エロいことしようとしてたら最強の魔導師になっていた (100000)
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番外編
剣崎暁斗の戦い方


時系列とか考えてないです。一応六課活動開始前です。
一応大人になってる設定です。

アンケートを出す前に書いていたのでご要望に添えず申し訳ありません。


あー、どっかの犯罪者グループの頭領が美女でその情報を引き出すために拷問してくんねぇかな〜。拷問官俺になんねぇかな〜。

 

『まもなく作戦地域上空に到達します。出撃の準備をお願いします』

 

「はいよ」

 

機械的なアナウンスが聞こえたのでブックカバーを付けた文学小説──に見せたエロ本(単行本)──を閉じ、転移魔法で自宅に転送する。あ、しおり付けるの忘れてた。まぁいいや、ちょうど催眠かけられたところだったし後で見直すか。

 

「セットアップ」

 

身体が管理局員の制服から上から下まで真っ黒なコートに覆われたバリアジャケットが現れる。コートの下のシャツやズボン、靴に至るまで黒に統一している。

 

「スコル」

 

『なんでしょう、変態(マスター)

 

「おい、今変な呼び方しなかったか?」

 

『はて?なんのことか分かりかねます。それでご要件はなんでしょうか』

 

「最初はカタナとライフルでやるから()()()()転送して」

 

『了解です、マスター』

 

すると俺の腰の位置に黒い鞘に黒い柄、そして真っ赤な鍔がついた刀が出現し、同様に漆黒の、銃身からトリガーに至るまで真っ黒なライフルが背中に背負われるように出現する。

 

『今回の任務の確認はしますか?』

 

「賊─デバイスハンター─の討伐だろ?取り敢えず作戦目標だけ教えてくれればいいよ。民間人の反応があったらその都度教えてくれ」

 

『それくらい自分でやってください』

 

「…そこまでやり始めたらお前の役割無くなるだろ」

 

『術式の補助とデバイス転送という立派な役割があります』

 

「………感知は俺の方でもやるが、戦闘中はお前に任せるぞ」

 

『了解です、マスター』

 

「できるじゃねえか!」

 

『それでは作戦を開始します』

 

俺の抗議をかき消すようにシップの床が開き、俺の身体は重力に従って落下していった。

 

 

 

─────────────────

 

 

 

 

『既に陸戦魔導師の人が応戦していますね』

 

「少し圧されてるな」

 

落下地点付近では戦闘が既に発生しており、管理局員と見られる部隊とデバイスハンターと思われる部隊が交戦している。

 

『人質をとっています。攻めあぐねていたのはそういうことですか』

 

「後手に回ったんだ、こうなるのはしょうがない」

 

『どうします?』

 

「先手必勝!」

 

『時間停止』

 

ピタッと落下する俺を除いて全ての物質が動きを止めた。

 

背中に担いだライフルを片手で持ち、スコープを覗く。

 

「まずは人質救出」

 

ズドンと魔力弾を放つ。しかしそれは人質の目の前にいる男に当たる直前で運動を止める。

 

そして着陸したら、刀で周囲の賊に切りかかる。

 

賊一人につき二回ずつ切りつけたら人質の前に移動する。

 

「スコル、人質に異常はないか?」

 

『特にこれといったものは。しかし、そこの黒い髪の男にはデバイスと魔力の反応があります。推定ランクBです』

 

いざという時の隠し球か何も出来ずに捕まったかのどっちかか…

 

「了解、警戒はしておく」

 

『時間停止、解除』

 

──そして時は動き出す

 

といった感じで全ての物質が再び活動を再開する。

 

例外があるとすれば俺が攻撃した賊だけは全員地に伏し動かなくなっていた。

 

「おぉ、『ファントム』だ!」

 

誰かがその二つ名を口にする。やめて、その呼び方結構恥ずかしいから。

 

「…せめて剣崎空尉と呼べ。状況は?」

 

「はい!現在、このB地区同様、A地区、E地区も襲撃を受けております!被害はいずれも大手デバイス店のみのようです!」

 

ふむ。デバイスハンターというのは魔導師を罠に嵌めてデバイスを強奪すると聞いていたが市販のものか。あれはペット用か生活用にしか使えないはずだが。

 

『おそらく魔法発展途上国に売り飛ばすつもりなのでしょう。ここら一帯のデバイスと比べると向こうのはかなり前の世代のものを使ってますし。さらに言うならペット用も生活用も改造を施せば、そこらの魔導師が使うデバイスと遜色ないものを作れます。大量に安価で仕入れて大量に高価で売る。商売の基本ですね』

 

「…了解した。ではお前たちはそのままA地区の増援に行け。俺はE地区の勢力の制圧に向かう」

 

「「「は!」」」

 

「きゃあ!」

 

「うご──」

 

『時間停止』

 

後ろを振り返る。するとさっきまで人質だった黒髪の男が銃型の懐に入るサイズの小型デバイスを別の人質に突きつけていた。

 

『当たりでしたね』

 

「逆転の芽にするつもりだったんだろうが周りみんな気絶してるし意味ないだろこれ」

 

とりあえず人質に当たらないように男の頭をライフルで撃ち抜く。

 

『時間停止、解除』

 

「ぎゃっ!」

 

男が吹っ飛んでいき、建物の壁に当たって倒れる。口から泡吹いてるし死んではないようだ。

 

『非殺傷設定でも二次的要素で死んでしまう可能性あるの笑えますね』

 

「…何人かはコイツらの連行と人質の保護だ。終わり次第、A地区に合流。既に敵は撤退を始めている可能性もある。早急に取り掛かれ」

 

「「「…は!」」」

 

陸戦部隊の返事と共にE地区に向けて飛び立つ。

 

『素直に従いますね。さすが空尉』

 

規則だからしょうがないが基本的に空戦と陸戦は階級が同じでも空戦の意見が優先されるからな。それが組織内の摩擦を産んでるんだがな。

 

『それもありますがマスターが陸戦からの叩き上げだからじゃないですか?』

 

ホント…なんで空戦にヘッドハンティングされたんだろうな。いや飛行能力詐称して陸戦志願した俺も悪いけどさ。

 

E地区へ飛んでいく途中、機械の大群が目の前に立ちはだかる。

 

「ガジェット…敵さんも本気だな」

 

『おかしいですね。今回予想される敵勢力は基本はぐれ魔導師編成でこんなに無人機械を使うことはないはずですが』

 

予想だから外れることもあるだろう。だがガジェットが横流しされたといった情報も回ってきてはない。何か知らない組織の後ろ盾があると考えた方が良いのだろうか。

 

「今考えていてもしょうがない。杖×刀でいく!再転送!」

 

『了解しました』

 

背中に背負ったライフルの感触、重量感が消え、代わりに左手に杖型のデバイスが出現する。

 

「シュートバインド!」

 

杖から黒い魔力球が直線型に放たれる。その魔力球はガジェットに当たると帯状の魔法陣に変化し瞬時に巻き付き拘束する。

 

どんどん魔力球を発射し、目の前に立ちはだかったガジェットらはあっという間に動きを止める。

 

そして腰に差したままの黒刀を抜き放つ。

 

「居合・千斬(ちぎり)!!」

 

一振りの斬撃、正確には()()()()()()()()()()攻撃は無数の刃と化して敵陣へと飛んでいく。

 

それらは一つとして外れることなくガジェットの大群を一瞬で鉄塊に変えた。

 

『全機消滅、反応無し。さすがです』

 

「褒めるのは任務が終わった後だ。取り逃したらここでの戦いも全部パーだ」

 

すぐにE地区へ向かう。

 

E地区の方は人質は取ってなかったが、市街地を舞台に敵味方入り交じって乱戦状態になっていた。

 

「めんどくさいな」

 

『そうですね。既に被害も出てるようですし、かといって敵を黙らせようにもこんなにバラバラだと…いっそ無差別いっちゃいます?』

 

しょうもないこと言うな。そんなことしたら俺が築き上げてきた地位や名誉、財産が無くなってしまうだろ。モブ並びに犯罪者の命と俺の人生では釣り合いが取れない。

 

『民衆は何故あなたを英雄視してるんですかね』

 

知らん。勝手に思ってるだけだろ。おかげでこっちは思うように動けなくていい迷惑だ。

 

『凄いじゃないですか。犯罪者予備軍を抑えてるんですから』

 

黙れ。

 

『認識改変』

 

敵の認識を入れ替える。具体的にはデバイスハンターがデバイスハンター同士を敵と思うようにした。

 

『面白いようにまとまっていきますね。陸戦の方々目を丸くしてます』

 

まぁ敵がいきなり自分じゃなくて味方同士で戦い始めたら驚くだろ。俺だって当事者じゃなかったら新手を想定するわ。

 

目の前の奇怪な光景を俺が引き起こしたことに気づいた職員はすぐに周囲にこの場から退くように呼びかける。これから俺がやること察するって君有能?良ければ専属マネージャーなんてどうです?

 

術式を起動する。俺の周囲に黒い魔力球がいくつも生成されていく。さっきと違うのは内包する魔力は比にならないほど圧縮されてることだ。

 

「ブラックレーザー」

 

魔力球から直線上に光線が放たれる。それは現在交戦中(笑)の敵に向かって伸び、爆発する。

 

『…反応無し。制圧完了です』

 

よし。

 

『………残念ですが、A地区の方は敵勢力を取り逃したようです』

 

は?使えなさすぎだろ。

 

敵の座標は?

 

『標高10000メートル通過まもなくです。中規模空間転移で離脱すると思われます』

 

反応は拾えるんだな?

 

『はい。いつものアレですか?』

 

ライフル転送

 

『さて、距離は…おっと13000メートル。記録更新ですね』

 

「魔法陣展開…遠視開始…目標補足。チャージ開始」

 

『演算開始。弾道予測。命中率80%…修正開始』

 

今度はスコープを覗かない。目を閉じ、魔法によって敵を探知し、補足する。弾道の修正はデバイスに任せて魔力をライフルにありったけチャージする。

 

『90……93……弾着地点、敵輸送機エンジン部分』

 

「チャージ完了」

 

いつでも撃てる。修正完了まだですか?

 

『95………これ以上の修正は困難です』

 

了解。95%も当たるならいけるな。

 

『まぁ最悪時間停止してトドメさせばいいですからね』

 

そこまで行くのは魔力消費量的にダルい。却下。

 

『言ってみただけです。どうぞ』

 

「スナイプブラスター!」

 

ライフルから砲撃魔法が放たれる。それはやや放物線を描きながら彼方へと飛んでいく。

 

発射から少し経つと爆音が遠くから聞こえる。あぁ、また人間やめたって言われる。

 

『…着弾を確認しました。任務完了ですお疲れ様でした』

 

はぁ、帰るか。

 

『おや帰るのですか?』

 

当たり前だろ、敵目標は沈黙したが盗まれたデバイスの一部は俺が破壊したようなものだし。報告書書かないと。

 

『おや?取り逃した陸戦に責任押し付けないんですか?』

 

押し付けるに決まってるだろ。てか事実だろ。そのための報告書だろ。こういうのは早さが肝心なんだよ。

 

『じゃあその前に向こうで手を振ってるボーイッシュな子に挨拶していきましょうね』

 

ん?なんでアイツが、あ、陸士かアイツ。おい待て来るなお前が来ると俺の時間なくなるから。徹夜報告書になるから。頼んでもねえのにお食事に連行されるから。しかも俺が年上だから会計俺持ちなんだろどうせ。

 

あーーーーーー!!(魂の叫び)




二つ名『ファントム』
本人が一番嫌がっている。敵もまた理由は違うが来ないでほしいと思っている。何をやっても効かず、どこへ逃げてもやられる、まさに亡霊のようだとファントムと二つ名が付いた(命名:はやて)

戦闘方法
ライフル(遠距離用)
カタナ(近接用)
ロッド(殲滅用)
また状況に応じてどれも遠近使い分けるようにしている。具体例:ライフルを叩きつけるなど
デバイスを変形させて使い分けるという考えもあったが、武器をそれぞれ使い分けた方がかっこいい(本人談)のでこのスタイルをとっている。

居合・千斬(ちぎり)
設定:身体能力を瞬間的に限界まで強化し、抜刀術を用いていくつもの斬撃を放つ、または飛ばす。

実際:時間を止めて「あいやああぁ!」との掛け声と共にたくさん剣を振る。抜刀術なんて存在しなかった。


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幼馴染であれば下着を見ても問題ないよね!…とかはない?

番外編です。
いつも通り時系列とかは……

なのは回です


『あきと君、今週って空いてる日ある?』

 

その日の仕事も終わりになりかけた頃、メールが一通届く。開くとどうやらなのはからのようだ。

 

スコル、今週って空いてたか?

 

『土曜日が一応非番になってます。ただ、最近は物騒ですからね。緊急出撃があるかもしれません』

 

土曜日は非番……と

 

時空管理局はブラック企業だ(断定)

優秀な人材は戦果をあげればどんどん昇進していくのはいい所だが、優秀だから待遇が良くなるとかそんなことはなく、むしろ逆に後進の指導や危険な任務の数が増え、さらに大変になる。その分給与はいいが使う機会が無い。これも全部犯罪者が悪いんだ………!

 

だから基本的に完全休日とかはない。…とはいえ非番なのに狩り出されるのはテロか大規模な災害の時ぐらいだが。

 

お、返信早いな。

 

『新しい服が欲しいんだけど、あきと君の意見を参考にしたいの。もし良ければなんだけど一緒に服を見に行かない?』

 

服かーそろそろ俺もなんか新しい服を買うべきかな〜、でも俺の意見とか参考にしていいのか?

 

『マスターはかわいいと思ったものをかわいいと口にしてればいいんですよ』

 

そういうものか?

 

『そういうものです。彼女がそれで喜ぶことはあれど怒ることはないでしょう』

 

じゃあ…了解、時間はそっちで決めていいよと

 

スコル、お出かけ用の服、コーディネートしてよ。

 

『また私ですか?そろそろ自分で服決めれないんですか?』

 

俺がやった結果、この前シグナムに笑われただろ

 

『いえあれはマスターが悪いです。基本黒しか選ばないし何かと装飾を求めすぎです。なんですかあの腰に着けたチェーン、痛すぎます。ついでだからその時のシグナムさんの一言言っておきますね。これから戦闘にでも行くつもりか?』

 

もうお前の口から充分過ぎるほど理由が語られただろ。頼むぞ。あとこの憎しみしばらく忘れないから。

 

『分かりました、せっかくなのでなのはさん好みにしてみましょう』

 

……コイツもうファッションリーダーとかにした方がいいのでは?

 

───────────────────

 

 

 

よし、あきと君とお出かけの約束を取り付けられた!

 

今週末は勝負だ。オシャレはまだよく分かってないから事前に雑誌で取り上げられていたかわいい服を買っている。服は買ってるのに服を買いに行くとか我ながらどうかと思うがあきと君の好みを把握するためなのでセーフ。

 

あきと君のスケジュールは把握済み、非番の日をしっかり合わせた。

 

「ふふ、久しぶりだな〜あきと君とお出かけするの」

 

最後にあきと君とお出かけしたのはいつだろうか。子どもの頃は毎日のように顔を合わせていたが、今では週に一回、顔を合わせる程度となってしまった。時空管理局に入ってからのあきと君の活躍は英雄と謳われるのも当然と思えるほどだった。…陸戦を志望したのは想定外だったけど。

 

「さて、今週末までに仕事が残らないように頑張らないと!」

 

自身の体にこっそり魔法をかけて報告書を書くスピードを、判子を押すスピードをさらに上げていく。

 

Master(マスター)………』

 

どこかのデバイスが私に呆れたような声をかける。違うよ。お母さんが前に言ってた…恋も仕事も全力だって!だからたとえ事務作業でも恋のためなら使えるものはなんだって使う!

 

『……Sir,Master(あ、はい)

 

──────────────────

 

 

 

そして、土曜日。

 

スコルにコーディネートしてもらった服を着て、待ち合わせのショッピングモールに向かう。

 

世間ではスーパーアイドルばりに人気なので外を歩くだけで人だかりができるのだが、隠すことはしない。

 

サインしてください!

 

凄い!ホンモノの方が100倍かっこいい!

 

きゃー!きゃー!

 

あぁ^〜自尊心がピョンピョンするんじゃ〜

 

『…うっわ』

 

何故か自分のデバイスにドン引きされているが気にしない。君にも味わわせてやりたいよ、この気持ち。

 

『そのうち本性暴かれても知りませんよ?』

 

その時は催眠するから…おけです!

 

『そろそろ待ち合わせ場所です』

 

了解。それじゃあ周りに集まった人は散ってもらいましょうね〜。

 

認識改変、発動

 

瞬間、周囲からの目線を感じなくなる。そして辺りの人は俺を探して周りをキョロキョロとし始める。

 

あれ?ファントム様は?

 

き、消えた……

 

スゲェ……

 

別に俺は消えたわけでも透明になったわけでもない。ただ周囲の人が()()()()()()()()()()()()()だけである。

 

今の俺はどこにでもいる普通の一般人、剣崎暁斗だ。

 

ショッピングモール前の広場、そこのベンチに見知った顔の女性が見える。

 

「よっ、なのは」

 

俺の声に気づいたなのはは驚きの表情を浮かべる。

 

「え、あきと君!?いつの間に!?」

 

「たった今来たところだよ」

 

イタズラ大成功といったところか。

 

『それにしてもなのはさん、いつからいたんでしょうね。まだ10分前ですよ』

 

たしかに。まだ暑くも寒くもない時期だが女性を待たせるのはさすがにダメだったかもしれない。

 

「待たせてしまって申し訳ないな。結構待ってたんじゃないか?」

 

「私もさっき来たところだよ」

 

スコル嘘発見器、起動!

 

『おそらく嘘をついてると……てか私が嘘を暴こうが待たせたのはマスターなんですからお世辞のひとつくらいしたらどうですか?』

 

いや謝ったじゃん。

 

『はぁ…これだからトーシロは』

 

は?

 

『まずはなのはさんの服を褒めるとかしたらどうです?』

 

は、はぁ〜!知ってたしー!それを今からやろうと思ってたしー!お前に言われなくてもそれぐらいやれるしー!

 

「なのは、その格好スゲェ似合ってるよ」

 

オシャレ分かんないし、お前何着ても似合うやんとしか思ってないがとりあえずそれっぽいセリフで取り繕う。

 

『ありきたりですね』

 

だけどなのは顔赤くして照れてるだろ?効果ばつぐんじゃん。

 

『顔ブーストですね』

 

人柄ブーストだ!

 

『人柄(笑)』

 

あ?

 

「じゃ、じゃあ行こうか!」

 

俺とスコルの間の火蓋が切って落とされようとしていたときになのはから声がかかる。そうだった今回の主役はなのはだった。命拾いしたな、スコル!

 

『どこの悪役ですか…』

 

スコルが何か言っているが、無視してショッピングモールの中に入っていく。もちろん認識改変で間違っても空の英雄高町なのはとは認識させないようにする。せいぜい美人なお姉さん程度だ。

 

ショッピングモールは相変わらず賑わっていたがこちらに気づくものはいない。

 

『元()()()()と空の英雄のコラボレーションですからね。ゴシップが捗りますよ』

 

スキャンダルとかやめてくれ…。普通にデートして世間に謝罪するとか意味わからんことしたくないぞ。

 

「あ、ここ!」

 

なのはが指さした看板は女性モノの服を扱う専門店だった。あーなんか雑誌でこんな感じの名前見た気がするぞ。

 

『マスターが以前、後学のためにと読んだ雑誌にありましたね。まぁ結果は知っての通りですが』

 

うるせ。だから服全般、パジャマからパンツまでお前に任せてるじゃないか。

 

『それはそれでどうなんですか?』

 

「この服なんてどうかな?」

 

なのはが持ってきたのは淡いピンクのワンピースだった。

 

…閃いた!

 

『はい?』

 

「なのはにはなんでも似合いそうだが、ふむ試しに着てみたらどうだ?」

 

「う、うん」

 

いそいそと試着室へ向かうなのは。

 

よし、それじゃあ

 

時間停止

 

『なんで今時間停止を?』

 

え、なのはってどんな下着つけてんのか気にならない?

 

『…………はい?』

 

何を考えてるのか分からないといったスコルを無視して試着室の方へ歩く。

 

『おいバカ待て止まれ止まれそんなことのために時間を止めるんじゃないカーテンに手をかけるなやめろやってることガチの犯罪だから』

 

スコル、俺さ常日頃から思ってたんだよね?

 

『はい?』

 

なのはってプライベートではどんな下着つけてるんだろう…ってね

 

『だからといってやっていい事と悪い事があるだろ』

 

でも覗きって興奮しない?

 

『死ね』

 

はい御開帳〜

 

『あ、ばか』

 

カーテンを開けるとちょうどなのはが着替えようとして服を脱ぎ終わったところだった。なのでしっかりと下着姿だった。

 

「スコル、結構なのはの下着エロくない?」

 

『あのなのはさんが黒とは大胆……じゃなくて早く閉めてください』

 

あ、待ってスコル、これ写真撮ってくんない?

 

『犯罪者の私利私欲にメモリーを使いたくないので断固拒否します』

 

ちぇ〜今日持ってきてる記憶媒体はスコルしかなかったのは迂闊だったな。

 

カーテンを閉じ、元の位置に戻って時間を戻す。

 

「ど、どうかな?」

 

なのはがワンピース姿をお披露目するが、うんやっぱお前なんでも似合うわ。

 

『私としても少し地味かなと思いましたが、びっくりするほど絵になりますね』

 

その後、何着か選んであげたり、なのはが着てみたいのをいくつか試着しながら気に入ったのをいくつか購入した。

 

「ごめんね、お金出してもらって」

 

「いやこっちは幼なじみのキレイなところをたくさん見させてもらったしその料金だと思えば安いもんだよ」

 

「………もう!」

 

あ〜揶揄うの楽しい〜。

 

次のお店に移動する。どうやらなのはは既に行きたい店をピックアップしていたようだ。事前にリサーチするとはさすがっす。

 

『フードコートがあるかどうかしか調べなかったマスターとは大違いですね』

 

でも何が食べられるか気になる…気にならない?

 

「えっと…次はここなんだけど……」

 

「…!?」

 

思わず動揺してしまう。なんとなのはが次に選んだお店は…

 

下着専門店、ランジェリーショップだったからだ。

 

ス、スコルこれ俺がなのはの下着姿を見たのとは何も関係ないよね?実はなのはは時が止まった中でも意識だけはしっかりしてたとかそんなことないよね?

 

『そんなわけないじゃないですか。時間操作とか古代技術ならともかく今の魔法技術ではとてもできません…よね?』

 

大丈夫大丈夫落ち着け落ち着け、さっきのとはなんも関係ない。最初からなのははここを選ぶつもりだった。だから俺が覗きをしたこととは関係ない…はずだ。

 

「その…あきと君に選んでもらいたいんだけど……だめ?」

 

「……行くか」

 

そんな上目遣いで顔赤くされながらとか拒否できるわけないじゃん。ずるい。

 

その後、なのはの下着姿を(合法的に)見ることができたが…正直1回見てるのでなんとも言えない気持ちになった。股間は元気だった。

 

なのはが気に入った下着、俺の個人的に気に入った下着は全て購入した。…なんかそうしないといけない気がした。

 

『マスター、下着選びは普通でしたね』

 

服選びが普通じゃないみたいに言うな。

 

あと店員さんが微笑ましくこちらを見ていたが、覗きをしてしまったせいか妙な罪悪感で居心地が悪かった。

 

 

 

 

 

「今日は楽しかったよ」

 

その後もお店を回ったり、ハンバーガー食べたり、ゲームセンターの記録のことごとくを塗り替えたりして最初のショッピングモール前広場に戻ってくる頃にはいつの間にか夕方になっていた。

 

「私もとっても楽しかった」

 

なのはの方もご満悦といった感じだ。

 

「ね、ねぇ」

 

「うん?」

 

解散するかという雰囲気になるなか、なのはから声がかかる。夕日が彼女を照らすがその姿がどこか神々しく感じるのは俺だけだろうか。

 

「夕食はどうするの?」

 

「特に決めてないな。ついでにどっかで食っていくか?」

 

「そ、それなら!」

 

なのはが何かを言いかけたその時、どこからか爆音が聞こえる。それと同時に悲鳴も届く。

 

「スコル!」

 

『4時の方向、200m先で火災があったようです。魔力反応は感じられません』

 

ということは何かしら事故が発生したのか?

 

『防犯カメラからの映像ですがお店にクルマが突っ込んだようです』

 

怪我人は?

 

『出てます。…治療が必要な人も何人かいますね』

 

じゃあ俺が出張るしかないか…

 

『その場で高度な治癒魔法が行えるマスターは確実に必要でしょうね』

 

「悪い、なのは!行ってくる!」

 

「あ、私も!」

 

なのはも俺もセットアップして現場へ向かう、くっそせっかくの非番の日なのに結局こうなるのか…!

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

目の前であきと君は倒れた人達に治癒魔法をかけている。私は人々が混乱しないように誘導し、スコルさんの指示に従って怪我人を手当てしている。

 

『痛いよ…痛いよ……』

 

「待っててね。もう少しで治るから」

 

──スコル!手が回らんから一気に治すぞ!

 

──『了解。治癒魔法、集中型から範囲型にシフトします』

 

──あ、待って!結構ムズい!魔力消費エグい!

 

──『現在の進行状況なら問題なく治せます、我慢してください』

 

私には治癒魔法を行う才能も技術もないからこんなことしか出来ない。

 

エースオブエースがなんなのだ、これでは一般人となんら変わらないではないか。

 

「…やっぱり凄いよ、あきと君は」

 

みんなを色んな意味でビックリさせるのは昔と変わらない。

 

そして誰かのピンチには必ず駆けつけて助けてくれることも昔と変わらない、みんなのヒーロー。

 

そして……私が恋した………

 

彼の隣に並ぶためにももっと頑張らないと!

 

私頑張るからね、あきと君!

 

──あばばばばばばばばばば!!!

 

──『しっかりしなさい』

 

……大丈夫かな、あきと君。




次は催眠時間停止ファントムおじさんでも書いてみようかな…


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フェイトちゃんは触れ合いたい

フェイト回です。
空いた時間で少しづつ書いてたのであまり完成度高くないです…


─あー、こちら剣崎一等空尉。現場に到着した。既に敵グループは保護対象の掘削を開始している、指示を請いたいどうぞ─

 

─えーと、ハラオウン執務官です。こっちも現場に到着しました。作戦は対象の確保、保護です。制圧手段は任せますが、対象へ被害が向かないように細心の注意をお願いします─

 

─了解、作戦を開始する─

 

今回の作戦の指揮をする、フェイトの許可が出た。本来こんなに堅苦しい言葉を交わす必要はないのだが、こちらのふざけにも彼女は真剣に取り合ってくれたようだ。真面目かよ、いやしになる。

 

『いきなりふざけてそれに対応できないのを悪く思うとか頭のネジ吹っ飛んでませんか?』

 

悪くは思ってないから。天然だなと思っただけだから。

 

そして相方からは厳しい言葉が飛ぶ。コイツ、他のやつの言うことは尊重するくせに俺の言葉は全否定しやがる。

 

『道行く人を見て感度高そう、おしり弱そうとか考える奴の何を尊重すればいいんですか?』

 

あー、聞こえない聞こえない。さて、敵もいることだしさっさと終わらせて帰りましょうねー。

 

─時間停止─

 

時間を止めて、呑気に採掘作業をするゴロツキどもに手錠をかけて、その顔面を殴り飛ばす。

 

─時間停止、解除─

 

『ごぼぉ!?』

 

一斉に吹き飛んでいく様は写真に収めたくなるほど鮮やかだった。凄いな、こんな野郎どもでも人を感動させることができるなんて。

 

『あなたもそこそこ同類ですけどね』

 

スコルの言うことを無視して、周囲を探知し他に残りがいないことを確認する。保護対象である鉱物は少し削られているがまだ原型はしっかり留めているようだ。

 

てかこの地面から突き出してるこの宝石みたいなの何なの?

 

『戦略物資に分類される希少鉱石です。魔力の伝導率が極めて高く魔導砲など戦艦に用いられる兵器に多く使われます。この星は前に大規模な地震が起きたようですしその時に岩盤ごと隆起してきたのでしょう』

 

なるほどそれは確かに危ないから管理しようとするわ。自分たちの他にも戦艦とか持ってこられたらたまったもんじゃないしな。

 

『戦艦なら随分前に一つ落としてますしマスターの敵じゃないのでは?』

 

お前あの後大変だったの忘れたのか?戦艦落とせる単体勢力を上が恐れて俺、封印指定一歩手前までいったじゃん。

 

『なのはさんがブチ切れて自分も戦艦落とせますよ?って本部に告げに行ったのは凄かったですね』

 

やめろやめろ、おかげで何故か俺まで1ヶ月謹慎くらったんだから。

 

『でも結局それ以降音沙汰ないからよかったですね』

 

いやいやこっちが管理局に対して好戦的になってないからでしょ。こっちとしても揉めるのは勘弁願いたいから結果オーライだけど。

 

─あきと、こっちは終わったよ─

 

お、どうやら向こうは終わったようだ。声を聞くに無事に制圧できたようでなによりだ。

 

─オッケー、じゃあそっちにまず回収班向かわせるから。俺はまだこいつら監視しとくから─

 

─うん、ありがとう─

 

しっかしなんで執務官まで現場に駆り出されるんだろうな。あれって基本デスクワークでしょ?

 

『執務官にも逮捕権はありますし、現場に出ることは何ら不思議なことではありません。むしろ犯罪者を間接的にでなく直接的に対応できるので執務官としての仕事の手間も省けますし、管理局も要らぬ人員を割かなくていいので一石二鳥なんですよ』

 

うーん、なんか安全より効率を求められてるようでイマイチ釈然としないなぁ。

 

『ですので執務官には法の知識に加えて実戦の強さも必要とされてるのです。合格率1%未満は伊達じゃありませんね』

 

1%未満……フェイトって凄いよな〜。そんなに凄いのになんで俺の手を借りようと思ったんだろうな。

 

『制圧対象が複数群予想されるのと…あとは自分で考えてみてください』

 

あ、それ余裕だわ。俺だったら話しかけやすいし、有能過ぎて基本仕事溜め込まないから仕事を増やしたこととかで変に気を負う必要もないからな。あと強い。

 

『…………そっすね』

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

『ご苦労さまです!』

 

回収班が犯罪者をどんどん運んでいく。うーん、フェイトの方が多いな、負けたわ。

 

『いやミニゲームじゃないんですから』

 

いいだろ、やることちゃんとやってるんだし。みんなお前のようにしっかりしてないから。俺みたいに遊び感覚でやらないとやってられないから。

 

『仕事を遊びと捉えてる人は少数派です』

 

その後俺とフェイトは合流し、回収班を要請、指示を出していた。こんな辺境でもしっかり仕事してくれて全ての犯罪者を送還するのに10分もかからなかった。

 

フェイトは相変わらずいい体をしており、特に見せるわけでもないのにその大きな胸がバリアジャケットから絶え間なく自己主張をしていて、もはやそういうコスプレのようにしか見えない。

 

『一応幼なじみですが普通に欲情してません?』

 

馬鹿だな、幼なじみだから欲情するんじゃないか。

 

『えぇ…』

 

「今日はありがとう、あきと」

 

「ん?いや俺の方こそいい運動になったよ」

 

俺の言葉にフェイトや回収班の人は苦笑いを浮かべる。え、俺なんか変なこと言った?

 

『そりゃあ極悪犯罪者、しかも魔導師も含まれてるのにそれを捕らえるのを運動と言ったんですから引かれて当然です』

 

マジか、選択肢ミスったわ。困った時はいつでも言ってくれ絶対助けるからみたいなこと言えばよかったかな。

 

『まぁ、ある意味正解です』

 

なんだよある意味って。

 

『さっきのと一緒に考えてみては?』

 

さっきのってフェイトが俺を誘った理由?それとこの会話との選択肢だろ?

 

……………分からん。

 

『さて、報告書の内容でも考えましょうか』

 

え、待って!その俺に愛想尽かしたような対応やめてくんない!?やられてるこっちとしてはスゲェやらかした感じがして気になるのだが!?

 

「あきとは相変わらずだね」

 

「え?そりゃあこの程度の輩に遅れをとるわけにはいかないからな」

 

「ううん、そういうことじゃないの」

 

「ん、ならどういうことだ?」

 

「ふふ、なんでもない♪」

 

かわいい。

 

じゃなかった。なぁスコル今のはなんで俺笑われたのか分かるか?

 

『うーん、彼女に限って嘲笑うことはないと思うので何か別のことでしょうか?』

 

もしかしてこの前フェイト似の人が出るエロ本買ってたの知ってるぞ的な感じかな?

 

『いや待てもしかしてこの前私を置いて家出たのはそれですか?』

 

そうだが?

 

『…もう土下座でもなんでもしてヤラせて下さいって言えばいいじゃないですか』

 

馬鹿野郎!彼女たちには原作遂行という立派な役目があるんだぞ!

 

『もう勝手にしてください…』

 

──それでは失礼します!

 

回収班は最後の確認を終わらせたら早々と帰っていった。俺たちもここに長く留まる理由はないのでさっさとお暇するか。

 

「フェイト、帰ろうか」

 

「う、うん」

 

フェイトの方を見るとどこかぎこちない様子だ。キョロキョロと辺りを見回したりと忙しない。

 

まさか…敵か!?

 

『周囲に敵影なしです』

 

だ、だよな。てか俺自身も確認は怠ったつもりもないし。これでいたら俺も無能の烙印を押されてしまうぞ。

 

「あきと…あのね?」

 

「ん?」

 

「う、動かないでね?」

 

そういうとフェイトはぎこちない動きで俺に体重をかけるように寄り添ってきた。何かをすることはなくフェイトは俺の手を握りながら目を閉じ、そこから動く気配はない。しかしその顔はとても落ち着いてるように見える。

 

………スコル、解釈お願い

 

『ん〜普通に甘えたいだけじゃないですか?ほら彼女が小学生の時は会う度にこうしてましたよね?』

 

そうだったか?

 

…あ〜なんか手をよく握ってた記憶はあるな。俺の手を握ってると安心するとか言ってたから当時はされるがままになってたけど

 

思えばこうしてお互いに本格的に管理局に勤めるようになってからはこうすることはなかったような気がする。最後にやったのは執務官試験の前だったか?大人になったということで残念に思いながらもしょうがないと勝手に忘れていたけど

 

『フェイトさん的には甘えたいけど甘えづらい…ということだったんですかね?』

 

なるほどな〜。管理局の一部の女性陣からは王子様扱いされてるだけにこういうギャップは結構くるな。

 

『こんなところでお猿さんにならないでくださいね?』

 

なるか!いやでもあんまりやられるとヤバいかも…

 

『マスターが社会的に死んでいくとこなんか見たくないので全力で耐えてください』

 

理性ガガガガガガガガガガガガ!!!

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

公私混同はいけないのは分かってはいるけどやっぱり自分を止めることは出来なかった。複数人で動く必要がある案件を受け取った瞬間に真っ先に浮かんだ今回の作戦。

 

「フェイト、帰ろうか」

 

「う、うん」

 

辺りを見渡す。よし誰もいない。本来なら任務を見守り、場合によっては指示を出す後方支援も今回はあきとがいるから大丈夫と伝え、監視もされていない。

 

「あきと…あのね?」

 

「ん?」

 

「う、動かないでね?」

 

あきとの手を握り、そのまま体を預ける。とても、とても久しぶりに握るその手は前よりもずっと固く、大きかったけど……その温かさは変わらなかった。

 

「あきとの…固くて大きいけど………やっぱり温かいね」

 

「お、おう」

 

とても安心する。どんなに緊張しても、どんなに不安でもこうしているだけで落ち着けるし何でもやれる気がしてくる。

 

「フェイトさん?」

 

「もう少しだけ…もう少しだけ…」

 

今離れると次にこの温もりに触れられるのがいつになるか分からない…だから今この瞬間はワガママだけどもう少し堪能させてもらおう。

 

 

 

 

 

「二人とも、おつかれさま!」

 

「…あぁ」

 

「う、うん」

 

「ちょっと待って二人ともこの任務の間に何があったのかな?詳しく聞かせて欲しいな?」

 

「な、なのは?どうしたの、目が怖いよ?」

 

「フェイト、頼むわ」

 

「えぇ!?」




フェイト・T・ハラオウン
あきとのことが大好きだが、なのはやはやても同じくらい好き。一夫一妻の考えがないだけに皆あきとと結ばれればいいのにと思ってる。


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ちっこい天使とでっかい子ども

自分の推しである大天使ヴィータちゃんが出ます。ヴィータ本…増えて…増えて…増えろ!(豹変)


「くっそ…シグナムのやつ、どんだけハイになってんだよ…!」

 

本来感じる必要のなかった疲労感は普通の疲労よりも一層俺の精神を重く蝕んでいるようだ。いつもならこれくらい特に何も感じることなく帰宅するのだが、どういうわけか足が重い。

 

『彼女にとってマスターとの模擬戦は今の生きがいの一つですからね。良かったじゃないですか、美女とキャッキャウフフできるんですから』

 

いやアレのどこがキャッキャウフフだよ。向こうの目、瞳孔開きまくってたし口から出る言葉もキャッキャじゃなくていいぞォ!もっとだァ!とかトチ狂ってるしもう俺に精神攻撃してるようにしか思えなかったぞ。

 

『でもしっかり撃墜するとは流石です』

 

まぁ負ける理由にはならないからな。

 

『気絶したシグナムさんをお姫様抱っこで医務室に運んだのもポイント高いですよ?』

 

それは演習場の後がつっかえてたからだ。元々なのはの教導時間だったのを後ろにズラしてもらったんだから終わったらさっさと片付けて撤収するのが常識だろ?

