こんな設定あったらいいな、個人的にこういう奴らいねぇかな。 (合間な人)
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自己満足な鬼滅の刃の設定と、短編
自己満足な鬼滅の刃の設定と、短編


自己満足でこんなのいたら良いな的な奴です。


鬼滅の刃

 

 

武苦(ムク)

人間としての名前は右衛門。鬼になる前は虚無僧。

 

性格

戒律を重んじるため生真面目、そして沈黙、話を振られればそれなりに返すが自分から話すことはあまりない。一人称は拙僧、二人称は主(ぬし)。人を名指しする場合は「(苗字)隊員」、「〇柱」親しい場合はフルネーム。

例:我妻善逸→我妻隊員

  村田→村田隊員

  煉獄杏寿郎→炎柱

  富岡義勇→水柱

  名乗っていない隊員→○○(特徴)の隊員

 

鬼の場合は鬼としての名前を呼び捨てする。十二鬼月の場合は下弦、もしくは上弦の数字で呼ぶ。

例:響凱→響凱

  珠世→珠世

  名乗っていない鬼→○○(特徴)の鬼

  黒死牟→上弦の壱

  童磨→上弦の弐

  累→下弦の伍

  病葉→下弦の参

 

経歴や主な活動

前途したように、虚無僧で、孤児であったため、最初は不信感もあったが、時が経つにつれ心を開き始め、無惨が来る前までは修行したり、見回りなどしていたが、山中で修行していたら、運悪く無惨に遭遇し、無理矢理鬼にされた。後途の左衛門のおかげで心まで鬼にならなかった。そのためうっとおしく思っていた左衛門にはいつも通り、厳しく接しているものの、棘が少し取れた言い方をしたり、侮辱されると怒りをあらわにするほど、大事に思っている。

鬼になってからは朝は洞窟に籠って修行をし、夜には別の山を転々と移動する。たまに夜の街に降りたりするが、大抵の目的は人と触れ合ったり夜の街や村の見回り。戒律のため人を食わず、禰津子と同じく睡眠や修行の一環である瞑想で足りない栄養を補う。

鬼になってから山に籠り1年間瞑想して呪いを解除している。無惨の呪いを解除してからは生前の生活通りに棒術、槍術、抜刀術、剣術、格闘術、法術などの戦闘技術を鍛え、後途の戒律を復唱している。戦闘技術はかなり高く、総合的な戦闘技術は猗窩座と黒死牟の間。ただし棒術、槍術『だけ』などで限れば、鬼殺隊の柱3人を相手取る程度の実力はある。血気術解禁、で持てる技術すべて使えば猗窩座を一人で倒せるが、黒死牟の試合相手になる実力を持っている。鬼殺隊に襲われても、鬼に襲われても追い返す程度しかしなく、命を奪うことはほぼない。

 

 

戒律

不殺生戒 殺生せず、命を大事にする

不偸盗戒 盗みを働かない

不邪淫戒 淫らなことはしない

不妄語戒 嘘を言わない

不飲酒戒 酒を飲まない

 

法術(血鬼術)

鬼気解戒(ききかいかい):鬼としての力を底上げするいうなれば猗窩座の破壊殺と似た血鬼術。

底上げされる能力:筋力、走力をはじめとする身体能力、回復力、気配察知能力、聴力、動体視力等。

鬼気分(ききわけ):回復力や身体能力のブーストをほかの人に分ける血鬼術。ちなみに、分け与えられた生命体は一時的に鬼に近くになるが、日光に当たって死ぬことはない。

 

 

 

左衛門

右衛門の別人格。曰く「右衛門がこの世に生まれたときに入った別の魂」。

 

性格

右衛門とは違い真面目ではあるが少しのんびりしており少し飄々としている。加えて戒律よりも人道を重んじるため、戒律を何よりも重んじる右衛門にはうっとおしがられていた。古風なしゃべり方をする右衛門とは対照的に現代っ子のような標準語で喋ったり、横文字を使い、どこかで習ったのか、流暢な英語を喋る。音楽センスもあり、右衛門が吹く尺八と、左衛門が吹く尺八とだと、左衛門のほうが上手い。一人称は俺、二人称は君、お前。人を指す時は苗字とさん付けで呼び、親しい場合は下の名前でくん付けか呼び捨て。鬼は呼び捨てか鬼と呼ぶ。

例:竈門炭治郎→竈門さん→炭治郎くん、もしくは炭治郎

  我妻善逸→我妻さん→善逸くん、もしくは善逸

  嘴平伊之助→嘴平さん→伊之助くん、もしくは伊之助

  煉獄杏寿郎→煉獄さん→杏寿郎くん、もしくは杏寿郎

 

例:名乗っていない鬼→鬼

  童磨→童磨

  累→累

  半天狗→半天狗

等 

 

経歴、活動

生まれたときから右衛門の別人格だが、実際はありきたりな転生で右衛門の体に入った別の魂。当初は、子供らしからぬ行動をとっていることもあり、人によっては気味悪がられたこともあったため、右衛門からうっとおしがられていた。しかし、寺に引き取られ、修行を始めたときは戦闘技術を習得するために修行する右衛門と同調したり、尺八を吹く右衛門に軽くダメ出ししたりなど、腐れ縁みたいに接していたが、右衛門が鬼にされたとき、右衛門が飢餓で苦しんでいる傍らで必死に右衛門に語り掛け、心まで鬼に変貌するのを防いだ。戦闘技術自体は右衛門と同等だが戦い方が違う。右衛門は敵の攻撃を避けたり受け流しながら少しずつダメージを与えるやり方に対し、左衛門は隙を見たら、一気に攻撃を叩きこむやり方を好む。そして鬼が殺されるときは大抵左衛門が殺している。右衛門は戒律があるため殺さず、戦意を喪失させる。人の場合はお互い最終的に襲い掛かった鬼殺隊員を気絶させている。しかし、手加減が苦手なため左衛門がつける打撲跡は少し残るため、人の相手は大抵左衛門に任せている。右衛門が意識のない時は左衛門が表に出る。

 

血気術

結界:無惨の干渉すら切るほどの強力な結界を展開する。結界の風景は左衛門次第で真っ白な何もない部屋から、森、狭霧山、果てには現代の都会まで、さまざまでいうなれば別世界に近い。展開するときは「拙僧はうそつきである、其は真実か否か」と言いそこから結界を展開する。結界の外から見ると、左衛門と結界の範囲内の人が消えたよう見える。部屋の壁は壁として機能しておらず、壁に向かって走れば別の壁か、天井から出てくる。都会の場合はM〇〇VELのドク○○○○○○ジに出てくるミ○○○○○○ションの操作のように地形を操作することも、人の重力の向きも操作することもできる。ついでに建物なども再現されており、デパートなどに入れば商品が並んでいる。しかし、いわば左衛門が作った結界の中の風景のようなものであり、人は全くいない。この時だけ虚無僧の恰好ではなく現代の服を着ているが、虚無僧の笠は着たままであるため少しシュール。いうなればダンボールを被った人がアクション映画のようなキレのある動きで戦っているような見た目。

 

持ち物:銭の入った財布、錫杖(仕込み刀)、尺八

 

 

短編

 

右衛門は真面目なやつだよ、本当に。戒律を何よりも重んじる彼は俺をずっと煙たがっている。でも、自分の非を認めることが出来るから、良識はある。それに戒律だけがすべてではないことも彼も理解している。あのワカメヘアーのクソッたれに無理矢理鬼にされた後でも、飢餓に襲われている傍ら、ずっと戒律の事、仲間の僧の事、師父の事も考えていた。まあ、最初の餌として考えていたのか、それとも心残りだったのかはわからないけどね。少なくとも、俺が仲間、師父、戒律を必死に右衛門に説いたことで人を捨てることを未然に防いだことは正直正解だったね。

まあそんなわけだ、今は俺も、右衛門も修行しているし、日が出ているから少し待とうか。その間に、昔ばなしでもするかな。

 

 

昔、山で俺たちが修行していた時に、彼が来た、高そうな着物を着たイケメンの男、鬼舞辻無惨だ。最初は驚いたよ、何せ、夜に山に来るわけだし。右衛門は心配して声をかけたけどそのあとなんて言ったと思う?「貴様には鬼になってもらう、死ぬまで私のために尽くせ」だよ?そんで、貫手を腹に食らわせて俺たちを鬼にしたんだ。もう、訳分かんないよ。否が応でも部下かなんかが欲しかったんだろうな?そんで、右衛門が苦しんでいる間、彼は居なくなった。まあ、無惨の呪いがあるし、おそらくそれで鬼になれば飢餓に襲われて人を捨てて「無惨様に絶対服従だワーイ」ってなるのを半ば確信してたんだろうね。

 

右衛門は蹲って、痛みに耐えた末、鬼になった。そして飢餓感が襲ってきた。人を殺せ!食え!って言葉が聞こえてきたよ。俺は焦ったよ、生まれてから18年間も経っているから結構大事に思ってたしね。だから右衛門が人食いになるのは嫌だった。

 

「右衛門!しっかりしろ!お前は寺で恩を返すんだろ!?戒律を思い出せ!お前はこんなちっぽけな出来事で何より重んじていた戒律を捨てるのか?!」

 

俺は叫んだ!彼に呼び掛けた。どんどん鬼化が進んだ時、それが功をなしたのか、勢いが弱まった。

 

「五戒を思い出せ!それがお前の信念だろ?!こんな鬼に負けるな!禁欲生活は続けてきたろ?絶食しても我慢できたんだろ?ならこんなもん余裕だろ。」

 

「あぁ...拙僧はあの修行を乗り越えた、どんな過酷な修行も乗り越えた...今回もそうだ、こんなもの修行の一つとそう変わらぬ!」

 

まあ、こんなあっさりした感じじゃないけど、概ねこんな感じ。こんな感じの問答を続けて、鬼が消えるまでずっと瞑想していた。気付いていたらかなり時間たっていたらしいけどね。まあ、久しぶりに寺に帰ったらみんなかなり年取ってるから驚きだよ。おそらくみんな俺たちの変化に気づいていたようだけど、普通に歓迎していたし、大丈夫だろ。って思ったら何やら鬼絶対殺す隊みたいなのが来た。鬼である俺らも抹殺対象だって理解したから行かなきゃいけなかったね。たまに手紙送ったけど、やっぱ寂しいものだよ。それに、年に何回も鬼に恨みを持った剣士とか、気性の荒い鬼とかと戦いながら400年間ずっと、目的のない旅をしていたわけ。今は狭霧山ってところだったかな?そこの洞窟で日が沈むまで修行しているところさ。たまに子供の声がするからおそらく彼らも何らかの修行をしていると思う。まあ、それも絶叫から勇ましい声に変ったりするけど。「さびと」と「ぎゆう」って聞こえたからそれが子供たちの名前かな?そんなこと言いながら、錫杖の輪は「チャリン」となりながら、彼は棒術と槍術の修行をしているわけだけど。これをずっとしていたから上弦や下弦が来ても追い返せたし、柱って奴が来ても気絶させて返せたし、今回もどうにかなるだろうな。

 

 

 

 

 

 




本当に自己満足です、すみません。
続き思いついたら書き綴ります。
血鬼術の名前を変えました。


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自己満足な鬼滅の刃の設定と、短編 その二

ムクの物語の続きです。思い描いたシチュをとりあえず書いて、もしほかに何かあればそれも書いたりします。


最近ずっと子供の踏ん張っている声が聞こえる。木刀の打ち合う音も聞こえる。おそらく呼吸の型の練習をしているんだろう。そういいながらいつものように修行を続ける。少しすると、天狗の面を被った老人が訪ねるようになった。俺たちが鬼だと理解しているんだろう。刺々しい雰囲気で俺たちと話していた。聞けば、鬼特有の腐った臭いはせず、流れる川の様な匂いがするそうだ。あの老人の名前は聞かなかったが、おそらくこの人が鱗滝左近次その人なのだろう。富岡義勇、竈門炭治郎を一流の鬼狩りに育てあげ、竈門禰津子を、鬼を認めること鬼狩りの一人として認められる要因を作った人。俺は、鬼滅の刃を知っているからこの先何が起こるかはわかる。でもまさか自分が物語の中に入るとは思いもしなかったよ。

 

その次の日、頻繁にこっちに来るようになった。相変わらず天狗の面が「ドーン」って感じでかなり目立つ。気配で探らなくても鱗滝だってわかった。たまに組手や模擬戦をするようになった。水の呼吸すごい。さすが育手だな。まあ、右衛門が名前聞いてないし、ずっと虚無僧と呼ばれているのもいつになったら飽きるかな。そろそろ語り掛けるか。

 

「右衛門、名乗らないのか?」

「名乗る必要もなかろう、どちらの名を名乗ればよいのかもわからん」

「人としての名前でいいんじゃねぇの?俺は彼のこと知ってるけど、君は知らないみたいだし。」

「次来たら名乗るとするか」

「そうしとけ、ずっとお互い、天狗、虚無僧って呼び合っててもなんだかな」

 

いやあ、話しかける度に「去ね」と言われていたのが懐かしいわ。あの頃から随分丸くなったものだね。

 

「虚無僧!居るか!」

「...天狗、拙僧の名前は右衛門だ。虚無僧ではあるが、ほかの虚無僧と間違える」

「ここに虚無僧に来ること自体稀だ。右衛門よ。貴様は何者だ?鬼であるが人食い鬼の匂いはしない」

「天狗のいう匂いがどういうものなのか拙僧にはわからん。しかし拙僧は鬼でなっても、人の道を逸れる気はない」

「ほかの鬼にも聞かせてやりたいものだ...言い忘れていた、名は鱗滝左近次だ。わしは天狗ではない」

 

なんだか、水の呼吸を扱う人ってどこかずれているように思うな。というか、鱗滝一門がずれているというべきか。そろそろ出てくるとするか。

(いいかな?右衛門?)

(相変わらずしゃべるのが好きな奴よ、左衛門。)

 

「初めましてだね、俺は左衛門、右衛門の人格とでも思えばいいよ」

「...二つの全く違う匂いはこれだったか」

 

驚いたように固まって、そのあと小さくそう言ったのを聞こえた。はたから見たら拙僧が全く異なる口調を使うようになった。僧侶がいきなり拙僧から俺に一人称を変えたら誰だって困惑する。

 

「鱗滝さんは弟子がいるのかな?たまに声が聞こえるんだ。」

「そうだった、今日はそれの話をしに来たのだ。近々弟子二人をそっちに行かせる。錆兎と義勇という名の子たちだ。」

「俺たち子供の面倒は見れねぇぞ?」

「手合わせの相手を頼みたいと言っているのだ。」

「あぁ、そういうことね、俺はいいけど右衛門はどうだろうな、一回戻るよ...拙僧も構わん...」

「こうしてみると奇妙なものだな、一瞬で匂いが変わるとは。」

 

少なくとも才能はあっても、まだ子供、加減はするさ。

 

 

本当に連れてきた。少しオレンジがかった髪に、口の右端から頬にかけて傷のある少年と、少し髪の長い黒髪が特徴の少年。傷のある少年は何やら勇猛そうな雰囲気を出し、逆に黒髪の少年は少し神経質な表情をしていた。錆兎と義勇だ。

 

「よく来たな、鬼狩りの童...育手鱗滝から話は聞いている。」

「錆兎です!鱗滝先生から実戦に近い形で稽古をつけてくれると聞きました!よろしくお願いします!...おい義勇、男なんだからお前もしっかり挨拶しろ!」

「冨岡義勇です...えっと、稽古よろしくお願いします。(怖そうなひと...)」

「うむ,,,どこからでもかかってきなさい」

 

そのその声で二人は驚いた。しかし、二人とも理解したようだ。鬼との戦いは試合や果し合いの様な「よーいどん」では始まらない。会った時にすぐ戦う。実戦とはそういうものだ。まあ、叩き潰しに行かないのはおそらくまだ実力を測るためだね。

先に飛び込んだのは錆兎だ、勇猛な彼はおそらく鬼殺隊に入ったら切り込み隊長の様な人になったことだろう。真っ先に鬼に挑み、味方の士気を高める、そんな人に。それだけにあの手鬼に殺されるのは残念だ。ここで出来るだけ伸ばしてみるのも手だな。

錆兎の攻撃はどちらかと言えば力押し気味だ。幼いが、勇ましい掛け声とともに繰り出される攻撃の一つ一つは子供にしてはかなり重く、そして激しい。錫杖で受け流しているがわかる。彼の攻撃をまともに受けたら少し力むかもしれない。普通の人間だったら少し焦るが、鬼である僕たちにとってはいわば身体能力は同等、しかし経験や技術は錆兎と義勇が圧倒的に不利と見ていい。一方義勇はこれが交代制だと思っているのか木刀を下ろして俺たちと錆兎の闘いを静観している。まあ闘っているのは右衛門だけだけどね。俺は右衛門が仕込み刀として使うようになったらちょくちょく出るかな。まずは彼らが右衛門を構えに入れることができるかだ。まだ彼はまっすぐ立っているしね。錫杖も縦に構えて、まるで何もない時の見張り兵みたいに。

 

「...黒髪の童よ、主はこないのか?」

「えっ、これって交代制じゃないのですか?」

「これは実戦と傷の童が言った。主ら二人がかりで来ることも構わん。」

「義勇!俺一人で大丈夫だ!男なら友を信じろ!」

「それは木刀を拙僧に当ててから言うことよ」

「はいっ!」

 

錆兎の攻撃を右衛門はいとも簡単に受け流す。少しずつ動きが良くなっているが、まだ柱や十二鬼月には程遠い。単純な剣術や型を使っているがどれもやはり力押しでどこか雑でぎこちない。義勇はまだ静観している。おそらく友を信じているけど、実戦でそれは悪手。早いところ錆兎に実力の違いを判らせて、義勇に手伝わせるしかないんじゃない?右衛門?

 

「潮時か...」

「?!がっ!」

「錆兎!」

 

生生流転を受け流し錆兎の背中に強めの突きを入れる。勢いは分散し、彼は体勢を崩した。今度は義勇が木刀で切りかかった。彼の攻撃は錆兎に比べてどことなく流麗な感じがする。錆兎ほどの重さや激しさはないにせよ、型を使った後の動きには錆兎の様なぎこちなさは少ない、でもまだ未熟故、粗削りだ。二人とも才能を感じるね。今日は右衛門が戦うから最終的な評価は彼なんだけどね。

 

「この程度か...」

「ぐっ!ぁ...」

「義勇!」

 

義勇も打ち潮を受け流され、脇腹に突きをくらい、痛みで蹲った。

 

「...勝負ありだ。主らの実力はおおよそ理解した。」

「...」

「くっ...」

「まず傷の童だが、主は力が強く一撃一撃が重い。が、それ故に大まかな剣筋が雑だ。次への動作の移行までの動きも少しぎこちない。それと、少し向こう見ずな戦いをする傾向がある。勇敢なのは良いことだがはき違えれば無謀だ。それを忘れるな。」

「...はいっ」

「次に黒髪の童だが、主は動きが丁寧で、錆兎の様なぎこちなさはあまりないが、自信がないせいか、どこか遠慮気味で、技の本来の威力を出し切っていないようだ。あまり遠慮するな、今ので分かった通り二人係でも拙僧に勝つのは難しい事だろう。優しいことは美徳だが、それも過ぎれば甘さだ。」

「はい...」

「疲れがある程度取れたらもう一度かかってきなさい。実戦に始めの合図はない、いつでもかかってきなさい」

 

そのあとの一日はずっと実戦の稽古だった。彼らも実力に大きな差があることを理解したようで、錆兎も義勇も少し躊躇いがなくなった。そして二人とも右衛門の言ったことを意識したのか、動きが少し良くなった。まあ今日の成果は微妙に構えるようになったことだね。俺が表に出るのはまだ早そうだ...頑張れ義勇!錆兎!

 

錆兎と義勇が来てから二年が経過した。週に3回くらいは来てるけど、来た当初よりも明らかに動きが良くなってる。鱗滝さんもたまに来て、あの二人がどんな感じか聞いてくる。そして、弟子が育つ旨を聞くと嬉しそうな、でも少し気が進まないようなそんな返事を出した。やはりそれだけ鬼殺隊の仕事は過酷なのだろう。最近は俺も表に出て義勇と錆兎を相手にしているが、確かに右衛門が言う通り若さ故の未熟さが残る。正直手加減が難しい。そろそろ右衛門が「最終試験」を行うと言っていたが、それが行われてあの二人はいつも通りに戦えるのかな?鱗滝さんは岩を斬るのが条件だって言ってたけどおそらく、それもこっちに伝わってくる。なんにせよ、最終試験は少し本気にやらないといけなさそうだ。まあ、戦うのはほぼ右衛門だけど。

(....主も戦うのだぞ、左衛門...)

(えぇ...)

 

瞑想していたら錆兎と義勇が来た。二人とも年相応の笑みを浮かべながら日輪刀を握って走ってきている。

 

「右衛門!左衛門!来たぞー!」

「む...来たか、童共」

「...あっ、そうだ!右衛門先生!今日、鱗滝さんの言っていた条件を達成したんだ!岩を斬れるようになったんだ!」

「おっ、俺も!先生!俺も斬った!」

「二人ともよく頑張ったな、俺たちからも最終試験があるんだ。しっかり柔軟はしてきたか?準備運動とかもしたか?」

「左衛門!右衛門先生に言ってくれよ!童はやめろって、もう一人前の男だって!」

「錆兎、お前まだ本気になった俺たちと戦ったことないし、剣術と抜刀術を使ってるときは型を入れるのがやっとじゃん。一人前を名乗るには、まず鬼殺隊でそれ相応の実力と胆力を持ってからだよ。」

「それって、どれくらいですか?」

「義勇も気になるのか。まあ、俺の基準だと、本物の化け物を退治した時に冷静に対処できる胆力、そんで柱と同等の実力かな?」

「先は遠そうだな、右衛門先生と左衛門が戦った鬼狩りの中でもすごく強いんでしょ?」

「...自信がない...」

「まあ、まずは君たち相手に、俺たちがしっかり構えて、槍術と棒術だけとか、抜刀術と剣術だけとかじゃなくて全部使うようになってからだよ。」

 

錆兎と義勇は俺達に懐いてきたのか、いろいろな意味で素直になってきた。感情表現も、遠慮もなくなってきて、話していて、楽しい。特に童と呼ばれると、錆兎と義勇が露骨に「ムッ」って顔するのが面白い。まあ、子供と認めたくない時期だし、仕方ないよね。そんなことを考えていると、錆兎が質問をしてきた。

 

「そういえば、最終試験って何するんだ?いつも通りの稽古じゃないのか?」

「慌てるでない童共。主らは、なぜ拙僧たちがいつも洞窟にいるのか、なぜいつも笠を被っているのかを考えたことがあるか?」

「それって、修行するのに、場所で、虚無僧って奴がそういうものだからか?」

「俺もかぶってるぞ、それに夜には洞窟の外を出歩いてるしね、いや...正確には夜にしか、出歩けないって言った方が正しいかな。...勝手に出てくるな、左衛門」

「...昼夜逆転生活していていいの?右衛門先生、左衛門?」

「いや、望んでこういう生活をしているのではない。やむ得なくやっている。見せてやろう、なぜ拙僧たちが笠を取らなかった理由を」

 

そういって右衛門は笠を取った。そこにいたのは真っ白な肌、そして鬼にしかない、血走った、瞳孔が猫の様な目。俺たちが喋れば鬼特有の牙も見える。俺たちは続ける。

 

「これが最終試験だ。さあ、かかってこ」

「うぉおあああ!」

「ハァッ!」

 

「い」を言い切る前に彼らは俺たちに切りかかってきた。彼らの表情は怒りに染まっていた。そうだ、俺が欲しかったのはその反応だ。さあ、失望させてくれないでくれ、二人とも。この時点で最終試験の結果は決まっている。そうだろ?右衛門。

 

「お前、俺達をだましていたのか!悪鬼め!俺たちをだまして楽しかったか!お前を斬る!」

 

錆兎は怒り狂った声を上げ切りかかり、義勇は静かな怒りを見せ斬りかかった。二人とも冷静さは欠いているが、剣筋自体は鍛えたからか、まだ良い方だが、大声を出しながら攻撃すれば、余計疲れるだけだ。怒りで我を忘れれば、それは即ち狙いのない攻撃、浅はかな攻撃。つまり負けだ。

 

「前に教えたはずだ、童共、感情に任せた攻撃は悪手だと。」

「黙れェッ!」

「...」

 

聞く耳を持たない。少し渇を入れるかな。

(ごめん、右衛門。表に出ていい?)

(構わぬ考えなしに出てくる主ではない。)

 

「感情に任せた攻撃はわかりやすい。鬼や仇を見ても常に冷静を保ち、隙を伺う。稽古をしたときに俺達教えたよなぁ?!」

「グッ」

「ゥァッ」

「俺達は確かに鬼だ。お前らの中では親の仇たる、鬼の一人だ!でも、感情に任せて闇雲に斬りかかればどうなるかは稽古を通してわかったはずだろうが!感情は確かに大事だ!やる気につながるからなァ!だが!激情に身を任せればどうなるかなんてたかが知れてるだろうが!」

「ぁッ」

「ガッァ」

 

彼らの型は怒りで雑になっていた。そうなればカウンターは容易い。攻撃の隙間に錫杖で突いて痛みを与えるだけだ。俺は彼らの腹を突いて錆兎の頭を思いっきり棒で薙いだ。それがかなりの勢いだったのか錆兎は気絶した。次は義勇だ痛みで顔はしかめているものの、闘志は残っているようだ。がそれが激情に変わるのも時間の問題。

 

「ハァッ」

「チッ」

 

存外、冷静なようだ。危うく一発入るところだった。義勇が型を使い、俺はそれを受け流す。それが繰り返されている、血鬼術はまだ使わない。これは錆兎が起き上がってから使うかもね。

 

「なるほど、案外義勇も感情に身を任せるかと思ったけど、そうでもないみたいだね。」

「左衛門はずっと俺たちの攻撃を受け流している。食べる気がなさそうなのがわかる。それに鬼なら鱗滝先生がとっくに斬っていると思う。」

「へぇ、随分見てるね、感心だよ。」

「シッ」

「でも、俺は斬るのね。」

「試験に合格するためだ」

「頑張んなよ、鬼狩り候補」

 

攻防はまだ続いた。滝壺、から打ち潮、そして水面切りや水飛沫・乱など様々な型を巧に使い本気を少し出した俺と互角に渡り合っている。

(雀の涙ほどの本気を少しというのだろうか?)

(構えてはいるから少しなんだよ。変わるか?)

(よかろう)

 

このやり取りをしていたら錆兎が少し呻きながら立ち上がった。やはりまだ痛いらしい。

任せたよ、右衛門

 

「気付いたか、童」

「...少し落ち着いた。見苦しいところを見せたな、右衛門。義勇もすまなかった。」

 

言い終わったあと、錆兎はさっきとは打って変わり落ち着いた様子で型を繰り出した。滝壺から、その勢いで水車を打ってきた。かなり重い、しかし、さっきのような雑さはない。いつもの錆兎だ。

 

「ふむ、左衛門め、味なことをする。」

「気絶した後考えたんだ。言われたことを、稽古を通して学んだことを。そして左衛門が言ったことを」

「大した置き土産を置いてきたものだ。さあ、二人係で来い!主らの今のすべてを見せてみよ!」

「でゃぁッ」

「ハァッ」

 

そこからは俺たちはかなり楽しめたし、少し苦戦した。右衛門が血鬼術を使わざるを得ないくらいに、強くなっていた。

 

「血鬼術、鬼気解戒。童共、これが上位の鬼が身に着ける異能。血鬼術だ。鬼狩りになれば、様々な血鬼術に遭遇する。何をするかはまさしく千差万別。そういう、未知の状況にこそ冷静を保て。」

「「ハイッ!」」

 

もはや、稽古と変わらない感じになってきた。けど、血鬼術を使うなんて、かなり期待しているんだね、右衛門。俺も使いたかったけど、そんなことしたら二人には悪いし。義勇は水飛沫・乱、流流舞い、打ち潮、錆兎は水面斬り、水車、滝壺、そして剣術による連撃。二人のすべては下手な隊士よりも大したものとなっている、でも...

 

「ここまでだ...よくやったな、錆兎、義勇。」

「なっ...ガフッ!」

「!!」

「グッ...義勇,,,主、何をした」

「ハァ...ハァ...ハァ......」

 

錆兎は乱れ突きを食らい気絶した。義勇にも食らわせて終わりになったと思ったのだが。義勇は刀の間合いに入った錫杖を斬撃で跳ね返して、そして体力が尽きたのか気絶した。もう夜中だ。さすがに洞窟で寝かせるわけにはいかない鱗滝さんの所まで運ぼう。

 

(結果は?俺的には合格だけど)

(同じだ。最初は錆兎は失格にするつもりだったが、気絶させた後に冷静さを取り戻させるとは、味なことをするな、左衛門)

(いきなりネタばらしで鬼だと知らせたら二人とも唖然とするか斬りかかるでしょ。)

(主に運ばせようか?)

(それでもいいよ、ほぼ右衛門が戦っていたし。)

 

鱗滝さんの家に着いて、扉を軽く叩く。天狗の面が目立つ老人、鱗滝左近次さんが出た。

 

「どっちだ?右衛門か?左衛門か?」

「左ですよ。」

「左衛門か、大方右衛門が試験を担当したのだな。どうだ?鬼狩りとしてやっていけそうか?」

「精神面でいえば錆兎はまだ未熟かな。最初は感情に振り回されていたけど、少ししたら冷静を取り戻していた。」

「ふむ,,.義勇は?」

「怯えながら戦っていたけど、こっちも実力が発揮すればかなり強いよ。正直下手な隊士よりも強いよ、今の二人は...錆兎も義勇も二人とも潜在能力は高く、未知数だ。まだまだ未熟な童だが、錆兎の連撃も、最後に見せた義勇の斬撃も見事なものだった。そう伝えてくれ。鱗滝左近次」

「わかった。今までの事、礼を言う。右衛門、左衛門」

「気にするな、拙僧はまた旅を続ける。鬼舞辻無惨を葬るため、犠牲を防ぐため。縁が合えばまた会おう、鱗滝左近次。」

 

そうして俺たちは歩き出した。夜が明ける前に別の滞在場所を見つける必要がある。

(にしても、最後に錆兎と義勇を名前で呼んだね。)

(最後のあの連撃、そして義勇の最後の斬撃。それで名前を呼ぶに値する存在にした)

(弟子みたいな感じで情が移ったんじゃなくて?)

(戯け。)

(ったく。あの二人の将来が楽しみだね。)

(そうだな)

 

新しい洞窟を見つけた。夜までここで瞑想だな。

 

 

 

 

後に鬼殺隊の新入隊士の内、圧倒的な水の呼吸の使い手二人が実績を上げていることを小耳にはさんだが、これが錆兎と義勇であることを知るのは先の話である。




やりたいシチュはあともう何個かあります。


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自己満足な鬼滅の刃の設定と、短編 その三

今回もムク編です
やりたいシチュは
1.鬼殺隊士との遭遇
2.猗窩座や童磨に遭遇する
3.もう一人の逃れ鬼、珠代と兪史郎との遭遇
この二つです。
今回は隊士達との遭遇です。


満月の下で俺たちは歩く。一つの体に二つの魂の鬼、武苦。だが、俺たちはその名を名乗らない。理由は人を捨てていないからだ。人を捨てれば鬼としての名前を使うが、それが起きない限り、右衛門と左衛門の名はずっと使ってゆく。

 

俺たちはずっと歩く。夜が明けるまで、ただひたすら歩く。そして、鬼が出ようと人が出ようと、俺たちがすることは変わらない。追い払うか、気絶させる。時によっては俺が出て、右衛門が鎮まる。当然だ。俺たちの戦い方は全く異なる。右衛門は技を使い、敵を鍛えるように戦う。ひたすら受け流し、その隙に反撃を加え、戦意を削ぐ。俺はむしろ攻撃を加えながら駆け引きの様な戦い方を演じ、そして相手を気絶に追い込むように戦う。スタミナを削るか、一気に削るかの違いだけだ。そして俺たちは鴉の鳴き声を聞く。

 

「カァー!カァー!」

 

こんな夜中に鴉の鳴き声は少し珍しい。そして大抵鴉の鳴き声がするときは決まって鬼狩りが来る。そして、姿を現したのは、俺の知る限り、現花柱、胡蝶カナエだった。確証はないが穏やかな雰囲気からして違いないだろう。

 

「貴方ね、虚無僧の鬼というのは。」

「...いかにも。拙僧は鬼。主が狩るべき一人の鬼。鬼狩りとして拙僧を狩るも良し、話すもよし。どちらも主の自由。」

「...貴方は自分から「狩るべき」というのね...なんで、そんな悲しいことを言うの?」

「主らは鬼を狩ることを生業としている。主らにとっては鬼とは犯罪を犯す害獣のような存在。そうであろう?」

「いいえ、私にとって鬼とは、そんな卑しい存在ではないわ。」

「ふむ、大抵の鬼狩りなら拙僧が鬼だとわかったとたん斬りかかるところを、主からは殺気も、敵意も、ましてや拙僧を陥れる悪意も感じぬ。主にとって鬼とはどういう存在だ?」

「...私にとっては鬼とは悲しい生き物。人を棄て自らの欲望に走る悲しい生き物」

「興味深い答えだな。『人の棄て欲望に走る悲しい生き物』...か。それでなんだ?主は鬼を斬ることでしか救えないとでもいうつもりか?」

「...だけど私は信じている。悪い鬼がいれば、人を思うことができる優しい鬼もいるはずだって。だから私には夢があるの。『鬼と友達になる』という夢が。」

「夢物語にも等しい夢だな。だが、理想のために戦う。復讐心にとらわれ、ひたすら鬼を狩る鬼狩り共とは、大きな違いだな。」

「でもあなたのおかげで今叶いそうな夢になった気がするわ。普通なら人を見た途端すぐに襲い掛かるもの。」

「話す余裕のある鬼かもしれぬぞ?主は拙僧を買いかぶり過ぎだ。」

「なら、一つ聞いていいかしら?」

「なんだ?鬼狩りの小娘よ。」

「あなたが関わっている報告ではほぼ、隊士達は口を揃えて『斬りかかったら反撃されて気絶した。』、『虚無僧の恰好をしたただの鬼だと思ったら武術の達人だった』、『別の鬼と戦ってた』というわ。それに新しく水柱になった人たちは二人とも『虚無僧の鬼はある意味俺たちに戦う術を教えた』とも言ったわ。そしてお館様も虚無僧の鬼はご存じだったわ『彼はずっと隊士達に追われていても跳びかかる火の粉を振り払うがごとく食べようともせず、殺そうともせず、ただ追い払っただけ』と。あなたはずっと、そうやって隊士達を追い払ったり気絶させたの?」

「人を殺すことに意義を見出せぬだけよ。それに拙僧に人を殺す趣味もなし」

「どういうこと?」

「そこからは主が考えること。」

 

そういって右衛門はそのまま歩き去ろうとした。が、彼女の横を通り過ぎようとしたところ、肩をつかまれた。

 

「やっぱり、あなたは私の夢を叶えてくれる!友達になりましょう!虚無僧さん!」

「拙僧に友達は不要、犯した罪を償わねばならぬのだ。」

「犯した罪?」

 

あーあ、余計なことを言うから勘ぐられちまうじゃん。右衛門は鬼になってしまったこと自体を罪として受け止めているのだ。もし彼が強ければ、彼は鬼になることはなかった。彼はその罪を償うために鬼舞辻無惨を探し、そして殺す。彼の様な鬼を生み出さないために。悲しい生き物が二度と作られないために。面倒だから俺出てきていいかな?

