンスと第1艦隊は深海棲艦からの執拗な攻撃を切り抜けられるのか❓


尖閣諸島近海

QFOP 第1潜水戦隊

旗艦 伊-400型潜水艦 伊-400

発令所

伊400(艦娘)「航海長、そろそろ第1艦隊と合流ですよね❓」

航海長妖精「はっ、その筈です。」

青島軍港の監視任務を終え、佐世保基地からの補給を受けた第1潜水戦隊は作戦行動中の第1艦隊と合流すべく暗い海中を航行していた。

伊400「ソナー、何か聞こえますか❓」

ソナー妖精「水上艦のスクリュー音多数を確認しました。音紋からして味方ですが、小型のも混じっています。」

伊400「小型ってボート❓なんでかしら❓潜望鏡深度まで浮上して。」

水上艦ならまだしと小型のボートのスクリュー音まで聴こえるのを不思議に思い、伊400こと"しおん"は潜望鏡を上げれる深度まで取って潜望鏡を覗く。

伊400「ッ❗️」

副長妖精「どうしました艦長❓」

伊400「至急ブイを上げて提督に繋いで❗️場合によっては浮上しますよ❗️」

"しおん"が見たのは炎と黒煙を上げている艦艇から海へ飛び込む乗員とそれを救助するヘリや内火艇の姿だった。三時間以上にも及ぶ対空戦闘を終えた第1艦隊だったが、安堵に浸る余裕はなかった。被害に遭った艦の救助をしなければならなかったからだ。

 

第1艦隊 第1空母戦隊

旗艦 装甲空母 大鳳

CDC

提督「大鳳より航巡 三隈へ、救助の様子はどうだ❓」

 

同艦隊 右翼 第3巡洋駆逐戦隊

航空巡洋艦 三隈

艦橋

三隈(艦娘)「こちら"くまりんこ"、現在ミサイル巡洋艦 ヴィンセンスの僚艦 ミサイル駆逐艦 シャクルトン(DDG-162)とジョン・スマイリー(DDG-152)が内火艇とヘリを出して救助に当たっています。シャクルトンと照月の2艦は被弾するも損傷軽微で作戦行動に支障はないそうです。」

 

装甲空母 大鳳

CDC

提督「分かった、引き続き頼む。」

三隈に状況を尋ね終えると一旦無線を切り、また別の方に掛け直す。

提督「多田部、そっちの様子は❓」

 

同艦隊 左翼

多田部 拓海(おおたべ たくみ)特務一尉「こちら多田部、現在海に飛び込んだ乗員の救助の真っ最中ですよ。」

艦隊右翼で被弾により大破炎上中のミサイル巡洋艦 タイコンデロガの救助を指揮するのは多田部 拓海 特務一尉だ。提督と戦闘空母 ヒマラヤの戦術行動士官 倉田とは同じ転生者で"同期の桜"でQFOP創設時からいる古参メンバーの1人だ。様々な仕事を請け負ってきた事から「よろず一尉」とも呼ばれる縁下の力持ち的存在である。

提督(通信)「そうか、タイコンデロガはどんな具合だ❓」

多田部「盛大に燃えてますよ。お陰で酷い火傷をした奴もいます。一部は手の施しようがなく力尽きた者も...。」

多田部の視線の先には右舷に僅かに傾斜し艦橋その他構造物からもうもうと黒煙と炎を上げるタイコンデロガの姿が目に映る。近代化され再就役したタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の栄えあるネームシップの面影はもはや見る影もない程の酷い姿だ。

多田部「あの炎じゃ艦内に入れそうにもありません。もっともあの中で人が生きてるとも思えないですが...。」

提督(通信)「そうか...。」

多田部「あぁそれと、秋月は被弾しましたが損害は軽微だと。こっちは以上です。」

提督(通信)「そうか、引き続き頼む。」

多田部「了解です。ほらそこ❗️早く掬い上げてやれ❗️」

通信を終えると多田部は再び救助作業に戻った。ここまでの情報を整理するとミサイル巡洋艦 タイコンデロガ、ヴィンセンスが大破炎上、ミサイル駆逐艦 シャクルトン、駆逐艦 秋月、照月が小破で航空隊の損害はゼロだ。大破炎上したタイコンダロガとヴィンセンスには総員退艦が命じられまもなく海中に没するであろう。それはQFOP創設時からの古参艦の最期であった。救助された乗員やそれに携わる者達は沈みゆく二艦にそれぞれ敬礼を送った。

 

装甲空母 大鳳

CDC

提督「損害報告はまとまったな。」

大鳳「えぇ、タイコンデロガとヴィンセンスの事は残念だったわね。」

提督「あぁ、だが悲しんでる暇はない。敵はきっとまた来るぞ。機動部隊はまだ生きてる艦もいるしさっきので航空隊が全部じゃない温存してる筈だ、たっぷりとな。

機動部隊は空母ヲ級が1隻に擦り傷の戦艦棲姫が3隻と巡洋艦に駆逐艦複数隻と減らしはしたがそれなりだな。」

提督の言う通り悲しむのは後だった。敵編隊を追い散らし敵艦隊も多数を撃沈するも未だ敵の戦力は大きく、戦闘はまだまだ続くからだ。

提督「そういや中国空母機動部隊はどうなった❓」

大鳳「しおんさん達からの報告だと艦隊は壊滅したそうよ。今頃はこちらと同じく損傷艦の救助を行っているものと思われます。」

提督「中国からも日本本土からの救援も遠くて間に合わないな。だが、幸い我々が1番近い。」

提督の一言に参謀が反応する。

参謀妖精「救助なさるおつもりですか⁉️しかしそれでは我々の作戦が...。」

提督「多少の遅れは想定内で作戦を立てただろ参謀❓それに本土の救援が来るまでの処置だ。大鳳、佐世保基地に救援を要請するよう言ってくれ。」

大鳳「分かったわ。」

通信妖精(CDCからの通信)「艦橋(へ、こちら)CDC❗️AWACSより入電❗️深海棲艦機動部隊より12隻が艦隊を離れこちらに向かってきます‼️」




対空戦闘を終えたQFOP 第1艦隊でしたがミサイル巡洋艦2隻を失う結果となりました。しかし艦隊の皆はそれを悲しんでる暇もなく次の戦いに備えなければなりません。QFOP 第1艦隊と同じく尖閣諸島の攻略を目指していた中国海軍空母機動部隊は壊滅したのを確認した提督は一旦作戦を止めて救助を行うと決意するが、深海棲艦機動部隊から12隻の敵が接近との報が届きます。どうなるQFOP 第1艦隊❓


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記録14「戦艦棲姫艦隊を迎撃せよ」

長い対空戦闘を終えタイコンデロガ、ヴィンセンスと2隻のミサイル巡洋艦を失うも乗り切ったものの、またもや新たな危機が来たようで...


QFOP 第1艦隊

第1空母戦隊

旗艦 装甲空母 大鳳

艦橋

大鳳「CDC(へ、こちら)艦橋。接近中の相手の数は❓」

通信妖精(CDCからの通信)「編成は戦艦3、巡洋艦4、駆逐5の計12隻です。パラメーターによると戦艦は"棲姫/鬼級(クラス)"戦艦棲姫です❗️」

大鳳「なんですってッ⁉️」

提督「3隻とも全部か⁉️」

通信妖精(CDCからの通信)「間違いありません❗️」

深海棲艦の中でも強力な「棲姫/鬼級」である戦艦棲姫が尖閣諸島に配属されている3隻全てが護衛を連れてこちらに向かってきている。

参謀妖精「敵は空母を失った代わりに水上戦力で対抗しようと言うのでしょうか❓」

提督「問題は数じゃなくて相手が相手という事だ参謀。潰さないといけない本命がお供を連れてきた、並の戦力をぶつけても勝てる相手じゃない。」

大鳳「それでどうするの❓」

提督「戦艦には戦艦をだ。大和と武蔵の第1戦艦戦隊を出す。それと護衛なしで戦艦を出す訳にはいかないから後もう一艦隊はどうするかな〜。」

提督が迎撃に出す艦隊を迷っていると大鳳の側の艦内電話が鳴る。「はい」と言って大鳳が出る。

大鳳「はい、こちら大鳳。...はい代わります。ヒマラヤの滝澤艦長からです。」

提督は大鳳から受話器を受け取る。

提督「はい代わった提督だ。敵艦隊の接近の事についてですか艦長❓」

 

同艦隊 第1戦闘空母打撃群

戦闘空母 ヒマラヤ

艦橋

滝澤「はい、我が艦隊も志願したく思います。」

 

提督「戦闘空母の本領発揮をするなら今だと❓」

 

滝澤「はい。幸い我が艦隊は無傷でありますし、大和、武蔵両艦を護衛するに不足はないかと...。」

少し提督は考え始める。第1戦闘空母打撃群と第1戦艦戦隊を合わせても8隻で敵の数は12隻と4隻少ない。だが中国機動部隊の救援にも数が必要である。普通なら敵数と同じ12隻を揃えるところだが、第1戦闘空母打撃群は今作戦が初陣なれど乗員達は歴戦の猛者の集まりでしかも所属艦艇の全てには数の不足を補う強力な兵器が搭載されている。大和型戦艦の大和と武蔵は史実では活躍の機を失ったが、転生し現世改装を受けその性能を活かすべく訓練に励んできている。その事を充分に分かっていた提督は答えを出す。

提督「......わかった、君達を信じるよ。」

滝澤「ありがとうございます❗️」

感謝の気持ちを述べると滝澤は受話器を置き指令を下す。

滝澤「艦長より第1戦闘空母打撃群所属の全艦艇に告げる❗️これより我々は艦隊を離れ戦艦大和、武蔵と共同で接近中の敵艦隊を迎撃する❗️全艦取り舵いっぱいッ❗️第1戦速ッ‼️」

滝澤の指示の下、第1戦闘空母打撃群の全艦艇は一斉に取り舵を切って艦隊から離脱していく。

 

第1戦艦戦隊

大和型戦艦 大和

艦橋

副長妖精「艦長、第1戦闘空母打撃群が離脱していきます。」

副長妖精が話しかけるは大和型1番艦にしてその名の如し"大和撫子"に相応しい美貌と人柄で日本のみならず世界的に人気を持つ戦艦娘 大和が美しい茶髪の長いポニーテルをたなびかせる。

大和(艦娘)「私達も続きます。取り舵20°、ヨーソロー❗️」

大和が取り舵を切ると後ろから巨大な艦が続く。大和型戦艦 2番艦の武蔵で、その艦橋で腕を組んでいる力強そうなイケメン褐色美女は戦艦娘の武蔵だ。

武蔵(艦娘)「大和に続くぞ❗️取り舵30°だッ❗️」

操舵手妖精「取り舵30°、ヨーソロ〜❗️」

武蔵が取り舵の指示を出し大和に続いて艦隊から離脱する。これから彼女達は深海棲艦の中でも群を抜いて強力な相手と対峙することとなるが、彼女達の顔には不安はなかった。




戦艦棲姫を含む艦隊の迎撃に向かう事となった第1戦闘空母打撃群と第1戦艦戦隊。対空戦闘を終えたのも束の間、敵は休む間も与えてくれない...これが戦場です。次回、戦闘空母ヒマラヤと大和、武蔵の本領が発揮されます。


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記録15「突撃❗️第1戦闘空母打撃群と第1戦艦戦隊 前編」

接近する戦艦棲姫率いる深海棲艦隊をQFOP 第1艦隊の第1戦闘空母打撃群と第1戦艦戦隊が迎撃に向かいます。


艦隊から離脱した第1戦闘空母打撃群と第1戦艦戦隊は戦艦棲姫率いる水上部隊を迎撃すべく航行している。第1戦闘空母打撃群は※鋒矢(ほうし)の陣形(矢印の形の隊形)を取り、その後ろに第1戦艦戦隊が続いている。

 

第1戦闘空母打撃群

旗艦 戦闘空母 ヒマラヤ

CIC

レーダー手「敵艦隊との距離600(㎞)に迫りました❗️」

倉田「距離500で"バスター・スター"を発射する。発射担当、用意しろ❗️」

ミサイル発射担当官「了解、"バスター・スター"発射スタンバイします。」

"バスター・スター"対艦巡航ミサイルは旧ソ連のSS-N12「サンドボックス(NATOコードネーム)」をベースにQFOP研究開発班によって開発されヒマラヤ級とブルビネラ級に搭載されている。棲姫/鬼が持つ障壁を撃ち破る事をコンセプトに開発された本ミサイルはベースになったサンドボックスよりも構造を簡素化して西側製の既存技術を用いる事でコストの低下を図っている。その結果、ほぼ全ての性能面、運用面において原型を上回る事に成功したのはQFOP技術の成果の賜物である。

倉田「僚艦 ブルビネラ、ベロニカに通達、本艦と合わせ戦艦棲姫を攻撃する。モーニング・グローリー、ビーナスベルトは敵重巡に照準合わせ❗️」

ブルビネラ、ベロニカのVLSとヒマラヤ、モーニング・グローリー、ビーナスベルトの発射機(ランチャー)が開く。モーニング・グローリーとビーナスベルトの発射機はRPK-5 "ラストルーブ"(NATOコードネーム:SS-N-14)の物だがトマホーク巡航ミサイルを搭載できるよう改装されている。

倉田「全艦発射準備よろし。」

滝澤「攻撃始めッ❗️」

倉田「撃ちー方始めーッ❗️」

ヒマラヤが撃つのと同時に他艦も続いてミサイルを撃ち始める。それをCICのディスプレイにて確認する滝澤艦長。

滝澤「ラヤ、"バスター・スター"を実戦で撃つのは今回が初めてだけど障壁を撃ち破れると思う❓」

ヒマラヤ「米海軍は棲姫/鬼級との戦闘の際、トマホークを15発消費して障壁を破りました。"バスター・スター"は計算上トマホーク2〜3発分の破壊力を持っていますからそれと大和型の主砲を用いれば破壊は可能と思われます。」

滝澤「(計算通り行けると良いけど...。)」

ヒマラヤの事を疑っている訳ではないが、なにせ実戦で初めて使う兵器だ。不安があるのも無理はない。ディスプレイを見るとまもなくミサイルが敵艦を直撃する所だった。戦艦棲姫は障壁で防御するが、巡洋艦はトマホークを盛大に受け爆散する。

レーダー手「バスター・スター、トマホーク全弾命中。戦艦棲姫健在なれど巡洋艦4全て撃沈しました。」

滝澤「効果ないか...。」

ヒマラヤ「いえ、ダメージは与えているはずです。」

ディスプレイからでは分からない。かと言って目視でも分かるかというとそうでもないだろうも滝澤は思った。ヒマラヤもあくまで計算上でそう言うところはAIらしいと言える。

レーダー手「あ❗️敵駆逐艦5、単縦陣を形成してこちらに向かってきます❗️」

滝澤「こちらも陣形を単縦陣に❗️戦術、砲戦用意して❗️」

倉田「了解。8インチ連装、5及び3インチ単装撃ち方用意❗️」

第1戦闘空母打撃群全艦は突入してくる駆逐艦を相手にすべく陣形を単縦陣に変えて迫る。ヒマラヤにはMk.45 mod2 5インチ単装速射砲及びOTOメラーラ 76㎜単装速射砲の他により大型の8インチ(旧帝国海軍 20.3㎝連装砲)連装が搭載されている。搭載の目的は対地艦砲射撃による上陸部隊の支援だが、無論水上戦にも使える。空母でありながら"バスター・スター"対艦巡航ミサイルと8インチ、速射砲と各種ミサイルをハリネズミの如く装備している攻撃的なスタイルを持つ艦容がヒマラヤ級を「戦闘空母」たらしめている。

滝澤「戦術、先手必勝よ。初弾から当てていきなさい❗️」

倉田「了解、砲術できるな❓」

砲術士「仰せのままに戦術長。」

倉田「てっ❗️」

倉田の合図で砲術士がトリガーを弾き8インチが火を噴く。先頭を行く駆逐艦に命中し炎上、行き足が止まる。撃沈だ。 

レーダー手「先頭の駆逐艦、機関停止。撃沈です。ッ❗️駆逐艦の艦隊に動きあり、撃沈した駆逐艦の左右からそれぞれ2隻来ます。」

滝澤「どう思うラヤ❓」

ヒマラヤ「恐らくどちらかが囮の引きつけ役でしょう。しかし問題なく仕留められる筈です。」

滝澤「その通りよ❗️艦長より操舵手へ、転舵取り舵❗️」

艦橋にいる操舵手に取舵を切るよう命じる滝澤。T字有利を取る為である。敵駆逐隊が撃沈された僚艦の背後から出てくるのよりも早くヒマラヤ達は取舵を切る事に成功する。艦側面を晒すのは被弾面積を広くする事にもなるが、その分敵側に向ける砲の数が増える為火力を発揮しやすくできる。今まさにヒマラヤ達はそういう状態になろうとしている。ヒマラヤとそれに続く僚艦達の砲門が敵に指向し一斉に火を噴き始める。戦闘空母ヒマラヤ、ミサイル巡洋艦ブルビネラ、ベロニカ、汎用駆逐艦 モーニング・グローリー、ビーナスベルト、おおよそ水上砲戦などする事がないであろう現用艦達の砲火力は一見頼りないものに思えるもののその速射性と精密さで次々と有効弾を命中させる。

レーダー手「敵駆逐隊、全艦撃沈です。」

倉田「よくやった砲術士。」

ヒマラヤ「ミユ、残りは戦艦棲姫のみとなりました。」

滝澤「よろしいわ。全艦回頭、後は大和と武蔵に任せます❗️」

第1戦闘空母打撃群全艦は回頭し、残りの戦艦棲姫を大和、武蔵に委ねるのだった。




戦闘空母の本領発揮回となった本話。現代の軍艦が水上砲戦をするなんて現実の場合は殆どありませんが、数で勝る深海棲艦が相手だとミサイルによる遠距離攻撃で決まらない場合があるのでこういうこともあると思います。そして見事に艦の性能を活かし練度を見せつけた第1戦闘空母打撃群は後を大和と武蔵に譲りました。次回は大和、武蔵vs戦艦棲姫です。


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記録16「突撃❗️第1戦闘空母打撃群と第1戦艦戦隊 後編」

ヒマラヤ率いる第1戦闘空母打撃群の活躍により深海棲艦 巡洋艦、駆逐艦を全て撃沈し、残りはボスクラスの戦艦棲姫3隻を残すのみとなった。相手をするのは大和型戦艦 大和と武蔵だ。


見事な練度で巡洋艦と駆逐艦を全て撃沈した第1戦闘空母打撃群は回頭し第1戦艦戦隊 大和、武蔵に後を託した。これより彼女らは深海棲艦最強クラスである戦艦棲姫3隻と対峙する。ヒマラヤと後に続く第1戦闘空母打撃群の艦艇達は大和、武蔵に対し敬礼を送りそして大和、武蔵のその乗員の妖精達も同じく返す。

 

第1戦艦戦隊

大和型戦艦 大和

艦橋

見張妖精「戦艦棲姫3、面舵を切ります。」

大和「(味方がやられたというのに...。)」

何事もなかったかのように涼しい顔で面舵を切り同航戦を挑もうとする戦艦棲姫に大和は「深海棲艦に仲間意識やそれに対する情はないのか❓」と疑問に思うが、今は戦闘に集中すべしと考えるのをやめる。

大和「いいでしょう。操舵手、こちらも面舵を。ヒマラヤ達を砲火に晒すわけには行かないわ❗️」

大和は敵の誘いに敢えて乗った。自分の役割を終えQFOP 第1艦隊に帰投する第1戦闘空母打撃群を守る"盾"となるべく立ち塞がる。武蔵もそれに続き面舵を切り、大和は受話器を取りCICに連絡を入れる。

大和「戦術、初弾から当てていきなさい。一番槍はこちらのものよ。」

「了解、やってやります。」と戦術妖精が答える。

大和「敵艦捕捉、全主砲❗️薙ぎ払えッ‼️」

それが大和の攻撃の合図だった。三連装46㎝の世界最大の艦載巨砲が轟音と衝撃を放って唸る。 

 

同戦隊

大和型戦艦 武蔵

艦橋

武蔵「遅れを取るなッ❗️全砲門、開けッ‼️」

大和に続いて2番艦の武蔵も続く。二艦から発射された「16式徹甲弾」は九一式徹甲弾を現代版に改良したものだ。ヒュウゥゥゥゥゥゥっと音を立てて弧を描き、戦艦棲姫の障壁に激突し爆発する。

 

戦艦 大和

艦橋

大和「見張妖精❗️敵の障壁は⁉️」

見張妖精「未だ健在のもようです❗️...あッ❗️敵艦発砲‼️」

大和「回避運動ッ❗️取り舵一杯ッ‼️」

急な取り舵に艦が揺さぶられる。座ってる妖精達は自身と机の物が落ちない様抑え、立っているまたは歩いている妖精は側にある物に捕まるかそれが出来ずに横転する。着弾の巨大な水柱が大和の右舷に上がり、その海水が大和を濡らす。

見張妖精「ぜ、全弾回避しました❗️」

大和「(先の巡航ミサイル攻撃でダメージを受けてるはず...ならば私の砲の一押しで破れないわけがないわ❗️)怯むなッ❗️撃ち返せッ‼️」

大和は乗員達に喝を入れる。一方の武蔵もバンバンッと46㎝を撃っている。

武蔵「どこでも良いから当てろッ❗️46㎝ならどこでも抜けるッ‼️」

改装された大和型の射撃管制システムにより次々と命中弾を叩き込んでいるが、戦艦棲姫の障壁はまさに鉄壁だ。それを良い事に撃ち返してくる。そして...

大和「ッ‼️‼️⁉️」

大和に突然強い衝撃が走った。被弾の衝撃だ。右舷艦首と艦中央のMk.29 シースパロー発射機群だ。砲弾の角度が浅かったお陰もあるが、そこはさすが大和型、1発や2発の被弾などものともしないようだ。

大和「※ダメージコントロールッ❗️急いでッ‼️」

(※通称「ダメコン」、物理的な損傷に対し被害を最小限にする為の処置)

大和はすぐ応急修理妖精に対しダメージコントロールを命じる。旧帝国海軍の時とは違い、ダメージコントロールの有用性を学んだ事により大和を含む日本艦娘達は今日(こんにち)まで沈まずにこれているのだ。

大和「このくらいじゃ大和はビクともしません❗️撃ち返し続けなさいッ‼️」

大和は被弾に動じず「撃ち返せ❗️」とまた檄を飛ばす。その檄を勢いにした砲弾が一隻の戦艦棲姫の障壁にぶつかり「パシャリーンッ❗️」とガラスが割れた様な音が鳴り響く。

戦艦 武蔵 見張員妖精「戦艦棲姫1隻の障壁消失を確認ッ❗️」

武蔵「やっと一隻か、かかり過ぎたな...。」

喜んでる暇はなかった。相手が相手だから無理もないが、戦艦棲姫一隻の障壁を破るのに時間がかから過ぎだと大和、武蔵とその乗員妖精達は思っている。

武蔵「CIC、戦術❗️障壁が破れた奴からやれッ‼️撃てーっ❗️撃てーっ‼️」

障壁という鉄壁の加護を失った戦艦棲姫にすかさず砲撃を加える武蔵。放たれた徹甲弾が艦橋の司令塔と第二主砲塔に直撃し、信管が作動して炸裂する。最初の命中弾は武蔵が取った。その様子は大和も見ていた。

大和副長妖精「やりますね武蔵さん達。」

大和「えぇ、私たちも負けてられないわよ❗️第1、第2主砲、一斉射ッ‼️」

武蔵と同じく手負となった戦艦棲姫を狙う大和。艦首付近に水柱が上がる。船体に破口が生じたのか、艦首付近から沈み始める。その次の瞬間だった❗️

大和見張妖精「やった❗️沈んでる...うわッ‼️⁉️」

音と言葉に表現出来ないほどの爆音がしたと思ったらその戦艦棲姫は突如真っ二つに折れて爆沈した。被弾した第二主砲塔の弾薬庫に引火し誘爆したのだろう。その衝撃波が大和と武蔵にも伝わり、小さな破片が「カンッ❗️カンッ❗️カンッ❗️」と大和と武蔵の船体に小さな音を立ててぶつかる。外に出ていた妖精達はすかさず身を隠したお陰で幸い負傷者は出なかったようだ。とにかく1隻撃沈だ。撃沈の喜びに浸る間もなく2隻目に照準を合わせる大和と武蔵。2隻目も障壁が破れた、大和武蔵のどちらのものかは分からないが放たれた徹甲弾が2隻目の戦艦棲姫の艦橋上部射撃指揮所と航海艦橋に直撃する。艦の頭脳を失っての混乱か主砲の射撃が止まる。

 

戦艦 大和 艦橋

大和見張妖精「戦艦棲姫2番艦、主砲射撃沈黙。」

大和通信妖精「武蔵からです艦長。」

通信妖精から言われ受話器を取る大和。

大和「大和よ。」

武蔵(通信)「どうする❓このまま奴も沈めるか❓」

武蔵は大和に尋ねる。今なら敵の丁度2対2でその内一隻は艦橋をやられ今は沈黙している。沈めるなら今がチャンスだ。しかし...

大和「いえ武蔵、提督は「3隻とも沈めて」とは言ってないわ。ここで退きましょう。」

 

戦艦 武蔵 艦橋

武蔵「了解した。CIC、戦術。主砲に発煙弾装填。」

戦果は十分としてこれ以上の戦闘継続の必要はないと判断した大和と武蔵は発煙弾を装填し、戦艦棲姫前方に放った。今日は風がなく煙幕は流される事なく滞留し続けた。結果、戦艦棲姫は大和型姉妹を見失い戦闘は終了した。戦艦棲姫1隻を撃沈、1隻を小破させた。こちらの損害は大和が被弾小破のみと比較的軽傷で済んだ。




前世でその巨砲を生かすことができなかった大和型姉妹が現世改装により深海棲艦の大物である戦艦棲姫と互角以上に戦えています。しかし幾ら近代化されてるとはいえやはりそこは戦艦棲姫で、大和も無傷ではいられなかったようです。まぁなんにせよ勝利は勝利です。


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記録17「待ち続ける者たち」

戦艦棲姫3隻を相手に2隻で挑み勝利した戦艦 大和と武蔵、一方それとほぼ時を同じくして作戦参加中のQFOP 第2艦隊は自分達の進軍命令を待っていた。


フィリピン海

 

ここフィリピン海域ではQFOP 第2艦隊が布陣し待機している。「トライデント作戦」での三方向作戦の内の真ん中に位置する艦隊だ。現在、作戦予定海域手前で「待機」を命じられている。

 

QFOP

第2艦隊 第2空母戦隊

戦隊及び総旗艦 翔鶴型航空母艦 翔鶴

艦橋

翔鶴(艦娘)「通信、提督達の様子は傍受していますか❓」

銀髪ロングヘアーのおっとり空母艦娘の翔鶴が、通信妖精に味方艦隊の様子を尋ねる。

通信妖精「はい、第1艦隊が深海棲艦機動部隊と交戦しこれを撃破しました。損失艦2隻と損傷艦あれど作戦続行は可能のようです。そのあと壊滅した中国海軍機動部隊の救助と戦艦棲姫率いる水上部隊の迎撃に分かれたようです。」

翔鶴「雲龍さん達の第3艦隊は❓」

通信妖精「まもなくオーストラリア海軍との会合海域に到達するようです。」

翔鶴「そう、提督のご命令とはいえ皆頑張ってるのにここで待機してていいのかしら私達...。」

通信妖精「私らはともかく瑞鶴さんは今頃ぶつくさ言って不貞腐れてるんじゃないでしょうか❓おっと通信が...。」

突然入ってきた通信を聞く通信妖精。

翔鶴「どうかしたの❓」

通信妖精「噂をすればなんとやらです。艦長の妹さんからですよ、話してやってください。」

 そう言ってヘッドセットを手渡すと翔鶴は頭に装着して無線のスイッチを入れる。

翔鶴「瑞鶴❓」

瑞鶴(通信)「翔鶴姉❗️いつになったら進軍命令が来るのよぉ❗️」

ヘッドセットから聞こえてきたのは翔鶴の妹で帝国海軍きっての「幸運艦」として知られる緑色のツインテールとツンデレさが特徴の瑞鶴だ。

 

同戦隊

翔鶴型航空母艦 瑞鶴

艦橋

瑞鶴(艦娘)「皆もう戦闘を始めてるのにあたし達はその「せ」の字もないじゃない❗️」

ヘッドセット越しに待機命令に不満を漏らす瑞鶴。第1も第3も動きがあるのに自分達第2はまだ動かない。瑞鶴の性格上、不満を垂れるのも無理はなかった。

 

翔鶴「落ち着いて瑞鶴、いつも言ってるでしょ❓焦ったら負けよ。提督にも考えがあるのよ。」

 

瑞鶴「分かってるけどさ❗️でもこう待たされるのは嫌なのよ‼️」

 

???「翔鶴の言う通りまで瑞鶴。」

 

翔鶴「龍驤さん...。」

2人の通信を聞き、割って入って来たのは第5空母戦隊所属のベテラン軽空母の龍驤だった。

 

同艦隊 第5空母戦隊

軽空母 龍驤

艦橋

龍驤「大きな声で話しとったからよう聞こえたで❓提督がなんの考えもなしにうちらを退屈させる訳ないのはお前さんも分かってるやろ❓龍鳳、お前さんもなんか言うたれや。」

そう言って龍驤は同じ戦隊で旗艦の軽空母 龍鳳に声をかける。

 

同戦隊所属 旗艦

軽空母 龍鳳

艦橋

龍鳳「え わ、私はその...龍驤さんの言う通りだと思います❗️提督は私達の事ちゃんと考えて信頼してくれてますから❗️」

軽空母艦娘の中でも良心的で※前世で潜水母艦から軽空母に改装されたものの活躍が叶わず戦運にも恵まれなかった龍鳳だったが、転生し提督の下で戦い奮闘してきた。それによりオドオドしさはあるものの戦闘への自信もつけ提督への信頼も厚い。

(※「龍鳳」と名乗り軽空母になる前は潜水母艦 大鯨であった。主要な戦いはマリアナ沖海戦(1944年 6月19日)のみ参加し、以降は輸送船団の護衛に従事し呉軍港空襲(1945年 3月19日)にて大破しその後終戦を迎えた。)

姉の翔鶴に戦友である龍驤、龍鳳に言われ、気の強い瑞鶴も「う〜...」と頭を掻きむしりながら言うとまた1人無線に割り込んで来た。第2戦艦戦隊の戦艦 金剛だ。

 

同艦隊 第2戦艦戦隊

旗艦 金剛型戦艦 金剛

艦橋

金剛「Hey everyone❗️皆でTea timeにしてはどうデスか〜❓」

と持ち前の明るさと片言デース口調Tea timeの提案をしてきた。

 

瑞鶴「はぁ⁉️あんたこんな時に何言って...。」

 

金剛「提督がよく言ってたネ、「待つのも大事な任務、その間にしっかりと休息を取るんだ」って。」

金剛はすかさず提督の言葉を出して瑞鶴の反論を制した。QFOPの"ムードメーカー"的存在であり自他共に認める「提督LOVE❤️」な彼女だが、その実姉妹の事のみならず提督や艦隊の皆の事をよく見て考えているリーダーの資質も備わっている。

 

翔鶴「金剛さんの言う通りよ瑞鶴。休むのも仕事の内よ。」

 

瑞鶴「了解、翔鶴姉。いえ、総旗艦。」

 

