新たなる赤き獅子 ウルトラマンライガ~休止中~ (新米くん)
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第一話 レオが危機の時、新たな戦士が現る

下手な投稿作品ですが、どうぞよろしくお願い致します。


宇宙....その無限に広がる暗黒の空間に無数に点在する星々が美しい輝きを放っている。その中でも緑豊かな、エメラルドのように煌めく太陽系第三惑星...地球もその星々に負けず劣らずの美しさを放っている。

しかし、その美しさを誇る地球に危機が訪れようとしていた。

突如として、広大な宇宙の彼方から二つ大きな球体が静寂な宇宙を切り裂くかの如く飛行している。

そしてその二つの球体は真っ直ぐ地球に落下していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【赤道軌道上の成層圏・新MAC空中基地母艦・MACベース】

 

 

 

MACベース全体にけたたましい程にアラートが鳴り響いていた。それに合わすかのようにそこで様々な役目を負った者たちが従事している。

それはMACステーションの中枢とも言える司令室も同じであった。その司令室のドアが大きく開き、MACの隊長である男が足早に入って来ると、直ぐ女性オペレーターに「状況は?」っと尋ねる。

その声には冷静さと力強い威厳を感じさせられる。

 

 

この男...我々はこの男を知っている。この男は嘗て故郷である獅子座L77星を失い地球の為に様々な怪獣や宇宙人から地球の平和と人々を守り抜いた男...おおとりゲン、またの名を...おっと、それは後にしよう。

 

 

「隊長!警戒衛生からの非常事態警報です!謎の物体が二つ、大気圏を突入し地上に落下しています!」

 

 

女性オペレーターのミヤマ隊員が振り返って答える。再びドアが大きく開閉して5人の男女の隊員が司令室に入ってきた。

彼らはモニターをチェックしているおおとり隊長の後ろに集って控えている。その間にも宇宙からの物体は刻々と地上に近づきつつある。

おおとり隊長はモニターを見ながら、

「各支部からの位置は?」

 

 

「各支部からではとても間に合いません!」

 

 

「分かった。落下予想場所の特定をしろ」

 

 

おおとり隊長の命令をすぐさま実行し、端末のキーボードを素早いタイピングにてその落下予想場所を算出する。そして結果が直ぐにも出た。

 

 

 

「出ました!東京湾です!!」

 

 

 

おおとり隊長は後ろに控えていた隊員たちに振り返り、力強く命令を口にするのだった。

 

 

「宇宙からの謎の物体だ。この地球に害をなすために来たのやもしれん。MAC出動!!」

 

「了解っ!!」

 

隊員たちは敬礼の姿勢で勢いよく応答して、各々ヘルメットを手にして司令室から出ていくのだった。隊員たちが出ていったのを確認し、おおとり隊長も出動すべく自身の色違いの隊員専用ヘルメットを携えて、自らも出動する。

 

 

この時、おおとり隊長には何か予感めいた感覚があった。今日、自分にとって思いもしないことと遭遇すると....。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃....。

 

《地上・東京・城南スポーツセンター》

 

 

東京都新宿区にあるスポーツ会館にて、指導員たちやスポーツセンターに通う子供たち視線がある一点に集中していた。

そこには一人の男がトランポリンを使って華麗に飛び跳ねて、空中でオリンピック選手顔負けのバク宙を披露している。

しかもバク宙しながらトランポリンに着地したと同時に、トランポリンから降りてからバク転しながらの宙返りを披露してみせた。

 

その連続の技には皆、感歎の思いを込めて拍手を送る。更に空手により自分一人に対し四人相手にしての対戦でもこの青年の異常な程の身体能力が発揮する。

四人の男が取り囲むようにして彼に挑み掛かる、が、彼は冷静にかつ素早い対応でこれらを躱し、隙も見せず目にも止まらぬ蹴りや拳を繰り出し彼らを見事に下したのだった

 

 

この男...大神(おおがみ)ジン。彼がこの物語の主人公である。

 

 

彼の試合が終わるのを確認して、子供たちが彼に集まってきた。

 

 

「わー!凄い凄い!」

 

 

「ジンさん、カッコイイ!」

 

 

「ねぇねぇ!今の僕に教えて!」

 

 

「私にもぉ!」

 

 

「僕にも!」

 

 

子供たちは皆彼の両手やジャージなど掴んで離さず、ジンにせがみ始める。子供たちに囲まれたジンは困った顔で苦笑する。

 

 

「み、みんな、落ち着いて...ははは」

 

 

するとそこへポニーテールの女性がやってきた。彼女は秋葉凛子。此処の城南スポーツセンターに働く女性、得意とするスポーツはバレーボールや水泳、そして剣道で鍛え抜かれた素晴らしいナイスな身体を持った美人。

そんな彼女が子供たちに注意する。

 

 

「こぉら、ジンさんが困ってるでしょ?それにみんなはこの後、私が教えるんだから」

 

 

「えー!凛子姉ちゃんよりジンさんが良いよぉー!」

 

 

「「「そうだ!そうだ!」」」

 

 

「まったく!」

 

 

そんな時だった。この城南スポーツセンターの責任者である梅田トオルが慌ててやって来た。昔子供時代に彼はここに通ったこともある。

 

 

「みんな!!避難するんだ!!」

 

 

慌てて来る様に皆動揺し始める。そんなトオルに凛子が何事かと問いかける。

 

 

「どうしたんですか!?梅田さん!」

 

 

「さっきニュースで隕石が東京湾に降ってくるから避難勧告が出たんだ!恐らく津波も来る!!避難だ!!」

 

 

「分かりました!!皆!避難しょう!!」

 

 

皆動揺するが、凛子の言葉に従うように挙って避難するために、子供たちは梅田や凛子たち大人たちに導かれるように体育館から出始める。

 

「よし....え?」

 

子供たちを見守る凛子はジンへと視線を向けると彼の様子に啞然とした。

彼女に見られているとは知らず、ジンは剣呑とした顔付きで外の方へ見ていた。彼が見ているのは先ほどまで晴天だった空が暗雲に包まれていた。

その光景を見てジンは呟いた。

 

 

「.....‷あの時‴と、同じ曇だ」

 

 

彼はそう呟きながらいつの間にか握り拳となっている両手から血が滴り落ちる。

そんな彼の傍に近寄り、「ジンさん...?」と不安と心配の気持ちで尋ねる。

ジンは自身を呼ぶ彼女に気付いて振り向き、先ほどの剣呑とした顔のまま明日奈に伝える。

 

 

「凛子。俺たちも早く行くぞ」

 

 

「え?」

 

 

「...最悪なことになる」

 

 

「最悪な、こと...?」

 

 

その時、上空で激しく光った。ただの雷とは違いまるで意思を持ったかのように稲光が乱雑に発生する。

 

「きゃあ!!」

 

 

その稲光に彼女は驚きジンに抱きついてしまう。運動などをやっている為に彼女の身体は引き締まりながらも女性の象徴と言える胸はしっかりとジャージの上からでも強調されている。

その胸がジンの腕に当たっている事に彼は内心少しドキッとしたが、それを表に出すことはしなかった。

彼らが遅れている事に気付いた梅田館長が戻ってきて、早く出ろと促す。

 

 

「君たち!何してる!!早く行くぞ!!」

 

 

「分かりました。凛子行こう」

 

 

「え?は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、MACベースからMACの戦闘機マッキー一号と二号が出撃。一号機には現場指揮の為におおとりゲン隊長が、操縦担当には戦闘機やバイクなどを操るのにお手の物である男性隊員、氷室恭輔。

分析機器などで担当をするのは静かに機器のモニターに目を凝らす眼鏡を掛けた女性隊員の一之瀬水月。

彼女は科学専門であり怪獣や宇宙人の生態などを分析したりするエキスパートである。

以上三名が一号機に乗り込んでいる。

二号機には女性でありながら副隊長の立場に在り、常にクールで冷静沈着を重んじ隊員たちを取り纏めて隊長であるおおとりゲンを補佐する彼女の名は、東雲梓。

操縦には芹沢晴子隊員。彼女の専門は射撃と格闘技がメインで彼女に銃を持たせれば百発百中の腕前を見せる。

分析担当には男性隊員、伊勢結城。彼は戦闘や生物分析よりもメカニックなどに精通している。

以上二号機にはこの三名が乗っている。

おおとりは通信機でMACベースと交信する。

 

 

「物体は?」

 

 

『それが落下コースを変更し、東京湾に落下しました!』

 

 

「全機、これより現場に急行する」

 

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 

 

マッキー一号と二号はすぐさま東京湾に急行する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾近くの海に大きな二つの物体が凄まじい稲光を発しながら滔々落下する。それらは海面にぶつかって爆発を起こし巨大な波を立て空にも届きそうな程の水柱が上がる。

激しい水飛沫の所為で何も見えない。しかも落下に生じた波が東京湾に襲い掛かり、被害は当然甚大な物となっている。

海岸にいた人や、海に近い都市部に居た人たちも波に吞まれ、波から助かった者たちは攫われた家族、兄弟、友人、恋人の名を叫ぶが返ってくるのは大きな波と雷の轟音のみ。

だがその時、海の中から何か巨大な影が二つ浮上してきた。その正体は頭頂部と背中に角が生えた黒と赤の体色を二匹の怪獣であった。

 

二匹の怪獣が海面から現れたと同時に、マッキー一号と二号が現場に到着した。コクピットから二匹の怪獣の姿にゲンは驚愕する。

 

 

 

「(あれは!?ブラックギラス!レッドギラス!まさか嘗て倒したあの双子怪獣が再びこの地球にやってくるとは...!)」

 

 

そう。ゲンはこの二匹の怪獣を知っている。その名を双子怪獣のブラックギラスとレッドギラス。この二匹は嘗て‷ある宇宙人‴と共に宇宙で大暴れした凶悪な存在であり、ゲンにとって因縁深い相手である。

 

 

「隊長!前方に怪獣!数2!」

 

 

操縦席の氷室隊員が声を上げ、分析一之瀬隊員がすぐさま双子怪獣の解析を始める。素早いキーボード操作で怪獣を調べあげた。

 

 

「黒い個体、身長56m体重4万t。赤い個体、55m体重3万9千t。過去のアーカイブからデータが合致しました。

個体名ブラックギラス、レッドギラスです!」

 

 

「確かその二匹の怪獣って!?」

 

 

 

一之瀬隊員の報告に氷室隊員が驚愕する。彼の驚愕に無線越しに東雲副隊長が答える。

 

 

 

『そうだ。嘗て伊豆諸島南端の黒潮島は完全に壊滅させ多くの島民たちの命を奪った大津波を操る能力を持ったとんでもない怪獣だ』

 

 

ゲン以外のMACメンバーは絶句する。天候や津波を操り島一つを滅ぼす程の恐ろしい能力を有する怪獣が東京湾に襲い掛かる。

その怪獣二匹が津波や台風を起こしながら上陸をしよう行動を開始する。

 

 

「ミサイル攻撃を敢行する。怪獣の上陸を阻止する!」

 

 

「「了解!!」」

 

 

ゲンは攻撃開始を命じ、怪獣の上陸阻止に行動を起こす。次に二号機の東雲副隊長に通信を繋ぐ。

 

 

「副隊長、これより二機での同時によるミサイル攻撃を行うぞ!」

 

 

『了解!!』

 

 

マッキー二機から発射されたミサイルが怪獣や海面に直撃し、大きく爆発する。

ミサイルによる爆発に双子怪獣は一瞬怯み、動きが止まる。

怪獣たちは反撃として頭部の赤色破壊光線をマッキー二機に目掛けて狙い撃つが、これに二機は慌てて旋回して回避することで直撃は免れる。

すかさず旋回して再び怪獣たちに腹や頭部にミサイルを浴びせることで二匹は怒り始める。

怒り心頭の二匹の様子にゲンは警戒心を強くする。

 

 

「各機!気を引き締めろ!!」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、城南スポーツセンターの彼らは子供たちを連れて波から逃げる為に高い場所へと移動している。ジンは子供たちが逸れないように後ろから見守っていた。

街中では逃げ惑う人々の所為で混雑しかなりパニックしているようで、押し合い圧し合いや暴動などが発生している始末だ。

警察も状況に後手に回っている為、暴動やパニックを諌めることなど出来ず避難誘導ぐらいがやっとなのだ。

だがその避難誘導すらもパニックの所為で満足に機能しておらず、中々に前に進めなかった。

そんな時「うわぁ」という声と共に群衆に押されて転んでしまい子供が倒れる。その子供にジンが駆け寄り助け起こす。

 

 

「大丈夫!」

 

 

「あ、ありがとう」

 

 

「立てる?」

 

 

子供を助けたその時、恐ろしい音がジンの耳に入る。彼はその音にビクッとしてしまい、身体の動きを止めてしまった。

動きを止まると同時に彼の危機感を更に強まり冷や汗が流れ、ジンは東京湾の方面に視線を向け目付きを鋭くして何かを見ているようだ、何かを見ながら彼の脳裏に何か恐ろしい記憶の断片が浮かんでいる。

それを思い起こす怒りからくる感情と共に歯を食いしばってしまう、それは巨大な竜巻が建物や人々を薙ぎ払い、雷があらゆる物を破壊される光景だった。

その光景が今起きている光景と重なり、ジンは海を睨む。

そんな彼に凛子が駆け寄った。

 

 

「ジンさん!大丈夫!?」

 

 

「凛子、この子を頼む」

 

 

ジンは自分が助けた子供を抱きかかえて凛子に託した。

 

 

「え?!わ、わかったわ!」

 

 

「すまない。俺は行く所がある」

 

 

彼が口にした台詞に凛子は「え?!」っと動揺し、外は危険だからこのまま共に避難所に向かおうと叫ぶ。

 

 

「ダメよジンさん!!こんな状況で一体何処へ行こうと言うの!?このまま避難所まで行きましょ!!」

 

 

しかし希う彼女の気持ちには応えることはできず、首を横に振る。

 

 

「すまない、だが必ず戻ってくるから君は皆と共に避難所に行くんだ!」

 

 

「ジンさん!!」

 

 

ジンは彼女らを残して何処ぞへと走り去ってしまう。そんな彼に凛子は切ない表情を浮かべてしまっている。

しかしそんな彼女の心中など気付くことなくジンは、雑踏の中を駆け抜けていく。そんな彼の脳裏に過去の記憶が浮かび上がる。

消え行く街...吹き飛ばされる自然...瓦礫に潰され、劫火に焼かれて悲鳴を上げる人々...そしてそれを眺めて震えながら故郷を逃げるように去る幼く小さい子供であった自身。

そしてそこから始まった苦痛と絶望の日々、いつか力を付けて自分の全てを奪った敵への深い怒りと憎しみをぶつける為に...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方MACは未だに双子怪獣たちと交戦していた。しかし二機のマッキーに攻撃に怯むことなく双子怪獣は猛進を緩むことはしない。

二匹の様子に隊長のゲンは焦りを浮かべてしまう。だがこのまま奴らを東京に上陸することは断じて許してはならない、ゲンは隊員たちに果敢に攻撃するよう命じる。

だがマッキーからのミサイル攻撃に対し、双子怪獣は通用しなかった。竜巻をバリアみたく展開してこれを防いでしまう。

攻撃が効かなかった歯がゆさがゲンのみならず、隊員たちも露にする。

その時ふいに東雲副隊長がゲンに通信で具申する。

 

 

『隊長、このままでは埒が明きません。接近して怪獣の目を狙います』

 

 

「ダメだ!」

 

 

彼女は落ち着いた声音でそう具申してきたが、ゲンはこれを却下する。恐らく彼女も内心焦りを抱いているのだろう。

現に今、双子怪獣は間もなく上陸してしまう。このままでは東京が双子怪獣によって海に飲まれてしまう、それだけは絶対に許すわけにはいかない。

そこでゲンは策を閃いた。

 

 

「二号機、これより作戦を告げる。よく聞け!」

 

 

『『『了解!』』』

 

 

ゲンが考えた策とはこうだ。まず二号機が二匹の注意を引き、隙を生んだ所に一号機が冷凍ミサイル弾で二匹を凍り付けにしてから総攻撃をかけるという流れである。

 

 

「以上だ!やるぞ!!」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

「芹沢!行け!!」

 

 

「りょーかい!!」

 

 

東雲副隊長の呼び掛けに応え、芹沢隊員は機体のレバーを強く踏み込む。二号機はすぐさまブラックギラス目掛けてスピード上げる。

自身に向かってくるマッキー二号機に角から出す赤色破壊光線で迎撃、しかし戦闘機乗りのプロたる彼女にとって躱すのは容易だった。

直撃寸前にローリングでこれを回避しながら、ブラックギラスの左目目掛けてレーザーを撃つ。

レーザーはブラックギラスの左目に見事に直撃。左目が爛れ、血が噴き出る。

片目を失い、怒りが込みあがり二号機を鷲掴もうと襲い掛かる。

 

 

「とろいんだよ!!」

 

 

彼女が操る二号機はそれを嘲笑うかのように、高度上げてブラックギラスの魔の手から逃れる。これに更に苛立ちを募らせるブラックギラスは二号機を追いかける。

更に二号機は今度はレッドギラスにもミサイルをお見舞いする。

レッドギラスも怒り、ブラックギラス同様に二号機を追う、二匹が作戦通りに釣られたのを確認したゲンは冷凍弾の発射を命じる。

 

 

「冷凍弾発射!!」

 

 

「了解!!」

 

 

 

一号機から発射された冷凍弾は二匹の頭上で爆発、冷凍ガスが双子怪獣を覆い包む。

ガスに巻き込まれた二匹はゲンの目論見通りに、見事凍ってしまう。これを待ったかとゲンが総攻撃を命じた。

 

 

「今だ!!総攻撃!!」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

絶好の好機、このまま行けば勝てる...そう抱いたMAC隊員たち、しかしその時であった。二匹を包む氷が突如ヒビが入り、中から二匹が怒りの咆哮を上げながら復活した。

あまりの復活の速さにMACの隊員たち全員驚愕し、ゲンが距離を離すよう告げる。

 

 

「離れろ!!」

 

 

しかしそんなの許すかと双子怪獣は一斉に角から赤色破壊光線を出して、2機のマッキーに命中する。

 

 

「きゃああー!!」

 

 

「うわぁ!!」

 

 

「くそぉ!!」

 

 

「全員脱出っ!!!」

 

 

 

隊員たちは皆、機体から脱出してパラシュートを開いた。それを見届けたゲンは一人機体に残っていた。

なぜ残ったのか?死を受け入れたのか?否、そうではない。彼には為さねばならないことがある、目の前に居る双子怪獣を倒し地球を守らなければならないという使命がある。

彼が残ったマッキー一号機は火に包まれる中、ゲンは左手薬指にはめている獅子の顔を模った上部に赤い宝石が埋め込まれた金色の指輪を、空手の正拳突きに近いポーズを取って...。

 

 

 

「レオー!」

 

 

 

瞬間、赤い光が彼を包み込みマッキー一号機から離れる。そのまま赤い光は上陸しようとする双子怪獣の目の前に立ちはだかるように降り立つと、光は消えて代わりにそこに現れたのは燃えるような赤い色の巨人。腹部の紋章、両腕にはめているブレスレット、胸部のプロテクター。

その赤き巨人は嘗て宇宙人や怪獣、そして円盤生物の脅威から守った伝説の英雄、ウルトラマンレオ。

 

 

「副隊長!あれ!!」

 

 

「ウルトラマン...レオ!!」

 

 

レオの登場にMACの面々は喜びに沸く。双子怪獣はレオの登場に驚きを表すが、それでもレオに襲い掛かる。

 

 

「ヤァっ!!!」

 

 

双子怪獣はレオに迎え撃つ態勢で戦いが始まる。襲い掛かる二匹に飛び掛かり、奴らの首をヘッドロックで絡みとってからの投げ飛ばす。

すかさずレオはブラックギラスに飛び蹴りをくらわす。飛び蹴りが頭部に命中したブラックギラスはレッドギラスを巻き添えに吹き飛ばされた。

レオは追撃をかける為接近する、しかし双子怪獣はレオを待っていたかのように互いに抱きついて回転する攻撃ギラススピンでこれを迎え撃つ。

だが歴戦の猛者であるウルトラマンレオに嘗てと同じ攻撃をするなど愚の骨頂。レオは寸前跳躍し、二匹の頭上に回転しながら落ちるように降下する。

するとレオの両足にエネルギーが溜まり赤く光って、そのまま接触する瞬間双子怪獣の頭部を纏めて蹴り飛ばして二匹は絶命した。

怪獣たちが倒された場面を目撃したMACの面々は大いに歓喜する。

 

 

「やったぜ!」

 

 

「やったぁ!!」

 

 

「凄いわ!!」

 

 

「流石はウルトラマンレオだね!」

 

 

「これで....ん?」

 

 

 

その時であった。レオの上空から何か降ってきた。それは何と人型であった。黒い体色に武器は右手に装着する刃渡り25メートルのパタ状のサーベル、左手に装着するフック状の鉤爪、マントを羽織った宇宙人であった。

その宇宙人の名は....。

 

 

「副隊長!あれは!!」

 

 

「ええ、マグマ星人っ!!」

 

 

 

マグマ星人....宇宙の星々を荒らし回る邪悪な宇宙人。嘗て奴の同胞が配下の双子怪獣のブラックギラスやレッドギラスと共に、ウルトラマンレオの故郷の獅子座L77星を滅ぼした極悪な宇宙人である。

更にはレオの師であるウルトラセブンを双子怪獣と共に変身不能にまで追いやった程の経歴を持つ。

そのマグマ星人が単身レオの前に現れたのだ。

 

 

「マグマ星人!!」

 

 

レオはマグマ星人を警戒しながら、戦う姿勢を崩さず構える。そんなレオを嘲笑うかのごとく、マグマ星人は口を開いた。

 

 

「フフフ。ウルトラマンレオ、よくもまぁまんまと現れてくれたなぁ...」

 

 

「なにっ!?」

 

 

「双子怪獣を差し向けたのは他ならぬこの俺様だ!その目的は....貴様だぁ!レオォ!」

 

 

 

マグマ星人はサーベルをレオに向けて今回の目的を口にする。これに驚愕するレオ。

 

 

「なんだと!?だが頼みの双子怪獣はもう倒した!貴様の負けだ!!」

 

 

「馬鹿が、あの程度如きで簡単に終わる双子怪獣だと思ったか!貴様が嘗て双子怪獣たちとの戦闘情報は収拾済みだっ。その為、今回の双子怪獣には“ある細工”が施されている!!貴様はここで終わるのだぁ!!」

 

 

 

「なに!?」

 

 

 

その時、双子怪獣の亡骸が突然謎の発光を起こした。眩い光にレオは両手で顔を守る。すると眩い光が止み、レオは恐る恐る手を退けると恐るべき光景が舞い込む。

 

 

「こ、これは!?」

 

 

 

なんと倒されたはずの双子怪獣はなんと合体して一体の凶悪な怪獣へと姿を変えた。その姿はまず、頭頂部から角が背中や尻尾にかけて背ビレみたく連ねって、その身体も双子怪獣よりも強靭となっていた。

口からはみ出る牙もまた鋭く咬まれれば一溜まりもない。

 

 

 

「名付けて、“キングギラス”!!貴様の為に新たに改良施された双子怪獣の真の姿だぁ!!」

 

 

マグマ星人の高らかな言葉に呼応するようにキングギラスは天にも轟く咆哮を上げた。そしてマグマ星人はレオを抹殺するよう命令する。

 

 

「殺れっ!!キングギラス!!ウルトラマンレオを殺せぇ!!」

 

 

キングギラスは吠えながらレオに襲い掛かる。レオも退かずキングギラスにハイキックをくらわす、っが。

 

 

「っ!?」

 

 

「(ニヤァ)」

 

 

キングギラスはレオの攻撃を片手で受け止め不敵に嘲笑い、そのままレオの足を鷲掴んだまま片手で難なく持ち上げてまるでバットを地面に叩きつけるかのように、レオを海面に何度も叩きつける。

 

 

「だ、だぁ!!」

 

 

何度も海面に叩きつけられるレオ。これには当然苦しい、しかしキングギラスはそんな苦しむレオを見て楽しみ、ついには放り投げる。

解放されたレオは苦しみながらも態勢を直して、両腕を広げるアクションの後に額のビームランプから放つ赤色光線レオクロスビームを放つ。

 

「エイヤぁ!!」

 

だがそんなレオの光線技の一つを回避や防御などもせず、真っ正面から諸に受け止めたのだ。驚きを隠せないが負けじと額のビームランプから放つ光線ビームランプ光線や、カラータイマーから発射する白色破壊光線タイマーショットなど、レオの強力な光線を痛くもないとばかりに直撃した腹や胸を蚊に刺されたから痒いとばかりに掻いて見せる。

レオは高くジャンプして必殺のレオキックをキングギラス目掛けて放つが、キングギラスは角から双子怪獣よりも強力な破壊光線を飛ばしてレオを墜落させる。

海面に叩きつかれたレオは苦しむが、そんなのキングギラスには知ったことかと彼に近寄り首を鷲掴んだ。

もがき苦しむレオ。そのレオを見てMACの面々は声を荒げる。

 

 

「レオが!!」

 

 

「大変!!」

 

 

「ど、どうしたら!!」

 

 

「どうするのよ!!」

 

 

「レオが、負ける.......」

 

 

苦しむレオのカラータイマーが青から赤に点滅し始める。マグマ星人は今のレオの様子に喜び、勝利を確信する。

 

 

「いいぞぉ!!このまま奴の首をへし折れぇ!!」

 

 

苦しむレオ、最早ここまでか.....っとその時だった。突如双子怪獣たちによって包まれていた暗雲の隙間から光が差し込んだ。

この状況にマグマ星人や、レオの首を絞めているキングギラスすらも何事かと上を見上げ、MACの面々も暗雲の方へと視線を向ける。

すると暗雲が真っ二つに引き裂かれて、そこから赤い光の球体現れた。球体はそのまま勢い良くマグマ星人に突っ込んできた。

 

 

 

「な、なんだと!?ぶぎゃぁ!!!」

 

 

 

赤い光の球体はマグマ星人に突進して吹き飛ばして、次にキングギラスをも吹き飛ばしてレオを助けたのだ。解放されたレオを庇うように球体は海面に着水すると大きくスパークした。そしてそこから現れたのは、赤い色の身体、鍛え抜かれた筋肉質な肉体、胸のカラータイマー、銀色の鎧のようなものに胸と左肩、その左肩を覆う部分が獅子を模した形状している。

頭部にはウルトラセブン21の21スラッガーとも言われてるヴェルザードや、それを両サイドで挟む形でウルトラマンゼロのゼロスラッガーに酷似した宇宙ブーメランが三本あり、目はセブンやセブン21、マックスやレオのレッド族と同じ六角形でそれが吊り上げって鋭く見える、額には菱形状のビームランプ、右腕には獅子の紋様が描かれた手甲を装備している。

見るからにレオと同じウルトラマンである。

 

 

「う、うぅ....ん?き、君は....?」

 

 

膝をつき苦しみながら自分をたすけたと思われる謎のウルトラマンを見上げるレオ。その彼の呼び掛けに振り向く赤きウルトラマンの腹部にある文字を見て、レオは驚愕した。

 

 

「そ、その文字はっ!?き、君は!!?」

 

 

「......」

 

 

しかし彼はレオの問いには答えず、すぐさまマグマ星人とキングギラスに目を向ける。その当の奴らは邪魔が入られて憤りを見せていた。

 

 

「よくも邪魔をしてくれたなぁ!!!」

 

 

キングギラスもマグマ星人と同じ怒りを募らせて唸り上げる。

 

 

「.....」

 

 

しかし赤きウルトラマンは黙り込んだままマグマ星人に目を向けると彼の拳に力が入る、それはまるで激しい怒りが込められているかのようだ。

そんなことなど気づかずマグマ星人は赤きウルトラマンに問いただす。

 

 

「貴様ぁ!!!一体何者だぁ!!!」

 

 

 

すると赤きウルトラマンは、とうとうその声を発す....。

 

 

 

 

「...俺の名は、ウルトラマン。ウルトラマン...ライガだぁ!!!」

 

 

 

続く.....。

 

 

 

 

 

 

 

 




感想などお待ちしております。


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第二話 レオ変身不能!?地球はお前に託される!!