(黙ってろ、主が出てきたら余計にこじれる)

(今すでにこじれてるじゃん...)

(すぐには出せぬ。)

(もしこれ以上こじれてきたら無理にでも出るからな)

(承知した。)

にしても本当に鬼と友達になろうとするとは、胡蝶家の隊士は漏れなく全員度胸がすさまじいようだ。一人は鬼と友達になる事を夢とし、一人は死ぬことを前提に作戦を密かに実行し、一人は仇の情報を得て、自分が壊れるのを覚悟のうえで戦い、そして一人はどんな相手であろうと堂々と喋る。

 

「あなたの罪は何なの?人食い?それとも盗み?」

「戯け。たとえ身が鬼になろうとも、心まで鬼になるつもりはない。戒律を背けばかつての友に顔向けなどできぬ」

「それってどういうこと?」

「つまり、右衛門は元は人間のお坊さんで、その戒律を守るために人を食ったこともないし、罪ってのは鬼になったことなんだよ。鬼狩りのお嬢さん。」

「...急に口調変わったわね。どういうことかしら?」

「申し遅れたな、俺は左衛門。堅っ苦しい喋り方をしてたいかにも虚無僧って感じの人は右衛門。俺たちはいわゆる、二重人格って奴なんだよ。」

(堅苦しいは余計だ。左衛門)

(事実じゃん...)

「ともかく、友達になる申し出に関しては、俺は良いぜ?最近は世間話をする相手も右衛門だけだったし、俺が鬼だとわかった瞬間斬りかかったり怖がったりする人もいるしさあ...君の様な人がいて少し救われたよ。」

(勝手なことを...)

「へっ?そんなあっさり認めていいの?」

「嫌だった?」

「ううん、全然そんなことないわ、ただびっくりしただけ」

「そんなに?」

「だって、こんな素直な鬼は初めて見たもの。びっくりするのも当然だわ。」

(もう戻るぞ左衛門)

(えっ?)

「左衛門は鬼になっても飲み込まれなかったからな。拙僧からすれば鬼に心を売らずに済んだのも左衛門のおかげだ。」

「あら、そうだったの?」

「語りはここまでだ。さらばだ、鬼狩りの小娘。」

「あら、名乗ってなかったわね、私はただの鬼狩りの小娘じゃないわ。私は花柱、胡蝶カナエよ。よろしくね、右衛門さん、左衛門さん。」

「...ふん」

 

今回は珍しく会話だけで終わった。ただししばらく経ってまた会うことになった。にしても原作で胡蝶カナエはあまり出てこない分、知らないことの方が多いな、胡蝶さん。

 

俺たちはまた歩いていた。朝のうちに鍛錬と瞑想。そして夜に動く。正直日の光で焼身自殺をする気はない。太陽を克服すればそれもまた面倒だ。だから鬼らしく夜に動く。

 

時は遡って蝶屋敷

「しのぶ!しのぶ!やったわ!夢が叶ったわ!」

「姉さん?!嬉しそうにしてどうしたの?夢ってまさか...」

「そう!ついに念願の鬼の友達ができたの!」

「...はぁ?!」

「虚無僧の鬼と友達になれたの!名前は右衛門と左衛門さんだって」

「いやいや、ちょっと待って姉さん!いきなり言われても情報量が多すぎて反応が」

「二重人格の鬼で二人とも戒律を重んじて人を食べたこともないんだって」

「ちょっと待ってって、カナヲももう寝てるから...」

 

姉の話を聞いて妹は困惑するしかなかった。帰ってくるなり『鬼と友達になれた』なんていわれたら誰だって「は?」ってなる。姉の語りは機関銃の如く(マシンガントーク)、妹の胡蝶しのぶはただただ困惑するしかなかった。

 

そして右衛門左衛門視点に戻る。

 

花柱、胡蝶カナエと友達になってから何週間か経った。最近鬼殺隊士と遭遇する頻度も高くなっていることから、おそらく報告したのだろう。最近よく鴉の鳴き声を聞き。隊士と遭遇し、いつものように右衛門が戦う。今もその真っ最中だ。

 

「風の呼吸、壱の型、塵旋風・削ぎ!」

「...」(ふむ、磨けば光るものがあるな、だが直線過ぎる)

「チィィ、また受け流しやがったァ...いい加減攻撃してきたらどうだァ?!虚無僧の鬼とやらよォ!」

「拙僧は戒律を守る故、殺生せず、盗まずだ。身は鬼に堕ちても、心まで鬼に堕ちる気はない!」

「どうだかなァ!人間を食わない鬼なんざァ!この世にいねぇんだよ!ボケがァ!!」

 

俺たちは傷だらけの隊士、不死川実弥と戦っている。彼は執拗に俺たちに攻撃する。自分の身なんざどうでもいいと言わんばかりに斬りかかる。彼は死にたがっているのか?それとも...稀血か...?稀血だな。どちらにせよ、鬼に対してはすべての仇と言わんばかりのの敵意を向けている。鬼のせいで大事なものを沢山、失ったのだろう。彼の過去を知っているからわかる。とても辛く、少年には過酷なものだった。俺たちがあの場にいれば、絶対に助けた。

 

「傷だらけの鬼狩りよ、なぜそこまでして、鬼を憎む。」

「鬼狩りは鬼を狩る!それだけで十分だろォ!」

「聞く耳を持たぬか。鬼というのはやはり、悲しいものだ。」

「ぐッ」

「まだ続けるか。拙僧に人を殺す趣味はない。」

「るせェ...ハァ!」弐の型、爪々・科戸風

「直線的な斬撃は読みやすい、多少趣向を凝らしても、一朝一夕でこなせるわけではない。」

「ぐァアッ!」

 

四つの斬撃を俺たちに繰り出すが、右衛門はそれでも受けなし、避ける。そして懐に入り。五回連続で突き、最後の一突きは手加減したにせよ、音だけ聞くと、岩を砕くほどの威力の突きを繰り出した。当然それほどの一撃を受けた隊士は吹っ飛ばされた。辛うじて受け身は取って様子だが、刀で自分を支えなければならないほど、消耗している。これ以上は彼が危ない。

 

「鬼を...狩るまで...俺は...倒れてらんねェんだよ...」

「見事な志。だが主の体は限界に近い。」

「引けってかァ?鬼相手にそんな真似ェ...出来るワケねェだろうがァ!」

「剣士なら引き時を知れ。血鬼術、鬼気解戒...」

 

螺旋状の斬撃を繰り出しながら突撃する不死川を見て、右衛門は血鬼術を発動させた。鬼気解戒、鬼としての力を最大限までに底上げする血鬼術。運動能力、動体視力、再生能力、すべてが異次元の領域に達する状態になるが、調整もできる。本気の鬼気解戒ではないが、不死川を気絶させるには十分だろう。

 

「は?消え、...がッ」

「少し眠れ。傷だらけの若き鬼狩りよ」

 

右衛門はそんな状態になっても、力加減が驚くほど上手だ。すぐ隊士の後ろに回り込み当て身を食らわせ、そして倒れるとこを彼は支えた。幸い、戦っていたのは森の中だったので、近くの木に寄りかからせる。そしてまた声が聞こえてくる。

 

「実弥!どこだ?!実弥ィ!居たら返事してくれ!」

 

声がだんだん近くなってくる。疲れてきたら交代も考えるべきかな。右衛門はまだ余裕そうだけど。柱相当の実力を持った人とかなり長い時間戦っていたんだ。彼の戦闘技術は俺よりも高いが、戦意を喪失させるという方法でいえば、彼は相手に諦めさせる。そういう意味ではあの隊士の様な執念深い人とはかなり相性が悪い。

 

「実弥!?実弥?!...お前、実弥に何をした!虚無僧の鬼!」

「気絶しているだけだ。そう騒ぐな。拙僧に人を殺す趣味はない」

 

ここ最近、何回も同じセリフを言っている気がする。

(うるさいぞ左衛門)

それはさておき、また傷のある隊士が出てきた名前は確か、条野匡近...だったっけ?それはさておき、やはり傷のある隊士は多い。鬼狩りという仕事はいうなれば鬼と剣士の殺し合いだ。お互いが殺し合い、それで自然と傷もつく。だから、顔や体に傷のない隊士は逆に珍しい。おそらくその人たちは医療施設か何かで傷が完全に癒えるまでしっかり安静にしているのだろう。死亡率が多くても、実力のある隊士が少なからずいるということは、どこかに医療施設がある。逆にもしなかったら鬼狩りたちはどうやって重症などを処置しているのかが気になるところだ。

 

「...虚無僧の鬼。なぜ、人を食おうとしない?いまこの場で実弥を食っても良かったはずだ。それにほかの隊士だってそうだ。あいつらもお前と戦って気絶したと言った。人を食える好機をなぜ逃すんだ?」

「拙僧は、拙僧であるため。人を食らってしまえば、人の道を逸れる。それは寺の虚無僧として恥ずべき事。」

「元お坊さんの鬼だっている。」

「身が鬼になろうと、拙僧は人を食わぬ。人を食えば、友や同胞に顔向けが出来ぬ。これで満足か?」

「...」

「さらばだ、若き鬼狩りどもよ」

 

そういって俺たちはその場を去ろうとした瞬間、また鬼狩りが出てきた。...あれは、義勇くん?

 

「...(鎹鴉から虚無僧の鬼が隊士と交戦、のちに気絶と聞いた。応援も来ているとも聞いたが、まさかお前だったとはな)右衛門。」

「義勇か。あの黒髪の童が随分と立派に育ったものだ。傷の童、錆兎は元気か?」

「あぁ(別の任務で最近は会えてないが)達者だ」

「主も鬼狩りだ、拙僧を狩るのなら、拙僧は止めはせぬ。」

「...あの時は感謝する。」

「何のことだ?」

「人を殺すだけの鬼以外にも稀に人を失わない鬼もいるということを教えてくれた。」

「...やはり、嘆かわしいものだな、。」

「...」

「鬼になって人を棄てることが当然だと思われるのも、人を棄てることしかできない人も...」

「そうだな。」

「...義勇、主は人を棄てぬ鬼が、またいつか現れると思うか?」

「どうだろうな(それはその人の強さしだいだ。だが、高潔な精神を持っている奴なら、鬼になってもきっと人を棄てないはずだ。)」

 

まさか、義勇君が出てくるとは思わなかった。錆兎も達者といったことから生きてはいるのだろう。にしても、目に光があるとはいえ、ちょくちょく何か抜けている気がするな。あの気弱な子供が、ここまで冷静な表情をした青年にするとは、時間とはすごいものだと実感する。そんな感じで話をしていると横から声を挟んだ。頬に傷のある若い鬼狩りだ。傷だらけの実弥という隊士を心配していた。

 

「水柱様、この鬼と知り合いだったのですか?」

「...あぁ、あれは8年前だったか...」

「冨岡君、そこまでその子は詳しく聞いてないわよ?」

「...胡蝶。」

「花柱か何日ぶりだな。」

「冨岡君、右衛門さんこんばんわ。今日は月が綺麗ね。」

「...満月だな。」

「確かに綺麗に見えるな。」

「それで、これは何の集まりなのかしら?冨岡君に風の呼吸を使う隊士、それに右衛門さん、なんだか、面白い組み合わせね。」

「集まりというか、隊士に斬りかかられただけだ。」

「鬼狩りなんだから鬼に斬りかかるのは当たり前だと思うぞ、虚無僧の鬼」

「もっともな判断だな。」

 

確かに鬼狩りとして、鬼を斬ることは正しい。しかし、善良な鬼からすれば、斬りかかられた方は溜まったものではない。むしろ、義勇くんと胡蝶さんが来たことに関してはありがたい。この話し合いの場面で斬りかかってくる隊士は余程無粋な人か、鬼に余程の恨みのある人だろう。正直、相手にするだけで面倒だ。話し合いはお互いの情報の提供ややり取りをする手段。行動もそうだが、情報を碌に引き出さず鬼を殺す隊士はかなりもったいない。それに、鴉などの連絡手段があるのに、それを鬼の能力に関しての情報交換、話し合いで引き出すことができた情報などをお互い報告することもできるはず、やっているのなら良いのだが、それをやる前に死んでしまっては元も子もないし、やってなかったら驚きだ。俺たちは月から視線を逸らし、隊士達に向き直る。

 

「それで、柱二人に、隊士一人、そして気絶した手負いの隊士。拙僧はお暇するが、主らは去ろうとする虚無僧の鬼を逃すほど優しくはない。ここで斬りかかるならそれを反撃はすれど、それを咎めることは無論しない。傷の隊士が言う通り、鬼を斬るのが鬼狩り故、咎めることはしない。しかし、斬りかかろうとするなら、拙僧も少しばかり本気を出すとする。」

 

そういい、右衛門は血鬼術を発動させた。そして、無表情だった義勇くんも、笑顔だった胡蝶さんも、匡近も全員険しい表情で刀を構える。

 

「来るなら来い。だが、手加減は出来んぞ。」

「...はい、右衛門さん」

「...昔を思い出すな...(右衛門)」

「これはきつい戦いになりそうだな...」

「いや、すぐ終わる。」

 

そういい、僕たちは素早く移動し、傷の隊士を気絶させた。おそらく傍から見れば消えて、それで次の瞬間匡近が気絶したように見えただろう。そして、次は義勇くんに向かって叩こうとするも、錫杖を防がれた。右衛門の「少しばかりの本気」は一瞬で何撃も加えることができるくらいの速さだが、それをすべて防がれた。そして少し離れると彼は刀を斜め下に構えていた。表情は凪いでおり、刀は下に向いている。試しにもう一回急接近して叩こうとするもすべて防がれた。昔の凪になりうるものが完全にものになったようだ。

 

「ほう、童だった頃の偶然を昇華させたか。」

「...偶然、か(もう子供だった頃の俺じゃない、俺をあの時の子供とは思わないことだ)」

「面白い、拙僧から一本取ってみなさい、若き剣士たちよ」

「なら遠慮なく。」

「...」

 

静かな呼吸音が場を流れる。聞こえるのは二つの呼吸音、そして感じるは空気の揺れと場の緊張。

 

「フゥー...」

「ヒュー...」

「ふむ、鬼狩りの呼吸か、随分と高い練度だな。だが今の拙僧からそう簡単に一本とれると思わないことだ。」

 

先に仕掛けたのは胡蝶さんだ、9連撃を仕掛けてきたがそれをすべて防ぐが、無理に反撃を入れたせいか、少し体勢を崩す。それを柱を見逃すはずがなく、そこで義勇くんは水面斬りを放つがここで右衛門は抜刀して真っ向から防ぎ、そして押し返した。これには流石の義勇くんも無表情ではいられなくなり、少々驚愕した顔になった。力いっぱい出斬りかかって、それを押し返されたのだから少し驚くだろう。胡蝶さんも反撃を食らったのが痛かったのか遅れて少し痛がるような体制をした。確かに腹を突いたが、そこまで力を入れていない感じだった。...あれ?今日ってそういう日?

 

「...うっ」

「拙僧に刀を抜かせるとは成長したな、義勇。」

「仕込み刀か(子供の頃には見せなかったが、棒術のほかに剣術を使っていたのはこれが理由か)」

「昔は見せなかったな。童に本物の剣で斬りかかるのは良しとしないのでな花柱の方は少し痛みに堪えているか様子だが。」

「そうだな。胡蝶、下がっていろ。」

 

義勇くんの指示に従い、胡蝶は少し後ろに下がった。だが、刀は収めない。おそらく頃合いを見てまた参戦するつもりだ。その前に終わらせる必要がある。夜明けまでの時間も迫っている。こちらは隙を見て逃げなければならないけど、右衛門は何としてでも気絶させようとするだろう。負けず嫌いだし。そう思っているうちに義勇くんが仕掛けた。肆の型・打ち潮だ。さっきの水面斬りもそうだが、義勇くんも成長して技は全て高い練度に達している。型一つ一つは流麗で力強い。すべて防がなければこっちが危ない。正直右衛門も完全な余裕から転じて、少し焦っているのがわかる。

 

「ふむ、主の成長が見れて嬉しいぞ、義勇よ。」

「そうか」

「確かに、どこかでまだ童だと思っていたらしい。そろそろこちらも本腰を入れるか...」

 

そういって右衛門は少し中途半端な構えから本気の構えになった。が、まだ本気ではないのがわかる。彼の本気を見た俺だからわかる。彼はまだ脱力していない。彼の本気の構えは脱力して、そして一撃を入れるときに力を入れ、それが驚異的な威力の一撃となる。それを抜刀術、槍術、棒術と格闘術で出来るのだから彼は多芸である。ちなみに俺はそんなことはできない。体術はある程度できるが、それでも右衛門ほどではない。何度か上弦を相手にした俺たちであるが、右衛門のほうが立ち回りが上手いし、体の使い方も上手い。俺はどちらかと言えば血鬼術で自分が得意なフィールドを作ったりしながら戦うからこそ、戦い方も強さの方向性も全然違うとも言える。最近だと、上弦の参、猗窩座と言う戦闘狂の鬼と夜明けまで戦い、そして彼を追い払えたがそれも正直交代交代で、俺が血鬼術で右衛門の得意なフィールドを展開して、援護しながら、右衛門の本気二歩手前の体術でやっと猗窩座を戦意喪失させたのだから、彼の強さがわかる。二歩手前はまだ大したことないとか言われそうだが、少なくとも俺たちを完全な本気にさせた相手が柱6人同時か上弦の壱だけなので、そこは仕方ない。ちなみに俺が猗窩座と戦っていた時は俺は8割方本気だった。本気出さないと殺されちゃうし、それにあいつの攻撃ってえぐいし。そんなことはさて置き義勇くんとの立ち合いだ。一応長く語っていたつもりだが、実際、まだ1秒しか経っていない。

先に動き出したのは義勇くんだ。やはり鱗滝さんの弟子だけあって判断が早い。彼は得意技、打ち潮を放ち体勢を崩そうとする。しかし、そこは本気の右衛門。難なく打ち潮の連撃を防ぎ、受け流し、剣撃の衝撃を逃がす。義勇くんは俺たちの後ろに受け流されたが、流れるように流流舞で方向転換し、俺たちの周りを縦横無尽に立ち回りながら一撃を入れてこようとする。そしてそのうちの一撃が軽く入り、俺たちが怯んだら、思わぬ伏兵が来た、錆兎と不死川実弥だ。怯み、後ろに下がったら上から滝壺をもろに受けかけ、辛うじて致命傷は避けたが、その後の不死川実弥が上から放った竜巻状の斬撃をくらい吹っ飛ばされた。これも致命傷にはならなかったのか、森の木を蹴り少し離れたところに着地し、大きく体勢を崩す。やはり致命傷にならなくてもかなり効いたようだ。

 

「ぐっ。まさか起きていたとはな、傷だらけの隊士よ。それに錆兎も久しぶりだな。」

「不死川実弥、てめェの頚を掻っ切る風だァ!」

「鎹鴉から「義勇が交戦中」と聞いて駆け付けたんだ。あの義勇が苦戦しているのだから余程の相手だと思ったが、まさかお前だったとはな、右衛門。」

「錆兎、俺一人でも行けそうだったぞ。」

「見事に全部受け流されてたやつが何を言う。だが、あの隙を生み出せたのは大きいぞ。」

「感謝するぜェ、水柱共...よくも気絶させてくれたなァ!今度はそう簡単には行かねェぞォ!」

 

(どうする?夜明けが近い、日光を克服したという保証もないし、森である程度遮られても、限界がある。)

(拙僧が一人でやる、全力を出す。)

(うわあ、大人げない)

(仕方なかろう、鬼舞辻無惨を仕留めるまで、日光に当たり、死ぬわけにはいくまい)

(そりゃあそうだな)

 

「何度やっても同じことよ。」血鬼術・鬼気解戒・全

 

今までとは比にならないくらいの闘気があふれ出る。一応「全」と銘打っているがこれより上に「極」がある。ちなみに「全」はいわゆる本気の一歩手前である。そして、右衛門が動いた。全員が驚き、そして一瞬で決着がついた。まずは傷だらけの隊士の後頭部を軽く叩き、気絶、そして、義勇くんと錆兎くんのうなじ当たりに当て身の要領で錫杖を叩きつけ、そして気絶させた。これを僅か0.1秒でやった。もう一度言うが文字通り一瞬で決着がついた。胡蝶さんを残したのには理由がある。彼女にあることを伝えるためだ。

 

「花柱よ、強引な手段を使い申し訳ない。拙僧はこれにてお暇する。」

「やはり、気絶だけさせて逃げるんですね」

「あぁ。それと伝えることがある。」

「はい、なんでしょう?」

「彼らに医者を呼んでおけ、そして主らの追うものは赤い目に、うねりの入った髪が特徴の青年だ。少なくともこれは拙僧の知る鬼舞辻無惨の見た目の一つだ。ではさらばだ」

「...見た目の一つ?それってどういう」

 

意味の「い」を言う前に俺たちはその場を去って日光を凌げる洞窟を探した。すごい勢いで探しているがなかなか見つからない。日が完全に上り、森に光が差す直前に見つけ、すぐ駆け込んだ。正直ここまで焦ったのも珍しい。危なかったなぁ...

(全くだ。まさか思わぬ伏兵がいたとはな。)

(...元気そうだったね、錆兎くんも、義勇くんも。)

(ふん、再会を喜べる主の余裕が羨ましいものだ。)

(そういいながら右衛門も喜んでいたじゃん、錆兎くんの成長も、義勇くんの成長もさ。「成長を見れて嬉しいぞ」とか言っちゃってさ)

(...確かに、錆兎も義勇も比べ物にならないぐらい成長していた。あそこまで焦ったのも久しぶりだ。)

(でも、俺知ってるよ。右衛門、一撃を入れた後の連携に対して結構うれしかったよね)

(あぁ、あの連携は見事なものだ。もう少し長引いていたら危なかったな)

(修行が一層に厳しくなりそうだ)

俺たちはそこからまた、修行を始めた。鬼舞辻無惨を仕留めるため、そして強い隊士を育てるため。

 

数日後の蝶屋敷。

「姉さん、虚無僧の鬼から鬼舞辻無惨の情報を貰ったって本当なの?」

「えぇ、でも少し引っかかったわ...」

「何が?」

「だって、見た目の一つって言ったのよ。」

「...確かに引っかかるわね。でも、それ次の柱合会議に絶対持ち出したほうが良いわ、無惨の情報を少しでも公表すれば私たちは有利になるもの。」

「そうね!...にしてもしのぶ?」

「なに?姉さん...」

「さっきから訓練場から凄い声が聞こえるんだけど。」

「...うん、ある程度回復して、冨岡さん、不死川さん、鱗滝さん、そして粂野さんががすごい勢いで訓練しているの。」

「...傷に響かないといいわね」

「もうほっときましょ、何回も忠告したけど、聞かなかったし。」

「不死川!粂野!もっと来い!こんな程度では虚無僧の鬼、右衛門は倒せないぞ!」

「うぉおおおおおああああ!!!」

「来い!まだまだいけるはずだ!次は絶対に一本取るぞ!」

「ハイッ!」

しのぶは頭が痛いと言わんばかりに手を頭に当て溜息をつき、さすがのカナエも苦笑いしかできなかったとさ。

 




錆兎を一瞬しか出せなかった...またこれやろうかな...
次はどのシチュがいいですか?
鬼舞辻無惨の配下と遭遇
or
逃れ鬼と遭遇

11/10/2020:見返して誤字があったので修正しました。描写にも設定的な矛盾があったためそれも修正しました


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自己満足な鬼滅の刃の設定と、短編 その四

逃れ鬼のシチュをやります。
他に状況が思い浮かばなかったので炭治郎と似たような遭遇の仕方にしました。


鬼になる前もあまり来なかった浅草。鬼になってからは...大した用もないので来ることもあまりなかった。今見るとやはり時代を感じる都会ではあるが、ところどころ現代の面影が見え隠れする。二つの魂を宿す鬼である俺たち、虚無僧の右衛門と、俺、左衛門は夜なのに明るい街の浅草の路を歩いていた。やはり都会だけあって賑やかだ。人は笑顔で商売をし、娯楽で英気を養う。裏の方では何が起こっているかはさておき、こういう平和な町は俺も右衛門も好きだ。ただ、人が多いということは一人いなくなっても気づかないって事なんだよなぁ。鬼だからか、人の食べ物があまり美味に感じられないが、そもそも今は食事が必要ないのでとりあえず風景を楽しむ。

 

「何年振りか、浅草。ここに来るたびに、何か新しいものがそこにある。」

 

そう、俺たちは何度かここに来ている。右衛門は鬼になってからはたまに来るが、何年、何十年に一回程度である。にしても、さすが都会。やはりどこも賑やか、見ているこっちも少し楽しくなる。

 

「ふむ、簪、着物、楽器、小道具。やはり都会だけあって洋の物もあって品ぞろえが豊かだな」

 

感心しているが、彼は何も考えずにただ用もなくここをふらついているだけである。それに慣れたが、「ねえ、あれ何?」やら「怪しい人」やら少し声も聞こえる。警察はもう事情を知っているためあまり触れてはこないが、仕込み杖の事は知らない。俺が血気術で切り目を見えなくし、引き抜けないようにした。それゆえ、ただの錫杖として認識されている。

 

「さて、宿も取れた事だ、もう少し都会の景色とやらを満喫するのも一興だろう」

(そうだね、少し怪しまれたけど金を出せばどうにかなるものだね。)

 

ここでなぜ鬼の俺たちに金が来るのかというのだが、俺たちが鬼や剣士を倒したことが噂になる。そうなれば要人暗殺などに対しての用心棒として雇われることもある。右衛門は無暗に受けるなどの事はしないが、世の中金がないとどうにもならないことだってある。よって、期限を決めて護衛として雇われることもあるのだ。あまり信じられない話ではあるが。場所によっては『武を極めた虚無僧』やら、『決して殺すことをしない慈悲の象徴』やら、囁かれる。あまりこういう噂は嫌いではないがやはり、買いかぶり過ぎでもあるためあまり良い気もしないが。鬼殺隊からは「虚無僧の鬼」として恐れられ、たまにその道の人から「武を極めた虚無僧」として立ち合いや稽古などを申し込まれたり、上の立場の人から「護衛になってほしい」と仕事を申し込まれたりと、時によってはかなり多忙になる。そんなことはさておき、俺たちは用もなく浅草の街を歩いている。そうしていると洋装の人にぶつかった。

 

「すまぬ、考え事をしていた故、周囲を少々いい加減になっていたらしい。」

「いいえ、こちらこそすみません。その笠、見えにくいですもんね、仕方ありませんよ。」

 

ここで普通の会話っぽく見えるかもしれないが、服を見て分かった。彼は長袖、帽子、長ズボン、洋装でペイズリー柄のネクタイ。そしてよく見えなかったが顔もかすかに青白く、目が少し赤かった。偶然かもしれないが、彼は鬼舞辻無惨とよく似ていた。といっても頭無惨な彼の事なので数年前に鬼にした後、放置した虚無僧など気にも留めないだろう。猗窩座と戦ったときも無惨とのつながりを断つように結界を張って戦っていたし、おそらく彼は俺たちが虚無僧であることを気付いていない。珠代を追っているけど千と何百年、全く逃れ鬼のしっぽも噂もつかんですらいないし。大方、青い彼岸花探しで頭がいっぱいなのだろう。

 

(左衛門、この青年、もしや)

(わからない、早計過ぎると思うけど、似ていた。)

(主も自信がないのか。少なくとも服の柄と、容姿は似ていたが、空似という可能性もある。)

(そうなんだよ、だからまだ自信がない。何か決定的なものがあれば良いんだけどなあ...)

(用意周到な彼奴の事よ、そう簡単に彼奴は尻尾を掴ませることはしないだろう。)

(呪いまで使う徹底ぶりだしね。)

 

彼に近い容姿なだけで疑うのは流石に早計だ、炭治郎がすぐに無惨だとわかったが、それは彼の並外れた嗅覚によってわかったものだ。敵意などの察知は出来るが、さすがに気配による人の識別までは出来ない。右衛門もそこまで精度は高く無いため、結局「無惨似の青年」止まりになった。そして静かに言うことにした。

 

「では、失礼仕る。...どこかで見たか?無惨?

「...いえ、お気になさらずに。では。」

 

あまり反応のないところから白だと思っていた。そこで何も起きずに俺たちと「無惨似の青年」が会釈して終わらせれれば確信にならなかったと思う。

 

「ゥゥアァアアアアア!」

「どうしたの?!あなた!」

 

近くから声が聞こえた。痛みから来る男性の叫び声、そしてそれを心配する女性。これで一気に確信できた。彼は鬼舞辻無惨に繋がっている。彼を追うと考えるが、これがもし鬼になりかけるのならば大変だ。右衛門には悪いが変わってもらうことにする。

 

(ごめん、右衛門!変わってくれるか?!)

(そろそろ主が出てくるころだと思った!)

 

「すみません!ちょっとごめんなさい!通ります!」

「ゥゥゥウゥゥ...ゥゥゥウウゥウゥゥ...」

「...嘘だろ...早いな...」

 

俺たちはかなり長い時間悶絶していたのだが、彼はかなり落ち着くのが早かった。おそらく、無惨が調整が上手くなったということだろう。そうしていると獣の様な唸り声がどんどん大きくなった

 

「ウゥウウ...ガァアアアアア!」

「! 不味い!その人から離れてください!」

「へっ?」

「ちッ!拙僧は嘘吐きである、其は真実か否か」結界展開・四方護結界

「ガァアアア!ァアアアアアアア!」

 

見えない壁に当たり「バチィッ!」と音を立てる。それに対して鬼に成り立て、理性を失った男は無理矢理突破して一緒にいる妻らしき人に襲い掛かろうとする。傍から見れば男は見えない何かに遮られて、襲えないようにしか見えないだろう。檻の中の獣の様な印象を抱かせる。俺は鬼を取り押さえ、首の後ろに衝撃を加え気絶させ、人を呼んだ。

 

「誰か!医者は居ませんか?!特殊な症状の病です!」

「警察だ!...武の虚無僧?取り押さえたのか?!」

「...はい、でも今の状態でこの人の身柄を引き渡すわけにはいきません。説明は省かざるを得ませんが、このまま目覚めてしまってはまた暴れだすかもしれないのでな、身柄はこちらで確保していただきたい。」

「...武の虚無僧の言うことなら余程の事なのだろう。わかった、しかし事情聴取させてもらうぞ。」

「はい」

「私が診ます。」

「君は?」

 

会話の中に入ってきたのは女性だった。気配からはまだわからないが俺たちと同じだろう。後ろに色白な少年もつれており、やわらかい雰囲気の女生徒は対照的に少し刺々しい雰囲気と信用ならないものを睨むような眼で俺たちを見ていた。

 

 

「時間がありません、彼を私にいったん預けてください。愈史郎、事情聴取が終わったら彼を私のところへ。」

「わかりました。珠世様」

「それでは、まず、----」

 

 

少し長い事情聴取が終わったのち、愈史郎からぶっきらぼうに「こっちだ」と言われ着いていく。

 

「お前、無惨の呪いを脱した割には鬼の中で随分強いな。」

「まあ、与えられた量が量だからな」

「よく死ななかったな、よほど行き意地汚さそうだ。」

「誰も死にたくはないだろうよ」

 

ちょくちょく刺々しい言葉や嫌味を言ってくる愈史郎だが、やはり珠世様を第一に考えているからか、案内はちゃんとしている。歩みを止めて「ここだ」といい、本来壁だったところをすり抜け、すり抜いた先には屋敷があった。そろそろ交代するよ、右衛門。

(何故、歩くところから交代しなかった?)