翔鶴「総旗艦 空母 翔鶴より艦隊全艦へ、警戒しつつ各自休息を取ってください。(提督、皆さん...私達は待っております。ですからどうかご無事で.....。)」

総旗艦らしく皆を纏める為そう言う翔鶴だったが、内心は瑞鶴や皆と同じく提督達が心配である事に変わりはなかった。




今回は戦闘無しの「待機回」です。息抜きにこういう回があっても良いかな❓と思って書きました。翔鶴や瑞鶴、龍驤、龍鳳それに金剛も艦娘それぞれのキャラクター性を分かりやすく描きました。
瑞鶴は性格上、待機命令とか待たされるのは嫌なタイプだと思います。むしろ彼女は活発的に動いてる姿の方が似合いますからね。それを宥める姉の翔鶴も大変です 金剛はお得意のムードメーカーっぷりでそれを制しました。アニメ版でもそういう「時折見せるやり手」感がありましたから、この創作の金剛もそういう感じにしました。


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記録18「夕焼けに染まる空と海で」

第2艦隊にいる瑞鶴が不貞腐れてる中、第1艦隊は中国海軍空母機動部隊の救助を行います。


多田部「そこ❗️早くすくい上げろ‼️直に日が暮れる❗️見えなくなってからじゃ遅いんだ‼️クソッ...こりゃまた酷ぇザマだな。」

ヒマラヤ達第1戦闘空母打撃群と大和、武蔵の第1戦艦戦隊が戦艦棲姫の水上部隊と交戦している中、本隊のQFOP 第1艦隊は深海棲艦との戦闘により壊滅した中国海軍空母機動部隊の救助を行っていた。

 

QFOP 第1艦隊

総旗艦 装甲空母 大鳳

艦橋

提督「多田部、状況はどうだ❓」

無線機を取り多田部に連絡をつける提督。

多田部「絶賛救助活動中ですよ。"中国海軍の野望"が燃える光景を見ながらです。」

 

中国空母機動部隊は旗艦の空母 遼寧が大破、052A型駆逐艦のハルピン、青島、江凱Ⅱ型ミサイル・フリゲート艦 煙台、塩城、揚州が戦没し残ったのは旅洋Ⅲ型ミサイル駆逐艦 海竜と大原そして江凱Ⅱ型の大慶の3隻のみだ。多田部の眼前ではその総旗艦たる空母 遼寧が炎上し黒煙を吐きながら傾斜している。総員退艦が発せられ今も乗員達が海へ飛び込んでいる。

 

多田部「見るも無惨ですよ。」

 

提督「そうだな。※ヴァリャーグ...いや遼寧にとって良い人生、いや"艦生"だったのかなってな。」

(※遼寧の旧艦名。ソビエト連邦海軍 アドミラル・クズネツォフ級重航空巡洋艦の2番艦として建造が進められるもソビエトが崩壊しその後紆余曲折を経て中国海軍にて改名の末、就役した。)

多田部「ははは、上手いですね提督。どうでしょうね、でも少なくとも錆びついて朽ちていくよりかは国は違えど生まれ変わらせてくれた中国には感謝はしてたんじゃないですかね❓」

2人は遼寧という軍艦がどの様な思いを抱いて今まさに海中に没しようとしているのかというのを話した。しかしどんなに考えようとそれは遼寧自身にしか分からない事だという答えに行き着くと、2人は感傷に浸るのをやめ各々の仕事に戻った。大鳳の艦橋から救助作業の様子を覗く提督。外は綺麗な夕焼けだった。その綺麗な夕焼けをバックにして沈んでいく空母 遼寧に対しその乗員達が敬礼を贈っている。それを見て提督は無線で艦隊全艦艇と救助作業中の隊員達にも彼らと同じく敬礼をするよう伝え、皆が遼寧に対し敬礼をする。例え敵対している国の艦であっても敬意を払わなければならないと思ったが故の行動である。

大鳳「提督、ヒマラヤの滝澤艦長から「敵水上艦隊を撃破」の報よ。」

提督「そうか、見事だな。被害はあるのか❓」

大鳳「大和さんが戦艦棲姫からの直撃弾を受け小破した以外は全艦無事だそうです。戦艦棲姫は1隻を撃沈、2隻が健在で内1隻が小破だそうです。」

提督「いくら大和と武蔵でも3隻の戦艦棲姫の相手はキツかったか...まぁ"全艦を相手にしろ"とは命じてないし1隻沈めて1隻損傷なら後はどうにかなるな。

大鳳、戦艦棲姫の動きを監視しつつ状況次第じゃ沈めれれるよう航空隊を準備させておいて。」

大鳳「分かったわ。」

第1戦闘空母打撃群と大和、武蔵の奮闘ぶりを称えつつ撃ち漏らした戦艦棲姫への備えをすべしと大鳳に伝えた。

提督「通信、本土からの救助隊到着は❓」

大鳳 通信妖精「はっ、あと30分とのこと。」

提督「分かった。(ミサイル巡洋艦2隻を失い、戦闘可能だが損傷してる艦も出ている。老朽艦とは言え、タイコンデロンガとヴィンセンスには私も愛着があったから残念だ...いやここでネガティブ陥っては士気に関わる。これ以上犠牲を出さない手を打つ、それが私の仕事だ。)」

そう心の中で提督は思ったのだった。




前回同様に今回も戦闘パート無し回です。中国海軍空母機動部隊の救助という"寄り道"をしていますが、例え作戦の妨害か何かで来たとはいえ「目の前で溺れてる人を見捨てない」のがQFOPの提督です。中国海軍の外洋進出の野望の象徴である空母 遼寧に対し敬礼もしました。提督という登場人物のキャラクター性が少しでも理解していただければ幸いです。


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記録19「闇夜の攻防 前編」

前話でQFOP 第1艦隊が尖閣諸島に駐留する深海棲艦との戦闘で壊滅した中国海軍空母機動部隊の救助を行いました。今回のお話はそれから少し時間が経っていて別の海域で作戦行動を起こしている第3艦隊の視点です。


鮮やかな夕日が沈み、太平洋は静寂の闇夜に包まれた。ここ南太平洋のソロモン諸島海域も同じだ。そこを航行するQFOP 第3艦隊はオーストラリア海軍と共同作戦を図るべく暗闇を進んでいたが...。

 

南太平洋 ソロモン諸島海域

QFOP 第3艦隊 第4護衛駆逐戦隊

陽炎型駆逐艦 陽炎

CIC

ソナー妖精「敵魚雷、10時の方向❗️向かってくる‼️」

 

艦橋

陽炎(艦娘)「了解❗️対雷撃爆雷を食わせなさいッ‼️」

CICからの一報を受け、駆逐艦 陽炎は艦後方にあるRBU-6000(ロシア(旧ソ連)製の対潜迫撃砲)から対魚雷の防御用爆雷を発射する。航行する魚雷の前に散布された爆雷が雨あられと広がり爆発、水柱を上げる。迎撃成功だ。

ソナー妖精「命中❗️迎撃成功です‼️」

陽炎「ヘッドフォン外さないでソナー手❗️陽炎より不知火へ、敵潜を捉えたッ⁉️」

 

同戦隊所属 同型駆逐艦 不知火

艦橋

不知火「いえ、こっちのソナーにはかからなかったです。」

 

陽炎「黒潮、そっちは❓」

 

同戦隊所属 同型駆逐艦 黒潮

艦橋

黒潮「ダメや、こんだけ撃ってきてるのに捕まえられへん。」

第3艦隊は深海棲艦潜水艦の※群狼戦術に遭っていた。(※第二次大戦中にドイツ海軍のカール・デーニッツ元帥によって考案された複数の潜水艦による多方向攻撃戦術。)しかもその相手はソナーに引っかからないと来ている。

黒潮「アクティブ打ったらどうや❓」

 

陽炎「ダメよ、私達どころか艦隊全艦の位置を晒すわ。」

黒潮は自ら音を発して敵潜を探知するアクティブ・ソナーの使用を具申するも却下される。既に攻撃を受けているこの状況なら使ってもいい筈だが、艦隊全艦が標的になったりされても困るしなにより今戦っている相手だけでなく他の敵潜まで呼び寄せかねない。

同艦隊 第3空母戦隊

総旗艦兼戦隊旗艦 雲龍型航空母艦 雲龍

CDC(戦闘指揮センター)

通信妖精「艦長、第4護駆(ごく)戦隊旗艦 陽炎より入電、"我、敵潜ノ攻撃ヲ受ケ迎撃スルモ探知デキズ。"です。」

雲龍(艦娘)「陽炎さん達でも探知できない敵...厄介ね。」

雲龍型姉妹と長女で「雲のように掴み所がない」ことで知られている雲龍もこの状況をおかしいと感じていた。※前世において潜水艦に沈められている彼女だから尚更だ。

(※雲龍は1944年 12月19日に"人間爆弾"として知られている特攻機の"桜花"の輸送中にバラオ級潜水艦 SS-395 レッドフィッシュの雷撃を受け撃沈された。)

雲龍「通信、前衛を航行する第5ミサイル巡洋駆逐戦隊 旗艦ミンスクに伝えてください。「敵潜未ダ探知セズ、ソシテ迎撃デキズ。注意サレタシ。」と。」

 

第5ミサイル巡洋駆逐戦隊

旗艦 キエフ級重航空巡洋艦(軽空母) CVL-117 ミンスク

艦橋

通信士「了解。艦長、総旗艦から敵潜は未だ捉えられずだと。」

艦長 ヨハン・バローン・マーリニキィ大佐「厄介だね、歴戦の彼女達でも捉えられない相手なんてね...。」

小柄で愛くるしい童顔が目を引き、家が元貴族のヨハン大佐はかつてのソビエト連邦海軍の威信を見せ、近代化され今尚その威容を示しているキエフ級重航空巡洋艦 2番艦 ミンスクの艦長で別名"ミンスクの小貴族"と呼ばれている。雲龍からの通信を聞き困った表情を見せるが、その童顔さとは裏腹にその表情はキリッとしている。

ヨハン「(陽炎さん達の前に出てきたのだけじゃない筈...相手は"群狼"、海の狼の群れだ。こんな美味しそうな獲物の前で舌なめずりをしない訳がなければ逃すつもりもないだろうから次はさらに一斉に掛かってくるはず...。)」

ヨハンは考えを巡らせる。深海棲艦がこんな大艦隊を野放しにする筈はないと。

CIC(戦闘情報センター)

ソナー手「ッ❗️ソナーに感ッ❗️方位-0-0-2に潜水艦ッ❗️感1ッ‼️」

CICのソナー手が潜水艦を捕らえた。パラメーターは深海棲艦の物と一致した。数は1隻、ほぼ真正面の位置だ。直ぐに戦術行動士官が艦橋にいる艦長に伝える。「他にはいないか❓」と聞かれたのとほぼ同時に方位2-7-3と0-8-7にも潜水艦が現れた。ヨハンの予感通り敵潜はいた、しかも3隻が真正面と左右にそれぞれ一隻ずつ陣取ってる。「頭を押さえる気だ」と艦長が確信した時、左右の敵潜が同時に魚雷の発射管を開けて雷撃してきた。「雷撃ッ❗️魚雷左右から2本ずつ計4発‼️」と叫ぶソナー手、戦術士官は直ちに艦長に「戦闘配置」を告げると了承して直ぐに迎撃を行う。両舷にあるRBU-6000が対雷撃爆雷を撒き同時に三連装短魚雷から対潜魚雷を放たれる。

ソナー手「敵魚雷迎撃成功❗️本艦の短魚雷、真っ直ぐ航行中...あぁッ❗️真正面の敵潜から雷撃ッ‼️」

 

艦橋

ヨハン「しまった❗️左右の雷撃は囮だッ‼️」

ヨハンの言う通りだった。こちらの対潜兵装を使わせて装填している隙を狙ったの雷撃だった。

 

CIC

戦術行動士官「対潜迫撃砲の装填はッ⁉️」

対潜兵装発射担当官「ダメですッ❗️間に合いませんッ‼️」

ソナー手「正面魚雷❗️直撃コース❗️命中まであと5秒ッ‼️」

戦術行動士官「艦長ッ❗️迎撃できませんッ‼️」

 

艦橋

ヨハン「総員衝撃に備えてッ‼️」

艦長が皆にそう叫んだ直後、ミンスク乗員の悲鳴や呻きが掻き消される程の衝撃が走った。




今回のお話で「トライデント作戦」に参加する全ての艦隊の話が出てきました。三方向作戦の一番下、ソロモン海方面を侵攻する第3艦隊は総旗艦を空母 雲龍が努めます。雲龍は史実だと実戦未経験ですが、転載してQFOP提督の下で戦ったお陰で現在では練度もそれなりに持ち艦隊の指揮も執れるくらいにまでなっています。
ミンスクは現実では中国でテーマパークとなった後、現在は空母展示公演となる予定で別の場所に係留されていますが、ここでは提督がなんらかの方法を使って入手し補修、近代化した後にQFOPに配備された事になっています。艦長のヨハンはオリキャラで、次回でも第5ミサイル巡洋駆逐戦隊の他の艦艇のオリキャラも出てくるのでお楽しみに。


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記録20「闇夜の攻防 後編」

夜のソロモン海を進むQFOP 第3艦隊は深海棲艦潜水艦隊の群狼戦術にあっていた。艦隊の前衛を務める第5ミサイル巡洋駆逐戦隊旗艦の重航空巡洋艦 ミンスクは敵潜を探知するものの罠に嵌められてしまい...。


ソロモン諸島海域

第3艦隊 艦隊中心輪形陣

第3空母戦隊 総旗艦兼戦隊旗艦

空母 雲龍

右舷見張所

見張妖精「前方に水柱ッ❗️」

雲龍「ッ❗️CDC(へ、こちら)艦橋❗️さっきのはなにッ⁉️」

見張妖精の報告を聞き、直ぐにCICに確認を取る雲龍。

 

CDC(戦闘指揮センター)

ソナー妖精「前衛の第5ミサイル巡洋駆逐戦隊です❗️ミンスクに魚雷が命中したもようッ❗️」

雲龍「ッ❗️被害は分かるッ⁉️」

 

ソナー妖精「まだ爆発音の残響が激しくそこまでは...。」

警戒し恐れていた事が起きた。もっと注意深く用心しておくべきだったと後悔し唇を噛む雲龍、だが一番その思いをしているのは攻撃を受けた軽空母 ミンスクとその乗員達であろう。

 

第5ミサイル巡洋駆逐戦隊

旗艦 重航空巡洋艦(軽空母) ミンスク

艦橋

ビーッ、ビーッ、ビーッ、ビーッ(警告音)

ヨハン「ぐっ...CIC、状況知らせ...。」

魚雷の直撃を受けた衝撃で吹き飛ばされて体の至る所をぶつけ痛い思いをしつつもヨハンはCICに状況を尋ねる。

 

CIC(戦闘情報センター)

戦術行動士官「敵魚雷、艦首に直撃❗️バウ・ソナー破損❗️使用不能❗️艦首に浸水‼️」

真正面の敵潜から放たれた魚雷は艦首に当たりバウ・ソナー(艦首部にあるソナー)を抉って浸水を発生させた。

ヨハン「曳航ソナーに切り替えて捜索を続けて❗️」

そう言って一旦無線を切った後、次は機関室に連絡を取る。

ヨハン「機関室 ダメコンチーム、配置についたッ⁉️」

 

機関室

旗艦要員「ハッ、既に向かっています。」

ダメコンチームの素早さにヨハンはホッとするも、完全には安心できる状況ではない。浸水によりミンスクは若干前のめりになり速度も落ちているからだ。ヨハンは本格的な戦闘になった為、艦橋を降りてCICに体を移す。

 

CIC

ヨハン「ソナー、敵潜は❓」

ソナー手「先程の攻撃の後、さらに3隻増えました。」

ヨハン「新手か、これで"群狼"になったか...。」

潜水艦のさらなる増援、トドメを刺すつもりだろうか...そう考えていた時だった。

ソナー手「ッ❗️正面の敵潜、再び魚雷を発射ッ❗️...あれ❓」

ヨハン「どうしたの❓」

ソナー手「航走音が途絶えました。」

また正面の敵潜からだったが、妙な事に航走音が途絶えたという。

ソナー手「.......ッ❗️違いますッ❗️対艦ミサイルですッ‼️数4ッ‼️」

ヨハン「なんだってッ⁉️」

それは魚雷ではなく潜水艦発射型の対艦ミサイルだった。「深海棲艦がなぜ対艦ミサイルをッ⁉️」とヨハンとソナー手が驚くのも無理なかった。

ヨハン「対空迎撃ッ❗️シースパロー発射ッ‼️」

直ぐに対空兵装での迎撃を命じる。艦首兵装群のMk.29発射機から短距離対空ミサイル"シースパロー"が放たれる。3発を落とし、残りは砲とCIWSにより迎撃できた。「よし❗️」と喜んでガッツポーズを取る間も無く左右からも潜水艦発射型の対艦ミサイルが飛来してくる。先程の一つのMk.29を撃ち尽くし残りは一つ、後は砲弾幕を張るも右舷から飛来する1発を撃ち漏らしてしまう。

ヨハン「当たるぞ❗️衝撃に備えッ‼️」

そう叫ぶヨハンだったが、そのミサイルはミンスクの手前ギリギリで爆発四散した。

ヨハン「落とした⁉️今のは誰が⁉️」

レーダー手「ミサイル巡洋艦 アドミラル・ウシャコフのです❗️」

ヨハン「"サーシャ"かッ❗️」

それはミンスクと同じく近代化改装を受けQFOP 第5ミサイル巡洋駆逐戦隊に所属し、同じくかつてソビエト連邦海軍の象徴として君臨したキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦 アドミラル・ウシャコフ(旧艦名:キーロフ)からのミサイル迎撃だった。艦長はヨハンと同期のアレクサンドラ・アレクセイ大佐、その美貌とカリスマ性と責任感の強さからついた別名は"ウシャコフの女帝"だ。

 

第5ミサイル巡洋駆逐戦隊

キーロフ級原子力ミサイル巡洋艦 CGN-092 アドミラル・ウシャコフ

艦橋

艦長 アレクサンドラ・アレクセイ大佐「ギリギリ危なかったですね。僚艦のセヴェロモルスクとシャポシニコフ(ウダロイ級)そしてラドヌイとピトリブイ(クリヴァク級)は対潜戦闘開始ッ❗️敵潜のさらなる攻撃と増援に注意❗️対空迎撃は本艦とラーゼリェフが引き受けます‼️」

 

同戦隊

同級原子力ミサイル巡洋艦 CGN-015 アドミラル・ラーザリェフ

艦橋

艦長 アンジェリカ・アレクセイ大佐「ラーザリェフ、了解です。ミンスクの前に出ます。前進強速❗️」

キーロフ級2番艦 ラーザリェフの艦長はアレクサンドラの妹のアンジェリカ、姉と同じ美少女に加え愛らしい見た目から別名"ラーザリェフの天使"と呼ばれている。

ミンスクの前に2隻の強力な防空艦2隻が配置に付き「鉄壁」の布陣を取る。それを知ってかいまいかおかまいなしか、次々と対艦ミサイルが飛んでくるもウシャコフとラーザリェフが互いに連携し合いそれをことごとく見事な迎撃ぶりを見せる。

 

原子力ミサイル巡洋艦 アドミラル・ウシャコフ

艦橋

アレクサンドラ「CIC、レーダー手。敵ミサイルのデータを取っておいでください。提督に報告する為によ。」

レーダー手(CICからの通信)「ダー(はい)。」

アレクサンドラはこのミサイル攻撃が深海棲艦のものなのかどうかを疑問に感じていた。それもそのはず、深海棲艦は第二次大戦期の艦艇の姿を模し兵装レベルもそれに準じているからだ。そんな存在がいきなり対艦ミサイルを使ってくるなど不思議に思わないわけがない。何か裏があるとしか思えないのだ。

アレクサンドラ「(ヨハンも思ってる事でしょうけど、潜水艦が3隻増えてからその対艦ミサイル攻撃が始まった。あの3隻はもしかして深海棲艦じゃないというのかしら...❓)」

そうアレクサンドラが考えてる中、ミンスクに再び"ドドォンっ❗️"と衝撃が走った。また魚雷の直撃、今度は2発で左舷に当たったようだ。1発は中央部にもう1発は機関部付近に命中し艦の速力をさらに低下させる。

アレクサンドラ「ミンスクが❗️またどこから来たのッ⁉️」

もはやミンスクは敵からは良い的となっていた。左舷にさらに大きく傾き始める。巧妙にも敵潜水艦隊は対潜艦の対潜兵器装填の隙をぬって攻撃してきている。セヴェロモルスクら味方の対潜艦も奮闘するも迎撃は手一杯だった。その間にまたミンスクが被弾する。中の乗員達もそうだが、航空機のいる飛行甲板と格納庫は固定が間に合わず艦が左へと傾斜すると同時に甲板にいた機は滑ってそのまま海面に落ち、格納庫のは航空機と荷物が雪崩れの如く滑り落ち荷崩れし放題状態になる。何かしらの原因で燃料タンクに引火して火災まで発生してしまった。直ぐに隔壁を閉鎖、スプリンクラーが作動するも格納庫の作業員の何人かの悲鳴と喚き呻きが全てが炎に包まれ消えていった。ミンスクはもう"戦える艦(ふね)"ではなくなっていた。

 

原子力ミサイル巡洋艦 アドミラル・ウシャコフ

艦橋

アレクサンドラ「ミンスクがもう保たない...敵のミサイルは⁉️」

戦術行動士官(CICからの通信)「まだまだ来ます❗️さらに3発ッ‼️」

アレクサンドラ「くっ❗️...足止めするつもりですね。」

カバーに回ろうにも敵が易々とはさせてくれない。セヴェロモルスク達対潜艦も敵潜の相手に手が離せない。「もう限界か...❓」と思った矢先だった。

通信士「艦長❗️通信が‼️」

アレクサンドラ「誰からッ⁉️」

通信士「味方です❗️繋ぎます‼️」

 

第5巡洋駆逐戦隊

大淀型軽巡洋艦 大淀

艦橋

大淀(艦娘)「こちら第5巡洋駆逐戦隊 軽巡 大淀以下4隻、これよりそちらを掩護します❗️」

第3艦隊内の第5巡洋駆逐戦隊から軽巡 大淀、夕張、駆逐戦 長波、高波が戦闘に加わり敵潜への対処がさらに強くなったことを悟ったか、敵潜水艦隊は数分後に戦闘を中止してさらに数分後には海域から離脱していった。

 

重航空巡洋艦 ミンスク

CIC

ソナー手「敵潜水艦隊、当海域から離れたもよう。周囲に反応ありません。」

ヨハン「対潜戦闘用具納め❗️戦闘配置から警戒配置へ❗️」

副長「艦長ッ❗️」

CICの扉をバンッ❗️と開け副長が艦長の下まで飛び込んでくる。

ヨハン「副長、艦の状況は❓」

副長「機関室浸水、航空機格納庫の火災未だ鎮火せず消火不能。破口からの浸水止まらず現在艦傾斜角18°、復旧は...絶望的です。」

"絶望的"との言葉を聞いてその場にいる皆が驚愕し言葉を失う中、ヨハンだけは違った、艦を放棄する決断を迫られて辛くない訳はないがその悲しみを押し殺して乗員等に言う。

ヨハン「分かった、皆よくやったよ。総員離艦準備を各所に通達し周囲の僚艦に救助と乗員/負傷者と受け入れを要請して❗️」

副長「艦長...。」

ヨハン「早く❗️いつ沈んでもおかしくないか...ッ‼️」

退艦をを勧めた矢先、ミンスクの船体に爆発の衝撃が走った。




窮地に陥ったミンスクをキーロフ級の2隻が救います。艦長2人はヨハンと同じオリキャラの同期です。見事な連携を見せるも敵のが上手だったというよりかは潜水艦発射型の対艦ミサイルまで撃ってきます。これは何を意味するのでしょうか❓そしてミンスクは戦闘不能どころか艦としての機能を失い死んだも同然になってしまいました。ヨハン艦長達の運命はいかに...❓


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記録21「気になる報告」

敵潜水艦隊に翻弄され追い詰められた重航空巡洋艦 ミンスク、僚艦の支援と救援に事なきを得たが既に死に体同然にされてしまい艦長 ヨハンは退艦を命じます。直後爆発に呑まれたミンスク、果たしてヨハン達の安否はいかに❓


中国海軍空母機動部隊の救助を終えたQFOP 第1艦隊は佐世保基地から来た艦隊と合流し、救助した中国海軍の乗員達の引渡しと補給を行なっていた。

 

とわだ型補給艦 AOE-424 はまな

甲板上

空母「遼寧」艦長「この度は救助の手を差し伸べてもらった事を改めて感謝致します。」

提督「いえ、海軍軍人しいては船乗りとして当然の事をしたまでです。頭をお上げください。」

補給艦 はまなの艦上で沈んだ中国空母「遼寧」の艦長は深々とQFOP提督に頭を下げ感謝を述べる。見たところ30代後半と言ったところだろうか、若い艦長だ。しかも礼儀正しい事に提督は少し意外性を感じている。

「遼寧」艦長「いえ、今現在の私の国は国連に従わず貴方達と敵対している関係。さらにそちらからすれば作戦行動を妨害してきた存在、そんな我々を助ける義理などないはずでしょう。」

提督「国と関係性がどうであれ、同じ船乗りそして人間です。見て見ぬふりなどできなかっただけです。」

遼寧の艦長は提督の寛大な言葉と姿勢そして海軍軍人精神に感銘を受けたのか、ハッとしてしばらく言葉を失った。

「遼寧」艦長「なんと寛大なお言葉、貴方程の軍人が果たして今の我が中国にどれほどいるでしょうか...貴方とお会いできて良かった。機会があればまたお会いしましょう。今度は戦場ではなく、もっと静かな場所で...。」

そう言い敬礼をすると提督も敬礼を返す。

「遼寧」艦長「再見(ツァイツェン:中国語で「また会おう」という意)❗️」

QFOP 第1艦隊

総旗艦 装甲空母 大鳳

艦橋

先任妖精「提督入られます。」

提督は自身の座乗艦に戻り艦橋へと上がる。先任妖精に敬礼を送った後、ネイビーレッドを手に通話する大鳳の下に寄る。

大鳳「あ、提督。丁度よかったわ。」

提督「どうした❓浮かない顔だな。」

大鳳「第3艦隊の雲龍さんから...。」

提督「なにかあったのか❓」

大鳳「ミンスクが沈んだそうです。」

それを聞いた提督は表情を変えなかったが、内心は驚きとミンスク艦長 ヨハンを含む乗員達の安否の心配で一杯だった。

 

第3艦隊

第5ミサイル巡洋駆逐戦隊

旗艦(臨時)キーロフ級原子力ミサイル巡洋艦

CGN-092 アドミラル・ウシャコフ

ヘリ格納庫

ヨハン「Dr.(ドク)、もっと良い治療はできないか❓」

ミンスク付きDr.「すみません今は氷で冷やすくらいしか、持ち出せた医療品は僅かでウシャコフからの分を合わせてもこの負傷者の数ではとても足りません。」

ウシャコフのヘリ格納庫は負傷し救助されたミンスクの乗員とそれの手当てに当たる手空き要員で一杯だった。その中にいる者の表情は艦と戦友の喪失による悲しみに支配されている。束の間の休息を得ている者、必死に手当てを行い負傷した戦友に声を掛け励ます者、手は尽くしたものの亡くなる者など様々だった。ヨハンはそんな中を乗員達に側に寄り添い部下を勇気元気付けている。艦と仲間を失った悲しみは皆と同じながら今はじっと耐え目の前の現状を乗り越えようとしている。

ヨハン「今他の艦からから運ばせてる。それまでの間は頼むよ。」

ミンスク付きDr.「最善を尽くします。」

装甲空母 大鳳

艦橋

アレクサンドラ(通信)「という感じで、今ヨハンは乗員達の側にいます提督。」

提督「今のヨハンにはその方が良いな。伝えてくれてありがとう"サーシャ"。」

アレクサンドラ(通信)「いえ、私が今の彼にできるのはこれくらいですから。」

提督「そうだろうね。ミンスクを失ったのは辛いよ、私も思い入れのある艦だからね。いや、今一番辛いのは彼と乗員達の方だな...。」

アレクサンドラ(通信)「そうですね...。」

提督「サーシャ、そういえば何か報告があるんだったよね❓」

アレクサンドラ(通信)「はい、私達が接敵した敵潜水艦隊の交戦記録です。気になるデータが取れましたので提督にも是非目を通していただきたく。」

そう言い、提督の座席のディスプレイにデータが送られてくる。それを見た提督は眉間にシワを寄せる。

提督「これは...確かに気になるデータだね。ありがとうこちらで今後の対応を検討する。この件はくれぐれも内密にな。」

アレクサンドラ(通信)「ダー。」

そう言い通信を終える2人。「ふーっ...」と息を吐いて体をシートにグタッと倒しすぐ起き上がると大鳳に言う。

提督「大鳳、多田部を呼んで一緒に士官室に来てくれ。」

大鳳「え❓わ、分かったわ。」

少し困惑した顔をして大鳳は艦内無線で多田部を呼び出した後、艦の指揮を副長に預け提督と共に艦橋を降りる。深刻な顔をして廊下を歩く提督に大鳳は質問する。

大鳳「提督、一体何を話すの❓」

提督「今後の私達の作戦に、いや世界に影響するかもしれない事案さ。」

そう答えた提督の発言の真意をまだ大鳳は理解できずにいたのだった。




沈められた中国空母"遼寧"の艦長を若く設定したのは「中国が国連に与せず独自に戦った結果、人材育成が追いつかず人員不足になったが故のもの」です。ここでは遼寧の艦長のみにスポットが当たっていますが、他の救助された艦の乗員達はさらに若いです。いくら人口の多い中国でも直ぐには一丁前の船乗りは生み出せないですからね。
オリキャラであるヨハンとサーシャ"アレクサンドラの愛称)の人間性を少し描きました。ミンスクを失って辛いヨハンはそれでも乗員達の側に寄り添い励まし、それに気を遣って代わりに提督に報告するサーシャと言った感じです。サーシャから送られたデータに提督の顔が代わり、大鳳と多田部を連れ次回から話がまた一歩前進します。


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記録22「中国への疑念」

深海棲艦潜水艦隊の群狼戦術により戦没した重航空巡洋艦 ミンスク。ミンスクと同じ艦隊に所属する原子力ミサイル巡洋艦 アドミラル・ウシャコフ艦長 アレクサンドラから交戦記録を受け取った提督は、それに違和感を感じ大鳳と多田部を士官室に招いた。