今回もどうぞよろしくお願いいたします。


前回、地球に現れた双子怪獣のブラックギラスとレッドギラス。その二匹をMACは対処に当たるが無念にも返り討ちにされてしまい、戦闘が継続不能となる。

っが、MACの隊長であり地球を守る為に派遣されたウルトラマンレオこと、おおとりゲンはレオに変身して双子怪獣と戦い、これに苦戦することなく勝利した。

しかし直後に現れたマグマ星人の呼び掛けに呼応した双子怪獣の亡骸が合体してキングギラスという新たな怪獣となって、形成は逆転してしまう。

キングギラスにあらゆる攻撃が通用せず、危機に陥るレオ。だがそこへ、空から現れた新しいウルトラマンによって救われることとなる。

物語はそこから始まる。

 

 

赤きウルトラマンは黙り込んだままマグマ星人に目を向けると彼の拳に力が入る、それはまるで激しい怒りが込められているかのようだ。

そんなことなど気づかずマグマ星人は赤きウルトラマンに問いただす。

 

 

「貴様ぁ!!!一体何者だぁ!!!」

 

 

 

すると赤きウルトラマンは、とうとうその声を発す....。

 

 

 

 

「...俺の名は、ウルトラマン。ウルトラマン...ライガだぁ!!!」

 

 

 

力強く叫ぶライガの名をレオは呟く。

 

 

 

「ウルトラマン...ライガ...」

 

 

彼の登場にはレオやマグマ星人だけでなく、それを陸から眺めていたMACの面々も新たなウルトラマンの登場には驚きを隠せない。

 

 

「新しいウルトラマン!?」

 

 

「私のデータにはないウルトラマンです!」

 

 

「僕の方でも記録されていない個体です!!」

 

 

「一体どうなってんの!?」

 

 

「彼は...レオを助けた?」

 

 

 

彼らがそのような反応をしている中、マグマ星人がサーベルをライガに向けてキングギラスに指図する。

 

 

 

「ええい!!どちらにしてもウルトラマンならば此処で殺すまでだぁ!!キングギラスぅ!!奴を殺せぇ!!」

 

 

 

キングギラスは咆哮を上げ、ライガに向けて突進する。ライガも格闘家や拳法家が取るような構え方でキングギラスを迎え撃つ。

キングギラスが右手を振りかざしてその手先の鋭利な爪でライガを切り裂こうと襲う。っが、ライガは一糸乱れぬことなく流れるような動きで、キングギラスの引っ搔き攻撃を躱しながら鋭い正拳突きを叩き込む。

 

 

「デェアッ!!!」

 

 

思わない反撃とレオとは比較にならない程の重すぎる一撃に二三歩後退しながら撃ち込まれた腹を両手で庇うように悶絶する。

そこへライガが追撃をかける。二発目の正拳突きを叩き込みながらそこからキングギラスの太股にローキックを命中させる。

 

 

「デイヤぁッ!!」

 

 

ローキックを受けて新たな痛みに苦しみながら、頭をライガの腹の位置まで下げてしまう。そこへライガがキングギラスの顎に膝蹴りを打ち込んだ。

 

 

「エイヤッ!!」

 

 

撃ち込まれた衝撃で牙の一本が折れてしまう。そんな自分の怪獣が苦戦する無様な姿にマグマ星人が激昂する。

 

 

「キングギラスっ!!そんな新参者相手に何を手こずっている!!しっかりしろ!!」

 

 

マグマ星人の 責によって目をぎらつかせ、気合いの咆哮を上げてそこから反撃の破壊光線を角から発射。

これにレオは思わず叫ぶ。

 

 

「っ!?危ない!!」

 

 

「...ドゥアッ!!」

 

 

だがそんなレオの助言など聞き流して、ライガは高いジャンプ力でこれを回避し放物線を描きながらキングギラスの背後を取る形で着地しそのまま背中に蹴りを入れ、キングギラスは前のめりで海面に倒れてしまう。

倒されたキングギラスは怒り、海面から起き上がり様に破壊光線や青色ショック光線でライガを仕留めようとする。

だがそんな反撃にライガは冷静にウルトラバリアでこれらを防ぎ、バリアをキングギラス目掛けて飛ばして命中し爆発してキングギラスは堪らずひるんでしまった。

 

ライガの余りの身体能力と戦闘能力、反射神経、これらにレオは驚きの余り言葉を無くしてしまう。

 

 

「.....」

 

 

これ程に高い戦闘力にレオは内心思う。

 

 

「(なんて言う実力だっ!?しかも相手の動きを決して見逃さない洞察力、しかもそれらに反応し対応する。彼の実力はゼロと同等、いや!それ以上かもしれん!!)」

 

 

そんな中ライガの戦いぶりとキングギラスの不甲斐なさにマグマ星人は苛立ちを隠せなかった。

 

 

「なぁにをやっている!!こうなったら!!」

 

 

マグマ星人は突如姿を消してしまう。それを見たレオは不味いと感じる。

 

 

「マグマ星人が消えた!!不味い!!」

 

 

そしてその不安は的中する。マグマ星人はライガの背後から姿を見せてサーベルからビームを発射する。

それを見逃す訳にはいかんとレオは残った体力を振り絞り、ジャンプしてライガとマグマ星人の間に着地して大きく両手を広げてライガを庇い、そのままサーベルビームを諸に受けて倒れる。

 

 

「ぐああっ!!」

 

 

「シュッ!?」

 

 

ライガが振り向くとそこには自身を庇ってマグマ星人の攻撃を受けたレオの姿があった。彼は倒されてしまい、マグマ星人は思わぬ邪魔によって地団駄を踏む。

 

 

「くそぉ!!!邪魔をしおってぇ!!!」

 

 

「貴様ぁ!!!!デェアアアッ!!!!」

 

 

「へっ!?ぶべれぇーーっ!!!」

 

 

回し蹴りでマグマ星人の頭に叩き込んで吹き飛ばすのだった。そして自分を庇ったレオに駆け寄ろうとしたが、キングギラスが近づいてきた為にそれに対処する。

 

 

「デアッ!!」

 

 

ライガはバク転しながらキングギラスの懐に近づき、素早い動きでハイキックをお見舞いして次にかかと落としを奴の脳天に叩き込む。

脳震盪を起こし完全に意識を失いかけるキングギラス、そしてウルトラマンライガは止めの必殺技の構えを取る。

両腕を腹の位置でクロスさせ、右腕の手甲にエネルギーを大きく貯める。そして両腕を大きく広げて手甲をはめてる腕を前に突き出しそこから破壊力抜群の必殺光線を発射した。

 

 

「ボルカリューム...バスターッ!!!!」

 

 

 

この光線を真っ正面から受けてしまったキングギラスは爆発、木端微塵となってしまう。吹き飛ばされてマグマ星人もこの光景を目の当たりにし啞然としてしまう、まさか自分の切り札であるキングギラスがこうもあっさりと負けてしまった事にショック受ける。

だがハッと意識をしっかりしたマグマ星人は更なる怒りを募らせてライガに不意打ちを仕掛けようとサーベルを振りかざす。

だがそんなのお見通しと、ライガは頭部に付けられている三本のブーメラン武器トライドスラッガーを三つ全てマグマ星人に飛ばして応戦する。

 

 

「ドゥアッ!!」

 

 

「な、なに!?」

 

 

三本のブーメランは縦横無尽にマグマ星人の周りを飛びながら翻弄、マグマ星人もサーベルでこれを振り払おうとするが全くダメであり、遂には三本の内の一本がサーベルを装備している右腕を切り落とした。

 

 

 

「ぎゃあああああああああああああーーーっ!!!」

 

 

 

切り落とされた箇所から夥しい出血を流して悲鳴を上げる。

キングギラスだけでなく、マグマ星人すらも圧倒するライガにレオは改めて彼の戦闘力に驚嘆する。

 

 

「なんて、強さだ....」

 

 

そんなライガにマグマ星人は恨みが籠った目で睨みながら口を開いた。

 

 

「ゆ、許さんぞ!!いつか必ず貴様を殺してやるぅ!!覚えているがいぃ!!!」

 

 

マグマ星人は姿を消してしまった。敵を退けたライガは無言でレオに近寄り、彼の肩を貸して飛んでいった。一部始終を見たMACの面々も啞然としていた。

 

 

「すげぇな...」

 

 

「レオが苦戦した敵を、あんな簡単に...」

 

 

「レオと一緒に飛んで行きましたよ....」

 

 

「あ!そう言えば隊長は!?」

 

 

「「「っ!?」」」

 

 

芹沢隊員の言葉に皆ゲンの安否が分からないと気付く。そこへ東雲副隊長がゲンの捜索をすることを命じる。

 

「急ぎ隊長の捜索するわよ!!」

 

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰も居ない浜辺でレオは光に包まれておおとりゲンの姿に戻り、彼は自身を助けたウルトラマンライガを見上げる。するとライガも光に包まれて1人の人間が現れた、それはあの大神ジンの姿であった。

ゲンは自分を助けてくれたジンに問いかける。

 

 

 

「君は...一体」

 

 

「ウルトラマンライガ...人間の姿では大神ジンと名乗っています」

 

 

「そうか....」

 

 

ゲンは彼に“とある事”を尋ねる。

 

 

「君はまさか....L77星の出身者か?」

 

 

「.....」

 

 

「そうか...」

 

 

ゲンの問いにジンは黙る、だが沈黙は肯定である。そのジンの反応にゲンはやはりと言った顔をし、まさか自分と今は離れている自分の実の弟アストラ以外にL77星雲のウルトラマンが生きているとは思わなかった。

何せL77星雲の住民は全て故郷と共に滅んだとばかり思っていたのだから...。

そんなゲンにジンは口を開いた。

 

 

「自分はあの日...L77星雲が滅ぼされたあの日...」

 

 

「ん?」

 

 

 

ジンは思い思いに語り始めた。彼はまだその時まだ幼い小さな子供だった、その日は父と母と共にいつものように買い物に出かけていた。

何の変哲もない一つの家族の幸せな光景、それがウルトラ族であっても愛おしい家族の姿があるのは当然のこと。

しかしその幸せの一時を悪魔たちがやって来たのだ、そうあのマグマ星人と双子怪獣たちだったのだ。

奴らは有無も言わさず容赦なく街を壊し、人々を慈悲なく命を奪っていった。

そんな中、ジンいやライガの両親は幼い彼だけでも逃がすべく囮となってマグマ星人と双子怪獣たちに果敢に戦う。

だがライガは途中引き返して二人と一緒に居たいと戻る。

 

 

 

『父さん!!母さん!!』

 

 

『ライガ!?何故戻って来たんだ!?』

 

 

『ライガ!!来てはダメ!!』

 

 

『嫌だ!!父さん母さんを置いて行くなんて嫌だ!!』

 

 

幼いライガは両親の元へ駆け寄ろうと走るが、そこへマグマ星人が下衆な笑みを浮かべてライガ目掛けてサーベルビームを放つ。

子供の彼に咄嗟に反応など出来ず、迫りくる死にどうすることも出来ず怯えてしまう。

だが我が子を守らんとライガの両親は己の命を顧みず進んで盾となり、愛おしい息子を庇うのだった。

 

 

『父さん!?母さん!?』

 

 

『に、逃げるんだ...ら、ライガ....』

 

 

『逃げるのよ....生きて.....ライガ......』

 

 

『父さん....母さん....うわあああああああああああぁぁぁぁぁぁーっ!!!!』

 

 

 

彼は一心不乱にL77星から逃げ出したのだった。

 

 

 

「そして長い流浪の旅の末、この地球にたどり着きました」

 

 

「そうだったのか....」

 

 

「貴方のことは知っています。ウルトラマンレオ...L77星の王・アルスの息子で、この地球でマグマ星人やババルウ星人を倒し、ブラックスターの円盤生物とも戦い奴らと奴らの星を壊滅させたと...」

 

 

「昔のことだ」

 

 

自分の伝説を聞かされ、少し恥ずかしいのかそっぽを向いてしまう。だが直ぐに気を取り直してゲンはジンに話す。

 

 

 

「ジン、君はどうして今回戦ったんだ?」

 

 

「どうして?」

 

 

「ああ。君はマグマ星人に激しい怒りを抱いている、その為に戦った。違うか?」

 

 

「.....」

 

 

再びの沈黙、そんなジンにゲンは諭す。

 

 

「ジン、私も同じ故郷を失っている。だから君の怒りは分かっている、だがそれは自分の心を壊しかねない。憎しみは憎しみしか生まない虚しいものだ」

 

 

「....はい」

 

 

「今すぐ怒りを捨てろとは言わない。だが戦いとはそんなことよりも大事な物があるんだ」

 

 

「大事な、物....」

 

 

ゲンの言葉に何かを感じるがそれを素直に受け止めることに躊躇いを覚える。そんなジンにゲンはあることを口にする。

 

 

「ジン...君にMACに入隊して、共に地球を守って欲しい」

 

 

「自分が?」

 

 

「ああ。愛するこの地球を、君自身の手で守るんだ」

 

 

突然のこの話にジンは動揺してしまう。何故ゲンはそんな話をするのか?だがゲンは話し続ける。

 

 

 

「君はMACに入隊するんだ」

 

 

だがジンはこれに異を唱える。既にこの地球にはウルトラマンレオが居るではないかと、彼がまだ健在なら自分がこれ以上邪魔をしてはならないと考える。

今回は仇と言えるマグマ星人が居たから戦ったまでだ。だがゲンの表情が重く物々しい雰囲気を漂わせ始める。

そんなゲンにジンは言う。

 

 

「しかしおおとりさん、地球には貴方が居るじゃないですか」

 

 

その言葉にゲンは厳しい顔で返した。

 

 

「私には君が必要だ。しかも!君には私が必要だ!!」

 

 

「しかし!ウルトラマンレオが居るではありませんか!」

 

 

その発言にゲンは彼の眼を見て、とんでもない発言をする。

 

 

 

「....レオはもう居ない」

 

 

「っ!?何を言ってるんだ!!?現に貴方は此処にいるでしょ!!」

 

 

「よく見ているんだ」

 

 

 

するとゲンは自分が変身に使うためのレオリングをはめた手を空手の正拳突きに近いポーズを取って「レオー!」っと叫ぶが、だがリングが突如ヒビが割れてしまう。

それを見たジンは驚きを見せる。

 

 

「そ、それは!?」

 

 

「恐らくマグマ星人のサーベルビームを諸に受けたのが原因かもしれん」

 

 

「そ、そんな....じゃあ俺の....」

 

 

 

自分のせいでゲンはウルトラマンレオとして変身能力を失ったと、だがそんな罪悪感を抱くジンに喝を入れる。

 

 

「自惚れるなっ!!!」

 

 

「っ!?」

 

 

「私は自分が取った行動に後悔はしていない。君は私に代わってこの地球の新たな希望だ、その希望の為に起きた代償ならば安いものんだ」

 

 

ゲンの一切迷いや後悔がない姿と言動に、ジンは胸を打たれる思いを抱く。

 

 

「ジン、君はこの地球にとって新たな希望だ。またマグマ星人がやって来るかもしれん。それに他の侵略者たちも必ずこの美しい星に魔の手を伸ばしてくる。

その時必ず君が必要なんだ」

 

 

「.....」

 

 

「共に、この地球を守ってくれ、頼む!」

 

 

ゲンは頭を下げて頼みこむ。自分に頭を下げるゲンにジンは返事をした。

 

 

「おおとりさん、自分も一緒に戦わせてください」

 

 

「ジン!」

 

 

「自分にとってもこの地球は、第二の故郷です。ならばこの命に替えても守ります」

 

 

「そうか!共に戦おう!!」

 

 

「はい!」

 

 

 

こうして、二人の宇宙人が命を賭けてこの青く美しい星に再び迫って脅威に立ち向かうと誓ったのだった。そしてこれから始まるウルトラマンライガの険しい戦いの物語が....続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、ウルトラマンライガ。


その夜、東京では夜毎人が斬り殺される怪奇な事件が発生していた。


その被害者の中にジンの知り合い兄妹の父も含まれていた。


恐るべき手刀を持ったツルク星人を倒す為、我らがヒーロー・ウルトラマンライガが立ち上がった!


さぁ!皆で見よう!!


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基本設定

ウルトラマンライガ

 

身長 56m

 

 

体重 4万t

 

 

年齢 7700歳

 

 

腕力 50万tの重さをも持ち上げる

 

 

ジャンプ力 2000m

 

 

走行距離 マッハ3.7

 

 

飛行速度 マッハ9

 

 

水中速度 マッハ3

 

 

彼の出身地は、ウルトラマンレオとその弟アストラと同じ獅子座L77星の生まれである。

突如現れたマグマ星人と双子怪獣に両親を目の前で殺された彼は、まだ幼くして1人孤独でL77星から辛くも脱出。

 

だがまだその当時子供であった彼にとって1人で生きるのはとても過酷であり、途中命を投げ出そうとした所、1人の女性ウルトラ戦士に助けられて暫くはその女性ウルトラ戦士と過ごし、彼女から戦い方を学びその中で自分の戦闘スタイルにピッタリな宇宙拳法を自分なりに会得することになる。

 

その女性ウルトラ戦士からの深き愛情に、彼女との生活にまだ幼いライガに癒しと幸せを齎したのだが、とある出来事によって彼女と生き別れとなる。

 

 

そこからまた孤独に生きることとなった彼は、月日が流れて本作品の開始から5ヶ月前に故郷と瓜二つの地球にやってきた。

大神ジンとして生活するが、苦戦することが多かった。そこへ嘗てウルトラマンレオことおおとりゲンのお陰で立派な大人として、そして城南スポーツセンターの館長として生活していた梅田トオルがそんなジンを見かけ、彼が宇宙人でゲンと同じウルトラマンであることを知ったトオルが彼に住む場所と、スポーツセンターのトレーナーと言う働き先を与える。

 

ジンが宇宙人であることを知っているのはトオルだけであった。

 

ウルトラマンライガの身体特徴を説明すると、光の国のウルトラ戦士たち同様にカラータイマーを胸部に備え付けられている。

地球での活動時間はレオと同じく2分40秒であり、巨大化せず人間サイズであればエネルギー消費を大幅に抑えられる。

カラータイマーの点滅音が初代ウルトラマンと同じ音である。

 

銀色の鎧のようなプロテクターが胸と左肩、その左肩を覆う部分のプロテクターが獅子を模した形状している。

 

頭部にはウルトラセブン21の21スラッガーとも言われてるヴェルザードや、それを両サイドで挟む形でウルトラマンゼロのゼロスラッガーに酷似した宇宙ブーメラン「トライドスラッガー」を装備している、これを変幻自在にウルトラ念力で操ることができる。

 

右腕には獅子の紋様が描かれた手甲「ライオブレス」を装備している。

 

独力で宇宙拳法を会得した彼が地球での初戦闘で、ウルトラマンレオに彼の弟子であるウルトラマンゼロと同等またはそれ以上と言わしめた。

 

 

能力

 

ライガキック ライガが最も得意とする必殺技。地上から2000メートルのジャンプ力と落下時の加速を活かし、自身のエネルギーを片足に収束して相手を蹴る。その威力はウルトラマンレオのレオキックの10倍である。

 

ボルカリュームバスター 両腕を腹の位置でクロスさせ、右腕の手甲のライオブレスにエネルギーを大きく貯める。そして両腕を大きく広げて手甲をはめてる腕を前に突き出しそこから破壊力抜群の必殺光線。

 

 

トライドスラッガー 頭部に備え付けられた三本のブーメラン武器をつかってウルトラ念力で操り相手を切り刻み、バラバラにするなど容易い。

 

 

まだ他にも彼には技があるようだが、それは今後の戦いにおいて見せてくれるだろう。

 

 



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第三話 涙を嘲笑う冷酷な刃

奇怪宇宙人・ツルク星人 登場


夕方から夜になる時間帯、城南スポーツセンターでは今、ジンと凛子、梅田さんやスポーツセンターの職員たちや子供たちが、1人の少年が逆上がりを成功させようとしていた。

そんな少年にジンは声援を贈る。

 

 

「一翔!ゆっくり深呼吸をするんだ。落ち着いてやれば必ず出来る!」

 

 

「うん!」

 

 

「一翔君、頑張って!」

 

 

「うん!凛子姉ちゃん!」

 

 

凛子の隣には一翔少年よりも幼い少女も彼を応援する。

 

 

「お兄ちゃん、がんばれー!」

 

 

彼らは桐ヶ谷一翔、城南スポーツセンターを通う小学4年生で、その妹である桐ヶ谷明日香は小学三年生である。

そして他にも一翔少年を応援している人が居る。

 

 

「いいぞぉ!!一翔!!がんばれぇ!」

 

 

彼は一翔と明日香の父親である。何故彼が此処にいるかと言うと、今回息子が苦手な逆上がりを見事出来たら新作ゲーム機を買ってあげるという約束を交わしているのだ。

そのおかげなのだろう、一翔は汗を流しながらも一生懸命に逆上がりを見事完成させようと奮闘する。そんな息子の懸命な姿に父親も手に力が入り、応援にも力が入るのだった。

 

 

「がんばれぇ!!一翔ぉ!!父さんは見てるぞぉ!!」

 

 

「うん!」

 

 

父の声援に応えるべく一翔も足を空に向けて床を蹴る。最初は全然出来ず、一回も回ることもなかったのが徐々に足が反対側に回りそうという所までいきかける。

その様子に皆嬉しさと驚きの声が沸き、そしてとうとう一翔少年は見事逆上がりを成し遂げるのだった。

 

 

「やったぁ!!やったよ!!お父さん!」

 

 

一翔は逆上がりを克服したことに大喜び、父親に抱きつきその嬉しさを表現するのだった。彼の妹も兄が成し遂げたことに喜んでいる。

そして喜ぶ一翔にジンが近寄り微笑みながら褒めるのだった。

 

 

「一翔、よくできたな。えらいぞ」

 

 

「ありがとう!ジンさん!これでゲーム機を買って貰えるよ」

 

 

「そうか。良かったな」

 

 

「うん!」

 

 

「じゃあ帰ろうか。明日香、帰ろう」

 

 

「はーい、ジンお兄ちゃんバイバーイ!」

 

 

「ああ、バイバイ」

 

 

 

幼い兄妹は嬉しそうに父親の両手と手をつないで幸せそうに駐車場に向かっていった。そんな彼らの姿を和みながら見つめていたジン。

そんな彼に凛子が心配そうに話しかけてきた。

 

 

「ジンさん、羨ましそう」

 

 

「え?そうかなぁ...」

 

 

「うんそう、まるで他人の親子を羨ましそうに見つめる独りぼっちの子供みたいよ...?」

 

 

「.....」

 

 

彼女の言葉にジンは顔を影に落として過去を思い出す。まだ自分が幼かった頃、よく一翔や明日香みたいに自分もああやって父や母に懐き、甘えていた。

厳しくもそれでも大きく暖かい手で自分を撫でてくれた父、優しくいつも深き愛情を注いでくれた母、二人の想いに包まれて育てられたライガはこれからも続くと思っていた。

だがその幸せもいとも簡単に脆くも崩れ去り、彼は深き絶望と悲しみに包まれたがそれがいつしか途方もない怒りと憎しみを抱くこととなってしまった。

故に大切なものを奪う侵略者を決して許すことは絶対にあってはならない。

その想いがおおとりゲンとの出会いによってより一層強くなって、気づけばジンの表情が険しくなっているが本人は気づかない。

それを彼女が驚き呼びかけた。

 

 

「っ!?ジンさん!!」

 

 

「え?な、なに?凛子」

 

 

「今ジンさん、怖い顔だったわ!」

 

 

「え...そうだった?」

 

 

「ええ、ジンさん大丈夫?」

 

 

そう彼女はジンの拳にそっと包み込むように手を添えて心配そうに尋ねる。自分の所為で彼女を不安したのだろうと彼は笑顔を見せてその心配を払拭しようとする。

 

 

「大丈夫だよ、凛子。俺は全然この通り!」

 

 

っと元気に逆立ちをして見せながら笑って見せる。そんな彼に凛子は思わず笑ってしまう。

 

 

「もう!ジンさんったら。フフッ」

 

 

そんな中、ジンにトオルが呼びかけてきた。

 

 

「ジン、少しいいか?」

 

 

「え?あ、はい。ごめん凛子、ちょっと行ってくるよ」

 

 

「ええ、行ってらっしゃい」

 

 

ジンは凛子と離れてトオルの元へと向かうべく、トオルが居る館長室のドアにノックするのだった。

 

 

「どうぞ」

 

 

「失礼します!...っ!?貴方は?!」

 

 

扉を開けて部屋に入る、そこにはMACの隊長でありジンと同じウルトラマンであるウルトラマンレオことおおとりゲンがそこに居たのだ。

彼が居たことに驚いたジンは、何故居るのか問いかける。

 

 

「おおとりさん!?何故此処に!?」

 

 

「いやなに、此処は昔俺がMACと兼任しながら働いていた場所なんだ」

 

 