(愈史郎の言葉に一々反応するかと思って。)

(拙僧とてそこまで器は小さくない、戯けが。)

(鬼や鬼殺隊のしつこい挑発に乗るのにな?)

(チッ...)

 

玄関を上がり、扉を開いた先に珠世様がいた。確かに愈史郎が「珠世様は今日も美しい」と言っていたのがなんとなく理解できた気がした。

 

「おかえりなさい、愈史郎。そして、初めましてですね。私と同じく、逃れ鬼の虚無僧ですね。私は珠世と申します、その子は愈史郎。」

「珠世様!危険です!」

「愈史郎、大丈夫です、彼は信用できます。」

「会ったことがないのに何故そんな事が言えるのです!」

「彼に遭遇した鬼は気絶をする事はあっても、手を下さないと、追っ手から聞いたでしょう。」

「それでも、万が一...」

「主らが何者であろうが、拙僧の敵でないということが分かった。」

「?!」

「案ずるでない、拙僧が手を下すは人食いの鬼、主らからは殺気は感じられぬ。大方、交渉が目的。そうであろう?医者、そして白の童。」

 

右衛門はぶっきらぼうな口を開き、無理矢理会話を遮った。愈史郎と珠世様が軽い言い合いになるのを見かねたのか、それとも本題に行かないのが苛ついたのか、彼から微かに苛立ちを感じた。彼は確かに静かな人物だが、中身のない話が嫌いだ。今の言い合いに中身はあるにはあるが、彼はどちらかというと彼が聞く必要のない口論などは彼にとっては時間の無駄というストイックな物の見方をする。悪く言えば自分本位だ。

 

「貴様、客人の癖に何を」

「愈史郎、やめなさい。」

「はいっ、珠世様」

「...話を続けてもらいたい」

 

本格的に苛立ってきたようだ。彼は俺より冷静で戦いが強い分、こういう交渉の面では俺より沸点が低い。頃合いを見て交代した方が良さそうだ。

(引っ込んでろ左衛門。)

(右衛門、かなり苛ついているでしょ、交渉で感情を優先するのは悪手だよ?)

(...頼んだ、追っ手が来たら変われ。)

(安心してよ、来ないから。)

(使うのだな。)

(お互い逃れ者だからね、彼女に人を陥れるような趣味はなさそうだし)

脳内での、会話は終わり主人格は右衛門から俺、左衛門に変わる。これを信用してもらえるかどうかだな。

 

「ごめんな、俺の主人格は少し気難しいやつなんだ。許してやってくれ。」

「お前、さっきからなんなんだ?コロコロ話し方を変えて、気持ち悪いぞ。」

「愈史郎、客人にそんなことを言うのはいけませんよ。」

「はいっ、珠世様」

「さて、交渉する前に俺は少しやることがある...拙僧は嘘吐きである、其は真実か、否か...さて、これでいいだろ。」隠蔽結界・展開。

 

僕は血鬼術である結界を展開した。四方護結界などは文字通り守るための結界。そしてこれは隠すための結界。やったことは単純明快で、壁に実体を与えた。文字通り通り抜けられる壁がただの壁になり、ここまでくる道のりが隠蔽され、無かったことにされた。たとえ、追っ手の鬼が来ようとも、ここに来ることはない。この屋敷にたどり着くことはない。少なくとも俺がいる限りは絶対に追っ手が来ることはない。

 

「何をした?虚無僧...」

「血鬼術を使っただけだ。神経質って言われるかもしれないが、さすがに交渉中に鬼狩りか追っ手が来たら交渉どころじゃなくなる。」

「...信じても良いのですか?」

「少なくとも、追っ手の鬼よりかは信用できると思いますよ、お医者さん。」

「自分で『嘘吐きである』って言っておいて信用できる奴がいると思うか?」

「確かにな、まあ、君が俺たちを信用しようがしまいが、俺たちのやることは変わらないよ。鬼舞辻無惨を見つけて仕留める。それに、彼を見た。彼の姿の一つをまた見た。」

「鬼舞辻無惨を見つけたのですか?!」

「あぁ、浅草にいた。少しかまけても動揺しなかったようだけど、俺たちは彼の向かった先に鬼を作ったのを見た。それに俺たちは鬼舞辻無惨の作った鬼の一人だ。見ないはずないだろう。」

「...そうですか、ここにいたのですね。」

「姿を隠していたけどな。少なくとも、彼を仕留めるのは今じゃない。一応俺は鬼殺隊の奴らとも交流関係はある。奴らにも言っといたよ、鬼舞辻無惨の姿は一つじゃないって。」

「今追わないのも納得です。今奇襲を仕掛けても、彼を完全に殺す手立てはありません。」

「やっぱりそっちもまだ準備が整ってないんだな。」

「待ってください珠世様、怪しいです!鬼が鬼殺隊と繋がりがあるなんて!それに俺達の目的を無暗に言うべきではありません!」

「鬼殺隊に関しては信用しなくても別にいい、協力してほしいんならするさ。俺たちに鬼舞辻のクソッたれを倒すお膳立てを手伝ってほしいのなら協力はするさ。現に俺たちは何回か鬼に遭遇しているし、君たちにも情報が来ていると思うよ。口の軽い鬼どもは結構多いみたいだしさ。それに...今鬼が屋敷前を通った。」

「(鬼舞辻のクソッたれ...)...貴方を信用してもよさそうですね、何より呪いが発動していません。愈史郎、例の物を。」

「ハイッ...オイ、胡散臭い方の虚無僧、これを鬼に刺して血を採れ。俺はまだお前のことを信用してないが、珠代様の意向だ。」

「愈史郎、無礼な事を言うのはよしなさい。」

「良いの良いの、胡散臭い物言いなのは自覚しているし。そんじゃあさっそく...」

 

俺は採血の小刀を自分の手に刺し血を吸わせた。二人はそれを見て少し引いたようだが、そんなことは気にしない。

 

「お前、何をやってるんだ?!」

「...俺の血だ。俺は血鬼術を二つ発現させている。俺の記憶が正しければ、血鬼術を発現させる条件ってのは、鬼舞辻のクソ汚い血を貰うことだったはずだ。俺たちは一回しか貰ってない。だから、必然的に一回でもらった血が多いってことになる。」

「その通りです、彼の血は鬼を作ります。私も彼から血を貰い、そして血鬼術を発現させました。...何年前に鬼に成ったのですか。」

「...うーん、かなり前だったかな...平安だったかも。まだ電気もそこまで普及してなかったころだし。」

「...随分前から鬼だったのですね。」

「随分と長生きなんだな。虚無僧、それにその短刀の回し方。余程その類の物を使い慣れているな。」

「あぁ、一回でもらった血もかなり多い。まだ把握しきってなかったのかもね。それに、虚無僧なのは元々だ、武僧になる予定の修行僧だったからね。」

「そうですか...」

 

俺は珠世様に採血の短刀を渡して錫杖で二回、床を叩いた。

 

「それじゃあ、俺たちは失礼するよ。結界も少しずつ解けていく。鬼舞辻のクソッたれはまだここにいると思うけど、あの短絡的なバカの事だ。気付かないだろうな。」

「なぜあいつが馬鹿だとわかる?」

「奴は今まで作った全ての鬼に『虚無僧の鬼を殺せ、逃れ者の鬼をすべて殺せ、鬼狩りも束で襲え』と言ってない時点で頭が足りてないだろ。それに俺たちがあいつの呪いを外した時も、元号どころか時代が何回か変わるほどの年月が経ってからほかの鬼も認知し始めたんだ。それまであいつが気づいていなかった証拠だろ。さすがに馬鹿が過ぎる。」

「...確かにな。無惨が頭良ければそもそも俺たちは全滅だった。それとこれ、もう一つの短刀だ。」

「そういうことだ、裏切り者の察知が早ければ、俺達や珠世さんも死んでいたわけだし。そもそも、鬼殺隊も壊滅していたかもな。ありがとな、貰っておくよ。」

「そんな未来は考えたくないものですね。」

「全くだよ。それじゃあ今度こそ失礼するよ。」

「短刀は茶々丸という猫が回収しに来る、二回手を叩けば来るはずだ。」

「了解だ。武運を祈る。」

「はい、そちらも。」

 

案外長話してしまった。かなり時間が経った。さて、宿に戻ろう。日を避けるために。そして、この短刀。次からは鬼を気絶させたのち、これを刺して珠世様の鬼血コレクションを増やすことに協力して、鬼用の薬の開発を手伝うことにする。右衛門も話を聞かないほど頭のないやつではないはずだから、忘れないはずだ。

(聞こえてるぞ、左衛門。)

(ごめんって。)

俺たちは歩く。鬼を滅するまで、自らを鍛え、そして歩く。それが鬼に成った罪を清算する方法なのだから。

(交代するぞ、左衛門。)

(わかったよ、右衛門。)

意識は左衛門から右衛門に戻る。

 

「この短刀を刺せばよいのだな、容易いことだ。」

 

右衛門は短刀を見て微笑む。協力者が増えたことが少しうれしいのか、鬼舞辻のクソッたれが倒せる準備がまた進んだのか、わからない。そんなことを考えながら俺たちは半月の下で歩き続ける。

 

 




少し強引になってしまいました。ちなみに無惨にカマかけたときの声は無惨にしか聞こえないくらいの小さな声です。
次は十二鬼月です。
珠世と愈史郎のキャラが掴めたかどうかが少し不安です。
ここまで読んでくれてありがとうございました!


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自己満足な鬼滅の刃の設定と、短編 鬼殺隊隊士編

唐突に思いついた隊士の設定と短編です。
相変わらず自己満足です。すみません。


甘露寺 侑真

 

見ての通り甘露寺蜜璃の弟。弟じゃなくてもいいけど、身内が鬼殺隊になれば鬼殺隊の一員になる理由もあるか、ってなった。ついでに鬼に身内は殺されていないが、友達が目の前で鬼に食べられている。隠として入隊しているが、そこいらの隊士よりも強い。呼吸も使える。でも姉を心配させたくないのと、当人曰く「前衛で戦うより、後方支援していた方が身に合っている。」とのこと。

 

性格

姉の蜜璃とは似ても似つかない性格。基本は落ち着いた性格で、少々ストイック。心を許せる相手だと、冗談飛ばしたり、いたずらしたり、感情を表に出したりと年相応人柄になる。隠として働いている際は柱は「〇柱様」と呼んでおり、同業者の人は「○○さん」になる。休暇が入った時全員に等しく「○○さん」もしくは「○○君」など、苗字か名前で呼ぶ、たまに敬称も付く。個人として、姉の蜜璃を呼ぶときは「蜜璃姉」。

 

経歴

友達の一人が目の前で鬼に食べられ、そのあと鬼殺隊の隊士に助けられる。その時、鱗滝左近次の名を知り、狭霧山まで走って行った。この時が13歳。一日走って、鱗滝左近次の居る狭霧山に着いた。そこで呼吸法を学び、鬼を狩る術、人と戦う術を学んだ。鱗滝左近次の山の修行と呼吸自体を覚える修行を1足らずで覚え、二か月間呼吸の練度を上げ、残りの八か月は鱗滝キッズ(錆兎、真菰など)との稽古。最終選別を終えた後、隠になることを決意し、隠として、本格的に訓練している傍ら、水の呼吸から派生した独自の型を編み出した。

この時、型の動きが微妙にあってないためかなり実戦的な動きに変わっている。もはや水の呼吸とは言えない動きになっているため、別の名前にされた。

隠として訓練している際に産屋敷、刀鍛冶の隠れ里、蝶屋敷そして、藤の花の家紋の屋敷の場所を知り、訓練の場で怪我の応急処置と裁縫を学び、刀鍛冶の里で鍛冶と絡繰り工作の基本を学んだ。教えた人全員から『筋が良い』と褒められるため応用も少し学んでいる。隠としての修行を半年で終えて、隠れ里に三か月滞在して、基本を学んだ。そのあとの残り一年と4か月は隠として活動しながら襲ってきた鬼を倒したりして、「戦える隠」として知られ、気づいたら恋柱/甘露寺蜜璃専属の隠として推薦されることとなった。

 

技能

裁縫、隊服の制作、及び修繕。

店の人の助っ人に駆り出される程度の料理の腕。

軽い機械工作、及び鍛冶の基本を刀鍛冶の里で学習、刀の手入れや修繕はできても、本格的な刀は打てない。工作などの知識は小鉄の父から学んだ。ちなみに設計図も書ける。

呼吸を使った戦闘技術。常中もできる。

怪我の応急処置は一般人レベルではできたものの、本格的な応急処置は隠になってから覚えた。

 

装備品

フード付きの隠の隊服(夜の任務で隠として知られるのは良しとしないため、後ろの『隠』の文字はわかりにくくなっている。)

日輪刀(短刀)

日輪刀の仕込み刃(アサシンブレードみたいなやつ)

口元を隠す布

狐のお面(鱗滝左近次に貰ったもの。持っているが、余り被らない。)

 

短編

 

 

布団から目を覚ます。いつもの朝だ。俺は身支度を済ませ、朝食を済ませてから、自作した隠の隊服を着ていつものように隠として仕事に行く。俺、甘露寺侑真は同僚から「そこいらの隊士よりも強いのになぜか隠として働いている男」として見られているが、これは姉の心配をかけたくないのと、俺の肌に合っているからだ。俺は元々、人の下で働くのが好きで手伝いなどもかなりやるからか、前で指揮するよりも誰かの下について行動するのが身に染みついている。それに、隠の方が死亡率が少なく、そして鬼の情報を効率よく集められる。何よりも仲間を助けることもできる。汚れ仕事もある程度受け持つがそんなことはさして気にしない。小刀を隊服の下に隠し俺は任務を確認する。今日はエロ眼鏡こと前田さんと一緒に隊服と着物の修繕、及び「余計な」手心をしないように監視、近辺の鬼の調査、そしてなぜかお館様から呼び出しだ。隠も人手が足りるから休暇はあるにせよ、鬼の調査を重点的に回されているのはおそらく俺が全集中、常中を使えていることだからだろう。

 

「はぁ...前田さんには困るなぁ。いつも趣味を挟もうするんだから。」

 

そう、僕の先輩、前田さんこと「前田まさお」は趣味全開の隠だ。特に恋柱様、そして俺の姉、甘露寺蜜璃の隊服を洋袴に、しかも丈を極端に短くしたと聞いたときは正直呆れ果てたし、軽蔑した。確かに服の面積を小さくして機動性を重視したという彼の言い分も間違ってはいないといえば間違ってない。彼女も初めてもらったものだからそういうものだと納得したことだろう。でも、やはり弟としてみると居たたまれない、というか少し辛い。「それ騙されてるよ蜜璃姉」と言いたかったが、文句を言わない辺りあまり気にしていないのだろう。無理に変えても本人が困るだけだし。それに多分蜜璃姉は俺気付いていないから、知らない隠に新しい隊服渡されたらそれはそれで困るだろう。

 

「っと、おはようございます、前田さん。今日はよろしくお願いします」

「来たね、甘露寺くん。相変わらず早いねー」

「まあ、早起きは三文の徳って言いますし、とりあえず仕事に取り掛かります。」

「了解。それじゃあ、これ頼むよ、昨日も大掛かりな鬼の討伐任務があったから負傷者と一緒に損傷した隊服が多くてね、君の手も借りたかったわけだよ。」

「そうですか。まあ、隠としての訓練である程度は身に付きましたが」

「その手際の良さをある程度っていうのか?」

「前田さんの指導のおかげですよ。」

「謙虚な後輩を持って嬉しいねぇ...」

 

隠としての訓練は場所の把握、簡単な隊服の修繕、そしてある程度の作法や鬼の手がかり、及び事後処理のいろはなどを身に着けるものである。ちなみに俺はその訓練をかなり短い時間で済ませ、他の隠たちからも「お前何でもできるな羨ましい...」と言われた。でも、最初っからできるわけじゃなくて飲み込みが早いって言われてるだけなんだけど、そこらへんはどうでもいいか。

隊服の修繕が終わった後は近辺の噂の確認だ。特に「最近、多数の村の住人が行方不明になっている」などの情報があればある程度特定できる。一週間のうちに10人、そして血縁上関係なかったり、一貫性がない場合はそこまで強くない鬼、行方不明者に何らかの関係性や共通性などがあればそれはおそらく上位の鬼とみている。少なくとも例外はあるようだが、拘ることができる鬼はある程度の強さを持って人間を「味わう」ことができる鬼だ。そして、近くで合流した頼れる先輩、後藤さんと合流した。彼も同じく情報集めの任務だそうだ。

 

「よう甘露寺弟。仕事には慣れているようだな」

「はい、先輩の教育のおかげです。特に後藤さんには頭が下がるばかりですよ」

「よせや、後輩を気にかけて育てるのが先輩の役目だろ?」

「...はい、ありがとうございます」

「それで、情報は集まったか?」

「聞いた話だと、この辺りで山の中とある屋敷から鼓を叩く音が聞こえて、中に迷い込んだ人たちが帰ってこなくなっているらしいです。」

「鼓の音が気になるが今まで何人犠牲になってきたかわかるか?」

「今日で7人目と言っていました。ほかの行方不明事件に比べて少ないですが、ここ最近「視線を感じる」、「異形の影が見える」、そして「『まれち』という呟きが聞こえる」とも言ってる人たちが次々と行方不明になっていることから、厳選している可能性が高いかもしれません。」

「その「まれち」は稀血というのをみて間違いないだろう...しかし誰を派遣する?稀血ばかりを狙うのならば何人か向かわせるか?一応小部隊を編成するよう御館様に掛け合うか」

「俺、今日なぜか呼び出し食らったんでついでにやります」

「俺だって定期連絡の義務がある。俺も付いていくよ。」

「毎度ながら頭が下がります。」

「だから気にすんなって。ほら、次の現場行くぞ」

「はい」

 

そこからは噂程度の話から、鬼がそこにいるという噂まで場所によってかなり違っていたが、少なくとも鬼が必ず出没する場所にいくつか目星は着いた。後はそれをお館様に報告するだけだ。

 

「ーーー...というわけですお館様。」

「ありがとうね、後藤くん、侑真。君たち隠の働きで最近、鬼狩りの効率がかなり上がっている。これからもその調子で頑張ってくれるとありがたいかな」

「勿体なきお言葉」

「さて後藤くん。下がっていいよ。そろそろ柱の定期報告が始まるからね。侑真はもう少し残ってくれるかな?」

「はい。ではお館様」

「はい。」

 

柱の定期報告が始まると聞くなり後藤さんはすぐ頭を下げそして礼儀正しく産屋敷から去っていった。俺は残れと言われたので少し不安が残るがここで処刑されることはないだろうから礼儀正しく待つ。

 

「さて侑真。なぜこうして残ってくれと頼んだか、わかるかな?」

「...いいえ、心当たりはございません。私は知らずのうちに隊律違反を犯したのですか?」

「そうではないよ、頼まれて欲しいことがあるんだ。引き受けてくれるかな?」

「内容によりますが、お館様の頼みならよっぽどの事でない限りは引き受けます。」

「ありがとう。その頼みっていうのは、柱の専属の隠、及び柱と隠の仲介係になってほしいんだ。」

「...別にかまいませんが、なぜそんなことを?」

「蜜璃に会う機会を設けようと思ってね」

「恋柱様に...ですか?なぜそんな?」

「姉に会いたくはないのかい?」

「...会いたくないといえば嘘になりますが。それでも解せない点がいくつか...」

「解せない点?まさか、自分にその役割は不相応とでも言うのかな?」

「...はい、他に隠として優れている人もいるのでその人たちがやるべきかと...」

「柱の名を聞いて怯えないのはごく少数。それも隠となるとかなり限られる。君はその怯えない一人だ。それでいて、隠としての技能もかなり優れていると聞く。そして何よりも君は全集中・常中も使えて鬼と渡り合える術を持っている。この君以上に適任は人はいないと思うんだ。」

「...わかりました。その役割、引き受けます。」

「良かった。といっても、柱との接触が頻繁になるだけで、隠としての仕事にさして変わりはないから安心して。」

「了解しました。」

 

そののち、柱の何人かに、専属の隠がつくことが決まった。俺もその一人で俺の担当は恋柱様。俺の姉だった。風柱様、霞柱様、岩柱様、水柱様、そして蛇柱様にも専属の隠がついたと聞いた。蟲柱様は蝶屋敷の中に何人かいるから、炎柱は煉獄家で弟が面倒を見ているから、そして音柱様は本人が即婚者であることから隠は着かなかったと見た。

余談だが「知らない隠よりも弟のほうが良いだろ」という理由で俺は恋柱様専属の隠として推薦されたらしい。なぜこうなった。

 

 

翌日、俺と他何人の隠が柱と一緒に産屋敷へ呼び出された。おそらく顔合わせだろう。全員名乗り上げて、今は俺の番だった。

 

「今日からあなたの専属の隠になる、甘露寺侑真です。何卒宜しくお願い致します。」

「へっ?!...うっ、うん!よろしくね!」

「えっと、どうかされましたか?」

「ううん、何でもないのよ...少し考え事があっただけ」

「そうですか...ともあれ、これからよろしくお願いします、恋柱様。」

 

一瞬驚いたような顔してそのあと平静を装うように振る舞っていた。弟が鬼殺隊の隠になっていたのがかなり驚きだったらしい。そのあとは、蜜璃姉もほかの隠と話していた。俺も暇だったので少し辺りを見回していると声を掛けられた。

 

「おい、貴様は甘露寺の弟なのか?」

「はい、そうですが...」

 

言い方からして悪意や敵意が入っているような...少し不安だがちゃんと応対しなければ。

 

「甘露寺の事について聞きたいんだが、彼女...は何をあげれば...喜ぶと思う?」

「えーっと...どういうことですか?贈り物なら...服の類でしょうか?あとは...自分の体質を受け入れてくれる人、ですかね?」

 

悪意じゃなかった、聞くのが恥ずかしくなってどんどん声が小さくなってた。この人か、最近気にかけてくれる『伊黒さん』って人は。

 

「体質?文通はしているがそんな話は書いていなかったぞ?」

「一緒に食事することがあればわかりますよ。それにあなたは、蛇柱の伊黒さん...ですか?」

「そうだが...なぜそれを?」

「姉の手紙で知ったんです。気にかけてくれる柱の先輩がいて、たくさんの事を教えてもらったって。でもまだ社交辞令なのか、それとも本心なのかがわからないとも言ってました。少なくとも一緒に出掛ける時があればある程度本心を打ち明けるのも一つだと思いますよ。」

「そうか、感謝する。それと、なぜ甘露寺に隠す?」

「少し驚かせようと思って。秘密にしてくださいね、驚いた顔が見たいので。良ければ遊びに来てください。」

「ふん、気が向いたら行ってやる。(甘露寺と比べると随分落ち着いた性格だな...)」

 

少し神経質な人だなというのが蛇柱、伊黒さんの第一印象だ。人に落ち度があればネチネチと責め立てる評判は小耳に挟んだことはあったが、人によってはそうでないらしい。少なくとも、俺もいつかネチネチと何か言われるけどそこは気にしないでおこう。一緒にいた蛇もなんだかいい感じの蛇だったし...なんとなく。そうこうしているうちに顔合わせの時間は終わり、蜜璃姉に声をかけられ、帰路についた。

 

「えーっと、あなたは何も思わないの?」

「何がですか?」

「この髪の毛の事とか...後女性が刀を握っている事とか...」

「別に何も思いませんよ。確かに奇抜な色だとは思いますが、それまでですよ。」

「えーっと、どういうこと?」

「髪の色は良い色だと思うし、刀を握っていることに関しては適材適所だからあまり気にすることではないと思って。女性の隠や隊士だっているわけですし。」

「そういってもらえると助かるわ!甘露寺くん!」

 

そんな雑談しているうちに恋柱邸、蜜璃姉の家に着いた。柱だけあってかなり大きい。俺たち隠は鬼殺隊の中でもかなり大事な役割を担っているが、個人個人の屋敷は用意されず、近くの藤の花の紋がいる屋敷に滞在、もしくはお館様と繋がりのある家に泊まらせてもらうことが普通である。場合によっては野宿もあり得るが、それをする勇気のある隠や隊士はいない...当然ながら。そして、苗字で呼ばれているあたり本気で気付いてないなと思った。まあ、隠の隊服につけた頭巾(現代でいうフード)と口を隠す布をしているから当然っちゃあ当然だね。声と名前だけだと自信ないし、何より蜜璃姉は鈍感だし。

 

「さて、ようこそ!ここが新しいお家よ!改めてよろしくね!甘露寺くん!」

「はい...今日からあなたの手となり、足となり、影となり、あなたを支援します。改めてよろしくお願いします、恋柱様。」

「...ねえ、私...君と名前が全く一緒の弟がいるの。声もそっくりなんだ。だから君と話していると、なんだか弟と話している感じがして...なんでだろうね?弟じゃないかもしれないのに、少し寂しくなっちゃうわね...ごめんなさいね、急にこんなこと言われても困っちゃうよね?」

「そうですか、すごい偶然ですね。声も名前も一緒なんて...すごい偶然ですね。蜜璃姉?」

「そう、その呼び方をしてたわ...ん?ちょっと待って?」

「はい、なんでしょうか?」

「今私の事なんて呼んだ?」

「...(やばい、耐えられない...おかしすぎる笑うな笑うな)」

「どうしたの甘露寺くん?」

「ごめんなさい、さすがにもう無理です...フフフ...」

「どうしたの甘露寺くん?」

「アハハハハハハ!蜜璃姉がめっちゃ気を使っている!あの快活で元気いっぱいの蜜璃姉が!アハハハハ!」

「えっ?えっ?どういうこと?私、馬鹿にされている?!」

「まだ気づかないの?俺だよ!侑真だよ!」

 

そういって、口の布と頭巾を外した。

 

「えっ...侑真くん...?なんで?へぇ?」

「アハハハハ!やばい!涙出た!ここまでずっと気付かなかったって...!蜜璃姉鈍感すぎw!アーハハハハハハハハハハ!」

「もう!そんなに面白い?!お姉さん怒るよ?!」

「ごめんごめんww...少しツボっちゃってw」

「もう!笑う子にはこうだ!」

「わぁ!」

 

姉に抱き着かれた。少し痛いけど、振りほどくほどではない。その後、啜り声が聞こえた。

 

「心配したんだよ...?うちからの手紙で『侑真が『俺、やりたいことがあるから』というなりどこかに行った』って呼んだ時どれだけ心配したか...鬼に食べられたと思ったこともあったし、それにあれ以降、手紙は来てもどこにいるとか、何をしているとか全く書かないんだもん。『元気にしています』以外何もなくて、私少し心配だったわ。」

「ごめん蜜璃姉。俺、ちょっと蜜璃姉を驚かしたくてさ、いつか隠として活躍していたら蜜璃姉に合えるかなって思って...それで、隠の仕事を頑張ったんだ。でも、俺は生きてるから許してくんね?」

「...お姉さんは、侑真くんが心配だよ...昔から自分の事を後回しにして...」

「ごめんって、ちゃんと自分のことも考えるから...」

「今日はこんなところで勘弁してあげるわっ!でも次はちゃんと報告を欠かさないこと!わかった?!」

「わかったよ、蜜璃姉。」

「後、恋柱様じゃなくていつも通り蜜璃姉って呼んで?」

「それとこれとは関係ないだろ?!公私しっかり分けさせてくれよ!」

「恋柱様呼びされるとお姉さんは寂しくなります!」

「隊士と隠の上下関係ははっきりしたほうが良いと思いまーす」

「じゃあ、柱として私の事は蜜璃姉と呼ぶことを義務付けするわ!」

「職権濫用反対でーす、隠として働いているときは柱として接しまーす。」

「...わかったわ!でも、こうしてここに帰った時はいつも通りでいいから」

「わかってるよ、さすがに家まで姉に対して他人行儀だと蜜璃姉涙目になりそうだし。」

「そんなことないわよ!」

「柱の権限使ってまで弟に隠として接されたくない時点で説得力ないよ?蜜璃姉」

「...」

 

久しぶりに遠慮のない会話ができて嬉しい。まあ蜜璃姉は不機嫌そうな顔で頬を膨らませているが。俺は手を洗い、ふとして蜜璃姉に聞く。

 

「蜜璃姉、ご飯作りたいけど料理用のものってどこにあるの?」

「えっ、侑真くんご飯作ってくれるの!?侑真のご飯食べるのは久しぶりねっ!」

「家出てから時間あるときは自炊は欠かさなくてね。たまに蜜璃姉が出てから色々やってたけど、何回か店に助っとを頼まれたことがあってさ、楽しみにして待ってろよ?」

「あれからもっと美味しくなったの?!すごく楽しみになったわ!」

「量はもちろん?」

「いっぱい!」

「任せて!腹いっぱい食べさせるよ!」

「やったぁ!」

 

この会話も久しぶりだ。蜜璃姉の屋敷だけあって、食べ物がたくさんある。作るものを決めてから、調理に取り掛かるとした。

料理しているときに蜜璃姉が話しかけてきた。

 

「それにしても、相変わらず手馴れてるね?」

「うん、店に呼び出される程だし、これくらいできないとね。」

「私も作るようになったんだけど、やっぱりこれほどズババババーッって感じには出来ないわねー」

「慣れればできるよ、蜜璃姉もなんだかんだ言って器用だし。」

「そうかなぁ...」

「そうだよ、そうでなきゃ蜜璃姉、あの刀使いこなせないもん」

「...見てたの?」

「結構前に修行しているところを見たけどすっごいかっこいいじゃん。あんな風に、ビュンッ、ギュワッって感じの技を出せるって」

「そうでしょそうでしょ?!あれ私の考えた型なんだけど!最初は苦労したんだよ?!縄や紐を使って試行錯誤して作ったんだから...私も聞いたよ?『戦う隠』として知られているんだって?!すごいじゃない!」

「お館様から聞いたの?」

「うん、聞いた話だと鬼の攻撃を小刀で受け流すと同時に頚を斬るって!侑真くんだってすごいじゃない!」

「水の呼吸を少し自分風に変えただけだよ。蜜璃姉みたいな『これが柱だ!』って感じじゃないしね」

「それでもだよ!隠って本来戦わないんだから、そういう意味では侑真くんってかなりすごい人材よ!それに常中まで習得しちゃってるし、自慢できないじゃない...」

「自慢して何するつもりなの?」

「少し姉の威厳を見せたかったり...ね」

「すごくぽわぽわした表情で桜餅食ってる姉に求める威厳って...」

「別にいいじゃない!」

「悪いとは言ってないよ?」

 

そんな雑談しているうちに料理が完成した。そのあとは食べながら会話は伊黒さんの話や故郷のみんなの話、そして同僚との付き合いなどの近況報告。鬼に食べられた親友、蓮治の話はしなかった。知られて欲しくないし。あれはある意味俺の戒めだ。あいつはこんなことを求めるようには思えないが、少なくとも、俺は蓮治の様な目に合うことは嫌だ。だから、俺は鬼殺隊の隠としてそれを未然に防ぐ。悲劇や過ちは繰り返してはいけないんだ。余談だが、蜜璃姉の食べっぷりはいつ見ても良いものだ。そして美味しそうに食べるところを見ると作った人としてはとても嬉しいし誇らしい。そして、伊黒さんには頑張ってもらわないと...姉の『添い遂げる人』の候補、同時に俺の義兄候補として。




隊士サイドの話です。今回は戦う隠の設定です。
矛盾がある可能性もありますが許してくださいお願いします。
ちなみに侑真は炭治郎と入れ違いです。彼が隠として修行している間に彼は狭霧山で二年間修行していました。その証拠に炭治郎は二年ですが、侑真は一年と8か月です。呑み込みが早いのでこれでいいでしょう。
自分で考えてなんだろうこのハイスペック。


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自己満足な読み切りの設定、とおはなし
自己満足なアサシンクリードと、短編


アサクリにはまっているので...ハイ...
ちなみに専門用語が出ます、そして後書きに意味載せます。
10/27/2020:一部修正。


新居 陽(あらい よう)

 

アサシン教団日本支部に属する訓練中の高校生。教団に心酔しているわけでもなく、ただ教団の理念を理解しており、腐敗を防ごうとする一般人寄りの思考を持つ高校生だね。アサシンなので殺しに抵抗はあまりない当たり、アサシンらしいといえばらしいんだけど。

 

アサシンの家に生まれ育ったからか、昔からアサシン教団の訓練場を自分ん家みたいに遊んでるからフリーラン技術はかなり高い。ホント羨ましいよ。そんな彼でもアサシンの極秘の文献を読んだりしたから、みんなヒヤヒヤしているんだけどね、殺さないのが唯一の温情だよ。やっぱりアサシンの家に生まれて割と家族が良い立場だからかな?そんなこともあってか歴史はかなり成績が良いけど最近「アサシン教団とテンプル騎士団の関係性を課題で書けない」とか言ってて悩んでいたな。まあそんなこと書かれたらアブスターゴの奴らが抹殺しに来るけどね。本当にヒヤヒヤするよ。

 

by ショーン・ヘイスティング

 

短編

 

ハァ...アメリカの教団の歴史とか見ていると少し残念な気がするよ。課題終わらせてヘリックスに煎りふけっているけど...うん、あれだ。ドロドロしてるな。コナー・ケンウェイ、又の名をラドンハゲードン、シェイ・パトリック・コーマックの物語なんか特に悲しいものだね。なんか、政治の汚さとか、信念の根本から否定とか、人の醜いところを見せつけられたよ。逆にアルタイル・イブン・ラ・アハドとか、エツィオ・アウディトーレ・ダ・フィレンツェみたいな「アサシンが正義!」みたいなのもあるけどあれは正直テンプル騎士団が悪いと思う。というか、コナー、エツィオ、アルノや後何人かはテンプル騎士に身内殺されたり、私刑執行されたりしてアサシンになったんだから、その時のテンプル騎士団は迂闊だったと思う。まあ、彼らもアサシン倒さなきゃ理念を達成できないし、急ぐのはわからんけど、悪者に仕立てて殺すとかどうなのよ。村焼いて母の死因を作るって、果てには身内全員死刑にしたり、目の前で殺すとかそりゃあ復讐に目覚めるわ。誰だって目の前で処刑されたり殺されたりしたら闇落ちするわな。

まあそんなこと言いながら今日も俺、新居 陽はアサシン教団とテンプル騎士団の文献を読み漁ってるわけだけど、このデズモンドって人すげぇな。バーで働いているところアブスターゴに拉致られた挙句、ヘリックスのプロトタイプであるアニムスの実験体にされるとか、人生波乱万丈すぎるだろ。しかも、アルタイルとエツィオ、それにコナーの祖先って、マジで主人公じゃん。でもそんな奴がなんでバーで働いてたんだろ...家出した後バイトしたのかな?まあ、パッと聞いてアサシン教団ってのもあまり良いイメージ湧かないし、家出するのもまあわからんでもない。やってることは結局大義のために人殺しているだけだし。ホント、自由による平和も統率による平和も間違っちゃあいないんだけど、どっちも過ぎると無秩序か圧政になるんだよな。そう考えるとイギリスのアサシンは本当に良いよな。ジェイコブとエヴィー・フライ。なんか活躍が王道って感じがするよ。まあジェイコブもエヴィーも色々ポカやらかしているけど最終的には上手く収まってるんだよなぁ、技量がすげぇよ。やってることはテロリストだけど。テロリストだけど!まあ、そんなことはほっておいて...課題も部活も終わったし、アブスターゴ社に見学しに行こうかな...なんか社会見学とかみんなそこ選んでるし、何より面白そうなものたくさんあるし。でも、絶対教団が止めに入るんだよなぁ...無難な奴にするか。

 

また僕は学校に行く。フリーランニングはあまりしないけど...あぁ、そういえば今日も陸上部に助っと誘われたんだった。面倒だなぁ...俺正直目立ちたくないんだけど。アブスターゴで働いている人の息子とかいるし。まあ同じクラスで仲はそこまで悪くはないんだけどね、テンプル騎士団の理念も理解できるし。あっ、こっち喋ってきた。

 

「なぁ、新居お前うちの会社に見学するのか?いろいろあるし楽しいぜ?」

「うーん...まだ考え中かな。少し絞るかな」

「そっか、まあ、決めたらうちの班来いよ、歓迎するぞ?」

「うん、その時はよろしく。」

「おう、待ってるぜ!またな!」

 

信じられるか?こいつ教団の敵なんだぜ?良いやつなんだよ全くよ。テンプル騎士団も一概に悪いとは言わないけどさ、なんかアサシン教団に努めてなきゃマジで心置きなく話せる気がするんだよな。バレたら絶対「そうか!死ね!」ってなって殺しにかかるし。何ならお世話になっている人たち全員殺されるし。穏便に行きたいんだよなぁ。それに今アブスターゴ社もなんか「先に来たもの」見たいななんかオーバーテクノロジーな奴らを研究しているっぽいし。あーあ、ショーンさんやレベッカさん大丈夫かなぁ...