QFOP 第1艦隊

総旗艦 装甲空母 大鳳

士官室

大鳳、多田部「中国が深海棲艦と手を組んでるッ⁉️」

提督に士官室へ呼び出された2人は思わず声を出して言うが、提督は「しーっ」口元に人差し指を当てる。

多田部「あ〜、データはさっき目を通しましたし間違いではないんでしょうがありえるでしょうか❓それじゃ中国空母機動部隊壊滅の説明がつかないでしょう。」

提督「そうだ、疑問に思う事がそれなんだ。芝居にしてはやり過ぎだし、遼寧の艦長を見た感じその手のものは感じ取れなかった。」

多田部「提督がそう仰るなら、今から渡した乗員達に尋問しても意味ないでしょうね。どうします閣下❓」

提督「手を考えるよ。結論に飛びつくにはまだ早過ぎるからな。この事は一切他言無用で頼む。無用な混乱を避けたいからな。」

大鳳「分かりました。」

多田部「アイアイサー。」

そう言って2人が部屋を出ようとすると、提督は「多田部は残ってくれ。」と言い大鳳はそのまま部屋を出て艦橋に戻り多田部は呼び止められてドアを閉める。

多田部「なぁ提督。」

提督「なんだよ、珍しく深刻そうな顔してさ。」

軍務に就いている時は上司と部下の間柄である提督と多田部だが、2人きりの時は"同期の桜"らしくタメ口になる。

多田部「いや、改めて俺達が戦ってる深海棲艦ってなんなのかな❓って思ってさ。」

口にしたのは「深海棲艦とは何者か❓」という長年の疑問だ。

提督「そうだな...俺達が深海と戦い続けて4年、いやもうすぐ5年になるな。それにしては我々は敵を知らないままだ、全くな。」

深海棲艦...突如として海から現れた異形の侵略者。その正体を探ろうと各国海軍と研究機関が躍起になっているが、4年経った現在でもそれに迫れた者はいない。彼らがが何処から来て、何を為そうとしているのかさえも......。

多田部「今まで色んな説が飛び交ったよな❓"怨念集合体説"に"某国が作った生体兵器説"まで出てきてるとあっちゃ〜もう何が何だか分からんな。」

突拍子も根拠もない仮説のオンパレードに「やれやれ」と言った感じで手を横に広げてやる。

提督「ふっ、そんな未知過ぎる連中との付き合い方が本当にあるなら是非ご教授願いたいな。」

多田部「でどうするよ❓和平でも結ぶか❓」

提督「ハハハ、向こうだって俺達人間と同じく知性のある生き物の筈。なら可能だと思うんだ。けどそれは俺達軍人のじゃない、政治屋の仕事だ。」

軽く冗談混じりな会話を交わした2人は笑みを少し溢した後、再び真剣な顔つきに戻った。

多田部「さてさてこれからどうします提督閣下❓」

提督「作戦は続行だ。しかし気になるものはやはり気になる。中国空母機動部隊の壊滅も何か意図があるはずだ。」

多田部「意図ってまさか、島の攻略が無謀だと分かってて別の目的の為にわざと壊滅するよう出したってことか❓」

提督「あくまで推論さ、推論はどこまでいっても推論だろ❓」

多田部「そうだな、で探るおつもりなのでしょう❓どう探りますか❓」

提督「"山猫"に動いて貰うさ。」

提督はそう言うと「良い考えだ」と多田部は口元に笑みを浮かべた。




「中国が深海棲艦と手を組んでるのではないか❓」という疑念が今回の話のテーマです。深海棲艦と艦娘が現れて4年経った2017年が舞台の本作ですが、4年が経過しても「深海棲艦が何者であるか❓」というのが核心を掴む程分かってません。そんな相手と4年も戦い続けてるQFOPの艦娘と国連平和維持海軍ですが、仮に組んでるのが本当だとしたら中国は一体どんな手段を使ってコンタクトを取っているのでしょうか❓次回は"山猫"ことオセロットがそれを暴きに行きます❗️


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記録23「大胆不敵なスニーキング 前編」

第3艦隊からの報告により「中国が深海棲艦と手を組んでいるのではないか❓」という疑念を受けた提督はオセロットとアディータ、ドゥーヴァ、トリィーに青島基地内部に潜入するよう命じる。


中国 青島

北海艦隊司令部基地

正面ゲート前

オセロット「3人共、用意は❓」

アディータ(通信)「アディータ、用意良し。」

ドゥーヴァ(通信)「ドゥーヴァ、配置良し。」

トリィー(通信)「トリィー、いつでもハラショーです。」

提督からの秘匿通信で「青島 北海艦隊基地の潜入調査」を命じられたオセロットとサルダート三姉妹は潜入の準備にそれぞれ取り掛かっていた。オセロットは中国海軍将校の服装に着替え、サルダート三姉妹のアディータとドゥーヴァは基地を一望できる高さのビルに登りSVK-12を構えている。ロシア連邦軍の正式自動小銃であるAK-12の狙撃銃仕様だ。本来の使用弾薬は旧ソ連から使われている「7.62×39㎜弾」だが、国連軍傘下に入り兵器のみならず使用する弾薬も"NATO(北大西洋条約機構)"規格に統一されることとなり、この狙撃銃型も「7.62×51NATO弾」に変更したモデルだ(ベースとなったAK-12も「5.45×39㎜弾」から「5.56×45㎜NATO弾」に変更されている)。

アディータ「使わないかと思ってたけど、持ってきて良かったね。」

ドゥーヴァ「"備えあれば憂いなし"ってやつだね。」

 

オセロット「トリィー、システムチェックを頼む。」

 

トリィー「了解。」

トリィーは姉2人とは違い、手元にノートパソコン型の端末を用いてバックアップの任務に就いている。オセロットに身につけられているインカムやマイク等の機器の動作確認を行う。

トリィー「オールグリーン、OKだよ同志。」

オセロットは身につけたインカム、マイク、眼鏡型多機能機器の作動を一通り行い、動作不良がないかをチェックする。

オセロット「よし、では作戦開始と行くか。」

そう言って基地正門まで歩みを進めるオセロットは歩哨2人に敬礼を送る。

オセロット「謝謝悠的辛勤工作、三上小校(ご苦労、ミカミ小校だ)。」

流暢な中国語を話しているのを聞いてアディータ達は「おっ❗️」と驚いた表情をする。歩哨はオセロットを警備員の所まで誘導し、警備員は身分証とオセロットの顔を十分に吟味する。

警備員「拝託、好好玩(どうぞ、ご苦労さまです)。」

そう言って身分証を手渡されるとオセロットは敬礼を送って基地に入った。すれ違う中国海軍軍人達にも敬礼を返していくオセロット。現状は彼を怪しむ者はいないようだ。

アディータ(通信)「凄いです同志オセロット。とても流暢な中国語で全く怪しまれていませんよ。」

ドゥーヴァ(通信)「どこで中国語を習ったんだ同志❓」

 

オセロット「何年か前に中国に潜入した際にな。それと、"腐れ縁"からも少しな。」

 

トリィー(通信)「腐れ縁❓」

 

オセロット「あぁ、美人なんだが癖のある奴でな。昔はよく組んでたが、今はどうしてるやら...。」

そうこう話している内にオセロットは基地の司令部施設の前にまで来ていた。

オセロット「司令部の中に入る。アディーとドゥー、お前達はこれから支援ができないが何か外に動きがあったら伝えてくれ。分かってると思うが無闇に撃つなよ❓」

 

アディータ、ドゥーヴァ「ダー。」

 

オセロット「トリィー、こっからはお前の仕事が増える。通信を暗号化回線に変更しろ。しっかり頼むぞ。」

 

トリィー「分かった、任せてよ同志。」

オセロットは司令部施設に入り歩きながら辺りを見回す。意外にも清潔に保たれている事に多少の驚きを見せるも、一番驚くべく事は自国の空母機動部隊が壊滅したというのに外と変わらずなんの騒ぎもなく静かな事だった。そんな事などまるでなかったかの様な雰囲気を醸し出している事にオセロットは違和感を感じずにはいられなかった。

オセロット「(なんなんだこの気味の悪い静けさは...❓奇妙...実に奇妙だ。)」

右に左にと目をやるオセロット、スパイである彼でなくてもこの異常な静けさを気にならないわけがなかった。だが、あまりにキョロキョロし過ぎていると怪しまれるので最小限に留めている。だったのだが......。

中国海軍佐官A「おい、そこのお前。」

1人の佐官に呼び止められ、オセロットは振り向いた。呼び止めた佐官の隣にもう1人いる。

中国海軍佐官B「見ない顔だな、貴様いつここに来た❓」

「もうバレたか...。」とオセロットは手を腰のホルスターに伸ばした。




中国に対する疑念を暴く為、オセロット達が動きます。アディータとドゥーヴァが装備するSVK-12は国連軍仕様としてNATO標準規格化されています。「ロシアも今やかつて敵対した軍事同盟の装備規格の統一に賛同し国連軍の一躍を担っている」という現れです。中国語は一部が日本語漢字には無かったので寄せて書いた「エセ中国語」です オセロットが名乗る"ミカミ"はMGSⅤ:PPでオセロットの声を務める三上哲(みかみ さとし)さんから来ています。なんとか潜入したと思いきや、司令部に入って怪しまれてしまいました。果たしてオセロットは切り抜けられるのか❓


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記録24「大胆不敵なスニーキング 中編」

提督の命を受け、中国 青島海軍基地への潜入調査を行う事となったオセロットとサルダート三姉妹。変装と流暢な中国語で難なく潜入したオセロットだったが...。


中国 青島

北海艦隊司令部基地

司令部施設

オセロット「(思ったより早かったな...変装が甘かったか❓)」

自身の変装の完成度が甘かったか、挙動不審に思われたかのどちらかはさておきオセロットは客観的に見ても悪い状況にいる。うまく話して誤魔化すか、気絶させるか、殺すかの3択で迷っていると...。

???「お二人さん、何をしてるのかしら❓」

中国海軍佐官A、B「ハンナ※大校殿❗️」

(※中国人民解放軍独自の階級、他国で言うところの"大佐"扱い)

ハンナと呼ばれる女性将校に声を掛けられた佐官2人は振り返って敬礼する。

ハンナ大校「彼は私の知り合いで今日着任予定だったの。これから基地を案内するから後は私に任せて。」

「はっ❗️失礼します。」と言って佐官2人はその場を去っていった。オセロットはハンナ大校のお陰で間一髪バレずに済んだ。2人きりでしばらく歩いているとオセロットは彼女に話し掛ける。

オセロット「"ハンナ大校"とはな、出世でもしたか❓"EVA"❓」

ハンナ大校ではなく"EVA"と呼ぶオセロット、だが呼び間違えたのではない。EVA「あら、礼くらい言ってほしいものね。さっきのはほんとに危なかったわよ❓」

そう、彼女はハンナ大校ではない。オセロットが言う所の"腐れ縁"である女スパイ"EVA"なのだ。

オセロット「あぁそうだな。ありがとうさっきは危なかった。」

EVA「素直でよろしい。」

オセロット「直接会うのはいつぶりだ❓」

EVA「あなたがQFOPに行ってからね。提督達は元気❓」

オセロット「変わらず元気だ。EVA、お前は何してんだこんな所で❓」

EVA「今は"ハンナ大校"よ"ミカミ小校"❓」

オセロット「おっと、これは失礼でした"大校殿"。」

「こう言う時ってスパイってめんどくさいよな」とオセロットは思う。

EVA「上が海軍内部が怪しいって言って調査を命じられたの。もしかして貴方も❓」

オセロット「まぁそういうこった。黒髪にしたんだな。それカツラじゃないだろ❓」

EVA「中国だと金髪は目立つからよ。ホントはカツラにしたかったけど仕方なく。

貴方は良いわね、カツラにできてかつ眼鏡もかけたら誰も怪しまないんだから。」

オセロット「どうかな、さっきの様になったのならサングラスにしときゃ良かったと思ったぞ。」

久々の再会に話が弾んでいる2人だったが、今は互いに身を偽っての任務。周りに怪しまれぬようここから先はキチっとする。

EVA「ここからは真面目な話をするわよ。今中国は国連に属すべきと考える"国連参入派"とあくまでも独自に戦うべきとする"独自抗戦派"に割れているの。私はその前者にいるわ。」

中国の内情について語るEVA。国連軍に参加し共闘することもなく独自に抗戦を続けてきた中国は、その後は所謂(いわゆる)"鎖国"や"鉄のカーテン"と言っても差し支えない状態になり国連や世間一般にはほとんど中国の内情が流れていない。

オセロット「なるほど、でとりわけ海軍が特に怪しいと。」

EVA「そう、私達はその"怪しい"所に向かってるの、そのまま着いてきて。」

2人はエレベーターに乗り地下へと降りて行く。

オセロット「随分潜るんだな。」

EVA「私もこんな深く潜るエレベーターがあるなんて最近まで知らなかったわ。渡された見取り図にも無かったし、警備が固くて限られた者しか入れないの。」

オセロット「でもお前は入れたんだな。大校だからか❓」

EVA「それもあるし、女というのを活かしてやればこれくらい朝飯前よ。苦労はしたけどね。」

「見取り図に載らず限られた面子しか知らない入れない地下空間」ますます怪しい匂いがプンプンである。「チーンッ❗️」というベルの音が鳴り扉が開くとオセロットの眼前には信じられない光景が広がっていた。

 

太平洋 尖閣諸島沖

QFOP 第1艦隊

装甲空母 大鳳

艦内通路

大鳳「(ん❓資料室に明かりが...誰かいるのかしら❓)」

時を同じく場所を移して尖閣諸島沖合に近づいたQFOP 第1艦隊 装甲空母 大鳳では艦長であり艦娘の大鳳が資料室の方から漏れる明かりに不思議に思い明かりの方は歩みを進める。

 

資料室

多田部「あぁぁぁぁぁ〜、調べても調べてもどれが真実わからねぇぜこりゃ。」

戸の隙間から見えたのは机一杯に資料を並べて何かを調べている多田部の姿だった。でも何かに行き詰まり上半身を大きく椅子の後ろにもたれのけぞらせて伸びをしている。

大鳳「何か調べ物❓」

多田部「おっとたいほ...いえ艦長殿。少し気になる事がありまして。」

大鳳「2人の時は"大鳳"でいいわよ。」

多田部「あ、そうだった。つい癖でちゃんと呼ばないとダメだってのが染み付いちゃってて。」

転生しても礼儀と姿勢を忘れない。帝国海軍の良き部分の表れだ。

大鳳「うふふ、そうみたいね。で何を調べてたの❓」

多田部「いやね。提督が深海と中国の事聞かされたら気になって気になって。で過去の資料を漁(あさく)ったら何か出てくるんじゃないかな〜❓と。

でもダメだな〜どれもこれも怪しく見えちゃって何が真実分かんないですわこりゃ。」

大鳳「そうなの❓でもどこか楽しそうに見えるわ。」

知識欲と好奇心の旺盛な多田部の性格を良く知る大鳳は言葉とは裏腹に楽しんでいる表情を見てくすりと微笑む。

大鳳「でも根を詰めるのは良くないわ。キリがついたらちゃんと寝るのよ❓」

多田部「分かった、艦長殿の言う通りに致しますよ。」

そう言って互いに敬礼を交わした後、大鳳は部屋を出る。「ふぁ〜」と大きなあくびをかき再び資料と睨めっこを始める多田部。

多田部「(やっぱり何度見ても妙だ...深海棲艦が現れて以後も中国の建艦率が全く減少してない。それどころか他の国々よりも抜きん出て増えている。)」

多田部が特に気にしているのは中国の建艦率だった。深海棲艦が現れて以降は戦力の立て直しを図るべく国連傘下の国々はこぞって艦艇の増産を始めているが、制海権を握られ戦略物資の輸出入が滞っている為か現状は芳しくない。アメリカやロシアの様な資源に恵まれている国でさえも深海棲艦の張遼以後の艦艇の増産は容易ではない。それは同じく大国の中国も例外ではない筈なのだが......。

多田部「(中国海軍にも損失艦は出ているがそのほとんどが旧式の艦艇ばかり...。」

無論、中国海軍も深海棲艦との戦闘で被害が出ていない訳ではない。しかし戦闘で戦没したのは殆どが現代の目からすれば「旧式」な艦ばかりで新型艦、例えば江凱Ⅱ型フリゲートや旅洋Ⅱ/Ⅲ型ミサイル駆逐艦の被害はほとんど書かれていない。「隠蔽しているのでは❓」と簡単に疑ってしまう事もできるが、単に隠蔽しているのではない様な気を多田部は感じている。

多田部「さらに気になるのはこの「中国籍タンカー連続失踪事件」だ。」

深海棲艦と艦娘が現れて2年後の2015年に起きた原因不明の連続失踪事件。中国籍のタンカーが太平洋 東シナ海で次々と謎の失踪を遂げたというもので、当初は「深海棲艦により沈められたのでは❓」という結論に誰もが至ったが数日後に突如として再び姿を見せた。すぐに調査が入り船を調べるも船体にダメージはなく乗員達も無事であり、聴取をしても「何も起きてない」との事だった。この事件の不可解な点は2つだ。1つは制海権がほぼ失われつつある現在の太平洋上でタンカーが単独航行をし失踪するも無傷で「異常なし」なこと、2つは全てのタンカーが同じ東シナ海で消息を経ちそして戻ってきたことだ。この事について考えつく事は一つだ。そう、提督が言っていた「中国と深海棲艦の結託」という推測だ。

多田部「(仮にタンカーが尖閣諸島や西沙諸島へ向かったとするならそこで深海棲艦と合流(ランデブー)して戦略物資を積み込んで戻ってきたとするなら辻褄は合うが、そもそもどうやって深海とパイプを持つ事ができたという答えが出てない。これじゃ全部憶測。軍人がしちゃいけないものだ。オセロット、アディータ、ドゥーヴァ、トリィー、頼む。中国の秘密を暴いてこのどうしようもないモヤモヤをはらしてくれたまえ❗️)」

多田部は資料室の天井を見上げてオセロット達の任務の成功を祈るのだった。




オセロットの窮地を救ったのは同じく「メタルギア」シリーズに登場したEVAでした。そういえばこの2人が直接組んで任務をするってのはゲーム本編でも無かったので少し新鮮ですね。
大鳳と多田部の関係性については軍務に付いている時は艦長と一介の一尉ですが、プライベートでは対等です。謎が謎を呼ぶ事態に多田部は頭を悩ませモヤモヤが収まりませんが、それでもどこか楽しそうな顔をしているのに大鳳はクスりとしていますね。さぁこの謎が次回で解けるのでしょうか❓


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記録25「大胆不敵なスニーキング 後編」

怪しい臭いがプンプンする青島基地の潜入を命じられたオセロットは正体がバレそうになったものの、スパイ仲間のEVAに助けられ施設を案内される。そこで彼が目にしたものとは......❓


中国 青島海軍基地(北海艦隊司令部)

地下施設

 

オセロット「こ、これは...❓」

オセロットは驚きのあまり体が固まった。眼前に広がっていたのは広大な地下空間だった。

EVA「ここは中国が海洋進出の野望を果たす為に生まれた闇。経済発展と深海棲艦との繋がりで生み出された"特異点"と言っても良い場所よ。」

しばらく歩いて辺りを見回す。自分が歩く橋の下には4〜5隻ほど建造中の艦艇がドックに腰を据えている。オセロットはここが艦艇建造ドックだという事を理解した。

オセロット「凄いな...見渡す限りどれもこれも最新鋭艦や新型ばかりだ。」

オセロットの目に止まったのはほぼ完成状態にある江凱Ⅱ型や旅洋Ⅲ型、そしてまだ形だけの状態の旅洋Ⅲ型を大型化させ空母 遼寧を発展させたであろう新型ミサイル巡洋艦と新型空母だった。

EVA「055型ミサイル駆逐艦と山東型航空母艦よ。」

オセロット「あのサイズで※"駆逐艦"か、性能はどうであれ大した艦だな。」

(※現代の艦種の基準はとても曖昧である為、その軍艦を所有する国が「駆逐艦」と言えばそうなってしまう。)

オセロットは驚きを隠せない表情で引き続きドックの光景を見渡していると前から2人組が歩いてくる。

EVA「私に合わせて喋ってちょうだい。」

オセロット「了解だ。」

2人組の前に立ち止まり敬礼を交わすEVAとオセロット。

EVA「チャン上将❗️」

そうEVAが挨拶したのはこの青島基地司令のチャン・ウェイ海軍上将だ。

チャン・ウェイ海軍上将「やぁハンナ君。調子はどうかね❓」

EVA「はっ❗️変わりなくであります。」

チャン「うむ、ところでそちらの将校は❓見ない顔だな。」

EVA「私の同期です。今日着任してきまして、基地を案内している所です。」

オセロット「ミカミ小校であります。」

チャン「ほぉ〜そうかそうか、どうだいこのドックは素晴らしかろう❓」

オセロット「は、常時驚きを隠せないであります。」

チャン「うむ、じっくり見物するといい。まだまだ驚くぞ。私はこれから客人と話があるからこれで失礼するよ。」

オセロットとEVAは再び敬礼を送るとチャンとその後ろにいたローブを被った人が過ぎて行った。殆ど顔は見えなかったが、オセロットは違和感を覚えた。「こいつもしかして...」と。人とは思えぬ白い肌、身に纏った人間ではない雰囲気を感じEVAに尋ねる。

オセロット「おいさっきのって。」

EVA「思ってる通り、"深海棲艦"よ。」

オセロット「なんてこった。提督達の疑念は本当か...❗️」

オセロットの感は正しかった。

EVA「チャン上将は中国海軍の現在のトップで「抗戦派」のリーダー的立ち位置にいる人物よ。」

オセロット「そんな大物と話をする深海棲艦もよほどの奴ってわけか❓」

EVA「恐らく、残念だけど私でもそこは探れなかったわ。「中国籍タンカー連続失踪事件」って覚えてる❓」

オセロット「あぁ、それと関係が❓」

EVA「そこで得た戦略資源はここに集められているの。島の占領の見返りとしてね。」

オセロット「その資源で新鋭艦をこんなに...。」

提督達の疑念は正しかった事が明らかになったが、事を聞いたオセロット本人としては気分は良くない。

オセロット「もし提督達が尖閣諸島を占領したらどうなる❓」

EVA「資源の供給が止まってここと立ち行かなくなると思う。最近シフトが倍になった所を見ると焦ってるように思うわ。」

オセロット「よし、そうと分かればいい。後はここの情報を取れるだけ取って退散するとしよう。」

EVA「いいわ、協力するわよ。」

そういうとポケットから補聴器の様な物を手渡されるオセロット。

オセロット「インカムか。」

EVA「あった方がいいでしょ❓じゃあまた後で。」

2人は自然な流れにサラッと分かれた。

オセロット「(さぁ〜てと、まずは片っ端からここを撮っていくとするかな。)」

オセロットは眼鏡の縁にあるスイッチを押す。すると外で待機していたトリィーのパソコンに映像が映し出される。

 

トリィー「お、映像が出た❗️心配したよ同志。」

 

オセロット「すまない、ヤバくなりかけたが今は平気だ。アディ、ドゥーそっちは変わりないか❓」

 

アディータ「大丈夫だよ同志。」

 

ドゥーヴァ「変化ないよ同志。」

 

オセロット「よし、今いるところの調査にまだしばらくかかる。アディとドゥーは監視を、トリィーは記録を続けてくれ。」

 

アディータ、ドゥーヴァ、トリィー「ダーッ❗️」

 

オセロットは眼鏡に仕込まれたカメラでドック内を録画をする。少し視線を外したその先にはチャン上将と先の深海棲艦が話している姿が目に映る。「後を会おう」と静かに遠くから尾行し始める。少し歩いてその内、2人は部屋に入った。「応接室」と中国語で書かれている。

オセロット「(何かヒソヒソ話する気だな❓)」

オセロットは応接室の前に立ち、ドアノブを捻ろうとしたその時だった。

警備兵「小校殿❓」

オセロットはドアノブを捻る手を止めた。警備兵に声を掛けられたのだ。ドアノブから手を離し警備兵の方へ顔を向かせる。「尾行がバレたか❓」と思うオセロット。しかし...

警備兵「そちらの応接室はただいま上将閣下が使用なさっております。」

オセロット「あぁ、そうだったのか。教えてくれてありがとう。」

警備兵「いえいえ。」

どうやら中に人がいると注意しただけでバレたわけではなかったようだ。そのまま立ち去るオセロット、だが部屋に入らなかった事を悔しがる表情はしていない。オセロットは眼鏡の蓋にあるスイッチを操作し、何かの機能を起動させる。

 

(音声)

[チャン「さぁて今日は何から話しましょうか❓」]

 

オセロット「(よし、上手く仕込めて聴こえてるな。)」

ドアノブに触れた時に指に小型の指向性集音マイクを仕込んでいたのだ。音量を上げてさらに聞き耳を立てる。深海棲艦の方も喋っているが未だに彼らの言語を解読できないでいる為、何を喋っているのかは分からない。

 

(音声)

[チャン「いえいえ、見返りは十分です。感謝しきれませんよ。海軍の発言力を高める為でしたら機動部隊の一つや二つ軽いものですよ。ハハハ...。、」]

 

オセロット「(クソッ❗️最初から沈めるつもりでやったってのか⁉️でも変だな、もうすぐ提督達が占領するかしないかって所まで来てるのにこの余裕はなんだ❓)」

尖閣諸島の奪還など最初から考えていなかったのを耳にし、オセロットは心中で怒りを露わにするのと同時に妙な余裕ぶりを見せるちゃんに疑問を抱く。

 

(音声)

[チャン「沈んだ艦は貴女方のお好きに、お陰で老朽艦の処分の手間が省けたというものです。互いの利益の為にこれからも協力を惜しみませんよ。」]

オセロット「(沈んだ艦をお好きにだと...❓一体どういうことだ❓」

意味深な発言を聞いたオセロットだが、考えを巡らせる前に耳につけたインカムから通信が入る。EVAからだ。

EVA(インカム通信)「聞こえる❓」

オセロット「あぁ、良い"盗み聞き"ができた。そっちは❓」

EVA(インカム通信)「深海棲艦とのやりとりを綴ったデータのコピーを取ったわ。渡したいから合流しましょう。」

オセロット「分かった、すぐ行く。」

用が済んだ2人は合流すべく最初に降りたエレベーターの前で落ち合う為歩みを進める。エレベーターに着き、中に入って上に階のボタンを押す。

EVA「どうだった❓

オセロット「お前の言った通りだったよ。ここも含め海軍部内は"真っ黒"だ。それと気になる事を聞いた。」

EVA「気になる事❓」

オセロット「チャンの奴は「沈めた艦の後はお好きに」と言った。これはあくまで推測だが、深海棲艦への技術供与かなにかなのか❓」

EVA「さぁ、上校の階級をもってしてもアクセスできる情報は限られててね。調べられなかったわ。」

オセロット「そうか、だがかなりの情報は取れた。提督達が尖閣を攻撃する時間も迫ってるし早くこの情報を届けないと。」

EVA「なら手伝ってあげるわ。」

そう言うとEVAは襟からリモコンを取り出してスイッチを押す。突如"ビーッ❗️ビーッ❗️ビーッ❗️"と警報が鳴り響き始めた。同時にエレベーターも目的の階に着き、オセロットとEVAは降りる。

オセロット「警報をいじったのか❓」

EVA「それだけじゃないわよ❓」

もう一度スイッチを押すと、外から"ボンッ❗️"という爆発音がして建物の明かりが消えた。

EVA「配電盤にも仕掛けをしておいたの。この暗さと混乱に紛れれば逃げれるわ。さぁ早く❗️」

オセロット「お前はどうするんだ❓」

EVA「まだ私はハンナ上校として振舞わなくちゃいけないの。あ、これ渡すわね。」

オセロットに放り投げたのはフラッシュメモリだ。

EVA「さっき言ってた中国海軍と深海棲艦との繋がりに関するデータよ。」

オセロット「助かる。」

EVA「礼ならまた会った時にね。じゃあ気をつけて。」

オセロット「お前もな。」

そう言って2人は互いに無事を言い合うと暗闇と右往左往する人々の中に溶け込み消えていった。EVAの読み通り基地の混乱ぶりを利用して脱出できたオセロットはサルダート三姉妹に撤収を命じる。「急に連絡がなくなったら基地が暗くなったりで大丈夫だった❓」と心配されたものの「事情は後で」と落ち着かせ、オセロット達は中国の街の中へと消えた。

後日、この青島基地の停電は「配電盤の漏電」という形で処理されたとニュースで報じられたのをオセロット達は後で知った。




青島基地の地下にあったのは巨大な艦艇建造ドックでした。モデルは「宇宙戦艦ヤマト2202/愛の戦士たち」の「時間断層」です。新型艦(055型と山東型)の建造、※チャン上将(BF4からの出演)と深海棲艦の密室外交、中国海軍と深海棲艦との繋がりとかなり黒いものが出てきましたね。
色んな情報を持ち帰る事ができたオセロットとサルダート三姉妹、果たしてこの情報が今後の物語の展開にどう影響を及ぼすのか❓次回をお楽しみに❗️


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記録26「尖閣諸島攻略戦 前編」

EVAの協力を得て中国 青島海軍基地の秘密を探る事に成功したオセロット達、一方のQFOP艦隊はいよいよ尖閣諸島の攻略に踏み出します。


暗闇が徐々に明るさを持ってくる薄暮の時。そんな静寂に包まれた闇夜を切り裂く様な轟音と速さで突っ切っていく飛翔体の群れがあった。BGM-109 "トマホーク"巡航ミサイルだ。QFOP第1艦隊所属の戦闘空母ヒマラヤ、ミサイル巡洋艦、ミサイル駆逐艦と既に尖閣諸島沖合に展開していた第7、8、9潜水戦隊のユーコン級から発射されたものだ。トマホークは尖閣諸島を構成する魚釣島(飛行場姫及び艦隊泊地)と久場島、大正島、北小島、南小島に点在する砲台小鬼に目掛けて進み、着弾して炸裂する。

 

総旗艦 装甲空母 大鳳

第1戦闘攻撃飛行隊 "ビーフェックス1"

ビーフェックス1-3「よしやった❗️」

ビーフェックス1-2「喜ぶのは早いぞ1-3。」

なんら妨害を受けることなくトマホークの全弾命中したことに喜ぶ1-3に1-2は言う。

ビーフェックス1-1「1-2の言う通りだ。砲台は潰せたが飛行場姫と泊地の艦隊は未だ健在だ。潰しにかかるぞ❗️全機、我に続けッ‼️」

ビーフェックスは隊の仲間や他の空母の航空隊の先陣を切って島に突っ込んでいく。その様子を艦隊総旗艦 装甲空母 大鳳のCDCで提督と大鳳らが見守っていた。

 

装甲空母 大鳳

CDC

提督「いよいよ始まったな。」

大鳳「えぇ。」

通信妖精「ビーフェックス1-1より入電、「トマホーク弾着を確認、これより攻撃開始す」。」

通信妖精からの報告を聞き、提督は手元の無線機を取り艦隊全艦に繋ぐ。

提督「総旗艦 大鳳座乗の提督より全艦へ、これより尖閣諸島攻略戦の第二段階に入る。本艦と信濃、飛鷹、隼鷹は第1ミサイル巡洋駆逐戦隊及び第6護衛駆逐戦隊と共に現海域にて待機し島への攻撃を援護。第1戦闘空母打撃群と第1戦艦戦隊及び第3巡洋駆逐戦隊は艦隊を離れ島へ突入、艦砲射撃を行う。」

艦隊全艦は一斉に提督の命(めい)を遂行すべく動き出す。返答を返さなくても即実行する。QFOP艦隊の練度の高さの証明だ。

提督「大鳳、私はヒマラヤに乗艦を移す。ヘリを用意するよう言ってくれ。」

大鳳「分かったわ。」

提督は総旗艦である大鳳を離れ、今まさに尖閣諸島へと向かおうとする第1戦闘空母打撃群 旗艦 ヒマラヤに移ると言いだす。しかし大鳳は危険な最前線に赴こうとする提督を止めない。彼が常に「指揮官先頭」という言葉を胸に抱き戦っているのを知っているからだ。

 

