2099 電子と獣 (gh0sttimes)
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プロローグ

政治、経済、交通、食糧・・・

全てがコンピューターのネットワークによって管理されている2099年のジャパリパーク国家連邦。

ジャパリパーク国家連邦は50年前に起きた第三次世界大戦の戦勝国として、空前の繁栄を遂げていた。

そんなジャパリパークの首都パークセントラルに住むカラカルはコンビニのレジ係として、つまらない日々を送っていた。

そんな中、同盟国であるイースタシアの首都東京で、異常な大事故が起きた。

発電所の制御コンピューターが未知のコンピューターウイルスにより、突然停止したのだ。

コンピューター関係の高校を出ていたカラカルはホワイトハッカーである友人のセーバルに誘われ、ホワイトハッカーとして転職した。

しかし、事態は思わぬ方向に進んでいくのだった。

これは、冴えないコンビニのレジ係が世界を破滅に導こうとするスーパーハッカーに対抗する物語である。

 

第三次世界大戦

 

2041年~2068年

 

死者:世界人口の半分。世界人口の5分の4という説もあるが、定かではない。

 

原因:大ゲルマン帝国軍によるアメリカ太平洋岸連邦への侵攻。

結果:核戦争により、世界が荒廃。

領土の大幅変更。

イースタシア、ゲルマニア、アメラニアの成立。

ジャパリパーク国家連邦がオセアニア北部を獲得。

 

登場人物紹介

 

·サーバル

サーバルキャットのフレンズ。

カラカルの友達である。

趣味は運動。

 

·カラカル

カラカルのフレンズ。

極普通のコンビニのレジ係であったが、友人であるセーバルに誘われ、ホワイトハッカーに転職した。

趣味は運動。

 

·セーバル

カラカルの友達。

目は動かすことができないので、笑う時は口元だけ。

趣味はお絵かき。

 

·シーサーバル=ライト

カラカルの同僚。

いつでも明るい。

趣味は読書。

 

·AGIBIATSUYU

今回の黒幕。

全てが謎に包まれている。

ハンドルネームは暗号である。

 

国家紹介

 

·イースタシア

非自由主義的民主主義の国家。

大日本帝国、中華民国、シベリア南部、南アジア地域、東南アジア地域を統治している。

首都は東京。

天皇制は続いている。

 

·ゲルマニア

ファシスト国家。

欧州全域、アフリカ全域、中東を統治している。

 

·アメラニア

非自由主義的民主主義の国家。

オセアニア南部、南北アメリカ大陸、フォークランド諸島、ハワイ諸島、グリーンランドを統治している。

イースタシアと同盟関係にある。

 

·ジャパリパーク国家連邦

全体主義の国家。

ジャパリパーク本土、オセアニア北部を支配している。

イースタシアと同盟関係にある。

 

 



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いつもの1日

2099年1月1日、パークセントラル市内のコンビニにはあるフレンズがいた。

「ソーセージとチーズとフォール=シガレット。合計で1201円です。」

「これです。」

「99円のおつりです。ありがとうございましたー。」

 

ダルそうにしているのは、レジ係のカラカルだ。

彼女は25歳でこのコンビニに就職し、30年近くレジ打ちをしている。

そんな彼女の隣で、楽しそうに仕事をしているフレンズがいた。

 

「最近の仕事は上手くいっていますか?」

 

彼女はお客さんに何か話題を出し、いつも楽しそうに仕事をしている。

「うーん。今度、大事な商談があって、イースタシアに行かないといけないから、今が踏ん張り時かな。」

「ソーセージとスティックチョコレート、健やか弁当。合計で1020円です。」

「はいよ。」

「15円のおつりです。ありがとうございましたー!」

 

彼女は常に明るいサーバルさんが好きだ。

勿論、友達としての関係としてだが、彼女自身もあれぐらい仕事を明るく出来るようになれたらいいのにと思っている。

 

「カラカルさん。」

 

そんな事を考えていると後ろから突然、サーバルが彼女に話し掛けた。

「どうしたの? ボーッとしてたけど・・・」

「ああ。ちょっと考え事をしてただけ。」

「それならいいんだけど、そろそろ仕事も終わりだよ。」

「そっか。じゃあ、これをシャットダウンしないと。端末。シャットダウンせよ。」

 