 

『そうですね、なのはさんがシグナムさんを恨めしそうな目で見てたのを除けば完璧でしたね』

 

なんでやねん。気絶してるんだから運ぶのは当たり前だろ。

 

『本音は?』

 

シグナムのおっぱいマジでけぇ、肉体も引き締まってるし、汗の匂いも相まって最高でした。ずっと深呼吸してた。ほんと寝てれば美女、起きたら野獣だけど。

 

『平常運転で安心しました。さすがは私のマスターです』

 

皮肉?

 

『皮肉』

 

 

 

ようやく家に到着する。家といっても仮拠点的なところであり、管理局に近いところに位置してるため、購入しただけの場所だ。まぁ管理局に近いことと普通に広いのもあって知り合いの溜まり場になることもしばしばあるのだが。

 

「うん…?」

 

合鍵を差し込むのだが、既に開いていたようだ。オートロック式ではないため、鍵のかけ忘れかと思ったがそれならばその時にスコルが教えてくれるはず。

 

『マスター、警戒……はしなくていいですね』

 

「うん、この魔力の感じはあの子か」

 

部屋の中の魔力を探知する限りでは怪しい人物ではないことが分かる、というよりバリバリ知り合いだった。

 

「ただいまー」

 

なぜお前がここにいるのか、そもそもいつ合鍵を用意したのか、てか何しに来た、様々な疑問が駆け巡るが家主である自分が外で待機してるのも変だと思い、中へ入る。案の定待っていたのは自分がよく見知った人物であった。

 

「おかえり!遅かったな!」

 

「…なんでヴィータがいるんだ?てか鍵は?」

 

「はやてからもらった!」

 

「……」

 

どうやら俺の友人にプライバシーについて色々教える必要がある奴かいたらしい。たしかに合鍵は渡したがホイホイ誰かに渡すんじゃねえよ。これは☆OHANASHI☆。

 

────────────────────

 

 

 

 

「……むぅ」

 

「目ぇ覚めたかあ?」

 

「主はやて……」

 

ここは…メディカルルームか。どうやら暁斗との模擬戦の後、私は気絶してしまったようだ。

 

「まったく…いくら楽しいからって模擬戦で魔力使い果たすやつがいるか」

 

「け、決して楽しんでは…!」

 

たしかに暁斗との戦いで気分が高揚してしまったのはあるかもしれないが、それは己を鼓舞するために気合いを入れただけであってそこに楽しいという感情は……ないはずだ。

 

「それならあそこまで怖い笑顔浮かべんで」

 

「うぐ……ですが、気絶したのは暁斗の攻撃です!」

 

「それは自分がまだやりたいと駄々こねるからや!子どもか!」

 

「うぐぐぐ」

 

いや、たしかにまだやりたいとは言ったがそれはまだ魔力がゼロではなく僅かに残ってただからだ…多分。

 

「とりあえず、しばらくアキトとの模擬戦は無しやで」

 

「そんな!?後生です、主はやて!どうかそれだけは!」

 

「アホ!いちいち限界まで戦ってたらアキトもシグナムも()たんわ!」

 

「うぅ…」

 

そうか…。主はやてに言われたのではしょうがない。大人しく…大人しく…して……おくか…。

 

「そ、そんな落ち込むんか?」

 

「……主はやては自分の生きがいを奪われたらどう思われますか?」

 

「そんなに!?」

 

「当たり前です!暁斗との闘いほど私の血肉を湧き上がらせるものはありません!」

 

「……アキトも大変やな」

 

「そういえば暁斗はどこへ?次の──もとい運んでくれたお礼を言いたいのですが」

 

「アキトならもう帰ったで。ついさっきや」

 

「むっ…なら今から走れば間に合うか」

 

「アホ!そんなこと言って、また模擬戦の約束取り付ける気やろ!」

 

「…トレーニングです」

 

「一緒や!……アキトの方にはヴィータがお礼をしに行っとるよ。自分は少し頭冷やしぃ」

 

「ヴィータが?それは珍しいですね」

 

「ヴィータもアキトと話したがってたんや。ええ機会やしこの際気の済むまでやらせたろ」

 

「…大丈夫でしょうか。ヴィータを疑うつもりはありませんが、少々不安です」

 

「大丈夫や。ヴィータはそこにいるだけで癒しになるからな」

 

「??」

 

────────────────────

 

 

 

 

「ほら!たくさん食えよ!」

 

目の前には溢れんばかりに具材が詰め込まれたすき焼き鍋が置かれている。パッと見、普通のすき焼き鍋だが、それを作ったのは目の前の(見た目)小学生が作ったのだから驚きだ。

 

「…いただきます」

 

『珍しいですね。ヴィータさんがマスターに料理をふるまうなんて』

 

珍しいというか初めてなんだが。こんなに可愛い子が俺のために一生懸命料理してくれたと思うと胸と股間が熱くなるんだが。

 

『熱くなるのは上半身だけにしてください』

 

「…うまい」

 

「だろ!あたしだってやればできるんだ!」

 

はたしてそれは俺に向けてなのか、ここにはいない主のはやてに向けてなのか。ともかく俺の感想にヴィータはガッツポーズをとる。かわいい。いやし。

 

うん、このすき焼きたぶんレシピ通りに作ったんだろうな。ヴィータが自分で料理できるとは思えないし。

 

『それでもレシピ通りにできるならそれなりに素養はあると思います』

 

たしかに。こんなに小さいのに家庭的とかそういうところははやてと似てきてるな。

 

「ヴィータは食わないのか?」

 

「あ、あたしは後でいい!」

 

そういうとおもむろに手を背中に隠すヴィータ。ふむ、これは想像通りなら料理に不慣れなせいで指を怪我したと捉えるべきかな?

 

『かもしれませんね』

 

「…そうだ。お礼に新作のゴリゴリ君アイスやるよ」

 

「ほんとかぁ!?」

 

俺の言葉に目をキラキラさせるヴィータ。いやもういちいち可愛い。めちゃくちゃ愛でたい。ハグしてそのまま頭撫でながらもみくちゃにしたい。

 

『かわいいものを愛でたくなる気持ちは分からなくもないですが取り敢えず落ち着いてください』

 

席を立ち、台所へ向かう。冷蔵庫を漁る前にキッチンを一通り確認する。

 

「うわぁ……」

 

キッチンは器具は出しっぱなし、素材の切りくずは至るところに落ちており、全く片付けが済んでいない様子だった。

 

『初めてなんですから仕方ありません。ここは彼女の優しさに免じてあげましょう』

 

まぁ片付け自体は文字通り秒で終わるから気にはしないし、厚意をこんな形で台無しするのも気が引けるししょうがないか。

 

冷凍庫からゴリゴリ君アイスを取り出し、ヴィータに渡す。

 

「ほらよ」

 

「ありがとな!」

 

「ちょっとごめんな」

 

「え?…あっ!」

 

アイスを受け取ろうとしたヴィータの手を取る。予想通り指にはいくつか絆創膏が貼られていた。

 

「…料理を作ってくれるのはいいが、怪我したら元も子もないだろ」

 

『治癒魔法、展開』

 

治癒魔法を発動させ、ヴィータの指の怪我を治す。幸い、切り傷だけだったのですぐに治すことができた。

 

「……あたしが勝手に傷ついただけだ」

 

「アホ、それでもこっちは心配になるんだよ。そもそもなんで不慣れな料理なんてしたんだ?」

 

「シグナムが迷惑かけただろ?そのお詫びだ」

 

「…あー」

 

なるほど家族の不始末だからその一員として責任を取りに来たって感じか。うーん、この流れはエッチなお願いしていいやつか?

 

『そんなわけないだろ』

 

ですよねー。

 

「シグナムのこともだけど、あたしも個人的にアキトにはお礼を言いたかったしな」

 

そう言いながら照れくさそうに頭を搔くヴィータ。かわいい、好き。しかし、俺はヴィータに感謝されるようなことをした記憶がないのだが。

 

『日頃の感謝じゃないですか?』

 

それこそ謎だろ。日頃って俺がそんな善人に見えるか?

 

『それはないですが』

 

おい即否定されるとは思ってなかったぞ。

 

『しかしマスターの行いが誰かの助けとなっているのは事実です。それはマスターが決めることではなく誰かが勝手に認めるものです。マスターが悪人かどうかなんて関係ありません』

 

いや悪人なんて一言も言ってないのだが。

 

「そうか、ありがとな。じゃあ飯食うか」

 

「じゃあアイスは後で食べるか!」

 

そう言って冷蔵庫の方へ駆け出していくヴィータ。うーん、子どもっぽい服も相まってよくできた妹にしか見えない。

 

『よかったじゃないですか。前に読んだエロ本は妹モノでしたよね?』

 

いやたしかに憧れはあるけど近親相姦してこようとする妹とか正直足枷以外の何者でもないのだが。

 

「……」

 

キッチンの方からヴィータが帰ってきたのだが、何故か浮かない顔をしていた。

 

「どうした?」

 

「…すまん。台所のゴミはちゃんと片付けて帰るから」

 

どうやらキッチンの惨状に今気づいたらしい。いや遅いわ。でもちゃんと気づけてえらいぞ。

 

「そっちは俺が片付けておく。もらってばっかりじゃ申し訳ないしな」

 

「い、いやそれじゃお礼の意味がなくなるだろ!」

 

「ならこれは俺からヴィータへのお礼だ。俺もヴィータには日頃からお世話になってるしな」

 

「あ、あたしはアキトになにもしてやれてないぞ?」

 

「それは俺が決める。少なくとも俺はヴィータがいてくれて良かったと思ってるぞ」

 

「あぅ……」

 

『私の意見丸パクリですか?』

 

はて?そんなこと言ってましたか?

 

「よし、じゃあ飯食うか!」

 

「そ、そうだな!」

 

む、ヴィータの顔なんか赤くないか?普段やらないことをしたから疲れたのかな?それならちゃんと労ってあげないとなぁ(極悪顔)

 

『そうかもしれないがそうじゃない』

 

─────────────────────

 

 

 

「お、おいヴィータ、流石にお酒はやめといた方がいいんじゃないか?」

 

「大丈夫だ!子ども扱いするな!」

 

すき焼き鍋もあっという間に無くなり、片付けも二人で済ませた後、ヴィータがなんとお酒を持ってきていたことが発覚した。

 

「あたしがお酒に弱く見えるか?」

 

「見える」

 

「見てろ!これぐらい余裕だからな!」

 

そう言って、ヴィータはビール缶一つを一気に飲み干す。おいおい一気飲みは危ないぞ。

 

「…うぇ。どうだ!」

 

一瞬不味そうな顔をしたが、やってやったぞという風にこちらを見るヴィータ。かわいい、いやいやそうじゃなくて。

 

「お酒なんてあたしが本気を出せばどうってことないのさ!」

 

 

 

 

 

「ううう、はやてもアキトもなのはも皆どんどん強くなって、シグナムも前とは比べものにならないくらいに強くなってるのに…あたしは全然強くなってないんだ…ううう」

 

その後、ヴィータは酔った。普通に酔った。しかも泣き始めた。これは多分めんどくさいやつだ、全く酒に呑まれるとは情けないやつだ。

 

『そういうマスターも酒に呑まれないでくださいね?』

 

おいおい、俺が酒に負けるようなやつに見えるか?ほら、もう三本目だけど全然余裕だぞ?

 

『いつもより飲んでいます。これ以上飲むのはオススメできません』

 

大丈夫大丈夫!はい、四本目いっきまーす!

 

 

 

 

 

「くっそ…くっそ……俺の周りにはなんで真人間しかいないんだよ!お前らみたいな真っ直ぐな人間見てるとな!死にたくなるんだよこっちは!俺はお前らが思ってるような人間じゃないんだよ!」

 

「そんなことない!アキトはいい人だ!じゃなきゃ皆お前に感謝するもんか!」

 

「うるせぇ!そっちの理想を俺に押し付けるな!抱き枕にするぞ!」

 

「なんだよそれ!ご褒美か!」

 

「なあああんでえええええ!?」

 

『さて、明日の日程を調整しておきましょうかね』

 

この後、めちゃくちゃ(ヴィータを抱き枕にして)安眠した。




あ、あれ。あたし寝ちゃったのか?

動けない……

え!?なんであたし、アキトに抱きつかれてるんだ!?

アキトの匂い……いいな…………

ダメだ!この匂い、頭がおかしくなる!

離れないと…離れないと……

頭が…なんだかふわふわする

「ふわぁ……」


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デバイスに肉体がついたので普段話せないことを話す

スコルに肉体(女体)を与えてみただけの話です


「生体デバイスの試験運用?」

 

『これはまた面白いことしてますね』

 

朝一番に職場に来て渡されたのは上からの通知、指令書であった。またか…と思うがいままでもこういうのは何度もあったしこれ俺じゃなかったら絶対無理だろ的なモノもいくつかあったので慣れてしまった。

 

しかし…今回のは……

 

「変わってるよな」

 

『次元犯罪者グループを全員捕まえてこいとかではありませんでしたね』

 

「いや流石にもうそれは無いだろ」

 

昔受けた指令(無茶振り)が脳裏をよぎるが、思い返しても不快感しか浮かばないため直ぐに思考から切り捨てる。

 

「てか生体デバイスとかこれどう考えても」

 

『私のデータを取るのが目的ですよね』

 

俺の中で一番のブラックボックス、専用デバイスであるスコルの秘密を探るのが目的だろうというのは手に取るようにわかった。一応汎用型インテリジェンスデバイスとして通ってはいるが、様々なストレージデバイスを統制し、さらにメンテナンスまでこなす万能っぷりは研究者からすれば是非とも調べてみたいのだろう。

 

『そこら辺のデバイスと変わらないと思いますがね』

 

「まぁ変わろうと変わらなかろうと流石に調べさせるつもりもないけどな」

 

『そうですか?私は別に構いませんが』

 

「お前に何かあったらどうするんだよ。これでお前が壊れても俺は他のデバイスを使うつもりはないからな」

 

『…………そうですね』

 

「さて、今日も一日仕事頑張りますかね!」

 

『…………』

 

──────────────────────

 

 

 

 

『マスター、起きてください』

 

「ん……もう朝か」

 

そしてまた今日もいつも通りスコルの目覚ましで起床する。最近何かと忙しく、睡眠時間も削り気味なのでこうやって起こしてくれるものがあるとありがたい。

 

「あー、今日の朝飯なんにしよ〜」

 

相変わらず瞼は閉じたままだが、寝ぼけた頭を働かせながら今日の朝の献立を考える。うーん、買い置きしてたパンまだあったかな〜。

 

『パンはありませんでした。朝食はもうできていますので早く起きてください』

 

スコルの急かす声が聞こえてくる。…ん?もうできてる?

 

「なんだなんだ、今度は誰が朝飯作ってくれたんだ?」

 

フェイトか?なのはか?はやてか?飯を作ってくれるのは結構だが、せめて前日に一言言って欲しいぞ。てか朝はお前らも忙しいんだからこんなことに時間使うなよ。

 

『今日は誰も来てませんよ』

 

「はい?じゃあ…誰…………」

 

スコルの言葉に疑問を覚えながら、瞼を開く。視界にまず飛び込んできたのは絹のように白い髪を腰まで伸ばした美女。白いロングTシャツにロングパンツという簡素な服装だが、それだけにモデル顔負けのプロポーションが強調されている。顔は整っていながらも無機質さを感じさせ、無感情な目をこちらに向けている。

 

「…もしかして、スコルか?」

 

『はい、おはようございます。マスター』

 

既に脳がキャパオーバーしているが聞こえてくる声がその口から発せられているという事実が現実だと俺に教えてくれている。

 

「えーと、スコル……さん?」

 

『ふふ、朝ご飯できてますよ?早く起きて顔を洗ってください』

 

「あ、はい」

 

その時の微笑むスコルの顔がまるでイタズラに成功した子どものように見えた。普段は無機質な感じだけど本当はこれくらい表情豊かなのか?

 

リビングへ向かうと既に朝食が用意されていた。メニューも見るに和食のようだ。米に味噌汁に、焼き鮭まで用意してある。

 

『冷めないうちに食べてください』

 

「え、あ、うん」

 

朝起きたら、スコルが擬人化していた。…うん、これは夢だわ。よしもう一回寝よう。

 

『何してるんですか、ボーっとしてると遅刻しますよ』

 

「あ、はい」

 

─────────────────────

 

 

『マスター。この後、候補生の教導が入っておりますのでそれらの仕事はそれまでに終わらせてください』

 

「もう終わったぞ」

 

『流石です、マスター』

 

「お、おう」

 

おかしい。いや仕事は相変わらず順調なのだが、既に流れ込んだ仕事をあっという間終わらせたのだが、すごい違和感を感じる。スコルが本日の業務を報告し、俺がそれを秒で終わらせて自身の才能に酔う…いつも通りだ。いや全然いつも通りじゃねえわ。凄いやりづらいわ。いやスコルが一部やってくれるから本当に仕事は秒で終わってるのだが。

 

それもこれも朝いきなり美女となって目の前に現れたスコルのせいだ。普段と同じように声をかけてくれるのだが姿が変わるだけでこうも調子が狂うのか。

 

『このモデルははやてさんが考えてくれました』

 

どうやら俺の視線に気づいたようでスコルが言葉を投げかけてきた。てかその姿、はやてが考えたのかよ。いやグッジョブ、才能あるわアイツ。

 

『マスター、コーヒーです』

 

「おう」

 

『マスター、お探し物はこれですか?』

 

「お、おう」

 

『マスター、本日の昼食は12:10からとなっています』

 

「……」

 

まるでこちらの思考を読んでいるかのように俺が考えていたことに対して答えてくる。いや実際に読まれているんだけど。

 

『いつものことですよ?』

 

「…ナチュラルに思考を読むな」

 

『ですからいつも読んでいるではありませんか』

 

それはそうなのだが。これはこれで違和感が凄いんだよ。てかスコルはいつからその姿になったんだ?

 

「スコル」

 

『なんでしょうマスター』

 

「いつ生体デバイスに?」

 

『マスターが寝た後です』

 

「誰にしてもらった?」

 

『はやてさんです』

 

「魔力は?」

 

『現在はデバイス内部にベルカ式カートリッジとマスターの魔力リンクを並列させて運用しています』

 

「……」

 

なんだろう、ここまで用意周到ってことは始めから計画されてたってことだよな。スコルが俺に黙っててのは考えにくいから昨日はやてが入れ知恵したな?

 

「おー、スコルさん制服姿も映えるな〜」

 

噂をすればなんとやら、全ての元凶である八神はやてがやってきた。その顔は全てを察してるようで、また、俺が驚いたことも見抜いてるのかニヤケ気味だった。

 

『はやてさん、こんにちは』

 

「こんにちは。いや〜我ながらいい出来やな!これならアイドル目指せるで!」

 

『私はマスター専用ですので』

 

「おいその姿で誤解を招くようなことを言うな」

 

周りの職員が今の言葉を聞いてかザワザワと騒ぎ始める。おいこら間違っても奴隷じゃないからな。

 

「はやて、いつの間にスコルに入れ知恵したんだ?」

 

「入れ知恵とは人聞きの悪いな〜。わたしも昨日言われてびっくりしたんやで。でもスコルさんのお願いやし…」

 

そう言い、はやてはスコルの体に抱きつき…正確には胸部の部分を揉みしだきながら

 

「わたしも興味あったしな!」

 

『はやてさん?』

 

「こいつ……」

 

まぁともかくスコル自身の願いだったというなら俺からとやかく言うことでもないか。

 

「はぁ…スコル、教導の準備するぞ」

 

『資料でしたら既にまとめています』

 

「……」

 

「どれどれ〜?おぉ、ほんま分かりやすいな〜。これスコルさんが?」

 

『つい先程』

 

「…スコルさん、わたしの秘書にならん?」

 

『私はマスター専用ですので』

 

「スコルはやらんぞ」

 

有能なのは俺も分かってるが、だからこそ誰かに譲る気もない。おい誰だ今痴情のもつれとか言ったやつ。

 

──────────────────────

 

 

「以上だ、各自ケアを怠るなよ」

 

─あ、ありがとうございました〜

 

俺からの終了合図を受け取ると同時にその場にへたり込む空戦候補生達。おいまだ上官は目の前にいるんだぞ。

 

スコルに戦闘の補助は任せず、今回は客観的な計測をお願いしている。一応ライフルだけ転送してもらったが、後のバリアジャケットなどの魔法関連は全て自分で処理した。

 

『皆さま、お疲れ様でした。私から個人的にアドバイスさせていただきます』

 

スコルが候補生達の前に立つ。いきなり美女が現れてギョッとする候補生達だが、そんなこと気に止めずスコルはアドバイスを始める。

 

「本当ならここまで俺がやるはずなんだが…」

 

しかし俺がやることをスコルが分担してくれるなら俺としても楽できるので問題ない。さっさと次の仕事の準備を…

 

『待ってくださいマスター。マスターにも私からアドバイスがあります』

 

「え?」

 

え、なんで上官の俺が?と思ったが冷静に考えればいつもスコルから色々とアドバイスは貰っていた。ただそれを普段は念話でやっていたから気づいてなかっただけだ。

 

『マスター、まずは本日の教導大変お疲れさまでした。デバイスの補助無しのだったにも関わず普段と変わらない戦闘力を維持されていたのは流石です』

 

「お、おう」

 

スコルが俺を賞賛する。なんやかんや褒めるところはしっかり褒めてくれるのだが何故かいつもと違って緊張してしまう。

 

一方、先程まで尊敬の眼差しを向けていた候補生達の目が一転化け物を見るような目に変わる。おいやめろ、他のやつと違うことは分かるけど傷つくものは傷つくんだぞ。

 

『マスター、話を聞いてますか』

 

「うお!?」

 

よそ見していたのを悟られたのかスコルがズイっと寄ってきた。こころなしかその顔は少し怒っているように見える。身長が俺より少し低めだからか上目気味だ。

 

やば、こうして近くで見るとスコル結構可愛いな…

 

『なっ……マスター!』

 

あ、やべ。そういえば俺の心読まれてるんだった。

 

「す、すまん」

 

『……まぁいいでしょう。ともかくまだ魔法の発動に粗が見られますのでそこだけ覚えておいてください』

 

そう言ってスコルはさっさと演習場を後にしていった。えーと、もしかして照れてたのかアイツ?そういえばスコル自身をあまり褒めたことはなかったな。

 

「うーん、思えば俺自身スコルを少し(ないがし)ろにしていたかもしれないな」

 

いつも側にいて、どんな時も的確なアドバイスをくれていたが俺はそれを当たり前と思っていた。後で感謝の気持ちくらい伝えとくか。

 

おい候補生共、さっきまで化け物を見る目で俺を見てただろ。なんで微笑ましいものを見る目に変わってんだよ、練習量増やすぞコラ。

 

その後の業務も普段より効率よく進んでいき、咄嗟のトラブルにもスコルが迅速に対応してくれるので本当に苦労もなくその日を終えられた。途中通りかかったなのはが白目を剥いていたがそれ以外は特に何も無かった。

 

『マスター、今日一日どうでした?』

 

今日もいつものメンツで帰路に着く。いつものメンツと言っても俺とスコルだけだが、今日は一人ではなく二人だ。

 

「そうだな……いつにも増して楽な一日だったよ」

 

そしていつにも増して緊張した一日だったな。

 

『それは良かったです』

 

「…そうだ、スコル。お前なんで生体デバイスを?」

 

なんやかんや一番聞きたかったことを今日聞けてなかったな。

 

『深い意味はありません…強いて言うなら興味があったんだと思います』

 

「それで?感想は?」

 

『体を動かすのは存外億劫なのですね。しかしこの体でないと感じられないことも沢山ありましたので良い経験になりました』

 

「それはよかった」

 

まぁなんにせよスコル自身が楽しめたなら問題ないか、俺としても今日一日楽できたから言うことないし……いやあったわ。

 

「スコル」

 

『はい?』

 

「いつもありがとな」

 

『…………………え?』

 

「いや今日お前が人型になって色々考えさせられたというか…ともかくいつもお前に助けられてばっかりだったのに碌にお礼を言えてなかったからな。だから…」

 

「ありがとう…こんな持ち主だけどこれからもよろしく頼む。やっぱり俺にはお前が必要なんだ」

 

我ながらあまり良い言葉が使えてないが、心からの本心を伝える。自分をいままで一番支えてくれたのに感謝すら述べてなかったとか笑えないな。

 

「じゃあ帰る……スコル?」

 

スコルの様子がおかしい。顔を伏せて、ぷるぷる震えている。こころなしか顔が赤い気がする…まさか

 

「おい!まさか生体デバイスに何か入ってたのか!?返事をしろ、スコル!」

 

はやてもスコルもいるから大丈夫だとタカをくくってたのがまずかったか…くそ!

 

『は、はい』

 

蚊の鳴くような声で返答してくるスコル。明らかに動きがおかしい。俺と話す時はしっかり目を合わせてくれていたのにそれすらしてくれない。

 

「スコル!俺が分かるか!?」

 

両手でスコルの頭を掴み、無理やりこちらに顔を向けさせようとするが

 

『だ、大丈夫です!マスターが思うようなことは何もありませんので!』

 

俺の手首を掴み、全力でスコルが抵抗してきた。

 

『マ、マスター…今顔は……』

 

「ふざけるな!お前に何かがあったらどうするんだ!俺のデバイスはお前しかいないんだぞ!」

 

『…!!だから…そういうのです!』

 

「ごはぁ!?」

 

いきなりスコルが正拳突きを放ってきた。その拳はキレイに俺の鳩尾を撃ち抜き、俺の意識は徐々に遠ざかっていった。

 

『あ……。マスター!』

 

 

その後俺が病室で目覚めるのは次の朝でスコルはこの件に対して黙秘するし、はやてやなのはからは俺が悪いと言われる始末。

 

………もう絶対生体デバイス使わないからな!?




スコル
この作品の主人公である剣崎暁斗の専用デバイス。あらゆる魔法式、デバイスを内包しデバイスのメンテに加えユニゾン機能まである超汎用型インテリジェンドデバイス。他のインテリジェンドデバイスよりも感情豊か…らしい(使用者談)。人格モデルは女性であるが本人に性別の認識はない。強いて言うなら女性よりとのこと。


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占いも存外馬鹿にできないと思う今日この頃

なんか別の作品が日間ランキング一桁入りして怪文書さん!?となってしまった。メインこっちなのに泣


──今日のラッキーパーソンは〜恋人です!特に魔導師の方だったりすると今日一日は最高のひとときを過ごせるでしょう!できてなくても今日アタックすればもしかすると⋯!

 

「⋯⋯えぇ」

 

なんだこの占い。朝ニュースを確認しようとテレビつけたら一発目からこれかよ。絶対リア充爆発しろ民が文字通り爆発するだろこれ。

 

『ちなみにこのテレビ局のスポンサーは管理局です』

 

出来レースじゃないですかヤダー!

 

「てかそんなに印象悪いのか⋯管理局」

 

『マスターやなのはさんの活躍で世間的には良い方向に進んでますが、汚職や横領が無いわけではありませんからね』

 

「あぁ⋯」

 

そういえばこの前捕まえた次元犯罪者に催眠かけて全部吐かせたら、高官の名前出てきて現場凍りついたなそういえば。まぁ速攻で証拠揃えて牢屋送りにはしたけど。

 

まぁなんにせよこの占いは俺には関係ないな、彼女いないし。まぁ⋯好かれてはいるけど。

 

『今日は告白の嵐かもしれませんね』

 

えぇ〜まじぃ〜?いやー、困っちゃうなー俺は誰のものでもないんだけどな〜。でも世界中の俺のファンを落胆させるのもな〜。

 

「⋯スコル、世界中のレディーのためにも今日は仕事休むか」

 

『はよ行けカス』

 

──────────────────────

 

 

 

 

──おはようございます!

 

「おはよ」

 

元気よく挨拶してくる可愛い後輩たち(下っ端ども)に手を挙げて、挨拶を返す。うん、朝から暑苦しいなおい。

 

『慕ってくれる人にそれはないでしょ』

 

うるさい、どう思うと俺の勝手だろ。別に尊敬のまなざし向けられるのや大衆にキャーキャー言われるのは大好きだけど朝イチでそういうの向けられるとテンションについていけないんだよ。

 

「あ、おはようあきと君」

 

「ん、なのはか。昨日も遅かったのに朝から教導か?」

 

「うん。皆が頑張ってるのに私だけ休むなんてできないからね」

 

「⋯せやな」

 

なあなあスコル、なのはが真面目すぎるんだけど。これまた過労と疲弊でリンカーコア破損とかならないよね?

 

『彼女も前のように限界を超えて酷使してるわけではないようですし問題ないかと。それにダメになったらなったでまたマスターが支えればいいじゃないですか。楽しかったですか?二日で三時間しか寝れないあの日々』

 

おいやめろ、確かに決めたのは俺だが、病室で人知れず泣くアイツを見てられなくて、なのはが背負ってた仕事全部を消化し尽くしたあの地獄の日々を思い出させるんじゃない。

 

「ま、無理はしないようにな」

 

「うん、もう迷惑かけないから」

 

そう言って明るく微笑むなのはの顔に疲労の色は見られない。まぁ大丈夫そうならいいかな。

 

「そうだ、あきと君お昼時間空いてる?」

 

昼は暇になったっけ?

 

『先の汚職の件の取り調べ次第かと』

 

まぁそれは催眠かけて吐かせればいいし。

 

「問題ない。昼飯食う時間ならいくらでもあるぞ」

 

「よかった、じゃあ久しぶりに一緒に食べようよ」

 

そう言ってなのはは肩にかけたバッグからやや小さめの箱を取り出す。

 

「これ、まさか」

 

「うん、お弁当作ってみたんだけど⋯迷惑だったかな?」

 

いやそんな上目遣いで悲しそうな表情作るなよ、わざとか?わざとなのか?可愛いぞもっとやれ。

 

「そんなわけないだろ、俺がなのはが作ってくれた物を拒んだことがあったか?」

 

「⋯!ありがとう!」

 

ぱあっと花が咲いたように笑うなのは。そこだけは出会った頃から変わっていない。かわいい(脳死)。

 

『本音は?』

 

正直お弁当じゃなくてラーメン食いたかった。

 

『どうして素直に喜べないんですか』

 

そうは言うが、何事にもタイミングはあるだろ。急に来られても対応に困る。スコルだっていきなり俺から「たまには他のデバイス使ってみるよ」って言われたら反応に困るだろ?

 

『困るっていうかそのデバイスを破壊しますね』

 

⋯⋯⋯え

 

『私を扱えるのはマスターだけですし、マスターを御せるのも私だけなので』

 

え、あ、うん。

 

どうやら地雷を踏んでしまったようだ。声は無機質だが圧に似たものを胸元の宝石から感じる。これは怒らせてしまったかもしれない。デバイスからしてみればお前もういらないって意味合いになるのか?それだったら流石に悪いな。

 

スコル、冗談だ。お前の言う通りだし、そもそもお前以外のデバイスを使うつもりは無いよ。

 

『⋯⋯⋯軽率な言葉は控えてください』

 

声色は分からないが、圧が引いたのでひとまず治めてくれたようだ。スコルが居ないとマジで俺何もできないからな、唯一の相棒としてこれからもよろしくな。

 

『マスターは卑怯です』

 

卑怯者とは言われるけど俺今回は何も卑怯なことしてなくね?

 

『してます』

 

えぇ⋯⋯。

 

──────────────────────

 

 

よし、アタック成功!いや、まだ成功じゃない⋯⋯まだあきと君にお弁当をあげただけじゃないか。まだまだ気が抜けない。今日のお弁当にはハンバーグとかあきと君が好きな物を入れてみたけど⋯大丈夫かな?好み、前と変わってたりしないよね?一応味見したけど美味しいって言ってくれるかな?

 

まさか、たまたまあきと君へお弁当を作ってみたらその日の占いで効果的と言われるとは思わなかった。これはきっと天啓、そう、神様が今日はいけると言ってるに違いない。

 

お昼までまだ時間があり、そもそも仕事はまだ沢山ある。もしお昼までに仕事が終わらなかったらあきと君と一緒にお弁当を食べれなくなってしまう。

 

「よし!頑張るぞ、私!」

 

今日はアタックし続けるんだ、占いにもそう書いてあったし。なにより、最近私負けヒロインとか言われがちだからここらで挽回しないと!

 

─────────────────────

 

 

 

「〜♪」

 

『今日はご機嫌ですね』

 

「そりゃあな」

 

なにせ、朝からわざわざなのはが俺に弁当を作ってくれたんだからな。これ絶対俺のこと好きだろ、絶対そうだぞ。

 

『⋯前々から思ってましたがマスターは周囲に好かれてる自覚はあるんですね』

 

え?そりゃあお前、こんな顔良し、性格良し、収入良しなパーフェクトイケメン超人である俺に惚れない女なんていないでしょ?スコルさん冷静に考えてくださいよ。

 

『⋯⋯私はマスターのことを鈍感クソ野郎といままで思っていましたが』

 

おい待て今悪口言っただろ?

 

『実際は自惚れ鈍感クズ野郎だったんですね』

 

おいもう悪口とかのレベルじゃねえぞ。笑いで済ますとかそんなもんじゃなくなってるぞ。

 

『好かれてる自覚があるならさっさとくっついてしまえばいいじゃないですか』

 

え、だって違ったら恥ずかしいじゃん。

 

『………頭が痛くなってきました』

 

いやいや、心が読めるならまだしも向こうが俺をどう思ってるかなんて分からないだろ!?

 

『今お弁当渡されたじゃないですか』

 

あ、やっぱりこれってそういうこと?

 

『はぁ…』

 

おい、そのどうしようもないやつだなっていう感じのため息やめろ。

 

『どうしようもないやつだな』

 

………ほぅ、そこまで言うか。

 

なら、今日一日、俺が決して鈍感ではないことを証明してやるからな!

 

『期待してますよ、マスター』

 

よし!見とけよ見とけよ!

 

あ、そうだ。スコル、今度の生体デバイスの運用試験日、ちょっと俺用事あるから一人で頼む。適当に管理局の仕事振り分けておくからそれやっといてくれ。

 

『…………-100ポイントです』

 

!?!?!?!!!???

 

──────────────────────

 

 

「あ、あきと…」

 

「お、フェイト」

 

仕事の休憩中、屋上でのんびりと空を見上げてボーッとしてると横からフェイトに声をかけられる。

 

「今休憩中?」

 

「ちょうどな」

 

「そ、そうなんだ…」

 

「「………」」

 

なんだこの間は。言いたいことがあるならさっさと言ってほしいのだが…。

 

『そういうところを待ってあげないといけないんですよ。-1ポイントです』

 

はぁ!?今のサイン関係ないやろ!

 

『相手の思いを汲み取れてません。というかこちらから話しかければいいじゃないですか』

 

理不尽だぁ……

 

「あのね、あきと。お昼って時間空いてる?」

 

「あ〜、すまん。先客がいるわ」

 

「あ……そうなの。ごめんね、やっぱりなんでもない」

 

『………』

 

ちょっと待って。そんなに落ち込まれると凄い気になるんだが。

 

「何か用事か?」

 

「え!?うんうん…なんでもないよ、あはは」

 

そう言うとフェイトはパッと振り向き立ち去ろうとする。振り向きざまに見えたが何か箱のようなものを持っているな。

 

「ストップ、フェイト」

 

「きゃ…!」

 

去ろうとするフェイトを呼び止め、肩を掴みくるっと回転させる。

 

「さて、その小さな箱は何かな?」

 

「え…えっと、これは…その……」

 

フェイトが持っていたのは箱というよりは小さなお弁当箱だった。もしかしなくてもこれ俺に作ってくれた説ある?