尖閣諸島 上空

軽空母 飛鷹 

第2戦闘攻撃飛行隊 コールサイン「スカイグ2」

スカイグ2-3「よしやった❗️またまた撃墜1ッ❗️」

スカイグ2-2「喜ぶのは早いぞ2-3。」

スカイグ2-1「その通り、だが迎撃機の第一波はとりあえず片付けたようだな。」

尖閣諸島上空では迎撃に上がった飛行場姫からの航空隊と激しい航空戦を繰り広げていた。

 

軽空母 隼鷹

第1戦闘攻撃飛行隊 コールサイン「ファイグル1」

ファイグル2-3「ッ❗️コンタクトッ❗️飛行場姫の滑走路から新たな迎撃機隊ッ‼️」

ファイグル2-2「隊長、新たな"お客さん"です❗️」

ファイグル2-1「ハッ❗️逆に"もてなし"てやるさ‼️ついて来い‼️」

艦載型トマホークによる対地攻撃により周辺の砲台は片付けたものの、飛行場姫とその滑走路は「棲姫/鬼級」特有の強固な障壁により未だ健在だ。まだまだ迎撃機を上げてくる。航空機の性能は上でも数の利を活かされ時間が経てば不利になる。飛行場姫の早期沈黙を目指さなければならない。そんな乱戦の最中、装甲空母 信濃の所属機が尖閣諸島 魚釣島の港湾施設の方を見やるとある事に気づく。

 

装甲空母 信濃

第5戦闘攻撃飛行隊 コールサイン「シナノ5」

シナノ5-7「ッ❗️5-7より5-1へ。隊長、港に戦艦棲姫の姿がありません❗️」

シナノ5-1「なにッ⁉️」

シナノ5-1の妖精はチラッと魚釣島の港を見やる。遠くからでも目立つ戦艦棲姫の姿はどこにもない事を確認する。

シナノ5-1「シナノ5-1よりビーフェックス1-1へ、"戦艦棲姫をLOST"。繰り返す"魚釣島に戦艦棲姫の姿なし"❗️」

 

ビーフェックス1-1「シナノ5-1、こちらも確認した。変だな。」

 

シナノ5-1「先程まで空自のAWACS(早期警戒管制機)でもちゃんと反応を捉えれてたんですが...。」

 

ビーフェックス1-1「艦隊に報告だ。何か嫌な予感がする感じだ。」

ビーフェックス1-1はこの戦艦棲姫の不在に違和感と胸騒ぎがしてならなかった。戦艦棲姫が停泊していたと思われる所から少し視点をずらしたところを見やる。

ビーフェックス1-1「んっ⁉️あれって...❓」

 

尖閣諸島 魚釣島 近海

QFOP第1艦隊

第1戦闘空母打撃群

旗艦 戦闘空母 ヒマラヤ

CIC(戦闘情報センター)

滝澤「間違いないの❓」

通信士「はい❗️確かな様です。」

滝澤「提督。」

提督「うん、"厄介者"その2が消えたらしいね。」

航空隊の攻撃成功と戦艦棲姫のLOSTの報を戦闘空母 ヒマラヤに移った提督は耳にする。

提督「航空隊は❓まだやり合ってるか❓」

滝澤「はい、飛行場姫は絶えず迎撃機を上げ続けています。トマホーク攻撃は継続していますが、未だに障壁が破れずで早急なる艦砲射撃の要を認むだそうです。」

提督「よし、消えた奴はとんでもない奴に違いないが今"ウ○ーリーを探せ❗️"よろしくかくれんぼに付き合ってる余裕はない。消えた理由は分からないが、飛行場姫を潰す事に専念しよう。」

滝澤「分かりました。ビーフェックス1-1が見つけた輸送船団はどうしますか❓」

それともう一つにビーフェックス1-1が見つけた輸送船団の対応を提督に尋ねる滝澤。

提督「本来の攻撃目標ではないが...潰しておくべきか...。」

通信士「艦長❗️総旗艦 大鳳より緊急電があるとの事であります‼️」

滝澤「どこから❓」

通信士「"ヤマネコ"からであります。提督宛だと。」

突然の入電は"ヤマネコ"、オセロット達からだった。こんな状況下で送ってきたのだ。きっと何かあると滝澤と提督は顔を合わせ提督は頷く。

滝澤「提督のデスクに回してください。」

滝澤が言うと通信士はすぐ提督の座る席の端末に表示させる。内容を吟味する提督。

提督「航空隊に通達、輸送船団への攻撃は禁ずる。潜水艦カムチャッカと周辺に展開中のQFOP所属潜水艦隊に追撃命令を、ただし「撃沈させずに足止めせよ」と伝えてください。」

滝澤「了解しました。通信士❗️」

通信士「了解❗️」

旗艦 ヒマラヤからの命を受けた同じ戦闘空母打撃群所属の潜水艦カムチャッカは艦隊から離れ、深海棲艦輸送船団の追撃を開始するべく速力を上げた。

 

ヒマラヤ CIC

ソナー手「カムチャッカ、艦隊から離れます。」

CICにいるソナー手もその動きを捉えていた。ディスプレイに映し出されている光点が徐々に自分達の艦隊から離れているのが見える。

倉田「水中警戒担当のチャッカが離れたら頼れるのは水上艦のソナーだけだ。頼むぞ。」

ソナー手「はい❗️あっ⁉️」

倉田「どうした❓」

ソナー手「何か聞こえます❗️」

倉田「潜水艦か❓」

ソナー手「スクリュー音はしてますが、潜水艦のものではありません❗️」

海中にいるスクリュー音と聞いてはほぼ十中八九間違いなく潜水艦の筈だが、ソナー手によると違うという。 

倉田「ハッキリさせろ❗️なんなんだッ⁉️」

倉田がそう言い、ソナー手は記録されたあらゆる国のそして深海棲艦の潜水艦の音紋データと照合させるもどれとも一致しない。

ソナー手「あぁッ❗️」

倉田「今度はなんだッ⁉️」

ソナー手「凄い気泡の音です❗️浮上(ブローアウト)してきますッ‼️」 

「ザバーンッ❗️」と勢い良く水柱を上げ戦闘空母打撃群前方にそれは現れた。

レーダー手「出ましたッ❗️戦艦棲姫ですッ‼️」

倉田「なにぃーッ⁉️」




遂に辿り着いた尖閣諸島、いよいよ攻略開始です。奇襲は成功するも飛行場姫は未だ健在な上に戦艦棲姫のLOSTとそう易々とはいかない様です。
航空隊が見つけた輸送船団はオセロットからの情報を得た為か、「何かある」と見て潜水艦隊を差し向けました。中国と深海との繋がりを記す何かが積まれてるのでしょうか❓
LOSTしていた戦艦棲姫の突然の海面浮上、モチーフは「蒼き鋼のアルペジオ」です。「海の底から現れた存在の深海棲艦なら霧の艦隊の水上艦みたいに海中を潜水艦よろしく潜航/浮上ができるんじゃないか❓」と思い書いてみましたw.


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記録27「尖閣諸島攻略戦 中編」

トマホークと空母航空隊による対地攻撃で始まった尖閣諸島攻略戦。防御の硬い飛行場姫の攻略に苦戦したり停泊している筈の戦艦棲姫の姿が見えなかったりと順調のようで手間取る相手に悩まされています。
そんな中、島に接近し艦砲射撃を加えようとするヒマラヤや大和らの前に突如として消えていた戦艦棲姫が海中から出現し...。


尖閣諸島攻略を開始したQFOP第1艦隊。トマホーク巡航ミサイルと空母航空隊の攻撃は成功したものの魚釣島の飛行場姫は健在、加えて戦艦棲姫のLOSTと不安要素が見られる展開となった。そして今、その戦艦棲姫が第1戦闘空母打撃群前方に水柱を高らかと上げ海中より姿を現したのだった。

 

QFOP 第1艦隊

第1戦闘空母打撃群

旗艦 戦闘空母 ヒマラヤ

CIC

レーダー手「戦艦棲姫です❗️海中より現れましたッ‼️」

倉田「なんてこった❗️CICより艦橋❗️戦艦棲姫、海中より出現‼️真正面です‼️」

 

艦橋

滝澤「なんですってッ⁉️」

提督「またまた派手かつ大胆で驚きなご登場だな。」

思わず声に出して驚く滝澤と冷静に状況を飲み込む提督。

 

CIC

レーダー手「戦艦棲姫、反応2ッ❗️」

レーダー手が続けて報告する。

レーダー手「後続に重巡ネ級1、軽巡ツ級1、駆逐ニ級2、戦艦棲姫の背後に浮上し続いています‼️」

 

艦橋

提督「(たぶん奴(やっこ)さん(戦艦棲姫)は前に大和、武蔵とやり合った艦だな。お供を引き連れてリベンジマッチと来たのか❓)」

提督の読みは恐らく正解だろう。戦艦棲姫は尖閣諸島に戻り態勢を立て直して今眼前に迫って来ている。

 

CIC

倉田「ッ❗️戦艦棲姫、発砲ッ‼️」

 

艦橋

滝澤「戦術❗️狙いはこっちッ⁉️」

 

CIC

倉田「いえ❗️本艦隊の頭上を超え、大和と武蔵の方に向かいます‼️」

狙いは大和と武蔵だった。明らかに彼女達への「復讐(リベンジ)という意思表示を込めた一撃だ。この砲撃は距離があった為か、至近弾で水柱を上げただけで大和、武蔵とも損害は皆無であった。

 

艦橋

提督「(深海棲艦が"復讐心"や"執念"の様な感情で動いている❓今までになかった事だな。)」

これまで深海棲艦が「情に動く」という所を初めて見た提督は思う。しかしあまり深く考えている余裕はない様だ。戦艦棲姫艦隊をどうにかしなければ魚釣島で未だ健在の飛行場姫を叩く事ができない。だが、戦艦棲姫に対抗できる火力を持っているのは大和と武蔵だけ。戦艦棲姫が彼女達への復讐(リベンジ)に燃えているのだとしたら、彼女達が囮となってもついてくるだろう。しかしその場合は飛行場姫に大打撃を与えられる46㎝の強力なハードパンチが無くなるという事だ。「大和と武蔵に戦艦棲姫を引き付けて貰う」か「戦艦棲姫艦隊を相手し航空隊と連携で損害を与えて振り切る」か「無視して強引に押し通る」かの三択が提督の脳裏に浮かぶ。

通信士「艦長❗️提督❗️大和から通信ッ‼️」

提督が決断をする前に大和からの通信があると通信士が伝える。滝澤は提督の方を見る。提督は頷くと滝澤は「繋いで」と言う。艦橋のパネルに大和の姿が映し出される。

大和(映像通信)「提督❗️敵の狙いは私と武蔵です。私達で引き受けます❗️」

提督が考えを出す前に大和は「自身が盾となる」と進言して来た。

武蔵(映像通信)「私からもお願いする。」

武蔵も画面を2分割して映像通信に割り込み提督に進言する。

提督「分かった、でも2隻だけでは行かせれない。第3巡洋駆逐戦隊から阿賀野、矢矧、磯風、浜風を連れて行け。」

大和、武蔵(映像通信)「はっ❗️」

そういって映像を切る2人。相手も6隻ならこちらも6隻ぶつける。戦力の分散は愚策であるが、敵が大和と武蔵を罠に嵌める為に艦隊から引き剥がそうとしたりさらなる増援を掛けてくる可能性もある為その保険も兼ねてだ。大和、武蔵そして軽巡 阿賀野 矢矧と駆逐艦 磯風、浜風が艦隊から離れていくのをパネルに投影されたレーダースクリーンで確認する提督と滝澤は皆の無事を祈る。その後に第1戦闘空母打撃群上空を轟音が突き抜ける。第1艦隊待機組みの航空隊第三及び四派とトマホーク第四から六派だ。「まもなく魚釣島近海❗️」とヒマラヤのCICにいるレーダー手が報告する。

提督「いよいよだな。艦長、艦隊陣形変更。単縦陣に移行、艦砲射撃用意を下令。」

滝澤「了解しました。ヒマラヤより全艦、陣形を単縦陣に移行。艦砲射撃用意❗️繰り返す陣形を単縦陣に、艦砲射撃用意❗️」

艦長の号令に一斉に艦が単縦陣への移行へと動き出す。各艦の砲塔という砲塔の砲身という砲身の砲門という砲門が魚釣島に向く。「各艦、射撃用意よし❗️」がヒマラヤのCICにいる戦術士官 倉田が艦橋に報告する。

提督「艦砲射撃始めッ❗️」

滝澤「撃ちー方始めッ❗️」

先頭のヒマラヤを皮切りに後続の艦の砲門が火を噴く。放たれた砲弾は大きく弧を描き飛行場姫の分厚い障壁に当たり信管が作動、爆発する。

ヒマラヤ CIC レーダー手「命中しました。」

倉田「間髪入れるな❗️"ヴォルカノ"続けて撃てッ‼️」

次々と放たれる砲弾の正体は衛星測位システムによる誘導で目標に向かい、最終的にGPS信号を受信しつつ着弾する射程延伸誘導砲弾。それが「ヴォルカノ」だ。ある軍事関係者は「これはもはや砲弾ではない、ミサイルだ。」と評している。通常の艦砲射撃なら風や重力等の影響を受け大きく誤差が出てしまうのだが、この"ヴォルカノ"はその誤差が少ないのでほぼピンポイントで目標に着弾する為に無駄が出ない。第三者が見ていたら気持ちいいくらいに全弾が飛行場姫に着弾していく。しかし......。

滝澤「ラヤ、飛行場姫の障壁は❓」

ヒマラヤ(擬似艦娘)「過去のデータから採算して47%消耗させたと思わせます。」

「厳しい数字だ」と提督と滝澤は思う。大和と武蔵が抜けた今現在、46㎝の次に大きい口径の砲は20.3㎝連装砲でそれを搭載しているのは戦闘空母 ヒマラヤと航巡 最上と三隈だけだ。トマホークを絶えず発射し続けて47%の消耗、陸上型深海棲艦の耐久力の高さの表れである。

滝澤「やはり大和と武蔵が抜けた穴が大きいですね。」

提督「あぁ、見事奴等の作戦通りになってしまっているな。敵ながら見事だよ...。」

ヒマラヤ(擬似艦娘)「お父様、敵を褒めるのは何か意味がある事なのでしょうか❓」

「敵対してる相手を褒める」言動に対し、なぜその様な事を言うのかを疑問に思い質問するヒマラヤ。

提督「"意味"というと難しいな...私だって敵がやり手なら尊敬の念だって抱く、いや抱いてしまう...といえば良いのかな❓ラヤもその内分かるようになるさ。」

ヒマラヤ(擬似艦娘)「......❓了解しました。データログに記録します。」

小首を傾げつつヒマラヤは「敵ながら見事」を記録する。人工知能の彼女はまだ意味を理解できない。しかしいずれ理解したいからと記録したと提督と滝澤は思った。

 

ヒマラヤ CIC

20.3㎝連装砲担当砲手「クソッ❗️なんて堅物だ‼️」

ヒマラヤのCICにいる20.3㎝連装砲の砲手が飛行場姫の耐久性の高さにイラつき毒づく。

倉田「落ち着け、ダメージは与えてる。」

それを宥める様に言う倉田。こう言っているが倉田本人もイラつくというか焦っている。弾薬には限りがある為、長引くと厄介だからだ。

倉田「さらに近づいたら通常弾に切り替えろ。ヴォルカノは高価だからな。」

20.3連装砲担当砲手「了、新三式弾切り替え用意します。」

無誘導の通常弾と違い、誘導装置の入った「ヴォルカノ」はミサイルと同じくらい高価な兵器だ。搭載数も少ないので多くは撃てないし、補給するのも大変だからだ。

 

艦橋

ヒマラヤ(擬似艦娘)「...❓」

滝澤「ラヤ、どうかした❓」

擬似艦娘 ヒマラヤの顔に疑問の表情が浮かんだのを察知し尋ねる滝澤。

ヒマラヤ「海中に音...生き物じゃ...ない。」

 

CIC

ソナー手「左舷前方より高速推進音ッ❗️魚雷ですッ‼️」

倉田「何だってッ⁉️」

ヒマラヤが海中に異音を探知したのと同時にソナー手が魚雷の反応を捉え叫ぶ。

ソナー手「包囲2-8-7、直撃コース❗️回避不能ッ‼️」

倉田「CICより艦橋ッ❗️敵魚雷接...。」

魚雷接近の報を伝えようとする倉田だったが、その声は着弾音と衝撃に飲み込まれ掻き消された。




海中より現れた戦艦棲姫の対処に大和、武蔵と他が駆り出され対地火力が低くなってしまった艦砲射撃組。上手いこと敵の策に乗せられてしまったようです。「深海棲艦にも執念があるのか❓」という疑問も出てきましたね。未だ謎が多い深海棲艦、時と物語が経てば見えてくるのでしょうか❓
艦砲射撃で出てきた射程延伸弾「ヴォルカノ」は「空母いぶき」にも出てきましたね。解説の所はオマージュです。ピンポイントに命中してはいるもののやはり大和と武蔵が抜けた穴がデカく大打撃にはなってないようです。
ヒマラヤが海中の異音を察知しているのは、彼女が艦の全てのシステムを管理しているAIだからできる事です。人が操作してはいるもののバックアップも兼ねてヒマラヤも耳を澄ましたりなんなりしています。


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記録28「尖閣諸島攻略戦 後編」

航空攻撃とトマホークによる対地攻撃に加え艦砲射撃のため尖閣諸島に接近するヒマラヤ達だったが、突如として現れた戦艦棲姫艦隊の迎撃に大和、武蔵らが割かれてしまい火力が低下して思う様なダメージを与えられずにいた。それでも射撃を続ける中、突如としてヒマラヤが魚雷攻撃を受け...。


尖閣諸島沖

アメリカ海軍

バージニア級攻撃型原子力潜水艦

SSN-775 テキサス

発令所

ソナー手「艦長。爆発音を探知、先頭の空母が被弾の模様です。」

QFOP第1艦隊と同じく尖閣諸島沖の海中で戦闘空母 ヒマラヤの被弾に聞き耳を立てているのはアメリカ海軍の攻撃型原潜テキサスだ。

艦長「速力落としたな。1本当たったくらいだ、沈みはしないが小さくねぇ被害が出たんだろうな。」

副長「我々は動かなくて良いんですか❓空母の型は不明ですが、後続に続いている間は日本艦で少なくとも味方ですよ。」

艦長「我々の任務は戦闘ではなく哨戒だ。中国との戦端を開くきっかけを作ることじゃない。」

艦長の言う通りだ。同盟国の艦が危険にあってるなら日米安保条約に則って助けるのが道理であるが、交戦許可が下りない以上は不用意に介入すべきではない。

艦長「それにだ副長。あの艦隊は例の太平洋上の基地を根城にしてる奴らかもしれんぞ。」

副長「まさか、存在すら怪しいとされる独立機動艦隊の❓」

艦長「そうだ。国連太平洋艦隊の精鋭中の精鋭が集まった艦隊だ。そんな連中ならこの状況だって乗り切ってやれる筈さ。それでもヤバくなったら、その時は命令無視して"助け舟"をしてやるとするかな。」

艦長は制帽を被り直し「必要なら命令無視も厭わない」という姿勢に副長や他の乗員もホッとする。

 

一方のヒマラヤの被害は決して軽くはなかった。艦首左舷に命中した魚雷は艦首バウ・ソナーを抉り浸水を発生させ、それによりか電気系統と機関系に異常をきたし20.3㎝連装砲が使用不能になってしまった。

 

ヒマラヤ 艦橋

滝澤「ラヤ、復旧までどのくらい❓」

ヒマラヤ(擬似艦娘)「約2時間と見積もります。それまでは本艦を後方に移し、射撃中の駆逐艦 モーニング・グローリー、ビーナス・ベルトを前方に出して対潜戦配置に着かせる事を具申します。」

滝澤「提督❓」

提督「よろしい。修理が最優先だ、今は下がろう。」

提督も了承し、滝澤はヒマラヤを後方に下がらせ2隻の駆逐艦を前に出すよう指示する。

ヒマラヤ(擬似艦娘)「... ... ... ...。」

滝澤「ラヤ、どうかした❓」

いつも通りの無表情な"擬似艦娘"ヒマラヤだが、艦長である滝澤と生みの親である提督には分かる。彼女が「気を落としている」という事を。

ヒマラヤ(擬似艦娘)「申し訳ありませんミユ、お父様。私の反応速度が遅かったばかりに招いたミスです。」

艦内管理AIである自分自身の過失であると反省するヒマラヤ。

滝澤「ラヤのせいじゃないわ。」

提督「そうだ、自分を責めるな。幸いな事に負傷者だけで済んだ。」

ヒマラヤ(擬似艦娘)「しかし...。」

提督「"お前も我々人間も完璧じゃない"。確かにお前はこの艦を制御しているAIプログラムだ。だが人に完璧は作れないし故に君も完全無欠にはならない。そういうことだ。」

ヒマラヤ(擬人艦娘)「ミユ...お父様...。」

提督「ラヤはここまでちゃんとやれている。再発防止に努めてくれればそれでいいさ。」

滝澤「そうよ、ラヤ。私には私の、ラヤはラヤのやれる事を引き続きお願い。」

ヒマラヤ(擬似艦娘)「了解しました。ヒマラヤ、精進する様努めます。」

提督と滝澤の言葉に赦され、またもや無表情だが滝澤と提督には彼女の表情が明るくなった事は伝わっている。

 

ヒマラヤ CIC

ソナー手「申し訳ありません。私の対応が遅れた為に...。」

倉田「謝るな。サポートとはいえラヤの方が俺達人間より反応が早いのは当然なんだ。負けてられないぞ。」

ソナー手「はい❗️」

倉田も「自身の責任だ」と攻めていたソナー手を宥める。

倉田「20.3㎝が使えない今頼れるのは5インチ砲だけだ。向こうにとっては蚊に刺された程しか感じないだろうが、無いよりマシだ射撃を続けろ。」

5インチ砲担当砲手「了❗️」

 

艦橋

ヒマラヤ(擬似艦娘)「モーニング・グローリー及びビーナス・ベルト配置完了。対潜戦用意よしとの事。」

滝澤「いかが致しますか提督❓」

提督「無論、飛行場姫に集中すべきだ。かといって沈めるわけにもいかないね。」

同じ人間とその艦を相手にしている暇はない。だが沈めれば深海棲艦だけでなく中国も敵に回す事になってしまう。難しい判断を迫られ、提督は浅すぎず深すぎずでどうするか思考を巡らせる。

提督「モーニング・グローリーに繋いで。」

 

第1艦隊前方の海中

中国海軍潜水艦

遠征102号 発令所

副長「やりましたね艦長。敵空母に損傷を与えましたよ。」

艦長「安心するのは早いぞ、下がって態勢を立て直す気だ。駆逐艦が2隻前に出たのはその証拠、向こうはまだまだやる気満々だぞ。」

空母に損傷を与えるという近代海戦では大戦果を成し得た事に喜ぶ副長に「まだ終わりじゃない」という艦長。実に冷静だ。

ソナー手「ッ❗️先頭に出た敵駆逐艦からアクティブ・ソナーが❗️」

副長「回避運動ッ❗️取り舵一杯❗️」

ソナー手「お待ちを❗️これはモールスです❗️」

副長「また同じ手を❗️」

艦長「待て、聞こうじゃないか。読み上げろ。」

ソナー手「「我ガ艦隊ハ先ト同様に貴艦隊トノ戦闘ヲ望マズ。尖閣諸島ノ深海棲艦ノ撃滅ガ我ラノ任務デアル。」」

副長「ふんっ❗️くどい奴らめ❗️魚釣島は我れ中国のものだとなぜ分からんッ‼️」

ソナー手「続きます。「貴国ノ機動部隊ハ壊滅的打撃ヲ受ケタ。我ラハコレヲ救助シ、現在救助シタ乗員等ノ身柄ハ日本本土艦隊ガ預カリ後ニ貴国ニ送還サレル手筈デアル。」

副長「機動部隊の壊滅は本当だったのかッ⁉️」

壊滅の報は届いていたもののにわかには信じていなかった副長。だが艦長は機動部隊の生存者の無事に安堵しつつ、敵ながらも救助の手を差し伸べた事に対し心中で感謝の思いを実らせた。

ソナー手「「前回対峙シタ時、"真ノ敵ハ誰カ❓"ト問イタト思ウ。私ハ深海棲艦ノ事ヲ言ッタ。ダガ、ソレダケデハナイ事ガ判明シタ。」

副長「な、何を言っているだ❓」

「深海棲艦ではない真の敵」との言葉に少しの戸惑いを見せる副長。

ソナー手「「真ノ敵ハ貴方達ノ中ニ、中国海軍上層部ノ中ニイル。」」

副長「ハッタリです艦長❗️我々を動揺させようとしてデタラメをッ‼️」

ハッタリだとして信じない副長。まぁいきなりこんな侮辱とも取れるような事を言われては無理もないし当然だ。しかし、逆に艦長の方は冷静だった。

艦長「副長、実は私はこの作戦の事を始まる前から不可解に思っていたんだ。」

副長「は❓」

艦長「攻略するには戦力的には少なすぎる上に情報の提供不足だ。あの機動部隊の数で魚釣島が墜とせたと思うか副長❓」

副長「そ、それは... ...。」

これまでの作戦行動を冷静かつ的確に分析する艦長に、副長は反論ができなかった。

艦長「(そうだ、あの艦隊の提督は何か知っている。我々の知り得ない何かを、でなければこんなハッタリ紛いな事はやるまい。)操舵手...。」

 

ヒマラヤ 艦橋

滝澤「戦術、兵装の復旧はどれくらい❓」

 

CIC

倉田「もう少しです❗️あと5分ください❗️」

 

艦橋

滝澤「なら4分半でやりなさい❗️」

 

CIC

倉田「はっ❗️」

 

艦橋

滝澤「ラヤ、第6次攻撃隊の到着予定は❓」

ヒマラヤ(擬似艦娘)「到達まで約10分です。」

提督「......。」

修理も攻撃隊到着もものの数〜数十分と来ている。自体は良くなるが、目の前の中国潜がモールスをどう受け取るかでまたさらに状況が一変する。その時が怖いと提督は思っているのだ。

滝澤「提督❓」

提督「ん❓あぁ、すまない。敵さんがどう動くか考えててね。」

滝澤「通じたでしょうか❓」

提督「さぁね、正直ハッタリと捉えられてもしょうがないような文面だし。」

命じた提督本人としても自信はなかった。逆に怒らせて事態を悪化させてしまうかもしれないと思わずにはいられなかった。

損傷した戦闘空母 ヒマラヤの前に出てモールスを放った駆逐艦 モーニング・グローリーと僚艦で姉妹艦のビーナス・ベルトはASROCとRBU-6000、三連装短魚雷発射管をいつでも放てるよう海面に睨みつかせていた。モールスの内容に逆上しての攻撃からいつでも自艦と艦隊を守る為だ。

 

汎用駆逐艦 モーニング・グローリー

CIC

ソナー手「ッ⁉️大尉❗️大戦に動きありました‼️」

戦術行動士官「艦長に伝える❗️」

 

戦闘空母 ヒマラヤ

艦橋

通信士「艦長、モーニング・グローリーより入電。「敵潜、海域ヲ離脱ス。」です。」

滝澤「提督。」

提督「あぁ、なんとか退いてくれたか。」

最悪の事態は避けられホッと胸を撫で下ろす提督と滝澤そして艦橋にいるクルー。

 

CIC

20.3㎝連装砲担当砲手「やった❗️動きました‼️」

時を同じくしてヒマラヤのCICでは先の中国潜の魚雷攻撃により使用不能となっていた20.3㎝連装砲がようやく復旧した。

倉田「艦橋、CIC。20.3㎝連装砲が復旧❗️」

艦橋

ヒマラヤ(擬似艦娘)「ミユ、20.3㎝が復旧。動作確認問題なし。」

滝澤「射撃再開❗️沈黙した分だけ撃ち込めッ‼️」

息を吹き返した20.3㎝連装砲は活きが良いくらい軽快にバカスカ撃ちまくっている。しかし、復旧して火力が戻ったは良いものの飛行場姫の障壁を破れるかは怪しかった。ヒマラヤ以外の艦艇はほぼ休む間も無く撃ち続けたせいで弾薬をかなり消耗しているからだ。

提督「ラヤ、僚艦の弾薬消耗率は⁉️」

ヒマラヤ(擬似艦娘)「現在消耗率78%、計算だとこのままでは弾薬欠乏により射撃不可となります。」

思ったよりも厳しい状況だった。このままでは飛行場姫を落とす事が叶わない、そう思った時だった。ヒュウゥゥゥゥゥ〜という砲弾の落下する音がし、その音はバキンッ❗️という障壁にぶつかる音になった後、ドドォンッ❗️連続した爆発音に変わった。それはQFOPの全員がよく聞き慣れている音だった。

滝澤「提督今のは⁉️」

提督「46㎝❗️戻ってきたか‼️」

それは大和、武蔵の46㎝だった。戦艦棲姫艦隊の迎撃を終え、僚艦と共に戻ってきたのだ。

通信士「大和、武蔵より入電❗️」

大和(映像通信)「提督❗️」

武蔵(映像通信)「待たせたすまない❗️」

提督「いいさ、無事で何よりだ。こっちの弾が少なくなった、盛大にやってくれ❗️」

大和「了解❗️1番及び2番主砲、照準を飛行場姫に‼️

武蔵「了解だ❗️1、2番主砲、飛行場姫へ‼️」

大和、武蔵の46㎝の巨砲が魚釣島の飛行場に向けられる。

大和「薙ぎ払え‼️

武蔵「吹き飛ばせ‼️」

2人の号令で放たれた計12発の砲弾はいつもながら凄まじい爆音と衝撃を発し、飛行場姫目掛けて飛翔していく。障壁にぶつかり「ガシャリーンッ❗️」とガラスが割れた様な音を立てた。頑強な飛行場姫の障壁が遂に破れたのだ。攻撃に参加したすべての艦娘と妖精、乗員がそれぞれの艦で歓声を上げた。

装甲空母 大鳳所属航空隊

第1戦闘攻撃飛行隊 "ビーフェックス1"

ビーフェックス1-2「隊長、飛行場姫の障壁が割れたそうです。」

飛行場姫の障壁破壊は攻撃に向かうQFOP第1艦隊の空母航空隊のパイロット妖精達も肉眼で確認していた。

ビーフェックス1-3「ハッ❗️やりましたね隊長❗️」

ビーフェックス1-1「あぁ、仕上げは我々がやるぞ。ついて来いッ‼️」

鉄壁の守りを失った飛行場姫に群がる様に襲いかかるQFOP空母航空隊。引導を渡しこの戦いに終止符を撃つ為、その攻撃は容赦がなく行われた。




今回は珍しく長丁場となりました。アメリカ海軍の原潜 テキサスが戦いの様子を見物しています。手出ししないのは劇中でも触れられた通り「アメリカも中国と戦争をするつもりがない」からです。でもテキサスの艦長はどうしようもなくなったら助けるつもりでいるみたいなので、そこまで冷たい訳ではないようですね。
ヒマラヤは魚雷の探知に遅れた自分の責任だと落ち込みますが、滝澤と提督により再発防止に努めると奮起します。AIとはいえ精巧に作られてますね"擬似艦娘"は。
前にも対峙した中国潜水艦2隻もまたモールスによる説得を受けます。遠征102号の艦長も今回の自分達の作戦行動に疑問を抱いていたみたいですね。なんとか退いてくれて、ヒマラヤの20.3㎝砲も直り、大和達も戻ってきて、障壁を破壊して、航空隊も来てくれて、やっとこさ尖閣諸島を墜とせたか❓次回に続きます。


