なにかご入用でしょうか? (はくれん)
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1.これは…金の匂い!

ノリと勢いで書きました
続くかどうかは不明

改行後に1文字分空かないのは何故…スマホじゃ無理とかあるのでしょうか


5年前、世界中に信者のいる正教会と呼ばれる宗教のトップである聖女に対して、ある神託が下った。

 

『最悪の魔王が蘇ろうとしている…滅びに抗うのならば武器を取れ…』

 

この神託は各国の首脳に伝わり、蘇ろうとしている魔王に対して対策を講じはじめた。

軍備の増強、都市の防壁の整備、物資の貯蔵、要塞の建築…そして神が鍛えたとされる聖剣の担い手の捜索。

 

幸いな事に聖剣の担い手は1年程度で発見された。当初は非力な青年であったが、各国の精鋭である騎士達との度重なる訓練や、魔王復活の神託が下ると同時期に増え始めた魔物との実戦によってその名に恥じぬ実力を身につけつつあった。

 

しかし、人類が魔王に対する対策を万全なものとする前に魔王は復活してしまった。

常に吹雪が吹き荒れ、険しい山脈に閉ざされた北の大地に突如として巨大な城が現れ、世界中に強力な魔物を放出していった。

 

勇者や、共に行動している仲間たち、世界中の騎士達が攻勢を仕掛けたものの、圧倒的な魔物の物量、聖剣を完全に扱いきれてない勇者の実力、そして人類には厳しすぎる北の大地の環境が立ちはだかり魔王を討伐することは叶わなかった。

 

しかし人類の魔王に対する対策は無駄ではなかった。統制された軍隊に強固な要塞、磐石な補給によって人類は強力な魔物の軍勢の攻勢を防ぎきってみせた。

 

以来、人類と魔王の戦争は続いているもののお互いに強固な防衛を突破することが出来ずに膠着状態が続いていた…

 

 

 

 

 

そんな中、聖女に下った神託が開示され、各国が魔王への対策を講じ始めた頃。

とある商人である青年も行動を起こそうとしていた。

 

 

「これは……金の匂いがする!!」

 

 

その目を金貨のように輝かせながら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦争が始まると何が起こるのか?実に簡単だ。

 

 

膨大な量の金が動く!!!

つまりは稼ぎ時なのだ!!!

 

 

世界中で軍備が増強される中、どの国も武器が必要となる。それは、よく冒険者連中に数打ち物のやっすい剣を数本売るなんて比ではなく、何千か何万単位で武器をが売れていく。しかも予備の武器や整備の為の道具も合わせて大量にだ。

 

それ以外にも、兵士達の食料、要塞の建材など飛ぶように売れていっている。しかも嗜好品の類は生産量が減ったのか値段がどんどんつり上がってる。

それでも需要が減った訳では無いので、多少高くても売れるし、国が兵士を食わせるために金を刷ったため市井には金が多く流れていた。

 

結果として、戦争の特需によって私はかなりの利益を得ることができた。のだが…

 

 

「売上が下がってきてるなぁ…」

 

 

今月の売上の計算がされた紙を片手にしかめっ面をしながら呟いた。

 

当然だが武器に限らず道具というのは使わなければ無くならない。

先の魔王の城に攻め込んだ時や、逆に人類の領地に攻められた時の一進一退の攻防を続けていた時は武器は飛ぶように売れていたのだが、小康状態になってからは売れ行きがイマイチになってきていた。

 

建材も要塞が完成してからは需要は減ったし、防衛に成功して都市に被害が殆ど出なかった為に民間からの需要も少なかった。

 

その上、戦争の特需で一旗揚げようと競合する商人が増えてきた為に供給が増えてしまい以前よりは物価も下がりつつあった。

 

 

「行うべきは…他の商人との差別化ってところかね…?」

 

 

ぼんやりと天井を見上げ、書類とのにらめっこで疲れた目をほぐしながらボヤいた。

 

差別化って言ってもなぁ…需要のある商品が大きく変わらない限り、他の商人と売るものに違いを持たせるのは難しいしなぁ…

 

 

 

 

…いや待てよ?

今考えるのは戦争が終わった後じゃないか?

特需が無くなれば有象無象の商人は金の周りが鈍い奴から淘汰されていく…たとえ今、派手に稼いでも後に続かなきゃ意味が無い…

 

となると

 

「生き残るにゃ、ある程度お偉方と関係を持つ必要があるな…」

 

しかし、そんな連中は既に他の商人と仲良しこよしな関係だろうから今更、外様の私が近づいても効果は薄いだろう。

 

顎に手を当てながら「どうしたもんか…」と数分間悩む。

理想は、影響力があって、そこそこの地位もあるのに他の商人の影響をそんなに受けてないやつだ

 

「とはいってもそんなに都合のいい奴がいるはずが…」

 

…いた。

飛びっきりに影響力があって他の連中とも接点が薄いであろう奴がいた。

 

「勇者か…見落としてたな」

 

勇者オズワルド

聖剣とやらの担い手で人類にとっての最高戦力の1つ。

まだ聖剣を完全にコントロールできていない、なんて噂だが、それでも常に兵士の先頭に立ち戦っているとの話も聞くから既に十分戦えるのだろう。人類をまとめる旗印としても扱われているから影響力もバッチリだ。

 

しかし何故取り入る商人が少ないのか?

それは彼が殆ど前線に立っているからだ。商人なんて懐の金を増やすことにしか興味が無いような連中ばかりだ。剣を持って戦うなんて想像すらしていない。

 

そんな連中が前線で暮らしていると言っても過言ではないような勇者の生活に、腹の出た商人がついていけるだろうか?

 

答えは否だ。

 

おかげで勇者の周りには金にがめつい商人は居ないのだろう。環境が辛いだろうが、私には好都合だ。

 

ご多分に漏れず、私も懐の金を増やすことが関心のほぼ全てを占めている。だが他とは違うところもある。

 

「最近サボってたけど…まだ動けるだろ。たぶん」

 

机の横に立て掛けていた刃渡り60cm程度の剣を、ゆっくり抜きながら呟いた。

 

護衛もろくに雇えないほどの駆け出しだった頃、街の近くでは野盗に襲われ、街から離れれば魔物に襲われ、そいつらを回避のために険しい道を選べば土砂崩れで荷物が流され…

 

おかげさまで自分を自分で守る技術や経験については他の商人とは比較にならないくらい自信があるのだ!

 

武器が重い?前線で立ち続けるのが怖い?美味い酒が飲めない?

 

たかがその程度で音を上げるなんて情けねぇ!こっちを餌として追っかけてくる龍種やら、丁度いいはけ口(なんのはけ口かは考えたくない)のために目を血ばらせて追っかけてくる野盗に比べたら、その程度なんて屁でもない。

 

「さてっと…んじゃ、まぁ勇者サマと仲良くなる為に、そして私が商人として落ちぶれないために!ちょっくら行ってみるか、最前線!」

 

売れるであろう、食料とポーションを一通り馬車に詰め込んでいざ出発!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え、なに?勇者たちは魔王倒すために北に向かった?

…うそん。

 

 




商人:初手の一歩で頓挫した我らが主人公。行動力はある。


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