«パスワードを入力してください。»

 

「たしか・・・」

 

«パスワードを認証しました。コマンドを実行します。»

その数秒後、レジの制御コンピューターは停止した。

「あっ。店長。そろそろ時間なので帰りますね。」

「おう。じゃあ、明日な。ゆっくり休めよ。」

「了解です。」

彼女はそういって、コンビニを出ていった。

 

帰路にて···

 

彼女はコンピューターウォッチを起動し、時間をみようとしていた。

「端末。時計を起動しろ。」

 

«コマンドを認証しました。実行中・・・ 警告。ファイルにエラーが発生しました。»

 

「はぁ・・・。端末、原因を調べろ。」

«原因不明。ウィルススキャンを実行します。»

ちょっと時間がかかりそうだ。

あとは家に帰ってからにしよう。

 

2時間後···

 

コンピューターウォッチは甲高い警告音を鳴らし、彼女をたたき起こした。

 

«警告。警告。ウィルス«終末の日»が検出されました。レベル測定不能。ソースコード解読不能。»

 

「端末。ウィルスを駆除せよ。」

 

«了解しました。駆除プロセス実行中··· 駆除成功しました。»

 

「端末。ガードドッグを実行しろ。」

 

«了解しました。ガードドッグを実行します。実行完了。この端末は保護されています。»

 

「端末。ガードドッグと必要なプロセス以外を停止し、スリープせよ。」

 

«了解しました。スリープします。»

 

彼女は静かになったので、再びベッドに入った。

破滅の火が燻っているとも知らずに···



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沈黙の文明

2099年1月3日

カラカル視点

 

「うーん。」

私は強い日差しにたたき起こされた。

私は近くにあったアナログ式の時計を見た。

「あっ。やべ! バイト遅れるぅーーー!!」

私はベッドから飛び降り、そのままコンピューターに文句を言った。

「おい! なんで起こしてくれなかったんだ!?」

«ァェぁ具留り録見よほもむ···»

「ちっ。コンピューター! 再起動しろ!」

«お火火滅経模す経経目無知踏6左府···»

全く反応しない。

ウイルスか?

いや、昨日駆除したはずだ。

私はそんなことを考えながら、リビングに降りた。

「テレビは大丈夫だよな・・・」

私はテレビのスイッチを入れた。

«お伝えしています通り、世界中のコンピューターが異常停止を起こしています。···»

私は青ざめた。

現代の社会はコンピューターに頼りきっていて、コンピューターが停止してしまったら、世界も停止してしまうのだ。

このままだと、13年前のイースタシアの芸能人«竹川ちゃんとん»が指摘していた«沈黙の文明»が訪れてしまう。

そう思った私はバイト先に連絡した。

勿論、インターネットは使えないので、黒電話を使う。

「もしもし。」

繋がったようだ。

「店長。今回の仕事はどうするのですか?」

「ああ。悪いが、今日は休みだ。コンピューターが止まっているからな。」

「そうですか・・・」

「そういえば、オールドネットワークを使用して、君宛てにメールが届いているんだが、読むか?」

「あっ。はい。」

「そうか。じゃあ、ファックスでデータを送るよ。」

それと同時に、家に置いてあるFAXが動き出し、メールの内容をプリントアウトした。

「メールはセーバルさんからのものですか?」

「そうだ。」

印刷されたメールには、«ホワイトハッカーに転職しない?»と書かれていた。

セーバルは私の友達で、今はホワイトハッカーの仕事をしている。

どうやら、セーバルが私のことを上司に話したら、«是非とも来てもらいたい。»と言ったらしく、私が就職できるようにセーバルの上司が根回しをしているようだ。

 

AGIBIATSUYU視点

 

「ははっ。ゲームへようこそ。」

僕はそう呟いた。

近くにあった観葉植物の葉が少し揺れた。

コンピューターコントロールの奴らは折角権力を握ってるのに、何も楽しいことをしない。

街をぶっ壊す訳でもなく、ただ話し合っているだけ。

まるで、眠れること請け合いの催眠サイトのようだ。

ゲームをするときは自分がルールになるんだよ。

奴らに本物のゲームを教えてやる。

望むならば、参加させてやろう。

絶対に負けるゲームにな。

僕はそう思いながら、コンピューターに命令した。

「端末。«終末の日»を解放しろ。」

「コマンドを認証しました。」

さあ。地獄を作ろう。

 

サーバル···

お前は何で裏切ったんだ?