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記録29「トライデント作戦最終段階」

尖閣諸島の攻略を辛くも成功させた提督が率いるQFOP第1艦隊。「トライデント作戦」はいよいよ最終段階に近づきつつあります。


太平洋 オーストラリア アラフラ海

QFOP第3艦隊

総旗艦 空母 雲龍

艦橋

当直士官妖精「艦長、CDC(戦闘指揮センター)から報告、第1艦隊から暗号電。「東シナ海で魚が釣れた」です。」

オーストラリア アラフラ海を進むQFOP第3艦隊総 旗艦 空母 雲龍の艦橋にて当直士官妖精が第1艦隊から暗号電が来たとの報告を受ける空母艦娘 雲龍。「東シナ海で魚が釣れた」、それは尖閣諸島を攻略したという意味の暗号だ。

副長妖精「提督達やりましたね。」

雲龍「えぇ、こちらも急がなくては。」

当直士官妖精「艦長、近海哨戒中のオーストラリア海軍ミサイル駆逐艦 ホバートより入電。「当海域に障害無し、そのまま前進されたし」。」

雲龍「通信へ「了解、感謝する」と伝えて。」

 

同海域

オーストラリア海軍

ホバート級ミサイル駆逐艦 DDG-39 ホバート

艦橋

左舷ウィング見張員「艦長、例の秘密艦隊が我が艦隊の前を横切っていきます。」

この海域に於けるQFOP艦隊の作戦行動掩護の為、オーストラリア海軍ミサイル駆逐艦 ホバートは僚艦のアンザック級フリゲート(ドイツ多用途フリゲート「MEKO」シリーズ MEKO200型)FFH-153 スチュアートとFFH-155 バララットは近海の哨戒任務に従事していた。

艦長「あれが平和維持海軍太平洋方面艦隊司令部直属の秘密艦隊か...。」

副長「深海棲艦と3〜4年も互角以上に戦ってきたという精鋭中の精鋭...まさかこんな形でお目にかかれるとは思いませんでしたよ。」

ミサイル駆逐艦 ホバートの艦橋内で双眼鏡でQFOP第3艦隊を見つめる艦長と副長。

艦長「あんな化け物達と長く戦い続けられる方法があるなら是非教えて貰いたいものだな。そうすれば我々もここまで追い詰められずに済んだ。」

副長「ASEAN諸国の海軍よりはウチはまだ保ってる方ですよ。向こうはもう居ないも同然です。」

艦長「我々も手助けできたらなぁ...。」

副長「対空、対潜の掩護なら出来ますね。新鋭の護衛戦艦も連れて行けたら尚良いです。」

深海棲艦に打ちのめされたのはASEAN諸国だけではなくオーストラリアもだったが、厳しい状況ながらも比較的損害は少ない方だった。自分達の戦いをするだけでも精一杯だが自分達以上にもっと過酷な戦いを続けているQFOPに一助出来たらと深くしみじみと思う艦長と副長だった。

艦長「... ... ...。針路変更、母港に帰投する。」

副長「アイサー、針路変更カタバル海軍基地へ。」

しかし、自分達の任務はあくまで「支援」、それを忘れていたなかったが本当にそれだけしかできない自分達が悔しかった。

 

尖閣諸島 魚釣島沖合

QFOP第1艦隊 総旗艦 大鳳

艦橋

提督「島の残敵の状況は❓」

大鳳「海上の敵は去りましたが、陸上の敵がまだ抵抗中です。しかし直に制圧可能との事です。」

提督「よろしい、補給の進捗と※遠征打撃群の到着予定は❓」」

大鳳「補給は53%まで完了、遠征群の到着は後2日を要すわ。」

(※アメリカ海軍の戦闘部隊の1つ。海兵隊遠征隊(MEU:Marine Expeditionary Unit)を乗せた揚陸艦3隻と水上戦闘艦3隻に加え潜水艦1隻で編成されている)

その頃、QFOP第1艦隊は尖閣諸島の支配権をほぼ手中収め各艦艇は合流したQFOP支援艦隊から補給を受けていた。アメリカ海軍 遠征打撃群の到着まで島への攻撃を続けながらだ。水上艦戦力は撃沈破または離脱し残りは陸上の僅かな抵抗のみとなっている。

通信妖精「失礼します。QFOP第3艦隊がアラフラ海を抜けました。」

艦橋に上がってきた通信妖精がQFOP第3艦隊の動きを敬礼し伝える。作戦は着々と最終段階にまで迫っている。

大鳳「雲龍さん達、無事に抜けたようね。」

提督「あぁ、皆上手くやってるな。」

作戦の良い方向に進んでいる事にここは素直に喜ぶ提督。ふと作戦図を記したディスプレイ付き作業机から目を離し艦橋の窓から外を見る。視線の先には戦艦棲姫との戦闘を終え戻った戦艦大和があった。その艦首は左右に大きく凹み黒く焦げている。報告によれば敵駆逐艦2隻が大和に急速接近して雷撃に有利なポジションに付ける為と思われていたが、そのままの勢いで突進してきたという。フレッチャー級の姿を模した艦影と艦首に792、649の艦番号がハッキリと見え、回避運動を取ろうとするも間に合わず2隻は大和の艦首の左右それぞれに激突しその後戦艦棲姫の攻撃を受け爆発四散した。幸運にも大和は艦首の損傷のみで済んだ。体当たりし且つその味方を撃つという今まで無かった行動を深海棲艦が取る。これは何を意味しているのだろうか❓5年近くも戦ってきても尚その正体すら掴めぬ敵の事だからいくら考えても答えは出なかった。

大鳳「提督❓どうかしたの❓」

考え込んでいる提督に大鳳は「どうしたの❓」と声を掛ける。その声にハッとして提督は気づく。

提督「ん❓あぁすまないちょっと考え事。そういえば潜水艦隊に追わせていた輸送船団はどうなったんだったかな❓」

尖閣諸島攻略中に発見し離脱を図ろうとしていた深海棲艦輸送船団を潜水艦隊に追尾するよう命じ、それからどうなったのかを思い出し大鳳に尋ねる提督。

大鳳「しおんさん達が輸送船に雷撃して損傷を与えて拿捕したそうよ。乗員達は海中に逃げ出して重要書類は殆ど焼却処分されてしまったけれど、一部と中国語で書かれた積荷に中国製の武器/兵器が満載したコンテナも見つかったわ。」

沈めさせなかったのが幸いした。その船団には中国の関与を表す物が大量に詰め込まれていたからだ。

提督「よろしい、しおん達には作戦が終わったら何か礼の一つでもしてあげないとね。報告書として纏めて私の所に提出するように言ってくれ。それを太平洋方面艦隊司令部にそれと日本本土防衛艦隊の長官にも伝える。早速取り掛かるよう伝えてくれ。」

大鳳「分かったわ。」

中国と深海棲艦との繋がり関する情報を海軍上層部に報告する。さらにその情報は国連軍そして世界各国に共有されることであろう。それが果たして世界にどのような影響を与えるのか❓それは提督にも予想できないが、世界が大きな衝撃を受け動かざるを得なくなる事は間違いないとは確信していたのだった。




オーストラリア海軍からイージスミサイル駆逐艦 ホバートとフリゲート艦2隻が登場しましたね。前に書いた時はセリフはあんまりなかったのですが、書き直して大幅にセリフと艦乗員の心情を書き足しました。「本当は彼らももっと役に立ちたい」というのが伝われば幸いです。オーストラリアだけでなくASEAN諸国の状況も少し触れられましたね。いずれそこも描いて行くつもりです。
なんとか尖閣諸島を陥せたQFOP第1艦隊。深海棲艦についてまた気になる件や中国と深海との繋がりを示す材料をまとめて提出と色々忙しいですが、補給を済ませて作戦最終段階に向かいます。


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記録30「相容れないNations」

QFOP艦隊が尖閣諸島を占領し作戦を最終段階へと進める中、日本と中国に動きが見られる様です。


中国 北京 

QFOP艦隊が作戦の最終段階に向かうのとほぼ時を同じくして中国 北京にある中国外交部(外務省)で現在進行形で人類の敵である深海棲艦との戦いのまさに真っ最中でありながら領土問題の話で日本を非難し、相変わらず平行線で話がまとまらなかった日本の外交官が車の窓から外の様子を見ていた。その目線の先では市民による大規模なデモが行われていた。人々が手に持つプラカードや横断幕には中国語で「これ以上の共産党一党独裁を許すな❗️」や「国連に帰属し深海と戦え❗️」など中国共産党を名指しで非難するような内容が書かれている。「国連」に属しながらも「国連軍」としては参戦を拒み中国が独自に深海棲艦と戦い続けて早4年、経済発展をバックに急成長を遂げた中国海軍は現在(いま)では見る影もないくらいに消耗してしまった。それでも断固として国連軍と共同戦線を張ろうとせずさらに軍備拡張路線を強引に推し進めた結果、中国国内では地域格差がさらに広がり国民が貧困に喘ぎ、暴動やデモが日常茶飯事と化している文字通りの混沌(カオス)が今の中国の現況である。

日本外交官「(ふぅ、えらく長く質問攻めにあったな〜。まぁ外がこんな様子じゃピリついても仕方ないか。少しだけだが中国さんには同情するよ。)」

車窓の外からデモを見やり少しながら多かれ少なかれ同情してやる日本の外交官だった。

 

中国外交部ビル

執務室

中国外交部官「ふん❗️あの外交官め、涼しい顔で出ていきおって‼️」

外交部ビルの執務室の複数ひびの入った窓から日本の外交官の乗る車を見て苛立つ中国外交部官。デモや暴動が日常茶飯事になっている現状の事もあってか余計に腹立っている。

中国外交部官「このまま向こうの好きにさせていては中国の威信に関わる。なんとかしなくてはならん...。」

???「彼は本当に知らないのだと思われますよ。」

後からする声の方に振り向く中国外交部官。そこには中国海軍武官 馬 大奇(マー・ターチー)が堂々とした涼しい顔で立っていた。

馬 大奇「情報だとあの艦隊は国連海軍太平洋方面艦隊司令部直属の艦隊。いくら日本艦と艦娘が大半を占めてると言っても、日本にその指揮権がある訳ではなくその存在を知る者もほんの一握りとか。」

中国外交部官「クソッ❗️ならばどうすれば良いと言うのだ❗️」

馬 大奇「ご安心を既に手は打ってございます。」

そう言って外交部官の怒りの表情とは正反対に余裕の笑みを浮かべる馬(マー)であった。それと時を同じくし同じ中国だが場所を移そう。湛江市の南海艦隊基地だ。

 

中国 湛江市 南海艦隊基地

基地副司令「司令、艦隊定刻通り出港します。」

南海艦隊基地副司令が双眼鏡を覗いきながら基地司令に言う。

基地司令「うむ。敵はあの国連海軍の"寄せ集めの精鋭艦隊"だそうだ。良い"モルモット"になるだろう。副司令、我らが新鋭艦隊の武運を祈って敬礼を贈ろうではないか。」

そう言われ静かに副司令が敬礼を贈り、司令もその後で贈った。

 

南海艦隊基地 港外水路付近海域

ベトナム海軍

キロ級攻撃型潜水艦 HQ-184 ハイフォン

ソナー室

ソナー手「艦長、こちらソナー。スクリュー音を聴知。」

中国海軍の動きを監視すべく南海艦隊基地で息を潜めていたベトナム海軍所属の潜水艦 ハイフォンのソナー手が外洋に出てきた中国海軍最新鋭艦艦隊を探知した事を発令所にいる艦長に伝える。艦長は「潜望鏡深度へ」と伝え潜望鏡を上げ中国艦隊の大名行列を拝む。

艦長「まだあれだけの艦隊がいたのか⁉️...潜望鏡を下ろせ。通信ケーブルを出し暗号で司令部に打電だ。」

 

日本 神奈川県

海上自衛隊 横須賀基地

また時をちょっと同じく場所を移してお次は日本です。海上自衛隊のみならず在日アメリカ海軍の根拠地としても機能している横須賀基地。その基地司令部内はなにやら張り詰めた空気感が漂っていた。

???「米遠征打撃群は尖閣諸島に到着したのだな❓」

海自自衛官「は、先程、中国海軍の妨害を受けず占拠することに成功したと。」

尖閣諸島に向けて出港したアメリカ海軍の遠征打撃群の現状を訪ねているこの司令の名は高野 五十六。あの旧帝国海軍連合艦隊司令長官の山本 五十六その人である。現在ではその名の高野と改め海上自衛隊 横須賀基地で指揮を執っている。アメリカ海軍のみならずASEAN諸国の海軍と連携して中国を監視しQFOPをバックアップする為にだ。

高野「中国海軍の動きに変化はあったか❓」

海自自衛官「いえ、今の所は何も...。」

2人が話してる中をコンコンッとドアをノックする音がする。「入れ」と高野が言うと「失礼します」と言って通信士が入ってくる。

海自通信士「報告します。中国海軍 南海艦隊基地を監視していたベトナム海軍から報告が。」

通信士から写真付きの電文を手渡される高野。目を通して顔色を変える。

高野「ッ⁉️すぐあの男の艦隊にも伝えてくれ❗️もちろん暗号でだ‼️」

「はっ❗️」と勢いよく返事すると共にさらに報告を続ける通信士。

海自通信士「それと、"竜宮"(QFOPの事を指す暗号名)から暗号電でこれが...。」

高野に一枚の電文が手渡される。内容は「中国海軍と深海棲艦との繋がり」を示す物だ。ただでさえ中国海軍の新たな動きに驚いているのにさらに高野の顔がまた驚きを隠さずまたその色を変える。

高野「これをすぐ統合参謀本部に伝えろ❗️」

通信士が「は、はっ❗️」と慌てて返事をして部屋を出て行く。

高野「君も参謀達を招集してきてくれ❗️」

海自自衛官「はっ❗️」

そう高野に言われ海自自衛官も部屋を出て行く。その後すぐに高野は自分のデスクに置いてある電話に手を付ける。

高野「私だ。元気にしているかね❓あぁそうか、実は君に頼みたい事があってな。」

 

日本 東京都 総理官邸

内閣総理大臣 米内 光政「そうがぁ...中国は相変わらず国連には就がねぇがぁ〜。」

場所は同じく日本だが少し移して東京都の総理官邸。独特な岩手訛りで中国との外交が難航してる事を憂えているのは米内 光政、前世の大日本帝国時代では海軍大臣を務めた帝国海軍の重鎮だ。今は転生して総理大臣の職に就いている。米内が官邸の窓際に立ち話しているその後ろでソファに座り話を聞いているのは垂水 慶一郎は官房長官だ。

官房長官 垂水 慶一郎「はい、態度変わらずで硬化し続けていると...国内の状況はますます悪化の一途を辿っているにも関わらずと。」

垂水は一言一言を重く米内に語る。

米内「妙...と思わないがぁ❓垂水君。」

垂水「はい。ここまで態度を硬化させたままを変わらずでいるのが実に...。」

垂水も米内と同じく中国の変わらぬ態度に疑問しかなかった。

米内「垂水君...深海棲艦が現れてから日本は、いやぁ世界は大きく変わったな。だが足りない、もっと我々日本は変わらねばならないとそう思わんがね❓」

垂水「はぁ...。」

米内は深海棲艦の登場により変革した世界について語り始め、日本も変わったがさらに変わる必要があると語る。

米内「日本は島国で海の広さは世界第6位だ。だがこの広さをカバーできる程の防衛力を自衛隊は持っていない。深海棲艦だけでなくもし某国の侵略を受けたらどうする❓」

垂水「それはアメリカに...。」

米内「頼るかね❓だが今のアメリカは深海棲艦が来る前よりも弱体化しつつある。向こうも本当は私らと同じく自分の事で精一杯だ。ならいつまでも同盟国頼りではいけないと思わんがね❓」

垂水は額に汗を垂らしながら米内の話を聞いている。米内の意見は最もに尽きている話なのは垂水も重々分かっていた。

米内「垂水君、強くなってくれ。次の総理大臣は垂水 慶一郎...君に決めている。」

垂水はさらにまた額から汗を垂らしじっと米内を見つめ沈黙した。




今回は艦娘の登場なしのガチの政治回です。「空母いぶき」と「紺碧の艦隊」からの登場人物も交えて中国の内情について描かせていただきました。急激な経済発展と同じくして海軍が増強された中国海軍ではありましたが、それをも呑みつぶす程の物量で迫る深海棲艦には敵いません。それでも国家のプライドが許せないのか国連にありかながら国連軍に属す事を拒み、その際で国際的にも孤立したも同然で国は貧しくなり国民からの非難が高まっているようです。この事に国連もそしてお隣の日本もお困りで今にも中国との本格的な戦争が始まるかもと危惧しています。米内と垂水はそれについて真剣に話し合い、今後は日本もさらに強くあらねばならないと話し合って物語は終わります。物語中盤ベトナム海軍潜水艦が発見した中国機動部隊はQFOP脅威になるのか❓と色々と大変な事になりそうです。


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記録31「迫る中国海軍新鋭空母機動部隊❗️」

中国海軍は国連海軍(QFOP)のこれ以上の西沙及び南沙諸島進出を阻止すべく新鋭空母を中心とした機動部隊を出撃させる。ASEAN諸国海軍と連携を取りつつ中国を監視していた日本国海上自衛隊の高野 五十六はのこの情報をQFOP第1艦隊に伝える。


南シナ海 西沙諸島周辺海域

QFOP 第一艦隊 旗艦 装甲空母 大鳳

艦橋

提督「高野閣下からなんだな❓間違いないか❓」

大鳳「えぇ、湛江海軍基地(南海艦隊)から空母機動部隊が出撃したそうよ。」

大鳳はデスク内蔵のディスプレイに入ってきた情報を開き提督と多田部に見せる。

多田部「空母1、ミサイル巡洋艦及び駆逐艦各4隻、ミサイルフリゲート艦4に潜水艦2隻も含めて15隻か、しかも空母と巡洋艦はオセロットが青島基地(北海艦隊)で見てきた新型もいるじゃないですか。」

提督「恐らく湛江海軍基地(南海艦隊)にも同様の秘密地下工廠があるんだろう。」

多田部「ただでさえ国は既に肥満体なのに国民からの搾取という名の甘い蜜でさらにブクブク太って軍備増強という名の別腹にそれを入れる。後には何が垂れ流されるのか連中は分かってるのかね〜❓」

容赦ない皮肉とブラックジョークを用いて多田部は中国の行動に呆れる。

提督「まぁこのままヤッ○ーワンよろしくビッ○リドッ○リメカを吐き出し続けていればいずれそうなるだろう。だが今はこの"黒腹生まれ黒腹育ちの女王"とその側近らをどうするか考えるのが先決だ。」

多田部「ですね。このまま行くとこっちの横っ腹を突かれます。いかがします提督閣下❓」

提督「背後から突かれるのは避けたい。補給は済ませてあるし少し付き合ってやろうじゃないか。向こうも本気ならこちらもその気だと知ってもらおう。」

多田部「了解。」

大鳳「分かったわ。」

 

同海域付近上空

日本国 航空自衛隊 早期警戒管制機 E-767 コールサイン"エリアルーラー(領域の支配者)"

レーダー手「ッ❗️中国空母より光点一つ...二つ...艦載機発艦の模様。」

QFOP第1艦隊が進む西沙諸島付近上空を飛行する航空自衛隊のE-767のレーダー手が中国新鋭空母機動部隊輪形陣のど真ん中に陣取る空母から艦載機の発艦を確認し同機内の管制官に報告する。

 

装甲空母 大鳳

CDC(戦闘指揮センター)

通信妖精「空自のAWACS(早期警戒管制機)から情報あり、中国空母から艦載機隊発艦を確認。」

大鳳「提督❗️」

提督「おいでなすったか...全艦戦闘配置❗️対空戦闘配置だ‼️」

提督の号令の下、QFOP第1艦隊の全艦艇に対空戦闘配置が発令され各艦とその乗員達は一斉に配置に着き始める。

大鳳「レーダー妖精、AWACSからさらに情報は⁉️」

レーダー妖精「来てますよ❗️一個編隊12機、機種は殲20だと。」

殲20こと殲撃20型(J-20)は中国の最新鋭第5世代ステルスジェット戦闘機だ。公開されている情報が少なくその機体自体とステルス性能については謎の多い戦闘機だ。その一個編隊がQFOP第1艦隊へと襲い掛かろうとしている。

大鳳「全艦対空戦闘配置完了よ。」

提督「よろしい。各イージス艦に伝え、向こうが撃つまでこっちからは撃つなとな。」

多田部「イージス艦のミサイル発射担当達は今頃トリガーに指を掛けたまんまだろうな、本当なら撃ち落とした方が早いと思ってるのに。」

提督「そうだな、だが上は中国との戦争は望んでいないだろうから撃墜は許可しないだろう。我慢させるのが申し訳ないよ。」

多田部「大丈夫、皆分かってるはずですよ。ったくこんな世だってのにこんな事気にしなくてはならないとは面倒も良いとこですね。」

提督は航空隊の温存と国際問題と中国との国家間戦争になるのを避ける為、中国機を撃墜せずミサイルのみの迎撃に注力する方向で事を進めている。深海棲艦と戦いながら中国との戦争になるのを回避しつつ迎撃しなければならない面倒な事態を多田部は素直に文句を口にする。それに対し提督は「言いたい事は分かるがやるしかないぞ❓」と顔を向ける。

レーダー妖精「敵編隊が6機ずつに分かれました❗️目標群a(アルファ)は高度10000に目標群b(ブラボー)は海面スレスレの位置にそれぞれつきます❗️」

大鳳「二手に分かれたわね。」

多田部「"サンドイッチ"ですなこれは。」

提督「あぁ、美味しく召し上がる気でいる様だ。」

レーダー妖精「両目標群ミサイル発射❗️距離80000‼️」

軽いサンドイッチジョークの束の間、上空と低空から必殺のYJ-91対艦ミサイルがQFOP第1艦隊に襲いかかる。

 

アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦 DDG-151 ネイサン・ジェームズ

CIC

ニシオカ「※ヴァンパイア❗️ヴァンパイア❗️ヴァンパイア❗️敵ミサイル総数48まっすぐ突っ込んでくる‼️」

(※適性飛行物体を表すアメリカ海軍の用語)

チャンドラー「戦術、迎撃開始だ一基残らず撃ち落とせ❗️」

カーラ「戦術了解❗️目標群aの敵ミサイルに向けSM-2連続発射、トラック1037、1038、1039❗️」

ネイサン・ジェームズに続き同型艦と僚艦であるミサイル駆逐艦 ヘイワード、シャクルトン、ジョン・スマイリー、ミサイル巡洋艦 ブルビネラ、ベロニカが艦隊防空ミサイル"SM-2"を次々と前後甲板のVLSから放出していく。

 

陽炎型駆逐艦 磯風

CIC

磯風「イージス達が上空ならこちらは低空のをやるぞ❗️シースパロー発射‼️」

イージス艦群が上空から接近するミサイル群を相手取る中、海面スレスレを飛行し近づくミサイル群は巡洋艦と駆逐艦の艦娘達と非イージス搭載の駆逐艦らは個艦防空ミサイルであるシースパローで迎え撃つ。迎撃は"完璧"と言って良い程の鮮やかさで敵ミサイル攻撃第一波を退けた。しかし、レーダースクリーンには既に敵の第二波が襲来し始めていた。

 

装甲空母 大鳳

CIC

大鳳「また来るわ❗️数は同じよ❗️」

多田部「物量にモノを言わせる気だな...なんともあの国らしい。」

提督「第三、第四も来るだろうが、この調子なら凌げる。そのまま迎撃を続行だ。」

 

中国新鋭空母機動部隊

山東級航空母艦 CV-17 山東

CDC(戦闘指揮センター)

レーダー手「第一次攻撃隊、帰還します。第二次攻撃隊、攻撃開始まであと15分。」

一方の中国海軍の新鋭機動部隊旗艦 空母"山東"のCDCでは自艦の航空隊の攻撃状況を確認していた。

副長「艦長、敵は迎撃機を上げてきません。どういう事でしょう❓」

空母"山東"艦長 リォウ・チャンロン大校「航空兵力を温存しているのだろう。それか、我々を試しているのか...❓」

空母"山東"の艦長リォウは冷静に分析して副長の問いに答える。その顔に微かに微笑んでる様にも見えたと副長が後に語る事になるのはまた別の話である。

副長「艦長、敵が迎撃機を上げる可能性があります。攻撃隊の兵装転換を進言致します。」

敵迎撃機の心配もあり用心のため攻撃隊に空対空ミサイルを搭載するよう艦長に進言する副長。

リォウ「その迷いが命取りなのだ副長。我が艦隊に"ミッドウェーの愚"を犯させたいのか❓」

攻撃目標の不明確さが生み出した敗北の例として海戦史において有名な「ミッドウェー海戦」を挙げる艦長。

副長「御言葉ですが、やはり心配です。もし本当に迎撃機を上げてきたらいかがしますか❓」

リォウ「その暇(いとま)を私は奴らに与えぬ。副長、これはチャンスなのだ。我が艦隊の動きを世界中が注目している今まさにこの時が...我が祖国中国が"アジアの王"たらんとする器を持つのか否かをな❗️第三次攻撃隊も発艦させよ❗️奴らに反撃の隙を与えるな‼️」

リォウ艦長はここぞというばかりに攻撃隊を矢継ぎ早に前面に押し出す様命じる。

 

装甲空母 大鳳

CDC

レーダー妖精「敵空母、第三次攻撃隊を上げてきました❗️」

大鳳「「攻撃は最大の防御」...数で圧倒する気ね。」

提督「よほど自分達の航空隊を信頼してなきゃここまで押さない。敵の指揮官の強い攻撃意志を感じるな。それと焦りもだ。」

大鳳「焦り❓」

提督「中国海軍には空母機動部隊のノウハウが無い。それにこの戦いを世界が注目しているなら中国にはこれほどの海軍力があるとアピールするには今この場が絶好なんだろう。」

多田部「ちょ〜っとあからさま過ぎな気もするけど、まぁプロパガンダ的なやり方的には有効なんだろうね〜。」

 

QFOP第1艦隊上空

殲20パイロット「上空10000m❗️上空からの一撃だ❗️先頭の奴...これで沈めッ‼️」

上空10000mの空、空母 山東から発艦した攻撃隊の内の一機の殲20が翼下のミサイルをQFOP 第1艦隊先頭艦に向け発射する。

 

装甲空母 大鳳

CDC

レーダー妖精「上空目標群d、対空ミサイルを撃ちました❗️」

多田部「対空ミサイルを艦に撃ったぁ⁉️」

多田部だけじゃなくCDCにいる皆が驚愕した。対艦ミサイルでなく対空ミサイルを撃つ、常識では考えられない事だからだ。

大鳳「チャフ発射❗️続いて回避運動‼️」

上から来る対空ミサイル群に対して大鳳を含むQFOP第1艦隊の空母群はチャフをばら撒きつつ回避運動に入る。しかしそれらを守る護衛の艦艇群は一歩も退かず迎撃する構えを見せる。

 

駆逐艦 浜風

CIC

レーダー妖精「敵ミサイル、高度8000で艦隊両側面より接近中❗️距離20000❗️計42基‼️」

浜風(駆逐艦娘)「面舵30°、シースパローで右舷接近のミサイルを迎撃する❗️攻撃始めッ‼️」

浜風は右舷に舵を切り、船体を斜めに向けて艦尾にあるMk-29 シースパロー八連装発射機を接近するミサイル向け発射する。それでも突破してきたミサイルはCIWS(近接防御火器)で弾幕を張った。しかし、全基撃墜には至らず3基のミサイルの突破を許してしまう。

 

軽空母 隼鷹

CDC

レーダー妖精「敵ミサイル、浜風の防空火力網を突破❗️接近します❗️」

浜風が撃ち漏らしたミサイルは護衛していた飛鷹型航空母艦(軽空母)隼鷹に向かってきている。

隼鷹(軽空母艦娘)「戦術〜SeaRAMでやっちゃって〜❗️」

そう軽空母 隼鷹の艦娘であり艦長の隼鷹が命じ放たれたのはSeaRAM、近接防空ミサイルだ。艦載防空システムの一つであるCIWS(近接防御火器)の一種でそれまでの物とは違い短距離ミサイルに迎撃を行う優れた対空兵装であるが、西側の代表的CIWSである"ファランクス"を完全に取って代わるものではなく現在ではセットで運用されていることが多い。隼鷹その他の軽空母が搭載する物は"ファランクス"の発射機を流用した十一連装モデルだ。敵ミサイルに指向されたSeaRAMはポンッ❗️とミサイルの蓋を弾け飛ばした後、バシュウッ❗️という音を立て発射された。それは見事に敵ミサイルに命中し「撃墜」とCDCのモニターに表示されたのを見て乗員達は「よし❗️」とそれぞれ小さく喜びの声を上げる。

 

駆逐艦 磯風

CIC

レーダー妖精「艦長❗️ミサイルがこちらにッ‼️」

磯風(駆逐艦娘)「なにっ⁉️」

レーダー妖精がミサイル接近の報を伝えたのも束の間、駆逐艦 磯風の船体は強い衝撃と激しい揺れに襲われた。直撃だ。その様子は周囲の艦艇の見張員達も目撃していた。

 

装甲空母 大鳳

CDC

レーダー妖精「駆逐艦 磯風、被弾。直撃のもよう❗️」

大鳳「提督❗️」

提督「心配は後だ❗️今は突っ込んでくるミサイルに集中だ‼️」

そういう提督だが、内心は心配しているに決まっている。だが、敢えてそれを口にも姿勢にも出さずに目の前の事態に集中する。大艦隊の指揮をする以上は常に全体を見ていなければならないのだ。

駆逐艦 磯風は艦橋から煙を上げつつも健在だった。CICで指揮を執る艦娘であり艦長の磯風はヘルメットを被っていたものの、ミサイルの直撃による衝撃で頭をどこかに強く打ちつけたらしく頭部から血を垂らしている。

 

駆逐艦 磯風

CIC

磯風「ぐ...ダメコンチーム。損害の程度を確認。」

ダメコン妖精(無線)「右舷ウィングに被弾、艦首ファランクス1番が沈黙❗️」

磯風「負傷者はどうだ❓」

ダメコン妖精(無線)「これから確認に向かいます。士官室で火災が発生しており人手が少し足りなくて。」

磯風「急げ❗️手空き要員も総動員して鎮火に当たらせろ、敵はまだまだ来るからな❗️(大した事はない、※坊ノ岬の時に比べれば❗️)」

(※昭和20年(1945年)4月7日に行われた戦艦大和率いる水上艦隊による沖縄への海上特攻。駆逐艦 磯風も大和の護衛として参加。)

右舷ウィングにダメコン妖精達が向かうと、そこはミサイルの直撃で構造が歪み張り付くように倒れている見張妖精達の姿が複数あった。

ダメコン妖精「右舷ウィングに到着。死傷者確認、数は13。」

磯風はダメコン妖精からの報告を聞き息を呑んで少し沈黙した後、「重傷者は後回しにして軽傷者を先に手当てしろ」と命じた。

 