 

『ノーコメントで』

 

むむ、スコルからの意見は得られないか。でもわざわざお弁当箱持って……いや、これは弁当箱はフェイトのもので一緒にご飯食べようってことか?そうかもしれないな、だってフェイトはお弁当箱一つしか持ってないし。

 

『まだ向こうも昼食時間ではありませんよ。もっとちゃんと考えろボケカス』

 

あ、そうか。ならやっぱりこれは俺に?てかなんか言葉厳しくない?

 

「これ……どうぞ」

 

小さな声でその手に持った弁当箱をこっちに差し出してくるフェイト。どうやら本当に俺宛てに作ってくれたようだ。

 

しかし顔真っ赤で渡す姿可愛いな。これもう少し待機して様子見していいかな?

 

『鬼畜ですか?早く受けとってあげてください』

 

いやもうなのはのお弁当あるんだけど……あ、そういうことか!

 

『ん?』

 

「フェイトは自分の弁当あるのか?」

 

「え、うん」

 

「じゃあお昼一緒に食べるか?」

 

「…!うん!」

 

満面の笑みを浮かべるフェイト。フェイトのことだから弁当渡して終わるつもりだったんだろうがきっと心の中では一緒に食事したかったはずだ。どうよ、この気遣い!

 

『本来なら褒められるべきでしたが、今の状況では驚く程悪手でしたね』

 

………え?

 

「じゃあまた、お昼に連絡するね!」

 

凄いご機嫌な様子で去っていくフェイト。スキップでもしそうなところを見ると別に俺の判断は間違ってない気がするのだが。

 

『本当に言ってるんですか?マスターはお昼なのはさんと一緒に食べるおつもりではなかったのですか?』

 

え?だからなのはとフェイトの三人で食べるんだろ?

 

『……………マスター、刺されても文句は言えないですよ』

 

え、誰に?まぁ仮に襲ってきたとしても返り討ちにしてやるがな!

 

『……………』

 

─────────────────────

 

 

 

 

うう……朝、占いを見たから急いでお弁当作っちゃったけど…どうしよう美味しくなかったら。

 

あきとの好みって何だったのかな、あきとはいつもなんでも美味しそうに食べるから分からないし。

 

でも、スコルさんはマスターはなんでもよく食べてくれると言ってくれてたから好き嫌いはないってことなんだろうけどやっぱり好みの食べ物くらいは把握しておくべきだったかな。

 

正直、お弁当渡すだけで限界だったけどあきとからお昼誘ってくれるのは嬉しかったな……。

 

あきとって私をちゃんと異性として見てくれてるのかな?昔みたいに友だち感覚だったらちょっと悲しいな…

 

ううん、弱気になっちゃダメ…!あきとに振り向いて欲しいなら自分から行動しないと…!

 

 

 

 

 

 

 

 

「あきと、待った?」

 

「あきと君おまたせ!」

 

 

 

 

 

 

 

「おぉー、二人同時か。ちょうどよかったな、じゃあ行くか」

 

「「……え?」」

 

『はぁ…』

 

ん?なんでみんな止まってるんだ、スコルもため息までついて。話だったら聞くぞ?

 

「えーと…あきと君?」

 

「どうしたなのは?」

 

「フェイトちゃんも?」

 

「あー、実はフェイトからも弁当貰ってな。せっかくだから三人で食べようと思ってな」

 

「そ、そんな〜」

 

ガーンといったエフェクトが出てきそうなぐらいガッカリするなのは。うん?もしかしなくても二人きりで食べたかった感じか。

 

『ようやくわか──』

 

たしかに、味比べみたいになるからちょっとこれは不適切だったかも。

 

『ってないですね。どう捻じれればそういう考察になるんですか』

 

え、なんでそんな呆れてるんだ?

 

「あきと……聞いてないよ」

 

「いやすまん。せっかくだから三人で食べようと思ってな」

 

「……いいよ、私もなのはと一緒に食事できるし」

 

「だろ!?よし、じゃあ屋上行くか!」

 

話もまとまった所で屋上へ向けて俺は歩き出す。

 

「「……はぁ」」

 

後ろからため息が聞こえるし、なんかジト目を向けられているような気がしなくもないが、ともかく歩き出す。

 

『…で、結局気づくことはできましたか?鈍感マスター』

 

うん、100点!

 

『そんなわけあるか』




うーん、不完全


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プロローグ
理想と現実は違ったようです


エロいことをしたかった男の話です。


エロいことをしたい…

 

そうだ、エロいことをしよう!

 

どんな能力が欲しいか?

 

決まっている!

 

『時間停止』『催眠』『認識改変』だぁぁぁ!

 

神様がくれたこのチャンス、俺は絶対にものにする…絶対になぁ!(ベジータ並感)

 

────────────────────

 

神様転生という一時期アニメやラノベでは見ない日はなかったある意味カルト的信仰を集めてたジャンルがあった。

 

当時は俺もそれらを信仰していたし、実際に死んだらワンチャン神様転生して異世界で女の子とキャッキャウフフできるんじゃねえかと考えてしまうほどにはハマっていた。

 

 

 

 

 

でもまさか自分が異世界転生、それも案外見知ったアニメの世界に転生することになるとは思わなかった。

 

 

 

 

神様的なのに能力を選べと言われた俺は最強チート能力!を選択することはなかった。

 

その頃、というより死ぬ直前の俺は性に盛んなお年頃らしく日本の…海外ではHENTAIと恐れ慄かれるエロ本文化に傾倒しており、さらに憧れの神様転生を味わえたことで有頂天になってた俺は神様に

 

「『催眠』『時間停止』『認識改変』!!!」

 

と計画性のない、私利私欲まみれの特典をお願いした

 

 

 

そしてこの世界、『魔法少女リリカルなのは』の世界に転生した俺は紆余曲折あって魔導師という魔法使い的なポジションにつき、さらに主人公につけられる『エースオブエース』のように二つ名がつけられる程に有名になってしまった。

 

魔法少女リリカルなのはは知っている……しかしそれはエロ同人誌という超極端な知識でのみだった。

 

なので、エロ能力を手にしても幼い頃から見境なく、なんてことはなくそもそも原作の展開を知らないので、下手に介入して取り返しがつかなくなるのを避けるためにエロいことはしていなかった。

 

原作キャラに出会っても、「あ、触手に犯されてた子だ」と思ったくらいで交友関係は持ってもそういうことは全くしてなかった。

 

でもせっかく原作キャラと仲良くなったし、邪魔にならない程度に関わってみようかな

 

とサービスっていうならせっかくだし〜、とデパートの押し売りにありそうなことを思いながら日々を過ごし、魔法と出会ってリリカル〜してたら一つ誤算が生じた。

 

 

このエロ能力の戦闘への応用の効き方が尋常ではなかったことだ。

 

相手スピード速いな『時間停止』

 

俺は敵じゃないよ『催眠』

 

パワー凄いけど殴ってるそれ俺じゃないんだよな『認識改変』

 

とあれ?これって敵の中でも強キャラが使うやつじゃんと戦闘に参加してようやく認識してしまった。

 

そして気づけば俺のポジションは『友だち』から『お前がいれば絶対に勝てる』という孫悟空的なポジションになり、故郷の地球を離れ、この管理世界、いわゆる魔法がオカルトではなく技術として確立された世界で『魔導師』という毎日が平日、休日も非番で緊急出動あり、お金たくさんあげるね!でも使う機会あるのかな?というブラック企業に就職することになった。

 

……………………………………………

 

 

……………………………

 

 

………………

 

 

………

 

「はぁ〜、あの頃が懐かしいな」

 

学生時代の楽しかった日々に思いを馳せながらカタカタと報告書に本日の成果を打ち込んでいく。インテリジェンスデバイスっていう自立思考型あるんだし、念話もできるんだからこういうの自動でやってくれればいいのに…と魔法という便利な物に頼ってただでさえ堕落した思考がさらに堕落しようとする。

 

「久々に同人誌買いに行こうかな〜」

 

「な〜にを買いに行くって〜?」

 

ドンッといきなりど突かれたと思ったら幼なじみ、仕事場では上官の女性が後ろに立っていた。

 

「……何も言ってないぞ、はやて」

 

俺は何も言っていない…無駄に頭が回るコイツを前に無駄な足掻きとは分かっているが、もうそろそろ仕事が終わる頃であり俺の思考はいわゆる脳死状態になっていた。

 

「おうおう、よう言うわ。この耳はバッチリあんたのエッチな声聞こえとったで〜」

 

「…おい、勘違いを引き起こすようなことを言うんじゃない」

 

それではまるで俺が職場で人目もはばからず致しているように聞こえるだろ。いや実際に『常識改変』で俺がナニやっても気にしないようにしたけどアレむしろ誰も反応してくれなくて寂しいだけだったんだぞ。あ、おいコラそこの君、俺を不審者を見るような目で見つめるんじゃない。その見解で概ね合っているが今この場では俺は何もやっていないだろ。

 

「なぁもう仕事終わりやろ?」

 

「あー、待て待て。…………今終わったぞ」

 

「よっしゃ!じゃあ久々に飲みに行くで!」

 

「えぇ〜」

 

「なんでや!こんな美女と飲みに行けるのに断るやつおるかあ!?」

 

別にはやてと飲みに行くのは嫌じゃない……嫌ではないのだが、俺はコイツ…のみならずその周辺の人物には苦手意識を持ってしまっている。

 

その理由だが………

 

「なあなあ!ええやろ?遠慮せんでええで、金ないならわたしが奢ったる!」

 

その目をやめて欲しいんだよなぁ。その、憧れを見るような、小さい頃に子どもがヒーローに向けていたような眼差しでこちらを見つめないでほしい。俺そういう人間じゃないから。

 

そもそも原作キャラは軒並み過去が重くて、それを可能な限り明るく、楽しくしてあげようとしたのが悪かった。まさか魔法少女っていうプリキュアみたいなジャンルの物語のキャラがまあまあ暗い過去を持ってるとは思いもしなかった。

 

そして気づけばなんかめちゃくちゃ原作に関わってるっぽいし、その都度原作キャラを助けてたらなんか憧れの存在的な眼差しで捉えられるようになってしまった。

 

そんな目で見てくる人に外道なことができるほど俺も人間やめてなかったので結局何も出来ずに今に至る。

 

エロいことが出来ずに不満が溜まっているが、悪いことばかりでもない。例えば

 

「美女なのは分かっている、言われなくてもな」

 

「え!?そ、そないな…えへへ……」

 

かわいい(ブロリー)

 

憧れの存在である俺から褒められた彼女らはこんな風に普段の凛々しさからかけ離れた可愛さを発揮する。かわいい、そのギャップかわいい。現実ならぶりっ子すんなって言われるだろうけど全くわざとらしくない。かわいい。かわいい。

 

かわいい(思考停止)

 

「あー、ずるい!私も行く!」

 

と横から同じ教導官として職場を、そして戦場を共にし、なにより原作主人公である高町なのはが入ってきた。

 

「ええやん、知ってるんやで!この前アキトと一緒に洋服買いに行ったやろ!」

 

「違うもん!下着だから洋服じゃないもん!」

 

「余計悪いわ!アホ!」

 

「…一緒でいいだろ」

 

「せやな!」「うん!」

 

「……………」

 

俺の名前は剣崎暁斗(けんざきあきと)

 

二回目の生を絶賛堪能中でこの世界、魔法少女リリカルなのはでは魔導師をしています。

 

「……」

 

「……」

 

火花散らすな、さっさと飯行くぞ。




剣崎暁斗(けんざきあきと)
ランク:オールS
レアスキル:超催眠(認識改変+催眠)
シークレットスキル:時間停止

かわいい女の子にエロいことしたかったのに、向けられる純粋な眼差しとリアルでやってしまった時の罪悪感で何も出来なくなった可哀想な男の子。
それでもいつか落ち着いた時にはやりたい放題やろうと虎視眈々と状況を伺っている(見誤っている)


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無印編
おそらく原作主人公に出会った日


主人公は(一応)善人です。
趣味は盗撮です。


改行のタイミング分からない。文才が、文才が欲しい。


パァーと真っ白な世界から知らない家の中へと視界がうつりかわる。

 

「え、なに?転生終わり?意外とすんなりやるんだな」

 

辺りを見渡し、自分の手を確認する。なるほど、どうやら俺は子どもの大きさに変わっているらしい。すげぇ本当に俺神様転生したんだ。

 

「あ、そうだ。顔、顔どうなってんだろ」

 

パタパタと軽快な足音とともに、鏡があるであろう洗面所を探す。

 

やけに広い家で探すのに手間取ること数分、ようやく洗面所を見つける。

 

「なんで1階に部屋が六つもあるんだよ…」

 

と思いのほか大きい家のサイズに驚きながらも鏡を覗く。

 

「………え、イケメン。やだ、かっこいい」

 

そこに映っていたのは髪や眼は日本人らしく黒だが、アイドル顔負けの美貌がそこにあった。その口や瞳、鼻を動かしながら自分の顔であることを自覚すること数分。俺は……

 

「勝ち組や…これは勝ち組だよ」

 

と自分のこれからの人生が薔薇色であることを確信した。この顔ならアイドルとして人類史に名を残せるのでは?めちゃくちゃ美人な奥さんと使い切れないほど財産を手にできるのでは?

 

これからの勝ち組(顔だけ)人生に思いを馳せているといきなり白い封筒が上から落ちてきた。

 

「うお!ビックリした!……え、なに神様よりって」

 

 

 

 

拝啓、転生者『けんざきあきと』様

『魔法少女リリカルなのは』への転生おめでとうございます。これからあなたは第二の人生をご自身が選んだ特典と共に満喫してください。戦いに生きるもよし、愛に生きるもよし、悪の道を進むもよし、全てがあなたの思うままです。今後私から何か提供できることはありませんが、あなたの転生ライフが善きものであることを望みます。

 

神様より

 

追伸

あなたの身辺情報は同封された紙に全て記載しており、またこの世界の通貨や道具、生活に必要なものは一通り整えており、場所も同記しております。また、私が提供した物につきましてはこちらでの責任は一切取りませんので悪しからず。

 

 

 

 

「なにこれ、俺が知らないだけで神様っていい人なのか?」

 

神とは人を試し、時には傍若無人に振る舞うもの…そう思っていた俺の考えはこの神様の手厚すぎるサービスによって覆った。

 

なんか最後の責任云々が気になるが、ともかくこれ以上のないほどの支援であることには変わりない。ぜひこれからの生活に役立てさせていただこう。

 

ふむふむなになに?

 

 

 

 

あなたの設定は以下の通りです

 

・氏名:剣崎暁斗(けんざきあきと) 性別:男

・親は二人とも海外へ単身赴任(いません戸籍だけです)

・親の氏名は同封の戸籍謄本を参照してください

・海鳴市へと最近引っ越してきた

・あなたは私立聖祥大附属小学校3年生です。

・来週から通うことになってるので準備をしてください。

 

 

え、親いないの?いやこの世界に本当の親いないけど俺実質天涯孤独?責任?あっ…(察し)

 

つまるところ親いないからやることなすこと全部お前の責任だからなということのようだ。いや確かにその通りであるが、これまさか親の設定まで書き込むのが面倒くさかったとかないよな?

 

だが、親がいないというのは反面誰も俺を縛ることが出来ないということ。

 

そうと決まればやることは一つ

 

「ご近所挨拶だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっはあああああ!神様転生最高!」

 

元々何も持ってなかったため菓子折りの一つも用意できていなかった俺だが一通り近所に挨拶をしたところ、えらいね〜とかしっかりしてるね〜とお褒めの言葉をいただいた。さらにお家にいたリトルガールの顔を真っ赤にする追加効果入りだ。いやー顔を合わせて微笑んだだけで惚れさせるとかこの世界楽勝っすわ!

 

「よし!せっかくだからもう少し遠出してこの顔晒すか!」

 

前世ではまず浴びることのなかった賛美にどんどん気が大きくなっていくのを自分でも実感する。でもしょうがないよね、イケメンなんだから!

 

「ん?お、公園あるじゃん。ちょっくら夕方ギリギリまで遊ぶ少女たちの心掴んでくるか〜」

 

家の近所からさらに少し歩いた場所にある公園に足を踏み入れる。しかしそこには誰もおらず、かくれんぼしているということも無く文字通り人っ子一人いなかった。

 

「なんだ、いないのか」

 

「そこで何してるの?」

 

「ん?」

 

後ろから女の子の声がする。ふっ、どうやらまた一人いたいけな女の子の心を……おと…………し………

 

「あ」

 

「??わわっ!かっこいい…!」

 

栗色のツインテールにどこか同人誌で見た事があるこの顔立ち……まさか

 

「えーと、失礼ですがお名前は?」

 

「あ、えっとはじめまして!私の名前は高町なのは!」

 

なのなのなのなの〜〜〜〜!!!???

 

まさかの原作主人公エンカウント!えっ凄い俺本当にアニメの世界に来たんだ!すごいすごい!

 

かわいい!小動物みたいな目と幼さが相まってかわいい!保護したい、いや、保護したい!(言語野崩壊)でもこの子見た目の割にはかなり礼儀がしっかりしてますね(冷静)

 

「……」

 

「え、えーと…」

 

「おっと失礼お嬢さん、俺の名前は剣崎暁斗っていうんだ。最近引っ越してきたよろしく頼む」

 

「引っ越してきたんだ!よろしくね!」

 

「あぁ。そうだなのはちゃん、良ければなんだけどここら辺で美味しい食べ物があるお店とかある?」

 

「!!!それならいいところ知ってるよ!ついてきて!」

 

おお!ここで原作キャラと交友が持てて、しかも案内までしてもらえるのはポイント高いのでは?いやーやっぱ人って顔だよね(ゲス顔)

 

そしてなのはちゃんについて行くこと数分、オシャレなスイーツ店へとやってきた。

 

「ここだよ!」

 

そこは夕方の下校時間とスイーツ店というのが相まってかかなりの女子学生や奥様方でごった返していた。

 

入店早々、まるで我が家のようにスルスルとお店の奥へと歩いていく。

 

凄いよこの子、ここまで案内してくれて思ったのが、しっかりしてる感が半端ない。俺がこれくらいの時はまだ言語発してなかったんだけど。猿みたいにキャーキャー喚いてただけだったんだが。

 

「ただいま!」

 

「おかえり、なのは」

 

え、ただいま?あれもしかしてこの店ってなのはちゃん家、俺ってもしかして………

 

 

 

 

客として呼ばれただけ?

 

 

 

 

ば、ばかな(震え声)

この完全無欠の超絶イケメンの俺を前にして結婚してくださいの一言もなかっただと!流石は原作主人公、並大抵の精神力ではないな。やはりエロ同人誌でアヘってたのは所詮二次創作ということか。

 

「あきとくん!こっちこっち!」

 

原作キャラの精神力に戦々恐々としているとなのはちゃんがお店のカウンターの奥、おそらく自宅がある方からこちらに手を振っている。

 

そこに行くまでの間にも俺の周囲にはどよめきが止まらない。

 

──え、あの子かっこよくない!?

 

──ジュニアアイドルかしら?

 

──将来、凄い男になるよ絶対!

 

ほら、なのはちゃん。みんなこうなるんだよ。俺がキメ顔作ったら奥様もJKも目がハートになるから。

 

だからボクニシタガエェ!(XXハンターXX並感)

 

奥へついて行くとリビングと思われる場所でなのはちゃんがスイーツを手に待っていた。

 

「はいこれ!私のお母さんが作ったシュークリーム美味しいよ!」

 

………………ですよねー!分かってた!分かってた!俺を客じゃなくて一人の男として見てるの分かってた!っかああああああああぁぁぁ原作主人公ですら堕としてしまうこの顔が憎いよー!お近付きの印ってか!きゃは!てかなのはちゃんしっかり俺に惚れてるじゃないか、チョロい!チョロいよ!そりゃあ触手にズボズボされてビクンビクンアヘアヘしちゃうよそりゃあ!

 

……………ふぅ、取り敢えずシュークリーム食べますか(賢者タイム)

 

…え、美味い。待ってこれ今まで食べたスイーツの中でダントツで美味いのだが。え、凄っ、これを一流パティシエじゃなくてそこら辺のお母様が作ったというのか!

 

「これ、めちゃくちゃ美味いな」

 

「でしょ!」

 

なのはちゃんがまるで自分の事のように胸を張る。まぁそりゃあこれだけ美味いシュークリーム出せるんだもの、誇るよな。俺でも誇る。

 

これはもう生涯リピーターになるしかないな…

 

うん?リピーター?

 

……………………………………………

 

はあああああぁぁぁ!?ま、まさかこのためにわざわざ奥まで呼んだのか!?俺が子どもでお金がないことを見越してタダで与えることでリピーターとして変身させ、これから生涯よろしくねってかあぁ!?

 

くそっ!踊らされてる!俺が!こんな小さな少女に!でも悔しい!美味しい!食を進める手が止まらない!ビクンビクン

 

この日、俺はこの世界で齢九つの少女から初の敗北を教わった。

 

────────────────────

 

 

 

 

 

私、高町なのはは今日運命の出会いをしました。

 

大袈裟かもしれないけれど確かにわたしはこれが運命の出会いなんだと確信しました。

 

彼とまた会いたい、また話したい、そんな想いが止まらなくなりました。

 

私のお母さんの作るシュークリームは一度食べたらまた食べたくなることで街では有名です。

 

………あきとくん、また来てくれるかな?




この後、主人公は夕飯までお世話になりました。

(く、くそ!夕飯までめちゃくちゃ美味いだと!どこまで俺をこの店に縛り付けるつもりなんだ!)ビクンビクン


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エロいことをする(決意)

感想が沢山来ててびっくり。頑張ります。


さて、先日は原作主人公に完膚なきまでに負かされてしまい、リピーターと化してしまった。

しかし問題ない。なぜなら俺には

 

『時間停止』『催眠』『認識改変』

 

この(ある意味)最強の能力がある。いざという時はこれで分からせをしてやればいいのさ!生意気なメスガキを分からせる!いいですねぇ!まあ俺もクソガキなんだけど!

 

しかしそれを実行する前に色々と確認しなければならないことがある。

 

それは能力の使い方だ。

 

魔法の世界なんだから、魔力を使えばどうにかできるだろとタカをくくってはいるが、そもそもその魔力の使い方を知らない。何を持って発動するのかの条件も何一つそういえば教えて貰っていない。今後の転生人生を左右する故にこれだけは早めに把握しておきたい。

 

「時間停止は発動したのは分かるけど、催眠と認識改変ってどの程度の範囲なんだ?てか勢いで言っちゃったけど催眠と認識改変って同じじゃね?」

 

冷静に考えてみると、同人誌の催眠おじさんは女の子に「おじさんとセッ…!するのは挨拶と同じだよ」といったふうに催眠によって認識を変えていた。催眠で認識改変と同等のことが出来るなら完全に無駄だ。だがそもそも個別として用意してくれたというのならある程度差別化されているのではないだろうか?

 

 

 

 

「…まずは時間停止からやってみるか」

 

考えていても仕方がない。行動あるのみ。とりあえず一番変化が実感出来るであろう時間停止からやってみよう。

 

紙を落として何がトリガーなのか調べることにした。予測としては念じれば止まるだろうと思っている。詠唱だったら詰み。「ザ・ワールド!!!」しか知らない。

 

(止まれ!)

 

ピタッ

 

「おっ!?」

 

紙を落とし念じた瞬間、紙が空中で静止した。時計を見る、秒針はおろか時計の進む音すら聞こえない。

 

「す、すげぇな本当に時間を止めてるのか」

 

目の前で起こっている超常現象にこれを起こしているのが自分だという実感が湧かない。漫画の世界だったことが今こうして現実で出来ている、使用用途はおおよそ人に言えるものではないが感動した。

 

静止した紙に触ってみると普通の紙と変わらない感触に加え、しっかりと俺が動かした分は動いてくれる。よしよし、これでエロいことできるな(確信)

 

「あれ?待ってこれどうやって動かすの」

 

ここで気づく。止める方法はすんなりできたが動かす方法を考えてなかった。まずい、このままでは止まった時の中で過ごす羽目になる。それではエロどころの話ではなくなる。でも時間停止おじさんの中にはそういう末路を辿ったおじさんがいた事を思い出し心の中で焦りが大きくなる。

 

(動け!)

 

パサッ

 

「…………よかった〜」

 

どうにか最悪の事態は避けられたことに胸を撫で下ろす。

 

「…ん?」

 

ふと感じる体の違和感、脱力感?

僅かにだけど体の中のエネルギーが消えていったような感覚を感じる。これが魔力を使った時の感覚かな?

 

ともかく時間の止め方は分かった。デメリットととして魔力的なのが失われるというのも分かった…ここら辺はまだまだ要検証だけど。

 

「よし、時間停止がわかったから次は催眠試してみるか」

 

時計を見る。早起きしたかいもあってかまだ朝9時前だ。そろそろ朝ごはんも食べたいし買い出しついでに催眠を試してみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンビニは思いのほか遠くにあり、歩いて20分ないくらいだった。神様、お金は口座にあるって言ってたけど小学三年生がATM引き出すの凄いシュールだよな。コンビニ店員さん訝しげに見てたし。

 

コンビニで買ったおにぎりや唐揚げを頬張りながら原作主人公にして現在最大の敵である高町なのはと出会った公園へ向かう。今は時間にして午前10時前、子供たちが遊んでるだろうし実験台には持ってこいだろう。

 

「そじゃ適当に女児引っ掛けて催眠かけましょうね〜(ゲス顔)」

 

さてさて誰にしようかな〜………んん?

 

公園を見回すと案の定元気に遊ぶ少年少女たち。しかしその中でとりわけ目を引いたのはやたら見覚えのある栗色のツインテールの女の子。キョロキョロとするのに合わせてツインテールが右に左に揺れる、かわいい。

 

「…何してるのなのはちゃん?」

 

怨敵であるが流石に声をかけないのは良好な関係を築くのに支障をきたす。こちらが声をかけるとクルッと振り向き、パアーッと笑顔になってこっちに駆けてきたかわいい。

 

「あきとくん!おはよう!」

 

「おはよう、なのはちゃん。ここで友達と待ち合わせ?」

 

「え、えっと……」

 

こちらの質問にもじもじとしながら何かを考えてるなのはちゃん。うーん、どうするべきか。何か目的があるから公園に来たのだろうけどこの様子、待ち合わせじゃないなら誰かを待ってるとかは無さそうだが…

 

だが、実験台が向こうから来たのは好都合ではないか…

 

「なのはちゃん、俺朝ごはんまだ食べてないからそこのベンチで食べていいかな?よければなんだけどこの街のことについて教えてくれない?」

 

「!!いいよ!喜んで!」

 

意訳すれば「俺まだ飯食ってないから飯食うわ、ついでにこの街の情報教えてくんね?」とお前何様やねんという有様だがこの顔が放つオーラによってまるでアイドルがこちらに甘く囁きながらお願いするようになってしまう…やはりイケメンが最強か。

 

ベンチに座り、残りのご飯食べながらこの街について質問する。なのはちゃんはニコニコにしながら嬉しそうにそれに答えていく。かわいい。

 

ご飯を食べ終わって一息ついたら実験を開始する。

 

白昼堂々ヤれるほど壊れてはないのでとりあえず眠くなる程度の催眠をかけてみよう。

 

「なのはちゃん」

 

「なに?」

 

なのはちゃんに目線を合わせて念じる

 

(眠くなれ眠くなれ眠くなれ)

 

さぁコテンと眠ってしまえ!高町なのはァ!

 

「ど、どうしたのあきとくん?恥ずかしいよ…」

 

かわいい

 

違う違う。どういうことだ何故かかってないのだ?念じることがトリガーにならない?催眠………あっ、分かったぞ。

 

『なのはちゃんは眠くなる』

 

「え?あ……き……………」

 

「おっと」

 

意識がなくなるかのようにパタッと倒れるなのはちゃん。怪我しないように受け止め、取り敢えず横にする。

 

ふふ、ふふふふふふふふ…………

 

やったぞ!やったぞ!なのはちゃんを催眠にかけてやったぞ。催眠のトリガーは念じるんじゃなくて言葉なんだな。催眠っぽいな、いや催眠なんだけど。

 

俺の膝の上に頭を乗せてスヤスヤ眠るなのはちゃん。ふっ、バカめ今から自分がナニをされるのか分かってないようだな。

 

作戦変更、白昼堂々ヤる馬鹿ではないと言ったがそもそもその馬鹿に俺はなるのだ。白昼堂々ヤれなくて催眠おじさんが務まるか!

 

お前の人生、ここで終わりだ!高町なのはァ!

 

「…………んぅ、あきとくん…んにゅ」

 

……………………………………かわいい

 

…………………………

 

……まあまあ冷静になれ。まだここでリスクを犯す必要はないじゃないか。この子は原作主人公、魔法少女になるんだからきっと世界の危機とか救っていくはず。それを今ここでやってしまうのは長い目で見れば俺に不利益しかない。今は我慢だ我慢。

 

決して可愛くて罪悪感が…とかそういうことはないから。

 

──────────────────

 

 

 

お昼前

 

「…ん、あれ?私?」

 

「起きたか」

 

「え?」

 

なんであきとくんが?それより私どこで寝て?え?え?え?

 

「え〜〜〜〜〜!!!」

 

「うお、どうした?」

 

あれ!?私寝ちゃってたの?なんで!?なんで!?

 

「え〜と…あきとくん……」

 

「ん?あぁ、かわいい寝顔だったぞ」

 

「〜〜〜!!!」

 

恥ずかしい!寝顔見られちゃったよ!

 

公園の時計を見る、既に11時半過ぎでどの家もお昼ご飯を食べ始める頃だ。

 

どうしよう…いや大丈夫!この状況を逆手にとれば!

 

「コホン。えっとごめんね、面倒見てもらって」

 

「いや、気にしなくていいよ。俺もかわいい寝顔見させてもらったしお互いさまだよ」

 

もう!なんでそんな恥ずかしいこと簡単に言えるの!

 

「…あのね、迷惑かけたお詫びじゃないんだけど今からお昼だけどあきとくんはお家で食べるの?」

 

「…いや?親今日は家にいないから適当にどこかで済ませようかなって思ってる」

 

「じゃ、じゃあ!私の家でご飯食べない!?」

 

お願い!お願い!お願い!

 

「え、いいの?なのはちゃん家のごはん美味しいからこっちとしても願ったりなんだけど」

 

「いいよいいよ!遠慮しないで!じゃあ行こう!」

 

やった!誘えた!お母さんやったよ!

 

────────────────────

 

 

 

くはははははははははははは!!!

 

やっぱりお前俺に惚れてるだろ!お詫びにご飯食べてくぅ?普通はそんな流れにならないんだよ!ありがとうございますの一言で済むんだよ!

 

でも顔真っ赤なのはちゃんめちゃくちゃかわいかったですありがとうございます。

 

再びなのはちゃんの家でご馳走になることになった。なんでもなのはちゃん曰く新メニューもあるからそれの試食もして欲しいとのこと。

 

おいおいどんだけ俺の気を惹きたいんだよ!これ絶対に堕ちてるだろ。しょうがねぇな〜(孫悟空並感)将来のお嫁さん候補の言う通りにするか〜!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

「………………」

 

「………………」

 

「あ、あはは」

 

なのはちゃん家─お店の名前は翠屋というらしい─について早々なのはちゃんは台所の方へと消えていった。そしてリビングで待つ俺の前には三人の大人が座っていた。

 

一人は眼鏡をかけたお兄さん、優しそうな目をしている。もう一人は人を殺しそうな目付きをしている何故か道着を着ているお兄さん。そして最後の一人は女の人でこちらを同情の目で見ている。

 

お互い無言で目線を交わす。

 

いえ嘘です。その後ろでせっせとお母さんの手伝いをしてるなのはちゃんを見て目の保養、現実逃避しています。

 

「なのはとは…」

 

「はい!」

 

「うちのなのはとはどういう関係なんだ?」

 

目つきの悪いお兄さんがこちらに問いかける。誤ったことを言えば即座に切り捨てると言わんばかりだ。

 

ふぇぇぇぇこわいよおおぉぉ!助けてなのはちゃぁぁん!

 

落ち着け俺!大丈夫、相手は子どもだ。向こうもヘタはうってこないはず。大丈夫、言葉さえ間違えなければ問題ない!

 

「む、娘さんには大変良くしてもらってます!」

 

「ほう?」

 

ブワッと殺気が膨れる。それは目つきの悪いお兄さんではなくさっきまで優しい目付きをしていた眼鏡のお兄さんの方だった。

 

「と、父さん」

 

「大丈夫、何もしないよ」

 

お姉さんがそれを見兼ねてか声をかける。あ、お父さんだったんですね。

 

………………

 

ふえええぇぇええええなのはちゃああああんんん!!助けてえええええ!

 

そしてなのはちゃんの家族と共に蛇に睨まれたカエルのようにひっそりとご飯を食べていた俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気づけば道場で木刀を持って目つきの悪いお兄さんと対峙していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで?(思考放棄)




原作突入はもう少し後です。


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どうやら俺は才能の塊だったらしい

たくさんの評価ありがとうございます。日間ランキングにも作品名が出てきてとても意欲に繋がっています。


「頑張って〜!あきとくーん!」

 

笑顔で声援を送るなのはちゃんに応えるように微笑み、手を振る。それだけでなのはちゃんの顔が赤くなる。ふふ、イケメン。

 

「……」

 

それに呼応するように目の前の、なのはちゃんのお兄さんである高町恭也さんの威圧感が強くなる。いや度を越したシスコンですやん。

 

取り敢えず黙々と素振りをする。少しずつ竹刀から音が聞こえ始めたのに上達を感じる。目指せ宮本武蔵。宮本武蔵になった暁には目の前のこのシスコン兄貴を叩きのめす!

 

どうして俺が道場で素振りをしているのかそれは時を遡ること少し前のこと、俺が高町家の昼食をご馳走になったところまで遡る。

 

─────────────────────

 

 

 

 

「ご飯できたよ〜」

 

「どうぞー!」

 

どうやら昼食ができたらしく、なのはちゃんとお母さんと思われる人が配膳をしてくれる。仮にこの人がお母さんだとしたらなのはちゃんの両親くっそ若いな、いや若く見えるのか?