っとゲンはそう微笑みながら説明する。まさかおおとりゲンが昔とは言えこのスポーツセンターで働いていたなど驚く。

ジンはトオルに眼を向けると、トオルもゲンと同様に笑みを浮かべながら頷いて口にした。

 

 

 

「ああ。おおとりさんは昔MACの隊員をしながら此処でトレーナーとしても働いていたんだよ」

 

 

「そ、そうだったのですか。しかしそのおおとりさんが何故今日此処に?」

 

 

そう、何故此処にゲンが居るのかが疑問なのだが、彼は今回此処に来た理由を説明する。

 

 

「実はな、君のMAC入隊のことでトオルと話す為に来たんだ」

 

 

「え?」

 

 

「ジン君。君は前回の怪獣出現の時、変身して戦ったね?」

 

 

真剣な顔に変わったトオルがジンに問いかける。それに彼は気まずそうに答えた。

 

 

「あ...はい。すみません」

 

 

「別に責めてわけじゃない。君のおかげで皆無事だったんだ、寧ろお礼を言いたいくらいだ。ありがとう!」

 

 

「そ、そんな!!」

 

 

2人のやり取りを見たゲンは、トオルがジンの正体がウルトラマンライガであると知ってると気付く。

 

 

「トオル、お前はジンがウルトラマンライガであることを....」

 

 

「はい、おおとりさん。知っています。しかし彼が貴方と同様に宇宙人であることを知っているのは私だけです。安心してください」

 

 

トオルの言葉にそうかと安心して頷くゲン。そして話は再び、ジンのMAC入隊の件に戻る。

 

 

「ではトオル、ジンのMAC入隊に件について賛成してくれるか?」

 

 

「はい、ジンくんが決めたのなら、私は応援しますよ」

 

 

「そうか。ありがとう!」

 

 

そのやり取りにジンはスポーツセンターのトレーナーを辞めなくてはならないか聞く。MACに入隊しては流石に此処に居ることはできないのだろうと踏んでいた。

だが....。

 

 

「いや、スポーツセンターを辞めなくても大丈夫だ」

 

 

「本当ですか?!」

 

 

「ああ。だから心配するな、君が居ることで子供たちも喜ぶ」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

「では、私はこれで失礼するよ。後日君の携帯に連絡する」

 

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

 

「ならジン君、おおとりさんを送ってあげなさい」

 

 

トオルはゲンを出入口まで送るように指示する。ジンもこれに当然従い、ゲンの後を追うのだった。

廊下でゲンに追いついたジンは彼に話しかける。

 

 

「おおとりさ....いえ、隊長」

 

 

これから彼らは上司と部下となるのだから馴れ馴れしい態度をダメだと畏まるジン。そんな彼に苦笑交じりに諭す。

 

 

「ジン、入隊は後日改めてだ。だからそんな今は畏まらなくもいい」

 

 

「しかし!」

 

 

「ジン、君と私はこの地球においてたった2人だけの宇宙人だ。これからは協力して迫りくる敵と戦わねばならん、分かるな?」

 

 

「.....」

 

 

そう。この地球においてジンとゲンは、たった2人だけの宇宙人なのだ。しかもトオル以外に除けば正体は決して悟られてはならない。

その秘密を背負いながらこの青い地球の為に命を賭けて共に戦う同士だ、だからこそ1人で気負い過ぎていざという時に何かあってはならない、自分の命は自分だけの物ではないのだ。

これからはゲンの元でこれからの戦いに備えて万全を期さなければならない、その為にも1人で背負いこみ過ぎてならないとゲンは言いたいのだ。

 

 

「....分かりました」

 

 

「うむ」

 

 

彼の返事に微笑みながら肩に手を乗せて頷くゲンは、再び歩みを進めて出入口に向かう。そして出入口にたどり着き、ジンはゲンを見送る。

 

 

「ではおおとりさん、お気を付けて」

 

 

「ああ。ではジン、よろしく頼むぞ」

 

 

「はい!」

 

 

「うむ、ではな」

 

 

ゲンはそのまま駐車場まで一人向かった。ジンはそんな彼の背中を見送りながら、これからの事を思い馳せるのだった。

 

 

「MAC入隊、か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、外はもう夜となってしまった時間、父親が運転する車の中で先ほど買って貰ったゲーム機を大切そうに胸に抱いて一翔はウキウキしていた。

 

 

「~♪」

 

 

「お兄ちゃん、私も一緒にそのゲームで遊んでいい?」

 

 

「うん!一緒に遊ぼう!」

 

 

「わーい!お兄ちゃん大好き♪」

 

 

子供たちの和気藹々としている会話を聞きこちらも幸せな気持ちになる父親。そして車は住宅街にたどり着いた時であった。

 

 

「ん?え!?」

 

 

外はもう暗く車の前方に一つ人影にいきなり現れて驚愕して急ブレーキを踏むのだった。幸いシートベルトをしていたが突然のことに驚愕と不安に包まれる子供たち。

 

 

「お父さん!どうしたの!?」

 

 

「車の中で待ってなさい!!」

 

 

父親は子供たちにそう言い聞かせて、自分は車から降りて外の様子を見に行くことに。まさかいきなり前方に人が出てきたことに一瞬パニックになりそうだったが、一度深呼吸をして自分を落ち着かせる。

もし人が車の前で倒れているのであれば、救急車と警察に連絡しなければと考える父親。

そして恐る恐る車の前に覗く....だがそこに、人一人の姿どころか影すらなかった。

一体どういうことなのか、確かに人らしき影が車の前に通ったはずなのだが、なのに車の前に人一人倒れてすら居ない。

この不可解なことに首を傾げてきっと気のせいだったのだろうと、車に戻ろうとしたその時であった。

突如周囲で何かが通った気配がした、父親は直ぐにその方向へ目を向けるが何もいない。

しかしまたも別の方からまた気配がする、そこにも振り向くがまた別の方向から....。

この常軌を逸した状況に恐怖に支配されつつあるが、それでも我が子だけはこの異常な状況から逃げ出さなくてはと、大声で叫んだ。

 

 

「一翔ぉー!!明日香ぁー!!」

 

 

「お父さん!」

 

 

「お父さん!」

 

 

「二人とも車から出て逃げるんだぁ!!」

 

 

いきなり大声で逃げるように叫んだ。しかし何故?どうして?逃げる必要が何処にあるのだと思うが、父が

叫んで逃げるように促した形相は鬼気迫るものがあった。

なので一翔は恐怖を抱きながらもそれでも妹の明日香を守るのは兄である自分なのだと震える足を奮い立たせる。

 

 

「明日香!車から降りて逃げよう!!」

 

 

「お、お父さんは....?」

 

 

妹は既に得体の知れない恐怖に耐えきれず涙を流してもう身体を震わして、一翔の服の袖を掴んでいる。でもこの状況でいつまでもすくんでしまう訳にはいかないと、一翔は先に車から降りて明日香に背中を見せておんぶして必死にその場から離れようとする。

 

その二人の逃げる姿を見守る父は尚も声を上げて遠くへ逃げるように促した。

 

 

「もっと遠くへ逃げるんだぁ!!とおk.....」

 

 

 

っとその時だった。突如自分の“体”が勢いよく宙に飛んだ。だが何故か宙に浮く自分の体がどうしてか軽い、その原因が地面に落ちたことで分かった。

 

 

何故なら........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

........倒れた目の前に自分の下半身が倒れていたのだから.....

 

 

 

あ、ああああああああああああああああああああああああーーーーっ!!!!!

 

 

 

 

最後に彼の叫びが木霊するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、そんな出来事が起きてるなど露とも知らぬジンは帰る支度をしていた。そしてスポーツセンターから出てこれから帰ろうとしていた。その彼の帰りを待って凛子が嬉しそうに駆け寄ってきた。

 

 

 

「ジンさん!一緒に帰りましょ!」

 

 

「ん?ああ。じゃあいこ...ん?」

 

 

彼の足が止まった。凛子はどうしたのかと彼が見ている方へ見るとそこには、妹の明日香をおんぶしたまま涙を流してこちらを見ている一翔の姿がそこに居た。

2人の表情は助けを求めているかのようだ、兄妹の反応が異常だと気付いたジンと凛子は直ぐに2人の傍まで急ぎ駆け寄った。

 

 

 

「一翔!!どうした!?」

 

 

「明日香ちゃんもどうしたの!?」

 

 

一翔と明日香は先ほどまで緊張の糸が完全に切れたのか、明日香は兄の背中から降りて凛子の胸に飛びつき彼女の胸の中で激しく号泣する。

 

 

「うわあああああああああああぁぁぁぁぁぁんっ!!おねぇえええぢゃあああああんっ!!!」

 

 

「よしよし、もう大丈夫だからね...」

 

 

凛子は明日香の背中を摩って安心させようとしている。ジンも一翔の肩に手を乗せて声をかける。

 

 

 

「一翔...」

 

 

「ジン、さん....ぐすっ...うぅっ」

 

 

「どうしたんだ?!なにがあった?!」

 

 

一翔もまた涙を流してジンのお腹に抱きつく。一翔の反応がやはり変だと思ったジン、凛子も明日香を同じように思った。そこへトオルがスポーツセンターの戸締りを済ませて帰る所だった。

 

 

「二人とも!どうしたんだ?!」

 

 

何やら異常な状況にどうしたのかと動揺する。そして一翔はジンの服を強く掴んで哀願する。

 

 

 

「ジンさん!!お父さんを!!お父さんを助けて!!」

 

 

「え!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事態を重いと感じたジンは、直ぐにゲンに連絡しMACが動くことになった。そして一翔と明日香の証言により、急いでその現場へと急行したMAC。

そこで目にしたのは.....。

 

 

 

「こいつは.....」

 

 

「ひ、酷い....」

 

 

「人間に出来ることじゃない...」

 

 

「何の!?これ!!」

 

 

「隊長....」

 

 

「......」

 

 

 

 

彼らが目にしたのは上半身と下半身が真っ二つにされ、そこら中血だまり場となっていた。しかも.....。

 

 

 

「隊長!」

 

 

「どうした、氷室」

 

 

「こ、こっちに...................首が」

 

 

「....」

 

 

氷室隊員が指し示した方へと行くと、そこには電柱にぶら下がった父親の首がそこにはあったのだった。余りの凄惨な惨状に誰しも言葉を発することが出来なかったのだ、何せ同行している警察官たちなどは既に何人かが嘔吐していたのだから。

だがゲンは違ったこの惨状でありながらも、鋭い目つきでこの状況をしっかりと見ている。

 

 

「急いで現場周辺を捜索しろ。恐らくまだ犯人は潜んでいる可能性がある」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

ゲンの命令に彼らは急ぎ行動に出る。そして更にゲンは警官たちに現場の立入規制と遺体の搬送を手配するよう指示。

彼らもゲンの覇気ある指示に意識をしっかりして行動に当たる。

 

 

ゲンもまた現場周辺の捜索をする。すると彼の足元に何かを見つけた、何かのレリーフだった。しかもそれには何と....。

 

 

 

「これは...ウルトラマンライガ!」

 

 

 

そのレリーフにはウルトラマンライガの顔が彫られていた。被害者はバラバラ、更にこの顔が彫られているレリーフ、これらにゲンは心当たりがあった。

 

そして東雲副隊長が戻ってきた。

 

 

「隊長、ダメです。怪しい者の影が一つもありませんでした」

 

 

「そうか。東雲、すまんが現場の指揮を任していいか?」

 

 

「え、隊長は?」

 

 

「私はこれから、被害者の遺族のところに行く。遺された遺族はまだ幼い子供たちだ」

 

 

「...分かりました」

 

 

ゲンはジープ型の戦闘車両マックロディーに乗り込んで、ジンたちが居るスポーツセンターに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方スポーツセンターでは一翔と明日香の傍に居ようと、ジンと凛子、トオルがそこに居た。一翔の表情は重くそしてとても暗かった。明日香は泣き疲れて凛子に抱きつきながら静かに眠っている。

そんな二人を心配してジンと凛子、それにトオルも離れないようにしていた。

 

 

 

「一体何があったのかしら....」

 

 

「分からない」

 

 

明日香を抱きしめながら心配そうに呟く凛子、ジンもまたこの状況に分からないでいる。だがトオルだけは....。

 

 

 

「.....」

 

 

彼だけは何となく一翔と明日香の状態に心当たりがあったのだろうか、黙り込む。そこへゲンがやって来た。

 

 

「おおとりさん!」

 

 

「ジン、二人だけで話がある。こっちへ来てくれ」

 

 

「え?しかし....」

 

 

一翔と明日香が気掛かりと視線を送るが、トオルが真顔でこちらは任せろと言う。一翔が心配だがゲンが呼ぶという事は何かしらの事が分かったのだろう、ジンは彼らから離れてゲンが居る場所へと向かう。

 

 

「お待たせしました」

 

 

「いや、大丈夫だ」

 

 

「それで、何か分かったのですか?」

 

 

 

ジンの問いかけにゲンは無言で現場で見つけたレリーフを渡した、それを受け取ったジンはそのレリーフを見て驚いた。

 

 

 

「ウルトラマンライガの顔!?」

 

 

「宇宙金属で出来ている」

 

 

「宇宙金属...まさか宇宙人が!?」

 

 

「これは恐らくウルトラマンライガへの挑戦状だ」

 

 

「挑戦状...?」

 

 

それを聞いてジンの表情が険しくなり、レリーフを握る手に力が入り遂には粉々となってしまった。そして無言で何処かへ行こうとするジンに、ゲンの手が肩をつかんで制止する。

 

 

「何処へいく」

 

 

「止めないでください!!」

 

 

「慌てるな!今はもう既に移動しているだろう。それよりもこの手口に心当たりがある」

 

 

「っ!?」

 

 

ゲンの発言にジンは驚愕し、問いただす。

 

 

「一体犯人は!?」

 

 

「犯人はツルク星人。宇宙の通り魔という異名をもつ残虐な宇宙人だ」

 

 

「宇宙の通り魔...」

 

 

ゲンからの説明にジンはこの時既に2人の父親がもう手遅れなのだと察する。だがそれでも聞かない訳にはいかなかった。

ジンは重苦しさを耐えながらゲンに問いかける。

 

 

「....桐ヶ谷さんは?」

 

 

「....胴体が真っ二つにされていた。しかも」

 

 

「...なんです?」

 

 

「首が電柱に吊るされていた」

 

 

「っ!?」

 

 

 

残酷な答えに眼を大きく開き信じられないと言った顔をし、直ぐにそれが怒りの感情に変わり彼の握り拳となっていた両手から血が滴る。

 

 

「....許さんっ」

 

 

「ジン、待て」

 

 

何処かへ行こうとするジンにゲンは再び彼の肩を掴んで止めた、振り向くジンの顔には怒りと憎しみの感情が表に出ていた。

ジンがどうしてこれ程に怒りを募らせているのか、その理由をゲンは気付いている。同じL77星の生まれでそしてその故郷を失い父と母を殺されている、その境遇があの兄妹と重ねているやもしれない。

それがジンの心の中で激しく燃える言わば彼の無くてはならない原動力となっているのだろう、だからこそこのような冷酷に平然と行い、何の躊躇いもなく人の命を弄び殺す侵略者を絶対に許すことを出来ない。

ゲンは、ジンの身体能力や戦闘能力の余りある高い力は悲しみと怒りと、そして憎しみから来ていると分かった。

だからこそそんなジンがとても危ういとゲンは既に察知している、その上で彼はジンにMACに入隊させて少しでも自分の近くでジンを見守り、そしてジンを新たに鍛え直したいと考えているのだ。

だがそんなゲンの思いなど気づかず、ジンは鋭く射殺すような目つきで自分を止める彼を睨む。

しかしジンの鋭い睨みに平然と冷静な態度でゲンは諭す。

 

 

 

「ジン、今は落ち着け。こう言う時だからこそ冷静にならなければならん」

 

 

「冷静に...?あの子たちの姿を見て、何も思わないのですかっ!!?」

 

 

 

ジンは一翔と明日香の方へと指を指し示す、ゲンは幼い兄妹を見ると一翔は今でも父の安否が気掛かりで不安に押しつぶされそうな顔をし、妹の明日香は泣き疲れでまだ眠りの中だが瞼から涙を流して寝言で父を呼んでいる。

さっきまでこのスポーツセンターで幸せな親子の絆を見せていた家族が、いきなり降りかかった災厄によって愛する父が殺された。

だがそんな父の死すら知らない兄妹、何故にあの子たちがこのような残酷な仕打ちを受けねばならないのか。

そう考えるだけでジンの怒りが更に込みあがり、ゲンに問い詰める。

 

 

「それでも貴方は冷静になれというのか!!」

 

 

「そうだ」

 

 

「っ!!」

 

 

今のジンはとてもとは言えないぐらい危うい、ならばとゲンはとんでもないことを言いつける。

 

 

「ジン、今回お前には私が良いと言うまで変身してはならん」

 

 

「なに!?」

 

 

唐突に驚愕の命令とでも受けとる言葉がゲンの口から出た。それに対してジンは何故そのような事を言うのか理解出来ず、先ほどよりも強くゲンに問い詰める。

 

 

「どういうつもりですか!!?変身するななんて!!」

 

 

「今のお前は冷静ではない、そんな状態でツルク星人と戦っても奴に無様にやられるだけだ」

 

 

「だから変身するなと!!ただ手をこまねいていろと!?」

 

 

「少なくとも、今は冷静になれ」

 

 

「.....」

 

 

ジンは黙って下を向くしかなかった。ゲンは彼が思いとどまってくれていることを祈りながら一翔と明日香の元へ歩もうとした、するとゲンは一度足を止めてジンにある事を問いかける。

 

 

「...ジン、あの子たちの母親は...?」

 

 

「....明日香ちゃんを産んでから一か月後に、事故で...」

 

 

「......そうか」

 

 

 

何ともやるせない思いを抱くが、しかしありのままの事実を子供たちに伝えなくてはならないのだ。ゲンは気をしっかりして一翔の傍までやってきた。

そして自身に気付いた一翔にゲンが.....。

 

 

 

「...お父さんの遺体が、見つかった」

 

 

「っ!!」

 

 

ゲンから伝えられた残酷な結果に一翔は隣で眠っている。妹を起こさないように唇を嚙みしめて静かに涙を流して身体を震えている。

その様子を見たゲンは彼らの父親を助け出せなかった自分の無力を呪った。

一刻も早く再びこの地球にやってきて残虐な宇宙の通り魔を打倒しなくては、だがそれにはウルトラマンライガことジンの力が必要不可欠である、その為にもジンには冷静さを取り戻して欲しいと願う。

 

 

 

 

 

 

 

 

それからというもの、MACは厳重な警戒態勢でパトロールを繰り返した。だが一向にツルク星人の突き止めることが出来ず、奴の犯行は続き犠牲者は10人まで登った。

この為、東京全域に緊急の外出規制を呼びかけ、夜の東京の街は異常な静けさに支配されていた。

そしてある夜、おおとりゲンは一人ツルク星人の複数の目撃情報があった住宅地に赴いた、この一人での行動にゲンは内心思いに耽る。

 

 

「(セブンも嘗てこんな気持ちだったのだろう)」

 

 

嘗て自身の師であり、旧MACの隊長をも務めたウルトラセブンことモロボシダンも一人でツルク星人相手に囮を努めた。

自分もあの時、ツルク星人によって梅田トオルの父親とMACの仲間であった鈴木隊員を殺され自分も冷静ではいられなかった、だからこそジンの怒りがとてもよく分かる。

 

 

「(だが...それではいかんのだ)」

 

 

ジンは故郷と両親を失い、その原因から怒りが彼の力の源になっている。それだけではこれからの戦いにやっていけることなど不可能なのだ。

それに今回の相手が相手なだけに油断や隙が在ることは敗北、いや最悪死であるのは明白だ。ウルトラマンの戦いに決して負ける事は許されないものだと、そして怒りだけが戦いの全てではない事を彼に知って貰いたいのだ。

 

そう考えるゲンの背後から怪しげな気配が....。

 

 

「(....来たか)」

 

 

 

ゲンは既にその気配に気づいてた。だが奴が至近距離まで近づくまで気づかないふりをしなければならない、絶対に気づかれてならないとゲンは後ろを振り向くことなく歩き続ける。

ツルク星人はどんどんとゲンの背中に忍び寄ろうと距離を縮める。そして奴がゲンの背後に立ったその時であった。

 

一つの影がツルク星人の背後を襲う。

 

 

「ぜぇぇぇい!!」

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

「なに!?」

 

 

 

ツルク星人は自分を襲う襲撃者の攻撃を避けてジャンプした。ゲンはツルク星人を襲う人物に驚いた。

 

 

 

「ジン!?何故此処に来た!?」

 

 

「.....」

 

 

 

しかしジンはゲンの問い詰めを聞き流して、拳を構えて目の前に自身と対峙する存在と睨み合う。

 

 

 

「...こいつがぁ」

 

 

彼が見据える存在....全身タイツのスリムな人型宇宙人、両腕に鋭利な刃を装備している。此奴こそが一翔と明日香の父親を殺した奇怪宇宙人・ツルク星人なのだ。

ツルク星人を睨むジンは星人に対して深い敵意と殺意が溢れる、此奴があの子たちの父親を無惨に殺した犯人だと思うと彼の拳に力が更に込みあがる。

 

 

ジンの様子に危機感を抱いたゲンは「いかん!」と思い、ジンに叫ぶ。

 

 

「ジンっ!!よせ!!」

 

 

「....」

 

 

しかしジンはゲンの制止の声を無視。そして彼はツルク星人に生身で戦いを挑み始めた。

 

 

「うおおおおおおおぉー!!」

 

 

ジンは素早くツルク星人に向かってハイキックで仕掛けた。しかしツルク星人はこれを回避、それにジンは反撃の隙など与えず尚も攻撃をかける。

だがそれらを紙一重にツルク星人は躱し続けた、憤り冷静さがないジンはそんなのお構いなく攻撃を続けるが冷静さがない為、正常な判断と動きが出来てないとゲンは直ぐに分かった。

 

そしてジンがツルク星人に正拳突きを放った瞬間の隙を突いて、両腕の刀で彼を斬り殺そうと襲う。

 

 

「させん!!」

 

 

ゲンはツルク星人よりも素早くMACの装備の一つの銃口が丸く膨らんだ小型銃「マックガン」を取り出して、ツルク星人の左腕目掛けて正確に射撃、弾丸は狙い通り命中し星人は大きくひるんでしまい堪らず逃げ出した。

ジンは奴を逃がさないと追おうする。

 

 

「逃がさん!!」

 

 

しかしそんな彼をゲンは呼び止めた。

 

 

「ジン!!」

 

 

「っ!!」

 

 

ようやくジンはゲンの声に足を止め、振り向くとそこには凄い剣幕でゲンがこちらを睨んでいる。そしてジンの傍まで駆け寄ってきた彼は無言で殴り飛ばした。

 

 

「ぐっ!!な、なにを!?」

 

 

「なぜ私の言うことを守れなかった!?」

 

 

「しかし!」

 

 

「しかしもかかしもない!!私が射撃してなかったら、お前の胴体は真っ二つになっていたんだぞ!!」

 

 

「くっ...」

 

 

悔し気に歯嚙みするジン。やはり今のジンに戦い以外にも精神的な訓練も必要と改めて思うゲン。っが、その時であった。

ツルク星人が逃げた方から大きな閃光が発生し、そこから巨大化すると全く印象の異なる怪獣のような姿に変化したツルク星人が現れた。

ゲンは直ぐに小型通信機でMACベースに連絡した。

 

 

「聞こえるか!こちらおおとり!!」

 

 

『はい!こちらMACベース!!』

 

 

「こちらに巨大化した宇宙人と遭遇!!直ぐに出撃せよ!!」

 

 

『了解!!直ちに出撃します!!』

 

 

通信機を懐にしまいゲンはジンに非難するよう呼びかける。今のジンに戦わせるのは危険だと判断したからである。しかし既にジンは巨大化したツルク星人の元へと走りだしていた。

ゲンは直ちに戻るようにジンを思い留まらせようと叫ぶ。

 

 

「ジーンっ!!もどれぇーー!!!」

 

 

 

だがジンはゲンの制止を完全に無視して彼は変身しようと、彼は赤い宝石を口で加えているライオンの顔が模られた金色のブレスレット型の変身アイテム「ライガブレス」をはめている手ともう片方の手で、胸の位置でクロスしてから天に向かってブレスレットをはめている拳を掲げて叫んだ。

 

 

 

 

ライガアアアァァァァーっ!!!!

 

 

 

そして光が彼を包み込み、大きくスパークした中心から我らがヒーロー・ウルトラマンライガが巨大化して現れた!

 

 

 

「デェア!!」

 

 

 

ライガは宇宙拳法の構えを取ってツルク星人と対峙する。ツルク星人も両腕の刀を構えていつでも迎え撃つ準備を整っている。

そんな中、ゲンが近隣住民たちを遠くへ避難誘導させながらウルトラマンライガを見守る。

 

 

「ジン」

 

 

「.....ドゥアッ!!!」

 

 

 

そして両者の戦いがとうとう始まった。ライガとツルク星人は同じタイミングで互いに向かって走り、ツルク星人が両腕の刀でライガに切りつけようとしたがその前にライガ大きくジャンプしてこれを避けて、ツルク星人の背後を取った。

着地してすぐに後ろのツルク星人に回し蹴りをお見舞いする。ライガからの攻撃を受けたツルク星人ではあったが、すかさず振り向いて既に防御を取っていた為にダメージは軽かった。

そればかりか、回し蹴りをしてきたライガの足を捕まえてそのまま大きく投げ飛ばした。

投げ飛ばされたライガは地面にぶつかる前にギリギリ受け身を取って直ぐに態勢を直して、立ち上がろうとするがツルク星人がそれよりも素早く手刀を振るって斬りかかってきた。

 

ライガは何とか躱したりするが、そんな彼の足元が隙だらけであり、そこへ足を引掛けられて姿勢を崩され、追い討ちと言わんばかりと頭を殴り飛ばされる。

 

 

倒れているライガを見逃さんとツルク星人は足蹴にしたり、踏みつける。このままやられっぱなしなのかウルトラマンライガよ!

だがそうではないのが我らがウルトラマンだ。彼は強引に立ち上がり反撃に出た、ツルク星人に正拳突きをくらわしてから続けて膝蹴り、更にそこからかかと落とし....だったのだがツルク星人は最後のかかと落としを避けてしまう。

更に避けて直ぐに強烈なカウンターのパンチを叩き込まれて、ライガは大きくひるんでしまう。

ツルク星人の追撃は続く、奴はライガを身体を持ち上げてまたも投げ飛ばしてしまう。

これには流石に受け身を取る余裕がなかった為に、ウルトラマンライガに大きなダメージとなってしまう。

 

 

「デュ....デュアァァッ!」

 

 

 

苦しむライガ、ゲンは自分の予感が当たってしまう。今のウルトラマンライガは冷静な戦いが出来ていない、故に彼はピンチなのだ。

現に彼のカラータイマーは点滅している、レオと同じL77星生まれの彼の地球での活動制限時間は2分40秒なのだ。

時間がない、負けないでくれ!ウルトラマンライガ!!