旗艦 装甲空母 大鳳

CDC

大鳳「了解、磯風より報告。死傷者は13名だそうよ。」

提督「13か...磯風は意地張るねたぶん。」

レーダー妖精「敵第四波、攻撃を終了。引き返していきます。」

レーダー妖精が敵攻撃隊の離脱を報告すると提督は無線機を取り出し磯風に連絡を取る。

提督「全艦へ、こちら旗艦 大鳳座乗の提督。磯風は後方に下がり浜風と交代、応急処置を実施されたし。他はそのまま輪形陣を保て。」

「後方に下がれ」との提督からの指令を聞くや否や、磯風は無線機を取って提督に連絡をつける。

 

駆逐艦 磯風

CIC

磯風「司令ッ❗️喰らったのは"軽い"対空ミサイルだ❗️この程度の傷はどうという事はないッ‼️戦闘に支障はないのだ❗️前衛の任務は私が適任だと進言する‼️」

磯風は乗員に死傷者が出たにも関わらず悲しい顔と気持ちを見せずむしろ「まだまだ戦える❗️」と提督に強く進言する。

 

装甲空母 大鳳

CDC

提督「その心意気さすがだよ磯風。けどな磯風、我々はもうこれ以上の近接戦闘を許してはならないんだ。先の大戦で共に戦い共に転生してまた戦う事になった戦友として君も分かっているはずだ。後衛に下がり、速やかなる立て直しをお願いする❗️」

過去と現在の戦友である提督からの一言に磯風はしばらく沈黙した後、「転舵取り舵一杯、艦隊後衛につけッ❗️」と部下の妖精に命じ前衛を浜風と交代した。

 

同 ブリーフィングルーム(パイロット待機所)

フェニックス2「対空砲火の音が止みましたね隊長。」

フェニックス1「あぁ、凌いだようだな。」

装甲空母 大鳳のブリーフィングルームには出撃の時を待つ航空隊の妖精達がいた。耳に響く対空砲火の轟音を聞きながら待機していた彼等がやっとその鼓膜と心臓に悪い耳の感触を感じなくなったのを認識する。

フェニックス3「隊長、俺らこのままお座りしたまま出番なしすか❓」

フェニックス1「俺達の提督に限って航空隊の面目を丸潰れさせる様な事ないと思うぞフェニックス3。だが、もしそうなった時はこっちから艦橋にカチコミかけるさ。」

このまま出撃の機会なく艦隊の損害が増す。最悪には乗艦である大鳳が戦闘不能になるんじゃないかも知れないのに出番がない事を不安に思い隊長に質問するフェニックス3だったが、提督への信頼を口にしつつも「いざとなったら直談判も辞さない」と言い部下を安心させるフェニックス1であった。

 

戻って艦橋及びCDC

大鳳「なんとか凌いだだわね。」

提督「あぁ、被弾したのは今のところ磯風だけだが次来たらまた増えるな。」

多田部「ではどうします❓攻撃隊は出せないですよ。許可は上からは出てませんから。」

QFOPは国連の直属であるが、深海棲艦に対する為の多国籍艦隊であって人類国家との戦う為の艦隊ではない。故にこの場合QFOP所属艦が1隻でも中国艦隊艦船を攻撃し損害または撃沈してしまえば国際問題となり深海棲艦と中国の両方を相手取らないといけなくなる最悪のシナリオとなってしまうのだ。

提督「(多田部の言う通り、このまま耐え続ける事もできるがそれでは他の艦隊との歩調が狂うし何より深海棲艦に態勢を立て直す機会を与える事にもなる。どうする❓何か突破口はないか...⁉️)」

そう口をつぐんで考えを巡らせてる時だった。通信妖精が「通信、戦闘空母 ヒマラヤからです。"ヒマラヤ"自身が提督と話したいと。」と言ってきた。「繋いで」と提督が言うと提督達の正面のディスプレイの一つに擬似艦娘"ヒマラヤ"が映し出される。

ヒマラヤ「お父さ...提督。」

提督「どうしたラヤ❓急に君から連絡を入れるなんて珍しいね。」

ヒマラヤ「お伝えしたい事がありまして。」

提督「伝えたいこと❓」

ヒマラヤ「あの艦隊には...人の意思が通っていません。」




始まりましたQFOP第1艦隊vs中国海軍新鋭空母機動部隊(南海艦隊所属)。戦闘シーンや会話は「空母いぶき」第10巻をベースにしています。
QFOPは国連海軍直属の独立部隊故に割と自由な作戦行動が容認されていますが、さすが独断で他国と戦争状態に入る様な行動はできないので敢えて防戦に徹するしかありません。お陰で磯風は小破とはいえ被弾してしまいました。この話で提督の過去について少し語られましたね。「同じ死地を共にした仲間の言う事くらい聞いてくれ」と提督に言われたら士気旺盛で勇猛果敢な磯風も従わざるを得ないようです。
最後にヒマラヤが妙な事を言いましたね。「意思が通ってない」とはどういう意味なのか❓続きをお楽しみに。


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記録32「Chinese Norman's Freet」

中国海軍新鋭空母機動部隊と戦闘に入ってしまうQFOP第1艦隊、空襲をなんとか凌いだが損害も出てしまう。そんな中、戦闘空母ヒマラヤの擬似艦娘が妙な事を言いだす。


QFOP第1艦隊

旗艦 装甲空母 大鳳

CDC

提督「君も洒落た言い回しができる様になったラヤ。なるほど、ではあの艦載機達はどうだ❓」

それは突然で奇妙な報せだった。戦闘空母 ヒマラヤの擬似艦娘であるヒマラヤが言った「あの(中国)艦隊の艦艇に意思が通っていない」と。AIシステムにしてはえらくハッキリしない言い分だ。その事を説明する様にヒマラヤは答える。

ヒマラヤ(擬似艦娘)「いえ、あの攻撃隊の航空機とその母艦である空母そして潜水艦には意志を感じます。しかし他は違います。」

提督「... ...一尉、同じ考えか❓」

多田部「えぇ提督、でも貴方の方がそう思ったのが早かったでしょう❓」

提督と多田部は既にヒマラヤの言葉の意味を理解していたようだが、大鳳はまだ答えが出ていないようだ。

大鳳「提督、一尉ごめんなさい。つまりどういう事なの❓」

今一度考えを巡らせてみたもののやっぱり答えが出てこない大鳳は提督と多田部に質問する。

提督「奴らの艦隊は空母と潜水艦以外は無人艦だってことさ。」

大鳳はハッとして驚いて開いた口を両手で覆う。「無人艦」はその言葉の通り人が乗っていない軍艦の事だ。この手の物はSFのそれこそ「宇宙戦艦ヤ○ト」や「エ○ァンゲリヲン」等の世界の話だと思う人もいるだろうが、実際は「正解であり不正解でもある」と言った感じだ。というのもアメリカ海軍では"シー・ハンター"と呼ばれる実験型の無人艇が開発されている。将来は対潜水艦及び機雷戦を担うとされているが、今はまだ巡視任務程度にしか使えない試作実験機に過ぎない。現状がこんな感じである為、艦艇の無人化は航空機や車輌ほどは進んでいない。それを中国がアメリカよりも早くしかも主力戦闘艦艇に行ったとすればその技術力には目を見張る物があると言わざるを得ない。

ヒマラヤ「敵艦隊の通信を解析した所、UAV(無人航空機)を操作する際に使用する周波数の電波を旗艦の空母から送信、護衛の艦艇が受信している事が分かりました。」

提督「さすが私の娘と言った所だ。良くやったぞ。」

提督に自身の解析を褒められ頬を赤くするヒマラヤ。

多田部「え〜っと、心配性の私から一つ提案。結論づける前にもう少し証拠集めした方が良いんじゃないかな❓と。」

多田部が言う事も最もだ。ヒマラヤの集めたデータでも充分確証がある物は揃ってはいるものの、やはり「これだ間違いない❗️」という決定的な証拠が欲しい。

ヒマラヤ「仰る通りです。確証が欲しい所です。」

大鳳「でもどうやって❓」

皆がどう相手を無人艦と証明するかどうか考えを巡らす為沈黙する。

多田部「... ...❗️提督、あれ使えないか❓ほらあのえ〜っと潜水艦に装備させた"特殊兵装"のやつ。」

提督「うん、良いアイデアだ一尉。大鳳、一番敵艦隊に近い潜水戦隊は❓」

大鳳「第3と第4です。」

提督「至急連絡をつけてくれ。」

 

中国新鋭空母機動部隊が航行中の海域

第3潜水戦隊

旗艦 シーウルフ級攻撃型原子力潜水艦 SSN-24 キング

発令所

副長「艦長、大鳳座乗の提督から。」

ノーマン・キング・ベイツ(艦長)「ふっ、さすが我らの提督だな副長。」

副長「は❓」

シーウルフ級原潜"キング"艦長のノーマン・キング・ベイツ大佐は副長から手渡された通信の内容を読み提督を称賛する。しかし内容を先に艦長に見せる為に読まなかった副長は艦長がなぜそう思ったのかは分からない。艦長は渡された電文を副長に返し読ませる。そして副長は先程の艦長の感想の意味を理解する。

副長「あの装備を使うのでありますか❓」

ノーマン・キング「あぁ、使う機会が果たして来るのかどうか分からないと少々疑問にも思っていた代物だ。」

副長「確かQFOPの研究開発班が作った物でしたな。」

ノーマン・キング「提督やオオタベの独創力や独立部隊であるQFOPでなければ出来なかっただろう。あの2人はとてもユニークだ。

よし、1番〜4番に"マルチ・スキャニング魚雷"装填。僚艦にも同魚雷装填を下令。」

副長「1番〜4番に"マルチ・スキャニング魚雷"装填及び僚艦への攻撃準備の通達了解。」

攻撃型原潜"キング"の魚雷発射管室では艦長の命により"マルチ・スキャニング魚雷"の発射準備が整え始める。魚雷がラマー(魚雷を発射管に押し出して装填する装置。いわゆる自動装填装置)に押し出され、発射管に装填され蓋を閉め注水し発射管扉が開く。

水雷長「発射準備及び解析値よし❗️」

ノーマン・キング「発射(ファイア)❗️」

艦長の号令の元、先に"キング"が放ち後から同戦隊の僚艦も次々と魚雷を放っていく。

 

中国新鋭空母機動部隊

旗艦 空母 山東

CDC(戦闘指揮センター)

ソナー手「ッ❗️ソーナー探知❗️敵魚雷数16、接近中❗️」

副長「なにっ⁉️無人艦と潜水艦は何をしていたっ⁉️」

艦隊の近くまで敵潜水艦の跳梁を許した事に憤慨する副長。無人艦が鈍いのと潜水艦の怠慢であるに違いないと思う。

リォウ「落ち着け副長。無人艦隊は本来なら実戦に出すのも早すぎなのだ。潜水艦の方も我が空母と同じく乗員達もまだ日も浅く練度は高くない連中だ。対処は可能だ、大目に見てやれ。」

警戒が甘かった事を強く咎めず、むしろ「まだ実証実験と訓練がいるがこの実戦が良いデータ収集と訓練になるから」と大目に見るよう冷静に副長を宥めるリォウ艦長だった。

リォウ「一番近いフリゲート艦607号と610号が対処させろ。」

艦隊前方で警戒に当たっている江凱II型フリゲート艦(無人艦仕様)の607号と610号が陣形を崩して前進し、魚雷に対し迎撃行動に移ろうとする。魚雷に対し舷側を向け87式対潜ロケット発射機(旧ソ連のRBU-1200対潜迫撃砲のコピー)から対魚雷散弾が発射される。海中に着水した対魚雷散弾は海中で弾けてパァーッと散弾を撒き散らし魚雷に当たってボコボコにしたあと爆発する。それとほぼ同時進行的に中国新鋭空母打撃群前衛の海中に潜むこちらも最新鋭原子力潜水艦"商型"の長征13と14の2隻が攻撃してきたQFOP潜水艦隊に向け魚雷を放つ。

 

攻撃型原潜"キング"

発令所

ソナー手「魚雷に迎撃されました。敵潜から魚雷来ます。雷数8、距離6500❗️」

副長「艦長、回避を❗️」

ノーマン・キング「慌てるな副長。」

すかさず回避行動を命じようとする副長にノーマン・キング艦長は「落ち着け」と諭す。それを他所(よそ)にソナー手から「敵魚雷迎撃、成功❗️」と言う。

副長「え...❓いつの間に...❓」

ソナー手「マスカー起動を確認、なんと素早い手際...。」

ノーマン・キング「さすがは私の"弟"だ。」

それは第4潜水戦隊による鮮やかな対魚雷迎撃行動であった。副長が回避行動を命じる前に片付けてしまった。

 

第4潜水戦隊

旗艦 シーウルフ級攻撃型原子力潜水艦 SSN-25 アレキサンダー

発令所

副長「敵魚雷迎撃成功、マスカー始動。敵潜から姿を隠せました艦長。」

ジョン・アレキサンダー・ベイツ大佐(艦長)「皆良くやった。迎撃タイム、久々のレコード更新だぞ。」

シーウルフ級攻撃型原潜"アレキサンダー"艦長"、ジョン・アレキサンダー・ベイツ大佐。ノーマン・キング・ベイツ大佐とは"兄弟"であるが、兄のキングが白い肌の欧米系に対し、弟のアレキサンダーは褐色肌を持つ南米系だ。そう、アレキサンダー艦長は政界の名門として名高いベイツ家に養子縁組で入ったベネズエラ人でキングは"義兄"に当たる。自分を受け入れてくれたベイツ家並びに義兄のキングには多大な感謝と信頼を寄せており、例え血が繋がっていなくてもその連携プレーは米海軍潜水艦部隊の中でもトップクラスだ。そして個艦プレーに於いてもそれは例外ではないという事を先の魚雷迎撃戦にて見せつけた。

アレキサンダー・ベイツ艦長「ウッズ、敵水上艦と潜水艦の動きは❓」

ウッズ(アレキサンダー・ソナー手)「マスカーで探知不能に陥ったのでしょう。追撃してくる様子は見られません。」

副長「どうします艦長❓」

アレキサンダー・ベイツ艦長「目的は果たした。マスカーにこのまま紛れて離脱する。180°回頭、面舵一杯。敵機動部隊と距離を取れ❗️」

任務を終えた第3及び第4潜水戦隊は針路を変え中国空母打撃群から離れていった。

 

中国新鋭空母機動部隊

CDC

副長「ソナー、敵潜はどうなった❓」

ソナー手「マスカーで音を掻き消されました。目標ロスト、味方潜水艦も同じと思われます。」

副長「クソッ、向かってきた事を後悔させてやろうと思ったのだが...❗️」

リォウ「こちらに被害は無かったのだ。無人艦を当初の護衛位置に戻し警戒を継続させよ。」

副長「はっ❗️」

リォウ「(先程の雷撃、なんの為の攻撃だ❓我々を足止めする事か❓いやそれならばすぐに違う方向から雷撃を敢行してきてとおかしくない。16本の魚雷を撃っただけで煙のように去っていった、狙いはなんだ❓)」

「迎撃できたから良し」と副長に言ったリォウ艦長であったが、敵潜の攻撃の意図は何か❓に考えを巡らせていたが「これだ❗️」という答えは出ずモヤモヤするだけだった。しかしその敵の真意は既に敵魚雷が放たれ迎撃された瞬間から始まっていた。話を少し戻そう。無人フリゲート艦2隻の対魚雷弾により破壊されたQFOP潜水艦の魚雷はただ爆散しただけではない。QFOP潜水艦側が発射した魚雷の弾頭には炸薬がない。つまり撃沈を狙ったものではないのだ。魚雷の中には小型の円盤状の物体が無数に搭載されている。これが対魚雷弾により迎撃され魚雷自体が爆散したのと同じくこれが海中に無数にバラ撒かれ海流に乗って中国新鋭空母機動部隊に向かっていく。そして水上艦の艦底部に潜水艦の船体各所にピタッと引っ付く。山東や潜水艦のソナー手は引っ付く際の微弱な音を聞き取りはしたもののノイズと捉えて特に報告する必要性もないと思いそのまま任務を続けてしまった。それが後に仇となることも知らずに...。

 

第3潜水戦隊

旗艦 攻撃型原潜 キング

発令所

ソナー手「艦長、データ来ました。」

少し離れた所から聞き耳を立てていた攻撃型原潜 キングのソナー手がマルチ・スキャニング魚雷の中身の円盤上の物体が貼り付いた敵艦のデータが来たことを艦長に伝える。

キング「よし、深度100につけ通信ブイを上げろ。」

 

QFOP 第1艦隊

旗艦 大鳳

CDC

通信妖精「データきました❗️」

通信妖精より攻撃型原潜"キング"よりマルチ・スキャニング魚雷のデータが来たと報告を受けると、提督は「パネルデスクに回してくれ」と言う。各艦艇の断面図が映し出される。そこには「心音センサー」「サーモグラフィー」等の生命反応の表示が出ている。これがマルチ・スキャニング魚雷の正体だ。円盤状の物体がこれら生命反応を検出する為の機能が組み込まれた装置であり、艦の中にいる生命体すなわち「人間」の様子を探れるという代物なのだ。

多田部「これは...。」

提督「ラヤの予測通りか...。」

しかし旗艦の空母 山東と潜水艦を除く水上艦の生命反応表示は全て「0」を指し示していた。つまり正真正銘の無人の「無人艦」である事、ヒマラヤの予測が的中した事を意味した。

多田部「後でベタとはいかないが褒めてあげないとですね提督❓」

提督「ふっ、そうするとしよう。」

自身の「娘」とも言える擬似艦娘 ヒマラヤ、「父親」として「娘」の仕事ぶりを褒めてあげなければと、提督は微笑んでそう思った。

大鳳「けど提督。相手の殆どが無人艦だと分かったのは良いけど、そこから先これ以上動けない事に変わりはないわ。」

大鳳の言う通りだった。中国艦隊の大半が無人艦だと証明できたは良いが、攻撃/撃沈すれば問題になってしまう。

提督「通信、今のデータとこれまで集めた情報は太平洋艦隊司令部に送ったな❓」

通信妖精「はっ、送信済みであります。」

提督「司令部でも話の通じる人に送った。すぐ返事がくる筈だ大鳳。」

いくら提督が顔が広いからと言ってそんなに早く事を起こしてくれる人がいるのかどうかと大鳳は小首を傾げたが、その答えはすぐにやってきた。

通信妖精「返信来ました。太平洋方面艦隊司令部からです。」

「え、早っ⁉️」と大鳳は口に出さずでも思ったくらいに早かった。通信妖精は通信版を提督の側まで寄って手渡し提督は読む。

提督「攻撃許可が出た。」

大鳳「本当なの⁉️」

提督「ただし、「攻撃対象は無人艦のみとする」との条件付きだ。」

多田部「それなら向こうも人が死ななくて済むますな。」

提督「よぉし、そうと決まれば戦闘配置だ❗️航空隊もスタンバらせろ‼️」

大鳳「了解よ❗️

多田部「アイサ〜アドミラ〜ル♪」

司令部の早急なる対応に感謝しつつ提督は皆に戦闘配置を命じた。




中国艦隊の大半がまさかの無人艦ということが判明❗️タイトルにある「Noman'sFreet」は「無人(地帯)」と「艦隊」を組み合わせた造語です。本編にも書きましたが、現実にはまだ軍艦の無人化は哨戒艇規模の艦艇の試験運用のみで実戦向きの艦艇無人化はまだまだ先の話ですが「経済及び技術力の発展著しい中国がアメリカやロシアよりも先に開発にこぎつけた」って事にしています。リアルにこうなったら恐ろしい事この上ないですね。しかしリォウ艦長曰く「実戦に出るのは早い」みたいでまだAI(人工知能)も未熟でラジコンの様に遠隔操作による制御をしています。
敵が無人艦化どうか探る作戦でかわぐちかいじ先生の作品「沈黙の艦隊」からアレキサンダー兄弟とシーウルフ級2隻が登場です。元々大西洋方面艦隊の所属だった2人ですが、QFOP提督にスカウトされる形でQFOP所属となっています。シーウルフ級2隻(キングとアレキサンダー)はそれぞれ架空の3、4番艦としています(現実のシーウルフ級は3隻のみ)。
マルチ・スキャニング魚雷の機能はゲーム「コールオブデューティ」シリーズの「アドバンスド・ウォーフェア」に登場したスレットグレネードや高調波パルスを元ネタにしています。QFOPは太平洋方面艦隊に属しているとはいえ独立部隊である為この様な特殊な武器/兵器の開発が行われています。
司令部の許可を得て、次回中国新鋭空母機動部隊への反撃にでます❗️


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記録33「疾走する悲しみ」

中国艦隊のほとんどが無人艦だと分かり、国連海軍太平洋司令部より中国艦隊への攻撃が許可され攻勢に転じるQFOP第1艦隊。航空隊がその役割を担う❗️果たして攻撃は成功なるか...❓


QFOP第1艦隊 総旗艦 装甲空母大鳳

ブリーフィングルーム

ビーフェックス1-1「太平洋方面艦隊司令部より中国空母艦隊への攻撃許可が下りた。ただし攻撃対象は空母を取り囲んでいる無人護衛艦群だ。」

太平洋方面艦隊司令部の承認を得て中国新鋭空母機動部隊への攻撃許可を取り付けたQFOP第1艦隊は反攻の準備に取り掛かっていた。艦隊総旗艦であるここ装甲空母 大鳳のブリーフィングルームではパイロット妖精が作戦とその概要を航空隊長から聞き頭に入れていた。他の空母でも同じくだ。

ビーフェックス1-1「南昌型ミサイル巡洋艦、旅洋Ⅲ型ミサイル駆逐艦、江凱Ⅱ型ミサイルフリゲート艦それぞれ4隻ずつの計12隻が攻撃目標となる。」

ホワイトボードには中国新鋭空母機動部隊の輪形陣が書かれており、そこに攻撃目標である護衛艦群に丸をつけそれぞれの艦級の画像をホワイトボードに磁石で貼り付けパイロット達に攻撃目標を誤認しないよう確認させる。

ビーフェックス1-3「"中華イージスクルーザー"に"中華イージスtype.B"、"中華ラファイエットクラス"ですか。」

ビーフェックス1-3が突如立て続けにそれぞれの中国艦をニックネームで呼び始めた。

ビーフェックス1-2「なんだ急にビーフェックス1-3❓」

ビーフェックス1-3「いやこれね、多田部一尉がつけたあだ名なんですよ。」

ビーフェックス1-5「あぁ〜、一尉はアメリカさんみたいに兵器から何から何まであだ名つけますもんねw.」

ビーフェックス1-6「分かりやすくていいですが、コールサインとしては長いですね。」

ビーフェックス1-1「それなら安心しろビーフェックス1-6、これらの無人艦群のコールサインを"ノー・ブラッド"とするそうだ。」

ビーフェックス1-6「"ノー・ブラッド"...なるほど。"血の一滴も通わないメカニズムの結晶"と来ましたか、上手い表現です。」

ビーフェックス1-2「これも一尉の案だそうだ。あの人らしい表現だろ❓」

「ハハハハ」と笑い声がパイロット妖精達から上がると隊長であるビーフェックス1-1は「ゴホン」と咳払いすると笑うのをやめ静かになる。

ビーフェックス1-1「ビーフェックス1-2が言った通り中国無人艦群を"ノー・ブラッド"と呼称、これを無力化する。攻撃しても人は乗っていないからコールサイン通り相手は血は流す事がない訳だ。」

隊長のビーフェックス1-1のコールサインの洒落に隊員達は再び笑みを浮かべる。

ビーフェックス1-4「✋沈めないとしたら攻撃はどこを❓」

ビーフェックス1-1「VLS(垂直発射装置)を狙う。それぞれ前甲板と後部構造物にある。対艦ミサイルをセミアクティブ・ホーミング(ミサイルを発射した機体から誘導の為のレーザーを目標に照射して命中させる方式)で誘導、無力化を図る。」

ビーフェックス1-5「✋もし誤って撃沈してしまったら❓」

ビーフェックス1-1「腕が未熟と心得ろ。今回の相手は深海棲艦のような大戦期の艦艇じゃなくミサイルで武装した現用艦だ。撃ち落とされると覚悟しておかなければならないし、しかも深海のと違って攻撃を誤れば簡単に沈む。」

全員が息を呑んで隊長の話を聞く。損傷を与えるのみで撃沈は避けろという深海棲艦の対処よりも厄介かつデリケートだ。しかも両用砲や対空機関砲/機銃で弾幕を張る深海棲艦と違い、確実に迎撃してくる対空ミサイルが持っているといういう堕とされるかもるしれないという恐怖もあるのだ。

ビーフェックス1-1「だが深海相手に4年も戦ってきた俺達だ。やってみせる。いや、やれるな⁉️」

ビーフェックス隊全妖精「了ッ‼️」

大きく返事をする大鳳航空隊全パイロット妖精達。ブリーフィングを終え即その足で格納庫へと向かう。艦橋のCDC(戦闘指揮センター)にある航空管制と飛行甲板ではそれぞれ攻撃隊発艦に向け妖精達が右往左往としていた。その間にビーフェックス隊隊長機"ビーフェックス1-1"が流れる様な甲板作業員の誘導に従い発艦位置に着く。発艦準備完了の合図を受け取るとビーフェックス1はコックピットから親指を立てて応える。

ビーフェックス1-1「BiFex1-1 Cread For TakeOFF❗️」

エンジンノズルから勢いよくジェット噴流を上げ、ビーフェックス1-1のF-35Bは発艦していった。次のそのまた次の機も何事もなく発艦していく。空母 信濃、軽空母 飛鷹、隼鷹の所属機も続いている。戦闘空母ヒマラヤの所属機は今回も艦隊の直掩だ。

 

装甲空母 大鳳 CDC

航空管制妖精「攻撃隊、高度1000で編隊の構成完了。針路0-1-5へ向かいます。」

提督と大鳳、飛鷹、隼鷹とその乗員と妖精達そしてヒマラヤの直掩機隊は攻撃成功を祈り見送った。

 

QFOP第1艦隊と中国空母機動部隊とのほぼ中間に位置する海域の上空

中国空軍 早期警戒管制機 空警500

レーダー手「ッ❗️機長、敵艦隊に動きあり。」

機長「我らが空母艦隊に知らせてやろう。」

 

中国新鋭空母機動部隊

旗艦 空母 山東

CDC

通信士「警戒飛行中の空警500より入電、「敵艦隊、空母より艦載機発艦を確認。」数は48機❗️」

副長「艦長❗️こちらに攻撃隊が❗️」

早期警戒管制機からの報告に驚くがリォウ艦長はこうなることを予感していたのか「想定の範囲内だ」と余裕そうな顔を見せていた。

リォウ「国連が重い腰を上げたのだ。我らを倒さねばならぬ敵だと認識された。これで向こうは本気で我々を潰しにかかりに来るのだ副長、嬉しいとは思わんか❓」

相手が「同じ人間の乗る艦を攻撃できない」ことに高を括(くく)らずむしろ本気で戦ってくれる事に子供の様に喜びの表情を浮かべるリォウ艦長に副長やCDCにいるクルー達も驚いた表情を隠せはかった。

レーダー手「敵編隊、ミサイル発射を確認❗️総数96...来ますっ‼️」

リォウ「ミサイル巡洋艦107号から110号及びミサイル駆逐艦87、131、156、122号。ミサイルフリゲート607から610号、迎撃せよ。」

旗艦 空母 山東を囲む無人水上戦闘艦群のVLSからもうもうと煙を上げながらHHQ-9(紅旗9艦隊空ミサイル)とHQ-16(紅旗16艦隊空ミサイル)がQFOP航空隊の空対艦ミサイルの迎撃に向かう。

QFOP第1艦隊

旗艦 装甲空母 大鳳

CDC

レーダー妖精「"ノー・ブラッド"全艦、迎撃ミサイルの発射を確認。我が方の空対艦ミサイル群に向かいます。」

大鳳のCDCで状況を見守る艦長 大鳳と提督と多田部そしてクルー達。

提督「(中華製イージスシステムとそれを管制するAIの実力、さぁていかがなものか。)」

多田部「(正直興味は深々だぜ。どこまでやれるんだコピーイージス❓)」

提督と多田部の心中は中国製イージスシステムの実力が如何なものか❓という関心を抱いていた。旅洋Ⅱ/Ⅲ型は本家アメリカ製イージスミサイル駆逐艦 アーレイ・バーク級のコピー艦とされ、艦影が酷似してるだけでなくイージスシステムそのものまでコピーしてるとの情報がある。さらなる発展型の055型も同様のシステムのバージョンアップ版を搭載していると言われている。しかし中国側はそのスペックの開示をしていない為、その実力は未知数であった。今まさにその力を見せてくれるのだから2人が興味を引くのも無理はない。

レーダー妖精「ミサイル交差まで5...4...3...2...1...0...。」

レーダー担当妖精のカウントが終了すると同時に現地ではミサイル同士が衝突し爆発を複数回発生させる。

レーダー妖精「弾着っ❗️」

提督、多田部「(予想以上か中華イージスッ⁉️)」

レーダーディスプレイを見ると敵味方を含むミサイルの反応は全て消失していた。全て撃墜されたのだ。「所詮中国製のコピーなんて」という予想に反して中国艦のイージスシステムはQFOPの空母航空隊の放った対艦ミサイルを全て撃墜してみせた。「これは予想より脅威的では❓」と思わざるを得なかった。

 

QFOP側空母航空隊

大鳳航空隊"ビーフェックス"

第1戦闘攻撃飛行隊

ビーフェックス1-2「隊長❗️全基落とされました❗️」

ビーフェックス1-3「ヒュ〜❗️やりますね〜中華イージス野郎も❗️」

ビーフェックス1-1「今度はそうはいかん、全機二波攻撃スタンバイ❗️」

第一波ミサイル攻撃を塞がれたがビーフェックス隊隊長のビーフェックス1-1は動じず第二波のミサイル攻撃を全機にスタンバらせる。しかし「敵機編隊、一時の方向❗️」と無線が入る。同じく攻撃隊として飛行する装甲空母 信濃の航空隊からだ。

 

同・信濃航空隊"シナノ"

第3攻撃飛行隊

シナノ3-1「シナノ3リーダーよりビーフェックス1リーダー。我が隊が引き受けます❗️攻撃成功を❗️」

そういうとシナノ隊全機は重い93式空対艦ミサイルを投棄し、迎撃に来た敵編隊を迎え撃つべく編隊から離脱する。

 

同・飛鷹航空隊"スカイグ"

第4戦闘攻撃飛行隊

スカイグ4-1「後輩ちゃんがカッコつけちゃってまぁ❗️」

 

同・隼鷹航空隊"ファイグル"

第5攻撃飛行隊

ファイグル5-1「イイじゃないの、そっちも気をつけてね❗️」

ファイグル5-2「隊長❗️敵艦からのミサイルです‼️」

後輩の航空隊の無事を祈ったのも束の間、敵艦からの迎撃ミサイルが飛来する。ロック音アラームが機内のディスプレイから鳴り響きパイロット妖精の隊長機は「ブレイク(散開)❗️※チャフ、フレア❗️」と僚機に伝え皆各自が回避行動を取るが...「ファイグル5-6、LOST❗️」「スカイグ4-4、撃墜❗️」、僚機から味方機撃墜の報せが入るのを聞き自身もいつ撃ち落とされるかという恐怖に操縦桿をグッと握りしめるパイロット妖精たち。

(※レーダー波を我慢するアルミ箔とネタ誘導ミサイルを欺瞞する偽の熱球)