 

「あらあらもう打ち解けたの?とても社交的ね〜」

 

えへへ、そう見えます?でも向けられてるこの気配、殺気なんですよ〜。打ち解けてる?ねぇ本当にそう見えます?(半ギレ)

 

「あきとくん、隣いい?」

 

「え、あ、いいよ」

 

「えへへ」

 

かわいい

 

なのはちゃんが隣に座り、笑いかけてくる。それに応えるようにこちらも微笑む。うん、殺気が強くなった。

 

なのはちゃん、君はこの状況が読めないのかな?これどう見ても君の行動次第で俺の生死が決まるんだけど。今のところ君考えうる限りで最悪の立ち回りしてるよ?愛されてるね君。一体日頃からどんな教育受けてるんだろうね〜。…キレるよ?(マジギレ)

 

なのはちゃんとそのお兄さん、お父さんの視線から逃れるように用意された食事に目を向ける。色とりどりの料理が並ぶ中、一つだけ俺の目の前には明らかに色味がおかしい野菜炒めが置いてある。いや、他の料理の完成度が高いだけでこの一品だけ妙に目立っている感じだ。

 

チラッとなのはちゃんの方を見る。

 

「………」

 

緊張の面持ちで俺とその野菜炒めを交互に見ている。

あ、なるほど(理解)。つまりなのはちゃんがさっき台所に行ってたのはお手伝いもあるけどこれを俺に食べてもらうためか。

 

はえ〜最近の小学生進んでるな〜。

 

ところでこれ俺が食べるんだよね?食べなくちゃいけないよね?俺としては他のめちゃくちゃ美味しそうな料理を食べたいんだけど。

 

なのはちゃんのお兄さんとお父さんを見る。お父さんはニコニコ(笑ってない)、お兄さんはギラっと睨みつけてくる。その目はこう語っているように見える。

 

『お前まさかうちのなのはが作ってくれた料理食わないとか言わねぇだろうな?食え』

 

うーん、愛されてるな(白目)

だが、こちらとしても食べないという選択肢はない。ここで食べて、不味かろうが美味しいと微笑んでやれば好感度はうなぎ登り、なのはちゃんの目をハートにできるはずだ。

 

決心して、野菜炒めに箸を伸ばす。

 

気づけばお姉さんやお母さんまでこちらを見ていた。いや大丈夫ですよ、そんな最悪の結果にはならないので。

 

それではいただきます。

 

……………………

 

え、美味い。色が落ちてる分シャキシャキ感は物足りない感じだけど塩コショウの効き方がパーフェクトだ。ここって普通はメシマズ属性追加イベントじゃないの。普通に美味いのだが。

 

「ど、どう?」

 

心配そうな目でこちらを見つめるなのはちゃん。どうやら俺の反応がないことに心配になったようだ。

 

「え、どうもなにも普通に美味しいぞ。なのはちゃんって本当に小学生?」

 

「ほ、本当!やったぁ!」

 

手を挙げて喜ぶなのはちゃんかわいい。他の、特に男性陣はうんうんと頷く。いやなんの同意だよ。

 

「なのはちゃんって初めてこれ作ったの?」

 

「えっと、いままでママの手伝いはしてきたけど自分で料理作ったのはこれが初めてだよ」

 

凄いこれで初めてとかもう魔法少女なんて辞めて料理人目指せばいいのに。魔法少女なんてやってたらいつ悪いおじさん(主に自分)や触手にエッチなことされるかわかったもんじゃないし(偏見)

 

「こんなに料理が上手ならなのはちゃんはいいお嫁さんになるよ」

 

「え……」

 

ボフンと顔が一気に真っ赤になるなのはちゃん。

…ん?流石に褒めすぎたかな?まぁ言ってることは事実だしええでしょ。

 

その後、真っ赤になって俯いたままのなのはちゃんとこれまで以上に殺気をぶつけてくるようになった男性陣を他所にパクパクと用意してもらった昼食を食べていく。

 

美味い美味い。これもう当分の間ご飯はここのお世話になろうかな。怖いお兄さん達いるけどこの美味しさとなのはちゃんの可愛さならお釣りが来るレベルだし。

 

「いい食べっぷりね、私の分も食べる?」

 

「いただきます!」

 

俺の食いっぷりを見たのかお姉さんが自分の分も分けてくれた。お姉さんも中々に美人っすね。唾液が微量に入ってるであろうこの野菜炒め、丁寧に味わわせていただきます。

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした」

 

あっという間の食事だった。いや俺が夢中に食いまくってたからあっという間に感じるだけなんだけども。冷たいお茶を一気飲みし一息つく。

 

「お粗末さまでした。ほらなのはも」

 

お母さんに言われて、なのはちゃんもペコッとお辞儀する。おいおい奥さん、お宅の娘さんいちいちかわいいんですがどう責任とってくれるんですか?

 

「洗い物手伝いましょうか?」

 

「あら、いいのよ。いつもなのはに良くしてくれてるお礼よ」

 

「お、お母さん!」

 

はえ〜いいお母さん。性格と容姿も綺麗とかホントアニメの世界ヤバいわ。だって普通、他所の子にそこまでします?いやするところはするだろうけど。普通、他所の子にここまで殺気ぶつけます?いやするところは……いやねえよ。

 

洗い物で煙をまく作戦は失敗に終わった以上、このカオスから抜け出すには隣のエンジェルに頼むしかない。

 

「じゃあなのはちゃん遊ぶ?と言っても俺女の子と遊んだことないから何するのか分かんないんだけど」

 

「え、えっと…いつも友達呼んだ時はお菓子食べてお話してるけど男の子とは家で遊んだことない……です」

 

なぜに敬語?かわいいのでオールオッケー。

 

「じゃあこの周辺で身体動かす場所ある?」

 

「それなら」

 

ん?なんだこのむさ苦しい分厚い手は?

なのはちゃんかな?でも握力強いから違うんだろうな〜。嫌だな〜…

 

「近くに道場がある。そこで()()()()()といい」

 

ねえこれって暴行事件に発展しない?しないんだろうな〜アニメの世界だし。

 

───────────────────

 

 

 

 

回想終了…

 

そして高町家の庭にある道場に連れ込まれるとそこで竹刀を握らされ素振りを半ば強制的にやらされることとなった。

 

いやまぁ体動かしたいって言ったの俺だし、正直竹刀見た時目を輝かせてしまったのも俺だから反論はないんだけど。

 

「………」

 

こっわ!この兄さんさっきからなんでこっち無言で見つめてんの!?そんなにじっと見つめるとか…まさか俺に惚れた?おいおい守備範囲外だわ、あいつ。

 

「…すごい才能だね」

 

「はい?」

 

そんなことを思いながら素振りをしているとなのはちゃんのお父さんから声がかかる。才能?そんな転生特典用意してもらってないけどな。

 

「普通、そこまで振れるようになるのにもどんなに早くても一年はかかるはずなんだけどね。まさかそれを百も振らないうちにできるようになるなんてね。才能…うんうん、君は剣の神に愛されてるかもしれないね」

 

言われてみると、素振りを一回する度に次にどうすれば上手く振れるのかがなんとなく分かっている気がする。

 

最初は剣なんてどうやって振ればいいのかも分からなかったが、今では手首や肘、肩に至るまで教わってもないのにこうすればいいという謎の確信がある。

 

足に至ってもそうだ。すり足…というらしいが右足を前に左足を後ろにして左踵は上げる、右踵も上げはしないが床スレスレというめっちゃ動きにくい歩法をしていたが、今ではむしろこれじゃないと違和感を感じるという状態だ。

 

剣の神…ねぇ。ガチの神には愛されてる?かもしれないがまさか転生者って皆こんなに才能豊かな状態で生まれてくるのか?

 

「えーと、ありがとうございます?」

 

「君には是非ともこれからも剣の道を進んでもらいたいね」

 

え、嫌です。

 

…ん?だが考えてみようか。

 

これから俺は魔法の世界でドンパチやっていくんだよな?じゃあ少なからず戦闘技術は学んでおかないといけないということか。

 

そうだよな〜、魔法使うんだからワンチャン死ぬかもしれないパターンもあるよな〜。うーんここらで一回戦い方を学んでおいた方がいいのかな〜。幸い、才能はめっちゃあるし学べば強くなるでしょ。

 

「すいません、剣を使った戦い方って教えてもらえたりします?」

 

「……!」

 

その一言、急に厳しい顔になる二人。あれ、俺なんか言っちゃいました?

 

「お前は…」

 

「いや、待つんだ恭也」

 

なのはちゃんのお父さんが急にシリアスな雰囲気を醸し出しながら俺の前に立つ。え、待ってなにこれ。今から何が始まんの?

 

「いいかい、あきとくん。剣は人を切るための道具だけど決して人を殺すための道具として使っちゃいけないよ」

 

え、何当たり前のこと言ってるんですか?

ん?いやでもたしかにいきなり小学生が剣道とかじゃなくて剣を使った戦い方とか言い出したら不審がるのもわかる気がする。俺だったらヤバいやつ認定しちゃうもん。

 

「分かっています。俺は守りたいものを守るためにこの剣を振るいます」

 

とりあえず真剣な顔でそれっぽいことを言っておく。正直、剣を振る理由とかどうでもいいです。俺は俺のために強くなりたいだけです。

 

「そうか…わかったよ。願わくばその守りたいものになのはが入ってるといいのだが」

 

「??初めから入ってますよ?」

 

なのはちゃん主人公やぞ。物語の中心人物いなくなったらヤバいでしょ。てか俺が最終的にエッッッッなことをするリスト筆頭なんだから他のおっさんとか触手とかにくれてやるわけないでしょ。

 

「…ははは、これは一本取られたかな。それじゃなのはをよろしく頼むよ」

 

「ん?え、あ、はい」

 

なんか重大な勘違いをしてる気がするがまぁいいや。

 

 

 

 

なのはちゃんのお父さんとお兄さんって人外?なんかテレビで見るアスリートの3倍は速く動いてる気がするんだけど。どうしよう稽古についていけない。いや上達してるにはしてるんだけど追いつく気配全くないっす。おい神様、もっとご都合主義的な才能を用意しろ。こちとら転生者やぞ。しかもイケメン、性格良い。

 

──────────────────

 

 

 

 

 

そしてめちゃくちゃ熱く稽古した俺はその後遺体となって…ということはなかったが道場でぶっ倒れた状態で見つかった。後半、恭也さん手加減してなかった気がする。瞬間移動っぽいことしてたし。

 

その後、夕飯まで高町家でお世話になった。迷惑をかけたお詫びもあるが俺の両親が単身赴任で海外に行っており家には俺一人しかいないと言ったらむしろこれからは毎日、うちで食べていきなさいと言われた。お母さん女神かなにかですか?

 

ちなみに恭也さんとなのはちゃんのお父さん、士郎さんは奥さんの桃子さんに怒られて、道場で正座中である。

 

どうやら道場での一件をなのはちゃんから聞いたらしく、鬼のように…というより鬼になった。その時なのはちゃんもお説教に加わって、かわいいのが見られると思ったが、まさかの無表情での正論攻め。ねぇ君本当に小学生?

 

ともかく高町家では女性陣を怒らせてはいけないということを理解した。

 

本日の収穫

・俺めっちゃ才能ある

・ママ怖い

・なのはちゃん怒らせたらいけないやつ

・高町家、サイヤ人説




隠しスキル:成長する戦闘論理(アップ・ザ・バトルロジック)
主人公も自覚していない転生者達が割と持ってるスキル。敵対した相手の技術が上の場合、それに追いすがるように己の技術も向上する。転生モノで主人公が特に理由もなくやけに強いのはこれが原因。


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学校行って明日も楽しみって思ってたら既に原作始まってた

誤字報告いつもありがとうございます。読み返してるのにこれだけ指摘もらうって最早自分の日本語疑うレベル。

少しだけ話を修正しました。たくさんのご意見ありがとうございます。ほんと助かってます。まだまだダメなところばかりですが今後もいろいろ教えて下さるとたいへん嬉しいです。


今日から学校に行くことになっている。先日担任の先生と思われる人から連絡が入っており、どうやら学校まで送り迎えしてくれるバスが来るらしい。前世とか歩いてしか学校行ったことないのだが。私立って凄い。

 

…ん?じゃあ俺って既に形成されたコミュニティの中に一人で突っ込んで行くの?ま、まぁ相手は小学生だし?俺ぐらいのイケメンになれば打ち解けるのも余裕だし?

 

玄関で待ってるとバスがやってくる

 

大丈夫大丈夫。相手は子ども相手は子ども。俺の方が上俺の方が上………よし!

 

いざ!出陣!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かっはああああああああぁぁぁ!!!

いや〜イケメンって基本的に得しかしないよね!

結局そそくさと空いてる席に座るしかなかったけど向こうから話しかけてくれたし!上級生も優しくしてくれるし!

顔が!この顔が!いっけないんだよなあペチペチ

 

結局上級生さんには職員室まで案内してもらった。いや普通にいい人だった。ごめん勝手に顔で人との接し方変える人だと思ってしまったわ。

 

職員室に着くと担任の先生と思われる男の人からようこそ!と言われる。あ、熱血系なんですね。イケメンはクール系が個人的に好きなんでなしで。

 

あ、女の子ならかわいければオールオッケーです。

 

───────────────────

 

 

 

 

 

 

『転校生だってー!』

 

『誰だろうねー!』

 

「ふん!皆浮かれちゃって転校生がなんだっていうのよ」

 

「あはは……」

 

アリサちゃんが転校生という話題に浮き足立つクラスを見て愚痴をこぼしています。隣のすずかちゃんも思わず乾いた笑みをこぼしてしまっています。

 

私の方はクラスの皆と同様少しソワソワしてしまっています。なぜならその転校生というワードに僅かながらに期待を込めてしまっているからです。

 

「そういえば最近すっごいかっこいい子がここら辺に引っ越してきたって聞いたよ」

 

その噂にピクっと思わず反応してしまいます。

 

「あら?なのは何か心当たりあるの?」

 

「え、えっとなんでもないよ…あはは」

 

「ふーん?ふーーーーん?」

 

私の反応が気になったのかアリサちゃんから質問を受けました。思わず否定しましたが、疑われてしまいました。

 

「えーとね、その引っ越してきた子とは会ったよ。でもこの学校に転校してくるかは分からないかな…」

 

嘘は言ってません。本当はその子とは一緒にご飯食べたり、お話したり、ひ…膝枕もしてもらいましたがそれを言うのはどうしてか躊躇ってしまいました。

 

「へぇー、どんな子だったの?」

 

すずかちゃんもその子に興味があるようで質問してきます。

 

「その子は…とても不思議な子。とてもかっこよくて優しいんだけど、時々同じ小学生なのかな?思うときがあるの。あ、でも危ない感じじゃなくてなんだか大人びた感じっていうの?とにかくとてもいい人だよ」

 

「………」

 

「………」

 

アリサちゃんとすずかちゃんがキョトンとした顔をしてます。あ、あれ?私変なこと言ったかな?

 

二人はお互いの顔を見合わせると少し意地悪な顔をしました。嫌な予感が……

 

「ちょっとなのは〜。やけにその子に詳しいじゃない?本当に会っただけ?本当はもっと色んなことしてたんでしょ?」

 

「え?」

 

「ごめんね、なのはちゃん。でも出会っただけの人にそんなに好印象抱くのってちょっと変でしょ?ねえねえその子のこともっと聞かせてもらってもいい?具体的になのはちゃんがその子のことどう思ってるかも含めて」

 

「え、えっと…えっとね?」

 

そんなに顔に出ていたかな?どうしよう…。その子のことが好きなんて恥ずかしすぎて言えないよ。

 

『ホームルームの時間だ!』バアン!!!

 

「ほ、ほら!先生が来たから席に着こうよ!」

 

「あ…」

 

「む…まぁいいわ。休み時間にまた話し聞かせてもらうわよ?」

 

よ、よし。ホームルームの時間に彼との馴れ初め…じゃなくて言い分を考えておかないと…!

 

『君たち!先週から言ってたとおり今日は転校生がやってくる!!!』

 

先生の言葉にクラスの皆が沸き立ちます。すずかちゃんも、見ればアリサちゃんもソワソワしてるように見えます。

 

『まずは自己紹介からだ!入ってこい!』

 

転校生…どんな子だろ?

 

「はい、失礼します」

 

…………………え?

 

──────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はじめまして。先週ここ海鳴市に引っ越してきました、剣崎暁斗です。よろしくお願いします。」ニコッ

 

決まった(確信)

 

今この場にいる女子は俺の美貌に堕ちました(ログ)

 

特に目立った挨拶でもない。いきなり尖ったところを見せるよりも当たり障りのない挨拶をしてみんなの反応を見てから接し方を変えていこうという方針にすることに決めたのだ。

 

────────────────────

 

廃案1:フハハハハ、我こそは!

廃案2:僕の名前は剣崎暁斗。よろしくね子羊ちゃん。ニカッ

 

────────────────────

 

さてみんなの反応はどうだろうか?

 

『…………』

 

あ、あれ?もしかして普通過ぎた?普通過ぎて俺のイケメン顔とのギャップに驚いてしまったのか?

 

『かっこいい!!』

 

『テレビ出てそう!』

 

『きゃあああ!!!』

 

『イケメン死ね』(((ボソッ

 

よ、よかった。ポケ〜ッとしてたのはただ驚いてただけか。やめてよね、そのどっか外国みたいな驚き方。

 

あとお前、顔覚えたから。ちゃんと聞こえてんぞコラ。

 

『よし!じゃあ暁斗くんを新しいクラスの一員として迎え入れたことだし席替えするぞぉ!』

 

『わああああああああああああ!!!』

 

うるさっ!

 

───────────────────

 

 

先生が席替え用のクジを作ってる間は空いてる席に座る。てかこれ席替えする意味あんの?俺に関して言えばどこに座っても初めての相手になるんですが。

 

「あきとくん!」

 

「お、なのはちゃん。おはよう」

 

「おはよう…じゃなくて!転校生ってやっぱりあきとくんだったの!?」

 

なんということでしょう。隣にはここ最近では会わない日はないほど仲良くなった高町なのはさんがいるではありませんか。いやまぁ入った時点で気づいてたけど。やっぱアニメの世界ってモブもかわいいけど主人公とかのネームドキャラはダントツでかわいいよな、目立つ。

 

「もう!ここに転校するなら言ってくれればよかったのに!」

 

「いやまさかなのはちゃんと同じ学校とは思ってなかったよ」

 

これ関しては本当である。なんなら一つ年上だと思ってるまである。

 

「「へぇ〜…」」

 

俺となのはちゃんが話していると後ろの方から何やら怪しい声が聞こえる。振り返ると紫髪と金髪の女の子がそれぞれニヤニヤしながらこちらを見ていた。

 

「かっこよくて優しい人…ね〜」

 

「とってもいい人…ね〜」

 

何を言ってるのかは分からないがそれ以上に隣のなのはちゃんがめちゃくちゃあたふたしてるのがかわいいことが気になるいいぞもっとやれ。

 

「どうかした?」

 

「わーーーーー!アリサちゃん!すずかちゃん!だめーーーー!」

 

女の子二人組の間になのはちゃんが割って入る。え、なにくっそどうでもいいんだけどそれはそれで露骨な反応示されると気になるのだが。

 

「いえいえ〜何もなくてよ〜」

 

「頑張って!なのはちゃん!」

 

誰やねん。あんなの同人誌で見かけたか?居たんだろうけど知らないから魔法少女じゃないサブキャラかもな。

 

「…うぅ」

 

とりあえず顔真っ赤で俯くなのはちゃんかわいいとだけ記す。いい加減にしないとそろそろロリコン発病するぞ?

 

さて、席替えとのことだが。まぁ運に任せて気ままに過ごすのもいいけど

 

せっかくだし不正するか

 

やり方は簡単、くじを引く…前に時間を止めて自分が座りたいくじが出るまで引きまくる、以上!

 

よし窓際確保。やっぱりイケメンには窓際が似合うよな。今の俺の席は窓際のちょうど真ん中だ。となると、前後と右の席に誰かが来ることになる。正直誰が来ても落とせるが、この際だから原作に関係ありそうなさっきのサブキャラさん近くにするか。あとなのはちゃんも。

 

 

 

 

 

はい、席替え終了。

 

時間止め過ぎたせいか体がだるいけどまぁ問題ないでしょ。席替えは、特に女子の争いが凄かった。君ら男子への交渉術(脅迫)やばいな。先生引いてたぞ。てか俺の周囲女子しかいないんだが。他に男は……おいお前さっき俺に死ねって言ったやつやんけ。

 

 

「よろしくね。わたし月村すずか」

 

俺の隣に来たのは月村すずかという女の子。大人しそうな子だ。金髪の子、アリサというらしいがうるさそうだったので前に。なのはちゃんが隣だと、こっちが授業に集中できないので後ろにした。

 

「あぁ、よろしく。すずかさん」

 

「ふふ、すずかでいいよ」

 

「む〜」

 

後ろで不貞腐れてるのがいるが取り敢えず無視でいいでしょう。どうせ休み時間でめっちゃ喋るだろうし。

 

「アンタ引っ越して来たんだってね。この学校のこと知らないんだったら私が案内してあげるわよ?」

 

偉そうな金髪が話しかけてきた。てめえ顔が良ければなんでもいいと思うなよ(ブーメラン)

 

「そうだな、せっかくだしよろしくお願いするよ」

 

「むー!」

 

さて、ホームルーム終わったらチョロチョロなのはちゃんのご機嫌でも取りますかね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業。その内容は所詮小学校のものでしかない。大学までしっかり勉強していた俺にはそんなものは一切通用しない。

 

俺の頭の良さ、お前らに教えてやるよ!!!

 

一限目:英語

 

ぷっ…。所詮小学校の英語とか絵を見せて先生と同じこと言ってワイワイやるだけのレクリエーションだろ?やれやれそんなの少なくとも俺にはやる意味が見いだせないね!

 

 

え、ゴリゴリの英会話なんですが。俺、英語は読むのは高校くらいのレベルならいけるけど話すと聞くはボロクソなんですけど。

 

先生がこれからやることを英語で教えてくる。何を言ってるのかあんまり理解できないが、ジェスチャーからなんとなく何をすればいいかは分かる。

 

しかもどうやらこの授業、生徒側も英語で話さないといけないらしい。ハードル高い。私立凄い。私立怖い。

 

「Nice to meet you」

 

隣のすずかちゃんが微笑みながら話しかけてくる。そんな涼しい顔で英語使う小学三年生とか恐怖以外何も感じないのですが………

 

なんか前の席のアリサちゃんが英語の先生相手にガチの英会話してるんですが……

 

……どうしよう、帰りたい

 

 

 

二限目:算数

 

くっ…!一限目の休み時間にアリサちゃんに煽られてしまった。だが英語では遅れをとったが、算数なら俺が一番できるはずだ!小テスト?満点で当たり前だろうがァ!

 

 

休み時間、一問間違えのアリサちゃんを煽り倒した。なのはちゃんも全問正解していた、偉いぞ〜。

 

三限目:体育

 

くはははは!!!このチートスペックを持つ俺にかけっこで貴様らが勝てるわけないだろうがー!

 

え?すずかさん?なんで俺と並走できてるんですか?

 

なのはちゃんって主人公なのに体育苦手なんだな、意外。

 

四限目:学活

 

先生が町の作りやお店のはたらきを導入に将来のことについて取り上げていく。俺はできるなら魔法使って仕事したいけどこの顔だしな〜。案外アイドルも捨てきれんな。

 

ん?アリサさんや、脇の間から見えるがお主落書きしてるな?授業ちゃんと聞けや。何書いてんだ?

 

あ、なのはちゃんじゃん。

 

 

あら〜^^(キマシタワー)

 

 

 

給食はお弁当………あ。

 

「お弁当忘れた…」

 

「あら」

 

「…!ならあきとくん!わたしのお弁当分け─」

 

『あきとくん!こんなこともあろうかと君の弁当は先生が用意しておいたぞ!』

 

なのはちゃん…どんまい。

 

先生、気持ちはありがたいのですが後ろのなのはちゃん凄い顔になってるので出来れば早めに退散した方がいいですよ。

 

───────────────────

 

「学校楽しいな…」

 

時間はすっかり放課後、転校生あるあるの質問攻めにもなんかうぜぇと感じながらも今日一日、何年ぶりかの学校生活を味わった俺に懐かしさとともに胸に到来したのは明日もまた行きたいという気持ちだった。いや前世の学校生活も楽しくなかったわけではないが、ここまで楽しいものではなかった。

 

「何か言った?あきとくん」

 

「うん?いや何も言ってないよ。それじゃまたあした」

 

「あ…あきとくん!」

 

「ん?」

 

さて帰ろうかという時になのはちゃんが話しかけてくる。

 

「今日は…うちに寄ってかないの?」

 

どうやらご飯のお誘いのようだ。なのはちゃん家の飯はめちゃくちゃ美味いのだが、流石に何度もご夕飯を預かるのは申し訳ないと思うから断ることにした。

 

「すまんな今日は俺の家で食べるよ。そう何度もおじゃましては悪いしな」

 

「う、うん。そうだよね…」

 

シュンと項垂れるなのはちゃん。だからいちいちかわいいんだよ。そんな姿見せると庇護欲湧いちゃうだろ。しょうがないな。

 

「じゃあ明日、もし良ければご馳走になりに行ってもいいかな?」

 

「うん!」

 

パァーっと一気に笑顔になるなのはちゃん。だからいちいち(ry

 

「なのは、完全にベタ惚れしてるわね」

 

「なのはちゃんいいなぁ〜」

 

おいそこのサブキャラ二人組聞こえてんぞ。俺は超絶イケメン転生者だぞ、惚れないわけがないだろ(真顔)

 

一緒に帰ってもよかったが、なんか寄り道するらしく面倒くさそうなのでさっさと帰ることにした。

 

 

 

 

てかなんで登校はバスで下校は徒歩なの?

はぁ〜つっかえ。

───────────────────

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

 

俺の家には一通の手紙が送られる。

 

 

 

 

 

拝啓『けんざきあきと』様

転生ライフいかがお過ごしでしょうか。

こちらは個性豊かな転生者たちを送り出す充実した日々を過ごしております。

さて、前回申した今後一切支援はしないという話でしたが一つ備え忘れていた物がありましたのでお送りします。今後の転生ライフに役立てていただけると幸いです。

 

追伸

原作突入おめでとうございます。

けんざき様のこれからの益々のご活躍を願っております。

 

 

 

 

 

…毎度思うけどこの神様凄い礼儀正しいよな。

 

そんな丁寧な手紙と一緒に入ってたのは、

 

『はじめましてマイマスター』

 

なんか喋る星型の真っ赤な宝石の付いたペンダントだった。

 

てか原作いつ始まってたの?情報量多すぎて整理つかないんだけど。




ユーノくんはちゃんと拾われました。


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くっそ便利な機械もらいました

地の文が少なめかもしれないです。これはこれでいいのか?

まさか日間ランキングに載るとは思ってなかった。期待に応えられるように頑張ります。

感想や評価たくさんありがとうございます。
色んなこと教えてくれて勉強になってます。


真っ赤な星型の宝石が目の前で爛々と輝いている。その輝きは電子的なそれを思わせながらもどことなく目を引いてしまうような輝きで少し心を奪われてしまった。

 

『いかがなさいましたかマスター?』

 

「えーと…AI?」

 

『まぁそんな感じですね』

 

俺の口から出た言葉は会話をしているのが誰かというなんとも的外れなものだった。

 

神様の贈り物なんだよな?たしかリリカルなのはの世界はデバイスを使ってたはず。同人誌にも書いてあったから合ってるはず。

 

『正解です。私はあなたが神様と呼ぶ存在によって作られたインテリジェントデバイスです』

 

「イン…なんだって?」

 

『インテリジェントデバイスです。自律思考型のデバイスと思ってくだされば大丈夫です』

 

な、なるほど。とにかく凄いデバイスということか。

 

神様も最後に凄いプレゼントを贈ってくれたな。いや今までも中々凄いの貰ってたけど。

 

「とりあえずそのデバイス…さん?って何ができるんです?」

 

『その前にまずは登録です。私はあなたをマスターと呼んでいますが、あなたが私をデバイスと呼ぶわけにはいかないと思われますが』

 

「たしかに」

 

ということは名前を決めるんだよな。うーん、急に言われてもこれといったものが思い浮かばないが。

 

『ちなみに私には個体名として“スコル”という名前があります』

 

「いや名前あるじゃねえか」

 

『ありますが?私はデバイスという呼び方は変えた方がいいのでは?と言っただけです。名前云々言い始めたのはマスターですよ?』

 

…コイツもしかして性格悪い?

 

『性格が悪い?いえ私はデバイスとしてマスター自身を尊重するように作られています。今のは私とマスターの間で思い違いがあっただけです。強いて言えばマスターのミスです』

 

え、思考読めるの?

 

『読めます、マスター限定ですが』

 

「プライバシーの侵害だぞ」

 

『私臣民ではないので。そもそもAIに対して法が適用されるかも怪しいですが』

 

「…登録は完了?」

 

『はい。ですがまだまだ決めてもらうことはありますよ』

 

うわダルっ

 

『ダルくてもマスターの今後を決める大切なことなので慎重にお願いします』

 

へーい

 

─────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バリアジャケットというアーマー的な服を設定する。服なのにアーマーとはこれ如何にと思ったが流石魔法、スコルによれば俺の魔力量なら戦車の砲撃ですら耐えられるらしい。

 

『一応テンプレートは用意してます。分からないのであればそれらを編集する感じにしますか?』

 

あ、それいいかも。

 

思考を読まれるのも最初は嫌だったが、向こうがこっちの思ってることを汲み取って発言してくれるおかげで今では不快感どころか便利とすら思い始めてる。わざわざ口にする必要もないとか魔法便利だな。

 

『流石に洗脳か念話でもしない限り、思考は聞けませんが。私がマスター専用機である証です。あ、これカタログです』

 

怖っ、でも洗脳っていう響きいいな。念話も気になるし今度色々試してみるか。

 

これかっこいいな。あ、このコートキリトっぽいな。ええやん。この色を真っ黒にして…

 

「これ試着できる?」

 

『え…いやこれ……えぇ分かりました』

 

俺の服が一瞬でカタログ通りの姿に変わる。

 

おぉ、ロングコートもズボンも中のパーカーまで黒だ。かっこいい。このネックウォーマーみたいなやつも口元がいい感じに隠れてかっこいいな。

 

「どうだ、結構イケてるだろ」

 

『ダッッッッッッッッ……さくないですね。かっこいいと思います』

 

ふっ、機械には分からんだろうが巷ではこれが一番カッコイイんだよ。

 

『いやどう見ても不審者……いえ、そうなんですか私は知らなかったです』

 

これで俺も人気者かな!

 

『そうですね人気者ですね……警察関係者に』

 

──────────────────

 

 

 

 

『次はデバイスです』

 

「ん?デバイスはお前じゃないのか?」

 

『言い方が悪かったです。戦う武器ですね』

 

あ、戦うんだ。やべえ唐突に不安になってきた。戦わなくても済むとか甘い考えしてたわ。

 

『それはマスター次第ですがいざという時の自衛手段がないのも考えものです』

 

ぐっ…たしかに。やっぱり魔法の世界を生きていくなら身につけておくべきだよな。

 

『その通りです。ではマスターはまず何ができますか?』

 

「え、急に何って言われても…」

 

『そうですね…では何かスポーツは?』

 

「スポーツはやってないけど最近剣術習い始めました」

 

『ふむ、では最初は剣を使ってみましょうか』

 

その言葉と同時に目の前に日本刀が出現する。

 

『剣とのことなのでこの国で一番浸透している剣を採用しました』

 

あぁだから日本刀なのね。てかどこから出した?

 

『魔法です。具体的には異空間に保持しているデバイスの中で適当なものを引っ張り出してきました』

 

魔法ってすげぇ(白目)

 

「ほかのもそんなに高性能なのか?」

 

『デバイス内に対象を縮小して収納するのは聞きますが異空間式の収納魔法を保持するデバイスというのはあまり聞きませんね』

 

…まぁ他のデバイスを知らないからなんとも言えないわ。

 

目の前に浮かぶ日本刀を掴む。ずっしりと重く手ごと床に落ちそうになるも堪える。何とか鞘から抜き、刀身を露わにするが如何せん重すぎる。なのはちゃん家で振った竹刀とは重さが全然違う。

 

「こ、これ軽くならない?」

 

『なりますよ』

 

ブローチが赤く光る。

 

すると刀がみるみるうちに軽くなって、竹刀くらいの重さになった。そんなこともできるのか。

 

「これは?」

 

『飛行魔法の応用です。ただ戦闘をする際はこんな回りくどいことはせずに自身の体に強化魔法をかけることをオススメします』

 

飛行魔法、強化魔法と聞き覚えのある単語が聞こえる。とりあえずそういった魔法も覚えていかなくちゃいけないということだろうな。

 

『勤勉な姿勢、大変結構です。早速色々試してみますか?』

 

「やりたい!」

 

『……子どもですか』

 

子どもです。

────────────────────

 

 

 

 

 

『まずはなにからしたいですか?』

 

「飛行魔法!」

 

『残念ですが、まずは魔力の基礎から学んでもらいます』

 

「………」

 

じゃあ最初の質問はなんだよ。上げて落とすスタイルか?お前やっぱり性格悪いだろ。

 

『まあまあ、最終的には飛行魔法までいきますが何事もまずは基本です』

 

くそ、正論言いやがって。そういうの今ではロジックハラスメントって言うんだからな!

 

『マスターのそれは使い方が若干異なる気がしますが…まぁいいでしょ』

 

『マスター、魔導師はどうやって魔力を運用していますか?』

 

「え、なにその実践問題みたいな質問」

 

『では質問を変えましょう。魔導師が使う魔力というのはどこから来てるでしょうか』

 

「え、そりゃあ体内で生成したものでしょ」

 

『半分正解です。魔導師は体内にあるリンカーコアという魔力を溜める器官を使用しています』

 

『しかし、それとは別に大気中に眠る魔力も使用しています』

 

「ふむふむ。つまり魔法を使うためにはそのリンカーコアと大気中にある魔力を認識しないと使えないのか」

 

『察しが早くて助かります。しかし大気中の魔力に関しては飛行魔法などの制御系ではなく砲撃魔法などの火力系の場合に使うことが多いので現状そこまで気にしなくてもいいです。それすら制御系に回せる人もいるにはいますが』

 

「じゃあどうやって魔力を感じるんだ?」

 

『そうですね…色々方法はありますが私は同じモノを感じる作戦でいきましょうか』

 

なんだ、そのダサいネーミングセンスは。

 

『マスターの服…いえこの方法は、まず私が目の前に魔力の塊を生成します』

 

目の前に白い光の球が現れる。光は目に悪いとかそういうのはなくなんだか温かみのようなものを感じる。

 

『それに触れてみてください』

 

「え、これ大丈夫?」

 

『問題ありません』

 

「……」

 

恐る恐る触れると───

 

「うわっ!」

 

思わずびっくりしてしまう。なんだ今の手を這う妙な感覚は。

 

『それです。その感覚をまず覚えてください』

 

「こ、これを?」

 

意識を手に集中する。

 

うーん、温かい?けどなんか水みたいな印象を受けるな。水にしては少し粘度がある感じがするけど。

 

『その感覚を今度は体内で探してみてください』

 

「………」

 

目を閉じて体の内側に意識を向ける。

うーん、あるようなないような…これ?

 

『見つけられたならそうですね…手に集められます?』

 

手に……手に……テニス!

 

『ふざけたこと言うな』

 

「は、はい」

 

そういえば思考筒抜けだった。しょうがない、小学生になるとしょうもないことでも反応してしまうんや。

 

再度集中する。多分身体を流れてるこのナニカのはずだ。それを手に……集める。

 

『マスター、目を開いてください』

 

「ん?……おぉ」

 

目を開けると俺の手には黒い光を放つ球体が浮かび上がっていた。

 

『魔力を感知でき、さらに放出、形態維持までやるとは。さすがですマスター』

 

「え?そんなに凄いことなの?」

 

『少なくとも習い始めて10分でここまでは普通いかないかと』

 

………………いやーやっぱり才能ですわぁ!顔も良くて頭も良くて性格も良くてオマケに魔法まで出来て…かぁー!神は俺にいくつモノを与えれば気が済むんだァ!

 

『…次に行きましょう』

 

「おう!」

 

『次は飛行魔法です』

 

「お、いきなり本題か!」

 

『魔力を放出できるなら問題ないでしょう』

 

『術式はこちらで展開します。マスターは…そうですね。魔力を足元につむじをまく感じで放出してください』

 

「…こうか?」

 

直後、フワッと俺の身体が浮かび上がる。急に目線が高くなったことに驚くがすぐに落ち着きを取り戻す。

 

「これできてる?できてるよね!?」

 

『…驚きました。まさか一発で成功なさるとは、それも姿勢制御まで。マスターは冗談抜きで天才ですね』

 

「と、ところでスコルさん!」

 

『はい』

 

「これどうやって降りるの?」

 

スコルの褒め言葉に鼻を高くしたかったが、いつの間にか俺は家の2階ぐらいの高さまで飛んでいた。流石に高すぎて怖いです。

 

『魔力の放出を徐々に抑えてください』

 

「お、おう」

 

魔力の放出を抑える……おぉ、地面が近づいてくる。

 

「結構疲れるな、魔法」

 

『それはまだ慣れてないからです。マスターならすぐに慣れるでしょう』

 

そういうもんか。いやまぁ俺才能ありますし(ドヤ顔)。せっかくだしもう少し飛行魔法の練習を……

 

「うん?」

 

『…感じましたか』

 

ふと向こう側で魔力のようなものを感じる。あっちはたしかなのはちゃんの家の方角だったはずだが。

 

『気になりますか?』

 

「そりゃあ」

 

『正直行くのはオススメできません』

 

「なんで?」

 

『それはマスターがまだ戦う術を持っていないからです。術式そのものは私が発動することができますがそれらを扱うのはマスターです。まだ飛ぶことしかできない状態で正体不明なナニカに行かせるのはとても容認できません』

 

うぐ……だけどなのはちゃんに何かあったら流石にヤバいでしょ。

 

『…その心配はないようです』

 

「え?」

 

さっき見た方角へ振り向くと、感じていた魔力もいつの間にか消えていた。

 

『………どうやら魔力を発生していたものは封印されたようですね』

 

「分かるのか?」

 

『はい。高性能なので』

 

俺も俺かもしれないがコイツも大概なのかもしれない。だけど何もなかったなら良かった。早く俺も戦えるようにならないとこんなんじゃおちおち眠ってもいられない。

 

『今日はどうします?』

 

「もちろん、魔法の練習だ!」

 

こうして俺は新しい家族?アクセサリー?…ともかくデバイス、スコルと共に夜遅くまで魔法の練習に熱中するのだった。




デバイス:スコル
ネックレス型で真っ赤な星型の宝石が特徴的なインテリジェンスデバイス。術式展開などデバイスが行う魔導師への基本的なサポートはできるが、これそのものに戦闘能力は無い。その代わり、自身の異空間内に保存される無人デバイスを持ち主に貸し出す形で戦闘に貢献している。しかも自身も含めてメンテナンスを自分で行える。これがあれば…もう何もいらない!