フレンズは裏切らないといっていたよな?




沈黙の文明

イースタシアの芸能人«竹川ちゃんとん»が現代社会を風刺して執筆した小説。
内容としては、コンピューターの暴走で滅びた世界を描いたもので、この本は1年間で30億冊ほど売れた。


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is it true?

ガードドッグ

カラカルが作ったセキュリティプログラム。
ウイルスや不正アクセスを感知すると、ユーザーに警告を出し、侵入してきたウイルスを食い、そのコードをアレンジすることで、自分の能力を上げる。
不正アクセスの場合はアクセス元に侵入し、プログラムを片っ端から食い尽くす。
そして、さらに成長する。

Crystal crasher

ハッキングツール。
アメラニア陸軍で使用されている。
ガードドッグにはウイルスの側面もあったため、このソフトを使った。


2099年1月3日

カラカル視点

 

私はバイト先に辞表を出し、ホワイトハッカーに転職した。

事前に«情報処理点検並保護関連技術者レベル2»と«情報処理国防防諜関連技術者レベル4»と«外交機密保護技術者レベル8»という資格を取っておいたため、すんなりと転職が出来た。

私はその翌日に出勤した。

「あっ。社長! これからお世話になります。カラカルです。」

「そうか。是非とも来てほしいと前から思っていたよ。初めてで悪いが、君にはあるクラッカーを追ってほしいんだ。」

「たしか、AGIBIATSUYUですよね?」

「そうだ。今回の事件はAIではない。これ程、特徴的なハッキング方法ができるのは人だけだ。現在のネットワークは使えない。オールドネットワークを使用してくれ。」

「了解!」

私はそういって、自分のデスクに行き、端末を起動した。

「ハッキングの方法は分かるな?」

「はい。たしか、«Crystal crasher»を使うんですよね?」

「そうだ。よくわかったな。なぜ知っていたんだ?」

「昔、高校生の時にガードドッグというセキュリティプログラムを作った時にこれを使いました。」

「そうか。あとで、ガードドッグのコピーを送ってくれないか? こちらのセキュリティ向上にも役立てたい。」

「分かりました。」

私は«Crystal crasher»を起動し、コードを書き込んだ。

まずは、オールドネットワークへの裏口からのアクセスだ。

裏口は確か···

あった。

«old125-tj_mi@net»をクリックすると、画面に樹形図が展開した。

ここから、犯人を炙り出していく。

私はコンピューターに音声で指示を送った。

「コンピューター。アクセスコードJirlp-kj+2jpk/s@bとアクセスコードIpjlj-25qr#tを結んだラインにセキュアライン«power»を引け。」

「コマンドを認証しました。実行します。」

「樹形図内を全てスキャンしろ。」

「コマンドを認識しました。実行します。」

 

20分後・・・

 

端末が突然、警告音を鳴らした。

「警告。脅威となるアクセスを確認しました。追跡しますか?」

「追跡を開始。端末の位置を取得しろ。」

「了解。」

そして、端末が指し示したのは・・・

「なっ・・・」

そこは、ジャマニア陸軍の軍事基地だった。

つまり、ジャマニア軍の攻撃か。

となると、かなり厄介だ。

「社長! これをみてください。」

「なんだ? なっ・・・」

「どうしますか?」

「とっ、とにかく、JPIPSB(ジャパリパーク情報処理保安局)に連絡しろ。」

「了解しました。」



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小さい物は大きい

·デフレベル
ジャパリパーク国防省が規定している危険度のレベル。
規定はデフコンと同じ。
デフレベル4-1は警戒態勢。
陸海空軍に総動員令が発令される。


2099年1月4日。

カラカルからの連絡を受けたジャパリパーク情報処理保安局はジャパリパーク国防省へデフレベル4-1の発令を要請。

デフレベル4-1の発令は第三次世界大戦以来であり、対応に追われることとなった。

さらに、イースタシア軍やアメラニア軍にも連絡が行き、これらの国々でも総動員令が発令された。

その頃、西太平洋では···

 