 

 

だが時遅しと言わんばかりにツルク星人が止めと、両腕の刀でライガの身体を何度も斬りつけてしまう。

 

 

 

「ヂュ、ヂュアアアアアアアアアァァァァァァーーーっ!!!!!」

 

 

 

大きく叫んだライガはそのまま倒れてしまい、遂には光に包まれて消えてしまったのだった。自身の勝利を確信したツルク星人はそのまま消えてしまうのだった。

ウルトラマンライガの敗北した光景を見たゲンはジンの名を叫ぶ。

 

 

 

 

ジーーーーーーーンッ!!!!

 

 

 

ウルトラマンライガは負けてしまった。果たして彼はどうなってしまったのか...続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、ウルトラマンライガ



凶暴に暴れ回るツルク星人の前にMACは成す術がなかった。



その頃敗北してしまったジンは、ツルク星人の二段攻撃を打ち破るべく滝を敵に見立て、三段攻撃をマスターする為に懸命になっていた。



だが流れ落ちる滝を切ることは可能なのであろうか?頑張れジン!!負けるな!!ライガ!!


さぁ!皆で見よう!!!


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基本設定2

一応今作の一部のキャラクター設定書いておきます。

イメージキャラクターモデルは作者の好みで書いてます、ご理解の程お願いいたします。


大神ジン(イメージCV:梅原裕一郎)

 

 

今作の主人公である、外見年齢24。

 

城南スポーツセンターのスポーツトレーナーとして働く好青年、誰にでも優しく接する好意的な性格に誰もが彼に心を許し、そして信頼していく。

しかし彼の正体は、両親を殺されて故郷・獅子座L77星を失った、今作の我らがヒーロー・ウルトラマンライガである。

 

イメージキャラクターモデル:この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎるの主人公・竜宮院 聖哉を感情を豊かにした感じ。

 

 

 

 

秋葉凛子(イメージCV:清水香里)

 

 

今作のヒロイン(予定)ジンと同じ城南スポーツセンターのスポーツトレーナーとして働く23歳の女性。

基本的には活発な性格していて、凛々しい風貌をしてスタイルも抜群。

運動神経がずば抜けてる為に、基本何でもやるが水泳やバレーボール、そして剣道がかなり好き。

 

最近の悩みは、胸が大きいこと。

 

イメージキャラクターモデル:リリカルなのはAsのヴォルケンリッター・烈火の将 剣の騎士シグナムを女性らしい性格をしている。

 

 

 

梅田トオル(イメージCV:石塚運昇)

 

 

城南スポーツセンターの館長、年齢は55。

誰にでも優しく接する優しいおじさん。嘗て少年時代にウルトラマンレオことおおとりゲンに生きる大切さを学び、それを後世にも伝えようと奮闘している。

 

そして大神ジンがウルトラマンライガであることを知っているのはおおとりゲン以外では彼のみだ。

 

 

 

おおとりゲン(イメージCV:真夏 竜)

 

 

MACの隊長を務める、外見年齢50代後半。

冷静沈着な洞察力を持ち、身体能力に長けて格闘術に優れている。

しかし彼にも秘密がある、その秘密は獅子座L77星のウルトラマンレオである。

 

彼は嘗て、獅子座L77星を失い、地球を第二の故郷として迫りくるマグマ星人やババルウ星人、そしてブラックスターの円盤生物と熾烈な戦いを繰り広げた。

だがその中で旧MACと当時の城南スポーツセンターの仲間や恋人を失い、孤独に戦い抜いた伝説の英雄。

 

 

 

 

東雲梓(イメージCV:田中 理恵)

 

 

常にクールで冷静沈着を重んじ隊員たちを取り纏めて隊長であるおおとりゲンを補佐するMAC副隊長、年齢は27歳のクールビューティーな女性。

 

何事にも落ち着いて物事に当たり、自分が信じるものの為に奮闘する一面も持っている。

 

しかし密かに可愛いものには目がない。

 

 

イメージキャラクターモデル:トータルイクリプスのシャロン・エイムを黒髪に目がきりっとしてる感じ。

 

 

 

氷室恭輔(イメージCV:杉田智和)

 

 

戦闘機やバイクを愛する25歳、空を飛んでる時が最高と言っている。

まぁその他にも女性をナンパするのも好きで、よくMACステーション内で女性オペレーターを口説いているがほとんど無視される。

 

イメージキャラクターモデル:テイルズ オブ エクシリアのアルヴィン

 

 

 

一之瀬水月(イメージCV:戸松遥)

 

 

分析や調査などを専門とし、特に生物に詳しい。嘗て地球を襲った怪獣や宇宙人、超獣、円盤生物など生態に興味があり、恋愛や女性らしいオシャレよりも生物生態を優先する。

 

それ以外に好きな物は甘い物。

 

 

イメージキャラクターモデル:SAOのアスナにメガネをかけた感じ。

 

 

芹沢晴子(イメージCV:高垣彩陽)

 

 

射撃と格闘技得意で格闘はキックボクシングが一番好みで、自身もかなりやっている。足技がかなり上手く、だいの男でも瞬殺されるほどである。

それで一度自分に対してしつこくナンパしてきた氷室隊員をノックアウトしてやったぐらいだ。

 

射撃に関してもそのスコアは200以上を叩き出す。

 

 

イメージキャラクターモデル:戦姫絶唱シンフォギアの雪音クリスを髪を黒髪ロングにした感じ。

 

 

 

伊勢結城(イメージCV:島﨑信長)

 

 

彼は誰よりもメカニックなどに精通し、独自でMACの装備開発も担っている。

 

知識も芹沢隊員にも負けず劣らずの物である。趣味としてはアニメ作品鑑賞、特に好きなのがロボット系のアニメである。

 

 

イメージキャラクターモデル:SAOのユージオ



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第四話 叩き込め!!怒りの三段攻撃!!

奇怪宇宙人・ツルク星人 登場


前回、幸せな気持ちでいた一翔と明日香の父親を殺されたことを知った主人公・大神ジンは、冷静さを見失ってしまう。

そんな彼の危うさに危惧したMAC隊長で彼と同じL77星の宇宙人・ウルトラマンレオこと、おおとりゲンはジンに対して許可なく変身してはならないと告げるが、これにジンは納得出来なかった。

 

 

そんなやり取りがあった後、ゲンは囮となってツルク星人を誘き出す作戦を実行する。

そして彼の作戦通り、ツルク星人はゲンを襲い掛かるが、そこへ突如ジンが現れてゲンとツルク星人の間に割って入り、彼の制止を無視してツルク星人と肉弾戦となる。

生身での戦いの中、ゲンのマックガンの銃撃を受けて負傷するがツルク星人はそのまま巨大化する。

 

これにジンもゲンの制止をまたも無視してウルトラマンライガに変身する。己の感情を抑えきれず、衝動的にライガはツルク星人に拳を振るうが、ツルク星人に全く歯が立たず最後には奴の両腕に付けられている刀から振るわれる二段攻撃に成す術なく、無念にも敗れてしまのだった。

 

 

 

 

「ヂュ、ヂュアアアアアアアアアァァァァァァーーーっ!!!!!」

 

 

 

大きく叫んだライガはそのまま倒れてしまい、遂には光に包まれて消えてしまったのだった。自身の勝利を確信したツルク星人はそのまま消えてしまうのだった。

ウルトラマンライガの敗北した光景を見たゲンはジンの名を叫ぶ。

 

 

 

 

ジーーーーーーーンッ!!!!

 

 

 

 

 

ゲンは急ぎライガが消えた場所まで走った。ゲンは走りながら嘗て自分もツルク星人に敗れた記憶を思い起こさせられ、不安を抱いてジンが倒れていると思われる現場にたどり着いた。

そこには.....。

 

 

 

 

「っ!?ジンっ!!」

 

 

 

身体中に斬り傷があり、そこから血が流れて意識を失ってしまっているジンの変わり果てた姿があった。ゲンは急ぎ彼の元へと駆け寄って彼の身体を起こし、声をかける。

 

 

「ジン!ジン!!」

 

 

「...っ...う、うぅ.......ぁ....」

 

 

「いかん!直ぐに病院へ!!」

 

 

 

ゲンは彼の身体を背負い、ジープ型の戦闘車両マックロディーにたどり着き、彼を後部座席に寝かせて病院に急行するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ツルク星人の出現に避難所である病院に梅田トオルと凛子、そして一翔と明日香の兄妹が避難していた。

 

 

 

「此処に居れば、きっと大丈夫さ。それに今頃、MACやウルトラマンがやっつけくれてる!」

 

 

「そうですよね」

 

 

そんな二人の会話に一翔と明日香は、ずっと落ち込んでいる。特に明日香はあの後一翔から父が殺されたことを教えられてショックでまた大泣きしてしまい、意気消沈してしまった。

そんな兄妹の姿に梅田は痛いほど彼らの気持ちが理解できる、何せ今回出現した宇宙人が嘗て自分の父を殺した同種の存在であったことをゲンから聞かされて動揺もした。

そしてテレビでその姿を垣間見た時なんか、あの幼い頃の今は亡き妹と見た目の前で殺された父の無惨な姿の記憶を思い出してしまった。

 

そして今度はこの無垢な兄妹にも味わせるツルク星人に激しい怒りすら抱いてしまう。しかしきっとウルトラマンライガであるジンが必ず倒してくれていると。

 

 

「二人とも、ウルトラマンライガが宇宙人をきっと倒してくれている。だから元気を...『ここで続報です!』...ん?」

 

 

 

梅田はテレビに眼をむけると、そこには....。

 

 

 

『ウルトラマンが現れ宇宙人と交戦しておりましたが、そのウルトラマンは宇宙人に惜しくも敗れてしまい姿を消してしまいました!繰り返しお伝えします!....』

 

 

「なんだと!?(ジンくん!!)」

 

 

梅田は思わず立ち上がって激しく動揺する。まさかジンが敗れてしまったと聞いて悪い想像を一瞬浮かべてしまう、だがそんなの有り得ないと頭を振り、悪い想像を振り払った。

そんな梅田の様子に気になった明日香を抱っこしてる凛子は、どうしたのかと問いかける。

 

 

「どうしたんですか?梅田さん」

 

 

「え!?い、いや!何でもない!!(大丈夫だ!ジンくんは死んでるはずがない!!そうさ!!)」

 

 

ニュースキャスターからの情報は尚も続く。

 

 

『更にウルトラマンを倒した宇宙人は、姿を消して行方を暗まして現在MACがその捜索をしております!』

 

 

「.....」

 

 

「ウルトラマン....負けた....」

 

 

「お兄ちゃん....」

 

 

梅田の隣でウルトラマンライガの敗北を知った一翔と明日香は更に絶望した顔になる。その二人に梅田は言い聞かせる。

 

 

「だ、大丈夫だ!ウルトラマンはきっと生きてる!!信じるんだ!!」

 

 

「「.....」」

 

 

俯き梅田の話を聞いていないのか、全く返事がない。凛子も二人を元気づけようと梅田の話に便乗する。

 

 

「そうよ二人とも!ウルトラマンは必ず生きて、そしてまた私たちの前に姿を見せてくれるわ!!」

 

 

「でも....」

 

 

「うぅ.....」

 

 

だが兄妹の顔は悲しみに包まれて涙で歪み始める。梅田と凛子の励ましなんて耳に入ってない彼らにこれ以上どう言えばいいかと、彼ら二人も言葉を詰まらせる。

その時であった。

 

 

 

「ジン!!しっかりしろ!!」

 

 

 

「え?ジン?」

 

 

 

遠くから聞こえる誰かを呼びかける声、そしてその呼び名にも聞き覚えがあった凛子は一瞬呆気に取られる。「まさか...」っと彼女は抱きかかえてる明日香を梅田に託してその声がする方へと思わず走っていく。

彼女の表情は信じたくないと言う気持ちと不安と恐れが現れていた、しかし彼女の不安は的中した。

凛子の目の前に患者搬送用のストレッチャーに載せられ運ばれていく重傷姿のジンがそこに居た。

衝撃的な光景に彼女は両手を口を覆い、涙を流して彼の名を叫んで駆け寄る。

 

 

 

「ジンさんっ!!!いやっ!!!どうして!!?」

 

 

彼女は号泣を抑えることが出来ず、ストレッチャーに寝かせられているジンの身体を揺らして泣き彼の名を叫ぶ。

そんな彼女の後を追ってきた梅田と一翔と明日香も、ジンの無惨な姿を見て動揺する。

 

 

「ジ、ジンくん!?」

 

 

「ジンさんっ!!?」

 

 

「ジンお兄ちゃん!!」

 

 

彼らの様子にゲンは言葉を発することが出来ず、表情を暗くしてしまう。

 

 

「.....」

 

 

その間にも凛子はジンの名を何度も叫ぶ。

 

 

「ジンさんっ!!!起きてっ!!眼を覚ましてっ!!いやぁー!!!」

 

 

しかし彼女は目覚めない彼の名を何度も叫んでも返ってくるのは残酷な無言である。もしかしたらジンは死んだのではと錯覚してしまった彼女は過呼吸になり意識を失って倒れてしまった。

その彼女に驚き、ゲンたちは駆け寄る

 

 

「秋葉くん!!」

 

 

「凛子ちゃん!!」

 

 

「凛子姉ちゃん!!」

 

 

「お姉ちゃん!!!」

 

 

これを見た医者が大急ぎで彼女も運ぶよう、看護師や看護婦たちに指示する。彼女もストレッチャーに乗せられて行く。

この状況を見てしまった明日香は再び泣き、自分を抱きかかえている梅田の胸の中で顔を埋めてしまう。

 

 

「おにいぃぢゃああああああんっ!!!おねぇぢゃあああああんっ!!!うわあああああああああああぁぁぁぁぁぁんっ!!!!」

 

 

「明日香ちゃん....」

 

 

梅田は明日香を見つめ少し考えてから、一翔に明日香を任せることを伝える。

 

 

「一翔くん、僕は少しおおとりさんとお話があるから向こうで待っててくれるかい?」

 

 

「え...」

 

 

「大丈夫、話終わったら必ず戻るからね」

 

 

「う、うん...」

 

 

梅田は抱きかかえている明日香を一翔に託してゲンに向こうで話そうと促し、ゲンも頷き梅田と共に人気のない場所に移動した。

 

 

「おおとりさん!一体どうしてジンくんは!?」

 

 

「すまない、トオル。ジンを止めることが出来なかった、今のジンは冷静に物事を見ることが出来ないことは分かっていたのに....」

 

 

「おおとりさん....」

 

 

悲痛に自分を責めるゲンの姿に梅田はこれ以上何も問うことが出来なかった。するとゲンは言葉を続ける。

 

 

 

「ジンには肉体のみならず、精神訓練も必要だったのは分かっていた。それを分かっていながら....」

 

 

「おおとりさん....どうかご自分を責めないでください。大丈夫ですよ!ジンくんは貴方と同じウルトラマンではありませんか!」

 

 

「すまん....」

 

 

その時ゲンの通信機に着信が響き、彼は応対する。

 

 

「こちらおおとり」

 

 

『隊長!宇宙人が再び現れ、街中を暴れてます!!MACホーク一号と二号で戦闘中!!』

 

 

「了解だ!!」

 

 

ゲンは通信を切って梅田に現場に向かう為、ジンのことを頼むと告げた。

 

 

「トオル、ジンを頼む」

 

 

「分かりました。おおとりさん気をつけてください!」

 

 

「ああ」

 

 

ゲンはそのまま急ぎ現場に向かう。梅田はゲンを見送った後、ジンが集中治療を受けているオペ室の前まで向かった。

 

 

「....」

 

 

オペ中の手術室前に佇む梅田の後ろから一翔が近寄ってきた。

 

 

「梅田さん....」

 

 

「トオルくん、明日香ちゃんは?」

 

 

「凛子姉ちゃんの病室で寝てるよ」

 

 

「そうか....ほら、一緒に座ろ」

 

 

「うん」

 

 

梅田はトオルに長椅子に座ろうと促し共に並んで座った。

一翔は未だに元気がなかった。ここまで色々起きた為に仕方ないのだろう。

そんな幼い少年に梅田は勇気づける。

 

 

「大丈夫さ!ジンくんはきっと良くなる‼️」

 

 

「うん....」

 

 

「ジンくんがこんなことで絶対に死ぬものか。だから一翔くんも元気を出して、な!」

 

 

「うん....」

 

 

だが彼の心はそんな梅田の思いとは裏腹に、明るい気持ちを取り戻すことが出来ないでいる。

自分だけでは子供の心を救えないと無力な気持ちを抱くが、だが梅田はそんなのを振り払って一翔に自分のことを話始めた。

 

 

「僕の父親もね、昔宇宙人に殺されたんだ」

 

 

「え!?」

 

 

余りの突然の話に一翔は衝撃を受ける。しかし梅田は話を続けた。

 

 

「父だけじゃない、妹も怪獣に殺されて酷く落ち込んで何もかもどうなってもいいと思った。でもね、そんな時おおとりさんが、あ!君にお父さんのことを教えてくれたMACの人なんだけどね、あの人が僕に生きることの辛さとそして大切さを教えて貰った」

 

 

「....」

 

 

梅田は嘗て自分が経験した出来事を話した。一翔は彼の話を黙って真剣に聞いていた。

一翔に、自分と妹だけがこんな残酷な思いをしてるんじゃないと言う事を梅田は伝えたかったのかもしれない。

そしてこう話す。

 

 

「一翔くん、これからもきっと辛くて目を覆いたくなることが必ずある。

だけどねそれから逃げてはいけない、逃げ続けた先には何も無いんだ。

ジンくんだって今を必死に足掻いて頑張ってるんだ」

 

 

「ジンさん、も....?」

 

 

「そうさ。ジンくんも過去に酷く辛い出来事があって、苦しんで、足掻いて、それでも今を頑張って生きてるんだ。

彼は強く生きようと頑張ってる」

 

 

「ジンさん....」

 

 

その時、オペ室出入口の表示ランプが消灯された。それを見た梅田は立ち上がり、一翔も慌てて立ち上がる。

すると開閉ドアが開かれ、治療を受けたジンがストレッチャーに乗せられて出てきた。

 

 

「ジンくん!」

 

 

「ジンさん!!」

 

 

駆け寄ってきた二人にジンの治療担当をした医師が話しかける。

 

 

「もう大丈夫ですよ」

 

 

「っと、言うことは!!」

 

 

梅田は嬉しそうに医師に問いかけ、医師も患者を救えた喜びの表情で答える。

 

 

「何とか一命を取り留めました。いやそれにしても....」

 

 

「どうかしました?」

 

 

「彼の生命力は本当に凄いですね。普通あれだけの重傷なら最悪出血死しててもおかしく無かったのですよ」

 

 

 

医者からの説明に青ざめる梅田。そんな中看護婦がやってきて凛子が目覚めた事を伝えてきた。

 

 

 

「梅田さん、先ほど秋葉凛子さんが目覚めました」

 

 

「おー、そうですか。一翔くん行ってあげなさい」

 

 

「え?梅田さんは?」

 

 

「僕はこのままジンが運ばれる病室に行く。それに明日香ちゃんを放っておいたままではダメだよ」

 

 

「うん!分かった」

 

 

一翔は明日香の元へと向かう。それと入れ違うようにジンが手術室から出てきた。梅田は彼の近寄り名を呼ぶ。

 

 

「ジンくん」

 

 

しかし術後である為、まだ意識は取り戻していない。そのまま病室へと連れてかれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、MACは現在再び現れ暴れ回るツルク星人と交戦していた。マッキー一号を操る氷室隊員はその持ち前の操縦テクニックを活かしてツルク星人を翻弄する。

 

 

「オラオラ!どうしたぁ!こっちだぜぇ!!」

 

 

 

ツルク星人はマッキー一号を追いかける所へ、背後からマッキー二号がレーザー攻撃を仕掛ける。

 

 

「ほぉら!後ろががら空きだっぜ!」

 

 

背後からのレーザーがツルク星人の背中に命中、思いもしない攻撃にツルク星人は憤り今度はマッキー2号を追いかけ始める。

 

待ってましたと2号機は180°反転してツルク星人から逃げ始めて、逆に1号機がミサイルで先ほどの2号機がやったように背後から攻撃する。

 

背中から尻尾にかけてミサイルの雨が直撃し、奴は怒り狂って両腕の刀を振り回す。

 

 

「当たりはしねぇよ!」

 

 

それでもツルク星人は刀を振り回しながら1号機を追いかける。

そんな相手に氷室隊員は挑発の言葉を口にし続ける。

 

 

「ここまで届く程のジャンプをしねぇ限りは届かねぇよ!!ばぁーか!」

 

 

っとその時、氷室隊員の言葉をその通りにツルク星人は1号機目掛けて高くジャンプしてきた。

 

 

「うおぉい!!マジか!?」

 

 

「なぁにやってんの!!バカ!!」

 

 

見かねた芹沢隊員の2号機がレーザーでツルク星人を打ち落として1号機は事なきを得て、氷室隊員は命拾いして大きくため息する。

 

 

「はぁ、助かったぁー」

 

 

『あんた、もう少し考えて飛んでなさいよ!!それともハエみたく何も考えてないわけ!このボケ!!』

 

 

「ああ!?んだと!!」

 

 

彼女からの怒号にムカッとなり反発するが、そこへ副隊長の東雲が割って入って諌める。

 

 

『くだらん言い争いしてないで、戦闘に集中なさい!!』

 

 

「「りょ、了解!!」」

 

 

その彼らにマッキー三号機に搭乗しているゲンから通信がくる。

 

 

『各機、三方向から同時にレーザー攻撃!!』

 

 

「「「了解!!」」」

 

 

『よし!行くぞ!!』

 

 

ゲンの指示で三機はそれぞれへ散開、ツルク星人はどれを追えば分からず困った様子。すると三機はツルク星人を囲む陣形を構築して一斉にレーザー攻撃を仕掛ける。

三機のレーザーはそれぞれ胴体や腕、顔面に命中するし、これに更に怒るツルク星人は三機の内ゲンが搭乗している三号機に狙いを付けて追いかけ始める。

 

ゲンは冷静な落ち着き様で自身を追いかけてくるツルク星人を上手く距離を保ちながら、ある場所へと誘導する。

そこには高圧電流が流れる発電所がある、ゲンはそこへ狙いを付けてツルク星人をそこまで誘き出す。

目的の場所上空に到達し、そこで滞空してツルク星人が来るのを待つ。

 

ツルク星人は三号機に狙いを付けて両腕の刀を振り下ろした。っが、そんなのお見通しとゲンは直ぐにペダルを踏みその場から直ぐに離れた。

 

攻撃対象を失ったツルク星人の刀はそのまま発電所の高圧電留線に接触、奴の両腕の刀は硬い宇宙金属で出来ている為、当然電流が流れやすい。

その為電流は奴の刀から身体全体に通電してしまうのだった。

 

10万以上の高電流を耐えきれるわけもなく、ツルク星人は痺れてしまい地面に倒れるのであった。

 

 

 

「よっしゃ!!」

 

 

「やりぃ!!」

 

 

「ツルク星人、沈黙!!」

 

 

「やりましたね!!」

 

 

「隊長、流石です」

 

 

「皆、油断するな!奴はまだ死んじゃいない。警戒しろ!」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

 

 

だがツルク星人は立ち上がり、そのまま上空に飛んで消えてしまったのだった。それを見たゲンは部下に帰投するよう命令する。

 

 

「各機、MACベースに帰還せよ」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツルク星人との戦闘が終わった頃、ジンが酷い状況を見て気絶した凛子が目覚めた。

 

 

「あれ?...私、どうして....」

 

 

彼女は頭を抱えながら自身がどうして気絶したのか思い出す。その彼女の病室の扉が開いて一翔と明日香が入ってきた。

 

 

「あ!凛子姉ちゃん!」

 

 

「目がさめたぁ?」

 

 

「二人とも....私」

 

 

「姉ちゃん倒れたんだよ。覚えてる?」

 

 

「え....?そうだ、私....ジンさんが....ジンさん?」

 

 

すると彼女はハッとなって一翔の肩を掴んで問い詰める。

 

 

「ねぇ!!ジンさんは!!?」

 

 

「お、落ち着いて!ジンさんはもう大丈夫だよ!」

 

 

一翔の話に凛子は肩から力が抜け、彼女は涙を流して口を両手で覆いながら安堵する。

 

 

「よか...よかった...ぐすっ.....ジン、さん....よかっだぁ~!」

 

 

 

 

彼女がそう騒いでる頃、ジンが居る病室では彼は苦しみながら魘されていた。

 

 

「ぐっ...ううっ.....」

 

 

魘される彼が見ていた夢は、幼い頃のL77星で過ごしていたあの懐かしい少年時代。

楽しかった、両親との大切な数々の思い出が...だがその思い出の夢が炎に包まれ、故郷の街が双子怪獣とマグマ星人に壊されそして自分の目の前で両親が殺された....。

 

 

『父さん!!母さん!!』

 

 

死んだ両親の亡骸を震える手で触れた後、彼は悲痛な叫びを上げる....。

 

 

 

う、うわあああああああああああぁぁぁぁぁぁーーっ!!!!

 

 

 

 

 

「ハッ!!?.....はぁはぁ...ここは」

 

 

 

魘されていたジンはようやく目が覚め、寝込んだまま自分が居る病室を見渡すのだった。

 

 

「なんで此処に...?俺は....」

 

 

自身がどうして此処に居るのか、思い出そうとするジン。そしてようやく自分がなぜ此処で寝込んで居るのか思い出した。

 

 

「そうだ....俺は、負けたんだ....ツルク星人に」

 

 

自身の敗北を思い出したジンは悔しさが込みあがる。その時病室のドアが開いた。そこへ現れたのは...。

 

 

 

「お、おおとり、さん....っ」

 

 

「ジン」

 

 

彼を見るゲンの顔は険しいものだった。そしてジンはそんな自分を見るゲンに対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった。それもそうだろう、ゲンの言う通りにせず無断に変身して感情を抑えきれず、怒りに我を忘れてツルク星人に挑み無様に負けてしまったのだ。

これに彼は何も言えず目を伏せている、そんな彼にゲンが....。

 

 

 

「ジン...悔しいか?」

 

 

 

「....え?」

 

 

 

突然の投げかけられた言葉にジンは理解できなかったが、ゲンは尚も話す。

 

 

 

「悔しいか?ジン」

 

 

「お、俺は....」

 

 

ゲンは同じ質問を繰り返した。そう口にするゲンに、ジンは自分の拳を握りしめて言葉を返す。

 

 

「く、悔しいです....俺はこのまままた失っていく」

 

 

いつしか涙を流してしまったジンに、ゲンは声に怒気を込めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その顔は何だ!?その眼は何だ!?その涙は何だ!?