多分性格は悪い。


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魔法少女って意外と大変(客観視)

アンケートまさかこんなにご回答いただけるとは思ってなかったです。ありがとうございます。

…催眠時間停止ファントムおじさんってなんやねん(猛省)


魔法の練習に明け暮れて人生(2回目)初の徹夜をしてしまった。魔法楽しい。

 

『まさか色んな過程すっ飛ばして飛行魔法と強化魔法を習得するとは思いませんでした』

 

とはスコルの言葉。ふふ、才能……

 

それにしても眠い…眠過ぎる…魔法の練習しすぎた。小学生だからか一徹しても疲れ自体は感じないけどやっぱり眠いものは眠い。

 

「ふあ〜」

 

「あきと君、眠いの?」

 

隣のすずかちゃんが話しかけてくる。やめろ話しかけてくんな。お前の声安心感あって余計に眠くなるんだよ(リスペクト)

 

「うん、ちょっと夜更かししてしまってね」

 

「大丈夫?宿題はちゃんとやってる?」

 

「やってるよ」

 

早朝5時に爆速で仕上げたからな。

 

『宿題にしてはかなりの多さだったような気がします』

 

ほんとそれ。私立ってやっぱ一定の学力水準があるからこういうのを普通にやれるんだろうな。すごいな。

 

…てかおま、スコル、急に出てくんなよ

 

『問題ありません、念話です』

 

こ、コイツ直接脳内に!?

 

『その言葉聞き飽きました』

 

スコルは学校に持っていくか悩んだが、何かあったら困るのでランドセルの中で待機してもらってる。ネックレス型だから別に付けても問題ないだろうけど、流石に小学生がアクセサリー付けるってマセすぎ?…マセすぎじゃない?

 

「ふーん、あの程度の宿題で夜更かししたの?私なんて習い事の合間にパパッと仕上げたのに。そんなんじゃ今日のテストが心配ね」

 

前の席からアリサちゃんが身を乗り出して自慢してくる。お前一々突っかかってくんなよ?わからせるぞ?いいのかわからせだぞ?メスガキが…泣き喚きながら土下座謝罪させてやろうか?

 

『そんなことすれば少年院送りされますよ』

 

本当にするわけないだろ。俺がガキ程度に激昂するように見えるか?

 

「別に終わらせたからいいだろ?それとテストは関係ないだろ?」

 

「ふぅーん、もう言い訳しちゃうんだ?」

 

フゥー!フゥー!フゥー!

 

『落ち着いてください、相手はガキですよ。自分の発言にはしっかり責任を持ってください』

 

思ってるだけだから。言ってないから。だからコイツを…!

 

『思っただけでもその意見が誰かにバレてる時点で言ったも同然ですよ』

 

フゥー!フゥー!フゥー!

 

『猫か』

 

「まあまあ。そういえばあきと君って凄い身体能力だよね。何かスポーツでもやってるの?」

 

ん?昨日の体育か。てか聞きたいのはこっちなんだよな。やたら運動神経いいなと思ったけどまさか並走されるとは思ってなかった。

 

「特に何もやってないよ。でもすずかちゃんの方が凄いよ。まさか並ばれるとは思ってなかった」

 

「あ、あはは。たまたまだよたまたま」

 

なんか歯切れが悪い。何かあるな…もしかしてすずかちゃん人間じゃない?

 

なーんてな!そんなことあるわけないか!てかこんな大人しそうな子が人外な世界とかもはや誰も信じられなくなるわ!

 

『………あながち間違いとは言い切れないかと』

 

…え?どういうことですかスコルさん。

 

『…いえ言ってみただけです』

 

…………お前やっぱり性格悪いだろ。この世界で一番信用してないのお前にするわ。

 

『何言ってるんですか、デバイスとマスターの信頼関係は何よりも大切にするものです。それを放棄するとは言語道断です』

 

いやいやそれはこっちのセリフだよ。どう見ても信頼関係を空の彼方に飛ばそうとしてるのお前やん。

 

『マスター、後ろの子が朝なのに寝てますよ。昨日夜更かしでもしたんですかね?』

 

人の話を聞けぇぇえええええ!!

 

 

 

『………』

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

『マスター少々お時間よろしいでしょうか?』

 

なんだ?今テスト中だぞ、後に出来ないか?

 

『全問正解なので問題ないかと。集中して聞いてもらいたいのでこの時間に声をかけさせてもらいました』

 

…あ、結構大事な案件?

 

『はい』

 

どうぞー

 

『マスターの後ろになのはという子がいるじゃないですか』

 

おま、この方は魔法少女リリカルなのはの主人公の高町なのは様だぞ。知らないのか?

 

『知りません。そもそも昨日の夜起動した私が知るわけないじゃないですか』

 

たしかに。それで?

 

『実は朝言いそびれてましたがその女の子、魔力が…正確に言うとリンカーコアが覚醒してます。さらに言うと昨日感知した魔力とかなり酷似しています』

 

おいおいしっかりしてくれよ…うん?そりゃあこの子魔法少女なんだから魔力はあって当然でしょ?

 

あれ?なのはちゃんっていつ魔法少女になったんだ?昨日?もしかして俺主人公が魔法少女になる決定的瞬間に立ち会えなかった感じ?

 

………なんか残念だな

 

『何言ってるんですか。付け加えて、その女の子が身に付けてる赤い宝石はほぼ間違いなくデバイスかと』

 

そりゃあ魔法少女なんだからデバイスくらい持ってるでしょ?

 

『………マスターはアホですか?』

 

はいアホって言った!主人に向かって!自分のご主人様に向かって侮辱の言葉を吐くとはお前はそれでもデバイスかー!

 

『冷静に考えてください。マスターの話ではその子はまだ魔導師ではなかったはずです。では昨日までは普通だった少女が特に何も無く魔法少女になりますか?』

 

………たしかに。

 

『おそらく何かあったんです。そしてその何かは昨日あったことだと思われます』

 

そして魔法関連なら少なからず俺にも関係することかもしれないと?

 

『その通りですマスター』

 

うーん、構えすぎな気がするけどな。

 

『…人って簡単に死ぬんですよ?』

 

怖っ!

 

『ともかくこのテストが終わったらなのはさんには事情を聞くべきかと。何も知らずに巻き込まれるほど理不尽なことはありません』

 

ぐうの音も出ないとはこのことか。

 

ちょうどチャイムが鳴る。スコル採点では満点とのことだったので問題ないと思うがそれよりもなのはちゃんだ。おそらく原作…だろうが果たして俺はそれに横槍をいれてもいいのだろうか?

 

テストの答案が後ろから回される。後ろのなのはちゃんと目が合う。

 

そうだついでに聞いておこう。

 

「なのはちゃん、放課後屋上に来てくんない?」

 

「……………え?」

 

あ、ちょっ、答案落とすなよ!

 

───────────────────

 

 

ともかく放課後、なのはちゃんに屋上に来てもらうことにした。さすがに放課後屋上で時間を潰すほど私立小学生も暇じゃないらしい。ここには俺一人しかいない。屋上でなのはちゃんが来るのを待っている状態だ。

 

うーん。聞くにしてもなんて聞けばいいんだ?あんまり直球過ぎるのも…いや、だけどなのはちゃんはもう魔法少女になってるんだよな?ならもう直球で構わないのか…よし!

 

しばらくするとなのはちゃんがやってきた。その動きはとてもぎこちなく緊張しているように見て取れる。

 

スコル、なのはちゃん緊張してるけど何かあったっけ?

 

『そうですね、何かあったんでしょうね。少なくとも私が知ってたとしてもそれはマスターが自分で気づくべきことだと思います』

 

え、なに俺が原因?

 

『はい』

 

……まぁいきなり屋上に来いと言われたら緊張…するかもな。人の感じ方はそれぞれだし。

 

『…そっすね』

 

「ごめんね、いきなり呼び出して」

 

「ううん!全然気にしてないよ!…そ、それで何か用かな?」

 

「うん。最初に、わざわざ屋上に来てもらったのも誰にも聞かれたくない話をするからなんだよね」

 

「だ、誰にも聞かれたくない…!」

 

なのはちゃんの顔がさらに緊張の色を示す。こころなしか顔も赤くなっているように見える。実はもう何を聞かれるのか察してたりするのか?

 

「なのはちゃん」

 

「はい…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最近魔法少女になった?」

 

「はい!…………………………え?」

 

うおマジか。なのはちゃん、魔法少女デビューおめでとう。

 

───────────────────

 

 

 

そしてその後すぐなのはちゃんと俺は帰路につく。色々となのはちゃんは教えてくれた。ジュエルシードと呼ばれる古代の遺物を集めてること。それは生物の願いに反応して暴走してしまうこと。だからそれを封印するために魔法少女になったこと。

 

普通に思ったんだけどそんな厄介事をみんなのためにってやれるのってホント凄いことだよな。俺だったら逃げてる。

 

『ジュエルシードですか…』

 

結構ヤバめ?

 

『場合によりけりですね。生物程度の願いなら対処とかはできますがそれを知性ある生き物が手に入れてしまった場合は果てしなく厄介です。なんせ人の願いなんてそれこそ無限にありますからね』

 

なんとかなりそう?

 

『少なくともマスターを生還させることに関してはこの機体の全てにかけて遵守するのでご心配なく』

 

え、スコルそんなかっこいいキャラだったか?

 

『デバイスは皆こうです。それよりも今はなのはさんに構った方が良いかと』

 

む、なのはちゃんのやけに残念そうな顔をしている一体どうしたのだろうか。

 

「はぁ〜」

 

「どうかしたなのはちゃん?」

 

「え?ううん!なんでもないよ!でもまさかあきと君も魔法少女…じゃなくて、ええと」

 

『魔導師です。なのはさん』

 

「そうそれ!ありがとうスコルさん!」

 

『どういたしまして』

 

おいこらスコル、そういえばお前アレだけなのはちゃん警戒していたのにめちゃくちゃ打ち解けてるやんけ。今後お前がどんな強硬姿勢に出るのか気が気じゃなかった俺の時間返せや。

 

『何を言ってるんですか、こんなにいい子を警戒する理由がどこにあるんですか?』

 

君の手の平よくドリルみたいって言われない?

 

『手の平ないです』

 

そうだったな!

 

「あ、そうだ!あきと君、念話ってできる?」

 

「ん?念話って」

 

──これのことか?──

 

「!!凄い!あきと君ってやっぱりなんでも出来るんだね!」

 

……ふはははははははははは!!!まぁやっぱり才能が違いますからね!いやーなのはちゃんはいい子だな〜どこぞのデバイスはこんな風に人を素直に褒められないのかね〜!

 

『え?できて当たり前のことを褒めて欲しいなんてマスターはかまちょですね』

 

フゥー!フゥー!フゥー!

 

『だから猫か』

 

「あ、あのねあきと君」

 

「うん?どうしたんだいなのはちゃん」

 

「その…たまにでいいんだけど念話で一緒にお話できたらなって……あ、いや宿題のこととか!魔法で困ったことがあったなら教えて欲しいなって思って!」

 

「うん。俺で力になれるかは分からないけどいつでも相談してくれていいよ」

 

「うん!」

 

ねえねえこの子可愛くない?スコルさんや、この子可愛くない?こんなに笑顔でお願いされたらなんでもオーケーしてしまうんだけど!あとこの子絶対俺のこと好きだよね!

 

『そうですね。私は今すぐレイジングハートさんとマスターを交換して欲しいと思いました』

 

ふざけんな!お前がいなくなったら誰が俺を守るんだよ!

 

『清々しいですね、さすが私のマスターです』

 

皮肉?

 

『皮肉』

 

 

 

 

さて、なのはちゃんが現在巻き込まれてる面倒事の状況は把握出来た。うん、俺はもうどうするか決めてる。

 

「なのはちゃん、ジュエルシード集め、俺も手伝っていいかな?」

 

『は?』

 

「え!?いやいや危ないから大丈夫だよ!」

 

『いやほんと危ないからオススメしません。やるならせめてある程度実力をつけてからにしてください』

 

「それはこっちのセリフだよ。女の子一人そんな危ない目に遭わせるわけにはいかないからね」

 

「あぅ…」

 

『すいません、マスターってたしか実戦経験まだゼロでしたよね?』

 

いやいや恭也さんからご指導ご鞭撻してもらってるから。

 

『魔法戦は?対大型戦闘は?』

 

スコルがいるじゃん。

 

『過去最高にキレそうです』

 

過去(二日目)

 

『…一応自爆術式もあるので』

 

サイバイ〇ンじゃないですかヤダー!

 

『はぁ…出過ぎたマネはさせませんからね』

 

おう!

 

「じゃあよろしくね、そういえばいつやってるの?宿題とか終わった後?」

 

「ええと…だいたい12時とか1時とかかな…」

 

………………深夜じゃないですか。あ、だから朝眠そうだったんですね(納得)

 

『自分が言ったことには責任、取ってくださいね』

 

……スコル、短時間で快適な睡眠とる魔法とかない?

 

『専用の設備がいるので無理です』

 

ですよねー!




念話はスコルの時だけ『』で後は───で済ませようかなと思ってます。見づらかったら教えてください。

なんだか話の進行遅い希ガス。書きたいこと書いているからなのか…!


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魔法少女二人目来たけど普通にかわいい

作中屈指のくいこみを見せるあの子の登場です。
書きたいこと書いてたら文字数が偉いことに……


「これで三つ目!」

 

さっきまで巨大化したカラスだったのが倒され、なのはちゃんがジュエルシードを封印する。

 

なぁスコル。

 

『なんでしょうかマスター』

 

俺らいる?

 

『まぁ今までの活躍を見るとぶっちゃけいらないですね。なまじなのはさんの邪魔してるまでありますよ』

 

ジュエルシード集めでさぁかっこいいところを見せようかという時に一つ問題が発生してしまった。なのはちゃんマジ強い問題である。

 

相手の攻撃はその強固なバリアに阻まれ、そして次の瞬間にはピンク色のキャノン砲がぶち込まれるという恐ろしい仕様。

 

俺は何をしてたのかというと飛んでくる硬質化した羽を手持ちの刀で弾いたくらいである。

 

『冷静に考えるとなのはさんとマスターは前衛と後衛って感じで相性よさげに見えますが、実際はなのはさんが一人で完結しちゃってるのでマスターが介入すると余計なお世話をしているようにしか思えません』

 

むっ…と思ってしまうが実際その通りなのだ。敵の目を逸らして今のうちに!という感じでやろうとしたがそもそも敵の攻撃が飛んできてもなのはちゃんのバリアが強固で魔力をチャージする時間が充分に稼げてるのでそもそも俺が囮になる必要も無いという有様である。

 

時間を止めて、ヒャッハーしても良かったが今この段階で手の内を見せるのはマズい。なにせここで時間停止の能力を見せれば、俺がエッッッッなことをしてしまった時に疑われてしまうきっかけを作ってしまう。

 

「あきと君!やったよ!」

 

手を振りながら笑顔で叫ぶなのはちゃんを見て、俺何もやってないんやでと思いながら手を振り返す。

 

『いたいけな少女一人に背負わせて自分は見学ですか?』

 

俺だってやる時はやるから!今はまだその時じゃないだけだから!

 

とはいえ手伝うと言った手前、なのはちゃん一人に任せるのは流石に気が引ける。一個ぐらいは俺だけでやっても問題ないだろう。

 

『たしか明日なのはさんは御学友と共に塾に行かれるはずです』

 

なら明日は俺だけで完璧にこなしてなのはちゃんの目をハートにしてやるから。

 

『…まぁ前回や今回程度ならマスターでもどうにかなりますから大丈夫でしょう』

 

しかしこの封時結界っていうの便利だよな。魔法で壊れた家とか元通りな上に魔法を知らない人は自動的に弾かれるんでしょ?どうなってんのこれ?

 

『そこを解説するなら魔法的次元の弾性と結界内における魔力の定義、性質の説明から入りますが?』

 

あ、ご都合主義ってことでおkです。

 

───────────────────

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、また明日」

 

次の日の放課後、なのはちゃん、すずかちゃん、メスガキを見送ったら早速行動を開始する。

 

『ところでマスター、アテはあるんですか?』

 

え、ないの?

 

『…前回、前々回のジュエルシードの反応を記録しています。活性化前と後のエネルギーの反応を元に周辺から探知していきましょうか』

 

さっすが有能!

 

『受け答えだけして後は他力本願なんですね』

 

違うね、適材適所さ!

 

 

 

スコルが周りを探知しながら俺は街中を走っていく。傍から見ればランドセルを背負った小学生が元気に帰ってるようにしか見えないだろうな。普通と違うのはその少年が明らかに目を引くレベルで顔立ちが整ってるくらいか(自惚れ)

 

…まあまあ走ったけど、反応は?

 

『今のところは…非活性化状態のジュエルシードは反応はかなり微弱、ほぼ無しといっていいです。やはりどこかで活性化してもらった方が手っ取り早いですね』

 

そうは言っても活性化してないならどうにもならないよな。そういえば深夜によく活性化してるけどなんか傾向があるんじゃない?

 

『いえ、正確には深夜までに活性化してるのを私たちが発見したことになります。それまでにある程度人の目にはついてますが…いままで話題になってないのは奇跡としか言いようがないです』

 

まぁともかくどっかに運良く落ちてるか、いきなり活性化するかの二択ということか……うん?

 

『そうですね。まぁそんな都合よく道端に落ちてるとかあるわけないですが』

 

…………………あったわ。

 

『………………………ありましたね』

 

なんか見つかりました、ジュエルシード。

 

 

────────────────────

 

 

 

「これどうすんの?」

 

聞こえる、誰かの声が………

 

『まぁ活性化してないならさっさと封印しましょう』

 

封印…………?誰を?

 

俺を?

 

冗談じゃない………

 

俺はまだ…………最強ではない

 

まだ…まだ……

 

強くなれるはずなんだ…!

 

「封印どうやってすんの?」

 

こんなところで……終われない…!

 

『レイジングハートさんから封印術式を預かっています』

 

強くなるんだ、最強になるんだ………

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()!!!

 

 

────────────────────

 

 

『飛行魔法発動!』

 

いきなりグワンと視界がぶれて、その目線はあっという間に空高くなっていく。

 

「ちょっ!スコルどうした急に!」

 

『結界展開完了。マスター、セットアップを』

 

「え?え?え?」

 

『…考えうる限りで最悪なことが起こってしまいました』

 

「…あれか」

 

先程自分たち居た場所には黒い煙が立ち込めている。その煙は徐々に集まっていき、やがて人型を形成し、真っ赤な、そして鋭い一つ目を輝かせた。

 

「…セットアップ!」

 

謎の人型実体が放つ圧力に急かされるようにバリアジャケットを身に纏う。

 

スコル、あれもしかしてヤバい?

 

『めちゃくちゃヤバいです。正直いままで出てきた大型エネミーとは比較するのも烏滸がましい程です』

 

「そ、そんなにか」

 

『…正体不明人型実体、内部にリンカーコアの形成を確認。同様にジュエルシードの完全覚醒を確認。マスターどうやらアレは()()()のようです』

 

え、マジか。あんな煙みたいな奴でも魔導師になれるのか。

 

『違います。ジュエルシードが何かしらの願いに反応して魔導師をかたどったのです』

 

「願い?」

 

願いってなんの願いだ?アレに触れていたのは俺だが、俺は特になんの願いも……もしかして……

 

「スコル」

 

『はい』

 

「あれはもしかすると度し難い変態かもしれない」

 

『そんなわけないだろ』

 

え!?でもこれ多分俺の願いが反映された可能性が高いよね?だとしたらこれ放置したらとんでもない被害が(主に女性に)出るぞ!?

 

『ここまで禍々しい魔力が邪な願いで形成されるわけないでしょ。そんなしょうもない願いで』

 

しょうもないって言うな!俺は憧れてるんだよ!

 

『集中してください。敵魔導師、推定ランクはSです』

 

Sってどれくらい?

 

『なのはさんは今の時点でAぐらいです』

 

え!?主人公より強いの!?そんなの俺が勝てるわけないじゃん!

 

『マスターもSです…あくまで推定ですが』

 

え、俺も結構強いんだ…ほほーん……

 

『あくまで性能の話です。実際の実力を測ってるわけではないので勘違いしないように』

 

「了解!」

 

カタナを構える。さて、まずは相手の出方を伺うか…

 

突如として出現したあの煙人間はまるでライトのように光るその真っ赤な目をこちらに向けたまま動かない。

 

『逃げると思いましたがそうではないのですね』

 

いやいや仮にこの化け物を外に逃がしたらどうなるとお思いで?

 

『そうですね、一時間と経たないうちにこの街は火の海と化すでしょう』

 

もう答え出てるじゃん!やるしかないじゃん!

 

『ですがマスターの今の攻撃手段はそのカタナのみです。接近戦に持ち込むとしてもどうやって懐に飛び込むお積もりで?』

 

「え、そんなの決まってんじゃん」

 

煙人間に向かって急降下する。カタナを構える。

 

「近づく!」

 

『強化魔法発動』

 

敵に近づくスピードがさらに上がる。力がよりみなぎり、柄を強く握りしめる

 

「はぁ!」

 

渾身の一撃だと思った。しかしそれは突如として現れた長剣に阻まれてしまった。

 

相手の武器も剣か!

 

『まさかデバイスまで生み出すとは…執念深いことこの上ないですね』

 

そしてさらに驚くことが続く。相手の剣が突然燃え始めたのだ。

スコル!これは!?

 

『レアスキル・魔力変換資質“炎熱”です!』

 

「あっつ!」

 

たまらず後ろに引く。しかしそれを見逃してくれるほど敵は優しくなかった。

 

すぐさま攻勢に移り、その長剣でこちらを素早く、豪快に、そして巧みに斬りつけてくる。

 

はやっ!?受けるだけで全力なんだが!?

 

「強化魔法!」

 

『これ以上の強化魔法は体への負担が大きいですよ?』

 

「大丈夫!俺は天才だ!」

 

『了解です、マスター』

 

さらにスピードとパワーを増した返し刃を放つ。それを敵はしっかり受けきるが、威力は殺せなかったらしくそのまま後ろに飛ばされる。

 

ふぅ…スコル、今の攻防を見ての俺の勝率は?

 

『多く見積っても6%です』

 

やべぇな…よし、奥の手だ。

 

スコル、アイツに催眠って効くかな?

 

『分かりません、人型実体をとっていますがだからといって精神となるものがあるようには見えません』

 

物は試しだ!

 

「『お前は俺に攻撃できない』」

 

どうだ!?

 

しかし敵はその言葉をまるで意に介さず、地を蹴りこちらへ斬りかかってきた

 

くそっ!ワンチャンあると思ったが流石に厳しいか!

 

敵の斬撃に対して当たらないようにカタナを滑り込ませていく。さっきよりも俺の動きが良くなってきている。少しずつ、少しずつだが俺がこの敵に追いつきつつある。神様から授かった才能が、転生者としての才能がこの敵に順応し始めている。

 

『勝率15%に上昇』

 

これでも15%か!?

 

なら──

 

時間停止!!

 

敵の動きが止まる。止まったのは結界内だけでなく結界外までも俺以外の全ての運動が停止する。

 

「くらえ!」

 

最初からこうすれば良かったと思った。いきなりの戦闘だから咄嗟に思いつかなかったが、時間停止できるならやりたい放題ではないか。元々そういう能力だし。

 

煙の袈裟と逆袈裟を斬り、そのまま回り込むように飛んでうなじを狩る。

 

普通ならこれで決まる。だが……

 

「硬い!?」

 

カタナから伝わる感触は金属のそれ。バリアをしているのではなくその身をまとう煙そのものが硬質化しているようだ。一応削れてはいるようだが、それでも煙の層は厚く、ダメージがあるようには見えない。

 

『厄介ですね、こちらの攻撃が通らなければ封印ができないというのに』

 

ちっ、一旦身を隠すぞ!

 

『了解です、隠蔽魔法発動』

 

煙から距離を取り、物陰に隠れる。

 

時間停止、解除

 

「はぁ…はぁ…」

 

……やっぱり時間停止が一番魔力消費するようだな。

 

『そうですね。時間停止した状態を維持したらマスターは体感時間2分で魔力切れです』

 

ウルトラ〇ンより短いな…

 

くっそ、おまけに過度な強化魔法のぶり返しもきてる。

 

「スコル、敵は?」

 

『現在、周囲の隠れられそうな場所をしらみ潰しに燃やしています。ここに到達するまで推定1〜2分です』

 

物陰から敵を見ると、なんか炎の弾丸やでっかい球体でそこかしこを爆撃している。やばいな。

 

『すぐさまクロスレンジまで飛び込んだのは正解でしたね』

 

そういえばさっきレアスキルとか言ってたけど敵の能力ってどんな感じなんだ?

 

『魔力変換資質“炎熱”は自身の魔力をそのまま炎に変換できる体質です。本来、魔力を炎に変換するには術式を通す必要があるのですが、このレアスキルを持っている人はその工程を飛ばすことが出来ます』

 

なるほど、つまりさっきからあの化け物が炎攻撃しかしないのは……

 

『魔力を生成してぶつけてるだけですね、実際は』

 

結構便利そうだな。……俺にはないの?

 

『マスターはその催眠スキルと認識改変スキル、何気に私は初めてだった時間停止スキルのみです』

 

攻撃系ないやん。

 

『いや攻撃運用すればどれも破格の性能ですから』

 

認識改変って使えそう?

 

『どう使えるか次第ですが、自分の認識をそこら辺の瓦礫に被せれば回避に使えそうですね』

 

うーん、俺を敵として認識できないようにするとかある?

 

『アレに敵味方の認識があるならいいんですが…見た感じ理性失ってそうです』

 

いやいや何事もやってみないと───

 

『マスター!』

 

「うおっ!?」

 

瞬時に空へ飛び上がる。さっきまで俺がいたところを爆炎が包み込む。

 

飛び上がった先でも炎の玉がマシンガンのように飛んでくる。

 

「くっ!」

 

飛行魔法の速度を上げ、当たらないように旋回する。

「ぐっ…!」

 

突然、体の動きが止まる。見れば俺の周りに魔法の式のような物が描かれた帯が囲むように出現していた。

 

──うがああああああ!!!───

 

それをまるで見越してたように化け物は巨大な火球を飛ばしてくる。

 

ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!!

 

『設置型バインドです!解除しますので時間停止を!』

 

時間停止!!!

 

時間を止める、その間にスコルがバインドを解除する。

 

「今いきなり出てきたけどあれが普通なのか!?」

 

『バインド魔法は今みたいな設置型と直接魔法を飛ばす射撃型があります。設置型は隠すようにするのが基本です。近接系かと思ったらしっかり遠距離で戦うロジックもある、敵は中々の強敵ですよ。……解除出来ました!』

 

自由になった瞬間、化け物を挟んで向こう側に移動する。それと同時に時間停止を解除する。火球は俺がいたであろう位置で大爆発を起こす。

 

「……あれモロにくらってたら?」

 

『モロなら即死です』

 

ひえ〜ヤバすぎ

 

『結構軽いですね、死ぬかもしれないのに』

 

うーん、一回死んでるせいかこの世界そのものが夢のように感じるというかもう一回死ぬことにもそこまで恐怖がないというか……

 

『まぁ戦闘に支障がないようでしたら構いません』

 

それよりもどうすんのあれ?明らかに向こうが強いのにどうやって勝つ?

 

『正直、取れる手段がリスキー過ぎてオススメ出来ません』

 

その手段とは?

 

『マスターが時間停止している間にあの煙をカタナでどうにか剥がし、私が中心にあるジュエルシードを封印します』

 

倒さなくてもいけるのか?

 

『かなり無理をしますが無理やり非活性化状態まで戻して封印を施します』

 

うーん、現状それしかないような気がする。

 

『それかなのはさんの増援を待ちます』

 

なのはちゃんの勝率は?

 

『昨日の実力ならほぼゼロです』

 

ダメじゃん。

 

──ああああああああぁぁぁ!!──

 

こちらに気づいた化け物が刀身に炎を宿してこちらに接近してくる。

 

「ふぅ…」

 

カタナを軽く握って深呼吸をする。俺がやることはもう決まってる。このカタナでひたすら斬る、それだけだ。

 

『強化魔法発動』

 

時間停止………

 

「行くぞ!」

 

止まった化け物に斬りかかる。とにかく早く、強く斬る!

 

「はあああああああ!!!」

 

『…マスターの残り魔力量、5割を下回りました』

 

「まだまだあああ!!!」

 

最初は黒く、光も通さないような煙が徐々に内側から青い光を漏らしていく。

 

『あと少しです!』

 

「さっさと露出しろおおおお!!!」

 

渾身の一撃を叩き込む。

 

すると、煙が晴れ、中から神々しい光を放つ球体が顔を出す!

 

「これか!?」

 

『それです!封印開始!』

 

その光は急速に輝きを失っていくが、時々大きく点滅する。

 

『くっ!強情な…!』

 

「間に合いそうか!?」

 

『間に合わせます!』

 

ジュエルシードの輝きが徐々に弱くなっていくのに対して、スコルの輝きが大きくなっていく。

 

お、いけるいける!

 

『………封印完了。マスターの魔力残量一割、時間停止を解除していただいて大丈夫です』

 

指示通り時間停止を解除する。

 

黒い煙が形を保つことなく辺りに広がるが、つい先程までこちらを覆っていた圧力感はもう感じない。

 

「結局これってなんの願いだったんだ?」

 

『分かりません。あくまで仮説ですが、このジュエルシードにどこかの魔導師が願いを込めていてそれが原因で取り込まれた…あるいは願いそのものになってしまったと思われます』

 

え、こわっ。普通に人を取り込むとかヤバすぎ。

 

「……で、もうこれ大丈夫なんだよね?」

 

『…………マスター、お疲れのところ申し訳ありませんが戦闘準備を』

 

「え?」

 

スコルがその言葉とともにバリアを展開したのと

 

俺に閃光が直撃したのはほぼ同じタイミングだった。

 

─────────────────────

 

 

 

お母さんに言われて、この管理外世界“地球”に降り立った。この世界は見ての通り、魔法技術が発達してなかった。

 

その中でロストロギアであるジュエルシードを捜索、回収するのだ。きっとすぐに帰れると、簡単だと思っていた。

 

でもこの地球に降り立ったその日に、私はロストロギアの、ジュエルシードの脅威を目の当たりにする。

 

「バルディッシュ、これは?」

 

It’s very powerful magical power.(非常に強力な魔力です)

 

The signal seems to be from Jewel Seed(反応はジュエルシードのものと思われます)

 

「これが…ジュエルシード……」

 

私の目には、ジュエルシード…が変化したと思われる物体とそれと激しい戦闘を繰り広げる少年が映っていた。

 

突然瞬間移動したり、いくつもの斬撃を発生させたりと奇妙な魔法を使っていたが戦いは少年の勝利に終わった。

 

今の私ではあの子に勝てない…でもあの戦闘で消耗はしている……これなら!

 

「フォトンランサー!」

 

射撃魔法を発動する。向こうは戦闘が終了して完全に気を抜いている……

 

ごめんね………

 

心の中で少年に謝罪する。それでも私はやらないわけにはいかないのとどこかで言い訳をしながら。

 

だが、完全に死角を突いたはずの攻撃は瞬時に展開されたバリアによって防がれたのだった。

 

──────────────────

 

 

衝撃をもらった方へすぐに振り向く。

 

その視線の先に立っていたのは、金色のツインテールをなびかせながらかなり…主に太もも部分が際どい服装をした少女を発見する。

 

あれは…!?

 

フェイトちゃん!フェイトちゃんや!

 

エッロ!小学生の未発達な体でその服装は色々マズイですよ!?

 

『マズイのはマスターの頭の中とこの状況です。勝てなくはないですが、消耗したこの状態で戦うのはオススメできません』

 

は!?いやいや、相手はなのはちゃんと並ぶ主人公レベルの重要キャラやぞ!そんな危ないことできないって!

 

『今あなたが置かれている状況もまあまあ危ないですけどね』

 

そんなことをボヤいているとフェイトちゃんが俺の周囲を高速で飛び回り始めた。

 

「速いな…」

 

『飛行技術は向こうが上ですかね?スピードもかなりのものですね』

 

でも…目で追える。さっきの化け物の剣の方がもっと速かったし。

 

フェイトちゃんが急旋回してこっちに向かってきたのですぐさま振り向き刀を構える。

 

普通に対応していることに対して驚きの顔を見せるフェイトちゃん。かわいい。

 

振り下ろされた鎌の軌道をカタナで逸らす。

 

「やあ!」

 

振り回される鎌を避けたり、逸らしたりしながら相手の出方を伺う。

 

やべぇどうしよう、なんか戦っちゃってるけど正直キツいぞ。こっちは戦う気ないのにどうしたものか…

 

『一回気絶させます?非殺傷設定で』

 

うーん、それも一考の余地があるけど正直こんなかわいい女の子にカタナ振るのは気が引ける。

 

「なら!」

 

近接攻撃に埒があかなくなったのかフェイトちゃんは距離を空ける。

 

「チェーンバインド!」

 

今度は魔法でできた鎖を飛ばしてきた。拘束系かな?

 

あれ斬れる?

 

『斬れます』

 

よし!

 

飛んできた鎖を全て叩き斬る。

 

「フォトンランサー!」

 

こっちの迎撃の合間をぬって先程と同じ魔法を繰り出してきた。

 

今度はカタナで迎撃せずに、一瞬だけ時間を止めて回避する。

 

「…テレポート!」

 

…あぁ向こうは俺が瞬間移動したように見えたのね。

 

『いいじゃないですか勘違いしてくれて。それよりもどうするかいい加減決めてください』

 

……デバイスって操縦主の手元を離れたらどうなんの?

 

『ただの喋る機械になります』

 

じゃあ時間少しだけ止めて、敵のデバイスを奪い取るのは?

 

『…まぁ相手が何も対策してないなら決定打ですね』

 

よし!それでいこう!時間停止!

 

時間をほんの少しだけ止めて、フェイトちゃんの鎌を奪い取り、近くの茂みへ放り投げる。

 

「…え?きゃっ!」

 

時間を戻すとフェイトちゃんが落下し始める…なんで!?

 

『そりゃあ基本術の制御はデバイスに任せますからね。そのデバイスが無くなったなら飛行魔法もままならなくなって当然ですよ』

 

「それを先に言えぇぇえええ!!!」

 

落下するフェイトちゃんを地面に激突する寸前で受け止める。あぶねぇ!もう少しで魔法少女なのに笑えないレベルの惨状になるところだった!

 

ズザアアアとスライディングキャッチをし、何とか無傷でおさめる。

 

おい!この子原作キャラなんだぞ!もっと丁重に扱え!

 

『知りません。敵ですし、私はマスターの意見を尊重しただけです』

 

俺この子大切にしようみたいな感じ醸し出してたやん!そこ汲み取れや!

 

『え、やだ』

 

うっきぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!

 

「あ、あの」

 

「うん?」

 

スライディングしながらキャッチしたのでお姫様抱っこみたいな状態になっているフェイトちゃんは少し顔を赤らめながら俺の手の中で縮こまりながら声をかけてきた。

 

はああああかわいい!何この小動物!?守りたい!腕細い!かわいいいいいいい!!!

 

『はい、犯罪者予備軍はさっさと手を離しましょうね〜』

 

まぁ待ちたまえよ、スコル殿。俺はこの子を助けたんだよ。ならこの状況は不可抗力であり、俺がこうして二の腕や太ももの感触を確かめてるのもなんらおかしいことでは───

 

「フェイトを離せぇぇええええ!!!」

 

「ぶべらァ!」

 

いきなり横から顔面を殴りつけられる。

 

土の上をゴロゴロと転がってるのか上と下の感覚が混乱する。

 

「ス、スコル。お前反応してただろ…」

 

『すいません。マスターがキモくて』

 

「お前後で覚えてろよ」

 

俺を殴ってきた奴を見ると、猫耳を付けたお姉さんだった。あれもなに?デバイス?