授業終わって今僕は屋上にいる。バク転やらのパルクールの技術をするだけどの度胸を失わないためだ。一回あいつ(アブスターゴの子)に見られて「すげぇな、それどうやるんだ?」って聞かれたけど、めっちゃ焦った。まあそん時は普通に教えたけど。あいつも最近運動することにハマったらしい。まあ嬉しいけど複雑。

後は時間あれば体操部とかに助っとに顔出したり、コンビニ行ったりして英気を養っている。まあそんな日常かな。あぁ、テンプル騎士団に心酔している奴が学校襲ったり、アサシン絶対殺すテンプル騎士が学校襲ったりしたら嫌だなぁ...まあ、あいつもいるしそんなの絶対起きないけど。

そういいながら、昼飯の弁当を食っているといきなりサイレンが鳴った。何やら暴れる不審者がいて、生徒に怪我させたそうだ。アブスターゴの子は正義感強いから絶対に止めに行くだろうな。避難勧告出ていたけど気になったので逃げている生徒たちを通ると、人質を取ったやつがいた。ここにアサシンのガキがいるからすぐに出せ!と言っているらしいが、当然数人しかわからない。というか、俺と言っている本人とアブスターゴの子しか知らない。こいつがどうなってもいいのか!と言っているが、正直名乗り上げたくない。まあ、戦えるけど、逆上させたら人質の子に何が起こるかわかんない。あっ、あの子漏らした...床が濡れている...しかもめっちゃ涙目だ、罪悪感半端ない。一応止めようとはするか。

「「そんなことをしてもアサシンって奴(とやら)は来ないぞ(よ)!...えっ?」」

シンクロした。相手は「うるせぇ!上がいるってんだからいるんだよ!おめぇらか!」と叫んでいるけど、正直ダルい。平穏な時間を返して。そう聞き流していると。彼はいきなり人質を投げ捨てナイフを持って俺に襲い掛かってきた...ハァ?!

「うぉ危なっ!」

「あのガキは見たことある気がするがお前は見たことねぇ、お前アサシンだな!?」

 

何その超理論...

 

「アサシンって何?!俺殺し屋じゃないけど!」

 

そういいながら俺は迫るナイフを持った腕をつかみ腕の関節に圧力を付けることによってナイフを離すようにして、押した。そしてアブスターゴの子は流れるようにの足を思いっきりすくい上げ、転ばせる。そして警備員さんはチャンスだと思ったみたいで一気に押さえつけた。俺はナイフを軽くけり、不審者の手から遠ざける。ついでに人質の子は無事っぽい。友達に泣きついてた。にしても、なんで人質捨てたんだろ...そこまでしてアサシンを殺したかったのかな。ちなみにこの後、軽く褒められたが同時に咎められた、アブスターゴの子も一緒に咎められた。まあ、無謀なことしたし仕方ないよね。終わった俺たちは帰っていた。ついでに漏らした子からお礼言われた、なんか顔赤かったけどやっぱ恥ずかしさのぶり返しかな?触れないようにしとこ...かわいい子だったな...

 

帰路にて

「さっきのあれはやばかったな。まあ、鍛えたり護身術勉強したりしたからどうにかできたけど。というかお前すげぇな、さっきの人の足を思いっきりすくい上げて転ばせるって。」

「お前こそよくナイフに怖がらず冷静に受け流せたな。はっきり言ってうちのボディーガードにほしいくらいだぞ。というか聞かないのかよ?」

「何が?」

「お前の顔は見たけどって奴だよ。聞かれたら答えるぜ?」

「あまり触れられたくないんでしょ?別にいいけど。」

「いや、やっぱ話す、申し訳ないし...信じないかもしれないけどよ、俺、テンプル騎士団っていう秘密結社に所属してるんだよ。そんでアサシン教団を抑えて、統率するのが使命なんだが...今のを見てなんか違う気がしてさ。」

「なんだよ急に、秘密結社っておい、なんだよそれwまあお前がどこかの秘密結社で暗躍してようが俺はお前の友達だよ。お前は人質を取るようなやつじゃないし、人を殺すようなことはしねぇでしょ?ならいいでしょ。もし本当なら上まで言って、なんとかすればいいじゃん。」

「確かにな、まさか信じるとは思わなかったけど、お前本当に、一般人か?やけに慣れていたみたいだが。」

「少し勉強熱心なだけだよ。それに仮に俺がアサシンだったとしても何かするわけではないでしょ?」

「その時になってみないとわからないな、そればっかりは。とりあえずまた明日な」

 

少し気楽すぎな気もするけど、日本でまさかあんなタイプがいたとはね。びっくりだよ。何にせよアブスターゴの子はテンプル騎士だってことが確定したし、新しい情報源得てちょっと得したかな?まあ彼が俺がアサシンだとわかった前提で動くとするかな。まあ、なるようにはなるしいいでしょ。




アサシン教団:自由を重んじる組織、テンプル騎士団とは相容れない存在。理念は自由による平和の創造。曰く「真実はなく、すべては許される。」"there is no truth, everything is permitted"
テンプル騎士団:秩序を重んじる組織、アサシン教団とは相いれぬ存在。紀元前からアサシン教団と対立しているらしい。有名なアサシンの出来事は大抵腐敗したテンプル騎士の暴走によるもの。理念は統率による平和の創造。曰く「英知の父の導きがあらんことを」"may the father of understanding guide us"
アブスターゴ社:テンプル騎士団の連中が経営する大手エンターテインメント企業、ゲーム会社から電化製品まで取り扱っているらしい。色々黒いところもあるらしいが、社会に貢献しているし、優秀なインサイダーがいるのでそういうのは隠蔽されているらしい。
ヘリックス、アニムス:アブスターゴ社がとある超文明のもののありかを探し出すためのVRシミュレーション的ななにか。過去の人物の出来事が追体験できるらしいがそれをするにはその人物の遺伝子情報が必要。
先駆者たち:新井 陽が言っていた「先に来た者」。うろ覚えだったらしい。いうなれば神のような存在でオーバーテクノロジーを使う人たち。来る災害を回避したいらしいが実際のところわからないことの方が多い。


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自己満足なワールドトリガーの設定と、短編 近界帰還者

一般人ではなく、流行りの近界から帰ってきた日本人設定で行きます。
設定準拠するために、一人称はおぼつかない感じになります。三人称気味になります。あまり慣れていないので、不安です。


設定

3歳の頃、大規模侵攻で目の前の家族がトリオン兵に殺されかけ、自分は攫われそのまま奴隷兵士として訓練、後に実戦の最前線に送られ、『有用な駒』として生き残った兵士。唯一覚えている事は名前と、攫われた当時の年齢。自己紹介を自分することにより、自分が誰なのかを忘れないようにしていたが、公では奴隷兵士として付けられた番号を名乗る。言葉を習うこともろくになかったので、会話は終始片言、答えは肯定か否定しか出来ず、人殺しも兵士として当然の事であり、同時に彼自身の死も常に間近だったため、目も死んでいて光が一切ない。

セリフ

「何、したい...?命令、何?」

「...18947番、任務、遂行...」

「敵、助ける...なぜ?」

「はい...情報、多い...知る...ない...」

「トリガー...渡す...」

「....桾本剛...三歳...」

 

 

奴隷兵、番号、18947。何度も、戦い、した。人、沢山、死んだ。いい人も、わるい人も、死んだ。また、殺さなきゃ。任務は、殺すこと。ミデンの兵、出来るだけ殺すこと...任務...やる。

 

奴隷兵18947番は、生きる意志を失ったような目を門に向けながら、ゆっくり歩いた。地球の三門市、通称、玄界(ミデン)での任務はそこの兵士を出来るだけ削る事。もはや、人を殺したところで、何も感じなくなった。彼はもう既に3歳、訓練中に人を殺さざるを得ない状況に置かれた。いや、この場合は投げ込まれたという表現の方が適切だ。およそ、虐めの様な訓練。トリガーが解除されればすぐに死ぬ。そんな人を人とも思わないような訓練を彼は運よく生き残った。幼いが故の高い学習能力を持って彼は生き残った。訓練の担当に一太刀入れ、同じ訓練中の兵士とともに殺し合いをし、そして生き残った。それを10年以上繰り返し、信念も、矜持も、疑問もなく、ただ生き残るために最適化した殺すための動き。武器を奪い、体勢を崩し、喉を切る。隠れ、誘い、そして後頭部から剣を突き刺し、止めに刺したところを斜め下に斬り、確実に停止させる。逃がさないように、短刀を投げ、そして当てる。二回目の攻撃で首を撥ねる。それを人を殺すと思わず。作業と思う事。彼はそれを繰り返し、気づけば望まれた「残忍で従順な奴隷兵」になっていた。ひたすら命令を遂行し、無表情に敵を殺し、機械的に得た情報を吐く。上官からの評価は概ね「戦闘能力や従順さは一級品以上だが、言語能力が残念」と言ったところだ。だが、これは自然だ。何せ、彼はまともに教育を受けなかった。環境が否定を許さなかった。願望を許さなかった。従順さと実力のみを求められる環境で、彼は精神的な成長は出来るはずもなく、無表情で無気力な目を持った殺人兵器になってしまった。太陽の光が顔に当たる。聞こえるのは彼と同い年か、それ以上の年の人の声。が、彼が驚いたのはその言葉だ。3歳の頃、彼は日本語を聞いた。そして、今それを聞いた。近界(ネイバーフッド)の言葉ではない、日本語だ。だが、彼はそれを気にしてはいけない。疑問を持てば処分される。トリガーを持って彼は斬りかかった。武器を持った少年の頭を斬り、飛んでくる弾を避ける。それがしばらく続いた。そして槍を避ける。立方体を二つ持つ少年はなぜか笑みを浮かべてかかり、対する剣使いは憎悪を隠さない表情で斬りかかった。思考加速トリガーを用いて、弾は全て避ける。

 

『さっきから無表情だなこいつ...不気味だ...』

『なんであれ、近界民(ネイバー)は敵だ。殺す以外ありえない。鉛弾(レッドバレット)もすべて避ける。挟み撃ちで退路を防ぎながら狙撃で仕留める。』

 

脳内通信で彼らは算段を付けていたが、18947はその間も警戒していた。が、どうにも引っかかっていた。日本語は幻聴だったのだろうか?どれだけ振り払おうと、その疑問がずっと頭にこびりついた。が、彼は疑問を持たず、斬りかかった。戦っている間に槍使いが話を18947に振った。

 

「お前、さっきからなんも喋らないな。もうちょい笑うとかなんかしないわけ?」

「...わらう?なぜ?」

 

弾使いと剣使いの少年は少し動揺した。彼の喋り方があまりにもぎこちなかったからだ。「そもそも、そんな言葉が存在するのか?」と言外に聞かれた気がして、不快感を露わにした。

 

「答えろ近界民(ネイバー)...なぜ二年前の侵攻で姉さんが殺された...」

「...??」

 

18947はその問いに首を傾げた。まるで意味が分からないと言わんばかりに。当然だ。彼は二年前、別のところにいた。が、その時に動きが止まった瞬間、頭を打ちぬかれ、戦闘体が解除された。

 

「馬鹿め、戦闘中に会話とは不自然に思わなかったのか?」

「....」

「おい三輪、こいつ全然喋らないぞ。寧ろこいつ、なんか、虚ろすぎねぇか?」

「...なんとか言ったらどうだ、近界民(ネイバー)!」

「...命令、何?」

「...は?」

「...は?」

 

二人は、呆気にとられた反応をした。それもそうだ。虚ろな少年18947は命令を聞いてきたから。が、その隙に彼は生身で斬りかかった。

 

「!やべっ」

 

シールドを起動して、何とか防ぐ。そして18947は刀の柄で殴られ、気絶した。

 

 

 

目が覚めたら、そこは尋問室のような場所だった。見たところ捕虜になっていた。そして、彼は見捨てられたことに気付いた。大柄な青年が彼に質問をした。

 

「ここはボーダーの本部だ。私の名は忍田真史。君にはいくつかの質問を受けてもらう。」

「...はい」

「なぜここを攻めてきた?」

「にんむ...へいし、ころす。」

「誰からだ?」

「じょうかん...えらい、ひと。ころせ、いった。」

 

尋問が続くにつれ、どんどん忍田の顔が険しくなった。喋り方が余りにもぎこちかったからだ。忍田は18947の経歴を本人から聞き、そうならざるを得なかったと理解してしまったからだ。そして忍田は最後の質問を聞いた。

 

「...君はいつからあちらに居た?」

「......桾本、剛....三、歳....」

「!!...わかった...情報と協力を感謝する。」

「...?...はい」

 

そういい、忍田真史は部屋から出た。そして一人残された18947は呟いた。

 

「...?...かん、しゃ?」

 

 

ボーダー、会議室にて件の近界民、18947の事について話していた。

「尋問の結果はどうだ?忍田本部長?」

「彼の所属していた星、与えられたトリガー、彼自身の経歴、そして彼の戸籍も見つけた。」

「名前は番号ではなかったのですか?」

「この戸籍だ。桾本剛。この情報によると11年前にトリオン兵に攫われている。まさか、奴隷兵として生きていたとは驚いたが。経歴に関してはあまり広げないほうが良い。はっきり言って今の彼は廃人の一歩手前だ。まるで、虐待をずっとされた子供を相手している気分だった。」

「あの小僧が嘘をついている可能性はあるのかの?それを名乗っているだけかもしれん。」

「鬼怒田技術長、そう思うのも無理はないが、彼の目と喋りのぎこちなさを聞けば、むしろ、それを言えるのが不自然とも考えられる。今でも言えるのはおそらく。」

「自我の維持だね」

「むしろ驚いたのはあいつのトリガーじゃ。思考速度を加速させるトリガー、マチェットの様な形の近接用トリガー、そして、自分に負荷をかけて無理矢理トリガーの出力を上げる補助トリガー。はっきり言って異常だ。それを常に使っていたあいつも、それを渡した国もな。」

 

その言葉で、会議室の雰囲気が一気に重くなった。

 

その後、会議は続き、結果ボーダーに置くことになった。彼自身の為にも、彼はしばらく戦場に居てはいけない。もう、心は限界のはずだ。

 

 

肝心の18947は虚ろな目で遠くを見つめていた。そして、薄ら笑いを浮かべていた。一人でいる方が、暴力も理不尽な物もない。

それを尋問室を外側から見ていた職員は彼を不気味だと感じたと同時に、同情の念も抱いていた。何せ、最初は番号を名乗ったが最後の質問で自己紹介をしたからだ。

どんな劣悪で歪んだ環境に身を置けばあんな虚ろな目が出来るのだろうか?ボーダーにも大人しい子は何人かいるが、虚ろな子はいない。しかも、彼は見た目的には中学生だ。そんな子供が虚ろな目で遠くを見つめているだけで、それは異常だ。しかもずっと、薄い笑みを浮かべているのが不気味だ。まるで軽く安心しているように。

また、誰かが入ってきた。茶髪で特徴的な色眼鏡を付けた青年だ。

 

「初めましてだね、桾本君。俺は実力派エリートの迅悠一。ぼんち揚げ食う?」

「ぼんち、あげ?」

「食いたいの?良い目の付け所だね。」

「...くえば、いいの?」

「...そうしたいのならばね」

「??」

 

桾本剛は首を傾げた。自分のしたいことを考えたことがないからだ。三歳から喜ぶことも、悲しむことも、泣くことも、人が当たり前に出来ることを出来なかった。いや、出来なくなっていったの方が正しいだろう。何せ、使い捨ての駒として戦地に送っていたら、彼は任務を達成し、帰ったのだから。それで、優秀な捨て駒として主に認知され、実験用のトリオン出力強化用のトリガーを付け、そして戦地に赴かせたのだから。そして、人殺しに慣れてしまった彼は、何がしたいか、これからどう動きたいかではなく、何をするべきかしか出来なくなった。自分が動いたら失敗する。泣いたら、笑ったら、怒ったら、決めたら処分される。自分は敵を殺すための駒。人以下の存在。自分の事をそう思うしかできなかった。

 

「...その様子だと何も食べてないんでしょ?食べなよ」

「....了解した」

 

迅から伸ばされたぼんち揚げの袋に手を伸ばし、彼の見様見真似で袋を破って開け、そして口の中に入れた。噛んで、そして飲み込んだ。舌にぼんち揚げを乗せると、塩気と微かな香ばしさを感じた。今まで味のない栄養食しか口に入れなかった彼にとって、味のあるものは久しぶりだった。だが、十年もそれが続いた彼にとって、それはもはや、初めての物と大差なかった。

 

「...おい、しい...おい、しい?...これ、なに?」

「それは良かった。...それを食って、もっと食いたいって思ったか?」

「...も、っと?....おもう、わかる、ない...めいれい、たくさん、ほしい...」

「それが美味しいって奴だ。」

「たべる、めいれい、もっと...おい、しい?」

「そうだ、その命令が欲しいって思うことは、もっと食べたいって思うことだ。それだけじゃない、その命令が欲しいって事は、それがしたいって事でもあるんだ。」

「...わか、った...」

 

 

玉狛支部に戻った迅はそこの支部長、林藤匠と話していた。

 

「迅、どうだった?」

支部長(ボス)...ありゃ少し、キツいかも知れない。少し話した後、未来がようやく変わったって感じだ。あれまであいつしばらく目が死んでいたままだったよ。」

「忍田本部長に聞いたよ、ずっと目が死んでいたんだって?」

「そうだね。それに、彼は命令に縛られている感じだった。三歳から、今までずっと戦場にいたんだろう。しかもあの様子だと、まともに人間扱いされていない感じだった。ぼんち揚げを食べたときだけ少し喜んでいたけど、それでもまだ目は虚ろだったよ。...それに、最初の方はどぎつい未来だったよ。」

「どんなだった?」

「みんなの死体が積み重なっていたよ。...恐らくだけど、彼は何も知らないんだ。」

「なら、こっちに置こう。彼は近界から帰ってきたんだ。それなら、こっちにいた方が安全だし、それに置くなら平和なところの方が良い。」

 

玉狛支部で、今回の件の方針が固まった。本部にとっては、桾本の存在はあまり喜ばしい事ではない。何せ、彼は近界から帰ってきたのだから。帰ってきた事実は吉報だ。だが、ネイバーに居た結果があれだと知られることは不味い。だから、出来るだけ秘密にしたいのだが、事はそうも進まなかった。

 

 

尋問室には、定期的に人が来る。質問する側と、聞く質問を促す側だ。そして、世間話をする人だ。桾本は技術者である、寺島雷蔵と話していた。

「...かん、しゃ...なに?...敵、なぜ、殺す、しない?」

「感謝は、してくれて嬉しいことや、助かった時に言うことだよ。」

「...」

「それに、敵だからって殺すのは少し短慮だよ。特に君は敵の国からのトリガーを持っていた上に、その国の情報まで持っていた。それに、君は元々ここの人だからね。殺すわけにはいかないんだよ。」

「...ひと、ちがう。捨て駒。」

「...ここでは人だよ。」

 

寺島は桾本の闇の深さに寒気を感じたと同時に、彼の今までの扱いを察し、かなり怒っていた。虚ろな目で、自分は人ではなく、捨て駒と断じさせた敵国の環境、そして今まで感謝ということを知らなかった事も、三門市では当たり前のことを彼は知らなかった。彼の今までいた環境が嫌でも分かった。寺島は「今日の仕事が終わったら木崎、風間、諏訪と飲もう」と心に決めた。

 




ちゃんと書けているかなとビクビクしています。


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自己満足なワールドトリガーの設定と、短編

モンストコラボで知って、見て、ハマりました。


名前:森塚 桐夜

年:15

トリオン量:13

攻撃:10

防御:6

機動:8

技術:9

射程:4(スナイパー時:8)

指揮:4

サイドエフェクト:トリオン感知

ポジション:攻撃手、狙撃手

職業:ボーダー隊員兼中学生

好きなもの:読書、有意義な戦い、友達、美味しい物

 

 

万能手(バランス型)

メイントリガー:弧月   旋風   シールド    グラスホッパー

 サブトリガー:シールド バイパー グラスホッパー バッグワーム

 

狙撃手

メイントリガー:イーグレット  アイビス シールド    グラスホッパー

 サブトリガー:弧月(小刀型) シールド グラスホッパー バッグワーム

 

設定

生まれつきトリオン量が平均よりも多い。幼少期に生駒達人と同じ道場に通っており、そこで居合、剣術を修めているが、生駒旋空をはじめとするキレのある斬撃を主に使う生駒達人とは対照的に剣舞の様な流れを重視する動きを使う。ちなみに剣舞は生駒道場の師範が踊っていたのを偶々見かけ、それを見様見真似でやろうとし、高校生になるまで欠かさずやっていた内に身についた。ボーダー内では部隊に入っておらず、個人ランク戦と、防衛任務だけをやる。純粋な剣術勝負だと椚矢研に分があり、ボーダーでの戦闘だと生駒達人の方が勝率が高い。主な理由としてはトリガーを用いた戦闘に不慣れである事と、京都から引っ越した後はずっと一人で修練を重ねていたが、定期的に道場に戻って稽古をしているため、ボーダーでA級レベルの実戦技術はないが、対人戦闘技術はそれなりに高い。

 

 

サイドエフェクト:トリオン感知

サイドエフェクトのトリオン感知は、トリオンそのものを感知する。人の内蔵トリオンが多いほど密度も濃くなる。質も感知できるため、知り合いを感知することも出来る。トリオン兵器にも引っかかるため、レーダーにもなれる。しかし、逆にトリオンの少ない人はそれを搔い潜れるため、無敵というわけではない。例として、雨取千佳の近くに三雲修がいても、トリオンが圧倒的に多い雨取千佳に釣られ、三雲修は全く感知に引っかからない。

 

 

 

僕はボーダーの個人ランク戦広場でくつろいでいた。10日前にボーダーに入隊して3日前にB級に昇格した後、部隊に入ってないし、暇なのでとりあえずボーっとしていたら昔から知っている人に話しかけられた。

 

「キリ、今からランク戦やらん?」

「良いけど回数は?」

「20回でええやろ。ほな、1074ブースで待っとるわ。」

「はーい」

 

ボーダー内でも、人生でも、武でも、僕の先輩の生駒達人、達兄にランク戦を申し込まれた。ほかにやる事もなかったし、承諾し、ブースに入った。パネルを操作し、達兄を選択。転送されたのは屋根の上で、住宅街の様なマップ。納刀したまま、姿勢はいつでも抜刀できるように構え、お互い驚くほど静かになる。

「旋空弧月」

「旋空弧月」

同時に旋空弧月を発動し、お互いの弧月の刃が壊れる。居合の勢いを殺さないように体の軸を回しながら弧月を修復、そして達兄に接近して、連撃を叩きこむが当然のようにすべて防がれる。これ以上無理に攻めたら逆に決められるので鍔迫り合いに持ち込み、強く押して仕切り直しと思ったが、無理矢理仕切り直したのが仇になった。構え直すと既に彼の剣は鞘に納められており、居合の構えが完成していた。

「もろたで。旋空弧月」

咄嗟に防ごうと思いシールドを展開したうえで弧月を横に構えても「関係ない」と言わんばかりに両方を両断。無機質な機械音声が頭の中に響く。

「戦闘体活動限界。ベイルアウト」

「はぁ、防ごうとしたのがダメだったな...次だ。」

待機室に戻り、何気なくつぶやいた後、転送される。

「欲張り過ぎたなぁ、キリ。」

「知ってる。あと19回あるんだから、挽回は利くよ。」

「後19回斬るったるわ。」

「言ってろ。」

 

二回目の戦いは真っ向な剣術勝負。僕は達兄に『生駒旋空』を打たせないように納刀の隙を与えないように立ち回っていた。一定の距離を保ちながら弧月をぶつけ合う。自分の中の波を絶やさず、無理に一撃を打ち込まず、一撃から二撃、三撃目とどんどん繋げていく。が、相手は僕の兄弟子にして、ボーダー随一の弧月使い。斬撃を打ち込んで勝てるほど単純な相手ではない。当然、相手からも反撃が来る。そして、何よりも粘る。道場に入って、引っ越した後も時々会って試合をしているため、お互いの戦い方を知り尽くしている。

ならば、それ以外の方法を使えば良い。僕は剣を振ると同時に後ろに小さいトリオンキューブを展開、4つに分割し、達兄をのけ反らせて、自分に当たらないように軌道を描き、戦闘体にいくつか穴を空ける。これで、意表を突かれたのでもうしばらくは時間が出来る。

「旋空弧月」

ダメ押しに弧月を横に薙いで僕の勝ち。達兄は真っ二つに斬られ、無機質な機械音声とともに転送された。

「戦闘体活動限界。ベイルアウト」

「まずは一本。」

 

そこからは勝率は五分でバイパーによる置き弾奇襲にも対応し始めたり、距離を取って生駒旋空を発動させて勝負を優位に進ませた。僕も生駒旋空に慣れ始めて、軌道をずらしてかすらせることが辛うじてできるものの、避けるかそもそもさせないようにする方が早い。

「やっぱキリ太刀筋が綺麗やな、剣舞を応用した剣術はやっぱやりにくいわ。」

「達兄も居合術が綺麗でしょ。実際、生駒旋空を使われたら受け流すか避けるかしかないし。」

「それを実際出来る人がいないんや。でも、ええ練習になったわ。お互い予定空いたらなんか奢ったるで。」

「こっちこそありがとうね、新しいことも試せたし。」

「おぉ、最後に見せたグラスホッパー斬りか。あれもやばかったな。」

「実戦レベルまではまだ粗があるけどね。んじゃまた。」

「おん、またな。」

世間話が済んだ後俺はボーダー本部内をぶらつくことにした。なんとなくボーダーの通路を通りながら新しい戦い方を考える。達兄が言っていたグラスホッパー斬りは言うなれば燕返しの再現だ。一応素でもできないことはないがそれをグラスホッパーで切り返しを早くしたものだ。これ以外にも試したいことがいくつかある。例えば、戦っている間にバイパーの展開、一種の防衛機能の様に自分の周りを旋回させたりと、今はこんなところだ。

思案に浸っていながら歩いていたら、後ろから声をかけられた。

「おっ、居た居た。生駒と互角の勝負をしていたやつっておまえだな?」

「はい、そうですけど。」

凄く強そうなひとに声をかけられた。絶対年上だろう。なんか頭良さそうな顎髭を生やした青年がニヤニヤしていた。

「俺もあの勝負を見て気分が戦い見たくなったから。いいか?50回」

「.....まあ、大丈夫です」

また個人ランク戦を申し込まれた。戦うことは嫌いじゃないし、どうせならと思い承諾したが、軽い気持ちで承諾して後悔した。ブースに入り、タッチパネルを操作し、転送された瞬間斬られかけた。

速いとかそんな次元じゃなかった。考える時間も与えられず、ただ反射神経だけで防がなければいけないほどに、早かった。一戦目は10秒保って、両肩を切られた。

「戦闘体活動限界、ベイルアウト。」

またタッチパネルを操作する。気を取り直して二戦目。転送される前に居合の構えを取る。そして転送された。

「旋空弧月」

「おっと、危ない危ない。そういえばおまえもそれ出来るんだったな」

構える隙を与えずに達兄仕様の旋空弧月を放つが、グラスホッパーで避けられる。おそらく、加速して攻めるのだろう。波を自分の中ですぐにイメージし、弧月を構える。しかし以前、彼は不敵な笑みを受けべている。彼は急接近して、二振りの弧月を用いた連撃を仕掛けた。ここからはほぼ我慢比べ。こちらが追い付かず斬られるか、あっちの勢いが減って隙をさらすかの我慢比べ。斬りあって5秒経過、勢いが増す。10秒経過、こちらの波も速く鋭くなり、調子が上がる。15秒経過、腕が斬られかけるも、一瞬シールド展開しで速度を遅らせてから受け斬り、もう片方はグラスホッパーで軽く反発させ、時間を稼ぐ。そして、その瞬間を無駄にせず、受け斬った弧月を受け流し、すかさず反対方向に斬り帰すが、同時に僕の体も両断される。

「戦闘体活動限界、ベイルアウト。」

無機質な機械音声とともに、お互い待機室に飛ばされる。

二戦目の経過時間を見ると19秒だった。あんな長い19秒は中々ないだろうと思いながら、気を引き締め、三戦目。転送されている間に構える。そしてまた、斬り合い。バイパーに対応され、二刀両断。4戦目から対応できるようになってもあちらも調子が温まっていく。普通に斬られた。

一気に飛ばして49戦目。疲れた。あっちはまだまだ余裕の表情。むしろ純粋な笑みになっている。

「ラスト、お願いします。」

「あぁ、楽しませてくれよ。」

「頑張りますよっと。」

グラスホッパーで一気に距離を詰め剣術勝負を仕掛ける。流れを絶やさずにバイパーを展開、8つ自分の周りに旋回させる。イメージとしては自分を陽子、バイパーはそれの周りを走る電子の構図を思い浮かべ、軌道を描く。それを見て、彼は足を狙おうとするも、それは既に織り込み済み。防ぎ、距離を詰め続け、そしてバイパーを当てる。柄にグラスホッパーを展開し、柄打で吹っ飛ばし、そして居合の姿勢に入る。

「旋空弧月」

彼の胴体は二つに分かれ、そしていつもの音声が流れる。

「戦闘体活動限界、ベイルアウト」

「50戦中、40敗、3勝、7引き分け...」

肩で息しながら、戦績を言い、待機室に戻された。

待機室から出たら、彼がいた。

「おまえ強いな!名前はなんて言うんだ?!」

先ほどとは打って変わって、ワクワクした様な声音で話しかけられた。

「森塚桐夜です...僕も、名前聞いてもよろしいですか?」

「俺の名は太刀川慶だ。にしても、おまえの二回目と最後のあれはビビった。まさか、グラスホッパーをシールド代わりにするとはな。しかも最後の生駒旋空も凄かったな。いや、お前の場合は森塚旋空か...」