 

 

 

「え...?」

 

 

いきなりの言葉にジンは何も言えず、ただ黙ってしまう。しかしゲンの叱咤は止まらない。

 

 

 

「お前がやらずに誰がやる!?お前の涙で、奴が倒せるか!?この地球が救えるか!?」

 

 

「お、おおとりさんっ...」

 

 

「皆必死に生きているのに・・・挫ける自分を恥ずかしいと思わんか!!」

 

 

そう語るゲンの拳が強く力が込められている。彼自身ジンに全て負わして戦わせる己の不甲斐なさから拳に力がこもってしまうのだ。

しかしそれでもこの地球は必ず守らないといけない、彼らの戦いは絶対に負けてはならない戦いなのだ。

故にゲンは在ることを口にする。

 

 

 

「星人はかなりのダメージを受けて暫くは出てこないだろう。医者が言うにはお前は回復力が良いそうだから、退院はもって二週間後だそうだ。退院後、お前にはやらなければならないことを課す」

 

 

「やらなければならないこと....」

 

 

「そうだ。その日お前を迎えに来る」

 

 

そう言い残してゲンは病室から出ていった。そのゲンと入れ違うように凛子が一翔と明日香と共に入ってきた。

自分が気絶して病室で寝込んでいたとは思えないくらいの元気な姿で凛子はジンに駆け寄り、彼の手を両手で包み込む。

 

 

「ジンさん!大丈夫!?」

 

 

「凛子...ああ、もう大丈夫だよ。二週間もすれば退院できるらしい」

 

 

「え!?そうなの!?」

 

 

「ああ」

 

 

これには凛子や一翔と明日香は喜ぶ。そんな凛子と喜ぶ幼い兄妹を見つめジンは、ゲンが先ほど自分に対して 責した言葉を思い出し、自分が何の戦うのか思い返す。

その彼の様子が気になった彼を一翔が声をかける。

 

 

「ジンさん、どうしたの?」

 

 

「いや、何でもない。俺...いや、ウルトラマン...負けたみたいだな?」

 

 

 

ジンの言葉に一翔と明日香は暗い顔をしてしまい、凛子も二人を安じる様子を見せる。すると一翔はジンの問いかけに対して答える。

 

 

 

「うん、でもぼくウルトラマンは絶対にまたあの宇宙人に勝ってくれるって信じてるんだ!」

 

 

「一翔...」

 

 

「一翔くん...」

 

 

「わたしも!お兄ちゃんとおなじ!ウルトラマンはきっと生きて、今度こそ勝ってくれるもん!」

 

 

「二人とも....」

 

 

この兄妹は母を亡くし、そして今回の事件で最愛の父を殺されてしまい最早家族と言えるのは兄と妹の二人だけ、そんな健気にもウルトラマンライガの、いや自分の勝利を信じてくれている。

二人の姿に瞳を潤ませるジン、自分たちを見つめるジンを心配するが彼は「大丈夫」と言って目を手で拭う。

そんな中、病室に梅田が入ってきた。

 

 

「ジンくん、目が覚めたか!よかった!」

 

 

「梅田さん、ご迷惑をお掛けしてすみませんでした」

 

 

「いやなに、僕は気にしていないよ」

 

 

ジンは改めてこの時、自分がウルトラマンとして今度こそ人々の為にも憎しみではなく己が正義の為に戦うと決めた。

それから入院してから二週間、ツルク星人はゲンの言葉通り現れていない。恐らくMACから受けたダメージが響いているのだろう、っとジンは入院期間が終わり無事退院。

その彼をゲンが車で迎えに来ていた。

 

 

「おおとりさん」

 

 

「ジン、乗るんだ」

 

 

彼は車に乗るよう促し、ジンは従い車に乗り込んだ。そうして彼らを乗せた車は東京の街から離れる、その間車内は一切会話がない、と言うか運転するゲンの表情が険しく鬼気迫るものがあった為、ジンは何も言えず只々どこぞの目的地に着くまで無言でいるしかなかった。っと、車はとある山へと辿り着く。

ゲンは「降りるぞ」と言ってジンもそれに続いて降りた。

そして2人はある場所に辿り着いた、そこは大きな滝であった。何故此処に連れて来られたのかジンは一切理解出来ずゲンにとうとう問いかける。

 

 

 

「あの、一体此処で何を.....」

 

 

そしてゲンはようやく此処での目的を話し始める。

 

 

「此処に来た目的は....特訓だ」

 

 

「特訓...?此処でですか?」

 

 

「そうだ。所でジン、何故お前はツルク星人に敗北したかわかるか?」

 

 

「......」

 

 

 

ゲンの問いに拳に力が込められる、それは己の不甲斐なさと未熟さ故、そして自身の感情を制御できず無様に負けたことだと今の冷静にそれを気づけるジンならそう思える。なので彼はゲンに伝える。すると....。

 

 

 

「それもあるが、それだけではない」

 

 

「え....?」

 

 

「お前が負けたのは、ツルク星人の両腕の刀から振るわれる強力な二段攻撃だ。あれに対してお前は翻弄されて負けた」

 

 

「.....」

 

 

確かにツルク星人の両腕の刀のあの攻撃に真面に対応出来なかった。悔しいが今のジンでは奴二段攻撃をどうしようも出来ない。

そこへゲンはある秘策を口にする。

 

 

 

「二段攻撃を攻略できるのは、三段攻撃だ!ジン!」

 

 

「三段攻撃!?」

 

 

「そうだ!故に此処でお前は、あの巨大な滝を切れ!!」

 

 

「っ!?」

 

 

何とゲンは、ジンに滝を切れという何とも無謀なことを命じた。これにはジンも無理があると口にしようとするが、だがゲンは車から持ってきたある物を無言でジンに投げ渡す。

ジンが受け取ったそれは、柔道着であった。

それを渡したゲンは、ジンにこうも言い渡した。

 

 

「ジン、いいか!お前は滝を切れるまで、ツルク星人が現れようと決して来るな!」

 

 

「っ!!」

 

 

「此処でお前は特訓しながら、忍耐力も鍛えなければならん!!」

 

 

「忍耐力....」

 

 

「そうだ!」

 

 

そう言ってゲンは、ジンの肩に手を乗せてこう言い聞かせた。

 

 

「ジン、お前は嘗て俺と同じだ。俺も此処で特訓して見事成し遂げてツルク星人を倒したんだ」

 

 

「おおとりさん....」

 

 

っと口にするジンに、ゲンは顔を険しくして.....。

 

 

 

「おおとりさんではない!!もうお前はMACの隊員だ!!」

 

 

「っ!!」

 

 

その言葉に驚くがジンは意を決して....。

 

 

 

「はいっ!!隊長!!!」

 

 

「うむ」

 

 

 

ゲンはジンを残して車に戻る。ジンはゲンから渡された柔道着に着替えて目の前の滝を見上げる。

 

 

「大きいなぁ....だが!!」

 

 

だがそれでも自分がこの特訓を乗り越えなければ、これからまた死ななくてもいい命を失うことになる。

ならばこの特訓で自分がまた強くなるのならば、そして多くの人を守れるならば必ずやこの滝を切ると決意し、ジンは滝に対して構えて吠えた。

 

 

 

 

 

うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな決意を固めるジンが特訓を始めている頃、車を走らせているゲンの通信機にMACベースから緊急報告が来た。

 

 

 

『こちらMACベース!隊長!緊急事態です!!』

 

 

「どうしたぁ!」

 

 

『ツルク星人が再び現れました!!』

 

 

「分かった!!直ちに各機、発進!!」

 

 

『了解!!』

 

 

「(ジン、見事特訓を乗り越えてくれ)」

 

 

ゲンは直ちに現場へと急行する。すると既にゲンの命令で出撃した氷室と一之瀬が乗るマックホーク一号機、芹沢と伊勢が乗る二号機、そして東雲が乗る三号機がツルク星人と交戦していた。

ゲンも地上からマックガンでツルク星人を射撃しながら、空中の三機に指示するのだった。

 

 

「各機!散開し続けて奴を翻弄しながら攻撃するんだ!!」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

 

三機はツルク星人の攻撃仕掛ける。一号機は奴の足元にミサイルを発射して奴の足を止め、二号機が胴体目掛けてミサイルでツルク星人を釘付けにして動きを縛る。

 

そこへ三号機がレーザーでツルク星人の頭を狙い撃つ。直撃した為、ツルク星人は頭を抱えながら後ろに倒れる。

それを好機とゲンは全機に総攻撃を命じる。三機は一斉にミサイルやレーザーによる嵐をお見舞いする。

 

 

「ははっ!どうよトカゲ野郎!!」

 

 

「氷室隊員!油断しないで!!」

 

 

 

っと、ツルク星人が的になって反撃に出れない姿に調子に乗る氷室が一之瀬に注意されたその時、M攻撃にとうとう怒りを爆発したツルク星人が突然のジャンプして二人が乗る一号機の翼を斬り落とした。

 

 

「うわぁ!!」

 

 

「きゃあ!!」

 

 

「氷室!一之瀬!!」

 

 

「脱出してください!!」

 

 

芹沢と伊勢からの通信で脱出を呼びかけられた二人は何とか命からがら一号機から脱出する。これを機会にマッキー二号機と三号機に襲い掛かる。

 

たちまち押され始めるMAC、ゲンもこれに不味いと思う。

 

 

「ジン、一刻も早く!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ジンは滝の水を切ろうと奮闘したいた。

 

 

 

「セイヤぁー!!デイヤァー!!!」

 

 

雄叫びを挙げながら滝の水に拳や蹴りを繰り出すが、一向に滝の水を切るどころか大きな滝の流れに圧倒されて飲まれてしまう。

一瞬溺れそうになるがそれでも立ち上がり、特訓を続行する。っが滝を切ることが出来ない。

 

 

「ダメなのか....」

 

 

滝から受ける所為で体力が奪われるジン、息が荒くなり自分が立っている滝下の池の水は冷たいのでかなりキツイ。

だがここで挫けては、一翔と明日香兄妹の想いやここまで自身を信じてくれてるゲンの期待に応える為にも、ジンは諦めなかった。

っとその時であった、滝の上から何かが流れ落ちてくる。花びらであった。

 

 

「花びら....ハッ!そうか!滝を流れる花びらを目標に見立て滝を斬ることが出来れば!!よしっ!!」

 

 

 

ジンは再び構えて花びらが自分の目の位置と並んだ瞬間を狙うべく意識を集中する。すると周りの雑音が聞こえなくなり、今のジンは滝の水を集中していた。

そして花びらが彼の視界に入った瞬間.....。

 

 

 

 

「デェアアアアアっ!!!」

 

 

 

素早い手刀が花びらと滝の水切り裂いた。これにジンは歓喜するのだった。

 

 

 

「よしっ!!」

 

 

 

見事特訓を成し遂げたジンは、赤い宝石を口で加えているライオンの顔が模られた金色のブレスレット型の変身アイテム「ライガブレス」をはめている手ともう片方の手で、胸の位置でクロスしてから天に向かってブレスレットをはめている拳を掲げて叫んだ。

 

 

 

 

ライガアアアァァァァーっ!!!!

 

 

 

そして光が彼を包み込み、大きくスパークした中心から我らがヒーロー・ウルトラマンライガが巨大化して、ツルク星人が暴れている市街へと飛んでいく。

 

 

 

「ダアッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、MACはツルク星人によって一号機をやられ、二号機と三号機で攻撃し続けるがツルク星人は両腕の刀で防御されてしまい効果がない。

ツルク星人は再びジャンプして今度は一号機と三号機の翼を斬り落としたのだった。

 

 

「きゃあ!!」

 

 

「うわぁ!!」

 

 

「くうっ!!」

 

 

とうとう二機ともやられてしまい、東雲は通信で芹沢と伊勢に共に脱出をするよう促す。

 

 

 

「脱出するわよ!!」

 

 

「「了解っ!!」」

 

 

三人はパラシュートで脱出して先に地上に居る氷室と一之瀬、そしてゲンとも合流した。彼らはMACガンで徹底抗戦するがそれでも火力は乏しい、このままではMACの面々はやられてしまう。

だがそんな所へ、我らがヒーロー・ウルトラマンライガがやって来た!

 

 

「隊長!あの赤いウルトラマンです!!」

 

 

「(ジン!まさか特訓を成し遂げたか!!)」

 

 

 

【イメージ挿入歌:ウルトラマンレオ前期OP(ライガver)】

 

 

 

飛行してきたライガはツルク星人目掛けて落下しながら空中キックをお見舞いする。

 

 

「ダァッ!!」

 

 

彼の飛び蹴りツルク星人の顔面に直撃し、奴を吹き飛ばす。ライガは着地してから直ぐにツルク星人に攻撃を仕掛ける。

ツルク星人もやられっぱなしに苛立ち、両腕の刀でライガを切り捨てようと振り回すが、ライガは奴の右腕を捕まえて腹に蹴りを5発をくらわす。

更にそこから下方からアッパーを編み出してツルク星人をまた吹き飛ばす。

今度のライガはもう感情によって冷静さを見失ったりはもうなくなったのだ。

ウルトラマンライガの出現に、緊急ニュースで報道されていた。その様子を見た明日香が兄の一翔に知らせる。

 

 

「お兄ちゃん!ウルトラマンよ!」

 

 

「うん!ウルトラマンが帰ってきたんだ!!」

 

 

兄妹と共に見ていた梅田と凛子も同じであった。

 

 

「梅田さん!ウルトラマンですよ!」

 

 

「ああ!(ジンくん、頑張ってくれ!!)」

 

 

 

誰もがこれに嬉しく歓喜する。そんな中、ライガは静かに構えてツルク星人が攻撃を仕掛けるのをまつ。

ツルク星人は両腕の刀でライガに突き刺そうと突進するが、ライガは奴の頭の上をジャンプし背後に回って後ろから奴の後頭部にハイキックを当てる。

後ろからの攻撃に前のめり倒れてしまうツルク星人は、更に怒り狂いライガに振り向き切りつけようと襲い掛かる。

だがライガはそれらを上手く躱し、日本拳法でいう胴突きや面突きを奴に与え、次に飛び膝蹴りで突き飛ばす。

 

 

「デェア!!ダアッ!!エイヤぁ!!」

 

 

それでもツルク星人は両腕の刀を二段攻撃の構えに入る。これにライガは「待っていた!」と自身の両腕にエネルギーを強く貯める。

そしてツルク星人はライガに斬りかかってきたが、エネルギーに強化された両腕でこれを傷一つ付くことなく防いだ。

防がれたことに驚愕ツルク星人にライガはカウンターとして正拳突きをくらわして反撃する。

最早ツルク星人など我らがヒーロー・ウルトラマンライガの相手ではないのだ。

 

 

「ドゥアッ!!ゼアっ!!」

 

 

ライガはチョップを三発、ローキックを二発、遂にはツルク星人をジャンプ台にしてウルトラマンタロウが得意とした数回宙返りしてから地上の敵に強烈な蹴りであるスワローキックをかました。

またも吹き飛ばされてしまうツルク星人にもうあとがない。

そこでまたもライガに二段攻撃を仕掛けるが、それが奴の最後となった。

 

 

「デェアアアァァ!!」

 

 

ライガは奴の二段攻撃に見事防いでからの強烈な手刀で奴を真っ二つに切り裂いたのだった。ウルトラマンライガの勝利にテレビを見ていた人々は大いに歓喜した、その中には当然一翔と明日香、凛子や梅田もであった。

 

 

「やった!明日香!ウルトラマンが勝ったんだよ!」

 

 

「うん!」

 

 

「やった!!」

 

 

「おお!(ジンくん、よくやった!!)」

 

 

 

 

MACの皆も大いに喜んだ。

 

 

「やったぜっ!!」

 

 

「凄いわ!!」

 

 

「カッコイイじゃん!!」

 

 

「はい!!見事な格闘センスですよ!!」

 

 

「流石だわ」

 

 

彼らが喜ぶ中、ゲンは静かに微笑みながらライガを見上げてテレパシーでライガに伝える。

 

 

「(よくやったぞ、ジン)」

 

 

 

「(コク)...ダアッ!!」

 

 

そんなライガはゲンのテレパシーを聞き、頷いた後そのまま飛び去ったのだった。

 

 

 

 

 

 

それから一週間後のこと.....。

 

 

 

【赤道軌道上の成層圏・新MAC空中基地母艦・MACベース】

 

 

 

MACベースの司令室では、ゲンの命令で隊員全員が集まっていた。今日は新入隊員が来る予定なのだ。

 

 

「一体どんな奴が来るんだ?伊勢」

 

 

「ぼくも分かりませんよ」

 

 

「どんな人かしら....」

 

 

「さぁね」

 

 

「皆、私語はやめなさい。隊長が来るわよ!」

 

 

っと司令室のドアが開き、ゲンが現れた。

 

 

「皆に新人隊員を紹介する!」

 

 

これに隊員一同落ち着いた様子であり、ゲンは話を続ける。

 

 

「よし!では入れ!!」

 

 

ゲンの合図に司令室に入室してきたのは、MACの制服を纏ったジンであった。彼は隊員たちに自分の名を告げる。

 

 

 

「本日よりMACに入隊することとなりました!大神ジンです!よろしくお願いします!」

 

 

 

入隊してきたジンに対して皆、彼に各々名乗り始める。

 

 

 

「んじゃ、俺から。俺は氷室恭輔。戦闘機の操縦なら隊員一だよろしくな?」

 

 

「次は私ね。一之瀬水月です。怪獣や宇宙人の分析担当をやらして貰ってます、よろしく」

 

 

「はい次私。芹沢晴子。好きなのは射撃や格闘技!よろしくねぇ♪」

 

 

「最後に私ね、東雲梓。副隊長をやらして貰ってるわ、よろしくね大神隊員」

 

 

「はい!よろしくお願いします!!」

 

 

彼らに対してジンはこれから共に戦う仲間と絆を紡ぐことになる。そしてそんなやり取りがあった翌日にて、ジンが気になっていたことが解決することになる。

 

 

 

 

 

 

それはジンがスポーツセンターにて、凛子と共に梅田の館長室で話のやり取りのことであった。

 

 

「え!梅田さんの所へ、一翔と明日香ちゃんを引き取る!?」

 

 

っと凛子は驚き、ジンも彼女と同じ反応見せる。

 

 

「本当ですか!?梅田さん!」

 

 

「ああ、実は私と妻には子供が授からなくてね。でもどうしても私たちは子供が欲しかったんだ、それに一翔くんと明日香ちゃんも私たちの申し出に受け入れてくれたんだよ」

 

 

「ジンさん!よかったわね!」

 

 

「ああ...!」

 

 

それを聞いて凛子は嬉しくなり、ジンに抱きつく。ジンもあの子たちがこれから寂しい人生を過ごさなくてすむと思うと嬉しくなる。

 

 

そして館長室から出る二人を待っていた一翔と明日香が笑顔で駆け寄ってきた。そんな二人にジンは祝う。

 

 

「二人とも、よかったね」

 

 

「「うん!」」

 

 

「梅田さんたちご夫婦の言うこと、ちゃんと聞くのよ?」

 

 

「分かってるよ凛子姉ちゃん♪」

 

 

「うん!いい子でいるぅ!」

 

 

「本当に良かったっ」

 

 

凛子は涙を流して嬉しさが込みあがって二人を抱きしめる。兄妹も彼女に抱きしめられて幸せな表情を浮かべるのだった。

この幸せな光景を見てジンは、これからどんな強敵が現れようと己の全てを賭けて守り抜こうと心に誓うのであった....続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、ウルトラマンライガ



地球に芽生えた美しい宇宙の花

不思議な植物の正体は何だ?

花を武器にする怪獣ケンドロスの陰謀に

愛する心を守るため、我らがヒーロー、ウルトラマンライガが立ち上がった

さぁ、みんなで見よう!!


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第五話 守る男の意地!!閃け!トライドスラッガー!!!

植物怪獣・ケンドロス 登場

読者の方がOPの歌詞を書いてくださいました、チャイロメガネさんありがとうございます。

曲名:咆えろ!ウルトラマンライガ!
作詞:???
作曲:???
歌:影〇ヒロノブ

ナレーション「宇宙にきらめくエメラルド・・・地球・・・それを狙う魔の手から赤き若獅子が今吠える!その名は・・・・!」

忘れるな・・・勇気を 忘れるな・・・やさしさを

正しき怒りの咆哮(こえ)上げろ!

咆えろ!ウルトラマンライガ!(ここまでイントロ)

1番

壊しちゃいけないぜ、この星の未来を

誰が行かなきゃ誰がやるんだ

涙だげじゃ何も守れない

一歩づつでも前に行くのさ!!

嵐か起きても絶対あきらめない!

皆のために戦う!ただそれだけさ!

忘れるな!勇気を!忘れるな!やさしさを!

獅子の瞳が今!赤く輝く!

そう!君の番さ!そう!今、戦え!

叫べ!その名を!

行くぜ!ウルトラマンライガ!


暗黒の宇宙空間、それに飛行している一つの影があった。見てくれが丸い体の外見で顔が身体の下にあるという変な外見をしている。

体の上部に花びらが生えているこの怪獣の名は植物怪獣・ケンドロス、現在此奴は植物惑星であるケンドロス星から我らが美しい星・地球の近くまでやってきた。

 

そして奴は不敵な笑みを浮かべ、奴の身体から切り離した何かを地球へと飛ばしたのだった。

 

奴から離れたそれはスポーツセンターの敷地内の中庭に落下し、みるみるうちに一つの美しい花が生えて咲いた。

 

 

そんなことなど知らず、スポーツウェア姿のジンがスポーツセンターから出てきて施設の敷地内に設置されてる水道で汗を流すのだった。

 

 

「ふいー!冷たく気持ちいいなぁ!」

 

 

 

水道の水で顔を洗うジン、そんな彼を追うようにへそ出しのスポーツウェアを着込んだ凛子も水道の水で飲む。

 

 

「はぁ~、スッキリした!」

 

 

っと嬉々としている凛子に、ジンも笑顔で言う。

 

 

 

「うん、お腹もスッキリ空いちゃったよ♪」

 

 

「もう、ロマンチックじゃないわよジンさん!」

 

 

「え?ハハハ」

 

 

「もう、フフフ」

 

 

呆れる彼女に笑うジン、そんな彼に釣られて凛子も笑顔で笑ってしまうのだった。前回の戦いから打って変わった平和な日に満喫するジンたち。

 

 

「ハハハ、ん?」

 

 

タオルで濡れた顔を拭うジンの視界に見慣れた少女の後ろ姿があった。その後ろ姿の持ち主は一翔の妹・明日香であった、彼女は敷地内の中庭で何かをしていた。

 

 

「明日香ちゃん?どうしたんだ?」

 

 

ジンは彼女に近づいて声をかける。

 

 

「明日香ちゃん、何をしてるのかな?」

 

 

「あ!ジンお兄ちゃん!みてぇ」

 

 

「ん?」

 

 

彼女はジンに振り向き、自分が見つけてたある物を彼に見せるのだった。それは一輪の花であった、だが見たこともない変わった花であった。

 

 

「(この花....!)」

 

 

ジンは自身の宇宙人としての超能力でその花が地球の物でないことを察知した。これに危機感を覚えたジンは、明日香に花を捨てるように促した。

 

 

「明日香ちゃん!その花を捨てるんだ!」

 

 

「え?どうしてぇ?」

 

 

明日香はジンに花を捨てるよう言われたが、どうして捨てねばならないのか理解出来なかった。そんな彼女に尚も捨てるよう言う。

 

 

「その花を捨てるんだ!!」

 

 

「いや!」

 

 

しかし見たこともなくそして花が好きな明日香は当然これを拒否する。そこへ騒いでいる様子へ凛子が間に入る。

 

 

「どうしたの!?ジンさん。そんな血相欠いて...」

 

 

「お姉ちゃん!」

 

 

明日香は凛子の後ろに隠れる。ジンの必死過ぎる様子に怖くなってしまった。凛子は困惑した様子を見せながらも明日香を後ろに庇ったままジンに問いかける。

 

 

「ジンさん、何があったの?」

 

 

しかし花に危険性があると悟ったジンは尚も捨てるよう強要する。

 

 

 

「その花を捨てるんだ、明日香ちゃん」

 

 

「いや!」

 

 

だがやはり花を捨てるのを拒む明日香。危険と分かったなら、強引に取り上げて捨てるべきなのだが、しかし相手は子供だ、いくら危険物を持っているからと強引にやれば怪我をさせてしまうし、何よりそれはジン自身やりたくはない。

しかしそんなジンの気持ちなど知らず、凛子は何故花を捨てねばならないのか問いかける。

 

 

「どうして花を捨てなくちゃいけないの?」

 

 

「え....何故って...」

 

 

口ごもってしまうジン、どうしてかと言われて「自分のウルトラマンとして直感でそれを悟った」などと言えるわけがない。言えば間違いなく彼女たちの元どころかこの地球にすら居られなくなる、それはどうしても言えない。

だがだからと言って、この花がどうして危険なのかもハッキリと言えないのも事実であった。そんなジンの様子を訝る凛子は花に視線を変えて、花びらに触れながらその綺麗さに見とれるのだった。

 

 

「珍しい花ね、綺麗だわぁ」

 

 

「うん!あのねぇ!明日香ね!この花をお父さんとお母さんの写真の前に指してあげよう思ったの!」

 

 

そう健気な笑みで無邪気に言う明日香、今彼女と兄の一翔は現在梅田トオルとその妻の家に引き取られ、その際に実の両親の写真も持っていったのだ。

学校に行く前には必ず、死んだ両親の写真に兄妹二人と梅田夫妻と共に手を合わせて拝んでいるのだ。その写真の為に、明日香は綺麗な花を用意してあげたいと前々から思っていたところ、今回この花と巡りあったのだ。

それを聞いた凛子はついウルっとしてしまい、余計にこの花を捨てろと言うジンが可笑しいと思ってしまう。

なのでもう花を持って行っていいと明日香を行かせてしまう。

 

 

「いいのよ、行きなさい」

 

 

「うん!....ジンお兄ちゃん」

 

 

明日香は最後にジンを悲しげに見てからそのまま走って去ってしまう。ジンは慌てて追いかけようとする。

 