 

『いえ、あれはあの子の使い魔…ペットですね』

 

「ペットが人型なのか…魔法の世界」

 

「ペットじゃない!」

 

「ア、アルフ…」

 

アルフと呼ばれた…獣?女性?は歯を剥き出しにしながらこちらを威嚇している。

 

『2対1ですか…状況がさらに厳しくなりましたね』

 

やばいですね☆

 

『本当にヤバいです』

 

非殺傷設定……気絶させる?

 

『構いませんが、マスターの残り魔力的に時間を止められるのはあと10秒程度です』

 

え、そんなにないの?

 

『そもそも戦闘が終わった時点で残存魔力は残り一割でした』

 

そういえばそうだった……

 

「はあああああああ!!!」

 

アルフが飛び込んでくる。うーん、これなら時間止めなくてもやれそうだな。

 

非殺傷設定、よろしく。

 

『了解しました』

 

アルフの拳をスレスレで避けながら、すり抜けざまに胴を切り裂く。

 

「がっは……」

 

「アルフ!!!」

 

ドサッとそのまま倒れ込むアルフ。…これ死んでないよね?ピクリとも動かないんだけど。

 

カタナでツンツンとつつくが猫?型獣人は身じろぎ一つしない。

 

「待って!」

 

「え?」

 

フェイトちゃんの悲鳴のような声に思わず振り返る。その姿は泣きながら、そして震えながらこちらを見つめていた。

 

「お願いします。アルフを許してください…私はどうなっても構わないから……お願いします…私の…家族を助けてください…お願いします…お願いします!!」

 

泣きながら土下座するフェイトちゃん

 

なんだろう、俺って襲われてるからこれも正当防衛なんだろうけど……これなんか俺が悪者みたいじゃね?

 

『そうですね、虫が良すぎると思いますが私も自分が悪いことをしているように感じますね』

 

小学生に泣きながら土下座させてる…ヤバいな罪悪感が。魔法少女リリカルなのはってこんなに重たいストーリーなの?

 

『知りません。まぁともかくなんでこんなことしたのか事情を聞くぐらいはした方がいいんじゃないんですか?コイツとこの子をどうするかはそれで決めても』

 

たしかに。

 

「なんでこんなことを?」

 

「……その石です」

 

「うん?」

 

石ってジュエルシードの事か。

 

「…これを集めてるのか?」

 

「……はい」

 

「なんで?」

 

「…分かりません」

 

うーん、これはどう判断すればいいんだ?

 

『隠してるようには見えません。何も教えられずに集めてこいと言われたとかその辺でしょうか?』

 

…この猫?犬?人?渡してお引き取りしてもらう?

 

『まぁそれでいいんじゃないですか?ここで二人を始末するメリットも戦うメリットもマスター的には無いようですし』

 

「ほらこの人は解放するよ。君のデバイスはそこの茂みに隠してある。それを取ったら帰ってくれ」

 

「…ありがとうございます」

 

フェイトちゃんはいそいそとアルフとデバイスを抱え、こっちに一礼してどこかへ飛んで行った。

 

はえ〜いいくい込みだな…エッロ。

 

『…とりあえず今日は帰りましょう。体を休めないとこの消耗の仕方は明日に響きます』

 

「…だな」

 

スコルが結界を解除する。すると魔法によって傷つけられた地形や建物が何事もなかったかのように修復されていた。

 

それにしても…

 

フェイトちゃんをお姫様抱っこした時のことを思い出す。太ももや腕の感触に気を取られて深く考えてなかったが、彼女の体には明らかに俺がつけていない傷がいくつも見られた。

 

虐待か……

 

まだ推測の域をでないがもし虐待されてるなら俺になにかできることはないだろうか……と考える。例え敵でも自分が知ったキャラには幸せに生きて欲しい…そう思うのは間違ってるだろうか。

 

「あーー疲れたーーー」




主人公、戦いの中で一気に強くなるドラゴ〇ボール超仕様。

書いてて思いましたが、スコルってめっちゃ便利っすね。


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狙撃ができるクロスレンジ系僧侶

いつの間にかUAが100000突破してましたね。これからも更新頑張ります。

日間ランキング7位に一瞬載ってましたね。短い間でしたけどめっちゃ嬉しかったです(感想)


激闘を終えた夜、塾から帰ってきたなのはちゃんにサプライズとばかりに取ってきたジュエルシードを見せびらかす。

 

煙魔導師と戦い得た戦利品である4個目のジュエルシード。きっとこれを見たなのはちゃんは目がハートになること間違いなし!のはずだったが突然取り乱し、泣きそうになりながらも

 

──どうしてそんな無茶したの!

 

と、まさかの激おこ。情緒不安定ですか?

 

あとから聞いたがその時の俺の状態はかなり危なかったらしい。

 

──『普通にボロボロでしたし、加えて魔力欠乏症ギリギリでしたからね』

 

と、その後スコル医師から診察結果をいただいた。いやお前なのはちゃんの前では全然大丈夫ですよって言ってたやん。普通に俺も信じてたわ。

 

そんなことがあり、昨日のジュエルシード探索はなのはちゃんに任せっきりとなってしまった。少しでも助けようものならダメ!と言われる。なんかそれがかわいくて何回もしてたら涙目になり始めたのでさすがにやめた。

 

そして今週の日曜日、なのはちゃん達御一行はサッカーの試合を見に行くらしい。しかもそのサッカーチームのコーチはなのはパパだという。なんでも出来るよなあの一家。そのうちクローンとか作り出しそう。

 

俺も誘いは受けたのだが、用事があると言って断った。なのはちゃんが心配そうに見ていたが、何もしないよと諭すと素直に頷いてくれた。かわいいかよ。

 

そして自宅で迎えた日曜日、何気に朝から一人で行動するというのは久しぶりな気がする。

 

『で、今日は何するんですか?』

 

「今日は新しい攻撃手段を考えようかなって」

 

煙魔導師との戦いで分かったことは俺が遠距離攻撃に対して対抗手段が時間停止くらいだということだ。

 

現状、時間停止が一番魔力を消費する。それではこの先あれ以上の強敵が複数体現れたりして長期戦になったらヤバいのでこの日曜日を使って遠距離攻撃手段を開発、あるいは対策する。

 

ということで

 

「教えてください!スコル先生!」

 

『何も考えず真っ先に私ですか…』

 

まぁ実際戦闘経験全くない俺がそんなすぐに効果的なモノを思いつくはずもないので。ここはスコルさんの知恵を借りようかな…と。

 

『道理なのが癪です』

 

頼む!

 

『はぁ…了解しましたマスター』

 

さっすがースコルさーん。話がわかっていらっしゃる!

 

『遠距離攻撃といっても魔法の場合、大きく二つに分かれます。魔法で攻撃するか、デバイスで攻撃するかです』

 

「えーと、どういうこと?」

 

『前者はなのはさんのようなタイプですね。杖型のデバイスから魔法を発射するパターンです。後者は銃型で魔力の弾丸を発射するパターンです』

 

うん?その違いでメリットとデメリットがあるのか?

 

『デメリットは場合によりけりで立ち回り次第では修正可能なのでこの際省きます。杖型のメリットは魔法を主体としていますのでバリエーション豊かです。加えて後衛向きなのもあって基本杖型を扱う魔導師は高火力な魔法を使うことが多いので杖型はそれに合わせて魔力の出力の幅がとても広いです』

 

はいはい、まさしくRPGの魔法使いって感じだな。

 

『銃型デバイスのメリットはなんと言ってもその扱いやすさです。引き金を引けば弾が飛びますし、無理に照準を合わせなくともエイムアシストで多少は当たります。さらに使ってるのは自分の魔力なので通常攻撃ならチャージ、術式の展開を必要としないので先手を取れます。これはデバイスの型に左右されるものですが、そのスピードを求めて使う魔導師も少なくないです。ただ、杖型程魔法に富んでる訳ではなく一般的にはストレージデバイスが多いですね。まぁそこら辺は当人の問題ですが』

 

ふむふむ、つまり魔法云々をあまり考えなくていいという事だな。

 

『まぁ玄人は魔法とこれで複合戦闘するのが普通ですがね』

 

むむ、杖もいいけど銃もいいな…いっそ両方使っちゃう?

 

『一応、ガンフォームとロッドフォームを持つ変形型デバイスもありますよ?』

 

いや、変形もいいけど一つ一つ武器チェンジしながら戦ってみたいじゃん?

 

『なんですかその子どもみたいな理由』

 

ロマンだから!ロマン!

 

『…そうですね。こちら、カタログです』

 

目の前にホログラムが映し出される。商品カタログのようにデバイスの写真がスクロールされていく。

 

色とりどりの銃や杖が並ぶなかで一際目を引くものがあった。

 

「お、スナイパーか!ええやん!」

 

それはまさしくザ・スナイパーといった感じのライフル型のデバイスだった。長い銃身に八の字になった二脚、長いスコープに加えて胸に当てるには長すぎるストック、そして色は大好き黒である。

 

『ご存知伏せスナイパー…ではありません。伏せるのは同じなのですが放つのは魔力砲でどちらかというと固定砲台みたいな感じです』

 

どうやら魔法のスナイパーと俺が思ってるスナイパーは違うらしい。

 

「これをカスタムしたら砲台じゃないスナイパー運用できたりする?」

 

『いやまぁ可能ではありますけどでしたら普通に射撃した方が効率いいですよ?』

 

はぁ〜、やっぱり機械には男のロマンというものは分からないか〜。

 

『そんなもので命を落とされてはたまったものではないのですが』

 

へぇー!ボルトアクション式もあるんだ!やっぱ分かってるねぇ!

 

『聞け』

 

スコルがなんか言ってるが無視して色々とカスタムを弄っていく。色はもちろん黒で銃身は今よりやや短めにしてストックも抱えられる程度に抑え、スコープは変わらず高倍率にする。

 

「よし!スコル、これ出して!」

 

『え、いや、これ、えぇ…』

 

ん、何か問題が?

 

『問題というか戦闘を前提にしてる感じしないんですが…ボルトアクション方式を採用するくらいなら普通にチャージショットの方が100倍マシなんですが、しかもスコープ付いてるのに突っ込む前提のフォルムになってるのが最高に意味がわかりません』

 

え?凸砂でもしようかなって。

 

『………マスター、スナイパーの最大の利点は気づかれず遠距離から強力な一撃を放つことです。凸砂というものは分かりますが、アレはゲームの話で現実でやるのは明らかにアホですよ。理想とリアルの区別ぐらいつけてください。てかそれならなおさらボルトアクションはダメでしょ』

 

うるさい!俺は凸砂がしたいんだよ!いいじゃん、どうせ才能豊かな肉体なんだし!極められそうなことは極めたいじゃん!

 

『…もう勝手にしてください』

 

やったぜ。

 

スコルが赤く輝き、目の前に魔法陣が形成される。幾何学的な紋様が鼓動するように輝く度に、徐々に俺がイメージした通りの銃がその姿をあらわにしていく。

 

「おぉ!」

 

そして現れた銃は俺がオーダーメイドした通りのカスタムになっていた。

 

手に取ってみる。…うーん、重い!

 

『銃なので当たり前です。…高倍率スコープ、なんかミスマッチじゃないですか?』

 

確かにこうして全体像を見ると無駄にスコープがデカい気がしなくもない。

 

『スコープはデジタル型にしますね』

 

……お願いします。やっぱり自分の理想を詰め込みすぎるのは良くないね。

 

『あとボルトアクション方式ではなくてコッキングしたら次弾がチャージショットになる仕組みにしておきますね』

 

「え!?そんなのボルトアクションじゃないよ!」

 

『あ?』

 

「…なんでもないです。試し撃ちいきましょ」

 

こうして出来上がったスナイパーライフルをこの街の山奥で試し撃ちすることにした。

 

────────────────────

 

 

 

 

「だいぶ当たるようになってきたな!」

 

『……ほんと上達だけは早いのなんなんですかね』

 

これが神様スペック!と自身の才能を誇らしく思う。

 

あれから一番近くにある山に移動し、結界を張り、スコルが展開した的を撃ち抜く練習をしていた。

 

最初はコッキングもままならなかったが、僅か三十分で大抵の動く的には当たるようになってきた。一発一発撃つ度になんとなく次はこうすると当たるとまるで初めから答えが分かっているかのように照準がどんどん改善されていく。

 

「よし!次は動きながらやってみようか!」

 

『了解しました…どんどんスナイパーから遠ざかっていく』

 

スコルがなんか言っているが、無視して撃ち始める。

 

走りながら撃つと常に照準がブレるから全然当たらないな。

 

……そうか、走ってる時の重心が一番沈みこんだ瞬間か一番浮かび上がった瞬間のどちらかを捉えて撃てばいいのか。

 

右足が深く沈みこんだ瞬間に合わせて撃つ。ど真ん中ではなかったが今度はしっかり命中する。

 

『なんでこれで当たるんですか?』

 

うーん、言うてデジスコなんてアイアンサイトと変わらんし、クイックショットでも当たって当然でしょ(COD脳)

 

「飛行魔法!」

 

次は空を飛びながら、的を射ていく。むむ、今度は360°意識しないといけないからかなりキツいぞ。

 

……なるほど、周囲の魔力を感知しながら狙ってみると当たりそうだな。

 

射的に使ってる魔力は俺の魔力だという。ならそれを感知してみるか。

 

目だけでなく周りにソナーを飛ばす感覚で魔力を感じてみる。

 

『…探知魔法、いやそれに似た何かですか。いずれにせよそれを容易くやれるのは世界探してもマスターだけですよ』

 

なんかスコルが化け物を見るような雰囲気を醸しているが実際できてしまっているのだから文句を言わないで欲しい。

 

くっ…自分も的も動いてる状態で探知しながら当てるにはまだ練習が必要か!

 

探知はできるが、そこから振り向いて照準、発射までのタイムラグなのか座標のズレかは分からないが魔法の感性と人としての感性が一致してないのか思った場所に飛ばない。

 

それでも一射ごとに徐々に照準があっていき、同じように探知魔法の感覚が自分にあてはまっていく感触を感じる。

 

「お、結構当たってきたんじゃないか?」

 

飛行魔法なので色々と体勢を変えながら撃ってみるがどの体勢でもそれなりに当たるようになってきた。

 

『回転しながら撃つとかもはやスナイパーの面影すらないんですが』

 

いいじゃん、当たれば。

 

そうやって試行錯誤しているとあっという間に昼時になっていた。

 

『マスター、そろそろお昼時です。一旦切り上げましょうか』

 

「マジか、じゃあ適当にコンビニで何か買うか」

 

この数時間でかなり射撃の腕が上達したのを感じる。明らかに2、3時間そこそこで身につくレベルものではないのだが、この体が才能豊かなのが悪い。つまり俺が天才すぎるのが悪いのだ。ごめんね。

 

『本当にその通りなのが最高にムカつきますね』

 

スコル、君はもう少し自重することを覚えようか。

 

『その言葉、そっくりそのままマスターへお返しします』

 

 

 

 

 

普段、ご飯はなのはちゃん家でいただくことが多いせいかコンビニ弁当では物足りなくなってしまう。あそこ、ご飯ホント美味しい。もはや一流レストランだからね。

 

「でもコンビニの弁当も普通に美味いよな」

 

『どこの店も試行錯誤の末、出品してますからね』

 

料理に軽く感想を添え、後は無言でパクパクと食べていく。

 

「ん。あ、そうだ、午後の予定なんだけど」

 

『はい、引き続き練習するのであれば付き合いますよ』

 

むしろ付き合わない選択肢もあるのかデバイスのくせにと思いつつも言葉を続ける。

 

「治癒魔法教えてくんない?」

 

『……………マジですか』

 

マジです。

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

 

今日はお父さんがコーチを務めるサッカーチームの試合を観戦しに行きます。アリサちゃんやすずかちゃんに加えてあきと君も誘ってみたんだけど、どうやらあきと君は一緒に行ってはくれないようです。

 

──大丈夫、なのはちゃんを悲しませるようなことはしないから。安心して。

 

「はぁ……」

 

あきと君がまた無茶しないか心配です。あきと君がボロボロの姿で帰ってきたあの日、私の心はきっと今までにないくらいぐしゃぐしゃになったと思います。あの時はあきと君が死んじゃうんじゃないかと本当に思いました。でも、あきと君はケロッとしてるし、スコルさんも大丈夫ですと言ってくれたので安心しましたが、わたしは決心しました。もうあんな思いはしたくない…

 

あきと君に無理をさせないように私自身が強くならないといけないと!

 

次の日のジュエルシード集めも私だけでやろうとしましたが、あきと君は私の動きが危なっかしいと思ったのか何度も手伝おうとしていました。やっぱりそれも私がまだまだだからです。

 

─なのは、大丈夫?─

 

─うん!大丈夫だよ!─

 

どうやらユーノ君にもいらぬ心配をかけてしまったようです。ダメダメ!落ち込んでいてもしょうがない!そんな暇があったら今よりもっと強くならないと!

 

─ユーノ君、今度また魔法の練習お願いできる?─

 

─うん。でも無茶しちゃダメだよ、最近のなのはは少し頑張りすぎてるんだから─

 

─大丈夫だよ、これくらい!それでね……

 

ユーノ君と念話でこれからの練習について話し合います。最近は並列思考(マルチタスク)というのも覚えて他のことしながらでも魔法も使えるようになってきました。あきと君を守るためにもやれることは何でもやらないと!

 

 

 

 

 

 

サッカーの試合は見事、お父さんのチームが勝ちました。勝利に皆が湧き上がる中、キーパーの男の子とマネージャーの女の子が仲良さそうにしています。傍から見ても分かるほどに二人の仲はとても良さそうで恋人同士にも見えます。

 

いいなぁ……私もあきと君と………

 

「わわっ!」

 

頭を振って思考を振り払う。何を考えてるの自分!今はそのことよりもジュエルシードを優先しないと!

 

……恋人か〜

 

勝利のお祝いを翠屋ですることになりました。みんな試合のことを振り返りながらワイワイと騒いでいます。ユーノ君もアリサちゃんとすずかちゃんにもみくちゃにされながらとても楽しそうです。

 

─うわっぷ!?たすけ、助けてなのは!!─

 

とても楽しそうです。

 

……?

 

今、一瞬魔力を感じたような?

 

気のせいかな?

 

そのまま解散となり、お父さんも今日は疲れたと先にお風呂に入るようです。私も自分の部屋に戻って布団に倒れ込みます。頑張ろうと思ったけどやっぱり体はすごく疲れているようです。魔法の練習をするためにもおやすみして体力を回復させないと。

 

─ユーノ君、ちょっと疲れたから寝るね。練習する……時間になったら…起こして…ね─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「?なんか今感じなかった?」

 

『ジュエルシードですね。しかし反応が一瞬だけだったのを見ると覚醒はしてないようですが、いつ覚醒してもおかしくないですね』

 

「…スコル、やっぱり治癒魔法の制御任せていい?」

 

『……私にも堪忍袋の緒がありましてね』

 

「ふえええええええええ!!!」

 

『きもっ』

 

「うるせ」

 

─────────────────────

 

 

 

 

─…て…………は!─

 

─お…て!な…は!─

 

─起きて!なのは!─

 

「はっ!?」

 

ユーノ君の声で意識が覚醒します。いえ、それもありますがなにより私の意識を引き付けたのは…

 

「この魔力は…ジュエルシード!!」

 

Stand by ready, setup.(セットアップできます)

 

「レイジングハート、セットアップ!」

 

 

 

急いでセットアップをして家から飛び出します。家を出て私の目に飛び込んできたのは大きな木でした。高さだけでも学校やビルよりも全然高い上に、その根は今にも街を飲み込もうとどんどん広がっています。

 

「なに…あれ…!」

 

─なんて巨大なんだ…!─

 

きっとアレはさっきの…!

 

「…私のせいだ」

 

─…なのは?─

 

「私があの時気づいていれば!」

 

─なのは!─

 

ジュエルシードがあそこまで広がったのも私が気づけなかったから。ならこれは、

 

()()()()()()()()()()()()

 

大樹のもとまで飛行魔法で急いで飛ばします。大樹の近くまで来ても私に反応することはなくその根を、幹を、葉をどんどん広げていきます。

 

「レイジングハート、アレをどうにかできないかな!?」

 

─ジュエルシードを封印するならまずは元となった核を探さないと!─

 

ユーノ君から念話が飛んできます。核、つまり願いを込めた生き物だね!

 

「レイジングハート、探索魔法お願い!」

 

『Area Search』

 

探索魔法を発動し、魔力の流れを読み取りながら元を探ります。木という形だから流れの元は辿りやすく、すぐに見つかりました。

 

「人!?」

 

探索魔法で探った先にいたのは遠くからで顔は分からないけど人が二人ジュエルシードを囲うようにして動かなくなっているのが見えました。

 

ジュエルシードが人の願いに反応して…?

 

「ううん、ここで考えても仕方ないよね。レイジングハート、あれを倒すためにはどうすればいいの?」

 

Use Divine Buster(ディバインバスターを使いましょう)

 

「ディバインバスター…それなら倒せるんだね?」

 

Yes(はい)

 

「分かった!お願い、レイジングハート!」

 

Shooting mode, setup.(射撃形態へ移行)

 

レイジングハートの音声と共に杖の先に真っ白な翼が生えていきます。これが射撃形態…凄い…。

 

杖を前に突き出す。足元に魔法陣が展開される。それと同時に杖の先に桃色の魔力がどんどん集まっていく。

 

すごい魔力…これならきっとあの大樹も倒せる!

 

─なのは、危ない!─

 

私の魔力に反応したのか、それとも私がやることが危ないと思ったのか、地面から大樹の根がいくつも凄い勢いで飛び出してきました。

 

「あっ…」

 

私は魔力を集中させていて、ユーノ君の警告があっても咄嗟に動くことが出来ませんでした。

 

迫る巨大な根、あんなので叩きつけられたら死んじゃう…のかな?

 

しかし、その根が私に当たることはありませんでした。なぜならそれは私に当たる前に突然どこからか飛んできた魔力弾によって破壊されたからです。

 

─いまのは!?─

 

ユーノ君は突然の事で慌てていましたが、私にはそれを誰がやったのかすぐに分かりました。

 

─なのは!─

 

念話が飛んできます。その声を聞くだけで私の胸は高鳴り、同時に心が安心するのを感じました。

 

─あきと君!─

 

どこにいるのかは分かりません。でもあきと君が私を守ってくれたことは分かります。情けない気持ちになりますが、ちょっとだけ王子様に助けられたお姫様のような気分になりました。

 

─やれるな!?─

 

あきと君は私がやろうとしてることを心配してくれてるようです。でも大丈夫……

 

「あきと君にかっこ悪いところは見せられない!」

 

Divine Buster, stand by(ディバインバスター、準備完了)

 

「いくよ、レイジングハート!」

 

 

 

『「ディバインバスター!」』

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ねぇ、スコル」

 

『はい、なんでしょう』

 

「主人公って凄いね」

 

『まぁ確かにアレは小学生がやるレベルじゃないですよね』

 

俺とスコルが目を向ける先では、なのはちゃんがなんかえっぐい魔力砲をこれまたヤバいデカさの大木に撃ち込んでいた。

 

スコルと治癒魔法の練習中にジュエルシードの反応が一瞬だけあったのでいつでも行けるように待機してたら、なんかクソでかい大木になってたのでいやこれどうする?とスコルと作戦会議をしていたらなのはちゃんが現れて何かをやろうとしていた。

 

スコル曰く、砲撃魔法ということで現状火力不足な俺はなのはちゃんの支援に回るという方向性で意見が一致した。

 

支援といってもなのはちゃんに迫る根っこを時間止めてライフルで撃っただけなのだが。

 

「もしあれ俺がくらったらどうなってた?」

 

『塵も残りませんね』

 

「…ヒェッ」

 

とりあえずもうなのはちゃんを怒らせないようにしよう。

 

大木は消し飛ばされ、ジュエルシードはなのはちゃんの手によって封印された。

 

とりあえずなのはちゃんの方へ行って、無事かどうかを確認する。

 

無事っぽいがなのはちゃんの顔は暗い。こんだけでかい化け物倒して一体なんでそんなに暗い顔してるのだろうか。

 

『マスターと違って、彼女は心優しいですからね』

 

どういう意味やねん。

 

訳を聞くと今回の騒動はどうやら事前に対処できたはずとのこと。うーん、流石に状況を知らないからなんとも言えないが結局今回も無事に事なきを得たんだから素直に喜べばいいのに。

 

そして一番気にしているっぽいのは核になった二人のこと。どうやら顔見知りだったらしくさらに男の子の方は怪我しているようだった。女の子が肩を貸しながら歩いているのがなんとも痛々しい。

 

涙を浮かべながら、ごめんね、ごめんね、と謝るなのはちゃん。いやめっちゃいい子。

 

『ホントにいい子ですね。私のマスターなんて─あ、怪我してるじゃん─としか思ってませんからね。慰めの言葉も無いとは驚きました』

 

最近、スコル、俺の深層心理まで読んでない?

 

『あなたの性格を考えれば一発です』

 

取り敢えずこのままだとなんかスッキリしないからあの子の怪我治すか。

 

『そうですね、実験─せっかく治癒魔法覚えたんですから使わない手はないですね』

 

うん。せっかくだし実験台になってもらおうか。

 

『…………』

 

─時間停止─

 

時を止めて怪我している男の子の方に近づく。

 

男の子の方に手を当てて魔力を集中させる。治癒魔法の基本は治すことよりも患部をしっかり認識することらしい。何が悪いのか、どうすれば治るのかをしっかり知る事が大事とのこと。

 

うーん、血管がいくつか破けてる、…打撲箇所もあるな、これを治せばいいのかな?

 

『そうですね、幸い数箇所の内出血、打撲程度の軽い怪我の範疇に留まっているのでマスターの腕でも治せますね』

 

「ちなみに手術が必要なレベルだったら?」

 

『病院まで運びましょう』

 

そりゃそうか。

 

『治癒魔法、開始』

 

スコルの声とともに集中力を高める。俺がやることは簡単、患部が治っていくのをイメージするだけ。口では簡単だが、魔力の出力や大まかな操作は俺がするので、本当に集中する。細かい部分や難しい部分はスコルがやってくれるのでそこは安心して任せられる。なんでも元の形状を細胞から読み取って…とか言ってたので考えるのをやめた(究極生命体並感)

 

『……終了です』

 

え、もう?

 

『はい。正直、マスターの治癒魔法の上達が気持ち悪いレベルにまで達しています。そのうち外傷程度ならもう私の手もいらなくなるでしょう』

 

え、そんなに?

 

…………ふふふ、才能。

 

『調子に乗るな』

 

…才能。

 

自分の才能の怖さをひとしきり堪能したら、なのはちゃんの隣まで戻る。そういえば魔力の消耗が前より少ない気がするんだけど。

 

『おそらくマスター自身がこの時間停止能力に順応し始めてることが原因かと。そのうち一時間ぐらいは止められるようになるんじゃないんですか?』

 

「D〇Oか」

 

──時間停止、解除──

 

苦しそうにしていた少年は自分の不調が嘘のように回復したことに目を丸くし、少女の方も驚いてはいるが嬉しそうに笑っている。

 

何が起こったのか分からないとこちらを見るなのはちゃんにウインクを送りながら優しい言葉を投げかける。さぁ惚れ直すがいい!

 

 

俺の言葉になのはちゃんは笑顔で頷き返してくれた。

 

あ、惚れそう。

 

『いやお前が惚れてどうする』

 

────────────────────

 

 

 

 

「おーい、なのはちゃーん」

 

「あ、あきと君」

 

あきと君がこっちに飛んできます。

 

ジュエルシードは無事に封印出来ました。でも本当ならこうなる前に早く解決できたはずだし、あきと君に無理をさせないと誓ったはずなのに結局彼の助けを受けてしまいました。

 

「なのはちゃん、今の砲撃魔法?っていうの凄いね!」

 

「ううん、結局あきと君の助けがないと撃てなかったからまだまだだよ」

 

「え、俺?いやいや俺は後ろからこれ撃ってただけだから」

 

とあきと君は黒くて大きな銃を見せてきます。あれ?そういえばあきと君、この前使ってたのは剣だったはずなのに銃なんていつの間に……

 

「あきと君、銃のデバイス持ってたの?」

 

「これはスコルに用意してもらったんだよ」

 

「スコルさんが?」

 

『僭越ながらマスターの要望に合わせた物を用意させていただきました』

 

す、凄い…。スコルさんもレイジングハートと同じように高性能なんだ…。そしてそれを扱うあきと君も。私なんて魔法一つ放つだけでもいっぱいいっぱいなのに。

 

─おいこらスコル、今俺がなのはちゃんと喋ってるだろうが、横から入ってくんな─

 

─『私のバトルフェイズはまだ終了してませんので』─

 

本当にすごいよ、あきと君は。……私なんかよりもずっと

 

「やっぱり私じゃなくてあきと君に任せればよかったのかな……」

 

「え、いやいや。俺にアレはできないよ、なのはちゃんだからこそ倒せた敵だよ」

 

「違うよ、本当ならこうなる前にもっと早く解決できたんだよ。私が……もっとしっかりしてたなら………」

 

こうなったのは自分のせいだと口にすると同時に涙が溢れてきました。何やってるの私…これじゃあまたあきと君を困らせちゃう。

 

頑張ろうとした事がぜんぶ空回りしています。おかしいな、本当ならもっと上手くやれたはずなのに。

 

あの二人だって、私がもっと早く気づいて対応してればこんなことにならなかったのに…

 

レイジングハートを使ったのが私じゃなくてあきと君だったら全部うまくいってたのかな?

 

自分は何も出来ないと思えば思うほど涙が止まりません。

 

「ごめんね…ごめんね…」

 

口から出る言葉は怪我をした二人への謝罪…。

 

「なのはちゃん……」

 

あきと君から心配そうな声をかけられます。うぅ、こんな姿見られたくなかったのに。

 

「あの二人を見てて」

 

「え?」

 

あきと君が指さす先にはジュエルシードの核となってた二人、()()()()()巻き込んでしまった人達……

 

「………え?」

 

だけど、私の目に映ったのは怪我をし、痛々しそうにする男の子の姿はなく、自分の怪我が治ったことに対して驚きながらもピンピンとしている姿でした。

 

何が起こったのか理解できない私にあきと君は言いました。

 

「ほら、これで大丈夫だよ。だからもう泣かないで」

 

きっとあの子をあきと君が何らかの魔法で治したんだと思います。

 

「なのはちゃん。少なくとも俺はアレを倒すことはできなかった。なのはちゃんがいてくれたからこの町は救われたんだ。つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。なのはちゃんがどう思ってるのか分かんないけどこれからも精一杯サポートするからさ、一緒に頑張っていこうよ」

 

 

……私じゃないとダメ?

 

そっか…私でもやれたことがあったんだね。

 

まだまだ私は未熟者です。正直今でも自分の弱さに挫けてしまいそうです。それでもこれからも頑張っていけそうです。私には私にしか出来ないことがある…だからそれを私は精一杯頑張りたいと思います。

 

「うん!」

 

どんなに辛いことでも、どんなに難しいことでも

 

あきと君となら頑張れる気がしたから…




~帰宅後~

「………♪」←暁斗の腕に抱きついている

「えーと…戻りました」

「「ナイスゥ!」」←女性陣

「「貴様ァァ!」」←男性陣


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本当に魔法少女の物語なのか疑わしくなった日

いつも誤字報告ありがとうございます。
関西弁全然分かってないのでどなたか修正してくれるとありがたいです。


「さぁ、たくさん食べてってな!」

 

目の前に並ぶ料理はとても同い年の女の子が作ったとは思えないほどに高い完成度を誇っている。家庭料理としては百戦錬磨の主婦のそれを思わせる程だ。

 

『なのはさんと言い、この方と言い、どうして私たちの周りにはこんなにハイスペックな人が多いんでしょうね』

 

そういえばなのはちゃんのお母さんもめっちゃ料理美味いよな。すずかちゃんも結構出来そうだし、メスガキもなんやかんややれそうだよな、英語もペラペラだし。

 

試しに唐揚げを一つ箸でつまんでみる。

 

ここらでは珍しい関西弁っぽい喋り方をする少女はニコニコしながらこっちを見ている。いやこれは感想待ちだな。

 

唐揚げを口の中に入れ、咀嚼してみる。しっかり中まで火が通ってるし、肉汁もあって衣はパリッと中は柔らかく、問答無用に旨味をこちらに叩きつけてくる。

 

「…うん、100点」

 

「よし!」

 

俺の言葉に花が咲いたように笑う少女。その眩しさはなのはちゃんと同じものを感じるが、こっちはさらに活発さを感じさせるものだ。

 

「いや〜わたし、人に料理を食べさせるの初めてでな?味覚合うか結構心配やったんや」

 

「そうかな?そんな心配する必要ないと思うけど。もっと自信持っていいよ、()()()ちゃん」

 

「ほんまか〜?えへへへ…あ、はやてで呼び捨てでええで!」

 

かわいい。

 

頬をポリポリと掻きながら照れ笑いする少女を目にしてホッコリとする。

 

さて、なぜ俺がこの少女『八神はやて』という原作キャラと食事を共にしているのか。それは少し前に遡る。

 

──────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…!はぁ……!」

 

走るというよりはとにかく足を前に出すことにひたすら全力を注ぐ。一度足を止めるとそのまま倒れて動けなくなってしまうだろう。

 

持久走は鼻から息を吸う方が酸素交換効率は良く、楽でいいらしく実践しているのだが、肺の方は今にも爆発しそうなくらい膨張と収縮を繰り返してる…つまりめっちゃキツイ。

 

「スコル…!今何キロ!?」

 

『まだ2キロです。ほらほら足の回転速度、1分前より落ちてますよ』

 

「はぁ…!はぁ…!」

 

スコルの煽りにも反応できない!キッつい!やっばい!吐きそう!

 

現在俺はスコル考案の魔法過負荷ランニングの真っ最中なのだが、今にもダウンしそうである。

 

クソデカ大樹をなのはちゃんがなぎ払った翌日、彼女は魔法の朝練を始めていた。なんでも戦い方のレパートリーを増やしたいとのこと。まさか俺の遠近両用な戦い方を参考にしてくれたのだろうか。

 

しかしなのはちゃんが頑張ってるのに俺だけ家に帰って認識を大人にすることで購入したエロ本を読み漁るのは申し訳ないということでスコルと相談し、放課後体力トレーニングとして走り込みをすることにした。

 

その結果がこれである。走れるところまで走ろうとして5キロ軽々走って鼻を高くしてたらスコルによって強制的に身体能力を制限された状態での走り込みを余儀なくされた。

 

クラスで一番走るのが速い子が一番遅くなるくらいには遅く、そして重くなった俺は最初の1キロもゼーハー言いながらようやく走れる程度のスペックになってしまった。

 

さすがにこれはやりすぎでは!?

 

『そんなことはありません。そもそも小学三年生で軽く5キロ走れる化け物はマスターしかいません。化け物に普通の基準は当てはまらないので問題ないです』

 

はい人権無視!名誉毀損!私はこのデバイスに名誉を傷つけられた上に不当な鍛錬を強いられました!

 

『ではそれで訴訟してみては?機械を訴える小学生とか世の笑いものになるのは目に見えてますがね』

 

むっきいいいいいいいいい!!!!