アメラニア

ハワイ諸島沖

 

ハワイ諸島沖では、遠坂艦長率いるジャパリパーク国家連邦海軍第七艦隊とラリー艦長率いるアメラニア海軍第一艦隊が展開していた。

 

遠坂萌視点

 

私たちはアメラニア海軍第一艦隊と合流。

西太平洋に展開していた。

近くには、オアフ島の真珠湾基地があり、100年ぐらい前に我が軍と旧大日本帝国海軍が攻撃した場所だ。

私自身、第三次世界大戦の後に生まれたので、そもそも第二次世界大戦を体験したこともない。

ネットで初めて知ったぐらいだ。

「艦長。イースタシア軍より連絡です。」

「おっと。考え込んでいたようだ。何かね?」

「はい。イースタシア軍より連絡です。4か月ほど待とうとのことです。」

その連絡はあまりにも不自然なものであった。

「おいおい。向こうは何を考えているんだ?」

「分かりません。少なくとも、向こうは何かいい案が浮かんだのでしょう。」

「そうか。太平洋の警戒のみにしておこう。」

 

実はこの5分前、イースタシア政府では、非公開の会議が行われたのだ。

 

イースタシア 東京

イースタシア国防省

ジャパリパーク海軍第七艦隊への入電の5分前

 

ジャパリパーク海軍第七艦隊への入電の5分前、国防省の会議室では、国防省関係者が今回の事態について話し合っていた。

 

「アクセス元はどうみても、ゲルマニア軍だ。ゲルマニアへの宣戦布告を提案する。」

「私もだ。」

そんな中、ただ一人だけ別の意見を言ったものがいた。

「失礼します。私は宣戦布告に反対です。」

そう言ったのは、国防省の中でも、あまり冴えない人であった。

「おいおい。もう、ゲルマニアがやったことは明確なんだぞ。何で・・・」

「コンピューター。アクセスファイルを開け。」

«了解しました。»

彼がコンピューターに指示を送ると、会議室の前の方にあるスクリーンに樹形図が表示され、

それを中心に素人には難解な内容が書かれたウィンドウが表示された。

「これをみてください。これは、ゲルマニア軍のアクセス記録です。確かに言ったとおりの時刻にアクセスが行われています。」

「そりゃそうだ。奴らがやったんだからな。」

「いえ。実は、ゲルマニア軍のサーバーが何者かから、不正アクセスを受けた痕跡がありました。」

「ゲルマニア軍が偽造したのではないか?」

「いえ。現代の技術では偽造することは不可能です。アクセスファイルの改竄をするときに必要なヘロルド暗号を解くには300年以上掛かります。」

「不正アクセスはどこから行われているんだ?」

「実は全てイマジネーションコンピューターなのです。イマジネーションコンピューターは自分のコンピューターを隠すためのものです。それに、イマジネーションコンピューターだけでネットワークを構成することは不可能です。さらに、未知の暗号を発見しました。」

「どういうものだ?」

「暗号文だけ読み上げますと、«IhiehIlpws/jmpm-596jqqlpmipt.hhl?m?.l?nim»というものでした。」

彼の言葉を聞いて、会議室にいる全員が頭を掻いた。

「これは全く規則性が読めない。」

「どういうことだ?」

「ただの文字の羅列ではないのか?」

会議室は大騒ぎだ。

難解な暗号をいきなり目の前に出されたのだ。

無理もないだろう。

そうして、全員が考え込んでいる中、彼はこのように言った。

「どうですか?」

その声に全員が我に返った。

「あ、ああ。そうだな。宣戦布告はしないようにしよう。ただし、第七艦隊には太平洋の警備をさせておけ。デフレベルは?」

「4-1です。」

「そうか。デフレベルを緊急パトロールの3-1まで下げてくれ。」

「了解!」

 




ヘロルド暗号

エニグマとヴィジュネル暗号とシーザー暗号と格子問題(500次元)を組み合わせたようなもの。
ピタゴラス数を使って解く。
解き方?
そんなものは知らん。

イマジネーションコンピューター
架空のIPアドレス。
これによって作られたネットワークをイマジネーションネットワークという。
イマジネーションコンピューターの管理には非常に高い技術力が必要であり、ハッカーが好んで使うことはない。


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