 

「明日香ちゃん!...「ジンさん!」...っ!」

 

 

しかしそれを許さないと凛子は声を上げて彼を止める。ジンは恐る恐る振り向くと、凛子の顔はとても真剣なものになっている。

そして彼女は言う。

 

 

 

「どうしてあの花が危険なの?」

 

 

「あ、あれは...毒があるかも」

 

 

「あんなに綺麗でいい花が?」

 

 

「.....」

 

 

「女の子は誰でも花が好きなものなのよ。だから毒なんてないって直感でわかるわ」

 

 

「....」

 

 

ジンは何も言い返すことは出来なかった。それでも凛子は尚も言う。

 

 

「道端の花にも目を止める優しさがないと、いくら強くてもダメだと思うなぁ...」

 

 

「俺はただ...」

 

 

「ごめんなさい!私言い過ぎちゃったわね!じゃ!」

 

 

彼女は申し訳ないといった表情でその場から立ち去る。結局ジンはあの危険な花を取り上げるなど出来ず、その結果この後起きる事件が引き起こされてしまうことをジンはまだ知らない。

そしてジンは、この後MACベースに出頭してあの花の一件を隊長であるおおとりゲンに報告することに...すると。

 

 

 

【赤道軌道上の成層圏・新MAC空中基地母艦・MACベース・司令室】

 

 

 

「馬鹿者ぉ!!!」

 

 

司令室にゲンの怒号が飛び、オペレーターの女性たちは驚くがゲンに「職務を続けろ」と言われてそのまま従事する彼女たち。

そんな彼女たちを余所にゲンは、ジンに対して彼の不甲斐なさを怒る。

 

 

「何故その花を無理やりでも取り上げ、処理しなかった!!」

 

 

「...」

 

 

ジンは弁明しようと口を開いた。

 

 

 

「宇宙から来たものだとは分かります。しかしそれが、必ずしも害のあるもか....」

 

 

「....その花は恐らく、ケンドロス星にある剣輪草だ」

 

 

「剣輪草...?」

 

 

「見た目は美しい赤い花だが、成長して花が咲くと花びらが金属のように硬くなる性質を持っている。そしてその花を武器として使う怪獣もいる」

 

 

 

そう説明したゲンは徐に席を立ち上がり、ジンに花を処分するよう命令する。

 

 

 

「とにかく花を処分するんだ、いいな?」

 

 

だがジンは花の処分に躊躇し、反論する。

 

 

「明日香ちゃんが、両親の写真に供えようとする花をですか!?」

 

 

そんなジンに対してゲンは一切躊躇いなどない険しい表情で厳しく言い放つ。

 

 

「地球のためだ」

 

 

厳しく突き放すゲンに、ジンは納得出来ずまたも反論するのだった。

 

 

「地球は守ります!しかし花の美しさや、そして子供たちの笑顔を見守ってあげられる人間にもなりたいんです!」

 

 

「命令だジン」

 

 

しかし一歩も許さないゲンに、ジンは尚も食いつく。

 

 

「もし万一怪獣が来ても、花を使われる前に倒してしまえば....」

 

 

「命令だっ!!」

 

 

「っ!」

 

 

ゲンの怒号に黙ってしまうジン、そんな彼に諭し始める。

 

 

「地球の子供が単純に美しいと思う草花も、我々が見ればその正体が分かってしまう。多少嫌がれたり憎まれたりしても怪しい物をドンドン処理していくのが、我々の仕事だ」

 

 

「しかしその為に、女の子の優しい心を踏みにじってもですか...?」

 

 

 

「そうだ!その程度で女の子の優しさが無くなってしまいはせん!」

 

 

 

「....」

 

 

そんな自分を諭そうとするゲンに、ジンは未だに渋っている。彼は明日香が両親の為にあの花を供えたいと願っているのにそれを無下にして無理やり処理しなくちゃならないのはどうしても出来ないのだ。

だがMACの隊員としてそのような生易しいことを言っていては、この先地球を守り抜くなど不可能だ。

宇宙にはそんな美しい物を美しいと素直に愛でて大切にする人間の気持ちすら利用して弄び、最悪残酷な末路を起きかねない。

それを嘗て熾烈な戦いの中で経験してきたゲンは知っていた為、ジンのこの気持ちは痛いほど分かる。だがそれを抱いてこの先戦いはやってはいけない。

 

ゲンの話は続く。

 

 

 

「何も起こらないかもしれん。だがもし何かが起きたら取り返しがつかない」

 

 

「...」

 

 

 

だがそのゲンの予想は的中するのだった。両親の写真に供えた花が突然成長して花が咲くと花びらが金属のように硬くなった。

そして硬くなった花びらがヘリコプターのプロペラみたく回転して宙に浮かび始める。そんなことなど知らず、スポーツセンターから凛子に送って貰った明日香が梅田家の自宅に帰ってきた。

 

 

「ただいまぁー!」

 

 

「こんにちはー!」

 

 

「お帰りなさい、明日香ちゃん。凛子ちゃんもいらっしゃい」

 

 

「うん!」

 

 

この綺麗なご婦人は梅田浅葱、梅田トオルの妻で彼よりも21歳年下の34歳女性。とても梅田には勿体無い程のスタイルと美貌の持ち主であるが、彼女が不妊症を患ってしまい子供が授からなかった。

そこへ梅田から両親を亡くした一翔と明日香の話を聞いて、躊躇いや悩むことなどせず即答で二人を引き取ろうと言ったそうだ。

とても優しい性格をし、さらに家事など全て熟すなど正に出来た人なのだ。

 

 

「今日の晩御飯何?」

 

 

「今日はね、ハンバーグよ」

 

 

「やったぁ♪」

 

 

「フフッ。あ!そうだわ!凛子ちゃんも晩御飯うちでどう?」

 

 

「え?悪いですよ!」

 

 

「いいのいいの。ご飯は多い方がいいしね!」

 

 

「お姉ちゃん!一緒に食べよ!ねっ!」

 

 

明日香にせがまれた凛子は根負けして苦笑交じりで受けることに。

 

 

 

「じゃ、じゃあご相伴に....」

 

 

「やったぁ!」

 

 

「フフッ」

 

 

 

明日香が喜ぶ姿に嬉しくなる浅葱、だがその時であった。明日香と一翔の部屋からあの花...剣輪草がドアに穴を空けて出てきたのだ。

突然のことに驚く浅葱と凛子、そして剣輪草を見て明日香はあれは自分が拾ってきた花だと気付く。

 

 

「な、なに!?あれ!!」

 

 

「わたしが拾ってきた花!!」

 

 

「っ!!明日香ちゃん!!触れちゃダメ!!」

 

 

凛子の制止を聞かずに明日香は花に手を伸ばして花びらに触れた、っが剣輪草の花びらは尖った鋭利な刃物同然であった。そんなことなど知らず明日香は触れてしまい手を怪我しまう。

 

 

「いたいっ!!」

 

 

「明日香ちゃん!!」

 

 

凛子と浅葱は急いで明日香を庇いながら家を出ていこうと玄関先まで行くと、梅田と一翔が帰ってきた。

 

 

「ただいまぁ、帰ったよ」

 

 

「ただいまぁー!」

 

 

 

浅葱は梅田と一翔に逃げるように伝える。

 

 

 

「二人とも危ないわ!!逃げて!!」

 

 

「どうした!!」

 

 

「変な花のお化けが!!」

 

 

「えぇ!明日香ちゃんが怪我を!」

 

 

「え!?明日香大丈夫か?!」

 

 

「痛いよぉ...」

 

 

浅葱の手当てによって怪我した手はそこまで深くはなかったから何とか事なきを得たが、その時家の奥から剣輪草が出てきて彼らの頭上を通り過ぎ、梅田家宅から出ていった。

 

 

「こんなの普通じゃない!!急いでMACに連絡だ!!」

 

 

この異常事態に梅田は急いでMACに連絡先するのだった。彼の連絡を聞きつけたMACはジンを派遣する。彼はマックカーで現着した。

 

 

「大丈夫ですか!!?」

 

 

「おお!ジンくん!」

 

 

「ジンさん!!」

 

 

凛子は駆けつけたジンに抱きついた。

 

 

「り、凛子!?」

 

 

「ごめんなさい!!私!!ジンさんのことを信じてことができなくて....」

 

 

彼女はジンがあの花が危険と言っていたが、そんなこと有り得ないと信じきれなかったのに対して罪悪感を抱いていたようだ。

だがジンはそんなことを気にしておらず、彼女の肩に手を乗せて言い聞かせる。

 

 

「大丈夫だ、そんなこと気にしてないから。それよりも怪我は?」

 

 

「ぐすっ...私は怪我してないけど、でも!明日香ちゃんが怪我してしまったの!」

 

 

「え!?」

 

 

っとジンは明日香を見るが、浅葱が話す。

 

 

「大丈夫よ。もう手当てしてあるから」

 

 

「うちの妻は看護婦だからね、安心さ」

 

 

「そうですか...良かった」

 

 

その明日香は一翔が傍についてもらっているが、ジンを見て彼女はバツが悪そうにしていた。ジンはそんな明日香に近寄って大丈夫かと聞く。

 

 

「大丈夫?明日香ちゃん」

 

 

「うん....ジンお兄ちゃん、ごめんなさい」

 

 

「え?」

 

 

明日香は突然謝ったのだ。彼女が謝るのはジンの言うことを聞かなかったのが理由だろう、しかしジンは笑みを浮かべて明日香の頭を撫でてあげてそんなこと気にするなと諭す。

 

 

「いいんだよ。明日香ちゃんが無事ならそれでいいんだ」

 

 

「ごめんなさい...ぐすっ」

 

 

「うん」

 

 

っとその時、ジンの通信機に通信が...。

 

 

『大神隊員!応答してください!』

 

 

「こちら大神!」

 

 

『大気圏突入している正体不明の物体を補足しています。更にそちらの座標近くに浮遊する物体も確認しています!』

 

 

「なんだって!?」

 

 

するとオペレーターからゲンに変わってジンに通信で呼びかける。

 

 

『ジン、恐らくそれは剣輪草だ。ケンドロスと合流するつもりだろう、急いで追跡するんだ!!』

 

 

「了解!!」

 

 

ジンは通信を切ってマックカーに向かう。そんな彼に凛子が声をかける。

 

 

「ジンさん!気を付けてね!!」

 

 

「ああ!行ってくるよ!!」

 

 

彼はマックカーに乗り込んで浮遊している剣輪草を地上から追跡するのだった。ジンはMACベースから送られた剣輪草の追跡マークを辿って追うと、気づけば東京から離れた山地に来ていた。

その頃、MACベースでも大気圏に突入していた物体の情報がキャッチ出来ていた。

 

 

「隊長!物体の正体が掴めました!映像に写します」

 

 

「うむ」

 

 

オペレーターがコンソールを使って司令室の大型のディスプレイにその映像が映し出される。そこには丸い緑色の物体...怪獣・ケンドロスが映し出されていた、これにMACの面々は驚愕するがゲンは「やはりケンドロス」と口ずさむ。

オペレーターがケンドロスの落下ポイントを算出し、結果を報告する。

 

 

「落下予想ポイントが分かりました!ポイント、G-22!山脈地帯です!!」

 

 

東雲副隊長がゲンに声をかける。

 

 

「隊長!」

 

 

「ああ!MAC!!出撃!!」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

直ちにMACベースからマックホーク、一号、二号、三号が順次発進して現場へと向かう。そして三号機に乗り込んでいるゲンは一人呟く。

 

 

 

「奴の目的は地球征服、ならば剣輪草と合流するはずだ」

 

 

ゲンの予想通り、ケンドロスは落下ポイントに落下する。そしてそのケンドロスの元へ剣輪草が飛んできた。

ケンドロスは口から光線を吐いて剣輪草に浴びせると、剣輪草の見た目が変化し花びら鋭利な刃物になりケンドロスの肉体上部に合体する。

 

ケンドロスと剣輪草が合体したのを目撃したジンは遅かったと悔しがるが、それでもここで奴を倒さなければ都市に向かってしまう。

 

 

「絶対にここで倒さなければ!!」

 

 

 

彼はマックカーから降りて、彼は赤い宝石を口で加えているライオンの顔が模られた金色のブレスレット型の変身アイテム「ライガブレス」をはめている手ともう片方の手で、胸の位置でクロスしてから天に向かってブレスレットをはめている拳を掲げて叫んだ。

 

 

 

 

ライガアアアァァァァーっ!!!!

 

 

 

そして光が彼を包み込み、大きくスパークした中心から我らがヒーロー・ウルトラマンライガが巨大化して現れた!

 

 

「ダァッ!!」

 

 

ライガはジャンプして都市に向かって進むケンドロスの進路上に着地する。ケンドロスは現れたウルトラマンライガに吠える。

ウルトラマンライガはケンドロスに攻撃を仕掛ける、しかしケンドロスは体の上部にセットされた剣輪草の花びらを扇風機の様に高速回転させて突風を起こす。突風を受けるライガは思うように前に進めず、その強い風に押されて吹っ飛ばされるのだった。

 

 

「だ、ダァッ!!!」

 

 

風を止めて吹っ飛したライガを見て嘲笑うケンドロスは彼に向かって進み始める。ライガは急いで態勢を整える。

そこへMACが現着する。東雲副隊長はケンドロスに攻撃する為、部下に命令する。

 

 

「ウルトラマンライガを援護する。怪獣を攻撃!!」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

全機レーザーでケンドロスに攻撃を仕掛けるが、ケンドロスにはどうやら効果なし。どうやら火力不足のようだ、ケンドロスは痛くも痒くもないと口元をニヤリと嘲笑う。

 

 

「ちくしょ!!効いてねぇぞ!!」

 

 

「こちらのマッキーの火力が弱いのよ!」

 

 

 

氷室がこぼしたぼやきに一之瀬がマッキーの武装に難点があることを言うと、二号機の伊勢と芹沢が氷室に言う。

 

 

 

「仕方ないですよ!マッキーは全部旧式の機体なんですから!それより怪獣に集中して!!」

 

 

「ぼやかないで!!黙って撃ちなさいよ!!氷室!!」

 

 

『分かってる!!』

 

 

同じく二号機に搭乗している東雲副隊長が部下を諌めて戦いに集中するよう怒鳴る。

 

 

「戦いに集中なさい!!」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

だがその隙を見逃すほどケンドロスは甘くはなかった。奴は体の上部にセットされている花びらをブーメランのように飛して二機を打ち落とす。

 

 

「くそ!!またかよ!!」

 

 

「脱出しましょ!!」

 

 

「こっちも脱出!!」

 

 

「は、はい!!」

 

 

「くっ!!やはり旧式の戦闘機では!」

 

 

 

彼らは直ぐに機体から脱出して事なきをえた。そんな中、ウルトラマンライガはケンドロスの隙を突くべく攻撃を再び仕掛ける、だがそれをお見通しとケンドロスは花びらのブーメランを今度はライガに攻撃させる。

空を切り、素早いスピードで四方八方からライガを翻弄して攻めまくる。

 

 

「ダ、ダァッ!!へ、ヘアぁ!!!」

 

 

そのライガの苦戦っぷりを見て、眉間を険しくしているのだった。やはりケンドロスの変幻自在な攻撃にライガは対応しきれていない、これではツルク星人の時と同じく無惨な惨敗をしかねない。

だがそのゲンの予想通り、ケンドロスの攻撃にライガは成す術が無くなっている。

 

ケンドロスは自身のブーメラン攻撃に苦戦しているライガを更に攻めようと胴体に付いている両腕からロケット弾を発射する。

 

 

「ドゥ、ドゥアァっ!!!」

 

 

いきなりの別の攻撃に驚くライガであったが、何とかバク転しながらこれを辛くも回避する。しかしそんな彼に再びブーメラン攻撃が襲い掛かり、ライガは窮地に立たされる。

そのライガのピンチを見るに堪えなかったゲンは司令室を後にして自身も出撃し、現場に急行する。

彼が現れたところでケンドロスは自身のブーメランを全て呼び戻してまた花びらの形態に戻った。最早優勢と見たのかケンドロスはニヤリと笑い、倒れ苦しむライガを嘲笑う。

ライガも何とか立ち上がりたいが、先ほどブーメラン攻撃が効いたのか思うように力が出ず立ち上がりたくても出来ない。

 

もうウルトラマンライガは自分の相手にならないと見たケンドロスは手足と花びらを収納し、丸い球体となってその身体を生かして転がりライガを下敷きにする。

ケンドロスは既に勝者の座興としてライガを転がる自分の身体で下敷きにして遊んでいるのだ。もう一度丸まって踏みにじようとするが、そこへゲンが乗る三号機がライガの援護の為に攻撃してきた。

 

思わぬ邪魔が入った為、ケンドロスは花びらをプロペラみたく回転させてその場から飛び去ったのだった。

 

 

 

「逃げられたか...」

 

 

 

ゲンはそう呟き、ウルトラマンライガはようやく立ち上がってその場から飛び去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、梅田家ではトオルや浅葱、一翔と明日香、そして凛子は皆不安と心配な表情を浮かべていた。

 

 

「ジンさん、大丈夫かなぁ...」

 

 

「なぁに、ジンくんは大丈夫さ!なんせ彼はうる...MACの隊員なんだから!」

 

 

ジンの身を安んじる一翔に梅田は笑顔で一翔の心配を払拭しようと励ます。しかし凛子はそれでも心配であった。

その時、梅田家のインターホンが鳴る。

 

 

「あら?誰かしら?」

 

 

浅葱は突然の来客に応対すべくリビングに備え付けられているインターホンで呼びかける。

 

 

「はい、どちら様ですか?」

 

 

彼女は来客に対して声をかけると....。

 

 

『じ...ジン、です...っ』

 

 

「え!?」

 

 

彼女は急いで玄関に向かい、扉を開けるとそこにはボロボロになった姿のジンが立っていた。彼の姿に驚く浅葱は「ジンくん!!」と大声で叫ぶとリビングに居た全員が玄関に向かいジンの姿に驚愕する。

特に凛子は彼のボロボロな姿を見て、口を手で覆い涙を溢れながらジンの傍に駆け寄る。

 

 

「ジンさん!!どうしたの!!?」

 

 

彼女は急いでジンが倒れないように支えながら家の中に入れようとする、梅田も驚き浅葱と共にジンを支えて中に入れてあげた。

 

 

「浅葱!救急車だ!このままじゃジンくんが危ない!!」

 

 

「はい!!」

 

 

 

だがそれをジンは手で制止して救急車を呼ばせるのを止める。

 

 

「い、いえ!少し休んだら、直ぐに行かないと....」

 

 

「何を言ってるの!?ジンさん!!大怪我してるのよ!?」

 

 

そんなジンに凛子が涙交じりに怒り、浅葱も彼女に同感だとジンを思い留まらせる。

 

 

「凛子ちゃんの言う通りよ!そんな身体はいけないわ!!」

 

 

大人たちが慌ててる中、一翔と明日香はジンの凄惨な姿に涙を流して彼の安否を心配する。

 

 

「ジンさん!!」

 

 

「ジンお兄ちゃん!!」

 

 

そんな子供たちを安心させようとジンは痛みに耐えながら笑顔を見せるのだった。そんな無理をするジンの姿に凛子は悲しげに見つめる。

 

 

「ジンさん....」

 

 

そこへまたインターホンが鳴る。今度は梅田が応対する為玄関に向かいドアを開くとそこにはゲンが立っていた。

 

 

「おおとりさん!?どうしたんですか?!」

 

 

「ジンはいるか?トオル」

 

 

「え!?い、居ますが....まさか」

 

 

梅田はゲンがジンに一体何をするのか分かった。彼はジンに 責し、そして現れたであろう敵を倒す為に厳しい特訓をさせようと迎えに来たのであろう。

梅田は狼狽えながら、ジンがそれどころではないと説明する。

 

 

「おおとりさん!ジンくんは今怪我を....」

 

 

「それどころではない。怪獣が現れている一刻も早く倒さなければならない。でないと取り返しができない」

 

 

「し、しかし....」

 

 

「待ってください!!

 

 

 

 

そこへ凛子がゲンと梅田の間に入って表情をこわばらせて、ゲンに異を唱える。

 

 

 

 

「ジンさんは今、怪我で動けないんです!だから....」

 

 

「怪我と言っても、前回より比べてもそほど酷くはないはずだ。ならば怪獣打倒の為に行動をしなければならない」

 

 

「でも!ジンさんはそんな真面に動けないですよ!それなのに....」

 

 

凛子はゲンに対して引き下げることはせず、尚もジンの為にくってかかる。しかしそこへジンが無理をしながらも玄関に来ていた。

 

 

「り、凛子、いいんだ。俺は行くよ」

 

 

「じ、ジンさん!!ダメよ!!そんな身体で!!」

 

 

「でも今動かないと、沢山の人々の命が危険に晒される。それを何とか止めないといけない」

 

 

「ジンさん.....」

 

 

ジンのこの姿に凛子は何も言えなかった、MACの仕事は危険なものだと分かっている。しかしだからと言ってもまさか怪我の治療や休むことすら許されないのかと愕然してしまう。

 

そんな反応をする彼女にジンは、自身の手を肩に乗せて諭す。

 

 

「今無理をしないと、凛子やみんなが安心して毎日を生きていけなくなる。そんなの俺は嫌なんだよ、それに子供たちや凛子には笑顔でいて欲しいんだ」

 

 

「ジンさん...」

 

 

「そうだ!これが終わったら...今度の休み、明日香ちゃんや一翔を連れて遊園地に一緒に行こう!」

 

 

「え...///」

 

 

ジンは凛子に笑顔を見せてから打って変わって、表情が真剣なものに変わりゲンに近づく。

 

 

「隊長、申し訳ありません。しかしどうか、連れていってください!!」

 

 

「....ジン、分かった。ついてこい」

 

 

「はい!!」

 

 

ジンはゲンが運転する車に乗って去っていく。そんな去って彼らを凛子は手を胸に当ててジンの名を呟くのだった。

 

 

「ジンさん....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車に中で重苦しさが漂う雰囲気に包まれていた。その中でゲンはジンに話しかける。

 

 

「私の恐れたことが現実になった」

 

 

「....」

 

 

「ライガが敗れた後、怪獣は東北に向かった」

 

 

「.....」

 

 

「仙台地方で怪獣の被害続出している」

 

 

 

ゲンの説明を聞いて、自分の責任でこうなったのだとジンは自責の念を抱いてしまう。自分があの時明日香から剣輪草を取り上げて処分していれば、ケンドロスに苦戦することなどなかったかもしれない。

そんなことが頭に浮かんでしまうジンに、ゲンは話す。

 

 

 

「出撃した各支部からのMAC機全て撃墜されている」

 

 

「申し訳ありません...」

 

 

「謝らんでいい、言い訳もいらん」

 

 

ジンはこうしてる間にもケンドロスによって被害が広がり、罪のない人間の命が脅かされていると思うと居ても立っても居られなくなっていた。

 

 

「仙台に飛びます!!」

 

 

そう口にするジンの言葉など無視してゲンは話を続ける。

 

 

「花と合体する前の怪獣ならば、MACだけでも倒すことは容易かっただろう。しかし今は無理だ」

 

 

「そんな....」

 

 

ゲンは鋭くジンに睨みつけ問いかける。

 

 

「今仙台に飛んで、奴に勝てるのか?」

 

 

「そ、それは....」

 

 

「勝てる」と口にすることがどうしても出来なかった。今仙台に飛んで再びケンドロスと戦えば、またもさっきの時の二の舞いになるのは必至であろう。それでは無駄に命をすり減らすことになりかねない、ジンには奴に対してのしっかりとした攻略法がなかった為に、何も言い返せない。

更にゲンは指摘する。

 

 

「それにだ、奴が飛ばすあのブーメラン攻撃を如何にして防ぐというのだ。自信はあるのか?」

 

 

「っ...」

 

 

これすら自信があるとも言えなかった。何も言えず顔を俯かして、膝の上に悔しさが込められた拳を乗せて己の不甲斐なさと無力さを呪った。

その間、ゲンが運転するマックカーが郊外の崖がある場所へと到着した。何故このような場所に着いたのかジンには分からずゲンを見ると、そのゲンがジンを一瞥した後車から降りる。降りた彼は車のトランクから一束に纏められたブーメランを取り出した。

 

 

「た、隊長?」

 

 

戸惑うジンにゲンは顎でしゃくして見せ「来い」と促し、ジンはそれに従いゲンの後に続くのだった。

するとゲンはいきなり振り返り、思いっきりブーメランを自身に投げてきた。

いきなりのことだったのでジンは避けることが出来ず、肩に直撃して身体のバランスを崩して倒れてしまう。

 

 

「た、隊長!!なにを!?」

 

 

しかしゲンは何も言わずただ容赦なくブーメランを投げ飛ばしてジンを執拗に追い詰める。ジンは何とかゲンが投げるブーメランを必死に防ぐがそれでもゲンはブーメランを投げる勢いを一切緩めることはせず、殺意が籠っているのではと錯覚するほどにブーメランを投げるゲンの力は更に上がる。

 

 

 

「っぐっ!!ぐあああ!!!」

 

 

 

やがてとうとうブーメランの一つがジンの顔面に直撃し彼は吹っ飛ばされる。ケンドロスによってダメージを負っているというのにゲンはそんなもの関係ないと一切容赦はしない。

次々にドンドンブーメランを投げるゲン。ジンは痛みを耐えながらも投げられるブーメランを防ぐだけでなくパンチや蹴りで弾き返す。

だがゲンは更にブーメランを投げてジンを追い詰めていく。

 

 

 

「でぇい!!はっ!!」

 

 

「どうした!!怪獣の攻撃はこんなものではないぞ!!!」

 

 

「くっ!!」

 

 

「奴はお前の傷など無視して容赦など絶対にしないぞ!!」

 

 

「ぐはっ!!」

 

 

ゲンはわざとジンの傷目掛けてブーメランを投げて当てた。傷に直撃したジンの体に激痛が走り、膝を屈してしまう。

しかしゲンはそんな苦しむジンに手を差し伸べることなどせず、そのままブーメランを投げつづけながらジンに激しく怒る。

 

 

「何をしているかぁーーっ!!!立てっ!!!」

 

 

「ぐはっ!!」

 

 

ジンは仰向けに倒れてしまうがそんな倒れたジンに尚もブーメランをぶつけて苦しめる。しかし情けない仕打ちにジンは堪らず体を丸くして痛みに耐えるしかなかった。

そんな情けないジンにゲンは激昂する。

 

 

 

 

男は外に出て戦わねばならん!何の為だ!? 後ろで女の子が優しく花を摘んでいられるようにしてやる為じゃないのか!?男まで女の子と一緒になって家の中でママゴトばかりしていたら、一体どうなる!?立てっ!!!