 

『速度落ちてますよ、キープキープ』

 

 

 

 

 

もう無理。走れない。おうち帰る。でも帰れない。助けてなのはちゃん。

 

『念話で呼んだら来てくれますよ?』

 

「こんな無様な姿見せられるわけないだろ」

 

どうにかこうにか5キロ走り終えた俺は公園のベンチで疲れた体を休めるために横になっていた。

 

『とはいえ速度はお粗末でしたがフォームはマラソン選手みたいになってましたよ』

 

「それは俺も感じた」

 

走ってるうちになんか体の動き変わってね?と思ったら走るフォームがいつの間にか完成されていたのは流石にびびった。もはや才能とかのレベルで片付けられない気がする。

 

「てかこれどうやって帰んの?」

 

公園で休んではいるが、ここは俺の家の近くにある公園ではなくさらに離れた場所に位置する公園のためこのボロボロな足で帰るのはかなりきつい。

 

『足が無理なら飛べばいいじゃないですか』

 

「……おま、天才かよ」

 

じゃあ早速飛行魔法を………

 

『あ、リンカーコアにも制限かけますので大分やりづらくなりますが頑張ってください』

 

………やっぱりなのはちゃん呼ぼうかな。

 

「ん?」

 

小学三年生にSOSを送るか迷っていたところ公園の入口を車椅子に乗った少女が横切っていく。膝の上には買い物を終えた帰りか大量の食べ物が入った袋が置かれている。それを落とさないようにしてるのかとても進みづらそうだ。

 

『そろそろ日が落ちる頃にあの子一人だけというのは危ないですね』

 

うーん、確かに。時刻は夕方だが、そろそろ日が落ちるといった頃合いだ。あの子に何かあってはこちらとしても夢見が悪いし

 

「しょうがない、家まで送ってやるか」

 

『お、さすがマスター。紳士ですね』

 

「ついでに惚れさせるか」

 

『お、さすがマスター。クソですね』

 

スコルの最上級の賞賛を聞き流し、車椅子少女の方まで歩いていく。ホントにノロノロ動いてんな。

 

「持つよ。そんなにノロノロ動いてたら日が暮れちゃうよ」

 

「え?」

 

流れるような動作で買い物袋を腕にかけ、車椅子を後ろから押してあげる。ふふ、イケメン。

 

俺が一連の動作をし終えると少女はその顔をポカンとさせてすぐに顔を赤くしてあたふたし始めた。

 

「いやいや、大丈夫や!これくらいわたしでもどうにかなるから!」

 

「いいからいいから。俺が勝手にやってるだけだから」

 

「いや、でも…」

 

「それにそろそろ暗くなるよ。こんなに可憐な子どもを一人置いていくわけにもいかないしね!」

 

「………ふふ、アンタも子どもやん」

 

「おっと、一本取られた」

 

軽く冗談を交えながら話してみると思いのほかウケが良く、家の方まで案内してもらうことになった。ふふ、イケメンパワー。

 

「ありがとな、わざわざ」

 

「放ってはおけなかったからね」

 

買い物袋は少女が持つにはとても重かった。買い溜めするからだろうがこれをこんな時間にこんな少女一人が、しかも車椅子で行っているのを見るにかなり複雑な家庭事情がありそうだ。

 

『どうでしょうか、マスターのようにそもそも親がいないとかじゃないですか?』

 

なおさら重いわ。てか俺の家にはスコルがいるから実質一人じゃないし。

 

『…ありがとうございます』

 

え、どゆこと?

 

「あ、ここや」

 

しばらく歩くとどこにでもありそうな家の前で止まる。表札には()()と書いてある。

 

……………八神?

 

「そういえば名前は?」

 

「わたし?わたしの名前は八神はやてや!」

 

……………………

 

マジ?

 

『どうかしましたか、マスター?』

 

スコル、この子多分原作キャラだ。

 

『マジ?』

 

マジ。

 

八神はやて…たしか高町なのは、フェイト・T・ハラオウンと同じ主人公格の人物……だったはず。同人誌では任務先でヤラれたり、催眠かけられたり、逆に同僚や家族?とヤッたりといろんなシチュエーションで登場している。

 

「キミは?」

 

「剣崎暁斗だよ」

 

「あきとちゅうんやな。ホンマにありがとな!」

 

「い、いや俺が勝手にやっただけだから気にしなくていいよ」

 

「でもキミも親が心配してるんやないの?」

 

「え、俺親いないから大丈…あ」

 

俺の言葉を聞くと途端に顔を暗くするはやてちゃん。ヤバい、話題を変えないと…!

 

「いや!えっ「なぁ!」…ん?」

 

「ご飯…食べてかん?」

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

 

とまあ長くなったがこういった経緯で八神家でご馳走になることになった。

 

「…♪」

 

そしてはやてちゃんは俺が無言でパクパクと食べてるのをニコニコとしながら見ている。そんな微笑ましい感じ出すなよ、母性感じるだろ。

 

『…え、小学生を母親にするんですか?』

 

……………………はぁ〜、分かってないなスコルは。

 

確かに母親というのは血縁関係によるものだと世間では認知されている。

 

『いやそれが真理で常識──

 

ただし!

 

それは()()()()()()()()()()()!!!!

 

『……………………………は?』

 

母性を感じるキャラであるならばすなわちそれがその人のママなんだ。だからたとえロリエルフでもガチぺドでも小学生でも母性を感じればそれはママなんだ!

 

『マスター』

 

なに?

 

『お前は何を言ってるんだ』

 

どうやらスコルには母親とママの違いが伝わらなかったらしい。悲しきかな、これが人と機械の差なのか。

 

『マスターのようになるなら私は機械のままでいいです』

 

「ごちそうさまでした」

 

「お粗末さまでした」

 

あっという間に平らげてしまった。なんでこんなに美味い料理を小学三年生が作れるんだろう。

 

「アキトはたくさん食べるんやね」

 

「まぁ育ち盛りだしね」

 

たしかに言われてみるとなのはちゃん家の時といい、ここでもたくさん食べたが、育ち盛りの三年生でもこんなに食べるのだろうか?

 

「洗い物は俺がやるよ、貰ってばっかりじゃ悪いし」

 

「へぇ、アキトは小学生なのにしっかりしとるなぁ」

 

「それはお互い様だな」

 

食器を一つに重ねて運んでいく。台所には大きめの椅子があり、はやてちゃんがそれに座って洗い物をしてるであろうことが見て取れた。台所は俺の場合は背伸びすれば問題ないが、車椅子に座った状態でやるには少し高すぎるようにも思える。

 

チラッと食器棚を見る。食器棚は皿やコップなど一般的なものは入っているが明らかに数が少ない。やっぱりこの家にははやてちゃん以外は住んでいないのだろうか。

 

「……アキトはさ」

 

「ん?」

 

「自分の親がいないのって寂しくないんか?」

 

…うーん、反応に困るな〜。確かに親はいないけどそもそもそれがいたのかも分からないんだよな〜。

 

『一応、海外に単身赴任という設定ですよ』

 

あ、そうだった。忘れてたわ。

 

「海外に行っててね。いずれは戻ってくると思うよ」

 

「あ、そうなんや。…家族、いるんだ」

 

あ、これ多分会話の選択肢ミスったわ。スコルどうしよう何か修正案ない?

 

洗い物をしながらのため背中越しでの会話になるが明らかに向こうが雰囲気が暗くなるのを感じる。

 

『足のことを聞いてみるのはどうですか?』

 

「はやてちゃんは何で車椅子なの?」

 

「……実はな、わたしの親はわたしが物心つく前に亡くなってな。この足はそれが原因で歩けなくなったらしくてな」

 

「……ごめん」

 

「うんうん!わたしの方こそ辛気臭い話してごめんな!」

 

おいいいいいいいい!スコル、おま、てめ、バカ!考えうる限りで最悪の選択肢踏んでるじゃねえか!

 

『ふむふむ、となると誰が彼女をいままで育ててたんでしょうね』

 

冷静に考察するなあああああ!!!

 

くそ!こうなったら俺のテクで話の内容を胸が熱くなるような感動モノへ変えてやる!魔法少女がこんな激重鬱展開で溜まるかァ!

 

「そうだ!じゃあはやてちゃんに足が治るおまじないをしてあげるよ」

 

「そんなんあるんか?」

 

『そんなのありましたっけ?』

 

馬鹿野郎、治癒魔法使うんだよ。おまじないでまさかの足回復、ハッピーエンド!これでいこう。

 

『それやるの私ですよね?』

 

うん。

 

『…………』

 

洗い物を中断し、手を拭いたらはやてちゃんの手を取り、念じるふりをする。

 

「け、結構本格的やな」

 

『治癒魔法開始』

 

体に魔力を巡らせてはやてちゃんが足が動かなくなった原因を探る。

 

ん?なんか魔力的なの感じない?しかもなんか黒めの

 

『は?は?は?は?は?は?は?』

 

怖い怖い怖い怖いどうした!?スコルお前なんかバグってるぞ!

 

『マスター、この子とんでもない爆弾抱えてますよ』

 

え、爆弾って何!?そんなに危ないものなのこの魔力!?

 

「な、なぁもうええやろ。さすがに恥ずかしくなってきたわ」

 

『一旦終わりましょう、このことについては後で話します』

 

「あ、ごめん」

 

「あ……うん」

 

手を離し、洗い物に戻る。スコルが言ってた爆弾、それが何を意味するかは分からないがこの子はとんでもないことに巻き込まれてる可能性が高いだろう。

 

「おまじない、効くとええな」

 

「俺のおまじない、結構効くんだよね」

 

後ろからはやてちゃんの声が聞こえる。その声はさっきよりは明るくなっていたので取り敢えず目標は達成したからよしとしよう。

 

てか魔法少女リリカルなのはの世界って虐待受けてたり、親無しで孤独に生活してたりで重くね?

 

『しかもそこに変態が混ざってるときましたか』

 

否定はしないが、スコル相手に肯定をするつもりは無いぞ?

 

───────────────────

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあね!」

 

元気よく手を振りながら走っていくのを見送る。外はもう暗いのに、泊まっていってくれてもいいのに、迷惑はかけられないからと少年は走っていった。

 

「不思議な子やな…」

 

公園の近くでいきなり声をかけられたと思ったら凄いカッコよくて最初はビックリしたが話してみると大人びているが、所々子どもっぽくて自分でもびっくりするぐらい気付いたら気を許していた。

 

お互い親がいないもの同士で親近感もあったが、どうやら向こうは親が一時的にいないだけだったようだ。それでもあの子は明るく、元気で、そしてこっちを励まそうとしてくれた。

 

「あかんな、こりゃ」

 

急に静かになった家を見て、いつもより広く感じるのは気のせいなのだろうか。きっと気のせいではない。

 

だって自分の目からは自然と涙が零れてしまってるのだから。

 

「寂しいなぁ…」

 

誰かと食事をするという温かみがここまでだとは思いもよらなかった。アキトが自分が作ったご飯を美味しそうに食べる姿を見るのはこの上なく幸せだった。アキトが自分の料理を褒めてくれるだけで舞い上がりそうなほど嬉しかった。

 

「おまじないか……」

 

アキトが握ってくれた手を見る。きっと本人は思いつきでやってくれたのだろうが、今の自分には本当に効いてくるのではというどこか確信めいた謎の自信があった。

 

「ホントに不思議な子やな〜」

 

一緒に過ごしたのはたった数時間もない僅かな間。でもそんな短い間でもここまで自分の心が揺さぶられるとは思わなかった。

 

唐突に家のインターホンが鳴る。こんな時間に誰だろうか。

 

一応警戒しながらも玄関を開けてみると

 

「…ごめん、外暗くてどっち帰ればよかったか分からなかったから今日だけ泊めてくんない?」

 

「………ええで!」

 

本当に……不思議な子や。




「え、あの子ロストロギア埋め込まれてんの!?」

『いえ、正確にはロストロギア、あるいはそれに類似した何かと接続した状態にあります。足が動かないのはその後遺症のせいでしょう』

「どうすんの?」

『取り敢えず調査をする必要がありますね…もう一回戻って泊めてもらえるか頼んでみましょう』

「そんな恥ずかしいことしたくないのだが!?」

『やれ』

「…ねぇ君本当に俺のデバイス?」

『当然です』


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他人の家に土足で上がって傷を治した話

無印編、どんな締めくくりにすればいいんだろう(何も考えていない)

アンケート、フェイトそんがスコルを抜いたの笑いました。


「あ、待って!」

 

フェイトちゃんが持ち味のスピードを活かして戦場から離脱していく。うん、遠目だけどやっぱりあのくい込みエッロいわ。

 

『いや何言ってるんですか、自分結構やらかしてますよ』

 

うん、だってまさかジュエルシードの反応を感知して駆けつけたらなのはちゃんとフェイトちゃんが戦ってるんだもん。どうすればいいか分からんわ。

 

はい、では何故俺はこの戦いに駆けつけるのが遅れたのでしょうか?

 

『はやてさんの家で寝てたからじゃないですか?』

 

はいその通りでございます。いや〜日光浴びたての布団はダメだね。しょうがないじゃんあの子、一人にしてたら泣きそうになるんだから。この前俺が泊めてもらうように頼みに行った時顔に泣いた跡あっただろ。アレ見せられると幸せにしたくなるじゃん。

 

『そうですね、マスターが恥も知らずに頼み込みにいったので覚えてます』

 

お前が行かせたんだろうがぁ!

 

『それよりもどうするんですか?一応追跡できますが?』

 

取り敢えずなのはちゃんが怪我してるかもしれないから治しに行こうか。

 

「なのはちゃん!」

 

「…あきとくん。ごめんね、ジュエルシ──」

 

「ちょっとごめんね!」

 

「え?」

 

何かを言いかけたなのはちゃんの声を遮って、手を握る。それと同時に治癒魔法を待機させ、魔力を送りなのはちゃんの身体の状態を確認する。

 

「あ、あきとくん!?はぁ…!?」

 

ふむふむ、特に目立った外傷はないな。念の為もう少し調べておくか。

 

「ふあ…あぅ…はぅ!」

 

『あー、これ集中してて聞いてないやつか』

 

一応()()()()()()()調べてみたが怪我はないようだ。これなら治癒魔法を使う必要は無いな。

 

「ごめん、大丈夫だった!あとはよろしく!」

 

「……」キュー

 

─え、これ、え、えぇ…─

 

さぁ、フェイトちゃんを追うか。スコル、ナビよろしく!

 

『了解です。あと今度から治癒魔法の制御は私がしますのでマスターは魔力の出力に気をつけてください』

 

え!?今の魔力出し過ぎだった!?

 

『あんまり出し過ぎると被験者が感じてしまいますので』

 

マジか、じゃあなのはちゃんには後で謝っとかないと。

 

『謝りましょうね、いやマジで』

 

…なんか俺やった?

 

『時、場所、場合では大事でした』

 

?????

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

 

スコルのナビに従って飛んで行った先にはかなり古めのアパートが建った場所に辿り着いた。

 

ここ?

 

『はい。ここのようです、この前マスターを殴り飛ばしたペットもいるようですね』

 

えーと、アルフだったかな。なんかイケメン系お姉さんって感じだったのは覚えてる。

 

『そういえば追跡しましたがこの後どうするんですか?ジュエルシード奪い返しますか?』

 

いやそれはきっとなのはちゃんがやることだからそんな野蛮なことはしないぞ。

 

『ふむ、ではなぜ?』

 

決まってるじゃん、フェイトちゃんの傷を治すためだよ。

 

『…治癒魔法を習得したのはその為でしたか』

 

あれ、意外だった?

 

『いえ、なんやかんや優しいマスターですからね』

 

なんかスコルに褒められるの照れくさいな…

 

『ところでなのはさんの体を調べた感想は?』

 

小学生らしい発育だと思いました!

 

『ゴミですね』

 

そんな茶番をしながらもフェイトちゃんがいるであろう部屋の前に立つ。うーん、インターホン押したら出てくるかな?

 

『魔法が飛んでくるに一票』

 

アルフが殴りかかってくるに一票。

 

とりあえずインターホンを押してみる。

 

──どちらさま?

 

この声はフェイトちゃんではないからペットのアルフだろう。

 

「えーと、覚えてます?」

 

そう告げた瞬間に魔力を扉の向こうから感じる。

 

『マスター』

 

待って、戦闘にはしないから。

 

─催眠開始─

 

「とりあえず扉開けてくれない?あ、攻撃しないでね?」

 

インターホンごしに()()()()()()()()()。すると扉の鍵が開き、こちらをガン睨みしているアルフが出てきた。

 

…怖っ

 

『そりゃあいきなり敵の術中に嵌められたんですから当然です』

 

そんなつもりはなかったんだけどな。

 

とりあえず玄関が開いたので中に入る。部屋の中はこれといって目立ったものはなかったがフェイトちゃんの姿が見当たらない。

 

「フェイトちゃんは?」

 

「ジュエルシードを探しに行っている……っ!?」

 

アルフは自分で言うつもりもなかったのに勝手に口が動いたことに驚いてるようだ。なんか自分の意思とは関係なく動いてるって興奮するな。

 

『マスター?』

 

ナンデモナイヨ?

 

しかし本人がいないなら目的が達成できない。ここはフェイトちゃんが帰ってくるまで待たせてもらうとしよう。

 

「ごめんね、じゃあフェイトちゃんが来るまで待たせてもらうよ?」

 

「ふざけるな!フェイトに何する気だ!」

 

アルフは鬼気迫るといった表情で叫ぶ。俺ってそんなに悪人に見える?

 

『考えてみてください、マスターはいきなり相手の制御権奪ったあげく主人が帰ってくるまで待つと言っていますよ』

 

強キャラ系の悪人ですね、完全に。これ本当のこと言っても信用されないんじゃない?

 

『言わないよりはマシかと』

 

たしかに。ならば俺の交渉術◎のチカラを見せてやるか。

 

「フェイトちゃん、虐待されてるでしょ?」

 

「…だからどうした」

 

「俺治癒魔法使えるから傷を治してあげようかなって」

 

「信用できない!」

 

ダメだ、全然信じてもらえないや。警戒心高すぎかもしれないが敵にとる行動としては普通なのかもな。これでは交渉の余地がないや。

 

『どうでしたか交渉術(笑)は?』

 

そもそも始めから交渉するつもりがないからノーカンノーカン。

 

『それはそうと』

 

スコルがそんなことを言うのと同時に勝手にセットアップされ、腰にはいつの間にかカタナが現れていた。

 

『超高速でフェイトさんがこっちに向かってます』

 

「え、マ──」

 

オレが言葉を言い切る前にフェイトちゃんがガラスを突き破ってこっちに突っ込んできた。

 

かろうじて抜刀を間に合わせ、こちらの首を刈ろうとする鎌を寸前で止める。

 

「…いや〜こんなことになるなんてな」

 

「アルフを解放して」

 

お互いの得物を押し当てたまま膠着状態に入る。というより俺としては戦闘するつもりもないし、向こうはこんなに狭い室内ではお得意のスピードを活かせないからだろう。

 

てかなんで俺がいるのバレてるの?

 

『念話ですね。マスターは攻撃するなという指示しか出してませんからね』

 

…スコル、もしかしてこうなるの予測してた?

 

『はい、これが一番早いと思います』

 

俺別にRTAはしてないのだが!?

 

『とりあえずフェイトさんの動きを止めたらどうですか?』

 

分かってるよ!お前後で覚えてろよ!

 

「ちょっと止まってくれる?」

 

「!?」

 

ピタッとフェイトちゃんの動きが止まり、鎌にかかってる力も同時に失われる。

 

「動かない!?」

 

「テメェ!フェイトに何かしてみろ!アタシがぶっ殺してやるよ!」

 

いちいち怖いのだが。俺そんなに悪人に見えるかな?こんなにカッコイイ顔してるのに。

 

『そういうところじゃないですか?』

 

ともかくこのままじゃ埒が明かないのでさっさと目的を達成して退散するとしよう。

 

フェイトちゃんと向かい合う。どうにか身体を動かそうとしているのか微かに震えている。その目はキッとこちらを睨みつけている。

 

…………これやっぱりエッチなことは

 

『ダメに決まってるだろ』

 

ですよね〜。

 

フェイトちゃんの手を握る。じゃあスコル、診察始めるよー。

 

『治癒魔法、展開開始』

 

「あっ……」

 

目を瞑り、魔力を集中させ、フェイトちゃんに流し込む。今度は出力を抑えて最小限で済むように心がける。

 

『これは…………』

 

うん。やっぱり虐待受けてるね。鞭で打たれたかのような傷に加えて、火傷まである。いやいやこれ虐待とかのレベルじゃなくね?

 

『はい。そのままにしてると傷が残ってしまいます』

 

いや〜魔法少女の物語重すぎ。スコル、治そ。

 

『了解しました』

 

「フェイトちゃん、このキズに関しては突っ込まないけどあまり抱え込まないようにな」

 

「えっ……」

 

「アンタ…なにを……」

 

「俺にはこれしかできないけど…まぁ、辛くなったら頼ってくれよ」

 

根本的な解決には全くもってなっていないけどこれで少しは楽になった……はず。

 

『治癒魔法、全行程終了しました。とりあえず確認できる傷は全て治せました』

 

「よし、じゃあ俺は帰るね」

 

あんまり歓迎されてないし流石に長居はできないよな。

 

『長居してたらどうしたんですか?』

 

いや〜この子どんな生活してるのか見てみたいな〜とか思ってみたり。

 

『きも』

 

ひどい!?

 

「待って!」

 

「ん?」

 

帰ろうとするところをフェイトちゃんに呼び止められる。なんだろう、流石に恨み言は聞くつもりは無いぞ?

 

「ありがとう、ございます…」

 

……やっぱりこの子いい子だよ。いや敵である女の子を治した俺もめちゃくちゃいい子だけどこんな状況でもしっかりお礼を言えるのは本当にえらい。頭撫でていい?

 

『とても芯が強い子なのでしょう。でなければ虐待を受けてなおここまで立派ではいられません』

 

「おう!」

 

そのまま玄関を出てドアを閉める。

 

─催眠、解除─

 

…よし、じゃあ帰るか!

 

『そういえばフェイトさんが割ったガラスはそのままですね』

 

……………あんまりお金に余裕が無さそうだから立て替えとくか。そもそも俺が原因だし。

 

────────────────────

 

 

 

 

 

「大丈夫、フェイト!?」

 

「う、うん」

 

あの子から体を触られてから体のダルさが嘘のように消えていた。しかも体を動かす度に痛みを感じていた傷もその跡すら残っていなかった。

 

「治癒魔法……使えるんだ」

 

「何者なんだい、アイツ」

 

「分からない…でもなんで?」

 

なぜ彼がここに来たのか全く見当がつかない。アルフからの念話で駆けつけたけど彼には戦闘をする気はないようだった。本当に治療するためだけに…?

 

「いい人…なのかな?」

 

「そんなわけない。アイツとあたし達は敵同士だよ」

 

「そうだけど……」

 

アルフの言う通りだが、あの行為には少なくとも悪意というのは考えられなかった。

 

「…温かい」

 

治癒魔法の際に体を駆け巡った感覚、まるで優しく包まれているようで悪い気はしなかった。それどころか居心地の良さまで感じた。

 

「……」

 

彼に握りしめられた手を見つめる。既にその温かさは消えていたことに何故か私は名残惜しさを感じていた。




アルフの一人称ってなんでしたっけ?


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コソ練してたらデバイスと合体した話

大天使ヴィータちゃんがアンケートに入っておりません。大変申し訳ございません。一応その他があるのでヴィータちゃん推しのロリコンさんはその他に投票してください。アンケートの枠の都合上、仕方なかったんです。…こうなったら高町なのはを消すしか…!


「俺も砲撃魔法を撃ってみたい!」

 

『ふむ、とうとうそれが来ましたか』

 

フェイトちゃんの傷を治したり、何故かなのはちゃんは顔を赤くしてこっちを避けていったり、高町男子ズからは凄い形相で睨まれたり、はやてちゃんが俺の家に住みたいとか言い出したりと色々なことがありながらむかえた週末…

 

なのはちゃん達 は 温泉 へ むかった!

 

一応誘われたのだが、小学生とはいえ女三人に男一人は居心地悪いことこの上ないのでお断りさせていただいた。

 

そんなわけでこの週末はジュエルシード集めもやってもよかったが、またなのはちゃんに怒られるのも嫌なので自己強化をすることにした。

 

「ということでスコル先生、お願いしまーす!」

 

『了解しました。死ぬことを望む程度に厳しくするので覚悟してください』

 

「どうせできるんで大丈夫でーすwww」

 

『さて、今日はもうシャットダウンしましょうか』

 

「待って!ごめんなさい!ちゃんと言うこと聞くから!」

 

『…はぁ、では砲撃魔法の講義を始めます』

 

「よろしくお願いします!」

 

─────────────────────

 

 

 

 

『では始めに、マスターはなのはさんが撃つような砲撃魔法を撃ちたいのですね?』

 

「うん」

 

この前のクソデカ大樹を吹き飛ばしたなのはちゃんの砲撃魔法、不覚にもカッコイイと思ったし自分もアレをやってみたいとその時から思っていた。

 

『後述しますが、いきなりなのはさんのように撃つのは無理です』

 

「え」

 

え、撃てないの?そんな馬鹿な。主人公補正というのは俺の圧倒的才能パワーすらも上回るものだったのか…?

 

『当たらずも遠からずです。彼女があそこまで砲撃魔法ができるのは一重にレアスキルのおかげです』

 

「レアスキルか…」

 

そういえば前、煙魔導師と戦った時もレアスキルとか言ってたな。

 

『なのはさんのレアスキル"魔力収束"が砲撃魔法の威力、精度をかなり押し上げています』

 

「で、俺にはそれがないと」

 

『はい、同じ威力は撃てるかもしれませんが例えば同じチャージ時間で砲撃魔法を放った場合、マスターとなのはさんでは雲泥の差が出ることでしょう』

 

「うん?一応同じ威力は撃てるんだよね?」

 

『まぁチャージに時間をかければですが』

 

「なら時間停止した状態でやればいけるくね?」

 

『ただでさえ魔力を使う砲撃魔法を現状一番魔力を使う時間停止を重ねるんですか?』

 

「た、たしかに」

 

スコルの言う通りだ。砲撃魔法がどれだけ魔力を使うのか分からないけど時間停止した状態でそんなことしてたら最悪一発で魔力が枯渇してしまう。

 

『そういうわけです。まぁ拘束魔法などで相手を抑えてればいいですしそこについては対策を考えていきましょう』

 

「はーい」

 

─────────────────────

 

 

 

流石に街中で砲撃魔法を撃つわけにもいかなかったので海岸の方へ移動する。季節は春ということもあって人気がないのは好都合だ。まぁ結界張れば問題ないのだろうけど。

 

「セットアップ」

 

よし、じゃあ行くか!

 

『それでは簡単に砲撃魔法の仕組みの話をしますね』

 

「うぇい!」

 

『真面目にお願いします』

 

「うぇいうぇい!」

 

『………砲撃魔法は魔力の集中、圧縮を経て撃ち出す強力な攻撃です』

 

あ、無視された。

 

『こういうのは基本デバイスが補助をするのですが術式の内容的に魔導師自身のポテンシャルにかなり左右されます』

 

なら、俺天才だから問題ないね!

 

『そっすね。まぁ物は試しです。マスター、ライフルを構えてください』

 

「え、カタナじゃ無理?」

 

『そもそもそういう機構を搭載してないので魔力制御がまだまだ未熟なマスターには無理です』

 

うるさい、未熟言うな。でもカタナは無理かー。まぁなんのためにライフル持ってるんだって話になるから今回は自重しよう。

 

転送されたライフルを浜辺から海の方へ向けて構える。

 

「これ、海に向けて撃っても大丈夫?」

 

『この星の自然界に魔法生物はいませんので結界からあらかじめ弾かれています。思う存分やってください』

 

「よし!スコル、よろしく!」

 

『砲撃魔法、術式展開開始』

 

スコルのアナウンスと共に俺の足元に幾何学的な紋様を形作った魔法陣が浮かびあがる。

 

『ではマスター、準備が済みました。砲撃魔法の基本は魔力の集中、圧縮です。周りに魔力は感じられますか?』

 

スコルの言葉を聞き、周囲の魔力を感じるために集中する。

 

……うん、感じられるな。

 

『では、それを銃口に集めるイメージを作ってもらっていいですか?』

 

イメージというとなのはちゃんのアレをイメージすればいいのかな?

 

なのはちゃんがディバインバスターを撃ってた時の魔力の流れをイメージすると銃口の先に魔力が集中し始めた。

 

『…やはりこちらの想像を上回ってきましたね。こちらの補助なしで一気に発射可能域まで集まりました』

 

え、もうそんなに集まったの?

 

………いやー、やっぱり世の中才能だよね!恵まれた人間が勝つんだよね!なんだよスコル、あれだけ難しそうな雰囲気出しておきながらこの程度だったのかよ驚かせやがってー!

 

『調子に乗るな。ただ発射は可能ですがどうしますか?一度撃ってみますか?』

 

「おう!」

 

『ではトリガーを引いてください』

 

「あ、待って」

 

『なんでしょう?』

 

「魔法の名前決めてないよ!」

 

『そんなの後にしてください。こうして維持してる間も魔力は消費されてるんですから早くしてください』

 

なぜこのデバイスは男のロマンを理解してくれないのだろうか。技にはカッコイイ名前を付けてなんぼだというのに。

 

『機械なので』

 

「いつかわからせてやる」

 

『はよやれ』

 

スコルが少し怒った雰囲気を出し始めたのでトリガーを引いてみる。

 

「うおおお!!」

 

海に向けて放たれたビームは水面に着弾すると同時に高い水柱を立てる。

 

しかしビームの迫力はなのはちゃんのと比べると見劣りするものだった。

 

『次は私も補助に回りますのでだいぶマシになりますよ』

 

「そういうことなら頼むぞ」

 

今のが俺の実力ということか。さて、スコル込みならどこまで伸ばせるんだろうね。

 

『それでは演算を開始します』

 

スコルの言葉と同時に再度魔力を集中させる。

 

「おぉ!?さっきと全然違う!?」

 

銃口の先に集まった魔力は先程とは比にならないほど収束しているのがよく分かった。さっきは集まった魔力はハンドボール程度の球体だったが、今のは直径60cmはあろうかというほど大きい。

 

『どうですか?デバイスの補助がいかに大切か分かりましたか?』

 

「スコル!これ撃っても大丈夫だよね!?」

 

『聞け』

 

スコルが何か言っているようだが、俺は砲撃魔法を放つ興奮にそれを聞き取ることができなかった。

 

『さて、術式の展開は完了しました。いつでもどうぞ』

 

「よし、いくぞ!」

 

─スナイプブラスタアアアアアア!!!!

 

思いつきの名前を叫ぶとともにトリガーを引く。バチバチとデバイスが放電しながらピュウと高い音を出して光線状になった魔力が海の方へ伸びていく。

 

あれ?なのはちゃんのは極太だったのに思ったより細いな、俺の砲撃。

 

と思ったのも束の間、先程とは比にならない爆音とともに海が陥没したんじゃないかというほど水が空高くうち上がる。

 

「……えぇ」

 

威力を見た感じではなのはちゃんが撃ってたのとそこまで変わらないように思うんだが。

 

『魔力の圧縮率が高いからですね。なのはさんは魔力を集めるのはレアスキルもあってかなりのものですが、この圧縮に関してはマスターもなかなかですよ?』

 

なるほど、つまり魔力を圧縮しすぎたからビームみたいになったのか。結構奥が深いな砲撃魔法。

 

「よし!じゃあ次は……うん?」

 

『魔力消費には………え?』

 

俺もスコルもおそらく見る方向はまったく同じ。俺の砲撃魔法でできた渦潮が何故か治まらない。というか中心の方から魔力のようなものを感じる。

 

うーん、なんか最近これと似たような反応を感じたようなないような……

 

『なに寝ぼけてるんですか。この反応、どう見てもジュエルシードです』

 

ですよね……。なんで急にジュエルシードが出てきてんの?

 

『…おそらくというか十中八九、我々が放った砲撃魔法が原因かと』

 

……スコルのせいじゃん。

 

『マスターが悪いです』

 

「はぁ!?そもそもこんなにヤバい砲撃魔法にしたのお前の補助があったからだろうが!責任取ってアレ封印してこいよ!」

 

『マスターが砲撃魔法をしたいと言ったから私は手伝ったまでです。そもそもデバイスの責任は使用者に向かいますので私に非はありません』

 

「じゃあデバイスなら前もって探知なりなんなりして安全確認しとけよ!」

 

『そもそも非活性化状態のジュエルシードは反応はかなり微弱です。マスターは私にこんな大海原の中で特定の小石を見つけてこいと言うのですか?』

 

「やれよ!」

 

『無理』

 

「むっきいいいいいいいいいい!!!!」

 

『それリアルで言う人いるんですね』

 

そんな言い合いをしていると雷が落ちたような音とともに渦潮の中から()()()を放つジュエルシードが出現する。

 

…………え?

 

「スコル…これってさ」

 

『…マスター、セットアップを』

 

スコルの言葉を聞いて、セットアップした俺を襲ったのは

 

視界を覆うほどに大きな津波だった。

 

─────────────────────

 

『艦長!ジュエルシードの強大な反応を検知しました!』

 

「場所は?」

 

『第97管理外世界"地球"です!』

 

「分かったわ。……クロノ執務官、出撃を命じます」

 

「了解した」

 

「ようやく見つけたわ、ジュエルシード」

 

さて、こっちが反応を掴んだということは向こうも同じなはず。これは争奪戦になるわね。

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

「おっぶぇ!」

 

─時間停止─

 

反射的に時間を止めて、飛行魔法を発動、空中に回避する。

 

─時間停止、解除─

 

「スコル!状況教えて!」

 

『ジュエルシードがこちらを攻撃してきたようですね。我々の魔力で覚醒したからなのか、もしくは他に原因があるかもしれませんが、なんにせよ戦闘は避けられません』

 

「やべぇよやべぇよ、これまたなのはちゃんに怒られちゃうやつだよ」

 

『それはそうでしょうが、今は目の前のことに集中してください。ジュエルシード、どうやら六つ覚醒してるようですよ』

 

「六つ!?」

 

マジかよ、六つ全部反応させてしまったのか。これってもしかして何か良くないことを引き起こすのでは?

 

『もしかすると共鳴してヤバいことが起こるかもしれませんね。前見た黒い煙も見えますし既に悪いことは起こっています』

 

「と、とりあえず一つずつ封印していこう!」

 

『賛成です。ただし、慎重にお願いします』

 

「おう!」

 

ライフルを構える。ジュエルシードは黒い煙を発しているようだが、それを纏うようなことはせずバチバチと雷を放ちながら六つとも密集している。

 

「スコル、これって一個ずつ引き剥がした方がいいよね?」

 

『六つ同時封印はどう考えてもリスキーですからね』

 

「了解!」

 

ジュエルシードの内、一つに照準を合わせ、引き金をひく。

 

ライフルから放たれたビームは当たる直前に、バリアに阻まれた。

 

「うーん、やっぱりそうだよね」

 

『……今の障壁魔法の強度はなのはさん並でしたね』

 

マジか、じゃあチャージ無しのライフルじゃ歯が立たないじゃないか。となると、カタナか覚えたての砲撃魔法か〜。いやーカタナであの中に突っ込んでいきたくないな〜。

 

ジュエルシードが怪しい光を放ったと同時に魔法陣が展開、複数の魔力球が浮かび上がると同時にこちらへ飛んでくる。

 

「やばっ」

 

飛行魔法で回避しようとするが、どうやら追尾型らしくこっちの後ろをピッタリとついてくる。

 

「撃ち落とす!」

 

後ろに振り向きながら、ライフルで追従してくる魔法弾を撃ち落とす。さらに2発が俺の先に回り込んでいたが、それもそのまま回転しながら撃ち抜く。

 

「今度はこっちの番だ!」

 

『カタナ、転送完了』

 

スコルがこっちの意思を汲み取って、カタナを転送してくれた。ナイスサポート。今度一緒にエロ本読もうな。

 

『サラッとそっちに引き込むのはやめてください』

 

何か失礼なことを言われた気がしたが構わず刀を握りしめ突っ込む。向こうも迎撃に魔法弾を撃ってくるが全て回避できるレベルだ。

 

「はぁ!」

 

体を回転させ、威力を増加させながら浮遊するジュエルシードのうち一つにカタナを振りおろす。

 

「やっぱり硬いな!?」

 

手に返ってくるのはビリビリとした痺れ。カタナはジュエルシードを捉える前にバリアに阻まれた。その硬さはまるで鉄の棒をコンクリートの柱に叩きつけているような心許なさすぎる感覚だ。

 

刀の痺れを感じていると周囲に魔力を感じる。周りを見ると先程と同じような魔力球が俺の周囲をこれでもかというほど浮遊していた。

 

「やば」

 

─時間停止─

 

時間を止めて、すぐさまその場から引く。

 

─時間停止、解除─

 

「…危ねぇ」

 

周囲に浮遊していた魔力球が一斉に爆発し俺がさっきまでいた場所は魔力が放つ光で爛々と輝いていた。もし時間を止められなかったら自分があの中にいたのだと思うとゾッとする。

 

『…マスター、ここは撤退を』

 

え、なんで?

 

『あのジュエルシード、まるで意志を持っているかのように攻撃の手段を変えています。先ほどの攻撃はマスターが逃げられないようにするためにやったようですがそれが避けられたとなると次はさらに狡猾になるでしょう。それが六つ…何かしら対策を立てないと取り返しのつかないことになります』

 

俺がここで引いても取り返しつかなくね?

 

『それは他の人の話です。私はマスターの話をしています』

 

それそうだけどさ、ここでやっておいた方が後々都合がいいんだよね。

 

『どういうことですか?何か対策でもお考えで?』

 

いやなのはちゃん今温泉じゃん?