「と言っても、おそらく達兄のが速いです。彼はそれを磨き続けたので...というか達兄のなんですから、生駒旋空でいいじゃないですか」

「そうだな。良ければまた勝負したい。またなやろうぜ、森塚」

「はい、ありがとうございました。太刀川さん...」

彼はそう言って、次の獲物を探すかのようにラウンジから出た。僕は、トリオン体での戦闘に慣れていないのと、飛び切り強い人と戦ったこともあってか、疲労困憊だ。広場にある椅子に座り、一息つく。

「あ゛ーーー、太刀川さん強すぎ...」

「おぉキリ、オマエ太刀川さんと戦ったん?」

「ん?うん、めちゃくちゃ強かった。やばかった」

「せやな、なんせ太刀川さんは攻撃手個人ランクポイントで一位やしな。」

「あー、道理であの強さか、さすが一位...よく二本くらい取れたなぁ...」

「マジ?!うっそ!何戦したん?」

「50戦、3勝、40敗、7引き分け」

「マジか。さすがキリやな。初めて戦ってそれって、実力A級くらいとちゃう?同門として誇らしいわ。」

「さあ...自分のランクあまり興味なかったし、多分B級止まりじゃない?俺も達兄がそんなに有名なんて知らなかったからそれこそ誇らしいよ。」

当然のように話しかけらたが、今はそれに突っ込めるほどの気力がなかった。

「おぉ...マジで疲れとるな。これからどうするんや?」

「あぁ...うちに帰る。疲れた。」

「おー、お疲れー。」

 

僕は疲れたような足取りで、家に向かう。家に着いたら、いつものように剣舞を舞い、ご飯を食べ、シャワーに入って寝た。

「はぁ...どう勝てばいいのやら太刀川さん。とりあえずログを見たりするか。」

この時、僕は太刀川さんの影響力と、他の隊員の熱意を知らなかった。人の噂は広がるのがすごく早い事も、僕は知らなかった。

 

翌日、学校が終わり、ボーダーに着き、ラウンジに向かっていると達兄に話しかけられた。

「おっ、キリ来たな。話したいことがあるからうちの隊室まで来てくれん?」

「良いけど、機密?」

「まあ、そんなところや。誰にも見つからんようにな。出来るやろ?」

「あー...まあ出来るけど。なんで?」

「着いてから話す。ほな後でな。」

 

トリオン反応が多いところを避けながら通路を歩いていると太刀川さんとばったり会った。昨日と違い、一人じゃないようだ。嵐山さんと上方の似た人と一緒にぼんち揚げを食ってた。二人ともトリオンがかなり高い。

 

「森塚、昨日ぶりだな。」

「こんにちわ、太刀川さん。」

「太刀川さん、この子が?」

「あぁ、昨日話していた弧月使いだ。」

「どうも...?」

「あぁ、そんな警戒しなくていいよ。俺は実力派エリート、迅悠一だ。よろしくね、森塚君?」

「あぁよろしくお願いします。もう知っているかもですが、森塚桐夜です。よろしくお願いします。」

「あーそうだ。生駒隊の隊室ならすぐそこだから。速く行ってきなよ。」

「??...ありがとうございます。」

「おう、またな」

「生駒との話が終わったらランク戦やろうぜ!」

「そん時に考えまーす!」

 

意外とすぐ近くにあったようで、生駒隊の看板を確認した後、2回ノックをし返事を待つ。

「開いてるでー」

『ガチャ』とドアが開く。

「お邪魔します、達兄いますか?」

「おーキリ、いるでー」

「イコさん、この子が前言ったキリくん?」

「おん、俺の弟弟子や。」

中に入ると如何にも爽やかそうなイケメンが僕の名前を出していた。仲がいいならたまに話に出てくるのかもしれない。

「あの太刀川さんに一太刀食らわせた奴っすね!俺南沢海!ここの攻撃手!よろしくなキリさん!」

「うん、初めまして、南沢君、キリでいいよ。」

「じゃあ、俺もカイでいいよ。キリ」

「おん、それじゃ、あそこにいるモテそうな爽やかイケメンが隠岐孝二。ウチの狙撃手や。」

「いやいや、モテませんて。オキでええよ。よろしゅうな、キリくん。」

「んで、あっちのインテリオレンジが水上敏志、めちゃ頭のええ射手で、嘘つくのが上手な奴や。」

「なんやインテリオレンジって。つか他に言い方あったやろ。」

「じゃあ、ずる賢いブロッコリーや」

「そっちやない。」

「達兄すぐボケるからなぁw」

「わかってくれるかキリ。」

「すまんなぁ。そんであっちの可愛いのがうちのオペレーター、マリオちゃんや。」

「ハァ?!」

「確かにかわいいっすね」

「えぇっ?!ちょっ!」

「な?かわええやろ!」

「ホンマかわええなマリオちゃん。」

「かわいいっすね。」

「マリオ先輩可愛いっす!」

と全員でかわいいかわいい言っていたら顔赤らめながら震えていた。マジでかわいい人だな。

「...さて、本題に入ろか。キリ、カイに孤月を教えてやってくれへん?」

「教える?ランキングを『バーッ』って見たけど結構高い順位だから教えること少なそうだよ?」

「せや、見つからないようにここに来い言うたのもそれが理由や。」

「確か迅さんもなんかそんなこと言ってたな。」

「迅にもあったんや...で、なんでンなこと言われたかわかっとる?」

「...なんで?」

「...キリくんマジで言ってる?」

「あー、キリはこういうところあるからなぁ...」

「意外と天然なんやね。」

天然とは心外だ。周りを見ると全員呆れたような表情を浮かべていた。「こいつわかってないだろ...」と言わんばかりの表情だ。

「今、ボーダー隊員、全員キリを探しとるんや。A級一位の太刀川さんから勝ちをもぎ取った期待の新人と噂されてんで。」

「あぁ、そういえば昨日達兄ンなこと言ってたね。」

「せや、キリ...あの太刀川さんにある程度に立ち回れる。その上、50戦中、相打ち込みとはいえ10回も斬ることが出来て、生駒さんの生駒旋空が使える。そんな実力者がフリーでぶらついてみ?絶対狙われるで。というか今いるボーダー隊員、全員もれなくキリを探しとるよ?」

「えぇ...防御に徹していれば何分かは稼げると思うけど...」

「それが出来たら苦労しないで、キリ。ちなみに俺は調子が上がった太刀川さんなら割と保つがそれでもキリほど持たんわ。49戦目なんか結構長いで。50戦目に至っては柄打ちからの旋空孤月居合。しかもグラスホッパーを展開してすぐひっこめるとか初心者技じゃないで?」

「...後でログ見るわ」

やっと自分の異常さに気付けた。よくよく考えてみたらA級一位と良い勝負をするということは相応の実力があるということ。それもまぐれで長持ちしているのではなく、純粋な勝負でだ。

「教えるって感じだったら何回かカイくんと戦わなきゃスタイルとかその辺諸々わからないとだけど。と言っても、どうせ達兄も参加するんでしょ?」

「せやな、俺的にもカイも強くなるうえに、俺らの稽古もできるし、良い条件だと思うんよ。そういやキリは何時隊に入るん?」

「まだ全然考えてない。とりあえず色んな隊を見るのが先かな...」

正直まだほかの部隊を知らない。それに、まだボーダーでのトリガーを用いた戦闘には慣れてないので、それに慣れてから部隊に入りたいと思った。と軽く考えていたら達兄が一気に話を変えた。

「せやな、...そういやサイドエフェクトもっておったな。トリオン感知。」

「トリオンだけを感知するって事か?」

「せや、でもあくまでトリオンだけ言うてたな。」

「うん、トリオンだけ。誰かもわからないけど、人のトリオンの残りと場所がわかる。でも残り少ないとわかりにくくなる。」

「万能ってわけじゃないんだな。そのサイドエフェクト...あれ、トリオンがわかるんだよね?」

「うん。」

「なら、展開している武器もわかるって事やな。他になんかある?」

「一応頑張れば、トリオンの質とかもわかると思う...」

「質?どういうことや?」

「なんというか、太刀川さんのトリオンの感じと、達兄のトリオンの感じ...そして、ここにいる全員のトリオンの感じが違うんだ。なんとなくだけど。」

「キリ...俺のトリオンってどんな感じなんや?」

「言うと思った...まあ、なんというか。見知った感じかな。でもなんとなく鋭い。」

「じゃあ、太刀川さんはどんな感じのトリオン?」

「なんというか、ふわふわしているのに一か所だけすごく尖っている...?って一人でっかいのが動いてるね。」

「あぁ、多分それ、二宮匡貴って言うめちゃくちゃ強い射手や。そいつどんなかんじなん?」

「ウニ...栗...?外はがっちりしているのに底がなんか...角がない...?」

「意外と侮れんなその感知能力。」

そう、一応トリオンの質まで感知できるが、よっぽど近くならない限りは分からない。後試したことないからわからないが、バッグワームも一応トリオン兵器であるため、おそらく感知に引っかかる。

「まあ、キリ君の件は保留って事でええか?」

「あぁ、オーケーだよ。一応演舞みたいな堅苦しい奴とまではいかないけど相性が良さそうなものは教えてみるよ」

「「マジ?」」

「マジ」

「今から呼び方変えた方が良い?」

「全然、そのままでいいよ。日程どうする?」

「じゃあ、携帯で伝えるわ、ほなな。」

「うん、またねー。」

「おう、またなキリ。」

「じゃーなー。」

生駒隊の隊室から出た僕は、いつもの癖でラウンジに向かっていた。たくさんのトリオンを感じるこのラウンジ。どんな人と戦えて、どんな戦法が見れるのか。少し楽しみになってきた。

 

 

この後めちゃくちゃ個人ランク戦やったり、隊に誘われたり孤月を教えてほしいと頼まれた。皆には確立した戦い方があるから、それを崩さずにならと言ってくれたらそれでもいいって言われた。

 




関西弁にはあまり自信ありません。


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自己満足なありふれたの設定と短編

ありふれが面白かったんでプロローグと導入だけです。
いつも通り設定は使って大丈夫です。




辻宮 綾斗

 

性別:男

 

トータス前 

能力値   参考

筋力:10  懸垂を10回3セットできるくらいの筋力。(滑り止め手袋あり)

体力:11  シャトルランは100回-120回は出来る程度の体力

精神力:14 基本動じない、流石に予想外の事になると、止まる

敏腕性:13 早いけど、運動神経は八重樫や天之河に一歩譲る

外見:12  「考えてみれば顔立ち良いね」くらい

体格:11  平均的

知性:16  理解力が高く、コツをすぐ掴める。

教養:11  成績は中の上

 

八重樫道場に通いながら、一人でふらふらと行動するのが好きなマイペースなんちゃってオタク。南雲ハジメ、清水幸利とはなんとなくで会った友達で、ハジメとは道を聞いてもらうついでに世間話していたら思いのほか趣味が近く、意気投合。清水幸利とは公園でお互い読書していたら、なんか問題抱えてそうだなと話しかけていたら、世間話になっていた。ガチオタ二人に比べたら知識は深いわけではないが、教えてもらえればすぐに身につくため、布教活動を楽しまれる。二人曰く「布教してみたら面白いくらい飲み込んでくれるから楽しくなってくる」らしい。

道場にいる理由は「覚えておいて損はないし、運動が楽しい」。そんな緩いメンタルをしているため、同門の八重樫雫からは「気楽で羨ましいわ」、坂上龍太郎からは「根性はまあまああるけどめっちゃマイペース」、天之河光輝から「もっと出来るはずなのになんで頑張らないんだ?」と、思われている。実は光輝の拗れた正義感と異常性に気付いており、最初はそこに目を瞑れば良い奴が、最近辟易している。

実は師範からは「緩い性格や言動に騙されるが芯の強さ、考えの柔軟さは目を見張る」と精神性は評価されているが動きに関しては「可もなく不可もない。ただ、移動や足運びが比較的軽い」とそこそこ。

 

 

 

気付いたら、宮殿っぽいところに居た。遅刻ギリギリの常習犯で、友達の南雲ハジメ、同じ趣味繋がりで仲良くなった清水幸利と昼休みに話をしていたら。なぜかこうなった。なんでこうなった?考えてみたが、わからない。とりあえず魔法陣が出てきて、気づいたらここにいたという認識だ。

メイドみたいな人たちが飲み物を僕たちに渡した後、イシュタルという爺さんがこの状況を説明してくれた。曰くエヒト神の神託により、適当なところから候補を適当に集め、その候補が俺達だったらしい。神様というものはいつだって自分本位らしい。人選他にいただろうが、神様は愉悦部部員らしい。上位者みたいだ腹が立つ...ブラッドボーンやりたいわ。瞳は欲しくないけど、真理を見通すくらいの目は欲しい...後、無限SAN値。チート入力してこれ入手できないかな。

話を聞くと、魔人族を滅ぼしてほしいと頼まれた。神の使徒として人間族を魔人族、はたまたモンスターから守ってほしいと頼まれた。魔人族、というものが何なのかわからないが、あまり良い予感がしない。寧ろ、あの目は僕たちを利用しようとする目だ。都合のいい駒を見ている目。嫌な予感の正体はこれだろう。助けを求めているのは確かかもしれないが、それよりも己への利を優先としている、そんな目だった。

そして召喚に巻き込まれた先生、畑山先生、通称愛子ちゃん先生がイシュタルに食って掛かった。彼女が言うには戦争に巻き込むこと、むしろ、戦争の兵士、駒にする事に等しいといった。考えてみればそうだ。魔人族と戦えと言っているわけなのだから、戦争と違いはない。そして、もう一つ理解した。彼はその事実を知ったほかの生徒多数が嘆いているのを見て、憐みの目、いや、心底理解できないような目を僕たちに向けていた。

「なぜ、崇高なるエヒト神の神託を理解できないのだろう」という目を嘆いていた生徒に向けていた。

僕は手を挙げた。

「あの、すみません。いきなり呼び出して、戦争に参加しろって言うのは早計じゃないですか?僕たちはそもそも、『エヒト』という神を知らない異世界から来ています。誘拐同前の行いをした挙句、神託と言われても、少なくとも僕は賛同しかねます。」

この発言を聞いた光輝はテーブルを叩いて僕に食って掛かった。

「綾都!お前はここの人々を見捨てるって言うのか?!見損なったぞ!」

「光輝、助けを求める人に手を差し伸べるのは間違ってはいないが、それには限度がある。君は見ず知らずの人に命を懸けれるの?ましてや、今僕たちが片棒を担がされているのは人殺しだよ?君がいつもやっている人助けとは訳が違うんだよ?わかってる?」

「人殺し?!そんなわけない!そんなことはさせない!話し合えばどうにかなるはずだ!」

「...それが出来ないから戦争になってるんだろうが。大体お前はいつもそうやって、後先考えないで、安請けする悪癖どうにかなんないの?前なんか」

「綾都!...すみません、イシュタルさん、この件は生徒と先生の間で話し合っても良いでしょうか?この状況だと、碌に話が進まなさそうですし。後日に持ち越せませんか?」

「ふむ、それも一理ありますな。良いでしょう、いい結果を期待していますよ。」

ハジメに止められ、妥協案を言い渡された。しかし、話し合いの場を設けてくれたのは正直助かった。しかし、どうしたものか。状況を受け止めた人は俺含め、ハジメ、幸利、雫、白崎、龍太郎、そして光輝だろう。他はまだ飲み込めていないか、そもそも、現実逃避しているかだ。少し気が重くなるのを感じていたら、畑山先生に声かけられた。

「辻宮君、ありがとうございます。辻宮君がいなかったら、私何もできませんでしたから。」

「お礼を言うのは僕の方ですよ先生。畑山先生がいなかったら、イシュタルさんの言っていたことを誤解して、安請けするところでしたし。事実、誘拐と戦争への参加を強要しているって言ったのは先生でしたし、僕はそれに乗っかっただけですよ。」

「それでも、私は助かりました。」

やはり、こういう状況で大人は頼りになる。僕たちよりも状況をすぐ理解できて、正しい道を示してくれた。

「...さすが先生...ですね」

「そうです!私は先生なんですから!困ったときは頼ってくださいね?先生ですから!」

漏れてしまった心の声が聞こえていたようだ。

 

話し合いの結果、光輝が持ち前のカリスマとイケメンフェイスで戦争参加する意思を示した結果、大半がそれに賛同。大半に入っていない生徒は、様子見の為の検討だが、おそらく、吊るしあげられるのが怖いのだろう、はっきりと検討するとは言っていない。俺ははっきりと、拒否したため、光輝とそれに賛同した何人からは厳しい目を向けられた。先生が説得しても駄目だったので、先生は涙目になっていた。

話し合いの初めに「戦争や殺し合いに参加するのがどういうことなのか、しっかり考えた上で、決めてほしい。」と先生も俺も言った上でこうなのだからそういうことなのだろう。

これからどうするかを何人かに話した後、その日の夜を過ごした。

 

次の日、戦闘訓練らしく、ここの王国の騎士団長、メルド・ロギンスの自己紹介とステータスプレートという身体能力等を数値化するドッグタグの様な物。曰く仕組みは知らんらしい。オーバーテクノロジーは便利だなぁ。わかんないだろw、おれもわかんない。と言われた某1000%の気持ちがわかった気がする。ここの人たちがわかんなかったら誰もわかんねぇなコレ。

言われる通り一滴の血をプレートに垂らし、ステータスオープンとつぶやく。そうするとステータスが表示された。

 

辻宮綾斗 17歳 男 レベル1

天職:魔法戦士、

筋力 : 90

体力 : 110

耐性 : 100

敏捷 : 140

魔力 : 195

魔耐 : 160

技能 : 剣術、格闘術、縮地、魔法纏い、魔力武器生成、魔力操作、言語理解

 

見せたとき、驚かれた。なんでも、魔力操作は普通は人には発現せず、亜人などのモンスターに近い、もしくはモンスターに発現する技能らしい。曰く、詠唱無しで魔法を発動できるとかなんとか。ハジメのも見せてもらった。

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル1

天職:錬成士

筋力 : 10

体力 : 10

耐性 : 10

敏捷 : 10

魔力 : 10

魔耐 : 10

技能 :錬成、言語理解

 

全部平均らしい。そして、錬成士というのは技術職らしい。ありふれた上、戦闘に向かないらしい。錬成...ハガレン出来そうだなと思いながら、話しかけようとしたら、不良共が茶々入れてきた。

「南雲さぁ、お前どうすんだよ?技術職じゃ戦えねぇだろぉ?ハハッ」

「ステータスも普通じゃねぇか!無理無理!肉壁にすらなんねぇよこいつ!」

...短慮で、いかにもバカ丸出しな発言にため息が漏れた。

「物を作ることが、どれだけ難しい事か知らない癖してよくそんなことがいえるね。」

「あぁ?!キモオタの友達が何言ってんだ?前々からお前生意気なんだよ!」

「知らないよ。」

と、だんだん腹立ってくると、畑山先生が仲裁に入り、ハジメを励ましたが、逆効果だったようだ...先生も天然なんだな。

 

一連の後、ハジメと歩きながら雑談していた。

「ハジメ、修行すればハガレン出来んじゃない?後、作ってほしいものがあるんだけど良い?」

「魔力武器生成あるから作らなくても良いんじゃないの?というかなんで僕に頼むのさ...」

「えぇ...だって、俺正直、手パン錬成とか憧れるし。」

「アヤトだって武器生成とかどこのバージル?どうせそれ飛ばせるんでしょ?僕的にそっちのが良いんだけど。」

軽口を叩き合ってると幸利が混ざった。

「お前ら俺のを見て同じことがいえるか?俺闇魔術師だぞ?!」

「ミィル、リザイアとか使えるでしょ?属性ある方がかっこいいじゃん。僕なんてハガレンもどきだよ?ステータスもそんなだし...」

「そうだな...アヤトおまえ、代われ。ステータス変われ。俺にそのかっこいい天職寄こせ。」

「あっ、それ僕も欲しい。というかそれ僕にくれない?僕バージルやりたいし魔力弾飛ばしたい。」

「嫌だ、シューターやったり急襲幻影剣とか、アルカノパルスとかやったりしたいからやだ。」

「お前それもしかしなくてもLoLとかだろ?」

「楽しいよね、ロングレンジチャンプ。」

 

座学(魔人族、亜人族等のここの種族、魔法について等)と戦闘訓練が終わり。後は自由時間だった。この1週間、自由時間の中で魔法武器生成、とその使用、そして元々の武術を磨いた。魔力で出来た剣を使い、雫や光輝、龍太郎とかと組手をしたり、魔法を習得して、戦い方に組み込んだり、そしてハジメや幸利と図書館で雑談しながら勉強をしてた。

工房スペースで勉強している幸利と作業と修行を同列でやっているハジメをよそに一人で修行していると。3バカ不良が絡んできた。何やら、勉強ばっかりしているハジメが気に入らないらしく、オタクはオタクらしく弱いままでいろとの事らしい。僕もそれに含まれているとのこと。何やら、オタクの癖して白崎さんや雫とそれなりに仲がいいのが気に食わないらしい。仕方ないので、『稽古』に付き合った。剣を4つ生成して飛ばしていたら、怖がられた。そして光輝に糾弾された。性善説を引き合いに出されているが、不良がそんな事しねぇよと思いながら、聞き流した。

ついでに作ったものは完成したらしい。試し打ちが楽しみだ。

 

ダンジョン遠征に行くことになったらしい。実戦経験を積みたいので行くことにした。最初に出くわしたのがラットマンというマッチョな2足歩行なネズミだった。我慢できなくなったので、つい掛け声を言ってしまった。

「仕上がってるね!」

ラットマンのポーズが変わる。

「もう、土台が違うよ土台が!」

「色々デケェ!」

「良い筋肉!ナイス筋肉!」

ハジメや幸利もポーズを次々変えるラットマンの様子が面白くなったのか、掛け声合戦に参加した。10分後、炎魔法でラットマンが消し炭になった。

「あー、よくやった。でも出力気を付けろよ?オーバーキルだからな?あと、そこの3人、特にアヤト、なんだったんだ今の?」

「ムキムキなマッチョの筋肉披露大会の場面を思い出してしまって。掛け声、というより、そういう決まり文句を言いたくなって、それでいい反応貰えたので楽しくなってしまって...」

「筋肉の仕上がり具合を称賛するのか?!変わった大会だなぁ...」

「僕も正直意味がわかりません。でも、やらなきゃいけない気がしました。」

「確かにポーズを変えて筋肉を見せつけていたラットマンも面白かったが...ごほん!次行くぞ!」

 

 

「!!白崎さん!持ち上げるのお願い!」

そう言って俺はハジメの後を追い奈落から飛び降りた。なんとかハジメの手を掴み、白崎さんに手を伸ばし、唱えた。

「5本の鎖よ!」

浅葱色の鎖が五本、白崎さんに向かう。白崎さんも放心状態からすぐにある魔法を唱えた。

「縛煌鎖!!」

金色の鎖と浅葱色の鎖が近づく。が、誰かさんは余程俺たちを落としたいらしい。今度は風球が飛んできた。

「ぐっ!...3本の鎖よ!」

いくつか食らったが、まだ間に合う。が、これを逃がせば落ちる。残る魔力を魔力の鎖の生成に回したが、それも撃ち落された。残った一つは魔力が足りず、脆くなったので、壊れてしまった。咄嗟に、風球が来た方向を見ると、そこには歪んだ笑みを浮かべていた檜山がいた。...あいつの仕業か!あのクズ野郎!!

「檜山このやろぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」

叫んだまま、俺達は落ちた。あいつのせいで俺たちは落ちた。あいつ、俺たちが戻ってきたら絶対ぶん殴る。俺たちを殺しかけた落とし前をつけさせてもらう。

それまで、ひどい目に会え。

 

 

 

設定その二

 

仮称:天職狙撃手

趣味:的当て、サバゲ―、筋トレ、銃の研究、ハジメとのガンオタ会話

苦手なもの:無意味に絡む人、悪意しか感じない笑い声

適当なご都合設定:4-12歳は弓道道場に中学入ってから射撃部に所属していた。今でもたまに道場で弓引いては当てれる。その後、的を当てるという共通点と射撃をしてみたいという中二心から中学の射撃部に入学。そこで、才能を開花させ、大会で好成績を残した。高校では射撃部がなかったため、休日に少し遠い射撃場でクレー射撃や普通の的当てをしたり、たまに、弓道場に顔を出し、弓を引いては射ている。高校で、隣の席が南雲であり、南雲がたまたま銃の構造の絵を簡易的に書いていたら、それの銃の種類と名前を看破し、ガンオタでもあるハジメと部活上、知識のある彼とで話が合い、かなりウマが合う友達になった。ちなみに、この会話の影響でハジメはオリジナルの銃の構造絵とデザインを書いて投稿するようになったり、彼と一緒にエアガンなどの物とは言え射撃場に行ったりしてる。ジョークやネタを飛ばし、「HAHAHAHAHAHAHA」と笑うのが一種の流れになってきてる。

 

エアガンの射撃場でいくつもの発砲音が鳴り響く。火薬から来る発砲音ではないが、それでも爽快感はあるものだ。共通の趣味を持った友人、南雲ハジメと休日で射撃場でストレス発散している。

「スコアはどれくらいよ?」

「大体いい感じかな?○○はいつも通り?」

「今日も良い調子だよぉw」

「うわ、露骨に真ん中を狙わずに、9点ゾーンだけ撃ってるし」

「こっちのがむずいんよ?紹介されたマンガ読んだけど、星書いたりニコちゃんマーク書いたりするのはマジ変態の所業。真ん中を全くブレずに打つのは変態だけど、簡易的なマーク書くのも変態だわ。」

「まじでそれ」

こんな風に緩い会話をしながらスコアを競ってた。ハンドガン、ライフル、サブマシンガンを借りて2マガジンずつ撃ってる。値は結構張るが、お互いバイトとかいろいろやってるから払えないわけじゃない。ただ、勘違いしないでほしいのは、俺たちはがトリガーハッピーではないということだ。人に向けてはいけないというルールはしっかり守ってるし、何なら俺はサバゲ―やってるが、極力当たるのはわかるけど痛くないところを狙って撃つ。ハジメもハジメで人を傷つけることを嫌う優しい人なので、心配はしてない。趣味は弓道と射撃ってだけで変な誤解されたし、未だに誤解している奴もいるし。

「もう時間だな、なんか食ってから帰るか?」

「そうだね、近くに良い店ないかなぁ」

「鉛玉は食いたくないねぇ」

「殺さないし、ここそういうのないからね?」

「「HAHAHAHAHAHAHAHA」」

...会計しなきゃ。

 

休日が終わり、学校だ。周りには悪意に満ちた笑い声をあげる不良っぽい奴ら。いかにも正義なやつや熱血って感じの奴も、話している。こういう状況でも、心を落ち着かせ、集中できる方法を学べると思うと弓道を習ってよかったと心の底から思える。心をリセットして、授業を待っていると、がららと戸を引く音がする。ギリギリでハジメが来た。そういえばチャットで急な仕事頼まれてたな。眠そう。

「よぉキモオタ、夜遅くまでエロゲーやってたのか?キモーww」

「うわ、それやるとかマジキモオタじゃんキモ―w」

ゲラゲラと笑っているが、こいつら下半身でしか考えないのかなとナチュラルに思ってしまう。去年から使い古されたネタでゲラゲラと下品に悪意の満ちた笑い声を響かせられると思うと少し感心するし、オタ=エロゲーっていつの時代の思考かと思うあたり中々染まっているなと実感する。あと言い回しがバカっぽくて笑いそうになった。

「っw...仕事お疲れさん。アシ、大変だったでしょ」

「うん...ギリギリで終わらせた...月曜日辛いわ」

「あー...うん。」

と笑い堪えながら話していると人気者グループがハジメに話しかけてきた。

「おはよう南雲くん!今日もギリギリだね。もっと早く来ればいいのに...」

「おはよう白崎さん。うん、次から気を付けるよ。」

その子の名は白崎香織。美少女。ギャグマンガなら「おっふ」と声に出るくらいの。ただ、色々と残念。俺は気付いている。休日、ハジメと遊んでると彼女らしき人物が必ずいる上、目が合うとササッっと隠れようとすることを。怖い、少し気持ち悪い、美少女じゃなかったら色々とやばい。射撃場の後飯食ってた時も普通にいた。その癖して恋愛的アプローチは全くできない。なぜだ?一回聞いたけどすごい目で圧かけてきた。

「おはよう南雲君、○○くん、毎日大変ね。」

「うん、おはよう八重樫さん。」

「おはよー、八重樫さん、これ多分もっと大変になるよ?」

続いてクール系美人の八重樫雫。剣道道場の娘。お姉さまと何人から慕われるくらいファンがおり、白崎香織さんと共に二大女神として沢山の生徒に崇められている。しっかり者でマトモなため、多分あの中で一番の良心。白崎さんの行動が余りにもあれでかつ白崎さんの圧がヤバかったため相談しようとしたがなんか疲れてそうだったので美味しい食べ物を出す喫茶店を紹介した。余談だがその次の休日、昼ご飯を食べにその喫茶店行ったら一人でスイーツを食って、頬をほころばせていたのを見た。でも言わない。言ったら呪われる。今も殺気とかいろいろ向けられてるのに。

「香織、また彼の世話を焼いているのか? 全く、本当に香織は優しいな。」

「全くだぜ。そんなやる気ねぇヤツ、何を言っても無駄と思うけどなぁ...」

爽やかイケメンと熱血な脳筋。めっちゃモテるけど、何か色々違和感のあるイケメン天之河光輝と、熱血体育会系脳筋空手マンの坂上龍太郎。まあ、坂上君に関してはそれなりに仲いいが、天之河は誤解した上思いっきり糾弾して来たのであまり良い印象はない。「クレー射撃が趣味、言葉が足りなくてすみません」と一応訂正はしたものの、それでもたまに小言行ってくる。ルール守ってるのに。

「おーす、相変わらずマッチョだね坂上君、天之河君もおはよー。」

「おはよう、天之河くん、坂上くん。自業自得だから仕方ないよ」

「おう、筋肉は普通落ちねぇし、お前は相変わらず口調緩いな○○」

「それが分かっているなら直すべきじゃないか? いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うし、香織だって君に構ってばかりはいられないんだぞ?それに君もだ○○。まともな趣味があるだろ?銃の撃ち合いとか趣味にするものじゃないぞ?」

こういう風にことあるごとに俺たちをディスったりする。悪意はないだろうが、腹立つ。

「人を殺す願望もないし、実弾なんか日本で売ってないし。別にいいでしょ。あと、一応理由あったりするから、しゃーないと思うよ?」

こんな感じの朝を毎日だ。仕事がない日もあるがそういう時も普通に小言を言われる。小言言いたいだけなんじゃないのかってくらい小言を言う。そして俺の言葉通りもっと大変になった。

「へ?光輝くん何言ってるの?私、南雲くんと話したいから話してるだけだよ?」

「えっ...あぁ...本当に香織は優しいな。」

「...本当に大変になったよ。」

「ごめんなさい、二人とも悪気はないんだけど...」

「うん、あはは....」

「苦労してるんだねぇ。心中お察しするよ。」

「そうしてもらうと少し、楽になるわ....」

爆弾を落とす白崎さん、鈍感な天之河、わけが分からないって顔をする坂上君、手を額に当てながら溜息を吐く八重樫さん、そして苦笑いをするハジメ、そして嫉妬と殺意を向けるクラスの面々。そんな重苦しく静かな雰囲気の中。先生が入り、呼鈴がなり、授業が始まった。ハジメは眠そうな目で授業を聞き、俺は心をリセットしてから授業に集中した。

 

時間は流れ昼食休憩。俺は自分の弁当を開けて食ってる傍ら、ハジメはゼリーをジューってやってポイして寝る体制に入った。やっぱ出汁巻き卵は美味。早起きして弁当とか作ってる。そして今日の出来はかなり良い。ハジメは昨日重労働だったので耳栓を近くに置いた。が、今日はハジメにとっては良い日ではないらしい。

「南雲君それだけなの?!ダメだよ、ちゃんと食べないと。」

「えっ、いや。僕はこれだけでいいよ...あんまりお腹空いてないし。」

白崎さんが弁当のお誘いをした。ハジメは目でSOS出している。俺はパスを投げた。

「白崎さん。昨日、ハジメも仕事が多くてね、今日は寝かせてやってくれると...あの...白崎さん?」

「何かな、○○くん?」

フォローしようとしたが「邪魔すんじゃねぇよゴルァ」って伝わるくらいの圧を受けた。ハジメの方を見るとキョロキョロと助けを求めてる。「こわっ」と小声で言ったのは俺のせいじゃないと思うし、後ろででっかい剣を持った阿修羅が剣を拭いているの光景が見えるのもおそらく仕方ない。

「何も怖くないよ○○くん?それで、昨日、南雲くんがなんなのかな?かな?」

「いや、あの...圧かけないでくださいます?」

「なんの事かな?私はこんな笑顔なのに。」

「...分かったよ、じゃあ、邪魔していいかな?」

ハジメが犠牲になってしまった。チクショウ、俺がもっと強かったらチクショウ。

「ハジメ、ほんとごめん。次の休日なんか奢るよ。」

「ううん、あれは仕方ない。後ありがとう。」

クラスが凍り付く一幕だった。

ハジメが席に着くと、魔法陣が展開された。なぜか天之河を中心に。次の授業の担当先生、畑山先生が「みんな!クラスから出て!」というが、待ってくれなかった。魔法陣が光が強く輝きを放ち、そして俺は気を失った。肉の味が舌の上に広がったのが気を失う前の最期の感覚だ。

 

この後、射撃とサバゲ―の技術が人殺しの技術になってしまうのは別の話。おのれエヒトめ。ぶち殺してやる。ハジメとか俺とかが。




原作キャラの口調があってるのかどうかがわからないのと、「くん」と「君」の違いとかが少し自信ありませんイメージ的に「君」の方が堅く、「くん」の方が柔らかい印象です。


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自己満足なbloodborneの短編 

突発的な物です。ネタバレも含んでいます。
一番苦戦した敵はローランの黒獣です...二度とやりたくない。あれだけやってることモンハンなんだよなぁ...