 

 

「ぐはっ!!ぐ、ぐうぅっ!!」

 

 

そう叱咤するゲンの言葉にジンは顔を上げ、苦しみながらも立ち上がり構えて見せる。だがそれでもゲンの投げるブーメランの数々には流石にそれら全てを対処出来ず、結局両腕で顔をガードして目をつぶってしまう。

そんなジンにゲンはその無様さに更に怒り、ブーメランの数を二本同時に投げる。

 

 

「そうやってお前は!!苦しいことから逃げるのかっ!!!臆病者がぁっ!!!そのお前の弱さがぁ!!!L77星で両親を失うことになったのだぁっ!!!」

 

 

「っ!!」

 

 

 

その言葉にハッとなったジンは咆哮を上げる。

 

 

 

 

うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!

 

 

 

天にも轟く程の咆哮を上げたジンは咄嗟にジャンプしてゲンが投げた二つのブーメランを両手で掴み取って見せた。

これには驚くゲンではあったがそれでも再び勢いよくブーメランを二つ投げる、っが、ジンは躊躇いのない尋常じゃない素早い動きで両手に握られているブーメランを逆手に持って、まるでウルトラマンゼロが二本のゼロスラッガーで縦横無尽に切り裂いたのだった。

 

 

 

「っ!!!」

 

 

思いもしない行動に驚愕するゲン。そんなゲンとは打って変わってジンは息を荒くしながらもゲンを睨み次にくるであろうブーメランに備える。

しかしゲンはブーメランを投げるのを辞める、ジンはこれに不思議がる。

 

 

「?」

 

 

「よくやった。今の動き...これならばあの怪獣にも勝てるだろう」

 

 

「え!?隊長!!」

 

 

「うむ....ん?」

 

 

 

ゲンの通信機にMACベースからの通信がきた。

 

 

 

『隊長!!怪獣が東京に向けて進行中!!間もなく東京に到達します!!』

 

 

「なに!?」

 

 

「隊長!!」

 

 

「ケンドロスだ!!東京に近づいている!まもなく東京が襲われる!!」

 

 

「っ!!!」

 

 

ゲンは急いでマックカーに乗り込んでMACベースに戻るべくジンを置いて去っていくのだった。置いてかれたジンは自身の両手に持つ二本のブーメランを見つめてケンドロス打倒のヒントを得たと感じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてとうとうケンドロスが東京に現れ街を襲い始めた。奴は胴体に付いている両腕からロケット弾を発射してビルを破壊し、丸まって転がり車や家などを踏みつぶす。

逃げ惑う人々、その中を大神ジンは走り抜ける、今度こそ奴に勝つために...。

 

そしてようやく修理が完了したマッキー一号機と二号機、ゲンの乗る三号機と共にケンドロスへの攻撃を開始する。

 

 

「全機、攻撃開始!街を守れ!!」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

 

三機は一斉にミサイルをケンドロス目掛けて発射する。ケンドロスは三機のマッキーに再び花びらのブーメランを飛ばして打ち落とそうとする。

 

 

「回避しろ!」

 

 

「「了解!!」」

 

 

東雲が叫ぶと氷室と芹沢が今度はやられまいと巧みに操縦桿を操作して避けるのだった。

 

 

「よし!どうよ!!オラオラ!!」

 

 

「行くよ反撃!!」

 

 

今度はレーザーで反撃する。しかし今度は両手からのロケットを飛ばして応戦する。これらも回避しようとするが、その際計器に異常が起きてしまう。どうやらエンジン系統が古いために無理な回避機動が影響したのだろう。

 

 

「ちくしょ!!このポンコツがぁ!!」

 

 

「駄目です!!各計器も数値がダウン!!」

 

 

一号機のみならず二号機も異常が起きてしまっている。

 

 

「こっちも異常が!」

 

 

「これ以上は飛べない!!」

 

 

「脱出よ!!」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

東雲の命令で彼らは無事に脱出するのだった。三号機だけは何とか無事であり、単独で攻撃を続行している。

しかし三号機の火力だけではケンドロスを倒すどころか怯ませることすら出来なかった。このままでは東京がと焦るゲンは徐に地上に眼を向けるとそこには戦場を走るジンの姿を見つける。

 

 

 

「ジン!!」

 

 

 

ジンは立ち止まって彼は赤い宝石を口で加えているライオンの顔が模られた金色のブレスレット型の変身アイテム「ライガブレス」をはめている手ともう片方の手で、胸の位置でクロスしてから天に向かってブレスレットをはめている拳を掲げて叫んだ。

 

 

 

 

ライガアアアァァァァーっ!!!!

 

 

 

そして光が彼を包み込み、大きくスパークした中心から我らがヒーロー・ウルトラマンライガが再び現れる!

 

 

 

【イメージ挿入歌:ウルトラマンレオ前期OP(ライガver)】

 

 

 

 

「ダァッ!!」

 

 

ケンドロスに目掛けて数回宙返りしてから地上の敵に強烈な蹴りであるスワローキックをかまして蹴り飛ばした。

倒れるケンドロスの右腕を捕まえてそのまま捻じ曲げて引き千切り、更にチョップで左腕をも斬り落とした。

 

 

「デェアァっ!!!」

 

 

奴の両腕を破壊したウルトラマンライガはバク転して距離を取る。そんなライガにケンドロスは怒りを露にして体の上部にセットすることでこの花びらをブーメランのように飛し、ライガに反撃する。

 

そこへウルトラマンライガは自身の頭部にある三本の宇宙ブーメラン「トライドスラッガー」を、二本手に取ってケンドロスのブーメランを次々に正確にそして素早くそれらを斬り捨てていく。

 

 

 

「ジュア!!デアッ!!エイヤァーッ!!!」

 

 

 

ケンドロスは前回とは違う動きをして見せるウルトラマンライガの戦いぶりに度肝抜いてしまう。そして遂には奴の花びらのブーメランは全て斬り捨てられた。

最早攻撃手段を無くしたケンドロスにウルトラマンライガは決して容赦など見せず怒りの必殺技を見せる。

 

ライガはウルトラ念力で二本のスラッガーを宙に浮かせた。そして三本目のスラッガーをも先ほどの二本と共に宙に浮かせて光線技の一つで拳にエネルギーを溜めて放つ「ナックルバスター」を空中にウルトラ念力で固定したトライドスラッガーを当てて飛ばした。

さしずめそのやり方で三本の宇宙ブーメランを飛ばす姿は嘗てのウルトラセブンがやって見せたウルトラノック戦法。

 

 

「デェエエエエアアアアアアアアッ!!!」

 

 

怒りの必殺技は見事ケンドロスに命中して爆発四散!!これを三号機から目の当たりにしたゲンは喜びの笑みをこぼし、ウルトラマンライガを称賛した。

 

 

「でかしたぞ、ジン」

 

 

 

こうして今回の戦いは終わったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして後日、ジンは約束通りに凛子と一翔と明日香を連れて遊園地に来ていた。そこの敷地内には世界でも有名な花が植えられていることも有名でもある遊園地でもあった。

 

 

「わぁーキレイ!」

 

 

「ほんとね!良かったね?明日香ちゃん」

 

 

「うん!」

 

 

「ジンさん!こっちに凄い花があるよ!」

 

 

「お!ほんとだ!」

 

 

皆楽しくいるようでジンは嬉しく思う、花とは本来こういう誰もが見てて癒してくれるものだ。これからも大切に守っていこう誓う彼に凛子が呼ぶ。

 

 

「ジンさーん!」

 

 

「ん?どうしたの?」

 

 

「こっちにもキレイな花があるの、来てみてぇー」

 

 

「ああ。今いくよー!」

 

 

ジンはそのまま凛子の元へと駆け寄ろうとした時、足を躓かせてしまい凛子のすぐ目の前で転んでしまう。

 

 

「「うわぁ!!/きゃあ!!」」

 

 

「ジンさん!」

 

 

「お姉ちゃん!」

 

 

 

 

「もぉうなに....っ!!?///」

 

 

「いつつ...ごめん。って!?」

 

 

 

ジンは彼女を押し倒す形で転んでしまったのだが、その拍子で何と彼女の女性として素晴らしく強調されたいい形をしたおっぱ....胸を鷲掴みにしていたのだ。所謂、ラッキースケベというやつだろう。

 

 

「あ、あははは(;'∀')」

 

 

「....ジンさんの、スケベっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

バシンッ!!

 

 

 

 

 

.....まぁ何はともあれ、めでたしめでたし、続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、ウルトラマンライガ


遊園地の怪獣ショーの中に本物怪獣のギロ星獣が紛れ込み、遊びに来ていた一翔と仲良しになった

ギロを倒すべくMACが立ち上がった

しかし何も破壊しないギロに対し、ジンは迷う

どうしたジン?!急げライガ!!

さぁ、みんなで見よう!!


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第六話 星獣再び、宇宙をかける友情の橋

お待たせしまして申し訳ございません。ですが今回、それに見合う出来栄えではなく正直駄目かもしれません。許してくださいm(__)m

宇宙星獣・ギロ 登場


曲名:咆えろ!ウルトラマンライガ!
作詞:???
作曲:???
歌:影〇ヒロノブ

ナレーション「宇宙にきらめくエメラルド・・・地球・・・それを狙う魔の手から赤き若獅子が今吠える!その名は・・・・!」

忘れるな・・・勇気を 忘れるな・・・やさしさを

正しき怒りの咆哮(こえ)上げろ!

咆えろ!ウルトラマンライガ!(ここまでイントロ)

1番

壊しちゃいけないぜ、この星の未来を

誰が行かなきゃ誰がやるんだ

涙だげじゃ何も守れない

一歩づつでも前に行くのさ!!

嵐か起きても絶対あきらめない!

皆のために戦う!ただそれだけさ!

忘れるな!勇気を!忘れるな!やさしさを!

獅子の瞳が今!赤く輝く!

そう!君の番さ!そう!今、戦え!

叫べ!その名を!

行くぜ!ウルトラマンライガ!



この日ジンは、凛子と共に梅田夫妻と一翔と明日奈と一緒に遊園地で楽しい休日を過ごしていた。

ジンは凛子と一翔と明日香と共に、アトラクションのティーカップに乗って楽しんでいる。

 

 

「アハハ!」

 

 

「わー!」

 

 

「回るぅ!」

 

 

「フフッ」

 

 

そんな楽しむ彼らを梅田夫妻は和みながら見守っている。このような何ものにも縛られぬ時間はMACに入隊し、緊張した毎日を送っていた彼は今一地球人としてこの平和なひと時を楽しんでいるのである。

幾つかアトラクションを楽しんだジンたちは、アイスクリーム屋に立ち寄ってアイスを買って皆でそれを食べる。

アイスクリームの味を味わいながらこの後はどのアトラクションに乗るかと話していた。

 

 

「いやー、今日はジンくんが休みで良かったなぁ」

 

 

「ほんとね、ねぇ?明日香ちゃん」

 

 

「うん!凛子お姉ちゃんは凄く喜んでたんだよ!」

 

 

「ちょ!///明日香ちゃん!?///」

 

 

「そうなのか?凛子」

 

 

「へ!?///」

 

 

「あー、お姉ちゃんお顔真っ赤だぁー」

 

 

「あ、明日香ちゃん!!///」

 

 

「「「「ハハハハハ!」」」」

 

 

「も、もう!」

 

 

などと何とも見ていて幸せな雰囲気に包まれているジンたち、本当に平和な時間だと誰もが思わせてくれる。だがその中で一翔は何やらある方向をアイスを食べながら見ていた。

一翔が何処か見ていることに気付いたトオルはどうしたのかと問いかける。

 

 

「どうしたのかな?一翔くん」

 

 

「あっちで怪獣ショーやってるよ!」

 

 

「お、なら行ってみるかい?」

 

 

「うん!」

 

 

「浅葱、私は一翔くんと一緒に怪獣ショーを見に行くよ」

 

 

「あら、なら皆で行きましょう」

 

 

「そうですね、ね?ジンさん」

 

 

「うん、そうしよう」

 

 

そうして皆で遊園地内のイベントショーである怪獣軍団ショーを見に行くことに。怪獣ショーには嘗て地球で暴れ歴代のウルトラマンたちに倒された怪獣たちの姿を模した着ぐるみが、人々の前でそれぞれ披露して見せる。

子供たちや大人たちは着ぐるみ怪獣たちの姿に歓声を上げて楽しんでいた。

その中を一翔はアイスを食べながら怪獣ショーの着ぐるみたちを眺めながら楽しんでいた。その時であった、不思議な笑い声が一翔の耳に入る。

一翔はその声がする方へ向くと、見慣れない頭部に二本触覚が生えた見たこともない着ぐるみ怪獣であった。

その着ぐるみ怪獣は一翔を見て無邪気に笑う、この時怪獣の目が光り一翔を見つめる。

その光る目を見た一翔はその着ぐるみ怪獣?に近づき始める。

着ぐるみ怪獣?はそんな彼に手招きして「こっちおいでよ」と誘い、彼の持つアイスクリームを凝視する。

一翔は着ぐるみ怪獣?が自分が持っているアイスクリームを見ていることに気づき、食べたいかと聞く。

 

 

「食べたいの?はい!」

 

 

着ぐるみ怪獣?は一翔の問いに嬉しそうに頷くのであった。一翔は自分のアイスクリームを着ぐるみ怪獣?にそのままあげてやり、アイスクリームを受け取って何と食べたのだ。

美味しそうに食べる着ぐるみ怪獣?に一翔は嬉しそうに語りかける。

 

 

「君なに怪獣なの?ぼくの名前は一翔!君の名前は?」

 

 

 

すると....。

 

 

 

「ギロ!ボクギロ!ハハハ♪」

 

 

何と喋って自分の名前を教える。

 

 

「へぇ、君ギロって言うのか。君そんなアイスクリーム好きなんだね!」

 

 

 

 

一翔がギロと名乗る着ぐるみ怪獣?と接して中、ジンたちはそんな一翔を探していた。

 

 

「一翔どこだ?」

 

 

「ええ、もうあの子は!」

 

 

「あ!ジンお兄ちゃん、お姉ちゃん!いたよほら!」

 

 

「あ!」

 

 

明日香が指さす方に一翔を見つけたジンたち。そのジンたちの後ろからトオルと浅葱が追ってきた。

 

 

「ジンくん、一翔くんは!」

 

 

「いましたよ。ほら」

 

 

「ん?おー!かず...っ!!?」

 

 

トオルは一翔の名を呼ぼうとしたが、彼は驚愕したかのような表情を浮かべる。妻の浅葱はそんな夫の様子を見て、心配になりどうしたのかと呼びかける。

 

 

「あなた?どうしたの?」

 

 

「.....」

 

 

しかしトオルは言葉を失ったかのように黙ってしまっている、そんな様子が可笑しいと思ったジンがトオルを呼びかける。

 

 

「梅田さん!どうしたんですか?!」

 

 

「え?!あ....」

 

 

トオルはようやく意識をハッと取り戻した。今度は凛子も問いかける。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 

「あ、ああ。大丈夫だよ」

 

 

「どうしたんですか?」

 

 

「い、いや...」

 

 

トオルはまだ何か様子が可笑しい。そんなトオルが心配ではあったが明日香は一翔が一緒にいる着ぐるみ怪獣?が可愛いと言い始めた。

 

 

「お兄ちゃんと一緒にいる怪獣さん可愛いよ!」

 

 

「え?あ、そうね!....え?」

 

 

凛子は明日香の言葉に頷きながら着ぐるみ怪獣?を見たが、その際彼女はその着ぐるみ怪獣?に異常な違和感を覚え、隣にいるジンの腕を掴みながら知らせる。

 

 

「じ、ジンさん!あの着ぐるみ怪獣を見て!!」

 

 

「え?」

 

 

ジンは彼女に促され、一翔と一緒にいる着ぐるみ怪獣?を宇宙人としての超能力で、着ぐるみ怪獣?を確かめる。そしてその結果.....。

 

 

 

「怪獣だ!!!」

 

 

「「「っ!?」」」

 

 

ジンが発した言葉に凛子や浅葱、明日香は驚く。ジンと凛子、浅葱は一翔に離れるよう知らせる。

 

 

「一翔くん!!危ないから離れて!!」

 

 

「一翔くん!!お願いよ!!逃げて!!」

 

 

「一翔!!危ないぞ!!そいつから離れろ!!!」

 

 

そんな彼らの言葉を無視して一翔はどうしてか、怪獣・ギロの手を掴んで共に逃げ始めるのだった。怪獣と共に逃げる一翔にジンは呼び止めようと声を荒げる。

 

 

「一翔!!待て!!」

 

 

ジンはこのままでは取り返しが出来ないことになりかねないと、彼は二人の後を追いかけよう走る。ジンが一翔たちを追いかけ始めた後からトオルは事態が急変したのに気づく。

 

 

「っ!?一翔くんは!?」

 

 

「あ、あなた!一翔くんが怪獣に連れてかれて!今ジンくんが追いかけ始めたわ!!」

 

 

「なら私も追いかけよう!!三人はここに居なさい!!いいね!!」

 

 

トオルもジンたちの後を追いかける。トオルが追いかけ始めた頃、ジンは一翔に呼びかける。

 

 

「一翔!!待て!!一翔!!!離れろ!!!」

 

 

「ジンさぁん!!何でもないよぉー!!ギロはいい奴だよぉー!!」

 

 

しかし一翔はそんな呼び止めようとするジンの声を否定するみたく、それを拒否してギロという人間サイズの怪獣を庇って一緒に逃げ続ける。

そのジンたちの後からトオルが追ってきた。

 

 

「一翔くーん!!!待つんだぁ!!」

 

 

「梅田さん!」

 

 

トオルは走るジンの横まで並んで走ってきた。そしてジンにこう言った。

 

 

「ジンくん!!あの怪獣は悪い奴じゃないんだ!!決して攻撃しないでくれ!!」

 

 

「っ!?なにを言ってるんですか!!?」

 

 

トオルの言葉に信じられないといった顔で問いただすジン、しかしトオルは正気を失って言っている訳ではなかった。

 

 

「ギロは害のある奴じゃないんだ!!とてもいい奴なんだ!!」

 

 

「梅田さん!」

 

 

すると彼らは遊園地内の関係者以外の立ち入り禁止エリアに入ってしまい、とうとう逃げ場を失った一翔とギロ。

追い詰めた一翔にジンは呼びかける。

 

 

「一翔、こっちに戻るんだ!」

 

 

「やだ!!」

 

 

しかし一翔は尚も拒否してギロに抱きつき離れない。そんな一翔に抱きつかれているギロにトオルは呼びかけた。

 

 

「ギロ!君なんだろ!」

 

 

「?」

 

 

ギロはトオルに首をかしげる、ギロはトオルを知らないようだがトオルは尚も呼びかける。

 

 

「ぼくだ!トオルだ!覚えてないかい!?」

 

 

「トーオールー?」

 

 

「そうだ!トオルだ!」

 

 

「梅田さん」

 

 

ギロを知っていると思われる態度をしているトオルの姿にジンは目を向ける。ギロはトオルをしばらく見つめるとギロの昔の記憶の中で同じ名前の少年との思い出があったのを思い出す。

思い出したギロは喜びながら、一翔の手を繋いだままトオルに近づいてきた。ジンは戦う構えをするがそれをトオルが手で制止して止める。

 

 

「っ!?梅田さん!?」

 

 

「いいんだ。大丈夫だ、私に任せてくれ」

 

 

「なにを言ってるんですか?!」

 

 

っとジンが大声を上げると、ギロの目つきが険しくなり突如巨大化した。

 

 

 

「っ!?巨大化した!!!」

 

 

巨大化したギロは一翔をその手の中に優しく包み込む。そしてジンを睨みつけて頭部にある二本の触角から泡状の液を噴射した。

ジンはトオルと共に泡状の液から逃げる。巨大化したギロ星獣が現れたことで遊園地内はパニックとなった、アナウンスの呼びかけが遊園地内に響く。

 

 

『園内の全てのお客様!!怪獣が現れました!!スタッフが誘導に従って避難してください!!』

 

 

「怪獣!?」

 

 

「きっとさっきのだわ!!」

 

 

「お兄ちゃん!!」

 

 

その頃、ギロの溶解液から逃げてるジンはトオルに逃げるよう促す。

 

 

 

「梅田さん!避難してください!!」

 

 

「ジンくん!すまない!!だがどうか、一翔くんを!!」

 

 

「はい!!必ず一翔を助けます!!!」

 

 

ジンに促されたトオルは避難することに。彼が避難したのを確認したジンは、赤い宝石を口で加えているライオンの顔が模られた金色のブレスレット型の変身アイテム「ライガブレス」をはめている手ともう片方の手で、胸の位置でクロスしてから天に向かってブレスレットをはめている拳を掲げて叫んだ。

 

 

 

 

ライガアアアァァァァーっ!!!!

 

 

 

そして光が彼を包み込み、大きくスパークした中心から我らがヒーロー・ウルトラマンライガが現る。

ギロはウルトラマンライガの出現とその出で立ちに驚きながらも、それでも敵意を失わずライガに襲い掛かる。

 

 

「デェア!!ダァッ!!」

 

 

ライガは掴みかかってきたギロをローキックで怯ませてから、奴の身体に捕らえられた一翔を助けようとする。しかしそれをさせまいとギロはライガに頭突きをかまして隙を突き投げ飛ばした。

投げ飛ばされたライガに更に追撃をしかけようとギロは攻撃をかけるが、ライガはすぐに起き上がりざまにギロの足を引掛けて転倒させる。

 

 

 

「ドゥアッ!!ジュアぁ!!」

 

 

ライガは倒れたギロの顔面に押さえ面突き、次に胴体に押さえ胴突きを何発もくらわして奴の体力を奪う。だがギロは触角から泡状の液を噴射してライガを攻撃を妨害して距離を離し、立ち上がって怒りを見せる。

 

 

「ジュア!!」

 

 

ライガはギロに距離を縮めて攻撃をしかけようとするが、ギロの身体に囚われている一翔がライガを制止の声を上げる。

 

 

「やめてぇ!!ウルトラマンライガ!!」

 

 

「っ!?」

 

 

ライガは動きを止めてしまう。それをチャンスと見たギロはその姿を忽然と消すのだった。奴はテレポートを使ったのだろう。

 

 

 

「っ!?逃げられた!!」

 

 

 

ライガはギロを逃がしてしまい、そして一翔を取り返すことが出来なかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【赤道軌道上の成層圏・新MAC空中基地母艦・MACベース・司令室】

 

 

 

司令室にて隊長であるゲンは、今回の戦いでのジンに対する行動を 責していた。

 

 

「馬鹿者ぉ!ハッキリとした作戦もなく、無暗に変身することは厳重に禁止してあるはずだ!!」

 

 

実はツルク星人やケンドロスとの戦い以降、ゲンはジンに対してむやみやたらに変身することを禁じたのだ。冷静さを見失ってウルトラマンライガに変身した所で敵の術中にハマって敗れるというジンの不甲斐なさと油断を招きやすい決定的な欠点を無くす為に、ゲンはジンに変身の際には厳重に禁止と命じたのだ。

しかし今回の戦いで彼は何の作戦もなく変身してギロ星獣を怒らせてしまい、結果一翔を誘拐されてしまうという結末になってしまった。

 

だが自分を 責するゲンにジンは今回はどうしても変身しなければ不味かったと弁明する。

 

 

「しかし!!今回一翔の命が...!!」

 

 

「そうだ!一翔くんの命がかかっていた。で、お前は人質を救うことは出来たのか?ん?」

 

 

っと厳しく問いに、ジンは痛い所を突かれぐうの音も出ず返すことが出来なかった。

 

 

「...っ」

 

 

「ジン!俺が変身を禁止していたのは、今までの戦いの反省点を正すこととこう言う事態を恐れてたからだ!!お前が変身してしまえば、怪獣の方も余計に怒りを露にして暴れてしまう!」

 

 

「...っ」

 

 

ジンは顔を俯かせて自分の行いがまたも取り返しができないことになったと猛省する。そんなジンにゲンは言う。

 

 

「ジン。一翔くんが星獣の手によって宇宙に連れてかれると、お前そこまで考えたか?」

 

 

「っ!?」

 

 

思わぬ言葉にジンは一翔が星獣によって宇宙に連れてかれることを想像してしまう。もし一翔が宇宙に連れてかれてしまえば、星獣は宇宙空間での真空に耐えられるであろうが人間である一翔はそうはいかない最悪即死してしまう。

 

 

「とりあえず、今はMAC総出で星獣の捜索を続ける。それにしても....」

 

 

「隊長?」

 

 

ゲンは難しい顔を見せるが直ぐに顔を正してジンに言う。

 

 

「....いや、何でもない」

 

 

気になる反応を見せるゲンが気になったが、ジンは遊園地でギロと遭遇したトオルの反応を思い出し、トオルとは昔馴染みであるゲンならば知っているはずだと彼に話す。

 

 

「隊長、実はなんですが」

 

 

「なんだ」

 

 

「梅田さんがギロ星獣の姿を見て動揺してました」

 

 

「.....」

 

 

「あの星獣、もしかして以前にも....?」

 

 

ジンの問いにゲンは重い口を開いた。

 

 

「そうだ。ギロ星獣は以前にもこの地球に現れたことがあり、私はレオとして戦った」

 

 

ゲンは説明してくれた。嘗てまだゲンがMAC隊員でそしてウルトラマンレオとして地球を守っていた頃、彼が休日の時にまだ子供であったトオルと円盤生物によって殺されたゲンの恋人の百子とトオルの妹のカオルと共に、当時の遊園地内での怪獣着ぐるみショーに紛れ込んでいたギロ星獣が子供であったトオルと接触、トオルはギロ星獣と仲良くなっていたがゲンがギロ星獣を本物の怪獣と見破ってトオルを救うために奮闘し、遂にはギロ星獣を倒した。

だがトオルの懸命な願いに当時のMAC隊長であり、ウルトラセブンでもあったモロボシダンはトオルの願いを聞き入れる。だがその代わりにギロ星獣を地球から永久に追い出すこととするという条件つきでウルトラマンレオにギロ星獣をリライブ光線で復活させる。

 

こうしてギロ星獣はもう二度と地球にくることはなかった。

 

 

「そうだったのですね....」

 

 

「ああ」

 

 

「しかし、何故またギロ星獣は地球に来たのでしょう?」

 

 

「分からん。だが奴には夢のような幻を相手に見せる能力を持っている。奴はその催眠能力で一翔くんを誘拐している」

 

 

「そんな....」

 

 