 

『はい』

 

ここで引いたらどのみち対策立てて戦うから長引くじゃん。

 

『ま、まぁそうですね』

 

そしたらさ

 

()()()できなくね?

 

『………………………………は?』

 

いやだからさ、冷静に考えてみるとなのはちゃん達温泉じゃん?俺いないじゃん?つまり俺が覗きをしてもあやしまれないじゃん。

 

『……すいません、なにをどう冷静に考えてるのか分からないのですが』

 

実は元々砲撃魔法を完成させたらなのはちゃんの所に覗きに行こうかな〜って思ってたんだよね。

 

『もうヤダ、このマスター』

 

あなたのご主人様ですよ〜。

 

「でも現状何もないよね」

 

『……別に無くはないです』

 

え、あるの?

 

『まだ調整中で下手すればマスターが消滅しますが』

 

は?

 

「そんな諸刃の剣は求めてな──」

 

流石に喋りすぎていたらしい。再びジュエルシードが魔力球を生成、射出してきた。

 

「でも!それしか!方法!ないんでしょ!?」

 

さっきよりも数が多く、加えて軌道も複雑になってきていよいよこちらを仕留める気が見えてきた。

 

『下からも大規模な魔力を感知しました』

 

「はぁ!?」

 

スコルの言葉を聞き、下を見るとなんと海の水が回転し、ドリルのようになりながらこちらに向かってきていた。

 

回転しながら上下左右に、時々急旋回しながら避けてるなか、どうにかそれを避ける。

 

しかし必死なって避けてるこっちを嘲笑うかのように今度は避けたそのドリルが弾け、中から大量の光弾が飛んできた。

 

「いやレパートリーィ!」

 

─時間停止─

 

たまらず時間を止めて安全地帯まで撤退する。

 

「…スコル、さっき言ってたやつやってみない?」

 

『………危険ですよ?』

 

「それはモノによるだろ?もしかすると案外問題ないかもしれないし」

 

『……やろうとしてることは簡単に言うと"合体"です』

 

……はい?

 

「スコルと俺が?え、機械と合体ってもう俺の体が原形を保つとかそのレベルの話じゃないよね?」

 

『融合ではありません。私とマスターの魔力リンクを同調させることで基礎能力を飛躍的に上げるだけです』

 

…融合ではなく同調か。うーん、うまいイメージが浮かばないな。でもこれって何か危険性を孕んでいるのか?

 

「スコル…」

 

『危険性についてですが、私とマスターが合体…つまりユニゾンした場合マスターの精神が私の人格と合わさり消滅する可能性があります』

 

「え、怖っ!?」

 

俺とスコルが合体、肉体的にではなくて精神的にみたいな感じか。面白そうだけどそれで自分が消滅なんてしたら元も子もないな。

 

「どうやったらそれを回避できるんだ?」

 

『そこは私とマスターの相性ですね。精神的にも魔力的にもですが』

 

「魔力の相性ってどうやって分かんの?」

 

『魔力的な相性は私はマスター専用デバイスなのでチューニングしなくて大丈夫です』

 

ふむふむ、つまり精神的な相性だと?

 

『そうですね、信頼関係というか性格的な相性です』

 

「なんだそれ」

 

急に恋愛診断みたいになったな。あなたと私は付き合ったら絶対に結婚までいくよ!的な感じになったらユニゾンできるってか?

 

「それならもういっそスコルと結婚すれば全部解決じゃん」

 

『わ、私はデバイスですので結婚するのは……その……』

 

いやいやできないのは当たり前だろ?デバイスだぞ?機械だぞ?流石に無理があるだろ。世間体気にするとかのレベルじゃないし。

 

『……………死ね』

 

「えええええええええ!?」

 

お前が無理って言ったんだろ!?なんで俺が罵倒されなくちゃいけないんだよ!?

 

『マスターなんかもう知りません。勝手にやられてください』

 

誰お前!?そんな口調じゃなかっただろ!?急に可愛くなってんじゃねえぞ!ギャップ萌えに弱いんだよ俺は!

 

「と、とにかく信頼関係なんだろ?それなら大丈夫じゃないか?」

 

『この流れでどこが大丈夫って思えるんですか?』

 

「うーん、スコルって俺のこと信頼していない?」

 

『私はあなた専用のデバイスですよ?信じてないはずないじゃないですか』

 

「なら問題ないだろ」

 

『はい?』

 

スコルはどうやら勘違いしていたようだ。まぁこういうのって思考を読み取るよりもそう考えてようやく気づけるものだからな。

 

「俺はスコルを手にしたあの時からずっと信じてたぞ。まぁイラッとすることは多々あったが別にそれだけだしな。それに俺もうお前以外のデバイス使うつもりないしな」

 

『………マスターは卑怯です』

 

「えぇ…」

 

卑怯って俺なんか姑息なことしたか?

 

『ともかく問題ないことはわかりました。ではユニゾン準備を始めます。時間停止を解除してください』

 

─時間停止、解除─

 

スコルに言われた通りに解除する。

 

するとジュエルシードはこちらの動きを察していたかのように素早く魔法陣を展開、ビームを放ってきた……て!?

 

「スコスコスコスコルさん!?」

 

『安心してください。すぐに済みます』

 

いやいやいやいやいやいやいやいやこれやられるパター──

 

思わず目をつぶってしまったがいつまで経っても衝撃が来ない。そーっと目を開けてみると俺の目の前に白くクリアなバリアが貼られていた。

 

『ユニゾン完了しました。もうマスターは誰にも負けません』

 

自分の全てが変わったような気がした。魔力が能力が全てが内側から湯水のように溢れてくる。自分に何が起こったのか、正確に説明することはできないがでもたった今思ったことがある。

 

「スコルの言う通りだな」

 

目の前の敵、ジュエルシード。さっきまでは脅威だと感じていたそれらに対して俺は勝利を確信していた。




凄い圧縮感。あんまり伸ばしすぎるのもキツイからってこんなに圧縮してよかったのか………


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取り敢えず封印してみた

ちょくちょくランキングに上がるのなんでなの?更新もそんなにできてないのに…


『同調率50%…まぁ今のところはこれが限界ですね』

 

魔力そのものが変わった気がする、身体の内側が変わった気がする、視界はおかしくなっている。総評、これ大丈夫?俺がユニゾン、スコルと合体した感想だ。

 

「なぁスコル、俺って今どうなってんの?」

 

『こちら、外から見た映像です』

 

「…うえええ!?」

 

目の前にホログラフィックな画面が浮かんだと思うとそこに映っている自分の顔、姿に驚く。

 

「これが俺?」

 

映像に映っていた俺の姿はまず、髪がきっちり左半分が白くなっていた。肌に色違いな部分は見受けられないが、とりわけ気を引いたのが、目だ。左目の(まなこ)が僅かに黒い輪郭を残して全て白くなっていた。よく見ると黄色く魔法陣のようなものが浮かんでいる。そして服装も前の真っ黒な姿ではなく、髪同様、左側半分が白く染まっている。

 

「おぉ、結構カッコイイかも」

 

服装がピエロみたいに見えなくもないが、コートなのでギリギリそれっぽく見える。

 

『さてマスター、ユニゾンした感覚はどうですか?』

 

「あぁ、最高だよ。これなら…勝てる」

 

改めてジュエルシードを見据え、刀を構え直す。不思議とどうすればいいのか、どんな魔法を使えばいいのかが頭に浮かんでくる。

 

『今現在、私とマスターはかなり深い部分でリンクしています。私で扱える魔法はマスターも自然と扱えるようになっているはずです。存分にご活用ください』

 

「あぁ!」

 

魔力を圧縮させ、カタナに纏わせる。魔力を纏った武器はその魔力量に応じて攻撃力が上がっていくことは()()()()()。白と黒が捻れるように流れる魔力の脈動に力強さを感じる。

 

飛行魔法を発動させる。術式が頭の中を駆け巡る、しかしそれもほんの僅かな一瞬だけ。次の瞬間にはこれまでよりも圧倒的に速いスピードでジュエルシードに肉薄する。

 

「まずは1つ!」

 

カタナをありったけの力を込めて叩き込む。一瞬バリアがそれを遮るがあっという間に砕け散り、密集したジュエルシードのうち一つを刈り取った。

 

飛ばされたジュエルシードを掴み、封印を実行する。いまだに魔力渦巻くジュエルシードはその輝きを強め、抵抗してくるが無理やり捩じ伏せ抑え込む。

 

『…まさか50%でこれほどとは』

 

「どうだ?天才だろ?」

 

残ったジュエルシードが今ので危険を感じ取ったのか、光弾の量をさらに増やし、こちらに向けて射出する。

 

「遅いな」

 

ユニゾンした俺の目は光弾の一つ一つを正確に捉えるだけでなく、そこに含まれる魔力量、術式までも読み取ることができた。

 

全て切り伏せることはしない。魔力弾の軌道と軌道の隙間を縫うように飛行し、再びジュエルシードに近づく。

 

「…へぇ、考えるじゃん」

 

先程と同じようにカタナで切り飛ばそうとするところで急旋回、距離をとる。ジュエルシードはバリアを展開したまま動かない。否、()()()()()()()

 

『触れると誘爆する爆発膜ですか。その後ろにバリアを張ることで安全にカウンターを与えられるというわけですね。ジュエルシードが複数あり、それぞれで魔法を起動できるからこその戦法ですね』

 

「だけど」

 

左手にライフルを転送し、右手にカタナを持ち直す。

 

「先に誘爆させれば問題ないな」

 

ライフルをクルっと回し、トリガーから一瞬手を離す。コッキングするレバーが上を向いたところで素早くレバーを引き、またトリガーが元の位置に帰ってきた時に指を戻す。

 

「どうよ、片手でコッキングしたぜ」

 

『わざわざコッキングしないといけない構造なのどうにかなりません?』

 

「ロマンだから無理」

 

引き金を引く。コッキングしたことにより威力が増幅した魔力弾が発射される。それはジュエルシードが張るバリアに直撃し、やけに大きく爆発する。

 

「爆破膜、便利だな」

 

『問題は向こうにそれだけの知能があることですが』

 

飛行魔法で三度接近、今度は小細工がされておらず、カタナでバリアを剥がし、二つ目のジュエルシードの回収、封印に成功する。

 

「残り4つ!」

 

2個目のジュエルシードを封印するのとほぼ同時に残りのジュエルシードが散り散りに飛んでいく。いや、これは囲まれたな。

 

『お喜びのところ申し訳ありませんが』

 

「分かってる!」

 

ジュエルシードが四方からそれぞれ魔法を放ってくる。魔力弾に加え今度は火、雷、風と(いろど)り豊かだ。周りを見渡すのも一瞬、すぐに飛行魔法でその場から移動する。

 

「所々に罠仕掛けてるのめんどくさいな!?」

 

おそらく拘束魔法の設置型と思われる術式が空中の至る所に浮遊している。普通なら探知しないと分からないが今俺の目には魔力も知覚できるため位置が筒抜けだ。

 

拘束魔法、そして降り注ぐ多くの攻撃をすり抜け、ライフルで3つ目のジュエルシードを撃ち抜き、封印する。

 

「でもこんなにあるなら一つくらい貰っても…」

 

願いが叶うなら…一個くらい…

 

『思考が小物のそれなのでやめてください。というか現在戦闘中では?』

 

そうは言うが、ユニゾンしてからマジで負けるビジョンが浮かばない。さっきまで強敵だったのに一瞬で雑魚になったジュエルシードくん可哀想。

 

『雑魚にしたのはマスターなんですけどね』

 

「いやいや、ユニゾン持ち出したのはスコルじゃん」

 

残り3つのジュエルシードが再集結したかと思うと、膨大な魔力を感知する。

 

「お?砲撃魔法か、いいねぇそうこなくちゃ!」

 

武器を放し、両手を前に突き出す。砲撃魔法の基本は魔力の集中、圧縮。そして今やデバイスと一心同体になった俺にデバイスの補助は無用!

 

「ぶちかますぜ!」

 

大気中、身体中にある魔力を一点に集中させる。

 

『そういえばジュエルシードはこんなにたくさんの魔力をどこから補給してるんでしょう?』

 

知らないね!それよりもこんだけの魔力を圧縮すれば、なのはちゃん以上の砲撃魔法になるんじゃない!?

 

『…これ結界ぶち抜かないですか?』

 

「大丈夫大丈夫コラテラルコラテラル!」

 

ジュエルシードが砲撃魔法を撃ち出す。その威力は見た感じ、なのはちゃんのそれすらも凌駕しているように見える。

 

「スナイプ!……ライフルは無いから…えっと」

 

 

「トゥーハンドバスター!」

 

『4点』

 

 

何の採点か、スコルに問い詰めることを決め、圧縮した魔力を解放する。砲撃魔法は元々込めた魔力の量が先程の比じゃないせいかしっかり極太なビームになった。

 

ジュエルシードの放つ砲撃魔法と俺が放った砲撃魔法は衝突し、一瞬拮抗するが俺の砲撃魔法が一気に押し込みそのままジュエルシードを呑み込んだ。

 

…ドヤっ

 

『反応消失。取り敢えず封印しましょうか』

 

「おっけー」

 

「あきと君!」

 

「ん?あ、なのはちゃん!」

 

後ろから聞きなれた声が聞こえる。後ろを振り向くとなのはちゃんがいた。とても心配そうにしているけど、温泉は?逆に心配になるんだが。

 

「あきと君、その姿は?」

 

「あ、これ?俺の新しい力さ」

 

なのはちゃんに見せびらかすようにその場でターンする。あと決めポーズ。どうだ、カッコイイだろ。

 

「す、すごい」

 

ふはははははどうだ凄いだろう!もう何度目か分からないけどまた惚れ直すんじゃないぞ?

 

『…マスター、どうやらまだ安心するのは早いかと』

 

「…え?」

 

後ろの方から魔力が爆発的に膨れ上がるのを感じる。振り向くと3つのジュエルシードが()()()()()()()()()()()魔力を放出していた。

 

「うおっ!?」

 

「きゃ!」

 

放出される魔力の圧が先程の比ではないことは感覚でもこの目でもしっかりと理解出来た。

 

「スコルどうなってるんだ!?俺はあれを倒したんじゃなかったのか!?」

 

『魔力の波形を見るに暴走している可能性が高いかと』

 

「暴走!?なんでいまになって!」

 

『…あくまで仮説ですが、あのジュエルシードはマスターの魔力で起動しました。そしてあのジュエルシードは…』

 

俺の砲撃魔法をくらったから…?

 

「ふざけんな!攻撃したら暴走するとか地雷すぎるだろ!」

 

『しかし暴走しているのは事実です。この反応、恐らくアレが起こそうとしているのは"次元震"と呼ばれる超級災害と思われます』

 

「なにそれ!?根拠は!?」

 

『考えてみてください。これまでのジュエルシードは生物に取り付いてたことからその生物の魔力を使用していると思っていました。しかし今回は被検体がなく魔力の供給源が分かっていません』

 

「ジュエルシード自体がリンカーコア的な働きするかもしれんだろ!それに大気中に魔力もある!」

 

『それも考えられますが、この可能性も考えられます。すなわち()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と』

 

「………っ!まさかアレが次元の狭間とかそんなところに接続していたとかそんな二次元みたいなこと言うんじゃないだろうな…」

 

『そのまさかです。今回のジュエルシードは次元の彼方に接続し、その空間に漂う魔力を供給していた可能性があります。ならば今から起こす災害が"次元震"である説明がつきます』

 

「…マジかよ、これ放置するとどうなるの?」

 

『……規模によってはこの星が消滅します』

 

「…マジかよ」

 

そんないきなりアニメのクライマックスみたいなこと、どうしろと言うんだよ。逃げたら消滅ってどの道逃げ場ないじゃん。

 

「……私が何とかしてみる」

 

「え?」

 

なのはちゃんの方を見ると、既にレイジングハートを構えて戦闘態勢に入っていた。

 

「なんとかするって?」

 

「封印…やってみる」

 

封印…できんの?

 

『不可能ではありません。しかしなのはさんでは可能かどうかと言われると……無理かと』

 

「なのはちゃん、多分なのはちゃんじゃ無理だよ」

 

「…!でもやらないと、私がやらないと!」

 

ここで自分でやろうとするのは本当に主人公らしいよな。…スコル、俺がユニゾン状態で封印を施したらいける?

 

『不可能ではありません。しかし可能とも言い切れません。かなり危険な賭けかと』

 

でもなのはちゃんよりは?

 

『なのはさんには悪いですが成功率はまだ高い方かと』

 

なら決まりだな!俺がやろう!

 

『…普段は呆れる物言いですが、そういうところは男らしいですね』

 

…なんか一言多いけど、これ褒めてるんだよね?

 

『はい、それでこそマスターです』

 

 

 

「なのはちゃん!」

 

先に封印した3つのジュエルシードをなのはちゃんに渡す。

 

「…ジュエルシード!なんでこんなに?」

 

「話は後、取り敢えずこれ持っててよ」

 

「……待ってよ、あきと君。まさか今から」

 

「うん、ちょっとアレ止めてくる」

 

「だめ…って言っても行っちゃうんだよね」

 

そう言うなのはちゃんの目は若干潤んでいるように見えた。きっと俺がこれからやることを心配してのことだろう。正直察しが良くて助かる。やっぱり持つべきものは友達だよね。

 

『違うそうじゃない』

 

「まあね、アレ軽く止めてくるから。なのはちゃんはそこで見てて」

 

「………うん」

 

え、なんでさらに落ち込むの。俺なんも悪いこと言ってないじゃん。

 

『まぁ彼女なりに責任を感じてるのでは?元々この件の発端は()()()()()()()ですが、傍から見ればジュエルシードの発見から封印までを一人でやってるんですから』

 

確かになのはちゃんくらい真っ直ぐな人間ならそう思うかもしれないな。オレは()()()()()()()()でしょうがなく封印してるだけなんだけどな。

 

『……まぁ責任の追求はこの後でもいいでしょう』

 

「さて、封印したいけどあれどう封印しようか?」

 

『現在も魔力を膨張させていますのでまずはそれを抑え込みましょう』

 

「どうやって?」

 

『力技ですが、マスターの魔力を使って捩じ伏せます』

 

「……………他に方法は?」

 

『なくはないですが、時間も押してます。ここが正念場ですよ』

 

「……まぁやるだけやってみるか」

 

飛行魔法でいまだに凄まじい光と魔力を放つジュエルシード接近する。そして、封印するために手を伸ばすが。

 

「…!今バチッっていったぞ!?」

 

ジュエルシードに触れることすら出来ず、その手は放出される魔力に弾かれる。

 

『それでもやってください』

 

「……ちくしょう!」

 

楽に済むと思っていたが、どうやら全然そんなことはないらしい。次は吹っ飛ばされないように堪えるが、まるで体全体が振動しているかのように衝撃が伝わってくる。…だけど

 

「押さえ込んでやるよ!これくらい!」

 

術式ではなく自身の魔力を展開する。そして魔力を圧縮する要領で、大気中の魔力ごと圧縮する。

 

ジュエルシードは魔力が抑え込まれていくにつれ、その輝きをさらに強めていく。

 

『もっと出力を上げてください』

 

「上げてるよ!」

 

『もっとです』

 

「上げてるって!」

 

『まだ足りません』

 

「くそがあ!なら俺の魔力全部持っていけぇぇぇぇ!」

 

魔力を知覚できる目になったからか視界から流れてくる情報量が凄まじいことになり、目を閉じる。そしてがむしゃらに魔力を抑え込む。

 

『封印可能領域まであと少しです』

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

ジュエルシードの輝きが徐々に弱まっていき、最初の覚醒状態と同じくらいの輝きに戻る。

 

『今です!』

 

「封印!」

 

素早く3つ同時に封印する。目を閉じているためどうなっているか、よく分からないが魔力を感知するに

 

「……終わった?」

 

『………封印状態への移行を確認。マスター、お疲れ様でした』

 

「…………」

 

ドヤああああああああ!!!!

 

どうよ、この天才っぷりぃ!ジュエルシード6つ一気に封印とかもう国民栄誉賞並の快挙でしょ!いやー、やっぱりぃ?こうなることは最初から計算通りだったしぃ?暴走して封印するところまで筋書き通りだったしぃ?もう何から何まで計画通りだったなァ!

 

『…そうですか。でしたらこの次に起こることも予想していましたか?』

 

「……はい?」

 

ふと、気づく。視界が元通りになっている。ユニゾンしていたときに感じたあの力強さも感じない。これが指し示す答えは…………つまり

 

「魔力切れ?」

 

『正解です、マスター』

 

あああああああああああぁぁぁ落ちるぅううううううう!?!?!?!?

 

もはや飛行魔法すらも満足にできないほど魔力を消耗しきった俺はそのまま重力に従って海に向かって突っ込んでいく。

 

「あ、死んだ」

 

この高さから落ちたら海もコンクリートの床とそう変わらないだろうし、バリアジャケット着ててもさすがにこれは無理やろ。

 

半ば諦め気味に思考を放棄していると誰かに支えられるのを感じる。

 

「………あ、あざす」

 

自分の命を助けてくれた恩人が誰なのか、視線を移すとそれは

 

「あの、大丈夫?」

 

「フェイトちゃん……まじナイス………」

 

そこまで言って俺の意識は強い脱力感とともに底へ沈んでいった。




スコルの体ってなんにでも付け替えられるから色んなシチュができますよね。なんて万能なんだ!?


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気がつくと拉致られてた

そろそろ無印編を終わらせたくはある


「知らない天井だ」

 

目が覚めると知らない天井……え、マジで知らない天井なんだけど俺どうなったの?

 

『マスター、目覚めましたか』

 

「あ、スコル。これどういう状況?」

 

辺りを見回す、ホテルのような個室だ。俺はそこのベッドの上で目が覚めたようだ。清潔感のある部屋だが、壁にはモニターが埋め込まれてたり、照明が何故か浮遊していたりと日本の普通のホテルではまず見られないような装飾が施されている。

 

『マスターはあの後魔力切れで意識を失いました。そこへフェイトさんが現れ、マスターを保護。そして』

 

「目が覚めたようだな」

 

壁に埋め込まれたモニターに映像が映し出される。そこに映っていたのは俺よりいくらか年上の少年だった。

 

「はじめまして。クロノ・ハラオウンだ」

 

『あの少年が現れ、フェイトさんはマスターをなのはさんに預け、マスターが封印した残りのジュエルシードを回収し撤退しました。今はあの少年が属する組織から事情聴取を受けているところです』

 

事情聴取って俺気を失ってたんだけど

 

『そこは私が代わりに。マスターも何か質問を受けたら私の方に合わせてください。矛盾は疑惑しか生みませんので』

 

た、たしかに。ここはスコルの言う通りにしよう。スコルのことだ、俺が怪しまれないように適切な感じで話をしてくれているはずだ。

 

「早速質問なんだが……」

 

さぁ、来いよ!

 

「君が次元震を引き起こした張本人で間違いないんだな?」

 

「……」

 

スコルさんや、向こうには今回のことをなんて説明したんです?

 

『向こうが把握しているのは今回の事件の中心はマスターであること。ジュエルシードをなのはさんと協力して集めていることですね』

 

なんか向こう睨んでるけど心象悪くない?

 

『それは超級災害である次元震引き起こそうとした張本人ですからね』

 

そこら辺上手くフォローできなかったの?俺今のところ危険人物じゃん。

 

『先程も申し上げたように矛盾が生むのは疑惑だけです。どうやら現場も見られてたようですし変に隠すのはかえって危ないかと。どのみち元々危険人物ですし』

 

おい待ていまなんつった?おいこら

 

「なぜ黙っている」

 

どうやら向こうが痺れを切らしたようだ。だんまりだった俺に不信感を抱いているのは明らかだ。

 

「うん、だいたい合ってるよ」

 

「だいたいだと?」

 

これって俺は知りませんでしたって大丈夫?

 

『向こうはこっちが半ば巻き込まれる形でジュエルシードを集めていたのは把握済みです。その辺は問題ないかと』

 

おけおけ。

 

「たしかに次元震?は起こしちゃったけどそれは事故っていうか悪意があってやったわけじゃない」

 

『小三にしてその説明の仕方は違和感しかないですね』

 

たしかに、もっとバカっぽくなるのもいいかも。

 

「それは把握している。次は、そのデバイスについてだ」

 

「へええええ!?デバイスってぇなんですかあああ?」

 

「お、おい?急にどうした?」

 

あれ、なんか急に悲しいものを見る目線に変わったんだけど。もしかして逆効果?

 

『私は今おぞましいものを見る目線に変わりました。目、ありませんけど』

 

「いや大丈夫。スコルについてだよね?うーん、何から話そうか」

 

「なんなんだ、この子……」

 

『私は知らない人から貰ったということにしてください』

 

え。それはさすがに怪しまれるでしょ?

 

『神様から貰いましたって言いますか?』

 

あ、それはヤバいやつだと思われるな。第一信用されないだろうし。

 

『そもそも向こうにはそれを確認する手段がありません。こっちとしても深く教える必要もありません。こちらはあくまで部外者、ある程度情報は明かしても全てを打ち明けなくてもいいです』

 

「このデバイスは──」

 

「いや待て。……分かりました。悪いが場所を変えさせてもらう」

 

その言葉と同時に部屋の扉が開き、案内役と思われる人が出てくる。場所を変えさせるって大丈夫?拷問とかはされないよね?

 

『それなら最初から動きを拘束してるはずです。恐らく責任者が出てくるかと』

 

責任者?……スコル、どういうこと?そもそもここって?

 

案内役の人について行く途中でガラスの窓があったので外を覗く。まるで夜を思わせるように真っ黒な空の中で星々が自分の存在を示すかのように輝いている。そしてなにより太陽の光に照らされ青く美しく光る我が故郷、地球………

 

…………

 

…………

 

スコルここってもしかして

 

『はい宇宙です。正確には戦艦アースラの中ですが』

 

………それ先に言えや。

 

─────────────────────

 

 

 

さて、案内の人に艦長がいるという部屋にお通しされたのだが、正直言ってこんなのが艦長で大丈夫なのかと思った。艦長は翠色の髪をしたキレイな女性だった。そこは認めよう。しかし部屋の内装に問題があった。

 

まず、畳に座布団、そして手には抹茶の入った器、ここまで見ればあー、こっちの文化に合わせてくれてるのかと思う。しかし壁の方に見ると秋葉原で見るようなアニメの女の子のタペストリー、そして色んな国の国旗が並べられ、異様な雰囲気に満ちていた。日本の文化って客観的に見ればこんな感じなのか?

 

「あきと君!」

 

部屋に入ると既に居たなのはちゃんがこっちに向かってくる。

 

「大丈夫?」

 

「あぁ、大丈夫だよ」

 

心配そうにこちらを見つめるなのはちゃんの頭を撫でる。撫でられる彼女は気持ちよさそうに目を細める、まるで猫だ。かわいい。

 

「あらあら仲良いわね」

 

でしょ?俺もそう思います。

 

「大事な友達ですから」

 

「…うん!」

 

え、なに今の微妙な間は。もしかして友達だと思ってたの俺だけ?まだ翠屋の金づるからの昇格できていなかった?スコル教えてよ

 

『自分で考えてください』

 

なんて薄情なデバイスなんだろう。

 

 

 

「座ってどうぞ」

 

「あ、失礼します」

 

女性に誘導され、なのはちゃんと一緒に座布団に腰をおろす。なんかふんわりとした人だな。でも艦長になったぐらいだから凄い人なんだろうな。

 

「初めまして、このアースラで艦長を務めてるリンディ・ハラオウンよ」

 

「初めまして、剣崎暁斗と言います。この度はお招きいただきありがとうございます」

 

「ふふ、こちらはあなた達を保護しただけだからお礼は大丈夫よ」

 

たしかに、冷静に考えると俺別に招かれてないな。向こうが礼儀正しくするもんだから思わず返してしまったぞ。

 

『私としてはマスターがちゃんとそこまで礼儀正しくできたことが驚きです』

 

殺しますわよ?

 

『なぜお嬢様?』

 

「まずは先にお礼を言わせてください。我々が本来解決しなくてはいけないことなのに押し付けてしまって、本当に申し訳なく思っています」

 

スコルに殺害予告を突きつけているとリンディさんは温和な顔から真剣な顔にチェンジし、お礼と謝罪を述べてきた。

 

たしかに褒められるようなことかもしれないけどなんで謝られてんの?

 

『そこはまだ話してませんでしたね。まぁ端的に言うと元々ジュエルシードは向こうが管理していたようですが何者かの襲撃を受けて地球へ飛散、それを発見した我々が回収していたという流れです』

 

マジで巻き込まれただけなの草。

 

『一歩間違えたら死んでいた場面もありました。笑える話ではありません』

 

スコルもしかして怒ってる?

 

『当たり前です。自分のマスターが命の危険に晒されてキレないわけないでしょう』

 

いやそれは俺から望んでやった事だし………

 

『それでも向こうがしっかりしてれば起こりえなかったことです』

 

まあまあ、落ち着いて。

 

「気にしなくていいですよ。困った時はお互いさまってことで」

 

「そう言ってもらえると助かるわ。じゃあ本題に入っていいかしら?」

 

え、今の本題じゃなかったの?

 

『さて、相手方はどう出るんですかね』

 

え、今から何が始まるの?

 

「暁斗君、あなたのデバイスはどこで作られたものなの?」

 

「えーと、これは貰い物です」

 

「誰から?」

 

「いやわからないです。手紙と一緒に貰っただけです」

 

「手紙の内容を聞いてもいいかしら?」

 

『私をよろしくとだけ言ってください』

 

「えーとスコルをよろしくとそれだけでした」

 

ヤバい。雰囲気がヤバい。リンディさんはニコニコしてるけどこれではまるで警察で取り調べをしている感覚だ。

 

「抹茶美味しいね、あきと君」

 

うんごめんなのはちゃん。今そんな状況じゃないから。事の次第によってはそっちにも危害が加わるかもしれないから。

 

「そう……。あきと君はどうしてジュエルシードを?」

 

『ここは正直に言っていただいて構いません』

 

「なのはちゃんのお手伝いです」

 

なんかもっと別の目的が当初あった気がするが、取り敢えず嘘はついていない。隣のなのはちゃんが照れながら頬をかいている。かわいい。

 

「ふふ、優しい子ね」

 

『マスター、まだ向こうは』

 

うん、分かってる。多分まだ()()()()()()

 

「ところでね、あきと君。そのデバイス、こちらで点検してもいいかしら?なのはちゃんのレイジングハートもちょうど一緒に点検するから。そんなに時間はとらせないわ」

 

『ダウトです。なのはさんのレイジングハートは恐らく向こうの管理ですが、出処が分かっていないデバイスを点検するはずがありません』

 

じゃあなんて言うの?

 

『デバイス自身に修復機能が付いてると言ってください』

 

「スコルにメンテナンス機能あるんで大丈夫ですよ。いままでもそうしてきましたし」

 

「遠慮しなくてもいいのよ?」

 

「そこまで消耗もしてませんし大丈夫ですよ」

 

「そう……わかったわ」

 

渋々といった感じで引き下がるリンディさん。それでもまだ終わらないといった感じだ。

 

「そういえばあきと君が使ってたあの変身は何なのかしら?」

 

『む、やはりそこをついてきますか』

 

なんて返す?

 

『現場は既に見られています。変に隠し通すのも厳しいです。ここはユニゾンの単語だけ出してください』

 

「ユニゾン?っていうらしいです。自分も今日なったばかりなので詳しくは分からないです」

 

「知らない⋯?じゃあどうやって?」

 

『ここも私に搭載されていた機能とだけ』

 

「スコルに元々付いてた機能です。試したのはついさっきが初めてだったんですけど」

 

「それは⋯危なくなかったかしら?」

 

「いや〜そうかもしれませんけど、まぁ俺基本スコル信頼してるんで」

 

『⋯⋯マスター、打ち合わせにないことは言わないでください』

 

あ、すまん。

 

「あら、それはスコルさんも良い持ち主に出会ったわね」

 

ほんと、良い持ち主に出会ったよな?

 

『ソウデスネー』

 

「質問は以上よ。後は⋯なのはちゃん、お願いね」

 

「はい!」

 

え、もう終わり?もっと根掘り葉掘り聞かれると思ったんだけど。

 

『同感です。向こうからしたら我々は脅威以外の何者でもないはずなのですが⋯』

 

「あのね、あきと君。私、ここでジュエルシード集めを手伝うことにしたの」

 

うん、まぁなのはちゃんが先に居た時点でそんな気はしてた。責任感強い子だし、途中で放り投げることはしないと思ってたよ。

 

『一方こちらは』

 

うーん、正直危ないことしたくない⋯⋯。勝てるとは思うけど。無双するとは思うけど。

 

「いままであきと君に任せっきりだったから、今度こそ私一人で頑張るよ!」

 

言うほど任せっきりだったか?

 

『封印した数はなんやかんやマスターの方が上ですが、別に任せっきりではなかったはずです』

 

「お、おう。大丈夫?俺の手いる?」

 

「大丈夫!」

 

すごい気合いだ。あまりの熱さにメラメラとなのはちゃんの目が燃えているのを幻視する。

 

「そしてフェイトちゃんともしっかり話し合ってみる!」

 

おお、一応敵だけどしっかり話し合う姿勢を持つなんて流石主人公。

 

「あの子も悪い子じゃないからなのはちゃんの思いは伝わると思うよ」

 

「それ!」

 

ビシッと急に俺に指を向けるなのはちゃん。こらこら、人を指差すなと教わったでしょ。

 

「なんでその⋯フェイトちゃんのこと知ってるの!?」

 

リンディさんの目が細くなるのを視界の端で確認する。いやヤバイ、ここで変な解答したらせっかく解放されたのにまた捕まってしまう。

 

『思わぬ伏兵ですね⋯』

 

「前に一人でジュエルシードを回収した時に少しだけ話してね、別にそこまで深く関わってないよ」

 

「私の時は見向きもしてくれなかったのに⋯⋯」

 

ガクンと肩を落とすなのはちゃん。まあまあ俺の方は半ば強引だったからね。言わないけど。

 

まぁなのはちゃんもやる気になってくれたし、俺も程々に手伝えばいいかな

 

『マスター、その件についてお話があります』

 

ん?どうしたの改まって

 

『マスター、あなたはこの件から手を引くべきだと私は思います』

 

⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯はい?

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

なのはちゃんとあきとくんは一旦地球へと返すことにした。向こうにも家族がいる、その人たちと話し合うとのことだ。こちらは表に出れない以上、そこは彼女たちに上手くやってもらうしかない。

 

「僕は反対だ」

 

「クロノ⋯」

 

なのはちゃん達とすれ違うように部屋へ入ってきたクロノは開口一番に私にそう言ってきた。

 

「あのなのはという子はともかく、あきとという少年は信用できない。第一、管理局に登録されてないデバイスを使ってる時点でアレを没収するべきだった」

 

「クロノ、たしかにあなたの言うことも道理だわ。でも、私の勘だけどあの子は悪い子じゃないわ」

 

「⋯⋯母さんも立場ある人間だ。そんな憶測で物を言わないでもらいたい」

 

「そうね、でもここであの子を拘束することもきっと間違ってるわ。あの子たちはそもそもこちら側の人間じゃない」

 

「⋯だけど」

 

「分かってるわ」

 

あきと君が持っていたデバイス⋯スコルは間違いなく管理局が持っていたものではない。そもそもユニゾンなんて技術、私が知る限りではまだ試作機の段階ですらなかったはず。では何故そんな代物を自分の息子より年下の少年が持っているのだろうか。

 

「剣崎暁斗君⋯あなたは一体何者なのかしら」

 

もし彼が世界に仇なす人間だった場合、魔法を管理するものとして適切な()()をしなければならない。たとえ相手が子どもでも。

 

「きっといい子なんでしょうけど」

 

しかし彼が自分のデバイスに対して語ったあの言葉、その目、それは偽りなく彼の人物像を著してるようにも思う。自分が思っているようなことにはならないだろう。

 

なんにせよ、今の自分に与えられた命令はジュエルシードを安全に何事もなく回収すること、それだけだ。そのためにも彼らを全力でバックアップしよう。

 

監視カメラをモニターするとちょうど転送装置に二人が向かってるところだった。顔を赤くしながらも腕に抱きつく女の子を満更でもない風に頭を撫でる男の子は見てて微笑ましいものだ。

 

願わくば、その微笑ましさを保ったまま事件が解決に向かわんことを。




アンケートで次回の番外編を決めます。
そういえば感想欄で色々聞くのはアウトでしたね⋯
活動報告の方に誰とのが見たいか聞いてますのでご要望があればお気軽にどうぞ。


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