俺はいつものように課題を終わらせ、食事をとり、そして平和な日常を送っていた。そして目覚めれば全くおかしな状況になっていた。

気付けば、藪医者のような男から輸血をされ、大きな狼に殺されてから狩人の夢とやらに起きたのがすべての始まりだった。あれからどれくらい経ったのか、今までの体験のせいで数えるのも億劫になった。今、自分で出来ることと言えば、獣を狩り、出来る範囲で人を助け、そして平和に生きる。

 

初めて死んで、夢で起きたときは驚いた。抉られたはずの腹を触る。なんともない。食いちぎられたはずの頭を触る。いつもの頭だ。いつもの頭というのもおかしい表現だが、なぜか死ぬ前の自分だった。しばらく状況を整理したが、なにも理解できない。いや、理解を拒んでいたと言っていた方がいいだろうか。死んだ痛みを体感したのだから。考えれば考えるほど吐き気がしてくる。呼吸が荒くなる。少しでも気を紛らわすため歯を食いしばり、口を抑える。

「っ....くそが...」

つい、息が荒くなりながら悪態をついてしまう。目を瞑り、そして深呼吸をする。少し落ち着いてきて、俺は周りを見渡す。

『使者』と呼ばれる骸骨から計五種の武器を目の前に出された。三つはいわゆる近接系。剣の様な杖、鋸、そして斧。人並みの生活をしていた僕は斧を振り回せる筋力もない。鋸は獣によく効きそうだと思ったが、しっくりこなかった。残るは剣の様な杖。この杖には人としての矜持がある気がしたから。俺を殺した獣のようにならないように。一番人のような武器だった。

俺は剣のような杖を取り、それを見た『使者』達はすぐに地面に沈んだ。どういう仕組みなのかはわからないが、そこまで気にするものではないだろう。次の『使者』が提示するのは短銃か散弾銃かだ。俺は短銃を取った。

「...ありがとうな」

好意で渡したのか、何か裏があるのかは知らないが武器をくれることはありがたい。使者が沈む前にお礼を述べた。彼らから笑い声が聞こえた気がした。その声に嬉しさが混じっている気がした。

 

目の前の扉を開けると、本があちこちに重なっていた。祭壇のような、職人の作業場のようなそんな場所だった。次に目に入ったのは車椅子に座る老人だった。話しかけたところ彼はゲールマンと名乗り、曰く『狩人の助言者』だそうだ。俺は狩人になった覚えはないのだが、彼は『狩人とは獣を狩るものだ。』と言った。前途多難かつ、右も左もわからない為、俺はその言葉に従うしかなかった。墓の前に立ち、目覚めの場所を思い浮かべる。

俺は目覚める。そして目覚めるなり獣の唸り声が聞こえて来た。武器を握りしめ、そして狼擬きを狩る。ふと思い出したのは使者の札の一つ、『打撃の際、銃を撃ちぬくと体勢が大きく崩れる。狩人ならその隙を逃がさず、抉れ』と。後ろ足で立ち、威嚇するように狼擬きは前足を大きく広げる。どう見ても予備動作だ。銃を獣に向けて打つと、がくんと獣は脱力するように体勢を崩す。その隙を逃がさない。貫手で胴体に当たる部分を貫き、そして抉る。手には肉を貫いた感触が残り、顔を顰めるが止まってはいけない。すぐに抜き、傷を大きくするように引き抜き、そして傷口から大量の血が噴き出る。何かが頭の中に入る。それはわからないが、気持ちの良い物ではなかった。

 

あれからどれくらい経っただろうか。狩り、狩られ、友好的な人を見つける。そういう人たちから狂い始める。上位者なるものを連盟の同志と共に狩り、俺に仇なすす狩人も狩り、そして最後には何もな起きなかったかのように、自分のやったことは全て無駄だったと嘲笑うが如く、俺は輸血台に居た。どうせ繰り返すのだ、俺はへその緒の様なものを自分に使い、そしてゲールマンに安らぎを与えた。彼の声音は最初から最後まで悲哀と諦念に溢れ、そして疲れ切っていたのだから。最初の狩人なのだから、それもそうだろう。何人のも狩人を育て、そして送り出す。それを繰り返したのだろう。繰り返すたびに、ここにいる前の思い出が鮮明になっていく。鮮明にしなければただの獣狩りの機械になってしまうとわかっていたからだ。

 

最初から最後まで狂わなかった人が一人いた。俺と同じ狩人で、人にやさしく、狩人には向いていないような内面の持ち主だった。最初に会った時は俺に仇なすものとして最後には勝った。だが、二回目に彼の言葉をしっかり聞き、そして獣を殺さずに後ろから挨拶してみたら、案外普通に世間話の出来る人で驚いた。今では偶に彼の居る塔を上り彼と同じ景色を見ながら話しかける。

「なぁデュラ」

「なんだ?」

「俺の立ち位置は変わらないって前言ったよな。」

「自分に仇をなさんとする者は叩くが、それ以外に危害を加えるつもりはない、だったな。」

「ここでは無条件で手を出さないことにしているけどな。少なくとも俺はあんたのような人がいて、とても助かったよ。」

「私はただ貴公の話を聞いているだけだ。しかし貴公もよくここに来る。ここに思い出でもあるのか?」

「いや、気が狂わない人がいるのは大きな救いさ。...邪魔したね、そろそろ行く。」

「そうか。いつでもここに来い、狩人に繰言は不要だが、狩人にも休息は必要だ。それに貴公の話も退屈しのぎになるからな。」

話は終わり、狩人の確かな徴を使い、夢に戻る。何度も繰り返し、見た光景だ。疲れた気がする場合は『人形』と世間話をしたり、デュラとああやって話している。その時だけ、自分が獣を狩るだけの狩人だと忘れられる気がしたからだ。それに狩人としては失格だが、デュラの言い分もわかる。獣とは人間から来るものだった。ギルバートを見て、それを確信した。だが、獣となった人に人間としての心はもうない。俺はあくまで人としてデュラの言い分を旧ヤーナム市街でのみ尊重するが、狩人として人に仇を成さんとする獣になった人を狩るだけだ。おそらくデュラは親しい人が獣になっていく姿を見たのだろう。そして狩人として旧ヤーナム市街を燃やすところも見たのだろう。だから、今に至ったのだと思う。狩人として破綻した今の考えに至ったのだろう。だが人としての死を与えるか、獣になったとしても彼らを人として見て殺さずにそっとしておくかの二択に正解なんてない。ガスコイン神父の例があるから、殺した方が本人も幸せなのだろう。何せ、獣に変貌した挙句、妻を自らの手で殺してしまったのだ。そんな奴らはおそらくヤーナムでも珍しくないだろう。獣と化すか、人ならざるものと化し、人を忘れ、そして大切なものを自ら壊す。手遅れだったとしても、俺は獣を狩る。彼らがせめて来世で人としての性を持ち、人並みに幸せな人生を享受できるために。そのために、人間に仇名すものを狩る。狩りを成就するために。

 

狩人として、そして最後の助言を貰うものとしてゲールマンに休息を与えねばならないと思った。燃えている夢を見て思う。どうせ、これもまた見る。一つのループでゲールマンから狩りのノウハウを教えてもらった。最初は弟子を取らないと言っていたが、食い下がったら根負けしてある程度教えてくれた。得物の落葉を振り、そしてゲールマンの教えを体に染み込ませた。そして、そのループでは弟子としてゲールマンに休息を与えた。今回も俺はそうする。最後の狩人として、そして最後の助言を貰うものとして、世話になったものとして、俺が出来る最善だ。

そんな決意を胸にしながら燃える夢を見ていると人形から話しかけられる。

「狩人様。お待ちしておりました。間もなく夜明け…夜と夢の終わりですね…大樹の下で、ゲールマン様がお待ちのはずです。」

「人形さん、色々ありがとうな。俺の世間話に付き合ってくれたり、手伝ったりしてくれて。」

「いえ、礼には及びませんよ。あなたは私に大きなものをいくつも教えてくださりました。楽しいの思い出話や昔話、この髪飾り、そして他の狩人様からの言葉も。お礼では足りないくらいのものを私はあなたから受け取りました。」

「そうか、喜んでもらえたのならよかった。...そろそろ行くよ。ゲールマンさんを長い悪夢から休ませるために。」

「そうですか...狩人様、貴方の目覚めが有意なものでありますように。」

「あぁ、また会おう。人形さん。達者でな。」

 

大樹の前の花畑に向かい、ついにはゲールマンさんが待つ大樹の前に着く。

「ゲールマンさん、その刃で俺をこの夢から解き放つつもりですよね?」

「狩人よ、君はよくやってくれた。その通り、君は私に介錯される。君は死に、そして夢を忘れ、朝に目覚める…解放されるのだ。この忌々しい、狩人の悪夢から…」

俺は知っている。彼は自己犠牲からこの行動をとっているのだと。一番辛いのは、夢でずっと苦しんでいるゲールマン自身だ。彼の寝言でいつも聞くのは寂しさと苦しさ。何時も喋っている時もそれがわかる。俺は、彼に問う。

「俺を殺して、その後どうするのです?」

「新たな狩人を待つさ。」

それでは永遠に彼は悲しいままだ。もう、彼が苦しむ必要はないのだ。三本目のへその緒をすべて使い、夢の主を狩ったことのある俺だから言える。彼が夢にとらわれ続ける必要がないのだ。覚悟を決め、俺はゲールマンさんに言う。自分でも苦しくなるのがわかる。話す人には情が移る...狩人としては私情を出してはいけないのに。

「...ゲールマンさん、もういいんです。貴方ももう十分、助言者として狩人として俺たち後世の狩人に知恵と胸を貸しました。貴方に必要なのは自己犠牲ではなく、休息です。」

「何に吞まれたわけでもなくそういうのか。この人生でそれを言われたのは初めてだ。だが、助言者として私はここに居なければなるまい。君に私の苦しみを味合わせたくないのでね。...ゲールマンの狩りを知るがいい。」

「...やはり貴方はとんでもないお人好しだよ。ゲールマンさん。」

そういい、ゲールマンと俺は獲物を構える。片や大鎌に変わる刃の葬送の刃、片や一対の打ち刀と短刀からなる仕掛け武器、落葉。何度もこの場面を体験したが、ここで行われるのは自己犠牲から来るどちらかの介錯そして、高尚な狩人同士の決闘。血に飢えた狩人を倒すこととは訳が違う。

「行きますよ、ゲールマンさん...!あなたに休息を与えるために。」

「来い、若き優秀な狩人よ。」

最初の狩人と最後の狩人がぶつかる。長いリーチの刃を受け流しながら、大降りになったところを銃で体勢を崩し、そして抉る。抉られたゲールマンさんは仰け反るがすぐに体制を立て直し、そして銃を撃ってくる。

俺は知っている。あの散弾銃は貫通弾も撃って来る彼だけの銃だ。だが、どちらにせよ、攻撃に当たるわけにはいかない。ステップで避ける。ただ、毎回思うのだが、このステップ、攻撃をすり抜けるのだ。ステップで地面から足が離れた瞬間、その一瞬だけ、あらゆる攻撃が俺をすり抜ける。他の狩人も然り。

彼が刃を鎌にした。ここから気合を入れないといけない。

刃が交差する。刃がぶつかり合い、発砲する音が鳴り響く。

「やはり、マリアさんの師であり、原初の狩人だけある。年季が手強いですね、ゲールマンさん...!」

「なぜその名を知っている?」

「悪夢であったんですよ。彼女もそこに居ました。彼女はとても強かった。この落葉の技術も割合的には彼女から教わりました。」

「そうか...あちら側に送ったのだな?」

「...えぇ、彼女も苦しんでいました。そして優しい人でした。」

この世界は人を殺し過ぎている。人としても、文字通りでもだ。上位者共は生命を弄び過ぎた。愚弄した。獣の病なるもののせいで、死ぬ必要のない人が死んでいく。ギルバートは獣になってしまい、ルドウイークさん、マリアさん、ゲールマンさんは優しさ故に苦しみ、実験練の皆はその命を実験のせいで弄ばれた。使命を全うし、人としての矜持を保っていたアイリーンさんも血に酔っていたカインの流血鴉に追い詰められ、アルフレートはカインハーストの女王を殺した末に狂い、人として終わってしまった。その中で特に許せなかったのは、何も知らない少女と、普通の神父として、父として生きていたかもしれないガスコイン神父までもが獣共のせいで、狩らざるを得なかった。俺が殺した。

激闘の末ゲールマンさんは片膝をつく。

「やはり、狩場から身を引いてがは、全盛期の様には行かんな。君は私が思った以上に優秀な狩人だよ。」

「...ゲールマンさん。ヤーナムは何もかもが破綻している。人を殺し過ぎている。そう思いませんか?」

「だが、そこで生まれてしまった。それが地獄の始まりだ。私はもう、諦めたよ。ここから見える。ヤーナムはどんどん酷く、醜くなる。ビルゲンワースの学者共が好き勝手やったせいで、上位者を呼び寄せた。いや、そう仕向けたのかもしれない。」

「だから、俺は終わらせます。ゲールマンさん、介錯は俺がします。だからもう休んでください。あなたは十分に狩人として、助言者としての役割を全うしました。そして、十分この世界で苦しみました。だから、もういいんです。」

「あぁ、長い悪夢だったよ。ありがとう、優秀な狩人よ。やっと終わるのだな。」

「来世は、獣の病も上位者もいない世界が良いですね。」

「あぁ、そうだな。」

「...おやすみなさい、ゲールマンさん。」

そういい、俺は落葉でゲールマンさんの首を切り落とした。やはり、親しかったものを葬るのは気が滅入る。何度やっても、痛むものは痛む。が、ここで終わりではない。本命が来る。青ざめた血が、全ての元凶が。この悪夢の主が。

それは俺に抱き着こうと手を伸ばしてくる。俺はへその緒を使い、上位者に至ったのだ。

俺が思った通り、それは俺を拒絶した。抱き着いた後何かに気付いて、そしてそっと置きそして俺に襲い掛かった。

難なく狩った、だがやはり腑に落ちない。不可解な動きをして、それが何をしたいのかわからなかった。まるで単純な物だった。月の魔物はあまりにも弱かった。

それを狩り、俺は夢の主となった。

 

烏賊になった俺は元の狩人の姿に戻った。何回もこれを経験しているとある程度掴めてくる。

狩人としての使命を全うできたと思う。上位者を狩り、獣を狩り、正気を失い発狂した者も狩った。どれだけ奔走しても、運命を変える事は出来なかった。破綻しているかもしれないが、殺してしまった後、黙祷を捧げたりもした。こちらに生まれた全員、来世は平和な世の中でそれを謳歌してほしいものだ。

「さて、今回は帰れるかどうか」

今までの行いを無駄にしたくないと、そう思った。




狩人のステータス

生命力:50
持久力:25
筋力:25
技量:79
血質:15
神秘:15
過去:特筆なし

装備
右手:落葉
左手:獣狩りの短銃
嘴の仮面
狩人の狩装束
神父の狩手袋
教会の黒脚衣

全体的に低いかもしれませんが最後にプレイした時のアバターのステはこんな感じでした。でも過去は「生まれるべきではなかった」です。やはり低ステだと初回プレイよりも難しく感じるものですね。
読んでくれて、ありがとうございました。


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自己満足なヒーローアカデミアの設定

ヒーローアカデミアの短編と設定です!
どうぞ!


名前:実験番号TP1864(正式名称:任意発動型個性兵TP1864) → 青木 瞬(あおき しゅん)

個性:短距離瞬間移動 (FF15のシフト)

性格:飄々

出身:個性兵育成施設

好きな食べ物:バーガー、ピザ、パパっと食えるもの

設定:短距離瞬間移動の個性を持って生まれた少年。任意発動型の移動系(TelePort)の個性を持った実験体1864号。実験体として生まれた彼は兵士として戦闘、隠密、座学、工作の訓練を施され、兵士としての技能は高いが、会話や掛け合い、そして駆け引きが好きで、比喩表現やジョークの様な言い回しを使うこともしばしばある。個性に関しては物体に触れて『座標』と認識し、そこに瞬間移動をする。戦闘の際は二本のククリ刀を用いた白兵戦、そして投げナイフを数本使って敵を攪乱が主な戦法。移動技術も習得しており、フリーランをしながら個性の発動も可能。任務の後の離脱はこうしている。任務の関係上ヒーローや(ヴィラン)との戦闘経験もあり幼いころから何人かのヒーローや(ヴィラン)と戦っている。しかし、一般人が巻き込まれることを良しとせず、無駄な犠牲を最小限に、任務は依頼主の要望に沿って遂行する。

 

サンプルセリフ

「簡単には逃がしてくれねぇよなヒーロー。が、こっちも任務ってもんがあるが、少し遊んでいくか。」

「おーおー、ウサギさんがラーテルになってら。悪いが、どいてもらうぜ、ラビットヒーローミルコ。」

「やっとか。TP1864って名前からおさらばだな....新しい名前も考えないとな...」

「青木 俊だ。よろしくな緑谷。」

「相変わらず、(ヴィラン)はピンキリが多いな...あれじゃチンピラの寄せ集めじゃねぇか....先生、戦闘許可を」

「ヒーロー名...ねぇ...Pitchport(ピッチポート)とかか?」


 

名前:実験番号ES302(正式名称:常時発動型個性兵ES302) → 佐上 茂久(さがみ もく)

個性:超強化視界眼(ハガレンの最強の眼)

性格:寡黙

出身:個性兵育成施設

好きな食べ物:栄養バー、そうめん、コンパクトな物

設定:異常な視力が常時発動している個性を持った個性兵の少年。強化感覚(Enhanced Sense)系の個性を持った実験体302号。単純な視力はもちろん、動体視力、色の識別等、眼球自体が強化されている個性。その気になれば空気の動きも、見切れる。TP1864と同じ訓練も受けているため、兵士としての能力も高い。任務に赴く際は単独の行動が多く、速やかに遂行することが多い。戦闘の際は長物を頻繁に使うが、それ以外が使えないわけではなく、任務によっては取り回しが良い物を採用することも多い。1864と同じく任務の関係上ヒーローや(ヴィラン)と戦うことも少なくないため、対人型の(ヴィラン)やヒーローとなると高い実力を発揮する。寡黙だが、決して冷酷なわけではなく、1864と同じく必要であれば殺すが、あくまで最終手段と捉えている。

 

サンプルセリフ

「...こちらES302、任務を開始する」

「任務完了、目標地点を提示してくれ」

「...どいてもらおうか、ヒーロー・イレイザーヘッド」

「潮時か、新しい名前と戸籍を作る必要がある...」

「相澤先生、戦闘許可を。」

「ヒーロー名...どうしようか...」


個性兵育成施設

個性を持った兵士を育成する施設。あらゆる個性検査のデータを持ち、そこから極めて高い質の個性を厳選し、それを胎児の状態で因子を埋め込み、そこから訓練を積ませる育成施設。個性兵は傭兵の様な扱いで、一般のヒーローじゃできないような任務を受け持つ。3歳から訓練をはじめ、9歳か10歳で実戦に放り込まれる。訓練の内容は集団戦闘訓練、格闘術実践訓練、武器術実践訓練、一対一戦闘訓練、隠密訓練、移動術実践訓練、一般常識及び教養の座学。他にも、個性は瞬間移動、五感強化以外にも、放出系、補助系、生成系、等文字通りあらゆる個性が集まっている。


1864、出番だ。任務の資料を送る。

「了解。装備品はいつもので頼むぜ、司令サン」

 

 

送られた資料を流し読みする。どうやらこちらの情報を『オールフォーワン』なるものに送ろうとしているらしい、送る前に確保するのが任務だ。もし確保が難しい場合はその場で殺しても良いとのことだった。個人的には確保した方が表立ったようなことにならないと思って、俺は任務用の服に着替え、すぐに向かった。遠距離移動の個性持ちと施設内で合流し、転送してもらった。

「毎度ありがとうな」

「任務を成功させて来ればそれでいい...行くぞ」

「了解」

ぶっきらぼうに返されながらも、「礼はいい」と言外に言ってくれるこいつに少し好感を持てる。現に任務が終わればすぐにピックアップポイントを示してくれる。フードを被ってマスクが装着される。変声機も作動していることから、整備済みだと判断し、任務に向かう。

「こちら1864。任務の場についた。遂行する。」

俺は、個性を使い、センサーに感知されないように瞬間移動を繰り返しながら建物の屋上につき、そして意識を集中させる...警備はそこそこってところか...ダクトから侵入し、ナイフを警備兵の頭上に投げ、個性を発動し、すぐに口をふさぎ、壁に打ち付け気絶させる。怪しまれないように、気絶した人は壁に寄りかからせ、あたかも起きているように見せる。静かに目的人物の部屋に近づきながら、警備兵の視界等を避けながら、一人ずつ確実に気絶させる。

そして、目的人物のいる部屋につき、そして話しかける。

「よぉ、あんただな、ウチの情報を売ろうってのは。残念だが、阻止させてもらう。」

「?!」

そういい、俺は目的人物を殴って気絶させ、無線の電源を入れた。

「オールフォーワン、何回かその名前を見たが、そいつはかなりの大玉らしいな。こちら1864。ターゲットは回収した、ピックアップ地点を頼む。」

「いや、こっちから行く、すごい速度でヒーローがこっちに来てる。時間あればお前も回収するが、間に合わないなら、人物だけだ。」

「了解、いつもの時間稼ぎだろ?」

「そういうことだ。」

そういい、遠距離瞬間移動持ちが部屋に現れ、目標人物を掴んだ瞬間壁が粉砕され、頼もしそうな兎の女性が蹴りかかってきた。武闘派ヒーローの中でも特に手強いラビットヒーロー、ミルコだだった。

「おぉ、またおまえらか!捕まってくれや個性兵集団!」

「悪いけど、こっちも逃げてさせてもらうぜ。こいつの先約は俺達なんだ。用事済んだら返すからよ。」

咄嗟に、拳を受け流し、流れるように出てきた蹴りを個性を使い避ける。座標は彼女の真上、後頭部を押し、そして受け身を取る。

「おっとと...チッ、逃がしたか。」

あっちはうまく逃げれたようだが、今度はこっちがターゲットだ。部屋の穴は外につながっているため、思いっきりククリ刀を投げて逃げる。2つ目のククリ刀も投げて、続けざまに個性を使う。が、相手はプロヒーローで武闘派だ。おそらく逃がしてくれないだろう。ククリ刀を2本とも構えて、臨戦態勢に入り、関心と呆れが口から洩れる。

「簡単には逃がしてくれねぇよなヒーロー。こっちも任務ってもんがあるが、少し遊んでいくか。」

口走った瞬間、地面が砕ける音が辺りに響く。ミルコが派手に着地した音だ。砂や砂利が吹っ飛び、その砂煙からミルコが勢いよく飛び出る。

「今日こそ捕まえるぜワープ野郎。そろそろ追いかけっこも飽きてきたんだ。任務なんか忘れて、あたしと遊ぼうぜ...!」

「悪いけど、先約があるんだ、美人姉さんヒーローからのお誘いも魅力的だが、一歩間違えたらぶん殴られそうでね、遠慮する。」

「そうかよ、なら蹴られて捕まれや!」

得物と蹴りで応戦する。現時点で彼女の方が素の力も上、とすれば、刃と個性の機動力でどうにかするしかない。応戦と離脱を繰り返しながら、戦うしかない。蹴りを避けながらククリを投げて離脱する。

「兎さんは元気だなぁ...っと、またかよ。逃がしてくれねぇんだな、兎さん」

「お前のやってることはこっちじゃ法律に反しているんでね。それに、いい加減鬼ごっこも終わらして、遊ぼうぜ!」

「さて、どれくらい持つかだな...」

動物系個性との戦闘訓練で慣らしといて正解だったな。ここからは完全にタイマン。一対一の勝負。瞬間移動の回収が来るまでの耐久組手。冷汗が頬を伝るのがわかる。気を引き締めながら二本のククリ刀を構える。

ミルコの打撃を捌いているはいるが、プレッシャー量がえげつないほど伝わってくる。一発にでも当たれば最悪意識を持っていかれる。今は避けるか、最悪受け流すかくらいしかできない。何せ、任務は抹殺などの任務ではなく、回収任務であり、被害は最小限に抑えると同時に、どうにかして彼女を撒かないといけない。それに、彼女は交渉したがらない性格だ。前述したようにこちらとしては、どうにか逃げたい。しょうがない、少し凝らすか。

ククリ刀をミルコに向かって投げる。そろそろ彼女も慣れるころだ。彼女はククリの方に蹴りを入れようとする。でも、単純な引っかけだ。これで一発、意識に隙を作るしかない。

もう一つのククリを落とし、そして小さな投げナイフを投げる。ナイフにワープし、それに気づいたミルコは蹴りをそのままこっちに向けた。そして最初に投げたククリ刀にワープし、ミルコの頭を思い切り後ろ回し蹴りを食らわせた。ここからはすぐに投げナイフを投げ、落とした方のククリを回収、投げナイフにワープし、投げてワープを繰り返した。

「...っぶな」

かなり離れた場所に来た。ミルコが来る前にすぐ連絡を入れた。

「こちらTP1964。座標確認、及びピックアップを頼む。」

「了解、すぐに回収に向かう。」

そういい、すぐに迎えが来た。そいつは個性を発動させ、俺たちは施設に戻った。

ミルコが来たのはその十数秒後だった。

 

 

side ES302

 

「...任務か。」

頼むぞ、ES302。

 

ここ最近任務が多く来る。オールフォーワンという(ヴィラン)の名前がよく出てくる。曰く彼はかのno.1ヒーロー、オールマイトと戦いそして逃げたという。あのno.1の妨害任務は何人か請け負った人がいたが、戻ってこなかったか、万が一戻れたとしても満身創痍になっていたかだ。この施設の中でも、特に実力が高く、そして兵士として完成していたやつらだとしてもだ。

資料を見て、ここにもオールフォーワンの名前が出た。任務の内容は脳無と呼ばれる、死体を改造した怪人の調査、及び可能であればその施設の破壊。俺にこの任務を当てたのがどうにも引っかかる。確かに体術に関しては確かに上位にいるということを自負している。だが、個性の関係上、僕によく当てられる任務は偵察の類だ。視認による偵察や監視任務。潜入はTP1864などの瞬間移動系個性か、聴力に長けた強化感覚系、音を消すステルスタイプの個性。破壊に関しても、破壊系の個性はいくつも思い当たる節がある。『目が良い』だけの個性を持つ僕とは相性が良くない。何か理由があるのだろうか?

戦闘用の服に着替え、そして装備を整えた。自分の装備からは折り畳み式の長剣、コンバットナイフ数本、そして端末。支給されたものはC4複数、コンピューターウイルスの入ったUSB、そして無線。武器類とUSB、そして端末仕舞い無線を耳にかける。無線と端末はしっかり無線は動くようだ。部屋を出て転送係と合流して、任務の場へと送られた。

「こちらES302、任務を開始する。」

了解、施設はそこから南西、見回りやヒーローに注意しながら進め、オーバー

「了解。」

高台に移動し、施設を見る。目のピントを合わせ、そして集中する。脳が何かの液体に付けられているのがわかるが、脳無の写真を思い出し、あれがおそらく頭部なのだろう。あれらを使って何をする気なのかは知らないが、気持ち悪いのは確かだ。脚を進める。ヒーローと見回りに注意しながら音を立てずに侵入する。脳液と培養液の匂いが部屋に充満している。思わず顔を顰めるが、監視カメラを避けながら目的の部屋に侵入。端末で部屋をスキャンした後、メインコンピューターにUSBを差し込み、ウイルスを流し込む。脳無が漬けられている箱にC4を設置し、連絡を入れる。

「こちらES302、破壊はいつでも可能だ。」

スキャンを確認した。処理を任せる。オーバー。

「了解」

C4の時限式装置に電源を入れ、その場を後にする。

ある程度離れた場所に行くと、爆発音が聞こえた。施設が爆発したのだろう。

「こちらES302。任務完了、帰還する。」

迎えをそちらに向かわせた、オーバー

連絡が入り。迎えが来た。施設に転送された。案外すぐ任務が終わって拍子抜けだ。

 

 

TP1864は今戸惑っていた。ES302と一緒になぜか指令室に呼び出されたからだ。任務終わった後に、自由時間を好きなように過ごしていた。前回の任務の反省点を生かそうと訓練に励んでいたおり、一方ES302は見聞を広めようと読書に興じていた。

「俺たちの共通点って言ったら歳くらいか。俺は生まれてから14-15年目だが、君は?」

「...製造から14-15年だ。特別任務なら他にいるはず。」

「だよなぁ。なんでお偉いさん、態々俺らを呼び出しているんだろうな?」

「...着いたら説明されるだろう。」

余り会話が続かない、とTP1864はやりにくく感じていたが寡黙な奴なんだろうと結論付けた。ES302も『こいつとの共同任務は考えられるが、内容が全く想像つかない』と呼び出された理由について一人で考察していたが、情報が少なすぎるため考えるだけ無駄と結論付けた。呼び出された部屋に着く。ドアが開き、施設長の口が開く。

「来たか。TP1864、ES302」

やっと来た、と言いたそうな声音だった。TP1864が質問する。

「呼び出された理由を。」

「そうだったな、まずそれを説明しなければ話にならない。」

少し口角を挙げて含み笑いを零しながら施設長は説明を始めた。

「お前たち、最近の任務はオールフォーワンという(ヴィラン)が関わっていた仕事をしていただろう?TP1864は情報漏洩を未然に防ぐ任務、ES302はオールフォーワンの組織が保有する生物兵器開発施設の始末。」

「...最後に世間に現れたのは俺たちが生まれる前でしたね。」

「お前たちは、世間一般でいう中学3年生から高校1年生になる年齢だ。」

「はぁ...まさか俺たちに高校生活を満喫しろって言う任務なら他をあたったほうが良いんじゃないですかねぇ施設長さんよ。そういうのに夢を見ている奴らはここじゃあわんさかいるしな。」

「半分あたりだ。お前たちは、現№1ヒーロー、オールマイトを知っているか?」

「名前だけなら知っていますが、それがどうしました?」

「確か、先輩方がオールマイトの活動の妨害任務を受けたことがあるってのは聞いたことがある。」

「あぁ、そのオールマイトだ。彼はここ最近じゃあどんどん活動時間が減ってきている。どこかで必ずオールマイトを殺そうとする輩が現れるはずとも考えられる。」

「現ナンバーワンを殺すとか、それこそ寝込みやトイレでも厳しそうじゃねぇの?ミルコでも上位だろ?」

「彼女の数段上だぞ、TP1864。」

「まあ、そこは良い。お前たちの任務は雄英高校でのオールマイトの監視、及びにもしもの事があれば(ヴィラン)の討伐だ。生徒と先生という関係上つきっきりは難しいだろうが、彼がいない間でももし(ヴィラン)襲撃が来たら事だ。」

彼らからしてみたらかなり大掛かりであり、人選ミスも甚だしい任務だと思った。もっと優秀な奴がいるはずなのになぜ俺、僕たちなのだと。

「お前らの年齢だと一番優秀なのがお前らだった。それに一般常識もある。一辺倒の奴らには任せられんのでな。」

合点がいった。だが、もう一つ懸念がある。

「戸籍と名前、その他諸々に関してはどうするのです?」

「それに関しては抜かりない。経歴は偽装してあるし、個性届などのは準備してある。住処も長期任務用のアパートがあるし高校からはかなり近い。苦労はしないだろうさ。」

「受験というものもあるがその辺は。」

「なんのために定期学力テストがあると思っている?」

「...それもそうでしたね。」

「それで受けるのか?受けないのか?」

「どーせ受ける以外の選択しないんでしょ?受けるよ。」

「受けます。」

その後二人は任務の詳細を聞いたのち退室。自室に戻った後、自分のこれからの名前などを知らされ、少しうきうきした。

「俺の名前は青木 瞬、ねぇ。自己紹介でついTP1864って言わないように頭の中に入れないとなぁ。」

 

「名は佐上 茂久...か。名前しっかり覚えないといけないな。」

 

 




やりたかったけど、都合上できなかったワンシーン

佐上茂久は驚いていた。ヒーロー基礎訓練の授業が始まる前にヒーローコスチューム、いわゆる戦闘服を着て、集まっていたからである。そこに手袋とブーツだけのほぼ全裸の美少女がいたらいくら兵士のような精神性とはいえ動揺するだろう。
「葉隠。」
が、動揺を振り切り彼が羽織っていた軍服を模した上着を彼女に羽織らせたのは(年齢上)思春期男子の年齢の判断にしてはよくできたものだった。
「...へ?佐上くん?」
「...俺は目が良いんだ...ほかの人が見えないとはいえ、せめて隠すか特殊な繊維を作れ...!頼むから...!」
「!!」
普段寡黙な彼がここまで動揺するのも珍しい。瞬/TP1864は感心しながらも、葉隠れさんってどんな見た目なんだろうと少し興味がわいた。
一方、茂久/ES302は上鳴と峰田に質問攻めに合いながらも、葉隠の名誉のために「言えないし言わない。」との一点張りだった。
ちなみに葉隠は初めて見てもらえた喜びが沢山沸き上がった反面、全裸を見られた羞恥心のせいで複雑な気持ちになっていた。


このシーンを入れたかったけど、変にスキップするといろいろややこしくなるので、後書きに入れました。
大体この二人の実力は一緒です。設定上本気を出せば(殺害解禁)死柄木弔と黒霧を倒せる実力です。ヒーロー科としての制約があると倒すことは一気に難しくなりますが、気絶させて捕獲くらいは出来ます。


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自己満足なリコリス・リコイルの設定と、短編 

やっぱガンアクションは良いものだ。

調べたり、他の作者様の作品を読んで学びました。しっかり原作を見たわけでもないのでキャラ崩壊気味、口調の違いや解釈違いが起きるとおもいます。ご了承ください。


【プロフィール】

名前:水上 健司

性別:男性

年齢:16

誕生日:6/03

性格:冷徹(?)