中国新鋭空母機動部隊

旗艦 空母 山東

CDC

副長「艦長、敵編隊は我が方の護衛艦のみを狙って攻撃しています❗️どういうことでしょう❓」

リォウ「こちらの護衛艦を全て叩き。この"山東"を丸裸にしようとしているのだよ。」

冷静に分析してるリォウ艦長だが、その声には少し怒気が篭っているのを副長やその場にいるCDCのクルーも肌にピリリと感じ取る。

リォウ「この艦に白旗を上げさせるつもりか...ッ❗️」

次の瞬間、艦長は「くわっ」とした顔をして拳を椅子の手元をドンッ❗️叩いて言い放つ。

リォウ「各国の寄せ集めの国連のさらなる寄せ集めでできた海軍の一個艦隊如きが❗️我が中国の※天子(てんし)の様な振る舞いを‼️」

(※中国や日本で用いられた君主の称号。天命を受けて天下を治める者の意。)

滅多な事では声を荒げないリォウ艦長が怒りを露わにしてる事に副長とCDCのクルー達は汗を垂れ流して少しの間沈黙した。

リォウ「一機たりとも生かして返すな❗️このリォウの機動部隊を舐めたツケは死で払わせるんだ‼️」

怒り心頭なリォウ艦長は迫るQFOP空母航空隊を全滅させろと命じたその時だった。空母 山東の左翼を守る055型(南昌型)ミサイル巡洋艦の一隻に突如水柱が上がった。

山東CDCソナー手「109号、被弾❗️雷撃の模様‼️」

リォウ「なんだと⁉️」

 

QFOP第1艦隊

第1戦闘空母打撃群

汎用駆逐艦 DD-696 モーニング・グローリー

CIC

ソナー手「水中で爆発音を聴知❗️敵艦の一隻のスクリューに命中を確認、停止しました。」

艦長「潜水艦による雷撃か⁉️」

ソナー手「はい、他の艦も次々と被弾していきます❗️」

モーニング・グローリー(擬似艦娘)「ん⁉️」

突然の敵の被雷に「何が起きた」と思わずにはいられない艦長とCICクルーだが、擬似艦娘のモーニング・グローリーは何かを感じ取り艦長は「どうしたモグ❓」と尋ねる。

モーニング・グローリー(擬似艦娘)「音楽が...聴こえる。」

同・総旗艦 装甲空母 大鳳

CDC

大鳳「味方かしら❓それとも敵❓」

提督「分からん、深海棲艦に音楽が理解できてるかは分からんし仮に味方だとしても静かに聞き耳を立ててる潜水艦が自分の存在をバラす様な行為をするとは考えられない。」

モーニング・グローリーからの報告をにわかに信じられない大鳳と提督、提督の言う通り「海の忍者」たる潜水艦がそんな良く言えば大胆、悪く言えば愚策としか思えない様な手段をとる説明がつかない。

多田部「深海が「題◯のない音楽会」を知ってたらそれはそれで面白いけどな。ソナー、ヘッドセットを貸して。」

敵味方不明の存在にあっても多田部のジョークは健在であった。自分の耳で聴きたいとソナー妖精にヘッドセットを貸す様言い掛けて耳を澄ます。

多田部「こいつはマジですよ提督、大鳳。」

提督「何が聴こえる❓」

多田部「モーツァルトの交響曲第40番「疾走する悲しみ」だ。」

曲名を聞いた提督はその場で固まった。「提督、どうかしたの❓」と尋ねる大鳳に「なんでもないよ」と返す。だが心中は違っている。提督はどこか覚えがあるのだ。モーツァルトのその曲を愛する知り合いの1人の顔が頭に浮かぶが今は作戦に集中するのが先だしそっちのが大事だから「まさかな偶然だ」と自分に言い聞かせた。

QFOP側空母航空隊

ビーフェックス1-1「敵の動きが止まった❓チャンスだ❗️全機第二次攻撃‼️」

この機を逃すまいとQFOP合同空母航空隊は一斉に第二次攻撃の対艦ミサイルを全弾発射する。被弾した中国無人艦群は謎の潜水艦による攻撃の混乱の為に迎撃が遅れCIWS(近接防御火器)が弾幕を張るも時既に遅しで対艦ミサイルはVLSに次々と命中していった。被弾による火災が艦内に広がっていきAIはさらに混乱、ダメージコントロールで消火用のハロンガスを吹き掛けるも消火し切れず火の手が次から次へと違う箇所へ広がっていき文字通り"手の施し用がない"状態だ。最も無人艦なので最初から人の手など存在しないのだが...。

 

中国新鋭空母機動部隊

旗艦 空母 山東

CDC

AIモニター担当官「AIシステムが混乱をきたしています❗️ミサイル巡洋艦107から110号、ミサイル駆逐艦87、131、156、122号、ミサイルフリゲート艦607から610号全艦戦闘不能‼️」

「クソッ❗️」椅子の手元を叩くリォウ艦長。瞬く間に護衛の無人水上艦群は行動及び戦闘不能の浮かぶ火だるま屑鉄スクラップと化してしまった。

副長「艦長、もはや我が艦は裸同然...。」

リォウ「分かっている❗️...モニター官、護衛艦全てのAI稼働データを回収しその後自沈プログラムを送信しろ。」

AIモニター担当官「はっ。」

リォウ「現時刻を以って作戦を終了する。反転180°、基地に帰投する。(覚えているがいい、今度会ったときは...❗️)」

復讐(リベンジ)を誓い、リォウ艦長は作戦の中止と基地への帰投を命じた。

 

???潜水艦

発令所

???ソナー手「敵水上艦群、艦内に注水音。自沈のもよう。旗艦の空母は反転、基地への帰投コースに。」

海中で音楽(モーツァルト)を響かせ中国新鋭空母機動部隊を翻弄した謎の潜水艦は海上(うえ)の様子を確認していた。

???艦長「戦闘配置解除、諸君見事な働きだった。」

???副長「やりましたね艦長。」

???艦長「あぁ、我々の技量の前では"張子の虎"の艦隊など相手にならん。近年の中国とその軍事分野の急成長振りは目を見張るものがあるが、中身が伴っていなければ所詮この程度だ。」

中国に対する痛烈かつ情け容赦のない評価を下す艦長。中国海軍は近年に外洋海軍となって日が浅く乗員の練度も他国に比べれば低い、さらに国連に与せず深海棲艦との独自戦線を開いた事により艦のみならず人的喪失もあってただでさえ低い練度の更なる低下を招いている。それを解決する為の無人艦なのだろうが、「もはや人そのものが乗っておらず成熟しているとは言い難い現代のAI技術で操られる艦などに頼っているようでは中国も堕ちたものだ」という意味もこの台詞に込められている事を副長を始め他の乗員達も理解している。

???艦長「我々の任務は終わった。基地に帰投する。」

???「了解、反転180°。針路を佐世保に。」

 

QFOP 第1艦隊

旗艦 装甲空母 大鳳

CDC

レーダー妖精「中国艦隊旗艦の空母、反転します。"ノー・ブラッド"群、自沈していきます。」

多田部「引き返したみたいですね。」

提督「相手が利口で良かったよ。」

さすがに空母単艦で挑んでくるほど相手も愚かではなかった事に安堵する提督達。

提督「通信、音楽を流してた潜水艦はどうなった❓」

通信妖精「各艦からの報告なし、現在探知した艦はいません。恐らく既に海域を離れたと思われます。」

提督「そうか、ソナーは引き続き警戒を続けるように。」

音楽を掛けながら敵を動揺させこちらを助けるような行動、見事にスクリューのみを破壊し足を奪って去って行った。嵐の様にサッと現れパッと消える。何者か今は分からなかったが、一切無駄のない戦闘行動は見事としか言いようがないと提督は思うのだった。

提督「航空隊は❓」

大鳳「先程帰投しました。未帰還...12...。」

攻撃成功の代償が大鳳より知らされる。提督の顔を見やる多田部。提督は瞼を閉じ黙祷すると「機の補給とパイロットには休養を、報告は後で聞こう」と答えた。

多田部「やっぱり無傷ではいかなかったですね。」

提督「ビーフェックスや他の隊の皆も覚悟しての事だ。良くやってくれたよ。」

大鳳「そうね...。」

被害が少ない...いやそれ以前に出ないに越した事はないが、そうもいかないのが戦争で戦場だ。過去に※ほぼワンサイドゲームで終わった戦闘はあるがこれも完全に損害が皆無だった訳ではない(※例としてマリアナ沖海戦(1944年6月19日))。皆しばらく先の戦闘で戦死した妖精達の事に思いにふける。そして少し経って提督が口を開いた。

提督「あの曲の通りだな。」

大鳳「え❓」

提督「こうして深海棲艦という"人類共通の敵"という認識で通って相手をこうして国連の名の下に人類が力を合わせて戦ってるのに、それでも人類同士で争ってる。なんだか少し悲しいと思わない❓」

提督が思いを口にすると皆は言い切れぬ表情を浮かべて静まり返った。そしてQFOP第1艦隊は針路を変えて本来の作戦に戻ったのだった。




中国新鋭空母機動部隊との戦闘に決着が着きました。戦闘やセリフ/会話の大部分は「空母いぶき」原作第10巻をベースにしつつ、「ザ・ラストシップ」(旅洋Ⅲ型の艦番号の一部がシーズン3登場艦と同じなのと旅洋Ⅲ型がアーレイ・バーク級のコピー艦という設定)、「沈黙の艦隊」(「失踪する悲しみ」これだけでもうファンなら誰の事すぐ分かっちゃってますよねw.)、「機動戦士ガンダム」(提督の最後のセリフはワッケイン司令の「寒い時代だと思わんか❓」が元ネタ)、「宇宙戦艦ヤマト2」(「血の一滴も通わないメカニズムの結晶)、「宇宙戦艦ヤマト2199」(QFOP航空隊の損害機数が七色星団会戦でのヤマト航空隊と同じ)ネタをぶっ込んでいます。今回は敗北したリォウ艦長ですが、いつかまたリベンジしてきそうですね。QFOP側も謎の潜水艦による手助けがあったとはいえパイロット妖精12名戦死という結果となりました。最後の提督の台詞曰く「人類の共通の敵と戦ってる最中でも人間同士の戦いは起こる」というのは所謂「SFあるある」ですが、現実でも実際にこうなりそうなんですからなんともまぁという気持ちになります。


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記録34「作戦は終局へ」

中国海軍新鋭空母機動部隊との戦闘は思わぬ助けを得てQFOP第1艦隊の勝利で終わった。QFOP艦隊は本来の作戦に戻る。いよいよクライマックスです。


西沙諸島沖

QFOP第2艦隊 第2空母戦隊 空母翔鶴(艦隊総旗艦兼戦隊旗艦)

CDC(戦闘指揮センター)

翔鶴「飛行場姫はまだ墜ちないのッ⁉️」

レーダー妖精「はっ❗️航空隊によれば対空砲火が激しく未だ頑強な抵抗を見せているとの事です❗️」

提督達のQFOP第1艦隊が中国新鋭空母機動部隊と交戦するのと時を同じくして空母 翔鶴が率いる第2艦隊は西沙諸島の攻略を開始していた。序盤の航空及びバスター・スター/トマホーク巡航ミサイルの攻撃で駐留していた深海棲艦艦隊に壊滅的な被害を与える事に成功したものの、飛行場姫の障壁を破るには至っておらず。司令部と周りの対空火器は未だ沈黙せずであった。

レーダー妖精「第三次攻撃隊、攻撃終了し帰投。第四次攻撃隊、攻撃準備完了とのこと。」

翔鶴「すぐに発進させて❗️通信、瑞鶴にも伝えなさい❗️」

レーダー/通信妖精「了❗️」

翔鶴は焦っていた。自分達の攻略が遅れ、第1や第3艦隊が被害を被るかもしれないからだ。

通信妖精「艦長、戦艦金剛より入電です。」

翔鶴「回線繋いで。」

金剛(通信)「ヘーイショーカーク❗️まもなく艦砲射撃圏内に入るネー❗️引き続き制空権の確保と航空攻撃をよろしく頼みマース‼️」

翔鶴「分かりました。こちらこそ攻撃成功を❗️(なんとか航空攻撃のみでカタをつけたかったけど、やむを得ないわね。金剛さん達、仕上げは頼みましたよ。)」

地上への艦砲射撃は有効だが敵の勢力圏内に近づく事になり、陸上砲台による攻撃による被弾の危険性も高まる。それをできれば避けたかった翔鶴だったのだが、飛行場姫の防御力は予想に反して強靭でありこれから先の戦闘の事も考えると艦載機の燃料、弾薬はこれ以上は消費できない。航空攻撃のみで撃ち崩す事はもはや困難であった。ならば今自分にできることは金剛をはじめとする艦砲射撃組が無事西沙諸島に着くよう空の安全を維持する事だ。そしてそれができるのは自分も含め妹の瑞鶴だと自負している。

翔鶴「総旗艦 翔鶴より瑞鶴へ、これから対空装備を施した機は直ちに発艦させ対地装備機は待機。補給中の機体は完了次第対空装備を多めに搭載して❗️」

 

同艦隊 同戦隊 空母 瑞鶴

CDC

瑞鶴「りょ、了解だよ翔鶴姉❗️」

姉の気迫ある指令に「さすが❗️」と嬉しく頼りに思いつつもその指示に焦りと心配を感じとる妹の瑞鶴。姉妹だからか他の者からすればそうは感じないだろうが、姉の翔鶴はそう思っていると感じ取る事ができる。

 

空母 翔鶴 CDC

翔鶴「戦闘空母 アルプスは引き続きこちらの制空権を確保維持、龍鳳さんと龍驤さんは対潜ヘリによる周辺の対潜/対水上警戒を厳に❗️」

 

同艦隊 第2戦闘空母打撃群

旗艦 戦闘空母 CVB-862 アルプス

CIC(戦闘情報センター)

アルム艦長「アルプス了解。ルピィ、航空隊の現況報告は管制官と絶えず確認し続けろ。」

アルプス(擬似艦娘)「はーい♪」

 

同艦隊 第5空母戦隊

軽空母 龍驤

CDC

龍驤「了解やで❗️龍鳳❗️うちらで網を張るんや❗️物騒な魚が来ぃへんようにな❗️」

 

同戦隊

軽空母 龍鳳

CDC

龍鳳「りょ、了解です ヘリに対潜装備を忘れないで❗️」

翔鶴の指揮からの指揮の下、戦闘空母アルプスは艦隊の制空権の確保、軽空母 龍驤、龍鳳は艦隊周辺の対潜及び対水上警戒と各個に動き始める空母群たち。

一方の金剛達艦砲射撃組は西沙諸島に近づきつつあった。翔鶴と瑞鶴の航空隊の攻撃により敵艦隊は壊滅していた為に妨害は無く艦隊は順調に進んでいた。

 

第2戦艦戦隊

旗艦 金剛型戦艦 金剛

CIC

レーダー手「西沙諸島に接近、距離30,000。まもなく主砲射程内です❗️」

金剛「比叡❗️榛名❗️霧島❗️先手必勝❗️最大射程ギリギリでも当ててやるデース‼️」

 

同戦隊 同戦艦 比叡

CIC

比叡「はいお姉様❗️気合い❗️入れて❗️撃ちます‼️」

 

同戦隊 同戦艦 榛名

CIC

榛名「はい❗️榛名❗️全力で参ります‼️」

 

同戦隊 同戦艦 霧島

CIC

霧島「了解ですお姉様。さぁ、砲撃戦。開始するわよー❗️」

 

長女である金剛の号令に妹達3人がそれぞれ答えると金剛型4隻は梯形陣を敷き、第1、第2主砲の発射準備を整える。砲弾は対空/対地兼用の新三式弾だ。

 

戦艦 金剛

CIC

主砲担当妖精「新三色弾、装填完了。」

通信妖精「比叡、榛名、霧島の3艦も完了との報。」

金剛「私も含めて姉妹全艦で統制射撃を行うデース❗️」

 

(各々の艦のCIC)

比叡、榛名、霧島「了解。そちらの指揮の下、統制射撃を行う❗️」

金剛も含め姉妹達の砲撃準備が完了し、戦隊旗艦であり長女である金剛の指揮の下で統制砲撃戦を行う❗️と返信する姉妹3人。各々のCICでビーッ❗️とサイレンが鳴り響く。

 

戦艦 金剛

CIC

金剛「バァァァニングゥゥゥラアァァァブ‼️」

「攻撃」と「提督への愛」である口癖を力強く叫ぶと同時に金剛型戦艦4隻の第1、第2主砲が一斉に火を噴く。西沙諸島の飛行場姫へ目掛けて飛来し障壁に激突する新三式弾。全弾命中、最大射程かつ最大戦速でとさすがの練度だ。

レーダー妖精「全弾命中。」

金剛「お見事デース❗️このまま射撃を続行しつつ取り舵30°を取りマァス❗️」

砲術妖精を褒めてすぐさま次の行動を指示する金剛。取り舵を取り全砲門を開ける態勢を取るのだ。少し経って金剛艦隊は取り舵を取り金剛型各艦の3、4番砲塔も西沙諸島の飛行場姫に向け指向し砲撃を始める。先程の様な当たるかどうか怪しい最大射程ギリギリの射撃ではなく今度は確実に当てていく為に距離を詰めて撃ちまくる。だが...。

ドォンッ❗️と爆発音がする。金剛型4隻にそれぞれいる見張の妖精達は爆発音した方向を一斉に見やる。後方に続いている第4巡洋駆逐戦隊旗艦の航空巡洋艦 鈴谷だ。

 

第4巡洋駆逐戦隊

旗艦 最上型重(航空)巡洋艦 鈴谷

CIC

ダメコン妖精「中央部に被弾❗️右舷両用砲群大破❗️」

鈴谷「痛いし〜❗️ダメコン早く直しに行ってよ〜❗️火災の鎮火も忘れずにね〜❗️」

艦体中央に被弾した航巡 鈴谷は素早くダメコンを行うよう妖精達に命じる。しかし敵はそんな手傷を負ったばかりの鈴谷をそのままにしておくつもりはない様だ。

見張妖精「砲台小鬼2基、こちらに指向❗️」

「うわっ❗️うそマジさらにダメ押し⁉️」と思い更なる被弾を覚悟し衝撃に備えるよう言おうとした矢先、鈴谷に砲門を向けていた砲台小鬼が2基とも破壊される。鈴谷の後続に位置し姉妹艦である航巡 熊野による射撃だった。

 

同戦隊 同重巡(航巡) 熊野

CIC

レーダー妖精「命中、ターゲットを破壊。」

熊野「鈴谷にこれ以上手出しさせませんわ。」

鈴谷(通信)「サンキュー熊野、今のヤバかったよマジで。」

熊野「礼なら無用ですわ。それより砲台を黙らせになる方が先でしてよ。」

鈴谷(通信)「おっと、そうだった。でも右舷側の両用砲二つともやられちゃったよ〜 」

熊野「鈴谷は金剛さん達に続いて飛行場姫を、砲台小鬼は私と能代、酒匂、夕雲、風雲が引き受けますわ❗️よろしくて皆さん⁉️」

4隻から「了解❗️」の返答が熊野に返る。

 

戦艦 金剛

CIC

通信妖精「航巡 熊野より入電、「砲台小鬼はこちらが全力で引き受けます。引き続き飛行場姫への艦砲射撃を続行されたしですわ」です。」

金剛「「了解」と伝えてくだサイ❗️さぁさらに畳み掛けるデース‼️」

金剛は砲術妖精に檄を飛ばす。熊野達が砲台小鬼を引きつけていれば邪魔はいない。思い切り飛行場姫への攻撃に集中できる。そして...。

キンッ❗️ドカパリーンッ‼️と遂にその音は聞こえた。金剛の放った新三式弾の内の一発が飛行場姫の障壁を破った音だ。

レーダー妖精「飛行場姫の障壁の破壊を確認❗️我が艦の射撃と思われます❗️」

金剛「Oh❗️やりましたネー❗️」

比叡(通信)「流石ですお姉様❗️」

榛名(通信)「やりましたね❗️」

霧島「航空隊もまもなく到着です。計算通りならこのまま押せば撃滅可能です❗️」

金剛「では最後の仕上げデース❗️全砲門、ファイアァァァ‼️」

金剛は航空隊がトドメを刺すのを援護する為に更なる追い討ちを掛ける。金剛に続き比叡、榛名、霧島も新三式弾を放つ。そして着弾間近に迫ったのと時を同じくナイスなタイミングで翔鶴達から飛び立った航空隊が到着し対地ミサイルを放った。ほぼ同時に着弾し大きな火の手が飛行場姫の司令部に立ち上り大きなキノコ雲へと昇華する。司令部は陥落、飛行場姫は遂に沈黙した。

 

空母 翔鶴

CDC

通信妖精「戦艦金剛より入電、「飛行場姫、陥落。繰り返す、飛行場姫の陥落を確認」。」

翔鶴のCDC内で妖精達は歓声を上げるが、翔鶴は「浮かれるのは後にして❗️」と叱責しそれぞれの職務に妖精達は戻る。

翔鶴「第3艦隊に連絡を。」

 

オーストラリア アラフラ海

QFOP第3艦隊

第3戦艦戦隊

旗艦 航空戦艦 伊勢

CIC

通信妖精「第2艦隊旗艦"翔鶴"より入電、「我、西沙諸島の飛行場姫を陥落させたし。突入されたし」です。」

伊勢「よし間に合ったね。これより突入する❗️後続の第5巡駆戦に通達して❗️」

 

同艦隊 第5巡洋駆逐戦隊

旗艦 航空巡洋艦 利根

CIC

利根「ようやく吾輩達の出番か❗️待ちかねたぞ❗️筑摩❗️皆の衆❗️存分に暴れるぞ‼️」

敵陣への突入をずっと待ち侘びていた利根は威勢良く戦隊に属する艦全てに命ずる。QFOP第1艦隊が尖閣諸島沖を制圧、第2艦隊が西沙諸島沖を制圧し東シナ及び南シナ海それぞれで脅威となっていた深海棲艦の泊地を陥落させた事により深海棲艦側の混乱は極みに達した。そこにオーストラリア アラフラ海側こらの第3艦隊の突入により逃げ道は断たれ彼らは海に潜り姿を消した。

 

台湾沖と先島諸島沖の中間海域

QFOP第1艦隊 第1空母戦隊

装甲空母 大鳳(艦隊総旗艦兼戦隊旗艦)

CDC

大鳳「提督、作戦海域の深海棲艦の行動が鎮静化しつつあるわ。作戦成功ね。」

提督「そうだな。」

作戦は成功したのだが、提督の声には達成の喜びを感じられない事を大鳳は感じる。作戦は成功して終わりではない。艦隊と艦の状況の確認や鎮静化しつつあっても未だ脅威が存在する為にその対処もしなければならないので一切油断できないのだ。

提督「大鳳。」

大鳳「は、はい。」

提督「皆のお陰で今回は作戦を成功させる事ができたけど奴らはまたきっと、いや必ず戻ってくるよ。それに備える為にやる事は山程あるからね。」

大鳳「...はい。」

作戦の先を既にこの時点で見通している提督に敬意を払いつつ大鳳は静かに答える。

提督「まぁそれは後からやるとして、今のこのバタバタが終わったら基地に戻ってゆっくりしよう。皆にはじっくり休んでもらいたいしね。」

大鳳「はい、提督♪」

ようやく少し笑みを見せた提督に大鳳も笑顔で応えるのだった。




これにて第1章は完結です。「なんかえらくあっさりとした終わり方だな」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、実際の戦闘とその終わりはフィクションみたくドラマチックかつ派手ではないのでこれくらいがリアルだしドラマチックな終わり方はこの先幾らでも書けるので今回はこう締め括らせていただきました。元々スマホのメモアプリで書きスクショし挙げていたものをここハーメルンにて掲載する際に大幅に加筆・修正を加えてリメイクし連載する事にしてこの第1章のリメイクだけで約1年と2ヶ月も掛かってしまいました。既に第2章は完結済み、第3章は途中掛けの状態なので早くこれらもリメイクしないとです。ではまた次章でお会いしましょう。


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登場人物紹介(その1)

Twitterで見てくれてるフォロワーさんから「登場人物が多いから纏めてくれると助かります。」という事で書きます。


QFOP(太平洋の女王の砦)

提督

本作の総合的な主人公。海軍中将。本名不詳で先の大戦からの転生者だが経歴に謎が多い。「現世改装」の生みの親として多くの艦娘と海軍関係者から絶大な信頼を得ている。

 

多田部 拓海(おおたべ たくみ)

特務一尉(二個上の二佐扱い)。提督とは同じ転生者で同期の桜で提督と同じく謎の多き眼鏡の人物。ざっくばらんで好奇心も旺盛。軍事のみならず映画やアニメ、サブカルチャーなどの知識も豊富な変人気質。QFOP創設時からのメンバーで様々な業務をこなした事から「よろず一尉」とあだ名されている。モデルは作者自身。

 

マッコイ

漫画/アニメ作品「エリア88」からの登場人物。中東のブラックマーケットで武器商人をしていた所を提督にスカウトされ現在ではQFOPの兵站面を支えている。

 

オセロット

ゲーム「メタルギアソリッド」シリーズからの登場人物(ここでは「V」ファントム・ペイン時の姿のが出演)。元CIAのエージェントのロシア人。スペツナズにいた事もあり戦闘や情報収集、兵士への尋問及び拷問のプロフェッショナル。現在はQFOP諜報班に所属している。

 

ジマーサルダート三姉妹(長女:アディータ/次女:ドゥーヴァ/三女:トリィー)

艦娘の身体能力の高さに目をつけたロシアの科学者達が暁型駆逐艦 響(ヴェールヌイ)の遺伝子情報を基にクローンを作る「ジマーサルダート(英訳:Winter Soldier)計画」にて生み出されたクローン艦娘の三姉妹。響と容姿も性格も瓜二つな外見をしているが、左腕には機械の儀手腕が施され、三姉妹の方は成長を促進したせいか肉体年齢が高い(響(ヴェールヌイ)を含む暁型姉妹が12〜13歳相当なのに対しジマーサルダート三姉妹は16〜17歳相当)。彼女達が生み出された当初は名前がなく、提督が保護した際にロシア語での数字の読み方をアレンジしてそれぞれ名づけた。提督を"アチェーツ(ロシア語で"父親")と呼び慕っている。見分けがつき易い様に帽子(響もといヴェールヌイがしてる物と同じ)にそれぞれ数字が書かれている。

 

滝澤 美優(たきざわ みゆ)

戦闘空母ヒマラヤ艦長。1等海佐。海上自衛隊から引き抜かれてQFOPに移籍。真面目で冷静に事を進めるがやや融通が利かない面もある。名前の元ネタは「機動戦士ガンダム外伝 宇宙、閃光の果てに...」に登場するミユ・タキザワ。

 

倉田 貴輝(くらた たかき)

戦闘空母ヒマラヤ戦術行動士官。1等海尉。提督と多田部と同じ転生者で同期の桜。常に的確な指揮を示す戦術士。モデルは作者の友人。

 

坂本美緒(さかもと みお)

アニメ「ストライクウィッチーズ」からの登場人物。3等海佐。戦闘空母ヒマラヤ所属の航空隊では第1戦闘攻撃飛行隊"a(アルファ)"を指揮している。コールサインは"アルファ1"

 

宮藤芳佳(みやふじ よしか)

同上。3等海尉。パイロット兼医療班所属。コールサインは"アルファ2"。

 

雁淵(かりぶち)ひかり

アニメ「ブレイブウィッチーズ」からの登場人物。長時間かつどんな天候でもパフォーマンスが低下しない体力持ちのパイロット。「やってみなくちゃ分からない❗️」が口癖。コールサインは"アルファ3"。

 

アルム

戦闘空母アルプス艦長。元ネタは「アルプスの少女 ハイジ」のアルムおんじから。

 

ヒマラヤ

戦闘空母ヒマラヤを制御/補助しているAI(人工知能)システム「擬似艦娘」の1人。銀髪の滑らかなロングヘアーと灰色の瞳が目を惹く美少女。擬似艦娘のプロトタイプ的存在で無表情で機械的に淡々と話すが、艦長の滝澤らとの触れ合いで少しずつ人間っぽくなっている。元ネタは「フレームアームズ・ガール」のアーキテクト。

 

ブルビネラ

ミサイル巡洋艦ブルビネラの擬似艦娘。

 

ベロニカ

ミサイル巡洋艦ベロニカの擬似艦娘。

 

モーニング・グローリー

汎用駆逐艦モーニング・グローリーの擬似艦娘。

 

ビーナス・ベルト

汎用駆逐艦ビーナス・ベルトの擬似艦娘。

 

カムチャッカ

通常動力型潜水艦カムチャッカの擬似艦娘。

 

トム・チャンドラー

海外ドラマ「ザ・ラストシップ」からの登場人物。アメリカ海軍 アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦 DDG-151 ネイサン・ジェームズ艦長。階級は中佐。

 

カーラ・フォスター

同上。ミサイル駆逐艦 ネイサン・ジェームズ戦術行動士官。階級は大尉。

 

カール・ニシオカ

同上。ミサイル駆逐艦 ネイサン・ジェームズ 火器管制担当。階級は一等兵曹。

 

ノーマン・キング・ベイツ

アニメ、漫画「沈黙の艦隊」からの登場人物。シーウルフ級攻撃型原潜"キング"艦長。階級は大佐。

 

ジョン・アレキサンダー・ベイツ

アニメ、漫画「沈黙の艦隊」からの登場人物。シーウルフ級攻撃型原潜"アレキサンダー"艦長。階級は少将。

 

アレクサンドラ・アレクセイ

ロシア海軍大佐。キーロフ級原子力ミサイル巡洋艦 アドミラル・ウシャコフ艦長。別名「ウシャコフの女帝」。アンジェリカは双子の妹。

 

アンジェリカ・アレクセイ

ロシア海軍大佐。キーロフ級原子力ミサイル巡洋艦 アドミラル・ラーザリェフ艦長。別名「ラーザリェフの天使」。アレクサンドラは双子の姉。

 

ヨハン・バローン・マーリニキィ

ロシア海軍大佐。重航空巡洋艦 ミンスク艦長。アレクセイ姉妹とは海軍学校での同期。別名「ミンスクの小貴族」。

 

日本

高野五十六

アニメ、漫画「紺碧の艦隊」からの登場人物。史実で言う山本五十六連合艦隊司令長官その人。

 

米内光政(よない みつまさ)

大日本帝国時代に海軍大臣を務めた"海軍の重鎮"。転生し現在は内閣総理大臣となっている。

 

垂水慶一郎(たるみ けいいちろう)

漫画「空母いぶき」からの登場人物。米内内閣の官房長官をしている。

 

アメリカ

EVA

「メタルギアソリッド」シリーズからの登場人物(「3」スネークイーター時)。CIA所属の女スパイ。中国軍部に潜入しその中の"国連参入派"のスパイとして"独自交戦派"を調査している。

 

中国

チャン・ウェイ/張偉

ゲーム「BF(バトルフィールド)」シリーズの「BF4」からの登場人物。中華人民解放軍海軍上将(大将)。密かに深海棲艦と繋がりを持ち、各海軍基地地下にある秘密ドックを用いた艦隊増強計画を指揮している。

 

馬 大奇(マー・ターチー)

漫画「空母いぶき」からの登場人物。海軍駐在武官。総参謀部第2部第6処所属。「中国海軍の権益拡大」の野望を抱いている。階級は大校(大佐)。

 