「当時の私もお前と同じでギロ星獣を倒すことを躊躇ったものだ。とても害があるようには見えなかった、しかしそれでもトオルや大勢の人を守る為にもギロ星獣を倒さないといけなかった。だがそれでもトオルはギロ星獣を信じ、その友情を貫いた。そんなトオルの姿にモロボシダンはわたしにギロ星獣を生き返らせたのだ」

 

 

「.....」

 

 

「だが奴は再びこの地球にやって来た。例えどんな理由があるにしても、一翔くんを誘拐して良い訳がない!」

 

 

「隊長....」

 

 

 

 

 

 

そして今夜もMACは総出で捜索活動を行っていた。ジンはマックロディーを走らせてギロ星獣を探し回る、そこへMACベースからの通信がきた。

 

 

『レーダーが星獣の反応を捉えました!場所はB-105!前回現れた遊園地です!!』

 

 

「了解!!急行します!!」

 

 

ジンはアクセルペダルを力強く踏み、スピードを上げて向かった。現場に駆け付けたジン、彼が駆け付けた時には既にゲンや他の隊員たちが着いていた。

 

 

「大神、遅いわよ」

 

 

「すみません!」

 

 

東雲副隊長に注意されながらもジンは氷室の隣に並ぶ。その氷室は既に芹沢と共に射撃の態勢を取っていた。

 

 

「大神、奴はあそこにいる」

 

 

「あんたの知り合いの男の子もね」

 

 

「え!?」

 

 

2人が指さす方へ見るとそこにはメリーゴーランドでギロ星獣と楽しんでいる一翔の姿が。

 

 

「アハハ!ギロー♪ハハハ」

 

 

「キャハハハ」

 

 

本来もうこの時間帯でのメリーゴーランドは動いていないはずなのに、イルミネーションを点灯して優雅に回転している。

なんとも不可思議な光景である、それを見てからジンはゲンの元へ駆け寄る。

 

 

「隊長、あれは」

 

 

「ギロの世界にいるんだ」

 

 

「あ!MACのみなさーん!そんな所に居ないで一緒に遊びませんかー!」

 

 

MACの面々を見つけた一翔はこちらに誘ってきた。ギロ星獣といる言うのに彼は一切怯えたり怖がったりしていない。

そこでゲンはジンに一翔と近づくように命じた。

 

 

「いけジン」

 

 

「はい」

 

 

ジンを一翔の元へ行かせて他の隊員には別命を下す。

 

 

 

「他の者は円形に散開、私の別命があるまで待機」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

彼らはそれぞれ円形状に散開してマックガンを構えていつでもギロ星獣を狙い撃つ態勢を整えている。

ジンは慎重に歩きながら目を反らさず、ホルスターにしまっているマックガンのグリップに手をかけながら一翔に話しかける。

 

 

「一翔、ぼくだ、ジンだ。俺も仲間に入れてくれないかな?」

 

 

「ジンさんもおいでよぉ!楽しいよぉ、ギロはいい奴なんだよぉ!」

 

 

ジンの混ぜて欲しいと言う要望に一翔は笑顔で手招きする。そんな一翔に気づかれないようにグリップを握ってホルスターからマックガンを静かに取り出した。

いつでも撃てる用意が出来るジンは、一翔にメリーゴーランドの止めるよう頼む。

 

 

「一翔、出来たらでいいんだけど。メリーゴーランドの木馬を止めてほしいんだ」

 

 

「うん、ちょっと待っててー!」

 

 

 

一翔がギロから離れた、その時であった。

 

 

 

「よし!今だ!!」

 

 

「撃てっ!!」

 

 

ゲンの号令で隊員たち全員がマックガンでギロに集中して銃撃する。マックガンの弾丸は全てギロの身体に命中していく、ギロが撃たれていることに気付く一翔が慌てて叫ぶ。

 

 

 

「やめてぇ!!やめてよぉ!!ギロを殺さないでぇ!!!」

 

 

しかしMACの面々は容赦なくギロを狙い撃ち、攻撃を受けたギロ星獣は姿を煙みたく消した。ギロ星獣がいなくなった途端、一翔は意識を失い倒れてしまう。

 

 

「っ!?一翔!!」

 

 

ジンはそんな一翔に駆け寄り抱き上げる。心配するジンやMACの面々の反応とは裏腹に彼は心地よい顔で眠っているのだった。

ゲンの指示により、一翔はMAC関連施設の特別病院へと駆け込まれた。

特別病院に運ばせたゲンは直ぐに梅田家に一翔を見つけ保護したと連絡を入れる、トオルたちは安堵した。

明日香を浅葱に任せて現在トオルがこちらに向かっているようだ。

 

一方、未だに心地よく夢の世界で夢の中のギロ星獣と戯れる。お菓子で出来た家や遊園地、乗り物、それらが全部お菓子で作られ、そのお菓子の遊園地で一翔はギロ星獣と喜び遊んでいる。

 

現実では脳波スキャナーで一翔の脳を調べてギロ星獣から受けた催眠の影響を調べることに。

 

 

「先生、一翔は!?」

 

 

ジンは担当医師に問いかけ、医師は真剣な面持ちで答える。

 

 

「ああ。今のところ脳に異常は見られない、更に脈拍及び血圧も正常だ。今夜ゆっくり休ませていればもう大丈夫だろう」

 

 

「そうですか!!ありがとうございます!!」

 

 

ジンは医師からの説明に安堵する。一先ずこれで一翔のことは助け出せた、あとはあのギロ星獣を何とかすれば事件は解決と言えるだろう。

彼は眠りに居る一翔の元へ近寄り頭を撫でてやることに、その際一翔が寝言を呟く。

 

 

「やめて....ギロを...殺さないで.....ギロはいい奴なんだ....」

 

 

「一翔....」

 

 

寝言でギロはいい奴だ、ギロを殺さないでと希う一翔の瞼の隙間から一筋の涙が流れる。これほどまでにギロ星獣を思う姿を見せられると本当にギロ星獣は害がないのではと考えてしまう。

そういえばとジンは遊園地で梅田が言っていた言葉を思い出す。

 

 

 

『ジンくん!!あの怪獣は悪い奴じゃないんだ!!決して攻撃しないでくれ!!』

 

 

トオルもギロ星獣に害はないと信じている。こんなにもギロ星獣を思い庇う彼や一翔を考えるとギロ星獣を倒すべきなのかと考える。

っとジンが悩む所でトオルがやって来た。

 

 

「ジンくん!一翔くんは!?」

 

 

「医者から異常がないのでもう大丈夫だと」

 

 

「そうか!良かった!!」

 

 

「梅田さん....」

 

 

「ん?」

 

 

「貴方は、まだギロ星獣が敵でないと思いますか?」

 

 

「それは....」

 

 

ジンの問いにトオルは口を噤んでしまう。トオルはギロ星獣のことを忘れたことなど一度もなく、彼をずっと大切な友人だと信じてきた。

それ故に遊園地でジンに攻撃しないでくれと懇願したのもギロ星獣を思ったが故であったのだ、しかしまたギロ星獣はモロボシダンの約束を蔑ろにしてしかも一翔を誘拐してしまったのだ。

ゲンも今ではMACの隊長として地球や人間の生命や安全、そして平和を最優先に行動し敵である存在は誰であれきっと人の為に感情に流されずに戦いギロ星獣の命を奪うだろう。

トオルはそれを思ってジンにもあの時希ったのだ。

しかしジンもまたMACの隊員であり、そしておおとりゲンと同じウルトラマンでもあるのだ。人々の幸福と平和の敵となりかねない存在を黙って見過ごしてはこの先戦って行くことは不可能である。

だがそんな責任と義務を持ちながらも、一方ではギロ星獣と戦うのに躊躇いを持っている自分も居るのもまた事実である。

ジンの問いに思い悩む顔をするトオルは、ようやく口を開いた。

 

 

 

「僕もまだギロを信じている。彼は本当はいい奴なんだと....」

 

 

「しかし、以前にモロボシダン隊長と交わした約束を破ってギロは再び地球に現れた」

 

 

「ああ。だがそれにはきっと理由が...!」

 

 

 

トオルが尚も言葉を紡ごうした時、ゲンが現れた。

 

 

 

「だとしてもトオル、ギロが再び子供を催眠にかけて攻撃されないように人質にしたのは事実だ」

 

 

「おおとりさん....」

 

 

ゲンの言葉にトオルは顔を俯かせる、しかしジンはまだギロ星獣をハッキリした敵と断じるには迷いがあったのでゲンに問いかける。

 

 

「隊長、ギロ星獣は俺が変身や追い詰めなかったら何もしなかったし....それにこの地球に戻って来たのも、何か事情があって!」

 

 

「だが、ギロ星獣が再び子供を攫わないとも限らん。一翔くんだけではなく他の子供にも同じ手口をしかねない」

 

 

「っ!!!」

 

 

ゲンは一切揺るがずジンの言葉を否定した。己の思いを否定されたジンは顔を歪ませて俯く。そんな彼にゲンは新たな使命を与える。

 

 

「ジン!ギロ星獣は頭部にある二本の触角から出す泡を攻略する為に特訓を開始する!」

 

 

「隊長!?」

 

 

ジンに対して有無も言わさず特訓せよと言い渡したゲン、しかしジンはこれに素直に従うことが出来ない。だがジンの意見をゲンは聞く耳を持とうとはしない。

 

 

「直ぐに特訓に入れ」

 

 

「しかし隊長!!」

 

 

「ギロ星獣の被害者が既に居るんだ、相手はまたやってくるぞ。それにだ新しい犠牲者が出た時、お前は指を加えて見ているのか?」

 

 

「そ、それは.....」

 

 

確かにゲンが言っていることは間違ってはいない。一翔には怪我はなく無事ではあったが子供を攫ったという結果は残っている、これは覆すことは出来ない。

それにゲンが言ったように一翔に限らず別の子供がギロ星獣の標的になり、催眠にかけられて人質にされてしまい最悪犠牲者が増えてしまう。

そう思うとジンは否定することが出来なかった。そしてゲンはジンに投げかける。

 

 

 

「ジン!この地球は、お菓子で出来た夢の国ではないんだっ!!」

 

 

「......」

 

 

そう、現実はお菓子のような甘く心地よい物では断じてない。それはL77星で両親を失い、孤独となって生きてきたジンには痛いほど分かっていたことだった。

だがどうしてもジンはギロ星獣を倒すのに躊躇ってしまう。しかしゲンはそれを許さずついてこいと言う。

 

 

「ジン、特訓の為についてこい」

 

 

「はい」

 

 

「ジンくん....」

 

 

トオルは神妙な顔でジンを見る。今回自分の甘い考えで一翔を危険にしてしまったかもと思っているようだ。

 

 

「梅田さん、いってきます」

 

 

「ああ、頼む」

 

 

 

 

 

 

 

 

その一方で病室に移された一翔は未だに眠っていた、その横でトオルが見守って看病している。今回の一件でトオルは自分があの時遊園地でジンに引き止めるような言葉を投げかけなければ、ジンはウルトラマンライガになったあの時にギロ星獣を倒して一翔を助け出せていたかも知れない。

しかしそれはギロ星獣を見殺しにすることに等しい、トオルにはどうしても出来なかった。

だがその結果として自分が我が子として自身の家に引き取った一翔をこのような目にしてしまったと罪悪感を抱いてしまう。

 

 

「一翔くん...すまない」

 

 

トオルは寝ている一翔に詫びた。だが突如一翔は目を覚ましていきなり起き上がった。

 

 

「か、一翔くん!!目が覚めたのか!!」

 

 

「ギロが...ギロが呼んでいる....行かなきゃ」

 

 

「え!?」

 

 

その時であった。病室の窓が開き、そこからギロが現れたのだ。

 

 

「ぎ、ギロ!?」

 

 

ギロ星獣の出現に動揺するトオル、ギロ星獣はそんなトオルを見て喜ぶそぶりで手を振る。本当ならギロに再び会えて嬉しいという感情が沸くがしかし今の自分は一翔くんの親代わりだ、その彼をもう二度と危険な目には逢わしたくないと思ったトオルは嘗ての友情への思いを断ち切り、一翔を守らんとギロの前に阻む。

 

ギロ星獣は不思議そうに首を傾げるが、トオルは表情を強張りながら声を出した。

 

 

「ギロ!本当は僕も君とまた会えて嬉しい!だが!これ以上一翔くんを危険な目に合わすわけにはいかない!!」

 

 

っと嘗ての思い出を封じて子供を守る親として一翔くんを守ろうとする。ギロ星獣はトオルがこのような行動を取ったことに理解出来ず怒りを露にして彼を突き飛ばして壁にぶつける。

 

 

「ぐはっ!!ぎ、ギロぉ...」

 

 

ガクリと意識を失い倒れるトオル、彼を突き飛ばしたギロ星獣は一翔に振り向き彼をそのまま連れ去ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ゲンに連れてこられたジンが居る場所はとある特殊実験に使われる場所だった。その場所はガラス張りで密閉されていて、天井には噴射ノズルがありそこから泡が噴射され始める。

 

 

「でぇい!!てやぁああああー!!」

 

 

ノズルから泡が大量に噴射されている中、泡まみれになりながらジンはバク転や宙返りなどと身体能力を駆使して特訓に行っていた。

ゲンは厳しい顔で特訓に打ち込むジンを見つめてから助言する。

 

 

「相手は液体だ。それを振り払うスピードで圧倒しろ」

 

 

「スピード...」

 

 

「そうだ。奴の泡の液は一瞬に固まる。そうなっては助からん!!固まる前に弾き返さなければならん」

 

 

「弾き返す....」

 

 

ゲンの助言を聞きながらジンは己の両手を見つめる、っとゲンの助言は更に続く。

 

 

「スピードを上げるには空気の抵抗を出来るだけ少なくすることだ」

 

 

「少なくする...っ!」

 

 

ジンは何かに気づき、身を屈めて身体を丸くする。

 

 

「そうか!身体を...出来るだけ丸くすればいいんですね!」

 

 

「そうだ。円盤のように出来るだけ丸くすることだ。そして全身をバネにして遠心力で弾き返すんだ!!」

 

 

この新たな攻略法はレオが嘗てギロ星獣にやった方法で、これを使って見事にギロ星獣に勝利している。ならば今度もまた同じやり方でギロ星獣を倒しかないとゲンは踏んだのだ。

 

 

「いいか、星獣を倒す時間はほんの一瞬しかない。その一瞬が勝負だ」

 

 

「隊長....」

 

 

やはりもうゲンは嘗てのようにギロ星獣を二度も許しはしないようだ。表情でそれを語っている為にその圧も半端ない。

だがジンはまだゲンに意見する。

 

 

「しかし隊長、そのギロ星獣はまだ破壊活動一切してません」

 

 

「言葉を慎め!!お前は星獣を倒すことだけに集中すればいい!!」

 

 

っがその時であった。一之瀬隊員が慌てて入ってきた。

 

 

「隊長!!大変です!!!一翔くんが病院から居なくなりました!!」

 

 

「なに?!」

 

 

「それと梅田さんが病院で意識を失って倒れてました!!」

 

 

「梅田さんが!?」

 

 

ジンたちは一翔が居た病室へと向かう、そこには意識を失い倒れているトオルがそこに居たが一翔は何処にも居ない。

 

 

「梅田さん!!しっかりしてください!!梅田さん!!」

 

 

ジンはトオルを身体を揺さぶり起こし、トオルは意識がハッキリしてないがジンの肩を必死に掴み懇願する。

 

 

「じ、ジンくん...頼む!!ギロを...ギロを止めてくれぇ!!」

 

 

「梅田さん....」

 

 

「頼む!!」

 

 

トオルの姿にジンは立ち上がり、拳に力を込めて決意を固める。彼が決意を新たにしたその時MACベースから通信がきた。

 

 

『こちらMACベース!!』

 

 

「どうした!!」

 

 

『隊長!レーダーに星獣の反応が!!』

 

 

「場所は!!」

 

 

『場所は再びB-105の遊園地です!!』

 

 

「分かった!!一之瀬!他の隊員たちに連絡しろ!!」

 

 

「了解!!」

 

 

ギロ星獣出現の報を聞いたゲンは一之瀬隊員に他の隊員たちにも連絡しろ命じて部屋を出ていかせ、ジンにも特訓を続けるよう命じた。

 

 

「ジン、お前は特訓を続けろ。いいな?」

 

 

「分かりました!」

 

 

 

 

 

 

 

朝日に照らされた遊園地に再び現れたギロ星獣は巨大化して雄叫びを上げる。そこへMACベースから氷室と伊勢が乗るマッキー二号機と、芹沢と東雲が乗る三号機が駆けつけ更に地上からはゲンと一之瀬が乗るマックロディー現場に到着。

 

 

「よし!攻撃開始!!」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

ゲンの号令で巨大化したギロ星獣に集中砲火を浴びせる。そんなMACの攻撃を受けているギロを病院から連れ出された一翔が遊園地園内から見ていた。

 

 

「やめてよぉ!!ギロが何をしたんだぁ!!!」

 

 

しかしそんな一翔の叫びはMACの攻撃による轟音によってかき消され無情にも届かない。そればかりかギロ星獣は完全に怒りで暴走している、一翔は暴れるギロ星獣を落ち着かせようと声を大にして叫ぶ。

 

 

「ギロぉ!!落ち着いてよぉ!!!ギロが暴れなければ攻撃されないよ!!」

 

 

だがそれも届かない。一翔が叫んでいる頃、ジンは未だにギロ星獣攻略の特訓の為に噴射ノズルから出る泡が舞う中で身体を丸くして見事な空中回転する。

 

 

「てやぁああああー!!」

 

 

しかし肝心な所で失敗し、床に倒れこむ。

 

 

「ぐっ、くそ!!もう一度だ!!」

 

 

ジンは意識を集中する。全てはギロ星獣を倒すことに精神を集中する、そして再び彼はジャンプして空中回転する。

その回転は先ほどよりも速くそしてそれをバネに、最後は自分の身体中の泡が全てガラス張りの壁に弾け飛び散ちり見事特訓を完成させる。

 

 

「よし!出来た!!」

 

 

特訓を終わらせたジンはMACの制服に着替えて急ぎ外にでる。

 

 

「今行くぞ!!一翔!!」

 

 

 

ジンは「ライガブレス」をはめている手ともう片方の手で、胸の位置でクロスしてから天に向かってブレスレットをはめている拳を掲げて叫んだ。

 

 

 

 

ライガアアアァァァァーっ!!!!

 

 

 

そして光が彼を包み込み、大きくスパークした中心から我らがヒーロー・ウルトラマンライガがギロ星獣の目の前に飛んでやって来た。

 

 

「ダァッ!!」

 

 

ライガはギロに構えて立ちはだかる。MACの攻撃で怒りを募らせていたギロ星獣はライガの姿を見て更に怒り、ライガに殴りかかる。

ギロの攻撃にライガは冷静に躱しながらカウンターの正拳突きをかまし、次にはローキックでギロ星獣の足を止めてから身体を持ち上げて投げ飛ばす。

 

 

「デェイッ!!!」

 

 

凄まじい力で投げ飛ばされたギロ星獣はひるんでしまう、しかしライガは容赦なく畳み掛ける。手刀でギロ星獣の頭部に何度も手刀を叩きこみ、次に面蹴りをかます。

ギロ星獣がやられる姿を見て一翔はライガに叫んだ。

 

 

「やめてよぉ!!ウルトラマンライガぁ!!!」

 

 

しかし今回のライガはそんな少年の願いを聞こえていないのか、それとも地球や人々を守る為敢えて心を鬼にして無視して戦っているのだろうか、どちらにしろライガはドンドンと攻撃を加えていく。

 

 

「エイヤァ!!ジュアッ!!!」

 

 

胴蹴りを仕掛けてから大きく態勢を崩した所へ股蹴りをくらわして悶絶し倒れた奴のマウントを取るウルトラマンライガ。

しかしギロ星獣は二本の触角から泡の液を噴射させてライガを追撃を妨害する。好機と見たギロ星獣は泡攻撃を続けライガを泡まみれにする

だがそこへ氷室と芹沢が操縦するマッキー二号機、三号機が援護に来る。

 

 

「ウルトラマンライガぁ!!援護するぜぇ!!」

 

 

「ほらほら!!後ろがガラ空きだよ!!」

 

 

二機の攻撃がギロ星獣の注意を取り、奴に隙が生まれる。ライガは自身に纏まりついた泡を回転して全て弾け飛ばして透かさずギロ星獣の背後を蹴りを入れる。

怒るギロ星獣は泡をドンドン噴射する、しかしあろうことか一翔にまで危害が及びそうになる。

 

 

「うわぁ!!」

 

 

ギロ星獣の泡が一翔を襲うとしたが、そこへウルトラマンライガが寸前で身を挺して幼い命を助けてギロにもう一度挑む。

ギロはそんなライガに再び泡攻撃を仕掛けてくるが、ウルトラマンライガは乱れぬ動きで奴の手を掴んでから一本背負投を決める。

 

 

「ジュアぁ!!!」

 

 

立ち上がったギロは今度こそ、っと泡を噴射してくるがそこへ特訓の成果を見せようとライガは素早いスピードで翻弄してからジャンプし、奴の頭上とすれ違うようにダブルチョップで見事二本の触角を斬り落としたのだった。

触角を斬られたギロはそのまま倒れ、切れ目から泡が噴き出して巨大化した体を溶かして息絶えてしまう。

その光景を見てしまった一翔はギロの名を叫んだ。

 

 

 

「っ!?ギロォオオオォォォーー!!」

 

 

泡は段々縮小し、そこから触角を斬られたギロが人間サイズで倒れて死んでいた。ギロの元へ駆け付けた一翔は涙を流してギロの亡骸に縋る。

 

 

「ギロぉ....ギロォオオ....ううっ」

 

 

そんな彼らの周りには変身を解除したジンと、ゲンやMACの皆、更に病院から駆け付けたトオルまでもがやって来た。

 

 

「トオル....」

 

 

トオルはギロの悲しい姿に涙を流す。やはり嘗ての友達の死に姿をまた見てしまうなどキツイのだろう。だがトオルは涙を拭き、一翔の傍らで諭す。

 

 

「一翔くん、泣くのはよせ。君だってMACの隊員の仕事の意味は分かっているはずだ!」

 

 

「わからないよっ!!」

 

 

だが一翔は泣きながらトオルの手を弾いて拒否して、ゲンを睨む。

 

 

「隊長さんはどんな怪獣だってみんな敵だって思ってるんだ!!」

 

 

「....」

 

 

ゲンは一翔に只々見つめるのみであるが、一翔は尚も話を続ける。

 

 

「ギロがこの地球にきたのは...住んでた星が“悪い宇宙人”に壊されたんだ...」

 

 

「悪い宇宙人?」

 

 

「うん....ギロが言うには、片腕がない宇宙人(・・・・・・・・)に、いきなり....」

 

 

「(片腕がない宇宙人?....まさか)」

 

 

ゲンは自分の記憶を辿ってそれに該当する宇宙人を思い出す。そんなゲンとは打って変わって、ジンはギロが住んでた星を追われたと聞いて悲痛な顔を浮かべる。

自分もL77星を失い一人孤独だったので、ギロの気持ちが理解できる。それなのに自分が今回やった行為はギロの星を滅ぼした宇宙人と変わらないではないか。

ジンは己を責める。だがもう既に遅い、事は既にこうなったのだ。

しかし一翔はギロを殺したMACとウルトラマンライガに非を責める。

 

 

「今までギロは街を壊さなかった!攻撃してきたのはいつもMACが先じゃないか!!」

 

 

「そ、そいつは....」

 

 

「う、うん....」

 

 

「ここまで言われると....」

 

 

「そう、ね....」

 

 

「.....」

 

 

 

MACの面々も罪悪感が湧いてくる、子供の心に傷をつけたのかと。泣く一翔にトオルはそれでも語る。

 

 

「一翔くん...君は確かにギロと仲良くできた、そしてこの宇宙にはとても優しい怪獣も居たと皆に伝えようとした...ぼくもね、昔ギロと友達になった。だから君の気持ちは痛いほどわかるんだ。今回でMACの皆もきっと分かってくれる」

 

 

「でも...ギロは....」

 

 

っとそこへゲンが思わぬ提案をする。

 

 

 

「一翔くん....私からのお願いだ。ギロを生き返らせたらMACを許してくれるか?」

 

 

「隊長!?」

 

 

ゲンの発言に東雲やMAC隊員たちは驚愕し信じられない顔をするが、ジンは顔から笑みを溢す。そしてそれはトオルや一翔も同様であった。

 

 

「え!?本当に!?ギロを生き返るの!?」

 

 

「ああ。しかし条件がある、例え生き返っても怪獣を地球に置くことは許されない。ギロには宇宙に帰ってもらう。いいね?」

 

 

「....うん」

 

 

ゲンの条件を聞いて一翔は寂しげに首を縦にふる。本当は嫌だがギロにはやはり宇宙が居場所なのだろうと思い自分に言い聞かせる。

そんなやり取りの中、ジンは誰にも気づかれずに皆から離れた場所に向かい、「ライガブレス」をはめている手ともう片方の手で、胸の位置でクロスしてから天に向かってブレスレットをはめている拳を掲げて叫んだ。

 

 

 

 

ライガアアアァァァァーっ!!!!

 

 

 

 

「あ!ウルトラマンライガ!」

 

 

「デェア」

 

ウルトラマンライガは両腕を頭の位置でクロスさせたから額の菱形のビームランプから生物や物体を再生させ、蘇らせる「レイズレクション光線」をギロの亡骸に放射すると、たちまちギロの触角が再生していく。

そして完全に再生し、ギロは息を吹き返して喜びながら立ち上がる。

 

 

「ギロ!」

 

 

一翔はギロが生き返ったことに喜ぶ。そんな自分の蘇生に喜んでくれてる一翔にギロは最後と言わんばかりに握手を求め、一翔もギロの手を強く握り別れを覚悟する。

 

 

「ギロ....さよなら」

 

 

「バイバイ、カズトくん!」

 

 

そう言ってギロは光となって空へと消えていった。一翔は空へと飛び去ったギロに対して手を振るう。

 

 

「ギロォー!さよならー!!さよならーー!!」

 

 

トオルも呟きながらギロに別れを告げる。

 

 

「ギロ...さよなら」

 

 

宇宙には確かに悪となる怪獣やそうでない怪獣も居る、ジンはこのことを胸に刻みこれからも戦い続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、ウルトラマンライガ

宇宙カマキリ▪ギルマンティス登場!遥か彼方の宇宙から餌を求めて地球にやって来た!

8本足なのが特徴、4本の鎌でどんなものも簡単に引き裂く!

頑張れジン!!頑張れウルトラマンライガ!!

さぁ!皆で見よう!!


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