パーソナルナンバー:LB1488

【概要】

・本作の主人公である男子高校生(年齢的に)

・一人称は「俺」で、二人称は相手によって「あんた」「お前」などを使う。敬語も一応使える。

・常に無表情だが、時折笑顔を見せることもある。

・身長172cm、体重65kgとやや痩せ型体型

・見た目のイメージ:イヴ(NieR:Automata)を黒髪にして、表情を全体的に柔らかくした感じ。ただし上記。

・戦闘と『銃』の才能を買われ、アラン機関からリリベルに配属されたが、リリベルの「群の動き」だけでなくリコリスの「個々の動き」も訓練した結果、周りから変わり者を見る目で見られている。本人からしたら「いつ孤立するかわからない。どんな状況にも対応できるようにしなければ生存と任務の遂行は不可能」と断じており、寧ろ周りがおかしいと思っている節さえある。度重なる訓練を積んだ結果、戦闘、格闘、暗殺術、潜入技術等を高い水準で身に着けており、ファーストリコリスとも渡り合えるくらいには強い。

余談だがモデルは二代目死神(暗殺教室)とハンク(バイオシリーズ)。そのためリリベルのような秘密裏の銃撃戦をする際には顔が割れないために必ずガスマスクを着用している。戦い方は派手に見えて堅実。中距離は射撃、近距離はナイフと格闘メインと使い分けながら「任務遂行」が第一、「不必要な犠牲は出さない」を次に優先している。ただし必要であれば殺しも厭わない。

「This is war. Survival is your own responsibility」

「例えこの技術を使う確率は少なくても、研鑽しない理由にはならない。相手が奇襲だの銃撃だの狙撃だの様々な手法を用いる。それに対処するための訓練だろ。」

「任務は成功こそしたがやはり殉職率は高い。今回も任務に当たった5%以外の人的資源が失われた。」

 

使用武器:H&K USP (近距離中距離、実弾入りハンドガン)

     M1911  (近距離中距離、非殺傷弾入りハンドガン)

     H&K MP5A3(中距離、サブマシンガン)

     タクティカルナイフ

 

 

最後の対象を無力化する。俺がこの依頼を完遂するにあたって、無力化しなければならない人物だ。今回の任務でも俺の部隊は無事では済まなかった。以前の任務ほどではないが、やはり殉職率は高い。だが、それは主に「自分の技術が優れている、そして相手は日本にいることもあって素人だ」という考えから来る慢心と油断、及び周囲の警戒を怠ったことが要因だ。任務では安全地帯なんてないのは当然のことだと訓練時代に言われたはずだ。

「任務完了、全対象は無力化されました。...えぇ、生きてはいます。彼から情報を引き出すことは可能です。...いえ、参考人の半数は抵抗にあいやむなく射殺。雇われ兵との銃撃戦もあり、半分以上殉職しました。...はい、データも回収済みです。...了解。行くぞ、撤収だ。」

「りょーかい、相変わらず冷たいねぇ...『ハンク』隊長?」

「ここは戦場だ。運命も、活路も自らで切り開くものだ。」

「ところどころでフォローしてた人の言うセリフじゃないね」

「人的被害を最小限に留めろと、上からの指示だ。気付かなかったのはあいつらの損失だ。」

「そうだねぇ...」

一人の隊員はどこか、浮かない顔を見せた。隊員の中に仲の良い奴でもいたのだろう。しかしここではいつ誰が死ぬかなんてわかりはしない。俺もその一人だ。今回の任務で俺が生きれたからと言って、次の任務で俺が生きて帰れるかなんて誰にも分らない。未来は不確定要素に溢れている。だから備え続けねばならない。理不尽や残党やそのほかの敵からの強襲など。

撤収している最中、小さな足音が聞こえた。控えめな足音。隊員の足音に紛れて、一人だけ軽く、そして注意を払いながら歩いているような足音だった。

「周囲を警戒しろ。リコリスだ。」

瞬間、発砲音が響き、一人倒れた。おそらく件のデータの横取りが目的なのか、それともこちらの殲滅か。どちらかはわからない。一瞬しか見えなかったが制服は赤、日本人離れした様な容姿をした女性だった。すぐに指示を出す。

「『ジャック』、この場の指揮は任せる。『ジョン』はこいつを本部まで持っていけ、依頼達成のためのものだ。『ベクター』、『ゴースト』は周囲の警戒を怠るな。こいつは俺が足止めする。」

「ちょっと隊ちょ!」

「参考人たちを回収するのが俺たちの任務。リコリスに渡すなと上からの報告だ。ここは戦場だ。運命は自ら切り開け。」

『ジョン』が異を唱える前にかぶせる。この場では判断が遅れればそれが命取りになる。ここで喋っている時間も相手にとっては奇襲のチャンスだ。

それを聞くや否やリコリスは俺の隊に向かってきた。おそらく全員一気に仕留める気だろう。牽制の為に弾をいくつか小刻みに連射する。こっちに向かい、走りながら避けている。彼女が噂に聞く弾を避けるファーストリコリスだと確信した。取り回しの良いハンドガンとナイフに持ち変える。案の定こちらを注視しながら隊に銃を向けている。一発足元に発砲すると飛んで避け、壁を蹴り、一気に距離を詰める。

予想通りだ。

構えていた蹴りを横っ腹に入れる。放たれた蹴りはリコリスを吹っ飛ばし、彼女は壁にぶつかる。「かはっ」という苦し気な声とともに鈍い音が耳に響く。一瞬の隙を逃さんと残った部隊は倒れた隊員、重要参考人とデータとともに急ぎ足でここを離れる。リコリスは何事もなかったかのように起き上がり、呆れたかのような声で話しかけてきた。

「可愛い女の子に躊躇なく蹴りを入れるって、黒いリリベルは随分と乱暴なことするのねぇ?」

「...」

「無視すんな。泣いちゃうぞ?」

会話に乗る理由がない。俺の後ろにいた隊は既に撤退に向かっていた。今、ここは戦場。運命は自らで切り開け。尊敬する教官の言葉を自分の中で反復する。現在装弾数は6/7発。あちらはおそらく5-7/?、銃の種類をよくわかっていない以上こちらが不利だと考えるべきだ。相手は銃弾を軽々と避ける運動神経、動体視力と洞察力を持つ手練れ。だが、体術や接近戦においてこちらに多少の分があると思いたい。リコリスは踏み込んだ。こちらに銃を向け発砲するが、寸前に全体をずらし、弾丸は頬を横切る。現在中距離の間合い。サブマシンガンを使いたいところだが相手が相手だ。元々分が悪いのが更に悪くなる。両手がふさがるのがかなり痛い上、弾丸を避けるのだからなおさらだ。

発砲する。やはり避けられそして接近してくる。ナイフを握り直しそしてそれを振る。バックステップで避ける彼女を追撃する。戦い方がわかってきた。彼女は銃しか使いたがらない。至近距離からの射撃が主体の様だ。蹴りもたまに使ってくるが、思惑があるのか射撃以外で致命傷になりうる攻撃はしてこない。というよりも急所をあまり狙っていない。最初の頭だけだ。

なんにせよ、やる事は変わらない。奇襲してきたファーストリコリスを無力化し、尋問する。

「やはり噂通りの寡黙さと冷徹さだね。無機質なまでに任務達成を優先する君はこっちでも有名だよ。」

戦っている最中に話しかけてきたが答えるつもりも義務もない。無駄口を叩きすぎるリコリスに苛立ち交じりの溜息が出る。

「ガスマスクと黒い戦闘服を身に着けたリリベルは大きな脅威って言われたけどその通りだったよ。まさか私と互角の人がいるなんて、世の中は広いものだね。」

「随分と余裕だな。敵に向かって悠々とおしゃべりとは。リコリスは存外、暇人が多いらしい。」

「やっと返してくれた。やっぱり喋れるんだねぇ。というか随分と辛辣ね?仮にもファーストを暇人呼ばわりって。」

タイミングよく無線から声が入る。任務終了の通達ともう俺はもう必要ないとの事だった。曰く、リリベルとしてはかなり高い腕を持ちながらも殉職率の高い依頼で人的資源を失い続けたことが決定打らしい。そんな依頼を引き受けてこちらを向かわせた上の問題とツッコミどころがあったが、おそらくもう一つは過酷な任務でも俺が必ず任務の達成という成果とともに帰還し続けたことだろう。ここまで俺を含めた一握りが帰るとなると変な疑いがかかるのも致し方なしだが、「D.A.の上の連中はバカなのか」と思えてくる。ただ、解雇ではなく。別の支部への転属。もしくは左遷らしいが、それでも猶更『俺と同行する部隊が赴く任務の概要を見直せ』と言いたくなる。

「行くとこなくなった感じかな?黒いリリベル君?」

「聞いてたのか。ファーストリコリス。」

ニヤニヤと鬱陶しい表情を作りながら聞いてきた彼女をファーストリコリスと呼んだ瞬間少し怒ったように頬を膨らませた。名前を知らないからとはいえ、少し不躾だったようだ。もう戦う理由はないと銃を仕舞うが、ナイフは手に握ったままにする。

「銃を仕舞ってもその物騒なのは抜身のままなのか。」

「争う理由は有らずとも、お前がまた俺を殺さないとも言えないしな。」

「えっ?...ぁたしってそんな信用ない?」

「会ったばっかりな上、その数秒間命のやり取りをしあった奴を信用できるか?」

「無理だね」

「そういうことだ、ファーストリコリス。」

また、彼女は頬を膨らませた。余程気に食わなかったようだ。自分の名前を誇っているのが少し羨ましい。俺はずっと人として与えられた名前ではなくリリベルとして与えられた『ハンク』として活動していた。俺にとって『ハンク』の方が名前に近い感覚だった。だからコードネームや役職である『リリベル』と呼ばれることに抵抗も悪感情もなかったのだが、彼女は違うようだ。

「さっきからファーストリコリスって...人を名無しの兵士みたいに呼ばないでくれる?私には『錦木千束』って名前があるのよ?」

「...そうか、わるかったな錦木。」

「そういう君の名前は?コードネームじゃなくて名前。」

「...水上健司だ。」

「じゃあ、健司くんだねっ!」

「は?」

「だから君の呼び名だよ!」

「...そうか」

心底どうでも良い。呼び名自体こだわったことがないし、その上、水上とも健司とも呼ばれたことがない。何時だって『ハンク』だった。ただ、こう呼ばれるも悪くないと思った。だが、大半は反射神経で返しているだけだ。事実、本当にどうでも良い。

「そうだ!行く当てのない可哀そうな健司くんに提案があるんだ!君、どうせ私たちの支部に来るんだからリリベル以外の仕事をしない?」

「D.A.の支部か。つまりお前の下で働けと...そういうことか?」

「ある意味ね。そして私からの条件は二つ。任務では犠牲や死者は最小限に抑えること。そしてカモフラージュとして喫茶店の店員としての役割を全うすること!」

なるほど、ある意味とは彼女直属の部下としてではなさそうだ。二つ目もカモフラージュとしてかなり良い。D.A.が守っている日常を見る機会もかなり少なく、興味も少しあった。だが、ここで悩むのが自分の在り方だ。俺は生まれてから16年間、ずっと兵士としての訓練しかしていなかった。戦うための才能、敵を無力化する才能、極限の状況でも生きいられる才能。そんな才能を買われリリベルの部隊に入れられた。そんな兵士としての訓練だけを積ませられた俺を、今度は喫茶店の店員にする。かなり手間がかかるだろう。何せ、休暇時も訓練をしたのち、遠目で料理を作っているところ、遠目でコーヒーやお茶を淹れているところと、遠目でしか見たことない上に、気にする余裕もなかったのだ。

「兵士としてしかの訓練を受けていた俺にそれを依頼するのか...手間かかるぞ?」

「いいの!あたしも慣れるのに時間かかったから!接客業は得意だけどね!」

「生まれつきだろそれは。」

そう言いながら、施設の裏口を目指す。錦木の明るさと刹那主義的思考に呆れながらも彼女の言うD.A.の支部の一つ、喫茶店リコリコへ共に足を運んだ。途中で着替えて、それなりの服を着た。ガスマスク外して出たときに思いのほかびっくりされた。なぜだろうかと考えていると「ガスマスクをずっとしているイメージだったから、顔とか想像できなくてさ。」というかずっと無表情だねと足された。そんな中身もない錦木の話を聞き流しながら例の支部に向かった。道中、リリベルにもリコリスにも出くわさずに支部にたどり着いた。

支部に入ると鈴の心地良い音とともに錦木の「ただいまーっ!」という元気な声が店内に響く。貫禄のある男性がゆっくりとこちらを見てくる。彼は店員だろうか?「君が本部から転属された『新人』だね。ここの店長のミカだ。これからよろしく頼むよ...『ハンク』だったかな?」

なぜかリリベルとしての名前を呼ばれた。やはりここも一応D.A.の支部の一つなのだなと思いながらも、その名前を呼ばれたことに他に意味があるのかと思案を巡らしながら彼を警戒した。

「...よろしくおねがいします。ミカさん」

「あら、中々のイケメンね。まさか千束が私に献上しに来たのかしら?」

「ミズキ、16歳にまで手を出すのは流石にマズいんじゃない?酔っ払いもここまで来るといっそ清々しいわ。あとミカさん、今は水上健司くんだよ。」

「あぁん?!誰が酔っ払いよ小娘ぇ!」

D.A.にもこういう人もいるのだなと呆れ半分驚き半分で見ていると、ミカさんに案内されて早速着付けや店員としてやるべきことを確認してもらいながら制服の袖に腕を通し、喫茶店の表に立った。喫茶店の客の注文を取りながら、客によっては水とおしぼりを渡したりした。『ミズキ』は別の意味で警戒しなければならなそうだ。

少し時間が経つとどんどん客も来る。一息付いていると合間に錦木に話しかけられた。

「健司くんってさ、言動は無機質なのにごくたまにふわって笑顔みせるよね。何人か女の子、見惚れてたよ?」

「接客しなくてもいいのか?」

「先輩として新人の面倒を見ているって言ったら少し待ってくれてるんだよ。私と話している時は基本無表情なのに接客する時にたまに笑顔を見せるのはミカさんの入れ知恵?」

「身近な手本を見ていただけだ。接客業は笑顔でやるものだろ。常に笑顔は俺には合わない。だから俺なりに模倣しているだけだ。仕事に戻る。」

人懐っこく話しかけてくる錦木を流しながら、仕事の持ち場に戻る。正直、彼女の人懐っこさには慣れない。何人か隊にもいたが、ここまでではなかった。女性と喋ることも考えてみれば少なかった。が、それはどうでもよい。今の役目を遂行して、依頼が来れば要望に沿って達成を最優先するだけだ。

今日は客足が良く、「黒字」らしい。曰く「人懐っこくかわいい先輩の錦木」と「クール美形イケメン後輩の水上」という構図が出来上がったらしくそこに一定の需要があるという話らしい。ただ、錦木からは「クール通り越して無機質なんだよなぁ」とつっこまれた。酔っぱらっていた女性が話しかけてきた。

「そういえば紹介が遅れたわね水上君。私は中原ミズキ。ここの店長補佐役とD.A.の情報部をしていたわ。」

D.A.の情報部となるとかなり能力の高い人なのだろう。組織が扱う情報量は多く、偽りと真実、そして不確定要素が混ざっている。そこから、依頼の重要人物の特定や、敵の情報等を割り出すなど、能力が高いとそもそも仕事にならない。そんな彼女がなぜここにいるのかが疑問だ。何か事情があるのだろうか?その疑問の答えを錦木が後ろから呆れたようにひけらかす。

「んなこと言ってるけど、ここにいるのは出会いが欲しいからだよね。」

「うっさいわね!周りが家族やらお付き合いしている中なんで私だけ何もないのよ!」

呆れてものも言えなかった。だが人の生き方は人それぞれだ。口出しする理由もないが、今の酔っ払いの女性が荒れながら騒いでいるのを見て寄り付く男などごく少数だろう。店長のミカさんが話しかけてきた。

「お疲れ様水上君。初仕事どうだったかな?」

「...普段とかなり違いましたね。接客はある程度こなせても、店長のような食料を作るのに時間がかかると思います。」

「そうか」

彼は意外そうに俺を見る。同時に少し悲しそうにも見える。結果を聞かれたので反省点と改善点を言うべきだと思ったのだが違うようだ。なにやら、まだ客が集まっている。錦木は客と卓に座りながらチェスやオセロの盤面を見つめている。

「今日はボードゲーム大会でね、水上くんも良ければ参加しないかい?」

「いえ、勘が鈍らないためにも、先に上がります。問題は山積みですので。」

今日ここにいる理由はもうない。泊まるところもない今、宿泊先の事も考えなければならないし、自分の荷物をここにおいて場所を取るわけにもいかない。裏の控室に戻り、自分の荷物をまとめて居ると錦木が入ってくるなり話しかけてきた。

「そういえば健司くん住むところないのね。相変わらずD.A.、ここに飛ばされて後は勝手にやれって感じなのかな?」

「さあな。他に始末されないだけマシだ。」

「そんな可哀そうな健司くんに、提案があります!私のセーフハウスに住む?」

こっちにとっては願ったり叶ったりだが、錦木にメリットがない。元リリベルの俺。戦闘能力は互角。場合によって彼女が俺に殺される可能性もある。何が思惑でもあるのか。

「お前に利がないだろ。寧ろリスクしかない。」

「いや、利点はあるよ?君、理由がない限り殺しもしないでしょ?事実私とやり合った時も急所に当てる気はなかったでしょ?」

どういうことだ?まさかこいつ、そんな理由で引き取るとか言うつもりじゃないだろうな?「殺さないから傍に置く。」そんな安直な理由なのだろうか?

「それに、私と互角ならこっちに来るリリベルの対処もできるでしょ?水上、いや『ハンク』のD.A.の黒いリリベルって噂凄いからね?」

「そうだね、どんな任務でも必ず任務達成という成果と共に帰って来る。文字通り。例えリリベル一人を残して全滅したとしても。黒いリリベルだけは任務達成という成果と共に必ず帰って来ると。」

覚えがある。いくつかの任務はファーストリコリスの始末または無力化、武装された敵性傭兵団の殲滅、社会にとって重要な人物の護衛、及び送られてきた暗殺者の無力化。いくつかで最後には俺一人だけが任務を遂行して生き残っているなんてことも何回かあった。上層部はそこから俺、及び実力やポテンシャルの高い者何人かに殉職率の高い任務を依頼。そして、厳選されるが如く実力不足の兵士から殉職していった。『ジャック』、『ジョン』、『ベクター』、『ゴースト』も過去に任務を共にした兵士達だ。D.A.からここに配属される以前から、何回か任務を共にしていた。

「何が言いたい?錦木。」

「自分の身は自分で守りよりも、お互いの背中を守り合った方が心強い...そういうことかな?千束ちゃん?」

「そ!それにD.A.からここに異動させられた以上、必ずしも後ろ盾があるわけじゃない。リリベルもたまにこっちにも押しかけて来たりするから、君にとっても悪い事じゃないでしょ?」

それも確かにそうだ。俺は事実上ここに厄介払いされたがD.A.がただの厄介払いをするとは限らない。いつ殺しに来るかわからない。教官にも「任務の遂行するためにはまず生きていなければならない。」とも言われた。現時点での任務は変わらず、リリベルとしてのいつでも活動できるようにしなければならないこと、そして新しくリコリコの作業員としての役割を全うすることだ。その両方は敵性組織の襲撃の末に死んでしまえば失敗だ。となれば応じる方が安全だろう。

「....了解。これから世話になる。」

「話が分かる奴で助かるよ。それじゃ私はボードゲームに戻るよ!また後でね!」

錦木が控室から出たので話はここで終わりだと思ったら店長が次の言葉を発した。

「それと任務の話なんだが、早速D.A.から指令だよ。」

「内容は。」

「ウイルス兵器を開発している研究所が山中にあるとD.A.からの通達でね。『ハンク』にそれを確保、及び使用を未然に防ぎたいとのことだ。」

「敵の装備は」

「警備兵は短機関銃を持っているね。出来るかい?」

「確保した後はどうすれば?」

「D.A.から回収する人が来るそうだよ。」

「了解、見ての通りいつでも行ける。」

「店が閉まったら、裏にバイクがある。それを使っていってね。」

「了解。」

時が経ち、店が閉じる。錦木からセーフハウスの座標と鍵をもらい、そして任務の場に向かう。山の中の研究所だ。ダクトを外し、中へ侵入する。ガスマスクがあるおかげか臭いは軽減されているがやはり不快感は拭えない。D.A.の情報部によればサンプルの入ったケースは近くのはずだ。警備兵も巡回しているが研究室の中にはいない。空気配給管を通り、件の兵器の置き場、及びに製造データと実験記録をUSBに移す。だが、余りにも静かだ。不自然なまでに静かだ。そういえば、研究を続けている科学者が一人いてもおかしくない。簡単すぎる。データを移し終えた。後はウイルス兵器の回収だ。警備兵を体術で気絶させるだけに留める、巡回する兵士も待遇が良くないことがよくわかる。プロテクターすらつけてないのがなんとも解せない、がやる事は変わらない。仕留めた方が良いがそれだとリリベル、及びにリコリスや掃除屋が来た時に尋問が出来ない。情報源は多いに越したことはない。非殺傷弾入りのハンドガンを構える。研究所の奥に行くほど声が聞こえる。

ここからはまたダクトに入ったほうが良さそうだ。入った形跡をしっかり無くすようにガワだけ何もなかったかのように見せる。会話が聞こえた。

「あの研究者またヤバい代物作ってるみたいだぜ?」

「遺伝子に影響を及ぼして強制的に進化させるウイルスだってよ?」

「もう基盤が出来ているし今ある奴らで十分なはずだぜ?上の連中はこいつらを作って戦争でもする気かよ?」

データを移している間にいくつかこの世の物とは思えないような生物のデータを見たがあれを売るのかと考えたら合点がいく。しかし、俺一人だけにしたのがおかしい。普通ならリコリスも何人かここに来させるはずだ。

会話に続きがあった。

「そういえばこっちに高校生の女が何人か来てたな。見学ってわけでもなさそうだし職場体験でもしに来てたのか?」

「2人来てたな。全員容姿は良かったのにな。あの研究狂いに行ったのが運の突きとしかいえないね。」

「違いない。良くても実験台コースだろう。」

来ていたらしい。ただ、彼女らの存在を教えなかったという事実にまた疑問が残る。何にせよ任務が先、安否の確認は後だ。

例の部屋に続く排気口に着いた。研究者は何か必死に研究をしている。大きな音を立ててはいけない、周りに気付かれたらそこで終わりだ。

排気口から出て彼の後頭部に銃を構える。

「治安維持組織の者です。一緒に来てもらいますよ。」

「来ると思っていたよ。実験サンプル候補はこれで40人目だ。外部から今まで2人、送られてきた『志願者』は38人だ。実験体が増えるから困らないんだけどね。」

彼の話を聞くと俺がここに来る前の奴らは無事かどうかわからないらしい。

「そうか」

そう言って俺は科学者を撃ち、気絶させる。「うぁ...!」とうめき声をあげて気絶する。サンプルを回収して、パソコンから彼のデータをUSBに移しながら閲覧する。他のリコリスの実験データもあった。無線をD.A.につなげる。

「こちら『ハンク』。件の兵器担当の科学者を確保した。」

『相変わらず仕事が速い。例の科学者と兵器の回収は?』

「はい、今気絶しています。兵器に関しては今データを移しています。サンプルも回収しています。実験体はどうします?」

『実験体?』

「どうやらここに2人、外部から10代当たりの女性が来ていたらしい。」

『セカンドリコリスのコンビをそこに送っていたな。彼女らの安否は?』

「不明ですが、碌な目に会ってないと思います。回収しますか?」

『可能ならな。安否の確認だけで十分だ。科学者に関してはこちらから掃除屋を手配する。彼らが回収するのでその護衛は結構だ。すぐに向かわせる。』

「了解。」

D.A.もここを前から怪しんでいたようでアラン機関やD.A.から科学者何人かはここにいたらしい。次はリコリスの安否だ。データの移動が終わるカメラを見る限り何人かはもう寝ているか研究しているだけみたいだ。研究狂いという言葉にも納得がいく。実験室のモニターを見ると案の定いた。が、様子がおかしく出口を探していた。もう一人はぐったりとしていたが様子がおかしい。

「安否を確認。一人は体調を崩しており、もう片方は焦燥しています。」

『了解、あちらの研究員が送ったデータを見ても初期症状が出ているだけだ。念のため救助が来たとだけ教えろ。』

「了解。」

実験室に向かった。やはりというべきか実験現場を好き好んでみる人はいないだろう。特にウイルスに関する物ならなおさらだ。実験現場に着くとリコリスが俺に気付いたようですぐにこちらに駆け寄った。

「あなたD.A.のひとでしょ?!助けて!」

かなり焦燥しているようだった。

「もうすぐ掃除屋が来る。こっちにもワクチンがあるはずだ。D.A.もバカじゃないだろうからおそらくあっちも薬を作ってくれるだろう。だからいったん落ち着け。」

そう伝えると状況を理解したようで少し落ち着きを取り戻した。数時間後に掃除屋が来た。科学者一行も掃除屋として伝わっていた為特に気にすることなく件のサンプルと重要参考人、そして実験体になったリコリスを回収していった。

「任務完了。撤収する。」

『了解。よくやった、ハンク。』

気の利いた会話やお洒落な掛け合いなどなく任務は終わる。俺は個室で着替え、ここに来るときに乗ったバイクで錦木の情報をもとに、セーフハウスへと向かった。

意外とわかりやすいところにあるようですぐに錦木のセーフハウスだってわかった。後ろから足音がする。5人の小隊、チームといったところか。非殺傷弾入りのハンドガンを手に持つ。ガスマスクはしているままだが戦闘服ではない分、当たれば危ない。下に防弾服を着ているがそれだけだ。

「元本部直属リリベル、『ハンク』だな?」

赤い服を着た隊長が喋る。確認を取るかのような声音で聞いている。

「そうだな。コードネーム上はな。」

「上の命令でお前の回収と錦木千束の始末をしに来た。」

俺の回収。D.A.は俺をリコリコに移した手前、なぜ回収が必要なのか疑問だ。何より錦木の始末はむしろ悪手だと思った。

「大きな人的資源の浪費になるぞ。それでも彼女を始末する気か?」

「それが上からの命令だ。お前も来てもらおう。」

上からの命令と一点張りだ。警戒はすれど、噂は噂だと高を括った顔だ。後ろから走る音が聞こえる。錦木だ。全員が俺から視線を外し足音が出る家に向ける。その隙を逃がさず、隊長に接近する。彼は一瞬おくれたがギリギリ気付いたのか、焦って表情で銃を発砲する。ここで全員俺に向き、銃を構える。ここまでよし。射線を敵に重ねるように動く。これで容易に発砲できないが隊長は構わず撃つ。

「バカが」

声が漏れる。誰かが痛みで叫び呻く声が走る。銃を手から弾き、流れで顎にフックを叩き込み、最後にハイキックで意識を確実に刈り取る。錦木は部下を二人倒していた。俺は近くにいた一人に走り、銃を強く弾く。勢いで敵も後ろを向きそこからすかさず首を決め締め落とす。打撲音が聞こえて錦木が呆れたような、安心したような声で話しかけてくる。

「無茶しすぎ。撃たれていたらどうするの?」

「お前がここにいたのはわかっていた。いなかったら別の動きをしていたさ。それよりも...おい。」

撃たれた兵に歩み寄る。

「上に伝えろ、俺達はお前たちD.A.本部に敵意は全くないが、敵性部隊を送れば必ず迎撃すると。」

「はい。うぐっ...」

錦木が彼に応急処置をする。

「動かないで。すぐ終わるし、殺したいわけじゃないから。」

俺はそれを見てセーフハウスに向かう。犠牲を最小限にとどめるのは慣れているが、手当までする奴はあいつが初めてだ。錦木に会ってから初めての事ばかりだ。初めて水上健司という名前で呼ばれた。自分は兵士だけではないと考えさせることも、寧ろ兵士以外の生き方もあると気付かせるきっかけを作ってくれた。あいつは、ただのファーストリコリスじゃないって事がよくわかる。

リコリスが自ら人助けなんて聞いたこともないが、それが彼女の生き甲斐なのだろう。少なくとも、俺がこうなってしまったが、彼女はたとえ俺と同じ目に会ってもあの明るさのままだろう。羨ましい限りだ。

ドアのあく音がした。

「あぁ、そうそう!ようこそ我が家へ!千束'sセーフハウス1号!」

「宿泊場所の提供、感謝する。」

「わぁ、いつも以上に淡泊な声。こう、心から喜ぶことはしないのか?ずっとそれだと疲れるでしょ。」

「もともとこうだ、疲れるのはお前のテンションだ。そのテンションで体力が有り余っているのは凄いな。」

「疲れ知らずな元気っ子でかわいいってことかな?!」

「うるさいって事だ。」

「ひっどーい!」

ぎゃいぎゃいと錦木が騒ぐが、無視する。聞き入れるだけ無駄だ。明日も喫茶店で働く為おそらく朝は早い。少し精神と体を休ませるべく、シャワーを浴び、歯を磨き、睡眠をとることにした。そういえば、掃除屋が俺以外にもリコリスがもう一人配属されると言っていたな。あいつも訳ありみたいだが、今はそんなことを考えても仕方がない。そう思い、眠りに落ちた。

夜が明ける。錦木はまだ寝ているようで「むにゃむにゃ」とリコリスらしからぬが少女らしい寝息を立てていた。普通の人が見ればエージェントには見えないなと納得する。任務用の装備を持ち、私服でリコリコに向かう。朝の5時、この時間は車もあまり走っておらず日も上っている。バイクを走らせながら俺は今の配属先に向かう。

バイクを降り、荷物を持ちリコリコの裏口から入り、制服に着替える。電話が鳴る。錦木からだ。

「なんだ?」

『健司くん今どこなの?!まさかもうリコリコについているなんてことないよね?!なんで起こしてくれなかったの?!』

早口に文句をまくしたてる錦木にため息しか出なかった。

「頼まなかっただろ。」

『頼まれなかったらやらないんかアンタは!?』

「必要なさそうだったからな。お前みたいなのが寝てたら起こすのをためらうのが普通だ。」

『可愛いね姿に見とれてたんならそういえば良かったのにィw』

「起こした後が面倒そうだから起こさなかっただけだ。」

『ハァ?!』

これ以上は意味がないと思い電話を切る。

「おはよう水上君。昨日の任務、死傷者ゼロで要望通りに任務を遂行したそうだね。お疲れさま。」

店長がホールに続くドアから着替え室に入ってきた。

「ありがとうございます。今日は昨日と変わらない感じですか?」

「そうだね。でも時間があるから仕込みかな。」

「...店長、コーヒーの淹れ方、教えてくれませんか?」

「真面目なんだね。...あと千束ちゃんに辛辣過ぎると大きなしっぺ食らうから気を付けなよ?」

聞かれていたみたいだ。その後喫茶店の作業員の役割を全うできるように開店まで喫茶店の料理の作り方やコーヒーの淹れ方を教わったりした。途中で騒がしく入ってきた錦木に、起こしてくれなかったことを責められるが、新しく配属されたセカンドリコリス、井ノ上たきなに意識が行ったため、そこまで何か言われることはなかった。というよりも教わった内容を実践していたので聞き流していた。三回目だ。一つは店長さんが飲み、もう一つは結婚できないと嘆いていた中原に渡し、最後のは俺が飲むつもりだったが、一口しか飲めず、気づいたら錦木が飲んでいた。少しいら立ちを感じたがそれを飲み込み、声をかける。

「店長さんに比べたら全然だろ。まだ慣れないといけない。」

「精進したまえよ少年。」

肯定なのか否定なのかよくわからない言葉を残し、彼女は着替えに行った。ため息が漏れながらつい、思ったことが言葉に出る。

「...あんたも変わらねぇだろうが。」

 