リォウ・チャンロン

漫画「空母いぶき」からの登場人物。空母"山東"艦長。海軍大校。自身の指揮する新鋭空母打撃群に多大なる自信を持つ野心家。




「艦娘が書いてないじゃん❗️」と思われた方もいると思いますが、群像劇ゆえになんせ登場人数が多いのと「提督(プレイヤー)さん達にわざわざ書く必要性がない」のと「そうじゃない人は調べれば早いから」という事ですので書いてません。ですが、他作品(アニメ、映画、ゲーム、小説)に登場する艦の艦娘化やここでのオリジナル艦娘は掲載していきます。
本作品のオリジナルキャラクターとアニメ、漫画、ゲームに絞って書くと割と少ないのが書いてて分かりました。


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用語解説その1

「艦娘」

ありし日の艦艇の魂を持つ少女達の総称。その魂の由来となる艦の艦長として現代に転生してきた。深海棲艦と互角に戦える存在として各国海軍の対深海棲艦戦力の中核を担っている。

 

「妖精」

艦娘と共に転生してきた艦娘の艦艇の乗員達の総称。身長は三等身程と小柄なのが特徴。

 

「転生者」

主に第二次大戦で活躍した軍人等が生まれ変わって現代に転生してきた者達の総称。

 

「深海棲艦」

海の底から突如として現れた正体不明の異形の存在。2013年にその姿が確認された(艦娘と同じ時期)。大戦中に戦没した艦艇群の姿を模しているが、時折戦没していない艦の姿を取る事もある。主に「イロハ級」と呼ばれる通常型、「鬼・姫級」と呼ばれる上位種、「陸上型」と呼ばれる司令部や砲台などを含む陸上施設型などがいる。「normal」「elite」「flagship」と呼ばれる形態がありそれぞれ白、赤、黄と艦の一部が発光している。

 

「現世改装」

「艦娘艦艇を現代戦に対応できるようにする為の近代化改装」の総称。QFOP提督が提案したこの改装案により艦娘艦艇は現用艦と共に作戦行動を行えるようになっただけでなく性能及び生存性も向上した。

 

「国連軍」

深海棲艦に対抗すべく国際連合加盟の国々の戦力を統合した多国籍軍。それぞれ「国連治安維持陸軍(UNPMA)」「国連平和維持海軍(UNPKN)」「国連戦略戦術空軍(UNSTAF)」の三軍で構成されているが、各国の戦力を急遽結集した為に国毎の装備や戦術、戦略等の違いで連携が取れてるとは言い難く、更なる軍の統合化が検討されている。

 

「QFOP」

「Queen Fort Of Pasific:太平洋の女王の砦」を意味する第81独立機動艦隊の基地。太平洋上にあるが正確な場所は極秘で海軍のトップのほんの一部の者にしか知られていない。

 

「第81独立機動艦隊」

国連平和維持海軍 太平洋方面艦隊所属の独立艦隊。QFOPを母港/基地としており日本、アメリカ、ロシアの艦艇及び艦娘を中心として艦隊が組まれている。如何なる国家の指揮下にも属さない国連直属の非公開艦隊の為、その詳細はQFOP基地と同じく機密レベルの存在。

 

「トライデント作戦」

東南アジア方面海域の解放を目指す大規模作戦。三俣の槍である三叉槍(さんさそう:トライデント)に因み東シナ海、フィリピン、ソロモン諸島の三方面から侵攻するという所からそう名付けられた。

 

「ジマー・サルダート計画」

駆逐艦娘"響"の遺伝子情報を基にクローン艦娘を作る計画。ロシアの科学者達が極秘裏に進められていたが、クローン研究は禁止されていた為に国連の調査が入り計画は頓挫した。しかし3体は完成しており、QFOP提督が引き取ってそれぞれ"アディータ"、"ドゥーヴァ"、"トリィー"と名付けた。

 

「擬似艦娘」

※戦闘空母打撃群(※後述)に属する艦艇に搭載されている高性能自立型サポートAIプログラムで艦内制御や管理、火器管制も行える。ホログラムの立体映像で姿を現せる。容姿や性格は艦長の好みに合わせてカスタマイズできる。

 

「戦闘空母打撃群」

ヒマラヤ級戦闘航空母艦を中心とする空母艦隊。戦闘空母を旗艦としミサイル巡洋艦、汎用駆逐艦、潜水艦で反省されている。QFOP提督が提案する対深海棲艦及び新しい時代向けの空母打撃群の構想として世界中から注目されている。

 

「中国籍タンカー連続失踪事件」

2015年に起きた中国籍のタンカーが太平洋 東シナ海で次々と失踪するも数日後に何事もなかったように現れたという事件。実は中国海軍上層部が深海棲艦と通じているおりタンカーは密かに深海棲艦と接触して密かに資源を受け取りその資源で中国海軍各基地の地下秘密ドックの艦艇達を建造していた事が判明した。




とりあえず第1章にて登場した単語を並べて解説してみました。登場人物紹介の時よりも数が少なく割とさらっとしたのもありますが、「まぁあんまり長いのもあれなんでこんなもんでしょ」としました。


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特別記録01「AOBA's Report File01:QFOPへ突撃取材です❗️」

今回は番外編という事で重巡艦娘 青葉の時点で本編では語られない裏側の話をします。それではどうぞ!


日本国 神奈川県 海上自衛隊 横須賀基地

基地食堂

 

衣笠「ねぇ、青葉知らない❓」

横須賀基地の食堂で青葉型重巡洋艦娘 次女"衣笠"が姉"青葉の所在を同じ重巡艦娘の古鷹型姉妹2人に尋ねる。

 

古鷹「見てないよ。加古は❓」

加古「さぁ〜...あ、そういや山本...じゃなかった高野司令の許可を取り付けてQFOPに行くって言ってたなぁ。」

衣笠「許可下りたの⁉️「海に浮かぶ機密の塊」の様な所なのに...。」

加古「今頃窓を覆った飛行機に押し込まれて他の乗客と口を聞くことも許されずにQFOPに向かっているんじゃないか❓」

古鷹「アハハハハ(汗)」

 

「クリスタルス○ルの王国」での某冒険家のセリフみたいな事を言う妹の加古に苦笑いをする姉の古鷹。

 

衣笠「それでも青葉のジャーナリスト魂が黙っていられないんだと思う。取材しても公には出せない情報ばかりしかないのに。」

加古「今に何かしでかして捕まりそうだな。」

古鷹「加古❗️滅多な事言わないの❗️」

加古「ちょっ、怒んなよ古鷹〜。」

衣笠「アハハハハ、その時は衣笠さんがしっかり手綱握るから安心して。」

 

QFOP 埠頭プラットフォーム

 

青葉「私青葉は今、国連平和維持海軍の秘密基地"QFOP"に来ています。」

 

心配されてるのかされてないのかよく分からない(※衣笠はちゃんと心配しています)様な会話をしているのと時を同じくして青葉はビデオカメラを片手にQFOPの埠頭プラットフォームで撮影を始めていた。

 

青葉「ここを拠点に置く第81独立機動艦隊は太平洋方面艦隊に属する国連直属の艦隊でどの国家の指揮下になくほぼ独立した部隊であるそうです。見てください❗️埠頭に並ぶ威風堂々としたこの艦艇の数々を❗️日本、アメリカ、ロシアの艦娘艦に現役、退役を含む現用艦が並んでいますよー‼️」

 

ビデオカメラを埠頭にいる艦艇に向ける。彼女の目は遊園地や美味しい食べ物に目を輝かせる子供の様に光っている。

 

???「Oh.もしかしてアオーバ❓」

 

声を掛けられた方にカメラを向けるとそこには綺麗な長い金髪をたなびかせ「絵に描いたようなアメリカン」な事で有名なアメリカ海軍戦艦娘"アイオワ"がいた。

 

青葉「あ、アイオワさん❗️お久しぶりですぅ〜❗️」

アイオワ「元気そうねアオーバ。取材に来たの❓」

青葉「はい❗️是非とも取材したくて呉からすっ飛んできましたよ❗️あ、許可はちゃんと取り付けてきしましたし取材内容も公表できるものとそうでないものはちゃんと精査しますから大丈夫ですよ❗️」

アイオワ「楽しそうでなによりネ。」

青葉「そういうアイオワさんはこれからどこに行くんですか❓」

アイオワ「Meの戦隊を引き連れて"イリィ"と"タッキー"のいるウィス(4番艦のウィスコンシンのこと)の戦隊を鍛えるのよ。2人は姉妹の中でもまだまだ経験が浅いから。」

 

"イリィ"と"タッキー"ことイリノイとケンタッキーはそれぞれアイオワ級の5及び6番艦だ。史実ではどちらも大戦中に空母の建造が優先され建造中止となり艦娘として転生もしていなかったが、QFOPの提督がFRAMⅠ(近代化及び再就役)改装時と設計図を元に引き直して建造した。就役と同時に艦娘が出現しQFOPの貴重かつ大きな戦力となって今に至っている。

 

青葉「なるほど〜、でお相手の方は❓」

アイオワ「第6戦艦戦隊と第1巡洋駆逐戦隊よ。第6には紀伊classがいるのよ❗️」

青葉「おぉ❗️実在の噂は聞いてましたがまさか実在していたとは❗️」

 

"紀伊型戦艦"、大和型の次級の「改大和型」のさらにまた次級の「超大和型」に当たる幻の計画艦だ。これもQFOP提督が戦力拡大の為(と元より日本には戦艦が少なく、QFOPに配属できる数も限られていたので)この計画案を引っ張り出し大和型2隻の現世改装のデータを反映して「紀伊」「三河」「尾張」の3隻が建造された。先述したイリノイとケンタッキー同様、こちらの紀伊型姉妹も艦娘を得ている。

 

アイオワ「"相手にとって不足はない"って言うのはコーユー事を言うのよネ✨

今からとても楽しみヨ❗️」

青葉「私はこれからまだまだ取材する所があるので見に行けないのが惜しいんですが、後でアイオワさんや紀伊さんら皆さんご一緒にまとめて取材したいんです❗️」

アイオワ「OK OK❗️Coverageはいつでも歓迎ヨ✨」

 

演習を間近で見れない事が惜しいがこれは特ダネもののネタが拾えると予感する青葉であった。

 

QFOP居住区プラットフォーム

食堂

 

青葉「歩き回ってお腹が空いたと思ったらもうお昼間近でした。今私は居住区の食堂に来ております。もう既にたくさんのスタッフさん達が昼食を取っております。」

 

食事をテーブルに運んでいる時でもカメラを手からは離さない。ここでもジャーナリスト魂は健在だ。艦艇群が日本、アメリカ、ロシアで構成されてるだけ合ってそれら三ヶ国の人種がほとんどだが、それだけでなく見たところヨーロッパ系、アジア系、中東系、アフリカ系などアメリカにも負けない"人種の坩堝(るつぼ)"に青葉は思えた。

 

???「おや、青葉さんじゃないか❓」

 

青葉は声を掛けられた方にカメラを向ける。そこには背が低く長い銀髪の愛らしい駆逐艦娘がいた。

 

青葉「おやおやこれは響ちゃんじゃないですか❗️」

 

暁型駆逐艦娘の次女"響"。姉妹の中ではとても落ち着きがあり、やたら「大人のレディ」を主張し背伸びしたがる長女の"暁(あかつき)"や「もっと私に頼っていいのよ✨」と「世話焼き狐の○狐さん」よろしく世話焼きな三女"雷(いかづち)"、「はわわわ」と慌てん坊な四女"電(いなづま)"のまとめ役もこなしつつ時折見せる「不思議ちゃん」振りなどクールな外見とのギャップがある面白い駆逐艦娘と内外に広く知れ渡っている。

 

響「久しぶりだね、取材に来たのかい❓」

青葉「はい❗️そうなんですよ〜、おッ❗️そちらの見慣れないお方はどちら様ですかッ⁉️」

 

響の隣にいる彼女と同じくらいの白い肌の美形でかつ身長は二頭身程高く赤い目をした美女が何者かを尋ねる青葉。

 

響「あぁ、彼女はウクライナさん。」

ウクライナ「ウクライナです。よろしく青葉さん。」

 

食事を乗せたトレーを持ち青葉に会釈(えしゃく)するウクライナ。見れば見るほどその美しさに見惚(みと)れて少し気が抜けてしまう。

 

響「青葉さん大丈夫かい❓」

青葉「はっ❗️あ、ああぁッ⁉️申し訳ないです❗️響さんとウクライナさん、お話聞かせて貰って良いですか❓」

響「構わないよ。良いよねライナ❓」

ウクライナ「はい。」

響「立ち話もなんだし、座って話そう。私達もそうだが、青葉さんもお腹が空いただろう❓」

青葉「はい❗️是非❗️是非❗️」

 

空いてる席を見つけ座り食事を摂りながら取材を進める青葉。食べながらではメモは取れないので早くたいらげる。響は青葉のジャーナリズムの姿勢をよく知っているので驚かないが、ウクライナに至っては空いた口が塞がらず。汗を垂らして少しドン引きしている。「ごちそうさまでした❗️」と手を合わせ食事を済ませた青葉はすぐさまポケットからメモ帳とペンを取り出して話を聞く。まず聞いた内容はウクライナ、彼女自身の事だった。

 

青葉「えぇッ⁉️艦娘だったんですかぁッ⁉️」

ウクライナ「はい、旧ソ連崩壊と共に建造中止となったスラヴァ級ミサイル巡洋艦の4番艦です。」

 

ウクライナは自身が建造中止となり放置され、その後紆余曲折を充てQFOP提督が彼女を引き取り近代化改装込みの建造が再開され就役。その際になんの前触れもなく気が付いたら艦娘の身体を得て艦橋にポツンと立っていたという。

 

響「司令官はそうやって建造中止や退役艦を見ると皆引き取っちゃうのさ。」

ウクライナ「そう...とても優しい人...。」

 

ウクライナはポッと頬を赤くする。彼女がQFOPに来て改装を受ける際、提督はほぼ毎日足を運び声を掛けてもらったという。

 

青葉「分かりますよ。あの人はほぼ全ての艦娘に優しい且つ軍艦/兵器マニアな面がありますから、スラヴァ級であるウクライナさんも提督の目には魅力的に映ったのでしょう。」

 

青葉にそう言われさらにまた頬を赤くするウクライナ。「現用艦が艦娘に⁉️」という新たなネタを得られて青葉も満足な表情を浮かべた。

 

工廠班プラットフォーム

 

青葉「おぉ〜、ここが"QFOPの工場街"...。」

 

昼食を済ませ次に青葉が向かったのは艦船の建造や修理の為のドック、武器/兵器の生産を一点に担っている工廠版プラットフォーム、別名"QFOPの工場街"だ。

 

青葉「あ❗️明石さ〜ん、夕張さ〜ん❗️」

 

青葉が声を掛けたのはこの工廠班の"主(ぬし)"とも言うべき2人の艦娘。旧帝国海軍 明石型工作艦 明石と"実験型軽巡"と呼ばれ帝国海軍型重/軽巡洋艦の設計に大きく影響を与えた夕張型の夕張だ。

 

明石「あ、青葉さん。」

夕張「久しぶり〜青葉さん。取材に来たの❓」

青葉「どもどもお久しぶりで、もちのろんですよ♪今大丈夫ですか❓」

明石「いいよ〜ちょうどキリがついたとこ。」

 

明石と夕張に工廠班プラットフォームを案内されながら取材をすることになった。

 

青葉「今は艦艇の修理にお忙しいみたいですね。」

明石「そうなのよ、一番酷いのは大和さんと武蔵さんですかね。あ、ここがそうよ。」

 

大和と武蔵が入渠(にゅうきょ)しているドックの前に立つ3人。破損箇所は修理に入っているが、所々に傷がまだ残っており激しい戦いが行われた事が想像できる。

 

青葉「これではしばらく出撃は無理そうですね。」

明石「まぁ提督もしばらくは大和さん達戦艦戦隊が動く様な大規模な作戦はないと言ってるから、大和さんと武蔵さんからもこの間に「徹底的にやってくれ」と頼まれたのでそれに追われてますね。他の艦の損傷は大した事ないので良いんですが。」

青葉「大変と言ってる割には明石さん楽しそうですよ。」

明石「ま〜ね〜♪工作艦娘である私にはこれが生き甲斐ですから。"ドバッて掛けただけで直る液体"なんてあったら便利でしょうけど現実的じゃないしそんなのあったら商売あがったりですよ。」

 

大変だと思い感じる事はあってもそれを生き甲斐とし楽しんで笑いながら何かとんでもなく意味深なメタ発言の様な何かを言う明石に青葉も釣られて笑顔になる。

 

明石「艦自体や艤装の修理は私が担当で、武器/兵器システム関連は夕張と分担してやってるの。」

青葉「そういえば夕張さんは重巡、軽巡、駆逐艦の現世改装のテストベッドを務めたと聞いた事がありますけど本当ですか❓」

夕張「///まぁ〜なんか恥ずかしい話なんだけどそうなのよ。///まぁ私自称"兵装実験軽巡"を名乗ってる以上は実験開発って言葉が大好き過ぎるのよね。提督にもそうしたいって願いを出したら叶っちゃったって感じで。」

青葉「その話詳しく聞きたいです❗️」

夕張「えぇ⁉️い、良いけど...。」

ふと明石の方に目を向ける夕張。明石は「大丈夫行っといで」とアイコンタクトをする。

夕張「じゃあ向こうで話そっか❗️」

青葉「え❓まだこの先見る物があるんじゃ...❓」

夕張「いいからいいから❗️さぁ早く早く❗️」

 

青葉を引っ張って明石のもとを離れる2人。「いってらっしゃ〜い」と小さく手を振り見送る明石。

 

明石「(そのまま引きつけておいて夕張。ここから先のエリアはまだ見せるわけにはいかないですからね。)」

 

そう心中に思う明石が振り向いた視線の先には大きな壁に囲まれた建造ドックがあった。

 

明石「新たな戦闘空母打撃群六個艦隊分と新型護衛戦艦にその発展型のミサイル戦艦、今は見せられないからまた来た時に見せてあげますね。」




時系列的には「トライデント作戦」の後です。青葉の時点でQFOPのあれこれを見て行くという話でした。
本編にはまだ登場していない艦娘の登場がありましたね。史実では未成に終わったイリノイとケンタッキーが艦娘を得て登場しています。この二艦の存在を知ったのはTV版「エヴァ」第8話「アスカ、来日」で出したいなと思い出しました。アイオワ級は実際には就役した4艦全てが博物館となっています。この作品でのアイオワ級は本編に語っているイリノイとケンタッキー同様に一から建造しています。ただし"ミサイル戦艦"時の姿ではなく第二次大戦時の姿で建造しそこから現世改装したという特殊な経緯を持ってます。
アイオワの口から紀伊型(超大和型)の存在が語られましたね。紀伊型もアイオワ達と似た様な経緯です。46㎝もそうですが、51㎝なんて規格外な主砲を持つ艦ですから提督も余程の大きな作戦にしか出さないと思います。
食堂に移って色んな人種の人が働いてる様子を見ていたら響とスラヴァ級の艦娘 ウクライナと出会います。「現用艦を艦娘に」というのはファンが良くやってて自分も作品内で出したいと思い、まず建造中止で放棄されたスラヴァ級4番艦を出しました。「現用艦娘は珍しいケース」という形でこの作品に登場していますが、他にもいますのでそこはまた本編にてお楽しみに。
明石と夕張という「艦娘随一のメカ強」コンビのご登場です。「夕張は現世改装で大きな貢献をした」というのはやはり史実での実験艦振りを活かしたかったからです。明石は青葉にまだ見られたくない物の建造に関わってるらしいです。そこはまた次章にて。


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第2章「変わり始める世界編」記録35「それぞれの新たな一歩」

特別記録(番外編)から間が空きましたが、第2章スタートです。


「トライデント作戦が成功に終わって数ヶ月が経って年が明けた2018年は中国にとったは大きな変革の年となった。

国連は傘下の平和維持海軍の作戦行動の妨害をしたとして中国を非難し、加盟各国は中国に対して厳しい経済制裁等を行った。作戦中にQFOPが収集した「中国海軍上層部と深海棲艦との繋がり」を示す証拠等は「混乱を招く」として公表される事はなかったが、密かに行われた政治交渉でこれを突きつけられた中国政府は驚愕したと同時に以前からあった国内の暴動と経済の破綻もありこれ以上中国が一国で戦うことができなくなった。深海棲艦をも利用し「アジアの王」たらんとしようとしていた中国の野望はここに潰えたのである。

さらに70年以上にも亘り中国を事実上一党独裁で支配していた共産党が崩壊し、中国は「中華人民共和国」改め「中華民主共和国」と民主制国家へと舵を切り共産党の指揮下というより事実上の私兵集団であった「人民解放軍」も解体、再編され純粋な国軍となることが決定した。

 

QFOP 鎮守府プラットフォーム

提督室

 

多田部「高野長官はお元気そうでした❓」

提督「あぁ、変わらない様子だったけど顔に少し疲れが出ていたな。先の我々の作戦で色々と権限を行使した事と"自衛隊の国防軍化"についてお忙しいのだろう。」

多田部「遂に始まるのですか、"国防軍化"が...。」

提督「お隣の"巨人"が今や"小人"同然になってしまったのだ。旧ソ連が崩壊した時の様にしばらくは立ち直れないよ。そんな中国にアジアのリーダーをやらせるなんて酷じゃないか❓最も、国連にも国民にもあんな態度を取り続けてきた国にその資格が最初からあったとは思えんがな。」

 

すごく辛辣(しんらつ)な事を言ってる風に聞こえるが、中国がこれまでしてきた事を考えればこんな風に言われても仕方がない。

「自衛隊の国防軍化」は以前から議論されていた事だが、野党や世論からの反対意見が多く今まで実現できなかった。しかし中国の失墜もあって「次のアジアのリーダーは日本しかない」と国連からの声もあり「自衛隊の国防軍化」の必要性が高まったのだ。

 

多田部「で我々はこれから何を❓」

提督「当面は東南アジア諸国への支援と周辺海域の哨戒が任務だ。しばらく大きな作戦行動は取らないつもりだ。その間に俺は欧州に向かう。お前はまずアメリカに渡ってそこで用事を済ませた後QFOP2と3の建造を視察してきてくれ。それとこの資料に目を通しておいて。色々と知っておいて欲しいことを纏めてある。」

 

一通り今後のやるべき事を話した提督は多田部にファイルに纏めた資料を手渡す。辞書ほどではないが、それなりの厚みのあるものだ。

 

多田部「アメリカですか、ま〜た色々と飛び回らんといかん訳ですか。」

提督「欧州各国にも日本の国防軍化についてやその他諸々のご理解とご協力を取り付けてくる。いわば外交の真似事だ。久々に欧州にいる知り合い達の顔も見てくるよ。そっちも気をつけてな。」

多田部「アイアイサーですよ提督。」

 

提督室から退出し提督から渡された資料をペラペラとめくって内容を吟味(ぎんみ)する。さすが"ながら読み"は危ないと思いテーブルとイスを見つけ着席する。

 

多田部「(こりゃまた凄い増強計画だな...。ん❓"人造艦娘"❓...なんなんだこれ❓)」

 

多田部が多くの文章の中から気になる一文を見つけさらに深く読もうとした時、自分に近づいてくる足音に気付く。ふと顔を上げるとそこにはキーロフ級アドミラル・ウシャコフ艦長 アレクサンドラと同級 アドミラル・ラーザリェフ艦長 アンジェリカのアレクセイ姉妹が横に並んで立っていた。多田部は資料をテーブルに置き立ち上がって敬礼する。

 

多田部「これはこれは大佐殿のお二人で。」

アレクサンドラ「よしてよターベ。そんな堅苦しい。」

アンジェリカ「年下の私達にそんな、それに私達の仲じゃないですか。」

多田部「あぁ、そうだったな。つい厳しかった帝国海軍時代の習慣が出ちゃうんだわさ。」

 

アレクセイ姉妹はQFOP創設時からのメンバーで提督や多田部とは長い付き合いだ。その為か関係性は厳しくビチッとはしておらずその仲はとてもフランクだ。

 

アレクサンドラ「そこ座って良いかしら❓」

多田部「どうぞお二人さん。」

 

アレクセイ姉妹は多田部の向かい側の空いてるイスに座る。

 

アレクサンドラ「その資料は❓」

多田部「あぁこれ❓提督閣下から渡された重要書類の数々が纏められたものだ。いくら長い付き合いのお二人でも見せれないんだわごめんね。」

アンジェリカ「それは仕方ないですね。」

アレクサンドラ「良いわね〜そういうの。一介の艦長じゃそういうのないもの。」

多田部「そういや2人のお父さんはロシア海軍のお偉いさんだったよね。そういう経験あるんじゃないのか❓」

アレクサンドラ「いいえ、お父様は家族に言えない事は胸の内に閉まって見せれない物はすぐ自分の部屋に入れてたから。」

アンジェリカ「でもよく海軍や自分の艦の事を話してくれました。だからでしょうね、私達が海軍を目指したのは。」

多田部「家族とは❓」

アレクサンドラ「ここに来てからしばらく会ってないわね。たまに映像通信で話すくらいよ。」

アンジェリカ「でもお父様もお母様も変わりないようでした。」

多田部「そっか、しばらくは大きな作戦はないって提督が言ってたから休暇を取って会いに戻っても良いかもしれないよ。」

アレクサンドラ「ほんと⁉️」

アンジェリカ「じゃあ申請書出さなくちゃね、お姉ちゃん。」

 

久々に故郷に帰れるかもしれないという期待に思わず喜びを声に出す2人。

 

多田部「そういえばさっきから気になってたんだけどその紙袋なんぞや❓」

 

多田部はアレクサンドラとアンジェリカそれぞれの足元にある2つずつある紙袋に目線を向ける。いや2人に話しかけられた時から気になってしょうがなかった。

 

アレクサンドラ「あぁこれ❓メイド服よ。」

多田部「メイド服❓なんでまたコスプレ大会でもあるの❓」

アレクサンドラ「私達が着るんじゃないわ。ヨハンに着せるのよ。」

多田部「えっ⁉️」

アレクサンドラ「ほら日本のアニメ文化に"男の娘"ってのがあるじゃない❓ヨハンは中性的な顔立ちだから似合うと思って。」

アンジェリカ「お姉ちゃんったら張り切ってるの(苦笑い)。」

多田部「そうかそうか。」

 

「ウシャコフの女帝」なんて大層な異名で呼ばれる彼女だが、実は「日本のオタク文化にどっぷり浸かった親日家」という側面もあり、異名とは裏腹にその趣味のお陰か親しみやすい人柄をしている。それは父から日本のよく聞かされてことやQFOP配属以降は提督や多田部からのオタク教育もあってのことだそうな。そんな姉に振り回されるこちらも「ラーザリェフの天使」の異名を持つ妹のアンジェリカだが、彼女も姉や提督、多田部の影響を受け今やすっかりオタクの仲間入りをしている。そんな彼女なりの艦と多くの乗員を失ったヨハンに対する励まし方なのだろうと多田部は思うのだった。

その後、アレクサンドラは「ヨハンを見かけたら声掛けてね。」と良いアンジェリカと共に退席していった。多田部も少ししてから退席しふと外を見るとヨハンの姿を「英雄の碑」に見かけた。それは深海棲艦との戦いで散っていった者達を慰霊・顕彰する為の記念碑だ。ヨハンは花束を持ってその碑の前に立ち膝をついて花を手向(たむ)けると敬礼する。

 

※ここからは宇宙戦艦ヤマトのBGM「英雄の丘」を脳内再生しながらお読みください。

 

多田部「ヨハン。」

ヨハン「あ、多田部一尉。」

多田部「献花に来たのか。」

ヨハン「はい。僕は自分のミスで艦を失っただけでなく多くの乗員を死なせてしまいました。今自分ができることはこうして碑に花を手向けたり、傷ついた仲間を励ますことくらいしかないんです。そう思うと...悔しくて...。」

 

ヨハンの表情には哀しさしかなかった。失ったものが大きく多いのだから仕方がない。

 

多田部「... ...ヨハン、ちょっと来てくれ。」 

ヨハン「え❓」

多田部「見せたい物があるんだ。」

 

そう言う多田部に連れられてヨハンの足が向かった先はQFOPの工廠プラットフォームだった。

 

多田部「明石、ご苦労様。」

明石「あ、ターベさん。お疲れ様です。」

多田部「今入れるかな❓」

明石「え、構いませんけど...ここから先はヨハンさんは...。」

多田部「大丈夫、提督の許可は貰ってるよ。」

 

多田部は明石にスマホの画面を向け、明石はその内容を読むとちゃんと許可を得ている事を確認して中に通した。

締められた扉の前に立つ多田部とヨハン、ここからは声紋認証の様だ。

 

多田部「ドックに入りたい。」

音声案内「ヨハン大佐はこのドックへの入出許可は出ていません。」

多田部「提督と特務一尉権限だ。多田部 拓海。」

音声案内「確認しました。」

 

提督と自信の階級と名を言っただけでパスできるとは、「一尉って何者だ❓」と思うヨハン。

多田部「我らQFOPの秘密ドックにようこそだ。」

ヨハン「こ、これは⁉️」

 

多田部の権限云々に驚く間もなく次の驚きがヨハンの眼前にあった。数十隻にも及ぶ就役間近の新型艦がズラッと並んでいた。

 

多田部「QFOPもさらに先を行かなくてはならないとの提督の考えとお達しがこの新鋭艦達ってわけだ。スゴイでしょ❓」

 

多田部に案内され歩きながら首を左右に振り新型艦を見やるヨハン。多田部がピタッ足を止めたのを見てヨハンもピタリと止まる。目の前には一隻の空母があった。戦闘空母打撃群の旗艦を務めるヒマラヤ級の一隻だ。

 

多田部「ヒマラヤ級 CVB-865 ウラルだ。君の艦だよヨハン。」

ヨハン「えっ⁉️」

 

ヨハンは驚き思わず多田部の方へ顔を向ける。「このヒマラヤ級姉妹の一隻を自分に任せる」と言われた事に。だが...。

 

ヨハン「お言葉ですが一尉、僕にはこの艦を頂く権利はありません。自分の艦を沈め、多くの乗員を死なせてしまった自分になんか...」

多田部「言っとくけどこれは決定事項なんだよヨハン。なんせ提督からの命令だからね。」

ヨハン「同志提督から...ですか❓」

 

「一度艦を沈めてしまった自分には相応しくない」と拒否しようとするヨハンに多田部は「提督の命令なんだ」と反論を制止させる。

 

多田部「提督は君の事を高く評価してるんだよ。もちろん俺もだし他の皆もさ。簡単な事じゃないけど君には乗り越えて欲しいんだよ。その一歩がこの艦を君にという事さ。」

ヨハン「多田部一尉...。」

多田部「ま、そのうち正式に拝命されると思うからよろしくね。

あ、それとアーシャとアンジェが君を探してたよ。でも注意した方が良いかもね。じゃあまた。」

 

ヨハンは親友2人の件に関して頭に「❓」を浮かべたものの、眼前のウラルに再びを顔と視線を向け「今後こそ前みたいにいかない」「提督達の期待に応える為にも沈めてたまるか」と決意を胸に抱くのだった。




前章からほんの少し経った時間軸から始まりました第2章です。「中国の事実上崩壊と新国家体制」「自衛隊の国防軍化」「提督は欧州、多田部はアメリカへ」「人造艦娘」「秘密ドックの新型艦」など今後の物語に関わる事柄がいきなりわんさかご登場となっております。これらが物語に今後どういう展開をして絡んでいくのかお楽しみください。それと本章は前章に比べ日常パートを多めに入れていき戦闘パートが多めだった前と違って世界観をより深く掘り下げていきますのでそのつもりでお願いします。


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