井ノ上が入ってはや数時間、昨日よりお客さんが増えた。快活な錦木、クールで冷静な井ノ上、そしてなぜか陰のある俺。全員人気になりうる要素があるみたいだ。ただ、俺の「陰のある一面」がなぜ人気になりうる要素になるのかが皆目見当つかない。店長さん曰く、「陰のある表情からたまに見せる笑顔が人気になる理由だよ」と言われたが意味が分からなかった。容姿に優れる二人はともかく、俺はそこまででもないはずだ。

「井ノ上、二番テーブルの接客頼めるか?」

「はい、その後は」

「呼び出されたら応対、もしお冷とおしぼりがない場合は出しておけ。」

「了解。」

井ノ上の言動は錦木とは正反対だ。必要以上に客と雑談せず、教科書通りの接客といった印象だ。個人的にはこちらの方がやりやすい。騒がしい人より落ち着きのある人の方が面倒さの度合いが低い。上のやり取りのようなのを数度繰り返し、すぐに順応していたが、彼女から微かな焦りが見える。余程D.A.の本部に行き、『名誉あるリコリス』に復帰したいのだろう。俺もD.A.の過剰な刷り込みを真に受けていたらこうなっていたのだろうかと思うと少し安心できる。何せ俺がD.A.でリリベルをやっていたのは他にやる事がなかった上、その生き方しか知らなかったからだ。結局は長期任務としか認識できなかった。

 

休憩時間中にD.A.の実働部隊としての任務を引き受けた。曰く、『たまたま自撮りで撮った写真が銃の取引現場の場所だった』ようだ。こういう偶然もあるものなのだなと、世の中の因果に関心を持ちながらも、酔っ払いの僻みを聞き流した。曰く「撮り映えに意識しすぎた罰」だそうだ。それなら俺は自分への依頼の為に殺した命に対しての罰がいつ来るのだろうか。俺は任務成功のために、自分を顧みなかったし、部下の命も見殺しにしてしまった。依頼に沿うための殺しも行った。最小限に犠牲をとどめても、殺すべき時は殺した。その報いはいつか来るのだろう。だが、せめて今は来てほしくない。自分の居場所ともいえるリコリコを、「人」としてもう少し享受したい。もし、罰が来たときはリコリコがなくなるときか、俺が何かを引き換えに死ぬ時だ。

 

井ノ上がトラックに護衛対象を乗せておとりに使った。傭兵たちは彼女を人質として確保しようと銃を構えてトラックに歩み寄る。非殺傷弾を用いて傭兵たちを気絶させる。少々遠く、外だからというのもありサブマシンガンを使う。次々と命中し、敵は気絶していく。こちらに注目が集まる。人質になりそうな護衛人物と井ノ上は二の次といった感じだ。残った敵は銃をこちらに構えるが、もう彼は助からないだろう。上から錦木が降ってきた。別の敵を撃ち、気絶させる。

「随分いいタイミングだな。助かった。」

「お礼を言えるようになったなんて成長しているじゃないか。」

「言ってろ。」

粗方片付いた。それに気づいた護衛人物が井ノ上と錦木に抱き着き、全員で泣いていた...一般人からしてみれば恐怖が強いのも当然か。落ち着くまで待った。

「井ノ上、俺の聞きたいこと...わかるか?」

「いえ...」

「...なぜ護衛対象をおとりに使った?」

怒りを可能な限り抑えて彼女に問う。

「...その方が敵を引き付けられて仕留めやすいと思いました。」

「護衛任務って言葉の意味を分かった上でその行動をしたのか?井ノ上。」

「...護衛対象を守る任務です。」

「お前は何をした?」

「ハイハイ!たきなを詰めんな!気付いてないかもだけど涙目になってっから!」

舌打ちが口から洩れる。思った以上に苛ついていたようだ。護衛対象も井ノ上を庇うように口をはさむ。

「私、本当に気にしてませんから。」

井ノ上にだけ聞こえるようにつぶやく。

「...次似たようなことをすればお前を任務の妨害する敵とみなす...わかったか。」

「健司くん!」

「チッ...撤収するぞ。」

 

撤収した後、特に目立った会話はなくリコリコに戻った。まだ時間があったためコーヒーや飲食物の調理の練習と実習した。『ずっと兵士だった割に意外と筋が良いね』と店長さんから太鼓判を押されたため、接客と調理をある程度任されるようになった。リコリコの今日の営業は終了し、セーフハウス一号に入り一息つくと千束が少し怒ったような、悲しそうな声で俺に聞いてきた。

「あそこまで詰める必要あったの?」

「あいつの行動で依頼が終わるところだったぞ。」

「それはそうだけど...」

「あいつが本部に戻りたいのであればまず余計なリスクを作らないように立ち回る動きを覚えてもらわないといけない。合理を重視するあまり回避できたリスクを追ってそれで任務失敗したらそこまでだ。二度とリコリスとして復帰できなくなる。」

「...言い方ってものがあるでしょうよ。」

「これでも抑えた方だ。少なくとも、今までずっとああだったのならここに転属されたのも納得だ。」

「ちょっと...!」

「ただ、それが治れば本部に戻れる可能性もあるだろうな。事実、井ノ上も優秀だ。不殺の誓いも、リスク管理もこなせれるようになるだろ。」

「...ただの冷血漢だと思ったら意外と褒めるんだね、健司くんって。」

「オレの目で見た事実に基づいて評価しているだけだ。」

錦木が微笑みながら安心したかのように言う。反省点、改善点と長所を述べているだけだ。ただ、確かに俺は人より冷たいのかもしれない。環境が許してくれなかったのと、少なからずそういう性格だったからだと思う。

何が彼女をそこまで不安にさせたのかはわからない。俺は事実に基づいて評価したにもかかわらず、さっきまで怒るのを必死に抑えるような声音で聞いたからだ。人というのは難しいものだと実感する。

錦木は「そういえばさ」と思い出したかのように話し始める。大概こういう始め方するときは碌な話題じゃない。

「なんで全員敬称か苗字で呼ぶの?私の事は錦木って呼ぶし、たきなの事は井ノ上、ミカさんの事は店長さんって呼ぶし、ミズキの事も中原さんじゃん。」

「理由がない。」

「じゃあ、名前で呼んでよ!寂しいんだよ私だけ名前で呼んでるの!健司くんと良いたきなと言い、ここに来るD.A.の実働部隊はなんでこう他人行儀過ぎるかなぁ!?」

ここで名前呼びしないと後が面倒だ。苗字呼びする度に訂正を促してくる上、それを無視したら騒ぎ始めるのが容易に想像できる。

「...あとで後悔するなよ錦木...千束。助けてくれたのは感謝しているが、口の悪さは変わらないからな。」

慣れてない呼び方をして錦木は呆れたように笑いを零す。

「自覚してたのね健司くん。」

「隊の誰かが死ねば必ず辛い思いをする。それに任務をこなしてこそのリリベルと教わったからな。情を捨てたり、持たないことが効率的だと思っていただけだ。」

錦木...いや、千束は心底不思議そうに俺の顔を覗き込む。珍しいもの、あるいは理解不能なものを見るかのように俺を見た。

「『いた』ってことは心境の変化でもあった?」

「まあな、人としての居場所があるのも悪くないと思っただけだ。リリベルでいなきゃいけないという義務感が薄れるからな。」

心境の変化と呼べるかどうかはわからないが、そう答えるしかなった。事実、喫茶店リコリコで働いている時はリリベルとしての使命を少し忘れられる。誰も俺を『D.A.の黒いリリベル』と認識せず、ただの新人店員「水上健司」として認識している。それが俺の心を少し軽くしてくれた。俺の答えを聞くと千束は何かに気付いたような顔をして含み笑いを零し、笑顔で俺の訪ねた。

「君さ、ここに配属されて後悔も恨みもないでしょ?」

「ないな。抱く理由もない。お前はどうだ?千束。」

「私もないよ。お互い様だね。」

溜息を出し、その場を後にする。ここにいるとリリベルとして生きることが良い事なのか否かがわからなくなる。聞く人が聞けば答えも違う。リコリコにいる間、自分の納得できる答えを探してみるのも悪くないかもしれない。

 




リコリコ→水上

ミカ:任務の話をした時だけ異様な殺気と冷たい空気を発するし、雰囲気がただの不器用で無機質な少年から機械の様な殺し屋に変わるからびっくりした。ここで働いている時はしっかり言われたことをやってくれるしアドリブもある程度聞くからこっちとしてもかなり助かる。ただ、最初の二、三回の接客が無機質すぎたね。後、話が端的過ぎてるから避けられているのかで不安になる。

千束:戦った時顔を見えなかったからわからなかったけど『いつでも獲れる』って感じだけが伝わってきて油断できなかったし怖かった。任務じゃないときは接客できる子だしなんだかすっごく真面目な人って印象だね。素顔が意外とイケメンで意外だった。物言い基本端的で辛辣だけど彼なりの優しさもあると思う。でもあたしに対しては輪をかけて辛辣じゃない?

ミズキ:最初は他のリリベル同様、指示待ちの人だと思ったら意外と順応が速くてびっくりした。任務に向かう時のあの量の殺気が出てくるってどういう環境に身を置いていたのよ?たまにヤバいものを見る目で見られるのが解せないわ。

たきな:私より断然強いですね。千束と互角って時点で頭おかしいです。リコリコで働いている時は普通に無表情な先輩、リリベルとしての任務に赴いている時は噂通りかそれ以上に冷たく、底が知れませんね。彼の関わる任務で同伴しなくて良かったと思ってしまいます。一々言い方が刺々しいけど正論気味なのが嫌ですね。

水上→他

ミカさん(店長さん):ただの店長じゃない。喫茶店のメニュー作っているのがすごいと思うけど、絶対それ以外に何かやっていた。一般人のそれじゃない、D.A.の中でも上積みの戦闘力だろうな。

千束(錦木):強いけどアホっぽい。初対面で戦う羽目になったので良い印象はないが任務で味方に回っているのならこれ以上のないくらい頼りになる戦力だ。ファーストリコリスの称号は伊達じゃないのがよくわかる動きだった。ニヤニヤしながら揶揄ってくるのが微妙にムカつく。でも兵士以外の生き方を教えてくれた恩人。

ミズキ:酔っ払い。情報部という場所に身を置いていたから貴重な人的資材には間違いないのだが人格面が残念過ぎる。十代でも構わないスタンスに少し引いた。

たきな(井ノ上):銃の名手のセカンドリコリス。錦木とは対照的だが精神的未熟さが垣間見える。重要人物をおとりとして使った時はその場で気絶させるかどうかで迷った。合理的すぎて命令無視、改めてみると敵より厄介な性質だ。


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自己満足な鉄拳+リコリス+その他諸々の設定と、短編

間違えて投稿したものですので不完全も良いところです。
申し訳ございません。
この短編はよく編集するのでご容赦ください。
では
オリキャラの名前は
檜山松陰
です。
英語は意訳です。
どうぞ!


檜山松陰(ひやま しょういん)

年齢:15

身長:176cm

体重:65kg

特技:詠春拳、棒術、整体、指笛

趣味:喫茶店巡り、師匠との稽古

性格:不敵だが控えめ

師匠はリロイ・スミス(鉄拳7)。幼いころに夏休みに香港で彼に会い詠春拳に魅せられ、リロイが修行している時にずっと見ており、彼の愛犬「シュガー」の相手をしていたこともあり少し手解きを受けてもらい、そこから日本に帰宅してから修行。貿易商の仕事の一環として日本に来るリロイ・スミスに稽古をしてもらいながら中学生活を送っていた。

防御、いなしからの返し技は既に師匠のリロイと同等。発勁の技術ももはや癖レベルで身についており、速い連続攻撃とも言われる連環拳も芯まで伝えている。筋力を鍛えながらひたすら発勁の鍛錬をしていた上、色んな道場や武術の部活で防御、避け、いなしの練習をひたすら行っていた。師匠の影響で英語もある程度喋れる上いなす時に「weak」、もしくは「甘い」と口走ったり、指笛が出来たりする。

「やっぱ、これだな。」

「You do know that you are my teacher right Leroy?(俺、先生から色々教わったって事忘れてない?)」

「Thought you could do more (もっと出来るのかと思ったよ)」

「あまり戦いたくないんだけどなぁ...」

 

「リロイ先生よりも全然弱いなぁ。」

襲い掛かってきた輩に寸勁を叩きこむ。後ろから足音がする。振り向きざまに双龍門の構えで打撃と蹴りに対処する。全て受け流し、連環拳で返す。速さではない、一撃一撃、しっかり芯まで通し、伝える。先生よりも上手くできる自信がある唯一の技法だ。戦闘になると、全攻撃をしっかり芯に伝えるそんな技法。倒れた輩を見る。その後ろにはさらに倒れた輩が何人もいる。全員何かをしている時に俺がたまたま通りかかったのがまずかったみたいで、全員俺に襲い掛かった。そいつらを全員倒してしまったわけだが、一応正当防衛に当たるのだろうか?他人事のように考えてしまった。

ここ最近、特に人目の付かないところの治安の悪さが目立つ。場合によっては銃が出てくる。治安が良い日本で銃が出てくること自体が異常なのだ。裏では色々あるんだなと、治安が良いというが闇もまあ深い事を実感する。それを色々と片付けるのは少し軽率かもしれないが、俺からすればそんなものだ。

「動いたら少し腹減ったな。なんかないかな...」

何も考えずに口走りながら歩いていると、良さげな喫茶店が目に入る。だが、同時になにか別の物も感じる。強者の気配、それに何か隠しているようなそんな気配。だが、それでも喫茶店が気になる。怖いとも言っていられない。危ないかどうかは入ってから決めよう。

扉を開けると「からんころん」と扉の角に付けられた鈴が小気味の良い音を響かせる。

店員さんとそこにいたお客さんの何人かがその音に気付いたようでこちらを振り向き、「あぁ、客か」と言わんばかりに自分の事に視線を戻す。店員さんの一人はこちらの接客に来た。

元気な人の様でハキハキと接客をしてくれた。ここまで元気な人も珍しい。生来の物なのだろう。というより喫茶店でこれはマジで珍しい。

当たり障りのない言葉で会話を紡ぎながら注文をした。

コーヒーがめっちゃ美味しかった。スイーツと合ってめっちゃ美味しかった。この喫茶店の名前を憶えてからまた来ようと心の中で自分に言いながら一息つく。

携帯が揺れ、画面には先生の名前が出た。控えめな声で話す。

 

「Hello?(もしもし?)」

「Shoin, you been a good kid?

(いい子にしてたか?松陰)」

「Least better than the thugs around. What you call for?

(そこらのチンピラよりはね。どしたの?)」

「Heard dark rumors about Japan. Thought it was one of the safest countries. You okay?

(最近そっちのよくない噂を聞いたからな。大丈夫か?日本の治安は他と比べてかなり良いはずだろ?)」

「Dunno, bumped into people doing illegal trade a few times at the backstreet.

(さあ?何回か裏町で違法取引の現場に鉢合わせちゃったけど)」

「You seem like you don't give fucks... Do you?

(どうでも良さそうだな...そこらへんどうなんだ?)」

「I'd start giving fucks if they point their guns at me.

(銃とか向けられたら注意とかし始めるよ。)」

「Anyway, careful. I'm hearing things about agent master assassins and soldiers here in there.

(なんにせよ気を付けろよ?なんにせよ凄腕暗殺者エージェントやら兵士やらの話も耳にしてる。)」

「Huh... Not like they're gonna do anything to me.

(ふーん...こっちに何かするわけでもないでしょ。)」

「You do know they witnessed you witnessing them. I don't want another friend being killed.

(お前に見られたってわかってんだろ。仲のいい奴が死ぬのはもうごめんだからな。)」

「I know I know

(わかってるよ。)」

「Alright see you soon.

(それじゃあ、またな)」

「Yeah, see you.

(うん、またね)」

 

会話を終わらせ電話を切るとさっきの店員さんがじーっと見つめてくる。

「...どうかしました?」

「お兄さん英語ペラペラなんだね!すごいじゃん!」

すごい!って感情がこっちに伝わって来る。正直こういうのは慣れない分少し押されるが、それ以上に何かを探りたいような目だ。

「聞いてたんですか?」

「耳は良いんでねぇ...何の話か聞いていい?」

「先生との世間話ですよ。そんな大したものじゃありませんよ。」

「話を聞く限りかなり深刻そうな顔していましたけど?」

「いえ、普通に世間話を交えた近況報告ですよ。彼、結構顔が広い人なので。あと、勘定頼んでいいですか?」

「はーい!コーヒーとおはぎセットですね!合計900円になりまーす!」

お金を払い、そして「ご馳走様でした」と小さく会釈し喫茶店を後にする。...なんだったんだろう?

 

リロイ先生にまたなと言われたが、本当にsoonだとは思わなかった。街中で鉢合わせるとは思わないじゃん。

「thought you'd be here.

(ここにいると思ったよ。)」

「When you said soon, I was expecting days or weeks. Not hours or minutes.

(またなって数日か数週間だと思うじゃん、今日中にまたなとは普通ならないから。)」

そんな緩い会話から始まった。いきなりジャブかましてきたので弾いて腹に拳を寸止めさせる。

「I see you did your homework.

(しっかりやる事やってるようだな)」

「You do know how you teach right?

(自分の教え方自覚してる?)」

「Yeah your right.

(それもそうだな)」

感心したように、そして嬉しそうに彼の声音が少し弾む。こういう会話もかなり好きだ。何せ、彼は実戦を主体にしてきた、反射レベルでこういう反応が出来たるようになったことには大いに感謝している。というより出来るようになってすっごく楽しい。彼の稽古は基本を教えた後、いきなりそれをやって自然とそれを出来るようになるスパルタ式死にゲー方式だ。苦手な状況に放り込まれ、そしてひたすらそれに慣れる。そんなやり方だ。嫌いじゃあいけど、一人で修行している方が余程楽だ...二人の方が出来ることも多いが。

 

 



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自己満足なブルーアーカイブ

今回はふとした時に思い付いたネタです。


生徒名:夜帳 鳳浄

 読み:やとばり ほうじょう

ヘイロー:なし

武器:番傘型マシンガン「夜兎月」

趣味:フリーラン、強敵との戦闘、鍛錬

灰色の髪を生やした中背の青年。夜兎族特有の白い肌、キヴォトス人を遥かに凌駕する身体能力と回復力を有するが、頑丈さはキヴォトス人と比べて劣る。例に漏れず、大食いでもあり、大盛りを一人で何回も出来るほどよく食べるが、同じものを続けて食べることはあまり好まない。好物に関しては本人曰く「強いて言うなら...洋食...?他のご飯も大好きだけど」らしいが、偏りがあるわけでもないためこだわりはない。

番傘型マシンガン「夜兎月」のデザインは黒い番傘。連射ができる銃。同時に思いきり振り回しても壊れないのが大いに気に入っているところ。

戦闘スタイルは身体能力と番傘を生かした接近戦と中距離戦を得意とする。動き自体は軽やかだが動きからは想像つかないほど一撃が強く、本人基準で軽く蹴れば蹴られた方は吹っ飛ぶ。力重視と速度重視で使い分けている。

サンプルセリフ

「夜帳鳳浄だ、ホージョーとでも呼んでくれ。護衛から陽動まで、頼まれたらやるさ。」

「どこに所属しているかって?...さあ?そういえばどこにも所属してないな。強いて、ブラックマーケットかな、そこに住んでるし。...えっ?危なくないかって?んー...慣れた。」

「治安維持と護衛の依頼が最近多いな。今も要人の警護をしているようなものだし。」

 

俺はヘイローを持たない一般キヴォトス人男性。中等部に身を置いている。陽の光に弱く、日傘は手放せない。バイトや仕事をしないと食料が足りないなんてことはしょっちゅうある。そんな俺は今は護衛のバイトを務めている。人手が足りないらしく、運良く雇ってくれたのだ。番傘には銃が仕込まれている。ミレニアムのエンジニア部に作ってもらったものだ。特別壊れにくくしている。

陽の光に弱いと言ったが悪いことばかりじゃない。弾丸を見てから避けるくらいならわけないし、そこいらの人よりも速く力強い自負もある。銃や爆弾ばかりに頼る以外何もできないボンクラをしばき回すことも多かった。その甲斐があってか手を出す輩は減った。

大きな仕事はない、腹五分目まで食う。今日は護衛はないと言われたので瓦礫の山に向かった。

戦闘が行われた後で、壊れかけの場所だ。壁に向かい、構える。息が口から漏れる。そして、殴る。壁を殴る。重い音が響く。壁にヒビが入る。

「おぉおおっ!」

思い切り力を込めそして壁を殴る。穴が開きそして壁の一部が吹っ飛ぶ。

「ふゥーーーーッ」

最初は数発で拳が参ったが、どんどん慣れてきた。今では何度殴っても拳はなんともない。むしろ壁が心配になる。蹴りだと尚更だ。

少し時間が経ったので次は傘だ。突く、薙ぐ、払う、回す。風を切る音が響く、床に傘を叩きつける。爆発したような音が響く。それはそうだ、思い切り叩きつけたのだから。ここまでして全く折れない傘もなかなかすごい。腕立てや腹筋等の筋力を鍛えることも忘れない。

 

前々から視線を感じる。壁や柱を蹴り始めた頃からだ。手頃な瓦礫を蹴り上げ視線の方向に蹴る。びっくりしたような声が響く。

「さっきからコソコソと見てるけど、なんのようかな?」

ぞろぞろと、スケバンが姿を現す。思わずため息が漏れる。何せ、こいつらをぶっ叩いたのはつい最近だ。懲りないのかと思いながら彼女たちを睨む。

「少し前にぶっ飛ばされたばっかだろう?助っ人でも呼んだ?それとも修行を重ねた?」

「今日こそお前をぶちのめしてやるぜ、前の様には行かねぇよ!」

スケバンのリーダー格と思われる子が銃を向けて発砲した。頭を少し逸らして弾丸を避ける。

息を深く吸う。

「すぅ...」

そして、地面を割る勢いで拳を振り下ろす。

「オラァッ!」

拳は地面に当たる。地面は落としたガラスの様に砕け、爆発音のそれともとれる轟音が砕けた瓦礫や地面と共に飛び散り、響く。

息が漏れる。これで全員懲りれば良いのだが、こんな演出で怖気付くのなら「今日こそ」なんて言わないだろう。連中を睨みつける。

「念のため聞くけど、引く気はないんだね?」

そんなことを聞いたが答えは分かりきっている。おそらく、拒否。もしくは「燃えてきた」等の好戦的なセリフだ。リーダー格のスケバンは威勢よく応える。

「ハッ!そんな演出で怖気付くようなアタシ達じゃあねぇんだよ!大人しく撃たれろ!」

構えていた連中は一斉に射撃を開始した。

走って避ける、飛んで避ける。瓦礫を盾にする。いつも通りの戦闘だ。

リーダー格めがけて飛び、蹴りを浴びせる。当然蹴られたリーダー格は吹っ飛ぶ。もう一度踏み込み、番傘で腹を突き引き金を引く。所謂ゼロ距離の射撃だ。苦しそうな息が彼女の口から漏れる。連中の内何人かが振り返る。まだ全員何が起きたのかわからない状態らしい。振り返った人達から気絶しにかかる。

「前回とそんなに展開変わらなかったな」

少し息が上がった状態で独りごちる。

死屍累々。今の状況を説明したらこの四字熟語が真っ先に浮かび上がる。どこも千切れてはいないし、内臓と血が飛び散るような、吐き気を催す光景はないが、気絶したスケバンの連中の体がそこら中にいるのを見るにこの表現は間違ってはいないと思える。その中で微かに震え、ヘイローが消えてない体が一つ。いや、この場合は1人と言っていいだろう。

「クッソ…化け物が…」

「失礼だね、人を見境なしの殺戮兵器みたいに言わないでほしいよ。」

向けられたその目は正しく睨んでいた。恨めしそうに、妬ましそうに、恐ろしげに、そして悔しそうに。

「アタシ達はずっとここいらを仕切っていたんだ。お前が悠々とここに来るまではな…生意気なやつだと思ってヤキを入れようと思ったらお前はアタシ達を一蹴した。なんどやってもだ。ここはアタシたちのナワバリだ!あんたが好き勝手やってたら立つ瀬がねェンだよ!」

「立つ瀬とか、君たちの面子はどうでもいいし、僕としては勝手に因縁つけられて襲われた方が困ってたんだ。ただ、ここが君達の縄張りで掟があるというのならそれに従うよ。」

「情けのつもりかよ…」

「違う、礼儀と筋だ。このブラックマーケットにも通すべき筋や仁義、守るべき掟もあるんでしょ。余程理解できないルールでもない限り、従うよ」

スケバンは複雑そうな顔を浮かべた。何かを噛み締めてるようなそんな表情だった。実際は情けとも取れる言葉をかけられた惨めさと話の通じる事実からくる安堵が混ざったような表情だったが、そんな細かい表情分かるわけがない。

ため息をついたのち僕に言った。

「そうだが、それをさっきまで淡々と処理したやつに言われるのはなんだかな。」

「喧嘩を売られたから買っただけだよ、そっちと違って、弾当たって『痛い』だけで済む体じゃないんでね」

「だから毎回避けてたのかよ」

「そう。時間ができたら起きてとか決まりを聞きに行くよ。またね、リーダーさん」

そういい、僕は瓦礫の広場を後にした。

この後、トリニティの自警団やゲヘナの風紀委員、ミレニアムのC&Cとかに存在を認知され始めたらしいのだが、こっちにも事情がある。護衛から時間稼ぎまでだ。ただ、強い奴と戦うのは楽しみだ。笑みを漏らし僕は仕事が来ているかどうかを確認した。

 

設定そのニ

生徒名:ヘンリー・エヴァーグリーン

種族:バーニッシュ

能力:高度なバーニッシュフレアの操作、高い身体能力

バーニッシュサイクル:クラッシックバイク型 ヨーク アドベンチャーバイク型 ボストン

バーニッシュアーマー:全体的にスリムで癖のないデザイン。特徴は腕全体にはプロテクターのようなものが覆っており、拳部分にはメリケンサックのような鈍い棘がついており足は猛禽類の様な爪がある。肘と膝関節部分は丸いが打つのに適している。

趣味:ツーリングやドライブ、バーニッシュフレアを凝視。

特技:フリーラン、火加減、バイクの運転、接近戦。

その他の設定:表情にあどけなさが残った少年。高校になったばかりの年齢なのか、基本的には冷静だが、バーニッシュらしく情熱を密かに燃やしている。バーニッシュサイクルを乗っている時は楽しそうに乗っており、乗り方も飛び乗ったりしているため活動的でもある。一部からはバイクに乗せて欲しいと思われている上本人も気づいているし、親しい人に対しては乗せているし、運転方法も教えてる。

本人の名前に関して、燃えていることを少し気にしているのか、稀に偽名でバーンズと名乗ることもある。

実はマッドバーニッシュの一員。とは言え活動していたわけではなくむしろバーニッシュフレアの制御と操作、そして鍛錬をバーニッシュに目覚めた当初からやっており、フリーズフォースに捕まりかけ、全力で逃げたところ、キヴォトスに行き着いた。本人はどうやってきたのか、なぜ来たのかは分からない上、どうしてかプロメアの「燃えたい」という意思がよりよく聞こえているため、バーニッシュフレアを燃やしながらキヴォトスでの生活を満喫している。

サンプルセリフ

「ほら乗って!早く!」

「飛ばすよ、掴まっててな!」

「ボス…なんでここに俺がここに行き着いちゃったのかわからないけど、必ず意味はあるよな」

「燃やさなければ生きていけない…それがバーニッシュ…だよね。」

「炎を操る突然変異人間の姓が常緑(エヴァーグリーン)ってどうなんだよ」

 

「ハァ…ハァ…ぐっ…フリーズフォースの奴ら…」

逃げていて、気づいたらどこかの路地裏に着いていた。建物の外壁に体を預け、あがっていた息を整えるよう努める。あちこちボロボロだ。体も痛い。逃亡のためゆっくり何かを食べることもなかった。硬化させたバーニッシュフレアを口に入れて誤魔化していたが、もう体はそんな手には乗ってくれなさそうなくらい疲労している。それにしてもフリーズフォースの連中が追ってきていない。よく見たら街行く人々も頭の上に輪っかみたいなものが浮かんでいたり、ロボットや犬、猫が立って服を着ている。どんなヘンテコな街にきたのだろう。プロメポリスでこんな地区聞いた事がない。夢を見ていると言われればこんな非現実的な光景にも納得する。

「とにかく立たなきゃな…」

自分に言い聞かせて立ち上がる。歩くのにもふらついて仕方がない。意識も限界だ…少なくともここがプロメポリスじゃないことを祈るばかりだ…

 

気づいたら、どこか事務所のような部屋にいた。捕まったわけではなさそうだ。額縁に『一日一惡』の文字が書かれている。それ以外のものに目を配れば基本洋風なデザインの事務所だ。センスが良く見た目にこだわる持ち主なのだろう。そう言えば口に入れてたフレアがない。

「気がついたみたいだねっ」

声の方向に目を向けると白髪の小柄な少女がいた。人懐っこい笑顔を浮かべているが警戒しているようにも見える。

「あんたが、俺をここに?」

「どちらかといえば社長が、だけどね」

次は白と黒のツートンカラーの髪にパーカーを着た少女だ。大人っぽくいかにも頭が回りそうなそんな雰囲気の少女だ。

「拾ってくれたのは助かったが俺を拾ってもあんたらに利はないはずだ。どっかの回し者か?」

「いいえ、私たちは便利屋68。金をもらえればどんな依頼もこなすアウトローでハードボイルドな便利屋よ!」

あからさまなボスっぽい少女が出てきた。赤い髪、ファー付きのコート。いかにもここのボスでマフィアのトップですよーと主張するような格好だ。そう言えばさっきから隠れながらこっちをみてる子が一人。人見知りなのだろう。先に自分から名乗ったほうがよさそうだ。

「さっきも言ったようにここで保護してくれて助かった。見た目から察するに君がボスって感じだな。俺はヘンリー・エヴァーグリーン。見ての通り訳あって追われてた」

ボスと言われた少女はものすごく誇らしげな表情を浮かべていた。名前を聞いて少し固まったようにも見えるが。

「それは、あなたの口の中にあった石みたいなのが関係する?」

「…あんたらが持ってたのか。まあ、そうだな。」

燃えたい。燃えたい。少しそんな声が聞こえた。手のひらにバーニッシュフレアが灯った。

「…大丈夫?手、何か漏れてるけど。」

「大丈夫…じゃなさそうだ。タイミング悪いな。会ったばっかりで悪いがもっと喋ることになりそうだ。」

燃えているバーニッシュフレアを前に出し、浮かせる。

「気にしない。もとよりこっちも聴きたいことがある」

「こいつはバーニッシュフレアって呼ばれる特殊な炎でな。燃やす事や硬化させたり何かを模る事ができる。」

炎を立方体や三角錐、鳥に形を変えながら説明する。

「そんな炎を操る俺はバーニッシュと呼ばれる人型突然変異種として認知されるようになった」

「すみません…炎を操れるだけでは追われることはないのでは…?すみません急に質問して…」

「いや、疑問があるのは無理もない。俺のところでそういう奴が急に出たらしい。これの制御ができないやつがね。その結果、街は大炎上。それでこれを使えるやつは全員人類の敵と見做されてな。俺が生まれる前の話でな、物心つくころには基本逃亡か防衛だ。」

こんな感じかと話し終えたところに電話が鳴った。社長が電話を取った。

「はい。便利屋68陸八魔です。はい、依頼ですね。場所は…はい…わかりましたそちらに向かいます」

がちゃんと勢いよく電話を切り、社長は全員に向けて言った。

「依頼だったわ。場所の座標と打ち合わせがあるみたい。出動よ!あなたもよ、ヘンリー!私たちのハードボイルドでアウトローな仕事ぶり、見せてあげるわ!」

全員持っている武器を手にし、事務所を後にした。灯してたバーニッシュフレアを握り、彼女らについて行った。

外に出て、全員歩くような雰囲気を出していた。道路は換装されており、交通規制もしっかり機能しているみたいだ。意を決し、彼女らに声をかける。

「陸八魔さん、他の皆もだが。バイクの運転は経験したことあるか?」

「バイク?まあ何度かはあるけどなんで?」

そう言われ、バーニッシュフレアを収束させバイクを模る。逃亡している時も、どこか遠くに行く時も共に乗っていた相棒のような存在。バーニッシュサイクルのヨーク、そしてボストンを出した。

「貴方そんなこともできるの?!」

「言ったろ、模る事ができるって。そんでどうする?あんたらが乗る方にサイドカー生やせるが。」

「無しでいいわ!サイドカーなしのバイクで行くなんてハードボイルドじゃない!ありがとうねヘンリー!」

わたしこっちー!とヨークの方に行く白髪の子、ワクワクやうずうずを隠せない様子でボストンの方に行く社長と黒髪の子。そしてため息をつきながらもどこか楽しそうに微笑みながらヨークの方に行くツートン。

俺の乗るバイクはなさそうだが、作ればいいか。

もう一つ、バーニッシュフレアを収束させる。

燃えれる、燃やせる!と声が嬉しそうだ。もう一つバイクを作る。単車やオフロードはメイスとボスに怒られそうなので、クルーザー型を模る。

「こいつは…デンヴァーと名付けるか」

便利屋68は全員嬉しそうだ。そして社長を先頭を走り、全員で先ほど電話で聞いたであろう依頼の座標に向かった。

 



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